恋愛ってなあに?
- 1 名前:松竹藤 投稿日:2003年08月31日(日)11時32分38秒
- 銀板でやっていましたが、スレッドがいっぱいになってしまったので、こちらに移りました。
変なところで切ってしまって、本当に申し訳ないです。
前スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/silver/1057153695/289-
続きから始めます…。
- 2 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時35分36秒
- 「とりあえず……そろそろいいかげん、止める?」
「いや……もうちょっとだけ」
「…ふぅん。ごっちんがいいなら、いいけど」
2人が見やる先は、同じだけど別々で。
それぞれ、自分に好意を持ってくれている女の子に。
そうしてしばらく眺めていたら、いきなり1年のお嬢さん2人が、手を繋いでやってくる。
- 3 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時36分09秒
- 「何? 喧嘩はやめたの?」
亜弥と亜依の2人に訊ねたつもりなんだけど、美貴の質問は、亜依が返す前に亜弥が答える事になっている。
「くだらない喧嘩をしても意味ないことに気付いたの、あたし達」
「へぇ」
「好きな人が一番可愛く見えるのは当たり前だもんね」
「そーそー。ナンバーワンは人によって違うからな」
「そんなの、もっと早く気付きなよ…」
そんなことすら、突っ込まないといけないのか。
美貴は、本当に疲れてくる。
「それよりですね」
ビシッと亜弥が、指を立てて。
どうやら、提案があるみたいだ。
- 4 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時36分41秒
- 「これから、あいぼんの初恋のお祝いに、カラオケでも行こうかってことなんですが、いかがでしょうか、先輩たち」
「え。あいぼん初恋だったの?」
「そーいやぁ、全然聞いた事なかったね」
「まあ……遅まきながらってことで……」
頭掻いて、照れ笑い。
その笑顔の可愛さに、先輩2人の頬は緩む。
「あたしみたいに、初恋は実らせなきゃダメだよ、あいぼん! 迷信なんか信じちゃダメだからね!」
「う、うん。頑張る!」
「って……いつ亜弥ちゃんの初恋実ったのさ、初耳だよ」
「まぁたまたぁ、みきたんはぁ。ほんと照れ屋なんだから」
「ハッ、ハァ…?」
バシバシと腕を叩くのはいいけれど、痛い。
「…先輩、顔、赤いです」
「ば、ちが!!」
「ほらぁ! やっぱり照れてるぅ!!!」
「違う違う違う違うぅ!!!!!」
素直じゃないんだからみきたんはぁ、と亜弥はすっごく楽しそう。
- 5 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時37分25秒
「……やっぱり、恋愛っていいなぁ」
3人で遊びに行った帰り、亜弥と美貴の後ろ姿を見て感じた事。
その時と同じ事を、また思う。
でも前と今違うのは、亜依の横に真希がいること。
- 6 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時37分57秒
- 「…真希ちゃん」
「んぁ?」
「うちは、もっともっと、亜弥ちゃんやよっすぃーよりもっと、真希ちゃんを楽しくさせるから」
「……うん」
「だから…」
「ん?」
「好きになったら、好きって、はっきり言ってな。
あいぼんとおんなじ“好き”になったよって、言ってな」
「…あいぼん…」
泣かせたりしない。
寂しさを感じさせたりしない。
独りになんか、絶対にさせない。
「うちは、いつでも真希ちゃんの告白受け入れ体勢、整ってるから!」
身体は小さいけど、その小さな身体全部で、受け止めるから。
いつまでも待ってる。
- 7 名前:―レモンよりすっぱくて、チョコより甘い― 投稿日:2003年08月31日(日)11時38分29秒
1年生2人の恋愛は、まだまだ、始まったばかりだ。
- 8 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2003年08月31日(日)11時39分04秒
- 9 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2003年08月31日(日)11時39分35秒
- 10 名前:恋愛ってなあに? 投稿日:2003年08月31日(日)11時40分06秒
( ‘д‘)<終わりやで
- 11 名前:松竹藤 投稿日:2003年08月31日(日)11時50分32秒
- 本当に申し訳ないです。
またしても、ラストで区切ってしまいました。
ごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・
ちゃんと、今度は、いつになるかわかりませんが、サイズ内に収まるように、
森板らしく短編を載せたいな…と。
ネタ募集中です…。
更新しました。そして、終わりました。有難うございました。
- 12 名前:松竹藤 投稿日:2003年08月31日(日)11時51分02秒
- 前スレのレス返しです。
>506さん
楽しみにしてくださっていて、本当に有難うございました。
506さんの希望通り…なっていたでしょうか…心配です。
>ほわさん
残り少しな話を、分けてしまって本当にすいませんでした。
余裕で収まると思っていたのに、あれよこれよと足してたらスレッドサイズを越してしまいました…。
あいぼんさんと後藤さんのラスト、いかがだったでしょう。
次の話のネタ、ください・゚・(ノД`)・゚・
>334さん
よしごまの2人は以前好きだった組み合わせなんです。
だからこそ仲良くしてほしいし、笑い合ってて欲しいなぁと。
そこにあいぼんさんもいれて、もっと笑顔を出せたらな、と。
よっすぃー、ありがとう>メル欄
>344さん
こんな話に泣いてくれて、ありがとうございます。
344さんの応援に応えれるように、頑張ったつもりです。
どうぞ。
- 13 名前:松竹藤 投稿日:2003年08月31日(日)11時53分22秒
- 今回更新分
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/silver/1057153695/510-
>>2-7
- 14 名前:344 投稿日:2003年08月31日(日)12時45分29秒
- ハッピーエンド! きれいな花火が上がりました!
亜弥美貴も真希亜依も桃色に輝いてます!
みんな幸せそうです!!!
今度は、もう一度亜弥美貴やってくださいよ!
期待しております。
そうですね・・・今度は学校ではなく、OLで二人が登場ってのはどうでしょう?
いや、自分の勝手な意見ですので、もし参考になれば(ならないか?)参考にしていただきたいです。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)17時50分27秒
- お疲れ様でした。
ごまっとう+あいぼんでカラオケ。なんか新鮮かも。
無事インタビューできたのかな?
次回作も楽しみです。
このスレでの短編でもよいけどできれば長編で。(^-^)
>>14
OL。いいですね。ちょっと大人なみきあやいいかも。
- 16 名前:JOJO 投稿日:2003年08月31日(日)18時19分56秒
- とてもよかったです!!
ひと夏の思い出にはもったいないぐらい楽しめた作品でした
作者さんの中で次回作の構想が組みあがってくれると信じたいと思います
これを一週間分の妄想ネタ(なんか不謹慎)にすごしていきたいです
マジで戻ってきてくださいね!!
- 17 名前:つみ 投稿日:2003年08月31日(日)18時43分37秒
- 一瞬銀板でおどろきましたよ・・・
あいぼんの最後のほうのセリフは胸にきますね〜^^
- 18 名前:334 投稿日:2003年08月31日(日)19時47分18秒
- 纏めるの巧いなー。
紺野さんのパートもすっきり終わってるし。
つーか、あいぼんさんに身に何が!?まさか命よりも大事な前髪を(ry
(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
あいぼんさんと松浦さんの間柄も『No.1――ナンバー☆ワン』の頃よりも熱くなってるし。
読み終わってホント恋愛っていいなーと思えました。
でも今回は恋愛だけでなく、友情の面にも大きな物を感じました。
今回は主人公一点の気持ちだけでなく、そこを中心にそれぞれの人物のストーリーが見れて、とても面白かったです。
またいつか作者さんの小説が読める事を心より楽しみ待たせて頂きます。
脱稿お疲れ様でした。
- 19 名前:ほわ 投稿日:2003年09月01日(月)00時09分37秒
- さわやかな終わりかたっす!
あざやかっす!
(・∀・)イイ!!っす!!
あいぼんならきっとうまくいくさぁ〜
大丈夫、きっと大丈夫だ!
そして作者さん、おつかれさまです
ネタの提供はできないですけど、リアル系で短編〜中編とか書いてみてはいかがでしょうか?
1レス〜5レスくらいで終わるようなのとか・・・
結構無茶言ってますかね?
でも俺、作者さんの作る話気にいっちゃったんで次の話を書くことに期待しちゃいますよ?
ではまた会う日まで・・・
- 20 名前:前スレ161 投稿日:2003年09月01日(月)01時43分10秒
- >>10
この一言に感動しました(マテ
個人的にはスレッドサイズに収まりきらなかったことに感謝。
これで作者様の新作がupされる場所がわかったので。
え〜…いつもいつもへんな感想ばかり言ってすみませんでしたw
- 21 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年09月01日(月)14時09分29秒
- 始めまして〜
隠れながらひっそりと読んでいた者です(ぇ
ネタですが・・・ごっちんとあいぼんの恋の続きが読んでみたいなぁーと・・・
では、まったりとお待ちしていますのでゆっくりと頑張ってください〜♪
ではでは〜
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)12時03分55秒
- 完結おめでとうございます!毎回毎回萌えさせて頂きました…。
でも森で続き載せてたの知らなくて結構焦りましたよ(w
ネタとしては…一年経って藤本さんが高校卒業してしまった話とか。
会える機会が減っても松浦さんは自分からいくらでも会いにいくと思うんですけど、
藤本さんが二人の距離が離れた時、どうするんだろう、と思いまして。
松浦さんのことをどう思っているのか。う〜ん、読んでみたい。
あとはネタじゃないんですけど、作者さんの飼育での作品だと松→藤が
目立ってた感じを受けるので藤→松な話を読んでみたいなぁとも思います。
松浦さんをひたすら追いつめる藤本さん。そして必死で逃げる松浦さん。
……つまりはSな藤本さんとMな松浦さんが見たい、ってことなんですけどね…。
そんなでもやっぱ基本は甘々がいいです。
ネタ提供(ていうか自分の妄想)するのが感想より多いっていうのはどうなんでしょう。
あやみきは妄想が色々膨らんでしまう素晴らしいCPですね。
- 23 名前:JOJO 投稿日:2003年09月07日(日)15時56分37秒
- 自分もネタ提供させてください
頭の中で考えていても文字等に起こせないので
やっぱり折角ハワイに行ったのでミキたんとぁゃゃで
ミキたんがハワイに行ってしまう前日あたりから
行ってしまった後のぁゃゃの会えない悲しさ、寂しさ
さらにミキたんの会えない悲しさ、寂しさ
そしてミキたん帰国後の再会…
みたいな感じはどうでしょうか
甘〜い感じで
- 24 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 00:29
-
レスありがとうございます。感謝です。
>344さん
無事桃色に輝かせる事が出来、一安心です。
OL話の提供も、有難うございます。
是非是非、今後何かの参考にさせてもらいたいと思います。
>15さん
最後までお読み下さり、お疲れ様でした&有難うございます。
ごまっとうぼんの4人は、書いてて楽しかったです。カラオケ話も書いてみたいです(w
メール欄でご指摘有難うございました…気付いてませんでした・゚・(ノД`)・゚・
>JOJOさん
有難うございます。
もう1週間以上経ってしまいましたが、大丈夫でしょうか?(w
あやみき小説は面白いのがいっぱいありますよね。
>つみさん
本当にすいません…。突然切れてしまって…。
最後、あいぼんさんに頑張らせてみました。
>334さん
恋愛ってなあに?はかごまに見せかけ実は亜依亜弥(ry
ナンバーワンの時から色んな事にパワーアップ出来て、書いてよかったなと思います。
恋愛も大切ですが、友情も大切です。
あいぼんさんや松浦さんには、これからもどっちにも頑張ってほしいと思います。
- 25 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 00:30
-
>ほわさん
最後までお読み頂きまして有難うございました。
あいぼんさんならきっとうまくいくと、私も思います。
ネタ提供もありがとうございます。
リアル…そういえば中編でリアルって書いた事がないんですよね。
短編は、思いつけばリアルでもアンリアルでも書きたいと思います。
>前スレ161さん
本当にお恥ずかしい事をしたと思ってます…。
スレッドサイズの計算も出来ない頭が嫌になります…。
感想、本当に有難うございました。励みになります。
>ヒトシズクさん
読んで頂いてくれたようで、有難うございます。
あいぼんさんと後藤さんのお話…中途半端に終わってしまって申し訳ないです。
書くとしたら…今度はあいぼんさんの恋を完璧に成就させたげないと(w
- 26 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 00:31
- >22さん
焦らせてしまい、本当に御免なさい。
メル欄には書いてたのですが、やっぱりきちんとお知らせするべきでした…。
そして、探し出してくれて、レスを頂けて、幸せです。
22さんのネタを読んで、作者本人がその話を読みたくなりました(w
本当に、どうするんだろう藤本さん。松浦さんは前以上にアタックするんでしょうが(w
ああ、どうするんだろう。すごく興味があります。
一度ナンバーワンの頃に戻って、藤本さんの気持ちを思い出してみたいと思います。
Sな藤本さんとMな松浦さんも素敵です。
ネタ提供、有難うございます。やっぱりあやみきは素晴らしいです。
>JOJOさん
ハワイネタ、書こうと思って失敗しました・゚・(ノД`)・゚・
JOJOさんのネタを織り交ぜながら、もう一度挑戦してみたいと思います。。
- 27 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 23:25
- 中途半端なアンリアルものを1つ。
また、よければお付き合いください。
- 28 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:27
-
『それじゃあ亜弥、また、お盆にな』
『うん……裕ちゃん、お盆になったらまた絶対に来てや? あたし、ずっとずっと待ってるから!!!』
『うん、もちろん行くよ。亜弥に逢いたいし』
春休み、確かにそう約束した。
なのに、そのお盆になっても、裕ちゃんこと中澤裕子は、家に遊びにやって来ない。
- 29 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:28
- 「ママぁ」
「なんやの?」
「裕ちゃんはまだこーへんの?」
「裕ちゃんって、中澤のとこの裕ちゃん?」
「うん。いっつも、お盆になったら、遊びに来てくれる裕ちゃん」
夕方近く、せっせと洗濯物をたたんでいる母親に、いつまで経ってもやって来ない裕子について訊ねてみる。
心配が杞憂だったらそれでいい……なのに、それは、杞憂どころじゃなくなって。
「あー、その裕ちゃんね。その裕ちゃんやったら、仕事の都合でこっち来られへんようになったって電話で言うてたけど」
「…は?」
「亜弥にまだ言うてなかった? だからお盆は、裕ちゃんこっちこーへんって」
「…………ま、マジで?」
「ホンマやけど」
「……………」
愕然とする娘、亜弥こと松浦亜弥。
その亜弥に洗濯物たたむの手伝ってよ、そう声を母親はかけたのに、見事に無視される。
それどころか、足取りもおぼつかない様子で、部屋を去って行ってしまっちゃって。
「………なんやの、あのコは……」
素朴な母親の疑問は、亜弥には届かなかった。
- 30 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:28
- ずっと楽しみにしていた、お盆。
楽しみ、なんて言ったら怒る人はいっぱいいる日だけれど、亜弥は、どうしようもないくらい楽しみだった。
親戚である、中澤裕子に逢える日。
それが、お盆であったから。
「……嫌やぁ…」
涙が出て来る。
それでなくても、裕子には年に一度しか逢えないのに。
今年逢えないとなると、来年になってしまう。
そんなの、ヤダ。
逢いたい。裕子に逢いたい。
- 31 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:30
- 亜弥にとって裕子は、親戚でありいいお姉さん的存在であり、初恋だった。
そこらにいる同年代の男の子より格好よくて、優しくて。
恋する対象が他のコと違うのも、分かっていた。
分かっていたけど、好きになっちゃったんだ、もう。
年に一度しか逢えないけれど、逢えた時は嬉しくて嬉しくて。
………なのに。
今年は、逢えないなんて。
大きくなるにつれて、我慢というものを出来なくなってしまった亜弥は、いきなり洗濯物をたたんでいた母親にこんなことを言い出す。
- 32 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:31
- 「ママ!」
「わっ。な、なんやの」
「…あたし、東京行く」
「――は?」
「裕ちゃんがおる、東京行く!!!」
「ちょ、ちょっと待ち……何をいきなり…」
「真剣に考えた末の発言やで。あたしは、裕ちゃんに逢いに行く!」
「……あのなぁ。逢いに行く言うても、来年は来てくれるって」
「いやや! 来年まで待たれへん!」
「そんなこと言うても、向こうの都合とかもあるやろ?」
「じゃあ聞いてぇや。あたしは、なんとしても行くで」
「な〜にをそんなにムキになってんの」
「だって……」
逢いたい。逢いたい。
裕子に逢いたい。
考えるだけで、涙が零れ落ちそう。
「………わかったわかった。亜弥は頑固やからな…一度言い出したら聞かんか…」
「!! じゃ、じゃあっ、行っていいん!?」
「亜弥は裕ちゃんが好きやもんなぁ」
「うん! めっちゃ好き!!!」
「その代わり、裕ちゃんが無理って言うたら、諦めや?」
「う、うん…」
- 33 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/12(金) 23:32
- 心配する亜弥だったけど、裕子は電話で快く引き受けてくれた。
ただ、仕事が忙しいからあまり構ってやれないけど……という申し訳なさそうなコメントもつけて。
それは亜弥にとっては残念な事だったけれど、本当だったら顔も見れない所だったんだ。
それに、憧れの東京に行けるし、何より裕子の部屋に遊びに行ける。
構ってくれないのは寂しかったけれど、それ以上に亜弥は、楽しみで楽しみでしょうがなかった。
- 34 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:34
- ――――そして、東京へ。
朝、親に散々言われた「忘れ物はない?」と。
確認もした。ばっちりだった。――亜弥は。
「ママが忘れてどないすんの……アホ……」
1人ポツンと、新幹線の東京駅。
ここからどの電車に乗ってどこで降りて、どうやって歩けば裕子の家に着くのか。
お金はたくさん持たされたのに、地図をもたせてくれなかった亜弥は、一歩も動けない。
「ど、どおしよぉ」
キョロキョロと周りを見渡しても、助けてくれるどころか人に無関心な人たちばかり。
「……そうや!」
裕ちゃんに電話して、迎えに来てもらえば済む事じゃないか。
どうしてそんな単純な事、思いつかなかったんだろう。
すぐに携帯を操って、裕子の名前を呼び出し、かける。
- 35 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:35
- プルルル……と何度かの電子音。
ブツ、と音が鳴って出たと思ったら。
『こちらは、留守番電話――』
「………」
仕事中なんだろう。
一応メッセージを残しておいたけど、いつ聴いてくれるかも分からない。
それまで、独り。
どうしよう。
駅でこうして突っ立っていたって、地元みたいに見知った顔が歩いてきて助けてくれる事もない。
たまに声をかけてくれたと思えば、ナンパ目的の男達だけ。
裕子以外興味さえも持たない亜弥は、もちろんそんな誘いに乗る事はなかったんだけど。
- 36 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:36
- 東京駅に着いて、2時間が経った時だった。
亜弥の携帯が鳴る。
「! もっ、もしもし!」
『あ、亜弥ぁ? あたし、裕子やけど』
「裕ちゃぁん」
『あはは、どうしたん。情けない声出して』
「だって、だって…」
独り寂しい東京駅。
ポツンと待っていたら、愛しいあの人の声。
思わず、泣きそうになる。
『ごめんな。今留守電聴いてん。もう着いててんな』
「うん…裕ちゃんは今どこ?」
『あたしは…まだ仕事先やねん。ちょっと、その前の仕事が押してて、
ほんまやったら迎えに行くつもりやってんけど、それが出来んくなってしまってん』
「…え…」
- 37 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:37
- 『あ、でも大丈夫。ちゃんと、代わりに迎えに来させてるから。まだ来てない?』
「……裕ちゃん、来てくれへんの……」
『…ごめんな、せっかく会いに来てくれたのに。でも、迎えに行かせた子、面白い子やし、亜弥も仲良くなれると思うで。
東京おる時に友達もおった方がいいやろと思って、歳近い藤本って子行かせたんやけど…」
「…藤本…?」
『うん、そう、藤本美貴。――って、亜弥ごめん! ちょっと今お客さん来て…』
「あ…ん…」
『また電話する! 藤本来るまで、もうちょっとだけ待っててな!』
「あ……」
ばいばいを言う前に切れてしまった。
忙しいのは知ってる。
それを承知でやって来たんだ。
文句なんか言えない。
文句を言って、裕子を困らせ、裕子に嫌われたくない。
- 38 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:37
- ただ迎えに来れないだけで、夜にでもなれば、逢えるんだ。
もうちょっと我慢するだけ。
我慢出来ないけど、裕子の為に我慢。
とにかく今は、藤本美貴という人待ち。
今さっき裕子に言われて初めて聞いた名前で、亜弥は顔なんか知らない。
キョロキョロ探したって、誰が藤本美貴なのかも分からない。
向こうから声をかけてくれるのを、ただ待つだけ。
- 39 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:37
- 「にしても………遅い」
裕子に電話をもらい、切ってから30分。
「うーうー」
唸ってる亜弥を、不審そうに見やる女の子。
そりゃ、大きなバック持って独りで唸ってる同じ女の子は、珍しくそして不気味なのかもしれない。
冷たい視線を浴びながらも、それでも亜弥は待つしかなかった。
「まだかなまだかな…」
藤本美貴さん。
「まだかなまだかな…」
「学研のおばさん」
「まだかな〜………って、はっ?」
「――プッ。アハハハハハ!!!」
「…は、え……はぁ?」
「ひーひー」
腹抱えて笑ってる、さっき亜弥を不審そうに見ていた女の子。
何なんだ、一体。
……東京って、やっぱり怖い。
- 40 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:38
- 「…あたし、あなたに笑われる覚え、ありません!」
「いやっ、ごめんごめん」
泣き笑いで謝ってもらっても、嬉しくない。
馬鹿にされてる感じ。
「なんなんですか」
「そっちこそ、どうかしたの?」
「………人、待ってるんです」
「へー」
「……」
だから、何なんだというんだ、一体。
どうかしたのと聞かれたから答えたのに、目の前の女の子はにやにや笑ってどこかへ行きそうにない。
「誰待ってんの?」
「……」
口の端をつり上げて、面白そうに訊ねる。
それがまた、亜弥には頭に来て。
- 41 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:39
- 「言うたって、わからへんでしょ」
「おー、関西弁かっくいー」
「っ、関西弁で悪いんですかっ?」
「悪いって言ってないよ。かっくいーって褒めたのに。それに、うちの上司、関西弁だし」
「……あっそ」
「冷たいなぁ」
「…あなたが馴れ馴れ過ぎなんじゃないですか」
「いいから、誰待ってんのか言ってよ」
「いやです」
「ええっ。言わなきゃわかんないじゃん」
「別に、あなたにわかってもらおうとは思ってません」
「ダメだよ。確認したいんだから」
「…はぁ〜?」
「いいから、言って」
早く早く。
言ってどうなると思うけど、そんなに言うなら言ってやろう。
- 42 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/12(金) 23:39
- 「藤本美貴さんです」
「そう。お待たせ」
「………………はい?」
「藤本美貴です。待たせてごめん」
「………」
東京って、嫌な所だ。
- 43 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 23:40
- あやゆゆか、あやみきか、はたまたゆゆみき(ry
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/12(金) 23:44
- ははは。結局どれっすか?
新作待ってましたよ。またまた面白そうですね。CPはどうなるんだろう?
続き楽しみにしてます。頑張って。
- 45 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/12(金) 23:44
- すいません。早速ミスりました…。
>>28の、
春休み→×
去年の夏休み→○
- 46 名前:344 投稿日:2003/09/13(土) 04:36
- 新作、待っておりました!
さあ、どれになるでしょうか?
個人的には三角関係期待なんですが!
またまた名作期待しておりますよ!
- 47 名前:JOJO 投稿日:2003/09/13(土) 13:55
- 新作だ^^
姐さん絡みとは予想外でした
個人的には姐さんはあまり好きくなくはないですが苦手なので
純粋に2人で「君とどこまでも」状態を希望します
こんな無神経な願いは
ノーマネーでフィニッシュですかね
どんどんいい作品を書き続けてください
- 48 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:41
- 「写真持ってて顔知ってたんやったら、最初にあなたが確認してくれたらよかったんじゃないんですか!」
「何がぁ?」
「いちいちあたしが藤本美貴って人を待ってるって言わせるより、自分があたしに『松浦さん?』って訊ねてくれたらよかったのにって事です!」
「松浦さんって言うんだ」
「え…」
「ごめん、中澤さんに写真渡されただけで、名前は聞いてなかったんだ」
「……」
「だから、確認するしかなかったわけ。いきなり預かった写真顔の前に持ってきて、『この写真と同一人物?』って聞かれる方がやでしょ?」
真顔で当然のように言われるから、亜弥も素直に頷く事しか出来ない。
でも、出逢い方が出逢い方なんだから、どっちも似たようなものかもしれない。
そもそも、裕子も裕子だ。
亜弥に友達を作らせてあげるつもりで今目の前の人をよこしたというのなら、それは大失敗と言えよう。
微妙な顔の亜弥とは反対に、美貴はというと楽しそうに含み笑いをしている。
- 49 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:41
- 「…なんなんですか、ほんま」
「女の子の関西弁って、いいよねと思って」
「でも、それやったら裕ちゃんので聞きなれてるんじゃ?」
「あー。でも中澤さんは女の子じゃなくておばさ――」
「それ以上言ったら、怒る」
その先は言わせない。
美貴の口を押さえて、制止。
「うむむっ。プハッ!…ぁにすんのさぁ」
「裕ちゃんは、おばさんなんかじゃないもん。そんな事言う人、あたしが許さへん」
キッと睨むと、美貴は大げさに手を挙げて観念したように首をすくめる。
からかい半分だったんだけど、亜弥には通じないというのは一回で分かったらしい。
「あなたが中澤さんの味方だと言うのは、分かった。もぉ言わない。
それじゃあ早速中澤さんがいるとこに案内しようと思うんだけど」
「えっ」
顔が、自然と笑顔に。
逢える。もうすぐ、裕子に。
- 50 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:42
- 「の、前に」
「……今度は、何」
が、その笑顔もすぐに崩される。
すべては目の前にいる、藤本美貴のせい。
「美貴、まだ知らない」
「意味が分からない」
「名前」
「……あたしの?」
「うん。苗字はさっき知った。松浦さん。下の名前」
「…あぁ」
「教えてくんなきゃ、連れて行かない」
「それは困る…」
「でしょ」
「…」
弱みを握るなんて、なんて卑怯な。
でも、名前くらいなら、言っても害にはならないだろう。
「……亜弥」
「ん? ごめん、なんて?」
「…だからぁ、亜弥や言うたやん!」
「あやや?」
「ち、ちがっ。あや。亜弥! 松浦亜弥! や、1つ多い!」
「だって、自分であややって」
「もういいから。名前、亜弥やから」
「ほらまた、あややって」
「……」
「そっかぁ、あややかぁ。変わった名前だねぇ」
「だからっ…」
「じゃ、いこっかぁ、……亜弥ちゃん」
「……」
無事裕子の元に辿り着けたら、頭、殴ってやる。
- 51 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:42
-
- 52 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:43
- 裕子の元へ辿り着く間も、美貴のお喋りは止まらない。
亜弥は腹が立つから徹底的に無視しているというのに。
「…ね、ねぇ、いつになったら裕ちゃんのとこに着けるの?」
「ん?」
「まだなの、って」
ぎこちない喋り方。
「ってか、なんで関西弁じゃないの」
「いいやんかっ……じゃなくて、いいでしょ、別に!」
関西弁で会話をしてたら、さっきの名前みたいにまた美貴にからかわれる。
慣れなくて鳥肌が立つけれど、関西弁をからかわれるよりマシだ。
なのに美貴はそれを許してくれない。
- 53 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:43
- 「関西弁可愛いのに〜。兵庫だっけ?」
「………うん」
「東京でそんなでっかいバック持ってなかったら、ほんとに関西人には見えないよね」
「関西人に見えない…?」
「うん。サルに見える」
「!! っのぉ…」
「んはは。嘘嘘」
「言われるけど。言われるけどっ、あなたに言われるとむかつく!」
「そんな、ウキーッてサルみたいに怒鳴らなくても」
「…っ、もう怒った!」
「あ。どこ行くの」
「1人で探して行くからいい!!」
美貴の後を歩くのをやめて、美貴の先を足早に歩き出す。
今までは亜弥を引率する役だった美貴が、今度は亜弥についてく形となって。
- 54 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:44
- 調子に乗りすぎた。
気付いてしまった時には、亜弥の顔が真っ赤。
それも、怒りで真っ赤。
「ごめんって!」
「離して」
「中澤さんにも、ちゃんと連れて来るって約束したんだって! 連れてこなきゃ美貴ボコボコになっちゃうよぉ」
「………」
「それに…会社、ここ、左に曲がるんじゃなくて、右に曲がるんだよね……」
「…う」
「行こう。もう、そこだから」
「…」
渋々、言う通りに。
美貴も反省してるみたいだし、何より意地張ったけど、1人でなんて行けるわけないのだ。
「…ほんまに、ちゃんと連れてってくれる?」
「うん、ほんまほんま」
「……変な関西べ〜ん」
「変とちゃうちゃう」
「イントネーションが変」
「聞き真似じゃダメかぁ」
「ダメダメ」
「さっきの亜弥ちゃんの標準語も変だったよ」
「えぇ! 嘘やぁ」
「まじで」
……なんて。
こうしてると、普通に喋れてる。
言葉や年齢は少し違うけど、最初に逢った時より、亜弥は大分美貴と打ち解けていた。
- 55 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:44
- 「………こ、ここかぁ」
「? 来た事ないんだ?」
「来た事あったら、東京駅で1人で待たんと、乗り込んでるもん」
「あはは、そかそか」
初めて見る裕子がいる会社。
そして美貴も働いている会社。
「入ろう。多分この時間だったらもう中澤さんの仕事も落ち着いてるんじゃないかな」
「う、うん」
ドキドキ。
1年ぶり。
裕子は、どんな反応するだろう。
声は電話で聴いたけど、顔はまだ見ていない。
変わっているだろうか。変わっていないんだろうか。
早く、逢いたい。
- 56 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:45
- 中へ入ると、
「藤本美貴、ただいま戻りましたー!」
と美貴が元気よく頭を下げる。
今年就職したばかりの美貴は、この中では一番下だ。
そんな美貴を笑って出迎えてくれる、優しい社員達。
「この子が中澤さんの親戚さん?」
「あっ…ま、松浦亜弥です!」
「可愛い〜」
「似てないねぇ、中澤さんと」
「姉妹じゃないんだから、似てなくても当たり前でしょー」
年上の人達に囲まれ、亜弥は縮こまる。
こんな事を言われる為に来たんじゃないんだ、裕子に逢いに来たんだ。
だけど、囲まれて質問攻めにあっては、何も言えない。
- 57 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:45
- 「……あのー、中澤さんは」
そんな時、いつのまにか後ろに移動していた美貴が、亜弥がずっと言いたかった事を訊ねてくれる。
「あ、中澤さんなら社長室に向かってるよ」
「そうですか。じゃあ亜弥ちゃん、行ってみる?」
「え、でも…」
「早く逢いたいんでしょ」
亜弥の気持ちを読んでくれていた。
「でも、社長室には…」
「分かってます。入りませんよぉ。廊下で待たせて頂きます」
じゃあ行こう、と自然に手を繋がれて。
囲まれていた中から、あっさりと抜ける事が出来た。
美貴の質問と、手のおかげで。
- 58 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:46
- 「おねーさん達は、興味深々だから。別に悪い人達じゃないよ」
「…さっきの人達の事…?」
「うん」
「うん、分かってる。優しかったし…」
でも早く裕子に逢いたかったんだ。
だから、美貴の何気ない気の遣いには、嬉しかった。
「……ありがとう」
「? 何がぁ?」
「…なん…でも、ない」
「あーそう」
別に気にする事もなく、ただ美貴は言って。
黙って、社長室に続く廊下に案内してくれる。
そうして2人で待ってると、頭を下げて社長室から出て来る、裕子の姿が――。
- 59 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:46
- 「裕ちゃん!!!」
「んっ? お、亜弥……わっ」
勢いよく抱きつく。
離れないように、ギュッと。
だけどその勢いが強かったのか、裕子はよろけてそのまま亜弥の体重に押され、床に亜弥に押し倒される形になってしまう。
それでも、亜弥を責める事はなく、ただ笑って抱き締められてる。
「よー来たなぁ。遠かったやろ、結構」
「んーん。そんなことない…。でも、ずっと逢いたかった……」
「可愛い事言うなぁ、亜弥は」
「んへへ…だってあたし可愛いもん」
裕子の首筋に鼻を寄せて、くんくん匂う。
裕子の匂い。
1年ぶりのこの匂い。
ずっと逢いたかったし、ずっと匂いたかった。
「………あのぉ」
この匂いと感覚に酔ってたかったのに、邪魔する声。
申し訳なさそうに頭を掻いてる、美貴だ。
- 60 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:47
- 「あ、ふじもっちゃんありがとうな」
「あ、いえ。そんなのは全然いいんですけど。っていうか、楽しかったですし」
「なんや亜弥、早速ふじもっちゃんと友達になったん?」
「んぅ…友達、っていうか…」
何と表現したらいいのやら。
でも嬉しそうに裕子が言うから、とりあえず頷いておこう。
「そっかそっか。東京で亜弥も友達が出来たかぁ。それやったら裕ちゃん、ちょっとは安心やわ」
「…安心って?」
「いや、その……な?」
「な…何…?」
嫌な予感。
的中、しないで。
的中しちゃったら、何の為に来たのか、夏休み。
- 61 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:47
- 「………あたし、ちょっとほんまに忙しいねんやんか。
だから…いつもお盆みたいに、亜弥にずっと構ってられへんねん。休みも取られへんし。夜も、帰れるかどうか……」
「えっ…」
「……ごめん!!!」
来てくれた事は嬉しい。
亜弥は裕子の可愛い親戚。
それでも去年みたいに、亜弥を甘やかす事は出来ない。
「よ、夜、帰れるかどうかって。じゃ、じゃああたし、どうすればいいん?」
「……」
楽しみにしてたんだ。
夜は長いから、どんな事話そうとか。
夜だから、もしかしてもしかしちゃったりとか、そういう、ちょっぴり年頃な事も考えたりして。
裕ちゃんならいい、とかって、1人で勝手に決心してやって来たんだ。
昼間は忙しくても、夜は一緒にいれるもんだとばっかり思ってて。
「…ごめん」
裕子は、謝ることしか出来ない。
- 62 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:48
- 「でも、せっかく来てくれたんやし、亜弥には楽しんでもらいたいと思ってる。
それに、おばさんにも亜弥の事よろしく頼まれたし……夜、1人で部屋におらすなんてこと、出来へん」
「あ…じゃあっ」
裕子の傍で過ごせるのかも。
そう思ったのに。
「1人やったら、心配やから……亜弥、あたしが帰って来られへん時は、ふじもっちゃん家におったらどうかなって」
「――え」
「は? いや、中澤さん。初耳ですけど…」
聞き捨てならないとばかりに美貴も口を挟んだけれど、見事にシカトされる美貴。
「さっき友達になったって言うてたし。それに、ふじもっちゃんとこやったら、あたしも安心やし。
……っていうか、急か。さすがに無理か……うー、うーんと、どうしよう………」
「……」
困ってる。
裕子が困ってる。
亜弥がいることで、裕子が困っている。
困らないで、自分のせいで。
- 63 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:48
- 「…あ……あたしやったら、いいよ、別に」
「え?」
「裕ちゃんが安心って言うんやったら、あたしも安心やし……」
「あ、亜弥ぁ。ごめんなぁ、ごめんなぁ」
「……大丈夫」
抱き締めてたのを、今度は反対に抱き締め返されて。
それが心地よくもあり、少し、胸が苦しかった。
「いや、っていうか。ちょっと待って。ちょい待ち」
「「?」」
「そこの親戚。親戚同士で納得しないで」
「あぁ…ふじもっちゃんのこと忘れてた」
「可愛い後輩を忘れないでくださいよ! 名前出したの自分なくせして!」
「悪い悪い」
全然悪びれもなく頭を下げる裕子に、美貴は怒った顔を崩さない。
- 64 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:49
- 「そりゃ、楽しかったですけど。あのですね…実の話、美貴、亜弥ちゃん養うお金ないですよ。
新入社員だし……給料、ギリギリなんですよね……」
「あ、それやったら大丈夫。ご飯代なんかは、ちゃんとあたしが出すから」
「えっ。いいよ裕ちゃん。あたし、ママにいっぱいお金もらって…」
「ええてええて。そのお金は、お土産にでも使い。一緒にいられへん分の罪滅ぼしやから」
「でも…」
「子供はそんな気遣わんでええの」
「……」
…子供じゃないのに。
裕子に釣り合うような大人を目指しているのに、そう子供扱いされると悲しくなる。
「えっと、じゃあ…美貴、どうすれば」
「ふじもっちゃんがよければ、亜弥の面倒見てあげて欲しいねん」
「………まぁ……そういうことならいいです、けど」
「じゃあ、今日はこれで亜弥を焼肉にでも連れてったってくれへん? 亜弥泊めてくれるお礼や」
「え!」
焼肉、という言葉に美貴の目がキラキラと光る。
美貴の先輩の裕子は、親戚の亜弥の好みだけでなく、美貴の好みだって知っている。
- 65 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/13(土) 18:49
- 「い、いや、でも、そんな」
「いいからいいから。遠慮はふじもっちゃんらしくないで。その代わり、亜弥をよろしくな」
「はい!」
「………」
何なんだ、一体。この人は。
初めて逢った時と同じように、亜弥は思う。
焼肉という単語を聞いただけで、目をキラキラさせて。
「それじゃあ亜弥ちゃん! よろしくぅ!!!」
「よ、よろしく…」
「肉! 肉!」
「………」
東京の人は、よく分からない。
- 66 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/13(土) 18:50
- 東京1日目が長い…。
かちゅ〜しゃって、便利でつね。
>44さん
結局どうなるかは、もうしばらくお待ちください(w
続き、頑張ります
>344さん
三角関係期待(w 頑張ります(w
名作なんて書けないんですが…精一杯がんばります。
>JOJOさん
中澤さんを初めて…じゃないや、ナンバーワン以来出してみました。
松浦さんが関西弁を使う話を書きたかったので、それならと中澤さんも。
頑張って書きつづけてみます。
- 67 名前:44 投稿日:2003/09/13(土) 19:44
- おや?フェードアウト気味?
ということはということですか?
オラわくわくしてきたぞ。
- 68 名前:JOJO 投稿日:2003/09/13(土) 20:07
- 展開がおもしろい感じになってきて楽しいです
ぁゃゃの関西弁はやたら新鮮ですよね
まぁあの人は四六時中聞き続けてるんでしょうけど(w
自分はこれ以上リアルで絡みが無いと発狂しそうです
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 20:28
- 今後の展開にうきうき♪(殴)
- 70 名前:344 投稿日:2003/09/14(日) 10:50
- これはまたまた意外な展開!
二人で行くのか?! また楽しみになってきました。
作者様、期待しております!
- 71 名前:ほわ 投稿日:2003/09/14(日) 13:43
- 新作キテタ━━━\(‘ 。‘*从≡(‘ 。‘*从≡从*‘ 。‘人VvV*从 ≡川*VvV)≡川*VvV)/━━━━ !!!!!
アンリアルなのにリアルに感じてしまうのは作者さんの魔力でしょうか?w
ここも2ちゃんブラウザ対応になって便利な世の中になりましたねぇ・・・
いつもながら今後の展開に期待してます!
- 72 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:39
- 「ん〜〜っ」
焼きたてカルビを口いっぱい。
頭をフルフル振って、カルビがどんなに美味いかという事を、全身でアピール。
「っはぁ〜! 超ウマッ! 亜弥ちゃん、カルビ超美味いよ!」
「……へぇ〜」
「へぇ〜って。何そのリアクション。トリビア?」
「トリビアじゃない。…っていうかあたし全然当たってない、カルビ」
「あれ、そうだっけ」
「……」
焼けたと思って箸を伸ばしてみれば、それより先に前から箸が伸びて、美貴の口の中に。
他の肉を狙おうとしても、失敗。
結局亜弥はまだ野菜しか口に入れていない。
「亜弥ちゃんはベジタリアンなんだね」
「違う!」
「なんだ。そうだったら肉独り占めできると思ったのに」
「ひっどー!」
「へへへ。嘘嘘。はい」
お皿に一切れ。
野菜じゃない、ちゃんとしたお肉。
「……いただきます」
「どぞどぞー」
「………美味しい」
「ね!」
- 73 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:40
- 焼肉大好きな2人の注文は、絶える事もなく。
美貴に至ってはレバ刺し5人前を1人で平らげる技を見せる。
そんなに食べれるのかと聞いたところ、食べれるとあっさり答えが返ってきて、これまた美味しそうに口に運ぶ。
それを見て亜弥も食欲が湧いて、頼んだ生レバーを網の上に乗せたら、美貴に怒られてしまった。
「馬鹿! 焼いたら生レバーの意味ないじゃん!」
「…えー? 焼くって言っても、ちょっとだけ…」
「ダメだよ! これは、生で食べるから美味しいの!」
「……いちいちうるさいなぁ」
「ん、何か言った?」
「ん、んーん」
なんでもないなんでもない。
焼肉奉行らしい美貴には、この時ばかりは逆らわないようにする。
以前、鍋奉行な父親のする事に疑問を感じて口を挟んだら、物凄く怒られたトラウマがあるから。
- 74 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:40
- 「あ。っていうか、それ、あたしのタン!」
「んぁっ?」
「あー!」
わざわざ取られないようにと、亜弥の方へとタン塩を寄せていたのに。
わざわざ箸を伸ばして、そのタン塩を美貴は食べてしまった。
「タン! あたしのタンぅ!」
「…タンタンうっさいなぁ」
「たぁーん!!!」
「ごーめんって。ほら、ね? このタン塩は亜弥ちゃんのだから」
「……むー」
「まだまだいっぱいあるんだからさぁ」
「でもほとんど、食べられてる」
「だ、だから、これは亜弥ちゃんの、ね?」
「うん」
当然。
今度は美貴になんか取らせない。
いい具合に焼けたのを確認して、美貴にお皿に置かれるより先に、箸でタン塩を掴む。
そして、レモン汁をべっちょべちょにつけて、召し上がり。
- 75 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:41
- 「ん〜っ」
「ぅんまい?」
「ぅんまぁい」
「どれどれ…」
「って、あかん〜!」
どさくさ紛れに、残ったタン塩を食べようとした美貴を制す。
危ない所だった。
箸を押さえると、大人しく美貴は手を下ろす。
「好きだねぇ、タン」
「好き!」
「じゃあ亜弥ちゃん言うのやめて、亜弥タンにしようか?」
にやにや笑って、そんなくだらないこと。
「意味わからんし。…っていうか、あたしの舌食べられるみたい」
「じゃーあやたん。ほら、あだ名っぽくなった」
「子供みたいで嫌」
子供扱いされるのは、嫌だ。
少しでも早く、大人になりたいのに。
「可愛いじゃん。あやたんあやたん」
なのに美貴と来たら、面白そうにそんなあだ名を繰り返す。
あややより屈辱的かもしれない。
けれど亜弥だって負けちゃいない。
言われっ放しじゃプライドが許さないのだ。
- 76 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:42
- 「みきたんうっさい」
「…みきたん〜?」
「あやたん言うから、みきたん。お揃い」
「…うわ、なんかヤダ。子供っぽい」
美貴だって18だ。
さすがにそんなあだ名を呼ばれるのは恥ずかしい気がする。
昔、中学時代にキティが好きだからミキとキティでミキティと呼んで、と友達に広めていた子供の頃が懐かしい。
- 77 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:42
- 「だからあたしだって子供っぽいってゆったのに」
「やめやめ。あやたんやめ。亜弥ちゃんでいい」
「ふーん。でもあたしはみきたんのままにする」
「はっ? やめてよ」
「じゃあ、たん」
「はぁあ?」
「子供っぽくなくなった」
「それと同時に、あだ名でもなくなったけど」
「そうかな。たんって言い易い」
「いや、まあ、二文字だからね。…っていうか、同じ二文字なら、みきの方を呼んだ方が…」
「それやったら嫌がらせにならへんもん」
「って、嫌がらせかよ!」
「んふふ」
やり返してやった。
美貴は、悔しがってる。
「たんのタン、いただきぃ!」
「うあ! 何すんのぉ! っていうか、面白くないし!!」
「あーおいし」
「くそっ…」
- 78 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:42
-
- 79 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:43
- 楽しく美味しい食事の時間が終わり、会計を済ませ出てきた美貴。
外で待っていた亜弥は、美貴を見て、頭を下げる。
「ごちそーさまでした」
「それは、あなたの親戚のおねえさんに言ってくださいね」
「あ、そっかぁ」
「中澤さんのおかげで、ひっさびさに肉食べれたよ〜」
ポンポンとお腹を叩いて、美貴は満足げな顔。
「…そんなにお給料少ないとか?」
「家賃とかさー、結構高くて。かなりそれで取られちゃうんだよねぇ。んで、美貴、結構食べるから。
焼肉なんか行ったら、千円二千円じゃ済まないでしょ?」
「まあ…」
「だから当分行けなかったんだ。でも、今日行けて肉溜めしたから大丈夫!」
「人のお肉取るくらい食べたし」
「ま、まーまー! そういう個人的な恨みはこの際忘れましてぇ、家、行きましょうか!」
都合の悪い話はこの辺で終わり。
話題転換。
- 80 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:43
- 「…あ、でも家って…どこ?」
「んっと、こっから歩いて15分くらいだよ。言っとくけど、狭いよ」
「あ…でも…」
「ん?」
「………行っても、ほんまにいいん?」
「何を今更」
亜弥にしても美貴にしても、こんなことになったのはいきなりのことだったし。
確かに今日は焼肉に釣られOKしても、それが何日も続いたら、焼肉一回分じゃ足らないかもしれない。
「確かに急に決められてびびったけどさ、いいよ、別に」
余計な心配するな、と口には出さず安心させてくれる。
こういう所は、やっぱり亜弥より年上で、大人なんだろうなと思う。
「それより、2人きりだからって、寝込み襲わないでね」
「は、はぁっ?! 誰が襲うかっ」
「いやん」
でも18歳という年齢は、完璧な大人じゃなくて。
そういうところが、亜弥にはとても可笑しくて、作り笑いでなく素直に笑えた。
- 81 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:43
-
- 82 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:44
- ガチャリと鍵を開けてドアが開いた先には、想像してたような部屋じゃなくて。
観葉植物が置いてある、意外に殺風景な部屋だった。
「綺麗でびっくりした」
「何? 汚いと思った?」
「うん…」
「ははっ、素直だね。そっちのが好きだからいいけど。適当に座ってよ」
「あ…はぁい。でも、ほんまにいいん?」
「だからぁ」
「だって…彼氏とか…」
「いたら焼肉に釣られても泊まらせないって。いいから、早く座る」
「う、うん」
慣れない部屋に腰を下ろし、キョロキョロと視線を彷徨わせる。
見慣れない部屋。嗅ぎ慣れない匂い。でも決して嫌いじゃない匂い。
初めての匂いが珍しくてくんくん鼻を鳴らしながら匂っていると、お茶を入れたコップを持った美貴が笑いながらやってくる。
- 83 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:45
- 「なーにしてんのさ」
「ん。匂ってた」
「アハハハ!」
「あたし、匂いフェチやから」
「すっげー。へへへへ」
「なーんで笑うん?」
「だ、だってっ……」
目尻の涙を拭って、また笑う。笑うとまた出て来る涙。
「亜弥ちゃんおもしれー。さいこぉ」
「…褒めてる?」
「褒めてる褒めてる。っていうか、好き。らぶ」
「その気持ちは受け取れませーん」
「えー、なんでー」
好きな人がいる。
小さい頃から、ずっと好きな人。
女同士だろうが、関係ないくらい、好きな人。
- 84 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:45
- 「……軽蔑、せーへん?」
「ん?」
「あたし…裕ちゃんの事…」
「好き、なんでしょ?」
「え、あ、…うん。だけど、普通の好きと違うっていうか…」
「軽蔑しないよ。だって美貴も女の子と付き合ったことあるしぃ」
「えっ、そうなん?」
まさか、そんな反応が返ってくるなんて。
予想しなかっただけに、びっくり。
「ロリコンだってファザコンだってマザコンだっていっぱいいるんだ。別に女が女好きだっていいのにねぇ。
なんで軽蔑とか引かれなきゃいけないんだろうって思うよ」
「たん…女の子と付き合ったことあるんや…」
「1人だけだけどね」
「へぇ…」
「気になる?」
「気になるっていうか…聞きたい」
「どうしてもっていうなら」
「……じゃあいい」
「あぁ、嘘だってぇ。話すよぉ」
ここまでで、大体美貴の扱いは読めてきた。
こう言えばこう返してくれるだろう、というのが分かった気がする。
そしてその亜弥の読み通り、美貴は話してくれる。
- 85 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:46
- 「里田まいちゃんっつってさ。美貴より二つ上で、同じ北海道出身でさ。
仲良かったんだよ、中学くらいからずっと。
んで……いつだったか忘れたけど、何かのきっかけでキスして……それで、恋人みたいな関係になって」
「こ、こ、恋人みたいな関係って」
ゴクリ、と亜弥の喉が鳴る。
「…想像にお任せするよ」
美貴はそんな亜弥の考えをお見通ししたように笑って、続きを話す。
「まいちゃんはさ、年上だから、先に就職しに東京へ上京したんだ。
それでも毎日とは行かないけど、電話やメールで話してた。
でも、その電話の回数が減って、メールの返事が遅くなったり、予兆はあったんだ。
それでも美貴は、まいちゃんの方が美貴に惚れてるって意識が強かったから、別になんとも思わなくて。
……けど、やっぱ逢いたくなってさ。夏休み、亜弥ちゃんみたいに逢いに行ったんだよ、北海道から東京へ」
「……」
「したら、自分が馬鹿だった事に気付いたの。
驚かせようと思ってまいちゃん家に行ったら、まいちゃん、家の前で男とキスしてやんの。思わず笑っちゃったよ、自分の馬鹿さ加減に」
「…………たん」
- 86 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:46
- 「そして、女の子同士の恋は終わりましたとさ。別れた原因は、まいちゃんが男の良さに気付いたから、でしょうか」
笑いながら締めてるけど、亜弥には美貴が泣いてるように見えた。
美貴は、好きだったんだ、本気で。
亜弥と同じで、本気で、相手の事を――。
「……でも……」
「…ん?」
「男か女か分けるより先に、男と女は人間やんか。同じ人間やのに、どっちが良いとかって、あんの?
顔や性格で好きって判断するのはいいけど、男と女で恋愛対象分けられたら……もう、何もできひん、あたし。
女同士やったら、結婚もできひんし、赤ちゃんだって作られへん。みんなから変な目で見られて……。
それでもあたしは、裕ちゃんが好き。裕ちゃんが男でも女でもなくて、おかまでも、裕ちゃんが好き。裕ちゃんって人が、好き」
- 87 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:47
- 「……そうだね。美貴も、まいちゃんか美貴が男の子だったらよかったのにって思う事あったけど…さ。
結局、男でも女でも、美貴はまいちゃんが好きだったんだよね。
シャイで、優しくて、天然ボケな、まいちゃんが……」
「じゃあっ、今からでも告白し直しに行くとか?」
「バカ。もう二年近く前の話なの。それに…」
「んぅ?」
「まいちゃんも、男とか女ってのを関係なく、ただ美貴よりいい人間見つけたんだって、思いたいからさ。
……幸せなら、それでいいよ。
美貴とだったら出来ない結婚して子供産んでくれてたら、もっと幸せかな」
「たん…」
大人だなぁ。
それが亜弥なら、そんな風には思えない。
自分以外の人と裕子が幸せになるなんて、泣きそうだ。
- 88 名前:幸せになる方法〜東京1日目〜 投稿日:2003/09/14(日) 18:47
- 「それより亜弥ちゃん」
「…?」
「関西弁教えてよ、かんさいべーん」
「え、なんで」
「関西弁好きなんだよね、結構」
「いいけど、イントネーションがぁ」
「それを正しく言わせるようにしてよ。せっかくだから完璧にしたいじゃん」
「…んー。じゃあ、なんでだよを関西弁に直してください」
直すのは簡単だ。
だけど、関西の人以外が言う「なんでやねん」は、微妙におかしい。
「なんでやねん」
「ブー。イントネーションが違いますぅ。なんでやねんは、こう。…なんでやねん!」
「なんでやねん!」
「また違う。なんでやねん!」
「なんでやねん!」
「なんでそんなイントネーションになんの!」
「なんでそんなイントネーションになんの!」
「って、違う! あたしと同じ事繰り返すんじゃなくて、なんでやねん!」
「なんでやねん!」
その晩、飽きる事なく、部屋になんでやねんがこだましたとか。
………なんでやねん。
- 89 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/14(日) 18:48
- やっと1日目が終わり、呼び方の話は、ものすごく無理やりです。
……だって「たん」って言わせたかったんだ……。
>44さん
ということはということになるかもしれないです(w
わくわくドキドキをこれからもさせれたらいいなぁと。
>JOJOさん
松浦さんがテレビなどでたまに使う関西弁が飛び上がる程嬉しい関西人です。
兵庫ではないので、兵庫弁とは少し異なるかもしれませんが…。
リアルで絡みはないですが、リアルでのふとしたトークに2人の絆を結びつけると楽しいかもしれません。
>70さん
うきうきしてくださってありがとうございます(w
>344さん
二人で行ったみたいです。これで、最初に書いたカップリング予想が見えてきたかな…?
頑張って期待に応えれたらなと思います。
>ほわさん
こっそり新しい話を更新してました。
もっともっと強大な魔力が欲しいです(w
かちゅ〜しゃは今回の移転で初めて入れたのですが、素晴らしさに感動しています。
- 90 名前:JOJO 投稿日:2003/09/14(日) 18:59
- リアルタイムで更新をみれたの初めてかも…
ぁゃゃの関西弁の使用はプライベートのみと言っていたので
素のぁゃゃを垣間見てるようですごく何か無駄に緊張とかするんですけど
なんかとっても楽しいので更新がんばってください
- 91 名前:44 投稿日:2003/09/14(日) 19:18
- 藤本さん大人ですねぇ。
にしても関西弁の基本は「なんでやねん」なんですかねえ? (w
これからどういう展開になっていくんでしょう。
次が待ち遠しい。
- 92 名前:344 投稿日:2003/09/14(日) 22:12
- やっぱ「たん」ですね(?)
この二人だけが出ている時は妙に安心しています(笑)。
これからも作者様作品一筋で読ませていただきます!
素晴らしい作品期待です!
- 93 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 22:14
- やばい…やばいぞ。
作者さんのみきあや大好きな自分としたことが…
松浦さんの、裕ちゃんへの一途な想いに激萌えしてる。
応援したくなってる。あやゆう(?)二人に幸せになってほしいと思い始めてる。
……どうなるんだろう。
- 94 名前:ほわ 投稿日:2003/09/14(日) 22:45
- レバ刺し5人前を一人でたいらげたり
レバ刺しを焼いちゃうぁゃゃを怒ったり
たんって呼び始めたり・・・
あぁ〜本物が見てぇ〜!!
なんだか本物の二人の絡みがぜんぜん見れてない気がします
脳内だけだと限界があるので、作者さんの書く話は非常に助かってますw
なんだか作品の感想になってませんが(w)これからもがんばってください
- 95 名前:つみ 投稿日:2003/09/15(月) 00:14
- しまったぁぁぁ!
こんな作品が進行してたなんて!今回も期待してます!
- 96 名前:334 投稿日:2003/09/15(月) 00:21
- むずむず…むずむず…。
ダメだ!我慢できないレスしちゃう!!
最初の更新に乗り遅れたからずっと黙っていたけど、無理だった!!
だって、’たん’なんだもん!
たんでタンがたんをたんって言っちゃうんだもん!!(意味不明
でも、今度こそ完結までレス我慢してやる……無理かもしれないけど。
- 97 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:10
- 「亜弥ちゃん」
「………ん……んぅ」
「ほら、朝だって」
「んー……んっ?」
ママかと思えば、聞き慣れない喋り方。
誰だ。睡眠の邪魔する奴は。
「わぁ!」
「――ッ、きゃああ!!!」
朝一番に亜弥の目に飛び込んで来たのは、ドアップの美貴の顔だった。
- 98 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:11
- 「………あー、痛」
「ご、ごめんって、たぁん」
ぶすっとパンを齧ってる美貴の左目の横には、亜弥が喰らわせた拳の青アザ。
見てるだけで痛々しい。
「でっ、でもたんがああいう起こし方するからっ」
なかなか起きない亜弥の目の前で、大声を。
「ドキッとした?」
「びっくりしてドキッとしただけ!」
「なんだ。中澤さんから美貴に乗り換えたんだと思った」
「誰が乗り換えるかっ」
いーだとアッカンベをして、立ち上がる。
- 99 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:11
- 「あれ、どっか行くの?」
「コンビニ。ご飯買いに行ってくる。昨日ここに来る時、コンビニ見つけたし、1人で行けるから」
「あ、待ってよ。ご飯ならあるよ。これ食べなよ」
「…?」
6枚切りのパンの内の1枚。
「でも、あたし食べたらたんのパンが」
「6枚切りのパンも買えないくらいお金持ってないわけじゃないって」
「……」
「それに、やばくなったら中澤さんに請求するから。ひひ」
そんな心配なんかするな、とまた口に出さずに笑ってくれる。
昨日逢ったばかりで、本当に成り行きでこうなったのに、美貴は優しい。
本当は朝は和食派なんだけど、美貴の優しい好意に亜弥は素直に甘える事にした。
久しぶりに食べたパンは、昨日の焼肉と同じ位美味しかった。
- 100 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:12
- パンを食べて、牛乳飲んでを繰り返してると、食べ終わった美貴が喋りかけてくる。
「さて、どうしよっか」
「?」
「これから」
「……あぁ。たんは仕事?」
「いや、今日はない。だから、兵庫から来たサル似の女の子を東京案内したげようかなと計画してんだけど」
「えっ!」
サル似というのは聞き逃せないけど、それより後の方が聞き逃せなかった。
東京案内、してくれる。
「中澤さんは仕事だから、どっちみち亜弥ちゃん暇でしょ。美貴も会社休みで暇だし、時間つぶしに付き合うよ」
行きたい所はいっぱいある。
でも、行き方さえ知らなかった亜弥は、今日、一日中じっとしてようと思っていたところだった。
そんな時に美貴から思いがけない誘いが来て、亜弥が乗らないわけはなかった。
- 101 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:12
- 「い、いちまるきゅーとか!」
「うんうん」
「渋谷とかっ」
「109は渋谷にあるからね」
「は、原宿とかっ」
「あー」
「アルタとか!」
「行ってどうすんの」
「いいともの時に映る!」
「ふははっ。いいねぇ、映ろうかぁ」
楽しそうに美貴が笑って頷くから、亜弥もどんどん楽しくなって。
朝からハイテンションで、憧れの東京見物コースを語る。
本来なら中澤に逢えなくて寂しいだけかと思っていたのに、そうじゃなかった。
美貴、という東京で出来た友達は、亜弥に裕子を忘れさせてくれていた。
- 102 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:12
-
- 103 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:14
- 「でぇー、これが一個下の妹のでぇ、これが2番目の妹ちゃんのぉ」
「ふーん」
「これがパパので、これがママ。へへ…いっぱい買ったぁ」
ママにもらったお小遣いで、お買い物。
ちゃんと、お土産も忘れない。
ご丁寧に家族は何が欲しいかを、メールで送ってくれたりしてるから。
「帰り持ち切れるの?」
「…ん、なんとかなると思う」
「そう。じゃあいいけど」
帰りの荷物の心配だけして、頼んだオレンジジュースを一口飲む。
亜弥の勢いに付き合ったおかげで、美貴は喉がカラカラだった。
ちょうどいい所に喫茶店があったので、今は休憩中。
「亜弥ちゃんは、あと何日いるの?」
「えっと…1週間泊まる予定やったから、今日入れてあと6日」
「そーなんだ」
「あ、もし、邪魔やったら…ホテルでも部屋借りるから…」
「だから、大丈夫って言ってんじゃん」
「…そ、そっか」
- 104 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:14
- 「それに、今日こそは中澤さんの部屋で一緒に寝れるんじゃない?」
「そっ、そうかな!」
「……嬉しそうだねぇ」
「あ…」
思わず、顔に。
でも美貴は亜弥の気持ちを知っているから、別に何も突っ込む事もしない。
「でもさぁ、どうするわけ? 亜弥ちゃんは」
「何が?」
同じく頼んだオレンジジュースをカラコロとストローで氷を混ぜていると、美貴からの質問。
「中澤さんだよ。コクんの?」
「………うん。そのつもり」
「おー」
計画では、昨日の夜にだったんだけど。
昨日の夜は裕子は仕事で、美貴の家に泊まったから計画失敗。
だけどまだ6日ある。
早く伝えて、いちゃいちゃらぶらぶするんだ。
- 105 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:15
- 「じゃ、頑張んなきゃね」
「うん!」
応援してくれる人がいる。
それは、とても嬉しい事。
「上手くいったら、たんにちゅーしてあげる」
「ファーストキスをくれるわけ?」
「違うぅ。裕ちゃんとしてから、たんにちゅー。あたしのファーストキスは裕ちゃんって決まってるもん」
「じゃあ上手くいかなかったら、キスしてくれないわけだ」
「そういうこと」
「そういうことかぁ」
「うん!」
「だったら上手くいかないようにお祈りしとかなきゃね」
「うんうん。…って、普通、反対やん! たん、あたしとちゅーしたくないわけっ?」
「嘘だよぉ」
またからかった。
そして、またひっかかった。
美貴はケラケラ笑ってる。
- 106 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:15
- 「……アホぉ」
「ひっかかる方がアホなんじゃぁん」
「純粋やの、あたしは!」
「田舎者だから?」
「……う」
そりゃ確かに学校まで2キロ程あるし、信号は学校までに一個か二個くらいしかないし、
家にはまだ本物の猿が降りてきて下着を盗んだりもするし。
だけど、いいところだ。大好き姫路市。
「そういうたんこそ、標準語喋ってるけど、ほんまは北海道やってんやん!」
「ほっかいどーはでっかいどー」
「…そういうダジャレはいいから。自分こそ、北海道のどこなん」
「真ん中ら辺」
「は?」
「真ん中ら辺。亜弥ちゃんより都会!」
「真ん中ら辺……知らんかった…北海道にそんな市名があるんや……」
勉強はニガテな亜弥。
そんな市なんか存在しないなんてことは、知らない。
素直に美貴の言う事を信じきっている。
- 107 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:16
- 「………亜弥ちゃんさぁ」
「ん?」
「なんか…ほんっと、可愛いね。そこまで純粋な人、久しぶりに見た」
純粋というか、この場合はバカなだけなんだけど。
亜弥はそんな美貴の発言をまた正直に受け止める。
「まさか…」
「何?」
「――たん、あたしに惚れた?」
「ブホッ!」
何を亜弥が言い出すのか、ジュースを口に含んで待っていたら、そんなこと。
思わず抑え切れなくて、ジュースを吐き出してしまった。
- 108 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:16
- 「うぁー、たんきたなぁい」
「ゲホ、…ケホ…誰のっ、せいだと思って…」
「いや、だって」
「アホはどっちだよアホぉ」
「なんや、違うんやぁ」
「もしそうだとしても、美貴1秒でフラれるじゃん」
「だってあたしには裕ちゃんがおるもん!」
「…はいはい」
その話は終わりとばかりに疲れた声を出し、伝票を掴む。
「あ、お金…」
「喫茶店入ろうって言ったのは美貴だから、いい」
お金がないないって言う割に、亜弥は美貴に奢られてばかりだ。
- 109 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:17
-
- 110 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:17
- 夜、昨日の内に裕子にもらっていたお金でホカ弁を買って美貴の部屋で食べていると、携帯電話が鳴った。
母親とはさっき話していて切ったばかりなので、誰だろうと思って見ると、それは裕子で。
「ゆ、裕ちゃんっ?」
『亜弥ー、元気ぃ?』
「元気元気!」
『そかそか。ふじもっちゃんは? 今日風邪らしいけど、大丈夫なん? 亜弥泊まらせて悪かったかなぁ』
「へっ…?」
風邪?
そんなの嘘だ。
だって今美貴は、鼻歌歌いながらシャワーを浴びているのに。
朝、今日は休みだと言っていた。
本当は今日、出勤だったんじゃないか。
- 111 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:18
- 『ほんまごめんなぁ。遊びにも連れてかれへんで』
「う、ううん」
だって今日、連れてってもらった。裕子じゃないけど、美貴に。
『それに、今日も…ちょっと忙しくて…家に帰れるかわからへんねん……』
「そう…なん……」
『でも、ふじもっちゃん風邪ひいてるみたいやし、あたしホテル取ったるから、亜弥、ホテル行き?
さすがに風邪ひいてんのに亜弥の面倒見てもらうわけにもいかへんし…』
「あ、でも…」
確かにホテルに行った方が、美貴に面倒はかけないかもしれない。
でも。
「昨日、面倒見てくれたから…今日は、風邪ひいてる藤本さん、あたしがちゃんと見るから…ホテル、いい」
『う、うーん…でも、移って亜弥まで風邪ひいたら、あたし、ほんまにおばさんに顔合わせる事出来ひん…』
「風邪ひかへんから! 裕ちゃんは、心配せんといて。頑張って仕事して」
『…亜弥』
「でも、明日は一緒に裕ちゃんの部屋で、寝たい」
『うん。約束。今度は守る』
「…うんっ!」
ばいばい明日と電話を切って。
美貴が上がってくるのを待つ。
- 112 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:19
- 5分程待ってると、頭の水分を取りながらやってくる美貴。
にこにこ笑ってる亜弥を見て、不審顔。
「……何?」
「いや」
「気持ちわるいよ…」
「うあ、ひっどー! 気持ち悪いなんて初めて言われたぁ!」
「わ、わ。だからなんなんだよぉ」
「………あの、ありがとぉ」
「? は…っ?」
混乱してるのが見て取れる。
それがまた可笑しい。
「ちょ、なんだか意味わかんないんだけど…何? 亜弥ちゃん、今日もここ泊まるわけ?」
「うん。裕ちゃんまた仕事で遅くなるって。それにぃ、風邪ひいてるたんのお世話、しなあかんし」
「…………え」
どうして亜弥に礼を言われたのか。
風邪、という言葉を聞いて、美貴はやっと分かった。
- 113 名前:幸せになる方法〜東京2日目〜 投稿日:2003/09/15(月) 10:20
- 「風邪なんかひかせて会社休ませて、ごめん。それから、ありがと。すっごい嬉しい」
「ほ、ほんとに風邪気味だっただけだよ……ぅ、ごほごほ。あ、ダメ、熱がまた上がってきた…」
「たん大丈夫ぅ?」
「う…うっさい!」
東京に来て2日。
東京の人だと思っていた北海道の真ん中らへんの人は、とても優しく、照れ屋であるという事を知った。
- 114 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/15(月) 10:20
- ハロモニでのれなみきに萌えまくってしまった昨日。
でも松浦さんが怖いので、書けません。
>JOJOさん
リアルタイムでしたか。更新遅くて見難かった事かと思います。
マナー部のDVD等を見返して思ったんですが、たまに漫才か何かで藤本さんも関西弁を言ってる時あるんですが、
意外と上手いよなぁと思った記憶があります。
きっと、関西弁コーチにプライベートで指導してもらったからだと妄想してます。
女塾はこちらで放送されてないので、DVD化を待ちます。。。
>44さん
関西弁の基本…なんでやねんなんですかね(w
少なくとも自分はよく使います(w>なんでやねん
毎回、44さんのsageの前につく言葉に笑わせてもらってます(w
>344さん
ぶっちゃけ松浦さんが藤本さんを指す言葉は何でも萌えるのですが、やはり現在の呼び方を思いましてたんに。
そ、そんな、自分の話一筋なんか言わないで、他の作者様のも是非。
あやみきは面白い作品いっぱいで楽しいです。
- 115 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/15(月) 10:21
- >93さん
激萌えしてくださり有難うございます。
どうやらM黙であやゆゆが熱いみたいなので…。こちらでは放送されてないので痛いのですが(w
どうなるか、は、あともうしばらくお付き合いくださいませ。
>ほわさん
ネタはビデオレターからの拝借をしてます。
自分も、本物が見たい・゚・(ノД`)・゚・
それでも、ほわさんのflashを見たりで、こちらも非常に助かってます。有難うございます。
これからも頑張ります。
>つみさん
毎回sageで潜っての更新で申し訳ありません。
見つけてくださり有難うございます。
>334さん
レス有難うございます。
そうです、たんです(w 初めて無理やりにでも言わせてみました。
レスは、頂けた方が励みになりますし、嬉しいです(w
- 116 名前:JOJO 投稿日:2003/09/15(月) 10:58
- あ〜。今回は微妙にリアルじゃなかった
ぁゃゃの思考がまったく読めなくなりました
一体この先どんな展開が待ってるのか凄く気になってます
藤本さんと姐さんの間をフワフワしてる気もしますし
次回本当に楽しみです
がんばってください
- 117 名前:44 投稿日:2003/09/15(月) 13:11
- 藤本さん青アザこしらえたまま東京案内したんでしょうか。
ええ人や。 ⊃д`)
また中澤さんが絡んでくるようですがどうなるんでしょうね
藤本さんは今のとこはそうでもないようですが
今後心境に変化が現れるのかな?
続き楽しみにしてます。
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 15:40
- 藤本さんは松浦さんにはまってきてますね〜
たまらん!!
松浦さんも何気にホテルいいなんて断っちゃって。
なんだかんだであやみきはやっぱり萌えてしまう!!
- 119 名前:344 投稿日:2003/09/15(月) 20:59
- だんだん・・・来ました!亜弥美貴!
もう、この接近していく時の文の味がたまりません!
浮気性な私なので、作者様一筋で頑張ります!!!
- 120 名前:つみ 投稿日:2003/09/15(月) 23:36
- 藤本さん優しいですね!
あやみきは不滅です!
- 121 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:00
- さすがに2日連続風邪というにはいかない。
朝、美貴が亜弥を残して会社に出勤してから、亜弥は泊めてくれたお礼として、洗濯から掃除と家事を引き受ける事にした。
家事をする事でお礼もできるし、何より仕事が終わるまで時間を潰せる。
今日は、昨日ちゃんと約束した、やっと裕子と一緒に寝れる日だ。
告白が上手くいけば、夜寝ると同時に、亜弥はオトナになれるかもしれない。
想像して掃除機片手に「きゃー」と叫び赤くなりながら、美貴の部屋は綺麗になっていく。
ざっと掃除を済まし、今度は洗濯をして。
新婚さんみたいと思った後、ここは美貴の部屋だと言う事を思い出す。
夜ご飯は作ってあげた方がいいんだろうか。
いつも何だかんだ言って奢ってくれてるし、お小遣いはまだ残っているし。
これもお礼として料理をする事にし、メニューを考え材料を買いに行き、今晩の料理カレーを作っているといい時間帯になってきた。
- 122 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:00
- 「ただいま」
「あっ、たんお帰り!」
ぐつぐつ日持ちするカレーを煮ていると、タイミングよく美貴が帰ってくる。
「あれ…なんかいい匂いするけど」
「あ、うん。お礼に、あたしがカレー作ってみた。ちゃんと、自分のお金で材料買ったから大丈夫!」
「カレー?」
へぇ、と顔を綻ばせる。
「でも、後で食べるよ」
「えー、なんで?」
「亜弥ちゃん、早く中澤さんに逢いたいでしょ? 家まで連れて来てやってって頼まれてんだ、美貴」
自分の食欲より、亜弥の気持ちを先に優先してくれる。
そういうところ、すごく嬉しくて有り難い。
「美貴より遅く退社するらしいからまだ帰ってないんだけど……遅く行くより、早く行った方がいいでしょ」
「う、うん!」
「じゃ、いこっか。ちょっと遠いから」
「……へへへ」
嬉しくって、手を繋いでみる。
びっくりしたように美貴は亜弥の顔を見たけれど、それでも手を振り解きはしなかった。
- 123 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:00
-
- 124 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:01
- 「たんはぁ、裕ちゃんの家に行った事あるん?」
「ん、そうだねぇ。5回くらいかな、遊びに連れてってくれたりとか結構可愛がってもらってるし。
その分、亜弥ちゃん迎えに行かされたりパシリ扱いされてる気もするけどー」
パシリ扱いされてる割には不快じゃない顔で、美貴が言う。
亜弥は、2cm程高い身長の美貴の顔を見つめながら聞いていて。
美貴の最寄駅から乗り換えも入れて、電車で6駅。
そこから降りて、徒歩でもう3分くらい。
その間ずっと手を繋ぎながら、2人は歩いてる。
- 125 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:01
- 「泊まった事もあったよ、会社入ってすぐん時。中澤さん酒豪だからさぁ、帰してくんないんだよ。
でも上司の中の上司だから逆らえなくて、そのまま朝まで」
「ず、ずるい!」
「…言っとくけど、何もないよ…?」
「だってあたし、裕ちゃんの家に泊まった事ないもん、まだ! たんずるい!」
「いーじゃん、今日泊まるんだからぁ」
妙な嫉妬が面白くて思わず美貴は笑ってしまう。
だが笑うと亜弥は、もっと不機嫌になっちゃって。
「…やっぱ、高校、東京の高校にすればよかった」
「何、いきなり」
「そしたら、ずっと裕ちゃんの傍におれたのに」
中学三年の進路の時、一応その提案は親にしてみた。
だけど、娘が可愛くて可愛くて仕方ない父親は大反対で、結局地元の高校を選ぶ事になったのだ。
「……一年に一回は、つらいもん」
「亜弥ちゃん…」
その気持ちは、美貴にはよく分かっていた。
美貴だって、似たような経験をしたから。
- 126 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:02
- 「……って、何ブルーになっちゃってんの。
一年に一回じゃなくて、もっといっぱい逢えるように、ラブラブになれるように、告白しに来たんでしょ?」
「う、うん」
「大丈夫。亜弥ちゃんには神様より強い、美貴様がついてるさぁ」
だから心配するな、そう胸張って。
美貴様が本当に神様より強いような気もして、亜弥は元気に頷いた。
「仏様もお姫様も王子様も女王様も王様も、みんな恐れる美貴様だからね」
「そんな人があたしの味方してくれるんや」
「そう! 心強いっしょ」
「裏がありそうでこわぁい」
「ないよ」
「………アリガト」
「美貴、亜弥ちゃん気に入ってるから」
「やっぱ、可愛いって得」
「自分で言うな」
ポンッと人差し指で頭を突付かれ、よろける真似。
楽しい。
学校で友達と話しているより、楽しかった。
- 127 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:02
- じゃれ合いながらフラフラと歩いてたら、裕子が今現在住んでいるマンションに到着。
会社でも上の地位にいる裕子が住んでいるマンションは、美貴が住んでいるマンションよりずっと大きくて。
「んー…ゆっくり歩いてきたんだけど、やっぱちょっと早かったかな」
「時間?」
「うん」
腕時計に目を落とし、美貴がぽつり。
「8時半くらいには帰ってるって言ってたんだけど、まだ15分くらいあるな…。
どうする? マンションの前で待っとく? それとも部屋の前で待っとく?」
「部屋の前!」
「そか」
部屋の前で待ってて、びっくりさせてやる。
裕子のびっくりした顔が見たい。
早く見たい。
「じゃ、行こ」
「うん!」
- 128 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:02
- 美貴に手を引かれ、エレベーターに乗って。
エレベーターのドアが開いた所から見える一番奥の部屋が、裕子の部屋。
「ん? でも、電気ついてるじゃん。帰ってんのかな」
玄関のドアの右に、カーテン付きの窓。
そこから漏れる明かりは、独り暮らしの裕子が帰ってるんだと思わせる。
「驚かせる事出来なくて残念だったね、亜弥ちゃん」
「んぅ…でも、もうどっちでもいいや」
裕子が、あの部屋にいる。
それだけで嬉しくなる。
早く逢おうと走り出そうとした時、そのドアが開く。
- 129 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:03
-
「お、タイミングよく中澤さんのお出む……………」
それは、やって来た亜弥達をお出迎えする為に開かれたドアじゃなくて。
亜弥達より先に来ていた訪問者を、お見送りする為に開かれたドアだった。
そして、亜弥達が見た、想像してなかった光景。
- 130 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:03
-
男。
抱き合ってる。
キス。
幸せそう。
裕ちゃん。
気付いてない。
裕子が見ているのは、男。
「ッ…!」
「あ、亜弥ちゃっ」
気付かれないように、階段を物凄い勢いで駆け下りる。
呆然としてた美貴も、亜弥に続いて。
- 131 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:04
- 「あっ…亜弥ちゃん、待って、って…ハァハァッ」
「――く。…ぅえっ……ンッ…」
美貴が追いついて手を掴んだ時には、亜弥の目からは大粒の涙が零れていて。
美貴が親指の腹で拭いても、追いつかない。
「あっ…たし、…っひ、…っくぅー…っ。…ぁう…」
「………」
まるで、一緒だ。
美貴が体験したあの時と。
本当は、美貴より仕事が遅くなるなんて、嘘で。
亜弥を泊まらせる為、その間逢えない恋人と少しの間でも一緒にいようと、8時半まで帰らないなんて、嘘を。
本当は、家にいたくせに。
- 132 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:04
- 「亜弥…、ちゃん」
「…へ、…ぇへへっ……ゆ、…っちゃん、もぉ30やもんなっ…こい…人さん、おらん方が…」
「亜弥ちゃん」
「……………ちょ…待って。あと、もうちょっと…ッ…ック…ん」
はぁと胸に手を置いて、息を整えて。
持ってきた鏡、メイクセットで泣いた顔も整える。
どうして、そんなことをするんだろうと美貴は思った。
「いきなり…あたし、泣いてたら、裕ちゃん、困るから」
しゃっくりを堪えるように、言葉を区切って言う亜弥。
それに、泣きはらして不細工な顔、裕子に見られたくなんかない。
「…っていうか…逢えるの?」
あんなの、見た後で。
美貴は、逢えなかった。
だから、まいとはもうそれっきり。
「だって………顔、見たいもん。喋りたいもん。……一緒に、寝たいもん。
告白する前にフラれたけど……………めっちゃ、好きやもん」
「……」
泣き腫らして赤い、瞳。
その瞳に宿ってる気持ちは、泣く前から何ら変わっていない。
ただ、裕子が好き。
- 133 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:05
- 17歳の高校生が。
自分以外の人と好きな人のラブシーンを見てしまったというのに、気持ちは1つも変わらない。
もっとも亜弥の場合は片想いで、最初は両想いだった美貴とは少し違うけれど。
でも、傷ついている。
泣いている。
悲しんでいる。
亜弥は、告白するより先に、振られた。
「今、何分?」
「…え…あ、あぁ…30分過ぎてるけど」
「じゃ、行こう。裕ちゃん、あたし待ってくれてるもん」
「……」
なのに、裕子の為に笑顔を作る。
- 134 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:05
- 今度は亜弥が美貴の手を引いて、先程までいた階に向かう。
今日だけで2度目だ。
それでも亜弥はまるで初めて来たかのように、目をキラキラさせて、裕子の部屋のインターホンを。
「おー、亜弥!」
「へへっ、裕ちゃぁん!」
2人とも、まるで何もさっきの事がなかったように。
幸せそうに、抱き合ってる。
- 135 名前:幸せになる方法〜東京3日目〜 投稿日:2003/09/16(火) 17:06
-
心で、号泣してるくせに。
美貴は、それでも無理に幸せそうに笑う亜弥が、つらくて哀しくて仕方なくて。
無理したそんな顔じゃなくて、亜弥には、幸せな笑顔をして欲しい――そう、思った。
- 136 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/16(火) 17:06
- これで半分くらいでしょうか。
>JOJOさん
この先、こんな展開になってしまいました…中澤さん好きな人は見ない方がいいかもしれません(苦笑
もっともっと頑張ります。
>44さん
青アザこしらえたまま東京案内したみたいです(w
中澤さんは最初からこういう風にと決めてました。
藤本さんは……。
それと、プレッシャーかけたわけでは…すいません。
>118さん
はまってきてます藤本さん。
お嬢様の話以来の藤→松でしょうか。
あやみきは最高でつ。
>344さん
徐々に徐々に名前通り(竹が邪魔ですが)の松藤に…なれたらなと。
一筋、本当に嬉しいです。頑張ります。
>つみさん
意地悪な藤本さんも大好きなんですが、優しい藤本さんも大好きです(w
あやみきは不滅です!
- 137 名前:JOJO 投稿日:2003/09/16(火) 17:48
- おぉ!更新されてる
この展開個人的には凄く待ってました的と言ったら失礼かもしれませんが
なんか安心してるんですよね、心の中で
多分無意識的にぁゃゃ獲られなくて良かったと思ってるんですよ
もちろん姐さんには今以上の活躍を希望しています
あとはどうやって藤本さんがぁゃゃを落としにかかるかそればかりを気にしてしまいます(w
これからも更新がんばってください
- 138 名前:44 投稿日:2003/09/16(火) 18:00
- はぁ、こうなりますか・・・切ないですね・・・・
こうなると元気付けて上げられるのは1人だけですね。
頑張って欲しいものです。
>それと、プレッシャーかけたわけでは…すいません。
とんでもないです。ちょっとでも喜んでもらえて凄く嬉しかったです。
- 139 名前:チップ 投稿日:2003/09/16(火) 19:27
- 健気なあややに涙ポロリ。
でももうこれであとはいよいよ…(w
続きかなり楽しみです。頑張ってください。
- 140 名前:つみ 投稿日:2003/09/16(火) 22:45
- 藤本さんがあややを救ってくれることに期待!
- 141 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/16(火) 23:36
- 今日初めて気付きました。ちょっと悔しい(w
松浦さんが切ない…自分まで切ないです。
あと半分くらいなんでしょうか。期待してます。
- 142 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/16(火) 23:55
- まいさんは登場しないんでしょうか…
個人的にはそこらへんも見てみたい気がするのですが…
何はともあれ面白いです。
続きに期待!
- 143 名前:前スレ161 投稿日:2003/09/17(水) 04:16
- 最初〜2日目にかけて笑うこと十数回。こんな僕はだめですか?(何が
まだ半分とのことなので恋の結末(新たな恋?)の展開に期待させて頂きます。
- 144 名前:344 投稿日:2003/09/17(水) 06:26
- こ・・・これは切ないです・・・。
亜弥さんの涙に思わず自分も涙・・・。さすが作者様。
美貴様の助けに期待です。
頑張れ!あやや!
- 145 名前:名無し 投稿日:2003/09/17(水) 14:20
- やっぱ松浦を幸せにできるのは
藤本さんだけですよね。。。(安心)
藤本さん、松浦をよろしくお願いします!
- 146 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/17(水) 19:29
-
幸せになってほしい。
幸せなら、それで。
彼女が幸せだったなら、自分は、それで。
だから。だから――――
- 147 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/17(水) 19:29
-
- 148 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:30
- 「たんが、仕事休んだ?」
「そう。風邪ぶり返したんかなぁ。やっぱ亜弥泊めたん、悪かったんかな」
東京4日目の晩。
仕事から帰ってきた裕子は、亜弥手作りのパスタを食べながら、美貴の話。
「でも…風邪……」
それは嘘だったはずだ。
でももしかしたら、やっぱり本当に風邪だったのかもしれない。
そうだとすれば、亜弥は無理させてしまった事を謝らなければならないと思った。
「電話かけたら、やばいかな?」
「それが、あたしも心配でかけてんけど、携帯繋がらんねん。多分眠りこけてるんじゃないかな」
「……そっかぁ」
じゃあ明日にでも、部屋に行ってみよう。
何か、お見舞いの品を持って。
今度はカレーなんて刺激の強いものじゃなくて、お粥でも作ってあげて。
- 149 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:30
- 「それより、亜弥」
「え?」
「あのさ、明日やねんけど…」
「………あ、仕事? それやったら、別にあたしホテルにでも…」
「あー、違う。仕事は休み取ってもらってん。亜弥が姫路帰るまで遊べるで」
「!!! ほんまに!?」
「ああ」
嬉しさを隠そうともしない亜弥の笑顔につられ、裕子の顔も緩む。
だが、その顔も段々ぎこちなくなって…。
「?…裕ちゃん? どないしたん?」
そんな顔されると、心配になる。
思わず、亜弥も裕子と同じような顔に。
「あ、あのな」
「う、うん」
言葉を溜めてるうちに、裕子の白い肌は段々、赤く、紅く。
どうしたんだろう、裕ちゃんは。
亜弥はただ、次の言葉を待つだけ。
- 150 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:31
- 「あのなっ、ライブハウスいかへんっ?」
「………………ライブ、ハウス?」
「そ、そう! インディーズのバンドのライブやねんけど!」
まさか、それを言う為に言葉を溜めて赤くなってたというんだろうか。
だとしたら、意味が分からない。
「別に、あたしは…裕ちゃんとやったらどこでもいいけど……でもなんで、ライブハウス?」
はっきり言って、興味はナシ。
それにまさか裕子の口から、そんな場所が出て来るなんて。
「いや、その…亜弥は、あたしの妹みたいなもんやから、やっぱり…と思って」
「……妹、か」
はは、と掠れた笑いが思わず漏れる。
ハナから、亜弥は裕子の恋愛対象にはされていない。
それはもう、男と女も関係なく。
それに裕子には既に、恋愛対象の男がいる。
裕子は、素面で誰彼構わずキスをする人じゃない。
そんな、遊び人でもない。
裕子は真剣で真面目な人だ。
- 151 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:32
- 「あのさ…」
「ん、何、亜弥」
「あたし……実は、昨日見てん」
「…?」
「裕ちゃんが、この部屋の前で男の人と抱き合ってるの」
「えっ…」
カァーッと物凄い速さで赤に染まってく裕子の身体。
ラブシーンを、親戚に、そして多分会社の後輩にも見られた。
「ふ、ふじもっちゃんもおったんか?」
「……うん。連れてきてくれたから」
「うわっちゃー。バレたな、ほな…。じゃあ改めてふじもっちゃんにも紹介せなあかんか」
「ん…?」
改めて、ということは、美貴は過去に会った事があるんだろうか。
でも会った事あるなら、どうして、裕子に恋人がいるって言ってくれなかったんだろう。
そうしたら、心の準備だって出来たかもしれないのに。
- 152 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:32
- 「あんな、明日亜弥をライブハウスに誘ったんは、その…昨日、亜弥が見た人がライブやるからやねん」
「え。あの人、バンドマンなん?」
「…うん。つんくって名前でな。あたしもつんくさんって言うてんねんけど、本名はちゃんと別の名前があんで? もちろん」
「つ、つんくさん…」
なんか、変な名前。
だけど裕子の前じゃそれは言えない。
「でな…あたし、つんくさんと付き合ってるって事は内緒でたまにふじもっちゃんをライブハウスに連れてってあげてたりしてん。
昨日顔見たんやったら、ふじもっちゃんの奴怒ってるかもしれんな…『なんで美貴に付き合ってるって内緒にしてたんですかぁ!』って」
可愛がっている後輩だから、美貴が何を言ってどんな反応するかは、検討がつく。
想像するだけで、それはまた楽しい。
- 153 名前:幸せになる方法〜4日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:33
- 「…そっか、たんは知らんかったんや…裕ちゃんに恋人がおんの」
「うん」
だから、素直に亜弥の応援してくれて。
美貴様がついてる、なんて励ましてくれてたんだ。
少し美貴を疑ってしまった。
また、自分は知ってて、まったく知らなかった亜弥をからかって楽しんでいるんじゃないか……って。
「なぁ……亜弥、逢ってくれる?」
「………」
美貴の事を思い出していたら、すぐ前に、裕子の顔。
真剣な顔で、亜弥に懇願。
…逢いたくない。
亜弥が逢いたかったのは、裕子だ。
…………だけど。
「……うん。もちろん」
「!!! よ、よかったぁ…」
安心して幸せそうに笑う裕子を見たら、そんなこと、言えない。
- 154 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/17(水) 19:34
-
- 155 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:34
- 翌朝。
低血圧な裕子を起こし、掃除、洗濯、料理。
裕子の部屋は美貴の部屋より広く、片付けられていなかったので、それはそれは時間がかかる。
でもライブハウスへ行くのは夜からなので、掃除しながら裕子と話したりと、亜弥は久しぶりに幸せな時間を送る。
「亜弥が来てくれてほんまに助かったぁ」
「もう。裕ちゃんこんな散らかってたら、お嫁に行かれへんで」
そうだ、行くな。
行かなきゃいい、お嫁になんて。
「反対に亜弥はいつでも嫁に行けるな」
「………そう、かな」
「おう! 裕ちゃんが男やったら、亜弥をお嫁さんにしてるで!」
「へへ…ありがとぉ」
でも裕ちゃんは女じゃないか。
裕ちゃんにはつんくがいるじゃないか。
今世じゃどうにも出来ない事を言って、悲しませないで。
涙が出て来るから。
- 156 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:35
- 「…ッ…」
「ん? 亜弥?」
「ごめ、…ちょっと」
「亜弥っ?」
洗面所に入って、水で顔を洗う。
「亜弥…?」
「………」
明らかに様子がおかしいのを見られてしまった。
顔を下向けたまま黙ってる亜弥に不安そうに裕子が亜弥の肩に手をかけた時――。
- 157 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:35
- 「ばあ!」
「わっ!!」
「へっへー。裕ちゃん、びっくりした?」
「な、なんやねん一体! 泣いてるかと、思った…」
「掃除してたら目にゴミが入ったから」
「……そぉか。ならいいねん。心配ささんといてな」
「へへへ」
笑って裕子が洗面所から出て行くのを確認する。
確認した後、また、顔を洗った。
「あー……ゴミなかなか取れへんなぁ」
17年間ずっと溜まっていた気持ちは、いくら洗い流しても、なかなか、取れてはくれなかった。
- 158 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:35
-
- 159 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:36
- ピンポーン………ピンポーン……。
そんな音が、もう、十数回。
なのに、何の応答もなし。
「おっかしいなぁ」
「あたしがお昼お見舞い来た時もおらんかった。だから、会社行ったんかなと思ったけど。まだ帰ってないかなぁ」
「いや、アイツ、今日も出勤してないねん……風邪やったら家で大人しくしてるはずやのに」
何やってんねん、と美貴の部屋の前。
ライブハウスへ行く前に、一緒に行こうと美貴のマンションへ寄ったのはいいのだが、肝心の美貴がいないのだ。
「中で、し、死んでたりとかないやんな…?」
「ないやろ。っていうか、あったら困るで…。……そもそも、あの、バカが風邪ひくはずないんや。
バカは風邪ひかへんっていう言葉もあるし。どっかで遊びまわってるんとちゃうやろなぁ」
だったら先輩として、怒らなければならない。
美貴は入ったばかりの社員だ。
確かに今年の夏は忙しくて休みはなかなか取れないけれど。
- 160 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:36
- 「でも、たんがそんなんで休むわけないと思う」
「え、なんで?」
「だって、たん、お金ないもん。お金なかったら働くしかないやん」
「…ま、まあ、そやね」
そうだ。
働かなければならないのに、亜弥の為に美貴は仕事を休んでくれた。
そんな優しい美貴が、風邪ひいたと嘘をついて遊び回る事は亜弥には思えない。
「…とにかく、行こか。ふじもっちゃん、明日も休みみたいやねんやったら、管理人さんに鍵借りて中見てみるし」
「うん………」
後ろ髪ひかれる思いで、その場を去る。
思えば、あの時、美貴の前で泣いてから、亜弥は一度も美貴の顔も見てないし、声さえも聴いていなかった。
東京来る前は全然知らなかった顔と声なのに、出逢ってから2日逢わないだけで、こんなに寂しいものなのかと知った。
- 161 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:36
-
- 162 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:37
- 初めて入ったライブハウス。
そこは、想像してたよりうるさくて、怖くて。
それでも裕子がいたからよかったけど、独りじゃこんなとことても入れないと亜弥は思った。
裕子の手をしっかり握り、周りに押されながら、それでも背伸びしながら、舞台を見る。
「亜弥、ほら、ボーカルの人」
「ん…」
背伸びして背伸びして、やっと見えた顔は、あの時の顔。
はっきりじっくり見たつんくという人の顔は、なんだか気さくそうな顔。
「おらみんなぁ! 次の曲いくでぇ!」
「うぉおおお!!」
つんくの声で、観客のボルテージが上がる。
そのつんくの声を聴いて、亜弥は気付いた。
「あの人、関西弁」
「うん。面白いで。ノリもいいし。………楽しくて幸せやねん、あの人とおると」
優しい顔で新曲を歌う恋人の顔を見る裕子は、それは、綺麗で。
オンナの顔。
――敵わない。
……思わず、認めてしまった。
- 163 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:37
-
裕子を好きな気持ちは誰にも負けないとは思う。
裕子を想っていた長さも、そうだ。
だけど、どうだ。
あんな顔は、させた事がない。
敵わない。あの、人間には。
たとえ亜弥が同じ男になったとしても、それは無理な事だろう。
- 164 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:38
- 歌も聴かず、ただ裕子だけを見つめていると、いつのまにかつんくがいるバンドの時間は終わっていた。
「中、行こう」
「へ?」
ぼぉっと突っ立っていた亜弥の手を引っ張り、スタッフの人に言って入れてもらう。
控え室らしき部屋に入ると、中にはビール片手に感想を言い合ってるメンバー達。
「お、裕子ちゃんやないか」
「また来てくれたんやなぁ」
ボーカルの彼女はギターやキーボード、ドラムの人ともお友達。
気さくに話し合ってる。
「その子は? なんや、裕子ちゃんとつんくの子かぁ?」
「アホ! この子は、あたしの親戚の亜弥」
「あ…こ、こんばんは」
「それより…つんくさんは?」
この部屋には見当たらない。
亜弥につんくを紹介する為にやって来たのに、これじゃ意味がない。
- 165 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:38
- 「つんくやったら、ほら…前、裕子ちゃんがここに連れて来てくれた女の子とどっか行ったで?」
「は…?」
「なんやったっけ…あの子」
「美貴ちゃんちゃうかった?」
「美貴ちゃん……藤本?」
「そうそう。なんか呼ばれて出て行ったで。なんや、美貴ちゃんと一緒と違うかったんかいな」
「裏にでもおるんちゃうかな」
亜弥は裕子と顔を見合わせる。
風邪と言って仕事を休んでいた美貴。
家に行っても携帯にかけても出なかった美貴。
それが、何故、ここに。
- 166 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:38
- 「あの子…いつのまにつんくさんと仲良くなったんや…っていうか、仕事どうしてん、まったく」
「……」
亜弥を連れて美貴を探す裕子の口は、絶えず動いてる。
何でもないように見せて、実はほんの少し、自分よりつんくと逢った美貴に嫉妬しているのかもしれない。
少し不機嫌そうに亜弥の手を引いて言われた通り裏へと行ってみると、関西弁と、少し鼻にかかったような女の子の声。
「…ねぇ」
「アホ、何言うてんねん。冗談やったら他の奴にしろや」
「冗談なんかじゃないですよ。本気ですよ……美貴」
「――!」
それからしばらくして突然、声が止んだ。
そして、裕子と亜弥は見てしまった。
- 167 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:39
-
――――キスシーンを。
- 168 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:39
- 密着して、美貴は首に手を回して。
つんくの手は、美貴の肩に。
その肩に乗せていた手は、2人に気付いたつんくによって強く前に押される。
それによって離れる、唇、身体。
唇をぺろりと舐めた後、2人がそこにいることを知ってたかのように、美貴は、楽しそうに笑う。
「…………やっば。内緒にするつもりが、見られちゃった。中澤さんに。つんくさんと美貴の、浮気現――――」
――バシッ!
笑って楽しそうに言う美貴の顔に、裕子のドぎついビンタ。
「…あたしが、バカやった!!!」
「ゆ、裕子!! ちょっと待て!!!!」
後輩に裏切られ、恋人に裏切られ。
どうしようもなくなってしまった裕子は、亜弥を置いてどこかへ行ってしまった。
そして、当然のようにそんな裕子を追うつんく。
- 169 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:40
- 残った亜弥と美貴の間には、ただ、静寂だけ。
何も言わない、美貴は。
ただ、叩かれた頬を押さえて俯いてるだけ。
「………た…ん」
「………」
「たん……」
「………」
なんとか亜弥が声を出しても、何も発してくれない。
初めの頃は、亜弥が無視してても、喋りつづけていたのに。
「あ……あたし…たん、…たんが、何も言ってくれへんかったら、許されへん……」
「………」
「…たん!」
「………」
「裕ちゃんに、悲しい顔させた。裕ちゃん、傷つけた。
………なんで? たん、あの人の事、好きやったん…………?」
「………ちがう。好きなんかじゃ………ない」
「! じゃ、じゃあなんでっ!!!」
それでも顔を上げない。
髪の毛が邪魔で、顔が見れない。
今、美貴はどんな顔してるんだろう。
亜弥には分からない。
- 170 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:40
- 「……ちゃ……せになって……から」
「? たん、もう一回」
理由を聞きたい。
いくらからかうのが好きな美貴でも、こんな事は冗談でもしないはずだ。
美貴の口から、はっきり理由を聞きたい。
「…亜弥ちゃんに、幸せになってほしかったから」
「――え、?」
「……美貴はただ、亜弥ちゃんに幸せになってほしかっただけ……。
中澤さんより、亜弥ちゃんに幸せになってほしかっただけ…………それだけ、なの」
神様より強い美貴様がついてるから。
神様がみんなの味方なら、美貴様は亜弥だけの味方。
好きな人が幸せなら、それだけで。
他の人なんかどうでもいい。好きな人が、幸せになるなら。
- 171 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:41
- 「…純粋で、やんなっちゃうよ………言う通り、惚れたんだもん。ほんっと、バカだぁ、美貴…。
ちくしょー…なんで好きになるかな……いつ好きになったんだろ…ならなきゃよかったのに………」
「た、たん?」
「…………でも、好きになっちゃったから。亜弥ちゃんには、幸せになってほしいんだ」
美貴が告白しても一秒で振られるって、分かっていたし。
それだったら、その好きな人に幸せになってもらいたい。
どうすれば、亜弥が幸せになれるのか。
美貴は考えた。
裕子がつんくと別れれば、亜弥にだってチャンスが。
そのためには、裕子とつんくは別れなければならない。
美貴は知ってたんだ。
きっと必ず、裕子は今日のライブに訪れ、そして、控え室までつんくに逢いに来る事。
あとは、タイミングを見計らって、さっきみたいにすればいい。
- 172 名前:幸せになる方法〜5日目〜 投稿日:2003/09/17(水) 19:41
-
「…たん……っ。アホ…ほんま、たんってアホ…ッ…」
人の幸せを願っても、自分が幸せにならなきゃ、何も、意味はないじゃないか。
- 173 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/17(水) 19:42
- え、えっと……色んな意味で申し訳ありません!
あ、あと2回で…終われると思います……。
>JOJOさん
凄くお待たせしました(w
しかし今回の展開は見事に裏切ってるかもしれません…
これからも頑張ります。
>44さん
切なくさせて申し訳です。今回はいかがだったでしょうか…。
風邪をひいてしまいめっさ元気じゃないのですが、頑張りたいです。
>チップさん
泣かないでください・゚・(ノД`)・゚・
あとはいよいよ…と、いきたいのですが、どうでしょうか。頑張ります。
>つみさん
期待に応えれるように頑張ります。
- 174 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/17(水) 19:43
- >141さん
気付いてくださり有難うございます。sage更新で申し訳ありません。
半分は間違いでもうすぐ終わりですが、ラストスパートで張り切りたいです。
>142さん
里田さんは…すいません登場しません。
登場するとしたら、番外編か何かじゃないと…すいません。
あやみきの次にまいみきが大好きなので、登場させるとそれこそ収集つかなくなるので諦めました(w
続き頑張ります。
>前スレ161さん
笑ってくれて有難うございます。密かに狙ってたのでスルーされる方が哀しいです(w
小ネタが好きなので、どうしても入れてしまいます。
前スレ161さんは、だめじゃないです。だめは自分(ry
>344さん
うわーん。すいません、切なくしてしまって…。
ぁゃゃ、頑張ります。
>名無しさん
リC|VvV)<任せとけ!
- 175 名前:334 投稿日:2003/09/17(水) 20:03
- ちきしょぉぉーーダメだ!!
なんつー意志の弱さ!定期的にレスをしたくなる衝動に駆られる!
それほどおもしれぇーー!!
つーかなんなの、この松浦さんの気丈さは。
リアルでもどんな時でも笑っている感じがしますもんね。あの力はホント凄いと思います。
今回の更新を読んで、ふとリアルの松浦さんの努力にも気付きました。ありがとー
- 176 名前:334 投稿日:2003/09/17(水) 20:10
- あれ、前回の読んでレス書いてる間に新しい更新来てた(w
連続レスすいません・・・・・・・。
つーか、普通に号泣しちゃいました。
久しぶりに娘。小説で泣いた気がします。またもありがとー
- 177 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 20:10
- こうなったらもう、藤本さんの気持を無駄にするわけには行かないぞ! 松浦さん。
いや、それじゃだめなのか?
いや、それでいいはずだ!
……どうなんだ?
略奪愛上等。誰が誰から?
- 178 名前:44 投稿日:2003/09/17(水) 20:39
- 松浦さん気丈ですねー。
藤本さん健気ですねー。
2人とも幸せになって欲しいです。
- 179 名前:JOJO 投稿日:2003/09/17(水) 20:40
- そっちへ展開してしまうとは…
まったく予想を大きく外されました
つんくに対して殺意の波動が目覚めるかと思いましたよ
藤本さんの唇はぁゃゃだけのもののハズなのに…
何はともあれぁゃゃの恋は実るんでしょうか
そして藤本さんはどうなるんでしょうか
精神崩壊が始まりそうなのでミキオネアを見つつ待ってます
- 180 名前:名無し 投稿日:2003/09/17(水) 21:00
- >>179
頼むから、ネタバレレスすんの、やめてくれへんかなー。
かちゅ入れてても、そーゆーレス、ウザイんだけど。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 21:21
- みんないい人過ぎるんだよなあ。優しすぎ。
すんなり幸せになれるはずなんだけど…
>>180
まあまあ、もうちょいやらかく言おうや。ほら、スレの空気が…ね。作者さんも困るだろうし。
でも、179さんはもうちょい考えたほうがいいと思うよ、ワタクシも。
- 182 名前:344 投稿日:2003/09/17(水) 22:10
- 驚愕の新展開!いやいや、すごいですね。
美貴さん、あんたはすごいよ!
作者様、あと二回ですか。
超作期待してます!
- 183 名前:ほわ 投稿日:2003/09/17(水) 23:44
- ハァハァ・・・まさかこんなことになってしまうとは・・・
ていうかつんくは予想の外の外にいたんで完全に不意打ちを食らった気分です・・・
あぁ、ぁゃゃはこの後どういう心境に陥ってしまうのかを考えたら・・・考えたら・・・
あと二回ですか。
逆にもうちょっと長引くことを期待してしまうのは罪でしょうかw
ではがんばってください
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/18(木) 01:50
- むむ。多少、引っかかるものはありますが。
誰とは言わない。>>179みたいに皆さんに怒られる(w
と、蒸し返すのもよくないですよね。すいません。
更新あと二回ですか。楽しみです。
- 185 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:25
- 「亜弥、夜ご飯出来たで。裕ちゃんの手作りや!」
「……ほんまや。美味しそう」
昨日あんなことがあったにも関わらず、裕子は何も表には出さない。
あれから亜弥が家に帰って来たら、置いて帰った事を謝ったくらいだった。
でも、亜弥は知ってる。
どこにも出かけてなんかいないのに、裕子のメイクが、いつもより濃い事。
携帯の電源を、オフにしている事。
明らかに裕子は、昨日の事について避けている。
「あ、あんな、裕ちゃん…」
「ほら、亜弥早く食べ。大丈夫、不味くないから!」
「……う…ん」
言わないでくれ、と口には出さないけど全身で言っている。
それによって、亜弥はなかなか言う事が出来ない。
ただ、黙って裕子の作ってくれた料理を食べるだけ。
- 186 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:25
- 楽しくない。
こんな気持ちのまま食べる裕子の手料理、楽しくない。
それでも、亜弥が昨日の事を口に出す事で、裕子が悲しい顔をするのは、嫌で。
どうしよう。
どうすればいいんだろう。
あと亜弥がいる日数は、もうわずか。
このままで、いいわけがない。
「なあ、裕ちゃ――」
――ピンポーン。
思い切った亜弥の呼びかけは、インターホンに邪魔される。
「……? 裕ちゃん?」
「…」
だけど、インターホンが鳴ったのに、立ち上がってドアを開けようとしない裕子。
聴こえなかったなんて事、ないはずだ。
亜弥が座ってご飯を食べている位置より、裕子が座ってご飯を食べている位置の方が玄関に近いんだし。
- 187 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:26
- 「…鳴ってる、けど」
「………いいねん、どうせ新聞の勧誘かなんかちゃう?」
インターホンの音なんか聴こえないとばかりに無視して、料理を口に運ぶ。
「裕ちゃん…」
つんくだと思ってるんだ。
だから、裕子は出ない。
でも、つんくだったら、尚更出ないと。
このままじゃ、裕子は……。
「じゃあっ、あたしが代わりに出る!!!」
「あ、ちょ、亜弥っ」
裕子の止める声も聞かず、玄関に。
勢いつけてドアを開けると、そこにいたのはつんくじゃなくて。
「………たん」
美貴、だった。
- 188 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:26
- 「あ、あのさ、これ、忘れてたから」
「…あ………ご、ごめん」
美貴の部屋に、妹の為に買ったお土産を忘れてた。
それを届けに来てくれた美貴。
「それと……中澤さんは?」
「中に…おる、けど」
「……」
「た、たん、あたしやったら、もういいからっ。だからたん…」
もうやめて。
その言葉は口に出来なかった。
リビングにいた裕子が、玄関にやってきて、びっくりしたから。
「……藤本……」
「…昨日は、どうも」
いつもみたいにふじもっちゃんではなく。
いつもみたいに笑ってなくて。
亜弥が1週間見てきた、仲のいい先輩後輩の関係は、昨日で見事に壊れていた。
- 189 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:27
- 「美貴が、憎いですか?」
「………」
「上司の彼氏とキスした、美貴、憎いですか?」
「…っ…」
「あんな浮気性な奴なんか、別れちゃえばいいんだ。中澤さんなら他に、いい人いますよ」
「っるさい! あんたにっ……あんたに何がわかんねん!!!」
「ゆっ、裕ちゃん!」
ガシッと裕子の腰に手を回して、今にも殴りかかろうとする裕子を亜弥が必死で押さえる。
美貴はその様子を、薄笑いで見てるだけ。
- 190 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:28
- 「藤本っ…なんでっ……なんで…」
「……………別に」
「別に…? 意味もなく、あんなことしたん? なぁ、なあ…藤本ぉ!」
「…さっさと別れちゃえ」
……っ、「あんたに言われんでも、別れるわ!
………でも、なぁ、入ってきた時から可愛がってた後輩にオトコ取られた気持ち、分かる? あんたに」
「もう、今日会社に辞職願い出してきたんで、後輩でもなんでもないです。今まで、ありがとうございました」
「ふっ、藤本ぉ!!!」
そのまま頭下げて、去って行こうとする美貴。
力が緩んでいた亜弥の手を振り払って裕子は飛びつき、美貴を背中を部屋の前のマンションの壁にぶつけさせる。
「…う……て…」
「った!!」
「あんたってやつは……っの!」
「もうやめてよぉ!!!!!」
亜弥の突然の大声に、振り上げた裕子の手が、ぴたりと止まる。
大人しく殴られようと目を瞑っていた美貴の目が、ゆっくりと開く。
- 191 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:28
- 「ゆ……ちゃ………たん、責めんとい、って。たん…っく、…たん悪くない……」
「あ、亜弥! なんでっ」
「たん殴らんといてぇ」
えぐえぐ泣きながら、裕子の前に回り今度は美貴の腰へと手を回す。
美貴を、回るように強く、ギュッと。
「たんはぁ……たんは、あたしの……ためにぃ…ぅ、んっ…んぅ…」
「あ、亜弥ちゃん、何言って…」
「たんは…悪くない…」
「違うよっ、美貴が勝手に…!」
「…ゆ……ちゃん好きになった、あたしが………悪い」
「へ?」
裕子にとって、それは初耳。
緊迫してた空気のところに、拍子抜けしたような、間抜けな声。
- 192 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:29
- このまま黙ってるなんて出来なかった。
裕子が中澤に怒る気持ちも分かるし、美貴がした行動も、亜弥は全部知っているから。
だからこそ、気持ちを伝えなきゃならないと思った。
たとえ、裕子に迷惑がられたとしても。
息と涙を整え、亜弥は覚悟を決める。
「あ、あたしは………ずっと、小さい頃から、裕ちゃんが、好きで。
親戚のおねえちゃんっていう事で好きじゃなくて、裕ちゃんに、恋してて。
ほんまは……今回の東京行きも、裕ちゃんに逢いたいからっていうのと、裕ちゃんに気持ち伝えたいからって目的があってん…。
好き、って。そんで、裕ちゃんとずっとイチャイチャしたくて、ラブラブになりたくて……」
「あ、あや…」
「…あたしは、裕ちゃんと幸せになりたかってん。
………でももう裕ちゃんは、別の人と幸せになってたみたいって、3日目に、知った。失恋」
幸せになりたかった。
ずっとずっと夢見てて。
それが、破れた。
- 193 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:29
- 「たんは、あたしのそんな気持ち知ってて……。たんは……たんは、泣いてるあたしの………」
「もう、いいよ、亜弥ちゃん」
「よくない!! たんはっ、悪くない! そ、そりゃ、裕ちゃんの恋人さんとキスしてたけど…っ、でもそれも、あたしのために!!
裕ちゃんが恋人さんと別れたら、あたしと幸せになってくれるかもって、たんは……!!!」
「…………わかった」
ごく静かに。
裕子が頷く。
そして頷いた後、先程は亜弥の声に止められ出来なかったビンタを、美貴の頬に。
「裕ちゃん!!」
「分かったけど……それでも、それとこれとは別やから。それから、亜弥」
「え…な、何?」
「あたし、思いっきり殴って」
「ええ?!」
何を突然言い出すんだ、裕子は。
冗談かと思えば、裕子は真剣な顔で亜弥を見つめてる。
「で、出来ひん…」
「あかん。じゃないと…」
「無理っ」
「じゃあ、美貴がする」
「ッ――」
亜弥の代わりに、力の限りのビンタ。
裕子の白い肌は、みるみる内に赤く染まる。
- 194 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:30
- 叩いた手を握り締めて、美貴は。
「なんでっ……もっと早く気付いてやれなかったんですかっ…。
なんで…………なんで、気持ち応えてあげれないんですか、中澤さん……応えてあげてくださいよっ」
叩かれた頬に手を当てて、裕子は。
「…ごめん。ごめん、亜弥……………ほんまに、ごめん………ごめんな、あたし…っ…」
美貴の涙は、亜弥を幸せにする事が出来なかったから。
裕子の涙は、亜弥の気持ちに今までずっと気付かず、気付いた今も、気持ちに応えてやる事が出来ないから。
そして――――。
「…ふぇ…う、…ぅ…………うぁーん」
亜弥の涙は、17年想い続けて来た気持ちに踏ん切りをつけたから。
- 195 名前:幸せになる方法〜東京6日目〜 投稿日:2003/09/18(木) 18:30
-
長かった恋も、夢も、終わる。
失恋、だ。
- 196 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/18(木) 18:31
- 次でラストでつ。
>334さん
定期的レスありがとうございます(w
読んで頂いてるときに更新して申し訳ありませんでした。
こんなので泣いていただけるとは……嬉しくて涙が出そうです。
>177さん
略奪愛上等!
…えー、誰が誰からしたらいいんでしょうか(w
>44さん
題名が題名なので、幸せになってくれないと、本当に困ります…ああどうしよう。
2つもネタ使わせて申し訳ないです(w
>JOJOさん
展開はまるで無視みたくなってるので、自分でもどう転ぶか分からないお話でした…。
だから、勢いで書くとこうなるのは重々分かってるはずなのに…。
精神崩壊が始まる前に更新したいと思います。
- 197 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/18(木) 18:31
- >名無しさん
すいません、自分も何かしら言っておくというかそういう配慮が必要でした。
申し訳ございません。
>181さん
悪い人も書きたいんですが…なかなか。
すんなり幸せにしたげたいです…
>344さん
驚かせてしまい、すいません。
ラストまで頑張ります。
>ほわさん
まったく唐突に名前を出してしまい本当に申し訳ないです…。
ぁゃゃ、こんな感じなりました。
長引くとまたスレが怖いので考えます(w
>184さん
わざわざ黙ってくださり有難うございます。
それと、お気を遣わせてしまいすいません。
お待たせしました、更新しました。
- 198 名前:JOJO 投稿日:2003/09/18(木) 18:57
- あぁ…。展開がわからない
けど姐さんへのベクトルが消えたということは残す道はあと1つ!!
もう終わってしまうんですか
次回作があるのならそれにも期待したいです
ラストの更新がんばってください
昨日はとんだご迷惑をおかけしました
自分ではネタバレのつもりは無かったんですがそういう感じで書いてしまった為、
ネタバレと受け取られるのもごもっともだと思います
とても不快にさせてしまってすいませんでした
- 199 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/18(木) 19:17
- 凄いことになってきましたね
うまくまるく収まるのでしょうか
幸せになってくれないと僕も困ります (^-^;
次もますます期待してます、頑張って。
- 200 名前:344 投稿日:2003/09/18(木) 21:29
- うんうん! 凄い!
この展開! キマシタ!
頑張れ亜弥美貴!
明日のラスト更新、期待しています。
- 201 名前:334 投稿日:2003/09/18(木) 23:21
- だから泣いちゃうっての!!
くそぉー。みんな不器用過ぎるよぉ。
でもこんがらがっていた知恵の輪がやっと解けた感じがします。それが良い事であることを願っています。
こういう話も書けるから凄い。
さぁー、新しいティッシュ買いに行って鼻水と涙拭こう。
- 202 名前:ほわ 投稿日:2003/09/19(金) 01:29
- なんだか年上ふたりが大人で、ぁゃゃだけまだまだ子供な感じで・・・
でもこの失恋で少し大人になってる(気がする)感じで・・・
なんだか青春がつまってますね
ばりばりの女同士の恋愛なのにw
次でラスト・・・
最後の締めで作者さんはどんな魔法をつかうのでしょうかw
期待してます
- 203 名前:名無し 投稿日:2003/09/19(金) 13:02
- これだけ言わせてください。
藤本さん、亜弥ちゃんを幸せにできるのはあなただけです!
- 204 名前:幸せになる方法〜東京最終日〜 投稿日:2003/09/19(金) 17:15
-
「忘れ物ない?」
「うん。だいじょおぶ」
「そっか」
新幹線の駅のホーム。
荷物の最終確認。
出発まであともう少しだ。
「………こぉへんな、あいつ」
「……え?…あ、うん」
「何してんねん…」
キョロキョロと裕子が視線を彷徨わせたけど、見当たらなくて。
亜弥の方へ向き直ると、亜弥は一点を見つめて少し笑った後。
「…まあ、いいよ」
「でも…」
「いいから」
亜弥に強い口調で言われると、さすがにそれ以上、裕子は何も言えなくなる。
それからしばらく、沈黙があって。
耐えかねたように、亜弥の方から口を開いた。
- 205 名前:幸せになる方法〜東京最終日〜 投稿日:2003/09/19(金) 17:16
- 「仲直り、した?」
「…うん?」
「恋人さんと」
「…………あー、……うん、したよ」
「そっか、したんや」
他の女、しかも会社の後輩とキスしてる所を目撃した裕子。
怒って一時は別れると言っていた。
それが昨日、原因は分かったから。
「あれからあいつ、亜弥が泣き疲れて眠った後、『キスしたのは一方的だったんです。悪いのは全部美貴なんです』って言って。
その後携帯出ても、つんくさんは謝りながらもふじもっちゃん……庇うしな。
『あの子にもきっと、何かあったんや。だから、あの子の話も聞いたってくれ』って。
結局、大人げなかったのはあたしだけやってことや。……なんか、怒ってんの馬鹿らしなった」
「………そ、っか。あ…たんの辞職のは……」
「社長に言うて止めてもらった。今の時代、就職難やし、あのアンポンタン雇ってくれるとこ、うちんとこしかないしな」
「よかった…」
亜弥に幸せになってもらう為に、とことん悪者を気取ってみせた美貴。
しかしネタバレをしてしまうと、もう、それは馬鹿らしくてしょうがない。
- 206 名前:幸せになる方法〜東京最終日〜 投稿日:2003/09/19(金) 17:16
- 「どいつもこいつも、優しいんやから。自分の事一番に考えたらいいのに」
「…うん」
「って、亜弥もやん」
「え、あたしぃ?」
何を一体、と頬を膨らませる。
自慢じゃないが、常に自分の事を考えてる。
「亜弥は、自分が告白したらあたしが困るからって、気持ち伝えへんかってんやろ?」
「………あ、あぁ……」
「言ってくれたらよかったのに。…って、気持ち気付かへんかったあたしもあたしやけど」
「言いたかった。言いたかったけど……」
「気、遣わせてごめんな。それと、好きでいてくれて、ありがとう」
頭の上に手を置いて、ぐしゃぐしゃと撫でてやる。
「好きって気持ち…迷惑じゃない?」
「迷惑? なんで? 人を好きになるのって、素敵な事やん。
あたしは、こんな可愛い亜弥に好かれて、すっごい嬉しいで」
「……裕ちゃあん」
やっぱり好きだ、大好きだ。
好きになれて、よかった。
ずっと好きだった17年間は、何も、無駄じゃなかった。
抱き締めて、裕子の匂いを嗅いで。
もうすぐ発進の合図を聞いて、亜弥は、ゆっくりとその手を離す。
- 207 名前:幸せになる方法〜東京最終日〜 投稿日:2003/09/19(金) 17:17
- 「………なぁ裕ちゃん、今、幸せ?」
「うん、幸せやけど…?」
「あたしも、裕ちゃんに負けへんくらい、幸せになる。ほんまは、裕ちゃんと幸せになりたかったけど……さ」
「……うん。幸せになって」
「裕ちゃんに負けへんくらい幸せになるには、どうしたらいいか考える。それで、考えついたら、絶対、裕ちゃんより幸せになるから!」
「あたしも負けへんでぇ」
「……へへへ。じゃあ、ばいばい」
「ばいばい」
扉が閉まって、亜弥と裕子の間は区切られて。
そのまま2人見つめ合って、新幹線は出発した。
- 208 名前:幸せになる方法〜東京最終日〜 投稿日:2003/09/19(金) 17:17
-
「………ふぅ」
長かったようで短かった1週間。
それが今終わる。
くるりと裕子が向きを変えると、おかしな人影。
「……来てたんやったら、そんなとこにおらんとちゃんとバイバイくらい言うたらよかったのに」
隠れてたつもりなんだろうけど、バレバレだ。
だって、声出して号泣しているんだもの。
亜弥は、気付いてたんだろうか。
じっと隠れて見ていた美貴の存在に。
気付いていたからこそ、ああやって、何も言わなかったのかもしれない。
「…う、うっさいです…」
「泣くな。また来るって」
「な、泣いてない!!」
「意地張るのはいいけど、あんた、会社どーしたん」
「へっ?」
「辞職願いやったら、却下されたで」
「え………」
「ふじもっちゃんはあたしの後輩や。
あたしの恋人に理由がどうであろうとキスしたからには、いっぱいコキ使わせてもらうからな」
「うあ、うわ…わー!」
- 209 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:17
-
- 210 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:18
-
幸せになる方法。
ずっと考えてた。
どうやったら、裕子以上に幸せになれるのか。
失恋してすっきりしたはずの心にひっかかるものはなんなのか。
その答えがようやく、分かったような気がした。
- 211 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:18
-
- 212 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:19
- 「ママ」
「うん? どしたん?」
「明日っから、冬休みやね」
「…それが? 今年はどこにも連れていかへんで」
「うん。それは分かってるから、あたし、1人でどっか行こうかな、って」
「はあ? どこ行くんよ」
「東京」
「東京って。何しに行くんよ? また裕ちゃんに会いに行くん?」
「裕ちゃんには会うけど…違う。……………幸せに、なりに行くねん」
- 213 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:19
-
新幹線で、ガタンゴトン。
荷物はギューギュー。
目的地に着くまで、スゥスゥ熟睡。
そして、いざ。
- 214 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:19
- インターホンを押して、出て来るのを待って。
数ヶ月ぶりの、再会。
部屋の主の名前は――藤本美貴。
訪れた客人は。
「……はい、誰?」
「久しぶり。あたし」
あたし、って。
覚えてる。本当に久しぶり。
というか、美貴はもう逢えないと思ってた。
「なぁ、たん」
「はっ…は? え、え、何?」
驚いてる美貴の事なんか気にせずに、話し掛けて。
- 215 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:20
-
「なぁ、たん」
「はっ…は? え、え、何?」
驚いてる美貴の事なんか気にせずに、話し掛けて。
「たん、今、幸せ?」
不安そうに首を傾げて、上目遣い。
ずっと逢えなくて諦めてたのに、それだけで美貴の想いは、もう、抑え切れなくなる。
「……は、何、いきなり。………っていうか、幸せじゃないよ…」
「よかった。あたしも、今、幸せじゃないねん。でも、あたし、考えてん、あれからずっと」
「…………?」
「2人が、幸せになる方法」
にっこりと笑った笑顔は、夏休みに見たそれと、1つも変わらない。
それどころか、もっと可愛くなった気がする。
「2人って……………あ、亜弥ちゃんと、美貴が?」
「うん。こうすれば、幸せ」
- 216 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:20
-
キス。
- 217 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:21
- 「……ファーストキス。結局、たんと」
それは、軽い、合わせるだけのキスだったけれど。
亜弥が、まだ誰も触れてない唇。
それがさっき、美貴の唇と合わさった。
「…………っ、セカンドキスだって、それ以上のキスだって、渡すもんか、誰にも」
思わず美貴は、泣きそうになる。
初めて、自分が幸せになれた。
それも、幸せになってほしい人と。
それは、最高の幸せ。
- 218 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:21
-
「…関西弁、練習してた?」
「……うん、してた」
「じゃあ、関西弁で、告白して」
抱き着いて、美貴が囁くのを待って。
亜弥は静かに、瞳を閉じる。
「亜弥ちゃんの事が…………めっちゃ、好きやねん」
「へへへ………合格」
- 219 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:22
-
人から好かれるのは、こんな嬉しくて。
その気持ちに応えて抱きつくのが、こんなに気持ちよくて。
「もぉ…やっぱ中澤さんの方がいいって言っても、無理だからね…」
「いたたっ、たん痛いよぉ」
「亜弥ちゃんどっか行っちゃいそうだから、緩めない」
抱き締めてる腕に力を込められても、楽しくて。
嫉妬のような美貴の言葉も、可愛くて。
「どこにも行かへんもん。ずぅっと、ずぅーっとここにおるもん」
「で、でも帰るんでしょ? 冬休み終わったら……夏休みも帰ったし…さ」
「んーん。もう、好きな人と離れるの嫌やもん。
裕ちゃんは、離れてたからあーいう残念な結果になったと思って。だから、たんとはもう離れへん」
「…そんなの……嬉しすぎる」
それを実現させるには、両親や色々な障害はあるけれど。
それでも、一緒にいたいから。
- 220 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:22
-
「で、でもさぁ…」
「うん?」
「亜弥ちゃん…いつ美貴の事…」
「分からへん」
「……はっ?」
「だってあたし裕ちゃん一筋やったもん。フラれた時は、めっちゃ哀しかったし。
でも……帰りの駅のホームに、たん、見つけて。泣いてるんやもん、たん。
最初は意地悪やったけど、優しくて……変で、応援してくれて……あたしを、幸せにしてくれようとした。
だからあたし、考える事にしてん。
その時出来た不思議な気持ちと、幸せになる方法。
ちょっと時間がかかったけど………やっと、その答えが出た」
「…」
「…あたしも、たんの事……めっちゃ好きやねん」
考えてる間、ずっと逢いたかった。
逢いたくて逢いたくて逢いたくて。
裕子じゃなくて、美貴に逢いたくて。
裕子の事は今でも大好き。そして美貴は、日を過ごす事に好きになって。
逢えなかった間、その想いは形になって膨らんだ。
それで、気付いた。
そして、2人がいっぺんに幸せになる方法も、分かった。
- 221 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:23
-
「…関西弁でサル似でもいい?」
「可愛い」
「…めちゃくちゃ独占欲強いけど」
「美貴だってそうだからいい」
「……裕ちゃんの事17年間想ってたのもいい……?」
「これから、ずっと美貴の事想っててくれたら、中澤さんの17年間なんかすぐに超せるよ」
心変わりは許さない。
心変わりなんかしない。
ずっと見つめてくっついててもいいんだということを、知ったから。
「………たん、今、幸せ?」
「うん………すっごく幸せ」
「よかった…あたしも、めっちゃ幸せ」
- 222 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:23
-
2人のこれからも、幸よ、あれ。
- 223 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:25
-
(^▽^)<…ハッピー?
- 224 名前:幸せになる方法 投稿日:2003/09/19(金) 17:26
-
(^▽^)<ハッピー!
- 225 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/19(金) 17:27
- これにて完結です。
ラストは当初のより大分追加してみましたが、追加しても何か足らない疑問が残るのは、作者の力量不足です、ごめんなさい。
次お会いする時は、れなみきで!
……う、嘘です松浦さんごめんなさい。
また、藤本さんと松浦さんの2人でお会い出来たら嬉しいです。
恋愛ってなあに?が終わった後にいくつかネタを頂いたので、それを少しでも消化出来たらいいかなと思っております。
見かけたら、また、宜しくお願いします。
- 226 名前:松竹藤 投稿日:2003/09/19(金) 17:28
- >JOJOさん
残す道へと突っ走りました。
次回作は…今回のは昔の設定引っ張り出してきたんで、当分中編は無理なので短編かなと。
ラスト頑張りました…ハァハァ…。
>199さん
うまくまるく収まってくれないと、自分も困ります・゚・(ノД`)・゚・
自分なりにみんなを幸せに…したつもりなんですが、いかがでしょうか。
おさげの藤本さんも素敵です!
>344さん
亜弥美貴に、頑張ってもらいました。更新、お待たせしました。
>334さん
泣いてくれて有難うございます…。
残ったティッシュはよく鼻をかむらしい藤本さんへ(w
>ほわさん
そうですね、ばりばり女同士の恋愛ですね(w
魔法を使えるとしたらパルプンテだと思うので、何が起こるか分かりません(w
>名無しさん
自分もそれを望んでいます。
っていうか、現実もそうに決まって(ry
- 227 名前:JOJO 投稿日:2003/09/19(金) 18:09
- ラスト更新乙でした!!
やっぱこの二人は結ばれるしかないんですよね
自分は作者さんの作品は短編でも長編でも…
読めるだけで幸せですよ
新作待ってます
- 228 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/19(金) 18:24
- お疲れ様でした。
最高の終わり方ですね。いや良かったです。
関西弁練習してみようかな?意味はないのだけど (^-^;
次回作も期待してます。
(´-`)。o0(個人的にはみきれなでもいいかなあ)
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/19(金) 18:36
- 良かったあ〜。
しみじみ・ほのぼのできました。
特に、>>206での松浦さんなりの総括を読めて、すっきりしました。実は>>157での「いくら洗い流しても〜」というあたりがですね…すごく気になっていたので。今までの気持はゴミなんかじゃないよ、素敵なことなんだよ松浦さん!と。
だから嬉しい。こうして前向きになって、新しい道が始まって、嬉しい。
精一杯頑張ってる彼女らに、幸あれ。
最後に、爽やかさをありがとう、作者さん。
新たな物語に出会える日をのんびりお待ちします。
- 230 名前:334 投稿日:2003/09/19(金) 19:43
- 脱稿お疲れ様でした。
うむうむ。こういう形のあやみきもいいですな。
今回は3連続で泣かせて頂きました。
様々なスタイルのあやみきを見させて頂きましたが、
あやみきじゃなくても通用する話が一個も無かったのが素晴らしいです。
この二人の織り成すハーモニーだからこそ一つの物語に泣いたり笑ったり出来るんだと信じています。
それを再現してくれる作者さん、本当に有難う御座います。
次回作も余韻を楽しみながら待たせて頂きます。
- 231 名前:ほわ 投稿日:2003/09/20(土) 01:55
- いいなぁ、この二人・・・
さわやかにしめましたね
パルプンテしか使えないとかいいながらきっちりここの読者全員に魔法がかかってますぞw
作者さんの魔力とあやみきの魔力は絶大ですね・・・
ところで作者さんの作品は二人がくっつくまでで綺麗に終わるのが多いかと思いますが、
一度作者さんが書く、いちゃいちゃしまくってる二人も見たいです。
変な注文しちゃいましたが、次回作、気長にお待ちしております・・・
ではまた会う日まで・・・
- 232 名前:344 投稿日:2003/09/20(土) 05:11
- 作者様、ありがとうございました。
ポジティブな松浦さんに感動。
やはり亜弥美貴は不滅です!
やはり、涙無しには終われませんでした。
次回作、期待しております。
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/20(土) 12:59
- ほわさん、ラブラブな二人は作者さんのHPで
すっごいのが見れますよ(w
自分はあのシリーズで、あやみきにどっぷりと
はまってしまった者です。
まだ目にしていない方はぜひ読むべきです。
あやみきから抜け出せなくなる可能性大ですが(w
- 234 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 13:32
- >>233
抜け出せなくなった人ですが、何か?w
今までいしよし派だったのに、あやみきばかり読んでしまい
作者さんのHPでモロ影響を受け、ことミックも買ってしまい
あややコンやおとめコンにまで逝こうと決心し
またごまっとうをやってくれないかと毎日お星様にお願いしてますw
作者さんのあやみきは最強だー!いつもありがとうございます。
- 235 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 16:58
- 作者様お疲れ様です
更新が早くて毎日楽しみにしてました
>>233
そのラブラブなお話読みたーい
と思って探して読んじゃいました
まだ途中までしか読んでないけど最高!です
素敵な情報ありがとー
- 236 名前:ほわ 投稿日:2003/09/20(土) 23:11
- >>233
貴重な情報ありがとうございます!
一気読みしたいので時間が出来たら読ませてもらいたいと思います
- 237 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/21(日) 00:26
- >>233
もしかして…例のカテキョシリーズのことですか?
あのシリーズに出逢ってから、自分の人生が変わりました(w
あれから作者さんの作品にはやられっぱなしです。
いつもあまりに萌えすぎて萌えすぎて血液が大量生産されてます。
いつでも献血オッケーですよ(w
- 238 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 10:14
- >>233-237
横槍いれるようで、どうだって感じもするんだけど、
作者さんに無断で、個人サイトの話とか、書き込んじゃっていいの?
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/21(日) 13:44
- 確かに、皆さんもう少し気を使われた方が…。
作者さんも名前を変えて書いていらっしゃる訳ですしね。
- 240 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 16:21
- とりあえず、スレ内ではそのスレの作品の話題にするべきなんだな。
…って、この話をあまり引っぱるのもスレ汚しでスマソ。跳んできます。
作者さん、また素敵なあやみき短編マターリお待ちします。
はて、あやみきなのかみきあやなのか。作者さんのどっちの作品も好きですよ。
「ネタの消化」というのも楽しみだな。
- 241 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:27
-
たくさんのレスありがとうございます。幸せものです。
>JOJOさん
やっぱり松浦さんと藤本さんのお2人が好きなので、どうしてもこんな形に。
最後まで読んでくれて、有難うございました。
>228さん
関西弁、FUNで藤本さんも「好き」と言ってくれたので、是非(w
あの時程関西に生まれてよかったと感じた事はありませんでした(w
耳だし、可愛すぎる…ハァハァ
>229さん
しみじみ・ほのぼのさせることができて、嬉しいです。有難うございます。
>>157から>>206まで、長いこと気にならせてしまって申し訳ありませんでした。
みんなに幸せが訪れてくれれば幸せです。
爽やかさを与える事が出来、私も幸せです。
>334さん
いつもいつも嬉しいお言葉、本当に有難うございます。
ありふれた下手な文章でお返しする事が出来ない自分が悔しいです。
お待たせは出来るだけさせないように、書ければいいなと思ってます。
- 242 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:28
-
>ほわさん
パルプンテがいい方に効いてくれてよかった…、そしてほわさんにパルプンテという呪文が通じてよかった(w
ほわさんの言われた通り、自分が書く話はくっつくまで前提が多いです。
なので、キスもナンバーワンでしかしてないし、その先はもちろんのこと。
いちゃいちゃしまくってるバカップルの2人も登場させたいですね。
>344さん
やっぱり松浦さんはポジティブじゃないと、と。
そして松浦さんには藤本さんじゃないと、と。
亜弥美貴は不滅です。
>233-237さん
あわわわわわわ。
あちらもこちらも読んで頂き、有難うございます。
出来ればあちらの方に感想を書いてくれると、もっと喜びます(w
名前がダサいのは同じですが、一応HNが違いますので…
まとめてのレス返し、申し訳ありません。
- 243 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:29
-
>238-239さん
こちらの対応が遅くなり、申し訳ありませんでした。
それになんだか反対に気を遣わせてしまい、すいませんでした。
またしてもまとめてのレス返し、申し訳ありません。
>240さん
ああ、跳ばないでください。大丈夫です。
あやみきなのかみきあやなのか。
個人的にはみきあやで、普段もみきあやと呼んでいますが。
あやみきと言った方が通じるのか、みきあやじゃなくあやみきの方が事実なのかわからなくなってきました。
ネタの消化、頑張りたいです。
- 244 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:31
- >>23のJOJOさんから提供して頂いたハワイネタ。
まったくその通りになってないという突っ込みは、バシバシどうぞ。
………申し訳ありません。
- 245 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:33
-
「……は?」
「わい」
「いや、だから、は?」
「だから………わい」
「…たんって、自分の事『美貴』っていうのやめて、『わい』にしたの? そんなの、関西の人もあんまり言わないよ」
「違うよ。亜弥ちゃんが『は』って言うから、続きを言ってあげたんじゃん?」
「は?」
「…わい。だから、ハワイ」
「………」
「っていうかー、前行くって言ってたじゃん」
もうすぐ亜弥の秋のコンサートツアーが始まる。
美貴がいるモーニング娘。は、亜弥のツアーより少し早く始まっている。
お互いツアーになると、会える時間が更に減ってしまうので、それまではいっぱい遊ぼう、そう亜弥が言ったのに。
- 246 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:33
-
「聞いてない。あたし、そんなこと聞いてない」
「いや、言ったし」
「聞いてない!」
「…まぁた人の話聞いてなかったんでしょ?」
「なんで信じてくんないのっ?」
「だって美貴言ったもん。っていうか、FC会報にも載ってたでしょ? 『モーニング娘。と行くハワイツアー』って!」
「あたしFC会員じゃないもん!」
「…ま、まあ、そうだけどさ」
仕事なんだし。
亜弥に黙って別の人とラブラブしに行くんじゃないのに。
独占欲の強い彼女は、ご立腹。
- 247 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:34
-
「何をそんなに怒んの? 亜弥ちゃんだって写真集でハワイ行ったじゃん」
「あたし仕事だもん」
「美貴も仕事だもん」
「うー」
「1週間くらいでしょ。前だってそれくらい逢わなかった時あったじゃん」
「前は前。今は今」
「だから何をそんなに拗ねてんのさ…」
ちゃんとお土産買ってくるから、と美貴が宥めても膨れっ面。
頭を撫でてあげても、亜弥は体育座りしていじけてる。
- 248 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:35
-
「確かにあたし、写真集でハワイ行ったよ? それにたんも行ったよね」
「あぁ…アロハロ藤本美貴ね」
「でもそれって、ソロの時でしょ? 今たん、ソロじゃないじゃん。モーニング娘。じゃん」
「………だから?」
別に自ら希望してなったわけじゃ。
そりゃ、モーニング娘。オーディションには受けたけれど。
「……あたし以外の子が、いっぱい、いる」
「ハァ?」
「だってだって……メンバーってあたしソロだから分かんないけどさ、見えない絆があるとか言うじゃん。
モーニングさん達見てても、同期の人達はやっぱりそんな絆、感じるし。メロン記念日さんのメンバーの絆、すっごいし」
「だから?」
「だから…たんもモーニングさん達と見えない……あたしが見えない絆結ばれたりしてさ……」
- 249 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:36
-
「…ようするに」
「…?」
「亜弥ちゃん、不安なんだ?」
モーニング娘。に入ってからというもの、ロクに逢えなくて。
テレビではまだ少し違和感を感じてても、意外に馴染んでる美貴がいるし。
今まではソロ同士、ということで同じ想いを感じていたのに。
美貴にはメンバーが出来て、そこから絆も結ばれるとなると。
「………そぉだよ。すっごく、すっごく不安」
- 250 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:36
-
もう、食べちゃいたいくらい好きだから。
でも食べちゃったら、逢えなくなるから。
それくらい好きだから、自分以外の人と仲良くしてる美貴の姿なんて、見るのは嫌だ。
この気持ちがなんなのか分かっている。ヤキモチだ。
しかも同じ事務所の先輩グループにヤキモチだなんて。
「亜弥ちゃんはばかだなぁ」
「!! な、なんでっ」
「モーニング同士の絆より、美貴達にはもっと強い絆があんじゃん?」
「……強い……絆?」
「そ」
事務所で初めて逢ってその後松田聖子さんのコンサートで逢って。
それから電話してメールして遊んで仲良くなって、泡風呂、シャッフル、ことミック、ごまっとう、マナー部……。
- 251 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:37
-
「絆は1つじゃないじゃん。モーニング同士の絆だったりさ、家族の絆とか色々あるし。亜弥ちゃんだってそうでしょ?」
「う…うん」
「ハワイ行ったってこれからも、美貴と亜弥ちゃんの2人だけの絆は絶対に消えないよ」
「………みきたぁん」
うわんうわんと美貴に抱きついて、美貴のお気に入りのシャツに涙つけて。
ぐすぐす鼻を鳴らしながら、亜弥が赤い瞳をして顔を上げる。
「…でも、あのね?」
「うん?」
「……モーニングさん達と絆は結んでも、関係は結んじゃダメだよ?」
「………」
しかも真顔で。
今は感動の場面なのに、どうしてそっちに話がいくんだろうか。
「あんたとも結んでないじゃん……」
「あたしは、今から結ぶ!」
「ハァっ?! え、嘘でしょっ? う、嘘じゃないの?!…きゃーーっ!!!」
- 252 名前:あやみき1 投稿日:2003/10/02(木) 16:38
-
美貴の身も心も亜弥と結ばれるのは、もう時間の問題。
- 253 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:44
- クリスマスには松浦さんがまたハワイへ行くというのに、
今頃夏休みの藤本さんハワイネタですいません…。
そしてもう1つ。
>>19のほわさんから提供して頂いたリアル系で短編〜中編のお話。
プラス、>>231でのいちゃいちゃしまくってる二人というのを自分なりに。
リアルのようでリアルでないし、こんなんいちゃいちゃしてる内に入らんぞゴルァという突っ込みはバシバシどうぞ。
でも作者、打たれ弱いです。でもまめおです。ハァハァ
- 254 名前:あやみき2(ニィ) 投稿日:2003/10/02(木) 16:47
-
「らぁぶちゃんす! だぁれにもひみぃつぅ♪ らぁぶちゃんす! それがはぁじまる、いぇい!」
「……どうやらご機嫌良いみたいですが、松浦さん」
「んっふっふっふ」
お久しぶりの亜弥の家でお泊りの日。
たんは座っててあたしが作るから、と亜弥が仕切った夜ご飯は、レトルトのカレー。
作るとか仕切るとかまったく必要はないのに、亜弥は美貴を座らせてどこか満足そう。
温め時間の3分間は、亜弥の生歌、今日はセカンドアルバム〔T・W・O〕の11番目〔ナビが壊れた王子様〕のようだ。
ご丁寧に振り付きで3分間楽しませてくれるらしい。
「あ、そうだ。あたし1人で盛り上がって、確認するの忘れてた」
「ん?」
「たん、今日は何の日か分かる?」
ご飯をお皿に置いてさあ盛り付けよう、とする前に。
もう一度、3分経って取り出したレトルトカレーをアツアツのお湯の中に入れて、亜弥が問う。
- 255 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:47
-
「今日は何の日…? それは、亜弥ちゃんの意味不明な機嫌な良さと関係がある?」
「もちろん!」
「ってことは、絶対亜弥ちゃん絡みのイベントだよね…」
自分大好きな亜弥の事。
自分が関係してないイベントでこんなに機嫌が良いはずがない。
そんな亜弥と仲良しの美貴の予想は、予想通り的中。
「デビュー、…は、4月でしょ。誕生日、…は、もう終わった」
「うんうん」
「パパさんとかママさんから何か好きなもの送ってきてもらったとか?」
「ブー。じゃあヒントね。たんとあたしが関係すること」
「はああ? 美貴も…?」
亜弥の意味不明な機嫌の良さの理由に自らも追加された。
亜弥が関係あって、それに加え美貴も……。
悪いけれど、まったく身に覚えがない。
- 256 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:48
-
「わかんない?」
「わかんない」
「たんとあたしが初めてちゅうした日なのにぃ」
「知るかっ、んなの!!!」
「なんでなんで! 大事な記念日じゃん!!」
「……」
女の子にとって好きな人とどうした何したという記念日は大切。
それを忘れられたということで、亜弥は怒り心頭。
「たんひどいよ! たん、それでも女の子!?」
「うっさいな! 女だよ、それがなんかあるわけ?」
「女の子ならちゃんと、そーいうの覚えてなきゃ!!!」
「そんなの……ファーストキスじゃあるまいし………て、あ」
これだったら、怒った顔してくれる方がマシだった。
いつのまにか亜弥の顔は静かに、無表情。
- 257 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:49
-
「あたしだって、ファーストキスじゃないもん。あいぼんとかとだってしたもん。
でも、好きな人とは初めてだもん。たんと初めてしたキスだけじゃなくて、二回目、三回目だってちゃんと覚えてるもん。
出逢った日だって、手繋いだ日だって、初めて泊まった日だって、お風呂入った日だって……」
「へ、へえええええ、す、すごいね……」
「それに……初めてえっ――」
「わわわわわわわわ!!!!!!」
「……なんで、言わせてくんないの」
「い、いや、だって」
「みきたん、忘れたいわけ?」
「そっ、それは………」
……だって恥ずかしいじゃんそんなの。
どうして亜弥は恥ずかしくないんだろう、美貴は不思議に思う。
- 258 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:50
-
「今日は、みきたんと初めてちゅうした日なの」
「う、うん。それは分かったよ」
「覚えててくれてると思ってた。ファーストキスじゃなくても、あたしとした、初めてのキス」
「…………ゴメン」
「デビュー日や、誕生日…覚えててくれたのは、もちろん嬉しいよ?
でも、そーいうのは、ファンの人とかパパもママもみんな知ってるもん。
でもでも、今日は何の日か、あたしとみきたんしか知らないのに」
「…誰にも言ってないの?」
「言ってないよ」
「ゴメンなさい……」
亜弥にとって、2人だけの大事な大事な記念日。
美貴にしか、その日を共有出来ないのに。
美貴にしか、祝う事は出来ないのに。
- 259 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:50
-
「たん、ムカツク」
「ゴメン」
「たん、バカ」
「ゴメン」
「たん、スキ」
「ゴメン。……んっ?」
「人の告白、断わるなぁ」
「ゴ、ゴメン!」
肩を押されて、その上亜弥に抱きつかれて。
華奢な美貴は、そのままソファに倒れ込む。
- 260 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:51
-
「来年は忘れないように、ものすんごい、キス、して」
「え。み、美貴から?」
「当たり前だよ」
目を瞑り、ただ美貴を待つ。
来年は、忘れないようにしなければ。
今年は許してくれても、きっと来年はそうはいかない。
それまでに別れていれば別に気にしなくていいけれど、そんな事はあり得ないから。
- 261 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:52
-
「っ、…ん、…ぅむッ……ハ…」
「……ふっ…あや……ッ、ちゃ」
こうしてキスしてる時の切なく漏れる声とか、
背中にぎゅっと手を回して離さないのとか。
全部、覚えておこう。
ファーストキスの思い出を、今、このキスで塗り替えてしまえ。
- 262 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:52
-
舌が絡み合う。
少しだけ唇から離すと吐かれる息がとてつもなく熱い。
一年前のキスとは、比べ物にならない。
それだけ、初めてのキスから2人はたくさんのキスを交わしてきた。
一年前、こんなキスが出来なかった頃。
初々しかったキスを忘れたのは、少しだけ残念だった。
「…ふぅ……お風呂、…入る?」
「ん、んぅ……中で…」
「………ん」
一年の間に、色んな事があったから。
その分、色んな事をして記念日が増えちゃったけど。
今度は全部忘れないように、日記につけとこう。
- 263 名前:あやみき2 投稿日:2003/10/02(木) 16:52
-
でも、キスがどうだこうだ言う前に。
美貴だけじゃなくって、亜弥も忘れているものがある。
「「あ、そーいえば」」
夜ご飯。
レトルトカレー。
泡風呂じゃない、透明なお湯のお風呂に、いつまで浸かっていればいいんだろう。
レトルトカレーは段々温くなってきたお湯に湯冷めしそうになりながら、亜弥の次に食べられるのをいつまでも待つのであった。
- 264 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/02(木) 16:56
- ネタ提供してくれた方の話を全部消化出来ればいいのですが、
全部消化する!という自信が持てないのも事実です。
それでも、提供してくれた方に少しでも恩返し出来るように一生懸命頑張ります。
また、提供してくださった通りにならない話で御免なさい…。
- 265 名前:JOJO 投稿日:2003/10/02(木) 20:43
- 作者様ネタを使って頂いて有難うございました!
ハワイって魅力的な場所ですよね。いろんな意味で
最後に帰国後のエピソードが欲しかったです
2つ目のほうもとても良かったです!!
自分も「T・W・O」の中では「ナビが壊れた王子様」が一番好きです
全体では「ドッキドキLOVEメール」なんですけど…
ファーストキス記念日を覚えてるぁゃゃが可愛すぎる!!
お風呂では一体何が…
次回作も楽しみに待ってます
- 266 名前:344 投稿日:2003/10/02(木) 23:42
- お! 新作始まりですね!
なんだか初期路線(?)のような二人きりでのほんわかムードが良いです。
あやや良いですね。可愛さがにじみ出ています。
- 267 名前:ほわ 投稿日:2003/10/02(木) 23:42
- (*´д`)ハァハァ
キスっていいですよね。キス大好きです(爆
ぁゃゃの唇ってやけにセクシーだし、あの唇が半開きになって舌がふぁjsdlfじゃlsdjfぁkj
すいません取り乱しました
次に何を書いてくれるのかわくわくしながらお待ちしております
- 268 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 23:59
- あややもハワイに行っちゃうらしいんで、ズバッと続編を…
- 269 名前:334 投稿日:2003/10/03(金) 01:24
- むひー!幸せやわ〜。
作者さんのあやみきを読むとホント幸せな気分になれます。
ありがとうございます、ありがとうございます。
これであと1ヶ月は頑張れます。
1ヵ月後にまた宜しくお願いし(ry
- 270 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:55
-
「唐突ですが」
「は?」
「あたし松浦亜弥、イブもクリスマスも、ハワイで過ごす事になりました」
――バリッ。
割れたポテトチップスのカスは、こぼれて床のじゅうたんに。
「あーぁ、たぁん。もう、汚いんだからぁ」
「あ……ご、ごめ」
「もー」
せっせとミニ掃除機で、美貴がこぼしたカスを吸い取る亜弥ちゃん。
掃除するのは当然。
ここは、亜弥ちゃんち。
こぼした人がホントはしなきゃいけないんだけど、残念ながらそれどころじゃなかった。
- 271 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:55
-
「いきなり、何」
「何が?」
「ハワイ」
「だから、唐突って言ったでしょ」
「唐突すぎるっつーの!」
何で何で。
何でハワイ。そんなのイヤン。イヤンイヤンハワイヤン。
そんなバカな事、やってられない。
「…仕事だよ?」
「当たり前だよ! プライベートだったら、誰と行くのさ!」
「あー。みきたん妬いてる。ひひひ、うーれしぃなぁ」
……。
妬くっていうより、怒ってるよ。
悪いけど、亜弥ちゃん。
すっげーむかつくんですけど、今、美貴。
- 272 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:56
-
まさか今年も、ごまっとうといいつつ美貴と亜弥ちゃんの二人だけだったラジオが出来るとは思ってなかったけどさ。
けどさ。
クリスマス番組、ソロ同士じゃなくなったけど、一緒に出て、その後亜弥ちゃんちでパーティーとかさ。
美貴、もう18過ぎたから亜弥ちゃんより帰りが遅くなるかもしれないけどさ。
それでも、ダッシュで帰って、亜弥ちゃんのパパとママと妹ちゃんとも仲良く過ごそうって思ってたのに。
「何、それ」
「たん達も夏休み行ったでしょ? それのあたしは、クリスマスバージョンだって」
「ファンの人と、イブもクリスマスも過ごすわけ」
「そうみたい」
「………」
- 273 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:56
-
よかったね、ファンの人。
…って、全然よくないよ。
美貴だって、亜弥ちゃんのファンなのに。
「なんで亜弥ちゃんは平気そうなわけ?」
「へ?」
「イブとかクリスマスとかさ、普通だったらその…す、好きな人とかと過ごしたいって思うじゃん!」
「あー……でも、ファンの人達と過ごすのも楽しそうだし。そういう身近で触れ合えるの、ずっとなかったし」
「…………ふぅん」
想像してたのは、美貴だけなんですか。
クリスマスの事考えて、楽しんでたのは美貴だけですか。
ああ、そうですか。
- 274 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:57
-
「いってらっしゃい」
「…? う、うん。あ、お土産」
「いらない」
「えっ、でも」
「欲しいのは、ハワイ行った時自分で買ったし。いらない」
「みきたん…何か怒ってる?」
「元からこういう顔なんですぅ」
「違うよ。元は、もっと優しい顔だもん。あたし、ずっと見てるから怒ってるかどうかくらいの区別、簡単につくもん!」
「じゃあ、なんで怒ってるんだと思う」
「えー……」
…ほんとに、なんで怒ってんだろう、美貴は。
イブとかクリスマスくらい、いいじゃん。
それに亜弥ちゃんが決めたわけじゃないんだし。仕事なんだし。
亜弥ちゃんは別に美貴と過ごさなくても、いいみたいだし。
「電話、するよ?」
「何が」
「イブも、クリスマスも、たんに」
「いいよ」
そういうんじゃなくて。
なんで、亜弥ちゃんはそれを受け入れてんの。
電話じゃなくて逢いたいよ、とかないの。
- 275 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:58
-
「………行かないで」
亜弥ちゃんが言わないから。
ほら。
思わず、口に出しちゃったじゃんか。
「行かないでよ」
美貴がハワイ行った時みたいに、駄々こねたらいいじゃん。
もう決定してるのなら仕方ないけど、美貴の前でくらい。
どうでもいいのかもとか、思っちゃうじゃん。
「むかつく」
こんな、独占欲強かったんだ、美貴。
自分が過ごせないイブもクリスマスも亜弥ちゃんと過ごせる、ファンの人達が、憎い。
美貴達がしたように、亜弥ちゃんと握手して、記念撮影して。
2003年のイブとクリスマスは、その人達にとって一生の想い出になるんだ。
「アップフロントのものなんかじゃなくて、亜弥ちゃんは、美貴のものになったらいいんだ」
だったらどこにも行かせない。
ずっと傍に。
それが出来たら、どんなにいいか。
- 276 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:58
-
「たん…」
「ハワイでもどこにでも行っちゃえ、ばかやろー」
「……最初と最後、言ってる事矛盾してるよぉ」
「…うぅ」
「最初の方が、嬉しかったんだけどなぁ。滅多に訊けないたんのホンネだったのに」
「まさか…、それが聞きたいがために、言わせた、とかじゃないよね?」
「あたし、そんなに頭よくないよ。顔はいいけど」
「…っとに、……頭、バカ」
「今のはホンネじゃないと思う」
「本音だよ!」
何が顔はいいだよ。
その通りだよ。可愛いじゃん、ちくしょう。
勝ち誇った顔がやっぱりむかつくけど、可愛いじゃん、ちくしょう。
- 277 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:59
-
「夏休みにたんがいなくて寂しいあたしの気持ちが分かったぁ?」
「夏休みとイブとクリスマスは全然違う」
「パーティー、今年は出来ないね」
「うん」
「離れ離れ、だね」
「……うん」
「ほんとは………ヤダ」
…じゃあ、早く言ってよ、それ。
言ってくれたらもっと早く、抱き締める事出来たのに。
「来年は、2人で行けるかなぁ」
「んー」
「行けたら、いいね」
美貴の肩に顎を乗せて、耳元で笑う亜弥ちゃん。
うん。
行けたら、いいね。
- 278 名前:あやみき3 投稿日:2003/10/03(金) 23:59
-
「お土産、期待しててね」
「え…だから、いいって」
「約一週間の松浦亜弥の藤本みきたんへの想い、ぜぇんぶ受け取ってもらうから」
「……返品不可?」
「返品なんか出来ないくせに」
「…くれるもんなら、もらっとく」
「じゃあそんな可愛いたんに、まつーらあやさんから、ちゅーをあげましょう」
「それは、いらない」
「えー!」
………だって。
キスは、もらうより、あげる方が好きだから。
- 279 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/04(土) 00:00
-
締めが上手くいかなかった……ガックシ。
>JOJOさん
帰国後のエピソード、ごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・
自分もT・W・Oでは、ナビ〜がお気に入りです。ライブで振り付けを見て更に惚れました。
全体ではやっぱりここはヲタとしては「女の友情問題」と言っておきます(w
お風呂では、秘密です。妄想にお任せします(w
>344さん
リアル設定の2人というのはすごく久しぶりに書きまして…。
上手く、リアルに少しでも近いように書けたらいいなぁと思って書きました。
松浦さんを褒めていただき、幸せでございます。
>ほわさん
取り乱しは全然OKです。キスは萌えます。激しくなる程萌えて(ry
次はれなみき書くぞ決めながらあやみきばかり書いてます。
>268さん
ズバッとサマータイム…じゃなく、ズバッと続編みたいなのを書いてしまいました…。
ごめんなさいごめんなさい。
>334さん
幸せな気分になってくださり、こちらも幸せな気分になります。有難うございます。
一ヶ月より前に、更新してしまいました。ごめんなさい(w
- 280 名前:JOJO 投稿日:2003/10/04(土) 00:31
- 新作早いですねぇ!!
軽く後日談みたいなものもこの話に込められていたみたいなので
自分が想像していたネタとほぼ合致しました
ありがとうございました
今度はオランダ旅行かな?
次の作品も待ってます
最近なんかステージ上で二人が「会えない長い日曜日」を藤本さんのデビュー当時の衣装を着て左右対称で踊っている夢を良く見ます
- 281 名前:ほわ 投稿日:2003/10/04(土) 00:35
- 短編(・∀・)イイ!!
寝る前にチェックしに着てよかった(*´д`)
今日はいい夢見れそうです
ぁゃすみきてぃ・・・
- 282 名前:344 投稿日:2003/10/04(土) 22:00
- いつもと違う視点での進行が面白かったです。
是非二人で、ハワイに行って欲しいなあ・・・なんて勝手な妄想をしてしまいました。
ごまっとうラジオ、今年はやらないんですかねえ?
- 283 名前:334 投稿日:2003/10/05(日) 19:05
- これ見てみたかったー!
松浦さんにかっこ悪く嫉妬する藤本さん!!
短くてもここまで想いを詰めれる作者さんすげー!
- 284 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:49
-
長女のあたし。末っ子のたん。
服はきっちりたたまないと気が済まないあたし。脱いだら脱ぎっぱなしのたん。
可愛いあたし。可愛すぎるたん。
そんな2人は、飽きずに今日も一緒にいる。
- 285 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:50
-
「字幕ってさぁ」
「うん?」
「……消えるの、早いね」
「違うよ、亜弥ちゃんが遅いんだよ、読むの」
「むぅ」
ちっちゃいソファに、肩寄せ合って。
たんが持ってきてくれたDVDを、あたしの家で鑑賞中。
だけど日本語吹き替えじゃないDVDは、たんもDVDも見たいあたしにとって、ちょっと大変。
- 286 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:50
-
「巻き戻ししようか」
「えー」
「だって分かんないもん」
流れを止められるのが嫌なのか、たんはあたしの提案を不満そうな声と顔で返す。
まあ、巻き戻しして読み直しても、分かんない字とかあったら意味ないんだけど。
「一行二行見逃しただけでしょ。んなの、ストーリーにあんま支障ないよ」
「でもこうやって言い合ってる間にかなり見逃してるよぉ?」
「美貴は見ながら喋ってるから大丈夫」
「えっ、じゃああたしだけ取り残されてるんじゃん!」
「いいからDVD見ようよ、こうして言い合ってないでさ。せっかく持ってきたんだし」
持ってきてくれても、ストーリーが。
一行二行どころか3分くらい見てない気がする。
それでも、たんに頭撫でられながら言われて、渋々また見始めたけど、やっぱり漢字が分からない。
- 287 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:50
-
「……ダメ。早い上に分かんない」
「漢字?」
「うん」
「アハハ、高校ちゃんと行けよー」
「う、うるさいなぁ。行きたくても行けないんですぅ」
笑って、あたしのおでこを軽く突付くたん。
突付かれたおでこを両手で押さえて、痛くもなかったのに「いったぁーい」と声をあげてみる。
……そしたら、見事に無視された。
虚しくて悲しくて、痛くもないおでこをおさえながらくいついてみる。
- 288 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:51
-
「たん! 今痛かったんだよ?」
「全然力入れてないよ」
「でも痛かったぁ」
「あーはいはい。ごめんね」
「…投げやりだぁ」
なんか…なんか。
もうちょっと、構ってくれたりとか、さぁ。
なんかないの、なんか。
ごめんねっておでこ撫でてくれたりとか、キス、してくれたりとか。
……って、少女漫画の見すぎか、あたし。
- 289 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:51
-
またまた虚しくなっちゃって。
なんだかDVDを見る気も失せてくる。
「…もうDVD見るのやめよう」
「はあ?! さっき見始めたとこじゃん」
「だって今更見ても、ストーリー分かんないもん。字も読めないし」
「適当に読んでたらいいじゃん。しょっちゅう難しい漢字出て来るわけじゃないし」
「やだ。じゃあたん、字幕声出して読ん――」
「いやだ」
「……早っ」
突っ込みの早い人は、断わるのも早いのかな。
せっかく出したあたしの案も、あっさりとたんに拒絶される。
- 290 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:52
-
「だってたん読めるんでしょ? だったら読んでよー」
「自分で読まないと勉強になんないでしょうが」
「たんに読んでもらって覚えるよ」
「嫌だ。疲れる。読む事に一生懸命でストーリーに集中出来ない」
「見終わった後、もっかい見返せばいいじゃん」
「じゃあ亜弥ちゃんがそうしなよ」
美貴1人で見るから亜弥ちゃんは後日スローで字幕を見て楽しんで……って。
ひどい。ひどいよたん。
- 291 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:52
-
「バカー」
「バカはどっちだバカー」
「たんの方がバカだー」
「バカって最初に言った方がバカだー」
バカバカバカと何回も、何十回も。
その内、バカを繰り返しすぎてバカがカバになってしまったところで、終わったんだけど。
終わったと同時に、またたんはDVDに集中しちゃう。
最初の字幕についていけずストーリーも分からないあたしは、DVDもたんにも完全放置をくらってる。
…いいもん。別にいいもん。
見るのが1つに絞れたから。
たんだけ見てるもん、もう。
- 292 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:52
-
「………」
「………」
じーっ。
「………」
「………」
…あ、小さいニキビ見つけた。
「………」
「………」
…画面見てるたんの真剣な顔、いいなぁ。
「………」
「………」
…やっぱり、好き。
「………」
「………あの」
ゆっくりこっちを見る目とか。…て。
- 293 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:53
-
「ん?」
「いや、見る方向間違ってない?」
「なんで?」
「画面…こっちだよ?」
そう言ってたんが指差したのは、テレビの方向。
あたしは何も間違ってない。
「だってDVD見てないもん。あたし、たん見てたから」
「…はい?」
「DVDは、たんの言う通り、たんが見終わってから見直す事にする。だから、貸してね?」
「それはいいけど………美貴見てて、なんか面白いわけ?」
「面白いっていうか…………可愛い」
飽きない。尽きない。楽しい。
自分の顔を鏡で見るより、ずっと。
- 294 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:53
-
「…亜弥ちゃん……バカじゃなくて、アホだね、アホ」
「えー、何それ」
「アホ、アホ」
……いいもん。いくら言われても分かってるもん。
たんが、照れてること。
それがまた可愛いから、つい笑ってしまう。
「笑わないでよ…」
「だって可愛いもん」
「…っ……あーもう、美貴はDVD見るんだって!」
- 295 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:54
-
可愛い可愛い。
耳まで赤い。
「おー。餃子が赤く焼けてきたぁ。ちょっと食べてみよぉ」
「…アホ」
「いったぁーい!」
赤い赤いたんの耳を折り曲げて、耳餃子を作って。
そこに大きく口開けて持ってったら、待ち構えてたようにたんにまたしてもおでこにチョップされた。
- 296 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:54
-
「何すんのぉ」
「食べるな」
「むぅ。じゃあしゅうまい…」
「も、食べるな」
「じゃあたこ焼き…」
「いーから大人しくしててっ」
「…………はぁい」
しくしく。
DVDに負けたあたし。
ことミックかマナー部、どっちか忘れたけど、その時は食べさせてくれた(フリ)のに。
今のこのあたしの気持ちを、大人しく歌に表してみる。
- 297 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:55
-
「…さーみしーくないよー、さみしーくなんかないよぉー……」
「……」
「さーみしくなんか、なぁーいよぉ〜ぅおぅおぅおぅお…」
「………嫌がらせ?」
「違うよ。『SWALL WE LOVE?』松浦バージョンを唄ってるだけだもん」
「……」
「さーみしくないよー、さみしーくなんかないよぉー……」
「……」
「さーみしくなんか、なぁーいよぉ〜ぅおぅおぅおぅお…」
「そこばっかりかよ…」
「…ここが好きなんですぅ」
「……あーはいはい。分かりましたよ」
「………んぅ?」
- 298 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:55
-
パチッとリモコン操作して、今まで真剣に見てたDVDを切って。
たんが、笑ってあたしを見る。
「…亜弥ちゃんの寂しがり屋」
「………ぅ。だって」
「でもそーゆーとこ、可愛いから許す」
「…たぁん」
よし。よし。よっし。
勝った。
DVDに勝ったよ、あたし。
- 299 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:56
-
「また今度一緒に見直そ」
「うん。…たん、字幕読んでくれる?」
「それは、ヤダ」
「………」
「べんきょーしろべんきょー」
「じゃあたん教えて?」
「…………いいよ。じゃあこの漢字、なんて読むか分かる?」
「んー?」
どれどれと覗き込んで。
紙に丸い可愛い字を書くたん。
書かれた字は、『馬鹿』。
- 300 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:56
-
「………」
「あ、分かんない?」
「………あの、さ」
「はい?」
「いくら『バカ』なあたしでも、分かるよ」
「アハハ、そりゃよかった。亜弥ちゃんはそこまで『バカ』じゃなかったかー」
「……『バカ』にしてる。たん、あたし『バカ』にしてるよね」
「『バカ』になんかしてないよぉ。『馬鹿』って字が読めてよかったじゃん」
「うるさい『馬鹿』ー!」
「アハハハハ!!!」
- 301 名前:あやみき4 投稿日:2003/10/09(木) 18:56
-
年下のあたし。年上のたん。
寂しがり屋のあたし。実は意外と涙もろいたん。
バカなあたし。もっとバカなたん。
そんな『バカ』ップル2人は、飽きずに今日も一緒にいる。
- 302 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/09(木) 18:57
-
松浦さん一人称で書いてみたんですが…見事に失敗。
ごめんなさいごめんなさい。
ネタの消化でもなんでもなく、ただただ作者が書いてみたかっただけです…。
>JOJOさん
ホッ…合致してよかったです。あんな話ですいませんでした。
オランダ旅行(w
いつかはさせてあげたいですね(w
>ほわさん
寝る前にチェックしてくださり有難うございます。
いい夢は見れましたでしょうか? ぁゃすみきてぃ!
>344さん
藤本さん視点は書きやすいです。その点松浦さんは…ゲホゲホ。
ごまっとうラジオ…やってほしいなあ。やらないのかなあ…。
>334さん
嫉妬する藤本さん大好きです。嫉妬する松浦さんも大好きです。あやみき大好きです。
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 19:01
- リアルタイムで見てましたよー
あやみきはいいなぁ(*´д`*)ポワワ
- 304 名前:JOJO 投稿日:2003/10/09(木) 21:21
- 休日の二人はいつもこんなんだろうなと改めて思いました
今年はごまっとうラジヲリアルで聴けると思ったのに…
頼むからやってくれよーーー!
次回作も期待しています
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 22:04
- 結局松浦さんの相手をさせられるんですねw
从*‘ 。‘)<やっぱ美貴タン優しいなあ
川*VvV)<亜弥ちゃんにだけね
- 306 名前:334 投稿日:2003/10/10(金) 01:52
- 幸せをありがとー
- 307 名前:344 投稿日:2003/10/10(金) 23:18
- おっと! 更新されてましたね!?
いえいえ、良い作品じゃあないですか!
こういうスタイル好きです。
そしてやっぱリアルなところが一番ですね!!!
次回も期待です!
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 19:15
- いや〜素晴らしかったっす!!!
松竹藤さんの文の感じすごく好きです。
とても読みやすく、読んでいるうちに自然とひきこまれてしまいます〜。
あやみき最高!!
- 309 名前:京 投稿日:2003/10/12(日) 19:35
- ナンバーワンから全部読ませていただいたんですが、松竹藤さん最高です!!
『恋愛ってなぁに?』にはすっごい感動しました!!
すっごい期待してます!!
- 310 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/13(月) 00:44
- >303さん
リアルタイムで有難うございます。
あやみき、最高です。オアシスです…
>JOJOさん
ごまっとうラジオやってほしいですよね…あぁ、メール送らないと。
次回作も頑張ります。
>305さん
やっぱり、奴隷ですから(w>相手させられる
でも奴隷は松浦さんだけで。最高です。
>334さん
こちらこそ、読んでくれて有難うございます。
>344さん
短編でリアルは書けるんですけど、もう少し長い話になるとどうしてもアンリアルに入っちゃう自分です。
でも、リアルの2人は妄想を越えてしまうので、大変です(w
>308さん
有難うございます。文にはまったく自信がないものですから、嬉しいです・゚・(ノД`)・゚・
あやみき最高です!
>京さん
ナンバーワンの頃から有難うございます。
すっごい期待されるとドキドキしますが、その期待に応えれるように頑張ります。
- 311 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/13(月) 00:46
-
そんなに長くない話を、1つ。
お時間ある方は、お付き合いください。
- 312 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:49
-
バイト帰りにたまたま入った、人がいない公園のトイレで、変な落書きを見つけた。
その落書きには、自分の名前と知らない名前が、傘の下に書かれていた。
左に、藤本美貴。
右に、松浦亜弥。
相合傘だった。
- 313 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:50
-
*****
- 314 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:50
-
「松浦亜弥ぁ? ダレ、それ」
「…こっちが聞いてんだよ、まいちゃんのバカ」
公園のトイレで見つけた落書き。
美貴の相合傘のお相手は、名前を聞いた事も顔を見た事もない松浦亜弥。
もしかしたら「美貴」の読み方は「ミキ」じゃなくて、「ヨシタカ」「ヨシキ」と読む男の子かもしれないけれど。
苗字も一緒で名前の漢字まで一緒という男がいるという事実は、あまり考えたくなかった。
「その子がどーしたの?」
「別に」
「聞いといてそれはないよみっき〜」
「なんもないってば、だから」
- 315 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:54
-
意外としつこく聞く友達、まいを軽くあしらって考える。
なんもないと言いつつ、松浦亜弥は美貴の相合傘の相手。
っていうか、松浦亜弥って。
名前からして、女。じゃあ年は。どこに住んでる。
さっぱり分からない。
分かるのは、松浦亜弥は美貴の事を知っている――ということだけ。
友達や、誰か別の奴が書いた、という可能性も考えられるけど。
じゃあ、書いた意味はなんなのだ、と問いたい。
誰が書いたにしろ、美貴はこれっぽちもいい気なんかしない。
勝手に相合傘の相手にされているのだ。美貴は何も知らないのに。
前にあの公園のトイレに入った時は、いつだったか。
いや、それともあの時が初めてだったのか。
でも、行った覚えがあるような。
でも、覚えてない。思い出せない。曖昧。
公園の前は、バイトの行き帰りに通るんだけど、中はどうだったか。
どちらにせよ、あんな落書きは初めて見た。
今まで気付かなかっただけかもしれないけど。
- 316 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:54
-
「まつうら、あや」
男に好かれる事はあっても、女に好かれる覚えはない。
というか、美貴も同じ女である。
「あー、くそ」
気になる。
誰なんだろう、その女。
何の意味があって、相合傘を書いたんだろう。
そんな落書きなんかほっときゃいいのに、美貴は、どうしてもあの落書きが頭から離れなかった。
- 317 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:54
-
*****
- 318 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:55
-
雨が降ってた。
傘を持つのが重く感じる程、強く、強く。
傘からはみ出た肩や腕に、冷たい雨の感触。
雨は、止みそうになかった。
- 319 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:56
-
*****
- 320 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:56
-
「……あーぁ。何やってんだろ、美貴……」
公園のトイレの前に、独りポツンと。
外は雨が降っていて。
その様子を、屋根があるトイレの入り口でじっと眺めてる。
そしてなぜ自分が今ここにいるのか、自分でいておいて呆れてくるのだ。
傘はある。
雨宿りしているわけじゃない。
じゃあ何故雨を避け、トイレの入り口でじっとしているのか。
「くっそー……」
待てど暮らせど。
松浦亜弥らしき人物が来るどころか、雨のせいか人すらやって来ない。
1人くらい来てもいいのにと思うが、来てくれない。
- 321 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:56
-
雨でびしょ濡れの、無人のブランコ。
跳び箱代わりのタイヤ。
泥だらけの砂場。
人があまり来ない公園の遊び場所は、その3つだけ。
シーソーもなければ、すべり台もなくて。
ここから少し歩いたところに大きな公園がある。
そこに行けば何でも揃っているからか、この公園には、誰もいなかった。
「誰もいない公園、……か」
美貴がたまたまトイレに立ち寄った時も、誰もいなかった。
静かなトイレは、少しだけ怖くて。
手入れも掃除もしばらくやっていない、汚いトイレ。
目についたのは、たまたま。
薄暗い、トイレの白いドアの内側に、小さく書かれていた落書き。
「藤本美貴と松浦亜弥」
相合傘。
見なきゃよかった。
どうしてこんなに気になるんだろう。
寂しい公園に、独りで待つ程。
- 322 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:57
-
勝手に人の名前を使った罰で、しめてやろうかと張り込み中。
まいにも一緒に来てよと頼んでみたけど、嫌ですと見事切り捨てられた。
「……使えねぇ」
松浦亜弥って誰々と聞いといて、なんだよそれ。
そうして独りで待ってる事、3日と2時間。
もちろん、空いてる時間だけだけど。こうして立っているのは。
しかし、3日経っても、誰も来ない。
いいかげん、やめようか。
そんなことを思い出した時だった。
- 323 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:58
-
「あっ…」
「…あ?」
バチャバチャと、公園に出来た水溜まりに足を踏み入れ、音を立てながらやってきた女の子。
その手に持ってるのは、どこか見覚えのある青い傘。
デパートか何かで、美貴も同じ傘を買った覚えがある。だから見覚えがあると思った。
そういえばあの傘は何処へ行ったんだろうか。
今美貴の横には、白い傘。
そして青い傘を差してる女の子の顔は、傘と違い見覚えがなかった。
「…あの」
「え?」
「トイレ……」
「あぁ」
美貴が入り口に立っているから、入れないのだ。
恐る恐ると言った感じで、女の子がトイレの中に入りたい事をアピールする。
「ゴメン」
「いえ」
「どぞどぞ」
「…し、失礼します」
道を空けて、さあどうぞお通り下さい。
そして思い出した。
- 324 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:59
-
「あ、ねえちょっと!」
「キャッ!」
ドアを開けて中に入ろうとした女の子の手をぐっと握って。
美貴は、入る前に聞きたい事がある。
「……アンタさ」
「は、はい?」
「松浦亜弥………じゃない、よね?」
「へ?」
「あー、違うんならいいんだ、違うんなら」
こちとら、松浦亜弥データは、『女』ということしかないから。
とりあえずここに来たのは、女の子だったし。
とりあえず、聞いてみただけ。
「その子がどうしたんですか?」
「いや、いいの。なんでもないから」
関係ない人に言ったって意味がない。
それに、説明するのもめんどくさい。
だけども女の子は、説明もせずに察してくれた。
「…ひょっとして………これ?」
トイレの個室の中に書かれた、落書き。
藤本美貴と松浦亜弥。
- 325 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 00:59
-
「…なんで…」
「だって、さっき松浦亜弥?って聞いたから」
「あ、あぁ…」
にっこりと笑う顔は、とてもチャーミングだ。
何歳なんだろうか。
美貴はふと、目の前の女の子に関心を覚えてる事に気付く。
「………いしかわ、りか」
「えっ?」
「石川梨華です、あたし」
――梨華ちゃん。
可愛い名前。
「よろしく、美貴ちゃん」
笑って、握手。
トイレでする事じゃないよな……そう思って、美貴も笑った。
- 326 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/13(月) 00:59
- すぐとは言わないけど、早く終わります。
- 327 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 01:12
- キタ━━━━━━━━!!!!!
展開が読めない・・・けど期待してます!
- 328 名前:JOJO 投稿日:2003/10/13(月) 01:23
- おぉ!新作だ
これは何か今までに無いものを感じさせてくれて楽しみです
これからも頑張って下さい
- 329 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 01:53
- 新作キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
毎度ながらどうしてこうツボにきてしまうのか…
素敵すぎます…。
続き、マジで期待してます!!
- 330 名前:京 投稿日:2003/10/13(月) 11:20
- 同じく新作キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!
マジでまったく展開が読めないですね…。
あやりかになるのかいつも通りあやみきになるのかマジわかんないっすよ…。
期待してます、頑張ってください!
(こんなに『期待してる』ばっか言うとプレッシャーなるかな…?)
- 331 名前:334 投稿日:2003/10/13(月) 15:55
- おいおいおいおい!!
どんな萌え展開だよ!あんた神だよ!!
こんなイントロ普通思いつかないよ!!すげーよ!!
で、最後にこうだもんなーすげーよ。
でも実は(ry
- 332 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:39
-
*****
- 333 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:39
-
「梨華ちゃんはさ、何歳なの?」
「…へっ?」
「いや、疑問に思っただけなんだけど」
突然思いついたわけじゃない。
逢った時から気になってた事。
仲良くなって、美貴が暇な時はこの公園に来て話している時に、思い切って聞いてみた。
「…こう見えても、じゅーはちだったり」
「へえ。タメじゃん。っていうか同い年には見えないよねー」
「美貴ちゃん、大人っぽいから」
「……アリガト」
笑顔で当然のように褒められると、なんだか妙に照れてしまう。
老けてるじゃなく、大人っぽい。
そういう彼女は、とても可愛い。
「でもさ」
「…ん?」
「こないだ、なんであそこで待ってたの? 松浦亜弥捜し?」
「あ、うん。いや、松浦亜弥って誰なんだろって思って」
「勝手に相合傘に書かれたから?」
「びっくりしたよ。たまたま入ったトイレのドアに、美貴の名前と知らない名前で相合傘してるんだから」
「あははは」
「…笑い事じゃないよ」
「あ、ごめん」
- 334 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:40
-
シュンと下がる眉。
喜怒哀楽がはっきり顔に出るらしい梨華。
どうしても怒の表情ばかり顔に出てしまう美貴は、そんな梨華がとても可愛らしく思える。
話を聞いていたら、買い物好きだし、ピンク好きだし、女の子らしいし。
あぁ…女の子ってこういう子の事を言うんだ、と、結構ハードな家庭環境で育ってきた美貴は実感する。
「…彼氏とか、いないの?」
「へ?」
「……かれし……」
美貴らしくない、小さくボソボソと言い難そうに。
梨華はきょとんと首を傾げてる。その仕草さえ、女の子。
完璧な女の子は、もてるはずだ。
こんなに可愛いのに、モテない方がおかしい。
「いないよ」
「い、いないの?」
「好きな人なら、いる」
「……あ、そーなんだ」
ガックシ。
……なんで、ガックシ。
気付くと落ち込んでる事に気付く。
梨華に彼氏はいないけれど、好きな人はいることに対して、ガックシ。
- 335 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:40
-
「…年上?」
なんとなく。
そんな気がした。
どちらかというと、年齢より童顔だし。
甘えたそうな感じだから、年上かなって。
「うん」
「…そうなんだ」
当たった。
まだ逢って数日しか経っていないのに、梨華のタイプを当てる事が出来た。
「どこで知り合ったの? その人と」
「あー、っとねぇ。知り合ったっていうか……多分向こう、あたしの事、知らない。っていうかまったく覚えてないと思う」
「あ、そうなんだ?」
「片想いなのです」
「コクっちゃえばいいのに」
きっと成功すると思う。だって可愛いから。
- 336 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:40
-
「でもきっと無理」
「なんで」
「なんとなく」
「…なんじゃそりゃ」
「想ってるだけで幸せだから。もし告白してフラれたら、もう、その幸せを味わえなくなるもん」
「………ふーん」
好きな人がいても、梨華は告白しないという。理由はなんとなく。
美貴も、好きな人がいても告白はしない。っていうか、出来ないのだ。
なんでも強気でズバズバ言いそうな外見と違い、実は結構臆病者。
「一目惚れっていえば、一目惚れだったのかなぁ」
「……ふーん」
「…あ…興味ない話して、ごめんね」
「あ、いや!」
返事が冷たかったのは、なんだか面白くなかったからで。
だから別に、違うんだ。
慌てる美貴とは対照に、梨華は何でもないように美貴に質問する。
- 337 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:41
-
「美貴ちゃんは、好きな人とかいないの?」
「美貴? いないよ」
出逢いといえば、美貴は現在スーパーの惣菜部でバイト中。
日々出逢うのはこれでもかというくらい焦げがついたお鍋の洗い物と、パートのおばちゃんくらい。
楽しいから、いいんだけども。
「女ばっかだし、周り。化粧臭い」
「…メイクしてない女の子の方がいいの?」
「いや別にそーいうわけじゃないけど。梨華ちゃんくらいのは、好きだよ」
「あ、ありがとう…」
ナチュラルな感じで仕上げた、あっさりメイク。
ほのかに香る香水が、またいい感じ。
「それに、好きな人なんかいたら、松浦亜弥捜しなんかしないよ」
「あ、そっか」
暇だから出来る事で。
好きな人や彼氏がいたら、絶対にそっちを優先してる。
- 338 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:41
-
でも、そういえば。
梨華とこうして出逢ってから、一度も頭に松浦亜弥と名前が浮かんだ事がない。
忘れていた、今まで。
そうだ、美貴は松浦亜弥という奴を探しに、この公園にいたんだった。
そして、梨華と出逢って。
しかし、こうして梨華と時間の許す限り喋っていても、松浦亜弥どころか、人自体来ない。
寂しい公園には、美貴と梨華の2人きり。
でも美貴は、寂しくなかった。
ブランコを漕がなくても、タイヤを跳ばなくても、砂場で山を作らなくても。
美貴は、楽しかった。
- 339 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:41
-
*****
- 340 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:42
-
この気持ちが恋なんだと気付いたのは、いつなんだろう。
梨華の不思議な魅力。
可愛い笑顔。
甘い、可愛い声。
すべてが愛しいとさえ思った。初めてだった。
女なのに。相手は。
松浦亜弥なんて名前を消して、石川梨華と藤本美貴の相合傘を書きたいとさえ思った。
好きで、好きで。
もっともっと知りたかった、梨華のこと。
- 341 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:43
-
「あのさ、誕生日とかっていつなの?」
「…あたしの?」
「うん。あ、美貴、2月26日なんだけど」
「…そうなんだぁ」
「梨華ちゃんは?」
「あたし?」
「うん…あ、でも、別に言いたくないならいいんだけど、さ」
少し困った顔をするから、心配になる。
違う。そういう顔をさせたいわけじゃない。
ただ、誕生日が過ぎてたり、もうすぐだったりした時、何かプレゼント出来ないかなって、そう思って美貴は聞いただけ。
「1月、19日、だよ」
「なんだ…じゃあまだまだかぁ」
「うん、だね」
「1月19日は何座になるんだっけ…」
「えっ? あー、んー……なんだっけ? あたしもド忘れしちゃった、ごめん」
少女漫画の絵で表すと、笑顔で謝る梨華の横には、『てへ☆』という文字が書かれているかのように、可愛い顔と仕草で。
なんだかたまらなくなる。
ぎゅっと、心臓が縮まる感じ。
あぁそうか……これがときめくって言うのか、これも初めての事。
- 342 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:43
-
「んじゃ、血液型は?」
「んと、A」
「おぉっ、美貴もA! もし梨華ちゃん大怪我したら、美貴の血あげるよ!」
「…あはは。大怪我したくないよぉ」
「いや、そりゃそーだけどさ」
好きな人の役に立てるなら、たとえ全部の血をあげたって構わない。
それほど、梨華が好きなんだと改めて実感する。
「家族構成とかは?」
「そんなの聞いてどうするの?」
「え。あ。……い、いや別に」
ただ知りたいから。
そう言ったら、気味悪がられるかな。
心配する美貴をよそに、梨華はくすくす笑って、美貴を見てる。
- 343 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:44
-
「じゃああたしも言うから、美貴ちゃんも教えてね」
「あ、それはもちろんっ」
「兄弟は、3姉妹。んで、パパとママと犬と。…あとねぇ、すっごい仲良い、従姉妹がいる」
「へー。その従姉妹さんも一緒に住んでるの?」
「あ、ううん。よく遊んでるだけなんだけどね。家は別々」
「ふぅん」
じゃあその家はどこにあるの、とか、そこまで聞くのはやめておいた。
さすがに質問のしすぎだし、そこまで行き過ぎると、引かれるかもしれないし。
聞きたい気持ちをぐっと我慢し、美貴の家族構成も伝える。
「今は独り暮らしなんだけどね」
「あ、そうなんだ?」
「北海道から上京してきたから。向こうには、おとーさんとおかーさんとおねーちゃんとおにーちゃんとじいちゃんばあちゃん。
焼肉屋やっててさぁ、北海道で。ちっちゃい頃から焼肉好きなんだよねぇ」
「あたしもよく行くよ、焼肉!」
「あ、そうなの」
「うん!」
- 344 名前:相合傘 投稿日:2003/10/13(月) 17:44
-
歳も一緒だし、話も合うし。
可愛いし。楽しいし。面白いし。最高だし。
幸せ。
そう感じると同時に、あの時、梨華が言っていた事が、少し分かるようになった。
『想ってるだけで幸せだから。もし告白してフラれたら、もう、その幸せを味わえなくなるもん』
フラれちゃえば、こうして喋る事もなくなるんだろう。
それでなくても、彼女には好きな人がいるのだ。
フラれるのなんか、分かりきっている。
告白出来ない。告白しない。
とりあえず今は、この関係が、一番幸せ。
- 345 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/13(月) 17:45
-
>327さん
素早いレス有難うございます。
期待に応えれるようにまた頑張りますのでよろしくお付き合いくださいませ。
>JOJOさん
新作です。チェック有難うございます。
これからも頑張ります。
>329さん
喜んでいただけたようで、嬉しいです。
自分はこんな馬鹿な話しか書けないのですが、それでもツボってくれる方がいる事実がとても嬉しいです。
続き、頑張ります。
>京さん
そろそろ展開が読まれた頃でしょうか…ビクビク
あやりかもあやみきも、そしてりかみきも大好きなんです。節操なし(ry
期待してくれてるというのは、とても嬉しい事です。
プレッシャーというか、ドキドキしますが(w
>334さん
少し違う相合傘っていうのを書きたくて始まったお話です。でもいざ書いてみるとどこかでネタ被りがないか心配…。
出だし、結構苦労しました(w
略されたところが気になりますが、今はあえて訊かない事にします(w
- 346 名前:京 投稿日:2003/10/13(月) 18:09
- やっぱ流れ的にりかみきですか??
りかみきって自分の中では初めてな組み合わせなんで楽しみです。
じつは一番好きなのはごまいしよしの三角関係なんですがね。
修羅場好きです(w
ドキドキですか。(w
がんばってくださいね>松竹藤さん
- 347 名前:名無し 投稿日:2003/10/13(月) 19:51
- あー・・・なんかわかりました♪
続き楽しみにしてます!がんばってください!!
- 348 名前:JOJO 投稿日:2003/10/13(月) 20:17
- この流れはりかみきの流れですか?
りかみきってありそうで無いですよね
何か熱戦、烈戦、超激戦みたいな感じはハラハラして
この後の話の展開が凄く楽しみです
頑張って下さい
- 349 名前:344 投稿日:2003/10/13(月) 21:36
- これはすごいですな!
石川さん登場とは!!!
わたしはまだ筋が読めませんが、これはかなり楽しみです!
- 350 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 22:22
- ああ、なんかカキコしようと思ったけど気使うね、これ。
まああれだ、いい感じだと思うよ。
- 351 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 22:53
- なんつーかこう、深いよね。(笑)
いい感じっす。
- 352 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/14(火) 01:53
- 作者さん、たぶんわかっちゃいました…。
でも違ってたら恥ずかしいなぁ(w
最後、どんな感じになるのか楽しみです。
- 353 名前:334 投稿日:2003/10/14(火) 02:10
- うむうむ、良い展開ですな。
可愛すぎます。どっちも女の子っぽくて。
ある意味期待通りの展開で嬉しいですw
- 354 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 08:28
- あやみきじゃないのか…
_| ̄|○
- 355 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:06
-
*****
- 356 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:06
-
「はーっ…」
「ん? みっきーさん、溜息なんかついてどうしたの」
「……そのあだ名で『さん』つけるの、やめてよ」
まいの家でくつろいでたら、いつのまにかまいが隣にいて。
溜息を聞かれてしまった。
「松浦亜弥、やっぱ見つかんない? さすがに諦めたら?」
「あ? あー……っていうかもう別に興味ないし。気になんないし」
まだ松浦亜弥を捜してると勘違いしていたまい。
そういえば、あれっきりまいとは松浦亜弥話をしていない。
「じゃあなんで溜息ついてたの?」
「いいじゃんかぁ、別に」
「教えろー。そうかっ、恋だ! 恋の病だみっきー!」
「……」
「…おかしい。否定しない」
「………いいじゃんか、別に」
「…ッ」
言葉を詰まらせ、固まっているまい。
普段は綺麗なその顔も、こういう時ばかりはおとぼけに映る。
性格はかなりのおとぼけだったりするけれど。
- 357 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:06
-
「み、みっきーが……」
「なによ?」
「みっきーが恋なんて…」
「…あのね。美貴はねずみのミッキーさんじゃないんだから、恋くらいするよ」
「ねずみのミッキーさんも恋してるよ。ミニーちゃんがいるじゃない」
「…あ…」
「みっきーのみにーちゃんは、誰よ。誰々?」
ああ、大丈夫かな。
言ってもいいかな、まいにだったら。
彼女は、女子高だったし。
もしかしたらそういうことに、抵抗がないかも。
相合傘の話をした時も、松浦亜弥って誰と聞いただけで、気持ち悪いとも言わなかったし。
「いしかわ、りか」
「……ん?」
「いしかわりか、ちゃん」
「………女の子?」
「うん」
「…………わぉ」
少しだけ、静かな時間が出来た。
- 358 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:07
-
「…みっきーって、最初からそういう人だった?」
「違う」
「だよねぇ。前、どの男の子がかっこいいとかって話したことあったし…」
「美貴だって驚いてる。でも、好きになっちゃったんだもん」
女の子をっていうか、梨華を。
石川梨華を、好きになっちゃった。
「でね、しかもさ」
「…なに?」
「いしかわりかって言ったよね」
「? うん」
「あたしの大学に、同じ名前の人いるんだけど、その子じゃないよね?」
「え!!!」
あぁ、しまった。
血液型とか家族構成は聞いたのに、大学を聞くのを忘れていた。
なんて間抜けなんだろう。
「い、石川梨華だよ? 可愛いんだよ?」
「うん。梨華ちゃん…だよね。ファッションダサくて、キモい梨華ちゃん」
ピクリ。
美貴の若干吊り上がり気味の眉が、少し歪む。
- 359 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:07
-
「……今なんつった」
「え?」
「可愛いじゃん、ファッション! それに、キモくない!!!」
「あ、そ、そっか。みっきー梨華ちゃんの事好きなんだっけ…あははは」
「笑ってごまかすな」
いくらまいでも、梨華の事を悪く言う奴は許さない。
どこがダサいんだ。
めちゃくちゃ可愛いじゃないか、私服。
どこがキモいんだ。
めちゃくちゃ可愛いじゃないか、梨華ちゃん。
「でもみっきー……恋は盲目なのはいいけど、実際、それで有名だし」
「誰だよそんなこと言った奴!」
「いやいや、みんな言ってるから。だから有名なんだよ」
「…殴ってやる……そんなこと言う奴、みんな殴ってやる……」
「怖いから。怖いからみっきー」
1人ずつこらしめて、謝らせたい。
梨華は可愛くて可愛くて、ダサくもないしキモくもないから。
……もう、完璧に惚れてる。
- 360 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:08
-
「っていうか知らなかったんだけど、あたし。同じテニスサークルだけど、みっきーと仲良いって」
テニス。
そういえば、テニスをやっているとこないだ言っていたような気がする。
スコートとか穿いてんのかな、とか、少し馬鹿な想像をしてしまった事も思い出した。
思い出してしまってほんのり梨華の好きなピンク色になった頬に気付かれないように、何でもない様子で話す。
「美貴もまいちゃんと梨華ちゃんが同じ大学なんて知らなかったよ。
そもそも、美貴とまいちゃんが友達って事知らないから、まいちゃんが梨華ちゃんの口から美貴の話聞くのなんかありえないじゃん」
「あ、そっか」
でもこれで、接点が出来た。
公園という限られた空間だけじゃなくて、もっともっと広いところで話せる空間が。
- 361 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:09
-
「今度、一緒に遊ぼうか、3人で」
「マジで!?」
「みんなの都合が合えば…だけど」
「遊ぶ遊ぶ!!!」
「じゃあ聞いておくよ」
「あ、いいよ、美貴が聞くよ」
「あ、そだね。恋の邪魔しちゃいけないもんね。っていうか、3人じゃなくて、みっきーは2人の方がいいのかぁ」
「うっ、うるさい」
つんつんと肘で美貴の二の腕を突っついて。
「…まいちゃん、おっさんくさい」
「みっきーに言われたくないなあ…」
本当に嫌そうな顔で、まいが呟いた。
- 362 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:09
-
*****
- 363 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:09
-
「っていうワケなんだ! ね、ねぇ、3人で遊びに行かない?」
「あー………」
後日、まいと交わした会話を梨華にも伝えてみる。
しかし梨華は困ったようなような顔をしただけ。
「……都合…悪い?」
「う、うん。ちょっと」
「…好きな人と遊びに行くとか…?」
「……それは、ないよ」
「じゃ、じゃあっ」
「でも、ごめんなさい」
本当にすまなさそうに頭を下げられる。
そんなことされたら、どうしていいか分からない。
誘った行為が悪かったように思えてくる。
- 364 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:10
-
「ごめん、ね」
「いや、いいよ、全然だいじょぶ」
ハハハと無理やり笑顔を作って取り繕う。
本当は、すごく悲しいけど。
「それから…さ」
「ん?」
「こうやってここで逢うのも、もう、やめにしようか」
「――ぇ?」
無理やり作った笑顔だったから。
不自然な笑顔のまま、顔が固まる。
- 365 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:10
-
「な、何、いきなり」
固まった顔を、無理やり動かして。
びっくりして出ない声を無理やり出したから、変な声になる。
それでも、聞かずにはいられない。
「だってここさ、今はまだいいけど、冬になったりとかすると、怖いじゃん。暗くなっちゃうし。人いないし」
「そんなの…大丈夫だよ」
「あたし、怖がりなんだぁ」
「じゃ、じゃあ、違うとこで話そうよ。どこでもいいよ、美貴」
本当の事を言えば、ここがいいけど。
2人しかいないから。2人だけの基地みたいで。
でもそれが嫌なら、そばに梨華がいるなら、どこでも。
「……ゴメン、帰る」
「あ、ねえちょっと!」
「キャッ!」
待ってよ、と腕を掴んで。
……あぁ、この場面、前にもしたような。
――初めて逢った、あの日。
- 366 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:11
-
「梨華ちゃんっ」
行かせない。行かせたくない。
理由もなしにサヨナラなんて、嫌だ。
好きで。
「……、や!」
「あ……」
感情の赴くまま、そのまま唇を塞ごうとしたら、拒絶された。
それも、思いっきり。
どうして。
…ああそうだった。
彼女には好きな人がいたんだった。
美貴は、告白する前からフラれていた。
幸せは、もう終わり。
- 367 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:11
-
*****
- 368 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:12
-
逢う事すら許してくれなくなった。
拒絶された。
絶対に、嫌われてしまった。
ああ、どうしよう。
失恋って、こんなにつらいものだったなんて。
片想いしてた時は、あんなにも幸せだったのに。
何がいけなかったんだろう。
松浦亜弥捜しなんかしなければ?
恋なんかしなければ?
キスなんかしそうにならなければ?
今更考えたって、もう遅い。
全部、美貴はしてしまった。
松浦亜弥を捜す為に唯一の手がかりのトイレに待ち伏せて。
女の子の梨華を、好きになってしまった。
キスは、したかった。
- 369 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:12
-
「……つらいなぁ……」
こんな気持ちの時でも、バイトはある。
本当は今日、休みだったんだけど、もう1人のバイトが風邪をこじらせてしまったもんだから、絶対出勤だったんだ。
洗い物は多いし、皆帰っちゃうし。
21時の閉店時間まではまだ時間があるからゆっくり出来るけど、独りは寂しかった。
そうやって独りでしばらく黙々と洗い物をやっていたら、ガラス張りの窓を、コンコンと叩く音。
「はいはいっ」
お客さんかと思って、洗い物の水を慌てて止めて振り向いたら、そこには見知った顔。
「みっきー、元気?」
「……まいちゃん」
やあやあと、まだ何も言ってないのに、従業員用のドアを押して、惣菜部に入ってくるまい。
でも今は部外者が入って来た事を怒る人はいない。
惣菜部には、美貴独り。
- 370 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:13
-
「…どしたの?」
「ん? いや、何か残ってないかなって」
「言っとくけど、あげないよ」
「えー」
今日までの賞味期限のものは持ち帰ってもいいよ、という惣菜部主任の言葉。
そのお言葉に甘えて、閉店までのシフトの時、美貴はいつも持ち帰っている。
それを知ってるまいは、たまにこうして遊びに来て、おかずやご飯をカンパしてもらっているのだ。
「それに、エプロンとかつけてないのに中にいるの、丸見えなんだけど」
作業をお客さんにも見えるようにと、ガラス張りの店内。
つまみ食いしてるのなんかも見えるし、そこで働いてる人にはいいことなんかちっともない。
「じゃあエプロン借りるよぉ」
「手伝ってくれんのかよぉ」
「手伝いたいけど、あたし、爪長いから」
「……ズルイ」
勝手に近くにあったエプロンを着用し、従業員になりすます。
しかしそれは本当になりすましただけで、まいはただ楽しそうに美貴を見てる。
洗い物という仕事は爪が長いと痛めたりと大変な為、しにくいのだ。
わざわざそのせいで、美貴は伸ばしていた爪を切り、バイトがない日はつけ爪で過ごしている。
- 371 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:13
-
「…いつまでいる気?」
勝手に冷蔵庫の中をあげてめぼしいものはないかと物色したりと、まいはうろうろ。
独りじゃなくなったけど、独りじゃなくなった為もう1人の行動が今度はなんだかやけに目につく。
「閉店までダメ?」
「えー」
「みっきー、独りで寂しそうだし、いいじゃん」
「………」
さすが、親友。
でもだから最後まで付き合ってくれるのかなと思ったら大間違い。
「あれ、ほら」
「は?」
「あの10カンのおすし、目ぇつけてるんだけど誰か閉店まで買ってかないかな、ねえ」
「………」
細い割に、食欲旺盛。
…まあ、美貴も人の事言えないけど。
- 372 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:14
-
「これから掃除するから、まいちゃん足気をつけてね」
洗い物も終わり、他の用事も終わって、閉店が近付いてきたところで、最後の仕事。
服にホースの水がかからないように前掛けをつけて、靴が濡れないように、長靴に履き替える。
「おー、なんかみっきーかっこいいですね」
「嫌味ですか」
魚屋さんがしてるような前掛けに、長靴。
これを組み合わせた藤本美貴の、どこがかっこいいのか。
「大変そうなバイトだねぇ」
「まあね」
でも時給がいいから。
それにやっぱり、楽しいし。
何より閉店まで残ったら、食費が少しでも浮くし。
- 373 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:14
-
「まいちゃんも働いたら? 今、ここのアルバイト募集中だし」
「いや、あたしサークルあるし」
「ほんとはこんなカッコしたくないだけでしょ」
笑って言うと、まいも笑って「まあね」と返す。
そのまま笑いながらホースを水道にセットした時。
「あ」
「ん?」
ガラス張りで、惣菜部の中からも、惣菜部の外からも丸見えな窓を見て。
まいが、短い声をあげる。
「あれって、梨華ちゃんじゃない?」
「………え」
ほらほら、とちょうど店に入ってきた2人組の女の子を指差して。
一緒に来たもう1人の子は知らないけど、……そうだ。
あれは、梨華だ。
拒絶されてから一度も逢っていない、梨華だ。
- 374 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:14
-
「一緒にいる子って、従姉妹じゃなかったっけ」
「…そうなんだ…」
そういえば言ってたっけ。
仲の良い従姉妹がいるって。
でも、今はそんなこと、どうでもいい。
「梨華ちゃん…」
「? みっきー? 掃除は?」
「梨華ちゃん!」
ホースを水道に差しっ放しで、前掛けもつけたままで、長靴も履いたままで。
美貴は、惣菜部を飛び出した。
- 375 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:15
-
「梨華ちゃん! 梨華ちゃん!!!」
走りながら叫ばれるその声に気付いたのか、先に従姉妹という女の子が何事かと振り返る。
そして、梨華も気付いたのか、驚いた顔で走ってきた美貴を見て。
「な、なんでっ」
顔面蒼白な顔。
美貴を認めてすぐに、慌てて、戸惑ってる従姉妹の手を引いて、梨華は美貴から逃げてしまう。
「ちょっと待ってよ! ちょっ……」
掴まえようと手を伸ばしたら、前掛けが下にずれて踏んづけてしまい、その場で転んでしまった。
そんな美貴に気付いてないのか無視をしているのか、梨華は従姉妹を連れて、せっかく来たスーパーをすぐに立ち去ってしまった。
「ちょっとちょっと、みっきー大丈夫?」
こけた美貴の手を掴み、立たせてあげるまい。
美貴は、返事をしなかった。
- 376 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:15
-
逃げられた。梨華に。
そんなに嫌われたんだろうか。ちょっと前までは楽しく話していたのに。
………それに。それに――――。
- 377 名前:相合傘 投稿日:2003/10/14(火) 09:16
-
「ねえ、まいちゃん」
「…ん?」
「まいちゃんの大学って、制服とかってあるわけ……?」
「は? ないよ。高校とかじゃあるまいし。大学だよ?」
「………そう、だよね」
じゃあなんで。なんで。
彼女、梨華は、なんで、大学のでもない制服を着ていたんだろう。
- 378 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/14(火) 09:17
-
ここまで来るともう皆さん分かった方が多いと思います。
でも、本当に申し訳ありませんが、
自分はかちゅ〜しゃなので大丈夫なのですが、レスから先に見てしまうという人もいるかもしれませんので、
直接的な言葉は避けてくださると作者としても助かります。
本当に勝手なお願いで、すいません…。
- 379 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/14(火) 09:18
-
お待たせするのも忍びないので、次はラストまで一気更新します。
>京さん
修羅場好きですか(w
自分も見る分には大好きなんですが、自分が書くと収集つかなくなるんで苦手です(w
ドキドキしながら頑張ります。有難うございます。
>名無しさん
気付いてくれて有難うございます(w
続き、頑張ります。
>JOJOさん
りかみき、そうなんですよね。ありそうで無いですよね。
お2人には吉澤さんだったり松浦さんだったりと有名な人がいるからでしょうか。
頑張ります。
>344さん
楽しみにしてくださり、有難うございます。
頑張るんで、あともう少しだけお付き合いください。
>350さん
気を遣わせてしまい申し訳ありません。
書き込み、有難うございます。
- 380 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/14(火) 09:18
-
>351さん
深いですか(w 有難うございます。
いい感じに終われるよう、ラストまで突っ走りたいと思います。
>352さん
多分352さんの想像通りかと思われます(w
最後は一気に逝くので長くなるかもしれませんが、お付き合いしてくださると嬉しいです。
>334さん
期待通りでしたか(w それはよかった(w
最後までその期待に応えられるように頑張ります。
>354さん
あわわ…お、落ち込まないでください。
- 381 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 09:39
- 朝から幸せだなぁ…。
彼女がどうでるか、楽しみに待ってます!!
- 382 名前:JOJO 投稿日:2003/10/14(火) 18:21
- 次回でラストですか
あの人の行動次第で何かありそうで今から楽しみです
ラストもこの調子で頑張って下さい
- 383 名前:京 投稿日:2003/10/14(火) 20:22
- 次回ラストですか!
僕結構鈍感人間なんでどーなるか微妙にわかりません(w
たぶん僕も修羅場書こうとしたらすごいことなりますね。
怖くなりそうです(w
ラスト頑張ってください。
- 384 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 21:07
- ここまでの展開、すごく好きです。
CPとかじゃなくて、登場人物とお話がなんともツボですよ。
甘いとかせつないじゃない、なんだろう、しみじみいいなあ、という感じです。
どうなるのかわかりませんが、とてもとても、期待しています。
個人的に、(好きな話ばかりの)このスレのなかでも一番好きです。
- 385 名前:334 投稿日:2003/10/14(火) 21:49
- 速攻勘潜ったりして性格悪い読者ですいませんw
それでも十分楽しめるストーリーです。つーか自分もこのスレでかなり好きな方です。
ドラマ性があって続きが楽しみで仕方ありません。
あと、里田さんがかなり良い味出している事に今更気付いた。
巧い。
- 386 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 22:33
- 何がすごいって?
作者さんの設定の思い付きがすごい!
マジでアホやなぁって思う。いや、いい意味で、ってホローになっていないか
関西人がいうアホやなぁって事ですよ。誉めてるんです、いやマジで
なんというか、いつもいつも萌えさせてもらってるし
なんでこんな話しが思い付くのかと小一(r
ほんといつもありがとうございます
- 387 名前:344 投稿日:2003/10/14(火) 22:40
- んん!くぅぅ! 上手い!
もうこの展開痺れますぅ!!!
次回更新、心待ちにしております!
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 23:41
- たしかに、ラスト後のレスはネタバレ防止に気をつけないといけない気がしますね。
- 389 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/15(水) 00:37
- 大人しく待ってます
- 390 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:22
-
*****
- 391 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:23
-
ある雨の日。
それは、すごい雨が降っていて。
美貴はまだ、スーパーで働いてなくて。
ちょうど、そのスーパーの面接に行った帰りだった。
あの頃は、今の白い傘じゃなくて、青い傘を差していた。
………ああ、あの傘、どこに行ったんだろう。
気に入ってたのに。
- 392 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:23
-
*****
- 393 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:24
-
「みっきー、大丈夫なわけ?」
「…ん? あぁ…」
昨日、こけた時少し足を捻っちゃって。
大事には至らなかったけど、バイトを休んだ。
そうとは知らず今日もバイト先にやって来て美貴がいないと聞いたまいは、お見舞いにやって来てくれたのだ。
「これ、つまんないものだけど」
お見舞いの品、と言って、見覚えのある袋と共に渡される。
中を見てみると、
「うわ、ほんとつまんねー」
「うるさい」
美貴が働いてる惣菜部で売ってる、おかず。
「どうせなら違う店の買ってきてよぉ。食べ飽きたよ」
「お店の売上げに貢献したげたのにー」
「売上げ貢献してくれても、給料上がんないし。上がんのは、主任の株だけだし」
でもアリガト、とお礼を言って受け取る。
こんな言い合いは2人にとって何もない事。
まいも全然気にしていない。
- 394 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:24
-
「ところで、さ」
「ん、何?」
「昨日の事、なんだけど」
「………あぁ」
「今日あたし、梨華ちゃんに聞いたんだ。なんで昨日逃げたの?って」
そこまで言って、まいは言い難そうに顔を変える。
……大体分かってた。
多分、そういうことなんだ。
「……梨華ちゃん、みっきーのこと………知らないって」
――あぁ、やっぱり。
あれから1日考えた。
だからそんなに驚かない。
「……うん」
「へ、変だよ。なんで? だって石川梨華だよ、あの子」
「ファッションダサくて、きもい石川梨華ちゃんだよね」
「う、うん…」
「…美貴が言ってた梨華ちゃんは、その梨華ちゃんじゃなかったんだ」
「? それってどういう…」
ファッションだってダサくないし、可愛い梨華ちゃん。
「まいちゃんが思ってる梨華ちゃんじゃない子の方」
「え。従姉妹の?」
「………そう」
2人いた内、まいが梨華の従姉妹と言っていた方が、美貴の言う梨華ちゃん。
まいの言う梨華ちゃんは、美貴が従姉妹だと思っていた子。
- 395 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:25
-
気付いてしまってから、梨華と名乗った女の子の以前の言葉や顔を思い出すと、ああそうなのかと頷ける箇所がいくつもある。
本当の歳は何歳か知らないけどそもそも、美貴と同い年の18には見えないし。
自分の誕生日答えるのに、たどたどしいし。
それに、あんな女の子らしい子だったら、うらないなんかは大好きなはずなのに、何座か忘れたなんて。
趣味とか、特技とか、家族構成とか。
どこからホントで、どこまでウソだったんだろう。
そんなに、美貴の反応が楽しかったんだろうか。
初めて彼女に逢った時。
まだ名前も言ってないのに、彼女は「よろしく、美貴ちゃん」と笑って手を差し出してきた。
相合傘の松浦亜弥を捜していたということで、名前を書かれた藤本美貴だと思ったからだろうか。
でも、普通、女同士で相合傘なんか書かない。
「美貴」と書いて「ヨシタカ」や「ヨシキ」と読む男の子の彼女なのだろうかと、美貴を疑わなかったのだろうか。
こう考えれば納得がいく。
- 396 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:25
-
疑う必要なんか、なかったから。
なぜなら、彼女は、知っていたから。
そして彼女は、美貴が捜していた松浦亜弥なんじゃないか――って。
- 397 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:26
-
突然、逢うのもやめにしようと言ったのは、まいという共通の友人がいた事を知り、
自分が本当は石川梨華じゃないということをバレるかもしれないと思ったから。
スーパーで逃げたのは、隣に本当の石川梨華がいたから。
美貴が嫉妬していた、梨華の好きな人。
嬉しそうに語っていた、梨華の好きな人。
――それが、自分だったなんて。
「松浦亜弥、しめてくる」
「ええっ? ど、どうしたのいきなり。それに松浦亜弥のことなんかもうどうでもいいじゃなかったの?」
「どうでもよくない、やっぱり」
騙しやがって。
「でも、雨降ってるよ?」
「傘持ってきゃ大丈夫」
「っていうか、おーい。足…」
「痛みなんか忘れた!! まいちゃん留守番よろしく!!!」
玄関に置いてた白い傘を引っ掴んで、雨の中を駆けて行く。
松浦亜弥を、捜しに。
- 398 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:27
-
*****
- 399 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:28
-
強い強い雨が、降っていた。
走ると、ジーパンに水が跳ね、靴に染み込み、美貴を嫌な気分にさせる。
それでも走った。
あの場所に。
あの、公園に。
冷たい雨が、容赦なく地面を打つ。
その雨を避けきれるのは、傘がない者にとっては、公園にあるトイレの場所だけ。
その入り口に座り込むようにして、髪も服もすべて濡らした梨華――亜弥がいた。
- 400 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:28
-
「あ……」
ドクン、と心臓が大きく波を打った。
この光景、見覚えがある。
あの時、確かに美貴は青い傘を持っていた。
デパートで買った、青い傘。
美貴が初めて彼女と出逢った時に、彼女が差していた傘。
――――あの傘は、美貴のだ。
- 401 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:29
-
◇ ◇ ◇
- 402 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:29
-
無視しようかと思った。
こっちは、ただいま面接が終わったばかりで、なんだか変に肩が凝っていたし。
雨は、強いし。
でも、その公園はあまりにも静かで。
人さえもいなくて。
このまま放っておいたら、あの子はどうするんだろう………おせっかいだけど、ひどく気になった。
- 403 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:30
-
『……ねえ』
びしょ濡れの制服が冷たいのか、小さく震えて俯いてる女の子。
美貴がかけた声に反応して顔をあげるが、雨に濡れた髪が邪魔でよく顔が見えない。
『…?』
『家、どこなの』
『あ、はあ。この公園をもっと真っ直ぐ歩いて突き当たったとこを右に行ったとこです』
『傘は』
『あ…へへへ。あたし晴れ女だから降らないだろって思ってたんで、傘持ってきてなかったんですよね』
『……コンビニかどっかでも売ってんじゃん』
『お恥ずかしながら、お金、なくてですね』
『それで、こんなずぶ濡れなわけ』
『……そゆコトみたいです』
- 404 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:30
-
あー冷たいとパタパタとシャツを扇ぎ、水分を取る為ハンカチを当てて。
でも、そのハンカチももう、絞れる程水分を拭き取ってる。
かっこ悪いところを見られたくないのか、女の子はすぐにまた俯いた。
『………』
『………』
こうして黙っている間にも、雨は降ってる。
一向に止む気配はない。
当たり前だ。90%と天気予報で言っていたんだ。
どうして晴れ女だから大丈夫だと思ったんだろう、この馬鹿女。
軽く、美貴は呆れてくる。
- 405 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:31
-
『いやでもですね、ほんとに前はピターッと止んだんですよ、雨。
あたしが外に出た途端、ザーザー降りだった雨が、ピターッと』
『今止んでないけど。っていうか、最高に降ってるけど』
『…う。も、もうすぐしたら止むんですよぉ』
『その前に、あんたが病んじゃうよ』
髪も、制服も、靴も。
震える身体は、どんどん大きくなって。
どれくらいこの場所で待機していたんだろう。
『……いい?』
『え?』
『この傘、美貴のお気に入りなの』
『は、はあ』
青い傘。
『だから、絶対返してよね』
『えっ…? いや、あの』
そのお気に入りの青い傘を、戸惑ってる女の子の横に置いて。
美貴は、大雨の中、家までの道を走って帰る。
後ろの方で声が聞こえたけど、雨音のせいで聞こえないふりして、振り向かなかった。
- 406 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:31
-
偽善者ぶりたかったんじゃない。
ただ、体力にはあの女の子より自信があったし。
それに、どう見てももうあの子は限界そうだったから。
意味はなかった。
期待してなかった。
だから、忘れていた。
青い傘の事も、あの時の女の子の事も。全部。
- 407 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:32
- ◇ ◇ ◇
- 408 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:32
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初めてじゃなかったんだ、本当はあの時。
だから、亜弥はあんなこと。
『あー、っとねぇ。知り合ったっていうか……多分向こう、あたしの事、知らない。っていうかまったく覚えてないと思う』
言う通りだった。
覚えてなかった。
あの時はどうしてこんな可愛い子の事を覚えてないんだと好きな人に嫉妬したものだ。
まさかそんな鈍感な奴が、自分だったとは。
- 409 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:33
-
雨の中、公園に靴跡をつけながら、トイレの前に行く。
しかし座り込んでいる亜弥は、目の前に立ってる美貴の足が見えてるはずなのに、顔を上げない。
それでも美貴は気にせず、ゆっくりと口を開く。
「何、またずぶ濡れになってんの」
「……」
「美貴が渡した、青い傘は」
「え…」
「傘、貸したじゃん」
「お、思い出して…」
「今思い出した。…っていうか……逢っちゃったね、この公園で」
逢うのはやめにしようと言われた。
だけど、やっぱりここにいた。
「怖がりのくせに、1人で何してんの」
「………」
「ねえ」
「………」
「――亜弥ちゃん」
「っ!!」
びっくりして上げた顔は、やっぱりあの時の顔。
どうして2度目の時に気付かなかったんだろう。
制服じゃなかったから?
髪の毛、ちゃんとセットされていたから?
初めて出逢ったと思い込んでた時に気付いてたら、どうなってたんだろう。
潤んだ瞳で見つめる亜弥をまた見つめながら、美貴はそんなことを思う。
- 410 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:33
-
「あ、あの……」
「石川梨華ちゃんじゃ、ないよね」
「………はぃ」
「なんで、嘘ついたの」
気付かなかった自分も悪いけど。
じゃあ、言ってくれたらよかったんだ。
お捜しの松浦亜弥さんは、あたしですよ、と。
「じゃあ、美貴ちゃ、…藤本さんは、あたしが松浦亜弥だって知ったら、…どうしてました?」
梨華と名乗っていた時は同い年ということであえて使っていたタメ語。
その名残を切り捨てて、呼び方だけでなく喋り方も変える。
「……想ってるだけで、幸せだったんです。告白したらフラれるの、分かってたから。
だから、覚えてないなら、それでいい。じゃあまったく違う人として、少しでも一緒に過ごせたら……って」
美貴は、何も言えない。
ただ、黙って亜弥の話を聞くことにした。
- 411 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:34
-
「あれから…傘貸してくれた次の日から、返そうと思ってずっと捜してたんです。でも、見つからなくて…。
そしたら、たまたま入った近所のスーパーで、藤本さん、見つけた。名前も、そこの名札で知ったんです。
でも……なんか、言い出せなくて。ずっと、見てるだけで………。青いあの傘、返したくなかったから」
おいおい、借りパクする気満々だったのかよと心の中で突っ込みを入れると、すぐそれを訂正するフォローが入る。
「藤本さんの事、好きになってたから。だから、藤本さんが使ってたあの傘、返したくなかった」
真剣な顔で、美貴を見つめる。
これは、嘘なんかじゃない。
- 412 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:34
-
雨の日は、青い傘を差していつも公園に足を運んだ。
そして、トイレのドアに、相合傘の落書きを書いた。
誰もいない公園だから。人なんか来ないから。
亜弥にとってその空間は、あの時の思い出に浸れる場所。
「でもそこに、藤本さんがいて」
びっくりした。
目が合ったのは、あれ以来初めてだったし。掴まれたのだって。
いつも、洗い物を洗っている美貴の背中ばかり見ていたから。
「あの時の事、覚えてないみたいだし。松浦亜弥はあたしだって、知らなかったから。
でも……お話がしたかった。喋りたかった……だから――」
嘘をついた。
- 413 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:35
-
「…ねえ、どこまでが嘘なの」
「…?」
「じゅーはちとか」
「あ、あぁ…。ホントの年は、17の高2です…」
だから、好きな人は年上で。
あの時言った事は間違っちゃいない。美貴は、18。亜弥より年上。
「…誕生日とか血液型とか」
「6月25日のかに座のB型です…だから、血、もらえないんです…」
「……テニスやってるとか、ピンク好きとか」
「それは、ほんとですっ! 梨華ちゃんと…結構趣味が似てるんで…」
服の好みは似てないけど、と小さい声で付け足す。
…確かに。
スーパーで見た本当の梨華の私服は、まいが言っていたようにダサかった。
「じゃあ、兄弟は」
「…梨華ちゃんは3姉妹の真ん中で、あたしは、3姉妹の長女なんです……犬も両方います」
「……」
「ちなみに、すっごい仲良い従姉妹は、ホントの梨華ちゃんの事です………」
「あぁそう……」
「や、焼肉だって大好きです!!! 嘘じゃないですっ、ホントです!!!」
彼女は結局、名前と歳と誕生日や血液型しか嘘をついていなかった。
笑顔も気持ちも、本物だった。
- 414 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:36
-
でも、気持ちは嘘じゃないと言うのなら、なんで。
なんであの時、美貴のキスを拒絶したんだ。
「…キス、拒絶した、のは」
「あ…あぁ」
亜弥は女の子だ。
それはもう、すごい女の子。
「……あたしの名前は、梨華ちゃんじゃ、ないから……」
違う人の名前を呼ばれてキスなんか、嫌過ぎる。
「……石川梨華って名乗ったのは誰なんだよばかやろー」
「ゴ、ゴメンなさい……」
思いっきり怒の表情を表に出すと、亜弥はもう泣き出しそう。
この場合、悪いのは全面的に亜弥だ。
美貴も亜弥も、それを分かっている。
- 415 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:37
-
「スーパーで逢った時も、逃げやがって」
足捻ったんだよ、どうしてくれるんだと文句。
「だ、だって…あ、あたしは行きたくなかったけど、梨華ちゃんが買いたい物があるからって…。
ふ、藤本さん確か水曜日は休みだったと思ったから思い直して行ったのに、いたから…」
「バイトの子が風邪ひいて急遽出勤になったの。っていうか、なんで水曜日が休みって知ってんの」
「そ、それは……」
ずっと見てたから。
ストーカーと言われても、仕方ない。
- 416 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/15(水) 06:37
-
「……」
「……」
大体の事は、分かった。
でも、最後に、もう1つ。
亜弥に、訊きたい事がある。
「なんで………なんで相合傘なんか、書いたの」
「…それは………」
まさか見られるなんて思ってなかった。
そして、捜して待ち伏せなんかするとも思わなかった。
ただただ、亜弥は。
- 417 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:38
-
「あの傘で、相合傘がしたくて」
- 418 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:39
-
青い傘。
美貴が貸してくれた、あの青い傘。
「落書きでもいいから、藤本さんと。…………ごめんなさい」
ぶわっと、亜弥の瞳に涙が溢れる。
それはそのまま、亜弥の瞳から零れ落ち、頬を濡らす。
それでなくても身体中、濡れているのに。
- 419 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:40
-
「…でも、藤本さんには、その白い傘があるから、もう…いいんですよね。えへへ。
………だから……だから、あの青い傘、もらっちゃダメですかね? 今、家にあるんですけど…」
「え…」
「…落書きも、消します。もう、スーパーにも行きません。だから……だから、あの傘だけは…ッ…く」
泣かないでよ。
どうしたらいいか、分からない。
分からないから、とりあえず頷いた。
そして、ありがとうございますと言って、亜弥は、去って行ってしまった。
- 420 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:40
-
*****
- 421 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:40
-
しばらく、雨は降らなかった。
いい天気が続いた。
降水確率60%でも、雨は降らなかった。
そうして降水確率をナメてたら、バイトを早上がりしたある日、雨が急に降り出した。
「げっ」
でもまだ小雨だし。
すぐ止むだろうとまたナメてたら、これでもかというくらい強い雨に変わった。
傘を持ってきてなかった美貴の身体は、10秒も経たずにボトボトになってしまった。
止む気配はない。
大きな公園には、雨を避ける人達が屋根のある場所にいっぱいいた。
美貴が入れそうな雰囲気じゃない。
仕方なく、場所を変える。
そして結局、誰もいない、あの公園のトイレの入り口に。
久しぶりに立ち寄ったそこは、相変わらずひっそり静かだった。
- 422 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:41
-
「……バカ」
ナメてた美貴。
今まで降水確率60%でも降らなかったのに、50%の今日に限って降った雨。
バカバカバカ。
「今日、お金持ってきてないんだよなぁ…」
コンビニで傘も買えない。
スーパーに引き返して誰かに傘を借りようと思っても、濡れた身体が寒くて、言う事を聞いてくれない。
思い出す。
あの時の、亜弥の姿。
それが今は、美貴になってて。
忘れてなんかいない。
「……バカ」
公園の前に見える、傘。
学校帰りの女の子が差している。
――あの青い傘は、美貴のだ。
- 423 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:41
-
「ねえ」
「……」
「…無視するなよ」
そりゃ美貴だって、最初は無視しようと思ったけど。
けど最終的に思い直して、声をかけたんだ。
「………やっぱり、傘返せ」
その、青い傘。
だってそれは、元は美貴のだ。
あの時、あまり把握出来ないまま、確かに頷いてしまったけど。
「………はい」
哀しそうに、青い傘の持ち主はこちらにやってきて、青い傘をビショビショの美貴へと渡す。
そうすると必然的に雨に濡れるわけで。
しかしそんな事気にもせず、真っ直ぐ歩いて去ってく子。
「ちょっと」
「…?」
そこで、美貴は引き止めた。
「風邪、ひくよ」
自分の方が濡れてるくせに、そんなこと。
…ほら、びっくりしてるじゃないか、彼女も。
- 424 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:42
-
「え……あ………」
「…この公園をもっと真っ直ぐ歩いて突き当たったとこを右に行ったとこに、…亜弥ちゃんの家があるんだっけか」
もう忘れない。
傘も、顔も、声も――松浦亜弥の、名前も。
「…家まで送る。こっちの方向でいいんでしょ?」
「そ、そうだけど、あ、あのっ」
傘、傘、と頭の上を指差して。
その方向に向けてみると、傘。
「あ、相合傘っ!」
「――あぁ」
1つの傘に、2人の人間。
左に、藤本美貴。
右に、松浦亜弥。
その光景はまるで、トイレのドアに書かれていた落書きのよう――。
- 425 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:43
-
あの日以来、バイトも忙しくて、公園に立ち寄る事もなくなって。
バイトの行き帰りにチラッと見たりしたけれど、探していた姿もなくて。
ぼんやりと、毎日を過ごした。
そして過ごしていたら、急に雨が降った。
亜弥に出逢ったのは、雨の日。
再び出逢ったのも、雨の日。
自称晴れ女のくせに、雨の時しか姿を見せないなんて、憎い。
- 426 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:43
-
「…本当はしめてやろうと思ってたけど、それ以上にしたくなったことが出来た」
「な、何…?」
「………亜弥ちゃんと、キス」
チュ、と、それは一瞬な。
した後、すぐにプイと思いっきり赤い顔を横にする。
……真っ赤になるくらい恥ずかしいなら、しなきゃいいのに。
「…ふぇ…っ…」
「うぇえっ?! あ、亜弥ちゃん!? なななんでっ、今度はホントの名前で言ったのに!!!
キ、キスやだった?! ごごごめん、ごめんね!!!!」
「ちが…っ……ぅ、…ぅっ…。だってあたし、騙して、たっ…のに」
松浦亜弥じゃなく、石川梨華って。
美貴もむかついた。ひどいと思った。
………でも。
「名前で好きになったんじゃない」
現に、あれから本物の梨華と話す機会が一度だけ逢ったけど、何も思わなかった。
- 427 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:44
-
「今度は、あのおっきな公園のトイレに、おっきな字で、相合傘書こう」
傘の色は、青色で。
名前の色は、亜弥の好きなピンクで。
2人の、相合傘を書こう。
- 428 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:44
-
( ‘д‘)<あい
- 429 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:44
-
川’ー’川<あい
- 430 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:46
-
( ‘д‘)川’ー’川<傘!
ってことで以上、「相合傘」でした。
ありがとうございました。
途中まで名前、「相合傘」に変えるの忘れてた……く、悔しい。
>381さん
朝からチェックありがとうございます。
彼女、こんな感じでした。
>JOJOさん
ラスト、突っ走ってみました。
お気に召してくれるといいんですが…いかがでしたでしょうか。
>京さん
修羅場は、盛り上がれば盛り上がる程、後が大変ですしね(w
ラスト、頑張りました。
>384さん
一番好きと言ってくださり、感激です。有難うございます。
登場人物が実は5本の指に収まる人数しか出ていない話ですが…。
最後までそう思っていただけるように、一生懸命書きました。
- 431 名前:相合傘 投稿日:2003/10/15(水) 06:46
-
>334さん
2回目の更新狙いだったんですが、1回目でちょっとショックでした(w
里田さん、好きなんです…。
はっきりとキャラが分からないので、動かし易いというか。有難うございます。
>386さん
関西のアホやなぁはとても好きです。自分も関西人なものでわかります(w
こちらこそ、いつもいつもこんな話に萌えて頂いて…有難うございます。
小一時間トーク、機会があれば(w
>344さん
心待ちにしてくださって有難うございます。お待たせしました。どうぞ。
>388さん
まあ、元々バレバレだったわけですが…(w
気を遣わせてしまい申し訳ありません。
>389さん
有難うございます。
最後なので暴れてください(w
- 432 名前:44 投稿日:2003/10/15(水) 07:15
- リアルタイム記念パピコ
いっき読みしました。凄く面白かったですよ。
遅レスですが前掛け長靴姿でこけてる姿を想像すると
その無様さが切なかったり
ところで扱いのあまりよろしくない方がいらっしゃるようで (w
いつか良い役も与えてあげてくださいね
- 433 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/15(水) 12:03
- 健気ですねぇ…
すげぇ面白かった!!
できればいつか別視点の続編なんて…いかがでしょう?(w
って、いきなりリクしたくなっちゃうぐらい、
この世界観と言うかシチュエーション最高でした。
ありがとう!!
- 434 名前:ほわ 投稿日:2003/10/15(水) 14:43
- はうあああぁぁぅぅぁぁああああ!!!!!
萌えぇぇぇぇええええ;´д`えええぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!
すごすぎますよ、えぇ、すごすぎます
短編でここまできれいにまとめられてしまうとは・・・
あなた天才ですよ
ほんとにもうありがとうって言葉しかでてきませんね
次回作も大大大期待ですよ〜
- 435 名前:JOJO 投稿日:2003/10/15(水) 18:56
- 更新乙です
ラスト最高でした!
こんなことって…
やっぱり作者さんの作品は癒されます
次回作も大いに期待しています!!
- 436 名前:京 投稿日:2003/10/15(水) 20:29
- お疲れさまでした!!
ラスト、すっごい凝ってますね!
僕がバカなだけかもしれませんが、全然こんなラスト予想もしてませんでした
とても驚かされました(w
とても最高でした。
次回作も頑張ってください。
- 437 名前:334 投稿日:2003/10/15(水) 20:49
- 言い訳するわけではないんですが、自分が即気付けたのも作者さんの描写力の高さのせいだと思います(w
これで、作者さんの書かれる話が誰でも成立と言うわけでは無い事を証明したのだと思います。
しかし、今回は叙述トリック云々よりもストーリーのドラマ性の高さに驚かされました。
作者さんの書かれた話の中でも私的には上位の話になりました。ほんとこの話大好きです。
青いです、切ないです、泣けるです、岩井俊二監督で映画で見たいです。ほんと好きです。
セリフにもやられました。『藤本さんの事、好きになってたから。だから、〜』ここで泣き始めました。所々で泣きました。
『傘』という言葉の使い方が美しく巧みで素晴らしかったです。正直いつも絶賛ですが、今回は手放しで大好きです。
長レスすいませんでした。感動しました。ありがとー。
- 438 名前:いの 投稿日:2003/10/15(水) 22:14
- すごい。うまい。
話に引きこまれました。
次の新作にも期待してます。
- 439 名前:344 投稿日:2003/10/15(水) 23:21
- いやあ! またまた一本取られましたね!
驚きました。 そして感動しました!
やっぱ作者様の作品大好きです!
自作もとーーーっても期待しておりますよ!
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/16(木) 06:35
- 完全にやられました。松竹藤さん、あなたって御人は…
次回作も期待してます。
- 441 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/19(日) 09:02
- sageで一度も上げずに更新していたのですが、
たくさんのレスをいただけ、幸せでございます。本当に有難うございました。
>44さん
リアルタイムでの拝見、有難うございます。
前掛け長靴でこけると確かに恥ずかしい(w
扱いがあまりよろしくなかった方、大好きなので、いつかはフォローしたいと思います(w
>433さん
実は別視点の続編ではないのですが、蛇足で後日談となるものを書いてみたんですが…
本当に蛇足だったのでボツにしました…。
個人的には世界観もシチュも大好きな話なので、いつかはまた書いてみたいです。
>ほわさん
そ、そこまで興奮していただき有難うございます(w
他のあやみき作家さん達の素晴らしさに凹んだりする時もあるので、そう言って頂けるとまた頑張れます。
こちらこそ、お読み頂き有難うございました。
>JOJOさん
いつみんなにバレるかな…とビクビクしながらの更新だったので、
上手く最後まで騙せたのなら成功でした(w
癒されてくれて、こっちが有難うございます…嬉しすぎる。
- 442 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/19(日) 09:02
- >京さん
ラストは物足りないかなと思ったんですが、最後はどうしてもあの一文で締めたくてああいう感じにしました。
毎回レスしてくれて有難うございます。
>334さん
めちゃくちゃ嬉しいです(w いやほんと、有難うございます。
スレ内で収めようと少し急過ぎたりしたかなと反省点もありますが、
無事終わる事が出来、ホッとしております。
松浦さんのセリフは狙いすぎだったかなと思ってましたが、泣いてくれて嬉しいです(w
>いのさん
有難うございます。
こういう話しか書けませんが、次も見てくださると嬉しいです。
>344さん
本当に有難うございます。
これからも大好きでいたくれるように、頑張りたいと思います。
>440さん
完全にやられてくれて有難うございます(w
すいません、こんな奴で…
- 443 名前:松竹藤 投稿日:2003/10/19(日) 09:03
-
次回のお話なんですが、まあまず、アイディアがありません…。
皆様の期待に添えず、申し訳ありません…。
なので、しばらく間が空くかもしれません。
短編などは書くかもしれませんが、その際は、
容量がいっぱいになって前回の失敗が起こりそうなので、こちらではなく、まだスレ自体が残っていれば銀板の前スレに載せたいと思っております。
今度はそちらで、どうかよろしくお願いします。
- 444 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 17:34
- 藤本(不良グループのリーダー格)
松浦(転校生で不良グループにいじめられる)
藤本と松浦が出会う。→恋に落ちる。
こんなん書いて。
- 445 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/02(日) 01:02
- >>444
あのさ、リクするにしてももうちょい言葉えらぼうや。
確かに以前作者さんはネタ募集してたけどさ。
- 446 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/02(日) 12:07
- >>445
自分も言葉選んだほうがいいのではないでしょうか
- 447 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/12(水) 05:29
- 我が儘なお願いですが、さとみき、見たいです。
前回の里田さん、よかったし
カン紺藤の新しいPVもよかったんで。
もし気が向いたらでいいんでよろしくです、ハイ。
- 448 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 09:23
- 保全
- 449 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 23:02
- 保全
- 450 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 20:57
- ほ
- 451 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/20(金) 11:42
- 最初のスレで書いていた、小川と紺野の物語の続編希望です。
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