吉絡み、SS。

1 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時16分16秒
初めまして。
短編といえるかどうか分かりませんが、
一応吉絡みな短編を。

一発めはなちよしで。
2 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時17分09秒
今日もあの人は笑ってた。

ニコニコ ニコニコ

あの人はいつでも笑ってる。

ニコニコ ニコニコ

あの人は誰にでも笑顔を見せる。

ニコニコ ニコニコ


なんだか、とても腹が立つ。
ねえ、笑わないで下さいよ。
そんな笑顔ばっかしないで下さいよ。
誰にでもそんな笑顔見せないで下さいよ。

その笑顔を見るのは私だけ。

貴方は私のためだけに笑う。

その笑顔は私のもの。

その笑顔を見て私もやっと笑えるんですよ。

ねぇ、安倍さん?
3 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時18分01秒
2・飯吉
4 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時19分59秒
ねぇ、吉澤。
カオリ気付いたよ。
カオリ吉澤の事が好き。

だってカオリのこの心臓の音聞いてみてよ。
ホラ、こんなにドキドキしてる。

おかしいよね。

なっちといても矢口といても全然普通なのに、吉澤といるとこんなにドキドキしてるんだ。

ねぇ、吉澤は気付いてる?
カオリは吉澤の事が好きみたい。

吉澤が笑ってくれるだけで、あぁ〜幸せ☆なんて思っちゃうんだ。

ねぇ、吉澤はカオリの事どう思ってる?

・・・・・・・・・・うん、やっぱり聞くのは止めとくよ。
吉澤の幸せを邪魔するのは悪いからね。

この想いはカオリの胸の中だけにしまっておくよ。


ねぇ、吉澤。


大好きだよ☆
5 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時20分36秒
3・よしごま
6 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時21分30秒
彼女は見かけより全然弱くて。

彼女は見かけより全然繊細で。

ちょっとした事でもスグ気がつくんだ。

そして一番に助けてくれるんだよね。


でもね、ごとーは分かってるよ。

一番助けて欲しいのはよっすぃー自身だよね?


ねえ、弱いトコ見せてよ、ごとーにだけ。

ねえ、よっすぃーの涙を見せてよごとーにだけ。

そしてあたしの心も助けてよ。


あたしはよっすぃーがいなきゃダメなんだ。

いつも

いつでも

どんなときでも

よっすぃーと一緒じゃなきゃ嫌なんだ。

ねえ、こんなごとーを助けて?
7 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時25分50秒
4・いしよし
8 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時28分08秒
ああ、そうか。

これは全ての始まりなんだ。

全ての始まりであり、ある一つの終わりの形なんだ。

ああ、そうだったのか。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

見返りなんていらない。

ただ貴方が喜ぶ事を、してあげようと。

そう、思っただけ。

貴方の笑顔を見るだけで私は幸せだから。

貴方の笑顔が。

私にとっては最高の宝物だったから。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

いつも、君の事を思っているよ。

泣き虫で、強がりで、とても優しい君の事を。

言葉が足りなくて、知らずに傷つけたかもしれない。

でもね。

いつも、君の事を思っているよ。

そう、一番にね。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

私はね、貴方のことが大好きなの。

大きな瞳で、こっちを見て、ニコって笑う。

そんな貴方が大好きなの。

その瞳に私を映して欲しいの。

私だけを映して欲しいの。

こんな私は欲張りですか?

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

9 名前:ショッポ 投稿日:2003年07月28日(月)00時28分51秒
君はスグ拗ねちゃうよね。

他の人といると。

悲しそうな顔して見るよね。

そんな顔を見ると心が痛むんだ。

ズキン、ズキンって。

だからね、抱きしめてあげるよ。

ギュって。

痛いなんて言っても離してやらないんだから。

抱きしめた後の君の顔が好きだよ。

ニッコリ笑う君が好きだよ。

これからもね。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

貴方の腕の中にいるときが大好きなの。

暖かくて。

何もかもを包み込んでくれるような、貴方の腕の中が大好きなの。

おっきな手で、私の頭を撫でてくれるの。

そんな貴方が大好きよ。

これからもね。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
10 名前:ネス 投稿日:2003年08月08日(金)00時56分20秒
あぁ好きだなぁ…これすごい好き。なんか引き付けられます。新作期待してます。頑張ってくらさい!
11 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:24
昨日は最悪だった。
一年間付き合った彼女と別れた。
別れたというか、一方的にふられた。
そのふられた理由と言うかその、それがなんとも情けない。
昨日たまたま昔の連れと会い、ファミレスに入った時だった。
ちょっと汗をかいたもんで出されたお絞りで顔を拭いたのだ。
それをたまたま外を通りかかった彼女が見てたらしい。
浮気者呼ばわりされた上に、オヤジ臭いと言われ、そんな人とは付き合えないといわれた。
・・・たまたま拭いただけなのに。
・・・いつもはこんな事しないんだぜ?
・・・偶然と言うものは最悪だ。
12 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:24
という訳で、今日。
未だにふられたショックから立ち直れていない吉澤ひとみ、17歳、目覚め最悪です。
あ〜ぁ・・・うぅ・・・神様、昨日と言う日を消し去ってください。
あ、それか彼女がファミレスで見た光景を消してくださっても構いません。
・・・・なんてね。

あーうー・・・チクショウ。
13 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:25
ま、いいか。過ぎた事を悩んでも仕方がない。
そう、ふられた事をラッキーと考えるべきだ。
新しい恋を見つけるチャンスだ!なんつってね。
・・・でもね、やっぱり悲しいんだよ。
と言うわけで、今日は学校は休みたいと思います。
一日休んだらなんとかなるだろ。・・・多分ね。
14 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:26
机の引き出しから手帳を取り出す。
彼女と撮ったプリクラやら写真やらがいっぱい貼ってある。
かなり分厚い。
よく撮ったなぁ・・・自分。
ま、これからは増える事もないんだろうけど。

・・・ヤバイ、泣きそう。
15 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:26
慌てて手帳を机の中にしまう。
そのままベットへダイブ。落下地点にあった枕を顔に押し付ける。
・・・うぅ・・・なんでだよぅ・・・ヒック・・・
布団をかぶって本格的な泣きの体勢に入った時、

〜♪〜♪〜♪〜

携帯が鳴った。

電話だ。
着信表示は大親友のごっちん。
無視する訳にもいかないので取り合えず出る。

・・・まぁ、言われる事は大体分かってるけど。
16 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:27
「もしもし?」

『んぁー、よっすぃ?ごとーだよ〜?』

「うん、で、何?」

『あー、何って今日学校は?今日は月曜日ですよ〜?』

・・・分かってるって・・・

「うん、知ってる・・・」

『あっは、そりゃ知ってるだろうケドさ、学校来ないの?』

「・・・うん・・・今日は休むよ・・・おばちゃんに言っといて・・・」

あ、おばちゃんってのはウチラの担任の保田先生のことね・・・

『ぇ〜、休むのぉ?何でよ〜、あ、分かった、サボってまた彼女んトコ行く気でしょ?
も〜しょうがないなぁ、何て言っとこう、お腹痛い?や、コレはこないだ使ったからなぁ・・・
頭痛いにしとこっか?あ、コレもダメだ・・・巻き爪痛い?う〜ん・・・』

ごっちんは一人で延々とウチの欠席理由を挙げてはダメ出しを繰り返してる。
ハァ・・・キリがないよ・・・
ってかウチはいっつも腹痛とか頭痛とかそんな事で欠席してる事になってるのね・・・
巻き爪って・・・
17 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:28
「はぁ・・・ごっちん?今日のウチの欠席理由は恋の病ね。おばちゃんにそう言っといて」

『・・・恋の病ぃ!?』

あまりの声の大きさにウチは携帯を耳から離した。
と、笑い声が聞こえてきた。
しかもかなりの爆笑モード。

『アッハッハ、恋の病って、アハハ、ヨシコ天才だよ、ちょ〜ウケるハッハッハ・・・』

・・・や、天才もウケるも何も事実なんだよ・・・

「とにかくそう言っといて。今日は休むからね」

『ハハ、あいよ、んじゃね〜アッハッハッハ・・・』

・・・まだ笑ってるよ・・・

「・・・じゃーね」
18 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:32
携帯の向こうではごっちんがまだ爆笑してる。
ウチはなんだか無性に腹が立って電話を切った。
ベッドの上へ放り投げる。

あー、ホント。
何でこうなったんだろう。

一昨日までは全然普通に幸せで。
あー、コレからもずっとこんな日が続くのかなーなんて思ってて。
それなのに。
それなのにだ。

・・・ッあぁ〜!!!!!

嫌だ嫌だ。
昨日の事なんか思い出したくも無い!
ケド頭の中に浮かんでくるのは昨日の光景。

冷たく別れを吐きつける彼女と、去っていく彼女の後姿。

消してしまいたいのに消えてくれない。
19 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/02(木) 23:40
起きてるとこの映像がエンドレスで流れてきそうなのでまた寝ることにした。


―夢を見た―

そこは例のファミレス。
ウチはごっちんと一個先輩の矢口さんと来てた。
ウェイトレスのお姉さんがやってきて注文をとる。
矢口さんはオレンジジュースとチーズケーキを、
ごっちんはアイスコーヒーをそれぞれオーダーしてた。
そして自分。
ウチはベーグルサンドを頼もうとお姉さんに目をやった。

―ビビビッ―

ウチの体に電流が走った。
20 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/12(日) 17:55
・・・・・・・・・・・いってぇ!!!
って、マジで痺れてるよ・・・

「んあ〜?起きた〜?」

「うわあ!!」

「お、しっかり目も覚めたようで」

「ご、ごっちん?」

「んあ、ゴトーですよ?」

うん、間違いない。
ごっちんだ。
でも

「なんで?」

「やー、ヨシコが休むって言うからごとーもサボってきちゃった」

ごっちんはあはっと笑う。
や、ウチが聞きたいのはそういう事じゃなくて、

「何でここにいるの?」

「ん?ああ、あのね、窓開いてたから」

「窓?窓ってあの窓?」

ウチは目の前にある窓を指差す。
ごっちんはコクンと頷く。

「あ、あのー、ここ二階ですけど?」

そう、ウチの部屋は二階にある。

「あっは、よじ登ってきたよ〜」

ニィーっと口を横いっぱい広げて笑顔のごっちん。

「す、スゲーっす・・・」

凄い。凄いけどさ、かるーく犯罪犯してるよね・・・
21 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/13(月) 20:47
「でもさ、ビックリしたな」

クッションを抱えながらごっちんが口を開く。

「何で?ウチの方がビックリだよ。起きたらごっちんいるし・・・」

「そうじゃなくって」

「なにが?」

「ヨシコが家にいることに。
ごとーはさ、てっきり亜弥ちゃんトコ行ってると思ってたからさ」

ああ、そうか。
ごっちんはウチが振られた事知らないんだ。
あ、亜弥ってのはウチが付き合ってた子ね。

「あのさ、ごっちん?」

「なーにー?」

「うーんとね、・・・あたし、別れちゃったんだ・・・」

「・・・マジ?」

22 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/13(月) 20:58
「・・・マジっす・・・」

「・・・そっかぁ・・・今度は上手くいくと思ったのにな・・・」

「・・・ね。ウチもさ、本気だったんだよ・・・なのにさ・・・」

昨日の事が鮮明に思い出される。
ああ、ホント。無かったことにして下さい。

「でもさ、ヨシコの恋の病ってウソじゃなかったんだね」

「当たり前じゃん。ウチはウソつかないよ?」

「ごとーがいっつも代わりにウソついてあげるんだよね」

う゛・・・確かに。

「ね、何で別れちゃったのさ。浮気でもした?」

ごっちんは目をキラキラさせながら聞いてくる。
はー、そんなに人の失恋話が聞きたいんすか。
こっちは思い出すだけでも辛いというのに。

「ねー、喧嘩でもした?」

ぶぅ。しょうがないから話してやろう。
昨日の辛い辛い出来事を。

23 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/19(日) 02:02
 
「…と、まぁ、そーいう訳でね…」

「…別れっちゃったんだ?」

頷く。
そんなアタシを見てごっちんはニカっと笑い言った。

「バカだね」

「ヨシコも亜弥ちゃんも」

「何がよ」

アタシの事をバカって言うのはいいよ?
自分で分かってるから。
だけど亜弥の事をバカ呼ばわりするのは許さん!
仮にもアタシと付き合っていた彼女なのだ。
いくらごっちんでも言って良いことと悪いことがある。

「何でバカなんだよ」

ムキになって言い返すアタシにごっちんはやっぱり笑いながら言った。

「ヨシコはさ、それでいいの?」

「は?何が?」

ゴメン、ごっちん、アタシやっぱバカだからさ、貴方の言いたい事がよく分かりません。

「だからさ、このままじゃヨシコ、亜弥ちゃんの中でずぅっとオヤジのイメージのまま居続けるんだよ?」

あ、そうか。
…い、嫌だ!

「ま、亜弥ちゃんがヨシコの事なんか忘れちゃえばそれはそれでもいいと思うんだけど」

忘れる?
亜弥がアタシを?
亜弥の記憶からアタシと過ごした楽しかった日々が消される?

「そ、そんなのもっと嫌だ!」

アタシは無意識の内に声に出して言っていた。
24 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/24(金) 13:27

「え?あ、ああ、うん、嫌でしょ?」

ブンブンブン

首を激しく縦に振る。

「はいはい、分かったって。首折れるよ?
んでさ、だからさ、行こうよ」

「行くって・・・ドコ?」

「んあ〜・・・亜弥ちゃんトコ?」

「えー、ダメだよ、もう会ってくれないよ・・・」

「うー・・・じゃあ呼び出そう」

「ドコに?」

「いつもんトコ!!」


いつものトコってことは、あのファミレスだ。
亜弥にオヤジ臭い一面を見られ、フラれた場所。

「ね、そうしよう!」

ウチははっきり言って行きたくなかったのだが、
ごっちんが行こうよとうるさいので渋々着いて行くことにした。
 
 
 
 
 
でも後々になって、
ウチはこの時ごっちんに着いて来といてよかったと思うようになる。
25 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/24(金) 13:42

―場所は変わって。

「いらっしゃいませ〜」

アニメ声が聞こえる。お、という事は?

「ヤホー梨華ちゃん」
「おいーっす」

「あ、ごっちん!それによっすぃも!!」

まーた学校サボったの〜?
なんてニコニコしながらこっちに向かってくるのは幼馴染の梨華ちゃん。
家庭の事情が何やらで、昼間働きながら夜間高校へ通ってる。

「もー、サボっちゃダメでしょ?」

「なーに言ってんの。ホントはごとー達が来てくれて嬉しいんだろ」

「全っ然!!あー仕事が増えるわぁ」

なんて腕組みしてる梨華ちゃん。
でもその顔は嬉しそうだ。

「さ、お嬢さん方、何に致しましょう?」

ホラ、やっぱり嬉しそう。

「んあー、ドリンクバー二つとぉ、あー・・・ケーキ食べたい」

ケーキ?朝っぱらから?
うおー、ごっちんアンタすげえよ、やっぱ。
ある意味尊敬に値するわ。

「よっすぃはケーキ食べるの?」

「や、ウチはいいよ」

うん、ホント無理だから。

じゃあチョッと待っててね〜と手をひらひらさせながら梨華ちゃんは行ってしまった。


26 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/24(金) 13:53
「ヨシコケーキいらないの?」

「う〜ん、朝からケーキなんて無理だよ・・・」

「何言ってるんだ、食べなきゃダメでしょ?」

何、それは強制なの?

「ホラ、言うじゃん?『腹が減っては戦が出来ぬ』だっけ?だからさ、ホレ」

ああ、ウチはいまから戦に借り出されるのか。
まあ、ある意味戦いだけどな。
でもさ、食べるならもっと他のにしようや。

「んー・・・じゃあゆで卵」

「ウム、よろしい」

それではドリンクを取りに行くのだぁ〜!!
と、やけにテンションの高いごっちんの後についていく。

「おし、ごとーはコーラ」

ぅえッ?
朝からコーラっすか?
・・・やっぱすげえっす・・・

ウチはホットコーヒーとミルク、ガムシロップを手に持ち席へ戻った。
27 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/26(日) 21:40
席に着くと梨華ちゃんがケーキと伝票を持ってきた。

「ゆっくりしていってね」

そう言って梨華ちゃんは言ってしまった。

「あ、ヨシコゆで卵」

あ、そうだった。
ゆで卵頼むの忘れてたよ・・・。
ま、いいや。どうしても食べたいって訳じゃないし。

「後で頼むからいいや」

「・・・ほう・・・」

ごっちんは口いっぱいケーキを頬張ってる。
ご丁寧にも口の横にクリームをつけて。
 
 
 
 
「さ、呼び出しますか」

ケーキを食べ終わったごっちんは携帯を手にした。
何でもウチの携帯から掛けると亜弥が来ないかもしれないんだそうだ。
ホント、こーゆー事に関しては頭が回るよな。

「オシ、ヨシコ。準備は良いか?」

「・・・オケーイ」

何の準備なのかよく解らなかったが、ウチは一応頷いておいた。
28 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/26(日) 21:50
「よし、じゃあヨシコはここで待機ね。ごとーは亜弥ちゃんに電話してくるから」

そう言ってごっちんは席を立ってしまった。
ウチは一人取り残されて何だか心臓がドキドキしてきた。
緊張してる?まさか。

・・・じっとしてられない。
ウチはこのドキドキを紛らわすために席を立ちドリンクバーへ向かった。

 
ぅぅ・・・炭酸でも飲んでシャキっとするか。
ウチはコーラのボタンを押した。

氷を入れて・・・っと。

氷の入れすぎで、コップから溢れ出しそうになってるコーラを零さない様に
恐る恐る席へ戻っていた時。

―ドンッ―

 
 
出会いは突然。それも最悪な形で訪れた。
29 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/26(日) 22:00
 
 
「キャ、冷たい!!」

「う、ああ!!す、スミマセン!!!」

突然横の席から女の人が飛び出てきてぶつかった。
その衝撃でウチはコップを手放してしまい、
溢れそうなほどいっぱい入っていた中身は全て・・・

「ああ・・・ジュースかぶっちゃったよ・・・この服お気にだったのに・・・」

その女性に全てかかってしまっていた。

「ホ、ほんとスミマセン!!クリーニング代とかちゃんと弁償しますんで
ホント、ごめんなさい!!」

「チョッと、どうしたの?」

梨華ちゃんが通りかかる。
ウチは事情を説明し、梨華ちゃんに布巾を借りた。

「ごめんなさい、こ、コレで服・・・拭いてください」

「もー・・・どうしてくれんのよ・・・」

ぶつくさ言いながら女性は布巾を受け取ってくれた。
30 名前:ショッポ 投稿日:2003/10/26(日) 22:58
↑最後の文

×ぶつくさ言いながら女性は布巾を受け取ってくれた。
○ぶつくさ言いながらも、女性は布巾を受け取ってくれた。
31 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/10/28(火) 09:16
ウチはポケットから財布を取り出した。
女性にクリーニング代を渡すためだ。
中身を見てみる。
夏目さんが二枚と百円玉が三枚ほど。

…たりるのかな?

見たところ女性が着ているその服はとっても高そう。

それに、ココだけの話、
ウチはクリーニング屋さんに行った事がない。
いつも親に頼んでるんだ。

だから一着いくら位するのかが全く分からない。

とりあえず夏目さんを二枚渡すことにした。

「あ、あの…コレ使って下さい」

「…………」

…?
反応がないぞ?
も、もしかして二千円じゃ足りないのかな?

おそるおそる女性の顔を見上げる。

‥‥‥‥

「あ、あのー…」

「…!ん、あぁ、何?」

「コレ、使って下さい」

ウチは夏目さんを二枚女性の手に押しつけ、その場を離れた。

十分に距離をとってもう一度女性の方を見てみる。

…何やってるんだろう…

その女性は突っ立ったままボーっと宙を見つめている。
まるで得体のしれない何かと交信してるみたいだ。

32 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/11/03(月) 01:20

…あ、こっち向いた…やばっ!目ェ合っちゃった…

女性はズンズンとウチの方へ向かってくる。

ど、どうしよぉ…

アタフタとしている間に女性はウチの目の前までやってきてしまった。

「あ、あの、何か?」

おそるおそる尋ねてみる。
すると女性はいきなり喋りだした。

「カオには分かる」

…顔?

「人という生き物は出会いと別れを繰り返し、そうして生きていくものなの」

「…はぁ…?」

「だから今日嫌な事があっても明日は楽しいはずなの」

「…はぁ」

「じゃあ頑張ってね。カオは用事あるから帰る事にする」

「…はぁ」

それじゃ。
そう言って女性はスタスタと行ってしまった。

…?

どうやらカオというのは顔の事ではなく、女性自信の名前のようだ。

…頑張れ?

何を頑張ったらいいんだろうか。

…ぅ〜ん…

…取り合えず席に戻ろう。

席に着くとしばらくしてごっちんが戻ってきた。

「さ、ヨシコ頑張れよ?」

…頑張れ?

「もうスグ亜弥ちゃん来るから」

!!!
っあぁぁぁ!!

そ、そうだった!
亜弥だ!
あの女の人のせいですっかり忘れてた!
ど、どうしよぉ〜!!
33 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/11/09(日) 23:11






神様ってのは時に残酷だ。
ウチは別に神様なんて信じてないけどこの時ばかりは神様を恨んだ。
だってウチが顔を上げたその先には。

「話って何よ」

―亜弥。

ウチはそんなに日ごろの行いが悪いのですか?
お願いですから後五分だけ時間を下さい。

そんな願いが叶うはずもなく、ウチの目の前にはえらく機嫌の悪い亜弥。

「何もないんだったら帰るよ?」

「私これからデートなの」

「あ、チョッと待ってよ」

うん、チョッと待て。
待て。
うん、それで、えっと、デート。
デート?

「デートぉお!!???」

「そだよ。デートなの。だから話があるんなら早くして欲しいんだけど」

「だ、誰と?」

「ひーちゃんには関係ないじゃん」

た、確かに。
でも気になるよ。
だってさ、別れた翌日だよ?
普通に考えてありえないじゃん。

・・・・・・・・
や、でも待てよ?
もしかしてアイツか?
・・・あ、ありえる。
アイツなら十分ありえるぞ?
34 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/11/09(日) 23:26
 
 

「あ、あの、もしかして・・・藤本?」

「・・・ッ!関係ないって言ってるじゃん!」


亜弥は否定も肯定もしなかった。
でも多分ウチが言った事は当たってると思う。
亜弥の顔は真っ赤だったし、藤本だったらその可能性は十分ありえる。
ウチと亜弥が付き合う前から藤本は亜弥を狙ってるっていう噂があったし、
亜弥もそんな藤本を嫌っていなかった。
むしろ好意を抱いていたようにも見えた。


まあ、全てはただの憶測なんだけれども。

「で、話って何よ!」

あ、話。そうだ、何だっけ。
・・・・アレ?何だろう。
んん?何のためにウチは今ココにいるんだろう。
・・・なんか訳わかんないや。

だって亜弥にはもう新しい恋人がいて。
きっともう付き合ってるんだ。
だからあんな些細な事で別れるなんて言ったんだ。
ああ、そうか。
そうだったんだ。

なんだか無性に可笑しくなってきた。

「・・・ハハ・・・ック・・・ッハッハッハハハハ・・・」

ダメだ。笑いが止まらない。
笑いながら亜弥の方をチラッと見てみる。
亜弥は固まってた。
顔が強張ってる。
そりゃ当たり前だ。
いきなり目の前の人がおかしくなって壊れちゃったんだから。

でもさ、何だよ、つれないなあ。
仮にもウチは君の恋人だったんだよ?
そんな冷たい目で見るなよ。
そんな顔しないでよ。
なんで。



気がつくとウチは床に座り込んで両目からポロポロ涙をこぼしていた。
亜弥は・・・大分前に店から出て行ったみたいだ。
何が悲しいのかわからない。
別に何も悲しくないのかもしれない。
だけどウチは泣いていた。
35 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/11/17(月) 22:01


「…ヨシコ?」

どれぐらいたっただろうか。
顔を上げるとそこには困り顔のごっちんとこれまた困った顔の梨華ちゃん。

「…取りあえずさ、席、ちゃんと座ろ?ね?」

そうだった。
ウチ床に座り込んだままだった。

ごっちんに促され席につく。


「…頑張ったね。エライエライ」

ごっちんがヨシヨシと頭を撫でてくる。
その手がとても暖かくて。
ウチはまた涙を流した。
梨華ちゃんも背中を撫でてくれてる。

「…コレで終わりなんかじゃないよ?終わりは始まりなんだから。ね?」

梨華ちゃんの言葉がとても嬉しくもあり、
それと同時にコレで亜弥との恋物語も幕を閉じるのだと思うと、
何だか心が複雑な気分になった。
36 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/11/17(月) 22:02


「さ、ヨシコ何か好きな物頼め?ごとーが奢っちゃる」

ごっちんなりの気遣いなのだろう、普段は絶対奢ってくれる事のないごっちんが奢ってくれるらしい。

「うん、それじゃあ…」

ごっちんの優しさにつけ込んでこんな時にいっぱい頼むウチって結構性悪?
でもごっちんが奢ってくれるって言うしいいよね。
ケドごっちんそんなにお金持ってんのかなぁ?


「…ごめん、ヨシコ、ごとーお金足りないっぽい…」

あらら、やっぱり。

「あ、いいよ、今日は私が奢ってあげるから」

あら、コレまたビックリ。

ごっちんよりもっとケチケチな梨華ちゃんが。珍しい。

「よっすぃの振られた記念日だからね。でも今日だけだよ?あ、それと二千円以内でお願いね」


う、やっぱりケチなのは変わらないのね…。
てか振られた記念日って…。
チョット言う事酷いよ梨華ちゃん…。
37 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/20(木) 00:25
おもしろい
38 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/23(日) 02:30
すごいイイッ!! 
来たぁーっ*(゚∀゚)*━━(∀゚)*━━(゚ *)━━*( )*━━(* ゚)━━*(゚∀)━━*(゚∀゚)*
39 名前:ショッポ 投稿日:2003/12/13(土) 22:22
37、38>ありがとうございます。
励みになります。
がむばります。
40 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/12/13(土) 22:25
結局梨華ちゃんの言う上限二千円ではたいした物も頼めず、
ウチらはドリンクバーへ何度も足を運び、コップの中身をズーズーカラカラ言わせた。

「さ、これからどうしよーか?」

ごっちんが切り出した。

「今日はもうサボるとして、どっか遊びに行く?」

ごっちんの手の中ではクルクルとストローが踊っている。

「おーい。聞いてるかー?」

ウチの目の前で手をヒラヒラさせながらごっちんが身を乗り出す。

「どうします?ヨシコさん」

「あ、あぁ、どうするって、・・・どうしようか・・・」

はっきり言ってウチは今何もしたくない。
亜弥に振られたって事もあるけど、それより何より。

「ゴメン、ちょっとトイレ」


そう、さっきからジュースを飲み続けていたウチのお腹が泣いていた。
41 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/12/13(土) 22:26
トイレから戻るとごっちんのコップの中にはさっきとはまた違うジュースが溢れそうなほど入っていた。

「ごっちんまだ飲むの?」

「ん?ああ、そうだね、もうそろそろ止めとこう」

そう言ってごっちんは溢れそうなほど入っていたジュースを一気に飲み干した。
一息ついてごっちんが切り出した。


「さ、どーする?」

「う〜ん・・・もう、今日は何もしたくないや・・・」

「・・・そっか。だよね。じゃあもう帰ろっか?」

「・・・おう。」


「また来てね」と言う梨華ちゃんに礼を言い、私達は店を出た。

「さー、帰って寝るかな。」

どうやらごっちんは遊びに行くのを止めて家に帰るらしい。
うんうん、たまには家でボーっとしてなさい。
あなたは遊びすぎですから。

「さ、ヨシコん家行こうぜぃ。」

ん?

んん?
今なんて?

「はぁ?何でウチ?」
42 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2003/12/13(土) 22:30
「だってごとー家帰ったらサボった事バレちゃうじゃん。
ごとーはね、お母さんを悲しませたくないんだよ。」

うう、そんなのってありかよ。

「さ、だから、ホラ。行くよ?」

結局ウチはなんだか無茶苦茶な事を言うごっちんに反論する事ができず、
ごっちんに手を引かれて家に帰った。
43 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/06(火) 20:02


「ただいまあ〜」

ウチの先を行くごっちんはまるで自分の家みたく普通にズカズカと上がっていく。

「あら、お帰り〜。って真希ちゃんじゃない。久しぶりねえ。」

キッチンからヒョイと顔を出したお母さん。
娘が学校サボって外出してたってのにまるで気にもとめてない。
ごっちんもごっちんで暢気に世間話なんかしてる。

「ホラ、もう上行こうよ。」

なんだか長くなりそうな雰囲気だったのでウチはごっちんの腕を掴んで無理やり二階へと連れてった。

44 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/06(火) 20:03



「ヨシコさ。」

「何?」

ごっちんはウチのベッドの上であぐらをかいで座ってる。
一方、ウチはフローリングの床の上でクッションを抱き、壁にもたれていた。

「亜弥ちゃんの事好きだった?」

「は?何さ、いきなり。」

「や、何となく。てかさ、ヨシコ自分の言った事覚えてる?」

ウチが言った事?

「いつの話?」

「さっき。亜弥ちゃんと話してた時。」

亜弥と会ってた時?何か話したか?
あ、話したか。

「ああ、あの藤本のこと?」

「・・・違うよ。」

45 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/06(火) 20:03

ハテ。
違うと言われてもあの時話した事ってコレぐらいだろ?

「じゃあ分かんないや。覚えてないかも。」

「・・・そう。じゃあいいや。」

そう言ってごっちんはゴロンと横になってしまった。
何だよ、何か気になるなあ。

「ね、ウチ何か言ってた?」

「べっつに〜」

「ウソだぁ!!教えろよコノヤロー!!」

ピョンっとベッドへダイブ。
寝そべるごっちんの上に覆いかぶさり・・・


46 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/06(火) 20:04


「ひゃっ!!うはっ、あ、あっはははは、ちょ、やめ、やめてってば!ひゃはは、くすぐったいって、ねえ、
ヨシ、ちょおっと!あはははは・・・・」

へへーん、どうだ。
ごっちんの弱いトコぐらい知ってんだよ。

「ね、ウチ何か言ってた?教えて?」

満面の笑みでごっちんに問う。

「は、わ、分かったから、話すってば、話すから・・・」

目に涙を浮かべてごっちんは起き上がった。


47 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/10(土) 01:53









「なんだ、結局別れるのって藤本とくっつきたかったからなんだ?」

「ちがっ・・・」

「違くないよ。だっていつもの亜弥ならウチがほかの女の子と会ってたって許してくれんじゃん。」

「そんな事ない!許してなんかないよ!」

「うん、許してくれてはないかも知んないけど別れるなんて言った事ないよね?」

「それは・・・」
48 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/10(土) 01:54
「あーあー、そうか。結局亜弥にとってウチは見かけだけのたてまえ彼氏だったんだ。彼氏?彼女かな?」

「違うってば!亜弥は本当にひーちゃんの事・・・」

「好きじゃなかったんでしょ?」

「好きだよ!好き・・・」

「でも藤本の方がもっと好き。てか藤本が好きなんだ。」

「そんな・・・」

「うん、もう分かった。いいよ、藤本んトコ行けよ。ウチなんかと会ってたらアイツ怒るんじゃないの?」

「・・・・・・・・・」

「いんだよ、早く行けよ!どーせウチもお前の事なんか本気で好きじゃなかったし。」
49 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/10(土) 01:54

「な!?何て?」

「あーもう、だからね、アンタもウチにとっちゃあ見かけ倒しのたてまえ彼女だったんだよ。」

「そんな・・・」

「分かった?そーゆーことだから。サヨナラ。」

「・・・どい・・・」

「あ?」

「ヒドイよ、ひーちゃんは!!」

「何が。」

「亜弥はひーちゃんの事、少なくとも美貴たんに会う前までは本気で好きだったのに!!」

「・・・そ。」

「もういいよ!!ひーちゃんなんて大嫌い!!」







そして亜弥は店を出て行き、ウチは泣いた。
50 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/10(土) 01:55







・・・驚いた。

驚いたって言うか、ウチ、何言ってんだ。
これじゃあ、亜弥があんまりだ。
ウチだって亜弥の事は好きだった。
マジで。
本気で好きだったんだ。
それなのに。




「ヨシコってさぁ、メチャクチャ冷たい人間だよねぇ。」


ごっちんの言葉が胸に刺さる。
自分でも分かる。
言い返す言葉もない。

ウチは・・・最低な人間だ。




「ごめ・・・ごっちん、ちょっと一人にさせて・・・」





51 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/10(土) 01:56



ごっちんが出て行き、一人になった部屋でウチはまた泣いた。


亜弥、ゴメン。
本当にゴメン。
ウチはね、亜弥の事、マジで好きだったんだ。
今更こんな事言ってもしかたないけどさ、マジだったんだよ。
アンタだけは、アンタとだったらマジで上手くいくと思ってたんだ。

それなのにウチは。
本当にゴメン。





ようやく涙が止まり、布団から顔を出し外を見ると太陽はとっくに沈んでた。
びしょ濡れの枕を抱えて、ウチは真っ暗な部屋の中、一人小さくなっていた。


52 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/11(日) 19:48









喉、渇いたなぁ・・・。

あれから一週間が経つ。
ウチは今更どの面下げて亜弥と接すればいいのか分からず、家から一歩も出ていない。
キッチンへ行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
そう言えば今何時だ?
引きこもりの生活を始めてから時間の感覚が全くと言っていいほどない。
リビングに掛かっている時計に目をやる。
時計の針は五時過ぎを指していた。
(やば、もうすぐ母さん帰ってくるじゃん)
53 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/11(日) 19:49

実を言うと母さんともあまり顔を合わせていない。
部屋には鍵を掛けてるし、ご飯だってみんなとは食べてない。
真夜中にコッソリ下に降りるとウチの分のご飯にラップが掛けてあったりしてる。
それを一人で食べるんだ。

ペットボトルのキャップをしめていると玄関の開く音がした。
(やべ!)
焦れば焦るほどキャップは閉まってくれない。
しまいにはボトルの方が手から滑り落ち、ウチは床をビショビショに濡らしながら母さんと顔を合わせる事になってしまった。
54 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/11(日) 19:49

「・・・何やってんのアンタ。」

「・・・あーそのー・・・喉、渇いたから・・・」

久しぶりに出す声はなんだか掠れていて自分の声じゃないみたいだった。

「喉渇いたって、全部こぼしてるじゃない。」

「や、そのぉ。コレはね・・・」

「はぁ。もういいから着替えてきなさい。服濡れてるでしょ。」

片付けようとしたウチを制して母さんは雑巾を取りに行った。
ウチも着替える事にした。
母さんに言われるまで気付かなかったけど、お腹から足にかけてグッショリ濡れていた。
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 22:11
前から読んでたんですが初めて書かせていただきます。
この話のメンバー大好きです。
次の更新も楽しみにしてます。
56 名前:ショッポ 投稿日:2004/01/12(月) 00:56
名無飼育さん>
ありがとうございます。
話に出てくるメンバーは自分が大好きなメンバーです。
ってか全員好きなんですけどね。
これからも頑張ります!
57 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 00:57



「で、理由は?」

「は?何が?」

服を着替えて、何だか自分の部屋に戻るのもアレなんで、
リビングにあるソファアに埋もれていたら母さんがいきなり口を開いた。

「学校行ってないんでしょ?」

「え?あ、まぁ・・・」

「別にね、母さんはアンタが学校休んでたってどうでもいいんだけど。(本当はよくないけど)
ただねえ、友達に心配かけたり迷惑かけたりっていうのは母さん嫌いだな。」

「・・・ごっちん?」

「・・・メールの返事くらい返してあげなさい。真希ちゃん・・・泣いてたわよ。」


58 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 00:58


・・・ごっちん!
母さんの言葉を聞くと同時にウチはソファアから立ち上がり自分の部屋へダッシュした。
・・・や、ダッシュしようとした。ら、こけた。

「・・・そんなに急がなくても。真希ちゃん、アンタが元気になるまでずっと待ってるって。
そう言ってたわよ。」

うん、分かってる。
ごっちんがそういう子だって事は。
よく分かってるさ。だからこそ。

部屋へ行き、携帯に手を伸ばす。
操作する手が何故か震えてなかなかメールが開けない。
59 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 00:58



『よしこぉ〜元気?昨日はゴメンね。今日は・・・休むよね?
おばちゃんに言っとくね。
元気になったらまた遊ぼぉぜ☆』


『おはよ。今日も休みかな?よしこラッキーだね、なんか今日抜き打ちやるってさ。
あーもう最悪だよぉ!!じゃ、授業始まるから、バイバーイ』


『おーぃ生きてる?生きてたら返事下さいな(^〜^;
昨日のテストヤバイかも・・・よしこも学校来たら受けるんだぞ!』


『よしこ・・・寂しいよ。家、行っていいかな?』




『会いたい。』





60 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 00:59


メールボックスの一番上。
つまり、最新メール。
受信日時を見る。

・・・今日。
4時12分。
学校終わってから送ったのか。


「ちょっと出かけてくる!」

ウチは携帯を掴むとビーサンをつっかけ、家を飛び出した。
目的地は、ごっちん家。



ずっと家ん中に引っ込んでたからだろうか。
足が上手く動かない。
息が切れる。
それでもウチは走った。
早く、早くごっちんに。

会いたい。




61 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 00:59




ごっちん家は基本的にもの凄くオープンだ。
一応インターフォンを鳴らし、玄関を開けて真っ直ぐごっちんの部屋へ。


「ごっちん!!」

「んぁ・・・ヨシコ!?」

ベッドの上に寝そべり、雑誌を読んでいたごっちんはガバっと起き上がった。
おっきな目がいつもよりさらに大きくなってる。

「・・・ヨシコ・・・だよね?」

「ヨシコだよ」

ごっちんのおっきな目に涙が溜まっていく。

「ごっちん・・・」

ウチが手を伸ばし、ごっちんの肩に触れると堰を切ったように涙がポロポロと溢れ出した。

「ヨシコ・・・なんで・・・もう、急だよぉ!!」

ごっちんは泣いていたけど、笑っていた。
泣きながら、笑っていた。

「うん、ゴメン・・・へへっ・・・」

ウチも笑った。
笑いながら、泣いた。
笑って泣いて、ごっちんを抱きしめた。

「もうバカ!バカよしこ!!」
62 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 01:00



鼻をグズグズ言わせながらウチらの涙はようやく止まった。

「ごっちん。」

「ん、何?」

「その・・・あー・・・えっと・・・」

何だか照れくさいな。
頭をポリポリ掻きながらお礼と謝罪の言葉を。

「その、ありがとうね。それと・・・ごめんなさい。」

ごっちんの真っ赤な目がまた涙で埋まっていく。

「な、泣くなよぉ!」

「泣いてない!コレはその、あ、汗!汗なの!あ〜暑いなあ、チクショウ、汗が止まんないよ。」

うん、暑い暑い。
ウチも何だか汗が止まらないよ。
63 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 01:01

「でね、ウチ、学校、行くよ。」

「うん、そっか。・・・ってマジ?」

「うん。大マジ。で、もっかい亜弥と会う。亜弥と会って、ちゃんと話する。
ちゃんと話して、また振られてくる。」

「・・・よしこ・・・」

「このままじゃダメだと思うんだ。ウチが納得いかないし、それに亜弥と藤本に悪いしね。」

「・・・よしこ、あんたカッケーよ。やっぱよしこはカッコいいのが一番だ。」

「・・・だろ?惚れるなよ?」

「ばぁか。誰が。」

う、ちょっとショックだ。
でも。

「ありがと、ごっちん!」

「おう、いいって事よ。」
64 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 01:02



じゃあまた明日。
そう言ってごっちんの家を後にし、ウチは自分ちまでの道のりを全速力で走った。
今度は息が切れる事もない。
足だって軽い。心も軽い。
ごっちんのおかげかな?

うっすらと姿を現したまん丸な月が何故かごっちんの笑顔に見えてしょうがなかった。


65 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 23:58




翌日。
久しぶりに目覚ましをセットして、七時起床。
のはずが一時間寝過ごして八時起床。
下へ降りると母さんとバッタリ出くわした。

「あら、おはよ。」

「あーおはよ。それと、その、今日からガッコちゃんと行くから。」

「え?行くの?母さんアンタ今日も休むもんだと思ってたからお弁当作ってないわよ?」

「いいよ、コンビニか購買部で買っとく。」

「そ、じゃあコレお昼代。」

おっしゃ。千円ゲット!
ファミレスでの一件があってウチの財布はすっからかんだったんだ。

「じゃあもう行くわね。」

「ん、行ってらっしゃい。」

母さんを送り出して、身支度をする。
久しぶりの学校だ。
それに今日は。
ウチはいつもより念入りに身支度を整えた。

「おしっ。」


66 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/12(月) 23:59




通学路途中のコンビニで昼食を購入。
学校へと急ぐ。
校門の前でごっちんと出くわした。


「ごっちん!おはよ。」

「ヨシコ!おっはあ〜!どしたの、今日なんかいつもよりビシッとしてんじゃん、ビシッと。」

「ん?まあ、ちょっとね。それよりさ・・・」

ごっちんに耳打ち。
今日の計画。
一人でもやろうと思えばできるけど、多分無理っぽい。
こーゆー時には猫の手よりごっちんの手。

「・・・と言う事で、協力して下さい。」

「んあ、おっけい。ヨシコ、頑張れよ?」

「おう、まかしとけ。」

「あっは、それよりさあ、ウチらなんか遅刻っぽくない?」


・・・やべ、ショート始まるじゃん!

「ダーッシュ!」

ごっちんの手を握り、校内へ。
これでもか!ってくらいに走ったけれど、時既に遅し。


「ゴルァ!!二人とも遅い!」

ウチらは仲良くおばちゃんの拳骨を食らった。


67 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/13(火) 23:22



久しぶりに受ける授業は学校休んでたせいもあってか全くついていけなかった。
まあ、ちゃんと受けててもあんまし変わんないだろうケド・・・。
まあ、とにかく。
そんなこんなで今日の全ての授業が終わり、放課後。
ウチの一大決戦が始まる。

「ごっちん、よろしく頼んます。」

「あいよ、まかしといて。」


68 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/13(火) 23:22



ここでウチの計画を公表しよう。
ファミレスでの件があってからウチは亜弥に嫌われてしまった。
なので、ウチが直接亜弥に話し合いの機会を持ち出してもきっと請合ってくれない。絶対。
そこで、ごっちんの登場だ。
なんだかいつか見たようなシチュエーションだが気にするな。
第三者のごっちんに亜弥を呼び出してもらう。
そこでウチが登場。
ウチが出て行った時点で亜弥が逃げ出す可能性は大。
だけどやってみなきゃ、分からない。
亜弥に謝罪し、話し合えればそれでオッケイ。
そして藤本の元へ。
亜弥の事を頼むのだ。

そして全ては万々歳。

ってな感じ。
どう?結構考えたんだ。
きっと上手くいってくれるはず。
69 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/13(火) 23:23

まずはごっちんからだ。
ここでコケちゃあ意味がない。
亜弥はちゃんと出てくれるかな?

・・・話し終わったみたい。

「ごっちん、どう?」

「ん。」

ごっちんからグーサイン。
・・・おし、オッケイみたい。

「じゃ、ごとー先行くね。」

ごっちんが教室から出て行く。

よし、やるぞ。
70 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:31

ごっちんが教室を出て行き五分経過。
いよいよウチの出番だ。

よし。
試合前の選手みたく胸の前で十字を切る。
別に神様なんて信じちゃいないけど、一応祈ってみる。

さあ、行ってみよう。




71 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:32
屋上に続く階段を上がる。
何だかドキドキしてきた。
大丈夫、大丈夫。きっと、上手くいく。
自分に言い聞かせ、目の前にある大きな鉄の扉を開く。

亜弥と・・・ごっちんはドコだ?

扉を閉めて、屋上へ。
夕暮れの屋上から望む空は青ではなくオレンジ色をしていた。

・・・いた。
給水等の脇に人影が二つ。
ごっちんと・・・亜弥だ。

亜弥が笑っている。
楽しそうだ。
ウチ以外の人と会うときはあんな顔するんだ・・・。

なんだか胸が痛くなった。

でも。
それも今日までだ。
いや、今日で終わりにしてみせる。

なるべく自然を装って。

「ごっちん!・・・と、亜弥・・・」

亜弥がゆっくりとこっちを向く。
目が合った瞬間その顔から笑みが消えた。
72 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:33

「あ、や、その・・・久しぶり・・・」

亜弥とウチとの間に冷たい風が吹く。
その風に同調するように、亜弥の視線も冷たい。
負けて、たまるか。
ここから進むんだ。その先へ。

「・・・久しぶりついでに話がしたいんだけど・・・いいかな?」

「・・・じゃあ・・・五分だけね。」

・・・亜弥、アンタやっぱいい奴だよ。
ありがとう、ウチはアンタが大好きだ。

「ヨシコ、ごとー先行っとくわ。」

うん、計画通り。
ココから先はウチ次第。
神のみぞ知るってやつだ。

ごっちんに軽く手を振り、ウチは亜弥の方へゆっくり足を進めた。
73 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:33

「あ・・・あの・・・元気?」

「はぁ?何か話があるんじゃないの?」

「え?あ、そう、まあ・・・ね・・・元気にしてたかな?って・・・」

「・・・話があるならさっさとしてよ。もうすぐ一分過ぎるよ。」

「え?あ、うん、それじゃあ・・・まあ・・・」

うう〜・・・何て言おう。
ハッキリ言って今ウチの頭ん中は真っ白。空っぽ。
なんとかなるさ。と甘く考えていたウチがバカだった。
ええい、しょうがない。もう何でもいいや、とにかく亜弥と喋ろう。

「うんとね、その、まずはゴメン!」

「・・・何が?」

74 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:34

「あのね、あん時ね、実はウチ自分で何言ってるか解んなかったんだ。
で、後でごっちんに教えてもらって。ウチ、亜弥に酷い事言った。
自分でもサイテーだと思う。だってウチはね、亜弥の事一回も嫌いだなんて思ったことない。
亜弥の事、好きだった。見かけや建て前なんかじゃなくて、ホントに。
で、でね・・・多分ね、ウチが思うに、多分妬きもちだったんだ。その・・・藤本に対しての・・・。
だから・・・亜弥の事は嫌いなんかじゃない。別に別れたくないって言ってる訳じゃないよ?
亜弥は藤本が好きなんだし、藤本だってきっと亜弥の事大切にしてくれるだろうから、付き合えばいい。
ただ、その、仲直りっていうのかなあ?まあ、亜弥はウチの事嫌いでもいいや。
ただね、ウチは亜弥の事嫌いなんかじゃないって。また、話したいって。
そう、思ってる事を伝えたかったんだ。」

75 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:35
一気に。
頭ん中にはもう何を言えばいいのか言葉は残っていない。
浮かんでくる想いを言葉にして、伝えた。
息が、切れる。
苦しくは、ない。
亜弥の目を、見つめる。

怒っているか、戸惑っているか、何も思っていないか。

亜弥は・・・笑っていた。

76 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:36

「ハハハ、ひーちゃん必死になりすぎだよぉ・・・」

笑って、泣いていた。

「もう、解ってるよぉ・・・亜弥、だてにひーちゃんの彼女やってた訳じゃないんだかんね?
ひーちゃんが本気で、そんな・・・亜弥の事嫌いになれるわけないじゃん。ま、亜弥だってそうだけどさ。」

「・・・亜弥?」

「もう、バカだなあ。亜弥だってひーちゃんの事本気だったんだよ!」

「・・・そっか、ありがとう」

「・・・うん・・・その、嫌いなんて言ってゴメンね?」

「や、いいよ。ウチこそ・・・ホント悪かった」

「・・・うん」


77 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:36



よかった。
笑えた。
喋れた。
分かり合えた。



78 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:37



「ね、ひーちゃん」

ウチが鼻を啜っていると亜弥が声をかけてきた。

「ん?」

「あのね・・・その・・・亜弥、好きな人が、いるんだ。」

「うん、知ってる。」

「・・・そっか。ねぇ、ひーちゃん。」

「ん?」

「五分、過ぎてた。」

「うん、そーだね。」

「美貴たん・・・待ってるんだ」

「うん、そー・・・ってマジ!?」

「マジ。」

ヤバイ!!
コレはヤバイぞ!?
アイツなんか恐いんだもん、待たせたりしちゃあイカンのではないか?

79 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/21(水) 20:37

「亜弥、走ろう!」

「うん!」

差し出した右手。
ソレは自然に繋がれた。

もう、大丈夫。
ウチらの背中をそっと、秋の風が押していた。





80 名前:dada 投稿日:2004/01/24(土) 22:19
この話本当に大好きです!!
藤本さんを恐がる吉澤さんがかわいいです。
次の更新も楽しみにしてます。
81 名前:ショッポ 投稿日:2004/01/26(月) 23:43
dadaさん>ありがとうございます。
藤本さんは最強です。
楽しみにしてくださり光栄です。
頑張ります。
82 名前:ショッポ 投稿日:2004/01/26(月) 23:43




あの後ウチはやっぱり藤本に睨まれた。
でも亜弥が庇ってくれたんで助かった。
亜弥がいなきゃあ今頃ウチはどうなってた事だか。
あ、でも藤本はいい奴なんだ。
見た目はそりゃあ、ねぇ、ちょびーっと恐いけどさ。
いい奴なんだよ。強いしさ。
アイツだからウチも亜弥と安心してって言うと変だけど、まあ、別れられた。
もし亜弥が藤本以外のヤツと付き合うって言ったらもう、アレだね。
何とかしてウチは自分の元へ置いておくよ。
でも、藤本だからソレはしない。
亜弥と幸せになれよって、笑って言える。
まあ、ホント。仲良くしてやってくれ。


83 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/26(月) 23:44


「でも、よかったね。」

ウチの隣にはゲームに熱中してるごっちん。
学校が終わって、亜弥との話も終わって、藤本にも会って、全て終えて帰宅するとウチの部屋にはごっちんがいた。

「うん、ホントよかった。これもごっちんのおかげだ」

「へへへー、偉い?」

「うん、偉い。偉いっつーか、ありがとう。マジで感謝。」

「やだなー、そんな、照れるじゃん。ごとーは、ヨシコに笑ってて欲しいんだよ。それだけ」

「ははは、ごっちんのおかげで明日からまた笑えそうだよ」

「んあ。そりゃいいこった。」


ごっちんはニィーと笑った。
うん、ありがとう。マジで恩に着るよ。
だってごっちんがいなきゃ、きっとウチ、亜弥とはあの、最悪な状態で別れたままだったんだ。
ホント感謝だ。


84 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/26(月) 23:45


「んあー・・・お腹すいたな・・・」

「おし、じゃあ下で母さんになんか作ってもらおう」

ウチもちょうどお腹すいてたし。
そう言ってウチとごっちんはリビングへ下りた。




「んあ、お腹いっぱいになったしもーそろそろ帰ろっかな」

「帰るの?なら送ってくよ」



ごっちん家までの道のり。
月が照らすアスファルト。
その上に伸びるウチとごっちんの影。

「やー、しかしよかったよ。」

「ん?」

「や、仲直りできてさ。もうごとーは一安心。あ、明日からはちゃんとガッコ来んだよ?」

「りょーかい。ウチも一安心さ。」



ごっちん家でバイバイ。
道路を照らすまん丸な月はやっぱりごっちんの笑顔に見えてしょうがなかった。
85 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/01/26(月) 23:46


それから。
ウチはちゃんと学校に行った。
亜弥とも以前のように話せるようになった。
顔を合わせば挨拶だってする。下らない話だってする。
以前と変わったと事と言えばその横にはいっつも藤本がいるという事。それだけ。

亜弥は楽しそうだ。
見るだけで分かる。
幸せそうだ。
藤本もそうだ。
以前までまとわり付いていたピリっとした空気が和らいでいる。そんな気がする。

そんな藤本や亜弥にちょっぴり嫉妬してみたりして。

そんなウチにも新しい春がやって来ようとしていた。


86 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:13





「ヨシコー、帰ろっかぁ?」


それは普段の放課後。
ウチはごっちんからのラブコールを受けていた。
いつもならハイハイと二つ返事で飛んでいくのだが、今日はそうも言ってはいられないとある理由があった。

「あー、ごめん、今日おばちゃんがテストやってけって言っててさー、無理っぽいよー」

そ。
いつだったかウチが学校休んでた間に行われていたおばちゃん作成
(ごっちん曰く、地獄の門が見えたよあのテスト)を受けなければいけなかった。

「あー、そう?じゃあごとー先帰るねー」

ニコニコと手を振って帰っていく親友をウチは今にも死にそうな思いで見送った。

87 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:15



ごっちんを見送り、職員室へ。

「よーしーざーわー。待ってたわよ!」

ドアを開けた途端、目の前に広がる地獄絵図。
じゃなくって、おばちゃんのどアップ。

「わわっ、おばちゃ…」

「誰がおばちゃんよ、誰が!」

「ひ、スンマセン!食べないで!」

「だから何でそーなる!アンタ頭大丈夫?休んでる間におかしくなっちゃったんじゃない?」

「いやー、ハハ、そーかも」

88 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:16


なんて口では言ってるケド、ウチはいたって正常。
だってあんな顔見たら食べられる!って思っちゃうのが普通だよ。多分。
それ程、ウチの担任、おばちゃんこと、保田圭先生は顔に迫力がある。
ま、顔っていうかおばちゃんの存在自体がスゲー強烈なんだけど。

「もう。しっかりしなさいよね!さ、テストやるわよ!」

「…うぃーっす…」

なーんか。一難さってまた一難って感じだ。サイアク。



89 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:17



――――――――
――――――
――――
――




もーダメだ。
性も根も尽き果てた。
ごっちんの気持ちがよく分かったよ。
地獄の門どころかウチはその先まで見えちゃったよ・・・

「ホホ、じゃあ明日楽しみにしてなさいね!」

おばちゃんの声が胃にガンガン響く。
あーもうダメ。やっばいよ。

「さよーならー・・・」

引きつった笑顔に死にそうな声を乗っけておばちゃんにサヨナラ。
さー、帰ろー。
90 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:18

下駄箱で靴を履き替える。
と、その時、視界の隅にチラリと人影が見えた。

「ごっちん?」

あー、ごっちん待っててくれたのかなーなんて思いながらその人影に目をやる。

「あ・・・」

違う。
ごっちんじゃないや。
背が高い。

91 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:18

はは、ごっちんの事だ。
さっさと帰っちゃったに違いない。
でも、誰だろう。
先生かな?
保護者の人かな?

俯いて壁にもたれていたその人が顔を上げる。
その人を見つめていたウチは自然と目が合っちゃった訳で。

「…アレ?」

92 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:18

どこかで見たことがある。絶対。

誰だ?いつ会った?誰だ?思い出せ、自分。

背が高くて髪が長くて目が大きくて…

あ!思い出した。
ウチの記憶に間違いがなければ…

「「あ、あなた!」」

綺麗にハモった二人の声。

「「ファミレスの!」」


93 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/01(日) 18:19


うん、確かそうだ。
亜弥との件で朝っぱらからファミレスに行った時。
ウチがジュースぶっかけちゃった、その、被害者の方だ!


「あなたココの生徒さんだったの?」

「え、まぁ、はい」

つかつかとこっちへ向かってくるその女性。

わー、デケェなぁ。
髪なげぇなぁ。
目、おっきぃなぁ。

…綺麗だなぁ。


94 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/08(日) 12:49


「ね、圭ちゃんって分かるかな?」

距離を狭めながら、女性が問う。

けいちゃん?ケイチャン?圭ちゃ・・・おばちゃん?

「あ、おば・・・じゃなくて、保田先生の事っすか?」

「先生?・・・あ、そっか、そう、そうだよ。そっかー、保田先生かぁ〜・・・」

うん?なんだ、この人?
突然「先生かぁ〜」なんて呟いてデレデレしてる。
・・・あたまだいじょうぶかな?

95 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/08(日) 12:50

「・・・あのー・・・」

「ンフ、先生かぁ〜・・・保田センセ!何ちゃって、やぁ〜だぁ〜・・」

ホントにだいじょうぶだろーか・・・
一人で呟いて一人でデレデレして一人で照れてるその女性を目の前に、
ウチは如何したものかと頭を掻いた。

と、ソコへ話題の人物登場。

「アラ、吉澤じゃない。まだ帰ってなかったの?」

どうやら女性はおばちゃんの視界には映っていないらしい。

「うん、まあ。ええと、それより」

チョイチョイとおばちゃんを手招き。

「アレ、誰ですか?」

96 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/08(日) 12:50

ウチにアレ呼ばわりされたその女性は、
どこか遠い目をしながら、一人別の世界へトリップしていた。

その姿を視認するなりおばちゃんの表情が変わっていく。

「ちょ、圭織?アンタなにしてんの!!」

「・・・ん、んん?あ、圭ちゃん。オッス!」

おばちゃんの声に気付き、女性がこっちの世界へ戻ってくる。

「オッスって。オッスじゃないわよ。何してんの?」

「ああ、暇だったから。遊びに来たよー」

「遊びに来たって、アンタねぇ・・・」

ギャーギャーと言い合う二人。
全く訳の分からないウチはすっかり蚊帳の外。
何だよう、二人して無視しすぎだ!
てかその前に。
97 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/08(日) 12:51

おそるおそる二人に近づく。

「あの…」

「「何!?」」

ひっ、いや、二人とも顔怖いっすから。
そんな目ェギラギラさせないでよ、おばちゃん。
そんなジっと見つめないで。マジ、怖いっすから。交信癖のあるおねーさん。

「あ、あの、先生達はお知り合い?どーゆー関係?」

ウチからの突然の問いかけにキョドってるおばちゃん。
ムム、怪しいぞ?

「ちょ、どーゆー関係って、そんなのただの知り合いよ!友達よ!友達!ね?」

もの凄い勢いで同意を求めてるおばちゃん。
そんな怖い顔してたら嫌でも同意せざるを得ないよ…

ところが。

「え、圭ちゃんはカオの恋人っしょ?」
98 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:21

みるみる顔が赤くなっていくおばちゃん。
その傍らで「もしかして圭ちゃんカオに内緒で浮気してるの?何で言ってくれないのよ…」
なんて嘆いてるおねーさん。
ゴメン、一つだけツッコまして。浮気ってのは普通内緒でするもんなんだよ。

…ってマジ?
おばちゃん、彼女持ち?
おばちゃんと目が合った。と思ったらいきなり腕を掴まれ引きずられた。
階段下の陰になってるトコまで引きずられ、そこでようやくおばちゃんは掴んでいた腕を離してくれた。


99 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:21

「吉澤」

「はい?」

何だかいつもと雰囲気の違うおばちゃんに少々ビビリつつ、向かい合う。

「吉澤、さっきの事秘密にしといて。」

「う〜、何を秘密にするんすか?」

「バカね、さっきあったこと全部。アンタと私だけの秘密。大体ね、校則で異性不純交際禁じてるのに、
職員である私が学校で彼女と会ってたって事が校長にバレたらどうすんの?」

「あーそりゃヤバイっすねぇ〜」

「ヤバイっすねぇ〜じゃなくて、ヤバイの。私の首が飛ぶかもでしょ?」

「あー・・・」

「だからね、秘密よ、秘密。いいわね?」

「あぃ。」

むにっと頬を引っ張られ、返事をする。

「じゃあ帰ってよし。気をつけて帰んのよ!」

バシン!とおばちゃんに背中を叩かれてウチはようやく帰路へとつく事が出来た。
はぁ〜・・・なんだかいろいろあって忙しい一日だったよ・・・。
100 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:22



そして三日後。
帰ってきたテストの結果を見てウチは地獄の門を叩きかけていた。

「んあー、よしこバカだぁ〜」

ごっちんはごっちんでそんなウチを見てケラケラ笑ってる。
なんだよう、2点しか変わんなかったくせに!!

「ごっちんもあんま変わんなかったじゃん」

「あ、よしことごとーを一緒にするなよ?ごとーは抜き打ちだったけど、
よしこには出た問題教えてあげといたんだかんね?答えだって教えてあげたでしょー?」

「う゜、そりゃそうだけど・・・」

確かにそうだけどさ、ごっちんの教えてくれた答え殆ど間違ってたよ・・・。

「よーしーざーわー。不正行為はイカンなぁ?」
101 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:23

突然背後から声が。
この声は・・・

「お、おばちゃ・・・」

「だからこの口はぁ!!!誰がおばちゃんよ、だ・れ・が!!」

『おばちゃん』こと保田先生!
やべ、さっきの会話聞かれてたかな?

「バッチリ聞いたわよ!アンタね、答え教えてもらっといて31点ってどーなの?もう、信じらんないわよ」

うあ、そんな大きい声で言うと・・・
102 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:23

「うそ、マジでー!?」

「よっすぃーが31点?」

「キャー、そんなの絶対ウソ!!!」



ああ、もう、やめてよ・・・。
危惧したとおりクラス中が大騒ぎ。
なんか。
ホント最近ついてないよ・・・。


おばちゃんは謝ってくれたけど目が笑ってるし。
ごっちんは・・・爆笑してるし。


何だか恥ずかしくなって教室を出た。

103 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:24




教室を出て向かった先は屋上。
重い鉄の扉を開けると、そこには先客がいた。

「あ、藤本」

「お、よっちゃんさん。サボり?」

危険防止のフェンスに腕をかけて振り向いたのは藤本。

「や、そーゆー訳じゃないけど・・・そっちこそサボり?」

「違うよ。外の空気吸いに来ただけ」


・・・うん、つまり、サボりだよね。
取りあえず、藤本の横に陣取り、校庭を見下ろす。

無意識のうちに、ため息が出た。

「どーした?えらい沈んでんじゃん?」

「ん?あぁ、ハハハ、ちょっとね・・・」

藤本からの問いを軽く受け流し、ボーっと校庭を見つめる。
と、校門の辺りに何やら見覚えのある人影が。
104 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/13(金) 01:25

目を凝らしてよく見てみる。

・・・あ・・・おばちゃんの彼女さん!?

モデルのようなスタイルにあの長い黒髪は間違いない。
つい先日校内に侵入してきたおばちゃんの彼女さんだ!

ウチはその姿を確認するなり屋上を後にしていた。




「・・・?何だアイツ。お腹痛くなったのかな?」

「・・・なんか落ちてる。テスト?・・・31点って・・・」


藤本にあのこっ恥ずかしいテストを見られている事に気付く事もなく。
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 23:41
おもしろいです。
次の更新も楽しみにしてます。
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 12:01
面白い!!(^O^)早く続き読みたいわ(^皿^)
107 名前:ショッポ 投稿日:2004/02/26(木) 21:26
105さん>ありがとうございます。
     楽しみという言葉を励みに頑張ります。

106さん>ありがとうございます。
     更新ペースは遅いですが、ご愛読頂けると光栄です。
108 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:27

4階分の階段を一気に駆け下りて、校門へ。
おばちゃんの彼女さんは、さっきと変わらず門の影で、時々中を覗うようにして立っていた。

「あの!!」

ビクっと身体を震わせ彼女さんが振り向く。
一瞬警戒するような素振りがあったけど、話しかけた相手がウチだと分かるとニッコリ笑ってくれた。

「あ、この前の。あー・・・えーと・・・」

「あ、ヨシザワっす。吉澤ひとみです。高2で、おばちゃ・・・保田センセのクラスです」

「あ、吉澤さんね。カオはカオだよ。飯田圭織。圭ちゃんのね、彼女なんだよ。よろしくね」

「あー、はぁ、コチラこそ」

手を差し出されて握手する。
細くて、白くて、でも暖かくて。
大きな手だった。
109 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:27
「あ、あのー、先生になんか用ですか?」

「あ、そうだった。アナタ、えと、吉澤さんだっけ?圭ちゃんのクラスでしょ?」

「はい、そうですけど?」

「んとね、コレ。圭ちゃんに渡して欲しいの。忘れてっちゃったから。」

ハイ。
と、私に差し出されたソレは、お弁当。
お弁当?あ、愛妻弁当ってヤツですか?

「よろしくね。」

ずいっと私にお弁当を押し付けて、
彼女さんは長い髪を靡かせて颯爽と行ってしまった。
110 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:28
いや、頼まれたけどさ、無理やり押し付けられちゃったけどさ、
ウチ、いいですよなんて、任しといて下さい!なんて一言も言ってませんよ?

ボーっと彼女さんの後姿を見ていたらいつの間にかその姿は見えなくなっていた。

ま、しょうがないか。
可愛い可愛い彼女さんの頼みだもんな。
それに別にお弁当渡すだけだし。
取って食われたりなんて事、あるわけないさ。

彼女さんからお弁当を受け取り、校舎へ戻ると、
下駄箱に凭れるようにして藤本が立っていた。

111 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:29

「あれ?藤本。何してんの?」

「よっちゃん。コレ、落としてったよ」

ヒラヒラと藤本が紙切れを見せる。
あ、そ、それは!!

「み、見た!?」

「・・・バッチリ!」

親指立ててウィンクぶちかまして。
最上級の笑顔で藤本は笑った。

「よっちゃん。コレ、美貴よりも悪いよ」

うげっ。マジで?
サボってばっかの藤本に負けるなんて。

「藤本いくつよ、点数」

112 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:29

「はっはっは、35点だ」

偉そうに言い放つ藤本。
何だよ、ウチより点数がいいからって、そんな威張れるほどの点数でもないだろ!

でも、悔しい。

「あ、あの、亜弥には言うなよ?ウチの点数」

「分かってるって。まぁ、美貴が言っても言わなくても、
亜弥ちゃんはよっちゃんがバカだって事ぐらい知ってるだろうけどね」

声を上げて藤本は笑った。
むぅ、それを言うなよ!
と、ケラケラと笑っていた藤本が、急に真面目な顔になる。

「で、それはいいとして、ちょっと話しあるんだけど」


113 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:30

な、何?
ウチ、何かした?

「その・・・さ、美貴と亜弥ちゃんの事なんだけど」

あ、よかった。
ウチに関わる話じゃないのね。

「あの、ちゃんと付き合おうと思って。
一応よっちゃんにも言っとこうかな?って思ってさ、それで・・・」

さっきまでの勢いは何処へやら、俯き加減にボソボソと喋る藤本。
おい、もしかして。

コイツ、照れてる?

バッと、下から藤本の顔を見上げると、
茹でたタコみたいに、いや、茹タコ以上に顔を真っ赤にした藤本がいた。
114 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:30

「藤本、顔が真っ赤・・・っぐぁあああ!!!」

目が合った瞬間、台詞を言い終わらない内にウチは藤本の正拳を喰らい軽く5メートル程吹っ飛んだ。

「そーゆーわけだから!!」

地べたにボロボロになって横たわるウチをそのままに藤本は足音軽く行ってしまった。

ああ、何だよ、チクショウ。
いてーよ。アイツマジで殴りやがって。
でも以外だなあ。チョッと可愛いトコ発見しちゃったよ。

「よっと・・・」

起き上がり、汚れた制服の裾を叩く。
幸い怪我はしていないようだ。
さあ、もう教室へ戻ろう。

教室へと向けて足を一歩踏み出した瞬間、何だかもの凄く嫌な予感がした。

115 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/02/26(木) 21:31

軽い。何かが足りない。
藤本に殴られる前、ウチは何かを持っていた。
何を持ってた?

恐る恐る後ろを振り返る。


・・・出来る事なら今、ウチの視界に移っている全ての物を消してほしい。
それか、ドラえもんだ。
タイムマシンでも何でも出してもらって、時間を、少しだけ戻してほしい。
ああ、神様後生だから。

吉澤ひとみ、17歳。
こんな所で短い一生終えたくありません。



おばちゃんの彼女さんから託されたお弁当が見るも無残な姿になっていた。



116 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/11(日) 12:46
ん?
ミキティの誕生日から更新ゼロですか?
続き楽しみにしてるんで、頑張ってください。
待ってますよ。
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 16:35
4ヶ月程たちましたね………
118 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:49

どうしようどうしようどうしよう。
お腹空かせた野良犬みたくそこら中をグルグルグル。
でもどうしようもない。だってぶっちゃかしちゃったんだもん。
覆水盆に返らずってか。こーゆー時に使うんだな。おお、ウチ頭いい。
ってそんな事どうでもいいんだよ。
どうしよう、マジでやばいって。
ウチにお弁当託していったおばちゃんの彼女さん、どうしよう。
貴方が作った愛情たっぷり弁当、砂塗れになっちゃいました。
今、アリ達によってタコさんウインナーが運ばれようとしています。
てゆーか、それよりなにより、おばちゃんだよ。
あーうー・・・やばい。
どうしよう。どうしたらいいんだろう。
こーゆー時ごっちんなら、大丈夫きっと大丈夫〜って歌ってくれるんだろうな。
まあ歌ったからって何も事態が変わる事はないんだけどさ。

119 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:52

とりあえずグランドにお弁当ぶっちゃけてたらまずいよな。
それにもうチャイム鳴りそうだし。
足元に転がってた石ころを拾って地面をガリガリ。
穴を掘って砂塗れのご飯とおかずを埋めた。
アレだね、何年後かにこっから何かの芽が出てきたらそれはっきっと梅の木さ。
だって今、ウチスゲー大きい梅干埋めてやったから。
幸い、お弁当箱はアレだけの衝撃を受けたにもかかわらず、傷一つ付いていなかった。
さ、教室戻ってからどーするか考えるか。


120 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:53



教室に戻るとさっきまで騒いでいたのがまるで嘘のようにシーンと静まり返っていた。
まだ休み時間な筈なのに。どうしたんだろ。
後ろのドアをそーっと開けてその隙間から、コッソリチラリズム。
あれ?アレレレレ?何故におばちゃんがおるのですか?
教卓にドーン!と座ってなんだかビリビリとした空気が。
背後にもの凄いオーラが見えてますよ、保田センセ。
見つからないように匍匐前進で自分の席へ。ああ、一番後ろの席って最高だよNE☆
そこら中に落ちてる消しゴムの消しクズや、何だかよく分からない、
チョッと気持ち悪いゴミ達と格闘しながら何とか自分の席へ。
隣の席にはごっちん。なんだかそわそわしてる。

「ごっちん、ウチがいない間になんかあったの?」

別にコソこそ話す必要なんてないとは思うんだけどさ、やっぱ状況が状況だし。
おばちゃんに見つからないように、顔と身体だけは前向けて。
目と心はごっちん向きね。

121 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:54

「なんかね、圭ちゃんお腹空いてるんだって。」

ドキッ。

「三日前くらいに恋人と喧嘩してご飯作ってくれなくてヘロヘロなんだって。」

ドキドキッ。
三日前って・・・・

「でね、今日ついに向こうの方が折れてお弁当作ってくれたらしかったんだけど、
肝心のお弁当を忘れてきちゃったんだって。」

ドキドキドキーッ!!!

もしかして、もしかしなくっても、その、そのお弁当ってのは、
グランドの土の中で永眠していらっしゃるお米さんやらその他タンパク質的な者たちの事ですよね。

「でね、お腹へってご機嫌斜めらしいよ。」

お腹空いて拗ねるなんてなんて幼稚なんだ!!
ってそうじゃない!違う、そうじゃない。
ここでウチがすっとあのお弁当をおばちゃんの前にスッと差し出していれば・・・


122 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:55


『保田さん・・・お弁当をドウゾ・・・』

『アラ、吉澤。気が利くじゃない』

『いいえ、これくらいの事。保田さんの為なら。』

『まあ、優しいのね・・・』

『そんな。それより召し上がって見てください。』

『ウフ、じゃあ頂くわ・・・』


『どうです?』

『こッ、この味は!!』

『貴方の求めている味、つまり、愛。表現してみたのですが・・・』

『凄い、凄いわ!!貴方って、お料理上手なのね・・・』

『いいえ・・・ソレほどでも・・・』

「・・ぃ〜・・・」

『ううん、凄いわ。ねえ、私に料理を教えてくれないかしら・・・』

『そんな、お教えするほどの知識を持ち合わせていません・・・』

『なら・・・創作料理なんてどうかしら・・・貴方ならきっとイけるわ・・・』

「・・・っすぃ〜・・・」

『創作?しかしココでは材料が・・・』

『アラ、貴方の目の目にいるわよ・・・』

『保田さん・・・』

『吉澤・・・・』


123 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:56


「よっすぃ〜!!!!」

「うう、うん、冗談さ、冗談だよ、誰がおばちゃんなんかと・・ハハ、軽いジョークさ・・・」

「何言ってんの?ちょっと怖いよ・・・てゆーか涎拭いたら?」

ごっちんがすんごい顔してウチを見てる。
慌てて口に手をやるとうん、これは拭かなきゃやばいよね。
涎垂らしてた。

124 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/06/18(金) 23:57

あー、でも。
ヤッパこれってウチのせいなのかなあ?
三日前ぐらいに喧嘩って、ウチがおばちゃんの彼女さんにあったのも三日前だった。
それからなんかあったんだろうか。分かんないけどさ。
分かんないけど、今日の、あのお弁当は完璧ウチが悪いよね。
・・・ん?でもチョッと待てよ。何でウチが悪いんだよ。
あれはおもっくそ殴った藤本が悪いんじゃないのか?
おお、きっとそうだ。そうに違いないさ。
さあ、藤本のトコに行ってこよう!!

「吉澤!!!!」

「ヒぃっ!!」

「もう授業は始まってる!座れ。」

ああ、いつの間にかチャイムが鳴っていたんだ。
藤本にはこの授業が終わってから会いに行こう。
うん、そうしよう。


125 名前:ショッポ 投稿日:2004/06/19(土) 00:03
116,117さん>スイマセン、大分更新遅れました。
更新ペース遅いですが、楽しみにして頂ければありがたいです。
最低でも月一回は更新出来るよう頑張ります
126 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/07/31(土) 15:23

さて、イライラモード全開のおばちゃんの授業も、
誰一人の負傷者を出すことなく無事に終わって、休み時間。
ごっちんは机に突っ伏して爆睡中。
ごっちんにも相談しようと思ってたけど、無理に起こすのもかわいそうなんで、
藤本んトコにはウチが一人で行くとしよう。

「おーす、藤も・・・と?」

127 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/07/31(土) 15:24

教室のドアを開けたとたん目に飛び込んできたのは地獄絵図。
鬼が立っていた。両の手に、力尽きたのだろうか、だらんとした人をぶら下げて。

「なんだよ?」

ドアを開けたまま立ち尽くすウチをギラリと一睨み。
ウヒャァ、ヒーちゃんピンチですよー。
やっぱ無理矢理にでもごっちんを起こして連れて来るべきだった。
こんなロマンティックイライラモードな藤本に対抗できるのはごっちんしかいないのだ。
でもここにごっちんはいない。
あー今日はついてねーなー。ホントついてないよ。
テストの点数皆にバレちゃうし、お弁当ぶっちゃかしちゃったし、藤本はキレてるし。
つーか何で藤本キレてんだよ。
訳わかんねーよ。

128 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/07/31(土) 15:24

「あー、やっぱ何でもないよ、また後で。」

ひとまずココは退却だ。
アイツ怒ってたら話になんねーもん。
まず何で起こってるのかその理由からだな。
あー、ヤバイ、ヤバイ。
どんどん時間がなくなってくよー。
時間は止まんねぇっす要チェケラッチョー!!

・・・なんて歌ってる暇はない。
教室から出てきた女の子を捕まえて聞き込み開始。
命からがら逃げ出してきたのだろう、顔面蒼白、身体はブルブル震えてる。
そんな彼女をウチのこのあま〜いヴォイスで落ち着かせながら、経緯を聞きだしていく。
・・・フンフン、なるへそ、そーゆーことか。
途中泣き出しそうになりながらも一生懸命状況説明をしてくれた彼女にありがとう。
最後に軽いハグを一つプレゼント。
青かった顔色がほんのりピンク色に変わってた。

129 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/07/31(土) 15:25

で、藤本が何で怒ってるのか分かった。
そうと決まれば次行くべきところは・・・

―キーンコーンカーンコーン―

って、チャイムかよ!!休み時間の終わっちゃったよ!!
ああ、もう!コレマジでヤバクないですか?
あとこの授業と、もう一限終わったらお昼じゃん。
ドーラーえーもーん!!!
タイム風呂敷だよ、あ、タイムマシン?何だっけ、ああもうヤバイって。
だってウチがお弁当渡し損ねた事でおばちゃんと彼女さんが喧嘩なんかしちゃったら可哀そうだよ。
・・・彼女さんが。
あー、もうホントついてないよ。



130 名前:ショッポ 投稿日:2004/07/31(土) 15:33

短いですが。
近いうちに更新できたらいいな・・・
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 08:00
次の更新をお待ちしてます
132 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/09/04(土) 12:42


焦ったって時間が早くすぎるわけじゃない。
それどころか針の進み具合の遅い事遅い事。
焦って足ガタガタ言わせてたらごっちんが「トイレ我慢してんの?」なんて聞いてくるし。
違うっつーの!!トイレじゃねっつーの!
黙って睨み返したら「ああ、おっきい方か」なんて勝手に勘違いしてるし。一人で納得すんなー!
ああもう君は愛すべきアホだよ。今は今で涎垂らして寝てるし。ウチより酷いんじゃないか?その量は。

133 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/09/04(土) 12:43



「んあっ!それごとーのミルキーだよぅ・・・」

ははー、ミルキーはママの味ってか。
ってゆーかどんな夢だよ。夢の中でミルキー食べちゃってるの?
ミルキーなんか食べてるから涎垂れるんですよ、ごとーさん。
あーもう早く終わんないかなー。
窓からグラウンドを見下ろすとどっかのクラスが体育の授業をしていた。
あはあ、ウチが掘ったトコだけ土の色変わってるや。
もーどうしたらいいんだろう。
ウチってついてないよな。ホントに。
みんなにバカばれちゃったし藤本には殴られるしお弁当の一つもキチンととどけられないし。
はあーあ。
ボケーっと外を見てたら授業が終わった。それ、ダッシュだ。
ごっちんが何か言ってきたけど無視しといた。
ごめんよごっちん、今はそれどころじゃないんだ。君は君で涎を早く拭いた方がいいよ。

134 名前:雨。のち晴れ 投稿日:2004/09/04(土) 12:44

向かった先は一つ上の階。一年生の教室があるトコだ。
廊下を走って走って、

「まつーら!!」

「・・・ひーちゃん?」

辿り着いたのは亜弥の教室。
皆何事かと注目してるけど関係ない。
ズカズカ入り込んで楽しそうにお喋りしてる輪を蹴散らして亜弥を連れ出す。

「ちょっと着いてきて」

何が何だか訳がわかんないってな顔の亜弥を引っ張って向かう先は・・・

「おーす、藤本」

ロマンティックイライラモードな藤本さんの教室。
亜弥は後ろでますます訳わかんなそうにしてる。

「みきたん?」

135 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 01:04
待ってます

Converted by dat2html.pl v0.2