私立朝日ヶ丘大付属学園高校殺人事件
- 1 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月12日(火)18時02分59秒
- どうも初めまして聖なる竜騎士と言います。推理小説系をメインとしています。って言うか
恋愛系とかサスペンス系とか書けないし、自分は推理小説しか読まないので。なにぶん、右
も左も分からないので時に重大なミスを犯す事もあると思いますがその時は遠慮無く申して
下さい。またしょっちゅう誤字脱字があると思いますがその時は指摘くださるなり、心に留
めて下さるなりご自由にしてください。まあ、こんな自分ですが末永くお付き合いください
ここは都内にある、ある有名私立高校「私立朝日ヶ丘大学付属学園高校」である。
この高校は全国でもトップクラスの進学率を誇り部活動も盛んで風紀も乱れていない伝統あ
る高校である。今回の舞台はこの高校の中の部活動の内の1つ「ミュージカル部」と言う部
活動内での話である。このミュージカル部は演劇部とも、ダンス部とも違う新タイプの部活
動である。
ここを舞台としたあんな事件が起ころうとは誰が予想できただろうか?
- 2 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月13日(水)09時09分37秒
- 高橋「あれ、まこっちゃん、今の台詞間違ってるよ。」
小川「え?あっ、本当だ。ごめんなさい。」
石川「ちょっと、いい加減にしてよね!小川さん。あなたさっきも同じ所で
間違えたでしょ?この場面ではここが肝心の場所なのよ。分かってる?ここ
で間違ったら、この舞台全体に影響するんだからね。」
今、ミュージカル部で場面、場面をグループで立ち回りの練習をしている。
その中でメインの場面の練習を行っているのがこのグループである。その中
で台詞を間違えた後輩にきつく当たっているのはこの舞台の副主役を努める
石川梨華(いしかわりか)、3年生部員である。また怒られているのは同じ
部活動内、2年生小川麻琴(おがわまこと)である。
高橋「まあまあ、石川先輩。まだ台本配られてから2日しか経ってないじゃ
ないですか。まだ殆どの人が覚えられてないですから別にそこまで言わなく
もいいんじゃないですか?」
そう言って、小川に対して怒鳴り散らしている石川を止めに入ったのは同じ
く2年生部員高橋愛(たかはしあい)である。この高橋は今回の主役を務め
るのだ。
石川「何言ってんのあんた!そんな甘い事言っている暇無いでしょ。ただで
さえここが見せ場だって言うのにこの子のこんなミスで舞台1つ台無しにし
たく無いのよ!」
高橋「それはそうですけど・・・、でもいくらなんでも言い過ぎじゃあ・・」
石川「何・・・あんた、調子に乗ってんじゃないわよ!たかが1回主役にな
っつたからって、でかい口叩いてんじゃ無いわよ。」
実は石川は今回の舞台の主役を高橋に取られてしまったのだ。
- 3 名前:セントラル 投稿日:2003年08月23日(土)10時53分22秒
- 続きはかかれないんですか?
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)23時05分28秒
- まだ?
- 5 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月30日(土)17時22分09秒
- まことに申し訳ございません。私、学生なもので更新がかな〜り不定期です
それ故、読者さんには多大なるご迷惑をおかけします。
<本編>
石川「大体ね、あんた!前回の舞台や前々回の舞台だって台詞、台本と全く
違う事言ってたじゃない。その後、ちゃんと話が繋がったから良かった物の
あんな事しょっちゅうあったらたまんないわよ!」
そう言われると普段おとなしい高橋も黙っては居ない。
高橋「むっ!、そう言う石川先輩だって役作りするときやたら感情的になり
過ぎて色々失敗するくせに。」
石川「何ですって〜!!!!」
高橋「なんですか!!!!」
こうなるともう手が付けられない。この2人、実はこんな騒動は今に始まっ
た事ではない。高橋が1年の時から多少こんないざこざはあったが、高橋が
今回の舞台の主役に抜擢されてからというもの、ほぼ毎日、起きている。正
に毎日の恒例行事と化していた。
いつもならここら辺で一様熱は冷めるのだが、今日はお互いの襟首を掴み合
い噛み付くと言わんばかりの勢いで襲い掛かる。流石に周りにいた他の部員
が止めに入った。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)20時13分58秒
- もう終わり?
- 7 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月30日(土)20時45分27秒
- 最初に止めに入ったのは今回の火種にもなった小川、続いて同じく一緒に稽
古をしていて高橋の親友である紺野あさ美(こんのあさみ)、新垣里沙(に
いがきりさ)が高橋を押さえに入った。今度は、石川の親友、吉澤ひとみ(
よしざわひとみ)、加護亜依(かごあい)、辻希美(つじのぞみ)が慌てて
石川の暴走を制止させるべく入った。
そんなこんなで、高橋、石川の衝突は収まった。その様子を見ていた飯田圭
織(いいだかおり)と安部なつみ(あべなつみ)は呆れながら2人に言った。
飯田「あんたら、いい加減にしなさい!」
安部「そうだよ、カオリンの言うとおりだよ。もうすぐ、中澤先生来るよ。」
安部が言った中澤先生とはこのミュージカル部の顧問の中澤裕子(なかざわ
ゆうこ)の事である。この人はミュージカル部の中で正に、鬼の様な存在で
ある。今のところ中澤にはこんな騒ぎが起きている事はなるべく知られない
様にしている。もし知られたら・・・・。
また、この2人は朝日ヶ丘大付属学園ミュージカル部のOBであり、朝日ヶ
丘大の生徒である。毎年数人のOBがこのようにして高校の部活のコーチ役
を行うのが風習になっている。
向こうで違うグループを押しえている矢口真里(やぐちまり)も少し笑いな
がら見ている。すると飯田の言う通り中澤先生が部活動場所であるダンスホ
ールに入ってきた。
- 8 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月30日(土)20時59分47秒
- 中澤「よーーーし!今日の練習はここまで!全員集合!」
中澤の威勢のよい声がただでさえ響きやすいダンスホール内にビンビン響い
た。今の今まで睨み合っていた高橋と石川も姿勢を正した。
全員が中澤の元に集合して、いつもの様に簡単なmeetingを終え、中澤の少し
長ったらしい本日の締めの言葉が終わり解散となった。
ここまではまあ、普通の部活動である。今、時計は8時30分をさしていた。
高橋達も部室に戻り練習着からいつもの制服に着替えながら小川や紺野、新
垣と世間話をしていた。中澤も1人、教務室に向かった。
- 9 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月30日(土)21時30分50秒
- 中澤は教務室で自分も帰る支度をしていた。すると教務室のドアが開く音が
した。
藤本「失礼します。」
教務室の入口でそんな声がした。声の主はミュージカル部1年生部員の藤本
美貴(ふじもとみき)であった。藤本は1年生部員の中でも一目置かれる存
在だった。
中澤「ん?どないしたんや、藤本?」
藤本「中澤先生。1つお聞きしたい事があります。」
中澤「ん?なんや?」
藤本「中澤先生。何故、先生はあの2人をあの様な役に置くのですか?」
中澤「なんや、いきなり。あの2人ってのは恐らく高橋と石川のことやろ?
あの2人がどうかしたか?・・・何てな、まあ、藤本が何を言いたいかは、
まあ何となく分かる。あの2人が毎度毎度言い争いをおこすんやろ?」
藤本「中澤先生は知ってたんですか?先輩達がいつも言い争いをしているの
を知っていたんですか?」
中澤「気づかんはずがないやろ、何年顧問やってると思ってんねん。それで
何で2人がそんなに仲が悪いのにあえて、主役、準主役を任せたか・・・・、
って事を言いたいんやろ?」
藤本「・・・・・・。」
藤本は沈黙した。
- 10 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003年08月30日(土)22時15分21秒
- 中澤「まあ、藤本は知らんかもしれないけどあの2人の衝突は別に今に始ま
った事ではないんや。あの2人は高橋が1年の時から衝突してるんや。」
藤本「えっ!高橋先輩が1年生の時からですか?」
中澤「ああ、まあ話せば長くなるけどあの2人はああ見えてもお互いにライ
バル視して認め合っているんや。」
藤本「じゃあ、アドリブが多いとか、感情的になりやすいとかって言うのも
・・・」
中澤「ふふ、恐らくひっくり返せば、お互いに大した臨機応変力、度胸の持
ち主、凡人を超えた感情移入力だ、とか言いたいんやで。きっと。せやから
今回はこれ位で勘弁してくれへんか?」
藤本「・・・・、分かりました。どうも失礼しました。」
そう言うと藤本は教務室を後にした。
中澤(ふ〜、1年にしちゃあ言いたい事言うな〜。大した奴だ。)
- 11 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/11(木) 16:58
- すいません。また更新が大変遅れました。ご迷惑おかけします。
なにとぞ、読んでくれた読者の皆様、ご感想などの方、宜しくお願いします。
教務室からの帰り道、藤本はあまり納得のいかない様子だった。別に中澤の説明に
不満を持っているわけではない。ただ、藤本としては石川、そして高橋の存在が何
となく気に食わない、そんな感じだった。
- 12 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/11(木) 17:10
- 藤本は中澤や他の部員が注目し、一目置くほどのなかなかの実力の持ち
主だ。その才能は幼稚園の頃から遺憾なく発揮され、その後、小学校、
中学校とやはり今と同じように注目され続けてきた。しかし高校に入学
したらどうだろう?今、所属しているミュージカル部には藤本以上の才
能を持ち合わせた石川や、人一倍の努力という努力を重ねる高橋が既に
いるのだ。確かに藤本の才能は誰もが認めているが、やはりその2人の
せいで藤本の存在が少なからず前より薄れている事は確かであろう。
それ故、今までよりもちやほやされなくなり多少気に食わない存在であ
ったかもしれない。
しかし、だからと言って、石川、高橋に何をするわけでもなく、別に練
習に出なくなるといったことはしない。藤本もこの世界が好きなのだ。
- 13 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/21(日) 17:08
- 亀井「お〜〜い。美貴ちゃん。」
藤本が歩いていると廊下の向こうから声が聞こえた。その声の主は同じ
くミュージカル部の1年生部員亀井絵里(かめいえり)だ。その後ろに
は同じく1年生部員、田中れいな(たなかれいな)と、道重さゆみ(み
ちしげさゆみ)がこっちに向かって小走りしている。
田中「も〜、探しても見つかんないからびっくりしたよ。こんなところ
でなにしてんの?」
藤本「え、別に。」
道重「いっつもそればっかじゃん。美貴ちゃんはいつも。」
藤本「まあ、いいじゃん。別に。もう遅いから早く帰ろう。」
4人は何だかんだ言いながら、笑いながら、くだらない世間話に花を咲
かせながら学校を後にした。
- 14 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/21(日) 17:16
- 藤本は正直嬉しかった。藤本はその才能ゆえ、特に親しい友人と言う者
が少なかった。また、性格も意地っ張りなため、今まで親友と呼べる親
友はいなかった。しかしこの同じミュージカル部の亀井、田中、道重は
何故かこんな藤本に親しげに寄って来る。この3人は部活内では藤本程
では無いにしろ1年生内では中々の実力者、何かお互いに引き付け合う
物があるにであろう、入部してすぐにこの4人は仲良くなった。例え、
他に友達が殆ど出来なくとも藤本には十分であった。藤本は今のこの状
がいつまでも続けばいいと思った。
- 15 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/21(日) 17:29
- さて、場面が変わりここはミュージカル部の部室、週末最後の部活が終
わり、皆は早く帰ろうとする者もいれば、いつまでも友達と話をしてい
る人も沢山いる。
小川「ね〜ね〜、みんな。今日、土曜日じゃん。明日休みだし、これか
らいつものとこ行かない?」
紺野「いいね〜。行こ行こ。愛ちゃん達どうする?」
高橋「賛成〜〜!」
新垣「私も賛成〜〜!」
小川「お〜〜〜し決まり!じゃあ早速出発!」
「いつものとこ」というのはこの4人が週末部活動が終わったあとに寄
る学校の近くにある24時間営業のファミレスのことである。ここは、
学生に人気があって高橋達以外にも週末沢山の人が訪れる場所である。
4人はたいてい、週末にはここに来てジュース1杯で何時間も粘ってお
しゃべりして帰るのだ。
- 16 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/21(日) 17:41
- 4人がワイワイ話しているすぐ横を着替え終わった石川達が通り過ぎよ
うとした。
その場に自然と緊張が走った。何しろつい1時間位前に高橋と石川は胸
倉掴んで一触即発状態になっていたのだ。例え時間が経っているとはい
え、また何かのはずみで衝突するのではないか、周りにいた部員はそう
思った。無論近くにいる小川、紺野、新垣、吉澤、加護、辻はなおさら
である。
ところが、
高橋「あ、石川先輩。どうですか?私達これからいつもの場所行くんで
すけど、石川先輩達も一緒にどうですか?」
石川「勿論・・・、て言いたいところだけどね、残念なことに私達今度
模試があるのよ。宿題もあるし勉強しなきゃだから今日はパス。ゴメン
ね。また今度誘ってね。」
- 17 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/21(日) 17:50
- え・・・・・・・?
明らかに高橋と石川の雰囲気と周りの雰囲気が一致してない。周りの部
員は今度は掴み合い、殴り合いを想像していたのに対し、当の2人は何
とも和やかな雰囲気、さっきの事件などどこ吹く風、である。
石川「あっ、やば。このままじゃ電車に間に合わない。急がなきゃ!」
吉澤「え、嘘。もうそんな時間かよ。辻、加護、走るよ。」
加護「おう!!」
辻「合点承知!!」
そう言って、4人は帰って行った。
高橋「う〜〜ん。模試があるんじゃあねえ。しょうがない。私達4人で
行こう。・・・・、あれどうしたの?」
高橋はあっけに取られている3人を不思議そうに見つめた。
- 18 名前:名無しだよん 投稿日:2003/09/22(月) 23:57
- 俺は竜騎士に期待する。
がんがれ。
- 19 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/28(日) 16:25
- ありがとうございます。「名無しだよん」さん。これからもこの駄作の
応援宜しくお願いします!!
新垣「へ〜〜、愛ちゃん、石川先輩のこと、あんまり嫌いじゃあないん
だ。ちょっと意外だね。」
新垣はいつもの店でフリードリンクを飲みながら言った。
高橋「別にそんなこと無いよ。石川先輩はすっごく尊敬できる先輩だよ。
あそこまで自分の役に徹底して入り込める人って中々いないし、それに
いいライバルだし・・・」
小川「普段恒例行事みたいになっているあの取っ組み合いも裏を返せば、
お互い認め合ってるってことなのかな〜。・・・・ねえ、コンちゃん、
どう思う?」
紺野「ふえ?」
他の3人はフリードリンクしか頼んでいないのに、紺野だけ散々迷った
あげく、パスタとカレーライスを頼んで、口いっぱいに詰め込みながら
何とか小川の問いかけに答えた。
小川「コンちゃんには聞いてないか。」
まあ、そのあともたわいの無い話が盛り上がり、そろそろ、期末考査が
近いね、勉強しなきゃね、じゃあ、そろそろ今日は帰ろうか、と言う具
合になり今日の宴はお開きになった。時刻にしてちょうど10時30分。
4人は遅くなったので親に連絡するため、各々鞄から携帯電話を取り出
し電話をかけた。
- 20 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/28(日) 16:34
- しかし高橋だけは自分の鞄から携帯を探し出せずにいた。
高橋「あれ〜、どこいったんだろ?」
新垣「どしたの?」
高橋「私の携帯が見つかんない。・・・ねえ、知らない?」
紺野「そう言えば、愛ちゃん、部室出るときいじってなかった?」
高橋「え・・・、あっ!そうだあの時メールが来て・・・。じゃあ多分
部室に忘れてきたのかな?どうしよう。休みの日、携帯無いときついな
〜。・・・ねえ。一緒に着いて来てくれない?」
3人「え〜〜〜〜〜。」
高橋「お願い!!今日、私のおごりにするから。」
小川・新垣・紺野は高橋ごおごると言うことでしぶしぶ着いて行く事に
なった。
- 21 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/28(日) 16:52
- 4人は数時間前来た道を戻っていた。いつもの晴れた朝ならこ辺りは両
脇に欅の木がズラーっと並んでいてその外側も様々な植物が生い茂って
いて、都会の真ん中では到底見られないような緑溢れる学校前の通りだ。
しかし今は違う多少、電灯はあるものの、明かりが照らされていない場
は暗闇でしかも人通りがまったく無い。いつもなら学校から、いつもの
場所に行くのに10分あれば余裕で着くところを、4人固まってビクビ
クしながら歩いていたので倍の20分かかってしまった。
何とかしてやっと、学校の中央玄関前に到着した。
そこは、普段なら多くの生徒が賑わっていて、日の光に照らし出されて
いる真っ白の校舎の壁が際立って、辺りに立っている新緑豊かな木々が
水水しく映る。そして、目の前には正に平和の象徴とも言える神々しい
「私立朝日ヶ丘大付属学園高校」が腰を据えて生徒を見守っている、そ
んな、風景がもはや当たり前のようにあるところだった。
しかし、現在4人の前にある物は、真っ暗で今にも自分達を飲み込んで
しまいそうな暗黒とその中に不気味なまでに佇んでいる、もはや朝の顔
とは180度逆の廃墟と化した様な恐ろしい「館」が、ただただ在った。
- 22 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/09/28(日) 17:03
- 高橋「うわ〜〜・・・、噂には聞いていたけど夜の学校がこれだけ怖い
なんてね〜。」
小川「ホンと、ホンと。」
高橋「・・・じゃあ行きますか・・・」
紺野「え??私も行くの?」
高橋「何言ってるの?当たり前でしょ?ねえ、まこっちゃん?」
小川「へ?」
新垣「マジ?」
高橋「え〜〜!、なんで〜?約束したジャン。」
新垣「だ、だって実際本当に怖いんだもん。」
小川「愛ちゃんには気の毒だけど1人で行ってきて。」
高橋「えーーーーー!!!!????」
こうして高橋は部室まで1人で携帯を取りに行くこととなった。
- 23 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/05(日) 16:22
- 高橋は中央玄関を入って右に進んだ。この学校は中央玄関から見て、左
側校舎は1〜3年生の教室、音楽室、図書室、から視聴覚室、教務室へ
と主要な施設が並んでいるのに対し、右側校舎は体育館やミュージカル
部のダンスホール、はあるものの後はゴミ収集場や物置程度しかない何
ともアンバランスな造りとなっている。
高橋はいつも部活で使うダンスホールに伸びる廊下をたった1人で歩い
ていた。そこは外から漏れる微かな街灯の光だけしか入ってこない、電
気もついていないほぼ漆黒の空間である。数メートル先も見えないただ
ただ暗闇が続くだけの空間であった。
- 24 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/05(日) 16:34
- 高橋は何とかダンスホールの入り口までやって来た。途中何度引き返そ
うか、と考えた事か。しかし、無理言って着いて来てもらった3人に悪
いと思い、帰るに帰れなくなった。
高橋(え〜〜い!ここまで来たらさっさと携帯見つけて早く帰ろう。)
高橋は予め教務室の学校中の鍵が収納されている通称「キーボックス」
と呼ばれる箱からダンスホールの鍵を持ってきていた。その鍵を鍵穴
に差込み鍵を開けた。ダンスホールの扉は防音機能や防犯のために結
構重たく出来ている。それを高橋1人では骨が折れる作業だ。
高橋は何とか扉を開けた。そこは今まで以上の闇が高橋を待ち構えて
いた。そのままいたらあっという間にその終わりなき闇に永遠に飲み込
まれそうな、そんな感じを受けた。高橋は無意識の内に扉から部室まで
の僅かな道のりを足早に歩を進めた。
- 25 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/05(日) 16:44
- 高橋は僅かながらその異変に気づいていた。
何かが違う・・・・。
辺り一面が暗闇で言いようも無い恐怖に脅えている事は確かである。今
ある物は恐怖以上の何者でもない。だがしかし、先ほどの玄関からダン
スホールの扉の前に来るまでの感覚と、今現在、自分が感じている「恐
怖」はどこか違和感があった。それが何なのか?、何の所為なのか?は
全くもって分からない。分からないが何か違う。
そんな「恐怖」は足を1歩、また1歩進める毎に、ハッキリ体に伝わっ
てくる。「恐怖」は次第に寒気を増し、また、鋭い針のような痛みを伴
ってくる。吐き気もしてきた。高橋はこの「恐怖」が何なのか理解でき
ない。しかし、
何かがある
それだけは確かなようだ。
高橋が目的地の部室のドアの前に来たとき、「恐怖」はピークを迎えた。
- 26 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/05(日) 16:55
- 高橋は部室のドアに手をかけた。冷や汗が額を覆っているのがはっきり
わかる。高橋はドアを開けた。
次の瞬間、部室内の空気と一緒に生暖かい臭気が流れ込んできて高橋の
鼻を突いた。
高橋「うっ・・・・・」
高橋は思わず叫んだ。それも無理は無い。この臭気は極めて激しい腐乱
臭でありそれでいて何か生臭い。
高橋は持っていたハンカチで鼻を覆いながらとにかく明かりをつけるた
め、電気のスイッチの元に移動しようとした。
高橋「まあ、とにかく、明かり、明かりっと・・・・。」
足を2歩、3歩動かしたとき高橋の右足に何かが当たった。高橋は思わ
ず倒れこんだ。
べチャ!!!
ドスン!ではなくべチャ!と言う音が狭い部室内に響いた。
- 27 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/05(日) 17:08
- 高橋「うわ!何だろこれ?暗くてよく見えないけど、何かネバネバして
る・・・・・。まあいいや。とにかく明かりをつけなきゃ。」
もしかしたら、高橋はここで明かりをつけないで、また、携帯電話を忘
れても、取りに戻ってこよう、などと思わなかった方が良かったのかも
知れない。
パチン!
電気スイッチの少し硬い音がまた部室内に鳴り響いた。そして、真上の
蛍光灯から光速の速さで光の粒子が部屋全体に隅々まで届いた。その粒
子は高橋の直ぐ床の光景に反射して、高橋の網膜に届いた。高橋はそこ
で全てを見て、また全てを刹那に理解した。
高橋自身の制服は真っ赤な紅色に染まっていた。
床には、「石川梨華」のもはや変わり果てた真っ赤な血の制服を着た
両眼を見開いたままの、無残なまでの亡骸が力無く横たわっていた。
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/06(月) 22:18
- 薄ハ白い。どうしよう。続きドキドキしながら待ってます。
- 29 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/19(日) 16:58
- 高橋「えっ・・・・・・?、え・・・・・。」
高橋は声を出すことが出来なかった。自分が立っているそのすぐしたの
床には石川梨華がただただ、横たわっている。石川は全身血だらけで、
特に胸、心臓の部分から血が噴出しているようだった。その光景は誰が
見ても「石川梨華の死体」として映るものである。
高橋「え・・・・、あ・・・・、え・・・・・・、あの・・・・」
普通、テレビや何かでやっている推理サスペンス物で死体を発見する人
は死体を見るや否や、大声で叫ぶ。、と言ったシーンをよく目にする物
だが、実際急に、直接死を目の前にするとあんな風に叫べないし、まず
今の状況が完全に把握できない。
目に見えていて実際理解している様で脳内の回路が繋がらない。
実際、頭の中では分かっていても、ずっと混乱している。
そんな頭が矛盾した状態になっているのだ。叫べるはずも無い。
- 30 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/19(日) 17:11
- 何分くらい経ったであろうか?高橋は脳が混乱して受け付けないで拒否
してきた現実をやっと完全に理解できた。
石川梨華はこの部室で殺された。そして、私はちょうどそこにやって来
たのだ。この自分の制服についている赤い液体は紛れも無い石川の血液。
その赤い血液は床を覆っている。本物の血液が私の体や制服やそして石
川の体を覆っている。「石川梨華」は、ほんの数時間前までいつものち
ょっとした会話をしたちょっと見、変わっているけど本当は部活に対し
て人1倍情熱を持っていて、怖いときもあるけど、本当はすっごく優し
くて、私のライバルで憧れの先輩でもある、あの「石川梨華」はもうこ
の世にはいない。殺されたのだ。・・・・・・・と。
高橋「キャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
やっとの思いで、腹のそこからの悲しみのこもった悲鳴がでた。
- 31 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/19(日) 17:24
- 小川「ん・・・?今、愛ちゃんの声しなかった?」
新垣「うん、した。確かに聞こえた。何かあったのかな?」
紺野「ゴキブリでも出たのかな?」
小川「まさか〜、あの愛ちゃんがたかがゴキブリ程度であんな声出さな
いでしょ?」
紺野「それもそっか・・・」
小川・新垣・紺野の3人はせめてと思い、学校の中央玄関の中で高橋の
帰りを待つことにしていたのだ。3人が玄関の段差の所に腰を下ろして
いたところ、先程の高橋の悲鳴を聞いたのだ。
新垣「でもさ、愛ちゃんがあそこまで大声出すんだから、よっぽどの事
があったんじゃないの?」
新垣がそう言うと3人は黙った。
もしかしたら・・・・・なにかあったんじゃあ・・・・
3人は同時に、一斉にダンスホールの方向へ走り出した。
(怖いなんて言ってられない。親友の愛ちゃんの身の何かあったのでは?)
3人は共に同じ事を考えながらひた走った。
- 32 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/19(日) 17:36
- 3人はダンスホール内に入った。部室のドアの中から蛍光灯の明かりが
漏れている。3人の中でも小川が先頭で入ってきて最初にその光を見つ
け急いで中の様子を見た。
小川「愛ちゃ〜ん!どうしたの?何かあった・・・・・の・・・・?」
小川は部室内のその「惨劇」を目の当たりにした。
高橋「あ・・・あ・・・ま、まこっちゃん・・・」
小川に気づいたのか高橋が涙や鼻水でクシャクシャになった顔をこちら
に向けた。
小川「え・・・え・・・・・・な・・・・」
小川の目にその場の光景が焼きついた。
紺野「どうしたの?まこっちゃん?何かあったの?愛ちゃん平・・・気
・・・・・」
新垣「愛ちゃ〜ん・・・大丈夫・・・・」
紺野「え・・・・・」
新垣「な・・・・・」
紺野、新垣の2人もまたその光景を目にした。
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 13:37
- 推理物好きなんで期待させてもらってます。頑張ってください。
でも、推理ものって放置されると本当に辛いので更新遅くても
いいので完結させてほしいです
- 34 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/26(日) 16:18
- いや〜、「名無し読者さん」ありがとうございます。これからも感想、
意見など待ってます。
用務員さん「どうしたんだ〜?何かあったのかー?」
先程の高橋の悲鳴を聞いたのであろうか、この学校の用務員さんの市井
紗耶香(いちいさやか・今回は男性役です)が慌ててやってきた。市井
にとっても3人の女子生徒が部室前でただ呆然と立っている光景は、何
かあった、と感じさせるものであった。
市井「どうしたんだ?一体何が?・・・・・、うっ、こ・・・これは!」
流石の男性の用務員さんと言えども、その光景は一瞬言葉を奪ってしま
うモノであった。
校長「どうしましたー?市井さん?」
副校長「何かあったんですか?」
その直ぐ後に、夜遅くまで残っていた校長の石黒彩(いしぐろあや・男
性)と、副校長の福田明日香(ふくだあすか・やっぱり男性)が小走り
でやって来た。
石黒「え・・・・・・・・」
福田「な・・・、な・・・・・・・」
この2人もまた、その場にいた者同様、その惨劇を目にした。
- 35 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/26(日) 16:30
- その後、市井さんの処置により、石川梨華には毛布が被せられ警察に連
絡した。ちょうど、大きな警察署が学校の近くにあるため警察官は10
〜15分でこの学園にやって来た。
刑事「どうも皆さん。初めまして。私、今回の事件を担当する事になり
ました「権藤」(この人はハロプロメンバーとは関係有りません)と言
う者です。」
そういって高橋達の前に大勢の警察官を従えた中年の刑事が現れた。
その名を権藤と言うらしいが中年であることは見て間違いないが、何か
「警察」という事を無意識に振りかざしていかにも自分はベテラン刑事
ですと、言わんばかりの態度である。どうやら他の警察官を顎で使って
いる様子からうかがうと、この中では一番偉いらしい。
石黒「どうも、校長の石黒です。」
福田「同じく、副校長の福田です。」
てな具合で一通りの挨拶を終えると、権藤刑事は事件現場へ行ってしま
った。
- 36 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/26(日) 16:53
- どの位、時間が経ったであろうか、高橋達にはその精神状態であるが故
ハッキリとした時間は解らなかったがまあ、20〜30分と言った所だ。
すると、向こうのドアから再び権藤刑事が彼らのもとにやって来た。
権藤「皆さんお待たせしました。え〜一応、今回の事件について現段階
でわかったことをお話します。
今回の事件の被害者は当高校の生徒、3年B組の石川梨華と判明。死因
は出血性ショックによるもの。なお、遺体には2ヵ所の刺し傷、どちら
も包丁の様な鋭利な刃物によるもので、1ヵ所は心臓に深く刺された致
命傷の傷、もう1ヵ所はは後ろの腰の部分にある比較的浅い傷が発見さ
れました。血液の凝固具合から見て死亡推定時刻は今から1時間以上前、
大体、10時20分から40分までの間。またこれは事件に関係あるか
解りませんが遺体の直ぐそばの壁に、
私は地獄の淵より復讐の為に蘇った。 我が名は煉獄仮面
といった意味不明な被害者の血文字が残されていました。
今の所、わかっていることはこの程度です。皆さんには申し訳ありませ
んが、事件の第一発見者及び関係者ですからもう暫くこの場に残って頂
ます。」
そういい残すと権藤刑事はまた戻っていった。
- 37 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/10/26(日) 17:00
- え〜、小説投稿の場にこんな事を書くのは不謹慎であるとは思いますが
この小説を読んでくれた読者の皆様、何でも構わないので、感想、意見
間違いの指摘、とにかく何でも構いません。こんな事書いたら変におも
われる、なんてことありませんので、どうか1つ、私にメッセージの1
つでもお願いします。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/26(日) 23:47
- 更新お疲れ様です。
小説特に推理物の途中で感想と言うのも難しい気がするんですが。
まだわからないことだらけの事件ですが次の更新も期待してます。
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/28(火) 21:17
- 更新お疲れさまでした。
(人のことは言えないのですが)
お願いがあるのですが…
改行・区とく点をもう少し入れてもらえないでしょうか?
だいぶ読みやすくなると思うのです。
>>37 の作者さんの発言もそうなのですが…。
同じ言葉が、1つ文章に何回も出てきますよね?
もう少し区切ってもらえないでしょうか。
生意気を言いましたが、作品の方はいつも楽しみにしています。
これからの展開、期待してます。
- 40 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/03(月) 16:07
- いや〜スイマセン。何分、急いでいたり、執筆に乗ってくると「、」や
「。」が少なくなったり。焦って同じ語句を何度も入力してしまうので
こんな文章になってしまいました。誠に申し訳ございません。こんな御
指摘ありがたいですね。これからも自分もより良い作品を仕上げいてい
きたいので、この様な意見、感想、疑問などなど、お待ちしております。
- 41 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/03(月) 16:17
- 権藤刑事の言った通り高橋達はその、直ぐ近くが殺人現場であるダンス
ホールの中央辺りで待機していた。その中では警察官の慌しい声と、さ
っきの権藤刑事の人を罵倒するような馬鹿でかい声だけが響いていた。
どうやら声からすると権藤刑事は指示するだけで、自分は携帯電話で本
庁の偉い人と話しているだけのようだった。
その間、高橋はおろか、小川、紺野、新垣は勿論の事、用務員の市井さ
ん、校長、副校長先生も一言も話さずにじっと何かを見つめているかの
様に、ただただ、沈黙を続けていた。
まあ、こんな状態で何か喋れる方がおかしいのだ。
- 42 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/03(月) 16:33
- 今度は10分、いや10分も経たない位であろうか?、権藤刑事が再び
高橋達のもとへやって来た。
権藤「いや、皆さん。お待たせした申し訳ございませんでした。しかし、
ご安心下さい。今回の極めて冷酷かつ残酷な事件の真相がわかりました。」
石黒「ほ、本当ですか?刑事さん。」
権藤「ええ!本当です。今回の殺人事件の真犯人、つまり石川梨華を殺
害した犯人は・・・・・・・。お前だ!高橋愛!!」
全員「え!!!!????」
そう言うと高橋以外全員が声を上げて、驚いた様子で高橋を見た。
高橋「・・・・え?・・・」
しかし、一番驚いたのは高橋本人だろう。何しろ、実際、死体に触れて
しかもそれが自分の最も尊敬する先輩であり、それで犯人扱いされたの
である。
高橋「え・・・、あの、そんな・・違います。私、知りません。」
小川「そうですよ!!愛ちゃんはそんなことしません!!」
新垣「愛ちゃんはケイタイを忘れて取りに戻っただけですよ。この事件
に何にも関係ないですよ。」
紺野「確かに間違いありません!!!」
(次に続く)
- 43 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/03(月) 16:54
- 市井「そうですよ。刑事さん。お言葉ですが、こんな高校2年生位の女
子に人を殺すなんて、余りにも不可能ですよ。」
石黒「うちの生徒がそんな事をするとは思えんし・・・」
福田「やっぱり、何かの間違えじゃあ・・・・」
福田がそう言うと向こうから1人の警察官が手帳を持ってやってきて、
その手帳を権藤刑事に渡した。
権藤「ふん、やっぱりな。・・・・良いでしょう、皆さん。そこまで言
うのなら、何故、高橋と言う者が犯人なのか説明しましょう。
ここに、今、部下に持ってきてもらった、近隣のこの学校関係者の生徒
や教師に聞き込みをした内容が書かれた手帳があります。この手帳によ
りますと、高橋さん、・・・あなた、部活で被害者の石川梨華と毎日の
様に言い争いをしていたらしいじゃないですか?何でも、今度の舞台の
主役を、取った取られたで時には、掴み合って、殴り合いになる一歩手
前までいったそうじゃないですか?・・・・と、いう事はこれで動機は
完璧だ。あとは何らかの方法で石川を呼び出しておき、自分はケイタイ
を学校に忘れたと言って、アリバイ作りに友人を2〜3人一緒に連れて
くる。そしてお前は部室に向かい、待ち合わせていた石川と再び口論に
なり、思わずカッとなり持っていた包丁か何かで、刺し殺した。あとは
悲鳴をあげて、あたかも自分は被害者を装えばいい。
どうだ、違うか!!」
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/03(月) 21:16
- 愛ちゃんなんて事を
って冗談です。続きが気になります。
- 45 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/09(日) 17:28
- 高橋「え・・・・、そ、そんな・・・」
市井「ちょっと待ってくださいよ、刑事さん。そんなの無茶苦茶じゃな
いですか?今の推論を聞く限りでは少なくとも証拠が無いじゃないです
か?それに、こう言うのも何ですが、今の推理ならば、ここにいる誰も
が、・・・勿論、私も、刑事さんも、犯行は可能なのではないですか?」
小川「そ、そうですよ。証拠も無いのに犯人扱いするなんて、人権の侵
害ですよ。」
新垣・紺野「そうだそうだ!」
権藤「えーーーーい、うるさい!!!。これほど整った現場の証拠が残
っていて、何が人権の侵害だ。それとも何か?、それでも、私に意見す
ると言うのか?だったら、お前達、公務執行妨害でしょっ引くぞ。
ったく、解ったらそこをどけ。」
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/09(日) 20:26
- 権藤刑事がそう言うと、その後ろに立っていた2人のの警察官が
高橋の両腕をがっしりと掴んだ。
権藤「よ〜し、そのまま身柄を拘束しろ。ちんたらするな。さっさ
と運べ。」
高橋「え、そんな・・・、違います。私じゃありません。本当です。
本当に私じゃあ、ありません。部室に来たら本当に石川先輩が倒れ
ていて・・・・・。」
権藤「あ〜、分かった。分かった。そう言った言い訳は向こうでた
っぷり聞いてやるから。」
高橋「本当です。私じゃ、ありません。私じゃあ・・・・・」
空しくも高橋の叫びは警察官によって消された。その痛く、切ない
叫びが・・・・・
また、小川や新垣、紺野達も無実の親友1人助けられない自らを悔
やみ、そして憤りを感じずには居られなかった。
高橋が殺人なんて物を犯していない事は痛いほど分かっていた。
しかし、それだけでは誰一人、親友1人救えない事を痛感した。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/09(日) 20:43
- 高橋は抵抗したが、相手は大の大人、しかも鍛え抜かれた警察官
である。それは全く無意味であった。
見る見るうちに高橋はダンスホールの出入り口の方に運ばれた。
高橋は涙や、鼻水で顔がくしゃくしゃになり、髪もぼさぼさにな
りながら泣き叫んだ。
権藤「一件落着!まあ、こんな物、私の様な刑事生活30年のべ
テランの手に掛かればあっという間ですな。しかし、最近の世の
中は物騒になりましたなー。高校2年生の女子高生が殺人を起す
なんて。・・・まあ、あの子は何でもミュージカル部の部員だそ
すじゃないですか。じゃあ、あの泣きまねが上手いのも納得だな
。」
権藤刑事は周りにいた部下の警察官に、あるいは市井達に話しか
けた。
- 48 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/09(日) 20:46
- すいません。こちらの手違いで46、47の作者名が名無し読者
になってしまいましたが、これは正真正銘、本物の作者です。
本当に申し訳ございませんでした。
- 49 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/09(日) 20:53
- 自分の無力さに不甲斐なさを感じているのは何も、小川達だけでは
ないだろう、用務員の市井さんや、校長、副校長の石黒、福田さん
もまた何も出来ない己に憤りを感じている事だろう。また、そんな
事には気も掛けずに、自分の有能さに陶酔していて、皆の神経を逆
なでしている権藤刑事に「無力の怒り」を感じていた事だろう。
権藤「よーーし、事件は解決した。必要最低人数だけ残って、あと
は撤収・・・・」
権藤刑事がそう言いかけたとき・・・・。
- 50 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/09(日) 20:54
- ???「大した推理ですね・・・・。権藤刑事?」
事件現場の部室のほうから確かにこんな声が聞こえた。
- 51 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/15(土) 17:13
- 権藤「ああん?、誰か、何か言ったか?」
警察官1「いえ、私は何も。」
警察官2「私も・・・。」
権藤「ん〜〜?、じゃあ、誰の声だ?今のは?」
???「権藤刑事・・・・と言いましたよね?今の貴方の推理聞かして
貰いましたが、やけに杜撰だと思いませんか?」
そう言うと、部室の中から1人の高校生らしき少年がその姿を表した。
その姿は、身長175cm位、眼鏡をかけていて、髪は短め、見た目は
結構、ひょろっとしているが、よく見るとしっかりした筋肉が見えるよ
うな、まあ、言ってみれば何処にでも居そうな普通の高校生がそこに立
っていた。
- 52 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/15(土) 17:23
- 驚いたのは、権藤刑事達である。一般人の高校生がすっと、立入禁止の
事件現場から、それもいたって冷静で、何食わぬ顔で出てきたのだ。
権藤「こら!貴様!何をしている!どうやってそこに入った?」
鑑識さん「あれ?権藤刑事のお知り合いじゃないんですか?いや、その
少年が権藤刑事の知り合いと言うことなので・・・・・」
権藤「なに!わしはこんな小僧知らんぞ!・・・・貴様〜!わしの名前
を勝手に使いおって・・・・。何のつもりだ!勝手に事件現場を荒らし
おって!」
鑑識さん「いえ・・・、私、ずっとその少年を見ていましたけど、特に
変わった事は何も・・・・」
権藤「ふん。・・・・で、貴様、ここで何をしていた?」
権藤刑事は謎の少年に近寄って少年の襟首をグイッと掴んだ。
- 53 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/15(土) 17:34
- 少年はいかにも強面らしい顔の権藤刑事が近づいてきて、襟首を掴まれ
たが、顔色1つ変えず、手に付けていた、乾ききった血が付いているビ
二―ル製の手袋を、近くに居た気の弱そうな警察官の持っていたゴミ袋
に投げ入れた。
権藤刑事はそんな少年の図々しい態度に腹を立てた。
権藤「その前に、貴様、誰だ?」
???「これは失礼、自己紹介が遅れました。私立朝日ヶ丘大付属学園
高校、2年D組、名簿番号23番、「皇 祐一郎」(すめらぎゆういち
ろう)と、申します。」(これもハロプロメンバーではなく、本編の主
人公です。)
- 54 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/15(土) 17:43
- 権藤「ほ〜〜、皇君と言うのか。で、その皇君が、一体、事件現場に、
何の、用かね?」
権藤は怒りを抑えて、あえて優しげな口調で皇に話し掛けた。
皇「いえ、別に・・・・。ただ、あなたの推理を聞かせて頂きまして、
2,3お尋ねしたい事がありまして・・・・。」
権藤「ほ〜〜〜〜!一般の高校生が探偵気取りか?いいか!!これは、
本物の殺人事件なんだぞ!都内の有名進学校か何か知らんが、これは、
漫画じゃないんだぞ!!解ったら、とっとと、ここから立ち去れ。さも
ないと、公務執行妨害で逮捕するぞ!!!!」
- 55 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/15(土) 17:54
- 皇「・・・・。どうぞ。」
権藤「なっ・・・・・。」
皇「逮捕したければ、どうぞして下さい。逮捕するかどうかは、俺の推
理を聞いてからにして頂きたい。」
権藤「な、な、何だと?」
その場にいた全員が驚いた事だろう。権藤刑事も、また、権藤刑事に今
まで、付き従ってきた部下の警察官もまた、「警察の権力」と言う名の、
権力濫用を振りかざして、今の今までそれに屈しない者が今までに居た
だろうか?いや少なくとも権藤刑事達の前には、現れなかった。だから
今まで、「公務執行妨害」と言う権力を使って、五月蝿い物を鎮めてき
た権藤刑事は、いざ、それが通じなくなるとどうしていいものか解らな
い。
皇「いいでしょうか?」
権藤「・・・・・・ふん、面白い。聞いてみようじゃないか。」
- 56 名前:名無し竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 14:08
- 毎回楽しく読ましていただいています。この「皇」君ですか、謎の
少年といい、謎が深まる感じがします。
あと、会話文が続くときは良いのですが文章が続くと少し窮屈な感
じがします。
出来れば文が長くなりそうならば、段を変えて頂けると読みやすく
なると思います。
恐縮です。
これからも更新楽しみにしています。
- 57 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 14:45
- どうも「名無し竜騎士」さん。貴重なご意見ありがとうございます。
<本編>
皇「・・・・・・・。分かりました。
まず、第一に、彼女に付いている返り血。一般的に返り血と言う物は、刺
された箇所からほぼ同心円状に、しぶき状となって飛び散る物です。
しかし、彼女に付いている返り血は制服全体に、しかも、しぶき状と言う
よりは、何かに躓いて転んだ拍子に付いた血のような感じで付着していま
す。」
権藤「た、確かに、そうだが・・・・。」
- 58 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 15:01
- 皇「その2。被害者の石川梨華が倒れていた場所、及び、刺された
箇所。・・・・・・・。
権藤刑事、被害者が腰を刺された時の返り血は、主に事件現場
のどの辺りに多く付着していましたか?」
権藤「ああ?そんな事聞いてどうする?
まあいい。そうだな、大体、部室内の内側のドアの部分に多
く残っていたが・・・・。
それが、どうかしたか?」
皇「では、被害者は、事件現場のどの辺りに倒れていましたか?」
権藤「今度は何だ!?」
皇「いいから早く答えてください!!」
権藤「・・・・・ったく。被害者の石川梨華は同じく、部室の内側
のドアから大体、2〜3m位の位置に倒れていた。
これで満足か?」
皇「やはりですか・・・・・」
権藤「やはり?・・・・・」
- 59 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 15:20
- 皇「いいですか?考えてみてください。
まず、権藤刑事の推理によると、
高橋が被害者を予め部室に呼び出しておき、
被害者が先に部室に居て、
その後に、高橋が部室に到着し、
口論となり、思わず、刺してしまった。
・・・・と、言う事でしたよね?」
権藤「そうだが・・・、それがどうかしたか?」
皇「だとしたら、事件現場である部室には、ドアに近いほうから、
高橋、石川、と言う順番で並んでいる事になりますよね?」
権藤「石川さん、高橋さん、と言う順番で部室に入ったのだから、まあ、当然
だろう・・・・。」
- 60 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 15:39
- 皇「だとしたら、おかしくないですか?」
権藤「何がだ?何かおかしい事があるか?」
皇「だってそうでしょう?被害者の石川さんは、まず、腰を刺され
て、その後、石川さんが思わず振り返ったところを、今度は、
心臓を一突きした・・・・・・、と言う時、返り血が飛ぶ位置
が、おかしいんですよ。
腰を刺し、振り返った後に心臓を刺したのなら、返り血のほと
んどは犯人の居る方向に飛ぶはず。
しかし、被害者の石川さんと、ドアとの間隔はたった2〜3m
しかないんですよ。
まさか、口論をした後、被害者と犯人がドアに近づいて刺され
た、なんてことはないだろうし・・・・・・。」
権藤「そ、それはだな・・・・・・・・・・。」
- 61 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 15:59
- 皇「その3。
権藤刑事、事件現場の電気のスイッチに付いていた血痕の跡は
どうでしたか?」
権藤「返り血の跡の次は、今度はスイッチの血痕の跡か?
事件現場の電気スイッチは、何処にでもあるスイッチだが、
「入」と「切」の両方に指紋は残っていないが、返り血では
なく、手袋か何かを装着した手で押した跡が発見された。
・・・・・・これで満足か?」
皇「どうも・・・。
これもおかしな話だと思いませんか?
先程も話した通り、被害者の石川さんが先に事件現場に来てい
たなら、まず、間違い無く、電気をつけるでしょう。
小川さん?でしたよね?
あなた方がこの事件現場に到着した時、この部屋の明かりは
ついていましたか?」
小川「え・・・、あ、はい。ついていました。」
- 62 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/20(木) 16:08
- 皇「・・・・。どうも。
ここで、仮に、高橋さんが来て犯行を犯したとするならば、電
気のスイッチに触れる必要は無いはずだ。
そうすると、明らかにスイッチに付いた血痕は不自然だ。」
権藤「ちょっと待て!!
さっきから聞いていれば言いたい事、言いおって。
お前が言っているのは、被害者の石川がそこに居る高橋より
も、先に到着した時の話だろ!
高橋が先に到着して、後から、石川が部室に入ってくれば、
何もおかしくないじゃないか?」
- 63 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/21(金) 14:48
- 小川・紺野・新垣「えっ?」
3人が一斉に声を上げた。
権藤「な、何だよ?」
新垣「それは無いですよ。私達、愛ちゃんがダンスホールに向か
った時から、ずっと中央玄関に居ましたよ。」
小川「そうですよ。もし、石川先輩が通ったら分かりますよ。」
紺野「でも、石川先輩は通りませんでした。」
権藤「な、何だと??。どう言う事だ。それじゃあ、被害者の石川
は高橋よりも、後に来た事になる。・・・・・。」
皇「・・・・・、そう言う事になりますね。
この学校の構造上、中央玄関や左校棟からダンスホールに向か
うには、必ず、3人の居た場所を通らなくてはならない。
居たのが1人ならまだしも、3人も居た。
3人も居て見逃すとは考えにくい。」
- 64 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/21(金) 15:04
- 権藤「むむむ・・・・。そうなると高橋には犯行は・・・・。」
皇「まず、土台、変な話ですよ。
さっき、被害者の石川さんの携帯電話のメールボックスを見
さしてもらいましたが、高橋さんからのメールはありません
でした。」
権藤「それがどうした?」
皇「おかしいと思いませんか?
人を呼び出すには何らかの方法を用いなければならない。
現代の利器である、携帯電話でメールを送れば誰にも知られる
こと無く、犯行後も、操作1つで証拠も消せるし、何より簡単
だ。
しかし、犯人はあえてそれをしなかった。
メールを使った痕跡が残っていないとこからすると、手紙か、
何かを使ったと考えられる。
しかし、手紙類を使ったとなると、それを特定の場所に忍ばせ
るとなると、誰かに見られる危険性を伴う。
あえて、裏をかいた、と考えても、リスクが大きすぎる。
もし、高橋さんが犯人だとしたら、まず間違いなくメールを使
要するでしょう。」
- 65 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/21(金) 15:13
- 権藤「・・・・・・・・・。」
皇「そもそも、高橋さんが犯人なら悲鳴をあげる必要は無いでしょ
う?
下手に悲鳴をあげて、証拠を発見されたり、また、何処かの、
刑事さんに犯人扱いされないとも言い切れない。
事件現場の壁に残された、謎の血文字にしてもだ、事件現場に
いつまでも残る事は、無意味かつ、危険極まりない。
もし、俺が犯人なら、悲鳴もあげずに、血文字も残さず、身の
周りのの処理をして、出来るだけ早くこの場から立ち去ろう、
と、考えますけどね・・・・・。」
- 66 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/21(金) 15:58
- 権藤「むむむ・・・・・・・。」
権藤刑事は何も言えない状態のようだ。
確かに、ベテラン刑事を自負しておきながら、何処からか来た分け
の分からない生意気な高校生がひょっこり顔を出し、
しかも、有無を言わせない完璧な推理(???)を言われて、自分
のプライドも何も、ずたずたにされたのだ。
しかし、この「皇」とか言う少年が言っている事も、また事実であ
る。何も言う事は出来ない。
皇「まあ、今、俺が言った事は、物的証拠に欠けますし、決定的だ
とは言い切れません。・・・・・・・。
ただ、高橋さんを犯人だと言うのならば、今、言った疑問点を
解決してからも遅くは無い、と思うのですが・・・・。
いかかでしょうか?権藤刑事?」
- 67 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 00:20
- 権藤「ぐぬぬぬ・・・・・・、おい!お前達、現場検証の続きだ。」
そう言うと周りにいた警察官達はハイ!と、勢い良く答え、再び事
件現場に戻っていた。
いつの間にか、さっきまで高橋の両腕をしっかりと掴んでいた警察
官も居なくなっていた。
皇「ふう・・・」
皇は軽いため息。1つしてダンスホールの隅っこに置いていた自分
の鞄を持ち上げて、まるで何も無かったかの様に、出入り口に向か
って歩き出した。
- 68 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 00:29
- 高橋はペタンと、床に膝をついてただ、呆然としていた。
今の今まで、警察に犯人扱いされて、いつの間にか無実が証明され、
思考回路がまだ繋がっていない様子だ。
皇「高橋、立てるか?」
不意に高橋の耳に声が響いた。
高橋「・・・・・え?」
今の声で高橋は我に帰った。
気がつくと目の前には皇の大きな掌があった。
高橋「え?・・・。あ、うん。」
高橋はその、差し出された手を掴んで何とか立ち上げれた。
- 69 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 00:37
- 皇「高橋、大丈夫か、お前?」
高橋「う、うん。大丈夫。・・・・・・。
す、皇君・・・。」
皇「ん?」
高橋「あ、ありがとう・・・。お陰で助かったよ。」
皇「・・・・・・・・。ん、ああ。気にすんなよ。」
皇はそれだけ言い残すと、また、スタスタと、左肩に鞄のショルダ
ーを掛けて、ダンスホールから出て行った。
- 70 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 00:47
- 皇が出て行ったのと同時に、1人のいかにも下っ端、と言わんばか
りの警察官が皆の前に遣って来た。
下っ端「え〜〜、皆さん。大変お疲れ様でした。
ある程度の捜査が済みましたし、皆さん、お疲れのようで
すので、権藤刑事が今日のところは皆さんに帰ってもらっ
て結構だそうですので、それを、お伝えに来ました。
皆様、ご協力、ありがとうございました。」
そう言うと、下っ端は居なくなった。
人を犯人扱いしておいて、こんな時間まで、ほぼ監禁に近い事して、
お詫びの一言無いのか!・・・・、と、そこにいた誰もが思ったが、
その一方で、あの刑事にそんな事、期待しても無駄か・・・・。
と、言う事も考えただろう。
何はともあれ、高橋達はようやくこれで帰れる事になった。
- 71 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 01:30
- 小川「ねーねー、愛ちゃん?本当に大丈夫?」
今は、学校からの帰り道。
学校から少し遠い駅まで4人で歩いている。
周りは住宅街や、商店街など殆ど無い、どちらかと言うと郊外と言
わんばかりの閑静な土地なので、外灯程度しか4人の足元を、照ら
す光は無い。
小川はある程度、気の落着いた、と言ってもまだ眼が赤く腫れてい
る高橋に恐る恐る話しかけた。
高橋「うん。もう大丈夫。・・・・、ごめんね。皆に迷惑掛けて。」
新垣「何言ってるの?愛ちゃんは謝る必要無いよ。
悪いのは、あの権藤とか言う偉そうな、つるっぱげ刑事じゃ
ない」
紺野「そうだよ!気にする事無いよ」
- 72 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 01:44
- 小川「ところでさ、愛ちゃん。あの「皇」君って人、2年D組って
言ってたじゃん?
確か、愛ちゃんも2年D組だったよね?
クラスメートって事だよね?
愛ちゃん、知ってたの?」
高橋「うん・・・・。一応、クラスメートはクラスメートなんだけ
ど、あんまり話した事無いし・・・・・。」
紺野「でもさ、あの人、すごくなかった!?あの推理!!
権藤とか言う刑事をタジタジだったじゃん?
すごいよね〜、あんな人が身近に居たなんて。
やっぱり、その「皇」って人、学校の成績もいいの?」
高橋「え・・・・・・・・・、う、うん・・・。まあ、普通じゃ
ない?多分・・・・。」
・
・
・
4人は駅に着いた。
そろそろ、時間も時間だし、また、ただでさえこの辺りは、夜になると利
用客が殆ど無くなるせいか、電車の本数が激減する。
しかし、高橋達は運良く、ちょうど来た電車に乗る事ができた。
高橋、小川、新垣、紺野は無事に帰路についた。
- 73 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 01:56
- 私立朝日ヶ丘大付属学園高校 2年D組23番
「皇 祐一郎」(すめらぎ ゆういちろう)
私立朝日ヶ丘大付属学園高校(以下、朝高)は前にも述べた通り、
学問、部活動、校風、いずれも全国でもAランクに属する由緒正し
い高校である。
勿論、朝高内では勉学に勤しむ者、部活動に汗を流す者、学校の規
律を忠実に守る者、真面目な者、と言った生徒が殆どである。
しかし、何処にでも、はみ出し者、落ちこぼれ、と言った者も当然
存在する。
「皇 祐一郎」は朝高の代表的なそれと言っても過言ではなかった。
差はあるものの、皆、真面目で一生懸命なのが朝高生徒なのであるが、
この「皇」は違った。
- 74 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 02:13
- 「皇」は遅刻、早退、サボりは当然、まず、学校自体に来る事が
珍しい存在であった。
例え、学校に来たとしても、授業に出るとは限らない。
大抵、授業をふけて何処かで、何をするわけでもなく、ボーっと
時間を潰しているらしい。
仮に、授業に出席しても、真面目に受ける事は殆ど無く、まず、
1時間中、居眠りしているか、早弁か、あるいは漫画を読むかだっ
た。
「皇」が1時間中真面目に授業を受けるのは、まず、皆無で、年に
2、3回有るか無いか、だそうだ。
成績についても酷い物で、テストはうけるものの、常に赤点連発、
学年最下位まっしぐら、どうやって2年生に進級したのかが、不思
議なくらいである。スポーツは、まあ、人並み程度に出来る様だ。
(例えるなら、金O一少年に近いかも・・・・。)
さっき、高橋が紺野の質問に少し戸惑ったのは、この為である。
まあ、一言で言うと、朝高に一番似合わない生徒である。
そんなキャラクターのせいか、クラスの男子の間では、結構人気が
有るようだが・・・・・・・。
しかし、何事も真面目で、一生懸命がモットーの、高橋愛には同
じクラスメートと言えども、あまり良いイメージは持っていなか
ったことだろう。少なくとも、この事件が起こる前までは・・・。
- 75 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 15:20
- 高橋「ただいま。」
高橋は何とか家に帰った。時刻はもう翌日、午前1時はとうに回っ
ている。
高橋の、その元気の無い声が家の廊下に静かにこだまする。
高橋母「どうしたの?愛?こんな遅くなって?
遅くなるなら、ケイタイで連絡しなさいって、いつも言っ
るでしょ。また、小川ちゃん達と居たの?」
高橋が帰るなり母がパタパタと、スリッパを鳴らしながら大慌てで
玄関に姿を現した。
母は口では高橋を叱っている様に聞こえるが、その声から伺える様
に、心の底から心配していた。
- 76 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 15:31
- 高橋「・・・・、う、うん・・。」
高橋母「どうしたの?何かあったの?」
高橋「え?・・・・、べ、別に。
何でもないよ。ごめん。遅くなって。・・・・・。」
母は明らかに、高橋がいつもと違う、何かを隠している、と言った
事を感じ取った。それは声のトーンから、顔の色まで、誰でも気づ
く様な物だった。
しかし、母は言及をしなかった。
いつもなら、母が聞かなくとも高橋の方から、話してくるはずなの
だが、今日は隠そうとしている。
母はこの為、あえて、言及はしなかった。
った。
- 77 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 15:47
- 高橋母「愛、ご飯は?」
高橋「要らない・・・・・・。」
高橋は母親のすぐ横を通り過ぎ、玄関の正面にある、2階にある自
分の部屋に続く階段を上った。
高橋母「じゃあ、お風呂は?」
高橋「今日はいい・・・・。」
暗くなっている階段に明かりを灯さず、俯いたまま階段を上った。
高橋母「愛・・・・・。」
母親は高橋を追いついて、話を聞いてあげたかった。
しかし、出来なかった。
高橋自身も、自分が母親に隠し事をしている事は、既にばれている、
と薄々、気づいているだろう。
高橋「ごめんね、お母さん・・・・・」
- 78 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 16:14
-
ピロピロピロピロ・・・・・・・・・。
高橋は無意識に、目覚まし時計に手を伸ばした。
カチ!というスイッチを切る音がした。
高橋が眠い眼を擦りながら、ベットから上半身を起した。
高橋「もう、8時。朝か・・・・・。いつの間にか寝ちゃったんだ。」
高橋は完全に覚め切っていない思考回路と、焦点をそのままに、自
分の右手の掌を、額に重ねた。
昨日(正確には今日)、高橋は自分の部屋に戻ってきて、ろくに
着替えもせず、早々とベットに突っ伏した。
ベットに入ったところで、すぐに眠れるはずがなかった。
体は疲れ切っているが、精神や脳は不安定な状態でゆっくり休めた
ものではない。
眠りにつく前に、最後に時計を見たときは、4時半位だった。
実質、4時間も寝ていない。しかし、高橋はもうこれ以上、寝れな
かった。
- 79 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/22(土) 16:39
- (ちなみに、言い忘れましたが、高橋は制服が汚れてしまったので
学校にあった、予備の制服をもらい、着て帰りました。
ここに来て少し、話の辻褄が合わなくなったので、修正させてもら
ます。)
高橋はベットから起き上がった。
クローゼットから自分の私服を取り出し、着替えた。
その後、階段をゆっくり、1歩、1歩足を動かした。
1階につくと、リビングから母親が忙しく動き回っている音が聞こえ
る。
日曜日だと言うのに、母親は忙しそうだ。
高橋母「あ、愛。今、起きたの?今日は早いわね。」
高橋「うん」
母はいつものように仕事着を着ながら、昼飯の準備をしていた。
高橋母「じゃあ、私、仕事に行ってくるね。
朝食は食パン、昼食は冷蔵庫に炒飯が入っているから、
レンジでチンして。
じゃあね。行って来ます。」
そう言うと母親はいそいそと仕事に出かけて行った。
帰ってくるのは、また、9時くらいになる。
しかし、これは変わった事ではない。高橋家にとっていつもの家庭
風景である。
- 80 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/23(日) 20:46
- 高橋「ふう・・・・。」
高橋はテレビのスイッチを入れた。
朝食を食べる気にはなれなかった。
テレビのスイッチが入ると、それはよく、休日の朝にやっているワ
イドショーだった。
テレビ「先日、都内の有名私立高校で殺人事件か・・・・。」
「殺害されたのは、学校の生徒・・・・。」
「今、流行の学校荒らしか?・・・・」
テレビ内のアナウンサーは、高橋の事など気にするはずもなく、好
き勝手話している。
高橋はリモコンを手にしてスイッチを押すと、乱暴に放り投げた。
すると、それとほぼ同時に、
プルルルルルル・・・・・・・・・・
電話がなり始めた。
- 81 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 14:14
- 高橋(誰だろう?)
高橋はさっきから鳴り響いている電話の受話器を取った。
高橋「もしもし。」
電話の主「あ、もしもし。高橋さんのお宅でしょうか?」
受話器からは、なにやら若い男性の聞き覚えの無い声がした。
高橋「はい・・・、そうですけど。どちら様でしょうか?」
電話の主「あ、これは失礼しました。私は「朝日ヶ丘署」の者ですが
が、失礼ですが高橋愛さんでいらっしゃいますか?」
- 82 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 14:37
- 電話から「朝日ヶ丘署」、警察、と言う言葉を聴いたとき、高橋は
一瞬、拒否感の様な感覚に襲われた。
しかし、それも当然、「警察」と言う言葉には、自分は何もしてい
なくとも、やはりすごんでしまう感覚は誰にでもあるだろう。
ましてや、高橋には昨日の出来事がある。当然と言えば当然だ。
高橋「はい。そうですけど・・・・・、何か?」
電話の主「はい。実はですね、昨日の事件について権藤刑事が事情
徴収を行いたい、との事なので、ぜひとも高橋さんにも
起こし頂きたいと思いまして。
あの、高橋さんは今日、何かご予定はありますでしょか
か?」
高橋「いえ、別にありません・・・・。」
電話の主「では、本日の10時までに朝日ヶ丘署までお越し下さい。
それでは。」
そう言うと、電話の向こうの男性は用件だけ述べて切った。
- 83 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 15:00
- 高橋は、ただツーツー、と言うだけの受話器を待ったまま立ってい
た。
高橋は正直、行きたくなかった。
昨日とは言え、自分の最も尊敬していた部活の先輩、「石川梨華」
を失ったのだ。出来る事なら、思い出したくない。今後、二度と、
思い出さない様に永遠の心の奥底にしまいたかった。
しかし、今日、事情徴収に行かなかったら、またあの刑事に疑いを
かけられない、とも言い切れない。
それに、もしかしたら、この事がきっかけで事件が解決するかもし
れない。
何の根拠も無い。
しかし、このまま、闇を心の中に押し閉じ込めたまま生きる事に、
高橋自身、嫌な感じもまたしていた。
- 84 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 15:13
- 高橋はすぐ近くにある置時計に、目をやった。
高橋「8時30分か・・・・。ここから朝日ヶ丘署まで大体、30
〜40分位だから、余裕持って、9時過ぎには家を出ればいいか。」
高橋は左手に持っていた、話し手を失った受話器を元の位置に戻し
た。
9時10分。
高橋は家を出た。
- 85 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 15:24
- 9時55分。
高橋は朝日ヶ丘署に着いた。
ドアを潜ると、受付の警察官に案内されて、5階の大きな会議室ら
しき広間に連れて行かれた。
ガチャ!
重々しい金属製のドアは押したとき、その音は部屋の中に響いた。
別に、音自身が大きいわけでも無く、ただ単に、部屋の中があまり
にも静かで、多少の音でも分けなく響いてしまうのだった。
小川「あ!愛ちゃん!!」
高橋が部屋にはいるやいなや、小川が寄って来た。小川だけでなく、
新垣、紺野も近づいてきた。
どうやら、この3人はもっと早く朝日ヶ丘署に着いていたらしい。
良く見てみると、高橋より早く来ていたのは、この3人だけではな
い。
- 86 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 15:46
- 今現在、部屋内に居るのは、次の18人。
石黒彩 (校長)
福田明日香 (副校長)
市井紗耶香 (用務員)
中澤裕子 (顧問)
飯田圭織 (部活OB・朝日ヶ丘大2年生)
安倍なつみ (部活OB・朝日ヶ丘大2年生)
矢口真里 (部活OB・朝日ヶ丘大1年生)
吉澤ひとみ (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
加護亜依 (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
辻希美 (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
高橋愛 (主人公・朝日ヶ丘高2年生)
小川麻琴 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
新垣里沙 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
紺野あさ美 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
藤本美貴 (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
亀井絵里 (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
道重さゆみ (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
田中れいな (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
- 87 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 16:02
- 小川「愛ちゃん、大丈夫?」
高橋「うん。大丈夫。心配かけてごめんね。」
この時、高橋は3人の顔を見た。3人とも、いつもより顔色が悪い。
やはり、みんな、自分同様寝付けなかったのかな、と思いつつ、
4人で話をしていたところ、高橋が入って来たドアとは別のドアが
開いた。
権藤刑事だ。
権藤「え〜、皆さん。お待たせしました。
今日、皆さんにお集まり頂いたのは、他でもありません。
皆さんは既に、昨日の事件について、人から話を聞くなり、
テレビを見るなりして、ご存知の通りかと思いますが、
皆さんは、今事件の重要参考人であります。
故に、今日、皆さんの昨日の行動について事情徴収を行いた
いと、思います。」
- 88 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 16:16
- その時、
飯田「ちょっと待って下さい!!」
飯田が勢い良く立ち上がった。
周りにいた人達や、権藤刑事の部下達が一瞬、ビクッとした。
飯田「何故、私達が重要参考人になるんですか?
何で、私達の昨日の行動を言わなくてはならないんですか?
まるで、私達が容疑者みたいじゃないですか?」
権藤刑事は、飯田がひどい剣幕で喋りだしたのを聞いても、表情を
変えずにこう言った。
権藤「・・・・・・・・・・・・・・。
その通りです。
この際、はっきり申しあげましょう。
ここにいらっしゃる19名の皆さんは、今回の事件の容疑者
です。
まあ、この中に必ず犯人が居る、と言うわけではありません
が、可能性は、‘0”と言うわけではありません。
実を言いますと、犯行推定時刻前後にあなた方を目撃した、
と言う人がいまして・・・・・・。」
全員「え・・・・、「19人」?・・・・・」
- 89 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 16:24
- この場に居た、18人は頭の上に疑問詞が浮かんだ。
今、この場には高橋を含め「18」人しか居ない。
しかし、権藤刑事は「19」人と言う。
残る1人は・・・・・・?
部下「権藤刑事!!!」
権藤「何だ!五月蝿いな!!」
部下「1人・・・、1人足りません。」
するといきなり、ドアがゆっくり開いた。
皇「すいません・・・・。遅れました。」
別に悪ぶれた様子も無く、むしろ堂々と、緊迫した空気の張り詰め
た部屋に皇祐一郎が入ってきた。
- 90 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 21:44
- 神経の張り詰めた空気を切り裂き、
その場に居た全員の視線を1人占めし、
この前の鞄をやはり片肩に担ぎ、進んで、一番近い空椅子に腰を
下ろした。
権藤「おい!小僧!何、遅刻してるんだ。お前。
しっかり、10時までに来いと伝えたはずだぞ。」
皇「まだ、10分しか遅れてないじゃないですか?」
権藤「10分も遅れているじゃないか!!
しかも、威張っているんだ!」
皇は担いでいた鞄を、床に置くと椅子の背もたれに、深く背を預け
た。
皇「で?何の用ですか?」
権藤「・・・・ったく!!最近の若造は・・・ぶつぶつ・・・・
まあいい。・・・かくかくしかじか・・・・、だ。
分かったか?」
皇「成る程。所謂、取調べってやつですか・・・・」
- 91 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 21:56
- 権藤「ふん。そんなところだ。
それじゃあ、改めて19人集まったところで、皆さんの昨日
の、大体、午後10時〜11時の間、何をしていたか?また
それを証明する物、を教えていただきたい。
また、この後に、個人、1人1人分かれて個別で詳しい事情
聴取を行いますので、そのつもりで。
じゃあ、まずは校長先生の石黒さん、副校長の福田さん。
昨日の、その時間帯、一体何をしていましたか?」
石黒「はい。昨日の夜は、副校長の福田と一緒に、その日のうちに
眼を通しておきたい書類や、資料がありましたので、2人で
夜遅くまで話し合いをしていました。
そうですよね?福田君?」
福田「ええ、その通りです。来年の入学者の案内製作書、授業料の
納入の処理など、やることが山ほどありまして、つい、あん
な時間まで・・・・。」
- 92 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 22:07
- 権藤「それは分かりましたが、前もって少しずつ、片付けられなか
たのですか?
そうすれば、あんなに遅くならなかったのでは?」
石黒「それは、そうなのですが・・・・、何分、私達はぎりぎり
まで手を付けない性なので・・・・。
いやはや、お恥ずかしい。」
権藤「ほ〜、本当ですか?
実はそれを口実にして、裏で何かやましい事してたりとかは?」
福田「な、何を失礼な!!私達は本当に忙しくて・・・。」
権藤「分かりました、分かりました。
では、それを証明する物は?」
石黒「いえ・・・・、何分、2人だけで残って居た為、証明する物
は特に・・・・。」
権藤「じゃあ、あなた達のアリバイを証明する物は無いと、そうお
っしゃるのですか?」
- 93 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 22:23
- 石黒「しかしですね、私と福田君が互いが互いに、アリバイ証明を
していた、とはならないでしょうか?」
権藤「確かに可能ですが、両方とも容疑者では・・・・。
それに、あなた方は途中でトイレなどに行かれたりしなかっ
たのですか?」
福田「まあ、それは。
私達も人間ですので、途中、1〜2回程トイレに行きました
が。」
権藤「成る程。では、もしかしたらあなた方のどちらかが、トイレ
と言って、事件を起して、すぐに戻ってくる、
と言うのも可能なわけですな?」
権藤の疑いが思いっきり、石黒、福田の2人に向けられた時、
市井「あの〜、私、見ました。」
- 94 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/11/29(土) 22:29
- 権藤「なに!?」
市井「私、校長先生、副校長先生を見ました。
私はいつも夜の10時頃〜11時頃まで校内の見回りに出る
のですが、校長室の前を通ったとき、中で明かりがついてい
ましたし、中で2人を見かけました。
本当です。間違いありません。
確かに、私も容疑者の1人に変わりはありませんが、別に私
は2人の話し合いに参加していたわけではありませんし、偶
然見かけたわけですから・・・・」
権藤「ふ〜〜〜〜む。
まあ、分かりました。とりあえず保留にしておきましょう。」
- 95 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/02(火) 22:39
- 権藤「ちなみに、彼らを見たのは何時ごろですか?」
市井「そうですね・・・・。詳しい時刻は分かりませんが、恐らく
10時30分前後、だと思います。」
権藤「分かりました。
ところで、市井さん。
あなたは、今しがた10時頃〜11時頃まで校内の見回りに
出ていると申しましたが、それを証明できる物は?」
市井「残念ながら・・・・・・・。」
権藤「無いわけですな?
では、校長先生、副校長先生のアリバイも厳密に言うと、完
璧ではないと・・・・。
まあ、いいでしょう。
では、次は・・・・・、中澤裕子さん?」
中澤「は、はい・・・。」
- 96 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/02(火) 22:56
- 権藤「あなた、少なくとも、昨晩の10時〜11時までの間に、学
校に来られましたね?
来ていないとは言わせませんよ。学校の近くに住む主婦があ
なたの車を目撃していますからね!」
中澤「・・・・・、はい・・・・。」
それを聞いて高橋達はハッとした。
石川の殺人現場には中澤は来ていない。
しかし、中澤自身は学校に来ている、と言う。
どういうことだろうか・・・・・?と、考えてもおかしくは無い。
権藤「一体、何時ごろに、何の為に来られたのですか?」
中澤「はい、昨日は私が担当している部活の書類を、学校の自分の
机に置き忘れてしまったので、それを取りに来ました。
時間帯は、確か、10時25分頃に学校に着いて、10時
40分〜45分位までかかりました。
その後は、普通に帰りました。」
緊張のせいか、普段、軽く関西訛りが加わっている喋りは、標準語
になっている。
- 97 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/02(火) 23:05
- 権藤「成る程・・・。
となれば、例の事件現場に姿を現さなかった、と言うわけで
すか。
しかし、となると被害者の死亡推定時刻の10時20分〜
10時40分に被りますが、それを証明する物は?・・・」
中澤「・・・・・・・・。」
中澤は無言のまま俯いた。
権藤「無いのですな!?」
権藤のいつも以上に鋭い視線が中澤に注がれる。
すると・・・・・。
市井「・・・・・あ!!
私見ました!!
確か、10時30分頃だと思いますが、教務室の前を通った
時、中で明かりが付いた事を思い出しました。
今思えば、背格好からしても、恐らくあれは中澤先生だった
のかも・・・・・・・。」
権藤「何ですって!?
本当ですか??」
- 98 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/02(火) 23:16
- <訂正>
97の市井さんの台詞
誤「・・・・・10時30分頃・・・・・」
正「・・・・・10時40分頃・・・・・」
です。見難くてすいません。
この作品をお読み下さった読者さん、一言でいいので、感想、意見
疑問ナドナド、どうぞよろしくお願いします!!!!!
- 99 名前:名も無き読者 投稿日:2003/12/02(火) 23:35
- 更新乙彼ッス。
いつも期待してるんで頑張って下さい(w
- 100 名前:SINKI 投稿日:2003/12/03(水) 14:21
- 更新、お疲れさまです。
私のところにもきていただいて本当にうれしかったです。
実は聖なる竜騎士さんのこの小説を
私のにレスしてもらう前に読んでいたんですよね。
これからは積極的にレスしたいと思います。
つーか権藤刑事は意地が悪いですね。
警察が意地悪いからでしょうか?
- 101 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/03(水) 18:09
- 「名も無き読者」さん、「SINKI」さんありがとうございます。
<56>の「名無し竜騎士」さん以来、久しぶりなので、
この上無く嬉しいです。
この先、まだ自分の予定だとまだまだ、ストーリーは続くので、
何卒、まだまだ未熟者ですので応援して頂くと、執筆の活力になり
ますので、恐縮ではございますがこれからのご支援、よろしくお願
いします。
「SINKI」さん、これからも「無題」楽しみにしています!!
- 102 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 15:01
- 市井「ええ。
暗い部屋の中で、スタンドライトだけしか付いていなかったので、はっ
りと中澤先生だとは言えませんが・・・・。」
権藤「ふ〜〜〜〜む。そうですか・・・・」
権藤は少し残念そうに呟きながら、持っていたボールペンで頭をかいた。
権藤「では、次にいきましょう。
え〜、飯田さん?」
飯田「はい。」
飯田は先程の事があるため、少し荒っぽく答えた。
権藤「それと、安倍さん、矢口さん?
あなた方は昨晩、何をしていらっしゃいましたか?
大学の中央図書館の管理人さんがあなた達3人を10時15分頃に、
見かけたと証言していますが・・・・」
安倍「あ、そ、それは・・・。」
飯田「いいよ、ナッチ・・・・。」
飯田は何か言い掛けた安倍を遮った。
- 103 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 15:16
- 飯田「私達は昨日、3人同じレポート課題が出されたので、3人
図書館に集まって、協力して片付けていました。
最初は図書館に何人か居たんですけど、最後のほうは、多
分私達3人だけしか残っていなかったと思います。」
権藤「3人揃って?
飯田さんと安倍さんは2年生だと聞いていますが、矢口さ
ん?あなたは1年生だと聞いていますが?」
矢口「あ、私、単位の都合でカオリンとナッチと同じレポート課題
を出されたんです。」
権藤「カオリン?、ナッチ?」
矢口「飯田さんと、安倍さんの事です。」
権藤「はあ・・・。
まあ、課題については調査すれば分かることです。
それより、あなた達3人の詳しい行動について聞きたいので
すが。」
- 104 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 15:42
- 飯田「良いですよ。別にやましい事はしていませんから。
そうですね、10時15分頃からは、私達はずっと一緒に
居ました。
容疑者だけではアリバイにはならないかもしれませんね。」
権藤「本当に、ずっと一緒でしたか?」
飯田「え?
まあ、途中でナッチ、いや安倍さんがケイタイが鳴ったので
席を外しました。・・・・・、けど、たかが5〜6分でした
し、矢口はトイレに行ったかな。うちの大学は図書館からト
イレまで遠いから、やっぱり帰ってくるのに5〜6分位、か
かりました。
勿論、私も安倍、矢口同様、途中で飲み物を自販機に買いに
5分程度、席を立ちました。
その後は、私達は一回も席を立っていません。
そして、10時50分になったら電車も無くなるので帰りま
した。」
- 105 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 15:55
- 権藤「・・・・・・・・。」
権藤は無言のまま、手帳に今聞いたアリバイを書いている。
飯田「ところで刑事さん?
私達は石川さんを殺すことは不可能じゃありませんか?
3人とも5〜6分しかアリバイの無い時間がないじゃないで
すか?」
権藤「いえ。そうでもないんですよ・・・・」
権藤は動かしていた右腕を止めて、顔を上げた。
飯田「え?」
安倍「どう言う事ですか?」
権藤「実はですね、大学の図書館から事件現場までの距離を考慮し、
実際、犯行を決行するとなると、どの位時間が掛かるのかを
調べたところ、何とか急げば5〜6分で可能なことは可能な
のですよ。
事実、事件現場の近くの焼却炉から事件に使用された道具が
発見されました。」
- 106 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 16:05
- 飯田「え、何、どう言う事?」
権藤「つまり!あなた達は5〜6分しか席を外していないと言いま
すが、その時間があれば犯行は可能なんですよ。
あなた方の疑いは完全には晴れないことになりますな。」
飯田「そ・・・・・そんな・・・・。」
飯田は落胆して椅子に腰を下ろす。
権藤「では次。
吉澤さんですか?」
吉澤「あのねー!言っておくけど私も、加護も、辻もやってないか
らね!!!私達はむしろ、被害者なんだよ!!!」
吉澤も飯田に負けず劣らず、威勢の良い声を浴びせた。
- 107 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 16:21
- 権藤「いえいえ、別に私は・・・・」
権藤の言葉には耳も貸さず、吉澤は続ける。
吉澤「いいよ!!言ってやるよ!!
まずね、私達は部活が終わった後、9時10分に学校を出ま
した。学校から駅まで遠いし、時間が無かったから走って、
梨華ちゃんとうち等3人で駅に向かいました。
10分位で駅について、ちょうど電車が着たからそのまま
乗り込みました。
4人は同じ方向なので同じ電車です。」
加護「ヨッシィー、落着いて。後は私達が話すから。」
隣に座っていた加護が吉澤を宥めた。
- 108 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 16:43
- 辻「すいません、刑事さん。
ヨッシィー、大親友の梨華ちゃんが殺されてから、あんな感じ
なんです。私達もショックだったんですけど、ヨッシィーはも
っとショックだったらしくて・・・・。
あ、すいません。こんな事話して。
それで、電車に乗って10分位すると梨華ちゃんが部室に忘れ
物した、って言って、次の駅で降りて反対方向の電車に乗る、
って言って、そのまま別れました。」
少し舌足らずな話し方だが、言うことははっきりしている。
加護「その後は、3人で普通に電車で帰って、
ヨッシィーが9時45分に、
ののが9時50分に、
私が9時55分に電車を降りました。
その後は、ヨッシィーはバスで15分、
ののと私は自転車で駅から家に帰るんです。」
- 109 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 16:55
- 権藤「成る程。まあ、その駅の駅員に聞けば分かることだ。
・・・・・・、ところで、今、君達の言った、「ヨッシィー」
と、「のの」と言うのは、吉澤さんと、辻さんと解釈して宜
しいですか?」
加護「はい。どうぞ。
ちなみに私は「あいぼん」って呼ばれます。」
権藤「はいはい、分かりました。(そんな事、聞いてないっつーの)
では、その次は・・・・、藤本さん?」
藤本「はい。」
藤本は端正な面持ちを崩さず返事をした。
- 110 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 17:30
- 藤本「私と、亀井ちゃん、道重ちゃん、田中ちゃんは学校の近くの
公園で、おしゃべりを兼ねて、今度の部活の舞台の練習を行
って居ました。
そこの公園は外灯が明るくて、しかも、結構人も多かったの
ので、練習には打ってつけかな、と思いまして。
今日だけじゃなくて、今までに何回か練習してたので、いつ
も公園に来る人に聞けば私達、4人のアリバイが存在すると
言う事が分かると思います。ねっ?」
亀井「うん。」
道重「うん。」
田中「うん。」
藤本が促すと、横に居た3人は返事をした。
権藤「は、は〜・・・・そうですか。」
権藤は藤本の、その堂々たる態度に少し精神的に退いた。
- 111 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/06(土) 17:46
- 権藤「あとは、高橋さんと、小川さん、新垣さん、紺野さんの4人
は一応、昨日調べさせて頂きましたので、結構ですが、・・
・・・・・・・・・、」
権藤は昨日の事もあるので、あまり高橋達に触れなかった。
権藤「残るは・・・・・・・・、」
権藤は残る1人に苦手な物を相手にするかのように、横目で最後の
容疑者に目線を流した。
皇「俺は、ずっと高校の視聴覚室でパソコンをいじってました。」
権藤「パソコン?あんな時間にか?」
皇「はい。いつも週末はこっそり視聴覚室に忍び込んで、システム
や、プログラムを立ち上げています。
そうですね、昨日は夕方の6時頃から始めて、途中で用務員さ
んが見回りに来るので、電気やスイッチを切って息を潜めてい
ました。
用務員さんが行った後は、また始めました。
調べたければどうぞ、メイン機のデータメモリーに記録が残っ
ていると思います。」
- 112 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/07(日) 02:30
- 権藤「ほほ〜〜。言ってくれるじゃないか。
しかしだな、もし調べてみて、そのデータメモリーに記録が
残っていなかったらどうする気だ?一発で疑われるぞ。
それにだな、もし万が一記録が残っていたとしても、少し
そういう系統に詳しい者なら、データベースの書き換え位、
簡単に出来るはずだ。
つまり、本当に残っていたとしても、アリバイ証明には・・
・・・・」
部下「権藤刑事・・・・。」
権藤「今度は何だ?」
部下「実はですね、昨夜、その少年に言われまして学校の視聴覚室
のメイン機のデータメモリーを鑑識さんと業者の方と一緒に
調べたところ、本当に6時頃〜11時頃までパソコンが使用
されていた形跡が残っていました。
後ですね、この学校はセキュリティーシステムが非常に厳し
く、データベースに残っていた記録を見るので精一杯で、
データの書き換えは、事実上不可能かと思われます。」
- 113 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/07(日) 02:44
- 権藤「な、な、何だと!?!?
ちゃんと調べたんだろうな?」
権藤刑事は報告を行った部下の顔に、自らの顔を近づけて圧した。
部下「は、はい・・・・・。間違いありません・・・。」
権藤刑事はクルリと振り返ると、皇が見下すような眼で見ていた。
権藤「ぐぬぬぬぬぬぬ・・・・。」
権藤刑事はこの上なく悔しそうである。
部下「権藤刑事。
実質、はっきりとしたアリバイが有るのは、高橋さんを除く
と、皇祐一郎君だけとなりますが・・・・」
権藤「えーーい!!わかっとる!!
(何で、よりによって、この一番怪しくて、くそ生意気な小
僧に一番はっきりしたアリバイがあるんだ?納得いかん。)」
- 114 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/07(日) 03:13
- (読者の皆様、全員のアリバイ証言がこんがらがってしまってどう
もすいません。
何分、一応、推理小説なのでアリバイ証言と言う物が必要になっ
てくるのですけど、まさか、ここまで長く、わけの分からない物
に成ってしまうとは・・・・・。
今度、表らしき物でも作って見やすくしようと考えていますので
それまで、恐縮ですが、自分でアリバイ表なんかを紙に描いて頂
ければ多少、分かりやすくなると思うので、暇があれば作ってみ
下さい。失礼します。)
- 115 名前:名も無き読者 投稿日:2003/12/07(日) 16:16
- 更新乙です。
アリバイ表作ってみましたが、全然犯人わかりません(w
続き待ってます。
- 116 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/07(日) 17:22
- <名も無き読者>さん
毎回読んでいただいてありがとうございます。
自分でも今回のアリバイは難しい(つーか分からないかな)と、思
います。
これからのストーリーにも幾つかの布石を置くので、そこら辺を気
にしながら読んでいただいたら光栄です。
- 117 名前:SINKI 投稿日:2003/12/08(月) 11:57
- 更新、お疲れ様です。
私的に藤本があやしいような気がする、、、。
まぁ、なんとなくです。
なんだかこういう場面にたってよどみなく答えられる人って
あまりいないと思うんですよね。
その裏になにかがないかぎり。
だから今のところでは藤本かな。
勝手に犯人当てしてすいません、、。
がんばってくださいね。
- 118 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 13:35
- <SINKI>さん
感想、犯人当て推理、ありがとうございます。
流石に今、コメントは控えさしてもらいますが、SINKIさんは
これからも、その都度、「こいつが怪しい。」、「こいつのこの行
動が不可解だ。」など、意見を教えて欲しいものです。
自分も、その都度、本作に支障が出ないように解消して行きたいと
思います。
これからもこの駄作の応援、よろしくお願いします。
- 119 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 15:00
- 「お詫び」
前回、アリバイ表を作ると言いましたが、何分、自分はパソコンの操作をよく
知らなく、インターネットで精一杯の為、アリバイ表作りなんて複雑な事をす
る技量が無い事に気づきました。
皆さん、すいませんでした。お許し下さい。
- 120 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 15:12
- その後、19人は1人、1人隔離され個人聴取されることとなった。
ほぼ、監禁に近い状態で19人は10時に集められ、事情聴取が終
ったのは午後4時頃だった。
その頃になると、19人全員は流石に疲労の色は隠せない。
小川「は〜〜。事情聴取って疲れるね〜。自由にトイレにも行けな
いもん。」
新垣「ほんと、ほんと。私なんかずっと座りっぱなしで腰が痛い。
紺野ちゃん、大丈夫?」
紺野「でも私、お茶とお茶菓子もらったから、別に・・・。」
小川・新垣「あっそう・・・・・・。」
いかにも紺野らしい言葉に、2人はがっかりした。
- 121 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 15:25
- 小川「愛ちゃん、愛ちゃんは大丈夫?」
高橋「うん。大丈夫だよ。でも、流石に5〜6時間はきついかな。」
4人(3人)は「だよね〜」などと喋りながら、階段を下りていた。
すると、
石黒「高橋君・・・・・、少しいいかな?」
校長の石黒と副校長の福田が後ろから高橋に声をかけた。
高橋「え、あ、はい。」
新垣「じゃあ、愛ちゃん。先、駅に行ってるよ。」
そう言うと小川達は先に階段の下って行った。
高橋「で、何でしょうか?校長先生?」
石黒「実は今回は、君にお詫びをしなくては、と思ってね。
高橋君、校長、副校長ともども深くお詫び申し上げる。」
そう言うと、石黒、福田は深く深く頭を下げた。
- 122 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 15:47
- 困惑したのは高橋の方だった。
高橋「え?え?一体どうしたんですか?あの・・・・・・。
頭を上げてください。
どうしたんですか?校長先生も副校長先生も。」
石黒「こんな事をしても無駄かもしれない。
こんな事をしても君の心の傷は治らないかもしれない。
しかし、我々にはこんな事しか出来ないんだ。
・・・・・すまない・・・・・。」
高橋「え・・・・・・・?」
福田「先程、警察の方に聞いたのだが、何でも今回の被害者の石川
君と、高橋君は部活でとても仲の良い先輩後輩だったらしい
じゃないか。
我々も、直接的ではないとは言え、最先端のセキュウリティ
−装置を導入している、と思って、慢心して中央玄関の鍵を
かけ忘れると言う失態を犯した。
もし、ちゃんと玄関の鍵をかけ忘れていなかったら、今頃は
石川君もこんな事にはならなかったはず。
これは、間接的に石川君を殺したのと等しい行為だと思って
いる。」
石黒「同じく私もだ。」
- 123 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 16:07
- 石黒「今の我々は、無力だ。君が昨日、警察に逮捕されそうになっ
時も・・・・・。
今の我々は、こうして謝罪する事しか出来ない。
勿論、この後、石川君のご両親、親戚、また吉澤君、加護君
辻君、など今回関わった全員の関係者に謝罪するつもりだ。
・・・・・・・、本当にすまなかった。」
高橋「そ、そんな事無いですよ。
別に校長先生達が悪いわけじゃ・・・・・。
それに、私気にしていませんから。大丈夫です。」
石黒「そうですか・・・・・。
あ、いや、すいません。時間を取らせてしまって。」
高橋「いえ、そんな。じゃあ、私はこれで・・・・。」
高橋がそう言って、階段を下ろうとした時、
石黒「あっ、高橋君!!」
石黒がもう一度高橋を呼び止めた。
高橋「何ですか?」
石黒「君は・・・・・・、あの学校が好きかい?」
高橋「・・・・・・・・・・・。
はい!!好きです!!」
石黒「そうかい・・・・。それを聞いて嬉しいよ。
それじゃあ、私達はこれで・・・・・。」
そう言うと石黒と福田は行ってしまった。
高橋も朝日ヶ丘署を後にした。
皇「ふうん・・・・・。」
皇は壁の陰で先程のやり取りを聞いていた。
- 124 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/09(火) 17:00
- 高橋は駅で小川達に合流した。
小川は家がすぐ近くなので電車には乗らず、駅の駐輪場に自転車
を置いていただけなので、ここで別れた。
高橋と新垣紺野で同じ方向の電車に乗った。
<電車内>
新垣「愛ちゃん、さっき、校長先生に何言われたの?」
高橋「ん〜、別に。大したことじゃないよ。」
紺野「え〜。何々!気になるじゃん。」
なんて事を話しながら高橋は電車を降り、2人と別れた。
駅を出た。
駅は多くの人がごった返していた。
行きかう人は皆、セカセカと足を動かしている。
行きかう人はただただ、歩くだけ、ただそれだけだった。
- 125 名前:SINKI 投稿日:2003/12/11(木) 14:04
- 更新、お疲れ様です。
最後の
>行きかう人はただただ、歩くだけ、ただそれだけだった。
が意味深ですね。
校長先生はいい人そうですね。
それにしてもこの事件に動機があるのかどうかがわかりません。
まぁ、あるんでしょうけど私の少ない脳細胞ではわかりません(笑)
これからもがんばってください。
- 126 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 00:33
- <SINKI>さん、感想ありがたく頂戴します。
ドキ!「動機」ですか・・・・・・、中々痛いところを突かれた気
がします。(ドキと動機は洒落じゃありません。)
自分も一応、筆者と言う立場ですが、やはり皆さんの感想を聞くだ
けでなく、はやりネタバレしない程度の軽いヒントも出したい、と
言うのが本音です。
もし、読者の皆さんが迷惑でなければ、ヒントの1つ、2つ位、た
まに出したいと思います。
ちなみに、出すヒントはこんな感じで出したいと思います。
<ヒント1>
今回の事件は「動機」が鍵になる・・・・・かも?
- 127 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 00:41
- 高橋はその人ごみの流れの中に居た。
眼に光を失った人々が多く、高橋もその内の1人だった。
高橋は以前から、この様な人達を見て(将来、あんな風には正直、
なりたくない。)と、思っていたが、知らず知らずのうちに、その
様な人と同一化していることに気づいた。
眼に光を失った人々とは理由は違えど、希望を失い、絶望に打ちひ
しがれたその様子は、周りの人となんら変わらなかった。
高橋は駅を出て、家路を歩いていた。
もう時間的にも遅く、歩いている道は、紅く染まった落陽によって
影を色濃く落とされている。
- 128 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 00:56
- 高橋は俯いたまま道を歩く。
この警察の事情聴取で、何か事件の解決の糸口を掴めるかもしれな
い、と言う淡い期待は脆くも崩れさった。
警察の話によると、捜査は事件の特殊性故、何ら進んでいなく、捜
査方針も定まっていないらしい。
それどころか、警察の執拗な尋問で、忘れかけようとしたあの日の
事件記憶がを完全に復活した。
眼を瞑れば脳裏に蘇るあの時の状況、
ダンスホールに入った時の、不気味なな悪寒、
部室のドアを開けたときの、あの腐臭、
転んだ時の、あの感触、
電気を付けた時の、あの光景、
制服や手足にこびり付いた、あの血、
そして、全てを理解した時の、あの恐怖、
それら全てが、脳裏に、瞼に、心に蘇る。
全てが高橋の精神を侵食した。
高橋は無意識に、夕日で紅く、血に染まったような紅のアスファル
トの上を、自らの影で染まった道を歩いた。
- 129 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 01:09
- 皇「おい!」
高橋の前方から、何やら声が聞こえた。
しかし、高橋には殆ど意識も無かったし、そもそも、自分が呼ばれ
たのではない、と感じてそのまま、俯いて歩き続けた。
皇「おい!高橋!お前だよ!!」
ようやく高橋は自分が呼ばれている事に気づき、今まで行方不明だ
った意識を手繰り寄せ、何とかその声に反応した。
高橋「え?」
高橋が顔を上げると、前方には皇祐一郎が居た。
- 130 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 01:19
- 高橋「あれ?何で皇君がここに居るの?」
皇「それはこっちの台詞だ。
お前こそ、さっきから俺のあと、着いて来てただろ?」
高橋「え!?別に私はそんなつもりじゃ・・・・。
私はただ、帰り道を歩いていただけだけど・・・・・。」
皇「え?そうなんだ?お前も家、こっちなのか?」
高橋「「お前も」って事は、皇君も・・・・・・?」
どうやら、高橋も、皇も中学はお互い違う公立中学で有った為、家
が近くても知らなかったらしい。
- 131 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 01:27
- 高橋と皇は一応、並んで帰ることにした。
途中で何度か、クラスの話をしたが、性格が正反対であるし、元々
それ程仲が良く、何度も話した事がある・・・・・、と言うわけで
も無い為、会話はすぐに途切れた。
しばし、2人の間に沈黙と言う壁が隔たった。
・
・
・
・
高橋「ねえ、皇君?」
その沈黙を破ったのは高橋だった。
皇「ん?」
皇は面倒くさそうに答える。
高橋「ねえ、・・・・・・・・・・・・・・・・・
皇君は今回の事件をどう思ってるの?」
皇「え・・・・・!?」
皇は明らかに動揺を見せた。
- 132 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 02:35
- 高橋「ねえ、皇君は今回の事件についてどう考えてるの?」
皇「さぁね、別に・・・・・。」
皇からは素っ気無い返事しか返ってこない。
高橋「皇君・・・・・。
どうして石川先輩は殺されたのかな・・・・・・・?」
皇「!?」
高橋「私、警察署である刑事さんの立ち話を聞いちゃったんだけど、
今回の事件って、学校荒らしって可能性があるんじゃない?
確か、今日の朝、テレビのワイドショー見たんだけど、その
可能性も有るんじゃない?
そして、ある学校荒らしが偶然、部室に忍び込んで、偶然、
石川先輩が忘れ物を取りに行ったら、出くわしちゃって、
しょうがなく・・・・・・。
って事も、考えられ無くない?
絶対そうだよね、じゃないと石川先輩が殺されるなんて・・
・・・・・・・」
高橋がせめて、石川が偶然事件に巻き込まれたと、石川には非が無
く、偶然殺された、と皇ではなく、むしろ自分自身に言い聞かせる
様に話したとき、
皇「恐らく、それは無いな。」
と、無情な言葉が遮った。
- 133 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 02:46
- 高橋「え・・・・・・・・。何で?」
皇「ん〜〜〜、確かに学校荒らしって事も考えられなくは無いけど、
その可能性は低いだろうな・・・・。
いいか、考えてみろ。
もし、学校荒らしが犯人なら、まず何処から学校に侵入したと
思う?」
高橋「え?た、たぶん、中央玄関じゃない?
あそこ、よく鍵開いてるし、他からじゃあ入る所無いし。」
皇「だよな。
だとしたら、犯人はどうやってその事を知ったんだろう?」
高橋「ん〜〜、たぶん、1回位、校域内に下見に来たんじゃない?
そして、その時、玄関が開いていることを知ったんじゃない
の?」
皇「だよな。
だとしたらなお更変なんだよ。」
高橋「何処が変なの?」
- 134 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 03:00
- 皇「学校荒らしが犯人なら、最初に学校の構造を見たとき、明らか
に、その随分と偏った構造に気づく筈なんだよ。
中央玄関から見て、左側の左校棟と、右側の右校棟とじゃあ、
一目瞭然、教務室や校長室なんかがある右校棟に忍び込むはず
なんだよ。
そっちの方が、どう見ても金目の物がありそうだからね。
ところが、今回の犯人は、どういった訳か、侵入したのは、物
置や、焼却炉や、ダンスホール程度しかない左校棟。
そんな所に入ったところで何も無い事くらい、プロでなくとも
分かるだろ。」
高橋「う〜〜〜ん。確かに、それはそうだけど・・・・・・。」
皇「それに、現場に残された血文字も不可解だ。
犯人が学校荒らしなら、見つかった時、切羽詰って思わず殺し
たってのも分かるけど、血文字を残す必要性が分からん。
まあ、そもそも、こんな世間一般にセキュウリティーの厳しい
って知られている学校を荒らしには、普通来ないだろ。」
高橋「・・・・・・・・・・・・・。」
高橋は言葉に詰まった。
- 135 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 11:30
- またしばらく、2人の間に無音の時間が流れた。
皇は歩きながら、隣で俯きながら何かを考えている高橋を、横目で
チラッと見た。
皇「・・・・・・・・・・。
なあ、高橋。お前って・・・・・、意外と良い奴だよな。」
高橋「え??何どうしたの?いきなり・・・・・・。」
皇「いや、別に。
ただな、お前がさっき言った事がな、ちょっと気になっただけ
だ。」
高橋「?。私、何か言ったっけ?」
皇「お前、さっき、「どうして石川先輩は殺されたのか?」って、
言っただろ。」
高橋「それがどうかした?」
- 136 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 11:54
- 皇「少なくとも、俺が今日の朝に会った奴は決まってこう言ったぜ。
「誰に殺されたのか?」ってな。
けど、お前は「誰に?」ではなく、「どうして?」だった。
これは、殺害された石川さんを、偲んだからこそ、言えた台詞
なんだろうよ。
他の奴は、ただ単にマスコミに扇がれて、興奮しているだけな
んだろうよ。
・・・・・・・・、まあ、それだけなんだけどな。」
高橋「え、そんな、別に・・・・・。」
皇「まあ、少なからず、俺はお前の事、見直したけどな。
正直言うと、俺はお前の事、あんまり気に入らなかっただよな。
クラスでは、何でも器用にこなして、優等生ぶって、誰にでも
愛想良く接して・・・・・。
劣等性の塊みたいな俺にとっては、嫌な存在だったけどな。
少し、見直したぜ。」
高橋「そんな・・・・・・・・・・。
実を言うと、私も最初、皇君の事、嫌な存在だと思ってた。
何事も一生懸命がモットーの私にとって、皇君みたいな人は
正直・・・・・・・・。
でも、今回、皇君が推理で助けてくれた時、本当に凄いな、
って思った。」
皇「まあ、お互い様って所かな。」
- 137 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/13(土) 12:02
- 高橋「うん・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・。
お前、学校好きか?」
高橋「!?。もしかして、さっきの校長先生達との会話を聞いてた
の?」
皇「まあね・・・・。」
高橋「・・・・・・・。
うん。私、学校が大好き。
何か、学校って、平和と安全の象徴って感じしない?」
皇「さあ・・・・。」
高橋「少なくとも、私はそう思う!
だから、私は学校が大好き!特に朝学が一番!!」
皇「ふうん・・・・・・・。(何か変わっているな)」
高橋は自分で言ったことに少し恥ずかしさを感じたのか、少し頬を
赤らめた。
- 138 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/14(日) 15:14
- 2人が十字路に差し掛かった。
高橋「じゃあ、私こっちだから・・・・。」
皇「ん、ああ、そっか。
じゃあな。気をつけて帰れよ。」
そう言って、皇は高橋を見送った。
高橋は小さくなっていった。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇は黙ったまま自分の道を進んだ。
皇は胸ポケットにある古びた手帳を取り出した。
皇「ふう。
(高橋には流石に言えないな〜。
・・・・・・・。
やっぱり、一番気になるのは「血文字」なんだよな〜。
・・・・・・・、この事件はまだ続くような気がする。
まあ、あくまでも第六感と言う直感での話しなんだがな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
まあ、いいか。明日、学校に行ってみようかな。)
皇もゆっくりと、消え行く夕陽と深まる闇の入り混じる道を進んで、
そして、姿は見えなくなった。
- 139 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/14(日) 15:45
- 「お知らせ」
これからのストーリーは「皇」が主人公となり、話が進んでいきま
す。
とは言っても、メンバーが出てこないわけではありません。
「皇」がメインで、メンバーを客観的に見て犯人を考えると言う、
形式で進めて行きたいと思います。
そこんところ、ご了承お願いします。
- 140 名前:名も無き読者 投稿日:2003/12/14(日) 15:46
- そっちの方が読者も犯人考えやすいんでいいんじゃないでしょうか?
次も期待して待ってますね。
- 141 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/14(日) 15:58
- ジリリリリリリリリリリ・・・・・・・・
都内郊外にある、ある古びたアパートの一室から、これまた、古び
た騒がしい金属音が鳴り響いた。
私立朝日ヶ丘大付属学園高校で、事件が起きて2日経った、ある晴
れた日。今日は、混乱を避けるため休校日。
ガン!!
突如、その一室からひどく乱暴な音が聞こえた。
皇「ったく!何で、この目覚まし時計は、こうでもしないと止まら
ないんだ?」
同じ部屋から聞こえたのは、皇祐一郎の声。
そう、このアパートの一室に住んでいたのは、皇祐一郎本人である。
彼は、ここに1人暮らししている。
- 142 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/14(日) 16:06
- <名も無き読者>さん。どうも毎回、毎回、この駄作を読んでくだ
さって、うれしい限りです。
当初、この小説を書こうと考えたとき、「皇」が途中から主役にな
る事に、どんな物だろう・・・・、と考えていました。
でも、名も無き読者さんの様に、容認して頂く人がいてくれて、
正直、安心しました。
これからも、この駄小説の応援、よろしくお願いします。
- 143 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/14(日) 16:27
- 午前9時頃、皇は眠い眼を擦りながら、身支度を終えて、部屋を
でた。
駅を出て、学校に向かって歩を進める。
視界に学校が入ったとき、日頃無い物が校門の前に群がっている。
人、人、人の山。すごい数のマスコミ勢。
今日は、休校だって言うのに、やたら数が多い。
皇(あんな所通ったら、一発でマスコミの餌食だな。
しょうがない、裏門から入るか。)
裏門とは、派手で大きな正門とは違って、人通りの少ない裏道に作
られた、トラック1台がぎりぎり通れる程の小さな門。
恐らく、マスコミ達はその裏門に気づいていない。
皇は難なく校内に入った。
- 144 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/15(月) 00:07
- <訂正>
最近、自分でこの作品を最初から読み直していました。
すると、重大な間違いを発見しました。
前半部分ではダンスホール等は「右校棟」にあると、記述していま
したが、正しくは「左校棟」です。
皆さん、本当にすいません。お許し下さい。
(あと、途中でかなり誤字、脱字があって恥ずかしい限りです。)
- 145 名前:SINKI 投稿日:2003/12/18(木) 14:54
- 更新、お疲れ様です。
皇君はなにをしに学校に行ったのでしょう?
気になります。
あと、なにか知ってるっぽいようなセリフもとっても気になります。
更新、楽しみにしているのでこれからもがんばってくださいね。
- 146 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 13:59
- <SINKI>さん、どうもありがとうございます。
どうもすいません。自分の記述が足りませんでした。
皇君は学校に、見落とした物が無いか、もう一度部室に調べに行っ
た、と言う設定です。
皇君が何か知っているような雰囲気がありましたか?
まあ、これが事件に関係するかどうか・・・・・・、ですね。
- 147 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 14:19
- 皇はダンスホールに着いた。
そこには、まだ微かではあるが、この前の凍てつく冷気の様な空気
が漂っていた。
人1人が殺められた、そう、そんな独特な空気がそこにはある。
こんな空気を慣れてしまった自分を、皇は少し、悔やんだ。
皇は肩でその冷気を切りながら事件現場である、部室のドアを開け
た。
そこには、今までの空間以上の冷気が佇んでいる。
皇は持ってきた鞄をそこら辺の床に投げ捨て、用意していた手袋を
装着した。
皇は今日は、部室に何か見落としている証拠は無いか?、何か事件
解決の手がかりは無いか?と、調べに来たのだ。
幸い、部室に「立入禁止」のテープも、鑑識の人もいない。
皇はここでも難なく入ることが出来た。
- 148 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 14:34
- 皇は早速、腰を屈め部屋の隅から隅まで眼を光らせた。
何分、今回の事件に関しては、手中に収めている情報量が、余りに
も少なすぎる。それは警察によってある程度、情報が抑えられてい
るとは言え、それを差し引いてもやはり少ない。
その足りない情報量を補う為、こうして、態々休みの日に学校に赴い
いたのだ。
・
・
・
・
・
皇「無いな〜・・・・・。」
床には何1つ手掛かりとなるであろう物はそこには無かった。
床どころか、壁や、天井にも何も無い。
恐らく、鑑識の人がご丁寧に、1つ1つ拾って持って行ったのだろ
う。
皇は今まで曲げていた腰を上げた。
今まで曲げていたからなのであろう、腰が痛いらしく、皇は腰を少
し叩いた。
- 149 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 14:57
- 皇は徐に顔を上げた。
そこには、問題になっている例の血文字が眼に入った。
私は地獄の淵より復讐の為に蘇った。 我が名は煉獄仮面
と言った感じの血文字が、部室の壁にデカデカとそれでいて、凶々
しく表れている。
どうやらこれが、権藤刑事が言っていた血文字らしい。
皇「私は地獄の淵より復讐の為に蘇る。・・・・・、我が名は煉獄
仮面・・・・・、か。
犯人はなんでまた、こんな物を現場に残したんだ?
つーか、「煉獄仮面」って一体なんだ?」
飯田「「煉獄仮面」って言うのはね・・・・・。」
ふと、部室の入口の方から、声が聞こえた。
皇はその方向に顔を向ける。
- 150 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 15:11
- 飯田「「煉獄仮面」って言うのはね、今度の都大会コンクールで石
川達がやるはずだった、舞台の名前なのよ。」
そう言うと、ドアの陰から背の高い、スラっとした、髪が肩の辺り
まで長い、大人っぽい女性が姿を現した。
皇「あなたは?」
飯田「あ、いきなりごめんなさい。
私、飯田圭織って言うの。昨日、朝日ヶ丘署で一緒だったん
だけど。
皇君だよね?何か調べ物でもしてた?」
皇「いえ、別に・・・・・・。
ところで、今、「煉獄仮面」って言いましたよね?
何か、知っているんですか?」
- 151 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 15:27
- 飯田「まあね・・・・・。
一応、彼女達の指導係りだったから。」
皇「よろしかったら、詳しく教えていただけませんか?」
飯田「良いわよ。」
飯田はゆっくり、部室の中に足を進めた。
飯田「「煉獄仮面」って言うのは今回の舞台名だってのは今言った
はね。
実際、中世ヨーロッパに、こんな言い伝えがあるの。
昔、ヨーロッパに、それはそれはひどい大悪党がいました。
そのひどい悪党は、強盗、殺人、放火など悪の限りを尽くし
ていました。
しかし、ある日、不幸にもその悪党は事故で命を落としてし
まいました。
当然、その悪党は地獄に落とされました。
しかし、その男が落とされたのは、ただの地獄ではありませ
んでした。
(次回へ続きます)
- 152 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/20(土) 15:44
- その悪党が落とされたのは、「煉獄」と言われる、地獄の中
でも、生前に犯した罪を、生きているうちに、何らかの償い
を行っていない人間が落とされる、地獄の中でも特に厳しい
と言われる地獄でした。
その悪党は、煉獄で大変苦しい思いをしました。
ところがある日、その悪党は地獄を抜け出し、現実世界に戻
てきてしまいました。
その悪党は、顔を、煉獄の火炎で焼け爛れていたので、地獄
の使者を象った仮面を作り、顔につけて、再び現実世界で煉
獄での恨みを晴らすべく、惨劇を起こしました。
しかし、すぐに死神に煉獄に連れ戻され、永遠の苦痛を与え
られました・・・・・・・・・・。
そして、私達がこの話を朝学でアレンジしたのが、今度やる
はずだった「煉獄仮面」なんだけど・・・・・。」
皇「ふ〜〜〜〜ん。」
皇は溜息をしながら、答えた。
- 153 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/21(日) 16:19
- すると、部室の入り口から、飯田以外の声が2つ近づいてきた。
安倍「も〜〜、カオリン。こんな所で何やってるの?」
矢口「早くしないと始まっちゃうよ!」
2つの声の主は、安倍なつみと、矢口真里であった。
安倍がひょっこりと、顔を部室の中に覗かせた。
安倍「カオリン!、どうした・・・・・・、
あれ、君は確か、皇君だっけ?」
皇は安倍と目を合わせた。
矢口「あれ!?本当だ。君もカオリンも、こんなとこで何してんの?」
続いて矢口も、顔を出した。
- 154 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/21(日) 16:30
- 飯田「別に。
大した事じゃ無いよ。ただ、この子が部室に入っていく所を見たか
ら、何しに行くのかな?って思っただけ。」
そう言って、飯田は皇を指差した。
安倍「そう言えば聞いたよ。
皇君!君、ここで事件が起きた時、高橋を偉そうな刑事から名推理で
救ったんだってね?」
矢口「ナッチ、それ本当?
すごーーーーい!!シャーロック・ホームズみたい!
そう言えば、昨日の事情聴取の時も、入って来た時、面白かった
もんね。」
皇「はあ・・・・・。(そんなにインパクトのある登場だったかな?)」
安倍「あ!そうだ。こんな事している暇無いんだ。
カオリン、早く行こう。遅れちゃうよ。」
飯田「ああ、そっか、もうそんな時間だっけ?
分かった、今行くよ。
じゃあね、皇君。頑張って、今回の犯人捕まえてね。」
そう言うと、飯田・安倍・矢口の3人は部室から出て行った。
- 155 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/21(日) 16:38
- 飯田が部室から出ようとした、ちょうどその時、
飯田「・・・・・・・・・・皇君。
・・・・・・・・・、高橋の事、守ってあげてね・・・・。」
飯田が何やら、小さい声で、安倍や矢口に聞こえないように呟いた。
皇「え?今、何か言いましたか?」
飯田「ううん。別に、何でも無い。じゃあね・・・・。」
そう言い残して、飯田は部室を出て行った。
皇(飯田さんは何が言いたかったんだ?
ま、いいか。一応、「煉獄仮面」について分かった事だし、今日の
所は収穫有り、ッて所かな。)
皇は投げ捨てていた自分の鞄を拾い、軽く付いていた埃を払い、部室を
後にした。
- 156 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/21(日) 16:56
- 皇は歩道を歩いていた。
両脇が、閑静な住宅街の歩道を、ただ歩を進めるのみだ。
皇(こんな晴れた日は、電車に乗って帰らずに、たまには歩いて帰るか。)
そう思って、わざと遠回りをして、閑静な住宅街を抜け、綺麗に生い茂
げる林の砂利道を超え、終には辺りには、殆ど何も無いただの歩道の上
に立っていた。
辺りには本当に何も無く、あるのは天空から降り注がれる陽の光と、
そこに漂う雲の影。
周りを見ても、大きな建物が2、3軒並んでるだけ。
他には何も無い。都心の騒音も、悪臭も、煩わしい人ごみも・・・・・。
皇は何故だか、荒んでしまい切ったその心が浄化されていく気がした。
- 157 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/21(日) 17:06
- 皇がそうした幻想世界を歩いていると、ふと気が付いた時、目の前には
何やら、負のエネルギーを纏った、奇妙な建物に遭遇した。
皇「ん〜〜〜〜。ここは?」
その建物の門の所に、何か書いてある。
「朝日ヶ丘火葬所」
何とも、禍々しい、今までの幻想世界の雰囲気をぶち壊す建物だ。
皇「あ〜、やだやだ。さっさと通り過ぎよう。」
そう独り言を吐き捨てて、即刻この場から立ち去ろうとした時、その中
に見覚えのある人間が目に付いた。
高橋だ
高橋だけではない。その近くには、小川や新垣、紺野、また、さっきま
で一緒に話していた、飯田や安倍や矢口、そして加護や辻や吉澤、おま
けに、校長、副校長、用務員さんまでいる。
皇(そっか、今日はこの日だったんだ。)
今日は死んだ「石川梨華」も葬式の日だった。
- 158 名前:SINKI 投稿日:2003/12/22(月) 14:31
- 更新、お疲れ様です。
なんだか陰な感じですね。
これからもがんばってください。
- 159 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 14:04
- 「SINKI」さん、ど〜もです。
これからも陰な感じは続く(予定です)ので、お楽しみに。
ちなみに、今、誰が怪しいと感じますか?
これからも、精一杯更新します。
- 160 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 14:19
- 皇も先程、安倍達が飯田に言っていた、「早くしないと間に合わな
い」と言う台詞の意味が分かった。
皇は火葬所の入口で、高橋達を眺めていた。
恐らく、向こうは皇にきづいていない。
その場には、高橋達だけでなく、石川のクラスメイトや親類の人達
が多くいた。
それらの人達はハンカチで涙を拭っていたり、大声で泣き喚いてい
ていた。勿論、小川達や吉澤達、飯田や安倍、矢口、そして校長先
生達も、その内の1人だった。
しかし、高橋だけは違った。
皆が泣いている中で1人だけ小川たちを慰めている高橋の姿があっ
た。
しかし、皇にはそれがどうも気丈に振舞っているだけの様に見えた。
高橋の性格からして、皆が悲しみに明け暮れていても、自分だけは
・・・・・・、と言う大きすぎる責任感に耐えている、と言う風に
しか、皇には見えなかった。
皆の中で1番大声を出して気が済むまで泣き叫びたい、と思ってい
るのは他の誰でもなく、高橋本人であるだろうに・・・・・・。
- 161 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 14:32
- 皇は今すぐにでもこの場を離れてもよかった。
しかし、皇はこの場を離れず、ただ高橋の悲しくも明るく努める、
その横顔を、ただただ見つめていた。
皇「・・・・・・・・・・・・・。ふう、」
溜息1つして、皇はこの時、一体何を思ったのだろうか?
皇はようやく眼を高橋から外し、幻想世界に浸る余裕も無く、清々
しいそよ風を体全体に受けながら、空のある1点を見つめながら、
家路についた。
空は不公平な物だ。
下の世界では、これ程にも陰の空気が満ちているのに、天空はこれ
程まで青く澄み切っている・・・・・・・・・・。
- 162 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 14:51
- 翌日も空は不公平な程、晴れ渡っていた。
今日、私立朝日ヶ丘大付属学園高校は授業が再開された。
やはり、学校では先日起きた「石川梨華殺害事件」の噂で持ちきり
だった。
「学校荒らしではないか?」
「自殺ではないか?」
「もしかしたら、中世西欧の悪霊の仕業では・・・?」
などと、無責任な発言が耳につく。
勿論、高橋のいる2年D組も例外ではない。
高橋はなるべく聞かないようにしている。
いつもの如く、皇はその教室にはいない。
またサボりであろう、と誰も気に留めない。
- 163 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 15:04
- クラスメイト1「高橋さん、大丈夫?」
クラスメイト2「本当だ。顔色悪いよ。」
落ち込んで黙りこくっている高橋を気遣って、クラスメイトが話し
かけて来た。
実は、事件の事は知られているが、警察の必死の口止めで事件関係
者、及び詳細は一切口外されていない。
つまり、クラスメイト達は高橋が事件に関係があることを知らない
のだ。
高橋「ううん。何でもない。最近ちょっと寝不足なだけ。」
クラスメイト1「そっか、今回の事件の被害者の石川って人、高橋
さんの先輩だもんね。しょうがないよね。」
高橋「ちょっと、トイレに行って来る。」
高橋はそう言って、話しかけてきたクラスメイトの元を逃げるよう
に、席を立った。
- 164 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/25(木) 15:19
- 高橋は廊下をトボトボと、歩いている。
別に何処に行こう、と言うわけではない。ただ、例の事件の話を
聞きたくない、それだけである。
高橋はボーっと、雲の殆ど無い晴れている空を見上げた。
高橋(この晴れ渡った空の様になりたい・・・・・・。
私は何も欲しない。
何も切望しない。
ただ、何も無い平凡な日常が欲しいだけ。
なのに・・・・・、なのに・・・・・・、なのに・・・・・・。
どうしてこんな事に巻き込まれるの?
私が何をしたって言うの?
私は普通の平和な生活を送りたい・・・・・・・・・・。)
ふと、目線を移動させたとき、学校の屋上の上で何やら人影が見えた。
- 165 名前:SINKI 投稿日:2003/12/25(木) 16:54
- 更新、お疲れ様です。
あやしい人ですか?
う〜ん、私の中ではまだ藤本のすらすら感があやしく思えます。
あと皇くんの
>(高橋には流石に言えないな〜。
ってところも気になりますね。
伏線なのかな?って思ってしまいます。
まぁ、よく分かりませんが、、、(汗)
もう少しヒントがあればいいんですが、、、(爆)
これからもがんばってください。
あとメリークリスマス!
- 166 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/26(金) 09:51
- 「SINKI」さん。誠にありがとうございます。
成る程〜、藤本が怪しいですか?・・・・・(意味深)。
あと、伏線も今までの話の中に、それなりに忍ばせているつもりで
す。今はまだ関係無くとも、ラストで「あ〜、こう言う事だったん
だ。」と思うような物(だと思います)です。
あと、ヒントその2
「最初の全員のアリバイ証言に、今は固執しない方が良いかも。」
(後々、使う事になるかもしれませんが、今はあまり・・・・・・)
としか、言いようがありません。
(今、変に発言するとあっという間にネタバレしてしまうので・・・・・)
SINKIさん、1足遅いですけど、「メリークリスマス!」
そして、1足早く「A HAPPY NEW YEAR!!」
- 167 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/26(金) 10:08
- 高橋は無意識のうちに、今、人影が見えた屋上に繋がっている階段
を上っていた。
高橋は屋上に出るドアのドアノブを握り捻った。
ガチャ
と言う、金属製のドアノブを回した時に出る独特な音が発する。
高橋は屋上に出る。
一瞬、強い突風が高橋を襲ったが、ほのかに涼しく心地よい。
そこから見える地上の景色は、正に絶景。
校域内に広がる欅の木や、ポプラの木々は鮮やかに日光を反射して
いる。
小さな住宅街も、まだまだ緑が姿を残していて心が落着く。
もう少し建物が少なかったら、地平線が見えそうな・・・・・・、
そんな風景が高橋を優しく包み込んだ。
- 168 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/26(金) 10:19
- 高橋はハッとした。
高橋は自分がここに来た目的を思い出した。
とは言っても、ここに人影が見えただけであって、別にその人影に
用があるわけではないし、そもそも誰かも分からない。
ただ何となく、何かに誘われた感じがして来ただけだ。
高橋は屋上の、その周りをぐるりと一周見渡した。
しかし、そこには人影は無く、またそれらしき物も無い。
高橋(気のせいだったのかな・・・・?)
高橋がそろそろ教室に戻ろうと振り返ったとき、自分が入ってきた
ドアのすぐ横に、もう1つ上の屋上に続くはしご段を見つけた。
その上の屋上は貯水タンクやアンテナか何かがあるだけの狭いスペ
ースだ。
高橋はそのはしご段を昇った。
高橋が上に到着すると、顔を半分だけ出して様子を静かに伺った。
- 169 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/28(日) 23:31
- 高橋が様子を伺ってみると、そこには仰向けになって青空を眺めて
いる、1人の男子生徒が居た。
その男子生徒のすぐ横には、見覚えのある鞄が1つ転がっている。
高橋は少し、その少年を見ていると、
皇「こんなところに来客とは、珍しいな。」
と言って、皇が体を起こした。その男子生徒は皇だった。
高橋「え・・・・。
(気付かれていたのか。)」
高橋は申し訳なさそうに顔を出して、屋上に上った。
高橋「皇君、こんなところで何してんの?」
皇「それはこっちの台詞だ。おまえこそ、こんなところで何してん
だ?」
高橋「え、別に。ただここら辺で人影が見えたから、ただ何となく
・・・・・・・・。
そう言う皇こそ、今日は学校に来てたんだね。」
皇「今日は・・・・・?
俺はいつも学校には来てるぞ。」
- 170 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/28(日) 23:40
- 高橋「え・・・・・?
だって今日、皇君、教室に来て無いじゃん?」
皇「教室にはな・・・・・・。
俺は大抵、天気が良くてする事が無いときは、ここに来てるぞ。
こんな天気の良い日に、授業なんか出てられないだろ?」
皇は青く澄み渡った天を仰いだ。
高橋「呆れた・・・・・・。
ってことは、いつも晴れた日はここに日向ぼっこしに、学校
の屋上に来てるってわけ?」
皇「悪いか?」
皇は悪びれた様子を全く見せず、あたかも当然だろ・・・・、と言
んばかりの口調で話した。
- 171 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/28(日) 23:51
- 皇「ところで、お前、もう良いのか?」
高橋「え、何が?」
皇「石川さんの事さ・・・・・・・・・・。
もうショック受けてないのか?」
高橋「・・・・・・・・・・・・・。」
高橋は終始無言になった。
皇(やば・・・・。変なこと聞いちゃったかな・・・・・・。)
この狭い空間に沈黙が流れるかと思った。
しかし、思いのほか早く、高橋は口を開いた。
高橋「石川先輩の事、完全に立ち直った・・・・・・、って言えば
嘘になるけど、でも今はある程度石川先輩の死を受け入れら
れている、って思ってる。
これは自分で自分に言い聞かせている部分があるかもしれな
いけど、それでも前よりは随分気が楽になった。
こんな事言ったら、石川先輩に不謹慎かもしれないけどね。」
高橋は小さい笑顔で答えた。
皇はホッと胸をなでおろした。
- 172 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 00:02
- 高橋「ねえ、皇君。
犯人はいつ捕まるのかな?」
皇「・・・・・・・・・・。
さあな。俺もそこまでは分からん。
警察も今、色々捜査の手を広げているらしいけどな・・・・、
まだまだ、らしい・・・・・。」
高橋「・・・・・そっか・・・・・・・・・。
しょうがないよね。」
高橋は再び俯いた。
皇はそんな高橋を見て、再び悩んだ。
皇は「ある事」を高橋に言うべきか、言わないべきか、悩んでいた。
皇は昨日の火葬場での高橋の様子を見て、「ある事」は言わないべき
きか・・・・・・・、と思っていた。
何事も、例えそれが高橋自分自身にとって1番つらい事であっても、
気丈に振舞う芯の強い高橋。
しかし、その気丈さ故、1度折れたときどうなる事か・・・・、と
考えると言うに言えなかった。
- 173 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 00:11
- 高橋は皇の、その微かな表情の変化を見逃さなかった。
高橋「皇君、どうかしたの?」
皇「へ???」
迂闊だった。皇は一瞬、そう思った。
思いもよらない質問に、動揺したのか声が多少上ずった。
高橋もその声の変調に、皇が何かを隠している事を悟った。
高橋「皇君、何か隠しているでしょ?」
皇「べ、別に・・・・・。」
高橋「本当に!?」
高橋が矢の様な視線で皇を睨んでくる。
皇はこれ以上しらを切っても無駄だ、と踏んで、話すしかないな・・
・・・・、と思った。
皇「お前、聞いても後悔しないか・・・・・・・・・?」
高橋「うん!!!」
高橋は力を込めて頷いた。
- 174 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 00:32
- 皇「これはまだ、確か・・・・、と言うわけでは無い。
しかし、可能性は高い・・・・、と言う話だ。
今回の事件は恐らく、まだまだ続く様な気がする。」
高橋「・・・・え・・・・??」
高橋は、まさか、と言わんばかりに我が耳を疑った。
皇「理由は2つ。
1つは現場に残された例の「血文字」だ。
お前も聞いていると思うけど、
「私は地獄の淵より復習の為に蘇った。 我が名は煉獄仮面」
って言う血文字が残されていたんだ。
俺は最初にこの血文字が残されていた事に疑問を抱いていた。
何故、犯人はこの様な血文字を残すのか・・・・?
残す以上、何か意味があるはずだ。
それが何なのか・・・・・?
今の俺には分からない。
しかし、文面から見て犯人はまだ犯行を繰り返す可能性が高い。
これは、犯罪心理学から見ても、この様な血文字などを現場に
残す犯人は、似たような犯行を繰り返す傾向が強いとある。」
- 175 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 00:48
- 高橋「じゃあ・・・・、石川先輩を殺した犯人は、もしかしたらま
た誰かを襲うかもしれないって事?」
皇「ああ。少なくとも可能性はゼロではない。」
高橋「・・・・・・・・・・・。」
高橋は下唇を強く噛締めた。
皇「その2。
犯人がまだ、犯行を繰り返す可能性があるってことはだ、
それは同時に、犯人は部外者や学校荒らしなんかでは無く、
一昨日、朝日ヶ丘署に集められた例の、俺を含めた「19人」
の誰か、である可能性が極めて高くなる、って事だ。」
高橋「ど、どうして・・・・?」
皇「部外者や学校荒らしが、1回犯行を犯した場所に危険を犯して
まで、戻ってきて同じ犯行を犯すとは考えにくい。
精神異常者ならまだ考えられなくは無いが、そんな奴なら最初
から血文字なんて残さないだろうに・・・・・。
つまり、同じような犯行を起こすとしたら、それが可能な内部
の立場の人物、
つまり俺達「19人」の中の誰か・・・・・・・、である可能
性が充分高い・・・・・・・ってわけだ。」
高橋「そ、そんな・・・・・・・・・・・・。」
- 176 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 10:49
- 皇「今回の犯人は自らの事を、「煉獄仮面」と名乗っている。
「煉獄仮面」って言う言葉に聞き覚えがあるだろ?」
高橋「うん・・・・・・。
今回、私達が行う予定だった舞台の作品名よ。」
皇「飯田さんに聞いたところ、「煉獄仮面」ってのは、昔、煉獄と
言う地獄に堕とされた悪人が現実世界に蘇り、再び煉獄に堕と
された怪人、らしいじゃないか。
実際、中世ヨーロッパであった話を元に作られているらしいが、
アレンジを加えられている。
事実、実際、お前達が行う「煉獄仮面」は内部の物しか、名前
も、話の内容も知らないはずだ。
しかし、現場にはミュージカル部の行なうはずだった「煉獄仮
面」を思わせる内容の血文字が残されている。」
高橋「じゃ・・・・・、じゃあ・・・・・。」
皇「俺だって考えたくは無い。
しかし、そう考えざるを得ない状況であることも確か。」
- 177 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 11:04
- 高橋「皇君は私達「19人」の中に犯人が居ると、本気でそう思っ
っているの?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・。」
高橋「そんなのおかしいよ。
石川先輩だって、吉澤先輩だって、加護先輩、辻先輩も、飯
田先輩、安倍先輩、矢口先輩も、まこっちゃん、あさ美ちゃ
ん、里沙ちゃんも、中澤先生も、勿論、校長先生、副校長先
生も、用務員さんも、みんな皆、いい人ばっかりだよ!!
みんな良い人ばっかりなのに・・・・・・・・・・・・・・
何で?
どうして?
どうして皇君はそんな事言えるの?
皆、皆、石川先輩を殺すような悪い人じゃないのに・・・・
・・・・・・。」
高橋は、もはや我を見失っていた。
もはや無我夢中だった。
皇が恐れていた事が起こった。
皇「高橋!!!!!」
皇はいきなり怒鳴り上げた。
- 178 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 11:16
- 高橋「えっ・・・・・・・。」
高橋は皇に怒鳴られ、ハッと我に返った。
皇「高橋・・・・・・・・・・。
お前の気持ちは分かる。
お前の身近な人が犯人でない、と思い込みたい気持ちは痛い程
わかる。
しかしな、高橋。
今回は石川さんと言う、人間が1人殺されている。
これはれっきとした殺人事件だ。
その様な個人的感情は、あまり持たないほうが良い。」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その2人の間の空間に、「沈黙」と言う悪魔が抱擁した。
- 179 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2003/12/29(月) 11:39
- 高橋はまた、俯いたまま、まだ無言のままだ。
皇(高橋にはまだ、荷が重かったのかもしれない。
けど遅かれ、早かれいつかは受け入れなければならない事。
・・・・、しかし、今言うべきだったのか・・・・・・・?)
皇は自らと苦悩苦闘しながら、大空を見上げた。
青空は昨日と少しも変わらず、スカイブルーに、純白の大きな雲が
心地よく彩っていた。
何1つ、悩みも、淀みも、汚れも、何も無く正に、清らかさの象徴だ。
皇「俺はこの青空が何より好きだ。」
今度は皇が、その沈黙を突き破った。
高橋「え・・・・・・・・・?」
皇「澄み切った青い空。
流れて、崩れては繋がり、また流れて、崩れて繋がる。
その繰り返しの天空を俺は好きだ。
天も、そこを漂う雲も、完全な自由で決まった形を持たない。
その場、その場に合わせた好きな形に、自らの形を変えられる。
俺は時々、ふと思う。
なれないと分かっていても、この自由な雲に、浄化しきった雲
になれたら、どんなに楽だろうと・・・・・。
空っていいな・・・・・・・・・。」
皇は顔を上に向けた。
高橋も釣られて上を向く。
空はやはり、決まりきって晴れ渡って、強く、それでいて淡い陽の
光を惜しみなく放っている。
全くもって、空は不公平である・・・・・・・・・・・・・・。
- 180 名前:名無し竜騎士 投稿日:2003/12/30(火) 19:49
- どうもお久しぶりです。
久しぶりにこの小説を読ましていただきました。
僕、名無し竜騎士曰く、聖なる竜騎士さんは情景描写がかなりうま
〜〜〜〜いと思います。今の皇と高橋の暗い心理状態と、澄み渡っ
た空の対比描写が絶妙だと、僕は思います。(他の読者さんはどう
思っているか分かりませんが・・・・・・)
でも一方で話の展開が少し遅い気がします。(僕だけでしょうか?)
その中に伏線が隠されているのでしょうか?
何はともあれこれからの更新もますます目が離せません。
これからの更新もがんばって〜〜〜〜〜〜(熱)
- 181 名前:名無しくん 投稿日:2004/01/01(木) 09:40
- あけましておめでとうございます。
更新楽しみにしてます。
- 182 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 10:44
- 「名無しくん」さん、応援ありがたく頂戴します。
これからも、1人でも多くの人に読んでもらう為に、
1人でも多くの読者の皆様に、喜んでいただく為に、
これからも、出来るだけがんばりますので・・・・。
- 183 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 11:01
- 皇は立ち上がり、その脇に置いてあった鞄を持ち上げた。
だらしなく姿を見せるシャツと、第2ボタンまで開いている制服が風でなびく。
皇は再び俯いてみた高橋の髪をクシャクシャと撫でた。
皇「ほら!しけた面するな。
まだ、「19人」の中に犯人がいる・・・・って完全に決まったわけじゃ
ない・・・・・・・・。
まだお前の言う、学校荒らしや、外部犯って可能性も無いわけじゃ無い。
だから、顔上げろ!」
皇は無駄かもしれない、と思いつつも高橋に激を入れた。
高橋「・・・・・・うん。」
高橋は俯き加減で答えた。
- 184 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 11:16
- 皇は鞄を持って、そのままはしご段を下りようとした。
高橋「あれ?皇君、何処行くの?」
高橋は明らかに、教室に向かう雰囲気を発していない皇に、疑問を
抱いた。
皇「サボる!!」
高橋にとっては、ああやっぱり、と言わんばかりの台詞だった。
皇「こんな晴れた日に、授業なんか浮けてられるか。
お前は優等生なんだから、午後の授業にちゃんと出ろよ。」
皇はそう言うと、さっさとはしご段を下りていった。
- 185 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 11:44
- 皇はただ1人だけ、朝学の中央玄関から校門に繋がる両脇が欅の
木で彩られた1本道を歩いていた。
時折吹くそよ風に、欅の木がざわざわと揺れ、音が響く。
その風は、同時に皇の頬と、その心をも吹きかける。
皇が自分の歩く少し先をボーっと眺めながら歩いている。
皇が校門を出る頃、
安倍「あ!皇君?」
皇は聞覚えのある、少し子供っぽい声に引き止められた。
皇「え?」
皇が振り返ると、そこにはこの間顔をあわせた、安倍と矢口が立っ
ていた。
どうやら、サボり癖のある皇を、高校校門の辺りで待っていたらし
い。
- 186 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 12:04
- 安倍「やっぱり皇君だ。」
皇「安倍さんと、矢口さん・・・・・・、でしたっけ?
俺に何か用ですか?」
矢口「まあね・・・・・・・。
ねえ、皇君、今暇?」
皇「はあ?」
安倍「良かったら、ちょっと話したい事があるんだけど・・・・。」
皇「はあ・・・・・・・。」
皇は2人に連れられて、朝学の近くの小さな喫茶店にやって来た。
- 187 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 12:15
- その小さな喫茶店は、大通りから伸びている細いわき道に面してい
る、あまり利用客の姿が見られないこじんまりとした店だった。
店内には題名は分からないが、静かな曲調のクラシック音楽が流れ
ていて、これが大通りにあったなら、客の足も増えるだろうに・・
・・・・・、と言うような雰囲気の良い店だ。
皇達が店内に入った時、店内には常連客らしき数人の人間がそれぞ
れテーブルに向かっていた。
皇達が入ってきても、さほど反応を示した様子は無い。
皇達は窓際の、日の光が入ってくるテーブルに腰を据えた。
- 188 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 12:32
- 定員にコーヒーを3つ注文すると、安倍と矢口は神妙な面持ちに直
した。
安倍「ごめんね。忙しそうな所を無理言っちゃって。」
皇「いえ。そんな事無いですよ。
ところで話って何ですか?」
安倍「皇君もある程度、気がついていると思うけど、話って言うの
は、今回の事件についてなの。」
矢口「話しによると、皇君ってすごい推理力の持ち主なんでしょ?
今回の事件の被害者が、私達の掛け替えの無い大切な後輩の
1人だし、出来る事ならば、私達も出来る限りの事はしたい
と思うけど・・・・・・・。
でも、私達は皇君みたいに優れた推理力も持ってないし、
警察みたいに捜査力も行動力も持ってない。
ただただ、皆が捜査をする事を後ろから見守ることしかでき
ない。」
- 189 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 12:47
- 安倍「私達は悔しいんだ。
大事な大事な仲間が殺されたのに、その1番身近な私達が何
もできない、って事が・・・・・・。
そして、今回1番傷ついているのが、何を隠そう、高橋本人
だよ。
しかも、高橋は誰よりも元気を振舞っている。
自分の出来る限り、周りの人を落胆させないように、皆の支
えになるべく、1番辛いはずの高橋が、1番頑張っている。
1番辛い立場の高橋が頑張っているのに、1番頑張らなくて
はいけない年上の私達が何もできない。
そんな状況を見ていて、何も出来ない私達が悔しい。
だから、せめて、私達は皇君を応援する事位しか、すること
が無いの。」
矢口「だから、皇君、お願い。
皇君にとってはプレッシャーになるかもしれないけど、今回
の事件を何が何でも解決してほしいんだ。
石川の為
高橋の為
そしてみんなの為にも・・・・。」
- 190 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 12:57
- 安倍「そして、今、高橋の1番近くにいる皇君に高橋自身を守って
やってほしい・・・・・・・。
これが、今回、私達が皇君を呼んだ理由。」
皇「そうですか・・・・・・・・・・・。
(「守ってほしい」か・・・・・・・。何処かで聞いたことが
ある響きだと思ったら、・・・・、そうか昨日飯田さんが、
部室を出るときに聞き取れなかった囁き・・・・・。
あの響きと一緒だ。
と言う事は、あの時、飯田さんは俺に、「高橋を守ってやって
欲しい。」って言ったのか。
でも何で?何かあるのか?)」
皇は既に運ばれてきていた、少し冷めたコーヒーを啜った。
この時のコーヒーが多少濃かった。
- 191 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 13:09
- 矢口「ところで、皇君。
今の時点で何か、分かっている事は無い?
私達に出来ることなら、何でも言って。
出来ることなら何でもするから・・・・・・。」
皇「お気遣い、ありがとうございます。
けど、今のところ、分かっていることは殆ど無くて、俺自身も
困っている所なんですよ。」
安倍「そっか・・・・・・・・。
ごめんね、変なこと聞いちゃって・・・・・・・。
つい、「あの子」の事を思い出しちゃって、気があせっちゃ
った・・・・・・・・。」
矢口「ナッチ!!!」
安倍が「あの子」と口を漏らした時、隣で座っていた矢口が人が変
わった様に、叫んだ。
矢口「ナッチ!!それは言わない約束でしょ!!」
安倍「ご、ごめん。矢口。つい・・・・・・・」
- 192 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 13:19
- 皇「「あの子」って言うのは?」
安倍「ううん。何でも無い。気にしないで・・・・・。
ああ、じゃあ私達はこれで失礼するね。」
そう言うと、安倍がテーブルの隅に置いてあった伝票を拾い上げる
と、矢口と共に立ち上がった。
皇「あっ、自分の分は自分で払いますよ。」
安倍「いいから、いいから。私達に払わさして。
これは、私達の今回の事件解決の餞別だと思って。」
そう言うと、他のもまだまだ聞きたいことがありそうだったが、
なにやら、場が悪くなったので席を外すらしい。
安倍と矢口は支払いを終えると、すぐに喫茶店を出て、すぐに姿が
見えなくなった。
皇は1人椅子に座ったまま、残ったコーヒーを飲み干した。
ミルクを多めに入れたが、やはり苦かった。
- 193 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 13:34
- 皇は喫茶店を後にしたあと、駅までの道のりで考え事をしていた。
皇(成る程。悩み苦しんでいるのは、何も俺や高橋だけじゃないっ
ってことか・・・・・・・。
俺は、安倍さんや矢口さんに嘘をついた。
今のところ分かっていることは無い、と言った。
別に分かっていることは無いわけでは無い。
血文字の件や、これが内部犯である可能性が高い件など、ある
程度、分かっていることはある。
しかし、安倍さんや矢口さんが犯人像から外れたわけではない。
安倍さん、矢口さんも、もしかしたら犯人である可能性も、無
い訳ではない。
もしも犯人である場合、俺は自ら、犯人に手の内を明かす失態
を犯すことになる。
そうした場合、俺や高橋やはたまた別の人が狙われる事になる
事になるだろう。
それだけは避けなくては・・・・・・。)
皇は自らの重くなった両足を引きずりながら、家路についた。
- 194 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/02(金) 13:44
- 皇は誰もいるはずの無い自分の部屋に着いた。
今日は特別疲れた感じが残っていた為、早めに布団の上に転がった。
そこで、皇はふと、今日安倍が喫茶店で思わず口を滑らしたらしい
あの言葉を思い出した。
「あの子」
一体、どういう意味なのだろう?
「あの子」とは誰の事であろう?
口を滑らした、あの瞬間の安倍の表情、
一瞬、人が違ったように叫んで、「あの子」と言う言葉に拒絶反応
を示した矢口に、演技掛かった素振りは全く見られなかった。
今まで、石川の事は普通に話していた事から、「あの子」は石川の
事ではあるまい。
となると・・・・・・・、「あの子」とは一体・・・・・・?
皇はそんな事を考えていたが、疲労感のせいか、いつの間にか寝入
ってしまったいた。
- 195 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/02(金) 20:57
- あけおめッス♪
む〜、全然わからん(w
これからの展開を見て犯人推理できればうれすぃ〜です。
今年もよろしくお願いしますねw
- 196 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 12:48
- 「名も無き読者」さん、こちらこそ、あけおめです。
やはり今のところ、犯人当ては作者が言うのも何ですが、自分自身
でも難しいと感じます。
でもこれから、事件の進展?、謎の解明?、がある程度明らかにな
ると、思います。
「名も無き読者」さんの、今のところの目星でも教えて頂けたら、
幸いです。
これからも、この駄小説の応援、よろしくお願いします。
- 197 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 13:13
- 今日は、土曜日の「石川梨華殺害事件」から4日後の水曜日。
今日は今まで晴れていた分、朝から土砂降りの雨。
そんな中、傘をさしながら自転車に乗っている少女がいる。
小川 麻琴である。
只今の時刻は、6時30分。
ある程度、事件が落着いてきたので、今日から朝学のミュージカル
部の朝練が再開される事となった。
朝学の朝練は午前7時から開始され、朝のHRの始まる直前の、8
時30分までの1時間30分間行われる。
朝の7時から開始される為、その準備をしなくてはならない。
ダンスホールの鍵開け、道具の整理や準備など結構、する事が多い。
その為、家が学校に近く、また結構何だかんだ言ってしっかりして
いる小川が鍵開け当番として任命された。
- 198 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 13:31
- 小川は何とか学校に到着した。
小川「うっひゃーーー!雨、結構強いな。濡れちゃった。」
小川はぼやきながら、ダンスホールの鍵を取りに行く為、教務室に
向かった。
小川「失礼しま〜す。」
電気もついていなく、朝が早すぎて誰も居ない事を知っていながら、
小川はそう言いながら教務室に入る。
教務室を入って、真直ぐ行った所に学校中の鍵が収められている、
通称「キーボックス」と呼ばれる金属製の箱が置いてある。
その「キーボックス」の中に、ダンスホールの入口の鍵が掛けられ
ている。
小川はいつもの様にそのキーボックスを開け、いつもダンスホール
の鍵が掛けられている場所に手を伸ばした。
しかし、いつもあるはずの鍵がそこには無かった。
小川「あれ!?鍵が無い。
おっかし〜な〜・・・・・・・。
誰かが使った後、ここに返すの忘れてるのかな?」
小川は、キーボックス内の別の部分に掛かっているのではないか、
キーボックスの周りに落ちているのではないか、と思い見回してみ
るが、やはり、どこにも見当たらない。
- 199 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 14:02
- 小川「しょうがない・・・・・・・・・・。
合鍵を借りるしかないか・・・・・。」
小川は探すのを諦めて、教務室を出て教務室から少し離れた、事務
室に向かった。
事務室は朝が早いというのに明かりがついていた。
小川「失礼します〜〜。」
小川の少し腑抜けた声が、事務室内に響く。
保田「お〜〜!小川。どうした?何か用?」
そこにはデスクに向かって、1人の女性が座っていた。
彼女の名前は保田圭(やすだけい)。
私立朝日ヶ丘大付属学園高校の事務員の1人であり、ミュージカル
部のOBの1人でもある。
保田は今まで、何度かOBとしてュージカル部の練習に顔を出した
こともある為、小川とも面識がある。
高校卒業後、すぐにこの事務室に勤務することが決定、若いながら
も、バリバリ働いている。
- 200 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/03(土) 15:36
- 連日更新乙彼です。
犯人の目星ですか…?
じゃあ、アリバイの一つも無い市井さんで!
現時点じゃ全く自信ないですが^^
それじゃ次回も期待してます。。。
- 201 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 17:19
- 「名も無き読者」さん、誠にうれしゅうございます。まさか、こんな早く返事
がもらえるとは、思ってもみなかったです。
そうですか〜「市井さん」ですか〜〜〜。(???)
う〜〜ん、どうでしょう??
やはり、推理小説は書く方も、読む方も難しいと思うんですよ。
読む人は、頭の中であれこれ考えるし、
一方、書く方も書く方で、読者の方に、伏線などをなるべく気付かれない様に
しつつ、その一方で、あまりにも気付かれないと、気付かれないで寂しい思い
をする事も有るので、こちらも大変です。
それ故、「名も無き読者」さんのように、読んで頂いて感想の一言でも頂くと、
嬉しいので、これからもこの小説をよろしくお願いします。
- 202 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 17:45
- 小川「あれ〜、保田さん、何してるんですか?
こんな朝早くから?」
保田「見れば分かるでしょ?仕事よ、し・ご・と!
今週中に処理しなくちゃいけない書類が、まだ沢山あるのよ。
私もまだまだ、新人でね〜、上の人にこき使われているの。
・・・・、ところで、小川?何か用?」
小川「あ〜、そうだった、そうだった。
保田さ〜ん、ダンスホールの合鍵貸して下さ〜い。
なんか、誰かが使ったらしく、キーボックスの中に無いんで
すよ。」
保田「え〜〜、鍵が無くなったの?この学校の鍵って、見た目は普
通だけど、特殊な造りに成っていて、複製するのに結構、時
間もお金もかかるのに〜!・・・・・・・・・・
しょうがない、じゃあ、この「合鍵貸出名簿」に名前と時間
書いて。」
そう言うと、保田は自分の鞄の中から、1つの分厚いファイルを取
りだし、小川に渡した。
- 203 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/03(土) 17:57
- 小川「え〜〜、またこれ書くんですか?
保田さん代わりに書いてくださいよ〜。」
保田「だ〜め!!いつも言ってるでしょ?
本鍵と合鍵が、もし万が一両方とも無くなったら、新しいの
作れないでしょ?
もしなくなったら、鍵穴ごと変えなくちゃいけないの!
そっちの方が面倒でしょ?
そうならない為にも、いつ、誰に、何処の合鍵を貸したか分
かる様にしておかないと。
はい、ぐたぐた言ってないで書いた、書いた。」
小川はそう言われて、渋々記入した。
小川「え〜〜と、名前・・・・、「小川麻琴」・・・・・・・・、
時刻・・・・、6時・・・35分・・・・・・・・・・・、
何処の鍵か・・・・・・、ダンスホール・・・・・・・、と。
これで良いですか?」
保田「・・・・・・・・・・。はい!OK!
じゃあ、ちょっと待ってね。」
保田は「合鍵貸出名簿」にちゃんと必要事項が記入されている事を
確認すると、自分の胸ポケットから1つの鍵を取り出し、自分のデ
スクの1番上の引き出しの鍵穴に差し込んだ。
ガチャ!と言う音と共に、引き出しを開ける。
中には、キーボックス同様、全ての合鍵が入っていた。
- 204 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/04(日) 23:33
- 小川「うわ〜〜。すご〜〜い。相変わらず沢山、鍵がありますね〜。」
保田「当たり前でしょ!一応、学校中の合鍵があるんだから。
・・・・・・・、ええっと、ダンスホールの鍵は・・・・・
・・、これか。
はい、小川。」
保田は合鍵がきちんと並べてある中から、ダンスホールの合鍵を取
り出すと、小川に渡した。
小川「ど〜もありがとうございます。」
保田「いい事?今から15分以内に返しに来なさい。
これも規則だからね。有無は言わせないわよ。」
小川「は〜〜〜〜い。」
小川に対して、合鍵を早く返す様に釘を刺したが、当の小川は相変
らずヘロ〜〜ン、としている。
合鍵を受け取ると、そのまま事務室を出ようとした。
- 205 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/04(日) 23:41
- 保田「ねえ・・・・、小川。」
小川が手をドアの取っ手にかけた時、保田が不意に小川を呼び止め
た。
小川「何ですか?保田さん?」
保田「あんた達、今度の大会、もうすぐでしょ?」
小川は、保田のいきなりの質問に戸惑った。
小川「ええ、まあ。近いと言えば、近いですけど・・・・・・。
でも、事態が事態ですから出れるかどうか分かりませんけど
・・・・・・・・。」
保田「殺された石川の手向けの意味でも、今度の大会頑張りなよ。!!」
小川「・・・・・・・・・・。はい!!任せてください!!」
小川は少し元気付けられて、事務室を出て行った。
- 206 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/04(日) 23:54
- 小川は、その右手にダンスホールの合鍵を強く握り締め、ダンスホ
ールに続く長い1本廊下を駆けていた。
小川(いつもは、憎まれ口を叩く事が多い保田先輩があんな事を言
ってくれるなんて・・・・。
そうだよね・・・・・。確かに石川先輩が殺されたのは事実。
それは分かっている。
その為に、部員の皆が落ち込んでいる事も事実。
それも分かっている。
だからこそ、ミュージカル部のムードメーカーの1人として、
辻先輩や加護先輩達と一緒にムードメーカーとして、部活全
体を元気付けてあげる番だ。
これから頑張らなくちゃ!)
小川は、その自らの使命感に奮起した。
その足取りは軽かった。
- 207 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/05(月) 00:11
- 小川の、その軽い足取り。
その足取りとは裏腹に、小川が歩を進める毎にその足は、回転が悪
くなっていく事は容易に気付いたことだった。
進めば進む毎に、足が、腕が、体が、頭が、重く、硬く、何となく
痛くなっていった。
小川「あれ!?」
またさらに、小川は自分の掌や背中、額がジトー、っとした汗を噴
出している事に、自ら驚く事となった。
今は、外はまだまだ雨の勢いを失う事無く、大荒れの天候だ。
今日は、雨が降っているせいか、湿度が高くいつもより暑い位なの
に、何故か小川は寒気を感じずにはいられなかった。
いや、「寒気」と言うよりは「激しい悪寒」と言った方が正しいだ
ろう。
小川「風邪ひいちゃったかな〜?」
その頃小川はまだ、その程度にしか考えていなかった。
- 208 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/05(月) 00:25
- 重くなった足を引きずって、小川はダンスホールの入口の前に立っ
ていた。
目の前はいつもの部活で使う、いつものダンスホールの、いつもの
重い扉だ。
しかし、小川にとってその「いつものダンスホールの扉」は「いつ
ものダンスホールの扉」であって、「いつものダンスホールの扉」
ではなかった。
論理的には「何」の、「何処」が、「どんな風」に違っている、と
は言えない。
しかし、生理的に小川の体全身が、その「いつものダンスホールの
扉」を拒絶していた。
小川は理性で、その生理的拒絶を丸め込み、右手を動かし、持って
いた合鍵を、扉の鍵穴に装着した。
そう、その瞬間、皮肉にも、希望を花咲かせるはずのダンスホール
の入口を開けると同時に、小川は自分自身で自分自身を煉獄に導く
「煉獄の扉」の封印を解いてしまったのだった・・・・・・・・。
- 209 名前:名無しくん 投稿日:2004/01/05(月) 00:31
- 更新中ですかね?楽しみにまってますよー!
- 210 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/05(月) 13:11
- ひぇ〜!!
この展開はもしや…
不安です。続き期待。
- 211 名前:SINKI 投稿日:2004/01/05(月) 15:03
- 次の殺人ですか?
誰が殺されたんでしょうか?
とりあえず、小川と愛ちゃん、皇くんは犯人ではなくなりましたね。
多数の人による犯行でしたらわかりませんけど、、、。
展開が気になりますね。
- 212 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:02
- 「名無しくん」さん、どうもありがとうございます。
まだまだ、更新中ですよ。
やはり、学生(受験生)と言う身分である故、これから多少ペース
は落ちると思いますが、お返事程度ならある程度、定期的に行える
と思うので、これからも応援よろしくお願いします。
- 213 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:06
- 「名も無き読者」さん、誠にありがとうございます。
こ、この展開はもしや・・・・・・・・・・。
まあ、そこの所は、これからの本編を楽しみに?待っていただけれ
ば、幸いです。
これからも読者の皆様のご期待を裏切らない作品造りに努めて行き
たい、と思う今日この頃です。
- 214 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:15
- 「SINKI」さん、ご感想どうもありがとうございます。
この展開は新たなる殺人事件か・・・・・・・・?どうか?
(ぶっちゃけると新たな殺人事件です。)
犯人はあの「19人」の中の誰かなのか、どうか?
(これは、言えませんけど、ご想像にお任せします。)
「多人数の犯行」ですか?
一言で言うなら、「痛い所を突かれた」かな、ですね。(すっごい
意味深なヒント?)
これからの展開に、こうご期待です。
- 215 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:34
- 時を少し逆上る。
時は1日前の火曜日の夕方。
藤本と亀井、田中、道重が授業を終え、4人で帰ろうと中央玄関に来た時の事
だった。
まだ、学校中に部活動禁止令が出されていた。その為、4人は部活動に出ない
で、帰ることとなった。
4人が揃って下駄箱の前まで来た。
藤本が自分の上履きを、下駄箱の中に入れようとした時、中に何か変な物が入
っている事に気がついた。
手紙だ。
真っ白な便箋に、中にこれまた真っ白な手紙が同封されている。
差出人は不明。
道重「あれ?美貴ちゃん、どうかしたの?」
藤本「え?んん。何でもない。」
亀井「また美貴ちゃんの「何でもない」が出た〜。」
藤本はとっさに、その謎の手紙を自分の鞄に隠すようにねじ込んだ。
別に大した物ではない、ただの手紙だが、その時藤本は不吉な予感がした。
4人は仲良く学校を出た。
- 216 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:41
- 3人との、いつもの他愛も無い会話にも藤本は集中できなかった。
3人と別れ、家に帰っても、夕御飯を食べるときも、例の手紙が気
になって、ろくに御飯が喉を通らない。
藤本はさっさと、夕御飯を済ませ、風呂に入り、自分の部屋の椅子
に腰掛けた。
ろくに勉強道具も乗っていない机の上に、藤本は鞄から出した、少
ししわくちゃになった、例の手紙を取り出して広げた。
その真っ白な便箋の中の手紙は、パソコンで打ったような、生気の
全くしない、インク文字が並べられていた。
- 217 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 17:52
- 藤本は部屋のドアの鍵を閉め、窓のカーテンを全て閉めた。
誰が見ているわけではないが、誰かに見られたら危険な気がした。
手紙にはこう書かれていた。
「 こんにちは 藤本美貴さん
都合により名前は伏せさせてもらいます
実は私は、今、警察も知らない重大な事実を知っています
この事実は、もしかしたら今回の「石川梨華殺害事件」の犯人を
特定する事が出来るかもしれない、重大な事実です
そこで、私が1番信用できる藤本さんにだけ、この事実をお話し
したいと思います
もしよろしかったら、明日の朝、水曜日の午前5時までに、ダン
スホールのステージの横の物置部屋に来てください
くれぐれも、誰にも見つからないようにお願いします
待ってます
名も無き証言者」
- 218 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/06(火) 18:01
- 藤本は溜息をついた。
藤本「たちの悪いラブレターね・・・・・・・・・・。」
藤本は考え込んだ。
この「名も無き証言者」とは一体、誰なのか?
自分を1番信用している、とは言っていたが・・・・・・。
この事件を知っているとなると、やはり朝日ヶ丘署での事情聴取に
呼ばれた、私を含めた「19人」の中の誰か、ってこと?
警察も知り得ない重大な事実とは何か?
いや、そもそもこの手紙を信用して良いのだろうか?
もしかしたら、これは犯人の罠かも・・・・・・・。
藤本自身、考えたところで答えは出なかった。
結局、
「犯人に襲われそうになったら、自慢の運動神経で逃げれば良いし、
いざとなったら、自分自身で犯人を捕まえてやる。」
と言う結論に行き着いた。
藤本は明日の為、早めに床に着いた。
- 219 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/06(火) 19:40
- どーも、名も無き証げ・・・いや名も無き読者です(ww
嗚呼、ミキティ…
嫌な予感がしますぅ(汗
では次もマターリ待ってますね。
- 220 名前:名無しくん 投稿日:2004/01/06(火) 20:38
- 小川・・・ミキティ・・・
そろそろ次の・・・
期待して待ってますよー!
- 221 名前:闇への光 投稿日:2004/01/07(水) 09:02
- はじめまして。初投稿します。
いきなりですが安倍が言った「あの子」がもし私の予想と当っていたら
(登場人物を見ると十中八九間違いないが・・・)この人が重要と思います。
おそらく何らかの「絆」があると思うのですがどうでしょうか?
次回の更新を楽しみにしています。
- 222 名前:闇への光 投稿日:2004/01/07(水) 15:39
- レス119をみて勝手にアリバイ表を作りました。
被害者:石川梨華
死亡推定時刻:午後10時20分から40分(レス36)
発見時刻:11時前後(作者の書き込みから自分が逆算したため不確実、レス35・36)
アリバイ表
石黒・福田・市井は現場に現れる(レス34)。
石黒彩 : 福田とともに校長室で雑用(レス91)、市井が目撃(10時30分前後、レス94)
福田明日香:福田とともに校長室で雑用(レス91)、市井が目撃(10時30分前後、レス94)
両者とも1〜2回ほどトイレに行き席をはずす(レス93)
市井紗耶香: 校内見回り(10時〜11時頃、レス94) 、ただし本人証言のため確証なし。
- 223 名前:闇への光 投稿日:2004/01/07(水) 15:39
- 中澤裕子 : 10時25分頃に学校に着いて10時40分〜45分位までいた。近所の主婦の証言(レス96)。
10時40分頃、教務室で中澤らしき人を市井が目撃(レス97・98)。ただし現場には現れていない(レス96)。
飯田圭織 : 安倍・矢口と共に10時15分頃から図書館(レス102・103)、5分程度自販機に行き席をはずす (レス104)。
安倍なつみ: 飯田・矢口と共に10時15分頃から図書館(レス102・103)、携帯で5〜6分席をはずす(レス104)。
矢口真里 : 飯田・安倍と共に10時15分頃から図書館(レス102・103)、トイレで5〜6分席をはずす(レス104)。
上記の三人は10時50分ごろに電車がなくなるため帰る(レス104)。。
ただし図書館から5〜6分でも犯行可能(レス105)。
なお、単位の関係上、矢口は年上の飯田・安倍と同じレポートをしていた(レス103)。
- 224 名前:闇への光 投稿日:2004/01/07(水) 15:40
- 以下の三人は石川と9時10分に学校を出て列車に乗る(レス107)。
電車に乗って10分位すると石川だけが降りる(レス108)。
吉澤ひとみ: 9時45分 電車を降りる(加護証言、レス108)。家に帰るにはバスで15分(レス108)。
加護亜依 : 9時55分 電車を降りる(本人証言のため確証なし、レス108)。家に帰るには自転車(レス108)。
辻希美 : 9時50分55分 電車を降りる(加護証言、レス108)。家に帰るには自転車(レス108)。
- 225 名前:闇への光 投稿日:2004/01/07(水) 15:42
- 藤本美貴・亀井絵里・道重さゆみ・田中れいなの4人は学校の近くの公園にいたと証言(レス110)。
皇 祐一郎:6時頃〜11時頃に視聴覚教室でパソコン(レス111)。データメモリーに記録。データメモリーは書き換えほぼ不可能(レス112)
10時30分、高橋愛・小川麻琴・新垣里沙・紺野あさ美は学校近くのファミレスにいる(レス19)。
以上の5人は現場に現れる。
小川・新垣・紺野の証言より高橋の後に学校に入った人物はいない(レス62より)。
ちなみに(レス00)ってのは根拠です。作者さん勝手なことをお許しください。
- 226 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 17:44
- 「名も無き読者」さん。毎回ありがとうございます。
な、なんと、「名も無き読者」さんが、藤本を呼び出した人物だったのですか?
・・・・・・・、と言うのは冗談です。
藤本が・・・・・・・・・、嫌な予感がしますか?
まあ、その予感が当たらないように祈りたいのですが・・・・・・・・。
続きをご期待下さい。
- 227 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 17:51
- 「名無しくん」さん、読んで頂いてありがとうございます。
小川、藤本、とこれから先が不安な先行きとなりました。
まあ、一応、自分が考えた通りなのですが・・・・・・。
犯人は一体、誰なのであろう?、動機は一体、何なのであろう?などと、考え
て、この小説を読んで頂いたとき、少しでも、面白いと感じていただければ、
こちらも本望です。
- 228 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 19:28
- 「闇への光」さん、ありがとうございます。
また1人、この小説を読んで下さった読者の方が増えた事をうれしく感じます。
「闇への光」さん!
なんと素晴らしい事を!!
こんな素晴らしいアリバイ表を作っていただいて、本当にありがとうございます。
正に非の付け所の無いアリバイ表です。
勝手な事などとんでもない!
これからもこんな駄小説に応援、一言、批判などなど、お待ちしております。
(「闇への光」さんにだけではないのですが、「ダメだし」もたまにはお待ち
しております。)
- 229 名前:闇への光 投稿日:2004/01/08(木) 19:33
- イヤー喜んでもらえてよかったです。実はこれ誤字や間違いや脱落が多くて
あとで自分の意見を加えて新しくメモ帳に保存しまして・・・
おそらく起こるであろう次の事件もすでに用意中。
動機はほとんどつかめてしましました。
- 230 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 19:40
- 水曜日の早朝、只今の時刻は午前4時過ぎ。(正確にはまだ夜?)
外はひどい土砂降り。
ぴりりりりり・・・。
藤本の狭い部屋から聞こえた目覚まし時計の音は、あっという間に消えた。
藤本は目覚まし時計の音にすぐに反応し、家族に気付かれないように、すぐに
消したのだ。
藤本は昨日、早く寝た為、今日はやけに目覚めは良い。
すぐに制服に着替え、手紙に書いてあったように、誰にも気付かれぬように、
息を殺して、物音を極力立てぬよう、冷蔵庫から牛乳、戸棚から食パンを1〜
2枚抜き取り、銜えながら家を出た。
傘を差しながら駅に向かう。
親に気付かれたときは、「部活の朝練が今日は、いつもより早い時間にあった。」
とでも言えば良い。
良い訳を考えながら、ホームに来た始発電車に乗り込んだ。
- 231 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 19:52
- 藤本は、自分の乗り込んだ電車の車両内を見回してみた。
他の車両には、2〜3人位乗っているのだろうが、今、自分の居る
車両には藤本自身以外居ない。
藤本は少し安心して、鞄から昨日の手紙を取り出した。
何度見てみても、不思議な文章である。
これがもし、犯人による罠だったら・・・・・・・・・、
もしもの為に、家から金属バット(ちゃんとカバーをかけてある)
を持ってきた。
これで大丈夫。
むしろ、藤本は犯人の罠であって欲しい・・・・・・・、
そう思っていたかもしれない。
何しろ、好奇心が人1倍強い藤本である、そう思うのも無理は無い
かもしれない・・・・・・・。
犯人の罠と知っていて、敢てそこに踏み込む。
そして、自分が今回、世間を騒がした殺人犯を捕まえる。
それだけで、藤本の好奇心をかき立てるには、充分すぎた。
- 232 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 19:57
- 「闇への光」さん、ご返事ありがとうございます。
なんと、もう今回の事件の動機が掴めましたか?
いやはや、もう脱帽です。
「あの子」の正体もあっさり気付かれましたし、(普通の人なら分
かりますかね・・・・・・?)流石ですね。
一応、他の読者の皆様が居ますので、ネタバレになるようなスレに
はご注意下さい。
他にも気になる事があったら、何でも言ってください。
- 233 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/08(木) 20:06
- しかし、藤本が犯人の罠であって欲しい、思う理由はまだあった。
それは、何を隠そう「石川梨華」のことである。
藤本も石川、高橋の事を少なからず、「眼の上のこぶ」の様に思っ
ていた所はあったはずだ。
しかしながら、これも高橋同様、尊敬、ライバル心の裏返しである。
石川は藤本にとっても、掛け替えの無い目標である人物の1人であ
る事は確かであったはずだ。
そんな大事な先輩を1人、殺されて黙っている藤本でも、またなか
った。
微かな意識の奥底に、そう言った類の復讐心はあった。
無意識に、持っていた手紙と、カバーの掛かったバットに力が入る。
外はまだ、土砂降り、雨はまだ止んではいなかった。
- 234 名前:SINKI 投稿日:2004/01/09(金) 15:21
- 怖いですね。
犯人はミキティを犯人に仕立て上げようとしているのでしょうか。
私は消去法で犯人を考えるため、
とりあえずはミキティはなくなりましたね。
もし、ミキティが犯人ならば手紙には
『あの事件であなたに関する重大な証拠を発見しました』
とでも書いたほうが雰囲気が出ますし、
ミキティの心情も犯人ではないと否定しているように思います。
私は『あの子』がまだわかりません。
もう一度読み返してみます。
- 235 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 21:15
- 「SINKI」さん、どうもです。
ご感想を伺う限りでは、犯人探しに戸惑っている様子ですね。
まあ、流石に、この段階で犯人に見当がついたら、こちらとしても
困りますけどね・・・・・・・。(笑)
「あの子」は一体誰でしょう?
別に今、目くじらを立てて、考える必要は無いと思います。
そのうち(後半)、出てきて「あの子」の正体が分かりますので、
楽しみにして下さい。
- 236 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 21:38
- 駅を出て、学校までの長い長い道のりは、降っている雨のせいで、
いつもより更に長く感じた。
傘を差しているとはいえ、足元は結構、雨水が染込んでいる。
金属バットのカバーを肩に担ぎながら、藤本はふと、思った。
藤本(学校に来たは良いけど、どうやって校内に入れば良いんだろう?
今は朝の4時50分。
流石にこんなに早いんじゃあ、用務員さんもまだ学校に来てい
いないに違いないし・・・・。
と、なると中央玄関の鍵が開いていない・・・・・・・。
どうすれば良いんだろう?)
そうこう考えている間に、藤本は朝学の中央玄関の手前に来てしま
った。
するとどうだろう?
昨日、用務員さんが鍵をかけ忘れたのか?
はたまた、「名も無き証言者」が何とか校内に入り込み、内側から
鍵を開けたのか?
中央玄関のドアが、少しばかり開いていたのだ。
そのドアの隙間から、中の暗闇が姿を見せる。
藤本「ふ〜〜〜〜ん・・・・・・・・・。
かかって来い!・・・・って事?
望むところよ・・・・・・・・・。」
藤本は、その言葉無き挑戦状に返事をするかのように、校内に入っ
って行った。
- 237 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 21:50
- 藤本は、まず教務室にに向かい、キーボックスを開けてみた。
中には、いつもはあるはずの場所に、「ダンスホール」の鍵が無か
った。
藤本「鍵が無い・・・・・・・・、って事はやっぱり、ダンスホー
ルに、先に誰かが来ているって事?」
藤本はキーボックスのカバーを静かに閉めると、肩に掛けてあった
金属バットのカバーから金属バットを取り出し、右手で握り締めた。
藤本は静かに、静かに、静かに、その足1歩1歩を確かめるように
進めると共に、右手の握力を強める。
右手の掌の汗が、自ら緊張している事を物語っている。
藤本は既に、「名も無き証言者」=「今回の犯人」、「手紙」=「犯人
の罠」と言う方程式が頭の中に出来上がっていた。
藤本は「名も無き証言者」ではなく、今回の殺人犯「煉獄仮面」に
会うつもりである。
藤本の心臓が、いつもより5割増で強く打っていた。
- 238 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 22:05
- 藤本は今、ダンスホールの重々しい扉の前に立っている。
その扉も僅かに開いていた。
いかにも、誰か居ますよ、と言わんばかりに、わざとらしく開いて
いた。
その頃になると、藤本の中に多少尻込みする自分が居る事が分かる。
やはり危険だ、やめた方が良いのではないか?
もしも、万が一の事を考えると・・・・・・。
いや。だめだ。
これは売られた喧嘩だ。喧嘩を売られたら、倍にして返す。
これぞ人生の極意。
人生には1度や2度、やらねばならない事がある。
ここで退いて何になる。
今は、進むのみだ。藤本美貴!!
藤本は自分に言い聞かすように深呼吸をして、首を横に激しく振る。
藤本は目の前の重いダンスホールの扉を、他の部員よりも遥かに発
達した腕の筋力の為、片手で軽々開けてみせた。
- 239 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 22:14
- 藤本は真っ暗闇のダンスホール内に入った。
張り詰める空気
突き刺さる冷気
包み込む暗黒
果てしなく広がる空間
響き渡る藤本の吐息
それら全てが藤本の好奇心と、そして恐怖感を呼び起こす。
その後、藤本は指定された、入ってすぐに眼に入る大きなステージ
の真横に作られた道具室、所謂、物置のドアの前に立った。
藤本は再び2〜3回深呼吸をした。
コンコン!
藤本はそのドアを叩いた。
現時刻は4時55分。
藤本「私よ。藤本よ。あなたのご希望通り来て上げたわよ。」
道具室内「・・・・・・・・・・・・・。」
藤本の声にも何も反応は無い。
- 240 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 22:26
- 藤本は反応が無かったので、もう1度ドアを叩いた。
コンコン!!
藤本「私よ!藤本美貴よ!居るんだったら顔位出しなさい!」
道具室内「・・・・・・・・・・・・・・。」
やはり、道具室内からの反応は無い。
藤本は痺れを切らしてドアを思いっきり強く開けた。
中は当然の如く、真っ暗だ。
藤本は入口の近くにある電気のスイッチを入れる。
部屋内はあっという間に明るくなる。
藤本は右手に持っていたバットを両手で持ち直し、恐る恐る、1歩
1歩、慎重に足を進める。
中は、あまり掃除が施されている様子があまり見られなく、床には
埃がちらほら見える。
藤本は目を皿の様にして辺りを見回す。
とは言え、ここは物置。辺りには大道具、小道具、照明器具、壊れ
た備品、使わなくなった道具などで溢れている。
見回したところでよく分からない。
握っているバットに、自然と更に力が篭る。
- 241 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 22:41
- 藤本が人影を探していると、道具室の奥のほうで、何かが動いた気
がした。
藤本はビクッと反応し、バットの先端を、その何かが動いた方向に
向けた。
そろりそろり、と近づいてみた。
藤本(もしかして、そこに「名も無き証言者」が隠れているの?
だとしたら、有無を言わさずこのバットで・・・・・・・。)
あと1歩のところで、藤本は息を沈め足を止める。
そこに、何か不思議な間が開いた。
藤本は一気に、その音源の元に体を翻し、バットをすぐにフルスイ
ングできる体勢に構えた。
しかし・・・・・・、よく見てみると、その動いた影の正体は・・・
・・・・・、なんと、ただのカナブンの様な虫であった。
藤本(な〜〜んだ。・・・・・・・・・・・・。
ただの虫か・・・・・・・・・・・・・。
全く、人騒がせな・・・・・・・・・・。)
藤本はふう・・・・・・、と息を漏らして、構えていたバットを下
ろした。
- 242 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 23:17
- 藤本は顔を上げた。
ふと、隣にある、古くなった道具の金属部分に眼を、何の気無しに
向けた。
すると、その金属部分に藤本とは別の人物の陰が映った。
藤本「え・・・・・?」
藤本は自分の背後に誰かが居る事に気付き、振り返ろうとした・・
・・・・、そう、その時だった。
ゴン!!
自分の後頭部の辺りで鈍く、大きな音がした。
と、同時に藤本の体全身を、激しい衝撃と一緒になって、激痛が駆
け巡った。
藤本「ぐっ・・・・・・・・。」
藤本はその場に倒れ込んだ。
藤本(し、しまった・・・・・・。不意をつかれた・・・・・・・。)
藤本は後頭部の激しい痛みに見舞われた。
体の自由が奪われ、思うように動かない。
どうやら後頭部をやられたらしい。
既に意識が渾沌としてきた。
どうやら隠れ潜んでいた「名も無き証言者」に後頭部を、何か鈍器
の様なもので、強打されたらしい。
藤本は渾沌とする意識の中で、うっすらではあるがそう感じた。
藤本「うぐ・・・・・・・ぐ・・・・・・ぐ・・・・・。」
藤本はその激痛のせいで、悲痛なうめきが漏れる。
藤本の周りの床が、見る見るうちに、自らの鮮血で染まっていくの
を、黒いカーテンが掛かりつつある視界で確かめた。
私はもう死ぬかもしれない・・・・・・。
藤本の弱音が、初めて心を征服した。
???「ぜはぁ・・・、 ぜはぁ・・・、 ぜはぁ・・・。」
藤本の背後では、もはや人間の息声とは思えない程の凶暴な、息切
れ声が聞こえている。
藤本(ま、まさか・・・・・・、「あの人」が石川先輩を?
「あの人」が今回の殺人犯なの・・・・・・・・・?
まさか、・・・・まさか、・・・・まさ・・・・・)
藤本は、襲われる直前の、あの金属部分に映った「あの人」の姿を
その脳裏に焼付けていた。
そこで、藤本の意識は途切れた・・・・・・・・・・・・。
- 243 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/09(金) 23:22
- 「ちょっとしたあとがき」
つ、ついに藤本が被害者になってしまいました。
こ、これからの展開はいかに!?
ちなみに「あの子」と、「あの人」とは別人物です。
念の為・・・・・・・・。
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 01:55
- あーミキティやられちゃったんすねあの人?うーんわかんないなあ
- 245 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 04:37
- 「名無し飼育さん」、自分の記憶が正しければ、初めましてですね。
「あの人」(犯人)が分かりませんか?
結構嬉しいですね。小説内に伏線をさりげなく残しつつ、読者の方がそれを探
りつつ、あーでもない、こーでもない・・・・・・、と考えてくれている、と
思うと、非常に嬉しいです。
「あの人」=「名も無き証言者」=「煉獄仮面」だと思ってもらえば、結構です。
- 246 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 04:46
- 場面を、現在に戻します。
小川がそのダンスホールの、重い重い扉を何とか開けた。
いつも自分1人で開けているとは言え、こればっかりは慣れる事が出来ない。
ガガガ・・・・・・・。
ダンスホールの扉が、重たそうな音を立てながら小川の手によって、横に移動
されていく。
小川(ふう・・・・・・。この後、いつもの様に準備して、この合鍵を保田さ
んの所に返しに行かないと・・・・・・。)
小川はそんな事を考えながら、ダンスホールの中に入っていく。
ダンスホールは、入口を入ってすぐに、目の前の大きなステージが眼に入る。
ふと、小川は、いつもなら何も無いはずの、そのステージに何かがあることに
気付いた。
- 247 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 04:55
- 小川「あれ・・・・・・?」
小川はそのステージにある「何か」が、何なのかがすぐには分から
なかった。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は宙に浮いているらしい。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は人間の形をした人形らしい。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は宙に浮いているのではなく、ロープで天井
の照明器具から吊るされているらしい。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は、ロープが人形の首辺りに巻きつけられ
ていて、それで浮いているらしい。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」の後ろのステージの壁には、赤く、少し黒
ずんだペイントが施されているようだ。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は人形何かではなく、本物の人間らしい。
- 248 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:01
- 小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は自分の知っている人物のようだ。
小川は足を1歩踏み出す。
どうやら、その「何か」は「藤本美貴」のようだ。
小川「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
小川の足がピタッと止まる。
その目線の先には、背景の赤黒い血文字によって浮き上がる、頭を
垂らしていて、もはや生前の麗々しい面影を全く失ってしまった、
「藤本美貴」
その本人の無残なまでの屍であった。
- 249 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:08
- 小川「う・・・・・、嘘・・・・・・・・・?」
小川は、何かを否定するかの如く、首を左右に小さく振りながら、
後ずさりする。
小川「う・・・・・、嘘・・・・、嘘・・・・、嘘・・・・、嘘・
・・・、嘘・・・・・・・・・・・・。」
小川は壊れたねじ巻き式人形の様に、「嘘」と言う言葉と、後ずさ
りを繰り返す。
小川「いや・・・・・。
いや・・・・・・。
いや・・・・・・・。
いや・・・・・・・・。
いや・・・・・・・・・。
いや・・・・・・・・・・。・・・・・・・・」
小川はもはや壊れていた。
小川「いや・・・・・・・・・・。
いや・・・・・・・・・・・。
いや・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
小川のその凄まじい金切り声は、再び、ダンスホールから朝学校舎
全体を包み込んだ。
- 250 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:19
- すると、すぐに、
市井「ど、どうしたんだ〜?一体何事だ?」
悲鳴をあげた小川のすぐ後ろには、用務員の市井さんが居た。
小川「あ・・・・・、あああ・・・あれ・・・・・。」
小川が震える指を向ける。
市井「あ、あれ?・・・・・。
あれって言うと・・・・・・・・。」
市井さんが、小川の指差した方を向いてみる。
市井「な・・・・・・!何てこと・・・・・・。」
小川と市井がその地獄絵図を目の当たりにしていると、後ろから
保田「どうしたの〜?小川、何かあったの?」
事務員の保田が、先程の小川の悲鳴を聞いて駆けつけた。
市井「保田さん!!来てはいけません・・・・・・!!
・・・・・・・・、来ては・・・・・・・」
保田「え・・・・・?」
市井の制止の声も空しく、保田はその扉を、「ダンスホールの扉」
と言う名の「煉獄の扉」を越えてしまった。
そこにあるのは、まさに「地獄絵図」と言う名に相応しい光景、そ
の物だった。
- 251 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:29
- ガバッ!!
皇は布団から我が身を起こした。
皇「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・・・・・。
また、あの夢か・・・・・・・・。」
皇は悪夢から目覚めた。
その悪夢とは、遠い自分の過去の夢。
皇はときたま、この「悪夢」に魘される。
皇は目覚まし時計に眼をやる。
皇「8時か・・・・・・・・。」
皇にとって起床時間が8時とは、やたら早い時間である。
本来なら、ここから2度寝するはずなのだが、悪夢に魘されてもうこれ以上、
寝る気も起きない。
外も、さっきまでの雨が嘘のように晴れている。
皇は、今日は珍しく授業に主席してみるか・・・・・、と言う気になった。
- 252 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:40
- 皇が駅を出て、雨上がり特有の澄み切った空気を味わいながら学校
に向かっていた。
歩道には所々、大小様々な水溜りが出来ている。
その水溜りには、雨上がりの空と雲が、風によって波打ちながらも
綺麗に映し出されていた。
都会に居ながらも、都会に居る事を忘れさせてくれる、心地よい情
景けいのうちの1つだ。
しかしそんな中、この情景を打ち壊す存在が現れた。
パトカーだ。
皇「またか・・・・・・。」
皇は自分を追い越していくパトカーを見つめながらぼやく。
皇は気になっていた。
これで3度目。
皇が駅を出て、曲がり角を何度も曲がる通学路を歩いているにも関
わらず、さっきから3度もパトカーが自分を追い越していく。
皇は思った。
もしかしたら、自分とパトカーの目的地が同じなのではないか?と。
皇は無意識に早足で歩いた。
- 253 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/12(月) 05:50
- 皇が学校に到着する。
案の定、そこには「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープと
群がる群衆、多数の朝学生徒や、近所の住人の野次馬達が肩を並べ
て、騒いでいた。
皇「こりゃ、一体何の騒ぎだ?」
皇が誰に向かって、と言うわけでもなく呟く。
すると、後ろから、聞覚えのある、男性の低いドスの効いた声が響く。
権藤「おう、小僧か。」
今回の事件を担当する、朝日ヶ丘署の権藤刑事だ。
皇「ああ、権藤刑事・・・・・・。
一体、何ですか?こりゃ?」
権藤「ああ、その事でだが、お前に用がある。こっちに来い。」
権藤に誘導され、青いビニールシートで、野次馬に見えない様に皇
と権藤刑事は、校舎内に入っていった。
- 254 名前:SINKI 投稿日:2004/01/13(火) 13:37
- 更新、お疲れ様です。
『あの人』はミキティの先輩か年上のような気がします。
同じ歳、もしくは年下ならば『あの子』でよさそうですしね。
まだまだわかりません。
これからもがんばってください。
- 255 名前:闇への光 投稿日:2004/01/13(火) 16:10
- お久しぶりです。
「背景の赤黒い血文字によって浮き上がる」 なんて書いてあったのでしょうか?
しかし、まあ残忍な殺し方ですね。
犯人の目星は…まだ第一の事件のデータ不足でつきませんが絞込みはかけています。
- 256 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/13(火) 18:25
- 「SINKI」さん、ありがとうございます。
「あの人」が先輩か年上だと思いますか?
SINKIさん、毎回毎回、良い場所に気がつきますね。
まあ、かと言って「あの人」が年上の人物だ・・・・、とは自分で
はネタバレ防止のため言えません。
これから先、どうなるのでしょうね〜?(他人事)
- 257 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/13(火) 18:30
- 「闇への光」さん、ありがとうございます。
まだまだ小説中の表現も、自分では納得のいく描写が出来ない部分
が多々あります。
そんな中で、表現の部分を取り上げて頂く事は、例えそれが批判で
あれ嬉しい物です。
データ不足でしたら、「この部分のこう言ったヒントが欲しい」と
言って頂きましたら、ネタバレにならない程度にお答えしますよ。
- 258 名前:闇への光 投稿日:2004/01/14(水) 14:52
- 私が欲しいデータは石川事件のアリバイの裏が取れたかどうかなんですが・・・
まあ次回に出ると思いますが・・・
それから表現ですがレス247の様に同じ文字を繰り返えすとくどくなる
と思いますので避けられたほうがいいと思います。
私だったらここを以下の様にすると思いますので聖なる竜騎士さんの役に立てば幸いです。
- 259 名前:闇への光 投稿日:2004/01/14(水) 15:05
- 小川「あれ・・・・・・?」
小川はそのステージにある「何か」が、何なのかがすぐには分から
なかった。
小川が一歩一歩足を進めるごとにその「何か」は次第に明らかにな
っていった。その「何か」とはつい数日前、警察で堂々と自分のア
リバイを証言していた、また、普段でも自信たっぷりで強気な
藤本美貴、その人であった。
しかし、今の彼女からそのような様子はうかがい知ることは出来ず
背景の赤黒い血文字によって浮き上がる彼女の体を支えているものは
その首に巻かているたった一本のロープだった。
参考になれば幸いです。
- 260 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/16(金) 20:45
- 「闇への光」さん。貴重なご意見ありがとうございます。
自分は別に、小説家になろうとか、思っていませんが、やはり今よ
りさらに良い作品を作ろうと日々努力?していますので、こう言っ
た御意見はやはり宝、そのものです。
これから、もっと色々な表現・・・・・、は無理かもしれませんが
気をつけていきます。
あと、容疑者18人のアリバイ裏づけですが・・・・・・・、スト
ーリー展開関係の都合上、今すぐには書けません。
期待して頂いて恐縮ですが、本当に申し訳ございませんが、これか
らストーリーが進むごとに明らかになりますので、今回はこれで勘
弁していただきたいと、思う限りです。
また、個人的な都合(セ○ター試験)の為、また、しばしお休み状
態になると思います。
個人的な都合(○ンター試験)が終わり、休みが出来次第、更新し
ます。
これからも、ぜひともよろしくお願いします。
- 261 名前:名無しですねん 投稿日:2004/01/18(日) 00:14
- セン○ー試験がんばれ!更新楽しみにしてます。
- 262 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 19:26
- 「名無しですねん」さん、お待たせしました。センター○験大変で
した。
(個人的には、数学が今ひとつでしたかね・・・・・。)
<本編>
権藤刑事と皇は、学校の裏口から入り廊下を並んで歩いていた。
皇「で?今回は何が起こったんですか?」
皇が権藤刑事の方も向かずに尋ねると、権藤は少し表情を険しくし
て、こう答えた。
権藤「・・・・・・・・・、
ああ、実はな、今回、また例の殺人事件が起こっちまった。」
皇の顔が一瞬、曇った。
権藤は続ける。
権藤「今回の被害者は、当高校の女子生徒「藤本美貴」。」
皇「藤本美貴?藤本って言ったら、3日前の事情聴取の時に居た、
あの藤本美貴ですか?」
権藤「ああ、あの藤本だ。
発見場所はダンスホール。
死亡推定時刻は、今朝の5時頃。
死因は、鈍器の様な物で後頭部強打による、頭蓋骨陥没、及
び、出血多量による失血性ショック。
第1発見者は、同じく当高校の「小川麻琴」。
なんでも、この小川は部活の朝練で毎日鍵当番を任せられて
いて、今朝もいつもの様にダンスホールの鍵を開けに来ると
ステージの天井の照明器具から首吊死体として、発見された。」
権藤刑事はそう告げた。
- 263 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 19:42
- 皇「首吊死体?藤本は首吊死体として発見されたんですか?」
権藤「ああ、その通りだ。
そして、被害者が吊るされていたステージの後壁には、また
例のごとく、あの被害者の返り血を使った「血文字」が残さ
れていた。
「我は煉獄の淵より殺戮を繰り返す 我が名は煉獄仮面」
と言った感じだ。」
皇「また、あの血文字が殺人現場に残されていたんですか?
権藤刑事、マスコミ等に「血文字」の件は知らせているんですか?」
権藤「いいや。それはない。
我ら警察も事件が起こった・・・・・、と言わざるが得なかっ
たが、それ以外、被害者の名前だの、事件関係者だのとは、
全く口外無言にしてある。
ましてや、「血文字」の件など言うはずもあるまい。」
皇「そうですか・・・・・・・・・・・・。」
権藤がそう言い終わると、皇は俯いたまま黙った。
- 264 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 21:02
- 皇がふと権藤に尋ねる。
皇「?。あの・・・・・・・・。
ところで、何で俺が呼ばれなくてはいけないんですか?
別に、俺は関係無いんじゃあ?」
権藤「実はな、この間の件を上の連中、まあ警察上層部の者に話し
たら、上層部の連中が何故かお前の事を随分と気に入ってな
あ、あくまでお前に危害が加わらない範囲内で補助役と言う
形で協力を要請することを認めた・・・・・・・。
・・・・・・・、と言うわけだ。
俺はこんな小僧を事件現場を自由に行き来させるのは、反対
したんだが、何分上の命令だからな・・・・・・・。
と、言うことだ。」
皇「はあ・・・・・・・・・・。
それは分かりましたが、何故、今、俺の協力が必要なんですか?
権藤刑事の状況把握段階からすると、別に俺が出る幕も無い気が
するんですが・・・・・・・。
何か困ったことでも?」
皇がそう言うと、権藤はまた、困った様に顔を顰めた。
権藤「お前にはまだ言ってなかったな。
実はな今回の事件は・・・・・・・・・・・・・。
密室事件なんだ・・・・・・・・・・。」
2人の足が止まった。
- 265 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 21:22
- 皇「密室事件・・・・・?ですか?」
権藤「そうだ・・・・・・。正真正銘、密室殺人事件だ。
詳しく説明しよう。
お前も知っている様に、この学校は本鍵と合鍵がある。
今朝、小川が本鍵を取りに来た時、そこには本鍵が無かった。
小川がしょうがなく事務室で合鍵を借りてダンスホールの鍵
を開けた。
小川はそこで藤本を発見した。」
皇「はあ・・・・・・・・・・。」
権藤「ここで質問だ。
朝、小川が来た時無かった本鍵は何処から見つかったと思う?」
いきなりの権藤の質問に、皇は少し戸惑う。
皇「さあ・・・・・・・・?分からないですね。」
権藤「死んだ藤本の右手の中だ・・・・・・・・・・。」
- 266 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 21:38
- 皇「なっ・・・・・・・・・・・!」
皇は言葉を失った。
権藤「頭の切れるお前なら、ある程度容易に想像できるだろ?
発見時、藤本は既に死後1時間以上経っていて死後硬直が始
まっていた。
当然、鍵を握っていた右手も例外ではない。
つまり、ダンスホールの本鍵はずっと、ダンスホール内にあ
った。
しかも、ダンスホールは出入口が内側から鍵が掛かっていた。
そして、ダンスホールの鍵を開ける事の出来る残りの合鍵は
事務員の保田と言う人が、しっかり保管していた。
勿論、ダンスホール内の窓と言う窓は全て、鍵が掛かってい
た・・・・・・・・・・・・・。
例え犯人が被害者を殺害して、出入口や窓の鍵を掛けるとす
るとなると・・・・・・・、犯人はどうしても外には逃げられない。
犯人は一体どのようにしてこのダンスホールと言う巨大な密
室から逃げ出したのか・・・・・・・・?
我々警察が頭を痛めている最大の点がこれだ。」
- 267 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/18(日) 23:44
- 権藤「ちなみに、被害者の藤本は手紙の様な物で誘い出されて、待
ち伏せして、藤本が油断した背後から襲った・・・・、
と言う事が分かっている。」
皇は眉間にしわを寄せていた。
皇も一応、この学校の生徒である。中央玄関の鍵掛け忘れが起こっ
たとは言え、この学校のセキュリティーや建物の防犯設備は徹底し
ていると、言わざるを得ない。
皇の記憶が正しければ、ダンスホールの窓には全て鉄格子が付けら
れていたはずだ。
人間が通れるはずも無い。
かと言って、藤本がそんな奇妙な自殺をするはずも無い。
皇が色々な推論を脳内で巡らしている時、ふと思った。
皇「権藤刑事、第1発見者の「小川」が犯人って事は無いですか?」
権藤「なに?小川が犯人だと?」
皇「ええ。確かに小川は第1の事件では、新垣・紺野というアリバ
イ証人がいますが、今回の事件に限っていうと、その可能性も
なきにしもあらずです。
小川が藤本を殺害した後、本鍵を握らせた後、ダンスホールの
鍵を掛けずに外に出る。
後は、あたかも今、鍵当番に来て本鍵が見つからない・・・・・、
と普段通りの「小川麻琴」を演じれば良い。
とも、考えられなくは無いですよ。」
- 268 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 00:03
- 皇の推理にも関わらず、権藤の表情は芳しくない。
権藤「まあ、確かにそんな事も考えられなくはない。
が、しかしだ、我々も警察だ、その位の事もとっくに考え付
いた。
しかし、調査を進める毎にどうもそれは無いと判断せざるを
得ない状況になりつつある。
この高校の用務員の市井が今朝の6時頃、ダンスホールの出
入口に鍵が掛かっていることを確認している。
また、同じく用務員の市井が朝の校内見回りで、ちょうど6
時40分ころダンスホールに向かって鍵を開けようとしてい
る姿を目撃しているらしい。
まだ、この証言の信憑性が確かな物かどうかは、分からない
が、この様な証言が出ている以上、小川犯人説は余り現実味
を帯びないんだ。」
皇「ふ〜〜〜〜む・・・・・・。
最初から暗礁に乗り上げたか・・・・・・。」
皇は髪の毛をくしゃくしゃとかき上げた。
そうこうしている内に、皇と権藤の2人は事件現場であるダンスホ
ールに着いた。
やはりそこでは、立入禁止のテープと、大勢の警察官と鑑識さんが
慌しく右往左往していた。
- 269 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 00:19
- 皇はダンスホールの出入口に立っていた。
そこからほぼ真正面にステージと、未だ紅々と浮かぶ血文字がこれ
でもか、と言わんばかりに自己主張していた。
つい4日程前には、場所は少し違えど同じダンスホール内で尊い血
が流れたと言うのに、無情にもまた犠牲者と言う名の血の刻印が深
く深く刻み込まれていた。
それが、再び皇の暗く湿った心に圧し掛かった。
どうしても皇は
(自分がいながら、犠牲者をだしてしまった。
今回の被害者は救えなかったのだろうか?
自分は一体何をしてしまったんだ?
もうすこし気をつけていれば、藤本は助かったのかもしれない。
自分が救えた命を、むざむざと見捨ててしまった。これは殺人と同
罪、いやそれ以上の罪だ。
自分は取り返しのつかないことをした。)
誰も何も責めてはいないのに、誰も悪くは無いのに、皇は自分で自
分を責め続けた。
皇の心は錆び続ける。
- 270 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 00:31
- 権藤「おい!どうした、小僧?」
権藤刑事が皇の異変に気付き、声をかけた。
皇「え?・・・・・・、いや、なんでも・・・・・・・・。」
皇は権藤の声で正気に戻った。
部下「権藤刑事・・・・・、ちょっと・・・・・・・・。」
権藤「ああ、分かった。今行く・・・・・。
じゃあな、調べたいことがあったら、そこら辺にいる奴を使
え。あんまり無茶するなよ。
俺はこれから、第1の事件の被害者の石川梨華と、今回の事
件の被害者の藤本美貴との接点を調べる。
何か、調べて欲しいことはあるか?」
皇「そうですね・・・・・・・・・・・・。
今回の重要参考人の「17人」は今、何処にいますか?」
権藤「一応、事件の収集がつくまで、この高校の会議室に集まって
もらっている。
それがどうかしたか?」
皇「じゃあ、その17人全員の、アリバイや何でもいいので証言を
取ってください。」
権藤「ああ、わかった。」
権藤はそういい残すと、部下に呼ばれた方に歩いていった。
- 271 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 16:53
- 皇「さてと・・・・・・・・。」
皇は権藤が行ってしまったのを見届けると、そう呟いた。
皇「これから何をしようか・・・・・・・・?
やっぱり、ダンスホールの密室について調べてみるか。」
皇は権藤刑事の命令の為であろう、警察官達が忙しなく動いている。
皇はその中を、何を見つめるわけではなく、辺りを見回す程度に歩
ている。
皇はダンスホールのステージの上に上った。
ステージの壁を強く眺める、その血文字を・・・・・・・・・。
その血文字は大きな刷毛でも使った様な文字をしている。
天井を見上げてみると、そこには無数の照明器具が装備されている。
どうやら、あの器具のうちのどれかにロープを括って藤本を吊り下
げたのであろう。
皇は再びステージの床に眼を下ろしてみると、不思議に思った。
床には藤本の出血が点々と落ちてはいるが、どれもこれも多量とは
言い難い。
皇(確かに、血文字には多量の血液が使用されているが、ステージ
自体には派手な出血跡が見られない。
藤本は一体、何処で殺されたんだ?)
「すいません。被害者の直接な何処ですか?」
皇は近くにいた警察官に尋ねた。
警察官部下「ん〜、お前さっきから何をしているんだ?
そもそも、お前誰だ?」
- 272 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 17:40
- 皇「後で、権藤刑事にでも聞いてください。
で、それより、被害者の藤本さんは一体何処で殺されたんです
か?」
「権藤刑事」と言う言葉を聞いた警察官部下は少したじろいだ。
それはまるで、蛇に睨まれた蛙である。
警察官部下「え、ああ、ステージのすぐ横の道具室だが・・・・・・・・・。」
皇は「どうも」と言うとすぐにその道具室に向かった。
皇はすぐ横の道具室のドアを潜る。
皇は入ってすぐに、完全に消え去らない血液の死臭に囲まれた。
ふと眼をやると、床にはこれまた、完全に消え去っていない血痕と、
白い石灰線がくっきりと床に残っていた。
どうやら、藤本はここで殺害されたと見て間違いは無いようだ。
凶器は見つからないが、ここはミュージカル部の道具室。
凶器になり得る道具なんて、軽く見渡しただけで幾つも目に付く。
皇はふとある事を感じた。
- 273 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 20:19
- あー気になってしかたない! 更新おまちしております
- 274 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 21:27
- 「名無し飼育さん」さん、どうもです。
気になりますか?今、自分はセンター試○が1段落ついて休養中な
ので、まとまった更新が出来ると思いますので、ご期待下さい。
- 275 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 21:39
- 皇はふとある事を感じた。
皇(あれ?そう言えば権藤刑事は被害者の藤本は後頭部強打が死因
だって言ってたよな。
でも、実際、発見された時はステージの上で首吊死体として、
発見されたとも言ってたよな。
・・・・・・・・・・・・・なんでだろう?
犯人はこの道具室で藤本を殺害して、何でわざわざステージに
死体を移動させて吊るしたんだ?
死体だって、見た目以上に重たいし、ここからステージまでは
直線距離だと短いけど、道具室の出入口まで死体を引きずって、
今度はステージの上に上る為、短いとは言え階段も使わなくて
はいけない。
これはかなりの重労働なはずだ。
犯人は何故、道具室で殺害した藤本をステージに運んだんだ?
(次のスレに続く)
- 276 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 21:51
- (前のスレの続き)
とどめをさす為?
いや、違う。とどめをさすなら首吊りにしなくても、もう1度同
じ凶器を使えば良いし、そもそも、殴ってまだ生きていても、藤
本が無事なはずが無い。
後頭部を強打された藤本は、急所を外されても下手をしたら、呼
吸中枢をやられて呼吸困難に陥るはずだ。
そうなれば、遅かれ早かれ息が絶えることは間違いない。
つまり、もし万が一藤本を1撃でしとめられなくても、とどめを
さす必要が無いこと位、犯人も分かったはずだ。
藤本をステージに運んだのは、とどめをさす為ではないと言う事か?
じゃあ、一体何のために・・・・・・・・・?)
皇は考えがなかなかまとまらなく、また髪の毛をくしゃくしゃにした。
第2の犠牲者が出てしまった事の自責の念と、今朝見たあの「悪夢」
が頭から離れず、思うように思考に集中力が出てこない。
こう言う時は、一旦、この事から離れて別のことを考えると良い、
と考えて皇は薄暗く辛気臭い道具室から出た。
- 277 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 22:08
- 皇は窓から入ってくる陽の光を肌で感じて思った。
皇(そう言えば、俺は最初、密室の謎を考えようとしていたんだっ
っけ?)
皇は1番近くにある、窓に近づいた。
勿論手袋は着用済み。
このダンスホールの窓は全て、防犯用の鉄格子が付けられている。
どの鉄格子も比較的新めで、ねじもこの上なく頑丈に締められてい
る。
この鉄格子の格子間隔は、大人の握り拳1つ分やや大きめ程度に作
られている。
到底、人間1人が通れる隙間ではない。
皇(う〜〜〜〜〜ん。流石にこの鉄格子の隙間を縫って外に出るの
は無理だな〜。
それに、出たとしても、外からじゃあ鍵が掛けられない。
ピアノ線やワイヤーなんかを使って外から、鍵を掛けたり、ま
た死体の手に鍵を受け渡す、って言うトリックなんかテレビで
よくやってるけど、あんなことやったら窓や死体に奇妙な傷が
残ったり、道具を処分するのに手間がかかってしまうんだよな。
う〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・、弱った。)
皇は鉄格子を両手で握りながら、苦悩した。
- 278 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 22:24
- 皇は再び考え出した。
皇(今回の事件を簡単に振り返ってみよう。
被害者の藤本は、朝5時にあの道具室で殺害された。
犯人「煉獄仮面」は何故か、死体をステージに運び吊るした。
その後、藤本の手にここの本鍵を握らせて、自分は忽然とこの
ダンスホールと言う名の密室から、まるで煙の様に消え去った。
勿論、ダンスホールは唯一の出入口は内側からガッチリ鍵が掛
けられていた。
もう1つのダンスホールのドアを開けることの出来る合鍵は、
この学校の事務員の保田と言う人が、しっかり管理していて誰
1人として無断で使用する事は不可能。
「煉獄仮面」は一体、どの様にしてこの密室から逃げ出したの
であろうか・・・・・・・・?
せめて何処から外に出たのか・・・・・・・・。
それさえ分かれば、事件解決の糸口が掴める気がするんだが・・・・・・・。)
皇が鉄格子から手を離し、後ろを向いて壁に背をもたれた。
- 279 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/19(月) 22:47
- 皇は今朝の雨上がりの澄んだ青空や、石川の火葬式を目撃した時の
幻想的な風景を無意識のうちに、思い浮かべた。
そして、無意識のうちに今の自分の心の色合いと、そのスカイブルー
を比べてみて、また落胆する。
皇はボーっとしながら向こうの壁を見つめていた。
その時、皇はふっと正気を取り戻し、ある物に気付いた。
それは窓の上の方に作られた上層通路だった。
このダンスホールには空中に壁に沿って、道具置きや天井の電球交換
や天井窓の掃除などの為に作られた上層通路が存在する。
この上層通路は通称「ギャラリー」と呼ばれている。
(ちなみに「キーボックス」とか、「ギャラリー」と言う言葉は、
自分の学校で同じような物があって、実際そう呼ばれている為
遣わしてもらっているだけです。あまり深い意味はありません)
そう言えば「ギャラリー」には窓が付いている。
その窓は高い場所に付いている為、鉄格子は付いていない。
その「ギャラリー」はぱっと見、余り目立たなくうっかりすると見
落としてしまう程だ。
警察も気付いる様子はないし、もしかしたら「煉獄仮面」はその
「ギャラリー」の窓から外に逃げ出したのかもしれない。
皇はその上層通路「ギャラリー」について調べてみる事にした。
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 23:08
- センター試験中ですかー なつかしいですね 無理せず更新してくださいね!
- 281 名前:SINKI 投稿日:2004/01/20(火) 13:30
- 難しいですね、、、。
なかなかわかりません。
続きが気になります。
無理をせずにがんばってください。
- 282 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/20(火) 18:29
- 更新&センター試験乙彼です。
むぅ、なんとなくわかったようなわかんないような…w
皇君の調査結果次第です。。
次も待ってます。
あと一つだけ注意を…
他のスレに感想レスをつける時は
E-mailの欄に半角でsageと入れた方が良いかと思われます。
そうしないとスレが板の一番上まであがって更新されたと期待してしまう人もいるので…
一応ここにも決まりみたいのがあるので
できればFAQに目を通して欲しいと思います。
お忙しいのに無茶言ってすいません。
ではこれからも頑張って下さい。
- 283 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 23:02
- 「名無し飼育さん」さん、ありがとうございます。
名無し飼育さんもセ○ター試験受けた事あるんですか?
自分も先日受けたセンターの自己採点してみましたが・・・・・・・・・・。
まあ、気にせずこれからもお楽しみに・・・・・。
- 284 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 23:07
- 「SINKI」さん、どうもです。
難しいですか?でも今は分からなくて当然だと思います。
だって、あんまし(全然)ヒントが出ていませんから・・・・・・。
逆に今、分かった!・・・・、と言う人は恐らく間違っている可能性
があるかもしれない・・・・・・・。そんな状態なので気にせず
読んでください。
なるべくこれから、ヒント等を出して行きたいと・・・・・・・・、思います。
- 285 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 23:12
- 「名も無き読者」さん、ご指摘ありがたく頂戴いたします。
この駄小説を読んでいただいた読者の皆様、
この場を借りて深くお詫びします。
今まで、こんな事を知らずに小説を書いてきた事を恥ずかしく思います。
一応FAQを読んだつもりだのですが・・・・・・・、
どうやら見落としていた様です。
すいません、言い訳になりませんね・・・・・・・・。
とにかくこれからも細心の注意を払いつつ書いていきます。
応援よろしくお願いします。
- 286 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 23:32
- 皇は周りにいる警察官に気付かれないように、ステージ脇から上層通路「ギャ
ラリー」に昇る。
鍵の壊れたドアノブを捻ると、長い上層通路が視界に入る。
皇は通路に沿って付けられている大きな窓を、ギャラリーを歩きながら見て回る。
皇「やっぱりだ・・・・・・・・。
やっぱり、ここの窓には鉄格子が付けられていない。
これなら、犯行後、犯人は外へ逃走可能だ。」
皇は勝誇ったかのような小さな笑みを浮かべ、外部から窓の鍵を掛ける為の仕
掛けの跡を探すべく、それぞれの窓を凝視しながら歩く。
その大きな窓から毀れた日光が、皇の足を、コンクリート製の通路を淡く照ら
し出す。
皇が全ての窓を一通り調べた。
しかし・・・・・・・・・、どの窓も仕掛けを施した様な跡は勿論だが、最近
開け閉めをした様な跡も見られない。
皇はもう1度、全ての窓をくまなく調べてみたが、やはり怪しい痕跡は1つも
見当たらない。
ども窓のさんも、隙間も埃が詰まっていた。
- 287 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 23:42
- 皇「おかしいな・・・・・・・。
どいつもこいつも、埃が積もって開けた跡すらないじゃないか。
一体、犯人はどうやって・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
え?・・・・・、埃?」
皇は自分で言った事に、自分でひっかっかた。
皇は身を伏せて、眼を細め、床に積もりに積もった通路の埃を見た。
ギャラリーには今、自分が歩いた内履きの底の跡が1往復分しか残
っていない。それも1人ぶんだけ。
後は通路を覆い被さっている埃が、先程より窓から入ってくる日光
で浮かび上がるだけであった。
そこには、皇の足跡しか残っていない。
皇は絶望に打ちひしがれた。
皇はせっかく掴んだ、小さな光を失った様な・・・・・・、そんな感じを受けた。
皇「そんな・・・・・・・、馬鹿な・・・・・・・・・。」
皇は今まで、伏していた体を持ち上げる。
- 288 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 00:03
- 皇「どう言う事だ・・・・・・?
何故、俺の足跡しか残っていない?
犯人がこの窓を使ったなら、
このギャラリーを歩いたなら、必ず足跡が残るはずだ。
たかが、数時間でここまで埃が積もるはずないし・・・・・・、
どこも不自然に埃が積もった跡は無い。
それに人為的に且つ、自然に埃を短時間のうちに積もらせる事も
はっきりいって不可能だ。
窓もそうだ。
窓も開けられて痕跡が全く見られない。
窓から逃げるのに、窓を開けずには外に出られない。
ここ、ギャラリーには犯人が逃走の際使用した痕跡が全く見ら
れない。
これは人間業じゃない。人間には出来るはずが無い。
だとすると、犯人「煉獄仮面」はどうやってここから逃げ出し
たんだ?」
皇は俯いたまま、左手で口の周りを軽く覆いながら、呟く。
皇「まさか・・・・・・・・・・・。
本当に・・・・・、本当に「煉獄仮面」は実在するのか?
本当に中世ヨーロッパにいた「煉獄仮面」はこの現実世界に蘇
り、気の赴くままに殺戮を繰り返すのか?
もはや、人間ではない「煉獄仮面」が・・・・・・・・。」
皇の頭の中では、昔見た図鑑に出てくるような外国の不気味で禍々
しい仮面の写真を映し出した。
その時、皇は何事にも言い換えられない凶々しい恐怖を感じた。
そして、背筋に冷たい物が這う気が、そんな気がした。
- 289 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 00:19
- 皇は今まで、口を覆っていた左手を、思いっきり隣の壁にぶつけた。
ゴン!
鈍い音がした。
左手は、当然の如く痛かった。
しかし、同時に皇自身の心もまた、痛かった。
皇「そんな事・・・・・・・、あってたまるか!!
何が「煉獄仮面」だ!
何が地獄だ!
何が復讐だ!
何が殺戮だ!
・・・・・・・、俺は絶対認めないぞ。
何が、蘇った死者だ、そんな物がこの世に存在するはずが無い。
これは、明らかに人間の犯行だ。
尊い命2つ奪っといて、「煉獄仮面」だと?
俺が必ずその化けの皮を剥がしてやるからな・・・・・。
覚悟してろよ・・・・・・・「煉獄仮面」・・・・・。」
皇はさっき来た道を戻り、下のダンスホールに戻ってきた。
実際、なぜ、皇があそこまで気が高ぶったのかは、皇自身にも分か
らない。無意識の内に何か「悪」の様な物に対する何かが爆発した
様な、そんな感じだった。
これは形は違えど、高橋の大事な人を失ったときの反応に近いもの
でもあった。
皇や高橋の過去に何があったのか・・・・・・・・・・・・?
それは分からない・・・・・・・・・。
- 290 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 10:58
- 皇はそのまま、屋上に向かった。
このまま考え続けても泥沼にはまるだけだと思ったからだ。
皇は屋上の上に昇ると、空を仰いだ。
屋上の床は、今朝の雨で多少濡れていた。
その為寝転がる事は出来ないが、所々乾いている部分もある為、そこに腰を下
ろすこと位はできた。
鞄も濡れないようにして、天を仰ぎ溜息を1つ。
自責感、夕べの悪夢、およそ予測不能な犯人のトリック、そして最近忙しかっ
たせいか心身共に溜まった疲労感。
それら全てが一気に皇の思考を蝕む。
さっきまでの高揚とは打って変わって、今は体を動かす気にはなれない。
指先1つ動かす事も、呼吸する事も億劫だ。
皇「ハア・・・・・・・・・・・・・・。
辛い・・・・・・・・・・・・・・。」
思わず、皇の口から弱音が毀れる。
皇はこの時間、僅かながら空と1体になれた・・・・・、そんな気さえした。
「病める。」
そんな言葉が、今の皇には1番合っていた。
- 291 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 11:10
- カン・・・・・・・カン・・・・・・・
屋上の上に繋がっているはしご段を昇る音がした。
皇がはしご段の方を向くと、そこには高橋がいた。
高橋「あ、やっぱりここにいたんだ。」
皇「ん、あ・・・・・、ああ・・・・。」
皇は素っ気無い返事を返す。
皇「お前、会議室にいたんじゃないのか?」
高橋「うん、さっきまではね・・・・・・・・・。
さっき、若い警察官の人が来て、1人1人、色々聞いて解散
になったの。」
皇「ふ〜〜〜〜ん・・・・・・・・・。」
とは言ったものの、皇自身の耳には余り声が届いていなかった。
ただの、相槌の様な物であった。
皇は高橋をほっといて、また、空を仰ぎだした。
- 292 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 11:25
- 皇「お前、よくここにいるって分かったな。」
高橋「うん。
周りにいた警察官の人に聞いたけどみんな知らないって言っ
たから・・・・・・。
だから、皇君の事だからここにいるかなって・・・・・、
そう思っただけ・・・・・・・・・・・・・・。」
高橋も皇のいつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、言葉の最後の
方を濁した。
皇「で?何か様か?」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・。
別にこれと言った用は無いけど・・・・・・・。」
高橋も、濡れてない場所に腰を下ろした。
高橋「でも、皇君、今何してるのかなって・・・・・・。
そう思っただけ・・・・・・・・・・・。」
皇「別に・・・・・・・・・・。
何をしているわけじゃないさ・・・・・・・。
ま、さっきまで、ダンスホールにいて色々調べていたけどな。・・・・・・。」
- 293 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 11:33
- 高橋「ダンスホールで?
ダンスホールで一体何してたの?」
皇「大した事じゃないさ・・・・・・・・。
なんか、権藤刑事曰く、朝日ヶ丘署の方で俺に、あくまで捜査
の補助役として捜査協力を依頼可能になったらしい。
つまり、俺がある程度自由に捜査が可能になったとか・・・・・・。」
高橋「え〜〜。すごいじゃん。」
皇「ああ・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・、そうだな。」
皇はそう言うが、どこか悲哀とも取れる表情をしていた。
皇は相変わらず空を眺めている。
- 294 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 11:46
- >>284
>逆に今、分かった!・・・・、と言う人は恐らく間違っている可能性
>があるかもしれない・・・・・・・。
本当にそう思ってるなら犯人と密室の謎と
死体を吊るした理由を書いていいか?
- 295 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 11:53
- 高橋「ところで、今回の事件って、一体どうなってるの?」
皇「お前は何処まで聞いてるんだ?」
高橋「うん・・・・・・・。
朝、部活の朝練の為に学校に来た時何かパトカーとか沢山有
って、なんか知らないうちに会議室に連れて行かれて・・・・・・・。
しばらく待っていると、この間、事情聴取の時集められた
人達が、また集められて・・・・・・・・。
また、しばらくすると、警察の人が入ってきて・・・・・、
「藤本美貴さんが、今日未明殺害されました・・・・・」
って言って・・・・・・・。
その時、私は頭が真っ白になって・・・・・・・。
嘘だって思いたかった・・・・・・・・。
もう、泣き叫びたかった・・・・・・・・・。
たぶん、他のみんなもそうだったと思う。
でも、その警察の言葉を聴いて最初に泣き叫んだのは、私じ
ゃなくて、後輩の亀井ちゃんと、道重ちゃんと、田中ちゃん
だった・・・・・・・・。
そのお陰で、私はハッととして正気に戻ったんだけど・・・・・・。
でも、その時の3人は見るに耐えられなかった。」
- 296 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 11:58
- 「名無飼育さん」さん、どうもです。
う〜〜ん、どうでしょう。多分、支障がないと思いますので・・・・、
良いと思います。
こちらとしても、皆さんの幅広い考えも知りたいので、お願いします。
他の読者の皆さんから苦情が来たら、その都度対応を考えたいと思
いますので・・・・・・・・。
- 297 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 12:13
- 皇「藤本と、その亀井・道重・田中って言うのは仲が良かったのか?」
高橋「うん。特に藤本さんはとても年下って思えない程大人っぽく
って、しっかりしてて・・・・・・・。
でも、その分、部活内じゃあ結構浮いた存在で、友達も決し
て多い方じゃないよ。
噂だと、中学校でも、今のクラスでも殆ど話せる友達が居な
かったとか・・・・・・・・。
でも、この3人は何か、そんな藤本さんと親しげに話してみ
たいで・・・・・・、帰るときもいつも一緒で、とっても仲
が良かったよ・・・・・・・。
だから、その分、悲しみも人1倍だったのかも・・・・・・・・・。
その3人が泣いている所を見てると、私自身の心も締め付け
られるみたいだった・・・・・・・。
なんか、人事じゃないみたいで・・・・・・・・、とっても
苦しかった・・・・・・・・・・・・。」
高橋は今度は俯いたまま、話した。
しかし、その瞳には光る物は見えなかった。
恐らく高橋の事だ・・・・、必死で耐えていることが、その雰囲気
で容易に想像できる。
- 298 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 12:32
- 高橋「私・・・・・・・。
その時、初めて犯人が憎いって・・・・・・、そう思った。
大事な人を奪う事もそうだけど、私の平穏な生活を奪う権利
が何故、犯人にはあるの?・・・・・・って、
そう思うようになった。
勿論、それを自分で何にも出来ない自分自身の無力さも憎い。
・・・・・・・・、もうこんな生活嫌・・・・・・・。」
声は小さく、既に涙声になっていたが、皇にはその気持ちが充分過
ぎるほど、ひしひしと伝わった。
高橋は必死で涙をこらえている。
皇(こいつ・・・・、一体何故、ここまで平穏って事に拘る?
こいつにとって、「平和」・「平穏」ってのは何なんだ?
こいつの平穏に対する切望感は異常なほどだ。
こいつの過去に何かあったのか・・・・・・・?)
皇はそんな様子の高橋を見ながら、思いをはせた。
皇「それは俺も同じだ。」
高橋「え??」
皇「理由は違えど、俺も犯人が憎い事に変わりは無い。
お前も薄々気付いているとは思うが、今回の2つの事件は明ら
かに同一犯の仕業だ。(次回に続く)
- 299 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 12:45
- (前回の続き)
今回の事件の現場に前回と同様な血文字が残されていた。
文章は多少違うが、文脈が同じで筆跡も似ている。
しかも、警察側はこのことをマスコミ等には話してはいない、
と言う。
つまり、外部の人間が今回の血文字の存在を知ることは無い。
今回の事件関係者しかこの血文字のことを知らない。
故に、複数犯とも考え辛い。
今回は単独犯の連続犯行と考えていい。
俺は、この後、引き続き捜査を続ける。
殺された石川さんや、藤本さんや、勿論みんなの為にも・・・・・・。」
高橋「ねえ・・・・・・・・。
私にも手伝わしてくれない・・・・・・?」
高橋は思い切ったかのように言った。
皇「何だって・・・・・・・?」
当然、皇は驚いた。
- 300 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 13:00
- 皇「お前・・・・・、自分で何言ってるのか分かってるのか?
お前も少なからず、危険な身に晒されるんだぞ?
そうしたら、最悪の場合、石川さんや、藤本さんと同じ運命を
辿る事にも為りかねないんだぞ。
お前は、それを分かっているのか?」
高橋「・・・・・・・・うん!!」
高橋は皇の言葉にも屈せず、確かめるように力強く答える。
高橋「私も何か協力したいの。
石川先輩や藤本さんの為にも、指を銜えて待ってるなんて嫌。
無力な自分が嫌なの・・・・・・。
だからお願い。
皇君には迷惑をかけないから・・・・・・。」
高橋の思いは切実だ、流石の皇も思わずたじろぐ。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふん、好きにしろ。
だがな、俺が引き受ける以上、俺にも責任がある。
あんまり、無茶をするな。危険だと思ったら、すぐにこの事件
から離れろ・・・・・・・。いいな!!」
高橋「うん!分かった。」
皇はそれを聞き届けると、そばに置いてあった鞄を持ち上げ高橋の
脇の下に下りるはしご段を降りようとした。
- 301 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/21(水) 13:11
- その時、高橋はこう言った。
高橋「皇君、ありがとう・・・・・・・。
こんな無茶なお願いきいてくれて・・・・・。」
その声で皇の動きが止まる。
皇「・・・・・・・・・・・気にするな・・・・・・・・。」
高橋は軽く、「うん」と頷く。
皇「お前を見ていると、なんだか、他人事のように思えない・・・・・・。」
皇は高橋に聞こえないように、そっと呟く。
高橋「え??何か言った?」
皇「いいや・・・・・・。何にも・・・・・。」
皇と高橋は屋上を後にした。
空は今の2人を思わせる様に、薄く、淡く、力強く輝く。
その位、空は清麗な姿だ。
全くもって、空はこの世の不平等を思わせる。
<注意>
皇と高橋の恋愛物にはしたくありませんので、ご了承ください。
- 302 名前:SINKI 投稿日:2004/01/21(水) 16:00
- う〜ん、難しいですね。
というか、途中から皇くんが熱い人になっている気がするのは
私だけでしょうか?
これからもがんばってください。
- 303 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/21(水) 18:15
- む〜ん、分かったような気がしたんですけど違うのか…?
でもまだヒント出てないって言うなら納得かもしんないです。
ヒントが出るまで黙って待つことにします。。。
>>294 名無飼育さん
当たってたら嫌ですからよした方が良いかと。。。
僕も人のコト言えませんが、やるならせめてメル欄で…
偉そうでごめんなさい。。。
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 22:57
- >>303
同感です。何にしてももう少し材料そろってからか、メル欄がよいかと。
作者さんの創作意欲に支障をきたさないようにしたほうが・・・
皇と高橋の恋愛ものですか・・・少しは匂わせてくれたほうが・・
って思わないでもありませんが・・
まあとにかく楽しみにしていますので、がんばってください!
- 305 名前:294 投稿日:2004/01/21(水) 23:12
- >>296
マジで?本当に支障がない?
普通こういう話を書く時は『分かったとしても、頼むから言わないでくれ』
というのが作者心理だと思うんだが。あんたは変わってるねぇ。
>>303
多分考えてる事は同じなんだと思う。
俺の書き込みに対して『お願いします』と作者が返レスしたから
分からなくなってるんじゃないだろうか?
でもその考えが正解だと思うよ。
>>304
ってゆうか、296を読んだか?
『皆さんの幅広い考えも知りたいので』とあるんだが。
という事でもう一回聞くぞ作者。
本当に書いていいのか?
明日の昼にまた覗いてみる。
- 306 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 10:36
- 「SINKI」さん、ありがとうございます。
最初は、「皇」と言う人物は類稀なる頭脳を持っている反面、冷めてて面倒く
さがりで、人とあまり関わりを持たない・・・・・、そんな人物として登場さたつもりでした。
でも、また1方で(余り深くは言えませんが)何か「悪」に関しては異常なほ
どに熱くなる・・・・・・、と言う内面も持つと言う人物にもしたかったので、
まあ、結果的にこうなってしまいました。
- 307 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 10:41
- 「名も無き読者」さん、どうもです。
やはり、こう言う小説は、その人その人の読み方やペースもあると思います。
今はまだ分からなくとも、これからヒントも少し出そうとも思っていますから
大丈夫だと思います。
逆に、早い段階で頭を無理にめぐらすと、固定観念に捕まる可能性もあるので・・・・・・・。
- 308 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 10:46
- 「名無飼育さん」さん、ありがとうございます。
もう少ししたら、ヒントを出しますので、ご安心ください。
正直、今、どんなヒントを出したら良いのか分からないので・・・・・・・・・。
皇と高橋の恋愛物はですね・・・・・・・・・・、
実際、恋愛物を取り込むと本編と、恋愛とどっちも中途半端になってしまう気
がしますので・・・・・・・。ご了承下さい。
- 309 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 11:01
- 「294」さんは、「名無飼育さん」さんと思って良いのでしょうか?
何はともあれ、完全に支障が無いか・・・・・?、と言われたら困りますが、
でも、本編には恐らく支障は無いと、そう思ったんですけどね・・・・・・・・・。
でも、皆さんのスレを読ませて頂いたら、ちょっと不安になりました。
確かに「言わないでくれ」と言う気持ちは有りますが、それ以上に「皆さんが
何処に目をつけて、どう考えているか・・・・・・。」などを見たい、と言う気持ちも
ありますので・・・・・・・・・・。
変わっててすいません。
今まで、レスを読ませて頂いて「書かないでくれ」と言った感じの内容もあっ
たので、
「犯人・トリック等は原則、書かない。」
と言う事でお願いします。
(但し、ここが怪しいのではないか、程度のほかの読者の方へのささやかなヒ
の出し合い程度なら、まあ、いいかな・・・・・・・、とも思います。
これは読者の方々の自主規制にお任せします。
これも苦情が来次第、検討します。)
- 310 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 14:23
- >>305の書き込みを見てドキドキしながら昼を待ったんですが…
294氏はもう現れないんですかね…ホッとしたのが半分と残念なのが半分です(w
多分ですけど、私にも犯人とトリックが分かったような気がします。
294氏の推理が正しいと仮定して、何故彼に密室の謎と死体を吊るした理由が分かったのか?
そう考えていたら、答えが見つかりました。一連の物なんですね。
死体を吊るした理由が分かれば密室の謎が解ける。そうすると犯人も自然と分かる。
私なりの考えを追加すると、ダメ出しされてしまった>>247には作者さんなりの
こだわりがあった…。そのこだわりの意味が分かると正解に一歩近づく…。
いかがでしょうか?当たってると思うんですが…。
- 311 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 15:14
- 「名無飼育さん」、お返事うれしいです。
基本的には「ノーコメント」を貫かして頂きます・・・・・・・・・。
「いかがでしょうか?」と言われても、お答えしても良いのでしょうか?
でも、この文章は分かる人には分かるかもしれないし、
逆に、分からない人には分からない文章かもしれません。
一応、返答するとしたら、
「本当に素晴らしい場所に眼を付けられましたね・・・・。」
とだけ、言わせていただきます。
あと、「250」のスレにも、もしかしたら・・・・・・、ヒントが隠されて
いるかも・・・・・・・、しれません・・・・。(謎)
- 312 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 16:11
- 皇の考えで、捜査の続きは翌日に行う、と言う事になった。
翌日、当然学校は臨時休校になったため、生徒は登校してこない。
また、捜査に当たっていた警察官も、権藤刑事の命令であろう、学校付近で
被害者の石川梨華や藤本美貴の接点や、事件当日、不審人物の情報などの情報
の聞き込みを行う為、学校には殆どいなかった。
その方が皇には動きやすかった。
皇(+高橋)は学校のダンスホールにやって来た。
皇はまず鍵について調べる為、教務室のキーボックスにあるダンスホールの本
鍵と、事務室の保田と言う人が管理している合鍵を手に入れようとした。
皇は教務室で本鍵を手に入れた後、その足で事務室に向かった。
そこにはやはり、事務員の保田がいた。
まあ、皇にとっては保田とは初対面なのだが・・・・・・。
ガラッ
皇が明かりの付いた事務室のドアを開けた。
保田「は〜〜〜いい。どちら様?」
保田は自分のデスクの上においてあるパソコンを操作しながら、訪問者の方に
は眼もくれず応対する。
保田「君、何か事務室に御用?」
保田はパソコンから目を離し、あくまで事務的に皇に話しかける。
- 313 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 16:24
- 皇は正直、こう言う雰囲気は苦手だった。
皇は日常で初対面の人と会話をするのはあんまり好きではない。
すると、
高橋「保田先輩、お久しぶりです。」
高橋が、皇と保田の間に割って入ってきた。
保田「ん?お〜〜、高橋、お前か〜。
どうしたの・何か用?」
保田の表情は、事務的で冷静な表情は優しそうな姉御顔になった。
皇は少し、ホッとした。
皇は事件現場などでは、権藤刑事などには平気で突っかかるくせに
こういう場面はどうも・・・・・・・・、と感じただろう。
皇「あ、実はダンスホールの合鍵を借りたいと思いまして・・・・・・。」
保田「え?ダンスホールの合鍵?そんな物何するの?」
皇「ええ、実は先日起こった事件について、色々調べてみたい事が
ありまして・・・・・・・・・・。」
保田「え!!!君が!!!事件について調べる!!!」
保田はかなり驚いたようだ。まあ、無理も無い。
- 314 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 16:37
- 保田「高橋!この子どういう子なの?」
高橋「え、あ、まあ・・・・・・、見ての通りです。」
保田「ふ〜〜〜ん。」
皇(高橋も高橋だが、これで納得している保田って人も人だな・・・・・・。)
保田「ま、いいか。合鍵を貸す事自体、何にも無いしね・・・・・・・。
じゃあここに名前とか書いて。」
保田は、今回も自分の鞄から分厚いファイルを取り出して皇に渡した。
皇は言われた通り、ファイルに名前を書こうとした。
皇は名前を書く欄の1つ前を見た。
そこには「小川麻琴」と書かれていた。
皇(前回使ったのは、権藤刑事の言う通り小川か・・・・・。)
皇はファイルに必要事項を書き終え保田に渡した。
- 315 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/22(木) 16:51
- 保田「・・・・・・・・・・・・。ふ〜〜ん、皇君って言うんだ。
よし。OK!、ちょっと待ってね。」
保田はファイルに眼を通すと、自分の胸ポケットから鍵を取り出した。
そして、その鍵をデスクの1番の鍵穴に通して引き出しを開けた。
保田「はいこれ。ダンスホールの合鍵。
15分以内に返しに来てね。」
高橋が代わりに合鍵を受け取った。
高橋が事務室を出ようとした時、
保田「皇君だっけ・・・・・・・・・?」
皇「はい?何ですか?」
保田「君はすごいの?」
何とも漠然とした質問である。
高橋「保田先輩、皇君ってこういう事すごいんですよ!」
皇の代わりに高橋が、保田の質問に答えた。
- 316 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/22(木) 17:51
- 乙れす。
やっぱ合ってんのかな…?
ていうか合っててもまだ全体像は見えてきませんけどw
次も楽しみにしてます。。。
蛇足ですが、僕なりの考えを書いちゃってますので
知りたくない人は僕のメル欄見ないよう注意して下さい。
一方的なお願いで申し訳。。。
- 317 名前:SINKI 投稿日:2004/01/23(金) 15:50
- みなさんの会話から犯人が絞り込めて来ました。
みなさん、視点がするどいですね。
これからも更新がんばってください。
- 318 名前:闇への光 投稿日:2004/01/23(金) 21:27
- お久しぶりです。
私も犯人はつかめたとは思ったのですが・・・
予想が違ったかな?
いや、待て。自分の作ったアリバイ表と照らしてみると・・・
やっぱり、レス310の通り騙されたのかな?俺?
- 319 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/24(土) 09:08
- 「名も無き読者」さん、ご感想嬉しいです。
「ノーコメント」を貫くと言いながら、変なこと喋ってしまった様で申し訳無
い。まあ、作者の自分が言うのも何ですが、合っていると思います。
恐らく、まだ「動機」の方は分からないと思います。
だって、殆ど書いてませんから。(笑)
でも、後半になるに連れて動機や、その他もろもろの描写の理由も繋がってく
ると思います。
そこの辺りも頭の片隅にでも置いて読んでいただければ光栄です。
- 320 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/24(土) 09:12
- 「SINKI」さん、光栄です。
なんと、SINKIさんまで真実に気付かれましたか?
まあ、真実と言うほどの事でもありませんが・・・・・・・。
「名も無き読者」さんへの返事レスにも書きましたが、これからは
動機や事件の裏に隠された事実にも眼を付けてみてください。
とは言っても、そこまで見つけるのも難しくないとは思いますが・・・・・・。
- 321 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/24(土) 09:20
- 「闇への光」さん、こちらこそお久しぶりです。
闇への光さんが、どう考えているかは分かりませんが、合っている
んじゃないか・・・・・・・、と思います。(あくまで思うだけです。)
「レス310に騙された」って、別に誰も騙すつもりは無いと・・・・・・。
これからも末永くお願いします。
闇への光さんには失礼ですが、この場を借りて連絡いたします。
自分はセ○ター○験が終わりましたが、これから大学別2次試験の
勉強をしなくてはならないので、またまた、更新が不定期、且つ遅筆
に為りかねません、ご了承下さい。
- 322 名前:まっち☆ 投稿日:2004/01/24(土) 15:40
- いい小説ですね。勉強になります。
期待していますのでがんばってください。
- 323 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 17:23
- sage
- 324 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 14:27
- 「まっち☆」さん、どうもです。
良い小説ですか?、勉強になりますか?
そう言っていただけると嬉しいですね・・・・・・・・・・。
(ほどほどに)期待してください。
- 325 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 14:43
- 保田「へ〜〜〜〜。どの位?」
またしても、漠然とした質問だ。
高橋「どの位って・・・・・・、とにかくすごいんですよ!」
高橋もまた、漠然とした答えである。
保田「・・・・・・・・・・・・・・。
ねえ、噂だけど裕ちゃんって、何て言うか・・・・・・・・・・、
容疑者のうちの1人って本当?」
皇「裕ちゃん?」
皇は聞き慣れない言葉に首を傾げた。
保田「あ、ごめんね。裕ちゃんてのはミュージカル部の顧問の中澤裕子の事よ。
略して裕ちゃん。」
皇「・・・・・・・・・、ハイ。そうです。
中澤さんは、現在のところ容疑者のうちの1人です。」
高橋「皇君!そんなこと言って大丈夫?」
皇「遅かれ早かれ、分かることだ。」
皇はシレっとしている。
- 326 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 15:04
- 保田「そ、そっか・・・・・・・・・・。」
皇「保田さんは中澤さんのお知り合いなんですか?」
保田「ん〜〜〜〜〜、まあね。
裕ちゃんとは小さい頃からの悪友でね・・・・・・。
物心付いた頃から一緒に遊んでた。
年は多少違えど、小学校、中学校、高校、と同じで・・・・・。
今でも、気の合う飲み仲間なんだ・・・・・・・・・・。」
保田は、しんみりと昔を思い出したように遠い眼をした。
高橋「知ってます。よく中澤先生、休み明けとか2日酔いで機嫌悪
いときなんか、保田さんの名前を聞きます。」
保田「ねえ、皇君。裕ちゃんは石川の事件の夜、電話したけど、い
つもの裕ちゃんだったんだ。
あんな優しい裕ちゃんが人殺しなんてするわけ無いよ。
ましてや、自分の部活の教え子だよ。
有り得ないよ・・・・・・・・・。」
皇「?、保田さん、あの日中澤さんに電話したんですか?」
保田「まあね、結構裕ちゃん、ああ見えて怖がりな面もあるから、
15分位長電話しちゃった。」
皇「ふ〜〜〜〜〜ん、そうですか・・・・・・・。」
- 327 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 15:21
- 保田「あ、ごめんね。引き止めちゃって。
皇君、捜査の方頑張ってね。」
保田に見送られて、2人は事務室を出た。
高橋は気付かなかったが、皇は頭で何かを巡らせていた。
皇と高橋はダンスホールのステージに来た。
皇は藤本が吊るされていたと言うステージが何やら気になっていたのだ。
皇と高橋は手分けして、ステージの上の警察も見逃していた証拠は
無いかと探していた。
しかし、あまり思うように捗っていない。
皇「どうだ高橋?何か見つかったか?」
高橋「ん〜〜ん、何にも・・・・。」
皇「絶対何かあるはずだ。気合入れて探せよ。」
高橋「う〜〜〜〜ん、でもさ・・・・・・・・・・、
こう言うのもなんだけど、ここには何にも無いような気がす
るんだよね。
だって、私達はいつも部活でここを使っているんだよ。
だから、見慣れてるから、何か違ったところがあったらすぐ
に気付くと思うんだけど・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・・・。
確かにそれもそうだな。」
- 328 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 15:49
- 皇が手を腰に手を当てながら、高橋と一緒に悩んでいるた。
その横の2人から死角なステージ裏に、なにやら不吉な人影が2人
を見つめながら潜んでいた。
そして、その人影は移動して、奥の暗闇に消えていった。
そんな事とは露知らず、2人は話していた。
高橋「ねえ、もっと他のところを探そうよ。
ここには多分、何にも無いよ。」
そんな高橋の言葉を、背で聞きながら皇は頭をポリポリかき出した。
皇「とは言ったものの、他に調べることも今の所、何も無いしな。
今は消されているけど、そこの壁に描かれた血文字の事もある
しな・・・・・・・・・。
もうちょっと、このまま探そ・・・・・・・・・・。」
皇が振り返りながら高橋を宥めようとそう言った、その時、
皇は何を思ったか、いきなり有無を言わさず高橋に飛びつき抱きついた。
皇は高橋に抱きついたまま、勢い余ってそのまま高橋と一緒に床に
倒れ転げた。
高橋「え!?きゃっ!なに?皇君、何するの?」
高橋はその瞬間、完全に当惑した。
それもそうだ、いきなり男子に抱きつかれて驚かない女子はいないだろう。
- 329 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 16:05
- バタン!!
皇が高橋に飛び掛り床に倒れこんで激しい音がした、そうその瞬間、
ガシャーーン!!!!
何かガラスの様な張り裂けんばかりの勢い良く砕ける音が、ダンス
ホール中に響き渡った。
皇が激しい粉砕音が響くと、すぐに高橋を離して音源を見た。
そこには今の今まで高橋が立っていた場所に、無残にまでに粉々
に砕け散った照明器具のスポットライトが姿を現していた。
皇はそんな事には眼もくれず、今さっきまで人の気配の有った場所
に眼を向けた。
その目線の先には、2階にある照明の調節・操作や音響等の仕事を
行う「音響照明室」があった。
皇「おいこら!待て!!」
そう言って、皇はすぐに立ち上がり人の気配の主を追うかのように
「音響照明室」に向かい全速力で走り出した。
- 330 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 16:17
- 皇が走っていってしまって、1人残された高橋は、未だ落下してき
たスポットライトを白い顔をして見ていた。
皇がいきなり高橋に飛びついたのは、他の何でもなく落下してくる
スポットライトから高橋自身を守る為だった。
もし、
皇の反応が少しでも遅かったら、
落ちてくるスポットライトの数が多かったら、
皇が行動を起こそうとしなかたら
・
・
・
今頃はスポットライトが頭を直撃していて、おそらく無事では済ま
なかったことだろう・・・・・・・・・・・・。
高橋はそんなことを考えると、手足の震えが止まらない。
立とうとしても腰が抜けて立てないでいた。
高橋は未だとして、スポットライトを見続けている。
- 331 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 16:33
- 一方、皇は今までただならぬ気配を感じていた音響照明室の前にやってきた。
しかし、音響照明室のドアが半開きになっていた。
皇がドアを開けて中に入ってみると、そこは既にもぬけの殻だった。
しかし、部屋の中は微かではあるが、熱を帯びていた。
皇(ちっ!もういない。しかし、部屋が微かではあるが熱を帯びている。
さっきまで誰かがここにいて何かをした証拠だ。)
皇は目の前の数多のスイッチを見ても何がなんだか良く分からない。
しかし、大抵のことは想像が付いた。
皇はすぐに音響照明室を出て、今来た通路の逆の道をひた走った。
この通路を通れば、ステージ上から見られずにダンスホールの出入口1歩手前
まで行ける。
皇はそのまま走った。
ダンスホールを出たところ、皇はT形に交わった廊下で誰かにぶつかった。
- 332 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/26(月) 16:47
- 皇とぶつかったのは吉澤であった。
皇「わっ!」
吉澤「うげ!!」
2人は同時に尻餅をついた。
皇「いてててて・・・・・・、
あ、すいません。吉澤さん。前見てなかったので、つい・・・・。」
吉澤「あ、ごめんごめん。こっちこそボーっとしちゃって・・・・。」
皇は立ち上がり、体に付いた埃を払いながら吉澤に尋ねた。
皇「すいません。吉澤さん。今、そっちの方に誰か走っていきませ
んでしかた?」
吉澤「え?いや・・・・・・・、別に・・・、誰も来なかったぜ。」
皇「そうですか・・・・・・、
(くそ!さっきのT字路廊下を逆に進んだか・・・・。)
皇はポケットの中で強く握り拳を作った。
- 333 名前:SINKI 投稿日:2004/01/27(火) 13:33
- なんだか怪しい雰囲気ですね。
短いですが、これからもがんばってください。
あと、よっすぃーは嘘ついてませんか?
ちょこっと言い回しが気になりました。
- 334 名前:名無しですねん 投稿日:2004/01/27(火) 22:23
- センター乙です。引き続き勉強がんがれ!!
自分は去年ですた。結局就職しましたが(藁
高橋危機一髪!でしたね。あそこで更新終わってたら
次がとても気になったかも…って生意気なこと言ってすんません。
- 335 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 13:02
- 「SINKI」さん、毎度毎度ありがとうございます。
怪しさ満点でございます。
よっすぃーが嘘をついているか、どうか?・・・・・・・・。
そこも謎の1つですし、だとしたら何故嘘をついたのか・・・・・?
そこら辺も考えてもらいたいです。
- 336 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 13:09
- 「名無しですねん」さん、お疲れ様です。
センター・・・・・・・・、全然乙じゃありませんでした。
終わった直後は結構手応えがありましたが、いざ自己採点をすると・・・・・・、
自分でも思うのですから、読者の皆様は「何故こんなところで更新
を区切るのであろう?」とお思いの方がいると思いますが、
ぶっちゃけ、特に意味はありません。
その時の、作者の気分次第でその日の更新を終えるため、皆様に不
可解な思いをさせてしまいましたが、あまり気にしないでください。
- 337 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 13:22
- 皇はふと思った。
皇「あれ?そう言えば吉澤さん、今日は休校日なのに何で学校に?」
吉澤「え、ああ、ちょっと教室に忘れ物しちゃってね。
でも、やっぱ、いいわ。もう帰るわ。」
吉澤はそう言うと、急に踵を返すとスタコラと今来た道を帰っていった。
皇(・・・・・・・・?吉澤さんは何しに来たんだ?
ま、いいか。それよりも、犯人を逃がしちまったな・・・・・・・・・。
今から追ったって無駄だろうしな・・・・・・・・。)
皇も踵を返すと、またダンスホールのステージに向かって歩き出した。
- 338 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 13:40
- 皇がステージに戻ってくると、そこには高橋がペタンと腰を下ろし
て座っていた。
皇「おい!高橋。大丈夫か?」
その皇の声で高橋は我に帰った。
高橋「・・・・・・え?あ、うん大丈夫。」
高橋は何とかその場に立ち上がるが、まだ少しボーっとしている様
だった。しかし、それも無理も無い。
皇「すまん、すまん。急に飛び出したりして・・・・・・・・・。
それより高橋、怪我無いか?」
高橋「ん・・・・・・・、特に大した怪我は・・・・・・・・。」
皇「そうか・・・・・、良かった・・・・。」
「良かった」と、皇は言うけれどもその顔は、晴れない顔をしていた。
やはり、高橋に大した怪我が無かったとは言え、高橋を危険な目に
あわせた事には代わりは無かったと言う自分自身への責任感が、ど
うしても皇自身を許しはしなかった。
今度は皇は高橋を襲った落下した1つのスポットライトに近づいた。
皇がスポットライトをぐるりと見回した。
皇がまず最初に気が付いたのは、落下したスポットライトを天井の
装置に固定するワイヤーであった。
- 339 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 13:54
- このスポットライトは1つ5〜6kgはある金属の塊の様な物である。
この様なスポットライトを支えるには大抵のワイヤーでは足りず、
市販されている物に比べ、だいぶ丈夫に作られたワイヤーを使用し
ていた。
そんな丈夫なワイヤーがそう簡単に劣化するはずも無い、と言う皇
の思惑通り、ワイヤーには刃物の様な物で切り込みを入れられた跡
が見られる。
皇(思った通りだ。このスポットライトは人為的に落とされたんだ。)
次に皇はスポットライトの側面に眼をやった。
そこには、
「我の復讐を妨げる者は死の鉄槌を受けるだろう 我が名は煉獄仮面」
と、紅い字で書かれていた。
皇「なっ・・・・・・・。」
皇は言葉を失う以外何も出来なかった。
- 340 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 14:07
- 高橋「どうしたの?」
皇の様子を見に、高橋がそのスポットライトに眼をやった。
高橋「え・・・・・・?
皇君、これってもしかして・・・・・・・・・
血・・・・・文字・・・・・・・・・?」
高橋はその紅い文字を見たようだ。
皇「ああ・・・・・・、その「もしかして」だ・・・・・。
だが、安心しろ。これは血じゃない。
恐らく、紅いペンキか塗料か・・・・・、そんなもんだ。」
高橋「う・・・・・・、うん・・・・・・・。」
そうは言うものの、高橋は恐怖を感じざるは得ない様だ。
確かに今回の血文字は、血ではなかったものの、命を狙われた事自
体には代わりは無い。
明らかに高橋の顔色は変色している。
- 341 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 14:35
- 皇はスポットライトを眺めて、他に変わった所が無い事を確かめる
と、立ち上がり高橋に向かってこう言った。
皇「高橋すまなかったな・・・・・・・・。
危険な目にあわせてしまって・・・・・・・・。」
高橋「え、どうしたの?皇君のせいじゃないよ。
悪いのは全部犯人じゃない。
気にしないでよ・・・・・・・・・・・。」
皇「そう言うわけにはいかない。
昨日言っただろ?お前が俺に協力すると決めた以上、俺にも責
任があるって・・・・・・・・・・。
今回お前が危険な立場におかれた以上、お前をこのまま残すわ
けにはいかない。
高橋・・・・・、お前はもう家に帰れ。
なるべく人通りの多い通りを通れ。分かったな!?」
皇はあくまで、高橋を突き放すような冷たい眼を突きつけた。
しかも今までに見せた事の無いような酷冷なるまでの眼で・・・・・・・。
- 342 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 14:45
- 高橋「え・・・・・・・、でも・・・・・・・、」
皇「分かったな!!」
高橋の請いを叩き落とすかのごとく、皇は再度、冷酷な眼で高橋を
睨み付けた。
高橋「・・・・・・・・・・・・。うん、わかった。」
高橋は「じゃあね」と言い残すと、静かにダンスホールを後にした。
その「じゃあね」と言う単語が、虚しく木霊する。
その場所が、ダンスホーなだけ余計響いたように感じた。
皇の立っている位置から見えなくなると、皇は「音響照明室」に向
かった。
- 343 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 15:08
- 皇は音響照明室に向かうまでの廊下で葛藤していた。
皇(しょうがなかったんだ・・・・・・・・。
間違ってはいないはずだ・・・・・・・・。
高橋はああでもしないと退かないからな・・・・・・・・。
ああ言ちゃあ高橋には悪いが、これは俺が勝手に首を突っ込んでやってい
る事だ。
そんなことに、関係無い高橋を巻き込んでもしもの事があったら・・・・・・・。
そうだ・・・・・・、俺のやったことは正しかったに違いない。)
皇は頭の中で、自分の高橋にしてしまった、あの冷徹な眼を悔やみ、
同時にその行為を正当化しようと奮闘していた。
脳内では自分のあんな眼をしてしまった行為を、不可抗力として捕らえてはい
るものの、心の何処かではやはり得体の知れない重みに悲鳴を上げていたのか
もしれない。
皇は音響照明室のドアノブを握り、捻る。
当然ドアは開いた。
- 344 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 15:36
- 皇が音響照明室に入るとそこは、さっきまで含んでいた微かな熱量は既に無く
正に人気の無い部屋だ。
皇は目の前の数々のボタン、レバーなどが備え付けられているテーブルがあった。
皇はそれらの装置の意味が分からなかったが、何となく雰囲気で適当に操作し
てみる。
すると、天井に付けられている装置が沈黙な音をたてながら、作動し始めた。
当然、高橋を襲った残りのスポットライトも動き始めた。
皇(天井の照明装置を動かすこと自体は容易い。
後は、予め切り口を入れておいたスポットライトの下に来たときに、この
操作を行えば重さに耐え切れなくなったワイヤーが切れて、そのまま落下
する。
幸い、作動音も殆どしない為、下にいた俺達も全く気が付かなかった。
あの時、偶然天井を見なかったら高橋は本当に危なかった・・・・・・・。)
皇はそんな事を考えて、自らの葛藤を紛らわせた。
- 345 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/29(木) 16:00
- しかし、同時に皇には引っかかる事もまたあった。
皇は装置の操作が容易に行えることを確かめ終えると、そのまま元居たステー
ジの元居た場所に戻ってきた。
そうした後、皇は天井を見上げた。
そこには1箇所だけスポットライトを欠いた照明装置が広がっている。
勿論、欠けているスポットライトは先程、高橋目掛けて落ちてきた物だ。
照明装置には、全部で20〜30個程の同様のスポットライトが設置されている。
皇は(やはりミュージカルには結構な量の照明も使うもんだな)などと、呑気
な事を考えつつ、ある事に頭を捻る。
皇「何で犯人は、スポットライトを1つしか落下させなかったんだ?
もし、俺達が邪魔で本気で殺す気があるなら、1つじゃなくて30個全部
落下させれば良いのにな・・・・・・・・・・・・・。
天井に固定されている照明装置ごとネジでも緩めておけば、作動の際に丸
ごと落下させられるのにな・・・・・・・・・。
そっちの方が切れ目を入れる必要が無いし、なにしろ確実。
俺だって、照明装置ごと落ちてきたら、高橋を救うどころか、自分自身逃
げることすら出来なかった・・・・・・・・・・。」
皇は頭をボリボリと音が出る位、掻き立てた。
- 346 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/30(金) 15:39
- 皇はしばらく両目を閉じて考えたが、やはり情報量が少ないせいか、何にも
頭に浮かんでこない。
それどころか、皇には今回の件以上にもっと気掛かりになることもあった。
今回の事件、そしてその背後の「何か」の存在。
その「何か」は何か?
依然として深い濃霧の中にある「何か」は、皇の精神の奥底でひっそりと息を
していた。
別に、特別これと言って根拠となっている物等これと言って無い。
しかし、皇にとって心の深淵で微かに花開く「何か」と自分とが、何故か「1本
の糸」で繋がっている気がしてならない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
とは言うものの、考えてたって何にも始まらない。
皇(一応、調べる事は調べ尽した事だし、ここに居るよりは朝日ヶ丘署にでも
行って、権藤刑事からでも情報の1つでも貰おうかな・・・・・・。)
皇は鞄を持ち上げ、心にモヤモヤした物を残しつつ学校の中央玄関を出ようと
した。
- 347 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/30(金) 15:54
- 皇が目線を、俯き加減で落としながら玄関を出た時、
権藤「おう!小僧こんな所に居たのか?探したぞ。」
権藤の声が、広く天井の高い玄関の隅々まで響いた声が皇の耳に入る。
皇「あれ?権藤刑事?何でこんな所に・・・・・・?」
権藤「ばかたれ!お前が参考人の証言等を取れって言ったんだろ?
だから、こうして態々、届けに来てやったんだ。
ほら。これが証言等をまとめたノートだ。」
権藤は胸ポケットから小さな手帳を取り出すと、皇に目掛けて投げ
つけた。
皇「ああ、そうでしたね・・・・・・・。
どうも、態々ありがとうございました。」
皇は権藤から勢い良く投げつけられた手帳を右手で受け取ると、
中身を軽く眺めて自分の鞄の中にしまった。
- 348 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/30(金) 16:21
- 権藤「用はこれだけだ・・・・・・・・。
俺はこれから残った仕事があるからもう行く。
じゃあな・・・・・・・・・。」
権藤が皇に目的の手帳を渡すと、すぐに帰ろうとした。
皇「そう言えば権藤刑事、朝日ヶ丘署で受けた事情聴取の確認は出
来ましたか?」
皇の言葉で、権藤の足が止まる。
権藤「・・・・・・・・・・。
その事なんだがな、何しろ時間帯が時間帯なだけに有力な手
掛かりが無い。
よって、確証が掴めない。
校長の石黒にしろ、副校長の福田にしろ、用務員の市井にし
ろ、教員の中澤にしろ、その他の飯田、安倍、矢口、吉澤、
加護、辻、高橋、小川、新垣、紺野、亀井、道重、田中・・・・・、
と、皆、それなりの目撃証言はあるものの、どれもこれも
決め手に欠ける物ばかりでな・・・・・・・・・・・。」
皇「じゃあ、事務の保田さんは?
権藤刑事も一応、容疑者以外でもアリバイ程度なら調べはつい
ているでしょう?」
権藤「なんだ、お前知ってたのか?
一応、彼女も合鍵を自由に使える為、調べは付いている。
事務の保田は石川殺害事件の時、地元の居酒屋で地元の友人
と一緒に宴会を開いていたらしい。
保田の地元はここから10km以上離れていて、車でも片道
20分以上掛かる場所にある。
往復時間+事件後の処理の時間を算出すると、まず犯行は不
可能らしい。
これは友人や居酒屋の店員の証言により、まず疑いの無い事
実と判明した。以上だ。」
- 349 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/30(金) 16:35
- 皇「と、言う事は保田さんは犯人ではないと・・・・・・・・。」
権藤「そう言う事になるな。今回の事件は同一犯の犯行である可能性が極めて
高い。
故に、起こった事件のうち、1つでも容疑者から外れる事は、全ての事
件の容疑者から外れる事を意味するからな・・・・・・・・・・。
まず、保田は犯人ではないだろう・・・・・・。」
皇「あともう1つ。
権藤刑事、昨日言ってましたよね?
第1の被害者の石川さんと、第2の被害者の藤本さんとの共通点を探して
いるって・・・・・・・・・・。
どうですか?何か分かりましたか?」
権藤は虫を噛み殺した様な表情をした。
権藤「何も掴めない。」
皇「は?」
権藤「何も手掛かりが掴めない。これが今の現状だ。」
皇「何も手掛かりが掴めないって・・・・・・・・。
例え、1日しか調べていないと言っても多少の手掛かりとかは・・・・・・・?」
権藤「何度も言わせるな!何も無いって言ってるだろ?」
- 350 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/30(金) 17:08
- 皇「本当に何にも・・・・・・・・?」
権藤「本当に何もだ。こちらも警察のメンツにかけて部下が必死に
操作を続けている。
2人の出身中学校から、共通の知人、趣味、持ち物、住所、
行きつけの病院、理容室、喫茶店、過去に訪れた場所など
可能な限り調べてみた。
しかし、どれもこれもはずれだ。
2人に殺害されるような共通点はない。
これが、現段階の状況だ。
これからも今の捜査を続ける予定だが、あまり良い結果は期
待できないな。」
皇「そうですか・・・・・・・・。」
皇はもっと聞きたいことがあったが、権藤の喋り終わった後の、そ
の権藤の様子を見て口を閉ざした。
皇「(まあいいか。容疑者の証言メモは手に入ったわけだし。
朝日ヶ丘署に行ってもろくな情報は手に入りそうでも無いし。
今日のところはこれで良いか。)
どうも、ありがとうございました。」
権藤「ああ、お前も気をつけろよ。じゃあな。」
権藤はそう言って、外に止めてあったパトカーに乗り込んだ。
皇も権藤刑事からもらった証言の書かれた手帳を広げながら、岐路
につくことにした。
(次回から容疑者17人の証言をかきます。)
- 351 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/31(土) 16:03
- 乙彼サマです。
む〜現段階じゃなんとも言えない感じですなぁ・・・
次回からの容疑者証言を待つとします。
- 352 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 12:54
- 「名も無き読者」さん、乙彼様です。
本来はこの18人分の証言で、ある程度犯人の目星の付くように仕向けてみよ
うかな・・・・・・と、思ったんですけどね・・・・・・・・・・。
なんだか皆さん、そこそこ気付いているようなので難し目に作ってみます。
一応、見易い様に1人1レスにしておきます。念のため・・・・・。
- 353 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 13:18
- 重要参考人証言ノート(1) 校長 石黒彩
(念のために言っておきますが、本書は証言者の証言内容をある程度要約して
あります。・・・・・・・・)
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分頃)
「当日は朝6時頃に起床したあと、7時に家を出て、7時45分頃学校に到着。
よって、4時30分〜5時30分までのアリバイは無し。」
との事。
藤本殺害当日に見た、不審人物や光景について。
「特に無し。
強いて言えば、最近、この辺りで朝学の部活動(特にダンス部やチアガール
ル部やミュージカル部など)の追っかけ?や異様なファンクラブ?が増えて
いる、と言う噂を聞いたことがある。
何か、今回の事件に関係があるかも・・・・・・・。」
との事。
その他について。
「う〜〜ん。これと言って特に無し。」
との事。
以上。
- 354 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 13:34
- 重要参考人証言ノート(2) 副校長 福田明日香
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分頃)
「いつも朝、5時30分頃に起床して30分ほど、家の周りをランニングしている。
途中で、ランニング仲間に2〜3人に会った。
当日は処理しなくてはいけない書類等が有った為、いつもより早めに学校に
向かった。
学校に着いたのは、7時20分〜30分頃。」
との事。
藤本殺害当日に見た、不審人物や光景について。
「7時20分〜7時30分頃に学校に着いた時には、既に警察の方が居て、
周りには沢山の野次馬がいた。
その中に、学校の周りでは見かけない人物が居たような・・・・・・。」
との事。
その他について。
「いえ・・・・・・、特に・・・・・・・・・・。」
との事。
以上。
- 355 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 13:55
- 重要参考人証言ノート(3) 用務員 市井紗耶香
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「いつも、早朝に校域内の見回りをする為、朝5時頃に起床して6時前には
学校に着くようにしている。
毎朝、6時過ぎ〜7時頃まで校内の見回りをする。
今日(最近)は6時15分頃、事務室の前を通る時、事務員の保田さんに
会った。
その後、続けて見回りをしていると、ダンスホール前の廊下を通る時に、
いつもミュージカル部の鍵当番の小川が合鍵でダンスホール部のドアを
開けるところを見た。
なんだか、胸騒ぎがしたので、ダンスホールに見回りに行こうとした所、
小川の悲鳴を聞いた。」
との事。
藤本殺害当日に見た、不審者や光景について。
「特に無し。と言うよりも、意識が無かった。」
との事。
その他について。
「小川が鍵当番としてダンスホールの鍵を開ける前に、鍵が掛かっているか
調べたが、確かに鍵が掛かっていた。」
との事。
以上。
- 356 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 14:09
- 重要参考人証言ノート(4) 教員(顧問) 中澤裕子
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分頃)
「昨夜、1人で酒盛りをしていて、朝2日酔いで学校に来たのは、朝練の始ま
る5分前の6時55分頃。
朝起きれない時の為に念のため、事務員の保田に携帯電話で起こしてもらうよ
うに頼んだ。その時、6時30分頃で、ちゃんと電話に出た。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景。
「朝は、自家用車で学校に着たが、雨が降っていて視界が悪く、しかも2日酔
いで気分が優れなく、殆ど何も見ていない。
途中で、赤信号に気付かず、事故を起こしそうになった。」
との事。
その他について。
「朝練を久しぶりに再開したが、いつもは遅刻をしない吉澤が珍しく、その日
に限って遅刻した。
何か、あったのか・・・・・・、と、思った。」
との事。
以上。
- 357 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 14:25
- 重要参考人証言ノート(5) 大学生 飯田圭織
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分頃)
「朝、6時に起床した後、朝早くから大学の中央図書館で残ったレポートを
仕上げる為に、図書館開館と同時に行く為、7時には大学に到着していた。
図書館の管理人と会った。
4時30分〜5時30分までの間は、家で寝ていたため、アリバイは無し。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物、光景について。
「何も見てはいない。」
との事。
その他について。
「大学側の校門から入った為、高校の事件には気付かなかった。
当日は珍しく、朝から雨が降っていて、何か不吉な予感がした。
一応、1人暮らし。」
との事。
以上。
- 358 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 15:08
- 重要参考人証言ノート(6) 大学生 安倍なつみ
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「朝の4時30分〜5時30分までの間は、徹夜でレポートの仕上げにかかっ
ていた。
家では家族と暮らしていたが、家族は皆、寝てしまっていたため、アリバイ
は特に無し。
その後、2時間くらいの仮眠の後、大学に向かったところ、朝学で何か起こ
た、と言う事を飯田から聞いた。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物、光景について。
「特にこれと言った物は見ていない。」
との事。
その他について。
「特に無し・・・・・。」
との事。
以上。
- 359 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 15:25
- 重要参考人証言ノート(7) 大学生 矢口真里
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「事件当日の夜は、友人と夜遅くまで携帯電話で長電話をしていた為、その
友人に確認を取ってもらえば、アリバイははっきりする。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物、光景について。
「不審人物と言うわけではないが、朝、8時過ぎに大学に到着して、警察に
高校の会議室に集められた時、高校の校長と副校長がなにやら隅っこで、
小さく話し合っていたのを見た。」
との事。
その他について。
「朝、吉澤に会ったら、何やらいつもと違って持ち前の元気が無かった気がした。」
との事。
以上。
- 360 名前:SINKI 投稿日:2004/02/02(月) 15:54
- 今日の分はおわったのでしょうか?
証言書くのは大変でしょうが、がんばってください。
- 361 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 16:02
- 重要参考人証言ノート(8) 高校生 吉澤ひとみ
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分の間は、家で寝ていて、特にアリバイを証明できる
ものは無い。
その後は、7時に起きて、急いで身支度を終えて学校の朝練に向かった。
その日は、目覚まし時計をセットし忘れて、目覚まし時計が作動しなかった
ため、その日は朝連に遅刻してしまった。
両親は共稼ぎなため、これも証明出来ない。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「不審というわけではないが、他の高校の男子達が野次馬の様に集まっていた。
朝学のミュージカル部は、よその高校にも有名で、ましてや最近事件が起き
て騒ぎになっていたから、当然なのかもしれない・・・・・・。」
との事。
その他について。
「特にこれと言って・・・・・・・。」
との事。
以上。
- 362 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 16:06
- 「SINKI」さん、お気遣いありがとうございます。
なにぶん、証言なんかは書くのが大変な為、途中で休憩を挟みなが
ら書かざるを得ない状況なので・・・・・・・・・・。
本当に申し訳ありません。
予定だと、2日くらいに分けて全員分の証言を書こうと考えていま
す。
まあ、どうなるか分かりません。
期待しないで下さい。(笑)
- 363 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/02(月) 16:44
- 重要参考人証言ノート(9) 高校生 加護亜依
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「朝早い為、特にこれと言ったアリバイは無い。
とても寝られる状況ではなくて、5時位には目を覚ましてはいた。
5時過ぎから、朝のニュースでも見ていた。
ニュースの内容も言える。
当日から部活の朝練が開始されるし、雨も降っていた為、6時5分〜10分
頃に家を出て、学校に到着したのは6時50分〜55分頃であった。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「学校に来た時には、まだ警察は殆ど到着していなかったが、周りには野次馬
どころか、雨のせいか誰も周りにいなかった。
また、特に変わった物も目に付かなかった。」
との事。
その他について。
「当日、吉澤が登校するのが遅かったが、特にこれと言った変化は無い。
あと、自分が登校したとき、市井が誰かに電話をしているのを見た。
あとは特に無し。」
との事。
以上。
- 364 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 14:16
- 重要参考人ノート(10) 高校生 辻希美
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分頃のアリバイは無し。
部活の朝錬もいつも通り始まる直前の7時ごろに、学校に到着。
1人で登校した為、その頃のアリバイも無し。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「電車の中や、電車を降りてから学校まで、朝食を摂っていた為何も見ていない。」
との事。
その他について。
「これは関係あるか分からないけど、学校に着いたとき、なんだか焦げ臭い匂
いがした。」
との事。
以上。
- 365 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 14:31
- 重要参考人ノート(11) 高校生 高橋愛
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分のアリバイは無いが、5時30分過ぎから近所の公
園で20分弱、発声練習をしていた。
6時15分くらいに家を出て、学校に着いたのは6時45分〜50分の間。
それまでの、アリバイは殆ど無い。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「特に何も見ていない。」
との事。
その他について。
「特に無い。」
との事。
以上。
- 366 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 14:50
- 重要参考人証言ノート(12) 高校生 小川麻琴
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「当日は部活の朝練の鍵当番が有って、また雨も降っていた為、早めに家を出た。
大体、6時10分〜15分頃に家を出た。
その後、合鍵を借りる為、事務室の保田の元へ向かった。
事務員の保田に聞けば、アリバイは確認できる。
そして、そのままダンスホールに向かって鍵を開けたら、そこに藤本が居た。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「これと言って何も見ていない。」
との事。
その他について。
「朝、教務室に来て鍵を探したが、そこには無く、また辺りにも落ちていなか
った。
背後に用務員さんが居たことに気が付かなかった。
ダンスホールに入った直後に藤本の姿が見えて、頭が真っ白になり、後は何
も覚えていない。」
との事。
以上。
- 367 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 15:01
- 重要参考人証言ノート(13) 高校生 新垣里沙
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「朝起きた時には6時5分くらいだった。
それより前は、アリバイが無い。
その後、急いで支度をして学校に到着したのは6時50分過ぎくらいだった。
登校する時、友人に出会った為、その時のアリバイならある。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「学校に着いた時には、警察の人が少ないが居た。
その時、やけに野次馬の人が多かったように感じた。
その中に、他校の男子生徒がやたら多かった気がした。」
との事。
その他について。
「学校に着いたとき、学校の焼却炉が使われていた気もする。」
との事。
以上。
- 368 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 15:15
- 重要参考人証言ノート(14) 高校生 紺野あさ美
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分頃のアリバイは無い。
でも、学校に行く前に、近所のコンビニで買い物した為、その頃のアリバイ
がある。時間は大体、6時20分頃でレシートも持っている。
そして、学校に着いたのは6時55分前だと思う。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「特にありません・・・・・・、
しかし、警察に会議室に連れて行かれた時、石黒と福田の様子がいつもより
そわそわしていた気がする。」
との事。
その他について。
「特に何も無い。」
との事。
以上。
- 369 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 15:39
- 重要参考人証言ノート(15) 高校生 亀井絵里
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「いつも早朝に勉強をしている為、4時30分〜5時30分の間は、家で起き
て宿題をしていた。
田中も早朝に勉強しているようで、勉強中にメールでやり取りをしていた。
田中にも聞けばわかる。
ちなみに、道重にもメールをしたが、寝ていたらしく、返事は無かった。
家を出たのは、朝の6時15分頃で、学校には田中と道重と一緒に6時50
分頃に着いた。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「電車に乗っている時、窓から、そこにいるはずもない吉澤らしき人物を見た。」
との事。
その他について。
「いつも藤本は3人と一緒に登校しないで、1人で早めに登校して自主練習を
しているので、今日もそうだと思ったら・・・・・・・・・。
そういえば、事件の前日に一緒に帰る時、中央玄関で藤本の様子が、一瞬変
だった気がする。」
との事。
以上。
- 370 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 15:51
- 重要参考人証言ノート(16) 高校生 道重さゆみ
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分までの時間帯は家で寝ていた。
起きた時に携帯電話を見たら、亀井と田中からメールが来ていた。
亀井からのメールは4時45分頃、
田中からのメールは5時頃、
あと、家を出たのは6時20分頃で、2人との待ち合わせに遅れそうだった
から、急いで駅に向かった。
その時、近所の人と会って挨拶をしたため、その頃のアリバイは有る。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「特にこれと言って怪しい物は見ていない。」
との事。
その他について。
「亀井が電車に乗っている途中で、吉澤らしき人を見たとか言っていた。
そう言えば、当日、いつも余裕を持って部活に来る吉澤が遅刻してきた。」
との事。
以上。
- 371 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 16:10
- 重要参考人証言ノート(17) 高校生 田中れいな
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「4時30分〜5時30分の間は、宿題を片付けたり、今度の舞台の台詞を
覚えたり、立ち回りの練習をしたりしていた。
休憩中に亀井とメールでやり取りをしていた。
道重にも5時前あたりにメールを送ったが、まだ寝ていたのか返信されて来
なかった。
朝は6時過ぎに家を出て、6時30分くらいに亀井と道重に会った。
学校に着いたのは6時50分前後だった気がする。
2人と会うまでのアリバイは特に無い。」
との事。
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「電車に乗っている時、亀井が吉澤らしき人物を見たというが、自分は見えな
かった。」
との事。
その他について。
「学校について、会議室に案内された時、加護と辻と吉澤が何か、話をしてい
た気がする。
それと、事件前日、藤本と一緒に帰る時に藤本が下駄箱から何かを取り出し
たのを見た。
それが何か分からなかったが、手紙のような気がした。」
との事。
以上。
- 372 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/04(水) 16:29
- 一応参考人証言ノート(18) 事務員 保田圭
藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「5時15分頃に起床後、5時30分頃に家を出て、6時前に学校に到着。
事務員新人の為、仕事が多く、前日に終わらなかった分をする為、いつも
より早めに学校に到着。
仕事をしていると、6時15分頃に市井が見回りに来て少し立ち話をした。
その後、6時40分頃に小川が合鍵を借りに来た。」
藤本殺害時に見た、不審人物や光景について。
「藤本が発見されたダンスホールには、駆けつけた時、特にこれと言って変なものは
無かった。」
との事。
その他について。
「特にこれと言って無いが、
市井が藤本を発見した後、死体の処理をして警察に連絡した後、自分も動揺
していたのではっきり見てはいないが、市井が外に何かを持って出て行った
気がした。」
との事。
以上。
以上で全ての証言者報告を終えます。
- 373 名前:名も無き読者 投稿日:2004/02/04(水) 18:08
- 更新乙です。
証言から、実行犯の目星は間違ってなかった…気がしますw
でもまだ共犯の可能性も残ってる上、
いくつか気になる点を見つけてしまって正直パニクってます。。。
でわ次も楽しみにしてます。
- 374 名前:ともとも☆ 投稿日:2004/02/04(水) 18:30
- 自分なりに考えたところ、用務員さんではないか??と思った
う〜ん・・難しい・・
これからも頑張って下さい
- 375 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 22:27
- 「闇への光」なんですが何故か名前とメール欄が書き込めなくなっています。よってこのままで書かせていただきます。
展開がますます読めなくなってきた。ちっ、前半の推理は外れたか・・・
- 376 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/05(木) 13:32
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
犯人の絞込みのやり直しですか?
これらの証言ノートには、恐らく犯人特定の手掛かりがあるでしょう。
でも、フェイントやミスリードなんかもありますので、あまり鵜呑みにし過ぎ
無いようにご注意下さい。
なんだか皆さん、犯人に気付いているようなので、今回の証言ノートを難し目
に作ってみました。
皆さんが混乱してもらえれば、こちらとしても本心、嬉しいです。
- 377 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/05(木) 13:46
- 「ともとも☆」さん、初めてですよね?初めまして。
ともとも☆さん、推理していただいて本当に嬉しく思いますが、レス「309」
に書いてある様に、例え確信を持ったとしてもここに書き込むことは、ご遠慮
願いたい物です。
自分自身は構わないのですが、やはり他の読者様に迷惑ですので、ご理解お願
いします。
初心者なのに偉そうで申し訳ありません。
さて、その事は置きまして、怪しいのは用務員の市井さんですか?
ふふふふ・・・・・・・・・、どうでしょうかね・・・・・・・・(笑)。
この後、ヒントっぽい物を出すので、それも参考にして冷静に考えてください。
あと、この事件の「動機」についても・・・・・・・・・・。
長くなってすいません(汗)。
- 378 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/05(木) 13:54
- 「名無飼育さん」さん、嬉しいですね。
展開が読めなくなってしまいましたか?
まあ、それを意図してアリバイ証言ノートを作りましたので・・・・・・。
大変でした・・・・、証言ノートを作り上げるのは・・・・・・。
前半の推理はどの様な物だったのでしょうか?
聞いてみたいですね・・・・・・・・・・。
アリバイ証言ノートの穴の開くくらい見ていると、何か分かるかもしれません
よ・・・・・・・・・・。
続きもこうご期待!
- 379 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/05(木) 14:19
- ここらで、久しぶりのヒントや作者から1言。
<ヒント3>
皆さん、先入観には気をつけてください。
恐らく、皆さんは知らず知らずの内に先入観に捕まっているかも・・・・・・・・。
と、言っておきます。
「先入観」、推理物を読む時に読者が最も振り払わなくてはいけない物であり、
同時に作者が、読者を騙す(?)上で最も利用し甲斐のある物、だと思います。
(偉そうで申し訳ないです・・・・・・・・・・。)
この「先入観」を皆様に植え付ける(?)為に、この小説を書く時は最も気を
使いました。
なるべく皆様に気付かれないように、それでいて自然体に近いように・・・・・・・・・、と、
大変でした。
でも、そのお陰で読者の皆様に、ささやかながら楽しんでもらえているような
ので、こちらとしても嬉しい限りです。
本小説内には犯人探しの他にも、色々な謎が姿を現しています。
(この事件の裏に隠された謎・皇や高橋の過去の謎・安倍の口にした「あの子」
の謎・作品内に隠された伏線の謎・・・・・・・・・・・・・・・・・などなど。)
これらの謎解きも、少し頭に入れて推理していただきたい、と思います。
長々とした、作者の戯言にお付き合い頂いて、本当にありがとうございます。
- 380 名前:SINKI 投稿日:2004/02/05(木) 15:08
- 更新、乙です。
なんだか、混乱してしまいました。
あ〜本当にわからなくなってきている。
殺人を犯した人を考えすぎて、
別の謎のことをまるっきり忘れていました。
もう一回、読みなおさなければ!!
これからもがんばってください。
- 381 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 20:14
- 「SINKI」さん、ありがとうございます。
今回は、皆さんがなにやら犯人に気付いていそうなので、わざと混乱するよう
に作ってみました。
お陰で、こっちも混乱してしまいました。
今作品は、犯人を見つけようと思えば、見つけられなくは無いんですよ。
でも、その事だけに血眼になると、どうしても「動機」と言う面にぶつかる様
に作ってあります(そのつもりです。)
よく言いますよね、「推理物は2度読め」って。
意味は少し違いますが、色んな視点から見て欲しいですね。
けど、そこんところは読者の皆様にお任せします。
やはり読むのは読者様なので・・・・・・・・・・・・。
し、しまった、癖でまた長くなってしまいました。
では本編を宜しく。
- 382 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 20:26
- ・
・
・
・
・
ここは何処であろう?
なにやら様子を見てみると、現実世界ではないらしい。
辺りがぼやけて薄暗い。
その黒ずんだ世界の中に1人の幼い少年が居た。
幼い日の皇だ。
・
・
・
女性「祐一郎!危ない!!」
ドン!!
皇「えっっ!?」
キキーーーーーー!!
ドン!!ガシャーーーーーン!!
バーーーーーン!!!
- 383 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 20:33
- ガバッ!
皇「ハア・・・・・。ハア・・・・・。ハア・・・・・・。」
皇は勢い良く、布団から飛び起きた。
窓から朝日が筋を成して、部屋に飛び込んでくる。
皇「ハア・・・・・。ハア・・・・・。
ゆ、夢か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇は今の今まで寝ていたにも関わらず、その息は切れていて、体中、夥しい汗
でびっしょりだった。
皇「また、「あの夢」か・・・・・・・・・・・。
一昨日見たって言うのに・・・・、またか・・・・・・・。」
皇は右手で額の汗を拭い、布団から立ち上がった。
目覚まし時計は6時を少し過ぎていた。
- 384 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 20:48
- 6時。
それが、特に何も予定の無い日に皇が起きるにしてはなんとも早すぎる時刻で
ある。
いつもなら、ここから2度寝・3度寝は当たり前の皇が、こんな時間に起きる
とは・・・・・・・、やはり「あの夢」が相当答えているのであろう。
実際、皇は眠気すっきり、と言うわけではない。
怖いのだ。
2度寝・3度寝をして、また「あの夢」を見るのではないか?
そう考えると、皇は寝る気にはならない。
皇が今朝見た「あの夢」は、皇がたまに見る悪夢だ。
どの場面から始まって、どの場面まで続くのかは、その日によって違う。
しかし、必ず決まって、夢の中で女性が叫んだ場面から、意味不明な轟音が響
き渡る場面までは、どんな事があっても見るのだ。
事実、「あの夢」が一体何なのか?、それは分からない
幼い日の皇が出てきている以上、昔のトラウマの様な物だろう。
しかし、あの皇が恐怖を感じるのだ、只ならぬ過去があったのであろう。
その「過去」が一体何なのか?
それは皇自身しか知らない。
- 385 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 20:59
- 皇(くそっ!まだ脳裏に「あの夢」の残像が残る)
皇は洗面台で顔を洗っていた。
水道から冷たい水が決まった形を保たないまま流れてくる。
それを、両手ですくって顔を洗う。
いや、水を顔にぶつけていると言った方が正確な表現だ。
顔を洗っているとは思えない、激しい音が狭い洗面所に響く。
皇の顔が紅く色を染める。
必死で、必死で、脳裏に残った「あの夢」の残像を払拭しようと、
激しく水道水を顔面に叩きつけるが、一向にその気配を失おうとは
しない。
顔を上げて鏡を見てみる。
水に塗れたその顔は、死人の顔をしていた。
生気を吸い尽くされたその顔は見るに耐えないものだ。
皇はそばに置いてあったタオルを拾い上げ、自らの醜い顔を覆い隠
すかのように拭いた。
- 386 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/06(金) 21:13
- 今日は、今回被害のあった藤本美貴の葬式の日。
前もって、高橋が皇に出席言っていたので、皇は覚えている。
しかしながら、皇は行く気には成れなかった。
石川は仕方ないとしても、自分が居ながら藤本と言う犠牲を被って
しまった事は間違いの無い事実。
ただでさえ、藤本を犠牲者としてしまったことに、自分で自分を責
め苦に陥れているのに、ここでその被害者の葬式に行こうものなら
責め苦に耐え切れず、自暴自棄に陥ってしまう恐れもある。
別に、誰が皇を責めている訳ではない。
高橋も、吉澤も、石黒も、市井も、権藤も、世間一般の人間も、誰
も皇の責任で今回の事件が起こったなどとは、これっぽっちも思っ
てはいない。
ただ、皇自身で、自分自身で、己で己の無力さを悔いて嘆いている。
皇は、そんな馬鹿な人間だ。
高橋に言われた時は、皇は断り続けたが、高橋が余りにもしつこく
遂に、皇が顔を出すだけと言う事で、折れた形となった。
- 387 名前:SINKI 投稿日:2004/02/09(月) 15:55
- 更新、お疲れ様です。
皇くんの過去が少しだけ明るみに出ましたね。
皇くんのつらい過去が高橋とシンクロしないことを祈っています。
これからもがんばってください。
- 388 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/09(月) 21:49
- 「SINKI」さん、自分が言うのも何ですが、お疲れ様です。
なんだか最近、皇ばっかりしか出てきませんね。
まあ、一応、主人公のつもりですし、その割には謎が多い為、自然と登場回数
が増えてくるんですよ。
娘。小説なのに、当のメンバーが出てこなくて、何が娘。小説だ!・・・・、とおっしゃる
方々も多い事でしょう。すいません。まさかこんなに皇の登場回数が多くなる
なんて思ってもみなかったもので・・・・・。
これから気を付けます。
皇の過去と高橋の過去と・・・・・・、シンクロするのか否か。
まあ、軽くするかもしれません。(本当に軽く)
でもその事が小説内に顔を出すのはもっと先の予定です。
- 389 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/09(月) 22:06
- 皇がダンスホールの出入口のところに立っていた。
そこから、ダンスホール内をジーーっと眼を細め気味にして、眺めていた。
窓から入ってくる日光のせいもあるが、何かを見透かすかのように、そう、
今回の2件の連続殺人事件、そしてその事件の裏に暗躍する秘密、
「煉獄仮面」と言う名の殺人鬼を、
その仮面の裏の「真実」と言う名の秘密の顔を持つ殺人鬼を、見透かすかのよう
に、皇は眼を凝らしていた。
当然の如く、ダンスホールの出入口で中をどんなに眼を凝らしてみたところで
何が分かるわけでもない。
そこに見えるのは、真っ暗な漆黒の完全なるダークネス、闇である。
皇の心の中を忠実に映し出す鏡のように、
黒煙の作り出す真っ暗闇がそこに、
朝学全体を包み込みだす死神の黒衣がそこに、
そして、本当に地獄の煉獄を思わせる奈落の光景がそこに、
浮かび上がるのである。
- 390 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/09(月) 22:33
- 高橋「どうしたの?」
皇がダンスホールの宙を仰いでいるところを、一緒に連いてきた高橋が問いか
ける。
皇「ん〜〜・・・・・、別に・・・・・・・・・・。」
皇は静かに答える。
高橋「急に学校に寄って行こうなんて言い出して、来てみれば、ただぼーっと
してるだけじゃん。
もうすぐ、美貴ちゃんのお葬式、始まっちゃうよ。」
皇「ああ・・・・・・・・・・・・・。分かってる。」
高橋がいくら急かしても、皇はそう言うだけで、動こうとしない。
皇は未だに宙を眺めている。
探れば探るほど、見つめれば見つめるほど、どんどんその闇に飲み込まれてい
く、そんな気持ちがしていた。
「真実」と言う名の闇に飲み込まれていく。
皇にはそんな感じがした。
- 391 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/09(月) 22:48
- 高橋「ねえ・・・・・、さっきから何を見てるの?」
高橋が皇のすぐ横に来て、再び尋ねる。
皇「闇」
高橋「ヤミ?闇ってなに?」
皇「真実」
高橋には理解できない言葉の羅列である。
高橋は首を傾げて、今、皇が言った言葉に頭を捻りながら、目線を皇から外し
た。
皇「なあ・・・・・・・・・・・、高橋・・・・・・・・・・・・」
高橋「ん?何?」
皇に呼ばれて、外していた視線をまた戻す。
皇「お前・・・・・・・・・・、
(いや、よそう。今、高橋に言う事じゃないな。
今回の事件の犯人が「17人」の中にいるってことだけで、高橋には受け
入れるのに精一杯なはずだ。
ここで、今回の事件の裏に何か潜んでいるなんて言えたもんじゃない。
顔には出していないが、やはり要らぬ心配はかけたくない。
それに、今回の事件の裏に何かがある・・・・・、なんてのは俺の第6感、言うなれば
直感だけの話だ。
まだ、完全にそうと決まったわけじゃない。
今はまだ伏せておこう・・・・・・・。)
・・・・・・・・・・・、いやなんでもない。」
- 392 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/09(月) 22:59
- 高橋「なんなの、一体?」
皇の微かな沈黙の意味が良く分からず、頭に?マークを浮かべなが
ら、高橋は言う。
しかし、なんなのか分からずとも、その重みが充分重いことはひし
ひしと伝わったのか、高橋はそれ以上言及しなかった。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さてと、じゃあ行くか?」
皇は軽く背伸びをして肩の力を抜きながら言った。
高橋「・・・・・・・うん・・・・・・・。」
皇は、その心の闇と真実にかかる深い闇を振り解けぬまま、足を傾
けた。
「今朝の悪夢」・「心の闇」・「真実の闇」
皇はその3つが細い糸で繋がって為らない気がした。
なんの根拠も保障も無い。
が、しかし皇にはどうしても、そう感じずには居られなかった。
- 393 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 13:12
- むぅー・・・難しい
- 394 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/10(火) 16:35
- 「名無し飼育さん」さん、その1言が嬉しいですね。
正直、本心としては読者の皆様に「難しいな。」と思っていただければ、
こちらとしても、うれしい限りです。
やはり、前半にストレートに書き過ぎましたかね。なんか皆さん、気付かれて
いる雰囲気なので、気持ち難し目に作った甲斐がありました。
さてさて、これから先、どんな展開になるのでしょうか?
一応、自分としては頭の中にはラストまでのストーリーが出来上がっています
が、でも何が起こりかわかりません。(自分自身でも)
ですので、これから先、一体どうなることやら・・・・・・・・。
- 395 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 00:28
- 皇と高橋は、藤本の自宅の前にやってきた。
藤本の自宅は、大通りを少し入って、やや木々の茂っていて日当たりの余り良
くない場所にあった。
こじんまりとはしているものの、門構えのしっかりした、立派な1戸建だ。
家の前には、白黒の花輪が顔を澄ましながら立っていた。
高橋「中に入ろう。」
高橋が出席者名簿に名前を書き終えると、そう言って皇を呼んだ。
皇「ん、ああ・・・・・・・・・。」
皇はそう言うものの、門の入口の前で花輪や、その家の構えを見眺めるだけで、
中々、家の中に入ろうとはしない。
高橋「もう、早く!」
高橋がいつまでもボーっとしている皇の腕を、無理やり引っ張って行った。
- 396 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 00:45
- 家の中は、葬式用に綺麗に片付けられていて、既に小川達や吉澤達
も着ていたらしく、高橋はすぐにそっちの方に行ってしまった。
1人になった皇は辺り周りを見回してみた。
沢山の人が喪服を着ていてあちこちに頭を並べているが、どれもこ
れも笑顔の人間は、1人として居ない。
葬式の場で、笑顔の者が居たらそれこそ場違いでは有るが、
それでも、何10人と言う人が居て、その皆が皆、悲しみにふけっ
た顔をしている図は、やはり気持ちの良いものではない。
暫くすると、奥からお寺の住職らしき人が姿を表した。
身なりから言って、まず間違いはなさそうだ。
その住職が席に座り、それに連れられて辺りに居た人達が続けて座
る。
すぐに呪文の様なお経が、この部屋一体を征服した。
そこからは、住職の呪文と、すすり泣く声しか聞こえない。
ほぼ無音状態なだけに、このお経とすすり泣き声が、隅で腰を下ろ
していた皇の胸に余計、太い針のように染み入り突き刺さる。
皇には耐え難い苦痛でしかなかった。
今、必死で自らの責め苦にのた打ち回っていて、何とか平静を保っ
ている心理状況で、これ程まで「人の死」を、ひしひしと訴えかけ
る波動を受ければ、それが例え皇の様なものであっても、気が狂い
そうになる。
皇の心に浮かんでくる「自責の念」は増幅する1方だった。
- 397 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 00:59
- 皇は後悔した。
藤本の葬式に出席する事と共に、自分の不甲斐なさを。
他の1般人には無い天性の感覚とも言おうか、その鋭い考察力。
その「天性の考察力」という物を持っていながら、
その「力」を持っている自分と言う人間が居ながら、
人1人を救う事も出来なかった。
普通の人間ならいざともかく、「天性の力」を持っている人間が何も出
来ないと言うことは、それ以上に罪な事ではないのか?
遂には自分の存在意義さえ疑い始めてくる。
自分が生きる意味は何なのか?
自分と言う存在が生き続ける事で、世界に多大なる損害を与えてい
るのではないか?
自分は何故生まれて来たのか?
自分とは何なのか?
皇はそんな罪の意識に苛まれていた。
そんな事を考えるたび、精神がどんどん病んで、やせ細っていく気
してならない。
心の片隅で、「そんなことは無い。自分は悪くない」と言う自衛心
はあるものの、しかしそんな物は焼け石に水、全く持って無駄だった。
皇は無意識に、音を立てない様にして、その場を立ち去り外に出た。
- 398 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 14:13
- 皇は藤本自宅の外に出てきた。
多少古びた門に背をもたれて、両手を制服のポケットに入れて、深い溜息をつ
きながら、皇は雲がゆっくり動いている空を見上げた。
先程の拷問室の様な空間から逃れたい一心でここに来たものの、特にやること
もない。
自分で自分を擁護する気も起きないし、またする必要も無い。
自分の心が、今回の事件のせいで蝕んではいて、言葉にもならない苦痛を味わ
い続けることは確かだ。
しかし、皇自身が、石川や藤本を「煉獄仮面」から救えなかった事も、また
事実である。
皇はただ、渇望するその天空を眺めている。
もうどの位時間が経ったのか分からない。
暫くすると、家の中から大勢の人の声が聞こえ始めた。
どうやら、読経の時間が終わったらしい。
皇は手をポケットから出して、家の中に入った。
- 399 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 14:24
- 皇が先程の空間に顔を出すと、どうやら出棺の時間の様だ。
数人の大人が藤本の姿が入っている棺を動かそうとした、その時、
田中「美貴ちゃーーーーん!!」
田中がその棺に泣き叫びながら飛びついた。
周りにいた大人達がぎょっとすると、
亀井「美貴ちゃん!!何で死んじゃったの!!??」
道重「美貴ちゃーーーーん!!」
田中に続いて、亀井、道重も飛びついた。
その後、3人はワンワン大声で泣きながら、何を叫んでいるのか分
からない位に我を忘れて泣き叫ぶ。
その光景は、当然皇の目にも入ってくる。
周りにいる大人も、どう対処して良いか分からず、おろおろしている。
道重「何で?どうして?
どうしてこんな事になっちゃったの?」
田中「ずっと一緒に居ようって言ったじゃないかーーー!!」
亀井「美貴ちゃーーーん!!死んじゃやだよーーーーーー!!」
その声は、皇の精神に追い討ちをかけるに充分だった。
- 400 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 14:40
- 聞かないように、聞かないように、・・・・・・・と思っていても、3人はミュー
ジカル部の期待の新人の中の3人である、耳に痛いほど入ってくる。
近くにいた、3年生部員の吉澤や加護、辻、そして高橋達が協力し
て、3人を棺から引き剥がした。
それでも、3人の鳴き声は、皇の持っている古臭い目覚まし時計の
様に、いつまでも鳴り止まないアラームの様に、耳障りなまでに聞こ
えた。
皇は、その3人のシンクロした泣き声は、皇の頭の中に潜在するあ
の「悪夢」に呼びかけて、寝ても居ないのに脳内の回路で、最近見
た、あの「悪夢」を全く色褪せることなく復活させる。
あの「悪夢」の中で、幼き日の皇はあの後、この世の終わりかの様
に泣き叫んでいた。
そんな夢の中の「皇自身」と、今も泣き叫んでいる、田中・亀井・
道重が見事なまでに波長がシンクロして、それがまた、皇の精神を
侵食していくのだった。
皇は歯をこれでもか、と言うくらい食いしばりこれを耐えた。
- 401 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/15(日) 15:38
- その後、何とかその場を取り繕い、藤本を乗せた棺が、例の火葬場に運ばれた。
高橋達もそれに着いて行き、藤本家の前には皇しかいなかった。
皇はどうしても、あの「朝日ヶ丘火葬所」には行けなかった。
あの禍々しいオーラに包まれた場所には、どうしても近づく気にはなれない。
葬式も1段落したことだし、もうそろそろ帰ろうかな・・・・・・・・。
と皇が駅の方向に足を向けようとした時、今居る道の少し向こうで、見たこと
のある姿が4つ見える。
1つは少し年老いた様な50代後半の中年男性、
あとの3つは身長は違うが、今時の女子高生の感じな少女。
皇が近づいてみると、それは権藤刑事と吉澤・辻・加護の4人であった。
皇は正直、誰も相手にしたくなかったので、ピタリと足を止め、180度方向
転回して、今来た道を戻ろうとした時、
権藤「おう!小僧か!いい所に来たな!」
皇(見つかっちまったか・・・・・・・・)
皇は自分の愚考を反省し、また観念して権藤の下に近づいた。
- 402 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/16(月) 09:47
- 皇「何ですか・・・・・・・・・?」
皇は明らかに不機嫌そうな声を出しながら、権藤に近づいた。
権藤「ふむ。実はな、今朝うちの鑑識班から石川の検死結果が出たらしくてな・・・・・・。
何でも、その報告書では石川の正確な死亡推定時刻は10時30分との
ことだ。」
皇「はあ・・・・・・・・・・。それが何か?」
権藤「ったく、鈍い奴だな。
いいか、この間の朝日ヶ丘署での事情聴取の時に、重要参考人にアリバ
イを聞いたが、どいつもこいつも微妙な奴ばっかりだっただろ。
それに比べ、この3人は被害者と一緒に電車で帰った、と言う完璧そう
なアリバイがあるだろ?」
皇「はあ、で、それが何か?」
吉澤「それがよ〜、このつるっぱげ親父がよ〜、それが怪しいとか言いやがっ
て、捕まったんだよ。」
今まで黙っていた3人の1人、吉澤ひとみがここぞといわんばかりに、皇に対
して言った。
皇(はあ〜〜、またか・・・・・・・・・・。
むやみやたらに、わけの分からん理由で犯人扱いするのは権藤刑事のお家
芸だな。)
権藤刑事「やかましい!!誰がつるっぱげ親父だ!!」
加護「つるっぱげ親父じゃなかったら、茹蛸星人だ〜。」
辻「茹蛸!茹蛸!!」
吉澤に続いて、脇にいた加護と辻もわめく。
皇(こいつらもこいつらで、今自分達が置かれている立場分かっているのか?)
皇はどっと疲れが溜まるのを感じた。
- 403 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/16(月) 10:05
- 権藤「やかましいぞ、貴様ら!18歳にもなってそんな事言ってて、恥かしく
無いのか?」
権藤が3人に罵声を浴びせる。
皇(あんたも、そんな18歳の言葉間に受けて、向きになって言い争いしてる
んじゃね〜よ・・・・・・。)
皇はこのままでは、らちが開かないと思い、口を開いた。
皇「で!?権藤刑事、何が言いたいんですか?」
権藤「ふう・・・・・・・・・・。
実はな、さっき言ったとおり石川は9時30分に殺害された。
これは最新技術を使用した結果だ。まず間違いが無い。
そして、事情聴取で唯一、いかにも完璧なアリバイを持っていたからこ
そ、俺はこの3人が怪しいと思っている。
3人全員とは言わなくてもだ・・・・・・・・・。」
吉澤「だから〜!!それで、何でうちらが怪しまれるんだよ!」
皇「権藤刑事、続けてください。」
皇はこれ以上話をややこしくしたくない為、吉澤の話を打ち切った。
- 404 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/17(火) 22:30
- 権藤刑事は、1回咳払いをしてこう言った。
権藤「まずだ。まず、事件当日、被害者の石川と一緒にお前達3人
は電車で家に帰ることにした。
9時10分に学校を出て、9時20分に駅に着くと同時に、
電車に乗り込み、9時30分に石川が途中の駅で降りて、
その後、9時45分、9時50分、9時55分にそれぞれ吉
澤、辻、加護が降車とのことだ。
ここでだ、3人はそれぞれの駅で降りたと言うが、そこから
のアリバイは無い。
仮にだ、もしこの3人の中の誰かが駅を降りて、あたかも家
に帰るかの様に装い、すぐに今降りた電車の反対方面行きの
電車に乗り込み、学校に居る被害者の石川と合流し、殺害す
る・・・・・・・・・。
と、考えれば、辻褄が合うとは思わないか?
こう考えれば、死亡推定時刻の10時30分に充分間に合う
と、俺は思うんだがな〜。」
権藤刑事はそう言いながら、後ろに立っている吉澤・加護・辻の3
人を軽く見た。
吉澤「何だよ!それ!何の根拠も無いのにいい加減な事言うなよ!」
加護「そうだ!そうだ!人権侵害だ。」
辻「警察の不祥事だ。」
なんだか、以前にも聞いたことのある様な言葉が、皇の目の前の宙
を派手に飛び交う。
- 405 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/17(火) 22:47
- 権藤「や、やかましい!!貴様ら。これ程現場証拠が残っていたら
断定できなくとも、怪しまれるのは当然だろ。
いい加減、今のうちに白状しておいた方が良いぞ〜。
お前達の誰かがやったことは分かってるんだぞ。」
権藤刑事お得意の、犯人決めつけ思考だ。
吉澤「今の話聞き捨てならね〜よ!私達の中に、本当に今回の犯人
がいると思ってるのかよ?
この火星人!!」
権藤「な、なな、火星人だとーーー!
もーーー許せん!!お前達は公務執行妨害に加えて、侮辱罪
で逮捕してくれるわーーーー!!」
辻「いい年して、女子高生の言葉にいちいち、突っかかるなよ。
そんな事だから、いつまでたっても警部止まりなんだよ〜。」
権藤「な、どうして私の役職が警部だと・・・・・・・・・。」
加護「さっき、あんたが見せた警察手帳に書いてあったよ。」
吉澤「うわ〜、だっさ〜い。まだ警部なの?私、てっきり年齢から
して警視かと思った〜。」
権藤刑事1人に対して、日頃の鬱憤を晴らすかの様に、かなりの罵
声を浴びせまくった。
- 406 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/17(火) 23:09
- 皇は正直、頭が痛かった。
頭の中で、自らの自責の念と、自己防衛本能とが葛藤していて、1
分1秒たりとも誰かと一緒に居ることを避けたい、と言う状況なの
に、この4人と来たらそんなことはお構い無しに、馬鹿なやり取り
を、よくも飽きずに繰り返している。
皇の口から濃厚な溜息が漏れるのも、仕方の無いことだった。
皇(しかし、権藤刑事の言い分も分からなくは無い。
電車を降りた後の3人のアリバイが無いことは確かだ。
3人のその後のアリバイも曖昧だし・・・・・・、
そうなれば、もしかしたら、あの3人の中に・・・・・・・・。
でもな〜、何か、もやもやするんだよな〜。
何か引っかかる気がする・・・・・・・。)
皇は胸ポケットに入れてある、薄汚れた小さな手帳を取り出して、
頭の中を整理しようとした時、手帳と一緒にある紙切れが落ちた。
その紙切れは電車の時刻表だった。
皇(あ、やば、電車の時刻表の紙、落としちゃった。)
皇はその落ちた時刻表を拾い上げようと、右手を伸ばした時、
皇(あれ・・・・・・・、これって、もしかして・・・・・・・・・・。)
権藤「黙れ!!!!」
その瞬間、権藤刑事の口から衝撃波が発せられた。
そして、今まで耳障りなほど騒がしかった3人の動きが、ピタッと
完全に停止した。
- 407 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/17(火) 23:19
- 権藤「何も知らない小娘どもが・・・・・・・・・、
知ったような口をきくんじゃない!」
今までの、ただでかい声で相手を威嚇する権藤刑事が、何故かその
様子が違っていた。
まるで、激しい憤りを必死に歯で噛み千切ろうとしている様な、そ
んな印象を受けた。
今まで、3人に色々言われた事に対して、堪忍袋の緒が切れた、と
いう感じではないだろう。
その権藤刑事の表情は、ただいかついだけの表情ではなく、
まるで、鬼神のお面を付けているかのような、そんな顔をしていた。
権藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ、すまない・・・・・・・・・・。
つい過去の事を思い出してしまってね、取り乱した。」
皇(「過去の事」・・・・・・・・・・?)
皇にとって、権藤刑事の言葉であろうと、その「過去の事」と言う
単語には反応せざるを得ない。
それは皇にとっても、忘れ難い「過去」を引きずっているからだった。
- 408 名前:SINKI 投稿日:2004/02/18(水) 14:36
- 更新乙です。
みんな、過去をひきずってたり、
過去に嫌な思い出があるんですね〜。
また、謎が増えた感じです。
権藤刑事の過去はなんなんでしょうか?
気になります。
- 409 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/20(金) 15:06
- 「SINKI」さん、ご感想ありがとうございます。
なにやら、過去に「何か」を持った人が沢山出てきましたね。
皇といい、高橋といい、安倍の言った「あの人」といい、今回の権藤といい、・・・・・。
先に行っておきますと、これら全てが最後には1つになる・・・・・・・?、と言っても
いいでしょう。
まだまだ、真実についての描写が殆どありませんが、本文中にちょこちょこヒ
ントらしき物が転がっていますよ〜。
- 410 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/20(金) 15:24
- 権藤「話を続けるぞ。
先程言ったとおり、電車を急いで乗り換えれば、石川殺害時の完璧なア
リバイを得ると同時に、殺害のチャンスを得る事が出来る。
こう考えれば、証拠は無くともお前達3人が怪しまれて当然だ。」
皇(う〜〜〜〜〜ん。
やっぱりだ、やっぱりそうだ・・・・・・・・・・・・・・・・・。)
皇は先程、胸ポケットから落ちた電車の時刻表の紙を見つめながら、そう感じ
ていた。
吉澤「ち、ちょっと、待てよ。」
加護「いくらなんでも、なんまりだ。」
辻「私達、何にもやってね〜って。」
権藤「やかましい!とにかく着いて来い!」
権藤刑事は、先程の剣幕を伏しているものの、やはりいつもの面持ち、口調で
3人を威嚇した。
すると、
皇「権藤刑事、少し待っていただけませんか?」
皇はいつもより、柔らかな腰の低めの口調で話し始めた。
- 411 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/20(金) 15:40
- 権藤「なんだ、小僧?また何か言いたい事があるのか?」
皇「ええ、まあ。
先程の権藤刑事の話を聞いてですね、確かに、急いで電車を降りてすぐに
逆方向の電車に乗り換えれば、被害者の石川さんい合流して、殺害のチャ
ンスを伺うことができる。
確かに、そう言う可能性もあります。
現に、俺も権藤刑事の話を聞いて、それもそうだな・・・・、と思いました。・・・・・・・・」
吉澤「ちょっと待てよ。あんたどっちの味方なんだよ!?」
権藤「どうだ、やっぱりそうだろ、その通りだろ!お前達も分かっただろ?」
吉澤達の顔に焦りが、逆に権藤刑事の顔に笑みが浮かぶ。
皇(どうして、この人達は、こう人の話を最後まで聞かないんだろうな・・・・・・・・)
皇の口から溜息が漏れる。
皇「・・・・・・・・・・・、ですが、
権藤刑事、あなたは重要な事を忘れていますよ。」
そう言うと、今度は先程の正反対、
権藤刑事には焦りが、3人には正気復活と言った感じの表情が出てきた。
- 412 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/20(金) 16:11
- 権藤「な、な・・・・なんだと。
小僧、それは一体どういう意味だ?」
吉澤「そ〜らみろ、言っただろ!私達はやってないって。」
皇「確かに、権藤刑事の言う事は『ある事』を無視すれば、可能なんですよ。」
権藤「『ある事』?何だ、それは?」
皇「電車のダイヤですよ。」
権藤「電車のダイヤ?」
皇「そう、確かに、その駅を通る電車の本数が多く、短間隔であれば権藤刑事
推理も考えられなくは無い。
しかし、ここら一帯を走っている電車の本数は、利用客人数の都合で週末
の、しかも夜遅い時間帯は、通常の電車の本数に比べ激減する。
当然、石川さん殺害時前後のあの辺りの電車は、良くて30分、長ければ
1時間以上も待たなくてはいけないほど、電車が無くなる。
(レス72あたりに書いてあります。)
権藤刑事が言うように、9時30分に石川さんがある駅で降りる。
その1方で、石川さんの死亡推定時刻は10時30分。
権藤刑事、石川さんが10時30分に殺害されたとしたら、被害者は何時
頃に学校に着いたと考えられると思いますか?」
(次回に続く)
- 413 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 00:38
- (前回の続き)
権藤「ん〜〜〜、そうだな、いいとこ10時20分って所か?」
皇「では、駅に到着したのは何時頃だと思いますか?」
権藤「何だか、誘導尋問みたいだな。
そうだな、この3人の証言だと、急いで10分らしいからな、
大体、15分かかったとして、10時5分って所だな。」
皇「今度は被害者の石川さんを含め、吉澤さん、加護さん、辻さん
の4人が駅に到着して、電車に乗り込んだのは9時20分です。
その後、石川さんが忘れ物をしたといって、電車を降りたのは
何時でしたっけ?権藤刑事?」
権藤「電車に乗り込んで、約10分後だから9時30分だろ?
それがどうしたって言うんだ?」
皇の目つきが冷酷な目つきに突き換わった。
そしてその眼で権藤を見つめる。
皇「おかしいと思いませんか?」
権藤はその皇の目つきに背筋に寒気を感じながら、答える。
権藤「何がだ?何もおかしく無いだろ?」
- 414 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 00:49
- 皇「考えてみて下さい。
学校近くの駅から、石川さんが降りた駅まで時間にして10分、
しかし、権藤刑事の言う通りに9時30分に反対方向の電車に乗り込めば
今と同じだけの時間、つまり10分しかかからないんですよ?
つまり権藤刑事の言う通りの行動をすると、9時40分に駅に到着して、
9時55分に学校に到着して、死亡推定時刻の10時30分までの35分
間も学校内に滞在した事になる。
おかしいと思いませんか?
いくら、夜道女子高生1〜2人であったとしても、駅から学校までは20分は
かからない。
仮にかかったとしても、やはり20分〜30分と言う空白の時間が空きま
す。
もし、この3人の中の誰かが犯人だとしたら、この空白の時間は無意味だ。
犯人の心理からしても、また忘れ物を探す時間にしても明らかに有り得な
い時間なんですよ。」
権藤「あっ!、確かにそれもそうだな・・・・・・・・・・・。
しかし、現実に空白の時間があるじゃないか。
その時間はどう説明するんだ?」
- 415 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 01:10
- 皇「勿論説明できますよ。」
皇の自信満々の答えに対し、権藤は返す。
権藤「まさか、電車が遅れたとか言うんじゃ無いだろうな?」
皇「んな事いいませんよ。
でも、当たらずと言えども遠からずですね・・・・・・。」
そう言うと、皇は先程から持っていた電車の時刻表の印刷されている紙を権藤
に向けて見せた。
権藤「これがどうした?」
皇「さっきも言ったでしょ?ここら辺の電車の本数は週末の夜には激減するって。
この時刻表を見ると、9時30分前後の石川さんの降りた駅を、学校方面
に向かう電車の時刻を見てください。
(実際読者の皆様にお見せできなくて誠に残念です。)
9時20分頃に1本通過しますが、これでは乗れない。
そして、次に来る電車は9時55分。
ちなみに、そのまた次に来る電車は10時30分。
よってこれでもない。
つまり石川さんは9時55分発の電車に乗ったと考えられる。
だから駅のホームで25分間電車を待たなくてはいけなかった。
これが空白の30分を埋める時間なんですよ。」
皇が言い終わるが早いか、すかさず権藤刑事がこう口を挟んだ。
権藤「確かに、空白の時間は分かったが、この3人の犯行を否定する材料には
ならないだろ?
この3人のいずれかが、自分の降りた駅で被害者の石川同様、急いで反
対側のホームに向かい、石川の乗る電車と同じ電車に乗り込めば、犯行
は充分可能だろ。
そういった意味では、1番可能性が高いのは吉澤だな。
あいつは石川の次に電車を降りているしな・・・・・・・・・・。」
- 416 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 01:29
- 権藤刑事が得意げな顔をして、口をヘン、と曲げた時、皇が冷たく言う。
皇「本気で言ってますか?」
権藤「んん!?どういう意味だ?」
皇「確かに、1見すれば吉澤さんが1番怪しく見えますが、それでも吉澤さん
には絶対に不可能なんですよ。」
皇は嫌に強調して言う。
権藤「どうしてだ?」
皇「簡単な算数の問題ですよ。
石川さんが降りた駅から、吉澤さんの降りた駅まで約15分かかる。
吉澤さんも、石川さんが乗る電車に乗らなくては、10時30分までに学
校に到着できない。
しかし、当の電車は9時55分に石川さんのいる駅を発車する以上、吉澤
さんの降りる駅を、少なくとも15分以上前に発車しなくてはならない。
となると、その電車は、吉澤さんの降りる駅を9時40分に発車する。
しかし、吉澤さん自身は9時45分にならないと、ホームに着かない。
つまり、石川さんと同じ電車には、どう頑張っても乗れないんですよ。」
権藤はその瞬間、言葉と言う言葉を失った。
1度ならず2度までも、皇と言う少年に、自分の全てを否定されたような、
そんな感覚に陥ったのだった。
その後、権藤刑事は1言も喋らずに、吉澤達を解放して、頭を垂らしながらパ
トカーに乗り込み、部下に運転させながらその場を立ち去って行った。
正直、皇も辛かった。
皇にもその時の権藤の気持ちが分からなくも無かった。
例え、推理が間違っていたとしても、そこに邪念は無い。
自分の中の信念を、誰かに折られると言う屈辱も少なからず、皇にも感じ取れ
たのであった。
- 417 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 01:40
- <お詫び>
今回の皇の推理編、恐らく読者の皆様はお怒りになっていることでしょう。
なにしろ、「長い」は、「何言ってるか全然分からない」は・・・・・・、と。
当然です。作者の自分も途中で分け分からなくなってしまいましたから。
ここに至る前に、時刻表の描写を入れる予定だったのですが、
こちらの不手際で書くのを忘れてしまいました。
お陰で、最近のレスを読んでも、読者さんは、わけが分からない事でしょう。
心より深く、深〜く、お詫び申し上げます。
重ね重ね、最近、娘。メンバーが出てこなくて、これもお詫びしなくては
なりません。
すいませんでした。申し訳ありませんでした。
これからこんな事が無い様に、細心の注意を払って小説の続きを書かせて
頂きます故、長い眼で見てください。
自分の更新は不定期なのですが、言っておきます。
2月23日〜2月24日は更新できませんので、ご了承下さい。
- 418 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/25(水) 16:04
- 権藤刑事の乗ったパトカーが、道路の彼方へ消えていった。
皇がふう・・・・・、と溜息をすると、吉澤が寄って来た。
吉澤「いや〜〜〜、あんたのお陰で助かったよ。サンキュ〜。」
何処までも、お間抜けなのか、はたまた自分の無罪を疑わなかったのか、吉澤
は相変わらずの調子だった。
皇「いえ、俺は思った事を言っただけですよ・・・・・・・。
ところで、吉澤さん達は高橋達と一緒に行かなかったんですか?」
加護「あんな辛気臭い所、もうこりごりや。」
皇は全くその通りだ、と思っただろう。
皇「じゃあ、俺はこれで・・・・・・・・。」
皇がそう言いかけた時、
吉澤「ねえ、あんたこれから予定あるの?」
皇「はあ?」
吉澤の突然の問いかけに皇は戸惑った。
皇「別にこれと言った予定はありませんが・・・・・・・。」
吉澤「よし、決定!ね、辻、加護、良いよね?」
辻「ののは構わないけど。」
加護「私も別に良いと思うけど。」
吉澤「というわけで、皇君、ちょっと来てくれない?」
皇は分けの分からないまま、拉致された。
- 419 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 00:04
- 皇は歩道を歩いていた。
皇の前方を辻と加護が、皇の横に吉澤が歩くと言う形で、4人は歩いていた。
皇の前方の2人は、なにやら分けの分からぬ2人だけの世界の話で、勝手に盛
り上がっている。
皇はすぐ横の、無言で並んで歩いている吉澤が気になってしょうがなかった。
吉澤は特に何を話すわけでも、何を考えているわけでもなく、ただ前の辻、加護
の愉快なじゃれ合いを、少し微笑みながら見ているだけだった。
皇は藤本宅から3人の言うとおり暫く歩かされて、口を開いた。
皇「あの〜、吉澤さん、これから何処に向かうつもりなんすか?」
吉澤「行ってみればわかるよ。」
吉澤は皇の質問にただそう答えるだけで、再び無口になった。
その吉澤は、先程の権藤刑事と突っかかっていた吉澤とは、また違った側面を
見せたかの様だった。
一体、どの位歩いただろうか?
4人は住宅街を遥か超え、辺りの景色に木々の多くなった。
仕舞いには緩やかな、深い木々に囲まれた小高い丘のすぐ麓、そして、その丘
に昇る為の古めかしい石の階段の前まで来た。
途中、吉澤達は小さな花屋と、雑貨屋に寄ったようだったが、皇は気に留めな
かった。
- 420 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 00:20
- 皇を含め4人は、目の前の階段を上った。
先程から皇と吉澤の前方を歩いている加護と辻は、今だそのテンションが途切
れぬ様で、相変わらずの調子でどんどん石段を昇って言った。
次いで、皇と吉澤がその2人に遅れぬようにと、急ぎ足で昇る。
皇には時間感覚が全く無かったが、背後には微かに夕刻を匂わす淡い朱色を纏
った空が広がっていたので、そろそろ夕方の4時過ぎかもしれない・・・・・・・・・・、
と感じていた。
古臭い石段はそれ程長くは無かった。
せいぜい、30〜40段程度の田舎に良く有るほどの石段である。
石段を昇ったそこは、先程と殆ど同色の色をした地界を1呑みにするほどの空
が、照らし出す神々しさが残る場所だった。
皇が両目を細めた。
皇がそこで見たものは、墓石が規則正しく並んだ霊園所だった。
鮮やかなオレンジ色の太陽光をコートの様に着込んだ、活きているかのように
見る者を錯覚させる墓石が、神々しさを醸し出している。
また、場所が場所なだけに、より一層そう感じるのかもしれない。
- 421 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 00:37
- 吉澤「ふ〜〜、ようやく到着。」
吉澤が石段を昇りきった時に、そう言った。
加護「長かったね〜。」
辻「お腹すいたな〜。」
そう言いながら、3人は、同時に同じ場所に向かって歩き出した。
3人の脚が、ある場所でピタリと止まる。
皇も一応、それに連いていく。
3人の目の前には、先程の石段以上に古さ香る墓石があった。
その墓石には「石川家之墓」と刻印が施されている。
皇はその刻印を眼にしたとき、全てを理解した。
吉澤はその右手に持っていた小さいが、彩の豊かな花束をその墓石のそばに置
いた。
加護がポケットに入れておいた線香の束を取り出して、辻が持っていたライター
で火を点けて備える。
3人のこれらの行動は、どこかやり慣れている感じが出ている。
皇「もしかして、俺を連れてきたかったのって・・・・・・・。」
その声に反応してか、吉澤が顔を上げた。
吉澤「辻、加護、この桶にいつもの様に水入れてきて。」
吉澤は、その墓石のすぐ脇に置いてあった木製の桶を、辻、加護に渡した。
- 422 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 01:00
- 加護・辻「は〜〜〜〜い!」
加護と辻の声が見事に重なり、2人はその桶と柄杓を持って、向こ
うの方へ走っていった。
その場には皇と吉澤の2人だけになった。
吉澤「変な所に連れてきてごめんね。」
吉澤はずっと石川のお墓を見ながら答える。
暫しの沈黙が続いた後、吉澤はゆっくりと立ち上がった。
吉澤「梨華ちゃん、幸せだと思わない?」
皇「え??」
吉澤「だって、死んじゃった後も、こんな眺めの良いところで、寝
ていられるんだよ?
私だったら、幸せだよ・・・・・・・・・。」
吉澤は、石川の墓石の前から、地上が一望できる木で出来たしっか
りとした造りの策に移動して、手をついて言った。
吉澤はオレンジ色に染まった。
皇「吉澤さん達はいつもここへ・・・・・・・?」
吉澤「加護と辻はいつもじゃないけど、私は毎日。」
皇「1つ聞いても良いですか?」
吉澤「なに?」
- 423 名前:名無読者 投稿日:2004/02/26(木) 01:32
- ==================
______________
/
| 作者さんに期待って言ってるのに…
| プロテクト・スペル
| 魔法防壁陣!
\
 ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フィーー ヽ \
ノノノハヽ | ヽ
( ;´ Д `) | |
⊂ つ | |
/ / ヽ | /
(_)(_) / /
==================
- 424 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 08:56
- 「名無読者」さんの、感想レスの意図がよく掴めませんので、返事レスは控え
させて頂きます。
<本編>
皇「吉澤さんは、藤本さん殺害当日に行われるはずだった朝錬に、いつもは遅
刻をしないのに、その日に限って遅刻をしたらしいですね?
あなたは目覚まし時計の調子が悪かったらしく、その為遅刻してしまった
らしいですね?
しかし、1方で吉澤さんが居るはずの無い駅の近くで、吉澤さんを見かけ
た、と証言している人が、また居ました。
その証言した人が見た人物が、吉澤さん本人とは断言できませんし、吉澤
さんが嘘をついている根拠もありません。
しかし、もしかしたら吉澤さん、事件当日の朝・・・・・・・・・・・・。」
皇は自分の言葉の最後を濁し、それを聞いてか吉澤は今まで肘を置いていた柵
に掌を着いた。
吉澤「ああ、そうだよ!私はあの朝、ここに来てたね。」
皇「じゃあ、何故警察に目覚まし時計の調子が悪かったなんて、嘘の証言をし
たんですか?
嘘だってばれたら、怪しまれてまたさっきみたいに、犯人扱いされますよ。
なのに何故?」
その時、吉澤はオレンジ色の羽衣の中に居た。
- 425 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 09:08
- 吉澤「言えないよ・・・・・・・・・・・。
言える訳無いよ・・・・・・・・・・・。」
皇はその言葉の意味が良く分からなかった。
皇「??
どういう意味ですか?」
吉澤「・・・・・・・・・。ねえ、今度はこっちから質問して良い?」
皇「何ですか?」
吉澤「皇君、私ってどんなイメージ?」
皇「は???」
皇の頭の上に、3つくらいクエスチョンマークが並んだ。
吉澤「だから、私のイメージつーか、第一印象ってどんな感じだった?」
皇は眉間にしわを寄せながら、答える。
皇「どんなって、・・・・・・・・・・・・・・、
そうですね、朝日ヶ丘警察署での事情聴取や先程の権藤刑事とのやり取り
を見る限りでは、少し男っぽい感じの人だな・・・・・・・・・、
と、思いましたね。」
皇がそう答えると、夕焼けの逆行ではっきりとは見えなかったが、吉澤は自虐
的とも取れる笑みを浮かべながら、
吉澤「・・・・・・、だよね・・・・・・・。」
とだけ残した。
- 426 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 09:31
- 吉澤の表情は、一向に弱まる事の無い陽の光で、伺う事は出来なかったが、悲
哀の篭った最大に空元気を絞った表情にも見えた。
吉澤「みんなそう言うんだ。
先生も、友達も、先輩や後輩も、近所の人も・・・・・・・・・・、
自分とあまり深く関わり合いにならない人なほど、みんなそう言うんだ。
「吉澤は男っぽい性格だね」って・・・・・・・・。
確かに、自分で自分自身は、少し男っぽい性格な所もあるって思う。
口調が男っぽかったり、仕草だって男っぽいところもある。
それは認めるよ・・・・・・・・・・・。
だけど、別に皆が思っているほどでも無いんだよ。
私だって、たまには普通の女子高生っぽい事も考えるし、遊んだりする
し・・・・・・・・・・。
でも、部活内じゃあ私って、梨華ちゃんや辻・加護じゃあなんか頼りな
いから、結構リーダー役に回されることが多いんだ。
だから、ミュージカル部内では常に「男っぽい吉澤ひとみ」を演じなく
ちゃいけないんだ。勿論クラス内や家の近所でも・・・・・・・・・・。
心の奥底に「女っぽい吉澤ひとみ」を押し殺しながら・・・・・・・・・。
そういう訳だから、あんまり親しくない先輩や後輩や同輩の友人は、
皆、皇君が今言った様なイメージを持っちゃうんだ。
でもね、梨華ちゃんや辻や加護、矢口先輩や安倍先輩、飯田先輩、そし
て、高橋達はそんな私を分かってくれるから、なんか安心するんだよね。
何か、漠然とした「仲間」って思うんだ。
でもさ、今回梨華ちゃんが死んじゃってさ、部員皆がブルーになってい
るときに、私が落ち込んでちゃいけないじゃん。
私はみんなの支えにならなきゃいけないし、また皆も私を頼りにしてる
んだよ。
そんな中で、私が死んじゃった梨華ちゃんの墓に毎日のように通っている
なんて、脆弱な顔なんか見せられないでしょ?
(次回に続く)
- 427 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 09:47
- (前回の続き)
そんな顔見せたら、困るのは私じゃなくて部員皆なんだよ。
今、高橋も梨華ちゃんの死で悲しみのどん底に居るはずなのに、必死で
耐え抜いている。
今の、1〜2年生部員が立っていられるのは、必死で耐えている高橋が
居るからだし、3年生部員、部活動全体、そして高橋自身を支える為に
も、私が「男っぽい吉澤」を演じなくちゃいけないんだよ。
だから、警察の証言の時も、こんな嘘をつかなくちゃいけなかったんだ。」
そう言うと、皇の背後から声が聞こえた。
加護「そう!よっしぃーは強いけど、その分弱い普通の女の子なんだ。」
辻「よっしぃーはガラスの心の持ち主なんだよ。
ガラスはガラスでも、特別強化ガラスなんだけどね・・・・・・・。」
いつの間にか、水汲みから帰ってきた加護、辻が皇の背後に立っていた。
吉澤「お、お帰り、意外と早かったね。」
そう言うと、吉澤は加護の持っていた水の満杯に入った桶を受け取ると、小さ
な柄杓で、石川の墓にかけ始めた。
その後、吉澤と辻、加護は目を閉じて合掌する。
皇はそんな3人の後ろ姿を、そして墓石を見つめていた。
- 428 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/26(木) 10:01
- 合掌後、吉澤は目を開け立ち上がり、口を開いた。
吉澤「そう言う訳でさ、このことは警察、そして他の人には誰にも
言わないで欲しいんだ。
お願いできる・・・・・・・・・・?」
吉澤は方向転回し、皇の方を向く。
皇「・・・・・・・・・・・・・・。
別に俺は構いませんが・・・・・・・・・・・、
しかし、そう決断を下したのはあなた方ですよ。
俺はどうなっても知りませんよ・・・・・・・・。」
吉澤「サンキュー!助かるよ。」
霊園所には、刻一刻と紅色を増しながら傾いていく夕日の淡く、
鋭い光線が4人を、墓石を、そして「石川梨華」を照らして浮き上
がらせる。
時折吹く冷たさが仄かに残る北風が、吉澤の熱くなった頬を冷却し
ながら、霊園所の周りに生い茂る杉の木の葉という葉を、揺らして
ザワザワと音をたてる。
皇にとって、こんな情景はこの間の幻想的風景に重なって見えた事
だろう。
- 429 名前:SINKI 投稿日:2004/02/26(木) 15:56
- 更新乙です。
よっすぃーの心が少し出てきましたね。
でもそれと電車で遅刻しなかったのは、なにか関係があるのですか?
皇くんに頼むのだから、もう少し腹の内をみせてもいいと想うんですが、、、。
これからもがんばってくださいね。
- 430 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 00:05
- 「SINKI」さん、ありがとうございます。
すいません、これまた記述不足でした。
吉澤が遅刻したのは、これから書きますが、吉澤が朝早く石川の墓参りに来た
後、電車に乗ろうとしましたが、意外と計画通り行動できず遅刻してしまった・・・・・、
と言う設定です。
申し訳ございません、自分の頭の中に既に原作が出来ていて、遂勝手に読者も
分かっているだろう、といつの間にか変な錯覚に襲われてしまって・・・・・・。
前にもこんな事がありましたね、これからも気をつけます。
- 431 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 00:22
- 皇「じゃあ、吉澤さんが事件当日、朝錬に遅刻したのは石川さんの墓参りに行
った為だったんですか?」
皇は吉澤と加護、辻と今先程来た道を帰っているときに、隣を歩いている吉澤
に話していた。
吉澤「ま〜ね、学校終わった後じゃあ、行く暇無いしね。
自分じゃあ結構完璧に計画を立てたんだけどね、朝ぎりぎりまで寝たい
し、でも梨華ちゃんの墓参りには行きたい、遅刻もしたくない、って思
ってね・・・・・・・・・・・・。
でも実際行動してみると、予定通りに行動できなくってね・・・・・・。
そしたら乗るはずの電車に乗れなくて、結局遅刻しちゃったってわけさ・・・・・・。」
吉澤は軽くおどけながら言うものの、どこか乗り切らない感じがする。
皇「ところで、今更こんな事を聞くのもなんですけど・・・・・・・・・・、
何故、吉澤さん達はそこまで石川さんに・・・・・・・・?」
吉澤「はは、そんなことか・・・・・・・・。
別に大した理由なんて無いよ・・・・・・・・。
ただ、梨華ちゃんは、なんか特別なんだよ。」
皇「特別?」
吉澤「そもそもね、私と梨華ちゃんは最初は殆ど話さなかったんだ。」
吉澤は重々しそうなその口を開いた。
- 432 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 00:39
- 吉澤「皇君も聞いていると思うけど、梨華ちゃんは見た目とか、第
一印象が結構きついじゃん。
だから、最初は話すを躊躇っていたんだけどね・・・・・・・・。
ある日、脇役だけど私達4人は舞台の役をもらったんだ。
その時会話してみたら、意外と反りが合ってそれ以来、仲が
良い・・・・、って感じかな。
特にこれと言った、出会いがあったわけじゃないよ。」
加護「他の人は梨華ちゃんのことを、見下しているとか、お高くつ
いているとか、なんか言いたい事言ってるけど、実際そんな
こと無いよ。
確かにちょっと色黒だし、ネガティブなところがあるけど、
話すととっても面白いしさ・・・・・・・・。」
辻「それに、梨華ちゃんの悪口言う人は大抵、ろくに練習しないで
口ばっかりな人ばっかりなんだよね。
そのくせ、影で努力している梨華ちゃんをボロクソに言うんだよ。
でも梨華ちゃんはそんな人のことを、何にも言わないから言わ
れたい放題なんだよ・・・・・・・。
本当に梨華ちゃんが可愛そうなんだよ・・・・・・・。」
吉澤「ま、そこが梨華ちゃんの良い所なんだけどね。
そう言う所は私達は尊敬できるね。
人を引っ張ることは出来なくて私の仕事だけど、そういう演
技的な面は頭が下がるね・・・・・・・。」
3人が決まって石川梨華を救護する。
皇はそれを聞いて、少し安心した。
- 433 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 00:56
- しかし、同時に皇にはある疑問が頭に浮かんだ。
皇(被害者の石川さんと深く関わっている人は、決まって人柄が良いという。
1方、余り深く関わらない人は、好印象は受けないらしい。
殺人事件の動機ともなると、被害者と加害者は深い係わり合いがあると
あると思って、まず間違いが無いないはずだ。
しかし、深く関わった人は皆、殺害の動機を持つ者は居ない。
何故だ?一体何が動機なんだ?
被害者の石川梨華と、犯人の「煉獄仮面」との間に何があったんだ?)
皇は3人の話を聞きながら、頭の中ではそんな事を考えていた。
隣に居た吉澤が、そんな皇の表情を見た。
吉澤「別に、私達は皇君に何をして欲しいわけじゃないよ。
確かに、梨華ちゃんや、藤本を殺した犯人は捕まえて欲しいけど、
私達は私達で何とかするから、別に気にしないでくれよ。
高橋だって、1人で頑張っているのに、うちらがこんなんじゃ示しがつ
かないからね。」
皇「高橋かあ・・・・・・・・・・・・・・・・。
そう言えば、吉澤さん達は高橋について何か知りませんか?」
皇は不意に、吉澤の口から出た「高橋」と言う言葉にひっかかった。
- 434 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 01:10
- 加護「何かって具体的に何?」
皇「う〜〜〜ん、具体的にと言われましても・・・・・・・・・・。
何か、高橋って時々変じゃありませんか?
普段は、いたって普通の女子高生だけど、今回の事件が起こった直後、
異常なほど『平和』や『平穏』って言う言葉に固執しているって言うか・・・・・・、
この前も、『朝学や学校は平和の砦』とか熱弁していたり・・・・・・・。
とにかく、こと「平和」に関しては人が変わるんですよ。
だから高橋は過去に何かあったのかな?と思いまして・・・・・・・。
皆さんは何か知りませんか?」
その質問に辻と加護は首を横に振ったが、ただ吉澤だけ何やら口を開いた。
吉澤「う〜〜〜ん、これは梨華ちゃんから聞いた話なんだけど、確かかどうか
は分からない。
けど、高橋は小さい時、そうだな・・・・、大体・・・・・・・・・、
2〜3歳の時に何かあったって、前に梨華ちゃんが言ってたっけ・・・・・・。
何があったかは忘れたけど・・・・・・・・。」
皇「何かがあったことは確かなんですか?」
吉澤「うん・・・・・・・・。
梨華ちゃんの話が本当ならばね・・・・・。」
辻「へ〜〜〜、初耳。」
加護「私達、そんなこと1回も無いな〜。」
辻と加護が互いに顔を合わせながら、話している。
- 435 名前:名も無き読者 投稿日:2004/02/29(日) 10:38
- 何があったんだぁ…w
失礼、なんかお久しぶりです。
いや読んでたんですけどね?
犯人の動機…予測ならいくらでもたつ気がしますが、
現段階じゃ判断しづらいッスねぇw
いつも通りヒントが出るの黙って待ちます。。。
- 436 名前:SINKI 投稿日:2004/02/29(日) 14:19
- 謎が一つ明かされそうな雰囲気ですね。
みんないろいろと抱えているんですね。
続きを楽しみにしてます。
- 437 名前:ところてん 投稿日:2004/02/29(日) 21:47
- あ〜頭こんがらがってきたッス。
むつかしいよぉ・・・・。
作者さん頑張って下さい。期待してます。
- 438 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 23:09
- 「名も無き読者」さん、感想レスありがたく頂戴します。
今回、ちょこっと高橋の過去に触れてみましたが、やはり難しいでしょうか?
でも、この過去が事件に関係してくる事は確かですし、高橋の過去については
断定できなくとも、この小説を最初から呼んでいただくと「もしかしたら・・・・・・、」
なんて感じる事くらいは出来ると思います。
<ヒント4>
そろそろ(結構前から?)、石川梨華殺害事件についての、朝日ヶ丘署での事
情聴取が意味を持ち始める頃かと・・・・・・、思いますね。
勿論、事情聴取の内容だけでは分かりません。
ある人物の、ある台詞が「鍵」となります。
- 439 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 23:14
- 「SINKI」さん、毎回毎回、ありがとうございます。
謎が1つ1つ、人が抱える内側の部分の1つ1つ、明らかになる毎
にまた謎が増える、なんて言う流れにしてみたつもりなんですが、
皆さんは楽しんでもらっているでしょうか?
最後には1つにまとまる・・・・・・予定です。
続きをお楽しみに・・・・・。
- 440 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/29(日) 23:19
- 「ところてん」さん、どうもありがとうございます。
「頭がこんがらがってきた」、まさにこの上ない誉め言葉です。
レス438に書いたヒントを基にして、頭の中を整理して下さい。
こちらとしては期待して頂く事は、誠にうれしい事ですが、1方で、
読者の皆様の期待に応えられるか、どうか・・・・・、と、
不安にもなります。
けど、これから先も頑張ります。
- 441 名前:闇への光 投稿日:2004/03/01(月) 07:40
- お久しぶりです。
吉澤の行動が分かったのですがもう一人謎な人物が増えてしまいました。
まあ、根気よく考えて見ます。
- 442 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 22:28
- 「闇への光」さん、お久しぶりです。
「もう1人謎な人物」とは一体誰の事なんでしょうか?
こちらも気になりますね〜。
根気良く頭の中で事件全体を整理して、考えれば事件の全容が分かると思いま
すよ。頑張ってください。
こちらも更新が遅くなって申し訳ないです。
(なにしろ今、自動車学校に通っているもので・・・・・・・。)
- 443 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 22:44
- ここは、周りが薄らぼんやりしている異次元の様な空間だ。
辺り一体は、夜なのであろう、暗い闇に覆われている。
夜という時間帯が時間帯なだけに暗闇なのだろうが、それだけではない漆黒が
姿を現しているのであるのだろうか・・・・・・。
そんな漆黒の異次元空間内を3人の人間が並んで歩いていた。
辺りは数本の外灯が立っており、その3人の足元を照らす。
その周囲も暗くてよく見えないが、市街地を少し抜けた車の通行料も殆ど無い
通りのように見えた。
その3人は、1人は2〜3歳程度のまだ幼い子供と、その両脇を、その子供の両
手を持つかのように1人の働き盛りの男性と、スラリとして髪が肩まで降りて
いる女性が歩いていた。
その3人は何とも楽しそうにお喋りをしながら歩いている。
- 444 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 22:56
- あたりには誰も居なく、3人だけの空間だった。
周りは外灯の光と、所々に設置されているネオンや看板が淡い波動
を繰り出していて、そのほかに3人の眼に留まるものといえば、そ
の頭上に輝く、僅かな星だけであった。
手を繋ぎ合った3人は、永遠の平和を信じて疑わないような至福の
笑顔を浮かべて、まだまだ歩いていた。
そう、その3人の笑顔が見事に重なったその瞬間だった。
3人がろくに車の通らない十字路に差し掛かったとき、横から猛ス
ピードを出した大型トラックが、
そのヘッドライトが、獲物を狙う獣の眼光のように
そのバンパーやナンバープレートが、獣の獲物を噛み切り喰らいつく凶牙のように
そのホイールが、獲物に飛び掛る獣の両手両足の鋭爪のように
3人に突如、襲い掛かった。
- 445 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 23:07
- 3人の中央に位置していた子供は、その野獣の様なトラックに反応
できず、そのトラックを正面からその両目に捕らえる事しか出来な
かった。
大型トラックが十字路の路地から飛び出して、3人の元に突っ込む
まで、肉食獣が草食獣に飛び掛るのと同様に、ほんの数秒もかから
ないだろう。
しかし、その小さな少年にとってはコマ送りに見えた。
まばたき1つしないで、そのコマ送りの映像を網膜に投射した。
少しずつ、少しずつ、少しずつトラックがこちらに向かって来てい
る事は、その少年には見えた、分かった。
しかし、分かってはいるが動かなかった。
分かってはいるが動けなかった。
分かっているが体が微動だにしなかった。
少年は2〜3歳程度であったが、『死』を悟った、そして覚悟した。
しかし、その刹那だった。
- 446 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 23:24
- 女性「祐一郎!危ない!!」
ドン!!
その少年の隣に居た女性が、トラックが3人に衝突する瞬間、近くに居たその
子供を両手で力一杯、突き飛ばした。
少年「えっっ!?」
少年は、その女性に突き飛ばされてなすがままになり、そのままアスファルト
の歩道に倒れた。
少年が歩道に倒れた、そうその時、
キキーーーーーー!!
ドン!!ガシャーーーーーン!!
バーーーーーン!!
とてつもない豪音が辺り一帯に鼓膜が破れんばかりに轟く。
その少年は、すぐさまその場に立ち上がった。
目の前は大破した大型トラックと、窓ガラスの破片、大小様々な部品、毀れ出
したオイル、そして、外灯によって浮かび上がる赤黒い粘着性のある液体。
そして、今の今まで自分の隣を歩いていた2人の見るも無残な肉塊。
その時、トラックから何人かの人間が、大急ぎで逃げ去って行くのが見えた。
しかし、その少年にとってはそんなことは、どうでも良かった。
少年を助けた女性と、男性はその少年を助けたばかりに、自分達は逃げ遅れて
トラックと言う名の野獣に食い殺されたのだ。
少年はそう悟った。
- 447 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/05(金) 23:45
- ガバッ!!
皇「ハア・・・・・・・・・、ハア・・・・・・・・・、ハア・・・・・・・・。」
皇はこの前と同様に、息を切らしながら布団から起き上がった。
皇の全身は、やはり大量の冷や汗で覆われていて、ビショビショだった。
そのままでは、風邪でもひきそうだったが、むしろ皇は全身が焼け付くほど
熱を帯びている事にも、また自分の瞳孔が開ききっている事にも気付いた。
皇「ハア・・・・・・・、はあ・・・・・・、
ま・・・・・・・・また・・・・・、またあの夢か・・・・・・・・・・・」
まだ、両目の焦点が合っていない状態で、皇はそう呟いた。
皇「また・・・・、また・・・・・、また『あの夢』か・・・・・・・。
つい最近に見たばっかりだってのに・・・・・・・・・・。
一体、何故だ。
何故俺はこんなに『あの夢』を繰り返し、繰り返し見るんだ?
・・・・・・・・・・・・・・・・。
気が狂いそうだ・・・・・・・・・・・・・。」
体全身が僅かに痙攣しているのか、麻痺しているのか、痛かった。
だが、それ以上に辛かった・・・・・・・・・・。
皇はそう感じていただろう。
- 448 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 21:38
- 今日からまた、授業が再開される。
繰り返し繰り返し悪夢が、皇を襲い掛かかって来ていた為、皇は学校に登校す
る気にはなれなかった。
まあ最も、登校したところで授業に出ないで、また屋上でぼんやりする事は、
明らかではあったが・・・・・・・・・・。
皇が学校に着くと、やはり当然のように屋上に向かう階段を昇った。
屋上のドアを開くと、皇の眼前に眩しい位の朝陽の光が被さる。
皇が眼を細めながら眺める、屋上からの景色はいつもと何ら代わり映えはしな
かった。
しかし、どこか雰囲気が違う。
何処かしら皇の事を同情するかのように、寂しさを漂わせる表情を出して、爽
やかな、そして冷たい風が一瞬吹き付ける。
皇はふう・・・・・・、と溜息を漏らすともう1つ上の屋上に乗った。
皇はいつもの様に鞄をそこら辺に投げつけると、そのまま仰向けになって寝転
がった。
そして、これまた青く聖々とした空を見つめた。
皇「ふう・・・・・・・・・・。」
皇はまた溜息をついた。
- 449 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 21:52
- 空は青く、広く、ゆったりとした顔を皇に見せていた。
皇も表情を一切変えることなく、何かに思いを巡らせるかの様にそんな空を眺
め続ける。
皇は空の、またその奥のただ1点を見透かしていた。
空は大きい雲、小さな雲、丸い形の雲、崩れた不恰好な雲、濃厚な雲、薄白な雲、
様々な雲が、それぞれの形を保ちながら、崩しながら、繋がりまたくっつきな
がら、ただ『青空』と言う漠然とした自由の象徴の上に成り上がっていた。
今、皇が見つめている空もまた、いつもと変わらない空を模っていたが、
しかし、普段、皇が見てきた空とはやはりどこか異なっていた。
いつもよりも、やや黒ずんでいるか?
雨が近いのであろうか?
それとも、皇の同情を買っているかの如く、皇の心をそのまま映し出しているかの
如く、病んだ暗さを纏っているかのようにも見えただけであろうか?
皇はそんな空に、また逆に同情した。
- 450 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 22:08
- どれ程の時間が過ぎ去っただろうか?
実際には、何時間も経っていただろうが、皇にとってはほんの数分しか経って
いないかのように思えた。
いや、数分も経っていたとも感じもしなかったことだろう。
それ程、皇はあの悪夢に悩まされていたのだ。
皇が感じた時間の流れとほぼ同様の速度で、風が弱かったのであろう、空もま
たゆっくり流れていた。
皇はいつしか、脳内の回路がショートしたのか何も考えていなかった。
いや何も考える事が出来なかった。
すると、
カン・・・・・・カン・・・・・・カン・・・・・・。
鉄製のはしご段を1歩、1歩踏みしめる音が皇の耳に入ってきた。
皇が顔を動かさずに、両眼だけを動かして音のする方を見てみた。
- 451 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 22:21
- 皇が視線を青空から移動させてみると、そこには高橋が居た。
高橋が鞄を背中に担ぎながら、はしご段を昇ってきていた。
皇は不思議に思い、自分のポケットから携帯電話を取り出し見てみると、正午
少し前、まだ授業が終わっていない時間帯だ。
皇は上半身を起こしてみた。
皇「高橋・・・・・・・、お前こんな時間に何やってんだ?
今、まだ午前の授業が終わってないだろ?」
高橋「皇君こそ・・・・・・・・・・・。またサボったの?」
皇「質問を質問で返すなよ。お前、まさか授業、サボったのか?」
皇の質問に、高橋は少し間を空けながらも答えた。
高橋「まあね・・・・・・・・。たまにはサボるのも良いかなって。
今度は私の番ね。
皇君はまたサボり?授業でなくて良いの?」
皇「出席日数はぎりぎり足りてる。問題無い。」
高橋の質問に、皇はあくまで無機質に応える。
- 452 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 22:40
- 皇「何しに来たんだよ?」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・。
今日、天気が良いのに皇君が教室に来ないから、またいつもの屋上の
上かな・・・・・・、って思っただけ。
特に、これと言った訳は無いよ。」
高橋は皇からほんの少し離れた場所に腰を下ろした。
暫し、高橋と皇との間に、僅かながら沈黙が現れた。
高橋「ねえ、昨日、美貴ちゃんの葬儀の後どこに行ったの?
皇君が急に消えちゃったから、私驚いちゃった。」
皇「別に・・・・・・・・、吉澤さん達と一緒に石川さんの墓参りに行っただけだ。」
皇は敢て言葉を短くした。
高橋もこの場を和ませようと、一生懸命、皇に話しかけようとするが、皇が思
う様に乗ってこないので、モヤモヤしていた。
高橋はいつも変わっているが、それでもいつもと違う皇の様子に引っかかっていた。
高橋「皇君、いつもと様子が変だよ。」
高橋は思い切って言った。
- 453 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 22:49
- 皇「何がだ?」
高橋「何って言われても・・・・・・・・。」
高橋は口ごもる。
皇「俺の何処がいつもと違うんだ?」
高橋「皇君・・・・・・・?」
皇「一体、俺の何処が変なんだ?」
皇の口調が強くなる。
高橋「皇君・・・・・、やっぱり変だよ。」
皇の眼がカッと見開いた。
皇「お前は俺の何を知っているって言うんだ?
たかだか、今年同じクラスになって、事件が起こって顔を会わせる様にな
っただけで、お前は俺の何を知っているんだ?」
答えてみろよ!高橋!!」
皇の口調が一層強くなり、いきり立った。
その目線は、高橋の両目を完全に貫いていた。
- 454 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 23:15
- 高橋「ちょ、ちょっと待ってよ。」
高橋は激昂した皇を止め様としたが、しかし、無駄だった。
皇「お前は・・・・・・、お前は・・・・・、
お前は、俺の何を知っているんだ!!!」
皇は既にいつもの冷静さを完全に欠いていた。
そこで、高橋は口を開いた。
高橋「皇君、少なくとも私の知っている皇君とは違う。」
皇「はっ!?」
高橋「皇君、皇君って何でもかんでも自分で溜め込んでるんだよ。
一見、冷静で頭の切れはピカイチで、それで居て何考えてるか分からな
いで、それでいて強そうに見えるよ。
でも、その反面今までの心の疲れや痛みを知らず知らずのうちに溜め込
んで、顔に出さないだけで内側がとっても弱いんだよ。
私は皇君がどんな人か分からない。
今までに皇君がどんな心の傷を負ったのかは知らない。
でもさ、だからこそ言える。
皇君の過去を知っていたら言えないかもしれない。
皇君、もう少し周りに居る人を信頼して頼ったら。」
高橋は哀れみにも似た眼で皇を見つめる。
- 455 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 23:45
- 皇はその高橋に圧倒されて、通常の『皇祐一郎』にすっかり戻っていた。
高橋はそう言い終わると、すぐに立ち上がった。
高橋「ごめんね、皇君に偉そうな事言って・・・・・・・。
私、邪魔みたいだからこれで帰るね・・・・・・・。」
そう言うと、高橋は何も喋らず、静かにはしご段を下りて言った。
皇も寂しそうに降りていく高橋の背中を見る事しか出来なかった。
カン・・・・・カン・・・・・カン・・・・・。
高橋がはしご段を降りる音がした後、屋上に出るドアが開く音がした。
しばし、段々と弱くなっていく、高橋が階段を下りていく音が、皇の心に痛い
ほどに突き刺さった。
皇は起こしていた上半身を再び、アスファルト製の屋上の床にくっ付けた。
目線を上方に向けると、そこには先程と殆ど同じ空が待っていた。
何故か、皇は軽い笑みを浮かべた。
皇(まさか、あの高橋にこんな事言われるなんてな・・・・・・・・。
思ってもみなかったな・・・・・・・。
自分だって、泣き叫びたいのを必死で耐え抜いて気丈に振舞っているくせ
にな・・・・・・・・。
確かに、俺は今までの痛みが蓄積していたのかもしれない。
高橋の言うとおり無意識、無意識の内に溜め込んでいたのかもしれない。
もしかしたら『あの時』以来、本能的に体が自己防衛反応を起こしていた
のかもしれない・・・・・・・・・・。
そして、その自己防衛反応がここで仇となり、溢れ出したんだな。
高橋にも悪い事をした。
今のは完全に俺が悪かったのに、高橋を傷つけてしまったのも事実。
今朝最近見るあの『悪夢』で一杯一杯だった。
「もう少し周りの人を信頼して、頼ったら」・・・・・、か。
そうかもしれないな・・・・・・・・・。)
皇の遥か遠くに佇む天空は、いつしか雲1つ無い晴天の天空となっていた。
空は全くもって不公平かもしれない・・・・・・・・・・・
しかし、何処か公平なのかもしれない・・・・・・・・・・・
- 456 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 23:54
- ここで、小説自体とは関係有りませんが、ご報告させて頂きます。
私、「聖なる竜騎士」は前に大学受験生である、と言いましたが、
今回、見事、関東地方の国公立大学に合格しました。
これも一重に、この駄小説を読んで、また感想を書いていただいた読者の
皆様のお陰だと思います。
皆さんの感想の1つ1つがあったからころ、辛い受験勉強を乗り切
れたのだと思います。
今春から大学生となりますが、この小説は引き続き書き上げますの
で、これからもこの駄作の応援をお願いいたします。
大変厚かましいとは思いますが、これをもって感謝の言葉に変えさ
せて頂きます。
- 457 名前:ところてん 投稿日:2004/03/07(日) 11:33
- おめでとうございますです!
- 458 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/07(日) 21:11
- おぉ!お見事!!
おめでとうございます!!
その調子で小説の方も頑張って下さい。w
- 459 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/08(月) 19:08
- 「ところてん」さん、「名も無き読者」さん、本当にありがとうございます。
前レスにも書きましたが、読者の皆様が居てくれたからこそ、今の自分がある
と思います。
これからも、皆様にお礼の意味も込めて、本小説も全力で創り上げていきます
ので、これからも相変わらずの応援を、何卒、よろしくお願いします。
夢は大きく、狙うは「芥川賞」!!
- 460 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/10(水) 00:00
- 翌日、朝早く皇は屋上に向かわず、教室に向かった。
皇は、自分が教室に足を向けるのは何ヶ月ぶりであろう・・・・・・?
などと考えながら、教室の扉を開ける。
朝早かったためか、教室内には数人の生徒しか中に居なかった。
男子生徒「お〜〜、皇!お前が教室に来るなんて、珍しいな。明日雨かもな〜。」
1人の皇と仲の良い男子生徒が、珍しい来客に沸いた。
皇「ああ・・・・・・・・。確かに珍しいな・・・・・・。
(雨か・・・・・・・。逆にそっちの方が気が楽だ・・・・・・・・・・。)」
皇が友人の言葉に感傷しながら応えた。
皇がかなり久しい自分の席に着いた。
皇の席は窓際の、1番後ろの席だった。
皇が片肩に担いでいた、いつもの鞄を強く机の上に置く。
どうも、昨日の高橋との1件があってからどうも辛い罪悪感に苛まれていた。
今回の事件の罪悪感・自責の念ともまた違う、蜃気楼の様な、ぼんやりしてい
て、それでいていつまでも消えずにしつこく残る罪悪感だった。
皇は椅子に座った後、机に突っ伏した。
突っ伏しながら、皇の心の中で高橋に言ったあの時の言葉を思い出した。
(「・・・・・・俺が引き受ける以上、俺にも責任がある・・・・・・・・・・。」
俺が高橋を守る・・・・、と言っておきながら、俺が高橋自身を傷つけていた。
高橋のほうが、俺よりも何倍も辛かったはずなのに・・・・・・・。
俺は・・・・・・・、俺は・・・・・・、俺は、最低な人間だった。)
皇「ふう〜〜・・・・・・・・・・・。」
この時の皇の溜息は深く、重く、湿っていた。
- 461 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/10(水) 00:17
- 男子生徒「そ〜、そ〜、皇。お前知ってるか?
最近、この学校で殺人事件が起こったんだぜ。」
皇「へえ〜〜・・・・・。」
皇は思い出したくない、また思い出したとしても深く考えたくない話題を振ら
れた事に嫌気がさして、適当に流した。
男子生徒「・・・・・・・・・・・・・でよ〜、
俺ん家ってこの近くだろ、それでよ〜〜・・・・・・・。」
皇「ああ・・・・・・。」
男子生徒「それでさ〜、この前、警察がさ〜・・・・・・・。」
皇「へえ・・・・・・。」
男子生徒「昨日なんかさ〜、うちの近所でさ地震があってさ〜・・・・・・。」
皇「ふうん・・・・・・・。」
男子生徒「しかも、テレビが故障してさ〜・・・・・・・。」
皇「そうなんだ・・・・・・。」
皇は、久しぶりに登校した友人に対して絶えない話題の事を、いつもなら気楽
に笑いあうはずなのに、今日に限っては静かにしていたい気分の為か、乗気で
はなかった。
- 462 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/10(水) 00:31
- 皇は暫くの間、無意識状態になった。
どの位か時間が経過して、教室の扉が開く音がして、皇は意識を取り戻した。
隣を見てみると、友人の男子生徒は今だ皇に話しかけていた。
どうやら、無意識のうちに、友人の何気ない会話に相槌を打っていたようで、
会話は繋がっているようだった。
皇は少し安心した。
皇は、例えそれが軽くとも、誰かを傷つける事はしたくなかったので、少し安
心した。
皇が開いた扉を見ると、それは高橋だった。
皇の席が席なだけに、扉から入ってくる生徒とは必ず眼が合うことになる。
その瞬間、皇と高橋の目線が合った。
確かにお互いの顔を認識したが、高橋は不意に目線をずらした。
皇にはそれが、精神的な圧迫に違いなく感じた。
高橋も、昨日のこともあって気まずく感じているのか、自分の席に着くと、
一切眼を合わせる様子を見せなかった。
高橋も高橋で、昨日の皇に言った言葉に後悔しているのか、自悶しているかの
様だった。
皇は自らの精神が軋んでいくのが確信できた。
- 463 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/10(水) 00:55
- 皇はその日1日、1回もサボることなく真面目に授業を受けた。
いや、少なくとも見た目は真面目に授業を受けた。
席に着き、ノートを開き、シャーペンを持ち、黒板に書かれたチョークの文字
を綴りなぞったが、全く集中できていなかった。
今回の事件の事、悪夢の事、高橋との事、頭を煩わせる内容はいくらでもある。
ましてや、高橋と同じ空間にいると言う事実が、そんな集中力を散漫させる。
いつもの屋上で、爽快な北風に吹かれながら、太陽の光を存分に浴び、澄青な
天空を眺めて、余計な事を一切忘れられる場所なのに、こんな場所は苦痛的な
空間に違いなかった。
授業が全て終了し、その殆どの生徒が帰路に着く。
皇も生徒の流れに乗り、電車に乗り、いつもの帰り道を歩く。
皇が立っているアスファルトの道路は、この前に高橋と並んで帰ったとき以上
に落陽で真紅に染まっている。
皇の陽影は黒々と色を道路に落としていき、落陽の淀んだ紅色と恐ろしいほどに
同調していて、それが皇の今現在の心のあり方を示しているように見えて、
皇は見も心も闇と同化した気がしてならなかった
皇が目線をあげると、向こうの高層ビル郡の間に沈みかかる太陽が見えた。
暗い闇の中に赤々と浮かぶ夕方の太陽は、不吉な戒めに見える。
皇「紅蓮色の夕陽か・・・・・・・。
なんだか、不吉な予感がする・・・・・・。」
皇は止めていた両足を無理矢理動き出させた。
- 464 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/10(水) 22:10
- 皇は自分の部屋に戻ると、そのまま敷いてあった布団にダイブした。
使い古しの枕に顔を埋めながら、今までの事を頭の中で反芻しる。
今までに複雑な事が絡みに絡まって、脳内で整理できない。
そんな中で、頭の中で先程見た「紅蓮色の夕陽」が絡み付いて取れなかった。
夕陽は、さもあれば綺麗な1日の無事の終了を示す、正に生粋の平和をも表す
象徴であろう。
だが、皇の見た深淵真紅の夕陽は、それ所ではなく、禍々しい波動を放つ邪悪
な要塞をも思わせる、そう正に『死』・『恐怖』・『邪怨』・『破壊』を示す
に他ならない象徴その物だった。
気味が悪い、思い出したくない、と想うほどの紅蓮の夕陽が目を閉じても、
瞼の裏に嫌に焼きついて、決して消える事の無い烙印となって執拗に、皇に纏
いつく。
皇(何か・・・・、何か・・・・、何か、嫌な予感がする。
全くもって、根拠に無い考えだが・・・・・・・・・、
けど、俺のこう言った第6感は当たるんだ・・・・・・・・・・・。
当たらないで欲しいんだがな・・・・・・・・・。)
皇は全身が疲れ切っていたが、脳が興奮状態でどうも眠れそうに無い。
皇「はあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
疲れた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇が顔を上げて、そう呟いた時、
ピリリリリリリ・・・・・・・・。
皇の携帯電話がいきなり鳴り出した。
その音はどこか、いつもと違った不音調を奏でていた。
- 465 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/13(土) 00:01
- 皇は面倒くさくて、最初は無視していたが、いつまでも鳴り響く着信音が皇に
何か大きな重石として圧し掛かった。
しばらくしても着信音が止まなかったので、しょうがなく携帯電話を取った。
皇「もしもし・・・・・・・・・。」
電話の主「おお、小僧か?やっと出たな。」
皇の耳に入ってきた声は、聞覚えのある少々ドスの利いた年配の男性の声。
しかし、今回の声は急いでいる様だった。
皇「ああ、権藤刑事ですか?こんな時間に何のようですか?」
権藤「実はな、一刻も早く朝学に来て欲しい。」
皇「はっ??」
権藤「詳しい事を話している暇は無い。こっちに来次第、詳しく説明するから
とにかく今は、早く来てくれ。じゃあな。
プツッ・・・・・・・・・・・。
ツー、ツー、ツー、・・・・・・」
権藤はほぼ1方的に喋ると、勝手に電話を切った。
皇「何なんだ、一体・・・・・・・・・・・・?」
でも今の権藤刑事の様子はただ事じゃないな。」
皇は不吉な予感がした。
夕刻に見たあの夕陽が脳裏を過ぎった。
気が付くと、自分の心臓が破裂しそうなほどバクバク言っているのに気付いた。
皇は今まで着ていた制服のまま、靴を急いで履くとドアに鍵も掛けず、部屋を
飛び出した。
皇の頭の中では、最悪の事態を想定していた。
- 466 名前:あsんlkd 投稿日:2004/03/14(日) 03:26
- ためし大鹿
- 467 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/15(月) 20:48
- 「あsんlkd」さん、どうもです。ってか「ためし大鹿」も含め、これ何て
読むんですかね?俺にはわかりません。
後日、説明なり、付け足しなり、お願いします。
- 468 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/15(月) 21:06
- 皇が息を切らしながら、駅から学校までの直線の道路を走っていた。
考えたくも無かったが、どうしても頭の中では最悪の事態を想像している自分
がいた。
どんなに、どんなに走っても、その思考は止まる事はなかった。
皇がようやくの事で朝学の正門の前まで来ると、そのライトは光ってはいなか
ったが、数台のパトカーが校内の駐車場内に止まっていた。
数にして5〜6台。
やはりただ事ではない。
皇にそう思わせるには充分なほどだった。
皇がまだ収まらない呼吸のまま、校舎を眺め回した。
やはりどこかいつもの「私立朝日ヶ丘大付属学園高校」とは明らかに違ってい
た。そこは悪魔の巣窟かのようだった。
権藤「おお!小僧!やっと来たか?」
皇の視線の向こうから、権藤刑事が走りながらやって来た。
皇「一体、何が起こったんですか?」
権藤「詳しい話は後だ。とにかく今は、俺について来い。」
それだけ言うと、権藤刑事はまた今来た道を戻っていった。
皇もしょうがなく、その後姿を追った。
- 469 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/15(月) 21:17
- 権藤「実はな・・・・・・・、小僧・・・・・・・・・。」
権藤と皇がダンスルームへと続く廊下を歩いている時、権藤が皇に話しかけた。
皇「また・・・・・・・・・・、事件が起こったんですか?」
皇が痛いところを突く。権藤も思わず眉を顰める。
権藤「まだ確実にそうだとは言えないがな・・・・・・・・。」
皇「どう言う事ですか?」
権藤「実はな・・・・・・・・・・・・・・・・。
今回の重要参考人の1人が行方不明になった・・・・・・・・・・・。」
皇「な、何ですって・・・・・・・・・・・。」
皇の足が止まった。
自然と権藤の足も止まる。
- 470 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 23:59
- なんか、最近細切れなかんじ。更新とかはある程度まとまってからしたほうがいいと思いますよ。こういう連載物ってのは、中途半端なとこで切れるのが連続すると、読者の読み気が無くなってしまいます。まあかなり主観的な意見なんで無視してもらって結構です。中身が良いだけ、もったいないな、と思ったもので・・・
- 471 名前:北斗 投稿日:2004/03/17(水) 01:01
- はじめまして。
今日一日で読まさせていただきました。
本当に面白いっす。
犯人も全然わからん。
しかも、行方不明者が…。
高橋ではないように願います。
彼女だったらなんか切ない。
- 472 名前:風紀 投稿日:2004/03/17(水) 16:01
- 初めまして。
いやぁ、すごいです。楽しいです。
犯人が全くわからくて、思わず画面に向かって
「誰なんだよ〜!」と叫び出しそうになっています(笑
これからも楽しみにしていますので頑張って下さい!
- 473 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 20:53
- 「名無し飼育」さん、どうも貴重なご意見ありがとうございます。
「だめだし」ありがとうございます。
どうもすいません。この小説を読んで不快な気分になられた全ての読者様に深く、お
侘び申し上げます。
なにせ、1人暮らしの準備や、自動車学校、大学入学手続きなどが忙しくまと
まって更新する暇が無いのが現状です。
出来るだけ、毎日更新しようと想いましたが、逆にこんな事になってしまいま
した。以後気をつけます。
「ここが悪い、ここを直した方が良い。」なんて言って頂ける読者さんがいて
くれて、本当にうれしく想います。
名無し飼育さんに限らず、この作品を読んで頂いて「ここが悪い、ここをこう
直した方がもっと良い」なんて言うご意見がありましたら、お気軽に言って頂
いて結構ですので、ご協力のほどよろしくお願いします。
- 474 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 21:03
- 「北斗」さん、初めまして、こちらこそよろしくお願いします。
この駄作をたった1日で読んでいただけるなんて、嬉しいですね。感激です。
この作品自体、レス数が500弱ありますが、お返事レスで1人に1レス使用
しているので、実際のところ、それ程長くは無いとは想いますが、それでも、
1日で読んで頂ければ、やはり嬉しく想います。
「聖なる竜騎士」と名乗ってから推理小説を書くのは初めてで、出来上がりも
決して満足のいく作品では、はっきり言ってありません。
ストーリーに関してはまだ良いかもしれませんが、
トリックに関してはまだまだ練りこみ不足な気がします。
こんな駄小説ですが、そろそろ終盤、佳境に突入します。
最後の最後まで、応援よろしくお願いします。
- 475 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 21:13
- 「風紀」さん、もれまた初めましてですね。
ありがとうございます。
こんな嬉しい感想レスを頂いたのは久しぶりです。
自分も、風紀さんの感想レスを頂いた時、「ありがとうございま〜す。」と
思わず叫びそうになりました。
北斗さんや風紀さんの様に、こんな作品の新読者が増えてもらって本当に嬉し
く感じます。
前に書きましたが、今本当に多忙な日々を過ごしていまして、まとまった更新
が出来るのは日曜日くらいなので、皆さんご了承ください。
皆さんにご迷惑おかけします。
- 476 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 22:44
- 皇は今だ信じられない、と言わんばかりの驚きの表情を見せる。
皇「い・・・・・・・・、一体誰が・・・・・、一体誰が行方不明なんですか?」
権藤「実はな、朝日ヶ丘大1回生の矢口真里だ。
矢口が昨日、外出する際に母親に目撃されて以来、今の今まで家に戻る
どころか、一切の目撃証言が無いんだ。」
皇「や・・・・・・矢口さんが・・・・・・?」
権藤が止まっていた足が再び動き出した。
権藤はポケットから警察手帳を取り出して、ペラペラと捲り出した。
権藤「詳細についてだが、
現在行方不明の矢口は昨日の朝、母親に翌日の朝には戻ってくる、と
言い残し家を出た。
しかし、その翌日の昼になっても当の矢口は家に帰ってこない。
事実、矢口は女友達宅に宿泊する事もしばしばあったらしい。
しかし、無断外泊した事は無かった為、昨日の朝〜今日の夜までの丸2
日間も姿を見せない娘が気になり、母親は矢口の部屋に入ったら、
机の引き出しから見慣れない紙切れが目に付いたらしい。
母親がその紙切れを取り出したら、中身はこんな物だった。」
権藤は今持っている手帳に挟まっていた白い紙切れを皇に手渡した。
- 477 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 23:05
- 皇は無言のままその紙切れを受け取った。
皇がその手紙らしき紙切れを広げて、眼を通してみた。
その紙切れは、
『 親愛なる矢口真里様へ
我は今回の事件の当事者「煉獄仮面」である
「石川梨華」及び「藤本美貴」に地獄の鉄槌を下したのは
何を隠そう、この私である
もしこの儀式の真実を知りたくば
○○日(昨日)に朝日ヶ丘大学付属学園高校に来てもらいたい
待っている
煉獄仮面 』
と書かれた真っ白な手紙だった。
この手紙はタイプライターか、ワープロか、パソコンか分からないが、明らか
に手書きではなく、機械的なインク文字だった。
皇「こ・・・・・・・、こ・・・・・・・・、こ・・・・・・・・、
これは・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇はその手紙を持った両手が震え上がり、声が詰まった。
権藤「ああ、恐らく矢口は何らかの方法によりその手紙を受け取った。
そして、その手紙に乗せられてこの学校にやって来て、
犯人に捕まり、どこかに監禁されているか、
もしかしたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
権藤はまた口を閉ざし、踵を返した。
- 478 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 23:33
- 皇「もしかしたら・・・・・・・・・・・・・・。」
暗さが滲み出ている廊下で真っ黒な沈黙が現れる。
権藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
しかしな、まだそうと決まったわけではない。
この学校だって、そんじょそこらのセキュリティーシステムじゃないん
だ。人1人殺害して始末するどころか、拉致して何処かに隠すなんて事、
できるはずもないだろ。
その事は小僧、貴様にも分かっているはずだぞ!」
権藤は呆然としている皇に活を入れる。
皇「・・・・・・、ええ。そうですね。その通りですよ。
まあ、石川さんみたいな事件は起きてますがね。」
皇も活を入れた権藤に対して、今の精一杯の皮肉を言ってのけた。
権藤「そこでだ、今回は今回の事件の重要参考人全員に集まってもらった。
今まで狙われたのが重要参考人だけなんだ。
この学校内には、今現在手の開いている俺の部下を総動員している。
重要参考人をここに集めた方が、各々ばらばらにいるよりも、むしろ
安全と言うものだろう。
それに、行方不明の矢口を探すには数は多い方が良いしな。」
皇「それに、犯人は同じく重要参考人の中に居ると考え、
重要参考人全17人を警察の目の届くところに置いておけば、怪しい行動
をしたものなら、すぐに分かる・・・・・、って魂胆でしょ?」
権藤「はは・・・・・、お前には何もかもお見通しってわけか。」
皇の鋭い言葉に権藤は笑わずにはいられなかった。
権藤「さあ来い!ダンスホールに全員待っている。」
権藤と皇は歩き出した。
- 479 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/19(金) 17:58
- 更新お疲れサマです。
一人暮らしの準備ですか・・・大変ですね。
またーり待ってますから無理に毎日更新しなくても大丈夫ですよ?
って週一で少量更新の自分が言うのもなんですが・・・w
では続き楽しみに待ってます。
- 480 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/21(日) 17:45
- 「名も無き読者」さん、お久しぶりです。
毎日更新しなくてもいいですよね?
先程?に、日曜日更新と言いましたが、余り気にしないで下さい。
日曜日に更新、それプラス不定期に更新しますので、
「なんだよ、今日、日曜日じゃないのに更新してあるじゃん。」
なんて言わないで下さい。
自分で言うのも何ですが、最近ヒント出してないですね。
もう少ししたら、出しますので待っていてください
- 481 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/21(日) 23:43
- 皇と権藤刑事が揃って、ダンスホール内に入ってきた。
中で待機していた権藤刑事の部下達が、背筋をピシッと正した。
待っていた高橋達も目線を2人に向けた。
権藤「え〜〜、皆さん。お待たせいたしました。
詳しい事は、そこに立っている私の部下が話した事と思いますが、
皆さんも知っています、矢口真里が昨日の朝、自宅を出てから現在まで
行方不明であります。
そして、矢口真里自身の部屋から、今回の事件の首謀者『煉獄仮面』
と名乗る者が矢口真里宛に書いたと思われる手紙が発見されました。
その手紙によると、その『煉獄仮面』と名乗る者はこの学校内に、矢口
真里を誘い出したと思われます。
私達警察は、今現在、時効成立間近な事件の捜索のため、人手が不足し
ています。
そして、重要参考人の皆さんを警護する意味も込めて、17人の皆様に
は今回、行方不明の矢口真里の捜索にご協力をお願いしたい限りでござ
います。」
権藤刑事は、いつも以上にはっきりとして厳格な口調で目の前の『17人』に
話した。
- 482 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/21(日) 23:56
- 石黒「私達で宜しければ、喜んで。なあ、福田君?」
石黒校長が立ち上がった。
福田「ええ、勿論ですよ。」
福田も続いて立ち上がる。
市井「こんな老いぼれで良ければ・・・・・・。」
用務員の市井も同じく。
石黒「皆さん。やりましょう!」
校長の一声で、周りにいた、中澤・飯田・安倍・吉澤・加護・辻・高橋・小川
新垣・紺野・亀井・田中・道重が各々様々な事を叫びながら果敢な勇者の様に
立ち上がった。
中澤「でも、刑事さん、私達は安全なのでしょうか?
今の話からすると、この校内に殺人犯が潜み隠れているって言う事は
考えられなくは無いですか?」
中澤が不安そうな口調で権藤に対して話した。
権藤「ご安心下さい!人手が足りないとは言え、何十人の警察官がいます。
相手もそうそう、簡単には手は出せませんよ。」
権藤は、自信満々に言うが、他の者にとっては根拠の無い自信にしか映らなか
った。
しかし、そうは言え退くに退けない、その場にいる全員が『矢口真里捜索』に
乗り出した。
- 483 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/22(月) 00:11
- 権藤「では皆さん。集合時間を決めましょう。
現在の時刻が、9時を少し回ったところですね。
では今から1時間後の10時ちょうどに、またこのダンスホールに戻っ
て来て下さい。
10時までにここに集まらなかった場合は、犯人とも見なす場合があり
ますので、皆さんご注意下さい。
あと、出来るだけ数人のグループで行動してください。
では皆さん、お気を付けて。」
権藤刑事が全員に言うと、皆、バラバラになって捜索に出かけ始めた。
皇は誰よりも先に行動し始めた。
しかも1人で。
誰かと一緒に居ることが辛かったのか、はたまた、誰かが一緒に居ると邪魔に
なるだけだ、と思ったのか、それは分からなかったが皇は1人だけで走り出した。
左手に、配られた小さな懐中電灯を掲げ、まさかの最悪の事態を頭の中で払拭
しきれぬまま、ダンスホールから伸びる廊下を突っ走った。
途中で、権藤刑事の部下の警察官を追い抜いた。
しかし、皇の視界には他の何も入らなかった。
- 484 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/22(月) 00:27
- 暫く校内を走り回って、すっかり息も切れ始めた頃、皇は静かに立ち止まり落
ち着いて考え始めた。
皇(そう言えば、今まで気にも留めなかったけど、朝学の校内はずっと前から
権藤刑事の部下の警察官の人が捜索しているはずだ。
恐らく、俺達の到着するずっとずっと前からだろう。
それなのに、矢口さんが見つかっていないって事は、恐らく矢口さんは少
なくとも朝学の校内には居ない確率の方が高いだろう。
この学校は大学とも敷地が繋がっているし、そもそもこの高校自体の敷地
面積が異常なまでに広い。
昔の古い木造校舎のある場所も含まるから、仮に拉致したとしたら校外の
何処かに隠す方が、校内に隠すよりずっと隠しやすい。)
皇はクルリと方向転換すると、近くにある外に繋がるドアを開け放ってそのま
ま校外の、綺麗に舗装されたレンガの敷き詰められた歩道に出た。
外は何個かの外灯はあったが、その外灯の光の届かない場所は当然、真っ暗闇だ。
手に持っている懐中電灯で照らしてみるものの、良く見えない。
皇「こりゃぁ、骨が折れそうだ・・・・・・・・。」
皇は懐中電灯を持っている拳に力を込め、そのまま漆黒の闇の中に入っていった。
- 485 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/22(月) 00:40
- 外で吹く風は、普段皇が屋上で思う存分浴びているそよ風とは、全くの別物だ
った。
体や心の芯までも凍てつかせる様な冷気を帯びた風が、皇の全身を包み込む。
その凍てつく風で、周りに聳える欅の木も、派手な音をかき鳴らす。
そんな音が、余計、気味の悪さを奏で異常なまでにこの暗闇とシンクロする。
皇「さすが、学校の教育目標の1つに『自然との調和』を掲げるだけあって、
本当に広いし、木々が沢山あるな。」
皇はぼやきながら、足を1歩1歩進める。
皇(俺達がこうして探して、矢口さんが見つかれば、それに越した事は無い。
だがしかし、不吉な予感がする。
今日の夕方に見たあの紅蓮の夕陽といい、俺の第6感といい、そんな無事
に事が済むとは、到底思えない。
最悪の事態、矢口さんはもうこの世には居ないって事も、充分考えられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
いや、まさか、考えすぎか?
大丈夫さ、矢口さんはきっと無事だ。生きているはずだ。
とにかく急ごう。時間が・・・・・・時間が無い。)
皇は自分で自分に言い聞かすように、精神を落着かせた。
- 486 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/22(月) 00:51
- 皇は必死になって学校の敷地内を見て回った。
時間の経過さえ、忘れていた。
季節的には、冬はまだまだ先なのだが、夜の風はこうまで冷たい物なのか?
と皇は痛感していた。
皇がふと腕時計に眼をやると、既に40分以上経っていた。
それでもまだ、全体の3分の1程度しか見て回っていない。
皇以外にも、何人かの警察官の人が校舎外の敷地内を見て回っているだろうが、
到底、あてにはならない。
皇(くそっ!このままじゃあ埒が開かない。
俺がこう、まごまごしている間にも、矢口さんは危険な目に合っているか
もしれないのに・・・・・・・・・。
俺は何をしているんだ?)
皇は悔やんでも、悔やみきれない衝動に駆られた。
皇にはとにかく時間が無い。
10時になれば、権藤刑事の言うとおりダンスホールに戻らなくてはいけない。
しかし、そんなことをしている暇は無い。
今は一刻の猶予も許されない。
そんな事ばかりを考えてしまう。
皇の焦りが更なる焦りを生む。
皇は更に足を速める。
- 487 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/22(月) 01:05
- 皇が少し疲れて、頭を冷やそうと休憩していた。
皇(落着け。落着け。
まず間違いなく、今回の犯人はあの16人の中の誰かであるはずなんだ。
しかし、その16人全員は今、矢口さんを探している、って言う事になっ
ている。
もし、まだ矢口さんが無事で、探している振りをしてこの隙をついて殺害
に及ぼうとしても、そこら中にいる警察官に怪しい行動がばれてしまう。
つまり、今この状況で権藤刑事の言うとおり、矢口真里殺害を決行できる
はずが無いんだ。
そうだ、落着こう・・・・・・・。)
皇が必死で納得しようとしていた。
すると
ガサ!!
後方で何やら不審な音が聞こえた。
皇は条件反射で、その身を翻した。
一瞬、「煉獄仮面か!?」と思い戦闘体勢に入る。
市井「おや、驚かしてすまないね。」
そこから現れたのは、いつも通りの用務員の市井さんであった。
- 488 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 10:33
- 皇「あ、市井さん・・・・・・・・。」
皇はふっ、と右拳を緩めた。
皇は一瞬、『煉獄仮面』かとも思ったが、普通に出てきた市井に緊張感が少し
途切れた。
皇「市井さん、こんな所で何してるんですか?」
市井「そんな君こそこんな所で何してるんだい?
私は今までこっちの校舎の外を調べていた所だよ。」
皇「ああ、そうだったんですか。
実は俺も、途中で矢口さんが校舎の外に居るんじゃないかと思って、向こ
うの方から外を探していたんですよ。
どうでした、市井さん。矢口さん見つかりましたか?」
市井「いや・・・・・・・・・・・。
私も尽力で探してはみたんだが、気配すら無いんだよ。
皇君、君の様子なら君も見つからなかった様だね。」
皇「・・・・・・・・・・・はい。」
皇は俯いた。
- 489 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 11:01
- 市井「皇君、どうやら矢口君は校舎外じゃなくて校舎内にいるのかもしれない
な。
あとは頼りないが、警察の人に任せて、私達はもう1回校舎内を調べて
みようじゃないか。」
皇「・・・・・・はい、そうですね。」
皇がそう言うと、用務員の市井は自分の足元を持っていた懐中電灯で照らしな
がら、近くの校舎出入口に向かってゆっくり歩き出した。
皇は市井と数メートル間隔を空けながら、市井の後を付いて行った。
その数メートルと言うのも、大人が大股1歩ではちょうど届かない範囲であった。
皇が市井と数メートル間隔を空けたのは、まだ市井が犯人では無いと確信して
いないからであって、不意打ちを喰らわないようにする為でもあった。
皇と市井は広すぎる校舎内の様々の場所を探し始めた。
暫くの間、皇は市井と一定の間隔を空け続けて歩いたが、市井は1人で黙々と
懐中電灯を右へ左へと揺らしながら、失踪した矢口真里を探していた。
皇は市井と一定の間隔を空け続けた。
市井が犯人だとは思ってはいなかったが、犯人で無いとも思ってはいなかった。
皇は出来る限り、市井の間合いに入らないようにと努めた。
市井が足を止めたら、同じく止めて、足を進めたら、同時に進める。
しかし、当の市井はそんな皇をお構い無しに、手馴れた手つきで校内をゆっく
り見回っている。
けれども、皇は市井の背後でその鋭く研がれた眼光を絶やす事はなかった。
『怪しい者は犯人だと思え』
過去17年間で皇が培った鉄則に従ったまでだった。
- 490 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 11:22
- 校舎内の廊下は、天井の蛍光灯が光を発してはいたものの、外部の夜の黒く濁った
光が入って来るので、あまり見通しは良くない。
市井は無言で歩き続ける。
皇も間隔を空け過ぎず、詰め過ぎず市井の後を歩いていた。
遠くでは何人かの警察官の声が聞こえるだけで、あとは何も聞こえない沈黙の
空間である。
道なりに歩いていくと、小さな講堂の前まで来た。
そこで市井は足を止めた。
市井「ふう・・・・・・・・・・・・・。
矢口さん、見つからないですね・・・・・・・・・・。」
皇「ええ・・・・・・・・・・・・。」
市井の言葉に、皇が返事を返した。
市井「動きっぱなしで疲れましたね。少し休みますか?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・。」
今度は市井の言葉にも答えないで、代わりに警戒の目線を向けていた。
市井が講堂の中の1つの机に座る。
皇は両手をポケットに入れながら、さりげなく視線を市井に向けていたが、
市井はさしも特にこれと言った行動は示さなかった。
また暫く、漆黒の沈黙が続いた。
- 491 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 11:44
- 市井「少し、昔話でもしようか?」
いきなり市井が口を開いた。
皇「は?」
市井「私は昔、結構な悪でね・・・・・・・・・。
ろくに高校にも行かずに、毎日毎日地元の友人と一緒に夜まで遊び呆け
て、警察のお世話に何度もなっていましてね・・・・・・・。
まあ、若気の至りってやつかな。
とにかく、毎日がスリルと刺激の連続だった。」
皇「は・・・はあ・・・・・・・・・・。」
市井の話にどう答えて良いか分からず、とりあえず相打ちをしてみた。
市井「その後は言うまでも無い。
社会人になってみれば、今までの様には行かない。
就職しようにも、高校も出ていないし警察のお世話になった落ち毀れを
雇ってくれる所なんて何処にも無い。
そんな私が路頭に迷っている時、私を用務員として雇ってくれたのが今
の校長先生の石黒彩だった。
当時、理事長や他の先生方の意見も聞かずに、私を雇ってくれたらしいがな。
正に、地獄で仏に会ったようだった。
そのお陰で、今の私があるものだ。
そして私は、この命尽きるまでこの学校に尽くそうと思っている。」
皇「そうですか・・・・・・・・・・・・・。」
皇はまた相槌をまた打った。
- 492 名前:六の目ダイス 投稿日:2004/03/29(月) 11:46
- 更新乙ッス。皇さんは中々警戒心が強くて
頼もしいですね。
ヤグさんどこいったぁー!
- 493 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 13:45
- 「六の目ダイス」さん、初めましてですね。
皇君が警戒心が強いのも理由がありそうですね。
矢口さん、一体今何処に居るのでしょうか?
犯人は一体?
動機は何か?
また1人、読者さんが増えて嬉しい限りです。
今後ともよろしく。
- 494 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 13:59
- 市井「私がこの学校の為、そして今回の事件の為に尽力を尽くすのは、その為だ。
皇君、噂によると色々大変らしいじゃないか?
警察の方から捜査の協力を依頼されているとか・・・・・・・。
君は一体何のために?
何が君をそこまで駆り立てているんだい?
私は前々から君に聞きたかったんだ」
皇は右手で頭をポリポリかくと、躊躇ったようにこう答えた。
皇「理由ですか・・・・・・・・・・・・・・?」
また間が開く。
市井「ああ・・・・・・・・、いいんだ。
言いたくなかったら言わなくても。
人には言いたくない事の1つや2つはあるものだからね。」
市井が申し訳なさそうに言うと、
皇「強いて言えば・・・・・・・・・・・・・・・・・、
『宿命』・・・・・・・、ですかね。
自分でも良く分かりませんが・・・・・・・・・。」
と答えた。
- 495 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 14:15
- 市井「『宿命』か・・・・・・・・・・、どこかのドラマのワンフレーズみたいだな。
・・・・・・・・・・・・・・・。
よし、そろそろ行くかな。」
市井が再び足を動かした。
皇「あ、じゃあ俺も・・・・・・・・・。」
皇が今まで腰掛けていた机から立ち上がると、
市井「いや、皇君。君はいいよ・・・・・・・・。」
市井が言った。
皇「え?いいってどういう意味ですか?」
市井「皇君、君は疲れているんじゃないか?
顔にも疲れの色が濃く出ているよ。
何があったか分からないが、朝日ヶ丘署で見かけたときよりも、随分
疲れた印象を受けるよ。
悪い事は言わない、君は早めにダンスホールに行って休んでいたら良い。
まだ10時までもう少し時間が有るから、私はもう少し矢口さんを探す
としよう。」
皇は自分の左腕の腕時計を見た。
時計は数字の10と11のちょうど間を、長針が指していた。
皇「分かりました。市井さんの言うとおり先にダンスホールに戻って休んでい
ます。
市井さんも、くれぐれも犯人に気を付けて下さい。」
市井「ああ・・・・・・・・。分かっているよ。」
市井は講堂を出ると、懐中電灯を点け直すと何処かに向かっていった。
市井の足音が次第に小さくなっていき、そして闇中消えていった。
- 496 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/29(月) 14:31
- 皇は市井の足音が聞こえなくなると、講堂の外に出て近くの水飲み場に向かった。
誰も居ない、電気の点いていない、月明かりのみが照らし出す、ただの暗闇の
水飲み場に皇はいた。
蛇口を全開にして、出てきた水道水を顔に勢い良く叩きつける。
手から毀れた水道水が落ちる音、掌に溜まった水を顔にぶつける音、
それ以外の音が全くしない空間だった。
皇が少し落ち着くと、顔を上げた。
そこには横に長い鏡が置いてあった。
鏡には皇の顔が浮かび上がっている。
しかし、そこに浮かび上がった顔は皇自身の知っている自らの顔ではなかった。
市井の言ったとおり、心の奥底に溜まりに溜まった、全ての疲労感が滲み出た
死神の様な顔だった。
皇自身、自分の顔を見てここまでぞっとした記憶は無かった。
ここでやっと、皇は自分自身がかなり危険な状態にある事を実感した。
皇「ふう・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その溜息はかなり重々しかった。
皇はゆっくり回れ右をすると、そのままダンスホールへと向かった。
- 497 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/01(木) 00:38
- 更新お疲れサマです。
って遅いですねw
痛々しいですな、皇君。。。
頑張って彼女らの危機を救って欲しいものです・・・。
次もマターリお待ちしてます。
追伸 同板・希望峰の名も無き作者は僕と同一人物だったりしますw
レスありがとうございました(ぺこり
- 498 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 16:27
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
「希望峰」もお疲れ様です。
なんだか、皇君の出番が増えて、一方で娘。メンバーの出番が激減した気がするのは
自分だけでしょうか?
「彼女達の危機を救って欲しい。」、実はこの言葉はこの作品のサブテーマの
1つにもなっています。
一体どういう意味なんでしょうか?
さあ、現在行方不明の矢口さんは一体何処へ?お楽しみに。
- 499 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 21:31
- 皇はダンスホールに無事到着した。
ダンスホール内には何人かの警察官がトランシーバーの様な物を持って、忙し
なく連絡を取り合っているようだった。
皇はダンスホール内のステージ脇に腰を下ろした。
頭が痛く、ひどく倦怠感がしたので1つ深呼吸した。
周りに数人ではあるが警察官が居たからであろうか、皇は突然の睡魔に襲われた。
両膝を曲げた状態で、膝の上に腕を固定して少しの間、寝る事にした。
- 500 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 21:45
- 真っ暗な闇の中、辺り一帯が薄らぼんやりした視界で、2人の大人の男女と、
1人の2〜3歳の子供が手を繋いで歩いているのが分かる。
皇は夢の中で、幼き日の自分の姿を見ていた。
夜遅く、夜中の大きな十字路を3人が差しかかっていた。
3人仲良く手を繋いで、何やら楽しげな話をしている。
信号機の明かり、月明かり、外灯の明かり、看板のネオン灯、いずれも微かな
光が3人を舞台のように、うっすら照らし出している。
男性「祐一郎。今日の遊園地は楽しかったな。」
皇「うん!!」
女性「遅くなっちゃったわね。早く帰ろうね。」
夢の中、3人は笑顔が絶えなかった。
- 501 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 22:06
- 3人がゆっくり交差点に向かって歩いている。
辺りに人通りは全くといって良いほど無い。
眼の前の信号機が青色に変わり、3人がそのまま歩を進めている。
刹那!
十字路の比較的見通しの良い交差点であったが、曲がり角を3人に向かって
大型の4トントラックがヘッドライトをギラギラ光らせながら、突っ込んで来た。
確実に法定速度は振り切っているだろう、とてつもないスピードで走ってくる。
当然、ハンドルを取られたのであろうカーブは曲がりきれず、3人に向かって
突進してきた。
皇は動けなかった。
2〜3歳の子供のくせに、既に死を覚悟していたのかもしれない。
しかしだった、
女性「祐一郎!危ない!!」
女性がそう叫び、両手で皇を道路の向こうへ突き飛ばした。
ドン!!
突き飛ばす際に、鈍い音が響く。
キキーーーーーー!!
ドン!!ガシャーーーーーン!!
バーーーーーン!!!
- 502 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 22:29
- 女性が皇を突き飛ばすが早いか、その瞬間、激しい爆発音が辺り1面に響き渡る。
黒々とした凄まじい爆炎、皮膚を焼き付ける熱波、呼吸困難を引き起こす煙幕、
それらの全てが一気に皇に襲い掛かる。
事故を起こした大型トラックはブロック塀に激突して大炎上していた。
すぐさま、そのトラックの荷台や座席から暗くてよく見えないが、5〜6人の
人間が出て行くのが見えた。
周囲に大勢の野次馬が集まってきた。
しかし、皇にとってそんなことははどうでも良かった。
皇はただその炎上したトラックを見つめる事しか出来なかった。
ただただ、夕方に見た紅蓮色をした夕焼けと同色を成していた炎を見つめる事
しかできなかった。
あの時、あの夕焼けを見てやけに不吉な気がしたのは、この日の火炎を思い出
してしまったからなのであろうか?
皇「・・・・・・・・・ん。
・・・・・・・・・・・・さん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・うさん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
お父さん!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
お母さん!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇祐一郎の悲痛な叫びが、漆黒と紅蓮色のシンクロする天空に木霊した。
- 503 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/02(金) 23:04
- 権藤「おい!!小僧、さっさと起きろ!!」
皇がぼんやりとした意識で、聞いた事のある濁った声が皇の夢を醒ます。
ここで皇はようやく、今まで自分が夢を見ていたことに気付いた。
皇「え・・・・・・・・・・。ああ、分かりました。(何だ、また夢か。)」
権藤「もう10時はとっくに過ぎてるぞ、さっさと眼を覚ませ。
貴様のせいで、全員の帰る時間が延びるだろ。」
権藤が皇を叩き起こすと、17人を1箇所に集めると話し始めた。
権藤「え〜〜、皆さん。今回はお疲れ様でした。
皆さん同様、我々警察も全力を尽くして行方不明の矢口さんを捜索しま
したが、発見に至りませんでした。
皆様お疲れ様でした。今日のところはお引取り頂いて結構ですので、
皆様、お気をつけて・・・・・・・・・・。」
権藤がそう言って解散の言葉をかけようとした、ちょうどその時、
ドカーーーーーーーーーーン!!!!
何処からともなく竜の咆哮の如く、轟音が鳴り響いた。
- 504 名前:北斗 投稿日:2004/04/03(土) 22:38
- 更新されてる・・・。
しかも、矢口発見されてない。
さらに、ドカーーーーーーーーーーン!!!!
死ぬな、矢口!生きろ、矢口!
犯人許さん。
あー、やっぱり面白いです。
これからも更新大変でしょうけど、頑張ってください!
- 505 名前:uranai師 投稿日:2004/04/12(月) 21:16
- >>504さんネタばれ注意報でっせ。気をつけてください。
作者さん頑張ってくださいね。主人公にも期待がもてます。
- 506 名前:北斗 投稿日:2004/04/13(火) 19:52
- >>505
すみません。以後気をつけます。
- 507 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/21(水) 13:19
- 皆様、誠に申し訳ございませんでした。ほぼ3週間も更新が止まってしまって大変
迷惑をかけた事を深く、深くお詫び申し上げます。
実を言うと、今、自分は1人暮らしなのですが、早い話がまだ家出インターネットが
できない状態なんですよ。
実はこれ、大学のパソコンを使ってます。
おそらくインターネットが導入されるのは6月ころになると思います。
でも、ちょくちょくまた大学のパソコンを使って更新しますので、多少は更新できると
思います。
この小説を呼んで頂いている読者の皆様には引き続きご迷惑をおかけすると思いますの
で、なにとぞよろしくお願いします。
- 508 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/21(水) 13:24
- 「北斗」さん、こんな小説へのご意見ありがとうございます。
「ドカーーーーーーーン!!!」とは一体なんでしょうか?
まさか行方不明の矢口さんに何か関係があるのでしょうか?
てか、犯人は一体誰なんでしょうか?
北斗さんは犯人の目星はついているのでしょうか?
書いているこっちもハラハラします。
続きもこうご期待。
- 509 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/21(水) 13:32
- 「uranai師」さん、初めましてでしょうか?
では改めて初めまして。
uranai師さん、大丈夫ですよ。この程度だったらネタバレにはならない、とは自分では
思いますけどね。
程度の問題ですけど、この位多少ならまだ本編には差し障りが無いかとも思われますが・・・・・・・・。
おそらく次回の更新は日曜日あたりだとは思います。
あくまでも予定ですけどね・・・・・・・。
- 510 名前:KAZU 投稿日:2004/04/25(日) 14:50
- 初めましてですね。何度か見ました。とても面白いですね。次回の日曜日とは今日ですかね。楽しみです。また何回か顔出しますので宜しくです
- 511 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/26(月) 14:58
- 「KAZU」さん、初めまして。
すいません、日曜日に更新するはずだったのですが、諸事情により1日遅れで今日、
月曜日に更新させていただきます。
また何度かと言わずに、いつも顔を出していただきたいです。
皆さんのご期待に添えられるようにがんばります。
- 512 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/26(月) 15:09
- 地響きを立てるかの様に空気を伝ってくる衝撃はダンスホールにいる全員の体を震え
上がらせた。
誰もがその轟音に意識を奪われ立ち尽くした。
権藤「何だ?一体何事だ、何なんだこの馬鹿でかい音は?」
安倍「何?何の音??」
小川「耳が痛い。」
田中「すっごい音がしたけど・・・・・・・。」
その場にいた全員が混乱した。
市井「今のは・・・・、もしかしたら、爆発音なんじゃあ・・・・・・・。」
市井の何気なく発したその言葉に誰もが絶句した。
そして最悪の事態を、誰もがまったく同じことを頭の中で想像した事だろう。
権藤「爆発音・・・・・・・・・・・・・・。
だとしたら、一体何処から・・・・・?」
市井「お・・・・・恐らく、学校敷地内の隅のほうにある古くなった倉庫の方からだと
思いますが・・・・・・・・・。」
市井は恐る恐るそう言った。
- 513 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/26(月) 15:27
- 権藤「倉庫か・・・・・・、よし分かった。お前達、行くぞ!
市井さん、誘導よろしくお願いします。」
権藤はそう言うと部下の警察官を連れて、堰を切ったかのようにダンスホールを抜けて
走り出した。
飯田や安倍達も、警察に遅れて一斉に走り始めた。
勿論、皇も一緒に走り始めた。
権藤と市井と部下の警察官は真っ暗で長い直線の廊下をひた走っていた。
市井と警察官の数人が持っていた懐中電灯の明かりだけが、足元を小さく照らし出して
いる程度で、視界の殆どは真っ暗闇に遮られていた。
外界の月星が鈍く光沢を発していたのが、不気味に感じられるほどだった。
そのすぐ後を高橋や飯田や安倍や吉澤達が、見失ってたまるかと言わんばかりに、
全力疾走で追いかけていた。
ただひたすら長い、地獄にでも繋がっているかの様な廊下を走っていた。
途中で曲がり角を曲がったり、道なりに走っていくと目の前に分厚い金属製の扉が
市井たちの持っている明かりによって浮かび上がってきた。
市井「ここです、この扉の向こうです。」
市井はそう叫びながら、そのドアノブを勢い良くひねり、強く押した。
ドアは開いた。
- 514 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/26(月) 15:51
- 高橋達も、何とか市井たちに追いついて、今市井が扉を開けようとした所だった。
市井がドアノブを捻りながら、押すとそこにはゴウゴウと燃え上がる黒く黒煙を惜し
げも無く放つ、まさに地獄の業火が、周囲周りの漆黒と溶け合って見事なまでの調和
を取り出し荒れ狂っていた。
それは幻想的なほどの光景だった。
赤々と噴出す豪炎と、深まるばかりの漆黒と、炎から繰り出される小さく無数の空中を
舞う火の粉が、眼前に広がっているのだ。
すぐ隣に聳える、昔使っていたのであろう、古くなっていて腐れかけた木造の校舎壁が印
象的な旧校舎の壁や窓ガラスにまで、燃え盛り煌く紅炎の射影が、事細かに映し出さ
れていたのだから。
しばしの間、権藤を含め、そこにいた全員が立ち尽くした。
権藤「・・・・・・・・・・・、えーーーーい!!
お前達、何をぼさっとしている!
早く消防署に連絡だ!他の者は消火活動を行うぞ!」
権藤の一声により、今まで固まっていた警察官たちは、慌てふためきながらも急いで
行動し始めた。
近くにあった水道の蛇口からバケツに水をめい一杯張り、燃え上がる炎に投げかけた。
そこにいた飯田達も警察官たちの消火活動を手伝い、ホースをつないだり、水の入った
バケツを運んだりと、とにかく一生懸命だった。
- 515 名前:KAZU 投稿日:2004/04/27(火) 17:15
- またきました。この展開・・・もしかしたらもしかして・・・なんて思ってます。じゃあまた顔出しますので頑張って書いて下さい
- 516 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/08(土) 14:10
- 「KAZU」さん、ありがとうございます。
来ました来ました。この展開。
もしかしたら・・・・・・・・・・・・、もしかするかもしれませんよ。
また顔を出していただける日を楽しみに待っています。
- 517 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/08(土) 14:26
- しばらくして、近くの消防署から消防隊が駆けつけて、ようやく地獄の業火は鎮火した。
そこには、原形こそとどめているものの、真っ黒く焼け焦げた古びた小さな物置倉庫
が建っていた。
小さいとは言っても、普通の教室1室分位はある広さだったが、焼けきれていて、周りの
壁や、天井も老朽化のせいもあってか殆ど崩れかけていた。
飯田「ま・・・・・、まさか、この中に矢口が・・・・・・・?」
飯田が今まで溜め切って毀れた言葉のように吐いた。
中澤「や・・・・・・矢口!」
続いて中澤がその鎮火しきった瓦礫の城に走っていこうとしたが、すぐさま権藤刑事
によって遮られた。
権藤「待って下さい、皆さん。ここから先は危険です。
ここからは、我々警察の仕事です。」
権藤自身も、これほど事件が起こっていて、何も事件の尖閣も見えていないのに、
「ここからは、我々警察の仕事です。」などと頼りない言葉を言わなくてはいけない
事に、正直、苦しかった。
権藤刑事は他の部下を連れて、燃え尽きたその老城の如くの、廃墟と貸した物置倉庫
の中に高橋たちが見守る中、入っていた。
- 518 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/08(土) 14:40
- その物置倉庫の内部は、それの燃え尽きた外見よりも、異常に残酷なほどのものであった。
物置倉庫内に入ろうと、重い鉄製のドアを開いたとたん、内部に溜まった喉や鼻を
やられて麻痺しそうな、煤を多量に含んだ黒煙が噴出した。
中も光が全く届かない暗闇の世界。
持っていた懐中電灯も、宙を舞う煤や煙により、全くと言って良いほど意味をなさない。
足元も、物置倉庫にしまって置かれてあった物だったのであろう、黒一色に変色して
ごろごろ足元に転がっている。
まさに別世界だった。
外界は、空に浮かぶ金色に発行する月から発せられる神秘の月光を十二分に受けている
と言うのに、1つ鉄の扉を超えるとそこは世界の奈落の果てを思わせる死の世界。
皇も権藤に続いて物置倉庫内に恐る恐る入る。
手で鼻と口を押さえながらも、1歩1歩足元や頭の上を注意しながら進む。
酷く焦げ臭い臭いと、相当の間使われていなかったのであろう、かび臭さも少しだが
一緒になって鼻の粘膜を刺激した。
- 519 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/08(土) 14:49
- ある程度歩くと、今まで気付かなかったが、また新たな臭いが漂ってきた。
皇にも、権藤にも、決して感じ取りたくなかった臭いが嗅覚を刺激した。
皇「これは、まさか、死臭!?」
動物の肉が、焦げて腐ったような臭い。
皇も権藤も、その臭いに顔を歪め吐き気を催した。。
勿論、部下の警察官も一緒だった。
その臭いは、本当に強烈だった。
一発で、眠気やだるさや興奮も無に帰してしまうその悪臭。
胃に溜まった、消化物やら、胃酸やら、何から何までもが口に向かって酷い勢いで
逆流してくるようだった。
一緒に偏頭痛やめまいも引き起こす、その悪臭の発生源に皇達は、確実に近づいていた。
- 520 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/08(土) 15:01
- 警察官「ご、権藤刑事・・・・・・・。ここに何かあります!!」
不意に皇の前方で、権藤刑事の部下の警察官の1人が叫んだ。
権藤「何だと!?」
権藤が急いでその場に駆け寄る。
そこには我が眼を疑うような物があった。
そこには全体が黒焦げになっている、少し身長の低いマネキンのような物が横たわっていた。
そのマネキンは服も着ていたようだが、ただの炭になっていてよく分からない。
権藤「ま、まさかこれは・・・・・・・・・・・・・。」
皇は思わず、そこから目を背けてしまった。
それは筆舌し難くあまりにも無残で残酷な光景であった。
その後、権藤刑事によって本庁から鑑識班がこの現場に呼ばれた。
そして、その鑑識班の鑑識の結果、
そのマネキンが現在行方不明であった矢口真里、本人の遺体であると断定された。
- 521 名前:KAZU 投稿日:2004/05/09(日) 11:43
- やはりといえばやはりでしたね。これからどうなっていくのか楽しみです
- 522 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:00
- 「KAZU」さん、毎度ありがとうございます。
やはりと言えばやはりな結果になってしまいましたね。
矢口さん、すいませんでした。
これからまた新たな被害者が出るのでしょうか?
それとも、今度は新たな進展を生むのでしょうか?
それは自分にも分かりません。
こうご期待!!
- 523 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:16
- 鑑識「権藤刑事、どうやらこの遺体は現在行方不明の矢口真里、本人であることが
確認されました。
DNA鑑定はこれから行いますが、燃え残った衣類の中に、学生証が見つかり
ました。
遺体の身長からして、まず間違いないと思います。」
権藤「死亡推定時刻は分かりますか?」
鑑識「それは無理ですよ。今回の被害者は全身が激しく燃え爛れていた為、正確な死亡推定時刻
が分かりません。」
権藤「そうですか、分かりました。ご苦労様です。」
権藤は少し苦虫をかみ殺したような表情を浮かべた。
警察官「権藤刑事・・・・・・・・。
だめです、この物置倉庫の何処からも時限爆破装置のような物やその部品すら
見つかりません。」
権藤「なんだと!?そんな馬鹿な!」
権藤は、ちらりと背後の重要参考人である、飯田や安倍や高橋達が居る方を見て、
こちらの会話が聞こえていないことを確認すると、また小さな声で話し始めた。
権藤「そんな馬鹿なことがあるか。どう考えても今回の連続殺人事件の犯人は、
あの16人の中の誰かなんだぞ?
しかし、ダンスホールでここの爆発音が聞こえた時は、その16人全員が私と
一緒にいたんだ。
それは間違いない。
となると、必ず16人の誰かが、ここに時限爆破装置を作らなくてはならない
じゃないか!?
つべこべ言わず、とっとと探し出せ!!」
権藤の大声により、報告を行った警察官はまた慌てて戻っていった。
- 524 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:26
- その頃、皇は暗い中を、腰を下ろしつつ眼を光らせながら、床に落ちているすべての物に
集中力を配っていた。
とは言え、落ちている物は全て灰と化していたし、それら全て、この物置倉庫に元から置いて
ありそうな物ばかりだった。
とても、ここから有力な証拠のような物は見つかりそうもない。
皇(これと言ってめぼしい物は無いな。強いて言えば、この長めの導火線っぽい紐の
かすかに残った燃えカス程度かな。)
皇はその燃え残った黒い煤を軽く持ち上げながら、溜息混じりにそう思った。
その時、またどこかで若い警察官の声が響いてきた。
警察官「権藤刑事!
また、例の血文字が見つかりました!!」
一瞬にして、物置倉庫内に戦慄がひた走った。
- 525 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:44
- 権藤「何処だ!!何処から出てきた!?」
警察官「ここです。被害者が倒れていた壁のすぐ横です!」
警察官全員がその場に集まる。
そこには、やはり今回も被害者の出血で書かれたのであろう、禍禍しい血文字が
超高温の炎で焼けたせいであろう、かなり黒ずんで鉄色を示していたが、
確かにそこに、今までとほぼ等しい狂った筆跡で、こう書かれていた
「我は己の憎悪によりのみ生き そして己の憎悪によりのみ死す
我が名は煉獄仮面 」
書かれている事こそ違うものの、内容は殆ど同じ物である。
まず間違いなく、今までと同一犯による物であると誰もが、一瞬で悟った。
皇は腹のそこから、怒りと言う怒りが、憤慨の念と言う形であふれそうな気分だった。
それは横に居る、権藤刑事も同じであったであろう。
警察官「あとですね、権藤刑事・・・・・・・・・・。
実はこれとは別に、もう1ヶ所、血文字が発見されました。」
権藤「なんだと、一体何処からだ?」
警察官「実は、被害者が倒れていた床から発見されました。
しかし、その血文字は上に被害者が被さっていた為、発見が遅れたのですが・・・・・。」
権藤「ええーーーーいい、構わん。
それで、何と書かれていたんだ?」
- 526 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:53
- 警察官「じ、実は・・・・・・・・・。
「1 1 4 4 1 1」
とだけしか書かれていませんでした。」
権藤「は?それだけか?」
警察官「はい・・・・・・・それだけです。」
権藤「本当にそれだけか?」
警察官「本当に、それだけです。すでに黒く変色していて読みずらかったですが、
確かにそれだけしか書かれていませんでした。
壁に書かれた例の血文字とは筆跡もかなり異なっていましたから、恐らく
被害者本人が死ぬ間際に書いた物だと思われますが・・・・・・・。」
権藤「そ、そうか・・・・・・・・・。」
崩れた天井から月光が権藤刑事の、そのときの表情を映したとき、とても言い表せるような
表情ではなかった。とても曇り切っていた。
その日の捜査は、ここで打ち切りとなった。
皇も曇りきった心のまま、帰路につくことを余儀なくされた。
- 527 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/12(水) 13:59
- ここで訂正、と言うか付けたし。
実はレス523で鑑識の人の台詞として付けたしを致します。
まあ、これが無くても本編にはそれほど支障が無いので、気にしないでください。
鑑識「矢口真里は発見時、全身がかなり酷い火傷の状態で発見されましたが、
後頭部に、鈍器のような物で殴られた痕跡を発見。
恐らく、直接の死因は全身火傷ではなく、むしろ後頭部強打であると思われます。
しかし、急所をわずかに外されていたため、即死ではなく、数分間は意識はあったと
思われます。
以上。」
では皆さん、引き続き更新を待ちながらお楽しみ下さい。
- 528 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/12(水) 18:38
- 更新お疲れ様です。
なんかまたまたどエライことに・・・。(汗
それにしてもアレはどういう意味なんでしょうねぇ・・・?
分かりませんw
続きも楽しみにしてます。
- 529 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/19(水) 15:40
- 名も無き読者」さん、ありがとうございます。
なんかまたどえらい事になってしまって、本当に申し訳ないです。
石川さん、藤本さんに引き続き、矢口さんまでこんな目にあって、この先どうなるので
しょうか?
事件現場に残された「114411」の意味も、結構重要ですよ。
もし分かった人が居たら、答えは伏せてもらって、
「俺はこの暗号の意味が分かったぞ!」
とか、言って欲しい気もしないわけではないです。
それでは引き続きお楽しみください。
<ヒント>
久しぶりにやってきました、ヒントのコーナー。
今まで忘れていたわけではありませんよ。ただヒントの出しようが無かったため、
出したくても出せなかったんです。
事件現場に残された
「114411」
と言う血文字。
これはもう、殺された矢口さんが残したダイイングメッセージだと思ってもらって
結構です。
ぶっちゃけ、これは犯人を直接指していると考えられます。
ではこの6つの数字は何を意味しているのか?
あ〜〜っと、ここからはどうしても教えられませんね。
まあ、強いて言えば、この6つの数字、これはなにか特殊な変換方法を用いれば、
すんなりと答えがわかるはずです。
え?どんな変換方法かって?
それは言えません!ただ、意外と私たちの身近な物を使った変換方法かもしれませんよ?
それでは引き続き、本編のほうと、ついでに次回のヒントのコーナーもお楽しみに!
- 530 名前:北斗 投稿日:2004/05/19(水) 23:32
- お久しぶりです。
物語も佳境に入ってきましたね。
今回の更新で犯人がわかった気がします。
例のあれで・・・。
でも、もうひとひねりがありそう・・・。
これからも期待しています。
更新がんがって!
- 531 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/20(木) 12:40
- では言ってみます。
俺はこの暗号の意味が分かったぞ!
・・・いやぶっちゃけヒントのおかげなんですがね?w
次回更新も引き続き楽しみにしてます。
- 532 名前:闇への光 投稿日:2004/05/20(木) 21:25
- お久しぶりでございます。暗号の意味は分かりました。
初めのころに私が言ったとおりの展開だと思いますがトリックがぜんぜん解けない・・・。
はてさて・・・どないして解こうか・・・
- 533 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/26(水) 15:10
- 「北斗」さん、どうもです。
ありゃりゃ、犯人がわかってしまいましたか?
まあ、あれだけヒントのコーナーで色々喋っちゃいましたからね。
物語りもそろそろ佳境でしょうかね、でもここからもう1展開あるかもしれませんね。
ではではお楽しみに。
- 534 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/26(水) 15:14
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
うわ〜〜〜〜、言われちゃいました。「犯人がわかったぞ」って言われちゃいました。
でもあそこまで言えば分かりますよね?
いやはや、あんまりネタバレにならない程度にって、前前から言ってたのに、
つい口が滑ってしまいました。
トリックと言うほどのものもありませんよ。
そんな難しいことでもありませんよ。
まだまだ、物語は続きますから、その間に考えちゃって下さい。
- 535 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/27(木) 12:44
- 「闇への光」さん、申し訳ございません。お返事レスが1人だけ違う時間帯で。
どう言う訳か、一緒の時間帯に書いたつもりなんですけど、何故か、空板に
出てないと言うことで、誠に申し訳ございません。
なんだか、皆さん、ヒントのコーナーで犯人の正体が分かってしまったようですね。
こっちとしては、正直、つまらないですが・・・・・・・・。
ではもう1つお題です。
ダイイングメッセージだけでは犯人は捕まりません。
何か???が犯人であると言う証拠のような物も見つけなければなりません。
実はその証拠らしき物、もうすでに文中に描写されています。
さて、その証拠らしき物とは一体なんでしょう?
もしよろしければ、読者の皆様はそれも一緒にお探しになられてはいかがですか?
それでは続きをお楽しみ下さい。
- 536 名前:KAZU 投稿日:2004/05/30(日) 11:32
- 犯人分かっちゃいましたね。ただ証拠ってなんすかね。
探してみたいと思います。」
- 537 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 14:48
- 「KAZU」さん、毎回ありがとうございます。
なんと、KAZUさんまで・・・・・・・・。
なんかヒント書かなかった方が良かったような気がします。
まあ、いまさら言っても後の祭りなんですが・・・・・・・・。(苦笑)
でも、皆さん、証拠のほうはまだ分からないですよね?、いくらなんでも。
とりあえず、これからも更新の方頑張っていきたいと思います。
応援、よろしくお願いします。
- 538 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 15:00
- 翌日、皇はこの間、安倍と矢口と立ち寄った喫茶店にいた。
外は晴れなのか曇りなのか良く分からない天気だった。
まるで自分の心の中を映し出しているみたいだ、と皇が思うほどだった。
陽が指したと思えば、濃厚な雲がその日射をすぐさま遮り、そうかと思えばまた、
明るみが指し始めると言う、なんともいい加減な天気であった。
皇はこの喫茶店で、しかも前回と同じ場所に座っていた。
ただぼんやりと天気を眺めたり、殆ど通らない人の流れに視線を移したりと、ある人を
静かに待っていた。
すると、
「カラーーーーン」
と言う小さな鐘の音が皇の耳に入った。
この喫茶店の入り口が開くとその振動でなる、ドアに付けられた鐘の音だ。
その音と同時に、ある人物が店内に入ってきた。
安倍なつみだ。
安倍は皇を見つけると、少し笑顔を浮かべながらそのテーブルに座った。
皇には、その笑顔が作り笑顔であった事が痛いほどわかっていた。
- 539 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 15:10
- 皇「安倍さん、どうもすみません。こんな時に呼び出したりして・・・・・・。」
皇は立ち上がって、安倍に申し訳無さそうに深々と頭を下げた。
安倍「ううん。全然大丈夫だよ。」
安倍はいつもと同じくらいの笑顔を皇に返した。
皇は店員が着たのでとりあえずコーヒーを2つ頼んだ。
安倍「で、皇君?今日は何の用?」
皇「え?」
安倍「なんか用があったから私を呼んだんでしょ?違うの?」
皇「ええ・・・・・、実はそうなんです。
矢口さんが昨日殺されてこんな話をするのも何なんですが・・・・・・、
前回ここで安倍さんと矢口さんと話を聞いたとき、矢口さん、「あの人」と言う
言葉に拒絶反応を示したじゃないですか・・・・・・・・。
もしよろしかったらで良いので、その「あの人」と言うのが一体誰なのか、
それを教えて欲しいと思いまして・・・・・・。」
皇は恐る恐る、安倍の顔色を伺いながら言った。
- 540 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 15:20
- 安倍「ああ、「ごっちん」の事ね・・・・・・・。」
皇「「ごっちん」?」
皇は聞きなれない言葉に戸惑った。
安倍「もう矢口もこの世界に居ないんだから、言っちゃっても良いよね・・・・・。
そう・・・・、矢口の言う「あの人」って言うのは「ごっちん」の事なの。
『後藤真希』。『通称ごっちん』。
ごっちんは私たち同様、ミュージカル部の部員だったの・・・・・・。」
皇「『部員だった』・・・・・・?と言う事は今はその人はどちらに?」
安倍「・・・・・・・・・・・・・・。ごっちんは、今は居ない。」
皇「は?居ない?」
安倍「行方不明になっちゃったの・・・・・・。現在でも見つかっていないの・・・・・。」
安倍の寂しげに震えた声が、共鳴した。
- 541 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 15:37
- 皇「ゆ、行方不明・・・・・ですか・・・・・・・?」
安倍「うん。ごっちんは矢口と同い年のミュージカル部員だったの。
もし今も生きているとしたら、今は大学1年生なんだよ。
でも、ある日、ごっちんは忽然と消えちゃった・・・・・・・・。
今からちょうど2年くらい前、皇君が入学するその前、ごっちんは友達と
一緒に部活が終わって帰ろうとしたとき、忘れ物をしたって言って、1人で
部室に帰ったのを最後に姿が消えちゃった。」
皇「それって誘拐事件か何かじゃないんですか?」
安倍「うん、私たちも最初はそう思ったけど、その後いくら待っても犯人と思われる者
から脅迫電話の1本もかかってこなかったの。
その後警察はその事件の目撃者も居ない事から、彼女の家出か、好きな人ができて
その人との駆け落ちか何かだろうって事で片付けられたの。
ごっちんはそんな人じゃない。部活も真面目だし、いきなり私たちの目の前から
居なくなるなんて事、今まで1回も無かった。なのに何故か・・・・・・・・。」
安倍はそう言うなり、下向いたまま俯いて動かなくなった。
そこには、小さな光る雫が見えた気がした。
皇「え?いや・・・・・・、あの・・・・・・、そんな・・・・・・。」
それを見た皇はどうしたら良いものか分からず、ただあたふたうろたえる事しかできなかった。
- 542 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 15:46
- 皇(まさか、あの人って言うのが、そんな行方不明の人だったなんて・・・・。
矢口さんが殺害された後にこんな事聞いたら、誰だってこうなっちゃうよな・・・・。
変な事聞かなきゃ良かった・・・・・・。)
皇は自分のしでかした事を今更になってから後悔し始めた。
安倍「ご・・・・・・・、ごめんね・・・話の途中で・・・・・。
何だかその当時の事思い出しちゃって・・・・・・。
矢口もごっちんと、とっても仲が良かったから当時の事思い出すから口に出さ
ないでくれ、って念を押して言われてたんだけどね・・・・・・・。」
安倍は仄かに赤くなったその2つの瞳を、一生懸命見られまいとごしごし擦りながら、
気丈に答えた。
その気丈に振舞った声は、かなり震えていた。
皇「そうだったんですか・・・・・・・・・。
(ん?でも待てよ・・・・・・・・・・・)」
その時、皇はある事に引っかかった。
- 543 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/06(日) 16:05
- 皇「でも、安倍さん・・・・・・・・、そんな女子高生失踪事件が起こったら、普通
かなり有名になって、多くの人の耳に届くと思うんですよ。
でもどう言う訳か、俺はそんな話、安倍さんに聞くまで全然知らなかったんです
けど・・・・・・・・・。
新聞でも、テレビでも、そんな記事一回も見た事が無いんですが・・・・・・。」
安倍「確か、なんでも校長先生がこの事が社会に知れたら、社会に悪影響が及ぶから
ごっちんの家族への配慮も込めて、公にしないほうが良い、って言ってマスコミ
関係には内緒にしていたんだって。」
皇「そうですか・・・・・・・、校長先生がね・・・・・・・。
(この女子高生失踪事件を内密にね〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」)
この時、皇は頭の中である事を思い描いた。
皇「安倍さん、今日はどうもすみません。なんか忙しいときに変な事聞いてしまって。」
安倍「ううん。私は大丈夫。私の方こそ皇君に変な気分にさせちゃって・・・・。
何か今回の事件解決の手がかりになった?」
皇「ええ。本当にありがとうございました。」
安倍「そう、それは良かった・・・・・・・・・・・・・・・・。」
安倍は思いっきりの笑顔を皇に送った。
皇と安倍はそこで別れた。
安倍を駅まで見送った後、皇もまた1人、自らの帰路に立った。
しかし、どう言う訳か、その時皇は何か歯がゆい思いをしていた事も確かだった。
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 21:45
- お〜、更新されてる!!
おつかれさまです〜♪
次回も期待してます。
- 545 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/07(月) 19:55
- 更新お疲れ様デス。
動機が見えてきましたね。。。
でも証拠はさっぱりわからないw
続きも期待しております。
- 546 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/13(日) 16:21
- 「名無飼育さん」さん、お疲れ様です。
いや〜、中々更新できなくて困っている今日この頃です。
何しろ休日や講義の無い時間帯を縫って更新せにゃなりませんから・・・・・。
早く自分のパソコンで小説かきたいです・・・・・・。
- 547 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/13(日) 16:25
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
さあ、犯人の目星も付いたし、動機も揃ってきた。
後は証拠探しですか。
でも気をつけてください・・・・・・・・。
小説はそろそろ終盤に突入しましたが、事件はそう簡単な物ではないですよ。(自分で言うのもなんですが・・・・・・・)
慎重に考えをまとめる事をお勧めします。
- 548 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/15(火) 13:56
- 翌日、学校はあるにも関わらず皇は朝早くからある場所へと向かった。
そのある場所とは朝日ヶ丘警察署だ。
そこで皇は権藤刑事を待つ為、小さな会議室のような部屋に通された。
皇は近くにあった椅子を手元に寄せると、背もたれに凭れるように座った。
窓ガラスからはブラインドに遮られた細い幾多の光筋が皇の顔に向かって飛んでくる。
目の前に「真実」と言うものが転がっておきながら、それが手の届く範囲にありながら
どうやって取ればいいのか分からない。そんな事が脳裏をよぎった。
暫く待っていると、ガチャ!と言う音とともに権藤刑事が入ってきた。
権藤「何だ小僧!こんな時間に!?」
いつもと同じような感じで騒ぎ立て権藤刑事は入ってきた。
しかし、いつもとは何か違った印象を受けた。
何かこう、疲れか感じを受ける。
皇「朝早くすいません。実は権藤刑事にある事件の資料を頂きたいなと思いまして。」
権藤「ある事件の資料?何の事件の資料だ?」
皇「権藤刑事もご存知だと思いますが、2年前、今回と同じく朝学で起きた『女子生徒
失踪事件』です。」
権藤は一瞬表情を曇らせた。
- 549 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/15(火) 14:08
- 権藤「ああ、あの事件か。2年前、朝学の1人の女子生徒がある日突然姿を消した。
当初は誘拐事件かとも思われたが、犯人からの脅迫電話が1度も無く、殺人
事件かとも思われたが、目撃者が1人も居ない事から、警察はただの家出か
当時の恋人との駆け落ちか何かだと断定。結局今も迷宮入りした事件か。
ところでお前が何でその事件の資料を欲しがるんだ?
何か今回の事件と関係があるのか?」
皇「いえ、まだ分かりませんが・・・・・・・・。
でも何か繋がりが無いとも言えないんです。お願いします。」
権藤「市民にむやみやたらに事件資料を提供する事はご法度とされているんだがな・・・・・・。
まあ良いだろう。あの事件はすでに進展が無く、もう誰も捜査してないからな。
よし分かった。そこで待ってろ。今もって来てやるよ。」
そう言うと権藤は踵を返すと、再び扉を開けようと右手をドアノブに伸ばそうとしたとき、
その前に1人の若い警察官が入ってきた。
警察官「失礼します。権藤刑事、『例の事件』の書類出来上がりました。」
そう言うと、その警察官は懐に持っていた分厚い大きな封筒から1つの冊子を取り出し、
権藤刑事に渡した。
- 550 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/15(火) 14:15
- 権藤「ああ、ご苦労さん。ついでにお前、こいつに茶の1杯でも入れてやれ。」
警察官「は、はあ・・・・・・・・・・。」
書類を受け取り、そう言うと権藤刑事は部屋を出て行った。
バタンと扉が閉まり皇と若い警察官の2人だけになった。
警察官「う〜〜〜んと、じゃあお茶でも入れようか?」
皇「あ、別にお気使い無く。・・・・・・・ところで良いですか?」
警察官「ん?何だい?」
皇「権藤刑事は最近どうかしたんですか?最近疲れてるような気がするんですが・・・・・・」
警察官「ああ、そうかもしれないね。あの人もうすぐ時効を迎える大きな事件を抱えて
るからね・・・・・・・。それで疲れてるのかもしれないね・・・・・・・。」
皇「時効を迎える大きな事件ですか?」
皇は警察官の言ったその言葉に引っかかった。
- 551 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/16(水) 14:32
- 警察官「ああ、私はまだ警察官になって日が浅いから良く分からないが、何でも
今から15年以上前に、ここ等の地区一帯で日本の犯罪史上に名を残す連続強盗
事件が起こったらしいんだ。
権藤刑事はその事件を担当していたらしいんだけど、当時、権藤刑事の部下の
1人の警察官がその事件の犯人を追跡中に銃弾を受けて殉職してしまった
らしいんだ。
権藤刑事はそのことに酷く責任を感じて、今日まで全ての手柄や昇格を拒んで
きてるって話だ。権藤刑事が今でも「警部」止なのはそのためだそうなんだ。」
皇「15年前の連続強盗事件で警察官の殉職・・・・・・・・。
権藤刑事の過去にはそんなことがあったのか・・・・・・・・・。」
警察官「そう。そしてその事件はもうすぐ時効を迎えるんだ。
だから権藤刑事はもうそろそろ年齢も年齢なのに無理して、疲れが溜まってるんだよ。
だから僕達もその事件の捜査の手伝いや、資料作りに忙しいだけどね・・・・・・。」
そう言うとその警察官は溜息を漏らしながら俯いた。
皇「あの、すいませんが、さっき権藤刑事に渡した資料って言うのは、もしかして
その15年前の連続強盗事件についての資料ですか?」
警察官「え?ああ、そうだけど・・・・・。」
皇「あの、もしよろしかったら1冊頂けないでしょうか?」
- 552 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/16(水) 14:39
- それを聞いて警察官は驚いた。
警察官「え??君がこの資料を?何でまたこんな資料が必要何だい?」
皇「お願いします。もしかしたら事件を解く大切なヒントになるかもしれないんです!!」
皇の熱気こもった様子に、さすがの警察官も圧倒された。
警察官「はあ、まあ別に余分にコピーしてあるから良いけど・・・・・。
こんなもの何に使うんだい?それに事件を解くヒントって・・・・・・?」
不思議そうに警察官は持っていた大きな封筒から、先程権藤刑事に渡した冊子と全く
同じ物を皇に渡した。
皇「ありがとうございます!」
警察官「別に良いけど、あんまりこの事権藤刑事に言わないほうが良いよ。
あの人この話をすると、人が変わるから・・・・・・・」
警察官の人がそう言い掛けた時、後方で
権藤刑事「私がどうかしたか?」
いつのまにか扉を開けて顔を出して中を覗いている権藤刑事が居た。
- 553 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/16(水) 14:48
- 警察官「い・・・・・・いえ別に何でもありません。では私はこれで・・・・。」
そう言いながら若い警察官はそそくさと部屋を後にした。
権藤「???
まあいい。ほら、小僧。これが例の失踪事件の捜査資料だ。これ全部お前に
くれてやるよ・・・・・・・、とは言うものの、それほど量は無いがな・・・・。
そう言うと、権藤刑事は持ってきた埃をかぶって、いかにも今まで誰にもいじられなかった
問いわんばかりのファイルを皇に手渡した。
しかし、そのファイルはファイル自体は大きいものの、中身は事件の情報が少なかったせいか
中に入っている資料の数そのものはあまり入ってはいなかった。
皇も無言でそれを受け取る。
権藤「上からの話だと、お前も昔苦労してるらしいな・・・・・・・。」
皇「いえ・・・・・・。別に・・・・・・・。」
皇はそのまま一礼して権藤刑事と眼を合わせることなく部屋を出て、朝日ヶ丘警察署
を後にした。
- 554 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/16(水) 15:08
- 皇はいつものように学校の屋上にいた。
空はいつものように嫌味なほど晴れ渡っていた。
皇はいつものように大の字になってそのスカイブルーに染まった空を、ただ眺めている
だけだった。
先程もらった2つの資料にもまだ眼を通さず、今日は珍しく朝早かったせいもあり
いつものように調子が出てくるまで、屋上でボーっとしていようと思ったのである。
無論、授業なんて物に出る気は無い。
頭の中がぐるぐる回っている。
『今回の連続殺人事件』、『2年前の女子生徒失踪事件』、『15年前の連続強盗事件』・・・・・・・
皇の頭の中ではこの3つの、はたから見れば全く無関係とも言えそうな事件が、
皇本人も何故か分からないが、くっついたまま離れない。
これも皇ご自慢の第6感と言ったものだろうか・・・・・・・?
皇「はあ・・・・・・・・・・・・・・・」
皇は深遠な溜息をついた。
するとその時、皇のいる屋上の扉が開く音がした。
- 555 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/16(水) 15:17
- 屋上の扉が開いた音がした後、足音が床のコンクリートを叩く音が聞こえた。
皇(高橋でも来たのか・・・・・・・?)
皇は暫くその音を聞く事にした。
その音は、皇のいる、屋上のもう1段上の場所に繋がる鉄はしご段を登る音へと
変わっていった。
カンカン・・・・・・・・カンカン・・・・・・・・・(鉄はしご段を登る音)
皇は最初、その音主が高橋かと思ったがどうやら違うらしい。
カンカン・・・・・・カン・・・・カンカン・・・・カンカンカン・・・カンカン・・・・・・
カン・・・・カンカン・・・・カン・・・・カンカンカン・・・・・・・カンカン・・・・・・
明らかに足音が多すぎる。これは1人分の足音ではない。
これだと2人分・・・・・、いや3人分ほどの足音に聞こえる。
やがてその足音が止まった。
皇が顔を上げてみると、そこには小川と紺野と新垣の3人がちょうどはしご段から登り
終わったところだった。
- 556 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/16(水) 18:17
- 更新お疲れサマです。
警察の守秘義務はドコ行った?w
そろそろ考えをまとめる段階に来てる気がしますが、
実生活でソレどころじゃなくなってる自分。。。
マターリ考えてみますので作者さんもマターリ頑張って下さい。
- 557 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 09:22
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
長い間、留守ですみませんでした。
警察の守秘義務ですか?そんな物あったらこういった類の小説は話が進みませんよ。
あくまでも小説なので、都合の良いように話を進めていきますのであしからず。
自分も実生活であたふたして更新どころでは無かったです。
お言葉に甘えてマターリ頑張りますので、よろしくお願いします。
- 558 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 09:30
- 小川「あ!いたいた!やっぱり皆の言う通りだ。」
小川が叫びながらはしご段から足を離す。
続いて紺野、新垣と続く。
3人は皇の眼の前に座った。
皇も眼の前に3人、行儀良く座られて自分だけ寝転がっているのもどうかと思い、
その重そうな体を起こし上げ、3人と向き合った。
皇「今日は3人も来客か・・・・・・・・・・。で、何か用か?」
皇はあぐらをかきながら聞いた。
小川、紺野、新垣の3人は互いの顔を見合わせて軽く頷き、再び皇の顔を伺った。
小川「皇君、1つ聞いてもいい?」
皇「ん?」
新垣「皇君は愛ちゃんの事、何処まで知ってるの?」
それは意味深な言葉だった。
皇「は?高橋の事、何処まで知っているか?どう言う意味だ?」
- 559 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 09:45
- 3人はやっぱりと言わんばかりの表情だった。
小川「愛ちゃんには口止めされてるんだけど、この際言うね。」
皇「何をだ?」
紺野「実は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
愛ちゃんのお父さん、もうこの世には居ないの・・・・・・。」
紺野の言葉は後半が聞き取り辛かったが、耳に入ってきた。
皇「は?」
新垣「愛ちゃんのお父さんは警察官だったらしく、15年位前に殉職したらしいの・・・・・・・。」
皇「殉職?なんでまた・・・・・・?」
小川「・・・・・・・・・・・、皇君、『カミカゼ強盗団』って知ってる?」
皇「『カミカゼ強盗団』?聞いた事があるな・・・・・・。」
小川「15年前、この辺り一帯で起こった、歴史に残る連続強盗事件の名称よ。」
新垣「なんでも、この一帯で大きな美術館や大富豪や資産家の家ばかりを狙って
ありとあらゆる絵画や彫刻や掛け軸などの世界的に有名な美術品ばかりを強奪する
日本の犯罪史上に名を残す強盗団のことよ。
しかも、その『カミカゼ強盗団』は事件を起こす前、必ず犯行声明文を警察に送り、
犯行を犯す。そのくせ、警察が事件が発生する前から事件現場を中心とした半径
10kmを非常線や検問を、細かく張り巡らすものの、ただの1度も不審者などを
発見する事は遂にできなかった、って言う今でもその犯人は捕まっていないって言う
あの『カミカゼ強盗団』よ。知ってる?」
皇「ああ、何となく聞いた事がある・・・・・・・。」
皇は頭を書きながら答えた。
- 560 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 09:57
- 紺野「でね、愛ちゃんのお父さんはその事件を担当していて、ある日、そのカミカゼ強盗団
が犯行を終え逃走しようとしたところを、愛ちゃんのお父さんが発見して、仲間の
静止を振り切り後を追った。
向こうは銃を持っていたらしく、威嚇射撃をしてきた。
勿論、愛ちゃんのお父さんも銃で応戦。
けど、向こうの銃での威嚇射撃が運悪く腹部に命中したらしく、その後病院に搬送
されたけど、当たり所が悪くて間も無く息を引き取ったらしいの・・・・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・。
しかし、そんな話、高橋から一言も聞いてないんだが・・・・・・・・。」
小川「当然よ。愛ちゃんはお父さんが死んだ事を他人に知られる事を酷く嫌がってたから・・・・。
それもこの事は親友の私たち3人と、後は部活で親しい人にしか襲えてくれなかったの。
飯田先輩や安倍先輩、石川先輩たちはこのことを知ってるとは思うけど・・・・・・。」
皇「ふ〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・、なるほど・・・・・・・、通りで・・・・・・・・。」
皇は頭を上げて、その仄かに白い雲を纏った空を見上げながら頷いた。
風が強いらしい。はるか上空の雲は忙しなく縦横している。
- 561 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 10:05
- 皇「あいつにそんな過去があったとはね〜〜〜。」
その時、皇はかすかに笑んでいた。
小川「だから皇君にはそんな愛ちゃんを守って欲しいの。私たちじゃあ愛ちゃんを
守れない。今、愛ちゃんを守れるのは皇君、あなた1人だけだと思うの。
皇君強いから・・・・・・・・。」
その時、
キーーーン、コーーーン、カーーーン、コーーーン・・・・・・・・・・。
始業ベルが校内校外中に鳴り響いた。
皇「・・・・・・・・・・・、ほら昼の授業開始のベルが鳴ったぞ。
早く教室に帰ったらどうだ?」
小川「皇君はどうなの?」
皇「俺の勝手だろ?」
小川「皇君、お願いだよ・・・・・・・。」
新垣「私からも・・・・・・・。」
紺野「私からも・・・・・・・。」
そう言うと、3人はさっき来たはしご段の方へ戻っていった。
- 562 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/28(月) 10:13
- 皇「・・・・・・・・・・・・・。お前達に一言言っとくわ。
俺は決して強くない。俺も高橋同様、もろい人間だ、覚えておけ・・・・・・・。」
小川「・・・・・・・・・?。うん、分かった。」
そう言って、3人は皇の視界から消えた。
皇「・・・・・・・・・・・、まさか、高橋までもがね・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さて、俺もぼちぼち働くとするかな・・・・・・・。」
皇は立ち上がり、頭上高くある太陽の陽を浴びながらどこかへ向かった。
空はいつまでも青かった
例え、地球に終わりの日が来てもこの空はいつまでも青いだろう
- 563 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/14(水) 14:18
- 皇は自分の自転車に乗って、辺りを走り回っていた。
降り注ぐ淡い日光と、時折吹き付ける柔らかな北風を頬に受けながら、道のりを特に
定めることなく、ただ漠然と走っていた。
学校の近くの閑静な住宅街を抜け、小さな商店街を抜け、両脇には何も無い樹接道を抜け
皇はさらに走った。
別にこれといった意味は無い。
自宅に帰るには方向が全く逆だし、かと言ってどこか遊びに行こうと言うわけでもない。
ただ単に、ぼ〜〜〜っと、何かを、皇自信ですら分からない何かを漠然と考えたかっただけなの
かもしれない。
その主の意識もはっきりしないまま、自転車は尚も動きつづける。
- 564 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/14(水) 14:25
- 皇は、はっと意識を取り戻した。
今の今まで無意識で自転車を走らせてきて、時間もわからぬままようやくその意識を
取り戻した。
ここは何処であろう?
自分は一体何処まで来てしまったのであろう?
辺りを見回して見ても、それがわかるような手がかりが何も無い。
(ああ困った)
皇は内心そう思いながら、それでも自転車を止めることなく、ひたすらこぎ続けた。
時間にして、数時間。
皇は無意識のまま、高校から数十キロ離れた町に来た事になる。
学校の屋上で眺めていた太陽の角度も、明らかに変わってきている。
日が傾いてきている。
しかし、そんな事もお構い無しにさらに自転車をとばす。
- 565 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/14(水) 14:37
- ふと、そのとき、皇の鼓膜になにやら大勢の子供たちの戯れ声が入ってくる。
皇は、まるで綺麗な花に集まるミツバチのように、無意識にその声に引かれた。
その声に惹かれてやってきたのは、小学校。
小学校のグラウンドであった。
そこで小学校低学年の生徒たちであろうか、何人もの男女の子供たちが楽しそうな
声を上げて、遊んでいる光景が眼に入ってきた。
皇はしばし、自転車を走らせる事も、自分が現在地もわからない場所に佇んでいる事も
忘れ、その楽しげに遊んでいる子供たちに見入ってしまった。
どうやら子供たちは、広いグラウンドをめい一杯使って鬼ごっこでもして遊んでいるようだった。
皇は自転車のグリップの部分に腕を広げ、顔を乗せ、ぼ〜〜っと眺めている。
鬼になった子が、必死になって他の子供を追いかける。
時にはすぐに鬼が交代したり、時には中々鬼が代わらずずっと同じ子供が鬼になりつづけたり、
グラウンドの片隅に置かれているブランコなんかを、障害物にして鬼から必死に逃れようとしたり、
逃げている途中に、石かなんかにつまずいて転んじゃったり・・・・・・・・・。
なんとも無邪気な世界であった。
皇も不思議に自然と笑みが零れて来る。
- 566 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/14(水) 14:50
- するとある時、皇が『ある物』を眼にする。
それは、鬼が1人のターゲットを絞り込み、必死になって追いかけている光景だった。
逃げるほうも必死であるが、追いかけるほうも更に必死になって逃走追跡劇が始まった。
しかし、逃げる子供よりも、追いかける鬼のほうが若干足が速いのであろう、その2人の
差はじりじり詰め寄られていた。
最初は10m以上あった差が、今ではその半分以下にまで縮まっている。
捕まるのも時間の問題だと思われた。
逃げていた子供が校舎の角を曲がったときだった。
急いでその後を追いかけていた鬼が、続いて同じ角を曲がったそのときだった。
先ほど逃げ回っていて校舎の角を曲がったはずの子供が、角を曲がってすぐに、
その校舎の角を走り去ったと見せかけて、実はその壁にぴったりと背をくっつけた。
鬼が自分を追ってきてこの角を曲がり、自分を一瞬見失った鬼のすぐ後ろを、その
追いかけられていた子供が急いで、今来た道をダッシュで逃げて鬼の魔の手から
逃れていった。
こんな光景を皇は眼にした。
- 567 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/14(水) 15:07
- こんな光景は大して珍しくも何とも無いだろう。
子供同士の鬼ごっこでは、古典的ではあるが、鬼を欺く為に良く見かけられる光景でもある。
大人が見れば、子供同士のやる程度の低い逃走方法であろう、子供味溢れる楽しい
鬼ごっこではないか、と言うだろう。
しかし、皇には今の光景が、びっちりと瞳に焼き付いて離れなかった。
皇はすぐさま頭の中で、朝学のダンスホールの見取り図を繊細に、細かく再現した。
頭の中でダンスホール内の映像を、普段自分の見ている視点からぐるぐる回しながら
思い出している。
大きく防災上の為の重い、横に押すタイプのダンスホールの扉。
その扉を開けるとすぐに目に飛び込んでくる、広いステージ。
まだ他に何か無かっただろうか?
まだ他にダンスホールに引っかかる何かがあったはず・・・・・・・・・。
そう言えば、その扉のすぐ横にある、観覧用のパイプ椅子や長机を仕舞う為の大人が
数人は入れそうな空間があったな・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、なると・・・・・・・・・・・・?。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・そうか、そう言う事だったのか・・・・・・・・。
皇は小さな笑みを浮かべた。
- 568 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/17(土) 11:52
- 更新お疲れ様デス。
お、という事は自分の推理もあながち間違ってなかったのかも。。。w
となるとあと気になってくるのは動機ですか。
例の三つの件を考慮してみると・・・。
続きも楽しみにしてます。
- 569 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 03:02
- 「名も無き読者」さん、ありがとうございます。
どうもすみません、なんか結構長い間更新してませんでしたね。
まあ、完結部分の手直しをして更新が遅くなったのも有りましたが、実際、
某板のテニス物の小説の荒筋考えていて、遅くなってしまいました。
謹んでお詫び申し上げます。
- 570 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 03:12
- 皇は急いで自転車に乗りなおし、今来た道をそのまま逆走して、学校に戻ろうとした。
しかし、ここまで無意識に自転車を走らせてきた。
現在地すら分からず、その上、帰り道も脳内では定かではない。
皇「ああ、もう!!」
皇は自分で自分の馬鹿さ加減にうんざりしがなら、微かな記憶を頼りに、
学校までの長い長い道のりを帰る事となった。
途中、何度、道を間違えた事か・・・・・・・・・・・。
数えたらきりが無い・・・・・・・・・・・・。
皇は何とか自分の部屋に戻ってくる事が出来た。
もう既に日は沈みきっていた。
- 571 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 03:24
- 翌日、皇は珍しく朝から学校に居た。
しかし、いつものように授業に出る為ではなく、いつものように屋上でのんびり
考えを巡らす為。
両側をガラスで外界と仕切られた廊下を渡りながら、皇は屋上に向かっていた。
朝だと言うのに、窓からはさんさんと陽の光が、皇の顔を照らす。
その光を嫌味に感じながら、屋上に繋がる金属製のドアのドアノブを握る。
ドアを開ければそこにはいつものように、屋上から広がる緑多き目下の世界。
時たま吹く風になびかれながら、いつものように更に上へと伸びるはしご段に
手をかけ、ゆっくりゆっくり、その錆びかけたはしご段の硬さや、冷たさを
肌で感じながら、1歩1歩、1段1段、昇っていく。
しかし、そこにはいつも見る光景とは異なる光景があった。
- 572 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 03:33
- 皇「何してんだ?そんな所で・・・・・・?なあ、高橋?」
高橋がいつも皇が寝ている場所で、いつも皇が寝ているような大の字の格好で、
寝ている高橋の姿が眼についた。
高橋「ううん・・・・・・・・・。別に・・・・・・・・・・・。
ただ待ってたの・・・・・・・・。
いつも皇君が居る場所で待ってたら、皇君に会えると思ったから・・・・・。」
高橋は今まで寝ていた上半身を起こして、風にそのポニーテールが風に吹かれながら、
細々といった。
皇「ん?待ってた・・・・・・?俺をか?」
高橋「うん、ちょっと謝らなきゃいけない事があったからね・・・・・。」
皇「丁度良い。俺もお前に謝んなきゃいけない事があるしな。」
- 573 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 03:59
- 皇ははしご段を昇りきった。
高橋「ごめんね。」
皇「ん?」
高橋「この間、皇君に変なこと言っちゃって。
あの時、皇君、とっても辛かったんだよね・・・・・・。
それなのに、私ったらそんなことも知らずに・・・・・・・・。
本当にごめんなさい。」
高橋は俯いたまま言った。
皇「ああ、その話か・・・・・・・
気にするな、悪いのは俺の方だ。
俺の方こそ、自分の事で頭が一杯だったからな・・・・・・。
誰よりも傷ついているお前の事を、考える事すら出来なかった。
謝らなくちゃいけないのは俺の方さ・・・・・・・・・。」
- 574 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 04:17
- 高橋「で、でも・・・・・・、私の方が・・・・・・・・」
皇「はいはい、分かった分かった。
今回は俺と高橋、2人とも悪かったってことで、この話は終わり。」
そう言うと、皇は自分の眼の前で両手を叩いて見せた。
皇「じゃあ、そろそろ本題に入っても良いか?」
高橋「え?本題?」
皇「今日の午後、お前暇か?」
高橋「え、今日の午後?
うん、今日は午前しか授業無いから午後は別に予定も入ってないけど・・・・・・。
どうかした?」
皇「よ〜し、なら午後から手伝ってくれ。」
- 575 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/09(月) 04:34
- 高橋「手伝ってくれ?何を?」
皇「何を?って、捜査だよ。捜査の続き。」
高橋「え??捜査の続きって、皇君、今回の犯人の目星ついてるの?」
皇「ん・・・・・・・ああ、多少な。」
高橋「え!!それ本当なの??」
皇「ああ、ま〜な。ただ、まだ確信が持てない。動機に関しても、まだまだ
不透明な部分が多い。
高橋にはまだ、これが誰なのかは言えない。」
高橋「うん・・・・・・わかった・・・・・・。」
皇「じゃあ、午前の授業が終わったらある場所に来てくれ。」
高橋「ある場所?」
皇「ああ。ある場所って言うのは・・・・・・・・・。」
- 576 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/15(日) 14:49
- はじめまして。はじめから一気に読んでみました。 私にもだいたい犯人が判ったような気がします。ダイイングメッセージの意味はさっぱりわかんなかったですけど(笑)次回更新も楽しみにしています。
- 577 名前:七誌さん 投稿日:2004/09/20(月) 13:28
- 「聖なる竜騎士」様。はじめまして。
一気に読ませていただきました。
犯人、僕にはさっぱりわからんです・・・。
こうゆうの向いてないのかなぁ・・・。
ダイイングメッセージ・・・ああわかんない・・・!
最近の更新がないようですが、次回更新を待ってます。
- 578 名前:KAZU 投稿日:2004/09/20(月) 18:59
- そういえば更新遅いですね。忙しいとは思いますが是非又近いうちに更新して下さい。
- 579 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/08(金) 03:15
- 始めまして。
ひとつお聞きしたいのですが・・・まだこの板、生きてますよね・・・。
ちょっと更新が滞っているようなので。
- 580 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 02:25
- 「名無し読者」さん、一気に読んでくださいまして、どうもありがとうございます。
ありゃりゃ、犯人わかってしまいましたか?
でも、ダイイングメッセージの意味がわからなくて、こちらは何かほっとしました。
更新がかなり遅れてしまいましたが、読んでいただけると、幸いです。
- 581 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 02:28
- 「七誌さん」さん、初めまして。
犯人もダイイングメッセージも両方分からないと言われると、こちらも何日も
かけて考えた甲斐があってうれしゅうございます。
ごめんなさい。更新がかな〜〜〜り遅れてしまいましたが、そこんところは
大目に見てください。
では本編の続きをお楽しみに・・・・・・。
- 582 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 02:38
- 「KAZU」さん、申し訳ございません。
最近、色々ありましてですね・・・・・・・、更新する暇が無かったのが現実です。
自分は今、大学生なのですが、8月〜9月一杯まで夏休みだったのですが、まあ、
その間に部活動があったり、その部活の大会があったり合宿があったり・・・・・・・・・、
また、6月頃に「光」が繋がるとアパートの大家さんに言われて早、4ヶ月。
やっと繋がったと思ったら、今度はいきなりウィルスにかかるとか・・・・・・・・・。
まあ、言い訳に過ぎないんですけどね。
これからはなんとか、定期的に更新できると思います。(あくまでも思う程度です。)
こんな駄作を今まで読んでいただいた読者の皆様に、深くお詫びの念を申し上げます。
- 583 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 02:51
- 午前の授業が聞きなれたチャイムの音とともに、終わりを告げた。
チャイムの音が止むや否や、高橋は鞄を担いで皇に言われた場所に向かった。
高橋はその場所の前にやってきた。
すると、反対側の向こうの方から皇もほぼ同時にやって来た。
高橋「ねえ、皇君。こんな所に何の用があるの?」
高橋が心配そうに皇に聞いた。
皇「まあね、ちょっと聞きたいことがあってね・・・・・・・。」
高橋「聞きたいこと?」
高橋が皇に聞き返す暇も無く、皇本人はそんなことも気にせず、その部屋の中に
入っていった。
- 584 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/10/10(日) 02:56
- 始めまして。
これらのレスを見て、正直、ホッとしました。
これからも楽しみにしてます。
頑張ってください。
- 585 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 03:08
- 保田「え??2年前に失踪した後藤真希について知っていることを教えてほしいって?」
皇「はい。何でも良いですので、とにかく知っていることは何でも。」
皇と高橋は保田圭のいる事務室にやって来ていたのだ。
保田「う〜〜〜〜ん・・・・・・・・・・・・・
知っていることといわれてもね〜〜・・・・・・・・・・。」
皇「何かありませんか?本当に何でも良いんですよ。」
保田「私もあの事については、殆ど聞かされてないんだよね〜〜。
確かに、2年前、後藤がいきなり行方不明になったことは私も驚いたけど、
私は本当に、何にも知らないし聞かされてもいないのよ。
そもそも、今回の事件とその後藤の事件と何か関係があるの?」
皇「いえ、特にこれと言った関係は今のところ分からないんですが・・・・・・、」
保田「それじゃあ、私も協力しようが無いじゃない?」
皇「はあ、すいません、ご迷惑をおかけして・・・・・・・・・・・・。」
皇が肩を落として踵を返したとき、今まで隣にいた高橋が前に出た。
- 586 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 03:23
- 高橋「そう言えば保田さん。昔の新聞紙とかありませんか?」
保田「え?古新聞?何でまた?」
皇「いきなりどうしたんだよ?高橋?」
高橋「これよ!これ!」
そう言うと高橋は、事務室の部屋の片隅に置かれているいかにも古臭い
段ボール箱を引っ張り出してきた。
その段ボール箱の中には、数日前の新聞紙が乱雑に詰め込まれていた。
高橋はその新聞紙の中の1冊子を掴んで言った。
高橋「これよ。この2年前の新聞紙を調べてみれば、その中にもしかしたら
その失踪した後藤さんの記事が載っているかもしれないでしょ。」
保田「成る程!その手があったか!」
皇「保田さん。その2年前の新聞紙はまだ残ってますか?」
保田「2年前の新聞か〜〜〜?多分この事務室内にはないけど、でもあるとしたら
『あそこ』にあるかもな〜〜。」
高橋「『あそこ』?『あそこ』ってどこですか?」
- 587 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 03:39
- 皇「『あそこ』って言うのは図書館のことですか?」
皇と高橋は、保田に連れられて図書館の貸し出しカウンターの脇にいた。
貸し出しカウンターのテーブルの上は、綺麗に掃除が施されていて、塵1つ
落ちていない。
数本の赤黒のボールペンがホルダーにかけられている程度で、他には何も置か
れていない。
辺り一帯も、こんな事件が起こったせいか、図書館で本を読もうなんて考える
輩は誰一人として居ない。
ただでさえ日本国内でも有数の図書館面積を誇る広い、ベージュのふわふわした
絨毯の敷き詰められた床が、さらに余計だだっ広く感じてしまう。
カウンターのすぐ目の前は本を読む人の為の長机と椅子が、これまた几帳面に
その面子を並べていた。
その長机と椅子の隊列のはるか向こうには、5m程もある天井に頭がついてしまう
のではないか、と言う位に背の高い本棚が整列しているのだ。
いくら他の校舎の陰になるからと言っても、昼下がりの斜陽が殆どと言うほど
入ってこない図書室は、室内に3人しか居ないということも助けて、異様なほどに
薄気味悪く感じるものだ。
そこに皇と高橋はひっそりと息をしながら、立っていた。
- 588 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 03:55
- 保田「ほらほら、2人共。こっちだよ。」
保田の独特な波長による声色で、皇ははっと我に返った。
皇と高橋は保田の声のする方に、歩を進めた。
そこはまるで寒気がするほどに広い図書館の、正に死角と言っても良いだろう、
中世ヨーロッパをモチーフにしたアンティーク的な壁と、妖怪話に出てくる
「ぬりかべ」を思わせる本棚の丁度、その間にあるこれまた何とも言えない
外開きの扉が、ひっそりと気配を完全に消し去って、大人しく佇んでいる。
高橋「なんか、大きな図書館にしては、やたら小さくてみすぼらしい扉ですよね?」
高橋が保田に呼ばれるがままに、敷居を跨ぎながら呟いた。
皇「それにしても、やったら広い図書館ですよね?無駄に・・・・・・・・。
それに図書館だけじゃなくて、教室も、体育館も、特別教室も、グラウンドも
プールも、講義堂も・・・・・・・・・・・・。
やっぱり、朝学はお金持ってるんですかね〜〜?保田さん?」
- 589 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 04:18
- 保田「う〜〜ん、たぶん・・・・・・・・・。」
保田は眉間に小さな皺を浮かべながら答えた。
皇「たぶん、って、保田さん、事務員でしょ?そう言った関係の物を扱ってるんじゃ
ないんですか?」
皇も小さなため息を混ぜながら尋ねる。
保田「ん〜〜〜〜、それもそうなんだけどね・・・・・・・・・・。
でも、そう言われてみれば何か不思議に思えることがあるんだよね。」
高橋「不思議なこと?ですか?」
保田「うん、実を言うとね、ここ数年の入学者が少しずつだけど減ってきてるのよね〜〜。」
皇「別に入学者が減ることは、大して珍しい事でも何でも無いじゃないですか?
最近の不景気や少子化問題もあって、入学者が減少すること自体は、普通ですよ。」
保田「入学者が減ること自体は良いんだけど、問題はその癖、学園全体に入ってきている
経営収支は常に黒字。しかも、年を追うごとにその黒字が増えていってるの。」
皇「入学者が減っているのも関わらずに、経営自体は黒字・・・・・・・・・、ですか?」
保田「そう!それも、黒字になり始めたのはここ10年程前からで、それ以前は
朝学も赤字経営だったのよ。それなのにある時を境に、急に黒字経営になったのよ。」
皇「保田さん!それ本当ですか!?」
保田「うん、嘘っぽいけど本当の話。
ついこの間、仕事でそう言った資料を見てて不思議に思ったっけ。」
- 590 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 04:43
- 保田は手に持っていた鍵を、目の前にある先程とはまた別の扉の鍵穴に通した。
ガチャリ!という音とともに、その扉は開いた。
その扉が開いたその空間は、先程の図書館とはこれまた異なった雰囲気を漂わせている
部屋が、いや亜空間が待っていた。
その空間は端までは見えないが、とにかく広かった。
恐らく普通の教室3〜4室分くらいは当に超えてあろう。
しかし、広いことは広いのだが、その広大さに負けず劣らずやたらと色々な物が
置かれていた。
何十年、何百年前かとも思われる、古い本棚、金庫、腐りかけたような机や椅子、
電気の蛍光灯の束や、壊れてしまった電気器具、日本語のみでなく英語、フランス語
ドイツ語、イタリア語、どこの言葉か分からない文字で書かれた書物の数々・・・・・・・・・・。
まあ、とにかくありとあらゆる、粗大ごみの類が所狭しと佇んでいる。
その等の多くの置かれているものは、埃を被らない様に襤褸切れに近い布が
被せられている。
それに加え、この謎の部屋の入り口からはよく見えないが、奥の方にはこの亜空間には
不釣合いな程に、立派に仕立てられた長机、おそらく表面の木材は桐か高級木材か何か
が使用されているようだ、さらさらしていて極めて木目が細かい、そんな長机と椅子があった。
その長机を囲むようにこれまた高級長机と波長の取れた、黒皮張りの椅子が
合計10脚以上は並んでいる。
他に並んでいるごみ、及びその類とは異なり当然のことながら、明らかに手入れを加
えられている。
とにかく、そこは外界と隔離された別世界が存在していた。
- 591 名前:584 投稿日:2004/10/10(日) 10:33
- 作者様、読者様
今日は返事だけだと勝手に判断し、更新中にレスつけてしまいました。
すみませんでした。
- 592 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/10(日) 18:50
- 「マシュー利樹」さん、どうもすみません。
こちらも久しぶりの更新で、読者様のありがたいご感想を見落としてしまいました。
マシュー利樹さんは決して悪くありませんよ。むしろありがとうございます、と
言いたいくらいです。こんな放棄同然にまで更新しなかった駄作を、読んでいただいた
だけで、こちらとしてもとてもうれしいです。
これからはきちんと更新していく予定なので、これからもよろしくお願いします。
- 593 名前:七誌さん 投稿日:2004/10/11(月) 01:23
- 更新おつかれいな〜(^-^)/
お、ちょっと進んできましたな。う〜む、また謎がありそうで・・・
>>581
う、嬉しいんでしたらいいんですけど、
なんだか皆さんのカキコを見てると皆さんもう「わかってる!」
という方が多いので何気に心配でした。
これからもこの使えない脳みそを精一杯使って謎解きしたいと思います。
でゎ更新を待ってます。
- 594 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/11(月) 20:27
- 「七誌さん」さん、どうもありがとうございます。
あんまり気にしないでください。多分自分の文才が無いために読者の皆さん
によく伝わらない場面が多々あると思うので、これからも楽しく読んでいた
だければ・・・・・・・・。
こっちも無い脳みそを捻って、書いていきたいと思います。
- 595 名前:七誌さん 投稿日:2004/10/11(月) 23:16
- >>594聖なる竜騎士様
こんなすごいのを書けるんですから十分でございます。
犯人をがんばって考えたいと思います。
でゎ引き続き更新がんばってください(^-^)/
- 596 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 02:28
- 高橋「ここ、どこですか?」
保田「ここ?ここは一応、『司書室』ってことになってんだけど、実際には
ちょうど良い物置部屋ってところかな・・・・・。広いし。」
皇「物置小屋ですか・・・・・・・?」
保田「ん〜〜、もともと、昔の蔵書や何かをためておく場所だったんだけど、
いつの間にか学校中のいらなくなったガラクタをここに集めて、溜まったら
業者の人に持っていってもらっているんだけど。」
皇「は〜〜〜〜・・・・・・。」
皇はゆっくりと歩みだし、目の前にあるかなり傷んだ机や、その周りの壁に
手を添えて、何かを見出した。
机の上や、その下、壁の片隅や痛み具合などなど・・・・・・。
保田「皇君、どうかした?」
皇「保田さん、この壁なんかを見ると壁なんか、まだ真新しい感じがするんですが、
この司書室はいつごろ建てられたんですか?」
保田「いつ頃って・・・・・・・・、そうねえ、この新しい司書室が建てられたのが
今から15〜16年前になるかな?
そうそう、ちょうどさっき私がおかしいって言った頃とほぼ同時に建てられたん
だっけ。
その前は本来の司書室はもっと違う場所にあって、しかも小さくてぼろっちい
建物だったんだっけ。」
- 597 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 02:39
- 皇「違う場所・・・・・ですか?」
保田「そうそう、もともと司書室は日当たりも良いし教務室の横に建てられて
いたんだけど、なんか知らないけど急遽、この場所に建てられたんだった。
ところで、それがどうかした?」
皇「いえ、別に。只、気になっただけなんで。」
保田「そう。なら別に良いんだけど・・・・・・。」
保田が不思議そうな顔をしていると、突然、司書室の天井につけられているスピーカー
からチャイムが鳴り始めた。
「ピンポンパンポン・・・・・・・・。
事務の保田さん、事務の保田さん・・・・。
お電話が入っておりますので、至急事務室までお戻りください。
繰り返します・・・・・・・・」
保田「やば!私行かなくちゃ!じゃあ、後はあんたらで頑張ってね。
帰るときはちゃんと鍵閉めて帰ってね。
はい、これ司書室の鍵。」
そう言うと保田は、持っていた銀色に輝く鍵を皇に、ポンと投げかけた。
それと同時に、保田は事務室の向かって戻っていった。
- 598 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 02:50
- 皇「・・・・・・・・・・・。
さてと、じゃあそろそろ始めるか?」
高橋「始めるかって、何すれば良いの?」
皇「何すれば良いのって、お前な〜〜、2年前に失踪した後藤さんの載った
新聞記事を探すんだよ。
とは言ったものの、この広い部屋から昔の新聞を探し出すのも一苦労
だけどな・・・・・・・。
じゃあ、俺は向こうの本棚の辺り探すから、高橋は・・・・・・・・・・・・・・、
まあ、適当に探してくれ。」
高橋「うん。わかった。」
高橋がそういい終わる頃には、皇は既に高橋の視界内には入っておらず、どこかで
がさごそと本棚を漁る音が聞こえていた。
- 599 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 02:58
- 斜陽が更に色濃くなり、司書室の窓の外から朱色の光線が室内を程よく照らし
出している頃、高橋は司書室の片隅の、大小様々な布の被さった置物が並べら
れている辺りを探していた。
高橋「ねえ、皇君?」
皇「ん〜〜?何だよ?」
何処からとも無く、皇の声がした。
高橋「どうして2年前に失踪した後藤さんのことを調べようとしたの?
やっぱり、今回の事件と何か関係があるの?」
皇「さあね・・・・・。」
高橋「えーーー!!何それ?何にも関係ないの?」
皇「さあ、有るかもしれないし、無いかもしれないし。」
高橋「どう言う事?」
皇「だから、今回の事件と関係があるか無いかを調べるために、今調べている
んだよ。」
高橋「ん〜〜〜・・・・・・・」
高橋が渋い顔をしながら答える。
- 600 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 03:16
- 高橋「本当にこんなこと調べて何か分かるの?」
皇「高橋・・・・・・。
お前は2年前の後藤さん失踪事件のこと知ってるのか?」
高橋「え、まあ・・・・・・・・・・・、2年前はまだここに入学してなかったから
詳しくは聞いてないんだけど、安倍先輩たちの話によると、何でも、
2年前に後藤真希って言う女子生徒がある日、忽然と姿を消した、って
言うことぐらいしか聞いてないし、先輩たちもそれ以上教えてくれないし。
・・・・・・・・・、それがどうかしたの?」
皇「これ見てみろよ。」
そう言うと、すぐそこの物陰からいきなり皇が姿を現し、近くの小さなテーブルの
上にある紙の束を投げた。
高橋「??何これ??」
高橋がその紙の束を拾い上げる。
そこには小さな文字で、難しい文字の羅列が並んでいた。
皇「警察の人からちょっと拝借したんだけど、まあ、そこにグダグダ書かれて
いることを要約すれば、こう言う事だ。・・・・・・。
- 601 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 03:39
- 2年前、都内の某私立高校で1人の女子生徒が失踪した。
その女子生徒の名は『後藤真希』。
その後藤真希は○○年×月☆日金曜日、その日はミュージカル部の練習終了後
数人の友人とともに下校。
しかし、途中で後藤真希は「部室に忘れ物をした」と友人に言い残し、1人、部室に
戻ったという。
しかし、その時に友人にあったのを最後に、その後一切後藤真希を見た人物は
居ないとの事だ。
勿論、家にもその後帰ってはいない。
その後、我々警察は学校及び自宅周辺の聞き込みを開始した。
部室のは後藤真希の忘れ物は残っていなかった為、部室に立ち寄った後、行方を
くらました模様。
しかし、その後有力な情報を得ることは出来ず、また操作を続けていくと、
後藤真希と言う人物は、学園生活も至って順調。何かに悩んでいる様子は
全くと言って良いほど無かったらしい。
誘拐の線も挙がるものの、その後全く犯人と思わしき人物から身代金電話の
類の電話も無い。
捜査は難航。
最終的に、警察は後藤真希失踪事件は今流行のプチ家出か、はたまた恋人と一緒に
駆け落ちか、あるいはまた別の理由か・・・・・・・・。
何れにせよ、後藤真希が何か事件に関わった痕跡が無いため、操作を打ち切る・・・・・・・・・。
との事だ。
どうだ?高橋?何か気づいたことは?」
高橋はその話を聞いた直後は、眉間に皺を何本も寄せてその厚い書類とにらめっこを
していて悩んでいた様子だったが、ふと何かを思いついたようだ。
高橋「これって、この状況って・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
石川先輩の事件とよく似てる。」
- 602 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 03:48
- 皇「ああ、そうなんだ。
石川さんも今回の事件、吉澤さん・加護さん・辻さんと一緒に帰る途中、
後藤さん同様、「忘れ物をした。先に帰ってくれ。」と残してミュージカル部の
部室に戻る。
そして、その後2人とも被害に逢った。
勿論、この事件が起こったのも金曜日の夜。
後藤さんと石川さんは、「失踪」と「殺害」という点において異なっているものの、
その他の点においては、全くと言って良いほど状況が合致している。
まあ、恐らく、後藤さんは失踪したといっても、その後の連絡等が取れていないため、
たぶん後藤さんももうこの世には居ないだろう・・・・・・・・。」
高橋「それって、一体どう言う事・・・・・・・・?」
高橋が恐る恐る聞き返す。
- 603 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/14(木) 03:58
- 皇が小さく深呼吸して答える。
皇「2年間でこれほど酷似した事件が起こっているんだ。しかも、事件の舞台が
2件ともこの学園だ。
だから少なくとも、後藤さんの失踪事件と石川さんの殺害事件と何かしらの
関係があると考えてもおかしくない。」
高橋「だから、何か関係があるかと思って情報を求めて新聞記事を探しに来た、
ってわけなんだ。」
皇「まあ、そんなところだ。」
皇はそう言うと、高橋の持っていた書類を自分の懐のポケットに入れ直すと、
再び後藤真希の新聞記事を探しにガラクタの向こうに消えていった。
- 604 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/10/14(木) 07:20
- >592
レス、ありがとうございます。
そう言ってもらえると救われます。
>594
俺も七誌さんと同じ意見ですね。
これだけ長い間、同じクォリティで続ける事のがどれだけ大変な事か・・・。
文才が無ければ、とても出来ないことだと思います。
次回、更新を楽しみにしてます。頑張ってください。
- 605 名前:七誌さん 投稿日:2004/10/14(木) 19:34
- 更新おつかれいな〜。
お、少し僕にもわかってきたかも・・・。
でも犯人は未だわからず・・・。あぅぅ・・・。
話をもう一度読んで自分の中でこれを整理したいと思います。
次の更新を待ってます。
- 606 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/20(水) 21:40
- 「マシュー利樹」さん、毎回ありがとうございます。
この私に文才なんて、大それたものはありませんよ。
クォリティ(そもそもこの駄文に、そこまでクォリティがあるとは思いませんが、)
をここまで維持できたのも、マシュー利樹さんをはじめとした、数多くの読者の
皆様のおかげだと思います。
これからも、ご声援お願いいたします。
- 607 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/20(水) 21:47
- 「七誌さん」さん、おつかれいな〜・・・、いえいえ、ありがとうございます。
ささ、そろそろこの小説も終演に近づいている気がします。
ん・・・・・・、なんか前にも同じことを言ったような気が・・・・・・・・。
まあ、あまり気にしないでください。
こっちも頭の中で整理しながら、有終の美を飾りたいと・・・・・・・・・。
これから頑張ります。
- 608 名前:北斗 投稿日:2004/10/22(金) 02:26
- お久しぶりです。そして更新お疲れ様です。
ずっと楽しみに待ってました!
犯人はおそらくあの人なのでしょうが
いまだにトリック、動機等がわからない・・・
もう一度はじめから読み直すか!
これからも忙しいと思いますが更新頑張ってください!
- 609 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 04:56
- 「北斗」さん、どうもありがとうございます。・・・・・・・・こんな駄文を。
いや〜〜、何とかmyPCがネットデビューできまして、なんとか更新の目処が
立ちました。出来るだけ、定期的に更新したいと思うのですが・・・・・。
犯人は、そう・・・・・○○○さんですよ。多分、北斗さん、その他大勢の読者の
思った通りだと思います。
動機のほうが分からなくとも、大丈夫ですよ、そのうち分かってきますから。
何とか、読んで頂いている皆様に分かりやすい文章を書く努力をしてますので、
「この文章、分かり辛い」って言わないでください。(泣)
- 610 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 05:08
- 皇、高橋は広い司書室内で何か後藤真希失踪事件と、石川梨華殺害事件との
関係性を裏付ける記事を探そうと、必死になって探していた。
夕刻も尚、ひっそりと身を潜め始める午後6時前。
室内は元々、薄暗く、何か気味悪い感が渦巻いていて、しかし、それでいて何処と無く
清潔感を多少漂わせている、不可思議な空間である。
蛍光灯を点けていないせいか、ここに入った当初は確かにほの暗い印象は受けたが、
今となってはそのとき感じた印象以上に暗く、漆黒を感じる。
司書室に取り付けられている数個の窓ガラスを通して、オレンジ色を既に通り越して
黒褐色を混ぜた紅蓮色の光線が皇祐一郎・高橋愛のシルエットを淡々と浮かび
上がらしている。
その姿は、古こけたマリオネットでもあった。
- 611 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 05:15
- 皇「なあ、高橋・・・・・・・・・・・。」
黒朱色の空間から、高橋に対して声がした。
高橋「何?」
高橋は持っていた、昔の雑誌の詰め込まれたボロボロの段ボール箱を元の場所に
戻しながら答えた。
皇「なあ・・・・・・・・・・、お前ってさぁ・・・・・・・・・・・・・・・、
お前の家ってさぁ・・・・・・・・・・・、」
高橋「何?何なの?」
皇「お前の家って母子家庭なのか?」
高橋「え!?」
今まで普通に話していた高橋の声色が、その『母子家庭』という言葉によって、
突如崩れた。
- 612 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 05:26
- 皇「何でも・・・・・・・、10年以上前に警察官であるお前の父親は、当時世間を
騒がせていた『カミカゼ強盗団』の一行を、仲間の静止を振り切り、1人で
追いかけていったところ、『カミカゼ強盗団』の1人の流れ弾を受けた。
その後すぐに病院に運ばれるものの、当たり所が悪く、数時間後に命を
落ちした・・・・・・・・。要は殉職。
その後、母とお前と2人で暮らしている、って聞いたんだけど・・・・・?」
高橋「・・・・・・・、誰から聞いたの?まこっちゃん?」
皇「さあ・・・・・・・・・・・、風の噂だけどね・・・・。
この話は本当なのか?」
高橋はその後、しばらく黙ったまま今まで続けていた仕事をこなしながら、小さく答える。
高橋「・・・・・・・・・・・。本当だよ・・・・。」
その声は確かに小さくはあったが、2人しか居なく、まただだっ広く不思議に
反響する司書室内のせいで、やたら響き皇にもよく聞こえた。
- 613 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 05:45
- 高橋「私のお父さんは、とっても格好良かった。
あの頃、お父さんはまだ若かったからまだ警部補だったけど、仕事も
頑張ってたし、家でも家族と出来るだけ一緒に居る時間を造ったり、
友達にも自慢できるお父さんだった。
事件があったあの日も、ちょうど今くらいの、夏が終わって少し肌寒い
秋風が吹く季節、家族3人で仲良く夕ご飯を食べていたときだったっけ。
突然、家の電話が鳴ってその後、すぐにお父さんがスーツを着て、家を
飛び出していった。
そういえばあの時、家を出る前にお父さん、必死で謝っていたっけ・・・・・・。
「ごめんな、愛。お父さん、愛と一緒にご飯食べて居たいけど、どうしても
行かなくちゃいけない仕事が出来たんだよ。本当にごめん。
そうだ!その代りに、次の連休に愛の見たがっていた宝塚見に行くか?」って。
その時、大きな掌で私の頭を撫でてくれた。手がとっても暖かかったのを
今でも覚えている。
それまでにも何度か同じことがあったから、いつもの様にお母さんと一緒に
お父さんを見送った、またいつもの様に、「疲れた〜。」って言いながら、笑顔で
帰ってくることを、当然のように待ちながら。」
高橋は少し俯いたまま話していた。
- 614 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 05:59
- 皇「成る程。その事件が15年前のカミカゼ強盗団の事件だってわけか?」
高橋「うん・・・・・・・・・・。
お父さんを見送ってから、数時間経ってまた家に電話がかかってきた。
お母さんがその電話を取った瞬間、お母さんの表情が、いつもの話し声が
変わったのを、覚えてる。
そのすぐ後、私はわけも分からずお母さんに腕を引っ張られて、病院に
向かった。
病院に着いたら、すぐにある部屋に連れてこられた。
その部屋、すっごく暗くて、部屋の真ん中にベットがあってその上に誰か
寝てたんだよ。体を覆うような真っ白な布と、顔にも同じような真っ白な
布が被せられていて・・・・・・・・。
その時、お母さんが私の隣で泣き崩れたっけ・・・・・・。
お母さんは必死で泣いていること隠そうとしてたけど、ばればれだった。
すっごい涙声だったし、顔なんかも涙でしわくちゃで・・・・・・・・・。
それでも3歳児の癖に、事情も全く知らないのに変に気を使って笑顔で
振舞っていたことも、今でもよく覚えている。
それ以来、お父さんは帰ってこなかったし、お母さんも元気無かったし・・・・・・・。
当然、お父さんとの「次の連休に宝塚に行く。」って約束も、果たされぬまま。
お母さんは「お父さんは、遠い遠い場所にお仕事で行くことになちゃった。もうずっと
帰ってこれない」って・・・・・・・・・・・・。(台詞は続く)
- 615 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/22(金) 06:16
- (台詞は続く)
お父さんがあの日、死んじゃったって知ったのは何時だったっけ?もう忘れた。
でもそんな昔じゃない気がする。それに知ったときも、そんなにショックじゃなかった
気もする。
お父さんが死んじゃった次の日から、お母さん大変そうだった。
いつもは朝、起きたときから夜寝るまで、いつも一緒だったのに、それ以来、朝起きた
時にはもう仕事に出かけていて、夜、ベットで寝た後で家に帰ってくる。
たまの休みの日も、パートで朝早く出かけるか、内職をしてた。
それでもお母さんは私の話し相手になってくれたし、予定が何も無い日は、私と一緒に
買い物なんか一緒に来てくれた。
どんなに疲れていても、どんなに忙しくても私の相手をしてくれた。
それが嬉しかったけど、でも同時に・・・・・・・辛かった。
お父さんが生きていれば、こんなことにはならなかったのにって、いつも感じてた。
無理して優しくしてくれるお母さんの笑顔がとっても苦しかった。
そもそもこの私立の学校も、お母さんが「母子家庭だからって、愛には不自由な
生活はさせたくない。」って言ってくれて、この学校に入れてくれたから。
だから、学校でも、部活でも、出来るだけ皆には辛い顔を見せないように、いつも
皆を引っ張っていけるように、苦しさを隠してた・・・・・・・・・・・・・、
そして、そのまま生活を送ってきたのに・・・・・・・・・・・・・・・、
こんなのってあんまりだよ・・・・・・・・・・・・・・」
最後には必死に堪える高橋の涙声が聞こえてきた。
- 616 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/10/23(土) 06:49
- 更新、お疲れ様です。
そして、ネットデビューおめでとう!
はぁ・・・この先が気になる
次回、更新を楽しみにしてます。
頑張って下さい。
- 617 名前:七誌さん 投稿日:2004/10/23(土) 12:51
- 更新おつかれいな〜
高橋さんにはそんな事情があったんですね・・・。
この先が気になる〜ですね。
次回更新まってます。
- 618 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/23(土) 19:19
- 「マシュー利樹」さん、ありがとうございます。
ネットデビューありがとうございます。その割には更新量も更新頻度も少ないね・・・・・、
とか言わないでください。
これからもっと頑張る・・・・・・・・・・・・予定です。
- 619 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/23(土) 19:26
- 「七誌さん」さん、どうもありがとうございました。
そうなんです、高橋さんにはちょっと可愛そうな設定になっていただきました。
高橋さん、申し訳ございません。
ここで、本編には全く関係ありませんが、わが地元『新潟県』が今大変なことに
なっているらしいです、大地震で。
幸い、震源地である『小千谷市』と言う場所からは少し離れていたため被害は小さく済みましたが、
(まあそれでも、震度5弱程度はあったらしいですが)大学でこっち栃木に来ていて
助かりました。何ヶ月か前に大雨で洪水が起こりましたし、新潟は大変ですね。
す、すいません。全く関係ない話で・・・・・・・・、更新頑張ります。
- 620 名前:七誌さん 投稿日:2004/10/23(土) 23:00
- そうでしたか。「聖なる竜騎士」さんの地元は新潟でしたか。
ご家族の方は大丈夫でしたでしょうか?
なんかトピズレ?みたいなのになってしまいました。すいません。
次回更新、楽しみにしてます^-^
- 621 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 20:51
- 「七誌さん」さん、ご心配頂きありがとうございます。
でも実家は震源地から少し離れていたので、軽い地震ですみました。
それでも「えらいこっちゃ!」的な状態だったらしいです。
期待されているとなると、気が引き締まる思いですね。
なるでく定期的更新を目指しつつ、頑張って更新していきたいと思います。
- 622 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 21:10
- 高橋「ご・・・・ごめんね・・・・・。なんか変な空気にしちゃって・・・・・。」
そう言うと、高橋は自分の制服の袖で両眼の辺りををごしごしと拭いた。
高橋「そう言えば、皇君の両親って何してるの?」
高橋が顔を上げ、振り返ったその眼は掠れたように紅く変わっている。
皇「え?」
段ボール箱を持ち上げていた皇の手が、一瞬止まった。
高橋「??」
皇「俺の親か・・・・・・・・・・・?」
皇の声のトーンが、今までよりも明らかに下がった。
高橋も、今まで古くかび臭い棚から雑誌やら古記事を、テーブルの上でざらざら
したテーブルの上で整理していた手をふっと休めた。
- 623 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 21:22
- 皇「親は・・・・・・・俺の両親は、俺の近くには居ない。」
高橋「近くに居ない?どう言う事?」
皇「そのまんまの意味だ。」
高橋「???。皇君の両親は何処に居にいるの?」
皇は小さく深呼吸をした。
皇「さあね。俺も知らん。」
高橋「じゃあ、何時帰ってくるの?」
皇「さあね。恐らくずっと帰ってこないと思う。」
高橋「???どう言う事?
それってまさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
- 624 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 21:37
- 皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
俺の両親は、もうこの世には居ない。死んだんだ、両方とも・・・・・・・・。」
高橋は息を呑んだ。ほんの一瞬でも息が止まった。
高橋「皇君の両親が死んだって、それ本当?」
皇「正確に言うと『殺された』かな?」
高橋「殺された!!??」
高橋は口から心臓が飛び出しそうになった。
自分の皮膚という皮膚が、強張り鳥肌が立った。背筋もひどい寒気が一瞬にして走り去った。
高橋「こ、こ、殺されたって・・・・・・一体誰に?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇はその言葉を聴くと、黙りこくってしまった。
高橋「あ・・・ごめんね。何か根掘り葉掘り聞いちゃって。
皇君にとっては思い出したくない辛い過去だもんね・・・・・・・・。」
高橋もしまった、と感じたのか、言葉の後半を濁した。
- 625 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 22:03
- 皇「『カミカゼ強盗団』さ・・・・・・・・・・・。」
高橋「え?『カミカゼ強盗団』?それじゃあ、私のお父さんと・・・・・・・・。」
『カミカゼ強盗団』
高橋はその言葉を聴いて、反応せずにはいられなかった。
15年前、自らの尊き父をこの世から奪った張本人。
暖かかった家庭を、ほんの刹那に無き物にした悪魔の化身。
その名前を聞いて、体が、内臓が、脳が、それら全てが、禍々しい拒絶反応を示した。
皇「ああそうだ。俺の両親も高橋、お前の父親と同様、15年前にカミカゼ強盗団の
逃走用のトラックがカーブを曲がりきれず、歩道に突っ込んできた。
両親は俺をかばって俺を突き飛ばし、代わりに轢かれ、そして俺だけが生き残った。」
高橋「そんな・・・・・・・・・・、
じゃあ、皇君は15年前から両親が居ないの?」
皇「まあ、そうなるな。
身寄りの無い幼かった俺は、施設に預けられる形になった。
たかだか2〜3歳の小さな子供が、そんな環境で育って、まともな人間に育つ
もんじゃない。俺は施設内でもろくに友達を作ろうともせず、ずっと1人だった。
(次回へ続く)
- 626 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 22:29
- (前回からの続き)
両親も居なく、ろくに友達も居なかった俺は1日の大半を推理小説を読んでた。
日本の無名ものから世界の名だたる名作まで。
言葉も文字も大して分からなくても、分からないなりに小説を読んでた。
最初は1日2〜3ページしか読めなかったのが、徐々に読解力が付いてきて、
ついには1日に何冊も、何十冊も読めるようになってきた。
多分その頃からだろう、何事にも特殊な考え方や視点を持ち始めたのは。
ある時、町に遊びに行ったら偶然、通り魔事件が起こった。
目撃者も殆ど無く、証拠も無い。警察が捜査に難航していたところを通りかかり
助言したところ、事件は見事解決。
それ以来、難事件が発生すると、俺に協力という形で事件の捜査を加担する、
と言うことがしばしあった。」
高橋「じゃあ、権藤刑事が言ってた、今回の事件も捜査協力依頼が本庁から出たって言うのも・・・・・?」
皇「まあ、そんなところだ。
本来なら中学校を卒業した後、住む所が無いわけだから、施設を出た後、必然的に
働かなくちゃいけないんだけど、警察のほうから、高校卒業後、警視庁に就職し、事件解決に
協力する、と言う約束で高校の学費及び生活費の援助を受けているってわけだ。」
皇は気だるそうに答えた。
- 627 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 22:52
- 高橋「そっか。だから両親がいなくても皇君が生活できるんだ。
でも、皇君、すごいね。警視庁から捜査協力依頼が来るなんて。」
皇「そうでもないさ、事件が起こるたびに、例のカミカゼ強盗団の事件を思い出す。
その事件を思い出すたびに、心のどっかに黒いまどろみみたいな物が溜まっていく
気がする。まどろみが溜まるたびに、心が、体が錆び付いてくる気がしてならない。
夜寝てても、夢に15年前のあの事件が出てくる。
この事件が起こってからは特に鮮明に覚えている。
親と手をつないで歩いていて、十字路に差し掛かったら、横から急にトラックがこっちに向かって
突っ込んでくる。母親が俺を突き飛ばして代わりに轢かれる。その後、トラックが炎上していく様子が
まるで現実で、今、目の前で起こっているかのように思えてくる。
そんな夢を見るたびに、精神が病んでいく気がしてな・・・・・・・・・・。」
高橋「・・・・・・・・そっか・・・・・・・・・ごめんね、何度も何度も・・・・・。」
高橋が再び俯いたまま固まった。
皇「ふぅ・・・・・・。気にするな、高橋、お前が気にする必要無い。
さてと、それよりそろそろ時間だ。後藤さんの記事探すのも、今日はこの辺にしよう。」
高橋「そうだね、もう遅いし・・・・・・・・。」
そう言うと、2人は手を止めて、集めた記事を持ち寄った。
- 628 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 23:07
- 皇と高橋は数時間掛けて収集した記事なり、雑誌の切り抜きなりを司書室の中央に
おかれている、これまた高貴な雰囲気が香る超大型のテーブルの上に並べた。
高橋「多分これで全部だと思うよ。」
高橋がほんの一抱えのファイルなり新聞記事をそのテーブルの上に勢い良く置きながら言う。
皇「ご苦労さん、・・・・・・・これで全部だな。」
皇は手を腰に当てて疲れ気味に言う。
最早、ドス黒く紅さが微かに浮き上がる程度の明るさの夕陽が、窓から2人の
横顔の輪郭をうっすら浮き上がらせる。
そんな波動は、疲れを増幅させる作用があるようだ。
皇「・・・・・・・・・、にしては量が少なすぎるよな〜。」
皇がテーブルの上に乗っている資料の数を見て文句を漏らす。
その上には新聞が数冊、記事の切抜きなどを集めた資料やファイルが数冊、雑誌数冊程度
乗っている程度だった。
- 629 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 23:22
- 高橋「そう言われてみれば、そうだよね。昼過ぎから何時間も探した割には
量が少ない気がする・・・・・・・・・・・。」
皇がそれらの資料を手に取り、ぱらぱらと捲って眼を通してみる。
皇「ああ、確かに少なすぎる。これだけの時間をかけたんだ。見落としたって事は
あるまい。
それに資料の量が少ないだけじゃない。これら資料、どれもこれも載っている
情報量が少ないものばかりだ。」
皇が持っていたファイルをテーブルの上に豪快に叩き付ける。
高橋もテーブルの上に置かれている資料の1つを手にとって眼を通してみる。
高橋「本当だ!!どれもこれもどうでも良い様な小さな記事ばっかり。
皇君、これってどう言う事??」
皇は少し、眉間に皺を集めて考え込んだ。
皇「いくらなんでも、古新聞にしろ、記事の切抜きにしろ、情報量がこれだけって言うのは
おかしすぎる。
女子高生が1人、失踪してるんだ、当時にしてはある程度話題になったはずだ。
それなのに、これしか残っていないって事は・・・・・・・・・・・・」
高橋「って事は・・・・・・・・・・・・・?」
- 630 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 23:38
- 皇「って事はだ・・・・・・・・・・・、
意図的にこの他の情報を処理されたってことだ。それ以外、考えられない。」
高橋「『意図的に情報を処理された』ってどう言う事?」
皇「つまりだ、誰かが、何らかの理由で、誰か他の人間の眼に付く前にひっそりと
処理した、つまり焼却なり廃棄処分なりして、人の目に付かないようにした、って
ことだ。」
高橋「誰が何の為に?」
皇「そりゃあ、後藤さん失踪事件の犯人が、これ以上表沙汰にならないようにする為だろうな。」
高橋「う〜〜〜っむ、確かにそれはそうだね・・・・・・・・。」
皇「おかしいとは思わないか?」
高橋「え?何が」
皇「だって考えてみろ。後藤さん失踪事件の犯人がここの司書室の古新聞や雑誌の
切り抜きなりを密かに処理したんだぞ!?」
高橋「・・・・・・・、それが?」
皇「おかしいだろ?外部の人間がこの学園内の司書室で色んな情報の処分をするなんて
できっこないだろ?」
高橋「そっか!!・・・・・・・・・じゃあ、2年前の後藤さん失踪事件の犯人って、
この学校内の人間ってこと?」
- 631 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/03(水) 23:56
- 皇「まずそう考えて間違い無いだろう。」
皇は両手を組んで大きな溜息を漏らす。
高橋も今回の事件の大きさ、複雑さ、凶悪さをしかと噛み締めて、寒気をそして恐怖を感じた。
皇もそのまま、口を閉ざしたまま。
司書室の壁に掛かっている、大きく骨董品的な時計の発する秒針の音が、2人の
沈黙の空間に浮かぶ。
あまりにも無音で、2人の鼓動の音さえも聞こえてきそうだった。
秒針の音と、2つの異なる鼓動音が難とも言えぬ不協和音を奏でているかのようで、
耳に、いや心に侵食してきた。
高橋「あっ!!」
当然の高橋の叫びが、空間を埋めていた無音の不協和音を一瞬にしてかき消した。
皇「な、なんだよ?急に大声出して?」
高橋「皇君、これ見て!!」
そう言うと、高橋は皇のすぐ後ろの少し大きめの本棚に駆け寄った。
- 632 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/04(木) 00:09
- 皇「この本棚がどうかしたか?」
皇は少し呆れた感じで、その本棚に眼をやった。
その本棚は、少し大きな感じで古い専門書らしき本がびっしり詰まった本棚
だったが、しかし、ぱっと見てみると、特にこれと言って眼を引くわけでもない本棚だ。
高橋「今、この本棚の陰に何か見えた気がしたの。」
そう言うと、高橋はその本棚と、隣の本棚とのほんの数センチの隙間に顔を近づけた。
皇「何かって、何だよ?」
高橋「う〜〜〜んと、はっきりとは見えなかったけど、何か綺麗な絵みたいな物が
見えた気がしたんだけど・・・・・・・・・。」
皇「絵??」
皇が何気無く、その高橋が言った本棚に眼をやった。
皇(ん・・・・・・・・・・・?)
高橋が「絵が見えた」と言う言葉を聴いて、その本棚を見てみると、その本棚が何か不自然な
感じを受けた。
- 633 名前:七誌さん 投稿日:2004/11/04(木) 21:03
- 更新乙です。
お〜って皇にもそんな過去が・・・。
なんとなく犯人がわかってきたかも・・・。
もう一度この話を見直さなきゃ・・・
- 634 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/11/05(金) 21:23
- 更新、お疲れ様です。
>618
分かってますとも!
更新速度はこの調子で!
ちなみに俺はまだ犯人の確証持てないですね・・・。
一応、あの人かなって人はいるんですが・・・。
- 635 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 02:19
- 「七誌さん」さん、毎回毎回こんな駄作に付き合っていただいて、本当に感無量です。
さあ、そろそろ犯人の正体・トリック・動機・過去が繋がってきますたい。
ど〜〜ぞ、最初から読み直してみて下さい。何か新しい発見があるかもし
れませんよ・・・・・・・?
- 636 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 02:25
- 「マシュー利樹」さん、どうもすみません・・・・・更新速度をこの調子で
維持することが精一杯で・・・・、いやむしろこのままガタガタ落ちていくかも・・・・・・。
いえいえ何とか頑張ります。
あの人かなって思っている人は、恐らく犯人で合ってますよ。
この私もまだまだ修行が足りませんね・・・・・・・・・。
何とか年内完結を目指しています。恐らく来年からは新作を・・・・・・・・・・・(無理かな?)
と、とにかく頑張ります。
- 637 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 02:38
- 皇はその本棚に違和感を抱いていた。
その本棚は、古い専門書や分厚い辞書かなんかが、びっしりと詰まっている。
だがしかし、その両隣の本棚はと言うと、一応本は並んではいると言うものの、
専門書や辞書のような分厚く、重々しい書籍は並んではおらず、か細い数冊の
冊子が乱雑に投げ込まれているような本棚であった。
よく見てみると、本がぴっちりと本棚に並べられている本棚は、その本棚だけで、
周囲の本棚は殆ど本が並んでいない状況だった。
高橋「う〜〜〜ん・・・・・・、何かこの本棚と壁の間に何か挟まっているみたい
なんだけど、手が届かないな〜〜・・・・・・・・・・・」
高橋はまだ、この本棚の裏に置いてある絵らしき物に、届かぬ手を伸ばしていた。
皇「・・・・・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・」
皇はボソッとそう呟くと、その本の沢山詰まった本棚に、右手を掛けた。
皇「高橋、ちょっとどいてくれ。」
高橋「え?・・・・・う・・・うん。」
そう言うと高橋は本棚と本棚との狭い隙間に伸ばしていた手を引っ込めて、
その場から皇の言う通り少し離れた。
- 638 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 02:48
- 高橋が皇の2〜3歩後ろに立つと、皇は残った左手でその本棚の部位をしっかりと
掌握すると、ふぅ〜〜〜、と静かに、また深く深呼吸をしたかと思ったその時、
ガガガガガガ・・・・・・・・・!!
と言う音とともにその本棚が少しずつではあるが、床を引きずる騒音をけたたましく
立ち鳴らしながら、確実に動き出したのだった。
まず、普通の男子高校生1人で、到底動くはずも無いような重々しい本棚が、
本当にいとも簡単にその姿を動かし始めたのだ。
皇「やっぱりな・・・・・・・。」
皇は少々ヒリヒリするその両掌を軽く空で振り回しながら言う。
高橋「え!!嘘!!何でこの本棚動くの??」
高橋が騒ぎながら当の本棚に近づいてみる。
その時、高橋もその本棚の怪奇な点に、遅ればせながらも気づいた。
- 639 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 03:01
- 高橋「ん・・・・・、何この本棚?変じゃない?」
皇「ああ、それもそうさ。この本棚、一見すると訳の分からない専門書や無駄に
分厚い辞書何かが隙間無く並べられているように見えるけど、一度これらの
本に手を差し伸べてみると・・・・・・、」
そう言いながら皇は眼の高さのスペースに納められている本の1つに手を伸ばして、
手元に持ってくると・・・・・・・・
高橋「何これ!これ本じゃない。これ本のカバーじゃん。
あれも、これも、それも全部中身の入っていないカバーばっかり・・・・・・・・・・。
これってどう言う事?」
皇「つまりそう言う事さ。この本棚はそもそも本を納めて並べるために、ここ
司書室に置かれた本棚じゃない。
一見すると、分厚く重たそうな本々が並べられていて、動かしようが無いように
見えるが、実際は並べられている本の殆どが、ブックケースの背表紙しか見えなくて
動かそうと思えば、小柄な男1人でも動かせる偽りの本棚だってことさ・・・・・・。」
高橋「それはわかったけど、でも何でこんなものを置く必要があるの?」
高橋は眉間に2〜3本の皺を浮かべてみせた。
- 640 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 03:15
- 皇「さあね・・・・・・・、俺でもそこまでは・・・・・・・」
皇は何気無く視線を無造作に、右へ左へ動かした。
すると、ふっと今動かした本棚のすぐ下、床が眼に入った。
高橋「あ、そうだ!そんなことよりこれで本棚の裏側にしまってある絵が見れる。」
そう言いながら高橋は何故か、少々上機嫌でその絵画に近づいた。
皇(そもそも、何で絵画をこんな司書室にしまってあるんだ?
しかも普段、まず人の眼に付かないような本棚の裏なんかに・・・・・・・・?
それに、この本棚の下の床・・・・・・・・・おかしいな・・・・・・・・・・・・)
皇はいつもの癖でろくに整えてもいない、いやもしかしたらろくに毎日洗髪も
していないだろう髪の毛を、ぼりぼりとかき出した。
皇は早々と、自分の世界に入りだした。
高橋「わあ、すごい!!ねえ、見て見て!皇君!この絵すごいよ。」
皇が自分の世界に入り込み、脳内で思考をぐるぐる巡らしている所へ、響き通った
高橋の声色が、そんな精神状態を断絶し、皇の意識を現実に引き戻した。
- 641 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 03:39
- 皇「何だよ、何が見つかったんだよ?」
皇は気だるそうに高橋の言う元に歩む。
高橋「ほらほら!この絵見てみてよ!すごく綺麗!」
そう言いながら高橋は、丁寧に変に上質な布で包まれた3枚の絵画を、皇に
見せた。
皇「???なんじゃこりゃ?」
それらの絵を見た皇の第一声がそれだった。
皇が見た絵は、
1つは1人の女性が椅子に座っていて、絵の具?が派手に塗り手繰られた豪快な油絵。
1つは恐らく何かの風景画なのであろう、何色も連ねた青色、水色、紺色、や
木々の緑色を表した緑色、黄緑色、エメラルドグリーン、くすんで少し黒ずんだ
緑色からそれと分かるが、それにしても風景そのものをそっくり誠実に写生する
気が作者には無いのだろう、と思わせる絵。
1つはさっきよりもたちが悪くて、何をモチーフにして、何を題材にして、何を
描いているのかさえ全く不明な、幼稚園児が悪戯書きした様にも思える、いや
そうとしか思えない絵。
そんな絵をいきなり眼前に迫られては、「なんじゃこりゃ?」と出ても、それもまた
当然のことであろう。
- 642 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 03:57
- 皇「何だこのふざけた絵は?どこぞの生徒の失敗作か?」
皇は少し腹立たしかった。
高橋「何言ってるの皇君。この3枚の絵、どれもこれも世界的に名立たる画家が
描いた、世界でも有数の名作な絵画じゃない?知らないの?
どれもこれも天文学的な値段の付く絵画ばっかりよ。」
高橋はそんな皇に対して、少し自慢げに話した。
皇「世界的に名立たる画家??
世界でも有数の名作???
これが???
本当かよ??信じられないな・・・・・・・・・・・・・」
高橋「う〜〜〜〜ん、小さいときにお母さんと一緒に美術館で見たことがあるから
間違いないと思うよ。
でも、流石に本物じゃないと思うな。レプリカか何かだと思うけど・・・・・・・・。
それにしても、何でこんな所に・・・・・・・・・・?」
皇(ん・・・・・・・・?動かすことが出来る本棚の裏に、世界的に有名な絵画のレプリカ?
それも、殆ど人の出入りの無いこの司書室で・・・・・・・・・・・?
まさか・・・・・・・・・・・・・・。)
高橋は首を傾げながらも、今まで見ていた3枚の絵画を元通り布を被せなおし、
元の場所に戻そうとした。
- 643 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 04:14
- 皇「高橋、ちょっと待て。」
皇はそう言うと、高橋が片付けようとしている絵を、超至近距離からまじまじと
見つめてみた。
高橋「??皇君、どうしたの?」
皇はその3枚の絵を、全て額縁から絵の表面から、絵の具の掠れ具合から隅から
隅まで目を通した。
皇「(どの絵も、この絵も、やたら古い。つい最近作られたレプリカじゃないな。)
高橋、この絵っていつ頃描かれた絵か分かるか?」
高橋「え?う〜〜〜ん・・・・・・・・、詳しくは分からないけど、少なくとも
最近描かれたものじゃないと思う。
そうねえ、中世〜後世のヨーロッパ辺りの作品だと・・・・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・、だろうな・・・・。」
そう言うと、今まで睨めっこをしていた絵から視線を外し、今度はつい先程動かした
本棚のすぐ下の床を、掌でなぞってみせた。
高橋「何してるの?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・」
高橋の声を黙殺して、引き続き高橋にとって意味不明な行動を皇は続ける。
- 644 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 04:29
- 皇は床をなぞってみせた掌を、まじまじと見つめた。
しかし、皇が見つめているその掌には、何も無い。
相変わらず皇は険しい表情を崩さない。
高橋「・・・・・・・・・・・・・皇君?」
高橋のそんな声を聞いてか、聞かずか、今度は皇は立ち上がり、すぐ近くのテーブルや
本棚の棚の隅っこ、窓のさん、などを鬼姑のように、人差し指でつ〜っと、なぞる。
皇は、つい今自分がやった様に、その人差し指をもう一度自らの眼に近づけてみた。
その時の皇の姿は、今までの多少気だるそうな皇ではなく、『皇祐一郎』であった。
皇の周囲には、独特のオーラが、とてつもなく重圧な空気が漂っていた。
皇のその両眼は、鷹の如く、獅子の如く、狼の如く、何かを狙い済ましたかの様な、獲物を
一点に見据えたような眼光鋭い猛獣の眼になっていた。
最早、高橋は声をかけることが出来なかった。
皇は、今度は司書室の端に置かれている掃除道具を片付けられている棚、そして
入り口付近にある、司書室全体の明かりを点ける電気スイッチ、これらも調べた。
- 645 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 04:40
- どうやら皇は、気になった箇所全てを調べつくしたようだった。
今までせかせかと、司書室内を右往左往と動き回っていたのが、ようやく落ち着いて
すぐ近くにあった、埃の溜まっていない、上級の革張りの椅子に、どっと疲れたかの
様に、腰を下ろした。
皇「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・」
それは重々しい呼吸だった。
高橋もようやく声を掛けられる雰囲気になったのを確認すると、皇に改めて
声をかけた。
高橋「何か分かったの?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
分かったような・・・・・・・・・・・・分からないような・・・・・・・・・・。」
そう言うと、皇はまた黙りこくってしまった。
高橋はもう一歩近づいて聞いた。
高橋「今まで何を調べてたの?」
- 646 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 04:54
- 皇は今まで顔全体を両掌で覆っていたのを、少しずつ緩めながら答える。
皇「『埃』さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
高橋「埃?」
高橋は思いがけない言葉にキョトンとした。
高橋「埃って、あのゴミの埃?」
皇「ああそうさ。
実は、この部屋に初めて入ったとき、ある事を感じていたんだ・・・・。」
高橋「ある事?」
皇「この部屋・・・・・・・・・・、やたらと埃の量が少ない気がしたんだ。
空気中を漂う埃の量にしろ、本棚やテーブルや椅子や床に積もった埃が少なすぎるんだよ。」
高橋「埃の量が少なすぎる?
そう?あんまり学校の教室や自分の家の部屋と大して変わらない気がするけど・・・・・・・。」
皇「だからおかしいんだよ。
保田さんが言ってただろ?この司書室は書物の整理や、壊れた備品をしまう
位しか使わない、って。
書物の整理なんかは普通、2〜3年に1度やれば良い方だ。
つまり数年に1度しか人が入らないのに、ここまで掃除が行き届いているって事が
不可解でならないんだよ。」
- 647 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 05:05
- 高橋「それもそうだね・・・・・・・・・・。
そもそも、書物の整理程度にしか使われない部屋を掃除する必要も全く無いはず。」
皇「それなのにも関わらず、この司書室は定期的に誰かが掃除を行っているらしい。
さっき掃除道具のしまってある棚を調べたけど、それらもつい最近使用された
痕跡があった。」
高橋「・・・・・・・って事はどう言う事?」
皇「つまりだ・・・・・・・・・・・、
この学園内で、何らかの目的で、この掃除する必要の無い司書室の掃除を
しかも、定期的に行っている人物が存在するってことだ。」
高橋「・・・・・・・・・・、でもそれが何か大変なことなの?
別に、殆ど使われない司書室を掃除することが、悪いことでもないし・・・・・・・。」
皇「それが、そうでもないんだよ。」
高橋「どうして?」
皇「『ある場所』も埃が全く溜まっていなかったんだよ・・・・・・・・・・・。」
高橋「『ある場所』って?」
- 648 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 05:18
- 皇「さっき動かした本棚のすぐ下の床の上さ。」
高橋「???」
皇「他の本棚の下は掃除をした痕跡が無いのに、どう言う訳か、あの動かせる
本棚の下はきれいさっぱり掃除されていたのさ。
まあ、全ての本棚の下を調べたわけじゃないから、断定は出来ないが・・・・・・・・。」
高橋「何が不思議なの?だってあの本棚は実際は本が無いから、軽くて簡単に
動かせるんでしょ?
だったら、その本棚を動かして掃除をしたって何の不思議も・・・・・・・・・・」
皇「じゃあ、高橋に聞こう。
どうしてその掃除をする人は、その本棚を動かせる子を知っていたんだ?」
高橋「え?」
皇「最初見たとき、俺もお前も、あの本棚が動くなんて事は分からなかったはずだ。
偶然、俺が不自然な点を発見したから、あの本棚が動かせるって事が分かった。
普通の人間なら気付くはずも無い。
つまりだ、あの本棚の下の床が掃除されていたって事は、逆を返せば、
この司書室を掃除している人物こそが、あの動かせる本棚を設置させた、と考える
のが妥当な線だ。」
- 649 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 05:35
- 高橋「え??何でそんなことをする必要があるの?」
皇「恐らくは、高橋、お前が見つけた例の3枚の絵画を隠すためさ。」
高橋「何でその人はあの3枚の絵を隠そうとするの?」
皇「他の人物、つまり数年に一回行われる書物整理の際に、この司書室に生徒や
教師が入ってくる。
そのまま置いていたら見つかってしまう。
だからその生徒や教師達に絵画の存在を知られまいとした為だろう。」
高橋「何で、あの絵を隠そうとするの?他の人に
見つかったところで、何も起こらないでしょ?」
ここで皇は再び、大きな溜息を吐き出した。
皇「それがそうでもないんだ・・・・・・・・・。」
高橋「どう言う事?何が言いたいの?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
悪いがここから先は、確信が無く俺の推測でしかない。
だからまだ詳しいことは言えない・・・・・・・・・・。」
そう言い残すと、皇はまた頭を抱えて、首を垂らして考え込んだ。
それを見て、高橋もそれ以上の言及を止めざるを得なかった。
- 650 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 05:50
- 皇は苦悩していた。
皇は、真実にたどり着くために謎と言う漆黒の空間の中を奥へ、更に奥へと進んで
行かなくてはいけないことを知っている。
奥へ、奥へと進んでいって、終点に到着したとき、真実と言う名の希望の光がようやく
照らし出してくれることを、皇は知っている。
しかし、光を求めて闇の中を奥へ奥へと進んで行く間は、奥へ進めば進むほど、
その闇は更に漆黒を増していく。
絶望と言う名の闇に身を溶かしていく事になる。
不用意に光を求めて闇の中に一歩でも脚を踏み込んでもしようものなら、たちまち
目印を失い、永遠にその闇に包まれる事になる。
皇はその事を知っている。
真実を求めて闇の中に脚を踏み込むには、それなりの覚悟が、犠牲が必要になることを
皇は知っている。
- 651 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:00
- 皇はそのことを承知の上で、今回の事件に、今回の不可解な謎に、漆黒の闇中に、
その身を投じることを決したのだ。
光を得るために、どんな苦痛をも耐えることを、覚悟していた。
ある日、偶然首を突っ込んだ事件から、漆黒は侵食し、そして真実を、光を
求めもがき苦しむ、茨の道を通ることを選んだ。
光を欲して進めば進むほど、苦痛はその度合いを増し、苦悩することは漸近的に
増加し続ける。そして繁殖し続ける。
謎が解けなく結果的に光をその手で掌握できなかったときは、最も大きな苦痛を
味わうことになる。その事を承知の上で、覚悟の上で、黒色の世界に脚を踏み入れた。
今頃後悔しても、遅い。
そう、皇は一筋の光も無い影中で苦悩していた。
- 652 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:06
- 皇(誰か・・・・・・・・・・・・・・・・
誰か・・・・・・・・・・・・・・・・
誰か・・・・・・・・・・・・・・・・
俺に真実を・・・・・・・・・・・・・・・
俺に安らぎを・・・・・・・・・・・・・・・・
俺に・・・・・・・・・・・『光』を・・・・・・・・・)
皇は小刻みに震えていた。
そのあまりにも大きな苦痛に耐え切れなかった。
精神が、まるで底なし沼にはまり、そのまま沈んでいくのを、ただただ待つばかりであった。
自らの精神が崩壊していく状況を、自分自身で見届けていく、ただそれしか
自分に残された道しかない。
- 653 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:09
- 皇「あと・・・・・・・・・・・
あと、もう少しで
あともう少しで、全ての点が一本の直線になるのに・・・・・・・・、
何か足りない
あと、何か1つでこの掌に、光を手に出来るのに・・・・・・・・・・。」
最早その声は、口から出た言葉なのか、皇の心の声か、分からない。
そう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その時だった。
- 654 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:12
-
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・ねえ皇君、
もう遅いし、今日のところは、そろそろ帰らない?
だってもうこんなに暗いよ。陽もかなり傾いてきたし・・・・・・・・・。」
そう言って高橋が皇に声を静かにかけた。
- 655 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:18
- 皇「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
暗い??????????????」
皇は今まで、その両掌に埋め込んでいた顔を、はっと立て治した。
皇のちょうど背後にある、司書室の窓2つ。
時刻もかなり時を進め、最早夕陽とも呼べない紅蓮色の光が、皇の背中を、
高橋の横顔を淡く、そしてくっきりと浮かび上がらせた。
皇「!!!!!!!!!そうか!!!!!!!!!!」
皇は勢い良く立ち上がり、今まで座っていた椅子をなぎ倒し、急いで窓側に
張り付いた。
高橋「え??どうしたの!どうしたの?」
当の高橋は困惑気味であった。
- 656 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:28
- 皇「そう・・・・・・・・・・・だったのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
皇は広い司書室にとって、やたら少ない窓に張り付いたまま頷いた。
高橋から見ると、窓際に真っ黒な人影しか見えなかった。
しかし、不思議にその真っ黒な人影は、光に満ち満ちているかのように感じた。
皇「そうか、これが引っかかっていたんだ。
だから、石川さんと後藤さんは殺されなくてはいけなかったんだ。」
高橋「え???
皇君、それどう言う事??」
皇「遂に、遂に全て分かったんだよ・・・・・・・・・・・・・・・。
今回の事件のトリックが、動機が、犯人が・・・・・・・・・・・・、
そして・・・・・・・・・・・・・・・。」
高橋「そして・・・・・・・・・・・・・?」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の事件に隠された真実が・・・・・・・・・・・・・!!!!!。」
- 657 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:37
- 高橋「え・・・・・・・・・・・・・・
ほ・・・・・・・・本当なの・・・・・・・・・・??」
皇「ああ・・・・・・・
最後にヒントになったのは、この窓さ。」
高橋「窓?」
皇「そう。
おかしいとは思わないか?こんなだだっ広い司書室なのに取り付けられている
窓は、わずか2枚だけ。」
高橋「うん・・・・・・・、それは気付いたけど、それがどうかしたの?」
皇「もう1つ。
窓の向こうには何が見えると思う?」
高橋「この窓の向こう?」
そう言うと、高橋は皇に言われるがままにその小さな顔を、ひょっこりと、
2つしかない窓を、1つは皇が、もう1つは高橋が、揃って向こう側を覗き込む。
皇「高橋、何が見える?」
高橋「え、何って・・・・・ミュージカル部の部室の事?」
皇「その通り!!これで全ての謎が解けたのさ。」
- 658 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:42
- 高橋の言う通り、司書室の窓からは、真正面にミュージカル部の部室の外壁と
窓が伺える。
高橋「本当なの・・・・・・・・・・・?」
皇「本当さ。全ての謎は解けた。
『全ては真実と言う名の光の下に』」
高橋「じゃあ、早く権藤刑事に・・・・・!」
皇「ああそうだな・・・・、だがその前に・・・・・・・・・・」
高橋「??どうしたの?早く早く・・・・・・・・・」
せかす高橋に対して、皇はその2つの眼をじっと見据えてこう聞いた。
- 659 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:48
- 皇「高橋・・・・・・・・・、
お前は何も知らないで幸せに生きるのと、
真実を知って、絶望に打ちひしがれるのと、
どちらが良い?」
その言葉は意味深であった。
高橋「どう言う事?何が言いたいの?
もしかして、今回の事件と、何か関係がある質問なの?」
皇「どっちなんだ?」
皇は高橋の質問に答えようとはせず、あえて冷たい眼で、しかし、どこか哀れみの
ような眼で見据えた。
ただの一回も高橋から視線を逸らしはしなかった。
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
- 660 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 06:59
- 高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
私は、例え、絶望に打ちひしがれてでも、真実を知りたい。」
皇「・・・・・・、それは本心か?」
高橋「勿論!!
だって、幸せに生きれても、少なくとも普通の生活が送れても、
真実を知らないで生きていく事は、私にとっては望むべき事じゃない、
そう思うの。
少なくともお父さんはそう言うと思う。」
高橋の声は、確かだった。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そうか、すまん、変な事を聞いた。
じゃあ、お願いだ、今すぐ権藤刑事に容疑者全員を集めるように言ってくれ。
集合場所は・・・・・・、そうだなダンスホールにしよう。」
高橋「わかった!すぐ行く!」
皇「ああ、そうそう、もう1つ。
権藤刑事に『・・・・・・(秘密)・・・・・・・』って事も、伝えてくれ。」
高橋「わかった。じゃあ行くね!!」
そう言うと高橋は、勢い良く司書室を飛び出して行った。
しかし、当の皇は、少し曇り顔であった。
- 661 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 07:09
- 皇(ああ神よ。もしこの世に神という者が存在するとしたら、そなたは何と
残酷な事を、高橋に差し向ける?
俺は別に良い。
しかし、これでは、あんまりではないか??
あいつは何も悪くないのに・・・・・・・・・・・。
神は何と残酷なんだ・・・・・・・・・・・)
ずっと、皇は心の中でそんな事を呪文のように唱え続けていた。
今回の事件解決の中で、唯一の心残りと言えば、今回の事件の真実を暴露した
その時、『高橋はどうなってしまうのか?』と言うことだけだった。
皇は神を恨んだ。こんな運命を差し向けた神を恨んだ。
しかし、恨みきれなかった。
皇「ああ良いだろう!!
相手になってやるよ!!神よ!!そなたの指し示した運命を受け入れてやるよ。
さあ!!勝負だ!!『煉獄仮面』!!!!!!!!!」
皇は大声で神に対し、そして今回の殺人犯『煉獄仮面』に対して宣戦布告を申し立てた。
皇祐一郎は、その重くなった脚を一歩一歩、静かに、だがしかし確かに踏み出した。
真実を手に入れるために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
- 662 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/09(火) 07:22
- いや〜〜〜、ようやく「事件編」が終了いたしました。
ここに至るまで、どれだけ苦悩し計画を立て直した事か・・・・・・・・・・・・
この小説を書き始めて早、1年3ヶ月と3日、長かったな〜。
さてさて、それは良いとして次回更新からは解決編に入ります。
読者の皆様、犯人・トリック・動機・そして事件の裏に隠された真実、
分かりましたかね〜〜〜〜〜、多分この私の文章が分かり辛く、苦労している
人も多いんじゃあないでしょうか?
すいません。すいません。文才無くて・・・・・・・・・。
ではでは、いつになるか分かりませんが、次回更新お楽しみに〜!!。
<容疑者リスト>(この中に犯人がいます?)
・石黒彩 (校長)
・福田明日香 (副校長)
・市井紗耶香 (用務員)
・中澤裕子 (顧問)
・飯田圭織 (部活OB・朝日ヶ丘大2年生)
・安倍なつみ (部活OB・朝日ヶ丘大2年生)
・吉澤ひとみ (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
・加護亜依 (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
・辻希美 (部活先輩・朝日ヶ丘高3年生)
・高橋愛 (主人公・朝日ヶ丘高2年生)
・小川麻琴 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
・新垣里沙 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
・紺野あさ美 (部活同期・朝日ヶ丘高2年生)
・亀井絵里 (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
・道重さゆみ (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
・田中れいな (部活後輩・朝日ヶ丘高1年生)
・皇祐一郎 (主人公・朝日が丘高2年生)
- 663 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/11/10(水) 00:56
- 更新、お疲れ様です。
また随分、更新しましたね。
自分のペースで頑張ってください。
- 664 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/10(水) 22:19
- 犯人は誰だ〜!!!
解答編も楽しみにしてま〜す
- 665 名前:七誌さん 投稿日:2004/11/11(木) 21:35
- 更新乙です。
んあ〜もうすぐ解決編・・・・・?
ま、まだ解けてない・・・。
今すぐ見直さねば!(前回と同じ?)
- 666 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/24(水) 21:12
- 「マシュー利樹」さん、いや〜〜、大量更新したは良いんですが、次が中々
更新できませんでした。
これから解決編に行きますが、・・・・・・・・・・・・・・まあ出来るだけ
定期的更新いたします、はい・・・・・・・・・・・・。
- 667 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/24(水) 21:16
- 「名無飼育さん」さん、毎日毎日忙しくって更新が思うように行きません。
でも、ちゃんと完結させますので、・・・・・・・・・・・・・・
何とか今年末までに・・・・・・・・・・・。
が、頑張ります。
- 668 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/24(水) 21:20
- 「七誌さん」さん、どうもどうも、読んでいただいて光栄です。
んあ〜、もうすぐ解決編ですね、こちらとしては一応予定通り・・・・・・な気がします。?なずです。
こっちも、変なところが無いかもう一度から読み直さねば・・・・・・・・。
そんなわけで、解決編をよろしくお願いします。
- 669 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 22:06
- 陽は完全に沈んでいた。
またあの日のように、外道の明かりがちらほら窓から漏れてきている程度にしか
足元を照らす光源が無い真っ暗闇。
あたりのはオフィスビルなどの高層ビルが無いため、見える明かりは専ら住宅街の
家庭から発せられている明かりが殆どだ。
その明かりの中に、一際大きな明かりが浮いている。
『私立朝日ヶ丘大学付属学園高校』だ。
その学園に17人(+警察官)が集められた。
漆黒の闇に彩られたカーテンが、重々しくその幕を上げた。
- 670 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 22:29
- 天井の明かりが点いている広いダンスホール、その中に校長の石黒、副校長の福田、
用務員の市井や教員の中澤、飯田や安倍や吉澤を始めとする、15人(皇と高橋を
除く)が警察の案内と監視の元、ここに集められたのだ。
集められた15人はダンスホールのほぼ中央に綺麗に並べられたパイプ椅子に座らされた。
暫くすると、ダンスホールの入り口から1つの人影が入ってくるのが見えた。
権藤刑事だ。
権藤刑事が15人の集められたダンスホールに入ってきた。
権藤「皆様、大変お待たせいたしました。」
小声でも充分部屋全体に声が響き渡る。
石黒「刑事さん、何なんですか?何で私たちはこんな所に集められたのですか?」
最もな質問が、校長である石黒彩から発せられた。
飯田「そうよ、訳もわからずここに連れてこられたのよ。
せめて理由だけでも聞かせてもらわないと・・・・・・・・・。」
権藤「ええ・・・・・・・、実は今日皆さんに集まってもらったのは、他ではありません。
今回の連続殺人についてなんです・・・・・・・・。」
ざわざわ
一斉に、今まで雲っていた15人の顔色が、一瞬にして変わった。
- 671 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 22:38
- 安倍「今回の連続殺人について、って・・・・・・・・・・・・・・・・。
何か分かったんですか!?」
権藤「え・・・・・・・、ええ・・・・・。
分かったことは分かったんですが・・・・・・・・・、
何と言うか・・・・・・・・・・・・・。」
どうも権藤の様子が煮え切らない。
中澤「なに?犯人が分かったんじゃないの?」
権藤「はあ、実は犯人がわかったらしいんですが・・・・・・・・・、
分かったことは分かったんですが、
わかったのは私じゃないんです。」
小川「言っている意味が分からないけど・・・・・・・。」
新垣「権藤刑事が分からないってことは・・・・・・・・・・、じゃあ誰が犯人が
分かったんですか?」
田中「どうなってんの!!??」
15人から次から次へと、罵声とも取れる非難を浴びせられた。
- 672 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 22:48
- 権藤「あ・・・・・・、だから・・・・・・・・、その・・・・・・・・・・・。」
市井「はっきりして下さいよ。!!」
辻「そうですよ!」
権藤刑事がしどろもどろになっていると、権藤刑事の背後から今度は2つの人影が
ダンスホール内に入ってきた。
1つは皇祐一郎。
もう1つは高橋愛だ。
紺野「愛ちゃん!今まで何処行ってたの?」
加護「皇君まで。」
皇「すいません・・・・。遅れました。」
石川梨華の殺害後の朝日ヶ丘署での事情聴取の際、遅れてきた時の台詞そのままだ。
権藤刑事「小僧。お前、今まで何してたんだよ!」
皇「ええ、ちょっとした準備で少し遅れました。」
皇はやはりすこしも悪びれた様子を見せず弁解した。
権藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。で、準備はもう良いのか?」
皇「ええ、大丈夫です・・・・・・・・。高橋、手はずは頭に入れたか?」
高橋「うん!!」
高橋は力強く頷いた。
- 673 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 23:03
- 権藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皇と高橋の会話を聞くと、権藤刑事は無言のままダンスホールの隅っこの方に
より、用意してあったパイプ椅子に腰を下ろした。
椅子に深く腰を下ろし、脚を組み、右手でほおずきをしながら皇の様子を伺った。
それを見ると、皇と高橋はゆっくりと歩いて、重要参考人15人の座り並んだ前に立ち、
頭をぽろぽりかき、視線を上げた。
皇の背後に立っていた高橋も、それを見てきゅっと奥歯に力を込める。
警察官「権藤刑事・・・・・・・・?」
権藤「なんだ?」
椅子に座っている権藤刑事の脇に待機していた1人の警察官が、小声で聞いた。
警察官「大丈夫なんですか?」
権藤「だか何がだ?」
警察官「何って、・・・・・・あんな高校生2人にこの場を任せて良いんですか?」
権藤「しょうがないだろ。こちら側は手も足も出ない状況なんだ。
少なくとも私たちがこの場を仕切るよりは、すっとましだ。
お前たちも、黙って聞いてろ。」
警察官「はあ・・・・・・・・・・・・」
警察官はそれっきり黙りこくった。
権藤(まあ、皇祐一郎よ。警察本庁、警視総監も一目置くお前の実力、見せてもらおうか・・・・・)
権藤は深呼吸をし直した。
- 674 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 23:21
- 15人の注目が皇に集中する。
皇「皆さん、今回皆さんに集まってもらったのは他でもありません。
権藤刑事の口から聞いたとおり、今回の連続殺人事件について皆さんに
お話しなくてはならないことがあるんです。」
石黒「まさか、今回の事件が解決した!、だなんて言うんじゃないだろうね?」
皇「その通り。俺の考えが間違ってなければ、今回の事件が解決しました。」
再び皆がざわめいた。
福田「解決したって?今回の事件の犯人はこの学園に恨みを持つ人物か、または精神異常者か
または、幽霊か何かじゃ無いんですか?」
皇「いいえ!今回の事件は外部の人間の仕業でもなければ、ましてや幽霊や何百年も
昔のヨーロッパの御伽話の主人公でもない。」
中澤「じゃあ、一体どうだって言うの?はっきり言いなさいよ。」
高橋「今回の事件はとてつもなく大掛かりで、それでいて綿密に仕組まれた計画的
殺人事件だったんです。」
皇と入れ替わりに、高橋が話し始める。
- 675 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/11/28(日) 23:30
- 吉澤「計画的殺人事件?」
皇「そう、高橋の言う通り、今回の事件は正真正銘人間の、しかも今回の事件に
深く関係している内部犯の犯行・・・・・・・・・・・・・・・・・、
つまりは今、この場に居る15人の重要参考人の中の今回の殺人事件の犯人が、
石川梨華、藤本美貴、矢口真里を殺害した人物が居るって言うことですよ。」
そう言った瞬間、周りに居た警察官がダンスホールの出入り口を固めた。
安倍「そんな・・・・・・・・・・・」
亀井「嘘でしょ・・・・・・・・・・・・・」
飯田「この中に・・・・・今回の犯人が・・・・・・・・?」
市井「そんな馬鹿な・・・・・・・・・・。」
全員が一斉に一斉、互いの顔を見合った。
この中に恐るべき殺人犯が居るのだということに、半信半疑だが、恐怖に慄いた。
- 676 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/11/30(火) 05:00
- 更新、お疲れ様です。
さあ、いよいよと犯人が・・・。
- 677 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 01:43
- 「マシュー利樹」さん、早々と感想、ありがとうございます。
すいません、更新量少量ですいません。
内容も殆ど進展が無くて、本当に申し訳ございません。
これから、もう少し更新量多めにして、内容も多めに・・・・・・・・・出来れば良いな・・・・、
と思っております。
- 678 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 01:57
- 吉澤「じゃあ、一体誰が、どやって、何の為にこんな酷い事を?」
皇「誰がやったか?どうしてこんなことをしたのか?は、まだ証拠が揃ってなく
確証が持てないので、詳しく言うことは出来ないんですが、しかし、『どうやって』
石川さん達を殺害したかは分かります。
今回の事件は様々なトリックを用いて行われた事件なんです。」
道重「様々なトリック?・・・・・・ですか?」
皇「ええ・・・・・・・・・。
高橋、3つの事件の状況確認を・・・・・・。」
そう言うと脇に居た高橋が、ポケットから白い手帳を出して、ふっと開けた。
- 679 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 02:11
- 高橋は軽く咳払いをして、その手帳に書いてある文面を読み始めた。
高橋「最初の事件の被害者は、『石川梨華』さん。
死因は出血多量による失血性ショック。
死亡推定時刻は、夜の10時20分〜10時40分。
ミュージカル部の部室内で鋭利な刃物で背後から刺された模様。
石川さんは、部室内でそのまま倒れた状態で発見されました。
部室内には、被害者の返り血で例の血文字が書かれていました。
第一発見者は、この私です。」
そう言い終わると、高橋はふう〜〜、と大きく深呼吸をして精神を落ち着かせたようだ。
『今の高橋』は、『数日前の高橋』とは全く違う。
石川の死に、全くの混沌に没していた、過去の高橋。
身近の人間の死に、全く躊躇はしていない高橋。
高橋は、今回の事件で多少逞しくなった様だった。
- 680 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 02:21
- 高橋「第二の事件の被害者は、『藤本美貴」さん。
死因は後頭部を鈍器のようなもので殴打されての、頭蓋骨陥没、及び
失血性ショック。
死亡推定時刻は、午前5時前後。
藤本美貴さんは、一度ダンスホール内の物置部屋内で後頭部を殴られ息絶えた後、
すぐ横のステージに移動され、ステージの天井から首を吊られて発見されました。
藤本さん発見時、石川さんの事件同様、ステージの壁に例の血文字が残されていました。
第一発見者は、鍵当番としてダンスホールの鍵を開けにきた『小川麻琴』さん。」
高橋の言葉に、椅子に座っている15人、そして権藤刑事も静かに耳を傾けた。
- 681 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 02:32
- 高橋「第三の事件の被害者は『矢口真里』さん。
死因は至近距離での爆発による焼死。
死亡推定時刻は、はっきりとはわかりませんが、遺体発見時から72時間以内。
矢口さんは発見される前日から行方不明になり、その翌日の夜、私達全員がダンスホール
に集合時、爆発音が聞こえ、その音源に駆けつけてみると、校域内の物置小屋が燃えてい
るのを発見。直ちに消火し内部を調べてみると、そこで全身が焼け爛れた矢口真里さんを
発見。
矢口さんの遺体のすぐ近くに『114411』と書かれたダイイングメッセージを発見。
第一発見者は朝日ヶ丘署の警察官の方。」
高橋は持っていた手帳を、再び懐にしまった。
- 682 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 02:44
- 皇「皆さん、どうですか?今高橋が話した3つの事件の状況確認、3つの事件を
通して何か思ったこと、何か感じたことありませんか?」
皇が高橋の言葉が終わったあと、一呼吸おいて口を開いた。
当然、15人は俯いたまま無言のままだった。
吉澤「あ・・・・・・・・、そう言えば・・・・・・・・・・・・・。」
吉澤が誰より早く沈黙を破った。
安倍「どうしたの?ヨッシー?」
吉澤「何か思ったんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
最初n事件だけ、梨華ちゃんの事件だけ、何か他の2つの事件と感じが違う気がする・・・・・・・。」
吉澤が自信無さそうに、ぼそりと答えた。
- 683 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 02:58
- 皇「そうです!!吉澤さんの言う通りです。
今回の3つの事件は、ぱっと見ると3件とも同様の事件に見えますが、
よくよく考えてみると、最初の『石川さんの事件』だけ、他の『藤本さんの事件』、
『矢口さんの事件』と比べ、様子が異なることに気がつきます。」
辻「何が違うの?」
皇「第一の石川さんの事件は、事件現場に証拠も残さず、血文字を残しているとは言え、
どこか突発的、それでいて、かなりがさつに起こった事件のような感じがします。
それに比べ、第二の藤本さんの事件も第三の矢口さんの事件も、かなり手の込んでいて
用意周到に犯行を犯し、そしてかなり奇妙な手口で殺人が行われている。
そこで俺はある考えが浮かんだ。」
- 684 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 03:12
- 一同はピンと張り詰めた痛いほどの冷気の中で、凍えそうな沈黙を堅く保った。
皇「俺はこう考えました。
第一の石川さん殺害の事件はある種、予期せぬ突発的な事件であった。
ある事がきっかけで犯人は、石川さんを殺害せざるを得なくなった。
予期せぬ事件ではあったが、犯人はその場の機転により、石川さん殺害を決行した。
ミュージカル部の部室に居る石川梨華さんを、背後から刃物で襲い、殺害。
証拠を残すことなく、また現場に血文字を残しその場から立ち去る。
ここまでは順調だった。」
亀井「『だった』?」
皇「そう。ここまでは犯人の計画通りだった。
しかし、ここで犯人には予想外の、思わぬ事態が起こってしまった。」
加護「『思わぬ事態』って一体なに?」
- 685 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 03:23
- 高橋「私が忘れ物をして、部室に戻ってきたことです。」
皇「そう。犯人はまさか、石川さん殺害後、高橋が部室に戻ってくるなんて
これっぽっちも考えなかっただろう。
それが犯人の『思わぬ事態』だったんだ。
これは犯人もかなり焦った事でしょう。」
石黒「分からないですね。どうして高橋さんが忘れ物をして、部室に戻ってくる事に
焦る必要があったんだ?
むしろ、犯人にとっては石川梨華殺害の罪を被せられる、絶好の機会ではないか?」
皇「そうです。本来の殺人犯ならこの様な不測の事態は、自分の殺人の罪を他人に被せる
絶好の誤算のはずです。」
飯田「じゃあ、何で高橋が部室に戻ってきたことが『不測の事態』で焦る必要があるの?」
- 686 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 03:36
- 皇「元々、土曜日の夜、殺人を行った犯人は石川梨華さんを殺害した後、
月曜日の朝、朝練のためにダンスホールにやって来た生徒に初めて『石川さんの遺体』
を発見してもらう、と言う計画を立てていたんだろう。
日曜日は、ミュージカル部だけでなく、大抵何処の部活動も休養日。
学校にやってくる生徒や教師は殆ど居ない。
その為、土曜日の夜、石川さんを殺害して、その遺体をミュージカル部部室に
置き去りにしても、月曜日の朝まで発見される可能性は極めて少ない。
そもそも、死亡推定時刻は遺体が発見される時間が、遅ければ遅いほど、誤差が
生じて、はっきりとした時刻が出にくくなる。
犯人はこのことを知っていた。
その後、警察がやって来て死亡推定時刻を調べようとしても、丸一日以上放置されていた
遺体だ。まず正確な死亡推定時刻は割り出せない。
犯人はきっと、こう考えたはずだ。
(台詞は続く)
- 687 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 03:44
- (台詞は前回から続く)
例え、死亡推定時刻が割り出せたとしても、その時間帯はかなり幅が広く
ならざるを得ない。
そうすれば、例えその時間帯に自分のアリバイが無くとも、警察にそうそう
怪しまれることも無い。
犯人の計画は完璧だった。」
中澤「成る程!!
だから石川を殺害してすぐに、高橋に発見されれば、それだけ死亡推定時刻が
正確に割り出されて、その時間帯にアリバイの無い犯人自身が怪しまれてしまう。
・・・・・・・そう言う事でしょ?」
中澤の独特の声色が、ダンスホール内に良く響く。
- 688 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 04:00
- 小川「あれ!?
それでもおかしくないですか?
確かに、愛ちゃんが忘れ物をして部室に帰ってくる、これは犯人にとっては
不測の事態だったかもしれないけど、実際、警察に怪しまれたのは愛ちゃん自身じゃないですか?
犯人自身は警察に眼を付けられなかったんだから、結果オーライじゃないの?」
小川の言うことは最もだ。
結果的に、権藤刑事に容疑者として捕まりそうになったのは、犯人ではなく、高橋愛であった。
皇「確かにそうです。小川さんの言う事も最もです。
ここで俺は更に考えてみた。
そうすると、今回の3つの殺人事件、実はある共通点があったんです。」
- 689 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 04:13
- 田中「3つの事件の共通点?なんかあるの?」
皇「実は今回の3つの連続殺人事件、その3件とも、
『誰1人として、犯人にしたてあげられてない』と言うことです。」
新垣「どう言う事?」
皇「皆さんも考えてみてください。
第二の藤本さん殺害事件、第三の矢口さん殺害事件、共に決定的に犯人として
捜査線上に浮かび上がった人物が居ないんですよ。
その気になれば、第二の事件でも、犯人は、第一の石川さん殺害事件で犯人扱いされた『高橋』、
第一発見者の『小川』をうまく罠に嵌めれば、罪を被せることは充分に可能だった。
しかし、犯人はそうできるにも関わらず、しなかった。
むしろ、事件を良く見てみれば、『誰にも罪を被せないように事件が行われた。』事に気付きます。」
- 690 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 04:25
- 皇「そう考えてみれば、矢口さん殺害事件についても同じことが言えます。
矢口さんが殺害されたと思われる、あの晩。
ここに居る17人全員が、警察官の居る元でダンスホールで集まっているとき、
遠くの物置小屋の方向から爆発音が聞こえてきた。
これは犯人自身のアリバイ作りになるかもしれないが、同時に他の容疑者のアリバイも
同時に証明してしまうことになる。
どうせ、同じ矢口さんを殺害するなら、自分のアリバイは証明されて、尚且つ他の誰かの
アリバイの証明されない時に、犯行を実行すれば、自分は安全に他の容疑者に罪を
被せる事くらい、分けなかったはずです。
しかし、やはりどう言う訳か、犯人はそうしなかった。
何故か??
実際俺は、そこがどうも気になって、頭から離れなかった。」
市井「成る程、確かに皇君の言う通りかもしれない。」
辻「え?え?どう言う事?良くわかんない?」
どうやら辻は、今回の話を良く理解できていないようだ。
- 691 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 04:41
- 高橋「つまりです。今、皇君が言いたいことを要約すれば、
『犯人はある理由で、誰にも罪を被ってほしくなかったし、自分も罪を被りたく無かった。』
と言うことが言いたかったんです。」
ふ〜〜〜む、と一斉に頷く声が聞こえる。
福田「皇君・・・・・・・・・。
君の言いたいことは分かった。
しかし、実際、そんなことが可能なのかね?」
皇「と、申しますと?」
福田「君の言うことは理解できたし、納得もいく。大方筋も通っている。
しかし、事実。藤本君殺害の事件、矢口君殺害の事件ともに、我々では
不可能犯罪なのではないか?
警察の方々もそう言ってるじゃないか?」
脇では権藤刑事も、軽くではあるが頷いている。
- 692 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 04:55
- 福田はまだまだ続けて話した。
福田「藤本君殺害事件の時、殺害現場はこのダンスホールらしいが、
実際、このダンスホールは鍵が掛かっていて、その本鍵は遺体の藤本君の
掌で握られていた。
合鍵も事務の保田君が厳重に保管している。無論、本鍵や合鍵でコピーを
作ろうにも、職人が丸々一週間かけてやっと一本作れる位、特殊な鍵だぞ。
窓から逃げ出そうにも、見ての通り全ての窓には鉄格子が掛かっている。
唯一の出入り口を内側から掛けると、犯人は外部に逃げ出すことは不可能。
矢口君殺害事件だってそうだろ?
私達がダンスホールで17人全員が集まっていた、ちょうどその時、
向こうのほうで、爆発音がした。
これは間違いない。
当の事件現場には、時限装置らしき物も発見されなかったわけだ。
と言う事は、爆発音がした時には皆、このダンスホールにいたんだから
当然、こちらも我々17人には不可能だ。
さあ、皇君、これでも君は、犯人はこの中に居ると言い切るのかね?」
副校長の福田の言った事は、的確に的を射抜いていた。
- 693 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 05:05
- 皇「ええ可能ですよ!」
福田の言葉に、あたかも待ってました、と言わんばかりの自信に満ちた声で、
答えた。
福田「何だと!?」
福田はカウンターパンチを受けたかの様な表情を浮かべた。
飯田「嘘!!そんなこと可能なの?」
安倍「皇君、本当なの?」
紺野「まさか・・・・・・・・・。」
皇「本当です。今から披露しましょう。
なんてことはありません。簡単なカラクリですよ・・・・・・・・。」
皇は不敵な笑みを浮かべた。
- 694 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/01(水) 05:12
- いや〜〜〜、何とか解決編、一区切りつきました。
解決編は、出来ることならば一気に更新したかったんですけどね・・・・・・・・・。
まあ、無理な話です。
それはともかく、一応、解決編がある程度進みましたが、実際、読者の皆様に
どれほど、この私の言いたい事が伝わっているか心配です。
執筆しているうちに、自分でも何言っているのか分からなくなることがあるので、
殆ど伝わっていない気がします。
ですので、「ここの意味が分からない」、「要約してほしい」などと言う要望がありましたら、
お気軽に申し出て下さって結構です。
こちらとしても何処が、どう悪かった、などと勉強になりますので、よろしくお願いします。
- 695 名前:七誌さん 投稿日:2004/12/01(水) 17:52
- おお〜。解決編が始まってるではあ〜りませんかぁ!!!
ここまできたら一応・・・ってまだあんまりわかってません・・・。
次回更新待ってます。
- 696 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/12/09(木) 23:28
- お疲れ様です。
・・・なんか予想していた人と違っている様子です。
もう一度見直さなくちゃ!!。
- 697 名前:北斗 投稿日:2004/12/11(土) 16:02
- 更新お疲れ様です!
もう少しで完結ですね?
このままの調子で頑張ってください!
しかし、簡単なカラクリが全くわからん・・・
- 698 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 01:40
- 「七誌さん」さん、ここまで来て、長々更新しなくて申し訳ございません。
あんまり期待しないで下さい。そんな大層な文才はありませんので・・・・・・。
目指せ年内完結!!、(あくまでも目標・・・・・・・)
- 699 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 01:44
- 「マシュー利樹」さん、お疲れ様です。
犯人探し、最後の最後まで頑張ってください。
まだまだトリック、動機、なんかも色々ありますので、宜しかったら探してみてください。
(かなり安っぽいですが・・・・・・・・)
- 700 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 01:48
- 「北斗」さん、お久しぶりです。
どうもすみません、長々と休んでしまって・・・・・・・・。
先週12日も、都内の「西立川駅」のすぐ脇の「某昭和記念公園」で駅伝、走って
きました。疲れて疲れて・・・・・・・・、更新しようにも・・・・・・・・。
申し訳ございません。
このままの調子で続けられるか分かりませんが、行けるところまで行きます。
- 701 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 02:23
- 皇「まず、第二の事件、藤本さん殺害の事件のカラクリです。
最初、俺が気になったのは藤本さんの遺体発見時の状態です。
藤本さんは、ダンスホール内のステージ脇の物置部屋で背後から、頭部を
殴打され、殺害された。
犯人はこの後、何故か、その藤本さんの遺体をそのまま放置せず、態々、
ステージに運び直し、ステージの天井から遺体を吊るし、そして血文字も残した。
このことがどうしても頭から離れなかった。
しかし、落ち着いて考えてみれば、実に筋の通った行動だったんです。」
市井「一体どう言う事だ?その行動に何の意味があるんだ?」
皇「この完全密室から逃げ出すための布石にする為です。」
安倍「じゃあ、やっぱり犯人は藤本を殺した後、このダンスホールから逃げて密室にしたって事?」
高橋「安倍さん、違いますよ。」
安倍「え?違うの?
でも今、皇君が言ったじゃない?」
皇「藤本さんを殺害した後、逃げてから密室にしたんじゃありません。
正確に言うと、『密室にしてから逃げたんです。』」
- 702 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 02:38
- 全員の頭に『?』マークが並んだ。
加護「さっきから皇君の言っている意味が良くわかんない。
どうして美貴ちゃんステージの天井に吊るす事が、密室を作り出す布石になんの?」
高橋「吊るされた藤本さんが密室化されたダンスホールを逃げ出す布石になる。
言い換えれば、藤本さんが吊るされてなかったら、犯人は、ダンスホールから
逃げ出すことが出来なかった。
だから犯人は態々、藤本さんの遺体を吊るすと言う、手間の掛かる作業をせざるを得なかったんです。」
中澤「結局、犯人は何処からダンスホールから逃げ去ったて言うの?」
皇「逃げ去るも何も、ダンスホールの窓は鉄格子が付いているから無理。
鉄格子の付いていない窓のある、二階のギャラリーは床に溜まっている埃に足跡が残る可能性があって
邪魔になる。しかも当時、外は土砂降りの雨、窓を開ければ大量の雫が入ってきて、跡が残る。
よって、二階のギャラリーを使った逃走ルートも不可能。
となると、残された方法はたった一つ・・・・・・・・・、犯人はダンスホールの『出入り口』を使って外に逃げたんです。」
- 703 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 02:47
- 全員「え!?!?!?」
一瞬にして、凍り付いていた沈黙の空間が、崩壊した。
そこに居た全員がざわめいた。
小川「ちょっと待ってよ!」
次の瞬間、小川が立ち上がった。
小川「言っておくけど、私は犯人じゃないわよ。
あの日、鍵を開けに言った時、ダンスホールの扉の鍵はちゃんと掛かってたし、
鍵を開けてステージの美貴ちゃんを見つけた時も、その後、用務員の市井さんと、
事務の保田さんが来るまで、ずっと私はダンスホールに居たわよ。」
小川がいきり立った。
市井「そうだ。私もそれは証明する。
小川君がいつもの時間に、合鍵を持ってダンスホールの扉を開けるところは、一瞬だが
私も見た。本当だ。」
皇「安心してください。別に俺は、小川さんが今回の犯人だ、なんていてません。」
- 704 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 03:01
- 小川「え?でも今、犯人は密室を作った後、その出入り口から外に逃げたって言ったでしょ?」
皇「ええ言いました。犯人は正々堂々、ダンスホールの出入り口から逃げたんです。
ただ、完全密室状態だと、どう足掻こうと外部には逃げ出すことは不可能。
だから、犯人は『ある瞬間』を狙っていたんです。」
田中「何?『ある瞬間』って?」
皇「ダンスホールの完全密室状態が解かれる、『ある一瞬』・・・・・・。
ダンスホールの内側から鍵をかけて、犯人は『その瞬間』を今か今かと待っていた。
そうつまり、
『小川麻琴が朝錬の為に外からダンスホールの扉を合鍵で開ける瞬間』を。」
紺野「え!?嘘・・・・・・・・」
新垣「ちょっと待って・・・・・、それってつまり・・・・・・・・・」
飯田「小川が鍵を開ける、その瞬間まで、藤本を殺した犯人はダンスホール内に居たって事?」
福田「そんな馬鹿な・・・・・・・・。」
皇「冗談でもなければ、嘘でもありません。
そう考えると、犯人がどうやってダンスホールから逃走したのか?
そして、何故藤本さんを殺害後、態々ステージに吊るす必要があったのか?
この謎も解けます。」
- 705 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 03:13
- 小川「ちょっと待ってよ、私が鍵を開けるその瞬間まで、中に犯人が居たとしても、
どうやって犯人はダンスホールから逃げ出すことが出来るの?
実際、私は出入り口のすぐそばにずっと居たんだよ?」
高橋「そう、本来なら、まこっちゃんが鍵を開ける瞬間を待っていて、鍵が開いた瞬間、まこっちゃんが
入ってくるのと同時に外に逃げ出せば、確実に見つかってしまう。
そこで犯人は藤本さんの遺体を使ったわけです。」
皇「普通に出入り口から逃げたのでは、小川さんに見つかってしまう。
しかし、小川がダンスホールに入った瞬間、
『何かに眼を奪われて、それを凝視してしまっていたら』
犯人はそっちに意識が集中している小川のすぐ脇を通って、いまさっき開いた
出入り口から外部に逃げ出すことは、少なくとも不可能ではなかったはずだ。」
- 706 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 03:26
- 吉澤「そうか、それで犯人は小川の意識をある一点に集中させるために、藤本の
死体を使ったって訳だ。」
皇「そう、つまり犯人が起こした行動を順にまとめるとこうだ。
犯人は朝早く藤本美貴をダンスホール内の物置部屋に呼び出し、殺害。
次に犯人は、事切れた藤本美貴をステージに引きずって来て天井に吊るす。
その後、血が乾かないうちに例の血文字を残す。
そして犯人は、出入り口すぐ脇の、パイプ椅子などを置いておくスペースに、
その身を隠す。
そしたら、小川が鍵を開けに来るまで、ひらすら待つ。
しばらくすると、鍵が開いて、小川が入ってくる。
小川は入った瞬間に、視線上に浮かぶ藤本美貴首吊り死体を発見し、そこに意識が集中する。
人間ってのは、どんなに精巧に出来ていても、ある一点に集中すると、周りが見えなくなる。
例え、すぐ後ろを人間が通っていても、気付かない時が多い。
犯人はその隙を見計らって、外部に逃走した。
犯人が態々、藤本さんを撲殺した後、ステージに運んで天井から吊るした
理由は、ダンスホールに入ってきた小川の意識と視線を、ほんの数秒間そこに
固定させるためだったって訳だ。」
- 707 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/12/20(月) 03:37
- 小川「じゃ・・・・・じゃあ・・・・・・・・・・・?」
皇「そう、小川。お前が藤本美貴の遺体に意識が集中していた、その瞬間、
お前のすぐ背後を、藤本美貴を殺害した張本人が、事もあろうか、お前の
開けた出入り口から、外部に逃げ出したって事だ。」
高橋「警察が、『犯人は密室からどうやって逃げ出したか?』を必死で考えていましたけど、
そうじゃなかったんですよ。
そう考えれば考えるほど、真実から遠のいていく。
問題は、犯人が逃走するその瞬間まで、ダンスホールが本当に密室だったのか?
と言う点だったんです。」
さっきまで慌ただしかった空間が、再び凍てつく幕に覆われる。
- 708 名前:七誌さん 投稿日:2004/12/21(火) 22:09
- んああああああ!謎解き開始ィ!!!
ミキティ事件?・・・なるほど・・・。
はぁ、自分頭固いなぁ。このトリックが浮かばなかったなんて・・・。
- 709 名前:マシュー利樹 投稿日:2004/12/29(水) 13:39
- やっと読み終りました。
今度こそ、分かった気が・・・。
- 710 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/06(木) 23:45
- 「七誌さん」さん、ありがとうございます。
いや〜〜、あんな下手糞な文章を理解して頂いて、本当にありがとうございます。
こちらとしても、あの文章で分かってもらえたかな・・・・・・・、と思っていましたが、
どうやら何の支障も無いようなので、一安心しました。
- 711 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/06(木) 23:50
- 「マシュー利樹」さん、どうもです。
なんとか分かっていただけましたでしょうか?
文才の無い作者が書いていますので、多少は眼をつぶっていただいて・・・・・・・・。
まあ、分からない箇所がありましたら、詳し〜く説明させて頂きますので、
その時は、お気軽に・・・・・・・・・・。
何とか定期的に更新したいんですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頑張ります。
- 712 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 01:17
- 安倍「じゃあ、矢口の事件も同じ様に・・・・・・・・・・?」
皇「そうです。第3の事件、矢口真里さんの事件も同様に、人間の手によって
引き起こされた事件だったわけです。
ここにいる俺達全員が、事件当夜、行方不明だった矢口さんを探す為、
学園内をうろついていた。
そして、全員が一ヶ所で集まっていた、ちょうどその時、あの轟音が聞こえてきた。
音のした方に向かっていくと、そこには紅く燃え上がる家屋があった。
中を調べてみると、そこには矢口さんがいた。」
飯田「確かにその通り。
だとしたら、少なくともここにいる私達にはこの犯行は不可能なはずでしょ?
だって、現場には時限装置の様な物が残っていない限り、ダンスホールで皆と
顔を合わせながら、火を点ける事なんて無理でしょ?」
- 713 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 01:43
- 確かに飯田の言う通りだった。
全員が一ヶ所に集まったダンスホールと、矢口真里が発見された物置小屋との
距離は直線距離にして2〜300mはあった。
つまり超能力でも使わない限り、遠く離れた現場に火を点ける事は不可能なのだ。
皇「ええ。ダンスホールに居ながらにして、あの事件現場に火を点ける事は無理です。
でも、『あたかも今、爆発が起こったかのように見せかける事』は可能です。」
中澤「『見せかける事』?何言ってんの??
現に爆発音が向こうの方の古倉庫から聞こえてきたじゃない?」
皇「確かに爆発音は聞こえてきました・・・・・・・・、しかし、
あの爆音が『本物』の爆音かどうかはわかりません。」
中澤「本物の爆音?」
皇「もし、仮に我々が聞いた爆音が『偽物』の爆音、例えば『持ち運び可能な
ラジカセ等』で再生し直した爆音だったとしたら・・・・・・・・・・。」
- 714 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 02:10
- 道重「・・・・・・・・って言うことは、私達はラジカセで再生された爆音を
本物の爆音と勘違いしたってわけ?」
高橋「恐らくそうだと思う・・・・・・まだ仮説の段階だけどね・・・・・・・・・。」
皇「しかし、そう考えると、これまた色々と都合が良くなるんですよ。
まず1つ目は、矢口さんの失踪時期と発見時期との関係。
矢口さんは、恐らく犯人と思われる人物から手紙を受けてその後失踪した。
しかし、何故か矢口さんが発見されたのは、失踪したその日ではなく、
翌日になってからだった事。
2つ目は、何故矢口真里は、鈍器の様な物で頭部を殴られた後、燃やされた事。
矢口さんは、石川さん同様、致命傷となる頭部の殴打があったにも関わらず、
何故か爆発によって、全身が焼け爛れてしまった事。
3つ目は、『ある人物』の動言の事。」
- 715 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 02:35
- 皇「犯人は矢口さんを殺害する計画を企てた。
しかし、ここでも犯人は自分だけでなく、我々も犯人として警察に疑われ
ないようにする必要があった。
その為にはどうすれば良いか、犯人は考えた。
そこで犯人は自分のアリバイを作ると同時に、残りの16人のアリバイを作り出すために、
警察を間接的に動かし、警察自身をアリバイ作りの証人にしてしまう事を考えた。
だがしかし、実際に犯行を行えばアリバイを作る事が出来ないので、ここで一工夫打つ事にした。
それが今回の『偽爆発音事件』だ。」
高橋「まず矢口さんを手紙でおびき寄せ、隙を突き背後から襲い掛かる。
けれどもここで問題が発生します。
それが『死亡推定時刻』です。
矢口真里さんが家に帰ってこなくなり、両親が捜索願を出し、警察が実際に
動き出すまでに、最低でも1日はかかります。
仮に、運良く失踪して翌日に警察が動き出し、矢口さんを見つけ出しても、
死亡推定時刻が昨日だったとしたら、自分が怪しまれてしまう。
その為、犯人は矢口さんの死亡推定時刻を操作する必要がありました。」
- 716 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 02:52
- <訂正>
「714」の下から3行目
(誤)『矢口さんは、石川さん同様〜・・・・・・』
(正)『矢口さんは、藤本さん同様〜・・・・・・』
『本編』
吉澤「操作って何すんの?」
皇「矢口さん殺害後、そのまま放置し続ければ、死亡推定時刻に誤差が生じて
来ますが、そのトリックは、石川さんの事件で使おうとして失敗してますし、
そもそも、警察がいつごろ動き出すか分からない場合は、返って危険だ。」
高橋「ですから犯人は、死亡推定時刻自体を消してしまおうとしました。
そこで犯人は殺害した矢口さんを『焼失』させてしまおうとしたんです。
実際、警察で死亡推定時刻は、血液の凝固具合、死後硬直の進行具合、
細胞の腐食具合、体幹温度、『死斑』と言う痣の出来具合などにより決定されます。
でも、遺体が焼け爛れて検査のしようがなければ、当然、死亡推定時刻は出てきません。
犯人はそれが狙いだったんです。」
- 717 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 03:20
- 皇「しかし、ここでも問題が発生する。
後は例の事件現場で火薬かガスを充満させたあと爆発させ、矢口さんの遺体を
焼却すれば良いのだが、爆発させようにも、直接爆発させようとするとアリバイが
保てない。
かと言って、ずっと警察たちの眼の届く範囲に居ると爆発させられない。
ここで犯人は実にうまい事を考え出した。
それは、一度、遺体を警察に発見される前に、あの事件場所で本当に爆発物を引火し、矢口真里の
燃死体を作り出し、すぐに古倉庫の火を消す。
このことをあまり騒ぎにしたくないこともあって、警察は自分達に
失踪した矢口真里の捜索の協力を依頼してくるだろうと犯人は考え、案の定その通りになった。
そして、その後、警察たちが捜査し始めたら隙を窺って、事件現場である
燃え残った古倉庫に向かい、再び火をつける。
ここで一度燃えた建物は火が点きにくく、点いても燃えにくいと言う性質を利用した。
古倉庫に火を点けた犯人は急いで皆の居るダンスホールに戻ってくる。
その間にも、一度燃えた古倉庫が、じわじわ少しずつ火の手を上げていく。
そして頃合を見計らってポケットか何かに隠し持っていたリモコンで
予め、ダンスホールのすぐ外に置いておいたステレオやラジカセの電源を入れ
昨日、本当に爆発させた時の爆音を録音していたテープを、大音量で再生した・・・・・・・・。」
- 718 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 03:39
- 福田「成る程・・・・・・・・・・、確かにそれなら警察と一緒にいてアリバイを
作りながら、同時に殺人事件を起こせると言うわけか・・・・・・・・・・。」
高橋「後は、焼死体の身元が分かるように、さりげなく現場に学生証を置いていけば
トリックは完璧でした。」
吉澤「だけどわかんないな〜〜。
何で態々犯人はそんな回りくどい事したの?
ミキティーの事件といい、矢口さんの事件といい、そもそも犯人は何で
私達のアリバイを証明しようとか、私達が警察に犯人扱いさせないように
する必要があったわけ??」
安倍「確かにそれは言えてるね。
普通に考えたらがそんなことする必要無いよね?
メリットが無いどころか、デメリットしか無い気がするんだけど・・・・・・・。」
それは吉澤や安倍だけでなく、他の全員も同じ事を感じているのは誰にでも
容易に想像できる。
- 719 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/07(金) 03:45
- 皇「こんな手間のかかる事、いくら警察の捜査を撹乱するためとは言え、
ここまでする物好きは居ませんよ。
それは犯人が『ある事を隠す』為、やらざるを得なかった、
正に苦肉の策だったんですよ。」
紺野「ある事を・・・・・・・・・・・?」
田中「隠す為・・・・・・・・・・・・?」
ダンスホール内は、シーンと水を打ったように静まり返っていた。
- 720 名前:七誌さん 投稿日:2005/01/07(金) 22:32
- あ、リアルタイムゲッツ!!(古ッ!!
なるほど・・・矢口さんの事件の真相はそうだったんですね・・・。
ぜんっぜんわかんなかった・・・。な、情けない・・・。
犯人のやった『ある事隠すため』とはなんなんでしょう・・・。
ん〜ここまできても犯人がわかんないなんて・・・だめだな〜。
- 721 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/01/09(日) 04:35
- 更新、お疲れ様でした。
この理由は何となく分かったかも。
と言って、間違えたら物凄〜く格好悪いから言いませんが・・・。
(合っててもマナー違反だし・・・)
- 722 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/17(月) 23:23
- 「七誌さん」さん、どうもです。
自分で言うのも申し訳ございませんが、ここからが大切な場面になって・・・・・・、
来ると思います。
犯人は、そうですね〜〜・・・・・・・・・、矢口さんの残したダイイングメッセージ
「114411」の謎を解けば、すぐ分かりますよ・・・・・・(?)
- 723 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/17(月) 23:29
- 「マシュー利樹」さん、ありがとうございます
な、なんとこの理由が分かってしまいましたか?
知りたいですね〜。一応、作者として読者の皆様がどんな考えを持っているか
非常に知りたいですね。
今度宜しかったら、メル欄解答お願いします。
- 724 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/17(月) 23:55
- 皇「そう!犯人は『ある事実』を警察、我々、そして世間の眼から隠すため、
この様な事件を仕組んだと考えて良いでしょう。」
ゴクンと、誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
辻「それで?『ある事実』って一体何?
犯人は本当に、その『ある事実』を隠そうとしてこんなことを?」
高橋がゆっくりと話し始めた。
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・、
2年前・・・・・・・・・、この学園に『後藤真希』と言う女子生徒が居ました。」
『後藤真希』と言う言葉が高橋の口から出た時、そこに並んでいた多くの人物が、ビクッと
反応した。
校長の石黒や副校長の福田、用務員の市井、中澤や飯田や安倍、吉澤、辻、加護
が反応を示し、逆に紺野や小川や新垣、道重、亀井、田中は反応を示せなかった。
- 725 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/18(火) 00:08
- 小川「え??『後藤真希』??誰々?」
紺野「聴いたこと無い名前だね?2年前だから、私たちがこの学園に入学する
と同時に卒業した人かな?」
高橋は続ける。
高橋「その『後藤真希』さんは私達と同じミュージカル部員でした。
しかし、その『後藤真希』さんは、ある日、謎の失踪を遂げてしまいました。」
小川「え?」
紺野「え??」
新垣「え???」
高橋「『後藤真希』さんは失踪当時、高校2年生でしたがその才能は眼を見張る
ものがあり、性格も明るく友達も多く、成績もそこそこ良い方だったそうです。」
飯田「私も良く覚えている・・・・・・・・。
後藤はキャラクターに一癖あったものの、とっても良い子だった。
特にこれと言って悩んでいることも無さそうだったのに、ある日、突然
その姿を消した・・・・・・・・・・。」
- 726 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/18(火) 00:22
- 安倍「それなのに警察は状況が状況なだけに、誘拐や他の事件に巻き込まれた、
と断定できない、って言って後藤が密かに家出を企んでいたんだろう・・・・・・、って
言ってまともに捜査もしてもらえなかったっけ・・・・・・・・・・・。
同学年で、クラスメイトでもあった矢口は、後藤が失踪したって聞かされた時、
凄く落ち込んでいたっけ・・・・・・・・・・・。」
吉澤「あの時の矢口先輩・・・・・・・・・・、見てるこっちが辛かったの覚えてる。」
加護「あの時、何日かしたら矢口さんは見た目、立ち直ったように見えたけど・・・・・・・・・・・」
辻「・・・・・、でもどこか耐え忍んでいる風にも見えた・・・・・。」
福田「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
まあ確かに当時は警察も早い段階で、事件への関連性が無いと
断定され、マスコミも大して騒がなかったから、1〜2年生の皆が知らないのは
無理も無いだろうが・・・・・・・・・・・、
その『後藤真希』君の失踪事件が、今回の連続殺人事件と何の関わりが
あると言うんだね?」
- 727 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/18(火) 00:52
- 皇「石川梨華さんは、土曜日の夜、忘れ物をしたと言って一緒に帰っていた
吉澤さんたちと駅で別れ、一人部室に戻ったところ、何者かによって部室内で
殺害された。現場には例の不気味な血文字が残されていた。」
高橋「一方、2年前に失踪した後藤真希さんは同じく土曜日の夜、忘れ物をしたので
家に帰る道の途中、一緒に帰っていた友達と別れ、自分だけダンスホールにある
ミュージカル部の部室に戻った、そこから後藤真希を目撃した人物はいない。
と言う事実だけが警察の捜査資料から分かりました。」
中澤「・・・・・・・・、石川と後藤・・・・・・・・・・、
この2人の事件、やたら内容が酷似してるな〜〜。
石川は殺されて、後藤の方は行方不明。
後は石川の現場には血文字が残されているとは言っても、それが無かったら
この2人の事件、良く似てるな〜〜・・・・・・・・。」
市井「と・・・・・と言うことは・・・・・・どう言う事だ?」
皇「2人とも、この学園の女子生徒といい、ミュージカル部の部員といい、
場所がミュージカル部部室といい、土曜日といい、忘れ物を取りにと偶発的な
理由で部室に戻ってきたことといい・・・・・・・・・・、
これが石川さんが殺害されずに、あるいは殺害されてもその後、そこに放置
されずに何処か遠くの山奥に遺棄されて、血文字も残っていなかったとしたら・・・・・・・・・?」
どう思いますか?中澤先生?」
中澤「・・・・・・・、この2人の事件・・・・・・、ほぼ・・・・・いいえ、
全くと言って良いほどぴったりと重なるわね・・・・・・・・。」
- 728 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/18(火) 01:07
- 皇「そう言う事です。
1人は失踪、1人は部室で血まみれで絶命していた。
石川さんの場合は、現場に血文字こそ残っていたものの、
この『石川梨華殺害事件』と『後藤真希失踪事件』、この2つの事件は
2年の間隔が開いていますが、全くの無関係の事件ではないんです。」
高橋「石川さん殺害事件の時は、現場に『煉獄仮面』と言う犯人の犯行声明文が
存在したため、その印象が私達の脳裏に強く残ってしまい、2年前の
全く酷似した事件、『後藤真希失踪事件』と掛け合わせることが出来なかったんです。
勿論、2年前に後藤さんが失踪した時に、一緒に居た中澤先生を始め、
飯田さんや安倍さん達も、・・・・・・・そして警察の人たちも・・・・・・・・・。」
何と言うことだ!!
2年前の後藤真希と言う女子生徒が失踪した事件と、今回起こった石川梨華殺害事件が
関係性を帯びていると言うことを知った全ての人物が、まるで魂を抜き取られたかのような
衝撃に襲われた。
- 729 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/01/18(火) 01:23
- 石黒「皇君は、『後藤真希失踪事件』と今回の『石川梨華殺害事件』は無関係ではないと
言うつもりだろうが、では聞くが、この2つの事件はどんな繋がりが
あると言うんだね?」
皇「『どんな繋がりがある?』の話じゃないですよ。
恐らく・・・・・・・・・・・、この2つの事件の犯人は同一犯です。」
石黒「はぁ!?!?!?」
石黒は驚きのあまり、馬鹿でかい声を上げた。
声を上げたのは、何も校長の石黒だけではない。
多かれ少なかれ、周りに居た全員が声を上げた。
2年前に風化した1つの事件
迷宮入りと言う名の、永久の眠りから覚めた『後藤真希失踪事件』
皇祐一郎の頭の中で、それは覚醒し始めた。
- 730 名前:七誌さん 投稿日:2005/01/18(火) 21:43
- う〜ん・・・微妙にリアルタイム・・・?
そうか・・・って皇クンってすごいな〜。
「114411」・・・う〜ん。考えてみよっと♪
- 731 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/01/24(月) 21:55
- 更新されてたの、今、気づきました。
分かったような気が何で、正直、まだ、何とも言えません。
一言だけ言うと、結構、その部分に関しては、
犯人に直結するような重要な部分ではないかと思うんですが・・・・。
- 732 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 01:56
- 「七誌さん」さん、真にありがとうございます。
更新遅れてしまって、どうもすみません。
皇君凄いですね〜〜、自分もこのぐらい才能に溢れたいです。
何か、数ヶ月前には「年内完結を目指す」とか訳の分からないことをほざいていましたが
この有様です。もうちょっと定期的に更新できるように気をつけます。
- 733 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 02:00
- 「マシュー利樹」さん、ありがとうございます。
本当に、気が付けば更新されてる、気が付けば半ば放置されてる・・・・・・・、的な状況で
申し訳ございません。
え〜〜、もうこの小説に物言いがありましたら、どんどん、がんがん言っちゃって下さい。
不平不満は随時承ってございます。
- 734 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 02:16
- 皇「皆さん、考えてみてください。
後藤さんと石川さんは、状況から言って恐らく同じ理由でこの世から姿を消されて
しまったことは、もうお分かりかと思います。
ここで、仮に後藤さんを連れ去った人物と、石川さんを殺害した人物が、全くの
別人だとしましょう。
ある時犯人である、『ある人物』が石川さんを殺害しなくてはならなくなった。
そして石川さんを殺害した。
その時、皆さんだったらどうしますか?
面倒くさい細工を施して、いつ殺人犯として捕まるか分からない恐怖を毎日味わいながら、
普通の生活を送っていくのと、
結果として同じ殺してしまったにしても、そのまま現場を綺麗に片付け、その遺体を何処か
人里離れた山奥に埋める、
こうすれば遺体は簡単に発見されないし、行方不明として警察が動き出しても、
もしかしたら事故か、または他の原因がある、と断定してくれれば、自分に
逮捕の手が回ってくることは、随分抑えられる。
こう考えた時、皆さんならどちらの行動をとりますか?」
皇の目の前に座っている人達は、物語らない人形になっている。
- 735 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 02:33
- 皇「十中八九、後者の行動をとります。何より安全ですからね。
現に、後藤さんの事件は2年経った今でも、ろくに捜査されていませんからね?
ここで問題です。
では何故、石川さんを殺害した犯人は、明らかに安全な遺体処理の手段があるにも
関わらず、態々、面倒くさい手間の掛かる前者の方法を取ったのでしょうか?」
全員「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
皇「そう、犯人はしたくても出来なかった。
石川さんを殺害した犯人は、少なくとも2年前の後藤真希さん失踪事件の存在を
知っていた。
だから、2年前と全く同様の手口で犯行を重ねれば、流石の警察だって「おかしい」と
思うことだろう、と直感した。」
高橋「そうなってくると、家出か何か・・・・と片付けられてきた2年前の後藤真希さん
失踪事件も警察は再捜査を開始するでしょう。」
皇「そうなると、今回殺害した石川梨華についてもかなり込み入った捜査が行われるのは
容易に想像可能だ。」
高橋「そうなれば、石川さんの遺体ももすぐに発見されることでしょう。」
皇「こうなると、今度は警察は、何故同様の手口で全く酷似した2つの事件が起こったのかと
怪しむはず。」
高橋「そうなってくると折角、石川さんを殺してまで隠そうとした、『ある事実』が
露呈してしまう。」
- 736 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 02:47
- 皇「石川さんを殺害した犯人は、それを恐れた。
後藤真希さん失踪・石川梨華さん殺害の関係性を暴かれるくらいだったら、態々面倒でも
手の込んだ工夫を施し、この2つの事件が全く別の事件であることをアピール
して、被害を最小限に抑えようと考える。」
高橋「そして犯人は石川梨華さんを山奥で遺棄しようとはせず、現場に血文字を
残し、あたかも精神異常者か朝学、ミュージカル部に恨みを持つ者、
はたまた、過去の御伽話に登場する悪霊の仕業か・・・・・・・・・・・・・・、
と言う印象を私達に植え付けることにして、その結果成功を収めた。」
皇「・・・・・・・・・・恐らくこれが石川さんを殺害した犯人の考えた事。
まあ、確かに後藤真希さん失踪事件と、石川梨華さん殺害事件の犯人が
同一人物と言う、絶対的な証拠はありません。
しかし、犯人がこれらことを考えなくてはいけなかったと言うことは、
2つの事件の犯人が同一犯である、と考えてもおかしくない事と思います。」
皇と高橋は、予め計画していたのか、見事に交互に喋った。
- 737 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 03:06
- 皇「では、本題に入りましょう。
今話した『後藤真希さん失踪事件』・『石川梨華さん殺害事件』は、実は
このままでは終わりません。」
高橋「犯人はこの2つの事件が、全く別の無関係の事件である、と言う印象を
私達に植え付ける作戦は成功しました。
けれども今度は別の問題が浮上します。」
皇「それが、『石川梨華さん殺害事件』の後片付け。
確かに2つの事件は無関係と言う形で、警察は処理するだろうが、今度は
石川さんの事件がネックになってくる。
これ程奇特で、マスコミが喜びそうな事件が起こってしまうと、後藤さんの事件の
ときのように、ほとぼりが冷め、いつの間にか収束する・・・・・・、と言った処理が
ほぼ不可能になる。」
高橋「こうなってくると、警察も下手に引き下がれない。
何がなんでも事件解決に走り出す。」
皇「実はこれこそが犯人の悩みの種だったんでしょう。
マスコミがいくら騒ごうとも、犯人自身には困ったことは無かったんでしょうが、
警察が事件解決に乗り出すと、犯人にとって困ったことが起こる。」
田中「困ったこと?なに、困ったことって?」
- 738 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 03:23
- 皇「『学園内の捜査』ですよ。」
田中「???」
安倍「・・・・・・あ・・・・・・そっか・・・・・・・・。」
皇「お分かりになりましたか?」
安倍「もともと、後藤も石川も『ある事実』を隠すために起こった事件だよね?
・・・・・てことは態々、細工を施して2つの事件は無関係だ、ってアピールしても
その結果、石川の事件が有名になって、警察が動き出し、学園内に捜査の
手が及んできたら、結局同じ結果になって『ある事実』が見つかってしまう。」
飯田がそこに付け加えるように入ってきた。
飯田「成る程!!
学園内を捜査されないように石川の事件を、変わった状況に作り上げたのに、
皮肉にも、その作戦が逆に、警察に捜査の手を更に学園内に向けることになってしまった・・・・・・。
そう言いたいんでしょ?」
皇「ええ、そう言う事です。
犯人はここで更に考えた。警察に学園内に隠してある『ある事実』に近づけない
為には、どうすれば良いか?
要は、今回起こった『石川梨華殺害事件』がこの『私立朝日ヶ丘大付属学園高校』と全く
無関係である、とアピールする必要があったわけだ。」
高橋「つまり今回の事件が、特異な者の犯行で、『朝学』がだた単に、事件の舞台になった
に過ぎず、無関係である、とアピールすれば良いと・・・・・・・・。」
- 739 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 03:37
- 皇「更に石川梨華さんの様な、変死体殺人事件が更に起こり、犯人像がはっきりせず、
『特異的な性格の者の犯行である』と警察に思わせれば良い。
まあ、つまり、
今回の事件には全く関わりが無い無関係な人間があと数人、同様の事件で殺害
されれば、警察も捜査方針を
『犯人は学園内ではなく、学園外に居る特異的性格人物だ。
よって学園内は捜査の必要性無し。』
と切り替えてくれるだろう。
犯人はそこまで考えて、第二第三の犯行を行った。」
その話を聞いた刹那、そこに居た全員の顔色が、一瞬のうちに変わったことに、嫌でも
気付くこととなる。
真っ青なペンキを塗り手繰った様な色だ。
亀井「ちょ・・・・・・・・ちょ・・・・・、ちょっと待って・・・・・・・・・・、」
亀井はそこで声が出ず、固まった。
もう後半は涙混じりの声だった。
吉澤「・・・・・・・・・よ・・・。
・・・・・・・・・てよ・・・・・。
・・・・・・・・待てよ・・・・・・・・。
!!!!ちょっと待てよ!!!!!!!!!!!!」
吉澤が張り裂けんばかりの、豪声を放った。
高橋達の鼓膜が、破れそうだった。
微かに、周りの窓ガラスが、共鳴を起こした。
- 740 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 03:43
- 加護「ちょ、どうしたのヨッシー?いきなり大声出して?」
吉澤のすぐ隣の椅子に座っていた加護が、吉澤の宥めに入る。
吉澤「ちょっと待てよ・・・・・・・・。
今、あんたが言ったことを要約すると、つまりは・・・・・・・・、
2回目に殺された藤本や・・・・・・・・・・・・・・・、
3回目に殺された矢口先輩は、・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・、ただ単に・・・・・・・・・・・・・・・、
警察の眼を誤魔化す為だけに殺されたって言う風に聞こえるじゃんかよ!!!」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・」
皇のすぐ後横に立っている高橋は、皇の顔を、恐る恐る伺うように見ているだけだ。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・、そうです・・・・・。」
吉澤「は???」
いきり立った吉澤の表情が歪む。
- 741 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/01(火) 03:50
- 皇「犯人にとって、第二の被害者藤本美貴さん、第三の被害者矢口真里さん、は
別に恨みや怨恨、口封じとかではなく、単に警察の眼を真実から遠ざけ、
ミスリードさせる為に殺された、と言う意味で言いました。」
高橋「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
高橋は両眼を閉じた。
吉澤「・・・・・・・・・・・・・・・・・。
嘘だろ・・・・・・・・・・・・・・・・?
そんな・・・・・・・・・・馬鹿な・・・・・・・・・・?」
吉澤は、そのまま力尽きたのか、膝を折り曲げ、椅子に凭れ掛かった。
吉澤だけでない
その他の全員も全く同様の表情になったであろう。
皇の位置からだと、全員の表情が良く伺える。
それでも皇は、話を続ける。
- 742 名前:七誌さん 投稿日:2005/02/02(水) 19:02
- う〜ん・・・吉澤サンの言うことも一理ありますね・・・。
一体どうなるんでしょう・・・?
犯人の目星は大体・・・ってまだあんましわかってないけど・・・(悲)
次の更新までに考えておかないと・・・。
- 743 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 00:40
- 「七誌さん」さん、毎回毎回ありがとうございます。
吉澤さんは、ちょっと可哀想でしたね・・・・・・・、自分で作っておきながら・・・・・・。
なんだか今まで、更新と更新の間隔が開きすぎてしまって、流石にこれでは・・・・・・・、と
感じた今日この頃です。
考える時間を七誌さんから奪ってしまうようですが、今回はいつもよりも早めに
更新してみます。
- 744 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 00:58
- 皇「話を戻しましょう。
今言ったように、犯人は『後藤真希失踪事件』と『石川梨華殺害事件』が
全く無関係である、更に『石川梨華殺害事件』を不自然な殺人事件として
警察に思わせないように、更なる仕掛け・細工を施す必要があった。
犯人は悩んだ。そして悩んだ挙句、更なる殺人事件を起こさせようと言う
悪魔のような考えを巡らせた。
まず、特異的な事件状況であった『石川梨華殺害事件』の様な殺人事件
が立て続けに起これば、警察はこれらの事件にだけ眼を向け、連続して起こった
怪奇連続殺人事件をひとまとめにして解決しようと乗り出す。
当然、こうなると頭の固い警察集団は、2つの事件が実は大きな関わりがあるとは
これっぽっちも思わない。
これで、まず第一の課題、『後藤真希失踪事件』と『石川梨華殺害事件』は
無関係と言う形で処理される。」
- 745 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 01:13
- 高橋「後は『石川梨華さん殺害事件』が変質者の仕業であり、学園の人物の仕業
では無いと言うことをアピールする事。
幸い、石川さんの殺害現場に謎の血文字を残しておきました。
これを連続して使えば、警察でなくても犯行はまともな人間の犯行ではない
と、言うことは充分アピールできます。
確実に・・・・・・と、言うわけではありませんが犯人が、まず普通の高校の
職員や、高校生徒だ、とは思わないはずです。
連続殺人を起こせば、警察が事件解決に乗り出します。
恐らく連続して殺された被害者、今回で言う『石川さん』・『藤本さん』
そして『矢口さん』の関係性を探ろうとするはずです。
そこから、もしかしたら事件の動機が伺えるかもしれませんからね。
しかし、今回の『藤本さん』と『矢口さん』は事件そのものには全く関係無く、
『石川梨華さん殺害事件』をカモフラージュするためだけの被害者なので、
『石川さん』と『藤本さん』、『矢口さん』自体に、同じミュージカル部部員
と言う関係はあっても、それほど親密な関係は無いんです。」
- 746 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 01:28
- 皇「『石川さん』・『藤本さん』・『矢口さん』の間にこれと言った大きな関係性
が無い以上、警察は動けず捜査は早くも行き詰る。
同一犯による犯行で、しかもこれほど珍しい事件が起こったにも関わらず、
犯人の手掛かりすら掴めない。
こうなると今度は警察の方がマスコミに叩かれるだろう。
そうなればマスコミと世間の注目は、徐々に今回の『事件怪奇殺人事件』から
『手際の悪い警察』に向けられる。
そう来れば、自然とこの事件のほとぼりも冷めやすくなり、万が一に警察が被害者である
3人の共通点を見つけ出し、容疑者を引っ張って来たとしても、それはそれで
世間の注目が更にそこに向くだけだし、容疑者その者も、朝学と全く関係無い
人物になる可能性が高い。
犯人はそこまで読んで、今回の大掛かりな『カモフラージュ殺人事件』を作り出した。
少なくとも犯人は、最初の石川梨華さんを殺害し、細工を施し、この凄まじい計画を
思いついた時点では、この策略は何の非の打ち所の無い、完璧な策略だ、と考えたでしょう。」
- 747 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 01:40
- 高橋「けれども、ここで早くも誤算が起こってしまったんです・・・・・・・。」
小川「・・・・そっか、愛ちゃんが予定よりずっと早く、石川先輩の遺体を見つけちゃった
事だ・・・・・・・・・・。」
小川が、はっとしながら言う。
皇「そう言う事。
前にも言ったけど、犯人の予定だと石川梨華さんは日曜日の朝、ミュージカル部の
朝練が行われる際に発見される、と考えていたはず。
それが犯行を起こしてから、ほんの数十分で発見されてしまった。
当時、犯人は相当焦ったはずだ。」
高橋「ここで重要になってくるのは、朝学関係者、つまり『ここに居る17名全員を
誰1人容疑者として浮き上がらせてはいけない』と言うことです。
何故なら、それは先程から言われている通り、犯人が朝学関係者ではない、しいては
学園内に警察の捜査の手を出させない為です。
・・・・・・・・全ては隠された『ある事実』を隠し通すため。」
石黒「そうか!だから高橋君があの時、事件現場に居合わせたことが、大きな誤算になって
しまったって訳か。」
- 748 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 02:06
- 皇「犯人は相当焦る。
よりにもよって朝学の生徒が、しかも殺害してすぐにその遺体が発見されたんだから。
案の定、警察はすぐに駆けつけ、当然の如く現場検証を開始する。
死亡推定時刻も、これまた当然のように、正確に割り出される。
それより何より、最も恐れていた『朝学の関係者(生徒)が容疑者として捕まる』
と言う事が現実に起こってしまった。
それも自分が疑われるのなら、まだ心構えがあってまだましだったであろう、
それが容疑者として疑われたのは、事件とは本当に無関係な女子生徒。」
高橋「その後、私は皆さんご存知の通り、私は無実を証明されました。
犯人にとっては、この瞬間は助かったかもしれませんが、この計画の綻びは
その後、全ての事件に影響してきます。」
皇「元々、朝学関係者を今回の事件に巻き込みたくなかった。
しかし、最初の事件で高橋が巻き込まれてしまった。
警察も意外と手筈が早く、事件に関係があろうと思われる人物がピックアップ
された。
こうなってくると犯人の計画の綻びは大きくなり過ぎて、収集が付かなくなる。
ここでまた別の無関係の人物を事件に巻き込むと、話が大きくなり連続殺害計画を
行う上で、不都合が生じてくる危険性さえある。」
- 749 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 02:21
- 高橋「その為、犯人はやむを得ず、警察にピックアップされた重要参考人、19人の
中で残った連続殺人を起こさなくてはならなかったんです。
第一の事件で私が警察に疑われてしまったので、犯人は急いで計画の方向修正
を行い、第二の事件は最も疑われやすい第一発見者の『小川麻琴』を守り、
更に極めつけとして、第三の事件においては、犯人を含め
ここに居る全員のアリバイを証明しながら、矢口さんを殺害する方法を選んだんです。」
皇「・・・・・・・・・・・・・・・とまあ、こんな所が真相です。」
皇はしれっと言うが、それを聞いている15人は気が気ではないであろう。
ましてや、当の犯人は心臓が口から飛び出す程度ではすまない思いだろう。
中澤「そ・・・・・それで・・・・・、結局犯人は一体誰なの・・・・・・・・・?」
そこに居た全員の思いを代表してか、中澤裕子が口を開く。
- 750 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 02:38
- 皇「それは簡単です。
今回の犯人は当然『石川梨華』・『藤本美貴』・『矢口真里』の3人の
事件全てで犯行可能だった人物に決まってるじゃないですか?」
中澤「で・・・・・・でも、私たちの中にはそんな人物はいないけど・・・・・・?」
高橋「いいえ、そんなことはありませんよ、中澤先生。
確かに、私と皇君を除く15人の中に、犯人は居ます。」
皇「それに、犯人は『不可思議な言動』を残しています。」
道重「『不可思議な言動』・・・・・・・ですか・・・・・?」
道重の小さな問いかけに対し、皇と高橋は静かに頷いた・・・・・・・・・
外では大きな都会の夜空に小さな星が数個瞬く
昼間では見せたことも無いような黒一色の空が地上を覆い潰す
雲も 散らばる微塵の星も 何も 地に立つ人の眼に留まることは無い
たった数時間の時が経つだけで空は全く異なる顔を覗かせる
それはまるで人間誰もが持っている心の闇の部分を露にするかの様だった
今一筋の淡い閃光が『私立朝日ヶ丘大付属学園高校』の丁度真上を横切ったのだった・・・・・・・・
- 751 名前:七誌さん 投稿日:2005/02/08(火) 20:12
- リアルタイムで更新乙です!
作者さま更新早いですね〜今日ここをのぞいてみてびっくりしましたよ!
う〜む・・・皇クンのいう『不可思議な言動』・・・
もう一度よく・・・って毎回おんなじこと言ってるな〜自分。
- 752 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/02/26(土) 10:32
- 更新、お疲れ様です。
ある程度、読み直し、また、予想していた犯人が変わってしまった・・・・。
何か、矢口事件も自信が無くなってしまった・・・・。
- 753 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/03(木) 15:42
- 「七誌さん」どうもありがとうございます。
どうもすみません。七誌さんにはリアルタイムで更新してもらっているのに、
こちらと来たら、気まぐれで更新するだけで、不定期極まりないったらありゃしない・・・・・・・。
『不可思議な言動』・・・・・・、まあ、この小説の内容全てが『不可思議』ですね。
これからも得意の不定期更新していきますので、気長に読んで下さい。
- 754 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/03(木) 15:48
- 「マシュー利樹」さん、毎回毎回ありがとうございます。
読んでいる途中で犯人が変わってしまう、なんて良くある事です。
またそれが、小説の良い所だと・・・・・・・、あわわ、偉そうな事言って申し訳無い。
自分でも読み返していると、何言ってんだ?とか、ここ間違ってるな、とか良くありますね。
小説の方も、もう少ししたら更新しますから、何卒お許し下さい・・・・・・・・・。
- 755 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/07(月) 00:34
- 皇「『不可思議な言動』・・・・・、まあ噛み砕いて言えば『よくよく考えてみると、
何処かおかしい点』の事です。」
飯田「今までの皇君の説明の中で、何処かおかしい箇所なんてあったの?」
飯田は皇に問いかける。
飯田達には、一見すると今までの説明の中にこれと言った引っかかる箇所は無かった。
皇「まずは、第二の殺人事件・・・・・・・藤本美貴さん殺害の時です。」
加護「あの事件に何かあったの?」
皇「先程にも言ったとおり、藤本さん殺害事件はダンスホールと言う密室内で
小川さんが扉を開けて、藤本美貴の遺体に意識を集中させられている間に、
その背後を逃げ去る・・・・・・・、と言った事件でした。
・・・・・・・・、しかし、この説明では聊か精細を欠くんです。」
安倍「??、・・・・・・その説明の中に何かあるの?」
高橋「実際に考えてみると、このトリックを用いたとなると、犯人が外部に逃げ伸びることが
非常に困難になるんです。
何故なら、まこっちゃんのすぐ後ろには用務員の市井さん、そして事務員の
保田さんが、悲鳴を聞いてやって来ていたんです。」
間髪入れずに皇が口を開く。
皇「それなのにも関わらず、例のカラクリを使って外部に逃げた犯人は、すぐ後ろまで
来ていた市井さんにも、保田さんにもその姿を見せることなく、忽然と煙の様に
消えてしまった。」
- 756 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/07(月) 00:50
- 吉澤「確かに・・・・・・・・・。言われてみれば・・・・・・・・・。
ダンスホールの密室にばっかり気をとられていたけど、ダンスホールを
抜けたとしても、そのすぐ後には、市井さんと保田さんの『2つ目の密室』が
あったのか・・・・・・・・。」
中澤「吉澤の言う通り・・・・・・。
ダンスホールと本棟を結ぶ廊下は、細い一本道の廊下だけ。
途中に身を隠す障害物の様なものも無いし、どう考えたって皇君の説明じゃあ、
不完全なわけなんだ・・・・・・・。」
新垣「それじゃあ、このダンスホールの密室は振り出しに戻っちゃうの・・・・・?」
皇「いいえ。そんなことありません。この説はこれであってるんです。」
市井「は?しかし、今、自分で自分の説を不十分だと言ったばかりじゃないか・・・・・。」
高橋「はい。確かにあのままでは不十分なんです。でも、決して間違ってはいません。」
皇「そう!今のままでは間違っているのではなく、『足りない』んです。」
亀井「『足りない』って何がですか?」
皇「犯人は先程の方法で無事ダンスホールを抜け出した後、『外部に逃げては居ない』んです。」
その言葉に、全員が言葉を失った。
- 757 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/07(月) 01:09
- 辻「『外部に逃げてはいない』って・・・・・・・・、一体どう言う事?」
皇「そっくりそのまんまの意味です。
ついさっきは、例のトリックを使って外部に逃げたと言いましたが、真実はそうじゃない。
実際は、外部に逃げずに『その場に留まった』んです。」
福田「『その場に留まった』と言う事は・・・・・・・・、つまり・・・・・・・・・?」
皇「そうです!恐らく皆さんがご想像している通りですよ・・・・・・。
犯人は小川麻琴の心理的死角を突き、市井さんと保田さんと顔を合わせなかったのだから、
犯人は事件現場から逃げ出したと思わせておいて、実はそのまま事件現場に残った人物、
そう考えるのが、不自然に見えて一番自然だ。
つまり、藤本美貴を発見したあの場所に居合わせた人物・・・・・・・・。
保田さんは今回の事件とは無関係・・・・・・・。
小川麻琴も、実質不可能・・・・・・・。」
吉澤「じゃ・・・・・・・・・・・・・・・・、
じゃあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
犯人は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
周囲一体が驚くほどの殺意的な、凍てつく冷気に包まれた気がした。
そこにいる全員分の心臓の鼓動が聞こえてくるほど、真っ暗な沈黙が更に冷気を増してくる。
その場に、1つ分の鼓動音が、不自然なまでに他の鼓動音と不協和音を奏でるのが、
嫌でも耳について離れない。
この鼓動音の主は、紛れも無く今回の犯人『煉獄仮面』を名乗る『ある人物』に
他ならない。
その人物にはより一層の黒い垂れ幕の様なベールが降り注ぐ。
- 758 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/07(月) 01:27
- 高橋「今回の連続殺人事件・・・・・・・・、石川梨華さんと藤本美貴さん、
そして矢口真里さんを連続して殺害した人物は・・・・・・・・・・・・・、
あなたです!!!!!!!!・・・・・、」
高橋は右手の人差し指を立てた状態で、眼の前に座っている皆の中である1人の
人物を指差し、声を荒でて叫んだ。
何処か悲しく、何故か憎しみも篭った声だった。
高橋「『市井紗耶香』さん!!!」
高橋の怒声がダンスホール中にビンビンに響いて聞こえてくる。
他の全員は一斉に、立ち上がったり、市井に顔を向けたり、口を押さえたりと
様々な反応を見せた。
市井はその皺くちゃになった両掌で、己の顔を隠すように広げている。
良く見てみると、床に着いている両脚は小刻みに振動を繰り返していた。
呼吸も荒げている。
高橋「煉獄仮面の正体は、あなたですね!?!?市井紗耶香さん!!
あなたが2年前の後藤真希さんを始め、石川先輩や・・・・・・、美貴ちゃんや、
矢口先輩を殺した殺人鬼だ!?!?!?・・・・・・・・・・・・・」
高橋は今まで抑えていたものが、火山から噴出されるマグマの様に、一気に表面に
噴出されてきた。
理性も何もかも、吹っ切れたようだった。
皇「落ち着け、高橋・・・・・。後は俺が言う。」
皇がそう言いながら、狂いだした歯車にそっと手を添えるかのように、高橋の
左肩を叩きながら前に出る。
- 759 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/07(月) 01:42
- もしかしたら流しておいたほうが良いでしょうか?
一応流しておきます。
- 760 名前:マシュー利樹 投稿日:2005/03/07(月) 03:50
- 更新、お疲れ様です。
変えなきゃ良かった・・・・orz
- 761 名前:七誌さん 投稿日:2005/03/07(月) 13:57
- 更新乙なのです。
ついに犯人が暴かれましたね・・・。
私の予想とは違ってました・・・。
でも考えたなかに「その人」はいたんですけどね〜・・・。
嗚呼・・・言い訳だ・・・悲しい・・・。
- 762 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/28(月) 23:53
- やっと読むことが出来ました(^o^; 一気に読まさせて頂きました、ミステリー作品はやっぱりどきどきしますね。犯人が明かされて、次の行動が少し気付いてしまいましたが伏せておきます。 次回更新待ってます。
- 763 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 22:05
- 「マシュー利樹」さん、すみません。更新が遅れてしまいました。
遂に犯人出現。
犯人当てだけが全てじゃありません・・・・・・・・、ってかマシュー利樹さんは
一度、犯人が分かっちゃったってこと・・・・・・・・?
やばかった・・・・・・。
- 764 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 22:10
- 「七誌さん」さん、毎回ありがとうございます。
『犯人暴き編』は終わりましたが、まだもうちょっと終わりません。
ってか、七誌さんも犯人が途中まで分かってたって事ですよね・・・・・?
まあ確かに、布石やら伏線やら色々起きましたが、やっぱり怪しいと思われるんでしょうね。
こちらも更新が大幅遅刻した理由が、そりゃあもう沢山・・・・・・・・・、
すいません・・・・・、こちらも苦しい言い訳ですね。(反省)
- 765 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 22:14
- 「通りすがりの者」さん、態々こんな駄小説読んで頂いて、本当にありがたい限りです。
一気に読んで頂くなんて・・・・・、こんな中途半端で変に長い小説を、しかも
どきどきして頂くなんて、これ以上無い誉め言葉として頂戴していただきます。
本編はまあ、もうちょっと続きますが、宜しかったら感想の一言も引き続きお願いします。
- 766 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 22:54
- 皇「市井さんはこの学校の用務員。真夜中や早朝に校内を見回りする人物。
だから、人目を避けたり、本鍵をこっそり持ち出したり、遺体処理についても
全部自分が初期動作を行う事になる役割だ。
夜な夜な犯行の下準備をするにしても、あやふやなアリバイの言い訳をするにも、
殺害現場に証拠を残してしまっても、遺体処理を行う際に残ってしまったと言える
犯人にとっては、この上ない便利な立場だ。」
皇は2〜3歩市井に近づき、その鋭い眼つきで睨みつける。
すると、市井は徐に立ち上がった。
市井「・・・・・・・・・ははは・・・はは、ははははははは・・・・・・・・・。
確かに君の説明だと、私が犯人扱い受けてもしょうがないね・・・・・・・。」
小さく薄ら笑いを浮かべ、しかし、全身を小刻みに身震いさせながら、答える。
皇「へえ・・・・・・・・、と、言いますと?」
市井「しかしだよ?それは全て状況からの判断であって、何一つ証拠らしい証拠が、
まるで見受けられないよ。
それで私を犯人扱いされては、こっちも黙ってはいないよ。
それが嫌だったら、私の前に証拠を見せてもらおうか?」
市井は嫌に強気になって、皇と高橋の前に立ちはだかった。
しかしそれは、追い詰められた獲物の、最期の強がりにも見受けられる。
- 767 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 23:13
- 皇は待ってました、と言わんばかりに、口元をにやっと吊り上げてみせた。
皇「第三の事件、矢口真里さん殺害事件についてです。
あの事件は皆さんがダンスホールに集まっていました。当然市井さん、あなたもです。」
市井「それで?」
皇「皆さんが集まって、どうしよう・・・・と顔を見合わせている丁度その時、
校舎の向こうの方から、正確には古校舎のすぐ隣にある物置小屋の方向から、
凄まじい轟音が聞こえてきました。」
市井「さっきも聞いたよ・・・・・・・。それがどうしたの?」
皇「例の轟音が発せられた時、その場に居た全員が、当然権藤刑事を含む大勢の警察官でさえも
予期せぬ轟音に、戸惑い、焦り、混乱した。
長年、現場で鍛え抜かれたベテランの権藤刑事でさえも、例外ではなかった。」
市井「何が言いたいのかね?」
皇「しかしですよ・・・・・・・・・・・・・・・・、
その中で唯一、発せられた轟音が『爆発音』であると気がついた人物がいます。」
市井はその言葉を出された瞬間、息が止まった。
皇「誰一人警察官がその事に気付かなかった。けれどもそれもしょうがありません。
本当に一瞬の出来事でしたから。
それでも普通の一般人が、どういうわけか『爆発音』だときっちり断定しました。
しかも、その人物はそれだけでなく、その『爆発音』の方向も、距離も見事に
『学校敷地内の隅のほうにある古くなった倉庫』とどんぴしゃで的中させているんです。」
- 768 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 23:27
- 市井はここで、初めて自分の犯した失敗の一つを自覚しただろう。
皇「確かに、現場に駆けつけてみると、実際に炎上していたのはその人が言ったとおり
『学校敷地内の隅のほうにある古くなった倉庫』ではありました。」
辻「それの何がおかしいの?別に筋の通っている事じゃないの?」
皇「そう!結果的にその人物の言葉は正解だった。確かに、物置小屋の倉庫から
出火していました。それは間違いない。
けれども、爆音を聞いたその瞬間は、まだ出火場所を特定する情報は『爆音』その物以外に、
何一つ無かったはずだ。
炎上していた倉庫小屋のすぐ脇には、今は使われていない『古校舎』と言う
もっと目印になる建物があった。
恐らく、普通に爆音を聞いて、その場所を特定するとなると、
「学校敷地内の『古校舎』の方」と、言うでしょう。
それにも関わらず、その人物は爆音の発信源が『学校敷地内の隅のほうにある古くなった倉庫』
と、ピンポイントで特定しているんだ。
これは、よほどその人物の聴覚が敏感だったか・・・・・・・・、あるいは、
『元々、炎上場所がどこか知っていた人物』に限られるんです。」
皇が再び市井に顔を向けると、その顔面は血の気を失っていた。
- 769 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 23:38
- 皇「他にもある。
それは最初の事件、『石川梨華殺害事件』の発生後、警察の事情聴取の時だ。
市井さん、あなたはこう言った。
『教務室の前を通った
時、中で明かりが付いた事を思い出しました。
今思えば、背格好からしても、恐らくあれは中澤先生だったのかも・・・・・・・。』
中澤先生のアリバイがはっきりしない時、市井さんは警察の人にそう言いましたね?」
市井は無言で、首を小さく上下させた。
皇「ところが・・・・・・・・、この証言は矛盾を感じるんです。」
安倍「矛盾?」
皇「この時、中澤先生は証言しませんでしたが、後に事務の保田さんに聞きました。
丁度この時、中澤先生は、携帯電話でその保田さんと長電話をしていたそうです。
・・・・・・・、間違いありませんか、中澤先生?」
中澤「た、確かに・・・・・・そうだけど・・・・。」
中澤は恐る恐る言葉を発する。
権藤「え!!中澤先生!そんなこと私は一言も聞いていませんが・・・・?」
向こうでパイプ椅子に腰を深々と下ろしていた権藤刑事が立ち上がった。
中澤「で・・・・、でも・・・・、別に大したことじゃないし、あんまり関係無い事を
話すと、何を言われるか分からなかったもので、すいません。」
中澤は声を小さくし、弁解する。
- 770 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/03/31(木) 23:51
- 権藤「事件に関係ないことって、そっちで勝手に判断されても・・・・・。」
中澤「本当に申し訳ございませんでした。」
中澤は深く頭を下げて、権藤刑事の眼も見れずに謝る。
皇「とにかく今はそんなことは置いておいて下さい。
警察の方は、良く分からないかもしれませんが、証言する者の立場だと、どうしても
『関係ないことを言うと、怒られそう』と言った心理が働きます。
ましてや、その刑事がやたら威圧的で、自分が睨まれている場面では、
極力、変な言動を避けようとします。」
そう言いながら横目で権藤刑事を見ると、本人はばつが悪そうに椅子に座りなおした。
皇「言いたい事はここからです。
もし本当に市井さんが、教務室の前を通り、実際に中澤先生を見かけたなら、
『教務室の前を通った時、中から中澤先生の話し声が聞こえた』
と証言するべきだったんです。
市井さんがこの様な証言をしたのは、警察に犯人と睨まれた中澤先生の
アリバイを確立しようと思い、直前の先生のアリバイ証言を鵜呑みにしてしまった
実際には見ていないが、誰一人として犯人になって欲しくない今回の犯人でしか
できない証言だったからなんです。」
- 771 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/01(金) 00:13
- 市井は真っ暗な空気を纏いながらも、精一杯深呼吸して精神を正常に保とうと
していた。
市井「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
どれもこれも今一歩決め手に欠けるんじゃないかな?
どれもこれも、その時精神が動揺していたから、って言い逃れれば
いつまで経っても私は捕まえる事が出来ないぞ・・・・・・・。
どうする『名探偵君』?」
市井は無駄な抵抗でもするかのように、口角を持ち上げ、平然を装っていたが、
逆にそれが全員の眼についた。
市井「私が決定的な証拠を現場に残したかね?
私がどうあっても言い逃れの出来ない証言をしたかね?
まさか死んだ人間が生き返って、私が犯人だ!とでも言ったかね?
まあ無理だな!科学的に不可能だ!
よって私は、犯人でもないし、絶対に捕まらない!」
腹の底から力を込めて、思いっきり罵声の如く貫く。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良いでしょう・・・・。」
市井「は?え?」
皇「そこまで言うんでしたら、良いでしょう。ぐうの音も出ない証拠をその腐った両眼に
叩き込むが良いですよ。」
市井「何だと・・・・・・・・・・・」
市井の声は最早、擦れ切っている。
皇「高橋!出番だ!」
そう言うと、皇の後ろに立って出番を待っていた高橋愛が、少しいきり立って登場した。
高橋は市井の眼の前に立つと、徐にその右手を市井の顔のまん前に突き出し、
人差し指と中指を突き立てる。
高橋「証拠は2つ!!
1つは矢口さんの残した『114411』のダイイングメッセージ。
2つは美貴ちゃんの事件の後の事情聴取の時の、あなたの証言。」
天井に備え付けられている蛍光灯の明かりが、外界の黒色の闇と同調しながら
チカチカと眼につく。
空に輝く星達は更にその姿を増やし、地上の星の行方を見守るのだった。
- 772 名前:七誌さん 投稿日:2005/04/01(金) 12:50
- 更新乙っておぉ・・・!
皇クン大人〜ですな〜・・・
にしてもいつも思うんですが作者さまの更新最後の
ナレーション?かな。そのセリフがいい感じなんですよ〜。
- 773 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/03(日) 18:03
- 更新お疲れさまです。 ついにあのダイイングメッセージが明らかに!! かなり気になります! 次回更新待ってます。
- 774 名前:スペード 投稿日:2005/04/03(日) 22:55
- やっぱりダイイングメッセージきましたね。
私はすぐにわかりました。
ただ発言のほうはちょっと…。
続きが気になります。
- 775 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/19(火) 01:30
- 「七誌さん」さん、すいませんね〜、いつもいつも。
皇君、僕もかなり立派だと思います。
でも、なんか背中に大きな過去をしょっているので、かなり辛い立場・・・・・・な気がします。
ナレーションは、こちらの頭の中にあるイメージを描写してみたくなったんで・・・・・・、
まあ、自己満足ですね・・・・・。どうもすみません。
- 776 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/19(火) 01:36
- 「通りすがりの者」さん、ありがとうございます
ダイイングメッセージの謎がこんなに盛り上がるとは、自分でも思いませんでした。
実際、このダイイングメッセージは、ギリギリまで悩んで、結局こんな形になって
しまった、てな感じだったんですが、思ったよりも好評?っぽいので安心しました。
皆さんに納得していただけるか分かりませんが・・・・・・・・。
- 777 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/19(火) 01:45
- 「スペード」さん、ありがとうございます
やっぱりダイイングメッセージは簡単すぎましたかね〜?
一方の市井さんの『おかしな発言』は、結構自信があります。
前回の『爆発音事件』と同じように考えると分かるかもしれませんよ・・・・・・・。
ってな事を言いつつ、次回更新をお楽しみに・・・・・・・・。
「お詫び」
ただ今、小説の流れを書いたメモ帳を無くしてしまって、更新できません。
メモ帳が発見されるまで、今しばらくお待ちください。
本当に申し訳ございません。
- 778 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/28(木) 02:20
- 高橋は市井の目の前に立ち、一枚の写真をその眼前に叩き付けた。
その写真は、矢口真里殺害事件の際に、ダイイングメッセージの『114411』
と描かれている写真だ。
市井「・・・・・・・これが何?」
高橋「これは矢口さんが殺害された時、矢口さんが残したと思われるダイイングメッセージ、
つまり犯人が誰かを表しているメッセージです。」
市井「この6つの数字が私を表しているとでも・・・・・?」
高橋「ええ・・・。この『114411』は間違いなく、市井さん!あなたを指しています。」
市井「馬鹿馬鹿しい・・・・・・、」
高橋「市井さん、・・・・・・市井さんは携帯電話はお使いですか?」
市井「携帯電話?ふん、私はあんまりそう言う面倒くさい物は・・・・・・。」
そう言うと、高橋はふっと口角を吊り上げる。
高橋「市井さんはもしかしたらご存じないかもしれませんが、携帯電話にはメール機能が
付いています。」
小川「メール機能??・・・・・・。
!!!」
飯田「メール機能って・・・・・・・・、」
吉澤「もしかしたら!」
そう言うと、皆は一斉に自分の携帯電話を取り出した。
- 779 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/28(木) 02:40
- 高橋「メール機能は最近の女子高生、女子大生だけでなく小学生や社会人だって
使うのは当たり前。
得意な人は眼を閉じても打てます。
恐らく、殺された矢口さんもメール打ちは普通に出来たはずです。」
そう言うと高橋は自分のポケットから自分の携帯電話を取り出す。
石川梨華殺害事件の幕上げとなった、携帯電話だ。
高橋「メールは文字を打つ際に、数字のボタンと行が繋がっています。
『あ』と打つ時は『1』を1回、『い』と打ちたければ『1』を2回、
『か』と打ちたければ『2』を1回、と言う様に・・・・・・・・。」
市井「・・・・・・・・・・・・」
市井は何かを悟ったかのように、腰に手を当てたまま動かない。
高橋「つまり『114411』をメールで順番に打ち込むと、
『11』で『い』、『44』で『ち』、『11』で『い』。
繋げると、『いちい』・・・・・、
つまり『市井」と矢口さんは言いたかったんです!!」
ダンスホール内はキーーンとした空気が張り詰める。
痛ささえ生温い、無言の修羅場、とさえ言えぬだろう。
高橋「・・・・・・・・・・・・。
矢口さんは犯人であるあなたの顔を見て、死ぬ間際の最期の力を振り絞り、
何か私達にメッセージを残そうと考えた。
しかし一方で、もし仮に残したメッセージが市井さんに発見されたとき、
それがダイイングメッセージだと気付かれないようなメッセージにする必要が
あった。
そこで、あまり携帯電話を使わなそうな市井さんをみて、携帯電話を使った
メッセージを残そうと考えたでしょう。
つまり、携帯電話を用いたダイイングメッセージを残したと言う時点で、
市井さんが犯人である、と言うことです。」
今度の高橋の言葉は、ついさっきの言葉と違い、静かな旋律を奏でたようなゆっくりとした
言葉だった。
- 780 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/28(木) 02:53
- 高橋「そしてもう1つ。
市井さんは藤本美貴殺害事件後の事情聴取で、何て言ったか覚えてますか?」
市井「・・・・・・・・、さあね、覚えてないね・・・・。」
高橋は市井の言葉なんか待たずに、先程写真を取り出したポケットと逆の方から、
今度は皇の持っていた手帳と同じ手帳を取り出した。
高橋「市井さんはあの時の事情聴取でこう言いました。
『藤本殺害時前後のアリバイ(4時30分〜5時30分)
「いつも、早朝に校域内の見回りをする為、朝5時頃に起床して6時前には
学校に着くようにしている。
毎朝、6時過ぎ〜7時頃まで校内の見回りをする。
今日(最近)は6時15分頃、事務室の前を通る時、事務員の保田さんに
会った。
その後、続けて見回りをしていると、ダンスホール前の廊下を通る時に、
いつもミュージカル部の鍵当番の小川が合鍵でダンスホール部のドアを
開けるところを見た。
なんだか、胸騒ぎがしたので、ダンスホールに見回りに行こうとした所、
小川の悲鳴を聞いた。」
との事。
藤本殺害当日に見た、不審者や光景について。
「特に無し。と言うよりも、意識が無かった。」
との事。
その他について。
「小川が鍵当番としてダンスホールの鍵を開ける前に、鍵が掛かっているか
調べたが、確かに鍵が掛かっていた。」
と言っています。
とぼけても無駄ですよ、こっちにはしっかりと記録が残っています。」
高橋は臨戦態勢に入る。
- 781 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/28(木) 03:03
- 高橋「確かにこの証言の内容は事件の詳細と一致しています。」
市井「じゃあ、何が引っかかるんだ??証言は全部おかしな箇所は無かったんだろ?」
皇「だからおかしいんですよ。」
高橋と市井の攻防の後ろに立っていた皇は言った。
高橋「そうなんです。
この時の事情聴取は、事件発生後すぐに行われ、1人1人個別に行われた。
私たちが投稿してきてすぐに会議室に通され、警察から殺人事件が起こった、としか
聞かされないまま行われました。
となると、この時の市井さんの証言は明らかにおかしいんですよ。」
市井は痺れを切らしたかのように、いきり立つ。
市井「いい加減にしろ!!
何で証言に何の食い違いも無いのに、そんな事を言われなくては・・・・・・」
高橋「『合鍵』ですよ。」
市井が喋り切る前に高橋が遮る。
高橋「市井さんは証言中で
『・・・鍵当番の小川が合鍵でダンスホール部のドアを・・・』
と『合鍵で』と証言しています。
これはおかしいんです。」
- 782 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/04/28(木) 03:19
- 市井「・・・・・・・・!?」
高橋「まだ分かりませんか?
犯人は確かに、本鍵を遺体に握らせていたため、合鍵でダンスホールの鍵を
掛けました。そして、まこっちゃんは、同じように合鍵で鍵を外しました。
一方で、警察が遺体の右手から本鍵を発見し、合鍵が用いられたと言うことは、
事情聴取では分からなかったことです。事情聴取の時点で警察の人がそれらしきことを
口走ることはできません。
当のまこっちゃんは、会議室では何も喋っていなかったので、他の人が
『合鍵を使ってダンスホールの鍵を開けた』と言うことはまこっちゃん、小川麻琴以外
知っているはずが無いんです。
現に私も、このことを知ったのはその随分後になってからです。」
市井「!!!!!!!」
高橋「合鍵と本鍵は保管されている場所は違えど、鍵本体にはなんら違いは無く、
付いているキーホルダーが若干違うだけで、遠く離れた場所からは2つの
鍵の判別はまず不可能。
となると、市井さんはどのタイミングで合鍵が使われた、と知ることが
出来たんでしょうか?」
市井「そ・・・・・、それは・・・・・・・・・・・、」
皇「答えは簡単。
市井さん本人が、犯行時に使ってしまったのだから。
事件に関係ないだろう、とつい油断して口走ったことが運のつきです。」
高橋の後ろから顔を出した皇が、締めくくった。
- 783 名前:七誌さん 投稿日:2005/04/28(木) 14:23
- リアルタイムゲッツ!!(超古
なるほど・・・「114411」はそんな意味があったんですね。
なんかわからなかった自分がやだなぁ・・・悔しいなぁ。
- 784 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/30(土) 21:19
- 更新お疲れさまです。 やっぱりあのダイイングメッセージはあれが関係してたんですね。 もう少しで分かったのに残念ですね・・。 次回更新待ってます。
- 785 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 00:24
- 「七誌さん」さん、カウンターゲッツ!!
結構『114411』は急遽作ったダイイングメッセージだったんですけど、
なんだかそう言って貰えると嬉しいです。
本編はもうちょっと(まだまだ?)続きます。
今度は動機編です。お楽しみに!?
- 786 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 00:27
- 「通りすがりの者」さん、ありがとうございます
そうなんですよ、あのメッセージは『あれ』が関係していました。
(まあ、そんな大それたものではないんですが)
今度は次回更新をもうちょっと早く出来ればな〜〜、と感じる今日この頃です。
- 787 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 00:40
- 高橋を始めとする、皇、石黒、福田、中澤や飯田、安倍を纏う空気は、黒くも無く
かと言って白いわけでもなく、迷いや不安、恐怖、混沌を入り混ぜた様な空気。
市井の周りは、暗くじっとりと湿った、殺意・殺戮・戦慄・・・・・を含む全くの
『悪』を感じさせる空気。
同一空間に居ながらにして、この二者の空気は全くの別物。
相反する物でありながら、何故か同一起源をもつ隣り合う存在。
市井は先程から何も動かず、喋らず、その主を失った物言わぬ操り人形になっていた。
時の流れの中で、何かを感じ悟ったのだろう、ふっとそのまま椅子に持たれ込んだ。
ガタン!と言う椅子がずれる音と、市井が背もたれにもたれるときの、パイプの
軋む音が、無響の部屋に、まるで静かな水面に一粒小さな水滴を零して、同心円状に
輪が広がる様子を映したかのように、ゆっくり広がる。
両手の掌でその小さく最早年老いてしまった顔を、無念の如く包むかのように、
すっぽりと覆う。
その後、何とか聞き取れる大きさの声で、高橋愛と皇祐一郎に嘆いた。
- 788 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 00:45
- 市井「どうしてだい・・・・・・・・・・?」
高橋「え・・・・?」
市井「・・・・・・・・・・・・。
どうして私だと・・・・・・・?
いつから私を怪しいと睨んでいたんだい・・・・・・?」
自白だった。
その言葉は、正しく『自分がやりました』と犯行を認めた言葉に等しかった。
高橋「・・・と言う事は・・・・、自分が犯人だと認めるんですか?」
高橋は恐る恐る聞く。
市井「・・・・・・・ああ、
もはや、これまでだろう・・・・・・。
もう・・・・私は逃げられん・・・・・・・・・・・・。」
市井の力尽きた言葉の端々に、涙のような澱んだニュアンスが伺える。
- 789 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 01:06
- 皇が2歩3歩、市井の下に近づく。
皇「・・・・・・・・・、
市井さんが犯人では?、と強く感じたのは最近です。
最初に怪しいと思ったのは、矢口さん殺害事件の当日、学校に登校してきたとき、
俺の友達の何気無い言葉を聴いたときです。」
市井「何気無い言葉?」
皇「・・・・・・、俺の友達は前日に真夜中に小さな地震の様な物があって驚いた、って言ってました。
そいつはこの学校の近くに住んでいます。
そして、その直後に矢口さんの事件があった。
その時はなんとも感じませんでしたが、ある日、少し気になって気象庁の人に
聞いてみました。
するとどうでしょう?その時間、その場所で地震どころか地響き1つ発生していなかったようです。
念のため、学園の近くに住む生徒に片っ端から聞いてみたら、1人だけでなく、
ほぼ全員が同じ時間帯に、小さな揺れを感じたそうです。
そこで俺は感じました。矢口さん殺害事件の起こった前日の深夜、
例の事件現場の物置小屋で『何か』が起こった・・・・・・、と・・・・。
高橋「そっか・・・・・、それが実際に矢口先輩の殺害につかった1回目の爆発・・・・・・。」
皇「そう・・・・・・・・・。
そしてそこから逆算していくと、先程も言ったとおり、市井さんの発言が引っかかってくる。
その後、もっと掘り返してみると、ぽつぽつを綻びを見つけることが出来た。
・・・・・・・、って訳ですよ。」
皇は悲哀にも似た眼で市井をそっと見つめる。
- 790 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 01:20
- 市井「そうか・・・・・・・・・・・・、
私の犯行は・・・・・、そんな偶然に負けたのか・・・・・・・・?
・・・・・・・・はは。
結構、考えたトリックだったんだけどな・・・・・・。」
その声は笑い声とも、泣き声とも取れる声。
皇「正直、俺も今回は運に助けられました。
藤本さん殺害事件だって、あのトリックは小学生の鬼ごっこを見て、ふっと
思いついたことです。
あれを見なかったら、今でもこのトリックは解けずじまいでした・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・俺は本当に運が良かった。」
市井はその皇の言葉を静かに聴きながら、少し震えているかの様子で、先程から
座ったままだ。
市井「・・・・・・・・でもね皇君・・・・。」
不意に市井が喋りだす。
今まで視線を外していた皇が、その横に立っていた高橋がまた眼を市井に戻す。
市井「正直、君達にこうやって真相を導き出してもらって、心底ほっとしている。
警察たちが、今回の事件に困惑しながら右往左往している様を見ていて、
『うまく行ってる』と感じつつも、同時に何処かで『いつかばれて、捕まるのでは?』
と感じることもあった。
うまく行っていればいるほど、もし仮に見つかった時の恐怖が、まるで巨大な錘を
背負っていくかのように、どんどん積もり積もっていく。
ましてや、それが法に、そして人道に背いている事なら尚更だ。
いつ発覚し、捕まり、堕ちていくのか・・・・・・・・・・・・・・・
それを考えると、今の今まで生きている心地は無いに等しかった。
何度夢に出てきたことか?
こうやって真実に、光に照らされて悔しいが、でもね・・・・・、正直ほっと安心している。
もうびくびくしないで済むかと思うと、良かったと思うよ・・・・・・。」
市井は両掌で見えないが、きっと小さな笑みを浮かべているだろう。
- 791 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 01:30
- 皇「市井さんは、自分のやったことがわかっているんですか?」
皇はあえて厳しい口調で繋ぐ。
市井「・・・・・・・ああ。充分なくらい分かってる。
痛いくらいにね・・・・・・・・・・・・。」
皇「なら・・・・・・・・・、いい・・・・・・・・・・・・。」
そう言うと、皇は踵をくるりと返すと、さっきいた元の位置に戻る。
市井は相変わらず、俯いたまま。
ここには『沈黙』という名の『騒音』が満ち満ちてる。
そんな気がする、と高橋は心の隅で感じた。
皇「・・・・・・・・・・・・・、でもね・・・・市井さん
これで終わりじゃないんですよね?」
皇の声がダンスホール中を付き抜け、駆け抜ける。
飯田「え?終わりじゃないってどう言う事?」
皇の言葉に飯田たちは引っかかる。
吉澤「市井さんだって犯行を認めてるじゃないか?他に何があるんだよ?」
中澤「そうよ、無事事件解決じゃないの?」
田中「・・・・・・・・・・・・・・・・・、
動機ですか・・・・・・・・・・・・?」
今まで黙りこくっていた田中れいなが小さく、ぼそりと吐き捨てるように言った。
高橋「・・・・ええ、まだ終わっていません。
まだ晴れ渡っていません。
この事件に降り注いだ、いえ、この『私立朝日ヶ丘大付属学園高校』に潜んでいる
黒い霧は存在します。」
高橋のくっきりとした、強く輪郭を保った声は全員の耳に入る。
- 792 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/08(日) 01:44
- 皇「高橋の言う通り・・・・・・・・・。
今まで起こった4件の殺人事件は、これから話す『隠されし秘密』を守り
抜くための犯行。
いわば、RPGで言う、本当のラスボス・・・・・・・。
後藤さんや石川さんには失礼かもしれないが・・・・・・・、
この学園には日本の警察史上に名を残す秘密が、確かに存在する。
この秘密を解かずに、今回の事件は本当に解決したことにならない。」
皇はかすかにほくそ笑んだかもしれない。
その両眼には、黒い業火を宿した。
口の両口角を悲しげに吊り上げる。
高橋以外の皆には気付かれないように、拳は力が込められる。
空気が、黒色の霧が、事件の闇が、交錯した人々の想いが、渦を巻きながら
ある地点へ向かって、沈み込んでいく。そして収束していく。
お風呂の栓を引っこ抜いた時の様に、最初はゆっくり、近づくにつれ関数的に
加速を始め、気がついたときには最早、手の付けられないように蠢き、
そしてある一点に集約される。
本当なら気付きたくない『真実』がその集約される点に、絶対に存在する。
「さあ・・・・・・・・・・、始めようか・・・・・・・・・・・・・・・・?」
何処の誰かも分からない声が、音響を開始する。
もしかしたらその声の主は、
殺戮の象徴の悪魔か?それとも全てを創造してきた神か?
動き出した渦の螺旋は
もう止まらない
- 793 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/08(日) 18:18
- 更新お疲れ様です。
ついに本当の確信に迫るときですね。
謎が謎を呼ぶ{?とはこの事!
- 794 名前:七誌さん 投稿日:2005/05/09(月) 18:25
- おぉー・・・ついに真相が出ますねぇ。
>>793の通りすがりの者様と同じ意見です。
本当に謎が謎を呼ぶ・・・という言葉が似合いますね。
- 795 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/29(日) 23:49
- 「通りすがりの者」さん、ありがとうございます。
『謎が謎を呼ぶ』・・・・・・・、良い言葉ですね!!!格好良い。
この期待に応えられる様な作品を・・・・・・・・・・・出来れば書きたいです。
- 796 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/29(日) 23:52
- 「七誌さん」さん、
謎が謎を呼ぶ、正にこの言葉の通りの展開になると思います。
(自分で言っちゃった・・・・・・・)
2年間以上に渡る小説も遂に終曲に近づいています。
- 797 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 00:03
- 紺野「この学園にどんな秘密があるの?」
他の全員が抱える疑問を、紺野あさ美が代わって代弁する。
皇「・・・・・・・・・・・・、
皆さんは『カミカゼ強盗団事件』と言うものをご存知ですか?」
紺野の質問に、皇が質問で返す。
道重「カミカ・・・・・・・?って何ですかそれ?」
亀井「私も聞いたこと無い・・・・・・。」
飯田「私は聞いたことはあるは・・・・・・。
確か、今から10年以上前に起こった有名な集団強盗事件。」
飯田が両手を合わせ、口元に降ろしながら言う。
中澤「私も覚えてる。
活動範囲は狭いものの日本の犯罪史上、類を見ないほどの大規模、且つ大胆周到で
未だ犯人グループの特定すらも掴めていない、犯罪グループの事件。」
中澤も、飯田に続くように言葉を継ぎ足す。
- 798 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 00:26
- 田中「私知ってます。
世界的に有名な美術館や骨董品店や大富豪宅を標的とし、様々な美術品を
あっという間に盗み去る、って言うあの『カミカゼ強盗団』ですよね?」
吉澤「聞いたこと無いね?」
加護「私は少し言いたことあるかも・・・・・・・」
辻「でも何それ・・・・・・・・・・、何か怖い。」
安倍「心配しなくてもいいわ・・・・・・・。
その『カミカゼ強盗団』は15年位前に、犯行を犯し、警察からの逃走中に
事故を起こしたっきり、ぱったりをその姿を消したって噂よ。」
流石、年上と言った雰囲気で吉澤達を落ち着かせる。
皇「大よそ皆さんの仰るとおりです。
『カミカゼ強盗団』が現れたのが20年ほど前。世界に名立たる美術館などを標的とし、
そこにある天文的価値のある絵画や、彫刻や、骨董品、掛け軸、等々・・・・、を
ターゲットにして、大胆にして鮮やかに、その場から持ち去った伝説の強盗団。
しかもこいつらは、犯行を犯す前、必ずその所有者や警察に犯行声明分を送り、
充分に警備を固めた中を、嘲笑うかのように盗む。
それ以上にこの強盗団が不可解だったのは、警察が『カミカゼ強盗団』出現直後に、
事件現場を中心として、、国道から首都高から裏道、あぜ道、細い道、道路と言う道路を
検問と非常線で全ての自動車やバイクを取調べを行ったにも関わらず、
不審車がただの1台も発見されなかった事だ。」
- 799 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 00:43
- 高橋「犯行が重ねられる度に、警察は検問や非常線を、更に多く細かく、
現場から何十キロも離れた場所で行っても結果は同じ、まるで霧の如く
消えていった。
突如、勇敢に出現していつの間にか消えていなくなる、この様子から
『カミカゼ強盗団』と言う名前が付いたくらいですからね・・・・・・・。」
皇「その後は安倍さんの言う通り。
『カミカゼ強盗団』が始めて現れて5年位した後、逃走しようとするところを警察官に
発見され、その警察官を射殺。」
高橋「その後逃走していた『カミカゼ強盗団』はハンドル操作を誤り、交差点で急カーブを
曲がりきれず、横転。
その際に1組の家族を巻き込む。当時2歳だった男の子は幸い、擦り傷程度で済んだものの
彼の両親は、即死だったそうです・・・・・・・・。」
皇、高橋がそれぞれの言葉を口にするたびに、互いは互いに不自然な姿勢を示していた。
まるで2人とも、何かを耐えているかのように・・・・・・・・・・・・。
新垣「確かに、その『カミカゼ強盗団』は凄いけど、それが今回の事件と
何か関係があるの?」
皇「無関係に見えて、実は大有りなんですよ。」
高橋「この『カミカゼ強盗団』、さっきれいなちゃんが言ったように、行動範囲が丁度この学園の
周囲数キロから、遠くても十数キロ程度なんです。
その範囲外にいくら有名な美術品があろうとも、決して動かなかったそうです。」
- 800 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 00:58
- 小川「・・・・・・・・、それで・・・・・・?」
皇「その一方で、警察方はここから数十キロ以上も離れた場所に非常線、検問を
懲りずに張っていた。
勿論、非常線の中のここら一帯に盗品を隠している可能性がある為、この周囲を
懸命に捜査もしたけど、この辺にはそんな場所が無い、と言う結論に達した。」
中澤「別に大型トラックでそのまま逃走したとは限らないわね。
軽自動車でも、分割すればそのまま検問外まで逃げ切れるんじゃない?」
権藤「一応、警察もその事を計算に入れ捜査を行いましたが、やはりそれらしい
不審車は見つかりませんでした。」
権藤刑事が横から返答する。
飯田「話が見えてきたわね・・・・・・・・・・。
皇君、高橋、・・・・・・・・・・・あなた達、もしかして・・・・・・・。」
今まで頭を深くして、考え込んでいた飯田圭織が何かを察したかのように、
声色のトーンを1オクターブ下げる。
その響きは、目の前にいる手頃な獲物に今正に喰らい付きそうな勢いだ。
皇「飯田さんは勘が良いですね?恐らくその通りですよ。」
皇もその飯田の勘の鋭さに感服した。
- 801 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 01:11
- 吉澤「飯田さん、何か分かったんですか?」
吉澤はまだ良く分かっていないようだ。
飯田「この朝学の近くには大きな『朝日ヶ丘署』って言う警察署があるしね・・・・・・。
当の朝学も、由緒正しい伝統校、そして何よりも神聖な教育の学び屋・・・・・・・・・、
ってことでしょ?」
安倍「はあ〜〜?かおりん、一体何言ってんの?」
皇「飯田さんの言う通り。先程言った『カミカゼ強盗団』は警察の盲点を突く、
それでいて、格好の盗品保管場所を手に入れたんです。」
権藤「・・・・・・・?」
飯田「・・・・・・・・・・・・・・、
その『カミカゼ強盗団』は盗品保管場所として・・・・・、
この『私立朝日ヶ丘大付属学園高校』
を選んだって訳ね・・・・・・・・?」
安倍「え?」
中澤「!!!」
吉澤「な・・・・・・・・・!」
辻「う・・・・・・・・・、」
加護「うそ・・・・・・・・・でしょ?」
小川「この朝学が・・・・・・・・・・・」
紺野「『カミカゼ強盗団』の・・・・・・・・」
新垣「盗品の保管場所・・・・・・・・・?」
亀井「そんな・・・・・・・・!」
道重「まさか・・・・・・・・・・・・。」
田中「何かの間違いですよね?高橋先輩?」
- 802 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 01:25
- 一瞬にしてダンスホールの静寂は、ドロドロしたヘドロ状の気体と化した。
これも全て、あの誰の声だかも分からない主の思った通りなのだろうか?
狂気に満ちた神か?
慈悲深い悪魔か?
それともまた別の誰かか・・・・・・・・?
その笑みは、確かに闇のように黒く、血のように紅い色を浮かべていた。
権藤「・・・・・!!!!!
ま・・・・・・・、待て小僧!!!
一体何の冗談だ?この学校がその『カミカゼ強盗団』の盗品の保管場所だと
本気で言い出す気か?」
流石の権藤刑事も正気を保てないのか、いきなり吠え出した。
しかしながら、それも無理も無かった。
高橋「・・・・・・・・・、事実です。」
その言葉には弱弱しく力が篭っている。
皇「飯田さんの言うことは恐らく正解でしょう。
この学園は大きい警察署が近くにある。まさかとは思うが、意外とこういう場所の
方が、警察の眼につきにくい。
ましてや、それが学校と言う場所。警察も自分たちの本部のすぐ近くで、しかも
学校に大昔に盗まれた美術品があるとは、これっぽっちも思わないだろう。」
飯田「『灯台下暗し』ってわけね・・・・・・・・・?」
飯田はその鋭い横眼で、ちらりと権藤刑事を見る。
- 803 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 01:54
- 高橋「警察は、『カミカゼ強盗団』が盗んだ盗品は、警察の眼の届かない場所に
持ち出し、且つ金に換えるために裏ルートに流すための便利で遠い場所、に
全ての盗品を移動させるだろうと考えた。
けれどもそれが既に向こうの思う壺。
警察がそう思い込むことを想定して、『カミカゼ強盗団』はこの朝学に
全ての盗品を隠すことを決めたんです。」
亀井「で・・・・、でもこの学校の何処に隠されているんですか?」
中澤「確かに。敷地内には付属の大学もあるから、もし仮に本当だとしても
探すとなるとかなり骨が折れる。」
中澤達は、まだ半信半疑のまま顔を渋らせる。
皇「いえ、大丈夫です。仮にもここは生徒の大勢居る学校です。
人眼につかないで隠すとなると、場所はかなり特定されます。」
高橋「まず、大学ではなく高校内の校舎内の何処かにあります。
何故なら、大学は夜遅くや週末でも、生徒が残りますから、その分
人眼に付く可能性が出てきます。
その分高校は、夜や週末は時間さえ待てば、生徒や教師たちも出払えます。」
皇「それに、高校校舎内と言ってもまだ絞り込めます。
校舎内の変な場所に隠そうものなら、たちまち見つかってしまう。
その為、可能な限り目立たなく人の立ち寄らない場所
それでいて、外からも見えない場所・・・・・・。」
加護「そんな場所、この高校にあったっけ?」
吉澤「可能な限り目立たなく、人の立ち寄らないで、しかも外から見えない場所ね〜〜。」
皆が、両腕を組んで頭を捻っていると、
道重「・・・・・・・あっ!!ありました・・・・・。」
亀井「え?何処何処?」
田中「そんな場所あった?」
道重が声を上げると、周りの視線を集めた。
- 804 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 02:18
- 道重「・・・・・・『司書室』・・・・・なんてどうですかね?」
辻「司書室?」
中澤「あ〜〜あ〜〜、そう言えばそんな場所もあったけ。」
皇「そう言う事。図書館の奥に目立たないようにあって、しかも鍵がないと
中に入れない。
条件としては完璧だ。」
ここで瞬く沈黙が姿を現すが、すかさず今度は紺野が紡ぐ。
紺野「それじゃあ、市井さんはその『カミカゼ強盗団』のグルで、盗んだ
芸術品をこの朝学にこっそり運び込んだ。
だけど、2年前には後藤真希さん、そして今回は石川梨華さんにそれらを
見られ、口封じのために殺したって事ですか?」
皇「流石、紺野さん・・・・・・・・・・・、と言いたいところだけどね、
今のままじゃあ50点。」
紺野「え?じゃあまだ何か足りない点があるんですか?」
皇「確かに今、紺野さんが言ったことは正しいが、市井さんはただの用務員でしか
ないんだ。
そんな、しがないただの用務員1人で、誰にも見つからず美術品を隠し、
そして裏ルートに流す、なんて言う大きな行動が出来ると思うか?」
飯田「じゃあ、何?皇君は市井さんの他にも共犯者が居るって言いたいの?
皇「・・・・・・・・・・、少なくともこれだけの大掛かりな計画を成し遂げるには、
この朝学内で大きな権力を持ち、何に対しても融通の利く立場の人物が、
もう2人ほど必要になってくる。」
皇のその言葉が終わるが早いか、全員がある人物に体を翻す。
- 805 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 02:28
-
全員の血の気が引く音が、まるで砂浜に打ち付けては引く漣の如くに聞こえてきた。
ある者は2〜3歩後ずさり
またある者は全身身震い
そして、またある者はその場にへたり込む。
十人十色の反応を示す。
皇「・・・・・・・・・・・・・・・。
そう、例えば、校長先生の石黒先生とか、副校長先生の福田先生とか?」
皇の単語の一言一言が、視線を浴びせられる2つの黒影に確実に浸透している。
そう、そこには皇の言う通り、
私立朝日ヶ丘大付属学園高校 校長
石黒彩
同校 副校長
福田明日香
が、人間型の黒い影を落とした人形に、たった2粒の白い眼球を残したまま、
物言わず立ち尽くす。
最早、微動だりすらしない。それは胸の鼓動すら感じさせない。
悪魔の乗り移ったカラクリ人形、まさしくそれだった。
カラクリ人形は『絶対零度』に相応しい痛みを伴う波動を繰り出す
- 806 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 02:29
-
隠します。
ってか隠れてますか?
これで良いのかな?
- 807 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 02:30
-
もうちょっと隠します。
- 808 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/05/30(月) 02:31
- なんだか荒らしみたいになっちゃった。
皆さんご迷惑かけてすみません。
- 809 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/30(月) 19:30
- 更新お疲れさまです。 もう何も言う事は無いです(ェ なんて言ってもただ感想がないというのも・・・(オィ でも、それほど続きが気になるのもまた事実。 次回更新待ってます。
- 810 名前:七誌さん 投稿日:2005/05/30(月) 21:37
- 更新お疲れ様です。
いやぁ〜・・・なかなか奥が深いですねぇ・・・
なんかもう頭がグルグル・・・(@_@)
作者さま、次回更新もがんばってください。
- 811 名前:エイト 投稿日:2005/05/31(火) 23:35
- どうやったら見れるのですか?
- 812 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/04(土) 13:19
- >>811エイトさん
なにがですか?
- 813 名前:エイト 投稿日:2005/06/04(土) 23:20
- >>812七誌さん
806以降の隠されている部分です。
愚問でしょうか?
- 814 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/09(木) 16:20
- >>813エイトさん
多分それは・・・上の話をできるだけ隠す・・・なんて言っていいか
わかりませんけど、とにかく、隠す=どっかになにかあるってわけじゃないと
思います。
- 815 名前:ititetu 投稿日:2005/06/19(日) 21:44
- >>814七誌さん
なるほど、見えなくするってことですね。
わかりました、ありがとうございました。
- 816 名前:エイト 投稿日:2005/06/20(月) 22:52
- ↑HN間違っていました。
- 817 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/22(水) 15:24
- >>815エイトさん
いえいえ;こちらこそなんかわかりにくい説明をしてしまって・・・;
お役に立てたのなら嬉しいです;
- 818 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/06(水) 23:51
- 「通りすがりの者」さん、ありがとうございます。遅れて申し訳ございません。
続きを待っておられるのに、ここまで遅れてしまって、本当に申し訳ないです。
言い訳をするわけではありませんが、次回作の準備をしていたら・・・・・・・・・、
(言い訳してるし・・・・・・・・・)
- 819 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/06(水) 23:55
- 「七誌さん」さん、ありがとうございます。
奥が深そうですか?でも他の小説なんかに比べると、まだまだひよっこです。
あんまり期待しないで下さい・・・・・・・・、後々がっかりするかも・・・・・・・・。
こちらも頭の中(@_@) です・・・・・・・・(もうグダグダです)。
- 820 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 00:01
- 「エイト」さん、「七誌さん」さん、「ititetu」さん、・・・・・・・。
どうもすみません、一丁前に『流し』とか言われるものをやってみたら、何だか
皆さんを混乱させてしまったようで・・・・・・・。
大変遺憾に思います。なんだかこれ以上やってもまた皆さんを困らせるだけだと
感じたので、『流し』はこれっきりと言うことで・・・・・・・・・。
本当に申し訳ございませんでした・・・・・。
- 821 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 00:35
- 皇「・・・・・・・・・・・・。
いかがですか?この推理・・・・・・・・・・・?」
皇は、不適な笑みを浮かべつつ、前方に立っている2人の影に問いかけた。
石黒「・・・・・・・・・・・。」
福田「・・・・・・・・・・・。」
石黒と福田の2人はだんまりを決め込んだ。
皇は続ける。
皇「あなた達は今から15年前、『カミカゼ強盗団』を協力する立場になった。
当時、仲間の中で盗んだ盗品を何処に隠すか問題になった。
その時、あなた達はある名案が浮かんだ。
そう、この学園に全ての盗品を隠してしまおうと・・・・・・・。」
今度は高橋の出番だ。
高橋「最初は他に良い場所が見つかるまでの一時的な隠し場所だった。
だけど、思いのほかこの隠し場所が良かった。
誰にも見つからず、警察にも怪しまれなかった。
あなた達はこのまま、この学園に隠し続けようと考えた。」
皇「けれども、そう長くは続かない。
盗品が多すぎて、隠し場所が少なくなってきた。
それに加え、いくらなんでも周囲の人間が怪しみ始めてきた。
『最近、事件が起こる日と同じ日に、謎のトラックがこの学園に入っていくのが見えた。』と・・・・。
だからあなた達はこの学園を『改築』することを思いついた。」
- 822 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 00:56
- 石黒「・・・・・・・。」
福田「・・・・・・・・。」
未だに2人は黙りきっている。
高橋「まずは、新たな隠し場所の設置。
『司書室』と言った体の良い巨大な部屋を作ります。しかもこの部屋は、
図書室の奥深い場所の更に、分厚い南京錠のその奥地。
仮に、教師や生徒が入ってきたとしても、盗品が見つからないように、
仕掛けを施して・・・・・・・・。
それに加え、周囲の住民に見つからないようにトラックを校内に運び込む為に、
非常に見つかりにくい場所に、トラック1台分が丁度入れる程度の『出入り口』を
作り出します。」
皇「自分たちが盗んだ盗品が、他の誰かに盗まれるのを防ぐほかに、
夜遅く学園内に、何も知らない教師や生徒達が入ってきた時の為、
学校自体のセキュリティーシステムを強化する。
その上、学園のコンピューターシステムもかなり強固なシステムを搭載している。
これもちゃんとした理由があった。
これは俺の勝手な推理だが、盗品を裏に流す為の帳簿をあなた方2人のパソコンに
入力していた為、それを他の誰にも見られない為にも、セキュリティーシステムに
しておく必要があった。」
皇が言い終わると、2人の様子を見てみる。
先程の2人の様子に比べると、僅かだが雰囲気が異なる。
皇と高橋はこれで確信を突き、更に展開する。
- 823 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 01:45
- 皇は相手を逃がすまいと、更に言葉を継ぎ足す。
皇「その上、あなた達はこの校舎全体を改築した。
盗品を隠している司書室は、出来ることなら誰にも見られたくは無い。
その為、校舎全体を作り変え、司書室は周りを校舎の壁に囲まれる格好となった。」
高橋は大きく息を吸い込む。
高橋「そしてあなた達は裏競売・・・・・・・・・、つまり『闇取引』を行う必要があった。
いくら芸術品があっても、それだけなら飾りと何ら変わりない。
裏市場に流して、お金を得る必要があったんです。」
皇「恐らくその闇取引もこの学園で行う予定だったんでしょう。
その時、取引を行う相手・・・・・、つまり『闇の売人』を学園内に入れる必要もある。
一応、セキュリティーが厳しいと噂の学園だ。下手に入ってこられると、
逆に、そのセキュリティーに引っかかる可能性もある。」
高橋「だから、闇の売人を学園内に入れる方法として、『中央玄関の鍵を開け放つ』。
これなら、売人を学園内に入れることは簡単だった。」
皇「しかし、同時に厄介なことも抱えなくてはいけない。
今回の石川さん殺害事件がその良い例だ。
毎週毎週金曜日の夜、玄関の鍵が開いているもんだから、当然生徒もそこから入って来る可能性もある。
高橋達が当夜学園内に忍び込み、石川さんの事件に巻き込まれたのも、
売人を中入れる為のしっぺ返しだ。」
- 824 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 02:00
- 高橋「確かに、この学園は司書室が学園の何処からも見えないように作り変えられました。
けれども、1箇所だけ例外があります。
つまり、ある場所からは司書室の中の様子が伺える場所があったんです。」
皇「・・・・・・・・・、そう、『ミュージカル部の部室』です。
あの部屋の窓ガラスだけからは司書室の様子が丸見えだったんです。
だから、犠牲となったのが2人ともミュージカル部だった理由も納得です。
・・・・・・・、すいません、話が長くなりましたがこんな感じです。
いかがですか?校長先生?副校長先生?」
皇は淡々と問い詰めていく。
最早言い逃れが出来ない状況なのは、皇も勿論、高橋も分かっていた。
周りに取り囲むように立ち尽くしている傍観者は、ただ成り行きに任せている。
石黒「・・・・・・・・・・・、」
不意に石黒の口元がぴくっと動く。
高橋「校長先生、どうかしましたか?」
石黒「・・・・・・、はは・・・、はははははは・・・・・・・。」
石黒の不適にして不気味な笑い声が徐々に大きさを増し、弾んでくる。
石黒「はははははははははははは!!!!!!」
まるで悪魔の咆哮のようだ。
聞いている胸糞が悪くなる。
- 825 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 02:16
- 皇「何かおかしいですか?」
福田「ど・・・、どうしたんですか?校長?」
石黒「はははははははははは・・・・・・・・。
そんな空想話、誰が信じるって言うんだい?
今時、幼稚園児だってくだらない妄想だって思うだろうさ・・・・・・・。」
石黒はあくまで余裕の馬鹿笑いを見せる。
あくまで白を切るつもりか?
飯田や中澤達の表情が不安で曇る。
それに加え、警察の権藤も口をきゅっと縛り上げ、まだ沈黙を保っている。
高橋も、正直そこを突かれると痛かった。
確かに、皇の意見は最もらしいし筋も通っている。
信憑性も無いわけではない。
しかし、けれどもしかし、現実では到底起こりえない話だろう。
今回の事件がやたら現実離れした話だったのだ、石黒の言うことのほうが、
実際の『現実的』には、石黒の主張のほうが正しかった。
石黒「皇君・・・・・・、あなたは小説家になるべきだね?
ここまで立派なストーリーを1人で練ることができたんだろ?
・・・・・・・・・・・・・、
さあ、いい加減、こんな茶番やめにしようじゃないか・・・・・・。
あとはそちらの警察の方に全てを任せて、私達は・・・・・・・・・・」
石黒の長々とした弁論の結末を待たずして、皇は切り込む。
皇「無駄口はそこらへんで・・・・・・・。
そろそろ来るはずですよ・・・・・・・。」
皇の口調はあくまでゆっくりしたものだった。
その声が柔らかく、空間を波門する。
- 826 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/07/07(木) 02:31
- 石黒「来る?・・・・・・・・・・、一体何が・・・・・?」
石黒が急に黙り込んで聞いてみる。
皇「・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・『逮捕状』ですよ・・・・・・・・・・・?」
石黒「な!!??」
石黒だけではない、その場に居た全員があんぐり口をあけた。
石黒は全身が冷や汗、脂汗で一杯だった。
福田は気が気ではなかった。
高橋は思い返した。
皆がここに集まる直前・・・・・・。
皇と交わした言葉・・・・・・・・・・・。
『でも・・・・・・、証拠が無いよ。これじゃあ、逮捕できないよ?』
『安心しろ。証拠と逮捕状はいずれやって来る。』
石黒「ふん。馬鹿な。証拠も無いのに逮捕状なんか出るはずが無い。
人を馬鹿にするのも好い加減にしろ。終いには訴えるぞ!」
石黒の、その余裕を纏った力強い言葉1つ1つに対しても、高橋愛は一切の
脅えは無かった。
あの時の皇の言葉を思い出したからだ。
高橋は冷静な眼で石黒を、そして皇を見つめる。
皇祐一郎の表情は余裕の為か、笑顔さえちらついていた。
その頃、1人の小走りする足音が、ダンスホールに向かっていた。
- 827 名前:七誌さん 投稿日:2005/07/09(土) 00:51
- う〜ん・・・皇君は一体なにを考えてるんでしょうか・・・
- 828 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/07/10(日) 11:12
- 更新お疲れさまです。 あの笑みは一体何処から来るんでしょうか?? しかも最後の足音は・・・? 次回更新待ってます。
- 829 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 14:35
- ホウチ?
- 830 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/30(日) 19:08
- 最終更新から4ヶ月以上が経ちました。
生存報告だけでもお願いします。
- 831 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:17
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 832 名前:七誌さん 投稿日:2006/01/08(日) 18:51
- 放置なら放置で、続けるなら続けるで、
待ってる読者さんのために一言お願いします。作者さま。
口が悪くてすいません。
- 833 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/15(日) 15:13
- 早く結論出せや…
- 834 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 23:57
-
- 835 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/02/13(月) 00:29
- いい加減にしろや…ヘボ作者…
- 836 名前:七誌さん 投稿日:2006/02/14(火) 22:08
- 度々投稿すいません。
読者は作者さまのお返事を待ってます。
出来るだけ早く、お返事をお願いします。
お忙しかったのだとしたら、仕方ないですけど、
少しでもお暇が出来ているのなら、ここへの書き込みをお願いします。
しつこくてすいません。
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