キスした人

1 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時05分56秒
こんごま(?)です。
甘々(?)です。
更新遅いです。
2 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時07分54秒
一話 ――再会――
3 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時08分57秒

紅い、不気味な月がこんもりと空に浮いていました。
夏も真っ盛りという頃の夜なのに、この肌寒さは何なんでしょう。
影絵の街の隙間を縫って、冷たい風がひゅうひゅうと吹いてきます。


私は今日も一日完璧だったのに、あんまりじゃないですか。
少し今日の仕事のことを思い出しながら愚痴ってみると
風がせせら笑うようにいっそう強く吹きました。
肌が粟だって慌てて身体を抱きしめすごすごと帰路を急ぎます。


私は紺野あさ美。
今を時めくモーニング娘。の一番人気のアイドルです。
…すいません、少しさばを読みました。
しかし、アイドルには違いありません。
もっと大事にされてもいいはずです。
なのにこの寒さはなんですか。夏のお天道様は馬鹿にしてるんですか。
タクシーくらい用意してくれないんですか。
4 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時09分42秒

ぶつぶつと文句を言いながら歩いているとどうやら私の住むマンションに辿り着きました。
ちょっと高級っぽい都内のマンション。その一室が私の部屋です。
疲れた身体を引きずって、なんとかエレベーターまで辿り着いて一息。


大きく肩で息をつきます。
実はさっき完璧だったといったのは嘘で、またやらかしてしまいました。
番組収録中、つい呆けてしまってNGをだしてしまったのです。
最近どうも空回り気味。
6期メンバーも本格的に合流して、先輩としていいところを見せないといけないんですが、
どうも上手くいきません。
先輩になったという重圧が想像以上に肩にのしかかってるのでしょうか。
少し前までは先輩達に何でも教えてもらう立場だったんですから…。

先輩に――


チン、と軽い音がしてエレベーターのドアが開きました。
私の部屋は13階。
エレベーターを降りて一つ角を曲がった4番目が私の部屋です。

5 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時10分32秒


――――

はて。
角を曲がったのはいいのですが、どうも私の部屋と思われるドアの前に何か落ちています。
なにやら大きな、黒っぽいものです。
丸い形…それは明らかに箱や何かの人工物と違うもの。

嫌な予感がよぎりました。

一歩、一歩、
恐る恐る近づいていくうち
その『それ』が何かが、わかりました。


「―――――――――っぁ―――」

声にならない音を喉の底で聞きながらぺたんと腰を落としました。
腰を抜かしました。

『それ』は、
ヒトの生首でした。


6 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時11分32秒



――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――

深呼吸をして、下半身に活を入れて
何とか腰を浮かせることに成功した私は、とりあえずどうするかを考えました。
『それ』が作り物で、誰かの悪質な悪戯である、という可能性もあるのです。

私はその可能性を信じて
またそぞろに歩を進めました。

私が『それ』に2メートルほども近づいた時、
廊下を照らす蛍光灯の音が「ヴンッ」と一際大きく、不気味になりました。



これまで戸の方を向いて立っていた生首が、
風も無いのにゴロン、と転がりました。

「ひっ…」


突然の事に心臓は飛び跳ね、きつく目を閉じで悲鳴をあげました。
7 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)22時12分18秒

心臓の音が一段と大きくなって
やがてその音しか聞こえなくなりました。

しかし、その後、恐る恐る開いた目に映ったものは
もう何にも驚くまいと思った心をあざ笑うものでした。


だって

私と目があったその顔は
私が最も慕っていた先輩…



後藤さんだったんですから―――


8 名前:初回更新終了 投稿日:2003年08月18日(月)22時13分56秒
こんな感じで。
9 名前:わがままな読者ですみません 投稿日:2003年08月18日(月)22時23分10秒
あ、ありえねー!! おもしろそーじゃないですか。ダッシュで更新希望!
10 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月18日(月)22時47分31秒
なんじゃこりゃー!!続き楽しみ
11 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)23時44分22秒
キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━ !!!!!
導入部分でやられた
やるな〜
12 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月19日(火)23時58分45秒
Σまぢかよっ!甘くなる展開が読めませんw
13 名前:名無し読者。 投稿日:2003年08月20日(水)01時54分51秒
なんだそりゃ!!!
ダメだ、もうこの小説、無視できねぇ。毎日チェックだ。
ほんとに、どう甘くするんだ、コレ?かなり期待

14 名前:13 投稿日:2003年08月20日(水)01時56分51秒
スンマセン。
興奮のあまり、sageんの忘れてました。申し訳
15 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)16時58分36秒

――――――――――――――
――――――――――――
―――――――


後藤さんは生気の無い蒼く白く黒ずんだ顔で、
生気の無い、それでいて変わらず美しい瞳をして
寂しそうに私の顔を見上げていました。

後藤さんの目は、吸い込むように私を放しません。

私は冷たいコンクリートの上に腰を沈め
ただカタカタと震えていました。

何も考える事はできませんでした。


「………ご…ごとう…さん……」

空気が抜けるような、掠れた声がでました。
確かに私の口から発せられた言葉が梵鐘のように頭の中に響きました。

『それ』は確かに作り物などではない、本物の生首で
そして疑い様も無くそれは、『後藤さん』でした。
16 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)16時59分15秒


髪は汚く切られ短くなっています。
目は見開かれ、決して閉じる事もありません。
顔は蝋作りのように白い上に青紫の斑点が所々を染めています。

以前の美しい後藤さんの器量からは想像だにできない醜怪な姿。

それでも、
鼻の形、大きな耳、目、
後藤さんであるとしか思えないのです。



「後藤さん…なんですか…?」

誰に言うとも無い私の声が、閑散とした長い廊下に微かに響きました。


17 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)17時00分28秒



鼓動が、収まってきました。
視界がはっきりとし、その後藤さんの姿が私の目にくっきりと浮かびました。

なんというか…
あまりにも吃驚しすぎて安全弁がおりてしまったようで
随分と平静を取り戻しました。
我ながら吃驚です。

しかし、こうしてみると後藤さんは本当に綺麗です。

その目。
魚河岸に並ぶ魚みたいなくせに、なんともいえない、意思のようにも思える炎が仄めいているのです。
後藤さんは、何か訴えかけでもするような目で私の顔を見上げています。


じぃっと…

18 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)17時01分20秒


「……後藤さん?」

あんまりじぃっと見られるのでついつい呼びかけてしまいました。

しかし、どうでしょう。


後藤さんの目が、キラリと光るではありませんか。



今日3度目の吃驚。
すでにブレーカーが落ちて不感症になっていたので事なきを得ましたが
間違いなく一番ありえないことが起こりました。

ありえない。
ありえないのに、どうしても今、後藤さんが返事をしたようにしか思えません。
19 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)17時01分54秒

こめかみを伝って顎の先に溜まった汗がぽとりと落ちました。


私は、なるたけ心を落ち着かせ
その汗を手で拭うと、もう一度後藤さんに呼びかけました。

「後藤さん、聞こえますか?後藤さん」

間違いありません。
後藤さんの目は光り、
その顔はどこか嬉しそうにすら見える表情に変わりました。


「後藤さん…後藤さん…」

後藤さんは私が呼びかけるたびに嬉しそうに返事をします。

私の声が、届いているのです。


20 名前:更新終了 投稿日:2003年08月20日(水)17時03分20秒
注:真面目に読んではいけません
21 名前:更新終了 投稿日:2003年08月20日(水)17時11分23秒
>>9
書く時間が全然無いんです。じゃあ立てるな、という話ですが…
でも読んでホスィ。わがままな書き手ですみません。

>>10
自分でもよくわかりません

>>11
導入部分(というか設定)以上に驚き(?)の展開にはならないと思います。
あしからず

>>12
実際それほど甘くならない気がしてきました。
なんせ後藤さん総受けなので…

>>13
非常にありがたいのですが、毎日チェックされても毎日更新なんてとても出来ないです

そういえば関係無いけど、他の作者さんたちもage更新してホスィ…
22 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月22日(金)18時20分38秒
いやでも期待してしまいます。
そしてレスに喰いついてしまいました。後藤さん総受け・・・
23 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時15分10秒

不謹慎にも嬉しい気持ちが沸いてきました。
確かに死体には違いないのですが
後藤さんはまだ後藤さんのままでした。


そっと後藤さんの髪に触れてみました。

乾いたような、ぬめっているような、
何とも言えない不気味な感触。
冷たく、死を否応無く感じさせる手触りでした。

後藤さんは複雑そうな表情で私の手の動きに任せました。

手にべたべたした、血なのか、何かしらの体液がついてしまい
慌てて壁に手を擦り付けました。

いわゆるところの『切断面』に触れてしまったのです。
サーッと、また背中に嫌な水が浮かびました。

その生々しい感触、混沌とした赤黒い断面のおぞましい姿は、私に強烈な吐き気を催させました。
『そこ』は、うら若き乙女が直視するにはあまりにも露骨すぎました。

24 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時15分56秒


後藤さんを触っているうち
なにやら非常にまずい状況であることを思い出しました。

夜とはいえ、こうやってずっと廊下で生首と向き合っているわけにはいきません。
もし、誰かに見られたりしたら只事ではありません。


まだ、完全にとはいえませんがこの状況に大分慣れてきました。
我ながら完璧です。

今は考えてはいけません。
とにかく部屋に入るのが先決です。


この生首をどうするかはその後です。

25 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時17分00秒

とりあえず玄関の前に置かれた後藤さんを足でどかして部屋の鍵をあけます。
戸をあけて、後藤さんのこめかみを両手で挟んでなんとか持ち上げます。

後藤さんは足蹴にされたことでしょうか、とても不満そうな目を向けてきました。
しかしそんなことよりもまずは部屋に入ることです。

ずしりと両腕に重力がかかります。
想像よりずっと重いそれに、思わず落としてしまいそうになりました。

間一髪のところで両手に力を入れなおします。

こうしてみるとスイカ割りのスイカにも似ています。

まあ、これは落としてもそうそう割れたりしないでしょうが…
ちょっとくらい割れてもどうせ死体だからいいんですがね。
26 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時18分56秒
何にしてもやっと家に帰ってくることができました。
門をくぐって、とりあえず後藤さんを下駄箱の上において、戸を閉めて、施錠して、一息。

実際はほんの数分。
でも、家の前から家の中に入るまでに一晩かかったたような心持になりました。


手探りで部屋の明かりのスイッチを入れます。


新聞紙をベッドの脇の小テーブルの上に広げます。
その上に後藤さんを乗せます。

洗面所まで行って入念に手を洗います。
鏡で、自分の顔を確認。
多少やつれているようにも見えますが、大丈夫、いつもの私です。
にこっと笑ってみると歯並びの悪い口が覗きます。

手を拭いて、ぽんと両手で自分の頬を張ってから
また寝室に戻りました。

27 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時20分27秒

当然、とでも言うように小テーブルの上には後藤さんが乗っています。

私は今日一番の溜め息とともにベッドの上に腰を落としました。
ちょうど、後藤さんと向き合う位置です。

部屋の調度品をぐるりと見渡します。
いつもと変わらない部屋。
しかし目の前のテーブルの上にはこの上なく悪趣味な置き物。



「……で、後藤さんは何やってるんですか?」

後藤さんは何が不満なのかさっきからずっと膨れっ面で拗ねています。
もちろん本当に膨れているわけではありませんが。

汚いもの扱いされたのが不満なのでしょうか。

この人が見かけよりずっと子供っぽいということは
生前よりよく見知っていたのですが死んでも変わらないんですね…


「…しかたないじゃないですか。本当にばっちいんですから」
28 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時22分00秒

本当に汚い。というか少し臭いまでします。
ここ数日あまり気温は上がらなかったとはいえ季節は夏。
いつ死んだのか知りませんがこの湿気では蟲が沸くことも考えられます。


『鳥屋の梯子と人生は
      そも短くて糞まみれ』

妙なフレーズが頭に浮かびました。
今の後藤さんにぴったり。…糞まみれは言い過ぎかな。

私のストレートな物言いにいよいよ本格的にいじけモードの後藤さん。
しかし、顔の筋肉を一ミリも動かさず――否、動かせず――こうも雄弁に感情を吐露する後藤さん。
凄いです。
いや、読み取る私の感受性が豊かなのかもしれません。

とにかく、このままでは話がすすみません。

「とにかく、後藤さんはどうしたいんですか?」

考えてみれば、喋れない生首相手に話もくそもありません。
しかし、後藤さんはその問いに対しとても情けない眼になりました。
うったえかけるような…

「泊めて欲しいんですか…?」

一応察して聞き返すと
ぱっと明るい目になりました。どうやら当たりです。

29 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時22分54秒

しかし、後藤さんをここに置いておいて本当にいいのでしょうか。
死体遺棄にならないのでしょうか。

頭の中に私が後藤さんを抱えて駐在所を訪ね、
「あの…これ、家の前に落ちてたんですけど…」と言って差し出す画を浮かべてみます。

ありえない。

そもそも後藤さんの生首が今私の目の前にあること事態がありえません。
これはもう、どうしょうもありません。

私は、もう何度目になるであろう溜め息をついて
後藤さんを留めておくことを決めました。
その旨を伝えた時の後藤さんの喜びようといったら…別に表情が変わるわけでもないんですけどね。



30 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)22時24分12秒
とりあえず、もう夜です。
いろいろとしなくてはならないこともありますが、明日に回すほかありません。

ベッドに豪快にダイブ。
とてもとても疲れました。
今は早く寝たい。


明日はちょうど、仕事が昼間でしかありません。
いわゆる半ドンです。

色々買わなきゃ。


電気のスイッチを引っ張って豆電球の電気だけ残すと
後藤さんの閉じる事の無い両目、半開きの口が不気味に赤く光ってこちらを見るではありませんか。

慌ててすべての電気を消して
後藤さんに背を向けつつ寝に入ります。


背中に感じる視線。

ああ―――眠い―――。


――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――――


31 名前:更新終了 投稿日:2003年08月22日(金)22時25分29秒
一話 ――再会――  終わり
32 名前:更新終了 投稿日:2003年08月22日(金)22時28分25秒
>>22
動きが無いしありがちだし、期待に応えられるかどうか…
33 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月23日(土)00時06分07秒
ちょっとくらい割れてもどうせ死体だから…ここのこんこんは素敵でつな。(w
34 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月23日(土)08時39分58秒
期待おち
35 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月23日(土)22時43分00秒
やべぇ、普通に後藤さんが可愛く感じた。
つーか、これでありがちなの?w
36 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時34分38秒

”こんのー…こーんの”

「……後藤さん…また随分と軽装ですね…」

”皮肉?”

「…いえ」

”あたしの身体、探して欲しいんだけど…”

「えー…」

”体からだ、カラダぷりーず”

「……」

”見つけてくれないと憑くよ?”

「生々しいこと言わないで下さい…ほっといたら生えてくるんじゃないんですか?」

”こんのはDBの読みすぎだね。あは”

「いや、笑われましても…」


”温泉いきたいね”

「脈絡無いですね……後藤さん」



――――――後藤さん、好きです――――――
37 名前:更新終了 投稿日:2003年08月26日(火)13時35分13秒

2話 ――動揺――

38 名前:↑間違い 投稿日:2003年08月26日(火)13時36分06秒


瞼の裏に感じる生暖かいひかり。
カラスのけたたましいがなり声が遠くから耳に届きました。

朝。

重い瞼をゆっくりと開けて、首を後ろに反らし時計を眺めると、
まだ短針は6時の前を指しています。
仕事に向かうにはまだ早すぎる時間。

カーテンの向こうから漏れる光は灰白色。
今日もまたいいお天気ではなさそうです。

五感に入ってくる緩やかな情報の波を整理しながら、徐々に頭を覚醒させます。
いつもの朝。

大分目が覚めた頭にふと、イヤな記憶が蘇ってきました。

『朝起きたら夢であれと何度も唱えてみたけど…』

誰かさんの歌が頭に響く中、侭よ、と『そちら』に首を向けると、
『それ』はやはりあたりまえのようにそこにありました。

心の中で激しい舌打ち。
39 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時36分51秒

テーブルに置いた新聞紙には茶色いシミが滲んでいます。
後藤さんはというとだらしなく口をあけて目もあけて眠りこけているではありませんか。

マイペースというか、緊張感が無いというか。
もっと生首だという自覚を持ってもらいたいものです。
しかも人の夢にまで押しかけて安眠を妨害した上に、無理難題を押し付けてくれました。
少しは遠慮というものをしたらどうなんですか、まったく。


気だるい身体を揺すって上半身を起こします。
大きく伸びをすると身体の節々がカチカチと鳴りました。

横目で、爆睡中の後藤さんを一瞥。

「後藤さん、おはようございます…」

私の声にハッとしたように目を覚ます後藤さん。
とっさに、寝てないよ?とでも言いたげな目をしてしらばくれて見せます。
呆れて物も言えません。

私はそれでけ言うとさっさとベッドを降りました。

40 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時37分50秒


昨日は何だかんだ言っても動転していたらしく、気が付くと外着のまま寝てしまっていました。
というか昨日は帰宅してすぐに寝たのでシャワーも浴びていません。
冷房が入ってはいましたが体はどうにも気持ち悪い。
まずはシャワーを浴びる事から今日一日を始めようという結論に落ち着きました。


冷たい水を全身で浴びるうち
体を包んでいた嫌な空気が弾かれていくような心持がしました。
心地よい感覚。
顔に当たる飛沫がパタパタと跳ねて踊ります。

今日のすべき事を考えます。
まだ時間はありますが、まず仕事です。
今日は全員揃っての歌番組の収録。それが午前中です。
それから午後にはそれぞれがソロ、ユニット等に分かれます。
私はたまたま休みです。
たまたまです。決して仕事が無いわけではありません。
この時間は非常にありがたい。
お買い物が出来ます。
まず後藤さんを収容する箱、アイスボックスのような物を購入する必要があります。
あのまま置いておくのはいやだし、腐ってしまいますから。
あとで後藤さん洗おうっと。
41 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時38分45秒

それと、後藤さんの身体の捜索です。
夢に見た…というのは自分の潜在意識の顕現です。
でも後藤さんが乗り込んできたように思えて仕方がありません。
やはり後藤さんだって身体はあったほうがいいはずなのです。

後藤さんの身体…
長い指。広い肩。すらりとした脚。
今の後藤さんの姿が強烈で、なかなかイメージにならないのですが
なんとか生前の後藤さんの全身像を思い浮かべてみます。

私が一番尊敬し、憧れた姿―――

やはり後藤さんはすべてそろっていた方がいいと感じました。

もしかしたらヘンな後藤さんのことですから
体を持ってきたら頭とくっついて、また動き出すかもしれませんしね。
ははは。

冗談ですけどね。


シャワーの温度を少し上げて
頭から思い切りかぶって湯を止めました。

ぷるぷると頬っぺたを振って水を切って上がります。

洗面所の鏡の前。
昨日と同じように、今日は裸で立ってみて、自分の体をしげしげと見てみます。
肩、腕、胸、腰、これらがすべて無くなるというのは、やっぱり嫌な感じです。
というかその前に後藤さんは死んでるわけですが。


42 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時40分21秒

「しかし、身体を探すといっても、具体的にどうしょうもないですよ」

服を着て、髪を乾かして寝室に戻ると、相変わらずテーブルの上にいる後藤さんに話し掛けました。
後藤さんは不満顔。

「だってまず何でうちの前に頭だけあったかからして訳わかりませんもん」

この話題は後藤さんとしては都合が悪いらしく
いつも空々しい知らんふりを決め込むのです。

「まさか…後藤さんが自分で這ってきたんじゃないでしょうね…」

つん、と知らぬ顔の後藤さん。
しかし、想像するとかなり気持ち悪い映像ですが、後藤さんは昨日風も無いのに転がった前科があります。
もしかしたらもしかしたりして…。
ここは13階、後藤さんは見かけに寄らず根性がある方なのかもしれません。

「身体のある場所について心当たりとか無いんですか?」

きらりと光る後藤さんの目。何か訴えるように私を見上げます。
が、考えてみればこの人に心当たりがあっても私に伝える術がありません。
はっきりいって時間の無駄です。
43 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時41分32秒


とはいえ、後藤さんとお話していたい。

昨日再会を果たした後の今日ですが、
もし後藤さんが呼びかけても返事を返してくれなくなったら、と思うと
些か、いやかなり、寂しい。




妙な気分です。
一番妙なのは後藤さんですが。


無駄な事を訪ねるのをやめて他愛ない世間話に興じることにしました。
中身は私の近況報告。
後藤さんは優しく目で相槌を打ってくれます。

以前の後藤さんとなんら変わりない―――

今は多少私主導で強引ではありますが。
前も何度か後藤さんは私の話を微笑みながら、頷いてくれました。

そんな話をしているうち、仕事に向かう時間がきました。

「私、そろそろ行きますね」

後藤さんは一瞬寂しそうな目をした後、『頑張っといで』とでも言うような優しげな顔に戻りました。

――生首の後藤さんとの間に『いい関係』が出来ていました――

私の顔には自然と笑顔が浮かんでいました。

44 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)13時42分35秒



それはそうと、
敷いてあった新聞紙で後藤さんを包むと押入れに放り込みました。
包む瞬間、後藤さんが激しく不満げな目を向けてきましたが。
だってイヤですもん。日中テーブルの上に生首が置いてあるのとか。

「あとでちゃんとアイスボックス買ってきますから、我慢してください」

押入れに向かって言います。
無言。
あたりまえですが。


「それじゃあ、行ってきます」


大きな声。
昨日までは出す事は無かった挨拶をして、部屋の門戸をくぐりました。


45 名前:更新終了 投稿日:2003年08月26日(火)13時43分42秒
狩が消える日…
46 名前:更新終了 投稿日:2003年08月26日(火)13時47分15秒
>>33
割れたら困りますよね
>>34
更新あげ
>>35
後藤さん科白も殆ど無いですが見守ってあげてください
47 名前:tsukise 投稿日:2003年08月26日(火)16時25分42秒
更新、お疲れ様ですっ!
はじめて読みましたけれど、サイコーにウケました(笑
ありえない話の展開ですけど、凄く楽しいですっ。
ごっちんが腐ってしまわないように期待しつつ、次回更新を楽しみにしてます。
48 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月26日(火)17時29分23秒
『魍魎の匣』が浮んだ
49 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)17時41分38秒
面白い…なんかもうすでに甘々な感じがします。
生首さんとラブラブな紺野さんw
50 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)17時42分37秒
しくった…ageちまった…すっかりしくった
51 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)00時16分43秒
うわーかなりツボにきてます☆
後藤総受けに期待(w
52 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時25分59秒



一歩外に出ると、纏わりつく湿気、生温かい空気。
空はどんよりと雲の影を落とし微かな風が常に温まった空気をかき混ぜていました。
街はいつもと何ら変わらない表情でくたびれた人の波を包んでいます。

人々は時間を急かし時間に急かされ一心不乱に行き交っています。

おかしな気分。

朝の電車に揺られながら、確かにこれが日常であったと納得します。
ところがどうも、いつもの風景がいつもよりも色褪せて見えるのです。

家の中のおかしな世界。
後藤さんのいる家。
あの不思議な空間が、まるで夢の世界の出来事であったかのように
あるいは、異次元空間のように朦朧としたヴェールを纏って思い出されるのです。
53 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時26分40秒


もしかすると本当に、ここはあそことは違う、別の世界なのかもしれない。
そんな、根拠の無い夢想が思考の一片を締めたとき
車内に目的地への到着を告げるアナウンスが流れました。


都内某所の某ビルの某楽屋。
今日はここに集合です。
建物の中に入るとまた利きすぎた冷房の刺すような感覚が
違った世界を演出します。

…ただ外が暑かっただけでした。

『モーニング娘。様』と書かれた楽屋。
コンコンとドアをノックして扉を開けます。

時間でいえば集合時間の20分前。
余裕の時間ですが、中には人の気配がありました。

「おはようございます」


54 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時27分40秒



「紺野おはよう」

中から聞こえたのは石川さんの声。
それから、吉澤さん、矢口さん、飯田さん、安倍さんが迎えてくれました。
お姉さんメンバーの揃い踏みです。
安倍さんまで。珍しい。

皆さん何処かしら沈痛な面持ち。
楽屋の空気が何となく重苦しい。


「…何かあったんですか?」

「…どうして?」

「…いえ……」

私の質問に答えたのは石川さん。
質問をしてから自分の愚かさに気付きました。
はっきりとした心当たりがあったのですから。

彼女達の表情を曇らせている原因は間違いなく後藤さんでした。

55 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時28分18秒

少なくとも昨日から、後藤さんの首は私の家にあるのです。
しかも体は本人曰く行方不明。ということは世間的には後藤さん自身が行方不明ということなのです。
彼女達はいずれも後藤さんと仲のよかった人達。
或いは身を寄せているかもしれない、と連絡が入っている可能性が高いのです。
…私のところにはありませんでしたが。


それ以上私の口から言葉は出せませんでした。
皆さんの心配も非常によくわかります。
今の日本の治安は決していいとはいえません。
後藤さんにもしものことがあったら…

悪いことに、すでに最悪の事態を迎えてしまっていることを私だけが知っているのです。
とても気休めを言えるところではありません。

次第にメンバーが揃いはじめました。
15人の楽屋。
56 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時29分21秒

辻さん、加護さんは朝から元気です。
お姉さんメンバーの重苦しい雰囲気などなんのその。
まだ後藤さんのことを知らないことがわかります。

6期の子達はまだそれほど騒ぐわけではありませんが、3人で固まって談笑しています。
藤本さんはやはりお姉さん組動揺、落ち着かない面持ちで思案しています。

同期の3人はそれぞれ、いつもと違う雰囲気を感じ取ってか戸惑っているようです。

嫌な空気。
気を張っているお姉さん組にしてみれば無邪気にはしゃぐ後輩達が疎ましいらしく
見えないように舌打ちを繰り返しているのがわかります。

時間以上に長い、重苦しい待ち時間がようやく終わり、
マネージャーが呼びにきて仕事をはじめる時間となりました。

私は一人安堵の溜め息をもらしました。


57 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時30分54秒


歌番組の収録。
番組は滞ることなく進行しました。
先輩達もさすがにこの世界で何年もやってきただけあって
内心にある不安を微塵も感じさせない仕事振りを見せ付けました。

逆に今日もミスを連発してしまったのは私。
NGこそ出しませんでしたが考え事をして呆けてしまって司会者に注意されてしまいました。

何とか番組を撮り終えました。
昨日なら先輩達が何かしら声をかけてくれたのですが今日はありません。
わかっています。
彼女達には今他人を気遣う余裕は無いのです。
代わりに、愛ちゃんや麻琴ちゃんが声を掛けてくれました。
嬉しいのですが、どうしても複雑な気持ちになってしまいます。


今日はこのあと三々五々分かれての仕事なので、ここでもう解散、
と思いきや、マネージャーに集合を掛けられました。

何だろうと疑問符を浮かべるメンバーと暗い表情のメンバー。
二つに分かれました。
私は、多分そのどちらでもない、変てこな顔をしているでしょうが…


「後藤が…後藤真希が失踪した…」
58 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時32分37秒

マネージャーは前置きをしてそう告げました。
驚きの声を上げたのは私を除く年少メンバー。


「どういうことですか!?」

加護さんがマネージャーに詰め寄ります。

年配メンバーはぐっと唇をかんで下を向いておし黙っています。

「一昨日の夜、仕事から帰ってから、行方がわからないらしい… 家にも帰ってないみたい…」

マネージャーはどもりながら言いました。
一昨日の夜…
ということは、それまで生きていたという事です。

わかりません。
不可解な事が多すぎて線が一本に繋がりません。

「もしかしたら、何かの事故に巻き込まれたのかもしれない…誘拐されたのかも…」


メンバーの顔色がさっと変わりました。
59 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時34分10秒

「とにかく、あなた達も気をつけて…」

マネージャーはそのあと、後藤は…と続けようとして黙りました。
一気にどん底の空気に包まれたメンバーを促がして、次の仕事へと向かわせました。


私は仕事が無いので、マネージャーに充分に注意を促がされて
帰途につきました。
もっとも寄り道するところがあるのですが。

別れ際に見たメンバー達。
いつもなら互いに激励しあって分かれるところですが、今日は意の篭らない挨拶を交わしただけに留まりました。
3人だけでの取材がある6期メンバーの戸惑い。

今さらながらに、思い知りました。
皆の、私たちにとっての後藤さんという存在の大きさを。


60 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時35分56秒

――――――――――――――
―――――――――――
―――――――


都内某生活百貨店。

アウトドアのコーナーに来ています。
私のような麗らかな美少女が一人で訪れるには些か場違いな場所。
実際、こんなところには殆ど来たこともありませんので、何処に何があるやらよくわかりません。
しばらく彷徨しているうち、見知った顔の販売員を見つけました。

「…あの」

「ああ、この間の…今日は何をお求めですか?」

「その…アイスボックスなんですけど…」

怪訝な思いもあったでしょうが、そこはプロ。
にこやかに私をそのコーナーまで連れて行き、商品の説明をしてくれました。


なんとか無事買い物も終わりました。
両手には大きな荷物、でっかい箱。
どうなんでしょう、この状況。

61 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時38分29秒

家まではそう遠くはないのですが、あまり長い間この荷物を持って歩きたくもないのでタクシーを拾うことにしました。
ターミナルまでの道のりをぶらぶらと歩きます。
空は曇っていて辺りは薄暗く、どのくらい買い物をしていたのかもよくわかりません。



小さな川に差し掛かりました。
橋の上からぼんやりとその流れを見つめます。
煤色の畝が暴れる雷魚の背のように、不気味に蠢いて
まるで其処が地獄への入り口であるかのような様相をしているのです。


失踪した後藤さん。
そして死んでしまった後藤さん。
もう、閻魔の審判はうけたのでしょうか。


死んでしまわれたんですね――

62 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)15時39分45秒

冷たい風が一凪。
震える体を抱きしめるうち
霧雨が落ちてきました。

鈍る足をなんとか動かして、空車のタクシーを拾いました。
ふと目に入った時計は5時過ぎを指していました。



がさばる荷物を抱えて自宅前。
この扉の向こうには、後藤さんがいます。
死んだはずの後藤さんが。

おかしな話ですが、何もおかしくはないのです。
この扉を開けばそこは別の世界。
何もおかしくはないのです。

63 名前:更新終了 投稿日:2003年08月28日(木)15時42分33秒
展開が遅いな…もっとサクサク進めたいんだけど…
64 名前:更新終了 投稿日:2003年08月28日(木)15時50分38秒
>>47
ウケてもらえて嬉しいです。次はコワくなるように頑張ります(嘘

>>48
あんなややこしい話にはできそうにないです

>>49
気のせいかもしれません

>>51
紺野さんの(略)にも期待してあげてください

65 名前:更新終了 投稿日:2003年08月28日(木)18時00分07秒
何を考えていたんだろう。。。
>>62
一行目 ×凪→〇吹き
脳内変換お願いします…
66 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月28日(木)19時28分29秒
おもしろくてしょーがない。続き期待。
67 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時11分09秒


「ただいま」

無言。
あたりまえです。

両腕にかかった重圧を開放するとキクリと鳴りました。
軽く肩を回します。
押入れを開けて『それ』があることを確認。
無くなっていたら大変です。ホラーです。

暗い押入れの中にぼんやりと浮き上がるボール大の新聞紙の包み。
確かにありました。

それを取り出し、昨日と同じようにテーブルの上に置いて包みを開けると
後藤さんが嬉しそうな目で出迎えてくれました。

「ただいま」

と、もう一度、後藤さんの目を見て笑いかけると
おかえり、と後藤さん。もちろん喋るわけはありませんが。


「買ってきましたよ。アイスボックス」

そう言って、玄関に置いていたそれを持ってきました。
喜ぶかと思ったのですが、後藤さんは複雑な顔。
我が侭ですね。
68 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時12分14秒

いま、これに後藤さんを入れるわけにはいきません。
まずは後藤さんを洗わなければいけません。

それよりも何よりも私の食事が先です。

「待ってて下さいね」

思わしくない反応にちょっと不機嫌な声が出てしまいましたが、
ご飯が最優先事項です。
調理場に立って、冷蔵庫からあり合わせの材料で野菜炒めを作ります。
我ながら素晴らしい手際です。

インスタントのお吸い物とお漬物を野菜炒めとご飯に添えて出来上がり。
少ないようですが、あとで干し芋をつまむので問題はありません。

テーブルの、後藤さんの横にお盆を置いて、いただきます。
生首の横での食事というのはかなり不気味なものですが
慣れというのは恐ろしいもので全く気になりません。
でもちょっと臭うのが嫌といえば嫌ですが。
汚いし。

69 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時13分28秒


「後藤さんも食べます?」

私の軽い厭味に膨れ面の後藤さん。
食べたくても消化管がありませんもんね。


私と後藤さんと、食事をしながらまったりしていると
真っ黒に染まった窓の外から激しくコンクリートのベランダを叩く雨の音が聞こえてきました。
それに伴って遠くから雷鳴も響いてきます。

「嫌な天気ですね…」

私の言葉に、しかし窓の外を向くことが出来ない後藤さんはただ目で頷きました。


70 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時14分21秒



「さて」

ぼーっとしていて、特にしておくべき事も思いつかなかったので声を出しました。

「後藤さんを洗いましょうか」

少し驚いたような目をする後藤さん。
昨日から散々言ってるのに。

よっこらせ、と掛け声をあげて立ち上がると、後藤さんの包みを持ち上げました。
どうするの?と聞きたげな後藤さん。

「お風呂に入るんですよ?」

私の言葉にボッと赤面する後藤さん。
いや、実際顔の色が変わったわけでもないのですが。
異常に照れるので、何だか私まで恥ずかしくなってきました。

生首に恥ずかしいもくそも無いような気がするのですが…

71 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時15分43秒


とりあえず風呂場にいって浴槽にお湯を張ります。
それから後藤さんを置いて、服を脱いで…

「……見ないで下さいよ…」

見える位置に置いた私が悪いのですが。


脱意をすませると後藤さんを持って浴室に入ります。
ぬるぬると気持ち悪い後藤さん。
まず、これを落とさなければいけません。

しかし、考えてみれば後藤さんは首だけしかないのですから見られたってどうということはありません。
ある意味恥ずかしい姿ではありますが。

恥ずかしいのは私です。

以前メンバーで地方のホテルに泊まったとき、みんなで温泉に入ったのを思い出しました。
あの時は、後藤さんも生きていましたから、恥ずかしくて…

それはそうです。
私は、ずっと前から後藤さんを慕っていた。好きだったんですから。
ろくに身体を洗う事もできず、ずっと真っ赤になってもじもじしていたのを憶えています。

今は状況は違いますが、一緒にお風呂に入っていてしかも二人きり…

72 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時16分49秒


いけませんね。
変な考えが過ぎました。
今はとにかく後藤さんを洗うのが先です。


シャワーのお湯を出して私と、後藤さんにかけます。
心地よい温かさが体を包みます。
後藤さんは、無反応。

シャワーを浴びせながら恐る恐る擦ってみます。
髪のぬるぬるはなかなか取れません。
何か、化学反応を起こしたりしないだろうかという心配もありましたが、シャンプーで洗う事にしました。

泡だらけの後藤さんの頭をしゃかしゃかと揉み解します。
特に髪の毛が抜けたりということも無いのでそのままで。

「気持ちいいですか?」

聴いてみますが、あちら向きなので返事はわかりません。
でも、何となく嬉しそうな雰囲気が伝わったので続けます。

泡をシャワーで洗い落とすとぬるぬるが無くなっていました。
よかったです。
次は顔です。後藤さんの頭をこちらに向けます。
調度向き合う形。
73 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時18分47秒

後藤さんはにやにや。

「どこ見てるんですか!」

しょせん生首。されど後藤さん。
頬が熱くなってつい声を上げてしまいました。

後藤さんの角度を少しずらして、手にボディソープをとります。
洗顔料なんか死体には勿体無いので。

後藤さんの顔に擦りつけます。
目に入っても目をぱっくりと開けている後藤さん。
痛くないのでしょうか。
痛いわけないですね。死体だから。

顔、耳の後ろ、首筋、満遍なく擦ってその泡も洗い落としました。
生まれ変わったように清々とした後藤さん。
74 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時19分59秒

次が難関です。
一番見苦しい『切断面』を洗わなければなりません。
でもはっきり言って触りたくないし、石鹸をつける気にもなれません。
後藤さんを横倒しにして、そこにシャワーのお湯をぶつけてみました。
そこに当たったお湯が、何やら薄茶色の液体に変わって流れ落ちます。


―――――――――――――


暫くそうしていると、液の色が次第に薄くなってきました。

もう、これくらいでいいでしょう。

もう一度後藤さんを立てて見つめます。
濡れた髪、眼球に水がついても開いたままの眼は不気味ではありますが
かなり綺麗になったように思われます。
満足です。

75 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時21分13秒

「じゃあ、私の身体を洗うので、後藤さんはお風呂に入ってて下さい」

言って後藤さんを湯の張った浴槽に入れます。
浮くかと思ったのですが、横向けになって顔の八割ほどが湯に沈んでしまいました。
片目だけが水面を行ったり来たり…
気持ち悪いです。

私もなるたけてきぱきと、髪を洗い、身体を洗って流しました。


私も湯につかります。

私が入って水面が上がっても、後藤さんは変わらずぷかぷかと浮いています。

ミルク色の湯気が漂う浴室。

後藤さんと二人で入るお風呂。

なんというか、甘い響きです。
こんなに、私は後藤さんのことが好きだったんです。

幸せな時間。

後藤さんは水面下から私の顔を見上げます。
ちょっと照れて、優しい目をして。

私も、同じように後藤さんに笑いかけて、一日の疲れをゆっくりと湯船に溶かしました。



76 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時22分48秒



二人でお風呂から上がります。
お互いの顔と髪と、私の身体とをよく乾かして。

綺麗になった後藤さん。
あまり抵抗も無く小脇に抱えて持ち運べるようになりました。

先ほどまで包んでいた汚い新聞紙は丸めてゴミ箱へ。

それから、後藤さんの顔に、今日買ったエタノールを噴霧。
殺菌のつもりです。
特に『切断面』にこれでもかというほどにに噴きかけました。



完璧です。


タオルで切断面を覆ってテーブルの上に置いた後藤さん。
とても綺麗です。
77 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時24分07秒
蝋人形のように白い肌。
意志をもった瞳。


私が、一番好きで、憧れて、愛した瞳。

その姿は一種神々しく、この空間を支配していました。
雨音が次第に離れてゆきます。


私と、後藤さんだけの世界が辺りを包み込みます。
私の手は自然に伸び、後藤さんの髪に、頬に、耳に触れていました。


「後藤さん…」

自然と、引き寄せられるように
後藤さんを引き寄せました。



78 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時25分05秒



突然けたたましい音が響きしじまが破られました。
それに次いで激しい雨音が耳に戻ってきます。

音は、私の携帯でした。

慌てて後藤さんをテーブルに置いてディスプレイを確認します。



――愛ちゃん―――



79 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時26分03秒

気付かないうちに激しく打ち鳴らしていた鼓動を収めるために
大きく一つ深呼吸をしてから通話ボタンを押しました。


「もしもし、愛ちゃん?」


『あ、あさ美ちゃん……いま、大丈夫…?』

大丈夫?に込められた意味を考えながら少し慎重に。

「うん。どうしたの?」
80 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時28分40秒

愛ちゃんは、やや逡巡してから
覚束ない口火を切りました。


『あの…聴きたいことがあるんだけど…』

「うん?」

『あさ美ちゃんは…その……後藤さんのこと……』

「……」

『…知ってたの?居なくなっちゃったこと…』

ちらりと後藤さんを見ます。
慌てていたために倒れてしまっていた後藤さんを片手で立て直します。

愛ちゃんの声。
小さくて、元気が無くて、かなり気を揉んでいることが読み取れる声。
そんな中でも、多分
今日もミスを連発した私、態度がおかしかった私のことを気遣ってくれている。
それがわかって、ちょっと、苛立った気持ちが静まっていきます。

81 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時29分32秒


「うん、その、電話が繋がらなかったから…」

なるたけ愛ちゃんに心配を掛けさせないように、
いつもどうりの声を作って答えました。


『そっか…』

言ってから、そういえば、と思いました。
後藤さんの携帯は、所持品はどうなっているのでしょうか。
『失踪』というからには多分繋がりはしないと思うのですが、
或いは身体を探す手がかりになるかも―――


『そうだよね……あさ美ちゃんは後藤さんのこと……』
82 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時30分37秒


突然の物言いに吃驚。
それと同時に、今さっきまでの後藤さんとの秘め事、というとイヤラシイですが
それが頭の中にフラッシュバックされて頬が一気に紅潮していきます。

後藤さんの見ると、ボーっと中空を見ています。
私の視線に気付いて、なに?と言うように見つめ返しました。
それに、また頬が熱くなって
思わず目をそらす私。
恥ずかしい。


「な、何いってるの、もう……」

動揺を隠すために精一杯繕って声を出しましたが
やはり不自然な返事。
83 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時31分38秒

私の、明らかに上擦った声を聴いて愛ちゃんは


『ごめん…あさ美ちゃん……』


激しく沈んだ声で謝罪しました。
私の声が落ち込みから上擦ったものと思ったのでしょうか。


『でも…まだ、どうにかなったって訳じゃないし……』

自分で言って、言葉を詰まらせる愛ちゃん。
泣きそうな声です。
私の、後藤さんへの気持ちを知っていた愛ちゃん。
だから、こうやって励ましの電話を入れてくれているのです。
しかし、彼女だって後藤さんを慕っていたことには変わりありません。


残念ながらもうどうにかなっちゃってます、と言える雰囲気ではありません。

84 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時32分59秒
愛ちゃん……」

『ごめん……私……』


「ううん……電話、ありがとう…」

ぼろが出ないように言葉を選びます。
愛ちゃんは、もしかしたらもう涙を流しているのかもしれません。

みんなみんな、気持ちは同じです。

後藤さんが心配で、不安で―――



「ごめんね。私の為に掛けてくれたんだよね…。私は、大丈夫だから……」

『うん……ごめんね…あさ美』

「また、電話するね、後藤さんは……」


大丈夫、と言おうとして、全く大丈夫ではないので言えません。
ただ、愛ちゃんには、元気を出して欲しい――
85 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時33分50秒


言葉が、上手く出てきませんでした。

『うん…じゃあ、おやすみ…………
 後藤さんは…きっと、大丈夫だよね?』

 
「………うん」



86 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時34分36秒


携帯を閉じて、暫し握った手を見つめます。

窓の外では雷が物凄い閃光を走らせました。


複雑な気分。
後藤さんが、だいじょうぶでも何でもないことは、いずれ知れてしまうことです。
それでもとても「そんなことはない」とは言えません。
言えるわけがありません。

でも
今たとえ愛ちゃんの気持ちが落ち着いても
きっとまた、その笑顔がどん底までに曇ることになるのです。

87 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時35分49秒

後藤さんを睨みつけます。
間抜け面。

でも、その顔は昨日までとは違って美しく透明で、
生前以上の気品すらも感じさせる姿。

私はこうして後藤さんと一緒にいて、
しょっぱなからめちゃくちゃに驚かされて
でもある程度落ち着いて
何が起こってるのかはよくわからないけれど、普通にこうして座っています。

もし、私が愛ちゃんや、他の皆さんと同じように
何もわからなくて、後藤さんが居なくなって
どうなっているのかも、無事なのかもわからなくて
独りでいて、どうでしょう。
不安で不安で不安で、潰れてしまうのではないでしょうか。


ぐるぐると、頭の中を様々な考えがよぎります。
昨日の時点であまり考える事はよそうと踏ん切りをつけたはずでしたが…

88 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時36分32秒

考えてしまうのは癖です。
悪い癖です。

後藤さんを見ていみれば、何も考えてはいないじゃないですか。
のほほんとして。

今日も、もう寝ることにします。


雷が煩いですが。

電気を落としてベッドに潜って後藤さんを見ます。
光のように白く美しい後藤さん。昨日とは違います。


「おやすみなさい」




――――――――――――



89 名前:更新終了 投稿日:2003年08月31日(日)14時37分38秒
2話 ――動揺――  終わり
90 名前:更新終了 投稿日:2003年08月31日(日)14時41分49秒
>>66
期待を裏切っていないか心配です


お詫び
9月以降、更新速度が急激に落ちると思われます。
読んでもなんらありがたみもない拙作ですが、もし待ってくれる奇特な方がいらっしゃれば
マターリ待っていただければ幸いです。
91 名前:tsukise 投稿日:2003年08月31日(日)15時52分38秒
更新お疲れ様ですっ。
二人の奇妙な関係に、またまた笑わせて頂きました(笑
他のメンバーからしてみれば、気が気でない状態なんでしょぅが(^^ゞ
更新は作者さんのペースで頑張ってください♪
マターリお待ちしています。
92 名前:名無し優作 投稿日:2003年08月31日(日)20時10分49秒
なんだろーこの感情は。あれだ、キモ可愛いってやつだ。

それにしても文章の感覚が面白くて好き。
間抜け面からの切替しとかありえない。
93 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)23時05分18秒
いやーいつまでも待ちます!!
これほどはまった作品はないです。
しかも今回わしの好きなごまたかチックでよかったです☆
更新がんばってくださいねー♪
94 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/10(水) 07:29
hozen
95 名前:自己保全 投稿日:2003/09/13(土) 15:20
パソコンがアボーンしますた…
年内更新も難しい状況です。見限って下さい…
一応保全は自分でしますゆえ
96 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 19:42
待ってるげす
97 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 01:58
見限ってあげないw
で、昔と変わっていなければここで保全という行為に意味は無いと思うよ。
スレの最終書き込み時間による自動dat落ちってな仕組みじゃなかったから。
昔整理してたときは、作者による小説の更新がどの程度行われていないか、
を調べて放置とみなされたものは倉庫行きだった。

仕組みが変わっていなければ、いたずらな保全はレス数とスレ容量の
無駄遣いにしかならない。
俺のこの書き込みモナ

とりあえず復活待ってます。
98 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 23:37
保全
99 名前:名無しさん  投稿日:2003/10/11(土) 21:22


”こんのー…こーんの”

「……後藤さん…またまた軽装ですね」

”そう思うなら早くあたしの身体探して欲しいんだけど…”

「えー…」

”体からだ、カラダぷりーず”

「どこか心当たりとかないんですか?」

”あるようなー無いようなー”

「はっきりしてください。探せないじゃないですか」

”とにかく探してよ。お願い”

「は、はい…何とかやってみます…」

”私はこんのを信じてるから”

「はあ、ありがとうございます」


”そうそう、アイスボックス、なかなか気持ちいいね”

「はあ、ありがとうございます」


――――――後藤さん、ずっと好きでした――――――
100 名前:名無しさん  投稿日:2003/10/11(土) 21:24


3話 ――高揚――
101 名前:名無しさん  投稿日:2003/10/11(土) 21:25


昨日までの雷はどこへやら。
カーテンの隙間からから差し込む光はまぶしくて、今日の天気は完璧のようです。

「後藤さん、おはようございます…」

久しぶりのいいお天気に、少し浮かれ気分になりながら、声をかけました。
昨日と違う後藤さん。
にっこり笑って答えてくれました。
後藤さんもいいお天気だと機嫌がいいようです。

ところが、こんな気持ちのいい朝も、部屋に鳴り響く電子音でぶち壊しになりました。
こんな朝早くに電話を掛けてくるなんて、非常識もいいところです。

ディスプレイをみると、マネージャーさんからでした。
嫌な予感というのでしょうか。
電話に黒いもやがかかっているように思えました。
102 名前:名無しさん  投稿日:2003/10/11(土) 21:28


「も、もしもし…」

『もしもし…』


どこか疲れているような声。
無理もありません。
いくら後藤さんがモーニング娘。では無いからといっても、マネージャーさんが何もしないでいるわけはないのですから。

『あのね、今日の仕事はキャンセルになったの…』


ふと、私を覗く視線に気付きました。
誰だかすぐにわかります。
だって、この部屋には二人…正確には一人と一体しかいないんですから。
後藤さんは不安の色を含んだ目でじっと見ていました。
電話の内容が気になるのでしょうか?


『だけど、時間通りに来て頂戴。できればタクシーで…』


奥歯に物がはさまったような言い方。
それ以上聞いても仕方ないことだと思い、わかりましたとだけ言って電話を切りました。
103 名前:名無しさん  投稿日:2003/10/11(土) 21:30


「大丈夫ですよ」

電話を後藤さんの横におきながら言います。
私の言葉に安心したようにニコッと笑う後藤さん。
思わずその笑顔に見とれてしまいます。

でも、そんなことをしているうちにも時間は過ぎていきます。
ふと時計に目をやったときには、もう家を出る時間でした。
朝ご飯を食べる暇もなく、急いで着替えを済ませ、後藤さんをアイスボックスに入れます。
新聞紙よりは気に入ってるというのはまんざらでもなさそうです。
昨日のような恨みがましい目をすることなく、後藤さんはアイスボックスへと入りました。


「今日は寄り道しないので、早く帰ってこれると思います」

そう言って蓋を閉めます。
このままテーブルに置いておいてもかまいませんが、やっぱり押入れに入れておくことにしましょう。

「行ってきます」

押入れの前でそう言ってから、部屋を出ました。
104 名前:更新終了 投稿日:2003/10/11(土) 21:31


いいお天気です。
雲もほとんどなくて、太陽が頭の上で輝いています。
いいお天気過ぎて暑すぎるくらいでした。
やっぱり東京の夏は、北海道とは違って暑すぎます。
3回目の東京の夏ですが、やはりこの暑さに慣れるのはまだ無理でした。
どこからか聞こえてくる蝉の鳴き声が余計に暑さを増幅させます。
汗びっしょりになりながら近くの駅まで歩き、そこでタクシーを拾いました。

105 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 21:32
復活オメ!
106 名前:更新終了 投稿日:2003/10/11(土) 21:32
次はいつになるかわかりません
107 名前:更新終了 投稿日:2003/10/11(土) 21:38
>>91
笑ってもらえてうれしいです。マターリお待ちください

>>92
キモ可愛いとは上手い表現ですね。そうなるようにがんばります。

>>93
そう言っていただけるとうれしいです。

>>96
気長にお待ちください。

>>97
見限ってください(w

>>94,98
保全ありがとうございます。

>>105
リアルタイムでありがとうござます。
108 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 23:27
とりあえず復活おめ。
いつになるかわからなくても待ってるよん。
109 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 23:40
復活オメ
ひっそり待ってます
110 名前:tsukise 投稿日:2003/10/14(火) 18:44
ゆっくりお待ちしていますので、
作者さんのペースで頑張ってくださいね。
111 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:16


集合場所に着いたのは、集合時間の10分前でした。
道が少々混んでいたにもかかわらず、ちゃんと時間前につくとは、我ながら完璧です。

いつもと違うのは、正面に大きな人だかりができていたことでした。
まるでベッカムさんでも待っているようなすごい数です。
いくつものマイクがその中からにょきにょきと出ていました。
それを横切って、裏から地下の駐車場に入ります。
マネージャーさんはこのためにタクシーでと言ったんでしょうか。
112 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:17


「おはようございます」

昨日と同じ調子で部屋に入ります。

「おはよう紺野」

中から聞こえたのは飯田さん。
その目は赤く腫れていました。
それは既に楽屋にいるみんなも同じ。
逆に腫れていない私が不自然で、私はそれを隠すように下を向いて部屋の隅へ移動しました。


「おはよう」

隣に座っていた愛ちゃんが声をかけてくれました。
昨日の電話のことが頭によぎります。
どう振舞っていいのかわからず、黙り込んでしまった私。
愛ちゃんはそっと肩を抱いてくれました。


「後藤さんは大丈夫だって」

私を励ましてくれる愛ちゃん。
真っ赤な目をしているのは愛ちゃんの方なのです。
私はコクンと頷くことしかできませんでした。
何か言おうとすると、余計なことまで一緒に言ってしまいそうでした。
113 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:18


私はいつまでこうして知らぬ振りを続けていくのでしょう?
メンバーと一緒に悲しむことをせずに、一人だけ平気な顔でいれるのでしょう?
後藤さんはもう首だけになっています。
首だけになって生きている人なんていません。
後藤さんは死んでいるんです。
でも、後藤さんは私と一緒にいてくれます。
そのことがなにより心強いことでした。
例え死んでいたとしても、私と一緒にいてくれるのであれば、私と話してくれるなら、何も悲しくなんてありませんから。

みんなには悪いですが、やっぱり私は悲しむ振りしかできません。

114 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:19


「みんな揃った?」

扉が開いてマネージャーさんが入ってきました。
今朝の声から想像していた以上にやつれている様子でした。
睡眠をとっていないのでしょうか。
まるで拾ったときの後藤さんのような酷い顔色でした。

「ごっちんは……」

石川さんが尋ねました。
マネージャーさんは黙って首を振ります。
室内に漂っていた雰囲気が更に重くなりました。。
酸素濃度が一気に下がったみたいに、座っているだけで苦しくなります。
何人かのすすり泣く声も聞こえます。
もちろん隣の愛ちゃんも泣いていました。
私はどうすればいいのかわからず、ずっと下を向いていました。
115 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:20


「それでね…今朝、警察の方に連絡したの」

ブルッと身体が震えました。
足元から寒気が湧き上がってくるような感覚。
その後に押し寄せるのは、高揚感でした。
胸が高鳴っていくのがわかります。
隣にいる愛ちゃんに心音が聞こえていないか心配になるほどでした。

「これから、一人一人警察の方に知ってることを話してもらうことになるけど……」

これはチャンスです。
失踪前の後藤さんの足取りがわかれば、身体がどこにあるか絞れることになります。
まだ高鳴る胸を必死に抑え、一つ深呼吸をしました。
116 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/21(火) 22:21


まだ涙が止まらないメンバーが多い中、飯田さんが別の部屋に呼ばれます。
いったいどんな話をしているのでしょうか。
誰が後藤さんの最後の姿を知っているのでしょうか。

自分の心音を聞きながら、じっと飯田さんが出て行った扉を見ていました。
もう1時間くらい経ったでしょうか。
飯田さんは一向に帰ってくる気配はありません。
このペースで行くと15時間かかることになります。
いくらなんでもそれは無茶です。

ところが、ふと時計を見るとまだ5分しか経っていませんでした。
時間が過ぎるのが遅すぎます。
こういう経験はよくあることです。
遠足の前の日に眠れないときは、こんな感じです。
オーディションの時もそうでした。
発表までの時間が永遠に感じられました。


オーディションと言えば、もうずっと昔のように思えます。

後藤さんと会ったときもその時でしたね。
ずっと憧れていた後藤さん。
あいさつをするとニコッと笑ってくれた後藤さん。
よろしくお願いしますと言って握手をした手。
心臓が飛び出しそうになったことを覚えています。

それから2年間。
いつも私の前に立っていた後藤さん。
歌う時、いつも後姿しか見れませんでした。
いつか後藤さんと一緒に歌える日を目指して。
きっと、私ががんばってこれたのはその思いを叶えるためだったかもしれません。。

なのに―――
やっと、一緒に並んで歌えると思ったら―――

すぐに私は元の隅っこに戻りました。
以前と違うのは、後藤さんの姿はもう目の前に無いということでした。


――――――
――――――――――――

117 名前:更新終了 投稿日:2003/10/21(火) 22:22


「…野…紺野…」

急に名前を呼ばれてはっとしました。
目の前に石川さんの顔が映りました。

「次、紺野だよ…大丈夫?」

気付けば、隣の愛ちゃんの姿はありませんでした。
どうやら今は愛ちゃんの番のようです。

「心配しないで。警察の人、いい人だったよ。怖がらなくていいんだよ」

「は、はい」

いつの間にそんなに進んだんでしょうか。
時計の針は11時を指したところです。
もう1時間近く経っていました。
知らない間に収まっていた高揚が再び戻ってきます。

扉が開く音がしました。
愛ちゃんの姿が見えました。
一度、自分の胸をポンと叩いて立ち上がりました。
118 名前:更新終了 投稿日:2003/10/21(火) 22:23
相変わらず展開遅いです。
119 名前:更新終了 投稿日:2003/10/21(火) 22:27
>>108
いつ更新するかもわかりませんがお待ちください。
>>109
ひっそり更新しますのでお待ちください。
>>110
ゆっくりしか書けないのでお待ちください。
120 名前:更新終了 投稿日:2003/10/21(火) 23:33
やっぱりageます。
このスレはage推奨なので、ageレスしても落とさなくていいです。

その方がこちらも早く更新できるようがんばらないといけない気がします。
121 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 20:17
復活していたのですか!気がつきませんでした…。
続きが読めて本当に嬉しいです。
次回紺野が警察にどう対応していくのか楽しみに待ってます
122 名前:tsukise 投稿日:2003/10/27(月) 22:06
更新お疲れ様ですっ!
紺野の微妙な心理が、見ていてたのしかったり(笑
次回の紺野…どんな受け答えをするのか楽しみです。
マターリお待ちしていますね♪
123 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/09(日) 15:44

廊下に一歩踏み出すと、まるで異世界のようでした。
しんと静まり返った空気。
時が止まったようなその空間を歩いていきます。
有機的な雰囲気が全く感じらません。
全てが無機質。
私の存在までもが無機質に思えてきます。

角を右に曲がって突き当たりのドアを開けます。
中には2人の男の人。それにマネージャーさんが座っていました。

二人とも年はお父さんと同じくらい。
長袖のカッターシャツの袖を捲り上げていました。

じっと観察しているとその人と目が合い、思わず目をそらしてしまいました。
何か私の心の中を盗み見ようとするような…
嫌な感じを受けました。
124 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/09(日) 15:45

「座ってください」

促されるままに椅子に腰掛けます。
心臓はもうドキドキしていませんでした。
かわりに嫌な汗が背中をつたいます。
私は自分の足が震えていることに気付きました。

武者震いというやつなんですか?
後藤さんのことがわかるかもしれませんから。
きっとそのせいです。
それ以外に考えられません。

「お名前を言っていただいてよろしいですか?」

事務的な質問です。
こんなことに何の意味があるんでしょうか。
本当に私の名前も知らないのなら、ちょっと世間から取り残されていますよ。
私は超人気アイドルなんですから。

「紺野あさ美です」

そんな思いを全く出さずに答えました。

「はい、結構です。ありがとうございました。
皆さんお忙しいでしょうし、お時間をそんなにいただくわけにもいきません。
単刀直入にお尋ねします。あなたが後藤真希さんを最後に連絡をとったのは何時ですか?」

「一週間ほど前だったと思います」

隣に座っている男の人がすらすらとペンを走らせます。
125 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/09(日) 15:47

「そうですか。ではさっきお聞きしたのですが、あなたは後藤真希さんの携帯電話に連絡を入れたそうですね。
でも、返事がなかった。それは何時ごろの話ですか?」

初めは何のことか全くわかりませんでしたが、ふと昨日の愛ちゃんとの電話が頭に浮かびました。

「き、昨日の朝です…」

「間違いありませんね?」

「は、はい…」

足の震えが一層激しくなりました。
膝の上に載せている両手で必死に押さえますが、全く効果はありませんでした。
心臓の音も大きくなっていきます。
速度は変わらず、一回一回が大きく響いていました。
ドクン、ドクンと身体ごと波打つような音でした。

「実はですね、後藤さんの通話記録を失礼ながら見させていただいたんですが、
あなたに3日前電話をしているという記録が残っているのですが、それについて心当たりはありませんか?」

どっと全身から汗が噴出しました。
私はそんな時間に電話した覚えなんてありません。
何かの間違いに決まっています。
126 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/09(日) 15:47

「あ…あったようにも思います」

曖昧な返事しか出来ませんでした。

「そうですか」

それから後は何を話したかよく覚えていません。
後藤さんが最後に誰と何をしたか聞くことが出来なかったことは確かです。
捜査情報というものなんでしょうか。
質問に答えるだけで、こちらからの質問は許されない状況でした。
たった数分の会話ですが、非常に疲れました。
心臓や体の震えは収まっていましたが、手のひらはまだ汗でびっしょりでした。


――――
――――――
127 名前:更新終了 投稿日:2003/11/09(日) 15:49
今日の仕事は全てキャンセルなので、今日はもう終わりです。
手がかりは得られませんでしたが、後藤さんの身体を捜しに行くことにしましょう。
支度を済ませ、帰ろうとした時、ふと一ついいことを思い出しました。

マネージャーさんです。

私達全員と警察の会話を聞いているはずです。
マネージャーさんに聞けば最後に後藤さんの姿を見た人がわかるはずです。
我ながら頭が冴えています。
荷物を持ってマネージャーさんのところへ行きます。

「あの、後藤さんのことなんですけど、最後に後藤さんと会ったのは誰かわかりますか?」

ストレート過ぎて怪しまれるかと思いましたが、マネージャーさんは特に表情を変えずに教えてくれました。

「会ってたわけじゃないけど、紺野、あなたと電話した後に高橋さんに電話したみたいね」

灯台下暗しとでも言うのでしょうか。
手がかりは一番近くにあったのです。
マネージャーさんにお礼を言うと、愛ちゃんの下へと向かいました。


128 名前:更新終了 投稿日:2003/11/09(日) 15:50
展開も更新も何もかも遅いです。
129 名前:更新終了 投稿日:2003/11/09(日) 15:53
>>121
またいつ止まるかわかりませんが完結はさせるつもりです。

>>122
心理描写のせいで展開遅いと気付きましたが、気にせずこのままいきます。

130 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/16(日) 13:23
更新お疲れさまです。
気が向いたときにふらりと来て楽しく読ませていただいております。
今回もたまたま更新されており、嬉しいかぎりです。
マイペースで更新なさってください。
次回もふらりと来てみます。
131 名前:tsukise 投稿日:2003/11/16(日) 20:16
更新お疲れ様です。
少しでも更新されているだけで嬉しいものですっ。
ゆっくりとお待ちしていますので、作者様のペースで
頑張ってくださいね。
132 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/22(土) 16:27
ミステリー風味になってきましたね。
先が読めません。
マターリ待ってますので、マターリ頑張ってください。
133 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 00:25


部屋にはまだ何人か残っていました。
愛ちゃんは麻琴と里沙ちゃんと3人で一緒に何か話していました。

「愛ちゃん、ちょっといいかな」

愛ちゃんは私の顔を見た後、麻琴と里沙ちゃんの顔を見ます。
何か言われたらどうしようかと思いましたが、「ごめんね」と言って輪から外れてくれました。
そのまま二人で廊下にでます。

「何?」

「あのさ…後藤さんと電話したんでしょ?」

「何時?」

「いなくなる一日前」

愛ちゃんの表情に影が見えます。
一瞬だけでしたが、私から目をそらしたのもわかりました。
畳み掛けるように私は質問を続けました。
134 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 00:26


「どんなこと話したの?後藤さんはどこか行くっていってなかった?」

「何も言ってない。元気してる?って聞いてきただけ」

嘘です。
どうして本当のことを教えてくれないの?
愛ちゃんは私の目を見ようとはしませんでした。

「それだけ?なら戻るよ」

逃げるようにノブに手をかけます。
「どうして嘘つくの?」とは言えませんでした。
全身から私を拒否しているのがわかります。
なぜでしょう…わかりません。

「あさ美ちゃん、変だよ。後藤さん心配なのはわかるけどさ…」

「それは愛ちゃんでしょ」とも言えませんでした。

「戻るね」

愛ちゃんは部屋に戻っていきます。
呼び止めたい気持ちがありましたが、余りしつこくして変に思われるのも嫌です。
私は部屋に戻らずに帰ることにします。
これ以上手がかりが得られないのなら、ここにいても仕方ありません。
後藤さんの行きそうな場所を探していくしかありません。
135 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 00:27


出て行こうとすると、ガラス張りの入り口の向こうに、人だかりが出来ているのが見えました。
来るときに見た人たちでしょう。
私の姿に気付いたのか、一斉にフラッシュがたかれます。
あの人だかりは私達のための人だかりだったんですね。
距離はかなりありましたが、フラッシュの雨は容赦なく私に浴びせられます。
どうしようか迷っている私の腕を引っ張ったのは、マネージャーさんでした。

「地下から帰って。車は待たせてあるから。それと、今回のことは今朝、マスコミには知られてるの。
何か聞かれても答えちゃ駄目よ。いい?まだ後藤は死んだわけじゃないんだからね」

「死んだ」という言葉を今日初めて聞いた気がします。
誰もが口に出すまいと決めている言葉です。
だけど、こんなあっさりマネージャーさんの口から漏れるとは思ってませんでした。

「はい。わかりました」

私はそれだけ言って、下に下りていきました。
地下の駐車場の一番奥に止めてある車に乗ります。
私が乗ると、すぐに車は動き始めます。
136 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 00:28


出て行こうとすると、ガラス張りの入り口の向こうに、人だかりが出来ているのが見えました。
来るときに見た人たちでしょう。
私の姿に気付いたのか、一斉にフラッシュがたかれます。
あの人だかりは私達のための人だかりだったんですね。
距離はかなりありましたが、フラッシュの雨は容赦なく私に浴びせられます。
どうしようか迷っている私の腕を引っ張ったのは、マネージャーさんでした。

「地下から帰って。車は待たせてあるから。それと、今回のことは今朝、マスコミには知られてるの。
何か聞かれても答えちゃ駄目よ。いい?まだ後藤は死んだわけじゃないんだからね」

「死んだ」という言葉を今日初めて聞いた気がします。
誰もが口に出すまいと決めている言葉です。
だけど、こんなあっさりマネージャーさんの口から漏れるとは思ってませんでした。

「はい。わかりました」

私はそれだけ言って、下に下りていきました。
地下の駐車場の一番奥に止めてある車に乗ります。
私が乗ると、すぐに車は動き始めました。
137 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 00:29

車の中で私は考え始めました。
後藤さんの身体はどこにあるのでしょうか?
後藤さんの訪れそうな場所といって思い当たるのは、どれもにぎやかなところばかりです。
まさか、109の中に死体があるとも考えられませんので、もっと人気のない場所でしょう。
だけど、思いつく場所はありません。

当てもなく探すには東京という町は広すぎます。
でも、探さないわけにはいきません。
後藤さんが私のところに来てから3日目です。
そろそろ身体の方は腐っているかもしれません。
私の頭の中には、昔やったアクションゲームに出てくるゾンビの姿がよぎりました。
慌ててそれを消します。
後藤さんのそんな姿なんて、想像したくもありません。
138 名前:更新終了 投稿日:2003/12/03(水) 00:29

ずっと歩き回って帰る頃にはもうお日様は西に傾いていました。
足が棒になりそうでした。
それに、真夏の太陽が何時間も容赦なく私に降り注いでいたのです。
喉もからからでしたが、それよりも後藤さんの身体が見つからなかったことの方が私に重くのしかかっていました。
手がかりくらいは見つかると思っていました。
もしかしたら身体を持って帰ってこれるかもしれないと期待していました。

でも、私の両手には何もありません。
後藤さんにどんな顔をして会えばいいのでしょう……

「ただいま」

手を掛けたドアは重く、私は泥棒にでも入るかのように、ドキドキしながら部屋に入っていきました。

139 名前:更新終了 投稿日:2003/12/03(水) 00:33
投稿ミスしてしまいました。すいません。>>136は飛ばしてください。
次は、今年中に一回更新したいです
140 名前:更新終了 投稿日:2003/12/03(水) 00:38
>>130
ふらりと更新してみました。次もふらりと更新します

>>131
本当に少しだけで申し訳ないです。次こそは多く更新するかもしれません。

>>132
ミステリーなんて大そうなものではないです。マターリがんばっていきます。
141 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 22:48
すっげー気になって仕方ないところで切れてるんだもんな…
でもマターリ待ってますyo
142 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/23(火) 23:15

「ただいま」

中に入ってからもう一度言いました。
返事はありません。
誰もいないんですから当然です。
後藤さんは押入れの中ですから。

私はびくびくしながら押入れを開け、中からアイスボックスを取り出します。
テーブルの上に置き、ゆっくりと蓋を開けました。


「あれ…後藤さん?」

アイスボックスの中で、後藤さんは気持ちよさそうに寝ていました
綺麗な横顔に見とれちゃいましたが、なんだか腹が立ってきました。
私がこんなに真剣に悩んで、探してるのに、後藤さんはその間お休みなんですか。

「後藤さん!」

耳元で大声を出しました。
後藤さんの目がパチリと開きます。
何が起こっているのかわからないといった表情で、後藤さんは私を見ます。
そのきょとんとした表情を見ると、怒る気も失せてきました。
143 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/23(火) 23:16


「もういいです」

そう言って立ち上がると、後藤さんは逆に不安そうな顔で私を見上げます。

「怒ってませんよ」

本当?と私の顔をじっと覗き込む後藤さん。
その仕草がかわいすぎて思わずキスをしてしまいそうでした。




「キス…してもいいですか?」

トクンと胸が一度なりました。
後藤さんは私の顔をじっと見たままでした。
後藤さんを両手ですくうように持ち上げます。
髪のふわっとした感触を両手に感じます。

「…いいですよね」

後藤さんは尚も表情を変えません。
ゴクンと一つ息を呑んで、私は目を閉じました。
144 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/23(火) 23:17

だけど、またしてもそれを妨げたのは携帯電話でした。
慌てて後藤さんをテーブルの上において、携帯を手に取ります。
ディスプレイに映ったのは愛ちゃんの名前でした。


「も、もしもし…」

『もしもし…あさ美ちゃん…』


愛ちゃんから電話を掛けてきたのに、愛ちゃんは黙ってしまいました。

145 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/23(火) 23:17


「何?どうしたの?」

『いや…ごめん…何でもない』

「そ、そう。あのさ…今日は変なこと聞いてごめん」

『うん、いいよ。あさ美ちゃんが…後藤さんが心配なのはわかってるから』


最後は消え入りそうな声でした。
そこで電話が切れます。
掛け直そうかと思いましたが、止めておきました。
愛ちゃんの様子は明らかに変でした。
それが心配でないと言えば嘘になります。
それに、もし何かあるなら向こうから再度掛けてくるはずです。
でも何より、愛ちゃんと話していると、何か変なことを口走ってしまいそうで怖いのです。

携帯をテーブルの上に置き、5分待ってみました。
電話がなることはありませんでした。
ふと見ると、テーブルの上の後藤さんは、再び眠ってしまわれたようです。
そっとアイスボックスに戻しました。
146 名前:更新終了 投稿日:2003/12/23(火) 23:19


「おやすみなさい、後藤さん」

なるべく揺らさないように押入れに戻し、私はお風呂に入りました。
重かった身体が一気に軽くなった気がします。
たぶん明日は筋肉痛になるんでしょうか。
早くも明日からの仕事はいつもどおりに組まれています。
いくら私達が超一流アイドルだからといっても、そこまでするのはどうかと思います。
気持ちの整理のついていないメンバーがいることは、今日、よくわかりました。
みんな、パンパンに膨らんだ風船のようなものです。
ちょっとの刺激ですぐに破裂してしまいます。
その空気を抜く時間さえも、私達には与えられないのです。

お風呂から上がり、そのままベッドに直行します。
晩御飯を食べていない気がしましたが、どうでもよくなりました。
食が進みませんし、なにより身体が休息を求めています。
ベッドに倒れこむと同時に強烈な睡魔が襲ってきました。
147 名前:更新終了 投稿日:2003/12/23(火) 23:20
2話 ――高揚――  終わり
148 名前:更新終了 投稿日:2003/12/23(火) 23:21
もうすぐ終わるかもしれません
149 名前:更新終了 投稿日:2003/12/23(火) 23:22
>>147 2話じゃなくて3話の間違いです。

>>141 今度は切りのいいところで切ってみました。
150 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/24(水) 19:56
更新乙です。
なんだか高橋…気になるなぁ。

>もうすぐ終わるかもしれません

…そんなっ!(w

151 名前:130 投稿日:2003/12/31(水) 02:18
お疲れ様です。
今年も終わりですね。
更新は来年に持ち越しのようですが、お正月はのんびり過ごして
くださいね。
またふらりと来てみます。
152 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/18(日) 01:10


”こんのー…こーんの”

「後藤さん…」

”駄目だったねー”

「何のことですか?」

”もう体、戻らないよ”

「どういうことですか?」

”もう、一緒にいれないよ”

「ちゃんと説明してください!」

”ありがとう。こんの”

「後藤さん……」


――――――後藤さん、どうして、私を選んでくれないんですか――――――

153 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/18(日) 01:12
四話 ――別離――
154 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/18(日) 01:13

「後藤さん!」

私の声が部屋に響きました。
そこは、私の部屋。
白い天井が目に映りました。

後藤さんは?

さっきの夢が気になります。
急いで押入れを開けて、アイスボックスを取り出しました。
中にいたのはいつもと変わらない後藤さん。
眠そうな目で私の方を見ます。

155 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/18(日) 01:13


「何でもありません。ごめんなさい」


後藤さんをテーブルに移し、時計を見ます。
まだ6時を指したところでした。
昨日動き回ったせいか、体があちこち痛いです。
ダンスで使う筋肉と、歩き回るのに使う筋肉は違うんでしょうか。

もう一度寝るには中途半端な時間です。
ボーっとTVを付けてみました。
いきなり、画面には後藤真希という文字が映し出されます。
これは、横浜アリーナの映像でしょうか。
後藤さんがモーニング娘。だったころの映像です。
その後には、私達の映像が流れます。

いつの間に録ったんでしょうか。
飯田さんがフラッシュの雨の中に映っていました。
きっと私が帰った後でしょう。
涙をこらえているのが表情からわかります。
飯田さんが何か言う前に、私はTVを消しました。
見ていたくありませんでした。
私があの場に立ったなら何て言えるんだろう、と考えます。
泣いてしまうんでしょうか。
それとも、やっぱり泣けないんでしょうか。
後藤さんが見つかることを願ってますとか。
後藤さんは生きてるはずですとか。
そんな嘘を並べ立てるんでしょうか。

後藤さんはここにいるんです。
私のところに。
首だけですが、確かに後藤さんなんです。
156 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/18(日) 01:13
後藤さんが申し訳なさそうに、私を見ていることに気付きます。
私は無理に笑顔を作りました。

「後藤さんのせいじゃないですよ」

複雑な表情の後藤さんの頭をそっと撫でます。
まるで私がお姉さんみたいです。
後藤さんは、子ども扱いしないでと言いたげな表情をします。
私が後藤さんに頭を撫でられたことは二度あります。
一度目はミュージカルの後だったでしょうか。
「がんばったね」って頭を撫でてくれました。

二度目は卒業の時。
楽屋で泣き止まない私の頭をそっと撫でてくれました。
「紺野はもうできる子だよ。私がいなくっても…大丈夫だから」

そんなことはありません。
私はもう、後藤さんが好きだったんですから。
後藤さん無しでは何もできません。
後藤さんがいるから何でもついてこれたんです。
157 名前:更新終了 投稿日:2004/01/18(日) 01:14

それなのに…

視界がぼやけて、後藤さんの表情がよく見えません。
きっと困った顔をしているんでしょう。
頭を撫でた後にそっと抱きしめてくれたあの時のように。

電話が鳴りました。
いつもそうです。
狙ったかのように電話が鳴ります。

こんな早い時間に、非常識です。
ディスプレイはマネージャ−さんからの電話だと告げています。

「もしもし…」

『……』


気付けば私はタクシーに乗り込んでいました。

「急いでください!」

そう連呼している自分を他人のように見ている自分がいました。
158 名前:更新終了 投稿日:2004/01/18(日) 01:16
あけましておめでとうございます(遅
あと2回くらいで終わりそうです。

>>150
大して長くない話なのに書くの遅くて申し訳

>>151
のんびりしすぎて更新遅くなりました。次こそはなんとかがんばってみます。
159 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/18(日) 07:31
158がなぜかあぼーん
160 名前:130→151 投稿日:2004/01/18(日) 12:23
こんにちは。
更新お疲れさまです。あと二回ですか・・・。さみしいですね。
またのんびりと更新してくださいね。
161 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:25
>>160
急遽今回で完結にいたします。最後にのんびり出来なくてすいません。


それでは最終更新、いきます。
162 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:26
フロントガラスに雨が当たり始めました。
空は真っ黒です。
一気に雨足は強くなり、派手な音がガラス越しに聞こえます。

雨にもかかわらず、建物の前には昨日と変わらない人だかりがありました。
地下の駐車場へと車は入っていきます。

「お釣りはいいですから」

そう言って一万円札を一枚渡すと、車が止まると同時に飛び出しました。

163 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:26


『後藤がみつかったんだ……』


エレベーターは3階を指していました。
迷わず階段を探します。


『その……落ち着いて聞いて欲しいんだけど……』


一段飛ばしで駆け上がります。
靴の音が薄暗い非常階段に響き渡ります。
2階、3階、4階。
心臓は激しく高鳴っています。
痺れてきた足を懸命に動かして、私は5階につきました。

164 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:27


『体だけなんだ……その、あのね……』


扉を開けます。
部屋にいたのはマネージャーさんと飯田さん。
安倍さんと矢口さんは顔を伏せていました。


『死んだんだ……後藤は……』


165 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:27

「紺野……」

「後藤さんは、後藤さんはどこですか!」

「ちょっと落ち着いて」

「後藤さんは、後藤さんの体はどこにあるんですか!」

「紺野!」

マネージャーさんを掴む私の手を、飯田さんが握りました。
その手は振るえていました

「後藤は……警察のところ…まだ……は見つかってないし…」

半分聞き取ることが出来ませんでした。
飯田さんはわっと泣き出しました。
部屋は沈黙が流れ、泣き声だけが聞こえてきます。
どうしていいかわからず、私はぼーっと椅子に座りました。
166 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:28

今朝の夢はこのことだったんでしょう。
後藤さんの体はもうない。
きっと、警察で解剖されていろいろ調べられるんでしょう。

後藤さん、ごめんなさい。

後悔と自責が次々と襲ってきます。
もう、何も聞こえてきませんでした。
何も見えていませんでした。
気付けば隣に愛ちゃんがいます。
奥では藤本さんと石川さんが顔を伏せていて。
その隣で吉澤さんが、焦点の定まらない目で天井を見上げていました。
167 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:28

「みんな、聞いて…」

マネージャーさんの言葉に誰一人反応しませんでした。
啜り泣きしか聞こえないこの部屋は、まるで牢屋のよう。
後藤さんという鍵を失ったこの牢は、開くことがないのでしょうか。

「警察には、今日は駄目ってお願いしてます。辛いと思うけど、明日、昨日みたいに警察の人にお話してもらいます」

変わらない重い空気が部屋を包みます。
まるで圧力がかかっているように、空気が体にのしかかってきます。
それでも、私はまだ泣いていませんでした。
泣けませんでした。

それからどうやって解散したのか覚えてません。
脳が麻痺したように、ぼーっとしていました。
後藤さんのことばかり頭に流れてきて。
雨がまだ降っていたことは、部屋に入って、自分の服が濡れていたことからわかりました。

後藤さんはテーブルの上に出しっぱなしでした。
168 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:29

どうしたの?

まるで何事も無かったかのような後藤さん。

「ごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい!」

私は謝りました。
ただただ謝りました。
もう、私にできることはこれだけです。
後藤さんは何が起こったかわからない顔をしています。
それでも、私は謝り続けました。
後藤さんとの約束を守れなかった私。
後藤さんは、ずっと私といてくれるっていう約束を守ってくれています。
それなのに…
169 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:29



あれ?

私はどこでそんな約束をしたんでしょうか?

ずっと一緒にいるから。

後藤さんは私にそう言いました。

あれはいつのことですか?

その時、また、携帯がなりました。
また、私の思考は中断されます。
170 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:30

「もしもし…」

『……』


ディスプレイの表示は愛ちゃんです。
それでも、愛ちゃんは何も言ってくれません。


「もしもし、もしもし」

『あさ美ちゃん…後藤さんのことなんだけど…』


愛ちゃんの口から出る後藤さんという言葉は、私をいつも緊張させます。


『紺野、最近何かあったの?』

「え?」

『それが後藤さんからの電話だった…』

「何が言いたいの?」

『後藤さん、失踪する前の日、あさ美ちゃんに会いにいったんだ』

「……」


背中がじっとり濡れていました。
クーラーの風がいやに冷たく感じます。
171 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:30


『あさ美ちゃんじゃないよね?』

「……何が?」

『ごめん、忘れて』


心臓がどんどん高鳴ります。
電話越しに聞こえるんじゃないかと心配になるほどでした。


『もう……切るね』

「……」

『おやすみ』

プチッと電話は切れました。
何がなんだかわかりません。
でも、何かがつながろうとしています。
霧の中に見えていた明かりが、より大きくなって。
そこへ行く道がぼんやりと見えてきています。
172 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:31

「後藤さん、私、どうしたんですか?」

問いかけても、答えはありません。
後藤さんは笑っているだけです。

「真面目に考えてください!」

大声を出しても同じです。
後藤さんは笑っているだけです。

「ごめんなさい…後藤さんのせいじゃないですよね」

ふぅっとため息をつきます。
体が自然と震えていました。
173 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:31



――――――キスしていいですか?――――――



後藤さんはにっこり笑ってくれました。
私はそっと後藤さんの耳に手をかけました。

10cm、5cm、4cm

後藤さんの顔に当たった息が、私の髪をふわっと持ち上げます。
174 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:31

3cm、2cm

今度は携帯も鳴りませんでした。

1cm……

冷たい、だけど暖かい感触が口に広がります。
たった数秒のキスでした。
だけど、私の初めてのキスでした。
そして、私にかけられた魔法を解く、王子様のキスでした。


―――――――――――――――――――
―――――――――――
―――――
175 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:32

ガタン

押入れの中で何かが落ちる音がしました。
後藤さんを置き、私は押入れを開けます。

そこにあったのは、黒い糸と、茶色の錆がこびりついたノコギリでした。
黒い糸、それは糸なんかではありませんでした。

私の中で何かが音を立てて崩れていきます。
176 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:32

「紺野…」

「後藤さん、好きです」

「こ、ん……の……」

「後藤さん、ずっと好きでした」

「こ……」

「後藤さん、どうして、私を選んでくれないんですか」

私の手から滑り落ちる後藤さんの手。
手に持った紐を落とす私。
まるで映画のように頭の中に流れていきます。
177 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:33

次に私が袋から出したのはノコギリでした。
そして、次のシーンでは後藤さんは首だけになっていました。
後藤さんは、私に言ってくれました。
これからはずっと一緒にいるから、と。

にっこり笑って、後藤さんの首を持って歩いていく私。

もう十分です。
もう…
もう…わかりました。
178 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:33

「後藤さん」

首を持ち上げます。
でも、後藤さんはもう、笑いかけてくれませんでした。

「後藤さん」

再度呼びかけても答えはありません。
私にかけられた魔法は解けてしまったのです。
ここにいるのは、ただの死体です。
話しかけても答えてくれません。

涙が一気に溢れてきました。
後藤さんはもうこの世にはいないのです。
もう私と一緒にいてくれないのです。
そして、そうしたのは私なのです。


私が後藤さんを殺したんです。

179 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:33
部屋が一度光りました。
雨の勢いは更に増し、ゴロゴロという音が聞こえてきます。

私は後藤さんと共に、部屋を飛び出しました。
外はもう真っ暗で、時折光る雷が、空を照らしていました。

私は走りました。
捕まるのが怖かったんです。
すれ違う人がみんな、私を見ているように思えます。
後藤さんはアイスボックスに入れていますので、見えるわけありません。
それでも、それでもみんな私を見ていたに違いありません。

バシャバシャと派手な音を立て、水溜りを突っ切ります。
靴はもうびしょびしょ。
靴だけではありません。前も見えないくらいの雨の中、傘もささずに走っているのです。
髪が顔にべっとり張り付きます。
ズボンが足に絡みつきます。
それでも私は走りました。

行き先なんてありません。
ただ、逃げていました。
180 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:34
不意に転びました。
今更ながら体が濡れる感触と、膝に鋭い痛みが走ります。
アイスボックスはその拍子に私の手をすり抜けて、水溜りの上を滑っていきました。
慌てて立ち上がり、後藤さんのもとへ行きます。

ここは、いつかに見た川でした。
小さな川ですが、雨で水かさが増しています。
街灯の光に照らされて見えるそれは、地獄へと誘う漆黒の扉でした。

ピカッと空が光ると共に、轟音が響き渡りました。
雨は一層激しく、私を濡らしていきます。
181 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:35

「後藤さん……」

アイスボックスをその場に下ろし、後藤さんを取り出します。
髪の毛はすぐに雨で濡れ、後藤さんの顔に張り付いていきます。

「ずっと一緒にいてくれますよね」

再度光が走りました。
後藤さんは頷いてくれました。

私はもう一度キスしました。

今度は長い、長いキス。
冷たい後藤さんの唇は、死の臭いがしました。
まるで私の魂が吸い取られていくようい思えます。
それでも、私は唇を離しませんでした。

「ずっと一緒ですよ。ずっと……」

私は片手で後藤さんを抱きながら、手摺の上に立ちました。
182 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:35




―――――後藤さん、愛してます―――――




183 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:35
キスした人 FIN
184 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:38
ありがとうございました。一応、これで完結です。
更新遅い中、読んでいただいた方、ありがとうございました。
放置せずに完結できたのは、一重に皆様のレスのおかげでございます。
できれば、最後に一言感想をいただけると幸いです。

185 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:39
 
186 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/22(木) 00:39
>>162-183 最終更新です。
187 名前:tsukise 投稿日:2004/01/22(木) 07:54
脱稿お疲れ様ですっ。
なんとなく…そんな感じはしていましたが…(涙
切ないキモチになってしまったり…。
でも、最後まで惹き込まれて読んでて、ドキドキしましたです。
本当にお疲れ様でしたっ
188 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 15:35
完結おめでとうございます。
毎回更新を楽しみにしてました。
甘々なこんごま……堪能させてもらいました。ありがとうございます。
189 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/01/22(木) 16:25
最初から最後まで後藤さんが可愛くて、紺野さんがいじらしかった。
素敵作品でした。
色々言いたいけど、ネタバレになるからこれにて御免。
190 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 21:35
面白かったです。
ラストもなんとなく泣けました(w
次回作も(ありましたら)楽しみにしてます。
191 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 23:47
ずっと犯人は◎◎だと思ってました。最初の最初から伏線が敷いてあって、
作者のサービス精神に頭が下がります。とても面白かったです。こういうの
また読みたいです。ゆったりとしたペースなのも却ってよかったです。

もし他に何かかかれていたら、是非おしえてください。
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/23(金) 01:55
完結お疲れさまでした、最初からずっとチェックしてました。
だからFIN の字をみて嬉しいのと悲しいのが半々です。
それくらい好きな作品でした。

一言感想というか、すこし気になったこと
もしかして、こういったオチであるならば書き下ろして
一気に投稿の方が作品としてインパクトが強まって
より鮮烈な印象になるのではと思いました。(ここは>>191さんと逆の意見です)
もちろん、作者様の執筆のスタイルもあるので余り無理は言えませんし
今から読む読者様には別段関係のない話ですが。

長々と申し訳在りませんでした。
もし次回作が在るのならば楽しみに待たさせて頂きます。
193 名前:130→151→160 投稿日:2004/01/23(金) 19:34
お疲れさまでした。
私、紺ヲタなのですが、紺野に単独でドラマか映画の主演をやってもらうとすれば、
この物語のような役を密かに希望していました。
紺野のある種狂気に満ちた愛情。その対象になるべき人、それが後藤真希であると
僕は思っていました。それは「Do it now」で紺野の夢が叶った瞬間から抱き続け
ていました。そう、あれは2002年のフジの27時間テレビ。忘れもしません。

ほんのひとときですが、大変楽しませていただきました。
ありがとうございました。
194 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 23:17
>>187
ありがとうございます。
tsukise様の書かれるこんごまとは、正反対の暗い内容で…
こういった一途な紺野もありかなと思って書きました。

>>188
ありがとうございます。
甘々とは程遠くなってしまいました。
二人だけの時はまだ甘いんですが(w

>>189
お気遣いありがとうございます。
一言も発していない後藤さんですが、そう思っていただけるとうれしいです。

>>190
ありがとうございます。
次のレスでカミングアウトします。あと、このスレの続きにもお話は書く予定です。

>>191
ありがとうございます。◎◎がすごい気になってます。
カミングアウトは次のレスでします。

>>192
ありがとうございます。
アドバイス頂いた点はおっしゃるとおりです。私もそう思いました。
ただ、このスレの事情と、私がストックなしで書く人間ですので、それは少し難しいです。

>>193
ありがとうございます。
こういった後藤と紺野の関係は、結構好きだったりします。
こういった機会で無いとかけないので、書けてよかったです。
そして、そう思ってらっしゃる方がいて、よかったです。
195 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 23:25
最後にカミングアウトしておきます。
このスレは初めは名無しさんが書かれていました。
しかし、その方から、私に続きを書いて欲しいと依頼を受け、99からは私が書いています。
作者さんが、続けられなくなった理由は95あたりです。
ラストシーンは教えていただいたので、間を保管する形で私が書いています。

ちなみに、私は赤板でレッドタイズというものを書いているものです。
どうもありがとうございました。

このスレは、容量がまだありますので、続きで別のお話を書いていくつもりです。
196 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 23:27
次作を書くまで落としておいてください。
197 名前:191 投稿日:2004/02/11(水) 03:42
犯人は(メール欄)だと思ってました。
最初の作者さんの正体も知りたい……。

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