死ぬほどあなたが好きだから。

1 名前:jinro 投稿日:2003年08月04日(月)02時17分32秒
 風板でおばかななちごま書いてる者です。
 どうしてもシリアスが書きたくなってスレ立てました。

 風板同様、週一更新目指してがんばりますです。

 えーと、リアルでシリアスで多角関係モノ。
 主な登場人物は
 (●´ー`●)(○^〜^○)(〜^◇^〜)( ´ Д ` )
 かな…。あ、チーム笑わん姫だ。

 そだ、時期とかは…ザ☆ピ〜ス!位ってことで…あんまし突っ込まないでください。
 後藤さんがまだ娘。にいるってことで。


2 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)02時25分21秒
「オイラさぁ、よっすぃーのこと好きなんだよね」

 仕事が終わってから、矢口に誘われて夕食を兼ねて居酒屋に来た安倍は、矢口の突然
の言葉に驚いた。
 話がある、とは聞いたけど、まさかこんな話だとは思わなかった。

「へえ」
 安倍は曖昧に笑ってグラスのチューハイを一口飲んだ。
 どんな顔をしていいか分からない。
「初めて聞いた」
「初めて言ったもん」
 当たり前じゃん、と矢口はケラケラと笑った。

「…それで?告白とか、するの?」
 安倍はグラスを持つ手に自然と力が入るのをどうしようもなかった。
(わたしは…今までヤグチの何を見てきたんだろ)

「ん〜。どうしたらいいかと思ってさ…」

 矢口は通りかかった店員にチューハイのお代わりを頼んでから、安倍の方へ身を乗り
出した。
3 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)02時32分13秒
「…なっちはさ、どうしたらいいと思う?」

「なっちは…」
(告白なんかしないでほしい)
 でもそんなこと言えない。
 矢口が吉澤を好きなら、自分のこの想いは矢口にとって迷惑になる。
「なっちは告白したらいいと思うよ」
 矢口といつも一緒にいる安倍にはある確信があった。

 多分、吉澤も矢口が好きだ。

 直接本人に確かめたわけではないが、間違いないと思う。
 何故なら、矢口と一緒にいるとき、安倍は良く吉澤と視線が合った。
 きっと、矢口を見ていたのだ。

「え〜?でもなぁ…あ、すいません」
 矢口は乗り出していた体を戻し、お代わりを持ってきた店員からグラスを受け取る。
「大丈夫。きっと上手くいくよ」
「そうかなあ…」
4 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)02時39分46秒
「矢口カワイイもん。よっすぃーだって矢口が好きだよ」
 安倍は氷だけになったグラスを手で弄びながら微笑む。
 それでも矢口は不安そうな顔をしたまま、考え込んでいる。

(矢口には…幸せになってもらいたいな)

 それが出来るのが自分じゃないのが悲しいけれど。
 安倍は小さく息をついて、矢口の手を取った。
「したっけさ、なっちがよっすぃーに聞いてみようか?」
 その言葉に、矢口は驚いて顔をあげた。

「で、でも…」
「なっちに任せなってぇ」
「う、うん…」
「さりげなくさ、好きな人いないかきいてあげるよ」
 きっとヤグチだよー、と笑いながら、安倍は胸がキリキリと痛むのを感じた。
 
(大丈夫…ヤグチがが幸せになってくれたら、それがわたしの幸せだから)

 この胸の痛みも消えるはず。


5 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)02時45分25秒



 翌日。

 安倍はバラエティ番組の合間の休憩時間に吉澤を呼び出した。
 普段あまり接点のない安倍の誘いに吉澤は心なしか驚いているようだった。

 二人はあまり人の来ない廊下の端の喫煙コーナーのベンチに座った。
「よっすぃー、何飲む?」
 財布から小銭を出しながら尋ねると、吉澤は慌てて自分のポケットを探る。
「や、自分で買いますよ」
「いいって。折角の休憩に連れ出しちゃったお詫び。コーヒーでいい?」
 吉澤を制して、安倍はコーヒーと、自分に紅茶を買った。

6 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)02時52分42秒
「あのさ、よっすぃー」
 吉澤の隣に腰掛けて、安倍は口を開いた。
「よっすぃーってさ、今付き合ってる人とかいるのかなぁ?」
「ええっ!?」
 余程驚いたのか、プルトップを開けようとしていた吉澤の指が滑って、カチンと金属音
が誰もいない廊下に響き渡った。

「なんすか、突然…」
 吉澤は少し頬を染めて改めてプルトップを開けてぐいっとコーヒーを飲んだ。
 こんなに動揺するとは思ってなかった安倍は、少し唐突過ぎたかな、と思ったけど、
今更ひくわけにはいかなかった。
「うん…、ちょっと、ね」
 安倍の曖昧な言い方に、吉澤は首を傾げる。
「…付き合ってる人はいないですよ」
「あ、ホント!?」
「はあ」
「したっけさ、その、好きな人とか…いる?」
7 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時03分18秒
 安倍はまるで自分のことのようにドキドキしながら尋ねた。
 いや、実際安倍にはこのことは決して他人事ではないのだ。
 …矢口の幸せが掛かっているのだから。

「…好きな人、は…」
 吉澤は暫く考え込んでから、じっと安倍を見つめた。
「…な、何?」
 じっと大きな瞳で見つめられて、なんとなく落ち着かない気分になる。
 安倍は慌てて視線を反らした。

「好きな人は…いません」

 その答えに、安倍は再び視線を隣に座る吉澤に戻して。
「本当?…したっけさ!」
「はい?」
「よっすぃーのこと…」
 言いかけて、ふと考える。
 自分がここまで言ってしまっていいのだろうか。
(でも…わたしに出来るのはこれくらいしかないから…)
「よっすぃーのこと、すっごく好きな子がいるの。その子とさ、付き合うって、出来ない
かな…?」
「…」
 大体話の予想はついていたのか、吉澤は大して驚きもせずに安倍を見つめ返した。
 今度は安倍も視線は反らせない。
 いかに自分が真剣なのかを分かってもらわないと。
8 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時09分41秒
「…誰ですか?その子って」
 興味を持ったらしい吉澤に、安倍は望みがあるかもしれないと思った。
(だってヤグチは可愛いもん。一緒にいたら絶対よっすぃーも好きになるっしょ!)
「あのね…」
「もしかして、矢口さんですか?」
 遮られるように言われて、安倍は心底驚いた。
「なんで分かったの?」
「なんとなく…てか、安倍さんがそんな風に世話焼くのって、矢口さんしかいないかな
って」
 確かに安倍と矢口はいつも一緒にいる。
 そう思われても仕方ないことかもしれない。

「なら話が早いよ。…どうかな?」
「いいっすよ」
 即答。
 これまた意外で安倍はまた驚いた間抜けな顔を吉澤に披露することになった。
「ウチ、矢口さんと付き合ってもいいっすよ」
 驚いたまま何も言わない安倍に、吉澤は繰り返した。
9 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時16分53秒
 その声に安倍はハッと我に返って。
「…あ、ありがとう、よっすぃー!よっすぃーもきっとヤグチ好きになるよ!ヤグチは
すごくイイコだし、可愛いし!」

(良かった…!さっきは好きな子はいないなんて言ってたけど、照れくさかったのかも。
よっすぃーもヤグチが好きだったんじゃないかな…)

 安倍は満面の笑顔で立ち上がる。
「したっけヤグチ呼んでくるから、待ってて」
「待ってください」 
 矢口を呼びに楽屋に戻ろうと一歩踏み出した安倍の腕を、吉澤が強い力で掴んで引き止めた。
「…何、どしたの?」
「ウチも話があるんです」
「話?…なっちに?」
 吉澤は安倍の腕を掴んだまま、小さく頷いた。

「安倍さん、ウチのものになってくださいよ」




10 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時23分34秒
 最初、何を言われているのか分からなかった。
 安倍は暫くそのまま吉澤の顔を見つめていた。
「矢口さんと付き合ってもいいっすけど…その代わり、安倍さんウチのものになって
ください」
(何を…言ってるんだべか?)
「な、…わけ分かんないよ」
 安倍は混乱していた。
 吉澤は表情が固まった安倍の腕を引いて、自らの腕の中に抱え込んだ。

「安倍さんがウチのものになってくれたら、矢口さんを幸せにしますよ。絶対泣かさないし、
優しくします」

「なっちが…断ったら?」
 吉澤の腕に抱かれたまま、安倍は震える声で聞いた。
「…矢口さん、傷つくことになりますね」

「や、ヤグチをどうするつもりだべ!?」
 焦って方言が出てしまっているのにも気づかない。
(ヤグチは…ヤグチを傷つけるなんて)
11 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時28分55秒
 矢口が傷つく姿を想像して、安倍は頭がくらくらした。
「そうですね…付き合ってはあげますよ。安倍さんの頼みだし。でも…ぼろぼろにします
よ。心も体も」

「なっちがよっすぃーの言うこと聞いたら、ヤグチを幸せにしてくれる?」
「しますよ。誰よりも幸せに」
「約束、してくれる?」
「しますよ。約束」
 吉澤は安倍を抱いたまま、薄く笑みを浮かべた。


「取り合えず、矢口さん呼んできてもらえますか?」




12 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時30分19秒
>う〜ん。
 難しいな…。
 でもま、こんなカンジで。
 そーいえば後藤さんが出てきてない…。


13 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時32分05秒
 
14 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月04日(月)03時32分56秒
  
15 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月04日(月)03時52分10秒
お!ほぼリアルタイム?
風板のほうもお気に登録させてもらってますが、
今度も面白そうですね!!ワクワクします。黒よっす(・∀・)イイ!!タイトルも(・∀・)イイ!!
両方楽しみだけど、ムリせずに頑張って続けてくださいまし。
16 名前:つみ 投稿日:2003年08月04日(月)09時07分38秒
またいいものはじめましたね!!
作者さん!!
17 名前:くり 投稿日:2003年08月04日(月)09時12分16秒
更新おつかれさまです!
すごくおもしろそう!
続きがかなり気になります!
次の更新もがんばってください!
応援しています!
18 名前:ルル 投稿日:2003年08月06日(水)18時53分46秒
初めて作者さんの小説読みましたぁーめっちゃ好きです!!
私の小説ツボにもろハマってます!!
私はよしやぐが一番好きなんですけど、この関係もいいですねぇー(*^Д^
*)
矢口さんを幸せにしてやってください…
19 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月08日(金)00時26分01秒
ルルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
20 名前:jinro 投稿日:2003年08月08日(金)18時28分41秒
>これだけは言っておかなければ

 カオリ誕生日おめでとう!!!

>えっと、明日か明後日、更新しますです。

21 名前:LOVE 投稿日:2003年08月08日(金)19時16分34秒
好きな人のためになっちは・・・一体なっちはどうなるんだ?
この状況にどうごっちんが絡んでくるのか・・・
続き期待しております。
22 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月08日(金)22時32分34秒
とてもキャンディーと同じ作者とは・・・(w
もちろん良い意味でです!
23 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時14分35秒


「安倍さん、ウチのものになってください」


 吉澤の言葉。
 しかし実際、あれから一週間、何もない。
 あの後、矢口を呼びに行って、安倍はそのまま楽屋に戻ってしまったので、ふたりが
どんな話をしたのか分からない。
 でも楽屋に戻ってきた矢口にありがとうと小さな声で言われたから、ふたりはきっと
うまくいったのだろう。

「なっちぃ〜」

 収録を終えて、帰り支度をしている安倍に矢口が声を掛けてきた。
 鏡に向かっていた安倍は後ろに矢口の姿を確認すると笑顔で振り返った。
「どうしたの、ヤグチ?」
24 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時21分19秒
「今日さ、一緒にご飯食べに行かない?」
「今日?」
「うん、よっすぃーがさ」
 矢口がちょいちょいと後藤と喋っている吉澤を手招きする。
「お礼になっちにご馳走しようって」
「お礼って、なっちはなんもしてないよ?」
「何言ってんですか、安倍さん。安倍さんのおかげでウチら両思いになれたんすよ」
「そうだよ!ね?なっち、行こっ?」
 
 正直、安倍は気が進まなかった。
 矢口と吉澤が仲良くしているところを見て、自分が平静でいられるか不安だった。

「それとも…なんか用事ある?」
 悲しそうに安倍を見つめる矢口。
 その後ろで黙ったまま、じっと安倍を見つめる吉澤。
25 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時28分13秒
「…用事なんかないよ。うん、ご馳走になろうかな…」

 矢口の悲しそうな顔は見たくない。
 そしてそれよりも。

 じっと見つめてくる吉澤の視線に耐えられなかった。



 三人が選んだ店は以前、安倍と矢口、それから飯田と保田で見つけて、それ以来
常連になっている小さな居酒屋だった。
 居酒屋と言っても、肴の他に食事のメニューも充実していて、アルコールがあまり
飲めない安倍も気に入っていた。

「それじゃあカンパイしようか?」
 矢口がおどけた様子でグラスを持ち上げた。
「そっすね」
 吉澤もそれに習ってグラスを掲げたので、安倍も仕方なしにグラスを手に取る。
(あんまし乾杯って気分じゃないんだけど)
 矢口が楽しそうだから、まあいいか、と安倍はカチンとグラスを合わせた。
26 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時37分09秒


 自分の正面に座った吉澤は、矢口にとても優しく接している。
 醤油や紙ナプキンを取ってあげたり、大皿のつまみを取り分けてあげたり。
 その度に嬉しそうに笑う矢口の笑顔に、安倍は胸が痛んだ。

(こんなんじゃ駄目だ…。ヤグチが両思いになったんだもん。祝福しなきゃ)
 矢口の幸せを誰よりも望んでいたのは自分なのに、いつまでも未練がましく落ち込んで
いる自分に安倍は嫌気が差しそうだった。
「なっち、元気ないね?」
「えっ?そ、そんなことないっしょ」
「アハハ、久しぶりになっちの訛り聞いたよ」
 アルコールのせいか、矢口はひとりでテンションが高い。

「別にいいでしょー!プライベートなんだから〜」
 東京に出てきて、随分経つのに未だに抜けない北海道訛り。
 最近ではだいぶ出なくなってきたけど、油断したり動揺したりするとぽろっと出て
しまう。
27 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時46分05秒
『なっちはうそつく時訛りふが出るからすぐ分かんねん』
 かなり昔のことだけど、そう中澤にからかわれたことがあった。
『でもそれがなっちの良いとこだよ』
 その後、矢口がフォローしてくれた。
 暗に、なっちはそのままでいいんだよと言われてるみたいですごく嬉しかったのを
今でも覚えている。

「……っ!?」
 物思いに耽っている安倍の膝に何かが触った。
 最初は気のせいかと思ったが、安倍の膝に触れたそれは、明らかに意思を持った動き
をしていた。
(な、なんだべ…?)
 座敷になっているこのテーブルの下は掘り炬燵式になっている。
 もしそこに誰かが隠れていたとしても、最初に座った時に気づかない筈がない。
(…まさか)
 安倍はハッして正面に座る吉澤を見た。

「矢口さん、次は何飲みますか?」
「ん〜。オイラはカルピスサワー。よっすぃーは?」

 吉澤は顔色ひとつ変えずにメニューを見ながら矢口と話している。
28 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)08時54分59秒
 でも間違いない。

 自分の膝に触れているのは、吉澤のつま先だ。

「じゃあウチはウーロンハイで」
 何事もなかったような顔でオーダーする吉澤。
 その間も、微妙なタッチでつま先は安倍の膝に触れている。
「…なっちはさ、好きな人とかいないの?」
「…え?なっち?」
「うん。人のキューピッド役もいいけどさ、自分のことはどうなのさ?」
「なっちは…今はそういうの、いいや…」
(駄目だ…)
 触れてくる吉澤のつま先に意識が取られる。
 しかもつま先は膝を割ってだんだんと奥へ入り込んで来ている。

「えー?そんなんつまんないじゃん」
「そうですよ。安倍さんかわいいからモテるでしょ?」
「そんな…こと、ないよ」

(よっすぃー、お願いやめて)
 目で訴えるけど、吉澤の足は止まらない。
 つねってやろうかとも思ったけど、吉澤の視線とあの言葉がそれをさせてくれない。
『ぼろぼろにしますよ。心も体も』
29 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)09時04分47秒
 矢口のこの楽しそうな笑顔を消すわけにはいかない。
「…っ!」
 吉澤のつま先が安倍の足の付け根のきわどい所をなぞった。
 思わず体が強張る。
 頬が赤くなっているのが自分でも分かった。
 矢口と吉澤が何か話しかけているのは分かったけど、ほとんど頭に入らない。
 全神経が吉澤の触れている所に集中する。

「おかわり頼む?」
「なっちはまだ、いいよ」
「そ?でもグラス空じゃん」
「……っん」
 ついに吉澤のつま先が一番奥に触れた。
 耐え切れず声を漏らした安倍の顔を矢口が心配そうに覗き込む。
「なっち?もしかして具合悪い?」
「違、だいじょーぶ」
(駄目…このままじゃ…)
「顔、赤いですよ?酔っ払っちゃいましたか?」
 飄々とそんなことを言う吉澤を、安倍は睨み付ける。
(誰のせいで…っ!)
「ごめん、ちょっと、お手洗い」
 このままいたら何をされるか分からない。
 安倍は立ち上がって吉澤から逃げ出した。


30 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)09時14分56秒


 洗面所で顔を洗ったら、少しだけさっぱりとした。
 まさか吉澤があんなことをしてくるなんて思わなくて、安倍は混乱していた。
(なっち…なんかよっすぃーにしたかなぁ)
 心当たりはない。
 ないけれど、知らないうちに吉澤の気に障ることをしてしまったのかもしれない。
 自分の物になってくれ、と言われた時は、正直吉澤は自分の事が好きなのかと思っ
てしまったが、どうやらそうではないみたいだ。
(今度、ちゃんと聞いてみよう)
 うん、俯いていた顔をあげると、自分の後ろに立っている吉澤が映っていて、安倍は
心底驚いた。

「なん、びっくりした…」
「矢口さんに言われて様子見にきたんすけど」
「ヤグチに?」
「ええ。もしなっちが具合悪かったりしてたら、おいらじゃ支えてあげれないからって」
 確かに、矢口では安倍は抱えられないだろう。
「安倍さん、大丈夫ですか?」
「…っ、よっすぃーのせいでしょ!?」
 先ほどのことを思い出して、安倍の頬が再び赤く染まる。
 それを見て吉澤は面白そうに唇の端をあげると、安倍を腕の中に抱きこんだ。
「なにす…っ?」
「もしかして安倍さん…感じちゃいました?」
31 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)09時34分13秒
「…違…っ!?」
「でも真っ赤でしたよ?顔」
「…あんなことされれば誰だって赤くなるべ!…もお離して!」
「駄目ですよ」
 安倍を抱いたまま、吉澤は個室に入り、鍵を掛ける。
「よっすぃー?なに、するの?」
(こわい…こんなよっすぃー、初めてだ)
 怯えた表情の安倍に、吉澤はさっきのどこかいやらしい笑みとは正反対の、まるで
楽しい玩具を手に入れた子供みたいな笑顔を見せて、安倍の耳元に囁いた。

「安倍さんのそーゆー顔、好きですよ。ゾクゾクする」

「やめ、よっすぃー!」
 吉澤は安倍の体をドアに押し付け、膝の間に自分の片足を割り込ませる。
「お仕置き。さっき途中で逃げたから」
「よっ、すぃ、…ぁん!」
 割り込ませた膝を安倍の足の付け根に押し当てて前後に揺する。
 微妙な感覚に安倍の体がびくんと震える。
(なんで、こんな…っ)

「よっすぃー、ふっ、あ、なっち、なんかした?よっすぃーになんかした?」
「…何も。別に何もしてないですよ」
 押し当てた膝を動かしながら、吉澤は安倍の耳を舌で撫でる。

「ただ、吉澤が勝手に勘違いしただけです」
(なに、どういうこと…?)
32 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)09時42分25秒
「勘違いして、勝手にスイッチ入れちゃっただけです」
(なに、わかんない…わけわかんないよ)

「安倍さん、どうしてウチが一週間も何もしなかったかわかりますか?」
「何、わかんな、…ん、んっ」
「今日、久しぶりにスカートはいてきたでしょ?」
 確かに、吉澤と矢口の話をしてから暫く、安倍はずっとパンツルックだった。
 今日は久しぶりにスカートをはいてきたのだ。

「ジーンズの上からあんなことしても仕方ないですもんね」
(…したっけ、よっすぃーは最初からこんなことするつもりで…)
 耳を這う吉澤の舌と、押し付けられる膝に頭がくらくらする。
 自分のものになってくれ、という言葉の意味が、安倍は漸く理解できた気がした。

「よっすぃー?なっち、大丈夫!?」
 ドンドンとドアを叩く音と矢口の声。
 吉澤は小さく息を吐いて安倍から全ての手を離した。
 途端、その場にへたり込みそうになる小柄な体を抱きかかえて、個室を出る。
「矢口さん、安倍さんやっぱり調子良くないみたいです」
33 名前:緩やかに堕ちていく 投稿日:2003年08月09日(土)09時46分30秒
「うわ、やっぱり?なっちごめんよー。オイラが無理に誘ったから」

 大丈夫。
 なんでもないよ。
 そう言いたかったけど、矢口の顔がまともに見れなかった。
「とりあえずタクシー呼んでくるよ!」
 小さな体を翻し去っていく矢口を見送ってから、吉澤は安倍に囁いた。


「安心してください。矢口さんは幸せにしますよ。必ず」


 矢口の幸せが自分の幸せだから。
 安倍は自分の胸に言い聞かせて、こみ上げてくる涙を拭った。



34 名前:jinro 投稿日:2003年08月09日(土)09時52分23秒
>15 名無し読者様
 シリアスって難しい…。
 一応痛めを目指してるんですが…どうなることやら。

>16 つみ様
 いいもの…そう思い続けていただけるよう精進します。

>17 くり様
 面白くなるようにがんばりますです!

>18 ルル様
 よしやぐ…は、どうなるんだろ。
 やぐちさんは自分三押しなので幸せにしてあげたいです。

>19 名無しさん様
 ん?ルルさんて有名な方なんですか?
35 名前:jinro 投稿日:2003年08月09日(土)09時55分52秒
>21 LOVE様
 ごとーさん…また出ませんでしたね。
 次の更新で出るはずです!
 えっとLOVEさんのなちまり読んでます。がんばってください!

>22 名無しさん様
 イエーイ!
 実は密かにそれを狙ってたり…。


>レスありがとうございます!すごく嬉しいです。
36 名前:jinro 投稿日:2003年08月09日(土)09時58分00秒


(●´ー`)人(^〜^○) …?ちょっと違う。



37 名前:つみ 投稿日:2003年08月09日(土)13時10分46秒
黒よし・・・・
この後ごまがどう絡んでくるか見ものですね!
38 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月10日(日)03時29分00秒
なっちかわいそう…
でも萌えてしまう自分は鬼やな(w
期待しております。
39 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003年08月11日(月)11時52分19秒
jinroさん見ぃ〜っけw新作速報からすっ飛んできやした。
黒よすこエロエロですな...こわひよぉ〜(゜Д゜;
このカップリングは、妙に期待させますな...ストライクゾーンど真ん中ですw
この先なっちが征服されてしまうかどうか...うぅ〜ん、気になる!
楽しみに待っているので、更新がんばでーす!
40 名前:jinro 投稿日:2003年08月17日(日)12時40分44秒



 今日がオフでよかった。
 ベッドの中でゴロゴロしたまま、安倍は昨夜の事を思い出していた。

『安心してください。矢口さんは幸せにしますよ。必ず』

 吉澤のその言葉は嘘ではないのだろう。
 昨夜の矢口はとても楽しそうに笑っていたし、吉澤も矢口には優しかった。
 自分にあんな事をしながら、矢口には。
(もう…明日どんな顔してふたりに会えばいいんだべ…)
 わざとらしくため息なんかついてみるけど、本当は分かっていた。

 普通にしていればいいのだ。

 今まで通りしていれば、矢口はきっと幸せになれる。
(…ヤグチ)
 枕元に置いてあった携帯を見ると、もう昼近い時刻だ。
 なにか食べなきゃ、そう思うけど動くのが億劫だった。
41 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)12時47分42秒
 それに溜まっている洗濯物も洗わなければいけないし、部屋の掃除だって随分して
いない。
 一度起き上がってしまえばいいのだが、枕から頭をあげるのすら面倒くさい。

 ごろりと寝返りをうって、安倍は手を伸ばしてカーテンを捲って外を見た。
 瞬間飛び込んできた蒼に思わず目を細める。
(…あの時も、こんな蒼だったっけ)

 安倍はカーテンの隙間から空を見上げながら、記憶をゆっくりと思い起こしていく。
 何年も前の、あの記憶を。
42 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)12時56分44秒



 ただ必死だった事を覚えている。
 リリース三枚目でオリコン初登場一位を獲得して、それを維持するのに必死だった。
 がむしゃらに歌やダンスの練習をした。
 当時のメンバーは全員、当たり前だけど余裕がなかったように思う。

「なっち、まだやるの?」
「うん。ここ、9時まで使っていいって言ってたから」
「あんまり根詰めないほうがいいよ?じゃお先に〜」
「お疲れ」
 飯田を見送り、安倍は額や首筋に浮いた汗をタオルで拭った。

 確かに、皆余裕なんてなかった。
 それでも、皆それなりに考えて体にも心にも負担にならないように上手く折り合いを
つけていた。
「…もう一回…」
 新曲の振り付け。
 激しいダンスではないが、その分ミスが目立つ。
 センターを勤める自分にミスは許されない。
 そのプレッシャーが安倍の感覚を鈍らせてしまっていたのかもしれない。
43 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時07分08秒
 一位を獲った後の次の曲は二位だった。
 これ以上落ちるわけにはいかない。

 レッスン室に床を踏み鳴らす音と激しい息遣いだけが響く。
「…あっ!」
 床に落ちた自分の汗に足を獲られて滑ってしまった。
 なんとか体制を建て直し、転倒は免れたが左の足首を捻ってしまった。
「…なんて、ドジ」
 ぺたんと床に座り込んで、安倍は足首を押さえて蹲る。

(なんでなっちばっかり…)
 この頃の安倍は余裕なんて全然なくていつも一杯一杯だった。
 始めの頃は皆で上を目指しているという一体感があったけど、今はすべてが自分に
圧し掛かってきているみたいだ。
 福田とのツートップがなくなった今、安倍は自分自身との戦いを始めなければなら
なかった。

 昔から融通の利かない性格だったと思う。
 頑固で負けずギライで。
 事務所が自分を押して動いてくれるのは嬉しかった。
 けれど、それがあまりにも露骨に出すぎて世間の認識は『モー娘。イコール安倍』
の図式になってしまいつつあった。
44 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時16分35秒
(福ちゃん…帰ってきてよ…)
 福田の事を考えると自然と涙が出てきた。
 足首も痛いし、胸も痛いし、どうにかなりそうだった。
(なっち、福ちゃんいないと駄目だよ)


「あれ…?安倍さん?」


 いつの間にか、レッスン室の扉が開いていて、小柄な安倍よりももっと小柄な少女
が立っていた。
「…まりっぺ」
 慌てて目元を掌で拭う。
 涙だか汗だか分からない水滴がたくさん付いた。
「まだ練習してたんだ」
「うん…まりっぺは?」
「ヤグチは忘れ物しちゃって…あ、あったあった」
 矢口はレッスン室の隅にあるロッカーから財布を取り出し、へへへ、と照れくさそうに
笑った。
「圭ちゃんとご飯食べてて…いざ会計しようと思ったら財布なくてあせっちゃった」
「財布なしでご飯は食べらんないねえ」
 つられたように安倍も自然に笑った。
45 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時24分41秒
 矢口と福田は全然違う。
 でも安倍は、矢口といると何故だか安心できた。
「でも安倍さんさすが」
「え?」
「こんな時間まで練習なんて…」
「や、…」
(さすが?なにがさすがなんだろう)
 さすがセンター?

「どーいう…イタ…っ」
 思わず立ち上がりかけて、痛めた足を思い出した。
「なに、怪我したの?」
「…ちょっと捻っただけ」
「見せて!」
「な、いいよ、大丈夫だから…」
「駄目だよ!早く」
 譲らない矢口に、安倍は小さくため息をついて靴下を脱いだ。
「少し腫れてるよ…ちょっと待ってて」
 矢口は救急箱を持ってくると、勝手に安倍の足の治療を始めた。
「明日ちゃんと病院行って診てもらって?」
「そんな…大げさだよ」
46 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時31分51秒
「大げさじゃなって!ひびとか入ってたり…神経痛めてたりしたらどうするの?もう
踊れなくなっちゃうんだよ!」

(踊れなく…)

「分かった?」
「…分かった…でも」
「何?」
「…皆には内緒にして」
 余計な心配を掛けたくない。
 いや、余計な心配されたくないというほうが正しい気がする。
 皆にアレコレ言われるのは正直面倒くさい。

「なんで?」
「…心配させるから」
「……」
「お願い」
 矢口は暫く俯く安倍をじっと見ていたが、やがて救急箱を持って立ち上がった。
「分かったよ。誰にも言わない。でも病院はちゃんと行ってね?」
「うん。ありがとう」
 救急箱を元のところに戻して、矢口は安倍にもう一度病院に行けと言ってレッスン室を
出て行った。



47 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時50分03秒



 突然枕もとの携帯が鳴り出して、安倍はハッと現実に引き戻された。
「…もしもし」
 慌てて携帯を獲り出てみると、聞き覚えのある声が聞こえた。

『もしもし〜?ごとーだけど』
「ごっちん?どうしたの、電話なんて」
 後藤が電話を掛けて来るのはとても珍しい。
 いつもはたいていの話をメールで済ませてしまうのに。
『ん〜?なんかねえ、なっちの声が聴きたくなったの』
「え〜?ナニソレ」
 後藤の声の後ろに街の喧騒らしいざわざわした音が聞こえる。
「ごっちん、外?」
『うん、渋谷』
(渋谷かあ。随分行ってないなあ)
『なっちは〜?お家?』
「うん。ごろごろしてた」
『ええ?折角いい天気なのにもったいなぁい!』
「ねえ?」
 クスクス笑いながら、安倍は再びカーテンの隙間から空を見た。
 空はさっきと変わらずに蒼いままだった。
『なっちさ、出ておいでよ』
「え?今から?」
『今から。家ン中ばっかりいたらモヤシになっちゃうよ』
 確かに、と安倍はよっこらしょと体を起こした。
 家にいてもどうしようもない事ばっかり考えてしまう。


48 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)13時56分01秒
「そうだね。久しぶりに渋谷行きたいかも」
 それに、安倍は後藤といるのは楽だった。
 前に後藤にそんな話をしたら、後藤はあのふにゃっとした笑顔になって、ごとーも
そう、と言った。
 ごとーもなっちといるの安心するの。きっと波長が合うんだよ。
 なんて難しいことを続けて。

『ほんと?じゃあ駅付いたら電話して?ごとー、時間潰してる』
「うん。したっけあとでね」

 携帯を切って、ベッドから降りる。
 カーテンを全開にして窓を開けると気持ちのいい風が入ってきて安倍の前髪を揺ら
した。
(今日くらい…いやなこと忘れてもいいよね)


 ううんと伸びをして出かける用意を始めた。

49 名前:jinro 投稿日:2003年08月17日(日)14時06分55秒
>37 つみ様
 ( ´ Д `)<んあ、やっとごとー登場だよ。
 (〜^◇^)ノ<声だけだけどね!
 ( ´ Д `)<…

 次からほんとに出ます。ごっちん。

>38 名無しさん様
 (○^〜^)<見かけは白いけど中身は黒いんだYO!
 (●´ー`)<…よっすぃー…

 自分、なちよしって痛めがしっくり来るんですよねえ。

>39 名無し小説屋さん様
 (○;^〜^)<エロエロ?
 (●´ー`)ノ<エロエロだべ。
 (〜^◇^)ノ<そうそう!キャハハ!

 なっち…よしこになにされるのかな〜?作者も考え中〜(ヲイ


>レスありがとうです。
50 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月17日(日)14時09分02秒


>えーと、あいかわらず少ない更新で申し訳。
 あまりに少ないので、今日の夜か明日、また更新したいです。
 
 あ、風板のほうも同じく、今日の夜か明日…。



51 名前:jinro 投稿日:2003年08月17日(日)14時28分48秒
>しっかし…改めて読み直すと誤字脱字とか題名間違いとか多いなあ…。
 
 (●´ー`)ノ<まったくだべ。

>…うるさいっ!
 気をつけます。
52 名前:つみ 投稿日:2003年08月17日(日)15時37分26秒
ごっちん参加してきましたね〜^^

四角関係楽しみにしてます!
53 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時12分36秒


「なっちぃ!」
「お待たせ、ごっちん」
 後藤はラフはキャミソールにジーンズといった出で立ちだった。
 すらりとしてかっこいいな、と安倍は思わず見惚れてしまう。
「なっちご飯食べた?」
「まだまだ〜。だってごっちんから電話あるまで寝てたんだよ?」
「あはっ、そういえばそうだね」
 
 美味しいとこ知ってると言う後藤に案内されて入ったのは小さなパスタ専門店だった。
「ここ美味しいの。前にやぐっつぁんと来た」
「ヤグチと?」
「うん。結構前」
 オーダーを済ませて、後藤は水を飲む。
 矢口の名前が出て、安倍は自分が動揺しているのを感じた。
 落ち着くために水のグラスを取るが、手が震えているのか不自然に中身が揺れてしまい
慌ててテーブルに戻した。
(ごっちんに変に思われちゃう)
「そういえばさ、よしことやぐっつぁん、付き合い始めたんだって?」
 どきっとした。
 掌がじんわり汗ばんでくる。
54 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時19分27秒
「うん、知ってる」
「安倍さんが橋渡ししてくれたって、よしこ喜んでたよ」
「…なっちはなんもしてないっしょ」
 声が震えた。
 昨日、吉澤に抱きすくめられた事を思い出し、安倍の頬が赤くなる。
「…なっちさ…」
「ん?」
 じっと安倍を見つめていた後藤が不意に口を開いた。
「や、なんでもない」
「なーにー気になるよー」
 言いかけてやめられるのは気持ちが悪い。
 安倍は続きを促しながら、足で向かいにいる後藤の靴を軽く蹴った。
「なーんでもないってえ」
「んー?まあいーけど」

 それきり吉澤と矢口の話は途切れてしまった。
 後は仕事の話や家族の話をして穏やかに食事をした。
55 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時25分19秒
 それからふたりは街に出てショッピングをしたりプリクラを撮ったりして遊んだ。
 たまに「モー娘。の安倍さんと後藤さんですよね?」とか声をかけられたりした
けど、その度に「ちがいまーす」と言って走って逃げた。

「ねえねえ、さっきの、面白かったね」
「さっきの?」
「ほら、ごとーたちナンパして来た人たち。最初うちらのこと気づいてなくて」
「あーあー」
 撮ったプリクラを見てたら後ろから声を掛けられて。
 同時に振り返ったらその男の子たちはびっくりして口をパクパクさせていた。
「金魚みたいだったよね」
「ねー!」
 思い出して大笑いする。
 やっぱり後藤といるのは楽だと思う。
 安心できる。
 これが後藤のいう、波長が合うということなのだろう。
56 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時31分04秒
「ありゃ、もうこんな時間だぁ…。ごっちん夕ご飯どうする?」
 携帯で時間をチェックしたら、もう7時近い時間だった。
「うーん」
 後藤は暫く考えてから、にっと笑って安倍を見た。
「今日さ、なっちン家泊まっていい?」
「なっちの家?」
「うん。夜はお外歩くの危険だし…久しぶりになっちのご飯食べたい」
 言われてみれば、以前ほど後藤は安倍の家に来なくなった気がする。
 それに、ひとりでいてもどうせ嫌な事ばかり思い出してしまう。
「いいよ。じゃあ、お買い物して帰ろ?」
「うん!」


57 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時38分40秒


 二人でご飯を作って、二人でそれを食べた。
 それから交代でお風呂に入って、今はなんとなくリビングでテレビを見てぼうっと
していた。
「…なっち」
 雑誌を捲っていた後藤がいきなり口を開いた。
 なんとなくテレビを見ていた安倍は顔だけそちらに向けた。
「やぐっつぁん…いいの?」
「なん、急に」
 思いもかけない事を言った後藤に安倍は動揺を隠せない。
「てかさ、なっち、やぐっつぁん…好きだったよね?」
「……別に」
(なんでごっちんが)
「隠さなくてもいーよ。なっち見てれば分かるし」
「…」
 返す言葉が見つからなかった。
 後藤は捲っていた雑誌をラックに戻すと安倍の方へ体ごと向き直って。
「でも…多分気づいたのごとーだけだよ」
「…え?」
 後藤の言葉の意味が分からなくて、安倍は間抜けな声を上げてしまう。
58 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時45分22秒
「ごとーは、ずっとなっちを見てたから」
 小さな声で、それでも後藤は真っ直ぐに安倍を見つめたまま言葉を続ける。
「ね、なっち。ごとーじゃ駄目?」
「なに…言って」
「ごとー、なっちが好き。ずっと好きだった」
「じょ、冗談はやめるべさ」
 冗談なんかじゃないのは分かっている。
 言葉よりも何よりも、強い視線がそれを証明していた。
 安倍は慌ててその視線から逃れるように無理矢理視線を逸らした。

「冗談なんかじゃないよ」
 伸びてきた後藤の手が安倍の腕を捕らえる。
 そのまま強い力で引かれ、安倍はバランスを崩して後藤の胸に倒れこんだ。

「…ずっと…こうしたかった」
「…ごっちん、離して…」
「いやだ」
 背中に回った後藤の腕が更にきつく安倍を抱きしめる。
 吉澤のように強引ではないけれど、抗えない強さがその腕にはあった。
59 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時52分05秒
「なっち、ごとーが守るから。なっちの為ならなんでもするから」
 後藤はうわ言の様に言うと、そっと安倍の体を離して正面から見つめた。

「ごとーのものになって」

 同じ事を吉澤にも言われた。
『ウチのものになってくださいよ』
 でもこれは違う。
 後藤は真っ直ぐに安倍を見つめて、まるで懇願するみたいに自分のものになってくれと
言った。
「なっち…好きだよ」
「ごっちん」
 この腕の中はきっと居心地がいいのだろう。
 後藤は優しく安倍を包んでくれるに違いなかった。
 
 後藤の腕に少しだけ力が籠もり、そのまま安倍はその場に押し倒されていた。
 目の前の、まるで祈る様な後藤の顔。
(こんなごっちん、初めて見る)
60 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)10時59分24秒
 そっと手首を押さえつけられ、頬と鼻の頭にキスをされた。
「駄目だよ」
「なんで?」
「…なんでも…」
(なっちはごっちんに愛される資格なんてないんだべさ)
 もしも自分が後藤と付き合い出したら、吉澤がなにをするか分からない。
 
『ぼろぼろにしますよ』

 怯えた顔が好きだと笑った顔を思い出して、安倍は胸がムカムカした。
 吐き気がする。
「なっち…」
「ごめんね、ごっちん」
 やんわりと後藤の腕を解いて起き上がる。
 少し乱れたパジャマの襟元を直しながら、安倍は後藤に謝る。
「なん、謝んないでよ…なんか、ごとー惨めじゃん」
「…ごめん」
「ごとー、諦めないから」
「え?」
 
61 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月20日(水)11時02分39秒
 驚いて顔を上げると、後藤は子供みたいににかっと笑って、安倍の頭をぽんぽんと
叩いた。

「絶対、やぐっつぁんよりごとーの事、好きにならせてみせるから」
「…ごっちん」
「覚悟しといてねっ!」
 後藤の純粋さにいつも救われる。
 
 安倍は困ったように笑う事しか出来なかった。



62 名前:jinro 投稿日:2003年08月20日(水)11時04分27秒
>52 つみ様
 いつも読んでくれてありがとうです!
 予定守れなくてごめんなさい〜。


63 名前:jinro 投稿日:2003年08月20日(水)11時05分59秒


>ひとつだけ隠し〜。
64 名前:つみ 投稿日:2003年08月20日(水)14時43分10秒
ごっつあん参戦っすね〜^^

泥沼の未来しか予想できない・・・
65 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)15時07分47秒
おっ、これからどうなるんでしょう?
なっちのことが大好きな後藤さん、この設定好きです。
66 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003年08月21日(木)09時35分11秒
んあー!なっちったらモテモテ!
この先どんな風に展開してくのでしょうか...ワクワクw
妄想広がりっぱなしですw
次回更新が待ち遠しい...
67 名前:LOVE 投稿日:2003年08月21日(木)15時33分17秒
>「絶対、やぐっつぁんよりごとーの事、好きにならせてみせるから」
>「覚悟しといてねっ!」

ご、ごっち〜ん!!あんた可愛すぎっす!!
ってか、今後の展開がかなり気になるっす・・・
次回更新に期待!!!
68 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)11時14分35秒


「何もしないから…一緒に寝ていい?」
 もじもじと俯いて後藤が言った。
 その姿がまるで小さな子供みたいで、安倍は思わず頬が緩んだ。
「なっちは最初からそのつもりだったよ」

 今まで一緒に眠った事のある人は皆口を揃えて「すごい寝相」と言われた安倍は最近
ベッドをシングルからセミダブルに変えた。
「スゴイ、おっきいベッド」
「はは…なっち寝相悪いから…」
 楽しそうにベッドの端から端まで転がる後藤。
 普段は大人びて見えるけど、やっぱりまだまだ子供だ。
「なっちぃ!はやくはやく」
「ハイハイ…よっこいしょ」
「きゃはは!よっこいしょだって。なっちオバチャンみたい〜」
(オバチャン…失礼な)
 さすがに少しむっとしたが、楽しそうな後藤の様子に、まいっかと思う。
69 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)11時22分20秒
「なっち、手ぇ繋いでもいい?」
「なあに〜。ごっちんは甘えたさんだねぇ」
 笑いながらら安倍は後藤の額に軽くデコピンをする。
 後藤はむうっと不貞腐れた顔をしてデコピンされた額を擦った。
「…なっちだからだもん」
「え?」
「なっちだけにだもん。ごとーが甘えたくなるのは!」
 いつになく早口で言うと後藤はやや強引に安倍の手を握った。
 そのまま、おやすみっとぶっきらぼうに言うと、布団に顔を埋めてしまった。
(…なんだべぇ、ごっちんは、もぉ)
 自然と赤くなった頬を握られていない方の手で擦る。
 
 大人の顔で告白してきたと思ったら今度は子供の顔で甘えられる。
(今日は振り回されてばっかりだね)
 小さく息を吐いて、ベッドサイドのスタンドを消した。



70 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)11時31分35秒
「なんでウチらに黙ってたん!?」
 目の前の厳しい顔。
 中澤は腕を組んでソファで項垂れる安倍を問い詰めた。
 新曲の始めてのスタジオ収録。
 自主トレで足首を痛めていた安倍は、ターンでものの見事に転倒してしまった。
「…これが生じゃなかったから良かったものの…聞いてるんか?」
 俯いたままだった安倍に苛立った中澤が無理やり安倍の顎を掴んで顔をあげさ
せると。
「…っ」
 驚く程強い視線とぶつかり、思わず息を呑む。

「次はちゃんとやるよ。それでいーでしょ」
 掴まれた顎を手で振り払い、安倍は吐き捨てるように言った。
 正直、面倒くさかった。
「なんや、その言い方は!皆心配してんねんよ!?」
「…り…」
「え?なん?」
71 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)11時40分16秒
「なんでもない。もういい?帰りたいんだけど」
(嘘ばっかり。心配なんかしてないくせに)
「…この…っ」
 カッなった中澤の手が振り上げられた。
 少し驚いたけど、安倍はそれを避けなかった。
 他のメンバーが止める間もなく、中澤の平手が安倍の頬を打った。

「なんや、さっきからその態度は!皆に迷惑かけてんのがわからんの!?」
「…た〜」
 どうやら口の中を切ったらしい。
 舌に感じる血の味に顔を歪める。
「聞いてんの?アンタ最近おかしいで?」
「…別になっちはおかしくない。おかしいのは皆の方じゃん」
 肩に触れようとする中澤の手を振り解いて、安倍は楽屋にいるメンバー全員をゆっくり
見渡した。

「…少し位なっちが迷惑かけたってどってことないでしょ?だってなっち、皆の倍以上
頑張ってるもん」
72 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)11時49分22秒
「どーいう意味や?皆だって物凄い頑張ってるで?」
「…頑張ってる?あれで?」
 再び中澤の手が振りあがった。
「裕ちゃん!だめだよ!」
 さすがにそれには飯田が止めに入る。
 同じところを叩かれたら堪らないと思っていた安倍は、そっと息をつく。
「でもなっち、今のは聞き捨てならないよ」
 中澤の前に立った飯田がじっと自分を見下ろしてくる。
「皆頑張ってるし、なっちも頑張ってる。だからここまでやってこれたんだよね?」
「違う…」
「え?」
 安倍は強く手を握り締めると、再びメンバーを見渡した。

「皆頑張った?最初は確かにそうだったかもしれない。でも今は違うよね?…なっち
ばっかりいろいろやらされてる。歌のパートだって番組のトークだって…。なんで?
なんでなっちなの?歌だって彩っぺとか圭ちゃんとか上手いのに、トークだって
裕ちゃんがリーダーなのに!」
73 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)11時57分28秒
(だめ…これ以上言ったら駄目だ…)
 頭の隅で警笛がなる。
 でも一度溢れ出した感情は止めることが出来なかった。

「それは…なっちが可愛いから」
 誰が言ったのか、興奮していた安倍には分からなかったけれど。
 その一言が、今まで安倍を支えてきたもの全てを壊してしまった。
(可愛いから?…ただそれだけ?)

 自分を事務所が押してくれたのは、これから期待できるからとかじゃなくて。
 『モーニング娘。』をアイドルグループとして売り出す為。
「…っ、可愛いから?それだけ?歌は?ダンスは?」
「なっち、落ち着いて…」
 自分は歌手になるために頑張ってきたのだ。
 アイドルになるためじゃない。
 なのに。

「なっちは…なっちは人形じゃない!!!」

 自分を支えていたものが、音を立てて崩れてしまった。


74 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)12時08分03秒


 いやな夢を見て目が覚めた。
 暗闇の中、数回瞬きをして漸くここがいつどこなのか理解する。
(いまさら…)
 昼間、昔のこと思い出してたからかな。
 安倍はそっと隣の後藤を起こさないように起き上がった。
 後藤の握られていたままだった手を外してベッドを降りた。

 キッチンに行って冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してそのまま飲む。
 いやな気分だった。
 あの頃の自分は何もかもが敵に見えていた。
(まだ…16だったもんねぇ)
 冷蔵庫を背に床に座り、思い出して苦笑いする。
(若い若い)
 一人でくすくすと暫く笑って、もう一口水を飲んで寝室に戻った。

 何時だろうと思いベッドの脇においてあった携帯を取ると、メールの受信を知らせ
る表示。
(メール…誰だろ)
 普段、安倍はメール着信はサイレントにしている。
 よっぱど緊急の用事なら直接電話をかけてくるだろう、と言う考えからなのだが、
どうやらそれは不評のようで、よくメンバーからメールの返事が遅いと怒られる。
75 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)12時22分26秒
『もう寝ちゃいましたか?起きてたら電話ください』
(…よっすぃー…)
 着信時間は今から一時間ほど前。
 それでも充分深夜と呼べる時間の一方的なメール。
 普段だったらそのまま無視をしてしまうが、相手が吉澤ならそういうわけには
いかない。
 寝ていて気づかなかったと言っても…不安だった。

 安倍は携帯を持ってリビングのソファに座った。
 電気は点けずにメモリから番号を探してダイヤルする。
『…安倍さん?』
「…うん…メール、見たから」
『良かった。寝てたら悪いかな、と思ったんですけど』
「寝てたけど…喉渇いて目が覚めて。見たらメール着てたから」
『ウチが起こしちゃったわけじゃないんですよね?』
「うん。違うよ」
『で、早速なんですけど…安倍さん今から出てきて貰えませんか?』
「今から?」
 びっくりした。
「なに…今何時だと思ってんのさ」
『えーと…午前…二時、少し回ったとこですね』
「……」

76 名前:記憶と現実の狭間に 投稿日:2003年08月24日(日)12時25分10秒
 能天気な吉澤の声に、さすがに少し不愉快になる。
『安倍さん家に一番近いファミレスで待ってますよ』
「ちょ、困る…」
 電話は一方的に切られてしまっていた。
(…よっすぃー…どーいうつもりなんだろ…)

 安倍は暫く携帯を見つめたまま、そこから動くことが出来なかった。


77 名前:jinro 投稿日:2003年08月24日(日)12時35分15秒
>64 つみ様
 ( ´ Д `)<んあ〜、登場〜。
 (〜^◇^)<おいらは?
 (●´ー`)<暫くでないらしいよ。
 (〜^◇^)<…

>65 名無しさん様
 オイラがごまなち大好きなんで(w
 (●´ー`)人(´ Д ` )

>66 名無し小説屋さん様
 モテモテ…?果たしてそうかな?
 (○^〜^)ノ<ウチ、安倍さんスキって言ってないっすよ!

>67 LOVE様
 ( ´ Д `)<んあ、ごとー可愛い?
 可愛いままでいってくれるといいんですが…。
 この話の人たちはみんな一癖あるんで(w

>レスありがとうです。
78 名前:jinro 投稿日:2003年08月24日(日)12時37分17秒


>ガーン!書いてたらハロモニ見逃した…。

>(●´ー`)<馬鹿じゃん
 
>うるさいっ!チクショウ。

79 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時04分15秒


 後藤に気づかれないように着替えて部屋を出る。
 一度眠ってしまえば中々起きない後藤は、どうやら安倍が外出したのには気づかな
かったようだ。
 マンションのロビーを出て、雨が降っていることに漸く気づいたけれど、傘を取り
に戻るのもはばかれた。
 そう何度も出入りをしたら流石の後藤も起きてしまうかもしれない。
(…ったく)
 心の中でこっそり悪態を付いて安倍は吉澤が待つファミレスに向かった。


「すみませんね、こんな時間に呼び出して」
 安倍が向かいに座ると、吉澤は悪びれた様子もなく言った。
「…いいけど」
「本当は明日でも良かったんですけど。なんか急に会いたくなって」
 良く言う、と思いながら安倍はメニューを開く。
 けれど、さっきまで眠っていた体は特に食べ物を必要としていない。
 それにこんな時間に食べたらそのまま体重になって帰ってきてしまう。
80 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時14分50秒
 ウエイトレスに紅茶を注文して、出されたおしぼりで服や髪に付いた雨の雫を拭う。

「なにか…話があるんじゃないの?」
 おしぼりを丁寧に畳んでテーブルに戻す。
 吉澤の顔は見ずに安倍は問うた。
「ん、話っていうか…安倍さんにプレゼントがあるんですよ」
「プレゼント?」
 意外な言葉に安倍の顔が不機嫌そうに曇った。
(プレゼント…そんなもの明日でいいっしょや)
 そんな安倍の心中を読んだのか、吉澤は困ったように髪に手をやる。
「今日、それ買いに行って…見てたらなんか、どーしても安倍さんにすぐ渡したく
なっちゃって」
「……」
 照れたようにはにかむ吉澤に、安倍は何処か違和感を感じていた。
 真夜中に呼び出すなどと非常識な事をしたかと思えば、今は子供のように照れて
笑っている。
(なんだろう…)
81 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時20分30秒
 この違和感は何なのか。
 思い出せそうで思い出せない。
 喉まで出掛かっているのに…そこまで考えた時、目の前にウエイトレスの手が
差し出されて驚いた。
 お待たせしました、と紅茶のポットとカップを置いて去るウエイトレスを見送り、
安倍は今日始めて正面から吉澤を見つめた。

「これ、飲んだら帰るからさ…」
「分かってますよ」
 にこにこと笑顔で吉澤は安倍の一挙一動を見つめている。
 落ち着かなかった。
 仕事柄、見られるのは慣れている筈なのに、安倍はどうにも居心地の悪さを感じて
いた。



82 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時31分16秒
「送りますよ」
 傘を広げながら当然のように言う吉澤を安倍は近いから、と断る。
「でも雨降ってるし。これ以上濡れたら風邪引きますよ?それに…プレゼントも渡して
ないし。ね?」
 もっともらしい事を言って、吉澤は安倍の手をぎゅっと握った。

 握られた手を振りほどく事も出来ずに、吉澤と並んで歩く。
 背の高い吉澤と低い自分。
 傍から見たらどんな風に見えるんだろう。
「ウチら、周りからどんな風に見えるんすかね?」
「…あ、うん…どうかな…」
 まるきり同じ事を考えていたらしい。
 急なことで安倍はうまく答える事が出来なかった。
「安倍さん、ちょっと寄り道していいですか?」
「え?ちょ、…よっすぃー?」
 最初から返事など聞くつもりはなかったのか、吉澤は強引に安倍の手を引いて
薄暗いビルの非常階段に引きずり込んだ。

「やだ…っ、よっすぃー!」
 両手を捕まれてざらざらした壁に押し付けられる。
「大声出すと誰か来ますよ?」
「……ッ」
83 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時38分21秒
「大丈夫…こんなとこで変なことしませんから」
 怯える安倍に、吉澤は面白そうに肩を揺らす。
(そんなの…信用できるわけないべ!)
 ご飯食べながら、矢口がいるのにこっそり変な事したくせに。

「そんな顔しないでくださいよ。さっきも言ったでしょ?プレゼントあるって」
 なんとか逃げようと躍起になっている安倍の手を吉澤は簡単に片手で纏め上げる
と、更に体を密着させて。
「動かないでくださいね。動くと痛いですよ」
 耳元に囁いた。
84 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時48分04秒
「…痛ッ、あ…!」 
 なにをされるんだろう、そう思う間もなく、安倍の左の耳たぶに刺すような痛み
が走った。

「何、よっすぃー、なにしたの?」
「印」
 一言呟いた吉澤に、痛みが走った耳たぶをぺろりと舐められる。
 疼くような刺激に思わず声が零れそうになる。
「安倍さんがウチのものだっていう印」
 そっと押さえ込んでいた体を離すと、吉澤はポケットから鏡を取り出し、安倍に
手渡した。
 安倍は渡された鏡と楽しそうな吉澤の顔を交互に見て、それから鏡に痛みと疼きを
感じた場所を映してみる。

「…あ…」
 安倍の左の耳に光るそれ。
 元からあったホールよりやや上に銀色の丸いピアスがつけられていた。
「これ見たらイヤでも思い出すでしょ?ウチのこと」
85 名前:冷たく熱い銀の束縛 投稿日:2003年08月26日(火)12時58分11秒
 愕然とする安倍の手から鏡を受け取りながら、吉澤はあの子供みたいな笑顔で。

「ウチ、安倍さんに穴開けたかったんですよ」

(信じられない…)
 まだ微かに痛む耳を押さえて、安倍はへたへたとその場に座り込む。
 そんな安倍をしばらく笑顔で見つめていた吉澤は、そっとしゃがみ込んで安倍に
目の高さを合わせる。
「ウチ、帰りますね。風邪引かないように傘は置いていきますから」
 座り込んだままの安倍の前に傘を置いて、着ていたパーカーのフードを被る。
「あ、そうだ」
 一歩踏み出してから、吉澤は思い出したように立ち止まり振り返る。

「ごっちんによろしく」
「…どーいう…っ!?」
 吉澤の言葉に、安倍は慌てて立ち上がったけれど、吉澤はもう雨の中を駆け出して
しまっていた。
 安倍の足では吉澤には追いつけない。

(どういう…こと…?)

 耳の痛みと吉澤の言葉で、頭が混乱している。
 安倍は再びその場にぺたんと座り込んだ。

86 名前:jinro 投稿日:2003年08月26日(火)12時58分56秒

>出来るときに更新更新。

87 名前:jinro 投稿日:2003年08月26日(火)12時59分58秒


>(●´ー`)ノ<隠しだべ。


88 名前:jinro 投稿日:2003年08月26日(火)13時00分43秒


>(○^〜^)<もいっかい。


89 名前:つみ 投稿日:2003年08月26日(火)13時02分56秒
いろんな意味で「痛い」ね・・・
90 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月26日(火)21時30分01秒
というかよしざー怖すぎ!
91 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月04日(木)10時16分44秒


 結局、次のシングルもその次のシングルも巻き返しは出来なかった。
 あの事件依頼、他のメンバーと孤立してしまった安倍は、精神的に限界に達して
いた。
 特に6枚目のシングル、安倍を前面に打ち出したこのシングルでの売り上げが今まで
で一番芳しくなかったのが特に安倍を苦しめていた。

「…みんな、ごめん」
 そう謝った安倍は、この時芸能界引退を決めていた。

「…なっち」
 スタジオの屋上でフェンスに肘を付いてぼんやりする安倍に、矢口は後ろから
そっと声をかけた。
92 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月04日(木)10時24分58秒
「…まりっぺ」
「どーしたの?下でみんな探してるよー?」
 安倍の隣に、フェンスを背に寄りかかりながら矢口は明るく言う。
「……」
「なっち、なんかいらん事考えてるでしょ?」
 不意に真面目な顔になった矢口は、まるで跳ねるみたいにフェンスを離れ、安倍の肩を
掴んで正面を向かせる。
 急に真髄な瞳に見つめられ、安倍は思わず視線を落とした。
「…別に」
「うそ」
「…まりっぺには…」
「かんけーないじゃん?」
 続けるはずだった言葉を言い当てられ、カチンと来て顔を上げる。
 安倍のその強い視線にも矢口は怯むことなく。
「最近のなっちの口癖だよね。関係ないじゃん」
「……」
 むっとした顔のまま、安倍は乱暴に矢口の手を解くと、再びフェンスに肘を着いた。

「新しい子」
「…ああ、真希ちゃん?」
「…可愛いよね」
「まあね。てか大人っぽい」

93 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月04日(木)10時31分31秒
「ねえ?13って聞いてなっち、なまらびっくりしたよ」
「ヤグチも」
 向かい合ってケタケタ笑う。
 お互い子供っぽいもんねぇ、なんて肩を叩き合ったりして。
(メンバーとこんな風に笑うの、久しぶりだな)
 あの子よりなっちのが4つも年上なんてありえないよ、とまだ笑う矢口を見て、
安倍は久しぶりの感覚に目を細める。
(まりっぺになら…話してもいいかな)

「まりっぺ」
「んん?」
「なっちね…室蘭、帰ろうと思ってるんだ」


「…ち、なっち!」
「…んぅ…?」
 呼ばれて目が覚めた。
 重い瞼を無理矢理上げて見ると、目の前に良く見知った顔。
「ごっちん…おはよぅ」
「おはようじゃないよぉ。寝起きの悪さは直んないねえ」
94 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月04日(木)10時39分45秒
 一瞬、何で後藤がここにいるのか分からなかった。
(そっか…昨日ごっちんと遊んで)
 家来てそのまま泊めたんだっけ。
 寝起きの働かない頭でそこまで考えて。

「むー…今何時ぃ?」
「もーすぐ8時だよ。10時にスタジオ入りだから早く起きなきゃ」
「そーだっけぇ?」
 ベッドの上で布団に包まったまま、寝返りを打つ。
「……っ」
 左耳が枕に擦れて、鈍い痛みが走った。
 反射的に安倍は起き上がり、自分の左耳に触れてみる。
 そこには、まだ触りなれない新しいピアスの感触。

『ウチ、安倍さんに穴開けたかったんですよ』

 あれはどういう意味なのだろう。
 ただの独占欲?…それにしては度が過ぎてる気がする。
 それに。

『ごっちんによろしく』

 別れ際の吉澤のこの台詞はなんだろう?
95 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月04日(木)10時47分35秒
 昨日、安倍に会う前に後藤が吉澤に連絡したのだろうか。
『今日なっちと会うんだよ』みたいな感じで。
 これは有り得る。
 吉澤と後藤は年が同じ事もあってとても仲が良いのは安倍も知っている。
 けれど。
 その後はどうだろう。
 後藤と合流してからほとんど一緒に行動してきた。
 わざわざ、後藤が吉澤に安倍の部屋に泊まると連絡したのだろうか。
 …有り得なくはない。
 有り得なくはないけど…なんの為に?
「なっち、朝ごはん出来てるよ?」
 中途半端は格好で起き上がったままだった安倍は、声を掛けられてやっと我に
かえった。
「あ、ありがと…」
「冷蔵庫とか、勝手に開けちゃった」
「うん…」
 屈託のない笑顔。
 普段は大人っぽく見える後藤がメンバーにだけ見せるこの笑顔が、安倍は好き
だった。
96 名前:jinro 投稿日:2003年09月04日(木)10時48分42秒

>急な用事が入って中断します。
 また午後に更新します。

97 名前:jinro 投稿日:2003年09月04日(木)17時03分14秒

>ごめんなさい。
 週末には必ず…!

>(●´ー`)<ごめんなさいだべ。

98 名前:名無し読者 投稿日:2003年09月05日(金)21時20分22秒
楽しみにしてまーす!
99 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)14時55分55秒
 

 ふたりで食事をして仕事へ向かう。
 食事の間、他愛のない会話をしながらも、後藤の視線は何度か安倍の左耳に
注がれたが、後藤はあえてそれを尋ねてくる事はなかった。

「おはよー」
「うぃーっす」
「おっはー」
 いつものように騒がしい楽屋。
 安倍と後藤は適当にメンバーに挨拶をして、それぞれ後藤は吉澤の隣に、安倍は
保田の隣に腰を降ろした。
「圭ちゃん、ヤグチは?」
「そういえば今日は遅いわね」
 安倍の言葉に保田は読んでいたハードカバーの本から顔をあげて、楽屋を見渡して
言った。
100 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時02分39秒
 矢口は大抵、集合時間よりかなり早目に来るのに。
(どーしたんだろ…?)

 心配になって楽屋を見渡すと、吉澤と目が合った。
 安倍は慌てて視線を反らし、俯く。
(もしかしたら、よっすぃーならヤグチのこと知ってるかも…)
 そう思ったが、吉澤に話しかけるのは躊躇われた。
 俯いていても分かる。
 今、吉澤はじっと自分を見つめている。

(…怖い)
 そう、安倍は吉澤に対して恐怖心を抱き始めていた。

「うっわー!ギリだよ、ギリ!!」
 俯いたままどれだけ時間が過ぎたのか分からないが、矢口の明るい声で安倍は
漸く顔をあげる事が出来た。
101 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時11分24秒
「珍しいじゃない、ヤグチがこんなギリギリなんて」
 読んでいた本を閉じて、保田が隣に座った矢口にでこピンをする。
「って!…寝坊したよ〜!起きて時計見てビックリだよ」
「それこそ珍しいんじゃない?寝坊なんて…誰かさんたちじゃあるまいし」
(誰かさんたちじゃあるまいし?…む)
「圭ちゃん!それって誰のこと言ってるのー!」
 保田の軽いイヤミに気づいた安倍が口を開く前に、後藤が椅子のに反対向きに座って
背もたれに顎を乗せた状態のまま膨れた声を上げた。
「そんなん言うまでもないでしょ?遅刻魔ツートップ」
 ケラケラ笑いながら保田が後藤と安倍を順番に指差した。
「ひどーい!」
「最近はあんまし遅刻しないべさ!」
「なっち、訛ってるよ〜」
 矢口の突っ込みに楽屋は大爆笑。
 入ったばかりの5期メンバーも笑っている。

 こういうのはいい、と安倍はそっと目を細めた。
102 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時18分52秒


「室蘭帰るって…帰ってどーすんの?」
 安倍の言葉に、矢口は驚いた様子を隠さなかった。
「んー。バイトでもして…大検でも受けようかな」
「そんな…だって夢だったんでしょ?歌手になるの!」
「うん…でもさ、なんかなっち、疲れちゃったよ」
 曖昧な笑みを浮かべて、安倍は矢口の視線から逃れるように空を見上げた。
 その空はなんだかとても蒼くて何故だか鼻の奥がつんとした。
「歌手になるのは夢だけど…もっとさ、こんな…競争するみたいじゃなくて、自然に
普通に歌っていたいんだよね」
 空を見上げたままじゃ涙が出そうなので、安倍は今度は正面から矢口を見つめた。
 矢口はなんだか泣きそうな顔をしていて、それを見ていたらまた涙が出そうに
なったから、俯いてしまった。
「なっちはさ、もうやなんだよ。オリコンがどうとか、売り上げがどうとか」
103 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時25分57秒
「なっち…」
「だから、室蘭帰って、バイトしたり勉強したりしながらさ、それでも歌ってどこ
でも歌えるじゃん?」
 逃げてるのは、自分で分かっていた。
 それでも、歌うのが辛くなる前に、最初に戻りたかったのだ。
 安倍は俯いていた顔をあげ、真っ直ぐに矢口を見た。
 今度は視線は反らさない。
 自分は本気なのだと分かってもらいたかった。

「…歌うの、キライになったんじゃないよね?」
 搾り出すような矢口の声に、つきんと胸が痛んだ。
「違うよ」
「まだまだ歌っていたいんだよね?」
「…歌っていたいよ」
 小さな子供に言い聞かせるみたいな言い方になってしまったのを後悔した。
 案の定、矢口の目から雫が落ちて足元のコンクリートを黒く変えた。
104 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時34分07秒
「…まりっぺ」
 俯いて泣く矢口はとても小さくて、安倍は思わずその肩に手を伸ばしかける。
「だったらさぁ!」
 その手が肩に届く前に、矢口は弾かれたように顔をあげて、そのまま安倍を
抱きしめた。
「だったら、歌ってよ!ヤグチの側でずっと歌っててよ!!」
 悲鳴のような声。
 抱きついてくる力強い腕。
「ヤグチはいやだ…なっちがいなくなるなんて絶対やだ…」
 全身を使って、体だけでなく心まで全部使ってぶつかってくる矢口に、安倍は
返す言葉がなかった。

「駄目だよ、まりっぺ…」
 震える腕をそっと小さな背中に回して力を込める。
 応えるように更に力を込めて抱きしめてくる腕に、縋ってしまいそうになる。
「なっち…もう無理なんだよ。人を感動させる歌を歌いたいなんて…ねぇ?」
 本当は歌えるだけで嬉しかったのに。
 いったいいつから自分は変わってしまったのだろう。
105 名前:記憶と現実の狭間にU 投稿日:2003年09月06日(土)15時46分35秒
 本当は1000人がCDを買ってくれるよりも、たったひとりが自分の歌を
聞いて感動してくれた方が嬉しかったのに。
「…ヤグチは…」
 安倍に回していた腕を解いて、矢口は。
「ヤグチは初めてなっちの歌聞いたとき、スゴイ感動したんだよ。心を込めて
歌うなっち見て…この子と一緒に歌えたらって…そう、思ったんだよ」

 もう一度、今度は優しく矢口の腕が安倍を優しく抱き寄せた。
 回された手に髪を撫でられる。
 自然に安倍は矢口の肩に顔を埋めていた。
「ヤグチの夢は、なっちと一緒に歌うことだから」
 矢口の声が体を通して直接心に響いてくる気がする。
 泣きたくなんてないのに、涙が出て困った。
「だからなっち」

(もうしばらく)

「ヤグチの為に…ヤグチと一緒にずっとここで、歌い続けてください」

(この腕に縋ってもいいかな…?)

 矢口の肩越しに見た都会のビル群と北海道に負けないくらい蒼い空を、安倍は
一生忘れないと思った。

106 名前:jinro 投稿日:2003年09月06日(土)15時56分30秒
>少なくてごめんなさい。
 しかも話進んでないし(爆

>89 つみ様
 (●´ー`)<なっちは案外痛いの平気っしょ!
 (〜;^◇^)<…M…?

>90 名無し募集中。。。様
 (○^〜^)<…。
 (●´ー`)<よっすぃー、こわいって。
 (○^〜^)<…。
 (●´ー`)<なっちも風板で言われたからおそろいだべ。

 (○^〜^)人(´ー`●)おそろい♪

>98 名無し読者様
 楽しみにしてくださったのに…少なくてごめんなさい。
 (●´ー`)ノ<ごめんなさいだべ。

>レスありがとうございます〜。
107 名前:jinro 投稿日:2003年09月06日(土)15時58分03秒

>これで過去話はとりあえずおしまいです。
 次から(○^〜^)大暴走…?


108 名前:jinro 投稿日:2003年09月06日(土)15時58分58秒

>( ´ Д `)<んあ〜、隠すよ。


109 名前:つみ 投稿日:2003年09月06日(土)21時11分51秒
ヤグチとなっち・・・
幸せになってほしいなぁ〜
110 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:11


「安倍さん。今日、安倍さん家行ってもいいすか?」

 帰り際、安倍は吉澤に声をかけられた。
 隣に座った吉澤は、安倍の方は見ずに言葉を続ける。
「いいすよね。夜、八時位に行きますから」
「ちょ、よっすぃー!?」
 安倍が答える間もなく、吉澤は楽屋に残っているメンバーに挨拶をして出て行って
しまった。

(なんだべ、もぉ)
 一方的な吉澤に安倍はため息をつく。
 また何かされるのだろうか。
(…やだなぁ…)
 しかし帰らないわけにはいかない。
 椅子に座って飯田と談笑している矢口を鏡越しに見る。
111 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:17
 するとタイミング良く矢口もこちらを見ていて、鏡越しに目が合った。

「なっちなっち〜」
 矢口はニコニコしながら安倍の隣に座った。
 まるで仔犬みたいだ、と安倍は思う。
「それ、いつ開けたの?」
 左耳を指差されて、安倍は反射的に顔が強張るのを感じた。
「あ、昨日…」
「オフだったもんね〜。でも急だよね?てか、なっちもうピアス開けないって
言ってなかったっけ」
「うん、…気分転換かな…」
 
『ウチ、安倍さんに穴開けたかったんですよ』

 吉澤に無理矢理開けられた。そんなこと言えない。
112 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:27
「なっちの耳に二つも穴があるって変な感じ」
「そうだね…なっちも自分で落ち着かない」
 なんだよソレ〜、と矢口がべしべしと肩を叩いて来る。
 矢口の笑顔を見るとほっとする。
 この笑顔があったから、今の自分があるのだ。

「ヤグチしゃん、打ち合わせはじまりますよ〜」
「あっちゃ、忘れてた。じゃあね、なっち」
「うん」
 矢口と辻が楽屋を出るのを見送ってから、安倍は漸く自分が最後の一人になって
いたことに気づく。
 急いで身支度を整えてスタジオを後にした。


113 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:33



 部屋に戻っても、落ち着かなかった。
 後一時間で吉澤が来る。
 
 昨日は無理矢理ピアスホールを開けさせられた。
 その前は矢口が一緒にいるのにこっそり足で悪戯をしてきた。
 …今度は何をされるのだろう。
 そんなことばかり考えて、何も手につかない。
 帰ってきた格好のまま着替えもしないで安倍はソファに座っていた。

(…どうしてよっすぃーは…)
 あんな事をするのだろう。
 前に吉澤は『勝手にスイッチをいれた』と言っていた。
 あの言葉はどういう意味なのか。
 それと昨夜の『ごっちんによろしく』この言葉も謎のままだ。
114 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:39
 分からない事ばかりだ。
 これではこっちから何も動けない。
(…よっすぃーに直接聞いても…無駄だろうし…)
 後、なにか知ってそうなのは。
(やっぱりごっちん…それと仲いいのは梨華ちゃん、かなぁ)
 吉澤と石川は同期だし、年が近いこともあって仲がいい。
 後藤と三人で良く遊びに行ったりしているらしい。

(明日…ちょっと話してみよう)
 うん、と安倍は頷いて立ち上がった。
 いつまでもこうしてても仕方ないし、と無理矢理自分自身に言い聞かせた。




115 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:47


「安倍さん家来るの始めてっすよね」
 出された紅茶を一口飲んで、吉澤は嬉しそうに笑った。
 こういう笑顔は年相応で、この前の吉澤と同一人物なのか思わず疑ってしまい
そうになる。
「安倍さん、ご飯食べました?」
「まだ、だけど」
「したらピザでも取りましょうよ。ウチ、お腹空いちゃいました」

 注文したピザが届くまで、吉澤は黙って紅茶を飲んで側に置いてあった雑誌を
ぱらぱらと捲っていた。
 それから暫くしてピザが届けられると、嬉しそうに先ほど自分が持ってきた
缶のチューハイを開けて安倍にも勧めてきた。
 お酒はあんまり飲めない、と安倍が断ると、少しだけ、と無理矢理缶を手に
握らせられてしまった。
116 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 11:52
「ね、よっすぃー」
「なんすか?」
 もぐもぐと口を動かしながら吉澤は顔を上げた。
 目が合いそうになって、安倍は慌てて俯く。

「…なんで、その、あんなことするの?」
 どう言ったらいいか分からなくてしどろもどろになってしまう。
「あんなことって?」
 きょとんとした声。
 とぼけてるのか本当に分からないのか、声だけでは判断できない。
 安倍は思い切って俯いていた顔を上げて正面から吉澤を見た。
「だから…ヤグチとご飯食べ行った時とか…コレとか…」
 言いながら左耳に触る。
 黙ってそれを見ていた吉澤は、暫くきょとんとした顔をしたままだったけれど。
117 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 12:01

「安倍さんの困った顔見るの、好きなんすよ」

 などと笑顔で答えた。

「それ、だけ?」
「ん〜…。そういうわけじゃないすけど」
 吉澤はかりかりと頭を掻いて手に持っていた缶をテーブルに置いた。
「そんなのどーでもいいじゃないですか」
「っ、どーでもいいって…!」
「てか、安倍さんにはかんけーない話ですから。大丈夫。矢口さんは絶対幸せに
しますよ。それだけでしょ、安倍さんが気になるのは」
 笑顔のまま隣に移動してきた吉澤に手を捕まれてしまう。

「そんなつまんない話より、もっと楽しいことしましょうよ」

 楽しいこと?聞き返す間もなくソファに押し倒される。
「…、何、す…!」
「安倍さんがして欲しいことしますよ」
「なに、わけわかんないよ」
 捕まれた手首はびくともしない。
 こんな時は自分の非力さに腹が立つ。
118 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 12:08
「言葉の通りですよ。安倍さん、どうして欲しいですか?」
(どうしてって…)
「手を離して」
「それはだめ。そんなことしたら安倍さん逃げるでしょ?」
「…逃げないから」
「本当?」
「本当…」
 体の自由を奪われているのは落ち着かない。
 怯えた顔の安倍に、吉澤はふっと笑って掴んでいた手を離した。
「逃げたらだめですよ」
 その言葉に、起き上がろうとしていた安倍の肩がびくっと震えた。
 手が自由になっただけでこれでは何も変わらない。

「……」
 じっと上から降りてくる視線。
 見つめられて居た堪れなくなる。
 見つめられて戸惑う事など今までなかった安倍はどうしたらいいか分からない。
「どうして欲しいですか?」
「……」
「言わないと…ウチがしたいことしますよ?」
「…ッ、そんな、ずるい」
119 名前:この罪深い夜に 投稿日:2003/09/13(土) 12:17
「じゃあ、安倍さんがして欲しいこと言ってください」
「……見ないで、ほしい」
「安倍さんの困った顔好きだって言ったでしょ?」
「どいてほしい」
「それじゃ意味ないし」
 相変わらず、吉澤は微妙な笑顔のまま見下ろしてくる。
「よっすぃー…」
「なんすか?」
 自分は罠に嵌っているのだろうか。
 自問しても答えなど出ない。
 でも、このままこの瞳に見つめられ続けたら気が狂ってしまいそうだ。

 吉澤の手がすいと動いて安倍の左耳に触れた。
「…ッ」
「したいこと、しますよ」
 

 罠に嵌った。
 安倍は耳に触れる吉澤の手を取り、そっと唇を押し付けた。

120 名前:jinro 投稿日:2003/09/13(土) 12:22
>109 つみ様
 (●´ー`)<やぐちとなっちは風板の短編で幸せになる予定。
 (〜;^◇^)<ここでは幸せになれないの?
 (●´ー`)<…さあ?
 (〜;^◇^)<!!!

>レスありがとうございますぅ。

121 名前:jinro 投稿日:2003/09/13(土) 12:24


>えっと、連休中にもっかい更新します。
 風は今日の夜にでも…。

122 名前:つみ 投稿日:2003/09/13(土) 21:22
流されんなぁ〜〜!なっち!!
123 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/16(火) 02:25
笑わん姫だ…
124 名前:jinro 投稿日:2003/09/16(火) 20:55
>ううう。すみません、いそがしくて…
 週末までには必ず……
125 名前:名無し小説屋さん 投稿日:2003/09/21(日) 10:38
お久しぶりでごぜますw
何かいい感じで引き込まれてます、世界に...w
月板の私的更新が全終了しましたので
約束通りROMりに来ましたw

ごゆるりと更新希望でございます。
頑張ってくらさい!
126 名前:名無し小説屋さん 投稿日:2003/09/21(日) 10:40
もろ揚げ...
すみませんでした。
以後ROMに徹します。

あぁ、大失敗…(/Д`;)
127 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:03



 最初にブラウン管越しに見たとき、吃驚した。
 
 …その愛らしさに。
 天使って言うのは彼女のことを言うんだと本気で思った。

 好意を寄せることさえ、彼女を汚してしまいそうなほどの神々しさ。
 その時自分は、彼女に恋をしたのではなく、恋情などというレベル
は一気に超えてしまって。

 彼女を崇拝した。



128 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:11
「後藤、緊張してる?」
 初めての歌収録。
 待機ブースで譜面と睨めっこしている後藤に市井が声をかけてきた。

「…どうだろ」
「してる風に見えるよ。顔がコワイ」
 ケラケラと笑いながら市井は後藤の隣に座った。
 ほい、と渡されたパックのオレンジジュースを受け取る。
「緊張とは…違う気がする」
 
 そうだ。
 歌収録は緊張すると言うより、ワクワクするといった感じだ。
 例えるなら…遊園地で初めて乗るアトラクションを待っている時の
ような。

「そ?ならいいけど。…なんかいつもと違って見えたからさ」
「……」
 でも緊張していないというのも嘘だった。
 今まで13年間生きてきて…多分一番緊張している。
129 名前:jinro 投稿日:2003/09/21(日) 13:18
 後藤は市井から受け取ったジュースのパックにストローを指しながら
収録ブースの入り口に一番近い椅子に座る安倍を横目で伺う。

 安倍は浅く椅子に腰掛け、両手を組んで肘を膝に乗せている。組んだ
両手に顎を乗せて、食い入るように収録ブースで歌う矢口を見つめて
いた。
 …真剣な横顔。
 矢口がブースに入ってから、安倍は一瞬たりとも矢口から目を離さな
かったのだろうか。
「こういう感じの曲、あんまり歌ったことないからね。みんな苦労して
る」
「…うん」
 市井の声に慌てて視線を戻す。
 ストローを指したまま口を付けてないジュースを一口飲んで、市井に
倣って矢口を見た。
130 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:28
 確かに、最初の中澤もそうだったが、矢口も少し時間がかかっている
みたいだ。
「矢口は器用な声してるからいつも早いんだけど」
「うん」

 矢口真里。
 後藤は彼女が羨ましくて仕方なかった。
 四枚目のシングルの、出だしの安倍とのハモリ。最初に聞いた時
鳥肌が立った。
 この音は安倍と矢口にしか出せない。
 
『ほな次、安倍ー』

 待機ブースのスピーカーからプロデューサーの声が響いた。
 安倍は無言のまま立ち上がると、中のプロデューサーに小さく頷いた。
「真希」
「…え」
「それ、一口頂戴?」
 いきなり声を掛けられて驚いた。
 心臓がこれ以上ないくらい一気に跳ね上がったのが自分で分かった。
131 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:36
 安倍は間抜けな顔で自分を見上げる後藤に、少しだけ口元を綻ばせる
と、もう一度、今度は後藤の手元を指差しながら。
「ジュース。一口貰っていい?」
 と、言った。
「あ、あのっ」
「いーよいーよ。ホイ」
 それって間接…。
 下らない事を考えてしまって軽く混乱した後藤の手から、市井がパック
を取り上げて安倍に手渡した。
 
 市井の手から安倍に渡ったジュースのパック。
 ゆっくりと安倍の唇に含まれる白いストロー。
 さっきまで自分が銜えていた。

「サンキュ」

 間抜けな顔のまま固まってしまった後藤の手にパックを返すと、安倍は
入れ替わりになった矢口と二言三言会話を交わして収録ブースに向かった。


 …後藤の初歌収録が散々だったのは言うまでもない。


132 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:48



「真希ー」
 歌収録が終わり憔悴しきった後藤が控え室に戻ると、にこにこと笑顔の
安倍が近づいてきて。
「これ、ジュースのお礼〜」
 と、カラフルな紙に包まれた飴をひとつ手渡した。
「あ、ありがと…ございます」
「いま、食べて?」
 持って帰って記念にしよう、とか考えていたのだが、安倍に可愛く
そう言われたら食べないわけにはいかない。
「う、うん」
 紙を取ってじっと見つめる安倍の視線にドキドキしながら飴を口に
放り込んだ。

「……?」

 なんだかコレは…。
133 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 13:57
「辛っ!!!」

 口に入れた飴の辛さに後藤は思わず咳き込む。
 それをじっと見ていた安倍と、少し離れた所で見ていた矢口が手を
叩いて大笑いする。
「〜〜〜なんですかぁ、これぇ」
 涙目になりながら後藤は飴を包み紙に戻す。
 まだ口の中がヒリヒリしている。
「ごめんね〜、いたずらキャンディなんだよ〜」
「なっちがさ、真希に食べさせようって言うから」
「……まだヒリヒリする…」
 今だ笑いを堪えてるような顔をしている二人。
 それでもさすがに悪いと思ったのか、矢口がまだ新しい缶のお茶を
持ってきた。
「ごめんごめん。コレ飲んで」
「なっちもまりっぺにやられたんだよから〜」
「だからって…なんでごとーに」
 お茶を飲みながらむっとした視線を向ける。
 すると安倍は申し訳なさそうに俯いて。
134 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:04
「だって…なっちだけ騙されて悔しかったんだも」
 両手の指先をもじもじさせて上目遣いで後藤を見上げた。

 …可愛い。

 心臓が鷲掴みにされたような衝撃。
 感情がすべて麻痺してしまって言葉を返すことが出来なかった。
「真希…怒っちゃった?」
 答えない後藤に、安倍はますます不安そうな顔になる。
 
「お、怒ってないよ?…ちょっと吃驚しただけで…」
 目が潤んできて泣きそうになったから、後藤は慌てて答える。
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「良かったぁ。真希なら怒らないって思ったんだ」
 先ほどまでの不安そうな表情と一変して、今度は花が綻ぶような
満面の笑顔。

 …ごとー、この人に殺されるかも。
135 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:10
 きりきりと痛む胸のあたりにそっと手をやる。
 
 だってこの人の一挙一動にこんなにも胸が痛い。



「真希ィ、早く寝るべさ〜」
「待ってよ、なっち」
「なっち明るいと寝られないから」
 
 いたずらキャンディ事件の後、後藤と安倍の仲は急速に縮まって
いき、今日は安倍が後藤の家に泊まりに来た。
 最初こそは安倍が表情を変えるだけでドキドキしていた後藤も、
最近になって漸く普通に接しられるようになった。

 明日はツアーの初日。
 朝一の飛行機に乗って地方へ飛ばなければならない。
136 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:17
 …それにしても。

「なっち、まだ11時だよ」
「でもなっち、11時になると眠くなるんだよ。明日は早いし。真希も
寝よう?」

 もう眠い、と言う安倍の主張でふたりは早々に寝床に就いたのだが。

 …寝れるワケないじゃん…。
 
 同じ布団というわけではないが、隣に憧れの人が眠っているのだ。
 時間だけが眠れないまま過ぎていく中、後藤は隣で眠る安倍のこと
ばかりを考えていた。

 見た目と同じ、行動もおこちゃまで。
 でもたまに驚くくらい大人っぽい、はっきり言って艶っぽい顔とか
して。
 感情の浮き沈みが激しくて。
 でもまわりに結構気を使ってて。
 可愛い顔してるのに平気で変顔とかするし。
 でもやっぱり自分は可愛いって自覚してるみたいで。
137 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:24
 ブラウン管越しで見ていたときは天使だと思ったけど。
 やっぱり普通の女の子で。

『それ、一口頂戴?』

 不意に後藤の脳裏に安倍の台詞が蘇った。
 それからまるでフラッシュバックみたいに映像が。

 自分が口を付けたストローを銜える形のいい薄い唇。

『サンキュ』

 …ごとー、何、考えて…。
 じっとりと全身に汗が浮かんだ。
 心臓が狂ったように早く鳴ってる。
 …なっちに、なっちに聞こえちゃう。

 パジャマの胸元を掴んで上半身を起こす。
 暗闇に慣れた目が隣で眠る安倍を捕らえた。
138 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:29
「……ッ」
 息を呑む。
 その音が大きく響いた気がして、ますます鼓動が早くなる。

 両手を頭の横に投げ出して、安倍はまるで子供のような顔で眠った
まま、起きる気配はない。
 薄く開かれた唇に自然と視線が吸い寄せられる。

 …なっち。

 後藤はゆっくりと体を安倍の方へ向ける。
 震える手で安倍の投げ出された手をそっと握る。
 ぴくっと触れた安倍の手が小さく動いたけれど、呼吸に合わせて上下
する胸は穏やかなままで、寝顔は変わらない。

 ごめんなさい。

 してはいけないこと。
 分かっているのに、後藤は止まらなかった。
139 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/09/21(日) 14:34
 握った手に少しだけ力を込める。
 これでなっちが起きたらやめよう、そう思ったのに。
 安倍は起きなかった。

 ごとー、気が付いちゃったよ。

「…なっち…」
 ゆっくりと顔を近づける。

 …なっちは天使なんかじゃなかった。
 だから、手に入らないと思ってた。
 だけど、今こうして。

 唇が触れる瞬間まで、後藤は目を閉じなかった。
 薄く目を開いたまま、唇に暖かい感触。
 涙が零れそうになって慌てて瞼を閉じた。

 なっちに触れられるなら。

 …なっちが欲しい。


140 名前:jinro 投稿日:2003/09/21(日) 14:39
>122 つみ様
 (●´ー`)<…。
 流されるなっち…流されてるのか?

>123 名無し読者様
 ( ´ Д `)<んあ〜、呼んだ?

>125 名無し小説屋さん様
 (●´ー`)ノ<完結おめでとうございますだべ。
 さっそく読みに行きます〜。

>レスありがとうです。
 予定守れなくてごめんなさい〜。
141 名前:jinro 投稿日:2003/09/21(日) 14:40

>また週末には…げふぅっ!

142 名前:jinro 投稿日:2003/09/21(日) 14:41

 (●´ー`)<隠しとくべ。


143 名前:つみ 投稿日:2003/09/21(日) 17:54
ごとーさんの理性VS天使のなっちですか・・・
どっちが勝つかな?
144 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 23:28
微妙なエロ…(w
いつも楽しみに読ませて頂いております。
ついになちごまな展開が!!
( ´ Д `)(●´ー`●) <きゃーーーーーー!!(w
超期待して待ってます。
145 名前:jinro 投稿日:2003/10/06(月) 18:09
>すみません、私的に超忙しくて…
 絶対放置はしないんでマターリ待っててくれるとありがたいです。
146 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 03:25
マターリ待ってます〜
147 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/10/22(水) 08:50


 次の日。
 あの後もしっかり眠れなかった後藤と、基本的に寝起きが悪い安倍は遅刻
ぎりぎりでマネージャーと中澤にこっ酷く怒られた。
 それでも怒られてる間、たまに安倍と目配せして笑いあったりして、それが
とても楽しかった。

「真希ー」
 飛行機の中で、安倍はにこにこしながら後藤を隣の席に誘って。
「なぁんか真希にはなっち、通じるものを感じるんだよね〜」
 なんてにこにこしたまま言うから、後藤は胸がどきどきしっぱなしだった。
 
 しばらくして飛行機って眠くなるべさ、と言って眠ってしまった安倍を見て、
後藤はようやく少しだけ落ち着くことができた。
「後藤」
「…え?」
 声をかけてきたのは、通路を挟んで隣の席に座った矢口だった。
「矢口さん…」
(やだな…)
 正直、後藤は矢口が苦手だった。
 いや、苦手というより、嫌いだった。
 理由ははっきりと自覚している。
 安倍と仲がいいからだ。
148 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/10/22(水) 08:58
 くだらない嫉妬だということも自覚している。
 
 でも無理なのだ。
 今の後藤は安倍の関わるものすべてに、安倍が触れるものすべてに嫉妬して
しまっている。
 後藤が自分を好いてないということが分かるのだろう、矢口は普段あまり後藤
に声はかけてこない。
「後藤さ、なっちと仲良くしてやってね」
「…うん」
(言われなくてもそのつもりだけど?)
「なっちさ、ほら、あんまり人付き合い得意じゃないからさ」
「…うん」
(なっちはごとーとだけ仲良くしてれば大丈夫)
「後藤が入る前もいろいろあって…ちょっと情緒不安定だった時期もあったりした
から」
「…いろいろ?」
「それは…やぐちの口からは言えないけど」
(なら最初から言わないでよ)
 
 いちいち心の中で反発する自分に嫌気がさす。
 しかも矢口はせっかく好意で言ってくれているのに、それを『自分ならなっち
のこと良く分かってるから』とでも言いたいのかなどと捻じ曲がった解釈をして
 しまう。
149 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/10/22(水) 09:09
「…む…」
 話し声で目が覚めたのか、安倍が起き出したので矢口との会話はここで強制的
に終わった。
 正直、後藤はほっとしていた。
 あのまま矢口の話を聞いていたら感情が爆発していたかもしれない。
 
「やぐち〜、なに真希苛めてるっしょ?」
 眠そうにまぶたを擦りながら安倍が矢口に言う。
 矢口は、
「苛めてないよ〜!」
 と、けらけらと笑っている。
 後藤はもう矢口のことなどすっぱり頭からなくなって、すべての感情を、感覚を
安倍に向ける。

 レーダーみたいだ、と心の中で苦笑して、ずっと同じ姿勢で眠っていたから変な
風に癖のついてしまった安倍の髪に手を伸ばす。
「寝癖」
「ほえっ!?マジで?」
 慌てて手で髪を整える安倍。
 そのしぐさがまるで仔猫みたいにかわいくて、後藤は思わず見惚れる。

「直った?」
「うん…かわいい」
「真希もかわいいよ〜」
 他愛のない会話。

 最初は見てるだけでよかった。
 次は話することを望んで、それから愛称で呼び合うことを望んで。
 今では触れることを望んでいる。

 いったい自分は、どこまで彼女を手に入れたら満足するのだろうか。
150 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/10/22(水) 09:15
>143 つみ様
 (●´ー`)<なっちが最強だべ。
 (*´ Д `)<…うん。

>144 名無し読者様
 ( ´ Д `)<これからもっとエロくなるらしいよ〜。

>146 名無し読者様
 (〜^◇^)<マターリ待っててくれてありがとう!



 
151 名前:出逢ってしまったふたり 投稿日:2003/10/22(水) 09:17


>プチ放置スミマセン…。
 次はもっと早く更新したいです。

>風のほうも…書かないと…。
 スミマセン…ゲフゲフ。


152 名前:jinro 投稿日:2003/10/22(水) 09:18

>↑ふたつ名前欄jinroにするの忘れた。


153 名前:つみ 投稿日:2003/10/22(水) 10:51
ごとーさんファイト!
なっちを手に入れろ!(w
154 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 11:56
更新キタ〜。
楽しみに待ってます。
155 名前:144 投稿日:2003/10/22(水) 20:06
>( ´ Д `)<これからもっとエロくなるらしいよ〜。

なんですと…!?
期待しちゃって良いですか?(w
以外に独占欲強めなごとーさん好きです。

156 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 14:32



 口付けた吉澤の手はなぜか小さく震えていた。
 安倍が不思議に思ってそっと伏せていた瞼を上げると、泣きそうな顔をした
吉澤と目が合った。

「…よっすぃー…」
 どうしてそんな顔をするの?
 尋ねようとした安倍の唇は触れていた吉澤の指先でそっと塞がれ、そしてそのまま
その手で手元も覆われてしまう。
 遮られた視界の中、吉澤が安倍の耳元で囁く。

「安倍さん、そのまま…舐めて」
 言葉と同時に安倍の唇に何かが触れた。
 こくんと小さく息を呑んで、安倍は恐る恐る舌を出してそれを確かめる。

 触れてすぐに分かった。
 これは吉澤の手だ。

「もっと…丁寧に」

 催眠術のように耳元に注ぎ込まれる声。
 懸命に舌を伸ばして吉澤の手を舐める。
157 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 14:39
 掌から甲まで。
 そして指の付け根から爪の先まで丁寧に舌を這わせる。

 部屋の中には安倍の舌が吉澤の手を舐めまわす、濡れた唾液の音だけ
が響く。
 そしてその音すら安倍のまともな思考回路を破壊していく。

「…はぁ…、ふっ」
 口が開けっ放しになったままでそろそろ顎が疲れてきた。
(…苦しい…)
 でも何が苦しいのか分からない。

 呼吸なのか、心なのか。

「…ん…ふぅ」
 執りつかれたように吉澤の手を舐める安倍の唇の端からは口腔に
溜まった唾液が零れ始めている。
158 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 14:47
 そして不意に、安倍の視界を覆っていた吉澤の片手が外された。
 瞼に光を感じて、安倍はゆっくりと目を開く。
 そこにはさっきまでの泣きそうな顔をした吉澤の姿はなく、いつもの、
あの子供のように笑う吉澤がじっと自分を見下ろしていて。

 空いた手で安倍の顎に流れた唾液を拭う。
 そしてそのままその手を自分の唇に含んだ。
 じっと安倍の顔を見つめたままのその仕草に、体が熱くなる。

 直接触れ合ったわけではないのになぜ。

 燻っていた小さな火種がじわじわと燃え上がる。
「安倍さん…続けて」
 目を見たまま吉澤が静かに命令する。
 もう抵抗などできない。
 安倍は諦めと、そしてどこか悦びを感じている自分を確かに感じて
いた。
159 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 14:59
 小さく息を吐いて、目を閉じる。
 するとまた、催眠術のような吉澤の声が降りてくる。

「ダメ。目はあけてて」

 逆らえない。
 再び目を開くと、大きな射抜くような瞳と出会う。
 逸らせないまま、安倍は再び吉澤の手に舌を這わせていく。
 吉澤も、安倍の手に舌を這わせる。
 お互い見つめあったままの、現実世界では在り得ない行為をして
いる。

 …ひどく興奮した。

 吉澤も興奮しているのだろうか。
 そんなことを考えながら、安倍は舌の動きは緩めずに吉澤の瞳を覗き
込んで伺う。
 吉澤も同じなのか、お互い目を逸らさないまま、お互いの手を舐め
合う。

 ピピッ。

 小さく電子音が鳴った。
 どうやら吉澤の腕時計が時間を知らせたらしい。
160 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 15:06
 それが合図だったように、ふたりは同時に舐めるのをやめた。
 でも見詰め合ったまま、吉澤はふっと目を細めて。

「覚えておいてくださいね。吉澤の味」

 と、小さく囁いた。
 そしてまだ自分の目の前に差し出されたままだった安倍の手の、
中指の先をちゅっと唇に一瞬だけ含んで言葉を続けた。

「ウチも覚えておきますから。…安倍さんの味」



 
 吉澤が帰ってからも、安倍はソファに座ったままぼうっとしていた。
(…ありえないでしょ…)
 先ほどまでの出来事を思い出して小さく首を左右に振る。

 しかし吉澤の舌が隅々まで這い回った左手はまだじんじんと熱を持って
いるように疼いている。
 そして自分の舌に残る吉澤の肌の感触、味。
 現実なのだと思い知らされる。
161 名前:原色の夢 投稿日:2003/10/24(金) 15:14
 自分から積極的に舐めた。
 吉澤を積極的に求めて。

(なんで…)

 なぜあんなことをしてしまったのか。
 自問しても答えは出ない。
 まるで夢をみているような感覚だった。
 見詰め合ったまま、お互いの手にだけ舌を這わせ舐めあう。

 普通に生活していたらまず在り得ないシチュエーションに、ひどく
官能的ななにかを感じてしまった。
 
 罠にはまった。

 とても危険で官能的な罠に。

 安倍は静かに目を閉じて、再び夢のような、それでも遥かに現実めいた、
原色の夢に身を埋める。

 ゆっくりと左手の中指を自らの唇に含んだ。


162 名前:jinro 投稿日:2003/10/24(金) 15:21
>153 つみ様
 ( ´ Д `)ノ<んあ、応援ありがとー。

>154 名無し読者様
 (●´ー`)<のろい更新で申し訳ないべ…。
       これからもマターリ待っててください。

>155 144様
 ( ´ Д `)<『全編通して微妙にエロっぽく』が目標なんだって〜。
 (○^〜^)<直接的な表現なくしていかにエロっぽくみせるか試行錯誤
       してるらしいYO!

163 名前:jinro 投稿日:2003/10/24(金) 15:22

>時間できたので更新してみまつた。


164 名前:jinro 投稿日:2003/10/24(金) 15:23

>(●´ー`)ノ<隠すべ。


165 名前:つみ 投稿日:2003/10/24(金) 18:49
また手だけってのがそそられます!(w
166 名前:ROM読者 投稿日:2003/10/25(土) 09:44
怖い物見たさ・・・痛いの苦手だけど目が離せない。
167 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/12(水) 22:19
みんながみんな暗いものを抱えてる感じで引き込まれます。
楽しみに待ってますよー。
168 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 02:07
最後には、全員の思いがいい方向で昇華していって欲しい
169 名前:スイッチ 投稿日:2003/11/13(木) 16:08


「よっすぃーとは同じ年なんだよね」

 そう言って、吉澤が娘。に加入してから一番最初に仲良くなった先輩メンバーは
後藤だった。
 好きなブランドや、お互い肉が食べられないところや、似ている部分の多かった
二人はすぐに意気投合した。

 娘。でのポジションをうまく見つけられない吉澤に取って、後藤は憧れだった。
 たった一人で娘。に加入して、いきなりセンターに抜擢されてその大役を見事な
までにこなした。
 娘。の新機軸を打ち出した後藤は誰よりも輝いて見えた。


「ごっちん!今日、うちに遊びに来ない?」
 仕事が終わり、帰り支度をしている後藤に吉澤は声をかけた。
 鞄に荷物を詰めながらぼんやりしていた後藤は少し驚いた顔をして振り返った。
「あ、うん…」
 何事にも動じないように見えた後藤のこういうリアクションは珍しい。

(なに見てたんだ?)

 不思議に思って吉澤は後藤がぼうっと見ていた方向に目を向ける。
 その方向には矢口と安倍が楽しそうに談笑している姿があった。
「よっすぃー、行こ!」
 後藤は慌てたように立ち上がってさっさと楽屋を出て行ってしまう。
170 名前:スイッチ 投稿日:2003/11/13(木) 16:17
 お疲れ様でした、と残っていたメンバーに声をかけて、吉澤は急いで
後藤を追う。

「待ってよ、ごっちん!」

 隣に並んで歩きながら吉澤が顔を伺うと、後藤はいつになく険しい表情
をしていて、それ以上声をかけることが出来なかった。

 会話の少ないまま、電車に乗って吉澤の自宅に着いたころには辺りは
すっかり暗くなってしまっていた。
 帰りがけにコンビニで買ってきた夕食をやっぱり会話のないままとる。
 
 せっかくごっちんとふたりきりなのに…。
 何か面白い話題はないかと吉澤は頭を悩ませる。
「そういえばさ、ごっちん知ってる?」
「…なにを?」
「梨華ちゃん。保田さんが気になるんだって」
 この間石川にこっそり打ち明けられた話を持ち出す。
 後藤は口が堅いから大丈夫だろうと思って話をしたのだが、後藤は
驚いた顔をして、箸をカーペットに落としてしまった。

「…へ、へえ…」

 意外な後藤の反応。
 拙かったかな、と吉澤は後悔する。
171 名前:スイッチ 投稿日:2003/11/13(木) 16:24
 後藤は無言のまま箸を拾い上げ、そのままそれをテーブルに置く。
 そして暫くなにか考えるような仕草をして、不意に顔を上げて吉澤
を見た。

「…よっすぃーはさ、誰か気になる人とかいる?」

 意外な質問。
 今度は吉澤が箸を落としそうになった。
「な、何、いきなり」
(なんだろ、急に…もしかして…)
 チャンスなのかな?と吉澤はどきどきしながら後藤と同じように箸を
テーブルに戻した。

「うん…ほら、なんとなく、さ」

 誤魔化すように後藤は髪に手をやって笑う。
 そんな後藤を見て、吉澤はごくっと息を呑む。
(言っちゃっていいのかな…いいよね…)


172 名前:スイッチ 投稿日:2003/11/13(木) 16:34
「ごっちん」
「うん?」
「ウチ、ごっちんが好きだよ。ずっと前から好きだった」

 吉澤の突然の告白に、髪を触っていた後藤の手がぴたりと止まる。
「だからさ、今度の新曲、ごっちんとメインで歌えてすごく嬉しい」
(安倍さんもだけど…)
 
 精一杯真面目な顔で自分を見つめる吉澤に、後藤は困ったように視線
を彷徨わせ、それから俯く。
「…ごとーは…、その」
「き、急に言われても困るよねぇ!…あはは…」 
 後藤のその反応に、吉澤は軽くショックを受けながらもわざと明るく
言う。
 でも語尾が震えてしまい、かえって気まずくなってしまった。

 沈黙。

(…言わなきゃよかった…)
 吉澤が後悔をし始めた時。
「よっすぃー…」
 さっきとは違い、はっきりとした意思を持った目で後藤がこちらを
見た。
「え…?」
「よっすぃー、ごとーのこと、どんな風に好きなの?」
「ど、どんな風って…」
「ごとーと…付き合いたい?」
 何を言い出すのだろう。
 間誤付く吉澤を他所に、後藤はテーブルを回り吉澤の隣に来る。

「いいよ?よっすぃーと付き合っても」
173 名前:スイッチ 投稿日:2003/11/13(木) 16:41


「…え…?」
 思わず言葉を失ってしまった吉澤の首に、するりと後藤のしなやか
な腕が巻きつく。
 そのまま顔が近づいて来て、唇が触れ合った。
(なんで…?)

 後藤はゆっくりと唇を離すと、薄く笑みを浮かべて吉澤の顔を覗き
込んだ。
「ごとーのこと、よっすぃーの好きにしていいよ」
 甘い誘惑。

 憧れだった後藤を自分の好きに出来る。

 頭の中が真っ白になって、気がついたときは吉澤は後藤を抱きしめて
カーペットに倒れこんでいた。
「そのかわり、お願いがあるんだ」
「…お願い?」
 少し息を荒くした吉澤の頬に後藤の手が添えられる。
 後藤はまっすぐ吉澤を見詰めたまま、静かに『お願い』を口にした。


「ごとーね、なっちが欲しいの。だから…ごとーをよっすぃーにあげる
から、協力して?」

 カチ。

 吉澤の心のどこかで、何かのスイッチが入る音がした。


174 名前:jinro 投稿日:2003/11/13(木) 16:52
>165 つみ様
 (●´ー`)<手だけでいっぱいいっぱいだべ。
 ( ´ Д `)ノ<んあ、まだまだエロくなるよ〜。
 Σ(;●´ー`)<!!

>166 ROM読者様
 ( ´ Д `)<怖いもの見たさ…、んあ、わかるわかる。
 (●´ー`)<…怖いのはごっちんだべさ。
 Σ( ´ Д `)<!!

>167 名無し読者様
 (●´ー`)<暗い話だべ。
 (〜^◇^)ノ<そろそろオイラが出て明るい展開に!
 (●´ー`)<やぐちが一番ノーテンキな役だもんね。
 (〜T◇T)<・・・。

>168 名無し読者様
 (○^〜^)<ラストはまだ悩んでるらしいYO!
 (●´ー`)<ハッピーかアンハッピーか…?

>レスありがとうございます。
 相変わらずのろくて申し訳ありません…。
 引き続きマターリ待ってて…くだ、さい…。
175 名前:jinro 投稿日:2003/11/13(木) 16:53

(●´ー`)ノ<隠すべ。


176 名前:jinro 投稿日:2003/11/13(木) 16:53

(○^〜^)ノ<隠すYO!

177 名前:つみ 投稿日:2003/11/13(木) 17:23
んあ〜〜〜!
そんな取引があったなんて・・・
これで納得がいかなかったところが納得しました。
だれとだれが結ばれればいいんだろう・・・?
178 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 17:28
んが〜、何てイイところで止めるのですかぁ〜!?
まったく先が読めないです、マジで・・
次回を楽しみにしております。
179 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 23:41
最高の展開です
180 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/18(火) 23:22
いいですなぁ。吉澤はズルイ。
181 名前:仮面の告白 投稿日:2003/11/27(木) 12:58
 
 頭がジンジンする。

 安倍の部屋を出た吉澤はその足で後藤の部屋に向かった。

 安倍の舌が隅々まで這った手を上着のポケットの中でぎゅうと握り締める。


「おかえり、よしこ」
 出迎えてくれた後藤は笑顔で吉澤を部屋に通す。
 そして吉澤をベッドに座らせて肩に手をかけ、シーツに押し倒した。
「手…貸して」
 お腹の辺りに跨った後藤は上着のポケットに入れっぱなしだった吉澤の手を少し
強引に引き出した。

 引き出した吉澤の手をじっと見つめる後藤。
「…この手…なっちが舐めたんだよね?」
 次第にとろんとなってくる瞳。

 吉澤は小さく頷いて、後藤を見上げた。

「そうだよ。…ごっちんが舐めたウチの手…安倍さんに舐めさせたよ」


182 名前:仮面の告白 投稿日:2003/11/27(木) 13:06
 ――安倍の部屋に行く前。
 後藤に会っていた吉澤はただされるがままに後藤の舌が手に這うのを
感じていた。
 
(ごっちんがウチの手を舐めてくれてる)

 ただそのことだけに感動を覚えていたのに、後藤は口元を手の甲で拭って
から、酷く残酷な命令を吉澤に下した。

「この手…なっちに舐めさせて来て?」

 それから。

「なっちの手…舐めてきて?」

 そしたらキスしてあげる、そう言う後藤の言葉に、吉澤は黙ったまま
安倍の部屋に向かったのだ。


 ――ぴちゃ。
 柔らかい何かが自分の手を這う感触と音に吉澤は飛ばしていた意識を戻す。

 うっとりと目を閉じて吉澤の手に舌を這わせる後藤は何を考えているのだろう。
 きっと安倍のこと。
 分かりきっている。
183 名前:仮面の告白 投稿日:2003/11/27(木) 13:15
 今自分がしてるように、安倍もこの掌に舌を滑らせたのだ。
 この指に舌を絡ませたのだ。

 後藤の頭の中は彼女のことでいっぱいに違いない。

「よしこ…なっちの手、美味しかった?」

 ふっと瞼を上げて後藤が尋ねる。
 吉澤は間髪入れずに答える。この人が望んでいるであろう答えを。
 そして自分も望んでいる答えを。

「うん。とっても」

 その答えに、後藤は髪を耳にかけながら吉澤に覆いかぶさってくる。
「…ん…っ」
 ああ答えればこうして貰える事は分かっていた。

 一心不乱に吉澤の舌に自分の舌を絡ませながら、後藤はさっきまで舐めて
いた吉澤の指に触れる。
 指を絡ませて、そして解いて。

 まだ唾液で湿ったままの吉澤の中指をそっと自らの人差し指と親指で扱く。
184 名前:仮面の告白 投稿日:2003/11/27(木) 13:22
 そのどこかいやらしい動作に吉澤は堪らなくなって、伸し掛かる後藤の
背中に腕を回した。
 すると後藤はそっと唇を離して微笑むと、

「いーよ。しよ。…でも、最後はこの指入れてね?」

 と、また酷く残酷な命令を下した。




「おっはよー!なっちっ!!!」
 楽屋に向かう廊下で、安倍はいきなり背中をバシンと叩かれて前につん
のめりそうになった。

「〜〜びっくりしたぁ…。なんだよぅ、やぐち」
 弾みで肩から落ちかけた鞄をかけ直しながら隣に並んだ矢口に文句を言う。
「なぁんかチンタラ歩いてるからさ、気合入れてあげたの」
「なぁにが気合だよ、もう」
 感謝しろ、とでも言いたそうな矢口にため息が零れる。
(そんなんで元気になったら苦労しないべさ…)
185 名前:仮面の告白 投稿日:2003/11/27(木) 13:32
「なっち、マジで元気なくない?大丈夫?」
 いつもだったらそれで笑顔になる安倍の浮かないため息を聞いて、矢口が
怪訝そうな顔で覗き込んでくる。

「だいじょうぶだよ〜。昨夜あんまし眠れなくってさ…」
「本当?無理しないほうがいいよ」
「へーきへーき」
 本気で心配してくれる矢口に安倍はそれだけで少しだけ意識が浮上するのを
感じる。
 
 矢口が自分のことを気に留めていてくれている。

 それだけで元気になるなんて現金なものだ。

「あっ!よっすぃーだ!おーい!」
 突然の矢口の声に安倍の足がすくむ。
 楽屋の前にある自動販売機の前にいた吉澤はその声に気づき、こちらを見た。

「おはようございます」
 今買ったらしいコーヒーの缶を手で弄びながら吉澤が挨拶する。
「おはよう、よっすぃー」
「おはよ…」
 矢口に続いて挨拶を返しながらも、安倍の視線は吉澤の手に向いてしまう。

 昨夜の出来事を思い出して、体温が2,3度あがった気がした。

 談笑する矢口と吉澤に続いて楽屋に入ると、安倍はふたりから出来るだけ
離れた椅子に腰を降ろした。
186 名前:jinro 投稿日:2003/11/27(木) 13:41
>>177 つみ様
 (●´ー`)<まだすべての謎は解けてないべ。

>>178 名無し読者様
 (〜^◇^)ノ<そろそろ終盤…?
 (●´ー`)<いやいや、まだまだ続くべ。
 (○^〜^)<どっちだよ…。

>>179 >>180 名無し読者様。
 (●´ー`)<最高だって!
 (○^〜^)<照れるYO!
 (〜^◇^)ノ<よっすぃーはズルイって!
 (○T〜T)<…。

>少ない更新でスミマセン…。
 次はなるべく早くたくさん(!)更新、したい、です…_| ̄|○

187 名前:jinro 投稿日:2003/11/27(木) 13:42


( ´ Д `)<んあ、隠そう。
188 名前:jinro 投稿日:2003/11/27(木) 13:45

ノノ*^ー^)ノ<えりが隠します。

(;●´ー`)<なんで亀井ちゃん…出てないのに…。

189 名前:つみ 投稿日:2003/11/27(木) 16:17
少し怖いね・・・
黒ごまと黒よしは・・・
やぐちさんが健気でかわいそう・・・
190 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/28(金) 04:12
ノノ*^ー^)ノ<jinroさん、絵里も出して〜!
191 名前:双六 投稿日:2003/11/29(土) 12:53
おもしろい!頑張って下さい!
>190名無し読者様
青板の私の作品に亀井サンでてるので、よかったら見てください^^
192 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 11:47
「んあ。なっち、おはよう」
 安倍が腰掛けた椅子の近くに座っていた後藤が突っ伏していた机から顔をあげて
声を掛けてきた。

「おはよ…」
「どしたの?元気ないね」
「…そんなことないべさ〜。なっちはいつも元気っしょ」
 ぼうっとしているようでなかなかこの後輩はするどい。

 しばらく後藤は考えが読めない瞳で安倍を見つめていたが、やがてまた机に付いた
腕に顔を埋めて眠ってしまったようだ。

 ――良かった、と安倍は少しだけ張っていた気を緩め、鞄から携帯電話を取り出す。

(…ん?メール…)

 表示されている『未読メールあり』の文字。
 開いた携帯電話のディスプレイに浮かんだ名前に安倍の心拍数があがった。

『昨夜はごちそうさまでした。
 ところで今日、仕事が終わったら三階の機材倉庫にきてもらいたいんですけど。
 待ってますね』

(…よっすぃー…)

 今度はなんだろう。

 微かに震える手で携帯電話を閉じ、安倍は無意識のうちに吉澤と矢口の会話に耳を
傾けた。
193 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 11:54
「…なんだよー!せっかくオゴッてやるって言ってんのに」
「すみませんね…。また時間あるときオゴッてください」
「ちえー」

 矢口からは見えないが、安倍の位置からは吉澤が机の下で携帯電話を閉じ
るのが見えた。

 矢口と何食わぬ顔で話をしながら、吉澤は自分にメールを送ってくる。

 自分は矢口を裏切っているのだろうか。

(…でもなっちは…やぐちが…)

 だめだ。
 何を考えても言い訳になってしまう。
 やっぱり自分はしてはならないことをしてしまったのだ。

 机に肘を付いて、安倍は両手で自分の顔を覆い、ため息をついた。
194 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 12:05
「…よっすぃー…?」

 食事をして行こうという保田と飯田の誘いを断って、安倍は吉澤の指定
した機材倉庫の扉を開けた。
 中は電気がついていなく、お化けとか幽霊とかの類が苦手な安倍は足が
竦んでしまう。

「…真っ暗じゃんか〜。電気電気…どこだべ〜」

 気を紛らわせる為に独り言を言いながらスイッチを探して明かりをつける。
 倉庫の中はスタジオのセットや小道具を置くだけあってかなり広い。

「よっすぃー?いないの?」

 明るくなったことにほっとしながら安倍は倉庫の中を吉澤を呼びながら
進む。
(もう…帰ろうかな…)
 そう考えた時、いきなり後ろから肩を叩かれて飛び上がりそうになった。

「――ひゃ…っ!?な、なんだべ…よっすぃー」
「スミマセン。脅かしちゃったみたいっすね」
195 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 12:16
 苦笑いしながら吉澤はジーンスのポケットに手を突っ込んだ。

「ところで安倍さん」
 まだドキドキしている心臓のあたりを押さえている安倍に吉澤がすいっと
一歩近づく。
「……っ」
 警戒心丸出しの顔をして、安倍は近づかれた距離だけ後ずさる。

「そんな怯えないでくださいよ」
 その安倍の態度に、吉澤はまいったな、というふうにポケットから出した
両手を顔を横に上げた。
「よっすぃー…なに持ってるの?」
 ポケットから出した吉澤の手に持たれていた物に、安倍は恐怖を感じる。

「これっすか?これは…」

 言いながら吉澤の手がこちらに伸びた。
 その手は信じられない速さで安倍を捕らえて動けなくしてしまう。

「よっすぃー…っ!」
「大丈夫。これでちょっと、目隠しするだけですから」
 安倍がどんなにがんばっても吉澤の力には到底適わない。

 アイマスクで視界を覆われ、安倍はその場にへなへなと座り込む。
196 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 12:25
 両手は吉澤に掴まれたままだ。

(怖い…怖い…何されるの…?)

 かたかたと震える体をどうにもできない。
 覆われた視界の中で、すっと空気が動くのを感じた。

「安倍さん。抵抗しないでくださいね?抵抗されると、ウチ困るんで」

 言葉と共に強い力でその場に押し倒された。
 一瞬自由になった手で抵抗を試みるが目が見えないせいで徒労に終わる。
 
再び掴まれてしまった手首を冷たい床に押さえつけられて、漸く安倍は
自分がこれから何をされるのかを理解した。


 
197 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 12:36



「く…っ、あ…っ!」

 無理やり屈服させられているのに、いちいち反応を返してしまう自分の体に嫌気が
さす。
 もう何度限界を迎えさせられただろう。

 深いところに入り込んでくる指に吐息と声が上擦る。

 乱暴なのに、時折唇に触れる口付けはまるで恋人にするそれのように優しく、安倍の
心と体を混乱させた。 
 最初拘束されていた両手は今は自由だが、何度も追い詰められて抵抗する体力など
なくなってしまった。

「…っふ、ぅ、…ぅうん…っ!」 
 
 自分の荒い呼吸と声と、相手が立てる微かな衣擦れの音を聞きながら、安倍は意識を
手放した。


198 名前:仮面の告白 投稿日:2003/12/16(火) 12:42
>>189 つみ様
 ( ´ Д `)<黒ごま…。
 (●´ー`)<なんか美味しそうな名前だべ。

>>190 名無し読者様
 (●´ー`)ノ<亀ちゃんは花に出てるべさ!

>>191 双六様
 青板のなんてお話ですか?
 (〜^◇^)ノ<おいらも読みたい!

>レスありがとうございます。
 少しだけ話は動いた、かな?

199 名前:jinro 投稿日:2003/12/16(火) 12:43


(●´ー`)<>>198 まーたjinroにするの忘れたべさ。


200 名前:jinro 投稿日:2003/12/16(火) 12:44



( ´ Д `)ノ<200ゲッツ!んあ!隠すよ!


201 名前:つみ 投稿日:2003/12/16(火) 16:05
はあ・・・
黒吉ですね・・・
まさかアイマスクをした意味というのはごっつあんが・・・
深く考えずに次回もまってます!
202 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 22:54
やばい面白いっす。
黒吉&黒ごま最高ー!!
安倍さんの気持ちも分からないでもないですが……
やっぱり矢口さんを裏切る行為になってますよね(;´ー`) 
203 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 20:34
さらに最高の展開です。
204 名前:ロン 投稿日:2004/01/04(日) 00:52
たまらないです。うああ・・・官能。
205 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 11:28



「――っ!…っち!なっち!」

 呼ばれる声と頬に感じる軽い痛みで意識がゆっくりと浮上する。

 重い瞼を懸命にあげて見ると、目の前にはなぜだか泣きそうな顔をした後藤の顔が
あった。

「……っつぁん…?」
 掠れて声がうまく出ない。
 散々嬌声を絞り取られたせいだろうか。

「なっちっ?…気がついた!?大丈夫?」
 後藤に支えられながら上体を起こすと、硬いコンクリートの床に押さえつけられていた
体がぎしぎしと鳴った気がした。

 視線をゆっくり落として自分の服を確かめる。

 大した乱れはなかった。が、目隠しをされるまでは確かに留めてあった筈のシャツ
のボタンが上から二つ、外れたままだった。
 その胸元をぎゅっと手で握り、安倍は後藤を見上げた。

「ごっつぁん…どうして、ここに?」
「…ごとーのことよりなっちだよ!どーして…こんなとこで…あんな格好で倒れてたの!?」
「…っ」
206 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 11:39
 いつもマイペースな後藤がこんなに取り乱すのを見るのは久しぶりだ。

「…なんでもないよ。…うん」

 後藤に話しても仕方がないし…それより話せる内容ではない。
 
 無理に笑顔を作って、外れていたシャツのボタンを掛けようとする。
「――なっち!」
 しかしその手は後藤の手にぐっと掴まれてしまう。

「…誰かに…乱暴された、んだよね?」
 ひとつひとつ言葉を選んで聞いてくる後藤。
 安倍はそんな後藤を見て、また曖昧に笑うことしかできなかった。
「乱暴…って、や、そーゆーわけじゃないんだよ…」
「じゃあなにさ!?こんなとこで…っ!なっち、服とかメチャクチャ乱れ
てて…っ!ごとー、心臓止まるかと思ったっ!」

 ヒステリックな声と同時に、安倍の体は後藤の腕に抱きしめられていた。

「…ごっつぁん…」

(どーして…ごっつぁんがそんな辛そうな顔するの…?)

 これは自分が蒔いた種なのだ。
207 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 11:48
 矢口の幸せを想って。
 矢口を幸せにできると思ってしたことが、一番、矢口を裏切る行為になって
しまった。

「…なっちが…言いたくないなら、無理には聞かないよ」

 その声は柔らかな胸にぎゅうっと顔を押し付けられているせいで直接
体の中に語りかけられているように聞こえた。

「でも…ごとーは辛い。最近のなっち…見てるとごとーは辛いよ。…なっち、
ごとーじゃ駄目?ごとーじゃなっちの力にはなれないかな?」

 そう言って、後藤は安倍の体に回した腕に力を込める。
 
 ――縋れるものなら縋りたかった。

 でも、いったいどうして言えるだろう。
 こんなに汚い――矢口のためと言いながら、所詮自分のために一番大切
な人を裏切った汚い自分を助けてくれなどと。
208 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 11:58

「ごっつぁん。なっちはだいじょうぶだから」

 そっと後藤の腕を解きながら、安倍は俯いたまま呟く。

 きっと、後藤は辛そうな顔をして自分を見ている。

「ちょっとね、その、ケンカしちゃっただけなんだべ。だいじょうぶ。すぐに
仲直りするから、ね?」
 ぽんぽん、といつもするように後藤の頭を軽く叩くと、彼女は一瞬顔を歪めて、
それから小さく頷いてくれた。



「なっち」

 楽屋に戻って帰る仕度をしていると、後藤がさっきとは正反対の無邪気な笑顔で
安倍に声を掛けた。

「なんだい?」
「ほんとうにね、なんか我慢できないくらい辛いことがあったら、ごとーに相談
して?」
 ニコニコしたまま、後藤は安倍の手を握った。

「ごとー、なっちのためならなんでもするよ」

 そして、まるで忠誠を誓うようにその指先に唇を寄せた。
209 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 12:06







 スタジオで後藤と別れて、安倍はひとり自宅のマンションへ帰った。

 鞄をソファに放り投げ、自分もまるで倒れこむように身を預ける。

『――抵抗しないでくださいね?抵抗されると、ウチ、困るんで』

 不意に蘇る吉澤の言葉に、安倍は小さく首を左右に振って、自分の両手に
顔を埋めた。

 …別に初めてだったわけじゃない。
 行為自体は、例えそれが愛のない、一方的な略奪行為であったとしても、
大した問題ではなかった。
210 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 12:22
 問題だったのは。

 ――そこまで考えたとき、急に聞き覚えのあるメロディが静寂を破った。

 慌てて先ほど放った鞄から携帯電話を取り出す。
 開いてみて目に飛び込んできた名前に、安倍の頬が一気に紅潮する。

『今、圭織とディナー中〜♪
 美味しいお店発見!今度一緒に行こうね♪
              セクシ〜マリリン』

 吉澤と行くはずったお店に飯田と行ったのだろう。
 飯田とのツーショットの添付画像が一緒に送られてきた。

「…なんだべか…もぉ…」

 頬を赤くしたまま、安倍はその画像を開くのを躊躇ってしまう。
(見ちゃったら…なっちは、きっと、また…)

 いやな感じに高ぶる鼓動と呼吸に、安倍は携帯を閉じて背中を丸める。

『…感じてるでしょ?いいですよ、安倍さん』
211 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 12:30
 再び繰り返される吉澤の言葉。
 思わず耳を塞いでも、頭の中に直接響く声は防ぎようがない。

『――頭の中で、好きな人想像していいですよ?』

 濡れた音とその囁きが、安倍の中の触れてはいけない想いに触れてしまった。

『安倍さん。今、あなたを犯してるのは…誰ですか?』

 あの子は、自分の一番大切な人で。
 自分の何にでも変えても守ってあげたいくらい大事な人で。

 ……『そんな風』に好きなはずじゃなかった。

『安倍さん。答えて』
『――…っあ、…ぐち…ぃ…っ。やぐち…っ!』
 なのに。
 吉澤の指と舌に翻弄されながら頭の中で思い浮かべたのは、金髪を揺らして
無邪気に笑う、小さなあの子で。

 そのことに愕然としながらも、安倍はタガが外れたように、その愛しい名前を
呼ぶことしか出来なかった。
212 名前:仮面の告白 投稿日:2004/01/08(木) 12:39
「…やぐち…」

 下半身の鈍い疼きと、共に胸に浮かぶのはやっぱり矢口のことだ。

 汚されたのは自分なのに、汚されながら大切な人を心の中で汚してしまった。

 自分で気づかないように、こっそりとしまっておいた欲望を刃にして喉元に
突きつけられた。
 そうして初めて気がつく。
 
 自分は矢口とそういうことがしたかったのだと。

 自分が犯されるのはさほど大きな問題ではないのだ。
 問題なのは――気づいてはいけないことに気がついてしまったこと。

 何度頭を振っても一度半端に付いた火は消えない。

 安倍は殆ど無意識に、右手の中指を唇に含んで、左手に持ったままだった携帯
を再び開く。
 そしてさっき矢口から送られてきた添付画像を開くと、唾液で濡れた右手の指
をゆっくりと下半身に向かわせた。

213 名前:jinro 投稿日:2004/01/08(木) 12:51
>えー…アケマシテオメデトウゴザイマス(遅っ!

>>201 つみ様
 ( ´ Д `)<んあ…、それは…。
 (●´ー`)<まだ内緒だべ。

>>202 名無し読者様
 (●´ー`)<なっちもようやくそれに気づいたんだけどね。
 (〜^◇^)ノシ<おせーよ!

>>203 名無し読者様
 ( ´ Д `)<最高?
 (●´ー`)<なにが最高?
 (〜^◇^)<おいら!
 ( ´ Д `)(●´ー`)ノシ<ちげーよ!

>>204 ロン様
 (○^〜^)<官能!
 (〜^◇^)<何気に一番うれしい褒め言葉だったりしる!

>レスありがとうございます。
 どんどん更新間隔が開いていきますね…_| ̄|○だめぽ。
 次は風…じゃないや、銀の方を近々更新したいです。
 マターリですが…お許しを…
214 名前:jinro 投稿日:2004/01/08(木) 12:51



(●´ー`)<一応ね!


215 名前:jinro 投稿日:2004/01/08(木) 12:53



(○^〜^)<辻・加護、卒業かYO!


216 名前:つみ 投稿日:2004/01/08(木) 16:30
あうっ!
やられましたあ〜安倍さ〜ん!
一人取り残された安倍さんがかわいそうだけど
始めますか・・・見届けよう・・・
217 名前:jinro 投稿日:2004/01/09(金) 08:38
>>213 銀じゃなくて花だよ。
銀はここじゃん。_| ̄|〇
218 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 17:38
うわー凄い展開ですねー。
どうなるんだろう?
後藤さんと吉澤さん、怖いけどせつない..。
花の方も楽しみに待ってます!
219 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 11:02
更新お疲れ様です。
焦らず作者さんのペースで大丈夫ですよ。
ありゃ?てっきり私はご(ryがしてたのかと…。
これからどう展開していくのか分かりませんが、期待しております。
220 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:35
 ――パン!

 乾いた音とともに吉澤の頬に鋭い痛みが走った。
 
 叩かれた拍子に横を向いてしまった顔を正面に戻して、目の前に立つ後藤を見上げる。

「……顔、殴るなんてひどいな。一応、ウチ、アイドルなんだけど」

 その言葉に後藤は蔑んだ目でベッドに浅く腰掛けた吉澤を見下ろして、
「拳骨じゃなかっただけ感謝しなよ」
 と、吐き捨てるように言った。

 後藤にそんな目で見られるのは耐えられない。

 吉澤は今更ながらひりひりとしてきた頬を片手で押さえて俯いた。
 しかし後藤はそんな態度に苛ついたように、ぐいっと吉澤のシャツの胸倉を掴み上げる。

「なんで余計なことしたの?」

 余計なこと。
 あの時に横から口を挟んだこと。
221 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:36
『感じてるでしょ?』

 横から口を挟んだ吉澤に、安倍の体を弄っていた後藤は驚いて顔をあげた。
『頭の中で、好きな人想像していいですよ』
 なおも言葉を続ける吉澤を後藤は強い視線で睨み付けて、それから安倍の体を貪ることに没頭 
「ごっちん…。あれでわかったはずだよ」
「…なにが?」
「安倍さんの心の中には矢口さんしかいない。…どんなにウチが追い詰めてもそれは絶対変わらないよ」

 吉澤の言葉に再び後藤の右手が振りあがった。
 しかし後藤は振り上げた手を宙で止め、ぎゅっと握り締めてゆっくりと下に降ろした。

「――よっすぃーに…なにがわかるのさ」
「ごっちん…」
(分かるよ。痛いくらい分かるよ)
222 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:38
「――よっすぃーに…なにがわかるのさ」
「ごっちん…」
(分かるよ。痛いくらい分かるよ)

 こんなに好きなのに手に入らないもどかしさ。
 頭がどうにかなってしまうんじゃないかと思うくらい、寝ても覚めてもその人のことしか考えられなくて。

『――…ぐち…ぃ…、やぐち…っ』

 安倍さんの口から矢口の名前が出たとき、吉澤はそのまま後藤が正気に返ってくれればいいと思った。
 そうじゃないと、後藤が壊れてしまうような気がした。

「ごっちん。もうやめよう?終わりにしようよ」

 両手を握り締めたまま立ち竦む後藤の手をそっと取る。
223 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:40
「…安倍さんもさ、つらい思いしてるよ」
「…なっちも?」
「うん」
 安倍の名前に、色を失っていた後藤の瞳に光が戻る。

「なっちもつらいのかな?」
「…多分ね」

 暫くなにか考えるように後藤は視線を一点に集中させていたが、いきなり吉澤の手を振り解いて声をあげた。
「やぐっつぁんだよね?やぐっつぁんのせいでなっち、つらい思いしてるんだよねっ!?」

(ごっちん、何言って…)
「ち、違うよ!なんでそうなるんだよ!」
「だってそうでしょ?やぐっつぁんがなっちのこと好きになってあげないからなっちがつらいんでしょ?」
「…それは…っ」

 吉澤の心臓が早鐘のように鳴る。
224 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:42
ごっちんは何を言ってるんだ?矢口さんのせい?違う…、違うだろ)

 興奮気味の後藤を宥めるように、吉澤はベッドから立ち上がって肩を掴んだ。
「しっかりしろよ!なんで矢口さんのせいになるんだよ!」
 掴んだ肩を揺さぶって言い聞かせる。
( 後藤は暫くぶつぶつと何か口の中で呟いていたが、不意に顔を上げて、

「――うん…もう大丈夫」

 と、いつものふにゃっとした笑みを浮かべた。

「…大丈夫だから…。ごめん、よっすぃー、今日は帰ってくれる?」
「でも…」
「ごとーは大丈夫だから」

 不安が拭えない吉澤はなんとか部屋に残ろうとするが、努力も空しく後藤に追い出されてしまう。

「ごっちん…」

 閉められたドアを見つめて、吉澤は小さくため息をついた。


225 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:43


『――なっちぃ!おはよー!』

 いつまでも鳴り止まない携帯に出ると、元気溌剌といった感じの声が耳に響いてきた。
 昨夜あまり眠れなかった安倍は、少し顔を顰める。

「ごっちん…元気だねぇ」
『あれー?なっち、もしかして寝てた?』
「もしかしなくても寝てたよ…今何時?」
『えっとねぇ…八時半くらい』
「八時ぃ!?」

(冗談じゃないべさ…今日は午後からっしょ?もっと寝かせてよぉ…)
226 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/02/02(月) 14:45

 ごそごそとベッドの中で寝返りをうつ。
「でぇ?こんな時間にどしたのさ?」
『あのねぇ…今からなっちん家行ってもイイ?』
「……ええ!?今から?」
『うん…だめ?』
 ――正直、今は人に会いたくなかった。

 でも、妹のように可愛がっている後輩にそんな甘えた声を出されては無下にも出来ない。

(仕方ないなぁ)

 よいしょ、と上体を起こして、寝癖のついた髪をがしがしと擦りながら、安倍は後藤の訪問を了解した。

「ついでにさ…朝ごはんでも買ってきてよ」

『あはっ。オッケー』





227 名前:jinro 投稿日:2004/02/02(月) 14:51
>>216 つみさま
 はは…見届けてください。

>>218 名無し飼育さん様
 怖いけど切ない…自分じゃわからないけど、そう言ってもらえて嬉しいです。エヘ。

>>219 名無し飼育さん様
 あはは、何気にバレバレでしたね。
 マターリでしかも少ない更新でスミマセン。


228 名前:jinro 投稿日:2004/02/02(月) 14:52
>少しだけ更新しました〜。
 相変わらずのろい少ないのダメダメでスミマセン。
229 名前:jinro 投稿日:2004/02/02(月) 14:53



(●´ー`)ノ<ソロになったべ。



230 名前:つみ 投稿日:2004/02/02(月) 16:05
ごまさん・・・
よしこがごまさんをとめるしかないでしょう!
なちさんはこれからどうなるのか・・
ソロおめ!
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 16:37
壊れた心は何処へ..。
吉澤さんが一番辛そう(涙)。
232 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 22:32
やばい! なにやらやばい雲行きだー。
だからこそ最高です。
233 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/19(木) 17:29
風の作品からこっちに飛んできましたー。
こっちはずいぶんシリアスですねー。でもおもしろいです。
あとjinroさんのサイト探してみてもないんでURL教えてもらえますか?
これからも頑張ってください。応援してます。
234 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:53


「ふわわ…ごっちんは早起きだねぇ」

 後藤を部屋に招き入れてながら安倍は欠伸を噛み殺しながらごちた。
「紅茶、飲む?」
「うん!」

 リビングのソファに座った後藤はにこにこと機嫌がいい。

「ミルクでいい?」
「うん」
 二つのマグカップを持ってリビングに戻ると、後藤は買ってきたサンドイッチをすでにパクついている。
「ハイ」
「ありがとー。なっち、ハムサンドでいい?あ、サラダもあるよぉ」
 後藤からハムサンドを受け取り、安倍はテーブルを挟んで向かい側の床に座ろうとする。

 すると、後藤が不服そうに声をあげた。
235 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:53
「なんでそっち座んのさー」
「え?」
 きょとんとする安倍。
 後藤は自分の隣のぽんぽんと叩きながら、
「ここおいでよ」
「……でも狭いっしょ」
「なっちちっちゃいからだいじょーぶだよ〜。ね?」

 なおも言い続ける後藤に、安倍はやれやれと言われた通りに隣に腰を降ろした。
「ごっちんは甘えんぼうだね」
「…なっちだけだもん。ごとーが甘えたくなるのは」
「……」

 後藤の言葉に、そういえば、と安倍は思い出す。
(前にごっちんに好きって言われたっけ…)

 ごたごたしていてすっかり忘れていた。
 あの時の、真っ直ぐ自分を見つめてきた視線を思い出し、途端に安倍は落ち着かなくなる。
 今、隣で美味しそうに卵のサンドイッチを食べている姿とは正反対の。
236 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:54

「――なっち、食べないの?」
「…!…た、食べるよ…あ、フォークないね、サラダ、食べるのにいるよね」

 持ってくる、とまるで逃げるようにソファから立ち上がった。
 不思議そうに見上げる後藤の視線を背中に感じながら、キッチンに向かう。

(…なにやってるんだべか…なっちは…)

 ふうっとため息をついて気持ちを落ち着かせる。
 最近色々なことがあり過ぎて神経が過敏になっているのかもしれない。

 食器棚からフォークを二本取ると、もう一度ため息をついてリビングに戻った。

「――ね…なっち」
 粗方食べ終わった頃、後藤が少し言い難そうに口を開いた。

「…ん?」
237 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:54
 折角後藤が来てくれたのだから、久しぶりに街にでも出ようか、などと考えていた安倍は少し遅れて顔をあげた。

「…どした?」

 顔をあげてすぐに飛び込んできた後藤の不安そうな表情に思わず目を丸くする。
「なっち…だいじょうぶ?」
「――なにが?」

 なんとなく後藤が言いたいことが分かったが、敢えて気づかないフリをする。
 言ってしまったら、同じ苦しみをこの後輩にも味合わせることになってしまう。
 彼女は優しいから、きっと苦しむに違いない。

「なにがって…だからさ、こないだの…」
「……」
「なっち、無理してるんじゃないかなって…」
 段々小さくなる声と、俯いていってしまう顔。
 安倍はそっと後藤の頭に手をやると、ぽんぽんと優しく叩いた。
238 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:56
「なっちは大丈夫だよ?」
 その言葉に、後藤は俯いていた顔をハッとあげた。

「ごっちんは気にしないでいいよ」
「……には…の?」
「え?」
「ごとーには言えないけど…やぐっつぁんには言えるの?」

 思いもかけない言葉に安倍の体が強張る。
 心拍数が一気にあがった。

「ごっちん…?なに、言って…」
「そんなにやぐっつぁんが好き!?ごとーの方が…ごとーの方がやぐっつぁんなんかよりずっとなっちを想ってるのに!!」
「落ちつくべさ、ごっちん!やぐちは関係ないっしょ!?」

 興奮気味の後藤の肩に手をやり言い聞かせる。

(どうしたんだべ…ごっちんは)
239 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:57

「…ねえ、なっち…ごとーにしときなよ。ごとーなら絶対なっちを泣かさない。幸せにするよ?」
「ごっちん…」
 肩に乗せた手を掴まれ、ぎゅっと握り締められる。
 真剣な視線に堪らなくなって思わず俯いてしまうと、今度は引き寄せられて抱きしめられた。

「は、離して…」
「やだよ。やだ!」
「ごっちん、なっち怒るよ?」

 少し語気を強めてみても、後藤の腕はがっちりと安倍の体を抱きしめたまま離れない。
「ごとーが守るから。なっちのこと、一生守るから」

 ――ごとーのものになってよ。

 耳元に囁かれる強烈な愛の告白。
 抱きしめられる腕の強さに息をするのも苦しくなってくる。
「――なっち…」
 不意に体に回った腕が少しだけ緩まって、目の前に真剣な後藤の顔。
240 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:57
 逃げよう、と思うまもなく唇が触れ合った。

 何度も、ついばむような触れるだけのキスを繰り返す。
 その口付けはとても優しく、あんな情熱的な告白をする人がするそれとは思えなかった。

 触れる唇。

 あの時と同じように、まるで恋人にするような―――。

「や…やめて…!!!」

 気がついたとき、安倍は思い切り後藤を突き飛ばしていた。
 驚いた顔をしているだろう後藤をまともに見ることが出来ない。
 頭のどこかが麻痺してしまっているようだ。

(あの時は…よっすぃーに、無理やり)
(でも、今のキスは)
(あの時とまるで同じで…)
241 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:58

「なっち…?」

(ごっちんは後から来て)
(…なっちを起こしてくれて…)

「ごっちん…聞いてもいい?」
「なに?」
「…あの時さ、ごっちん、いつあの倉庫に来たの?」
「え?」
「…なっち以外にさ、誰か見た?」
「……見てないよ、誰も」

 心臓が破裂しそうだ。
 パジャマの胸元をぎゅっと握って、安倍はなるべく声が震えないように確信をついた。

「ごっちんさ、なっちが…されてる時、もしかして傍にいた?」
「…いないよ?なんで?」

 間違えるはずない。
 あんなに何回も何回も口付けられて。
242 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:58

「――や、ちょっと聞いてみた、だけ…」
 でも、これ以上真実を知るのは怖い。
 誤魔化すように苦笑いをしながら顔をあげた安倍の目に飛び込んできたのは、まるで子供のように無邪気に笑う後藤の顔だった。

「なっち、気づいちゃった?」

 この笑顔は見たことがある。

「実はねー。あの倉庫でなっち抱いたの、ごとーなんだよね」

 自分を束縛していた吉澤と同じ笑顔だ。

「なっち可愛かったよー。必死で声とか我慢しちゃって」

 ――心臓が破裂しそうだ。
243 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 22:59
「あんまり可愛かったからさー。何度もしちゃって…ごめんね?」

 カラカラに乾いた喉を唾液を飲み込んで潤して、安倍はやっと口を開く。

「……なん…で…?」

 自分を縛っていたのは吉澤で、でもあの時自分を無理やり犯したのは、目の前で笑うこの子で。

 瞬きを忘れていた目がひりひりしてきたから、一度瞬きをしたら涙が零れた。
 それを見て、後藤は笑顔のまま指先で安倍の頬を伝った涙を拭った。

「なんで?決まってるじゃん。なっちが好きだから」

 無邪気な笑顔のまま、後藤は指先に付いた雫を唇に運んで舐め取ると、

「なっちが好きだからだよ」

 呆然としている安倍に、もう一度同じ言葉を繰り返した。





244 名前:欠けた歯車 投稿日:2004/03/04(木) 23:08
>>230 つみさま
(●´ー`)<佳境に入ってきたべ
(O;^〜^)<もう誰にも止められないYO!

>>231 名無し飼育さんさま
(OT〜T)<そうかも…。

>>232 名無し飼育さんさま
(●´ー`)<やばい雲行きだけど最高…。
( ´ Д `)<んあ…微妙だねぇ。

>>233 名無し飼育さんさま
(〜^◇^)<jinronのホムペは…。
(●´ー`)<URL貼るわけにいかないので『GN-llbc』でググってみてくれだべ。

>レスありがとうございます。
 約一月ぶり…_| ̄|○ダメポ

245 名前:jinro 投稿日:2004/03/04(木) 23:09




(●´ー`)<ドラマ主題歌決まったべさ!



246 名前:jinro 投稿日:2004/03/04(木) 23:12
エビフライに乗りながら隠すべさー


         ∩__∩  ≡==
        ノノノ人ヽ   ≡==
     .,.、,、(´ー`●) ⌒\     /i
    .;'`;、、:、. .:、:,∪:,.:;:(_)`''':,'.´ -‐i(´´(´⌒;;
    '、;: ...: ,:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄≡≡(´⌒(´⌒;;;≡
     `"゙' ''`゙ `´゙`´´´≡≡≡(´⌒(´⌒(´⌒(´⌒;;;≡
247 名前:つみ 投稿日:2004/03/05(金) 00:37
ついにあべさんも知っちゃいましたね・・・
どういうCP?になっていくのかが楽しみです!
248 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 00:43
なにやらますますえらいことになってますなぁ
249 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 01:11
やばいはずなのにほのぼのした空気をかもし出すこの子が怖い
というか幸せになってくれえ・・・
250 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 18:40
狂気のような後藤の愛…素晴らしい(w
251 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 18:05
内容の出来もさることながら、表現が巧みですね。
「意識を手放した」なんてオキニの表現です。
修辞学の専攻の方ですか?
252 名前:jinro 投稿日:2004/04/09(金) 02:56
>えーと、申し訳ないんですが、忙しくてしばらく更新できなさそうです。
 早ければ今月中に、遅くても来月半ばくらいには戻ってきますので、
 まったり舞ってていただけるとありがたいです

(●´ー`)つビシッ!<舞ってどうするんだべ!
253 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/17(土) 12:14
はい。
いつまでも待ちますよ
254 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:52
 うまく頭が働かない。

 呆然とする安倍の頬に後藤の手が触れた。
 まるで壊れ物を扱うみたいに優しく、なぞるように滑った指先は耳に掛かる髪をそっと掻き分けた。

「――ずっとつけててくれてるんだ」

 嬉しそうな無邪気な笑顔。
 左の耳たぶに触れた冷たい指先に、安倍の意識が戻ってくる。

「このピアス」
「…なに、言って」
「よっすぃーにね、ごとーが頼んだの。なっちにつけてきてって。本当はごとーが自分でつけてあげたかったんだけどさ…、ね?まだ内緒だったし」

 言いながら後藤は自分の髪をかきあげた。
 その耳には安倍の耳についているものと全く同じ銀のピアスが光っていた。
255 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:52

「えへへー。お揃い」
「…ごっちん…どぉして…」

 まだうまく頭が働かない。

 安倍の耳に触れたまま、後藤はまるで小さな子供が秘密を打ち明ける時のような顔をして、

「ごとーね、なっちに穴、開けたかったんだ」

 と笑った。

 ――ウチ、安倍さんに穴開けたかったんすよ。

 吉澤の言葉と重なる。

 頭がクラクラして、思わず額に手をやって顔を顰める。

「――ひゃっ…!?」

 次の瞬間、視界が回転して後藤に押し倒されていた。
256 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:53

「なに、する…」
「ほんとはさあ」

 蛍光灯が逆光になって後藤の顔がよく見えない。
 
「なっちのね、ココに穴開けたかったんだよ」

 言葉と共に、後藤の手が安倍のスカートの中に滑り込んだ。
 躊躇いもせずに下着越しにそこに触れると、指先できつくなぞりあげた。

「…っ!や、あ…っ」

 びくん、と腰が跳ねた。
 その反応に後藤は嬉しそうにクスクスと笑いながら言葉を続ける。
「でもごとーは男じゃないからアレもないし…それ以前になっち、バージンじゃないでしょ?」

(こわい…こわい)
257 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:53
 後藤を怖いなんて思ったことは初めてだ。

 心臓が壊れるんじゃないかというくらい激しく鳴っている。
 押さえつけられた腕を動かそうとするが、やっぱりあの時と同じ、徒労に終わる。

「だからね、ピアスにしたんだぁ」

 これならお揃いにできるしね、と後藤は楽しそうに言うと、安倍に触れるだけのキスを落とした。
 しかし、過敏になっている安倍はそれだけで体を強張らせてしまう。

「怖がらなくてだいじょーぶだよ?優しくするからぁ」

 後藤の手が安倍のシャツに掛かる。
 離されて自由になった手で安倍は後藤の肩を押し返す。

「やだ…っ!やだよ、ごっちん!」
「…なっち…」
「なんでこんなことするのさ…っ。なっちは、こんなことしてもごっちん好きにならないよ…っ?」
「…やぐっつぁんが好きだから?」
258 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:54

 矢口の名前があがって、ぴたりと安倍の抵抗が止まった。
 さっきと違って無表情で見下ろしてくる後藤を見上げる。

「なん、やぐちは、関係ない…」

 矢口の名前が出ると途端に落ち着かなくなる。
 そんな安倍の心境を知っているのか、後藤はまたふにゃっとした笑顔に戻って、唇が触れ合う
寸前まで顔を近づけて。

「関係ないの?…じゃあやぐっつぁんに言ってもいいんだ?」
「何を…」
「なっちがよっすぃーと寝たって」
「なに言うべさ…!なっちはそんなことしてないっ!」
「したじゃん。この前倉庫でさ」
「あれはごっちんが…!」
259 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:55
 後藤は混乱する安倍の上から退くと、ソファに置いてあった自分の鞄を手に取った。

「まあねえ、確かになっち抱いたのはごとーなんだけど」

 はい、と後藤は鞄から一枚のポラロイド写真を取り出して体を起こした安倍に渡した。

「なに…?」
「それ見せたら勘違いしそーじゃん?」

 恐る恐る写真を表に返す。

「――…!…」

 血の気が引く、とはまさにこの事だ。
 力の抜けた手からぱさりと写真がカーペットに落ちた。

「こんなの、やぐっつぁん見たらどんな反応するかなぁ?」

 クスクス笑いながら、後藤は落ちた写真を拾い上げた。
 その拾い上げた写真に写っているのは、紛れもなく、吉澤に圧し掛かられている、服の乱れた自分自身。
 誰がどう見ても行為の真っ最中の姿。
260 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:56
(あの時…撮られたんだ…)

 麻痺しかかった頭で必死に考える。
 おそらく気絶してから撮られたのだろう。

 屈辱に怒りがこみ上げてくる。
 顔を上げて強い視線で後藤を睨み付ける。

「なんでこんなことするのさ…!」

 涙目で睨み付ける安倍に、後藤は笑顔のまま答える。

「なっちが欲しかったから」
「……っ」
「ね?この写真、やぐっつぁんに見られたくないでしょ?」
「…ぃ…よ…」
「こんな写真見たらやぐっつぁん、なっちのこと軽蔑するだろーね?」

 ――そんなの構わない。

 嫌われるくらい、憎まれるくらいぜんぜん構わない。
 一番怖いのは。
261 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:56


「それに、傷つくだろーね?自分の恋人が親友とデキてたーなんて分かったら」

 一番怖いのは矢口を傷つけること。悲しませること。

「…ずるいよ…ごっちん」

 目頭がじんわり熱くなって、涙が溢れてきた。
 安倍の涙を見て、後藤は一瞬苦しそうに眉を顰めたけれど、すぐに笑顔に戻って。

「ずるくてもいーや。なっちが手に入るなら」

 再びその場に安倍を押し倒した。




262 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:57

「よっすぃー?なにやってんの、こんなとこで」

 スタジオのロビーで声を掛けられて、吉澤は飛び上がるほどびっくりした。

「や、矢口さん…」
「楽屋いかないの?」
「あ、ちょっと、用があって…」
「…こんなとこで?」
「はぁ、まぁ」

 いまいち歯切れの悪い吉澤に、矢口は首を傾げていたが、やがて「早く来なよ」と言い残して
楽屋に向かっていった。

 矢口の小さな背中がエレベーターに消えるのを確認して、吉澤はほっと胸を撫で下ろした。
 ふうっと息をついて再び壁にもたれる。

(…ごっちん…あれからどうしたかな…)

 メールを送っても返事がないし、携帯も出てくれない。
 自宅に電話したら朝から出かけてると母親が出て言っていた。
263 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:58

 とにかくもう一度話がしたくて、朝早くからスタジオに来て後藤を待っているのだが、他のメンバー
は来るが後藤は一向に現れない。
 そして安倍も。

「…まー、ふたりとも遅刻魔だし…」

 口の中でぶつぶつ言っていると、ロビーの扉から見慣れた二人連れが入ってくるのが見えた。
 後藤と安倍だ。

 後藤はニコニコしながら安倍の手を握っている。
 安倍の表情は目深に被った帽子のせいでよく分からない。

「ごっちん、…安倍さん」

「よっすぃー。こんなとこでなにしてんの?」
「ごっちんを待ってたんだよ…メールなんで返してくんなかったの?電話も出ないし」
「あははー。ゴメンゴメン」

 ちっとも悪びれる様子はなく、後藤は後ろで居心地悪そうにしている安倍の肩に腕を回した。
264 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:58

「ずっとなっちとラブラブしてたからさー。携帯なんて眼中になかったよ」
「ラブラブ?」

 笑顔の後藤と俯いたまま表情の伺えない安倍を交互に見やる。

(どーいうことだ?)

「あ!遅れちゃうよ。そろそろ楽屋入んなきゃ」

 そう言うと後藤は安倍の手を引いてエレベーターに向かう。
 慌てて吉澤もふたりのあとを追った。

 エレベーターの中は三人とも一言も喋らなかった。

 楽屋に入ると、自然と吉澤は矢口の隣に腰を落ち着けた。
265 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 02:59
「よっすぃー、なにしてたの?」
「や、まあ…」

 そこまで話した時、いきなり後藤が大声を上げた。

「みなさーん!本日、私ごとーまきとなっちはめでたく恋人同士になることができましたー!!!」

 その言葉に俄かに騒がしくなる楽屋。

「へえ〜。なっちと後藤がねぇ」

 矢口も驚いた顔をしている。

「なっち、こないだは恋人いらないなんて言ってたくせに…後藤が本命だったのかぁ」

 ――違う。
(安倍さんが想ってるのは矢口さんだ)

 メンバーに質問攻めにされているふたりを見て、吉澤は呆然とした。



266 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 03:00

 収録の合間の休憩時間。
 なんとか隙を見つけて吉澤は後藤を人気のない階段の踊り場に引っ張り出した。

 なっちとイチャイチャしたいのにーとぼやく後藤を無視して、吉澤は単刀直入に尋ねた。

「ごっちん…、安倍さんになにしたの?」
「なにしたって…なんもしてないよー」
「うそ」

 真面目な顔でじっと後藤を見つめる。
 暫く黙って見詰め合っていたけれど、やがて後藤は、ふうっと息を吐いて吉澤から視線をそらした。

「ほんとになんもしてないもん。…これ、見せただけ」

 ポケットから取り出した写真を吉澤に渡す。

「これ、あの時の…!」
267 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 03:02

 ――よっすぃー、なっちの上に被さってみて。

 ――ちょっとね。なんかに使えるかと思って。

「この写真で安倍さん脅してるの?」

 あり得ないと思った。
 そこまでするなんて。

「べっつに脅してなんかいないよー?この写真、やぐっつぁんに見せようかなって
言っただけだもん」
「そ、それを脅してるって言うんだよ!…ごっちんしっかりしてよ!そんなんで安倍さんと
見かけだけの恋人になれて嬉しい!?」
268 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 03:03
 後藤の肩に手をやろうとしたら、ぱしんと跳ね除けられてしまった。

「――ごっちん…」

「嬉しいよ。なっちがそばにいてくれる…それだけでごとーは嬉しいよ!!!」

 怒鳴るように言い捨てると、後藤は踵を返して階段を駆け下りて行った。

「――…ごっち…っ」

 追いかけることが出来なかった。
269 名前:眩暈 投稿日:2004/04/28(水) 03:04

 ぎゅっと唇を噛んで壁にもたれかかる。

 これ以上後藤に関わると、いつか飲み込まれる気がした。

 彼女の純粋すぎる想いに、飲み込まれてしまう気がした。

 ――それでも、彼女の狂気に火が灯るきっかけを与えてしまったのは紛れもなく
自分なのだ。

 唇に塗ったグロスが落ちてしまうほど強く噛み締めて、吉澤は拳で壁を叩いた。






270 名前:jinro 投稿日:2004/04/28(水) 03:12
>>247 つみさま
(●´ー`)<なっちどうしたらいいんだべ・・・
( ´ Д `)<・・・

>>248 名無し飼育さんさま
(●´ー`)<ヤバイ?
(〜^◇^)<ヤバイ!

>>249 名無し飼育さんさま
( ´ Д `)<なっち・・・ごとぉたち幸せになれるのかな?
(●´ー`)<どうだろうね・・・

>>250 名無し飼育さんさま
( ´ Д `)<んぁ、ごとぉ素晴らしい?
(〜;^◇^)<素晴らしくこわいってことじゃないのかな?

>>251 名無し飼育さんさま
(〜^◇^)<修辞学?
(●´ー`)<ただのモーヲタだべさ

>>253
(●´ー`)<お待たせしてしまって申し訳ないべさ!

レスありがとうです。
次は出来るだけ早く・・・

(●´一`)<いつも同じこと言ってるべな

_| ̄|○
271 名前:jinro 投稿日:2004/04/28(水) 03:14



( ´ Д `)<んぁ


272 名前:jinro 投稿日:2004/04/28(水) 03:16
             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ,__     |  次こそは早めに更新できますように・・・
    /  ./\    \_______________
  /  ./( ・)\       o〇
/_____/(●´ー`)\   ∧∧
 ̄|| || || ||. |っ¢..||    (,,  ,)ナムナム
  || || || ||./,,, |ゝ||ii~   ⊂  ヾ
  | ̄ ̄ ̄|~~凸( ̄)凸 .(   )〜
273 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/28(水) 07:22
更新乙彼です。
四角関係ですね…続きが楽しみです。
ごとーさん、怖いけどそのままなっちを攻め続けてくださいw
274 名前:つみ 投稿日:2004/04/28(水) 15:56
想いが絡み合ってますね・・
一番幸せになる形はどんなだろう・・・
次回も待ってますよ!
275 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/29(木) 01:41
作品が高品質なのは言うまでもなく、作者さんによる、
更新の後のレスの顔文字(絵文字?)がカワイイ、と思うのは私だけでしょうか…
276 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/29(木) 19:23
いや吉澤、お前も結構ひどいことしてきたんだぞ…
というかやっぱ矢口が一番かわいそうなのかなあ。
このドロドロ感がたまらんです。最高。
277 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/29(木) 22:55
間違いなく一番悲惨なのは矢口でしょ
278 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 09:57
矢口の幸せを考えるなら吉澤と。と思うけど
でも後藤を救うには吉澤が必要な気がするし…

安倍と後藤が解りあうことができれば一番いいんだけど
できないなら矢口に気持ちを伝えてしまえとも思ったり。

やべ。ほんとこの作品にはまってる(w
279 名前:まーちゃん 投稿日:2004/05/03(月) 12:53
サイトの方も見させていただいてます^^まーちゃんです。

この話・・・はまったw
ごっちんの言葉に涙してしまいました。゚(つд∩)゚。
280 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/20(日) 14:45
待ってるよー
281 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 15:32
待ってます
282 名前:jinro 投稿日:2004/08/10(火) 01:08
放置しててすみませんヘコヘコ
来月からまた花、銀ともフカーツしまつのでお待ちを…
283 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 12:38
よかったぁ
来月まで楽しみに待ってます
284 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 18:00
おち
285 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/19(木) 23:37
楽しみにお待ちしております。
作者さんのペースでいいので。
286 名前:jinro 投稿日:2004/08/20(金) 01:35
 お待たせしてしまってどうにもこうにも…
 軌道にのるまでsage進行しまつ

>>273 名無し飼育さん様
   (〜^◇^)<四角関係?
   (●´ー`)<やぐちは微妙に蚊帳の外だべ
   (〜;´◇`;)<・・・

>>274 つみさま
   ( ´ Д `)<作者はみんな幸せにする気があるのかと小一時間(ry

>>275 名無し飼育さん様
    更新の遅さ、話の拙さをAAで誤魔化し(ry

>>276 
>>277 名無し飼育さん様
   煤iO^〜^)
   (〜;´◇`;)

>>278 名無し飼育さん様
   (●´ー`)<はまってくれてなによりだべ

>>279 まーちゃん様
   (●´ー`)<こっちもサイトもよろしくだべ

>>280
>>281
>>283-285
    お待たせしてしまって・・・ヘコヘコ
287 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:37
「安倍さん!」

 吉澤は楽屋を出てトイレに向かった安倍を追いかけた。

「――よっすぃー?」
「…話、あるんですけど…」
「……」

 その言葉に、安倍は少しだけ逡巡するように視線を泳がせた。
 それから視線を合わせないまま、小さく頷いた。

「ここじゃあれだから…少し、外でようか」
「はい」


 外に出る、と言ってもまだ撮影が残っているのであまり遠くにはいけない。
 安倍は黙ったままスタジオの近くにある小さな公園に向かい、吉澤も黙ったまま安倍の後ろを歩いた。

 ちょうど夕食時の公園は人影がなく、安倍は手近なベンチに浅く腰を降ろすと、小さくため息をつく。
288 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:38

 疲れているのか、いつもより顔色が悪いように見える。
 
 話をどう切り出したらいいものか、吉澤は頭を悩ませる。

 ――話があると言ったものの、なにを話せばいいのかすら分からなかった。

 自分は彼女に謝るべきなのだろうか。

 ――後藤の言いなりになって傷つけたこと?それとも…

「…よっすぃー」
「は、はい」

 呼ばれた声に顔を向けると、安倍はどこか頼りなさそうな目をしてこちらを見上げていた。
 この人のこんな弱弱しい顔を見るのははじめてで、心が痛んだ。

「…ごっちんのこと、好きなんだよね?」
「……はい」
「そっか」
289 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:39

 安倍は微かに唇に笑みを浮かべて、視線を地面に落とした。
 
「そっか…なら仕方ないか」

 (仕方ない?)

 意味が分からない。

「安倍さん、それ、どーゆう…」
「よっすぃーがさ、ごっちん好きならごっちんの言うこと聞いてあげるのは仕方ないよね」
「――なに、言って…」
「まいったなぁ…。なっち、なんも知らないでさぁ…」

 俯いたまま、安倍は言葉を続ける。

「なっち、馬鹿みたいっしょ?」

 なにも言えなかった。

 後藤に好かれたくて、後藤のためだけに動いていた自分に今更怒りがこみ上げる。
290 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:40

「…安倍さん」
「よっすぃーもつらいねぇ…。…なっちのせい、かな…」
「なんで…っ、そんな」
「やぐちのこと、どうするの?」
「……」
「結局やぐちも傷つけちゃうべさ…」

 確かに。
 このまま矢口と付き合い続けるわけにはいかない。
 それならいっそ、すべて矢口に話してしまおうか、吉澤の頭にそんな考えが浮かぶ。

「よっすぃーはさ、ごっちんのこと、あきらめられるの?」

 (…わからない、そんなのわかんないよ)

 そんな思いが顔に出たのか、安倍は吉澤を見て、ふっと目元を緩めた。

「――難しいこと聞いたね?ごめん」
291 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:42

 そろそろ戻ろうか、とベンチから立ち上がって、安倍は吉澤に背中を向けて歩き出す。
 その小さな背中に吉澤は気がついたら声をかけていた。

「安倍さん。安倍さんはこれからどうするんですか?」

 その言葉に、小さな背中が強張ったように見えたのは気のせいだろうか。
 安倍は振り返らない。

「――今朝ね、ごっちん家にいたんだけどさ」

 振り返らないまま、静かに語りだす。

「そんで…いろいろお話して…えっち、してさ」

 安倍はなにを話すつもりだろう。
 真意が分からない吉澤は黙って聞いているしかない。

「ごっちん、しながらさ、好きだって言うんだよ。何度も、何度も」

 安倍と後藤が抱き合っている姿が頭に浮かんで、吉澤は思わず唇を噛んだ。
 自分もそうだったのだ。
292 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:43

 ――後藤を抱きながら、何度も何度もうわ言のように愛の言葉を囁いた。

「でも言うだけでさ、なっちに好きって言ってとか、言わないの。なっち思ったよ。ああ、ごっちんは本当に
なっちのことが好きなんだ、って。なっちさえそばにいたら他になんもいらないんだって」

 そこまで話すと、安倍は不意に体ごと吉澤の方に振り返る。

「ごめんね?よっすぃー」

 謝罪の意味が分からない。

「なに、謝るんですか…?」

「なっちね、やぐちが一番なんだ」

「……」
293 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:44

「ごっちんがなっちを好きなように、よっすぃーがごっちんを好きなように、なっちはやぐちが一番好きなんだ」

(なにを言ってるんだ、このひとは)

「なっちがさ、そばにいたらごっちん、やぐち傷つけないって言うからさ」
「……」

 ぜんぶ自分に返ってきた。

「なっちはごっちんのそばにいるよ。ごっちんの気が済むまで」

 後藤は安倍の体は手に入れたけれど、心は手に入れられなかった。
 吉澤も同じだ。

「安倍さ…」
「だからごめんね?…やぐちを幸せにするために、今度はなっちがよっすぃーとごっちんを使うよ?」
294 名前:眩暈 投稿日:2004/08/20(金) 01:45

 眩暈がした。
 ジーンズのポケットに入れた携帯が震えた。

 くらくらする頭を抑えながら携帯を取る。
 開いたディスプレイには『ごっちん』の四文字。

「――……」

 出ようかどうか迷っている吉澤に、安倍が柔らかく声を掛けた。

「いいよ?電話、ごっちんからでしょ?出なよ」

 ――柔らかい笑顔。

 飲み込まれそうだ、そんなことを考えながら、吉澤は携帯の通話ボタンを押した。






295 名前:jinro 投稿日:2004/08/20(金) 01:46
久々の更新・・・

sageでいきまつ
296 名前:jinro 投稿日:2004/08/20(金) 01:47



(●´ー`)ノ<隠すべさ



297 名前:jinro 投稿日:2004/08/20(金) 01:49
    .__   〃ハハ
    |. ● | (●´ー`)
     ̄ ̄| ( O┬O
  〜〜  ◎-ヽJ┴◎  キコキコ
298 名前:まーちゃん 投稿日:2004/08/20(金) 13:30
キタ━(〜^◇^)0^〜^)´Д`)(●´ー`)━!!!!!!!!

待ってました(´∀`)
さすがだなぁ、なっち
299 名前:まーちゃん 投稿日:2004/08/20(金) 13:31
すいません…ageてしまった(;´Д`)
300 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/20(金) 19:44
おお! 更新来てくれた
しっかし……なっちが凄みというか恐さを見せてきたような
いや愛情なんだろうけどもこの話では誰の愛情も恐いし
続きをドキドキしながら待ちますです
301 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/22(日) 06:54
なっち…何かを極めましたな。
みんな一方通行だからドロドロですね。
更新お疲れ様です。
302 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 17:20
更新お疲れさまです。
なんか、どんどんすごい展開になっているので驚きです。

みんなが幸せになれるといいなぁって思っています。
303 名前:LOVE 投稿日:2004/08/31(火) 19:42
遅くなりましたが、ヒサブリの更新おつかれさまです。

・・・なっちの言葉が気になりますねぇ。
好きな人のためにとんでもないことでもしてしまえる・・・
そんなよっすぃ〜やなっちに惹かれますね。

続き期待してます。
304 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/18(土) 21:09
待ってます。
305 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 23:30
まだかな? 
306 名前:jinro 投稿日:2004/11/18(木) 14:41
ぬあー!
放置しててスミマセン ヘコヘコ

えー、ぶっちゃけ、こっちも花も年内は更新難しそうです(´・ω・`)

でもなんとか時間を見つけて少しずつ書き溜めているので、
今暫くお待ちください

絶対にどっちもきっちり完結させる気マンマンですので!

本当に申し訳ないです
307 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/18(木) 22:03
作者さんわざわざ報告thx
のんびり待ってます
308 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/30(木) 23:47
もうすぐ年も変わりますね。
来年、期待しています!!
309 名前:名無し 投稿日:2005/02/05(土) 02:34
一気によんだけどカッケー!
続き期待
310 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/14(月) 22:48
月末にはスレ整理始まりますんでお願いします

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