ベースボールドリーム

1 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)14時56分49秒
題名の通り野球小説です。
あまり野球に詳しくない方はおもしろくないかもしれません。
とりあえず、週一更新でがんばりたいのでよろしくお願いします。
2 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)14時58分20秒
「こら!ごっちん、寝るな!」
「んあ?よっすぃ〜おはよう」

ここは埼玉県立朝顔高校(通称朝高)の野球部の部室
これからレギュラー部員だけのミーティングが始まるところだ。
朝高のエースである後藤を起こし、部長の吉澤が話を始める。
3 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時00分16秒
「ごっちん、寝過ぎだよ、全く・・・えっと、わが朝高は去年まで五年練続で甲子園に出場していて、今年も埼玉県大会を見事突破し、最低目標の甲子園出場は果たせたわけだけど、三年前全国優勝してからは二年連続で初戦敗退をしています。だから、今年こそはまず初戦を突破し、全国優勝を目指したいと思います。三年前、矢口さん・市井さん・保田さんがいた世代が黄金世代だったと言われないように、うちらもがんばろう。まあ、三年前は矢口さんのおかげで優勝したようなものだけど」

「ちょっと、よっすぃ〜、今の言葉訂正してよ。三年前優勝したのはいちーちゃんのおかげなんだから。よっすぃ〜も見たでしょ、決勝戦でいちーちゃんの逆転サヨナラホームラン」

「何言ってんの、ごっちん。あのサヨナラホームランだって矢口さんがヒットで出塁してなかったらただの同点どまりだったんだから」
4 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時01分24秒
今にも戦闘態勢に入りそうな二人に新たな声が参戦してくる。

「もう、二人とも止めようよ。間をとって保田さんのおかげだったってことでいいでしょ?よっすぃ〜もごっちんも」

「「梨華ちゃんは黙ってて」」

他のレギュラー部員はこの三人をあきれながら見ている。
5 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時02分22秒
「また始まったね、あやや」

「ホントホント、あの三人も飽きないね。毎回同じことやってるよね。ごっちんとよっすぃ〜がけんかを始めて、梨華ちゃんが火に油を注ぐ。ホント大丈夫なのかな、このチーム。ね、美貴タン」

「ごっちんとよっすぃ〜もあれで野球になると名バッテリーになるんだから不思議だよ」

こうして、朝高の野球部は今日も平和に過ぎていった。

6 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時04分24秒
1週間後、朝高野球部は甲子園近くのホテルで、組み合わせ抽選会のときを迎えた。
さすがに去年も一昨年も甲子園に来ているとはいえ、くじを引くのはもちろん初めてである吉澤は緊張していた。

そしてとうとう朝高の順番となった。
すでに四分の三ほどが埋まっている。
吉澤が悩んだ挙句、くじを一つ手に取る。
そのくじ番号が読み上げられると、朝高ナインから、あっという声が上がった

吉澤の引いたくじは、三日目第二試合と日程としてはちょうどいいところであったが、問題はその相手だった。

奈良県立双葉高校

7 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時06分42秒
去年の甲子園、初戦で朝高が破れた相手だ。
そして、双葉高校はそのまま準優勝をした。
しかも、去年の主力選手はほとんどが二年生、つまり、去年より戦力が落ちたとは考えられない。

吉澤も対戦校を見て、さすがにしまったという表情を浮かべた。
ナインも落胆しているだろうなあと思いながら吉澤は朝高の席に戻ったが、意外にもナインは落ち込んだ様子を見せなかった。
それどころか、ようやく去年のお返しができるとほとんどの部員が燃えていた。
後藤だけは相変わらず、熟睡中であったが・・・
8 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時07分55秒
全ての組み合わせが決まり、対戦校の部長同士が握手をする事となった。
吉澤も双葉高の部長にあいさつをしに、双葉高の席に向かった。
まあ、部長とは去年試合をしてからも、メール等で連絡を取り合う仲になっていたので、知り合いではあった。

「お〜、よっすぃ〜じゃん、こっちこっち」

吉澤が部長を探していると、背後から声がかかってきた。
振り向くと、その双葉高の部長になった加護亜依が立っていた。

「あいぼん、今年は負けないからね」

「よっすぃ〜の方こそまたうちと当たるなんて、運が悪いな〜」

二人の周りに埼玉と奈良の地方紙のカメラマンが集まってきたので、話を切り上げ、二人はしっかりと握手を交わした。
9 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月08日(金)15時11分13秒
とりあえずこんな感じで
次回から試合に入りたいと思います。
レスがあるのと無いのとではやる気が違うので、何でもいいのでレスをくれるとうれしいです。
10 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003年08月08日(金)22時12分56秒
野球もの、興味があります。
続き待ってます。
頑張ってください。

ところで、今出ている四人のほかにも出てくるのですか?
11 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月09日(土)16時50分22秒
待っていました野球小説
選抜の時の成績など
細かい設定も考えていただき頑張ってほしいです
12 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時48分57秒
試合当日
試合前になり、両チームのスタメンが発表された。
朝顔高も双葉高も県大会からメンバーを入れ替えては無い。
先攻は双葉高だ。

双葉高         朝顔高
1番 加護 二     1番 松浦 中
2番 辻  遊     2番 石川 一
3番 遠藤 左     3番 後藤 投
4番 松岡 三     4番 吉澤 捕
5番 大石 中     5番 藤本 三
6番 山本 一     6番 矢野 二
7番 竹中 捕     7番 金谷 左
8番 斉木 右     8番 松本 右
9番 新垣 投     9番 土井 遊
13 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時50分25秒
両チームの練習が終わり、とうとう主審がプレーボールを宣告する。
一回表
後藤の投球練習の球を受けた吉澤は、今日の後藤は変化球の切れが甘かったので、ストレートでどんどん押していこうと思った。

一方、打席の加護は初球ストレートだと予想し、ストライクゾーンなら初球から強振しようと打席に入った。

そして、注目の初球
加護の予想通りにストレートがインコース低めに投げられた。
球速は148キロを計測した。
左打者の加護はそれを上手く引きつけて強振する。

石川の横、一塁線を破り、ボールが転々とする。
加護は迷わず一塁を蹴り、二塁に向かう。
ライト松本がようやく追いついたが、ボールはセカンドに戻っただけ。
二塁打となった。
14 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時51分28秒
続く辻が右打席に立つ。
初球、またストレートから入るが、アウトコースに外れる。
辻は少しもバントの構えを見せなかった。
その辻に二塁の加護からサインが送られる。
(のの、次の球を、ヒットエンドラン)
(了解、あいぼん)
二球目の高めのスライダーを辻が力まずに流し打つ。
ボールは一二塁間をライナーで破る。
スタートを切っていた加護はそのままホームへ向かう。
双葉高がたった3球で先制点を挙げた。

双1−0朝
15 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時52分09秒
後藤はすぐに立ち直り、3、4、5番を三者三振に切ってとった。
一回表を終え、ベンチに向かう後藤に吉澤が近づく。

「ドンマイ、ごっちん」
「うん・・・今日はよっすぃ〜の指示通りに投げるよ」
「分かった、任せて」

他のナインも口々に後藤に、ドンマイと声をかける。

16 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時52分49秒
一回裏
双葉高新垣が投球練習を始める。

新垣の球種はフォークとスローカーブとストレート
ストレートも120キロ前後しか出ないが、コントロールが良く、球を低めに集める。
奈良県大会では一本も長打を打たれていない。

双葉高は守りも良く、エラーは一試合平均0、3個だ。
特に、辻加護の二遊間は完璧で、一試合平均3、6個という併殺打の数がそれを物語っている。

17 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時53分32秒
投球練習も終え、松浦が打席に入る。
新垣の初球、スローカーブだ。
松浦はこれを見逃すが、ぎりぎり決まり、ストライク。
二球目ボール、三球目ファールの後の四球目のフォーク。
松浦が上手くすくいあげ、新垣の頭を越え、センターに抜けるかと思ったが、ショート辻が追いつき、ワンバウンドで捕り、一塁に送りワンナウトとなる。

石川が続いて打席に立つ。
フルカウントまで粘るが、セカンドゴロに倒れる。

18 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時54分26秒
後藤、
初球のストレートを流し打ち、レフト前ヒットで出塁する。

吉澤、
四球目を高々と打ち上げる。
加護が手を上げて、後退していくがまだ落ちてこない。
センターも後退して追いかけるが、まだ落ちない。
ようやく落ちてきたのをセンターが捕ったのは、フェンス3メートル手前だった。

これには、加護もあきれて、
「セカンドフライやと思たのに・・・相変わらずの馬鹿力やなあ、よっすぃ〜は」
とつぶやいた。

19 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時55分13秒
二回表、双葉高三者凡退三振二つ

二回裏、藤本ヒットも後が続かず無得点。

三回はどちらも9番からの攻撃となる。
三回表
新垣の打球はサードライナー、藤本がしっかりつかむ。

トップに戻り、加護。
すっかり落ち着いていた後藤、吉澤のバッテリーはその加護をセンターフライに討ち取り、
ツーアウト。

続く辻が二打席連続のヒットをレフト前に放つも、3番遠藤は三振でチェンジとなる。

20 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時56分34秒
三回裏
ワンナウト後、俊足の松浦が初球セーフティーバントを試みる。
サードのスタートが少し遅れ、成功する。

「よし、あややが出たよ。梨華ちゃん、頼むよ」
「うん」
後藤の呼びかけに答えて、石川が打席に向かう。

初球、いきなり松浦が単独スチールを決行。
予想外だったキャッチャーが慌ててしまい、送球がそれて成功する。

そして、二球目を流し打った、石川の打球は一二塁間へ。
抜ければ俊足の松浦は高確率でホームインできる。
が、加護が飛びつき、辛うじてグラブに当てる。
すぐに立ち上がり、ボールを拾い、一塁に投げるが、わずかに石川が先で内野安打。
ワンナウト一、三塁と好機が広がる。
21 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時58分18秒
後藤が打席に立つ。
双葉高が初めてのタイムをとり、内野陣が新垣の周りに集まる。

「どうする?」
「後藤さんの後がよっすぃ〜か・・・ののはどう思う?」
「やっぱり、勝負れすかね〜、お豆ちゃんは?」
「もしかしたら、と思うけど、S作戦とってみない?」
「Sって・・・まさか・・・いや、あるかもしれない」
「ののもそれは考えてませんれした」
「よし、ベンチにサイン送ろう」

双葉高の内野陣がまたもとの位置に戻っていく。
22 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)08時59分37秒
その後、双葉高の監督が出て、球審に何かを告げる。
しばらくして、アナウンスが流れる。
「双葉高校、守備の変更をお伝えします。ファースト山本がセカンドに、セカンド加護がファーストに、サード松岡がショートに、ショート辻がサードに、それぞれ変更となります」

これには、朝高ベンチも意図がわからず、戸惑いを見せる。
監督と吉澤が話し合っても分からず、とりあえず、さっきと同じ初球スクイズのサインを後藤に出す。

23 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)09時01分24秒
審判がプレイをかけ、新垣が初球を投げる。
真ん中低めのストレート、バントには絶好球だ。
これを確実に後藤はファースト方向にバントを決め、うまく転がしたに見えた・・・が、ボールはワンバウンドしただけで、加護がそれを捕り、ホームへすぐ送球。
俊足松浦だったが、さすがに楽々アウトになる。
スクイズ失敗。

「やった!あいぼん、ナイス」
「ののやってあれくらいできるやろ〜」
「当然れす」
加護のもとに、辻が行き、加護とハイタッチを交わす。

24 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)09時02分42秒
これを見ていた吉澤はしまったと思った。
(双葉高はスクイズが来るって読んでたんだ・・・そしてあの守備変更はスクイズをより確実に防ぐためのものだったんだ・・・新垣の投球と同時にののとあいぼんがホームに突っ込む・・・やられた。でも、まだ攻撃は終わってないよ)

ツーアウト一、二塁に変わり、また守備変更をして、それぞれもとに戻る。
続くバッターは吉澤。

2−2からの五球目だった。
吉澤のバットは低めのスローカーブを完璧に捕らえ、全身守備のレフトの頭上を軽々越え、フェンスに激突する。
石川がホームインし、後藤も三塁を蹴る。
辻がレフトからのボールを中継してバックホームする。
わずかに、後藤のヘッドスライディングが勝り、ホームインし、逆転。
吉澤の2点タイムリーツーベース。
25 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月12日(火)09時04分38秒
先ほどの、スクイズ阻止が無駄になるような吉澤の一振りに加護・辻・新垣も落胆する。
続く藤本にもタイムリーを打たれ、三点目が入り、次のバッターを三振にとり、ようやくチェンジとなった。

双1−3朝

四回、五回、六回、七回は両チーム、チャンスは作るも、無得点に終わり、いよいよ大詰めの八回表に入る。
双葉高の攻撃は7番から。

双葉高は攻撃の前に、ベンチで円陣を組んだ。
「ええか、この回三人で終わったら、9回はうちからや。そうなったら、うちとのので一点取れるか取れないかや。二点以上取ろうと思ったら、この回が勝負やで。うちとののの前に何とか出塁してな。お願いやから」
加護の言葉に、ナインは全員うなずく。
「よっしゃ〜、はりきっていっきま〜〜〜っ」
「「「「「「「「しょい!!!!!!!!」」」」」」」」
26 名前:スワローズ 投稿日:2003年08月12日(火)09時13分23秒
>>10 ヨードーケッティさん
初めの更新ですでに六人出てたんですが、分かりにくかったですか?
とりあえず、五期メンは全員出すつもりです。
矢口より上のメンバーは第一部では出ないかもしれません。

>>11 名無し読者さん
選抜は考えてなかったですが、一応考えたいと思います。

少し早めに更新してみました。
試合の書き方について、こうしたらいいとかありましたら、教えてください。
その他、批評・感想なんでもいいです。
そのうち、人物紹介を載せたいと思います。
27 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003年08月17日(日)00時17分02秒
最初にスターティングメンバーが書いてあったので読みやすいです。
読んでいる途中で、新垣を「あらかき」と読んでしまい
「ダイエー新垣がスローカーブ!?」とか思いました。(笑)

野球ものは書いたことが無いけれど、
ハロプロメンバーをパワプロの能力値で構想することをよくやります。
ロケットボーイさん(スワローズさん?)がどんな設定にするのかと思ったら、
ヨッスィ〜がパワーヒッター、ゴマキがエース、美貴ティーがサードでクリーンアップと
ほとんどイメージが一緒なのでびっくりしました。
試合の展開、結果楽しみにしています。
28 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003年08月17日(日)00時17分57秒
すいません、ageてしまいました。
責任取ります。
29 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時07分36秒
しかし、7番竹中の打球はサードライナー、8番斉木の打球はキャッチャーフライ、簡単にツーアウトとなる。
9番新垣が打席に入る。
何とか新垣は加護につなごうと、粘る。
粘った末の12球目、後藤が粘り負けて、ストレートが外れ、フォアボールとなる。

いきなり盛り上がる双葉高ベンチと応援団。
ここまでの加護の成績は3打数2安打1二塁打、辻は3打数2安打1打点1併殺打と双葉高でヒットを打っているのはこの二人だけである。
その加護が打席に入る。

30 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時09分35秒
その初球、吉澤の要求した球はストレート。
(さすが、よっすぃ〜だね。後藤の投げたい球がよく分かってるよ。よっすぃ〜はやっぱ最高のパートナーだよ)
改めて吉澤に感心しながら、後藤が投げたストレートに観客からどよめきが起こる。

154キロ、自己最速であった後藤の球はわずかに高めに外れ、1ボールとなる。
加護は見逃したというより、手が出なかった。

セットポジションから後藤が2球目を投げる。
(しまった)
ノーツーにしたくない気持ちから148キロのストレートがど真ん中に入る。
31 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時10分53秒
この球を見逃さず、加護のバットが真芯で捕らえる。
ボールは痛烈なライナーで右中間を破る。
1塁ランナーの新垣が生還、加護も2塁まで到達する。
1点差に詰めるタイムリーツーベースとなり、大歓声が双葉高側から沸き起こる。

そして、打席には辻。
ここで朝高は初めて守備のタイムをとり、内野陣が集まる。
まず初めに浮かんだのは敬遠策だが、これにはほとんどのチームメイトが反対する。
「ごっちん、ファーストに打たせたら、絶対にアウトにするよ」
「サードでもいいよ」
「梨華ちゃん・・・ミキティー・・・」
他のチームメイトも後藤を元気付ける。
最後に吉澤が声をかける。
「よ〜し、ごっちん。思いきり投げてこい」
「よっすぃ〜、ありがと」
32 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時12分22秒
初球、2球目、3球目とここまで、一度も手を出さず、辻はツーワンと追いこまれる。
吉澤のサインはアウトローへストレート。
後藤もサイン通りに投げ込む。
その球を辻がバットの先で捕らえると、打球は後藤の足元を抜け、二遊間の真ん中を突破する。
ほとんどの観客が同点打になると思っていた。
もちろん双葉高ベンチもである。
しかし、その希望を打ち砕いたのが、センター松浦だった。
チーム1の俊足で打球を捕球すると、チーム1の肩力でホームへのストライク送球。
そして、加護のタックルに遭いながら、吉澤のミットからボールはこぼれず、主審がアウトをコールする。
これが、最大のピンチを切り抜けた瞬間だった。
33 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時13分25秒
ベンチに帰ってきた松浦をチーム全員のハイタッチで迎える。
「あやや最高!おかげで後藤助かったよ」
「ありがとう、ごっちん」


一方の双葉高側は重苦しい雰囲気に包まれている。
守備位置についても迫力や活気が伝わらない。
ムードメーカーの二人についても同じだった。
そしてこの回、石川のタイムリー、吉澤の特大ツーランで駄目押しの3点を奪い、朝高が試合を決めた。
九回を後藤が3人できっちり抑え、試合終了となる。

双葉高100000010┃2
朝顔高00300003×┃6

試合終了と同時に辻と加護が泣き崩れる。
逆に朝高ナインの喜びは最高潮を迎えた。
そして、朝高の校歌が3年ぶりに夏の甲子園に流れた。
34 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時14分38秒
二回戦の相手は次の試合の勝者となっているので、興奮が冷めやまないまま、吉澤とじゃんけんで負けた松浦は観客席に移ることにした。
朝高にはマネージャーが山ほどいるが、ほとんどが部員目当てなので野球に関しては素人ばかりだった。
だから、対戦校の試合はキャプテンの吉澤とじゃんけんで負けたレギュラー部員一人が直にその試合を観戦して、研究する事になっている。

二人で応援団がとっていた席に座る。
「あやや、ナイスバックホームだったよ。まるで矢口さんを見ているようだった」
「そんな・・・松浦なんてまだまだですよ。それよりよっすぃ〜こそナイスホームランだね」
「ありがとう・・・さあ、試合をちゃんと見てないと」

試合は明徳義塾(高知)−東北(宮城)という有名校同士の対決で、序盤からシーソーゲームになったが7−5で明徳が競り勝った。
35 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時15分39秒
「あの3番は要注意だね。あとピッチャーもコントロールがいいし」
「さすがあややだね。私と同じ意見だ。これがごっちんだったら寝てばっかりで試合なんて見てないだろうけど」
「あははは、そうだね・・・あれ?」
試合が終わり、吉澤と松浦が話しながら、ホテルに向かって歩いていると、松浦が何かに気づいて足を止める。

「どうしたの?」
「あの公園のベンチで座っている二人って双葉高の二人じゃない?」
松浦の指差した方向を見ると、確かに辻と加護がベンチに座っていた。
「ホントだ・・・ののとあいぼんだよ」
「ののとあいぼん?」
「あ〜、辻と加護の事、言ってなかったね、あややには。私、あの二人と去年からメール交換してたんだ」
「へ〜、そうなの?」
「うん、ちょっと行ってみよ」
「松浦は帰ってようか?」
「うん、じゃあ他のみんなには次の相手のこと話しといて」
「分かった」
松浦と分かれた吉澤は公園に入り、二人の背後から近づいていった。
36 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月19日(火)22時21分22秒
>>27,28 ヨードーケッティさん
おれもよくパワプロで同じことやります。
まだ第1章の双葉高戦は次回まで続きます。
それが終ると、登場人物の紹介とか少しずつしていきたいです。
37 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003年08月26日(火)23時04分00秒
甲子園も終わったし、そろそろこうしんをっ!!
38 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時49分15秒
「二人は何をやってるのかな?」

辻と加護は同時に振り向き、同時に驚きの声をあげた。

「「よっすぃ〜」」

吉澤二人が座っているベンチの真後ろの植え込みのそばに腰を下ろした。

「よっすぃ〜さあ、非常識れすよ!?試合の勝者が敗者に試合が終わってすぐ話しかけるなんて」

辻も、ついきつい口調になる。

「ふ〜ん、じゃあ去年私が双葉高に負けて、一人で近くのトイレで泣いてたときに声をかけてきたのはどちらさんでしたかねえ?」

「あ、あれは・・・あいぼんが・・・」
39 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時52分43秒
「トイレから出たら、いきなり二人が近づいてきて、二人分の携帯のアドレスを書いた紙を渡してきて、メル友なろうよとか言ってきた時はなんだこいつら?とか思ったし」

「あの時は本当にメル友になりたいと思ってて。それにこんな事考えたらだめだと思うけど、よっすぃ〜の泣き声を聞いてたら、なんか勝って悪い気がしちゃってさ・・・」

そこまで聞いて、吉澤は加護が最初のときから一言もしゃべってない事に気づいた。

「どうしたの、あいぼん?」

加護の返事は無く、仕方なく辻が代わりに答える。

「さっきからこんな感じでさあ。試合が終わってすぐに甲子園を飛び出していったからののが追いかけたんれす。ここで座っているときに追いついたんらけど、ずっと、『うちのせいで負けたんや。みんなに合わす顔無いわ』って言ってるんれす。ののがいくらそんな事無いって言ってもちっとも反応してくれないんれす」
40 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時54分45秒
「うちのせいや・・・」

吉澤は深いため息をついて、二人に向かって言った。

「そうそう、あいぼんとのののせいだよ」

「よっすぃ〜!」

話しかけた時以上に辻の口調がきつくなる。

「よっすぃ〜の言うとおりや。うちがあの時、もっとスタートを早くしてたら同点に追いついとったのに」
41 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時55分32秒
「馬鹿じゃない?私が言ってるのはそんな事じゃないよ」

「「え!?」」

「確かにあのあやや・・・松浦のバックホームは流れを変えたけど、その後の二人の守りは何?まだ九回の攻撃もあるのに、もう終わったみたいな顔してさあ。キャプテンと副キャプテンが初めにあきらめてどうすんのさ!」

「「・・・・・」」

「はっきり言って、あの時もうあきらめていたのは二人だけだったよ。新垣だって八回の投球には気迫が表れていたし。九回だって三者凡退にはなったけども、三人とも何球も粘って、打球だってヒット性の当たりが野手の正面に飛んできたってだけだったし・・・応援団のみんなもあきらめずに最後まで一緒に戦っていたのに・・・野球は二人でやるもんじゃないんだよ」

吉澤が話し終わって二人を見ると、二人の目から涙があふれていた。
吉澤がハンカチを貸してやろうと、ポケットを探っていると、新たな声が聞こえてきた。

42 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時56分43秒
「あいぼん!のの!」

新垣を先頭に双葉高の部員が公園の中に入ってきた。

「みんな・・・どうしてここが?」

「二人を探していたら、朝高の松浦さんに会って、聞いたらこの公園にいたって言ってたから・・・・って、朝高の吉澤さん!?なんでここに?二人は泣いているし・・・吉澤さんにいじめられたの!?」

「まあ、私が二人を泣かしたのは間違いじゃないよ」

「やっぱり!早くののとあいぼんはそいつから離れて!二人を泣かすなんて絶対許さないんだから」
43 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時57分17秒
辻と加護は新垣達に誤解を解こうとしたが、吉澤に口をふさがれる。

「ふ〜ん、許さないってどうするつもり?」

「は、早く二人を放しなさいよ!」

「どうしようかな〜?新垣さあ、もう試合に負けたんだから、ほとんどが引退になったわけだよね。もちろんこの二人も。だったらもうチームメイトじゃないし、すぐに試合をあきらめるような二人なんて放っておけば?」

吉澤の言葉に、新垣や他の部員達も一瞬黙り込む。

「みんなも本心では二人のこと自己中で嫌な奴とか思ってんじゃないの?」

44 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時58分42秒
口を抑えられていた二人の目からまた涙があふれてくる。
その沈黙を破ったのは新垣だった。

「ちがう・・・」

!!
泣いていた二人は新垣の言葉に驚いて、顔を上げる。

「確かに去年の夏、前の部長からあいぼんが新部長、ののが新副部長に任命されてから、しばらくはみんなわがままな二人に不信感はあった・・・でも、しばらく二人を見てて、ホントにがんばっててみんな二人にずっとついて行こうと思ったんだ・・・甲子園に来れたのも二人のおかげだし、全然今では恨んでないし、これからも二人は私達と同じチームメイトなんだ。吉澤さん、二人を返してください!」

他の部員も口々に「そうだそうだ!」とか「二人を返せ!」とか言い出す。
吉澤はそれを見て微笑みながら、二人の口をふさいでいた両手を放す。
45 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)15時59分21秒
「のの、あいぼん、これでも野球は二人でやるものだと思う?」

ふたりは泣きながら首を必死に横に振る。
それを見ていた新垣たちは訳が分からず、首をかしげる。

10分後、ようやく泣き止んだ二人から、事情を聞かされた新垣たちは吉澤に口々に「ごめん」と謝る。
吉澤は「いいっていいって」と笑う。
辻と加護の二人は今日の試合の事をチームメイトに謝り、チームメイトはそんな二人を温かく迎える。
二人はまた吉澤のほうに向き直り、「ありがとう」とお礼を言ったあと言葉を続ける。

「よっすぃ〜、うちらに勝ったんやから、絶対優勝してな」
「そうれすよ、負けたら承知しないのれす」

「もちろん、優勝するよ、絶対に。二人とも、ちゃんと見ててね」

「「もちろん」」と二人は声を合わせて返事をした後、新垣達に、甲子園の土を分けてもらいながら、一緒に公園を出ていった。
46 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)16時00分04秒
注:これは野球小説です。
47 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)16時00分50秒
一回戦 対奈良県立双葉高等学校 6−2で勝利
二回戦進出決定
48 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年08月27日(水)16時04分50秒
>>37 壱ダイエーファンさん
甲子園終りましたねえ。
東北に勝ってもらいたかったけど。

更新しました。
なんか野球っぽくないです。
次回は一気に準決勝ぐらいまで行くので、それまでの試合は簡単に終らせます。
っていうか、本物の高校名出していいものだろうか?
49 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月27日(水)17時22分54秒
更新ありがとうございます
試合展開もだらだら長くなくていい感じでした
次がまた楽しみです

自分も東北を応援していたんで優勝できなくて残念です
来年、頑張ってほしいと思います
50 名前:ヒニー 投稿日:2003年08月28日(木)00時32分02秒
こういうベンチ裏の出来事も好きです。
野球は友情をも作るのでしょう。
ダルビッシュ選手の今後はどうなるのか気になります。
そして、この話もすごく気になってます。
頑張ってください。
51 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)15時32分47秒
関係ないけど、ダルビッシュ…従兄にそっくりなんだよなぁ。
52 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時00分29秒
朝顔高        明徳義塾
1番 松浦 中    1番 白石 三
2番 石川 一    2番 青野 右
3番 後藤 投    3番 黒田 中
4番 吉澤 捕    4番 緑谷 一
5番 藤本 三    5番 筑紫 投
6番 矢野 二    6番 赤峰 二
7番 金谷 左    7番 灰原 捕
8番 松本 右    8番 桃井 遊
9番 土井 遊    9番 黄島 左

53 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時01分55秒
一回戦の双葉高戦から5日後、朝高ナインは二回戦の明徳義塾戦を迎えた。
この試合ヒーローになったのは、いつも吉澤の影に隠れてそれほど目立っていなかった5番の藤本だった。

初回いきなりの先制スリーラン。
明徳の先発二年生投手筑紫にいきなりのプレッシャーを与える。

三回には吉澤のタイムリーの後、なおもワンナウト1、3塁の場面で、右中間へ走者一掃の三塁打を放つ。
これで、まだ経験の浅い筑紫はK.Oされる。
54 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時03分35秒
エース後藤も上々のピッチングで明徳打線を八回まで散発6安打、三塁を踏ませない投球を披露する。

打線も八回まで、筑紫に変わって出てきた水貞からもこつこつと追加点を奪い、八回が終わって9−0で大量九点をリードしている。

藤本は八回までに4打数3安打5打点の活躍で、もし5打席目に二塁打が出ると、サイクルヒットを達成する事になる。

九回表は2番石川からの攻撃だ。
石川は、水貞のフォークを芯で捕らえたが、ショート真正面のライナーとなりワンナウト。

続く後藤もセカンドゴロに倒れて、ツーアウトになる。
これで、吉澤が出塁しなければ、藤本まで打席が回らない。
55 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時04分35秒
吉澤がベンチの声援を受けながら、ゆっくりと打席に入る。
ベンチも吉澤ももちろん藤本の記録の事に気づいていた。
いつも冷静な藤本だが、さすがにネクストバッターボックスに入っても落ち着かず、立ったり座ったりしている。

ストライク!

球審の声に藤本がボールカウントを確認したら、もうすでに吉澤はツーワンと追いこまれていた。

(よっすぃ〜、打って!)

心の中で藤本が叫んだ後、水貞が投げた外角低めの球を吉澤のバットが捕らえる。
しかし、打球はボテボテでサード前に転がっている。
吉澤が必死で走る。
サードがダッシュしてボールをつかみ、投げる・・・が、少しあせったサードの送球がワンバウンドする間に、吉澤が一塁を駆け抜ける。

記録は内野安打。
辛うじて藤本に打席が回ってきた。
56 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時05分52秒

「よし」

吉澤がセーフになったのを見届けて、思わずそうつぶやきながら打席に入る。
なぜか分からないけれども、二塁打を打てるような予感が藤本はしていた。

初球、二球目と連続でボール。
三球目も微妙だったが、それを藤本がカットしてワンツーとなる。

そして四球目、内角高めのストレートを振りぬくと、打球は左中間ど真ん中に飛ぶ。
ベンチも観客も期待が高まる。
打った藤本も抜けたと思った。
しかし・・・サイクルヒットの夢は絶たれた。
57 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時06分46秒
確かに打球はセンターもレフトも追いつけなかったし、藤本が途中でこけて二塁の前でアウトになってしまったわけでもない。
打球は甲子園名物の浜風に後押しされ、ぎりぎりでフェンスを越えていった。

思わず、藤本は「あ!」とつぶやいてしまう。
こうして、ホームランを打ったのにあまりうれしくないという複雑な気持ちで、藤本はベースを一周した。

もちろん、あくまで記録にこだわるなら三塁ベースをわざと踏み忘れるという方法もあったが、さすがにそれは藤本にはできなかった。
58 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時08分58秒
その裏の明徳の意地の攻撃で、後藤は三安打され一点を失ったものの最後は三振で締め、
朝高は二回戦も突破した。

朝顔高校303010202┃11
明徳義塾000000001┃ 1

二回戦 対高知代表明徳義塾 11―1で完勝
準々決勝戦進出&ベスト8決定
59 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時10分07秒
試合後に、準々決勝の組み合わせを決める抽選が行われ、朝高は第四試合で今春の選抜の優勝高であり、夏も優勝候補である広島県代表広陵高校との試合が決定した。

その他の組み合わせはこうなり、準々決勝一試合目が終ると、準決勝以降の組み合わせも抽選で決まる。
準々決勝
第一試合 常総学院(茨城) − 東北高校(宮城)
第二試合 水仙高校(東東京)− 平安高校(京都)
第三試合 向日葵高校(福井)− 今治西高校(愛媛)
第四試合 広陵高校(広島) − 朝顔高校(埼玉)

60 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時11分16秒
その抽選結果を見ながら、吉澤は後藤と話していた。

「あっちゃ〜、いきなり広陵だってさ、ごっちん」

「春の優勝校でしょ?つくづく運が悪いね」

「後の高校も大体は常連校が残ったねえ。あの高橋のいる向日葵高も残ってるし」

「去年の優勝校かあ、あの辻加護を去年の決勝で完封したんだからねえ。でも、今年の大会が始まるまではあんまり話題にならなかったねえ」

「去年のレギュラーは高橋以外全員三年でもう卒業したからねえ。解説者も今年は高橋のワンマンチームだって言ってたし」
61 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時12分45秒
「大会が始まったら、話題に上がるようになったね、高橋以外の名前も」

「うん、なんでも北海道と新潟から強力なバッターが転校してきたらしいね。ベスト8の中で知らないのは水仙高校だけか・・・まあ、平安が勝つと思うけど」

・・・・・
62 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時16分32秒
吉澤ひとみ
朝顔高校野球部部長で4番キャッチャーを務める。その魅力的な長打力と勝負強さで高校生の打者の中では一番の評価を受けている。打率も松浦に続いてチーム二位である。今年のドラフトでも三球団以上が一位指名を検討しているが、本人は大学進学も考えている。家が隣という事もあり、小学生の頃、ヤクルトの新人で不動のトップバッターであり、幼馴染の矢口真里に野球を教わっていた。右投右打。

後藤真希
朝顔高校野球部エースピッチャーで打順は3番である。150キロ超のストレートと多彩な変化球を兼ね備えていて、今年の甲子園では、「右の後藤、左の高橋」といわれるほどである。ドラフトでも複数の一位指名が期待できる。今の阪神の新人で若き4番の市井とはいとこでもあり、小学生の頃よく一緒に練習していて、姉妹のように仲がよかった。右投左打。

63 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時17分44秒
石川梨華
朝顔高校野球部副部長であり、2番でファーストを守る。バントの技術はもちろん、三年になって、筋トレによって長打力もつき、何をしてくるか分からない、投手にとってはもっとも嫌なタイプの打者である。複数球団が注目しており、本人もプロ行きを強く望んでいる。今では巨人の新人で大魔人と呼ばれている保田の試合を中学生のときに見て、感銘を受け、試合が終った後、しつこく保田に弟子入りを申しこみ、徹底的に鍛え上げられた。右投右打。

松浦亜弥
朝顔高校野球部で1番センターの座を勝ち取る。走攻守三拍子全てがそろった選手で、プロのスカウトからもその足と肩を絶賛されている。バットコントロールも上手く、打率と盗塁では朝高一位である。埼玉県大会では、八回途中で突き指をした後藤に代わって、ピッチャーとして登板し、その後を0点に抑えた試合もあった。右投左打。
64 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時19分11秒
藤本美貴
朝顔高校野球部で、5番サードを打つ。吉澤ほどの上手さは無いが、力だけでは吉澤と同レベルである。こちらもプロのスカウトが注目していて、荒削りだが成長すれば清原レベルの選手になれると評価されている。左投左打。

加護亜依
双葉高校野球部で1番セカンド、そして部長を務め、二年のときには甲子園準優勝の立役者となる。辻加護のゴールデンコンビは中学校時代から全国で有名である。中学校時代はプレイスタイルもよく似ていたが、高校に入ってからは、加護は打率、辻は長打力を重視するようになる。その成果もあり、加護はその巧みなバットコントロールでプロ注目の逸材となった。もちろん辻とのコンビネーションは今でも健在である。右投両打。

65 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003年09月03日(水)19時21分08秒
辻希美
双葉高校野球部の副部長を務め、2番ショートである。高校に入って長打力を重視し始めた辻は二年のとき、甲子園でホームランを三本放つなど、プロのスカウトも驚きの成長を見せる。それと同時に器用な面もあり、ランナーがいる時、ダブルプレイになることはほとんど無く、最低でも自分が塁に残れるバッティングを心がけている。加護と共に一年前から吉澤とメル友を続けている。右投右打。

新垣里沙
双葉高校野球部のエースであり、9番を打つ。奈良県大会から一人で投げぬき、そのスタミナとコントロールはプロでも十分にやっていけると言われている。奈良県大会の準々決勝から決勝までの三連戦、27イニングをわずか五点で切りぬいた事は賞賛に値される。
どちらかと言うと、プライドなんかよりも仲間意識を大切にしている。右投右打。

66 名前:スワローズ 投稿日:2003年09月03日(水)19時30分09秒
>>49 名無し読者さん
こちらこそレスありがとうございます。
これからもがんばります。
>>50 ヒニーさん
正直言ってあの場面は入れようか迷いました。
今は入れてよかったと思います。
>>51 名無しさん
ホントに関係無いですね(笑)
まあ、僕はそんなに東北ファンじゃないからよく知らないけど(どちらかというと東北とは正反対の場所に住んでるし)

少し人物紹介をしてみました。
矢口など他の人物はまた次回ぐらいに
67 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003年09月03日(水)22時41分08秒
決勝はやっぱり東北とですか?
68 名前:名無し読者 投稿日:2003年09月05日(金)17時53分11秒
すみません、3回戦は?
普通、夏の甲子園は準々決勝までは
1回戦からのチームは3試合、2回戦からのチームは2試合ですよね

あと、1回戦で明徳に負けている東北が
なんで準々決勝に出ているんでしょうか?
東北は好きなんで気にしないですが

朝顔高校の秋の大会の結果も気になるところですが
細かい設定まで配慮していただき頑張ってほしいです
これからも期待しています
69 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/09/15(月) 22:22
続きは?

70 名前:良い"管理人"になりましょう! 投稿日:2003/09/16(火) 15:20
『ネチケットを笑い飛ばせ!〜N』
ttp://home.highway.ne.jp/flower/

コンテンツは、中々良いんですよ!
サイトの内容はね・・・
評価したり、閲覧するだけなら何も言われないんですよ・・
ですが、いざ私がサイトの内容を信じて、
「議論」しようとするといつの間にやら、すっかり私は荒らし扱い・・・(泣)
「プロパイダ報告」までされてしまいました。
その上ある事無い事ペラペラ発言するわ、
終いには、自分にとって都合の悪い発言はおかまい無しに削除の連発で
情報操作が当たり前!! 訪問者に対して酷い管理人です。

ですから今このサイトに行っても私の事は悪者にしか見えないです。
サイトの評価ではなく「議論」をして欲しいです。
ヒドイ扱いをされるかもしれませんから。。。注意。
71 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:12
準々決勝当日、第二試合の途中で甲子園についた朝高ナインは観客の異常な盛り上がりに気づいた。
吉澤らが観客席に出て、スコアボードを見ると、まだ試合開始から1時間半といったところだが、イニングはすでに九回裏に入っていた。
水仙高校が2−0と平安高校をリードしていた。
そして、驚くべきは平安高校のヒットの数が0ということだった。
急いで、水仙高校の投手の名前を確認すると、田中と表示されていた。
朝高ナインの誰も聞いたことの無い名前だ。
吉澤は近くにいた一般の観客にこの試合について聞いてみた。
72 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:13
「あの〜、水仙高校の田中って投手そんなにいいんですか?」

「ん?ああ、今来た人か。違う違う、確かに田中って投手も上手いと思うけど、その前に二人の投手が投げてたんだ。先発の亀井が三回まで、次の道重が四回から六回まで、そして今投げてる田中が七回からといった具合に、その三人の投手が今のところ、平安打線をパーフェクトに抑えているってこと」

「そうなんですか・・・ありがとうございます」

観客から試合経過を聞いた吉澤は、他のナインにも教えてあげた。
その間に、水仙高校の田中が平安の8番打者をセカンドゴロに仕留め、ツーアウトとなった。
73 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:14
観客から試合経過を聞いた吉澤は、他のナインにも教えてあげた。
その間に、水仙高校の田中が平安の8番打者をセカンドゴロに仕留め、ツーアウトとなった。

朝高ナインも全員、話すのを止め、試合に注目した。
その日、第一試合で常総学院が東北高校を4−2で破った後、準決勝の抽選が行われ、今日勝てば朝顔高校は明日の第二試合でこの水仙高と平安高の試合の勝者と対戦することが決まったので、なおさらだ。
そして、ついにその瞬間が来た。

4球目。
平安高の代打のバットはむなしく空を切る。
空振り三振、ゲームセット。

結局3番手の田中もランナーを許さぬ快投を見せ、水仙高校は三投手で見事完全試合を達成した。

しかも、その日の見所はそれだけではなかった。
続く第三試合向日葵高校−今治西高校で、向日葵高校の高橋が自身三度目の甲子園でのノーヒットノーランを達成したのだ。
74 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:17
観客の大興奮が控え室にいた朝高ナインにもテレビを通して伝わってきて、今まで以上の緊張感に包まれる。
そんな中、後藤だけはいつもと同じマイペースで昼寝をしていた。
そんな後藤を見ていると、他のナインもなぜか安心でき、自分たちの緊張が解けていくのが分かった。

そして、ついに広陵高校との準々決勝が始まった。

75 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:18
広陵高        朝顔高
1番 樫林 三    1番 松浦 中
2番 松野 右    2番 石川 一
3番 藤井 一    3番 後藤 投
4番 菊池 中    4番 吉澤 捕
5番 梅田 遊    5番 藤本 三
6番 杉本 投    6番 矢野 二
7番 桔梗 二    7番 金谷 左
8番 柏木 左    8番 松本 右
9番 竹川 捕    9番 土井 遊

76 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:19
気にしてないように見えて実は水仙高の三投手や向日葵高の高橋のノーヒットピッチングに意識させられていた後藤だが、それによって力んだりする事は無く、いつも以上の落ち着いたピッチングで観客や仲間の声援に応えた。
特にストレートは絶好調で三回までの48球全てストレートで内150キロ以上の球は39球もあった。
2回表の先頭打者4番菊池への3球目には自己最速タイの155キロを計測した。
打順が二順目になってからはさすがに変化球も練りこみながらの投球になったが、その変化球も切れていて、七回までパーフェクト、14Kの最高のピッチングを披露する。

そんな後藤に打線も好調ぶりを見せつける。
好投手の杉本を中盤から終盤にかけ捕らえ、五回裏には松浦・石川のタイムリー、六回裏には吉澤のホームラン、七回裏にも松浦が二打席連続のタイムリーを放ち、4−0と広陵をリードして八回表を迎えた。
77 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:21
4番菊池は内野ゴロでワンナウトになったが、ここでノーヒットながら一打席目ショートライナー、二打席目センターライナーと後藤には一番タイミングが合っている5番梅田が打席に入る。
その初球のスライダー、バットは快音を響かせながら左中間を襲う。
センター松浦、レフト金谷が懸命に打球を追いかける。
松浦の俊足を持ってしても追いつくかどうか微妙な場所に打球は伸びていく。
どんどん高度を下げていく打球に向かって松浦が一杯に手を伸ばす。
しかし打球はその松浦のグラブをはじき、グランドに落ちる。
その間に梅田は二塁に到達。
盛り上がる広陵高のベンチと対称的にうなだれる後藤。

次の瞬間、今度は朝高の応援団やその他の観客達が大きな声を上げる。
不思議に思って後藤がスコアボードの方を見ると、いまだに広陵高のHのところは0のままで代わりに朝高のEのところに1が入っていた。
松浦が辛うじてグラブに当てた事が幸いし、記録は二塁打ではなくエラーとなっていたのだ。
気を取り直した後藤はその後の6番7番をこの日二度目の155キロなどで、二者連続三振に仕留める。
78 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:22
こうしてこの試合最大のピンチを切り抜けた後藤は九回にも2Kを奪うなど三者凡退に抑え、高橋の17Kを一つ上回る18Kのノーヒットノーランを達成する。
甲子園ではもちろんはじめてのノーヒットノーランである。

これで今日試合を行った8校中3校がノーヒットという前代未聞の結果に観客もまだ信じられないのか、試合が終った直後、不気味な沈黙が数秒生まれた。
吉澤とハイタッチをしながら、後藤は笑顔でベンチに戻ってきて、他の部員から祝福を受けた。
そして我に返った観客から割れんばかりの拍手と声援を受けながら、朝顔高校は最後にベスト4入りを決めた。

広陵高校000000000┃0
朝顔高校00002110×┃4
79 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:26
今日の結果
第一試合 常総学院(茨城)4 − 2東北高校(宮城)
第二試合 水仙高校(東東京)2 − 0平安高校(京都)
第三試合 向日葵高校(福井)5 − 0今治西高校(愛媛)
第四試合 広陵高校(広島)0 − 4朝顔高校(埼玉)

明日の準決勝の組み合わせ
第一試合 常総学院(茨城) − 向日葵高校(福井)
第二試合 朝顔高校(埼玉) − 水仙高校(東東京)
80 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/09/16(火) 19:30
>>67>>69壱ダイエーファンさん
更新遅れて済みませんでした。
決勝の相手については今回ので予想がついたと思います。
>>68名無し読者さん
いろいろご指摘ありがとうございます。
東北については弁解の余地がありません。
全く忘れてました。すみません。
三回戦も飛ばしていました。
2回戦から試合をしたということでゆるしてください。

もう一つ間違い発見しました。
吉澤・後藤・石川の紹介のときに矢口・市井・保田をそれぞれ新人だと書いてましたが3年目でした。
間違いばかりですみません。
81 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/27(土) 09:49
待ってます
82 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/09/28(日) 22:08
ダイエー早く優勝してくれ!!!!!!!!!!
もう待ちくたびれた・・・・・
83 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/10/01(水) 22:33
ダイエー優勝お目でと==============!!!!!!!!!!!
ところで更新まだっすか?
84 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 19:58
準々決勝後、ホテルで夕食中に朝高野球部を訪ねてきた3人に吉澤後藤をはじめ、全員が驚きの表情を示した。
3年前朝高を全国優勝に導いて、今ではそれぞれ入ったプロ野球のチームにとって欠かせない存在となっている3人、そう矢口・市井・保田が朝高の活躍を見て、休養日ということもあり訪ねてきたのだった。

「よっすぃ〜!」「矢口さん!!」
「よっ!後藤」「いちーちゃん!?」
「石川」「は、はい!保田さん」

それぞれ一番親しい吉澤・後藤・石川のもとに向かい、久しぶりの再会をそれぞれの形で喜ぶ。
85 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:02
「矢口さん、吉澤のホームラン見てくれましたか?」
「もちろん!よっすぃ〜かっこよかったよ。おいら惚れちゃいそう」
「どんどん惚れちゃってくださいよ」
「はいはい」
と、さっきから褒めて褒められてを繰り返している騒がしい矢口・吉澤。

「・・・・・」
「・・・・・」
会話は無く、さっきからずっと抱き合ったままの怪しい市井・後藤。

「・・・あ、あの!保田さん、のど乾きませんか?」
「ちょっとは乾いてるけど?」
「じゃあ、なんか外で買ってきましょうよ」
「ここにもたくさん飲み物あるじゃない?」
「と、とにかく行きましょう!」
半ば強引に保田を外に連れ出して結局その晩帰ってこなかった保田・石川。
86 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:03
それら3組(石川と保田が出て行ってからは2組だが)をあきれながら見ている藤本・松浦を初めとする他の部員達。

その視線に気づき、矢口・市井・吉澤・後藤を含めて、ようやく夕食が再開された。

「そういやあ、どうしたんですか?いきなり訪ねてきて」

「もちろん、おいら達は後輩達を激励しに来たんだよ!ベスト4おめでとう!」

「ありがとうございます。でも、うちらはベスト4で終るつもりじゃないですからね。明後日の決勝が終ったらまたお祝いしに来てくださいよ」
87 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:03
「もちろん、おいら達も優勝すると思ってるよ。明後日の決勝が終ってもまだ後1泊ぐらいするんでしょ?だったら明々後日なら3人とも空いてるからお祝いに行くよ」

「はい、待ってます」

「後藤も3連投はきついだろうけどがんばれよ。」

「わかってるよ、いちーちゃん」

「あ、ごっちん 言うの忘れてたけど、明日ごっちんは投げさせないから」

「え!? よっすぃ〜どういうこと?」

このことは誰にも言ってなかったので、みんな吉澤の言葉に驚いた声を出す。
88 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:04
「ん? 明日はあややに投げてもらうから、ごっちんは外野ね」

「なんで!?」

「市井さんが言ったとおり、さすがに三連投になったらごっちんでもスタミナ持たないよ。
明後日の決勝戦のためにごっちんには肩を休ませたいんだ。もちろん打つほうではきちんと仕事をしてもらうから。みんなにも大会が始まるまでに言っておいたはずだよ、ごっちんが疲れたらあややにも投げさせるって」

「でも、明日勝てなきゃ意味無いじゃん。あの完全試合を達成した水仙高校の三投手が相手だよ、吉澤だって見ただろ?」
89 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:05
「市井さん、さっきも言ったけどうちらは負けません。それにごっちん一人の力でここまで来れたんじゃないことはみんな分かってるはずです。ごっちんが不調のときは打線が支えて、打線が打てない時はごっちんがふんばって勝ち残ってきたんだから。いいよね?ごっちん」

「んあ、ごとーはよっすぃ〜の言う事を信じてるよ。ごとー達はベスト4なんかで終わっちゃうチームじゃないよ。いちーちゃんでもできた全国制覇をごとー達ができないわけないじゃん。じゃあ、あやや 明日はよろしくね」

「・・・分かった。ごっちんみたいにはいかないけどがんばるよ!」

最後までぶつぶつ言っていた市井もようやく納得して、みんな吉澤や後藤と考えは一緒になった。
90 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:06
(朝顔高校野球部は準決勝で敗れるような弱いチームじゃない!一気に全国制覇まで駆け抜けれる強いチームなんだ!)

その後は何事もなく夕食が進む中、吉澤は矢口に外へ呼び出された。
そのまま二人は入り口を背にしてロビーのソファーに座り込んだ。

「どうしたんですか? 矢口さん」

「よっすぃ〜さあ、もしかしてあさ美のこと気づいてる?」

吉澤はゆっくりため息をついて言った。

「やっぱり矢口さんも気づいてたんですね」

「ごっちんに明日投げさせないのも、本当はそのせいだったんだね?」
91 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:08
「・・・はい・・・やっぱキャプテン失格ですかねえ?チームの戦いに個人の問題を持ちこんだりして」

「おいらはいいと思うよ。だって大体キャプテンなんてわがままなものだと思うし。まあ、おいらはよっすぃ〜とあさ美の問題についても知っているから・・・だからあさ美のことがよっすぃ〜にとってすごく重要な問題だって分かってるから何も言わないけど。ほかのみんなには言わないの?」

「言ってもどうなるってわけでもないでしょ」

「まあいいか・・・じゃあとにかくまずは明日勝つこと考えてよ」

「もちろんです。あややもやるときはやる奴ですから大丈夫でしょう。それより矢口さんもがんばってくださいよ」

「よっすぃ〜に言われなくてもがんばるよ・・・そろそろみんなのところに戻ろうか?」

「そうですね」
92 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:08
二人がようやくロビーを出ていったのを見届けて、二人が話していたソファーの近くの植え込みから保田と石川が出てきた。

「どう思う?石川」

「あさ美さんって誰ですかねえ」

「まあ話からするに、多分向日葵高校野球部の一人だと思うけど・・・」

「そのあさ美さんとよっすぃ〜がどんな関係なのかはわからないですねえ」

「・・・まあ、石川もまずは明日のことを考えてよ。勝たなきゃ許さないから」

「はい!もちろんです」

その後、矢口・市井・保田の三人は帰り、朝高ナインも早々と切り上げ、明日の試合に備え、早めにそれぞれの部屋に戻っていった。

そして、夜が明け、準決勝当日を迎えた。
93 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/02(木) 20:13
>>81
すいません、更新遅れてしまって・・・
>>82、83 壱ダイエーファンさん
ダイエー優勝おめでとうございます。
僕はロッテが好きなので千葉で決められてちょっと複雑ですが・・・
94 名前:愛のシャボン玉 投稿日:2003/10/03(金) 14:14
更新ありがとうございます
面白そうな展開になってきたので次も楽しみにしています

水仙高校が3投手で完全試合を達成しましたが、よく考えてみると夏の甲子園での完全試合はないんですよね。
ちなみに春は2回あります。
95 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/10/03(金) 23:18
ダイエーは西武が負けたから優勝したんです。
だからロッテが負けたからという訳ではかいですよ。
96 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:27
「どうやらあっちも同じこと考えてたみたいだね」

準決勝第一試合の向日葵高校のスタメンが発表されたのを見て、後藤は吉澤に話しかけた。
向日葵高校の先発ピッチャーは高橋ではなかった。

「そうだね・・・」

吉澤はそれよりも気になったのは、4番打者のところに紺野と名前が入っていたことだ。
準々決勝まで4番を務めていた小川は1番になっている。

(あさ美・・・)
97 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:27
「あの4番って今まで試合に出た事ないよねえ。いきなり4番なんてどうしてだろう・・・よっすぃ〜知ってる?」

「・・・え!?ああ、ううん、知らないよ・・・」

そしてとうとう試合が始まった。

先制したのは常総学院。
ツーアウト一塁から4番がセンターオーバーのタイムリーツーベースで一点先制した。
常1−0向
98 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:28
その裏にすぐ一番小川が右中間へ先頭打者ホームランを放ち、同点。
さらにツーアウトから甲子園初打席の紺野がバックスクリーンへ特大のホームランを放ち、勝ちこす。
常1―2向

二回は両チーム三人で攻撃が終わったが、三回表ツーアウト満塁から5番打者が走者一掃のスリーベースを放ち、常総が逆転に成功する。
常4−2向

三回裏。
ワンナウトから小川がヒットを打つが、後が続かず無得点。

四回表は三者凡退。
99 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:29
四回裏、先頭の紺野が2打席連続のホームランを放ち、1点差とする。
常4−3向

五回六回は両チーム後一本が出ず無得点で常総が1点リードのまま。

七回表を三人で抑えたその裏、下位打線がつなぎ、ワンナウト一塁三塁で小川がきっちりタイムリーを打って同点。
なおもツーアウト満塁で紺野がこの日三本目のホームランをここで放ち、向日葵高が一気に勝ち越した。
常4―8向

八回表に2点返されるが、その裏に小川がスリーランホームランを放ち、試合を決めた。
九回表にも1点返されるが、それまで。
5打数4安打2ホームラン5打点の1番小川と4打数4安打3ホームラン6打点の4番紺野の大活躍で向日葵高校が常総学院との打撃戦を制した。
100 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:30
準決勝第1試合
常総学院7−11向日葵高校
101 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:31
「あれが、北海道と新潟から転校してきた二人か・・・予想以上だね・・・よっすぃ〜」

後藤が吉澤とキャッチボオールをしながら話しかけてきた。

「まあね・・・でもごっちんなら大丈夫だよ」(あさ美・・・やっぱりすごい)

そしてとうとう両チームの練習も終わり、準決勝第2試合が始まった。

102 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:32
朝顔高            水仙高
1番 松浦 投        1番 松山 二
2番 石川 一        2番 盛岡 中
3番 後藤 左        3番 道重 右
4番 吉澤 捕        4番 田中 左
5番 藤本 三        5番 亀井 投
6番 矢野 二        6番 高松 一
7番 金谷 中        7番 前橋 捕
8番 松本 右        8番 大津 遊
9番 土井 遊        9番 水戸 三
103 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:32
水仙高校の先発は今日も右横手投げ速球派の亀井だ。
対するはトップバッターの松浦。

昨日吉澤は松浦に投げてもらうと言った後、打順は負担がかからないように8番辺りを打ってもらうつもりだったが、これには松浦が断固拒否した。
投げるだけでなく、打つ方にも全力を注ぎたいと・・・。
吉澤もその意気を買ってこの日もトップで打ってもらうようにした。

初球インローのストレートはいきなり144キロを計測する。
これを松浦は余裕を持って見送る。
わずかに外れてボールとなる。

二球目、今度はストライクコースにカーブを投げてくる。
松浦はカットし、ファールとなる。
104 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:34
三球目のストレートに松浦が反応した。
思いきり引っ張る・・・が、わずかに切れてまたしてもファール。

しかし、松浦のすごさはここからだった。

ボール、ファール、ファール、ファール、ボール、ファール、ファール、ファール・・・
追いこまれてからはどんなボールにも食らいつき、ファールを連発する。

そして21球目、ついに亀井が根負けしてど真ん中のストレートを投げてしまう。
これを松浦のバットは完璧に捕らえ、打球はレフトスタンドに突き刺さった。
先頭打者ホームランだ。
105 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:34
さらにトップバッターに21球も使い、集中が切れかけている亀井を攻め、ノーアウト満塁から藤本の犠牲フライで一点追加した。

守備側の水仙高校がタイムを取り、亀井を落ち着かせた。
そのおかげか、続くバッターは併殺打に打ち取り、見事ピンチを抜け出した。

朝2−0水
106 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:35
微妙・・・
良くもなく悪くもない。
松浦の持ち球はストレート以外ではスローカーブとチェンジアップがあるが、その切れも今一つだ。
さらに、緊張もして投球動作の動きが堅い。
緊張さえほぐれたら、球の切れも戻ると思うんだけど・・・

それが投球練習の時松浦の球を受けての吉澤が抱いた感想だった。

投球練習が終わり、水仙高校のトップバッター松山が打席に入る。
クリーンナップ以外では最も警戒しなければならない相手だ。
107 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:36
初球、スローカーブから入る。
これを松山が引っ掛けてしまい、ボテボテの打球はピッチャー松浦の守備範囲に転がっている。
難なくワンナウトかと思ったが、松浦はこの打球を素手で取ろうとしてお手玉してしまう。
急いでもう一度つかみ、ファーストに送球するも、その送球が大きく反れてしまい、石川の足が離れて松山はセーフとなる。
記録は松浦のエラーだ。

このエラーに動揺したのか続く2番盛岡にはストレートのフォアボール、3番道重にもワンスリーから歩かせてしまう。
今度は逆に水仙高校がノーアウト満塁のチャンスを作った。

朝顔高校の内野陣が松浦の周りに集まってくる。
108 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:38
「あやや、落ち着いてよ」
「そうそう、美貴のところに打たせたら絶対大丈夫だから」

石川や藤本が声をかけてくれているのを聞きながら、松浦は一つ大きく深呼吸をした。

「・・・フ〜、ありがとう、みんな。もう落ち着いた、大丈夫だよ」

そう松浦は言ったものの、周りはみんな松浦が無理をして言ってるのに気づいていたが、何も言う事はできなかった。
仕方なくそのままそれぞれの守備位置に戻った。

吉澤もまたマスクをかぶりながら、審判の前に戻った。
その時打席の横で素振りをしている4番田中をチラッと見ると、田中が全然力んでいないのに気づいた。
普通、こんなノーアウト満塁のチャンスのとき、ほとんどの打者は自分が走者を返そうと多少は意気込みすぎて力むものである。
そうならないのは超一流の打者か、もしくはヒット以外を狙ってるかどちらかだろう。
109 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:40
そこまで考えた吉澤は初球ウエストボールを松浦に要求する。
このサインに松浦も戸惑いの表情を見せる。
吉澤はそれに応えるかのように力強くうなずき、それを見た松浦もうなずき返した。

そしてその初球、三塁ランナーが飛び出す。
初球スクイズだ。
しかし、大きくウエストさせたボールは、田中の懸命に伸ばしたバットに当たらずに、吉澤のミットに収まった。
慌てて三塁走者が戻ろうとするも、吉澤はすばやく藤本に送り藤本が走者にタッチしてアウトとなる。

続く2球目を田中は打ってくるが、ショート正面のゴロ、6−4−3と渡ってダブルプレーでスリーアウトチェンジとなる。
思わず松浦はマウンドを降りて、うれしそうに吉澤とハイタッチをした。
こうしてノーアウト満塁のピンチを吉澤の機転で何とか無得点で切り抜けた。

朝2−0水
110 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/12(日) 15:42
>>94 愛のシャボン玉さん
そうなんですか、初めて知りました。
これからもありえないことが起こるかもしれませんがよろしくお願いします。
(まあ、小説なんで・・・)
>>95 壱ダイエーファンさん
気にしないで日本シリーズもがんばって応援してあげてください。
ロッテも来季こそはAクラスに上がって、プレーオフでのパ・リーグ制覇を狙います。
(九月や十月強いので、プレーオフは期待できそうですので・・・)

ふ〜、何とかロッテの最終戦が終わるまでに更新できました。
十月中に後2回は更新したいです。
111 名前:たか 投稿日:2003/10/16(木) 12:32
いやー今全部読ませていただきました。 
最高に面白いです。僕も野球の経験があります。
この小説は試合の進行ばかりする単純な小説とは違い
試合以外のドラマや試合内での励まし合いなどが
本当に傑作です。ちなみに僕はあややとミキティのファンです。
なかなか活躍しててうれしいです。あやや水仙高校戦がんばれ!
良いピッチング期待してます!!
112 名前:たか 投稿日:2003/10/16(木) 12:32
すみません上げてしまいました。
お許しを。
113 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:30
その後、2回3回の朝高の攻撃は亀井がパーフェクトに抑え、4回からは亀井と道重がそのままポジションチェンジをして道重が登板する。

ビデオとかで見ると一番打ちやすそうな気がしたが、実際対戦して見ると、あまり対戦したことのないアンダースローに朝高打線はてこずる。

予想以上の球の伸びに4回、5回を内野フライ5つ外野フライ1つとパーフェクトに抑えこまれる。

一方の松浦は初回を乗り切った後も3回ワンナウト一、三塁、そして4回ツーアウト満塁のピンチを迎えたが、何とかしのぎつづけた。

114 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:30
再び試合が動いたのは5回裏だった。
1番、2番を共に松浦は内野ゴロに抑えたが、道重にセンター前に落とされ、続く田中には三遊間を破られる。
ツーアウト一、二塁で迎えるのは5番の亀井だ。

初球はスローカーブで入る。
ストライクコースだが、亀井のバットはピクリとも動かなかった。
その後も3球続けて変化球を投げ込み、2−2と追いこんだ。

そして5球目、吉澤の要求はストライクコースからボール一つ外に外したストレートだったが、松浦の投げた球は逆球となり、インコースの甘いボールとなった。
もちろん亀井がこれを見逃すはずがなく、打球は左中間を破り、同点のタイムリー二塁打となった。
115 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:31
これで糸が切れたのか、松浦は続く二人に連続フォアボールを出し、満塁となる。
ここで吉澤は二度目の守備タイムをとり、外野も含めたナイン全員がマウンド上に集まる。
松浦は皆が集まってきてもうつむいて黙ったままだ。

「・・・よっすぃ〜」

皆なかなか松浦に声を掛けることができないでいたら、ようやく松浦は顔を上げ、吉澤に話しかけた。

「どうした? あやや」

「もうこれ以上は無理だよ・・・ごっちんにピッチャー代えたほうがいいよね・・・?」
116 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:32
「あやや・・・」

「ごっちん、そういうことだからごめんね。せっかく松浦ががんばってごっちんを休ませようと思ったのに・・・」

「あやや、まだ同点だよ!大丈夫だって」

後藤の呼びかけにも松浦は「ごめん」とつぶやきながら首を振るだけだ。
それを見ていた吉澤は決心したようにうなずくと、主審に向かって歩き出した。

「ちょっとよっすぃ〜、どこ行ってるの!?」
「まさか亜弥ちゃんを代えるつもりじゃないよね?」
「よっすぃ〜がこんな冷たい奴だったなんて思わなかったよ!」
「よっすぃ〜があややを先発に選んだんでしょ!?」

ナインのそんな声にも耳を貸さず、そのまま主審に何かを告げて、またマウンドの周りに戻ってきた。
117 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:32
吉澤に対してナインは口々に文句を言うが、吉澤は何も答えずに、後藤にだけ何かを耳打ちした。
それを聞いている後藤の顔を見ると、聞く前の怒りの表情はすぐに消え、途中驚きの表情に変わったりしながら、聞き終わると最後には吉澤の顔を見て力強くうなずいた後、後藤はなぜかベンチに戻っていった。
松浦を含めた他のナインは一様に戸惑いの表情を浮かべながら吉澤を見る。

やがて、場内アナウンスの声が流れてきた。

「朝顔高校、選手交代のお知らせをします。3番レフト後藤に代わりまして、佐々木。3番レフト佐々木。以上の様に代わります。繰り返します・・・・・」

さっきまで戸惑いの表情を浮かべていた全員の表情が驚きに変わる中、吉澤は松浦の方にいたずらっぽい笑みを浮かべながら向き直った。

118 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:34
「さあ、これでうちにはあややしかピッチャーいなくなっちゃったね。どうする?」

「な、何考えてんの?よっすぃ〜・・・負けてもいいの?」

「いいわけないじゃん、って言うか負けないし」

「・・・分かった・・・投げればいいんでしょ。もう分かったから、はい、皆自分の位置に戻って戻って」
119 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:34
ようやく松浦がいつものムードメーカーらしさが戻ったのに気づき、ナインはそれぞれ自分のポジションに散っていった。
吉澤も戻りながら、チラッとベンチの方を見ると、すでに後藤は安心しきったかのように熟睡していた。

ありがとう、ごっちん
ごっちんなら分かってくれると思ってた。
絶対勝つからね・・・

その後、松浦は目が覚めるような投球を見せ、8番大津を三球三振にしとめる。

朝2−2水
120 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:35
その直後の6回表だった。
1番からの好打順の朝高はまず先頭の松浦がこれまでの2イニングを完璧に抑えられていた道重から初安打をライト前に放つ。

続く石川に対する2球目、松浦は盗塁をしかけ見事成功する。
さらに続く3球目に松浦は三盗を試みる。
さすがに予想していなかったキャッチャーはあせり、三塁への送球は大きくそれ、ファウルゾーンを転々としている。
その間にもちろん松浦はホームに到達。
貴重な勝ち越し点を朝高は松浦の足で獲得した。
121 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:35
そして、朝高の攻撃はまだ終わらなかった。
石川、佐々木は凡退するも、道重と2度目の対戦となる吉澤・藤本が連続ツーベースを放ち、貴重な追加点をあげた。

朝4−2水

6回裏以降は両チーム静かな展開が続く。
いつものペースに戻った松浦を水仙高打線は打ちあぐねて、一方の朝高打線も七回から登板した田中の速球に抑えこまれていた。

その松浦も8回裏にとうとう投球数は170球を越え、疲労の色が見え始め、久々のヒットを打たれるも、その回は何とか乗り切った。
122 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:36
そして9回表、朝高ナインはこの回の先頭吉澤に向かって大きな声援を送る。
もちろん、ここまで大きな声援が送られるのは、ただ松浦のために追加点が欲しいというだけではない。
今、マウンド上にいる水仙高の田中が先に決勝進出を決めた向日葵高校のエース高橋と似ているのを感じたからだ。
左のオーバースロー、自他共に認める本格派。
コントロール、スピード、変化球のキレどれをとっても高橋の方が一回りほどは上だが、十分プロでも通用するピッチャーだ。

つまり、朝高ナインはこの田中を仮想高橋と見立てているのだ。
田中を打ち崩す事ができない限り、高橋を打つことなど不可能だと皆感じていた。
しかし田中は、朝高打線を7回8回と打者六人に対し、ノーヒット4三振に抑えこんでいた。
唯一ヒット性の石川の当たりもファーストの好守に阻まれていて、嫌なムードがベンチに漂っている。
123 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:36
このままだと今日勝てても明日の決勝戦に不安を残したままになる。
絶対打たなければ・・・と決心しながら吉澤は打席に立った。

初球、2球目、3球目と140キロ台後半の直球を連投され、2−1と追いこまれる。
今までの打者に対しては変化球を投げ込む事が多かったが、吉澤に対しては直球しか投げてこない。
田中もまた、同学年で最高のバッターと言われている吉澤と力対力の勝負がしたかったのだ。
そんな田中の意思を感じ、吉澤の頭の中から変化球という選択肢は消えた。
124 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:36
4球目、5球目と振り遅れながらも吉澤は何とかファウルにする。
そして6球目、田中の自己最高球速を越える151キロの直球はバックスクリーンへ飛びこんでいった。

悠然とダイヤモンドを一周している吉澤は、いつのまにか田中を仮想高橋としてではなく、一人の手強い投手として見ていた事に気づいた。

そして、意気消沈している田中に対し、藤本が変化球を捕らえ、この日3打点目となるホームランを放ち、止めを刺した。
125 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:37
9回裏、ほとんどスタミナ切れの松浦は、ヒット2本と四球で満塁のピンチを迎えたが、ちょうど200球目のスローカーブを相手打者が空振りをして、ゲームセット。
松浦はそのままマウンド上で安堵のため息を漏らしながら座り込んだ。
松浦に向かって歓声を上げながらナインが駆け寄る。
その歓喜の輪が落ち着くと、松浦は藤本と吉澤に肩を貸してもらいながら、歩いて他のナインと共に整列し、礼をした。

「ごっちん、終わったよ。起きて」

「・・・・・んあ・・・よっすぃ〜じゃん、試合は?」

「もちろん勝ったよ」

「よかった・・・ごとーはもう心配で心配で」

「ウソつけ、早くしないと校歌が流れるよ」

「んあ!」
126 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:37
熟睡中だった後藤とそれを起こした吉澤と共に朝顔高校はうれしさをかみしめながら、甲子園に流れている朝顔高校の校歌を斉唱した。

朝顔高校200002002┃6
水仙高校000020000┃2

朝顔高校決勝進出
127 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/10/26(日) 18:38
準決勝
第一試合 常総学院(茨城)7−11向日葵高校(福井)
第二試合 朝顔高校(埼玉)6−2水仙高校(東東京)

決勝戦の組み合わせ
向日葵高校(福井)− 朝顔高校(埼玉)
128 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/26(日) 18:41
>>111,112 たかさん
ありがとうございます。
今回はあややにちょっとがんばってもらいました。
これからもよろしくおねがいします。

10月中にもう1回は無理なので11月中に二、三回は更新したいです。
切るところが変になったり文章がおかしくなったりしてますが、ご了承ください。
129 名前:たか 投稿日:2003/10/27(月) 17:49
今回も面白かったです。更新は作者さんの都合などもあると思うので
ゆっくりでいいです。 さすがあやや!! 
それにしても作者さんって文才ありますね〜。これからも期待してますっ
130 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/10/28(火) 00:56
ダイエー日本一!!!!!
和田かっこよか〜〜〜!!!!!!!
^^v

131 名前:みさと 投稿日:2003/11/20(木) 23:34
今年のオフも色々ありますねぇ
長嶋ジャパン、宮本キャプテンの奮闘にちょっと感動
この小説で言うと誰なのかなぁ?
更新お待ちしています、頑張って下さい

小久保無償放出・井口のポスティング移籍・伊良部&下柳のFA宣言・V旅行不参加・・・
ダイエー・阪神とも、オフは大変そうですねぇ
132 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/11/21(金) 18:59
選手や首脳陣ばかりでなく、ファンも大変です・・・

133 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/23(日) 15:53
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・雨だねえ」
「・・・・・」
「・・・そうだね、よっすぃ〜」

決勝戦があるはずのこの日、吉澤らは激しい雨音によって起こされた。
もちろん、こんな雨の中で試合は出来るはずもなく、しばらくして大会本部から正式に「雨天のため、明日に順延いたします」という電話がかかってきた。

「このまま勢いに乗って一気に行きたかったんだけどなあ・・・」
134 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 15:55
「まあいいじゃん、亜弥ちゃん。休みはあればあるほど、それに越した事はないよ。ねえ、ごっちん・・・ってやっぱりもう寝てるよ・・・」

「そだね。で、今日はどうする?室内練習場なら練習できると思うけど」

「う〜〜〜ん、まあ、今日はいいや。みんな集まって!」

キャプテン・吉澤の言葉に素直に従って、部員全員が集まってくる。
135 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 15:56
「えっと・・・今日一日必死で練習しても、大きく変わるわけじゃないので、今日は自由行動とします。大阪まで行って観光するもよし、このままホテルで休むもよし、あややみたいに実家が近くにある人はこの機会に実家に戻って家族と一日過ごすのももちろんいいよ。ただし、明日が決勝だってこと忘れずに、羽目を外しすぎない様にね。以上!」

吉澤の言葉が終わると同時に部員達の中から歓声が上がる。
中には万歳をしている者もいる。

(羽目を外し過ぎない様にって行っても無駄みたいだね・・・)

30分も経つと、大勢いた部員のほとんどが、大阪や神戸に観光や買い物に行ってしまい、もうホテルに残っているのはいつもの吉澤・後藤・石川・松浦・藤本の5人だけにだった。
136 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 15:57
「みんなはこれからどうするの?」

姫路の実家に帰る準備をしていた松浦が他の4人に尋ねてきた。

「ごとーは・・・・・もう一度寝る」
「美貴は梨華ちゃんと一緒に買い物とか行くつもりだよ」
「よっすぃ〜も一緒に来る?」
「ん?いいや・・・うちは一人でいろんなとこ回って見るから」
「そう?じゃあ美貴ちゃん、そろそろ行こうよ?」
「そうだね」
「ちょっと待ってて、松浦も途中まで一緒に行くから」
「「わかった」」

すぐに準備を終えた松浦と共に石川と藤本は出発していった。
3人を見送って、しばらく後藤と話した後、吉澤はそろそろ出かける事にした。
137 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 15:59
「さて、そろそろ出かけるとしますか」
「ごとーもそろそろ寝ようかな」
「じゃあね、ごっちん」
「んあ・・・」

後藤と別れ、吉澤が傘を差しながらホテルから出ると、それを図った様に携帯に着信が入った。
吉澤は立ち止まって相手を確認した後、電話に出る。

「もしもし、どうしたの?あいぼん」

「久しぶりやなあ、よっすぃ〜。今大丈夫なん?」

「うん、大丈夫だけど、今一人で出かけようとしてたところだから」
138 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:00
「そやったらちょうどええわ。うちも奈良から遊びに出てきとって暇しとるから一緒に遊びに行かへん?」

「ん〜・・・いいよ、どこ行けばいい?」

少し迷った末にそう答えると、加護の喜んだ声が電話越しに聞こえてくる。

「じゃあよっすぃ〜、ここ分かる?」

加護から場所を説明された吉澤は、そこがここから30分ぐらいの所だと分かったので、それを加護に伝えて電話を切った。

そうして、ちょうど30分後に待ち合わせ場所の喫茶店に到着した吉澤はすぐに加護の姿を見つけ、声をかけた。
139 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:02
「お待たせ、あいぼん」

「よっすぃ〜やっと来たんか。じゃあ早速バッティングセンターに行くで」

「はあ!?なんでいきなりバッティングセンター?」

「まあ、ええやん。ののもそこでおると思うけん」

「わかったよ。じゃあ行こうか」

吉澤は怪しいとは思ったが、上手く断る方法が無かったので、仕方なくバッティングセンターに一緒に行くことにした。

140 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:04
(あ、あさ美!?)

バッティングセンターの前で、大きく手を振っている辻の横で立っている紺野を見たとき、吉澤は叫び出しそうになった。
隣の加護は悪魔のような微笑を浮かべ、吉澤を見ている。

「うちの泣き顔を無料で見たんやから、これくらいのことはさせてもらうで」

(そういやあ、メール交換しているときに、あさ美のことを辻・加護に話したことがあるような気が・・・)
141 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:06
□ ■ □ ■ □

一方、石川と藤本は大阪のとある喫茶店で早めの昼食を食べていた。

「え〜、それホント?梨華ちゃん」

「ホントだって!私、保田さんと一緒に聞いたんだから」

「紺野あさ美って向日葵高校の4番打ってた子だよね?その子とよしこが知り合いなの?初耳だよ、それ」

「私もその時に初めて聞いたんだよ。しかも、よっすぃ〜はその紺野さんに負けたくない理由があるらしいよ」
142 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:07
「それって、もしかしてちょっと暗い過去なのかなあ?例えば、よしこがそのあさ美って子をケガさせたとか」

「それじゃあ、よっすぃ〜が負けたくない理由にはならないじゃん。
それよりさあ、こんなのは?
昔、紺野さんのチームとよっすぃ〜のチームが試合をしていて、紺野さんがよっすぃ〜の弟の目にデッドボールを当てて、弟は失明。
紺野さんもそれに責任を感じて野球を辞めようと決意し、きつく責めるよっすぃ〜から逃げる様に、北海道へ引っ越し、中学、高校と野球部の無い学校を選んで進学していった。
・・・しかし、野球が大好きな紺野さんはどうしても野球をもう一度やりたいと思い、自分の通っていた野球部の無い高校を自主退学し、甲子園常連校の向日葵高校に入るために、福井に引っ越していったのであります!
143 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:10
一方、風の噂で紺野さんが野球を辞めた、と聞いたよっすぃ〜は強く責めすぎた、と反省し、代わりに紺野さんの分までがんばろうと日々練習を重ね、甲子園出場も決め、とうとう決勝進出までもできるようなチームをつくりあげてきました。
しかし、そこでよっすぃ〜が見たのは忘れもしない、紺野の顔!
北海道に引っ越したはずの紺野がなぜそこに?
いや、そんなことはどうでもいい。
なんで紺野がまだ野球をやってるのだ?
うちのかわいい弟はもちろんまだ失明したまま苦しんでいるというのに・・・
なぜ、紺野は仲間と一緒に笑いながら楽しそうに野球をやっているのだ!?
許さない!!
絶対決勝戦では叩きのめしてやる!・・・どう?」
144 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:13
「どうって・・・・・」

朝高のツッコミ王と呼ばれている藤本もさすがにツッコミどころ満載の石川の話にあきれてなにも言えなかった。

「は〜あ、梨華ちゃんの想像力にはついて行けないや」

そういいながら、藤本は石川の後ろの席で必死に笑いをこらえている小さな背中に気づいた。

「矢口・・・さん?」

その言葉に石川も後ろを振り向いてその存在にようやく気づいた。

「あ〜あ、ばれちゃったか」

そう言いながら、矢口は藤本の隣に席を移してきた。
145 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/23(日) 16:15
>>129 たかさん
ゆっくりしすぎてしまいました。すみません。
>>130、132壱ダイエーファンさん
かなり遅れましたが、日本一おめでとうございます。
>>131 みさとさん
レスありがとうございます。
ホントにいろいろありますねえ。
宮本さんは僕も応援しています。この小説では・・・いるのかなあ?

だいぶ遅れてしまいました。すみません。
謝ってばかりですねえ・・・

パ・リーグの今年の下位の3球団はいい補強をしましたねえ。
オリックスは村松、日ハムは新庄、そしてロッテのバレンタイン監督。
来年が楽しみになってきました。
一方のダイエーや近鉄は主力が抜けて厳しいですねえ。

まあ、とりあえず、今日はこの辺で・・・
146 名前:たか 投稿日:2003/11/28(金) 17:32
今回も面白かったです!!そして気になるは紺野さんの存在・・・
次回はそれに伴って物語が動き出しそうですね!!
頑張ってください。

野球は西武は松井の抜けた穴は大きそうですよね・・
他球団も変動は色々あって、来シーズンが楽しみですね!!
147 名前:まるまる 投稿日:2003/11/29(土) 11:15
はじめまして!!最近、プロ野球界は大変なことになっていますね。巨人は、
他球団から放出された選手をどれだけとるともりなのでしょうか!?

石川さんの妄想は、果たして当たっているのでしょうか?いよいよ決勝戦!
紺野さんとの対決ですね!!
148 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:09
「途中で声を掛けようかなって思ったけど、梨華ちゃんがあまりにおかしい話をするもんだから。笑いをこらえるのに必死になってたよ」

「別におかしくしてるわけじゃないんだけど・・・じゃあ、実際はどうなんですか?矢口さんはよっすぃ〜と紺野さんの関係知っているんでしょ?やっぱりなにか暗い過去があるんですか?」
「美貴も知りたいです。教えてください」

二人がそう言うと、矢口は少し考えた後、
「別に暗い過去なんてないけどね・・・」と話し始めた。
149 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:11
「ホントに全然暗い話じゃないよ?よっすぃ〜とあさ美は・・・親友でもあり、ライバルでもあり、そしてお互いが目標でもあるんだ」

「「目標!?」」

「うん・・・実はさあ、おいらの従姉妹なんだ、二人とも」

「そうなんですか?」

「うん、よっすぃ〜とあさ美は血は繋がってないんだけどね。
よっすぃ〜はおいらのお父さんの妹の子供で、あさ美はおいらのお母さんの弟の子供なんだ。
しかも、おいらの家はよっすぃ〜の家とあさ美の家の間に挟まれているから、昔から自然と3人でいることが多かったんだ。
二人とも負けず嫌いで、どんな事でも二人で競い合ってさあ・・・そして、負けた方が泣きついてくるのを慰めてあげるのがおいらの役割だったんだ。
なんでそんなに二人が互いをライバル視してるのかは、おいらにも分からなかったけど」

石川も藤本もはじめて聞く吉澤と紺野の関係に真剣に耳を傾けている。
150 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:11
「それが、よっすぃ〜が紺野さんに負けたくない理由なんですか?」

「ううん、まだ続きがあるんだ。それからも二人でたくさんの勝負をしたんだけど、そのなかでも二人が1番夢中になったのが野球、それもバッティングだったんだ。
まあ、これはおいらの影響もあるんだけど。
おいらが言うのもなんだけど、ホントによっすぃ〜もあさ美も天才だと思う。
二人が小1のときにおいらと同じ野球クラブに入ったんだけど、その時点でもうバッティングだけだと6年生のなかにも二人に勝てる人はいなかったよ」

「すごい・・・矢口さんも・・・ですか?」
151 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:14
「おいら?おいらは根っからの1番打者タイプだから、二人とはタイプが違うけど。
・・・それでももし二人のうちどちらかがおいらと同じタイプだったとしたら、おいらは勝つ自信なんて無いよ・・・それほど二人の野球センスはすごかったんだ。
それで・・・当然二人はチームの4番の座を争った。
監督・・・って言ってもおいら達の小学校の体育の先生だったんだけど、その人もかなり悩んでいたみたい。
二人の実力はホントに互角で、甲乙つけがたかったから。
結局どちらを4番にするか決める事ができず、1試合交代ってことで手を打ったんだ。

その後は、前と同じように3人で楽しく遊んだりしてたんだけど、二人が小3のときだったかな・・・あさ美が父親の仕事の関係で北海道に転校する事が決まったの。
その時だけは二人ともがおいらに泣きついてきて・・・おいらも寂しかったけど、二人を慰めるのに精一杯だった。
152 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:15
引越しの当日、ちょうど県大会の決勝戦が行われる予定だった。
あさ美は親に直訴して、その決勝に出る事が許されたらしかった。
試合の直前、あさ美はよっすぃ〜に最後の勝負を申し込んだ。
よっすぃ〜に後から聞いたことだから、詳しい内容は聞けなかったけど。
結局その試合二人とも4打数4安打2HRと決着はつかなかったみたいだった。

試合後、あさ美とよっすぃ〜はこれからも野球を続ける事、そして今度会ったときには必ず決着をつけることを約束して、別れたんだ・・・これもよっすぃ〜から聞いた話なんだけど。
おいらが知ってるのはそんなもんだよ。
後はよっすぃ〜に直接聞いたら?
よっすぃ〜のことだから、ただ聞かれなかったから言わなかっただけで、聞かれたら意外に普通に答えるんじゃない?」
153 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:16
□ ■ □ ■ □

「ひさしぶりだね、よっすぃ〜・・・」

「え?あ、うん・・・あさ美も元気そうだね。野球やっぱり続けていたんだね?」

「もちろん、ちゃんとあのときの約束は覚えてるよ」

バッティングセンターの中のベンチで吉澤と紺野は並んで座っている。
加護と辻は早速バッティングを始めたらしく、カーン、キーンという小気味よい音が少し離れた二人の耳にも届いている。
154 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:18
吉澤が加護や辻に問いただした結果、どうやら二人は以前からメル友であった高橋の紹介で紺野と知り合ったことが分かった。
その後、二人は紺野ともメル友になり、いろんな話をしているうちに紺野の昔の話に出てくるよっすぃ〜が自分たちの知っているよっすぃ〜と同一人物である事に気づいたそうだ。

「真里ちゃんも元気にしてる?」

「真里ちゃん?・・・ああ、矢口さんのことか。もちろん元気だよ、新聞とかテレビでも見てるでしょ?」

「よっすぃ〜、いつの間に真里ちゃんの事、矢口さんなんて他人行儀な呼び方で呼ぶようになったの?」

「いつからだろう・・・多分矢口さんがプロになって、何か遠い存在になったような気がしたからかな・・・いや、もっと前かも・・・」
155 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:20
「もしかして昔、私が言った事をまだ気にしてるの?」

「バレた?気にしてるってほどでもないけど、やっぱりあさ美に悪い気がしてさあ・・・結局あさ美が引っ越す日にやった最後の勝負は引き分けだったのに、うちが矢口さんを一人占めしたような気になってさあ・・・」

「そもそもどっちが言い出したんだっけ、勝負に勝ったら真里ちゃんを一人占めするなんて・・・おかげで物心ついたときから、よっすぃ〜とは勝負した思い出しかないもんね?」

「そうだね。で・・・結局負けた方が矢口さ・・・真里ちゃんに泣きついて一人占めしちゃうんだもんね。勝負する意味無いじゃんって感じで。でも絶対わざと負けようなんて考えなかったよね?うちもあさ美も負けず嫌いだから」

「もちろん」
156 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:23
10年近く会っていないのに、会ってすぐ昔のように自然に話すことができる。
それが紺野と吉澤の親友という言葉でもくくることのできない強い絆で結ばれた関係だった。
そして、二人を昔からつないでいる矢口真里・・・
彼女は二人が共通に持っている憧れ、尊敬、そしてもしかしたら自分より大切に思っている対象であった。

紺野が転校する当日、試合が終わった後、吉澤と紺野はある二つの約束を交わした。
一つは矢口にも伝えた事のある、これからも野球を続けて、今度会ったときには必ず決着をつけること。
そしてもう一つは、その最後の勝負だけはきちんと勝った方が矢口を一人占めして、負けた方は矢口に泣きついたりしないというものだった。
だから、わざわざ吉澤はその約束以来、真里ちゃんと呼ぶのを止め、矢口さんという呼び方で呼ぶようになった。
もちろん、そのことは矢口には言ってない。
157 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:25
「よっすぃ〜!あさ美ちゃん!二人ともやらないの〜?」

辻のよく通る大声のおかげで、思い出にふけっていた二人は現実に戻される。
吉澤は苦笑いを浮かべながら、紺野に話しかける。

「ののの言う通りだね。せっかくバッティングセンターに来たんだからバッティングをしなくちゃ」

「そうだね。じゃあよっすぃ〜、明日の決勝戦および二人の勝負の前哨戦といきますかね?」

「お!いいね〜。言っとくけど、今日も明日も負けないからね。だいぶ成長してもうあさ美の知っている吉澤ひとみじゃないかもよ?」

「私だってよっすぃ〜の知ってる紺野あさ美じゃもう無いよ」

「よし!じゃあ30スイング中、何本ホームランが出るか勝負だ!」

「完璧です!」

結局その日の勝負も二人ともホームランは27本と引き分けに終わった。
158 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:29
ホテルに戻った後、吉澤は石川や藤本、さらには石川や藤本に矢口が話したことを聞かされた後藤や松浦にまで問い詰められ、仕方なく昔の事、さらには今日紺野と会ったことなど矢口関係以外のことを全て白状させられた。

「なんだ・・・よっすぃ〜も言ってくれたらよかったのに」

「別に聞かれなかったからわざわざ言わなくていいかなと・・・」

「とりあえずごとーはその紺野あさ美を抑えればいいんだよね?」

「ええ、まあ・・・・・」

「二人が勝負する理由はよくわかんないけど、そういう事ならごとー達に任せてよ。よっすぃ〜が勝てるようにみんな協力するからさあ」

「そうそう、よっすぃ〜の打席のときは松浦がちゃんと塁に出て高橋ちゃ
159 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:32
「みんな・・・怒んないの?うちは個人的な理由で準決勝でごっちんに投げさせなかったりしたんだよ?」

「当たり前じゃん、よっすぃ〜は朝高のキャプテンなんだから」
「そうそう、キャプテンによっすぃ〜がなった時からこれくらいのわがまま覚悟してたもん。それどころか今まで無くて部員全員が拍子抜けしてたんだよ」
「結局準決勝も勝ったんだし、よしこの考えも間違ってたわけじゃないしね」
「だから全然怒ってなんかないよ」

「みんな・・・吉澤は今、皆様方の寛大なお言葉に感動しているところでございます。そのお言葉に感謝致しまして、明日の試合必ずホームランを打ちまして、朝高を全国制覇にお導き致します所をお誓い申し上げます」

吉澤の言葉に後藤達は一斉に吹き出した。
160 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:34
「よっすぃ〜最高!」
「今の言い方おかし過ぎだよ」
「誓ったからには絶対打ってよね?」
「打てなかったらよっすぃ〜には甲子園から埼玉まで歩いて帰ってもらおうかな?」
「え!?」
「お!梨華ちゃんそれいいねえ。美貴もそれにさんせ〜い」
「松浦も!」
「ごとーも!という事で決定!よっすぃ〜はホームラン打てなかったら埼玉まで歩いて帰る事」
「え〜!!・・・分かったよ・・・絶対ホームラン打ってやる!」

こうして、歴史に残る決勝戦が行われる前日の夜は更けていった・・・
161 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:39
>>146たかさん
松井にローズに小久保・・・
来シーズンの特にパ・リーグはどうなるのか全然見当もつきませんね
>>147まるまるさん
レスありがとうございます
すいません、僕自身暗いのは少し苦手なもので・・・石川さんの妄想は聞き流してください。
巨人ねえ・・・確かにちょっと取り過ぎですよね、しかも4番打者ばかり


今回は珍しく早めの更新
っていうか、テスト期間中なんですけどね・・・
は〜あ、早く大学に合格したいなあ・・・
というわけで、さすがに1月2月は受験のため、今まで以上に遅れると思います。
ちなみに決勝戦で完結というわけではないので・・・
162 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/11/30(日) 15:40
すみません、ちょっと>>158の最後が飛んでいるので>>159との間に次に書いてるのを付け足してください。「そうそう、よっすぃ〜の打席のときは松浦がちゃんと塁に出て高橋ちゃんにプレッシャーかけるよ」

「わたしもよっすぃ〜の前に頑張って塁に出れる様に頑張る」

「美貴は・・・どうしようかなあ?よしこの後だから先に塁に出る事はできないし・・・とりあえず、ごっちんがあさ美ちゃんに打たれても3塁方向なら絶対守り抜くね」
163 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/12/01(月) 15:00
巨人は今のやり方を続けていたら絶対潰れますね。
パ・リーグはホントにこれからどうなるんでしょうか?
164 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2003/12/10(水) 23:18
ローズの巨人入団確実・・・
ますます日本プロ野球がつまらなくなる・・・

165 名前:みさと 投稿日:2003/12/16(火) 23:50
入来問題どうなるんでしょ?
またまた巨人はお騒がせですね

決勝戦、楽しみに待ってます
頑張って下さい
166 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:15
決勝戦当日を迎え、いつもうるさい朝高ナインもさすがにバスに乗っての移動中、口数が少なかった。
甲子園に着いても口数の少なさは変わらず、吉澤はキャプテンとして何とかこの重苦しい雰囲気を打破しなければと思いつつも、自分もこんな大舞台は初めてという事もあり、自分のことで精一杯で何もできなかった。

その重苦しい雰囲気を打破してくれたのは、朝高ナインにとって心強い助っ人達であった。

「お〜い!なんだその思い雰囲気は!?いつもの後藤らしくないぞ!」
「石川!ポジティブにいくって約束したじゃん」
「よっすぃ〜!キャプテンがそんなんでどうするんだよ!」

「先輩達・・・」
167 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:17
まず声をかけてくれたのは、市井・保田・矢口という尊敬すべき先輩達であった。

3人はこの決勝戦に応援に来るために、それぞれの球団の監督やチームメイトに必死で頼み込んで許しをもらったのであった。

「そやそや、もう試合に負けたみたいになっとるでえ。うちらに勝ったんやから、優勝してもらわんと困るわ」

「あいぼん!」

3人の先輩の横に双葉高の加護の姿も見えた。
168 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:19
「今日はあいぼん一人?」

「ん?ああ、ののはあさ美ちゃんや愛ちゃんのほうを応援しに行っとるわ。よっすぃ〜の方ばっか応援しとったら不公平やからなあ」

4人の心強い応援団にナインの緊張もだいぶほぐれた様で、控え室に入る頃にはみんないつもの笑顔に戻っていた。
ノックなどの練習でも、おかげでのびのびとみんなプレイできていた。

試合前の練習も終え、後15分ほどで試合が始まるという事で、朝高ナインはベンチで最後のミーティングを行っていた。
169 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:20
「やっぱり注目すべきは高橋・紺野・小川の3選手だね・・・
ピッチャーの高橋からはまず大量点は望めない。
球速とスタミナの面では、わずかにごっちんの方が上かもしれないけど、あいぼんから聞いた話によると、球に伸びがあり、打席に立った時に感じる速さはごっちん以上かもだって・・・。
それに、スライダー、スクリュー、フォークといった変化球もキレがあって攻略はかなり難しいみたい」

吉澤がナインを見渡すと、皆一様に不安そうに見ている。

「なんか攻略法あるの?」

藤本がナインを代表して吉澤に質問した。

その質問に少し吉澤は考えたが、何も答えれなかった。
170 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:21


「・・・あるよ」

控え室が再び重い空気に変わろうとするのを防いだのは、今まで話を聞いてたのか聞いてなかったのかも分からない様子だった後藤だった。

「ごっちん!?」

「確かに高橋の方がごとーよりすごいピッチャーだと思う・・・それに打つ方だって、互角といっていいかもしれない。
でも、一つ言えるのはピッチャーは一人じゃ何もできないってことだよ。
そう、安心して任せられ、最高のパートナーであるキャッチャーがいないとね。
ごとー一人じゃ高橋に勝てなくても、よっすぃ〜と一緒なら絶対抑えられる自信がある。
紺野も小川も二人で抑えてみせるよ。ね、よっすぃ〜?」
171 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:26
後藤の言葉に再び明るい雰囲気が戻ってくる。
吉澤もその言葉に勇気付けられたかのように、大きくうなずき返した。

(あ〜あ、ホント、うちなんかより、よっぽどごっちんの方がキャプテンっぽいな。うちにとってもごっちんは最高のパートナーだよ。他のみんなもこんな自分勝手で頼りないキャプテンに今までついてきてくれてありがとうね)

「よし!!みんな、そろそろ王者相手に大番狂わせを起こしに行くよ!
今から約三時間後、笑っているのは向日葵高校じゃなくてうちらなんだ!」

「オ〜!!!」

そして・・・決勝戦の幕が切って落とされた。
172 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:30
向日葵高        朝顔高
1番 小川 左     1番 松浦 中
2番 福嶋 二     2番 石川 一
3番 逢坂 遊     3番 後藤 投
4番 紺野 右     4番 吉澤 捕
5番 嵯峨 中     5番 藤本 三
6番 賀川 捕     6番 矢野 二
7番 永野 一     7番 金谷 左
8番 戸山 三     8番 松本 右
9番 高橋 投     9番 土井 遊
173 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:32
一回表
小川が一礼をして無表情で打席に入る。
吉澤と後藤が初球に選択した球はもちろんストレートだ。
あいさつ代わりのストレートを後藤が思いきり投げこむ。

コースなんか決めてない
ただ思いきり投げるだけ・・・
ストライクゾーンから大きく外れた球に吉澤が飛び上がって捕球する。

球速155キロ

興奮して盛り上がる応援席とは対象に、後藤が渾身の力で投げた自己最速のその球を見ても、小川は眉一つ動かさなかった。

吉澤は昨日の紺野の言葉を思い出した。
174 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:34
無駄だと思いながら、休憩中に軽い調子で小川や高橋について紺野に尋ねると、予想とは違って紺野は二言三言答えてくれた。

「麻琴はねえ・・・一言で表すとすると・・・侍だね」

「侍!?」

「そう、普段はチームの中で一番のムードメーカーで、そして一番だらしないし頼りないんだけど・・・試合になると侍に変わるんだ」

「侍ってどういうこと?」

「・・・明日になれば分かるよ」
175 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:37

(これが侍状態って訳か・・・確かにそんな感じだね・・・)

気を取り直して、後藤に二球目のサインを送る。

後藤は大きくうなずき、足を上げ、二球目を投げる。
サイン通りのスライダーが外角低め、これ以上無いという所に決まった。
またしても小川はピクリとも動かなかった。

(何かを待ってるのか・・・?)

後藤が三球目を投げ込む。
再びストレート、しかし今度はストライクゾーンの中だ。
この球に初めて小川は反応する。

カキーン

鋭い打球音を響かせて、打球はライト方向に高々と舞い上がる。
ライト・松本が必死に下がっている。
背中をフェンスにつけながら打球を見上げ、腕を伸ばす。
176 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:39

「予想以上に重かったか・・・」

打たれた瞬間、やられたと思った吉澤の耳に小川のつぶやきが届いた。
それを聞いて小川に向いていた目を打球の行方に移すと、まだ高く舞い上がったままだが少しずつ降りていっているのが確認できた。
そして、ようやく失速した打球は、懸命に伸ばした松本のグラブに収まった。

わずかの差で命拾いした後藤は、続く福嶋・逢坂を吉澤のサイン通りに変化球を混ぜこみながら、連続三振を奪った。

「三者凡退なんて久しぶりやわ〜。さすが決勝戦やなあ。じゃあ、次はおら達の番やで」

そう一人つぶやきながら、高校NO.1の左腕・高橋がマウンドに向かう。
そして、一回裏の朝顔高の攻撃が始まった。
177 名前:ロケットボーイ 投稿日:2003/12/21(日) 14:42
>>163>>164 壱ダイエーファンさん
巨人は本当に何を考えてるんでしょうね・・・
>>165 みさとさん
ありがとうございます。
決勝戦まだ18分の1しか終わっていませんが気長に待っていただけたらと思います。

多分今回のが今年ラストの更新になると思います。
こんな駄文ですが来年もお付き合いいただければ嬉しいです。
178 名前:みさと 投稿日:2004/01/25(日) 23:32
キャンプ開幕まであと1週間ですね
今年はどんなシーズンになるんでしょう?
私は、セリーグ=落合監督、パリーグ=新庄さんに注目してます

ロケットボーイさん、今年も楽しませて下さい
更新お待ちしています
179 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:20
一回裏
高橋の投球練習が終わり、松浦が打席に入った。

初球、高橋が投げたのはストレートだった。
150キロ近い速球だが、コースはストライクゾーンのど真ん中。

(もらった)

松浦はこれを逃さず、思いきり振りぬいた・・・が結果は芯を外してピッチャー前のゴロになる。
軽快に高橋がさばき、一塁に転送してワンナウト。

「おっかしいなあ、ちゃんと芯で捕えたはずだったのに・・・」

松浦が首をかしげながらベンチに戻り、代わりに石川が打席に入る。

(あややが打ち損じなんて珍しいなあ・・・なんか仕掛けがあるのかも。じっくり見てみよう・・・)
180 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:22
石川に対する初球は高めのスライダー。
これをあえて石川は見送る。

(別に普通のスライダーだよねえ・・・やっぱりただの打ち損じなのかなあ・・・)

二球目のストレートも見送り、やっぱりさっきのは松浦の打ち損じだと結論付けた石川は、
二球目の甘い高めのストレートに石川は手を出す。
石川が完璧に捕えたと思ったその打球もわずかに芯を外れ、高く高く打ち上がった打球はキャッチャーのミットに納まった。

続く後藤も初球のシンカーを上手く打ったと思ったが、結果は芯を外してファーストゴロに倒れる。

「んあ?」

結局両チーム初回は三者凡退となり、試合は多くのスカウトの注目の的である、紺野・吉澤、両四番打者の登場する二回へと移った。

向0−0朝
181 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:23
二回表

「頑張れ、あさ美」

紺野が打席に入るとき、矢口は後ろでそうつぶやく声が聞いた。
矢口が振り向くと、そこには高校時代に何度も甲子園で対戦した懐かしい顔が見えた。

「なっち!?」

その声に市井と保田も後ろを振り向いて驚いたような表情を見せる。。
その懐かしい顔も矢口達の方へ視線を向ける。

「え!? 真里っぺに紗耶香に圭ちゃん!!」

矢口達の後ろに座っていたのは、3人より一つ学年は上で、3人が高校一、二年のときに何度か甲子園で対戦し、死闘を演じた北海道の桔梗学園のエースピッチャーであった安倍なつみだった。
182 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:25
試合は結果的に毎回朝顔高校の惜敗に終わり、朝顔高校はこの安倍なつみがいる間一度も勝つことはできなかった。
また、安倍はその後、ドラフトで巨人の一位指名を受けたが、それを拒否し、無名の北海道の大学への進学を選択し、スポーツ新聞の話題になったこともある。
大学進学後も、神宮大会でその無名の大学を準優勝に導くなど、今では大学NO.1投手の名を不動のものとして、吉澤・後藤・紺野・高橋とともに次のドラフト会議の目玉に上げられている。
そんな安倍と3人は高校時代に仲良くなり、今ではさすがにめったに会えないが、毎週メールの交換は欠かさずするほどの仲であった。

「久しぶりじゃん、なっち!全然変わってないね」

「3人こそ、相変わらず矢口は小さいままだし、紗耶香はかっこいいままだし・・・圭ちゃんの顔は怖いままだし、全然変わってないよ。まあ高校時代よりも新聞やテレビで3人の事をよく見るようになったけど」
183 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:26
「なんか、私の顔が怖いままってのは納得しないなあ・・・まあ慣れてはいるけどさあ。それにしてもホントに久しぶりだね、なっち。今日はどうしたの?」

「そういやあ、さっきあさ美って言ってたけどなっちもあさ美と知り合いなの?」

「うん・・・ってなっちもってどういうこと?矢口もあさ美と知り合いなの?」

「ああ・・・これは紗耶香や圭ちゃんにも言ってなかったけど、おいらとあさ美、それによっすぃ〜は・・・ああ、よっすぃ〜ってのは朝高の吉澤ひとみのことね・・・おいらを含めたその3人は幼馴染で、それに親戚だったんだ」

「ああ、いちーと圭ちゃんなら知ってるよ。昨日梨華ちゃんから電話で聞かされた」

「うそ!?梨華ちゃんなんかに話したのは失敗だったなあ・・・こんなに口が軽いなんて・・・まあいいや、で、なっちとあさ美はなんで知り合いなの?」
184 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:27
「ああ・・・なっちはあさ美の師匠のうちの一人かな。
なっちが中一のとき、隣にあさ美が引っ越してきたんだ。
その時は別にどうとも思わなかったけど、しばらくして、近くの空き地で一人素振りをしたり、塀に向かって球を投げているあさ美を見かけたんだ。
次の日もそのまた次の日も同じ事をしていた。もちろんいつも一人で・・・だから、なっちは声をかけたんだ。
『なっちと一緒に練習しない?』って・・・そうしたらあさ美はしばらく悩んでたみたいだけど、うなずいたんだ。
それから何日か練習してるうちに、なっちはあさ美の打撃の才能に気づいた。
残念ながらなっちは打撃の才能は全く無かったから、あさ美の才能を伸ばすため高校のとき一年半くらい圭織にも協力してもらったんだ」
185 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:27
「ちょっと待って、圭織って、三年前に打点王と新人王を獲った横浜の4番打者の飯田圭織のこと?」

「そうそう、その圭織のことだよ。
圭織はなっちの小さい頃からの親友なんだ。
高校は別の所へいって、なっちの高校と何回も対戦したよ。
圭織には何本もホームラン打たれたし、まあ結果はなっちの高校が僅差で全部勝ったけどね・・・
実はなっちが大学進学した理由の一つが圭織がプロに入ったからなんだ。
当時のなっちは圭織に全然かなわなかったから、四年間必死に練習して圭織に追いついてやろうと思ったんだ。
そして、もう一つの理由があさ美なんだ」

「どういうこと?」
186 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:28
「はっきり言ってあさ美の実力は圭織より上だよ。
圭織も言ってた、天才だって
だからなっちはあさ美にも勝ちたかった。
でも、4つ年が違うのにどうやったら周りから比べられるか考えたんだ。
で、一つ考えついた。
ドラフトなら比べられるんじゃないかって。
なっちが大学4年のとき、あさ美は高校三年な訳だから、どっちがより上位に指名されるかで客観的な評価が分かるんじゃないかなって。
だから逆指名もするつもりは無いよ」

安倍は試合の方に視線を移すと、真剣な表情を浮かべた。
どうやら、マウンド上の後藤のウォーミングアップも終わり、紺野が打席に入るところだった。
矢口達も安倍に話しかけるのをやめ、紺野対後藤・吉澤の初勝負に注目した
187 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:29
(あさ美か・・・ホントに弱点ないからなあ・・・
初球何から入ろう・・・)

吉澤は迷っていた。
あさ美とは互いに手のうちを知り尽くしている間であるが、それゆえ互いに相手の実力を過小評価しない。

(どこへ投げても打たれそうな気がする)

吉澤の迷いはパートナーである後藤にも伝わる。

(よっすぃ〜がこんなに悩むなんて始めてだな・・・それほど紺野あさ美の実力は高いってことか・・・)
188 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:30
迷った末、吉澤が出したサインは外角低目一杯のストレートだった。
サイン通りのコースに後藤が投げ込む。

紺野は振らない。

その後もぎりぎりのコースをついて、紺野を2−2まで追い込んだ後藤と吉澤だったが、すり減らした神経は膨大な数であった。

そして、吉澤が決め球に選んだのは初球と同じ球だった。

(ここならホームラン打たれる事は絶対無い!)

そして、後藤の投げた球はサインと寸分違わないコースへ・・・

ヒュンッ
189 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:31
空振りかと思うようなスイング音だが、吉澤のミットにボールは収まってなかった。
朝高ナインが打球の行方を捜す中、紺野は悠然とベースを一周しだす。
そのスイングの早さによって観客のほとんどが、また審判までもが、打球の行方がわからない。
甲子園の中でその行方に気づいている者は安倍・矢口・市井・保田らわずかな観客と打たれた後藤・吉澤のバッテリー、そして打った本人だけだった。

「あさ美・・・やっぱすごい・・・」

「ウソ・・・今の球はよっすぃ〜でも打てないような1球だったのに・・・」

加護が隣に座っている矢口に恐る恐る尋ねる。

「あの〜、今の打球どこへいったんですか?」

「そっか・・・加護ちゃんでも分からなかったのか。
まあ、おいらもぎりぎりだったけどね。
もう少し待ってれば分かると思うよ」

そして、紺野が三塁を回った直後、周囲の静寂を破るような音が甲子園全体に響く。
190 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:32
ドカン!!

その音はバックスクリーン最上段に激突する打球の音だった。
なおも静寂が続く中、紺野がホームに到達すると主審が思い出したかのように高らかに宣言する。

「ホーーーームイン!!!」

静寂がどよめきと喧騒に変わる。

その後は三人で押さえたものの朝高にとっても後藤と吉澤にとっても痛い1点だった。

向1−0朝
191 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/02/09(月) 21:33
>>178みさとさん
また一人佐々木さんという注目選手が日本に戻ってきましたね。
今年はホントに楽しみです。

1ヶ月半も遅れてすみませんでした。
次回の更新はもっと早くできるように努力します。
192 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2004/02/15(日) 00:15
今の野球部はもてないらしく、今年もバレンタインは
収穫ゼロでした・・・。バレンタイン監督たすけて・・・。
(顔がどうのこうのとはつっこまないで下さい・・・。)
和田は今年も沢山もらうんだろうな〜。
193 名前:みさと 投稿日:2004/04/20(火) 23:39
ロケットボーイさんお忙しいのかな?
楽しみに待ってます
頑張って下さい
194 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2004/05/04(火) 22:49
6連勝のち6連敗・・・
王さん、今年は先発ではなく中継ぎ獲得に専念してほしいです。
195 名前:壱ダイエーファン 投稿日:2004/06/09(水) 00:25
王さん一日遅れれだけど1000勝おめでとう!!
城島も誕生日おめでとう!!
196 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:17
二回裏

まだ二回だというのに、早くも朝高ベンチにはどんよりとした空気が流れている。
何とかしなくてはと思いながら、吉澤は打席に入る。

1球目、ボール球を見送りながら、高橋について紺野が語った言葉を思い返していた。

□ ■ □ ■ □

「ん〜、愛ちゃんはねえ、たぶん決勝戦ではよっすぃ〜たちが見たことない投球すると思うよ」

「それってどういうこと?」

「本気の愛ちゃんはみんなが思ってるような、本格派でバンバン三振を取るようなピッチャーじゃないんだ」

「じゃあ、昨日の準決勝は手を抜いていたってこと?」

「手を抜いたって言うか、愛ちゃんは強いとこじゃないと本気を出せないんだ。でも、よっすぃ〜の学校が相手なら、私でさえ見たことない愛ちゃんの本気が見られるかもしれない」
197 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:17
「本気になったらどうなるの?」

「そこまでは……でも、愛ちゃんはゲーム(試合)をゲーム(遊戯)のように考えてるから、面白いことを考えてると思うよ。私からはこれ以上言えないけど」

「ゲームをゲーム?」

□ ■ □ ■ □

(高橋が考えている面白いことって……なんだろう。とりあえず今はこの打席に集中しないと)

気づけば、吉澤はもう2−2と追い込まれていた。
そして高橋は5球目の投球モーションに入っている。

5球目はインローのスライダーだが、キレはあまりよくない。
これを吉澤は芯で捕らえた……と思っていたが、結果はセカンドライナーに終わった。

(おかしいなあ、確かに捕らえたと思ってたんだけど)

吉澤はベンチに戻りながら、不思議に思っていた。
198 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:17
(そういえば、一回の3人も同じような感じだったよねえ。芯で捕らえたと思っていても結果は芯をうまくはずされて、ピッチャーゴロ、キャッチャーフライ、ファーストゴロ……あ!!)

そのとき吉澤はひらめいた。
その仮説が正しいものなのか確認するため、藤本の打席を注視する。
その藤本は、三球目の直球を打ち、サードゴロに倒れた。

(やっぱり……)

6番矢野はショートゴロに倒れ、吉澤はその仮説が真実であると確信した。

(問題はそれを仲間に伝えるべきか……だよね)

チェンジとなり、自分の守備位置に向かいながら、吉澤はそれを考えていた。

(やっぱりミキティーまでの上位打線には伝えたほうがいいよね。いつかは気づくだろうけど……とりあえずこの回は小川まで回るんだから、しっかり抑えないと)

8番戸山、9番高橋を三振で抑え、朝高は1番小川を打席に迎えた。

初球、二球目を見逃した小川は三球目に反応した。
打球は三遊間を勢いよく抜けていく……かと思ったが、サード藤本が飛びついて抑えるファインプレイを見せて、三回表を終えた。
199 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:18
四回表、7番金谷が打席に入ってる間に、吉澤は松浦・石川・後藤・藤本を呼び寄せた。

「どうしたの、よっちゃんさん?」

「高橋が何を狙っているのか、うちには分かったよ」

「「「「え!?」」」」

その吉澤の言葉に4人も驚きの声を上げる。

「高橋の狙いってどういうこと?」

「まあ百聞は一見にしかずっていうから、実際見たほうがいいよね。うちがこの三回裏の打席の結果を予想するよ。7番金谷ライトフライ、8番松本センターフライ、9番土井レフトフライ」

「!?」

勘のいい藤本と松浦は気づいたようだ。

「よっちゃんさん、それって……」

藤本の問いに吉澤はうなずく。
鈍感な後藤と石川はまだ頭に?を浮かべている。

「そう、高橋は守備位置の番号順に打たせてるんだ。1番ピッチャー、2番キャッチャー、3番ファースト、4番セカンド……って感じにね」

後藤と石川もようやく理解したようだ。
200 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:18
「でもよっすぃ〜、そんなのってできるの?」

「できるんだろうね、高橋には」

「「「「……」」」」

四人を沈黙が襲う。
試合のほうは、8番松本がセンターフライを打ち終えたところだった。

(やっぱり言うべきではなかったかな……でも、この四人なら乗り切ってくれるはず)

最初に口を開いたのは松浦だった。

「おもしろいですね」

「え?」

「思い通りに行かなかったときの高橋さんがどういう反応を見せるかが。ヒットを打つのは難しくても、松浦はピッチャーに向かって打たなければいいんですよね。楽勝じゃないですか」

その頼もしい言葉に他の3人もうなずく。

「ごとーも楽しみだよ」

「私も」

「美貴も高橋のあわてる顔を見てみたいなあ」

「みんな……」

5人が決意をこめてうなずいたとき、9番土井がレフトフライでアウトになった。
201 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/06/09(水) 17:19
言い訳しません
レス等は次回に
202 名前: 投稿日:2004/06/21(月) 17:40
楽しみに待ってます
203 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/04(日) 12:40
更新待ってます。
204 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/12(月) 21:24
更新待ってまーす!!
205 名前:ロケットボーイ 投稿日:2004/08/13(金) 08:24
放棄はしませんので残しておいてください
206 名前:ワク 投稿日:2004/09/11(土) 12:15
更新お待ちしてまーす!!
207 名前:あじあ 投稿日:2004/10/30(土) 01:23
今日見つけて、一気に読みました。
月並みな感想しかかけませんが、本当に面白かったです。

あと、どうでもいいつっこみですが、
守備位置を番号で表す場合、7はレフトで、9がライトのような気が…
作者さんが何らかの意図があって、7番金谷ライトフライ、9番土井レフトフライとしているのなら全く無視してください

次回の更新も楽しみにしています。
208 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/15(水) 21:38
お待ちしております。
209 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/06(木) 11:42
まだまだ待ちます。
210 名前:ロケットボーイ 投稿日:2005/02/08(火) 17:49
今月中には更新します
211 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 14:06
お待ちしております。
212 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/30(土) 21:28
まだまだ待ちます
213 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/30(土) 23:38
ochi

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