ストレイ シープ

1 名前:のえる 投稿日:2003年08月08日(金)17時08分58秒
青板で書いていたものの続きです。

前スレ 『すとれい しーぷ』
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/blue/1054715244/
2 名前:のえる  投稿日:2003年08月08日(金)17時10分53秒
 ( ´ Д `)人(´ー`●)
3 名前:つみ 投稿日:2003年08月08日(金)17時10分59秒
つづきみっけ♪
4 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月10日(日)01時50分40秒
なっち誕生日おめ
5 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時13分46秒

娘。大学付属高校の校舎の屋上。

「ひっく…ぐすっ、ぅ…っく」

松浦亜弥は、色素の薄い瞳と白い瞼を真っ赤に腫らして
嗚咽を漏らしていた。
今は5限の授業中だが、昼休みに見てしまった
衝撃的な映像に堪えきれなくなって
教室を飛び出してきたのである。


ミキたん、泣いてた……。


ただ泣いていただけなら、大騒ぎするようなコトじゃない。

だけど、だけどあんな切ない表情。

あんな顔をさせたのは―――

「私……だって、思ってもいいのかなぁ…?」


信じていた愛に裏切られた彼女に
愛を押し付けていた自分。

いつか拒絶されるのが怖くて
優しい手を振り払ってしまった自分。
6 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時14分59秒
犯した罪が次々に頭の中を占領していく。

「1番ダメなのは、ミキたんの心を縛り付けてる
 コトだと思ったのに」

自分が突き放したせいで、彼女が泣いてしまったというなら
あたしは……間違ってたのかな?
優しい優しい彼女はあたしを傷つけた罪悪感で苦しんでいるのだろうか?

「もぉ…どうすればいいのかわかんないよぉ……」

蹲って抱えた膝に顔を埋める。
欲しいのはこんなぬくもりじゃない。
誰よりも、何よりも、ミキたんが欲しいのに。



背中に刺さる視線にも気つかずに
松浦はしばらく動けなかった。


7 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時15分42秒
「ぐすっ、ごとー美貴に会わす顔ないよ」
「ウチも。なんて言やいーのか…。
 知らないフリもできないし」
「「…はぁぁ…」」

はいどーも…こちら神奈川県上空のごとーまきです。
テンション低いって?低いに決まってんじゃん…。
まっつー結婚しちゃったのよ?
乗り越えるのよ、一線を。
ごとーとなっちだってまだ乗り越えてないっつーのに。

んあ、乗り越えたいんすよ、切実なの。

「後藤先輩、そろそろメロンですよ」
「…ふぅ、柴田めぇ…」
「臨戦体勢はバッチリやよー、柴田許すまじやわ」
「ぇ…?愛ちゃん何する気?」
「小川、人はな、大切な人の為に戦わなきゃならない時があるんだ」
「いやいや、間違ってるし。
 ってか吉澤先輩ハチマキなんかどっから出したんですか?
 しかも“討ち入り”って……」
「んあ、よしこカッケーねぇ」
「私も巻きたいわぁ」
「・・・・・」
8 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時16分44秒
「あのぉ…」
「ん?どうしたの鶴井さん」
「せやから亀井やよー」
「んあ?ツルちゃんでしょ」
「…なんでもいいんですけど、もう着くんですよね?」
「うん、ってかアレだよ、屋根が緑の」
「……じゃあ、なんで減速しないんですかね?」
「「「「…へ……?」」」」

んあ、そういえば。
さっきの横浜では山下公園に着いたトコで勝手に
ポテト雲が減速して止まってくれて
だから運転とかしてなかったんだけど。
今はメロンの屋根が手前3メートルぐらいに接近しても
スピードはいっこも落ちてらっしゃらない。


 ら っ し ゃ ら な い 。


「「「「「ギゃぁぁあああー!!!ぶつかるぅぅぅー!!!!」」」」」

ドガーンバコーンドンガラグワシャ。


『あ、後藤さん。言い忘れましたけど
 ポテト雲は水に弱いので気をつけてくださいね、故障しますから』

んあ、言うの遅っ。

『エヘ☆ワザとです♪』

・・・殺す。


9 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時17分25秒



「松浦さんいるかい?」
「えーと…お昼の放送見て飛び出してっちゃったっきり
 戻ってないんですよ、5限目もいなかったし。
 ついでに高橋さんも戻ってきてなくて…」
「べさ、高橋さんは特別任務っしょ。
 …そっか、松浦さんいないべか」
「鞄あるんで、帰ってはないと思うんですけど」
「ありがと、捜してみるべ」

ふぅ、どこ行っちまったんだべか。

少しでもごっちんの役に立とうと
なっちは松浦さんのトコに来たワケなんだけど
どうやらホシは姿をくらませたようだべ。
したっけなっちは6限目授業ないし
必ず見つけ出してみせるっしょ!

さっき覗いた保健室にはいなかったし…
となると定番はやっぱ校舎の裏だべか?
いやいや、ソコはスカートが長くて眉毛がない人たちの定番かい?
あっ!松浦さんもライトが明るいと眉毛ないべさ!!
でもスカートは短いべ……あぁ!!
どーゆーコトだべかコレは!!

無理っしょ、なっちにはこの謎は解けねぇっしょぉ。
ばぁちゃん助けてぇ。
10 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時18分05秒
早く、早く見つけないと。

「ねぇねぇ聞いた?あややに彼氏できたんだって」
「えぇー?!藤本先輩はー?」
「どんな人だろー?カッコイイんだろーねぇー」
「なんか残念な気もするなー」
「小川さんってエロエロなんだって」
「えぇー、Sだって聞いたよぉー」

悩みまくりながら廊下を歩くなっちの耳に
次々と入ってくる生徒たちの会話。
最後の小川さん云々はともかく松浦さんに関する噂は
さっさと消えて欲しいべ、藤本さんまた泣いちゃうべさ。

あぁ!松浦さんはどこに隠れてるべかぁ?!

「ねぇーねぇーオッケー牧場を略すとしたらさぁー
 なんて略すぅ?」
「はぁ?んーとオッ牧?オッケじょ?オケ場?」

べさ?オケ場?オクェ場………屋上!!!
わかったべ!屋上だべさ!!

コラそこのアナタ!無理があるとか言っちゃダメ!

ワァープ!
11 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時18分55秒


スタ。

ひょぉ!?ホントにワープできたべさ!
なまらビックリしたっしょ、エスパーなっち誕生だべ!
よし、じゃあ早速世界ビックリ人間コンテストに……

って違うべ!!なっちは松浦さんに会いに来たんだべさ!
大人の女として愛の宣教師になるのさ!
さぁ松浦さん!なっちに包み隠さず全てを話してみるべさ!!

ドバァーン!

「愛は勝つべさぁ!!」
「っひゃ!?……安倍、先生?」

いたべ。隊長、ターゲット発見であります!
む?泣いてたのかい?目がウサギさんになってるっしょ。

「チッチッチッ、なっちは愛の宣教師
 アベンシスコ・ナチエルっしょ、迷える子羊を正しき愛に導くのデスタ」
「……はぁ、ナチエルさん」 

クフフ、決まったべ。
見てよこの松浦さんの眼差しを。
尊敬っしょ、信頼っしょ、それとえーと
とにかく色んなモノが詰まってるべさ。
わかりやすくお弁当に例えると幕の内ね、しかもデラックス。
12 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時19分51秒
と、そんな松浦さんのデラックス幕の内な期待に答えるべく
なっちは松浦さんの隣にちょこんと腰掛けたのさ。
すると何を勘違いしたのか、

「すいませんでした!授業サボっちゃって…」
って頭下げられちゃった。
でもソレってね、九分九厘間違ってるっしょ?
だって今なっちは教師じゃなくて
愛の宣教師だって説明したトコだべ?
ものの1分も経ってないのにもう忘れたべか、松浦さん。

まぁ泣いてたトコだったし、特別にお仕置きは免除してあげるべ。
ハイこれ免罪符、大事にしてね♪
む?なんだべその訝しげな目は、免罪符知らないのかい?ルターも?
宗教改革はもう習ったっしょ?まだ?
じゃあなっちが教えてあげるべ、よく聞くべさ。

昔々あるトコロに、ローマ教皇レオ10世という人がいたのさ。
その人はサン=ピエトロ大聖堂を修築したくって
ラファエロとミケランジェロに頼んだんだけど
それにはお金がいるっしょ?
だから前からあった、免罪符ってゆー天国に行く為に全ての罪を
許す証明書をドイツに売って金もうけの道具にしよーとしたんだ。
13 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時20分34秒
それに対してね、元々は法律の先生だったんだけど
ある日の雷がヒドイ帰り道に
『怖いよぅ、雷怖いよぅ、神様助けてよぅ。
 雷に打たれやんと家まで帰れたら、この身アンタに捧げたるさかい』
って無事に家に帰って神学教授になった
ヴィッテンベルク大学のルターが
九十五ヵ条の論題で免罪符を批判しちゃったの。

したっけこの時代は教皇を批判しちゃいけなかったべさ。
だから勿論レオちゃんは怒り、使いを送って
ライプチヒ討論会ってゆーのを開いたんだけど
この時の使いがエライ凄腕だったもんでルターがキレて
『聖書に載ってへん教皇なんていらんのじゃい!!』って
教皇の存在を否定しちゃったのさ。
したら教皇もプチっとキて必殺『破門!』をルターに言い渡し……む?

アレ?なんでなっちはこんな話してるべか?
違うっしょ、本来の目的はこんな青空個人授業じゃなかったハズっしょ!
コレじゃまるで学校の先生だべさ!
なっちはアベンシスコだって言ってるのにぃ!!

「松浦さん!」
「ひゃわ!?は、はい…?」
14 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時21分13秒
「なっちは大事な話があってここに来たっしょ」
しきり直しだべ、ズバっといくべさ。

「……大事な、話?」
「藤本さんのコトだべ」
「っ!…」
「今泣いてたのは…お昼の放送を見たからかい?」
「………はい」
「なっちは、あんまり詳しく知らないし
 昔の藤本さんを知らないからかもしんないけど
 なんで皆が藤本さんのコト黒いってゆーのかわかんないんだ。
 ヤンチャなトコあるけど優しくてなまらめんこい子なのに…。
 色々噂も聞いたけど、今流れてるのを聞いても
 なっちが黒いなんて思えないってコトは
 今の藤本さんは黒くないってコトでないかい?
 前のヒドかった時だって、悪戯に人を傷つけたり
 お金巻き上げたりはしてなかったっしょ?
 いい子だべさ、藤本さんは」

時々目がSだけど、ツッコミが早すぎて
ビックリしちゃうコトもあるけど…
ごっちんがあんなに大事にしてる友達なんだから
いい子に決まってるべさ。

「…………」
「それに…さっきチロっと調べたんだけど
 藤本さんに黒い噂が出始めたのって、ご両親が離婚される
 少し前ぐらいっしょ?
 ってことは…」
15 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時22分01秒
「ミキたんはっ!ミキたんは…
 大好きだったんです、本当に、本当に大好きだったんです!!」

む、再度目を潤ませて絞り出すみたいに叫んだ松浦さんの
顔やら話の流れから推理すると……抜けた目的語は
“ご両親のコトが”なんだろう。

「なのに!おじさんもおばさんも皆勝手にいなくなって
 ミキたんを独りにして!!
 助けたかったのに!ミキたんを傷つける全てが
 憎かったのに!!」

屋上の柵を、血の流れが止まるぐらい強く握りしめて
空を睨んだ松浦さんは、世界中の全部を敵に回しても
かまわないって全身で訴えてた。


こんな風に愛されて、藤本さんは幸せ者っしょ。
なのにどうして、2人はスレ違っちゃったのかな?

心に中で『ごっちんごめんね』と呟いて、なっちは
自分のより少し大きい華奢な背中を抱きしめて
だんだんと落ち着いていく呼吸を黙って聞いていた。 


16 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時22分33秒
   
17 名前:なっち、愛の宣教師になる。 投稿日:2003年08月10日(日)23時23分34秒
安倍なつみさん、お誕生日おめでとうございます!!
よかった間に合って・゜・(ノД`)・゜・もうダメかと思った・゜・(ノД`)・゜・
量少ないけど(爆

( ゜皿 ゜)<でもカオリの時みたいに番外編はないんだね。

Σ!?
だって時間が…ついでにネタもな(ry

>3 つみ様
早速ありがとうございます。
(*´ Д `)´ー`●)<あはっ、見っかっちゃった

>4 名無し読者様
ありがとうございます!頑張ります!

今日のハロモニはなちごまがあって幸せでした。

( ´ Д `)<2人で寝た。
        
        2 人 で 寝 た 。

ごっちん、ありがとう。
18 名前:のえる 投稿日:2003年08月10日(日)23時25分23秒

(●´ー`)ノ
19 名前:つみ 投稿日:2003年08月11日(月)00時49分25秒
ヽ( ` Д ´)ノ<んあー!なっちだめぇ〜!
         まっつ〜なんかじゃなくごとーの背中!

って感じっすね!

愛の宣教師アベンシスコ・ナチエル・・・・ワラタ
20 名前:jinro 投稿日:2003年08月11日(月)00時53分37秒
アベンシスコ ナチエル…ワロタ。
21 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003年08月11日(月)10時59分31秒
先ほど前すれから読ませていただきました。良い感じにポワワですなw
のえるさんの描くなちごまとあやみきは、何かこう
デフォルメされた上でのリアリティというか、セリフと光景がそのまま
浮かんできそうなぐらいの見事な描写で、ポワワできまくるのでとても好きです。尊敬ッッ!w
続きもがんばってくらさい!楽しみに待ってますです。
22 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月12日(火)22時07分15秒
あやなちキターーーーー!

( ´ Д `)<んぁー!なっちのCDはごとーが買い占めるぞー!
23 名前:つみ 投稿日:2003年08月14日(木)01時01分52秒
↑(´ー`●)<みんなに聞いてほしいべさ・・・
24 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時04分01秒


「ちょっと長くなりますけど……」

そう前置きして、松浦さんは背を向けたまま
なっちの腕の中でポツポツと話し始めた。
本当に、長い話を。


25 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時05分34秒

◇ ◇ ◇
26 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時06分19秒


あたしがこの目に初めて映した人は

とりあげてくれた産婦人科の先生かママなんだろうけど

あたしの記憶に1番最初に現れたのは

小さくて、とてもカワイイ女の子だった。

その子はあたしの手をキュっと掴んで

『あやちゃんってゆーのぉ?かぁわいいねぇ』

って笑ってくれた。


その笑顔にあたしは一瞬で心を奪われて

生まれて初めて、恋をしたんだ。


27 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時07分13秒
赤ん坊のあたしが、ママに抱っこされて退院した日
ミキたん一家は北海道の真ん中らへんから
松浦家の隣に引っ越してきた。
(昔住んでた場所について、何度か『北海道のどこ?』と聞いたけど
 『真ん中らへんだよ』としか言ってくれなかったので
 詳しい場所はわからない)

引越しの挨拶にミキたんの手を引いてやって来たおばさんと
ママはそこそこ年が離れていたんだけど
おばさんの人懐っこい性格や、ミキたんの上に2人子供がいる
子育ての先輩としての肝っ玉ぶりがママのハートを射抜いたみたいで
2人はスグに仲良くなり、年の近いあたしとミキたんは
本当の姉妹のように一緒に育てられた。

…いや、違うかな。
一緒に育てられたんじゃなく、ミキたんが
あたしを育ててくれたっていうか……。

ママたちは気が合いすぎて話し出すと
止まんなくなっちゃうから、その間にあたしが泣くと
いつもミキたんが抱っこしてあやしてくれたらしい。
ミルクを飲ませたり、お…おしめまで代えてくれたり。
28 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時08分12秒
『アラまだ小さいのに美貴ちゃんエライわぁ』
なんてママたちが感心してる横で
『みきもでるかなぁ?あやちゃん、ぼにゅーだよー』と
Tシャツを脱ぎだした時はさすがに止めたって言ってたけど…。

あたしもあたしでミキたんの後ろを常にハイハイでついてまわり
姿が見えないと泣き叫んでミキたん以外の人がどんなに
頑張っても泣き止まず、最初に喋った言葉も

『たぁ、たぁ、ミ、キ、たぁ』

だったそうで、自業自得なのにママは

『たぁたぁ言うからてっきりママって言うてるんかと
 思ったらミキたぁでさぁ。
 そんなんやったらミ、ミ、ミキたぁでええやん?
 なんでたぁからやねんって思わずツッコんでもーたがな。
 パパなんかズッコけた拍子にコンセントに足の小指ひっかけて
 骨折れてんで、ホンマ親泣かせな子やわ』

などと未だにブツブツ言ってくる。
パパ、ママ、ごめんね。
でも……あたしはそれだけ真っ直ぐに、ミキたんのコトが好きだったんだ。
29 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時09分13秒
ミキたんが幼稚園に行くようになって
傍にいられる時間が減った時、本当は泣きたかったけど
あたしは幼いながらも迷惑をかけちゃダメだって
自分に言い聞かせて我慢した。
妹も生まれていたし、ミキたんがあたしの面倒を見てくれた
ようにあたしも妹の世話をして
時間になると毎日玄関に座ってミキたんの帰りを待った。


だけどある日――――

外の風が気持ちいいからと、ママがお庭に敷いてくれた
ピンクのビニールシートでスヤスヤと寝てしまったあたしは
時間ギリギリに目を覚まして慌てて玄関まで走った。

その時ママが『廊下にワックスかけたで走ったら危ないに』と
叫んでいたコトにも気づかずに。


そして案の定あたしは転んで、膝小僧を切ってしまった。


痛みを感じる前に視界に映った赤い血が
どんどん溢れてくるのが怖くて
泣きもしないで震えていると、いつの間にか傍にあったミキたんの顔。
30 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時10分17秒
ポケットから出したハンカチをあたしの膝にあてながら
大声でママを呼ぶ。

飛んで来たママがアラアラと呟いて
手に持っていたムヒを傷口に塗る。

その瞬間電撃のような痛みに襲われて
声にならない悲鳴を上げ、あたしは気を失った。


『おばさんそれムヒ!!消毒液じゃないよ!』

心地いい、ミキたんのツッコミを聞きながら――――





目が覚めると、心配そうにあたしを見つめるミキたんの顔があった。
ミキたんはあたしの不思議そうな顔見て
『あやちゃんきゅーきゅーしゃではこばれたんだよ』って教えてくれた。
その後、病室に入ってきたママはどこかボーっとしてて
仕事場から駆けつけたパパを見た途端ワンワン泣いた。
31 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時11分19秒
『生まれつき―――』
『止まりにくい―――』
『子供が産めない―――』

そんな言葉がヤケに耳に残った。
なんでママが泣いてるのか、この時は全然わからなかったし
隣を見るとミキたんもキョトンとしてた。
だけどひどく悲しい気分になって、ミキたんに抱きついてあたしも泣いた。

パパたちは、あたしがちゃんと理解できるようになるまで
詳しい話はしなかったけど耳に残ってた言葉のおかげで
説明される前にある程度理解できてたと思う。

だってママはまた泣いたけど、あたしは泣かなかったもの。
悲しくなんてなかったよ。
人より足りないとか、言われても目に見えないから実感ないし。
むしろね、喜んでたかもしれない。

だって昔からあたしがちょっとでもハサミや包丁を触ると
パパもママもミキたんも血相変えて飛んできてくれて
大事にされてるって実感できた。
転ばないようにって、いつも心配そうな視線を注がれて
手は優しく握りしめられて。

お姫様になったような、そんな気分だったから。
32 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時12分19秒

時が経ち、ミキたんが中2、あたしが小6に上がっても
あたしたちはそれぞれの世界を広げつつ時間を見つけては
一緒に過ごした。なにをするでもなくどっちかの部屋で
ゴロゴロしたりお風呂に入ったり。
ミキたんはいつも優しくて、家にいる時も
外に出かける時もあたしの手をしっかり握って守ってくれた。
少しでも変な人が近づいてくると
自慢の睨みで弾き飛ばし『亜弥ちゃんかわいいから気をつけなよ』って
笑ってくれて、その度にあたしの胸はドキドキと大暴れした。


だけどこの頃から、兆候は現れてた。


ミキたんはよくおじさんの帰りが遅くなり
休日も仕事をしていてあまり家にいないから淋しいと漏らしていて
でもそれは親戚の焼肉屋の手伝いを始めたからだと
美貴が焼肉好きだから、将来は焼肉屋だけに専念して
お腹いっぱい肉を食わせてやるって言われたと嬉しそうに話してくれた。

あたしも焼肉が大好きだから、単純に羨ましいと思って
2人で焼肉屋のメニューを考えたり。
早く焼肉いっぱい食べたいねって笑ってた。
33 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時14分36秒

クリスマスは毎年、どちらかの家で
合同パーティーをするのが当たり前になってて
その年は、ミキたんの家に2家族全員が集まった。

豪華な料理を食べて、歌って、踊って
皆笑って騒いで、ヒィヒィ言いながら最後にケーキを食べようと
した時、突然鳴ったおじさんの携帯。

慌てた様子で電話を切って、申し訳なさそうに
どうしても焼肉屋に行かなければならないと
スネるミキたんの頭を撫でて出て行ったおじさんは
本当にいつもとなんら変わりがなくて。

あたしはそれが未だに信じられない。
普通の神経だったら考えられない。

裏切り者。なんて、なんて憎い、裏切り者。

ミキたんは『おとーさんと食べる』って言って
ケーキを我慢して待ってたのに。
おばさんと、一睡もせずに待ってたのに。
34 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時15分30秒






おじさんは、2度と帰って来なかった。






今も、どこで何をしているのかわからない。

寝室の鏡台の引き出しに、捺印済みの離婚届を残して

おじさんはいなくなった。



35 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時16分36秒

おばさんが警察や探偵に頼んで色々調べてもらうと
おじさんは焼肉屋の隣のキャバクラで出会った女の人と
駆け落ちしたコトがわかった。


そこから先は、マンガの中の出来事みたいに
現実感の持てないコトばっかり。
パパもママも色々と手を尽くしたけれど
壊れていく家族を、止めるコトはできなかった。


ブチギレたおばさんは速攻で離婚届を提出して
家事一切を放棄し、淋しさを紛らわす為にお酒ばっかり飲んだ。

ミキたんのおにーさんとおねーさんは
そんなおばさんを嫌がって北海道のおばあちゃんのところに逃げた。

おばさんはますます荒れて、居酒屋で知り合った男の人の家に入り浸り
ママがその住所をつきとめた時には
その人と再婚して遠い町に旅立っていた。


まだ、13歳だったミキたんをおいて。

皆みんな、いなくなった。
36 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時17分37秒
ねぇ、想像できる?
たった13歳で、大きな家にポツンと1人
突然取り残されてしまったミキたんの気持ち。

おじさんがいなくなった頃から
家に帰ってこなくなったミキたんは
きっと現実見るのが怖かったんだって、今ならわかる。

あたしの家にこなくなったのも
パパがいるあたしには会いたくなかったんだろう。

ある日、一升瓶片手に真っ赤な顔で寝ていたミキたんを
パパが公園で見つけて連れて帰ってきた。
その時パパはミキたんに、北海道のおばあちゃんのところに
行くか、松浦家で一緒に暮らそうと提案したのだけれど
ミキたんはどちらも嫌だと言った。

あたしが一緒に暮らそうと泣いて頼んでも
ひたすら首を横に振った。
それまであたしの頼みを断ったコトなんて、1度もなかったミキたんが。
37 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時19分16秒

あたしが中学に上がると、まず耳に入ってきたのは
ミキたんに関するたくさんの噂。

ホテル街を男の人と腕組んで歩いてたとか
朝方どこどこのマンションから出てくるのを見たとか
マクドナルドで『ちょっと、オレンジジュース氷少なめって
言ったのに全然多いんだけど!!』って店員さんに絡んでたとか。

久しぶりに廊下で見かけたミキたんは
鋭い目つきと、全身にトゲがあるかのようなオーラを
まとって、あたしに気づいても目を合わせてはくれなかった。

なんて、なんてつらいんだろう。
ミキたんに会えなかった日々なんかメじゃないぐらい
無視されたコトがつらくてつらくて
この時あたしは、自分のミキたんを想う気持ちの深さを痛感した。

あたしはこんなに、ミキたんのコトが好きなんだ。
ミキたんと、もっともっと、前みたいに一緒にいたいよ。
38 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時19分59秒
思い始めたら、止まらなかった。
その日の放課後、まだ携帯を持っていなかったあたしは
ゲタ箱の前で待ち伏せてミキたんを捕まえた。

また無視されるかと思ったけど
意外にもミキたんは久しぶりって笑ってくれて
さっきの出来事が嘘みたいだった。

核心に触れるコトなくあたりさわりのない話をして
カラオケで2時間歌い、ゲームセンターでプリクラを撮った。
モノマネしたり変顔したり、笑いに笑って午後7時
手を繋いで帰って、家の前で別れた。

それからずっと、ゲタ箱に通い続けるようになったあたしを
ミキたんは笑って受け入れてくれて
たまに、『ごめん、今日はまいちゃんと遊ぶから』って断られたけど
空いてる日は毎日遊んでくれた。

でもね、最初からわかってたよ。
家の前で別れた後、ミキたんがまた夜の街へ出かけていたコト。

止めたかった、本当は。けど止められなくて、知らない振りしてた。
なんて言えばいいか、わかんなかったんだもん。
39 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時20分53秒
毎日飽きもせず増え続ける噂なんか信じてなかった。
あたし自身がこの目で、女の人と抱き合うミキたんを見るまでは。

寝る前に外の空気が吸いたくなって部屋の窓を開けた時
飛び込んできたその光景に、我慢の糸は簡単に切れた。
女なら、あたしでいいじゃん。


次の日、いつものように遊んで午後7時。
帰ろうとするミキたんに、どうしても夜景が見たいと
我侭を言って連れて行ってもらったビルの屋上。

『ここ穴場なんだよ』って誰に教えてもらったの?
あたし以外の人となんで抱き合ってたの?あの人と付き合ってるの?
好きだよ、好きなんだよ。
あたしはミキたんのコトが好きなの。
初めて会った時からずっと、ミキたんだけに恋してたんだよ。

一気にまくしたてると、ミキたんの目つきが変わっていた。
鋭くて冷い、あの目だった。

『…ふぅ〜ん、美貴に恋してんだ?
 で、なに?愛してるとか言っちゃうワケ?
 それとも美貴に言って欲しいの?』
40 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時22分00秒
じりじりと、あたしを追い詰めるように近づいて

『それとも体?美貴の体が欲しい?
 美貴とヤりたい?ヤりたいんだよね、美貴と抱き合ったり
 ホテルに行ったりしたいんでしょ。
 そーゆー噂、いっぱい流れてるもんね。
 別にいーけどさぁ、ヤるってどーゆーコトか
 亜弥ちゃんわかってんの?』

いきなり、あたしの胸と下のソコに手をあてた。

『こことか、こことか、揉んで舐めて指突っ込んで
 亜弥ちゃんのコトぐちゃぐちゃにすんだよ。
 初めてだよね?痛いよ?また気絶しちゃうかもしんないよ』

ホントは怖かった、あたしの知らないミキたんが、そこにいたから。
触れる手はひどく優しいのに。

『ミキたんがしたい、なら……いいよ。
 愛してるから、ミキたんのコト愛してるから
 何されたっていいもん』

声が震えた。情けなかった。
だけど真っ直ぐ、ミキたんの目を見て言えた。

『…愛なんか、いらない』

苦しいの?ミキたん、どこが痛いの?
41 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時23分38秒
手が離れた。
向けられた背中が、泣いている。

『帰る…の?』
『・・・・・・』
『ミキたん!!』
『…っうるさいな!もうほっといてよ!!』

遠ざかる、エレベーターに向かって走り出した背中。
ボタンを押すと利用者が誰もいなかったのか
トビラはすぐに開いて、ミキたんが乗り込む。

『待ってぇー!!待ってミキたん!』

動いたあたしの体。
追いかける、追いかける。
閉まっていくトビラにも構わず、エレベーターに飛び込む。

『ついてくるな!……っあ!?危ない!!!』
『…!?ッキャアア!!』

けど間に合わず
ドアに挟まれた、あたしの顔。

『あ……ま…ちが………』

目を見開いて震えてるミキたんの指が押していたのは
『閉』のボタン。
42 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時25分36秒
『あああ…ちがっ……ちがうんだよ!!
 美貴…『開』押そうと思って……な、のに…
 うあぁぁあああああ!!!!』

手でトビラをこじ開けると
あたしの顔を見てミキたんは腰を抜かした。
不思議に思って鏡で見たら
大きな赤い痕が左頬についてて
ひどく混乱していたミキたんが、血と勘違いしたんだとスグにわかった。

血ではないと教える為に手をとって触れさせて
『痛くないよ、大丈夫だよ』って何度も言った。
あたしの胸に顔を埋め、子供みたいに泣きじゃくって
跳ねる肩を、強く強く抱きしめた。

呼吸が落ち着いたところでエレベーターを降りて
屋上で抱き合ったまま見た夜景。
キレイだったね、忘れないよ。


結局朝までそこにいて、手を繋いで家に帰ると
玄関の前でパパが仁王立ちしていた。

それを見たミキたんは1つ深呼吸して、何も言わずに手を離すと
パパの前に土下座した。
43 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時27分43秒
『美貴が悪いんです、亜弥ちゃんを怒らないでください』

そんな言葉が何度か聞えて、ママが出てきて
パパはそっとミキたんの頭を撫でた。

殴られると思ってたんだろうな。
ガバっと顔を上げたミキたんは、すごく驚いた様子で
しばらくパパを呆然と見上げた後
弾かれたように立ち上がって走り去ってしまった。

『おーいどこ行くねーん』
『まだまだ、子供やね、あの子も』
『でもしっかりしとるし、優しいええ子や。
 そんな子おいてく親の気持ちがサッパリわからん。
 おい亜弥、ちゃんと寝たか?今日休んでもええぞ』
『その代わりお手伝いいっぱいしてもらうけど』

この時は……正直ビックリしたなぁ。
ミキたんはああ言ってくれたけど、パパは絶対怒ると思ってたのに。
2人ともニコニコしてあたしを家に入れてくれて
失礼だけど、少し気味が悪くなってしまったあたしは
眠い目を擦って学校へ行った。

ミキたんは来てなかった。
そして、次の日も来なかった。その次の日も、次の日も、次も次も次も。
家にも全然帰ってこず、あたしの前から完全に姿を消した。
44 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時29分00秒
だけど不思議と、淋しくなかった。
いつも、なぜかミキたんに見守られているような気がしたし
パパも『しばらくほっときゃスグ帰ってくる』って
言ってくれらから。あたしもそれを信じて待った。



そして、大晦日にかかってきた1本の電話で
ミキたんは帰ってきた。

警察って聞いた時はビックリしたけど
そんな悪いコトをしたワケじゃなかったし。
でもやっぱり、嬉しくてあたしは泣いた。

その後、パパが『亜弥を泣かせた罰』にと、お正月は
ミキたんも姫路のおばあちゃんの家に連れて行き
『3学期はちゃんと学校に行かないと
 サボった分だけジャーマンスープレックス』とかいう
よくわからない約束をしてた。

ニヤリとしたパパに、ミキたんの顔が青褪めてたから
きっとなんかの技の名前だと思うけど。
とにかくそのおかげでミキたんは真面目に学校に行った。

そして、ごっちんと仲良くなったのも確かこの頃。
45 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時30分02秒
ごっちんに出会って、ミキたんはどんどん変わった。
体からトゲがどんどん抜けていって
廊下で見かけても、もうあのオーラは見えなかった。



初めて唇を重ねたのは、ミキたんの誕生日。
ごっちんたちとパーティーをした後
静かになったミキたんの家のリビングのソファで
永遠かと思うぐらい長く、触れるだけのキスをした。

『ミキたん、好き』

言おうかどうか迷ったけど、あたしは言った。
ミキたんは何も言わずに少し困った顔をしてあたしを抱きしめた。

ごっちんが聞いたら、驚くかもしれない。
そこからスグに先に進んだかと思いきや
あたしが高校生になるまで、ミキたんはキスを深くしただけで
なかなかその先に進もうとしなかった。
46 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時31分01秒


だから、初めて体を重ねたのは去年の春。

見慣れたハズのミキたんの部屋が、知らない場所に見えた。

どうしていいかわからなくて震えると
『大丈夫?』って頭を撫でてくれた優しい手。
壊れ物に触るみたいに、そっとそっと体中を滑る唇。
何度も何度も名前を呼ぶたび、答えてくれた甘い声。

水の跳ねる感触に目を開けると、汗だくのミキたんの顔が
目の前にあって、あたしは必死でしがみついた。

ただ愛しくて、愛しくて、痛みなんて感じなかった。
47 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時33分21秒
幸せだったよ。
たとえミキたんの口が確かな言葉をくれなくても
誰よりも近くでミキたんを感じられるその行為の最中は
いつもいつも幸せだった。


でもそう思ってたのはあたしだけ。

『亜…弥ちゃ……ちが…開け……』

ミキたん、夜中によくうなされてたね。
あたしはすっかり忘れてたから、あの時のコトが
ミキたんを苦しめてるなんて思いもしなかった。

あたしにキスしてくれたのも抱いてくれたのも
全ては償いのつもりだったんでしょ?
ごめんね、あたしの気持ち重かったよね。
あたしって図々しいからさ、もしかしたら、もしかしたらって
期待とかしちゃって。気づいてからもなかなか離れなくてさ。
ごめんね、本当にごめんなさい。

自由になっていいよ。
遠慮なんかしなくていいよ。
あたしは大丈夫。だから泣かないで。好きだよ。

48 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時34分05秒

◇ ◇ ◇
49 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時35分15秒

「傍にいると…伝えちゃうから。
 いらないって言われても愛しちゃうから。
 そんなの迷惑でしょう?でも優しいミキたんは
 突っぱねるコトもできなくて…1人で苦しんで……。
 嫌なら嫌ってハッキリ言えばいいのに、あんな嘘つかなくていいのに!!」

長い長い話の最後に、松浦さんは力の限り叫んだ。
太陽はもう、お山に半分隠れちゃってる。

藤本さんは不器用っしょや。
付き合いの短いなっちだけど、あの子を見てると
たまに歯痒くてしかたなくなるべ。
 
でも…そっか、2人がスレ違ってしまった理由は
なっちが思ってたよりも複雑で…。
したっけなっちが思うに……

「さっきのお昼の放送で…藤本さん泣いてたのはさ
 松浦さんのコト、愛してるからでないかい?」
「え…?」
「いや、その、言いたくないって言ってたけど
 言わなきゃいけないって思っ…む?…っそーでなくて!
 言いたいのに、言えなくて、言うのが怖くて
 そんな自分が嫌で泣いちゃったとか…」
50 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時36分41秒
「………」
「す、推測だから、そんなコトあるワケないとか
 思うかもだけど藤本さんは…ちゃんと松浦さんのコト想ってて
 でも愛だとかそーゆーのは怖いし
 信じてまたいなくなられたりとかも怖くてさ
 それでちょっとフラフラしちゃったりとか……」

あーなんて言えばいいんだべかっ!
でもでも、なっちは藤本さんが同情とか、償いとか
そういう気持ちだけで松浦さんを見てたなんて
絶対に思えないのさ!

エレベーターのドアで挟んじゃった時の
藤本さんの精神的ダメージは想像もできないけど
そもそもそれでそんなでっかいダメージ受ける時点で
愛があるんじゃないのかい???

血と勘違い=亜弥ちゃんが死んじゃったらどうしよう!?
ヤダヤダそんなの美貴生きていけないよ!死なないで亜弥ちゃぁん!
みたいな図式で腰抜かして、無事な姿に安心しすぎて
大泣きしちゃった…ってコレはなっちの勝手な想像だけど。

それにその…スグお抱きになられてないのも愛っぽいし!
なにはともあれ、なっちは藤本さんを信じるべさ!
51 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時37分52秒
だからつまりアレをこーしてああすれば
ソレがこうなるんだから……その場合……

「べさ!もし藤本さんが、ちゃんと想いを伝えたら
 松浦さんはそれに答えてくれる?」
「想いなんて……ミキたんは…」
「だからもし!例えばの話!!藤本さんも松浦さんを愛してて
 それをズバっと言ったら、いいんだべ?」
「・・・・あたしは、ミキたんだけですから」

よし!!ならいいべ!
もう暗いから家まで送るっしょ!歩きでだけど…。
そして次なるターゲットは藤本さんだべ!
このオトシのなっち様が、必ずや
松浦さんの前で告白大作戦させてやるべさ!!


覚悟せぃ!ミキティ!!
 




この時、話している間2人にずっと向けられていた視線に
安倍も松浦もとうとう気づくコトはなかった。
52 名前:ミキたんとあたし。 投稿日:2003年08月15日(金)03時38分22秒
   
53 名前:のえる 投稿日:2003年08月15日(金)03時39分49秒
なっち、間に合わなかったけど、買ってないけど(爆 おめでとう。
おまけに今回説明ばかりで無駄に長く読みにくいのは
松浦さんがポツポツ話したから……ではなく
技量が足りませんでした。スイマセン。

レスありがとうございます。

>19 つみ様
(;´ Д `)<ご、ごとーは心が広いから
        そんなコト言わないもぉ〜ん…。
どうやら、図星だったようです。

>20 jinro様
アベンシスコさんの意外な人気に驚いてます。2票ゲッツ…と。

>21 名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ
無意味に長い駄文を読んでいただいてありがとうございます。
びょびょびょ描写なんてとんでもない。ただのバカですから(w
そのうち怒られるんじゃないかとビクビクしています。

>22 名無し読者様
从‘ 。‘从人(´ー`●)<あやなちどぅ!
川VvV从( ´ Д `)<・・・・・。
あのメル欄は、22歳になった喜びをもっと表現したかった
安倍さんの残留思念だと思われます。決してミスなんかじゃ(ry
54 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月15日(金)12時06分16秒
あとは藤本さんだけですな。
頑張れへたれ!
55 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月16日(土)02時27分08秒
アベンシスコが2票なら……ムヒを塗ったママに3票(w
56 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月17日(日)06時05分41秒
他人の娘をジャーマソで脅迫するパパりんに4票
57 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)00時46分19秒
そんな感じで続き希望。
58 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時52分33秒

時は少し遡って、ここは喫茶メロン2階(通称:愛の園)。


「…で、突っ込んできたワケね?」
「「「「「はい、すいません・・・」」」」」
「よりにもよって私の店に、私の愛すべきメロンの屋根に
 ズガンと突っ込みやがったのね?
 ポテトンだかポテチンだか知らないけど
 奇妙な乗り物で飛んで濡らして故障で突っ込みやがったのね?」
「「「「「・・・申し訳ございません」」」」」

傷だらけで頭を下げる破壊者たちに
斎藤は扇子を高々と振り上げて叫んだ。

「申し訳ですむかぁ!!!修理代いくらかかると思ってんのよ!!
 ヤシガニ何匹分だと思ってんの?!
 どーして皆して私をヤシガニから遠ざけるのよ!
 セクシーだからってひがんでんじゃないわよ!プンプン!!」

プンプンついでにお尻も振って、今日も瞳はセぇークシーナぁーイ♪

「おぇっ」
「んあ!高橋吐くな!!耐えなさい!」 
「うぇっぷ」
「んあぁ!ツルちゃんまで!!」
59 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時53分12秒
ブシュブシュっ

「む?…んなっ!?
 エロエロズ!!なに仲良く鼻血吹いてんの!!」
「ちちち違いますよぉ…コレはさっき壁で鼻を打って…」
「ウチもだよ!別に斎藤さんのセクシーに噴出したワケじゃ…」

斎藤瞳のセクシーは常にギリギリであり、反応は人それぞれである。
  
「ちょっとぉ、なによアンタたち!
 人の店壊した挙句その反応は!!」
「んあ、ごめんなさい、これでも一応反省してるんです」
「一応ってなによ、一応って!
 修理代はキッチリ払ってもらうからね!!」
「「「「えぇえ!?そんなぁー?!」」」」
「………」

んあ?アレ?ツルちゃんの声がしないんだけど?
と、後藤が訝しんだ通り、亀井だけは悲鳴をあげず
右手をパーにして斎藤に掲げて見せた。

「コレで足りますか?」
「…え?……5?」
「足りませんか?じゃあ…コレ?」
「!?たたた足りまくりよ!足りすぎよ!!アナタまさか…金持ち?」
「いえ、それほどでも…」
60 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時54分13秒
頬を薄く染めて亀井は俯いた。
その様子に、後藤・吉澤・高橋・小川の4人は目を輝かせる。

【アイコンタクト・タイム】

(ねぇごっちん、金持ちなんだったらさ、全額払ってくれたりしないかな?)
(んあ?それはちょっと無理じゃない?)
(吉澤先輩セコすぎやよー、見損なったがし)
(愛ちゃんの言う通りです、一銭も払わない気ですか?私たちは皆共犯なんですよ)
(う……言ってみただけだよ…)
(んあ、そんなんだからポテト雲に乗れないんだよ)
(そうやよー、ケチケチボンバー)
(プ。愛ちゃんいい名前つけるねぇ。ケチケチボンバーだって、プププ…)
(うっせーんだよエロエロボンバー!)
(なっ!?誰がエロエロボンバーですか誰が!!)
(またはSSボンバーやよー)
(あはっ、どっちもヤだねぇ)

【終了】 

「んあ、えーと持ち合わせがないからまた今度でいい?
 1人いくら?」
「そーねぇ…屋根の修理代と私のセクシーソールを傷つけた慰謝料として…
 こんなモンかしら?」
61 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時55分13秒
「「「「えぇええ?!嘘ぉ!?」」」」
「ってゆーか慰謝料って何よ?ごとーは別に払わなくてよくない?」
「なっ?!ごっちん!なに1人だけ安く済まそうと…」

だってごとーは吐き気にも襲われてないし鼻血吹いてもないもん♪と
勝ち誇った顔を見せる後藤に、吉澤が詰め寄った。


その時――――――


ドカバカズンガバチョ。

「マサオぉ!!!」
「ぎゃぁ!?待てあゆ!誤解だ!誤解なんだぁ!!」
「黙れ浮気者ぉ!!」
「浮気なんかしてないってば!」
「…ぁー…店が壊れていくのぅ……」

一階から凄まじい破壊音と柴田の怒声、大谷の悲鳴が。
そして更に村田のジジくさい呟きの後、心地よい琵琶の音色が届く。


  メロン精舎の破壊音  諸行無常の響きあり

  沙羅双樹の花の色  セクシー必衰の理をあらはす

  暴れるあゆみも久しからず  唯春の夜の夢のごとし

  浮気なマサオも遂にはほろび  偏に風の前の塵に同じ
62 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時55分50秒
「…そうじゃ、京都に行こう」

ドタタタタタタ!!!

「ちょちょちょっと村っち!!
 アンタなに暢気に琵琶弾いてんのよ!
 あゆみを止めなさいよっ!店が半壊してるじゃない!!」
「これも運命じゃ、諦めぃ」
「なにがサダメよ!!ふざけんじゃないわよ!
 あゆみ!!あゆみやめなさい!」
「む?!うるさいマサオー!」
「きゃぁっ!?だっ誰がマサオよ!私はひとみよ!セクシーひとみ!!」
「黙れぇ!!」

ビュンビュンビュンビュン

「ギャァアアアアー!!!」

ガラドンドコドンシトピッチャン。


――――――――

「んあ、前にもあったなぁ…こーゆーの」
「……な、なんじゃこりゃぁ…地獄やよー」
「ししし柴田さんて…怒ると怖いんだね…」
「滅多に怒らないらしーけど、マサオさんの浮気にだけは敏感なんだって。
 それも全部誤解だって梨華ちゃん言ってたけど…」
63 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時56分51秒
「温厚な人程キレると怖いってゆーからね。
 …どーしよ?これじゃ柴田さんに話聞けないねぇ」
「うーん、でも帰るにも帰れないしなぁ。
 今下降りたら確実に死ぬし」
「ポテト雲も消えてもーたし、ここは終わるまで一休みしましょぉ」
「んあ、そだね。ツルちゃん時間とか大丈夫?
 他に予定とかない?」
「…はい、まぁ…」
「んじゃごとー寝る、おやすみ。…zzz…」
「ウチもー…zzz」
「早っ!…ったくこの状況でよく寝れるなぁ、ねぇ愛ちゃん?」
「zzzやよー…」
「ってアンタも寝とんのかいっ!!」

小川が振り返ると、のび太君以上の早さで眠りについた後藤と吉澤だけでなく
高橋と亀井までスヤスヤと目を閉じていた。

「…むにゃ…まこ、とぉ…」
「・・・っ!」
ドドドドッキーン

(か、かわいいじゃないか…。
 どーしよう、すんごいキスしたい。
 でもバレたら怒られるだろーし……)

そして愛しい彼女の寝言に、小川の孤独な戦いが始まる。
64 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時57分58秒
「まこと…好きやよー……」
「ふぇ!?」
 
そんな小川を、更に追い詰める高橋(の寝言)。

(んなっ?!なんつー寝言を言うんだ君はっ!!
 これはもう天然誘い受けと取っていいのか、否か。
 かわいすぎて困るんですけど……ムラムラ。
 愛ちゃんの寝顔ってさぁ…赤ちゃんみたいだね。
 ん?いや、決してロリコンなんかじゃないけど…幼い中にも色気ありってゆーか
 ちょっとだけならバレないよね?皆寝てるし……いいよね?)

自ら己のロリコン疑惑を出しつつ、顔を赤くして
小川はそっと高橋に唇を寄せる。

「んぁ…なっちぃー…zzz」
「梨華ちゃぁーん…グー…」
「ひゃぉっ!?」

しかし、それを邪魔する夢見人たち(の寝言)。

(ぐはぁっ!びびびびっくりしたぁ!
 なんだよ後藤先輩あと1ミリだったのになんか私に恨みでもあんですかマジで勘弁…
 はぁ…そうだよね、寝てるとはいえ人前だし
 キスなんかしちゃダメだよ、また今度、2人っきりの時にしよ。
 うん、よし、じゃあせめて愛ちゃんの隣で寝るか。
 よっこらせっと)
65 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時58分53秒
ちっ、しねーのかよ。
エロエロのくせになかなか我慢強い小川は、大人しく高橋の隣に寝転んだ。

「むぅー、まぁ−ことぉー…」
「ぇ?……え、ぇええ?!」

おぉっとしかしぃ!ここでなんと高橋が小川に抱きついた。

「ちょ…愛ちゃん…!や、やめ…」

(ぬわぅ!?密着ですか、むむむ胸がいい感じにピッタリなんだけど!
 愛ちゃん襲っちゃうよぉ!お願いだから離れ…)

「……いいやよー…」

(…っなにが?!ナニがいいの?!
 愛ちゃん柔らかいね……ってそーじゃなくて!
 だぁあ!?足で挟むなっ!理性が飛ぶぅー!!!!)


『飛ぶのなら  飛ばしてしまえ  ホトトギス』

(ぐぉ!?この声はあさ美ちゃん?なんできゅーに…)
『まこっちゃん、我慢は体に良くないよ。エイっ』
(エ、エイってなっ…うわぁああ!!ととと飛ぶぅ!!)

「愛ちゃん!いただきます!!」
「zzz…んー…んんぅ?」
66 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)18時59分51秒
飛んだ小川は高橋の背中と頭に腕を回すと、半開きになっている高橋の口を塞いだ。
そして本能のままに舌を入れる。

「んんっ……ま…こ…?」

突然のヌルリとした感触に高橋が目を開ける。

(ひょぉ?…あいやぁ、まことの顔が近いやよー。
 それになんやぁ?このヌルっちぃんはぁ、ナメクジみたいやよー…
 ひぃ!?嫌やよ!ナメクジなんて食べたくないやよ!!
 や、やめてぇ!まことやめてぇ!!)

「んぅ!い…イヤぁ!!」
「…っどわぁ!?」
「嫌やよ!縛ったりとかは覚悟できとるけどナメクジプレイだけはご勘弁やよ!!」
「…ハ?ナメクジ??」
「いいい今私の口に入れとったがし!!
 最初からそんなプレイ無理に決まっとるやよー!」
 
ガーン。

(え、えーと、私が愛ちゃんの口に入れていたのは、私の舌なワケで。
 ナメクジでは……ないワケで。
 ってゆーかそんなモノと間違えられて、果てしなくショックだったりするワケで…)
67 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)19時02分55秒
「んあ、違うよ高橋ぃー、今のはディープキスだよー。
 いつもしてんでしょー?」
「ふぇ?!あ…今のがデープ……」
「ディープだよ…ってのわぁ!?起きてたんですかっ後藤先輩!!」
「んあ、あんなでっかい声で『愛ちゃん!いただきます!!』なんて言われたら
 普通起きるって。ねぇ、よしこにツルちゃん?」
「うん、イイモン見せてもらったよ」
「………わ、私は見てません…」
「「・・・・・・」」
(いやいや鶴井さん、そんな赤い顔で言われても説得力ないし…)
(デ、デープキスなんて初めてやよ…)

「まぁー若いんだしエロエロだし、見られたっていーじゃん!
 んあ?なんか下静かになってない?」
「あ、そーいえば」
「終わったのかな?降りてみよか?」
「…はい」
「「・・・・・・」」

トントントントン…

後藤たちは、亀井以上に赤くなって俯いている高橋と小川を置いて
1階へと降りていった。
68 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)19時03分43秒

「あ、愛ちゃん、ごめんね?」
「…別に、まことが謝らんでいいやよ…。
 私こそナメクジと間違えてもーて…」
「いいって!いきなりした私が悪いし!
 でも…寝てる愛ちゃんかわいかったからさ…」
「・・・・まことやから、ええよ。
 ただ、次からあーゆーのは起きとる時にしてほしいわぁ。
 そしたら変な間違いせんでえーし…」
「う、うん…」

俯いたまま、高橋は小川の胸に顔を埋める。
その背中を小川はそっと包み込んだ。

「どんなプレイでも、頑張るやよ」
「だぁ!!だから頑張らんでいいっちゅーに!」



2人が最後までイキつく日と
高橋の誤解が解ける日は、まだまだ先のようだ。


69 名前:愛とまこと IN 愛の園。 投稿日:2003年08月19日(火)19時04分25秒
   
70 名前:のえる 投稿日:2003年08月19日(火)19時06分27秒
短い上に話が進んでなくて申し訳。
ちょっとまたもやPCの不調で一部消えちゃいまして…・゜・(ノД`)・゜・
次はもうちょっと多めに更新したいです。

レスありがとうございます。励みになります。

>54 名無しさん
川;VvV从<だから美貴はヘタレじゃな(ry
ミキティーは少々ヘタレすぎるので、時間がかかりそうです(w
でも頑張ってくれる…ハズ(爆

>55 名無しさん
なっちごめんなさい、買いました。
ママに3票ですか(ww ありがとうございます。
そーいやこの話のキャラで1番人気は誰なんでしょうね?
最初の方のレスを見ると…黒美貴かな?

>56 名無し読者様
ごっちんごめんね、でもそんな金ないねん・゜・(ノД`)・゜・
おぉ!今度はパパに4票も(ww ありがとうございます。
そーいやジャーマソってどんな技なんだろ?(爆 
実は名前しか知りません。

>57 名無しさん
続き微妙でスイマセン(汗
ありがとうございます。
71 名前:つみ 投稿日:2003年08月19日(火)21時48分37秒
おがたかも一歩
大人になりましたね〜^^
72 名前:jinro 投稿日:2003年08月20日(水)11時44分34秒
自分、なちヲタなんでなっちに一票!
73 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時19分28秒

んあ、ごとーです。
ただ今よしことツルちゃんと階段を下りきりまして…
あれ?小川たちは……まーいいか。
それでは覗いてみたいと思います。

「あのー…んあぁ!?」

なにコレ!?ここどこ?!メロンのメの字も面影ないんですけど!!
ってか斎藤さんは?村田さんは?大谷さんはいーとして
柴田さんは??皆死…

「ふぅ、スッキリした♪」

びくぅ!?
ししし柴田さん?!空襲後みたいなガレキの中から
無事に出ていらしたのはいいんだけど
スッキリとか言いながら眉間に皺がよったままなのはごとーの見間違いですか?

「……ごっちん、どうする?引き返す?」
「うん、そのほーがよさそ…」
「あっ、ごっちん。なにしてるのそんなトコで」

んあぁ!?見つかってもたぁー!!!
74 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時20分05秒
「あ、あはっ…こんにちは…」
「…ちわー」
「よっすぃーも一緒?…えーと、その子は?」
「かっ!キャキャキャキャメイです!!初めましてっ!」

んあ、ツルちゃん噛んでる上にどもっちゃって…。
怖いよね、ごめんねホントに。

「キャメイさん?私柴田あゆみです。よろしくね」
「ひゃいっ」
「かわいいなぁ〜緊張してるのぉ?
 私の人見知りするタイプだから気持ちよくわかるよぉ」
「・・・・・」

違う、絶対違う。
もしツルちゃんが人見知りするタイプだとしても
この緊張はそのせいじゃない。
恐怖だ。まごうことなき恐怖心から震えてるんだ。

「何飲む?ってちょっと店ガタガタだけど…
 コーヒーでいいかな?」
「いえ、もう今日は帰り…」
「何言ってんのごっちん、話聞くんでしょーが」
75 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時20分47秒
「んあ…」

うるさいなぁ、わかってるよ。
わかってるけど怖いのよ正直ごとーも!
よしこだって足震えてパカパカしてんじゃん、なんなのよハニーパイ!!
帰ろう!命大切にしよーよ!!


从从V)


ハッ!?美貴!!
やめて!そんな目でごとーを見ないで!!わかった頑張る!頑張るから!

「すぃばたさん!!」
「ん?なにー?」
「はい!あのですね、ごとーは柴田さんにお聞きしたいコトがありまして」
「ふーん、とりあえず座ったら?椅子ないけど」

・・・アンタが全部ブチ壊したんでしょーが。
なんて言えるワケない。ごとーたちはガレキを掻き分け
スペースを作って腰を下ろした。

「で、話って?」
「えぇっと、柴田さんお兄さんいるって言ってましたよね?」
「あー、うん」
76 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時21分22秒
「その…お兄さんって…彼女とかいたりします?」
「ほぇ?…そりゃーいると思うけど……なに?
 紹介してほしいとか?」
「いえいえいえ!!断じてそのよーなコトではなく!
 なんて言ったらいーのかな…」
「ごっちん、そんな遠回しに聞かずに全部話せばいーんだよ」

ぐ…。それもそーってゆーか、でもやっぱごとー怖いのかも。
んあ、柴田さんがってのじゃなくね、ホントのコトを
まっつーが美貴以外のヤツとってのを聞くのが怖いんだ。

「ウチが言おうか?」
「んあ…お願いします」

あぁ、カッケーね。
そーゆー男前なトコ最っ高。
よしこがいてくれてホントによかった。神様ありがとう☆


「…ってゆーワケなんス」
「・・・・・・」

んぁれ?
よしこの男前な説明が終わった途端
柴田さんは眉間の皺を更に深めて考え込んでしまった。
77 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時22分03秒
「ウチ…なんか怒らせるよーなコト言ったっけ?」
「いや、言ってないハズ…ねぇツルちゃん」
「…柴兄(仮名)がいけなかったのかも…」
「えぇえ?!だって名前知らないし!」

「思い出した!!!」
「「「っひぃ!?」」」

んあ!?いきなり大きな目見開いて叫んだらビックリするっちゅーねん!
かおりんの『ディア!』よりびびったっつーの!

「愛子ちゃんよ!井上愛子ちゃん!」
「あいこ…?」
「そーそー!山下公園の近くにあるオムライス屋さんの愛子ちゃん!
 あー懐かしー、そっかぁ、どうりで亜弥ちゃんのコト初めて見た時に
 どっかで会ったコトあるような気がしたんだぁ」

そーそー愛ちゃん♪なんて懐かしそうに目を細める柴田さん。
あのぅ、全然わかんないんですけど……

「その、愛子ちゃんがなんなんですか?」
「え?あぁだからね、ごっちんたちが見たのは亜弥ちゃんじゃなくて
 愛子ちゃんだってコトよ」
78 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時22分47秒
「でもめちゃくちゃ似てましたよぉ!!」
「んあ!まっつーそのモノだった!」
「んーあるんだねぇ、他人の空似って。
 信じられないかもだけど、私によく似た男の子と踊ってたってのが
 いい証拠ね。その子は絶対愛子ちゃん」

……マ、ジで?ってコトは…まっつーはまだ…

「あの、男の人は誰なんですか?」
「のぼるさんは私の従兄弟。
 愛ちゃんのお家…キラクの隣にミナト座っていう映画館があって
 そこの跡取息子なの。年は……22だったかな?
 昔からずぅっと愛子ちゃんのコトが好きでね、最近会ってないから
 知らなかったけど、そっかぁ…とうとう結婚かぁ」

…美貴のコトが……好きなんだ!!!

「んあ!!そーと決まれば長居は無用!
 いざ!黒美貴の元へ!!」
「そーは言ってもごっちん、美貴ちゃんどこにいるかわかんの?」
「ハッ!?そーいえば!美貴どこ?!」
「……どこって…泣きながら飛び出してっちゃったし
 なのにウチら誰も追いかけようとせず横浜行ってたから知るワケないし」
「えぇ!?美貴ちゃんが泣いたの?」
「そーなんすよー、もうウチらビックリしちゃって…」

『パッツ〜ン、パッツンえりぃ〜、電話鳴っとるとぉ〜』
79 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時23分24秒
「んあ?なにこの九州弁は?」
「あ、私です。ちょっとすいません…もしもし?」

ってゆーかパッツンえり?んあ、ツルちゃん下の名前えりってゆーのね。

「あぁ!?ご、ごめん!違うの!忘れてたとかじゃなくて
 もうよくなったいうか……ごめんなさい…」

むぅ?なにやら目を潤ませて平謝りしてるツルちゃんの
耳元から『ニィ!ニィ!』と騒ぐ声が聞える。

「ニィ…?んあ!ジュマペール!!」
「へ?なにさごっちん、ジュマペールって」
「呼び出してたじゃん!ツルちゃんにメール送った友達のコト!」
「あーそういえば…でもさ、ガセネタだったんだし
 来てもらって悪いけど縁がなかったってコトで…」
「それもそうか……ごめんねツルちゃん」

ツルちゃんには悪いけど、そもそもニィとかゆー子が
変なメール打ってこなきゃごとーたちがこんなに騒ぐコトもなかったんだし。
あっ、そーいえば十番館のクッキー買い忘れたなぁ。
マドレーヌも食べたかったのに…。

「まいっか。んじゃごとーは美貴捜しに行くね」
「ウチも行くよ」
「んあ」
80 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時24分14秒
「あ、待って」

ガレキの中から立ち上がり、出て行こうとしたごとーとよしこを
柴田さんが引き止める。

「どっちかさ、ここ片付けるの手伝ってくれない?」
「…んあ」

いや、だからね、美貴を捜しに行くのよ。
あの子泣いてたのよ、今も泣いてるかもしんないのよ。

「2階に高橋と小川がいるんで使ってもらって構いませんけど」
「2人じゃ足りないよ。よっすぃー力あるしさ
 終わったら私も美貴ちゃん捜し手伝うから、ね?」

どうやら柴田さんはターゲットをよしこ1人に搾ったらしい。
制服の裾をキュっと掴み、おねだりモードで甘えた声を出した。

「う……」
「んあ、いいよ。ごとー心あたりあるし。
 早く行方不明者たちを救出してあげてよ」
「あ…じゃあウチ手伝います」
「やった♪別に救出しなくていいからササっと片付けちゃおーねぇ」

怖っ。ってかその行方不明さんたち生きてんのかな?
望み薄そー…ま、大丈夫よね。
よしこ頑張って、梨華ちゃんにメールしといてあげるからさ。

アディオス!!



◇◇◇
81 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時24分55秒
「こんな遅くまで娘さんを拘束しちゃって、ホントにごめんなさいでした」
「いえいえ先生そんな頭下げんといてください。
 遅いゆーても8時前やし、この子ももう高2なんですから」
「…はぁ、そう言っていただけるとありがたいべ。
 したっけなっちはこれで失礼します。
 松浦さん、また明日ね」
「はい、先生気をつけて帰ってくださいね」
「む、なっちは子供じゃないっしょ、大丈夫だべさ」
「先生ほなまた今度ゆっくり」
 

―――――――――

安倍先生って優しいな。顔もなんとなく、ミキたんに似てるし。
なんて玄関に突っ立ったままドアを見つめてたら
ニヤニヤ顔のママに肩をつつかれた。

「さっきのホンマに先生なん?
 めっちゃかわいいやん。パパがおらんだら迷わず
 その場でテイクアウトやってんけど…世の中上手くいかんねぇ」

何言ってんのこの人は。パパがいなくてもそんなのダメに決まってる。
安倍先生はごっちんの大切な人なんだから。

「北海道弁も懐かしかったなぁ。
 あんなにひどくはなかったけど美貴ちゃんのママも
 訛ってはったからね」
82 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時25分51秒
あ…そうか、なんであたしが安倍先生にあんなにベラベラ
ミキたんとのコト話しちゃったのか、やっとわかった。
顔だけじゃない。雰囲気や訛り、北海道の香りがあたしを安心させてたんだ。
でなきゃいくら泣いてるトコ優しくされたからって
抱いてもらった時のコトまで話すワケない。

「あ、そーいや今日トンカツなんやけど
 亜弥はパスタでええ?」
「うーん…お腹すいてないや。今日はやめとく」
「あかんあかん。少しは食べとかんと。
 ほなおにぎりにしとくで後で食べ、絶対やで」
「…はぁい」

絶対って言われても……。
あたしはなんだか急に重くなった頭を抱えて自分の部屋へ向かった。

電気はつけずにカーテンを開けると
夜の闇に、ひっそりと佇むミキたんのお家が見える。

やっぱり今日は帰ってこないのかな?
泣いてたし…里田先輩のトコならいいんだけど……。
ご飯ちゃんと食べてるかな?あぁ、やっぱあたし食欲ないよ。


さっき、安倍先生には話さなかった話。

あたしはトンカツが食べられない。
名前を聞いただけで見事に食欲が失せる。
83 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時26分38秒
最初からってワケじゃなく、あの時から。
大好きだったトンカツを、あたしの体は受けつけなくなった。



◇ ◇ ◇

あれは、ミキたんが行方不明になる5日前の夜。

ベッドで毛布にくるまって腕に乗せたあたしの頭を撫でながら
思い出したようにミキたんが言った。

『亜弥ちゃん、美貴明日から沖縄行くんだ。
 なんか欲しい土産ある?』

突然教えられて、正直びっくり。
そっか、じゃあしばらく会えないねって、軽く凹んだのを覚えてる。

『ミキたんが無事に帰ってきてくれたら、それでいいよ』
『……ふぅーん…』
『帰りはいつ?』
『あー…よくわかんないけど1週間ぐらいで帰ると思う。
 結構適当だからさ、詳しくはわかんない』

わかってよ。誰と行くの?あたしは連れてってくれないの?
言いたいコトは山程あったけど、口にできるワケがなかった。
84 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時27分14秒
だけどやっぱり悔しくて、目の前にあったミキたんの肩に噛みついてみた。

『アテっ、ちょっなにすんのー?
 あー痕ついてんじゃん、そんなにおいしそーだった?』

もっと怒ったり、慌てるかと思ったら意外に冷静で。
それどころか『歯形なんて初めてだぁー、歯形記念日ぃ〜♪』
なんてケラケラ笑い出す始末。

いつもならそーゆーのかわいいなって思うハズなのに。
その日のあたしは違った。

『もっと噛んでやる、ガブぅー』
『アハハハ!いやぁー!くすぐったぁーい!』
『ガブガブガブガブぅー』

我ながら、アホなコトしたなぁと思う。
キャッキャと笑うミキたんの肩やら鎖骨やらに、次々と噛みついた。
だんだん下にさがって、胸のあたりに噛みついた時
ミキたんがそっとあたしを引きはがして覆い被さってきた。

『くすぐったいってば、美貴死んじゃうじゃん』
『だって…』
『んー?』
『………なんでもない』
『・・・・・・』
85 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時28分01秒
『…ごめんね?怒った?』
『んーん、怒ってないよ。
 亜弥ちゃんがその気にさしたんだから責任とってね』
『ふぇ?…ぁ、あ…』

甘くてあったかくて、幸せすぎて、このまま溶けちゃうんじゃないかと思った。
いつもよりたくさん名前を呼んだ。


だけどそんな幸せを一瞬で奪ったのは。

3度目の波がひいて、キレイにしてくれるミキたんの手を感じながら
ぼんやりとまどろんでいた時、突然走ったあの予感。


そう、あれは、嫌な予感。


『これでよしっと。それにしても亜弥ちゃんいっぱいつけたねぇー。
 亜弥ちゃん口小っちゃいからさー、赤ちゃんに噛まれたみたいだよぉ』


嫌だよ、ミキたん、行かないで。
あたしの傍から、離れないで。
もう、会えなくなっちゃうから。

ダメそんなコト言っちゃダメ。言える権利なんかない。
言ったら絶対嫌われちゃう。ダメ、ダメ、ダメ。
86 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時28分45秒
頭が揺れた。
あたしがつけた噛み痕をさすりながら
またミキたんが隣にきて、腕枕してくれたんだ。

『ほら見てよここのなんて特にさー…』
いかにあたしの口が小さいかを熱く語り出すミキたん。


ヒキトメタイ、ヒキトメチャイケナイ。


なんでいきなりこんな気持ちになったのか
理解できないまま頭の中は混乱して――――


『1口カツ5口で食べるもんね、1口だって言ってんのに』
『う、うん…』
『ん?どうしたの?具合悪い?』
『ちが…大丈夫、大丈夫だよ』
『…ホントに?ちょっと無理させちゃったかな。
 もう寝よっか』

嫌われたくない気持ちが勝ってあたしは止めなかった。
パジャマを着せてもらってる間、ずーっと黙りこくって
ロクにミキたんの顔も見れず目を閉じた。

言えばよかった。
嫌われたっていい、ミキたん行かないで、傍にいてよ。
87 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時30分23秒



あたしが思ってたよりミキたんは元気に帰ってきてくれたけど。

無人島で、1人きりなんて。
また、ミキたんを1人にさせてしまうなんて。

予感がしてたのに、また助けられなかった。
あたしはなんて、役に立たないんだろう。

ミキたんが行方不明になったという報せを聞いてから
ずっと鳴り止まなかった後悔。
どうしてあの時、あの時。


報せを聞いてすぐ、あたしはお肉が食べられなくなった。
だってミキたんの大好物でしょう?
ミキたんはきっと無事だけど、大好きなお肉が食べられないでいるかもしれないから。
なのにあたしだけ食べるなんてできなかった。

日が経つごとに、他の食べ物も受けつけなくなって入院して
真っ赤な顔でビールの空き缶片手に担がれてきたミキたんを見ても
お酒臭い匂いに包まれても、涙ばっかり出て食欲は戻ってこなかった。

このまま死ぬのかなぁなんて、生まれて初めて思ったよ。
ミキたんに看取られて死ぬなら、いいかなぁなんて。
88 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時32分00秒
とは言え、責任を感じたミキたんが
つきっきりで世話してご飯を食べさせてくれたおかげで
なんとか元に戻れたんだけど。(これにはパパもママも思いっきり拗ねてた)

退院祝いにお家で焼肉パーティーした時は
もうお肉も大丈夫になってて
安心していたら1つだけ、食べられないままのモノがあった。

それがトンカツ。
最初はなんでトンカツなのかさっぱりわからなかったけど
たぶん、あの日ミキたんと交わした会話の中に
唯一出てきた食べ物だからだと思う。
……正確には、1口カツだったけど。

信じられないけど、それだけあたしの後悔が深かったってコトだろうな。
あーぁ、どうしてあたしってこうなんだろう?
ミキたんのコト好きすぎだよって、たまに自分でも呆れる。



おーいミキたん、たんたん、たん。


会いたいよ、バカ。



◇◇◇
89 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時33分50秒
んあ、疲れた…。今何時よ?もう8時じゃん。
よしこに心当たりあるなんて言ったもののあるワケなくてさぁ
ごとー歩きっぱなしでベリータイヤド、ヘトヘトなの。

援軍もいないし…。(んあ、さっきよしこから『村田さん発掘』ってゆーメール
きたんだけど、斎藤さんと大谷さんはまだ発見されてないらしい)

んあー!もぉ!!ホントに黒美貴のアホぅはどこに行ったんだよぉ!

『ごっちぃ〜ん、電話だべ〜』 
む、誰よこんな時に。

「んあ?」
『ごっちん?なっちだけど』
「んあ!好き!!今どこにいるの?何してる??」
『べさ…なっちも好きだよ…、今ね、松浦さんの家の前に…』
「んあ!?まっつーの家の前?なんでそんなトコに…」
まさか浮気?ふふふ不適切な関係?!
『屋上でお話してたら遅くなっちゃって、家まで送ったのさ』

おおお屋上でお話ぃ?!=屋上で密会。
遅くなっちゃって=遅くまで屋上に2人きり。

「んなっ!?そんなバカなぁ!なっちのバカ!浮気者!!」
『ほぇ?なに言い出すのさごっちん!
 なっちは潔白だべ!なんもヤラしいコトなんてしてな……あ』
90 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時35分08秒
あ?!あってなによ!なんなのよなっち!
 
「んあ!今からごとーそこ行くから!なっち動かないでね!」
『え…?あっう、うん。そだね、直接話した方がいいね、こーゆーのは。
 じゃあ待ってるべさごっちん』

ブツッ ツー ツー ツー

んぇえ!?こっこーゆー話ぃ?!
一体何の話だってゆーのなっち!?
まさかホントーにまっつーに心変わりとか?
ヤだよ!そんなの絶対ダメぇ!!

くそぉ早く行きたいのにここからじゃ走っても15分はかかる!
なにかいい手は………む?あの鼻は…
91 名前:破壊神といっしょ。 投稿日:2003年08月22日(金)03時37分18秒
「ん?真希ちゃんこんなトコで何してんの?」
「んあ!ユウキ!ちょうどいいトコロに!」

初めてだよ!アンタがこんなタイミングよくごとーの前に現れるのは!
…む?現れるの自体初めてじゃないかって?
何言ってんの?んなワケないでしょ、姉弟なんだから。

「いそいでんの?」
「イエス!ってか見ればわかるでしょ、いちいち聞くな!
 とゆーワケでバイク借りるよ!じゃ!」
「おぅ…って真希ちゃん免許持ってないじゃん!
 オレが送ってやるよ!」
「やかましい!んなコト行ってごとーのなっちを奪おうったって
 そーはいかん乃助だ!んあぁー!!!」
「へ?なっちってだ……って、行っちゃったよ…」


んあぁー!ユウキは絶対会わせてやんないもんね!
なっちは誰にも渡さんのじゃぁ!!
92 名前:   投稿日:2003年08月22日(金)03時38分15秒
   
93 名前:のえる 投稿日:2003年08月22日(金)03時44分25秒
すいません、間違えまして。
題名『ミキたんとあたし』と『バイクで行くぜ』にかえるの忘れまして……。
あえてどこでかわるかは言いませぬ。脳内変換よろしくお願いします。
最近いいことないなぁ・゜・(ノД`)・゜・

レスありがとうございます。

>71 つみ様
ある意味コンコンのおかげですが
なんとか一歩進めたようです。

>72 jinro様 
(●´ー`)ノ<ありがとう。
( ´ Д `)<んあ、でもこの話の主人公ってごとーじゃ…。
94 名前:つみ 投稿日:2003年08月22日(金)10時00分11秒
まっつーせつない・・・
ごとーさんは免許は・・・?
95 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月23日(土)03時17分11秒
やっべ、かなりおもしろい。ぶっとんでますね。
でもたまにシリアスな感じにもなって、それがまたいい。
なにやら更新も早いし感心するばかり。
これからも頑張って下さいね。かなり更新が楽しみです。
96 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時36分45秒

ぬぅすんだバーイクぅではぁすぃりだすぅ♪
行く先っもぉ〜わかぁらぬままぁ〜♪

んあ、盗んだってゆーか借りたし、行き先もわかりまくってんだけど
なんか今の気分がオザキだったのよね、オザキ。
にしてもデカイバイクよねこれ、足つかないよ、ん?つかなくていいのかな?
んあーよくわかんない。だってごとーバイク興味ないし。
どっちかっつーと車?あはっ、いつかなっちとドライブしたいなぁ〜。

・・・・・ところで、ブレーキってどれ?
自転車と一緒でいい?ってゆーかなんで走り出せたんだろーね。
なんか勝手に手が動いたっつーか……もしかしてイモパワー?

『イエース、ザッツライ。完璧です』

んあ…やっぱり……。
ってか完璧じゃないよ!紺野のせいで散々な目に遭ったんだから!
ポテト雲消えちゃったけど、文句は受けつけないかんね!

『大丈夫です。あの子はちゃんと治って帰ってきますから』

……へ、へぇー…あ、そう。
あの子帰ってくんだ、ふぅーん。

『その時はまた乗せてあげます』

んあ、いらん。
97 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時37分27秒
『さてと、もうすぐ着くみたいですね。
 その前に1つお話しておきたいコトがあるんですけど』

んあ?なによ?

『先程まで屋上で、安倍先生と松浦先輩が…』

あーそれ知ってる。ごとー今からその件についてなっちを問い詰めに…

『抱きしめてらっしゃいましたよ。
 安倍先生が、松浦先輩を後ろからガバっと』

んのぉおぅ!?ううう後ろからガバガバぁ?!
ぐはっ!そんな!なんて羨まし…じゃなくて!!
ごとー以外になんつーコトしやがんだよなっちぃ!

『それとですね、そんな2人を熱い目で見つめる1つの影が…』

だぁー!!そんな影はどーでもいい!
覗き魔より今はなっち!安倍なつみ不倫問題が重要なの!
コニャクソー!許せなぁーい!

キィイイイイイ!

「なぁっち!!」
「あ、ごっちん早かっ…てなぜにバイク?
 免許なんて持ってないっしょ。無免許運転したべか?」
「んあ!いいから後ろ乗って!!」
98 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時38分07秒
確かにちゃんとした免許はないけど、ポテトライセンスがごとーの味方さ!

「2人乗りなんて危ないっしょ!ダメだべっ…キャァ!」

えぇーい問答無用じゃ!ハイ、ちゃんとヘルメット被って。
んあ?いいのいいのごとーはノーヘルで。
さ、しっかり掴まってね、一応念の為ヒモで縛っとくよ。
コラコラ抵抗しないの。そーゆープレイじゃないんだから。

「おっし!行くぜ!!」
「むぅ!っきゃぁああああー!」

........................................
.............................
..................
..........

「ふぅ、ここならいいね」
「……ど、どこだべ?ここ…」

ふっふっふっ、見ればわかるだろう、密室だよ、密室。
おまけにプールつき。楽園だよ、2人だけの。

「あの…でもごっちん、こんなとこ来ても
 なっちたちできないべ?」
「いいの。なっちが浮気した罰。思う存分イチャついてやる」

ガルルルル…食ってやる、食って食って食いつくしたる。
99 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時38分50秒
そーですイェイ!皆さんもうおわかりの通り、ここラブホ♪
獣になったごとーはなっちを壁際に追い詰めて
まずはどこから食べようかってなトコなのね。

「やだ…やだぁ……ごっちんがまた気ぃ失っちゃったら
 なっち泣いちゃうっしょ…」
「む…。じゃあソコ触んないから、気をつけるからいいでしょ?」

それともなにかい?
なっちの手使う?なっちの手をごとーが動かして
入場させてみるとか…道具使うとか……でもそんなんヤでしょ?
嫌がるコトはしたくないけど
ごとーなっちに触れたいんだ。ソコは無理でもなっちに触れたい。
まっつーに触れたトコ、全部ごとーに塗り替えてやる。

「ホントに…触んない?」
「うん、約束」
「……なら…いいっしょ」

やった


「うぁ…ふぁ……ごっち…」
「ん…なっち」

なんか忘れてる気もするけどまーいいか。
ごとーはキスしながらなっちを抱き上げてベッドに寝かせ、その上に跨った。
自分でも感動するぐらい流れるような手つきで邪魔する
服をとっぱらい、けどパンツは履いたまま抱き合ってキスを続ける。
100 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時39分22秒
「はぁ…はぁ…あっ!……あっ……」

こないだ知った弱点の耳を攻めると、ビクっと縮こまったものの
なっちは逃げずにごとーにしがみついた。

なんか…勢いで急にこんなコトになっちゃったけど
それでもナンダカンダ受けとめてくれるなっち、やっぱ好きだぁ〜。
ではでは、まっつーをお包みになられたと評判の二の腕あたり
攻めさせてもらいまひょ。あ〜ん…

「ふぁ!ひゃ…噛んじゃ……やぁ!…」
「んあ…なっちがいけないんだよ、まっつーを抱きしめたりして…」
「……ふぇ?な、なんで知って…べさ!!
 ごっちん!話があるって言ったっしょ!ちょっとストップだべさ!」
「えぇ!?ヤだ!するもん!話は後!」

ぐすっ。別れ話なんて聞いてやらないんだから!

「ふぅっ、ん…藤本さんっ……のコトだ…べぇ…あんっ」
「む?美貴?」
「はぁっ…なっち、ごっちんの力になりたくて…松浦さんに話っ…」
「・・・・んあ?そーいえばそーだったね。
 ふぅ…、でなに?」

くそぉ、結局中断か…涙が出ますなぁ。

“お乳すら 揉めずに今日も 寸止めさ” ごとー、心の俳句。(季語なし)
101 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時40分02秒
「えっと、だからね、ごっちんたちが横浜に行った後
 屋上で泣いてた松浦さん見つけてお話聞いたのさ。
 したら藤本さんとの出会いから病気のコト、家庭崩壊→一家離散
 →黒美貴誕生→初体験までを赤裸々に語ってくれて…。
 いつ見ても波乱万丈、アレ?なっちってば福○さん?みたいな気分になったべ。
 あ、そーいえば菊○怜が出た時はいっこも波乱万丈でなくて
 ちょっと腹立ったべさ。勝ち組か、勝ち組ですかって日テレに投書送ろうかと思っ…」
「んあ、なっち…そーでなくて…」

かわいいのよ、そんな風に順風満帆な人生にチッと思っちゃうトコは
最高にキュートなんだけど、ここは○際さんに免じて許してあげてよ。
また、今度ゆっくり聞くからさ。

「べさっ!?失敗だべ!なっちとしたコトがまた話を
 脱線させてしまったべさ!
 ぐすっ、ごめんなさい……」
「んあ…ごとー怒ってるんじゃないよ?だから泣かないで。
 笑ったなっちが1番好きです」
「…っ!ご、ごっちん…」

んあーやっぱり話の前にいただいてよろしいでしょうか?
ダメよね?ダメだよね、くぅ。
102 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時40分38秒
「あ、えっとそれでね松浦さんは、藤本さんが好きっしょ。
 きっと、一生心変わりなんてしないべさ」

うん。それはごとーも賛成だよ。…ん?…んあ?
そーいやなんか耳に引っかかって…

「…待って、さっき思いっきり聞き流したけど
 家庭崩壊とかってなに?まっつーの家のコトじゃないよね?」

だってホラ、美貴の世話焼いたりしてんだし。
ってコトは当然それは…

「……藤本さん家のコトっしょ。
 お父さんがお水の人と駆け落ちして以来お母さんは酒に溺れた挙句
 男の人とどっかに行っちゃって
 ご兄姉も藤本さんを置いて北海道に帰っちゃったらしくて…」
「んあ……」


そんな………ごとー、全然知らなかったよ…?
家に何度か遊びに行ったけど、いつも美貴の家族はいなかったけど
おかしいなって、そりゃ何度か思ったけど。

『おばさんとかは?』って聞くと必ず『あー今いない』って
ちょっと買い物行ってるぐらいな感じで美貴が答えてたから
深くつっこんだ質問をぶつけたコトもなかった。
ごとーたちが出会った正月に親がいなかったとか、聞いてたのに。
ヒントはたくさん出されてたのに。
103 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時41分18秒
「・・・それいつの話?」
「藤本さんが中2の時って…。それで藤本さん荒れて
 家に帰らなくなって、黒い噂が立ち始めたって……」
「…………」

一緒にいるのに必要なコトや、性格はよくわかってるつもりだけど。
いくら出会う前の話とはいえ美貴のそーゆー部分に
ノータッチだったごとーには、その事実は衝撃的すぎた。

だって美貴はいつも明るくて楽しくて黒くて
破天荒すぎだけど、優しくてカッコよくてやっぱ黒くて。

なんなのさソレ、美貴の家族は皆美貴をおいてっちゃったってコト?
なんだソレ、信じられない。

ジワジワ、体の奥から震えが来る。
なっちが咄嗟に抱きしめてくれたけど
どこにもぶつけられないもどかしさでごとーの体はさらに震えた。

「ごとー…美貴が何も話さないからって…
 なんとなくわかってたのに、なんでほっといたんだろ…」
「ごっちん…」
104 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時42分08秒
「もっと早く…無理にでも聞いてればよかったのかな?
 ごとー何も知らずに黒美貴黒美貴って…美貴のコト、傷つけてたよね?」
「違うよ!そんなコトない。
 松浦さん言ってたもん。藤本さんはごっちんと知り合ってから
 どんどん丸くなったって。
 ごっちんは、藤本さんの本質を見て仲良くなったんしょ?
 つっこんだ話や、弱いトコロ全部見せたりはできなくても
 ごっちんの存在は藤本さんにとってすごく大きいモノだったハズっしょ!
 もちろん吉澤さんも、親友なんだから」


親…友……そーだよ、美貴はごとーの大事な親友だよ。
だから助けなきゃ。絶対にもう泣かせないんだ。

「早く…なっち全部教えて、美貴のコト。
 まっつーから聞いた話全部ごとーに教えて」
「うん」



――――――――

105 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時42分38秒

それから、2時間くらいかけてなっちの話を聞いた。
途中で何度かごとーが泣いちゃって 
そのせいでこんなに時間がかかっちゃったんだけど。

ホテルは休憩で3時間だったから、話が終わるとすぐに出た。

美貴はごとーが知らない事情をいっぱい抱えてて
まっつーのコトも、ちゃんと大切にしてて
きっと愛したいのに、愛されたいのに怖くて怖くて逃げてるんだ。

そんなの、いいワケない。幸せなワケ、ない。

ごとーが教えてあげるよ。
愛は怖くなんかない。ごとーは、よしこは、そしてまっつーは
決して美貴を1人にして、いなくなったりしないってコト。

「なっち、ごとー本気で頑張る。
 美貴にまっつーへの愛を誓わせてみせるよ!」
「なっちも協力するっしょ。  
 藤本さんを説得してみせるべ!」

ラブホテルの前で、ごとーとなっちは右手を高く振り上げた。
まずは美貴を捜さなきゃ。
早く、苦しみから解放してあげないと。
106 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時43分15秒
「でももう11時だべ、ごっちんは帰った方がいいっしょ」
「何言ってんの!帰れるワケないじゃん!
 美貴は絶対帰ってないだろーし……んあ!里田先輩!
 すっかり忘れてたよ!」
「?…あぁ、体育祭の時にいた子だべか?」
「うん。美貴は里田先輩には甘えてるから、今の話も全部知ってるハズ!
 ってことは今一緒にいる可能性も高い!」
「ならえーと…どこに行けばいいんだい?」
「……んあ、わかんない…」
「・・・・・」

こんなコトならごとーも携帯の番号聞いときゃよかった。
まっつーは…11時には寝てるって前聞いたしなぁ…
他に……知ってる人は……んあ!

『ピンポーン♪カオにはわかる』

「かおりん!教えて!美貴が大変なの!!」
『そう大変でもないけど……ま、いいか。090のぉー…』
「フムフム、ありがと、じゃごとー急ぐからまたね」
『んーおやすみぃー』

よし、これで美貴が里田先輩のトコにいてくれればいいんだけど…。
107 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時43分58秒

プルルルル プルルルル

ガチャ
『はぁ〜い、もすぃもすぃ〜』
「…んあ…里田先輩ですか?」
『えへぇ、里田だと思いますけどぉ〜』
「・・・・・」

だと思う?どーしたんだろ?
酔っ払ってるのかな?

「あのー、美貴います?」
『うぅ?ミッキー?いるよぉ、おーいミッキー』

んあ!やった!いた!

「あの!美貴に代わってもらえます?」
『あーダメだぁ、潰れちゃってる。飲みすぎた玄白、なんちゃって♪』
「・・・・・」

サブっ。

潰れてるって…そーか、飲まなきゃやってられなかったのね美貴。
里田先輩と一緒なら安心だけど……でもやっぱ会っときたいな。
夜分遅くに悪いけど、仕方ない。
108 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時44分33秒
「ちょっと美貴に会いたいんですけど
 今家ですか?」 
『ううん。来る〜?ごっちんも一緒に飲むかぁ。
 えぇっと場所はぁ駅前のぉ、ココナッツっていうホテルなんだけどぉ』
「ホテル?!」

え…アナタたちそーゆー関係じゃないんじゃ…

『そーホテルぅー。場所わかる?』
「んあ…ちょっと待ってください。
 なっち、駅前のココナッツってホテル知ってる?」
「ココナッツ?…ぅーん……む?べさ?
 見間違いだべか?目の前にでかでかとあるよな気がするのは…」
「へ?」

なっちが目を細めて指差す方を見ると
今ごとーたちが出てきたホテルの看板に……“ホテル・ココナッツ”の文字が。

「んあ!嘘ぉ!!」

思いっきりここじゃん!ってかさっきまで1つ屋根の下にいたんじゃん!!
109 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時45分16秒
『フロントでアヤカの連れだって言えば通してもらえるからー。
 んじゃ待ってるねぇ〜』

ブツリ。

フ、フロント…?せっかく自動精算機だったのに…。
こーゆートコでこんにちはって結構恥ずかしいのよねぇ。
ってかアヤカって誰よ?

「んあ、とにかく入るか」
「ふぇ?また入るのかい?今出たトコなのに…」
「しょうがないよ、ここに美貴がいるんだから。ね?」
「…う、うん」

勘違いしちゃダメよ、ごとーだって好きでまた入るワケじゃないんだから。



思ったより美貴が近くにいて、安心したんだけど
なんとなく釈然としない気分のまま
ごとーはなっちの手をとってもう1度ココナッツに入っていった。
110 名前:ホテル・ココナッツ。 投稿日:2003年08月23日(土)18時46分12秒
   
111 名前:のえる 投稿日:2003年08月23日(土)18時49分06秒
レスありがとうございます。

>94 つみ様
松浦さん、早く明るい子にしたいんですけどね…。
( ´ Д `)ノ□<んあ、これ免許(嘘つけぃ
川o・∀・)<良い子は真似しないでくださいね。アヒャ。

>95 名無しさん
大変ありがたいお言葉ありがとうございます。
ぶっとんでますか(w えぇ、たまに帰ってきません。
更新は週2を目標にしてますが正直キツ(ry 頑張ります。
112 名前:つみ 投稿日:2003年08月23日(土)19時29分00秒
ココナッツ!!
ふじもとさんは里田さんとなにしてるんでしょう?
113 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月24日(日)21時55分11秒
( ´ Д `)人(´ー`●)キタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!

ごとーさんは「ともぞー」にでも弟子入りしたんでせうか?
114 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)17時54分39秒

ココナッツ。そう、ここはココナッツ。
またしてもココナッツ。2度目の入場ココナッツ。
ココナ(ry

「ごっちん、早くフロントに行くっしょ」
「んあ」

ごめんねなっち。ごとーってば3秒前にハリキって
なっちのお手てひいたばっかりなのに、いざ入ったら足が止まっちゃった。

でも偶然ってあるモンなんだねぇ。
ごとー、ここが駅前だってコトすら知らずにやって来たってのに。
む?待てよ。ってゆーかごとーがバイク運転できたのって
おイモパワーのおかげで、それはつまり紺野のおかげで、それでこのホテルに
来たってコトは………紺野、アンタここに美貴がいるコト知ってたんじゃないの?

『さぁ〜♪それはどうでしょう?』

んあ、絶対知ってたな!
だったら最初から教えやがりなさいよね全く!!

『後藤さん、道は自分で切り開くモノなのですよ。
 そしておイモも、同じく自分でふかして食べるモノなのです。アチチ』

んあぁ!!暢気にイモ食ってんじゃないよ!
なにがアチチだ郷○ろみ!

『アーチーチーアーチー♪
 それはおイぃモ〜がぁ〜決めたコトだぁよぉ〜♪夏のおイぃモ〜がぁ〜♪』

やかましいっ!
115 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)17時56分08秒
「ごっちん、早くってば!」
「……んあ?あぁ!ごめんまたボーっとしちゃって…
 えーと、ここだねフロント。すいませーん」
「…なにかしら?」

頭の中では未だ紺野のか細いゴールデンフィンガーがかかった状態のまま
ごとーはふらつく足を必死に動かしてフロントに辿りついた。
小窓から声をかけると、中からハワイアンなおばさんが顔を出す。
胸元の名札から察するに、名前は“キャシー”というらしい。

んあ……ここってキャバクラ??

「あのぅ、アヤカって人の連れなんですけど」

まーここがキャバクラだろーがノーパンしゃぶしゃぶだろーが
里田先輩の言う通りにして美貴の元に行かないと。

「あぁさっき連絡あったわ。後藤さんね?…お隣の方は?」
「んあ、なっちです」
「初めましてだべ」
「まぁかわいい。うんうんかわいい、上玉ね♪」
「たたた玉っ!?玉なんてないべ!上にも下にもついてるワケねーべさ!
 なっちは上玉なんかじゃない、玉無しっしょ!」
「…んあ……なっち、上玉っていうのはそーゆー意味じゃなくて…」
「べさ?…ハッ!まさか…チャカだべか?
 チャカの弾のコトだべか?!ひどいべ!それこそありえないっしょ!」 
116 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)17時58分12秒
「ちょっとなっち…」
あの、だから、そーじゃなくて、なっち落ち着いてよぅ。

「なっちは道産子だべ!室蘭の星だべ!スターオブムロランだべ!?
 チャカなんか触ったコトあるワケないっしょぉ!!
 ましてや22口径は洋服のボタンにあたっただけで方向がズレるから
 的を外しやすいとか、38口径は真っ直ぐ飛ぶけど金属にあたれば
 弾は砕けるしスピードは落ちるなんてコト知るワケねーべさぁ!!!」
「「・・・・・・」」
117 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)17時58分46秒
……そ、そーゆー割に…えらい詳しいんだね……なっち………。

「あ……、ななななっちったら余計なコトを口走った様な気がするのは
 気のせいだべか?気のせいっしょや?
 ねぇごっちん、今なっちおかしいコト言ったかい?」
「んぇ?!…べべべ別に!!
 何もおかしくないよ!ねぇキャシーさん?!」
「え…えぇ、ム、室蘭っていいところよね。
 …じゃじゃあ右のドアに入ってくれる?
 中にアヤカの部屋直通のエレベーターがあるから」
「んあ…はい」
「わかりましたべ」

幻聴だ。さっきのは幻聴。22口径だなんだぁーなんて
なっちの口から出るワケないよ。
キャシーさんも……顔はひきつってたけどなかったコトにしてくれたし
ごとーも忘れよう、そうだ、それがいい。

「ごっちん何ブツブツ言ってるべか。早く行くっしょ」
「……んあー」
118 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)17時59分25秒
カチャリ。

「「お邪魔しまーす」」

キャシーさんに言われた通り、フロントの右手にあったドアの中に入ると
目の前に青いトビラのエレベーターがあった。

トビラの横の↑ボタンを押すと、どうやら上がったままだった
エレベーターがウィーンと降りてきて、ごとーたちが乗ると
何も押してないのに上へ動き出す。
直通だから押す必要もないのね。表示を見ると8階ってなってて
たぶん最上階だと思うけど……この先に、美貴がいるんだね。
まずはお昼のコト謝らなきゃ。襟首つかんじゃったし…。

チィーン。

「だからついてないべさ!!」
「ふぇ!?」
「ぁ…な、なんでもないっしょ!さぁ行こうごっちん!」
「・・・・・」

ずっと黙ってていきなり叫ぶからビックリしたら……
まだ気にしてたの?大丈夫、なっちについてないコトはごとーが1番よくわかって…

『本当にそうでしょうか?』

んあ?当たり前じゃん、なんでそんなコト言うの。

『だってちゃんと最後までなさったコトはないワケですし…』
119 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時00分01秒
んなっ!?なさってなくてもこの目で何度か見てんだから
ついてないに決まってんでしょ!
入場しきれなくても入場しかけてんだから!!

『……ではそういうコトにしときましょーか』

なによその『はぁーぁ仕方ないな。だから大人って嫌い』
みたいな妥協する子供的言い草は!ってか紺野!
ごとーがなっちと抱いて抱かれてまた抱いてな関係になれないのはアンタのせいなんだからね!!
さっさと治す方法考えてよ!もう寸止めはこりごりなのよ!
プリーズ!プリーズプリーズプリーズゴぉーノぉーン!!

『はいはい、今頑張ってますから…ホフホフ。
 それより早く藤本先輩のトコに行った方がいいんじゃないですか?』

んあ!!どこが頑張ってんだよ!
思いっきりまだイモ食ってんじゃん!
ホフホフほおばってんじゃんかんあぁー!!

「ごーっちん!さっきから変だべ?
 気分悪いのかい?」
「…ううん、大丈夫。憎らしい程元気だから…」
「そ、そう…」

紺野め、覚えとれよ。いつかシメる。
でも今はあんなイモっ子の相手より美貴が大事だ。
120 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時00分38秒
「ごめんねなっち、行こ」
「うん」

手を繋いでエレベーターを降りると、赤い絨毯の廊下で
これはさっきごとーたちが入った部屋のあった階と同じだ。
ただこの階には部屋は1つしかないのか左に進んだ突き当たりに
ポツンとピンクのドアがあるだけ。
あの中に美貴はいるんだろうけど、ここ…寒くない?…空気が。
薄暗いし普通になんか出そうなんだけど。
でもごとー霊感ないしなぁー。

「1部屋っておかしくないかい?
 中相当広いのかな?でもその前にこの廊下の壁も変っしょ。
 ところどこと色が違うべさ」
「んあ、ホントだね。
 まーいいんじゃない?営業には使ってないプライベートなフロアみたいだし」
「…そーだけど、ちょっと怖いべさ」

あはっ、かわいいなぁ。オバケとか苦手なのぉ?
ごとーが守ってあげるから安心しなよ、怨霊だろーと絶対負けないから。

っと、ドアの前に到着。
コンコンと、心なしか腹の立つ音をたててノックする。

「はぁーい、後藤さん?どーぞぉ」
「んあー」
121 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時01分23秒

ガチャリ。

「いらっしゃーい」
「里田先輩こんばん…んあ!美貴!!」
「…zzz」

だっ誰その人!?なんで抱き合って寝てんの?!

ごとーとなっちが部屋に入るとまずソファに寝転んでる里田先輩が
ヒラヒラと手を振ってくれて、その先に見えたベッドに
黒いロングヘアーの…顔は見えないけどチャイナドレスを着てるおかげで
ナイスバディなのがよくわかる女の人と抱き合って寝てる美貴がいた。

「んあ…」
「む。この部屋お酒臭いっしょ」
「あー先生も一緒だったんですかぁー、がははぁ。
 美貴とアヤカ寝てんだけどぉ起こそうか?」
「あ、美貴だけお願いします」
あのナイスバディはアヤカっていうのね、メモメモ。

「おーいミッキぃー後藤さんだよぉー。
 いつまでアヤカの胸に顔埋めてんだよぉ、起きろぉー」
「zz……んー、う……」
「…?…ミッキー?」
「美貴?」


(VvVlll从


里田さんに揺らされて体を起こした美貴の顔は
酔って寝てたハズなのに妙に青白い。
まさか………
122 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時01分59秒
「き……気持ち悪い………おぇっぷ」

ダダダダダ!

んあ、やっぱり…。
口に手をあててものすごい勢いで立ち上がった美貴は
ごとーとなっちには目もくれず入り口付近にあったドアの中へ駆け込んでいった。

「あちゃーつまみも食べずにガブガブ飲んでたからなー。
 後藤さん、今日ミッキーなんかあったの?」
「んあ…えーと……お昼休みに泣かしちゃって…」
「やっぱ泣いてたんだぁ…。いやね、私とアヤカがお昼食べてたら
 息切らして走ってきてさぁ、目もちょっと腫れてて
 携帯と財布しか持ってなかったし学校いいの?って聞いても
 何も話そうとしないからおかしいなって思ってたんだ」
「……そーだったんですか…」

しまった、美貴の荷物学校に置いたままじゃん。
でも財布があるならいいか。

「じゃあ藤本さんは教室飛び出してそのままここに来たんだべね。
 よかったべ、変なトコに行ってなくて」

うん……っていやいや、ここホテルだし、しかもラブ。
変は変よ、なんでこんなトコに美貴と里田先輩とナイスバディがいんのさ。

「あー…後藤さん、充分変だって思ってるでしょ?」
「んあ!?どっどーしてソレを?!」
123 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時03分13秒
「アハハ!顔に出てるもん、わかるよぉ。
 ここはね、あの…ベッドで寝てるアヤカが住んでる部屋。
 美貴も1時期住んでたし、私も住んでんだけどね」

………へ?ちょっと待って、全然わかんない。

「ここって…ホテルですよね?住んでるんですか?」
ってか美貴も、1時期住んでたぁ?

「うん。ぶっちゃけラブホだけどこのフロアは使われてなくて。
 昔は違ったけど今はこのラブホのオーナーのプライベートフロアになってんの。
 そのオーナーっていうのが………」
「…?」

言いかけて、里田先輩は口を閉ざしてしまった。

「べさ、里田さん。なっちさっき松浦さんに藤本さんの話聞いたんだべ。
 どーして2人がスレ違ったか聞いたっしょや。
 んでごっちんと一緒に藤本さんを素直にさせようと…」
「え?ちょっと待って、スレ違った?
 なんかあったの?ミッキーと亜弥ちゃん」

なっちが慌てたみたいに早口で言うと、里田先輩は目を大きく見開いた。
どうやら美貴たちのコト知らなかったみたい。
124 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時05分01秒
「んあ、あのカクカクシカジカなんです」
「…………それでかぁ、最近ミッキー元気なかったの」

ごとーが手短に話すと、言ってくれればいーのにと淋しそうに呟いて
里田先輩はグラスを口に運ぶ。

「したっけ、できればここがどーゆー場所なのか
 なんで藤本さんが住んだりしてたのか教えてもらえると…」


パタン。

「待って」
「…美貴」
「…藤本さん」

話そうかどうか迷ってる里田先輩になっちが話を続けると
まだ顔の青白い美貴がトイレ(たぶん)から出てきた。
表情は消えてて、ちょっとゾンビっぽい。
125 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時05分42秒
「ごっちん……全部聞いちゃった?」
「…うん」
「せんせぇも?」
「うん、なっちが松浦さんに聞いて、それをごっちんに話したべ。
 勝手なコトしちゃってごめんなさい」
「…いーよ別に、ホントのコトだし。
 ごっちんやよっすぃーとはさ、一緒に楽しく笑えりゃいいじゃんって思ってたし
 自ら進んで話したいコトでもないから黙ってて…
 なんか隠してたみたいでごめんね?」
「いいよ!なんとなく気づいてながら聞かなかったごとーも悪いし。
 よしこだって同じだよ。
 それより昼はごめん。乱暴なコトしちゃって…」
「あーいいってぇ、忘れてよ」

恥ずかしいから、と小声で足すと
美貴はソファの横の椅子に腰掛ける。
126 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時06分22秒
「ごっちんたちも座りなよ、まいちゃんの隣のソファにでもさ」
「んあ」
言われた通り、先輩の隣の2人掛けソファになっちと座った。

「亜弥ちゃん……元気だった?」
「元気…だとは思うけど泣いてたべ。
 放送見た後、授業サボって屋上にいたべさ」
「…そっか」

まっつーのコト考えてるんだろうけど
少し口元を緩めただけで、表情は変わらなかった。

「亜弥ちゃんが泣くコトないのにね、バカだなぁ…」
「バカなんかじゃないっしょ、松浦さんは…すごい苦しんでるべさ!
 自分の気持ちが邪魔にならないようにって我慢して…
 藤本さんを自由にしてあげたいって……!」
「…なっち」
「・・・・・・」
「あ…ごめんなさい。
 でもさ、見てらんなかったっしょ。
 藤本さんにちゃんとハッキリ言って欲しいんだ、なっちは。
 言いたくないなら…手紙でも……手話でもいいべ…」
「しゅ、手話は通じないんじゃないかな…」

まっつー、耳は聞えるワケだし…ねぇ。
127 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時07分07秒
「アハハ…手話か、手話ねぇ……はぁ」
「んあ、聞いてもいい?」
「ん?なにを?」
「いや、だから…美貴サイドの話っていうか
 ごとーもなっちもまっつーサイドの話しか知らないし
 ここのコトもワケわかんないし、あのナイスバディさんも
 誰なんだかどういう関係なんだかサッパリで…
 んあ名前はアヤカってのは聞いたけど」

さっき抱き合ってたし。

「あーうん、そだね、ワケわかんないよね。
 じゃあちょっと昔話しようか、よっすぃーがいないのが残念だけど」
「んあ、呼ぶよ」
「んーいい、後でまた話すから。
 えぇっとそだな、何から話すかなぁ?」

うーんと唸って美貴は天井を見上げた。
そしてフっと顔をベッドに向け、口を開く。


「先に言っとくとね、アヤカは美貴と同じなんだ。
 ……傷の舐め合いだったけど
 美貴が初めて抱いたのも、抱かれたのも、アヤカなんだよ」
128 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時07分38秒

こうして、長い夜が始まった。

129 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時08分14秒
  (vV从从
130 名前:アヤカの部屋。 投稿日:2003年08月26日(火)18時09分18秒
24時間ごっちん頑張ってましたね。あややも娘。さんもお疲れ様です。

なんか中途半端な更新になってしまいました、申し訳。
レス、ありがとうございます。

>112 つみ様
なにって…ナニってそりゃぁ(ry

>113 名無し読者様
結構そのキターのAA好きなんで嬉しい(w マワッテル(ww
そーいえば実際の「ともぞー」さんはかなりエロイ爺さんだったそうなので
そーですね…弟子入り……( ^▽^)<しないよ♪
131 名前:つみ 投稿日:2003年08月26日(火)19時06分21秒
アヤカが絡みますか・・・
ってかなっちさんは何ゆえそんなに銃のことが
お詳しいの・・・?
132 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)02時05分06秒
アヤカは初体験の人でしたか
今はどーゆー関係なんだ!!
今まで見た小説の中で一番好きなキャラがここの黒美貴です
こんな素敵なキャラを作り出せる作者様素敵です
133 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)11時42分15秒
はやく美貴さんに幸せを…
てか俺に幸せを下さい(w
134 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時31分20秒

亜弥ちゃんはひとまずおいといて、アヤカとの話。


アヤカに初めて会ったのは美貴が中2で……そう、おとーさんがいなくなった頃。
あん時の美貴って結構必死でさぁ、周りに気を遣う余裕とか
なくて、お酒に逃げるおかーさんを助けるコトもできなかったんだよね。

家になんて、いたくなかった。
何度、夢だ、全部嘘だ、お芝居だって思っても
そこには必ず現実と真実があったから。

だから、美貴は夜の街に飛び出した。

最初の頃……まだおとーさんがなんでいなくなったか
わかんない時は、ただひたすら夜中まで歩き続けたり
コンビニで買った菓子パンを、河原のホームレスのオジサンたちと食べたり
お酒飲ませてもらったり…そんな感じでフラフラしてた。


それが、わかっちゃってからは変わった。

不思議なモンでね、どこに行こうとか決めてないし
ただ家の現実から逃げたかっただけなのに、足って勝手に動くモンなんだ。

しかも美貴の意思に思いっきり反して。

ビックリしたよぉ。
足が止まった時、目に映ったあの看板に大笑いしたもん。
135 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時32分14秒




なんだよ、現実から逃げんじゃなかったの?

全然ダメじゃん。何しようってのさ。

あーおかしい、美貴ってば超おかしい、笑える笑える。



13の女の子が入れるワケないじゃん。

キャバクラなんか。



アハハハハ。




136 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時32分58秒
笑えるでしょ?笑ってよ。
美貴の目の前にあったのは、おとーさんの浮気相手が
働いてた“いい国作ろうキャバクラ幕府”。

なんだよ美貴、こんなトコに来て何がしたいんだよ。
アハハハハ、アハハハハ。
もぉー笑いすぎて苦しくてさぁ、涙がボロボロ出てくんの。
サラリーマンのオジサンとか皆なんだこの子はって目で美貴のコト見てたなぁ。
あー恥ずかしい。

どれぐらい笑い転げてたかなんて覚えてないけど
息も絶え絶えになった頃、猿みたいなオジサンに声掛けられた。

『君…高校生?ウチの店の前で何してんの?』
『ヒァ…ハァっ…ふぅ、違うよ、美貴は高校生じゃない』
『?…あぁ、学校行ってないの?
 ってコトはここで働きたいとか?面接?』
『………うん』

中2の美貴を高校生と間違えるトコからして
見る目がない猿のおじさんの言葉に、気がつくと頷いてて
ヤバイかなーと思った時にはもうこの部屋に連れてこられてた。
137 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時33分33秒
へ?なんでここかって?
あぁ、だからね、ここのオーナーがその猿だったんだよ。
このフロアってさ、昔は下と同じように使われてたんだけど
出るってゆー話が絶えなくてね、そう、オバケが。
噂になっちゃって、最初は興味本位で来る客が増えたけど
その人たちが皆ホントに見ちゃって
どんどん客足が遠のいてったの。

で、これはヤバイってコトでこの部屋以外全部ドア封印して壁紙貼って…
オーナーが自分でやったからかなり適当で下手糞な上に
御祓いとかしてないからまだ霊はいるらしいよ。
あーここは大丈夫。この部屋だけはなぜか出なかったんだって。
このフロアの部屋は他全部出たんだけど。

まーそんなこんなでこのフロアを営業に使うのはヤメになって
オーナーがたまに泊まったり、キャバクラの面接に使うようになったと。

で、美貴も来ちゃったみたいな。


『なんかワケあり?』

猿が、名刺を差し出しながら聞いてきた。
そこには“8代目征夷大将軍 和田”ってなぜか苗字だけ書いてあって
ってゆーか将軍?8代目?
あぁ、キャバクラ幕府だからか、アハハ。
138 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時34分07秒
和田さんは、よっぽどの事情があるなら
未成年でも特別に雇ってもいい、実際今清掃とかで働いてる子もいて
美貴も働くなら雑用からになるけどって言ってくれた。

和田さんは面倒見のいい人でね、ワケありの子が
変なトコに騙されないように自分の店において
普通の…他の仕事を斡旋してあげたりとか、色々してんだ。
なんてゆーか、非行少女のお助けマンみたいな感じ。

そんで美貴もそーゆーコトだと思って声掛けてくれて。
でも違うじゃん?さっきはさ、自分の意思とは関係なく足が勝手に動いたって
言ったけど、美貴はおとーさんの浮気相手のコト知りたかったんだよね。



どんなヤツがおとーさんを奪ったんだろう。
どんなヤツがおかーさんを傷つけたんだろう。
どんなヤツが美貴の家の幸せを壊したんだろう。


許せない。許せない。

見つけ出して、1発殴ってやらなきゃ気が済まない。




ぶっ殺してやる。


139 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時34分45秒

蒼かった。幼かった。子供だった。

あの瞬間、美貴の心は悪に染まった。
和田さんの顔を、これでもかっていうぐらい睨みつけてた。


オマエノ、ミセノ、オンナガ、ワルインダ。

ミツケダシテ、ブッコロシテヤル。

イバショヲオシエロ。サモナイト、オマエモコロス。

......................................
............................
....................
.............



いやぁホントに、和田さん、あの時はごめんなさい。
思いっきり引っ掻いちゃって。
何の脈略もなくいきなりキレて暴れちゃって、アハハ…。
痛かったよねぇ、急所蹴り上げた時の『エギャハ!?』って悲鳴
たぶん一生忘れるまで忘れらんない。

ん?これじゃ忘れんじゃん、えへっ、……………ごめんなさい。
140 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時36分10秒

ま、まぁそんな感じでさぁ
和田さんをボコりながら全部喋っちゃってたんだ。

そしたら和田さん泣いちゃって
急所が痛くて泣いてんのかと思ったら違ってさ。

その…おとーさんの浮気相手ってのがね、イーイーっていう名前で
働いてた人なんだけど。その人は本当にいい子で
だけど身寄りもなく小さい時から苦労ばっかしてきて
美貴のおとーさんに出会うまで何一つ幸せとは縁の無い人だったんだってさ。

本当の名前はソニンっていって、日本人じゃなくてね。
好きだった男に騙されて売られそうになってたトコを和田さんが
助けたみたい。その辺はあんまり詳しく話してくれなかった。

美貴のおとーさんが既婚者なのはわかってたし
これ以上不幸にさせたくなくて、付き合いを反対してたらしいけど。

『止められなかった、オレが悪いんだ』

だから許してやってくれって。
オレのコト殺してもいいから、あの子の幸せだけは壊さないでやってくれって
泣いて頼むんだよ。

大人の男が、13の小娘に頭下げてさ。
141 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時37分17秒
そんなコトされたら、何もできないじゃん?
バカらしくなって、全部がどうでもよくなって。



未来なんてどこにあんのさ。希望ってなんだよ。
ソニンだかプリンだか知んないけど、ソイツの初めての
幸せと親父の下心と引き換えに美貴の幸せ壊れてんじゃんか。
おかーさんの幸せも壊れてんじゃん、おにーちゃんもおねーちゃんも。

おとーさんとおかーさん、あんなに仲良かったじゃん。
なんで突然いなくなんの?なにが離婚だよ、なにが愛人だよ。
不倫じゃんか、自分の家庭をブチ壊す、身勝手な愛じゃんか。

愛してたよ、美貴は。家族だもん、愛してたよ。
でもおとーさんはいらなかったんだね。
美貴たちより、ソイツとの愛を選んだんだ。

いらないよ、いらないよ。
お前の愛なんかいらねぇよ。

愛なんか、いらねぇよ。



それから美貴はほとんどここで生活するようになった。
ホテルやキャバクラの掃除手伝って食事もらって
ここから学校に通った。
家にはたまに着替えを取りに戻る程度だった。
142 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時38分34秒
誰が見たんだか、噂が本格的に流れ出したのって
たぶんこん時からだろーね。
和田さんや、キャバクラの掃除に行って知り合ったお店の女の人と
手ぇ繋いで歩いたりしてたし。

キャバクラの人たちは皆なにかしらワケありで
美貴と同じような目にあった人や、もっとヒドイ目にあった人だらけで
だから美貴にも優しくしてくれてさ。

だけど皆口を揃えて
イーイーを許してあげてねって言ってたっけ。

もう、どうでもいーのに。

許してますよ、恨んでなんかないですって笑って
抱きしめられれば拒まなかった。
頭を撫でてくれた同情の手も、黙って受け入れた。

美貴の心はどこにもなかった。
壊れてたんだ。

それすらも、どうでもよかった。

143 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時39分19秒

そんな中、久しぶりに家に帰ると
待っていたのは見たくもない現実。


『美貴、オレたち北海道に戻るけど…』

おかーさんがますますお酒に溺れて
おにーちゃんとおねーちゃんが出て行った。


『美貴、おかーさんとどっか行こうか』

行かない。
そう答えたら、次の日おかーさんはいなくなった。

どーぞどーぞ、ご自由に。
美貴は絶対この町を出たりするもんか。



そして、美貴は1人になった。

誰もいない家は、荒んだ心に心地よかった。
静けさをあんなに愛しく思ったのは初めてだった。
だけどやっぱり、いたくないって気持ちは変わらなくて
この部屋にばっかりいたなぁ。
144 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時39分57秒
あれは…3月の初め頃、まだ夜は肌寒くて
ベッドで毛布かぶってさぁ寝ようって時だった。
ドアがノックされて、和田さんだろうなって思いながら返事をした。
美貴が使うようになってから、ここは面接でも使わなくなって
誰か来るっていったらたまに和田さんが様子を見にくる程度だったし。

『よぅ、今日からこの子も一緒にいいかな?』

入ってきたのはやっぱり和田さんで…
けどその後ろにもう1人。俯き顔の、もうわかってると思うけど、アヤカがいたんだ。


アヤカは……今寝てるし、本人の了承無しには話せないから
簡単に言うとね、さっきも言ったように美貴と同じ。

1人だったんだ。
それで和田さんに拾われて、ここへ来た。
見ての通りアヤカはキレイで、スタイルよくて
おまけに性格も超いいの。優しいし、ちょっと天然入ってて、そこがカワイイ。
アヤカは今21…かな?たぶん。年上で、おねーちゃんみたいでさ。

仲良くなるのに時間はかからなかった。

あ、もちろん最初は友達としてね。
美貴だってあの頃は一応純情ピュアガールだったしさ。

なにが、きっかけだったんだろ?
結構唐突に抱き合っちゃったからよく覚えてないなぁ。
145 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時40分36秒
アヤカは、年上だけどそれを感じさせないぐらい
なんてゆーか真っ直ぐでさぁ。
全部どうでもいーとか、なるようになれーとか思ってた
投げやりな美貴と違って素直に傷ついて苦しんでた。

だからよく、夜中にベッドで泣いてたね。

声を押し殺して、美貴を起こさないように気遣ってるの知ってたから
いつも狸寝入りしてたんだけど
ある日我慢できなくなって、美貴は泣いてるアヤカを抱きしめた。


『淋しい、淋しいよ…』

そう?美貴は淋しくないよ。

『美貴、お願い傍にいて』

いるよ?隣にいるじゃん。

『抱いて』

――――いいよ、でも美貴ヤり方わかんないや。

『大丈夫、私が教えてあげる』

うん。




146 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時41分58秒

その日は朝までかかってアヤカを抱いた。
カーテンの隙間から入ってきた光に目を細めると
今度はアヤカに抱かれた。

痛かったなぁ……すっごい痛かった。
この世の終わりかと思うぐらい痛くて、ぎゃーぎゃー泣いて鼻水まみれになったっけ。

でも気づいたらアヤカも泣いてて、それ見たら次は笑いが止まんなかった。
笑うと振動で痛いんだけど
それすらもおかしくてゲラゲラ笑った。

あんなに痛かったのは、罰…みたいなモンだったのかな。
ちゃんと好きな人としなかった罰。

その後も、お互い甘い言葉を語らうコトもなく
ただ一緒に過ごして、体を重ね続けた。
アヤカといる時だけが、平和で、穏やかな時間だった。

あ、まいちゃんとも仲良かったよ。
美貴が壊れる前からかわいがってもらってたし。
普通に遊ぶコトも多かったけど……。

だけど違ったから。同じ思いを共有するコトはできなかったから。
笑えてはいたけど、正直息苦しかった。


そして亜弥ちゃんが中学に入学してきて、その苦しさは倍になった。
147 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時42分38秒
八つ当たりみたいに、アヤカを抱いたコトもあった。
そうすると必ず、終わった後に『なにやってんだ、なにがしたいんだよ。
こんなコトしてる場合じゃないだろ。傷つけてんのわかんないのかよ』って
心の声に責められて。

会わなきゃいいのに、逃げればよかったのに
美貴だって会いたかったんだよ。

夏の終わりに失う怖さを知って、ようやく逃げて。
家にも全然帰らなくなって、学校にも行かず
ここで生活して、だけど毎朝毎夕必ず会いに行った。


そして冬、大晦日のあの日、ごっちんたちに出会ったんだ。


アヤカ以外とは、隣にいるだけで息苦しかったのに
ごっちんたちに会って、一緒にバカ笑いして
どんどん楽になってったなぁ。

アヤカとは、美貴が強制的に連れてかれた姫路から
帰ってきた時にゆっくり話し合って
このままじゃお互いダメだってコトになった。

それで、亜弥ちゃんのパパさんとの約束もあったし……。
ちゃんと家で生活するようになって学校にも行って。
ここにはたまに、手伝いで通う程度。
148 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時43分21秒
お金は、北海道のおばあちゃんからもらってて
学費とかには使わせてもらってるけど
遊んだり飲んだりするお金は、今も和田さんの手伝いして稼いだのを
使ってるからさ。

ここや、お店の掃除して
その時にアヤカに会う時もあったし、会えない時もあった。
だけど頑張ろうって、相手に頼らず頑張ろうって約束したから。

美貴はこの通り、ごっちんたちのおかげで
なんとか丸くなれたし。
アヤカも離れてた妹と連絡が取れて、会えてはないけど
いつか会える日の為にって、今も頑張ってる。


それぞれ自分の足で、歩き始めた……とまぁ、こんな感じかな、アヤカとは。




◇◇◇


「終わり」

大きく息を吐いて、美貴はニッコリと笑って見せた。
淡々と話して聞かされた話は、思ってもなかったぐらい
ありえなくて、ごとーはすぐに美貴の目が見れなかった。
149 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時43分58秒
「あーそんな沈まなくていいよぉ?
 過ぎたコトだし、ある意味貴重な体験だったなぁなんて…」
「藤本さん!!」
「っほぁ?…な、なにいきなり……!」
「んあ!?」

ガーン。

いや、ショックを受けちゃいけないのか。
でもやっぱショックなんだけど…。

強がる美貴を叱りつけるみたいに叫んで、なっちが美貴に抱きついた。

「ごめんね…ごっちん、松浦さん…。
 今だけは藤本さんを抱きしめさせて欲しいっしょ。
 なっちは…なっちはとっても仲良い家庭で育って、藤本さんの気持ち
 上手く想像するコトもできないけど…
 けど!藤本さんは偉いべ!ちゃんといい子に育って
 なっちは嬉しいべさ!」
「…いや、あんまいい子には育ってないと思うし
 なんでせんせぇが嬉しいのかもよくわかんないんだけど…」

目をウルウルさせて美貴の手を握るなっちと
その勢いにやや引き気味の美貴。

ちょっとヤだけど、今日だけは許してあげるか。
150 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時44分45秒
ふぅ。

ん?ごとーが暖かい目でなっちと美貴を見つめていると
隣から里田先輩の小さな溜息が聞えた。

んあ、そーいえば。
なんで里田先輩はここにいるんだろう?
さっき、仲は良かったけど同じ時は共有できなかったって言ってたよね?
なのに話したのかな?

それとも――――――

「ん?どうかしたの?」
「んぇ?…あ、いえ…」
「なんでもないって顔じゃなかったけどぉ?
 …ってゆーか、ぶっちゃけなんでお前はここにいるんだって思ってるでしょ?」
「ふぇっ!?んあ…えっと…」

び、びっくりした。
さっきもあったよねこんなの。
里田先輩鋭すぎ。

「アハハ、顔に出てるよ〜。
 ミッキー、次、私いい?」
「え?あぁ、うん」
「む?里田さんもなにかあるのかい…?」
「はぁ、まーだから今ここにいるーみたいな感じなんだけど。
 実は私もさ、ミッキーたちと同じになっちゃって」
151 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時45分42秒
「………んあ…」
「………べさ…」
 
なんとなく、そうなのかもって思ったけど
思ったばっかでやっぱそうですかってのは結構キツイ。

「って言ってもね、いきなりいなくなったとかじゃなくて
 家庭内別居、顔見ればケンカ、おまけにまだ別れてくれないときたもんだ」

ごとーたちに気を遣わせまいと
さっきの美貴みたいに軽い感じで話す里田先輩。

「ミッキーと沖縄に行ったのもさぁ
 あ、アヤカも一緒だったんだよ?なんか2人で行ったみたいに
 なってるけど。
 あの時も…私の親って会社経営してて、お正月とかは
 毎日会社のお偉い方が挨拶に来るのね。
 それだから仮面夫婦は仲良くその相手しなきゃなんなくて
 毎年1番ケンカがヒドイのがその時期なワケ。
 2人とも慣れない芝居したせいでストレスも溜まってるし
 客が帰った途端ケンカして、仮面被って、ケンカしての繰り返し。
 それがもう嫌で嫌で、ミッキーとアヤカに頼んで逃げさせてもらったんだ」

楽しかったよね、ミッキーが落ちなきゃ。と付け足して
フフっと美貴に視線を向ける。

「…ごめんってば」
「アハハ、冗談だよ、無事でよかった」
152 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時47分21秒
「…んあ、もしかして2年前ぐらいからベッタリだったのって…」
「そう。それまでは冷戦っぽかったんだけど
 2年…そだね、それぐらいからヒートアップし出して
 たまたまミッキーがウチに遊びに来てた時にやってくれちゃったんだよね。
 で、実はって話したら…」
「美貴も実はって話だったと?」

ごとーが先に言うと、先輩はごとーの頭を撫でた。

「そゆこと。最初は驚いたし、なんで言ってくんなかったのーって
 思ったけどミッキーの場合私よりひどいコトが中2の時に起きてるワケじゃん?
 ビビるよね、私なんて今でもこんなツライのに。
 しかも私のはすぐにミッキーが支えてくれて、アヤカのコト紹介してくれて
 好きな時にここに来ていいって言ってくれてさ
 ホント恵まれてるよ、私は」

どうなんだろう。
こういうのに、どっちがマシとか恵まれてるとかってないと思うけど。
でもそう思わなきゃ、やってられない部分があるんだろーな。
優越感とか、そーゆー意味じゃなく自分より若くして
失った美貴だって頑張って乗り越えたんだから、私も…って意味で。

「で、最後にもいっこぶっちゃけると
 私はアヤカ狙いである、と」
153 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時48分10秒
へぇ〜…ってえぇ!?そーなの?!

「アハハハハ、何?意外?
 そんなに口ポカーンってしないでよぉ、先生も。
 好きなモンはしょーがないじゃん?
 だからまぁ、さっきのミッキーの話…知ってたけど改めて聞くと
 腹立つよね。そんなワケで私今不機嫌、よろしく」
「「・・・・・・」」

あいや…よろしくってそんな急にほっぺ膨らまされても…。

「あー…ごめんねまいちゃん。
 なんならもっかい話そうか?」
「いらない」
「遠慮しなくていいよぉ?弱いトコとか教えとくし」
「…いいってば」
「あ、今ちょっと考えたでしょ?ん?ん?知りたいんじゃないの?」

・・・んあ、悪魔か己は。
美貴はニヤニヤと里田先輩に詰め寄る。なっちを抱えたまま。

んあ?


 な っ ち を 抱 え た ま ま ?


アレ?ちょっとおかしいですねぇ。
さっきは確かなっちが美貴に抱きついて
美貴はただされるがままでしたでしょ?
いつの間に?いつの間に攻守交替?上下入れ替え?みたいな。
154 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時49分13秒
「美貴……」

ごとーが甘かった。
本場フランスの洋菓子にあんこと蜂蜜塗りたくったモノを
なっちに『ごっちん、あ〜ん』ってやってもらうぐらい甘かった。

やっぱり美貴は黒美貴だ。
どんな理由があれ黒美貴だ。
ごとーが言うからには黒美貴だ。

「んあ!なっちを離せぇ!!」
「へ?…ってぐはぁっ!…っく、なんでいきなり…」
「フン!いきなりじゃないよ!相手が違うでしょ!
 なっちはごとー、ごとーはなっち、これなちごまの常識。アンダスタン?」
「…ぁ…あんだすたん……ガクッ」
「自業自得だね、ミッキー」

ふぅ、今日もまた、つまらぬモノを蹴ってしまった。

「あ、あのごっちん?松浦さんとの話、まだ聞いてないべさ?」
「んあ…」



気づいた時にはすでに遅く
倒れたままピクリとも動かない美貴を
窓から射しこんだ太陽の光が優しく包みこんだ。

155 名前:愛を失くシテ。 投稿日:2003年08月29日(金)02時50分14秒
   
156 名前:のえる 投稿日:2003年08月29日(金)02時52分16秒
なんか暗っ(爆 はおいといて(w
今日やっと録画しておいたハロモニ見たんですが
おがたかぁ!!と萌えたコトもおいといて(w

安倍さん、浮気しましたね? 亀 井 さ ん と 。

ヽ( ` Д ´)ノ


そんなワケで(爆 レスありがとうございます。大感謝。

>131 つみ様
(●;´ー`)<詳しくないっしょ!357口径なら確実とか知るワケないべ!
(;´ Д `)<・・・・・。
なかったコトにしてやってください(w

>132 名無しさん
いいい一番ですかここここんなんでいいんですかあああありがとうございます(感涙
黒美貴はこの話の原点でもあり、題名もみきう〜るからきてるんで
書いてよかったと感動しています。作者はステキバカです、完璧です(爆

>133 名無しさん
美貴さんの幸せは少々遠いです、ごめんなさい(爆
え、えーと…どうすれば幸せになれますかね?
そうだ、サービスショットでも…エイっ 【从*‘ 。‘)εV从】
……幸せになれましたかね?(ww
157 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月29日(金)03時14分20秒
告白キター!
切ないね。ふじもとーふじもとー (T-T)
そろそろ動きがあるのかな。続き楽しみです。
158 名前:つみ 投稿日:2003年08月29日(金)05時45分19秒
つらい過去があったんですねぇ〜
なちごまの常識・・・アイアンダスタンド
159 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)02時57分11秒


「んあ、もう秋ですか……」
「あっという間だったね夏休み」
「梨華ちゃんと旅行行ったんだって?」
「フフフ…行ったとも、電車は鈍行、宿はラブホの安上がりな旅 
 だったけどウチらの愛は深まったよ」
「いいなぁ、ごとーなんてほとんどなっちといたけど
 1度も最後までできなかったし
 我慢できずに飛んで見たくもないモン見ちゃうしで最悪だよ…」
「まさか…ウチのも見た?」
「………んあ」
「っ!…そ、そう…」
「でも見たのなんてちょっとだし、梨華ちゃんの体はなるべく
 見ないようにしてたから安心してよ」
「う、うん。他には誰の見たの?」
「んあ…えーと小川たちとか、柴田さんとかかな?」 
160 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)02時57分48秒
「美貴ちゃんは…?」
「見てないよ、ってゆーかまだまっつーと仲直りできてないみたいだから」
「他の人とは…?」
「してないでしょ」
「だよね。あ、そーいえば小川たちって最後まで逝ったのかな?」
「んあーまだっぽいよぉ。
 紺野が『まこっちゃん、もっと押しでいかないと』って説教してたし
 ごとーが見たのもすごい慎重にキスしてるトコだけだったから」
「小川の脱・童貞はまだまだ先かぁ…。
 今度教えちゃるかな、色々」
「そーしなよ。よしこだって梨華ちゃん年上の鈍感で
 高橋とかぶるトコあるし、かわいい後輩に愛のレクチャーしたげれば?」
「うん、そだね。ウチやるよ!」
「んあー」


161 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)02時59分14秒

どーも、おはようございます、ごとーです。
今日から2学期に突入した学校の教室で、ごとーは今よしこと
楽しく雑談タイム中。

んあ?美貴はって?

それがさぁ、まだ来てないのよね。
夏休み最初の日に『1人で考えたいコトがある』ってどこかに
旅立っちゃって、夏休みなのになぜか普通に学校に行って授業を受けた
8月8日以外1度も姿を見ていない。
携帯も通じなくて帰ってきてるのかもわかんないし…。

まっつーとの話もね、結局聞けなくて。
美貴がまっつーのコトどう思ってるのかとか
何度か聞いたんだけど『やっぱもうちょっと待って』って言われて…
早く覚悟決めて欲しいんだけどね。

「美貴、来ないのかなぁ?」
「どこに行っちゃったんだろーねぇ。
 こんなコトなら8日に会った時無理矢理にでも亜弥ちゃんのトコ連れてきゃよかった」
「うーん…でも美貴も勇気を出す時間が必要なんだろーしねぇ…」
「はぁ…。
 なんで美貴ちゃんがこんな目に遭わなきゃいけないのかね。
 ウチは平和な家庭に生まれて、何の疑いもなく梨華ちゃんのコト好きになって
 梨華ちゃんと一緒にいられるなら何もつらいコトなんてないのに」
162 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時00分08秒
よしこの気持ちはよくわかる。
ごとーだって、なっちといられればそれだけで幸せだし
つらいコトだってハッピーに塗り変えられるから。

「美貴ちゃんも…早くウチらみたいになれるといいね」


あの日、徹夜で片付けを手伝わされてたよしこは
ごとーたちより少し遅れて美貴の話を聞いた。

ガムテープで応急処置された椅子に座って話す美貴の言葉を
よしこは終始黙って聞いていて、美貴に向ける視線もとても穏やかだったけど
見えないように腰の後ろに回した拳は強く握り締められてた。

『ぐすっ!…藤本ったら…そんな過去があったのね…!』
『うぅぅ…切ないじゃぁー』
『ミュン…』
『……そっか、キャバクラ幕府のソニンちゃんが急にいなくなったのは…』
『全然知らんだわぁ…ぐすん』
『大変だったんですね……』
『…………ぐす』

よしこの隣には斎藤さんらメロンの面々と高橋小川、そして家から
お迎えが来て帰ったツルちゃんと入れ違いにやって来たという梨華ちゃんがいて
それぞれ溢れる涙を抑えながら俯いていた。
163 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時02分17秒
でもその直後――――

『…ミュン?』
『んあ?』
『べさ?』

『ミュン!!!』

『へ?!…あ!しまったつい…ってぐわぁーっ!!』
『壊れていく…私の夢が壊れていく……さらばセクシー、セクシー瞳…』
『…無念じゃ』

『美貴ちゃんが中2の時の話なんだからマサオまだ高校生でしょ!
 なのになんでキャバクラなんか通ってるの!』
『違っ、通ってないよ!ソニンちゃんとはキャバクラで知り合ったんじゃなくて
 新聞配達のバイト一緒にやってたから…』
『……ぇ?』
『朝刊だけだけど…前話したでしょ?高校の時新聞配達やってたって。
 そこにソニンちゃんもいたんだよ。
 あの子…本当に苦労してて…キャバクラで働くだけじゃ
 貯金できないからって…ケバイ格好のまま原チャ乗ってたんだ…』

意外なトコロに人の繋がりはあるもので
美貴のおとーさんの浮気相手と大谷さんが知り合いだったコトがわかった。
164 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時02分50秒
『アハハ、それは目立つ新聞配達だったろーねぇ。
 見てみたかったなぁー』

あえて自然に美貴は明るい声を出したけど
本当はそんな話聞きたくないって思ってるコトはスグにわかったのは
ごとーだけじゃなかったようで、柴田さんは大谷さんに振り下ろしかけてた
ジャンケンチョキを引っ込めた。

んあ、目潰し狙いだったようね。

『ほっ、店はなんとか無事ね』
『…奇跡じゃ』

その様子に安堵の溜息を漏らす斎藤さんと村田さんの目には
うっすらと涙が浮かび、ごとーもホっとした瞬間――――

ぐぅ〜。

ごとーのお腹が大層でかい音で鳴って
それにつられるように皆のお腹もグーグー鳴った。
165 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時03分27秒
『斎藤さぁん、ごとー昨日のお昼のお弁当から何も食べてないの。
 何か食べさしてぇ』
『美貴も〜』
『…ハッ!そーいえば!私も食べてないわよ!ねぇ村っち!』
『イエスアイヅゥ』
『なっ!?会津?!間違ってるわよ村!ソレを言うならイエスアイドゥ!』
『ヅゥ?』
『ドゥ!』
『んあ!どっちでもいいから早く何か作ってってば!!』
『ごっちん、よくないべ。英語は正しく覚えないと。
 カオリに怒られちゃうべさ』

そうそう、村田さんの奇妙な発音のせいで
自分もお腹減ってんだろーに斎藤さんが全然作ろうとしてくれなくて。

『ヅゥ!』
『ドゥ!』
『ドゥっしょ!』
『ヅゥ!』
『『ドゥ!!』』

あのさ、村田さんもある程度大人だし、今更治らないんじゃない?
ここは諦めてご飯食べようよ。
ってかごとー自分で作るからさ、キッチンお借りしてもよろしいですか?

と、ごとーがカウンターに行こうとすると…
166 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時04分27秒
『ごっちーん、小川ちゃんがラーメン作ってくれてるよー』
『んあ?朝からラーメン?』
『まぁーずっと起きてたしいいんじゃない?
 美貴の分はおじやにしてくれるらしいからそっちがいいなら
 ごっちんも今のうちに言っときなよ』

いつの間にそんな話が進んでいたのか
言われて見るとたしかに頭にバンダナを巻いてまるで大将のような
小川がカウンターのなかで鍋の中をかき混ぜていて
その隣でたどたどしくネギを刻む高橋と2人、まるで夫婦のように見えた。
更にその横には………

ひぃっ!?

なんで?どーして?なぜゆえに?!
仲睦まじいおがたかの横で、これまた仲良く柴マサが美貴の雑炊を
作ってたんだけど……なぜか柴田さんは不敵な笑みを浮かべていて
明らかに何かを企んでるような、誰かを陥れようとしてるような
そんな気配を察知したごとーは雑炊を“危険食品レベル4803”に認定し
決して食べるまいと心に誓った。


『ヘイ!お待ち!』


       ∫<。。>∫∫∫∫∫
       _ミ□ミ___
   ___ \回回回回回/
 c2___ヽ \ __ /
  ∬∬´▽`)ノ |___|
167 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時05分59秒
『んあ、おいしそー』
そして、何事もなかったように大将のラーメンを…

『すごーい、なにこのでっかいザリガニみたいなの』
『ザリガニじゃないですよぉ、カニです』

食べようとした時、ごとーの丼に顔を思いっきり近づけて問う美貴に
答える小川、あーんど…

『ちょっと待ちなさい!!!』
『んあ?』

突然聞えてきた悲鳴。思わず振り返ると
顔を真っ青にさせた斎藤さんが村田さんにしがみついてワナワナと震えていた。

『カニ…ザっ…ザリガニみたいなカニって言ったら…まさか……』

うわ言のように呟いて、1歩1歩セクシーにこちらへ歩いてくる斎藤さん。
取り残された村田さんとなっちはワケがわからないようで
ポカンとそのセクシーな後姿を見ていた。

『お、小川さん……このカニはまさか……』
『ヤシガニですよ』
『っ!?今なんと…っ?!』


『 ヤ シ ガ ニ で す よ 』


『ヤっ!?ヤシガニぃぃい!!!?』
『なぬ?!ヤシガニ!?』
168 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時07分52秒
『なぜ?!なぜなの?!ヤシガニヤシ子がなぜここに?!
 わっ、私の分は?もちろんあるわよね?
 とうとうヤシガニを食べられる日が来たのよね?!』
『むぁー!!食べるのじゃぁー!!』

叫びながら駆け寄ってきた村田さんとヤシガニの前でヒシと抱き合い
2人はごとーの分のラーメンを奪って
涙や鼻水でグチャグチャな顔のままズルズルとラーメンをすすりだした。

この時は知らなかったけど
後で柴田さんから2人のヤシガニ物語を聞き
ごとーはやっと涙の意味がわかってほんのり泣いた。
柴田さんの笑みは全然危険な意味はなく、斎藤さんたちの喜ぶ姿を
思ってのモノだったんだ。んあ、誤解してゴメンナサイ。

あ、そーそー。
なんでヤシガニがあったのかっていうと、昨日ツルちゃんのお迎えが来た時
黒塗りのリムジンから颯爽と下りてきたツルパパ(決して頭の様子を表したワケではありません)が
『絵里がお世話になりました。
 知人からお裾分けで頂いたんですが、ちょっと多かったのでよろしければどうぞ』
と言ってヤシガニを30匹もくれたらしい。

んあ、やっぱりツルちゃん金持ちだったのね。
ってかその知人がスゴイのかな?
ま、とにかくありがとう。
169 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時09分06秒

んあ?あれ?なんでこんな話になったんだっけ?
ごとーよしこも美貴の話を聞いたってゆー報告だけするつもりが
ヤシガニの話までしちゃって……まさか、出番が少ないコトを妬む誰かの呪い?

「皆おはよー、久しぶり」
「おはようだべ」
「んあ、なっち!」

ごとーが久々の疑心暗鬼に陥っていると
2学期もやっぱりかわいいなっちと少しヤツれたカオリが教室に入ってきた。

「…藤本以外は皆いるね。
 先に言っとくけどカオ夏バテだから」
「なっちはバテてないべ」
「んあ、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。北海道から帰ってきたらいきなりコッチ暑くて
 参っちゃうよ、話はなっちがするから、バイバイ」
「ハニー…そんだけで帰るなら休めばよかったのに…」
「ダーリンに会いたかったんだもん」
「っ!ハニー!!」

あーハイハイ暑苦しい芝居はいいっつーの。
ってかかおりんクマすご…1昔前の梨華ちゃん並だぁ。

「ごっちん、藤本さんから何か聞いてるかい?」
「んあ、聞いてないってゆーかどこにいるのかもわかんない」
170 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時09分54秒
名簿片手にごとーに問いかけてきたなっちの右手の薬指には
誕生日にごとーがプレゼントした指輪が光ってる。
ホントは左手にして欲しかったんだけど
なっちが『まだ早いべ…それに、恥ずかしいっしょ…』なーんて
言ってくれちゃってぇー!
そんなトコも最高プリティーで愛しのマイラブなんだけどさ♪

「藤本さん、また留年なんてコトにならなきゃいいんだけど…」
「…そーすると今度はまっつーと同学年か。
 それはさすがにキツそーだねぇ。んあ、でも美貴なら意外にノリノリでやってけるかも…」

「ヤってけないよ!ってゆーかもう2度と留年する気ないし!!」

んぇ?…その声は……?

「美貴!!」
「藤本さん!」
「美貴ちゃん!」
「あーはいどーもー、これお土産ね。
 ん?井戸さんの分ないし、あるワケないし。 
 アレ?かおりせんせぇは?夏バテ?あー暑いもんなぁー」
「ちょっと美貴!」
「ん?なに?」
「なにじゃないよ!今までどこ行ってたの?!」
「北海道。ほっかいどぉーはぁ…」
「デッカイドォ!!じゃなくて!
 …んあ?北海道?ってコトはおばあちゃんのトコ行ってたの?」
「うん。おにーちゃんたちにも会ってきた」
171 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時10分36秒
んあ…そーだったんだ。
久しぶりに見た美貴は両手にお土産の紙袋を持って
麦藁帽子を被り、首にはなぜか虫カゴを下げている。

「生チョコとか夏場はイヤかなーと思ったから
 ごっちんには岩ノリね、おいしーんだよぉコレ。
 でよっすぃーには木彫りのクマ。見よう見まねで美貴が彫ったヤツだけど」
「んあーありがとぉー」
ってごとーはいいけど美貴が彫ったクマってどーなの?
「ミキティーって名前まで彫ってあんじゃん!カッケェー!」
んあ…いいんだ。
「よっすぃーっておっぱい好きだから最初はワラで乳牛でも編もうかと
 思ったんだけどさー、アレって結構面倒くさいのねー」

間違ってる。激しく間違ってるよ美貴。
ワザとだな、絶対ワザとだろ黒美貴!

「ありがとね美貴ちゃん、大事に部屋に飾るよ!」

んあー…気に入ってるみたいだからいいのか、いいんだよ、いいんだってば。

「ってか美貴、まっつーの分は買ってきたの?」
「ほぇ?あ…うん……まぁ、そりゃね」
「もう渡した?」
「さっき、ママさんに渡した…」
「んあ!なんで本人に渡さないの!」
172 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時11分15秒
「だってもう学校に行った後だったし…。
 北海道に行くコトは事前にちゃんとママさんに伝えといたから
 亜弥ちゃんに心配かけてないよ!
 ……って、もう美貴の心配なんかする気ないかもしんないけど…」
「んなワケないでしょ!
 まっつーは美貴だけなんだから!」
「……………」

ごとーの言葉に小っちゃくなって俯く美貴。
すると木彫りのクマを大事そうに撫でてたよしこが
男前な顔で美貴の肩にポンと手を置いた。

「美貴ちゃん。もうさ、ウチとごっちんは美貴ちゃんも同じだって
 思うコトにしたんだ。美貴ちゃんが素直にハッキリ言うのなんて待ってやらない。
 亜弥ちゃんだけだって信じてる。
 文句があるならハッキリ言いなよ。
 文句がないなら勇気出して、亜弥ちゃんに告白しに行こう?
 一から始めようよ。0になるのが怖いならウチとごっちんが助けるからさ」
「………よっすぃー…」
「そーそー、今日これからスグとは言わないからさ
 なるべく早くハッキリ言っちゃってね」
「………ごっちん…」

よしこが触れてない方の肩に手を置いて
ごとーはニッと美貴に笑いかけた。


『熱い友情は青春の証……完璧です』
173 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時12分01秒
んあ?紺野じゃん、久しぶり。
新学期早々なによ?

『実は…今日コンコンおイモ商会本部でちょっとしたパーティーがあるんです』

いや、無理。なにがパーティーよ、怪しすぎる。
ってゆーか本部ってなに?あのほったて小屋のコト?

『失礼な。私の城を侮辱するとはいい度胸です。
 せっかく松浦先輩も来るから招待しようと思ったのに……』

ふぇ?まっつーも来る?!
ソレを早く言ってよ!行くに決まってんじゃん!
美貴も連れてっていい?ついでによしこも!

『…どーしよっかなぁー…』

んあ!お願い!怪しいって言ったの取り消すから!

『しょーがないなぁ、じゃあ学校が終わったらスグに3人で
 いらしてください。人数が多すぎても困りますんで
 それ以上は連れてきちゃダメですよ。それじゃ失礼します』

ありがとぉ紺野!!
こりゃーさっき今日じゃなくてもいいって言ったけど
今日で上手くいっちゃったりして♪
174 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時12分59秒
「んあ、美貴今日あいてるよね?」
「うん、どっか行く?」
「パーティー行かない?今紺野に誘われたんだ」
「今?今ごっちん携帯触ってたっけ?
 …まいっか、行くよ」
「よしこは?」
「ウチもいいけど…3人で行くの?」
「んあ、たまにはいいじゃん。ヤラシーコトばっかしてないで
 爽やかにパーティー楽しもーよ」
「…う……わかった」
「アハハ、爽やかなパーティーってなによぉー?」


先にまっつーも来るコト伝えた方がいいかな?
でも変に緊張させんのも悪いし。
とりあえず今日は仲直りを目標に。告白はまた今度でもいいからさ。

頑張ってね、ミキたん






んあ、キショっ。


175 名前:2学期は突然に。 投稿日:2003年09月04日(木)03時13分42秒
   
176 名前:のえる 投稿日:2003年09月04日(木)03時14分39秒
なんだかまたしても話が進んでないよーな…(申し訳
ダラダラしちゃってすいません。

レスありがとうございます。

>157 名無しさん
川;VvV)ノ□<なに?だからなに??
         ってか泣かないでよ、はいハンカチ。
次回、ヘタレ全開……かも。         

>158 つみ様
(*´ Д `)´ー`●)<アンダスタン、サンキュー!
177 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)03時52分38秒
なんか色々つっこみたい所があるんですけど…。
やっぱり熊が一番気になります(W
ミキティ器用だよミキティ。

さて、それにしてもあややにはっきり言うことはできるんでしょうかね。
続き期待です。
178 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)05時05分04秒
(T-T)ノ□<ありがとう。本人立ち直ってるのに
        こっちが泣いててもしょうがないね。
(・∀・)<でもハンカチ借りちゃった。もって帰っちゃおうかな

大将、こっちにもラーメンお願い。あとマグロ水ね。
179 名前:つみ 投稿日:2003年09月04日(木)15時38分19秒
ツルパパさんヤシガニ30匹って・・・
このパーティーはやばいでしょう・・

なちごま不足っす今・・・・
180 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時33分20秒

「…ここ?」
「うん」
「…………」
「ふぅーん、結構イケてるじゃん。
 ただなんでボールペンなの?って感じだけど」

放課後、ごとーたちはなっちに見送られてコンコンおイモ商会へやって来た。
だけどいざ入ろうという時あまりにも怪しすぎるほったて小屋の外観に
よしこは言葉を失くし、美貴は興味深そうに立掛けられた看板に見入る。

「アハハ!なにこれ?!下の方に“おイモフォーエバー”って書いてあるよ!
 しかもなんでコッチはサインペンで書いてあんのー?
 コンコンおイモ商会よりコッチのが目立ってんじゃん!
 意味わかんなぁーい、アハハハハハ!」
「…………」
「んあ…そんなデカイ声出すと……」

ガラッ!

「やい、ごよっとう。
 そんなところで騒いでないで早くお入りください」
「ホラやっぱり……ってん?ごよっとう??」
なんじゃその聞き覚えがありそうでなさそうな上に耳障りなネーミングは。

「後吉藤でごよっとうじゃないですか。
 さぁ早く、皆待ってますよ」
「えぇーなんで美貴“とう”なのー、フジにしてよぉー」
「ごよふじはなんとなくダサいので却下です」
「ぶぅー」
181 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時34分20秒
いやいや、今はそんなのどうでもいいから入るとしよう。
皆ってコトはまっつーももう来てるんだから!

「ごっちん、皆って小川たちのコト?」
「んあ、そーよ。それに加えてぇー…」
「後藤先輩!お久しぶりです!あ、吉澤先輩に藤本先輩も!」
「よぉっす小川ー、まだ童貞なんだってぇー?」
「へぇー小川ちゃん純だねぇー」
「んなっ!?べ、別にいいじゃないですかそんなの…!」
「よくないクセにぃー、ウチが色々教えてあげるよ。
 同じ年上の彼女を持つ先輩としてさ」
「お、美貴も教えようかぁ?」
「……え…?」
「ナハハ!大人にしてやるぜ!」

中に入るとテーブルの上を片付けてる小川がいて
まっつーの姿はない。

『奥のキッチンで高橋先輩と煮物を作ってるんです。
 そろそろ高橋先輩だけ出てきますんで
 藤本先輩をキッチンに放り投げちゃってください』

んぇ?もう2人っきりにすんの?
いきなりすぎない?

『変に皆の前で晒しご対面させるよりはいいと思いますが』

それもそうか、オッケー了解した。
182 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時36分34秒
「いいか小川、部屋でベッドに凭れかかって座ってる場合は
 まず肩を抱いて名前呼ぶだろ、で振り返ったとこにブチュっと…」
「あーでも小川ちゃんたちみたいに初心者同士な場合は
 いきなりそこで口にキスすんじゃなくて
 そっと前髪をかきあげておデコ・こめかみ・ほっぺた・鼻・口の順に
 軽く口付けてったほーが…」
「なるほど、そーやってるウチに緊張がとけてムードが出るワケね」
「そーそー、高橋ちゃんっていきなりヤると
 ビックリ顔のまま固まっちゃいそーじゃん?
 だからそれを小川ちゃんがほぐしてあげないとねぇ」
「えぇー、私だって緊張したいですよぉ」

んあ、よしこはグッジョブだけどなんで美貴まで一緒になって
レクチャーしてんのよ!アンタそんなコトしてる場合じゃないし
人に教える前に自分のコトちゃんとしなさいよね!
183 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時37分20秒
カラリ。
「あ、後藤先輩お久しぶりやよー」
「今です!後藤先輩!」
「んあ!美貴!!ビシっと決めてきなさい!!!」
「でぇーそっと背中を撫でつつ体を斜めに…ってどぁああ!?!」
パタン。
「んなっ!?ごっちん、なにしてんのいきなり!」
「んあ!いーの!よしこと小川もこっち来て!
 皆で見守るのよ!!」
「へ?なにを?」
「んあ!黙って見守る!」


◇◇◇


184 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時38分18秒
後藤たちがまるで団子5兄弟のような体勢で
ドアの隙間から覗いているキッチンの中では――――


「どぁああ!?!………ぇ?…えぇえ!?」
「っ…………」

後藤に突然投げられて床に這い蹲る藤本と
竹串で鍋の中身を突き刺していた松浦が、約2ヶ月ぶりの対面を果たす。

「…亜……弥ちゃん…?」
「……………」
「…あ、え、な…んでここ…に?」
「…………愛ちゃんに、誘われて…」

『んぉ!美貴ちゃんホワイトですか…っ!』
『ほぁ〜、てっきり黒かと思とったけど
 意外に清楚なんはいとるんやなぁ』
『んあ!静かに!』

起き上がるコトもせず目を見開いて松浦を見上げる藤本のスカートは
さりげなく捲れあがっていて、覗き5姉妹には純白のパンツが丸見えだった。

「そっ…か。…ぅー…っと、なに作って…」
「北海道……行ってたんだって?」
「…あぅ?う、うん。さっき、おみみやゲッ…ママさんに渡シシマイだキャら…」
「うん。ありがとぉ」

一見和やかな空気が流れているようだが
藤本は体中から噴出す冷や汗にプルプルと震えている。
おまけに日本語も大分変だ。
185 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時39分11秒
「おばあちゃんたちに会ったの?」
「はぇ?!あ…アタタタ…っ会った、ったよ、うん」
「…そう」
「あ!ヤ…だよね?ごめん美貴気づかなくて…
 出てくね!おおおお邪魔しまし…」
「…じゃないよ」
「ぬぇ?」
「ヤじゃないよ。……会えて、嬉しい」
「…………そ、そうですか…」

『ねぇ、誰あの人?ホントに美貴?』
『う〜ん初めて見る生命体だね。ヘタレミキティ、略してヘタティと名付けよう』
『ヘ、ヘタティ…』
『ネギのぬたみたいな名前やよー』
『えぇ?!どこがヌタなのさ、タしか合ってないよ!』
『またはオロティ、完璧です』

「…………………」
「ねぇミキたん」
「ほぁ?!はい!?なんでしょう?!」
「……味見頼んでいーぃ?」
「は…?ぁ、毒…じゃなかった味見ね、うん、いいよよぅ」
「はい、あーん」
「あー…」

『んあ、こーゆー時はやっぱ女の方が強いよねぇ』
『いや藤本先輩も女だと思うんですけど…』
『あ、間違えた。白い方が強いんだ』
『はぁあ、なるほど』
186 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時40分28秒
「おいしい?」
「う、うん。コレ…ジャガイモ切ったの亜弥ちゃんじゃないよね?」
「…うん。愛ちゃんが切ってくれたんだよぉ」
「……高橋ちゃんか。
 この独創性溢れるカッティングをしたのは…」

『うへぇ、愛ちゃんどーゆー切り方したの?』
『………ノ、ノーコメントやよー…』
『んあー形は妙だけどおいしそーだねぇ。
 そーいやさぁ、こないだなっちにマリーアントワネットがジャガイモの髪飾り
 してたって聞いたんだけどホントなの?』
『えぇ!?ジャガイモの髪飾りぃ?!
 ちょっと前にごとー先輩が被ってた生ゴミの塊をフランス王妃がぁ?!』
『んあ!アレはコンオガヤヨーが勝手に被らせたんでしょーが!
 ごとーが趣味で被ったみたいに言わないでよ!!』
『後藤先輩!なんで私だけ訛りなんですかぁ!コンオガタカーでええやろにぃ』
『あの時自分でヤヨーって言ってたじゃん!』
『ほやからってぇ!』
『ちょっと皆、声でかいって…』
『黙れ』
『『『『…ヒッ!?…』』』』
187 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時41分27秒
「ミキたん?暑い?汗いっぱいだよ」
「あぁややや暑いんじゃなくって…その……だからつまり…り、り…」
「リンゴ?」
「…ゴリラ」
「らっこ」
「こまいぬ」
「ぬらりひょん……あ…負けちゃった…」
「ア、アハハハハ…」
「えへへっ」

『いいですか、南アメリカで生まれヨーロッパに渡ったジャガイモは
 毒があるという風説の為なかな広まらず
 食用としてよりもジャガイモの花が人々の興味を集めたんです。
 ですからその花がマリーアントワネットの髪飾りに使われたんでしょう。
 花の写真ありますよ、ほら』
『…んあ、なんか変な形だねぇ』
『ホントだ、チ○●みたい』
『えぇー見して見してぇー』
『なっ!?どこがチ○●ですか!全然普通の花ですよ!
 愛ちゃんの前で変なコト言わないでください!』
『まことぉー見してぇー』
『いやぁこの突き出す感じがそれとなく…』
『黙れオッパイマン!!』
『んあ、ってコトは梨華ちゃんのチ○●ってこんなんなんだぁー』
『ひょぇ!?いやそーゆーワケじゃ…』
188 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時43分15秒

もはや見守るコトも忘れ、5姉妹がおっぱい談義…ではなくジャガイモ談義に花を
咲かせる頃、キッチンではようやく藤本の体から緊張がとけ始めていた。
いざ謝ろうと覚悟を決めて、真剣な目で松浦を見つめる。

「えーと、さ、こないだの…コトなん…」
「あたしね」
「ぁう…?」

しかし話しだそうとした矢先に、松浦の少し強い声に止められてしまった。

「まだ、今は無理だし、これから先も
 やっぱり無理なのかもしれないけど……でも、頑張るから」
「……え?…なに…を?」

穏やかな笑みを浮かべる松浦の言葉の意味が掴めない。
藤本は恐る恐る目の前の手を握ってみた。
久しぶりに触れたその手は、夏だというのにひどく冷えていて
自分の熱で溶けてしまいそうだ。
189 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時45分37秒
「1番近くにいられなくてもミキたんが幸せならそれでいいって
 ちゃんと心から思えるように、頑張るから」
「亜弥ちゃん…?」
「だから、気にしなくていいよ、あたしのコト。
 ミキたんは1つも悪くなんてない。
 今まで傍にいてくれて、ありがとね、ミキたん」
「………………」

何を言ってるんだろう。
何を言わせてるんだろう。
美貴が気持ちを伝えてれば、悩ませるコトなんてなかった。
今すぐ叫んで抱きしめれば、きっと全部元通りになる。

わかってるのに、わかってるのに。
どうしてこの口は動かない?
どうして声は出てくれない?


松浦の手を引っぱって、抱きしめるコトはできたのに
藤本は何も言えなかった。
190 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時46分27秒
「へへへっ、やっぱいいなぁミキたんの腕の中。
 離れたくなくなっちゃうね」
「…………」
「なーんて大丈夫だよ、ちゃんと離れるから。
 隣の部屋にごっちんたちもいるんだよね?
 そろそろお料理運ばないと怒られちゃう」
「…ぁ……まっ…」
「最後にいっこだけ」
「…ぇ?」

「どんなに離れてても
 一生、あたしはミキたんのコトが、好きだよ」


「………亜弥ちゃん」

やっとまともに声が出た時には、松浦はスルリと藤本の腕から離れ
煮物を盛り付けた器を持ってキッチンを出ていってしまっていた。


「…っぁー……ぅー……」


◇◇◇


「でもチ○●やとしたらこの先端から飛び出てる白いのは
 どー説明するんです?」
「んあ、ぼにゅーでいいんじゃないの?」
「あぁもう!愛ちゃんは見ちゃダメって言ったじゃんか!」
191 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時47分11秒
「まこっちゃん、仲間はずれなんてよくないよ」
「いや、そーゆー問題じゃ…」
「うわー小川のイジメっ子ぉー、やっぱS〜」
「なにをぉ!?大体吉澤先輩がヤラしいコト言うから!」
「あはっ、よしこって最近変態化してきたよねぇー」
「最初は唯一の常識人キャラやったのに…」
「ま、そうでもありませんでしたけどね」
「んだとおが…って……亜弥ちゃん!」

んあ?おぉう!まっつー!いつの間にこっちに?
ってゆーかアレ?ごとーたち見守ってたハズなのに……

「あ、あの、まっつー、美貴は?」
「キッチンにいますよ」
「んあそーじゃなくて…仲直りとかは……?」
「ふふっ、やっぱりごっちんたちが仕組んだんですね。
 ミキたん焦っちゃって可哀想でしたよ?」

えぇ、そーでしたね。
ごとー的には可哀想っていうより面白かったけど。

「でぇ、仲直りできたん?」
「美貴ちゃん、ちゃんと言った?」
「…いきなりだったし、無理させたくなかったんで
 止めておきました。
 ミキたんは謝ろうとしてくれたんですけど」
192 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時48分19秒
「えぇえ!?止めたの?!」
「はい。で、勝負に出てみたんです。あたしなりに色々考えて…。
 ミキたんのコト、諦めるつもりなんてサラサラないですし。
 この世で1番あたしがミキたんのコト愛してますから」   

おぉお…言うねぇ…ってか勝負?
まっつー何したっての?
そーいや美貴出てこないけど……まさか押し倒したりとか…

「亜弥ちゃん勝負ってなんやの?」
「へへっ、内緒。お料理もできたしパーティーしようよ!
 ね、紺ちゃん♪」
「えぇ、そうですね」

んあ!紺野!アンタは見てたんでしょ!
まっつー何したの?
美貴は無事なの?ねぇってば!

『そんなに気になるのならご自分でお確かめください。
 私はなによりこの世でおイモが好きなんです』

やっぱりね!教えてもらえるなんて思ってないもん!フン!
よしこ行くよ!…ってまだ小川とおっぱい談義しとんのかい!
いいもんいいもん!1人で行くもん!
なっちのチ○●はそんな花より100万倍かわいーんだから!!


「美貴!」
「……ぅー……ぅー……」 
193 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時50分22秒
え…誰この人パート2…?

キッチンに飛び込んだごとーの目に映った美貴と思われる人物は
背中を丸め膝を抱えてぅーぅー言ってる。

「…美貴?どーしたの?
 なんか勝負かけられたらしーけど…大丈夫?」
「ぅー…」
「……壊れたのかな?」
「うー」
「なによ?パーティー始まってるよ。
 お腹すいてるでしょ?あっち行こうよ」
「うぅ…」
「んあ!だからうーじゃなくてぇ…」

「好きだよ…」


・・・・・・・は?

「美貴?…ぇ?ごとーのコト?」
ポ。いやん、ダメよそんなのごとー困っちゃう。

「好きだよ……亜弥ちゃん…」

ふぉぇ?亜弥ちゃん?まっつー?
好きなの?そりゃ好きよね、うん。でも待ってなんでごとーに言うの?
なんでごとーの肩に手置いてんの?ちょっと…そんなに見つめないでよ!
なんか顔が接近してくんのは気のせい?
誰かぁ!助けて!黒美貴がごとーの唇狙ってるぅー!!
194 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時51分34秒
「いやぁあああー!!!」

ピタ。

「ハッ!…っうわぁ!?ごっちんナニしてんの?!」
「んあ?ナニしてんのはこっちの台詞だよ!
 美貴がいきなりごとーに告白してキスしよーとしたんでしょーが!」
「えぇ?!美貴がごっちんにぃ?!」
「まっつーと間違えてたみたいだけどね」
「っ!?………ぅー…」
「んあ、うーはもういいから」
「……ぉー…」
「美貴ったら『好きだよ……亜弥ちゃん…』ってそれはそれは
 熱い眼差しで言ってたねぇ」
「…ぐ…」
「告白できたじゃん、ごとーにだけど」
「あぅ…」
「気持ち、すっごい伝わったよ。ごとーにだけど」
「……………」

「 ご と ー に だ け ど 」

「っ!うるさいな!!
 テンパってたんだからしょーがないじゃん!
 亜弥ちゃんがいるならいるって先に言ってよね!
 メチャメチャびびったよ!」
「んあ、ごめんごめん。
 んじゃ改めてまっつーに告白しよーか。
 呼んでくんね」
「へ…待って!無理!絶対無理!」
「何言ってんのー、今言えたじゃん。ごとーにだけど」
「しつこい!」
195 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時52分36秒
「だってホントのコトでしょ!
 なんでごとーに言えてまっつーに言えないの!
 まっつーは美貴のコト裏切ったりしないってわかってんでしょ?!
 何をそんなに怖がる必要があんのさ!」
「そ、それは………」

んあ、顔を赤くして俯いたって無駄です。
ごとーはこのお耳で確かに美貴の告白聞いたんだから。

「その…怖いってゆーより……なんか…」
「なによ?」
「恥ずかしい…かも」

はぁあ!?恥ずかしいだとぉ!!?
この期に及んで!この期に及んで黒美貴が恥じらいを覚えるなんて
どーゆーコトですか総理?!
ポリープとったって聞いたけど体の具合はいかがですか総理?! 

「ってそーじゃなくてぇ!!
 なにが恥ずかしいよ!黒美貴のクセにシャイシャイガール気取ってんじゃないよ!」
「別に気取ってなんかっ…!
 …ホントに恥ずかしいんだよ……。
 だって美貴…人に告白なんか、したコトないし……」

・・・ないの?ないのか……でもそんなの関係ないよ!
まっつーは散々美貴に告白し続けてんだよ?
どんだけ美貴の為に恥ずかしい思いしてると思ってんの!
196 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時53分16秒
「ったく!呼んでくるかんね!」
「ヤダ!言えないもん!絶対言えない!!」
「んあ!駄々こねるな!」
「美貴帰る!言えないモンは言えないんだから!」

黒美貴アホ美貴クロミキー!!帰ったら意味ないでしょーが!
結局仲直りもちゃんとできてないんでしょ?
乙女組だからって乙女になってる場合か!!

「ごっちーん、なに騒いでんのー?」
「んあ!よしこ!まっつー呼んで!早く!」
「あ、うん。亜弥ちゃーん」
「おら!美貴!……んあ?美貴?」

なんでおらへんねーん!!
んあ!窓が開いてる!


「逃げやがったな黒美貴ぃー!!!!!」
「はぁい、なんですかぁ?…あれ?ミキたんは……?」





んあ……大変申し訳ございません。 


197 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時54分03秒
   
198 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時55分00秒




この時ごとーは1ミクロンも気づいてなかった。





これが、黒美貴との、最後になるなんて――――――――――――――――



199 名前:この世で1番好きな人。 投稿日:2003年09月06日(土)02時55分32秒
   
200 名前:のえる 投稿日:2003年09月06日(土)02時57分25秒
ジャガイモの花に関する発言は吉澤さんの個人的なモノですので、あしからず。
えーと…ごめんなさい(爆

レスありがとうございます。嬉々。

>177 名無しさん
この話につっこみ出したらキリがないので…(爆
川*VvV从<えへへ、ありがとぉ。
( ´ Д `)<んあ、かなりいびつな熊だけどね…。
制作時間:7分の力作。

>178 名無しさん
川VvV从<別にいーけど…それでゲロ拭いたよ。
  ∫∫∫∫∫∫
     _________
     \回回回回回回回/
   ___ \         /
 c2___ヽ \ __ /
  ∬∬´▽`)ノ |___| 目 <ヘイ!まいど!アジワテクダサーイ……ん?マグロ?
从从;V)<いや、マグマだから。

>179 つみ様
えー…やばくなくてすいません。
不足ですか……えーと…ごめんなさい。

遅すぎで申し訳。
久しぶりに分類板を覗いたらあやみきで紹介していただいてたようで
おふぇんすの方も、紹介してくださった方々本当にありがとうございました。
201 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)03時34分23秒
まあ吉澤さんの意見=作者さんの意見ってことで(w
それにしても最後の一行が気になります。
藤本さんはどうなるんだぁぁぁ!
202 名前:つみ 投稿日:2003年09月06日(土)07時10分06秒
黒美貴との最後・・・?
いったいどうなるんだぁぁぁ!!

小高吉後はどんな会話してんだ?
203 名前:178 投稿日:2003年09月06日(土)07時49分23秒
>>200
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
つ[5000]<大将旨かったよ。お代はここ置いとくね。

予告どおりヘタレ全開。かわいいかも。スカートの中も・・・(^-^;
最後の一行。わくわくしますね。
204 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)13時39分38秒
黒美貴との最後って??????
どうしちゃうんですかミキティ!!!
気になって寝れないよー。
205 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年09月06日(土)21時18分08秒
今日、初めから一気に読ませていただきました。
…モエー!!!!
しかもなちごま、おがたか、みきあやなんてめっちゃツボです。
こんなおもしろい作品を逃がしていた自分が情けないです…。
ミキティが気になります。更新頑張って下さい。
206 名前:  投稿日:2003/09/10(水) 01:48




 さよなら サヨナラ さよなら。


 忘れない。 忘れられないよ。 忘れるもんか。    


 出会えたあの日を。 一緒に過ごしたあの日々を。


 いなくなったんじゃない。 もう2度と会えないんじゃない。  


 いつまでも、心の中に。


 生まれ変わっても、ずっと、ずっと――――――――――――――――





207 名前:  投稿日:2003/09/10(水) 01:48


208 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:49

「皆おはよう、今日はカオリが体調不良でお休みっしょ。
 …む?また藤本さんがいないのかい」
「んあ…」

はい、おはよー。
聞いてくれる?ごとーの話。
ってか嫌って言われても勝手に話すんだけど。

昨日さー、黒美貴のドアホゥが窓からゲラウェイしやがったでしょ?
ごとーとしてはそれが非常に許せないのよ。
全国に表明したいの、ミンナのミ〜♪……じゃなくて遺憾の意を。

大体恥ずかしいってさぁ!
美貴今まで散々恥ずかしいコト平気でしてたじゃん!
まっつーあの後開けっ放しの窓見て
『もっといっぱい食べて欲しかったのになぁ』って淋しそうに笑ってたんだよ?

ごとーだったら笑えないよ!!笑えるワケないよ!
パーティーの料理はどれも見た目はともかく最高においしかったのに!
おまけに学校にも来ないなんて何考えてんだんあぁぁああー!!!

ガラッ

「べさ?…藤本さん!ギリギリセーフだべ」
「………」
「んあ?来たの?ってかなんで黙ってんの!
 なっちにおはよーって返しなよ!」

礼儀知り尽くしたんでしょマナー部!…んあ!?マナー部ってなにぃ?!
209 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:50
「………」
「む?気分悪いのかい?あんま無理しちゃダメっしょ。
 とりあえず座るべさ」
「………」
まーだ黙りん子かい!なんなのよ最近の黒美貴は!
「ごっちん、なんか美貴ちゃん顔赤くない?
 見てよあのほっぺ、チークの使い方ミスったみたいになってる」
「ほぇ?…んあー…言われて見れば…」

来たかと思えばうーとも喋らず、フラフラと昨日さりげなく行われた席替えで
新しく決まった窓際の真ん中の席へ腰掛ける美貴。
その姿を隣の席から睨んでいたごとーに後ろのよしこが耳打ちしてきた。
言われてみれば机に肘を立てて俯いてる美貴の顔は確かに赤くて
目もなんだか潤んでる。

「熱でもあるのかな?でもそれなら休むか…どーしちゃったんだろ?」
「美貴ー?美ぃー貴ぃー」

さっきまでの怒りはどこへやら、だんだん心配になってきたごとーは
何度か話しかけようと小声で呼んだんだけど
聞えてないのか無視してるのか一向に返事が返ってこない。 

「じゃあこれで朝のショートは終わりだべ。
 でも1限目は世界史だからなっちは職員室に帰らねぇっしょ」
「ハハン、ではこれから後藤さんとのラブラブタイムですね」
「なっ!?何言うべか井戸さん!
 そんな…破廉恥タイムなワケねぇっしょ!」
「またまたぁー」
「べ、べさ!」
210 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:51
「ごっちん…美貴ちゃんて昨日ごっちんに告白して逃げたんだよね?」
「…んあ」

美貴の逃亡直後、捕まえに走ろうとしたごとーを
まっつーが止めて美貴がいないままパーティーは始まった。
それでも最初はみんな美貴の行方やまっつーを気にして大人しかったんだけど
いつの間にかえらい盛り上がっちゃって…(だって小川モノマネ上手いんだもん)
ごとーはすっかり美貴のコトを忘れて家に帰った。

で、家に着いた瞬間『んあぁ!?美貴!!』ってなって
慌ててよしこに電話してキッチンでのコトを話したんだ。
だけど『それなら1晩くらいそっとしといた方がよくない?』ってゆー
よしこの意見で“深夜の大捜査線、ミキンボーブリッジを封鎖せよ”って話にはならず
現在に至るワケで………

「なんか…あったのかな?」
「さぁ…でも学校にちゃんと来たってコトはもう逃げないかも。
 まっつー呼んでみる?」
「いやぁーこの様子だとまた逃げちゃうんじゃない?
 だってなんかプルプルしてるし…怯えてるっぽいよ?」
「怯え……って何に?まっつーに?」
「亜弥ちゃんに会うのも恥ずかしくなっちゃったとか?」
「……んあ、まさかそれで顔が赤いとか…?」
「ごーっちん!」
「ひゃっぁ!?」

うぉう!?いきなりな…ってなっち!
アイラブユー!!
211 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:51
「待て待てごっちん。ラブりたいのも激しくわかるけど
 今は待ちなって。美貴ちゃんなんとかしないと…」
「んあ〜なっち〜どうしてそんなにキャワイイの?
 今日ね、ごとーね、なっちと海で遊ぶ夢見たんだぁ♪
 なっちピンクの水着着ててね、なんか…ムフフ…大きくって……あはっはあとはあと」
「大きい?なにがだい?」
「ぉーぃごっちーん…」
 
ナニって…ナニってその……。
いや、そんなに何回も見たワケじゃないけどさぁ
日々なっちも成長してて進化を続けてるんだなっていうかぁ
まーでも夢だったしぃ、現物はいかがお過ごしなのか早速チェックしたいんだけどぉ♪

「やぁ!…ちょっ!…ごっちんここ教室っしょ!」
「んあー、フムフムなるほど…」
「あっ…んん、もっ…ダメぇ」
「正夢だったのかな?現物もなかなか…」
「ふぁぁ、はぅ…んっ、んん!吉澤さん見てないで助けてぇ!」
「………ハッ!ごっちんいい加減にしなって!」
「んあー!邪魔すんなよしこぉ!
 彼女のボディーチェックしてなにが悪いんだよぉ!
 よしこだって毎日欠かさずヤってんでしょ!」
「んなっ!?毎日は無理だよ!
 ってかボディって言うか明らかに一点狙いじゃん!
 それに先生の艶かしい声皆に聞かれてるけどいいの?!」
「んぇ?」

んあ!しもたぁ!ごとーだけのMIDARAなっちボイスが
皆様の耳元にぃ!!
返して!ごとーのなっち返してよ!鼓膜ごと返せぇ!!
212 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:52
「フフフ…録音大成功……」
「んあ!もっぺん入院さすぞバタ子ぉ!!」
「スイマセンごめんなさいカエシマス削除しますモウ2度トシマセン」
「んあ、わかればよろしい!」
 ……なっち、いきなりごめんね?」
「……………ごっちんのスケベ」
「だってぇ、好きなんだもん」
「………今度からは、人のいるトコでヤっちゃダメっしょ」
「うん、2人っきりの時にたっぷりしよーねぇ」
「……うん」

「いや、だからあの……ごっちん、美貴ちゃんが…ねぇってば…」

愛を止めないで。
ごとーとなっちの萌える恋を止めないで。

「おーい………チャイムも鳴ったんだけどぉー…」
「べさっ!?授業しなきゃだべ!
 ごっちん、ごめんね。なっち行かないと…」
「んえぇー行っちゃうのぉー」
「…むぅ、そんなコト言わないでぇ」
「だって淋しいもん」
「………」
「いやいやお2人さん、行かなきゃって教卓にじゃん?
 この教室で授業やるじゃん?
 ウチなんか見てよ、放課後までずーっと梨華ちゃんに会えないんだよ?
 ってゆーか最近梨華ちゃんの出番無さすぎじゃない?
 小川とかのが多いってどーよ?梨華ちゃん出し(諸事情により以下略」
213 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:53

「んあ、じゃあなっち、頑張ってね」
「うん!今日は夏休みの宿題で出した問題をクイズ形式で
 ランダムに出題してくべ。
 くれぐれも教科書やプリントを見ないように、机の上のモンは全部しまうべさ」
「はぁーい!」

あはっ、クイズかぁなっちの授業って楽しいね。
よぉーしごとーハリキって全部答えちゃうぞぉ!!

「第1問!1682年に登場した身長が2メートルもあるロシアの…」
「んあ!ピョートル1世!」
「の、趣味は?」
「んあ!歯を抜くコト!」
「ピンポーン♪
 では第2問!日独伊三国同盟締結時の日本の首相は?」
「んあ!綾小路…じゃなくて近衛文麿!」

んあ!なっちに喜んで欲しくて夏休み一生懸命勉強したおかげだね!
ごとーったら賢いじゃーん♪

「ピンポー…ってごっちんしか答えてねーべ!
 早い者勝ちなんだから皆ももっと積極的に答えるべさ!」
「でもごっちんが早すぎるんですよぉ」

イッヒッヒッ、愛のパワーは高速ハリケーンなのよ!
他の奴になんて答えさせてやるもんか!
214 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:54
「…それもそうっしょ、じゃあ次はごっちんお休みね」
「んえぇ!?なんでぇ!ごとーのコト嫌い?」
「んなワケないっしょ!でも…他の子もちゃんと夏休み勉強してたか
 チェックしないといけないし、こっからはなっちがあててくべ。
 吉澤さん、イデア論の内容を40字以内で説明してみて」

ぐすん。仕方ないね。
なっちの生徒はごとーだけじゃないんだし…。
でもでも!恋人はごとーだけなんだから!

「えぇ!?40字ぃ?!厳しくないですかそれ?」
「慶応の問題は短文論述は字数制限が厳しいのが特徴なのさ。
 ホレ頑張って」
「…はぁ…えーっと…『感覚でとらえる現実の個物ではなく、理性で
 とらえられるイデアを真の存在とする。』…でいいかな?」
「うん!ピッタリ40字、完璧っしょ!
 …では続いて藤本さん、ソ連共産党第20回大会について
 60字以上70字以内で説明するべさ、フン」

…んあ?どーしたの?

気のせいかもしれないけど、美貴に出題したなっちの声には
微量の不機嫌さが含まれてて、よしこのに比べたら問題は特別難しくはないけど
いきなり70字以内って……なんか長くない?
数えながら答えるの最高にメンドいよ。しかもフンって…。

ねぇ美貴、まさかなっちを怒らせるよーなコトしたんじゃ…ってんあぁ!
どこ見てんだよ!なっちの授業中にヨソ見とはケンカ売っとんのかいワレー!!
215 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:55
「…………」
「んあ!美貴!」
「…………」
「……美貴?」

もう俯いてはいないのに、美貴は窓の外に目を向けたまま。

ちょっと、どーしちゃったの?あてられてるよ?
早くなっちの問題に答えなさいな。

「藤本さん、わかんないのかい?」
「美貴ちゃん?聞いてる?」
「…………」
 
なっちの声もすっかり心配そうなモノに変わって
よしこだって優しく優しく尋ねてるのに、それでも美貴は答えない。

「ごっちん、美貴ちゃん何見てんの?」
「さぁ……んあ?あれ…高橋?」
「へ?どれどれ?…あーホントだ、体育やってんね」

美貴の視線の先を確かめようと、ごとーは席を立って窓の外を覗いた。
すると下のグラウンドに何人か知らない子たちと一緒に走る高橋の姿が。
Tシャツに短パンな格好からして体育の授業中らしい。

「え…ってコトは高橋のコト見てんの?
 なっちやごとーに話しかけられても気づかないぐらい熱心に」
「……いや、高橋がいるんだから当然どっかに…」

んあ!!まっつーだ!
216 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:56
「おーいたいた、これから走るみたいだね。
 50メートルかな?あやや頑張れ〜」

ゴールにいる高橋からよしこが指差す方に目を向けると
スタートラインで手を前についてお尻をプリンと上げてるまっつーがいた。
おぉなかなか上等なおし…って違う!断じてそんなコト想ってないよ!

「ままままっつーのコト見てたのね。
 かわいートコあんじゃん。そ、そんな赤い顔でさぁ」
「ごっちん?なにどもってんの?…ぐ!?…ぅ…苦し……」
「…………」

からかってもやはり反応しない美貴。
ごとーがよしこの首を絞めていると、グラウンドでは
アンタ誰って感じの体育教師が旗を上げてまっつーは走り出した。

今日は天気がいいなぁ。
青い空の下、短パンから伸びる足が輝かしいよ。
やっぱまっつーは白いねぇ。



――――しかし

「んあ、危ない!」

キラキラしながら快調に走っていたまっつーが
突然バランスを崩して――――

「あああぁぁぁあああ亜弥ちゃん!!!!」
「ふぇ?ちょっ美貴!…ぇぇえ!?」
217 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:56
転んだ瞬間、美貴は大きな声を出して物凄い勢いで立ち上がり
すばやく窓を開けるとそのまま外へ飛び出していった。

「……ここ、3階……」
呆気にとられたよしこの声。

んあ?そーだよ、そーじゃん、ここ3階じゃん。



………ってコトは今美貴は3階の窓から飛び降りていったと?



「んあー!!死ぬ気かアホー!!!」
「美貴ちゃぁああん!!」

慌ててごとーとよしこは窓に駆け寄る。
その背中にどんどん他のクラスメイトも集まった。

「うぉるぁああああああー!!!!!」

なっ!?ありえない!ありえないよマジでぇ!
んあ!今日もパンツが白い!…じゃなくてぇ!!
垂直だよ!壁を垂直に走ってるよ!

胸まで外に出して下を覗き込むと
信じられないコトに美貴はドスのきいた叫び声を上げながら
校舎の外壁を垂直に駆け下りていた。
218 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:57
「ああああ亜弥ぁあああああー!!!!」
「み、美貴ぃ!!誰か!誰か美貴を助けてぇー!!!」

そう叫ぶも、下の階から聞えるのは、パリーンという窓ガラスが
駆け抜ける美貴の足によって割られる音や悲鳴だけ。

「ダメだ!このままじゃ地面に激突する!!」
「そんなっ!美貴ぃー!!!」
『ちっ!緊急事態ですね、ポテト雲じゃ間に合わないし
 かくなる上は!』

んあ!紺野頼むよ!
絶対に美貴を助けて!死なせたらタダじゃ済まさないぞぉ!!

だけど美貴はもうその紺野のいる1年のクラスの窓を
割りにかかっていて――――ダメだ、間に合わない―――――――


『先生ごめんなさい!いでよ!プリメーラ&ダブルベェッ!!』





ドゴォオオォオオオォオオオーン!!!!!!!!!




219 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:58
「美貴!!美貴ぃー!!!」
「美貴ちゃぁん!!!」
「藤本さぁん!!!」

窓から落ちそうなぐらい、上半身全部窓の外に出して
ごとーは力の限り大きな声で叫んだ。
よしことなっちも、後ろのみんなも叫んでる。
下からは相変わらず悲鳴と、そして―――――――

「いやぁあああ!!プリメぇーラぁ!おまけにベッドまでぇぇえ!!」

地面に激突する美貴を受け止めるべく
紺野によって一瞬で現れ原型を失ったベッドとプリメーラを
すぐに自分のモノだと判断できたいい子のみっちゃんはある意味すごい。
それだけに可哀想だ、可哀想だけど……

「美貴は?!なんでいないのぉ!?!」

真っ二つに割れた紫のベッドとその下でペシャンコになってる
プリメーラから、美貴がそこに落ちたコトは明らかなのに
美貴の姿はどこにも見当たらない。

「んあ!こっからじゃ何もわかんないよ!
 よしこ!下に行こう!」
「うん!!」
「…っ待つべさ!あそこ!!木のトコにいるの藤本さんでないかい?!」
「え?…あぁ!!美貴だ!そうかベッドで跳ねたんだ!」
220 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:59
なっちが見つけた美貴は、校舎とグラウンドの間に4メートル間隔ぐらいで
生えてる木のうちの1本にグッタリと凭れかかってた。

「美貴ー!!」
「ミキたぁん!!」

んあ!まっつー!!
下でさっきすっ転んでたまっつーが美貴の元へ駆けてきた。

『後藤先輩!ポテト雲呼びました、すぐ来ますから
 それで降りてください!』

ポテポテポテポテ…

「んあ!来たぁ!よしこなっち、乗るよ!」
「へ?…うわぁ!ウチ乗れないよぉ!」
「きゃぁあ!なんだべかこれはぁ!?」
「美貴ぃー!!!」
つべこべ言ってる場合かどりゃぁあー!!

「美貴!」
「ごっちん!!ミキたんが!ミキたんがぁ!!」

下に着くとまっつーが美貴の肩にしがみついて泣き叫んでる。
よく見ると美貴の頭からは血が流れてた。

「意識は?頭打ってるから揺すっちゃダメだよ!」
「…は、はい」
「美貴!ごとーだよ!美貴!」
221 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 01:59
「………ぁ……ゃ……」
「ミキたん!?」
「んあ!意識あるよ!ってか誰か救急車呼んだ?!」
「今吉澤さんが電話してるっしょ!」
「美貴!救急車すぐ来るからね!」

苦しそうな声。眩しそうに目を開いて探るように
まっつーに伸ばされる美貴の手も傷だらけで真っ赤になってる。

「…亜弥ちゃ………怪我……ない…?」
「え…?」
「さっ、き…転ん……だ…じゃん……血…出てない……?」
「っ!大丈夫だよ!ちょっと擦りむいたけど
 血は出てないから!!」
「………そ……か……よかっ…たぁ…」

そう言った美貴は本当に安心したって顔で笑った。
愛しそうに、愛しそうにまっつーのほっぺたを撫でながら。

「アハハ……美貴…さぁ、亜弥ちゃんが…怪我し…てたら
 病院…連れ……て…かなきゃって……思っ…て…な…のに……着地…失敗しちゃったよ……」
「ひっく、もぉ…ドジだなぁミキたん……っく」
「…泣かな……いで………あの、さぁ…亜弥ちゃ……ゴフッ」
「ミキたん!しゃべっちゃダメだよ!」
「聞いてよぉ……美貴、さぁ……美貴、も…亜…弥ちゃ…のコト…
 …ずっと………ずっ……………と……………………」




ポトリ。


222 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:00

「………………ミキたん?」
「……………」
「…ミキたん?…………ミキたん………ミキたんってばぁ……」
「……………」

なに?…ねぇ、寝てるだけだよね?
血の気の引いた顔で、ちょっと半目で、全然動かないけど
まさか、そんな、そんなコトあるワケないじゃん。

「目ぇ開けてよ…ミキたん……っミキたぁん!!」
「美貴?…嘘でしょ?ちょっと起きなよ、まだまっつー泣いてんじゃんか!!」
「……………」

さっき揺らすなって言ったクセに
ごとーは美貴の肩をブンブン揺すって叫んだ。
後ろによしこやなっちがいるハズだけど
今のごとーの耳には自分とまっつーの声しか聞えなくて

美貴の口からは、呼吸する音すら聞えなくて――――



「…なんで?なんでぇ?!
 やだぁ…ぅっく、やだよぅ…起きてよミキたぁん!!」

ぬるっと、美貴の背中に触れたごとーの手に血がつく。
動かない体を木から離してみると、そこには折れた枝が深々と突き刺さっていた。
223 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:01
   
224 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:01
   
225 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:02
   
226 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:02
   
227 名前:黒美貴にさよなら。 投稿日:2003/09/10(水) 02:03
(vV从从  
228 名前:のえる 投稿日:2003/09/10(水) 02:04

ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

レスありがとうございます。黒美貴、愛されてるよ黒美貴。

>201 名無しさん 
ち、違うもぉん!(爆
こんなコトになってしまいました・゜・(ノД`)・゜・

>202 つみ様
小高吉後、アホでごめんなさい(爆

>203 178様
ハンカチ代込みで5千円ちょうど、たしかに(w
かわいいんですよ、黒美貴は。…なのに・゜・(ノД`)・゜・

>204 名無しさん
ぐす…ごめんなさい、えーと…とりあえず寝てください(爆

>205 ごーしゅ様
あわわわわくだらなく無駄に長い駄文を一気読みしていただきありがとうございます。
私ももしや読ませていただいております。
ここのおがたかはちょっとアホゥですがどうか気を悪くしないでください(爆
229 名前:のえる 投稿日:2003/09/10(水) 02:23
かわったので貼り直し。
移転お疲れ様です。

前スレ 『すとれい しーぷ』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/blue/1054715244/
230 名前:178 投稿日:2003/09/10(水) 02:47
(゚Д゚)・・・・・
231 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/10(水) 08:45
ギャグから一転…ですな。
ブラックチャック先生の出番でしょうか…
正座しておとなしく次を待ってます…。
232 名前:つみ 投稿日:2003/09/10(水) 15:26
ミキティィィィィ!!
生きろ〜〜〜〜!!
233 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/11(木) 11:29
やぁぁぁだぁぁぁぁーーーーーーーー号泣
黒美貴〜!やだよ〜!死んじゃやだよぉ〜〜〜!!!
234 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/11(木) 14:51
ぎゃああぁぁっ!!なんだなんだこの展開は!!
みきたん……生きろ!!
235 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/13(土) 13:53
殺さないでぇ〜〜〜〜(TT)
236 名前:236 投稿日:2003/09/14(日) 23:04
はじめまして。みきたん大好きなので
殺さないでください。みんな幸せに
237 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 00:29
あの…ageないでもらえますか…。
238 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 14:31
みなさん素晴らしく取り乱していますね。
気持ち分かります爆
こんな所で止めるなんて作者さんのいけずぅ〜
239 名前:   投稿日:2003/09/15(月) 18:25


『ミキたぁん!!返事してよぉ!…っやだぁ!』



あー…亜弥ちゃん泣いてるなぁ……

おまけにすっごい鼻声だし、ひどい顔してんだろーな。

・・・それにしても美貴かっこわるー。

あとちょっとだったのに、言ってあげられなかったよ。

体中が痛くってさぁ、特に背中。

お腹も気持ち悪くてなんか込み上げてきたし…

理想としてはもっとキレイに終わりたかったんだけど

亜弥ちゃんのこと散々泣かせた罰かな?

ごめんね。最後に、言いたいことも言えなくて。

傷つけてばっかで。

誰よりも、誰よりも大切なのに、なんで美貴は伝えられなかったのかな。

亜弥ちゃんのことしか、見てなかったのに。

亜弥ちゃんのことしか、愛してなかったのに。

240 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 18:27

直接言えなくてごめんね?



好きだよ、亜弥ちゃん。ずっと好きだった。

世界中の誰よりも、藤本美貴は、松浦亜弥を愛してる。



・・・・・・なーんてパパさんが聞いたら

『オレの方が愛してるっちゅうねん!!』ってシバかれるだろうなぁ。

ジャーマンかなぁ……アキレス腱固めかなぁ……

ヤダな、どっちもめちゃくちゃ痛いのに。

健太ッキーボムはもっとヤダ、名前ダサイし。

スクールボーイもさぁ、普通に横入り式エビ固めでよくない?

源さんカッターとか超ウケるし。

アハハハハ、アハハハハ、あー……ぁー……眠いなぁ。



『ミキたん、愛してる』

んー…美貴もぉー…亜弥ちゃぁん……愛してるよぉー…………



241 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 18:28


242 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:29

「ひっく、うっぅっうぅ…ミっキたぁっ…っ…」


静かだった。

血だらけ美貴は、とても安らかな顔で目を閉じてて
その体を抱きしめてるまっつーの嗚咽だけが耳に入ってくる。

あまりの静けさに後ろを振り返ると
なっちもよしこも、ボーっと突っ立ってて
目の前で起きてるコトが信じられないでいるみたいだ。

他の子たちもそう、窓から顔を出してる子も
まっつーと同じクラスの子も。

ごとーだってさ、信じらんないよ。
昨日元気だったじゃん。
今日だって様子はおかしかったけど
さっきの雄叫びは最高にイケてたよ?

それがなんで、なんでいきなり動かなくなんの?
悪い冗談ならさっさと起きて『ドッキリでした』って笑えばいいじゃん。

大成功だよ?

だからさっさとみんなの顔指差して大声で笑いなって。
いつもみたいにケラケラ笑ってよ、笑えよぉ。
243 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:30
視界が滲んでいく。美貴の顔がぼやけた。
嫌だ。嫌だ。消えないで。

「うっ…ぅっ…」

ごとーの口からも漏れる嗚咽。
涙が零れて、溢れて零れてを繰り返して
少し視界がクリアになっても映る光景は変わらない。

動かない美貴、泣きじゃくるまっつー、スポイトを持った高橋。




む?



・・・・・高橋?・・・高橋?・・スポイトを持った高橋?


あれ?なんか今不適切なモノが目に入ったよーな…


「亜弥ちゃん、ちょっとごめんやよー」

………なにしてんの?なんでスポイト持ってんの?
その試験管は何?

「ひとーつぅ、ふたぁーつぅ……あぁ!亜弥ちゃん動かんといてぇ」
244 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:31
ちょっと…ふざけてんじゃないよ。
こんな時にまっつーの涙集めてどーする気よ?
今ね、高橋の訛りとかいらないの。
普通にシリアスなトコなの。わかる?タカハシさん?

「愛ちゃん、藤本先輩の血と混ぜちゃダメだよ」
「んなこと言ったってぇ、亜弥ちゃん血だらけやから無理やよー」

………小川、ちょっと小川、アンタもなの?
ってかなによその小脇に抱えた7つのイモは。
こんな時までイモが食べたいの?
アンタの担当はカボチャじゃなくて?

「ほっぺのとこで吸い取るからダメなんだよ。
 目尻狙わなきゃ」
「メジリ…?こんな時までオシリ狙えなんてぇ
 やっぱりまことはエロエロやわー」
「なっ!?なんでそーなるの!!」
「………んあ」


プチ。

「んあ!空気嫁やバカどもぉおおおおー!!!!」
「「ひぃいっ!?」」
「おがたかぁっ!!なにさらしとんじゃヴォケぇっ!!!」
「いやっ違うんですよ!これには理由がっ…」
「聞く耳持つかぁ!ぶっ飛ばし…」

「お待ちなさい」

んあ!?紺野お前もか!!
245 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:32

「ポテター真希よ、空気嫁はコッチの台詞です。
 高橋先輩が何の為に松浦先輩の涙を集めてると思ってるんですか?
 まこっちゃんの持ってるおイモだって、ただのおイモじゃないんですよ」

…ハ?

「んぇ?どーゆーコト?」
「この世には真のおイモパワーだけが呼び覚ますコトのできる
 “ポテロン”という神がいるのです。
 2人は、そのポテロンを呼び覚ますのに必要な“おイモんボール”を
 作る手伝いをしてくれているのですよ」

………んあ?おイモんボール?ポテロン?

え、待って、なんかさぁ、似たような名前ない?
あのー…手に入れろ♪ドラ○ン○ール♪……みたいな。
そっちの場合…シェ○ロンは1つ願いを叶えてくれんだよね?

「んあ!ってことは美貴を助けてもらえるってコト?!」
「………絶対に、とは言えません。
 松浦先輩の藤本先輩を思う気持ちが本物ならば可能性はありますが」
「ちょちょちょちょっと!今の話ホント?!
 美貴ちゃん助かるかもしんないの?」
「ええ。というか、これしか助ける方法がありません。
 今の状態で病院に運ばれても手遅れですし、仮に命は助かっても重度の障害が残ります」
「障害………」
「命が助かる確率も5%ないですよ」
「「・・・・・」」
「ですから、ポテロンに頼むしかないんです」
246 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:33
言ってるコトはいつも通り、アホみたいにありえない紺野だけど
その顔はとても真剣でワケわかんない自信が感じられる。

・・・でもホントに大丈夫なんかな?
そのポテロンやら呼び出す為のおイモんボールを作るって…
そーゆーのは世界中に探しにいくもんじゃないの?
まっつーの涙でどーやって作るのかな?

疑問は底無しにあったけど
とりあえず信じてみるしかない。

「なので勝手なコトをと思うかもしれませんが
 救急車は来ないようにさせていただきました。
 来ても邪魔ですので」
「………んあ、そこまでしたんなら絶対助けてよ」
「ごっちん…ホントに任せていーの?」
「ごとーから見ても美貴は普通じゃ助かりそうにないよ。
 だから普通じゃない人に頼むしかないでしょ」
「何気に言うコトヒドイね…」
「ふぇ…ふぇぇ……」

とその時、後ろからなっちの小さな泣き声が。

「んあ、なっち!」
「……ぁ…ふ…じもとさん…が……し…し…」

青い顔で腰を抜かしてたなっちは
ごとーを見るなり震える手でごとーのスカートをつかむ。
247 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:33
「んあ!言っちゃダメだよそんなコト!
 紺野が絶対助けてくれるからしっかりして!!」
「え…?助かるのかい?だってあんなに血出てるべ…。
 息だってもう…してないみたいっしょ……救急車が来てもあれじゃ…」
「なっち!
 そんなコト言っちゃダメだよ!
 救急車じゃなくて紺野のイモがなんとかしてくれるらしーから!」
「……イモ…?」
「そーだよ!イモだよ!」
「む…イモイモうるさいべさ…」

んあ…忘れてた…。
なっちはイモという言葉に異常に敏感なコトを。
でもこの場合しかたなくない?
紺野のイモだもん。なっちがイモなんじゃないし。

どうせ頼るなら、もっとロクなモノに頼ってみたかったけど。
贅沢なんか言ってらんない。
美貴を助けてくれるなら、医者だろがイモだろーが何でもいいんだ。

「…でもその前にみっちゃんどーする?」

ぐしぐし涙を拭きながら口を尖らせるなっちを抱きしめていると
よしこがいつの間に外に出たのかプリメーラとベッドの残骸の前で
泣き崩れるみっちゃんを指差す。

危ないから離れさせた方がよさそうだけど
変に触れると不幸が移りそうだからほっとこう。
ごめんね、みっちゃん。
248 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:34
「いい子なのにね…」
「んあ…」
ごとーとよしこはみっちゃん放置を決定した。

「むーっつ、ななぁー…つぅ、あさ美ちゃぁん、7滴取れたでぇ」
「ご苦労様です。それでは
 まこっちゃんが並べたおイモに1滴ずつ落としてください」
「わかったやよー」

高橋は集めた試験管の中の涙をまたスポイトで吸い取って
小川が美貴とまっつーの周りに並べたイモに一滴一滴にたらしていく。

なるほど。
まっつーの涙をおイモにたらしておイモんボールを作るワケね。
………ってかそんなんで作れんだ、おイモんボール…。

『そんなんとは失礼な。
 おイモパワーの詰まった涙だからこそ作れるのですよ。
 このすっといこどっこい』

カッティーン。

「紺野…いつかシバく」
「えぇ!?ごっちんシバいちゃダメだべ!」
「んあ、止めるないで。
 恋をして田村選手がキレイになったっていいじゃない」
「べさ?何言い出すべか急に…」
「そこのなちごま!今からポテトンを呼び出す為の
 歌を流すのでちょっと静かにしてやがってください」
「あさ美ちゃん、敬語になってないよ…」
「フン」
249 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:34

紺野め、いちいち腹の立つ…。

「ミュージック・スターコン!」

“ 今日の涙はぁ 粉っぽすぎるわ〜♪
  見ぃられたくないわ この涙ぁ〜♪
  ね〜ぇ 焼き ふかし 煮て のぉちぃ〜 イモ〜♪
  ウォぉぇす ポーテート イモっ you are〜♪
  イモ イモ イぃモぉ〜♪ ”

「またしても微妙な歌詞にか細い声やよー…」
「しかも粉っぽすぎるってトコ歌いにくそうだったね…」
「それより“ウォぉぇす”ってなんやぁ?」
「う、うるさいなぁ…完璧だもん……」
「「「・・・・・」」」
確かに、微妙すぎるね、色んな意味で。

と、紺野の歌声で一同にそら寒い空気が流れた、その時――――


ダダダ!ダーダ、ダダダ!
ちゃーらちゃーららっちゃーちゃっちゃっらーちゃららー♪

「んあ!?なにこのでかい音?!」
「ポテトンの登場です!
 よかった。おイモんボールは成功でしたね…。
 でも勝負はこれからですよ!」

まだまだでかい音が響く中、突然宙に浮かぶ7つのイモ。
美貴とまっつーの頭上で円になるとピカっと光を発して1つになった。
250 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:35
「んあ!眩すぃいー!!!」
キャーだのうわぁーだの喚きながら、みんな光から目を逸らす。

『みんなじゃありません。
 私はサングラス用意してますから。完璧です』

んあ…歌以外はね……。

『・・・・・』

「呼ばれて飛び出て……ってなんやぁ…あしゃこやないかぁ」
「久しぶりポテトン」
「えぇ!?神なんでしょ?!
 なんでそんなにフレンドリー?!」

しかもあしゃこって…あだ名?ってかソイツホントにイモの神?
えーと…キノコじゃん?

眩しい光から解放されて、おっさんみたいな声のする方を見ると
さっきイモが合体したトコロにエロ目のキノコ(しかも毒々しい)がいた。
ハッキリ言ってかわいくない。かっこよくもない。
姫を笑わせたご褒美にバッチをもらっても普通に嬉しくなさそう。

「おいそこのナイスバディな髪の長いねーちゃん。
 ワレ今めっさ失礼なコト考えとったやろ、あぁん?」

ちっ、忘れてた…コイツ神なんだ。
心読まれてる。

「おー丸見えやでぇー、スケスケシースルーやでねーちゃん、グヘヘ♪」
251 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:35
「ごっちん、ホントにこの…キノコに頼んで大丈夫なの?
 美貴ちゃんの命かかってんだよ?」
「ごとーに聞かないで、そっくりおなじコト思ってるから」
「かわいいキノコちゃんだべ…」
「「えぇ!?マジでぇ?!」」
「ほぇ?マジっしょ。プカプカ浮いてかわいーべさ」

・・・へ、へぇ。なっちってあーゆーのタイプなんだぁ。
んあ?ってコトはごとーもどこかしらアイツと近いモノがあるってコト?

「そんなぁ!ひどいよなっちぃ!!うわーん!」
「ひょ!?なんで泣くべさごっちん!」
「……ごっちん、ご愁傷様」
ゴルァよしこぉ!縁起でもないコト言うんじゃないわよ!ぐすん。



安倍の足にしがみついて泣き出した後藤に
忌々しげな視線を向けるイモの神ポテトン(28歳・華の独身)と紺野。

「なんやねんアイツら、好き勝手にぬかしやがって。
 あしゃこ…オレは蔑まれる為に呼ばれたんか?」
「違うよ、安倍先生はかわいいって言ってくれたじゃない。
 それよりお願いがあるんだ」
「おーわかっとるわかっとる。
 あそこで倒れとる半目のねーちゃん助けるんやろ?
 あちゃー…こりゃヒドイなぁー、呼吸も心臓も止まってるやん。
 ってかあの抱きついとる子がオレを呼んだイモガールか?」 
「うん」
「かわいそーにあんな泣いてもーて…
 でも助けられるかどうかはあの子次第やからなぁ。
 ほなちょっくらやってみよか」
252 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:36

「うぇっ……っふ……ミ…キ…っ…」
「おーいねーちゃぁん」

フヨフヨと下降して、泣きすぎてボロボロになっている
松浦に話し掛けるポテトン(28歳・華の独身)。

「えぇーんぇんえんえん…ぅー…うぇー…」
「あのー…」
「ミキたぁ…んっ…んぅーぇーおぃおぃおぃー」

ポテトン(28歳・華の独(ry的にはこれ以上ないぐらい
優しく話し掛けてみるも
泣き叫ぶ松浦からは返事がない。

「変な泣き声やなぁ自分。
 とりあえず聞いてくれへん?自分その子のコト好きなんやろ?
 死んでほしないんやろ?」
「ひぃーっく…ぅーうっ…うん…」

それでもポテトン(28歳・華(ryが諦めずに
尋ねると、ようやく松浦は藤本の胸に埋めていた顔を上げた。

「うわっ…ほっぺ血だらけやん…。
 まぁえーわ。それやったらな、今からその子に自分ができる
 精一杯の方法で愛を伝えたってほしいねん。
 その子に対するおねーちゃんの想いがほんまモンやったら
 オレがその子生き返らしたんで」
「・・・・・・ホントぉ?」
「本当」
「………あなた誰ですか?」
「今更ソレを聞くんかいっ!!」
「っ…ごめんなさ…」
「わぁー!泣くな!怒ってへん!今のはツッコミやツッコミ!
 ホラ!はよ愛伝えてみ!」
253 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:37
神といえど、女の涙には弱いポテトン(28さ(ry。
さっきまでは藤本のせいで泣いていたからまだよかったものの
自分のせいで泣かれたらオレまで泣いてまうやないか…と
人知れず涙ぐんだ。

「愛を…伝える……?」
「そうや、愛してるんやろ?」
「……うん」

そう。愛してる。
いらないって言われても、それでも捨てきれなかった想い。

夏、ひたすら考えて
やっぱり自分は藤本への愛なしには生きられないと悟った。

だから昨日、伝えたんだ。
ミキたんに何を言われても、何も言われなくても
この気持ちは一生変わらない。

迷惑なら、知らん振りして。
それで嫌われても悔いはないから――――


「ミキたん」

ぐずっと1度、鼻をすすって。
強く強く抱きしめて。
頬に手を添え、唇を近づけながら松浦は囁いた。



「ミキたん、愛してる」






254 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:37





愛してる。愛してる。愛してる。


想いの全てを込めて。

松浦亜弥の、全てを込めて。


深く、深く、藤本の唇を塞いだ。







「イモメキーラ!!!」



イモ                       イモ
      イモ       イモ
          イモ
 イモ                  イモ
    イモ
             イモ
                      イモ
  イモ      イモ                 イモ




ふわっさぁー


255 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:38

「んあ!?空からなんか降ってくる!!」
「べさ?!なんかの皮だべ!」

安倍の足に顔をこすりつけていた後藤がポテトン(2(ryの大きな声に
思わず顔を向けると、藤本に口付ける松浦のちょうど真上の空から
直径10メートルはありそうな巨大なイモの皮が降ってきた。

「んあぁ!?美貴!まっつー!!!」

そしてその皮が一瞬にして藤本と松浦を包み込み…

「イモッパぁ!!」
というポテトン(ryの叫びと共に爆発した。

ドカァアアン!!!

「ぎゃぁああああー!!美貴ぃー!まっつー!!」
「きゃあああ!藤本さぁん!松浦さぁん!」
「美貴ちゃん!亜弥ちゃん!」
「うわぁ…花火みたいやよー」
「うぇぇ!?粉爆弾みたいだよ…うわっ粉降ってくるし…」
「ふかしイモやぁ…」
「え?…あ、ホントだ、おいしーね」
「んあ!!おがたか!ちったぁ美貴たちの心配せんかい!」
「「ひっ?!ごめんなさい…」」

んあ、でもウマー。

怒ってはみたものの、あたりに飛び散りまくり
もちろん後藤の口にも入ったふかしイモは確かにおいしかった。
256 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:39

「ごっちん!!松浦さんたちだべさ!モグモグ…」

爆発して、どれぐらい経ったのか。
見守っていた全員の口がイモでいっぱいになった頃
あたり一面雪景色ならぬイモ景色と化した後藤たちの目の前に
これまたイモまみれの松浦と藤本が現われた。

「………ミキたん」

そっと唇を離して、松浦が藤本の顔のイモをはらう。
瞼の上のイモを舌で舐めとると、パっと藤本の目が開いた。

「……………亜…弥……ちゃん…?」

掠れた声。
だけど確かに、藤本の声。

「ミキたん…?」
「あ…れ?亜弥ちゃん?…え?美貴…なんで……?
 …ってか、アハハ、イモのパックはあんま肌にいいとは
 思えないんだけど…」
「ふぇ?」

藤本を優先して自分のコトをすっかり忘れていた松浦の顔を、藤本は優しい手つきでぬぐう。
そしてそのまま頬に寄せた手を引き寄せて現れた鼻やおでこに次々と口付けた。
257 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:40
「チュ、チュ…」
「ん…ミキたん…体、痛いトコない?怪我大丈夫?」
「治ったっぽい、どこも痛くないよ。
 …だけど………大丈夫じゃ……ない…」
「え?やっぱ痛い?どこ?背中?」
「亜弥ちゃん…」

松浦に抱きかかえられていた藤本は、顔と手以外は
激しくイモまみれな体を起こして正座し
松浦の右手をとって自分の左む――――――

「みぎぃいい!!よがっだぁぁあ!うあぁぁぁああー!」
「みぎぢゃぁぁん!おがえりぃぃ!!よくぞ無事に地獄から戻って…」
「ぶじもどざぁん!なっぢばぶれじいべぇ!うまっぐわっどぇ…」
「藤本先輩お帰りやよー。
 生き返って早々なんやけどぉ、制服クリーニングに出した方がええんやないかのぅ?
 亜弥ちゃんは体操着やからええけどぉ
 制服が血まみれのイモまみれじゃ残りの学生生活ずっとジャージやよー」
「…ってかその前に破れてるから
 上着だけでも新しいの買わなきゃダメじゃない?」

「・・・・・・」

心配してくれてたのは嬉しい。
だけど今美貴大事なコト言おうとしてたんだけど…。
ってゆーか最初の3人濁音すぎ。
なんで美貴が地獄逝きって勝手に決めんのよっすぃー。
“ぶじもどざん”って誰ですか安倍先生。いや誰ってゆーよりどっかの山っぽいし。
“うまっぐわっどぇ”って何が言いたいのかサッパリだよ。

それに比べて全く心配してなかった風な高橋ちゃんと小川ちゃんのドライっぷりはどーなの?
美貴の体より制服が大事なのかと小1時間(ry
258 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:40
藤本の心の中には声にしたい気持ちがたくさんあって
でもそれを全部言うのは間違ってる気がしたので飲み込んでおく。

「えっと……なんか…助かっちゃったや…へへっ」
「んあ、みぎぃー!」
「ごっちん、それにみんなも。
 ちょっと聞いててくれない?」
「はぇ?なにを?」

この時、後藤は蘇った藤本にそれとなく違和感を感じた。

んあ…なんか違う…美貴なんだけど、確かに美貴なんだけど…。
美貴であって美貴でなくない?
顔つきが違うってゆーか…なんてゆーか…

「亜弥ちゃん」
「…なぁに?」
「さっきの、大丈夫じゃないやつ…」
「そうだ!どこが痛い?病院行かなきゃ――」
「そうじゃなくて、…大丈夫じゃないのは、ここ」

そう言って藤本は松浦の手を左胸の心臓の上にあてる。

「亜弥ちゃんが、いてくれないと……ここが痛い」
「……………え?」
「…だから、亜弥ちゃん、いなよ、美貴の、傍に」

いつの間にか、藤本の顔は真っ赤で。
潤んだ目で松浦だけをじっと見つめて。
259 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:41
「気にしなくていいとか、言わないで。
 美貴、亜弥ちゃんのコト、気にしたい。
 傍にいてくれなくていいとか、全然よくないよ。
 亜弥ちゃんが、いなきゃ、いてくれなきゃ、寂しい」
「……っミキたん……」
「だからいなよ、ずぅーっと、離れなくていいよ。
 ってゆーか、離れないで」
「…いいのぉ…?そんなコト言われたら…ホントに離れないよぉ?」
「いいよ。その代わり、美貴も離れてやんないから」

照れくさそうに、ポツリポツリと言葉を紡いで。
こんな一生懸命な藤本を見るのは、松浦も初めてだった。

「ごっちん…美貴ちゃん……もしかして…」
「し…白い……白くなってる…」
「べさ!雰囲気とかも全然違うべさ!
 まさに…まさにあれは……」
「あいやぁ、あれが噂に聞く例の…」
「滅多に光臨しないと言われている例の…」
「「「「「ホ、ホワイティー!!!!!」」」」」

「っひっく…ぅっく…ふぇ…ミキ…たぁ…」
「わぁあ?!泣かないでよ!
 ホラ、美貴だよ?亜弥ちゃーん?」
 

オロオロ 川;VvV) エーン∩。∩从 

260 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:41
んあ…神様…今ごとーが見てる光景は本物ですよね?
えぇぃいあぁ嬉し泣きが止まらないまっつーを
オロオロしながら頭撫でたり抱きしめたり背中さすったり
忙しく動き回るホワイティーは、幻なんかじゃないですよね?

「ごめんってば…亜弥ちゃん、泣かないでよ」
「うわーんぁんぁんぁんぁんあぁー!」
「よしよし、よしよし。
 ベロベロバー、ベロベロバー」
「うぇええええん!うわぁーん!!」

「べ…ベロベロバーって…」
「んあ、いいんだよ、白いから」
「泣けるべさ……」
「亜弥ちゃん…おめでとうやよー…」
「うん。よかったね……本当に…」 

「ありがとうポテトン」
「おぅ、ほなおれ帰るわぁ…ってあしゃこしか見送ってくれへんのかい!」



◇ ◇ ◇


翌日、昼休みの3年1組。

「ミーキたん、あーん」
「あー」
「おいしい?」
「うん」
「えへへっ、それねぇ、またあたしが作ったんだぁ」
「ふぅーガリッ!……………ふぅーん」
「あ……」
「ガリボリガリ…」
261 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:42
「ご、ごめんね?ティッシュあるから…」
「ゴクン」
「え、えっと…次は…」
「こないだよりカラ減ったね、頑張ったじゃん」
「………ふぇ?」
「早く次のあーんしてよ」
「…う、うん!」

んあ…皆さん…見えますか?
この仲むつまじい2人の様子が!!
そして白いの!一夜明けてもまだ美貴が白いんです!

「1回死んで、白く生まれ変わったんだね…」

ごとーの隣で、膝にまっつーを横乗りさせて抱きしめながら
お弁当を食べさせてもらってる美貴を見て
後ろのよしこがしみじみと呟く。

「まっつーのおイモパワーで心が浄化されたんだよ、きっと」

昨夜はたいそう萌え上がったのか
ラブラブな2人は仲良くクマができちゃってるのに
全然眠そうな素振りも見せず終始幸せそう。

美貴は授業も真面目に聞いてたし。
黒いヤジを飛ばすコトもなくニコニコしてた。
ホントに白いの、真っ白なの!白過ぎて恐いのぉ!!
262 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:42
「じゃあ亜弥ちゃんもあーん」
「…あーん」
「ついでにチュウ♪」
「んっ……えへへ」
「亜弥ちゃんカワイーねぇ」
「ミキたんのがカワイイよ」
「ううん、亜弥ちゃんのがカワイイ」
「ミキたん」
「亜弥ちゃん」
「ミキたんだって」
「亜弥ちゃんだってば」
「う〜…」
「う〜…」
「わかったぁ、2人ともカワイイんだぁ」
「アハハっ、そーいうことかぁ」
「そーゆーことぉ」

んあぁ!他のヤツだったら迷わず蹴り飛ばしたくなるような
バカップルぶりでも、この2人だとなぜか許せる!

ビバみきあや!白美貴バンザイ!ホワイティ最高!!





・・・・・でもごとーはちょっと寂しいかな。
黒美貴も、楽しくて面白くてイイヤツだったからさ。

だけどさよなら。

さようなら、黒美貴。

263 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:43
  
264 名前:   投稿日:2003/09/15(月) 18:44




 さよなら サヨナラ さよなら。


 忘れない。 忘れられないよ。 忘れるもんか。    


 出会えたあの日を。 一緒に過ごしたあの日々を。


 いなくなったんじゃない。 もう2度と会えないんじゃない。  


 いつまでも、心の中に。


 生まれ変わっても、ずっと、ずっと――――――――――――――――





265 名前:ずっと傍にいて欲しい。 投稿日:2003/09/15(月) 18:44
   
266 名前:のえる 投稿日:2003/09/15(月) 18:45

こうなるコトは、最初から決めてました(爆
ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・ 色んな意味でごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

レスありがとうございます。
こんなにレスもらったの初めて(感涙
お手数ですが、更新時にageますので、ほどよくさがってる時は
sageレスでお願いします。

>230 178様
その顔が見たかった(爆
すいません、嘘です、ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

>231 名無し読者様
そしてまた一(ry
こんな駄文に正座など…!しびれたらおでこにツバを塗っても治りませんよ(爆

>232 つみ様
雄叫び1号様、ありがとうございます。

>233 名無しさん
雄叫び2号様、号泣ありがとございます。
黒美貴…ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・
267 名前:のえる 投稿日:2003/09/15(月) 18:47
>234 名無しさん
雄叫び3号様、ありがとうございます。
そしてまたこんな展開でごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

>235 名無しさん
雄叫び4号様、ありがとうございます。
泣かないでください(爆

>236様
どうも初めまして、ありがとうございます。
ちょっと犯罪者の気持ちがわかりました(爆

>237 名無しさん
特に注意書きしていなかった私の責任であります。お詫びに…
   ___
 c2___ヽ 
 ∬∬´▽`)つ目 <オチャドゾー

>238
い、いけず!?まぁ色っぽい響き…(爆


今まで黒美貴を愛してくださった方、本当にありがとうございました。
268 名前:178 投稿日:2003/09/15(月) 19:47
203でのんきにわくわくしてたんだけど
予想外れたかと思って相当あせった。

にしても不幸がうつるって・・・ (ノД`)
あと"(ry" ワロタ
269 名前:つみ 投稿日:2003/09/15(月) 19:52
おぉぉぉぉぉ!!!
『黒美貴にさようなら』はこういうことだったんですね!
伝説の『ホワイティ』も登場したことですしね。
でもなんとなく黒美貴がもう見れなくなると思うと少し寂しいですね・・・

おイモんボール、ポテトンにはシリアスな場面でしたが笑ってしまった・・・
270 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/16(火) 00:59
シリアスな場面から一転、こんな展開になるとは…。
いや、頭のどこかでわかってたような気もしますが(w
あやみきもホワイティも最高です。
271 名前:雨男。 投稿日:2003/09/16(火) 04:41
作者様、更新お疲れです。
良いですね〜。やっぱあやみきは甘々でなきゃ!


にしてもドラ○ン○ールとおイモをかけるというアプローチがあったとは・・・
(しかも紺野さんはDBヲタ)。

やられた。
272 名前:名無しさん・・・ 投稿日:2003/09/16(火) 20:20
ネタバレレスだらけで予測できてしまった・・・
(´・ω・`)ショボーン
273 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/16(火) 23:47
>272
同じ気持ちです…
(´・ω・`)ショボーン

固定さんももう少し気を使ってもらえれば…。
274 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 04:55
そんなあなたに、かちゅやOpenJaneなどの専用ブラウザがおすすめ。
275 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:30


「「ギャーハッハッハッハッ!!ッヒァ!ハァーッ!」」
「・・・・・・」
「アハハハハハー!ありえなぁーい!お腹痛ぁーい!!」
「く、苦し!グワハハハ!ッハァー!」
「う…うるさいなぁ…」

だって!だって…ブハァ!もーダメ!息できないぃー!!

「そんなに笑うコトないでしょ!
 美貴だって着たくて着てるんじゃっ………」
「ヒーッヒーッ……ふぅ、んあ?嫌なの?」
「嫌じゃ…ないけど………」
「いやぁでもその背中はともかく条件キツイでしょ?
 ウチどんだけ梨華ちゃんのコト好きでもそれは飲み込めない!
 マジ無理!ヒャハハハハハ!!」

ごとーも!絶対無理!アンタは偉いよホワイティー!

「んなこと言ったってしょーがないじゃん!」
「「ドゥワガハハハハハッヒャァー!!!」」
「わーらーうーなぁー!」

パシャパシャ、パシャパシャ

「フフフ、藤本さんが白くなったおかげで
 取材もしやすくなったわ。…ププっ、それにしても素敵な刺繍だこと」
「んあーバタコぉ!もっと撮ってあげてぇ」 
「ハイハーイ!
 藤本さんこっちにスマイルお願いしまーす!」
「・・・・・・」
276 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:32

「「ヒァ!ヒァ!ハァ!ハァッ!」」

藤本が白くなって1週間が経ったある日の3年1組で
真っ赤な顔で素敵なブレザーをはおるホワイティーの話に
後藤と吉澤は呼吸困難になりそうなぐらい激しく爆笑していた。

「ヒュー、フゥー、あー…苦しかった…」
「んあ、ごとー涙出ちゃったよ。はぁー笑った」
「ぐ…人事だと思って……」
「だって人事だし。やぁーでも面白いねぇ、まっつーのパパとママ」
「うん。義理でも自分の親にはしたくないけどね」
「・・・・・・」

他人にとっちゃ面白いかもしれないけど……。
当事者である藤本にとっては1ミリも笑えない話だ。
いや笑ったけど…笑うしかなかったけど。
背中の刺繍はともかく、あんな長ったらしい名前………




事の発端は昨日。

生まれ変わったあの日、血まみれのイモまみれになった為
すぐにクリーニングに出したのに1週間近くかかってやっと返ってきた制服。

キレイにはなったが、木の枝が刺さっていた背中の部分は
破れたままだったので直さないととブレザーを広げると
そこにはデカデカとピンクの刺繍で“亜弥命”の文字が。

『え?………なにこれ…?』

思わず呟いて何度も瞬きしてみても

目に映るのは、“亜弥命”。
頬を叩いても、“亜弥命”。
277 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:32
夢…じゃないってことは美貴の頭がおかしくなったのかな?

目の前の現実を受け止められないでいると
プルルルと家の電話が鳴る。

『もしもし?』
『美貴ちゃーん?私らからのプレゼント気に入ってくれたー?
 いやー私はそんなんやめといた方がええんちゃうかなって
 思ったんやけどパパが美貴ちゃんも喜ぶでぇってうるさくてさぁー。
 あ、今暇?暇やんな。ちょっと話あんでこっち来てくれへん?
 ほな待っとるわー』
『え?……あ…』
ブチッと、返事も待たずに切られた。

プレゼントって……この刺繍のこと?
ってか気に入る気に入らないの前に制服にこんなことしていいの?
特攻服ならわかるけど………あ、そっか。
パパさんもママさんも昔はそっち系だったっけ。

いや、でもこれ制服だし。
美貴はそっち系じゃないし。

話って…なんだかものすごく嫌な予感がするんですけど。


こんな刺繍をプレゼントされた時点で
話が松浦に関することなのは明白で、それなら無視するワケにはいかないと
背中にヒンヤリしたモノを感じながらも藤本は松浦邸に向かった。
278 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:33

『ミキたん……ごめんね?』

チャイムを押すと、松浦が非常に申し訳なさそうな顔で迎えてくれた。

『なんで謝んの』
『だって…パパが勝手に勘違いして…』
『別に、刺繍のことなら…』
『ふぇ?刺繍?』

てっきり刺繍のことを謝ってるんだと思ったが、違ったらしい。
キョトンとした松浦を見て藤本の不安は一気に膨れ上がった。

『ミキたん、刺繍ってなぁに?ねぇ』
『ん?あー…そのうちわかるよ、それより早く行かないと。
 リビングで待ってくれてるんでしょ?』
『うん…』

内緒にされたようで寂しかったのか、目を伏せた松浦に
そっとキスをして離れ、リビングに入る。

『美貴ちゃん、いらっしゃい』
『さっそくやけど話さしてもらおか』
『パパ早すぎや!もっとこう…季節の挨拶とかせんと!』

にこやかな松浦母とは対照的に少し不機嫌な松浦父。

こ、殺されるかも…。
正直そう思いながら藤本は2人の前に正座した。

『どうぞ、話してください』
『あ、そう?ほなパパ、頼むで』
『おぅ。いや〜ちょっと前にな、小耳に挟んだんやけど
 亜弥にプロポーズしたらしいやんか』
『…え……?』
『傍におれって言うたんやろ?』
『あ…はい…まぁ…』
279 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:34
なるほど、さっき亜弥ちゃんが言ってたのはこのことか。
でも…あながち勘違いでもないけどなぁ。

『そ・れ・で・な、亜弥もオーケーしたみたいやし
 オレらも反対せんと暖かく見守ろうって決めたんや』
『は…はぁ…』
『亜弥は子供が生めへんやろ?
 どこぞの馬の骨とも知れん男にやるより、美貴ちゃんのがよっぽど安心や』
『…あ、ありがとうございます』
『だがしかぁーし!!
 亜弥はオレの大事なかわいいかわいい娘やん?
 それを奪おうっちゅうんやからそれなりの条件は飲んでもらわんと』
『………条件?』
『せや。まず第一に、美貴ちゃんに松浦の籍に入ってもらいたい』


・・・・・・ハ?


バターン!

『ちょ、ちょっと待ったぁ!!』
『ん?なんや亜弥、オレは今美貴ちゃんと話してんねん。
 入ってくんなや』
『そやで、立ち聞きなんて趣味悪い。部屋におりぃな』

突然入籍の話になって、藤本が目を点にしていると
廊下で立ち聞きしていたらしい松浦が飛び込んできた。

『部屋になんかいれるワケないでしょ!
 なんでそんな勝手なこと言うの!ミキたん困ってるじゃない!
 大体プロポーズなんて…ミキたんはそんなつもり…』

『…あるよ。ずっと一緒にいようって言ったじゃん』
280 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:34
まぁいきなりでびっくりしたけど。
別に困ってないし。

『で、でも……。パパたちの前だからって
 無理しなくていいんだよ?』
『してないよ』
『ホントに…?』
『うん』

親の前だということも忘れて
自然に手を取り合いながら見つめ合う。

『よっしゃ!ほな決まりやな!
 今の日本じゃ女同士は結婚できんし
 美貴ちゃんに松浦家の養女になってもらう方向で!』
『っ!?だから待ってよ!それならあたしが藤本家に入ればいいでしょ!
 なんでミキたんがウチに入るの!?』
『えー、だってそっちの家庭ボロボロやーん。
 そんなトコに亜弥を嫁に出せるワケないしぃー』
『なっ!?そんな言い方っ…!』
『亜弥ちゃん』

ひどい!と父親に噛みつこうとする松浦を藤本が止めた。

『ホントのことじゃん。
 それにいいよ、養女になっても。
 亜弥ちゃんと一緒にいられるなら全然構わないよ』
『ミ…ミキたん…』
『ほーれ美貴ちゃんもそー言っとるし
 反対してんのは亜弥だけやで?』
『…ぅ……ミキたんがいいなら……』
『ハイハイ、じゃあ次ー、条件第二ぃー♪』
281 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:35
『…今度はなに?』
『ふっふっふっ♪いやぁーさぁ、美貴ちゃんってぇ
 今までは決して亜弥ひとすじとは言えへんかったやん?
 亜弥はずぅーっとバカの一つ覚えみたいに美貴ちゃんだけやったのにさぁ』
『バ、バカってなによぅ!』
『ヴァーボォーや、ヴァーボー』
『わざわざ姫路風に言い直さなくていいよ!』

ギャーギャーと騒ぐ娘相手に、松浦父は心底楽しそうだった。
しかし――――

『まーまー亜弥落ち着きて。
 パパの話最後まで聞きーな』
『ぐ………』
『ニャハハハハ♪ほんま亜弥はアホでオモロイなぁ。
 …でもな、アホやけどさっきも言ったようにオレの、オレらの
 大事な娘やねん。もぉーかわいくてしゃーない。
 その娘をな、どういう事情があれ、美貴ちゃんは散々泣かしたワケや。
 明るいだけがとりえのアホを泣かして悩まして
 拒食症にまでさせて………親としては、かなり腹立つ存在や』

だんだんと低くなる声とともに、松浦父の藤本を見る目は
獲物を狩る野生動物のように鋭くなっていく。
そこに込められた殺意に、藤本は2度目の死を覚悟した。

『なーのーでぇ!もう一生亜弥を泣かさんと
 悲しませるよーなことはせぇへんっていう誓いが欲しい!』
『は…はい!誓います!
 それならもう嫌という程誓います!!』
『…口だけやったらなんでも言えるやんなぁー』
『え…?な、ならどうすれば…』
『改名せぇ』
282 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:36

『・・・・ほぁい?』

カイメイ?解明?…え?なにを??どの謎を?

『…パパ?何言ってるの?』
『ナニもクソもあらへん。改名せぇって言っとるんや』
『カイメイって……?』
『解き明かすんやなくて名を改める方な』
『あ〜そっちのカイ………って、えぇえ!?!』
『目に見える誓いが欲しいねん。
 せやから美貴ちゃんには松浦の籍に入るついでに改名してもらう。
 候補はママが昨日徹夜で考えたから』
『頑張ったんよ〜』


从lll‘ 。‘)(VvVlll从


いやいや、頑張られても。
改名って…名前を変えろってことでしょ?
ミキたんがミキたんじゃなくなるってことでしょ?
そんなのいいワケないじゃん。何を考えてるのあたしの親は。

美貴…自分の名前結構好きなんだけどな…。
亜弥ちゃんと一緒にいる為には捨てなきゃダメなの?
それって今すぐに?学校とかちょっと面倒くさそうなんだけど
ってゆーか候補ってなんですか?


ビシッと親指を突き立てる松浦父と、褒めてと言わんばかりの笑顔で
ノートを取り出す松浦母の嬉々とした声に2人は仲良く青褪めた。
283 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:37

『亜弥がミキたんって呼んどるし、全然違う名前にすんのは
 悪いかなーって思ったで美貴は残してぇ
 “松浦マルクス・アウレリウス・アントニヌス美貴”ってどぉ?
 去年亜弥世界史で覚えるの苦労してたやんかぁ。
 これならテストに出ても絶対間違えへんくてええと思うんよ』
『『・・・・・・・』』
『あれ?あかん?ほな日本一長いっぽい駅の名前からとってぇ
 “松浦南阿蘇水の生まれる里白水高原美貴”とか
 スリランカの首都からとって
 “松浦スリー・ジャヤワルダナプラ・コーッテ美貴”は?』
『『・・・・・・・』』


えーっと、待って。
ヒントを得る場所がことごとく間違ってる気がするのは美貴だけ?
マルクス云々って五賢帝の1人でしょ?1番名前長い人。
確かにテストで間違えなくなるのはいいと思うけど
そのテストって一生のうち何回受けるの?人生の大半に必要なくない?

日本一長いっぽい駅の名前とか…駅と美貴って似てるから語呂がいいかって
言ったらそうでもなさげだし、そんな駅の名前初めて聞いたんだけど。

で、スリランカの首都って…なぜにスリランカ?
しかもそこって長すぎる名前の割に機能しているのは国会議事堂だけで
首都機能のほとんどはコロンボにあるんじゃなかったっけ?
ならまだ“松浦コロンボ美貴”のがいいんだけど…。


『あ〜でもやっぱ温泉町の民話からとって
 “松浦テーキヤテーキヤテキテキヤテースリコンボハリマノベットウソペットウチャワンポーズノヒヨコ美貴助”
 がええかな。うん、これで決まりやね』
『・・・・・・』
『…っママ!冗談やめてよ!!ミキたんはミキたんでしょ!
 そんな変な名前になんかさせないんだから!』
284 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:38
『コラ!ママが亜弥の為に一生懸命考えた名前を
 変とはなんやねん!
 素敵センス溢れとるやないか!ママはやっぱ最高やな』
『やぁだパパったら…娘の前やで』
『ハハハ、たまにはええや〜ん』
『よくないってば!ひどいよ2人とも!!そんな人だと思わなかったぁ!』

『ア、アハハハハハ…アハハハハ…』

『ミっミキたん!?しっかりして!!
 大丈夫だから!あたしがなんとかするから!!』

すごいねママさん…あんな長い上にカミ率の高い名前を
スラスラ言えるなんて………。美貴、覚えられるかなぁ?
一生かかっても無理かもしんない。
アハハハハハ…アハハハハ…。

『ミキたぁん!もぉ!パパとママのバカぁ!!!』




「んあ〜ごとーも覚えらんないよぉ。なんだっけ?
 松浦テキーラテキーラズンゴラベッチョスズメ美貴助だっけ?」
「違うよごっちん。
 松浦テキテキテキーニボリボリワンコソバガチョウ美貴助でしょ」
「どっちも違うよ…」

まぁこの際どんな名前だろーと構いませんが何か?

激昂していた松浦と違って、今までの自分の非を
充分に熟知していた藤本は表面上は諦めがついていた。 表 面 上 は 。
285 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:39
「ホント、昨夜は大変だったよ…。
 『もうこんな家出てってやるぅ!』って亜弥ちゃんに引きずられて
 美貴の家に行ったら広げっ放しだったブレザー見て
 亜弥ちゃん貧血で倒れちゃうし…」
「…んあ…」
「看病してたらまたママさんから電話かかってきて
 『あ、美貴ちゃーん?話は以上やからよろしくねぇー。
  それと籍はこっちやけど暮らすんは美貴ちゃん家でええからぁー。
  亜弥のこと大切にしたってなぁー』って言われて
 漏れた声聞いてた亜弥ちゃん泣きだしちゃうし……」
「…………」
「申し訳なかったんだろうね、亜弥ちゃん。
 自分のせいでミキたんがって思っちゃうだろうし…ップ」

ちょっとよしこ、気持ちはわかるけど
まっつーに同情するんなら笑い抑えなさいよ、声もまだ震えてるよ。

などと思っている後藤の唇も、抑え切れない痙攣でプルプルしていた。
2人とも、友人の不幸でこんなに笑うとはなかなかの悪人である。

「さっきもさ、一緒に学校来たけど
 亜弥ちゃんずーっと俯いてて…通りすがる人に
 美貴の背中後ろ指さされる度真っ赤な顔で泣きそうになるし…」

悲惨ね。この話本のしたら
W・シェイクスピアにも負けないぐらいの悲劇になるよ。
あー涙でる、クックックッ…。

「で、いつからその長ったらしい名前になるの?」
「美貴の高校卒業までは待ってくれるみたい。
 だから大学に行く時は……もう…」
「…そっか……ククク…」
286 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:40
まぁー黒美貴時代の罪ってゆーか、まっつーのご両親にとっちゃあ
殴っても殴り足りないぐらいだろーに
改名だけで許してくれるんなら安いモンかもね。

決して安くはない。藤本にとっては
むしろ殴ってもらった方が有難いことだろう。

ガラッ
「松浦テーキヤテーキヤテキテキヤテースリコンボハリマノベットウソペットウチャワンポーズノヒヨコ美貴助さん
 含むカオの大事な生徒のみんな、おはよー」
「んあ?さすがだね、もう暗記してるよ!」

3人の話が終わる頃、夏バテもすっかり治って元気ハツラツな飯田と
?顔の安倍が教室に入ってきた。

「おはようっしょ…ってなんだべかその長ったらしい名前は?
 そんな子このクラスにいたかい?」
「んあ!なっちおはよー!」
「……カオリせんせぇ…なんで知って…」
「だってカオだもん♪」
「ぁー…そうだったね…」

「あのね、なっち、美貴の名前がね……」
「ふぇっ!?ホントかい?!そんなことできるのかい!?!」




49字という、心なしか不吉な字数の名前が
当たり前のように使われる日は、きっと近い。

287 名前:桃色娘想い。 投稿日:2003/09/18(木) 00:41
   
288 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:42

その日の放課後、ごとーは残業があるというなっちを待って
一緒に帰る為に廊下をスキップして時間を潰してた。

そうそう今日の昼休みね、『ここだと井戸さんの取材にあうから』って言って
なんと美貴がまっつーのクラスまで行ったの!!
これって何気にすごいコトよ?ごとーの携帯に高橋から

『藤本先輩ホントに白くなりましたねぇ。
 隣のクラスの子とか見に来ててぇ、見世物みたいになっとるけど
 全く気にせずラブラブボンバーやよー。…でも亜弥ちゃん元気なくてぇ
 なんかあったんですかねぇ?いやその前にあの背中の刺繍はなんやぁ?』

なんてメールがくるし。
あーでもやっぱまっつー凹んでんだぁ……


 _| ̄|○


んあっ!?誰よ?!
廊下の真ん中で凹んでんのは!?
まっつーならさっき美貴と帰ってったし……

「おや、後藤先輩じゃありませんか」
「えぇ!?こここ紺野?!なんで?1番ありえないと思ったのに!」

ブハぁっ!びっくりしたぁ。
けど手をついたままごとーを見上げた顔は確かに紺野で
しかもそんなに顔色超悪いんだけど…どったの?
289 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:43
「聞いてくださいますか?」
「んあ、ごとーでよかったら聞くよ」

では話します…と紺野はうっすら涙の浮かんだ目元を
ハンカチで抑えながら話し始めた。

「前回の更し…じゃなかった、このあいだの
 藤本先輩が生まれ変わられた時のコトなんですけど
 私くし、完璧じゃなかったんです!!」

んぇ?完璧じゃなかった?
なんでよ?実際に助けたのはまっつーの美貴への愛だけど
紺野があのイモの神様呼んでくれなかったら…

「それです!そのおイモの神が!神が完璧じゃなかったんです!!」
「んあ?どーゆーこと?」

あ、見た目?そーね普通にキノコだったし、しかもエロイ。
喋り方も神様っぽくはなかったなぁ〜。

「違うんです!そーじゃなくて名前が!
 名前が途中で変わってたんです!!!!」

へ…?名前が?

「そーです!最初、私後藤先輩に“ポテロン”だって説明したくせに
 ここの…>>249の登場シーンから突然“ポテトン”になってたんです!!」

えぇ?!どれどれ?……んあ、ホントだ。
そこまではごとーも“ポテロン”って言ってんのに
そっから先は何の疑いもなく“ポテトン”になってる。
290 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:44
「よりにもよってこんなミス……悔やんでも悔やみきれません…」
「…ってかさぁ、どっちが正しかったの?
 利用回数では圧倒的に“ポテトン”のが多いけど
 シェ○ロンにかけてるんだったら“ポテロン”だよね?」
「………ぐすっ…」

んあ…なにも泣かなくても……。

「げ、元気出しなよ。気づいてる人、いないかもしんないし。
 気づいてても暖かくスルーしてくれて…」
「ほくそ笑んでますよ!!
 『おやおや…途中で改名しちゃったよプププ』って!…っくぅ!」

んなぁ…“ロ”と“ト”間違えたぐらい忘れなってば。
紺野だけじゃなくごとーも間違えてるし
イモの神本人だって訂正せずに返事してんじゃん。
知らん振りしてほっときゃよかったのに、紺野は真面目だねぇ。

「気づいた時あまりにもショックで……
 言わずにはいられなかったんです…完璧です……」
「そっか、よしよし。
 元気出しなよ、ごとーはそろそろなっちのトコ行くからさ
 紺野も気をつけて帰りなね」
「…はい、聞いてくださってありがとうございました」


ふと見た時計が4時を指していたので
まだ少し暗い顔の紺野と別れ、ごとーはなっちを迎えに
靴に履き替えて教員用のゲタ箱に向かった。
291 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:45

すると――――
 

 〇| ̄|_


んあ!?またかい!!今度は誰よ?

「……ベサ…」
「んあ?!なっち!!どーしたの?!」
「あ…ごっちん……」

何があったの?!まさかなっちまで完璧じゃなかったとか言うんじゃ…

「あのね…なっちは…ごっちんに嫌われても
 しょうがない女なのさ……」
「ほぇ?いきなり何言い出すの!!ごとーがなっちを嫌いになるなんて
 ありえないっていつも言ってるじゃん!」
「それは…ごっちんがなっちの本性を知らないからっしょ!」

・・・んあ?なっちの本性?
え…いや、でもなっちってそんな裏と表で悪魔と天使みたいな…
たまに子悪魔だし、いつでもごとーにとってなっちは天使だけど……
 
「わかんないよなっち。
 本性ってなぁに?」
「なっちは……なっちは口先だけの女だったべさ!!」
「む…?そんなことないと思うけど…」
「これ見るべ!」
292 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:46
否定したごとーを潤んだ上目遣いで睨んだなっちが
掲げて見せたのは、1枚の小さなカード。

白いカードに、手書きで赤い北海道が描かれていて
その上に黒のペンでこう書かれていた。

“ミキティ様。

 明日未明、アナタの素直な気持ちを頂きに参上します。

                             ベサティ。”

・・・・・・・・ベサティ?

「んあ……まさか…ベサティって……」
「なっちのことだべ」
「……………」
「だ、だって!ナチティってナチスみたいで嫌だったんだもん!
 アベティもかわいくないし……だから…」
「…んあ」

なんとなく気持ちはわかるよ、なんとなく。

「ってか…これいつ書いたの?」
「夏休み前に…ごっちんが横浜に行った日、なっちは松浦さんに話聞いて
 その後お家まで送ってったっしょ?その時隣が藤本さん家だったから
 ポストに入れようと思って書いたんだけど
 ごっちんから電話がかかってきてそのままホ……藤本さんに会いに行ったから
 すっかり忘れてて………」
「あぁ…あの日か」
293 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:47
「松浦さんの前で藤本さんに告白大作戦させようって…
 なのに……なっちったらすっかり忘れて夏休みも暢気に過ごして…」
「ん〜でもさ、美貴もなんとか白くなって素直になったし…」
「でもでもっ…!」

むぅ。なっちはガンコさんですねぇ。

「なっち」
「…ふぁ?」
「今なっちの前にいるのは誰?」
「…ごっちん」
「今なっちの目に映ってるのは?」
「ごっちん…だけ」
「んあ、なっちはごとーのこと好き?」
「…大好き」
「なら今はごとーだけ見て、ごとーのことだけ考えなさい」
「………はい」
「んー」
「…む?」
「んー」
「な、なにさ?」
「わかってるクセにぃ♪」
「…こんなとこじゃ…ダメだべ」
「いいんだべ」
「…よくないです」
「いいんです」
「………目、閉じて」
「んぁーい♪」  
 
んふぅー幸せ。
おおっとぉ、もぉやめ?そんなぁ、却下です。
もちっとします、永遠にします。
あーなっちの唇ってなんでこんな柔らかくてとけそーなのぉ〜。
294 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:48

「カオでも知らないよ、そんなコト」
「んっきゃぁ?!!カカカカカオリぃっ?!?」
「んあぁ!?…邪魔するなんてひどいー…」

ぐすん。なっちぃ、突き飛ばさなくてもいいじゃんかぁ。
ってゆーかかおりんももーちっと気ぃ使って…

「あ、そーいえばごっちん。
 さっき紺野が凹んでたせいで言い忘れたけど
 今夜なっちと一緒にコンコンおイモ商会来てって」 
「んあ?今夜?」
「うん。なんかわかったかもしれないから新しい下着で
 お越しくださいってさ」

新しい下着?わかったかもしんない…?

「んあ!とうとうなっちと絡めるってコト?!」
「べっ…べさ!そんなコト大きい声で言わないの!」
「えぇーだってぇー」
「まぁまぁ。たぶんそーゆーコトだと思うよ。
 藤本も落ち着いて残る問題はごっちんの体だけだし」
「…あはっ」

とうとう…とうとうごとーにも春が?
夏の終わりにスプリングが?
絡んで絡んでスープパスタなラブタイムがやって来るのね!!

「なっち!下着買いに行こう!!」
「ふぇ?…え?ちょちょちょ待ってごっち…きゃああああ!!!」



ヒモパンでもTなバックでもなんでもいい!
どーせ脱がすんだから!!ヌハハハハハハハハハァー!!!!


295 名前:凹む人々。 投稿日:2003/09/18(木) 00:49
   
296 名前:のえる 投稿日:2003/09/18(木) 00:50

噛まずに3回言えたら、いいことがあります(たぶん。きっと。

レスありがとございます。

>268 178様
川o・∀・)v<イェイ♪
( `◇´)ノ□<また泣かせてもうて…ごめんなぁ。
みっちゃん…いつかフォロー……できたらします(爆

>269 つみ様
高橋さんが出てきた時点でシリアスじゃ(ry
書いといて私も寂しいです(爆 元気でね…(ホロリ

>270 名無しさん
ミキたんもあややも大好きなんで(w
それに私アホですし(爆

>271 雨男様
ポテト雲もさりげなくそこから来てますんで(w
えーあやみき、前途多難です(爆

>272 名無しさん・・・
>273 名無しさん
まとめレスすいません。>>274の方もおっしゃる通り
2chブラウザの使用をおすすめします。
↓詳しくは案内板のこのへんをご覧ください。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/imp/1062502486/143-157

予測できても楽しめるモノを書ければよかったのですが、力及ばず申し訳ございません。
前回も更新分は、どこをとってもネタバレになるような内容でありましたので
もっと早くにプラウザの使用をおすすめすればよかったのですが
気遣いが足りませんでした。ショボーンごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

>274 名無し読者様
フォローありがとうございます。
297 名前:178 投稿日:2003/09/18(木) 02:11
またなんか凄い展開になってきましたね
というかほんとに変わっちゃうんですか?本気なんだ・・・ (w
(´-`)。o0(気付いてたけど突っ込み忘れてたよー( ̄ー ̄))

毎回突っ込みどころ満載なので
あれにも触れたいこれにも触れたい、けどネタばれしないためには
こんだけしか書けない。ってもどかしい思いしますよね。
一応気を使ってはいるつもりですがなかなか難しいですよね。
レス簡潔になるかもしれませんが、思いはいっぱい込めますんで
膨らまして受け取ってやってください (^-^;
298 名前:つみ 投稿日:2003/09/18(木) 07:59
あやパパあやママ強すぎ・・・
紺野さんも落ち込むことがあるんですね
299 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/18(木) 17:02
黒美貴にさようならって・・・・
作者様ったらもう!!!!
ミキタンがどうであろうと愛し続ける松浦さん。
感動です泣けました。
そして7つのイモには違う意味で大泣きでした。
最高です。
300 名前:236 投稿日:2003/09/21(日) 13:43
前回sage方を知らなかったアホです。作者さん、みなさん迷惑
をかけて申し訳ありませんでした。作者さん、これからも
頑張ってください。sageれてますか?
301 名前:のえる 投稿日:2003/09/23(火) 23:53
(*´ Д `)  おたおめー♪>ヾ(´ー`●)シ
302 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:37

「あはっ♪なっちぃ〜、こんなのどぉ〜お?」
「……嫌だべ、そんな変なトコに穴開いてるの」
「んあ〜じゃあじゃあ〜コレとかぁ?」
「………それで何を隠せって言うべか?全部丸出しっしょ」
「む〜…あっ!ならコレ!」
「んなっ!?
 なっちはアマゾネスじゃねぇっしょぉ!!」
んふふぅ〜真っ赤になって大声出しちゃって、なっちかわいいなぁ。


紺野からの呼び出しを受け、安倍を担いで学校を飛び出した後藤は
商店街の一角にひっそりと佇むランジェリーショップ“買うていきんしゃい”で
初絡みの為の下着を選んでいた。

今まで散々中途半端な気持ちをさせてきた安倍に
少しでも萌え上がってもらおうとかなり真剣に選んでいるのに
何が気に入らないのか安倍はなかなか首を縦に振ってくれない。

「自分のは自分で決めるべ!
 なっちはコレにするっしょ!」
「えぇー?水玉ぁー?かわいいけどぉーかわいいけど
 それじゃ普通じゃーん。もっと普段履かないようなのにしよーよぉ」
「ごっちん1人で履けばいいべ。
 なっちはコレにするべさ、えぇっと…お会計はぁ…」
「んあ〜なっちの意地悪〜」

下唇を噛んで拗ねる後藤から離れ、レジを探す安倍。

…む?その前に店員さんはいないのかい?この店は。
303 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:38
確かに安倍が疑問に思う通り、2人が来店した時から今まで
この店の店員と思われる人間は1人も店に出てきていない。
他に客もいないし……本当にここは下着屋なのだろうか?

いや、こんだけ下着があるんだから下着屋さんっしょ。
看板にランジェリーショップって書いてあったし。
でも“買うていきんしゃい”ってなんだべか?室蘭の…北海道の言葉ではないべ。
もっと下の…南の国の言葉だべさ!!

「むむむ…どこだべ…?どこの言葉だべか…ハッ!謎だべ!ミステリーだべさ!
 くそぉばぁちゃん……またしてもなっちの前に謎が現れたべさ…!」

そんなモノより店員に現れて欲しいのに…
安倍はこっそり舌打ちを打った。 

「む?なっちどーしたの?」
「なっちじゃねーべさ!アタイはっ!アタイはぁっ!
 見た目は子供、頭脳は大人、迷探偵ナチン!!」

「・・・・・ナチン?」

っガラァ!

「さっきから騒がしかお客しゃんやね!下着ぐらいもっと静かに選べなかと?」
「「っひゃぁ!!?!おおお鬼ぃー!!!!!」」
304 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:38
突然店の奥の扉が開かれ、目の前に現れた般若のような鬼に
安倍と後藤は絶叫して腰を抜かした。

「誰が鬼と?!
 こげんかわいらしか女の子に向かってそげん暴言、名誉毀損ばい!」
「「ごごごめんなさぁいぃ!!
  お願いですから命だけはご勘弁をぉー!」」

耳に届く聞き慣れない言葉。
そこに含まれた感情、“怒”。

((殺される……九分九厘殺される…))

「で、どれにするか決まったと?
 そん手に持ってる水玉のでよかんと?」
「…んあ?」
「…べさ?」

おや?なにかおかしい。
鬼が商売してる。あらあらどこの世も不景気ですのね。
いや、だから、鬼じゃない。
後藤たちの前に現れたのは、鬼のTシャツを着た中学生らしき女の子だった。

「どげんしたと?お姉しゃんたち固まっとぅとよ」
「んあ……お、女の子…」
「べさ……女の子だべ…」

よかった、助かったべさ…。
こんなランジェリーだらけの空間で死んだりしたら
あの世でもごっちんに変な下着強要されるとこだったべさ。

死に場所があの世での生活に影響を及ぼすかどうかはともかく
安倍は心底アブノーマルな下着は身に付けたくないようだ。
305 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:40

「あんー、大丈夫と?
 驚かしたみたいで悪かったとよ。それでよかならお会計しときますばい」
「ふぇ?あ…はい、これで、お願いします。
 こちらこそうるさくしちゃってごめんなさい」
「もうよか。えーとお会計は……あ!
 そんパンツは2点で1800円のお買い得品やけん
 もう1枚選んでつかぁさい」
「もう1枚?」
「んあ!じゃあごとーのも一緒に買おう!
 えっとーえっとーごとーはぁー…コレ!ストラップ!」
「…スプライトやなか?」
「んあ……そーとも言うねぇ」
「そーとしか言わねーべさ…」

シーン。

「む?って違うべ!!
 ストラップでもスプライトでもねぇっしょ!ストライクだべさ!!」
「………んあ…し、知ってたよぉ…」
「れ、れいなもたい、ワザと間違えただけやけん。
 漫才でちゅうところのボケばしたわけやね、うんうん」

・・・この3人、どうやら力を合わせても矢は折れそうにない。
毛利元就もガックシである。
と、そこへ――――

ガラッ

「れいなぁ〜?…あれ?後藤先輩、安倍先生こんにちは」
「んあ?ツルちゃん?」
「…ツル?なんね、お姉しゃんたち絵里の知り合いと?」
「あ、あなた横浜に行く時ごっちんたちと一緒にいて
 確かヤシガニの…」
「ハイ。亀井絵里です。
 買い物ですか?わぁ〜かわいいですね。その ス ト ラ イ プ の下着」
306 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:41
「「「ハ………??」」」

突然現れた亀井の言葉に固まる3人。
そうだ、ストライプだ。それが正しい気がする。激しく正しい気がする。

「え…え?私…なにか変なコト言いました?」

間違ったコトなど何一つ言った覚えがないのに
いきなり出てきて何言いやがんだテメェな目(あくまで亀井さんの受けた印象)
を3人に向けられて亀井は焦った。

しかしそこに放たれる、1粒の豆。

「変なコトい言ってたのはそっちの3人ニィ。
 まずストラップは携帯電話に付けるアクセサリーだニィ。
 そしてスプライトは広いターゲットに親しまれ、自然なイメージをもつすっきりした
 さわやかで透明な炭酸飲料で甘みを抑えたさっぱりしたレモン味を特徴としてるニィ。
 1960年にアメリカで誕生し
語源的には英語のSpirit(元気の意)とSprite(妖精)からきてるニィ。
 前者は、スプライトの炭酸ガスがパチパチと威勢よくはじける様子を表現し
 また後者は製品のさわやかな透明感を強調してるニィね。
 炭酸のガス圧を強化することで、透明炭酸飲料がもたらす独特の刺激と爽快感を実現。
 キレのあるさっぱりしたドライな後味を引き出す新レモン・フォーミュラ“ドライレモン”も採用し
 飲用時はクールなおいしさ(甘み)を感じさせながら
 飲用後にはじめてほのかに香るレモンの風味を楽しむことができるニィ。
 飲みこんだ後口の中の甘みは打ち消され、後を引かない、爽快なあと味ニィ。
 最後のストライクは誰がなんと言おうとストライクニィ。
 わかりやすく野球で言うに、イェイ真ん中バッター三振、なんだいお前さん今日はえらい飛ばすじゃねぇか。
 いいね、いいねぇ、今夜は飲むか、お前の奢りでよ。ってなモンだニィ」

「「「・・・・・・・」」」
「…あ……こ、この子、新垣理沙ちゃんっていってこの前の横浜の目撃情報くれた子です。
 れいなは知ってるでしょ?」
「し…知っとぅと……」

亀井の後ろから、これまた颯爽と現れて舌もなめらかに語り出した新垣は
ラブラブっと固まる後藤たちにVサインしてみせる。
307 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:42
「んあ!?ニィってお前かぁ!!
 あん時はよくもガセネタ流してくれたわね!」
思い出したぞ!ジュマペール!!

忘れかけてた Ny Revolution♪を思い出し
人差し指を突き出して叫ぶ後藤に、新垣も負けじと叫び返す。

「ガっ、ガセネタとは何ニィ?!
 確かにあの後亀井ちゃんから話を聞くに、どうやらあの松浦先輩は松浦先輩ではなく
 ある種のドッペルゲンガー的存在だったワケですが。
 そちらさんだって思いっきり見間違えたそうじゃないですか!
 ニィだけを責めるなんて……本人の過失で起こした事故であっても
 それを製造した会社に責任をおわせ、二度とそんなことがおこらないように懲らしめる
 アメリカの懲罰的賠償制度と同じぐらいお門違いニィ!」

ニィ!と下着が陳列されている棚をガンと叩き
新垣は顔を怒りに染めた。

「……んあ、そんな制度あるの?」
「よくわかんなかや。具体的にどうちゅう話なと?」
「なっち聞いたコトあるべ。
 ずいぶん昔だけどニューメキシコ州でおばあちゃんが自分でこぼしたコーヒーで
 お尻を火傷しちゃって、その治療費に100万円を要求したとか…」
「それニィ!!」

よくぞ知っていてくれた!と安倍に満面の笑みを見せ、新垣は続ける。

「飲みごろのコーヒーの温度は65度。だけどお店の出したコーヒーは80度で
 客の安全に対する配慮が欠けていたとかゆー言い分であのババァ!!
 しかもそれに対する判決も判決ニィ!そのコーヒーを出した
 ファーストフードが2億9000万円も賠償金を支払うように命じられたニィよ?!
 信じられるニィ?!約3億ニィよ3億!!サマージャンボニィ!
 ババァのケツの火傷ごときに3億ってどーゆーコトニィ!
 こぼしたのは自分とちゃうんかい!
 ぬるいコーヒー出されたら出されたでどーせ文句言うんだろーが!ニィイー!!」
308 名前:青春の涙。(WITH NI-I-GA-KI) 投稿日:2003/09/24(水) 02:42

ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。

中学生の主張を終え、荒い息を吐く新垣のオデコは
汗でキラキラと光っていた。
その汗に濡れ、普段以上の存在感を醸し出す眉毛からは
今日もビームが無料で放出中である。

「んあ。まったくその通りだよニイカキさん。
 ごとー感動した」
「ニイ“ガキ”だニィ」
「れいなも感動したとよ。こんパンツ特別にプレゼントばい」
「…ありがとニィ、わかってもらえて嬉しいニィ」

ガシッ。

後藤、新垣、そしてランジェリーショップ“買うていきんしゃい”の
看板娘、田中れいなの3人は、熱い涙を零しながら抱き合った。

「美しいべ…これぞ青春っしょ、ねぇ亀井さん」
「・・・・・・・・・」



どうやらこの中でまともな人間は自分だけかもしれないと、今更気づく亀井であった。




◇ ◇ ◇


309 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:44

「んあ!結局普通のになっちゃったけど
 楽しかったねなっち!」
「べさ、新垣さんとの出会えてよかったべ」
「うん、田中にも、会えてよかった。
 ごとー今日久しぶりに日記でもつけてみよっかなー」

あはははは、うふふふふふ。

楽しい楽しい帰り道。
なっちと手を繋いで歩く、いつもと同じ商店街。

『おぃなちごま、私くしの呼び出し忘れちゃいねーか?』

「んあ!忘れてたよ完璧に!!」
「っひょぉ?!何を忘れてたべさ?」
「紺野!元はと言えばその為に下着買いに行ったっつーのに…んあ!
 しかもごとーたち下しか買ってないじゃん!!
 セットで上も買えばよかった……」

無念…勝負下着は上下揃えるのがツネ識ですのに…。
いや、普段用でも普通揃えるよね…ごとーったらそんなに触りたいのかしら、下。
 
「んあ!当たり前だい!
 今まで触る度に吹っ飛んできたんだ!
 下にばっかり気が逝って何が悪い!
 未知との遭遇求めて何が悪いぃー!!」
「ごごごごっちぃん!
 そんなデカイ声でなにワケわかんないコト言うべか?!
 恥ずかしいっしょ!シィーっ!」

あぁー…楽しみだなぁー初絡み♪
んあ!紺野!遅れたけどすぐ行くから!

ワァープ!

310 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:44

スタ。

「んあ!着いたね!」
「…そーいやごっちんもできるんだったね、ワープ」
「うん!じゃあ早速入ろー。
 紺野ぉー?来たよぉー?」

ガラガラリン♪

しくしく、しくしく。

「む?」

鍵が開いてたから、いつもみたいに勝手にお邪魔したんだけど
入ってすぐの部屋に紺野の姿はなくて
代わりに奥の部屋から細くすすり泣く声が聞える。

「紺野?どうし…」

『アンヌ、僕は…僕は人間じゃないんだよ。
 M78星雲から来たウルトラマンセブンなんだ。
 ……ビックリしただろう?』
『…ううん。
 人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンに変わりないじゃない。
 たとえ、ウルトラマンセブンでも』

ひぃん!

ごとーとなっちの存在に気づかずにテレビに見入る紺野は
更に大きな泣き声を上げた。
311 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:45
『西の空に、明けの明星が輝く時、ひとつの星が宇宙に帰っていく。
 それが僕なんだよ。
 ……さようなら、アンヌ!』

「うわぁあああん!!ダンのバカぁー!!!」
「っんあ!?」
「っべさぁ!?」

紺野にしては非常に珍しい大声。
それにももちろんビックリだけど、それ以上に驚いたのは
紺野の右手に握られていたジャガイモが粉々に砕かれる光景だった。

紺野…アンタ一体どこにそんな力を…?!

「あ〜ぁ、またジャガイモ1個無駄にしちゃった。
 これも全部ダンのせいだよ……っキャ!後藤先輩に安倍先生!!」
「…あ、ごめん勝手に入っちゃって……」

ってかさっきごとーたちのコト呼んだんだから
スグに来るコトぐらいわかってたんじゃないの?

「・・・・いえ、お気になさらず。
 お見苦しいトコロをお見せしてしまいましたね」
「んあ、別にいいよ。
 ってか今のが前に言ってた紺野がここを建てた理由?」
「えぇ、ダンのバカが間違えやがった
 決定的瞬間です。
 これを見ると、涙を零さずにはいられません」
「それはお気の毒に…」

ごとーにはサッパリその気持ちはわかんないけどね。
隣のなっちを見ると、(なっちもわかんねーべさ)って顔をしてた。
312 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:45
「フフフ、いいんですよ。
 いつの世も天才は凡人に理解されないモノですから」
「んあ」
そーね、そーよね。ごとーったら完璧な凡田凡子で…
「って誰が凡子よ!!
 紺野はただのイモバカでしょ!」
「なっちだって凡倍凡美じゃないべ!
 …ってなんだべかこのガスボンベみたいな名前はぁ!
 言い難いったらありゃしないっしょぉ!!」

んあ?ちょっと待ってなっち。
ってコトはごとーは凡藤凡希ってコト?
紺野の場合は凡野凡美…?

「ってやだぁ!それじゃなっちと紺野の名前が一緒になっちゃうじゃん!
 ごとーそんなのやだよぅ!!」
「ごっちん…!泣かないで、仕方ないべさ…。
 この日本には、いいえこの地球には約63億1936万7610人の人が
 生きてるんだから名前がかぶっちまうコトぐらい日常チャ飯事っしょ!」
「「・・・・・・」」

なっち……約ってつけた割にえらい細かい数字だね。 
しかも日常茶飯事、サハンジだと思うよ、ごとーは。

「国語は得意だったとおっしゃっていたのに…」
「んあ紺野!それは言っちゃダメ!!」
「む。得意だもん」
「しかしチャ飯…」
「だぁあストぉっプ!!紺野!さっさとごとーとなっちを絡ませてよ!
 ごとーの体を治す方法わかったんでしょ?」
313 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:46
「ふぅ、過保護ですねぇ。
 …わかったワケではないんですが、お話するとしましょう」
「んあ?わかってないの?」

のぉお…それじゃまだ絡めないのかよぉ…ぐすん。

「いややはり話の前に、調べたいコトがあるので
 ちょっと飛んでいただけますか?後藤さん」
「ふぇ?飛ぶ?」
「えぇ、飛んでください」

なんでこんなトコで飛ばなきゃなんないんだろ?
と疑問に思いつつ、ごとーはピョンとジャンプした。

「もうね、アホかと、バカかと」
「んあ!?なによ!」
「その“飛ぶ”ではありません。
 安倍先生の秘所に触れて飛んでしまえと言ってるんです」
「「えぇえええ!?!?」」

こここここでぇ?!紺野の目の前でぇ?!
そんなのダメ!18禁だから紺野は見ちゃダメ!

「誰もそんな濃厚な絡みの末の秘所タッチが見たいなんて言ってませんよ。
 空になった後藤先輩の体を調べたいので
 飛んでいただきたいだけです。完璧です」
「ごとーの体を…?」
「んなっ!?それはなっちが許さないべさ!
 ごっちんの体をいじくりまわそうなんて…っ!」
314 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:46
「ですが、それではいつまで経ってもこのままですよ。
 別に服を脱がせたりはしませんから。
 心配なら先生も見ててくださって結構ですし」
「そ、そうかい?それなら…」
「んあ、でもでも、絡まずにどーやって飛べっての?」
「無理にムードのあるコトしなくても触れば飛ぶんですから
 そのままパンツに手突っ込んでください。
 私くしは背を向けておりますので。
 あ、それとお帰りの際は呼びますんでしばらく楽しんでてくださいね」

んぇー…突っ込めって…やぁーまぁー今日のなっちはスカートだし
脱がす必要もないけどぉー……  
む?ってか楽しむってなに?!楽しめるワケないじゃんかあんなの!

「んあ…なっち、いい?」
「…うん。あんま刺激しないでね?」
「あはっ、はぁ〜い」

それではそれではぁ〜、失礼しまぁ〜…んあぁぁあああ?!?

「はっ…あぁ!」

ポテ。

「紺野さん!ごっちん飛んだっしょ!」
「…では、始めますか……」





315 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:47

「スカート皺になるから脱いでこのジャージ履いてなよ」
「…うん」
「ココアでも飲む?たしか前もらった外国製のすっごい美味しいのが残って…」
「誰に…」
「ん?」
「う…ううん、なんでもない」
「……………」

…んあ?あれ?おかしいな。
いやほらさ、ごとーが飛ぶ先っていっつもこぉ抱いて抱かれてみたいな
雰囲気の現場じゃん?
だからなるべく見ないようにしてんだけど、今回はなんか変。

ヤラしめの声とか聞えてこなくて
代わりに美貴の超優しい声とまっつーの元気ない声が聞えてきたし。

不思議に思って声のした方を見ると
美貴の家のリビングのソファに毛布を掛けられて横たわるまっつーと
その頭を撫でてるホワイティー様のお姿が。これは……終わった後なのかな?

「…あ、あのさ、今度の日曜どっか行こうか?」
「ぇ…?」
「あー…なんか用事あるならいいんだけど、もし…よかったら…」
「い、行く!行きたい!
 どこに行くの?!」
「うーんと…映画とか?亜弥ちゃん観たいのある?」
「え、えっとぉ…いっぱいある…」
「アハハ、じゃあ全部観ちゃおっか。美貴奢るし」
「えぇ?!そんなの悪いよぉ」
316 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:47

おぉお!これまた見事な白さで…素晴らしいね、涙出てくる…。

「遠慮しなくていいよ。
 美貴さ、夏休みバイトいっぱいしたし
 お酒やめてたから結構お金貯まったんだ。
 だから映画だけじゃなくてご飯も奢るよ、焼肉行こ?」
「……で、でも…」
「嫌?」
「ううん!…嬉しい…ミキたんとお出かけなんて
 ホント久しぶりだもんね…」
「…ごめんなさい」

ウォホホホ!笑っちゃダメ!笑っちゃダメなのはわかってる!
でもすごくない?美貴が、あの美貴がまっつーに
情けない顔で謝ってんの!いやぁー何度見ても見慣れないなぁー。

「ねぇミキたん、…しなくていいの?」 
「ハァ!?何言い出すの?!
 亜弥ちゃん昨日貧血で倒れたし、昼だって
 あんま食べてなかったじゃん。ゆっくり寝てなって」 
「……うん」

んあ!?してないの?!
うー?うぅー??ではなぜごとーはここに?
確かごとーが飛ぶのってヤってるトコとか泣いてるトコとかでしょ?
まっつー泣いてないし、ヤってもないならなぜにごとーはここに来たのよ?
317 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:48
ってかホントにまっつー元気ないよねー。
凹みまくりじゃん。そんなに申し訳なく思うコトないのに。
たかが美貴の名前がビフテキアヒル美貴助になるぐらい大したコトじゃないよぉ。

「えっと…美貴ならさ、別に名前が変わるぐらい
 どうってコトないし…。
 元気ない亜弥ちゃん見てる方がツライんだけど…」
「ミキたん…」

カぁーっ!シビレるねぇ!
美貴って黒くならずに真っ白なまま生きてたら
そぉーとぉーモテモテよねぇ…まー人気は昔っからあったけどさぁ。
今の美貴輝いてんもん。ごとー、ときめいちゃうぞ♪

「う…」
「ミキたん?どうかした?」
「いや…なんか寒気が…毛布、一緒に使っていい?」
「うん!」

む。ごとーのときめきに寒気感じるなんて
失礼なヤツね、白いクセに…。

後藤の文句なんて何1つ聞こえちゃいない美貴は制服のスカートと
“亜弥命”ブレザーをポポイと脱いで、嬉しそうに両手を広げる
まっつーを腕枕してすっぽりと毛布にくるまった。

「わぁ…やっぱソファに2人は狭いか」
「ピッタリしてれば大丈夫だよ」
「…これで、元気になっていただけます?」
「・・・・・・」
318 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:48
「ダメか…」

はぁ…と、美貴は溜息ついでにまっつーを抱く腕に力をこめた。
顔を覗くと好物の焼肉を目の前にして食べ損ねた時みたいに
下唇を噛んで悔しそうにしてる。

アハハハハッ!変な顔!ウケルぅー!!

「あのね…!あの…ね、あたし…」
「ふぁい?」
「ミキたんがいいなら…って納得しようと思ったんだけど…。
 でも、やっぱりミキたんヤなんじゃないかとかっ
 ヤだからまたあたしの前から……いなくなっちゃうかもしれない、とか」
「・・・亜弥ちゃん」

ぐすんっ!そーよね不安よね!
ごとー笑ってる場合じゃなかった、ごめんなさい。
どーぞ続けて、ラブフォーエバぁー!

「いなくなんないよ。って言っても説得力とか全然無いと思うけど…。
 あ!そーだ!今度いなくなったらさ、デコピンとかしていいし!
 あ?それじゃユルイ?なら飛び蹴りとか…」
「パパじゃないんだからそんなコトしないよぉ」
「あ…そう?うーん…じゃあ何でも言うコト聞く!
 亜弥姫の願いごとなんでも叶えてあげるよ!」
「えぇー、それじゃミキたん下僕みたぁい」
「アハハハ、亜弥姫の下僕なら喜んで」  
「フフフっ……あ、でもね…もう1つあってね…」
「ん?」
319 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:49
「あたしさ、小さい時からずっと、ミキたんのお嫁さんになりたいって
 思ってたから……でも女同士だしなぁって諦めてたのね?
 なのにパパがミキたんの苗字…だけじゃないけど変えるって言い出して
 だったらあたし“藤本亜弥”になりたかったのに…って思って」

んあ、そっかぁ。美貴が松浦の籍に入るんだからまっつーは
“松浦亜弥”のままだもんねぇ。
ってかいいね、“藤本亜弥”って。
松浦トトカルチョカモメ美貴助より全然いいじゃん。ホント残念。

「でもパパも頑固だし…いつまでも凹んでても仕方ないね。
 ごめんね?明日には元気になるから
 もうちょっと甘えていい?」
「いいよ、もぉ今日はずぅーっとこうしてよう」
「へへへっ……ありがとぉ」

パチパチパチパチ…よかラブストーリーでした。
これで最終回でも1ミリも文句はありませ……ってんあぁ!!
違ぁうダメじゃん!
主人公ごとーでしょ?!ちょっと最近ミキアヤばっか目立ちすぎじゃない!?
もっとごとーとなっちラブラブさしてよ!
絡めなくても絡めてよ!んあぁー!!

『後藤先輩お待たせしました、帰ってきてください』

んあ。なぁっちぃー!愛してるぜぇー!!!




320 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:49

「ぜぇー!!!」
「っきゃぁああ!」

んあ!ただいまなっち!ってなんでそんな仰け反ってるの?
え?ごとーの声がデカイ?んあ、ごめんなさい。

「後藤先輩、念の為確認ですが
 今松浦先輩のところに飛びましたね?」
「んあ、美貴とまっつーのトコね」
「そうですか…」

ごとーの返事に、やっぱりなって顔の紺野。
む?なんなんだろ?

「あ!そーいえばさぁ、2人は別にヤったりしてなかったんだけど
 それって普通の時でもおイモパワー出しまくりだったからなの?」
「いいえ。
 後藤先輩、あの時おイモ食べましたよね?」
「んぇ?あの時?」
「藤本先輩が生まれ変わる際、おイモの皮に包まれて爆発したじゃないですか。
 あの時あたりにふかしイモのカケラが飛び散ったでしょう?」

あー…あの激しく美味しかったイモかぁ。
「うん、食べた」
「あのおイモはですね、松浦先輩の涙でできたモノですから
 簡単に言うと松浦先輩のおイモパワーそのものなんですよ」
「ほぉほぉ」
「なので、それを食した後藤先輩の体は大量のあややおイモパワーが
 吸収されたワケです」
「でもあのイモならなっちも食べたべ。
 ってゆーかあそこにいた全員が食べたべさ」
321 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:50
「えぇ、ですからあそこにいた全員吸収してるんですけど
 大抵の場合は特別影響は出ませんし、出たとしても
 一時的に歌がものすごく上手くなったりだとか
 無償にウィンクがしたくなるだけなので日常生活には何も支障はありません。
 しかし!後藤先輩の場合は違います!!」

紺野は目をクワっと開き、ごとーの鼻の頭を指でさした。

「後藤先輩はただでさえ問題のある体なので。
 もうわかってるかもしれませんが…」
「んあ、これからごとーは毎回まっつーのトコに飛んでっちゃうってコト?」
「えぇ」
「ヤってなくても?」
「はい」
「まっつーが美貴といなくても?」
「イエス」
「なっちの秘所に触れたら、いつでもどこでも松浦行き?」
「・・・・・・」

む?なんでそこで黙るのさ、紺野?コンちゃーん?

「1番最近キスしたのはいつですか?」
「ハ?キスならここに来る前、かおりんから紺野が呼んでるって
 聞いた時にしてたけど」
「その時は特に体に異常は?」
「ないよ」
「そうですか……」

ちょっとなんなの?さっさと教えなさいよ!
322 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:50
「べさ……もしかして…」
「んあ?なに?」
「キスだけでも…飛んだりしちゃうかも?」
「…これから先、いえ近いうちにそうなる可能性が」
「へぇ〜」

キスだけで飛ぶんだぁ、へぇ〜。





・・・・・・・なんだとぉ!?!

「紺野ぉ!!どーゆーコトよ!
 治るどころか悪化してんじゃんそれ!」
「えぇ、完璧に」
「『えぇ、完璧に』じゃないよ!キスは大事なのよ?!
 絡むより全然大事なコトなの!!マウストゥマウスなのよ!
 ラブトゥラブよ!それさえもできなくなるかもってどーゆーコトよぉ!」




神様、ごとー贅沢は言いません。
おやつも我慢します、トイレ掃除だってします。

だからこれ以上、ごとーの幸せを奪わないでください。



よろしくプリーズ。

草々。


323 名前:悲劇。 投稿日:2003/09/24(水) 02:51
   
324 名前:のえる 投稿日:2003/09/24(水) 02:52

絶対間に合わせようと思ったのに……ガックシ。
改めまして、後藤真希さん、お誕生日おめでとうございます。

 ベサ ( ●´ー`)(´ Д ` ) ンア

レスありがとうございます。喜々。

>297 178様
こんな展開になっちゃいましたねぇ(爆
ホントに変わるのかなぁ…(オイ
簡潔でもドンケツでもレスをいただけるのは本当に嬉しいので
2倍にも50倍にも膨らませて受け取らせていただきたいと思います(w

>298 つみ様
実際のパパたちも強そうですよね。
紺野さんも一応人間なんで(w

>299 名無しさん
ななな泣いたとな!?ししししかも感動で?!
てっきり怒られるとばかり…優しいですね。
このお話を怒らずに読んでくださってる方は皆さん天使だと思います(爆

>300 236様
オケーですよ、ありがとうございます。頑張ります。
325 名前:178 投稿日:2003/09/24(水) 04:08
ぬぉ!そうくるのか・・・

登場人物増えましたね。そろって何気にボケてるし。
あとツッコミから熱い。そんなキャラだったんですね。
で、どうなるんだこの先?

前回メル欄ミスりました(´・ω・`)
失礼いたしました。本当に申し訳ないです(ノД`)
326 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/24(水) 05:39
ホワイティ様素敵すぎます…(´Д`)ハァハァ
327 名前:つみ 投稿日:2003/09/24(水) 15:34
ニィニィとれいなもいいキャラかもしだしてますね^^
しかしごとーさんこれからどうするんでしょうね〜?
328 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 07:38
後藤さん、がんがん飛んじゃって下さい!!(笑
そしてもっとホワイティーを…

続きに期待してます。
329 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:24





「…zzz……」
「・・・・・・」

はぁ……近いうちにって…………っ近すぎだよ!!
せめてもう1日ぐらいゆっくりキスさしてくれたっていいじゃんバカっ!!!

『……つくづく可哀想な人ですね、完璧です』

くぅ!
紺野ぉ…悪いんだけどさ、しばらく1人にしてくれない?
美貴たち寝てるみたいだし。
ごとー、ちょっぴり凹みたいの、お願い。

『そうですか……でもまだ話はありますので…』

んあ、大丈夫。
そんな長くなくていいから。
少しでいいからそっとしといて。

『わかりました。では15分経ったら呼びますので』

うん。ありがとぉ。



あ〜あぁ〜、泣きたい………。
もう言わなくてもわかってると思うけど

ごとーね、飛んじゃった。キスだけで。

紺野に話を聞いた後、試しにもう1回キスしてみたのね。
そしたらビュンって。

飛んじゃった。

330 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:24
学校でした時は大丈夫だったのに。
あれから2時間くらいしか経ってないハズでしょ?
早すぎるっつーの。

なんかね、紺野の話によると
体に吸収された他人のおイモパワーっの影響っていうのは
すぐに出るワケじゃないらしくて、個人差もあるけど
大体1週間くらいで馴染んで効果を発揮するらしいの。

つっても、さっきも聞いたようにほとんどの場合は
影響が外に出る人なんて稀で
あんま個性がないとか、自分ができてないとか
そーゆー子じゃないと全く問題はないらしい。

ごとーは見ての通り個性ありまくりだし
自分だってある程度、この年にしては出来すぎてる方だと思うの。
思ってるの、思いたいの、思わせてよ。

だから本来だったらまっつーのおイモパワーなんて
吸収しよーが何しよーが問題はなかったハズなのに…。

んあ…てっきり治るもんだと思っていただけに、つらいですねぇ…。

「zzzz…」

はぁぁ…いいなぁ、美貴は幸せそうで…。
色々あったけど好きな子と一緒にいられてさ。
好きなだけキスできて絡むコトだってできるし。
羨ましいったらないです。
331 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:25

「ミキたん……」

んあ?寝てると思ってたソファの上のカタマリから
まっつーのかわいらしいお声。

寝言かと思ったけど、顔を覗いてみたら目はパッチリと開いていて
美貴の胸にほっぺたをすり寄せたりして甘えてる。

ちょっとちょっとホワイティ。
こういう時って普通起きてるの逆じゃない?
アナタ元気ないまっつー心配してたでしょーが。
だったらまっつーが寝るまで美貴がまっつーを見つめるとか
頭撫でたりするモンなんじゃないの?
まっつーがまだ寝れてないってのに、なに暢気に寝てんのさ?

「ごめんね…」
んあ、お松さんったらまだ気にしちゃってんだ…。

まっつーは胸元から顔を上げて美貴を見つめ
回した手で美貴の背中や肩を確かめるみたいに撫でる。

「ミキたん、あったかい…」

そりゃ生きてんだし、そんだけくっついてりゃあったかいよ。
・・・・ぐすっ、ごめん八つ当たり…ごとーだってくっつきたいの、うわぁん。

「また……無理させてるね…」

えぇ、ごとーは無理しまくりです。
そこの白美貴さんは特に無理してないと思いますよ、えぇ。
332 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:26
「あ、このままじゃミキたんの腕死んじゃう。
 …っん…よいしょっ……えぃっ…」

まっつーは美貴に腕枕してもらってるから
当然頭の下に美貴の右腕があって、長いコト乗せてたら
悪いと思ったらしく頭を持ち上げて腕からおりようともがいてんだけど
ガッチリと抱きしめられてて身動きとれないみたい。

「でへへっ……zzz…」

それでもせめてと頭を浮かせたりするものの、首に限界がきて力尽き
ハァハァと荒い息を吐く。
その間もクースカと夢の中の美貴はもがくまっつーの髪の毛が顎に触れたり
息が首にかかるのがくすぐったかったらしく、口を緩めて寝たまま笑った。

「んんー…亜弥ちゃぁん……zzz」
「…?…わ、ふあぁ…っ!…」

おまけにもぞもぞ動いてまっつーの上にのしかかるみたいに
寝返りをうち、首筋にくんくんと鼻を寄せて匂いを嗅ぐ。
その様子はまるで母犬に甘える子犬みたい。

んあ、かーぁいいーねぇー。
まっつーもきっと幸せそうな顔し…んあ…?


・・・・・・泣いてる。

嬉し泣き…なのかな?美貴に乗っかられて
さらに身動きの取れなくなったまっつーの目からは
湧き水みたいに涙が溢れてて、声も出さず静かに泣いてた。
333 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:26
んあ…結局美貴って黒くても白くても
あやや泣かせなのは変わんないのね、罪な奴。

『後藤先輩、そろそろいいですか?』

んあ、オーケィ。なっちー、なっちぃー…








「ちぃー…」
「べさ、ごっちんお帰りなさい」
「んあ、ただいまぁ」

帰ってくると、赤い目をしたなっちが迎えてくれた。
なっちもショックだよね…キスもできないなんて。
はぁ…なんとかしてくださいよ紺野先生。

「なんとかなりますよ」
「んあ!?ホントに?!」
「えぇ、1年待っていただければ」
「「はぁあ!?いいい1年ぅ?!」」

なっちとごとーの声はハモる。
1年って、1年って長すぎだし!

「研究によって早期解決法が見つかれば話は別ですが
 この私が3ヶ月以上労力を費やしているにも関わらず
 解決法は見つかりませんし、こうなったらポテ…もとい
 おイモの神に頼むしかないんです」
334 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:27
「んあ?イモの神ってこないだの?
 ならさっさと呼ぼうよ、なんで1年もかかんの?」
ポテロンだかポテトンだかワケわかんなくなっちゃったエロいキノコか。

「ポ…おイモの神は、1度呼び出されると
 それから1年は地上に降りてくるコトができないのです。
 そうしないと、おイモパワーを持つ人がなんでもかんでも
 神を頼るコトになりかねませんから」

ほぉ…たしかドラ○ン○ールも1回使うと1年石になってたっけ。

「む?紺野さん、1つ聞きたいんだけど
 だったらごっちんがこんな体になっちまった時点で
 おイ…モの神様を呼んでもよかったんじゃねぇのかい?」
「んあ、それもそーだね。
 でもその場合は美貴が助からなかったワケだけど…」

美貴のコト考えたらごとーの為に使わなかったのは正解か。
でもでもぉ、ごとーの方が先に惨事に見舞われたワケだし
黒くもなかったし、ハッキリ言って黒美貴なんかのせいでごとーの
ラブラブライフが奪われたなんて許せなさ気なんですけどぉ。

「それがそういう簡単な話でもないんです。
 今言ったように、おイモパワーを持つ人が神を頼りすぎないように
 おイモの神を呼ぶには色々と規定があるんです。
 熟練されたおイモパワーを持つちょっとスケベなおイモ仙人たちは
 神を呼ぶ為のパワーを発するコトぐらい朝飯前なので」

おイモ仙人……スケベなんだ…。
その設定もなんだか被ってるよね…あのマンガと…。
335 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:27
「で、その規定的に後藤先輩の“最終的な行為ができない”という
 ケースはおイモんボールを作る時点で
 『そういう願いはアウトだよん』という茶目っ気タップリのお手紙が来るんです」

あー…そうなのか…ってか何が茶目っ気よぉ。
そんな腹立つ手紙いらねぇっての。

「でもそれなら今のもダメなんでないかい?」
「いえ、今の状態はキスすらまともにできないワケですから
 おイモの神も必ず助けてくれるハズです」

んあ!マジ?!
ぬぁーでも1年待たないとダメなのよねぇ…しくしく。

「ごめんねなっち、1年もキスできなくて…」
「謝るコトないっしょ。
 なっちはごっちんより大人だし、我慢は慣れてるべ。
 …ごっちんのがつらいっしょ?若いんだし…思春期だし…。
 ねぇ紺野さん、その研究なっちにも手伝わせてくれないかい?
 すこしでも早くごっちん助けてあげたいんだ」

ごとーの手を握って、凛とした顔で話すなっちは最高にかっこよくて
かわいくて。助けてあげたいって言ってくれたのは
すごく嬉しいんだけど、そんなコトよりちゅうしたいのぉー…おぉー…。

「………そうだ、電話してみよっかな」
「「へ?」」

なっちの話を聞いてなかったのか、考え込んだ顔をしてた紺野が
突然ポツリと呟いた。

「ちょっと、こんな時に誰に電話するっての?
 ごとーのなっち無視しないでよ」
「ブツブツ…ブツブツ…」
336 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:27
んあぁ!紺野!無視すんなっつってんのに!!

「ごっちん、落ち着いて、何か考えがあるんだべさ!」
「むぁあー!!ならその考え話さんかいっ!」
「ブツブ…ん?あぁ、失礼しました、ちょっと思いついたコトがありまして」
「んあ、だからなによ?」

思いついたとか言ってぇー
『新しいイモ料理を』とかだったらぶっ飛ばすわよ!

「違いますよ、失礼な。
 おイモの神に電話してみてはどうかと思ったんです」

ハ?電話をイモの神に?んなコトできんの?

「できますよ、私よく悩み聞いてもらったりしてるんで。
 後藤先輩の話も何度かしたんですが
 『そりゃーオレが扱うレベルの話とちゃうなぁー』って言われてて…
 でも今ならきっと何かアドバイスをくれるハズです」
「んあ!なら早く電話しよう!すぐしよう!」
「べさ!テレカならなっちの使っていいべ!!」
「・・・・・先生、ありがたいですけど度数きれてますよ」
「あっ………」
「んあ!なっちドンマイ!」

そんなトコロも好きさベイベー!!


337 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:28

と、そんなこんなで紺野がイモの神に電話(コレクトコールで)をかける。
皆で話せるように、スピーカーホンにしてコールを鳴らした。

プルルルル プルルルル

『はいもしもし〜』
んあ!この声は間違いなくイモの神!
「もしもしポテちゃん?あしゃこだけど」
お、ロンやトンはやめて新しくポテちゃんで逝くみたい、皆よろしくね。

『おぉ〜あしゃこかぁ〜どうしてん?また何か悩んでんのか?』
「うん、あのね、実はカクカクシカジカで
 キスもできない体に…」
『なんやとぉ?!マジか?!その話マジデジマか?!』
「…うん」
『っ!泣くわぁ…泣いてまうわそんなん、オレやったら耐えられへん。
 ポテ子とキスもできんやなんて死んだ方がマシやぁ…ぐすっ』

んあ、ポテ子?彼女さんかな?

「…ってかそれより!
 そんな風に泣いてくれるんなら1年はダメなんて言わずに
 ごとーの体元に戻してくれない?
 つらいの、つらすぎるのぶっちゃけ!!」
「なっちからもお願いっしょ!なんとかしてほしいべさ!」

頼むよ神様ぁ!
愛が地球を救うなら、キスだって地球を救うんです!!
338 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:29
『・・・・・・・・』

ごとーとなっちの痛々しい叫びに、受話器の向こうで
イモの神は黙りこんじゃった。
やっぱ神だし…規定とか破るワケにはいかないかなぁ…。

『お姉ちゃんたちの気持ちは……よくわかった。
 2人とも、ある意味おイモパワーの被害者やねんな。
 神として本当に申し訳ないと思ってる。ごめんなさい。
 せやからできるコトなら今すぐと地上に降りて、お姉ちゃんの体
 治したりたいんやけど、そうもいかんねん。それはわかってほしい』

んあ…やっぱダメか……。

『しかし!ここで1つ提案がある!!』
「む?提案?」
「なんだべか?期待していいべか?」
『イモの神はな、おイモパワーを持つ全ての人に
 幸せでおってほしいと思ってんねん。
 やけど世の中、そうそう上手くいくモンやない』
「うん、その通りだね」
『オレがつい最近助けたった子も、幸せやけど
 幸せになりきれてない。心の中は不安だらけで安心できてないねんな』
「はぁ…」
ん?最近助けた子?
それって…美貴?…いや…まっつーか!

『と、そこでや。
 おイモの神が人の願いを叶える時の条件の1つに極秘の特例があってな
 神の命を受けてそれを実現してみせた場合ってのがあんねん』 
「んあ、簡単に言うと
 神にされた命令をちゃんと実行した時ってコト?」
339 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:29
『そうや。しかもその場合、オレが下に行けへん時でも
 お姉ちゃんたちの願いを叶えたるコトができる。
 そこに、おイモパワーさえあれば!』
「じゃ、じゃあ!なっちに命令するっしょ!
 絶対実行してみせるべ!!」
『神の命令やからなぁ…ちょっとムズイけど…』
「なんでもやるっしょ!ごっちんの為なら!」
「なっち…」

ありがとう!ごとーもやるよ!
2人で力合わせて神の命令なんでも聞いちゃる!!

『うんうん。そう言う思たで。
 ほな話ちょろっと戻して、こないだオレを呼んだ子な、あのかわいい子』
「んあ、まっつーね」
『ほぉ、マッUっていうんか、変わった名前やな。
 まぁそれはおいといて、あの子幸せになりきれてないやんか』
「ふぇ?なんで?」

あー、美貴が改名しなきゃなんないから?
でもそれは時間が解決するし、明日には元気になるって…

『言うてへんやん。あの目つきSっぽい子』

んあ?目がSって…美貴か、美貴よね。
美貴が言ってない?なにを?なんか言うコトあったっけ?
340 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:30




『だからその………好きやとか……あああ愛してるとか…』





( ゚д゚)  ハァ?


・・・・・・え?言ってない?好きすらも言ってない?

そんなバカなぁ、白美貴だよ?ホワイティだよ?
黒美貴じゃないんだからそんなコトあるワケないじゃんよぉー。

『いや、だって言うてないんやもん。実際』
「えぇー?ありえないよぉ、白いんだよぉ?
 入籍だって決まったってのに言ってないワケないじゃん、ねー?なっち」
「うん。それにあんな毎日ラブラブで
 言ってないワケねーべさ」
『ほなお姉ちゃんら、あの子がマッUちゃんに
 好きやって言うたん聞いたコトあるか?』

あはっ、やだなぁ、そんなのあるに決まって………


「んあっ!?ないぃぃいいい!!!!」
「べさっ!なっちもないっしょぉ!!」

嘘ぉ?!なんでっ?!なんでないの?!
ちょっと待ってよく考えて…えーとうーんと……
ご、ごとーになら言ったよねぇ『好きだよ……亜弥ちゃん…』って。
でも、美貴がまっつーに直接好きだって言ってるのは……

「んあ…ごとー…聞いたコトない……」
「な、なっちも……」
341 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:31

「え…あ、でもほら…2人っきりの時に言ったりとか……」
『それがないねん。
 あしゃこは知ってるやろ?』
「うん。今おイモレーダーで確認したけど言ってないね。
 傍にいてとか、一緒にいようは言ってるけど」

WAO…ごとーびっくりです。
なんで言ってないのよ、言いなさいよアホ美貴ぃ!

『マッUちゃんはな、あの子が傍にいてくれるのは嬉しいし
 これからもずっと傍におりたいけど
 あの子に想われてるっていう自信が持てへんねん。
 それで自分でも気づかんうちに不安が蓄積されてっとる。
 今までが今までやったし、やっと捕まえた思たらパパたちが脅すしな。
 さっき寝れへんと起きとったんも、もし自分が寝てる間に
 おらんくなったら…って考えてまうからや』

そう…だよね、おっしゃる通り今までが今までだしね。

『泣いてたんもな、今ここにある、触れられる幸せを信じたいのに
 不安な自分が情けないねん。
 好きとか言葉だけが全てとちゃうけど、ちゃんと言ってもらわな
 マッUちゃんに真の幸せは訪れへんのや』
  
「…じゃあ早く美貴に好きだって言わせなきゃ!」
「そーだべ!告白大作戦させなきゃだべさ!!」

『そうや!とゆーわけで
 オレからお姉ちゃんらに下す命令はズバリ!!
 S目の姉ちゃんに直接マッUちゃんが好きって伝えさせろ!以上や!!』

「んあ!」
「べさ!」
「「了解だぜゴッド・オブ・ポテトぉー!!!!」」

 

ちゅーワケでぇ!覚悟せぃやホワイティ!!んあぁー!!!!!!
342 名前:ミッション・イモポッシブル。 投稿日:2003/09/25(木) 18:32
   
343 名前:のえる 投稿日:2003/09/25(木) 18:34
長らく無駄に続いてきたこの駄文も
ようやくラストがほんのり見えてまいりました。
最初の予定ではもうとっくに終わってるハズだったのに(爆

レスありがとうございます。ありがたや。

>325 178様
騙しちゃった(w 増やすつもりなかったんですけど
他の用事で田中さん書いてみたら楽しくて楽しくて、翻訳機使うのが(爆
ニィには不憫な思いをさせてきたのでかっこよさ気にしときました。
メル欄のコトはお気になさらず、かわいかったですよ、オサゲ(w

>326 名無し読者様
从*VvV)<えへへ…(照
素敵ですか(w 少々ヘタレなんですけどね(ww
これからもっともっと素敵さを発揮していきたいと思います。
見守ってやってくださいませ。

>327 つみ様
後藤さんはいつもどこでもなっちの為に頑張るのみです。
なっちの為だけじゃないような気がするのは気のせいです(爆

>328 名無し読者様
(;´ Д `)<えぇー…がんがん飛ぶのぉー…
では名無し読者様の承諾を得ましたのでがんがん飛ばし(ry
これからある意味ホワイティメインになりますんで(w
でもあまり期待しちゃダメですよ、アホな話にしかなりませんから(爆


とゆーワケで、たぶんあとちょっとですので
ラストまでよろしくです。
344 名前:つみ 投稿日:2003/09/25(木) 18:59
物語りもクライマックスですね^^
後もう少しをがんばってください!
345 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/26(金) 00:31
あやみきかわいすぎです。
そしてポテロンの命令最高。
ごとーさんがんがって!
346 名前:178 投稿日:2003/09/26(金) 01:35
近っ!&まだだったのかよ!
それはともかく、なんか切ない展開ですね。
「ある意味ホワイティメイン」ってのに期待してます。

なるほど。<タイトル
347 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:12

おイモの神からの命令を受けた翌日の早朝。

ごとーの部屋、しかもベッドの上。
朝早くにやって来たなっちがごとーの上に乗っている。

「ごっちん、しっかりね」
「…ホントに行かなきゃダメぇ?」
「べさ、よぉーく見てホントに言わないのか確かめてくるっしょ。
 もしかしたら言いかけたり、松浦さんが聞き逃してるだけかも
 しんないし!」
「それはないと思うけどなぁ…」
「いいから見てくるべさ!エイッ!!」
「んあ!?っんん!」

きゃーなっちからキスしてくれたけど素直に喜べなぁーい、んあぁ〜…







「危ないよ、切るのは美貴がやるから
 亜弥ちゃん卵といて」
「この包丁手ぇ切れないようになってるから大丈夫だよぉ?」
「ハ?そんなのあんの?」
「うん、子供用なんだけどね」
「ふぅーん……でも危ないからダメ。
 亜弥ちゃんは卵」
「…はぁい」
348 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:13
ちょっとホワイティ、過保護すぎよ。
いいじゃんハムぐらい切ったって。しかもそれボンレスとかの編み込み系じゃないし。
その包丁刃の部分プラスチックかなんかみたいだしさ。

「わぁあ!?危ないってば!!
 美貴が焼くから!亜弥ちゃんは食器とか出しといて!」
「……危なくないよぉ?」
「危ないの!!」
「・・・・・・」
「…あ、亜弥ちゃん?…ごめんね?
 言い方キツかったね、ごめん、ごめんなさい…」

んあ…そーゆーコトじゃないと思うんだけど。
俯いちゃったまっつーに、美貴は慌てて頭を下げる。
ごとー的にかなり笑える光景、あーヘタレぇー。

「………危なくないもん」
「ふぇ?」
「できるもん。火傷したり、しないもん」
「……ぁ…いや…でも、ね?」
「ぐすっ…」
「っああぁ!!!?亜弥ちゃん!!
 ごめん!泣かないで、お願いだから!!」

プックックッ、くぅーっ、ふぅーっ、あー腹痛いぃ…。
んあ、いやまっつーは泣いてるから笑ってる場合じゃないんだけど。

ハァー、にしても美貴さぁ、ここまで過保護に
まっつーのコト大事にしといてまだ言ってないってどーゆーコトよ?
信じらんない、マジで。
言いたくなるでしょ?そんだけかわいがってたらさ。
349 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:14
…ってゆーか、ごとーってば朝っぱらから何してんのかね?
別に見張ったり見守ったりってしなくてもよくない?
なっちに言われて飛んできたものの、こんなモン見るより
なっちとイチャコラしたいんだけどなー………できないけど。

あ、そうそうごとーね、飛んだ後自分の力で体に戻れるようになったの。

昨日、イモの神との電話の後に紺野が青いリストバンドくれて
それつけてるとなっちがごとーの体つねらなくても
ちゃんと戻れるんだって。だからなっちも『飛んでくるべさ』なんて
気軽に言ってくれちゃったりしたワケなんですが…。
もう戻ってもいいかなぁ?どー思うホワイティちゃん。

「あ、の…ホントごめん…。
 でも美貴心配で……」
「おっ…おととい…から、出前とったり…ック、ミキたんが作ってくれたりで
 あたし…何もしなくて……だから今日は…あたしが頑張る…って…」
「ぅ…その、亜弥ちゃん具合悪かったしさ
 しなかったってより美貴がさせなかったんだし…
 だからそんな風に、思うコトないよ?」
「ヒック……でもぉ…」

あーわかってないなぁホワイティ。
思っちゃうの、アンタが言わないからそう思っちゃうの、わかる?
言え、今言え、さっさと言え。そしてごとーにさせろ!!

「おいで」
「…ミキたん」

言えっつってんのに…、美貴は包丁をおいて両手を広げ
飛び込んできたまっつーを優しく抱きしめる。

んあ、この雰囲気とかって好きだって言うのに最適だと思うんだけど。
なんで言わないのかなぁ?
こりゃもう後で直接問い詰めるしかないね。
350 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:15
「じゃあ……卵焼いてくれる?」
「…いいのぉ?」
「うん」
「やったぁ」

よかったねまっつー、気をつけるんだよ。
ごとーはもう帰ります。なっち…なっちー…







「ちー…」
「あ!ごっちんお帰り!朝ご飯できてるべ!」

戻ってくると、ごとーのエンジェルこと安倍なつみさんが
笑顔でお出迎え。あぁ押し倒したい。ダメダメ我慢。

「…あはっ、持ってきてくれたのぉ?」
「うん。いつ戻ってくるかわかんなかったから
 遅刻しそうになったら包もうと思って」
「おにぎり?」
「うん。…あ、それでどうだった?藤本さん」
「ん〜やっぱ言ってなかった。
 今日とっ捕まえて話すしかないよ」
「そっか・・・」

んあ?どうしたの?
なっちが暗い顔するコトないのに…。

「なっち?」
「…松浦さん、ちょっとかわいそうっしょ」
「…んあ、だからこそ、まっつーの為にもごとーたち頑張らなきゃ!
 白美貴のアホゥにさっさと言わせなきゃ!!」
「うん!そだね!」

「「エイ、エイ、オー!!」」



◇ ◇ ◇


351 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:15

そしてその後、ごとーとなっちはいつもより早めに家を出て
学校の校門横の電信柱に隠れて美貴(とまっつー)を待つ。

「べさ…遅いっしょ、いつまで待たせる気だべか」
「んあ、まったくだね」

あと10分で予鈴鳴るってのに、美貴は何やってんだか…
ハッ!まさかナニかヤってるとか?!

「ごっちん、ちょっと様子見てきてくれない?」
「えぇ!?ヤダ!絶対ヤダ!!」
「む。なんでさ?
 さっき頑張るって約束したっしょ。
 未来の為に努力しなきゃビューティフルスターは手に入れらんねーべ!!」
「…でもぉ……」
「でもじゃねぇっしょ!どりょぉーく!みらぁーい!
 ホラ!ごっちんも一緒に!!」
「んあ…」 

 
(( ∩(´ Д `;)  ((  ∩(´ー`●)   ドリョーク!
    し    ¶と)     し    ¶と)        ミラーイ!
    (_/\_ヽ      (_/\_ヽ


「・・・ごっちん、なにやってんの?」
「んあぁ!?!みみみ美貴ぃ?!いいいいつの間にぃ?!」

ただでさえちょっと嫌々やってたのにいきなり出てこないでよ!
タイミング悪すぎよバカぁ!!

「…今来たけど…」
「おはよぉございまぁす」
「んあ…まっつーも…おはよう……」
「おはよう!2人とも遅いっしょ!予鈴ギリギリだべ」
「はぁ、すいませ…って先生こそ指導日でもないのにこんなトコいて
 いいの?職員会議終わってるんじゃ…」
「べさぁっ!?
 すっかり忘れてたべさ!!藤本さん言うの遅いっしょ!」
「んあ!美貴のバカ!」
「えぇぇ!?美貴のせいなの?!」
352 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:16
「もっと早く来て言ってくれたらなっち職員会議間に合ったのに…!」
「そーだよ美貴!なっちが減給にでもなったら
 どー責任取ってくれんのよ!!」
「あっ!違うんです!
 遅くなったのはミキたんのせいじゃなくてっ
 あたしが…ちょっと…面倒かけちゃって……」
「んあ?」
ハッ!そーいえば…朝ごはん作る時泣いちゃったんだっけ…

「なっ!?亜弥ちゃんは絶対悪くないから!
 普通に考えてよ!先生がちゃんと覚えてりゃよかったんじゃん!
 それがなんで美貴たちのせいになんの!!」
「む。なっちが悪いってのかい?」
「当たり前じゃん!
 こんなトコでマイク持って遊んでるのが悪いでしょ!」
「あ、遊んでなんかねぇっしょぉ!!!」
「んあ、なっち落ち着いて…。
 とりあえず教室行こ?話は後でいいから、ね?」

じゃないと予鈴どころか本令まで鳴って完璧遅刻になっちゃう。
美貴はホラ、なんでごとーたちがここにいたのか知らないんだし
暴れないでなっち、なっち、いい子だから、よしよし。

「むぅぅ…藤本さんまだまだ真っ黒だべ」
「いや、どっちかっていうと美貴より先生のが黒いんだけど…」
「むぅ!なっちは天使だべ!」
「じ、自分で言うコトじゃ…」
「んあ!!もういいから行くよ!ワァープ!!」
353 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:16

スタ。

「って亜弥ちゃんまで美貴たちのクラスに連れてきちゃダメじゃん!!」
「んあ?あそっか、まっつーごとーの腕に掴まって!行くよ!」
「ひゃ?…っきゃあああ!!」

ワァープ!

スタ。

「んっどぅわぁあ!?ごごご後藤?!松浦さん?!
 いいいいきなりどこから…?」
「んあ、みっちゃんおはよ、じゃね」

ワァープ!

スタ。

「んあ!ただいまぁ!」
「…ごっちん、変なトコ触んないでよ」
「んあ?変なトコ?」

帰ってきて早々美貴がごとーに絡む。
変なトコもなにも、ごとー美貴に触ってないよ?
ちゃんと自分の席ピッタリに着地したし。

「ごっちんおはよ、ってゆーかウチ思うんだけど
 変なトコってのは亜弥ちゃんのじゃない?」
「へ?まっつーの?」
美貴に睨まれてワケわかんなくなってるごとーによしこが耳打ちしてきた。

「今亜弥ちゃん抱えてワープしたでしょ。
 ってかウチ何気に初めて見たし、ここにいきなり4人で
 現れた時すんげぇ驚いた。ごっちんはやっぱカッケェー」
「あはっ、照れますぅ」
「照れるな! 今度亜弥ちゃんに変なコトしたらいくらごっちんでも
 タダじゃおかないから!!そこんとこよろしく!」
354 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:17

カッティーン。

オぃコラ、ホワイティ、今なんつった?
タダでおかないぐらい大切なんだったら言いなさいよさっさと!

「このアホ美貴!ごとーにそんなコト言う暇あったら
 まっつーにちゃんと言いなよ!」
「…ハ?亜弥ちゃんに?」
「好きだとか、愛してるとか、付き合っていく中で1番大事なコト
 アンタまだ言ってないでしょーが!!!」
「え…?」
「何言ってんのごっちん?美貴ちゃん白いんだよ?
 言ってないワケないじゃんかぁ」

あぁ、ここにも事実を受け止められない吉澤さんが1人。
うんうん、気持ちはわかる。ごとーも信じらんなかったし。でもね…

「よしこ、よぉーく考えてみて。
 聞いたコトある?お弁当とか食べてる時にさ
 美貴がまっつーにそーゆーコト言ってんの聞いたコトある?」
「えぇー?そんなのあるに決まっ……うぉ!?なななないぃ!!!」

余裕しゃくしゃくで『あるに決まってんじゃんベイベー』と続けようとした
よしこの表情が、一瞬にして驚愕の色に染まる。

「え…嘘…でもでも!ウチらの前で言ってないだけじゃ…」
「ふぅ、それがそうでもないんですよ吉澤さん。
 この白い悪党は2人っきりの時にすら言ってないんです。
 あれだけイチャコラしておいて、肝心なセリフを言ってないんです。んあ、完璧です」 
「そ、そんなバカなぁっ!?」

なんだか少し前のごとー自身を見てるみたい。
よしこは頭を抱えて『そんな…信じられ……』などとブツブツ言いながら
“お前はそれでも白美貴か?!”ってゆー視線で美貴を見ていた。
何気にその後ろで、他のクラスメイトたちも同じように美貴を見ている。
355 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:18
「…ってかごっちん、なんでそんなコト知ってんの?」

クラス中の視線を一身に浴びて、美貴は訝しげにごとーに聞いた。

「んあ?まー…なんて言うか…一身上の都合よ」
「ふぅん」
「っふぅんじゃないよ!美貴ちゃんホントなの?!
 なんで知ってるかって言うってコトはホントに言ってないんだね?
 なんでさ?!なんで言わないのさ?!
 プロポーズはしたんでしょ!?!」
「…よしこ落ち着いて…」

んあ…ごとー今日こんなんばっかり…。
でもホント美貴ってワケわかんないよね。
よしこの言う通り、入籍だの改名だのってトコまで話が進んでるのにさ。

「プロポーズは…したっていうか……
 したコトになっちゃったっていうか…」
「はぁあ!?ナニソレ?!
 そーゆーつもりで言ったって言ってたじゃん!ずっと傍にいるって!」
「う…」
「美貴ちゃん…話によってはブっ飛ばすよ?」
「ひっ!違う!本気です!
 亜弥ちゃんとずっと一緒にいたいよ!!ってかいるし!」
「じゃあなんで言わないの!!!」

ごとーには言ったじゃん!
すごい本気顔で言ってくれたじゃぁーん!!


「ぃゃ……だから…………前にも言ったけど……………恥ずかしいんだもん…」
356 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:18






( ゚д゚) ハァ? (゚д゚) ハァ? (゚д゚ ) ハァ?

ハッハッハァーのハァ?


『白美貴があややに好きだと言えないのは、恥ずかしいから。97ハァ』


やったぁ!80ハァ超えたよぉ!!
粗品がもらえるね母ちゃん!

「ってどーせなら100ハァでいいじゃん!!…っじゃなくてぇ!
 なにまたしても乙女ぶってんの?!
恥ずかしいって理由だけでまっつー苦しめるなんて白美貴失格よ!!」
「…ぇ…?亜弥ちゃんを苦しめてる…?」
「苦しめてる!!」
「…なんで……?」
「言わないから!!」
「っ・・・・・・・・」

美貴は言葉を失った。
ごとーの目を見たまま目を泳がせてる。

「不安なの。
 傍にいても、やっぱりどこかに行っちゃうんじゃないかって。
 だから昨日も今朝も泣いてたんだよ」
「…………ん?昨日?ってゆーかなんで今朝亜弥ちゃんが
 泣いたコト知ってんの?」
「ふぇ?あ…そーれはそのぉー…」

キャ。なんて言い逃れよう…さっきは一身上の都合でなんとかなったけど
今度は無理だ…でも美貴に見てましたなんて言いたくないし…。
357 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:19
と、困り果てるごとーの前に
1人の怒れる救世主・メシアよしこが御光臨。

「 美 貴 ち ゃ ん 」
「ん?なによっす…ってぐはぁっ!!」
「もう泣かせないんじゃなかったのかよ!!天誅!」
「イタタタタ!ううう腕折れるー!!」

んあ、ナイス腕ひしぎ。
でも折っちゃダメよ、まっつー泣くから。

「ねぇごっちん」
「んあ?っんあぁ!?」
よしこにお仕置きされてる美貴をのほほんと見ていると
いつの間にかなっちがごとーの膝に座ってた。

「そんな驚くコトないっしょ。ごっちんたちが騒いでるせいで
 誰も話聞いてくれないから、なっち職場放棄してきたべさ」
「んあ…ごめん、なっちすねないで。
 …む?かおりんは?」
「なっち職員会議サボったから朝のショート1人でやれって」
「ほぉ…」
「ごっちん、今日なっちここでの授業ないから放課後まで
 何も手伝えないけど…」
「んあ!大丈夫!休み時間使って美貴に話つけるから!」

あーでも昼休みとかが使えないのが難点よねぇ…。
かといって不安がってるまっつーから
美貴をとるにはたったの1分でも悪いよーな気がするし。
となると放課後も無理かぁー。
358 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:20
「じゃあお願いね、もう1時間目始まるからなっち行くっしょ。
 いい子で授業受けるんだよ」
「んぁーい」

『デデンデンデデン』

んっひゃぁ!?ななななにぃ?!いきなりぃ!?

『ねぇ、カオ思うんだけど、最近出番少なすぎない?』

んあ?出番?

『まぁいいか。あのねごっちん、今から視聴覚室来ない?』

えぇーなんでぇー授業始まっちゃうよぉ。
そーいえばかおりん、なんでター○ネーター?

『気分的に。
 ってそんなコトはおいといて、藤本に早く告らせたいんでしょ?
 だったら授業サボってここに連れておいでよ』

んぇ…でもさっきいい子で授業受けるってなっちと約束しちゃったし。

『でも早くなっちとしたいでしょ?
 それに今週中に藤本に告ってもらった方がいいと思うし』

んあ?なんで今週中?

『だって来週の火曜日から2年生は3泊4日の修学旅行だもん。
 その間藤本と松浦は離れ離れなワケだから…』

んなぁっ!?そーだ2年生は修学旅行あるんだ!!
すっかり忘れてたよごとー!
359 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:20
『今日金曜だし、急がないと松浦行っちゃうよ』  

んあ…それはダメです、どんどんごとーとなっちの
初絡みが遠のくじゃないですか、そんなの反対です。

『ん〜、だから、藤本連れてここおいで。
 ノートはダーリンにとっといてもらってさ』

うん、わかっ…ってちょっと待った!根本的なコト忘れてた!
ごとーが美貴を今からそこに連れてってどーすんの?
まっつーがいなきゃ意味ないじゃん!

『あれ?言わなかったっけ?松浦ならもういるよ』

んあ!?そーなの?ならすぐ行くよ!

「いたぁーい!!ごめんなさぁーい!」
「おらおらおらおらぁー!!」
「よしこぉ〜、そろそろいいー?
 実はカクカクシカコだから美貴貸してほすぃーの」
「えぇ!?ウチだけ真面目に授業受けんのぉ?!
 ………はぁ、まいっか。じゃあ美貴ちゃんにしっかり告らせてね」
「あはっ、任せとけぃ!」



目指せ!今夜の初絡み!

っちゅーワケでよろしく頼むよ、ホワイティ♪

360 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:21
   
361 名前:白美貴失格。 投稿日:2003/10/02(木) 21:22

さて、どーしようホワイティ(爆

レスありがとうございます。
ヽ(●´Д `●)ノ  アリガトーンアベサー   ((((VvV;)))) ダ、ダレ?

>344 つみ様
もう少しとか言いつつまだまだ微妙に長いかも(爆
ありがとうございます、頑張りますです。

>345 名無し読者様
か、かわいいですか、嬉しいです(ww
( ´ Д `)<んあ!頑張るよぉー!!!

>346 178様
まだでした(w そうですね、確かにほんのり切ないですね(今気づいた(爆
だから期待はしちゃダ(ry 
362 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 22:36
ハァ━━━━;´Д`━━━━ン!!!!!!
ホワイティ(・∀・)イイ!
363 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/02(木) 22:54
恥らってんなよ、ホワイティ!
男ならずばっと行け!
364 名前:つみ 投稿日:2003/10/02(木) 23:15
ミキティが白くなったけど、
他の皆が黒くなりつつある気がする・・・
365 名前:いの 投稿日:2003/10/03(金) 00:12
更新お疲れ様です。
いつも楽しんで見てます。
白美貴さん、早く亜弥ちゃんを安心させたげて下さいな。
366 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/07(火) 23:55
97ハァにワラタ!もう最高っす。
シリアスとギャグの絶妙なバランスがとても(・∀・)イイ!!
いつもいつもありごとう
367 名前:チップ 投稿日:2003/10/09(木) 00:17


デデンデンデデン デデンデンデデン

皆さんこんにちは、飯田圭織です。
待たせちゃってごめんね、でもカオも忙しかったの。
なんせ誰かさんにとんでもなく面倒な役目を押し付けられちゃっ(ry

きゃっ!?…なんで?!なんで略すの!?
ひどくない?!ねぇひどくない?!
カオ久しぶりなんだよ!いっぱい喋りたいし近況報告したいの!!
聞きたがってる人いっぱいいるよ、ホラ例えばそこの名無し読(ry

ちょっと!!!
だからなんで略すのってばぁ!!
…え?ぁ……あー…そっかそっか、そーだよね、ダメだよね。
ごめんごめん、カオってばどーかしちゃってた。寂しかったのかな、うんうん。

寂しいとさ、ウサギって死んじゃうでしょ?
でもカオは死なない。

なんでって? だってカオはウサギじゃないもん。
語尾に「ぴょん」だってつけないしさぁ。
え?見ればわかる?……ぶぅー、そんなコト言うんならウサギになってやる。
なってやるんだか(ry


あぁー!!!また略されたぁー!!!!!



「んあ、かおりーん、帰ってきてよーぅ」 
「……ハッ!ディディディディアっ!!!」
「あはっ、また交信?美貴連れてきたけどまっつーどこぉ?」
「おーごっちん、ご苦労様」
「ぐぅ…なんなのさいきなり……」
368 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:19

飯田に呼ばれ、藤本を引きずって視聴覚室にやって来た後藤。
しかしそこに松浦の姿はなく交信中の飯田が1人仰向けに寝転がっていた。

「松浦なら奥のつんく部屋のつんく布団で寝てるよ」
「えぇえ!?亜弥ちゃんをあの布団で寝かせたのぉ?!」
「しょうがないじゃん、『授業サボっちゃダメですぅ』って騒ぐからさ
 ディアっとしたら寝ちゃったんだもん」
「だもんじゃないよ!!
 明らかに気ぃ失わせて拉致るつもりでディアっとしたんじゃん!
 亜弥ちゃんに変なコトしないでよね!!」
「美貴、どーどー、どーどー」

かおりんにだって変なコトする理由があんだから
ってか美貴が言わないのが悪いんじゃい!このヤロー!!

飯田に掴みかかろうとする藤本の腰にしがみつく
後藤の顎が、イノキ型にしゃくれていく。

「んあ!美貴!なんでここに連れてこられたかわかってる?!」
「ハぃ?…え……なんでって……
 わかるワケないじゃん。いきなり引っぱられたんだから」

教室で、白美貴失格とか言われて、吉澤に腕ひしぎかけられて
涙がチョチョぎれた頃に突然後藤に引っ張られ
助けてくれたのかとほっとしていたらいつの間にかここに来ていた。
だからわかるワケない。疑問ばっかりだ。
369 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:19
「んあ!わかりなさいよ!!」
「……んな無茶言わないでよ…ってかなんで亜弥ちゃん拉致ってんの?
 ホントにいんの?ちゃんと説明してよ」
「む。まーそれもそーか、かおりんよろしく」
「えぇーカオー?ごっちんが言い…」
「だぁ!!どっちでもいいから!」

いるならいるでさっさと松浦に会いたい藤本がキレる。
それを見た2人はう〜んと睨めっこした後
公平にジャンケンで勝負をつけるコトにした。

「「スウェメ!」」
「んあ!鉄砲!」「ディア!上官!」
「やったぁーカオの勝ちぃー♪」
「んあ…負けた……」

しかも鉄砲が上官に負けるっていう
1番釈然としないルールで負けるなんてぇ。ごとーダブルショック。

腰に手をあてて、上官のポーズのまま胸を張る飯田に
人差し指を差し立てていた後藤はヘナヘナと崩れ落ちた。
非常にわかりやすい勝者と敗者の図である。

「……ってかなんでミャンマーのジャンケンなの?」
 
藤本の呟きが、2人の耳に届くコトはなかった。
370 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:20

「んあ、だからね、美貴に今から…いや今すぐにまっつーに
 好きだって言ってあげて欲しいの」
「……………」

ダブルショックから立ち直った後藤が、自分と安倍の話はさいて
松浦が思い悩んでいるコトをもう1度伝えると
藤本は何も言えずに黙り込んだ。

「恥ずかしいのもわかるけどさ、美貴はそんなコト言える立場じゃないの。
 好きなら好きって言わないとまっつーは幸せになりきれないんだから」
「……で、でもさ、さっきも聞いたけど
 なんでごっちんが亜弥ちゃんが泣いたコトとか知ってんの?
 それに昨日は…泣いてないハズだけど……」
「んあ…ぇーと…だからそれはぁー…」

どーしよ、見てたコト言わなきゃダメ?
美貴がまっつーに抱きついてアホ面で寝てたのを
ごとー見てましたって言わなきゃダメなの?ねぇ神様、神様ってばぁ。

「神ならここに、いるだ圭織」
「「・・・・・・」」
「 い る だ 圭 織 」
「…んあ、ちょっと苦しいんじゃない?」
「ちょっとどころじゃないと思うけど…」
ってゆーか寒い、すっごい寒い。
こんな時は亜弥ちゃんとくっついてあったまるに限る、限るのに…

「ディア!」
「…ひっ?!う、うわぁああ!!」

藤本が心の中でブツクサ言っていると
起き上がった飯田が藤本の顔面を左手で覆った。
371 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:21
「んあ!かおりん!いきなり何すんの?!」
「イタタタィ!!離してぇー!!」
「見せるんだよ、藤本に。
 昨日松浦が泣いてた様子を」
「んぇえ!?そんなコトできんのぉ?!」
「ゴッドカオリに不可能はナシ。JR新宿駅東口撃ぃ−!!」
「ぎゃぁあああああー!!!!」
「・・・・・んあ?歌舞伎町?…」

パタリ。

意味不明なネーミングの技を受け、藤本は気を失った。
その額にかかる前髪を飯田は丁寧にどかし
藤本のやや広めのデコを一般公開させる。

「よし、これでいい。ごっちん、カオたちも一緒に見よ」
「んあ、いいよ。ごとー昨日生で見たし」
「いいからいいから、ディア!再生っと」

そして藤本の上半身を起こし、デコの真ん中らへんを人差し指で押すと
不思議なコトにそのオデコから光が放たれ、いつの間に用意したのか
視聴覚室の巨大なスクリーンに【START?】という文字が映し出された。

「んあ!すごい!!どーなってんのコレぇ!?」
「フフフっ、内緒♪この映像は藤本も見てるからね。
 えぇーと…昨日の夜だから……このへんかな?」

ペチペチと飯田がデコを操作すると
スクリーンに見慣れた藤本家のキッチンが現れる。

『卵、美貴が割るから』
『今日はカラ入れないようにするよ?』
『いや、そーゆうんじゃなくて、今更だけどカラで手ぇ切ったら大変じゃん』
『…切ったコトなんてないよぉ?』
『今までは大丈夫でも、これから何があるかわかんないし』
『・・・・・・・』
372 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:22
「んあ?これはまさか…」
今朝?しかもごとーが飛んでくちょっと前の様子?
え、なに?美貴ったら卵も割らせなかったワケぇ?

「衝撃映像だね。これが今朝ならもうちょっと巻き戻さないとダメか」
「そだ。夜っていうより夕方だったよ、まっつーが泣いてたの」
「じゃあ…こんなモンかな…」

ペチペチペチ…、次に映されたのは藤本家のリビング。
ソファの上に毛布の塊。

『ミキたん、あったかい…』

「んあ!これだ!!これだよかおりん!」
「ふぁ、カオ疲れた、ちょっと休む。
 後藤、スクリーンからズレないように藤本のオデコ持ってて」
「えぇ?…もぉ、しょうがないなぁ…」

ナンダカンダ言いながらも後藤は藤本のデコを支え
スクリーンを見ていると、問題のシーンが近づいていた。

『でへへっ……zzz…』
『っ…はぁ、はぁ…』
『んんー…亜弥ちゃぁん……zzz』
『…?…わ、ふあぁ…っ!…』

「んあ…まっつー……」

ドアップで映し出された松浦の泣き顔とじゃれつく藤本の姿。
2回目でも、改めて見ると本当に切なくて心が痛む。
第3者の後藤がこうなんだから、泣かせた張本人は今どんな気持ちなんだろう。
373 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:22

「終わった?」
「んあ」
「じゃ…停止して…藤本ー、藤本起きてぇー」
「…ぅ、ううん……」
飯田が足でつつくと、藤本は目をこすりながら起き上がった。

「……亜弥ちゃん、泣いてた…」
「んあ…これでわかったでしょ」
「・・・・うん」
「わかったなら早……っ!?」
ションボリ顔で膝を抱えて、藤本の正面にいる後藤はまたも
うっすら覗く藤本の純白のパンツとご対面。

んあ・・・・・どうでもいいけど、ヒラヒラついてるっ…!

「ごっちん?どうしたの?」
「んあ!?…な…なんでもないよ…。
 そんなコトよりまっつーのトコ行っといで、奥にいるんでしょ」
「つんく布団で寝てるよ」
「っ…」
「かかかかおりん!余計なコト言わないの!!」
「フフーン♪」

飯田にからかわれ、握り拳をプルプルさせる藤本。
悔しいのか顔を見る見る真っ赤にさせて、動こうとしない。
 
「…もう、ホラ美貴、かおりんはほっといて…」
「ぐ…今から…言う…の?」
「んあ?」
何言ってんの?流れ読んでよ。言うに決まってんじゃん。
アナタ今、昨日の映像見たでしょ?

「心の………準備が……」
「・・・・・・・」
374 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:23
「知るかヴォケぇ!!さっさと告ってこいやゴルァ!!!」
「うぇえええ!?ドワっ!キャー!!!」

ガチャっ! ブン! バターン!! 

後藤はここまできてまだ恥じらいを見せる藤本の襟首を掴み
奥の部屋まで引きずって投げ入れた。

「これでよしと」
「何言ってるの?ちゃんと言うかどうか見守らなきゃ。
 次はごっちんのオデコ借りるね。ディア!」
「へ…?んあっうわぁ!」
「JR新宿駅西口撃ぃー!!」
「いやぁあぁあああー東京都庁ぉー!!!」

パタリ。

「ふぅ…よいしょっと。
 え?なんでわざわざオデコ上映会するんだって?
 左手でいいじゃないかって?ウフフ。そこのアナタ、なかなかのカオリ通だね。
 だってホラ、前は屋上だったし。
 せっかくスクリーンあるんだから見るなら大きい画面で見たいでしょ。
 カオってそういうタイプ」

誰に向かって話しているのか、飯田は意味不明な独り言を呟くと
後藤のデコの光をスクリーンに合わせる。
そこには、つんく部屋に投げ込まれた体勢で固まっている藤本と
つんく布団の中でスヤスヤ眠る松浦の姿が映っていた。

「さてさて、それではホワイティ告白物語上映開始ぃー♪」
375 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:23


376 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:24

・・・・・んあ、ここはどこ?
んあ!!美貴!まっつー!そっか、かおりんにディアっとやられて
ごとーは今さっきの美貴と同じ状態なんだ。

って言っても見えてる感じはなっちの秘所に触れて飛んだ時と
全然変わんないんだけど。

……ごとーのオデコ…光ってんのかなぁ………。
美貴程広くはないけど、自分の知らないトコでオデコ光らしてんのって
なんか嫌、おまけに勝手につつかれたりしてんだろーし…。
はぁ・・・憂鬱・・・・・・・・。

って凹んでる場合じゃなかった。
美貴がまっつーに告るの見届けなきゃ!!どれどれ…

「zzz……すうすう…」
「…ぅぅ………」

アーハハハハハ!ヒャーハハハハハハ!!
カッコ悪ぅー!情けなぁー!なにあの人!!カエルみたい!っヒァー!

あぁ、見てらんない。
美貴は寝てるまっつーの布団の端に手をついて四つん這いの体勢で唸ってる。

まっつーを起こそうと手を伸ばしてはひっこめ、伸ばしてはひっこめ。
たぶん起こしたら言わなきゃなんないから
フンギリがつかないんだろう。

クックックッ、“好き”ってたったの2文字なのにね。
ホワイティちゃんたらかわいいわぁ。
377 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:24
「ぁ…ぁぅ……ゃ…ぁゃ…ゃぅー……」
「…zzzz……ミ…キたん…」
「っ!?っははははい!?!ミキたんです!!
 ・・・・・・ってアレ?・・・寝言?」

ブハぁっ!!聞いた今の?
『ミキたんです!!』って自分でミキたんって言ってるよこの人!

「…はぁ…あー…緊張する……マジありえない…」

ごとー的には美貴が1番ありえないけどね。
んあ、でも相当緊張してるみたいでほんのり汗かいてるし
唇震えてるし、心臓のバクバクって音が聞えてきそうな感じ。

「ゴクン。…っふぅ、起こすぞ、起こすぞ、せぇーのぉ………ップハァ!ダメだぁ!!」

ちょっとちょっとぉ!期待しちゃったじゃん!!
さっさとしてよねホントに!
ってかそんな大声で騒いでたら起こさなくてもまっつー起きちゃうよ…。

「ん…んん?……ふぁ」
「…っぁ!お、おおおはようでございますですけど何か問題でも?」
「むにゃ?……ふぇ?…ミキたん?」

ハイハイハイ、やっぱ起きちゃったじゃんよぉー。
しかもなんでおぎや○ぎ?ってゆーか使い方おおいに間違ってるから。

まっつーは布団の中に入ったままノロリと体を起こし
間抜けなカエルの美貴を不思議そうに見つめた。
378 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:25
「おはよ…ぇ、ここ、どこぉ?」
「あ、ここですか。
 こちらは当ホテル自慢の最上階スウィートルームでございます。
 …え?タオルが足りない?申し訳ございません」
「ほょ?ミキたん?
 どうしちゃったの?新しい遊び?
 あーわかったホテルごっこだぁ、それとも高嶋○伸ごっこぉ?」

・・・・・・・・。

何を血迷ったのか、緊張のしすぎでとうとうおかしくなったのか
美貴は本当に申し訳なさそうにまっつーに深々と頭を下げた。
それを見てキャッキャと楽しそうに目を輝かせたまっつーも
美貴の真似をして「申し訳ございません」と頭を下げ返す。

この人たち頭おかしい。ごとー、ついてけない。

「申し訳ございません」
「ホテルプラトンで申し訳ございません」
「姉さん事件で申し訳ございません」
「小林捻○で申し訳ございません」
「松○弘樹で申し訳ございません」

んあぁ!!!いつまで続ける気だぁあ!!!!!
アホだな!美貴もまっつーも揃ってアホです!間違いない!!

「原作石○森章太郎で申し訳ございま…」
「…ねぇミキたん」
「ふぁ?!ハハハハイっ!!」
「途中で止めちゃってごめんね?
 でも…ホントにここどこなの?今って授業中だよね?
 あたし1限目の準備してた時に飯田先生に声かけられて…そこから記憶が…」

ほっ、やっと終わったか。
ごめんねまっつー、揃ってアホなんて言っちゃって。
アホは美貴だけでした。
379 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:26
「あぁ…そだったね…亜弥ちゃんせんせぇに拉致られたんだよ。
 美貴もごっちんに拉致られてさぁ。ここは視聴覚室の奥の部屋だよ。
 前大掃除の時に話聞いたよね?教頭の私物化してるトコ」
「あー…たしかぁ…
 ミキたんが映画見よって言ってくれた時だよね?
 はぇ!?ってコトはこれってつんく布団?! 
 …でもミキたんもこれで寝たコトあるんだよね?…えへへっ」

いやいやまっつー、たしかに美貴も寝たコトあるだろーけど
教頭が寝た回数の方が普通に多いと思うの。
だから頬擦りとかしない方が身の為だとも思います。
んあ…?やっぱまっつーもアホ…?

「亜弥ちゃん、それ汚いよ、教頭のだし。出といで」
「あ…うん」

カエルのままの美貴はまっつーの手を引いて布団から出させ
あぐらをかいてその上にまっつーを座らせる。
まっつーの足を自分の腰に巻き付けさせて正面からぎゅうっと抱きしめた。

「亜弥ちゃん…っ」
「…っ…ミキたん…?」

さっきはほんのりだった汗が流れ出して
真っ赤なのも変わんないけど、その顔は怖いくらい真剣。
唇も歯がカチカチ鳴るくらい震えてて
まっつーを強く抱きしめてるのは、それを隠す為なのかもしれない。

「あの………亜弥ちゃん……お、お話が…」
「な、なぁに?」
380 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:26
まっつーの肩に顔を埋めて、くぐもった声を出す美貴に戸惑うまっつー。

んあ、顔見て言うのは無理か。
でもとりあえず言ってくれさえすればごとー的には全然オッケー。
頑張れ美貴!自分に負けるなホワイティ!!

「その…ですから……したがって…要するに……」
「要するに?」
「えっと……だから…美貴は……亜弥ちゃ…の…こ…が……」
「ふぇ?なに?聞えないよぅ」

よし!あと一歩!!ゴールは近いぞホワイティ!!!

「す……す…ス…………………キンケアしてる?」
「ぇ?…し、てる…けど…ちょっとだけなら」

ずるぅっ!アっ・・・っアホか美貴ぃいい!!
きょうびの日本の女子高生が
スキンケアしてないワケがないでしょーが!!このヘタレ!!!!!

「ぐ…ぃゃ…やっぱしてるよねぇ……アハハ…」
「フフっ、変なミキたん。
 いきなり真面目な声出すから何言い出すかと思ったよぉ」
「アー…ハハハ…はぁ……」
「ん?どーしたの?」
「あぅ…そうですね、もういっこ……お話が…」

おぉ、偉い!自ら再挑戦のゴングを鳴らすなんて!
白いわ!プライムで磨いた歯並だよ白美貴ぃ!!
381 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:27
「なぁーにぃ?」

美貴の肩に顎を乗っけて鼻で髪をスリスリしてるまっつーは
気持ち良さそうに目を閉じていて、告白しようと
汗だくで必死になってる美貴の様子には全く気づいてない。

そろそろほっぺたに湿っぽいモノを感じてもよさそうなんだけど。
美貴は流れ落ちる汗で“洗顔後、拭く前”みたいになってるし
しがみついてる手も腕もバイエル弾いてるみたいになってんのに…。
まっつーも、今目の前にいる美貴を、幸せを信じようって必死なのかなぁ。

「す、すす…すぅースキンっ…!すぅ…す…」
「スキンすぅ?」
「・・・す・・・・・・スキンシップぅー…」
「ニャハハ、ミキたんとスキンシップぅー♪」
「…シップップぅー♪」
「プップップぅー♪」

・・・はいバカー。

「すぅー…スキルアップぅー♪」
「アップップぅー♪」
「・・・・・・・・・」
「…?」
「・・・・・・ぐすっ」
「ひょぇ!?ミミミミキたん?!?!」
「うっ…ぐっ……うぅ…」
「ど、どうしたの?!…すごい汗…っどっか痛い?」

あれま、白美貴泣いちゃったよ。
情けないか、言えない自分が情けないのか。

突然聞えてきた鼻を啜る音に、まっつーは慌てて体を離して
美貴の顔を覗き込み、その異様な汗と震え具合に目を白黒させてる。
382 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:27
「ご…ごめ……亜弥ちゃっ…ごめんなさ……」
「ミキたん?大丈夫?
 寒い?ちょっと待ってね、ハンカチ出すから…っきゃ!」
「ごめん…!」

そっと美貴の汗を拭っている右手と
ポケットに向かわせた左手が美貴に捕えられた。
そしてそのまま、まっつーはつんく布団へと押し倒される。

「ごめんっ…ごめんっ…」
「なんで謝るの?…いいよ」
「ちがっ…そうじゃなくて…美貴っ……ぅっうっ…」
「ミキたん…?」

まっつーは、胸元に美貴の頭を抱き寄せて
落ち着かせようと優しく撫でる。
その様子はまるでマリアみたいでで…聖母アヤヤ、白美貴を抱きしめるの図って感じ。

「亜弥ちゃん…っく、す…きやき…ぃ…っぐぅ」
「すき焼き?食べたい?」
「ぅぅうー……」

んあ、こりゃ無理だね。絶対無理。
ホントあとちょっとなのになぁ…でも泣くまで頑張ってくれたし
今日のところはこれで勘弁しといてあげよう。

「よしよしミキたん、泣かないで」
「んんぅ、亜弥ちゃぁん」
「風邪ひいちゃうから汗拭こうねぇ」
「…いい、どうせまたかくし」
「ふぇ?…っひゃ!」
383 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:28
んあ?んぇ?!ちょちょちょっと美貴!!
アンタ言ってもないのにそーゆーコトすんのかい!?!
何脱がせてるの!何脱いでんの!!

『服だね、カオにはわかるよ』

んあ!!ごとーにだってわかるよ服ぐらい!
なんで脱がすんだって聞いてんのごとーは!!

『ポっ…ヤだ、後藤ったら野暮なコト聞かないでよ。
 カオリ恥ずかしい…』

んなっ?!恥ずかしいなら見るのやめよ!!
オデコ上映会やめてごとーを早くそっちに戻して!
始まってるから!!見たくないからこんなの!!!!

「亜弥ちゃん……亜弥…」
「あっ…!ぁん…んっ…ミキ…たぁっん」
「亜弥ちゃんのココ、かわいい」
「んっ…ふぁ…ぁあ!…そんなコト…言わないっ…でぇ…」

どこよ!ココってどこよ!!どこでもいいよ!!!
…んあ、そこかぁ……。


ってちがーう!!!!!


見ないもん!見たくないんだもん!!
ってゆーかホワイティ変わり身早っ!今の今まで泣いてたのに…っ!
なにそんな嬉しそうに松乳吸ってんのよ!!
384 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:28
『フフフ、なんだかんだ言って後藤も楽しんでるね』

どこが?!楽しんでません!全身全霊かけて楽しんでないよバカ!
笑ってないで早く戻せっつーの!

『あ、今バカって言った?後藤、暴言1』

んあ!?バカにバカって言って何が悪いの?!

『また言ったね、暴言3』

だぁー!!わかった、ごめん!もう言わない!
かおりん天才!かおりん最高!これでいい?!

『気持ちが篭ってないよね』

気持ちなんか篭められるか…。ってゆーかマジ戻してよぉ。
目ぇ瞑りたくても瞑れないからどうしても見えちゃうの!

「んはっ…ひゃぅ…ぅっんんっ…もぉ…」
「…ん。腰、上げて?」

んあぁ!!ヤバイぃ!最終段階に入っちゃうぅう!!
いやぁあー!こんなの知り合い同士のAV見るのと一緒じゃん!ってか覗きじゃん!
かおりん!かおりぃーん!!

「ひゃ…ああっ……んん…んっ…んうっ…」
「…亜弥…気持ちいい?」
「あぅんっ……ひぅ…い、いよぉ…ミキたんぅ…好きぃ…」
「っ…………」
「大好き…っミキたん……ミキたんっ…」

くそぅ!見られてるとも知らずに盛り上がりやがって!
まっつーの胸丸見えだよ!下は…白美貴の頭で見えないけどっ!
385 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:29
ってか美貴言えよ!今すっごいチャンスだったし!
素ってゆーか普通に言うのが恥ずかしいなら
こういう時に言えばいいじゃないの!

「ミキたんっ…!」
「…亜弥ちゃん…」
「んん…はぁ……ん……」

んあ…最終の最終です、御入場前の最後のキスです。
美貴が完全にまっつーの上に覆い被さりました。
まっつーったら腕を美貴の首に巻き巻きしちゃって
受け入れ体勢バッチリです。

飯田圭織様、お願いします。
圭織様も自分の生徒の絡みを見るのは嫌ではないのですか?

『え?カオ見てないよぉー。
 腕力ないから後藤支えてんの疲れたしさぁー。
 後藤は見てなよぉー、終わった時とか言うかもしんないし。
 ってゆーかさっきカオにセクハラしたじゃん?
 セクシャルハラスメント、その恨みを晴らすメント、なんちゃって♪』

・・・・ブチッ!

見てないんかい!!
腕力ないってどこが!よくやぐっつぁんとか持ち上げて遊んでんじゃん!
言うかもなら言わないかもなんだし、後で美貴に言ったかどうか
聞けばいいでしょ!セクハラって…いつごとーがしたのさ!?
ワケわかんないコトばっか言ってんじゃねーよバカぁ!!

『はい、暴言4』

知るかアホぉー!バカバカバカバカでくの棒ぉー!!!!!
386 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:30
『はいはい、暴言10。2桁達成おめでとう』

めでたくなぁーい!!!

『ホント、全然めでたくないよ。
 藤本と松浦の愛の旋律でも聞いてよぉーく反省してね、じゃ』

んあぁ・・・・・・。

「亜弥ちゃん…」
「ん…ふぅ、ん…んぁっ…はっ…あっあっ…」
「もっと…声…聞かせて…」

聞かせないでください。

「ミ、キ…あ!…たんっ…んっあっあっもっもぉ…あっ…」
「…いいよ……亜弥ちゃん…」

よくないよくない。断じてよくない!

「あんっあっ…ふぁっあああぁぁ…ミ、キたぁ…っあぁ!!」

んあ・・・・・・・・・お疲れ様でした。

『後藤もね』

ぐすん。


「…はぁっはぁっはぁっ…」
「大丈夫?」
「はぁっ…っ……うん」
「ごめんね、こんなトコで…」
「ううん…嬉しかったよぉ…」
「っ…亜弥ちゃん!」
387 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:30

んあー…ごとーしばらく美貴とまっつーの顔見れない。
話し掛けられたら普通に無視したい。無視させて。
美貴が上手だったとか、まっつーが感じやすいとか早く忘れたい。

だからねホワイティ。
かわいいコト言われてたまらず抱きしめるのはいいです。
顔中に降らせるキスもよしとしましょう。

だけど頼むから、2回目には突入しないで。
2人して布団被ってくれたのはありがたいけど
またなんか声がしてるような気がするの。

ねぇ終わったばっかだよ?アフターケアしなさいな。
2回目する暇あったら言えやアホぅ!!

「あんっ…はっ…ミキたん…」

んあ!まっつーもそんな簡単に受け入れないの!!
疲れてるでしょ?!挟みなよ休憩を!
まだ息整ってないじゃんか!

かおりーんかおりーん、結局美貴言わないんでぇ
戻らせてもらっていいですかぁ?

『zzz……ハッ!…あ、もうお昼だぁ。
 後藤、カオご飯食べてくる』

んあ!寝とったんかぁーい!!
ってかお昼行くならごとー元に戻せっつーの!
ごとーだってお腹すいたぁ!!!
388 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:31

「うぁ…ん…ちょっと……ゆっくり…して…」
「あ、ごめん…」
「ん…やめなくていいよ…?」

ホワイティ、やめた方がいいです。
まっつー、やめさせなさい。

「んーん、ちょっと休も。
 ごめんね、強引にしすぎた」
「ウフフっ」
「…ん?」
「さっきからミキたん、謝ってばっかりだよ?」
「あ…ぅー…うー…」
「アハハっ、もぉーどうしちゃったのぉー?変なミキたん」
「…すぅー…キンヘッドぉー…」


ホっ。やめてくれたよ。
ホワイティ、言えなくて泣いた上に開き直って絡んだのは
ちょっとよろしくなかったけど、でもまぁ敢闘賞ぐらいあげるか。
 
修学旅行まで今日入れてあと4日。
日曜にはデートするみたいだし、一緒に住んでんだし。

いい加減“スキ”で使える単語もなくなってくるからさ
ホントお願いしますよ、ホワイティ。





389 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:33

この日、つんく布団の中の2人は
抱き合って話している間にいつの間にか眠ってしまって
後藤はなんとか2度目の鑑賞から逃れるコトができた。

しかし、お昼を食べに出て行った飯田がなかなか帰ってこず
放課後になってやっと戻され、『えへっ、忘れてた☆』とウィンクされた時は
さすがの後藤も右ストレートを繰り出さずにはいられなかったという。

鼻から鮮血を噴出して飯田が倒れたのと奥の部屋のドアが開いたのはほぼ同時で
後藤は出てきた藤本と松浦が自分に向かって声を発する前に
一目散で視聴覚室を飛び出していった。

そして、リンゴのように赤い顔で職員室に駆け込み
書類を整理していた安倍の胸で大量の涙を流したと、後に目撃者のTさんとOさんは語る。

「あの涙は500_gはあったわぁ、とにかくすごい量やったよー」
「500_gって……大げさだよ愛ちゃん。
 小さいペットボトルと同じ量だよ?」
「んだ、間違いね」
「・・・・・・」
(いや、間違ってるから、どう見ても間違ってるから)




後藤真希、苦悩の日々は、あともう少し続く。

390 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:33
   
391 名前:オデコ上映会。 投稿日:2003/10/09(木) 00:34
( ` Д ´)<んあ!続くなぁ!!
392 名前:のえる 投稿日:2003/10/09(木) 00:35

・゜・(ノД`)・゜・

ごっちん、ホントにホントにごめんなさい。
あぁもぉ…バカすぎるこの話(爆死

レスありがとうございます。
ウチのホワイティが申し訳ございません(陳謝)

>362 名無し読者様
川;VvV)<ハ、ハァーンて……でもありがとぉ。
ホワイティ…ヘタレすぎて嫌われなきゃいいんですが…。

>363 名無しさん
川;VvV)<いやいや女だから、ついてないから。
       ずばっと…行きたいよ……美貴だって…。
何が?という質問はナシの方向で(w

>364 つみ様
シィー!それは言っちゃいけません。気のせいです(爆
(●´ー`)0^〜^)<・・・・・・。

>365 いの様
川;VvV)<はい…頑張ります…。
ありがとうございます。これからも楽しんでいただけるよう頑張ります。

>366 名無し読者様
ぜ、絶妙ですか、微妙だと思ってたんで嬉しいです。
シリアスとギャグというより、バカと大バカって感じですが(爆
( ´ Д `)<んあ、ごとー?
        こちらこそいつもありごとー♪
393 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 01:28
ホワイティ…頑張ったね…頑張ったけど…
後藤さん頑張れ…。
394 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 09:31
飯田さんのキャラ最高ですw
1人でずーっとニヤニヤしながら読んでましたよあたしゃ。
朝から笑かして頂きました、ありがとう。
395 名前:つみ 投稿日:2003/10/09(木) 17:13
ごっちんとかおりんの絡みがステキ・・・
なっちの座を脅かしてきてるっぽい・・・
396 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 17:17
从‘ 。‘从<…ヘタレ
397 名前:178 投稿日:2003/10/09(木) 19:31
( ´ Д `)<ヘタレ
398 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 20:34
(0^〜^)<ヘタレすぎ
399 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 21:50
( ^▽^)<ヘタレ!
400 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/10(金) 00:24
可哀想に…ひどい言われ様だ…。
でもやっぱり……ヘタレ!!(w
401 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/10(金) 01:28
(●´ー`)<ヘタレ×100,000,000だべさ
402 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/10(金) 01:55
どうやらこのまま言われ続けそうですね。
そんなわけで、御早い更新を御待ち申し上げております。(w
403 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 23:27
ヘタレに期待(w
404 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/15(水) 10:30
自分も期待
405 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:05


拝啓、安倍なつみ様。

あなたに手紙を書くなんて、そういえば初めてで少し緊張しています。
今日は月曜日です。昨日デートしたあなたとまた学校で会える、記念日。
“ムーン記念日”とでも名付けましょうか。

素敵な響きね、ムーン記念日。
あなたと一緒のムーン記念日。
ララバイ♪ララバイ♪ムーン記念日。

ムーン♪……いや、やめましょう。こんな風にいくら明るく振舞ったって
あなたには全てお見通しなのでしょうから。

今日が期限日だってご存知ですか?
なのに、公約は何も果たされていないことも。
口だけか、小○政権か、どれだけの痛みに耐えろと言うんだ。
政治家じゃないでしょう?どこにでもいる、平凡な女子高生なんでしょう?

あいつは、あいつは、藤本美貴は。

あいつが言わない限り、痛みは消えません。
金曜日に約束して、土曜日、日曜日、チャンスはたくさんあったのです。
誰も邪魔なんかしていない。

時々あなたの唇を借りて、見に行った時の様子から
一生懸命努力していたことは認めます。
滝のような汗には感動すら覚えました。

しかし、結果が出なくては意味がないのです。
あなたと私の“合体成功”という結果を出さなければ。

出さなければ………………ボキッ!!!
406 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:05
「んあぁぁああああー!!!!はよ出せや白美貴ぃぃぃ!!!!!!」
「ううぉっ!?ごっちん、どしたの急に?
 美貴ちゃんならまだ来てないよ」
「んあ!こないだ話したでしょ!告ってないってヤツ!」
「あぁー…んでもすぐに言うって約束したんでしょ?
 昨日デートだって言ってたからもう言ったんじゃない?」
「それが言ってないから騒いでんだよごとーはぁ!!」
「はぇえ!?言ってないぃ?!」

そうよ!言ってないのよあのヘタレホワイティ!略してヘタティのヤローは!!

「…ってことはごっちんまだキスもできないままなんだ…。
 それに今日言ってもらわないと明日から亜弥ちゃん北海道だよね?」
「んあ………そうなのよ……。
 しかも3泊4日よ?
 ってことはあと最低5日は我慢せぃってことでしょ?
 そんなの無理。絶対無理。
 マジで絡めない5日間なんちゅーMK5歌えないから、本気で」
「あ、そういえば自主退学したんだっけ?ヒロ○エ」
「んあ!そんな話はどーでもいい!!」
 

そんなヒロ○エとかモ○スエとか今はおいといてぇ! 
見てくださる?土曜と日曜のアホ美貴観察日記!!




407 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:06

まず土曜日。…あ、いやその前に金曜の放課後のことも言っとくと…

恥ずかしながら視聴覚室を飛び出した後なっちの胸で号泣したごとーを慰め
ようと、適当な特別室の鍵を借りてマウストゥマウスにならないように慎重
にチュッチュしてくれたなっちに感極まってブチュッとしちゃったごとーが
飛んでけフライして、正直言ってその日はもう2人の顔見んのマジ勘弁だっ
たのに思いっきり近くでルックルックするハメになった後藤真希・18歳(不幸)。

んあ?あれ、いつの間に18になったのかしらごとー?
まーいい、とりあえずなっちからは指輪頂きました。前にごとーがあげたの
と同じモノをわざわざ探してきてくれたの。もぉ、なっち大好き!!

あ、で、話戻して。
そのぉー金曜日飛んだ時は、本気でヤだったから速攻で帰ったのね。
だから土曜日の朝に言えた?って、美貴にメールで聞いたの。
だって飛びたくなかったし。そしたら『ごめんまだ。今日頑張る』って返って
きたのよ!そして、ごとーはそれを信じて待った。

しかぁーし!
言えたら報告してねって言ったのにお昼を過ぎても夕方になっても音沙汰
ナッシング。で、7時前にいい加減腹立って見に行ったの。
そしたらばぁー…

『亜弥ちゃん、あと買ってないモノってなに?』
『えーと……たぶんもう全部買ったよ』
『たぶん?たぶんじゃダメだよ!準備はしっかりしてかないと!
 なにかあったらどうするの!!』
『…でも、向こうにもコンビニとかあるし…いざとなったら買えばいいから』
『あ…そっか…じゃ、じゃあさ、お金いっぱい持ってきなね。
 美貴もあげるから』
『えぇ!?悪いよぉ、明日のデートの分も出してくれるんでしょう?
 ママたちからのお小遣いで充分足りるから』
『いや!もしもの時に足りなくなったら大変じゃん!!
 美貴は…一緒に行けないから何かあっても亜弥ちゃんのこと助けてあげられないし…』
『ミキたん…』
408 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:06
両手いっぱい、抱えきれないぐらいこの想い〜♪

って感じに手にも肩にも首にも紙袋三昧な美貴と、財布と携帯ぐらいしか
入ってなさそうなちっこいバッグを持ったまっつーがショッピングモール
の片隅でピンクな雰囲気を醸し出してた。
ごとーの野生の勘で察するに、修学旅行の為のショッピングーをしてた模様。

『ハッ!でも大金持ってると逆に危ないじゃん!
 どーしよ、美貴はどうしたらいいの…うーんうーん』
『………あの、大丈夫だから…忘れ物しないように何回もチェックするし
 ミキたんとは……離れ離れだけど1人で行くんじゃないし…』
『それは…そーだけど……だけどみっちゃん不幸だし、高橋ちゃん訛ってるし』
『…………』
『不幸がうつったらマジやばいよ?そのせいで亜弥ちゃんになんかあったら…。
 ついでに訛りもうつったりして……うわぁ、福井訛りの亜弥ちゃんって
 全然想像つかなぁーい。えぇーどうなんのぉー?あやややよーって言いにく…』
『 ミ キ た ん 』
『ふぇ?なに?』
『…うつらないから。不幸も訛りもうつらないから。
 そんなコトよりお腹すかない?もう7時だよ』
『あー…なんか食べてこっか?』
『うん』

もぉーごとーつっこむ元気とか、とうの昔に失せてますのよ。オホホホホ。
でもね、ショッピングーな日だったから仕方ないって思った。
デートは明日だから。日曜なサンデーが告白記念日なはずって思ったの。

そして、そんなはずだった日曜日。
ごとーもなっちとデートした。

お揃いのスカーフを頭に巻いて、タモさんみたいなサングラスかけて
ホームズみたいなコート着て。
409 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:07

・・・ぐすっ!
なんでって…聞かないでください!もうわかってるんでしょぉ?!
そーよ!尾行よぉ!!美貴とまっつーのデート尾行してたのよぉ!!!

だって…なっちが『藤本さん大丈夫かなぁ?なっち心配だべ』って
ごとーに遠回しに飛んで様子見て来い光線送ってきてね
絶対ヤダって言ったら、『1人が嫌ならなっちも行くべさ!』とかワケわかんないコト
言い出しちゃって………ただ美貴の告白シーンを野次馬したいだけっぽかったんだけど
なっちに甘いごとーは…………うわぁん!

んあ、ついでにデートできたのはよかったんだけどぉ
できれば普通の格好でなっちだけを見つめてデートしたかったの、ごとーは。

それがなんであんな怪しさ全開の格好で美貴とまっつーばっか
見ながらデートせなならんのじゃいっ!!
全部美貴のせいだ!ホワイティのせいじゃぁああああー!!!!

…はぁ。

そんなこんなでずぅーっと2人を観察してたんだけど
駅までの道程とか、商店街通るのね。そこでまぁ声援が多いの。
え?誰からって?いやそれが誰かもわかんないような人からなのよ。
全身真っ白な服着て顔がないの。よく見ると背中に何やら書いてあんだけど…。
2人にむけて遠くから拍手とかしてたの。

『あややぁー!』とか『ヘタレ!ヘタレ!』とか『ホントに白い…』とか
『よかったね…あやや…でも、ヘタレ!』みたいな、たぶんあややファンの
人たちがある意味祝辞を述べてくれてたんだと思うけど…。
ヘタレって…なんで知ってるんだろう…?
ごとーが教室で言っちゃったから、噂になったのかな?
410 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:08
もしかしたら昨日もこんな感じだったのか、ごとーたちの前を歩く
2人は顔を俯かせながらも慣れた様子で声援を聞き流してた。

だからまぁー、期待してなかったけど
周りから見られまくりだったので白美貴が言えるワケもなく
駅に着いて電車に乗っても混んでてそんな雰囲気じゃないし。

『ごっちん…映画館着いちゃうけどなっちたちも観る?』
『んあ、観よーよ、せっかく来たんだし』
『えっと、でも同じの観た方がいいよね?
 何観るのかなぁ?』

映画館に着いてからは、逆にごとーとなっちたちの方が
なぜか周りからの視線を受けてたんだけど…美貴たちには気づかれないように
コソコソと2人の会話を盗み聞きした。

『亜弥ちゃん何観たい?』
『えっと…ミキたんは?』
『う〜ん……陰陽師とかぁーリーグ・オブ・レジェンドとか面白そうだねぇ』
『こ…怖くない?』
『んー?そっか、怖いと亜弥ちゃん泣いちゃうもんね。
 ホラーじゃないけど…ちょっと怖いかもしんないなぁ。
 じゃあ織田○二観よっか、もう観た?』
『ううん、観てないよ』
『おし、じゃあ決まりね』

反対。却下。ありえない。
ごとーもう観た、なっちと観た。とっくに観た。
つーかリーグ・オブ・レジェントって怖いの?たぶん怖くないよ?
そしてきっと陰陽師も怖くなんかないです。
だから陰陽師観よーよぉ!安倍ちゃん観よーってばぁ!
411 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:08
『…んあ、なっちどーする?』
『……しょうがないべさ、もっかい観よ?』
『やだ、お金もったいない』
『なっちが出すよ』
『んあ!?ダメだよぉ!』
『なんで?なっちは働いてるし、全然ダメじゃないべ』
『ダメなのぉ!!!』
『…ごっちん?』
『んあ?…っんぁ?!みみみ美貴ぃ?!?』
『え…?なにその格好……』

そうですねん、バレましてん。
そんでもってこの後なんとかして通りすがりを演じようとしたんだけど
美貴には尾けてたのバレバレで(んあ、まっつーは気づいてなかったけど)。

で、なぜかその後4人で織田ちゃん観て、マックでお昼食べて
その後また映画観るコトになって、怖くないって説得して陰陽師観よって
言ったらなぜかリーグ(ryを観るコトになって結局なっちと安倍ちゃんを
観るコトはできず…。

とりあえずマックで、まっつーがトイレに行った時に
『美貴、映画終わったらマジで言ってよ?
 ホント今夜ばっちりキメなかったらぶつ切りにするから』
『…っ…う、うん。
 映画終わったら夕日がキレイな公園に行こうと思ってるんだ。
 だから…そこで言うよ』
『んあ!エライ!ちゃんとシチュエーションまで考えてたのね!』
『へへへっ』
って会話があったから、終わった後ごとーたちは笑顔で
美貴たちと別れ遠ざかる2つの背中に敬礼したの。


信じてた。計画性のあるホワイティを、心の底から信じてた。


412 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:09
 


な  の  に  ぃ  ♪


会えてる長い日曜日。

ごとーはなっちの家にお邪魔して、2人でまったりしながら
美貴の報告メールを待ってた。

しかし、夜の9時を過ぎて届いたメールは…

『ごめん、非常事態発生。詳しいことは明日話す』

んあぁ?非常事態だぁ?
なによ…?なんなの?なにが起こったっつーのよ美貴。
時間がないの。非常事態だろーが非常痴態だろーがさっさと言えバカ。

その後何度『何があったの?簡単にでいいから教えてよ』とか
『吐けやゴルァ』とか『殺ってやる』とか送っても返事は返ってこず
泣く泣く飛ぶと…

『A−HA!ホント、聞いテタ通リのキュートガールね』
『でしょぉ?ミッキーが夢中になるのもわかるよねぇ〜』
『……そ、そんなコトないですよぉ』
『………』

んあ…この声はまさか……

『アヤちゃん、お酒ダメだっタ?
 ミキ、ウーロン茶取ってくれル?』
『…亜弥ちゃんウーロンでいい?ジュースもあるけど』 
『お…お茶でいいよ』
『あー亜弥ちゃん、今さぁ、この部屋はなんだって思ってるでしょ?』
『ふぇ?』
『HA−HAN♪ついでにコノ胡散臭い外人も
 ミキとどんな関係なんだって思ってル?』
『ふぇえ!?おお思ってないですよぉ!』
413 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:10
んあ、まっつーバレバレだから。図星だったんでしょ?
図星のボッチャンだったんでしょ?
相変わらず鋭いなぁー里田さん。
ってかアヤカって人の起きてるトコ初めて見たやぁー。
普通に日本語上手なんだけどやっぱなんか…微妙に巻いてる…。

『ここホテルだけどこの部屋は今アヤカが住んでるの。
 でぇ、ミッキーとアヤカはバイト仲間』
『デモ最近ミキ来てなかったけどネ。和田さんが心配してたヨ』
『あぁ…今度電話しとくよ』
『お、亜弥ちゃん今度は和田?和田ってアッコ?って思ってるね?』
『ひょぇ!?アッコは思ってないですよぉ』
『あー…和田さんはこのホテルのオーナーさん。
 美貴、ここの清掃のバイトしてんだ』
『あとキャバクラ幕府もね』
『キャ…?!キャバクラ!?!』
『掃除だから、掃除だけだから。和田さんはキャバクラ幕府の経営者でもあるんだよ』
『そ…そうなんだ……。
 あれ?待って…キャバクラ幕府って……もしかして…』
『そーだよ、おとーさんの不倫相手が働いてたトコ』
『っ!』

わちゃー、まっつー固まったねぇ。
そりゃいきなり聞いたら驚くよ、ごとーの時みたいに1からちゃんと
説明しなきゃわかんないって。

『ご、ごめんなさい…っ』
『ん?なんで謝んの?』
『だって……だって……』
『アヤちゃん、気なんか遣わなくていいヨ。
 どうせミキだし』
『んなっ!?アヤカ!どうせってなんだよどうせって!』
『ミキ、あなた今マデ何回アヤちゃんのコト泣かせたの?
 マイから色々聞いたワ、ほら、謝りなさい』
『ぐ……亜弥ちゃん、ごめんね』
『ううん…ミキたん悪くないよぉ…』
414 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:11
『アヤちゃん…ホントかわいいネ。
 知ってる?ミキがまだここに住んでた時、ミキったら学校に
 行くワケでもないのに毎日必ず朝と夕方に出かけてってね、アヤちゃんの…』
『っどぅわぁあ!?アヤカ!黙れアヤカ!!』
『えぇーいいじゃなぁーい』 
『うっさい!』 
『ここに…住んでた?ミキたんもここに住んでたの?』
『…え?あ、うん。
 アヤカより前から住んでて、途中からアヤカと一緒に住んでた』
『そう……なんだ…』
 
どわわわわ、美貴!だからちゃんとわかるように言わないとぉ!
まっつーの気持ちちょっとは考えなさいな!!

『アヤカって生活スタイルがハワイ式だから最初は大変だったなぁ…』
『こっちだって大変だったワ。
 ミキったら珍味ばっか食べるから部屋中臭くなるし』
『アヤカのお香だって臭かったよ…』
『なっ!?臭いだなんて!謝りなさい!ハワイに謝りなさい!!』
『やだよ!ってかどーやって1個人が国に謝りゃいーの?!
 カメハメハ大王にでも謝ればいいワケ!?』
『ちょちょちょっと2人ともストップストップ!
 …ミッキー、亜弥ちゃん凍り付いてんだけど』
『へ?…ぬぁあ!?亜弥ちゃん!どーしたの?!』

そら凍りつくっちゅーねん。
んあーでも非常事態ってのはよくわかった。
ごとーもぉ帰る。後は勝手にしろチクショウ。





415 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:11

「とゆーワケなのよ」
「…それって…亜弥ちゃんやばいんじゃないの…?」
「んあ、やばいだろーね」
「くぁーっ!美貴ちゃんのバカ!」

んあ、申し遅れましたけどここ、いつもの通り3年1組。
予鈴が鳴るまであと1分。未だ、美貴の姿は見えない。 

「やぁーでも、なんで里田先輩たちもこぉー大事な時にいきなり
 出てくんのかねぇ…」
「台詞欲しかったんじゃない?アヤカって人」

はぁ〜…。

ホントにそんな理由だったら脳天カチ割るよ。
それよか早く美貴来ないかな?

ガラッ

「おはよ…」
「んあ!美貴遅いよ!」
「美貴ちゃん!またあんたは亜弥ちゃんを…っ!」
「んぇえ!?なんで知ってるのよっすぃ?!」

やっぱり昨夜あの後まっつーは泣いたりしたんだろうか?
教室に入った途端よしこに胸倉を掴まれて
美貴は驚き慌てふためく。
416 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:12
「なんで知ってるじゃない!
 邪魔されたのは仕方ないけど余計不安にさせるようなコト言って
 どーすんのさ!信じらんないよ!!」
「ぅ…ぐ…なんでそんなコトまで……」
「んあ、よしこ降ろしたげて、とりあえず話聞こ」
「フン、やっぱまだ黒いんじゃないの?」

まぁまぁと、よしこを宥めて席に座る。
ごとーとよしこからの厳しい視線に美貴は小さくなった。

「で、昨日どこで里田先輩たちに会ったの?」
「だからなんで知って…」
「いいから早く話しなさい!詳しいコトは今日話すってメールで言ったでしょ!」
「あ…うん。あのさ、夕日のキレイな公園で言うって言ったじゃん?
 それで、映画館出たあと、適当にウィンドウショッピングして
 日が落ち始めた頃にスタバでコーヒー買って公園行ったんだ。
 で、夕日がいい感じになるまで世間話して…いざ言おうと思ったトコに…

 『おーミッキー!久しぶりじゃーん』
 『H@ミキ!なにしてるノー?』 

 ってあの2人が来てさ。結構雰囲気もよかったのに見事ブチ壊されて…。
 で、無理矢理ココナッツで飲みがてらご飯食べよってコトになって
 亜弥ちゃんも押されてオッケーしちゃってさ、美貴1人で逃げるワケにも
 いかないし……」

んあ…不幸。
美貴、あなたも不幸だったのね。
ごとーと同じか、アンラッキーズか。
417 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:13
「でぇ、まっつーが凍り付いた後はどーなったの?」
「ハ?それも知ってんのぉ?!なに?ごっちんって美貴のストーカー?
 そういや昨日も美貴たちのコト尾けてたし…」
「んあ!!好きでやってんじゃないよバカ!
 シメてやる!その首捻り潰したるぅ!!!!!」
「ぐぇっ!?わかった話す!話すから!」

ったくぅ、最初から大人しくそう言やいいの!
早くしないとかおりんたち来ちゃうよ!

「えっと…あの後…亜弥ちゃん喋らなくなっちゃって
 チラっと見た顔が悔しそうに下唇噛んでて…
 その顔まいちゃんたちに見られる前にさっさとホテル出たんだ。
 で、家に帰ってる間も…俯いたまま黙ってて……
 着いた途端に『荷造りするから今日は帰るね』って自分の家に走り帰っちゃってさ…」
「「えぇ!?マジでぇ!?」」
「・・・うん」

あちゃー…それ絶対ショック受けてるよ、かなり凹んでる。

「美貴、何がなんだかわかんなくて呆然としちゃって
 家の前で突っ立ってたんだ。そしたら亜弥ちゃんの部屋の
 電気が点いて…絶対おかしいって思って電話した。
 そしたら…出てくれたんだけど………だけど……」
「だけど?」
「窓から、美貴のコト見ながら言われたんだよ。
 泣きそうな声で『あの人でしょう?前にミキたんがそこで抱き合ってたの』って」

んあぁー…そういやなっちから聞いた話にあった。
まっつーは美貴にまつわる噂は全然信じてなかったけど
自分の目で見てキレちゃったって話。
418 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:13
「もぉ美貴さぁ…亜弥ちゃんが美貴とアヤカのコト見てたなんて
 すっかり忘れててさぁ。
 あの日、亜弥ちゃんが初めて美貴に告白してくれた時に
 言われたコトだったのに………」
「んあ…ごとーはてっきり一緒に住んでたってコトだけに傷ついたのかと
 思ってたけど…そっか、それもあったかぁー…」
「まぁ、住んでたのもダメだったっぽいよ。
 その後、『あの人…ミキたんのコトなんでも知ってるんだね。
 あたしなんかよりずっとずっと大人だし……一緒に住んでたんだし…』
 ってそこで一方的に電話切られてカーテンも閉められて
 かけ直しても電源切っちゃってて繋がんないし…」

んあ…まっつー……。

「今朝すんごい早起きして家の前で待ち伏せしよーとしたんだ。
 だけど、亜弥ちゃんの方が1枚上手で…靴履いてる時に
 『用があるから先に行きます』ってメールきて、慌てて出たけど
 とっくの昔に学校行ったってラジオ体操してたパパさんに言われたし…」 
「それ、何時の話?」
「7時ジャスト」
「んあ…」
早い…早過ぎる!
そこまで本気で避けなくてもいいのに!

「誤解…じゃないけど…アヤカとは…その、そういう関係だったけど
 でも今は一緒に住んでるのだって亜弥ちゃんだし…
 あの時だって気持ちは、気持ちはずっと亜弥ちゃんにあったって
 ちゃんと話したいのに……やっと、恥ずかしさが薄れて言えそうだったのに……」
「美貴ちゃん…」

ヘタレであり、不幸でもあり。
かわいそうこの人。かわいそうまっつー。
419 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:14
「亜弥ちゃんのコト…泣かせたくないんだ。
 悲しい顔なんてさせたくない。
 だからできたらあの時のコト全部話すのは…って思ってた。
 けど中途半端に1部だけ切り取って話しても傷つけるなら
 美貴は全部話したいし、聞いて欲しい」

しかし、まっつーは聞いてくれないと。
んあぁーもぉなんなのよミキアヤはぁー!!
美貴のヘタレが治ったら今度はまっつー逃亡なんて…っくぅ!
ごとーに恨みでもあんのかぃ!!!

「よぉーしわかった!!」
「んあ?なにが?」
「ウチが今から亜弥ちゃん掻っ攫ってくる!」
「えぇ?でももぉ本鈴なるよ?」
「美貴ちゃん、覚悟は決まってんだろ?」
「…うん。遅くなったけど…バッチリ決まってる」
「だったら善は急げ!ごっちんは美貴ちゃんとここにいて
 カオリが来たら説明しといて!じゃ!」
「んあ!かしこまり!!」


任せたぞよしこぉ!男前よしこぉ!!
・・・ってんあ?そーいえばさっきからずっと気になってたんだけど…。

「ねぇ美貴、オデコになんか字ぃ書いてない?」
前髪の隙間からなんとなく見えるオデコ……に、肉?

「あぁ…これ?さっきパパさんに会ったって言ったじゃん。
 そん時に『そーいや昨日亜弥が突然帰ってきてんけど…なんや目ぇ赤なっとったし
 部屋から全然出てこんくてなぁ。美貴ちゃん…なんか知っとるか?』って
 明らかに疑問形で訊ねられたのに返事する前に取り押さえられて
 キュキュッと書かれたんだよ…」
「んあ…御愁傷様です」

プププ…今時“肉”て……ククククク…。



◇ ◇ ◇

420 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:15


吉澤が3年1組を飛び出し後藤が藤本の額の
“肉”を発見した頃、松浦亜弥は屋上にいた。


「はぁ……あたし………いやな子だぁ……」

勢い余って、あんなこと。
責めるようなこと、口に出してしまった。

だってだってあの人は、ミキたんのコト、ミキって呼んで。
一緒に住んでた、あたしが入り込めなかったミキたんの、1番傍にいた人。
あたしの知らない時間を一緒に共有してた人。
そして今もきっと、すごく近くで、ミキたんを見守っている人。

ミキたんはあの人のコトを慕ってる。
無防備な瞳や甘えた声、全てがそれを証明していた。

大人っぽいし、美人だし、スタイルもいいし………。
あたしだってかわいいけど……けど……

「っ……もしかして…」

そっか、そういえば、あたしってミキたんに傍にいるって言われただけだし。
ずっとって言われたけど、好きだなんて言われてないし。

ミキたんは………まだアヤカって人のコトが好き…?

でもあの人には他に恋人がいて、叶わない恋で、だからあたしと一緒にいてくれてる?
それともやっぱりただの同情であたしの傍を離れられない?

なら、ちゃんと言わなくちゃ。ミキたんの恋を応援しなきゃ。
フラれるかもって、告白できないでいるんなら
あたしが背中を押してあげなきゃ!!
421 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:16


・・・やだぁ、やっぱりやだよぉ。

好きなんだもん。ミキたんが好きなんだもん。
でも、ミキたんの幸せ考えたら……

『ちょっとちょっと松浦。石川じゃあるまいし
 ネガティヴにもほどがあるよ』

「ひゃぁ!?だ、誰?!…ぇ…誰もいない…」
おかしいな…だって今確かに声が聞え…

『誰もいないけどいるようなモンなの。なんてゆーか
 カオリって脳に直接話し掛けられるタイプだから気にしないで。』

「・・・・・・」

『大体さぁ、なんでちょっと藤本の過去を知る女が出てきたぐらいで
 勝手に叶わぬ片想い胸がキュルルンになんの?
 今藤本が松浦の傍にいるのは藤本の意志でしょ?
 そんな同情なんかで結婚して改名なんかできるワケないじゃん。
 カオならヤダよ、絶対ヤダ。
 アヤカって子のコト疑うなら聞いてみればいいじゃん。
 どうしてあそこで一緒に暮らすコトになったの?とか
 聞けば藤本は答えてくれるよ』

聞きたいけど…そりゃぁ聞きたいけど…。

『ん?なに?』

「でも、それってすごく鬱陶しいだろうし。
 1個聞いたら止まんなくなるもん。
 ミキたんのコト、全部聞かなきゃ気が済まなくなっちゃう」

『だから全部聞けばいいんだって。
 好きな人のコトなんでも知りたいって思うの普通でしょ?
 まぁーカオみたいに大人になると別にいっかぁーって思うけどさ。
 松浦若いし、年下だし、少しはワガママ言った方がかわいいよ』
422 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:17
「でも…っ」

『だぁー!!!グチグチ言わない!!
 松浦らしくないよ!ったくなんで藤本絡みになるとそーなのかな!
 カオそーゆーの好きじゃないっ!だからディアっ!!!』

「え…?…っきゃ!きゃぁあああああー!!!」


だからディアってなんですか?と訊ねる余裕もなく
突然現れたブラックホールに吸い込まれ、松浦の姿は消えた。



◇ ◇ ◇

こちら戻って、3年1組。
本鈴から少し遅れて、勢いよくドアが開かれる。

ガラッ!
「はい、みんなおはよう」
「んあぇ?なっちは?」
「2年4組にダーリンを呼びに行ってもらった」
「えぇ!?なんで?かおりんわかってるんでしょ?
 今から美貴がまっつーに…」
「知ってる。ってゆーか、カオ今プチギレ中なの。
 だから 松 浦 誘 拐 し た の 。返してほしかったら迎えに来な。
 以上、朝のショート終わり」
ガラッピシャン!

・・・・・んあ?

「ちょっとごっちん…今カオリせんせぇ変なコト言わなかった?」
「んあ…言ったねぇ」
「亜弥ちゃんを誘拐したとかどうとか…」
「…んあ」
423 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:17
「ちょっとぉ!!どーゆーコトだよそれぇ!?!」
「し、知らないよ!かおりんに聞いてよ!!」
「だってもぉ出てっちゃったじゃんかぁ!!!」

素晴らしい速さで朝のショート(ってかただの私信?)を
終わらせ出て行ったかおりんの言葉に
ごとーと美貴はパニックに陥る。 
と、そんな2人の頭上に、ヒラヒラと舞い落ちてくる1枚の紙。

「んあ?なになに…」
空中で掴み取って目を通すと、そこにはこう書かれていた。


 『    好きよあなた 今でも今でも
    暦はもう少しで 今年も終わりですね

   ※ 逢いたくて恋しくて 泣きたくなる夜
      そばにいて少しでも 話を聞いて
       追いかけて 追いかけて
        追いかけて 雪国

       窓に落ちる 風と雪は
   女一人の部屋には 悲しすぎるはあなた
   酔いたくて泣きたくて ふるえるくちびる
    そばに来て少しでも わがまま聞いて
       追いかけて 追いかけて
        追いかけて 雪国
   
       好きな人はいるの あなた
    バカね バカな女ね 意地をはってた私
     逢いたくて夜汽車乗る デッキの窓に
      とめどなく頬つたう 涙のあとを
       追いかけて 追いかけて
        追いかけて 雪国

         ※を繰り返し            』
424 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:18

「「・・・・・・」」
んあ?これって………吉幾三?

「関係なかったみたいだね、それじゃ美貴はカオリせんせぇ追っかけるよ」
「んあ」
んっとに紛らわしいトコに落ちてくんじゃないよぉ…ってアレ?
裏になんか書いて……

「んあ!?美貴ストップ!関係あった!!」
「ハ?どこが?」
「これ!裏見て!!」
「どれどれ…」

『表を読めば、全部わかったハズ。
 そんなワケで一足先に行ってるからそっちで捜しても無駄だよ。
 それじゃ頑張って、追いかけて雪国。
                                    カオリ』

「……え…?…ごめん、美貴わかんないんだけど…」
「んあ……ごとーわかっちゃった………」

雪国って…たぶんあそこよね?
そこに一足先に行ってんのよね?
ってコトは美貴に追いかけて雪国まで来いってコトでオーケー?

「ちょっとごっちん、わかったなら固まってないで教えてよ」
「・・・まっつー…北海道に行ったみたい」
「ハァ?何言ってんの?
 北海道って…修学旅行は明日からでしょ?」
「 だ か ら 誘 拐 さ れ た ん だ っ て ば 」
「っ…………」
「で、美貴に追いかけてこいって」
「…………」 
「美貴?」
「……」
「おぉーぃ」
「…ってやる……」
「んあ?」
「行くよ行きますよ行けばいいんだろ!!!
 誘拐されたんなら助けに行くに決まってんじゃん!!」
425 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:19
んあ!美貴が燃えてる!
夢か幻か、その背中には正義の味方の白いマントまで見えるよ!

「じゃ、行ってらっしゃい」
「…ん?何言ってんの?ごっちんも行くんだよ」
「んぇえ!?なんでごとーが?!」
「だって北海道のどこにいるかわかんないじゃん!
 捜すの手伝ってよ!!」
「えぇー!」
雌鳥…じゃなかったメンドイよぉー。
言う決心ついたんだから1人で行って言ってきなさいな。

「それに…なんかごっちんが変な雲の汚い乗り物
 持ってるって聞いたんだけど、それに乗ってこーよ」
「違うよ!あれは紺野の!
 勝手にごとーのマイ雲にしないでよね!!
 ってかあんなんで行くのヤダ!
 幾三だって夜汽車に乗るって言ってるし、汽車だの飛行機だの乗ってきなよ!」
「お金もったいない…」
「んあぁ!?」

んだとぉ!?まっつーの為に金使うのがもったいないだぁ?

「そんな…移動費にお金使いたくないんだよ。
 亜弥ちゃんと一緒に何か食べたり遊ぶのに使うならまだしも…」
「………っはぁ、仕方ないなぁ…わかったよ。
 ごとーも行きゃいーんでしょ、ラーメンぐらい奢ってよね」
「もちろん!ありがとごっちん愛してるー♪」
「んあ!だからそれはごとーに言う前に
 まっつーに言えっつーの!!!」


こうして、後藤と藤本の“松浦を救う旅・IN北海道2003”は始まった。

426 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:21
   
427 名前:そしてあややは攫われた。 投稿日:2003/10/16(木) 17:22

祝・ヘタレ脱出?

別に引っぱってるワケじゃないんです(爆
あと2回?(適当)で終わると思いますので
どうか怒らないでください(爆死


レスありがとうございます。
わぁたくさん♪と思ったら俄かヘタレ祭が起こっていたんですね(w
白美貴、みんな呆れてるよ白美貴。

>393 名無し読者様
川;VvV)<頑張ったでしょ?頑張ったよね?
( T Д T)<んあ、頑張ります。
そしてさらに頑張れごっちん(w

>394 名無し読者様
( ゜皿 ゜)<ワーイ褒められたー♪
全然教師っぽくないんですが(爆 嬉しいです。
飯田さんにはもうちょっと活躍してもらいます。

>395 つみ様
(●´ー`)人(´ Д ` )<このお話はなちごまの提供でお送りしています。
( ゜皿 ゜)<かおごまキタ━━━━━━!!!!
こないよ、こないよカオリ。
428 名前:のえる 投稿日:2003/10/16(木) 17:23
>396 名無し読者様
从从;T)<あ、亜弥ちゃん…。

>397 178様
从从;V)<ごっちん…。

>398 名無し読者様
从从;V)<よっすぃにだけは言われたくないよ!!!

>399 名無し読者様
从从;V)<ついでに梨華ちゃんにも!
( T▽T)<なんでよぉ!

>400 名無し読者様
从从;V)<ちょっと…フォローするなら最後までしてよ。
      ズッコケたじゃん。

>401 名無しさん
从从;V)<あれ?おかしいな、せんせぇは天使のハズなのに…。
      ってかいーちじゅーぅ…1億?   

>402 名無し読者様
なんか…だんだん作者自身がヘタレなのかという錯覚に陥ってきました(爆
いや、まぁヘタレなんですけどね(爆死

>403 名無し読者
川;VvV)<え…?それってどーなの?

>404 名無し読者様
川;VvV)<だからそれはどー(ry
429 名前:のえる 投稿日:2003/10/16(木) 17:31
申し訳ございません。>>405に一つ不都合でおかしい文がありました。
消そう消そうと思って消し忘れたモノです(爆
あえてどれかは言いませんので(またかい
気づいた方は脳内で抹消するなりニヤニヤするなりでお願いいたします。
あぁ、恥ずかしい・゜・(ノД`)・゜・
430 名前:つみ 投稿日:2003/10/17(金) 20:49
かおりさん・・・何してるんですか・・
しかしみきごまでほんとになちごまの危機!?
2人とロボとの戦いをゆっくりと見届けたい所存でございます。
431 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/17(金) 20:58
へタティ、愛の為に北国まで飛べ・・・
432 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/17(金) 22:14
カオリン素敵…。
二人の新婚旅行(違)楽しみに待ってます。
433 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/20(月) 23:58

ダダダダダダダダ…

「ごっちん!早く!!」
「んあー待ってよぉ!」
「待ってらんないよ!亜弥ちゃんがカオリせんせぇに変なコト
 されてたらどーすんの!ごっちん責任取れるの?!」
「む……」
取れない、つーか取らない。

「よし!屋上着いた!さぁごっちんイモ雲呼んで!」
「イモグモって…ポテト雲だよ」
そんな毒々しいクモみたいな名前じゃないし。
「なんでもいいから早く!!」
早くったって…ごとー呼んだコトないんだけどなぁ…。
いつも紺野が呼んでくれてたし…。

「なんでもいいとは心外ですね」
「んのわぁ!?こここ紺野!何してんのこんなトコで!
 授業始まってんのに!!」

美貴に引っ張られてやって来た屋上でごとーが困っていると
ホウキ片手に落ち葉を掃いてる紺野がいた。

「焼芋のおいしい季節ですからね。
 授業なんてクソ喰らえです」
「………」

クソて……紺野さんお下品。
ってか1つ聞いていい?その落ち葉ってどこからきたの?
ここ屋上で木なんかないし、最近そんな風の強い日なかったし
下から風で飛ばされてきたとしても大量すぎると思うんだけど。
434 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/20(月) 23:58
「フッ、後藤せんぱ…いえ後藤さん、愚問ですよ。
 落ち葉は飛ばすのは風だけではありませんし
 風もまた私くしの前では赤子同然なのです」
「いや、意味わかんないんだけど…」
自然を赤子だなんて…アンタいつか地球にシメられるよ。

「だぁ!んなことはどぉーでもいいんだよ!
 紺ちゃん!雲借りたいの!早く呼んで!!」
「…いいですけど、藤本さんは大丈夫でも後藤さんの期限切れてますよ」
「んあ?ごとーの期限?」
なにそれ?レンタル期限がってコト?
「ポテトうーん、いらっしゃーい」
「んあ…相変わらず汚いな…」

ポテポテポテポテ。

「ホントだ、ホントに黄ばんでるね。
 でも今はそんな細かいコト気にしてらんない!
 早く北海道まで行かなきゃ!待ってて亜弥ちゃん!!とりゃー!」

おー燃えてる燃えてる。颯爽とポテト雲に飛び乗った美貴は
まるで孫悟空。気のせいかそのお尻にはあるハズのないシッポまで見える。

そんだけ燃えてんなら1人で行ってきてほしいモンだけど…
ごとーにも見守る義務あるし、さっさと行ってなっちとドカンだ!待っててなっち!!

「んあ!とりゃぁー……ってんあぁ!?」
「ひゃ?!ごっちん!大丈夫?!」

ドドッスーン!

んあ!?なんでぇ?!
美貴と同じように飛び乗ったごとーの体は見事に黄ばんだ雲をスルーして
背中から屋上に着地。 
そんなバカな!こないだまで普通に乗れてたのに!!
435 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/20(月) 23:59
「申し遅れましたけど…本来後藤さんはポテト雲には乗れないんです。
 だって清らかじゃありませんから。
 こないだまでは私くしの粋なはからいで乗車できたんですけど
 その特別乗車期間は昨日で切れたんでもう乗れません」
「んあ!?どこが!ごとーの心のどこが清らかじゃないっつーの!!
 美貴は乗れてんのにぃ!!」
「へ?それそんな規定あるんだ…ってかごっちんそれどーゆー意味よ!
 美貴は清らかだから当然だっつーの!!」 
「んあ!美貴のどこが清らかなのどこが!!」

よしこだって乗れなかったんだぞぉ!美貴だけ乗れるなんて納得できるかぁ!

「はぁ…後藤さん、お忘れですか?
 藤本さんはあの時松浦さんのおイモパワーで心が浄化されたでしょう?
 だからそれまで心が10代からの喫煙者、現在65歳の鬼俵さん(仮名)の
 肺並にドス黒かったとしても今は綺麗な真っピンクなんです。
 桃色ですよ、桃色。わかりますか?ピーチ姫です。
 それに比べれば後藤さんはワリオですね。マキオですマキオ。
 大体今お乗りになる時なんて言いました?
 『なっちとドカン』?いやらしさ全開じゃないですか。
 どうせなら『スリムがドカーン』とお腹で言って欲しかったモノです」
「っ…!」
「なっちとドカン?ごっちんそんなコト言ったっけ?」
「言いやがったんですよ、このエロマキオは」
「…んあ!しょうがないじゃん!
 それがごとーの本心だもん!
 こーなったのは紺野のせいでしょ?!紺野がなかなかさせてくんないから
 タマリにタマった欲が出ちゃったんだよ!!」

切なさ故の叫びなんだよ!声に出したワケじゃないんだからいいじゃん!
436 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/20(月) 23:59
「あ、そういえば生引きたまりきれてたんだった、買いに行かないと。
 えへっ、今夜は冷奴なんです」
「んあ!知るかぁ!紺野のご御飯のメニューなんて聞いてないし!
 ってかこの寒い時期にんなモン食ってんじゃないよ!!」
朝っぱらから屋上で焼芋してるクセに!

「まーまーごっちん、それは人の自由じゃん?」
「そうですよ、私お豆腐大好きなんです。
 ちなみに私の愛用する生引きたまりは芋島にある芋慶ってとこのです。
 あの赤みをおびた色と照り具合がいいんですよね、まさにたまりの中のたまり。
 お餅等の漬けしょうゆや煮物にも最適で…」
「だから聞いてないっつーのに!」
「あとお刺身には魚の照り焼きや甘露煮に用いると最高な同社のさしみたまりって
 決めてたんですけど、最近は健康に気を使って塩分を13%抑えた
 うす塩たまりにかえました。でも泳ぎ始めたりはしてませんよ、完璧です」
 
んあ、役○さんのバタフライすごかったよね……ってそーじゃなくてぇ!

「わかったから!紺野の醤油事情はよぉーくわかったから
 なんとかしてよ!ごとー乗れないんじゃ北海道行けないじゃん!!」

ハッ!でもそれならついてかなくていいんだ!
美貴には悪いけどここはひとつそんなワケで……

「ごめん美貴、1人で行っ…」
「しかたないなぁ、特別の特別ですよ、ポーテルンルン♪」
「んあっ!?ぎゃぁあー!!!」 

腹立たしい程軽快かつ楽しげに唱えられた紺野の魔術によって
ごとーの目の前にハンカチサイズのイモの皮が現れ
顔面をパックするように張り付いてきた。
437 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:00
紺野ぉ!アンタごとーが何考えてるか読めてんでしょ?!
特別の特別なんかいらないよ!余計なコトすんじゃねぇ!
ってか息が!息ができないぃー!!

「アハハッ!ごっちん顔の型とってるみたーい!
 でもちょっとキモイねぇこれー」
「ムガガガガガっ!んぐぅー!んぐぅー!
(ちょっと美貴笑ってないで助けてよっ!ヘルプ!ヘルプミー!)」
「フフフっ、後藤さんったら
 何をおっしゃってるのかサッパリですよ」
「あーあー、口モゴモゴさせるからそこだけ皮が皺々になってるよー」
「んがんがんがっ!モゴモーゴ!!
 (嘘つけや紺野ぉ!美貴も落ち着いて実況すなぁ!)」


――――5分後。

「プハぁっ!はぁっ!はぁっ!…し、死ぬかと思った……」
「大丈夫ですか?少々危なかったですね」
「どこが少々だよ!あと1秒遅かったら死んでたから!絶対死んでたから!
 訴えてやる!殺人未遂で訴えてやる!!」
「そう言われましても…。
 もう1度乗車できるようにするにはこれしかなかったんです。
 サイヤ人が死の1歩手前から復活すると強さが増すように
 後藤さんのおイモパワーも死にかけるコトで心の汚さを拭えるくらい
 強くなりましたから。さてと…そろそろ焼芋が焼けますし
 後藤さんたちの分はありませんからさっさと乗ってっちゃってください」

んあ!いつの間に火ぃつけてたのよ!!
煙出まくりじゃんゴホゴホ!
ちくしょぉ帰ったら覚えてなさいよね!
438 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:00
「んあ!美貴逝くぜ!!」
「おぅ!カモンごっちん!」
「とりゃぁー!」
うっし乗れたぁ!待ってろや北海道中膝栗毛ぇ!!

「後藤さん、それを言うなら東海道中膝栗毛です。完璧です」

ぐすっ!知ってたもん!ワザとだもん!
紺野のバカぁ!!

ポテポテドピューン。



「あ、そうだ、余談ですけど…
 私が後藤さんから“先輩”をつけるのをやめたのは気分の問題です。
 決して『そういえば最初の頃“先輩”だなんて呼んでなかったのに
 いつから“先輩”だなんて呼び始めたのかしら?』などと疑問に思った
 からではありません。
 私だけでなく最初の頃はみなさん呼び方が固定されてなくて
 ヒドイもんでしたから………え?何の話だって?
 だから余談ですよ、余談」

大空に消えていくポテト雲を眩しそうに見上げて
紺野はボソリと呟いた。とその時、屋上に舞い降りる1粒の豆。

「あさ美ちゃん、何1人でブツクサ言ってるニィ?」

( ・e・)

「あ、ガキさん遅かったね」
「そりゃ…横浜から来た上に高等部の建物なんて初めて入ったんだから
 時間かかるに決まってるニィ。しかもセンコーに見つからないように
 忍び足で来たし」
439 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:01
「センコーか…。ガキさんもどんどん大人になっていくんだね」
「あ?ワケわかんないニィ。
 それよりいきなり呼び出して何の用ニィ?
 学校サボってまで来たんだからそれなりの用じゃなかったら憤るニィよ」
「フフフ。わからないの?」
「えぇ?わかるワケないニィ、豆はあさ美ちゃんじゃないんだから」
「別に私じゃなくてもわかると思うけど…。
 まいっか。亀井ちゃん、田中ちゃん、出ておいで」
「ニィ!?亀井ちゃんたちまで?!」
「あぁ、空気が薄かったぁ…」
「ふぃー、やっと出れたとよ」

紺野が屋上の隅に置かれているダンボールに呼びかけると
中から亀井と田中が這い出てきた。

「里沙ちゃん、お誕生日おめでとう」
「んなっ!?えええ絵里ぃ!!そん言葉はいっせーのせぇでみんなで言う
 ってさっき打ち合わせしたやなかか!なに先走っとるんね!!」
「あっ!ごめんなさい…」
「…亀井ちゃん」

早速段取りを間違えた亀井に、田中と紺野は呆れた目を向けたが
新垣はすっかり忘れていた自分の誕生日をみんなが覚えていてくれたのが
嬉しくて素直に感動の涙を流した。

「言っちゃったモンは仕方ないか。ガキさん…おめでとう」
「おめでとうございますとよ」
「ありがとニィ、ありがとう亀井ちゃん、あさ美ちゃん、田中ちゃん…」
440 名前:追いかけて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:01
「さ、それじゃおイモ食べよ」
「そやそや、れいなはもうお腹が減りすぎて死にそうたい」
「れいな、また朝ご飯食べなかったの?」
「…時間がなかったけん…」
「もぉ…おイモ、えりの分も食べていいから」
「そげな食べたらプースカ止まらなか、1個で充分たい」
「ダメ、2個食べるの!」
「えぇー」
「相変わらず仲いいニィねぇ2人は。
 どーニィ?そこに愛はあるのニィ?ん?ん?」
「えぇ!?ないよぉ」「なか!!」
「全力で否定するところが怪しいね、ガキさん」
「ニィニィ」

真っ赤になって手をぶんぶん振る亀井と田中を見て
紺野と新垣はフフっと頬を緩める。
屋上で輪になって食べる焼芋は最高においしかった。
しかし、ここで新垣の頭のよぎる疑問が――――

(ってゆーかこれって…ニィの誕生日パーティーだニィ?
 ってことは、わざわざニィが朝から満員電車に揺られてコソコソと
 ヨソの学校に不法侵入までしてここに来なくても
 祝う側が横浜まで来てくれればよかったんじゃ………
 しかも焼芋って…あさ美ちゃんの好物ニィ。
 普通誕生日にはケーキなんじゃないのかニィ?)

ニィ?と自慢の眉毛をヒン曲げる新垣が、(気のせいだよ、ガキさん)と
隣でほくそ笑む紺野に気づくことはなかった。


441 名前: 投稿日:2003/10/21(火) 00:02
◇ ◇ ◇
442 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:03


ここは、どこなんだろう――――?

突如として現れたブラックホールに吸い込まれて意識を失って
いた松浦は、覚醒と同時に目に映った光景に戸惑っていた。

よく言えば古き良き日本家屋。悪く言えばただのボロ屋敷。
そんな表現がよく似合う建物の1室、ほつれた畳と
傾いた掛け軸がある種のおどろおどろしさ醸し出す和室に
薄い布団をかけられて寝そべっている。

下には何も敷かれていなかったせいで、軽く軋む体を起こし
携帯電話を取り出すと時刻は正午に迫らんとしていた。

日の高い時間であるのに部屋は薄暗く、それが松浦にただならぬ恐怖心を与える。
怖くなって誰かに電話をしようとメモリを検索した時
ディスプレイの右上隅に妙な違和感を感じて指を止めた。

え――――?

おかしい。ここにこんな言葉はおかしいし必要ない。
本来ならばアンテナの横に棒が1本だったり3本だったり
圏外なら“圏外”とだけ表示されるのが当たり前だった。

しかし今、そこにはなぜか窮屈そうに“カオリが思うに圏外”と
表示されている。

カオリ――圭織――飯田先生――?
443 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:03

そういえば。

ブラックホールに吸い込まれる前、姿の見えない飯田の声がして
いきなりディアっとされたような気がする。

ということは………ここはどこ?あたしは…松浦亜弥。……で?

「えぇっと、誰かいないかな?」

考えても無駄だし、とりあえずここから出てみようと掛けられていた
布団をどけると暖められていた足に触れた空気があまりに冷たくて
思わず掛け直してしまった。

「…あ、そういえば…寒い………あれ…?」

体育座りをして布団を体に巻きつける。
すると、ひどく懐かしい匂いが松浦の鼻腔をついた。

この匂い――この匂いは――ミキたん――?

間違いない、この布団から漂う甘い匂いは藤本のモノ。
大好きなんだから、愛してるんだから間違えるハズがない。

でも、どうして。
どうしてこの布団から、藤本の匂いがするんだろう?

『おぅー松浦もう起きちゃったの?
 早くない?早すぎだよ、男だったら早r(ryって言われてるトコだよ』

「ふぇ?…っあぁ!飯田先生!!
 あたしに何したんですか?!ここってど…」
444 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:03
『ハイハイ松浦ちょっとストーップ。
 そこは…今あんたが思ってる通りだよ。
 ってかさぁ、暇でしょ?迎えが来るまで時間あるし
 押入れにいいモノ入ってるから見てごらん』

思ってる通りって……え、でもどうして…

『いいから早く押入れー』
「わ、わかりましたよぉ。えぇっと、これかな?」

急かされて掛け軸の隣にあるボロい押入れをギシギシいわせながら
開ける。中から降る無数の埃にケホケホと咳が出た。

「開けましたけど…」
『中にさー鏡あるっしょ?出して出して』
「鏡…?えーっと…あ、あった」

真っ暗で何もないと思われた押入れの中に
トイレの便座の蓋程の大きさの、楕円形の大きな鏡が寝かされていた。

「よ…いしょ…ふぅ、出しましたよぉ?」
『よし、じゃあディア!!』
「キャッ!」

またもや出た飯田のディアで、今度は鏡が光り始め
聞き慣れた声が鼓膜に響く。

『あーもぉ!!もっとスピード出ないのコレ!』
『んあ、無理だよぉ…今でもすんごいスピードだよコレ』

「ミ、ミキたんと……ごっちん?」

光が弱まって鏡に映し出されたのは、黄ばんだ雲に乗って強風に
オデコを晒されている藤本と後藤の姿だった。
445 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:04
『そーだよ。その2人は今カオリが誘拐した松浦を救うべく
 追いかけて雪国なの。でもそこに着くにはまだ当分かかるから
 それ…藤本がどれだけ松浦のコト想ってるかよく見てな。
 音量調節は備えつけのリモコンをご利用ください、じゃ』

「え…ちょっと!先生待っ……え?待って…えぇ?」

なんだか全然わからないけど変に動くのも無駄らしい。
それにしても先生、『カオリが誘拐した』なんて
そんな犯罪臭いコトを堂々と言わないでほしい。一応生徒の前なんだから。

『だぁー!目が乾く!!』
『ホントだね、ごとーシパシパしっ放しだよ』

でも…ネガティヴ思考に陥っていた自分の為にしてくれたのは
明白だし、巻き込まれた風な後藤には甚だ申し訳ないけれど
早くも松浦の瞳は鏡の中の藤本に奪われていた。

『2時間以上飛んでんだからもー青森には着いてるだろーに
 なんで海が見えないんだよぉ!!
 ホントに横浜に10分で行けたの?』
『んあ、行けたよ』
『じゃあなんで…あ!海!!ごっちん海!!』
『おぉー見えてきたねぇ』
『……ちょっと、なんでそんなどうでもよさげなの?
 何度も言うけど亜弥ちゃん誘拐されたんだよ?
 あの交信教師もとい交信バカに』
『んあ…交信バカって………ほぇ?!ちょっと!かかかかおりん!?』
446 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:04
『ん?どーしたのごっちん』
『んあぁ!!美貴のバカ!アンタがかおりんのコト交信バカなんて
 言うから怒らせちゃったじゃん!!
 今夜12時までにまっつー見つけだせなかったら
 カオがあやや食べちゃうって!!!』
『ハァっ!?なにそれ?!そんなの許すワケないじゃん!!
 亜弥ちゃんは美貴のだっつーの!
 オラァ!雲ぉ!!死ぬ気でスピード出せやゴルァ!!!!!』

「ミキたん・・・」

目の奥が、熱い。

鏡越しだけど、本人は聞かれてるなんて思ってないだろうけど
『亜弥ちゃんは美貴の』って、大声で叫んでくれた。
あたしを助ける為に、あんなに一生懸命怒って。

とめどなく、涙が溢れる。


たん、ミキたん、ミキたん。
はやく来て。迎えに来て。


抱きしめてほしい。抱きしめたい。



愛しています。



447 名前:連れ去られて雪国。 投稿日:2003/10/21(火) 00:05
448 名前:のえる 投稿日:2003/10/21(火) 00:06

あと2回とか言いましたが
紺野さんのたまりとガキさんのせいで微妙です(爆
前のガキさん初(?)登場時に“里沙”の“里”が間違ってました・゜・(ノД`)・゜・
気づいても暖かい目でスルーしてくださった方、ありがとうございました。
そんな感じのお詫び出演。お豆ちゃん、お誕生日おめでとうございます。
…って更新してたら終わっとるがな_| ̄|○

次回、やっと(VvV从告白編。とか言ってみる(爆死


レスありがとうございます。

>430 つみ様
( ゜皿 ゜)<間違っているようで正義の為なんだよ(たぶんね)。
だからこのお話はなちごまの提供で(ry

>431 名無し読者様
川*VvV)<おぅ!今飛んでるぜぃ!!
だからもうヘタレは脱出し(ry 

>432 名無し読者様
川 ‘〜‘)||<カオリの素敵さがわかるなんて、あなた近いうちにいいことあるよ。
((((;VvV))))<え…し、新婚旅行て美貴とごっちんの?ブルブル…
( ゜皿 ゜)<カオリと松浦のでしょ(激違
449 名前:つみ 投稿日:2003/10/21(火) 00:59
最後のほうの松浦さんの言葉はぐっときます!
ニィニィさん・・・おめでとうございます。
450 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 01:03
そろそろまとまりそうな気がしないでもないですね。
でも本当にそうなるかどうかはわかりませんね。
今までも期待を裏切られてばっかりなので(いい意味で、ですよ
いつまでも読んでいたいと思うのは読者の我侭ですよね。
451 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 01:39
ヘタティ…ついに、ついにその時がくるのか…
後半の松浦さんの台詞に思わず胸キュンだよ、素敵だよ。

待 っ て ま す。
452 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 10:12
藤本!次回更新でビシっと決めろよ。
作者さん!次回更新は告白記念日の甘甘のとろとろでよろしこ。
453 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 10:18
孫〇空と化したヘタティよ、デコを晒け出しながらその愛を貫け・・・
454 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 14:10
しかし匂いでわかるものなのか…愛だね、愛。
さぁ、ヘタティ!!その愛に答えるためにも頑張るんだ!!
455 名前:178 投稿日:2003/10/22(水) 03:01
ピンクだといいんだ。でもピンクってどんな感じ?
そういえば塾から1人だけ登場してなかったんだねえ

なんによ良い感じですね。頑張れヘt・・・藤本!
456 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:43

「海だ海だ海だぁー!!!!!」
「……んあ、海だね」
「だぁーからごっちんテンション低いっつーの!!」
「美貴が高すぎなんだよ…」

2時間以上飛んで、ようやくごとーと美貴を乗せたポテト雲は
本州に別れを告げる。
目の前に広がる海に、美貴のテンションも最高潮。

しかし――――

ポテポテしゅる〜ん…

「ハ!?なに?!なんか速度落ちてんだけど!!」
「んあ!?ってか高度も落ちてる!
 なんで?!海の上に来た途端に……っんあぁ!!!そーだった!」
「ん?なにがそーなの?」
「ポテト雲は水に弱いんだよ!
 ごとーたちの涙で故障したコトもあるし!」
「え…でも、別に海の上だからって濡れたワケじゃないじゃん?
 雨だって降ってないしさぁ」
「でも、湿気にも弱いのかも!!
 …ってかヤバイよ!このままじゃ海に落っこちちゃう!」

さっきまでのスピードはどこへやら。
ヘロヘロと力なく海面へと落ちていくポテト雲、それにライドオンなごとーと美貴。

「えぇえ!?なんとかなんないの?!
 紺ちゃーん!助けてぇー!イモ雲壊れたぁー!!」
「だからイモグモじゃな…ってんあ!
 紺野ぉ!!アンタ最初からこうなるコトわかっててごとーたちに
 ポテト雲かしやがったわねぇ!!んあ腹が立つ!」
457 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:44
帰ったら速攻で八つ裂きにしてやるぅ!と心の中でそっと
付け足している間も、ポテト雲はどんどん高度を下げていく。
ホントに、ホントにこのままじゃ…

「紺野ぉー!紺野ぉ!聞えてんでしょ!!
 なんとか言えやゴルァ!!!」
「紺ちゃんヘループ!!
 …っうぁああ!!ダメだ!海に落ちるぅ!」
「「いやぁぁあああああー!!!」」

ジャポーン!! ニッポン! チャチャチャ!

…ってアホかぁ!!!

「ブクブク…プハぁっ!んあ!美貴!美貴ぃー!!」

んあぁ!落ちてもーたやんけ!冷たいよぉ!しかも海ってしょっぱいし!
それだけで気持ち悪くて力抜けるのに制服が水を吸うから
思うように体が動かない。でもポテト雲のスピードが最高に遅かったおかげで
そんなに深く落ちなかったのが不幸中の幸いだった。
でーもぉ!!不幸は不幸だ!誰か助けてぇ!

「ブハぁっ!…っごっちん!大丈夫?!」
「んあ!美貴!なんとか大丈夫だけど…でも長時間は無理!
 服重いしこのままじゃ溺れちゃうよ!」
「陸…遠いし海思いっきり深いし…。
 なんで海の上に来た途端スピード落ちたのに
 こんな海のど真ん中に落ちんだよ!計算合わないじゃん!」

まったくよ!美貴の言う通りおっしゃる通り!!
目を凝らしても陸見えないんですけど!?
んあぁー!こんなトコで死にたくないよぉ!

なっちぃー!!!!





「私って、かわいいですか?」


んあ?


458 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:44
◇ ◇ ◇
459 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:45


「それにしても、あさ美ちゃんにはこないだコーヒーも奢ってもらったのに
 なんか悪いニィね」
「何言ってんの、私とガキさんの仲じゃない」

フフフフっと、焼芋を頬張りながら微笑み合う2人。
そういえばこの2人の接点はどこにあったのか、そのへんは謎だが
かなり親しい関係であることに間違いはない。

「ねぇれいなぁ、一緒に入ろうよぉ」
「嫌や、狭か」
「狭いのがいいんだよ?」
「れいなは絵里と違って狭所愛好家やなかね」
「……イジワル」
「んなっ!?どこが?!れいなのどこがイジワルげな言うと?!
 田中しゃん家のれいなちゃんって言ったとよら
 もんすごか意地がよかって、意地良子やねって近所でん評判ばってん!」
「………もういいもん、1人でいいもん…」

そしてその隣では、さっきまで隠れていたダンボールを焚き火の傍
に運び、再び中に入ってニコニコしていた亀井が田中に冷たくされて凹んでいる。

「田中ちゃぁん、亀井ちゃんをイジメるなニィ。
 好きな子をイジメるなんて今時小学生男子でもやらないニィよ」
「そうだよ田中ちゃん。
 そんなの今時オッパイマンぐらいしかやらないよ」(注:オッパイマン=吉澤ひとみ)
「…っ! やけん別にれいなと絵里はそげなのやなか!
 からかうのはやめてつかぁさいよ塾長!
 ってか紺野しゃん、オッパイマンって誰ね?!」(だから注:オッパイマン=吉澤ひとみ)
460 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:46
「オッパイマンはオッパイマンだよ。
 …っていうか、塾長って?」
「ナハハ。あさ美ちゃん、こないだ話したニィ?
 “買うていきんしゃい”でニィがどれだけ民衆の高い支持を得たか。
 田中ちゃんはその時涙まで流して感動してくれた1人で
 次の日からさっそく“魁!新垣塾”の塾生になったニィよ」
「ふぅん、さすがだねガキさん」
「ニィニィ!」

ちなみに亀井とあともう1人、田中の熱い説得によって無理矢理
塾生となったのだが、新垣のことを塾長と呼ぶのは田中だけである。

「そういえば…今日道重ちゃんはどうしたニィ?」
「さゆは…なんか大事な用があるって…」
「私も電話したけど、なんか『お姉ちゃんに会いたいから』とか
 言ってて」
「お姉ちゃん?道重ちゃんお姉ちゃんいるニィ?」
「うん。さゆはお姉ちゃんっ子で、だけど離れて住んでるから
 久しぶりに会ってるのかな」
「でも今日普通なら学校ニィよ?」
「まぁまぁガキさん、道重ちゃんにとっては
 学校よりお姉ちゃんなんだよ」

そしてガキさんの誕生日よりもね…と声には出さず紺野は新垣の肩に手を置いた。




◇ ◇ ◇
461 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:47






んあ?


・・・・え?どっかから女の子の声が・・・

「美貴、今なんか言った?」
「んぇ?言ってないよ」
「じゃあ…今のは誰の…?」
「ぅん?美貴なんも聞こえなかったけど…」

おかしい、ごとーの気のせいかなぁ?
でも確かにどっちかっつーとか細い声がしたよーなしなかったよーな…
浮くコトに精一杯でどっちから聞こえたかはわかんないけど結構近くだったハズ。
そう思って辺りを見渡してみても誰もいない。
いるのは目の前でごとーと同じように必死こいてる美貴だけ。

「んあ……空耳か…」

「 私 っ て ぇ ー ! か わ い い で す か ぁ ー ? 」

「んあ!また聞えた!!『私かわいい?』って!」
「うん!美貴も聞こえた!!
 ってことは誰かいるんだ!すいませーん!助けてくださぁーい!」
「かわいいですかって聞いてるのに…」
「「ん?……っぎゃぁああ!?ううう浮いてるぅー!!!」

びびびびっくり大魔人なコトに、背中の方から聞こえた声に
振り返ると、そこには女の子が日傘を差して立っていた。

ここ……海なんだけど…オ…オバケ?
……まさか海坊主じゃないよね?女の子だし。
あ、でも……海坊子です♪みたいなコトだったらどーしましょ…
462 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:47
「かわいいですか?」
「ハァ?!ってか誰?どっから来たの?なんで浮いてんの?
 仙人…って年でもなさそうだし…まさか海坊主?」

んあ、美貴もごとーと似たような思考の持ち主ですね。
正直ちょっと嫌だったり…。

「でもね美貴、この子は女の子だから坊主じゃなくて坊子で…」
「違うもん!坊主でも坊子でもないもん!
 さえみっ…じゃなかったさゆみだもん!道重さゆみ!!」
「道重さゆみ?ってか自分の名前間違えんなよ」
「んあ、しかも“え”と“ゆ”ってなかなか間違えないよね」
「………」

んあ…ほっぺた膨らませられても…。
でも道重さゆみってコトは人間よね?
悪魔や妖怪の類じゃないよね?…じゃあなんで浮いてんのさ?

「えぇっと、さゆみちゃんはどーしてこんなトコロで浮いてるの?」

できるだけ優しい声で訊ねながら、ごとーは浮いてる右足にしがみついた。
美貴も真似して左足にしがみつく。

「平成生まれだからです」
「んあ…?」
「…いやいやそれ関係ないでしょ。
 確かに美貴とごっちんは昭和生まれで海に沈みかけてんだけどね。
 平成生まれだからって浮けるワケないと思うんだけど…」
「ちなみに好きな言葉はハイテンションで
 行ってみたい国はインドです。
 それプラス最近食べて美味しかったのはインドマグロですね」
「へぇ、インド尽くしじゃん…って聞いてないし!
 ごっちん!なんなのこの子?!」
「ご、ごとーに聞かないでよ…」
463 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:48
「まぁいいや。で、チゲさんはここで何をしてるの?」
「…シゲです」
「あぁはいはい、シゲさんね」
「………」
「んあ、美貴!またほっぺ膨らんじゃったじゃんか!
 怒らせたら話進まないっつーの!」
「…あーごめんシゲさん。ごっちんせっかちだからさ
 さっさと質問に答えてくれる?」

ぬぉ?!なに?黒美貴復活しかけてない?!
なんでごとーのせいにすんのよ!シゲさんもそんな目でごとーを見ないで!
子犬のようなウェットな目で見るなぁ!!

「…私、お姉ちゃんが大好きなんです」
「「ハ?」」
ちょっと待って、やっと話が進むかと思ったらなに?シスコン話?
「だから、今年のクリスマスはコンタさんに頼んで
 お姉ちゃんを山口から呼んでもらおうと…」

んあ、ハイストップー、一旦停止ー。

「シゲさん、今クリスマスに誰に頼むって?」
「…コンタさんです」
「サンタじゃなくて?」
「コンタさんです」
「……美貴、“コンタさん”に激しく紺野の気配を感じるのはごとーだけ?」
「…何考えてんだ、紺ちゃんは…」
「紺野?紺野さんをご存知なんですか?
 ってことはあなたたちが魚藤さんと藤本さん?」 

・・・今なんと?

「んあ!ちょっと待て!ギョトウってなに?!ギョトウって誰?!
 ゴトウだから!ギョじゃなくてゴっ!!!」
「アハハハっ!ギョトウって…ッヒぁー!」
「んあ!美貴笑うな!!」
464 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:48
「誤答?変わった名前ですね。私、道重さやみです」 
「んあ!さっき聞いたし!…あ?違うじゃん!
 さやみじゃなくてさゆみでしょ?」
「…あ、また間違えちゃった」
「「………」」

ホントになんなのこの子?
しかもごとーの発音微妙におかしかったし…でも今はスルーしておくか。

「ごっちん、美貴急いでんだけど…」
「ごとーだって…あの、シゲさんさぁ、ごとーたちのコト助けられる?
 無理なら誰か…船でも呼んできて欲しいんだけど」
「二者択一です」
「…っあんたいい加減にしてよ!
 美貴は今遊んでる場合じゃないんだよ!亜弥ちゃん助けなきゃいけないんだ!」
「落ち着いて美貴!シゲさんの目潤んでるから!
 …シゲさん、どういう二者択一?」
「ぐすっ…、1人走ってもう1人が船に乗るか
 2人で海を走るか、です」

んあ?…え?意味わかんないんだけど?

「私が呼べる船は2人乗りなんで、私とお2人のどちらかが乗れます。
 でも1人は乗れません」
「それならシゲさん浮けるんだからシゲさんが走ればよくない?
 美貴とごっちんが船に乗ってさ」
「それは無理です。ここから北海道まで辿り着くには
 海に仕掛けられた数々のトラップを潜り抜けないといけません。
 私……そんなの無理です」
 
いやいや、ごとーたちも無理よ。 
ってか誰?んなトラップ仕掛けやがったのは。
465 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:49
「ごっちん、美貴……カオリせんせぇだと思う」
「…んあ。ってコトは…シゲさんは紺野の手先なんだから
 あの2人グルか。ったく何考えてんだよぉ!」

んがぁっ!もぉ全然わかんないけどぉ!
とにかく簡単に北海道には行かせないってコトね!
わかったわよ!その挑戦受けてやろうじゃんかっ!!

「ごっちん、美貴が走るから、船に乗って」
「ふぇ?なっ、何言ってんの?!かおりんの罠が仕掛けられてんだよ?
 美貴1人で行かせられるワケないじゃん!」
「…ごっちん」
「んあ!ごとー走る!!もう絶対逃げない!
 2人で行きゃなんとかなるさ!」
「…っうん!!」

あはっ、美貴泣くなよぉ!
親友なんだから当たり前だって!

「では、この“アヒルでスイスイ”を履いてください。
 私のと色違いです」
「…オソロか、まいーやこれ履くと浮くのね?……っうぉ!浮いたよ!!」
「おっしゃ!行こうごっちん!!」
「んあー!!!」

 
 


「あの人たち、とうとう言ってくれなかった…」

アヒルを履いた途端もうお前なんぞに用はないと言わんばかりの勢いで
海面を走り去って行った後藤(さゆ的には誤答)たちの背中を見つめ
道重は自慢のプリティーフェイスを悔しげに膨らませた。
466 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:50

『今日もかわいい私に電話です』

「あ、電話だ…」
そんな中、耳に届く聞き慣れた自分の声。ある意味最強の着信ボイス。
道重さゆみ、またの名をナルシス・サーユ・シゲ。

「はい」
『信じる〜ことにするわ〜♪』
「                 ア 〜 ♪ 
     い      リー
   赤     フ     ジ         」
『ぅっ………』
「もしもし?」
『…えっ?あ、ごめんごめんちょっとファラウェイ。
 紺野今忙しいみたいだからカオが聞くけど、どーだった?
 上手くできた?』
「はい、…でもあの人たち私のコトかわいいって言ってくれなかったんです」
『なにぃ?!それは問題だね!
 任せて!カオがコテンパンにお仕置きしとくから!!泣いちゃダメだよ?』
「はい、頑張ります」
『よし、じゃあバイバイ』

ブツッ ツー ツー ツー。

コテンパンってどんなパンだろう?コッペパンみたいなモノかな?
切られた電話をしばし見つめて首を傾げる。
しかしすぐにどうでもよくなって、口笛を吹いて小型の船を呼び寄せると
道重はそれに乗って本州へと帰って行った。



467 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:51

「んあぁっ!走り難いぃぃ!!」
「まー水だからねぇ、でも暗くなる前に北海道に上陸しないとっ!」
「んあ!まっつーの貞操の危機だもんね!」
「どぇ?…いやまぁ、その…ぶっちゃけ貞操はもう美貴がイタダいたんだけど…」
「知ってるし、みんな知ってるしそんなコト」
嫌味か?嫌味ですか?
どーせごとーはなっちの貞操イタダけてませんよ、ぐすん。
 
「でもさぁ、結構走ってんのに全然陸見えないね。
 方向合ってんのかな?」
「んあ、かおりんが仕掛けたトラップもまだないし…」
ない方がいいけど。

うーん、とはいえないならないで不安になるなぁ。
マジで方向間違ってるとか?あーんどーしよー…

「待たれぃ!!」
「んあ?」
んなぁ!?誰あのオッサン?!

突然進行方向左手からかけられた声に目を向けると
うさんくさい格好の…昔の坊さんが腐ったみたいなオッサン(髪ボーボー)が
ごとーたちと同じように海の上に立っている。

「…あれが…トラップ?」
「……違うでしょ、ただのオッサンだよ、オッサンじゃん。
 はい無視無視行こうごっちん」
「ラジャ…」
「コラ無視すなぁ!」
んあ、やっぱりあれがトラップみたいですわよ…。
468 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:51
「我は道摩法師・蘆屋道満!
 おぬしらのような無礼者、許しておくわけにはいかぬ!!」」 
「ド、ドーマホーシ?アシヤドウマン…?」

ドウマンて…何マン?銅マン?
頭上に?マーク満開のごとーの肘を、美貴がつっつく。

「ごっちん…蘆屋道満って晴明のライバルだった人でしょ?
 なんでそんな人が現代にいんの?」
「んあ、ごとーに聞かれても…」
晴明って安倍ちゃん?
かおりん…ちょっとスケールが壮大すぎるんだけど……。

「…晴明?」
ピクっと、美貴の発した“晴明”の名にドウマンさんが反応する。
「おぬしら…晴明を知っておるのか…」

いや、知ってるっていうか映画にもなってる人だし。
そんな怖い目で睨まなくても…

「生意気だと思えば晴明の手の者とはな!
 ここで会ったが運のツキ!成敗してくれる!!」
「えぇ!?せせせ成敗ぃぃ?!」
「ごっちん!逃げるよ!」
「んあ!」
だから映画で知ってるだけで手の者じゃないし!
しかもこないだU観れなかったし!!

ごとーと美貴はドウマンさんに背を向けて全速力で走る。
方向もメチャクチャに、とりあえず今は北海道とか気にしてらんない。
(んあ、しなきゃいけないんだけどね) 
469 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:52
「逃がさんっちゅーに!」
「「ぎゃあぁ!?!」」

ジャパーンと、水面を蹴ってドウマンさんがジャンプしてきた。

「臨、兵、闘、者、皆、陳、列、在、前!」

そしてリンピョーだかカンピョーだか唱えながら
横5本縦4本、指で九字を切り、ついでに九字の真ん中に点を加える。

「いやぁあ!?ヤバイよごっちん!あれドーマンだよ!
 臨める兵、闘う者、皆陣を列して前に在りってヤツ!!」
「えぇ?!知らないよそんなのぉ!!」
「しかも最後に点加えたし…あの図形は九星九宮を表してて
 最も極まった数で最大っていう意味なんだよ!それに点を加えて十字にすると
 強力版なの!!」
「はぁ!?意味わかんないし!図形って…あれただの網模様じゃん!」

ヤバイの?あーゆーのって魔除けとかじゃないの?!
ってか美貴ってばマニアックぅー!

ズゴゴゴゴゴゴゴ…

んあ?ズゴゴ?
突然海の底から唸るような爆音が…。

「な、なに…なにが出てくんの…?」
「んあ、晴明のライバルなんだからあの人も陰陽師なのよね?
 なら式神が出てくんじゃないの?」

しかし、できればかわいらしい式神がいいなぁ…なんて
心臓をバクバクさせながら登場を待っていた
ごとーの期待を裏切り―――
470 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:52

ザバァ!!

「サっトぉーキビ!サっトぉーキビ!」
「ゴーヤぁ!ゴーヤゴーヤぁっ!!」
「「………」」

―――現れたのは、でかすぎるサトウキビとでかすぎるゴーヤ。
目はないけどかわいらしい唇があって(しかもグロス塗ってある)
そこから出る奇声は梨華ちゃん以上に高くて有害。

「んあぁ!?っなんでぇ?!
 なんで北海道を目の前にして沖縄ぁ!?」
「………ぇ、あれが式神…?…あのゴーヤが?」
「違うでしょ!…ってのわぁ?!」
「サトぉーキビ!」
「ゴーヤぁー!」

ぎゃぁあ!?サトウキビとゴーヤが突進してくるぅ!!
これって…世界初じゃない?三面記事モノだよ。
海でサトウキビとゴーヤに襲われる女子高生なんてさぁ。

「うるぁ!やれやれ我が下僕たちよぉ!」
「んあドウマンのスケベ!なにがヤれヤれだよぉ!」
「あぁーもぉ!こいつら逃げても逃げても追いかけて来る!どうすりゃいいのさぁ!」
「サトぉーキビぃー!」
「ゴヤゴヤゴぉーヤー!」
「「んっぎゃあああーぁぁああー!!」」

痛ぁい!お尻叩かれたよ!
ヒリヒリするぅー!!
471 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:53
「んあっ!美貴腕ぇ!」
美貴は左腕を叩かれたようで、折れたのかプランてなってる。
相変わらずヤワな骨ね。

「大丈夫!それよりこいつら倒さないと…っそうだ!
 そっちがドーマンなら、こっちはセーマンだ!
 術比べで道満は晴明に負けたんだし!」
「んにゃ?セーマン?」
「セーマンは晴明桔梗、五芒星のことだよ!
 陰陽師Tは観たでしょ?あの中で晴明が使ってた星の図形!」
「んあーあれかぁ。
 だけどあれだって魔除けじゃないの?サトウキビに対抗できるワケぇ?!」
「やってみなきゃわかんないよっ!
 バン、ウン、タラク、キリク、タクぅ!!」

シーン…。

「んあ、ダメじゃん!なんも出てこないじゃん!!」
「っ、しょーがないでしょ!美貴は陰陽師じゃないんだから!」
「サトーキビ!サトーキビ!」
「ゴーヤー!」
「んあっ、うるさぁーい!!」

あぁーどうすればいいのぉ?!誰か教えてぇー!!!

『……た………ミ……たん……』

「ふぇ?美貴!まっつーの声がする!!」
「あ、亜弥ちゃん?!…え…どこ…?」


姿はない、聞こえる声も極小。

だけどわかる。

まっつーが、美貴を呼んでる。
472 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:54
『よ……んで…し…がみ…の……まえ……』

「読んでシガミの前?」
「違う!……『呼んで、式神の名前』だ!
 えっと…晴明が使ってたのは……十二神将!
 青龍・匂陳・六合・朱雀・騰蛇・貴人・天后・大陰・玄武・大裳・白虎・天空!!」
「わぁー美貴すごぉーい」

海面にゴボーセーとかいう星を書きながら、美貴が式神の名前を叫ぶ。
すると空が…どんどん灰色の雲に覆われその隙間から
ピカっと強い光がごとーたちを射した。

「んあマブいー!!」
「サトーキ…ビャぁあああああー!!!」
「ゴー…ィヤぁああああああー!!!」
「ぐっ、ぐわぁあああああー!!!」

思わず目を閉じたごとーの耳に
ドウマンさんとサトウキビたちの絶叫が響く。

なに?なにが起こってるの?!
美貴の術が上手くいったのかな?

手で光を避けながら細く目を開けてみると、視界が全部ピンクだった。

なんじゃこりゃぁ!?落ち着かねぇ!!

「美貴!どーなってんの?」
「…亜弥ちゃんだ、亜弥ちゃんが助けてくれたんだ…」
「ハァ?!」
「ほら、亜弥ちゃんの光で悪いヤツらが消滅していくよ…」
「んあ?まっつーの光?」

この空から放たれるピンクの鬱陶しいのが?
473 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:56
…よくわかんないけど、ってかドウマンさんたちも
結局なにがしたかったのか意味不明だけど
邪魔者たちはピンクの光に吸い込まれて消え去った。

んあ、めでたしめでたし。

「よし、じゃあ行こぉ!」
「………」
「…美貴?」
「亜弥ちゃん…見てるのかな…」
「へ?」
「美貴のこと……見守ってくれてるのかな…」

んあ?どうやって?
まー…たしかにさっき声したけど、見守るったってここ海だし。
そーいや光は空から降り注がれたのよねぇ?
…っ!まさかっ!まっつー天上人になっちゃったの?!
えぇえ!?そんなぁっ!!!

「もうちょっと待っててね、すぐ行くから」
「んぇえ!?逝くのぉ?!」
「ハ?ごっちんだって行こって言ったじゃん、変なの」
「む……」
いや、言ったけど…行き先が違うのよ、たぶん。
ごとーまだヘヴンには逝きたくないの。

「北海道はあっちだ!走るよ、ゴぉ!!」
「んあ…うわぁん…!」 



美貴に首根っこ掴まれて泣きながら走り出す。

北海道は、まだ見えない。
474 名前:海の上の死闘。 投稿日:2003/10/28(火) 21:56
   
475 名前:のえる 投稿日:2003/10/28(火) 21:58

すいません_| ̄|○ ごめんなさい_| ̄|○
あんなコト言ったのに…っ、のえるのバカバカ(爆

いつものクセで暴走し、長くなってしまったのと
時間がないのでとりあえずここまで。

期待してた方、いらっしゃいましたら申し訳。


レスありがとうございます。

>449 つみ様
( ・e・)<ありがとニィ。
松浦さん、書いててだんだん申し訳ない気持ちに…(爆
ありがとうございます。

>450 名無しさん
よくわかってらっしゃる(w ホント、どうなるんでしょうね(爆
えぇ、作者は裏切り者です(爆 よかったら完結した時にでも
どの裏切りが1番いい意味だったか教えていただけると嬉しいです。
いつまでも読んでいたいなんて、ありがとうございます!感激です!
この設定とかキャラ気に入ってるんで、正直終わらせたくないんですけど…
また1から考えるのが面倒だし(激爆
なんて考えるのは、作者の我侭ですねぇ(w
476 名前:のえる 投稿日:2003/10/28(火) 21:58
>451 名無し読者様
川;VvV)<正直スマンカッタ。
申し訳ございません(土下座
从*‘ 。‘从<えへへぇ。
松浦さんは他と温度差がありすぎるんで、どーかな?と思ってたんですが
そう言っていただけると有難いです。

>452 名無し読者様
川;VvV)<正直スマンカッタ。
ひぇぇ申し訳ございません(土下座パートU
近日!近日必ず!甘甘のとろとろ…あまりよろしこできない
かもしれませんが、頑張ります、ホントごめんなさいです。

>453 名無し読者様
川;VvV)<…え?晒したまま?それはちょっと…。
たしかデビュー当時はデコがチャームポイントだって言ってたのに
こないだは広くて恥ずかしいって言ってましたねぇ。

>454 名無し読者様
愛…ですよ、たぶん(爆
松浦さんはミキたんのコトになると嗅覚が犬並になるので(w
从*VvV)<おぅ!頑張るぜぃ!!

>455 178様
桃色です、ドピンクです、一定の年齢以上の方は
無条件でムラムラする感じです(爆 あぁうまく説明できない。
忘れてませんよ、彼女のコトは。
でもタイミングが合わなかったので、中途半端なコトになってしまいました。
477 名前:つみ 投稿日:2003/10/28(火) 22:32
現時点で世界で一番笑っている自信があります(笑)
478 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/28(火) 22:52
あー笑った。魚藤って・・・(w
しかし藤本さんマニアックですな。いや、のえるさんがマニアックなのか。
479 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/28(火) 23:33
やっぱり期待を裏切られた!
そうでなくちゃ!
480 名前:名無し 投稿日:2003/10/28(火) 23:43
初レスです。
腹が…腹がぁ…(涙
あのマニアックなネタを全部知ってた自分が怖いッス(藁
481 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/29(水) 00:00
まだ焦らすのね!!・゚・ヾ((Д`≡´Д))ノ・゚・
もう、もどかしくてどうにかなりそうだよ、実際。

今度こそ…
待    っ    て     ま     す
482 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:02

「くっそぉ!日が落ちてきた…!」
「…北海道見えてないのにぃ…12時までに着けるのかなぁ?」
「着くんだよ!方角は亜弥ちゃんが教えてくれてるし
 もうちょっと走れば見えてくるハズ!」
「んあ…」

たしかに、さっきドウマンさんたちをやっつけてくれたピンクの光(まっつー?)は
空から細く一定の方角を射してくれてんだけど、視界一面海だし、暗くなってきたし…。

「ってか美貴さぁ、腕大丈夫なの?」
「ん?…あー…骨やっちゃったっぽいけど
 これぐらい大丈夫。でもちょっと走りにくいかな」
「…だろーね」

サトウキビ(またはゴーヤ)のタックルでポキっと折れた美貴の左腕は
ダラリとぶらさがってて、長い分走るにはすごい邪魔そう。

「でもあれだね、これなら普通に空港行って飛行機乗ればよかったね」
「…ぅ…そ、そうかもしんないけど……
 でも、美貴はそれじゃダメな気がするんだ」
「んあ?なんで?」
「だって…美貴は、亜弥ちゃんにたくさんひどいことして…」

んあ、知ってる。

「亜弥ちゃんの気持ちに甘えて……大事なことから逃げてた」

うんうん、黒美貴っつーか逃げ美貴だったよね。
藤本美貴よりトンヅラ…もといトンズラ美貴。

「だから、これぐらい、いや、もっと厳しい試練でも
 乗り越えて抱きしめなきゃいけないんだ。
 飛行機に乗って、簡単に抱きしめちゃ……ダメなんだよ」
483 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:02
「美貴…」

ピンクの光をじっと見つめて、右手に力をこめる美貴の横顔は
今まで見たどの顔よりも凛としていた。

「亜弥ちゃんの為なら、なんでもできる。
 それを証明してみせなきゃ、亜弥ちゃんを抱きしめる資格なんてない」

ごとー、ビデオでも持ってくりゃよかったなぁ。
なんかさ、まっつーを差し置いて美貴のこんないい表情を独占しちゃって…。
申し訳ないっていうか……んあ、まっつーに見せてあげたいなぁ。

「でも…ごめんね?ごっちん付き合わせちゃって…」
「それは言わないの。
 ってか遠慮とかキモイし、カユイからやめて」
「えぇー、カユイってなんだよぉー」

む。うるさいなぁ、ぶっちゃけ照れるのよ!美貴に改まられると!!
ねぇ、そこのキツネさん?

んあ?キツネさん?!

「美貴!!キツネ!キツネが浮いてる!!」
「ハァ?キツネぇ?……おぉ!ホントだ!」

おぃおぃおぃおぃ…今度はキツネかい。おまけに白いし。

「童子丸……私のかわいい童子丸…」
「んあぁ!?キキキキツネが喋ったぁぁ?!?」
しかもかわいいなんとか丸とかって…
「童子丸?…白い狐…?ハッ!まさか!!」
「んぇ?美貴、知り合い?」
484 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:03
「いや、知ってるっつーか…ってかまたなの!?
 何人蘇らしゃ気が済むのよ!!」
「んあ?あのキツネも黄泉がえり系?」

そーよね、現代にこんなヒューマンなキツネがいるワケないし。
と、1人納得するごとーと頭を抱える美貴をよそに
キツネは無表情で近づいてくる。

「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる
       信太の森の うらみ葛の葉」
「………違うっつーの」
「美貴、このキツネさんなんなの?」
「ママ」
「へぇ〜…ってえぇっ!?…マーママっママン?!?」
ちょっと初耳なんだけど!!美貴ってキツネから生まれたのぉ!?
でも待った。美貴のママはたしか男の人と遠くに…

「晴明のね」
「…っふぉぃ?!…あー、あー、晴明のね、あー、そー」
どぅぁビックリした、心臓止まりかけたっつーの。んあ……
「ってえぇえぇ!?!晴明のママンキツネなのぉ?!」
「…そういう伝説もあんだよ」

ほほぅ…どうせならもっとカッチョイイ伝説作ればいいのに…。
有名人も大変ねぇ。

「で、なんでママンがいきなり出てきたの?」
「知らないよそんなの」

んあ、そりゃそうよね、しかも美貴のコトを童子丸…(って晴明のコトかな?)って
呼んだってコトはぁー…んぉ!ママン、人違いだよママン。
485 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:03
「腕をお見せなさい」
「「へ?」」
「怪我をしているのでしょう?私のかわいい童子丸」
「いや、あの、怪我はしてるけど美貴は童子丸じゃな…」
「…ではないにしても先程アナタからあの子の気を感じました。
 少し…桃色でしたが、それでも確かに感じたのです。
 ですから母は、アナタを癒す義務があるのです」
「え…意味わかんないし…」
「んあ、いーじゃん。治してくれるんでしょ?
 甘えときなよ、丸ちゃん」
「えぇえ!?でも本物かどーかわかんないじゃん!カオリせんせぇの罠かもしんないし!
 …ってか丸ちゃんって誰だよ!!」
「あはっ、いいじゃん罠でも誰でも。ママン、よろしくお願いしまーす♪」
「にぐぇぇ!!ヤダ!!いやぁあああー!!!」

えーい往生際の悪い!ママンのご好意無駄にすんなっつーの!
母の愛のありがたみを知れ!と、ごとーは後ろから美貴を羽交い絞めにして
ママンに突き出す。
するとママンは白くてキレイな尻尾で美貴の左腕を撫で、呪文を唱えた。

「チチンプイプイ♪」

「「………」」
これまたなんつー究極に嘘臭い呪文を…。
「…ったく、そんな子供騙しで治るワケ…って!治ってるし!!」
「んあ!?マジで?!」

信じらんない、嘘臭い上に古臭くもあったのに…。
どーなってんのよ日本の魔法事情はっ!!

「もう痛くないでしょう?」
「あ…はい、ありがとうございました」
「礼などいいのですよ、母として当然のコトをしたまで。
 それに…まだまだ多くの凶悪な敵がアナタを待っているのだから。
 ではまた逢う日まで、コンコン」
「さ、さようなら…」
486 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:04

・・・・・あのー…さぁ、待ってよ、待ちなさいよ。

「…美貴、ママン最後にサラっととんでもないコト言わなかった?」
「………気のせいだよ」
「んあ、そっかぁー気のせいかぁー」
多くのぉーとか凶悪ぅーとか聞こえたのは気のせいかぁー…

「んあぁ!!!もぉーヤダぁ!ごとー帰りたいよぉ!!」
「…ごめん、美貴のせいで…」

ホントだよこのアホ美貴がぁぁ!!
…んあ?なによ?さっきと言ってるコトが違うって?
当たり前でしょ!ごとーは生きてるの!常に進行形なのよ!
ごとーまっきingなの!わかる?!昨日なんて昔なんだよバカヤローがぁぁぁ!!!

『後藤さん、進行形って現在ですよね?
 ならちゃんとbe動詞つけてください』
『そうそう、カオも今それ注意しようと思った。
 だって英語教師だし』

だぁー!うるさい!!今頃になって出てくるなぁ!
そんなこたぁ英語苦手な紺野に言われなくたって知ってるもん!!
かおりん!注意とかいいから仕掛けたトラップ解除して!マジお願い!

『海上なので、解除できません。プププププ、カオってば面白い』
『究極に寒いです、完璧です』

うわぁぁぁあん!!このヴォケどもが!!!

「ちくしょぉー!!走りやがれぇー!!」
「…マジごめんね…とにかく生きて北海道に着けるように頑張ろ…」

ぐすっ!死んだら化けてやる!
かおりんに髪の毛バシバシになる呪いかけてやる!
紺野のほっぺ垂れさせてやるぅ!!

487 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:04




そこから先は、まさに地獄だった。

死と隣合わせの海上レース。

生きてゴールに辿り着けたのは、奇跡としかいいようがない。



488 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:05

「「ぎゃあああぁぁぁぁあああー!!!!!」」

「ワカメぇ!!増えるワカメぇ!!」
「んなっ!?なんで海でわざわざ増えるワカメなんだよ!」
「んあ!しかも増えるワカメって膨張するだけで
 実際増えてるワケじゃないじゃん!!この嘘つき!」

「ネギぃ!!ネギネギぃ!!」
「いやぁー!美貴ネギ嫌ぁーい!!」
「しかもあいつらお尻狙ってる!別にごとーは風邪引いてないっつーの!」

「ひょっとこぉ〜」
「…んあ?ひょっとこが何する気よ?」
「さぁ…ってヤバっ!
 ひょっとこって火吹き男なんだよ!だからあんな口なの!!」
「えぇーありえなぁー…」
「ブゥーっ!!!」
「「アチチチチチっアッチぃぃぃー!!!!」」

「北斗百裂拳…」
「んえぇ!?ケケケケンシロウ?!」
「あの上半身の7つの傷跡は…!モノホンだよごっちん!!」
「ホワタタタタタタタタ!!!」
「ひでぶっ!」
「あべしっ!」

「リクーム!!」
「バータ!!」
「ジース!!」
「グルド!!」
「ギニュー!!」
「ごとー!!」
「ミキティ!!」
「「「「「「「みんなそろって…」」」」」」」
「って多い!2人多い!」
「いーじゃーん、混ぜてよぉ」
「しかたないなぁ…」
「「「「「ギニュ…「ミ…「ごとー特戦隊!!!!!」
「えぇーごっちん、美貴がトリだったんだからミキティ特戦隊でしょぉ」
「ヤダよ、それじゃなんか弱っちぃじゃん」
「だぁぁあー!!ギニューでいいんだよ!ギニューで!!」

「女の子、理解してよぉ〜♪」
「ぐぁああ!!耳がぁ!耳がぁああ!!」
「な、なんで梨華ちゃんがこんなトコにぃ!」
「人間ってぇ〜シャーララーラララー♪」
「「簡単に変われねぇー!!!」」
489 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:05


490 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:06


「「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ…」」

どれぐらい走り続けたんだろう。
ようやく見えた街の灯に、最後の力を振り絞って走りきった
ごとーと美貴は、バッタリと砂浜に倒れこんだ。

「ぐっ…ぅ、もぉー…ダ、メ…」
「み…美貴…も……」


 ンア… (ヽ´ Д `) 川ヽ´ 。`从  ゲッソリ


「な…何時…?今…」
「わか、んない…海に落ちて…携帯壊れたし……」
「のぉぉぉ…」

ぐふっ…んあ…どーしよ、12時過ぎてたら……こんなに頑張って
まっつー助けらんなかったらシャレになんない。3年は凹む。

「…さ…寒い…」
「ごっちん、寝ちゃダメだよ……死ぬから…
 こっからは美貴1人で大丈夫だし、ホテル探して泊まりなよ…」
「んあ…でもお金が…」
「…あぁ…美貴持って…あれ?財布がない…」
「海で落としたね…確実に」
「最悪…」

やっとの思いでゴールしたのに…あの世逝きか……。
フ○ンダースの犬の最終回のパトラッシュとネロのように
寄り添って倒れたまま起き上がるコトもできないごとーと美貴。
491 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:07

なっち、最後にもう1度、キスしたかった。
でも、もう無理みたい。なっち、ごめんね。

ごとーは最後の力を振り絞って、砂浜になっちへのラストメッセージを残そうと
腕を上げる。さよなら、愛してる、なつ――――


動きぃ〜始ぃ〜めたぁ〜汽車のぉ〜窓辺をぉ〜♪
流れていぃくぅ景色だけぇ〜をぉ〜じっと見てい〜たぁ〜♪


あん?

なんだ?なんか歌が聞こえる。しかも合唱。
人だ、人がいるんだ!助かった!!
ダークに沈みまくってた頭が一気に軽くなる。
目を輝かせて歌声のする方を見るとそこには……


桜ぁ〜吹雪のぉ〜 サライぃーの空はぁ〜♪
悲しいほど蒼く澄んでぇー 胸が、震えぇたぁ〜♪


…このクソ寒い中黄色いTシャツにジーパンという
毎年夏に見かけるお馴染みの格好でサライを熱唱している謎の集団が。

「ハイ!もっとセクシーに!!
 そんなんじゃゴールできないわよ!!」

しかもその集団の前でタクトをセクシーに振っているのは…
492 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:07
「んあ!?さささ斉藤さん?!?」
「あはぁん?アラ!!ごっちんに藤本!?
 あんたたちいつの間に来てたの?!村っち、早くゴール出してゴール!!」
「うむ。ひとみんそっち持つのじゃ」
「ハイ!オーケェー!さぁ2人とも!このテープをきりなさい!
 そしてお泣きなさい!!セクシーに!」

・・・・無理。
そんなバカに付き合う体力残ってないし。

「…って美貴!!なに匍匐前進してんのぉ?!」
「え?だってゴールしなきゃ…」
「美貴のゴールはここじゃないでしょ!
 まっつーの胸がゴールでしょうが!!」
「あ…」
あ…って、忘れてんじゃないよ!

「あ、ごっちーんゴールするともれなくヒントがもらえるわよぉ〜」
「そして体も心も温まる“セクシーラーメン”も食べられるのじゃ」
「もちろん小川ちゃん特製のね!」
「小川ぁ!?小川もいるのぉ?!」 
「えぇ、高橋ちゃんもいるわよ」

どーなってんの?え、なに?ってかその前に…
「そちらの黄色いTシャツの連中は…?」
「んなっ!?ごっちんの罰当たり!!連中だなんて言っちゃダメでしょ!
 この方たちはっ、この方たちはねぇ!
 藤本があややの為に頑張ってるのを是非応援したいって
 わざわざ集まってくださったのよ!
 ごっちんのコトだってずっと見守っててくださったんだから!
 お礼言いなさい!」 
「「…あ、ありがとうございます…」」
493 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:08
んあ…いまいちよくわからないけど…ごとーと美貴がお礼を言うと
黄色い人たちは『ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!』とか言いながら
照れくさそうに手を振ってくれた。
その人たちのとこだけ暗いせいで顔は全然見えないけど
よく見るとTシャツの背中にそれぞれ“名無し”だの数字だの
名前だのが書いてある。

「ごっちん…美貴、あの人たちに支えられて
 ここまで来れたような気がする…」
「んあ、ごとーも」

ありがとう、本当にありがとう。
ごとーは美貴と肩を組み、ゆっくり立ち上がってゴールテープをきった。

おめでとー!と、祝福の声に包まれる。
感極まってほんのり泣きながら美貴と抱き合った。

「はい、これごっちんたちの荷物ね、財布も入ってるから。
 それとこれがヒント。
 海に落ちて体冷えてるでしょう?おまけにそんなひどい格好で…
 早くお風呂入ってラーメン食べなさい」
「んあ?ひどい?」

ごとーたちを見て涙ぐむ斉藤さん。不思議に思って
じっくり美貴を見てみると…

「んあ?!美貴、なにそのワカメ!?」
「ごっちんこそなにそのネギ!?」
「ってか焦げてるし!」
「顔も痣だらけでボコボコだよ!!」

なんで第3者に言われるまで気づかなかったのか
美貴は頭にワカメのヅラ、スカートからはネギを生やし
焦げたブレザーは背中の刺繍“亜弥命”の部分だけをキレイに
残してボロボロに破れてしまっている。

でも1番ひどいのは顔。
言葉にするのも酷なぐらい……なんていうか…変色しちゃってる…。
494 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:09
「美貴…ひどいよ」
「たぶんごっちんも同じだよ、ひどいもん」

んあ、だろーね、1つ1つ心あたりがあるし…。
顔は絶対ケンシロウのせいじゃん。痛いよバカ。

「ま、まぁとにかく着替えなさいって!ね?」
「んあ…」
「はい…ってあぁ!!美貴こんなコトしてる場合じゃないんだ!
 今何時ですか?!」
「あ…えーっとぉ…時間…わかんないのよねぇ〜…」
「ハ?わかんないって…こんなの人がいてわかんないワケないじゃん!!
 誰か!時計持ってる人教えてください!」
「ダメ!!教えちゃダメよみんなぁ!」

ぬぉ!?なんでよ?
そーいやさっきからヒントヒントってなんのヒント?
……まさか……………

「ゴルァ!斉藤ぉぉ!!誰に頼まれたんじゃぃ!!」
「ひっ!?べべべ別に頼まれてなんかないし!
 タラバガニ食べさせてあげるなんて言われてないわよ!!」

ほぉ…ヤシガニの次はタラバですか…

「んあぁ!!タラバならそのへんの○越で缶詰売ってんだろーが!
 そんなモンで釣られてんじゃないよ!!」
「そっ、そんなモンとは失礼ね!
 確かにヤシガニよりはお身近だけどタラバだけじゃないのよ!
 パプアニューギニアへの旅行券もくれるって…ハッ!
 私ったらまたしても口が滑って…」
「んあ?パパは牛乳屋?」
「 パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア よ!このバカ!!」
「カッティーン!バカはどっちだ!
 このセクシーカニバカがぁ!!」

ギャーギャー ギャーギャー

495 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:10


「むぁ、ひとみんは若いのぅ…」

後藤と取っ組み合いのケンカを始めた斉藤を横目に
村田はゆっくりとお茶を啜る。
そこへ、ボロボロながらも目だけは強く光らせた藤本がやってきた。

「村田さん、お願いします。
 時間を教えてください、それとここはどこですか?」
「…ひとみんには内緒じゃよ」
「はい」
「そこの名無しさん、あなたの時計を貸してもらえますか?」
「はいっ!もちろんです!!」

村田は黄色いTシャツの1人から腕時計を受け取ると
それを藤本に差し出した。

「10時か、あと2時間じゃ。頑張りなされ」
「あ…助かります!名無しさんも、ありがとう!」
「ホワイティハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!」
「………」
「ま、まぁあの人は置いといて、ここは小樽じゃよ。
 ヒントをよく見てあややを見つけてあげなさい」
「はい!行ってきます!!」
「おーっと待った、あややの荷物も渡しておくじゃ。
 では気をつけて」

藤本は無言で松浦の荷物を受け取り抱きしめると
1つ頷いて走り去って行った。

と、それと入れ替わるように“ザ・大将”が現れる。

「お待たせしましたぁ〜、セクシーラーメン毎度〜」

    ゚〜 ∫∫∫∫∫∫  〜゚
       ξξノ“ З.“)  
  ___ \回回回回回/
 c2___ヽ \ __ / 
 ∬∬´▽`)ノ |___|  
496 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:11
「…ってアレ?村田さぁん、後藤先輩たち着いたんじゃなかったんですかぁ?」
「あそこでひとみんと戦っとるよ」
「えぇ!?あの顔面紫なの後藤先輩ですかぁ?!…ん?藤本先輩は…?」
「もう行ってしまったよ…」
「…え、2人分作っちゃったのに…」
「まことぉー持ってきたやよー」
「ふぉっふぉっふぉっ、藤本の分は村田が食べるよ」
「あいやぁ?でもこれは…ってなんやぁ!?あそこのパープルな怪魚はぁ?!」
「か、怪魚って……後藤先輩だよ…」
「ひょぉ!?」
「…?…愛ちゃん?…あーあ、ビックリ顔で固まっちゃったよ」

失礼極まりない高橋は、大きく目を見開いたまま、翌日の朝まで
意識を取り戻さなかったという。



◇ ◇ ◇


「…っ…亜弥ちゃん…っ…」

スカートに刺さるネギを揺らし、額に張り付くワカメを掻き分けながら
藤本は砂浜を抜け出して道路に出た。

「どっちに行けば…そうだヒント!」

斉藤に渡された茶封筒を乱暴に破ると
中の便箋には“顔でいうとぉ…鼻?みたいな”と書かれている。

「顔でいうと鼻?」
どういう意味だ?顔でいうと鼻、顔でいうと鼻…
497 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:11
「あぁー!わかんない!!顔でいうと鼻って
 じゃあ北海道でいうとどこなんだよ!!………ん?」

顔でいう鼻………北海道でいう鼻……?鼻は顔の…………

「真ん中らへん!!!」

ってことは…亜弥ちゃんは真ん中らへんの、美貴の住んでたところに?
もう使ってないけど家は残ってる。
隣におばあちゃんたちが住んでて、古いあの家は物置にしてるから。
そこに?…いや、そこで間違いない。

時計を見る。22時05分。
電車に乗るにも駅の場所がわからないし
タクシーじゃ…小樽から真ん中らへんっていくらかかんだよ…。
覗いた財布には亜弥ちゃんに渡そうと思っていた分も入っていて
かなりリッチだけど……亜弥ちゃんの分にまで手を出すことになるかもしれないし。

どうしよう、どうしよう、時間は止まってくれない。
立ち止まった体は、破れまくりの制服と北国の冷たい風で
どんどん熱を失っていく。寒い。
とりあえず走ろうと足を踏み出した、その時――――

『童子丸、童子丸や』

海で傷を癒してくれた白狐の声が頭に響く。

「うぁ?」
『私のかわいい童子丸、左腕を高く天に向かって突き出してご覧なさい』
「え?なんで…?」
『いいから早く』
「…あ、はい…」

ワケわかんないけど、さっきも助けてくれたし
とりあえず言われた通りにしてみる。
498 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:12
すると――――

「うっ、うわぁぁああああ!?!?」

突き出した左腕に白くふんわりとした狐の尾が生え
それがクルクル回り出すと、藤本の体は空高く舞い上がった。

「えぇえ!?ううう嘘ぉ!!」

マジで!?こーゆー体験はごっちん担当じゃないの?!
美貴ってば飛んじゃったよ!!!

『驚いた?怪我を治した時にこっそり仕込んでおいたの。
 そのこの名前はマワリストっていうのよ、仲良くね』

マ、マワリスト…?
なんか…そのまんまじゃん。
ってか待って…それなら………

「もっと早く、美貴たちがネギやらケンシロウに
 ボコられてる時に出してくれればよかったんじゃないの?」
『だってあなた言ってたでしょう。
 “もっと厳しい試練でも乗り越えなきゃ”って』
「…っ!」

言ったけど…っ!言ったけどさぁ!
あそこまでめちゃくちゃな試練だなんて思ってなかったんだよ!
死にそうだったんだよ実際!!

『でも実際生きてるんだし、頑張ったわね童子丸。
 それではまた、コンコン』
「…………」

我慢だ。つっこみたいことは色々あるけど
今は亜弥ちゃんだ、亜弥ちゃん。
499 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:13

「それじゃ…えっと、真ん中らへんまで飛んでくれる?」
「…真ん中ってどこぉ?地名言ってくんなきゃわきゃんなぁ〜い」
「………ぁん?」

なんだコイツ、いきなり喋ったと思ったら
キツネのしっぽのクセになんで喋りがギャル系なんだよ。
なんで声が気だるげなんだよ。
 
「ちぃーめぇーいぃーってわかるぅー?それ言ってくんないとぉー
 真ん中らへんとかなにぃー?ニセコぉー?みたいなぁー。
 ってかあたし北海道ってニセコしか知らないじゃん?キャハハ!マジで。
 もうさ、ニセコでいい?ニセコアンヌプリ温泉入ろうよ、つーか
 アンヌプリってなにぃー?ありえなぁーい」
「……今すぐ引き剥がして地面に叩きつけたろかゴルァ」
「え?なんか言ったー?」
「…別に」

耐えろ、キレちゃダメ、キレちゃダメ。
コイツで飛ぶしか12時までに亜弥ちゃん助ける方法ないんだから。

「…とりあえず、美貴が指示するからさ、適当に飛んでよ」
「えぇーマジでぇ?あたしすんげぇ早いよ?
 指示とかする暇ないっぽいよ?いいの?」
「…いいよ」
いいからさっさと飛べ。

「じゃ行きますビューン」

ビュン。

「どぐわぁぁぁぁぁああああー!!!!ははは早い早いストップっ…ぐぅ!」
「だから言ったじゃん早いってぇー」
500 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:13
「早いにも程があるから!内臓潰れるかと思ったよ!
 ってここどこ!?」
「んーとぉ今調べるねぇー…あーカムチャッカだってぇー」
「はぁ!?カムチャッカぁ?!
 ロシアじゃんそれ!!誰がオホーツク海越えろって言ったのさ!!」
「だって指示してくんないしー」
「できるかぁ!!」

かわいい外見とは裏腹に、マワリストはスピード狂だった。
というか早過ぎる。1秒ちょいで小樽からカムチャッカってどうなの?

「た……わ…」
「はい?タワー?」
「た○が○!北海道の真ん中らへんにあるた○が○わに行って!!」
「キャハハ!なんで伏せんのぉー?
 地名知ってんなら早く言いなよねー、ビューン」

ビュン。

「っぐぇ」
「はい到着ぅー♪」
「…はぁ、駅か、じゃあ降ろして」
「えぇー家まで送るよぉー暗いしぃー女の子の独り歩きは危険だぞ♪」
「いや……内臓が限界なの、勘弁して」
「じゃーゆっくり飛ぼうかぁ?」
「んなっ!?ゆっくり飛べるんかい!!
 だったら最初からそうしなよ!」
「えへへぇ〜」

あぁもう火ぃつけて燃やしてやりたい。
なにがえへへだ。えへへって笑ってカワイイのは亜弥ちゃんだけなんだよ。
お前の笑顔なんかより美貴は亜弥ちゃんの笑顔が見たいんだ。
…ってお前顔ないじゃん。イライラ。
501 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:14
「そこ、右」
「はぁーい、右に曲がりまぁ〜す」
「まっすぐ行った突き当りで降ろして」
「んーもっと飛びたいよぉー」
「黙れ」
「キャハっ、怒りんぼだぁ〜」
「………」

着いたら絶対ひきちぎって踏んづけてやる…などと
考えていると、ようやく見えた懐かしい家。
夏休みにも来たけれど、古い家には入らなかった。

時計を見る。22時20分。
もっと時間が経ったような気がするのに。
間に合った、亜弥ちゃんは無事だ。

でもあの家は、今はもう電気も通っていないハズ。
怖がりな亜弥ちゃんは中で泣いてやしないだろうか?
心配でしょうがない。


会いたい、会いたい、抱きしめたい。


「着いたよぉー、んしょっと…ひゃっ!」


地に足が着いた瞬間、それまで感じていた怒りは消え去っていた。
ひきちぎることも、忘れていた。


好きだ、好きだ、愛してる。


502 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:15



駆け出した足、込みあげる想い、受けとめて欲しい、受けとめたい。


門を飛び越え、広い庭を抜け、玄関の前。



声を上げて泣きながら、両手を広げて待っている



亜弥ちゃんが、いた。


   
503 名前:伝えたくてしょうがない。 投稿日:2003/11/01(土) 05:15

504 名前:のえる 投稿日:2003/11/01(土) 05:17

もう、言い訳もできません(爆
おっかしいなぁ、なんでこんな長くなったんだろ?

   ノノノハヽ
    川VvV) <あんたのせいだよ。
   / U つビシッ
   し'⌒∪

ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・

レスありがとうございます。
裏切り者に暖かいお言葉、本当に感謝しています。

>477 つみ様
うぉぅ、その自信は98%気のせいですよ(爆
でもありがとうございます。嬉しいです。

>478 名無し読者様
いえいえ適当な知識で適当に書いてますから(w
特技はうろ覚えのテキトニストです、完璧です(爆

>479 名無し読者様
おぉ!ということは期待を裏切るだろうという期待は
裏切らなかったワケですね、よかったぁ(爆

>480 名無し様
初レスありがとうございます。
本物のマニアックさんハケーン(ww

>481 名無し読者様
ご、ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・
非常に申し上げにくいのですが、あと少しだけ…

待  っ  て  て  ね  (爆

でも期待は絶対しちゃダメですよ。
のえるはアホなんですから(真顔


削除依頼、ありがとうございました。
505 名前:のえる 投稿日:2003/11/01(土) 05:25
マコ、アヤカ、ひとみん、お誕生日おめでとうでした。
506 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 08:46
待 っ て る よ !

ちなみにまん中らへんは
「が」じゃなくて「か」
らしいですよー
507 名前:178 投稿日:2003/11/01(土) 11:27
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! (一応言っとく)
そんなことになっているとは w

いよいよですか。楽しみだあ。
期待してるよ!何らかの意味で。
508 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 12:37
笑いどころ満載なのに…
なぜかいきなり胸が切なくなったり…

のえるはんは罪作りな人ね
509 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 12:38
ageちまった…申し訳…
510 名前:つみ 投稿日:2003/11/01(土) 17:21
やばすぎだろ・・・・
おもしろすぎて作者さんがにくい・・・
511 名前:つみ 投稿日:2003/11/01(土) 17:21
やばすぎだろ・・・・
おもしろすぎて作者さんがにくい・・・
512 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 18:02
笑いまくったり切なくなったり、ああ忙しい(w
513 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 23:06
期待するなと言われても期待してしまうよぅ
514 名前:名も無き読者 投稿日:2003/11/04(火) 22:04
やばい…
腹筋が死んでるYO…
なんかもうこのまま終わんないで欲しいぐらいです(w
次回も期待しております
515 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/05(水) 02:12
ああやっぱりまだまだ終わらないで欲しい…。
もっと焦らしてください!!(w
516 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/09(日) 23:02
そろそろお願いします……焦らされるのも限界だ…
517 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 15:24
俺もだよ…
どうかどうか早く助けてくらさい…
518 名前:  投稿日:2003/11/13(木) 15:58

世界で1番、甘いキスをしよう。

519 名前:  投稿日:2003/11/13(木) 15:58


520 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 15:59

初めて亜弥ちゃんに会った時、サルみたいだと思ったなんて言ったら怒る?
…いや、正しくはサルっぽくてかわいいと思ったんだけど。

あの時、生まれたばっかだったんだよね。
美貴もまだ1歳ちょっとだったから小さかったけど
亜弥ちゃん人形みたいでさ、指なんかあるのかないのかわかんない手で
美貴の手をきゅって掴んでくれたんだ。

そしたらもう、かわいいねって言わずにはいられなかった。
自然と顔が緩んだなぁ。覚えてるよ、あんな気持ち初めてだったんだから。
家に帰った後おかーさんにデレデレだったって言われたし。


ずっと妹みたいだって思ってたつもりだったけど
間違いなくこの時が、美貴の初恋だったんだ。

ん? そうだよ、亜弥ちゃんに一目惚れしたの。
信じられない?嘘じゃないよ、気づくの遅かったけどね。へへへっ…うぇ?
あわわわ亜弥ちゃん、泣かないで、よしよし、ごめんね?
でもホントだから。………あーもぉかわいいなぁ。
隠れないでよぉ、顔見たい。かわいい顔が見たいんですぅ。

だぁー拗ねちゃダメ、スマイル、スマーイル。
…ほっ、焦ったぁ……………はい、ごめんなさい、キスするから許して?
521 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 15:59

あ、で、話の続きなんだけど。
なんてゆーか、美貴ってずっと亜弥ちゃんの世話してたっていうか
3分の1,5…2分の1は美貴が育てたようなもんじゃん?
だからさ、余計に自分の中の気持ちに正しい名前がつけられなかったんだと思う。

亜弥ちゃんの面倒は美貴が見る。
亜弥ちゃんが泣いたら、笑わせるのは美貴の仕事。
亜弥ちゃんが困ってたら、助けるのは美貴の役目。

守るんだって、亜弥ちゃんを悪い奴らから守るのは美貴なんだって
誰に命じられるでもなくそう思ってた。

『ミキたぁ、ミキたぁ』って甘えた声でハイハイしてくる亜弥ちゃんを
傷つける奴がいたら、美貴がぶっ飛ばしてやるって。


亜弥ちゃんの体のことがわかってその思いはもっと強くなった。
最初は全然ワケわかんなかったし、何をどうすれば
亜弥ちゃんを守れるのか一生懸命考えたよ。
大人の言うことをできるだけ正確に理解できるように
本をたくさん読んで勉強もした。

それなのに――――

おとーさんがいなくなって、めちゃくちゃ凹んで
信じたくなくて、家からも亜弥ちゃんからも逃げた。
だって亜弥ちゃんは本当のことを知ってる。現実を知ってる。
だから美貴の顔を見れば、絶対に心配するし。

心配されるってことは、美貴が可哀想だってことだ。
そういう目に、美貴が遭ってるってことだ。

そんなの、嘘だ。

美貴は、可哀想なんかじゃない。そんな目に、遭っちゃいない。
522 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:00

そう思いたくて、思い込みたくて
優しく差し伸べられる手を拒んだ。

だけど、離れるワケにはいかなくて
おにーちゃんたちの誘いも、おかーさんの最後の言葉も撥ねつけた。

亜弥ちゃん。美貴が1人になったのは、美貴の意志だよ。
逃げたクセに亜弥ちゃんのいない町になんか行きたくなくて。

いなくなったのはみんなじゃない。

家に帰らなくなった美貴の方こそ、家族を捨てたんだ。

違う? 違わないよ。
おとーさんはともかく、おかーさんがいなくなったのは美貴のせいだし。
美貴がおかーさんを捨てたから、おかーさんは居場所を失くして家を出てったんだ。

子供だったんだからしょうがない?

でも美貴は、和田さんに拾われて、あの部屋を与えられて
アヤカに出会って――――心のない、虚しいだけの行為に溺れたんだよ?


亜弥ちゃんを、そしてなにより自分自身の気持ちを裏切っていることにも気づかずに。


なにもかもどうでもいい、興味ないって
そう思うことで楽に生きようとしてたんだ。
そんなんじゃ、寂しさは増える一方なのにね。
523 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:00
あの頃、亜弥ちゃんといると苦しかったのは
どうでもよくなかったからだ。興味があった。

入学おめでとう、制服似合ってるね、髪伸びた?
背も伸びたかな?妹ちゃんとケンカしてない?
…む、胸…もしかして美貴よりでかくない?

心の中はいっつもドキドキバクバクしてて、楽しいと思う時もあった。
亜弥ちゃんがたまにする変な動きに笑っちゃったりとか
素直に笑顔になれたのに。


一緒に過ごせた時間の反動も大きくて、昔に戻ったみたいな
このまま家に帰ればみんながいるような錯覚に陥っても
目の前には暗い家。隣から聞こえる笑い声。

違うんだ。もう亜弥ちゃんとは違うんだ。
家に帰っても誰もいない、寒い寒い、冷たい世界。

夏はもうすぐなのに、体が震えて仕方なかった。

カタカタ鳴る歯を食いしばって、亜弥ちゃんを見送るとすぐにアヤカの
元へ逃げ帰る。

それが、できなかったあの日。
震えすぎた体が動かなくなって、家の前で蹲って
帰って来ない美貴を心配して迎えに来てくれたアヤカに抱きついた。


亜弥ちゃんに見られてるなんて全然気づかなかったよ。

何も言ってなかったのに、アヤカは全部わかってる顔で優しく頭を
撫でてくれて。やっぱりアヤカだけだ。アヤカ以外とじゃ、ダメなんだ。

もう、最後にしよう。

だから、久しぶりの亜弥ちゃんのお願いも黙って聞いた。
524 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:01
キレイだったね。

別れを口にするには、眼下に広がる世界があまりにキレイで
2人を見下ろす夜空の星が眩しく煌めいて決心が鈍った。

たとえ息苦しさに押し潰されるとしても
この手を引いて歩いて行けるならいいんじゃないか。
大丈夫。絶対、亜弥ちゃんはついてきてくれるよ。
突然手を離して背中を突き飛ばしたりなんかしないよ。

でも、そんなの保証できない。

だからワザと一生睨むことなんてないと思ってた彼女を
強い視線で刺して、低い声で脅してみせた。
見てたんならちょうどいい。
諦めなよ。もう美貴は、亜弥ちゃんの知ってる美貴じゃない。

怯えた目で、それでも真っ直ぐ美貴を見た亜弥ちゃん。
耐えられなくなって逃げた美貴。
そして刻まれた赤い痕。

傷ついたのは、亜弥ちゃんの頬だったのか
美貴の心だったのか、ずっと消せなかったあの痕は
亜弥ちゃんが美貴を生き返らせてくれた時にようやく消えたよ。
全部許してくれたんだね。ありがとう。


星空の下で抱きしめられた日から大晦日まで会ってなかったけど
美貴的には会ってたっていうか。
なんか……心配で、いや、それ以上に顔が見たくて
学校がある日は朝夕、バレないように亜弥ちゃんが無事登下校するまで見守って
アヤカのことも抱かなくなった。
525 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:01
……ごめん、気持ち悪いよね。
ストーカーみたいなことされてたなんて。

けど気になって、でも近づけなくて。
募る苛立ちをアヤカにぶつけることもやめたから
お酒の量が増えて、あんな超ダサイことして捕まって。

『ミギだぁぁああん!!!!!』

恥ずかしくて。
泣きながら抱きついてきた亜弥ちゃんの顔、まともに見れなかったよ。

気まずくて視線を泳がせたら、後ろでフロントスープレックスで
ケブラドーラコンヒーロかダイビングニードロップまたは
ウルトラウラカンラナでもかましたろかって顔のパパさんと目が合うし……。

まー候補の中にロメロスペシャルがなかったのが唯一の救いだったけど。
やっぱ拷問系は勘弁してほしいじゃん?…あ、わかんないか。

…ま、まーそんなこんなでさぁ
家に戻ったし、ジャーマンに怯えつつ学校にも行って
(授業は頻繁にサボってたけど、バレなかったからラッキーだったなぁ)
アヤカとも別々の道を歩き出して
触れたいと思うのは亜弥ちゃんだけだった。

八つ当たりでもなんでもなく、ただ触れたいって思った。
手を繋ぐだけで、不思議と穏やかな気持ちになれたし。
でも、小さい頃から知ってるからだと思うけど
簡単に手を出す気にはなれなくて。

大事に大事に、誕生日に初めてキスしたのは
ちょっとした自分へのプレゼントのつもりだった。

あの時の亜弥ちゃんの言葉、嬉しかったよ、ありがとう。
心の中ではこたえてたのに、口にできない自分が情けなかったな。
526 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:02

したい。もっと奥まで触れてみたいって想いはずっとあって
亜弥ちゃんの無意識な誘惑に思わず
飲み込まれそうになったこともあったけど。

早いし。美貴さ、自分の時めちゃくちゃ痛かったから
怖かったっていうか。
あの鼻の穴にスイカ入れるみたいな痛みを亜弥ちゃんにも
味あわさせるのかって……結構、抵抗があって葛藤があったんだ。

『ワキヘアー抜くよりはマシでショウ?』なんてアヤカは言ってたけど
美貴的にはどっちもどっちだったし。
なんにせよ痛いことに変わりないじゃん?

だからもう少し、もう少し亜弥ちゃんが大人になるまではって決めて
初めて抱いた時は夢のようだった。

緊張しまくって、ありえないぐらい汗も噴き出て
なるべく痛みを感じないようにって気ぃ使いまくって

うわ、やっぱ美貴より胸でっかい、白い、柔らかぁい
初めては後ろからのが痛くないんだっけ、あーでも顔見たいし
ってか声かわいいなぁ、できれば目開けてほしいんだけど…って開いたよ
おわわわ、ダメ、そんな目で見ないで、優しくできない、う、わぁ……

ごちゃごちゃうるさい頭抱えて超必死。

全然余裕なかった。
亜弥ちゃんが甘く高い声を上げて美貴の腕の中に倒れこんだ時
すごいホっとしたもん。よかったぁ、うまくいったぁって。

頼りなく胸を上下させて浅い息を吐く姿に
喉の奥が熱くなるような、なんとも言えない気持ちになって
思いっきり抱きしめちゃったよね。
527 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:03

アヤカとでは酔えなかった甘い吐息。
アヤカとでは満たせなかった荒んだ心。
アヤカとでは交わせなかった想いの視線。

言葉にはできなかったけど、幸せで幸せで。
これからずっと、このぬくもりを抱きしめていくんだ
この柔らかさだけに包まれてたいって
心の底からそう思った。

今こうして振り返ると、自分の気持ちがよく見えるよ。
どうしてずっと素直になれなかったのかなぁ?
ぶっちゃけ完全に惚れてたのに。


逃げててごめん。信じきれなくてごめん。
ごめん、ごめん、ごめん。


会いたかった。


もう、絶対離れない。



いつも一緒に、これからもずっと

手を繋いで歩いていこう。



2人なら、幸せになれるから。



528 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:03


529 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:04

「…んっ……ふっ…っ…」

1ミリの隙間も許さず、強く抱き合って交わすキスは
それだけで溶け合ってしまうような
永遠に1つになれそうな、深く優しいキス。

交わせば交わすほど、愛しさも切なさも
ごちゃ混ぜになって泣けてくる。

「…っは………亜弥ちゃん…」
「ぅっ…ぅっふ、……ぇっく…ミキ、たん」

名残惜しいけれど、長く重なっていた唇を離して額を合わせる。
お互い、相手以外目に映らない距離で見つめ合うと
背中にまわした腕が自然と強くなった。

「…亜弥ちゃん」
「ひっく、ふぇ……?」

どうして、今まで言わずにいられたんだろう。
こんなに真っ赤に目を腫れさせて、いつから泣いてたの?
怖かった? 寂しかった? もう泣かないで。

「松浦、亜弥さん」
「……はい」

美貴が魔法をかけるから。
亜弥ちゃんの涙を止める、とっておきの白魔法を。






「あなたが、好きです」






530 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:04




びええええええええぇぇぇぇぇぇん!!!!!!



「え、えぇえ!?!ななななんでぇぇ?!?
 ちょっ…ごめん!ごめんなさい!!泣かないで!お願い!!!」

あれぇ?!あのー…美貴は今白魔法かけたんだけどぉ…失敗?
もしかして聞こえなかったとか…?ガックシ。

ってか亜弥ちゃん、泣きすぎ、よく出るね。
もうさ、目の周り痛々しいんだけど。
早く冷やさないと明日どえらいことになるよ?

「うあーんぁんぁんぁんぁんうおーんぉんぉんぉんぉん」
「………亜弥ちゃぁん…」
「ひぅー!っく、ぐ、ぐわぁーんあーあぅぇーんぇーん」
「…………」

ど、どどどどーしよぉ?こんな夜…ってもう12時ぃ?!
そんなに長くキスしてたんだ………すごい。
って関心してる場合じゃなかった。近所迷惑だしなんとかしないと。

「亜弥ちゃん、ちょっと、家入ろ?ね?」
「えぅーんぅーんぅーんぇー」

ダメだ。話ができる状態じゃない。

藤本は松浦の腰を抱え引きずるようにして古びた家の玄関に入り
戸を閉めると、今度は逆に泣きじゃくったままの松浦に引きずられて
懐かしい部屋に辿り着いた。
531 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:05
「ここ……美貴が寝てた部屋だ」

ここに住んでいた時の記憶はほとんどないけれど
この部屋は、おとーさんとおかーさんに挟まれて
川の字で寝ていたこの部屋のことは、よく覚えている。

引っ越して物置になってから、ずっと入っていなかった部屋。
懐かしくてあったかい家族の匂い。

「この布団も……」

もう捨てたと思ってたのに。
松浦を抱えたまま膝をついて布団を手に取ると
喉をひくつかせながら顔を上げた松浦が藤本を見つめてゆっくりと微笑んだ。

「亜弥ちゃん…」

そっと背中を撫でながら、不規則に震える体を布団の中に倒す。
その弾みで頭のワカメがペシャリと落ちた。

「ミキたん…ごめんね?
 あたしのせいで……いっぱい、怪我して…」
「なぁーに言ってんの。
 大切なお姫様が攫われたら、助けに行くのは当然じゃん」
 
なんて、こんな格好じゃきまんないなぁ。
自分のはまだ見てないけど、ごっちんのヒデブーなのから察するに
美貴もアベシーな顔になってるっぽいからキモイだろーし。

ってか亜弥ちゃん反応ないんだけど…ひいちゃったかな?

「ミキたんっ…」
「わぁ…!」

瞬きもしない松浦の上で困っていると、下から勢いよく飛びつかれた。
532 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:06
強く引き寄せられて、全体重を松浦に預けてしまう。
ヤバイと思って体を浮かせようとしても
巻きつけられた腕がそれを許さなかった。

「ありがとうっ…ありがとうミキたんっ…!
 好き! 大好き、ミキたん大好き!」
「…っ亜弥ちゃん…」

首に触れた唇が震えて、また泣いてるのかと顔を覗いたら
最高に幸せそうな笑顔が藤本に向けられていた。

この笑顔は、美貴のものだ。
他の誰にもやるもんか。

「美貴も好きだよ。亜弥ちゃん大好き」
「好き、ミキたん…もぉどこにも行っちゃヤダ」
「行かないよ。亜弥ちゃんの1番近くに、いつもいる」
「…ホントぉ?」
「うん、愛してる」
「…ふぇっ…ぅぇっ…」
「わあああ落ち着いて、泣かない、泣かない」
「ぐ…」
「よしよし、いいこいいこ」

ふぅ、ちょっと疲れる…。
だけど気持ちいいっていうか、この疲れは嫌じゃない。

「亜弥ちゃん、これからは美貴に聞きたいことあったらなんでも聞いて。
 言いたいことはなんでも言って」
533 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:07
「…え?…でもうるさいよ?うっとぉしいよ?」
「うるさくないし、鬱陶しいなんて思わない。
 束縛してよ。美貴の全部、亜弥ちゃんにあげる」

過去も今も未来も、全部あげる。
全て受け取って。返せなんて一生言わないから。

「………じゃあ、あたしのことも、全部もらってくれる?」
「うん。なにがなんでももらう」

あーぁ、こんなに愛しいんだから
言葉にするのなんて簡単だったハズなのに
恥ずかしがって、不安にさせて、いっぱい泣かせて
どれだけ謝っても足りないよ。
お詫び、いっぱいさせてね、亜弥ちゃん。
なんでも買ってあげる、どこにでも連れてってあげる。

「…そうだ!亜弥ちゃんに会わせたいヤツがいるんだ」
「・・・だぁれ?」
「アヤンキーっていう猿なんだけど…」
「サルぅ?」

そう、猿。ちなみにアヤンキーって名前は美貴が勝手につけたから
本名は違うかもしんない。ってか絶対違う。

「沖縄で海に落ちた時、美貴ずっと無人島にいたじゃん?
 そこで仲良くなった猿のアヤンキー」
「アヤンキー…」
「へへっ、亜弥ちゃんの名前からとったんだよ。
 あっ、でも別に亜弥ちゃんに似てたとか亜弥ちゃんが猿だって
 意味じゃなくて、そりゃ少し小さい頃に似てるなぁとは思ったけど…」
「・・・どうせサル顔だもん」
「どわぁ?!いや、だから、えっとそれはおいといて…っ」

534 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:07


『あぁーわたっしのぉーこぉーいはぁー♪
 みぃーな…あ!決めた!!珊瑚にする!!!』

まいちゃん曰く、船の手すりに凭れかかって松○聖子の青い珊瑚礁を
熱唱していた美貴は、突然閃いたって顔で
『亜弥ちゃんのお土産とってくる!!』と叫ぶと
止める間もなく真っ暗な冬の海に飛び込んでいったらしい。

酔ってたから全然記憶ないけど
気がついたらキレイな砂浜で、大きな葉っぱにくるまってて
『ハァっ!?』って叫んだ美貴の目の前にいたのが、アヤンキーだった。

アヤンキーはとても賢い猿で、人間みたいなの。
だって火まで使えんだよ、すごくない?
あの時アヤンキーが傍でずっと焚き火しててくれなかったら
間違いなく美貴は凍死してたし。

『ウキキ?』

愛嬌のある顔と、耳障りのいい鳴き声。
見たこともないカラフルな果物や魚を分けてくれたり
寝床を貸してくれたり、ホントお世話になったなぁ。

心配してくれてた亜弥ちゃんには申し訳ないけど
アヤンキーのおかげで美貴は結構無人島ライフ楽しんじゃって…。

でも、いつも亜弥ちゃんのこと考えてた。

沖縄に発つ前の晩の、寂しそうな目。
無理して作ってくれた笑顔。
何度も噛みついてきた小さな口。

亜弥ちゃんがつけてくれた噛み痕はなかなか消えなくて
まいちゃんとアヤカにもからかわれまくったんだけど
アヤンキーにも『ウッキッキィ♪』なんて肩つつかれてさぁ。

それに…これは言うのちょっと恥ずかしいんだけど
美貴ね、上着の内ポケットに亜弥ちゃんの写真入れてたんだ。
535 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:08
いつだったか、美貴の部屋で終わった後に顔くっつけて撮ったやつ。

海に落ちたせいでフヤフヤになってたけど
毎日それ眺めて、寝る前はその日あったこと全部話したし
元気だから、もうすぐ帰るからってずっと言ってた。


時計もカレンダーもない暮らしをしてた美貴にとっては
1ヶ月ぐらいかなって感じだったけど
それは大きな間違いだったようで………。

アヤンキーと、その家族に見送られて本土に帰った美貴は
すぐに亜弥ちゃんのとこに行こうと思った。
けど家見たら真っ暗で、妹ちゃんの部屋の電気だけついてて
どしたの?って聞いたら『パパとママはお出かけ、亜弥ちゃんは病院』って言うし。
てっきり定期検診だと思ったからついついビールを……ごめんなさい。

久しぶりのアルコールに上機嫌だったところを
いきなりごっちんとよっすぃに担がれて投げ込まれた病室で
痩せた亜弥ちゃんを見つけた時は、本当にビビった。

なんで?なんで亜弥ちゃん、こんな小さくなってんの?

細い肩、力のない腕、それでも瞳は、真っすぐ美貴を映してたね。
後悔したよ。物凄く後悔した。
食事ができなくなったって後から聞いて
胃袋の中身全部吐き出したくなった。

バカだなぁ、なんで美貴なんかの為に、亜弥ちゃんバカだよ。

でもそのバカが、愛しくてしょうがなかった。
しがみついて何度も美貴を呼ぶ声が、たまらなく愛しかった。

帰ってきたんだ。亜弥ちゃん、美貴は帰ってきたよ、ただいま。

結局お土産は、亜弥ちゃんのリクエスト通りになっちゃったね。


536 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:08
「行こうよ、沖縄。亜弥ちゃん行ったことないでしょ?
 沖縄って面白いよ、言葉も違うしさ。シシニウッサッサーとか
 チャヤエビガサとかウジュラーサンとかワケわかんないの」
「…うん、行きたい」
「あと、姫路にも行こ」
「ほぇ?なんで?」
「おばあちゃんにも挨拶しなきゃ。美貴、松浦の籍に入れてもらって
 松浦テーキヤテーキヤテキテキヤテースリコンボハリマノベットウソペットウチャワンポーズノヒヨコ美貴助に
 なるんだし。よろしくお願いしますって言わないとね」
「ミキたん……覚えたんだ…」
「ま、まぁね」

これから先、ずっと使う名前だし。
覚える為にノート一冊使い切ったのは内緒。
でも郵便局で振込み用紙に記入する時とか果てしなく
書き込みきれなさそうだから、次は小さい字で書く練習しなきゃ。

「もう寝ようか。どうする?隣行く?」
ばあちゃんは寝てるだろうけど
おにーちゃんたちは起きてるかもしれない。

「…ワガママ言っていい?」
「ん?いいよ、遠慮しないで」

腕の中、俯く松浦の耳が赤い。
藤本はそっとそれに口づけて言葉を待つ。

「今夜は、2人っきりがいい…」
「……わかった。でも布団これだけだから下痛いけど…」
「お話しよ?ミキたんに聞きたいこと、いっぱいあるの」
「…うん」


537 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:09


更けていく夜


抱き合って1枚の布団にくるまれば、寒さなんて感じない。

会話の合間、あればいくつものキスをして


明けていく朝


少し重たい瞼にも唇寄せて

世界で1番、甘いキスをしよう。

538 名前:美貴と亜弥ちゃん。 投稿日:2003/11/13(木) 16:11

从*‘ 。‘)(VvV*ノノ
539 名前:のえる 投稿日:2003/11/13(木) 16:15
うぉぉ・゜・(ノД`)・゜・
内容のくだらなさをスピードでごまかしてきたのに(爆
れいな、全然間に合わなかったよれいな・゜・(ノД`)・゜・

      ∫                        
ノハヽo∈∫                      
从 `,_っ´) ズズズ どうせ遅刻すっと思ってよったと。 ('A`;)ヾ  
(つ=||||____                          ∨) ヘイ、オッシャルトオリデス
('⌒)\_/ ((


レスありがとうございます。
不幸にも期待してしまった方、責任は取れません(爆

>506 名無し読者様
Σ(  ゚Д゚)ギャッ!?ももも申し訳ございません。
全くの無意識でした、「か」で打ったつもりだったのに…。
ご指摘ありがとうございます。
待たせといてこんなんですいません(爆

>507 178様
タンスの上から2段目にありますよ(w
許可もとらずに出演していただいたので苦情がくるかと
思いましたが、お優しいですね、ありがとうございました(感涙

>508 名無し読者様
笑ってくださった上に切なくまでなっていただけたとは
あなたは神ですか?
ホント無茶苦茶な話なのにそう言っていただけると…涙が…
罪作りというか、存在そのものが罪です(爆

>510 つみ様
やばすぎって…ありえなさがですか?アホさがですか?
どっちもですか?(爆死
え、えーっと、そんな不条理な理由で憎まないでください(爆
540 名前:のえる 投稿日:2003/11/13(木) 16:18
>512 名無し読者様
おぉ、ここにも神が(w っていうかみなさん神ですね。
ありがとうございます、もぉ何回言っても足りないです。

>513 名無し読者様
おぉぉ・゜・(ノД`)・゜・期待しちゃったんですか・゜・(ノД`)・゜・
でも私一応止めましたから、どうなっても知らないもん(プイ
…すいません、カワイ子ブリッコしました(爆

>514 名も無き読者様
ふっ!?腹筋が死っ…?!( ^▽^)<入院してください。
終わんないでなんて作者冥利に尽きます。
でもそろそろ終わらないと、こんな話で3スレ目まで逝ったら
怒られますから(w

>515 名無し読者様
焦らされ好きなんて、もしやマz(ry
ありがとうございます、幸せですねぇ、のえるは。

>516、517 名無し読者様様
まとめレスすいません。
変に間があいちゃってごめんなさいでした。
焦らすとかじゃなくただ時間がなくて
前回とか前々回、量も時間も無理しすぎたみたいで
自分の首を絞めてしまいました(爆


足、ずれまくった(爆ウワァン・゜・(ノД`)・゜・
541 名前:jinro 投稿日:2003/11/13(木) 17:32
・゜・(ノД`)・゜・良かったね、あやみき!
涙が止まりまへん…。
542 名前:つみ 投稿日:2003/11/13(木) 17:36
きた・・・・
やっとふじもとさんも超えましたね^^
感動しました!
いや〜ホントによかったよかった。
・・・ところで最近なちごまが・・・
543 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 23:02
絶対泣かない!と決めていたのに泣いてしまいますた・・・
544 名前:名も無き読者 投稿日:2003/11/14(金) 14:36
こ…今度は目がぁ…(涙
いや良かったね二人とも…
…ってあれ?この話の主人公って…?
545 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/14(金) 15:55
ハネムーンは沖縄かぁ…いやぁ…楽しみだ(w
よかったねぇ…あやや……あれ?
何か忘れてる気が…
546 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/15(土) 01:26
きたきた…ついにきた…
キュンとした…
ハラハラドキドキラブサスペンス
作者様こそ神にちげぇねぇ…
547 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/15(土) 01:27
きたきた…ついにきた…
キュンとした…
ハラハラドキドキラブサスペンス…
作者様こそ神にちげぇねぇ…
548 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/15(土) 01:29
やべっ興奮して2回もレスつけちまった…
スマソ…
549 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:55

海のむこうで、朝日が昇る。

「ん……あ……も、ダメ……」
「わ、わた…しも…」

バタリ。 ポフン。

柔らかい砂浜の上、激しい闘いの末に力尽きた後藤がうつ伏せに
倒れると相手をしていた斉藤もセクシーに尻餅をついてへたり込んだ。

「むぁ、終わったようじゃの」

その様子を、離れたところから途中いくつかの仮眠をとりつつ
観戦していた村田は眩しそうに目を細めて番茶を啜る。

「村田さん、おはようございまーす」
「おはようございますやよー」
「むぁ、おはよう」
「今みなさん朝食にラーメン召し上がってるんですけど
 村田さんはパンでいいですか?」
「今ならいちごジャムと茹で卵もついてくるがし」

そこへ、大将と高橋がやってくる。
みなさんとはどうやらあの黄色い集団のコトのようで
言われてみればさっきから『セクシーラーメンハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! 』
という声が聞こえてきていたのだ。

「じゃあパンをいただこうか」

昨夜すでにセクシーラーメンを食べた自分に対する有難い心遣いに
甘えて、コーンパンとカボチャのパンを受け取る。
焼きたてらしく暖かいそれの表面をよく見ると
そこにはチョコペンで『A・KONNO』と書かれていた。
550 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:56
「あ、それあさ美ちゃんが焼いたんです。
 昨日学校が終わってすぐに安倍先生と飛行機でコッチに
 来てたみたいで、昨夜は安倍先生の実家に泊まって今朝早くここに…」
「んあ!?なんだとぉ?!!?」

なっちが来てるぅ!?ってゆーかごとーを差し置いて
紺野が実家にご挨拶だぁ?!

聞き捨てならぬ情報に、ごとーはもう2度と立てないと思われた体を
気力だけで動かし、小川の胸倉を掴む。 

「ちょっと!マジなのそれ?!」
「ぐぇっ…マ、マジですよっ…さっきあさ美ちゃんに聞いたんですから!」
「どこぉ?!今その紺野はどこにいんのぉ?!」
「…あぐ…ぐるじい……」
「後藤先輩!!そんな首絞めたらまこと死んでまうやよー!
 それにまことはSでMやないんやしぃ!」
「んあ!こんな時に小川の性癖気にしてられるか!!」
「ぐぅ…ってかSでもないってば愛ちゃん!!」

小川の意識が遠くなる。うっすらと白くなっていく視界には
死んだハズの祖父の姿が……

「素直になろうよ、まこっちゃん」

「んあ!!紺野ぉ!!アンタよくもなっちの家に泊まりやがったわねぇ!」
「仕方ないじゃないですか、泊まっていけと何度も
 誘われて断れない状況になってしまったんですよ」
「なにが状況よ!なにが情交よぉ!!…んあ?じょじょじょ情交?!?
 ゴルァ紺野ぉ!死んでも許さん!ブチ殺す!!!」

ごとーは情交どころか…っ!キスさえもできない日々なのに!!
なっち!!ひどいよなっち!うわぁぁぁああん!!
551 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:56
キレた後藤は紺野に襲い掛かろうとするが
空手茶帯の紺野はそれを悠々とかわしてみせる。

「ご、後藤先輩…なんで状況から情交に繋がるんですか…」
「あぃやぁ?まことぉ、ジョーコーってなんやの?」
「ひょぇ?!ええええーと…な、なんだろーね?」
「……また私だけ除け者にするん?」

ヤバイ。これじゃ愛ちゃんの“まこと=S”という勘違いが
どんどん疑いようのないモノになっていく。
でも……言えないよ、ホントの意味なんて…。

「…い、いやそんなつもりは……あの、だから…あ!
 あれだよ!天皇が位を譲られた後の尊しょ…」 
「まこっちゃん、それは上皇」 
「っ!」
「あぁー、まことが嘘吐こうとしたぁー」

違うんだ、違うんだよ愛ちゃん!
ってかあさ美ちゃん!後藤先輩の怒涛の阿修羅パンチかわしながら
暢気な声で会話に入ってこないでよ!!

「…ご、ごめん、ちょっと間違えた…愛ちゃん耳かして」
「んー?ハイ」

そうだ、ここは愛ちゃんにしか聞こえないすればいいんだ。
なんとしてでもホントの意味は言いたくないし。

「ジョウコウはね、電車とかの乗り降りのコトだよ」
「なんやぁ、そんなコトかぁ」

ホッ。よかった、なんとか言わなくて済んだ。
今度はあさ美ちゃんも邪魔しなかっ…ギャー!!!
552 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:57
安心したのも束の間、ジョウコウの意味を教えてもらって
嬉しそうな笑顔を見せる高橋の肩越しに、無表情で筆を口に
咥えた紺野が『それは乗降』と書かれた半紙をヒラヒラさせながら
優雅に後藤のカエルアッパーを避ける姿が視界に入る。

「ん?まことぉ、どうしたん?」

ヤバっ!
悲鳴は抑えたが、口を開けたまま固まっている小川の視線の先に
高橋が振り返ろうとする。

――――くそぅ、あさ美ちゃんめ。そうはいくか。

「愛ちゃん!」
「ふぇ?…ぇ?っんん!」

知らないなら、そんな言葉知らないままでいいんだ。
愛ちゃんは、愛ちゃんは、知らなくたって十分かわいいんだから。

小川は高橋の顎を捕まえると、そのまま強引に口づけた。
いきなりで驚いている背中を抱きしめて
ゆっくりとナメクジ――もとい、舌を絡ませる。
あの日、拒絶されたのは苦い記憶だが、今ではすっかり高橋もなれて
こたえてくれるのが嬉しかった。


「ちぇっ、まこっちゃんもたまにはやるなぁ」

紺野の悔しそうな、それでいて小川の成長を喜んでいるような呟きは
キスに溺れる2人には届かなかった。


553 名前:あいとまこと。 投稿日:2003/11/21(金) 01:58


末永く、お幸せに。


          ∬∬´▽`)人(’ー’*川


                             おしまい。


554 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:59



「って終わるかぁー!!!
 ちょっとちょっとぉ、主役誰だと思ってんの?!
 おがたかのキスシーンなんかで終わるワケないでしょバカっ!!」

まったく最近なってないよね、全然なってない!
なっちとごとーの絡みが全然ないし!…いや絡めないのはわかってるけど。
ってか美貴はまっつー助けられたのかなぁ?
ちゃんと告白できたのかしら?したよね?したよね?…つーかしてろよ。

「んあ!そーいやなっちは?紺野と一緒に来たんでしょ?」
「えぇここに、まだ寝てらっいしゃいますけど」
「んあ?どこ?」
「ですからここに」

ニヤリとほくそ笑んで、紺野は制服のポケットから人形を取り出す。
その人形の顔はとてもよくなっちに似てい…

「んあぁぁあ!?ななななっちぃぃぃぃ!!?」
「イエス」
「高須クリニッ…じゃなくてぇ!!なんでよ?!
 なんでなっちが小人化してんの?!アンタなにしやがったのよ!!」
「安倍先生は朝が弱いんですね。
 なかなか起きてくださらないので持ち運び便利な手乗りサイズに
 縮小してみました。どうです?かわいいでしょう?」
「うん、かわいい♪
 ってバカ!!さっさと元に戻しなさいよ!」
「…フン、わかりましたよ。3分お待ちください。
 そうだ、携帯直ってますよ、藤本さんに電話してみたらどうです?」
「んあ?…あぁ、美貴のも直ってんのね」

つーか3分ってなによ?カップラーメンじゃないんだから!
まー美貴のコトも気になるし、電話電話…っと。
555 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 01:59
プルルルル プルルルル

『……はい』
「んあ、美貴ぃ?」
『あぁ…ごっちん……生きてる?』
「なんとかね。で、まっつーには会えたの?間に合った?」
『…うん。間に合ったよ、ありがとう』

よかったぁ、会えたんだ。
声暗いからダメだったのかと思ったじゃん、びっくりさせないでよねぇ。

「ちゃんと言えた?まっつーと一緒にいるんでしょ?」
『言ったよ。亜弥ちゃんに好きだって』
「んあ!!偉いエライえらい!!!」
『…へへっ』

やったぁー!!!!ホワイティやったじゃん!!
まっつーもさぞや嬉しかっただろーね!んあ、おめでとう!

「ごとーたちまだ海岸にいて紺野となっちも来てるんだけど
 美貴今どこにいんの?」
『……………ニセコ』
「んあ?」
え?今なんつった?キリコ?結婚おめでとう。

『………ニセコアンヌプリ温泉』
「はぁ!?なんで温泉なんかにいんの?!まっつーそんなトコにいたワケぇ?!」
『違う…亜弥ちゃんは美貴の昔の家にいた。
 だけど……だけど…………』

受話器越しでもハッキリわかるぐらい、震えてる美貴の声。
昔の家って…真ん中らへんだっけ?
ってかニセコヌンアペリってどこ?と、ごとーが首を傾げたその時――――

『キャハハハ!!ねーねーミキぃ早く入ろうよぉー!!
 ってかアヤちゃんだっけ?胸デカイよねー!
 揉まして!マジで、優しくするしぃー』
『ふぇ!?キャッ!く、くすぐったいよぉ!』
『んなっ!?ふざけんなゴルァ!!亜弥ちゃんに触んなこのセクハラシッポ!!
 ってかいつの間に美貴のコト呼び捨てにしてんだよ!』
『うわーやわこいやわこい、気持ちいいねー』
『やんっ…』
『テメぇ燃やす!絶対燃やしてやる!!!』
「…………?」
556 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:00
誰? なんか、聞いたコトもないよーなコギャルっぽい(しかも一昔前の)
口調の女の子の声すんだけど。
まっつー乳揉まれてるし、美貴キレてるし。

『えぇーマジでぇー?でもでもぉアタシ燃やしたら
 ミキも燃えちゃわなぁーい?』
『ひきちぎる!…っくそぉ!さっきから何度もやってんのに
 なんでひきちぎれないんだよぉ!!お前離れろよ!』
『んーあたしぶっちゃけぇーミキの話聞いてさぁー感動したっていうかぁー
 泣けたぁーみたいなー?たくさんツライことあったのにぃー
 ミキは今日も元気に生きててぇーアヤちゃんを大事にしててさぁー
 マジ尊敬するしぃーだから離れらんねーみたいなー』
『いらん。お前なんぞからの尊敬はいらん』
『そんな照れなくてもいいじゃぁーん!もぉーカワイイ人♪』
『がぁぁああー!!!ムカツクっ!!!』

む?ひきちぎるとか離れないとかって…美貴くっつかれてんの?
でもまっつーもいるんでしょ?なに?さっそく浮気ですか?

『…もしもし?ごっちん?』
「んあ?まっつー?」
『あ、ごめんね?今ちょっとミキたん取り込み中で…』
「いや、いーけど…それより、よかったねぇ」
『ありがとぉ…ミキたんね、いっぱいお話してくれたの。
 今までのコト全部教えてくれた』
「そっか。じゃあもう美貴のコト疑っちゃダメだよ」
『うん、信じる。信じてついてく』

おーおー、暑いねぇー。
まるで結婚するみたいじゃないのぉー…あ、するのか。
557 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:00
『あ、えっとそれでね、今温泉だけど修学旅行には参加しないで帰るから』
「んあ?帰るの?」
『…ミキたんと、一緒にいたいし』
「おぉぉぅ…」
な、涙が、別にごとーが泣くこっちゃないのに涙が…。
ホント、幸せにね、まっつー。

『あ…ごっちん怪我大丈夫?』
「んあ?…あーまだ見てないけど顔ヒドイっぽいねー。
 体の痛みはもうワケわかんないんだけど」
『ごめんね?でもミキたんも顔がアベシーだったんだけど
 変色しちゃってるトコにずーっとキスしてたら治ったの。
 だからごっちんも安倍先生にしてもらいなよ』
「…んあ、ラブラブね…」

そうですか、昨夜はずぅーっとキスしてたんですか。
どっかの砂浜でセクシーバカと闘い明かしたごとーとは大違いですね、ぐすっ。

『アヤちゃーん、はやく脱ぎなよぉー
 あたしに全てを見せてごらんよぉー』
『ダぁぁぁメ!お前だけには絶対亜弥ちゃんの体見せない!!』
『あ、それじゃ切るね、バイバイ』
「んあー…」

で、結局あのコギャルはなんだったの?まっつーいいの?
あぁもうわからん。

「後藤さん、安倍先生等身大に戻しましたけど」
「んあ!なっち!」
「zzz…」
「…なっちぃ」
「zz…む?……ひっ!?ババババケモっ……?…ごっちん?」
「………ぐすっ」

ヒドイ、なっちヒドイ。
今明らかににごとーのコト見て『バケモノ』って言おうとしたでしょ?
558 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:01
「ごっごっちん!!なんでそんなヒデブーな顔してるべさ?!
 何があったべ?よしよし、泣くんじゃねぇっしょ」
「うぅぅ…泣いてなんかないもん…」
「泣いてるっしょ!
 …べさ!なっちが面白い一発芸見せてあげるべ!!」


 ノビルベサ  / ´ー` \      モドルベサ ((●´ー`●))  
      ●⊂    つ● ビヨーン        ⊂     つ ボヨヨン


「どう?面白いっしょ?」
「………」
「ごっちん?…ごっちん!どうしたべさ!!」
「ンア…」
「ごっちん!ごっちんってば!!」

森を歩いてたらね、クマさんに出会ったの。
花咲く森の道、クマさんに出会ったの。
ごとーは、何を落としたんだろう?

「おやおや、世にも奇妙な一発芸に
 現実逃避してしまわれましたね、完璧です」
「べさ!?…っそんな!滑ったのかい?!ウケなかったのかい?!
 ショックだべ!!なっちの渾身の一発芸だったのに!」

ハハハ…、ありえねぇ…ありえねぇよなっち…そんなトコも好きだけど…。

「ごっちぃん!!…イッちゃってるべ…。
 こ、こうなったら……こうなったら…!!!」
「んあ?…っ!?」

突然ほっぺたを引っぱられて、唇に柔らかい感触、鼻を刺す甘い香り。
これは…これは…っ!!

んあー!!なっちとキスしとるがなー!!!!!
559 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:03
しかも飛ばない!飛んでない!!
意識はここにある!なっちの傍で、キスできてる!!!
イモの神ってば仕事早いじゃん!!

んあ…いつぶりだろう…気持ちいい…。
長らくおあずけ喰らわされてた、大好きな大好きな、なっちとのキス。

「…っ、ごっちん…」
「なっち…」

唇が離れると、なっちは泣いていた。
その涙を舌ですくって瞼におでこに愛を伝える。
ごめんね、待たせちゃったね、大好きだよ、愛してるよなっち。
こんな特殊な試練に付き合ってくれてありがとう、(●´ー`●)ありがとう。

ぎゅっと抱きしめてなっちの頭に顎を乗せる。
つむじにもキスして、てっぺんの髪を鼻で掻き混ぜた。

「んん…ごっちん、くすぐったいべ。
 それになっち薄いから……恥ずかしいっしょ…」
「あはっ、恥ずかしーことないよぉ?
 薄くても濃くてもなっちはなっち。で、ごとーはなっちが好き」
「…うん、なっちもごっちんが好き」

あー!!!もう幸せっ!!
…ハッ!待った!ごとーったらキスだけで満足しかかってたけど!

 絡 め る ん じ ゃ ん ! !

「んあ!ヤるぞ!ヤるんだなっちぃ!!!」
「ふぇ?なにを?…ってきゃぁ!!」

ナニをって聞かないでよぉ! あはっ♪

「紺野ぉ!!場所を提供せぃ!!」
「…ではそこのホテル・やるだべさへどうぞ。えぃ!」

んあ、なんか嫌なネーミングのホテルね…まぁその通りだからいーけどさ。
560 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:03


561 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:04

「ごっちん…」
「…なっち、お待たせ」

とゆーワケで、やって来ましたホテル・やるだべさ、723号室。
立ったまま抱きあって、お互いの背中を優しく撫で合う。

「ごっちん……海の香りがするっしょ」
「んあ、ごめん。臭い?」
「ううん。いい匂い…」
「そぉ?でも髪……ワカメ被ったままだった…」
「ふふっ、とったげるべさ。…ネギも」
「イテテ!」
「ど、どうしたべか?!」

んあ?どーしたんだろ?なんか今スカートからネギが引き抜かれた途端
鋭い痛みがお………ぃやいや!そんなコトより今は!!

「大丈夫!シャワーどうする?一緒に入る?
 ってか入らなくていい?ごとー我慢の限界なの」
「……いいよ」
「あはっ」

ベッドになっちを座らせてごとーは膝をつく。
そぉっと肩に触れて押し倒すと、子犬みたいな目が
柿の種の形になった。んあ、おいしそうだなぁ。

「ごっちん」
「っんぁ…!」

見惚れてたら、首にまわされた腕にひっぱられる。
んあ、なっちったら積極的だね、ごとー嬉しい!
562 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:04
「んっ…」
「ふぁっ……っ」

んあ…ちょっと苦しいよぅ。
なっちは本当にヤる気満々なようでごとーをきつく抱きしめたまま
上になろうと体を回転させ――――

「んぎゃああああああああああ――――――――――――!!!!!!!」
「べさぁっ!?ごごごぉっちん!?」

痛ぁい!ハンパなく痛ぁい!!
なんじゃこりゃぁ!お尻が異常に痛いんですけどぉぉぉ!!!

「ごっちん!どこが痛いんだい?!」
「ぁっ…ぐぁ…ひぅぅ…」

あまりの痛みで言葉にならない。なんで?
なんでいきなりベッドに仰向けになった途端お尻が痛いの?

「背中…はさっき触ったから違うし…ハッ!そういえばさっき
 ネギ抜いた時…!ってコトはお尻?!
 ちょっと見せてみるべさ!!」
「あぐぅ…」

今度はうつ伏せにされてスカートをペロンとめくられる。
いやん、なっちのエッチ。しょっぱなからバックなんてごとーヤだぁ。

「ひっ!ごごごごっちん!皮めくれてるべ!!」
「ひぁ?な…んの?」
「お尻の!!」
「ふぇ?」

お尻の皮が、むけてるぅ?
563 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:04
「パ…パンツも破れちゃってるっしょ…。
 ほんのり血も出てるべさ、早く消毒しないと」

えぇ!?ってかなんで?!ネギは刺さってたけどお尻にはあたらなかった
ハズだし、他になんかされたっけ?お尻に………

と、そこで脳内スクリーンに映し出される1つの記憶。

『サっトぉーキビ!サっトぉーキビ!』
『ゴーヤぁ!ゴーヤゴーヤぁっ!!』

んあ!あいつらかぁ!!そーいやお尻叩かれたんだ!ヒリヒリしたんだ!!

「ドーマンめ!忌々しい!!」
「ドーマン?それ…もしかして蘆屋道満だべか?」
「んあ。そんなコトはおいといて
 とりあえずごとーが下にならなきゃ大丈夫だから。できるから。
 しよう?なっち、お願いだからしよう?」
「ダメだべ!このままにしてばい菌入ったらどうするのさっ!」

んあ、いまさらだし。入るならもう入ってるよ。
ってコトでしよう、しましょう。

「なっちフロント行ってマキロン借りてくるべ!」
「ヤだ!!行かないで!ごとーの傍にいてよ!」
「へ?…すぐ帰ってくるべさ」
「ダメぇ!!行ったら泣く!!泣き喚いて死んじゃうんだからぁ!」
「しっ死ぃ!?!あぁーもぉ!!
 じゃあなっちが消毒してあげるべさぁ!!!」
「ぇ?…なっち?なにする気…?」
「舐めるに決まってるっしょ!!えぇぇぇい!!!」
「ひょぇ!?なっち!や、やめっ…」

そんなっ、いくらなんでも恥ずかしいよぉ!
と、抵抗しようにもごとーはうつ伏せで、手は上からなっちに抑えられてて
愛するなっちを蹴飛ばすワケにもいかないから
お尻に迫るなっちから逃れられない。…ふぁ!い、息があたるぅ!!
564 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:05



ぺろっ。


「ひんぐぃやぁあああああああああ――――――――――――!!!!!!!」

痛ーい!痛ーい!いーたーいぃぃぃー!!!
しみるしみるしみるぅ!!ってか舌が触れるだけで激痛っ!!
先生!麻酔お願いします!!でないとっ、マジでショック死しちゃうよぉ!!!

『後藤先輩、あなたのコトは忘れません』

んあ……そうだ、あの世逝ったら絶対呪ってやる。
覚悟してなよ紺野。

『てへっ。私、最近呪詛返し覚えたんでさっそく使えますね♪』

んなっ!?アンタ一体なに目指してんのよっ!!
呪詛返しなんか普通に生きてたら必要ないでしょーが!

「ひぎぃっ!…………ガクッ」
「ペロペロ…ごっちん、もうちょっとだからね!」
「…………」
「…む?ごっちん?ごっちーん?」
「………」
「ひょぉ!?ごごごごっちーん!!!」







「ククク…残念でしたね、後藤さん」
「…んあ、全然残念そうに聞こえないんだけど」
「まぁ、私にとっちゃ人事ですから、完璧に」
「殺す…っ!」
565 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:05

はい。みなさんおわかりの通り、あまりの痛みに気を失った
ごとーが目を覚ますと、なぜかあの砂浜に建てられたテントの中で
うつ伏せに寝かされ、お尻には大きなカットバンが貼り付けられていた。

んあ?っと顔を上げたごとーを見下ろしていたのは
忌々しい紺野と、涙目で手をぎゅっと掴んでたなっち。

気を失っている間心配してくれてたのは嬉しいけど
ずっと本人の意識が無いところでお尻が晒されていたのかと
思うと恥ずかしい。ちょっと涙が出た。

その後、初めて鏡で自分の顔を見たらなっちとキスしたおかげで
ヒデブーじゃなくなってたんだけど、それに喜ぶ間もなく
車に乗せられ(もちろんうつ伏せで)辿り着きたるは千歳空港。

んぇ?ごとーたちも帰るの?ってかみんなで帰るの?
高橋も小川も斉藤さんたちも黄色い人たちまで。

「紺野、高橋は帰っちゃダメなんじゃない?
 今日の夕方には他の子たちも来るんでしょ?
 …あ、そっか、ここで合流するんだ?」

そっかそっか、みんな飛行機で来るんだもんね。
ごとーみたいに走って来たりしないもんね。

「フッ、後藤さんったらまた愚問を。
 合流するかどうかはともかく、エンディングなんだから
 みんな集合するに決まってるじゃないですか」
「ハ?エンディング?」
「えぇ」

なんの?何が終わんの?
566 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:06
「ごっちん、歩いて大丈夫かい?」
「んあ。全然痛くないよ」
「あ、いたいた」
「へ?」

空港の中を、紺野を先頭にみんなで歩いていたら、紺野が何かを
見つけたらしく腕をスッと上げて立ち止まった。
その指のさす方には――――

「美貴!!まっつー!!!」
「ん?あー…ごっちん…」
「ごっちん!安倍先生たちも!おはようございますぅ」
「…亜弥ちゃん、もう昼だよ」
「あ…こんにちはだねぇ」
「キャハハ!どっちでもいいじゃーん!」

温泉帰りでリフレッシュしたハズなのに元気のない美貴と
その腕にくっついてニコニコしてるまっつー。
最後にあのコギャル声が聞こえたけど、2人しかいないなぁ。

「美貴ぃ、今の誰ぇ?」
「聞かないで。ってかお前も黙ってろ、2度と口きくな」
「えぇーありえな…フガっ、フガガっ」
「む?なにその羽、ファー?」
「なんでもないってば、それよりごっちんたちも今から帰るの?」
「いや、ごとーよくわかんなくって…大体チケットないし…」

「カオリが持ってる。大丈夫」

「どわぁ!?!かかかおりん!!なんでいんの?!」
「…ってかカオリせんせぇ、マジであのトラップで死にかけたんだけど」
「そうだ!かおりんひどいよ!!ごとーが何したってのさ!」
「そうだべカオリ!ごっちんをあんなヒデブーな顔にして!!」
「ミキたんもアベシーでした!!」

おまけにごとーは念願の絡みまで妨害されたんだぞぉ!!
責任取ってよねバカぁ!!!!!
567 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:07

「んー。みんなの言いたいコトはよくわかってる。
 だけど今は心に秘めておいて」
「「「「あぁぁん?!!?」」」」

秘められるか!こっちは怒ってるんだっつーの!!

「みんな、おかしいと思わない?
 ここんとこ期待を裏切ってカオの出番全然なかったでしょ?
 それには理由があってね。
 ある日、カオリは授業をサボって屋上で1人ピンチャポンゲームをしていまし…」
「んあ!ストップ!!」

待って!ピンチャポンゲームって何?!
ってゆーか期待って誰の?!その前にサボっちゃダメじゃん!

「あぁもう。後藤、邪魔しないでよ。
 でね、最高に盛り上がってた時に松浦が泣きながら走ってきたの」
「え……それってまさか…」
「べさ…なっちがお話聞いた時の?あの時カオリ屋上にいたのかい?」
「うん。で、話を聞いたカオは藤本の為になんかしようと思って
 一生懸命頑張ったの。その結果を発表するの」
「「「「発表??」」」」
 
だから何したのよ?そこの発表を先にして欲しいんだけど。

「藤本。あっち見てごらん」
「ハ?あっち?」

?が飛び交ってる美貴の頭に手を乗せかおりんは隅のベンチの方に
顔を向けさせた。ごとーたちもならって同じ方向を見る。

568 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:07



川; ´ v ´从


「おかーさんっ!!!!」
「お、おばさんっ!!!!」
「「えぇえ!?マ、ママンぅ?!?」」

キツネに続いてまたママン?!
い、言われてみれば似てるけどっ!似てるけど…マジで?!

「な、んで……」
「カオね、一生懸命捜したの。
 そしたら意外や意外、カオリの実家の隣に“小料理屋ママティ”っていう
 お店があってね、そこに入ったら見つけたの」
「ママティ…?え…じゃあ再婚相手は?」
「1度ね、再婚相手の実家の福井に住んでたらしいんだけど
 言葉の壁にぶつかって、ついでにその人リストラされちゃって
 それで2人でこっちに来たんだって。
 でも親や藤本に見せる顔がないから、真ん中らへんには行けなかったみたい」
「ちょ、ちょっと待つがの!!
 福井で言葉の壁ってどういうコトやぁ?!
 そら北海道とじゃ発音が違うけどぉ福井だって日本やよー!!」
「あ、愛ちゃん落ち着いて、あっちにいよ?ね?」
「福井 is ジャパァン!!越前ガニだってあるんじゃぁー!!」
「わかった、わかったから!」 

周囲の視線を浴びつつ、小川に引きづられて福井出身の高橋は
どこかへと連れ去られた。
かおりんの話を聞いても、20メートル程離れたところから
気まずそうに自分を見るママンの存在が信じられない美貴は呆然としてるし
まっつーも目を見開いて固まってる。

ここは、ごとーが背中を押そう。
切れかけた家族の絆を、もう1度結ぼう。

「美貴、行っといで」

美貴の背中をポンと押す。
戸惑った顔が振り向いた。だけどすぐ、目を合わせてしっかりと
頷くと、まっつーの手をそっと離して歩き出した。
569 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:08

「………美貴……」
「……お、かー…さん……」
「あ、あの……ごめんね?…今まで、本当に……」
「別にいいよ。悪いのは、おかーさんだけじゃ、ないし」
「…っ美貴!!」

ハンカチを口にあてて、涙でボロボロの顔のママンが
美貴に飛びつく。抱きしめられた美貴は、両手を宙に浮かせて
散々迷った後、ポンポンとママンの背中を優しく叩いた。

「ミキたんっ…よかった……ひっく…」

見守るまっつーは嬉しそうに笑顔で泣いて
テテテとママンたちに近づくと美貴の背中にはりついた。

「あら、あなた…亜弥ちゃん?大きくなって…」
「…はい、お久しぶりです」

美貴を挟んで、ある意味嫁姑の対面。

「…そうだ、美貴さ、亜弥ちゃん家に嫁ぐから。
 名前も松浦テーキヤテーキヤテキテキヤテースリコンボハリマノベット
 ウソペットウチャワンポーズノヒヨコ美貴助に改名するし」
「ひィっ!?なにその長ったらしい名前?!」
突然、ママンは甲高い悲鳴を上げて美貴から体を離す。

「だから美貴の新しい名前。
 これじゃないと亜弥ちゃんのパパさんたちに認めてもらえないからさ。
 おかーさんも気が向いたら覚えてよ」 
「ひィィっ!?覚えられるワケないでしょそんなモン!!
 ってゆーかなんで改名してまで嫁ぐの!!おかーさんは反対です!
 美貴の名前は藤本美貴!!それ以外は認めません!!」
「ハァァ?!?いまさらそんなコト言われても決めたし!
 見てよこのブレザー!!美貴は亜弥命なんだよ!一生一緒なんだよ!」
「っ…ミキたん…」
「なぁーにが亜弥命よ!今すぐそれママン命に変えなさい!
 おかーさんは子供は藤本美貴です!
 ステーキ屋の助さんなんか育てた覚えはありません!!」
「誰がステーキ屋だ!!
 ってかこっちだってここ5年ぐらい育てられた覚えないし!!」
「ひィ!?ごめんなさいっ!」

ギャーギャー ギャーギャー
570 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:09

「んあ、モメてるなぁ…」
「なっち、不安になってきたっしょ。
 ごっちんのお母さんに気に入ってもらえるかなぁ…」
「んあ?それは大丈夫じゃない?
 いっつもプリティー小町に会わせろってうるさいもん」
「そ、そうだべか…よかった…」

あっは、嬉しいな。
なっちもごとーと一緒になるコト考えてくれてるんだ♪
後藤なつみかぁ…いい感じだよねぇ…あ、安倍真希でもいーんだけどぉ。

「さてと、では後藤さん、エンディングいきますよ」
「んあ?だからエンディングってなに?」
「終わりですよ」
「んあ!そんぐらい知っとるわ!何が終わるのよ?!」
「何って…しいて言えば私たちが終わるんですね」
「ハァァ!?ちょっと待って!!
 まだいーじゃん!終わるなんて意味わかんないし!!」
「だって…後藤さんも藤本さんももう迷える子羊ではなくなりましたから
 続ける理由がないじゃないですか」
「でもでも!ごとーまだなっちとできてないし!
 主役がハッピーになってないっつうの!!」
♪〜
「べさ?なんだべ、このメロディー?」
「エンディングテーマですね。完璧です」
「だから終わらないってば!!」
「演奏&歌は黄色いTシャツでお馴染みの“ストレイ シープ応援団”の
 みなさんです、ハリきってどうぞ!」


♪住み慣れた我が家を 雲と青空の下 しばらく寒さと 雨に風にとうたれ  
 この町でいちばん すてきで暮らしたい リフォームしようよ 私 心も 夢も
 花の香りを 少しだけ入れて 町の香りも 少しだけ入れて
 優しく育った樹木 香りも入れて リフォームしようよ 新日本ハウス♪
571 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:11
「んあ!また幾三かい!リフォームって関係ないじゃん!!
 しかも新しいバージョンだし!
 ごとーは前のが好きだったぁ!!」

だって何が不満って新しくなって歌声に訛りがなくなっちゃったの!
『すんみんなんれんたっ♪』が『すみなれたっ♪』になっちゃったのよ!!




「とゆーワケで、今までカオリのコトを応援してくださった方本当にありがとう。
 出番少なくてごめんね。カオ、不本意だったけど…でも
 カワイイ生徒の為だもん。いいんだ。うん、カオってそういう人だから」
「どういう人ですか?サッパリわかりませんよ。
 …まぁそれはおいといて、こんにちは、陰の主役こと紺野あさ美です。
 本当に、ストレイ…略してストシーは紺野あさ美あってのストシーでしたね。
 みなさんもこの世でたった1つのおイモを大切に。
 真実はいつも、イモと共にあるのです」

「おりゃぁぁあ!!福井ナメとったら
 痛い目に遭うんだぁぁ!!味噌アイスだってあるんだぁぁ!!!」
「うぇっ、味噌アイス?まずそーだよ愛ちゃん」
「コリャまことぉ!こんなトコでまでSにならんといてぇ!」
「なっ!?なってないっつーの!!
 ってかソースカツ丼はいいの?」 
「ハッ!忘れとったがし!」
「…………」 

「亜弥ちゃん!飛行機の時間だからもう行くよ!」
「ふぇ、で、でも……ミキたん待って!」
「美貴!待ちなさい!!お母さんは許しませんよ!
美貴ヌケなんてマヌケな名前絶対許しません!」
「ゴルァ!誰がミキヌケだ誰が!」
「キャハハ!修羅場修羅場ぁー!!」
「ひィ!?綿毛が喋ったぁ?!」
「だぁ!お前はさっさとどっか逝け!!」
572 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:12

♪いつまでも近所と 家族 友達 呼んで お酒を片手に 夢と未来を語り♪

「おや、いつの間にか2番に突入してしまいましたね。
 飯田先生、これから一杯どうですか?」
「おっいいねぇ。反省会もしつつ飲み明かそうか」
「はい、お疲れ様でした」

♪この町でいちばん すてきで過ごしたい リフォームしようよ 私 笑顔も すべて♪

「ごっちーん、よしこも来たよぅ!
 …ってあれ?もう帰るの?えぇー梨華ちゃんも連れて来たのにぃー」
「残念だね、よっすぃー。
 でもせっかくだから一泊してこっか?」
「もちろん喜んで!!ムフフ…」

「フフフ、独占スクープだわ!
 お母様、バタ子の我侭聞いてくれてありがとう!」
「бγφψεж〜?」
「え?そうね、来週ぐらいから交換日記かなっ♪」

♪庭に出てみて 星を数えては 月の灯りに 君を抱きしめて♪

「大変!村っち!!私たち今完全に放置されてたわよ!
 ものすごく久しぶりな感じじゃない!!」
「仕方なかろぉ、そういう位置なんじゃから」
「ダメ!諦めちゃダメよぉ!!」

♪優しく育てと子供  寝顔に夢を♪

「んあぁぁああああー!!!だから終わんないってば!
 なっちと絡ませて!お願い!そしたら終わっていいから!!
 据え膳食わして!食わせろやぁぁああああー!!!!!」
「ごっちん!そんな大きい声ではしたないべさ!」
「んあぁぁー!!だぁってぇー!!!」

♪リフォームしようよ 新日本ハウス♪




573 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:12




川o・-・)ノ<終わらせます。

( ` Д ´)<んあぁ!!
        絡ませろっつってんのにぃー!!!




574 名前:ラスト シープ 投稿日:2003/11/21(金) 02:13


(●´ー`)<おしまい>(´ Д ` )


575 名前:のえる 投稿日:2003/11/21(金) 02:14

こんなにもアホで、何1つ身の為にならない話を
最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
あたたかいレスをくださった方、ものすごく励みになりました。
何度もにわかスランプに陥った時助けていただきました。
ツッコミ、本当に本当に嬉しかったです。

激しく無理矢理な終わり方ですが、スレもいい具合に膨らんでますんで
破裂する前に終わらせていただきます。
最後まで無茶苦茶な話でホントすいません。

ボツになったネタや、書きそびれた話、エピソードなどいくつかありまして
『あれ?そーいやここってなんだったの?』とか
『おいおい、あれはなしかい?』など
探せばアラはたくさん出てきますので、探さないでくださいね(爆死

誤字脱字も大量にありましたので、さぞ読みにくかったと思います。
それでも優しい読者様にのえるは感謝しまくりです。
576 名前:のえる 投稿日:2003/11/21(金) 02:15

実にどうでもいい話なんですが、完結記念に雑談しますと
この話で最初に思いついたのは黒美貴が飛び降りるシーンでした。

しかし、最初は傷つける気など毛頭なく
空中で突然黒美貴の背中からイモの皮の翼が生え
バッサバッサと飛んであややを抱き上げ、病院まで飛んでいく…
という話でした。

なのに、作者がDBの完全版を買って読んでいたために
おまけに紺野さんもDBヲタであったため、あんなコトに・゜・(ノД`)・゜・
でも一応どっち使おうか直前まで悩んだんですけど(悩むナヨ

えぇっとあとは、ごっちんの体質こそが1番ワケわかんなかったんですが(爆
あれはその場の思いつきで、全く後先考えずに書いてしまって
なのに結果まとまったんで(そうか?)よかったと思いたいです(希望カヨ


本当に、無駄に長く続いた話にお付き合いくださって
ありがとうございました。
最後に、久しぶりのあの言葉で締めたいと思います。


( ´ Д `)人(´ー`●)<なちごまどぅ!
                                のえる。
577 名前:のえる 投稿日:2003/11/21(金) 02:16
レスありがとうございます。多謝。

>541 jinro様
ななな泣いてくださるなんて、ありがとうございます。
でも結局アホで申し訳(爆

>542 つみ様
ホントやっとですね(w
なちごま後半ほとんどなくてすいませんでした。
でも誰がなんと言おうと主役はあの人です(キッパリ

>543 名無し読者様
うぉぉ…泣いてくださってありがとうございます。
しかし作者はホ○ルの墓を見ても泣かない冷徹な人間です(爆

>544 名も無き読者様
目、目まで!?この話、有害ですね(爆
えぇと…ですから主役はあの人だったハズですよ(…たぶん
いかん、自信なくなってきた(爆死

>545 名無し読者様
え?楽しみ?書きたかったんですが、書くスペースもないんで(爆
人は忘れるコトで大人になるんですよ(何
私は昔そう悟りました(ダカラ何

>546 名無し読者様
えぇぇ!?私が神ぃ?!?椅子から転がり落ちましたよ(w
サスペンスはちょっと違うような気がしますが(爆
興奮していただいてありがとうございました。
578 名前:つみ 投稿日:2003/11/21(金) 13:42
非常に長い間お疲れ様でした〜〜!!
最終話も爆笑の渦をありがとうございます。
おそらくこの連載が始まってから、
実生活でもこんなに笑ったことはないと思います!
主役はいったいだれだったんでしょうかねぇ〜(w
最後の最後まで笑いあり涙ありの作品をありがとうございました!

それではやはり最後に 

     ( ´ Д `)人(´ー`●)<なちごまどぅ!
579 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/21(金) 18:26
本当にお疲れサマーでした。
こんなに爆笑できたり、時には切なくなったりする作品初めてでした。
大好きですホント。作品も、…作者さんも(ポ←ぉぃ
こんなにも感情の動くものを、ありがとうございました。
素晴らしいっす!

では私も最後に

     ( ´ Д `)人(´ー`●)<なちごまどぅ!


    
580 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/24(月) 21:54
お疲れ様でした。
途中から発見して一気に読み。
素敵な作品、ありがとうございました。

そして私も最後に

     ( ´ Д `)人(´ー`●)<なちごまどぅ!
581 名前:のえる 投稿日:2003/11/25(火) 23:07
>578 つみ様
くだらない話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
自分で書いた話ではどう頑張っても笑えませんので本当にありがたいです。
主役……題名が藤本さんからきてる時点で主役は彼女だったのかも
しれませんが(爆

>579 名無し読者様
くだらない話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
初体験ですか(爆 こんな話が初(ryとはなんだか申し訳ないような気もしますが(汗
告白嬉しいです(ポ←マテ 
感情まで動かしていただいて…感無量です。ありがとうございました。

>580 名無し読者様
くだらない話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
一気ですか、それは読者様こそお疲れ様でした。
なんでこんなに長くなったのやら、全てはごっちんとミキたんのせいです(爆
ん?いや、ヘタティのせいです(断言


後半ほとんどミキアヤタイフーンで『なにがいまさらなちごまどぅだ!』と怒られて
然るべき状況の中、なちごまどぅ返ししてくださってありがとうございました。
あと、最終話をオチで書き込んだのでメル欄がわかりにくい……反省。
まぁ読まなくてもなんの支障もないからいいか(w
ではでは本当にありがとうございました。

(*´ Д `)´ー`●)  川*VvV)(‘ 。‘*从
582 名前:jinro 投稿日:2003/11/28(金) 09:10
完結おめでとう&お疲れサマです。

最後まで涙涙で腹イテエw
ではオイラも最後に

    ( ´ Д `)人(´ー`●)<なちごまどぅ!
583 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/07(日) 16:55
とうとう完結したのですね。
いやぁ、個人的には黒美貴からホワイティという流行語大賞
にも選ばれた藤本美貴に惚れましたよね、ほんと。
あやみき最高!!
そんでもってゴッチン、散々しどい言葉で罵りながらも最後まで戦ってくれて
ありがとう。

ラブ、ストシー色。
584 名前:178 投稿日:2003/12/08(月) 04:54
わぁ!久しぶりに来てみたら終わってたー!びっくり・・・・
ラストにこんなにレスが遅れてしまったのが残念

凄く楽しませてもらいました。凄く面白かったです。感謝!
585 名前:のえる 投稿日:2003/12/13(土) 03:27
>582 jinro様
レスありがとうございます。
最後までグチャグチャなものにお付き合いいただいて、ホントに感謝です。
お腹大丈夫ですか、私は今猛烈な空腹に襲われています(爆
(●´ー`)人(´ Д ` )なちごまどぅサンキューw

>583 名無しさん
レスありがとうございます。
へぃ、やっとこさ終わりました(w
りゅりゅりゅ流行語大賞ですか!やったねホワイティ!(爆
ただ、ホワイティの元ネタは白いスーツに花束を持ったオカマキャ(ry
黒美貴もホワイティも書いててすごい楽しかったんで
惚れたなんて言っていただけるとすげぇ嬉しいです(w
(*´ Д `)<あはっ、ありがとう!
労いのお言葉もありがとうございました。
ストシー色って、きっとアホな色なんでしょうね(爆

>584 178様
いえいえ全然、のえるも遅刻の常習犯でしたから(何
わざわざレスくださってありがとうございます。
いつもメル欄見るの楽しみでした(w 
色々気を遣っていただいて、こちらこそ感謝感謝大感謝です!
メル欄でのなちごまどぅも、ありがとうございました(w
586 名前:のえる 投稿日:2003/12/13(土) 03:28
もう誰も見てらっしゃらないかと思われますがひっそりと宣伝を。

新作を始めさせていただきました。
諸事情により、HNを微妙にイジりochiでひっそりと底に沈めております。
またしても悲しいほどにアホな話ですので、もし『ん?このアホ加減はまたお前か!』なんて
ことになってしまった方がおられましたら
『しょうがねぇなぁ』と呟いて読んでいただけると嬉しいです。
587 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 02:44
見つかりません・・・。ヒント下さい。
588 名前:のえる 投稿日:2003/12/23(火) 03:10
お手間おかけして申し訳ありません。
えっと、ヒントはですね、『すとれい しーぷ』があるスレの色と月の色を
足すとできる色のとこの底にあります。
あとスレタイが写真を撮るときの掛け声っぽいです。

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