福井の救世主。高橋愛誕生祭
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)16時35分53秒
- 川’ー’川 誕生日やよー、小説書いて欲しいやよー
- 2 名前:詳細 投稿日:2003年09月06日(土)16時38分05秒
- ついに9月14日が迫ってまいりました。
このスレは、福井の救世主、愛ちゃんの誕生日を祝うスレです。
ぜひぜひ皆様もどんどん小説を書き込んでください。
誕生日に関係なくてもかまいません。
普段娘。小説の世界で目立てない愛ちゃんに愛の手を(ry
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)16時40分29秒
- 『ぽっけにひとつ』
- 4 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時41分24秒
- 「信じないわけじゃないんだけど……」
怖気つく私に、あさ美ちゃんはプクッと頬を膨らませて怒った顔をする。
「だったら!」
「でも、でもね。あさ美ちゃんの勘違いかもしれないじゃん」
ますます怖気つく私に、ますます頬を膨らませるあさ美ちゃん。
ほっぺたが風船みたいに膨らんで、そのまま飛んでいってしまいそう。
「いくじなし」
「だってさぁ」
モジモジする私に、あさ美ちゃんは飽きれたようにふーっと息をはいた。
膨らんでいた風船がしぼんてゆくよう。
「今日しかないんだよ。明日には高橋先輩転校しちゃうんだから」
「……うん……」
- 5 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時42分08秒
- 私はいたたまれなくて下を向いた。
あさ美ちゃんの綺麗につま先をそろえた足が見える。
「それ」
あさ美ちゃんが言う。
でも、『それ』って何の事だろう。
「ちゃんと渡してあげなきゃ可哀想だよ」
私ははっと顔を上げた。
あさ美ちゃんの言う『それ』が何なのか分かったから。
私は胸に手を当てて小さく頷いた。
- 6 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時42分57秒
それから一時間後、夕焼け小焼けを背景に、私は泣きながら歩いていた。
泣き止まない私をあさ美ちゃんはずっと傍で慰めてくれた。
「いい人だったね」
「う、うぅ」
「ちゃんと受け取ってもらえたね」
「うぐ、うう」
「まこっちゃんの一生懸命がちゃんと伝わったんだよ」
私の横を歩きながら、独り言のように言うけれど、
でも、それはちゃんと私に向けられた言葉であって、
私は頷くしか出来なくて、
でも、ちゃんとあさ美ちゃんは分かってくれて、
だから、私は泣き止む事が出来たんだと思う。
- 7 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時43分53秒
空が藍色に混ざる頃、私は自分の家に帰り着いた。
あさ美ちゃんは玄関の前まで付き合ってくれた。
「あさ美ちゃん。今日はありがとね」
「ううん。まこっちゃんも良くがんばったよ」
私は照れくさくて鼻の頭を掻いた。
「あさ美ちゃんのおかげだよぉ」
あさ美ちゃんはにっこりと微笑んだ。
そして、何かを思い出したような顔をする。
「そうだ、まこっちゃんにいいものあげる」
「え?」
「ちょっとまっててね」
そう言うと、あさ美ちゃんはスカートのポケットをごそごそと調べだした。
そして、何かを見つけたのか嬉しそうににやにや笑いを浮かべる。
「じゃーん」
あさ美ちゃんはビニールに包まれた飴玉をひとつ取り出した。
- 8 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時44分43秒
「はい、がんばったご褒美にこれあげる」
「あ、ありがとう」
どうして飴玉なんだろう、と思いながら思わず受け取った。
あさ美ちゃんは私が受け取ると、踵を返して玄関を離れ、笑顔で手を振っている。
「それじゃ、またあしたぁ」
「うん、学校でね」
そう言うと、走って帰っていった。
私は、あさ美ちゃんが見えなくなるまで見送ると、手に残った飴玉を見つめる。
「ま、いっかぁ」
ビニールを開いて飴玉を取り出すと、ぱくっと口に放り込む。
口の中で、甘いソーダの味が広がった。
- 9 名前:ぽっけにひとつ 投稿日:2003年09月06日(土)16時45分54秒
- おわり
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)16時46分37秒
- おがたかです。誰がなんといおうとおがたかです。
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)16時47分10秒
- 後に続け!
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)17時45分46秒
- 「ねー愛ちゃん。愛ちゃんさ、いいかげん方言止めたほうがいいよ」
「え、なんでぇ?」
「いや、とにかくさ、愛ちゃんのために言ってるんだよ」
頭に浮かぶ無数の疑問符。
なんで急にあさ美ちゃんはそんなこと言い出したんやろか。
て言うか、寒いのは自分でもわかってるって、何度か言ったはずなのに……。
「なんでそんな今さら……」
「いや、寒いとかキャラ作ってるとか聞き取れないとかウザイとかじゃないの」
なんか言いたい放題言われてる気がする。
まあそれはいいとして、なら何故?
「いやだってさ、方言って、書きにくいじゃん」
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)17時46分53秒
- 書きにくい?
何を書くの?
「愛ちゃんの小説」
え……。
ちょっとどうしちゃったの!おじゃマルシェ!
誰が何の目的でそんなの書くの!意味不明やよ!
「別に書かれたくないならいいよー。
私は愛ちゃんのために言ってるのに……。
ねえねえ、じゃあさゆみちゃんとかれいなちゃんとか好き?」
い、いや嫌いじゃないけどあんまり喋ったことないし……。
「ふむ。じゃあそうだなぁ、石川さんは?」
え、い、石川さん……?
そりゃ好きだけど、別に恋愛感情とかそういうわけじゃないんやけど、友達としてというか
先輩としてというか、憧れの的ではあるけど……。
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)17時48分05秒
- 「ふんふん。じゃあ、今度からテレビ出てる時は石川さんにいっぱい絡みなね」
あさ美ちゃん意味不明やよ。こわいやよ。なきたいやよ。
なんかわかんないけど、まこっちゃんとかじゃダメなの?
「まこっちゃんはダメ! 私のもの! おがこんは第二のいしよし!」
す、すみません……。目が怖いぃ……。
「あ、そういえば愛ちゃんもうすぐ誕生日じゃん!」
そうなんやよ。べつにプレゼントとか、気使わなくていいからね。
「聖誕祭って手があった! よし。こうしちゃいられない。
私先帰って綿密なプロジェクト組んでくるよ!愛ちゃん主役ものが増えるように!」
なんだかよくわからないけど、ありがとう……。
「じゃあね!バイバイ」
嵐のように走り去っていくあさ美ちゃん。
なにはともあれ、愛されてるみたいだからまあいいか。
方言なくすのは無理だけど……。
- 15 名前:名無し6 投稿日:2003年09月06日(土)20時12分11秒
- 書きます。
- 16 名前:名無し6 投稿日:2003年09月06日(土)20時13分28秒
- わいわいにぎわっている楽屋。
今日もいろんな話題が飛び交っている。
「ねぇ、愛ちゃん。『死』ってなんだと思う?」
「急にそんなこと言ってどうしたの?」
その話題にまぎれて、私の隣の少女は急にそんなことを言いだした。
周りのみんなは、どうやら自分たちのことで必死らしく、
少女の言ったことは聞こえていないようだった。
「いや、愛ちゃんはどう思ってるのかなって」
「死かぁ・・・別の世界に旅立つみたいな感じかな」
「じゃあ、愛ちゃんは死んでみたいの?」
「そんなわけないよ」
「どうして死にたくないの?」
「うーん・・・目の前の人と離れたくないからかな?」
今のも周りのみんなに聞こえてないことを祈りながら、
赤くなっている顔を、目の前の人からそらした。
- 17 名前:名無し6 投稿日:2003年09月06日(土)20時14分14秒
- 短いですが以上です。
- 18 名前:名無し6 投稿日:2003年09月06日(土)20時20分43秒
- 題名を入れ忘れてました。
『愛と死』です。
- 19 名前:[ Septillion ] 投稿日:2003年09月06日(土)20時26分24秒
- 最初、彼女と出会ったときの感動を私は忘れない。
全てが桁外れだった。この瞳が信じられなかった。
今まで自分が歌ってきた唄は一体なんだったのだろう。
一度は自信を失くしかけ、彼女の歌を聴いて、またやる気が出た。
その綺麗な唇が紡ぎ出すメロディは、私の知らない世界を教えてくれる。
ある場所を目指して歩いていたはずのこの道をすべてぶち壊し、
そして新しく広い平地を作り出す。私は彼女のそんな歌声に酔いしれた。
「高橋先輩、お誕生日おめでとうございます」
彼女の声はとても澄んだ鈴の音のような響きを持っている。
涙が溢れそうだった。ありがとう。どうにかそれだけ伝えられた。
「…ハッピーバースディトゥユー…」
彼女の歌が聞こえてくる。
誕生日を祝う歌。彼女が私に歌ってくれる唄。
私はまた、知らない世界へと旅立てる。
〔 GAME OVER 〕
- 20 名前:誕生日プレゼント 投稿日:2003年09月06日(土)21時59分36秒
時刻は集合時間の10分前。
いつも30分以上前には着いているのだけど、楽屋は居心地が悪いのでトイレで時間をつぶしてから向かっている。
こうすれば、すぐに仕事の打ち合わせで居心地の悪さを感じなくて済むからだ。
私は、ため息を1つ楽屋のドアノブに手をかけた。
「おはよーございます」
「キタ━━━( ゚∀゚ )━━━━!!!!!! 」
「高橋キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!」
楽屋に入ると珍しくメンバーのみんなから囲まれた。
どうしたんだろう?
こんなに注目されるのは一年ぶりくらいだ。
「ど、ど、ど、どうしたんですか?」
慣れないことについ吃ってしまう。
「今日って高橋の誕生日でしょ」
まだ衣装に着替えてないらしいラフな格好の矢口さんが言う。
そのポケットから見える茶封筒がなんなのか気になったが
「だから、はい。プレゼント」
矢口さんがそういって包装紙に包まれたモノを私に差し出してきたので聞けなかった。
私は、それを受け取る。
矢口さんの行動をきっかけにメンバーたちがどんどん私にプレゼントをくれた。
どれもこれも小さく分厚い。
- 21 名前:誕生日プレゼント 投稿日:2003年09月06日(土)22時00分30秒
「お誕生日おめでと〜」
最後になった辻さんは買ってきたばかりと思われる本をそのままでプレゼントをくれた。
幽霊のような子――という題名。
まさか、私のことを言いたいのだろうか?
「なんだ、辻も本なの?」
私が固まっていると飯田さんの声。
「え、飯田さんも本なんですか?」
石川さんの声。
「マジでーっ、うちも本だよ」
「なっちもだよ」
「あ、私もです」
「もしかして、みんな本にしたんじゃないの?」
全てのきっかけになった矢口さんが私が手にしているプレゼントの山を見て言った。
途端、楽屋は静寂に包まれる。いっせいにみんなの目が私の手元に注がれる。
私も自分の手元を見た。
確かに、大きさは違えどこれは本らしい。
- 22 名前:誕生日プレゼント 投稿日:2003年09月06日(土)22時01分50秒
「……あ、愛ちゃん、いっつも休み時間本読んでるから」
私の親友、加護さんが言い訳がましいことを言う。
「さすが、娘。心は1つだね」
「なっちなんか娘。やっててよかったべ」
飯田さんと安倍さんは勝手に感動している。
他のメンバーは引きつった笑顔を浮かべている。
まずい、なにか言わなきゃ――
「あ、ちょうど読む本なくなってきてたんで……ありがとうございます」
私の言葉に皆一様にホッとした吐息を漏らした。
今までの微妙な空気は一掃されいつものようにがやがやと騒がしくなる楽屋。
14人分の安堵を感じながら私は空いていた場所に座る。
偶然、メンバーの荷物袋が目に入った。
矢口さんのズボンのポケットに入っていた茶封筒が一人一人の荷物袋の中に見える。
……どうして、みんなあんなものを持っているんだろう。
「……手当てが……しょ」
「‥・・・・ね」
微かに聞こえる何人かの声。
私にはよく分からない話をしているみたいだ。
私は、辻さんから貰った本をゆっくりと開いた。
おしまい
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時02分23秒
- ごめんなさい
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時06分20秒
- ゴメンなさい
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時06分56秒
- ゴメンナサイ
勘弁してください
許してください 。・゚・(ノД`)・゚・。
- 26 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時21分40秒
某独裁国家のBC兵器研究施設の杜撰な管理体制によって、誰にも知られずに
全世界に恐るべき細菌兵器が漏れだしていた。
それから一年も経たず、世界人類は絶滅の危機に瀕していた。気付いたときには
もはやすべてが手遅れだった。
ワクチン開発には全世界の知性が結集されたが、それを上回るスピードで猖獗を
極めていく細菌に対して、まったく打つ手は発見できなかった。また、ヤケに
なった某国が怒りにまかせて半島へ核を打ち込んだのをきっかけにして、
恐るべき「パイ投げ」の連鎖が始まった。
細菌は放射能によってさらに異常な進化を遂げ、滅亡へのカウントダウンを
加速させていった。
- 27 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時22分10秒
- 目の前に拡がっている壁の空白を目の前にして、高橋愛は立ちすくんでいた。
レコーディング中に、つんくが全身の毛穴から血を噴出させて絶命したのが
八ヶ月前。それから、モーニング娘。のメンバーはどうする事も出来ず、
次々と命を落としていった。
死から逃れるために、メンバーたちはありとあらゆる手段を講じて、そして
失敗していった。密閉されたシェルターに閉じこもり、自家用機をチャーターして
南極まで飛び、特効薬の噂を聞くたびに世界中を飛び回った。しかし、恐るべき
細菌の力は容赦なく一人一人とメンバーたちの命を奪っていった。
もはや世界中に生き残っている人類はほんの一握りだろう。詳細に世界中の
動向を伝えていたテレビやラジオも、一ヶ月ほど前から沈黙したままだ。
高橋の体の中にも当然細菌は侵入しているはずだった。今までそれらがなにも
起こさずにいたのはなにかの啓示のようなものだと、どちらかといえばリアリスト
であった彼女でも信じずにはいられなかった。
- 28 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時22分49秒
- 高橋と共に、最後まで生き残っていたメンバーである田中れいなも、つま先から
網目のように石化していく奇病によって死に瀕していた。
もし石化が心臓にまで及べば、いやおうなく命を落とすだろう。
腰の辺りまで石になってしまった田中の小さな身体をおぶりながら、高橋は放射能に
覆い尽くされた廃墟をあてもなく逃げまどった。しかし、ある廃屋で夜明けを
迎えたとき、衰弱しきった田中から声がかけられた。
「高橋さん、私、もうここで休みます……。だから一人で……逃げて」
「なに言ってるやよ! ダメやよ諦めちゃ!」
高橋は号泣しながら田中の細い肩を揺さぶった。田中は弱々しい笑みを浮かべると、
高橋の真っ赤に泣き腫らした目を見つめた。
- 29 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時23分25秒
「私、高橋さんは生きないといけない運命なんだって……よく分かんない
けどそう思うんです。……生き残った誰かが、このことを、誰かに……」
そこまで言って田中は激しく咳き込んだ。高橋は絶え間なく声をかけながら
田中の背中をさすり続けたが、そのまま目を閉じた彼女の声を聞くことは、
二度となかった。
三日三晩、その場で蹲って泣き続けた。何度も自殺を考え、そのたびに田中の
最後の言葉が耳の奥でリフレインされて、思い止まらされていた。
こぼれ落ちる涙も涸れ果てて高橋が顔を上げたとき、壁にもたれ掛かって座って
いた田中の身体は完全に石化していた。目を閉じて安らかな表情で硬直している
顔を撫でると、高橋はよろめきながら立ち上がった。
- 30 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時23分55秒
- 来たこともないような異国の街だった。吐瀉物に血が混じり初めてから大分たつ。
最後に食事を摂ったのがいつかも思い出せない。わずかな汚染された水だけで
なぜ生き続けられるのか、自分でも不思議だった。
ペットボトルの中には赤黒い液体が詰まっている。自分自身の血だった。いつか
どこかにメッセージを残すことだけを考え続けて、高橋は世界中を彷徨い続けた。
枯枝のようになった両脚が遂に動かなくなった。その時に、目の前に聳えていたのが
真っ白い壁だった。高橋には、それもまた神の手による導きだと感じられた。
今、私はここになにかを残さなければならない。何千年の進化の末に人類が
行き着いたあまりにも馬鹿げた結末。そのことを、遠い未来に発見する誰かに
対して伝えなければならない。それが自分に与えられた責務なのだ。
しかしどうやって?
- 31 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時24分27秒
- 絵画だろうか。「ゲルニカ」のように人類の愚かしい破滅をこの白いキャンバスに
自らの血で描くべきなのか。
しかし、そんなものを描きつくすだけの体力も時間も、自分には残されていない。
私のもっとも得意としているのはなんだろうか。それは歌だ。歌でもって
メッセージを伝えることには経験に裏打ちされた自負も持っている。
しかし、この場で全身全霊を込めて歌を歌ったとて、誰も聴きはしない。
刹那的な空気の振動はあっという間にかき消されてどこにも残らない。
ではなにを? どうやって?
高橋は焦っていた。死が目の前にまで迫っていることは自覚していた。残された
時間はわずかしかない。のんびりと逡巡しているような余裕などなかった。
いまこの場に残すべきもっともふさわしい言葉はなにか。愚かで馬鹿馬鹿しく、
それでも愛すべきだった人間たちの歴史の最後に刻まれるべき言葉は、いったい?
- 32 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時24分59秒
- 気が遠くなりかけていた。高橋はぐったりと大地に蹲っていた身体を最後の
気力を振り絞って持ち上げると、ペットボトルから右手に自らの血を注いで、
壁に向かっていった。
夜の闇の中でなんども気を失いながら、高橋は壁にぶつかり続けた。やがて、
長い時間をかけて最後の一筆を描き終えると、そのまま大地へ崩れ落ちた。
細菌はついに活動を起こすことはなかった。衰弱した高橋の身体は、生きながら
風化していたのだった。
何事もなかったように日は昇り、何事もなかったかのような大地をすみずみまで
照らし出した。
壁は、白いままだった。
- 33 名前:世界は君の後ろにある 投稿日:2003年09月06日(土)22時25分29秒
- 終わり
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時26分02秒
- 深いツッコミは
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時26分33秒
- 勘弁してね
- 36 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時32分48秒
- 独りで本を読んでいた愛の前に麻琴が立った。
「愛ちゃん」
愛が顔を上げると、どこか厭らしい笑みを浮かべた麻琴がいる。
愛が、何?、と聞こうとする前に麻琴の手が愛の肩に伸びた。
「さーわった!」
それだけ言うの麻琴は嬉々として行ってしまった。
鬼ごっこでもしていたのだろうか。
愛は首を傾げたが、さして気にせずに続きを読むことにした。
―――――――――――――――
「まこっちゃん、こっちー」
「小川ーゴローさんやってー」
「キャハハハハ、、、小川サイコー」
愛の耳に賑やかな声が聞こえてきた。
麻琴がみんなとじゃれていた。
何となしにそれを見つめる。
いいなぁ、と心の中で呟いてみた。
最近愛はあまりメンバーと話していなかった。
何となく楽屋では独りで本を読んでいる事が多かった。
「点呼とるよー。集まってー」
リーダーの圭織の声が響いてメンバーがぞろぞろと集まりだした。
愛も栞を挟んで本を閉じて席を立った。
- 37 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時33分19秒
「なっちー」
「はーい」
「やぐちー」
「おう」
「いしかわー」
「はーい」
「よっすぃー」
「はい」
「つじー」
「へい」
「かごー」
「はいー」
「おがわー」
「はい」
「こんのー」
「はい」
「にーがき」
「はーい」
「ふじもとー」
「はーい」
「かめいー」
「はぃ」
「みちしげー」
「はい」
「たなかー」
「はい」
「よーし、みんないるねー。じゃあ行くよー」
- 38 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時33分54秒
愛の心臓がドクンと跳ねた。
性質の悪い冗談かと思った。
他のメンバーはそれぞれ気の置けない同士で談笑しながらスタジオに向かう。
愛は慌てて後を追うと、圭織の背中に向かって声を掛けた。
「ちょっと飯田さん、ひどいじゃないですかー」
言葉には苦笑を交えたが、愛のこめかみには嫌な汗が伝っていた。
愛は圭織が笑いながら振り返って
それからみんなが振り返って、ごめんごめん、冗談だよ、と言うのを今か今かと待った。
しかし、ついに誰も振り返らなかった。
- 39 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時35分01秒
愛は、自分抜きで、それなのに誰も違和感を唱えない撮影現場を目の当たりにした。
それは、自然で、愛がいないことがあたりまえの場所だった。
愛はともすれば押し潰されそうな不安に苛まれながら考えた。
どうして。
ふと、愛の頭の中に先ほどの麻琴のことが浮かんだ。
そういえば麻琴にも、一時期、居る事さえもわからないほどに存在感の薄れた時があった。
今でこそ、その抜けたキャラが受けている麻琴だが昔は見えないときがあったのだ。
最近の愛は浮いているという自覚があった。
独りでいることが多く、無闇に疎外感を感じるようになっていた。
まるで、以前の麻琴のようだと思った。
その時愛は一つの考えを持った。
麻琴の「さわった」の意味。麻琴の表情。
この境遇は人から人に移るのだ。
麻琴が私に触って私に移ったのなら、愛も誰かを触って移すことができる、そう考えた。
そう考えた時愛の肩から力が抜けた。
- 40 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時35分39秒
- 何だ、吃驚した。
誰かに移せるのならたいしたことは無い。
早く気付いてよかった。
愛は冷たい壁にもたれながら安堵の溜め息をもらした。
では、誰に移そう、と考えたとき、この奇妙な境遇を利用しない手は無いと考えた。
もうすぐ娘。は二つに分かれる。
少しでも自分に有利に扱わなければ勿体ない。
乙女組はいい。
桜組のなかでも、愛の位置を脅かすかもしれない存在、亀井に決めた。
後輩の亀井には悪いが、伸びそうな芽は摘ませてもらおう。
愛の気持ちは、随分と楽になった。
- 41 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時36分12秒
メンバーが撮影を終えてぞろぞろとスタジオを出てきた。
何か言う愛の言葉に足を止めるメンバーは一人もいなかった。
愛はメンバーの後ろについていった。
絵里の後ろにつけた愛が絵里に呼びかけた。
しかし、絵里は何の反応も返さず、先輩メンバーの後に続いていそいそと歩いていた。
その、態度が愛の心に火をつけた。
ゴメン、と言いながら愛は絵里の肩に手を伸ばした。
その顔は笑っていた。
- 42 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時36分47秒
スッ、と愛の手が空を切った。
確かに絵里の肩に届く位置で手を伸ばしたのに。
当たらなかった、否、突き抜けた。
愛の顔から生気が消えた。
その場にがっくり膝をつき、焦点の定まらない双眸に遠ざかるメンバーの背を映していた。
メンバーのくすくすという笑い声が、耳を抜け
次第に小さくなり
消えた。
それから愛の目は何も映すことは無かった。
そして愛の姿も、誰の目にも映ることは無かった。
おわり
- 43 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時38分08秒
- 高橋さんおめ!
- 44 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時38分58秒
- というか高橋さんの誕生日企画ってこと
- 45 名前:さみしいよ 投稿日:2003年09月06日(土)22時40分17秒
- 忘れてたっ! スマソ
- 46 名前:名無しララ 投稿日:2003年09月06日(土)22時43分39秒
- 愛ちゃんの誕生日だという事なので愛ちゃんのモテまくり物語を書きたいと思います☆
長編になる予定です
みなさん見てください★
- 47 名前:愛は一人で本を読むらしい〜早くふるさとに帰りたい〜 投稿日:2003年09月06日(土)22時44分27秒
- 高橋愛は人気者だ。
- 48 名前:名無しララ 投稿日:2003年09月06日(土)22時45分17秒
- 御免なさい。
筆者の貧困な想像力ではこの続きを書く事が出来ませんでした。
勢いで思ってもない事を書いてしまって本当にすいませんでした。
- 49 名前:名無しララ 投稿日:2003年09月06日(土)22時46分32秒
- キタ━━川‘〜‘)●´ー`)〜^◇^)^▽^)o^〜^)´D`)‘д‘)´▽`∬o・−・)・e・)VvV从*・ 。.・从 ´ ヮ`)ノノ*^ー^)
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時47分19秒
- ヤヨ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜川’ー’川゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)22時47分52秒
- ( ´,_ゝ`)プ━━━━━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!!!!!!!!!!!!
- 52 名前:愛の 投稿日:2003年09月06日(土)22時58分41秒
- 彼女の羽はもはや普段の半分も機能していなかった。
羽だけではない。体中のあちこちに傷を作っていた。
それでも彼女は立ち上がった。
家族のため、親友のため、そして全ての妖精たちのため。
そいつが現れた時、愛は親友であるあさ美と、憧れの男性についての話で盛り上がっていた。
やれガクトだ反町だキムタクだとやたらと名前を並べるあさ美に、愛はつっこもうとしていた。
それは叶わなかった。
愛が口を開きかけた瞬間、空から降ってきた火の玉があさ美を飲み込んだのだ。
状況が飲み込めず、上を仰ぐと、指先に炎の塊を作った人間と目が合った。
とっさに愛は地面を蹴って左に転がる。
次の瞬間、愛のいたところに炎の弾がぶつかり、地面を揺らした。
あたりに砂煙が舞い視界が奪われた。
愛は混乱しながら、猛スピードで羽ばたき、そこから逃げ出し自宅へ向かった。
が、そこにもう街はなかった。あちこち地面が凹んでいて、さっきのヤツの仕業だとわかる。
愛の中で何かが一気に膨らみ、さっきいた所に踵返しした。
- 53 名前:愛の力 投稿日:2003年09月06日(土)22時59分31秒
- ヤツのことについては大体見当がついている。
大昔、度々世界を救った勇者だが、ある日突然、今のように凶行を繰り返すようになり、
泣く泣くみんなでどこかに封印したのだと言う。
その封印がそろそろ解けるのではと噂しているのを愛も聞いたことがある。
たしか名前はツンクだったか。
愛の目がツンクを捉えた。
堂々とした態度で廃墟と化した街を闊歩している。
愛は、彼には無い視力8.0の目でツンクを観察した。
髪は金色で、逆立っている。
サングラスをかけ、細い眉に、はっきりとした輪郭が、特徴と言えば特徴だった。
赤っぽいTシャツに色のあせたジーパンを穿いている。
怒りに身を任せ、ありったけのスピードでツンクに体当たりを試みた。
しかしあっけなくツンクにかわされる。
そもそも愛は攻撃の魔法は教わっていない。
相手にダメージを与える技など知らないのだ。
そしてツンクはこの世界で数少ない炎を操れる人間だ。
- 54 名前:愛の力 投稿日:2003年09月06日(土)23時00分13秒
- 愛はそのまま上昇した。
ツンクは飛ばずにだまって愛を見上げている。
愛は体からまばゆい光を発した。
その状態のまま、ツンクに急降下し、
顔に思い切り頭突きを食らわせた。
ツンクが吹っ飛んでよろけている隙に、落ちている石を拾って思い切り投げつけた。
顔を抑えていた手に命中した。
愛が喜んだのもつかの間、壊れたサングラスを投げ捨て、スイカほどの炎弾を投げつけてくる。
スピードが早く、愛は肩に火傷を負った。
体勢を立て直して見渡すと、ツンクの姿が無かった。
次の瞬間、背中に思いっきり蹴りを食らう。
倒れこんだところに馬乗りになられ、何度も顔を殴られた。
指先の炎で、体中に根性焼きのような火傷を作られた。
愛は、飛んでくる拳に向かって、逆に額を思い切りぶつけた。
少しめまいを感じながら見ると、ダメージは僅かしか与えられなかったようだ。
と、次の瞬間、ずっともがいていた愛の手が抜けて自由になった。
殴ろうにも振りかぶれず、ツンクの服の襟をつかんで引き寄せた。
彼はあっけなく愛の横に倒れこむ。
- 55 名前:愛の力 投稿日:2003年09月06日(土)23時00分46秒
- そのままツンクに馬乗りになって殴りかかろうとした。
が、次の瞬間愛はツンクの衝撃波と炎の弾を腹に食らって、空高くまで吹っ飛ばされた。
思わず涙がこぼれた。
死ぬのが怖いのではない。
ただ純粋に、悔しかった。
友達を殺し町を壊し、好き勝手やってるヤツに報復することもできないでただ殺されるだけ。
あさ美や親や友達の顔や、町の風景が頭をよぎり涙が止まらない。
はらはら零れ落ちる涙の行く先を見ると、ツンクが家が一個入りそうなほど大きな炎の弾を、
愛に向けて発射していた。
炎の弾はまっすぐに愛のところへ飛んできた。
- 56 名前:愛の力 投稿日:2003年09月06日(土)23時06分18秒
- 突如、まばゆい光とともに、眼下の炎の弾が飛び散って消えた。
それからツンクの叫び声が聞こえてきた。
それはまるで手足の指を一本ずつ切り落とされているような凄まじい悲鳴だった。
愛の見る前で、ツンクは熱いフライパンに乗った水滴のような音を発しながら溶けていった。
同時に悲鳴もはさみで切り落とされたように消えた。
そうか。
愛は思い当たった。
涙だ。
愛の純粋な涙がツンクの炎を消したのだ。
愛は泣きながら地上へ降りた。
しかしそこには逢いの知っているものは何一つ残っておらず、
愛は殺されなかったことを少し後悔した。
- 57 名前:愛の力 投稿日:2003年09月06日(土)23時08分15秒
- おわり
- 58 名前:高橋誕生日オメ! 投稿日:2003年09月06日(土)23時08分57秒
- 駄文すまそ
- 59 名前:高橋誕生日オメ! 投稿日:2003年09月06日(土)23時09分59秒
- 川’ー’川 まんせー
- 60 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時16分48秒
- 書きます。
- 61 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時17分24秒
- 「この後空いてる?よね?高橋」
ダンスレッスンを終えシャワー室から出てきた私に、安倍さんがニコニコ近づいてきた。
珍しいコトもあるもんだと思ったけれど、素直に本当のコトを答える。
「ええっと、はい。もう帰ってゴハン食べるだけです」
「じゃあさ、ちょっとなっちにつき合ってよ」
私はびっくりして、手に持っていたブルーのタオルを思わず落としそうになってしまった。
あははは、ベタな驚きっぷりだねえ、と安倍さんは笑って、行こう?そのまんまでイイからさ、と私の手を握った。
さらにびっくりした私は、その手に何か隠されてるんじゃないかと思ってとっさに手を引っ込めてしまう。
「な、何ですか安倍さん。何か企んでるんですかね」
「もーう違うってばー高橋、ほら、行くよ」
- 62 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時18分00秒
- 笑顔のままもう一度私の手を握った安倍さんは、おでかけおでかけ、と妙な節をつけて口ずさみながら私の手を引っ張って歩く。
何だろう。
珍しいドコロじゃない、こんなの今までになかった。
手をつないで歩く私たちに気づいたメンバーは、おお、とか、なっち高橋がビビってるじゃん、とか何とか、いちいち声をかける。
たとえばコレが安倍さんと…そうだな、吉澤さんだとしてもこんなに、声はかからないだろう。
それくらい私と安倍さんの組み合わせは珍しいのだ。
安倍さんはそんなメンバーの声にテキトーに応えながらも一度も立ち止まるコトはなく、私たちを待っていたらしい車の前までものすごいイキオイで歩き続けた。
「あのー、ホントに安倍さん、何ですかね?」
「だから、なっちにつき合ってくれない?って言ったじゃん。ちょっとそこまで」
ちょっとそこまで、ってコンビニでもないだろうけど。
メンバーでヒマなのは私だけだったのだろうか?
- 63 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時18分33秒
- 「私でイイんですか?」
「何言ってんの?高橋がイイんだよ」
私はもうそれ以上は訊かないコトにした。
しつこいって思われるのも何だかなあと思ったし、安倍さんと一緒に行動するというのはやっぱり、ちょっとワクワクするから。
「じゃあ、青山までお願いします」
後部座席から運転手さんにそう告げた安倍さんは、ふう、と大きく息をつくと、どさりとシートにカラダを沈めた。
安倍さん、ため息…やっぱり私じゃなくて本当は、そう思いかけたココロに、いけないと自分でストップをかける。
高橋がイイと言ってくれたんだから、さっき、それでイイじゃない?
- 64 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時19分10秒
- 静かな車内の空気は、少し緊張しているような、居心地が悪いような気がした。
私が緊張しているから?普段はありえない組み合わせだから?それとも?
横目で安倍さんを見ると目を閉じてじっとしていたから私は、黙って窓の外に目をやる。
小さな運河にかかる橋をちょうど渡るトコロだった。
のんびり走る小さな船が、橋の下を通り抜けてゆく。
…ああ、こんな空気の中にいるくらいなら、あの船に飛び乗って海まで連れてってもらいたい。
あれこれ考える私に気づいたのか、安倍さんが急に私を見て微笑んだ。
「高橋も、だいぶオトナっぽくなったよね」
「…そうですか?」
安倍さんと2人でいるだけで緊張して、逃げ出したいなんて思っているのに。
「そうだよ」
もうすぐ着くから、安倍さんが十数分後にそう言うまで私たちは、二言三言しかコトバを交わさなかった。
やっぱり私は、ココにいるべき人間てはなかったのではなかろうか?
- 65 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時20分05秒
- 「ココだよ」
車から降り立った歩道は並木道で木陰になっていたけれども、ムっとした空気が一気に私たちを包む。
安倍さんは、さあ、こっち、と私の背中を押してとある店の中に入ろうとする。
「え、え、ココですか?私、入れませんよ」
イカニモな高級なショップ、いやブティックっていうんだろうかこういうのは?
ドアの脇には白い手袋をはめたタキシードの男性が立っている。
「だーいじょぶだよ」
「だいじょぶじゃないですよー私、こんなですよ、格好」
シャワーを浴びて帰るだけだと思っていた私は、本当にロクな格好をしていなかった。
「なっちもこんなだから、ね。一緒一緒」
どこが一緒ですか!安倍さんはお洒落じゃないですか!私の精一杯の叫びを無視して安倍さんは、私の背中を強引に押した。
「ほら、静かにして?騒ぐほうがヘンだよ?」
耳元で安倍さんに囁かれて、自分のコドモっぽい振る舞いに気づく。
仕方なく黙ってはみたものの、情けない自分の格好が恥ずかしくて私は、カオを伏せるようにして店内に入った。
- 66 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時20分59秒
- 店内に入ると空気がしんとして、ひんやりとしている。
空調のせいだけではないだろう。
こういう店の、こういう緊張感。
「お待ちしておりました」
あああ、何なんだ、こんな、絵に描いたような「執事」みたいなヒトは!
と思ったけれどもちろん黙っている。
にこやかに私に微笑みかける中年の男性は本当に上品で、ウチのお父さんと交代してほしいと本気で思うくらい、カッコイイ。
「こちらへ」
奥の一室に案内された私たち、いや私は、何が何だかわからないうちに、2人の女性に囲まれた。
私に時たま話しかけ、その返事に丁寧に答えながら女性たちはてきぱきと動く。
「あの、安倍さん?」
てっきり安倍さんの買い物の付き添いだと思っていた私は困惑してしまう。
安倍さんはと言えば、部屋の隅のソファに腰掛け、で私のほうを見てはニコニコしているだけだった。
…私はどう考えても、寸法を測られていた。
女性たちが自分の首にかけたメジャーをせわしなく外しては、わたしのカラダにあてている。
- 67 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時21分46秒
- 「あのー、本当に、安倍さん?」
何が何だかわからないままこんなふうにされるのもキモチ悪かった。
私が不愉快になっていると思ったのかもしれない。
安倍さんは立ち上がり、微笑んだままゆっくりとこちらに向けて歩いてくる。
「まだまだ、ヒミツだよ?私たちの、儀式なんだ」
私の目の前に立った安倍さんが、そう言って私の唇にそっと自分の人差し指をあてる。
恥ずかしくなってしまった私は、安倍さんから目をそらしてしまう。
ふふ、もうちょっとしたらわかるからそれまではね、もうちょっとガマンしてね、安倍さんは私の頭を軽く撫でて、またソファに戻っていった。
この日はこのまま、途中までは安倍さんと一緒だった。
「同期のみんなにも、ヒミツにしとくんだよ?」
わかった?それじゃあね、と笑って手を振った安倍さんを降ろした車は私を乗せて、自宅まで一気に送り届けてくれた。
降りる間際に安倍さんが言ったヒトコトが気になって、このコトを私はまこっちゃんにも誰にも言えなかった。
- 68 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時22分17秒
- それから、1ヶ月後。
集合時間より早めに着いた私を見つけるなり、安倍さんが私を呼んだ。
「高橋?こっち来て」
安倍さんに呼ばれるコト自体が珍しい私は、忘れかけていたあの日のコトを思い出した。
またどこか、連れて行かれるのだろうか。
年少チームの楽屋では、私だけが呼ばれているのを特に気にしてはいないようだ。
取材か何かだと思っているのだろう。
私を年長チームの楽屋の前まで連れて行って安倍さんは、私に先に入るように促す。
おそるおそるドアのノブに手をかけてゆっくり、すき間から中を覗く。
聞こえていた話し声や笑い声がぴたりと止み、先輩メンバーが私に注目するのがわかった。
「あのぉー」
何か言わなければと思った私は、マヌケなヒトコトを自分が発しているコトに気づく。
やばい、先輩たちにまた笑われる…。
- 69 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時22分50秒
- カクゴを決めてドアを開いた私を見つめる先輩たちは、声に出して笑い出すコトもせずにただ、優しい微笑みをたたえていた。
「おいで、高橋」
手招きをする飯田さんの元におずおずと歩き出す私。
「あの、もうホント、何なんですかーこんな集まって」
緊張すると早口になって余計なコトを口走ってしまう私のコトを、今日は誰も笑わない。
微笑んだまま、私を見つめているだけだ。
立ち上がって私の前に立った吉澤さんに、大きな白い箱を手渡される。
「開けてみて」
いつもに増して優しい声の吉澤さん。
先輩たちのカオを一度見渡してから、私はゆっくり、箱を開ける。
「ああ…」
知らずに声を出してしまう私。
そこにあったのは。
- 70 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時23分20秒
- 「お誕生日おめでとう、高橋」
先輩たちが1人1人、私に向かってそうコトバをかけてくれる。
どのカオも柔らかく微笑んでいて私は、お礼を言う余裕もなく、呆然と立ち尽くしていた。
「あの、コレは一体」
「あの時の、覚えてるよね?高橋の為に作った、ドレス。高橋が着る為だけに作られたドレス、だね」
「でもどうして」
言いかけた私のコトバを遮るようにして矢口さんが、イイから着てみせてよ、高橋、と笑う。
「私が着てイイんですか」
そう言うと先輩たちが、声に出して笑った。
「高橋が着なきゃ、イミないよ」
「コレはね」
石川さんが言う。
- 71 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時24分15秒
- 「私たちの、17歳の儀式なんだよ。この部屋にいるメンバーは全員、17歳になった時に自分の為のドレスを作ってもらったの」
私もその時は、どこに連れて行かれるんだろう、ってすごく不安だったけどね、と石川さんは笑った。
箱に納まっているドレスのカタチはまだわからないけれど。
ゆっくりと手で撫でて、感触を確かめる。
自分が、このドレスを着たら。
想像するだけでくらくらした。
目を閉じて深呼吸して、もう一度目を開ける。
先輩たちは笑って、そんな私の様子を見ていた。
「ありがとう、ございます」
やっとのコトで声を出して私は、ドレスが入ったままの箱を持って立ち上がる。
楽屋の奥の更衣室に向かって私は、歩き出した。
- 72 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時24分45秒
おわり。
- 73 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時25分26秒
- (0^〜^)<…
- 74 名前:10 投稿日:2003年09月06日(土)23時26分53秒
- ↓
11
- 75 名前:高橋愛 投稿日:2003年09月07日(日)13時57分14秒
- 僕は高橋愛を見つめていた。息を詰まらせ、瞬きを忘れて、それでも。
タカハシアイだけを、ただ、ずっと。
だからたぶん、誰よりも先に彼女の異変に気づけたはずだ。
愛が娘に加入した直後だから、一ヶ月ほど前だろうか…。
それまではそんなことなかったのに、彼女はマンションで一人うなだれることが多くなった。
その原因は僕が察するに、こうだ。
愛は人一倍自尊心が強い。
特にバレエと歌についてはかなりの矜持を持っている。
そこに現れた、小川麻琴と言う存在。
オガワマコトハダンスガウマイ。
もちろん最初からそうだったわけではない。
最初は、愛のほうが断然うまかった。
しかし麻琴のダンスは、あっという間に愛レベルに達した。
飲み込みが異常に早かったのだ。
- 76 名前:高橋愛 投稿日:2003年09月07日(日)13時57分47秒
- 本気で何度も、愛は部屋の片隅で泣いた。
そのたびに僕も洗濯機の下の隙間で、もらい泣きした。
僕なりに、愛のために出来ることを考えた。
そしてある計画を立てた。
休日、僕は都会の空を飛んで麻琴の家へ向かった。
しょっちゅう愛をつけて外出していたから、こんなことはわけない。
家に入ると、あさ美が来ていた。
二人とも気持ちよさそうに眠っている。
僕は背負っていた風呂敷か睡眠薬を取り出し、麻琴の口の中に無理やり入れた。
それから、とてつもなく重かったけど包丁を持って飛び、
麻琴の喉元を目掛けて落とした。
そこから先のことを僕は知らない。
一目散に逃げたから。
- 77 名前:高橋愛 投稿日:2003年09月07日(日)13時58分20秒
- 麻琴が死んで、通夜も葬式も終わった。
愛は部屋で泣き伏すこともうなだれることもなくなった。
ただただ黙ってじっとしていることが多くなった。
もしかしたら僕がしたことは愛ちゃんの望んでたことではなかったのだろうか。
そんな苦悩に僕は捕らわれた。
そしてレッスンが再開する日、愛が呟いたのをぼくは聞いた。
「麻琴がいなくなったし、これからは私が一番や……」
愛は微笑をかみ殺しながら家を出て行った。
おわり
- 78 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時16分49秒
- わたすが目を覚ますと、目の前に子犬がおった。
くりくり瞳が可愛らしい。種類は多分柴犬やろか?
でもなんでわたすの部屋におるのか。そこがわからんです。
どうしようと思って周りを見回してもやっぱりここはわたすの部屋。
見慣れた風景に見慣れない子犬。どうすればいいのかわからなくて、
とりあえずベッドから降りてみると、子犬も着いてきてしもた。
「ダメやよー、とりあえずこの部屋でおとなしくしてるやよー」
そう言っても犬に言葉が通じるわけないことぐらいわかってる。
どうしたらええんやろか?家族に見つかったら怒られてまう。
何度か考え込んでいるうちに、そういえば、とあることを思い出した。
「今日はお母さん、町内会の温泉に行ってるんやった」
だからこのまま下のリビングに着いてこられても平気ってことやよ。
ほっ、としたのも束の間、子犬は階段の方へと駆けて行ってしもた。
安堵していたせいで一瞬だけ思考が遅れる。そしてわたすも走った。
- 79 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時17分24秒
- 「こらー!走っちゃダメやよー!」
そう叫んだらその子は立ち止まってこっちを見る。
一瞬ドキッとした。ウチの言葉がわかったんやろか。
でもどうやらそれは違ったらしい。うちの足元に戻って来ると、
パジャマの裾に噛み付いて、早く早くと急かすように引っ張ってくる。
「な、なに?どこか行きたいやろか?うちはそんな暇じゃな…」
抵抗するつもりで自分の部屋のドアノブにしがみついてみたら、
その犬はもっと強い力でズボンを引っ張って、脱げそうになる。恥ずかしい。
「わかった!わかったから脱がさんで!破かんで!!」
わたすの必死な声が天に届いたのか、裾から口を離してくれた。
少しずれたズボンを直しながら先を走る子犬のあとを急いで追う。
これ以上は危ない。あの子の言うことを素直に聞いておくべきやよ。
ちょっとだけ情けない気持ちもあったけど仕方なかった。
- 80 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時18分01秒
- 小さい身体のくせに器用に高い階段を駆け下りて行く子犬。
まるでうちの家を知っているかのように、そのまま一階に飛び降りて、
リビングのほうへと一直線に飛び込んでいってしもた。
荒らされないだろうか。後片付けまでうちがやるのはさすがに嫌やよ。
そう思ってリビングへ一歩足を踏み入れたとき、その姿があった。
「…なんであさ美ちゃんがわたすの家におるの?」
いかにも当たり前のようにしてソファーで足を組んで座っている彼女。
その格好はかなり変。魔女の宅急便に出てくる魔女みたいな感じ。
とにかく変だった。
「まいど」
「ま、まいど…?」
口にシガレットをくわえてニヒルに挨拶を交わすあさ美ちゃん。
その膝には、さっきの柴犬が嬉しそうに座り込んでいるのが見えた。
- 81 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時18分44秒
- 「その子あさ美ちゃんの犬?」
「それより愛ちゃん、お誕生日おめでとう」
「………」
確かに誕生日だけど、人の話をさらりと流さないでほしいやよ。
子犬は鼻をふんふんと鳴らしながらこっちを見て尻尾を振っている。
ちょっと可愛い。なんとなくどこかで見たことあるような気がした。
「今日私が愛ちゃんの家に来たのは言うまでもありません」
「はあ」
「つまり愛ちゃんのお願いを叶えにやって参りましたとさ」
「はあ」
「ほら、何かひとつお願い事を言ってみてください」
「はあ?」
よくわからないけどなんかそういうことらしい。
わたすは犬のことをひとまず置いといて、頭をめぐらせた。
そして頭の中にふっと浮かんできたお願い事を口にする。
- 82 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時19分34秒
- 「人気がほしいやよ!」
「世の中には出来る事と出来ない事があるんです」
あさ美ちゃんは真顔でそう即答した。
え、うちってそんなにダメなんやろか?救いようがないんやろか?
「だから、もうちょっと現実的にお願いしますね」
「…現実的なお願いって…」
とにかくもう一度頭をめぐらせる。他にどんなお願い事をすればいいのか。
大体、現実的なお願いってどこら辺から現実的と非現実的に分けられるん?
1兆円欲しいとか、そういうのも現実的なお願いになるんやろか?よーし。
「1兆円ほしいです」
「それは私に銀行強盗をしろと言ってるんですね?」
「ち、違っ…」
何故か膨らんでいるポケットに手を突っ込んで笑うあさ美ちゃんはどこか怖かった。
なんとなく、彼女なら本当にピストル片手に現金輸送車とか襲ってもおかしくない。
- 83 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時20分04秒
- もっと現実的に。そうか。普通のお願い事にすればいいんやよ。
この間ファッション雑誌を見たものを思い出して口を開いた。
「実は新しいペンダントが…」
「キエーッ!!!!」
膝の上でうとうとしていた子犬が、びくっと身体を震わせて起きた。
わたすもあさ美ちゃんがいきなりあげた奇声に驚いて椅子に隠れている。
「愛ちゃん!せっかくこの私がなんでも願い事を叶えてあげると言ってるのに
ペンダントだのピアスだのチャラチャラした装飾品を頼んでる場合なの!?
もっと大きいことお願いしようよ!世界が欲しいとか!大統領になりたいとか!」
「だ、だって、あさ美ちゃんが現実的なお願いをって…大統領って…」
「現実的と普段の地味さをイコールで繋げないの!
一生に一度かもしれないこのチャンスを、棒に振っちゃダメだよ!」
「地味…普段地味…」
頭の中で廻り続ける地味の言葉。
そんなわたすの前に、コップが差し出される。
- 84 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時20分39秒
- 「もう、あさ美ちゃんはダメだニィ。今日は愛ちゃんのお誕生日なんだから、
愛ちゃんの言うとおり、願ってるとおりにしてあげるべきだと思うニィ」
その声でそれが誰なのかすぐにわかった。
「あ、ありがとう里沙ちゃ…」
コップを受け取りながら彼女を見て絶句する。
なんで里沙ちゃんがウェイトレスの格好してわたすの家にいるんやろか?
正直似合ってるとは言いがたいけど、仲間思いのわたすは何も言わないでおいた。
「でも里沙ちゃん、私は愛ちゃんのためを思って…」
「それはニィもまこっちゃんも同じ気持ちだニィ」
「え、ていうかそれ麻琴なん!?」
わたすの声に、あさ美ちゃんの膝の上で眠っていた柴犬が目を開けて、一声鳴いた。
まるで『そうだよ』と返事したかのような声。驚きすぎて目が飛び出るかと思ったやよ。
- 85 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時21分26秒
- 「とにかく愛ちゃん、これで最後だよ。次またボケたこと言ったら猿にするからね」
「ま、麻琴は…だから麻琴は…」
真っ先にわたすは麻琴を元に戻して欲しいとお願いするべきだと思った。
でももしかしたらあさ美ちゃんは怒るかもしれない。わたすを猿にするかもしれない。
なにしろ麻琴(犬)の頭を撫でる彼女の顔は恍惚としていたからだ。
自分の身は可愛いので他のお願い事を考える。
それよりお願い事を強要するのって悪いことだと思うんやよ。わたすは。
そのとき勝手に里沙ちゃんがつけたテレビから歌が流れてくる。
それは後藤さんの新曲宣伝のCM。ふと、思いついた。
「わたす、ソロで歌いたいやよ!!」
一瞬あさ美ちゃんの麻琴を撫でる手が止まる。
もしかして間違ったんやろか。うちは、間違えた答えを言ってしもたんやろか。
彼女が口を開くまでのたった数秒間、死刑宣告を受ける人みたいにびくびくしてた。
でもあさ美ちゃんの返事は予想外のもので。
- 86 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時21分59秒
- 「…わかった」
「ごごごごめんやっぱ無理やよねわたす地味だからでも猿はやめ…え?」
麻琴を地面に下ろしてあさ美ちゃんはソファーから立ち上がった。
黒くて長いコートみたいなものをはためかせて、こっちを振り返る。
「それが愛ちゃんの願い事なんだね?」
「う…うん…」
「里沙ちゃん、用意して」
「わかったニィ」
似合わないウェイトレス姿でぱたぱたとリビングから出て行く里沙ちゃん。
麻琴はそんな彼女のあとを追って、同じように廊下へと飛び出していく。
わたすはまさかこんなお願い事が通るなんて思っても居なかったから、
ただ呆然と、そんな2人(正しくは1人と1匹)の後姿を見送っていた。
- 87 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時22分48秒
- 「…い、いいんやろか?」
「なにが?」
「うち…うちをソロになんてお願い事、できるん?」
「まあね。ソロになって、そのあと売れるかどうかはわからないけど」
「………」
そのうち里沙ちゃんが戻ってきた。
どこかに電話をかけていたらしい。あさ美ちゃんとアイコンタクトして、
そしてあさ美ちゃんもリビングを出て行こうとする。
「あ、あの、わたすはどうすれば…」
「大丈夫だよ。いつも通り明日はスタジオに向かってね」
そう言って、あさ美ちゃんも、里沙ちゃんも、麻琴も、みんな出て行った。
リビングにはわたすだけが残されて、後藤さんの新曲が響いてる。
- 88 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時24分10秒
- ―
――
―――
「え、わたす一人でやるんですか?」
スタッフさんは当たり前だろうと言った感じで頷いている。
他のみんなは居なかった。飯田しゃんも、石川しゃんも、5期のみんなも、6期も。
そこでやっとわたすは昨日あさ美ちゃんからもらったプレゼントを思い出す。
撮影は何事もなく始まった。
そして何事もなく進み、何事もなく終わった。
変な気分やよ。いつもはみんなわいわいと騒がしいスタジオが静かで、
わたすはすることもなく、一人静かに持ち歩いてた本を読み進めていたけど、
どこか変な気持ちが心の中に浮かんできて、1ページも読めなかった。
わたす一人で歌う歌。
すべてのパートを独り占め。少し気分がいい。
何台もあるカメラがうち一人だけに注がれている。
でもやっぱり喉に何か引っかかってるような気がして、上手く笑えなかった。
- 89 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時25分00秒
- ハローモーニングはわたすと卒業した保田さんの2人トーク番組になるらしい。
たまにゲストを迎えて雑談するだけの番組。新曲を披露したりもする番組。
前みたいにメンバー全員でなにか1つのゲームをやるなんて、できるわけない。
だってわたすはソロだから。一人になったから。ソロになるってそういうことだから。
スタジオ移動のとき後藤さんとすれ違う。
大変だろうけど頑張れ高橋、って、声かけてくれた。
これからは一人なんだから、って、声かけてくれた。
そのときになってやっとわたすはソロになったんだって実感して、
頬が熱くなって、鼻の奥がツーンとなって、瞼を閉じても涙が溢れてきた。
わたすの力が認められたんだと思った。
これは嬉し泣きなんだと思った。
でも、たった数時間過ごしただけで、うちはもう耐え切れなかった。
「…っ…あさ美ちゃん、どこやよー!!」
わたすはそのままスタジオを飛び出した。
道路を歩く人たちはうちの姿を見て驚いている。
- 90 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時25分41秒
- どこに向かえばいいのかわからなかった。
とにかく探さないと、みんなを見つけないと。
でもいくら走ってもあさ美ちゃんたちの姿は見えなかった。
気がつくと周りの通行人すら居ない場所へ辿り着いていた。
不思議な光景。街のど真ん中で誰も居ない場所、そこでわたすは立っている。
「…里沙ちゃん、麻琴…飯田しゃん、安部しゃん、矢口しゃん、石川しゃん…」
また頬が熱くなってきたやよ。
「…吉澤しゃん、辻しゃん、加護しゃん、亀井しゃん、道重しゃん、田中しゃん…」
目の前が見えなくなってきたやよ。
うちはこんなことを願っていたんやろか?
みんなが居なくて、一人で活躍したかったんやろか?
涙は頬を伝って顎へ、そして雫が、地面へと落ちてしもた。
―――
――
―
- 91 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時26分16秒
- わたすが目を覚ますと、目の前に麻琴がおった。
「…愛ちゃん?大丈夫?」
何か喋りたいのに声が出ない。
麻琴は心配そうな顔でわたすの目元を指でぬぐってくれた。
少し落ちついて身体を起こすと、そこはわたすの見慣れた部屋。
「どうして…麻琴が…」
「もう何言ってんの?今日は愛ちゃんのお誕生会やってたんじゃん」
疲れちゃったんだね、って言いながら、優しく頭を撫でてくれる麻琴。
ベッドの隣にある机の上の目覚まし時計は夜の11時を指している。
そうだ、今日は5期のみんながお泊りにきてくれたんやよ。
「下に来れる?まだケーキ食べてないからさ、あさ美ちゃん怒ってて」
「…うん」
麻琴に引っ張られてベッドを降り、部屋を出た。
2階に人気はまったくない。お母さんは温泉旅行に行ってるから。
とんとんと階段を降りてリビングに行くとあさ美ちゃんがソファーに座っていた。
- 92 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時27分00秒
- 「おはよ」
「…おはよ」
あさ美ちゃんは野菜スティックをくわえながらテレビを見ていた。
「愛ちゃんが起きてこないからケーキ食べれなかったよ」
「もう、あさ美ちゃんってばずっとケーキケーキ言ってて大変だったんだよー」
可愛い格好をした里沙ちゃんはそう言いながらお茶を持ってきてくれた。
いつも通りで変わりのない光景。
そんな当たり前のことがとても嬉しかったやよ。
お誕生日を祝ってくれるみんなが、まだ傍に居てくれた。
「ねー、もうケーキ食べていい?愛ちゃん…え、泣いてる?」
「あさ美ちゃんがケーキってしつこいから!」
「え、私のせい?なんで?え?」
「そうだニィ、あさ美ちゃんが悪い!」
「えぇー!」
- 93 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時27分45秒
- この世界に入った以上ソロになりたいのは当たり前。
きっとそれはあさ美ちゃんも里沙ちゃんも麻琴も同じはず。
いつかみんなバラバラになることもわかってる。大丈夫やよ。
「ごめんね愛ちゃん、私のお菓子あげるから泣き止んで」
「あさ美ちゃんじゃないんだから…」
今日はうちの誕生日なんだから、泣いてちゃだめだ。
「大丈夫?」
里沙ちゃんがそっと渡してくれたハンカチで目元を拭って、
「…うん、ありがとう」
将来起こるかもしれない夢の内容を忘れて、わたすは笑ってみせた。
−FIN−
- 94 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時28分25秒
- 1.オチとかひねりとか特にないです
- 95 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時28分58秒
- 2.なんでこんな長くなったのかが自分でもわかんないです
- 96 名前:いつかさよなら 投稿日:2003年09月07日(日)14時29分39秒
- 3.そもそも訛りすぎです
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)14時31分45秒
- 次ぎ書きます。
『ハザード』
- 98 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時32分59秒
- あさ美ちゃん、まこちゃん、里沙ちゃん、そして、私高橋愛は、疲労困憊していた。
それでも何処までも続く階段の上部を睨みつけ、歯を食いしばって上りつづける。
上空は、抜けるような青空から燃える赤へと変わり、オーロラがカーテンのように揺らめいている。
ガラスでできているかのような透明の階段は、果てしなく真っ直ぐ空へと続いている。
「もう少しやよ、がんばろ」
私が言うと、3人は頷いた。
そして、再び歩き出そうとしたその時、人影が現われた。
「いいかげん、諦めたらぁ?」
石川さんだった。
- 99 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時33分55秒
- 「くそぅ、いったい何人いるんだあんた」
「ついさっき22人目を倒したばかりだというのに…」
まこっちゃんとあさ美が悔しそうに言う。
「大丈夫よ。私で最後だら」
23人目の石川さんは、余裕の表情を浮かべている。
その余裕がより不気味さを与えていた。
「いくやよ。みんな」
「おう!」
私は銃を構え、里沙ちゃんはその横で鞘を持つと抜刀の構えをする。
まこっちゃんは鎖斧を構え、あさ美ちゃんは独鈷を手に持った。
- 100 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時34分55秒
- 「愛ちゃん里沙ちゃんどいて! 一気に方をつける」
「まこっちゃん。アレをやるのね」
そう言うと、まこっちゃんはあさ美ちゃんの斜め前に立ち、ボウルを持つように両手の平を向かい合わせ、あさ美ちゃんの前につき出して構える。
あさ美ちゃんは、まこっちゃんの両手の間に独鈷を持つ手を突き出して構えた。
「太極破!!」
二人が叫ぶと同時に私と里沙ちゃんは横へと飛びのいた。
私達がいた所をエネルギーの塊が通りすぎていく。
太極破、以前あさ美ちゃんに聞いたことがある。
まったく気質の違う気孔を融合させることにより、驚異的な破壊エネルギーを作り出す究極の秘儀があることを。
- 101 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時35分51秒
- 太極破は石川さんに直撃すると、激しい爆発エネルギーを生み出した。
しかし、石川さんは無傷で微笑んでいた。
「化け物め……」
これまでは、この技を食らえば大抵の石川さんは消し飛んでいたのだ。
まったくの無傷というのは始めてであった。
さすがに最後というだけあって、今までの石川さんとは違うようだ。
「これで終わり?」
石川さんは楽しそうに微笑む。
そして、右手を突き出すと黒い炎が現われ、それは黒い槍へと変わった。
「くそぅ、破っ破っ破ぁっ!」
連続して太極破を放つまこっちゃんとあさ美ちゃん。
しかし、石川さんは槍で太極破をことごとく切り裂いていく。
- 102 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時36分47秒
- 「スキあり!」
太極波に集中していた為か、石川さんが見せた一瞬の隙ををつき、里沙ちゃんは刀を抜き一閃した。
その直後、石川さんの頭は胴体を離れ、ごろごろと階段を転がった。
「やったぁ!」
「さすが里沙ちゃん」
私達は里沙ちゃんの元へ駆け寄ろうとした。
その時、里沙ちゃんは刀を正眼に構えたまま左手で制した。
「きちゃだめ!!」
里沙ちゃんが叫ぶと同時に、転がっていた石川さんの頭が私にめがけて飛んできた。
- 103 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時37分54秒
- 「あぶなぁい!」
里沙ちゃんはすばやく私と石川さんの頭の間に入る。
次の瞬間、里沙ちゃんの背中から千を超える無数の針が突き出した。
それは、金属のように硬直した石川さんの髪の毛だった。
「ふふ、最弱の高橋を狙ってたんだけどラッキーだったわ。あなた達の中でもっとも危険な新垣を殺すことができて」
里沙ちゃんは苦しそうにうめきながら片膝を付いた。
そして、石川さんの頭を抱えたまま刀を逆手に構える。
「まさか、馬鹿なことは止めなさい」
石川さんの声が震えていた。
- 104 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時39分04秒
- 次の瞬間、里沙ちゃんは自分の体ごと石川さんの頭に刀を突き刺した。
背中から、新たに刀が突き出て血飛沫を上げる。
「里沙ちゃん!」
私は里沙ちゃんに駆け寄った。
しかし、私は恐ろしくて里沙ちゃんに近寄る事はできなかった。
胸に抱えている石川さんが、笑ったように見えたのだ。
「いった〜い。んもう!何てことするのよ!」
「やっぱり……この程度じゃ……倒せないか」
里沙ちゃんは懐か火薬筒を取り出した。
- 105 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時40分03秒
- 「ここは私に任せて。愛ちゃん、まこっちゃん、あさ美ちゃん。先に行って」
「何、いってるの……里沙ちゃん」
「お願い、私はここで……リタイアだから……」
「ややぁ。何考えてるの。里沙ぁ」
里沙の足元には大量の血が流れ、まるで赤い絨毯がしかれたように何段も赤く染め上げる。
誰が見ても致命傷を受けていることがわかる。
それでも、私は動けなかった。
里沙を置いて先に進みたくなかった。
「まこっちゃん。あさ美ちゃん。お願い」
「うん」
「わかった」
2人は頷くと、私の両脇を抱えて階段を上り出した。
- 106 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時40分51秒
- 「やめてよ。何で里沙ちゃんを置いて行くのぉ」
私は腕を振りほどこうと身を捩り、二人を攻めた。
でも、二人の顔を見てとても後悔した。
2人は泣いていたのだ。
私は、自分がとても自分勝手に思えた。
「あさ美ちゃん……まこっちゃん……ごめん」
私は里沙ちゃんに精一杯の声で叫んだ。
「死んだらいややよ。里沙ちゃん。最上階で待ってるから!」
馬鹿な事を言ったことは分かっている。
でも言わずにはいられなかった。
里沙ちゃんは、笑ったような気がした。
- 107 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時41分53秒
- 石川さんは、不安そうに里沙ちゃんを見つめている。
「まさか、うそでしょ。そんなことしないよね……」
「あなたは、ここで、私と死ぬの」
「いや、やめて、ねぇ、里沙ちゃんお願い」
私は、目を閉じて向きを変えると、頂上へむけて階段を上りだした。
「愛ちゃん……みんな……ごめ」
次の瞬間、すさまじい閃光とともに衝撃破が襲ってきた。
私は振り向かず、ただ上だけを目指した。
振り向いたら引き戻ってしまいそうだったからかもしれない。
- 108 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時42分58秒
- 「あぶない!」
あさ美ちゃんが叫ぶと同じに、背後から凄まじい威圧感が襲ってきた。
石川さんの体が私達の元へと迫っていたのだ。
石川さんは黒い槍を私めがけて突き出す。
それをあさ美ちゃんは独鈷で受けとめていた。
「はぁぁぁっ!!」
あさ美ちゃんは結界を張り、槍を押し戻そうとする。
しかし、槍の波動は驚異的な威力で結界を押し破ろうとしていた。
「たーっ!」
まこっちゃんが鎖斧で石川さんの胴体をなぎ払おうとする。
しかし、石川さんは軽く後ろへ下がり鎖斧を避けた。
- 109 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時44分05秒
- あさ美ちゃんは危なかったのか、顔を蒼白にしながら息を荒げていた。
まこっちゃんの方を見ると、目で合図を送る。
「まこっちゃん……」
「わかってるって」
まこっちゃんは鎖斧を肩に担ぎ、笑顔で頷く。
あさ美ちゃんは頷くと、私を見た。
「愛ちゃん。ここは私達二人に任せて先を急いで!」
「ええ!?」
まこっちゃんは驚いた顔をしてあさ美ちゃんを見た。
「ええ!? そのつもりで頷いたんじゃないの?」
「いいですよいいですよぉ。そうなるんじゃないかと思ってましたっ」
まこっちゃんはあさ美ちゃんの言葉におざなりに返事をする。
「よーしやるかぁ」
そして、鎖斧を片手で持つと、その手でビシッと前を指した。
あさ美ちゃんはまこっちゃんに頷くと独鈷を構えた。
- 110 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時46分01秒
- 「あさ美ちゃん……まこっちゃん……ありがとう」
私は、2人にできるだけ笑顔に見えるよう微笑んだ。
2人は、私に答えるように力強く頷いた。
「絶対に勝つよ」
「オッケェ」
そして、2人が飛び出すと同じに、私は階段を上り始めた。
幾ばくもしないうちに激しいエネルギーの衝突を後方で感じた。
私は走った。
終わりなどないのではないかと思える長い階段を上り続けた。
疲れなど思い出さないよう何も考えず、ただ闇雲に走った。
- 111 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時47分12秒
- どのぐらいたったのだろう。
太陽は完全に沈んでいた。
時間の感覚など当の昔に無くなっていた。
月も星も無い漆黒の闇を、青と緑のオーロラだけが幾重にも重なり天空を埋め尽くしてる。
そして、遥か前方に、ついに階段の終わりが見えた。
もはや無いのではないか、と思われていた最上階がついにその姿をあらわした。
後少しだ!
私は無我夢中で頂上を目指した階段を上った。
200メートル、100メートルと確実に距離は短くなる。
そして、あと20段ほどで頂上へと辿り着くと思った矢先に、背中から腹にかけて激痛が走った。
腹を見ると、右下腹から槍の刃先が突き出ていた。
そして、一気に引きぬかれると同時にコップをひっくり返したような勢いで血が溢れ出した。
全身が痺れ、呼吸をするのも困難になる。
- 112 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時48分31秒
- 倒れる勢いで後ろを振り向くと、そこには髪を掴まれ血塗れとなって身動きしないあさ美ちゃんと、殆ど無傷だが頭の無い石川さんがいた。
まこっちゃんはさらに50メートルほど下方でうつ伏せになって倒れていた。
石川さんは、私に向けてゆっくりと槍を振りかざす。
槍の刃先からは、私の血がポタリ、ポタリと滴り落ちていた。
やられる……もうこれで全てが終わる。
そう思って目を閉じたが、いつまでたってもその瞬間は訪れなかった。
恐る恐る目を開けると、あさ美ちゃんが独鈷を足に突き立ててしがみついていた。
石川さんは、煩わしそうに足を振っている。
「行って、愛ちゃん」
あさ美ちゃんは必死にしがみ付きながら、それだけを言うのが精一杯のようだ。
私は頷くと、穴が開いた腹を片手で押さえ、地面を這いながら少しでも上ろうとする。
- 113 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時49分40秒
- 石川さんは、私に気づくとあさ美ちゃんを引き剥がすことを諦め、引きずりながら追おうとする。
その直後、石川さんは突然上体を前に落とした。
まこっちゃんが石川さんの背中に鎖斧を突き立てていたのだ。
「行けーっ! 愛ーっ!」
まこっちゃんが叫んだ。
私は、気力を振り絞って立ちあがり、一歩一歩、階段を上り始めた。
動かないはずの体が動いた。
里沙ちゃんがいた。
あさ美ちゃんがいた。
まこっちゃんがいた。
みんなの思いが私を突き動かした。
ついに、最後の階段を上りきり、私は最上階へと辿り着いた。
- 114 名前:ハザード 投稿日:2003年09月07日(日)14時51分08秒
- 最上階にはクリスタルの台座があり、その上にはボタンが一つあった。
背後には石川さんが迫ってくる気配を感じる。
私は台座にへばりつくように倒れると、後ろを振り返った。
丁度、石川さんがあさ美ちゃんとまこっちゃんを引きずりながら最上階に上がってきたところだった。
私は、手探りでボタンを探した。
石川さんは既に槍が届く位置にまで迫っている。
そして、指がボタンに触れると、私は会心の笑みを浮かべた。
「私達の……勝ち……」
石川さんが槍を振り上げたと同時に、私はボタンを押した。
『ヘェー。』
おわり
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)14時51分38秒
- ごめんなさいごめんなさい
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)14時52分18秒
- 考えてみたら誕生日とはまったく関係ないですね
- 117 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)14時53分41秒
- 愛ちゃん誕生日オメデトー(フライング)
- 118 名前:つぎいきます 投稿日:2003年09月07日(日)15時57分39秒
- ↓
↓
↓
『あたしの居場所はどこにあるの?』
↓
↓
↓
- 119 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)15時59分06秒
- あたしが何かを言うと中澤さんはいつも驚いたような表情になって、それからフッと優しい顔になって、高橋はいつも一生懸命で可愛いねぇって、頭を撫でてくれて、でもそれは、怒られるよりも、なんだかとても居心地が悪かった。
たとえて言えば新学期に遅れてしまって、教室の扉を開けたら自分の席がなかったような感じの居心地の悪さに共通していて。
あたしがいるのはここじゃない。ここじゃないんだけど――
あたしは焦っている。小川麻琴はダンスが巧い。紺野あさ美は頭が良い。新垣里沙は面白い。みんなあたしより若い。先輩の辻さんと亜依ちゃんも若い。6期はみんなあたしよりも、若い。5期のみんなだって、あたしよりも若い。16歳というのはもう結婚だってできる年で、安倍さんが卒業したら必然的にあたしは年齢が上のおねーさんチームに入ることになってしまう。まだ17歳にさえなっていないのに、自分の年齢に悩む人間なんて、あたし以外にいるのだろうか?
- 120 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)15時59分43秒
- ――だけどあたしはいつまで経っても大人扱いしてもらえない。中澤さんに頭を撫でられると、ほんのりほんわかするのと、なんだかとでもひどく悔しのとで胸が一杯になる。でも気の利いた言葉ひとつ返せずに戸惑ったような困ったような嬉しいような表情で中澤さんを見返すことしかできない。キダムサーカスの空中ブランコよりも宙ぶらりん。
娘。にあたしと同じ年齢の人はいない。上と下の間であたしはぶらぶら揺れている。
- 121 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時00分42秒
- ◇
「シゲさんって愛ちゃんファンらしいよ?」
久しぶりにテレビ東京の収録で五期全員が揃っての撮影待ち時間中、ふいに里沙ちゃんがもっともらしい顔で変なことを主張しはじめた。
「うっそやぁ。そんな話したことなぁで」
あたしは読んでいた『ロストボーイ』を閉じた。シゲさんこと道重さんとは二人っきりになるどころか、話したことも殆ど記憶にない。挨拶とか世間話ぐらいしかしない。あとはもう間が持たなくなって、あたしがなんか適当な用事――それは大概読みかけの本を読み終えちゃうことだったんだけど――を作って離れて、そのまま、みたいなことばっかりだった。ただ、うん。挨拶は頻繁にしてるかもしれない。かなり頻繁にしていたような気がしないでもない。
「それあたしも聞いたことあるかも。ねぇ、まこっちゃん」
なにかを思い出そうとしたぽわ〜とした表情で、あさ美ちゃんがほんわかと言って、麻琴に笑いかける。麻琴は自分にふられるとは思わなかったようで、素で面白い顔になっている。
- 122 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時01分31秒
- 「ほやの? どうなの、麻琴?」
あたしも真顔で突っ込むと、麻琴は困ったような曖昧な照れ笑いを浮かべた。麻琴はいつも答えに困るとこんな表情をする。ちょっとゴローさんっぽい。
「ぃいやあー、あのぉ、えぇっと……」
麻琴はばちんと音がするほどの勢いで両手を前で合わせ、あたしを拝むようにした。
「ごめん。あたし全然覚えてないの」
「や、ほらあれだよあれ。ハロモニでさあ、たしか、ねぇ」
「ねぇ」
くすくす笑って意味ありげに、あさ美ちゃんとガキさんが目配せした。
「なによ。言ってよ」
里沙ちゃんが目を極限にまで三日月形にしてものすごい勢いでニヤニヤ笑いながら「6期のコーナーで言ってたの。シゲさんあたしのことばっか見てしまうんだって」と言った。
……。あのね。
「ほやったら道重は里沙ちゃんのファンでないの」
- 123 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時02分26秒
- 不機嫌な態度をあらわにしてそう言うと、なぜか里沙ちゃんじゃなくて、あさ美ちゃんの方が慌てて手を振って、里沙ちゃんに言った。
「違う違うそうじゃなくて正確には高橋さんのファンだけど里沙ちゃんのほうばっかりつい見ちゃう』でしょ?」
頬を少し紅くして、焦ったようにとんでもない早口で一気に言う。里沙ちゃんはのんびりと、殊更のんびりと手を打った。
「ああそうそう、そうだった。で、その次はなんだっけ、圭ちゃん?」
「そうそう。『高橋さんのファンだけど保田さんばっかり見ちゃう』て」
「そーそーそーそーそ。まさにそう」
「へぇへぇへぇへぇへぇ…」
盛りあがる里沙ちゃんあさ美ちゃんに仕切りに感心しながら、麻琴はなにかを軽く叩きまくるような仕草をした。そして一気にへぇを23回も言った。言い過ぎ。それからニコニコとしまりのないとしか言いようのない顔で、あたしに微笑みかけた。
「シゲさんて愛ちゃんのファンだったんだね。あたしてっきりただのナルシ」
「ていうか、ていうかあ! それ絶対あたしのファンとか言わないってぇ!」
麻琴が言い切る前に、あたしはそう叫んで会話を終わらせた。
- 124 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時03分16秒
- ◇
確かに注意していると、道重だけではなくて、6期たちとよく目が合うことに気がついた。あたしが目を合わせると、亀井は気まずそうな曖昧な笑みを浮かべてすぐに視線を逸らすし、田中は多分それが素の顔なんだろうけど険しい表情で視線を逸らさずに、あるいはぷいっと感じで視線を思いっきり逸らす。
一番戸惑うのが道重で、目があってもしばらく気がつかないのかぼーっとこっちを見つめっぱなし。えへへって笑って手を振ってみると、首を傾げて笑ってるのか何なんだかよく分からない微妙な表情になって、それでまたずっとあたしを見続けている。
正直、きも、いや、えっと不気味だ。
待ち時間を潰すために始めた読書も、なんだかますます捗って仕方ない。読書家のあさ美ちゃんや麻琴の二人のお勧め本は制覇してしまいそうな勢いだ。ああ、あたしの毎日はとても充実している。充実しすぎて涙が出そうだ。
◇
- 125 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時04分10秒
- 「あのぉ、高橋さん。ちょっといいですか」
「はい?」
本から目を上げると、田中がいた。その後ろに隠れるようにして道重がいる。田中はちっちゃいし道重はちっちゃくないからバレバレだった。
「ほら、言っちゃいなよ、早く」
「だって……そんな……、ちょ、やめてよ、れいな……」
「もー、うざかー! さっさと言えばいいのにいつまでもぐじぐじぐじぐじ」
「ぐじぐじなんか言ってない……」
「言っとぉって。せからしかけんしょうんなかっちゃろ」
「しょうんなくないって、だって……」
呼び掛けていながら、あたしは放置で二人で小声で言い合いをし始める。誰だ新人教育したのは。全然なってないぞ。あたしたちなんかもっとこう敬語とか態度とかしっかりしていたし。とか思っていたら、田中がぐるっとあたしの方を振り返った
「あのですね、高橋さん。さゆがですね、高橋さんに言いたいことがあるって」
「はぁ、言いたいことデスカ……」
- 126 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時04分42秒
- あたしは後ろの道重をじっと見た。道重は顔真っ赤にして、田中の服をぎゅっと掴んで――いやそれ衣装だからしわしわにしたらやばいって――と思っていたら、田中がぺんってなかんじで道重を自分の衣装からひっぺがして、それから道重の背中をどんと突き飛ばすようにして、あたしの前に押し出した。
「あの…、ええと…」
「はい?」
見つめ返すと道重はますますもじもじした。なんなんだいったい。
「その…、あの…」
「……なに?」
大人しくじっと待っていたけど、内心ちょっとキレそうだったのはここだけの秘密である。キレるにしても楽屋でキレんのはやばい。ちょっとアイドルにあるまじきことをしただけでラジオやテレビや雑誌やそのほかはおろか色々なところでどんなことを言われるのかわからないデンジャラス空間なのである。ただでさえ楽屋中の注目を集めてる今ここでキレるわけにはいかな……え? 注目……?
冷や汗が流れた。
- 127 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時05分15秒
- 楽屋中の娘。の注意があたしと道重に注がれていることに気がついた。そりゃそうだ。全然話したことのない二人がなんだか世間話よりも込み入った話をしようとしているのに気付かないやつらではない。
「……」
ますますキレるのはまずい。あたしは引き攣った笑顔で、道重の言葉を待った。
「ひゅーひゅー愛ちゃん、愛の告白ぅー」
空気の読めない麻琴が、クレヨンしんちゃんの物真似でひやかしながらあたしの背中を叩いて楽屋から出ていった。
「……」
「……」
道重はますます顔赤らめて俯いた。あらぬ誤解を招きそうなような怪しい雰囲気が漂って、ますます居心地が悪い。今すぐ爆弾が落ちてきてみんなが死んじゃえば、この居心地の悪さから永遠に逃れられるのに。
- 128 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時06分21秒
- 「あのぉ、さゆですね」
見かねたのか田中が、道重の肩に手をかけて、ひょいっと背伸びして顔を出した。
「やっ、あっ、あの、自分で言う。自分で言うからっ」
「じゃあ早く言いなよ」
「れいなお節介…」
田中は無言で道重の背中を蹴って、踵を返して里沙ちゃんや藤本さんのいるところへ向った。バイオレンスな子だ。
「えっと、何かな?」
最大限の愛想を引き出して、道重に聞く。道重は痛そうに背中をさすりながら、口を開いた。
――――――。
――――。
――。
- 129 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時06分53秒
- ◇
「さくらのPVのほうが乙女より出来いいよねえ」
麻琴がぱりぱり煎餅をかじりながら、備えつけのティバックで煎れた緑茶を勧めてくれる。
「そう?」
緑茶は苦くもなく薄くもなく熱くもなくぬるくもなくちょうどいい。ポットの温度もいつの間にしたのやら85度に設定され直している。おばーちゃん子だっただけあって、麻琴はそのへんの躾が行き届いている。煎餅をかじりながらだけど。
「で、結局シゲさんの話って何だったの?」
興味津々といった表情で里沙ちゃんが麻琴の背中にのしかかって煎餅を取った。
「れいなちゃんから聞いてないの?」
「ううん全然。教えてくれなかった。なになに? マジで愛の告白とか、そういう人に言えない話?」
「や、別に……ダンスをね」
「ダンス?」
「ダンスって、どの?」
「全般的に。コツを教えてくれってさ。そういうのって矢口さんとか、麻琴とかに聞けばいいのにね」
- 130 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時07分28秒
- 「あーでもわかるー。愛ちゃんのダンスすごい綺麗で優雅だから」
「だよねえ。足上がり過ぎ」
「や、そういう意味じゃないから」
麻琴と里沙ちゃんが最後の一枚の煎餅の袋を奪い合いながら、あたしのダンスがいかに巧いかについて語り合う。あたしはちょっと気が抜けて、緑茶をすすった。
「うっそ。麻琴のほうが断然うまいって。呑み込み早いしキレがあって」
「愛ちゃんてさあ結構ないものねだりなとこあるよねえ?」
麻琴が笑って、お茶のお代わりを入れてくれた。
◇
「よ、高橋」
「中澤さん」
「最近どーよ。元気?」
「おかげさまで。中澤さんはどうですか?」
「あっは。元気元気。高橋はいつも可愛いなあ」
通りすがりに出会った中澤さんはあたしの問いには答えてくれずにニコニコ笑って、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「もー、中澤さんってなんでいつもあたし見ると頭撫でるんですかー」
ぐしゃぐしゃに乱れた髪を直しながら抗議すると、中澤さんはしれっと「高橋、はなちゃんに似てるから。すごいそっくりなんよ。見る?」と、チワワの写真を何枚も見せてくれた。
居心地の悪さは、感じなかった。
あたしも来週、17歳になる。
- 131 名前:『あたしの居場所はどこにあるの?』 投稿日:2003年09月07日(日)16時08分09秒
- -了-
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)00時40分02秒
- 次、書くやよ〜
ワンアイデアの話やよ〜
- 133 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時41分32秒
- 「楽しみやのう。」
あっしは、はしゃいでいました。仕事がらみとは言え、初めて海外に行くのです。
里沙ちゃんは家がお金持ちなので、何度か海外に行ったことがあるらしい。
でも、あっし、まこっちゃん、あさ美ちゃんの三人は全く初めての海外旅行なのです。
あっしもモーニング娘。に合格した時は、芸能人は正月にはハワイで過ごすのが定番という話しだし、すぐにでも海外のお仕事が来ると思っていました。
しかも、入って間もない時期に事務所から「いつでも海外に行けるようにパスポートを取っておきなさい。」と言われたときには、来たよ来たよ、海外のお仕事やよ、と期待しました。
しかし、あれから二年。全く海外でのお仕事は無し。
何かの拍子に辻さんや加護さんが、赤青黄色シャッフルで行ったハワイは楽しかったとか、お正月特番で行ったグアムは暑くてまいったとか、ハミルトン島は綺麗だったとか、ポロッと漏らす度に、あっしの心は乱れたのでした。
どうして、四期はこんなに海外に行けるのに五期は行けないのですか?
そう事務所の人に訴えたかったぐらいやよ。
- 134 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時42分32秒
- でも、ハワイやよ。ハワイ。
ワイハなんて言ってみたりして。
楽屋でも、海外未経験組の小高紺と田中道重の六期の子達(亀井はおフランスに行ったことがあるらしい。さすが社長令嬢。)も交えて、ハワイ対策を話し合った。何を持っていくとか、英語は話せるかとか、レストランではどうしたらいいかとかという、たわいも無い話です。
お豆や上の先輩達は、そんな、あっしらの様子をニヤニヤしながら見ていました。
世間では、あっしは楽屋で独りで本を読んでいるタイプだなんて思われているみたいやけど、そんなことはない。みんなと、仲良くやっているやよ。
「水着は当然持っていくやよね。」
「超ハイレグのビキニとか?」
「いやだ〜、まこっちゃん。」
そんな会話が楽しい。たぶん、24時間ずっと事務所のスタッフの監視付きで、自由行動をする時間など一秒も無いかも知れない。ホテルの決まった範囲だけを動けるだけかも。それでも、初めての海外は何かうきうきするやよ。
たとえ、1500人のヲタの皆さんといちいちポラロイド写真を撮らなくてはいけなくとも。
炎天下でダンスと歌のステージをこなさなくてはいけなくとも。
- 135 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時43分56秒
- そうこうしているうちに、早くもハワイに発つ前日になった。
混乱を避けるために、関空から娘。は出発するため、今日は大阪市内のホテル泊まりだ。まこっちゃんと同室だった。
またまた、初海外組でかなり遅くまでおしゃべりしてしまった。
もうお開きにしようよと誰かが言い出した時には日付も変わって、かなりの時間が経っていた。
「愛ちゃん。お休み。」と言って、まこっちゃんが自分のベットに入った後も、あっしはなかなか寝付けなかった。頭では寝なきゃと思っても、体が興奮して寝付けない。そんな感じだった。
そっとベットを抜け出して、スヤスヤと寝息をもう立てているまこっちゃんを起こさないようにして、ドアの近くに自分の旅行トランクを引っ張っていき、そっと開けた。ここなら、まこっちゃんのベットから死角になっているから、多少明かりをつけてガサゴソとやっても迷惑にはならないだろう。
ここに来て、まだ何を持っていくか迷っていた。
あれはどうだ。これは必要か。それとも要らないか。
そんなことを考えていると、ますます頭が冴えてくる。
結局寝付けたのは、窓の外がうっすらと白み始めた時間だった。
- 136 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時46分21秒
- 「お〜い。起きろ〜。愛ちゃん。起きて。」
どこか遠い所から、まこっちゃんの声がする。
「・・・ううん。もう少し。」
あっしは布団の中で寝返りを打つ。
ドスン。
急に強い衝撃を体中に感じた。
まこっちゃんが、あっしの上に全体重をかけて倒れかかって来たのだ。
「何すんの、まこっちゃん。」
ちょっと怒りが込み上げてくる。
「もう飛行機が出る時間だよ。」
あっしに覆い被さったままで、まこっちゃんが耳元で囁く。
急に頭の中がハッキリしてきた。
そうだ。今日はハワイに行く日なんだ。
飛び起きて、時計を確認する。
あちゃあ。集合時間まで後10分も無い。これじゃあ、朝ご飯は抜きだな。
健康維持のために、三食きちんと食べようと思っているのに。
「ひどいやよ。まこっちゃん。どうして起こしてくれなかったの?」
自分の事は棚に上げて、まこっちゃんを責めた。
「起こしたよ。何度も。でも愛ちゃん、絶対に起きないんだもの。」
少しトゲの入った口調で、まこっちゃんは抗弁した。
- 137 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時49分17秒
- 「そうか、済まんかったの。」
ここで喧嘩をしている時間はない。急いで顔を洗い、服を着替える。
まこっちゃんにも少し手伝って貰って、荷物をトランクに詰めて一階のロビーに向かった。あれだけ悩んだのに、結局は日本に置いていく物は何も無かった。
ロビーにはあっしら二人以外のメンバーは全員集合していて、あっしらが最後だった。バスに分乗して、空港に向かう。
何だか頭がガンガン痛い。マネージャさんが、何か注意みたいな事を前に立って話しているけど、ぜんぜん理解できない。完璧に寝不足の症状だ。
後であさ美ちゃんにでも、何を話したか聞いておかなくちゃだな。
バスの中では、ろくに寝付けずにフラフラな状態で関空のターミナルビルへと入っていった。一応はあっしらは有名芸能人なので、VIP用の入り口だ。
「愛ちゃん。おーい。愛ちゃん聞こえていますか?」
お豆の声がする。脇腹をつんつん指でつつかれた。
「ふぁーい。」
あっしは間抜けな声で反応する。
- 138 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時50分45秒
- 「もう、しっかりしてよ。荷物を預けるんでしょ。早くタグをつけて、チェックインしなきゃダメだよ。」
お豆がガンガン言う。
もう、うっさいなぁ。そんなガミガミいうことないじゃん。ちょっと海外の経験があるからって。
飛行機会社の紙のタグに住所と名前を書き込んでトランクにくくりつけてから、バッゲージカウンターでチェックインする。何だか夢の中でやっているみたいだ。
その後の出国審査も、飛行機の搭乗も半ば夢遊病患者のようになりながらやった。まるで矢口さんのようだ。
「ぐわあ。もうダメ。」
飛行機の自分の座席に座り込むとシートベルトだけを締めて寝る体勢に入った。その後の事は記憶にない。完全に熟睡したらしい。目が覚めて、飛行機の窓の外を見るとヤシの木と青い空のハワイの景色が広がっていた。
- 139 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時55分01秒
- 「うっし。完全復活したやよ〜。」
あっしは頭もスッキリして、体中に力がみなぎっているのを感じていた。
スチュアーデスさんに見送られながら飛行機を降りて、空港ビルの中に向かう。
「愛ちゃん。機内食も食べずに熟睡してたよねぇ。結構、美味しかったよ機内食のチキン。愛ちゃんの分も食べちゃった。」
あさ美ちゃんが横を歩きながら話しかけてきた。
「そうだったんや〜。惜しいことしたなぁ。」
せっかく海外に来たというのに、飛行機の中で完全に寝てしまったのは少々もったいなかったけど、帰りの飛行機もあるし、まあいいか。
この後はハワイに入国して、、預けた荷物を引き取るだけだ。
「こっちだよ。こっち。」
先の方で一塊りになっていた集団から辻さんが叫んでます。
まず入国手続き。入国書類は旅行会社の人に書いて貰ったから完璧だし、どういう裏ルートを使ったのか分からないですが、外交官とかが本来なら使う特別の窓口で手続きをしたので、ほとんどフリーパスやった。
一人一人が別々に入国審査を受けたけど、ブースを抜けていくと先に抜けたメンバーが、あっしの事を待っていてくれました。
- 140 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時56分19秒
- 「高橋。どう?ハワイの感想は?」
ハワイの感想っても、まだ飛行場の中しか見ていないんですけど、石川さん。
それでも、愛想笑いを浮かべて「いや〜、いいですよね。あっしは感動しました。」と答えておいた。
みんなでゾロゾロとベルトコンベアーが並んだ空間に入っていく。
「ここに荷物が出てくるから。」
石川さんが親切に教えてくれる。
しばらく待っていると、回転寿司の様にベルトコンベアーに乗って荷物が吐き出されてきた。
「あった。」「これだ。」「よいしょ。」
と娘。の他のメンバーが次々と自分の荷物をピックアップする。
しかし、あっしの荷物だけがいつまで待っても現れてこなかった。あっしのトランクは目立つようにとミニモちゃんのでっかいシールが貼ってある奴だから誰かが間違えて持っていくとは考えにくい。そのうちにベルトコンベアーの動きそのものが止まってしまった。もう荷物は全て終わりましたということやろうか。
あっしはどうしたら良いやろかと呆然と立ちつくして考えていると、飯田さんが
「おい、高橋。どうした?ひょっとしたら荷物が出てこないのか?」
と声を掛けてくれた。
- 141 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時57分54秒
- 「・・・そうなんです。どうしたら、いいですか。飯田さん。」
ちょっと泣きそうな気分になったきたやよ。
「取り敢えずは、飛行機会社の荷物担当の係員と交渉しなくちゃだな。うちらの英語では厳しいかもな。今日中に取り戻せるかどうか・・・」
「着替えとか、全部トランクの中なんすけど。」
本当に涙が込み上げてきたやよ。ここで思い切り泣けたら、どんなに良かったか分からん。
しかし、なんか周囲が少し騒がしいやよ。禿デブの赤ら顔の外人のおっさんが何か叫んでるわ。
「IT!! IT!!」
(んっ。これこれって言っとる。)
これって何と見ると、あっしのトランクをおっさんが引きずっていた。見覚えのあるミニモちゃんシール。
絶対に間違いない。あっしのだ。
「あった。ありましたよ。飯田さん。」
あっしは駆け足でそのおっさんの所に駆け寄った。だが、おっさんは奇妙な事をあっしに言う。
- 142 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)00時59分08秒
- Is your name メitモ?
この位の英語ならあっしにも分かる。あなたの名前はitかと質問しているのだ。もちろんあっしの名前はitなんて変な名前じゃない。
No. My name is メAi Takahashiモ.
あっしは、そう答えた。すると、そのおっさんは首を大袈裟に振り
This baggage is not yours.
と言い残して、早足に立ち去ろうとする。
ちょっと待ってよ。それは間違いなくあっしのトランクや。
あっしのゴタゴタを察して飯田さんや矢口さんが近くに寄ってきてくれた。
「どうした?高橋?」
飯田さんの声。
「あの。この人が、あっしの名前はitか、なんて変なことを訊いてきて、違うと答えたら、荷物を引き渡してくれないんです。」
「このトランクは確かに高橋の物なんだな?」
そう言いつつ、飯田さんはトランクに表に手を触れて確かめていた。そして、ある物を見つけると狂ったように笑い出し
「何これ。これじゃあ、変なことを訊かれる訳だよ。ああ可笑しい。」
とひとしきり笑った後で、おっさんにあっしのパスポートを見せて、交渉してくれた。
おっさんもパスポートとあっしの顔をしばらく見比べた後で
OKと言い、トランクを無事引き渡してもらえた。
- 143 名前:itと呼ばれた子 投稿日:2003年09月08日(月)01時00分55秒
- なんだか妙に重く感じるトランクを引きずりながら、空港の入り口に待っている移動バスに向かって歩いていく途中で、あっしは飯田さんにお礼を言ってから、どうしてさっきはあんなに笑ったのか理由を、釈然としない思いで訊いてみた。
あっしは何かへまをしたんやろか。
しかし飯田さんは、あっしの方をちらっと意味ありげに見て
「高橋。あんた荷物を預ける時に書いた荷物タグを見てみなよ。」
飯田さんはそう一言いって、ニヤニヤ笑うばかりだった。
そこでトランクにくくりつけた荷物タグを裏返して見てみると
NAME: あi Tか橋
と寝ぼけてグチャグチャの文字で書いてあった。
- 144 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)01時01分52秒
- 終わりやよ〜
文字化けしてしまったやよ〜
- 145 名前:名無し 投稿日:2003年09月08日(月)05時52分57秒
- 激しくグロいです。
苦手な方読まないように気をつけてください。
っていうか聖誕祭スレにこんなの書いてごめんなさい。
- 146 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時54分00秒
- 「もしもし、高橋愛ちゃんですか?」
「しつこい!もうかけてこないで!!」
電話越しに怒鳴りながら、顔をしかめて、私は電話を切った。
着信拒否をしたにも関わらずあらゆる手段を使われて電話がかかってくる。
野太い男の気持ち悪い発音で、どの電話も絶対に同一人物のものだろう。
芸能人である以上、プライベートな番号の流出は身の危険を感じるので、この頃は真剣に携帯の番号を変えようと思い始めた。
いや、もっと早くしておけば良かった。
- 147 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時54分30秒
- その電話がかかってきたのは、ちょうど9月の8日からだった。
最初の時は知らない番号からの着信に戸惑いながらも、きちんと電話に出たのだけれど、
「もしもし、高橋愛ちゃんですか?」という声が聞えるだけで、こちらが何と言ってもそれを繰り返すだけ。
気味が悪くなって電話を切ると、その日はもう掛かってこなくて安心したが、
次の日の同じ時間にまた違う番号から電話がかかってきた。
出ようかどうか迷った時に、出なければ良かった。
やっぱり同じ人からの電話のようで、電話の向こうでは「もしもし、高橋愛ちゃんですか?」と繰り返すばかり。
「違います」と言って電話を切ると、またその次の日に知らない番号から電話がかかってくる。
その電話に出ないと、今度は非通知で、その次は公衆電話から自宅に電話が掛かってきた。
今日で6回目。さすがにもう気味が悪い。
そうだ、もっと早く対策しておけば良かった。
こんな時に、親は福井に帰っていて、家には一人ぼっち。
お願いだからお母さん、早く帰ってきて。
- 148 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時55分02秒
- 「もしもし、あの、あさ美ちゃん?愛やけど…」
あさ美ちゃんに電話すると、あさ美ちゃんは寝ぼけた声で「うーん?」と返事を返した。
もう午前0時回ってる。寝ててもおかしくない時間だ。
「あの、今から、うちに来て欲しいんやよ」
私がそう言うと、あさ美ちゃんは返事を返さずしばらく無言になって、そのまま電話は切れた。
「つ、次…。そうや、麻琴…。ううん、麻琴は今はおとめ組の仕事で東京にいないし…。
そうや、あいぼんに来てもらって…。いや、年上の人の方が…、あっ、矢口さんに…」
次々とメンバーの顔が浮かんでは消え、結局は頼りになる大人…ということで矢口さんに連絡する事にした。
「あの、矢口さん…?」
ツーツーツー。
電話は、繋がらなかった。
仕方ないのでその日は、鍵を2つとも閉めてチェーンをし、雨戸も全部締め切ってカーテンまで閉めてやった。
そうして、一睡もしないで静かに夜が明けるのを待った。
- 149 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時56分36秒
- 「わっ、愛ちゃん。どうしたの?その目」
「おはよう、あいぼん…。昨日、一睡もできなかったんやよ…」
次の日の仕事に行く頃、睡魔が猛烈に襲ってきて眠かった。
やっぱりあいぼんに電話して、来てもらえば良かったと今更後悔した。
目の下にクマができてカッコ悪い。
今日は、できれば家には帰りたくない。
そうだ、誰かの家に泊めてもらおう。家に帰らなければ、あの変な電話もかかってこない。
「あの、あさ美ちゃん。今日泊めて欲しいんやけど」
「うち?いいけど珍しいね。愛ちゃんがうち泊まりに来るなんて」
「今日はちょっと、一人で居たくなくて…。
それにほら、明日は私の誕生日やし!」
「そうだったね。プレゼント買いに行かないとね」
笑ってごまかしたけど、本当のことはなんとなく言えなかった。
きっと本当の事を知られたら、どこかから情報が漏れてブ○カとかフラ○デーとかされちゃうんだ。
そうだ、あんな悪戯電話すぐに終わるよ。それにもう携帯替えるし。
- 150 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時57分06秒
- だから、大丈夫。
その日は軽くレコーディングをこなしてから、夕方には仕事は終わった。
そのままあさ美とマネージャーの承諾を得て携帯ショップに行って、携帯の解約と新規購入をしに行った。
携帯を替えてから、あさ美と一緒に彼女の家にタクシーで向かう途中。
あさ美が忘れ物をしたと言って、一旦事務所に戻った。
事務所の前に止まったタクシーの中で、あさ美を待つ。
すると今まで黙っていた運転手が、当然私に声をかけてきた。
「あのー…」
あまり顔を見てなかったけれど、この時初めて何かの違和感を感じた。
少し老け顔の、若い小太りの運転手。コンサートの会場とかにいるファンの人みたいな顔してる。
…この人、何か…。
「はい?何か」
きっと“芸能人の子でしょ?サイン頂戴”とでも言われるだけなら、その方が良かった。
嫌な予感というものは当たるもので、すぐにタクシーを降りていれば…と後悔した。
まぁ、どうせ鍵はガッチリ閉められてたから出られなかったんだろうけど。
後ろを振り向いた運転手は、低く野太い声に、汚ならしく鼻息を混じらせて言った。
- 151 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時57分40秒
「───高橋愛ちゃんですか?」
- 152 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時58分16秒
- ◇◇◇
目が覚めると、そこはどこかの地下室のようだった。
どれだけ眠っていたのかは解らない。
というか、何もかも理解するまでに少し時間はかかった。
だけど、自分の身に何が起きているかは解る。
…私は、全裸にされて両の腕を手錠され、所謂監禁という奴をされていた。
落ちついている訳じゃない。
まだこれが夢である事を、少しでも信じたかった。
それも無理な話だけど。
「愛ちゃん、愛ちゃん起きてくれたんだね」
男の声がする。薄暗くて、狭いこの部屋にその声がゆったりと響く。
気味が悪い。
私はもう半分以上狂ったようになっていて、とにかく叫び喚いていた。
「お願い、やめてください。出して!ここから出して!!」
ほとんど涙声で、瞳からは止めど無く涙が零れていた。
きっと、こんな風にされたら、次に何をされるか位は自分でも想像できる。
目の前の明かりに照らされた男が、下半身を露出して剥き出しにしていたなら尚のこと。
- 153 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時58分56秒
- 「そんな声出しても無駄だよぉ…ここには愛ちゃんと僕しかいないんだから」
「やめて!お願いします!本当に…本当に…」
男は私に擦り寄って来ると、思いきり汚らしいその裸体を、私の身体に重ねようとした。
私は足の自由が利く事を利用して、少なからずの抵抗をする。
男を蹴っ飛ばしたり、絶対に脚を開かないようにと太ももを固く閉ざしたり。
だけど男は諦めずに、しぶとく私に触れようとした。
「愛ちゃん、ダメだよぉ…ほら、いつもみたいにしゃぶってよ」
男はそう言って勃起した自分のモノを両手で掴み、私に向かって突き出した。
「うぐっ…いやっ!!絶対いやっ!!」
「愛ちゃぁぁん…いつもならもっと優しくしてくれるじゃない。何で今日はそんなに怒るのさ」
「いやぁぁぁぁぁっ!!!お願いっ、お願いだからっ…。
それ以上近づくと、舌噛みきって死ぬからっ!!」
「……それは、困るよ。解ったよ、愛ちゃんの言う通りにするよ。
愛ちゃんが死んだら、僕生きていけない」
胸の奥から熱くなって、私は男に向かって激しく嘔吐してしまった。
男はそれを嬉しそうに眺めると、「愛ちゃんは想像どおり下品な子だね」と言って体を拭いた。
- 154 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)05時59分30秒
キモチワルイ。
コロシタイ。
タスケテ。
- 155 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)06時00分00秒
- ───
もう、14日になったのだろうか。
私はそればかりが気になって、男の存在などどうでも良くなった。
「ねぇ」
「何かな?愛ちゃん」
「もう、14日?」
「そうだね、もう14日だね。愛ちゃんの誕生日だよ。愛ちゃんの17歳の誕生日だよ」
「………っ」
涙がまた、込み上げてきた。
もう、私はここから生きて帰れないだろう。
「愛ちゃん、どうして僕を見てくれないの?いつも僕は見てたのに」
「…………」
「いつも電話したのに、どうして出てくれない?
僕の事好きって、夢の中で何度も言ってくれたよね?くれたよね、愛ちゃん?」
親切な人から愛ちゃんの電話番号聞いて、いつもかけてたのに。どうして?ねぇ」
「…………」
「愛ちゃん?」
「お願い、何でも言う事聞くから、一つお願い聞いて」
「何?」
「手、自由にしてください。そしたら、何でもします」
「逃げない?」
「逃げません。だから、お願いします」
男はただのバカで、私のお願いならとすぐに手錠を外した。
本当にただのバカだ。もうすぐ殺されるとも知らないで。
- 156 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)06時00分32秒
- ───
料理をしてくれと要求してきた男が、これほどバカだとは思わなかった。
バカで助かった、とも言うべきだけれど。
手にした包丁で男の顔をめちゃくちゃに刻んでやった。
人を殺したという罪悪感なんてなくて、ただ爽快感だけは残った。
こんなクズ男は死んで当然だ。だから私が殺してやった。
男の部屋を隈なく漁り、例の携帯電話を発見した。
私の番号を売った者が誰なのかをつきとめたかった。
いくつか留守録が残ってる。
その番号も非通知だったけれど、それを再生した瞬間にもう何もかもがどうでも良くなった。
- 157 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)06時01分04秒
- 「こんばんわ。愛ちゃんは無事に攫えました?良かったですね。私も協力した甲斐があります。
そうそう、愛ちゃん意外としぶといですから気をつけてくださいね。それに、間違っても
手錠を外したりなんてしないで下さい。あなたきっと殺されますよ。そうしたら私も危ういですしね。
それじゃ、いつものようにこの留守録は消してください」
それだけが頭に残り、私はもうこの世界で生きて行く事を放棄した。
すべて、そういう事だった。私はこんなクズどもの欲のために犠牲にされた。
でもまだ復讐が終わってない。
殺してやる。絶対に。
- 158 名前:「高橋愛ちゃんですか?」 投稿日:2003年09月08日(月)06時01分34秒
───コンノアサミ。コロス。
- 159 名前:名無し 投稿日:2003年09月08日(月)06時02分04秒
- 高橋愛さんごめんなさい。
- 160 名前:名無し 投稿日:2003年09月08日(月)06時02分35秒
- 高橋愛さんのファンの方ごめんなさい。
- 161 名前:名無し 投稿日:2003年09月08日(月)06時03分37秒
- >>146->>158は大変キショい話です。
読む前に>>145の注意書きを読んでおきましょう(ハァト
高橋愛さん、17歳おめでとうございます。
- 162 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/09(火) 19:13
- 愛ちゃんがメンバーや後藤さんに
モテモテなやつ書いてください!
- 163 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/09(火) 21:49
- >>162
ワザといってるだろ
- 164 名前:親切なひと 投稿日:2003/09/09(火) 21:58
- >>162
はい、どうぞ。
>>46-50
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/09(火) 22:22
- 『円舞』
- 166 名前:円舞 投稿日:2003/09/09(火) 22:22
- もうすぐ高橋愛ちゃんの誕生日なのでモーニング娘。が愛ちゃんに尋ねました。
「愛ちゃんはお誕生日には何が欲しい?」
愛ちゃんは答えました。
「何もいりませんが、みんなで踊りたいです」
みんな目を丸くしました。
「だっていつも踊ってるじゃない」
「お客さんの為じゃなくて、私たちだけで踊りたいんです。私たちのために」
なるほど、とみんな納得しました。
お仕事が終わるころには辺りは真っ暗。
15人のモーニング娘。は連れ立って草原にゆきました。
9月の円いお月様の、銀の明かりだけが照らす草原のステージ。
15人は輪になりました。
タンタンタン
誰かが手拍子を鳴らしました。
また、誰かが何かの歌を口ずさみました。
ランランラララン
柔らかい夜気に包まれた草原で、口ずさむ歌は次第に弾み
みんなの身体は何時しか踊りだしました。
- 167 名前:円舞 投稿日:2003/09/09(火) 22:23
-
優しいステップ。
でたらめのステップ。
ランランラララン
タンタタタン
嬉しくなって歌いました。
何だか楽しそうだというので、じっと様子を窺っていたお月様も
シャンシャンシャララン
銀の光のメロディーをプレゼント。
それならば、と舞台の大地が
どんどんどんどこどん
風と草は重なり合って
シャラララヒューヒューサラサラ
お調子者の虫たちもしゃしゃり出て
ヒューロロロロロ
キリキリキリキリタナナナナ
いつの間にやら15人の舞台を囲んでの大合唱会になりました。
みんな好きに歌って踊って踊って踊って、
みんなみんな嬉しくて楽しくて時間を忘れて一晩中、踊りつづけました。
- 168 名前:円舞 投稿日:2003/09/09(火) 22:23
-
愛ちゃんは柔らかい秋の朝日にくすぐられて目を覚ましました。
とても楽しい夢でした。
弾んだ気分のまま仕事に向かいました。
『モーニング娘。さくら組 様』
楽屋のドアプレートに書いていた文字を見て愛ちゃんは瞼を落としました。
7人のメンバーから「おめでとう」の言葉を浴びました。
9月、14日の朝でした。
おわり
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 00:16
- ♪おたんじょーびおめでとー♪×3
高橋さん17歳の誕生日おめでとーage。
愉快な作品が多くておもしろい。えらい。
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 00:35
- ‖
| ||'-' 川 アガルヤヨー
| ( )
| | |
|
/ ̄ ̄ ̄ ̄
/
- 171 名前:ポルカ 投稿日:2003/09/14(日) 01:15
- 「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野は言った。すると「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に
言われた高橋は紺野に「ありがとう」と言った。すると「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に
言われた高橋に「ありがとう」と言われた紺野は「どういたしまして」と照れくさそうに笑った。すると
「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に言われた高橋に「ありがとう」と言われた紺野が「どうい
たしまして」と照れくさそうに笑ったせいで高橋も照れくさそうに笑った。新垣は段々苛々してきた。
「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に言われた高橋に「ありがとう」と言われた紺野が「どういた
しまして」と照れくさそうに笑ったせいで高橋も照れくさそうに笑ったことに気がついた紺野が「なん
か照れるね」と言った。「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に言われた高橋に「ありがとう」と
言われた紺野が「どういたしまして」と照れくさそうに笑ったせいで高橋も照れくさそうに笑ったことに
気がついた紺野が「なんか照れるね」と言ったので高橋はますます照れた。せめて照れるのを
やめて欲しいと新垣は思った。「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と紺野に言われた高橋に「ありがとう」
と言われた紺野が「どういたしまして」と照れくさそうに笑ったせいで高橋も照れくさそうに笑ったこと
に気がついた紺野が「なんか照れるね」と言ったので高橋がますます照れたのを見て、紺野はそんな
愛ちゃんはとても可愛いなと思った。その時「愛ちゃんお誕生日おめでとう」と小川が言いかけた。
新垣はすでに金属バットで次の高橋の行動を阻止しようとしていたのだが、迷わずそちらにも振り下ろす
ことにした。
- 172 名前:ポルカ 投稿日:2003/09/14(日) 01:19
- あ、終わり
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/14(日) 01:36
- 今日は、愛の誕生日だ。
その前日、愛は昔のビデオを見ていた。
モーニング娘。に加入した頃の自分が映っているものだ。
「初心忘れるべからずやよっ!!」
全てを見終わると愛は決意を秘めた瞳で呟いた。
当日、愛は気合をいれて楽屋に向かった。
「おはよーございます」
楽屋には、飯田と矢口と安倍が来ていてなにやら楽しげに話していた
愛の声に3人は振り返り「おはよう」と言葉を返す。
それから、話の続きをはじめた。
「でさー、なっちこの間さー」
「そうですよね、安倍さん」
「え?」
「あっしも○▼=?。>!!%$#なんですよ」
「・・・・・・え?」
「で、(>*+=−〜{#$が’!#”でした」
愛は言い切ると川 ’ー’)誇らしげな笑みを浮かべた。
しかし、3人――特に話の腰をおられた安倍――はなんともいえない
微妙な表情で愛を見ていた。
「あのさ〜」
矢口がいいづらそうに口をひらく。
「なんですか、矢口さん!!」
愛は、次に来る言葉が楽しみで目を大きくした。川 ’ー’)
「いや、今大事な話してるからちょっと邪魔しないでくれるかなって」
矢口の言葉に飯田も安倍も頷いている。
川 ’−’)「・・・・・・そうですか」
「ごめんね、あとで聞いてあげるから」
ポツンと楽屋の隅に座ってしまった哀に飯田がおざなりな言葉をかけた。
今日は、哀の誕生日らしい_| ̄|○
- 174 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:17
- 高橋の村
- 175 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:18
- 福井県○○郡○○町○○。詳しい地名は伏せておく。
福井市内でコンサートがあった翌日、つかのまの休息が取れたあたしたちは、愛ちゃんの生まれたところに行ってみようという話になった。メンバーはあたし、まこっちゃん、あさ美ちゃん、そして当の本人の愛ちゃん。同期のみんなだ。
福井市から在来線に乗り、何駅めかで降りた。そこからタクシーを拾って数十分。だんだん山の中に入っていった。雲が低く、山のてっぺんにひっかかっていた。空気も湿っていて体にのしかかってくるみたいだ。
「あれ、春江町じゃなかったの?」
「そこは育ったところ。生まれたんはちゃうよ」
- 176 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:18
- だんだん道が細くなっていく。しまいには田んぼのあぜ道みたいなところを通り、わらぶき小屋の前で止まった。
「着いた?」
「ここやよ」
町というよりは村だった。山の裾野に田んぼが広がり、麓のところに家々が連なっていた。
「なっつかしー」
愛ちゃんが、一応舗装された道路を駆け出した。あたしたちも一瞬ちゅうちょしてから、あとを追いかけた。愛ちゃんはお寺の境内に入っていった。
「ここで朝のラジオ体操とかしてたんやよ」
お寺の本堂の隣に、狭いスペースがあった。今でも子どもたちが遊んだりするのだろう。土の地面に石灰で線を引いたあとがある。
- 177 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:19
- 「ねえ、愛ちゃんの生まれた家って、今でもある?」
「うん、あるよ。行ってみる?」
愛ちゃんに連れられて、車がようやく通れそうな道をてくてく歩いた。その途中、みんな一瞬立ち止まったり、体をびくっとさせたりする。
「ね、ね、愛ちゃん」
まこっちゃんが恐る恐る声をかけた。
「この家じゃないの?」
「ちゃうよ」
「でも、ほら表札……」
確かに、その家に「高橋」という木の表札がかかっていた。
「あ、あそこも」
あたしも気づいた。その横の家にも「高橋○○」と彫られた石がかかっていた。愛ちゃんはきょとんとして、それから笑い出した。
「そやそや、ゆーの忘れとった。ここらへんの家、みーんな高橋さんってゆーんや」
この小さな集落、三十数戸全てが「高橋」という姓を持っているのだという。
「みんな親戚なの?」
「大昔はそうやったみたいやけど、今はちゃうと思うよ」
- 178 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:20
- さて、愛ちゃんの生まれたという家に着いた。愛ちゃんの親戚がいるらしい。さて、中に入ろうかというその時。
「あ、愛やんか」
「ほんまや、愛や」
その声に気づいた愛ちゃんは、その方向に体を向けて手を振った。
「みんな、ひさしぶりやのー」
その大きな声が山に跳ね返ってこだましたような感じがした。そこらじゅうの家の玄関が開き、小学生から高校生くらいの子どもたち数十人が飛び出してきた。
飛び出してきた子どもたちにもみくちゃにされる愛ちゃんを放って、あたしたちは待たせていたタクシーに飛び乗った。
「早く出してください」
「はいよ」
村がだんだん小さくなっていく。あたしたちは小さく息をはいた。
「び、びっくりしたー」
「どれが愛ちゃんかわからなくなっちゃった……」
あの「高橋」の子どもたち、みんな愛ちゃんと全くおんなじ顔をしていた。「高橋」の者たちには見分けがつくのかもしれないけど、あたしには無理だ。カブトムシの顔を見分けることができないのとおんなじだ。
これからどうしようなんて、先のことは忘れよう。あたしたちは駅に着くまで目を閉じていた。
- 179 名前:高橋の村 投稿日:2003/09/14(日) 21:21
- おわり
※この村は福井県に実在しますが、知っていても黙っててください。
- 180 名前:おめでとう。 投稿日:2003/09/14(日) 22:40
- なんなんだろう。朝からほんとについてない。
寝坊に始まり、フライパン落とすわ足の小指ぶつけるわ牛乳こぼすわ…。
あたしがトロいせいのはわかってるんだけど、神様もなにも誕生日にこんなに苛めなくてもいいのに。
溜め息の数は時を追うごとに多くなり、何もかもがブルーに見えた。
そして極め付けに、これだ。
家を出たとたん振り出した大粒の雨。
傘持ってくるの忘れたあたしもいけないけど、でも…。
涙がでそうになるのをぐっとこらえ、歩いた。
タン タタン タン タンタタン
雨粒はコンビニで買った傘の上で弾け、少しだけあたしの心を心地よく揺さぶったが、それも長続きしなかった。
その後もトラックに水跳ねられたり犬に吠えられたり電車がすごく混んでいたりしながらも、
あたしはようやく仕事場にたどり着いた。
- 181 名前:おめでとう。 投稿日:2003/09/14(日) 22:41
- が、楽屋のドアのノブに手をかけたところでふと考える。
みんなはあたしの誕生日覚えてくれているだろうか。
全員が覚えていることまでは期待しないけど、
同期はおぼえてるだろうか。
これであたしの十七歳の一年の運が決まる。そんな気がした。
ガチャッ
「おはようござ……」
誰もいなかった。
まあ確かに、あたしはいつも早く来るようにしてて、
これくらいだだいたいと飯田さんとか矢口さんとかしかいなかったりする。
しかし一番に来たのは今日が初めてだった。
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 22:41
- 今年は、最悪な一年になりそうだ…。
溜め息をつき、椅子に腰を下ろしてバッグから本を取り出した。
胸に巣食うチクチクしたものが邪魔で、二分もしないうちに本を放り出し、
今度は携帯でゲームをした。
十分たっても誰も来なかった。
これはどう考えてもおかしい。集合時間まであと五分とないのに。
もしかして時間か場所間違えたのだろうか。
しかしマネージャーからのメールを見直しても、何も間違ってはなくて。
そのとき、携帯が震えた。
光るディスプレイには、あさ美ちゃんの名前。
あわてて耳に当てた。
- 183 名前:おめでとう。 投稿日:2003/09/14(日) 22:41
- 「もしもし愛ちゃん?今どこ? あ…、私たちその廊下の突き当たりの部屋にいるから早く来て!」
どういうことだろう。
裏切られた時を想像すると素直に期待はできないけど、とりあえずあたしは言われた部屋にむかった。
しかしその部屋はあり得ないくらい静かで。
あたしは少しためらってから、ドアを開けた。
暗闇。
しかし人のいる気配。
そして…。
- 184 名前:おめでとう。 投稿日:2003/09/14(日) 22:43
- 「誕生日オメデト━━(●´ー`)゚〜゚)^◇^)0^〜^)^▽^)‘д‘)´D`)´▽`)o・-・)・e・)VvV从*^ー^)´ ヮ`)☆*・ 。.・从━━!!!」
明かりがつけられ、そこに現れたのはメンバーの十五人の顔と、蝋燭が十七本のったケーキ。
パンパン パパン パン パン
いっせいになるクラッカーの音。
「驚かしてごめんね。誕生日おめでとう。みんなプレゼント用意してるからね。
これからもよろしく」
あさ美ちゃんが代表してあたしにいった。
そんなこと言われると…。
「な、泣かないでよ!ほらケーキケーキ! 楽しもう」
「あさ美ちゃん食いしん坊ー」
「あははは」
笑顔と笑い声に満ちた平和な楽屋。
あたしは今年一年、幸せに暮らせそうだ。
おわり
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/16(火) 21:51
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|└─|| '-' || < 読んだナァ… 呪うガシ・・・
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人人人人/ \
< ギャー > \
YYYYYYY ニニニニニニニニニニニニニl
ノハハヽヾ ||
デタ〜 (´◇`;∬ //
⊂ つ
(⌒)ヽ__)
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 00:13
- ☆☆☆
やよー賞:すべての始まりとなった作品に送られる賞。
ぽっけにひとつ
てってけてー賞:結局何を言ってるんだかよく分からなかった作品に送られ賞。
世界は君の後ろにある
五月が瀬賞:オーソドックスに高橋愛を祝福してくれた作品に送られる賞。
いつかさよなら
イェイ賞:途中に出てきて会場の空気を寒々とさせてしまった作品に送られる賞。
愛は一人で本を読むらしい〜早くふるさとに帰りたい〜
カツ丼賞:それはソースカツ丼じゃなくてカツ丼だよ・・・ な作品に贈られる賞。
無題(>>12-14)
原発賞:放射性廃棄物並に、もう、どうしようもなく、処理のしようの無い作品に贈られる賞。
「高橋愛ちゃんですか?」
哀ちゃん賞:もうひたすらに寂しい、一番寂しかった作品に贈られる賞。
>>162
高橋ラブリー賞:聖誕祭の最優秀賞。
『あたしの居場所はどこにあるの』
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/24(水) 16:57
- カムアウトマダー チンチン
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 08:23
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川 '-'||
/ヘ_, _ヽ。ガリガリ
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