地球最後の日
- 1 名前:ゆとり 投稿日:2003年09月08日(月)00時39分39秒
- 初めてスレッドなるものを立てさせていただきます。
内容は、吉澤ひとみさん主演のゆる〜い感じの学園モノ連作短編集です。
それでは、肩の力を抜いてご覧ください。
- 2 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時40分38秒
-
- 3 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時41分15秒
地球最後の日
- 4 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時41分48秒
-
- 5 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時42分43秒
なんか、キャッチボールしたくない?
- 6 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時43分53秒
- 青い空。
白い雲。
白い太陽。
七色の太陽光線。
微風。
蝉の声。
夏休み。
補習を終えた吉澤ひとみさんは学校の屋上に。
左手には硬式野球グローブ。
右手には硬式野球ボール。
いずれも野球部から借りてきたものだ。
「行くぞー!」
吉澤はグローブをはめている左手を胸の高さほどの鉄柵に置きながら、
ボールを握った右手を高々とかかげ、ぶんぶんと左右に振る。
満面の笑み。
- 7 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時44分24秒
- 吉澤が視線を向ける地上――校庭には、
「あーい! ばっちこーい!」
屋上の吉澤を見上げながら、大声を張り上げながら、
左手にはめたキャッチャーミットにバスンバスンと右拳を叩きつけながら、
真剣な表情をしている辻希美さんの姿が。
彼女の背後からは、やる気があったりなかったりする野球部員の声と、
金属バットが硬式ボールを叩くキンッという甲高い音が聴こえてくる。
吉澤ひとみ、18歳、高校三年生。
元女子バレーボール部。現フリー。
恋人、なし。アホ。
辻希美、16歳、高校一年生。
女子バレーボール部所属、補欠、リベロ。
恋人、なし。アホ。
- 8 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時45分10秒
- 「よっしゃー! 原爆投下!」
戦争を知らない無邪気な少女の雄叫び。
少女だけど雄叫び。
声として発散された若いエネルギーが、夏の炎天下に拡散する。
吉澤の右手から地上に向かって投げ下ろされたボールは、
慣性の法則やら作用反作用の法則やら万有引力やら
位置エネルギーだの抵抗だの運動生理学だのその他いろいろな
アレやコレやのどうたらこうたらに従って空間を移動し――
バスンッ!
見事、辻のミットの中に収まった。
- 9 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時45分50秒
- 「のの、ナイスキャーッチ!」
鉄柵から身を乗り出して、辻の捕球を讃える吉澤。
『のの』は辻の愛称。
「痛いよ、バカぢから!」
「背筋力はのののほうが上だろ。つーか、強いのは重力だよ、重力。重力最強!」
なにげにマクロ世界における正論を叫ぶ吉澤だが、
もちろん、吉澤自身は本当に重力が最強かどうかは知らない。
どう最強なのか、なぜ最強なのかは知らない。
まったくもって知らない。完全に。完璧に。あざやかに。
- 10 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時46分31秒
- まあ、それはそうと、
どうして二人は学校の屋上と校庭でキャッチボールなんぞに興じているのか?
理由――なんとなく。
意味――なし。
吉澤の頭にピンとひらめいたのだ。
『なんか高いトコと低いトコでキャッチボールやりてー!』
- 11 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時47分07秒
- 「よっしゃー、今度はののが返してこい! アイシャルリターン!」
「言われなくても投げてやらー!」
「のの、口悪いぞー」
辻は助走距離をとって、右腕をぐるんぐるん回す。
「いくぞー! ちゃんと捕れよー!」
「おっしゃ、こーい! のの、口悪いぞー」
そして、辻は身体を斜に向けて走り出し、
「うぉーりゃーっ!」
小さな右手に握ったボールを、屋上の吉澤めがけ、夏の青空に向かって投げ――
ガシャンッ!
四階の窓ガラスにストライク。
やったね、ののたん。すごいよ、ののたん。
- 12 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時48分13秒
- 「あっ……」
風通しの良くなった窓を見上げながら、ぽかんと口を開ける辻。
「おおっ、ガラス割りやがった! すげー! 校内暴力カッケー!」
鉄柵に手をかけながら、直下の四階の窓を覗きこもうとする吉澤。
辻は背後の野球部員たちを振り返ってみた。
全員、動きを止めて、辻のほうを見ていた。
沈黙の中に響き渡る蝉の声。
青い空。
白い雲。
白い太陽。
七色の太陽光線。
微風。
土の匂い。
緑の匂い。
熱い汗と、冷や汗。
- 13 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時49分01秒
- 「どちくしょー!」
辻はキャッチャーミットをぬいで地面に叩きつけ、走った。
逃げた。
「おお、なんかいつもより足速いぞー!」
吉澤は爆笑して、笑いながら、砂埃だらけの屋上のコンクリートの床に寝転んだ。
グローブをぬいで、ぽーんと放り投げる。
両手を広げ、空を仰ぐ。
目を閉じる。
「ふふっ」と笑う。
金属バットが硬式ボールを叩くキンッという甲高い音が再び聴こえはじめた。
「あー、おもしれー」
- 14 名前:屋上と地上とキャッチボール 投稿日:2003年09月08日(月)00時49分38秒
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
(了)
- 15 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時50分09秒
-
- 16 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時51分15秒
-
- 17 名前:. 投稿日:2003年09月08日(月)00時52分19秒
-
- 18 名前:名無し娘。 投稿日:2003年09月08日(月)20時45分19秒
- (・∀・)イイ!!
やばい、イイです。
一目惚れしました。これからも頑張ってください。
- 19 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/09(火) 21:29
- SEEK変わったねぇ。びっくりした。というかドッキリした。
sageチェックボタン(?)が無くなったのが不便というか寂しいというか。
では、Janeからの書きこみテストを兼ねて――
>18
レスありがとうございます。
一目惚れしていただいた読者のかたを最後まで惹きつけてやまない魅力が、
このスレにあるのやら。ないのやら。たとえ及ばずとも、力は尽くします。
僕が落ちぶれたら、迷わず古い荷物を捨て、君は新しいドアを開けて進めばいいんだよ。
(無許可引用)
- 20 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:32
- 色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
無為の奥山 今日越えて
青き夢見し 恋せよ乙女
- 21 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:32
- 灰色の砂浜に打ち寄せる波は水色ではないけれども、
吉澤ひとみが見上げる空は、ただひたすらに空色だった。
制服のブレザーをほっぽり出して、白いブラウスとチェックのスカート姿になった吉澤は、
夏休みが明けた処暑の太陽光線をいっぱいに浴びている砂浜の砂を裸足で踏みしめながら、
両手を腰にあて、なんだかとっても男らしく、空色の空を見上げていた。
そして、
「うーむ。本日は晴天なり。――って、コロ助かよ!」
と言うと同時に、後方を振り返った。
- 22 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:32
- 「べつにコロ助じゃないんじゃない?」
吉澤が振り返った先で砂浜に体育座りをしていた後藤真希が、ボ〜ッとした表情で
ボ〜ッと答えた。
「なんだよ、その返し。25点。赤点」
「よっすぃのボケが悪いからじゃん。よっすぃが10点」
「低ッ! っていうか、ボケじゃなくてノリツッコミなんだけど」
「ふ〜ん。それってボケじゃないの?」
いってしまえば、二人ともボケだ。
まあ、それはともかくとして――
- 23 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:33
- 太陽が真上で輝く平日の正午。
この時間、高校三年生の二人は、本来ならば昼休み前の授業を受けていなければならないのだが、
今、こうして、何をするでもなく海の前にたたずんでいる。
吉澤いわく、
「こんな天気のいい日に、日陰の教室で授業なんかやってられるか!」
ということだ。
もっとも、そこで後藤が返す言葉によれば、
「よっすぃの場合、べつに天気関係ないじゃん」
ということなのだが。
- 24 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:34
- 学校から歩いて10分ほど。
学校前の国道を渡り、線路を横切り、自動車教習所を通過し、古い住宅地を通過し、
茶色く錆びついた水産加工場を通過すると、やがて小さな砂浜と広い太平洋に出る。
水平線の際がキラキラと白く輝く海。
これでもかというくらい「海臭い」海。
深呼吸すると、潮の匂いでむせそうになる。
どこか命っぽいニオイ。
血のような。
- 25 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:35
- 「うおー!」
突然、吉澤は奇声を発しながら海に向かって走り出す。そして、
「タイガーショーット!」
寄せる波を蹴り上げた。
海が、波が、水滴がはじけとび、太陽光線が乱反射する。
当然、吉澤のスカートとブラウスは濡れ、心もとない胸に装着されたブラが透ける。
- 26 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:35
- 「ちょーっと、な〜にやってんのさー」
気の抜けたままの後藤の声。
「タイガーショット」
吉澤は振り返り、唇の片端を吊り上げながら、グッと親指を立てる。
「何それ?」
「日向君の必殺シュート」
「誰それ?」
「なんだよ、知らないのかよー」
「知らない」
「日向君、カッケーのに」
「ふ〜ん」
「興味なしかい!」
「うん」
生産性も発展性もない会話が終わる。
どこへも行かない言葉の羅列。
生まれて消えるだけ。記憶にも残らない。
ただ時間を埋めるだけで。
必要か不必要かと訊かれれば、きっと、必要で。
- 27 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:36
- 吉澤にさらわれるようにして授業を抜け出してきた後藤は、ただ座って海を眺めている。
吉澤は連れ出した後藤を放っておいて、一人「うひょー」と波とたわむれている。
「うわっ、冷てっ」
「よっすぃ、水色のブラが透けっぱなしなんだけど」
「おっ! いやん」
「それって、乾くのに時間かかりそうだね」
「かもね。――よし。今日はこのまま帰っちまうか」
「自転車は?」
「もちろん取りにいって、乗って帰る」
「ブラ透けっぱなしで?」
「こんなもん。アメリカ人とか、Tシャツでチクりまくってんじゃん」
「よっすぃ、日本人じゃん」
「おっ、こいつは一本とられたね!」
「いや、とってないし」
吉澤は「なんだよ、とっとけよ」と言いながら、砂浜に放り出していたブレザーを掴み、
拾い上げ、砂を払い、ばっさばっさと振りまくり、襟を握って肩にかけた。
- 28 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:38
- 「なあ、ごっちん」
「ん?」
吉澤は空を見上げている。
後藤は海を眺めている。
「今ってさ、昼だから星見えないじゃん」
「うん。だね」
「でもさ、それは太陽がまぶしすぎるから見えないだけでさ、ちゃんと星はあるんだってさ」
「うん。知ってる」
「で――あれ? なんか違うな?」
「どうしたの?」
「えーとね……。あっ、違う!」
「何が?」
「いや、あのさ、ホントは、男なんて星の数だけいるとかさ、
そんな感じのこと言いたかったんだけどさ、なんかぜんぜん関係ないわ」
「何それ?」
「うん。いや、失敗、失敗。――あれ? やっぱいいのかな?」
「なによ、どっちさ?」
言いながら、後藤は「ふっ」と笑う。
- 29 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:39
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
- 30 名前:海の色は空の色 投稿日:2003/09/09(火) 21:40
- 「あっ! ここ砂浜じゃん! 砂の数だけとか言えたじゃん!」
「ふふっ。よっすぃ、もういいって。――ありがと」
(了)
- 31 名前:. 投稿日:2003/09/09(火) 21:41
-
- 32 名前:. 投稿日:2003/09/09(火) 21:41
-
- 33 名前:. 投稿日:2003/09/09(火) 21:42
-
- 34 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/10(水) 01:58
- やっべ!眩しい!!
青春一直線の光が僕を射す。
やっぱりこの恋は偽者じゃないみたいです。
もう少しだけステェェーーイさせて頂きます。
- 35 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/11(木) 22:26
- 改装にともなって底に沈んだスレで、なぜ空白レスを入れなければならないのか。
しかも3つじゃ隠れないし。しっかりしろよ、自分。頭の中はお留守ですか?
>34
毎度当スレをご利用いただきまして誠にありがとうございます。
なにぶん不慣れなため、充分にサービスが行き届かないこともあるかとは思いますが、
引き続き、当スレをお引き立てのほど、よろぴくお願い申し上げます。
それでは、毎度バカバカしいお話をひとつ。 デデン
- 36 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:26
-
この星の一等賞になりたい――わけではない。べつに。
- 37 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:28
- 「よお、紺野! 卓球やらね?」
放課後。一階の廊下。
毎度おなじみ、吉澤ひとみさんの右手には卓球のラケット。赤いラバー。
本人はサーブの格好をしているつもりなんだろうけれども、どこか何か違う変なポーズ。
というか、廊下でそんなポーズをとること自体が変だ。
「えっ? 石野卓球を襲撃するんですか? それはちょっと……」
紺野あさ美、16歳、高校一年生。
中学まで陸上部。空手も少々。現・帰宅部。今まさに帰宅中だったところ。
恋人、なし。英語以外の成績、優良。
チャームポイント、ほっぺとか。
- 38 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:29
- 「おおうっ! まさかそんな返しがくるとは予想だにせず! すごいな、紺野」
「でも、私、卓球のルールとか知らないですし」
「おおうっ! いきなり話つながってる! すごいな、紺野」
「ほめても何も出ませんよ」
「なんだよ、ちぇーっ。じゃあ、いいよ。――って、おい! 違うだろ!」
「テンション高いですね」
「おうっ、高いぜ! 昨日ビデオで『ピンポン』見たからな」
「それって卓球やりたい理由で、テンション高い理由とは違うんじゃないんですか?」
「バッカ、おまえ、ピンポン見てねえの? めっちゃテンション上がるんだって、あれ」
「ドッジボールならやってもいいです」
「なかば無視かよ!」
まあ、そんなやりとりがあって――
- 39 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:29
- 体育館。
本日は女子バレーボール部と卓球部の日。
見るからに気の乗らなさそうな紺野の手首をつかんで引きずってきた吉澤は、
「あっ、よっすぃ! こんなトコで何してんのさ!」
という声が聴こえてきたほうを振り向いた。
「おっ。のの」
そこには、バレーボールのネットを張るためのポールを肩に担ぎ上げている辻希美の姿。
ちなみに、いくら力の強い辻とはいえ、一人でポールを担いでいるわけではない。
「見りゃわかんだろ。卓球すんだよ、卓球」
と、吉澤はまたもや不可思議なサーブポーズ。
「あっそ」
と、辻は作業に戻る。頑張れ一年生。
「興味なしかい!」
以前にもどこかで言ったような気がするツッコミを吐きながらラケットをかかげる吉澤。
遊んでるんだか、遊ばれてるんだか。
- 40 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:30
- 「あの、やるんなら、早くやりましょう。卓球」
吉澤に手首を握られ続けていた紺野がぼそりと言う。
「おぅっ、紺野? なぜこんなところに?」
「下突きしてもいいですか?」
「ごめん。嘘。やめて。――下突きって何?」
「ボディアッパーです」
「あ、説明してくれるんだ。うん、わかった。実践はしなくていいから」
まあ、そんなやりとりがあって――
- 41 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:31
- 卓球部が使用する四台の卓球台のひとつを占領した吉澤。あと、一応共犯の紺野。
すご〜く迷惑そうな顔をしている卓球部員たちは、まるで植民地の奴(略
体育館を半分に分ける緑色のネットが、天井から床まで、壁から壁まで引かれている。
バレー部と卓球部のボールが、互いのコートに侵入することはない。
「おっしゃー! いっちょ、やりますかぁ!」
ペンをもつようにグリップを握る『ペンホルダー』の吉澤と対面する紺野は、
五指でグリップを握りしめる『シェイクハンド』。
もちろん、卓球のルールを何も知らない紺野自身は、自分の握り方に名前があることすら
知らない。ただ持っているだけといった感じだ。
- 42 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:31
- 「いくぞ、紺野! 特訓の成果、見せてやるぜ!」
「いつ特訓したんですか?」
「昨日。イメージトレーニング」
「そうですか。イメージトレーニングは大切ですよね」
「だろ?」
「それはそうと、卓球部の人たちがいるのに、どうしてわざわざ私なんか誘ったんですか?
私、本気で卓球のこと、何もわからないんですけど」
「バッカ、おまえ、卓球部のやつに付き合わせたら、練習の邪魔になっちまうだろ」
卓球台のひとつを占領していることで充分以上に邪魔していることには触れないらしい。
イッツ・ア・ヨシザワールド。これでいいのだ。
「あの、私、やっぱり帰っていいですか?」
「問答無用!」
吉澤の素早く鋭いサーブ。
紺野、一歩も動けず。というか、動かず。
- 43 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:32
- 「ヘイッ! ワンポイント先取!」
と、吉澤は紺野に向かって左手の人さし指を伸ばした。
挑発になりうる笑みと視線。
紺野は少し――ムッとした。
実はかなりの負けず嫌いな紺野さん。
- 44 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:32
- 「次はそっちからのサーブでいいぞ。ほら、来い」
「サーブってどうやって打つんですか?」
「あ? うーんとね、一回自分の陣地にボール着くように打って、相手のほうにも
一回着かせんの。そんで――ああ、めんどくせー! いいから来い!」
吉澤はあっというまに説明を放棄して、構える。
と、紺野はしばらくコートとラケットとピンポン球を見ながら何やら考えていたようだが、
自分で考えることはあきらめて、
「ちょっとすみません」
隣の台にいる二年生の男子卓球部員に説明を求めにいった。
「え、あ、はい。なんでしょう?」
「サーブの打ち方教えてもらいたいんですけど」
「あ、はい、あの、えーとですね」
そして、短時間の個人レッスン。まあ、エッチ。
「おい、紺野、何やってんだよ。そんなことしたら、手取り足取り教えるとか言って、
セクハラされるぞ、セクハラ。セクシャルバイオレット」
「そ、そんな、セクハラって!」
あらぬ疑いをかけられる山田君(仮名)。無念だね。あきらめろ。
まあ、そんなやりとりがあって――
- 45 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:33
- 紺野のサーブから試合再開。
紺野は軽く放り投げた球を一度台に弾ませてから、すくいあげるようにして山なりの
サーブを打つ。
「違う!」
吉澤は紺野の間違いサーブにツッコミをいれながら、山なりの弾道を描く球を強烈な
スマッシュで返す。ちなみにアウト。カウント1−1。
「一回自分のトコに着かせるの意味が違う!」
「やっぱりそうですか。うすうす違うとは感じていたんですけど」
そして、幾度か首をひねった末に、再び山田君(仮名)に説明を求める紺野さん。
「ああ、ええとね、それはね」
「おい、山田(仮名)! さっきよりなれなれしくなってるぞ!」
「えっ、そんな! あ、あの、すみません……」
相手が悪いだけだよ。落ちこむな。頑張れ、新キャプテン。
まあ、そんなやりとりがあって――
- 46 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:34
- 「おい、もういいのか?」
「はい。完璧です」
紺野のサーブから試合再々開。
片面ラバーのラケットなのにあいかわらずシェイクハンドグリップの紺野は、
左手で浮かせた球の側面をこするようにしてサーブを打つ。
「いきなり回転かけてくんのかよ!」
虚をつかれた吉澤の返球は、ネットにさえぎられて自軍コートに転がった。
「おまえ、説明されただけで上達してんじゃねえよ!」
「イメージトレーニングで特訓しました」
不敵な笑みを返す紺野。
「むちゃくちゃだな……」
「吉澤さんほどじゃないです」
「むちゃくちゃの質が違うんだよ。おまえとあたしじゃ」
「あ、自覚あったんですね」
「なに?」
「いいえ。なんでもないです」
- 47 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:35
- そして、むちゃくちゃな二人の壮絶なピンポンゲームが幕を開けた。
どう壮絶なのかというと、たとえば――
「あっ!」
と紺野の手からすっぽ抜けたラケットが、吉澤の顔面めがけ、
ガメラよろしく回転水平飛行していき、
「おうっ!」
とのけぞった吉澤は、それをかわし、背中から床に落ちる。
「危ねえな、おい! いまどきマトリックスみたいなことさせんなよ!」
「すみません。悪気はなかったんですけど、殺意はありました」
「マジで?」
「冗談です」
とか。
- 48 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:36
- で、いつのまにやらカウントは20−19。
あと1ポイントで吉澤の勝利。
ついさっきやり方を覚えた紺野と好勝負している吉澤ってどうなの?
と思うところだが、吉澤はべつに卓球の名手ではない。とくに卓球好きでもない。
というか、紺野の上達ぶりが異常で――
「いくぞ、紺野ぉ!」
吉澤はサーブの体勢。
「いつでも」
それらしくラケットを前に構えて待ち受ける紺野。
カコンッ!
吉澤のストレートサーブを、紺野は素直に打ち返す。
「速攻!」
台にかぶさるような体勢で、ヨシザワスペシャルモーレツスマッシュ!
紺野はあっさりカットで返す。
「やるな、スマイル!」
「紺野です」
- 49 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:37
- 試合途中から繰り返されるようになった長いラリーの果て、
紺野のカットボールが左に大きく流れていく。
アウト寸前で吉澤側のコートを跳ねる球。
「うぉらー! 反応、反射、音速、光速!」
吉澤がけんめいに拾い上げた球は山なりを描いて返され、紺野にとって絶好のチャンスボールに。
「しまったぁ!」
と床に倒れこみながら叫ぶ吉澤。
エコーとスローモーション。
「もらいました」
とテイクバックをとる紺野。
そして――
スカッ!
実はここまでほとんどスマッシュを打っていなかった紺野は、おもいっきり空振った。
打ち返すポイント、力加減などを計算しすぎた。りきみすぎた。頭で考えすぎた結果だ。
- 50 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:37
- ぽてんぽてん、と転がるピンポン球。
カランカラン、と卓球台に落ちるラケット。
台に両手をついて、がっくりとうなだれる紺野。
山田君(仮名)の唖然とした表情。
「そーれっ」という女子バレーボール部の声。
「イェイッ! 勝利」
床に横たわって、真顔でVサインをする吉澤。
- 51 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:37
- 「帰ります」
と紺野は顔を上げ、鞄を拾い上げ、そそくさと体育館をあとにした。
「おう。おととい来やがれ」
と吉澤は立ち上がり、ひらひらとラケットを振る。
なぜか、なんとなく気まずい山田君(仮名)。
吉澤は両手を腰にあてながら、ふーっと鼻から息を抜くと、満足そうに笑った。
「あー、おもしろかった」
- 52 名前:ぴんぐぽんぐうぉー 投稿日:2003/09/11(木) 22:38
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
(了)
- 53 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/12(金) 00:54
- あー、一々つっこみたい!でももったいないから止めとこー!
それでも反応、反射、音速、光速!のところはキタキタキタ━(゚∀゚)━!!と取り乱しました。
3人称なんだけど、独特の文体で1人称の語り口の様な暖かみと言うか人間臭さが好きです。
- 54 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/13(土) 23:35
- 杉原爽香も30歳になりました。俺も経たなぁ〜
>53
暖かいというか、人間くさいというか、いいかげんというか、
ふざけているというか、遊びまくっているというか。
とにかく、自由に好き勝手やらせてもらっています。
それを楽しいと感じていただけたら、望外の喜びであります。
それでは更新。4つめのお話。
高橋愛さん、まもなくお誕生日おめでとうございます。
- 55 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:37
-
泣くのはイヤだ、笑っちゃお
- 56 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:38
- 残暑厳しい、まだ秋らしくない秋。9月上旬。
「おひるや〜すみはうきうきウォッチン♪」
おやおや、今日の吉澤さんはいつにも増して上機嫌――かと思ったら大間違い。
これがいつもの彼女のテンション。ようするに、アホなんです。
昼休み。
彼女とはまったく縁のなさそうな図書室に乗りこんできた吉澤ひとみ。
もちろんといっていいだろう、普段、吉澤は本など読まない。表紙すら見ない。
しかし、今は『読書の秋』。
親友の後藤真希にそんなことを吹きこまれて、「それじゃあ、いっちょ本でも読んだるか」
と思ったのが、ついさっき。思いつき。直通。
- 57 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:38
- で――
「落語大全集みたいのない?」
「ありません」
残念ながら図書委員の女子生徒に一蹴された吉澤は、「ちぇーっ、つまんねーの」などと
ぶつぶつ言いながら、そう広くもない室内をうろうろ歩き回っていた。
と――
「お?」
部屋の隅、窓際に、一人で本を読みふけっている女子生徒を発見した吉澤は、
まっすぐな姿勢でスタスタとその女子生徒に歩み寄っていった。
「ヘイ、カノジョ、一人かい?」
吉澤はテーブルに肘をつき、『クイズ100人に聞きました』における
関口宏のような斜め立ち。
女子生徒は本から目を離し、吉澤を見上げた。
さる顔。大きな目。ポニーテール。
気のない視線。無表情。
「おおぅっ……!」
冷ややかな視線にひるむ吉澤。
ちっくしょう、負けねえぞぉ――と、なぜか勝ち負けの問題に。
- 58 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:39
- 「おすっ、オラ悟空! って寒い! それは寒い!」
吉澤はひとしきり震えるマネをしてから、パッとさる顔の女子生徒を見る。
ちなみに、女子生徒のさる顔を揶揄した発言ではない。天然100%。
で、無反応。
無表情のまま、吉澤を見上げる大きな目。
「うん。わかってた。こうなることはわかってた。しかしだ、あえてリスクを冒して
チャレンジするのが男ってもんじゃないか。なあ、ドラえもん。って、ドラえもん?
あれ? 野郎、どこ行った?」
静かな図書室に響き渡る吉澤の寒言。
あたしゃ男じゃないだろってさぁ――などと思っても、
そうそう見知らぬ他人からツッコミは返ってこないよ、吉澤さん。
第一にボケが悪いよ。意味不明だよ。危ない人みたいだよ。
- 59 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:40
- 「ふぅー。場所が悪いな。あたしにとっちゃ、ここはアウェイだ。負けを認めてやる」
そして、吉澤はテーブルに両手をついて、無表情な女子生徒を見下ろした。
「あたし、吉澤ひとみ。三年。――あんた、名前は?」
あきらめて普通の自己紹介と質問。
もっともその前に、普通じゃない自己紹介がなされているわけだが。
- 60 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:41
- 吉澤の自己紹介を受けた女子生徒は、無表情だった顔を不意にこわばらせ、
わずかに目を泳がせた。
「あれ? どしたん?」
緊張?――
「ああ……。あんた、たぶん一年か二年だよね? あんま見たことないからさ。
あたし三年だけどさ、べつにそういうの気にしなくていいから」
と、吉澤は笑いかける。
女子生徒は目をそらし、うつむく。
やっぱ、なんか怖がってる? あたしって怖い人だっけ? うわさの不良ガール?――
- 61 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:41
- 「おうおう、早く答えてくんないと、お姉さん怒っちゃうYO!」
なぜか『ここぞ』とばかりに、ふざけた調子で脅しをかける吉澤。
すると、
「……です」
消え入りそうな小さな声が返ってきた。
「なに? デス? 魔法?――さてはあたしを殺す気か!」
ヤァーッと吉澤はダチョウ倶楽部のマネ。両手を前に。
と、女子生徒はびくんと肩をふるわせ、
「あの、た、高橋……です……」
改めて、やはり小さな声で名乗った。
- 62 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:42
- 「ほほう、高橋さんね。で、下の名前は?」
「愛です」
「おっ、アイちゃんか。あたしと仲いい後輩にもアイってのが一人いるんだよ」
「めずらしい名前じゃ……ないですから」
「まあね。高橋に愛だもんね。チョーフツーって感じぃ。で、何年生?」
「二年です」
「おしっ。推理あたり! 冴えてるね、あたし。で、部活とかなんかやってる?」
「え……。あの、今は……」
ちょっと変化したイントネーション。
「おっ? 今、『今』って言うトコ、なまった?」
と吉澤が笑った瞬間、高橋は顔を真っ赤にしながら、パンッと音をたてて本を閉じた。
そして、あわてた様子で席を立ち、机から離れ、足早に去っていき――
途中で一度振り返って吉澤に一礼してから、逃げるように図書室から出ていってしまった。
「あ……。おーい、高橋さんやーい」
高橋愛、まもなく17歳、高校二年生。
福井県からの転入生。お国訛り、あり。
二学期前まで合唱部。友達、なし。
- 63 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:43
- さて、そんなこんなである日のお話――
午後の授業をさぼって屋上へ行こうとしていた吉澤は、三階にたどりついたところで、
「お?」
がらんとした廊下の向こう、女子トイレの前に立つ女子生徒の姿を認めた。
なんとなく記憶にある容姿。
先日、図書室で強引に出会った高橋愛とかいう二年生だ。
「ん?」
様子がおかしい。
うつむいていた。
下ろした手には拳が握られていた。
泣いてる?
- 64 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:44
- 吉澤は競歩選手のように腕を振ってずんずんと廊下を渡り、高橋のもとへ。
吉澤が近づいていくと、その足音を聴いたのだろう高橋は、びくりとして顔を上げた。
二人の目が合う。
リノリウムの廊下がキュッと音をたてる。
吉澤の足が止まる。その目の前――
充血した赤い目。
涙を流していたのかどうかはわからない。
高橋は、頭の上から足の下まで、全身ずぶ濡れで。
再び、彼女は目を伏せた。
吉澤は眉根を寄せ、下唇を突き上がらせ、とてつもなく不機嫌そうな容貌になった。
- 65 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:45
- 「あんた、高橋さんっていったよね?」
高橋は何も答えない。
「誰にやられたん?」
高橋は何も答えない。
「いじめられてんの?」
高橋は何も答えない。
「あんたのクラス、どこ?」
高橋は何も答えない。
吉澤は「ふむ」と顎に手をやり、斜め上の虚空を見る。
数秒後、
何やら思いついたらしい吉澤は、立ち尽くす高橋の脇をすり抜けて、女子トイレの中へ。
しばらくして聴こえはじめた水音に高橋は振り返り、そっとトイレのドアを開け、中を覗きこんだ。
手洗い場の流しに置いたバケツに、全開にした水道水を注ぎ入れている吉澤の横顔が見えた。
- 66 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:45
- 高橋は、この後に起こるだろうイヤな予感に顔をこわばらせ、目を丸め、
「あ……、や……、やめてください!」
と、悲痛な声をあげながら、一歩足を踏み出した。
しかし、それ以上近づいて止めるようなことはできない。
「ん? ふふーん。やめなーい」
これからピクニックにでもでかけるような、楽しげな笑い顔。
吉澤は、なみなみと水を注ぎ入れたバケツの把手を掴んで流しから引きずり出し、
ドンッとタイル床にバケツを下ろした。ちゃぷんと跳ねる水。
「ふ〜。おっも〜」
と、吉澤はわずかにしびれる両手を振り、指を組み、腕を前に伸ばす。
高橋は声もなく、ただ歯を噛み合せていた。不安に揺れる瞳。
- 67 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:45
- 吉澤は「よいしょーっ」とバケツを抱えこむようにして持ち上げると、
高橋をチラリと一瞥し、ニヤリと笑う。
そして――
ライオンキングのシンバさながら、重いバケツを両手で高くかかげたかと思うと、
いきなりそいつを頭上で引っ繰り返し、バシャンッと勢いよく盛大に水をかぶった。
吉澤の全身がずぶ濡れになったのは、あたりまえの話。
透明な糸を引いて流れ落ちる水。
ぽたぽたと垂れる水滴。
高橋は丸くしていた目をさらに見開かせ、ぐっと顎を引き、唇をキュッと結んだ。
- 68 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:46
- 「うひょー。冷てぇー」
と、吉澤はバケツを放り投げる。
ガランガラン……ゴンッ……ガラン……
吉澤は顔をぬぐい、髪をかきあげ、両手の水を切り、
「なあ、高橋さん」
まっすぐに高橋の目を見た。
笑っていた。
「屋上行って、服乾かそうぜ」
すると、高橋は唇をふるわせ、両手で顔をおおい、しゃがみこみ――
- 69 名前:Great Escape. 投稿日:2003/09/13(土) 23:46
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
(了)
- 70 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/14(日) 18:57
- あちーぜ、ちきしょぉー。
よっさん男前すぎ。
よっさんの弱い所を見るのが既に恐くなっている自分がいる・・。
- 71 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/17(水) 23:04
- >70
お? それは弱い吉澤を見たいというリクですか? うふふ(悪笑)
まあ、たぶん、ここの吉澤さんはそれほどバラエティに富んだ精神面を見せては
くれないんじゃないかと……
っていうか、「よっさん」かよ!
それでは、小川麻琴さん、一ヶ月以上早いけど、お誕生日おめでとうございます。
- 72 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:05
- 10月29日水曜日。
小川麻琴、高校一年生、16歳の誕生日。
誕生日だからといって何も特別なことはない普通の一日だった。
そう、2時間目の授業終了後の休み時間までは――って、すぐじゃねえかよ!
- 73 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:06
- 「あはははー」
とアホの子みたいに口を開けて笑う小川麻琴さんは、自分の席についたまま、後ろを向き、
親友兼クラスメイトの紺野あさ美さんと教室にて談笑中。
そんな二人に近づく不穏な影がひとつ。
吉澤ひとみ。
半笑い。
小川の席まで歩み寄ってきた吉澤。
それに気づいた紺野が見上げた半笑いの吉澤の左手には、
「?」
二等辺三角形に切り取られたパイのような形のケーキがのった陶器の皿。――さら?
- 74 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:06
- 「ん? どしたの? あさ美ちゃん」
と小川は紺野に向かって顔を突き出し、その視線を追って振り返ってみた。
目の前に、チェックの制服スカートと紺色のブレザー。誰かの腰。
見上げる。
口が開く。
そして、吉澤のニヤけた顔に気づいたところで、
「あっ。吉澤さーん」
と笑顔になりかけた瞬間――
「小川、くち開いてる」
吉澤の右手に顎の下を叩き上げられ、カツンッと歯を鳴らした。
- 75 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:06
- 「あががっ! ちょっと、吉澤さん、何すんですかー。いきなりー」
「言ったろ。くち開いてるって」
吉澤が小川の顎を叩いて口を閉じさせるのはいつものことで、挨拶代わりのようなものだ。
「吉澤さん、それ何ですか?」
と紺野が注視するのは、吉澤の目ではなく、左手の皿。
「見りゃわかんじゃん。ケーキだよ、ケーキ。――おい、小川」
「は、はい」
「ハッピーバースデー。誕生日おめでとう。はい、ケーキ」
呆気にとられている小川の眼前に、ずいと差し出されたケーキ&ソーサー。
「え、あの……」
「おまえ、かぼちゃ好きじゃん。だから、かぼちゃケーキをプレゼントフォーユー」
「あ……、ありがとうございます……」
わけもわからず押しつけられ流されるまま、小川はおずおずと両手で皿を受け取った。
浅く頭まで下げて。
- 76 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:07
- 「で、あの……」
「さあ、食え」
「へ?」
「へ? じゃないって。だから食えって」
「えっ。今ですか?」
「うん。今ここで。ただちに。すみやかに。あでやかに」
「あでやかに……ですか?――あの、いいですけど……フォークは?」
「ふぉーくぅ? そんなもん何に使うんだよ? おっ。さては、おまえ、あたしを刺す気か?
恩を仇で返すとはまさにこのことだな。ひどいやつだな、小川は」
「刺しませんって! なんでそんなことしなきゃいけないんですか!」
「まこっちゃん。吉澤さんの言うこと、いちいち真に受けてたら身がもたないよ」
と、紺野が目を閉じながら、小川の背中をぽふぽふ叩く。
「ほら、早く食えって。ナマモノだぞ。腐るぞ」
「…………。わかりました。いただきます」
と、小川はあきらめ、覚悟を決め、陶器の皿のうえに無雑作にむき出しに置かれている
かぼちゃケーキを手づかみし、とても納得いかなさそうな不服の表情を浮かべながら、
大大大好きなはずのかぼちゃケーキを口に運び、もしゃもしゃと咀嚼しはじめた。
- 77 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:07
- 「あっ。おいしい……」
曇りのちちょっと晴れ。
イヤイヤ食べさせられることになったケーキの美味に、小川は目を丸くする。
「だろ?」
ふふん、と得意気な吉澤。
「あの、これ、もしかして吉澤さんの手づくりですか?」
「あ? んなわけねーだろ。なんであたしがケーキなんてつくんなきゃなんねーんだよ。
買ってきたんだよ。アホか。おまえはアホなのか?」
再び、曇り。
小川はうつむき、おいしいケーキを悲しそうに食べる。
「吉澤さん、私の分はないんですか?」と紺野。
「紺野、誕生日じゃねーじゃん」
「ケチですね」
「ケチじゃない。正義だ。ジャスティスだ」
- 78 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:08
- やがて、途中でのどが詰まりそうになりながらもケーキを完食した小川を見て
満足そうに肯いた吉澤は、ケーキをのせてきた皿を手にして、かかげ、
「じゃっ!」と教室から去っていった。
「なんか、吉澤さんらしい誕生日プレゼントって感じだったね」
と笑う紺野。
「うん……。ちょっと水飲んでくる」
と席を立つ小川。
が、これで終わりだと思ったら大間違いなわけで――
- 79 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:08
- 3時間目終了後の休み時間。
小川のもとに、吉澤ひとみ再来。
半笑い。
左手に、かぼちゃケーキがのった皿。
「よ、吉澤さん?」
「小川、くち開いてる」
カツンッ!
「さあ、食え」
「はい……。いただきます……」
- 80 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:08
- 昼休み。
「なんか、お弁当たべる気しないよぉ」
紺野の机と向かい合わせにしてくっつけている自分の机に、ぐでーっと突っ伏す小川さん。
「じゃあ、ちょうだい。まこっちゃんのお弁当」
英語的な文法で、すかさず紺野が応じる。
「うん。いいよ。あげる。おいしく召し上がって……」
「ありがとー」
親友の不幸を尻目に、紺野は目を輝かせながらパチパチと小さく拍手。
そこへ――
左手にかぼちゃケーキがのった皿、右手にコーヒー牛乳のパック、
口にパンの袋を2つくわえて、吉澤ひとみが登場してきた。
「ひぃっ!」
小川は、悪魔と出会ったかのような驚愕の表情に。
- 81 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:09
- 「いやいや、お待たせ」
吉澤は口にくわえていたパンを二人の机の上にボトボトと落とし、
「あれ? 小川、昼飯は?」
「あ……、ちょっと食欲がないんで、ごらんの通り、あさ美ちゃんに……」
勇気を振り絞り、遠まわしにケーキ攻撃をかわそうとしてみる小川。
「あげませんよ」
と、睨むように吉澤を見上げる紺野。
「ふ〜ん。まあ、いいけどさ。――じゃあ、はい、ケーキ」
充分に予想通り、腹芸は通じない。
「はあ……」
べつに、もう食べられないというほど、おなかいっぱいなわけではないのだけれども。
「あっ!」
いきなり声をあげ、吉澤はコーヒー牛乳のパックをドンッと机に置いた。
「ど、どうしたんですか?」
「小川、くち開いてる」
カツンッ!
「あがっ!」
「いや〜、わるいわるい。忘れてた」
「忘れたままでいいですぅ……」
- 82 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:09
- で、5時間目終了後の休み時間。
ここで逃げようものならどんな仕打ちが待っているのか想像することさえ恐ろしい。
ということで、小川はおとなしく吉澤の来襲に備えていた。しっかりと口を閉じて。
「ハア〜イ! まこっちゃ〜ん」
アメリカンなウエイトレスよろしく、左手の指先に皿をかかげ持ちながら、
腰をくねらせて教室をねり歩いてくる吉澤。
「お? おまえ、なんで口閉じてんだよ」
「だって――」
カツンッ!
- 83 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:10
- 6時間目終了後、ホームルーム前。
胸焼けにうんざりしながらも、これで最後と気合を入れて、吉澤を待ち構える。
戦士の眼だ。頑張れ、小川。
しかし、いつまでたっても吉澤は現れず、そのままホームルームへ。
打ち止め?
- 84 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:10
- ホームルーム終了後。
本日、体調不良を理由にチアリーディング部の活動を休むことに決めた小川は、
紺野と一緒に教室を出たところで、
「よっ!」
出入り口脇の壁に背中をあずけながら腕を組んで立っている吉澤と接近遭遇した。
思わずあげそうになった悲鳴を呑みこむ。
「ま、ま、ま、まだ何かあるんですか?」
「小川、どもり過ぎ」
腕を組んでいる吉澤の手に、恐怖の皿は見えない。
「いやー、ホントはさっきもケーキ持ってくつもりだったんだけどさ、計算間違えて」
「計算?」
ものすごく単純な計算のような気がするが。
「で、コンビニ行って、これ買ってきた」
と、組んでいた腕をほどいた吉澤の手に握られていたのは、
「はい、かぼちゃプリン」
- 85 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:10
- そこでなぜか少しホッとしてしまった小川は、すぐに「いやいや、間違ってるぞ、自分」と
思い直す。
「意外と重いんですよね、それ……」
「へー、そうなんだ。――ほら、食え」
「はい、いただきます……。あの、スプーン……ありますよね?」
「あたりまえだろ。アホか、おまえ。だったらどうやってプリン食うんだよ」
「はい……。そうですよね。あたりまえですよね。ふふっ、いいんです……」
まこ、泣かないモン。
そして、教室前の廊下で、立ったまま、かぼちゃプリンを食べさせられる小川。
どこからどう見ても罰ゲームだ。
『今日は私の誕生日だよね。うれしい日だよね。そうだよね、お母さん』
- 86 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:11
- 「小川」
「はい?」
「おまえ、おもしろいな」
「えっ? なんでですか?」
他人がおもしろがるようなことをした憶えはない。
まったくない。心外だ。
吉澤はニヤけた微笑を浮かべたまま、小川の「なぜ」には答えない。
「なあ、小川」
「はい?」
「くち開いてる」
カツンッ!
- 87 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:11
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
- 88 名前:仲良きことは? 投稿日:2003/09/17(水) 23:12
- 「今日は麻琴の好きなかぼちゃケーキ買ってきたわよー」
お母さん、ごめんなさい。しばらく、かぼちゃは……
(了)
- 89 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/18(木) 17:30
- 吉澤さんの人に対する愛の深さには感服仕りました。
あれ?これ愛じゃないの?ジャスティスじゃないの?
はー。いいなー。こんなよっちーをウチの学校に一匹欲しいです。
なんか毎日が嫌でも楽しそうだ。でもウザいんだろうなー。でも居なくなると寂しいんだろうな。
あ、でもやっぱウザそう。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 17:01
- おもしれー。ここの吉澤は妙に味があってイイですね。
高橋さんの回は感動しますた…その後のマコには、容赦なく笑ったが(w
- 91 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/23(火) 23:42
- Σレスが2倍に!
>89
ウザイでしょうね(w
こんなやつ、ウザくないわけがない。
でも、まあ、学校に一人くらいいてもいいかもしれません。
つきあい方は考えさせていただくとして。
っていうか、「よっちー」かよ!
>90
レスありがとうございます。
全国のお茶の間に笑いと感動を届けるために日夜走り続けますよ、
って誰かが言ってた。
それでは、6つめのお話。ちょっと長くなってしまいましたが。
- 92 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:43
- 戦えど闘えど 我が人生明かるからず じっと足元を視る
それでも
- 93 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:44
- 季節は一気にとんで、冬の終わり。三学期。
「吉澤、おまえ、このままじゃ卒業できないぞ。英語の出席数足りなさすぎて」
「What? マジすか?」
ということで、吉澤ひとみさんは一日に同じ授業が二回あるような変則時間割りを
生み出す原因となり、さらに本人は特別補習の毎日ですよ。ええ。
英語に限らず、テストは赤点だらけですから。
吉澤を卒業させようとする諸先生方もたいへんです。てんてこまいです。
ま、それはそれとして――
- 94 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:44
- 2月12日木曜日。決戦前夜。というか、夕方。
「どう?」
お隣さんで二年下の後輩である加護亜依の自宅のキッチンにて、
吉澤は椅子に腰かけてむぐむぐと口を動かしていた。
「うん。甘い」
「そんなのわかってるよぉ」
と甘い感じの声で抗議する加護亜依。
背が小さくてちょっとぽっちゃりめな巨乳娘さん。
つい先日、16歳になったばかりの高校一年生。
愛称は『あいぼん』。
「なんでさ? もし焦げてたら甘くないだろ」
「そりゃそうだけどぉ」
「だいじょうぶ。うまいよ。たぶん」
「たぶんって」
「あたしの味覚にお伺いをたてようとしたあいぼんの間違い」
「そんなぁ」
「しゃーねーじゃん。あたし、あんまり甘いモンとか食わないし」
- 95 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:44
- 加護の手づくりチョコの毒見をさせられている吉澤は、
市販のチョコレートを溶かして型に流して冷やすだけ、
そんな作業を手づくりと呼んでいいものだろうか、などと疑問には思うが、
いっしょうけんめいな様子の加護の後ろ姿を見ていた身として、そんなことは言えない。
なぜだか、吉澤は加護に弱いのだ。
「はぁ〜。だいじょうぶかなぁ」
と言いながら、加護もチョコのかけらをひとつまみ。
「だいじょうぶだって。知らないけど」
「よっすぃ〜」
「問題は味じゃねーよ、って!」
吉澤は立ち上がり、
「料理は心って、どっかのおっさんも言ってただろ」
「でもぉ」
「ちゃんと心こめたんだろ?」
「うん……」
「だったらオッケー。ま、心こめただけでうまくなるんなら苦労しないけどな」
「よっすぃ〜!」
- 96 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:44
- 2月13日金曜日。決戦当日。
明日は第二土曜日で学校はお休みになるので、今日がチョコレート配給の日。勝負の日。
「おはよー」
と、いつものように加護が迎えに来てから、吉澤はのそのそと登校支度をはじめる。
3年生は登校日ではないのだが、吉澤は制服を着て学校へ。本日も特別補習。英語地獄。
「おあよ、あいぼん。今日も乳でかいな」
「いきなりそれかよっ」
- 97 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:45
- 雪融け水に濡れるアスファルトの路面をぴしゃぴしゃと走る自転車のペダルをこぎながら、
吉澤はあくびを連発する。
「ふわぉわぉ。う〜、やっぱまださぶいな。さすが2月。やるな」
「っていうか、よっすぃパンスト穿いてないからじゃないの?」
吉澤さん、冬の生足サービスデー。お世辞にも細い足とはいえませんが。
「あー。めんどくさかったから」
「男だね」
「まあね」
そんな、どうでもいい、だらだらとした会話を続けながら、今日も今日とて校門をくぐり、
二人はそれぞれの教室へ。というか、吉澤は職員室経由で生活指導室へ。
「あ〜。だりぃ〜」
積もり積もらせた自分の責任です。
- 98 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:45
- 決戦の昼休み。
吉澤の本日の特別補習は「あがり」になり、とるものもとりあえず加護の教室へと向かう。
今日は休み時間になるたびに同じ行動を繰り返していた。
加護の教室と生活指導室の往復。息をはずませるほどのダッシュで。
さっ、とドアの陰から教室を覗きこみ、トモダチと一緒にお弁当を食べている加護を
発見した吉澤は、「こっち見ろ〜。こっち見ろ、こら〜」と念を送る。
それが通じたものか、加護はふと教室の出入り口に目を向けた。
「あっ。よっすぃ」
そして、吉澤の手招きに吸い寄せられていく。
- 99 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:45
- 「もうチョコ渡した?」
「まだ……」
と、ひそひそ話。
「よしっ!」
吉澤は小さくガッツポーズ。
「え? なに?」
「いや、なんでもない。お姉さんは野次馬なんかじゃないよ。ぜんぜん」
「?」
- 100 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:45
- 「やっぱチョコ渡すなら昼休みだよな。放課後なんて邪道だよな」
補習から解放された今となっては、これ以上待つのが面倒なだけだったりするのだが。
「うん。でもぉ」
「いいから早く渡しちゃえよ〜。メシ食ったあとでいいからさ〜」
悪魔のささやき。
義理チョコではない、可愛らしいラッピングまで施した手づくりハート型チョコだ。
手紙を書いたりもしたけれど、結局はそれを付けるのはやめた。
揺れる乙女心。
「わかったぁ」
「おう。がんばれ!」
- 101 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:46
- 加護がチョコを渡す相手は、もちろん、女性でもなければ犬や猫でもない。
教室違いの男子生徒。
一年生全体の中でも1、2を争うハンサムボーイの奈良君(仮名)だ。
だけど、カノジョはいないという噂。
席に戻り、緊張がありありと浮かぶ表情でお弁当に向かう加護。
こういうときは、ご飯も喉を通らない状態になってもよさそうなものだが、
加護はしっかり食べてエネルギー補給。恋にはたくさんのエネルギーが必要です。
そして、いよいよ――
「どこ? 誰?」
奈良君(仮名)の教室前まで来た加護は、耳打ちする吉澤を脇に従えながら、
ドアの陰から教室内をきょろきょろと見回していた。
- 102 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:46
- 「いなぁい」
「なんだよ。どこ行ってんだよ。ったくよー」
「たぶん、体育館だと思う」
「よっしゃ。行くぞ」
と、吉澤は加護の手を引いて走り出す。
「あっ、ちょっと待ってぇ」
心の再準備が。
「なんで、よっすぃがそんなにはりきってるのぉ」
「いいから、いいから〜」
おもしろいから、とは言えない。
あくまでも、吉澤は加護の心の応援団なのだ。
- 103 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:47
- で――
「どうよ?」
「いた……」
またもや出入り口の陰に身を潜めて、体育館の中を覗き見る二人。
3on3バスケットボールをやっている数人の一年生男子生徒。
その中に、一際背が高くてハンサムで栗色の髪をしたモデルっぽい男がいる。
スリーポイントシュートを狙って、はずして、「あーっ!」とか言っている。
おそるおそる加護が指をさす先。
吉澤が「あいぼんも意外とミーハーさんだねー」とぼそりと言うと、
加護は一瞬にして顔を真っ赤に染めた。
- 104 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:48
- 「よしっ。そんじゃあ、突撃しますか」
と身を乗り出しかけた吉澤を、
「ちょっと、何すんのよ、ばかぁ」
加護は必死に押し戻す。
「何って、突撃お昼のバレンタイン」
「人いっぱいいるじゃない」
「いっぱいって、8人しかいないだろ」
「いいから、よっすぃは黙ってて。何もしないで」
「んだよ。つまん――いやいや、なんでもない」
そして二人は、塹壕から敵の様子をうかがう兵士のように、ビルの窓から大統領を見下ろす
スナイパーのように、草葉の陰から孫を見守るおじいさんのように、じっと息を潜め、
じりじりとした時間を過ごす。
やがて、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り――
- 105 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:48
- 「よっすぃ、下がって!」
と、加護は壁伝いにダッシュして、階段とは反対方向の廊下に隠れた。
「お? なんでよ?」
言いながら、吉澤も加護を追って、その隣に。
ふぅー、と加護は長く息を吐く。深呼吸を繰り返す。
吉澤は加護の背後に回りこんで、壁にもたれてしゃがみこむ。にやにやと笑っている。
体育館のほうから、がやがやと声が聴こえてきた。足音が聴こえてきた。
ブレザーの制服姿の男子生徒が、一人過ぎ、二人過ぎ、階段のほうへと向かう。
そこで、吉澤はゆらりと立ち上がり、
「おりゃ」
加護の背中を両手でドンッ!
「うきゃっ!」
不意打ちにふらついた加護は、壁の陰から飛び出て、そのまま前へ。
「おおっ! なんだ?」
という男子生徒の声。
ここまで隠れていた意味が、ほとんどなくなった瞬間。
吉澤は再びしゃがみこみ、にやりと笑った。
- 106 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:48
- 『よっすぃーっ!』
心の内で抗議の悲鳴をあげる加護。
目の前には、奈良君(仮名)を含めた驚き顔の男子生徒が6人。
固まる時間。
「あ……」
こうなった以上はもう仕方がない。
「あの……」
加護は死んだ気になって、顔を真っ赤にし、目を閉じ、うつむきながら、
「これ、奈良君(仮名)に……」
と、ピンク色のリボンにピンク色の包装紙という、男の子はちょっとひくかもしれない
ラッピングをほどこした平べったくて四角い箱を、両手にもって前へ差し出した。
「あ、ああ……」
と驚きをひきずってとまどった声を返す奈良君(仮名)。
「なんだよ、やっぱ奈良(仮名)かよ」
と言いながら散っていく他の男子生徒たち。
その場に残ったのは、加護と奈良君(仮名)とその友人ふたり。
- 107 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:49
- 「サンキュー。もらっとくわ」
というそっけない一言とともに、奈良君(仮名)は加護の手からチョコを受け取った。
瞬間、加護はうつむいたまま誰とも視線を合わせずに無言で走り出し、逃げるように
階段を上って行ってしまった。
呆気にとられっぱなしの男子三人。
吉澤は「うくくっ」と声を殺して笑う。
- 108 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:49
- 以下、カノジョのいない奈良君(仮名)とその友人たちの会話。
「あーあ、やっぱおまえかよ。くっそ」
と男子生徒A。
「あれ、誰?」
と奈良君(仮名)。
「え? 知らねえの? 加護じゃん」
「ふ〜ん。なんでおまえ知ってんの?」
「おぇっ? だって、カワイイじゃんか」
「そうか?」
「あれ? おまえ、加護みたいのダメなん?」
と男子生徒B。
「俺、ああいうデブいの好きくねえし」
「デブか? デブっていうほどじゃねえだろ。巨乳だよ、巨乳」
「だから、太いだけだろ」
「違うって、バカ、おまえ」
- 109 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:49
- 「ま、なんでもいいわ。興味ねえ」
「もったいねー」
「なんか、やられる気満々な空気出しまくってたじゃんかよー」
話の内容は下ネタに。
「だから、いらねって」
「なんでよ? 星一個増やせんじゃん。もったいなさすぎるって」
「星になるか? あれ」
「なるって。おまえ知らなくても、加護ってけっこう有名だって」
「あー、べつに、やってもやんなくてもどっちでもいいけどさ、あんま気ぃ進まねえ」
「うーわ、ぜいたく。殺してー」
「あいつ、処女くさかったし、面倒くさそうだし。ピンクだし」
と加護の手づくりハート型チョコ入りの箱をひらひらと振る奈良君(仮名)。
「えー。加護、処女じゃねーだろ」
「だから、べつに、どっちでも。面倒くさそうなのはカンベン。とにかく――
あれじゃ、遊べねえわ」
以上、特定のカノジョはいない奈良(仮名)とその友人たちの会話。
- 110 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:50
- 壁にもたれかかってしゃがみこみ、にやにや笑いが消えた無表情な真顔になっていた吉澤が、
立ち上がった。
そして、ブレザーのポケットに両手をつっこみながら歩き出し、体育館方面へ向かって
廊下を曲がり、愉快そうに談笑を続けながら教室へ戻りはじめた奈良(仮名)御一行と
対面して、立ち止まった。
男三人はチラリと吉澤を見やったが、かまわずそのまま通り過ぎる。
「ねえ」
吉澤は体育館のほうへ、正面を向いたまま口を開いた。
三人は首だけで吉澤を振り向く。
「あんたのもってる、それ、チョコ?」
吉澤も首だけで振り向いた。奈良(仮名)に向けられた冷たい眼。
「え? そうだけど。たぶんね」
寸前まで友人たちと談笑していたためか、笑みさえ浮かべそうな表情。
余裕のある顔つき。目つき。
- 111 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:51
- 「あんた、モテそうだね」
「なに? べつに、そうでもないけど」
「そのチョコくれない? あんた、いっぱい貰ってそうだからさ、一個ぐらいいいでしょ。
あたし、昼飯くってないんだ。腹減って」
「あ? べつにいいけど」
と、奈良(仮名)はピンク色のリボンが結ばれているピンク色の箱を軽く差し出す。
吉澤はポケットから両手を抜き、男三人のほうへ向き直し、まっすぐな姿勢ですたすたと歩き、
奈良(仮名)の目の前で立ち止まると、頭頂ほどの高さにある目を見上げながら、
「たすかるわ」
とピンクの箱を受け取った。
- 112 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:51
- そして、
「どうもありが――」
突然、吉澤はその場で跳び上がると、
スカートにふわりと空気を孕ませながら、
ジャンプのために膝を屈していた二本の白い足を伸ばし、
「とぉっ!」
ドロップキック!
- 113 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:51
- 「うごっ!」
胸板を貫かれて吹っ飛んだ奈良(仮名)は、宙を掻きながら廊下に転がり、
リノリウムの床に後頭部を打ちつけた。硬く鈍い音。
「なっ……」
あとに言葉を続けようにも、いきなりの凶行に固まる友人ふたり。
片足と片手で受け身を取り、着地した吉澤。
「よっ」と立ち上がって、ぱんぱんと両手を払う。
- 114 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:52
- 「つっ……。ッてえな! なんだ、おまえ、いきなり!」
奈良(仮名)が後頭部をおさえながら上半身を起き上がらせ、吠えた。
「あんたみたいのはいっぱいいるからさ、べつに――」
吉澤はそっぽを向きながら、
「いいとは言わないけど、まあ、いいよ。それは。キリないし」
五時間目の授業開始を知らせるチャイムが鳴った。
「ただ、あんたにとって不幸だったのは、あたしが目の前にいたってことだ」
「はあ?」
と奈良(仮名)は下品に顔を歪ませる。
「で、ただひとつだけ良かった点は、遊んでくれなくてありがとう。それ以外はダメ。赤点」
吉澤はそむけていた顔を戻し、奈良(仮名)を見下ろした。
- 115 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:52
- 「わけわかんねえこと言ってんなよ。なんだ、おまえ。頭おかしいんじゃねえのか?」
と立ち上がりかける奈良(仮名)。
その目の前に歩み寄った吉澤は、しゃがみこみ、視線を合わせ、
「あたし、かなり頭おかしいって、近所で評判なんだよ」
口元だけで笑った。射殺すような眼で。
奈良(仮名)は睨み返す。女に睨みつけられて竦むようなタマじゃない。
「なあ、ハンサム君。あんた、女なんだと思ってんだ? つーか、あんたにとって他人って何よ?」
「知るか、キチガイ」
奈良(仮名)は立ち上がる。吉澤は見上げる。
二人の視線は磁力を帯びているかのように離れない。
「おい」
男子生徒Aが「行こうぜ」というふうに顎をしゃくる。
それでもしばらく睨み合いは続いた。
やがて、奈良(仮名)は背を向け、舌打ちを一つ聴かせ、歩き出した。
- 116 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:52
- 「ハンサム君」
奈良(仮名)の後ろ姿に向かって、しゃがみこんだままの吉澤が声をかける。
「もしさ、今後、あんたが女泣かせた話とか聞いたらさ――殺すから」
階段を上りかけていた奈良(仮名)は立ち止まり、振り返った。再び睨み合いに。
「いや、マジで」
奈良(仮名)は、「かまうなって」と言う友人ふたりにうながされて、
吉澤を睨みつけたまま階段を上っていった。
そして、廊下に残る吉澤が一人。
「はぁー」
吉澤は深いため息をつき、ピンク色のリボンが結びつけられているピンク色の箱をかかげ、
見上げた。
この中に入っているのは、チョコだけじゃない。
心だ。
恋だ。
加護亜依の全身全霊だ。
ごめんな、あいぼん。あたし、余計なことしたかも――
- 117 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:53
- ◇
吉澤は、先生に頼んで図書室を開けてもらい、奈良(仮名)から奪い返した
加護の手づくりチョコを半分に割り、かじりながら、高橋愛から薦められていた
本を開いていた。
読んではいない。ぱらぱらとめくりながら、頭の中では違うことを考えていた。
加護の手づくりハート型チョコは、チョコの味がした。それだけ。ただ甘い。
そして、本日の放課直前。
いつのまにやら眠りに就いていた吉澤は、ハッと目を覚ますと同時に、
「あー、クソッ、悩む。なんであたしがこんな悩まなきゃなんねーんだよ」
と言いながら、口元のよだれをぬぐった。
よだれに濡れた本を見下ろし、誰もいない図書室内をきょろきょろと見回してから、
「南無三」
合掌のような形で、ぱたんとページを閉じる。
- 118 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:54
- 奈良(仮名)がどういう類の人間かということを、加護に言うべきか、言わざるべきか。
それが問題だ。
加護は本気で奈良(仮名)のことが好きらしい。混じりけ無しの純度100%だ。
加護があの野郎のどこを気に入り、なぜ好きになったのかがわからない。
あいつのことをどこまで知っているのかがわからない。
吉澤は、一年生内で、学内で、奈良(仮名)がどんな人間として語られているのかを知らない。
悪名が高いのか、表向きは爽やかな好少年なのか。
- 119 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:54
- たとえば、その二つの顔が並行して語られた場合、加護はどちらを信じ、選択しようとするのか。
悪名高くとも、なおかつあいつのことが好きなのだろうか。
それを嘘だと思ったり、「自分が彼を変えてやる」などと思ったり、
自分は他の女に負けていないからだいじょうぶだとか思ったりするのだろうか。
恋の話は柄じゃないし、誰が誰のことを好きで、誰と誰がつきあっているのか、
なんてことにも興味はない。
たまたま今回は、チョコの試食をさせられた流れからここまで付き合ってみただけで、
普段、加護の口からも、他の誰の口からも、恋の話なんて聞いたことがない。
第一に、誰もそんなことを吉澤に聞かせようとはしない。
- 120 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:54
- 「困った、困った、困ったぞー」
余計なこと。余計なこと。余計なこと。
奈良(仮名)は加護に興味がないようなことを言っていたし、
その毒手をのばしてくる可能性はないように思う。
しかし、万が一、あいつの目が加護に向いたらどうなるか?
もしも、何も知らない加護が、前後も見ずにあいつの腕に巻かれたら。
想像しただけで胸クソが悪くなる。
加護はどこまで知っている?
加護はなぜあいつのことが好きなんだ?
ただミーハー気分で、容姿だけで選んでいるのだとしたら。
あたし、あいぼんのことなんにも知らねーじゃん――
- 121 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:55
- 考えてもムダなことだ。
確認するのが一番早い。
でも、やはり、悩む。
加護が奈良(仮名)の本性を知らなかったとして――
知らないから幸せだってこともある。
世の中にはそんなものがたくさんある。
しかし、知らなければ自衛さえできない。そんな状況もある。
彼女に、どの現実を与えるべきか。
- 122 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:55
- 「クソッ」
たぶん、加護は奈良(仮名)の正体を知らない。
そうじゃなければ、あんなふうに真剣になったり、照れたりできないはずだ。
彼女は、無垢だ。
それが、吉澤の知っている加護亜依だ。
だから、吉澤が何を言おうと、何をしようと、何を選ぼうと、すべては加護を傷つける。
白い彼女を灰色に曇らせる。
吉澤が何もしなかったら?
いつものようにただへらへら笑っていたら?
そうすれば、とりあえず、今日、加護を傷つけることはない。
うまくいけば、死ぬまで彼女を傷つけることはない。
深刻に考えすぎかもしれない。
- 123 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:55
- 吉澤は立ち上がり、棚に本を戻す。
職員室へ行き、図書室の使用終了を告げる。
その足で正面玄関口へ向かう。
ずらりと並ぶ靴箱の群れを前にして、壁にもたれかかり、廊下に座りこむ。
しばらく虚空を見上げたのち、顔を伏せる。
ひとつ、深く、ため息をついた。
やがて――
今日一日の学校生活を終えた大勢の生徒たちが正面玄関に流れてきて、
それぞれがそれぞれの帰路につく。
吉澤は顔を上げ、廊下の先に目を向けた。
しばらく待つ。
そして、友人たちと笑いながら歩いてくる加護の丸っこい姿をみつけた。
- 124 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:56
- 加護が気づく。
「あっ、よっすぃ! まだいたんだ!」
愛らしい笑顔になる。
「補習終わったんだからさっさと帰れよっ!」
吉澤は立ち上がり、
「よっ!」
右手を上げた。
- 125 名前:戦闘バレンタインデイ 投稿日:2003/09/23(火) 23:56
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
(了)
- 126 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/24(水) 19:23
- そーか、あいぼんさんも恋をするお年頃か。
吉澤さんのやったことは正解かどうかわかんないけど、
僕がガッツポーズを取ったのは事実。色んな意味において。
ひとみんも人間だもんね。悩んで大きくなっていくんだね。縦にも横にも。
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 19:54
- あいぼーん・゚・(ノД`)・゚・
中学生日記のようなお話の雰囲気、好きです。
- 128 名前:リエット 投稿日:2003/09/27(土) 23:32
- ものすごく面白いです!
特に高橋さんと小川さんの回が好きでした。
でも、今回のも考えさせられる…。
全員登場するんでしょうか。
更新楽しみにしています。
- 129 名前:ゆとり 投稿日:2003/09/28(日) 00:45
- 川o・д・)¶<マルガリさんですかぁ〜?
が、めっちゃ可愛かったのに……
>126
秤。!
いやいや、なんのことやらさっぱりわかりません。
上の話は、いろいろと不安やら「どうなんだろう?」やらがあったのですが、
ガッツポーズを頂戴できのは嬉しい限りであります。
っていうか、「ひ(ry
>127
惜しい。中学生日記ではありません。NHKドラマ愛の詩です。(何が惜しいのか)
「六番目の小夜子」「浪花少年探偵団」大好きでした。
というか、このスレは、小説やドラマというより「文字漫画」ですが。
>128
レスありがとうがとうございます。
お褒めにあずかりまして光栄の至り。
全員登場かとのことですが、お話は、現役高校生年齢メンバー+後藤ということで、
申し訳ないですが――(以下へ)
予告もなく、いきなり最終回です。
べつにオソロが終わったから終わるわけではありません。念のため。
- 130 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:46
- 地球最後の日まで、あと、50億年くらいらしい。
たとえ地球上から生命という生命が消えて失くなっても、地球は死なない。
海が消えても、核が冷えても、地球は存在し続ける。たぶん。
他の惑星と同じような冷たい物質の塊になっても、宇宙の中にふわふわと浮かび続ける。
で、太陽はあと50億年くらいで死ぬらしい。
そのとき、太陽はなんか知らないけどぶくぶく膨れ上がって、地球を含む周りのすべてを
巻きこんでいって、最後の最後には爆発してしまうらしい。
壮絶かつ迷惑な死に様だ。
だから、太陽の最期が、地球の最期になる。
もっとも、人類がそこまで生きられるわけがないと思うし、それよりも何よりも、
あたし自身がそれまで生きられるわけがないんだから、まあ、どうでもいいっちゃあ
どうでもいいことなんだけど。
あっ、100年後の未来のために緑を増やそうってのはいいことだと思うよ。単純に。
- 131 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:46
- 3月2日。
目が覚めたと思ったら、すでに昼前。
休みの日でもこんなに眠りこけるようなことはなかった。
べつに夜更かしをしたわけでもない。
気が抜けたのかな?
昨日、あたしは高校生を卒業した。
というより、卒業させられたって感じだけど。
そう、昨日は――
- 132 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:46
- 「あれ? よっすぃ卒業しちゃうの?」
なんて言ってきやがったのは辻希美。のの。
アホ全開の後輩。すっげーかわいいやつ。
「おう、しちゃうよ。バリバリ卒業するっちゅーねん」
と、ののの額にペシペシとチョップを連発してやると、
「ちぇー、つまんないの」
と、ののはあたしの足のすねをガシガシ蹴ってくる。
そのまましばらく無言でチョップとキックの打ち合い。
お互いにだんだん力が入ってきて、ムキになってきて――
- 133 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:47
- ののの目がギラリと光って、本気のローキックを打ってきそうになったから、
あたしは素早く回りこんでチョークスリーパーに移行した。すると、
「ギブギブギブッ!」
ののは某U戦士ばりの高速タップ。
あたしが首から腕を離してやると、瞬間、ののは反転して、膝を折らんばかりの
強烈なローキックを見舞ってきた。
そして、痛みにこらえてよく踏ん張ったあたしに向かって、
「アホー!」
と一声投げつけてから、どたどたと逃げ去った。
な? かわいいだろ。
- 134 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:48
- 「うえぇーん」
なんて泣いてたのは加護亜依。あいぼん。やっぱかわいいやつ。
正面玄関前で、だらだらと学校との別れを惜しんでいたあたしとごっちんに向かって
泣きながら突撃してきて、てっきりあたしの胸に飛びこんでくるかと思いきや、
「後藤さーん!」
ごっちんにタックルをかまして、すがりついた。
「あたしじゃねーのかよ!」
「だって、よっすぃ、お隣さんだし、いつでも会えるし、会いたくなくても会うし」
ぐすぐすと泣きながら言いやがる。
「あー、そうですね。そうでした。そうですよ」
- 135 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:48
- で、そんな中、
「吉澤さーん!」
と、教室の窓から手を振る小川麻琴と紺野あさ美。
「もう二度と学校に来ないでくださいねー」とか
「月のある夜ばかりだと思うなよ」とか
「リメンバーパールハーバー!」とか
「先生、バスケがしたいです」とか
言いたい放題。
ごめん。ほとんど嘘。
あいかわらずいいコンビだ。
このままずっと死ぬまで仲良かったらいいのに、と思う。
- 136 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:49
- 高橋愛とは卒業式の日には顔を合わさなかったけれど、前日に会って話しをした。
渡す物があったからだ。
それは、学校の屋上の鍵。
去年の卒業式前日――
あたしが高橋にそうしたように、あたしも先輩から屋上の鍵を渡された。
藤本美貴っていう、ちょっと斜に構えている感じの先輩。
どうやら「一子相伝」の鍵らしい。
いつから伝わっているのかは知らないけれど、先輩から後輩へ、一年ごとに。
藤本先輩とは、特別に仲が良かったわけじゃない。
だから、鍵を預ける相手の基準はわからないけれど、たぶん、藤本先輩とか
あたし自身とか、高橋とかを見て、考えてみるに、一匹狼っていうか、なんとなく、
周りから浮いている感じの人間が手にしているように思う。
- 137 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:49
- で、藤本先輩いわく、
「あたしの前のやつまではさ、なんか『天国への扉の鍵』とか、こざかしいこと
言ってたんだけど、べつにこんなもん、ただの『屋上の鍵』じゃんねえ」
あたしもそれに同意した。
屋上を天国よばわりする気持ちはわからないでもない。
学校という閉じた世界の中の、唯一みたいな、解放の場所。自由の世界。
だけど、やっぱり、そこはあくまでも学校の一部であって、
解放だの自由だのと言ってしまうのは違うように思う。
錯覚だ。
本物じゃない。
- 138 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:49
- 屋上は、天国じゃない。
そこは、学校の中に重く溜まったガスを抜くための場所。
空気を入れ換えるための窓。
そして、あたしは、閉じた世界の空気をかき乱す仕事人。
学校を完全に閉じた世界にしないために、あたしにできること――
そんなことを考えたり考えなかったりしないわけでもなかったりなんたらかんたら。
- 139 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:50
- なんて、ちょっとばかりカッコよさげ(?)なことを思ってたりもしてたけど、
まあ、実際のところ、自由に好き勝手にやってただけ。
まず、自分ありきなわけで。
屋上の鍵を預けられたからといって、責任感みたいのを背負ったわけじゃない。
特別だとも思わない。
そんな鍵、失くそうが捨てようがかまわないんだ。
高橋が鍵をどんなふうに使うのかは知らないけれど、彼女には、とりあえず、
自分自身のために使ってほしいと思う。
その鍵を使って行ける場所が、真実の自由や解放とはつながっていないとしても。
閉じた世界で心まで閉ざしてしまうと、窒息してしまうから。
高橋を見ていると、リカちゃん先輩のことを思い出すんだ。
- 140 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:50
- 思い出すなんていったら、まるで遠く離れてもう会えないみたいな感じだけど、
今でも、会おうと思えばいつでも会える場所に住んでいたりする。たまに会う。
リカちゃん先輩こと石川梨華先輩は、あたしのイッコ上で、
あたしが一年のときに退学した人。
あとで聞いたら、イジメられてやめたとかで。
そんなの、あたしはぜんぜん知らなくて。
大好きだったのに。
すげー仲良かったつもりなのに。
あたしは、何も知らなくて。
学校だけがすべてじゃないけど、もっと一緒に高校生をやっていたかった。
- 141 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:51
- 現在、リカちゃん先輩は花屋でアルバイトをしている。
彼女流に言えば「お花屋さん」。
見た目と違い、仕事は意外とキツイみたい。
手なんかけっこう荒れちゃって。
学校をやめて、新しい生き方をはじめて、「今どうなの?」とか思ったから、
「リカちゃん先輩、今、しあわせ?」
って訊いてみた。ある日、なんの気なしに。
すると、リカちゃん先輩は、困ったような、それでいてやさしげな笑みを浮かべて、
「どうかな?」
と答えた。
- 142 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:51
- 「しあわせっていうのはね、私、お月様に似てると思うの」
「はあ」
「満ちて消えての繰り返し。一度満たされても、それはずっとは続かなくて、
いつかは満たされたことも忘れちゃう。そして、また求めるの。いつまでも」
「はあ。そういうもんですか」
そして、彼女は今しあわせなのかどうかは、答えてくれなかった。
やさしげに微笑んだまま。
- 143 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:51
- 「私はね、今ちゃんと生きてるから。それで充分」
しあわせな人生にどれほどの価値があって、
しあわせじゃない人生が無価値なのかどうか。
しあわせは、求めるほどに遠くなりけり。
しあわせは、正体のないお化け。
今はそんなふうに思う。
しあわせなんて言葉は、世界から抹消されてしまえばいいんだ。
まあ、それはそれで、ちょっと困るかもしれないけれど。
- 144 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:52
- しあわせな自分という状態。
しあわせじゃない自分という状態。
それはどちらも変わらず自分自身だ。
正体のないお化けに取り憑かれて、自分自身を見失ってちゃしょうがない。
たとえ完全じゃなくても、ある程度、しっかりとした自分自身を確立すること。
リカちゃん先輩はオトナになった。
あたしもいつかはオトナになるんだろうけど、まだ、もう少し、時間がかかりそうだ。
オトナになることと喜びを失うことは同義ではないけれど、
オトナだからこその喜びなんかがたくさんたくさんあるんだろうけど、
あたしは、まだ、今が楽しい。
- 145 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:52
- ◇
居間に下りていくと、
「真希ちゃんから電話あったわよ」
というママンの一言。
ごっちんは、あたしが家にいるってわかっているときには、
ケータイじゃなくて自宅の電話にかけてくる。
あたしもそうしてる。
電話の中身は、卒業旅行についてだろう。
さっそく電話返しを敢行。
「いつまで寝てんの? 10分で来ないと縁切るから」
というお言葉に、
「ムリ」
とお返事して電話をきった。
- 146 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:53
- 卒業旅行のメンバーは、あたしとごっちんにプラスしてリカちゃん先輩という超内輪。
リカちゃん先輩には保護者的な役割を担っていただくといって誘い出した。
最初はぜんぜん乗り気じゃなくて、リカちゃん先輩は「私が行くのは違うんじゃない?」
みたいなことを言ってたんだけど、そこはそれ、あたしお得意の強引な力業で解決した。
「リカちゃん先輩が行かないなら、あたしも行かない」と困らせて。
そうすると、リカちゃん先輩の性格上、行かないわけにはいかないのだ。
高校を途中でやめてしまったリカちゃん先輩とも、一緒に「卒業」したかった。
藤本先輩流に言えば「こざかしい」んだけど、どうしても、そうしたくて。
迷惑は承知で、とことんあたしの勝手なんだけど。
でも、絶対に損はさせないつもり。
いい旅行だったって、三人が三人とも思えるようにするつもり。
もちろん、自信アリだ。根拠なんかないけど。
- 147 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:54
- 顔を洗ったり、朝食兼昼食をとったりと、たっぷり30分は使ったうえで、
ようやく、ごっちんの家へと向かうべく自宅を出た。
なんだか太陽の野郎がいつもよりまぶしく感じたのは、寝すぎたせいか。
空は青くて、雲は白くて、風は穏やかで、春で。
ひとつ大きく伸びをしてから、自転車にまたがり、ケータイからごっちんの自宅に
電話をかける。
「どちらさまですか? 吉澤なんて知り合いはいないんですけど」
無視して叫ぶ。
「ごっちん、今たすけにいくから待ってろ!」
- 148 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:54
- ◇
地球最期の日まで、あと、50億年くらいらしい。
永遠に思えるようなどんな物事にも、必ず終わりはやってくる。
楽しいことにも、悲しいことにも、必ず終わりはやってくる。
人間にも、地球にも、宇宙にも、あたしにも、必ず終わりはやってくる。
生まれ、始まった物事には、必ず終わりがやってくる。
いつまでもいつまでもずっとずっと続くことなんて、ない。
永遠なんて、ない。
でも、やっぱ、あたしにとっては50億年なんてのは無限と一緒で、
いつか必ず終わりはやってくるんだろうけど、今日も明日も、永遠みたいに続いていく。
終わるけど、終わらない。
終わらせたいことは終わらせて、終わらせたくないことは終わらせないように。
曖昧に。
そんな感じ。
あたしは、今、ここにいる。
自転車に乗って、アスファルトの道を走って。
走り続けて――
- 149 名前:今日も世界の中心で 投稿日:2003/09/28(日) 00:54
-
地球最後の日まで、あと――50億年くらい。
(完)
- 150 名前:. 投稿日:2003/09/28(日) 00:55
- 地球最後の日
< and , I am the Heart of the World. >
出演.: 吉澤ひとみ
辻希美
紺野あさ美
高橋愛
小川麻琴
加護亜依
石川梨華
藤本美貴
山田君(仮名)
奈良君(仮名)
その他
後藤真希 (友情出演)
- 151 名前:. 投稿日:2003/09/28(日) 00:56
- もくじ
『 屋上と地上とキャッチボール 』……>>5-14
『 海の色は空の色 』…………………>>20-30
『 ぴんぐぽんぐうぉー 』………………>>36-52
『 Great Escape. 』……………………>>55-69
『 仲良きことは? 』. …………………>>72-88
『 戦闘バレンタインデイ 』……………>>92-125
『 今日も世界の中心で 』 ……………>>130-149
- 152 名前:あとがき 投稿日:2003/09/28(日) 00:56
- 以上で第一部を終了いたしますが、第二部の予定は未定です。
なお、連載終了につきまして、各話の人気投票をおこないたいと思います。
ハガキを送ってくれた方全員に、オリジナルの特製『よっすぃ』ストラップを
差し上げますので、ふるってご参加ください。
……ごめん。ぜんぶ嘘。もちろん。
パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……
- 153 名前:. 投稿日:2003/09/28(日) 00:56
-
- 154 名前:. 投稿日:2003/09/28(日) 00:57
-
地球最後の日
- 155 名前:. 投稿日:2003/09/28(日) 00:57
-
- 156 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/28(日) 01:03
- なんかすごく鮮やかだったなぁ…。良かったです。
いつも楽しんで読んでました。脱稿、お疲れ様です。
- 157 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/28(日) 02:15
- やべぇー!!ここに来て小ネタの乱発!!
俺に一々つっこめと?断わる!!頼まれてもいないのにお断りだ!!
緩急の付け方がとても巧い作品だと思っていました。
暖かい話で逃げるだけで終わらず、ちゃんと真正面向いて言いたい事を盛り込んだ話だなーと。
勉強になりました。お疲れ様です。
地球最後の日までにもう一度くらい逢えたら嬉しいなー。
なまいき電話相談室も。
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 02:24
- 物語のスピード感が本当に心地よかったです。
吉澤さんはじめ登場人物が全力で走っている
でも何に向かっているのかは分からない
とりあえず闇雲に前に向かって疾走している
でも誰も走っていること、向かっている先に何があるのか
誰もが確信を持っている、誰も不安に思わない、
そんな強さと爽やかさを感じました。
こちらのお話を読んでいる時は高校生になった気分で
明日もがんばろうとパワーをもらいました。
自分的には2話目の『海の色は空の色』が一番印象深いです
なんか「やられたー!」って感じです(どんなかんじなんでしょう?
作者様の「第2部の予定は未定」という言葉も嘘という言葉を信じて(w
またどこかでこんな素敵なお話に出会えることを期待したいと思います。
完結お疲れ様でした
- 159 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 10:23
- 東京都牛込局区内私書箱159159号
『地球最後の日』放送局御中
■アンケート
Great Escape.
がいちばん好きです。
■ストラップの送り先はK郵便局留でお願いします。
- 160 名前:リエット 投稿日:2003/09/29(月) 02:17
- 終わっちゃった!
でも、幕の下ろし方がすごく鮮やかで、続いて欲しい反面、
ラストが見れてよかったなとも思いました。
更新の楽しみなスレが一個減ってしまうのはやはり残念だけど。
できれば、短編集以外でも、作者さんの話がまた読みたいです。
- 161 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/30(火) 13:03
- お前みたいなアフォ大好きだ
と皆に言いたい
が、一際ハイレベルなアフォを見せてくれた吉澤さん@『 ぴんぐぽんぐうぉー 』
に一票
- 162 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 12:33
- ブラヴォー、おぉ、ブラヴォー
素敵な詩を読んだ気分。雰囲気がいいですね、何となく
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 19:53
- なんか100m五秒台で走る追い剥ぎにあったみたいな、
もしくは後出しで負けたじゃんけんで問答無用にパシられたような、
そんな気分。(w
最後までアフォでかっけーよっさん&仲間たち、堪能させて貰いました。
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 23:21
- うぉ。
愉快なよっすいとなかまたち、良すぎ。
こういうやつ友達にほしいねぇ。
アフォ最高!
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 05:25
- ラブ。全部が。THANX>ゆとりさん
- 166 名前:ゆとり 投稿日:2003/10/03(金) 00:10
- 投票すんな!ヽ(`Д´)ノ
いくつかは乗ってもらえると思っていたし、とても嬉しいけれども。
>156
自分が楽しんで書いているものを、読んでいる人にも楽しいと思ってもらえるのは
とても嬉しいことです。
>157
えー、つっこんでくれないのー。まあ、まったく悲しくないですが(w
毎回のレスありがとうございました。あなたのことは、2、3日は忘れません!
>158
「どこまで走れる?」「ゴールまで」ゴールはどこだ? わからない。走れ。
読者にパワーを与えられる自分、すごい。えらい。天才。あ……痛い。視線が痛い。
ということで、丁寧な感想レスありがとうございました。
第2部は気長にお待ちください。50年くらい。あ……痛い。石投げないで。
>159
私書箱キター! えーと……困る!
>160
自分もまた短編集以外でお会いしたいと思いますが、なにぶん寡作なもので。
書きたい気持ちだけはあるんですけどね。だけは……
- 167 名前:ゆとり 投稿日:2003/10/03(金) 00:11
- >161
アホづくしのこのメニュー、お気に召していただけたようで、シェフも喜んでおります。
>162
スタンディングオベーション、キター!
雰囲気がお気に召していただけたようで、ムードメイカーも喜んでおります。
>163
どんな気分だよ! まったくわかりません(w
「ああ……」って感じ? わかりません。
>164
やたらに生命力のありそうなやつらを友人にしたら、かなり疲れるとは思いますが(w
まずは体力づくりからはじめましょう。並行して、精神も鍛えないと。
いや、こいつらにつきあっているうちに、否応なしにパワーアップするか?
>165
まさか新垣さんからレスをいただけるとは。こちらこそ、ありがとうございました。
ウィズ・ラブ ゆとり
みなさん、レスありがとうございました。感謝。感激。
っていうか、後半の「貴様」ら、アホアホ言い過ぎや! ブラヴォーもアフォに見えるわ。
- 168 名前:163 投稿日:2003/10/06(月) 16:18
- あー、惜しい。
一言で言うと「やられた!」って感じです。
次回作はあるのかな?と期待しつつ、
今はただブラヴォーブラヴォー。
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 21:13
- 二部待ち保全
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