Buglers holiday
- 1 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時09分39秒
- どーも、はじめまして。でぃどるといいます。
おがたか書きます。すごい短いです。
感想とか大歓迎です。
でもへたくそなんでお手柔らかに。
- 2 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時10分56秒
- 「まこっちゃん、帰ろう。」
不意に後ろから声がして、振り向くと、紺ちゃんが立っていた。
ボーっとしていたので、授業が終わったことにも気づかなかった。
「ふぇ?あ、うん。いや、待って。今日は・・・何曜日?」
「木曜日。」
「・・・・・・ごめん、今日部活。」
「そっか。じゃ、また明日ね。」
「うん。ごめんね。」
- 3 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時11分55秒
- 彼女が去ったドアをしばらく眺めて、ふぅ、とため息をひとつ。
そして、勢いをつけて大袈裟に立ち上がると、机の中の荷物を鞄の中に押し込む。
よっこらしょ、と鞄を肩に提げ、のろのろと歩き出す。
(あーあ。嫌だな。サボっちゃおっかな。)
紺ちゃんと一緒に帰っときゃよかったと、今更ながら後悔する。
- 4 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時13分15秒
- 今からでも遅くないかも、と思い、ダッシュの体勢になった途端。
「麻琴。」
下の名前で呼ばれた。この呼び方をするのは、一人しかいない。
(・・・サボれなくなった。)
「なんすかぁ、先輩。」
「今日部活だよ。忘れてなんか無いよね?」
「忘れるわけ無いじゃないっすかぁ。」
忘れようとはしていました。
「まさかサボろうとは思ってないよね?」
「や、やだなぁ、そんな事思ってもないですよぉ。」
思ってました。
「ホントに?」
「ホントです。」
嘘です。
「まぁいっか。とりあえず、部室行こう。」
「はーい。」
よかった、無事難は逃れた。
あー、でも部活は嫌だぁ。だりぃ。
- 5 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時13分58秒
- せかせか歩く彼女の後ろを、のんびりとゆっくりと歩いていく自分。
窓の外を見ると、雲がふわふわと形を変えてゆっくり空を泳いでいた。
いいなぁ、雲になりたいなぁ。
そんなことを考えていると、突然腕をつかまれ、引っ張られた。
「ちょ、ちょっと、そんなに急がなくてもいいじゃないっすかぁ!」
「そんなにゆっくりされるとこっちがムカついてくるの!ほら、早く!」
ちぇ、と舌打ちすると、ギロリと睨まれた。
だから、もう悪ふざけはやめた。
- 6 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時14分43秒
- とうとう部室についてしまった。
彼女が鍵をポケットから出している間に、再び空に目を向けた。
相当風が強いのか、さっきの雲は、もういない。
またさっきみたいに腕を引っ張られるのは嫌なので、すぐにドアに目をやった。
ガチャガチャ、ガラリ。
ドアが開いた途端、彼女は吸い込まれるようにして中に入ってしまった。
それに続き、自分は普通のスピードで部室に入った。
- 7 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時15分50秒
- 相変わらず、部室は埃の溜まり場だった。しかも、今日は一段と酷かった。
「窓、開けて。」
「あ、はい。」
できる限りすべての窓を開けると、少しましになった気がした。
扇風機をつけて、奥から楽器を出してくる。
ケースから出すと、待ってましたと言わんばかりにきらきらと輝く銀色のボディ。
欲しくて欲しくて、ようやく親に買ってもらった、バックのトランペット。
中古だけど、相性は抜群にいい。
- 8 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時16分35秒
- まずはマウスピースを使って軽く準備運動。(?)
口の筋肉が解れてきた所で、マウスピースを本体に装着。
さぁ、やるぞ。そう思って意気込み、息をたっぷり吸い込んだ、が。
(・・・窓開いてる。)
教室の向こう側はアパート。ここで大きな音を出したら、明らかに近所迷惑。
でも閉めたら閉めたで埃が酷い。
(音出せねー!)
仕方なく、なるべく小さな音できれいな音を出す練習をする。
たーんたーらたったーったったったったったった。
(・・・・・・クラリネットめ)
音が小さいクラリネットは近所迷惑にならないらしい。
- 9 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時17分11秒
- ふと気がつくと、もうクラブの終了時間だった。
「先輩。時間。」
「ん?あ、ホントだ。じゃ、今日のクラブ活動は終了。お疲れ〜。」
「お疲れ様でした。」
トランペットは手入れが楽だ。マウスピースを抜いて、ケースに入れる。
汚れたら、クロスで拭くだけ。
それに比べて、クラリネットはというと。
紐のついた布(スワブだったっけ?)で水気をきっちりとったり、5つに分解したり。
片付けしてるのを見ながら、いつも思う。
(ラッパでよかった。)
- 10 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時17分47秒
- 「あれ、今日は持って帰るんだ。」
手に持ったケースを見て、彼女が言う。
(あ。直すの忘れてた・・・ま、いっか。)
「はぃ、今日あんまし吹いてないんで。」
「そっか。」
そう言ってドアを閉め、施錠をし、彼女は鍵を職員室に預けに行った。
ずっと伸ばしていた背筋をふにゃっと曲げて、下足室へ向かう。
自分のロッカーを開け、靴を出し、踵の潰れた上履きを突っ込む。
靴を履いて外に出る。校門に凭れ掛かり、息を吐き出した。
- 11 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時18分50秒
- ぼ〜っとしていたら、後ろに気配を感じて、振り返ったら彼女がいた。
「行こうか。」
彼女は無表情のまま。
「うん。」
- 12 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時19分24秒
- 10mほど先には、事故の多い交差点。
小さい頃からずっと、ここを渡る時は注意しろ、と言われてきた。
この、前を歩く彼女に。
- 13 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時19分56秒
- ゆっくりとついていく。
そんな自分を気遣ってくれているのか、少し歩幅を小さくしてくれている。
さっきとは違って、少しだけ優しい彼女。
「ねぇ、愛ちゃん。」
「ん?」
少しだけスピードを緩め、後ろを振り向く彼女。
- 14 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時20分27秒
- 学校の中では、こんな風に親しく呼んじゃダメ。
中学に入ったとき、突然押し付けられたルール。
なんで?どうして?と聞いても何も答えてくれなかった。
だから何もわからなかった。
一つだけ思ったことがあった。
――愛ちゃんは、自分のこと嫌いになったのかもしれない。
なぜかその考えはすんなりと受け入れられた。
- 15 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時21分10秒
- 「愛ちゃんは、私の事どう思ってる?」
なるべく軽い感じで聞いてみた。でも、ちょっとだけ声が震えた。
「どうって、・・・どうも思ってないよ。」
後ろ向きに歩きながら、彼女は答えた。
- 16 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時21分58秒
- どうも思ってない。
・・・好きでも、嫌いでもない?
- 17 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時22分35秒
- しばらく何も考えられなかった。
うつむいたまま、立ち止まっていた。
- 18 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時23分29秒
- 車のクラクションで、無理やり現実に引き戻された。
顔を上げると、首を傾げて自分を見ている彼女はライトに照らされていて。
甲高いブレーキ音と同時に走り出した。
最初に前から。次に横から。
横からの衝撃のほうが大きかった。
- 19 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時24分10秒
- 顔を上げた彼女と、目が合った。
- 20 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時25分28秒
- 目が合っていた。
突き飛ばされた瞬間から、麻琴の体が宙を浮くまでずっと。
その目からは、涙が溢れていた。
- 21 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時26分22秒
- どさっという音がして、麻琴の体は地に落ちた。
「・・・・・・あ、・・・」
声が、出ない。
- 22 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時27分26秒
- 足は、動く。動かなくても、無理やり動かす。
車にはねられた。大切な幼馴染みが。親友が。
大切な幼馴染み?・・・シンユウ?
さっき私は、何て答えた?
『愛ちゃんは、私の事どう思ってる?』
- 23 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時28分00秒
『どうって、・・・どうも思ってないよ。』
- 24 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時28分55秒
- 急に足がすくんだ。
酷いことを言った。
・・・麻琴の元へ、行けない。
- 25 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時30分18秒
- ・・・彼女があまりにも真剣だったから。
気迫に押されてその場しのぎで口から出任せを言った。
行くんだ。行かなきゃならない。
行って、訂正しなくちゃ。
- 26 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時31分08秒
- 小さい頃からどこに行くのも一緒で。
一年上のくせに、いつも麻琴に甘えてばかりで。
これじゃダメだ、と思い、ルールを作った。
『学校の中では、こんな風に親しく呼んじゃダメ。』
突然だったから、麻琴は当然嫌がった。
自分も嫌だったけど、聞く耳を持たないふりをした。
その内、次第に麻琴が自分から離れていった。
安心した。けど、嫌だった。
- 27 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時32分14秒
- 高校に入って、前から興味があった吹奏楽部に入った。
一年後、麻琴も入ってきた。
入ってきたとき三年しかいなかったし、同級生は幽霊部員だけ。
麻琴には同級生なんていなかった。
だから部活中二人きりになることが多かった。
家も隣同士だから、自然と一緒に帰るようになった。
と言うか、鍵を返して帰るときに、彼女が勝手に校門で待っていた。
それがまるでお使いに行った子供を待っている母親のようで、鬱陶しかった。
それからだ。麻琴と接する態度が適当になってきたのは。
- 28 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時32分48秒
- 力なく横たわった麻琴の上半身を抱き起した。
目は半開き、口端から血が一筋。
頭を支えると、麻琴が少し顔をしかめた。
水の感触がした。
「・・・あ、い・・ちゃん・・・。」
呼吸が弱い。
「何?」
「・・・ごめ、ん・・」
泣きそうな顔で、麻琴は謝った。
- 29 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時33分29秒
- 「・・・なんで、謝るの?」
「・・なんか・・勝手に・・・勘違い、しちゃってた、みたい・・・」
「な、にを?」
弱弱しい麻琴を見て、涙が出てきた。
「ずっと・・・愛ちゃんは、私が、いないと・・・何もできないって、思ってた。
・・・でも、そんなこと、なかった。愛ちゃんに、私なんか・・・」
「いるよ!麻琴がいなきゃ、私、何もできないもん。」
涙が頬を伝って、麻琴の顔に落ちた。
「・・泣かないでよ・・・っ、ケホ、」
慌てて血を吐きやすいように横に向かせる。制服に血がつく。
- 30 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時34分34秒
- 「・・・私のほうこそ、ごめん。」
「・・・、くっ・・ぇほっ」
麻琴は苦しそうに咳き込み、目を閉じた。
「すごい、真剣だったから。なんて答えたらいいか、わからなくって。
まじめに話し合ったことなんか無かったし。だから、正直に答えられなかった。」
「・・・・・・・・・」
「・・・麻琴は、私の大切な人。失いたく、ない。」
- 31 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時35分31秒
- 麻琴は、答えなかった。
その代わりに、口端が少しだけ上がった。
それから、ゆっくりと、呼吸が弱くなっていった。
- 32 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時36分18秒
- 「・・・麻琴、ねぇ。・・・・・まこ、と・・・」
麻琴のすぐそばには、へこんで曲がったトランペットが落ちていた。
「ごめん、ね。」
- 33 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時37分31秒
- ――うわぁ、何コレ。こんなの吹けないですよぉ!
――ダブルタンギング使えば楽勝でしょ?
――そうですけど・・・
- 34 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時38分42秒
- Buglers holiday。トランペット吹きの休日。
麻琴は、永遠の休日を手に入れた。
- 35 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月08日(金)12時41分16秒
- 終わりです。
苦情とかたっぷりあると思うんでどんどん言ってください。
そのほうがためになりますんで。
- 36 名前:くり 投稿日:2003年08月08日(金)15時01分15秒
- 更新おつかれさまです!
『おがたか』大好きなんですけど
最近かなり減ってきていたのでとても嬉しいです!
次の更新もがんばってください!応援しています!
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月08日(金)17時22分38秒
- 私もおがたか大好きなんです!
次の更新も待ってます
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)21時45分56秒
- うーん…何とも云えないですが、次の作品に期待!
- 39 名前:でぃどる 投稿日:2003年08月11日(月)19時16分06秒
- うわぁ、こんなにレスが・・・(感涙
>>くりさん
おがたか、ホントに少ないっすよねぇ。
まぁこんなんでよかったら見てやってください。
>>37さん
ガンガンおがたか書いていきます。お見逃し無く!
>>38さん
仰る通りで・・・。精進します!
次回作は・・・ただいま思案中。
ついでにBuglers holiday2を考えてます。終わりじゃない・・・かも?
- 40 名前:次回予告。 投稿日:2003年08月13日(水)20時14分28秒
- いつも、ニコニコ笑ってて。
たまに、寂しそうな表情もするけど。
「愛ちゃん。」
「ん?」
「好きだよ。」
「私も。」
「へへ、ありがと。」
こんなに可愛い麻琴を、じっと睨んでいる子がいる。
田中れいな。
それに気づいた麻琴は、ぎこちない笑顔でその子に手を振る。
でも、その子はそっぽを向いて、いつも答えようとはしない。
その後、麻琴はいつも悲しそうな顔をして俯く。
この二人の間に、何があったんだろう。
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月15日(金)14時38分07秒
- むむ…面白そう。次回作も「Buglers holiday2」もたのしみにしてます。
- 42 名前:38 投稿日:2003年08月20日(水)04時06分43秒
- 偉そうな事云ってすいません。
でも、この話だけでは完結してないから
Buglers holiday2を書くんですよね?
次回作も何だか一波乱ありそうで楽しみです。
どちらも期待して待ってますんで頑張ってください。
- 43 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/19(金) 17:38
- 申し訳ございません!
次回予告まだ書き終わってもないのに他のCPに浮気しました!
・・・らってみんなが小紺、小紺って言うんらもん(言い訳
そして自分もしぶしぶ小紺を認めることにしました。
じゃあ高橋さんはどうなるのか?
このまま独り身になってしまうのか?と。
あ、高新はなんでか認められないんです。
そんな時、PJでシャボン玉やってるのを見まして。
・・・これは、アリじゃねぇか?と。
自分痛いの大好きな人なんで。浮気しました。ごめんなさい。(土下座
この素晴らしさをわかってもらおうと書いてみました。
そしたら案の定痛くなりました。(笑
一応うpします。よろしければ見てやってください。
次回予告・Buglers holiday2も絶対うpします。いつか。
>>41
そう言って頂けると嬉しいです。
もうちょっとだけ待っててください。すみません。
>>42
初めは「これでいいかな?」とか馬鹿なこと思ってました。
でも自分で読み返してみて「終わってねぇ!」とか思いまして。(爆
・・・付け足しって感じで。すみません。
- 44 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:42
- 「・・・ふぁ・・・・っく・・・・・あ、!・・・」
恍惚とした表情で喘ぎ声をあげるあなた。
今日もあなたは私に抱かれながら、あの人の名前を呼ぶ。
「・・・くぅ、う・・ぁ、まこ、と・・・・」
私とあの人が似ているから間違えているんじゃない。
だからといってわざとというワケでもない。
『無意識の内に』、名前が出ているそうだ。
- 45 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:43
- 「・・・・・っ、・・ぁあ!」
そーいう事はよくある。
現に今、『無意識の内に』少しだけあなたを抱く手が乱暴になっていた。
だから、あなたに反論する権利なんてありませんよ?
「ぅ、ぅあ!ぁ、ぃた、痛い、よぉ・・・ん、あぅ!」
だらしなく涎を垂らしながら叫ぶその口から私の名前を聞くまで。
それまで私は、この手を休めない。
- 46 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:44
-
ただの嫉妬心を無意識と称して欲求を満たす私は罪深いでしょう。
でもあなただって酷い。
小川さんの代わりに私で欲求を満たしている。
- 47 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:45
-
「あぅ!ふっ、くぁ、ぁあ!も、だめぇ!」
大きく仰け反ってびくびくと痙攣すると、ぱたりと崩れ落ちる。
ぜぇぜぇと荒い息を吐くと、再びシーツをきゅっと掴む。
「ん、もぉ、やめ、てぇ・・・ぅん!」
名前、呼んでくれるまで。
絶対、止めない。
- 48 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:46
-
嫉妬心はつまらない意地に変わり、流れる汗もそのままに。
ただただ、あなたを抱いた。
ふと、目が合った。
切なそうな表情で、口が動く。
『ゴメンナ?』
- 49 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:47
-
確かにそう口が動いた。
でも、それは私の名前ではないのに。
「ふ、ふぁあ!!」
あなたが果てると、指は止まった。
- 50 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:48
-
妖しく光る指をじっと眺める。
「そんな、見んといてよぅ・・・」
シーツで鼻まで隠して、それでも隠しきれていない赤い顔が言う。
この指が、やったんだ。
この指で、汚してしまった。
あなたを。醜い嫉妬と、ただの意地で。
- 51 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:49
-
その指を口に含むと、ぐっと顎に力を入れる。
舌に指が触れ、それに付着した液体の香りが広がる。
手と指が離れる事を嫌がって、びりびりと頭に刺激を与える。
痛みに躊躇してなかなか力が入らない。
「た、田中ちゃん!何しとんのやざぁ!」
- 52 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:51
- 憎い指からちょうど鉄の味がしてきたころ、ようやく名前が呼ばれた。
顎を無理やりこじ開けようとして手を伸ばす。
しかし、まだ力が戻っていないためか、その手は弱弱しかった。
それでもすんなりと口は開いた。
- 53 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:51
- 「血、出てるし・・・」
咎める様な視線から逃げるため俯く。
「なんでこんなこ」
「あなたのことが好きだからです。」
声を少し荒げ、その視線を睨み返す。
- 54 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:52
-
「こんなに傍にいるのに、高橋さんは私を見てくれない。」
何かが頬を掠める。
「だから不安になるんです。高橋さんを抱いてもいいのか。」
それはシーツの上に落ちて、ゆっくりと広がっていく。
「この指が、高橋さんを汚してるんじゃないかって。」
潤む視界で精一杯濡れた指を睨みつける。
例えるなら、白濁色の液体は罪で、赤黒い血は罰。
まだ、罰が足りない。
- 55 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:53
-
再び指を銜えようとすると、掴まれた腕ごと引っ張られる。
バランスを崩して腕の中に引き込まれる。
「・・・ばか。」
ごつん、と頭突きされる。
「・・・逆、やよ?」
- 56 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:54
- とても複雑そうな顔で、高橋さんは呟いた。
「私が我侭言ってるだけやから、田中ちゃんは悪くない。」
見上げる私と視線を絡ませて。
「私が、田中ちゃんを汚してる。だから、ごめんな?」
- 57 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:55
- 辛そうな笑顔が次第にぼやけてきて。
無理矢理。我武者羅に、口付けた。
強引にやれば、いつもは嫌がるのに。
今日だけは向こうからも積極的に舌を絡ませてくる。
唇が離れた後、泣いている高橋さんに私の顔が見られないように抱き寄せて。
心の中で謝った後、出来るだけあの人に声色を似せて呟いた。
「・・・愛ちゃん。」
- 58 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:56
- 自分でも驚くぐらい似ていて、高橋さんもびくっと体を震わせて。
顔を見られないように、ぎゅっと抱きしめた。
「・・ぉ・ねが、・・・このままで・・いさせて・・?」
返事の代わりに首筋に顔を埋める。
それを合図に、嗚咽が漏れ出す。
- 59 名前:『無意識』という意識の元で。 投稿日:2003/09/19(金) 17:57
- 誰も、悪くなんかないんだ。
私も、高橋さんも。あの人だって。
みんな、思いに忠実なだけで。
それだけなのに。
どうしてみんな、傷つかなくちゃいけないんだろ?
- 60 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/19(金) 18:06
- 終わりです。
田×高でした。痛、黒、エロ。
脳内こんな感じですが何か。(笑
高橋さんの訛りが変だとか田中さんのキャラが違うとか、
お互いのことどう呼んでるかなんて知りません。
書きたかっただけなんです。衝動的に書きました。(爆
小川さん悪役みたいになっちゃってごめんなさい。
マコたんいい子なのにね∬´◇`∬
- 61 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 04:57
- 「麻琴ぉ・・・」
今日もあなたは寝言であの人の名前を呼ぶ。
その度にいつも目が覚めて、そのまま眠れない夜を過ごす。
いつも喉が渇いて水分がほしくなる。
けど、あなたが寂しくならない様にしている腕枕を動かすわけにもいかず。
すぐ近くにあるあなたの寝顔から顔を離すことも出来ず。
ベッド脇のコップにも手を伸ばせない。
- 62 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 04:57
- 毎晩のようにあなたはあの人を呼ぶ。
その度に生殺しのような気分を味わう。
でも、いいんです。
自分の気持ちがわからなくなったとき、
それだけあなたを愛せていることがわかるから。
- 63 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 04:58
- 楽屋の隅で昨日とは違う本を読んでいる。
表紙にはカバーがついていて、何の本かはわからない。
「何読んでるんですか?」
然程興味もなかったけれど、何故か寂しそうだったから。
「んー?」
ちらっと本から目を外して私の顔を見ると、
「あぁ、これ?」
今頃理解したように呟いて、
「ギリシャ神話の本。」
本の内容を言う。
言葉の一つ一つに反応してしまう。
- 64 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 04:59
- おいで、と手招きされて、横に座る。
ちょうど二人の間で本を開く。
右側のページに文章、左側のページに二つ絵がある。
上の絵は、男の人が岩を押し上げている絵。
下の絵は、違う男の人が首まで水に浸かっている絵。
- 65 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 04:59
- 「この人が、シシュポス。」
上の絵を指差す。
「悪いことしてもて、地獄でずーっとこの岩押し上げなあかんのやて。」
「へ〜。」
「でも、それほど悪くないんやよ?で、こっちが結構悪い。」
下の絵を指差す。
「タンタロス。神様を試す様な事したから、ゼウスが怒ったんよ。」
「試すって、何を?」
「全能なんかどうか。その為に、自分の息子をシチューにしたんやて。」
「うわぁ、グロ・・・」
- 66 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:00
- 「そのせいでここに縛り付けられて、この水飲もうとしたら水が引っ込んで、
一生水が飲まれへんのやて。」
- 67 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:01
- 「へぇ〜。」
トリビアのように膝を叩いて何度も『へぇ〜』と言う。
動揺を隠すために。
「お、田中、トリビアか?」
吉澤さんが寄ってくる。
それに続いて飯田さん、矢口さん、安倍さん、石川さん。
「高橋、新しい本買ったの?見せてよ〜。」
はい、とニコニコしながら本を差し出す高橋さん。
「何の本?」
「ギリシャ神話の本です。」
へ〜、と顔を寄せ合って一つの本を読む先輩方。
- 68 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:01
- 「吉澤さんはゼウスにそっくりですね。」
「マジ?ゼウスって偉い人じゃない?」
ゼウス、と呼ばれて笑顔になる吉澤さん。
(浮気ばっかりしてるし。)
こそっと耳打ちをして、笑いあう。
「じゃあ、私はなんですか?」
なんとなく聞いてみた。
「ん〜・・・悪いところを省いた、タンタロス。」
「へ?」
- 69 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:02
- 「こら〜!高橋〜!どーゆー意味だこれ〜!」
吉澤さんが高橋さんに襲い掛かる。
「そのまんまの意味ですよ〜!」
私の前を飛んで逃げる高橋さん。
楽屋の中でおっかけっこが始まり、みんなが笑い出す。
「何コレ、高橋上手いこと言うね〜!」
飯田さんが爆笑している。
「ぅはっ、ゼウス浮気ばっかりしてんじゃん!」
「アハハハハ!確かによっすぃ〜みたい!」
「なんだと〜、このやろ〜!」
安倍さんと矢口さんの言葉に、吉澤さんが方向転換する。
でも、顔は笑っている。
その隙に高橋さんは楽屋から出ようと試みた。
しかし。
- 70 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:02
- 「よっすぃ〜!私はよっすぃ〜の味方よ!」
吉澤さんの味方らしい石川さんに捕まる。
「た〜か〜は〜し〜、覚悟しろ!」
手をわきわきさせながら一歩一歩高橋さんににじり寄る吉澤さん。
「助けて〜、麻琴〜!」
小川さんに助けを求める。
しかし、笑顔の吉澤さんに睨まれて動けなくなっていた。
「まこっちゃん、わかってるよねっ♪」
「ふぇっ!?は、はい・・・」
紺野さんと身を寄せ合って縮こまる。
あ〜、また夜中起こされるんだろうなぁ・・・。
- 71 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:03
- 「田中ちゃんっ!」
「ふぇっ!?」
同じ反応してしまった。
皆さん大爆笑。
そのときドアが開いて、スタッフさんの神の声。
「そろそろ移動、お願いします。」
は〜い、と元気よく返事をした後、高橋さんはようやく逃げ出した。
あっ、と声を上げてまた高橋さんを追いかけようとする吉澤さんを。
「は〜い、すと〜っぷ。」
いつの間にか回復した飯田さんが止める。
「ダメだよよっすぃ〜、教育係がそんな様子じゃあ。」
「だって〜。あ、そういえばハニーも笑ってたね?」
「うっ・・・さぁみんな、行くよ!」
「無視かよ!ひどいぜ、ハニー!」
ずんずんと先頭を歩く飯田さんにずっと突っかかっている吉澤さん。
・・・犬みたいだ。
- 72 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:03
- ぼ〜っと眺めていたら、突然腕を引かれて。
「行こう。」
笑顔の高橋さんと目が合った。
「ハイ。」
負けじと笑顔で返す。
廊下を歩きながら、さっきの言葉を思い出した。
「高橋さん、さっきタンタロスって・・・」
「知ってたよ。夜中起きること。それからコップに手伸ばしてるのも。」
満面の笑みで言われる。
「でも、何で起きるんかは知らんのやざ。何で?」
その問いに、一瞬迷ってこう答えた。
- 73 名前:Tantalus 投稿日:2003/09/23(火) 05:03
-
「・・・喉が、渇くんです。なんせタンタロスですから。」
- 74 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/23(火) 05:06
- 夜行性なので夜中に書いてみたり。
- 75 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/23(火) 05:06
- ageてみよう!(笑
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/23(火) 14:36
- 読みました。愛ちゃんもれいなちゃんも大好きなんで嬉しかったです!これからも読ませていただきます。頑張って下さい。
- 77 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 10:38
- すげーツボはまってます…
- 78 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/28(日) 16:47
- ―――白い部屋。
少女はぼんやりと空を見つめていた。
両手足、それと首に見るからに丈夫そうな鎖で繋がれている。
大きな瞳から涙が零れる。
それはゆっくりと頬を流れ、顎で留まると、後から来た雫に押され、
重力に逆らう事無く床に吸い込まれるように落ちていく。
すでに床で待っていた同類達が、ぽたっと音を立ててそれを歓迎する。
その瞬間少女は瞳を更に大きく開き、反対に瞳孔を収縮する。
バサッ。
大きな音を立てて、少女の背中から大きな羽が広がる。
少し膝を曲げるとその羽を懸命に動かし、地上から飛び立とうとする。
しかし、頑丈な鎖はそれを許さない。
- 79 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/28(日) 16:48
- 「ダメだよ、愛ちゃん。」
白衣を着た少女が耳を塞ぎ、肘で壁に着いたボタンを押す。
鎖から電流が走り、鋭い悲鳴と共に愛は重力に従って落ちる。
「そんな事しちゃあ。お利口さんじゃないよ?」
ボタンから肘を外すと、電流は止まる。
それに伴って耳を塞いでいた手を外す。
「あさ美、ちゃん・・・」
虚ろな目で、白衣の少女の名前を呟く。
何時の間にか翼は消え失せていた。
「なぁに?」
「・・・放して」
「イヤ。だって愛ちゃん、逃げたらまこっちゃんの事・・・」
『まこっちゃん』と名前を出した途端、あさ美の目が狂気に満ちる。
- 80 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/28(日) 16:48
- ばん、と壁を叩く音と共に、鎖から電流が流れる。
「あああああああああああああ!!!」
びくびくと痙攣しながらその大きな瞳からぼろぼろと涙を流す。
その愛の様子を、あさ美は嬉しそうに眺めていた。
- 81 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/28(日) 16:49
- 更新しました。
- 82 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/28(日) 16:49
- 更新隠し。
- 83 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/28(日) 16:55
- さて、思いつきで始まりました『もう一つのBuglers holiday』。
この話がどう進んでいくのかはさっぱりわかりません。
出演は小・高・紺の三人で。
>>76
思いつきで書いたんですけど、喜んでもらえて嬉しいです!
てか自分全部思いつき・・・。ま、いっか!(え
>>77
ツボりましたか!やった!
とりあえず、こちらもお楽しみください。
田高は気が向いたら書きます。
次回予告は未だできあがってません・・・。
- 84 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:06
- 久しぶりの休日。
麻琴は何処へ行こうか悩んでいた。
片手には指令を伝えるためのラッパ。
休日でもこれを持たなければならないことは、別に苦痛でもない。
ラッパは好きだ。
戦場で聞こえる唯一の明るい音。
それを吹けることを、麻琴は誇りに思っていた。
- 85 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:07
- (何処行こうかな〜・・・)
と考えながら、麻琴の足はある方向に向かっていた。
あさ美のいる研究所。
この戦場にはそれだけ考えるほど行く場所はない。
だから決まって麻琴は、休日は同い年のあさ美のいる研究所を訪れる。
それに、研究所には防音加工の部屋がある。
休日の度に麻琴はそこでラッパを吹く。
たった一人の観客、あさ美だけのために吹くのもそれはそれで気持ちが良い。
しかし、それはただの口実で。
- 86 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:08
- 国家機密である愛の存在を、麻琴は知っている。
(綺麗だったな、あの翼。)
目を瞑れば脳裏に浮かぶのは、真っ白な翼。
鎖に繋がれていたけれど、あれを外せば今にも飛立つ事が出来そうだった。
一度しか会ったことがないけれど、もう一度愛に会うことが出来れば。
(今度会えたら、お願いしよう。)
背中に羽は無いけれど、共に空を飛びたい。
抱き抱えられて空を飛ぶ姿を想像し、思わずにやけてしまう。
お礼はもちろん、このラッパ。
戦争のない遠い国へ行って、人のいない所で。
明るいラッパの音色に、彼女の表情は綻ぶ。
ごつん、と研究所の壁に頭をぶつける音と共に、想像は終わった。
「何してるの、まこっちゃん。」
不思議そうな顔で麻琴を見つめるあさ美に、麻琴はただ苦笑いを返した。
- 87 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:09
- 日本は、戦争を始めていた。
『天使』である愛の存在を、独占するため。
天使。それは神に一番近い存在。
人々はそれに憧れを抱き、それに近づくため日々研究を重ねた。
日本は最先端の技術を駆使し、研究チームのトップに躍り出た。
しかし研究から生まれるのは実験に使われた囚人達の屍骸だけだった。
- 88 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:11
- 愛は普通の中学生だった。
学校の成績もそれなりに良い方で、友達も多い方だった。
その中学もいじめなど無く、良い学校だった。
高校に入った途端、愛は体に異変を感じ始めた。
夜中に突然ぎしぎしと背中が痛み出し、何度も病院へ行った。
検査をして薬を飲んでも、痛みは一向に治まらない。
そしてその病院の紹介で大学病院へ行ったとき。
何かが爆発して、背中の痛みは消え去った。
- 89 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:11
- その存在は、一瞬にして日本全国に出回った。
日本は躍起になって愛を世界から隠そうとした。
しかし、遅かった。
世界は愛を渡すよう、日本に告げた。
日本は開き直って世界中に核をばら撒いた。
核はいざという時の為、日本の地下深くに隠されていた。
そして、戦争は始まった。
- 90 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/09/30(火) 19:12
- 背中から、真っ白な翼が生えた。
それだけで捕らえられ、鎖に繋がれて、白い部屋に入れられる。
鎖から流れる電流が、一つ一つ記憶を消していく。
もう、家族の顔すら思い出せない。
突然変異で、愛は『天使』になった。
それだけ、なのに。
- 91 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/30(火) 19:15
- 更新しました。
- 92 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/30(火) 19:16
- 設定とか設定とか設定とか。
- 93 名前:でぃどる 投稿日:2003/09/30(火) 19:16
- 気にしないで下さい(土下座
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 15:05
- 気になるよ…
- 95 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/07(火) 21:18
- ・・・えっと、ですね。
率直に言いますと。
ただいま連載中の『もう一つのBuglers holiday』なんですが。
えー・・・あの・・・消えました!データ全部!
泣きそうです。ごめんなさい。泣きます。
同じ文を書くなんて器用なことできない奴なんです。
とりあえず明日あたり覚えてる分だけ書きます。
待たせてばっかりですみません。
待ちぼうけにはさせません。
ごめんなさい。
- 96 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 02:40
- アイト!がんがれ
待ってるよ(*´д`*)
- 97 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:20
- 「今日はねぇ、休みなんだー。」
「えぇー、いぃなー。私休みなんかもらったことない・・・」
「毎日休みみたいなもんじゃんかー。」
「そーなんだけどさー・・・」
あさ美は麻琴の隣で笑っている。
純粋で、清らかな笑み。
愛の前では見せない笑顔。
- 98 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:21
- あさ美は愛が嫌いだ。
なぜか?
愛には羽がある。空を飛べる。
愛は美人だし、歌もうまい。
でも、麻琴を好きで、麻琴に好かれてもいる。
- 99 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:21
- あさ美は麻琴が好きだ。
なぜか?
麻琴はトランペットがとても上手。
麻琴はおもしろいし、笑顔が可愛い。
それに、ここにいる数少ないよき理解者の一人だから。
- 100 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:23
- 愛が研究所から出ることができたら、きっと麻琴を何処かへ連れて行ってしまう。
なぜかあさ美はそんな予感がした。
だから毎日あさ美は毎日愛に電流を与え、愛の悲鳴を聞き、
愛が今日も檻の中にいることを確かめる。
愛に対する感情なんてもの、とっくに捨ててしまった。
- 101 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:24
- 愛は檻の中で膝を抱え、天窓を見上げながらここに来た時のことを思い出していた。
『よ、よろしく。』
初めて会ったときのあさ美の様子を思い出して、思わず笑みがこぼれた。
ゆっくりと首を項垂れて、膝に顔を埋める。
自分のことを人間とは思っていない研究員から笑顔を隠すために。
「・・・・・・あさ美、ちゃん。」
小さく、彼女の名前を呟く。
今ではなく、あの頃の。
- 102 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:25
-
『紺野さん。』
『はっ、はい!?』
書類を持ち、ずれたメガネを空いた手で直しながら驚いて振り向く。
愛が逃げないように監視役を任されたあさ美の仕事場は愛の檻の目の前だった。
『敬語やめよや。』
『え!?で、できませんよぉ!年上でしょ!?』
慌てて顔の前で手を振り、ついでに顔も振るあさ美。
その表紙に書類が手から滑り落ち、あぁ!と声を上げるあさ美。
檻の近くでばらまかれたそれは、当然檻の中にも落ちてきた。
それを拾うのを手伝いながら、愛は続けた。
『えーのえーの、一個違いなんやし。』
『は、はぁ・・・』
『んで、呼び方。』
『へ?』
『下の名前で呼んでや。』
『え・・・あ、はい。』
『ほら、敬語。』
『ご、ごめんなさ・・・ごめん。』
『うん、えぇよ、あさ美ちゃん。』
『あ・・・愛、ちゃん。』
はにかみながら小さな声で言ったのが耳に入って、すごく嬉しくなった。
- 103 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:26
- 『・・・・・・あ』
突然声を出したあさ美に驚いて後ろを振り向くと、白いものが眼に入った。
羽が、出ていた。
知らないうちに。
こんなこと初めてだった。
でも、それよりも驚いたことがあった。
- 104 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:26
-
『・・・きれい。』
あさ美が呟いた。
初めて、この羽をきれいと言う人を見た。
嬉しくて、胸がいっぱいになって。
『・・・愛ちゃん?』
涙が、あふれた。
『ご、めん。なんか、嬉しくて・・・っ、』
- 105 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:27
- ずっと、この羽を憎んでた。
この羽のせいでこんな檻の中に閉じ込められて。
家族とも会えなくなって。
周りの人の自分を見る目が変わって。
でも、諦めた。
好きにはなれそうにないけど、
この羽と生きていこうと決めた。
だから、嬉しかった。
あさ美のおかげで、この羽を好きになることができそうな気がして。
- 106 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:28
- 『・・・・・・・・・泣かないで。』
あさ美の指が、愛の涙を拭う。
顔を上げると、あさ美は笑顔だった。
『・・・うん。』
- 107 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:29
- 気がついたら、泣いていた。
これは、誰のための涙なんだろう?
自分のため?あさ美のため?
・・・それとも、あの頃のあさ美のため?
そんなの、知らない。
もう、疲れたよ。
信じてたのに。
- 108 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:33
- 100超えました。万歳三唱!!
バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ・・・(照
>>96
あい!!がんがります!!
って言いつつ最後どうするか決めてません(爆
今日はこんぐらいで勘弁・・・。
- 109 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:36
- 今揺れた!地震です!気をつけて!
- 110 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/08(水) 23:37
- 怖かったー・・・一瞬でしたが(笑
- 111 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:20
- 連なったドアの中から一番手前の部屋を選ぶ。
何もない部屋には一面の白い壁。
一番短い距離を通って吹き口が口に当てられる。
あさ美が正面に座ったのを見て、息を吸い込む。
「・・・何吹くんだっけ?」
- 112 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:20
- 「もぉ、『めだかの学校』だよ。」
「あぁ、そっか。ゴメンゴメン。」
笑いながらもう一度ラッパを構える。
笑顔が消えて、真剣な表情になる。
その顔をじっと見つめるあさ美。
- 113 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:21
-
息を吸い込む音がして、ゆっくりと目を閉じる。
力強いラッパの音色がやさしい旋律を奏でる。
瞼の裏に、愛の顔が浮かぶ。
檻の中で、優しい目をして、きれいな歌声で。
『めだかの学校』を歌っている。
- 114 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:22
- 彼女の歌声がラッパの音色に重なる。
歌声はラッパの音色にかき消され、次第に色褪せていく。
麻琴のラッパで、強引に記憶の中から愛を消している。
記憶の中の愛が麻琴で塗り潰されていく。
それが、なぜかはよくわからないが、あさ美には嬉しかった。
もちろん麻琴は自分のラッパがあさ美の中の愛を消していっていることなど知る由もない。
- 115 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:22
-
中学から三年間、部活動で始めたラッパをずっと続けている。
その間いろんなことがありすぎて、その三年がとても長いように感じるけれど。
初めてラッパに触れたとき、音が出せなくて悔しかった。
先輩の言うとおりに吹いてみてもなかなかうまくいかなかった。
だから初めて音を出せたとき、嬉しくって泣いてしまった。
- 116 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:23
- 三年生になって、学校が突然無くなった。
天使の存在が日本を狂わせた。
卒業した先輩、先生や親達は皆戦争に駆り出された。
そして帰ってこなかった。
学校だった建物は軍隊の砦となってしまった。
部はなくなったが、残された財産といえるほどでもない家の金で中古のラッパを買った。
それで毎日毎日堤防で練習をした。
ラッパを吹いてるときはいい音を出そうとしか思えないから現実逃避には最適だった。
- 117 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:23
- ある日、いつものようにラッパを吹いていたら、髪の長い女性が隣に座った。
その人は隣で静かにラッパの音色に耳を傾けていたが、突然ぽつんと呟いた。
『空っぽだね。』
確かにあの頃は、気分を紛らわすためだけに音を出していた。
でも当時の麻琴にはそれが十分ショックだった。
だから、女性に向かって頭を下げた。
『お願いします、もう一回聞いてください。』
女性は笑って頷いた。
- 118 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:24
- 初めて音が出たときの気持ちを思い出した。
目を閉じて、自分と一緒にはしゃいでくれた先輩達を思い出す。
口をつける。
口端で息を吸い込む。
口を閉じる。
唇を震わせる。
一連の作業をどうしてもできなかった自分は今、簡単に音を出すことができる。
けれど、あの時とは違い、ラッパを吹くことを楽しもうとしていない。
じゃあ、楽しめばいいんだ。
- 119 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/09(木) 23:24
-
曲が終わって女性のほうを盗み見ると、ばっちり目が合ってしまった。
急に恥ずかしくなって目をそらすと、女性は言った。
『よかったよ。カオリも楽しかった。』
わしわしと麻琴の頭を撫でて女性は笑った。
- 120 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/09(木) 23:25
- 今日はこの辺でご勘弁。
- 121 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/09(木) 23:26
- もーすぐ中間考査〜♪
- 122 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/09(木) 23:27
- 休みすぎて授業内容さっぱり〜♪(爆
やばいです。
- 123 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/10(金) 17:43
- 作ってみましたー。
飛べるかどうか知りませんが、お暇なら行ってみてくらさい。
http://lavenders-green.hp.infoseek.co.jp/
- 124 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:16
- 『じゃあ行こうか。』
しばらく話をしてからその人は言った。
もう一度私の頭をくしゃっと撫でると立ち上がり手を差し出して。
『え・・・と、行くってどこに?』
『あ、飯田圭織って言います。』
少なくともこれは地名ではないだろう。
それぐらい中卒の麻琴にもわかった。
『いや、どこに行くんですか?』
『戦場。』
『・・・は?』
- 125 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:17
-
『麻琴は戦場行ってもラッパ吹きたい?』
『え・・・』
そりゃあ吹きたいけど。
てかなんで私の名前・・・?
『はぁ、まぁ・・・』
『じゃ、決まりだね。』
『な、何がですか?』
『麻琴にはうちの部隊来てらっぱ吹きやってもらうから。』
意味がわからなかった。
うちの部隊?らっぱ吹きって?
それにまだ自己紹介してないよね?
『いーんだよ。カオリにはわかる。
麻琴は戦場に行ってもラッパを吹いていたい。そうでしょ?』
目が合って、じっと見つめられ、胸の奥が熱くなる。
『カオリが吹かせてあげる。だから、カオリと一緒に行こう。』
なぜだろう。なぜかわからないけれど。
この人なら、信用できる気がする。
そんな気がした。
だから、目の前に出された手を知らない内に掴んでいた。
- 126 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:17
- 回想と共に曲が終わる。
ぺこっとお辞儀をしてあさ美に尋ねる。
「どうだった?」
俯いていたあさ美はぱっと顔を上げ、笑顔で言った。
「よかったよ、すっごく。」
記憶を消すにはちょうどよかった。
最後の言葉は心の中にしまっておく。
- 127 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:18
- 「よかったぁ、ぜんぜんよくないって言われたら泣くところだったよぉ。」
あさ美の隣に座り、ニコニコと微笑みかける。
「はは、そんなこと言うわけないじゃんか。
私はまこっちゃんのファンなんだよ?」
「そっか。でもファンでも悪いところがあったらちゃんと言ってよ?」
真剣な顔であさ美を見つめる麻琴。
「わかってるって。」
その麻琴の頭を撫で、もう一度微笑むあさ美。
それを見て、真剣な表情が一気に崩れてしまう。
「あさ美ちゃん、大好き!」
悪戯っ子のように笑い、あさ美に抱きつく麻琴。
「おー、よしよし。」
大型犬に飛びつかれたようにあさ美は押し倒されたが、
その大型犬の頭をごしごしと撫でてやると、麻琴はとても嬉しそうに笑った。
- 128 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:18
- とりあえずこんだけで。
- 129 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:19
- 勉強・・・やる気ナッシングです。
- 130 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/13(月) 15:19
- てか、サボりすぎだな。自分。
- 131 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:47
- がちゃ。
部屋の扉が開いて、見慣れた顔が入ってくる。
「血ぃ取らせてねー。」
週に一回ある、一番嫌いな採血の時間。
理由のひとつは、あさ美。
しかし、入ってきたのはあさ美ではない。
「・・・なんで、安倍さんなんですか?」
「何、なっちじゃ不満?」
「そうじゃないんですけど・・・」
口篭る愛に、安倍は理解したように笑って言った。
「紺野、今日はお友達が来てるんだ。」
お友達。
それがあの『らっぱを持った兵隊さん』である事を直感的にわかった。
採血の時間に来るのがあさ美ではないことに安心しても、
休んだ理由を聞いてがっかりしてしまう。
- 132 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:47
-
「じゃあ、念の為。」
ふと顔を上げると、安倍の手が例のボタン掛けられている事を確認する。
それに力が入るのを見た途端、流れてきた電流に目を白黒させる。
愛の悲鳴を聞きながら、安倍がぽつんと呟く。
「ゴメンね、紺野に危ないから電流流して気絶させろって言われてるんだ。」
その言葉はもちろん愛には届かない。
- 133 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:48
- ―――目を覚ますと、いつもの椅子に縛り付けられている。
体中にコードが張り巡らされている。
「安倍さん、『天使』、目を覚ましました。」
「ん。ありがと。じゃ、外で待ってて。」
霞む視界の中。
見慣れない中学生くらいの少女達が部屋から出て行くのが見える。
「かわいいでしょ、新人。」
愛の視線に気付いた安倍が答える。
しかし、彼女達と安倍の他には誰もいない。
- 134 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:48
- 「他の、人は?」
掠れる声で聞くと、安倍の顔に影がさす。
「戦争に、行った。」
ちくりと胸が痛む。
この戦争が起こったのは自分のせいだから。
故意でもないけれど、そう思うと罪悪感に駆られる。
「・・・・・・ごめんなさい」
「謝らなくてもいいんだよ。償ってくれればいいんだから」
「え?」
安倍の手が首に掛かって、その意味を理解する。
ゆっくりと力が込められるのを感じる。
- 135 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:49
- 「安倍さん!」
突然ドアが開き、さっきの少女が入ってくる。
それにより、安倍の手が離れる。
「どったの、シゲさん。」
『シゲさん』と呼ばれた少女は、とても慌てた様子で何かを伝えようとしている。
「あの、あの、『れいな』が、大変なんです!!」
『れいな』という言葉に、安倍が過敏に反応する。
「シゲさん、すぐに紺野呼んできて。」
「もう絵里が行ってます!今新垣さんが一人で『れいな』を!」
「わかった、シゲさんは『天使』を見てて!」
「え・・・」
『シゲさん』の返事も聞かずに、安倍は出て行ってしまった。
- 136 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:50
-
少し残念そうな顔をしながら、『シゲさん』は俯いた。
「・・・えっと」
重苦しい沈黙を、取り繕うように愛が破る。
すると『シゲさん』が驚いたように振り返り、愛と目が合う。
何か言うのかと思ったが、『シゲさん』はもう一度扉に目をやった。
「あの〜・・・」
「『れいな』・・・」
どうやら話が通じそうにない。
愛は小さく溜息を吐いた。
- 137 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/22(水) 22:50
- 更新しました。
- 138 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:23
- 暗闇の中、背中に気配を感じて振り向く。
何も見えない。
溜息を吐いてもう一度前だった方向を見ると、
「コンニチハ」
奇妙な笑顔の仮面を被った、長い茶髪の少女と思われる人物が立っていた。
その仮面に驚いて、一歩後退りをする。
「ナンデ、ニゲルノ?」
「こ、怖いからに決まってるやなか。」
震える声で何とか答えると、仮面の少女が笑い出した。
少女の右手が動き、びくっと大きく震える。
- 139 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:24
- 「バカやなか?」
その手が仮面に掛かる。
「あんたは私で、私はあんたなのに。」
仮面が外れて出てきたものが酷く見慣れたもので、れいなは狼狽した。
まるで魔女のように狂った笑い声を上げ、目の前の『れいな』は笑った。
その声に気分が悪くなり、れいなは必死で耳を塞ぐ。
しかし、声が小さくなる事はない。
「そぎゃんことしても無駄ばい。」
それどころか自分が笑っているようにさえ聞こえる。
「笑ってるのはあんたなんやけん。」
- 140 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:24
- 頬の筋肉が引き攣っている。
笑いたくなくても声が出る。
喉が焼けるように熱い。
ぴたっと笑い声が止まる。
苦しくなって崩れ落ちる。
「・・・面白くなか。」
不機嫌そうな声に、れいなは思わず顔を上げる。
白い物が視界を塞ぐ。
それはさっきの仮面だった。
「これで、おんなしやね。」
- 141 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:25
-
仮面の目から覗く見覚えのある景色。
血まみれの教室。
血を流しているクラスメイト。
血の匂い。
血。血。血。
「うあああああああああ!!!」
- 142 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:25
- 目の前で死んでいる、親友のフリをしていた少女。
自分の手のひらに乗っている心臓は、持ち主を失ってなお鼓動を続けている。
投げ捨てようと思っても体が言う事を聞かない。
ゆっくりとその手が口元に運ばれる。
ぶち、ぐちゅ。
くちゃ、くちゃ。
口の中に血の味が広がる。
鶏肉に似た食感。
気持ち悪い。きもちわるい。キモチワルイ。
- 143 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:26
- 仮面が外された途端、体の感覚が戻ってくる。
同時に嘔吐感が押し寄せてくる。
「おいしかった?」
『れいな』が尋ねる。
堪えていたものが溢れる。
「うわ、汚〜。」
言葉では悪態を吐きながら、『れいな』は嬉しそうにそれを眺めていた。
- 144 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/26(日) 14:26
- 更新しました。
- 145 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:51
- 二人が楽しげに談笑していると、突然亀井が飛び込んでくる。
「紺野さんっ!!れいなが、れいながっ!!」
それを聞いてあさ美の緩んでいた頬が急に引き締まる。
素早く立ち上がると、亀井を押し退けて部屋を出て行く。
「まこっちゃん、ゴメンね!亀井ちゃん、後よろしく!」
「は、はい!!」
突然の出来事に、麻琴は何が起こったのかわからなかった。
とりあえず、目の前で心配そうにあさ美の後姿を見つめる彼女に声をかける。
「あの〜・・・」
麻琴の声に、亀井はびくっと跳ね上がる。
逆に麻琴はその反応に驚いた。
妙な間が空いて、亀井が口を開く。
「な、なんですか?」
「あ、いや、その、えっと・・・」
- 146 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:52
- 言葉が詰まる麻琴。
場を取り持つために言葉を発したわけだが、その後に続く言葉が見当たらない。
亀井も同じような様子で、戸惑いがちに視線を泳がせている。
ふと、亀井が何かを思いついたように顔を上げた。
「あ、あの、・・・えっと」
困ったように麻琴に目をやりながら、亀井の口が止まる。
「あ、小川です。」
「小川さん。あの、」
「天使、見に行きます?」
- 147 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:52
- 突然叫びだしたかと思うと、胃酸と共に朝食を吐き出した。
おかげで部屋中がキツイ酸の匂いに満たされる。
彼女の白衣は嘔吐物によってどんどん汚されていった。
ドアが開き、安倍が入ってくる。
「田中は?」
「いつもより酷い発作です。」
「そっか。田中?聞こえる?」
頬を軽く叩きながら話しかけるが、田中には聞こえない。
びくびくと白目をむいて痙攣しながら呻き声を上げ続けるばかり。
- 148 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:53
- 開けっ放しのドアからあさ美が入ってくる。
「安倍さん。」
「やばいよ、そろそろ・・・」
安倍の言葉に、あさ美が神妙な面持ちで頷く。
二人はゆっくりと立ち上がり、田中から離れてしまう。
「あ、あべさん?あさ美ちゃん?」
新垣は意味がわからないといった顔で二人の行動を見つめている。
「ガキさん、悪いけど拘束衣とハサミ持ってきてくれる?」
「え?なんで」
「いいから早く。」
「は、はい!」
突然口調の厳しくなった安倍に怯えて、新垣は走り出す。
安倍と紺野の視線は相変わらず田中から離れない。
「紺野、よ〜く見とくんだよ。」
「はい。」
- 149 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:53
- ぴたっと田中の動きが止まる。
まるで一瞬にして人形に変えられてしまったようだ。
それは死人のようにも見え、田中の目の奥の鈍い光がそれを強調する。
突然、田中の体が大きく跳ねる。
背中から突き出た肩甲骨が徐々に形を変えて大きくなっていく。
安倍が田中の服を首の辺りまで押し上げる。
剥き出しにされた背中が突起の中心に掛けて黒くなっている。
その上を血管が何本も浮き上がっている。
- 150 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/29(水) 22:54
- 更新しました。
- 151 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/29(水) 23:17
- 小川さんおたおめ。
- 152 名前:でぃどる 投稿日:2003/10/30(木) 22:44
- 「はうぅぅっ!!」
突然田中が叫ぶ。
その途端、更に田中の背中が丸まり、ずるりと音がした。
血が辺りに飛び散る。
胃酸と血の匂いが混じり合い、室内に悪臭が漂う。
あさ美はそれに顔を顰めるが、安倍は嬉しそうに田中を眺めていた。
- 153 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/30(木) 22:45
- 荒い息遣いが部屋に響く。
違和感を感じて、田中はゆっくりと顔を上げる。
「何、これ・・・」
田中の目に映ったのは、血塗れた漆黒の翼。
- 154 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/10/30(木) 22:45
- ちょっとだけ更新。
- 155 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:08
- トクン。
「・・・・・・・・・今、なんて?」
「・・・天使を、見に行きますか?」
トクン、トクン。
「・・・え、いいの?」
「はい、紺野さんのご友人なら大丈夫だと思います。」
どくん。
「・・・行く。」
- 156 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:09
- がちゃり。
開かれた扉には、記憶に鮮明に焼きついた部屋と同じもの。
一つだけ違うのは、愛がいないことだけ。
「あ、そっか。今採血だ。」
小さく呟くと麻琴にぺこっと頭を下げて扉を閉め、亀井はもう一度歩き出す。
麻琴はそれに素直に従う。
もう一度、天使に会える喜びで、ラッパを握る手に自然と力が入る。
「ここです。」
という声と共に、ゆっくりと扉が開かれる。
そこにいたのは白衣の少女。
- 157 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:09
- 振り向くタイミングはあさ美と同じか、それ以上に遅い。
「絵里?その人は?」
けれども麻琴にそんな事に注目していられるほどの余裕は無かった。
「紺野さんのお友達の、小川さんだって。」
椅子に縛り付けられた愛を見て、麻琴の中で何かが弾けた。
- 158 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:10
- 「ねぇ、小川さ」
ガツン。
亀井の言葉が途切れる。
麻琴が手に持っていたラッパで亀井を殴った音によって。
「絵里!」
意識を失って崩れ落ちる亀井を、道重が支えようと駆け寄る。
がら空きの道重の後頭部に、ラッパが振り下ろされる。
ガツッ
「小、川、さ・・ん・・・?」
それだけでは意識を失わなかったようだが、揺れる視界で麻琴を見つめ返す。
- 159 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:11
- 麻琴の手は震えていた。
それは、恐怖ではなく、怒りによって。
「・・・あんたらはただ他人の背中に羽が生えたってだけでその人を椅子に縛り付けれる権利があるの?」
道重はそれを聞いて目を逸らす事しかできなかった。
その後頭部にもう一度衝撃が走り、今度こそ道重は意識を失った。
はぁ、はぁ。
麻琴の息遣いだけが静かな部屋に響き渡る。
そんな中、もう一つの声が発される。
「・・・小川さんって、言うん?」
愛の言葉に、麻琴がぴくんと反応を示す。
「・・・ごめんなさい、ごめんなさい!!」
- 160 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:12
- 突然謝り出す麻琴を、愛はきょとんと見つめている。
気を失っている二人にぺこぺこと頭を下げ続ける麻琴。
「・・・気、失っとるよ?」
愛の言葉に麻琴は下げかけた頭をぴたっと止め、ようやく愛のほうを見る。
愛が微笑んでみせると、麻琴は苦笑いを返した。
「こ、こんにちは・・・」
「こんにちは・・・?」
なにやら様子のおかしい麻琴を不思議に思いながら、愛は挨拶を返す。
「なぁ、小川さん、やったっけ?」
「は、はい!小川麻琴、最近16になりました!!」
「へぇ、かわいい名前やのぉ。」
「・・・え?」
- 161 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:12
- 麻琴は驚いた。
天使なのに。
方言?
「・・・なんか、ついてる?」
ふと、麻琴は愛の顔をまじまじと見つめていたことに気づく。
「あぁ!いえ、なんでもないっす!」
「そっか。」
「16ってことは、あさ美ちゃんと同い年なん?」
「うぇ!?は、はい。そーです。同い年、です。」
いちいち愛の言うことに驚く麻琴を、愛は笑った。
それを見て、麻琴は少し頬を膨らませる。
しかしすぐに噴出して、愛と一緒に笑った。
- 162 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:13
- しばらくそうして笑いあっていると、突然麻琴の顔が深刻なものになる。
「・・・あの、手、痛くないんですか?」
「ん?あぁ、これ?別に大丈夫やよ。慣れてるから。」
慣れてるから。
でも縛られている手首は酷く変色している。
「・・・いつも」
「ん?」
「いつも、縛られてるんですか?そうやって。」
「・・・まぁ、な。」
少しだけ愛の表情が憂いを帯びる。
一瞬だったが、麻琴はそれを見逃さなかった。
- 163 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:13
- つかつかと縛られている椅子に歩み寄ると、護身用のナイフでそのロープを切る。
愛は驚いた表情でそれを見つめる。
「慣れちゃ、ダメですよ。そんなのに。」
愛の手を傷つけないように慎重にロープを切りながら、麻琴が呟く。
やっぱり、思ってた通り優しい子だ。
愛はそう思いながら、小さく頷いた。
両の手足が自由になると、麻琴は愛の手を掴んだ。
暖かい体温が冷たい愛の手に伝わる。
- 164 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/01(土) 01:14
- 「・・・逃げましょう。」
麻琴の言葉に、愛は驚く。
麻琴自身も、自分で言った言葉に驚いた。
でも、その言葉を取り消そうとして、やめた。
代わりに、にっと笑って見せた。
抱きしめられる。
愛の背中には、当然の如く羽根が生えていた。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 01:14
- 更新しました。
- 166 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/04(火) 21:58
- 「持ってきま・・・!?」
拘束衣とハサミを手にした新垣は、部屋の異常なまでの異臭に顔を顰める。
その異臭の元、田中の変わり果てた姿に、彼女まで嘔吐感を覚えた。
「あぁ、ガキさん。悪いけど、田中にそれ着せてくれる?」
そんな中でも、田中の存在を一瞬忘れさせるほどの笑顔で安倍が言う。
新垣は口で息をしながら、こくんと頷いた。
ゆっくりと歩み寄る。
田中が不安そうに新垣を見詰める。
「田中ちゃん、大丈夫?」
「・・・手が、手がぁ」
- 167 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/04(火) 21:58
- 言われて見ると、中途半端に開かれたままぴくりとも動こうとしない田中の手。
肩に触って確認すると田中の顔が激痛に歪む。
それを見て、新垣は確信する。
「安倍さん、田中ちゃんの手、神経切れてます。」
「いいから着せて。」
冷たい声に、新垣は仕方なく田中に拘束衣を着せる。
が。
「・・・安倍さん、」
「ハサミで穴開けて。」
再び冷たい声。
じゃきん、と音を立てて背中の部分に二つ縦に穴を開ける。
先に翼を通し、それから二度と動かないであろう田中の手を袖に通す。
頭を出させ、袖のベルトを止める。
「できました。」
「サンキュ。後やっとくから、ガキさんは休んでて。」
- 168 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/04(火) 21:59
- いつの間にか真後ろに立っていた安倍とあさ美に少々驚きつつも、
新垣は言われた通り田中を安倍とあさ美に任せて自室へ戻った。
ベッドに倒れこみ、枕に顔を埋めて目を閉じる。
・・・なんか、すごい疲れた。
・・・・・・田中ちゃん、大丈夫かなぁ。
・・・・・・・・・大丈夫だよね、安倍さんもあさ美ちゃんもいるし。
・・・・・・・・・・寝よ。すごい眠い。
「紺野。」
「は、はい!」
「・・・よかったの?ガキさんに、お別れ言わなくても。友達っしょ?」
「・・・・・・いいんです。また、すぐに、会えますし。」
「ま、それもそーなんだけどさ。」
もーちょっと勉強してたら亀井ちゃんに勝ってたのにね。
安倍の呟きは、もうすでにこの世に意識の無い新垣には届かなかった。
- 169 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/04(火) 21:59
- 更新しました。
- 170 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/05(水) 21:51
- たったったったっ。
できるだけ研究所から離れられるように。
テンポよく足を進める。
ざっ―ざざー―――
『――川!―――おが――、―やく――ろ!』
ノイズと共に聞こえる声。
肩に付けてあるトランシーバーを持って、アンテナを伸ばす。
たったったったっ。
「はい、小川です、どーぞ。」
『早く気付けバカ!敵襲だ!十分以内に戻れ!』
「えぇっ!?十分!?」
『お前がいなきゃみんな困るんだよ!!』
ぶつん。
音を立てて通信が途切れる。
- 171 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/05(水) 21:52
- たったったったったったっ―――――
足音が途切れる。
ふわり、麻琴の体がどんどん地面から離れていく。
「急いでるんやろ?」
「・・・?」
「この方が速いよ。」
宙を浮く体。
腰に巻かれた華奢な腕。
上を見上げると、鳥のような翼がバタバタと音を立てて宙を掻く。
真剣にじっと前を見詰めている愛。
- 172 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/05(水) 21:53
- 大分安定してきて、翼の動きがゆっくりになってくる。
大きく翼を広げて滑空。
ふと目が合う。
愛が悪戯っ子のようににっと笑う。
「どちらまで?」
はっと気付いて下を見る。
自軍の真上という事に気付き、慌てだす麻琴。
「こ、ここで!ってか見つかったらやばくないっすか!?」
「敬語なんて使わんでよー。」
ゆっくりと下降しながら愛が不貞腐れたように言う。
「え、でも・・・」
「いっこしか違わんのやから。な?」
「えっ」
いっこしか、違わんのやから?
「私、まだ17やよ?」
- 173 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/05(水) 21:54
- ようやく地に足をつけたのに、まだ宙を浮いている気がする。
17歳。たしかに、いっこしか違わない。
でも天使ってアニメや漫画のイメージでは同じくらいの年齢に見えて何百歳だったりするはず。
なのに。
「・・・マジっすか?」
「あ、まだちゃんと自己紹介してなかったなぁ。
高橋愛、17歳。福井県出身、1986年9月14日生まれのA型。」
まるで普通の人間のようなプロフィール。
そして麻琴は確信する。
本当にこの人は人間なんだ、と。
その証拠に、翼を収めた愛は普通の人間にしか見えない。
今までの思想に、麻琴はすっかり騙されていた。
「・・・・・っ、くっくっくっ」
「?」
「ふっ、ふぇひひひ!ふぁははははは!」
「!?・・・な、なんやの、急に!」
「いやね、あの、ひひっ、なんか、おかしくてっ、っく」
なんとか弁解しようと笑を堪えて言葉を出しても、やはり笑いが込み上げる。
- 174 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/05(水) 21:54
- 「ぅおがわぁーーーーー!!!」
「っひゃあ!?」
真後ろから大声で叫ばれる。
鼓膜が破れそうになるほどの聞き覚えのある声に、頬がひきつる。
「よ、吉澤さ」
「バッキャロー、何処行ってたんだよ。五分遅刻。」
「えぇっ!?ご、ごめんなさ」
「ゴメンナサイですむならケーサツはもういねーんだったなぁ・・・」
怒り口調で言いながら、最後の方は昔を懐かしむような声になる。
が、すぐにくるりと向き直り、ぽん、と麻琴の肩に手を置く。
「行くぞ、おがー。わざわざ迎えに来てやったんだから、感謝しろよ。」
「あ、あのぉ」
不安になった愛が恐る恐る声を出す。
吉澤は愛をまじまじと見つめ、わかった、という風にぽんと手を叩いた。
「・・・小川ぁ、おめーこんなとこまで来てナンパしてんのかぁ?」
「ちっ、違いますよぉ!」
「うぇえ!?」
- 175 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/05(水) 21:55
- 更新しました。
- 176 名前:∬´▽`)川’ー’川 投稿日:2003/11/06(木) 00:54
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
ちょっと来ない間に更新されてたー。
おがーさん愛ちゃんを包み守ってあげて(〃▽〃)キャッ
田中さんどーなっちゃうんだろ。激しく気になるよぉ。
- 177 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/08(土) 00:31
- がしゃん。
冷たい音が部屋に響く。
拘束された腕を使わずに立ち上がろうとするが、翼の重量に阻まれる。
「あ・・・あべ、さ・・」
「どうして」
冷たい声。
優しかった安倍はもうそこにはいない。
「田中なのか、わかる?」
疑問を投げかけた口の端がつりあがる。
背筋を冷たいものが走る。
「田中さぁ、成績悪すぎなんだよね。」
檻に手を掛けて、立ち上がることのできない田中を見下ろす安倍。
更に口端をつり上げ、続ける。
「成績順。残された人材の中で、優秀なのを切るのはもったいないっしょ?」
「・・・そ、んな、じゃあ、」
「そ。田中はバカだから、実験台に回されたの。なっちの判断でね。」
- 178 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/08(土) 00:43
- 更新・・・少なっ!!
>>176
おっ、久々のお客様(笑
微妙に更新してますよ〜。
田中さんは・・・知りませ(ry
- 179 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/12(水) 23:09
- 「こ、この人は、えっと・・・」
慌てて弁解しようと試みるが、この人に秘密を守る事ができるだろうか。
そんな考えがそれを邪魔する。
(いや、吉澤さんだって、一回ぐらい秘密を守った事が・・・)
この二年間の付き合いで一度も秘密を守った吉澤を見た事は無い。
(・・・やっぱナンパで・・・いや、それもどうかなぁ・・・)
「どうも、高橋愛です。初めまして。」
「おぉ、訛りがまた可愛いねぇ。よし、高橋さんは今日からテッテケテーだ!」
「なんですかぁ、それ。」
「なんか喋り方がモールス信号みたいだし。」
思いっきり訛りをバカにしたあだ名にも、初対面の愛は吉澤にツッコミを入れることができない。
なにやら一人問答を繰り返す麻琴よりも初めて見る愛に興味津々の吉澤。
そっと肩を抱いて、優しく愛に語り掛ける。
「小川なんかよりさぁ、私のほうがいいって。」
「はぇ?」
愛は吉澤の言う事が良くわからないらしい。
常時頭に?を浮かべて吉澤の顔をじっと見つめ続ける。
- 180 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/12(水) 23:09
- 「だって小川ヘタレだし」
「ちょ、今のは聞き捨てなりませんよ、吉澤さん。」
『ヘタレ』に敏感に反応する麻琴。
ラッパを構えようとしたところを吉澤に止められる。
「す、スマン!今のは取り消す!だから、梨華ちゃんだけは!」
「じゃあ早くその手を退けたほうが身の為・・・」
一瞬にして主導権を握った麻琴が固まる。
視線は吉澤の真後ろにある影に釘付けになっていた。
「・・・え、マコっちゃん、冗談、だよね?」
背中に刺さる冷たい視線に冷や汗を流す吉澤。
錆び付いたロボットのようにぎこちなく振り向く。
肩に掛かっている手が外され、二人の視線の先を見る愛も思わず固まってしまうほど。
「よ・し・ざ・わ・さん?」
「梨、梨華ちゃん・・・」
顔中を引き攣らせながら、吉澤・小川のヘタレコンビは目の前の見慣れた鬼に恐怖していた。
- 181 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:19
- 安倍が去った後も、田中は微動だにすることができなかった。
頭の中をいろいろなものが駆け巡る。
『新垣は死んだよ。』
『田中が殺したんだ。』
『なっちと紺野、天使の羽の原理がわかったんだ。』
『天使は特殊なDNAの配置と人間の汚いところを一度も感じずに成長する事でできるみたい・・・いや、できるんだ。』
『仕組みがわかったから、興味本位で今度は悪魔の羽を作ってみようって紺野に提案した。』
『ちょうど条件に合ってたのが一人だけいたし。それに』
『死ぬ前になっち達の頭脳がどれぐらいのものなのか試してみたかったんだ。』
『いい実験させてくれて、ありがと。』
- 182 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:19
- 一度も触れることなく。
昨日までのように頭をくしゃっと撫でてくれる事もなく。
冷たい目で、安倍は淡々と続けた。
怖かった。
あんなの安倍さんじゃない。
これは夢に違いない。
じゃあ、このリアルな痛みは何?
動くはずの腕が動かないのはなぜ?
なぜ視界に翳みがかかっていない?
いつものように、夢の中は思い通りにならないの?
- 183 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:20
- 「・・・・あ・・あ、ああぁぁ」
これが現実である事を認識した瞬間、声にならない嗚咽が漏れ出す。
涙が流れない。
悲しいはずなのに、嬉しい。
苦しいはずなのに、楽しい。
自分の中の、まだ人である部分の苦痛。
それは、黒い羽から流れ出す何かによって。
快感に変わる。
泣き叫べばいいのか、狂喜すればいいのか、わからない。
人が支配されないように、理性を最大限に活用する。
しかし、悪魔の感性がそれを吹き飛ばそうとする。
- 184 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:21
- 「あ、安倍さん!!」
部屋を出た途端、慌てた様子であさ美が駆け寄る。
田中には見せなかった笑顔でそれを迎える安倍。
「どした?紺野。」
「天使が、誘拐されました!」
泣きそうな声で、必死に状況を伝えようとするあさ美。
しかし安倍は一瞬驚いた顔をしただけですぐ笑顔に戻る。
「大丈夫だべ、紺野。」
「え?」
「もう天使に用は無いから。実験は成功したし。」
田中にはしなかった、頭をくしゃっと撫でる行為。
毎日のようにしていたため、あさ美にそれをして、安倍は少しだけ安心した。
- 185 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:21
- 「・・・それじゃ」
「ん?」
「それじゃ、ダメなんです。」
愛がここから消えた。
麻琴がそばにいない。
それだけで、あさ美は不安になった。
麻琴を案内していたはずの亀井。
愛を管理していたはずの道重。
その二人が、倒れていた。
麻琴が愛を連れて行った。
きっともう、ここには来ないだろう。
推理してみても、直感でも、どうしてもその答えだけは動かなかった。
- 186 名前:でぃどる 投稿日:2003/11/15(土) 01:22
- 理性だけじゃダメだ。
何かで自分を保とうとする。
壁に頭を打ち付けてみる。
これなら、きっと大丈夫。
がつん。がつん。
檻の中に、鈍い音が響く。
田中が欲しているのは人であることを保つための『痛み』。
なのに、その行為が生み出すのは悪魔にとっての『快感』。
そんなことに気付きもせず、田中はひたすら壁に頭を打ちつけ続けた。
- 187 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/18(火) 23:00
- 「「ごめんなさい!」」
「え・・・ご、ごめんなさい。」
同時に頭を下げる麻琴と吉澤に、自分も謝らなければいけないような気がして、
愛もぺこっと頭を下げる。
が、恐る恐る顔を上げたときに見えたのはやはり鬼。
「よっすぃ〜、小川迎えに行くって言って何分経った?」
「・・・五分、です。」
「小川、十分以内って言ってから何分経つ?」
「・・・・・・・・・十、五?」
「二十分やよ。」
「あぁ・・・二十分、です。」
- 188 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2003/11/18(火) 23:00
- はぁ、と長い溜息を吐く石川。
チラッと時計を見て、今度は短く溜息。
「また、後でね。小川、早く行かないと飯田さん疲れちゃうよ。」
「あ、は、はい!」
「よっすぃ〜はまだだから。」
「うぇえ!?ちょっ、マジでぇ!?」
「だって近距離戦に持ち込まれたんだもん。仕方ないよ。」
「えぇ〜・・・」
「はいはい、ウダウダ言わない。じゃ、小川、行っといで。」
「はい!」
敬礼を交わすと、麻琴は愛の手を掴んで走り出す。
愛はぺこりと会釈をすると、麻琴に続いて走り出した。
「・・・で、さぁ。」
「は、はい。」
「あの子、誰?」
「・・・・・・小川が・・・ナンパしてきた、子?」
「はぁ?」
- 189 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/24(月) 08:15
- ずっとROMってました!
田中の今後が気になる。
こういう話、好きなんでこれからも楽しみにしてますよ〜。
- 190 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/12/14(日) 16:44
- 面白い。すごい気に入った。
まこあいあるし(w
更新マターリ待ってるんよー
- 191 名前:名無し 投稿日:2004/01/03(土) 14:43
- 更新まってます!!
- 192 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/11(日) 01:17
- 『二人とも、遅刻はダメって言ったでしょ!』
『『ごめんなさい・・・』』
『もういいじゃんカオリ〜。二人とも反省してるんだし。』
ある日、先輩の辻と加護が集合に遅れてきた。
当時新米だった麻琴はラッパの手入れを止め、それを見ていた。
『これでもう十回目だよ?・・・よし、決めた。』
『え、決めたって・・・まさか、アレ!?』
『うん。辻、加護、ちょっと来な。』
『ちょ、ホントダメだって、辻も加護も一応大事な戦力なんだから!』
矢口が指揮官の腕を掴み、必死にそれを止めようとする。
しかし、矢口の小さな体では指揮官に敵わない。
『大事な戦力でも遅刻したら使えないでしょ?』
『そ、そーだけどさぁ・・・』
どもる矢口の手を振り切り、奥の部屋へ入っていく指揮官。
指揮官と矢口のやり取りに怯えながら、二人は後に続く。
- 193 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/11(日) 01:17
-
『・・・負けるなよ。』
すれ違った二人に呟いた一言。
その声に振り向いた二人が見た矢口は、目に涙を一杯にためていた。
『そ、そんな顔せんとってくださいよ、矢口さん・・・』
『ま、ますます怖くなるじゃないれすか!』
『・・・ごめん。』
おどけて言う辻加護に、まじめに返す矢口。
あぁ、本当に危ないんだ。
麻琴はうっすらそんなことを思い、同時に心の中で辻加護に手を合わせた。
『お前らも注意しろよ!遅刻とか、ホントやばいからな!』
肩を落とした辻と加護が部屋の中に入った後、矢口が叫んだ。
- 194 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/11(日) 01:18
-
(二人とも、出てきたときには生気が抜け落ちてたなぁ・・・
・・・・・・・・・やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!)
滝のように流れ落ちる汗。
それが目に入っても、麻琴は拭おうとしない。
そんな麻琴の様子を見て、愛はなんとなく悪い気がした。
(私のせいで、遅刻してんな・・・)
「なぁ、・・・小川、さん?」
返事は無い。
「・・・・・・ごめんな。」
- 195 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/11(日) 01:19
- 聞こえないように、小さく、小さく。
呟いたはずなのに。
「・・・謝らないで、くださいよ。」
ぜぇぜぇ、荒い息の中。
そんな言葉が聞こえて、愛は嬉しくなった。
「・・・高橋さん?」
「うん?」
「羽・・・」
「・・・うん。」
繋いだ手を握り返すと、麻琴は納得したように微笑んだ。
- 196 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/11(日) 01:37
- あけましておめでとうございます(遅
更新遅れすぎな上に少なくて申し訳ございません・・・
オクレスギヤヨ三川`ー´)=○)でぃ)・゚・ ゴハァ
>>189
久しぶりの更新なのに田中さん出てなくてすみません・・・
从 ` ヮ´)<遅か!れなもう待ちくたびれたと!
田中さんにもごめんなさい・・・
>>190
気に入ってもらえてよかったです。
まこあいはガチです。
川’ー’)ノシ<待っといてのー
>>191
お待たせいたしました。
てか待たせてすいません_| ̄|○
- 197 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/01/12(月) 10:32
- 久しぶりの更新お疲れさまです。
ニギニギ(;´Д`)ハァハァ
続き楽しみです。
- 198 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/01/21(水) 20:48
- 心地よい、緩やかなリズムで体が揺すられる。
それを感じた瞬間に、心が体と同調していく。
忘れていた体の感覚が戻ってきた時、殴られた頭の痛みも思い出す。
「重さん、だいじょぶ?」
「・・・安、倍、さん・・・はい、なんとか」
「痛む?頭・・・」
「あぁ、ちょっと・・・」
起き上がってそっと触れた殴られた箇所の痛みは、ちょっとなんて物じゃなかった。
しかし、慌しい研究所で先輩に心配をかけることはできない。
強がりと悟られないように少し微笑んで見せた。
- 199 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/01/21(水) 20:48
- 「ちょ、見してみ。」
「え?」
いつものようにそっけない返事を返すことなく。
押さえている箇所にそっと手が重ねられる。
「あらら、バッチリ腫れちゃってるねぇ。」
「あ、安倍さん?」
「ん?」
忙しくないんですか。
率直に言うのもどうかと頭の中で言葉のパズルを組み立てては崩し、組み立てては崩し。
しかしどれも納得が行かず、それを何度も繰り返す。
- 200 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/01/21(水) 20:49
- 「・・・もう、なっち達の研究は終わったよ。」
少しだけトーンが低くなったような、そんな先輩の声。
けれども見上げた先輩の表情は、大好きな研究が出来なくなって落ち込んでいる顔ではなくて。
「・・・実験は、成功したんだ。」
「実験・・・?」
「なのに、なんでだろね。全然嬉しくないんだ・・・」
実験なんて、一言も聞いたことが無い。
少し困ったような表情。
ベースになる笑顔はいつもと同じで、けれど何故か不気味に感じて。
嫌な予感がした。
- 201 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/01/21(水) 20:49
- 「・・・あ〜、」
いらついた様に、言い難そうに吐き出された声。
「・・・えっとね、重さん。」
まっすぐ道重の目を見て、ついに先輩は口を開いた。
「田中、ちょっと借りたから。」
- 202 名前:でぃどる 投稿日:2004/01/21(水) 20:55
- ちびちび更新。
>>197
ご声援ありがとうございます。
∬∬´▽`)ノ<ニギニギ
ちびちびやってきますんで、マターリ待っててください。
- 203 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/01/27(火) 21:10
- (;´д`)ドキドキ
- 204 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 17:08
- ho
- 205 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/04/01(木) 02:33
- ぐじゅ。
背中から音がして、激痛と快感に同時に襲われる。
痛いけど、気持ちよくて、けれど痛くて。
よくわからなくてヘンになりそうで。
ふと、あの子の顔が頭をよぎる。
口を開きかけ、やめる。
今、あの子がこんな姿になった自分を見たら。
どんなにショックを受けるだろう。
『いいじゃん。』
『見られちゃえよ。』
『怖がられて、こっちは嬉しいんだから。』
(嫌だ。そんなの、嫌だ。)
『呼べよ。ほら、口あけて。』
精一杯噛み締めた唇から、すぅっと痛みが引いて。
ゆっくりと口が開いていく。
『ほら、言ってみ?』
「・・・・ぇ・・・」
『いいぞ、あと一文字!』
「・・・・・・・り・・・・・」
- 206 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/04/01(木) 02:34
- 『よぉし、よく言った!感動したよ。』
耳元で囁く悪魔の言葉に、田中は少し嫌な予感がした。
『じゃあ、ご褒美な。』
「・・・ぇ、?」
「・・・れいな?」
びくっ。
体が跳ね上がる。
「れいな、なの?」
振り向きたくない。
今、私の後ろにいる人を、確認したくない。
「ねぇ、れい―――」
動かなかった腕が突然動き出す。
力も付いていて、拘束衣を破き、耳を塞いだ。
「―――――、―――?」
首を振る。
- 207 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/04/01(木) 02:35
- 手に手が触れる。
暖かい、手。
恐る恐る振り向く。
微笑まれる。
その顔が硬くなる。
口端からは、赤い液体が流れ落ちる。
- 208 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/04/01(木) 02:36
-
窓から入る風に、安倍は髪を揺らしながら呟いた。
「・・・ごめんねぇ、重さん。」
返事は無い。
「なっち、どーでもよくなっちゃったんだぁ。」
- 209 名前:もう一つのBuglers holiday 投稿日:2004/04/01(木) 02:36
- 「・・・さ、ゆ?」
『新垣は死んだよ。』
「ぁ・・・」
ぐらりと揺れて、崩れ落ちる。
「ぁあ・・・」
『気持ちイイ?』
「れぇ、な・・・」
ふわりと微笑んで、道重は目を閉じた。
田中の中には、快感だけが残った。
- 210 名前:でぃどる 投稿日:2004/04/01(木) 02:40
- 久しぶりなのに殺しちゃってごめんなさい・・・
从メ・ 。.・)=○)でぃ)・゚・ゴメンナサイッ
>>203
ちびちびどころじゃなくて申し訳ない_| ̄|○
>>204
・・・申し訳ない_| ̄|○
- 211 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/04/03(土) 16:02
- ヽ(´ー`)ノワーイ更新だぁー
なんか本当行き詰まってるようで…ガンガテネ!
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