イトコ同士

1 名前:作者 投稿日:2003年08月01日(金)00時09分52秒
いしよしです。
よろしくお願いします。
2 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時10分34秒


ったく、何だっていうんだよ。
やっと1人暮らしできると思ったのに、
3人で、しかも10年ぶりに会うイトコと暮らさなきゃいけねーんだよ。

さっきから、出てくるのはグチばっかり。
ともかく不満ばっかりだ。

4月から、父親が博多に転勤することが決まった。
今、高校3年生で、4月から東京の大学生になるウチが、
そんな父親についていくわけがない。

ウチは、10年前に母親を亡くして、それから父と2人暮らしをしていた。
家事とか一切できない父だから、ずっと家のことは全部ウチがしている。
だから、料理も掃除も洗濯も結構自信あるんだけど。

実は父親の転勤が決まったと聞いて、
家事が1人分減ると思って安心しただけだった。
本当にウチの父親は何もしない、
食器を流し台に運ぶことも、洗濯物をカゴに入れることもしない人だ。
父親が転勤先でどんな生活になるかは、知ったこっちゃない、
自分で今まで何もしなかったのが悪いんだから。
人の心配よりも、自分の未来の明るさに期待していた。
3 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時11分40秒
それなのに、どうよ。
父親が転勤の報告をするのに、イトコの家に電話連絡したんだよね。

横浜のおばさん―ウチの母親のお姉さんで、やっぱり母親が亡くなってからというもの
すっかり連絡しなくなってしまった人だったけど―に電話したら、
たまたま、おじさんも同時期に転勤することになっているらしい。
しかも、ニューヨークだって…ウチとは全然違う…
さらに、海外ってこともあって、夫婦同伴が条件。
ということで、おばさんも一緒にニューヨークについていくことに。

ちょうどいい偶然だということで、
子供たちを一緒に住まわせてしまおうと、親だけで勝手に決めやがった。
4 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時12分15秒
ふざけんな、と。
今、住んでる家も人に貸すことに決めやがってたから、
バイトをがんばってやって、家賃払ってでも自分で部屋を借りようと思った。
でも、でもなんだけど―
その貸した家の家賃を半分、ウチが生活費としてもらっていいことになった。
残りの半分は横浜のおばさんの家に、ウチの家賃として納められるとのこと。
ま、父さんは家賃収入がゼロってこと。
ウチの生活費といっても、食費なんかは横浜の家で出してくれるんだから、
丸々ウチのお小遣いになるんじゃん…そう思ったら、ポータブルDVDプレーヤー、
新しい携帯、ゲームソフト、エイプのトレーナーなどなど、
欲しいものが頭の中をよぎっていった。

それで、ついついその同居にOKをしてしまった。
結局はモノにつられた自分が情けない…
5 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時12分49秒
横浜のおばさんの家には、ウチより4才年上の梨華ちゃん、
4つ年下の亜依ちゃんがいる。
亜依ちゃんはまだ中2だけど、梨華ちゃんは大学を卒業して4月からOLさんになる。
女の子ばかりだけど、人数が多い方が安心だし、
大人(梨華ちゃんのことね)が1人でもいた方がいいんだと。

ちなみに、ウチは幼稚園から中学まで合気道を習っていて、
小さい頃に、横浜のおじさんを倒してしまったことがある。
ソレを覚えていたのか、
「ひとみちゃんなら、ボディーガードになってくれそうだし」
と、おばさんが言ったらしい。
そんなの好んでやりませんって。
6 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時13分19秒
そう、そのいとこたちとも疎遠になっていたから、
ウチの母親の葬儀のとき以来、会っていない。
それが10年前だから、亜依ちゃんは本当に小さい子供だったし、
梨華ちゃんもまだ小学生だった。
梨華ちゃんは、太ってて、色が黒くて、何か暗い子だなあってずっと思ってた。
それまでの親戚の集まりでも、どうも気が合いそうにないと思って、
あまり口をきいた覚えがないくらい。

そんな梨華ちゃんと一緒に住むと思うと気が重い。
亜依ちゃんは中学生じゃ、生意気盛りだろうし、
ちょっと先が思いやられる…

でも、サークルに入るつもりだし、
新しい友達もできれば、大学生らしく遊んでばっかりいればいいんだし。
勉強はする気になったら図書館ですればいいし。
家には寝に帰るくらいのつもりでいればいい。
そう、父親の転勤も2年間の限定らしいし。
何もしない人だけど、気を遣って横浜の家にいるよりは、
気楽に家でのんびりする方がいいに決まってる。
たった2年のガマンだ。うん、あっという間だよ、きっと。
7 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時13分52秒
高校の卒業式を無事終えて、春休み中に引越しをすることになった。
とりあえず、父親の引越しが済んでから―これもほとんどウチが荷造りしたんだけど―
自分の方の引越し。
ま、実は家賃獲得が最大の同居OKの理由だけど、
もう一つ、いいかなと思ったのが、大学に通うのが便利になること。
今住んでいる埼玉よりも、横浜からの方がなんと30分も通学時間が短くなるんだから。


ウチの引越し当日。
事前に荷物は送っておいた。
家の電化製品なんかは父親用に福岡に送ったし、
ウチの荷物なんか、服やら部屋で使ってる小さいテレビやコンポ、
本とかくらいで、大した量じゃないから。

横浜のおばさんの家、石川さんち、3階建ての広いお家。
新築ですごくお洒落なカンジ。
ウチも結婚したらこういう1戸建てに住みたいなあ。
8 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時14分22秒
ちょっと緊張しながら、インターフォンを鳴らすと、
バタバタと足音聞こえてきた。
すぐに、玄関のドアが開き、小さい女の子が飛び出してきた。
「ひとみちゃーん!!」
その子が、ウチに思いっきり飛びついてきた。

「うおっ!」
ウチは思わず、よろけてしまった。
な、なんだ?

その女の子がちょっと体を離して、顔を見せた。
「亜依だよー、覚えてる?」
ニコニコと微笑む亜依ちゃんは、とてもかわいらしかった。
顔立ちは子供のときのまんまで、背だけが大きくなったってカンジだな。

「もちろん、覚えてるよ。大きくなったね〜」
ウチは、亜依ちゃんの頭を撫でた。
エヘヘ、というように、亜依ちゃんは顔を赤くして、
とても純粋そうな屈託のない笑顔を浮かべてる。

「あ、早く家に入って〜お母さんとおやつ作ったから」
亜依ちゃんに手を取られ、家に入った。
うん、亜依ちゃんって、イイ子そうじゃん。
明るいし元気だし、お母さんとも仲イイってことは反抗期とかじゃないんだろうし。
9 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時14分53秒
「亜依ちゃん、これからよろしくね」
「うわー、『亜依ちゃん』って何かキショイわー、そんなんで呼ばれたことないから。
『亜依』とか『あいぼん』って呼んでー」
疑問に思っててあとで聞いたんだけど、どことなく関西弁っぽいのは、
今仲の良い子が、もともと奈良の出身でベタベタな関西弁で、
それを真似しているかららしい。

「ん、じゃ、『あいぼん』にするね。ウチも『ひとみちゃん』って呼ばれてないから、
何か他の呼び方にしてよ」
「友達には何て呼ばれてんの?」
「『よっすぃー』とか『ひーちゃん』かな」
「じゃ『よっすぃー』やな。うん、決まりや。よろしく、よっすぃー」
あいぼんは、握ったウチの手をブンブンふりまわした。
この年の頃のウチって、もっと大人だったよなあ。
まるで小学生みたいだな、あいぼんは。
10 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時15分24秒
石川家は1階におじさんおばさんの寝室と和室の客間と物置。
2階に広いLDKとお風呂。
3階に梨華ちゃんの部屋、あいぼんの部屋、おじさんの書斎、
そしてこれまた広いベランダがある。
ウチは、1階の客間を使わせてもらうことになっている。
広さは10畳くらいかな。
荷物が少ないから全然広く使える。
ウチは荷物が全部届いてるのを確認すると、とりあえず、畳の上に横になった。
裏に小さな庭があり、部屋の障子戸をあけると廊下があり、
そのすぐ先の窓の外には縁側みたいなものまでついている。
日が差し込んでいて暖かい。
今日は天気もいいから気持ちいいなあ。

あいぼんはいい子そうだし、心配いらないかな。
あ、梨華ちゃん…そういえば、いないのかな?
それとも、あの子、暗いから、
部屋にこもってたりするのかな…ありえそうでコワイ…
11 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時15分57秒
少しすると、あいぼんが部屋まで呼びにやってきた。
そしてリビングに行って、手作りのパウンドケーキをいただいた。
梨華ちゃんが好きだという紅茶もいっしょに飲んだ。
うん、どっちもおいしい。
なんかオンナノコのいる家ってカンジだよ。
ウチなんか、おやつといったら、お父さんのつまみにもなる
さきいかとかピスタチオとかたたみいわしとか…
で、飲み物は普通の緑茶だよ。
たまに焼酎なんか飲まされるしさ。


ちなみに、梨華ちゃんは、大学の友達と卒業旅行中らしい。
よかったよ、ひきこもってなくて…
帰ってくるのは1週間後とのこと。
とりあえず、梨華ちゃんとは1週間会わずに済むのか…なんかホッとした。


おばさんとおじさんは、その次の次の日にニューヨークへ行った。
ま、ウチがおじさんのBMWを運転して、空港まで送ってあげたんだけど。
しかもおじさんがいない間、ウチがこの車を使ってていいことになった。
超ラッキー!しかもBMWだもんなあ。
4月生まれのウチは、大学入試が終わったと同時に
教習所に通って車の運転免許を取っていた。
お父さんの車をちょこちょこ借りてたりしたし、運転するの大好きだからうれしい。
12 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時16分29秒
そう、おばさん、おじさんもいなくなったそれからの5日間、
ウチはあいぼんと2人っきりだったから、すっかり仲良くなった。
やっぱ、明るい元気な子はいいね、うん。
あいぼんは塾に通ってるし、もう受験生になるんだし、
家事はあいぼんにはやってもらわなくてもいいかな。
梨華ちゃんが戻ってきたら、ウチと半々にすればいい。
もしかして、全部やってくれちゃったりするかもしれないしねえ。


梨華ちゃんが帰ってくる前日に家に電話があった。
ウチはお風呂に入ってたから、話しはしなかったんだけど。
あいぼんの話しによると、梨華ちゃんの行き先はロス、ラスベガス、
ニューヨークということで、現地でおじさん、おばさんとも会ったらしい。
で、ウチが車の運転できることを知って、
できれば明日空港に迎えに来て欲しいというお願いをしてきた。
もともと、あいぼんと2人でドライブでもしようかって話ししてたから、
ウチが暇だと知ってたあいぼんはOKしたのだ。
別にいいけどさ、なんか緊張すんな…
13 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時17分30秒
次の日、早朝からウチらは空港に向かった。
あいぼんは自分のことを話したりとか、最近見た面白いバラエティー番組の話とか、
物真似をしてくれたりと、運転しているウチもとても楽しかった。

「梨華ちゃんなあ、彼氏いないからなあ、
向こうで変な男にひっかかってなきゃいいんだけど」
ウチも聞かなかったから、あんまり梨華ちゃんの話題にならなかったけど、
あいぼんがそんなことをポツリとつぶやいた。
そうだよなあ、あんな、デブ…もといふっくらしてて、
暗い子だったらモテそうもないもんな。
自分に声かけてくる男に勘違いして、フラフラとついていっちゃうかもなあ。
14 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時18分01秒
ウチが飛ばしたせいもあって、空港には梨華ちゃんの到着時刻の
30分以上も前に着いてしまった。
しょうがない、あいぼんとのんびりお茶でもすることにした。
とりあえず、梨華ちゃんが着いて荷物も受け取ったら、
あいぼんの携帯に連絡が入ることになっているし。

ココでもあいぼんは絶好調だった。
しっかし、よくしゃべるよな、この子は。
あいぼんが柳葉さんの真似をしている最中に、電話がなった。
もちろん、梨華ちゃんからだ。
あいぼんもうれしそうに話している。
姉妹も仲イイのかなあ。
15 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時18分32秒
ゲートの方に向かっていったけど、どうもそれらしい人が見当たらない。
あいぼんもしばらくキョロキョロしていた。
「あっ、梨華ちゃーん!!」
「あいぼーん!!」
ウチが背中を向けてた方に、あいぼんが思いっきり走りだした。
そして誰かに飛びついた。


あ、あれが梨華ちゃんか…
…えっ?ええっ???

ウチの記憶の中にある梨華ちゃんは、太ってて、色黒で、暗い子で…
今、目の前にいる女の人は、すごくやせてて、ま、色は黒いけど、
笑顔ですごくキレイな人だ…
…うそ…でも、確かに目や鼻や口、そして甲高い声も昔のままだ…

女の人っていうのは、こんなにも変わってしまうんだな…
ウチは自分が女だって、ときたま忘れちゃうからな。
16 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時19分03秒
あいぼんが体を離すと、梨華ちゃんのことをウチの前まで連れてくる。
あいぼんは何も言わないで、ニヤニヤとウチと梨華ちゃんを交互に見ている。
梨華ちゃんもウチのことを見る。

うわっ…かわいい…
目が合って一瞬ドキッとしちゃったよ。

梨華ちゃんはしばらくキョトンとしていたが、少しすると笑顔になった。
「もしかして、ひとみちゃん?ひとみちゃんなの!?」
ウチはおそるおそる頷いた。

「うわー、すっごくキレイになって、背も高くなってたからわかんなかったよ」

あは、あはは、ウチも全然梨華ちゃんってわかんなかったよ…
「…うん。久し振りだね」
「うんっ、これから、よろしくね」
「あ、う、うん。あ、荷物持つよ」
あんまり、ニコニコと見られるのが照れ臭くて、
梨華ちゃんの手に持っていた大き目のショルダーバッグを、ウチが手に取った。
「あ、いいよ、自分で持つから」
「いいよ、トランクもあるんだし」
「で、でも…」
17 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時19分37秒
「梨華ちゃん、遠慮しなくていいよ。よっすぃー、力持ちだから」
あいぼんがウチの腕に絡みついてくる。
「もー、お前が言うなよっ」
ウチはあいぼんの頭を小突いた。
あいぼんがエヘヘというように笑った。

「じゃ、行こうか、車、駐車場に止めてるから」
ウチが歩き出そうとすると

「梨華ちゃ〜ん」
後ろの方で、声がしたと思ったら、
トランクと大きなカバンを持った女の人がこっちにやってきた。

「あ、ごめん、柴ちゃんのこと忘れてた」
「もー、ひどいなあ」

この柴田さんという人が、梨華ちゃんの大学時代の親友。
他の友達とも合わせて、3人で卒業旅行に行ったらしい。
もう1人の子は彼氏が迎えに来てたらしくて、すでに別れたあとだった。
で、柴田さんの家も横浜でウチと同じ方向だから、
途中まででも一緒に送ってあげると、梨華ちゃんが勝手に決めてた。
ま、別にいいんだけど。
18 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時20分07秒
ウチは、柴田さんの手に持ってる荷物も預かり、両手に大荷物で歩き出した。
うっ、さすがに、両腕は結構くるなあ…
しかし、この人たち、こんなでっかいトランクあるのに何で荷物おさまんないだろ?
「おおーっ!よっすぃー、かっこいい!!」
あいぼんはウチの周りをチョロチョロとしながら、駐車場へと向かった。


車には、助手席にあいぼん、その後ろに柴田さん、
運転席の後ろに梨華ちゃんが座った。

…しっかし、梨華ちゃん、かわいくなったよなあ…
「よっすぃー、青!」
「あ、ああ」
ついつい、バックミラー越しに梨華ちゃんに見とれちゃったよ。
19 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時20分41秒
「そういえば、向こうで何かなかったの?ナンパとかされなかったん?」
あいぼんがニヤニヤしながら聞いた。

「すっごい声はかけられたけどねえ、現地の人より日本人観光客に」
柴田さんが楽しそうに笑って話した。

「ちょっといいかなって思った人と食事もいったよねえ」
柴田さんが何か含んだいい方で、梨華ちゃんに話しをふる。
「もう、ホント、柴ちゃん、信じらんないよ」

何でも、梨華ちゃんはそういうのが嫌いらしい。
それなのに、柴田さんともう1人の友達がノリノリで、
あるとき声をかけてきた結構かっこよかった日本人の男の人2人組と食事をして、
そのあとに彼らをホテルの部屋にも呼んだらしい。

しかも、そのうちの1人が梨華ちゃんを気に入って、
梨華ちゃんはいきなりベッドに押し倒された。
梨華ちゃんは大泣きして、暴れた拍子に男の人のアソコを思いっきり蹴ったらしい。
その男の人も冗談なのにと、泣いてたらしいけど。


うーむ、梨華ちゃん、こーんなかわいかったら、モテモテだろうな…
そういえば、彼氏いないって、あいぼん言ってたよな、何でだろ?
20 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時21分12秒
柴田さんの家はウチよりも遠い。
とりあえず、ウチに着いたので、お茶をするように誘った。
でも、柴田さんは疲れてるようだったので、
無理強いはしないで、そのまま家まで送ることにした。

「とりあえす、梨華ちゃんの荷物置いてくるから、ちょっと待っててね」

梨華ちゃんのトランクを抱えて、2階の梨華ちゃんの部屋に向かう。
「あ、い、いいよっ!部屋の前で」
その言葉を聞く前に、ウチは部屋のドアを開けていた。

梨華ちゃんが慌てて部屋を覗き込んで、驚いた表情になる。
「…あ、れ?…」
「昨日、お布団干しておこうかと思って…ついでに掃除機もかけたんだけど…」

梨華ちゃんは真っ赤になってうつむいていた。
「ごめんね…汚くて驚いたでしょ」
21 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時21分45秒
昨日、梨華ちゃんの部屋に入らせてもらって、確かに驚いた。
脱ぎ捨てられた服、読みかけの雑誌なんかが足の踏み場もない程、散らかってた。
とても女の子の部屋とは思えなかった。
あいぼんの部屋は結構キレイに片付いてたから、
姉妹でもこうも違うのかって驚いたくらい。

「いや、こっちこそ勝手に入っちゃってゴメン…」
「ううん、こっちこそ、キレイにしてもらっちゃって…」

ま、あんまりモノをいじっちゃうのもどうかと思って、
服は畳んで、本も重ねて、部屋の端に置いておいただけなんだけど。

「ううん、そんな大したことしてないし…
あ、お腹すいてない?おにぎり作っておいたよ。
あと、お風呂ももう沸いてると思うから」
「…えっ?」
梨華ちゃんは、キョトンとした顔でウチのことを見た。
うぅ、あんまり見つめられると、どうも恥ずかしい…
「あ、じゃ、ウチは柴田さん送ってくるから」
ウチは梨華ちゃんの荷物を部屋に置くと、
すぐに車に戻った。

22 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時22分19秒

ひとみちゃん、ホント、びっくりした。
そう、小さい頃から、親戚の中でもキレイで、明るくて元気で、
いとこ同士にだけじゃなくて、おばさん、おじさんにも人気があった。
いつもみんなの注目を浴びてた。
そんなひとみちゃんがうらやましくて、
仲良くしたいんだけど、引っ込み思案の私は声をかけることもできなくて。
たまに、ひとみちゃんの方から話しかけてくれても、
話しが盛り上がらなくて、結局ちょっとしか話しができなかった気がする。

実は、ひとみちゃんと住むことを聞いて、嬉しいと思ってた。
あいぼんは小さかったからはっきりとした記憶はなかったけど、
面白い強いお姉ちゃんくらいに覚えてたみたい。

10年ぶりに会った彼女は、より一層キレイに、
そして何だかたくましくなったように見えた。
そう、女の子というよりも、なんとなく男の子っぽくて。
しかも、私の重い荷物をさっと持っていったり、車の運転もうまいし。
23 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時22分50秒
昨日、あいぼんに電話したときに
「よっすぃー、かっこいい、よっすぃー、かっこいい!」
って何度も言ってた。
確かにそう思う。
しかも、料理とか家事もバッチリこなせるなんて、スゴイ。
私には何一つできないことを、全てやれるなんて。


「梨華ちゃーん、よっすぃーの作ってくれたおにぎり食べようよお」
部屋のドアが開いて、あいぼんが私の腕をつかんだ。

ダイニングのテーブルの上に少し小さめのおにぎりが5つあった。
三角に握られたおにぎりのてっぺんにはそれぞれの具がのっていた。
こんぶ、おかか、しゃけ、めんたいこ、梅。
それを見たら、すごくお腹がすいてきた。
機内食がおいしくなくてあんまり食べられなかったし、
何よりも旅行中おいしいお米が食べたかった。
うちのお米は、新潟のおばさんから送られてくるこしひかりだから、超おいしい。
そういえば、あそこの麻琴ちゃん、元気かな。
あいぼんと同い年だから、今度受験生なんだっけ。
24 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時23分23秒
「梨華ちゃん、おかかもらっていい?」
「うん。私はこんぶにしようっと」
…うん、おいしい…
私は力がないせいかおにぎりをつくっても、どうもしっかり固まらない。
このおにぎりはすごくギュッと握ってあって、
具の入れ具合もすごく丁度いい。

「…よっすぃーは、おにぎり作るのもうまいなあ」
あいぼんもおいしそうに食べている。
「うん、おいしいね」

「あ、お味噌汁もあるんやった」
あいぼんが、慌ててガス台に火をつける。
「よっすぃー、朝ゴハンのとき梨華ちゃんにもって、多めにつくってた」
「…あいぼん、ゴハン食べたのに、よくおにぎり食べられるね」
「うっ…だってよっすぃーのつくるの、おいしいんだもん」

外国旅行してると、お米や味噌汁って食べたくなるんだよね、
そんなときやっぱり、日本人だなあって思うんだけど。
私はあいぼんがめずらしく遠慮したので残りのおにぎりと、
豆腐とわかめのお味噌汁をおいしくいただいた。
25 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時23分55秒
ふぅ、お腹も一杯になって、少し眠くなってきた。
「片付けやっておくから、梨華ちゃん、お風呂入ってきなよー。
よっすぃーが『飛行機の中に長時間で疲れてるだろうから』って、
ちゃんと帰ってくる時間に合わせて、タイマーかけてたから」


すごい、ひとみちゃんってホント気が利く人だ。
私も見習わないとなあ。

お風呂に入ると、すごくいいニオイがしてきた。
これは桜の香りかなあ。春だしね。
湯船にエッセンスオイルかなにかいれてるみたい。
コレもひとみちゃんがやってくれたんだろうな…

あ、そういえば、そのまま、お風呂に入っちゃったもんだから、
下着とか着替え持ってきてないや。
ま、どうせあいぼんしかいないし、バスタオル巻いて部屋に行こうっと。
お母さんがいたら怒られるし、お父さんがいたらイヤだけど、
そんな心配もないし。
26 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時24分27秒
私はお風呂からあがると、体を拭いて、髪に普通のタオルを、
体にバスタオルを巻いた。
そして、お風呂場の戸を開けて、廊下を1歩歩き出したら、
目の前に人が立っていた。
…ひとみちゃん…

ひとみちゃんは驚いたように目を見開くと、視線を私の顔、
そしてそのまま下に下げていった。
「…あ、おかえりなさい…」
「……ただいま…」
私はなんだか恥ずかしくなって、急いで部屋に向かった。

….もう、女の子同士なのに、何か恥ずかしかった。
そりゃ、帰ってきて目の前で、バスタオルはつけてたけど、
裸でいられたらびっくりするのは当然だよね、女の子でも。
…そういえば、ひとみちゃん、顔真っ赤になってた。
うふふ、そんなとこも、男の子みたいでカワイイ。
27 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時25分00秒
部屋に戻ると、携帯にメールが届いてた
柴ちゃんからだった。

『お疲れでした〜いろいろあったけど、楽しかったね!
また旅行行こうね!
それにしてもよっすぃーってすっごくかっこいい(はあと)
優しいし、面白いし。
いいなあ、梨華ちゃん、よっすぃーと一つ屋根の下で暮らせるなんて(笑)』

…やっぱり、ひとみちゃんって誰から見てもかっこいいよね…
私はバスタオルのまま、ベッドに横になってため息をついた。
…ふわあぁぁ…飛行機で結構寝てたけど、まだ眠いなあ…
28 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時25分31秒
―コンコン―
ちょっとウトウトしてたら、部屋のドアがノックされた。
『…梨華ちゃん?』
ドア越しに、遠慮がちにひとみちゃんの声がした。
「あ、ど、どうしたの?」
まだ着替えてなかった私は、ドアも開けないで、返事だけした。
一応起きて、下着をタンスから出して、着はじめた。

『…あのさ、夕御飯、何が食べたい?』
「夕飯?」
『うん、ほら、海外でいたら食べれなかったのとか、ムショウに食べたくなんなかった?』

私はとりあえず下着とTシャツ、短パンを着たので、部屋のドアを開けた。

「…あ、ごめん、もしかして、寝てた?」
ひとみちゃんが申し訳なさそうな顔をする。
「ううん、大丈夫」
ひとみちゃんが、安心したように、ニッコリと微笑んだ。

………あれ?なんか、おかしい…
今、すっごくドキッとしちゃった。
29 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時26分03秒
「夕飯の材料、これから買い物に行こうと思って。
何かリクエストない?」
「…え、あ、うん…」
「やっぱり、お米系がいいかな?」
「あ、あ、そうだ!お、おにぎりありがとう!おいしかったよ」
「よかったあ、喜んでもらえて」

ひとみちゃんが、本当にうれしそうに微笑んだ。
…どうしよう?さっきから、ドキドキが止まらないんだけど…

「あ、それとも、ラーメンとかの方がいいかな?
梨華ちゃん、ラーメン好きなんでしょ?しかも角煮ラーメン」
「う、うん」
「じゃ、ラーメンにする?」
「…うん、ラーメン食べたいかな」
「よし!じゃ決まりね〜7時くらいに出来あがるようにするから、
それまで、ゆっくり眠ってていいよ。おやすみなさい」
「あ、うん、おやすみなさい…」
30 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月01日(金)00時26分33秒
ひとみちゃんが階段を下りていったので、私は部屋のドアを閉めて、
またベッドに横になった。
…ひとみちゃん、かっこいい…かわいい…優しいし、気が利くし…
背高いし、色白いし、車の運転うまいし…
きっと、すっごくモテるんだろうな、男の人にも女の人にも…
っていうか、あんなにキレイだったら、
きっと、付き合ってる人いるんだろうな。
あー、うらやましいな、その人…

…ん?
なんで、ひとみちゃんの恋人がうらやましいの、私?
ひとみちゃん、イトコで、4つも年下の高校生じゃない。もうすぐ大学生だけど。
…っていうか女の子じゃない。

…あー、旅行帰りで、久し振りに会って、何かおかしくなっちゃってるんだ。
とりあえず寝よう…
31 名前:作者 投稿日:2003年08月01日(金)00時27分10秒
とりあえず更新です。
元ネタはありますが、基本的に設定だけですので、ご了承いただければと。
いしよし2人のそれぞれの視点で話しは進行していきます。
更新日はまちまちになると思いますが、お読みいただければ幸いです。
32 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年08月01日(金)06時47分14秒
>作者さま

いしよし新作、お待ちしておりました。

何となくほのぼの系の様で素敵です、ハッピーになれそうですね。

マイペースで結構ですので、がんがってください。

33 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
∬´◇`∬<ダメダモン…
34 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時09分33秒

柴田さんを、家まで送ってる間、
梨華ちゃんのキャンパスライフがどんなカンジだったのか、
いろいろ聞かせてもらった。

柴田さんと梨華ちゃんは女子大の同じクラスですぐに意気投合して仲良くなり、
サークルも別の大学がやっているテニスサークルに一緒に入ったらしい。
柴田さんもそれなりにモテてたらしいんだけど、
やっぱり、一番モテてたのは梨華ちゃん。
でも、いろんな人から告白されても、誰とも付き合わなかったらしい。
実は梨華ちゃんはそのサークルの中で、いいなと思ってる人がいたから。
その人に梨華ちゃんから気持ちを伝えて、付き合うことにはなったみたいなんだけど。

「あいぼんに、梨華ちゃんは今彼氏いないって聞いたんだけど、その人と別れちゃったの?」
「え…あ、うん…詳しくは、梨華ちゃん本人から聞いて…
たぶん、梨華ちゃんはまだ彼のこと忘れられないんだとは思うよ…」
35 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時10分32秒
柴田さんが、言葉を濁したから余計に気になったけど、
確かにそういことは本人に聞いた方がいいよな。

しかし、梨華ちゃんがまだその彼のことを好きだっていうなら、
梨華ちゃんがフラれちゃったんだ。
あんなカワイイのに。
実はすごいウラの顔があったりして…



ウチは、家に着いて車を止めた。
梨華ちゃんの元彼のことを考えながら、リビングに向かおうとしたら、
目の前に、梨華ちゃんが立っていた。
…あ…!!…
梨華ちゃん、バ、バスタオル巻いてるってことは…下は、は、裸!?

「…あ、おかえりなさい…」
「……ただいま…」

梨華ちゃんは、そそくさと階段を上っていった。
ウチはそのままリビングに入っていった。
36 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時11分10秒
「うおー、よっすぃー。おかえりい」
ソファに座ってテレビを見ていたあいぼんが、こっちを見る。
「お、ただいま」

ウチはキッチンに行って、冷蔵庫からお茶を出しグラスに注ぐ。
そのグラスを持って、あいぼんの隣りにドカッと座った。


…ふう…何だかなあ…
梨華ちゃん、すごく一途なんだなあ。
梨華ちゃんをそんなに夢中にさせる男ってどんなヤツなんだ?
キムタクみたいにめちゃめちゃかっこよかったりするんだろうな。
テニスサークルっていってたし、テニス以外にもスポーツは得意でさ、
背も高くて、性格も優しかったりするんだろうな。
いや、梨華ちゃんのことふるんだから、優しいことないか。
そんなヤツのことなんか、早く忘れたらいいのに。
梨華ちゃんには、もっともっとふさわしいヤツがいるよ、ゼッタイ。
37 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時11分43秒
「よっすぃー、何ブツブツ言ってんの?」
「へっ?う、ウチ、何か言ってた?」
ヤバイ!梨華ちゃん、梨華ちゃん、つぶやいてたんじゃ…

「キムタクがどうこうとか?
よっすぃー、キムタクみたいのがタイプなん?」
「えっ!?ああ、カッコイイよねえ、キムタク」
「うわっ、よっすぃーが、男の人のことカッコイイとか言うの、違和感あるわあ。
キムタクよりもよっすぃーの方がかっこええし」
「そ、そう?ありがと」

なんで、ウチがキムタクと比較される対象になるのかよくわかんないけど、
悪い気はしなかった。
38 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時12分13秒
梨華ちゃんが帰ってきてから、5日がたった。

その間、梨華ちゃんは友達と遊んだり、
家でビデオ見たり、ゲームしたりっていうカンジだった。
ま、ウチも似たようなもんだったから、
梨華ちゃんと一緒にレンタル屋に行ったりもしたし。

あ、柴田さんと一緒に横浜に買い物に行くっていう日は、
ウチも暇だったから車で連れていってあげた。
横浜の中心まで車で行ったことなかったし、いい機会かなって思って。

しかし、ウチは実は買い物があんまり好きじゃない。
つーか、買い物に行くときは「コレを買う」って決めていくから、
ダラダラと見ることはないんだよね。
友達も買い物とか付き合っても、ウチは途中でお茶してるくらいだから。
梨華ちゃんも柴田さんもたぶん女の子にしてはマシな買い物の仕方だと思うんだけど、
やっぱり、すげー疲れた。
興味ないものを見て回るよりマシだと思って、
すすんで荷物持ちになって、車に買い物したものを運んでたくらい。
39 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時12分46秒
そうそう、梨華ちゃんは全然ウラなんかない子だった。
見た目通りすっごく女の子っぽくて、
やることもモノの趣味も女の子女の子で、
ウチとは正反対だった。

でもある意味裏切られたことがある。
そんな女の子らしいんだから、家事とか全部やってくれちゃうのかと期待してしまったんだよね。
ところが、とんでもなかった。
そりゃ部屋があんなキタナイんだから、当然といえば当然のこと。
料理でも洗濯でも何でもやろうとはしてくれる。
でも、あまりに危なっかしくて見てらんない。
1度、梨華ちゃんが一人で夕飯つくったとき、
あまりに時間がかかってたし、味も見た目もとんでもなかった。
それから、家事はウチが全部やろうと決めた。
梨華ちゃんは手伝ってくれようともするんだけど、
余計に時間がかかっちゃう。
ま、時間がかかってもかまわない食器洗いとかくらいはしてもらってるんだけど。
実はこれも危なっかしいし、結構いい加減だから、
基本的にウチがやることにしてる。
40 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時13分18秒
お風呂から上がって、部屋で音楽を聴きながら、布団に横になりぼんやりと本を読んでいた。
ふと時計を見ると1時をまわっていた。
ふぁぁ…そろそろ寝るかなあ。

コンコン
部屋のドアがノックされた。
『ひとみちゃん、起きてる?』
「へっ?ああ、どうぞ」
ウチは布団から上半身だけ起こして、声をかけた。

スーッとドアが開く。
上下ジャージ姿の梨華ちゃんが入ってきたのに、何も言わず、
ドアの前でうつむいたまま何だかモジモジとしている。
えへへ、すっごいカワイイかも…
41 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時13分53秒
「…梨華ちゃん、どしたの?」
梨華ちゃんは、ハッとしてウチの顔を一瞬だけ見るとまたうつむいた。
「あ、あのね…ひとみちゃん…今日、一緒に寝てもいい?」
…はい?
な、何?どうしたの?


今日、お昼ゴハンのときににつけてたテレビが、心霊ものの再放送番組だった。
確かに結構こわい内容だったと思う。
梨華ちゃんは、ホラー映画は好きだけど、
そういう実際にあるような怖い話しは苦手で、
部屋で一人になったときに、思い出してしまったらしい。
あいぼんも思い出してこわがってないかなと思ったら、
もうすでにグーグー寝ていたらしい。
で、ウチのところに恥をしのんでお願いにきたのだとか。


「あははは、梨華ちゃんはお子ちゃまですねえ」
ウチは立ちあがって、からかうように梨華ちゃんの頭を撫でた。
「…だって、こわいものはこわいんだもん…」
頬を膨らまして、唇を尖らす梨華ちゃんは本当にかわいい。
ウチはニコニコと梨華ちゃんを見ていた。
42 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時14分27秒
「お布団もう1つ持ってきた方がいいかな?」
「ひとみちゃんがよければ、1つの布団でいいよ。
お布団持ってくるの面倒だし。あ、狭いと眠れない?」
梨華ちゃんが眉をハの字にして、ウチの顔を覗き込んでくる。

「いや、別に大丈夫だけど。
あ、梨華ちゃんの寝相が悪いなら考えさせてもらうけど」
梨華ちゃんに顔を見られてる恥ずかしさもあって、少しイジワルを言う。

「大丈夫だよ、私、すっごく寝相いいから!
じゃ、一緒に寝てもいいの?」
「しょうがないね。梨華ちゃんが、全然眠れないで具合悪くなったら、
ウチが看病しなきゃなんないだろうしね」
ウチは、布団に入りなおすと、かけ布団を上げた。
43 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時15分03秒
「わーい、ありがと!」
「うぉっ!」
梨華ちゃんが、ウチに抱きついてきて、そのまま布団に倒れこむ形になった。
梨華ちゃんの髪のニオイがウチの鼻をくすぐる。
っていっても、ウチも同じシャンプー使ってんのに、何でこんないいニオイなんだろ?

「りっ、梨華ちゃん、電気全部消す?
それとも、今日は怖いから豆球くらいはつけておく?」
「…うん。真っ暗だとちょっとこわい…」
「全く、ホント子供なんだからあ」
ウチは梨華ちゃんの腕をほどいて、電気のヒモを引っ張りにいった。


ウチが布団に入ると、梨華ちゃんがぴったりとくっついてきて、
背中に腕を回してきた。
何か恥ずかしかったけど、ウチも梨華ちゃんの方を向いて、
腰の辺りを抱きしめた。
でもギュッとしたら何だかこわれちゃいそうな気がして、
ホント軽く腕を置いた程度なんだけど。
44 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時15分38秒
…しかし、近いな、近すぎる…
こんなに人と長時間密着することなんてないよな…
顔がすぐ目の前にあって、ちょっと唇を尖らしたら、キスできそう…

…キス、したい…

…へっ?い、今、ウチ、何考えた!?…
キスしたいって思った???
…何で?いとこじゃん。
だいたい女の人だよ…
ただの欲求不満?

でも、別にあいぼんとしたいとなんて思わないし、
幼馴染でずっと仲良くしてるミキティともしたいなんて絶対思わない。
過去にウチに告白してきた女の子たちとも、全然したくない。

…つまり、梨華ちゃんだからしたいってこと…?…
それって、それって、つまりのつまり…

ウチ、梨華ちゃんが好きってこと???
45 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時16分11秒
「でも、よかった…」
「へっ?な、何が?」
こんな側でしゃべられると、梨華ちゃんの息がウチの頬を撫でて、
何だかそれだけで、どうにかなってしまいそう。

「ひとみちゃんが女の子で。
いとこっていっても男の子じゃこんなこと頼めないもん」
「は、ははっ。そ、そりゃそうだね」
「…それに、ひとみちゃんが男の子だったら、私、好きになっちゃってたかも。
ひとみちゃん、かっこいいし、何でもできるし…」
梨華ちゃんの腕にギュッと力が入る。


……それってさ、つまり、女であるウチのことはそういう風に考えられないってことだよね…
は、はは、ははは、はははは…
吉澤ひとみ、自分の気持ちに気付いて、数秒後にフラれました…
こんな失恋ってあるかよお…
46 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時16分42秒
気付いたら、梨華ちゃんの規則正しい寝息が聞こえていた。
あはは、もう寝ちゃったワケね…怖くて寝れないっていってたのに。

ウチは失恋のショックと、好きな人が隣りにいるのに何もできない葛藤で、
結局全然眠ることもできずに朝を迎えた。
47 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時18分53秒
梨華ちゃんとあいぼんと3人で住むようになって、1ヶ月。
ウチも何となく学校にも慣れてきつつあって。
そう、何か大学生らしい楽しいことがしたくて、
ウチの大学のオールラウンドのサークルに入ってみた。
年間行事にはテニス、スノボ、ハイキング、釣り、何でもありで面白そうだったし、
勧誘をしてくれた先輩、安倍さん、飯田さんも優しくてかわいいキレイな人たちだった。
2人はウチと同じ学部の先輩だし、
いろいろ面倒みてもらえそうかな、なんてちょっと思ったりもして。

しっかし、サークルの歓迎会ではすっごい飲まされた。
幸いウチはお酒は強い方なので、潰れはしなかったけど、
他の1年生はかなりやられてた。
飯田さんにもかなり飲まされたから、
ウチも飲ませたら超テンション高くなるわ、ウチに絡んでくるわ、
ほっぺにキスはされるわで大変だったけど…
48 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時19分23秒
他にもなぜか1年生の松浦さん、ウチの大学の短大の子なんだけど、
ウチにベッタリで、ウチの膝枕で寝ちゃったりするもんだから困ったけど、
ま、カワイイからいっかなんて思っちゃったりもして…
どっかのサークルみたいに男の人たちに襲われちゃったりなんかしちゃったら大変だし、
帰りも同じ方向だったから、松浦さんと一緒に帰ったんだけど、
電車ん中でずっと抱きつかれてたのにはさすがに参った。


梨華ちゃんの方はまだ研修期間中で、
仕事は本格的にははじまってないけど、
友達もできたみたいだし、周りの先輩もいい人らしくて、
会社に行くのもイヤではないみたい。よかったね。


49 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時19分56秒


ひとみちゃんと暮らすようになって、すごく困ったことがある。
お母さんがいたときよりももっと、家事をしないようになってしまった。
いや、やろうとはするんだよ。

だけど、あるとき、ひとみちゃんの横で料理を手伝おうと、
野菜を切ってたら、指も一緒に切っちゃって。
それに、私が手伝った方が時間がかかってしまうことに気付いて、
「いいよ、料理はウチが全部やるから」
ってひとみちゃんに言われてしまった。
食器洗いくらいはしようと思ってるんだけど、
いつもひとみちゃんの方が先に動いてやってくれちゃうの…

洗濯は干し方がダメだって言うし、
だいたい、朝はひとみちゃんの方が早起きしてるもんだから…
たまにはやろうと、夜のうちに洗濯機をかけて、朝干そうと思って、
そのままにしてたら、ひとみちゃんに怒られた。
朝干すなら、洗濯じたいが終わったら、ちゃんと洗濯物を畳んでおかないとシワになっちゃうでしょって。

掃除が私が最も苦手とする家事ってことは、
ひとみちゃんも私の部屋を見て知っている。
「自分の部屋の掃除はしてね」
とだけ言って、家の他のところはいつもひとみちゃんがやってくれてる。
50 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時20分28秒
それにしても―
ひとみちゃんが料理してるとき、洗濯物干してるとき、つい見とれちゃう。
ひとみちゃんの背中って、なんかいいんだよねえ。
女の子にしては広い背中、何かたくましくて、ギュッと抱きつきたくなるほど。
あいぼんがよく抱きついてるから、私も真似して、
何回か実際に抱きついたりもしてはいるんだけど。
「こらー、じゃましないでよー」
って怒られちゃうから、いつもはできないのが残念なんだけど。


ひとみちゃんって、ホント、完璧な人だなって思う。
見た目はもちろん、家事もできて、性格もよくって、友達も多くて。
私なんかとは全然違う。
彼氏がいないのが不思議なくらい。
中学、高校と女子高で部活のバレーボールばっかりしてて、
部活以外のときにも、部活の仲間と遊ぶくらいだったみたいで。
他にも中学までは合気道習ってたりと、何だか体育会系のタイプ。
彼氏作るよりも、みんなと運動したり遊んだりする方が楽しいと思ってたらしくて。
51 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時20分58秒
大学に入って、周りに男の人もたくさんいるわけだし、
「かっこいい人とかいないの?好きな人とかできた?」

夕食後にひとみちゃんとソファーに座って、テレビを見てるとき、
そう聞いたら、ひとみちゃん、すっごく驚いた顔をして、
真っ赤になって、うつむいちゃった。


「あー、その様子だと、いるんでしょ?ね、ね、どんな人?」
「い、いないよっ!好きな人なんて」
「うっそだあ、だって、顔赤いよ」
私はひとみちゃんの腕を掴んで顔を覗き込んだ。
ひとみちゃんがじっと私の目を見る。
それにしても、ホントきれいな目してるなあ、
この目でじっと見詰められると、何かドキドキしちゃいそう。

「…あ、あのさ…」
「ん?」
「…梨華ちゃんこそ、好きな人いないの?」
「えっ?ワタシ?…」
52 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時21分28秒
「あー、なにイチャイチャしてんのお?」
あいぼんがお風呂から出てきて、私たちの前にソファーに座った。

「べっ、別にイチャイチャなんかしてないよっ」
ひとみちゃんが慌てて私の腕をふりほどく。

「じゃあ、アタシとイチャイチャして〜」
あいぼんが、ひとみちゃんに抱きつく。
「もう、何言ってんだよお」
ひとみちゃんは、あいぼんの頭を撫でて、膝の上に座らせた。
首を後ろに向けてうれしそうにひとみちゃんを見るあいぼん。
ひとみちゃんもニッコリと、あいぼんの腰の辺りを抱きしめてあげている。

いいなあ、私もひとみちゃんにあんなことしてもらいたいなあ。
「あー、梨華ちゃんが、何かうらやましそうに見てるう」
あいぼんが、私を見たと同時にそんなことを言い出した。

「…だって、私もしてもらいたいんだもん…」
ひとみちゃんが目を丸くして私を見る。
53 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時22分01秒
「しょうがないなあ、ハイ、交代!」
あいぼんが、ひとみちゃんの膝から下りた。
つい、さっきは『してもらいたい』なんて言っちゃったけど、
よく考えたら、4つも年下の女の子にそんな甘えちゃうのなんて、恥ずかしいよね。

「えっ…あ、い、いいよ」
「なに、遠慮してんの」
あいぼんが、私の腕をひっぱって、ひとみちゃんの膝に座らせた。
ひとみちゃんの腕がおずおずと私の腰に伸ばしてから、顎を私の肩にのせてきた。
何か、こう後ろから抱きしめられるのって気持ちいいなあ…
男の子っぽいっていっても、やっぱりひとみちゃんは女の子なわけで、
腕も体もやわらかくって、フワフワしてるみたいな気分…

「何かホントの恋人どうしみたいやで。お似合いお似合い」
いつのまにか、前のソファーに座りなおしていたあいぼんが、私たちを見てそう言った。

お似合いって…ホントの恋人って…私とひとみちゃんが?
54 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時22分33秒
「ばっ、ばか言うなって!女どうしだってーの」
ひとみちゃんの腕が、私の腰から離れた。

「えー?別に女どうしだっていいじゃん。
よっすぃー、かっこいいし、女からもモテるんやろ?」
あいぼんがニヤニヤとする。

「え…ま、まあ、昔っから、よくコクられたりするけど…」
「そうやろ?アタシの行ってる塾の友達の友達も、
女の子どうしで付き合ってるらしいからー」

「とにかく!フツーではありえないことなの!女どうしなんてっ!
お、お風呂入ってくるっ」
ひとみちゃんが、私のことをどけて立ちあがると、リビングを出ていった。


「よっすぃー、どないしたんやろ?」
「もう、あいぼんがからかいすぎなんだよー」
「でも、ホントによっすぃーと梨華ちゃん、お似合いだよ」
「何言ってるの。女の子どうしなんだから、
そんなこと言ったらひとみちゃんに失礼でしょ」
55 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時23分08秒
お似合いかあ…
何か女の子同士で言われるのって変なの。
でも、本当にひとみちゃんが男の子だったら、
私、絶対好きになってたと思う。
イトコだって年下だって関係なく、
すごく頼り甲斐があって、優しくて、かっこよくて、面白くって。
そう、男の子だったらね…
昔のことは忘れられるのかもしれないけど…

ひとみちゃんと一緒にいると、
すごく安心するっていうか、ずっと側にいたいなって思ってしまう。
それは、たぶん、イトコだから身内だからだよね。
うん、たぶん、そう。

ひとみちゃんに見つめられて、ちょっとドキッとしちゃうのも、
あまりキレイだからだと思う。

ひとみちゃんに抱きしめてほしいなんて思っちゃうのも、
ひとみちゃんの優しい、あったかい人柄からだと思う。
包容力があるっていうカンジなんだもん。

ふぅ…最近気付くとひとみちゃんのことばっかり考えてる…
56 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時23分40秒
ゴールデンウィーク。
せっかくの連休だけど、今年は家でゆっくりと過ごすことにした。
社会人になって、まだ1ヶ月くらいで、まだ緊張の連続で、
体も精神もかなり疲れてるみたい。
あいぼんも塾の講習があるとかで、家にいるみたいだし。

本当のところは、ひとみちゃんとあいぼんと3人でどっか行きたいなあ、なんて思ってた。
でも、ひとみちゃんはサークルの旅行で、2泊3日で軽井沢に行ってしまった。
あいぼんと2人っきりなんて、今までなかったかも。
お母さんがこっちにいたときは、お母さんが出かけることなんてほとんどなかったし。

ひとみちゃんがいない1日目は、あいぼんの塾は昼だったので、
夕飯は2人で近所のお店に食べにいった。
ひとみちゃんがいると絶対家で作ってくれるから、
あいぼんと外食なんてはじめてかも。

家に帰っても「おかえり」って言ってくれるひとみちゃんがいないとさみしい。
何だか部屋もどことなく暗い感じがする。
57 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時24分12秒
「あーあ、よっすぃーおらんと何かさみしいなあ」
あいぼんがため息をついた。
「あっ、そうや!よっすぃーにメール送ろう!!」

あいぼんが携帯を出して、私にピッタリくっつくと、
カメラ部分をこっちに向けた。
「りかちゃん、さみしい顔してやー」
あいぼんはそう言うと、左手を目に持っていって泣きまねをした。
私も同じポーズをした。
あいぼんがシャッターを切ると、何やら文字を打ってメールを送った。

少しするとあいぼんの携帯が鳴った。
「おっ、よっすぃーからやー」
あいぼんがメールを開けるのを、一緒に見る。
『ウチも2人がいなくて、さみしーよー』

画面には、よっすぃーが目をつぶってのチュー顔のアップ。
…いいなあ、あいぼん…私もその写真欲しい…

「りかちゃんも、チュー顔してあげてよー」
あいぼんがカメラをこっちに向ける。
「い、いいよお」
「いいじゃん、アタシもあとでするし。順番順番」
「…う、うん」

何か恥ずかしかったけど、目をつぶって、少し顎をあげた。
あいぼんがシャッターをきる。
58 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時24分46秒
次の日、私は友達と買い物に行ったあと、夕御飯を食べて帰った。
家に着いたら、まだ8時。
あいぼんは塾に行ってる。
ふぅ…少しお酒も飲んだから、何だか気分がいい。
でも、ひとみちゃんがいないのはやっぱりさみしい…
今頃、サークルの人たちと楽しくやってるんだろうな。
かっこいい人とかかわいい子に囲まれて…

私は何となく、ひとみちゃんの部屋に向かってみた。
もともと客間の和室だから、鍵もない。
あいぼんもいないし、今なら入っても大丈夫だよね…
そっと、戸を開けると、部屋の中はキレイに片付いていた。
ほとんど無駄なものなんてない、シンプルな部屋。
押し入れがないためか、部屋の隅に畳んでおいてある布団が目についた。
…ひとみちゃん、さみしいよう…
私は座ってその布団によりかかって、枕を抱きしめた。
あー、ひとみちゃんの匂いがするう…
何か、ひとみちゃんの側にいるみたい…
59 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時25分21秒
「梨華ちゃん!何してんの!」
「ふえっ?」
あいぼんが目の前に立っていた。

私はどうやら、ひとみちゃんの布団によりかかったまま、眠ってしまったらしい。
塾から帰ってきて、私の靴があって、帰ってきてるはずなのに、
部屋にもリビングにもお風呂場にもいない。
それで、もしやと思ってひとみちゃんの部屋に来たら、私がいてびっくりしたみたい。

「よっすぃーがいなくて、よっぽどさみしいんだねえ」
あいぼんはニヤニヤと私をみた。
「ち、違うの、お酒飲んでて…」
「はいはい、大丈夫、よっすぃーには秘密にしておくから」
も、もう、あいぼんのばかあ。
60 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時25分54秒
次の日の夜。
家の電話がなった。あいぼんが出ると、ひとみちゃんからで、
もうあと1時間くらいで家に帰ってくるとのこと。
あ、私、お風呂入っておこうっと。

お風呂を出てから、リビングであいぼんと2人でテレビを見てた。
ぼんやりしてるフリで本当はすっごくソワソワしていた。

「ただいま〜」
「よっすぃーやっ!!」
ひとみちゃんの声がすると、あいぼんは玄関まで転がるようにふっとんでいった。
私もそうしたい気持ちを押さえて、ゆっくり玄関まで向かった。

あいぼんが、ひとみちゃんに飛びついているのが見えた。
いいなあ…
「おー、ただいまだよお」
ひとみちゃんはニコニコとあいぼんの頭を撫でている。
61 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時26分25秒
私はゆっくりとその側までいった。
「ひとみちゃん、おかえりなさい」
「うん、ただいまあ」
ひとみちゃんが、私の方を見てニッコリとした。
…やっぱり、ひとみちゃんってキレイだなあ…

「あ、梨華ちゃん、よっすぃーがいなくてほんっとさみしかったみたいよー。
昨日なんか、よっすぃーの部屋の布団で寝てたんだから」
「あいぼんっ!!」
もうばかっ!言わないって約束したじゃない!!
あいぼんは今度はひとみちゃんの背中に隠れた。

ひとみちゃんはすごく不思議そうな顔をして、私を見た。
「…梨華ちゃん、ホントにさみしかったの?」

…すっごくすっごくさみしかったよ…
私はコクンと頷いて、うつむいた。

ふっと、私の体がぬくもりに包まれた。
!!
ひとみちゃんが、優しく優しく抱きしめてくれていた。
「…さみしくさせて、ごめんね」
そう、耳元で囁いた声は本当に優しくて。
62 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月13日(水)01時27分01秒
「よっすぃー、さっき、アイス買ってきたから、食べようよー」
「あ、うん、ありがと。とりあえず、荷物、部屋に置いてくる」
ひとみちゃんは、私から体を離すと、荷物を手にとって部屋に向かった。
「うん、待ってるよー」
あいぼんは今度は階段を駆け上がっていった。

…うふ、うふふふ…
『さみしくさせて、ごめんね』だって…
かっこいい〜…
もう、いいの、そんなこと言ってもらえたなんて、
今までのさみしい気持ちなんか、吹っ飛んじゃったんだから。


「…梨華ちゃん、何ニヤニヤしてんの?」
「へっ?」
荷物を置いてきたひとみちゃんが、私のすぐ背後にいた。
「お、思い出し笑いしてたのっ」
「へー、何?エッチなことでも考えてたの?」
「ち、違うよ!ひとみちゃんのバカッ」
私は恥ずかしくて、一気に階段を駆け上がった。


63 名前:名無し作者 投稿日:2003年08月13日(水)01時30分36秒
>>32
すみません、たぶん別の方とお間違えかと…
「作者」というHNではありませんので、訂正しました。
ほのぼのといっていただけてうれしいです。
64 名前:ギャ 投稿日:2003年08月13日(水)03時01分46秒
更新お疲れ様です。
読んでいてこっちがニヤニヤしてしまいます。
今後の二人に期待してますw
65 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年08月13日(水)06時27分03秒

更新オツです。

そうですか、あの方では無かったのですか、失礼しました。
今後とも宜しくです。

良いですね、こう言うパターンの『いしよし』は
にぶちんな二人が、いつか気がつくのを祈りつつ、お待ちしています。
66 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時22分57秒


しかし、石川家で過ごしてもう2ヶ月近くたつけど、
ずっと、どうしても気になっていることがある。
それは、梨華ちゃんの日曜日の行動。
お昼頃に家を出ていっては、夕飯前の7時頃に帰ってくる。
ウチが一緒に住むようになってから毎週毎週そうなのだ。
だから今までもずっとそうしてたんだとは思うんだけど。
しかもどこ行くのか聞いたら、「ちょっと…」ってごまかされた。

オトコなんだろうか?
それならそれで、前の彼のことが忘れられたんだなって思えるけど。
でも彼氏だったら、ウチに話してくれてもいいのに。
だいたい、あいぼんも知らないみたいだし。
隠さなきゃならないなんて、何なんだろう?

オトコはオトコでも不倫とかで、秘密にしなくちゃまずいとか…
それとも、何か宗教とか変な集団とかに入っちゃってるとか…
アイドルのおっかけしちゃってるとか…
ウチは気になって気になって、しょうがなかった。
67 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時23分34秒
今日は日曜日。
実はウチは、友達と約束があるといって、お昼前に家を出た。
今、ウチの最寄駅の駅前のファーストフードにいる。
一応キャップを目深に被って、駅に向かう人を見ている。

来た!!
…今日は赤いパーカーだから目につきやすくて助かる。
しかも手には花束をもっている。
なんだろう?誰かへのプレゼントなんだろうか?
ウチは、50メートル程離れて、梨華ちゃんの後を追った。

梨華ちゃんは、下りの電車に乗る。
念のため、1つ隣りの車両のドアの側に立って、梨華ちゃんが見えるところに立った。
しかし、スイカとかパスネットってホント便利だよね。
下りるときに清算とかしてたら、見逃しそうだもん。
68 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時24分06秒
乗り換えも一度したけれど、無事梨華ちゃんを見失うことなくたどり着いたのは鎌倉だった。
梨華ちゃんは海の方に向かい、
サーファーの人たちが泳いでるのを、横目で見ながら、ノンビリと歩いていた。
さすがに、後ろについているとバレそうだから、
ウチは防波堤の上から梨華ちゃんをずっと見ていた。
ときたま立ち止まって、海をぼんやりと見つめてはまたゆっくりと歩き出す。
そんな繰り返しを1時間以上も続けていた。

そして、梨華ちゃんが次にやってきたのは、お寺―墓地だった。
なんで、お墓?
最近、誰か身内で亡くなったっけ?
それとも友達とかかな?


この墓地はそんなに広くなさそうだから、さすがに入れない。
ウチは少し離れたところから、梨華ちゃんが出てくるのを見ていた。
手に花束はなくなっている。
そっか、お花はお供え用に買ってきてたんだ。
69 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時25分34秒
それから梨華ちゃんは、そのお寺から歩いて10分くらいの喫茶店に入っていった。
入ると、すぐにカウンターに座り、店員さんと笑顔で言葉を交わしている。
店員さんは、ちょっとキツイ顔をした女の人だ。
店の中が全部見渡せるわけじゃないけど、
たぶん、他にお客はいなさそう。
すごく楽しそうに話しをしている梨華ちゃん。
何か常連さんってカンジじゃん…
カップが運ばれてくると梨華ちゃんは、それをすすりはじめた。
まだまだ出てこきそうもないな。
よし、ちょっと墓地に戻ってみよう。


梨華ちゃんが、持っていた花の色は白と紫だったはず。
その花があるお墓をさがせばいい。

あ、あった…
お線香もまだ残ってるし、ココで間違いない。
…保田家の墓…
聞いたことない苗字だし、やっぱり身内ではないよね。
墓碑には、今から3年前の2月の日付と享年20才と刻まれていた。
ちょうど、梨華ちゃんと同じくらいの年だ。
やっぱり友達かな…
しかし、毎週お墓参り来るほどの友達って…
70 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時26分14秒
…あ!
もしかして、彼氏?
そうだ、きっとそうに違いない!
3年前なら、ちょうど梨華ちゃんが大学生のときだし。
付き合ってるときに死んじゃったんだろうか?
それなら、梨華ちゃんはフラれたっていう意味も、
今だに思い続けているのも納得できる気がする…

とりあえず、ウチはお墓に向かって手を合わせ頭を下げた。


なんだかなあ、死んじゃってんのかよ。
しかし、梨華ちゃんみたいなカワイイ子残して、死ぬなってーの。
だいたい、梨華ちゃんが辛すぎるよ、
もう会えない人を思い続けてるなんて。
この世にいない人なんて、梨華ちゃんにとっては最高に美化されてるワケなんだろうし。

はあ…
砂浜に座って、ぼんやり寄せては返す波を眺めていた。

ウチは、梨華ちゃんに何かしてあげられるんだろうか?
71 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時26分48秒
気付いたら、1時間くらいたっていて、
急いで喫茶店の方に戻ると、丁度梨華ちゃんが店を出るところだった。
梨華ちゃんの後をまたこっそりつけていくと、最寄駅まで歩いただけだった。
ふと時計を見る。
うん、今からまっすぐ家に帰ると、いつも梨華ちゃんが帰ってきてる時間だ。


ウチは梨華ちゃんと鉢合わせるのも何だし、喉も乾いたから、
さっきの喫茶店に寄ってみることにした。

「いらっしゃいませ」
さっき、梨華ちゃんと仲良さげに話していた店員さんが声をかけてきた。
何となく、さっきまで梨華ちゃんが座っていたところに座ってみる。

「アイスティー下さい」
「はい、アイスティーですね」
72 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時27分18秒
店の中を見渡す。
奥にテーブル席が1つとカウンターだけの10人くらいしか入らない小さな店。
今、お客はテーブル席にカップルが1組いるだけ。
店員さんもこのお姉さん以外にいないみたい。

壁には海とかの風景の写真が数枚飾られている。
店内は白が基調になってるし、
インテリアにサーフボードがあったりして、『海』ってカンジのさわやかなお店だ。

カウンターのすぐ横の壁には大きなコルクボードがあり、
常連さんたちのなのかな、
若い人たちのグループやカップルの写真やプリクラが沢山貼られている。


…あ、梨華ちゃん!…

その中の1枚の写真、10人くらいの男女が写っている写真の真中あたりに、
梨華ちゃんが写っていた。梨華ちゃんの左には柴田さん。
これ、きっとサークルのメンバーなんだろうな。
梨華ちゃんは自分の右にいる男の人になんとなく寄り添っている。
その写真の隅に貼られているプリクラは、
梨華ちゃんとその男の人のツーショットのものだった。
2人ともすっごい笑顔で顔寄せ合ってる。
この人が梨華ちゃんの彼氏だった人なのかな…
73 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時27分50秒
「はい、お待ちどうさま」
ウチの目の前に、アイスティーが置かれた。
「どうした?写真にかっこいい人でも写ってた?」
ウチが写真を食い入るように見てたのに気付いたのか、
店員さんが尋ねてきた。

「あ、いや……この人、カッコイイですね」
梨華ちゃんと一緒に写ってる人、ウチの好みではないけど、かっこいいとは思うし、
何か教えてもらえそうだから、試しに言ってみた。

「あ、その子?アタシの弟。残念だけど、3年前に死んじゃってるわよ」

…えっ?この人の弟なの?
そういえば、少し面影あるかも。

「…スミマセン、変なこと言っちゃって」
店員さんはニッコリと首を振った。
「死んだとはいえ、弟のこと誉めてくれたんなら、うれしいわよ」
74 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時28分32秒
そっか、梨華ちゃんは、彼のお墓参りのあと、
こうやっていつも彼のお姉さんに会いにきてるんだ。
やっぱり、やっぱり、まだ彼のこと好きなんだろうね…

「アンタ、大学生?」
「はい、1年生です」
「そう…弟が亡くなったのと同じときね。
大学1年なんて、人生で一番楽しいときじゃない?
いろんな遊びも覚えて、一応大人の恋愛もできて…
アンタも後悔しないようにめいっぱい遊びなさいよ」

この店員さん、話をしていて教えてもらったけど、
やっぱり保田さんっていう人だった。
すごく楽しくて、気付いたらいろんなことを話していた。
保田さんは聞き上手というかしゃべらせ上手なのかも。
保田さんの優しい人柄がそうさせるんだろうな。

梨華ちゃんも保田さんと話してるとき、すっごく楽しそうでいい顔してた。
なんだか悔しいと思った。
保田さんみたいに、ウチに対しても梨華ちゃんにいい顔してほしい、
誰にも見せないような幸せな顔をしてもらえるようになりたい。
75 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時29分09秒
それからというもの、ウチは何度か保田さんのお店に行っている。
梨華ちゃんが確実に来ない、平日の授業が早く終わったときとかに。
もちろん、梨華ちゃんの元カレの話を聞きたいっていうのが目的だけど、
保田さんと話しをするのは単純に楽しくて和むからだ。
この前は授業が1限しかなくって、一旦家に帰ってから、車で行ってみた。
海沿いだし、ドライブにもサイコーのコースだね。
いつか梨華ちゃんと、サザンでもBGMにして、来てみたいな。


「吉澤は、付き合ってる人いるの?」
「いないっすよ〜そのー…好きな人はいるんですけど」
「へえ、どんな人?」
「うーん、ウチより全然年上なのに、何か子供みたいで、
何にもできない人だからほおっておけないタイプっていうか…」

「吉澤、アンタ、相当、その人のこと好きだね」
「へっ?何で?」
「今、かなーり、顔がニヤついてたわよ」

確かに、梨華ちゃんのこと思い出すだけで、うれしいんだもん。
そりゃ、顔も緩むわなあ。
76 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時29分42秒
「えへへ、そうっすかあ?確かにそーとー好きかも…
でも、いくらがんばっても片思いなんで…」
「どーしてよ。アンタ、いい女だと思うわよ。
そんな弱気にならないで、ガンガンアタックしたらいいじゃない」

アタック、できるもんならしたいっつーの…

「いや、もうフラれちゃってるんすよ。
向こうは社会人で大人だし、ウチなんかまだまだ子供で。
ずっと思い続けてる人もいるみたいだし。
しかも、ウチのことは恋愛対象に思えないみたいなことハッキリ言われましたから」
「人の気持ちなんて、結構変わるもんよ。
とりあえず、がんばんなさいよ。応援してるから」

「あはは、そうっすねえ。厳しいけど」
「もしうまくいったら、ココに連れてきなさいよ」
「はい、そうっすね。一緒に来られるようになれればいいんっすけど…」
うん、いつか一緒にココに来て、保田さんを驚かせてみたいなあ。


77 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時30分12秒


私は大学1年生のとき、大好きな人がいた。
同じサークルの1年生。
みんなに対して優しくて面白くて、先輩からもすっごくかわいがられてた。
ライバルも何人かいたけど、
思いきってバレンタインのときに告白したら、
向こうも私のことを思っていてくれてらしく、付き合うことになった。

そのあと、学校帰りに2人で映画を見に行った。
その次の日曜日、彼の地元の鎌倉に連れていってくれることになった。
彼は都内に一人暮らしをしてて、バイクに乗ってたから、
私の家まで迎えに来てくれて、鎌倉の海を散歩して、
彼のお姉さんがやっている喫茶店に寄った。

お姉さんは、顔も性格も何となく彼と似ていた。
だからなのか初めて会う気がしなくて、
まるでずっと知り合いだったみたいにお話することができた。

お姉さんは、昔やっていたドラマの影響で、
海の見えるところで喫茶店をするのが夢だったとか。
今ではその夢をかなえて、こうして、海に遊びにくる人の相手をしている。
78 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時30分45秒
「あ、そうだ。この前の飲み会で撮った写真もらったんだ。
ココに貼っておくよ」
彼はサイフから写真を取り出すと、カウンター席の横にあるコルクボードに貼りつけた。
この前、私ももらった写真だった。
私は彼と隣りで写ってるから、大切に部屋の写真立てに飾ってたりするんだけど。

「あ、あと、コレも貼っておこうかな」
彼はこの前の映画帰りに私と一緒に撮ったプリクラをその写真の隅の方に貼った。
「写真ってさあ、そのときとるのは楽しいんだけど、
何か持ってるのって恥ずかしいんだよなあ」
と照れたように笑っていた。
でも、携帯電話の後ろには、私とのプリクラを貼っていてくれてて、
何だかうれしかったんだけど。
79 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時31分25秒
そして、その日、私の家までバイクで送ってくれた彼は、
自分の家に帰る途中、事故に遭い、帰らぬ人となってしまった。

私のせいだ。
私となんか鎌倉に行かなかったら、事故になんか遭わなかった。
私となんか付き合わなければ、そんなことにならなかった。

彼の葬儀に行ったものの、私は泣きながらご両親、お姉さんに何度も謝った。
あなたのせいなんかじゃない、と彼と同様優しいご家族は言ってくれたんだけど。
80 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時31分55秒
彼はもともとご両親が用意していた、実家の近くの海の側のお墓に葬られた。
その場所を聞いた私は、彼の亡くなった日曜日に毎週行くことを決めた。
3ヶ月くらいたったときだったかな、たまたま、墓前で彼のお姉さんに会った。

「毎週お花供えててくれたの、あなただったのね。ありがとう」

その帰りに喫茶店に来るように誘われ、
それからお墓参りの帰りには、毎週お店にも寄るようになった。

彼のお姉さんと話していると、すごく気持ちがやすらぐ。
表情とか、口調とかが、彼と似ている部分もあって、
ときたまだぶってしまい、彼を思い出してしまうこともあるけど…
お姉さんは優しくて、それでいてすごく強い人だ。
私なんかより、ご両親、お姉さんの方が彼と過ごしている時間は長い。
その分、ずっと辛いはずなのに、
全然そんなそぶりを見せないどころか、
私のことをさりげなくなぐさめてくれている。
81 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時32分28秒
「どうなの、会社は?先輩にいじめられたりしてないの?」
「大丈夫ですよー。同じ部署のすぐ上の先輩が矢口さんっていう人なんですけど、
すっごく優しくて面倒見がいい人なんで、いろいろ教えてもらってます」

彼のお姉さん―保田さんは本当のお姉さんかのように、
いろいろ気にかけてくれる。
妹しかいない私は、やっぱりお姉さんかお兄さんが欲しかったから、
そんな保田さんと話しをするのが、本当に楽しみだった。
保田さんにしても、矢口さんにしても、私は周りの人に恵まれてるなって思う。

「かっこいい人はいないの?」

保田さんは、まだ弟のことをひきずっている私に
新しい恋をすることをすすめている。
前にすすまなきゃって。
でも、やっぱりそう簡単には気持ちの切り替えってできないんじゃないかな…

「…全然いないですねえ」
「あ、石川が今一番かっこいいと思ってるのは、ひとみちゃんか」
保田さんがニヤリと笑う。
そう、保田さんにはいろんな話しをしている。
ある意味、あいぼんよりも保田さんに私のことを話ししている。
82 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月15日(金)00時33分00秒
「たしかに、ひとみちゃんはかっこいいですけど、女の子ですから」
「でも、アンタ、ひとみちゃんが一緒に住むようになってから、
ひとみちゃんの話しばっかりしてるけど。しかもすっごくうれしそうに」

…そうだっけ?
あ、そういえば、今日も来てすぐに、
昨日ひとみちゃんがつくってくれたビーフシチューがすっごくおいしかった、
って話しをしたような…

「今度、ひとみちゃん、連れてきてよ。
どんなにかっこいいか見てみたいし、
料理得意なら、ウチでバイトでもしてもらいたいくらい」

ひとみちゃんを保田さんに会わせたい気もするけど、
そういうことになったら、私と保田さんの関係も説明しなくちゃならない。
でも、ひとみちゃんには彼の話しをあんまりしたくない…なんでかなあ…


83 名前:名無し作者 投稿日:2003年08月15日(金)00時36分18秒
更新しました。途中でageてしまってすみません…

>>64様
ありがとうございます。
もっとニヤニヤしてもらえるように、がんばります(W

>>65様
こちらこそ、紛らわしいことをしてしまってすみません。
今後ともよろしくお願い申し上げます
84 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月15日(金)00時55分32秒
毎回幸せな気持ちになります。
これからも楽しみにしています。

今回はちょっと泣きました。
85 名前:玉袋 頬子 投稿日:2003年08月15日(金)22時23分57秒
見つけましたよ。(w
86 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年08月16日(土)06時26分52秒

なんか、イトコが出てきたみたいだな。

いつか梨華ちゃんは自分の気持ちに、気づくのでしょうか?
よしお、弱気になるなよ。

87 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月17日(日)17時55分15秒
んあ、面白いのみっけ!
ガンガレ作者サン!
88 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時24分54秒


最近、梨華ちゃんのことばっかり考えてて、他のことが手につかない。
昔の彼のことがわかって以来、余計にそうかもしれない。
ことあるごとに梨華ちゃんのことを盗み見ている自分がいる。
梨華ちゃんは、ほとんど家ではさみしそうな表情なんか見せない。
でも、例えば、テレビのドラマやバラエティで幸せそうなカップルが出てきたとき、
梨華ちゃんは少し困ったような微笑を浮かべる。
まず間違いなく彼とのことを思い出してるはず。

そんなとき何もできない自分にすごくイラだつ。
もちろん、梨華ちゃんと両思いになれないことはわかってる。
だたやっぱり、昔の、その死んじゃってる人をずっと引きずっているのは、どうかと思う。

ウチは梨華ちゃんのことが好きだからこそ、梨華ちゃんには幸せになってほしい。
だから、その彼のことを忘れてしまうほど素敵な人に出会えれば…
―――なんて本当はキレイごと。
ウチの悪魔のココロは、何としても梨華ちゃんのことを、
自分のものにしたいって思ってる。
でも、それは不可能なワケで…

こんな堂堂巡りのことをずっと考えてて、テストもあんまりうまくいかなかった。
ま、それはいいわけなのかもしれないけど。
89 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時25分36秒
明日から夏休みという日、サークルの人たちと飲みにいった。
2次会でカラオケ行って、オールってことになってたみたいなんだけど、
ウチは何となくそこまでする気になれなくて、途中で帰ることにした。

終電数本前に間に合う時間に、カラオケ屋を出て駅まで向かおうとしたところに、
「よっすぃー、帰っちゃうのー?」
と、後ろから声をかけられた。
同じサークルの松浦さん―亜弥ちゃんだ。
酔っ払ってるみたいで、フラフラとしながらも、顔はすごく笑顔だ。

「うん、ちょっと、明日朝から用事があるから」
梨華ちゃんとあいぼんに朝食をつくるっていう用事があるのは確かだ。
「えー、じゃあ、アタシも帰るっ」
ウチの腕に亜弥ちゃんの腕が絡みついてきた。
…参ったなあ…
90 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時26分07秒
実は、この前、サークルの何人かで遊びに行った帰りのこと。
同じ方向ということで、2人っきりになったときに、
ウチはこの亜弥ちゃんにコクられてしまった。
もちろん、丁寧にお断りはした。
『好きな人がいるから』って。
…かなり一方的な片思いだけど。

それでも、亜弥ちゃんはあきらめる気配もなく、
『じゃあ、遊びでいいから付き合って』
って、ワケわかんないことまで言われた。
とりあえず、『今まで通りでいよう』とは言ったものの、
それからも、サークルで集まりがあると、亜弥ちゃんは必ずウチの側にいるのだ。
実はすごく困ってるくらいなんだけど…
91 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時26分39秒
2人で電車に乗ったはいいけど、
ウチは亜弥ちゃんの駅は知ってても、家まで知らない、知るわけがない。
それなのに、ウチの肩に寄りかかって電車で熟睡している亜弥ちゃん。
当然、亜弥ちゃんのとこより手前のウチの駅に着くときに起こしても起きないわけで。

しょうがない、とりあえずウチに連れていって休ませよう。
駅は2駅先だし、そんなに遠くないだろうから、あとで車で送ってあげたらいいし。
そのまま亜弥ちゃんをおぶって、家まで帰った。

もう、夜も遅いから、梨華ちゃんもあいぼんも寝てるかもしれない。
ウチはそっと、自分の部屋に入って、亜弥ちゃんを布団に寝かせた。

さてと、ウチは酒を抜かなきゃなんないからな。
とりあえず、お風呂にでも入ってこよっと。


92 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時27分11秒


今日はひとみちゃんはサークルの飲み会があるって言ってたし、
晩御飯は矢口さん御用達のおいしいイタメシ屋さんに連れていってもらうことに。
うん、確かにすごくおいしかったあ。
ごちそうにもなっちゃったし、超ラッキー!

そのあとバーに入ったら、偶然矢口さんの大学時代の友達という男の人に会った。
友達というか元カレらしく、この店はよくデートで使っていたみたい。
矢口さんも会うのは久し振りだったらしく盛り上がってて、
その元カレは男友達と2人で来てたから、
その友達と私が2人で話すようなカンジになっちゃって…
私、人見知りだし初対面の人と話すの苦手だし、
すごくイヤだなって思ってたんだけど、
矢口さんの手前、そうも言えないし、一応、きちんと対応はしてた。

でも時計は気にしてて、終電に間に合うように店を出た。
矢口さんはもう少しいたいような雰囲気だったので、
私は1人で店を出ようとしたら、
矢口さんの元カレのお友達の方が駅まで送ってくれた。
93 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時27分46秒
「今度、2人で会えないかな」
駅の改札の前で、手を振ろうとしたときに、彼が名刺を出して、
裏に携帯電話の番号とメールアドレスを書くと私に渡した。
「いつでも連絡して」

別にイヤな人ではなかった。
顔は爽やか系で一般的にもかっこいい人だと思う。
話しをしていても優しい感じがしたし、
彼女がいない、私みたいな人がタイプみたいなことも言っていた。

別に『付き合って』とか言われたわけじゃない。
普通にお友達として連絡とるのもいいと思う。
もしかしたら、次に会えばもっと印象がよくなるかもしれない。

…でも、たぶん結局何もできないで終わるんだろうな。
今までもこういう機会があっても、その先を踏み出したことはない。
…そう、保田くんがいなくなってからは…
94 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時28分21秒
今でもまだ保田くんのことが好きなのかなって考えることがある。
でも、それははっきりいって、よくわからない。
もういなくなって3年半もたっているんだから…
さすがに亡くなってから半年くらいは、かなり精神的にも参っていたと思う。
でも、やっぱり人間っていうのはその環境に自然と慣れてしまうもので、
だんだん保田くんがいない状態が普通になってきた。
もちろん、日曜日には鎌倉に行ってるし、お姉さんにも会ってるし、
保田くんのことを忘れたことなんて全然ない。

だからこそ、新しい恋愛をしてしまうことに負い目を感じているのかもしれない。
自分だけが幸せになってしまっていいものか…
そうじゃなくても、もし万が一また同じようなことが、
愛する人が突然いなくなってしまうようなことが、起こったら…

…自分はもう恋愛はするべきじゃない。
私は心のどこかで、そう思い続けてる。
95 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時28分53秒
『…梨華ちゃんこそ、好きな人いないの?』
なぜかそう聞いてきたひとみちゃんの少しさみしげな顔が浮かんできた。

…ひとみちゃんとお話したいな。
何か面白いこと言って笑わせてほしい。
『そんなことで悩んでて、ばっかじゃないのー』
そんな言われ方でもいいから、元気づけてほしいな…

家に着いて、玄関で靴を脱いでいたら、
ひとみちゃんの部屋から明かりがもれているのが見えた。
ひとみちゃんも、さすがにもう帰ってきてるんだ。
ちょっと、声かけてこようかな。

「ひとみちゃん、いい?」
声をかけたけど、返事がない。
お風呂かな?
でも、ひとみちゃんはお風呂のときは電気を消していくはず。
ヘッドフォンで音楽でも聞いてて、私の声が聞こえないのかな?
96 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時29分27秒
「ひとみちゃん、開けるよー」
部屋の戸を開けると、布団に横たわってる人。
あ、寝ちゃってたの?…ん?
あれ?ひとみちゃんじゃない…

!!
なんでこの子、裸なの!?
服も下着も布団の周りに脱ぎ散らかされている。
横向きに寝てて、タオルケットに抱きついてるけど、
明らかに何も着てない…

…んと、うーんと、どういうことだろう???
えっと、ひとみちゃんの布団の上で、裸ってことは…
そのつまり、ひとみちゃんとそういうことしたってこと!?
いや、まさか、そんなことはないよねえ。
えーと、他に考えられるとしたら…
何だろ?なんだろ??ナンダロ???
…思いつかない…

寝ている子の顔を何となく見てみたら、すごくカワイイ子だった。
肌も色が白くてすごくキレイ。
ひとみちゃんも、こういう子ならそういう気になっちゃうのかな…
97 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時30分00秒
…はあ。
何だかよくわからない。
何がどうなってるのか。
何をどうしたいのか。

私はとりあえずお茶でも飲もうかと、リビングに向かったら、
廊下でお風呂から出てきたTシャツ短パン姿のひとみちゃんと鉢合わせた。
お風呂入ってたってことは、やっぱり、そういうことした後なのかな…

「お、梨華ちゃん、おかえりー。遅かったんだね」
「…うん…」
私はひとみちゃんの目も見れず、うつむいたままリビングのドアを開けた。
すると、ひとみちゃんに腕をつかまれた。

「ね、梨華ちゃん、何かあったの?元気ないよ」
私はゆっくり首を横に振った。
「…そう、それならいいんだけど…」
ひとみちゃんの声も何だか沈んでるような声。

私がリビングに入り、ドアを閉めると、
ひとみちゃんは階段を下りていった。

ひとみちゃん、信じられない。
ウチに女の子連れ込んで、その…そういうことするなんて。
あいぼんも私も一緒にいるのに、よくそういうことできるよね。
しかも、私とは全然普通に話ししてるし、
少しくらい後ろめたいとか思わないのかなあ。
もう、ひとみちゃんのバカ…
98 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時30分44秒
冷蔵庫からポットを取り出して、グラスに注いで、ソファーに座る。
鞄から、携帯の着メロが聞こえてきた。
携帯を取り出すと、矢口さんからのメールだった。
『今日はお疲れぃ!
ね、私の元カレの友達、なかなかよくない?
実は梨華ちゃんのこと相当気に入っちゃったみたいなんだよねえ。
よかったら、メールくらいしてあげて』

あ、そういえば…
さっきもらった名刺を取り出す。
裏に書いてあるアドレスを見てみる。
どうしよう?
矢口さんからもお願いされちゃったし、メールしてみようかな…
99 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時31分16秒
ふと、階段の下からひとみちゃんの怒鳴るような大きな声が聞こえた。
すぐに、階段を上がってくる足音がして、
ひとみちゃんがリビングに入ってきた。

ひとみちゃんは、大きなため息をつきながら、
冷蔵庫を乱暴に開け、お茶の入ったポットを取り出すと、
それとグラスを持ってきて、私の横にドカッと座った。

「ったく、信じられない」

信じられないのは、こっちだってば。
…いやらしいことしたくせに!

ひとみちゃんはお茶を注いで一気に飲むと、グラスにまたお茶を注ぐ。
「サークルの子でね、同じ方面の子がいて一緒に帰ってきたんだけど、
電車で寝ちゃって起きやしないから、しょうがなくウチに連れてきたんだよ。
で、ウチの部屋で寝かせておいたら、裸になってんだよ!
まったく、自分の家じゃないってーの」
ひとみちゃんは、お茶をまた飲み干すと、グラスに注ぐ。

「しかもさ、車で送ってあげるって言ったら、泊まらせてとかいうんだよ。
図々しいにもほどがある!」
100 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時31分51秒
…なーんだ、私の勘違いか。
ひとみちゃん、あの子と全然そういう感じにもなってないんだ…
うふ、うふふふ…
…ん?あれ?何で私、ホッとしてるんだろ?

「泊めてあげたら?」
ひとみちゃんが、私の方を見てキョトンとしている。

「ひとみちゃん、お酒飲んだんでしょ?車運転するの危ないじゃない」
「いや、お風呂入ったし、もう全然酔ってないから大丈夫。
むしろ、あの子を家に泊める方が危ないし…」
「えっ?何で危ないの?」
「あ、いや、その…ウチの身が危険というか…」

なんで、そんなに拒否するんだろ??
あ…
「もしかして、その子に迫られたりしたの?」

ひとみちゃんは、思いっきりむせてしまった。
背中をさすって、あげたら少し落ち着いてきたみたい。
101 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時32分21秒
「…あ、いや、その、コクられたというか…」
ひとみちゃん、困ったように、眉間にシワを寄せている。
「…へえ」
「だから、そんな子と、部屋で2人っきりになるのは、どうかなって…」

確かにひとみちゃんは、その辺の男の子よりずっとカッコイイ。
それでいて、すっごく優しいもん。
だから、その気がなくても、露骨に拒絶もできないんだろうね。
彼女が好きになる理由もよくわかるかも。


ひとみちゃんは、しゃべりながら、お茶を少しこぼしてしまっていて、
濡れたテーブルの上をティッシュで拭いていた。
ふと、テーブルの上に置いてある名刺が濡れてしまっているのに、気付く。
「あ、ごめんごめん」
名刺を持ち上げて、ティッシュでふき取る。
「あ、いいのに…」

ひとみちゃんがその名刺を見て一瞬固まる。
そして裏と表を何度も繰り返し眺めてた。
102 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時32分52秒
「…梨華ちゃん、今日、合コンとかだったの?」
何となくさびしげなひとみちゃんの声。

「ううん、違うんだけど、結果的にはそんな感じになっちゃって…」
今日の偶然の出会いの話をひとみちゃんにした。

「ふーん…で、その人どうなの?かっこいいの?」
「あ、うん、かっこいいとは思うよ」
「じゃ、付き合ったらいいんじゃない?」
「えっ?」
「うん、いいじゃん、付き合っちゃえ、付き合っちゃえー」
ひとみちゃんは、グラスのお茶の残りを一気に飲み干した。


と同じに、リビングのドアが開いた。
「よっすぃー?どこ行っちゃったのかと思ったあ」
さっき、裸で寝てた子が服をちゃんと着て入ってきた。

そして、私に気付くと、笑顔でペコリと頭を下げた。
「吉澤さんと同じサークルの松浦です。
夜中に突然おじゃましてしまってすみません」
「い、いえ、こちらこそ、何のお構いもなく…」
私も立ち上がって頭を下げる。
若いのに、しっかりしてるなあ、この子。
103 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時33分22秒
「よし、じゃあ行こうか」
ひとみちゃんが立ち上がって、松浦さんの頭をポンと叩いて、リビングのドアを開ける。
嬉しそうに、ひとみちゃんの腕に自分の腕を絡める松浦さん。
そして、私の方を振り返ると、また頭を下げた。
「おじゃましました」

リビングのドアが閉まって、2人が階段を下りていく音がする。
「深夜のドライブデートなんて、何か緊張しちゃうな」
「何言ってんだよ、ただ家に送るだけだよ」
なんて2人の会話も聞こえてきた。

そして、少しして外から、松浦さんの
「うわあ、ビーエムだあ」なんてはしゃいだ声のあと、
車のエンジン音がした後には、また夜の静寂が訪れる。
104 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時33分52秒
『付き合っちゃえ』って…
ひとみちゃん、本当にそんな風に思ってるのかな?

前にテレビを見てて、出てきた人がかっこよかったから、
「この人かっこいい」って言ったら、
あいぼんにもひとみちゃんにも、「えーっ!!」って言われて。
あいぼんなんか
「梨華ちゃん、趣味悪いわ。あんな人やったら、よっすぃーの方が全然かっこええ」
そしたら、ひとみちゃんも笑って、
「うん、ウチの方がかっこいいじゃん」なんて言ってた。

それから、私とあいぼんがテレビに出てくる男の人を評価するときには、
なぜかひとみちゃんと比較するのが当たり前になっている。
「この人かっこいいけど、よっすぃーの方がええな」
ってあいぼんが言えば、
「梨華ちゃん、この人とウチとどっちがかっこいい?」
なんて、ひとみちゃんも悪ノリしてくるし。

今日の人は確かにかっこいいと思った。
背も高くて、ガッチリしてて…
あの人だったら、あいぼんも、それからひとみちゃんだって、
かっこいいって言ってくれそうなタイプだとは思うんだけど、どうかな…


105 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時34分22秒


「はあ…」
亜弥ちゃんを家まで送っての帰り道、ウチはため息ばっかりついてた。

なんで、梨華ちゃんにあんなこと言っちゃったのかな。
もちろん、ウチが本気で梨華ちゃんに『付き合っちゃえ』なんて思ってるワケがない。
あー、もし、本当に付き合っちゃったら、どうすんだよ…

でも、それなら、梨華ちゃんが前の彼を忘れようとしてるってことだし、
梨華ちゃんにとってはいいことなんだよ。
ウチも喜ばなきゃ…って喜べるわけない。

ちなみに、亜弥ちゃんは、車の中で、ずっとウチの肩に頭をのせてた。
ウチもそのくらいはいいかなって、そのままにしてた。
亜弥ちゃんを降ろしたあとに、車を発進させようとしたら、
亜弥ちゃんが、運転席の窓ガラスをコンコンって叩いてきた。
ウチが窓を開けると、
「じゃ、おやすみのチュー」
って唇を突き出してきたのは、さすがに拒否したけど。
106 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時35分03秒
しかし、そういうことされる度に、亜弥ちゃんには悪いけど、
『コレが梨華ちゃんだったらなあ』って思ってしまう。
そんなことされたら、超メロメロで、ウチ、とろけちゃいそうかも…

はあ、そんな妄想より、梨華ちゃんの男問題だ。
今更そんな男やめろとかって言えないし。
ホント、自分のバカさ加減にあきれる。
107 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時35分39秒
家に着いて、リビングに行くと、
お風呂上りの梨華ちゃんがソファーに座ってボンヤリしてた。

「あ、おかえりなさい」
「…ただいま」

ウチは冷蔵庫からポットを出して、お茶を一気に飲む。
何か、また男の件で余計なことを言ってしまいそうだから、
何もしゃべらずに、グラスを洗って、手を拭いていると、
梨華ちゃんがこっちにやって来た。

何にも言わないで、ウチのことをじっと見ている梨華ちゃん。
「…何、どうしたの?」
どうも気まずくて、一応、声をかける。

すると、梨華ちゃんはウチに勢いよく抱きついてきた。
「!!な、何?」
何だ?いきなりどうしたんだよ?
108 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時36分10秒
「…あのね、ひとみちゃんの方がかっこいいなあって」
「へっ?」
梨華ちゃんは、ウチに抱きついたまま、ウチの顔を覗き込んでくる。
「だからー、今日会った人よりね、ひとみちゃんの方がかっこいいの」
そう言うと、恥ずかしそうにウチの首筋に顔をうずめた。

…もう、やられたってカンジ…
マジでカワイイ…かわいすぎる!

ウチも梨華ちゃんの腰あたりに腕を回して、ギュウギュウ抱きしめる。
「ひとみちゃん、苦しいよお」
梨華ちゃんのこと離したくないんだよ、こうしてずっとウチだけの側にいてほしいんだよ。
ダメかな…ダメだよね…
109 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月21日(木)00時36分41秒
ウチが腕の力を緩めると、梨華ちゃんがウチの顔をのぞきこんできた。
「…松浦さんって、すごくイイ子みたいだね。
ひとみちゃん、告白されたんでしょ?
付き合おうと思わないの?」

「付き合わないよ」
付き合うワケないじゃんか…
「何でー?カワイイし、礼儀正しいイイ子じゃない」
しかし、梨華ちゃんは、なんでこんなに鈍感なんだろうねえ…
「…だって、梨華ちゃんの方がカワイイもん」

さっきの梨華ちゃんの言葉に対抗してみたんだけど…
梨華ちゃんは一瞬ポカンとしたと思ったら、
徐々に顔が赤くなっていって、その後ウチの肩におでこを乗せてきた。
「…もう、何言ってるのよお…」
「えへへへ…」
きっと、ウチの顔は梨華ちゃん以上に真っ赤っ赤になっているはず…


110 名前:名無し作者 投稿日:2003年08月21日(木)00時41分27秒
更新致しました。

>>84様
ありがとうございます。
もっとハッピーな気持ちになってもらえるようがんがります。

>>85様
どなたでしょうか?えっと、探さないで下さい(W

>>86様
85さんとは身内ですか?
いつもありがとうございます。
ヨシくんにもがんがってもらいます(W

>>87様
ありがとうございます。
がんがらせていただきます。
111 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年08月21日(木)05時53分24秒

ヨシくん、もてもて。
がんばれ、もう少しだ!

結ばれる日を楽しみに、仕事、行って来ま〜す。

85さんは、父方のイトコでは無いかと?
112 名前:つみ 投稿日:2003年08月21日(木)10時13分33秒
思わず顔がほころぶね^^
113 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時22分18秒


ひとみちゃんはいいなあ、大学生だから、夏休みが長いもんね。
私なんか、お盆の時期の5日間だけ。
ま、土日と合わせれば9日間で、
他の会社の子と比べれば、充分長い方だとは思うんだけど…

そういえば、ひとみちゃんはアルバイトをはじめた。
家庭教師で、だいたい夕方の数時間だけだし、毎日じゃないから、
きちんと家事は今まで通りにやってくれる。
というか、時間があるせいか、今まで以上にやってくれてる。
夕飯とかも時間をかけて凝ったものを作ってくれたり、
この前、ゴキブリが出たのを気にして、
バルサンをたいてくれたりまでしてくれて…

あいぼんは夏休みに入ってから、余計に忙しくて、
ほとんど1日、塾か図書館に行って勉強してる。
塾がないときは、家で勉強したらいいのにって言ったら、
周りで勉強してる人がいた方がヤル気になれるって。
実はなかなかのがんばり屋さんなんだよね、あいぼんは。
114 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時23分06秒
この前の金曜日、たまには夜外食しようかって、
ひとみちゃんとあいぼんと約束をしてた。

でも会社を出ようとしたら、
矢口さんに「梨華ちゃん、今日、焼肉でも食べに行かない?」
って誘われちゃって。
妹とイトコとゴハン食べるって言ったら、本当にガックリして、
「いいなあ、オイラ、金曜日なのに、何の予定もないよお…」
なんて言うもんだから、
「一緒に行きましょうよ」って誘ってみた。
矢口さん、最初は遠慮したものの、
あいぼんもひとみちゃんも全然そういうこと気にしないし、
ぜひって言ったら、
喜んで「よし、今日は矢口がみんなにおごってやる!」ってはりきっちゃって。
115 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時23分51秒
矢口さんと私が、会社を出るとビルの前にあいぼんが立っていた。
「梨華ちゃ〜ん!」
あいぼんが抱きついてくる。
「あいぼーん、よく来たねえ。あ、矢口さん、妹の亜依です」
「あ、はじめまして、亜依です」
あいぼんが私から離れて、矢口さんにペコリと頭を下げる。
「矢口です。今日はせっかくのところ、ジャマしちゃってごめんねー」
「いや、いいんですよ。
いつも3人でゴハン食べてるから、たまには別の人がいた方が楽しいし」

さっき、矢口さんと一緒になるってことは、
メールで知らせておいたから、あいぼんもちゃんとわかっている。

「あ、ひとみちゃんは?」
「あ、あっち」
あいぼんが指差した方に、BMWが止まっていて、
車のクラクションが軽く鳴って、ひとみちゃんが運転席で手を振っている。
「あ、車で来てくれたんだあ」
116 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時25分21秒
そして、矢口さんが御用達の焼肉屋さんに行った。
焼肉って聞いて、あいぼんは大喜びだったけど、
あとで聞いたら、ひとみちゃんはあんまり肉が好きじゃなかったみたいで…
でも、そこの肉はすごくおいしかったから、
ひとみちゃんも結構食べられたみたい。

私の隣りにあいぼん、私の向かいに矢口さん、
矢口さんの隣りにひとみちゃんというように座った。
ひとみちゃんが気を遣って、矢口さんにビールを注いだり、
肉を焼いたり率先してやってたし、
矢口さんはお酒がだいぶ回ってきて、ひとみちゃんに超ベッタリしちゃってる。
117 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時26分05秒
「ね、彼氏いないんなら、矢口と付き合わない?
これだけかっこいいなら、男でも女でも関係ないしー」
「あははは、何言ってるんすか」
座席が掘りごたつ形式っていうのもあってか、
矢口さんがひとみちゃんに脚を絡めたりまでしちゃって。
「もう、矢口さん、ちゃんと座って下さいよ」
ひとみちゃんは、そんなこと言うわりには、
顔がうれしそうで、何だかイライラする。

あいぼんはあいぼんでキャッキャッはしゃぎながら、ずっと箸が動き続けている。
ひとみちゃんが取り分けてくれる肉にかぶりつきながらも、
私は何だかイライラしてきてしまって、
ついお酒を飲むペースが早くなっていた気がする…


118 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時26分38秒


夏休みに入って暇だし、何をしようかなって考えてた。
家賃収入があるから、別にお金に困ってるワケじゃないから、
バイトはしなくていいし。
というか、ヘタにバイトをすると家のことができない、
つまり、梨華ちゃんのためにしてあげられることが減ってしまうのだけは
避けたいと思ってた。
だからもちろん梨華ちゃんがいるときに旅行とかは考えもしなかった。

そんなある日、あいぼんがバイトの話しを持ってきた。
あいぼんの学校の友達の妹さん、中学2年生の家庭教師。
2年生なら、受験にダイレクトに関わってくるわけじゃないから、
そんなに責任も重くない。
なんでも、その子の志望校がウチの行ってる大学が付属している高校で、
(というか親の志望校。あいぼんの友達であるお姉さんの方はちょっと
学力的に無理があるらしくて、妹に望みを託してるみたい)
あいぼんがウチのことを友達に話して、それをその子が親に話したら、
『ぜひ家庭教師を!』ってことになったみたいで。
119 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時27分08秒
教科はその子が苦手な英語と数学だけでいいってことだし。
しかも、時間は夕方の2、3時間で、夕食の時間までには間に合う。
基本的には週に2回。
もちろん時給はすごくいいわけだし、
そこまでお願いされるならやってもいいかなと思ってはじめてみた。
実際、生徒である紺野さんちのあさ美ちゃんはマイペースだけど、
すごく飲み込みが早いし、性格もいい子ですごくやりやすい。

初日に授業が終わって、少し雑談して、帰ろうとしたときに
「伺ってた通り、本当にかっこよくて優しくて面白くてステキです」
って、あさ美ちゃんに頬を赤らめて言われたときは驚いたよ。
あいぼん、友達にどんな話ししてんだか。



実は、バイトをしてもいいかなって思ったのには他にも理由があった。
なるべく余計なことを考えなくてすむように
少しでも気を紛らわす時間が欲しかったのだ。
120 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時29分08秒
亜弥ちゃんが酔っ払ってウチの部屋で寝てた日以来、
梨華ちゃんとは今まで以上に親密になったようなカンジだった。
お互いに『かっこいい』『かわいい』なんて言い合ったもんだから、
それからというもの、あいぼんがいないときやお風呂に入ってるとき、
2人っきりになったときには何となく甘いムードが流れてた。

例えば、ウチがリビングに敷いてあるラグの上であぐらをかいて座ってたら、
梨華ちゃんが、ウチの脚の上にちょこんと座ってきたり、
ソファーで横に並んでテレビを見てて、
ちょっと眠くなってきたから、ふざけて梨華ちゃんに膝枕してもらったら、
梨華ちゃんは、普通にウチの頭を撫でてくれたり。

さすがにあいぼんがいると、ひやかしてくるから、
そんなことをするのは、2人っきりになったときだけだ。
それはそれで、2人の秘密みたいでうれしかったりした。
121 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時29分59秒
そんな幸せにひたってたある日の朝食時、テレビで芸能ニュースがやっていて、
ある芸能人同士のカップルが2人目の子供が生まれたとかで、
お披露目をしていた。

旦那はマメな人で家事もきちんと分担するどころか、メインでやっているらしい。
仕事してるのは2人ともなんだから、やれる方がやったらいいってスタンスみたいで、
すごいかっこいいと思った。
もちろん、奥さんも何もしないんじゃなくて、するべきことはちゃんとやってるし、
旦那にも子供にも愛情を注いでいるのが手に取るように画面からも伝わってきた。


「いいなあ、私、自分が結婚したらこの夫婦みたいになるのが理想なんだよね」
「無理無理、こんなイイ男めったにおらん。
さすがによっすぃーもかなわんなあ」
梨華ちゃんの言葉をあいぼんはバッサリ否定したワケだけども。


ガックリしてしまった。
最近の梨華ちゃんの態度、もしかしたらウチに
そういう意味での好意をちょっとはもってくれてるのかななんて思ってた。
122 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時30分32秒
そうだ、梨華ちゃんは、ウチが女だから、安全だから、
そういう態度をとってたんだ。
前にはっきりそう言われたじゃんか…

梨華ちゃんは、ステキな男の人と、普通に結婚をしたいんだ。
ウチなんかのことを本気で好きになってくれるワケがない。


そう思ったら、梨華ちゃんのことばっかり考えてる毎日をどうにかしなくちゃって思った。
だから、アルバイトの話しも受けたし、
バイトのない日や、空いてる時間は、家の近所のスポーツクラブに通ってた。
少なくとも、何かしている間は梨華ちゃんのことを考えなくてすむ。
でも、だからといって梨華ちゃんのことを好きじゃなくなるなんてことはできなくて、
一緒にいられる朝や夜は絶対家にいた。
それどころか、家事をすごくがんばった。
でも、見返りとかそんなことを求めちゃダメで、
梨華ちゃんの喜ぶ顔が見たいだけなんだって自分に言い聞かせて。
そう、変な期待だけはしないよう、片思いのままでいいんだ、
今まで通りちょっと甘い雰囲気で自己満足してればいいんだって。
123 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時31分02秒
そういえば、ある日の夜、リビングでテレビを見ていたら、
お風呂場から梨華ちゃんの叫び声がした。
まさか変質者とかじゃ…

ダッシュでお風呂場に行き、
「梨華ちゃん?どうした!?」
扉を思いっきり開けると、裸の梨華ちゃんがウチに抱きついてきた。

「!!」
一瞬、ウチは梨華ちゃんの身の心配より、自分の理性の方が心配になった。

「ゴ、ゴキブリ!」
梨華ちゃんが壁の方を指差すと、確かに大きな黒光りしているものが…
ウチは、自分の履いていたスリッパを脱いで、
そいつをパシンと叩くと見事命中。
脱衣所からティッシュを持ってくると、亡骸をくるんだ。

「…もう、大丈夫だよ」
その間ずっとウチに裸のまましがみついていた梨華ちゃんがやっと顔を上げる。
よっぽどコワかったのか、目にはうっすら涙が浮かんでた。
そして、梨華ちゃんはハッとなると顔を赤らめた。

「あ、あ、あの、目つぶって…」
「え?う、うん」
ウチが目をつぶると、梨華ちゃんの体が離れて、
湯船にバシャンとつかる音がした。
124 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時31分47秒
「…もう、目開けていいよ」
「あ、うん」
もちろん、梨華ちゃんは湯船に入って体を丸めてたから、ウチからは顔と肩しか見えない。
「…ありがとう」
「…い、いや、どういたしまして…」


ウチはお風呂場を出ると、鼻の奥が何か変な感触がした。
ふと、鼻の下を触ると、指に赤いものが…
慌てて部屋に行って、鼻にティッシュをつめこんで、布団に横になった。

ったく、情けない…
こんなことで鼻血を出すなんて。

しかし、梨華ちゃんの滑らかな肌、大きい胸、
あと、下の方まで視界に入ってしまった…一瞬だけだけど。
それを思い出しただけで、何ていうか…体が疼いてきた。
うう…梨華ちゃん、ゴメン、こんな変な気持ちになっちゃって…
いくら、ココロでは割り切ろうと思っても体は正直なんだよなあ…
125 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時33分06秒
ある金曜日、たまには外食でもしようか、ごちそうするよって梨華ちゃんが誘ってくれた。
あいぼんもウチももちろん賛成で、ウチらは車で梨華ちゃんの会社まで向かった。

途中で、梨華ちゃんからメールが来て、
会社の先輩、矢口さんも一緒にってことになった。
よく梨華ちゃんの話しに出てくる矢口さん、本当にイイ人らしいし、
梨華ちゃんの会社での話しも聞きたかったから、
もちろんソレも大賛成したわけだけど。


矢口さんはちびっこくてかわいらしいんだけど、何となく大人の色気みたいのがあって、
それでいてすごく面白くて優しくて、ウチでも憧れるような女性だった。

梨華ちゃんの話しもいろいろ聞いた。
やっぱり会社でも梨華ちゃんはカワイイと評判で、
噂を聞いた違う部署の人が見学にくることもたまにあるらしい。
カワイイだけじゃなくて、がんばりやさんで、気の利く梨華ちゃんは、
若い男の人はもちろんのこと、おじさん連中にも大人気。
矢口さんもいろんな人から、食事のセッティングを頼まれるらしい。
126 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時33分58秒
「えー、そんなの全然知らなかったですよー。
だって矢口さんが食事に誘ってくれるのって、
2人のときか女の子同士じゃないですかー」
梨華ちゃんがそう言うと、
「だって、梨華ちゃんだけがチヤホヤされる会なんて行きたくないもん」
って矢口さん、笑い飛ばしてた。
こういう裏表のない人っていいね。
つーか、そんな会に梨華ちゃんを行かせたくないし、
むしろウチ的に矢口さんみたいな人が梨華ちゃんの先輩でよかったって思うよ。


…しかし、矢口さん、多少酒癖が悪いかも。
ウチは車だからお酒は全く飲まなかったから、余計に冷静に見てたんだけど。

とにかくウチに絡みすぎ。
確かに、一年近くも男がいなくてさみしいって話しはわかりましたよ。
でも、ウチと付き合おうとか、梨華ちゃんの前で言わないで下さいよ。
梨華ちゃんの大事な先輩だから、イヤな態度もとれないし、適当に愛想笑いをしてた。
ま、実際のところ、小柄な矢口さんが甘えたりしてくるのは、
小さい子供かペットみたいで、すごくかわいかった、微笑ましかった。
127 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時34分34秒
矢口さんに気を取られてると、
突然梨華ちゃんが、テーブルの下からウチの足を蹴ってきた。
「ひとみちゃんのばかあ」
「な、何だよ突然?梨華ちゃん、どうした?」
「ばかなもんはばかなのお」
梨華ちゃんの目がトロンとしている。

「…梨華ちゃん、酔っ払ってるの?」
「れんれーん」
…明らかに舌が回ってないでしょ。

もちろんお酒を飲んでいないあいぼんに確認したところ、
どうやらカクテルを5、6杯は飲んでる様子。
梨華ちゃん、あんまりお酒強くないって言ってたのに、大丈夫なのか?

「ちょっとー、オイラのよっすぃーに何すんだよお」
矢口さんも充分酔っ払いだ。
「…だって、だって…」
なぜか泣き出す梨華ちゃん。
参ったなあ…
128 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時35分09秒
ウチはとりあえず、梨華ちゃんの隣にいこうと立ちあがった。
「あー、よっすぃー、オイラから離れないでっ」
ウチにベッタリくっついてくる矢口さんを振り払うこともできず、
そのまま2人並んで席を移動したんだけど。

「梨華ちゃん、どうしちゃったのさあ」
ウチは梨華ちゃんの頭を優しく撫でる。
梨華ちゃんはヒックヒック言いながら、ウチの胸に顔をうずめてきた。
なんなんだよ、どうしたらいいんだよお…


少しするとスースーと寝息が聞こえてきた。
全く、怒ったと思ったら、泣いて、今度は寝てんのかよ…
でも、梨華ちゃんの寝顔がカワイイから何も文句は言えない。
129 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時35分47秒
「あー、お腹いっぱい」
ウチが梨華ちゃんと矢口さんの相手で手間取ってるってゆーのに、
のんきなあいぼんの声が聞こえた。
お腹の辺りを擦って、満足そうに大きく息をついている。

「矢口ももう肉いいやー、デザート食べよう!
ここのおいものアイス、すっごくおいしいよお」
「あ、アタシも食べるう」
おいおい、今お腹いっぱいって言ってただろ、あいぼん!

ま、ウチも実はかなりのアイス好きなので、迷わず一緒に頼む。
お休み中の梨華ちゃんの分は注文しません。

矢口さん、あんなに酔っ払いながらも、
「ココはオイラが払う!」
って、張り切って会計してくれてた。
ちゃんとキメるところはキメるなんて、カッコイイな。

その間にウチは眠ってる梨華ちゃんを背負って、車に向かう。
ちょっとヨロヨロしてる矢口さんのフォローはあいぼんにお願いした。
130 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時36分45秒
とりあえず、運転席の後ろに梨華ちゃんを座らせ、
矢口さんの希望で助手席には矢口さん、その後ろにあいぼんが乗った。

矢口さんの家は都内でも横浜寄りの方なので、ほとんど通り道みたいなもん。
住所を聞いてあとはカーナビに任せた。

家に着くまでの間、矢口さんはしゃべりっぱなし。
主にウチに対して質問攻めってカンジなんだけど。

「好きなタイプは?」
「好きな芸能人は?」
「趣味は?」
「最近見た映画は?」
って、アイドル向けの雑誌にでも載せるのかよって質問ばっかり。

ま、テキトーに答えてるうちに、矢口さんのマンションに到着。
「ありがとね!梨華ちゃんにもよろしくっ」
って車を降りたのはいいけど、まだ少しよろけてる。
一応心配だったので、せめてマンションの入り口に入るところまで付き添おうかと、
車を降りて、矢口さんの腕をとって支える。
「大丈夫ですか?」

矢口さん、ウチのことを見上げて、すごく笑顔になる。
「やっぱ、よっすぃーってかっこいいっ!」

「!!」
矢口さんが背伸びをしたと思ったら、
ウチのほっぺにキスをした。
な、なんですか、突然…
131 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時37分23秒
しかも、矢口さん、恥ずかしそうにうつむいたまま、
1人でテケテケと歩いてオートロックを開けて、
ウチに軽く手を振ってそのままマンションに入っていってしまった。
なんだかなあ…


車に戻って、席に座ってドアを閉める。
「よお、色男」
いつの間にか、助手席に移動していたあいぼんがニヤニヤしながら、
ウチを見てた。
「よっすぃー、モテモテやなあ。
それじゃ、梨華ちゃんも心配で心配でしょうがないんとちゃうかなあ」

「何言ってんだよ、梨華ちゃんは関係ないじゃん」
「あ、そ。じゃ、今日の矢口さんとよっすぃーの一部始終を
梨華ちゃんに報告しておくわ」
「えっ…か、勝手にしろよ」
べ、別にいいじゃん、梨華ちゃんだって何とも思わないだろうし。

「ふーん、わかったわ。
梨華ちゃん、また泣き出すかもしれへんで?
それでもいいんか?」
さっきの梨華ちゃんの泣き顔が頭に浮かんでくる…

「…そんなことで、梨華ちゃんが泣くわけないじゃん」
「じゃ、あとで試してみるわ、梨華ちゃんが目え覚めたら」
132 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時38分01秒
結局、梨華ちゃんは次の日の昼まで起きなかった。
お昼ごはんの準備ができた時点で、あいぼんに梨華ちゃんを呼んできてと頼んだ。
部屋に入ったらまだ寝てたから、叩き起こしてきたらしい。

「アタシ、先食べるね」
あいぼんは塾は夕方からだけど、その前に図書館で勉強するとかで、
梨華ちゃんが来るよりも先に食べはじめた。

梨華ちゃんがボーッとしたままやってくる。
「おう、おはよ。どう?2日酔いとかじゃない?」
「ん、おはよう。大丈夫、まだ眠いけど」

梨華ちゃんが食べはじめたので、ウチも食事をはじめる。
「あ、矢口さんにお礼言っておいてね、昨日全部ごちそうしてくれたから。
梨華ちゃんは覚えてないだろうけど」
「あ、本当にごちそうしてくれたんだ。うん、あとでメールしておくね」
133 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時38分44秒
「よっすぃーはチューしてもらったお礼も言っておいた方がいいんとちゃう?」
「!!…うっ…ごほっ」
ウチはごはんを詰まらせてしまった。
確かに言ってもいいとは言ったけど、そんな言い方はないじゃんか、あいぼんよお。

梨華ちゃんを見ると、不思議そうな顔をしている。
「昨日な、矢口さんの家まで送ってあげたら、
矢口さん、帰り際によっすぃーのほっぺにチュッってしとったんや」
あいぼんがニヤニヤしながら、ウチと梨華ちゃんを見比べる。
まったく、コイツは何でこんなにイジワルかなあ…

「ふーん、そうなんだ」
梨華ちゃんはそれだけ言うと、うつむいたままごはんを食べ続けた。
何か話しかけてもいけないような雰囲気で、ウチは何も言えず、
あいぼんもその雰囲気を感じ取ってたのか、
その後は何もしゃべらず、急いでゴハンを食べると、
「ごちそーさまあ。じゃ図書館行ってくるわ」
ってとっとと出ていってしまった。

梨華ちゃんもあんまり量は食べなかったから、そのあとすぐに食べ終わり、
「シャワー浴びてくる」
ってすぐにいなくなってしまった。

何だよお…
梨華ちゃん、どうしちゃったんだよ…
134 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時39分36秒
ウチは食器を洗い終えてから、
リビングのラグの上にゴロンと横になった。
ふと、部屋の隅に置いてある雑誌のラックに入っている
『簡単!今日の晩御飯』という本が視界に入る。
梨華ちゃんが買ってきたものだ。
たまには自分が作るからって言ってくれるけど、ついウチが先にやってしまうんだ。

その本を手に取り、パラパラとめくってみる。
ところどころに付箋がついてる。
一応本当にヤル気はあるんだな。
今度、何かリクエストして作ってもらおうかな…

横になったまま、本を見てたら、何か眠くなってきた。
…うーん、昼食後の昼寝って気持ちいいんだよなあ…


135 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時40分08秒


矢口さんがひとみちゃんにキスをした話しを聞いたら、
何だかよくわかんない気持ちになってしまった。
こう、胃の奥の方を絞られるような、
何かがこみあげてくるような不思議な感覚になった。
何を言っていいのかもわからず、
とにかくひとみちゃんの前にいるのが辛かった。

だから、食後はすぐにシャワーを浴びるって言って、
その場から離れたんだけど。

矢口さんがひとみちゃんにキスしたからって、別にいいじゃない。
矢口さんが本当にひとみちゃんと付き合いたいって思ってるんなら、
別に私が反対することでもないし。
ひとみちゃんがもし万が一女の人と付き合うなら、ああいう大人の人がいいんだ。
私みたいに年上なのに全然子供で、
ひとみちゃんの手を煩わせてばっかりの人なんかより。

…ん?
何で私、自分と矢口さんを比較してるんだろ?
136 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時40分43秒
お風呂場を出て、リビングを覗いてみたら、
ひとみちゃんがラグの上で、お料理の本を持ったまま、仰向けで眠ってた。
そっとドアを開けて、ひとみちゃんのすぐ側に座って、顔を眺めてみる。

かわいい…
色が白くて、何だか外人さんの子供みたい。
こんなに体は大きいのに、やっぱり眠ってると
まだあどけなさがあるっていうか…まだ10代だもんね。

私は、何となくひとみちゃんの横に寝てみた。
そして腰の辺りに腕を回すと、ひとみちゃんは眠りが浅かったらしく、
ピクッとなって目を覚ました。

「…あ、梨華ちゃん…」
ひとみちゃんが、フニャッとした笑顔を向けてくれた。
うふふ、この笑顔見てるとなんだか癒されるんだよね。

「ごめんね?起こしちゃった?」
「いや、別に寝るつもりじゃなかったし」
「すごく気持ち良さそうに寝てたよ」
ひとみちゃんは、料理の本を横に置くと、
私の方に体を向けて、私の腰に腕を回してきた。

「んー、梨華ちゃんが隣りにいると余計気持ちいいかな」
…私もひとみちゃんが隣りにいてくれると、何か気持ちいいかも…
137 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時41分24秒
「あ、梨華ちゃん、たまには晩御飯つくってよ。せっかく本買ったんだしさ」
ひとみちゃんが私の頭を撫でながら聞いてくる。
「えー、ひとみちゃんが作った方がおいしいじゃない」
「料理は技術じゃないよ、愛情!
ウチは梨華ちゃんとあいぼんに愛情注いでるから、おいしくできるんだよ。
梨華ちゃんはウチとあいぼんに愛情持ってくれてないの?」

…そんなワケないじゃない。
私は体を半回転させて、ひとみちゃんの上にのるような体勢で、
ひとみちゃんのことを見下ろした。
「そんなことないよ、私、ひとみちゃんもあいぼんも大好きだもん」

ひとみちゃんが一瞬目を見開いたと思ったら、顔が真っ赤になった。
「あー、ひとみちゃん、自分で聞いておいて照れてるでしょー?」
「…んなワケないでしょっ」
ひとみちゃんは私の頭をコツンと叩いて、顔をじっと見た。
でもやっぱり赤いよ、カワイイ、ひとみちゃん。
138 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時42分04秒
「…梨華ちゃんさあ、今着てるTシャツって家用だよね?」
えっ?…確かに今着てるピンクのTシャツは、
安―いお店でパジャマ用として買ったものだけど、何で?

「うん、家でしか着てないけど」
「そう、それならいいんだけど…
そんなカッコしてると、ブラジャー丸見えだからさ」

自分の胸元を覗き込むと、確かにブラジャーはもちろん、
こんな体勢だから胸の谷間とかもバッチリ見えちゃってるワケで…
慌てて左手で胸元を押さえる。
「も、もう、ひとみちゃんのエッチ」
「何言ってんだよお、丁寧に教えてあげたんじゃんかよ」
そう言うと、ひとみちゃんは、ギュッと私のことを抱き寄せた。

「…こうしてれば見えないよ」
「…うん、そうだね」
ひとみちゃんのあったかいやわらかい腕に包まれて、
しばらくの間、クーラーのガンガンに効いた部屋で、
体はぬくもりを感じながら、外からで鳴り響いているセミの大合唱を聞いていた。
139 名前:イトコ同士 投稿日:2003年08月30日(土)00時42分41秒
もうすぐ私の夏休みがはじまる。
予定はずっと前から決まっていた。
お父さんとお母さんのところ、ニューヨークに遊びにいくのだ。
このときは、あいぼんも勉強をお休みして一緒に行くことになっている。
ひとみちゃんも誘ってみたんだけど、
ひとみちゃんはお父さんのところ、福岡にいって、
そのあとは、のんびり九州をレンタカーで一人旅するつもりだって言ってた。

それにしても、ひとみちゃんとそんなに会えないなんて、
なんだかちょっとさみしい。
ゴールデンウィークは3日間いないだけであんなにさみしかったから、
少し不安だけど、お父さんとお母さんに会えるのも、
ニューヨークに行けるのも楽しみだから、
楽しさで気が紛れるだろうし、大丈夫、きっと大丈夫。


140 名前:名無し作者 投稿日:2003年08月30日(土)00時46分54秒
更新しました。PCの調子がよくなくて、agesageが激しくてスミマセン…

>>111
実は結構ビミョーな距離感の2人なんです…
本当にくっつくのはまだもう少し先かと(W
お仕事がんばって下さいね。

>>112
ありがとうございます。
そういっていただけてうれしいです。
141 名前:たべ 投稿日:2003年08月30日(土)01時28分33秒
はじめまして。今日一気に読んだんですけど、すごくつぼにはまる話で
思わずにやけちゃいました。こういう関係の二人っていいですね。もてもてな
よっすぃ〜もいい!これからもがんばってください。応援してます。
142 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)09時38分51秒
もう少しこの関係が続いて欲しくもあり
早くくっついて欲しくもあり…
ビミョーな二人をワクワクしながら読ませて頂いてます。
続き楽しみです。
143 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)16時21分14秒
いしよしもいいですけど、やぐよしもイイ感じですね!!(w
これからも頑張ってください!
144 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
∬´◇`∬<ダメダモン…
145 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
∬´◇`∬<ダメダモン…
146 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年08月30日(土)18時42分37秒

交信、オツです。

良いですね、この微妙な距離感、すれ違い。
早く気づけよ、二人共! と言う感じもしますが
もう少しこの感じを楽しみたいと言う気も・・・。

のんびり待ってまっす。


>145 メール欄で謝りながら、うpするって、どうよ?
147 名前:よっすぃ〜( ´ω` ) 投稿日:2003年08月30日(土)22時15分48秒
作者さまmm(_ _)mmおつです。

最高っすね〜ほのぼのな「いしよし」がすっごくいいっす!
これからもよろしこです!!
楽しみにしてます!!がんがれえええヽ(`Д´)ノ ウワァン
148 名前:いしよしサイコー 投稿日:2003年09月02日(火)17時22分29秒
おつかれさまです。
やっぱり「いしよし」ですよね〜!!!
続き楽しみにしています。
なるべく早くみたいな〜
これからよろしくです。
149 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時44分09秒


梨華ちゃんの夏休みが始まった。
出発当日、ウチは梨華ちゃんとあいぼんを車で成田空港まで送った。

「よっすぃーに1週間も会えないのさみしいよお」
ってあいぼんが泣き出したら、梨華ちゃんまで泣いちゃって。
ウチは出発ロビーでカワイイ女の子を2人も泣かせてる悪いヤツに思われたに違いない。
なぐさめるのが大変だったよ。
こっちだって淋しくて泣きたいくらいのに。
涙目の2人を何とか見送ると、ウチはそのまま羽田、そして福岡に向かった。
150 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時45分17秒
お父さんは相変らずだったけど、
部屋がキレイに片付いていたのには驚いた。
感心、感心。やればできるんじゃん。
お父さんのところに2泊したあと、レンタカーでのんびり一人で九州を巡った。
しかもせっかく夏だし、気持ちよくいきたいなあなんて、
オープンカーを借りてみた。
いいねえ、今度、梨華ちゃんと鎌倉の海をオープンカーで走りたいなあ…
…そう、気付くと、いつも梨華ちゃんのことばかり頭に浮かんでる。

ウチは宿も予約しておらず、いきあたりばったり旅行をしようと思ってた。
九州で、思い浮かぶことといったら、
まず博多ラーメン、これはお父さんに地元の人に評判の店に連れていってもらった。
中州の屋台で焼き鳥も食べた。
阿蘇山も見てみたいかな。何か昔教科書で見た覚えがあるんだよなあ、
一度この目で見てみたいし。
指宿で海の見えるところで砂風呂に入りたいし、別府や湯布院の温泉にも行きたい!
あ、この前ネットではじめて知ったんだけど、
大分の地獄巡りなんてのも面白そうだから行ってみたいよなあ。
ハウステンボスも行きたいけど、さすがに1人で行くところじゃないだろうしな…
151 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時46分01秒
そういえば、梨華ちゃんから、1日1回はメールが届く。
最初にフリーメールのアドレスできたときは、いたずらかと思ったんだけど、
お父さんのパソコンを借りて、向こうの時間で夜、こっちではお昼くらいに届く。

初日は「お父さんとお母さんがひとみちゃんによろしくってー。
来年の夏休みは絶対に遊びに来てだって」とかだったし、
他の日はその日に行った場所や食べた食事のことなんかでごくごく普通の内容なんだけど、
それがウチにはこの上ない幸せで、もちろん全部保護かけてるわけだけど。
152 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時46分38秒
ウチは、梨華ちゃんとあいぼんが帰って来る3日前に、横浜に戻った。
そして帰った日の翌日、保田さんのお店に行こうと思った。
夏休みに入る1週間前くらいに行ったきりだったし。
今日は確実に梨華ちゃんとハチあわせることなんてないし、
お土産も買ってきたし、保田さんと久しぶりに話しもしたいしね。


しかし、ビックリだよ。
車で来てみたんだけど、路駐の車がびっしり。
もちろん、海水浴客たちのもので、今はもう夕方近い時間だから、
ウチが今来た方へ向かう海水浴帰りの車がもう渋滞ぎみ。
夏休みだから、やっぱりすごいんだねえ。

ウチは梨華ちゃんの元カレのお墓があるお寺の近くに
コインパーキングがあったことを思い出して、そっちまで車を走らせた。
さすがに、ココもいっぱいだったけど、タイミングよく一台出るところだったから、
止めることはできた。

一応、保田家のお墓がある方向に手を合わせた。
さすがにウチが1人で墓前に行くのも気がひけから、このくらいで許してもらおう。

波の音と、海水浴客の賑やかな声と、
海水浴場の放送―場内放送とでも言うのかな?―
を聞きながら保田さんの店までのんびりと歩いた。
153 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時47分15秒
店のドアを開けると、
「すみませーん、今いっぱいなんです…あ、吉澤じゃない!」
「こんちは」

確かに店の中はお客さんで席が全て埋まっていた。
この店にこんな人がたくさんいるのは、はじめて見る。
さすが夏休みマジック。しかも世間はお盆休みだしね。
保田さんじたい、あまりに忙しくてテンパってるように見えたので、
ウチはカウンターの中に入っていった。

「手伝いますよ」
「ホント?助かる!」
本当だったら、保田さんも遠慮したいところなんだろうけど、
そうも言ってられない状態だったと思う。
ウチは、とりあえず、シンクにいっぱいになっていたカップ類を洗い出した。

他にも、お客が帰ったら、カップを下げてテーブルを拭いたり、
新しくきたお客さんにはお水を出して、オーダーも取りにも行ったりもした。
154 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時47分48秒
「ふー、お疲れ。ありがと、すごく助かったわ」
最後のお客さんが帰った夜の8時過ぎ、やっと保田さんは店を閉めた。
そういえば、いつも夕飯前に帰ってたから、閉店までいるのってはじめてだ。

「いえいえ、そんな大したことしてないっすよ。
あ、そうだ、博多土産の明太子買ってきたんで、パスタでも作りますよ」
「いいわよ、そこまでしてくれなくても」
「いや、ウチも今そう言ったら、すごく食べたくなったんで作ります」
ウチが笑っていうと、保田さんも笑顔になった。

「じゃ、その冷蔵庫に入ってるビール飲んでいいわよ」
「ラッキー!…あ、ウチ、今日、車だったんだあ…」
「じゃ、夕食終わったら、スペシャルなコーヒーを入れてあげるわ、
デザートもあるもの何でも食べていいわよ」
「やったー!」
155 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時48分18秒
ウチが、和風であっさりのしょう油味の明太子パスタをつくると、
保田さんはえらく喜んでくれた。
「おいしいじゃない!吉澤、家で料理してるの?」
「ええ、家事歴10年ですから。
母親が亡くなってから、ウチ一人っ子だし、お父さんも何もしなかったから、
必然的にウチが自分でやるしかなかったんですよね」
「そうなの…ね、吉澤、よかったら、夏休みの間だけでも、ウチでバイトしない?」

すごくいい話しだと思った。
保田さんはいい人だし、この店も好きだ。
ただし、梨華ちゃんがやって来る可能性もある。
ま、日曜にバイトを入れないとして、店で会うことがなくても、
話しのネタで保田さんが梨華ちゃんに
「新しいバイトの子が入って、吉澤っていう大学生なんだけど…」
なんて話しをされたら、梨華ちゃんはおどろくどころが不気味がるかもしれない。
そう思ったら、断るしかなかった。

「すみません、ウチ、他のバイトしてるし、家のこともやらなきゃならないんで…」
「そうなの?あー、残念。吉澤だったら、いろいろやってもらえると思ったのに」
156 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時48分55秒
そのあと、ウチがデザートを自分で作ってみた。
フルーツをいろいろ盛り合わせたパフェにしてみたんだけど、
アイスもたくさん、生クリームもたくさんあまりにいろいろ入れすぎて、
さすがに保田さんも
「ちょっと、大きすぎるんじゃないの?」
なんてあきれてた。

保田さんが入れてくれたコーヒーはすごくおいしかった。
普段ウチはあまりコーヒーを飲まない。
ココの店に来たときも、いつも紅茶だったし、コーヒーは飲んだことがなかった。
でも、保田さんのコーヒーはそんなウチでも、
今まで飲んだものとは全然違うって思わせるほどおいしかった。
梨華ちゃんも、いつもココでコーヒーを飲んでるのかなあ…
気になったけど、聞けるわけがなかった。


ちなみに、保田さんは夏の間はお店を休まないみたい。
稼ぎ時だし、やっぱり夏の海が好きだからって。
その代わり、冬はまるまる2、3ヶ月とか休むらしい。
それで、友達が永住しているオーストラリアに旅行に行くのだとか。
もちろん、オーストラリアは、日本の冬の間は夏だから、
保田さんは、ここ数年あんまり冬を過ごしてないらしい。
なんか、かっけーよなあ。
157 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時52分16秒
その次の日は家の掃除をした。
さすがにほぼ1週間、閉め切りにしてたワケだし、
隅から隅まできっちり掃除機をかけてぞうきんがけまでした。

天気もよかったから布団も干した。
そういう理由付けで、梨華ちゃんの部屋にも入ったんだけど。
…相変らずキタナイねえ…

梨華ちゃんが掃除も料理も出来なくたって、そんなの関係ない。
ゴミをゴミ箱に捨てられなくても、服を畳めなくても、
部屋と同様カバンの中が汚くっても…
たぶん、梨華ちゃんのこんな面があるところ、外の人は知らないはず。
158 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時53分06秒
寝起きの寝癖のついた髪と焦点の定まってない目も、
テレビゲームで夢中になって画面の中の人物になりきって体動かしちゃうのも、
ビデオ見ながら寝ちゃうのも、お風呂で音程の外れた歌を歌ってるのも、
一緒に住んでいる人間しか知らないこと。
いいところも悪いところも全部ひっくるめて、ウチは梨華ちゃんっていう人間が好きだ…

やっぱり、好きだって気持ちはどうしても変わらない。
無理に気持ちを押し込めることないか。
梨華ちゃんだってウチのこと好きなはず、もちろんウチとは違う意味合いだけど。
それだけで、幸せじゃないか。
しかも家で2人っきりのときじゃれあうこともできてさ。
それでいいじゃないか、それ以上望む必要なんかない。


何てちょっぴりかっけーことを考えながらも、
脱ぎ捨てられている服の中にブラジャーを発見しちゃって、
ドキッとしちゃうウチはホントにアホだな…
159 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時53分37秒
ふと、ウチのポケットに入れていた携帯が鳴った。
画面を見ると『国際』となっている。
もしかして…
「もしもしっ!」
『なんや、よっすぃー、そんな慌てて』
違った…

「よ、よう、あいぼんか!元気?」
『うん、元気やで。梨華ちゃんも元気。
さっきな、梨華ちゃんからよっすぃーに電話かけさせようとしたんだけど、
何か照れてんのかイヤがったから、ウチがかけてみた』

あいぼんの後ろから、
『余計なこと言わないでよっ』って愛しい人の声が聞こえてきた。
ああ、梨華ちゃんだ…
『ああ、もう、お母ちゃんが代われとか言ってるわ』

そのあと、しばらくおばさんとおじさんと話すハメになり、
梨華ちゃんとは結局最後に、
『明日、お迎えよろしくね』「うん」って話しただけだった。
160 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時54分08秒
ウチは、久しぶりに梨華ちゃんに会える、絶対遅れるもんかと、
成田に3時間前に着いていた。
気が早すぎた…でも、飛行機は予定よりも30分早めに着いたからよしとしよう。

到着のアナウンスが聞こえて、10分もしないうちに携帯が鳴った。
あいぼんからだ。

「おー、おかえりー」
『よっすぃー?ただいまっ。今荷物出てくるの待ってるとこだから、
出口んとこまで来てて』
「了解」
『じゃ、あとでな』

実はウチはもうすでに出口の前で待機していた。
絶対、ウチの方が先に見つけてやるんだってよくわからない意気込みをしてた。
161 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時55分07秒
30分程して、ピンクのスーツケースを転がしている2人組みがやってきた。
「梨華ちゃん!あいぼん!」
思わずウチは大声を出していた。

「よっすぃー!!」
あいぼんはウチよりももっと大きな声を出して、
急ぎ足でやってくると、ウチに飛びついてきた。

「おかえり。元気そうだね」
「うん、元気。よっすぃーも相変らずかっこええし」
あいぼんがウチの胸に頭をすりすりしてくる。
ウチが頭を撫でてやると、あいぼんは笑顔でウチを見上げた。

急ぐではなく、普通にやってきた梨華ちゃんが、やっと側に来た。
「ひとみちゃん、ただいま!」
「…おかえり、梨華ちゃん」

なんつーか、やっぱり梨華ちゃんはかわいい…
いつもにまして、日焼けして肌が黒くなってるけど、
そんなところも健康的でいいというか…
162 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時56分41秒
「おっ、ごめんな、梨華ちゃんもよっすぃーと感動の再会したいやろ?」
あいぼんが、ウチの体から離れる。
「あいぼん、何言ってんだよ………!!」

ウチが否定したにも関わらず、梨華ちゃんはウチの胸に思いっきり飛び込んできた。
しかも、背中に回した腕をギュウギュウとしてくる。
くーっ!なんてかわいいんだ…
ウチもギュッと抱きしめ返して、梨華ちゃんのやわらかい髪をそっと撫でた。
梨華ちゃんがくすぐったそうに、顔を胸に押しつけてくる。
えへへへ…
163 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時57分33秒
「…あのー、いつまでやってるんですかね?」
いつの間にか、ウチらの足元にしゃがみこんで、こっちを見ているあいぼん。

慌てて離れる梨華ちゃんとウチ。
梨華ちゃんの顔を見たら、真っ赤になっていた。
「ラブラブな2人はほって帰ろうかと思ったんやけどな」
「ラ、ラブラブって何だよっ」
「だって、どうみてもラブラブカップルにしか見えへんけど」

うつむいたまま黙ってる梨華ちゃん…気悪くしちゃったかな…
「そんなことあるわけないでしょ。さ、行くよ。ほら、荷物持ってやるから」
あいぼんと梨華ちゃんの手に持っていたカバンはウチが引き受け、
2人はスーツケースだけを転がして、ウチの後ろをついてきていた。
164 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時58分10秒
その次の日から、梨華ちゃんはちゃんと会社に行って、
あいぼんも遅れを取り戻す!と今まで以上に勉強をがんばってた。
ウチは相変らず、家事の毎日、プラス家庭教師とジム通い。

それにしても、梨華ちゃん、今週は休み明けのせいか、
梨華ちゃんも残業とか、夜に飲み会があったりとかで、
平日はゆっくり話せなかった。
土曜日も、大学時代の友達にお土産渡すとかで、
お昼頃出ていって、帰ってきたのかなり遅かったし。
165 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時58分41秒
そして日曜日。
しばらく会ってなかったし、少しでも梨華ちゃんの姿を見ていたくて、
ウチはまたお墓参りに向かう梨華ちゃんのあとをつけた。

夏休みのせいもあって、まだ海水浴客も多かった。
おい、クラゲに刺されるぞ、クラゲに。
今年は海に泳ぎにいけてないから、ウチはちょっとむかついてた。

混んでても相変らず、のんびりぼんやり砂浜を歩いている梨華ちゃん、
ウチは暑いから少しでも海の近くで歩きたいのもあり、
人混みでばれないだろうと、梨華ちゃんの少し後ろを歩いていた。
166 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)00時59分39秒
ふと、ウチの目の前で、小さい男の子が転んだ。大声で泣き出す。
なんだよ、親はいないのか、親は。

「どっか、ぶつけたの?」
ウチはかかんで、その子のことを見る。
男の子が指差した右膝は赤くなっているだけで、
血は出てなかったし、大したことはなさそうだった。

「大丈夫、大丈夫。
ほら、男の子なんだから、こんくらいで泣いてたら、かっこ悪いぞ」
ウチは、その子の膝と頭を撫でてやっていたら、
その子の親がやってきて、軽くお礼を言って、
男の子は大袈裟に思えるほど、大事に連れていかれた。

なんだかなあ、最近の親はなってないねえ。
子供のこと、ちゃんと見てないし、かと思ったら甘やかしすぎだし。


ウチがヨロヨロと立ちあがると、目の前の人がこっちを見ていた。
…梨華ちゃん…
不思議そうに、でも笑顔でウチのことを見ていた。
167 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時00分11秒
しょうがない、ウチは正直に話した。
梨華ちゃんの日曜日の行動が気になってて、つい後をつけてしまったと。
しかも、今日が2回目であること。
保田さんの喫茶店にも何度か行ってること、
梨華ちゃんの元カレのことを結構詳しく知っていることも、キチンと話した。
嫌われても気味悪がられてもしょうがない、
変にウソをついて、後で本当のことがばれるよりマシだ。

「ごめん、何かストーカーみたいなことして」
海水浴客から離れて、防波堤に腰掛けて、話しをしていた。

「ううん…私の方こそ、ちゃんと話ししないで、心配かけてごめんなさい」
「何で梨華ちゃんが謝るんだよ。悪いのはウチだって」
梨華ちゃんはウチのことを見ると、クスッと笑った。
「じゃ、一緒にお墓参りして、保田さんのお店に行こうか」


梨華ちゃんは、彼の墓前でにこやかにしていた。
「保田くん、しばらく来れなくてごめんね?
今日はね、一緒に住んでるイトコのひとみちゃん、連れてきたよ」
ウチは、どうしていいかわからず、とりあえず、ペコリと頭を下げて手を合わせた。
168 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時00分46秒
保田さんのお店に2人で揃って入っていった。
キョトンとしている保田さん。
「アンタたち、知り合いなの?」

保田さんにも事情を説明したら、大笑いされた。
「でも、確かに納得できるわ、吉澤が『ひとみちゃん』だってこと。
フルネームで吉澤の名前聞いてたら、すぐにピンときたんだけどなあ」
と、少し悔しそうでもあったけど。


しばらく3人でくだらない話しをしていた。
っていっても、梨華ちゃんのやったドジを、
ウチが脚色して大袈裟にした話がメインだったんだけど。
169 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時01分21秒
ドアが開いてお客が入ってきた。
「よお」
と男の人の声がする。
「おう、来たね」
保田さんが笑顔で答える。

ふと、梨華ちゃんを見ると、そっちを見て固まっていた。
ウチも気になって、その男の人を見る。
…ん?誰かに似てる?

その男の人がウチと梨華ちゃんをジロジロ見て言った。
「何だよ、カワイイお客さんいるんじゃん!紹介してくれよ」
「誰がアンタなんかに紹介するかってーの」
保田さんと、その男の人が会話しているのを見て気付いた。
この2人、似てる…
170 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時01分55秒
その男の人が梨華ちゃんの隣りの空いてる席に座った。
「ども、はじめまして。圭ちゃんのイトコです」
「こらー、ウチのお客さんをナンパしない!」
「いーじゃん、カタイこと言わない」

どうやら、東京に住んでいる保田さんのイトコ、大学2年生。
親といっしょに保田さんの家に来たついでに、海で泳いできたとか。

それにしても、さっきから、梨華ちゃんの様子がおかしい。
隣りにいるのに、話しかけられても、全然、その人の方を見ないのだ。
見てもチラッとだけで、すぐに顔をそらして、うつむいたまま。

…そうか…
保田さんに似てるイコール弟にも似てる…
梨華ちゃんは、亡くなった元カレのことを思い出してるんだ…


171 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時02分30秒


先週、先々週と2週も来れなかったけど、
いつもの日曜日のように、海岸をのんびり歩いていた。
彼との最後の日のデートコース。
でも、最近はひとみちゃんのことばっかり考えて歩いてる気がする。
だから後ろで子供の泣き声がして、振り向いたとき、
ひとみちゃんがいて驚いた。
あんまりひとみちゃんのこと考えてるから、幻でも見えたのかなって。


ひとみちゃんは申し訳なさそうに、私のことをつけてきたことを話した。
しかも2回目で、保田さんのお店にも行ってて、
私の彼だった人の話しも知ってると。
それを聞いて私は驚いたというよりも、うれしくて安心した。
私のことをこんなに心配してくれる人がいるんだって。
しかも、彼の話しをひとみちゃんに話すかどうか、
話すとしたらどう話したらいいのか、悩んでいたときだったから、
もう知ってるって聞いてホッとした。
しかも、保田さんのお店にひとみちゃんのことを連れていけるんだなって。


保田さんも、私がいつも話しをしているひとみちゃんが、
よく店に来ている吉澤っていうのがわかって、
驚いてたけど、なんだかうれしそうだった。
172 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時03分01秒
そして、今日2回目のびっくり。
お店のドアが開いて、お客さんだと思って、振り向いたら保田くんがいた。
お盆時期だったから帰ってきてたのかなって、普通に思っちゃったくらい。
でも、そんなワケはなくて、保田さんのイトコ。
保田くん―保田さんの弟―よりもちょっとワイルドな感じがした。
でも、顔はすごく似てて、話し方も、笑うときのクシャッとする表情もよく似てた。
何か隣りに保田くんがいるみたいな気がして、すごくドキドキしていた。


私たちが帰ろうとしたら、彼はすごく残念がって、
「携帯番号教えて」
って私とひとみちゃんに言ったら、保田さんに殴られてた。

「また、2人そろっておいでよ」
って保田さんは笑顔で私たちを見送ってくれた。
173 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時04分31秒
帰り道、保田くんのことを思い出してた。
あの人、本当に保田くんと似てた。
イトコでもひとみちゃんと私は全然似てないのにな…
そういえば、あの店に保田くんと行った日も、
帰りに保田さんが「また2人そろっておいで」って言ってくれたっけ…
そう、保田くんが亡くなった日…

「…梨華ちゃん…」
「…ん?」
「あいぼんにメールしておくからさ、のんびり海でも見てこうか」
「…うん」

ひとみちゃんは、私の気持ちを察してるのかもしれない。
日が傾きはじめたところで、海水浴の人もほとんど帰っている。
私たちは、砂浜に並んで腰を下ろした。
174 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時05分12秒
「夕日、キレイだね」
ひとみちゃんがまぶしそうに目を細めながらも、
私に向かって小さく微笑んだ。
「…うん」
何となく、ひとみちゃんに寄りかかってみた。
すると、ひとみちゃんも私の腰を辺りに腕を回してきてくれた。

保田くんとのデートのときにも、こんな風な状況があった。
2人で座って肩を並べて海を見ていた。
保田くん…

彼がもしまだこの世にいたら、私たち、まだ付き合ってたかな?
…うん、たぶん付き合ってるんだろうな。
夏は毎週のようにこの海に来て、
帰りに保田さんの保田さんの店に行って、アイスコーヒーを飲んでたんだろうな…
175 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時05分35秒
「…はい」
気付くと、ひとみちゃんが私の前にハンカチを出してくれてた。
何で?
ふと、私の腕にしずくが落ちてきた。
…あ、私、泣いてたんだ…

ハンカチを受け取り、涙をふくと、
ひとみちゃんは、私の頭を優しく撫でてくれた。
ひとみちゃんは、何も言わない、何も聞かない。
それがすごくありがたかった。
ずっと、こうしててほしいと思った。


少しすると、私の頭の上から、グズッという音が聞こえてきた。
えっ?
私が顔を上げて、ひとみちゃんを見ると、
ひとみちゃんも泣いていた。
「…どうしたの?」
「…ん…」

もしかして、私の気持ちを考えてくれて、一緒に悲しくなってくれたのかな?
それとも、私が悲しんでるのを見て、自分の悲しいことでも思い出しちゃったのかな?
176 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時06分10秒
ひとみちゃんが渡してくれたハンカチで、ひとみちゃんの涙をふいて、
頭を撫でてあげた。
そしたら、ひとみちゃんは、困ったような顔をしてから、もっと泣いてしまった。
ホント、どうしちゃったの?
「…ごめん…何で、ウチが泣いてるんだろうね…ははは…」

こらえながらそう言ったひとみちゃんの声は、すごく切なそう…
私は立て膝になって、ひとみちゃんの脚の間に入り、
正面からひとみちゃんの頭を胸に抱きしめて、撫でてあげた。
ひとみちゃんが、私の背中にギュッと腕を回して、
しゃくりあげて泣いている。
ひとみちゃんがこんなに泣くなんて…
どんなつらいことなんだろう…

しばらくすると、落ち着いたのか、ひとみちゃんが顔を上げた。
「…ごめん…ありがとう…」
頭を撫でて、ニッコリしてあげる。
177 名前:イトコ同士 投稿日:2003年09月04日(木)01時09分31秒
「…あー、もう!恥ずかしいなあ!ウチ、人前じゃ泣いたことないのに!」
ひとみちゃんは、笑いながらそう言うと、立ち上がって私に背中を向けて、
カバンからティッシュを取り出すと鼻をかんだ。

「ううん、恥ずかしがることないよ…なんかうれしかった」
「へっ?なんで?」
「理由は何であっても、同じ時に一緒に泣いてくれる人っていいなあって」
あと、他の人の前では見せない涙を私にだけ見せてくれたっていうのも、何かうれしいかな…

ひとみちゃんは、振り向くとギュッと私のことを抱きしめた。
「…そんな、そんなこと言われると余計辛いよ…」
「…え?」
「…ううん、何でもない…」

帰り道、ひとみちゃんは、面白いことばっかり言って、
私のことをずっと笑わせてくれていた。
無理してるのかもしれない。
でも、そんなひとみちゃんの優しさは痛いほどありがたかった。

それにしても、ひとみちゃんは、どんな悩みを抱えてるんだろう…


178 名前:名無し作者 投稿日:2003年09月04日(木)01時18分48秒
更新しました。エラーが出たあと、どうもさげるの忘れがち…スミマセン。

>>141さん
ありがとうございます。
もっとツボを刺激できればよいのですが(W

>>142さん
ありがとうございます。
まだじれったい状態がつづく感じですが(W

>>143さん
ありがとうございます。
やぐよし、もう1回くらいは登場するかもしれません(W

>>146さん
いつもありがとうございます。
のんびりお待ちいただけると助かります(W

>>147さん
ありがとうございます。
ほのぼの系でなんかあったかくなれるようなものを書いていけたらと思っております。

>>148さん
ありがとうございます。
やっぱりいしよしですよね(W
なるべく早く更新できるよう、がんがりたいです…
179 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年09月04日(木)02時40分06秒
長年、いしよしを読んできましたが、ここのいしよしはかなりツボです!
甘さ、切なさ、人間関係など2人を引き立てる要素が近年まれにみる最高ぶりな気がします
180 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)12時51分46秒
よっすぃーにシンクロして私まで泣きそうでつ。
181 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003年09月04日(木)17時18分02秒

せつないのぅ〜、よしこ。
漢でも泣きたいときは、泣けばいい。
でも、梨華ちゃんの心の中には、確実に君がいる。
がんばれ、よしこ。
182 名前:よっすぃ〜( ´ω` ) 投稿日:2003年09月04日(木)23時35分39秒
わ〜い更新されてるぅ〜

うれすぃ〜す!

よっすぃ〜のやさしさが、とてもいいっす。
せつないわぁ・・・・・・

まったりとしていいっすぅうううううううううううう!
続きがとても気になる今日この頃です!(きっぱり)
183 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:25


割り切るつもりでも、やっぱり目の前でそういう状況になるとキツイものだ。
梨華ちゃんのココロには、やっぱりカレのことがあるんだ。
そんなの前からわかってた。
でも、カレはもういないんだからって、どっかで安心してた。

そのカレにそっくりな人が現れるなんて、思ってもみなかった。
あの梨華ちゃんの動揺ぶり、明らかにカレとダブらせてるとしか考えられない。
しかも梨華ちゃん、泣いてたし…

ウチは、悲しいというより悔しかった。
梨華ちゃんのこの涙を止める術はウチは持っていない。
こんなに好きでも、一方的に好きだって気持ちだけじゃどうにもならないんだ。
そう思ったら、ムショウに自分自身にハラが立ってきた。

そして、怖くなってきた。
今は何かあるごとに梨華ちゃんはウチに甘えてくれている。
そしてウチもそれで満足している、いやしようとしてる。
でも、もし梨華ちゃんが保田さんのイトコの彼のこと、
本気で好きになって、付き合うなんてことになったら、どうなるんだろう?
たぶん、ウチに甘える必要なんてなくなる。

ウチにしてくれてた、ちょっぴりすねた顔とか、全てを包んでくれるような優しい顔とか、
何だかくすぐったくなるような表情を彼に向けるかと思うと、激しい嫉妬にかられた。
そして、梨華ちゃんにとってウチは必要ない存在になるのではって思った。
そう思ったら自然と涙が溢れてきて…
184 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:26
…こんなときに、
梨華ちゃんに慰められると、余計自分がどうしようもないヤツだと思えてくる。
梨華ちゃんに優しくしてもらうと、自分が子供だとつくづく思い知らされる。
梨華ちゃんにふさわしいのは、大人の頼り甲斐のある優しくてかっこいい男の人なんだ。
ウチなんかはスタートラインに立つことすらできないのを、
つくづく思い知らされてしまった。

こんなウチでも、梨華ちゃんのためにしてあげられるとしたら、
笑顔にしてあげることくらいだ。
ウチは帰り道、これでもかって思うほどギャグばっかり言ってた。
梨華ちゃんが笑いすぎで涙を流してくれたくらいに。
185 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:26
たぶん、ウチが行ってるっていうのがわかった以上、
梨華ちゃんは、来週も保田さんのお店に一緒に行こうって誘ってくるような気がする。
ウチの今の気分からして、あの店に梨華ちゃんと2人で行くのはかなり辛い。
もし、万が一また保田さんのイトコでもいようもんなら、
ウチは堪えられなくてお店から出てしまいそうだし。
少なくとも、保田さんと梨華ちゃんの間で、あのイトコの彼の話題、
そしてよく似ている弟の話題にもなるだろう。
ウチはその会話にガマンできるほどの大きな度量を持っていない。

もし、梨華ちゃんが誘ってきたら、何て断ろう?
約束があるとか適当なウソをつけばいいんだけど、
ウチは基本的にウソをつくのが苦手だ。
日曜日に梨華ちゃんのあとをつけるのに、ウソをついたのも正直不安だった。
そのときはいいとしても、ウチはウソをついたことを忘れてしまったりする。
で、話しのツジツマが合わなくなったりしてバレた…っていうことも今までよくあった。
今回は違う形で―ある意味、最悪のパターンで―ウソがばれてしまったし、
これ以上ウソをつくのは本当に心苦しい。
梨華ちゃんへの気持ちを押さえてることだって、十分なウソだってのに。
186 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:27
そんなときに、1通のメールがきた。
幼馴染のミキティからだ。
『今度の土曜日の夜、横浜アリーナでコンサート見るんだけど、
家まで帰るの面倒だから泊めてくんない?』
…もう、すばらしい!
さすが長い付き合いなだけある。
何も言わなくても、無意識にウチに助け船を出してくれるなんて。


「土曜日さあ、埼玉の友達が横浜に来るらしくて、泊めてもいいかな?」
夜遅く来る予定だから、ほとんど寝るだけだし、
あいぼんの勉強のジャマになるほど騒いだりしない、
日曜はたぶん友達は昼頃まで寝てるだろうけど、
ウチは朝は起きてちゃんとゴハンはつくるからって約束して。

「全然、構わんよー。ね、梨華ちゃん」
「…うん、いいよ」
あいぼんは、もちろん全然笑顔でOKしてくれたんだけど、
梨華ちゃんの笑顔が少しぎこちなかった。
やっぱり、日曜にウチのこと誘おうと思ってて、それができなくなったからかな…


187 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:27


土曜日の夜11時頃、ひとみちゃんは、今日お泊りするお友達を迎えに駅まで行った。
あいぼんは部屋でお勉強してる。
私は、一応、お客さまだから、挨拶くらいはしなくちゃなって、
リビングに紅茶と軽く食べられるクッキーとかを用意していた。

本当は、明日、保田さんのお店に行くのにひとみちゃんも誘おうかなって思ってた。
それができなくなっちゃって、少しさみしい。
それに、今日泊まりに来るっていう子は、ひとみちゃんの幼馴染で、
家が近所で幼稚園から高校までずっと一緒だったらしい。
前にプリクラを見せてもらったことがあるけど、すごくキレイな子だった。
それだけ長い付き合いなら、ひとみちゃんのこと、いろいろ知ってるんだろうな。
私なんかよりもずっとずっと…
188 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:27
ひとみちゃんは出ていってから、20分くらいで戻ってきた。
すぐにリビングにやってくるひとみちゃんとその幼馴染。
…うわあ、2人ともキレイでかっこよくて絵になる…
ひとみちゃんの幼馴染、藤本さんは、話しをしてみると、
男の人みたいにすごくさっぱりしてる感じがして好感が持てた。

それにしても、2人がすごく仲がいいんだなって見ていてよくわかる。
すごくスキンシップしてるし…主に藤本さんの方からばっかりだけど…。
ひとみちゃんの様子も明らかに私たちと話してるときと何か違う。
藤本さんに対抗してなのか、私たちに言わないようなキツイこととかも
平気で言ってる。それだけ心を許してるってことなのかな…


189 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:28


ミキティは、誰に対しても厳しいことをいうというか、つっこみがスルドイ。
そんなんだからなのか、昔から一匹狼的というか、
あんまり仲がいい友達がいなかったように思う。
ま、ウチも幼稚園と小学校のときは、普通にクラスメートくらいで、
大して仲良くもなかったくらいだし。
中学からたまたま同じ私立に通うことになって、
同じ小学校から、その学校に通うのは2人だけだったから、
自然とそれまでよりも会話が増えていったし、仲良くなっていったように思う。

よくよく話してみると、結構サバけたやつで、
ウチにとってはすごく付き合いやすいタイプだった。
『私たち親友でしょ』みたいな女の子の友情ゴッコみたいのが苦手だと、
常々ウチは思ってたんだけど、ミキティには全くそれがなかった。
たぶん取っ組み合いの大ゲンカをしても、ケンカが終わったら、
お互い笑って許しちゃうようなそんな男の子どうしみたいな友情。
もちろん、そのときの舞台は夕日の沈む土手なんだけどね。


それにしても、ミキティと会うのは久し振りで、大学に入ってから初めてだった。
メールはよくしてるんだけど、やっぱり学校とともに家が離れてしまったから、
わざわざ会うっていうことをしてなかった。
メールだけじゃできない話しもあるし、やっぱり会うのが5ヶ月ぶりだと、
普段はクールと言われているウチらもすごく盛り上がってしまった。
相変らずのミキティの毒舌っぷりが逆にうれしかったりしてね。
190 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:28
家に着くと、梨華ちゃんがお茶とお菓子を用意してくれてて、
3人で話していると、あいぼんが顔を出して挨拶していった。
そしたら、ミキティがウチに耳打した。
「お姉さんも妹さんもカワイイね。よっすぃーはどっちがタイプ?」
「!!」
ウチはミキティの顔をマジマジと見てしまった。
まさか、ウチのそんな風な態度が出てしまっていたんだろうか…

ミキティはニコッとして、またウチの耳に口を近づけてきた。
「アタシは妹かな」

そのときはかなり動揺したけど、
そのあとすぐ、ウチが中学、高校んとき、女の子にもててた話しをはじめた。
ちなみにミキティも結構女の子から人気あったんだよね、なんていっても女子校だから。
2人で自分がどの子からコクられたって話しをよくしてて、
そっちの子の方がいい!とかお互い言ってたんだよね。
もちろん、2人とも本気ではそんなこと思ってなかったんだけど。

さっきの『どっちがタイプ』話しはそういう意味からだったみたい。
ウチの梨華ちゃんに対する気持ちが人から見てわかったわけじゃなくて、安心したよ。
でも、梨華ちゃんも一緒にその話しを聞いてたから、何か照れ臭かったんだけど。
しかも、梨華ちゃん、ウチがどんな風にモテてたのか、ミキティに詳しく聞いてるし。
ミキティも面白がって、いろいろ話ししちゃうし、もう余計なこと言うなよお。
191 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:29
「あー!そういえばさ、よっすぃー、合コンしようよ」
「へっ?」
何でも、ウチのプリクラを見たミキティの大学の同級生が、
相当ウチのことを気に入ったらしく、ぜひ会いたいと言ってきたらしい。
何だかなあ…そんなの全然キョーミないけど。
だってウチには梨華ちゃんが…

目の前の梨華ちゃんを見ると、眉間にシワを寄せてミキティのことを見てた。
…うーん、でも、ここであんまり拒否するのはおかしいよな。
ウチに彼氏がずっといないこと、梨華ちゃんは知ってる。
合コンを理由もなく断るなんて、オトコに興味ない、
女が好きかと思われたら警戒されてしまうかも…

「めちゃめちゃ面白くていいヤツなんだけどなあ、どう?」
「…うん、いいよ」
「マジで?サンキュー!よし、早速メールしてあげよっと」
192 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:29
ふと、梨華ちゃんを見てしまう。キョトンとしてウチを見ていた。
…あれ?
徐々に梨華ちゃんが何か泣きそうな顔になってきた。
…どうしちゃったの?
すると梨華ちゃんは立ち上がって、キッチンに向かい、お湯を沸かしはじめた。
ウチらの紅茶の入ったカップが空になってたから、新たに入れてくれるみたい。

「ねー、よっすぃー、今度の土曜日は?」
「えっ?あ、ああ、いいよ」
ウチは梨華ちゃんのことが気になって、それどころじゃなかったんだけど。


193 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:29


いつも通りに、1人で海岸を歩く。
先々週まで普通にしていたことなのに、なぜかすごくさみしい。
先週、ひとみちゃんとここで過ごした時間がすごく遠くのことのように感じる。
ひとみちゃんとまた一緒に歩きたいな…



昨日聞いた藤本さんの話しは面白かった。
私の知らないひとみちゃんの話し。

中学・高校と一貫の女子校。
ひとみちゃんは何となく藤本さんも誘ってみて、2人でバレー部に入った。
かっこいいひとみちゃんは入学してすぐに同級生、先輩問わず
沢山の人にコクられて、あっという間に学校一の人気者に。
ちなみに藤本さんは、先輩からはサッパリだったけど、
後輩からはすっごく人気があったみたい。何か納得できるなあ。

それまで一番人気だったのは、1つ上のバスケ部の先輩。
その人は、藤本さん曰く、スカートはいてるから女だけど、どうみても男にしか見えない、
全然キレイでもかっこよくもないけど、男っぽいからってだけの人気だったと。
現に、見た目と違って中身は超オンナで、ナンバー1の座を奪ったひとみちゃんに対して、
勝手にライバル意識を持って、いろいろひどいことをしたとか。
194 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:30
例えば、ひとみちゃんのことをいいって言ってる子がいたら、
言い寄って、気持ちを自分の方に向けるようにしたり。
ひとみちゃんにコクってふられた子に対しても、ゴーカンみたいなことしたり…
でも、その子たちは泣いてそのことを相談にくるもんだから、
結局ひとみちゃんがなぐさめてあげて、またそれが評判をよんで、
ひとみちゃんの人気は余計にすごくなっていったみたい。


ひとみちゃん、人のことなぐさめるのうまいもんね。
私も、ひとみちゃんに抱きしめてもらったり、
頭撫でてもらうのが、すごく好き。
何か安心するんだよね、ひとみちゃんの胸の中って…
195 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:30
お墓参りをして、保田さんのお店に行く。
「あれー、今日は1人なの?」
保田さん、ちょっと残念そう。

「そういえば、先週、ウチのイトコがごめんねー、バカなこと言ってー」
「あー、ゼンゼン!
でも、保田くんにそっくりで、すごくビックリしちゃいました」
「あはは、身内の中でも、あの子とウチの弟とアタシの3人が、
すごく似てるもんだから、昔っから3兄弟って言われてたんだもん」

ふと、私は壁のコルクボードに貼ってある写真を見る。
3兄弟か…保田くんにとって、イトコの彼は弟みたいな存在だったのかな。
私とひとみちゃんみたいな関係だったのかな…

「ナニ?弟にそっくりだから、好きになっちゃいそうとか?」
私が写真を見てることに気付いた保田さんが、ニヤッとしながら聞いてきた。

「そんなことないですよ。彼は彼で保田くんじゃないんだし」
「ふーん…あ、そっか、そっか」
一瞬真面目な顔になった保田さんが、またすぐにニヤッとした。
196 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:31
「なんですか?何が『そっか』なんですか?」
「いやー、石川には別に好きな人がいるんじゃないかなーって」
ますます、ニヤニヤしながら私の顔を見てくる保田さん。

「えっ!?何ですか、ソレ?いるわけないじゃないですか!
だいたい、何で保田さんがそんなことわかるんですか!」
「そりゃー、見てればわかるって」
「だから、いないですって!
何でいないのに、見てわかるんですか!」
「ま、自分で気付いてないならいいわよ。
でもアンタ、完全に恋してる女の子の顔なんだけどなあ」
保田さんはクスクス笑ってる。

…まったく、どこに私が好きになるような男の人がいるっていうのよ。
でも、何で保田さんはあんなに自信ありげに言うんだろ?
私、恋なんかしてる覚えないのに。
人を好きになってなんかないし、なっちゃいけないのに…
197 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:31
その次の土曜日。
私は柴ちゃんと映画を見に行って、ゴハンを食べて、カラオケをしている。
今頃、ひとみちゃんは合コンの最中だ。
ひとみちゃんが藤本さんの誘いにOKするとは思わなかった。
それも相手がひとみちゃんのことを気に入ってるなんて。
ひとみちゃん、合コンとかするような人はイヤだって言ってたのに。
…よくわかんないけど、裏切られたようで、ちょっとショックだった。


そういえば、昨日の夜、ひとみちゃんに藤本さんから電話があった。
藤本さんが連れていこうとした友達が体調悪くてドタキャンになったから、
誰か友達誘って!っていうお願いの電話だったらしく、
ひとみちゃんは携帯の画面をスクロールしながら考えて、
結局、松浦さんに電話してた。
松浦さんは即OKしたみたい。
たとえ合コンだって、大好きな人からのお誘いだったら、断るわけないよねえ。


きっと、今頃、そのひとみちゃんのことをイイって言ってる男の子が必死にくどいてて、
ひとみちゃんの逆隣りには酔っ払った松浦さんがいてベッタリしてて、
王様ゲームとかやっちゃって、1番と2番がキスするーとかで、
ひとみちゃんが「あ、ウチが1番!」とか言っちゃって、2番の人が…
198 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:32
「梨華ちゃん、どうしたの?曲はじまってるよ」
「えっ!?」
あ、カラオケにいること、すっかり忘れてた…
柴ちゃんが、曲をストップさせて、私の顔をじーっと見つめる。

「…なによお」
私が横を向くと、ニヤッとする柴ちゃん。
「ね、もしかして、梨華ちゃん、好きな人できた?」
「!!いないって!!なんでそんなこと言うの?」
どうして、保田さんだけじゃなくて、柴ちゃんまで…

「ふーん、何かね、梨華ちゃん、キレイになったっていうか、
イキイキとしてるんだよねえ。そのくせ、たまに物思いにふけてるみたいだし」
柴ちゃんと会うのは、5月以来なんだけど、
前に会ったときとだいぶ私の雰囲気が違うのだとか。

「そんなことないよ、全然変わってないよ」
「会社でいい人いるとか?」
「いないいない、全然いない。いるわけないじゃない」

突然、柴ちゃんがすごく真面目な顔になる。
「…ね、もしかして、まだ保田くんのこと…」
「………」
私がうつむくと、柴ちゃんが大きなため息をつく。
199 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:32
「まったくー。すっごく月並みなこと言うけどさ、
保田くんだって、梨華ちゃんが幸せになること望んでると思うよ」
柴ちゃんが、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「ほら、付き合う前から、保田くんによく言われてたじゃん。
梨華ちゃん、いっつも細かいこと気にしててさ、
『石川はネガティブだよなー。もっとポジティブに考えろよ、ポジティブに』って」

…うん、そうだった。
保田くんはいつも元気で明るくて、大らかな人だった。
だから、私が落ち込んでると『ポジティブ、ポジティブ』って慰めてくれたっけ…

「梨華ちゃんがそんなネガティブでいたら、保田くん怒ってるんじゃないかな」
私が顔を上げて、柴ちゃんの顔を見るとニコッとしてくれた。

「だからさ、新しい恋して、幸せになってさ、
保田くんに梨華ちゃんのポジティブなとこ見せてあげなよ」
…恋か…
『恋する』ってどんな感覚だったっけ…?
そういう感じ方もすっかり忘れちゃってるような気がする…
200 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:33
家に帰ってお風呂に入ったあと、
部屋で大学1年のときの写真が入ったアルバムを取り出してみた。
ベッドに転がって、ページをめくっていく。
保田くんはどの写真を見ても、いつも楽しそうに笑ってる。
私も保田くんみたいにポジティブでいなきゃダメだよね。
今の私を見て、保田くん、イライラしちゃってるかな。
天国からも、心配かけちゃってごめんね…


しばらくボーッとしてしまっていて、気付いたら、1時半くらいだった。
のどが渇いたから、キッチンにいくと、パジャマ姿のひとみちゃんがソファに座って、
タオルで髪の毛を拭きながら、テレビを見ていた。

「あ、梨華ちゃん、まだ起きてたんだ」
「うん…あ、合コン、どうだった?楽しかった?」

私はお茶を注いだグラスを持って、ひとみちゃんの隣りに座った。
「あ、ああ、盛り上がったことは盛り上がったけど…」
201 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:33
…そっか、そうだよね。
ひとみちゃんのこと、気に入ってる人だもん、盛り上げてくれるよね。
きっと、携帯番号とか交換してるんだよね。
明日ももしかしたらデートとかしちゃうのかな…
ひとみちゃん、付き合ったりしちゃうのかな…


私は無意識に、ひとみちゃんの肩に頭を乗せていた。
何にも言わなくても、ひとみちゃんは優しく私の髪を撫でてくれる。
うん、気持ちいい…ずっとずっとこうしててほしい。
ひとみちゃんがこうしてくれるなら、別に彼氏なんていなくてもいい…

でも、ひとみちゃんに彼氏ができちゃったら、どうなるんだろう?
私の相手なんかしてくれなくなっちゃうかな…
彼氏が1人暮しとかだったら、あいぼんと私の面倒なんかみるより、
彼氏のためにいろいろしてあげたいだろうし。
もし、そうなったら彼氏の家に入り浸りで、
うちに帰ってきてくれなくなっちゃったりするのかな…
私の頭撫でてくれたり、ギュッとしてくれたりしなくなっちゃうんだよね…
…そんなの、イヤ…
202 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/11(木) 00:33
「…?…梨華ちゃん?」
ひとみちゃんが、私の顔をのぞきこむと、
困ったように眉を下げながら、私の目の下を親指でぬぐってくれる。
あー、もう、何泣いてるんだろ、私。

ひとみちゃんが、私のことを抱き寄せてくれる。
そして優しく背中を撫でてくれる。
こういうことしてもらえなくなったら、本当にさみしい…
ずっと、ずっと、こうしててほしい…


203 名前:名無し作者 投稿日:2003/09/11(木) 00:50
更新しました。すっかりsage忘れ…

>>179さん
ありがとうございます。
そんな誉めていただけると恐縮すぎます…
ご期待に応えられるようがんばっていきたいです

>>180さん
泣かないで下さい…
でもシンクロしていただけるのはうれしいです(W

>>181さん
そうです、確実に梨華ちゃんの心の中には、よっすぃーがいます!
これから、よっすぃーにはもっとがんばってもらわないと(W

>>182さん
ありがとうございます。
まったり、ほのぼの、せつないというワードはとてもうれしいですね。
がんばりますので、ひきつづきよろしくです

204 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/11(木) 01:06
一緒に並んで帰るだけでドキドキした中学時代の恋を思い出しました。

今回もシンクロして胸が痛かった。
梨華ちゃん早く自分の気持ちに気付いてよぉ。。。
205 名前:( ´ω` )よっすぃ〜 投稿日:2003/09/11(木) 12:01
よっすぃ〜りかちゃんを泣かせないでぇぇぇぇぇ

でもよっすぃ〜もつらいんだよね(涙)

せつないわぁぁぁぁぁ早くお互いの気持ちが伝わるといいね。

更新お疲れ様ですmm(_ _)mm
206 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/11(木) 14:08
>>205はsageないポリシーでもあるのか
207 名前:( ´ω` )よっすぃ〜 投稿日:2003/09/11(木) 22:10
>>206

すまない・・・sage ないポリシー別にないyo
忘れただけだよ!ヽ(`Д´)ノ ウワァン
208 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003/09/16(火) 21:09
切なくても痛くないこの雰囲気、いしよし好きには、たまらん!

引っ張りまくっても良いから、幸せにしてやってね。
209 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 01:07
いい
210 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:56


昨日の夜、梨華ちゃんを泣かせてしまった。
きっと、合コンが盛り上がったなんて、話しをしたから、
また元カレのことを思い出してしまったに違いない。
ウチはバカだよ、ホント学習能力がないというか…

今日、梨華ちゃんは、お昼少し前に起きてきたけど、どうも元気がない。
ボーッとしたまま、遅い朝食というか早い昼食を食べはじめる梨華ちゃん。
あいぼんは、もうすでに図書館にいっている。



そういえば、おとといの午後、授業が休講になったから、保田さんの店に行ってみた。
さすがに梨華ちゃんと2人で行くのは、何となく気が引けたけど、
梨華ちゃんのいないところで保田さんのイトコの話も聞いてみたかったし。

で、保田さんの話しを聞いて、正直安心した。
先週の日曜日の梨華ちゃんの様子からすると、
イトコの彼には全然興味ないみたいだし、
彼は彼でちゃんと東京に彼女もいるらしい。
しかもその彼女は雑誌のモデルとかやってて、
超ヤキモチ焼きだから、実際のところは浮気なんかしないみたい。
彼はただ単にノリがいい、よく言えば社交的な人で、
女の子に対しては誰にでもあんな風に声をかけるらしいし。
211 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:57
「梨華ちゃん、今日も鎌倉行くの?」
「…うん」

それにしても、今日の梨華ちゃん、やっぱり元気ないよー。
…どうしたら、元気になってもらえるんだろう?


「あ、あー、もし、よかったら、ウチ、車で一緒に行こうか?
ほら、もう9月入ったから、海水浴客も少ないだろうし」

キョトンとしている梨華ちゃん。
…やべー、ウチと行きたいと思ってるなんて勘違いか。
そもそも、カレのお墓参りにいくんだもんな。
1人で思い出に浸りたいんだよな…


「…そんなの迷惑だよね。ごめん、でしゃばったこと言って」
ウチは空いた皿を流しに運ぼうと立ち上がった。
「うん!!」
「…へっ?」
梨華ちゃんの方を見ると、すごく笑顔になっていた。

「車で行くなんて初めて!すっごく楽しみ」
「…あ、あはは…」
なんだ、全然元気じゃん…よかったよ、安心した。


「ね、ひとみちゃんはお昼ゴハン食べたの?」
「いや、まだだけど」
「じゃ、早く食べて早く行こうよー」
梨華ちゃんは、ウチの腕を引っ張る。
まるで、子供がお母さんにおねだりしてるみたいでかわいい…

212 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:58
それからというもの、何度か2人で鎌倉にいった。
本当は毎週行きたいくらいなんだけど、
やっぱり、カレのお墓参りっていうのがメインなわけだし、
そういった意味でも一緒に行くのは少し心苦しかった。
一応、梨華ちゃんは毎週誘ってくれるけど、
2回に一度くらいのペースにしていた。

行けば、保田さんは喜んでくれるし、面白い話しもしてくれる。
保田さんは、本当にお姉さんみたいな存在で、
梨華ちゃんもウチに甘えるのとは違う甘え方をするところを見れるのも何かうれしい。
梨華ちゃんは年上っていっても、ウチにとってはお姉さんとは違う存在だから、
その分、保田さんが2人の本当のお姉さんがわりって感じかも。
そんなんだから、保田さんのお店に梨華ちゃんと行くのは楽しかった。



そして、12月最初の日曜日、
実は、今日で、保田さんのお店はしばらく休業。
オーストラリアに行ってしまうのだ。
次にお店が開店するのは、3月に入ってからとのこと。

保田さんの誕生日ももうすぐってこともあり、
ウチは梨華ちゃんと2人で協力して作ったケーキをあげた。
保田さんはすごく喜んでくれた。
そして、コーヒーを入れてくれて、3人でケーキを食べた。

「コレ、本当においしーよ!吉澤が1人でつくったんでしょ?」
保田さんは本当においしいと思ってくれてるようで、
8等分に切ったケーキの2切れ目に手を出していた。

「違うよっ!私だってつくったもん!
ほら、このウサギの絵書いたのも私だし」
ショートケーキの上に、チョコペンシルで書かれた
「HAPPY BIRTHDAY」のメッセージとウサギの絵は
確かに梨華ちゃんが書いたもの。

「ま、トッピングやったのは梨華ちゃんなんで、見た目が悪いんですけど」
ウチがそう言うと、梨華ちゃんはプーッと頬を膨らませた。
「何よお、一生懸命やったのに、そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「だって、本当のことじゃん」
ウチは、梨華ちゃんの膨れたほっぺを両手で包み込んだ。
怒ってたはずの梨華ちゃんの顔が、恥ずかしそうな笑顔に変わっていく。
かーわいいなあ、マジで。
保田さんは、そんなウチらを見てクスクスと笑っていた。
213 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:59
それからも、しばらくくだらない話しを続けてたんだけど、
そろそろ帰ろうかなってときに、会話が途切れて、保田さんが言った。

「吉澤の好きな人って、石川のことなんでしょ?」

やっぱり、保田さんにはお見通しか…

「…はい。梨華ちゃんのこと、好きです、大好きです」

目を見開いて隣りにいるウチのことを見る梨華ちゃん。
「ちょ、ちょっと、なに言ってるの?」

「本気で好きです。イトコとか年上とか、女同士とか、
そんなの関係なく、好きなんです」

自分の気持ちが自然とすらすらと口から出てくる。
でも恥ずかしくて梨華ちゃんのことは見れなくて、保田さんの方を見ながら言った。
何も言わずに固まっている梨華ちゃん。

「で、石川はどうなの?
かっこいいひとみちゃんはアンタのことが好きみたいだけど」
保田さんがニヤニヤしながら言った。

「…そんなこと、突然言われても…」
梨華ちゃんは、うつむいたまま、小さくそうつぶやいただけだった。


そのあと帰り道、一言も口をきいてくれなかった。
ウチも何となく話しかけられなくって…
その日は、家に帰ってからも、全然話しをしなかった。


勢いで告白してしまったけど、
よく考えたら、何であんなこと言っちゃったんだろ。
そりゃ梨華ちゃんが戸惑うのは当たり前だよ。

どういうわけか、自分の気持ちを伝えるとしたら、
今しかないととっさに思ってしまった。
別に、自分の気持ちなんて伝えなくていいのに…
むしろ伝えない方がいいはずなのに。
めちゃめちゃ後悔だよ…
今日の帰りみたいに、これからもウチと口きいてくれなくなっちゃうんじゃ…
214 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:59
でも、そんなことはなくって、翌日からは全く普通だった。
いつも通りに、朝ゴハンや夕ゴハンを食べるときは、
あいぼんと3人でくだらない話しして。

まるで、ウチの告白なんか忘れてしまったんじゃないか、聞いてなかったんじゃないか、いや実はウチが言ってなかったんじゃないかって思うほど、
ウチに対して全然態度が変わってなかった。


でも、大きく変わったことがあるのにすぐに気付いた。
梨華ちゃんがウチと2人っきりになることがなくなったのだ。

あいぼんがリビングからいなくなれば、梨華ちゃんもいなくなる。
今まではテレビを見るときは、リビングで見てたことの方が多かったのに、
自分の部屋で見てるみたいだし。
おかげで、梨華ちゃんとじゃれあうことも全くしてない。


やっぱり、ウチの梨華ちゃんに対しての気持ちが迷惑だったんだろう。
つーか、キショイとか思われてしまったのかも。
そりゃそうだよな、イトコで妹みたいに思ってる女の子が、
自分に恋愛感情持ってたなんてわかったら、一緒になんていたくなくなるだろう。

でも梨華ちゃんは大人だから、少なくともあいぼんがいる前では、
今まで通りに普通にふるまってるんだ。

はあ、ウチは自分の感情も押さえられないで、勢いで告白までしちゃう子供なのに…


215 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 00:59


ひとみちゃん、何であんなこと言ったんだろう?
きっと、私が悪いんだ。
変に抱きついたり、一緒に寝てって言ったり、甘えたりするから。
たぶん、ひとみちゃんは、恋愛とかにあんまり免疫がないんだと思う。
それで、身近でそういうことをされちゃって、
そういう気持ちになっちゃったんじゃないかな。
ほら、学生のときって、年上の同性に憧れたりすることあるし。

私はひとみちゃんとどう接していいのかわからなくなってしまった。
いや、必要以上に接触しない方がいいんだって思った。
だから、ひとみちゃんと2人っきりになるのは避けるようにしていた。
でも、さすがにあいぼんには心配をかけたくないから、
3人でいるときは今までと同じようにふるまってたんだけど。

ひとみちゃんのこと、たぶらかしちゃったみたいになっちゃったのかな。
4つも年下の大学生でイトコで、しかも女の子…
ひとみちゃんにはちゃんとした人と真っ当な恋愛をしてほしい。
私はもう恋愛なんてしたくないし…
216 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:00
クリスマスイブ。
年末のせいか、仕事が少し忙しくて、残業して遅くに帰ると
サンタさんの格好をしたひとみちゃんがケーキを作って待っていてくれた。
七面鳥ではなかったけど、チキンも用意してくれて。
あいぼんも食べないで待っててくれたから、
遅い時間から、我が家のクリスマスパーティー。


「サンタさーん、プレゼントはないの?」
あいぼんが言うと、ひとみちゃんはニッコリ笑って、
「サンタさんからは、愛をプレゼント〜」
あいぼんのことをギュッと抱きしめた。
そして、私のことも背中から一瞬ギュッと抱きしめた。
「!!」

「もう、よっすぃーサンタ、ずるいわー」
「ナニ言ってんだよー。ケーキも料理も作ってあげたじゃん。
あいぼんは高校合格のときにまとめて豪華なプレゼントあげるから」
「ホント!?じゃあねー、何にしよっかなあ…」

笑いながら話してるあいぼんとひとみちゃんの声がすごく遠く聞こえた。
さっきひとみちゃんに抱きしめられたとき、すごくドキッとしちゃった…
今までもしょっちゅうしてることなのに。
確かに最近ひとみちゃんと2人にならないようにしてたから、
久し振りだったからなのかもしれないけど。

ひとみちゃんのことを、ぼんやり見てたら、目が合ってニコッとしてくれた。

…そっか、ばっかだなあ、私。
私のこと好きだなんて言ってくれたひとみちゃんのこと、意識しすぎなんだ。
ひとみちゃんは、今までと何も変わってないのに。
217 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:00
でも、やっぱりそれからも何となく意識してしまって、
結局ひとみちゃんと2人っきりになることはできないまま、
12月29日になり、お父さんとお母さんが日本に帰ってきた。

しかも、ひとみちゃんは大晦日から3日までは埼玉に帰って、
藤本さんの家に泊めてもらいながら、地元の友達と遊ぶらしい。
藤本さんの家は焼肉屋さんで、正月も休みなく働いてて、
これまでも年越しは藤本さん家でしているから、
いつもと一緒なんだって言ってたけど、私たち家族に気を遣ってもあると思う。
『家族水入らずでのんびり過ごしなよ』なんて言ってたし。


その4日間、友達と遊んだりもしたけど、
ひとみちゃんが言ってくれたように、ほとんど家で家族とのんびり過ごしてた。
それにしても、何かがポッカリ空いてしまっている気がしてた。
…そう、やっぱり、ひとみちゃんがいないから。


年明けてすぐに、ひとみちゃんが家に電話をくれて、
お父さん、お母さん、あいぼん、私にそれぞれ、
『明けましておめでとう』と言ってくれた。
『今年もよろしくね』って言葉がすごくうれしく思えちゃって。
218 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:01
4日にはひとみちゃんも帰ってきて、
逆にお父さんがニューヨークに戻っていった。
お母さんはあいぼんの受験に備えて、そのまま残っている。
予定ではあいぼんの高校入学を見届けてまでだから、4月の頭くらいまで。
でも、お母さんがいるってことは家事をする人がいるってことで、
ひとみちゃんは家のことをやる必要がなくなってしまった。
お母さんが手伝えっていうのは私にだし…

実は、家のことをひとみちゃんが全部やってくれていたことに、お母さんはご立腹。
もちろん、ひとみちゃんには感謝してるんだけど、
受験生のあいぼんはともかく、一番大人の私が何もしていないことに怒ってて、
自分がこっちにいる間に、いろいろ教え込もうとはりきってしまっている。
ひとみちゃんは、それを気にして、あえて手を出さないようにしてるみたい。
お母さんには悪いけど、ひとみちゃんのお料理、すごく楽しみだったのにな…


ひとみちゃんは手持ち無沙汰になってしまったせいか、
近所の居酒屋で週に3、4回アルバイトをはじめた。
やっぱり、お料理するのが好きだから、調理の方をやってるみたい。
家庭教師のアルバイトはまだ続けてるけど、そっちは夕方までだし、
かけもちする日もあって、夜遅くまでやってるから、
顔を合わせない日もあったりして何だかさみしい。
そういうのもあるし、お母さんがいるから、
家でひとみちゃんと2人っきりになることは意識しなくても全くなくなっちゃった。
219 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:01
そんなある日の夜。
部屋で、雑誌を読みながらベッドでゴロゴロしてると、ドアがノックされた。

「…梨華ちゃん、ちょっといい?」
ひとみちゃんの優しい声がした。

正直、私は驚いていた。
最近は全然2人っきりになってもいなかったし、そもそもこんな改まって、
しかも夜に、私の部屋にひとみちゃんがやってくることなんてはじめてだ。
少し緊張しながら、部屋のドアを開けた。

「…どうぞ」
「あ、ありがと」

ひとみちゃんが、私の部屋に入ってきて、ドアをそっと閉める。
隣りの部屋のあいぼんが勉強してるか、寝てるかを気遣ってのことだと思う。

ひとみちゃんは、立ったまま何も言わないで、部屋を見渡している。
…あー、ここんとこ、お部屋掃除してないから、またキタナイとか思われちゃったかな。

何だろう?何の用事なんだろう?
聞こうと思って、口を開きかけたら、
ひとみちゃんの腕時計からピピッと音がした。

「…えっと…誕生日、おめでとう…」
ひとみちゃんは、はいていたジャージのポケットから、
小さなケースを取り出して私に渡した。

私はワケがわからずキョトンとしていた。
「一番ノリしようかなーって思って」
ひとみちゃんが恥ずかしそうに、微笑んだ。

部屋の時計を見ると12時ジャストだった。
そうだ、日付が変わって、今日、1月19日は私の誕生日…
ひとみちゃん、ちゃんとおぼえててくれたんだ。
220 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:02
「…あとさ、もう1つ、どうしても言いたいことがあって…」
ひとみちゃんは、真面目な顔をして、私をまっすぐ見つめる。

「…前にさ、保田さんのお店で言ったこと、忘れて」
私は思わず、ハッとしてしまった。

「ほら、あれからさー、梨華ちゃん、ウチと2人っきりになるの避けてるでしょ?
なーんか、そういう気まずいままなの、イヤだしさ。
うん、あのとき、保田さんはウチに何も聞かなかったし、ウチも何も言ってない」

…そんなの、そんなのって…
もしかして、私が避けてたこと、怒ってるの?
もしかして、私のこと嫌いになっちゃったの?


私は、無意識にひとみちゃんの胸に飛び込んだ。
ひとみちゃんが少し前までよくやってくれたように、優しく頭を撫でてくれる。
…ホントはひとみちゃんに、こうやってほしいと思ってたんだと改めて気付いた。
ずっとずっとガマンしてたんだ、私。

そう思ったら、涙が出てきて、止まらなくなってしまった。
「…ごめん、ごめん、ウチが悪かったよ。
梨華ちゃんの気持ち考えなくて、自分の気持ち押し付けちゃって…
迷惑だったよね?気遣わせちゃったよね?
本当にごめん。もう忘れてくれていいから。今まで通りにしようね」

…違う、違うの…そんな迷惑だなんて思ってない…
ひとみちゃんは全然悪くない。
ひとみちゃんの純粋な気持ちをもて遊んだみたいにしてた私が悪いの…

心でそう思っても言葉にできなくて、私はグズグズ泣いていた。
その間、ひとみちゃんは優しいトーンで、何度も何度も謝ってきた。
…謝らなきゃならないのは、私なのに…


私の携帯から着メロが聞こえてくる。
「…あ、電話だよ。ごめん、もう部屋戻るよ…おやすみなさい」
ひとみちゃんが、私から体を離すと、私の顔を覗き込んで、
頬の涙を指でぬぐってくれた。
そしてニッコリ微笑むと部屋を出ていった。
221 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:02
私は、立ち尽くしたまま、ひとみちゃんの出ていったドアを見ていたけど、
すぐに我に返って、鳴り続けている携帯をとった。

『もしもしー、石川?保田でーす。誕生日おめでとー!!』
なぜかテンション高い保田さんだった。
「あ、ありがとうございます、わざわざ」
『ん?何か元気ないんじゃないのー?吉澤とうまくいってないとか?』
「うまくもなにも、私たちは別に…」

私は自分の不用意な態度がひとみちゃんの純粋な気持ちを、
結果としてたぶらかしてしまったんだろうという話をした。
「…さっき、ひとみちゃんがきて、『あのときの言葉忘れて』って言われたし、
自分の気持ちが女性に憧れる一過性のものって気付いたんだと思います」

電話の向こうで大きくため息をつくのが聞こえた。
『石川、アンタ、本気でそんな風に思ってるんだったら、
鈍感もいいとこだよ、つーかバッカじゃないの』
「えっ?」

ひとみちゃんは今まで1人でお店に行ったときに、好きな人のことを相談してたらしい。
相手は大人で、全然自分のことを恋愛対象と思ってくれてないけど、
それでもいいって思うようにするって。
その人と一緒にいられるだけで十分幸せだからって。
もちろん、名前も女の人だってことも言わないで、
その気持ちだけを切々と保田さんに語ってたとか。


『好きな人の話をしてるときの吉澤って、ホントかわいいの。
もう顔がゆるみっぱなしでね。
だから、石川と一緒に来たときにすぐに気付いたわよ。
だって、吉澤ってば、石川と一緒だと、ずっとそのゆるんだ表情なんだもん』

…そうなのかな?
ひとみちゃんはいつも優しい目をしてくれてるとは思うけど…
222 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:02
『あとねー、この前、2人で来てたとき、吉澤が携帯忘れてったでしょ』

確か11月の頭に行ったときだったかな。
その日は車だったから、ひとみちゃん、すぐに気付いてUターンしたんだけど。
一応、お店じゃなくて別のとこの可能性もあるかなって心配だったから、
私の携帯から、ひとみちゃんの携帯に電話してみた。

保田さんもすぐに気付いて、私の携帯に電話しようとしてたらしい。
でも、その前にひとみちゃんの携帯が鳴り出して、
折り畳みの外側の画面に『梨華ちゃん』って出てたから、
保田さんも安心して電話に出たのだとか。

『そのとき携帯を開いて驚いたわよ。
だって、呼び出し音が鳴ってる間の画面が、石川の顔でさあ、
普通の顔とかならわかるんだけど、アンタのキス待ち顔だったから』


そんな写真なんてあげたっけ?
…思い出した!
ゴールデンウィーク中に、ひとみちゃんがサークルで旅行に行ってるときに、
あいぼんがひとみちゃんの携帯に送った写真だ。
恥ずかしい…あのときの写真、持ってるなんて。
しかもそんな画面に使わなくても…


しかも、保田さんが電話を受けた直後にひとみちゃん宛てにメールが届いてて、
機種が違う保田さんは、ボタン操作がよくわからなくて、
ちょっといじったら、受信メールの一覧画面が出てきてしまった。
で、何となく見てしまったら、
保護がかかってるのは私から届いてるメールだけだったらしい。
223 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:02
『ホントに石川のことが大好きなのね、あの子。
で、石川はどうなの?
その様子だと、気持ちを伝えることはしてないんだろうけど』

「私の気持ちですか…?」
『もう、とぼけなくていいから。
ちゃんとアンタが吉澤を好きだって気持ちもわかってるから』
「そんなこと…だって、ひとみちゃんはまだ大学生で、
4つも年下で…しかも女の子なんですよ?」
『まだそんなこと言ってるの?
石川、今まで恋したことあるでしょうが。
アタシの弟、好きだったんでしょ?
そのときの気持ち思い出してみなさいよ。
今、吉澤に対しても同じような気持ちでしょ?』

保田くんのこと好きだったときの気持ち…?


『いつも吉澤のこと考えたりしてるでしょ?』
そうかな…そうかも…
会社にいても、今頃ひとみちゃん、何してるかなとか思うし、
買い物してても、コレ、ひとみちゃんに似合いそうとか考える。
外食してておいしかったら、今度ひとみちゃんに作ってもらおうとか、
ひとみちゃんの料理の方がおいしいなとか思う。
少しでもかっこいい男の人を見たら、ひとみちゃんと比較して、
ひとみちゃんの方がいいって思う。
…前にも保田さんに言われたっけ、いつもひとみちゃんのことばっかり話してるって。
「…はい」
224 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:03
『吉澤が、他の女の子と、ま、一応男の子でもいいわ、
仲良くしてたら、何かむかついたりしない?』
松浦さんがうちで裸で寝てたとき、ホントひとみちゃんに腹が立ったな。
矢口さんとゴハン食べたときも、何かイライラしちゃって飲み過ぎちゃったし。
藤本さんとの合コンが盛り上がったって聞いたときは、泣いちゃったっけ…
「…はい」

『吉澤に抱きしめてもらいたいとか思うでしょ?』
うん、それはいつも思ってる。
だって、ひとみちゃんの腕の中は、すっごく気持ちよくて、
他の友達とかに抱きしめてもらうのとは、全然違う。
「…はい、思ってます」

『吉澤とキスしたいとか思わない?』
「えっ!?」
…キス?
考えたことなかった…
でも、ひとみちゃんが誰かとキスするのはイヤ…
…私自身、他の人にされるんだったらひとみちゃんとがいい。
ひとみちゃんの唇やわらかそうだし、
やっぱり気持ちいいんじゃないかな…
225 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:03
『ま、最後の質問はいいとして、
それだけ、吉澤のこと思ってるんなら、それが恋ってもんでしょ。
男とか女とか、年下とか年上とか、血が繋がってるとか、
そういうの関係なく人を好きになるのって、
ある意味、本当の恋なんじゃないかなあ』

本当の恋か…

『人を好きになるのって、基本的に理由なんかないでしょ。
顔がいいとか、あのときやさしくしてくれたとか、きっかけはあっても、
理屈じゃ人を好きになれないんだし』
「…そうですね…」

『吉澤、ああ見えて、結構繊細でしょ?
石川のことについてすっごく悩んでたと思うよ。
でも、繊細だけど、単純だから、
アンタが優しくしてくれたら、すぐにゴキゲンになるだろうし。
もし、アンタが自分のことを好きだなんてわかったら、
逆に「死んでもいい」とか言い出しそう』

私は思わずクスッと笑ってしまった。
もし、海岸とかでそういう状況になったら、
『うおーーーーっ!!』とか叫んで、
意味なく走って海に入っていったりしそうだもん、ひとみちゃん。
226 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:04
『しっかし、アンタたちはお互いにニブチンもいいとこだよね。
2人が一緒にいるとこ、普通の人が見たら、恋人かと思うわよ』
「そう、ですか?」
『石川だって、吉澤といるとき、すごくいい顔してるわよ。
石川ってすごくしっかりしてると思ってたのに、
吉澤といると、なんだか甘えん坊になってるしね』

…確かにひとみちゃんには、いろいろわがまま言っちゃってるかもしれない。
だって、ひとみちゃん、何でも受け入れてくれるから…

『ま、吉澤にちゃんと気持ち伝えなさいよ。
言葉でいえなくても、少なくとも態度で示してあげてさ。
冷たい態度とかとったら、本当に嫌われてると思って、
吉澤の気持ちも石川から離れていっちゃうかもよ』
「そんなのイヤです!」
『あははは、それだけ言い切れるようになったなら安心ね』


国際電話なのに、いろいろと話しをしてくれた保田さん、
本当に頼りになるお姉さん。
保田くん、どうもありがとう…
素敵なお姉さんに出会えさせてくれて。
すっごく感謝しています。
…それと、ごめんね。
私、好きな人ができちゃったみたい。
でも、保田くんも納得してくれると思うよ。
すごくすごくいい子で、魅力ある子だから。
むしろ、保田くんも好きになっちゃうかもしれないくらいだよ。


さっき、ひとみちゃんがくれた小さな箱を開けてみる。
「うわあ…」
中には、プラチナのピアス。
しかも1月の誕生石のガーネットが入ってる。
すぐにつけてみて、鏡を見た。
…すごくかわいい。
私の耳元で小さなピンク色が揺れている。
ひとみちゃん、コレ買うとき、一生懸命考えてくれたのかな。
私のこと思い浮かべて、コレなら似合うとか似合わないとか、
いろいろ悩んでくれたのかな…

あ、そういえば、さっき、ひとみちゃんにお礼を言ってなかった。
まだ起きてるといいんだけど…
227 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:04
そっと階段を下りて、ひとみちゃんの部屋に行く。
1階ではお母さんも寝てるから、物音を立てないように歩きながら。
ひとみちゃんの部屋の戸をノックする。
「ひとみちゃん、起きてる?」
「…えっ?あ、うん」
中でバタバタと音がしたと思ったら、すぐに部屋の戸が開いた。

部屋に入って、座布団に座る。
ひとみちゃんは敷いてある布団の上に体育座りをして、私のことを見た。

「あ、ピアス、つけてくれたんだ。ありがとう」
ニコッと笑って私のことを見るひとみちゃん。
…なんかドキッとしちゃった。

「どうもありがとう、すごくかわいいよ、コレ。
さっきは、ちゃんとお礼言えなくてごめんね」
ひとみちゃんは首を横に振った。
「すごく似合ってる。よかった、それにして」


何となくひとみちゃんの口元を見てしまって、
さっきの保田さんの言葉が浮かんできた。
『吉澤とキスしたいとか思わない?』
…イヤだ、私、何考えてるんだろ。
228 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:04
「梨華ちゃん、今日の夜は何か予定あるの?」
ひとみちゃん、誰かとキスしたことあるのかな?
付き合ったことなくても、キスくらいはしてるのかな?

「…?…梨華ちゃん?聞いてる?」
ひとみちゃんが、私の顔を覗き込んできた。
すごく顔が近くて、ビックリしちゃって、思わずのけぞっちゃった。
「えっ?あ、ああ、な、何?」

ひとみちゃんはハッとして、私から顔をそむけて、
もう少し離れたところに座りなおした。
「…ごめん」

ひとみちゃん、何で謝るの?
私がイヤがってるとでも思ったの?

「…あのさ、今日の夜、梨華ちゃん、まっすぐ帰ってこられるのかなって」
「え?あ、うん、帰ってくるよ、もちろん」
ひとみちゃんはニッコリとした。

「じゃ、おばさんと相談して何かおいしいものつくっておくから」
さすがに、誕生日なら、お母さんも私に手伝えとか言わないだろうし、
ひとみちゃんが手伝うって言えば、お母さんも喜ぶよね。
「うん、ありがとう」

…しばらく沈黙になってしまう。
どうしよう?何か話さないと…
229 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/21(日) 01:05
「梨華ちゃん、大丈夫?そろそろ寝た方がいいんじゃないの?」
「…あ、うん、そうだね」

私が立ち上がったときに少しよろけてしまったら、
ひとみちゃんがすばやく抱きとめてくれた。
「大丈夫?もう眠っちゃってるんじゃないの?」
ひとみちゃんが少し笑いながらそう言った。


ひとみちゃんの顔を近くで見つめる。
すっごく優しい目…ひとみちゃんの目、ダイスキ…
思わず、ギュッとひとみちゃんに抱きついた。

ひとみちゃんの腕の中はあったかくて、気持ちよくって。
どんなときでも私のことを受け止めてくれて、優しく優しくしてくれる。
ほら、今だって、私の髪を優しく撫でてくれている。


…ああ、やっぱり、私、この人のこと、好きなんだ。
この人じゃないとダメなんだ。
どうして今まで気付かなかったんだろう。


…そういえば、さっき、ひとみちゃん、
自分が言った言葉を忘れてくれって言ったんだった。
もしかしたら、他に好きな人ができて、
私のことなんて、もうどうでもよくなってるのかもしれない。
保田さんは、そんなことないみたいに言ってたけど、
保田さんに会ったのはもう1ヶ月以上も前のこと。
その間に気持ちが変わってるかもしれない。
そんなことを思ってたら、自分の気持ちなんて伝えられなかった。
そもそも、どう伝えようとか考えてもいなかった。


230 名前:名無し作者 投稿日:2003/09/21(日) 01:11
更新しました。

>>204さん
ありがとうございます。
そうですね、そういうカワイイ恋愛を目指してます。

>>205さん
ありがとうございます。
やっと、梨華ちゃんも自分の気持ちには気付いたのですが…
age、sageミスは作者本人もよくやるので、気にしないで下さい。

>>208さん
ありがとうございます。
もうちょっとだけひっぱります(W

>>209さん
ありがとうございます(W

231 名前:名無しいしよし 投稿日:2003/09/21(日) 02:50
今日一気に読ませていただきました。
恋心に至る心のグラデーション加減が凄く良いですね!!
読んでてやきもきさせられて、いしよしとしても
とても楽しい一時を過ごせました。
今後の展開、更に期待です!!
232 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 03:06
更新お疲れ様です。
いつも胸がすごく痛くて、痛くて。
今回はとうとうこの段階で号泣している私です(T_T)
あのキス待ち画像、ここで出てきたかぁ。
メールの保護とか自分の思い出とオーバーラップしちゃいました。
次も頑張ってください!
233 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 14:18
いつも楽しみにしています。
甘いいしよしがなんともいえません。
作者さんのペースでがんがってください。
234 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 15:07
ヤス良い人や〜。
キス待ち顔の待ち受け自分も欲しいです。
次回も楽しみにしております!
235 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 17:18
いしよしサイコー!
それにヤッス〜いいネタしてる!
頑張ってください。
236 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 01:42
梨華ちゃんお願い伝えてよ〜。
毎回更新が楽しみです。
ガンガッテ下さい。
237 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 19:38
うおーーーーーもどかしい
二人の気持ちをわかってる読者としては
歯痒い事この上ない!
でも面白い。続き楽しみにしてます
238 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/26(金) 02:48
‥(・∀・)イイ !!・゚・(ノД`)・゚・本当にイイッ!!
久々にm-seek来て、こんなイイ作品にめぐり合えるとは‥
梨華タソ‥もどかしい
作者さんがんがって下さい!
239 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:31


やっぱり、梨華ちゃん、ウチが好きだなんて言ったから、困ってたんだろうな。
あの言葉忘れてくれって言ったすぐあとには、今までみたいに抱きついてくれたし。
おばさんがいるのもあって、2人っきりになる機会は相変らずないんだけど、
何となく今までよりも、梨華ちゃんの目がより優しくなってる気がする。


梨華ちゃんの誕生日のあとの土曜日の夜、
大学時代の友達が誕生日パーティーをしてくれるとかで、
梨華ちゃんは出かけてしまっていた。

居酒屋のバイトを入れてたけど、
早番だったから10時には終わって、家に帰ってすぐにお風呂に入った。
部屋に戻るとすぐに、携帯が鳴った。
しかも、この着メロは、梨華ちゃんからだ。
携帯を開いて、梨華ちゃんのチュー顔を見る。
あー、こういう顔、ウチに本当にしてくれることなんてないんだろうな…


「もしもーし?どした」
『あー、よっすぃー?柴田ですぅ』
「へっ?」
…なんで?

実は、梨華ちゃん、1軒目からハイペースで飲みまくって、
今、2軒目のカラオケで熟睡してる模様。
このままだと、誰かが家に送らなくちゃならないかも、
だったら、迎えにきてもらおうと、梨華ちゃんの携帯を勝手に借りて、
ウチに電話してきたのだとか。
240 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:31
まったく、梨華ちゃん、何でそんなに飲むかなあ。
みんなが誕生日を祝ってくれて、ゴキゲンになっちゃったのかなあ。
ウチは急いで車を走らせて梨華ちゃんの元へ向かった。

カラオケ屋の場所と部屋番号は聞いてたから、車を近くに止めてから、走った。
部屋のドアを開けると、女の人ばっかり10人くらい。
入り口近くにいた柴田さんがウチに気付き、笑顔になる。

「あー、よっすぃー、ありがとう」
「すみません、梨華ちゃんが迷惑かけて…」

「えっ、この人がよっすぃーなの?」
「きゃー、かっこいい!」
何かワケがわからず、いろんな人に抱きつかれたりした。

柴田さんの話しによると、
梨華ちゃんは「ひとみちゃんのバカ」「ひとみちゃん、人の気も知らないで」
とか言いながら、グイグイ飲んでいたらしい。

柴田さんも「梨華ちゃんのイトコのひとみちゃん=よっすぃーは超かっこいい」とか
話しをしていたらしく、今日『よっすぃー』は話題の人になっていたのだ。

で、梨華ちゃんはというと、部屋のソファーのはじっこで丸くなって眠ってた。
241 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:32
ウチは梨華ちゃんをおぶって、車まで向かった。
全然起きる気配もないよ。
「人の気も知らないで」って、こっちは「人の気を知ってるくせに」って言いたいよ。
全く、何でこんなに飲み過ぎるかなあ。
今日は女の人ばっかりだったからいいけど、
男の人がいるところでこんなになったらどうすんだよ。
何かされてもわかんないじゃんか。
起きたら、ビシッと叱ってやんないとなあ。


家に着くと、おばさんが心配してくれて玄関まできてくれた。
「全く、どうしようもないんだから。
ごめんね、ひとみちゃん、迷惑かけて」
「いえいえ、大丈夫です」

そのまま梨華ちゃんを部屋までおぶっていった。
ベッドに寝かせても、ビクともしない。
…もう、絶対外で飲み過ぎたら、ダメだからね。
ウチは軽く梨華ちゃんにデコピンしてやった。
242 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:34
2月7日のあいぼんの誕生日には、
梨華ちゃんのときと同じく家でパーティーをやってあげた。
あのときは、どういうわけか、梨華ちゃんはすごくおとなしかった。
何かまるで緊張してるみたいで、
とくにウチが動くといちいちビクッとしてて。
別に襲いかかったりしないってーのにさあ…
おばさんもあいぼんも不思議がってたくらい。

で、自分の誕生日のときとはうってかわって、
梨華ちゃんはゴキゲンで、おばさんが用意してくれてたワインをゴクゴク。
あいぼんは、受験目前ということもあって、
食事が終わったら勉強しにすぐに部屋に戻ってしまったんだけど。

それからも、梨華ちゃんは飲む飲む。
おばさんもウチも飲んだんだけど、梨華ちゃんが一番飲んでた。
梨華ちゃんは、基本的にお酒が好きなのかも。
この前酔っ払ってウチが連れて帰ってきた次の日に、
おばさんからもウチからも怒られたもんだから、
それからは全然お酒を飲んでなかったみたいだけど。

ま、家でなら全然構わないよ、むしろうれしいくらい。
梨華ちゃんは飲んでるとき、楽しそうだし、
いつもに増して子供みたいになっちゃってカワイイし…
243 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:34
ワインもなくなって、おばさんはお風呂に入っていったので、
ウチは梨華ちゃんと2人っきりになった。
梨華ちゃんには、もうウーロン茶しかあげてないんだけど、
まだ酔っ払ってて、超ゴキゲン。

「ひとーみちゃんっ!」
梨華ちゃんは、ソファに座ってるウチの脚をまたいで、
ウチの膝の上に座って抱きついてきた。

…うわ、なんつーカッコしてんだよ!
だっこした状態でそのまま、座ってるカンジなんだけど…
今は部屋着のジャージだからいいけど、
梨華ちゃん、外でもこんなことしてんの?
スーツとかでやったら、スカートの中、丸見えじゃんか…
しかもウチにピッタリくっついて、
ほっぺにほっぺをくっつけてくる。

…もう、梨華ちゃん…
ウチの気持ちわかってんじゃん…
酔っ払ってるとはいえ、どうしてこんなことすんだよ…
ウチだってお酒入ってるし、キケンかもしれないんだよ?
…ったくぅ…
ウチはこれ以上ヘンな気持ちにならないように、
なるべく梨華ちゃんに触れないようにしていた。
244 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:35
「ねえ、ひとみちゃん?」
「…ん?」
梨華ちゃんが、少し離れてウチの顔を上目遣いで覗き込んでくる。
「きょうはどうしてぎゅっとしてくれないの?
なでなでしてくれないの?」
……か、かわいすぎ……

「…し、してほしいの?」
「うんっ!ひとみちゃんにぎゅってしてもらうの、だいすき!」
ウチは、思わず梨華ちゃんの背中に勢いよく腕をまわしてしまった。

「ね、ひとみちゃんのけーたいのがめん、わたしのかおなんでしょ?」
「…え?」
梨華ちゃんの顔にしてるのは、梨華ちゃんからの着信のときだけだけど?
アレを普通に待ち受けにしてたら、誰に見られるかわかんないもん。
本当はしたいけど…
ん?つーか、何で本人にバレてるの???

「こういうかお、なんでしょ?」
梨華ちゃんが、ウチから少し顔を離したと思ったら、
目をつぶって唇を尖らせた…つまり、キスを待ってるような顔…

…やばいって…こんな顔されたら、ウチ…
…し、しちゃうよ?
…いいの?
245 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:35
ウチも目をつぶろうとしたら、梨華ちゃんの目がパッと開いた。
「あー、いま、ちゅーしようとしたでしょ?ねえ、ねえ?」
「ち、ちがっ…」
ウチは慌てて、梨華ちゃんの背中から腕を外した。

「ねえ、わたしと、きすしたいとおもう?」
…そりゃー、思うに決まってるじゃん。
自分の好きな人とキスしたいと思うのって当たり前でしょ。
つーか、梨華ちゃんみたいなカワイイ子とだったら、
100人いたら100人ともしたいって。


「ねえ、したい?」
「…梨華ちゃんは、どうなのさ?ウチとキスしてもいいの?」

梨華ちゃんは、何だか恥ずかしそうにウチの肩にオデコをのせてきた。
「…そんなの、いえないもん」
…かわいい…
しかし、『言えない』ってどういうことだろう?
『したくない』って言ったら、ウチを傷つけるとでも思ってくれてるのかな。

「…じゃ、ウチも言えない」
「もー、ひとみちゃん、ずるい」
「ずるいって、梨華ちゃんが先にそう言ったんじゃん」
「わたしはいいけど、ひとみちゃんはだめなの」
「何がダメなんだよー」
「だめだもんだめだもんだめだもん」
246 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:36
ホントかわいいんだけど、よく考えたら、梨華ちゃん、酔っ払いだった。
だいたい、こんなカッコして抱きあってるとこ、
あいぼんはもちろん、おばさんに見られたら、ヘンに思われてしまうかも。

「ほら、もう早くベッドに行くよ」
梨華ちゃんは、なぜかギュッと余計に力をこめて抱きついてきた。

「……ひとみちゃんのえっち」
「はあ!?何でエッチなんだよ」
「だってー、べっどって…」
「な、なに言ってんだよ!寝るってことだよ!」
「…やっぱり、えっちじゃーん」
「だ、だから、違うって!も、もう!酔っ払いはとっとと寝る!」

ウチは、そのまま梨華ちゃんをだっこして、立ちあがった。
「きゃっ!」
「ほら、行くよ」

ウチは梨華ちゃんをしっかりと抱きかかえた。
「あー、いま、おしりさわった!」
「しょ、しょうがないじゃんか!」
「ひとみちゃんって、むっつりだあ」
「何言ってんだよっ」
247 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:37
そのまま梨華ちゃんを部屋まで連れていって、ベッドに寝かせた。
「じゃ、おやすみ」
梨華ちゃんから体を離そうとしたら、腕を掴まれた。
「…ひとみちゃん、いっちゃうの…?」
梨華ちゃんがすごくさみしそうな顔をする。
…そんなこと言われても、こんな状態の梨華ちゃんと
部屋で2人っきりでいられるわけないじゃんか…

「リビング戻って片付けしないとさ…じゃね!おやすみっ」
「…あ…」
ウチは振り向きもしないで梨華ちゃんの部屋を出た。
はぁ…このまま一緒に部屋にいて、ウチにどうしろって言うんだよお…
248 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:37
その翌日、梨華ちゃんが、自分の昨日の行動がどうだったか聞いてきた。
あいぼんが自分の部屋に戻ったあたりまでは、
覚えてるらしいんだけど、そのあとからは全く記憶がないらしい。
うん、ワインかなり飲んでたもんね。

ソファに座ってたウチにとんでもないカッコで抱きついてきたから、
ベッドまで運んでやったとおおまかに説明した。
そしたら、梨華ちゃん、超真っ赤になっちゃって、
「…どうしよう…」
って言ったっきり、ウチの方を全く見なくなってしまった。

一応、キスうんぬんのあたりの話しは、ウチも恥ずかしいし、
朝ゴハン中でおばさんもあいぼんもいたから、カットしたけど、
もしそれを話したら、部屋にでもこもっちゃって、
ウチと同じ場にいることもいやがられそうだしね…

それにしても、こんな記憶のなくなる酔っ払いになる梨華ちゃんが、
外でどんな風にお酒を飲んでるんだか、すっごく不安なんだけど…
249 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:38
2月13日。

昼、学食のウチのサークルのたまり場にいたら、亜弥ちゃんがやってきた。
亜弥ちゃんはいつも短大の学食の方で、
クラスの子とかとお昼を食べてることが多いみたいで、
めったに4大の学食にやってくることはない。

「どうしたの?珍しいじゃん」
「えへへー…はい、コレ」
ウチの目の前にかわいくラッピングされた手作りらしきチョコレートが出された。
周りの男子連中がうらやましがってるのがわかった。
亜弥ちゃんの行動はわかりやすいから、最初にウチに好意を持ってたのは、
みんなにもバレバレだったし、半ば公認みたいなカンジになってた。
だから、みんなも不思議がることはないくらいだった。

「でも、義理だからね」
…そんなの言わなくてもわかってるよ。
ちなみに、明日バレンタイン当日は、亜弥ちゃんは恋人とデートらしいので、
今日のうち、ウチに義理を果たそうと思ったらしい。
ラブラブだもんねえ、ちょっとうらやましいくらいに。
義理っていっても、ウチにチョコあげたなんて言ったら、怒られるんじゃないの?
何気にヤツはヤキモチ焼きっぽいしなあ…



今日はバイトが家庭教師だけだったから、早めに家に帰った。
ちなみに、あさ美ちゃんからも手作りチョコをもらった。
去年までは、女子校だったから、
ウチは女のクセに、すごい数のチョコをもらってた。
でも、今年は亜弥ちゃんとあさ美ちゃんからの2個だけかもしれないなあ…


250 名前:名無し作者 投稿日:2003/09/28(日) 01:42
更新です。
>>231さん
ありがとうございます。
グラデーション加減…そんなカッコイイ言葉で言っていただけると照れます(W

>>232さん
ありがとうございます。
号泣していただけるとはうれしいです。
あんまり胸が痛くなるのもツライですよね(W

>>233さん
ありがとうございます。マイペースでやらさせてもらいます(W

>>234さん
ありがとうございます。
自分も梨華ちゃんのキス待ち顔の画像欲しいです(W

>>235さん
ありがとうございます。
いしよしサイコー!(W)がんばらせてもらいます。

>>236さん
ありがとうございます。
そろそろ…(W

>>237さん
ありがとうございます。
書いてる自分でももどかしい、歯痒いです(W

>>238さん
ありがとうございます。
そこまで言っていただけるなんて非常に恐縮です…



今回更新分の中で「あれっ?」と思った部分があるかと…(W
その辺についてのサイドストーリーを以下に書かせてもらいます。
ちょっとだけ時間もさかのぼりますが…
いしよしではないので、興味のない方は避けて通っていただいても大丈夫です(W
251 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:43


昔から、自分はモテてたと思う。
中学に入ってからは女子校だったけど、
近くの学校の男子や、小学校のとき一緒だった子とかにコクられたりした。

でも、基本的に興味なんてなくて、
ちょっとかっこいいかなって思える子とだけ付き合った。
でも、結局すぐにイヤになって別れちゃってたし、
沢山の男の子たちをふりまくってるイメージがあったみたいで、
周りの子たちからは陰で「氷の女」って呼ばれてた…

―――そんな美貴が、一目ボレするなんて…しかも、女の子に―――
252 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:44
ある日、大学の掲示板の前で、自分の授業の休講状況を手帳にメモしてた。

「あ、藤本じゃん」
同じクラスの男の子が声をかけてきた。
明るくて面白くて気さくなヤツだから、
人からとっつきにくいなんて言われる美貴にも、いつも気軽に声をかけてきてくれる。

「おっす」
「何か休講になってんの?」
彼は掲示板を見たあと、美貴の手帳をのぞきこんできた。
「ちょっとー、見ないでよ」
美貴も本気で怒ってるわけじゃなくて、笑いながら手帳を閉じて言った。

「あれー、藤本もプリクラとかすんの?」
たまたま、手帳のプリクラページが目に入ったらしい。
「するよー、一応オンナノコですから」
「へえ、よかったら見せてよ。藤本の友達、見てみたい」

プリクラのページを開いて、彼に見せてあげた。
「あ、この子、かわいい!オレ、すっげータイプ!」
彼が指差したのは、よっすぃーだった。

友達の少ない美貴にとって、よっすぃーは一番気が許せる親友だと思ってる。
プリクラの数も一番多いかもしれない。

「でも、この子、こういうことヘーキでする子だよ?」
彼が指差したプリクラは、ちょっとすました顔で撮ってたけど、
基本的に、よっすぃーは変顔ばっかりしてる。
一番笑える顔をしてるヤツを彼に見せてあげた。

「うわー!でも、オレ、こういうことしちゃう女の子、好きなんだよなあ」
彼は大笑いしながらも、そう言った。
「ねえ、この子、紹介してよ。オレも友達連れてくるから、合コンしよ」

そういや、よっすぃー、今まで彼氏つくったことないんだよなあ。
彼は本当にイイやつだと思うし、よっすぃーとも合うと思う。
よし、じゃ、今度、合コンしますか。
253 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:45
彼は大学の人じゃない友達を2人連れてくると言ったので、
美貴もよっすぃー以外に、バイト先の合コン好きの友達に声をかけてた。
でも、彼女は風邪をひいたとかで前日にドタキャン。
誘う友達を考えるのも何か面倒で、
よっすぃーに友達連れてくるようにお願いしちゃった。
ま、よっすぃーなら友達多いし、すぐに見つかるでしょ。


当日、合コンのお店に行く前に、とりあえず女子だけでマックで待ち合わせした。
美貴が一番ノリで、シェークを飲みながら、
ボンヤリ入り口をながめてたら、よっすぃーが女の子と腕組んでやってきた。
…うわー…すっごくかわいい子じゃん…

よっすぃーが、すぐに美貴に気付いて手を振った。
一緒にいる女の子もこっちを見てにこやかに頭を下げる。
…むぅ、やっぱかわいい…

美貴の席の前に座るよっすぃーと女の子。
「お待たせー。あ、この子、同じサークルの亜弥ちゃん」
「松浦亜弥でーす。今日はよろしくお願いしまーす」
亜弥ちゃんが、ニッコリとして、美貴のことを見つめた。
…やばい、何かドキドキしてきたかも…

「…藤本美貴です。今日は突然ごめんね」
「あ、全然ダイジョーブ。どうせ、暇だったし」
『ね』、というように、よっすぃーの顔をのぞきこむ亜弥ちゃん。
よっすぃーもニコッとしてあげる。
…うー、何かムカツク。


しかし、さっきからずっと、亜弥ちゃんの腕はよっすぃーの腕に絡みついたまま。
中学高校のときの経験からいって、この様子だと、
亜弥ちゃんはよっすぃーのことが好きなんだろうな。
相変らず、女の子からモテててんのか、よっすぃーは。

それにしても、何かあるごとに、微笑んでよっすぃーの顔を見る亜弥ちゃん。
それが、たまらなくかわいい。
美貴にもして欲しいとすごく思った。
254 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:45
そして、合コンのお店では、男女交互に座らされて、
美貴の大学の友達は、よっすぃーと美貴の間に座って、すごく盛り上げてくれた。
そうそう、事前に、
『王様ゲームとかよっすぃーは嫌いだから絶対やらないでよ』って言っておいたから、
そういうのはしないで済んだし。

それにしても、酔っ払った亜弥ちゃんはかわいくて…
酔ってないときに増して、何かほわーんとしちゃってさ。
しかも、すっごく楽しそうなんだよね。
うー、亜弥ちゃんの両サイドを男にするんじゃなかった…

でも、彼がトイレに立って、よっすぃーと美貴の間の席が空いたら、
すかさず、亜弥ちゃんが来てくれた。
といっても、よっすぃーにしなだれかかって甘えモード。
でも、よっすぃーは「こらこら」とか言って、軽く頭を小突くくらいしかしない。
おいおい、イヤならもっと拒否しろってーの。
よっすぃーはこういう優しさが、相手に勘違いをさせてるんだよなあ。
ま、それがよっすぃーのイイところなんだけどさ…
255 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:46
亜弥ちゃんが、トイレにいくと言ったので、
大して行きたいわけじゃなかったけど、美貴も一緒に行こうと立ち上がった。
酔っ払って少しよろける亜弥ちゃんを抱きとめた。
…うわっ、オンナノコの匂いがする…
なんつーか、すっごく甘いカンジの…
何かドキッとしちゃったじゃん…

亜弥ちゃんはもともとスキンシップが好きな子みたい。
美貴にも少し心を許してくれたのか、
トイレに行くときも、手を握ってくれて。
トイレが個室1つだったから、亜弥ちゃんが先に入って出てきたら、
美貴に抱きついてくるし、
美貴が出るのも待っててくれて、出たらまた抱きついてくれた。

「みきたん、かわいいね」
って、よっぱらってるからなのか、わざとなのか、
そんな風に言う彼女が、なんていうか…たまらなくいとおしい。

「亜弥ちゃんの方がずっとずっとかわいいよ」
「えへへへー、ありがと」
ほっぺに何かやわらかい感触。
…え?
亜弥ちゃんが、美貴のほっぺにキスをしてた。
キョトンとしてる美貴の顔をのぞきこんで微笑む亜弥ちゃん。
256 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:47
そのあとどうやって席に戻ったのかはっきり思い出せない。
たぶん、亜弥ちゃんに手をひかれてだとは思うんだけど。
ただ、さっきのほっぺの感触を思い出すだけで、なぜか顔がカアッとなってくる。
でも、亜弥ちゃんは、相変らずよっすぃーにべったりなわけで。

一応、今日の会は、よっすぃーと美貴の友達をくっつけようの会なんだから、
亜弥ちゃんがよっすぃーにくっついてたら、よくないでしょ。
だから、無理矢理亜弥ちゃんをよっすぃーから離して、美貴の方に抱き寄せた。
最初は「よっすぃーと離れるのいやあ」って抵抗してた亜弥ちゃんだけど、
美貴がガッチリつかんで動けないようにしてたから、
結局あきらめておとなしく美貴の肩に頭をのせてくれてた。
…よっすぃーのことはほっておいてさ、ずっとこうしててよ…
257 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:48
その日から、いつも頭には亜弥ちゃんのことがあって。
すごく会いたくて会いたくてしょうがなかった。
あの日、酔っ払ってたし、メアドとか聞けてないから、連絡をとることもできなくて。



合コンから1週間くらいたって、ついにガマンできなくなって、よっすぃーに電話した。
いつものほほんとしてるよっすぃー。
話すだけで何かほっとできるから、とりあえず話しだけでも聞いてもらおう。

「…あのさ、美貴、この前の合コンで運命の出会いしちゃったかも…」
『ええっ!?誰?誰?あのメガネの人?』
「…違う」
『じゃ、金髪の人?えー、あの人、そんなにいいかなあ』
「…はずれ」
『え?じゃ、ミキティの大学の友達を好きになっちゃったの?』
「そうじゃないよ」
『え?他にいないじゃん。あ、お店の人とか?
そんなの全然気にしてなかったよ。どんな人?』
「お店の人でもない」
『は?だって、他にいないじゃん』
「…亜弥ちゃん」
『…へ?』
「松浦亜弥!よっすぃーが連れてきた亜弥ちゃんだよっ!」


よっすぃーは、そのあとしばらく考えてたけど、
何だかすごく好意的で、応援してくれるようになって。
『よし、じゃ明日暇?』
まだ夏休み中だし、明日はバイトもなかった。
『じゃ、亜弥ちゃんと3人で遊びに行こうよ。
そのあと、ウチに泊まったらいいよ』
258 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:49
何だか緊張してあんまり眠れなかった。
着る服もすっごく悩んじゃったくらい。
誰かに会うためのことで、こんなのはじめてかも…

亜弥ちゃんとよっすぃーと美貴の3人で、横浜で買い物とかゲーセンとか行って。
やっぱり、亜弥ちゃんは何をしてても完璧にかわいい。
だって、最初から待ち合わせ場所に現れた亜弥ちゃんのこと、
まぶしすぎてまっすぐ見れなかったくらいだもん。


夜、ゴハンを食べたあと、カラオケに行った。
部屋に入って30分くらいしたら、よっすぃーがトイレに行った。
そして、亜弥ちゃんの携帯電話が鳴る。

「えっ?…あ、うん…大丈夫?…でも…うん…わかった…気をつけてね…」
亜弥ちゃんが携帯をきる。

「どうしたの?」
「よっすぃーが、お腹痛くなったから、帰るって」
「えっ?」
「あ、みきたん、ウチに泊まってっていいよ。
今日、よっすぃーんとこ泊まるつもりだったんでしょ?」
「ええっ!?」

よっすぃーのヤロー…
全部計算してたに違いない。
最初から、自分のところに泊まるように準備させておいて、
自分が途中で帰って、亜弥ちゃんにお願いすれば、
亜弥ちゃんはいい子だから、絶対断らないと思ったんだろう。


「ウチ、親も妹もいてうるさいけど」
「で、でも…突然悪くない?」
「あー、全然大丈夫。
ウチの家族も、みきたんみたいなカワイイ子だったら大歓迎だよ」
259 名前:イトコ同士 投稿日:2003/09/28(日) 01:50
それにしても、亜弥ちゃんの家族は面白い。
パパもママもノリのいい人で、
自分たちの部屋で3人で一緒に寝ようとか言ってきたり。
妹2人も亜弥ちゃんに似ててかわいい子たち。
突然で迷惑はかけたけど、みんな暖かく迎えてくれた。


美貴が先にお風呂に入って、亜弥ちゃんの部屋で1人で亜弥ちゃんを待つ。
亜弥ちゃんの部屋は、思ってたよりシンプルなカンジだった。
カワイイぬいぐるみとかも置いてはあるんだけど、
そんなに女の子女の子した部屋ではなかった。
タンスの上の写真立てには、サークルで撮ったらしい写真が入ってて、
亜弥ちゃんがよっすぃーと隣りでしっかり腕を組んでるやつだった。

ったく、よっすぃーはずるいよ。
全然その気がないのに、女の子をその気にさせちゃうんだから。
美貴なんて、女の子にコクられたら、
変に期待させないように、なるべくその子とは接触しないようにしてた。
でも、よっすぃーはそういうの全然気にしてない風で、
告白されても、何があっても誰に対しても全然変わらない態度だった。
そういや、亜弥ちゃんは、よっすぃーにコクったりとかしてんのかな…

何だか、すごくムシャクシャして気持ちになってきた。
…あー、ばっかじゃないの、よっすぃーに嫉妬してるんだ。
でも、こんな気持ち持ってるだけムダだよな、
よっすぃーには全然その気はないんだから。
260 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:50
亜弥ちゃんがお風呂から出てきて、2人で並んでベッドに入る。
セミダブルだから、そんなに狭くないけど、美貴はかなり動揺してた。
突然だったから、お客用の布団も用意してなかったみたいだし、
友達が泊まりにきたときはだいたい、一緒にベッドで寝るらしい。
だから、変に意識してる美貴の方がおかしいんだけど。

ベッドに入ったまま、くだらない話しをする。
といっても、よっすぃーの話しがほとんど。
自分の好きな子が片思いしてる人のことを話題にするのは、なんかくやしい。
でも、2人の共通がそれしかないから、一番盛り上がるのはそれなわけで…
あー、もっといろんな話しができるように2人でいろんなことしていきたいよなあ。

ふと会話が途切れたときに、何となく亜弥ちゃんのことを抱き寄せた。
いい匂い…
亜弥ちゃんも、クスクス笑いながら、美貴の体に抱きついてきた。

「…亜弥ちゃん」
美貴は、もうガマンできなくなっちゃって、亜弥ちゃんにキスをした。
もちろん軽く触れるだけのキス。
亜弥ちゃんはすごく驚いた顔をしていた。

美貴も自分のしたことが恥ずかしくなって、
亜弥ちゃんの顔を見ていられなくて、ギュッと抱きしめた。
「…美貴ね、亜弥ちゃんのこと好きだよ」
そう耳元で囁いたけど、亜弥ちゃんは何も言ってくれなかった。

友達としての『好き』ではないことは、わかってくれたんだろう。
だから返事に困って言葉が出てこなかったに違いない。
あー、もしかして、これでウチらの関係、終わったかな…
まだ出会って1週間くらいしかたってない、しかも会うのは2回目だし。
結果を出すなら早い方が傷も浅くて済むはず。
うん、これでよかったんだ…ま、キスもできたしいいじゃん…
最後の夜なら、このまま亜弥ちゃんのこと抱きしめたまま眠ろう…
261 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:51
ふと、目が覚めると腕の中がからっぽだった。
そして、何か鼻をすするような音が聞こえてくる。
あれ、亜弥ちゃん…?
亜弥ちゃんは、ベッドの淵に腰掛けて、美貴に背中を向けて肩を震わせていた。

「…亜弥ちゃん?泣いてるの?」
顔だけを美貴の方に向けてきた亜弥ちゃんの目には涙がたまっていた。
美貴は亜弥ちゃんの笑顔しか知らなかったから、
何だか色っぽく見えて、ドキッとしてしまった。


「…私って、ひどい女だ…」
亜弥ちゃんは鼻声でそうつぶやいた。
「何で?亜弥ちゃんはイイ子だよ」

「…だって、ついこの前まで、よっすぃーのことが好きで大好きだったのに…」
「…あ、うん…」
わかってたことだけど、本人の口から聞くのって、結構キツイな…

「よっすぃーは好きな人いるからって、私の気持ちには応えてくれなかったんだけど、
いつも優しいから、甘えさせてもらえるだけでも幸せかなって」
…やっぱりコクられてたのか、ヨシザワめ…


「みきたんに会ったときね、すごくキレイでかっこいいなって。
さすがよっすぃーの友達だなって思った」
「…そんなことないよ」

「飲み会のときも今日も、みきたん、私にすごく優しくしてくれてうれしかった」
「…ううん」

「…それで、よっすぃーとみきたんを比較してる自分がすごくイヤに思えて…」
「……え?それって…」
…少しは期待しちゃってもよいの?
262 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:52
「さっき、みきたんに抱きしめられて、すごくうれしかった。
キスされて、すっごくすっごくドキドキしちゃった自分が許せなくて…」
亜弥ちゃんが、声を出して泣きはじめた。
美貴は起き上がって、亜弥ちゃんのことを背中から抱きしめた。
「…亜弥ちゃん」

「みきたんに『好き』って言われて、自分もみきたんのこと好きって普通に思った。
よっすぃーのことなんて、すっかり忘れちゃってるんだよ?
ひどい女でしょ、私って」
「何でだよ、亜弥ちゃんがひどいことなんてないよ!
別によっすぃーと付き合ってるわけじゃないんだし、
むしろ、よっすぃーの方がひどいヤツなんじゃんか!」

亜弥ちゃんは首を横に振る。
「よっすぃーは優しいよ…」
こんなときにまで、かばわれるよっすぃー…何だかすっげーハラが立ってきた。
「あー、もう!!それなら、よっすぃーのこと、美貴が忘れさせてあげる!!」
263 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:52
亜弥ちゃんのことをベッドに寝かせて、上から覆い被さる。
「…みきたん…?」
亜弥ちゃんが、不思議そうな顔になる。

軽いキスを何度も繰り返した。
亜弥ちゃん、戸惑いながらも、
「…んっ…」
なんて声出すもんだから、キスもどんどん激しくなっていっちゃって…

キスが少し落ち着いたときに、亜弥ちゃんを優しく抱きしめて髪を撫でてたら、
「…みきたん…ダイスキ…」
って言ってくれた。

「…よっすぃーよりも、美貴の方が好き?」
それにコクンと頷いた亜弥ちゃんに優しいキスをおとした。
それから、もう離さないって気持ちをこめてギュッと抱きしめた。
264 名前:イトコ同士 side M 投稿日:2003/09/28(日) 01:53
次の日の夜、よっすぃーから電話がかかってきた。
『どおだったの?昨日の夜は?』
「えへへ、亜弥ちゃん、美貴のこと好きだってー」
『おおーっ!じゃ、うまくいったんだ?』
「うん。亜弥ちゃん、キスうまいんだよねえ…」
『……ぬわにーっ!!!キスしたの!?1日目で?
ちくしょー、ウチなんて半年も一緒なのに、まだ何も…』
「ん?何、半年って?
そういや、よっすぃー、好きな人がいるってホント?
もしかして、その人と半年も付き合ってるのに何もしてないとか?」
『い、いや、その、ちがくて…』

結局、よっすぃーの好きな人のことをちゃんと聞かせてもらって。
一緒に住んでるのに、何もできないよっすぃーのこと、
『オクテのよっちゃん』ってからかった。
よっすぃーは怒るかと思ったら、
逆に美貴の押しの強さを学ばせて欲しいなんてお願いしてきやがった。

「おしえなーい」
『いいじゃん、お願い!』
亜弥ちゃんが惚れてたヤツなんかに優しくなんかしてやんないだから。


265 名前:名無し作者 投稿日:2003/09/28(日) 01:59
以上でside M終了です。
すみません、254と259のタイトルに「side M」入れ忘れました…

今後ももしかしたら、別の人視点のサイドストーリーを書くかもしれません(W
266 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 02:58
おぉ(w
いしよしを見に来てまさかもうひとつ好きなCPが見れるとは思いませんでした(w
満足です(w続き楽しみにしています
267 名前:頬袋 玉子 投稿日:2003/09/28(日) 06:23
よしこ! 美貴たんの押しを分けてもらえ!
ドッと行って、ダーっと決めて、ガバっと押し倒して、むにゃむにゃ・・・・・

りかたんに膝の上に乗って貰いたいのは、わたしだけでしょうか?
『梨華膝乗り実行推進委員会』を発足させました。
268 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 13:16
あの〜
いつも梨華ちゃんを酔っぱらわせて下さいw
269 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:07


明日はバレンタイン。
私は夕食を食べ終わってから、クッキー作りをはじめた。
いつもお世話になってる同じ部の人とか、仕事で関係がある人に、
男女問わず感謝の気持ちをこめて、チョコクッキーをあげるつもり。
きっと、男の人たちはみんな、他の人からはチョコをもらうだろうから、
チョコばっかりっていうのもなんだし、
クッキーなら私も何度か作ったことあるから、自信を持って人にあげられるかなって。

もちろん、大好きなひとみちゃんにもあげるつもり、っていうか、本当はそれがメイン。
前に、私が作ったクッキーを『おいしいよ』って食べてくれたし。
お世辞だったかもしれないけど、うれしかったから。

お母さんが手伝ってくれるって言ったんだけど、
やっぱり、好きな人のためには自分の手で作りたい。
だから、1人でがんばるんだ。

今日はひとみちゃんは、バイトが家庭教師だけで、早めに帰ってきてて、
夕食も家で食べたし、今もリビングでお母さんと一緒にテレビを見ている。
でも、私がキッチンで作業中なのが気になるらしくて、
チラチラと見てるもんだから、何度も目が合った。
270 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:08
出来上がってラッピングもほぼ完成してるときに、
お母さんがやってきて、クッキーを見てくれた。
「あらー、すごくよく出来てるじゃない。
このラッピングもかわいいわねえ」
よかったあ、誉めてもらえて。

「あれ?この青いリボンのだけ少し量が多いんじゃないの?
…しかも、入ってるのハート型ばっかりじゃない」

だって、それは、ひとみちゃんにあげるやつだもん。
確かに、他の袋にはハート以外の星型や花型とかのクッキーが入ってるんだけど。

「あー、さては本命用?
何?梨華、好きな人できたの?誰?会社の人?」
「ひみつー」

何となく、リビングにいるひとみちゃんの方を見てみたら、
眉を下げてまるで泣きそうな、心配そうな顔でこっちの方を見てた。
もしかして、コレを誰にあげるか気にかけてくれてるのかな?
コレはあなたの手に渡るんだよ?
ちゃんと受け取ってくれる?
私はその袋にチュッとキスをした。


271 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:08


バレンタイン当日。
ウチはだいぶへこんでいた。
昨日、クッキーを作ってた梨華ちゃん、何かすごく楽しそうだった。
しかもちゃんと特別なモノをあげるような人いるんじゃん。
梨華ちゃん、彼氏いないって言ってたし、
好きな人がいるようなことも全然言ってなかった。
でも、そんな人がいるなんて…
ここんとこ、ちゃんと話しもできてなかったから、最近できたんだろうか。
しかし、そんなことを思う度、ウチの梨華ちゃんへの告白がバカだったと、
穴があったら入りたい気分になる。

そんな風に落ち込みぎみで、昼を学食で食べてたら、
安倍さんと飯田さんがやってきて、サークルの男性陣にそれぞれチョコレートを配ってた。
2人ともなぜかウチにもくれた、他の女子にはあげてないのに。
272 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:09
今日は居酒屋のバイトがあったんだけど、
なぜか、ホールをやってる高校生の女の子からもチョコをもらった。
しかも、こっそり渡してきたし、他の男の人にはあげてないみたいだから、
マジみたいで、ちょっとあせったんだけど。


そういえば、梨華ちゃんは、本命クンにちゃんと渡せたのかな。
帰りに更衣室で着替えながら、ふと思い出してしまった。
…鼻の奥がツンとなってくる。
あー、こんなとこで泣いてどうすんだ。
ウチってこんなに涙もろかったっけ?
いや、梨華ちゃんのことだけでだよな、ウチが泣いちゃうのって…
はあ…
こんなクヨクヨしてたら、梨華ちゃんにホントに嫌われるぞ!
強い、かっこいいひとみちゃんは泣き虫なんかじゃないんだから。
ウチは気合を入れるため、パシンと両頬を叩いた。
273 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:10
「お先に失礼しまーす」
10時半頃バイト先を出る。
すると、店の前に梨華ちゃんがいて、ウチに気付くとニッコリと微笑んだ。
「お疲れさまー」
「ど、どうしたの?今日帰り遅かったの?」
「ううん」

確かに、この店は駅から近いけど、駅から家に帰るときには通らない道だから、
梨華ちゃんがいるのはすごく不思議だった。
今までこんなことなかったし…

何かあったのか質問しようと、梨華ちゃんを見つめたら、
目の前に紙袋を突き出された。
「はい、コレ」
「…ん?何?」
「…チョコレート」

ま、まじで?…すっげー、うれしい!
その他大勢の中に、入れてもらえただけでもうれしくて、小躍りしそうだった。
「ありがとう、うれしいよ」
ウチはその紙袋を宝物を扱うように、そーっと自分のカバンの中に入れた。

梨華ちゃんは、ニコッとして歩きはじめた。
ウチも梨華ちゃんの横に並んで歩いた。
274 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:10
「…ねえ、ひとみちゃん」
「ん?」
「…手、繋いでいい?」
「えっ?あ、ああ、いいよ」

ダウンジャケットのポケットから手を出して、梨華ちゃんの手を握る。
梨華ちゃんの手は手袋もしてなかったせいか、すごく冷たくなっていた。

「冷たいね…ごめん、外で待たせちゃったからだね」
そして、梨華ちゃんの手を握ったまま、一緒に自分のポケットの中に入れた。
「…ううん、大丈夫…ありがと」
梨華ちゃんは、うつむいたままでウチの方は見てくれなかった。

それにしても、梨華ちゃんとこうやって手を繋いで歩くのなんてはじめてだ。
すごくうれしいけど、何だか照れ臭い。
275 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:10
「ひとみちゃん、少し寄り道していかない?」
梨華ちゃんは、帰り道の途中にある小さな公園に入った。
ブランコと小さな滑り台と、砂場があるだけの公園。
ウチらは1つだけあるベンチに並んで腰掛けた。
まだ繋いだ手は離してなかった。
できれば、ずっとずっとこうしてたかった。

「…ひとみちゃん、他の人からもチョコレートもらった?」
「あ、うん…」
「何個もらったの?」
「…えっと…梨華ちゃんの入れて…6個かな?」
「…ふーん。ひとみちゃん、モテるね…」
「っていっても、女の子からだからねえ、ははは…」


梨華ちゃんは、笑ってくれなかった。
しかも、そのあとも、ときたま空を見上げたりはするけど、
相変らずウチの方は見てくれないし、ずっと黙ったままだ。
276 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:11
「…梨華ちゃん、そろそろ帰ろうか?寒いから、風邪ひいちゃうよ」
梨華ちゃんから一旦手を離して立ち上がると、
今度は梨華ちゃんはウチに抱きついてきた。

「…ひとみちゃん、私のこと嫌いになっちゃった?」
「…どうしたの?そんなこと聞くなんて」
ウチの気持ち忘れてくれって言ったのに、
何でわざわざ言わせようとするんだろう?

「…どうなの?」
「…嫌いになんかなるわけないじゃん…好きだよ、大好きだよ」
…ウチはやっぱりウソはつけない…

梨華ちゃんの腕に力がこもる。
「…私、もう誰も好きになっちゃいけないんだって思ってた…」
「…え?」
「誰かを好きになったら、また悲しいことが起こるに決まってる。
そんな思いするのはもうイヤだって…」

梨華ちゃんが泣きはじめた。
梨華ちゃんの腕をほどいて、顔を覗き込んで、涙をぬぐってあげる。
本当にこの人は子供みたいだ
ふと、梨華ちゃんがよく書いているウサギの絵を思い出した。
誰かが側で支えてあげないと、ウサギみたいにさみしさで死んじゃうかもしれない。


「恋愛って悲しいことより、楽しいことの方が多いんじゃないかなあ。
だって、好きな人がいるってだけで幸せな気持ちにならない?
人を好きになっちゃいけないなんてこと、絶対ないよ。
だいたい、人を好きになるのなんて自分でコントロールできるもんじゃないし」

…そう、ウチだって、気付いたら梨華ちゃんのこと、好きになってた。
好きにならなかったらよかったのにって思ったこともあるけど、
やっぱり、そんな辛い気持ちよりも、
梨華ちゃんがウチにしてくれたささいなことで幸せになれる喜びの方が大きい。
277 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:12
そんな気持ちを込めながら、梨華ちゃんの髪を撫でていた。
少しして、涙がおさまった梨華ちゃんが、またウチに抱きついてきて、
「…好き、大好き…」
耳元で小さくつぶやいた。

「…えっ?」
「好きなの、ひとみちゃんのことが…たぶん、ずっと好きだった」
「…ま、まじで?」
梨華ちゃんの顔を覗き込むと、コクンと頷いてくれた。

「…う、ウチ、死んでもいい!!」
ウチはこの喜びをどうしていいかわからず、
「うおーーーー!!」って叫んで、滑り台にかけのぼった。

近所の家から「うるさいっ!」って怒られたけど、そんなことはどうでもいい。
梨華ちゃんが、ウチのこと、『好き』って言ってくれたんだから。

この喜びをどう表現したらいいのかわからず、
意味もなく、滑り台を何往復もしてたら、梨華ちゃんが大笑いしてた。
「ホント、ひとみちゃんって単純」

単純で結構。
そんなウチのこと、梨華ちゃんは好きなんだよね?
ホントにホントに好きなんだよね?
何度目かの滑り台をすべったあとに、梨華ちゃんのところに飛びついた。
あまりに勢いをつけすぎて、梨華ちゃんはよろけたけど、
大丈夫、ウチがちゃんと支えてあげるから。ギュッと強く抱きしめた。

「ウチは梨華ちゃんに、悲しい思いなんてさせないからね。
いつも楽しい思いをさせてあげるから」

腕の中で、梨華ちゃんがクスッと笑った。

「…うん、ひとみちゃんといるとすっごく楽しいよ」

うん、ウチがずっとずっと一緒にいてあげる。
ウチ以外の誰にも梨華ちゃんのこと、任せたくなんかないから。
278 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:12
そのあとも手を繋いで家まで帰った。
言葉はなかったけど、歩きながら、ときたま見詰め合っては、微笑み合う。
すっげー幸せな気分。
こういうことが自然にできるっていうのが、恋人になれた証なんだなって気がする。


家に帰って、梨華ちゃんのくれた紙袋の中身を見てみたら、
昨日、おばさんが言ってた青のリボンがついた袋、
中にハートマークのクッキーばっかりが入ってるやつだった。
えへへへ…つまりウチが本命ってことでいいんだよね?
でも、このクッキー、ウチ食べられそうもないなあ…



その次の日の朝、ウチはまだ喜びを押さえきれてなかったらしく、
あいぼんからもおばさんからもニヤニヤしてて気味が悪いと言われた。
梨華ちゃんは、そんな風に言われてるウチのこと、
クスクス笑って見ててくれたけど。
279 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:13
その日の夜、バイトが終わって12時頃家に帰って、
お風呂を出てから、リビングでくつろいでたら、梨華ちゃんがやってきた。
こんな時間だから、おばさんは寝てるだろうし、
あいぼんも勉強か寝てるかだろう。

「…ひとみちゃん、あのね…」
「ん?」

とりあえず、立ったままの梨華ちゃんに手招きをして、
ソファーの自分の隣りに座らせた。
そして、梨華ちゃんの肩を抱いた。

「…あのね、こういうことしてもらうのとか、
私のこと見つめてくれてるのとか、すごくすっごくうれしいんだけど…」
うん、今までは盗み見るってカンジだったけど、
梨華ちゃんの気持ちがわかった以上、堂々と梨華ちゃんのことを見れた。
確かに朝ゴハン中も、何度も目が合った。

「…やっぱり、お母さんとかあいぼんのいる前では、
あんまりよくないんじゃないかなあって…」
280 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:14
…確かに、梨華ちゃんの言う通りだ。
恋人になれたとはいえ、ウチらは女同士だ。
世間的にはあんまり認められていない。
しかも、イトコ同士で、1つ屋根の下に住んでいる。
もし、ウチらの関係がおばさんをはじめ、自分たちの親にバレたらどうなる?
たぶん、2人は引き裂かれて、一緒に住むことができなくなるだろう。
その上、きっと年齢的には大人で年上の梨華ちゃんの方が悪者になるに違いない。
そんなのは絶対イヤだ。
どちらかといえば、先に思いを打ち明けたウチの方が悪いに決まってる。
ウチが梨華ちゃんを守らなきゃいけない立場なのに…

「…ごめん、ウチ、あまりにうれしくてさ、つい…」
ホント自分の子供さ加減にあきれる。
ウチは梨華ちゃんの体から手を離した。

「あっ…あ、あのね、で、でも、今みたいに2人っきりのときは全然いいっていうか…
むしろ、そうしててほしいっていうか…」

梨華ちゃんは、顔を赤らめながらチラリと上目遣いでウチを見た。
うぅ…かわいい…
ウチは今度は強めに梨華ちゃんの腰を抱き寄せた。
梨華ちゃんは一瞬驚いたけど、すぐにニッコリとしてくれた。
ウチも笑顔になる。
つーか、今朝、あいぼんから『なんかデレデレしてる』って
言われたときの顔になってると思う。
281 名前:イトコ同士 投稿日:2003/10/05(日) 04:14
そう、梨華ちゃんはあいぼんのことを一番気にかけていた。
ウチと梨華ちゃんをお似合いなんて言ってくれてるし、
同性同士の恋愛にも理解があるようなことは言ってたけれど…

「ひとみちゃんと私が仲良くしてるの見たら、
自分がジャマなんじゃないかって思っちゃうんじゃないかな。
あいぼん、人一倍さみしがりやなのに…」

あいぼんは、甘えん坊のさみしがりやさん。
いつも元気なのは、そのさみしさを紛らわしてるのもあると思う。
今はおばさんと4人だけれど、4月になれば、また3人での生活がはじまるのだ。
そのときに、梨華ちゃんとウチがイチャイチャしてたら…
もし、ウチがあいぼんの立場だったら、家出しちゃうかもしれない。

梨華ちゃんは特別な意味で好きだけど、
あいぼんもイトコとして、妹みたいな存在で大好きだ。
やっぱり、そのあいぼんを悲しませるようなことは絶対しちゃいけないと思う。

やっぱり、梨華ちゃんは大人だよなあ、ちゃんと周りのことも見てて、
先のことも考えてくれている。
あー、ウチってホント子供でバカだよなあ…
早く大人になって、梨華ちゃんに頼られる人間になるんだ、ゼッタイ。


282 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/05(日) 04:21
更新しました。

>>266さん
ありがとうございます。
あやみきは実は2人のキャラがいまいちつかみきれてなくて、
すごく書きづらかったんですけど、結構楽しく書けました(W

>>267さん
ありがとうございます。
よしこからはガーッといけませんでしたが、梨華ちゃんががんばりました(W
膝乗りいいですね、自分もやってもらいたいです(W

>>268さん
また、酔っ払いシーンは出てくるかもしれません(W
283 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 04:32
今日は更新ないのかなーって思って諦めてたら
梨華ちゃんの告白シーンが読めるなんて。。。
Mステ見ちゃって傷心中だった私には心底うれしい時間でした。
284 名前:( ´ω` )よっすぃ〜 投稿日:2003/10/05(日) 16:17
よかったぁぁ〜
。・゚・(ノД`)・゚・。

りかっちぃぃぃぃぃ〜かわいいぞぉぉぉぉぉ!
これからも楽しみにしていまつ

更新おつかれでつ。
285 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 08:36
二人がくっついちゃったら物語が終わっちゃうのかなあ
なんて寂しく思ってたんですが
まだまだ続きそうなので楽しみです。
286 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 16:13
今日はじめて読みました。最高です。設定はおいしいいしよしの入れ方?
見たいな感じですかね(w がんばってください 応援してますよ!!
287 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 09:41
これからどうなるんですかぁ〜〜
288 名前:双六 投稿日:2003/10/14(火) 22:37
どうも、初めましてスゴロクといいます。同じ板かいてます♪
今日最初から全部よみました!最高です・・・なきました!!!
切ないですね。うぅ・・・これからも頑張って下さい。
289 名前:双六 投稿日:2003/10/14(火) 22:37
あぁ・・・上げてしまった・・・・・・・・

本当に申し訳ありません・・・どうお詫びしていいのか・・・


逝ってきます。
290 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/15(水) 01:10
別に死ぬほどの事ではない
291 名前:奈々氏 投稿日:2003/10/15(水) 02:03
そうそう、ochiすればいいだけのこと。
292 名前:232 投稿日:2003/10/16(木) 21:06
もう10回は軽く最初から読み直してしまっています(^_^;)
ここで生き生きしている登場人物が大好きです!
あいぼんに彼女(!?)できて、連れ込んじゃってくれたらいんですよね?(笑)
293 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/16(木) 23:08
ムズムズ
294 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/20(月) 15:38
まだかなー
295 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/23(木) 00:07
あま〜いトロトロな
いしよしを堪能させてもらってます。
296 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/23(木) 12:55
期待sage
297 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/25(土) 02:02
イイ‥幸せ
298 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 03:03
まだ?
299 名前:名無し・・・ 投稿日:2003/11/01(土) 17:11
早く続きが読みたい
300 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 18:14
上げず急かさず。
作者さんも忙しいのでしょう。
まったり待ちましょう。
最低でもsageくらいしましょう。
301 名前:つみ 投稿日:2003/11/02(日) 14:36
待つのもまたおもしろきかな・・・
302 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:43


3月になった。
そして最初の日曜日。
私は鎌倉に行くのに、ひとみちゃんを誘った。
もちろん、保田さんのお店が再開してるから。
ちなみに、私はお店がお休み中でも、毎週日曜は鎌倉に行っていた。
その間は、保田くんのお墓参りのためだけだったし、
何となくひとみちゃんを誘うことはできなかった。
ひとみちゃんと一緒にはいたいけど、目的が目的だから…

ひとみちゃんはどう思ってるんだろう?
私が毎週、保田くんのお墓参りに行ってること。
やっぱり、あんまりいい気分じゃないのかな…
でも、ひとみちゃんと両思いになったからって、
その途端に行かなくなるなんて、人としてどうかと思うし。
もし、ひとみちゃんが『行かないで』とかはっきり言ってきたら、
それはそれでちょっとがっかりしてしまうかも。
でも言われたらどうしよう…
303 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:44
まずは2人で、保田くんのお墓参りに行く。
私は墓前で手を合わせた。

保田くん、彼女のこと覚えてる?
私のイトコのひとみちゃん。秋頃、何回か一緒に来たでしょ。
私ね、この人とお付き合いすることになったの。
うん、女の子だよ、ビックリした?
でもね、男とか女とか関係ないよね、人を好きになるのって、
もっと純粋な気持ちなのかなあって。
ま、コレはお姉さん、保田さんが教えてくれたんだけどね。
このあと、保田さんにもちゃんと報告しにいくから。

ふと、隣りを見たら、ひとみちゃんが、目をつぶって手を合わせていた。
何を思ってくれてるのかな。
ひとみちゃんの目が開いた。

「…保田くんに何を話したの?」
「ん、梨華ちゃんのことウチに任せて下さい、ウチらのこと見守ってて下さいって。
これからもちゃんと、お墓参りしにきますんでって」

…やっぱり、私、この人を選んでよかったなあ。
そんな風に考えてくれていたことがうれしくて、
ひとみちゃんにギュッと抱きついた。

「あらら、こんなとこで、そんなことしたら、
彼がヤキモチ焼いちゃうんじゃない?」
ひとみちゃんが笑って、私の頭を撫でながら言う。

「うふふ、いいの…」
柴ちゃんが言ってた通り、私のポジティブなとこ見せてあげないと、
保田くんは心配しちゃうもんね。
ちゃんと、私、新しい恋してるからね。
もしかして、保田くんも、そっちで新しい恋してるのかな?
それはそれで、私もちょっとヤキモチかも。
でも、でも、私たちの方が、きっとラブラブだから、負けないからね!
304 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:45
そして、保田さんの店に行った。
笑顔で手を繋いで入っていった私たちに、
保田さんは事情をすぐに察知してくれたみたいで、
「なーんか初々しいカップルがきたわね」
って言ってくれた。

「えへへへー」
ひとみちゃんが私のことを後ろから抱きしめてきた。
私は恥ずかしくて、肘鉄を食らわした。

「うっ!…」
振り向いたら、ひとみちゃん、本当に苦しそうで。
「…みぞおちに、入った…」
「ご、ごめん!大丈夫?」
私はひとみちゃんを支えながら、イスに座った。

「もう、あんまりイチャイチャするのやめてくれる?
こっちが恥ずかしくなるから」
保田さんが笑いながらも、少しムッとして言った。

「…で、でも、マジで苦しかったんすから」
ひとみちゃんは、まだお腹の辺りを押さえていた。

「ふん、あんまり、調子のってるからバチがあたったのよ」
保田さん、それってただ単にうらやましがってるだけじゃ?

そういえば、保田さんって、恋人いるのかな?
たぶん、私の保田くんに対する気持ちを気遣ってだと思うけど、
今までそんな話ししたことなかったなあ。
今度、ゆっくり聞いてみようかな…


305 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:50


3月の頭、その日、ウチは居酒屋のランチタイムのバイトに入ってたんだけど、
全く身が入ってなかった。
別に梨華ちゃんのことを考えてるワケでは…いや、いつも考えてはいるけど、
今日は違う、あいぼんの第一志望の学校の合格発表なのだ。

確か13時からって言ってたから、
そろそろ掲示板に紙が貼り出される準備もはじまってるだろう。
ウチは仕事をしながらも、さっきから何度も壁の時計を見ていた。
結果は本人からメールで来ることになってる。

他に受けた2つの高校はもう合格している。
でも、あいぼんの本命はあくまで今日発表のところ。
その学校に行くために、あいぼんは頑張ってた。
ウチがあの家に住むようになってもうすぐ1年だけど、
少なくともウチが見ている限りでも、かなり頑張ってた。

…そっか、1年か…
ふと、我に返って、こんな自分がおかしく思えてくる。
306 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:50
1年前までの自分だったら、人のことをここまで心配なんてしなかっただろう。
母親を小さいうちに亡くしてるし、父親は厳しい人だ。
本当はさみしくてさみしくてしょうがなかったのに、
そんなところを人に見せたら、迷惑をかけてしまう。
そのさみしさを人にみせないようにするためには、
自分が明るく振る舞ってればいいんだって思ってた。
だから、昔から友達はたくさんいた。
でも、どこかで線を引いていた。
心から本音でモノを言える人なんて、誰1人いなかった。
どうせ、誰もウチのことなんて理解してくれないと思ってたから。
人間は結局1人で生きていかなければならない生き物なんだ。
そう思っていて、必要以上に人に関わることを避けていた。
友達にいろいろ相談されて、励ましているくせに、
心からはそう思っていない自分がすごくイヤだった。

それがどうだろう?
1年でこんなに変わってしまうなんて。
最初は10年も会ってないイトコと暮らすのなんてイヤだった。
むしろ1人暮らしができるかもって喜んでたのに。

もし、最初にウチが想像していた通りに、
あいぼんが生意気盛りの中坊で、
梨華ちゃんが暗くて部屋にひきこもっているような人だったら、
たぶん、ウチの考えは変わってなかったと思う。
やっぱり、2人の影響は大きい。

2人と一緒に暮らして、すっかり忘れてた家族のあったかさみたいのを思い出した。
朝は『おはよう』そして『いってきます』『いってらっしゃい』
夜には『おかえりなさい』『ただいま』そして『おやすみ』
食事のときには『いただきます』『ごちそうさま』
当たり前のことなんだろうけど、それだけでもうれしかった。
そして、梨華ちゃんもあいぼんもすごく素直だ。
ごはんをおいしいと誉めてくれたり、
何かしてあげる度に必ず『ありがとう』って感謝してくれる。
307 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:51
ウチの父親は、家事を女がやるのは当たり前みたいに思ってる人。
もともと寡黙な人だし、たまに夜の晩酌に付き合わされることがあっても、
そういうときでさえ、会話はほとんどなかった。
普段の当たり前の挨拶すら家ではなかった。

もちろん、母親がいたときには、少なくともウチと母親の間では会話はあったから、
こういう家族的なことが、本当に10年ぶりなのだ。

そういえば、石川のおばさんは姉妹だけあって、ウチの母親とよく似ている。
顔ももちろん、口癖まで似てる。
だから、おばさんといると何だか母親といるみたいな気分になってくることもある。
それはそれで、今更だから何かすごく照れ臭くなってしまったりもするんだけど。


それにしても、やっぱり、梨華ちゃんとの出会い、いや再会か―は、
自分の人生を大きく変えてしまったと思う。
もちろん、いい意味で。

『恋をする』っていう気持ちもはじめて知った。
こんなに楽しく、そして苦しいものだなんて知らなかった。
今まで自分のことを完璧だなんて思ったことなかったけど、
自分の弱い部分、情けない部分を思い知らされた。

そうだ、親友と呼べる友達はいないと思ってたけど、
最近、ミキティは親友って呼べるんじゃないかなって思えるようになってきた。
確かに、今までも一緒にいて一番気が許せるヤツだったけど、
お互いが女の子に恋をするっていう、
普通ではあまりない秘密的なことを共有できたのが大きい。
そう、これも言ってみれば梨華ちゃんのおかげだ。
308 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:52
そんなことを考えてたら、ポケットに入れてた携帯がブルブルと震えた。
差出人は…あいぼん!!
慌てて、画面を切り換える。

『サクラサク』
って、電報かよっ!
…でも、つーことは…合格したんだ!!
「…おしっ!!」
ウチは思わず、大声を出してしまった。

「こら、仕事中に携帯なんかいじるな!」
厨房の先輩に怒られた。
「あ、スミマセンっ!」
ウチはとりあえず頭を下げた。

よーし、今日の夜はごちそうだな!
今日は、ウチも夕飯の準備手伝うからね、楽しみにしてろよ!


309 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:53


4月になった。
私も入社2年目になり、3週間後には研修を終えた直属の後輩ができる。
ある意味楽しみではあるけど、もう一番下だからって甘えてられない。
でも、矢口さんみたいに後輩思いのいい先輩になるんだ、ゼッタイ。

ひとみちゃんも2年生になる。
とりあえずは授業よりも、サークルの勧誘やらイベントの企画やらで忙しくなるみたい。
あ、そうそう、家庭教師のバイトの方は辞めてしまった。
というのも、駅前に新しい進学塾ができて、
キャンペーンで新中学3年生は、割引になるとかで、
他の科目も習わせたかった紺野さんのお宅では、
あさ美ちゃんをその塾に行かせることにしたらしい。

でも、その話しはひとみちゃんから聞いたこと。
実際のところを、あいぼんから聞いたところによると、
つまり情報元はあさ美ちゃんのお姉さんなんだけど、
実はあさ美ちゃんはひとみちゃんに恋をしてしまっていたらしい。
だから、ひとみちゃんが教えていた英語と数学は異常なほど頑張っていた。
でも、逆に他の科目がおろそかになってしまって、全体の成績も下がりぎみだった。
紺野さんのお母さんもどうしたらいいか、悩んでいたところ、
駅前にできた進学塾のチラシが入ってきた。
それで、それを理由に、ひとみちゃんは辞めてもらうことにして。
例え女の子とはいえ、娘が恋してる相手と部屋で2人っきりにさせておくのは、
やっぱり心配なところもあったみたいだし。
もちろん、あさ美ちゃんは大泣きして反対したらしいんだけど、
ひとみちゃんが「もう先生じゃないけど、わかんないことあったら、
いつでも電話かメールくれればいいよ。
全部の成績がもっと上がって、もしウチの高等部に入ったら、学校で会えるし」
って、優しく言ってくれたから何とか我慢したのだとか。

もう、ひとみちゃんって、本当にモテるから、すっごく不安。
大学だって、後輩ができて絶対また言い寄られたりすると思う。
きっと、ひとみちゃんは誰にでも優しくするんだろうし。
本当は私以外の人に優しくなんかしてほしくないんだけどなあ…
310 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:53
そして、4月はひとみちゃんの誕生日がある。
去年はもう一緒に住んでたっていうのに、何にもしなかった。
というか、私もあいぼんもひとみちゃんの誕生日を知らなかった。
しばらくあとに聞いて、
「何で教えてくれなかったの?」って言ったら、
「いや、そんなわざわざ言うほどのことでもないと思って」って。
ひとみちゃんのことだから、プレゼントとかで余計な気を遣わせるのが、
イヤだったんだと思う。
でも、ウチ石川家では、そういうイベントごとはいつも家で祝っている。
基本的にそういうお祭り事が好きだから。
だから普通にちゃんとお祝いしてあげたかったのになあ。

でも、その分今年は盛大なお祝いをしてあげるつもり。
まずは家でおいしいものを作っておもてなし。
これは、同じ家で暮らしてるんだから、家族としてのお祝い。
幸い、お母さんもまだこっちにいてくれてるから、
ちゃんとしたおいしいお料理も作ってあげられると思うよ。
超豪華料理にしちゃうからね。

そして、もう1つ…恋人としてのお祝いもしなくちゃ。
何か愛のこもったプレゼントをしたいんだけどなあ…
うーん、正直、コレはすっごく悩んでしまった。
ひとみちゃんが喜んでくれるプレゼントって何だろう?

基本的に私は人からセンスが悪いと言われてる。
もちろん、ひとみちゃんもそう思ってるみたいで、
「その服の組み合わせはないんじゃない?」とか言ってくるときもあった。
やっぱり、ひとみちゃんに本当に喜んでほしいから、
センスのない私が選ぶよりも、本人に聞くのが一番いいよね。
311 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:54
ある日、バイトで12時過ぎにひとみちゃんが帰ってきた。
あいぼんもお母さんも寝ているようだったし、
リビングでひとみちゃんのお風呂上りを待っていた。
ひとみちゃんは笑顔でやって来ると、ソファーの私の隣りに座った。
ひとみちゃんが私の肩をそっと抱いて、すごく優しい目で私のことを見つめてくる。
2人っきりの時間…すごくシアワセ。

「ね、ひとみちゃん、今一番欲しいものって何?」
「えっ!?」
ひとみちゃん、なぜかすごく驚いて、声が裏返っていた。
「一応、社会人だから、ちょっとくらい高いモノでも大丈夫だよ」
「…そ、その…り、梨華ちゃん…」
「ん?」
「へっ!?あ、い、いや、あ、あの、梨華ちゃん…と、デ、デートしたいなあって」
ひとみちゃんの顔は真っ赤だった。そんなに照れることでもないのに。

「そんなのでいいの?」
「あ、だ、だって、鎌倉以外で2人で出かけたことって全然ないし」

確かにそうだ。
家にいても同じ時間を過ごせるわけだし。
そういえば、スーパーとかちょっとした買い物とか、
レンタルビデオ屋くらいは一緒に行ったことはあるけど、
改まって2人っきりで出かけたことってないかも。
毎週のように鎌倉に行ってるから、あんまり実感なかったけど。


ひとみちゃんの希望は、ごくごく普通のデート。
映画を見て、ゴハン食べて、ゲーセン行って、プリクラ撮って、カラオケ行って…
「じゃあ、そのときは、私が全部おごってあげるから!」
「えっ?いいよー。悪いもん」
「いいの、ひとみちゃんのお祝いなんだから」
312 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:55
そして4月の最初の土曜日、
私たちは、デートをするために渋谷に向かった。
今日、私はお気に入りのパーカーに、この前買ったばっかりのミニスカート。
ひとみちゃんはトレーナーにオーバーオールで、キャップをかぶっている。
ホント、男の子みたいでカワイイ。


駅から映画館に向かう途中で、ひとみちゃんがつぶやいた。
「あのねー、梨華ちゃん、お祝いなら、お願いがあるんだけど…」
「うん、何でも言って」
「…今日、ずっと手握ってていい?」

恥ずかしそうに、チラリと私を見てくるひとみちゃん。
もう、いつも頼ってばっかりだけど、
たまにこういうカワイイところを見せられると、すごくキュンとしちゃう。

私がひとみちゃんの手をギュッと握ったら、
本当にうれしそうに笑って、指を絡めるようにして手を握り直してくれた。


約束通り、その日、私たちはずっと、映画を見てるときも、プリクラ撮るときも、
カラオケで歌ってるときもずっと手を離さなかった。
さすがに、食事のときだけは、ちょっと離したけど。
313 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:56
帰り、家の前に着いて、繋いだ手を離した。
「何かヘンなカンジ…」
「何が?」
「今日ずっと梨華ちゃんの手がつっくいてたから、
自分の体の一部になってたみたいな気分だった」
「うふふ、そういえば、そうかもね」
私もそんな感覚におそわれてた。
でも、大丈夫、手は離れても、
私たちの心はしっかり繋がってるでしょ?


ひとみちゃんが、真面目な顔で、私の顔を見た。
「ね、また、ウチとデートしてくれる?」
私は、ひとみちゃんの頭を小突いた。
「もう、当たり前じゃない」
「えへへへ…よかった。うん、今日はありがとう」
「どういたしまして」

私たちは2人っきりの時間がなくなるのが、
名残惜しいと思ってなかなか家に入れなかった。



「あー、吉澤先生っ!」
振り向くと、おとなしそうな女の子がひとみちゃんを見て微笑んでいた。
「おう!あさ美ちゃん!どうしたの?こんな遅くに」
「塾の帰りなんです」
あさ美ちゃんは、ひとみちゃんを見たあとに私の方も見て、ペコリと頭を下げた。
「あいぼん先輩のお姉さんですよね?こんばんは、紺野です」
「どうも、こんばんは」
私も頭は下げた。それにしても、ひとみちゃんのことを好きになる子は、
どうしてかわいい子ばっかりなんだろう…もう…

「一人じゃ危ないから、家まで送るよ」
「い、いえ、近いから大丈夫ですよ」
「いいよ、ウチももう家に入るだけなんだし」
「で、でも」

…もう、また、そうやって、かわいい子に優しくするんだから…

「じゃ、梨華ちゃん、ちょっと送ってくるから。10分くらいで戻るよ」
「…うん、行ってらっしゃい」

でも、私も怒ることはもちろん、反対なんかもできるわけなくて…
これからも、こんなことで、ヤキモキすることが増えそう…


314 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 03:57


只今、4月11日の午後11時50分。
あと10分後にウチはハタチになるわけで。
もうお風呂も入って、自分の部屋でボーッとしているところ。
部屋の掃除もしたし、ちょっと雰囲気のいい洋楽なんかかけちゃってる。
…たぶん、梨華ちゃんのことだ、ウチの真似をして、
『一番最初におめでとう言いたかったの』とか言って、部屋に来てくれるはずだ。

…あわよくば、チューとかできないかな…
誕生日だもん、拒否されたりはしないよね?
この前『欲しいものある?』って聞かれて、つい『梨華ちゃん』って答えたけど、
本人は全然そんなこと言ってるなんて気付いてないわけで。
ごまかして『梨華ちゃんとデート』って言ったけど、
アレはアレですごく楽しかった。
しっかし、あんときの梨華ちゃん、かわいかったなあ…
ウチは布団に横になって、枕をギュッと抱きしめた。
もう布団も敷いてあるし、今日は雰囲気によってはキス以上のことも…ムフフフ…
あー、もう、早く来てくんないかなあ…



…梨華ちゃん、来ないよ、梨華ちゃん…
もうすでに時計は12時半を指している。
携帯にメールが何通か届いてるのはわかったけど、
梨華ちゃんからの着メロではなかったから、まだ見てない。
だって、やっぱりウチだって一番好きな人に最初におめでとうって言って欲しいもん。

しかし、そんな風に思ってるのって、ウチだけだったのかな。
もしかして、忘れちゃったのかな、ウチの誕生日…
この前のデートでお祝いしたから、もういいとか思ってるのかな。

メールの着メロがまた聞こえた。
ああ、もう!
こうなったら、ちょっとカッコ悪いけど、自分から行ってやる!

315 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 04:05
ウチは階段をそっと上がり、梨華ちゃんの部屋のドアを小さくノックした。
「梨華ちゃん?」
…無反応…
でも、ドアの隙間から明かりがもれてるから、起きてると思うんだけど。
もう一度、ノックしたけど、返事なし。
ええい、
「梨華ちゃん、開けるよ」
ドアを開けたら…中は相変わらず掃除ができてない…ま、それはいいとして。

そして、愛しいあの人はテーブルに突っ伏して寝ていた。
テーブルの上には、リボンのついた紙袋。
あ、この袋ってこの前、梨華ちゃんと渋谷行ったときに入った店のだ。
結構いい値段するブランドで、かわいいトレーナーがあったんだけど、
さすがに買うのはやめたんだよね。
ウチが『コレ、いいねえ』って言ったのを覚えてて、
梨華ちゃん、ウチに買ってくれたんだろうか。

ちなみに、梨華ちゃんの右手にはデジタル式の腕時計が握られてた。
たぶん、時間を見計らって、ウチのところに来てくれるつもりだったんだろう。
でも、つい寝てしまったと。
…ったく、やること、全部かわいいんだから。
ウチは梨華ちゃんの寝顔を覗き込んだ。
…かわいー…えへへ…誕生日に最初に会えたのが、梨華ちゃんってことだけで満足。
本人は意識はないんだろうけど。
起こしちゃうのも何だしねえ。
でも、このままじゃ風邪ひいちゃうかも…
しょうがないな…
ウチはそーっと梨華ちゃんを抱きかかえて、ベッドに上げて、布団をかけてあげた。

あまりにも寝顔がカワイイので、ウチはしばらくながめていた。
そして、髪を撫でると、
「…ひとみちゃん…」
「ん?起きた?」
…どうやら、寝言だったみたい。
「…おめでと…」
…くぅーっ!かわいいっ!…
きっと、夢の中で、ウチの誕生日祝ってくれてるんだ。
もう、コレだけで超シアワセっす…

316 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 04:14
そして誕生日当日の朝。
ウチは今日は一限からなので、早めに起きて、
あいぼんと同じ時間に朝御飯を食べていた。
そろそろ梨華ちゃんが起きてくる時間なんだけど…

バタバタと階段を下りてくる音。
梨華ちゃんが慌てた様子でリビングに入ってきて、ウチを見て固まる。
梨華ちゃんの手には、例の紙袋。

「梨華、どうしたの?顔くらい洗ってきなさい」
「…うん」
梨華ちゃんはショボンとしてリビングを出ていった。

ウチは、梨華ちゃんが戻って来る前に御飯を食べ終わったので、
食器を洗って、自分の部屋に戻って、学校へ行く準備をした。
準備を終えてすぐにこっそりと梨華ちゃんの部屋に向かった。
リビングを通るときも気付かれないように、そっとね。

梨華ちゃんはまだ食事中だろうから、悪いけど、部屋に勝手に入って、ベッドに寝転がる。
まだ、布団がちょっとあたたかい。
えへへ…梨華ちゃんのぬくもりだあ…
このまま眠りたいくらい…ちょっとくらい遅刻しても全然いいから寝ちゃおうかな…
ふと横を見ると、テーブルには例の紙袋。
さっきの様子からしたら、やっぱりウチに渡してくれるものでいいんだよな。
317 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 04:15
少しして、梨華ちゃんが部屋に戻ってくる。
何だか沈んでる様子。
うつむいてて、ウチの存在にも気付いてない。
ドアが閉まってから、ウチが立ち上がったら、梨華ちゃん、すごくビックリしちゃって。
「きゃあっ!」
「うわっ!」
ウチまで驚いちゃったよ。

「…ひとみちゃん…」
でも、やっぱり、梨華ちゃんはガックリしたまま。
「どうしたの?元気ないよ」

「…あいぼんからもお母さんからも、もう『おめでとう』言われたよね?」
「あ、うん」
確かにリビングに入ってすぐに2人はおめでとうを言ってくれた。
梨華ちゃんが、口をヘの字にして泣きそうになる。

「な、何?どうしたんだよ?」
ウチは梨華ちゃんの側にいって抱きしめた。
「…だって、だって…私のときはちゃんとひとみちゃんが一番に祝ってくれたのに…」

やっぱり、梨華ちゃんだなあ、そんなとこ。
「ちゃんと一番に、梨華ちゃんが祝ってくれたよ」
グズグズ言い出した梨華ちゃんの頭を撫でる。
「…ウソ…」
「ホントだってー。昨日、ベッドまで運んであげたの、誰だと思ってんの?」
「えっ?」
梨華ちゃんは、キョトンとしてウチの顔を覗き込んだ。

昨日の夜のことを説明してあげた。
梨華ちゃんの部屋に来たら、もう寝てて、寝言でお祝いしてくれたと。

「…だからね、誕生日に最初に会ったのも梨華ちゃんだし、
おめでとう言ってくれたのも梨華ちゃん」
「…ホントに?」
まだ涙のたまってる目をぬぐってあげる。
「そんなウソついて、どうすんだよお」
頭をポンポンとやってあげたら、やっと笑ってくれた。
318 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/09(日) 04:16
「あ、コレ…」
梨華ちゃんが、テーブルの上の紙袋をウチに渡す。
「…お誕生日、おめでとう」
「ありがと…プレゼントくれたのも、梨華ちゃんが最初だよ」
ウチが微笑むと、梨華ちゃんも本当にうれしそうな顔をしてくれた。
でもすぐにハッと息をのんだ。

「…あー!遅刻しちゃうっ!!私、着替えるから…」
『出てって』と言わんばかりにドアの方を見る梨華ちゃん。
「いいよ、ウチのことは気にしないで、脱いでくれて」
ウチがニヤッとしたら、枕で殴られた。
「…もうっ!ひとみちゃんのエッチ!」
「わ、悪かったよ、冗談!」
ウチは慌ててドアを開けた。

「あ、ひとみちゃん…私も今日の夜はなるべく早く帰ってくるからね」
「うん、ウチもお腹すかせて帰ってくるよ。じゃ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
梨華ちゃんの笑顔を目に焼き付けて、ウチは学校に向かった。
うん、今年の誕生日は人生で一番幸せな誕生日になりそう…
っていうかもうすでにイチバンになってるよ、ありがとね、梨華ちゃん。


319 名前:名無し作者 投稿日:2003/11/09(日) 04:17
更新しました。
間があいてしまってすみません。

>>284さん
ありがとうございます。かわいいイシカーさん目指します(W

>>285さん
一応はまだ続いてます(W 引き続きよろしくお願いします

>>286さん
ありがとうございます。ある意味『おいしい』ですよね(W

>>287さん
こんなカンジです(W

>>289さん
ありがとうございます。ageは自分でもよくやりますし、
sageにそれほどこだわってるわけでもないので、全然気にしないで下さい。

>>292さん
ありがとうございます。
そんな10回も読んでいただいちゃうと、誤字脱字をかなり発見されてるかと(W
非常に多いですが、訂正もせずに申し訳ありません。

>>293さん>>294さん
お待たせいたしました。マイペースですみません…

>>295さん
ありがとうございます。自分もある意味、トロトロです(W

>>296さん>>297さん
ありがとうございます

>>298さん>>299さん
お待たせしました

>>300さん>>301さん
そういっていただけると、非常に助かります。
マイペースマイペース主義なもので(W

320 名前:292 投稿日:2003/11/09(日) 08:07
更新お疲れ様です!間が空いたので心配してました。でも気にせずマイペースで更新されてくださいね。
更新なくても読み返して「にまぁ〜」ってしてますから。なんで読み返しは10回はとうに超えてます(笑)
今回も胸の奥がキュンキュンしちゃいました。よっすぃーの誕生日、Happyな日になるといいなぁ。
321 名前:( ´ω` )よっすぃ〜 投稿日:2003/11/09(日) 13:24
作者さま〜更新お疲れさまです。

私も何度も読み返しては、ほっこりとさせて頂いています。
ほんと〜にここの、いしよしは最高で〜す!

誕生日の夜はお楽しみです♪(*/∇\*)キャ♪
322 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/10(月) 03:44
初レスです

甘くて甘くて最高ですね

続き期待してます
323 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 12:54


今日は会社を定時ピッタリに出て、
ひとみちゃんの好きなお店のケーキを買いに行った。
ちゃんと予約しておいて、「HAPPY BIRTHDAY HITOMI」って入れてもらった。

パーティーはお母さんとあいぼんももちろん一緒だし、それはそれでもちろん楽しい。
でも、たぶん、2人ともそんなに遅くまで起きてるはずはないし、
2人がいなくなってからは、ひとみちゃんと私の2人っきりの時間を過ごせる…
うふふふ…ひとみちゃんにまたプレゼントしちゃおうかな…
プレゼントは…私のク・チ・ビ・ル…いやーん、恥ずかしい!!もう!
でもでも、ちゃんと喜んでくれるかなあ?
あ、荒れたりしてないかな…うん、大丈夫。
この前買ったピーチの香りのするリップでもつけておこうっと。
最初のキスはピーチ味…なーんて。
うーん、今日はあんまりお酒は飲まないようにしないとなあ。
また変なことしちゃうかもしれないし。



ケーキを崩さない程度に急ぎ足で家に向かう。
玄関のドアを開けると、なぜか沢山の靴。
しかも全部女性ものっぽい。
なんで?
しかも2階のリビングから、楽しそうなにぎやかな声がする。


リビングのドアを開ける。
な、なんなの、この大勢の人たちは?
「あ、梨華ちゃん、お帰り」
最初にひとみちゃんが気づいてくれた。
「た、ただいま…」

「おかえりなさーい」
「おじゃましてまーす」
「梨華ちゃん、久しぶり!」
そこにいる人たちが口々に私に挨拶をしてくれた。
もう一度、ここにいる人をよく見てみる。

ひとみちゃん、お母さん、あいぼん…
他には藤本さんに松浦さん、あさ美ちゃん、
それにたまたまこっちに出てきてた麻琴ちゃん。
それに私の知らない人が3人…
324 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 12:55
麻琴ちゃんはウチの母方の親戚だからひとみちゃんのことも知ってる。
(ウチのお母さん、ひとみちゃんのお母さん、麻琴ちゃんのお母さんは姉妹)
麻琴ちゃんの父方の親戚の法事が明日あるとかで、
金曜日の今日、学校が終わってから新潟から東京に出てきたらしい。
それでたまたまあいぼんに連絡したところ、今日のことを知って駆けつけたのだとか。

知らない人のうちの2人はひとみちゃんの大学の先輩の安倍さんと飯田さん。
『誕生日の夜だけど、どうせ何もないんだろうから、飲みにでも行くぞ!』
ってひとみちゃんが誘われたらしい。
でも、家でイトコたちが祝ってくれるって言ったら、2人はすごく残念がってしまって。
で、ひとみちゃんは、家に電話してお母さんに聞いたら、
『パーティーなんだから、人数多い方が楽しいから連れていらっしゃい』って。
そんな話をしていたところにたまたまやってきた松浦さんも、参加することになって。
その話を藤本さんにしたら、藤本さんも『行く!!』って。
あ、ひとみちゃんから、この2人が付き合ってるって聞いて、ビックリしたけど、
2人が一緒にいるのを見て納得。すごくお似合いなんだもん。

あともう1人の知らない子は、
ひとみちゃんのバイト先の居酒屋で一緒の高校生の亀井さん。
あさ美ちゃんも亀井さんも、ひとみちゃんにプレゼントを渡しに、
家にきたところだったみたい。
で、これまたパーティーやってるからあがってってことになって。


しかし、何なのよ…
そりゃね、お祝い事だから大人数の方が盛り上がるし、楽しいのは確かだけど。
何か、何か、面白くない…
325 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 12:56
10時頃には、家が近いし、
まだ中学生、高校生のあさ美ちゃんと亀井さんは帰っていった。
麻琴ちゃんは、今日はあいぼんの部屋で寝るって。
お母さんもあとは若い子たちでって11時頃には寝てしまった。
まあココの人たちまでは許容範囲として。

なぜか、安倍さん、飯田さん、藤本さん、松浦さんはそのまま泊まるってことになった。
お母さんが布団を用意しようとしたら、
飯田さんが「あ、朝まで飲んでるんで、いりませんよ」って。
もちろん、基本体育会系のひとみちゃんが、先輩に逆らうはずもないし。


…ひとみちゃんとの2人っきりの甘い時間は?
せっかくのひとみちゃんの誕生日なのに…


だいたい、何でひとみちゃんは、飯田さんと安倍さんに挟まれて座ってるワケ?
床のラグの上では、藤本さんと松浦さんがいちゃついて座ってる。
そんなんだったら、別にココじゃなくても、どっちかの家にいけばいいじゃない!
…あ!…い、今、キスした!
もうっ!本当は、ひとみちゃんと私が今頃キスしてるはずなのに!


私がじっとひとみちゃんを見てたら、視線に気付いてくれて、
飲み物を持ってくるのに席を立って、
そのあとは、さりげなく私の隣に座ってくれた。

「梨華ちゃん、今日元気ないよ?どうしたの?」
小声でこっそり聞いてきてくれた。
「だって………ううん、何でもない…」
「…そう…それならいいんだけど…」

『ひとみちゃんがかわいい人たちに囲まれて楽しそうにしてるのがイヤ』
なんて言ったら、単なる嫉妬深い女だ。
だいたい、この人たちはみんなひとみちゃんのために来てくれたんだから。
むしろ感謝しなきゃいけないんだよね。

私の隣にいるけど、やっぱり、飯田さんや安倍さんは、
ひとみちゃんに話しかけてくるわけで、
藤本さんと松浦さんは完全に2人の世界だし。
326 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 12:57
やっぱりひとみちゃんが相手してくれないんじゃ、つまんないよぉ…
もう寝ちゃおうかな…
私は目をつぶってひとみちゃんの肩に頭をのせた。
すると、ひとみちゃんはいつもみたく、私の頭を撫でてくれた。
でも、やっぱり他の人がいるせいか、少ししかしてくれなかった。

ひとみちゃんと楽しそうに話してる飯田さんと安倍さんの声とか、
藤本さんと松浦さんがイチャイチャしてる声とかが耳について、全然眠れそうもない。
もう…ひとみちゃんが隣にいてくれればそれだけでいいや。
だから、そのまま寝たふりで、ずっと肩に頭をのせていた。


しばらくしてから、ひとみちゃんが、
「梨華ちゃん?梨華ちゃん?」って耳元で呼んできた。
でも、私は無視して目をつぶってた。
「あー、もう完全に寝ちゃってるね。ちゃんとベッドに寝かせてくるよ」

私の体がさっと持ち上げられた。
…あ、この体勢って…

「うわあ、よっすぃー、かっこいい!
いいなあ、みきたん、私もお姫様だっこされたい!」
「えー?やってみるー?」
結局藤本さんと松浦さんはイチャイチャしたままで。

でも、やっぱりひとみちゃんにお姫様だっこされてるのがうれしくて、
寝たフリしてるのがつらかった。
だって、顔がニヤけそうになっちゃったんだもん。

327 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 12:58
そのまま部屋まで連れてこられて、そっとベッドに寝かされた。
そのあと、ひとみちゃんはベッドサイドに座って私の髪を撫でてくれた。

「…かわいいなあ…」
ひとみちゃんが、つぶやく。
『かわいい』って私のことでいいんだよね?
もう、ひとみちゃんってば…
そんな言葉が聞けたことも、髪を撫でられるのも気持ちいいから、
そのまま寝たふりを続けてた。


ふと、ひとみちゃんが立ち上がる。
あ、行っちゃうのかな…行かないで…
薄目を開けて見ると、ひとみちゃんはドアを開けると、キョロキョロと外を見てから、
そのまま部屋は出ずに、そっとドアを閉めた。


…何だろう?…
ひとみちゃんが振り向いた瞬間に、起きてるのがばれないように急いで目をつぶる。
ひとみちゃんが近づいてくるのがわかる。
ど、どうしよう?
も、もしかして、私が寝てるのをいいことに、襲おうとしてるとか!?
もちろん、ひとみちゃんならいいんだけど…
でも、そんな突然過ぎて、心の準備が…

ひとみちゃんが、ベッドの上にのってきて、私の隣に横になった。
そして、腕枕をするようにして、私のことを抱き寄せた。
…えと、あの、ど、どうしよう…?
この状況で、実は起きてたなんて、今更すぎるし。
あー、でも、すっごく心臓がバクバクしてきた…起きてるってバレちゃうよ…
328 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:03
でも、ひとみちゃんは、優しく抱きしめたままで、
髪を撫でてるだけで、それ以上は何もしてこなかったし、
私が起きてることにも気付いてないみたいで。

「…梨華ちゃん…好き…大好き…」
って何度か小さい声でささやいて、頬を摺り寄せてきた。

…私だって、私だって…
そう思ったら、自然とひとみちゃんの背中に腕を回してた。
「…ひとみちゃん、好き…」
「…えっ?」

ひとみちゃんが慌てて、私の顔を覗き込んでくる。
「お、起きてたの?」
私がコクンと頷くと、ひとみちゃんは、顔赤くして、
「…もう、言ってよぉ…ウチ、ヘンタイみたいじゃん…」
「だって、そうじゃないの?」
私がクスクス笑ったら、
「あー、アッタマきた!」
ひとみちゃんは、私の上に覆いかぶさって、両方のほっぺを引っ張った。
「くるひいよー」
「ぷはは、梨華ちゃんの顔面白い!」
「あによー!」

私もひとみちゃんの顔に両手を伸ばして、ギュッとほっぺをつぶした。
「ひとみちゃんの顔だって、おもしろーい!」
「あんだよぉ!」
何だか、子供のケンカみたいだけど、こうやってじゃれあえることが、
すごくうれしかった。
329 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:04
「…ちょっと、押さないでよー」
「だって、見えないんだもん!」
「シッ!声大きいよっ!」
なぜか、ドアの方から声が聞こえてきた。
ひとみちゃんもソレに気付き、サッと立ち上がると、
細く開いていたドアを勢いよく開けた。

「…ナニやってんすか?」
トン吉チン平カン太のようにたてに並んで、のぞいていたと思われる4人組、
上から飯田さん、安倍さん、藤本さん、松浦さん。
「い、いや、楽しそうだなーって、仲間に入れてもらおうかなって」
ニコニコと微笑みながらも、目が泳いでる安倍さん。

「ごめん、ごめん、ジャマして」
その言葉のわりには、楽しそうに笑ってて全然罪悪感が感じられない飯田さん。

「もしかしてー、私とみきたんに影響されたとかー?」
松浦さんの勝ち誇ったような顔…何かムカツク。

「よっちゃん、やることやってんじゃん。がんばってるじゃん」
藤本さん、ちゃんと見てました?
私たち、何もしてないんだけど…

「…もう、ナニ言ってるんすか!
すぐに戻るから、リビング行ってて!」
ひとみちゃんは、ドアをおもいっきり閉めて、鍵までかけた。

「…もう最初から鍵かけておけばよかった…」
ひとみちゃんはそうつぶやいてがっくり肩を落とした。
おやつを取り上げられた子供みたいで、何だかかわいかった。

330 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:04
「梨華ちゃん、ごめんね、ヘンな人たちで」
「うふふふ…類は友を呼ぶっていうもんね」
私はまた笑ってしまった。
「もうっ!またそんなこと言う!」
ひとみちゃんも笑いながら、私の髪をクシャクシャとかき回した。
「じゃ、向こうに戻るよ。梨華ちゃんも眠くないなら、おいでよ」


本当はひとみちゃんの側にいたいけど、
またあっちに行ってもさっきと同じで変にヤキモチやいてしまう。
それが態度に出ちゃったら、私って本当にただのイヤな女だ。

「ううん、今日はもう寝るね」
「…そっか。じゃ、おやすみね。また明日」
ひとみちゃんは、さっき自分が思いっきり引っ張った私のほっぺを、
やさしく包み込んで撫でると、部屋を出ていった。


あーあ、もう少しひとみちゃんとイチャイチャしてたかったなあ。
もうあの人たちが来なかったら、もっとできたのに…
ひとみちゃん、もっと怒ってもいいのに…

ううん…ひとみちゃんが、私以外の人にも優しいのは、本当はイヤだけど、
それがひとみちゃんなんだもん。
そういう人じゃなかったら、私も好きにならなかったと思うし。
だから、つまんないことで私もイライラしちゃダメだよね。
私の方が大人なんだし、もう少し余裕を持たないと、
ひとみちゃんにあきれられちゃうもんね。


331 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:06


ウチの誕生日の次の次の日、おばさんが、ニューヨークに戻っていった。
そして、またウチが家事をやることになる。
でも、おばさんにいろいろ仕込まれたのもあってか、
梨華ちゃんもいろいろやってくれるようになった。
料理も、手つきもだいぶよくなったから、手伝ってもらうこともできるようになった。
洗濯だって、ウチが授業が遅くからで朝は寝ていられるときは、
梨華ちゃんがやってくれるようになったし。
もちろん、そんなときは朝ゴハンも作ってくれてて。
味はともかく、なーんか好きな人に、こういうことしてもらえるのって、
シアワセだよなあ…


ウチは家庭教師のバイトも辞めたし、
おばさんがいなくなったと同時に、居酒屋のバイトも辞めようかなと思ってたんだけど、
店からは引きとめられたし、実際あの店でのバイトは楽しくて好きだった。
梨華ちゃんに相談したら、「それなら続けた方がいいよ」って。
ひとみちゃんがいないときは、私がちゃんと家のことやるからって、
ひとみちゃんにばっかり頼ってられないって。


ウチはある意味さみしかった。
本当はもっともっとウチに頼ってほしい。
梨華ちゃんに「ひとみちゃんがいないとダメなの」って思われるくらいになりたいのに。

でも、そんなことは言えずに、結局日にちは減らしたけど、
居酒屋のバイトは続けることにした。
ウチがバイトに入ってる日も、梨華ちゃんは夕飯を作ってくれていた。
部活のないときには、一番早く帰ってくるあいぼんが、
夕飯を作ってくれてるときもある。

休みの日には、たまに「お料理教えて」って言ってくるから、
あいぼんに教えてあげている。
そんなとき、梨華ちゃんも横で一緒にやってるんだけど、
たぶん、あいぼんの方が、センスはあると思うなあ…ごめんよ、梨華ちゃん。
でも、梨華ちゃんもだんだんうまくなってるのは確かだからね。
だからって、無理はしなくていいんだよ、ウチが梨華ちゃんの面倒はみてあげるんだから。
332 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:14
ある日、ウチはバイトもなく、早めにお風呂に入って、
部屋で、音楽を聞きながら、布団にうつ伏せになって、雑誌を読んでいた。

「ひとみちゃあ〜ん」
突然戸がガラッと開いて、梨華ちゃんの声がした。

「!!」
振り向くと同時にウチの上に梨華ちゃんが覆い被さってきた。
「ど、ど、ど、どうしたの?」

「ひとみちゃんに会いたかったの」
ウチの首筋に顔をうずめて、スリスリしている梨華ちゃん。
ちきしょう、かわいすぎるじゃんかよお。
ん?待てよ。
「梨華ちゃん、お酒くさいよ」
「えへへ、今日、新人の歓迎会だって言ったじゃーん」
確かにそうだけど、人前ではあんまり飲み過ぎるなって言ったじゃん。
コレはどうみても飲み過ぎてるでしょ…


それにしても、この体勢は何気にヤバイ…
布団の上で、梨華ちゃんに抱きつかれてるって…

「…梨華ちゃん、スーツ、皺になっちゃうよ」
「いいの」
「…ダメだよ、ちゃんと自分の部屋行って、ハンガーにかけなよ」
「うーん、ひとみちゃんがお部屋まで連れていってくれるならいいよ」
「なんだよ、ソレ。歩けない程、酔っ払ってるわけじゃないでしょ」
「歩けな〜い。もう足が動かないよお」
そう言って、余計にギュッと抱きついてくる梨華ちゃんが、かわいくて仕方ない。
本当はこのまま寝ちゃってもいいくらいなんだけど…

「も、もう!この甘えんぼ!」
ウチは照れくささもあったし、梨華ちゃんをお姫様だっこして抱き上げた。
「きゃあっ!」
しっかし、この前も思ったけど、ホント軽いよなあ。

「…ほら、ちゃんとつかまってないと振り落とすよ」
ウチは梨華ちゃんの体わざと激しく横に揺らす。
「もうっ!ひとみちゃんのイジワル」
梨華ちゃんはそう言ってウチの首に腕を回してきた。
くぅ…ずっとこの状態のままでもいいんだけど。
333 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:14
ウチは階段をゆっくりと上り、梨華ちゃんの部屋のドアを開けると、
少し乱暴にベッドの上に梨華ちゃんを投げた。
「きゃっ!」
「ほら、運んであげたんだから、ちゃんとスーツ脱ぎなよ」
ウチが部屋から出ていこうとすると、かわいい酔っ払いに思いっきり腕を引っ張られた。

「だめ〜、ひとみちゃんが脱がせて〜」
「はあっ!?」
「一人じゃ脱げない〜」
「ナニ言ってんだよっ」
まるで子供のように口を尖らせて、ウチのことを見つめてくる梨華ちゃん。
…それは反則だよ…

「あー、もうわかったわかった」
梨華ちゃんの薄いピンクのジャケットを脱がせて、
部屋のクローゼットを開けて、空いているハンガーにかける。
「はい。コレでいいでしょ」
「スカートもっ」
「…ばっ、ばか言わないでよ」
スカートの下って、その…下着じゃんか。

「ひとみちゃんのウソツキ」
梨華ちゃんがまたすねて、体を横に向ける。
うう、行動全部がかわいいんだけど…

「はいはい。もう子供なんだからっ」
ウチは照れ隠しに、わざと雑な動きでスカートのホックを外し、
ファスナーを下ろして、スカートだけを見るようにしながら、脱がせた。
うっ…ピンクのパンツがチラッと視界に入った。
あー、いつも洗濯してあげてるじゃんかあ。
別に、ソレを着てるだけなのに、なんでこんなにドキドキすんだよ。

ウチは梨華ちゃんに背中を向けて、ハンガーにスカートをかけていた。
「う〜ん、よいしょ、よいしょ」
梨華ちゃんの声がしたので、気になって振り返ると、
梨華ちゃんは丸くなって、無理矢理ストッキングを脱ごうとしてた。
「あー、そんな乱暴に脱いだら、伝線しちゃうじゃん!」
「じゃ、脱がせて〜」
…もう、しょうがない…とことん、お姫様のわがままに付き合ってやるよ。
膝の辺りまで脱いでいたので、そのままゆっくりと慎重に下に下げた。
しかし、人のストッキング脱がすのって、えっちぃなあ…
また梨華ちゃんのピンクのパンツが目に入ってきたので、布団をかけてやる。
334 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:15
「じゃね」
「えー、ブラウスまだ脱いでないよお」
「も、もうっ!何言ってんだよ!」
梨華ちゃんを見ると、妙に潤んだ目でウチのことを見ていた。
そんな目で見られちゃったらさあ…
「…わ、わかったよ」
ウチは、また乱雑に梨華ちゃんのブラウスのボタンを外していく。

「…あん…」
「あ、ご、ごめん」
つい、胸に軽く指で触れてしまった。
しかし、ヘンな声出すなってーの。
こっちまで本当にヘンな気になっちゃうじゃんか。

ゴクン。
今度は、ピンクのブラが目に入ってきた。
うぅ…ヤバイってヤバイって。
ウチはブラウスを梨華ちゃんの腕から急いで脱がせて、ハンガーにかけた。
さすがに、コレ以上はヤバすぎる。
下着まで脱がせてとか言われたらどうすんだよ、どうなるんだよ、ウチ。
はあ…
335 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:16
「うおっ!」
突然後ろから引っ張られた。
気付いたら、ベッドの上で、しかも梨華ちゃんが上にいた。

「ちょ、ちょっと、梨華ちゃん!?」
「ひとみちゃ〜ん」
ウチにピッタリと抱きついている梨華ちゃん…しかも下着だけじゃん!

「り、梨華ちゃん、風邪ひくって、体冷えちゃうよ」
「じゃ、ひとみちゃんがあっためて」
…へっ…?
あ、あの、イシカーさん、ど、どういうことでしょうか?
そ、その、つまり、それって、そういうことしてくれってことなんでしょうか?
と、トツゼンすぎて、心の準備ができてないんですけど…


「ね、ギュッってしてえ」
…あ、そ、そういうことね。ギュッね、わかりましたよ、しますって。
ウチは梨華ちゃんの背中に腕を回し、ギュッと抱きしめた。
「うん、きもちい〜。ひとみちゃん、あったかい…」


梨華ちゃん…ホント細いな。
肌もスベスベしてるし。
梨華ちゃんの顔がウチの顔のすぐ横にある。
あー、なんてかわいいんだろ。
しかし胸がすげー柔らかくって、それがギュッって押しつけられてるワケですよ。
何か下半身がムズムズしてきちゃった…
しかもウチが脚を少し動かしたら、梨華ちゃんの脚が絡みついてきた。

うう、何だよお、コレ。拷問じゃんか…
ウチの頭ン中は、おかしくなってきた。
かなり呼吸も乱れてきた。
も、もう限界…ダメだ…
336 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:20
「梨華ちゃん…ウチ、もう、ガマンできないよ…」
ウチはそう言って、ゆっくりと梨華ちゃんの体を下にして、
キスをしようと、梨華ちゃんの顔を見た。

…彼女は幸せそうに口を少し開けて、スースー言っていた。
「…寝てんのかよ…」


ったく、なんでウチだけこんなに緊張して、ドキドキしてんだよお。
あーあ、ばっかみてー。
梨華ちゃんの天使のような顔を見る。
しっかし、なんでこんな無防備なんだよ。
もう、いくらでも襲って下さいって、言ってるようなもんじゃん。

そりゃ、ウチだって、梨華ちゃんとキスもしたいし、
それ以上のことだってしたいよ。
でも、そういうのって、お互いがそういう気持ちになっててしないとさ。
梨華ちゃんが全く知らないうちに、
そういうことしちゃうのはどうかと思うし。
だいたいあとでバレたら、口聞いてもらえないどころか、嫌われそうだし。


ウチはベッドの横に座って、梨華ちゃんの髪をそっと撫でた。
梨華ちゃんの、ぷっくりとした唇が目に入る。
あー、キスしたい。
ウチは、そっと、梨華ちゃんの唇を人差し指で撫でた。
柔らかい、すっごくしっとりとしてて気持ちいい…
そして、その指で自分の唇を撫でる。
「コレでガマンするよ…」


はあ…なんだかなあ…
ウチはベッドの脇に脱ぎ捨てられていたジャージを梨華ちゃんに着せた。
そして、布団をかけてあげて部屋を出た。

でも、結局、そのあとも、さっきの梨華ちゃんの体の感触が、
すぐによみがえってきちゃって、全然眠れなかった。
まったく、ウチは中学男子かってーの。
337 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:21
全然眠れないまま、朝がきて、一旦梨華ちゃんの部屋に寄る。
「梨華ちゃん、起きなよ。昨日、お風呂入ってないんだから、シャワー浴びなよ」
「…ん……うん…ありがと…」
梨華ちゃんが、のっそりと起きあがったので、安心してゴハンの用意をしに行った。
本当は今日の授業は午後からだから、早く起きなくてもよかったんだけど、
昨日の梨華ちゃんのあの様子じゃ朝ゴハンつくれると思えないし。


ゴハンの準備がほぼできた頃にあいぼんがやってくる。
「あいぼん、おはよう」
あいぼんは、なぜか、ニヤッとしてウチを見た。
「おはようさん」


そこにシャワーを浴び終えた梨華ちゃんが、髪の毛を拭きながらきた。
「おはよう」
「何や、梨華ちゃん、昨日、お風呂も入ってなかったんか」
「うーん、昨日のこと、あんまり覚えてなくって。
歓迎会で飲みにいって、タクシーで帰ってきたのは覚えてるんだけど。
家に入ってからの記憶がなくって」

そりゃないよ、梨華ちゃん。
あそこまでしといて、全く覚えてないなんて…

338 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:21
「ふーん、じゃ、よっすぃーは、酔っ払ってフラフラになってる梨華ちゃんを
無理矢理ベッドに押し倒してたんだあ」
「なっ!!」
「えっ!?」

あいぼんが、ニヤニヤしながら、ウチの方を見る。
そういえば、昨日、梨華ちゃんの部屋に入ったとき、
ドアをちゃんと閉めてなかった気がする。
あいぼん、覗いてたのかよ!
梨華ちゃんが、真っ赤になって俯く。
しかもチラッとウチのことを心配そうな目で見た。

「ウ、ウ、ウチがそんなことするわけないじゃんか!!」
「そっかー、『もうガマンできない!』って、
梨華ちゃんのこと押し倒してるよっすぃーは幻やったんかあ」
コ、コイツ、どこからどこまで見てたんだ?

梨華ちゃんが、泣きそうな顔になる。
「ち、違うよ。ウチ、何にもしてないからね、神に誓って言えるから!」
でも、梨華ちゃんは、うつむいたまま何も言ってくれない。
うわーん、どうしたら、信じてもらえるんだよう…


339 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:29


昨日、酔っ払って帰ってきたけど、全く記憶がなかった。
いや、全くなかったワケじゃない。
部長たちにタクシーに乗せられて、家まで帰ってきたのはハッキリ覚えてた。
でも、その後の断片的に覚えてたことは夢なんじゃないかなって思ってて。

ひとみちゃんにお姫様だっこされて、部屋までいったこと。
ひとみちゃんとベッドの上で抱き合ってたこと。

あいぼんが言ったことからすると、コレは夢なんかじゃなくて、
本当のことで、しかも、ひとみちゃんが私に何かしたかもしれなくて…
でもひとみちゃんはしてないって言ってたし、
私も何かされたような記憶は全くないし、その、体に異変もなかった。
だからひとみちゃんの言葉を信じたいとは思うんだけど…

今朝は何か恥ずかしくて、結局ひとみちゃんとしゃべれなかった。
夜はひとみちゃんがサークルでボーリング大会とかで、
帰りが遅くなるとかで、まだ帰ってきてない。
340 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:30
会社から帰ってきて、部屋に入ると、スーツを脱いだ。
昨日着てたスーツがキチンとハンガーにかけられてるのが目に入った。
たぶん、コレ、ひとみちゃんがやってくれたんだろうな…
さすがに酔っ払ってて、ココまでキレイに服をかけられるとは思えない。

「梨華ちゃん、いい〜?」
あいぼんの声がして、すぐにドアが開いた。
「ゴハン、食べた?」
「ううん、まだ」
「じゃ、一緒に食べよー。よっすぃーがカレーつくっておいてくれたから」
「うん」

ひとみちゃんは、自分の授業が遅くからで時間があったりすると、
こうやってゴハンをつくっておいてくれたりする。
ホント優しいよね。
もし、ウチにひとみちゃんが来てくれなかったら、
家の中どうなちゃってたんだろうって、ときたま思う。


お母さんは私に家事をするように言ったけど、
結局ひとみちゃんがやってくれる方が安心だし、
ひとみちゃんも自分からすすんでやってくれる。
でも、最近は私も手伝うようになったし、
ひとみちゃんがいないときは1人でやることもある。

前はあまりに危なっかしくて見てられなかったみたいなんだけど、
お母さんの3ヶ月に及ぶ特訓の成果も多少はあったのか、
だいぶうまくなったって、ひとみちゃんも褒めてくれた。
やっぱり、ひとみちゃんとお料理を一緒するのは楽しい。
もちろん、ひとみちゃんの華麗な手さばきを側で見れるのもうれしいし、
2人で一緒に作り上げたものを見てると、
目に見えないはずの2人の絆が形になって現れてるみたいで、幸せな気分になれる。
…なんて思ってるのは私だけなんだろうなあ、
もっとお料理の腕を上げないと。
ひとみちゃんが、私に完全に任せても安心って思ってくれるくらいまで。
無理だろうけど、目標は高く持たないとね。
341 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:30
キッチンにいくと、あいぼんが鍋をあたためていてくれた。
私がお皿にゴハンをよそい、カレーをあいぼんがかけてくれる。
いいニオイがする。すごくおいしそう。


2人でテーブルについて、カレーライスを食べる。
うん、おいしい。さすがひとみちゃん。

「…で、梨華ちゃんとよっすぃーはどこまでいってんの?」
「!!…うっ、ゴホッ」
ゴハンがヘンなところにつまってしまった。
あいぼんを見ると、ニヤニヤとした顔で、私を見ている。

「…ど、どこまでって?」
「いやー、別に隠さんでもええよ。チューくらいはしてるんやろ?
つーか、2人がお互いに好きなのは見ててバレバレやったし」

…えっ?あいぼん気付いてたの?

「世間体とかいろいろあるやろうし、
さすがにお父さんとお母さんにはバレたくないやろ?
ちゃんと秘密にはしておくから大丈夫」
「…いや、あの、あのね」
342 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:31

「昨日は、何かうるさいなあと思ったら、ちょうどよっすぃーが梨華ちゃんを
お姫様だっこして部屋に入ってくところでー、
ドアが開いたままだったから、ちょっと見学させてもらった」
あいぼんが肩をすくめてえへへと笑った。
こんな笑い方されちゃうと、お姉さんは何も言えなくなっちゃう…

「よっすぃー、ガマンしてしまうんやもん。
いいもん見せてもらおうと思ったのに」


何でも、私の方がワガママ言って、服を脱がせろとかお願いして、
ひとみちゃんは困りながらも言う通りにしてくれて。
下着姿になったところで、私の方から、ひとみちゃんに抱きついて、
ベッドに押し倒したらしい。
『ギュッとして〜』とか甘えてたのも私の方で…
しばらくじっとしてたものの、ひとみちゃんはさすがにガマンできなくなったらしく、
逆に私のことを押し倒したのに、私はもう寝てて。
結局ひとみちゃんは何もせずに、ジャージを着せてくれて、
布団をかけてくれて、部屋を出ていったとか。


ど、どうしよう、恥ずかしい…
私のとった行動はもちろんだけど、下着姿も見られちゃったんだ…
前にお風呂場で裸を見られたこともあったけど、
アレはわざとじゃないし、そのときはひとみちゃんのこと好きだって気付いてなかったし、
ほんの一瞬だったから、そんなに見られてないと思うし。
今回は酔っ払ってたとはいえ、明らかに自分の願望を出しちゃったんだ…


「しっかし、2人見てて、イライラするほどだったのに、
よく気持ち伝え合ったよねー。
ね、どうして両思いになれたん?」
「りょ、両思いって…」

あいぼんが、私たちに変に遠慮するようになるのだけは、避けたい。
だから、あまり私たちの関係を認めたくなかった。
343 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:32

「うーん、実は、アタシも好きな人いるんだ。
どう気持ちを伝えたらいいのかなって」
「そ、そうなの?同じ中学だった子?塾の子とか?」

あいぼんが顔を赤らめながら、首を横に振る。
「ううん、高校の1つ上のダンス部の先輩。
最初のオリエンテーションで、ダンス部の発表のとき初めてその人見たんだけど、
その人しか目に入らんくて…」

「…え?お、同じ学校って…」
「もちろん、女の子だよ、すっごくかわいいんだあ」

私は、驚いて固まってしまった。
姉妹で揃って、女の人を好きになるなんて…
でも、高校生くらいだったら、同性の先輩に憧れることなんて、よくある話しだよね。
むしろ、男の子と合コンやりまくるとか、
エンコーしちゃうとか思ったら、かなり健全な純粋な恋愛だよね、うん。
あいぼんは、そのままでいてほしい。


あいぼんは恥ずかしそうに、自分の手帳を取り出して、
プリクラが貼ってあるページを見せてくれた。
そこに写っている、カワイイ子、高橋愛ちゃんっていう子らしい。

「愛ちゃん先輩、カワイイだけじゃなくって、すっごくイイ先輩なんだよ。
ダンスもすっごくうまくて、歌もうまくて、カッコイイんだあ」

うん、あいぼんも愛ちゃんともっと仲良くなれるといいね。


「今度、ウチに愛ちゃん、連れておいでよ。
ひとみちゃんに何かおいしいものつくってもらって、おもてなししてあげるから」
「何や、よっすぃー任せかいっ。ま、その方が安心やけど」
「あ、ひどーい」
「だってホントのことやもん」
あいぼんと2人で笑い合った。

保田さんといい、あいぼんといい、
何か私の周りには、同性同士の恋愛をわかってくれる人がいてよかった。

でも、やっぱり家の中では、イチャイチャすることはできないよねえ。
あいぼんがわかってるってことは、そういう目で見てるんだろうから、
ちょっとしたじゃれあいも逆にしづらいかも…


344 名前:イトコ同士 投稿日:2003/11/30(日) 13:32
更新しました。PCの調子が悪いです…

>>320さん、>>321さん
ありがとうございます。
誕生日の夜は完全に甘いとはいえませんでしたが(W

>>322さん
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
345 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 19:33
更新、お疲れ様です。
初めて書き込みさせていただきます。

酔っ払い暴走梨華ちゃん、最高です。
ニヤニヤが止まりません。
346 名前:玉袋 頬子 投稿日:2003/11/30(日) 19:57
お久しぶりです。
酔っ払い梨華ちゃん(・∀・)イイ!
PCの調子が悪いそうですが、無理せずがんばってください。
つづき楽しみにしています
347 名前: 投稿日:2003/11/30(日) 19:58
もしかしてあげてしまいましたか?
スイマセンスイマセン
逝って来ます…。
348 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 21:18
テストも合わせて落ち。
349 名前:320 投稿日:2003/12/05(金) 23:36
PCの調子はどうですか?
私のPCはこの小説を読むための宝物化してます(照
作者様のPC、ご機嫌なおしてくれたらいいですね。
350 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 19:40
351 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 19:41
352 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/15(月) 18:48
越智
353 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/16(火) 14:03
高橋さんとあいぼんの仲が気になるぅ
354 名前:なち 投稿日:2003/12/22(月) 14:41
待っちょるよ〜♪いしよし万歳( ○^〜^)人(^▽^ )
355 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/28(日) 23:16
待ってるよ〜
356 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 14:20
ずっと、まってます。
357 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 13:29
まってるよ
358 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 17:11
ochi
359 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:16


ゴールデンウィークがはじまった。
本当は梨華ちゃんと2人で旅行とかしたかったけど、
ウチのサークルでは、毎年合宿がある。
2年生になった今年は、幹事補佐みたいなこともやらされてるし、
車も出さなきゃいけなくて。

梨華ちゃんは、ウチが合宿中に柴田さんや大学の友達と1泊で温泉に行った。
下田にある梨華ちゃんの会社の保養所。
帰ってきたときに「すっごくいいとこだったから、今度一緒に行こうね」
って梨華ちゃんが言ってくれた。

うーん……梨華ちゃんと温泉かあ……マジ、行きてー!!
つーか、絶対一緒に行くよ、約束だからね!
360 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:16
そして、ゴールデンウィーク後半に、新潟から麻琴が遊びにきた。
この前もウチの誕生日に、東京に来てたとはいえ、わざわざ家に来てくれたし。

麻琴は母方のイトコだけど、ウチの母親が亡くなった後でも、
毎年年賀状をくれてたし、たまにウチに電話をかけてきたりメールをくれたりもしてた。
今回みたいに、学校が休みのときには、埼玉の家にも泊まりにきたこともあった。
麻琴のお父さんと、ウチの父親が仲良かったせいもあるかもしれないけど、
麻琴もウチにすごく懐いてくれてて、ホントかわいいヤツだよ。
しかし、なぜかウチのこと『アニキ』って呼んでくる。ま、いいんだけど。



今回もせっかくこっちに出てきてくれたんだから、
梨華ちゃんとあいぼんと一緒に、
ディズニーランドとか、買い物とかいろいろ連れて行ってあげた。
ま、ウチは梨華ちゃんと一緒ならどこでも、誰がいても…いいってことでガマンだ。
さすがにイチャイチャはできないけど、
麻琴とあいぼんが手繋いでたら、梨華ちゃんとウチも繋いだりできたし…
そういうことができるだけでもシアワセなんだから。



そういえば、麻琴が明日帰るっていう日、
家でゆっくり宴会しようってことで、いい食材を使っての鍋をやることにした。
近所のスーパーで買い物をしているときに、偶然会ったあさ美ちゃんも一緒に。
この前の、ウチの誕生日のときに麻琴とあさ美ちゃんも会ってて、
何か二人は気が合ってるみたいだし。


麻琴は、新潟のせいか日本酒を小さい頃から飲まされてるらしく、
かなりイケる口で、結構飲んでいた。
ただし、声は余計にでかくなるし、上機嫌になってうるさくはなるけど。
ま、楽しい酔っ払いだからよしとしよう。
361 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:17
梨華ちゃんは、この前酔っ払って、ウチにせまった反省もあるし、
今日は自分が一番上だから、酔っ払っちゃダメだと思ったのか、
ほとんど飲んでなかった。
ウチが面倒見るんだから、別に気にしなくていいのになあ…


あさ美ちゃんも帰り、麻琴もあいぼんも寝てしまった後、
ウチはお風呂上りにリビングでテレビを見ていた。
梨華ちゃんはお風呂に入っている。


ふと、キッチンのカウンターの上に置いてある日本酒のビンが目に入った。
麻琴が飲みきらなかったヤツだ。
実はウチはあまり日本酒を飲まない。
高校のとき、文化祭の打ち上げで日本酒をしこたま飲んで、
全く記憶をなくして、次の日ひどい二日酔いになったことがある。
ビールとか他のお酒は結構飲んでもそんなになったことはなかったし、
あんなに酔ったのは、あれが初めてだった。
それからは飲むときには日本酒は極力避けてきた。

だから、今日も麻琴にすすめられても、グラスに1杯くらいしか飲まなかった。
ウチはビールを飲んでたんだけど、他にもあいぼんが残したチューハイとか、
梨華ちゃんの残した赤ワインとかを飲んでたし。
日本酒は1升ビンであと3分の1くらい残っている。
せっかく麻琴がお土産で買ってきてくれたモノだしなあ、
もうウチも寝るだけだし、飲んじゃおうかな。

ウチはビンとグラス、それとつまみ用にさきいかとピスタチオを、
リビングのラグの上置いて、あぐらをかいて、ちびちびやりはじめた。
…うん、確かにうまい酒だね。

テレビをつけたら、昔のヤクザものの映画がやっていた。
なんか、日本酒に合うねえ、いいよ。
362 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:18
ウチがグラスで2杯目を飲み干したときに、
梨華ちゃんが、タオルで髪を拭きながらやってきた。


「アレ?ひとみちゃん、飲み足りなかったの?」
「いや、残り少なかったから、もう全部飲んじゃおうと思って。
結構飲みやすくておいしいし」
「そうなの?じゃ、私も飲んじゃおうかな」
…えへへ、そうくるの、待ってました!


ウチは、グラスをもう1つ持ってきて梨華ちゃんの前に置くと、日本酒をついだ。
「さ、さ、どうぞ」
「ありがと」
梨華ちゃんが、ちょびっとだけ舐めるように飲んだあと、一口コクリと飲む。
「あ、ホントだ。結構フルーティーなカンジだね」
「ま、どんどんいっちゃって下さい」

ウチがまたグラスに注ごうとすると、
「うーん、今日はあんまり飲まないようにする」
「なんで?いいじゃん、もうウチしかいないんだし」
「だってー…ヘンなことしちゃいそうなんだもん、この前みたいに」
梨華ちゃんが、チラリと上目遣いでウチを見る。

えへへへ、あんなことだったらいくらでもしてほしいくらいなんだけどな。
そういや、あのときの一部始終を、あいぼんが話してくれたおかげで、
ウチが何もしてないことは、梨華ちゃんもわかってくれた。
のぞいてたあいぼんに感謝しなきゃいけないのは、納得できないけど。

「ダイジョウブだよ、ホラ、もう、残り少ないもん。あと2、3杯くらいかな。
それくらいじゃ、そんな酔っ払わないよー。飲んだら、すぐ寝たらいいんだしさあ」
「それもそうだね、じゃ、飲んじゃおう」
ウチは、梨華ちゃんのグラスになみなみと注いだ。


ふあああ…実はさっきからアクビが出てとまんない。
このゴールデンウィーク中、遊んでばっかで、いつもより睡眠時間が少ない。
昨日も、麻琴とあいぼんと梨華ちゃんと遅くまで、トランプやってた。
たぶん、それもあって、麻琴とあいぼんはもう寝ちゃってるに違いない。

隣の梨華ちゃんの顔がアクビで出た涙でにじんで、ぼやけてみえる。
でもかーわいいんだあ…


363 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:18


ゴールデンウィーク前半はひとみちゃんのサークルの旅行で
全然一緒にいられなかったけど、
後半は麻琴ちゃんが来てくれたおかげで、ずっと一緒にいられた。
イトコが上京してきてるからって理由で、
ひとみちゃんもいろんなお誘い断ってたみたいだし。

そんな楽しかったゴールデンウィークも明日で終わり。
麻琴ちゃんも明日帰ってしまう。
しかも、散々遊んで疲れたのか、最後の日だっていうのに、
麻琴ちゃんもあいぼんももう寝ちゃってるみたい。

…でも、っていうことは、ひとみちゃんと2人っきりの時間が過ごせる…うふふ…
やっぱり、麻琴ちゃんとあいぼんがいる手前、さすがにあんまりできなかったから、
その分、これから、いちゃいちゃするんだもん…



お風呂上りにリビングに行くと、ひとみちゃんが床に座って日本酒を飲んでた。
あれ?日本酒苦手だって言ってたのに、大丈夫なのかな?

ひとみちゃんの隣りに座って、日本酒を私もちょっと飲んでみた。
うん、おいしい…
でも、酔っ払わない程度にしないと。
せっかくひとみちゃんと2人っきりなのに、記憶なくしちゃうのもったいないもん。


ひとみちゃんのことをちらりと見る。
…あれ?…ひとみちゃん、珍しく顔赤くしちゃって、
とろんとした笑顔で私のことを見てる。
やっぱり酔っ払っちゃってるのかな?
364 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:19
「…りかちゃん…かーわいい…」
ひとみちゃんが、横からギュッと私に抱きついてきた。
持ってたグラスから日本酒がこぼれそうになる。

「きゃっ!ちょ、ちょっと、危ないよお」
私の言葉は聞こえてないのか、頬を肩にすりすりと摺り寄せている…
ひとみちゃんって、本当に酔っ払うとこんなふうになっちゃうんだあ…
もう、かわいすぎ!!いつもと違いすぎるなんて反則。

私はグラスを置くと、ひとみちゃんの髪を撫でてあげた。
「えへへ…りかちゃん、ダイスキ…」
今度はほっぺにほっぺを寄せてすりすりしてきた。
あ、え、う…そのまま、もう少し首をこっちに向けたら、キスしちゃいそう…
ど、どうしよ…

私がドキドキしながら、変に固まってたら、
ひとみちゃんの動きが止まってそのまま、私の肩に頭をのせてきた。
「?…ひとみちゃん?」
返事がないと思ったら、スースー言ってるのが聞こえてきた。
…ひとみちゃん、寝ちゃったんだ。
ずっと、麻琴ちゃんやあいぼんの相手するのはもちろん、
料理も車の運転も、あと荷物持ちまでしてくれてがんばってたもんね。
疲れちゃったよね…ごめんね…

ひとみちゃんの頭がそのまま、ゆっくり私の肩から胸、そして足まで落ちてきた。
そういえば、私たちがお互いの気持ちを言う前から、
たまにふざけて、こうやってひとみちゃんに膝枕してあげてたっけ。


ひとみちゃんはすごく気持ちよさそうに眠っている。
あー、キレイな顔。
色は透き通るように白くって。まつ毛は長くてクリンとしてる。
それから、このぷっくりほっぺ。
私は指でつついて遊んでみた。
やわらかいけど、ハリがあって気持ちいいー。
「…んん…」
うふふ、さすがにあんまり突付き過ぎたらイタイよね、ごめん。

365 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:19
『…あん……んっ!…』
突然、テレビからいやらしい声が聞こえてきて、ビックリする。
さっきチラッと画面が見えたときはヤクザものだと思ったんだけど、
その中で、どうやら親分とその愛人らしき人のベッドシーンがはじまっていた。

激しいキス…そして、男の人がふとんの中で、
女の人の体の下の方でもぞもぞ動いている。
その間ずっと女の人は大きな声であえいでる。

「…ん…」
ふと、ひとみちゃんが頭の位置を動かして、
まるで、その、私の足の付け根に顔をうずめるようなかたちになった。
ひとみちゃんのあたたかい吐息がジャージと下着越しに伝わってきてしまう。
…なんだか恥ずかしい…
つい、テレビの画面と自分たちを重ねてしまう。
…そ、そんな、ひとみちゃんってば!…

私が思わず立ち上がってしまうと、ひとみちゃんはテーブルの脚に頭をぶつけて、
頭を抱えて眉間に皺を寄せて、床に転がった。
「ご、ごめんね!」
慌ててひとみちゃんの頭を撫でたけど、まだスースー言って寝ていた。


もー、せっかく、2人っきりになれたのになあ…
でも、こんな風にひとみちゃんの顔をじっくり見ることもめったにできないもんね。
うふふふ…かわいい。
眠ってるときは、本当にまだまだ子供みたいなのに、
なんで、普段はあんなにかっこよくって頼りがいがあるんだろう。

仰向けになって、気持ちよさそうに眠っているひとみちゃん。
あー、もうイタズラしちゃおうっと。
ひとみちゃんの体に、そーっと抱きつく。
あったかくて気持ちいい。
重かったのかひとみちゃんは一瞬顔をしかめたけど、
すぐに私の背中に腕を回して抱きついてきた。
寝ぼけてやってくれてるんだってわかってるけど、
これだけでも、私はシアワセ。
「…ひとみちゃん…スキ…」
366 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/21(水) 10:20
突然リビングのドアが開いた。
急いでひとみちゃんから離れようとして、
今度は私がテーブルに頭をぶつけた。
「!いったーい!」

「あれ?梨華ちゃん?そんなとこで何やってんの?」
麻琴ちゃんが、ドアの方からキョトンとしてこっちを見てた。

すぐにあいぼんもリビングに入ってくる。
私が床に座って、頭をさすってて、
そのすぐ側にひとみちゃんが寝ているのを確認すると、あいぼんはニヤッとした。
「ごめんなー、ジャマして」
「な、何言ってるの?」
「まあまあ、うちらノド渇いただけやねん。お茶飲んだらすぐ行くから」
「え?え?何の話?」
麻琴ちゃんだけは、相変わらずキョトンとしたままだったけど。


2人が出ていっても、もちろん、あいぼんが期待してるようなことはするわけがない。
さすがに、ひとみちゃんみたいにお姫様だっこして部屋に運んであげる力は私にはないし。
でも、ひとみちゃんがあまりに気持ちよさそうに寝てるし、
しょうがないから、お部屋からお布団を持ってきてかけてあげた。
私はすぐ横に座って、しばらくひとみちゃんの寝顔を眺めていた。
うふふ…これだけで充分シアワセだから…


367 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/21(水) 10:20
更新しました。

>>345さん
ありがとうございます。
今後ものんびりな作者を見守って下さい(W

>>346さん
ありがとうございます。
agesageは全然気になさらずに。
あがってしまったら、それはそれで構いませんので。

>>349さん
いつもありがとうございます。
ペースが遅くてすみませんです。

>>353さん
また、どこかでサイドストーリーを書きたいと思ってます(W

>>354さん、355さん、356さん、357さん
大変お待たせしてすみません。
次回はわりと早く更新できるのではないかと思ってますが…



すみません、ちょっとブレイクで、サイドストーリーを書きました。
今回更新分に少し絡んでいますが、別の人の視点です。
読まなくても、本編にはとくに差し支えないですので、
興味のない方はとばしていただいてかまいません。
368 名前:イトコ同士 side K 投稿日:2004/01/21(水) 10:21


「…吉澤先生…」
そうつぶやくだけで、胸がギュッとしめつけられる。

はじめて会ったときから、スキになってた。
背が高くってかっこいいだけじゃなくって、
やさしくって、面白くって、勉強の教え方も上手で。
こんな素敵な人に今まで出会ったことがなかった。
男とか女とか関係なくって、スキになってた。


先生が、週に2回か3回、うちに来てくれるのを何よりも楽しみにしていた。
褒められたい、喜んでもらいたいために、勉強もがんばった。
でも、先生の教えてくれる英語と数学はいくらでもがんばれたのに、
他の教科はどうでもよくなってしまった。

私がそんなんだったから、吉澤先生は、私の家庭教師を辞めなくちゃならなくなったんだ。
私自身、吉澤先生に会えなくなるのはイヤだったけど、
それだけじゃなくって、実質吉澤先生はバイトをクビってことになっちゃう…
先生は家庭教師として完璧なのに、辞めさせちゃうなんて。
もしかしたら、自分が家庭教師としてデキが悪かったからだ、
なんて思わせちゃったら、申し訳なさすぎる。
しかも、新しいバイトを探したりしなきゃならないんじゃないかな…
だから先生には辞めて欲しくないって、お母さんに頼んだけど、
駅前にできた塾に手続き済ませたからって。

でもでも、私が全部の教科をがんばれば、先生の通ってる大学の付属の高校に行けるんだ。
そうしたら、先生にも毎日会えるかもしれないし、
朝とか帰りとかも一緒になれるかもしれない。
それなら、塾でがんばろうって思った。



そういえば、先生、冬休みに入る前ぐらいから、
しばらく元気がなかったから心配だった。
あんまりギャグとか言ってくれなくなってた。
でも2月後半ぐらいからは、それまでたまってたのを吐き出すかのように、
いつもご機嫌だった。
先生は結構単純でわかりやすい性格というか、
その時期に何かあったんだろうなっていうのは、気付いてはいた。

でも、まさか、そんなことになってるんだなんていうのは、
全く想像はできなかったんだけど…
369 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:22
4月になり、塾通いもまじめにやっていたある日のこと。
実は、偶然会えないかななんて思って、ちょっとだけ遠回りして
いつも吉澤先生の家の前の道を通って塾から帰っていたんだけど、
本当に偶然、前方50メートル先に吉澤先生が歩いていた。
うわあ、超ラッキー!
なんて声かけようかなあ…

ん?
でも、隣にはキレイな女の人がいる。
しかも2人の手はかたく繋がれていて、雰囲気も何だかまるで恋人同士…
本当にそうなのかな?でも女の人同士だし…
吉澤先生のことが好きな私がいえることでもないけど…


2人が吉澤先生の家のドアの前で、立ち止まる。
あ、あの女の人って、きっと、あいぼん先輩のお姉さんだ。
2人は繋いでいた手を名残惜しそうに離した。

ここは人通りも少ない住宅地で、周りも静かだから声も聞こえるはず。
すぐ近くの電信柱に隠れて、申し訳ないけれど、会話を立ち聞きすることにした。


「…今日ずっと梨華ちゃんの手がつっくいてたから、
自分の体の一部になってたみたいな気分だった」
「うふふ、そういえば、そうかもね」

…今日ずっと、手繋いでたんだ…

「ね、また、ウチとデートしてくれる?」
「もう、当たり前じゃない」
「えへへへ…よかった。うん、今日はありがとう」
「どういたしまして」


……これって、やっぱりどう考えても2人は恋人…
しかも、家の外でこんな話してるなんて、
きっと2人の関係はヒミツの関係なんだ…

確か、この2人ってイトコってことでしょ?
それも、同じ家に住んでて…っていうか、女同士だし…

でも、吉澤先生のあんな甘ったるい声は初めて聞いた。
顔は見えなかったけど、あんな声出してるんじゃ、
顔もきっとトローンとしちゃってるんだろうな…

…完璧に失恋…
っていうか、吉澤先生と付き合えるとか、そんなおこがましいことまでは、
考えてなかったけど…


ある意味、吉澤先生の相手が、あんなキレイな、しかも女の人であったことは、
少しうれしく感じた。すごくお似合いだし。
うん、あんなキレイな人が相手じゃ、私だって勝ち目ないもん。
っていうか勝負を挑める立場でもないけど。
370 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:22
それにしても、2人がなかなか家の中に入ってくれない。
たぶん、2人っきりの時間をもう少し…なんて思って入れないんだ。

でもこのままじゃ、私も出て行けないし…
ちょっと、吉澤先生のお相手にも興味あるから、
偶然装って声かけちゃおうかな…よしっ!


「あー、吉澤先生っ!」
少し、わざとらしかったかな?
吉澤先生は慌てて、あいぼん先輩のお姉さんとの間に少し距離を空ける。

「おう!あさ美ちゃん!どうしたの?こんな遅くに」
「塾の帰りなんです」

吉澤先生、明らかに動揺してる…わかりやすい人。
そのあと、あいぼん先輩のお姉さんもちゃんと見てみる。
うわあ、ちゃんと見ても、やっぱりキレイでかわいらしい人だ。

「あいぼん先輩のお姉さんですよね?こんばんは、紺野です」
「どうも、こんばんは」

お姉さんは頭を下げてくれたけど、何だか視線が少し挑戦的だ。
もしかしたら、私が吉澤先生に好意を持ってるのを知ってるのかも。
きっとジェラシーだ。
ちょっとコワイかも…

「一人じゃ危ないから、家まで送るよ」
「い、いえ、近いから大丈夫ですよ」
いや、そんなことしたら、もっとジェラシーが…

「いいよ、ウチももう家に入るだけなんだし」
「で、でも」
お姉さんの方を見たら、口をとがらせちゃってる。
あー、あとで、先生、怒られちゃうんじゃないの?

「じゃ、梨華ちゃん、ちょっと送ってくるから。10分くらいで戻るよ」
「…うん、行ってらっしゃい」

梨華ちゃんっていうんだ…名は体を表すっていうの納得。
何か名前と彼女の雰囲気が似合ってる。

吉澤先生が微笑んで、梨華ちゃんを見ると、
怒っているはずの彼女も笑顔になって…
大人の女の怖さを少し見れたような気がしました…
371 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:23
うちまでの帰り道。
吉澤先生はご機嫌だった。
今日見た映画が面白かったなんて話とかをしてくる。
そんなことよりも、やっぱり確認しておきたいかな、本当のところを。

「…吉澤先生って、付き合ってる人とかいるんですか?」
「うん、いるよ。年上のくせに子供みたいな人だけど」
彼女を思ってか、吉澤先生の顔がとろけそうな笑顔になる。
いいなあ、こんな顔してくれるまで思われるなんて。

「私が思うに、2月の後半くらいから付き合い始めたんじゃないですか?」
「えっ?そ、そうだね」

「それまで2ヶ月くらいは、ずっとケンカとかしてませんでした?」
「えっ??そうだったよ…な、なんでわかるの!?」
そんなの、あなたの態度見てたらバレバレですよ。
その相手が、さっきまで隣りにいた人だってことも。

「私は、人の心が読めるんです」
「うっそー!マジでスゴイじゃん!」
いや、たぶん、10人いたら9人まではあなたの気持ちは読めるかと。

「ウチもそんな力欲しいなあ…
そしたら、梨華ちゃんの気持ちももっとわかってあげられるのに…」
吉澤先生のつぶやき、聞き逃しませんでしたよ。
そうですね、吉澤先生、鈍感そうだもん。
梨華ちゃんもイライラすること多そう…苦労しますね…


何だか失恋したはずなのに、気持ちは晴れ晴れとしていて。
むしろ2人の今後を見守ってあげたいなんて、ヘンな気持ちが芽生えてきた。
私には、2人の関係を胸に閉じ込めておくことくらいしかできないけど、
心の中で応援していきますよ。
372 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:24
でも、そういえば、吉澤先生の誕生日プレゼント、
実はもう買ってあげていた。
ちょっとカッコイイかんじのシルバーのピアス。
私自身の趣味ではないし、せっかく買ったんだし、やっぱり先生にあげたい。

だから、私は誕生日当日、吉澤先生の家を訪ねた。
もしかしたら、梨華ちゃんとのツーショットがまた見れるかもしれないし。

ところが、玄関に出迎えてくれた吉澤先生に連れられて、
リビングに入ると、大人数の人たち。
しかも梨華ちゃんはまだ帰ってきてないみたい。

プレゼントを渡してすぐに帰るつもりだったんだけど、
やっぱり、吉澤先生と梨華ちゃんのツーショットが見たいから、
そのままパーティーに参加することにした。


「あ、あいぼん先輩、こんにちは」
「おー、お姉ちゃんは元気?」

とりあえず、私も知っているあいぼん先輩の側に座る。
「はじめましてー、あいぼんのイトコの小川麻琴です」
あいぼんの隣りに座っていた女の子が、笑顔で話しかけてきた。

「あ、こんにちは。あ、あの、吉澤先生に家庭教師してもらってた紺野あさ美といいます」
「えーっ!アニキ、家庭教師なんかやってたんっすか!?」
大きな声で吉澤先生の方を見る。
しかし、『アニキ』って…

「そうだよ、あさ美ちゃん、ウチの教え方は完璧だったよね?」
「はい、完璧でした!」
373 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:24

「ホント〜?よっすぃー、勉強じゃなくて、
何かヘンなこと教えてたんじゃないのー?」
この鋭いツッコミをしてくる人は誰なんだろう?
しかも、隣りにいる女の人は、この人にべったりくっついてる。
この2人もどうみても、そういう関係にしかみえない…

「あ、私も吉澤さんに家庭教師してもらいたいです…」
部屋の隅で、壁とソファーの間に座ってた女の子がポツリとつぶやいた。
あんなところに座ってて狭くて窮屈じゃないのかな?

「アタシも、アニキに勉強教えてもらいたいっす!」
「いや、家庭教師、お前だけはやりたくない」
「え〜?何でですか?」
「だって、麻琴、声でかいし、ベタベタしてくるし」
「えー、そんなことないですよお」
そう言いながら、麻琴ちゃんは、吉澤先生の側に行き、
ベタベタくっついていた。
「うわっ、ヤメロって、キショイ!」
何だか、このコンビは師弟みたいで面白い。
周りもみんな笑ってるし。
374 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:25
そんなとき、リビングのドアが開いた。
あ、梨華ちゃんだ!
コレでやっとツーショットが拝める。

「あ、梨華ちゃん、お帰り」
すぐに、吉澤先生が声をかける。
「た、ただいま…」
明らかに驚いてる様子。
もしかして、こんな大人数が集まってると思わなかったのかな?
話を聞いてたら、どうやらみんな飛び入り参加的だったし。


しかも、梨華ちゃんはどうも不機嫌になってしまったようで、
あんまり吉澤先生の側に行かない。
っていうか、吉澤先生の隣りには常に他の人がいて。
吉澤先生のためにみんな集まってるんだから当然なのかもしれないけど。

それにしても、私にとっては2人が並んでなきゃ意味ないのに。
あの様子じゃ、梨華ちゃん、またジェラシーに違いない。
相手が人気者だと、大変なんだなあ…



「あっさみちゃ〜ん、飲まないの?」
日本酒のビンを抱えて、私の隣りに麻琴ちゃんがやってきた。
つーか、あなた、酔ってるでしょ?
確か、まだ高校1年生って言ってたよね?日本酒飲むの?

「いや、私、帰ってから、勉強しなくちゃならないんで」
「そうなんだあ…残念だなあ…」
そう言いながら、手酌で日本酒を飲む麻琴ちゃん。
かなりいい飲みっぷりなんですけど…
375 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:26
「でもさあ、あさ美ちゃんって、かわいいよねえ。
色白いし、やせててスタイルいいし」
麻琴ちゃんが、私の顔と体をじっと見てくる。
何か、ヘンタイ親父みたいなんですけど…

「何言ってるんですかあ、全然やせてなんかいないですよ」
「いやいや、やせてるよ、ほら、ほっそーい」
麻琴ちゃんは、私のことをギュッと抱きしめてきた。
あ、あの、ベタベタするのは、あなたの師匠にだけにして下さいって。

「ほっぺもやらかそー」
チュッ。
…えっ?
…あの、今、わ、私のほっぺに、キ、キスしました???

驚いて固まっていると、麻琴ちゃんは至近距離で、
私の顔をマジマジと見つめてきた。
「…かーわいいなあ、あさ美ちゃん」
チュッ。
………………
…く、唇にされた!
ファ、ファーストキスなのに!!
何で、何で、こんな酔っ払いに…

「えへへへー、かわいっ」
そのあとも、麻琴ちゃんは私にギュッと抱きついたままで、
髪を撫でてきた。
「んー、髪もサラサラだねっ」
ホント、ただのセクハラ親父だ…
何で、こんな人にファーストキスを…
376 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:26
…でも、麻琴ちゃんの腕の中はあったかくて、
何か心地よくって、ずっとこのままでもいいかな…
い、いや、このセクハラ隊長は、私の唇を勝手に奪ったヤツだ!
こ、こんな人に、何で抱きしめられてなきゃいけないのよ!


「麻琴、お前、セクハラで訴えられるぞ!」
「アニキに言われたくありませんー!」
あ、やっと離れてくれた…
でも、少し残念な気がしたのは、何で?



それにしても、吉澤先生と麻琴ちゃんが言い合ってるのを見てたら、
何か2人が似てるなと思えてしまった。
…ま、まさか、そんなことありえない!
かっこいい吉澤先生と、この酔っ払い親父が…

…あれ?…
さっきから変顔ばっかりしてるから、そう感じなかったけど、
麻琴ちゃんって、口を閉じて普通にしてれば、キリッとしてるかも。
っていうか、結構かっこいいのでは…?


そのあとは、吉澤先生と梨華ちゃんのツーショットも見れることなく、
何だか麻琴ちゃんばっかり目で追ってしまった気がする。
私にとっては、ファーストキスを勝手に奪った憎っくきヤツなのに。
377 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:27
でも、その会が終わって家に帰ってからも、
その次の日もその次の日も、そのまた次の日も…
気がつくと麻琴ちゃんのことを考えてる自分がいる。
勉強も手につかないくらい。
こんなんじゃ、吉澤先生の大学の付属高校に行けない…
でも、別にそんなのいいかなって気になってきた。
だいたい、あそこの制服あんまりかわいくないんだよなあ、
紺1色のブレザーだし。

麻琴ちゃんが行ってるのは新潟の県立高校だって言ってた。
さずがに、私がそこに行くのは無理なんだろうな…

せめて、メアドを聞いておけばよかった。
新潟じゃ偶然会うなんてこともありえないし。

はあ…私のこの気持ちはどうしたらいいんだろう…



ところが、神様っているんだなって、そのときほど思ったことはなくて―――

378 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:27
ゴールデンウィークもあと1日という日、塾での授業中にメールがきて、
『明日の朝ゴハン用のパン買い忘れちゃったから、お願いね』ってお母さんから。
仕方がないから、塾帰りに近所のスーパーに寄った。
パンコーナーは確か、出口の方だったよなあ…


あ、あれ!?
吉澤先生と梨華ちゃんだ!
2人で仲良さそうに、カートを引いている。
わあ、ラッキーだなあ、こんなとこで会えるなんて。

少し離れたところから観察してると、
吉澤先生が野菜を吟味して、買い物カゴに入れていく。
何か言いながら、野菜を手に取って、
その都度、梨華ちゃんが感心してる顔をしてる。
たぶん、いい野菜の選び方を解説してるんじゃないかなあ…
ダンナさんの方がそういうのに詳しいんですね。

しかし、どう見たって、新婚カップルの雰囲気を漂わせてる…
何だか、見てるだけなのにこっちまでホンワカしてくる。

379 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:27
「あーっ!!あさ美ちゃん?あさ美ちゃんじゃん!!」

ホンワカ気分を一気にハラハラ気分にさせた大きな声。
振り向くと、セクハラ親父が立っていた。
その隣りにはあいぼん先輩。

「久しぶりだねえ!あ、そうでもないか、まだ半月くらいだもんねー。
あ、もしかして、アタシのこと忘れちゃってる?」

私は驚いて、反応できずに立ち尽くしてたけど、
肩を揺さぶられて、やっと我に返った。

「い、いえ!ちゃんと、覚えてますよ。ごぶさたしてます。
その節はお世話になりました」
私は麻琴ちゃんにも、あいぼん先輩にもペコリと頭を下げた。

「なーに、そんな堅苦しい挨拶しなくていいってー。
あー!アニキー!あさ美ちゃんですよー!」
ふと、こっちを振り向いた吉澤先生に、麻琴ちゃんが声をかける。

ニコニコとしながら向かってくる吉澤先生。
梨華ちゃんの顔が一瞬こわばったのは見ないフリをしておこう。
私は、2人にも頭を下げる。
「こんにちは。この前はお世話になりました」

吉澤先生が首を横に振る。
「いやいや、いいよー。いつでも遊びおいでよ。
あ、もしよかったら、今日もおいでよ。
麻琴が明日で帰るから、みんなで鍋でもしようかって」
「…そ、そんな、身内の方だけの会に、
関係ない私が参加させていただくわけには…」


「えー、あさ美ちゃん、アタシのことキライ?」
「へっ!?」
麻琴ちゃんが、私の顔を覗き込んでくる。
うわっ、顔、顔が近すぎます…

つい、隣りに来てた、梨華ちゃんの背中に隠れてしまった。
梨華ちゃんも振り向いて不思議そうに、私の顔を見てきた。
たぶん、私の顔は真っ赤だったと思うし、顔を上げて、
麻琴ちゃんの方を見ることなんてできなかった。

すると、梨華ちゃんが、フッと微笑んだ。
「全然気にしなくていいよ。
ね、麻琴ちゃんもそう言ってるんだし」
と、私の方だけを見て、片目をつぶろうとしていた。
たぶん、ウインクだったと思うんだけど、
梨華ちゃんは、どうやらできないらしい。
というか、梨華ちゃんは、何かを察してくれたみたいで…
380 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:28
そんなワケで、私は石川家にお邪魔して、鍋をいただくことになった。
テーブルを5人で囲む。
もちろん吉澤先生と梨華ちゃんが横に並び、
あいぼん先輩はお誕生日席に座ったから、
私は麻琴ちゃんと横に並ぶことになってしまった。


それにしても、吉澤先生、ホント優しいなあ…
マメに具を取り分けたりしてあげてるし、
気遣いがちゃんとしてるっていうか…
私とかにももちろん優しいんだけど、
なんとなく梨華ちゃんに対する優しさと違う。
ま、愛情の差だとは思うんだけど。
でも、こんな様子、毎日見てるあいぼん先輩は、
2人の仲に気付いてないのかな?
いや、絶対気付いてるだろうな。
たぶん、2人は隠してるつもりなんだろうけど、
気付かない方がおかしいかも。

でも、気付かない人もいる…
「あー、アニキっ!今、梨華ちゃんに一番大きなエビあげたでしょ?
ずるいよ、アタシが狙ってたのにぃ」
たぶん、鈍感さは、吉澤先生も麻琴ちゃんもいい勝負のような気がする。


麻琴ちゃんは、自分がお土産で持ってきたとかの日本酒をゴクゴク。
吉澤先生はあんまり日本酒が得意じゃないとかで、別のものを飲んでたし、
梨華ちゃんは酒癖が悪いから、お客さんがいるときにはあまり飲まないとか。
うーん、きっと吉澤先生の前で何かやらかして、怒られて、
それで反省して、飲まないようにしてるんじゃないかな…


麻琴ちゃんは、気にせず一人で手酌酒。
隣りにいる私にベッタリ寄りかかってきたりするし。
「ホント、あさ美ちゃんって、かわいーなあ。
色白くって、目クリクリしててー。
アタシの周りにこんなかわいい子いないよー」
チュッ。
…ま、また、ほっぺにキスされた…

「うわっ、麻琴、お前、マジでセクハラだよ」
向かいに座ってた吉澤先生が目を丸くする。

「アニキにもしてあげまーす」
麻琴ちゃんが立ち上がると、
「う、うわっ、絶対すんな!!」
吉澤先生が大きく後ろに下がる。
梨華ちゃんが、一瞬麻琴ちゃんのことをキッとにらむ。
かなりのヤキモチ焼きっぽいなあ、梨華ちゃん。
381 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:29
お鍋を食べ終わって、
あいぼん先輩は「食べ過ぎた〜くるじい」なんて、床に転がってた。
吉澤先生と梨華ちゃんは、キッチンで、デザートの準備をしてる。


ふと、隣りの麻琴ちゃんが、私の顔をじっと見て、
少し小さめの声で話してきた。
「あさ美ちゃん、スキーとかするー?」
「あ、はい。父が北海道出身なんで、
冬休みはよく連れていってもらってます」
「じゃ、じゃーさ、今度、新潟にもスキーしにおいでよー。
ウチに泊まったらいいし」
「え?で、でも…」
「ウチから、おとーさんが、スキー場まで車で連れてってくれるからさ。
あ、今年は受験なんだっけ?」
「あ、はい…」
「じゃ、受験終わったらおいでよ。
うん、楽しみだなあ、あさ美ちゃんに、新潟のいいとこ、いっぱい教えてあげる」

本気にしていいのか、それとも単なる社交辞令なのかなあ?
携帯のアドレスを交換はしたものの、
その日、家に帰ってからも、どうメールしていいのかわかんなくて、
結局できなかったし、来なかった。

382 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:29
次の日、夜、部屋で勉強をしていると、携帯が鳴った。
しかもメールじゃない。
画面を見ると麻琴ちゃんからの着信。
慌てて携帯を落としながらも、何とかボタンを押す。

「も、もしもしっ!」
『あ、あさ美ちゃーん?麻琴だけどー』
「…は、はい…」
『今ね、家に着いたんだー…』

しばらく、いろいろと話した。
学校のこと、好きな歌手のこと、吉澤先生のこと、そして恋愛話も。

『あさ美ちゃん、もてるでしょー、かわいいもん』
「えっ…私なんか全然…」
『うっそー!アタシが男だったら、絶対、あさ美ちゃんのこと彼女にしたいな』
「…は、はぁ……」
『男じゃなくても、彼女にしたいくらい』
「…えっ?」
『…んがーっ!…あははは…
ま、まあ、とにかく受験終わったら遊びにおいでね。
アタシがまたそっちに行くかもしれないけど』

何か今、すごく重要なことを言われたような気がしたんだけど…

「…あ、あの…」
『いや、あの、まあ、ソレだね、うん、とにかくまた電話するし、メールする!
じゃ、じゃーね』
「…あ、はい…じゃあ…」
383 名前:イトコ同士 sideK 投稿日:2004/01/21(水) 10:29
…んーと…
今、切る直前の話ってなんだったっけ…

私のこと『かわいい』って、また言ってくれた。
『男だったら彼女にしたい』とも。
それと似たことも言われたような…

…ん?…
『男じゃなくても、彼女にしたい』だったような…

ふーん、男じゃなくてもってことは女でもってことで、
つまり今の状態でもってことだよね…
…はいっ!?
…それって、それって…つまり…
私、コクられたってこと!?

ど、どうしよう…
受験終わったら、新潟に行くって約束しちゃったし、
そのとき、お泊りするってことは、一つ屋根の下、一つ布団の中ってこと!?

ど、どうしよう…
とても勉強なんて手につきそうもないです…


384 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/21(水) 10:32
いしよしウォッチャーこんこんの、小さな恋の物語でした(W

なお、オソロでこんこんが「梨華ちゃん」と呼んだことが、
結構印象的だったので、そのまま使わせてもらいましたが(W
385 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 12:36
こんこんきゃわいい!
てかピーマコ積極的ですねぇ。
受験勉強がんばれこんこん!(w
386 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:05


今日は金曜日。サークルで飲み会があるとかで、ひとみちゃんは遅くに帰ってきた。
もうあいぼんは寝てしまっている。
だから、こっそり、ひとみちゃんの部屋に行ってみた。

「ひとみちゃん、いい?」
「ああ、いいよ」

ひとみちゃんはちょうど部屋着のTシャツ、短パンに着替えたところだった。
長くて白いキレイな手足に少しドキッとする。

テーブルの上に封筒があり、写真が入ってるのが見えた。
「コレ、何の写真?あ、サークルの旅行のヤツ?」
写真の一枚目、日付がゴールデンウィーク中で、
テニスコートで撮られたものだったから、そうだなと思った。

「あ、わわわ、ちょ、ちょっと…」
ひとみちゃんが、写真を取り上げようとしたのを、サッとよけた。
「何?見られたらマズイものでもあるの?」
「い、いや、そ、そういうワケじゃ…」

ひとみちゃんが、気まずそうに目を伏せている。
何だろう?どんな写真があるんだろう?

最初の方はテニス中とか、観光地っぽいところで撮ったような写真。
ふーん、みんな楽しそう。
男の人は大したことないけど、女の人が結構キレイな人、カワイイ子が多い気がする。
松浦さん、飯田さん、安倍さんもいるくらいだもんね。
387 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:06
ん?アレ?
なぜかひとみちゃんがタキシードを着ているワンショット写真が出てきた。
「ひとみちゃん、カッコイイ…」

「へっ?ああ、車で来た先輩が、その前日にいとこの結婚式があって、
たまたまタキシードを持ってたんだよね。
その先輩とウチって、身長同じくらいで、よく体型が似てるって言われてて、
試しに着て見たら、やっぱりピッタリで…」
うっとりとその写真を眺めてたら、

「も、もういいよね、写真」
ひとみちゃんが写真を取り上げようとしたけど、うまく取れずに写真が何枚か散らばった。


タキシード姿のひとみちゃんを囲むキレイな女の人たちの写真。
もちろん、ひとみちゃんも超うれしそうな顔をしてる。
飯田さんとは、宝塚みたく、ダンスしてる写真もあって。
他の写真ではほっぺにキスまでされてる、それも何人かの女の人たちに。

「…何、コレ?」
「…いや、あの、その…」

まったく、どういうことよ!
私なんて、温泉に行ってても、会えないのがさみしくて、
ひとみちゃんのことばっかり考えてたのに!


ガックリとうなだれてるひとみちゃん。
「…あの、ほら、その場の雰囲気でノリでやっちゃったっていうか…」
「ふーん、ノリでキスでも何でもしちゃうんだ。私とはしたことないくせに!」
あ、言っちゃった…つい思ってたこと言っちゃった…

ひとみちゃん、キョトンとしたと思ったら、
「…へっ?…し、します!させて下さい」
私に抱きついてきた。

「イヤッ!ひとみちゃんのバカッ!!」
私はひとみちゃんの部屋を出た。
388 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:06
もう、信じられない。
ひとみちゃん、かっこいいから、女の子にモテるのもわかるけど、
きっと、私の知らないところでいろいろしてるんだ…

…でも、確かに、ああいう場で拒否とかできないよね。
ひとみちゃんからキスしてる写真はなかったわけだし。
うれしそうな顔してるのが、ちょっとムカツクけど。

部屋に戻って、布団にくるまってたら、ドアをノックする音がした。
「梨華ちゃん?あ、あの、さっきはごめん」
私は無視して、返事をしなかった。


すると、ドアの横の隙間から、封筒が入ってきて、床に落ちた。
何だろう?
気になって、封筒を開けてみると、
さっきのひとみちゃんのタキシードのワンショット写真。
それに付箋でフキダシがつけてある。

『ごめんなさい。明日の送り迎えしますんで許して下さい』

くすっ…もう、かわいいんだからあ。
実は、明日、会社の人の結婚式がある。
家からドレスを着ていこうと思ってるし、
普段履き慣れてない靴で、都内まで行くのツライなって思ってたところだった。

私はゆっくりドアを開ける。
ドアの外には眉をハの字にして、唇を尖らせてうつむいてるひとみちゃん。
…かわいい…
こういうところを見ると、やっぱり年下なんだなって気付かされる。
怒ってたのも忘れて、思わず笑ってしまった。


ひとみちゃんがハッと顔を上げる。
私はひとみちゃんのほっぺをギュッとつねった。
「もう、他の女の人にデレデレしない?」
「…ふぁい、しましぇん…」
ひとみちゃん、ちょっと涙目になってる、かわいいんだからあ。

私は指を離すと、つねっていた部分にキスをした。
キョトンとしているひとみちゃん。
「じゃ、明日、お昼くらいには家出るから、よろしくね。おやすみなさい」
私は、さっとドアを閉めた。

ドアの外で、『うおぉぉぉー』とか言って、階段を走っていく音が聞こえた。
大丈夫かな、ひとみちゃん…
389 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:07
次の日。
結婚式のためのドレス―黒い細身のシンプルなドレス―を着ようとしたら、
背中のファスナーがなかなか上らなかった。

ちょうどそのとき、部屋のドアの外で
『梨華ちゃん、そろそろ出た方がいいんじゃないの?』ってひとみちゃんの声が。

「ひとみちゃん、ちょっと来て」
ひとみちゃんが、ドアを開ける。
ハッと息を飲む声がした。
「うわあ…」
私のドレス姿を見て固まってるひとみちゃん。

「あのね、ファスナー上げてくれない?」
私は、ひとみちゃんに背中を向けた。

「へっ?…ああ、ああ、う、うん」
ひとみちゃんが、ゆっくりとファスナーを上げて、上のホックをかけてくれる。
「…し、しまったよ」
「ありがと」
私が振り向くと、真っ赤な顔になってるひとみちゃん。
390 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:08
「あ、あのさあ、そのドレス…胸のところ開きすぎじゃない?」
確かに少し大きめに胸の部分が開いている。
かがむと胸の谷間くらいは見えちゃうかもしれない。

「そうかな、こんなもんじゃない?
もしかして全然似合ってない?」
「…いや…スゴク、似合ってる…でもさあ…」
「でも?」
「他の人も、その、見るかと、思うと…」
「えっ?」
「ああ、もう、他の人に、見せたくないのっ!
そんなキレイな梨華ちゃんをっ」

恥ずかしそうにソッポを向くひとみちゃん。
きゃー、すっごくかわいい!

「でも、一番初めに見せたのは、ひとみちゃんだよ」
ひとみちゃんに抱きつくと、
ひとみちゃんが顔を赤くしたまま、私の方をチラリと見る。
「…そろそろ出ないと、遅刻しちゃうよ」
そんなひとみちゃんがかわいくって、もっとギュッと抱きしめた。



391 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:09


なんで、梨華ちゃんはこんなにキレイなんだろ?
梨華ちゃんのドレス姿を見たとき、本当にビックリした。
しかも、背中のファスナーあげてくれだなんて…
梨華ちゃんの背中はすごくキレイで、
今日はドレスに合わせてるのか、黒のブラで、
何かすっごくアダルトなカンジがする。

しかも、ちょっとそのドレス、胸の部分が開きすぎてるよ。
いくらこういうときだからって、梨華ちゃんのそういう姿を他の人に見せたくない。
もちろん、ウチにだけならいいんだけどさ。


梨華ちゃんを車で送る。
都内のホテルまで約1時間のドライブ。
本当は昨日の夜、梨華ちゃんのことを怒らせなくっても、
最初から、こうやって送ってあげるつもりだった。
でも、写真を見られたことが原因で、
ほっぺにチューしてもらえたのが、すごくラッキーだった。
あの写真を撮ったときも、いろんな人からされたけど、
やっぱり好きな人にされるのは、ほっぺといえども、格別なワケで。
しかも、その仕方が超かわいくってさあ、
顔洗うのどうしようかためらったくらい。

392 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:09
「何、ニヤニヤしてるの?」
梨華ちゃんが、ウチの横顔を見て微笑む。
「…梨華ちゃんのこと、考えてた」
梨華ちゃんがウチの腕を叩く。結構痛いんですけど…

「もう、目の前にいるんだから、別に考えなくてもいいのに…」
「つーか、だいたいいつも考えてるよ、梨華ちゃんのこと」
昨日のチューがあったから、結構ストレートに自分の気持ちを言えたりする。

「…私もだよ…気付くとひとみちゃんのこと考えてる」
うっひょー!梨華ちゃんからもそう言ってもらえると思わなかった。
ちょっと、このまま、ホテルの部屋とかに行きたいくらいだけど…



ま、もちろん、そんなことはできずに、普通にホテルの入り口に到着。
「あ、会社の人たちだ。じゃ、行くね。どうもありがと」
「2次会、終わるの8時くらいだったよね?
それくらいには間に合わせてくるから」
結婚式のあと、2次会を同じホテルの地下にあるカラオケルームで行うらしい。
「うん、終わったら電話するね」


梨華ちゃんが、車のドアを開けて出ていく。
梨華ちゃんが声をかけているのは、
タキシードを着た男の人たち3人組で、年はまだ20才代ってカンジの人たちに
声をかけている
「おっ、石川、何か今日は大人の女ってカンジじゃん!」
なんて声が聞こえてくる。

梨華ちゃんがちょっとコケたら、さりげなく腕をつかんであげたりして、
キチンとエスコートして、ホテルの中に入っていく。

…むう…なんだよう。
そりゃ、社会人の大人の男の人とウチじゃ比べもんにならないけどさ。
なんか、すっげー自分が子供に思えた。
しかも、ウチの今のカッコは、Tシャツにジャージ。
確かに今日の梨華ちゃんには全く釣り合わないよ…
はあ…
393 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:09
ウチは、ホテルの駐車場に7時半には着いていた。
ちょっと早いけど、梨華ちゃんを待たせるよりはいいかと思って。
カラオケルームがある地下のロビーのソファーに座って待つことにする。
トイレに行く人がいるからなのか、ときたまドアが開いては中の盛り上がりが聞こえる。

なぜか、女の人が通るたびに、ウチのことを見ていく。
うむ、やっぱり変なのかな…


実は、さっき、サークルの例の先輩のところに行って、タキシードを借りてきた。
今、それを着ているわけだけど。
フツーに考えて、女がタキシードっておかしいよなあ…



8時を少し過ぎた頃、カラオケルームの扉が開いて、新郎新婦らしき人たちが出てくる。
扉の外に立って、出ていく人たちをお見送りしながら、
何か手土産を渡している。
結婚式かあ…いいよなあ…
梨華ちゃんのウェディングドレス姿見てみたいなあ…
そのときは、ウチが隣にいることが理想だけど……


周りの人に気を遣ってたのか、
客がほとんどいなくなってから、やっと梨華ちゃんが出てきた。
えへへ、やっぱ、キレイだねえ。
いろんな人がいたけど、ダントツだよ。
笑顔で、新郎新婦と話しをしている。
社内結婚だから、梨華ちゃん自身、2人ともと知り合いらしいし。


梨華ちゃんは、話し終えると、ロビーの端の方に行き、鞄から携帯電話を取り出した。
すぐにウチの携帯が震える。
「あ、ひとみちゃーん、今終わったよ。どこにいるの?」
「うん、すぐ目の前にいるよ」
「えっ?」

ウチが立ち上がると、梨華ちゃんは目を丸くして、口をポカンと開けたまま固まっている。
梨華ちゃんのすぐ側まで行き、ふざけて、立て膝をつく。
「お迎えに参りました、お姫様」

ウチが笑顔で、梨華ちゃんを見上げると、
やっと梨華ちゃんも笑顔になる。
「もう、ビックリしちゃった…何でタキシードなんか着てるの?」
ウチは立ち上がって、梨華ちゃんの前で、1回転する。
「どう、似合ってる?」
「…うん、すっごく…」
梨華ちゃんは少しうつむいて、ウチのことを上目遣いで見た。
394 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:11
「梨華ちゃーん」
「あ、里ちゃん、おつかれー」
振り向くと、さっき、ウチのことをジロジロ見ていった女の人がいた。

その里ちゃんとかいう人は、ウチの側に来るとまたジロジロ見てきた。
…なんなんだよ…
「もしかして、梨華ちゃんの彼氏?」
えっ?
ウチ、普通に梨華ちゃんの彼氏に見えるの?

「あ、あのね!私のイトコのひとみちゃん」
梨華ちゃんも驚いたのか、少し声が裏返ってた。

「あ、ど、どうも。いつも、梨華ちゃんがお世話になってます」
一応、そんな挨拶をしてみた。

「あ、女の子だったんだ!ごめんなさい!
いや、タキシード着てるし、女の子っぽい男の子かと思っててー。
梨華ちゃんの同期の里田です。
それにしても、かっこいいねー。
うん、梨華ちゃんと並んでるとホント、カップルみたい」

少し離れてウチらを見る里田さん。
「今日の新郎新婦より、全然絵になってるよ」
笑いながら小声でそう言ってくれた。





「あ、そうだ。フイルム余ってるから、2人の写真撮ってあげる」
里田さんは、ウチらの並んでる写真を撮ってくれた。
梨華ちゃんは自分の携帯でも撮ってなんて頼んでて。
梨華ちゃんが、さりげなく腕を組んできたので、
本当にカップルに見えたらしく、

「あ、すみません。こっちも写真撮らせてもらっていいですか?」
その2次会で頼んでいたと思われるプロのカメラマンの人が、声をかけてきた。

もちろん、ウチらはOKしたんだけど、
「結婚されてるんですか?」
なんて聞きながら、写真を撮ってくれてるから、
梨華ちゃんもウチも、里田さんも思わず笑ってしまった。

「いや、まだなんですけど」
って、ウチも悪ノリして答えてみた。
「そっかー、まだお若いですもんね。でも、すごくお似合いですよ。
結婚式はぜひここのホテルでお願いしますね」
なんて宣伝までされて。

395 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:12
ふと、後ろの方できゃっきゃ騒いでる人がいたので、振り向いて見ると、
矢口さんがいた。

「あれっ?あれー?……もしかして、よっすぃー!?
きゃー、超かっこいいっ!!」
矢口さんに思いっきり抱きつかれた。
「あ、ご、ごぶさたです。その節はありがとうございました」
「いやーん、そんな他人行儀にしなくていいよお。
オイラとよっすぃーの仲じゃない」
矢口さんが、ウチのほっぺにキスをしようとしたのがわかったので、
「い、いや、ちょっと、ちょっと」
ウチは、さりげなく交わしたんだけど、
梨華ちゃんが、ちょっとムッとした顔をしているのがわかった。



帰り道、車の中で、梨華ちゃんが突然クスクス笑い出した。
よかった、矢口さんのせいで機嫌悪くなっちゃったのかと思ったから。
「何?どうしたの?」
「だってー、あのカメラマンさんにしても、里ちゃんにしても、
本当にひとみちゃんのこと、男の人だって思ってたんだなあって」
「まったく、よく考えたら、失礼な話しだよね」
「でも、私はちょっとうれしいかも。
だって、堂々とイチャイチャしてても変じゃないってことだよね」
そう言って、梨華ちゃんはギアに置いてたウチの手をそっと握ってきた。

この車はオートマだから、運転中、ギアを触る必要はないんだけど、
ウチの父親の車がマニュアルだったから、
信号とかで止まったときに、ギアに手を置くクセがついていた。
えへへ、このクセがあってよかったなって思ってしまった。

396 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:12
「梨華ちゃん、どっか散歩でもしてこうか」
「うん、いいね!」


結局、ウチらは、夜の山下公園を歩くことにした。
やっぱりカップルが多いね。
でも、今日はウチらもそう見られてるはず。
ウチは梨華ちゃんの腰を抱いて歩いた。
梨華ちゃんはウチに体を預けるようにしてくれて。

「本当のカップルみたく見えるかな」
ウチがつぶやくと、
「だって、本当のカップルでしょ」
梨華ちゃんが、そう言ってくれたのがすごくうれしかった。




397 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:13


今日のひとみちゃんはかっこよすぎる。
タキシード、本当によく似合ってるんだもん。
ココまで似合う女の子なんていないと思う。
うん、今日、式に出てたどの男の人よりもずっと似合ってる。


山下公園を歩くときも、さりげなく腰を抱き寄せられた。
あー、ホント、男の人みたいなことするんだから。
でも、今日なら、里ちゃんやカメラマンさんが間違えたように、
私たちは普通にカップルに見えるに違いない。
こんなときだもん、もっともっとひとみちゃんに近づきたい、心も体も。

2人で並んで港に泊まっている船をボンヤリ眺める。
とくに会話はなかったんだけど、ひとみちゃんはずっと私の腰を抱いていてくれて。
私もずっとひとみちゃんに寄り添っていた。

しばらくして、ふと、おでこに何か柔らかい感触。
顔を上げて、ひとみちゃんの方を見ると、
慌てて目を逸らして、顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。
もしかして、今、ひとみちゃん、私のおでこにキスした?
絶対そうだ。
下唇をギュッと噛んでるけど、口角は上がってて、明らかにニヤけてる。

もー、こんなときのひとみちゃんはまるで小学生の男の子みたい。
ホント、かわいいんだから。
お返しに、ほっぺにキスをしてあげたら、
もっとぎゅっと抱きしめてくれた。
私もひとみちゃんの腰にしっかり抱きついた。
このままずっと時間が止まってくれたらいいのにな…
398 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:14
そのあと駐車場の方に向かって歩いてた。
周りにいる人はさすがにほとんどがカップルなんだけど、
ちょっと裏の通りに、ちょっと騒がしいグループがいた。

そのまま何となくその人たちの様子を見てると、
どうやら、男の人2人が、1人の女の人の腕を無理やり引っ張って、
自分たちの車に乗せようとしてるところだった。

驚いて、ひとみちゃんの方を見ると、
すごくムッとした表情をしていた。

「ちょっと行ってくる。
梨華ちゃん、この辺にいてよ。近くに来たらダメだからね」
「えっ?行ってくるって…」

ひとみちゃんは、私から離れると、走ってその人たちの方に向かっていった。
そして、女の人の腕をつかんでる男の人の腕をつかんだ。

「いてっ!何だ、お前?」
「あんたたちこそ、何なんだよ」
スキを見て女の人が逃げようとしたのを、もう1人の男が追おうとした。
そしたら、ひとみちゃんがその男の足をひっかけたから、男は思いっきり転んでしまった。
「てめーっ!」

その間に、女の人はどこかに行ってしまった。

ひとみちゃんに、殴りかかろうとする男たち。
でも、ひとみちゃんはそれをすばやく避けて。
しかも、肩をつかまれたときには、男の人の腕を払って、
男の人は地面に叩きつけられた。

…ひとみちゃん、かっこよすぎ…
確か合気道やってたんだよね。
それにしても、男の人2人も相手にしてるのに、
全然物怖じもしないで、向かっていくなんて…
何かすっごくドキドキしてきた。
『惚れ直す』ってこういうカンジかなあ。
しかも、どうみても、ひとみちゃんの方が圧倒的に強いので、
私は安心して「やれやれー!」とまで思って見ていた。

ひとみちゃんには、全然無駄な動きがなくって、
基本的には避けてるだけだから、
男たちの方がはぁはぁ言っちゃってる。
399 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:14
「コラー、お前たち何してるー!!」
お巡りさんが走ってきた。
そのすぐ後ろに、さっきの女の人がいた。
お礼も言わないなんてヒドイ人だと思ったけど、
交番に行ってくれてたんだ。

男たちは、すばやく車に乗って逃げていった。
全くそのすばやさがあるんなら、ひとみちゃんのこと一発くらい殴ってみろってーの。
でも、殴ったら、私が許さないけど。

そのあと、交番に連れていかれた。
さっきの女の人もいたから、キチンと説明をしてくれて、
もちろん、ひとみちゃんはおとがめはなしだったんだけど。


交番を出た途端、その女の人がひとみちゃんに抱きついてきた。
「ありがとう!」
ひとみちゃんのほっぺにキスをする。

な、何よ、この人!
私のひとみちゃんに何するのよっ!

「あなた、すごくカッコイイ!
でも、女の子なんでしょ?
さっき名前聞いてびっくりしちゃった」
「は、はあ…」

ひとみちゃんは、突然のことで、タジタジってカンジ。

この人、たぶん私よりも少し年上だと思う。
結構キレイな人で、背もわりと高い。
ひとみちゃんに抱きついてるのを見てると、
私となんかよりよっぽどお似合いなんじゃないかなあ…

「ね、今度、ちゃんとお礼したいから、携帯教えて」
「い、いえ、お礼なんていいですから」
「えー?でも、そんなトコもかっこいー!
じゃお礼じゃなくて、私、あなたと友達になりたいから、教えて」
「で、でも…」

こんな話している間中、彼女はひとみちゃんに抱きついたままで。
私の存在なんて目に見えてないかのように、
うっとりとひとみちゃんの顔を見つめてる。
400 名前:イトコ同士 投稿日:2004/01/27(火) 11:16
私は、ちょっとわざとらしく咳払いをしてみた。
ひとみちゃんが、ビクッとする。

「あ、ああ、もう帰らなきゃいけないんで、失礼しますっ!」
ひとみちゃんは、彼女の腕を振り払うと、私の手を取って走り出した。


あー、何か本当にお姫様が王子様に連れ去られてるみたい。
ドレスも窮屈だし、ヒールも靴擦れして痛かったけど、
そんなのも気にならなかった。すごくうれしかった。


「ね、さっきのが私でも、ちゃんと助けてくれた?」
「当たり前じゃん。アレが梨華ちゃんだったら、
相手の男、ぶっ殺してたかもしれない」

うふふふ、ありがと。ちょっとコワイけど。

交番からだいぶ離れて、道を曲がったところで走るのを止めて、歩き出した。
「あ、梨華ちゃん、足痛いんじゃない?ゴメン、走らせて」
私が少し足をひきずってたのに気付いてくれたみたい。
「ううん、大丈夫。このくらいならガマンできるから」

ひとみちゃんは立ち止まって、私の正面に立った。
…やっぱり、かっこいい…

「じゃ、二択で。
一番おんぶ。二番お姫様だっこ。
どっちがいい?」

…もう、かっこよすぎる…
毎日一緒にいるのに、どうしてこんなにドキドキさせてくれるんだろう。

「いいよ、梨華ちゃんの好きな方で」
「…じゃ、一番で」
「OK牧場!」

ひとみちゃんは、私に背中を向けるとしゃがんだ。
その背中にのる。

お姫様だっこもスキだけど、
私、ひとみちゃんの背中、大好きなの。
女の子のわりに広くて大きな背中。
すごく頼れて、あったかいカンジがするの。

…それにね、おんぶの方が、ぴったりくっつけるし。
背中だけじゃなくって、ほっぺとほっぺもくっつけてみた。
ひとみちゃんが恥ずかしそうに微笑むのがわかった。

「重くない?」
「全然だよ」
「ありがとう、ね」
ひとみちゃんのほっぺにキスをする。
ひとみちゃん、ちょっとビクってした。
「…こっちこそ、ありがと」

もー、ひとみちゃんのそんなかわいいとこも、
かっこいいとこも、優しいとこも、
ちょっぴりオクテなとこも…他にもいろいろエトセトラ…
全部全部大好きだからね。



401 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/27(火) 11:19
更新しました。

>>385さん
ありがとうございます。
きっと、おがこんは幸せになれるかと(W
402 名前:なち 投稿日:2004/01/27(火) 23:08
よっすぃが照れてそっぽ向いてる姿
カ〜ワィィ♪何か甘甘な雰囲気イイですねぇ( ○^〜^)人(^▽^ )
次の更新も楽しみにしてマッスル♪
403 名前:349 投稿日:2004/01/28(水) 23:41
更新お疲れ様です。
更新のペースを気にされていたようですが、
どうぞお気になさらず、作者さまのペースで、ね。
もうやっぱりここのいしよしを読むと胸がキュンとしてたまらないです。
最近日常でそういう機会が減ったので有難いです(笑)
404 名前:PAN吉 投稿日:2004/02/08(日) 03:38
初々しい二人に引き込まれてしまいそうです。
いしよしのこれからに期待!
405 名前:ひらの 投稿日:2004/02/18(水) 01:42
はじめまして!いつも更新を楽しみにしています。
現実のいしよし不足を解消させていただいてます。
これからもよろしくお願いします。

406 名前:アッキー 投稿日:2004/03/03(水) 00:59
よっすぃ〜カッケ〜早く更新してください!!
407 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/03(水) 01:56
>>406さん
そういう言い方はしない方が…。
私達は作者さんのお話を読ませてもらってる立場ですしね。

作者さん、更新速度などあまり気にしないで下さい。
マターリとお待ちしてますんで。頑張って下さいね。
408 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/03(水) 02:44
一応、落としておきます。
409 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/06(土) 17:27
(T_T)保全(T_T)
410 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:25


今年の夏休みこそ、梨華ちゃんとあいぼんと一緒にニューヨークに行こうと思ってたのに、
また福岡に行くことになってしまった。


実は、ゴールデンウィーク前に、珍しくお父さんから電話があって、
こっちに遊びに来ないかと言われた。
ゴールデンウィーク中は、サークルの旅行や麻琴が遊びに来たりするから無理だって言ったら、
「じゃあ、お盆休みには必ず来てくれ」って言われた。
ウチのお父さんがそんな頼み事みたいなのを言うのは初めてだったし、
何かあるようなカンジがしたので、行かなきゃダメだろうなとは思った。

ま、確かに、ニューヨークに行ったところで、
梨華ちゃんとイチャイチャできるワケでもなければ、
家族水入らずのジャマをしてしまうことになる。
それはこっちも気を遣うなとは思ってはいたけど。

しょうがない、今年は九州一周するくらいのつもりで行くか!



411 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:25


もう少しで、私の夏休みが始まる。
今年ももちろん、お父さんのところ、ニューヨークに行く。
ひとみちゃんは今年も福岡に行くことにしたみたい。
本当は一緒にニューヨークに行きたかったんだけど、
おじさんがどうしても来て欲しそうだからって。
きっと部屋の掃除とか家事とかやらされるんだよ、なんて
ひとみちゃんは言ってたけど、おじさんもやっぱりさみしいんじゃないのかなあ。

「私もニューヨークやめて、九州に行こうかなあ」
「ダメだよ、お父さんとお母さん、悲しがるでしょ」
「だってー、ひとみちゃんに1週間も会えないのイヤ…」
ひとみちゃんは困ったように微笑んで、私の髪をクシャクシャっとした。

「電話とかメールすればいいよ。
それにさ…今度、2人でどっか旅行行こうよ」
ひとみちゃんが、照れたように誘ってくれたのがうれしくって、
ついギュッと抱きついちゃった。
リビングのソファーに座ってたんだけど、
なぜかすぐにひとみちゃんが慌てて私から離れた。

ふと、振り返って見ると、あいぼんが、壁に隠れてコッソリとこっちを見てた。
「何や、これからもっと激しくなると思ったのにぃ」
激しくって…
あいぼんが想像してるようなことは、私たちの間ではまだないんだからね。

412 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:26
ニューヨークに行く前日の夜、
私はひとみちゃんの部屋に行った。

「ひとみちゃん、ちょっといい?」
「ああ、どうぞ」

ひとみちゃんも国内とはいえ、長い旅行だから、
荷物を大きなスポーツバッグに詰めているところだった。
ひとみちゃんのすぐ横に座り、荷物を入れるのを眺めていた。

「梨華ちゃんは用意済んだの?」
「うん」
「どうせ適当にぐちゃぐちゃに詰め込んだだけでしょ」
「いいのー。お土産入るように、スーツケースの中、空けてるんだから」
「はいはい。で、どうしたの?
明日は8時に出発なんだよね?」

「あ、あのね…今日、一緒に寝てもいい?」
ひとみちゃんはキョトンとしたと思ったら、顔が真っ赤になった。

「な、何?またこわいテレビでも見たの?」
そうだ、いつかもこうやってひとみちゃんのところに夜中に来たっけ。

「違うよお、明日からしばらく会えないから、
少しでも側にいたいなって思って」
ひとみちゃんは、私のことをギュッと抱きしめた。
「もう、梨華ちゃんってホントかわいいなあ…」


一晩中、ひとみちゃんは、私のことを優しく抱きしめてるだけで、
キスも何もしてこなかった。
私も別にしてほしいってわけじゃなかったけど、
してくれてもよかったのにな…


413 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:26


お盆休みになった。
去年と同じく、梨華ちゃんとあいぼんを成田まで送り届けた。
さすがに今回は泣かれずに済んだからホッとした。
梨華ちゃんが今にも泣きそうだったけど、何とかこらえてくれたから、
頭を撫でてギュッと抱きしめてあげた。
もちろん、あいぼんにもしてあげたけど。

福岡空港まで、お父さんが車で迎えに来てくれた。
家に向かう途中、
「学校の方はどうだ?」
「梨華ちゃんと亜依ちゃんとうまくやってるのか?」
なんて、今までだったら聞きもしなかったとってつけたような質問をしてくる。
ちょっとブキミに思いながらも、
なんてことのない会話をしているうちに家に着いた。

お父さんの福岡の家は、会社で借り上げてるマンション。
結構新しくてキレイで便利なところに建ってる。

それにしても、今日のお父さんはどうも何かが違う。
いつもはどっしりとして寡黙な落ち着いた人なのに、
今日はペラペラどうでもいいことをしゃべってるし、
ソワソワと落ち着きがない。
ソレがマンションに着いてから、余計にひどくなった。

部屋のドアの前に立って、なぜか大きく深呼吸をするお父さん。
それから、気合を入れてドアを開ける。
なんなんだ?
だいたい、マンションじたいがオートロックだからって、部屋の鍵くらい閉めて出かけなよ。
ソレを注意しようかと思ったら、
中から「おかえりなさーい」なんて女の人の声がした。

…え?

お父さんは何も言わずに中に入る。
ウチがボー然としていると、部屋の中から玄関の方に女の人がやってきた。
「あ、ひとみちゃんね?はじめましてー。中澤です」

…ウチは全く状況が飲み込めない。
何も言えず、体も動かず固まっていると、
「…ちょっと、もしかして、吉澤さん、ひとみちゃんに何も話してないの!?」
「…い、いや、言おうとは思ったんだが…」
…お父さん、どういうこと?
414 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:35

結局、リビングのソファーに座って、全ての事情を中澤さんが話してくれた。
つまり、2人はそういうお付き合いをしているのだと。
そして、ウチの許しがあれば結婚もしたいと。


2人は同じ会社に勤めている。
父親が転勤してくる半年前に、中澤さんも関西の方から転勤してきていた。
中澤さんもこのマンションの同じフロアに住んでいる。
社内のことや地域のことをいろいろ中澤さんがお父さんに教えてあげてたし、
同じマンションなんだし一緒に帰ったりとか、
中澤さんが料理を作ってもってきてくれたりしていたらしい。
そういう付き合いをする前から。

父親は会社では中澤さんの上司にあたる。
中澤さんの部署の部長がウチのお父さん。
ウチは家での父親しか知らないから、そうは思ってなかったけど、
仕事はバリバリこなすし、下からの信頼も厚いタイプらしい。

それで、中澤さんはしだいにウチのお父さんに惹かれていったと。
中澤さんは30歳。
父親とよりウチとの方が年齢は近いのに。
そりゃ、ウチの父親は実際の年齢よりも若く見えると思う。
でも、こんなキレイな人だったら、大きな娘がいるようなおっさんを選ばなくても…


実は、去年ココに来たときに、部屋がキレイに片付いてたのは、
中澤さんがやってくれていたらしい。
もうその頃にはそういう関係になっていたとか。
そうだよな、ちょっと考えれば、
あの何もしないお父さんが1人になったからって突然やり出すとは思えない。

415 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:36
別にお父さんだって、まだ恋愛してもいいと思うし、
将来ウチが完全に家を出たら、父親の面倒を見てくれる人がいないと、一応不安もある。
どんどん年をとっていくと余計に。
だから、お父さんにとってこんな若い人が一緒にいてくれるなんて願ってもないことかもしれない。
それに話をしていて、中澤さんは気さくないい人だっていうのがよくわかった。
父親には本当にもったいないくらいだ。


ただ1つ、どうしてもさっきから、会った瞬間から気になってることがある…

「再来月には、ひとみちゃんはお姉さんになるのよね」

…やっぱり、そうだった。
お腹が大きいのはやっぱりそういうことだったか。

もちろん、弟か妹ができることは単純にうれしい。
年が離れすぎてて少し複雑なところもあるけど。


でも、こんな大事なことを何1つ父親は自分の口から言わず、
しかもこんなギリギリに聞かされるウチの身になってみろってーの。
もっと早く言えただろうが!

「3月くらいにね、子供ができてることに気付いてね、
それで結婚しようってことになったんだけど、
とりあえずひとみちゃんに会いたいなって」
で、ゴールデンウィークに呼んだけど、ウチが行けなくて。

全く、こんな大事なことなら、長期休みのときじゃなくても
普通の週末にでも呼んでくれたらいいのに。

「本当はこっちから挨拶に行くべきだったんだけど、
私がこんな体だから吉澤さんが飛行機とか乗るの反対してね」
オヤジ…娘にもそのくらいの優しさ持ってくれよ…

416 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:36
「私、ひとみちゃんのお母さんになってもいいかしら?
気持ち的にはお姉さんのつもりでいたいんだけど」
中澤さんはニッコリと微笑んで、ウチのことを見る。

…もちろん、反対する理由なんて1つもない。
「…どうしようもない父親ですけど、よろしくお願いします」

お父さんが本当に安心したように肩を下ろしたのが見えた。
中澤さんもお父さんの方を見て微笑み、
そしてウチの方を見て姿勢を正した。
「こちらこそふつつかものですがよろしくお願いします」


それにしても、お父さんがもっと早く話しをしてくれなかったことに、
かなりいらだちを覚えている。
もし、去年来たときに、付き合ってる人がいるってことくらい話してくれてれば、
弟か妹ができるって話を聞いたってそんなに驚くこともなかったのに。

お父さんに彼女がいた。
すごく年下でキレイな彼女。
彼女と結婚するつもり。
彼女のお腹にはお父さんとの子供がいる。

驚くことが沢山ありすぎて、自分でもまだよく理解ができていない。

417 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:37
その日の夜、中澤さんは自分の部屋に帰り、
ウチは父親と布団を並べて寝た。

「…ひとみ、起きてるか?」
「…うん」
「…ごめんな。こんな大事なこと、話するのが遅くなって」

ウチはまた驚かされてしまった。
父親が謝るのなんて初めて聞いたから。

「…ううん」
ウチはそう言うのが精一杯だった。


なかなか寝付けなかったウチが次の日起きたのはお昼近かった。
中澤さんがすでに来てくれていて、お昼ごはんの用意をしてくれていた。

3人で食卓を囲む。
父親が転勤から戻ったらこういう生活をしていくんだろうな。
あ、もう1人増えるから4人だし、もっと賑やかで…
全然想像もつかないけど…

418 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:37
食事中にウチの携帯が鳴り響く。
画面には『国際』と出ている。あ、もしかして…

「もしもし」
『あ、ひとみちゃん?元気?』

その愛しい人の声を聞いただけで、涙が出てきた。
ウチは慌ててベランダに出て、電話を続ける。

「…うん」
『今ね、友達に電話するって言って、ベランダに出て電話してるの。
ほら、ひとみちゃんだっていうと、あいぼんもお父さんもお母さんも
変わりたがるでしょ』

ウチは涙がボロボロとこぼれてきた。
突然いろんなことがありすぎて、自分の気持ちの整理ができていなかった。
それが梨華ちゃんの声を聞いて一気に緊張の糸がほぐれたというか、
安心できたからなんだと思う。

「…そうだね」
『…ね?ひとみちゃん元気なくない?何かあったの?
あ、もしかして今電話しちゃマズかった?』
「…ううん、そんなことないよ」
梨華ちゃんの声、聞けただけでうれしいから。

『あ、もう!あいぼんがニヤニヤしながら、窓に張り付いてこっち見てる!
ひとみちゃんだって気付いてるのかも』
「…あはは」
『もー、とりあえず電話切るね。またメールもするから』
「うん、待ってる」
『じゃーね……ダイスキだよ、ひとみちゃん』
…ウチの涙がまたブワッと溢れてくる。

「…ウチも梨華ちゃん、ダイスキだよ」
『…うふふ、ありがと!』

電話を切っても、ウチは家の中には戻りづらかった。
こんな泣き顔のまま出ていったら、父親も中澤さんも驚くだろう。
涙が止まって、少し落ち着くまで電話を続けているフリをしていた。
419 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:38
結局3日間、お父さんのところにいた。
中澤さんのこと、さすがにお母さんとは呼びづらいなと思ってたら、
「お母さんって呼ばんといて。ゆうちゃんでいいから」
って言ってくれた。
さすがに『ゆうちゃん』も呼びづらいので、
『裕子さん』と呼ぶことにした。

裕子さんと近くの観光地っぽいところを散歩したりもした。
身重だからあんまり遠いとこ連れていってあげられなくてごめんねって。


最後の日には、ウチが手料理をふるまったら、裕子さんはすごく喜んでくれた。
「こんなおいしいもの食べてるから、吉澤さんは舌が肥えてるのね」
お父さんも娘が誉められてまんざらではないようだった。

「もっとゆっくりしていったらいいのに」
「いや、レンタカーとか宿の予約とかしちゃってるんで」
ちょっとウソをついた。
確かにレンタカーはしてるけど、宿はとってない。

「そう、残念ねー。ま、また近いうち、週末でもいいから遊び来てね。
交通費はお父さんが出してくれるから大丈夫よ」
お父さんは苦笑いしながらも、頷いてくれた。
420 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:39
ウチは、去年と同じくオープンカーをレンタルした。
思いっきりスピードを出して、海岸線か山ん中を走りたい気分だった。
…そして、梨華ちゃんに今すぐ会いたかった。

会えなくなる前日に、梨華ちゃんと1晩同じ布団で過ごした。
でも、ウチには梨華ちゃんに何かする勇気なんかなくって…
ほら、この前、梨華ちゃんが酔っ払ってたときは、
いきなり下着姿で抱きつかれちゃったから、ウチも理性が飛んでしまったのもあるし。
本当のところは、梨華ちゃんのこと大切にしたいし、
もし何かして拒否されたら、
会えない1週間がさらに辛いものになってしまいそうだったから。

でも、ウチは今違う意味でも辛かった。
誰かに側にいて欲しかった。
それはもちろん梨華ちゃん以外に考えられない。

すぐにでもニューヨークに行きたいくらいだったけど、
そんなことはできないし、とりあえず九州で1人で気を紛らわそう。

ウチはもともと行き当たりばったりの旅をするつもりだったし、
今の気分からするとただ車を走らせて、いろんなとこで温泉に入るくらいでいいかなと思ってた。

421 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:39
昼ごろ、福岡駅前でレンタカーを借りた後、すぐに近くのコンビニに寄って、
飲み物とちょっとしたお菓子を購入。

車に戻ろうとしたら、女の子が2人、車の周りをウロウロしていた。
中学生くらいかな?
別に何かを盗もうとかしてるワケじゃなくて、
ただ興味を持って眺めてるってカンジだった。

ウチはリモコンで、少し離れた位置から車の鍵を開けた。
ガチャと音がしたから、
「うわあっ」って、1人の子が驚いた。
ウチはそのまま、ニコッと2人に微笑んで車のドアに手をかけた。

「コレ、お姉さんの車ですか?」
さっき驚いた子が、聞いてきた。
なんとなく気の強そうな子だなと思った。
「あー、レンタカーだから、自分のではないけどね」

ウチがそのまま乗り込むと、もう1人の子、
色の白いおとなしそうな子が声をかけてきた。
「あ、あのっ!よかったら、乗せてもらえませんか?」
…え?…ウチ、ナンパされてる?中学生に?

もう1人の気の強そうな子も、お願いするように、
まるでネコが甘えるみたくウチのことを見つめていた。

「あのね、アナタたち、ウチのこと何も知らないでしょ?」
2人が同時にコクンと頷く。
「知らない人にそういうこと、言っちゃダメだよ。
連れ去られて、監禁とかされちゃうかもしれないし、
もしかしたら殺されちゃうかもしれないんだよ」
最近、物騒なこと多いもんな。
その辺はちゃんとわからせてあげないと。

「アタシたちは大丈夫です、そんなことしません」
色の白い子が言い放った。
…え、と…何か勘違いしてる?

「いや、アナタたちがじゃなくて、ウチがそういうことする人かもしれないでしょ?
危ないから、そういうのはダメだって」
「お姉さんは大丈夫かー。そういうことする人に見えないとよ」
気の強そうな子が博多弁で言ってきた。

「いや、人は見かけによらないからダメだって」
「要するに、お姉さんはアタシたちを車に乗せたくないんですか?」
色の白い子が、じっとウチを見てきた。
…やっぱり、この子たちの方が危険人物じゃあないの?

「いや、そういう意味じゃなくってさあ…」
「じゃ、乗せて下さい」
そう言って、彼女たちは勝手に車に乗り込んできた。
422 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:40
結局ワケもわからず、行きずりの中学生2人とドライブしてるウチ。
オープンカーに乗るのは初めてらしく、
2人とも声をあげてはしゃいでいる。

2人は地元の中学2年生。
色の白い子は道重さゆみちゃん。
ウチが『シゲさん』と命名したら、本人は嫌がってたけど、
そのまま呼ばせてもらうことにした。
気の強そうな子は、田中れいなちゃん。
博多弁丸出しなトコが何かかわいらしい。


今日は2人で遊ぼうって会ったはいいけど、
何しようかーって話してたら、ちょうどかっこいい車が止まってた。
こんな車乗ってみたいねーって話してたら、
持ち主は優しそうなお姉さんだったので、
お願いしてみようと思ったらしい。
ま、コワイって思われるよりはいいけど…

結局、そのままその辺の山とかまでドライブ。
2人のキャラクターもそうだけど、本当に楽しかった。
やっぱり、今日は1人でいたらかなり気が滅入っていただろうし、
そう思うとこの子たちに感謝しないとな。

423 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:40
「吉澤さん、今日はどこに泊まるんですか?」
シゲさんが聞いてきた。
「いや、決めてないんだよねー。適当にぷらっと」
「じゃあ、ウチに泊まって下さい!」
「え?」
「ずるいー!れいなんちに泊まって下さい!」
「ええ!?」

そんな図々しいことはできないと断ったら、
「今日のお礼です」
って言われて。
「でもー……あ、2人は明日は何か予定あるの?」
2人とも首を横に振った。

「あ、じゃあさ、ハウステンボス行かない?
ウチ、行ってみたいんだけど、さすがに1人じゃ行きづらくってさ」
「もちろん、行きます!」
「うん、行きたいっ!」

逆に泊めてもらうお礼として、そうすることにした。
結局2人でジャンケンをして、ウチはシゲさんの家に泊めてもらうことになった。



シゲさん同様穏やかなご家族は、突然のワケのわからない訪問者を歓迎してくれた。
あー、旅っていいよな、こういう地元の人の優しさに触れられるっていうのが。
ただでさえ心淋しいときだったから、ウチのカンゲキもひとしおだった。
424 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:41
寝るときは、シゲさんの部屋で、シゲさんはベッド、
ウチは床に敷いてもらった布団で、しばらくいろいろ話をしていた。
シゲさんは東京に行ったことがなくて、すごく興味を持ってていろいろ聞いてきた。

ふと、会話がとぎれたときに、
「…あのー、そっちに行ってもいいですか?」
って言われた。

…『そっち』って、同じ布団に入っていいかってことだよね?
かわいいなあ、まだ中学生だもんね。
シゲさんにはお姉さんがいるんだけど、お姉さんのことが大好きらしく、
今でもたまに一緒に寝たりするって話をしてたから、そのつもりなんだろうな。


「うん、いいよ」
「あ、ありがとうございます」

シゲさんがウチの隣りに入ってきた。
頭を撫でてあげたら、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
うん、かわいいねえ。

「あ、あの、ギュッってしてもらっていいですか?」
あはは、本当に甘えん坊だね。
ウチがギュッと抱きしめてあげると、シゲさんもウチの背中に腕を回してきた。
…あーあ、コレが梨華ちゃんだったらなあ…

「…ずっと、こうしてて下さい…」
「ん、いいよ」
…ウチは疲れていたせいもあるのか、そのあとすぐに眠ってしまった。
425 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:41
次の日のハウステンボスも楽しかった。
2人が元気いっぱいで、見てるだけでも楽しいし、すごく癒された。

帰りはまた福岡まで戻った。
「今日はれんなんとこ、泊まってよ」
って言ってくれたけど、そうそう甘えてばかりもいられない。
また、今日は宿を決めてるってウソをついた。

それにしても、別れ際、2人は泣き出しちゃって大変だった。
「…絶対また福岡に来て下さい」
「うん。今度はウチの方にも遊びにおいでね」
まずは、れいなを家まで送った。

その後、シゲさんの家に到着して、車を止めたら、
「…今日も一緒にいて下さい」
って、腕をつかまれた。

「ごめんね、今日は無理だから。
そのかわり、絶対また来るし、シゲさんもおいでね」
シゲさんは涙を流しながら、コクコク頷いていた。

ありがと、シゲさん、れいな。
この2日間、すごく救われたよ。
ちょっと賑やかだけど、かわいらしい天使たち。



426 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:42


電話でのひとみちゃん、何か元気なかったな。
お父さんとケンカでもしちゃったのかな?
ちょっと心配…

さすがに毎日電話してると変と思われるかもしれないから、
それからはメールでガマンした。

その日に行った場所や食べた食事のことなんかを書いて送る。
ひとみちゃんからも似たような内容の返事が来る。
ある日は、地元の中学生の女の子の家に泊めてもらったなんて言ってた。
…また、かわいい子なんじゃないの?
帰ったら、問い詰めてやらないと。

でも、ひとみちゃん、毎日、メールの最後に「あと○日で会えるね」って書いてくれる。
その度に私の胸がキュンってなる。
もう、ひとみちゃんってば…
コレが恋なんだなってしみじみ感じちゃったりして。
今すぐにでも会いたい。
何日もガマンできないよ…


427 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:42


梨華ちゃんのいない生活を何とかやりすごして、ようやく帰国日。
車で空港に迎えに行ったら、あいぼんが飛びついてきた。
「よっすぃー、元気やったー?」
「うん、元気元気」
本当はちょっと元気ないんだけどね…

当然、梨華ちゃんも抱きついてくるかなって思ったら、
うつむいてるだけで、ウチのことをチラッと見て、
「久し振り」って言っただけ。
なんで?
ウチ、メールで何かイヤなことでも言ったかな?

車の中でも、あいぼんは機嫌よく話してるのに、
梨華ちゃんはそれに相槌をうったり、笑ったりする程度。
ただ単に疲れてるのかな…


家に着くと、あいぼんはすぐに「ごはん!」って言って、
ウチが用意してたまぜごはんとお味噌汁を食べはじめた。
梨華ちゃんは「お風呂入る」って、部屋に荷物を置いて、
すぐにお風呂に入ってしまった。

…もしかして、ウチのことなんてどうでもよくなっちゃったとか…
まさかニューヨークでかっこいい人と出会っちゃったりしたのかなあ…
428 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:43
梨華ちゃんがお風呂から上ると、すぐにあいぼんがお風呂に入りにいった。
少しして梨華ちゃんがリビングにやってきたので、
ゴハンをよそって、食事の準備をしてあげた。
それなのに、梨華ちゃんは突っ立ったまま、テーブルにつこうとしない。

「あ、お腹すいてない?ごめん、勝手に準備しちゃって」
ウチが片付けようとしたときに、梨華ちゃんが正面から抱きついてきた。

「…ひとみちゃん、会いたかった…」
グズグズ泣きはじめる梨華ちゃん。
「ウチだって、会いたかったよ」
梨華ちゃんの頭を撫でながら、腰の辺りを抱きしめる。

「さっきまで全然冷たいから、ウチ、嫌われたのかと思った」
「…だって、だって久し振りに会ったら、何か恥ずかしかったんだもん」
…かーわいいなあ…
あーもう!なんでこんなにかわいいのかなあ。




ウチは、梨華ちゃんから少し体を離して、涙を拭いてあげた。
じっと、梨華ちゃんの目を見る。
見つめ合うこと、数秒間。
…うぅ、やべー、すげー、キスとかしたいかも…

梨華ちゃんもそう思ってくれたのか、目を閉じて、少し上を向いてくれた。
…コレはOKってことだよね?ね?ね?
よぉし!
ウチは深呼吸して、梨華ちゃんの肩に両手を置き、
顔を近づけて、目をつぶった。


「あー、いいお湯やったわあ」
リビングのドアが開いて、あいぼんが入ってきた。

慌てて梨華ちゃんから体を離す。
梨華ちゃんは、イスに座って
「い、いただきまーす」
なんて言ってゴハンを食べはじめた。

ウチは、冷蔵庫から、ウーロン茶を取り出して、ゴクゴクと飲みはじめた。

あいぼんはニヤッとして、
「あれー?もしかしておジャマしちゃったかなあ」
「な、なんのこと?こ、このゴハンおいしいねえ」
梨華ちゃんが、慌てて話題を逸らす。
確かに、めちゃくちゃジャマされたんだけど…

でも、ま、いっか。
久し振りに、梨華ちゃんに会えて、
ちゃんと梨華ちゃんの気持ちも確認できたし、
ギュッってすることはできたから。
ホントはチューもしたかったけどね…
429 名前:イトコ同士 投稿日:2004/03/11(木) 23:43
「あ、そうだ、2人に話があるんだ」
「え?ナニナニ?」
あいぼんが梨華ちゃんの隣に座ったので、ウチも2人の向かいに座った。

「あのね、再来月、イトコが1人増えるんだ」
「え?」
「ん?どういうこと?」

父親が再婚すること、そしてウチに兄弟ができることを話した。
「うわぁ、赤ちゃん見るの楽しみぃ!」
あいぼんは大はしゃぎだった。
梨華ちゃんは少し微笑んでウチのことを見てるだけだった。

あ、よく考えたら、イトコっていっても、
石川家とは血の繋がりはないんだったな。
でも、イトコはイトコだもんな。
きっと歓迎してくれるよね。

「あ、そうや、ウチらも話あるんやったー」
あいぼんがニコニコとしながら言った。

「え?何?」
「おとーさんとおかーさん、9月に帰ってくるって!」
「…え、あ…よかったじゃん」
「うんっ!あ、もちろん、よっすぃーは家にいてくれていいんだよ。
っていうか、3月までじゃなくて、ずっとずっといて欲しいくらいだし」

あいぼんは純粋にうれしそうだった。
でも、正直、ウチの気持ちは複雑だった。
やっぱり、おばさんがいるとウチは家のことをしなくていいどころか、
やってもらわなくちゃならないし、心苦しい。
何よりも梨華ちゃんといちゃいちゃすることが今以上にできなくなるし。

梨華ちゃんの方を見たら、何か考えるようにうつむいているだけだった。


430 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/11(木) 23:44
更新です。
相変わらずペースが遅くてスミマセン…

>>402さん
ありがとうございます。
よっすぃーのたまにかわいいトコもうまく書けたらなあって思ってマス(W

>>403さん
ありがとうございます。
胸キュンはいていただけるなんて光栄です。
自分もそんな気持ちになったことは現実では久しくないですね(W

>>404さん
いつまでたっても、初々しくいてもらいたいんですが…どうなることやら(W

>>405さん
はじめまして。
本当に現実では不足してますよねえ、いしよし。
ネタもつきますね(泣)

>>406さん
遅くて申し訳ありません…
かっけーよっすぃーもマイペースなんで許して下さい(W

>>407さん
ありがとうございます。
本当にマターリですが、引き続きよろしくお願いしますです。

>>408さん>>409さん
お気遣いありがとうございます。
agesageは自分は全然気にしないので大丈夫ですよ。
431 名前:345 投稿日:2004/03/13(土) 12:06
久しぶりに覗いたら更新されてたぁー!!
お疲れ様です。

相変わらずここの二人は甘甘ですね。
福岡のくだり、自分もちょっと涙しちゃいました。

作者さんのペースで全然大丈夫ですよ。
黙ってついていきます。
432 名前:プリン 投稿日:2004/03/15(月) 20:12
(・∀・)イイ!
すごくいいですw
甘々いしよし(*´Д`)ポワワ

更新ガンバですw
応援していますよ。
マターリとw
433 名前:あっキー 投稿日:2004/03/29(月) 01:01
保全
434 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 11:23
435 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/09(金) 04:42
ho
436 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/19(月) 18:39
保全
437 名前:コナン 投稿日:2004/04/28(水) 02:38
>>463ageるなよ!
438 名前:sasuke 投稿日:2004/04/28(水) 02:41
sage
439 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/09(日) 06:08
440 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/09(日) 10:40
上がっていると、更新したのかと勘違いしてしまいますので、
レスは、やはりsageの方がいいと思います。
作者様は気にしないとおっしゃっていて、
いらないことかもしれませんが、
落とさせて頂きます。
441 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/16(日) 12:12
保全
442 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 21:48


ひとみちゃんのお父さんが再婚する話、そして弟か妹ができる話を聞いた。
ひとみちゃんが福岡に行ってたとき、何か元気がなかった原因はコレだったんだろうなって思った。
たぶん、ひとみちゃんは自分が何も知らされてなかったことがショックだったんだと思う。
しかも、そんな大切なことを。
でも私がなぐさめたりできるようなことじゃないし…
とりあえず、ひとみちゃんの側にいてあげることくらいしか、私にはできないんだけど…

それと、ウチのお父さんお母さんが帰ってくる話しをしたときのひとみちゃん、
ちょっと困った顔をしてた。
自分がこのままこの家にいていいんだろうか、とか考えちゃってるんじゃないかな。
もしかしたら、家を出ようとか思ってるかもしれない。
そんなのは絶対イヤ。
ひとみちゃんとイチャイチャしてられなくても、
同じ空間にいるだけで、心地よさっていうか安心感がある。
姿は見えなくても、ハナウタが聞こえてきたりするだけでうれしかったりするし。
夜遅く家に帰ってきたときも、もう寝ちゃってるんだろうけど、
あのドアの向こうにはひとみちゃんがいるんだって思うだけで、ホッとできたりした。
お父さんお母さんが帰ってきたら、ひとみちゃんはすごく気を遣うと思う。
でもでも、ずっとウチに、一緒にいて欲しい。
そんなワガママなお願いは無理なのかもしれないけど…
443 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 21:56
そんな話しもできずに、日曜日がやってきた。
久々に保田さんのお店に行こうってことになった。
まだ忙しい時期だろうから、夕方遅めの時間に行くことにした。

実は保田さんのところに行くのは1月半ぶり。
4月の終わり頃、私は保田くんの夢を見た。
私がひとみちゃんと仲良くやってるのを見たからなのか、
『幸せそうで、安心したよ。
オレもやっとこっちで新しい彼女作れるよ。
だから、オレんとこ、そんなにしょっちゅう来るなよ。
こっちでの彼女にヤキモチ焼かれるからさ』
なんて言われた。

そのことを保田さんに話したら、
保田さんの夢にも、そのころ頻繁に弟が出てきてたのだとか。
しかも『オレんこと来るんだったら、普通にデートした方がいいに決まってるんだから、
そんなに来なくていいって言ってくれ』
とか、私宛てのメッセージまで言っていたらしい。

正直迷ったけど、保田さんにもお願いするように言われてしまったし、
5月からは回数を減らして、月1回くらいのペースで行くことにした。
ひとみちゃんはそれ以外にも、平日の昼間、暇なときに保田さんの店に車で行って、
いろいろお話してくるみたい。
そのとき、一応、彼のお墓の方には手を合わせてるからって。

自分でも不思議なくらい、保田くんのことはフッきれたというか、
保田さんとも普通に彼の話しができるようになりつつある。
柴ちゃんにも前に言われたけど、
私が幸せそうにしてた方が、保田くんも保田さんも、喜んでくれてるんだろうなって、
実感してきてるからなのかもしれない。

最近、保田さんのお店で、保田さんとひとみちゃんと3人で笑いながら話してるとき、
ふと、保田くんの気配を感じることがある。
私たちと並んで座って、一緒に楽しんでくれてるようなカンジで。
もちろん、コワイとかは全然思わないし、すごくあったかい雰囲気で、
ああ、私たちのこと見守ってくれてるんだろうなって思う。
たぶん、今日もお店に行ったら、保田くんに会えそうな気がする。
うん、また、ひとみちゃんが面白いこと言って笑わせてくれると思うよ。
ずっと見守っててね、私、ちゃんと幸せだから。
444 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:00
まだ夏休みとはいえ、もう夕方になるから、
海水浴客もだいぶ帰っているみたい。
ひとみちゃんと私が保田さんのお店に入ったら、
お客さんはカップルが1組いるだけだった。

「あ、いらっしゃーい」
「ちーっす」
「ごぶさたです」

保田さんニコニコとうれしそうに私たちのことを見た。
いつも私たちが座っているカウンターの席は、客が帰ったばかりらしく、
まだカップなんかが置いたままだった。
私が片付けようとしたら、
「あー、すみません!」
ってトイレから出てきたエプロンをつけた女の人が謝ってきた。

あれ?保田さん、アルバイトの人、雇ったんだ?
…ん?んん?
この人、どっかで見たことあるような?

ひとみちゃんも何かひっかかっているような表情で彼女のことを見てた。
彼女はひとみちゃんの顔を、見ると満面の笑みになった。

「あー!!ひとみちゃんじゃない!!ひさしぶりっ!」
って言って、すぐにひとみちゃんに抱きついた。
ちょ、ちょっと何すんのよ!
ひとみちゃんは、戸惑ってオドオドしていた。

「えー?こんなとこで会えるなんて運命じゃない?私たち?」
彼女がうれしそうに、ひとみちゃんの顔を見つめる。
445 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:03
「ちょっと、アヤカ、吉澤と知り合いなの?」
保田さんが怒ったような口調で、聞いてきた。
そうよ、アンタ、ひとみちゃんとどういう関係なのよ?

「知り合いも何も、私の恩人!
ひとみちゃんがいなかったら、私、どうなってたかわかんないもん」

…あ!思い出した!!
私の会社の人の結婚式のあと、山下公園で男の人に連れていかれそうになってた人だ!
ひとみちゃんが、彼女のこと助けてあげたんだ。
ホントかっこよかったなあ、あのときのひとみちゃん…

彼女―アヤカさんは保田さんに、そのときの状況を説明した。
ひとみちゃんはそれでやっと思い出したみたいで。


アヤカさんは日本の大学を卒業してから、
おじいちゃん、おばあちゃんが永住しているオーストラリアに行き、
今でも、学生をしているらしい。
保田さんが冬に遊びに行ってるオーストラリアの友達はアヤカさんのことだった。

アヤカさんはもともと鎌倉に住んでいて、サーファーをしているみたい。
だから、保田さんがこの店をオープンした当初からのこの店の常連さんだった。
今でもご両親はまだ鎌倉に住んでいるから、日本に帰ってくると、
保田さんのお店にももちろんやってくる。
で、時間があるときにはこうやって店の手伝いもするのだとか。

この前の山下公園の事件のときは、私と同じで、
友達の結婚式の帰りだったみたい。
446 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:08
「でもさあ、この前、もっとちゃんとお礼したかったのに、
逃げるようにいなくなっちゃうんだもん」
「あ、え、すみませんでした…」
ひとみちゃんがペコリと頭を下げる。

アヤカさんがニコッとしてひとみちゃんを見たあとに、私の方を見た。
「ま、こんなかわいい彼女とのデート中ならおジャマだったよね」

保田さんは、私のこともひとみちゃんのことも、そして私たちの関係も、
アヤカさんに全部話ししてたみたい。
その2人に会えたってこと、それがあのとき助けてくれた人だったってこともあって、
アヤカさんは大喜び。


お店が終わってから、今日は車じゃなくて電車で来たし、
4人で飲みに行こう!ってことになった。

酔っ払ってるとはいえアヤカさんがひとみちゃんに触れたりすると、
私はかなりムッとしちゃってたかもしれない。
でも、そういうことをする度に、
「アヤカ!」って怒って、アヤカさんを自分の方に引き寄せる保田さん。

気付いちゃったんだけど、
この2人ってそういう、ひとみちゃんと私みたいな関係なんじゃないのかな?

だって保田さんが怒る度に、
「もー、けいちゃん、このくらいでヤキモチやかないのっ」
って、保田さんのほっぺにキスしてたし。

イライラしてたせいなのか、保田さんはペースも速くて、
すごく飲んでて、アヤカさんにベッタリとしたまま酔いつぶれてしまった。

「あー、もう、ごめんねえ。けいちゃん、ここまで酔っ払うこと、あんまりないのに」
って、アヤカさんは、保田さんを抱えて帰っていった。

447 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:10
帰り道、ひとみちゃんがニヤニヤしていた。
「何?何で笑ってるの?」
「だってさー、あんな保田さん、見たことなかったよねえ。
いつもさ、ウチらの前ではさ、かっこいい、頼りがいのある大人なのに」
「確かにそうだね」
「何かうれしいなって。保田さんにもそういう一面があってさ、
しかも自分の好きな人の前だと、そういう姿見せちゃうんだなって」

私だって、そうだよ。
前に保田さんに言われたもん。
自分でも、結構しっかりしてるタイプだと思うんだけど、
ひとみちゃんの前じゃ思いっきり甘えちゃう。
ひとみちゃんもそうだよね?
いつもはかっこいいのに、私の前だとたまにすっごくかわいかったりするもん。
他の人の前では、そんな姿、見せないでよね。
私だけにしてよね。


448 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:11


うーん、やっぱりこのくらいが相場なんだよなあ…
ウチは、学校の最寄り駅近くの不動産屋に貼ってあるチラシを見ていた。


もうすぐ、今月末には梨華ちゃんのおじさん、おばさんが帰ってくる。
そして来月にはウチに妹か弟ができる。
3月にはお父さんと裕子さんとの3人が埼玉の家に戻ってくる。

もちろん、当初の予定通り、3月までは横浜の梨華ちゃんの家でお世話になり、
お父さんが戻ってきたら、埼玉に戻るんだと周りのみんなも思ってると思う。

でも、こんなに早くおじさんおばさんが戻ってくるとは思わなかったし、
新しい母親と兄弟ができるなんて、あまりにも予想外すぎた。

その事実を知ってから悩みに悩んで、ウチは1人暮らしをする決心をした。
幸い、無駄遣いはしてなかったから、貯金も引っ越しできるくらいは充分ある。
だた毎月払う家賃のことを考えると、バイト代と残りの貯金で住めるところを探すのは、
かなり厳しい。
実は、1人暮らしをしようとしてることはまだ誰にも話してない。
親にも、梨華ちゃんにも。
反対されると思うから、部屋を決めちゃってから、事後報告にしようかと。

1人暮らししたいと思うのは、周りの大人に気を遣うのも遣われるのもイヤだというのが大きいけど、
それよりも、梨華ちゃんと本当に2人っきりになれるじゃんと思ったから。
今は同じ家とはいっても、あいぼんがいることが多いし…
何となく先へ進めないのは、そういう機会が少ないからじゃないかなって。
だから、ウチが1人暮らしをして梨華ちゃんが来てくれれば、
今以上の関係になれるハズ!っていう下心もあったりする。

だから、梨華ちゃんがウチの部屋に来やすい場所、
今の沿線で今よりも都内寄りのところがいい。
でも、結構高いんだ、コレがまた。
%
449 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:19
あんまり古いところじゃ、梨華ちゃんとそういう関係になるにはふさわしくないし、
料理はちゃんとしたいからガスキッチンじゃないとイヤだし…
なかなか条件に合うところってないんだよね…


「あれ?よっすぃー?」
振り向くと亜弥ちゃんがいた。
亜弥ちゃんも学校帰りらしい。

「おう」
「どうしたの?1人暮らしでもするの?」

話すかどうか一瞬ためらったけど、
亜弥ちゃんからウチの親や梨華ちゃんに話しが漏れることはないだろうし、事情を説明した。

「へー、どの辺で探してるの?学校の近く?実家の方とか?」
「いや、今の沿線でいいんだけどさー、結構高いよねえ」
ウチがチラリと、いいなと思ってた物件の貼ってあるチラシを見た。
物件的にはいいんだけど、家賃的に無理なところだった。
亜弥ちゃんもそのチラシを見て、なぜかハッとなった。
「あ!すっごいいいトコあるよ!」
450 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:48
その次の日に、亜弥ちゃんに連れて来られたところは、
梨華ちゃんの家から、5つほど東京寄りの駅が最寄の物件。
駅からも5分で歩ける半年前に建ったばかりの新築マンション。
その最上階の5階の角部屋の1LDKの部屋。
部屋の設備も新しいだけあって申し分ない。

何でも、このマンションが建っている敷地は亜弥ちゃんのイトコの家のもの。
すぐ隣りの一軒家は亜弥ちゃんのイトコの家。
亜弥ちゃんより2つ年上のイトコのお姉さんの部屋なのだ。
でも、肝心の彼女は海外をフラフラしてるのが好きらしく、
いろいろな国で旅行代理店だの、通訳だのいろんな仕事をしているものだから、
全然日本に帰ってこないらしい。
親が日本に留まって欲しいと、部屋を用意したのにもかかわらず、
まだ一度もこの部屋に本人は来たことがないのだとか。

このマンションの他の部屋はあっという間に借り手が決まったほどいい物件だし、
やっぱり、家は誰かが住んでいた方がいいから、亜弥ちゃんに住まないかと、
いう話が来たらしい。

イトコのお姉さんがいつ日本に戻ってくるかわからないし、
戻ってきたらすぐ部屋を出ていってくれるような融通の利く人で、
一通り揃えてあるソファーやテレビなんかの家具や電化製品を丁寧に扱ってくれるような人。
亜弥ちゃんは住みたいと思ったけれど、親が大反対。
他の身内でも住めるような人はいなくて、
もしそういう条件でも住んでいいと思う人がいれば教えてと言われてたらしい。
451 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:49
亜弥ちゃんのイトコのおばさんと話しをしたら、敷金礼金とかはもちろんいらないし、
家賃は実際の同じマンションの他の部屋の金額の半額でいいといわれた。
亜弥ちゃんが、ウチがすごく信頼できる人だってことをキチンと説明しておいてくれたのもあったみたいだけど。

確かにいつ亜弥ちゃんのイトコが戻ってくるかわからない不安はあるけど、
こんないい話は他には絶対ない。
部屋じたいはもちろんのこと、なんといってもこんな安い家賃で借りられるようなとこはまずない。
しかも、大家さんである亜弥ちゃんのイトコのおばさんはすごくいい人だし。

だから、部屋を借りることを即決定してしまった。
亜弥ちゃんもうれしそうで。
「あ、お願いなんだけど、こんないい物件紹介したんだから、
たまに遊びに来ていいよね?」
「うん、もちろん」
「にゃはは…あのね…」

『みきたんと2人っきりになりたいときは2時間くらいでいいから、
部屋貸してくれる?』って。
…おい、おい、つまり、ラブホ代わりってことかよ!
そりゃ、亜弥ちゃんもウチみたいな融通が利く人間が借りてくれてよかったよねえ。
まあ、そのくらいは仕方ないよね、こんないい部屋だもん。
マンションの近くにファミレスもあるし、駅前にもお店はいろいろあったから、
2時間くらいはガマンしますよ。


そんなんだから、引越しはいつでもできる状態だった。
できれば、梨華ちゃんのおばさんおじさんが帰ってくる前がいい。
帰国早々、周りが引越しでバタバタしてしまうのは申し訳ないし。

でも、実は、帰国予定日はあと1週間後だったりする。
今日帰ったらすぐに梨華ちゃんに話しをしないとな…


452 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:49


「…え?」
ある晩遅くに、私の部屋にやってきたひとみちゃんの口からでてきた、
1人暮らしする、もう部屋は決めてきた、引越しは今週中に、って言葉がなかなか理解できなかった。
もしかしたら、そうなるかもとは思ってたけど、
こんなに早く、しかも1人で決めちゃうなんて。


「…何で何にも話してくれなかったの?」
「ごめん、自分でもこんなにすんなり決まると思ってなくて…」
「でも、1人暮らししようとは思ってたんでしょ?
そう思ってること、話してくれてもよかったのに」
「…ごめん。その辺はホントに悪いと思ってる…
え?り、梨華ちゃん?泣かないでよ…」

気付いたら、涙がボロボロと溢れてて。
ひとみちゃんがオロオロしてるのがわかった。

「…もういい…1人にしてくれる?」
「で、でも…」

私はひとみちゃんに背中を向けた。
ひとみちゃんは、ふーっとため息をつくと、私の肩を優しく叩いた。
「…ホントにごめん」
それだけ言うと、部屋を出て行った。

私はベッドに突っ伏して大泣きした。
本当はひとみちゃんの胸で泣きたかった。
でも、そんなことしても、ひとみちゃんは困るだけだし、
単なるワガママなイヤな女なだけだ。
ひとみちゃんが自分でしたいと思って決めたことだもん。
私がして欲しくないからって、それをひっくり返させるなんてしたくない。
でも、でも、やっぱりひとみちゃんと離れたくない…
453 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:50
ひとみちゃんは、その次の日から、荷物を整理しはじめて、
車で少しづつモノを運び始めた。
私は、離れていくひとみちゃんのことを見てるのがつらくて、
その日以来、何だかぎこちない態度をとってて、まともな会話もできてなかった。

あいぼんはひとみちゃんが出ていく話しを聞いて、ワンワン泣いた。
「いややあ!よっすぃー、いてくれるって言ったやんかあ!」
私も同じ気持ちだった。
素直にそれを出せるあいぼんがうらやましいと思った。


で、ひとみちゃんは自分のお父さん、そして私のお父さんお母さんにも話をした。
かなり怒られて、猛反対されたみたいだけど、
「もう決めちゃったから」って言われちゃったら、どうしようもなかったようで、
とりあえず、その本当の住人である亜弥ちゃんのイトコのお姉さんが帰ってきたら、
必ず家に戻るってことは約束させられたみたい。
ひとみちゃんは、その後も1人暮らしを続けたかったみたいだから、
渋々了承したカンジだったけど。
454 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:50
そして、お父さんとお母さんが帰ってくる前日。
明日お昼前くらいに到着予定だから、ひとみちゃんの運転で空港まで迎えに行って、
そのまま外でみんなでゴハンを食べようってことになった。
ひとみちゃんは車だから、一旦うちには戻って来てくれるけど、
そのあとすぐに出て行くつもりらしい。
だから、今日がこの家で過ごす最後の日。
そう考えるだけで、私は胸がギュッと締め付けられるようで、
部屋で1人になりたいような、でもひとみちゃんと少しでも長く一緒にいたいような、
どうしていいかわからないまま、夕食を食べ終わった。

「さてと、これから、ののの家に行ってくるわー」
あいぼんが自分の食器をキッチンに運び終わるとそう言った。
『のの』はこの近所に住んでる幼稚園時代からのあいぼんの大親友。

「え、でも…」
ひとみちゃん、明日からいないんだよ?あいぼん、いいの?

「ほら、せっかくの最後の夜なんだからさ、2人っきりで過ごしたいでしょ?
うーんとね、10時くらいに帰ってくるから。
もし、もっと遅い方がよければ、電話ちょうだい」
あいぼんはそう言うと、親指を立てて、笑顔で出ていった。

「…なーんだよ、あいぼん。いないとさみしいじゃんかよぉ…」
ひとみちゃんは、そう小さくつぶやくと、キッチンに行って食器を洗い始めた。
455 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:51
こんな風に、ここでひとみちゃんの背中を見る夜も最後なんだ…
そう思ったら、また涙が溢れてきて、どうしようもなくて…
ひとみちゃんが食器を洗い終わって、流しを台ふきんで拭いてるときに、
思いっきりひとみちゃんの背中に飛びついてた。

「り、梨華ちゃん!?」
「…ひとみちゃん、さみしいよぉ…私のこと、1人にしないでよぉ…」

…もう、まるで、これじゃあ、子供じゃない…
でも、私の口からは、さみしいとか、出て行っちゃイヤだとか、
そんな言葉ばっかりが出てきてた。

ひとみちゃんはゆっくり振り向くと、私の涙でぐちょぐちょになってる顔をのぞきこんできた。
「…こんなこと言うのヘンだけど、よかった。
梨華ちゃん、あんまり話ししてくれなかったし、怒ってるだけかと思ってたから。
さみしいって思ってくれてたんだね」
「…当たり前じゃない…」
ひとみちゃんがニッコリしてくれても、私の涙は止まらない。

「さみしいのは、ウチも一緒だよ。
ほら、今までさ、梨華ちゃんとあいぼんと3人でにぎやかにやってきたのにさ」
…そっか、私にはあいぼんもお父さんもお母さんもいるけど、
ひとみちゃんは本当に1人になっちゃうんだもんね…

「ウチのお父さんが再婚するって聞いた時点で、
1人暮らししようって何となく思ってたんだ。
さすがにさ、一応新婚さんのところに、いるのは本当にジャマだと思うし。
お父さんのことはどうでもいいけど、裕子さんは、あ、新しくお母さんになる人ね、
まだ若いんだしさ、子供ができるとはいえ、新婚気分を味合わせてあげたいかなって」
456 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:52
…ひとみちゃんは優しすぎる。
もしかしたら、その新しくお母さんになる人はちょっとばかしはそんなことを思ってるかもしれない。
でも、でも、一応家族になるんだから、そんな遠慮なんかしなくていいのに。

「どっちにしてもさ、3月にはこの家は出て行かなきゃならなかったでしょ。
半年、フライングしちゃったけど…ごめんね」

私は首を横に振った。
そんな、ひとみちゃんが悪いわけじゃないのに、謝らせてばっかりいる。

「この前言えなかったんだけど、同じ沿線で家を決めたのは、
梨華ちゃんがウチのとこに来やすいようにって思ったからなんだよ」
「…え?」
ひとみちゃんは照れたようにして、私の頭を撫でた。

「ウチの部屋ならさ、こんな風にあいぼんに気遣わせなくても、
2人っきりになれるワケだしさ。
それも1人暮らししようと思った理由の1つだし」

…そうだったの?
ひとみちゃん、ちゃんと私とのこと考えてくれてたんだ。
私のこと考えてくれてないから、出て行くなんて言えるんだと思ってたけど…
そう思ったら、ちょっと落ち着いてた涙がまた出てきてしまった。

「わ、わ、わ、わ…ごめん、ごめんって!
ちょっと、梨華ちゃん、泣きすぎだよお…
あー、でも、ウチが悪いのか…ホントごめんね…どーしよ…」
457 名前:イトコ同士 投稿日:2004/05/23(日) 22:52
ひとみちゃんが私の顔を心配そうに覗きこんでた。
すごく近くにひとみちゃんの顔。
でもね、今の涙はさみしいからじゃなくて、うれし涙なんだから。
もっとうれしくなりたいな…

私は、首を傾けて、ひとみちゃんの唇に自分の唇を重ねた。
ほんの一瞬だけ。
ひとみちゃんは、キョトンとして中腰のまま固まってる。
けど、みるみるうちに顔が赤くなっていって、すごくかわいかった。
うふふ、初めてのキスは、涙でしょっぱかった。


458 名前:名無し作者 投稿日:2004/05/23(日) 22:54
石川さん卒業記念というワケではないですが、
久しぶりに更新しました。

>>431さん
ありがとうございます。
だいぶ間が空いてしまいましたが、まだついてきていただけてるでしょうか…?

>>432さん
ありがとうございます。
お言葉に甘えてマターリやらせてもらってます(w

>>433>>434>>435>>436>>437>>438>>439>>440>>441さん
お気遣いありがとうございます。

途中、PCが不調であげてしまっててすみません

たぶん、次の更新は近いうちにできると思います。
459 名前:345 投稿日:2004/05/24(月) 01:13
更新お疲れ様です。
しっかりついてきてますよ。
間が空いてもそれはそれで読み返しができる
楽しみがありますからね。
がんばってください。
460 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/24(月) 10:44
あらたな展開ですね。
こんな時だからこそほっとします。更新ありがとうございます。
これからも楽しみにしています。
461 名前:プリン 投稿日:2004/05/24(月) 19:14
更新お疲れ様です!待ってましたぁw

なんか予想外の展開っすかぁ?!(何
始めから素直になればいいのにぃ〜w梨華ちゃぁ〜んw
でも・・・やっぱ可愛いなぁ。

次回の更新も待ってますね!
マターリと(w

梨華ちゃぁ〜ん・゚・(ノД`)・゚・。
もう、聞いた時は本気で泣きました・・・。
来年って事は分かってますが、でもやっぱ卒業っていうのを聞くと(泣
辻ちゃん加護ちゃん卒業後でもいいような・・・。

小説に関係なくてごめんでしたm(_ _)m
462 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:14


梨華ちゃんのおじさんおばさんを迎えにいった日から、
いよいよ、ウチの1人暮らし生活がはじまった。

少ない荷物を徐々に運びながら、整理もしてたから、すぐに普通に生活できる。
リビングはフローリングだけど、部屋は和室だから、
ウチは畳の上にゴロリと横になった。


えへへへ…昨日の夜のことを思い出すと、自然にニヤけてしまう。
梨華ちゃんとのキス。
何だかよくわかんなくて、キスをされたの気付くのに少し時間がかかったし、
どうリアクションしていいかわかんなくて、ウチから出てきた言葉は、
「もう、最初のチューはウチの方からしたかったのに!」
って、ある意味逆ギレ。

梨華ちゃんは泣いてたくせにクスクス笑って、
「だって、ひとみちゃん、なかなかしてくれないじゃない」
「しょーがないじゃん、初めてなんだもん!」
「え?ひとみちゃんも初めてなの?」
「え?梨華ちゃんも初めてなの?だって、彼氏…」

言ってしまって、失敗したと思った。
また悲しい気分にさせちゃうかなって。

「ううん、保田くんとそういうことしてなかったから」
梨華ちゃんの表情は全然普通で、
むしろ『してなくてよかったでしょ?』って言ってるようなカンジすらあった。

そっか、そういえば、彼が亡くなったのって、
梨華ちゃんと付き合い始めてすぐだったんだっけ。
そういうことをする前だったんだね…

463 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:14
ま、その後はそれ以上のこともなくて、
それまでと同じように普通にイチャイチャしながら、
2人でいろんな話しをした。

リビングで、ウチが梨華ちゃんに膝枕してもらってるときにあいぼんが帰ってきて、
「うわっ!帰ってくるの早かった?」
なんて言ってたけど。

寝るときは、ウチの部屋だった和室で3人で並んで寝た。
もちろん、ウチが真ん中で。
あいぼんは「さっき、梨華ちゃんはイチャイチャしとったんやから、ええやん」
とか言って、ウチに抱きついたまま眠ってた。
でも、梨華ちゃんもちゃんとウチの手を握ってくれてた。
すごくすごく幸せな夜だった。


今日は完全に1人なんだなと思うと、さみしい気持ちになってくるけど、
これから毎日がそうなんだから、そんなこと言ってられない。
きっと、その分、梨華ちゃんが来てくれたときは、
すっごいすっごいうれしい気分になれるだろうから。


464 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:16


ひとみちゃんが1人暮らしをした翌週に、ひとみちゃんに妹ができた。
予定日より1週間ほど早かったから、
本当はひとみちゃんも立会いたかったみたいなんだけど、
間に合わずに、その翌日に妹さんとご対面をしてきたとか。
新しいお母さんの裕子さんが退院して落ち着くまでは、
ひとみちゃんが家のことをやるらしく、しばらくは福岡の方にいることに。


本当は、ひとみちゃんの家にお泊りに行きたいな、なんて思ってたけど、
そんなことも叶わず、それどころか、会えないし、何だかバタバタしてるみたいで、
電話とかもゆっくりできなくて、すごくさみしかった。
でも、妹さんと撮った写真を毎日送ってくれて、それはうれしかった。

『すごいよ、赤ちゃんって毎日毎日顔が変わってくんだよ』
って、確かに送ってくれた写真を見ると、顔が変わっていっているのがわかる。

だいたい、最初はおサルさんみたいなんていうけど、
ひとみちゃんの妹は、結構目がパッチリとしてて、
おじさん曰く『ひとみの小さい頃にそっくり』らしい。
うん、将来ひとみちゃんみたいなキレイでステキな女の子になるといいね。


ひとみちゃんが福岡から帰ってきたのは、2週間後で、
その日の夜に、うちにお土産と妹さんの写真をいっぱい持ってきてくれた。
あいぼんもお父さんもお母さんもかわいいかわいいって大喜び。
ひとみちゃんもまるで、自分の子供を自慢するお父さんみたいになってた。
お母さんというよりお父さんなんだよね、ひとみちゃんは。

465 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:16
その週の土曜日。
やっと、ひとみちゃんの家にお泊りに行くことになった。

昼間は家での足りないものとかを一緒に買いに行ったりして。
うふふ、何だか新婚さんみたい。

夜は久しぶりにひとみちゃんの手料理が食べたいって言ったら、
はりきって私の好物をいっぱいいっぱい作ってくれた。

食後に、テレビを見て軽くお酒なんか飲みながら、
2人でソファーで座ってぴったりくっついてた。

「…梨華ちゃん…」
「ん?」

ひとみちゃんの顔を見ると、私の顔を黙ってじっと見つめてた後、
顔をゆっくり近づけてきた。
…あ、キス、される…
って思った瞬間、ひとみちゃんの携帯が鳴り響いた。

ひとみちゃんは電話に出ようか、行為の続きをしようかためらっていた。
「電話、出ていいよ」
「あ、うん…もしもし…え?れいな?」

ん?れいなって誰よ?
私の知らない女の子じゃない!

466 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:17
「え?ウチのマンション?…そう、赤レンガの5階建てのだけど?…は?何?何で?…
そりゃ、この前、今度、こっちに来るっては聞いてたけど…」

ピンポーン。
インターフォンが鳴り響く。
ひとみちゃんは電話を切って、インターフォンの受話器を取った。
カメラが設置してあるらしく、画面にはかわいらしい中学生くらいの女の子が2人映ってた。
『どーも、おじゃましまーす』
ひとみちゃんはガックリ肩を落として、
「…どうぞ」ってカギを開けるボタンを押した。


やってきたのは、2人の中学生、道重さゆみちゃんと田中れいなちゃん。
ひとみちゃんが夏休みに福岡に行ったときに知り合った子たち。
この前、ひとみちゃんが妹さんができて、福岡に行ってたときにも、
一応ひとみちゃんから連絡を取って、会ったりしてたとか。
で、今度、2人で東京に遊びに行くって話しも聞いてて、
ひとみちゃんが1人暮らししはじめたからって部屋の住所を教えてあげて、
よかったら遊びにおいでね、って言ってたみたい。
…まったく、ホントみんなにイイ顔するんだから。

部屋に入ってきた途端、2人はひとみちゃんに思いっきり抱きついてた。
もー、何なのよ!?
2人っきりの夜、ジャマしないでよ!

彼女たちはゴハンはもう食べてきたらしく、
ひとみちゃんは紅茶とお菓子を出してあげて、
私の顔色を伺いながらも、楽しそうに話しをしていた。
467 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:17
もー、いつになったら帰ってくれるの?
「ねえ、2人は今日はどこに泊まるの?
ホテル?知り合いのお家とか?」
早く帰って欲しくて、そんな質問をしてみた。

「うんにゃ、ココに泊めてもらおうかと。
だって、前、吉澤さん、泊まりにおいでって言っとったがよ」
「え!?それならそれで先に言っておいてよ…」
ひとみちゃんが驚いた顔をする。

「あ、パジャマとかは持ってきてるんで大丈夫ですよ。
布団も同じ布団でいいし」
「は?3人で同じ布団に寝んの?」
「だって、この前はさゆと同じ布団で寝たんでしょ?ズルイよー。
ウチだって、吉澤さんにギュッってしてもらいながら寝たいもん」
「わわわわっ!そ、そんなことしたっけ?」

ひとみちゃんはオドオドしながら、私と道重ちゃんのことを交互に見ている。
「してくれたじゃないですかあ。
私のこと朝まで抱きしめてくれて…」
468 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:18
…何よ、ソレ!!
私はいい加減ムカついてきて、自分のカバンを持って立ち上がった。
心の中ではかなりイラついてたけど、一応オトナだもん、
2人の子供には笑顔を向けて、
「…じゃ、私は帰るんで、2人はゆっくりしてってね」
「はい、ありがとうございます」
「おやすみなさい」

玄関に向かう私を追いかけてくるひとみちゃん。
「か、帰っちゃうの?」
「かわいい2人に朝までギュッってあげればいいでしょ!」
「ち、違うよ、誤解だって。た、確かに、シゲさんと一緒に寝たけど、
そういう意味じゃなくって…」
「もう知らない。今日は帰る」
「あ、梨華ちゃん…」
靴を履いて、玄関のドアを開ける。

「追いかけてこないでよ」
キッと睨んでそう言ったら、ひとみちゃんは靴を履きかけのまま固まってた。


もう、どうして、どうして、ひとみちゃんはそんなにモテるのよ!
何で私以外の女の子と同じ布団で寝たりなんかするのよ!
…もう、ばかぁ…

そりゃ、そりゃね、道重ちゃんとも本当に頼まれて隣りで寝てあげてただけだとは思う。
でも、何でそんなに優しいのよ。
誰かがお願い事したら、全部聞いてあげちゃうワケ?
もし、誰かが『キスして』とか『エッチして』とか言ったら、
ひとみちゃんはOKしちゃうの?
もー、私にはなかなかできないくせに!
469 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:18
さっきの一言が効いたのか、ひとみちゃんは本当に追いかけてこなかった。
ただ、メールが何通かは届いてた。
『ごめん、シゲさんとは本当にそういうんじゃなくてだた頼まれたから一緒に寝たし
抱きしめてあげたし。自分でも「これが梨華ちゃんだったらなあ」とは思ってたけど
決してそれ以上のことしてないから』
『本当に反省してます。
もう梨華ちゃん以外の人には触れることもしないから。
あ、ウチの妹だけは許して下さい』
『今日はもう遅いし、れいなとシゲさんは泊めるけど、
2人には布団で寝てもらって、ウチはソファーで寝るから』
『今日は本当にごめん。どうしたら許してくれるのかなあ…
本当は梨華ちゃんと一緒に寝たかったけど、
1人さみしく寝ます。おやすみなさい』

うふふ、何だか、浮気がバレたダンナさんみたい。
反省してくれてるみたいだし、もうそんな怒ってないけど、
こんなかわいいメール、いっぱい送ってくれるなら、
もう少し怒ったフリしてようかな…


470 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:18


れいなとシゲさんは楽しそうにしてたけど、
こっちはぐったりげっそりしてしまった。
梨華ちゃん、怒らせちゃったよ…
もう、この部屋来てくれないんじゃ…もう、会ってくれないんじゃ…

梨華ちゃんに何度もメールを送っても、全然反応がない。
もしかしてウザいとか思われちゃってるのかな?
こんな浮気モノ(本当は無実だけど)みたいなヤツとは付き合いきれないとか思っちゃってるかな?

怒らせた次の日の夜、もういい加減、落ち着かないとと思って、
『ごめん、こんなしつこいヤツ、嫌いだよね?
しばらくメールも電話もしません。
梨華ちゃんが許してくれる気になったら返事下さい。待ってます』
ってメールを送った。

うー…何か女々しいかなあ…でも、嫌われるよりは、
しばらく距離をおいてガマンしてる方がいい。
それもかなりツライけどさあ…

そしたら、すぐに返事が来た。
急いでそのメールをみると、
『スキ』って一言。

うわぁ!マジっすか!!
すぐにウチは電話をして何度も謝った。
梨華ちゃんはもう怒ってなんかなくて、クスクス笑ってた。
『反省してるみたいだから、許してあげる。
でも、もう他の人とそういうことしちゃダメだからね』
「ぜ、ぜってーしない!!」

で、次の金曜日に、ウチに泊まりに来てくれる約束もした。
今度こそリベンジ!
何としても、梨華ちゃんともうちょっとススんだ関係になってやるっ!

471 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:19
金曜日、梨華ちゃんは、ちょっとしたボーナスみたいなのが出たから、
ごちそうしてあげるって、外で夕飯を食べることにした。
そのあと、カラオケとかも行って、ウチの部屋に着いたのは11時過ぎだった。
今日はこれから、梨華ちゃんと2人っきりだ…
えへへへ、寝なくてもいいくらい。


玄関を開けると、見覚えのない2足のスニーカーしかもお揃いのが並んでた。
「えっ!?だ、誰!?」
ウチが慌てて、リビングに向かうと、
亜弥ちゃんとミキティが寄り添ってソファーに座って、テレビを見ていた。

「あ、よっすぃー、おかえり」
「おかえりー」
「…おかえりって…」

すぐやってきた梨華ちゃんもキョトンとして2人を見ている。

「…つーか、何でいるの?何で部屋に入れたの?」
「あー、よっすぃーには了解得てるって言ったら、
おばさん、すぐに鍵貸してくれたよ」

…あのおばさん、人がいいにも程がある。

「…泊まりにきてもいいとは言ったけどさあ、事前に連絡してよ」
「え?さっき、メールしたじゃん。だからこのくらいに帰ってきたのかと思ったー」
「へっ!?」

…そういえば、さっきのお店、電波弱かった気がする。
センター問い合わせしたら、確かに亜弥ちゃんからとミキティからメールが来てた。
『今日ね、みきたんとデートしてるんだけど、
帰りたくなくなっちゃったのー。部屋に行ってもいいよね?』
『悪いね、部屋借りるわ。
帰ってくるの、できれば11時以降にして欲しいんだけど(笑)』

…つまり、もう一仕事終えたってことですか?
どーゆーことだよ!
マジでラブホですか?ココは!
472 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:19
「よっすぃー、ごめん、今日泊まっていいよね?
美貴、もう電車ないかもしれないしさー」
「あ、布団なら、さっき、おばさんからもらってきたから。
この辺に敷いて寝るから。お2人は部屋でゆっくりして下さい」

梨華ちゃんは驚いて声も出ないというカンジだった。
ウチもどうしたらいいのか全然わかんなくて。

「あ、お風呂も沸いてるよー。入ってきたら?
美貴たち、先に入らしてもらったけど」

…ぜってー、コイツら一緒に入ったに違いない。
だんだん本気でムカついてきた。

「明日ね、みきたんと一緒にディズニーランド行くんだ。
朝早いから、コレ見終わったら寝るから、ホント私たちのこと気にしなくていいよ」
「朝ゴハン用にパンもいっぱい買ってきたから、よっすぃーたちも食べて」

ウチがイライラしはじめたのがわかったのか、梨華ちゃんがギュッっとウチの手を握った。
「…じゃ、私、先にお風呂入るね」
「あ、ああ」

たぶん、梨華ちゃんはウチが怒り出すのを抑えてくれたんだ。
確かに図々しい2人だけど、ウチにとって大切な友達だし、
こんなとこで怒って追い出すのは友達としてどうかと思うし。
2人だって、一応気を遣って早く寝るとか、リビングで寝るとか言ってくれてるんだし。
473 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:20
黙ったままの梨華ちゃんがお風呂に入っていくと、
亜弥ちゃんが申し訳なさそうに、頭を下げた。
「ごめんね、ジャマしちゃったよね?」
「…うん、まあ…」
「ごめん、この埋め合わせは必ず何かで返すから」
ミキティも珍しく反省顔。
「…いいよ、もう」
「…また来てもいいよね?」
「いいけど、そのときは電話してくれる?」
「わかった、ホントにごめん。もう、美貴たち、寝るよ」

ミキティはテレビを消すと、亜弥ちゃんと一緒に布団を敷いてそのまま布団に並んでもぐった。
「おやすみなさい、あ、電気消しておいて」
「…ん、わかった。おやすみ」
ウチはリビングの電気を消して、梨華ちゃんがお風呂から戻ってきやすいように、
部屋の戸を開けておいた。

ウチは押入れから布団を出して敷いた。
お客さん用なんてないから(亜弥ちゃんのは亜弥ちゃんのだし)
梨華ちゃんと1つの布団だ。
はぁ、今日こそは、梨華ちゃんとそういう関係になりたいのに…
あの2人がいるんじゃ無理だろうなあ…
梨華ちゃんに拒否されそう。

あー、梨華ちゃん、怒ってないかなあ…
また帰っちゃったりしたらどうしよう…
それか、『一緒になんか寝ない』とか言い出しちゃったらどうしよう…

…しかし、ウチも大人げないよな。
せっかく亜弥ちゃんとミキティが、まあ目的は目的だけどさ、
部屋に遊びに来てくれたんだから、歓迎してあげないといけないのに。
はあ、その辺、逆に梨華ちゃんに気遣わせちゃったじゃん。
ホント、ウチはまだまだ子供だよ…

ぼんやりしてたら、梨華ちゃんがお風呂から出てきたので、ウチもすぐ入った。
474 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:20
お風呂から出たときに、リビングの布団を覗き込んだら、
ミキティが亜弥ちゃんが頭を抱き寄せるようにして、2人とも気持ち良さそうに眠ってた。
そりゃあさ、そういうことした後なら、疲れてるからすぐ寝れるよねえ。
ちきしょー、うらやましいぞ!
ウチだって、ウチだって…


部屋に入ると、梨華ちゃんは布団ではなく、クッションの上に座って、
YokohamaWarkerを読んでた。

部屋の戸をそっと閉めて、梨華ちゃんの隣りに座って、
2人を起こさないように小さい声で聞いた。
「明日どっか行きたいトコとかある?」
「んー、どっか行くよりも、ひとみちゃんと一緒にお料理作りたいな」
「え?そんなのでいいの?」
「うん、それがいいの」
「あ、この近くにね、大きいスーパーもあるんだよ。じゃ、そこで買い物すればいいね。
結構ね、野菜も魚もいいもの置いてるんだ」
「うふふ、ひとみちゃん、市場に買い物に行く人みたい」

よかった、梨華ちゃん、機嫌悪くなっちゃったかと思ったけど、全然ヘーキみたい。
えへへへ…

ふと時計を見たら、もう1時を過ぎてた。
「あ、そろそろ寝ようか…」
「…うん」


475 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:21
ウチは、梨華ちゃんが入りやすいように、布団の右側に入った。
梨華ちゃんがゆっくりとウチの隣りに入ってくる。
…うぅ…どーしよ、どーしよ…
うん、あの2人は寝ちゃってるし、大丈夫。
梨華ちゃんもこの様子なら拒否とかしないハズ…
あとは、ウチが勇気をふりしぼって…

梨華ちゃんの肩をそっと抱く。
梨華ちゃんはウチの方に体を向けてくれて、顔がすごく近くに…
…うぐっ…きょ、今日こそは、ウチからチューするんだっ!

ウチは目をつぶって、顔を、唇を梨華ちゃんに寄せた。
…うわー、やらかい…
唇で唇に3秒くらい触れただけなのにクラクラきそうだった。

…ヤバイ、もうちょっとちゃんとしたのがしたい!
梨華ちゃんに覆いかぶさるような体勢をとって、また唇を寄せようとした。


『ぶしゅんっ!』
『うわっ!しーっ!!』

…戸の方からくしゃみみたいな音がした。
ウチは素早く立ち上がると、思いっきり戸を開けた。


476 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:22
「…ナニ、やってんの?」
戸のところには案の定、ミキティと亜弥ちゃんがはりついていた。
…お前らっ!いつぞやも、こうやって覗いてジャマしたろーが!

「い、いや、よっすぃーのかっこいいとこ見せてもらおうかなーなんて」
「ね、ねえ?私たちもいろいろ勉強したいしー」

ホント、こいつらだけは…
ウチが殴りかかりそうになったのに気付いたのか、
そのまま逃げるように自分たちの布団に転がっていった。


「あー、で、でも、何か仲いい2人見てたら、美貴もしたくなっちゃったなー!
亜弥ちゃん、しよっ!」
「ええ!?ちょ…ん…んん…」
ミキティはウチがにらんでるのを逸らすためなのか、亜弥ちゃんにキスをした。
…うわっ…しかも、そんな激しいのすんなよ!
ウチが思わず顔を逸らすと、
「あー、もっと先までしちゃうから、よっすぃーたちも気にしないでしちゃってていいよ」

「な、なに言って…!!」
振り向くと、ミキティは本当に亜弥ちゃんのパジャマのボタンを外し始めてた。
な、な、なんつーことすんだよ!人の目の前で!
ウチは恥ずかしくなって、部屋の戸を閉めた。

477 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:22
布団の方を見ると、梨華ちゃんはウチの方に背を向ける姿勢で丸くなってた。
ウチが布団に入って、梨華ちゃんの肩を叩くと、ビクッとしただけで振り向いてもくれなかった。

「…梨華ちゃん、ミキティと亜弥ちゃんなら、しばらく平気だと思うから…」
さっきの続きさせて欲しいんだけどなあ…
梨華ちゃんがゆっくりとウチの方に体を向けてくれる。
えへへ…OKってことだよね?
よ、よーし!がんばっちゃうぞ!
とりあえず梨華ちゃんをそっと抱き寄せた。
そして、髪に、首筋に優しくキスをしはじめた。


「…ん…あ!…あん…みき、たん…」
「…はぁ…はぁ…あやちゃん…スキだよ…」

……お前ら、声デカすぎ!!


梨華ちゃんも、2人の声に驚いて固まってしまっていた。

聞いちゃいけないと思えば思うほど、聞こえてしまうもので、
亜弥ちゃんのあえぎ声と、ミキティの激しい息づかいと愛の囁きが、
イヤというほど耳に入ってくる。
そっちに気を取られて、こっちの行為を思わず中断してしまっていた。

478 名前:イトコ同士 投稿日:2004/06/08(火) 15:22
気付いたら梨華ちゃんは、またウチに背中を向けてしまっていた。
「…り、梨華ちゃん?」
「…もう、寝る…おやすみなさい」



えぇっ!?
寝るって、もうコレ以上しちゃダメってこと?
そ、そんなあ…

「…梨華ちゃーん…」
ウチが梨華ちゃんの肩を掴んでも無反応。
…マジで?マジでダメってこと?


ウチさぁ、1年半以上も、梨華ちゃんと結ばれることを夢見てたワケよ。
それなのに、何コレ?
目の前に手の届くとこにいて、一瞬は手に入りかけたのに…


あー、イトコ同士からコイビト同士の関係になれるのは、いつなんだよぉ…

fin

479 名前:名無し作者 投稿日:2004/06/08(火) 15:30
更新&終了しました。
こんな終わり方でスミマセン…

>>459さん
ありがとうございます。
最後までお付き合いいただけたでしょうか…

>>460さん
ありがとうございます。
せっかく楽しみにしていただいていたのに、終わらせてしまってすみません。

>>461さん
ありがとうございます。
カワイイ石川さんを書きたかったので(W
卒業はさみしいですけど、これからもがんばっていってほしいですね。

今後の予定は全く未定です…
駄文に今までお付き合いいただいた方、どうもありがとうございました
480 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/08(火) 18:30
完結お疲れ様でした!
なにげに、ここに出て来る、あややとミキティが可愛くて良かったです。
また次回も気長にお待ちしております。
481 名前:345 投稿日:2004/06/08(火) 20:32
某所で完結の文字を見てビックリしてすっ飛んできました。
最後に思いっきり笑わせていただきました。
二人が結ばれるまで、まだまだかかりそうですね。

なにげに、続編など期待しつつ
完結お疲れさまでした。
幸せな時間をありがとう!

482 名前:プリン 投稿日:2004/06/09(水) 16:56
更新&完結、お疲れ様でした!!
可愛い梨華ちゃんが読めたしw
カッコイイよっちゃんが読めたしw
もう、何も言う事はありませんね。
とにかく最高でした。
素敵な小説ありがとさんでしたm(_ _)m

新作、続編などを書かれた時はまたすっ飛んできますw
その時はよろしくです。
ホントに素晴らしい小説でした!!
483 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 22:36
続きとか書いてください(>_<)

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