金魚鉢

1 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 10:23
こんにちは、ヒトシズクです。
短編・中編などのんびりと書きたいと思います。
短編などが出来次第更新という形なので不規則更新になると思いますが絶対放置はしないので宜しくお願いします。
2 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 10:25
高橋さんお誕生日おめでとう、ということで短編1本目はたかこん。
3 名前:Densely 投稿日:2003/09/14(日) 10:30
探して、私を
何も見えない暗闇で
声は聞こえるのに触れられない不安を、もどかしさを感じながら
私が闇に溶け込んでしまう前に
探して、私を
触れて、私に

 
           『Densely』



「・・・あさ美?」
「愛ちゃん?・・・」
4 名前:Densely 投稿日:2003/09/14(日) 10:38
何も見えない暗闇で私たちはお互いの名前を呼び合う。
手を精一杯伸ばして、触れられない思いと独りぼっちの寂しさを味わいながら。
やっと手の先に感じたぬくもりを求めて、あさ美の手を思いっきり自分の胸元へと引っ張る
簡単に私の胸元へと転がり込んだあさ美を抱きしめて、私とあさ美はお互いの手を絡めて、もう二度と離れないようにと深い深い口付けをする。
「・・・探したよ」
あさ美のか細い声と共に淡い香りが私の心を満たしていく。
絡んだ私の右手をあさ美の左手はそのままで、私の首に巻きついたあさ美の右手と体温。
淡い香りがあさ美の香水の匂いだと分かって、私はやっとあさ美に抱きしめられてることを知る
そして空いている左手をあさ美の腰に回して、私もあさ美を抱きしめた。
「―――もう・・・離さないで」
暗闇のせいか、呟いた声は弱弱しく自分にも聞こえて少し苦笑した。
「離さないよ・・・絶対」
そう言って微笑んだあさ美の横顔がカーテンを閉めていない窓から差し込む光に照らされて、私も微笑み返す。
5 名前:Densely 投稿日:2003/09/14(日) 10:40


もう私を離さないで
あなたがいないと私は何も出来ないし、私もいなくなる。



探して、私を。


もっと触れて、私に。



―――私が不安にならないように・・・



                         end
6 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 10:44
【あとがきみたいなもの】

何となく短い短編を書きたかったので書いた作品(汗。
キャラ違うよ!という意見などは受け付けませんのであしからず。。
不安な高橋さんとちょっと強気な紺野さんを書いたつもり(笑。
テーマは『闇』と『不安』。
7 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 10:44
もう1本いっときますか?
8 名前:current 投稿日:2003/09/14(日) 10:56
夢を見た。
水辺であなたと2人
水面に映った月を見てた。
私が水面に映った月をすくうと、あなたが寂しそうな顔をして
手の隙間からこぼれていく月と共にあなたも私の目の前から消えていった。

残された私は、ただ一人ぽつんと立っていて、あなたが消える前私に見せたすがるような瞳を忘れられなくて、涙をこらえる―――

それが夢だと分かっているのに独りぼっちなような気がして、私は隣のあなたのぬくもりを手探りで探す。
カーテンの隙間からこぼれた青い光があなたを照らし出してくれる。
私があなたの手に触れると、あなたはゆっくりと目を覚まして私に優しい言葉で問い掛けるの。
「―――どうしたの?眠れない?」
小さい子供をあやすような甘ったるい言葉は嫌な程温かくて安心する。

青い光
あなたの白い肌
私とあなたの2つの黒い影
闇夜に浮かぶ三日月

「嫌な夢見ちゃって・・・」
私がそう言うと、あなたはそっか、と短く呟いて少し瞳を伏せて私に「おいでおいで」をする。
あなたの隣に滑り込んで私はあなたに子供みたいに問い掛ける
「ねぇ・・独りぼっちじゃないよね・・・?」
眠たげなあなたの黒い透明な瞳に私の言葉は吸い込まれて、周りは静かな雰囲気をさらけ出す
「一人じゃないよ・・・」
あなたはそう言って私の頭を抱えて抱きしめてくれる。
あなたの淡い匂いに包まれて不安はどこかに飛んでいって、変わりに睡魔が襲う。
9 名前:current 投稿日:2003/09/14(日) 10:58
もう、一人じゃないよ
その声が頭の中で響いて私はあなたと一緒に眠りに落ちる。

黒い服
コンクリートの地下室
青い空
伏せる瞳
溢れる水

―――あなたと2人っきり

                   
                        end
10 名前:current 投稿日:2003/09/14(日) 11:03
【あとがき】
これは『Do it!Now』を聞きながら書いたもの。
青い光、あなたの白い肌、2つの黒い影、闇夜に浮かぶ三日月、黒い服、コンクリートの地下室、青い空、伏せる瞳、溢れる水はPVを見ていて思いついたもの。
これらの単語を使って書いてたらこんなことに・・・(汗
最初はごまこんにしようと思ったのですが何となく高橋さんを書きたかったのでたかこんに(笑。
テーマは『水』と『Do it!NowのPV』ってことで。
11 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 11:37
いい感じですね。
紺野推しとしてはうれしいです。

次の話も楽しみにしています
12 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 17:52
>>11 名無し読者様
レス1番乗りありがとうございます☆
私は紺野・高橋・石川推しなんで高橋、紺野、石川が関わるお話が多くなると思います。
またのお越しをお待ちしています〜♪
13 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 19:12
読ませていただきましたー。たかこん好きです。お話もよかったです!私も紺野、石川、高橋推しなんです!後は田中ちゃんが好きです!(笑)これからも読ませていただきますね!頑張って下さい。石紺とか見てみたいです(笑)次のお話し待ってますね!
14 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 20:37
>>13 名無し読者様
レスありがとうございます☆本当に嬉しくて喜びの舞を・・(ry
名無し読者様も紺野・石川・高橋推しですか〜♪
石紺ですか・・・?頑張ります・・はい。
では、次回からも宜しくお願いします。
又のお越しをお待ちしています〜☆
15 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/14(日) 20:39
今日最後の更新。
ごまこんで『夏の終わりに』
16 名前:夏の終わりに 投稿日:2003/09/14(日) 20:43
この世界から
キミと2人っきり
どこか遠くへ
逃げ出そう
心地良い風に吹かれて行き先も分からぬまま
雲と一緒に旅をしよう


           『夏の終わりに』


「あっつぃー・・・・」
開けっ放した窓からは生ぬるい風しか入ってこなくて、今日何度目かのため息とその言葉をカラカラな喉から搾り出してベッドの上を転がる。
朝のニュースでは夏本番の1日と言っていた今日なのにクーラーを付けていないのは隣にいるキミのせい。
17 名前:夏の終わりに 投稿日:2003/09/14(日) 20:51
「ねー紺野〜クーラー付けよ?ごとー暑くて溶けそうだよー」
うちわをパタパタ仰ぎながら、膝の上に置いた文庫本に忙しそうに視線を走らせるキミに言う。
「ダメです。省エネしないと地球の温暖化が進んで冬がなくなるんですよ?」
扇いでいたうちわを止めて、キッと本気が入った瞳でキミは言う。
その瞳には『勝手に溶けるなら溶けといてください』と言う言葉が含まれているようでキミの視線から逃れる
「思うんだけど、ごとー一人が省エネしたって変わんなくない?」
視線を空中に漂わせて呟く。
「何言って―――」
両手に拳を作って、今にも立ち上がって選挙に出る時の演説みたいに喋りだしそうなキミに私は今日何度目かの降参を表すために両手を力なく左右にふった。
「分かった、分かった、ごとーが悪かったよ」
‘分かればいいんです’という視線をキミは痛いぐらい私にぶつけてきて私は変な感覚に陥る。
いつもはおとなしい中のおとなしい性格のキミがこうやって私を負かす時、立場が逆になった気がする。
まぁ、どっちのキミもいいんだけど。
18 名前:夏の終わりに 投稿日:2003/09/14(日) 20:57
キミはもう1度膝の上に文庫本を広げてパラパラとページを広げる。
窓から入ってくる生ぬるい風を頬に受けた時にふと思いついた。

この暑い世界が嫌ならば
逃げ出してしまえばいい

思いついたら吉日という言葉を考え出した人に感謝しながらベッドに寝そべっていた体を反動をつけて起き上がらせて、本に熱中するキミの右手をとった。

「―――逃げようか?」
?マークが何個も浮かんだキミの頭越しにそう呟いてキミの瞳を覗き込んだ。
何を言って言るんだ、と言うのと動揺が浮かんでいるキミの瞳は透明で純粋ささえ感じる水の様
「逃げよう・・・この世界から」
もう1度言ってから、キミの瞳をもう1度覗き込むとキミはふわっとした微笑を浮かべていて力強く頷く。
私もキミに微笑み返して、机の上の財布をポケットに突っ込んでキミの手を掴んだまま逃げ出した。
19 名前:夏の終わりに 投稿日:2003/09/14(日) 21:02
焼けるような太陽熱を反射する真っ黒いアスファルト
何処からか吹いてくる生ぬるい風
夏独特の緑の匂い
セミの止むことのない合唱
生ぬるい透明な水

―――全て、投げ出してしまえ。

「後藤さん。何処行くんですか?」
「・・・さぁー・・・気の向くままでいいんじゃない?」
「・・・そうですね」

気の向くまま
キミと2人っきり
何処かに逃げ出してしまえ
キミとだったら
何も怖くはないさ

人のいなくなったがらんとした私の部屋で
生ぬるい風がそっと微笑んで
キミが読んでいた本のページを悪戯にめくっていく

この世界から
私とキミと言う存在を消してしまえ
そう思って逃げた

キミと迎えた夏の終わり―――


                        end
20 名前:夏の終わりに 投稿日:2003/09/14(日) 21:04
【あとがき】
このスレで始めてのごまこん。
今年の夏は以上に暑い、ということで書いた作品。
ちょっとごとーさんがキャラ違いますが。。。
テーマは『脱走』と『生ぬるい』と『水』
21 名前:11 投稿日:2003/09/14(日) 23:39
ごまこんが来るとは思いませんでした!
びっくり…。でも、いい感じです

私も、紺野・石川推しです
あと、あやみきも好きです。
作者さんの、あやみきも読んでみたいです…
なんて、ちゃっかりワガママですよね(汗)


おがこん好きだったのが、紺高推しになってきました…。
作者さんには、すごく期待してます♪

あと、あやみきも好きです。
作者さんの、あやみきも読んでみたいです…
なんて、ちゃっかりワガママですよね(汗)

22 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 23:40
↑一番うざい部分が、二重になってます…(汗)
ごめんなさい!
読み流してくださいませ
23 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/15(月) 11:37
>>21,22 名無し読者様
レスありがとうございます〜☆
ごまこん私好きなんですよ〜びっくりでしたか?(汗。
あやみきは書きますよ〜ええ。下書きしてますので。もうすぐ書くと。。。
期待ですか・・・?(汗。
いや〜嬉しいですね〜でもちょっとプレッシャーを。。。
では、又のお越しをお待ちしております〜♪
24 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/15(月) 11:38
今日1本目はなちごまで『雨』
題をつけるセンスが無いと言わないで下さい。。。(汗
25 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 11:45
暗い暗い真っ黒な空から降る雨と
青い青い綺麗な青空から降る雨は
どうしてあんなにも違うの?
太陽の光に照らされて銀色に光る雨は同じなのに・・・


            『雨』


「ねぇ、雨が降ってるよ?」
真っ白なシーツがひかれているベッドに肘をついて、床から伝わる自然な冷たさを感じながらベッドで丸くなるごっちんに囁いた。
灰色の布団に包まって眠るごっちんには聞こえないと分かっているのに囁いてその言葉を口に出してしまうのはきっとごっちんが前に言った言葉と表情が今も色鮮やかに残っているから。
『雨ってさー・・・ごとー嫌いなんだよね』
寂しそうで悲しそうで泣きそうでつらそうな表情は今でも覚えてるよ。
ごっちんの色んな表情はいっぱい頭の中にあるけれど、ほとんどはモノクロ。
でもね、あの表情だけは写真に撮ったように色鮮やか。
そして、虹よりも綺麗でたまに思い出しては苦しいの。
26 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 11:48


ねぇ、まだあの子のこと忘れられないの?
ねぇ、まだあの子のこと好きなの?

ねぇ、ねぇ、ねぇ
なっちはあの子のことを忘れる為のごっちんの道具?

知ってるよ、そんなこと。
ごっちんが知ってるよりも、もっと、もっと、もっと、なっちはごっちんのこと見てきたから。

でもね、怒らないよ。
ごっちんが少しでも、そう、ほんの少しでも、なっちのこと考えてくれてるから。
ごっちんがなっちのそばにいてくれてるから。
27 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 11:55
『雨って、綺麗だけど残酷に見えるんですよ・・・私には』
あの子の言葉も覚えてる。そして表情も。
『銀色は私にはまぶしすぎるんです』
綺麗に本当の笑顔のように笑うのに。悲しく感じたよ。

銀色の光
透明な水滴
黒い空
青い空

ねぇ、どうして雨が嫌いなの?
ねぇ、忘れちゃってよ、あの子のこと。

「・・・・ん・・・なっちぃ・・・?」
「んー?」
眠そうな目をごしごしこすって、ごっちんはブラインドの上がった窓の外を見る。
「―――ごっちん雨、嫌いだったよね?ブラインド下ろそっか?」
早口に言って立ち上がろうとする私をごっちんは左手で制して、何を考えているのか分からない瞳でじっと外を見つめる。
目を細め、どこか透明な視線でどこか遠くを見つめるような横顔。
「ごとーは・・・なっちと見る雨なら嫌いじゃないよ・・・むしろ好きだよ」
綺麗な横顔が崩れていつものふにゃーとした笑顔でごっちんは言う。
「そっかぁー・・・なっちも一緒」
予想外の言葉に嬉しすぎて舞い上がらないように、いつもの口調を装って言うと
ごっちんの笑顔は私の心に反映したように嬉しさに染まっていく。
28 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 12:01
もう、いいや。
さっきまでのことが、嘘のように流れていく。
まるで、ごっちんの笑顔は何でも流していく雨のよう。

もう。いいよ。
まだ、あの子のこと忘れられなくても
あの子のことが好きでも
ごっちんが、なっちを必要としてくれているならそれでいい。

もう、いいよ。
なっちがあの子のことを忘れる為の道具でも
ごっちんがなっちを必要としてくれてるなら喜んで道具になろう。

ブラインドを下ろさずに
太陽の光に反射して光る銀色の雨を見よう
綺麗だ、と言うあなたに微笑んで
色んな雨を見よう
青い空から降る雨も
夕焼け空から降る雨も
黒い空から降る雨も
紫色の朝方の空から降る雨も
たくさん、たくさん見よう
そして笑いあって

雨、アメ、あめ、雨

あの子があなたが私が
雨を見ても怖くならないように悲しくならないように残酷に見えないようにまぶし過ぎないように。
あの子があなたが私が
見る雨が全て同じであるように。

雨、あめ、アメ、雨

                     end
29 名前: 投稿日:2003/09/15(月) 12:04
【あとがき】
ある作者さんのお話を読んで『雨』について書こうと思って書いた作品。
解説すると、あの子とは一応私の中では石川さん。
ごとーさんと石川さんは昔付き合っていて、別れたけれでも両者ともお互いを忘れられないでいる。
と、こんな感じでしょうか?(解説じゃないね・・・)
テーマは『雨』と『銀色』
30 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/15(月) 16:53
今日はお休みなので何となく更新・・・?
31 名前:ダブルシツレン 投稿日:2003/09/15(月) 17:00
真っ黒なテーブルに真っ白なマグカップ
真っ白なソファーに真っ黒な服を着たキミ

不覚にも綺麗だと思った。



「―――みきたん・・・」
今にも泣きそうな掠れたキミらしくない声でキミはソファーの上で私を呼ぶ。
綺麗な瞳に今にも落ちそうなほどの涙をためて。
「どしたの?」
キミの隣に腰をおろして、精一杯普段の私の声で対応した。
部屋の中央に置かれている四角いテーブルをじっと見つめて次のキミの言葉を待った。
「・・・ふられちゃった・・」
震えた声はバカみたいに私の心に響いて、変な痺れが体中を襲う。

ほら。まただ。
愛しくて愛しくてたまらないんだ。
抱きしめたくて抱きしめたくて
自分だけを見て欲しいのに。。。

「―――そっか」
そう短く言ってキミを見た瞬間キミの瞳からこぼれそうな涙は落ちた。
透明で部屋の照明に反射して輝いた一粒のまぁるい水滴はキミの黒い服の上に落ちてその上で光り続ける。

32 名前:ダブルシツレン 投稿日:2003/09/15(月) 17:05
何度も見たことあるはずの場面なのに今日は全てがスローモーション
キミの涙が落ちる瞬間さえも、ゆっくりと空を漂う雲のように見えて不思議な感覚
そして、変なぐらい遅い場面の移り変わりとは正反対にすごい速さで脈打つ私の心臓と血液
その鼓動を誤魔化すようにキミの隣から立ち上がって、少し深呼吸をして言った。

私自身にも、キミにも。
そんなの言える立場じゃないって事ぐらいわかってるけど、言わなきゃこれから後悔し続けると、本能的に思った

「泣きたいだけ泣いたらいい。笑いたいだけ笑えばいい。悲しみたいだけ悲しめばいい。それからゆっくりと次の恋を見つければいいんだから・・・」

シツレンした私と
シツレンしたキミに

サヨウナラ――――


                     end
33 名前:ダブルシツレン 投稿日:2003/09/15(月) 17:08
【あとがき】
うわっ・・なんですかこれ?(汗。短すぎじゃないですか?
んー・・・・まぁこれは短編もどきと言うことで(マテ
このダブルシツレンはあややに失恋したミキティと名前は出て来てませんがよっすぃーに失恋したあやや、と言う設定です(ぉ
つーことで題名がダブルシツレンになったわけですが何か?(笑。
このテーマは『黒』と『白』と『シツレン』
34 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/09/15(月) 23:50
あやみきが読みたい…
なんてずうずうしい事を言ってしまって、ごめんなさい(しかも間違えて2回も)

今回、更新されててすごくうれしかったです。
藤本さん、まだ失恋じゃない!これからですよ♪(爆)

なちごまも、すごくよかったです。
一人称の淡々とした感じが…

題名、簡単な分すごくいいと思います。
センスがないなんていわないで下さいな
35 名前:tsukise 投稿日:2003/09/16(火) 01:52
ご連絡、ありがとうございますっ!
早速一気に読ませていただきましたっ!
こんごまやなちごま…もう全てストライクゾーンですっ!
ヒトシズクさんの短編は感情移入しまくりで読んでたり(ぉ
赤板と共に、こちらも楽しみにしてますので、頑張ってくださいねっ!
36 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/16(火) 17:25
昨日はせっかくの休みだったのに全然更新してねーよ(泣。
と言う今日この頃。
まぁ、いっか。更新は気まぐれで(ちなみに性格が気まぐれなんで。
つーことで、レス返しです♪

>>34 ゆうゆ様
あやみきリクエスト(?)されたので昔に書いたモノを。。。(汗。
こんなのが、あやみきかーと自分で突っ込みを入れながらの更新でしたが何とか喜んで(?)頂いて嬉しい限りです♪
なちごまは結構自信作だったりします(爆。いや・・・始めて書いたんですが(笑。
題名のことフォローありがとうございます☆
なんとか、ゆうゆ様のおかげで復活しました(笑
では、又のお越しをお待ちしております♪

>>35 tsukise様
うわーーー!!!(爆
tsukise様、忙しい中こちらにも来て頂いて・・・本当に感謝感激です(泣
全てがtusukise様のストライクゾーンに当たった様で・・・まぁ、ストライクゾーンに行くようにしたんですが(嘘です。
では、またこちらの方のお越しをお待ちしております♪

第1回 リクを受け付けたいと思います。
書けるか、書けないかは分かりませんが。。。(マテ
CP,そして何視点か、など詳しく書いていただけると嬉しいです^^
では〜
37 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/16(火) 17:26
ここで今日の更新1本目。
いしよしで、『金魚鉢』
38 名前:金魚鉢 投稿日:2003/09/16(火) 17:34
床に置いた金魚鉢が
今日も昨日も明日も変わらず光を反射させる
真っ赤な2匹の金魚が泳ぐ度揺れる水面が光に反射してキラキラ光って
ただ、それがまぶしくて
いつか忘れた涙を流した。


    
            『金魚鉢』


「サヨウナラ」
手を伸ばせば簡単に触れることが出来るはずのアナタは何故か遠くて私はアナタに触れたくても何か魔法にかけられたように指1本すら動かすことが出来なかった。
あなたがただ1つ残した金魚鉢とその中を泳ぐ2匹の真っ赤な金魚が、ただ虚しかった。

ねぇ
泣きたくても泣けないのは
優しいあなたが泣き虫な私に悲しまないように、と涙を奪っていったから。
私の涙はあなたの元でどれくらい溢れてるの?

ねぇ・・・知ってる?
涙は悲しみを少しでも逃がすために外に出すための手段なの。
あなたが涙を奪っていったから私は悲しみを外に出せないで悲しいまま。

39 名前:金魚鉢 投稿日:2003/09/16(火) 17:42
「サヨウナラ」
どうしてあなたを止めれなかったの?
あの時、私が
「待って」
って言ったら優しいあなたはほんの少し振り向いて私を見てくれたかもしれないのに
私の元に戻ってきてくれたかもしれないのに・・・

金魚鉢の揺れる水面があの時も今と変わらずに揺れていて、あなたと一緒に買った金魚も今日もあの時も変わらず泳いでた。


真っ赤な金魚は苦しくて悲しくて口をパクパクさせて
自分が揺らした水に自分が揺らされて
いつも水のされるがままに水中を漂うの
ねぇ、まるで私は金魚のようね
苦しくて悲しくて口を一生懸命パクパクさせてるのに
狭い狭い金魚鉢からは出れないままだから
あなたを追うことも出来なかった
苦しくて悲しい私という金魚はいつまでも口をパクパクさせたまま苦しい、悲しいと泣くの。


青いガラスの金魚鉢が
今日も透明な水をうす青く映して
水中を漂う金魚たちを照らす

あなたが置いていった金魚鉢が
ただ私を悲しくさせて
あなたの居た頃を思い出させる
いつの日かそっとあなたが返してくれた私の涙が今日も私の元で溢れる

ねぇ、私と言う金魚が苦しい悲しいと泣かなくてすむように
いつかあなたが戻ってきてくれたらいいのに・・・

40 名前:金魚鉢 投稿日:2003/09/16(火) 17:44
今日も昨日もあさってもあの日も
いつも変わらずに揺れている金魚鉢。

金魚鉢、金魚ばち
今日もあなたのことを思い出させて悲しませるのね
きんぎょばち、キンギョバチ
苦しくて苦しくて口をパクパクさせたまま
金魚鉢、きんぎょばち・・・・


                    end
41 名前:金魚鉢 投稿日:2003/09/16(火) 17:48
【あとがき】
失恋モノですね・・・はい。
あなた、というのは吉澤さんのことですねー私の中では(笑。
このお話については特にコメント無し。(ぇ
テーマは・・・『金魚鉢』と『失恋』ってことで(マテ

では、更新はまた夜に。
42 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/09/16(火) 20:59
「金魚鉢」、切ないですね…。
赤い金魚が、すごくいいです。

いったい、誰視点なのかしら?(爆)
私の中では、なぜか石川さんなのですが。。

リク受付中なのですか?w
あの、ずうずうしくもお願いしていいでしょうか…。

みきりか、石川さん視点など。
もうお分かりだとは思いますが、私は藤本さん推しです(爆)

映画の共演がきっかけで、だんだん藤本さんに惹かれて行く石川さん。
でも、彼女は松浦さんと仲がよくて…

がマイ設定なのですが(爆)
その辺は、作者さんに全部お任せします。

あの、無理だったり、かけなかったりしたら別にいいですけど。
作者さんの書くものなら、みんな好きなので♪



43 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/16(火) 22:11
>>42 ゆうゆ様
金魚鉢はメール欄に書いたのですが、石川さん視点です。
あとがきにちゃんと書かなかった自分が悪いですね〜すみません(汗
リクありがとうございます☆
みきりか、未知の世界なので頑張ってみようと・・・(笑。
では、又のお越しをお待ちしております♪

と、ここで今日2本目の更新。
しばこんで、柴田さん視点。
『You like No vanish』
44 名前:You like No vanish 投稿日:2003/09/16(火) 22:15
夢も
未来も
雲も
霧も
いつか見えなくなり
いつかは形を変え
いつかは消える

そんなもの。



       『You like No vanish』

ふわふわ
手放すと遠くへ行ってしまう風船のようで
ゆらゆら
目を離すとどこかへ流れていく透明な水のようで
きらきら
いつの間にか夜に隠される星の様で

あの子がいつか自分の前から消えてしまうような気がしてたまらない
それはあの子が雪のように白くて
雲のようにふわふわ不安定だから―――?

45 名前:You like No vanish 投稿日:2003/09/16(火) 22:21
「紺ちゃん!」
すぐ先の曲がり角で見慣れた後ろ姿を見つけて私は間違えることの無い名前を呼んでその後姿に向かって思いっきり走った。
「あ〜柴田さん」
振り返って、にこっと微笑んでその場に止まって私を待ってくれる紺ちゃんはいつか溶けてしまう優しい雪やいつか晴れてしまう霧のよう。
「今、休憩?」
紺ちゃんの隣に立って、ゆっくりと歩く紺ちゃんに歩幅を合わせながら紺ちゃんに出会った嬉しさで声が弾まないようにゆっくりと言葉を吐く。
「はい。ジュース買おうと思って」
にこにこ笑顔を崩さずに言うキミに少しだけ不安になる。

雪や霧のように消えてしまわないで
雲や星のように見えなくならないで
夢や未来のように形を変えてしまわないで
水や風のように遠くに行ってしまわないで

消えないで
見えなくならないで
形を変えてしまわないで
遠くへ行ってしまわないで

―――私から離れないで。

46 名前:You like No vanish 投稿日:2003/09/16(火) 22:26
不安だから無防備なその白い左手をきゅっと握り締めた。
紺ちゃんは一瞬、驚いた顔をした顔をするけれど何も言わない。ただ笑顔を浮かべるだけ
「ね。遠くへ行ってしまわない?」
世間話でもするように私は尋ねる
紺ちゃんは少し分からないような顔をしてでも答えてくれる。
「行きませんよ・・・柴田さんを置いていくなんて」

ほら。
いつもキミは私の欲しい、望む言葉をくれる。

優しい優しいキミが消えて見えなくならないように
この繋いだ手はもう離さないよ
雪や星や夢のようになくなったり消えたり見えなくなったりしてしまわぬようにキミをもう離さない
消えるなら見えなくなるなら私も一緒になるように。

――――あなたが消えてなくならないように私がいる。


                        end
47 名前:You like No vanish 投稿日:2003/09/16(火) 22:29
【あとがき】
しばこん、柴田さん視点で書いて見ました。
しばこんは爽やかな感じっぽいので(私の中では)爽やかな感じになるようにしてみました。
と言うか・・・はっきり言っちゃえば柴田さんの最後の『あなたが消えてなくならないように私がいる』って言葉を使いたいが為に書いた作品とも・・(汗
テーマは『星』、『霧』、『夢』、『雲』
48 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/17(水) 22:02
今日は1本だけの更新。
いしよしで『sad water』
49 名前:sad water 投稿日:2003/09/17(水) 22:10
悲しさを水に溶かして
流してしまおう、どこか知らないところまで
砂糖をコーヒーに溶かすように
悲しみに彩られた水が出来るから。


          『sad water』


  透明な水はどんな色にでも着色できるの
  でも、着色された水はもう何色にもなれない悲しい水
 悲しい水の色を抜いてもう1度着色しても不自然なだけ。

あなたが水なら
私は水に溶ける悲しみね
あなたが悲しみなら
私は悲しみを溶かす水
もう2人離れられないのは
私たちが2人で1つだから

私たちは悲しい水
私があなた以外の人を愛しても
あなたが私以外の人を愛しても
不自然なだけで、結局2人愛し合うの

  悲しい水はずっと悲しいままで泣いてばかり
  透明な水に戻ることが出来るならもう泣かなくても済むのにね

コーヒーに溶けた砂糖はもう2度と溶ける前の固体に戻ることは無い
コーヒーに溶けた砂糖は1人ぼっちでで悲しいと泣くけれど
コーヒーと出会えて楽しいと笑うの。
1人ぼっちじゃないから、もう泣かなくていいの
50 名前:sad water 投稿日:2003/09/17(水) 22:11
悲しい水はずっと悲しいまま
でも涙を流すことはもう無いの
悲しみは水と一緒に何処までも流れていくの


もう泣かないように
泣かなくて済むように。

                        end
51 名前:sad water 投稿日:2003/09/17(水) 22:15
【あとがき】
これは一応いしよしで石川さん視点。
授業中に何となく思いついたものを書いたら、こんな風に(マテ
これは、別にいしよしじゃなくても別のCPでもいけますね。
まぁ、適当に。(オイ
テーマは・・・『悲しい水』・・かなぁ?(ぇ

第1回リク受付中です。
書けるかどうかは分かりませんが、しょうがないなぁ、と言う方はレスお願いします。
テーマ、CPなど詳しく書いていただけると嬉しいです。

52 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/09/21(日) 23:30
やっぱり、紺野はすごくいいですw

でも、カップリングの王道(ぇ)いしよしも大好きです♪
53 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/23(火) 21:46
>>52 ゆうゆ様
紺野よかったですか?それはよかったです〜♪
いしよしは王道なんですね〜(マテ。
いしよし好きだということで、ありがとうございます(謎。
あ、リクのみきりか、出来上がってます。少し設定が違いますがどうかお許しを(ぇ
明日更新させていただきます〜
では、又のお越しをお待ちしております☆

と、ここで久しぶりの更新。
いしよしで、『Let's be blue water』

54 名前:Let's be blue water 投稿日:2003/09/23(火) 21:47
青い青いプールに
溶けてしまおう
ちゃんぷん。
と心地良い音がしたら
私たちはもう水―――

55 名前:Let's be blue water 投稿日:2003/09/23(火) 21:56
夏休みの終わりの誰もいない2人だけのプール
水は熱い光に反射してキラキラと光って、青いコンクリートに映って綺麗な青色。
「わあっ・・・気持ちいー」
プールサイドに腰掛けて、靴下と靴を脱ぎ捨てた裸足は水の中
空気の生ぬるさとは正反対の冷たい水に私は思わず静かな空気を壊してしまう。
「んー・・・冷たいね」
私と同じ格好をしたあなたもにっこりと微笑む。
「ここに来てよかったね。梨華ちゃん」
生ぬるい風に吹かれるあなたの金色っぽい髪。
太陽に照らされていつも以上に白く見える肌。
全部がまぶしくてあなたを見る目を少し細めた。
青色と白色のチェック柄のスカートは膝上までめくり上げて、第2ボタンまで外した白い制服のカッターシャツは風に吹かれてパタパタ動いて、そのたびくすぐったさを感じる。
「このまま入っちゃおうか?」
私の返事も聞かないまま、あなたはゆっくりと足から水に入っていく。

揺れる波紋がどんどん同心円状に広がっては消えて、また波紋が生まれては揺れる。

ぽちゃん。

肩まで水に浸かったあなたは気持ちよさそうに目を細めて笑って、濡れた冷たい両手を私に向かって差し出す。
微笑むあなたの白い手に自分の手を重ねて、私も水に浸かっていく。
56 名前:Let's be blue water 投稿日:2003/09/23(火) 22:04
ぽちゃん。

あなたに抱きついたまま私たちは頭まで水の中に沈むけど泳げない私たちはすぐ水面に浮かぶ。
「つめた〜」
「でも気持ちいいでしょ?」
何かを自慢する子供のような笑顔のあなたに微笑み返して揺れる水面を見つめた。

水の中は音が篭ったように聞こえて、まるで別世界のよう。
水中から見る水面は地上から見る水面よりも綺麗で、幻想的。
現実から切り離されて時が止まったような水中にあなたとずっと一緒にいたいと思ってしまう。

青い青い水に
あなたと私
2人っきり

すくいあげた水は私の手から滑り落ちてぽちゃんと乾いた音を立てて青い青い水に戻る。
さっき私の手の中にあった水のもう1度すくう事は困難。
肌に吸い付くような白い制服も、水中ではゆらゆら揺れて小さな金魚鉢の中で泳ぐ金魚のよう。
57 名前:Let's be blue water 投稿日:2003/09/23(火) 22:07
泳げない2匹の金魚は
水のされるがままに揺れて
青い青い水の中に消えていくの。

「ね、ひとみちゃん」
「ん?」
「水に・・・溶けちゃおっか?」
「いいね・・・それ」


抱き合って、2人の体温感じて微笑みあったなら
ゆっくりと水に溶けるように戯れて水にされるがまま水中を漂おう。
ぽちゃんと水面が揺れて、広がった波紋が消えたなら

私たちは青い青い透明な水―――

                 
                      おわり。
58 名前:Let's be blue water 投稿日:2003/09/23(火) 22:10
【あとがき】
これは夏休み中に書いててやっと最近書き上げた作品。
結構、お気に入り。
というか、『ぽちゃん』と言う音自体が好きなんで・・・(笑。
題名は特に意味はなし。何となくつけたら意味不明で、まぁいっかと(マテ
テーマは『プール』『溶ける2人』

では、更新はまた明日。
今日、赤板の『私のマリア』を完結させたのでよかったら見てやってください。

以上。
59 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/24(水) 15:00
今日1本目の更新。
最近ハマってる田中×道重で『月のウタ』
60 名前:月のウタ 投稿日:2003/09/24(水) 15:01
空がどんどん紅く染まって
真っ赤な太陽が見えたなら
あなたは悲しみを顔に染めて
真っ黒な絵の具が空を塗りつぶしたら
あなたは涙をひっそりと流すでしょう
答えが見つかるまで。



            『月のウタ』

61 名前:月のウタ 投稿日:2003/09/24(水) 15:08
満月が海に浮かんで
黄金の光を黒い水い注ぎ込んで
波が押したり引いたり永遠に続いて
変わらない波音を聞く。

月はあなたと私を照らしてはくれなくて
あなたの姿や顔が見えないまま
どんどん暗闇が支配していく。

「さゆ?」
私の不安な囁きも波音に飲み込まれて、あなたには聞こえない。
深い夜の歌と星たちの囁きが聞こえて、私の不安はどんどん大きくなるばかり。
不安を消すように手探りであなたの手を探して、ぎゅっと握って雲に隠された朧月を見た。

ゆっくりと夏の終わりを感じさせる少し肌寒い風が吹いて、悪戯にあなたの髪を揺らしていく。
裸足と波の音と足にくっついた小さな砂

夜の海になくしたあなたの心を探すために私は永遠の旅を続けるでしょう

あなたが泣かなくなるまで
涙がきっと消え去る日まで
62 名前:月のウタ 投稿日:2003/09/24(水) 15:13
月が歌ったウタが
あなたには聞こえますか?
しゃくりあげるあなたにそっと囁いて
ぼんやりとした光であなたを照らしてくれる

海にかかる月は
あなたに昔話をいくつも語るけど
あなたにはほとんど聞こえない
水面を走る月の光が
波に乗ってあなたに砂に埋もれた貝殻を差し出すけど
あなたはそれすらも分からない。

月が迷路に迷ったあなたにゴールをえらして教えるけど
あなたは泣いてそれを拒否する。
答えが見つかるまで。

「・・・れいな?」
あなたの甘ったるい雰囲気が耳に響いて心地いい
「・・・見つかった?」
そっけなく言って空を見ると月が笑ってた。
「―――うん」

63 名前:月のウタ 投稿日:2003/09/24(水) 15:15
私に向かって笑うあなたの笑顔が今度は月に照らされて綺麗に見えた。
忙しく動く月が私の不安を取り除いてくれて何度も迷路に迷うあなたに答えをくれた。

月のウタ
今日も聞こえる
波の音と共に


                    おわり。
64 名前:月のウタ 投稿日:2003/09/24(水) 15:17
【あとがき】
初れなさゆ、田中さん視点でした。
2人ともキャラが違いますが、苦情は受け付けません(マテ
これは、思いつきで書いた・・・嘘です。一番時間がかかりました。
テーマは『月』『ウタ』
65 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/27(土) 10:57
今日1本目の更新。
いしたかで高橋さん視点。
『甘い』
66 名前:甘い 投稿日:2003/09/27(土) 11:01
甘い甘い声で
甘い甘い瞳で
私と一杯にしてください
甘くて甘くて砂糖を吐くほど
甘くて甘くてとろけそうなほど
甘くて甘くて脳が麻痺してしまいそうなほど
甘い甘い恋愛を下さい



              『甘い』


「―――高橋?」
甘い甘い私を呼ぶ声
甘い甘い囁き
甘い甘いあなたの香り
「何ですか?」
私の座っている2人がけのソファーの隣に座って、私にもたれかかっている状態の石川さん
密着した状態だから触れ合っている場所がいつも以上に熱を持って熱くて、とろけそう。

私の耳に囁く言葉も
心に溢れるあなたの姿も
胸を一杯にする香りも
潤んだあなたの瞳も

甘くて甘くて、脳が麻痺しそう。

「ねぇ、好き?」
密着した肌も
上目遣いも
その言葉すら計算しているのかな?と思うほど私を虜にする。
67 名前:甘い 投稿日:2003/09/27(土) 11:05
甘い甘いキス
甘い甘い香り
甘い甘いあなた


もっと私を一杯にしてください

甘い甘いあなたが一秒でも一瞬でもいなくなると不安になるように
魔法をかけてください。
甘い甘いあなたから離れられないように
私の心に鎖をかけて独り占めしてください

甘い甘い香りで
甘い甘い囁きで
脳を麻痺させて、あなた以外のことを考えられないようにしてください


もっともっと愛して、キスして、抱きしめて、囁いて。

もっともっと甘いあなたを下さい。
もっともっと甘い恋愛を下さい。



あぁ

甘い甘い

とろけそう

一杯に

麻痺しそう




―――――――――甘い。


                         おわり。
68 名前:甘い 投稿日:2003/09/27(土) 11:07
【あとがき】
最後の『あぁ 甘い甘い とろけそう 一杯に 麻痺しそう』は高橋さんの脳が麻痺して何も考えられない状態、をあらわしています(笑。
少し壊れたような感じを入れたくて、書いた作品。
テーマはやっぱり『甘い』
69 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/27(土) 11:08
今日は時間があるので、もう少し更新。
ごまこんで後藤さん視点。
『SOS』
70 名前:SOS 投稿日:2003/09/27(土) 11:13
ねぇ。聞こえる?
私のSOS
キミだけに送るSOS・・・・

いっつもキミやメンバーから憧れたり慕われたりする私だけど
たまに壊れそうになるんだ
バカみたいに平気装ってるけど内心はすごく傷ついてて
それがね、ある一定値を超すと抑えきれなくなるんだ。

ねぇ、だから気づいて
私からキミへのSOS
壊れかけた私の最終手段を。

溢れる人並みの中で1人立ち尽くして、もうすぐ暮れる真っ赤な夕日を見つめてる
レールから脱線しかけた列車を見つめて、消えないため息を吐く
飾り立てた歌
綺麗だけの宝石
最初から出口なんて存在しない迷路
広くも狭くも無い未来
青く光る月
71 名前:SOS 投稿日:2003/09/27(土) 11:15
ねぇ、ほんの少しでいいんだ
君の笑顔さえ見ることが出来たら
心の中に溜まっていた不安も寂しさも色んなモノが崩れて0になるから
そしたら、キミやメンバーに憧れられてるいつもの私に戻るから

ねぇ、だから聞いて
耳を澄まして、消えかけの言葉の私のSOS
きっとキミだけが聞こえる

SOS

                        end.
72 名前:SOS 投稿日:2003/09/27(土) 11:17
【あとがき】
何となくこういう後藤さんを書いてみたかった、という罠(笑。
もう、簡単に言うと後藤さんは紺野さん一筋、だと(マテ
テーマは『壊れる』『SOS』
73 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/27(土) 11:18
もう1本更新。
たかこんで高橋さん視点。
『夢でも会いましょう』
74 名前:夢でも会いましょう 投稿日:2003/09/27(土) 11:25
あなたと1分1秒でも長く一緒にいたい
抱きしめたい、ぎゅっと。
包まれたいあなたの香りだけに。
だから夜なんて消えてしまえばいいと思ってた。
夜さえなかったらずっとずっと一緒に入れると思ってたから―――



          『夢でも会いましょう』


「ねぇ?」
同じベッドに寝そべって本に集中しているあさ美を呼ぶ。
「んー?」
返事はすぐ返ってくるのに何故かしっくりこない。
私とあさ美の距離は十数センチ。あたしの手の平1個分くらい。
彼女が本に集中していて私のことを見てくれないのはいつものこと。
それなのに今日は何故か変な感じ。
白い枕にぽふっと顔をうずめて、視界を真っ暗にする。
隣で本のページをめくる音と、クーラーの音がやけに耳を付く。
いつもなら2人でいることだけで幸せなのに今日は何か変
ムカツク、といった気持ちに似ている気持ちが私の心を渦巻いている
「ん――――――・・・・」
考えて考えて頭の中の思い出を整理して、思いついたのは今日のあさ美の一言。
75 名前:夢でも会いましょう 投稿日:2003/09/27(土) 11:36
『今日、夢で後藤さんに会ったんだ〜』
なんだ、焼いてるんじゃん。自分。
その時のあさ美の笑顔を思い浮かべながら枕にうずめた顔で少し自分に笑った。

愛しい愛しいあなただから
ずっと一緒にいたい。
私以外の人のことを考えないでほしい。
それが夢であっても現実でも。

「―――愛ちゃん?」
私を呼ぶ声がして、私は上半身を起き上がらせる。
あさ美はいつの間にか本を読むのをやめていて、いつもと変わりない笑顔を浮かべていた。
「んー?どした?」
あさ美の髪に手を伸ばして、ゆっくりと少し茶色い髪を撫ぜる。
茶色に染めた髪は前に一緒に泊まった時よりも少し伸びていて私と同じシャンプーの匂いがかすかに香る。
「あのさ・・・愛ちゃん私が今日言った言葉で焼いてくれた?」
少し顔を紅くして、それでも嬉しそうな笑顔は消えない。
あさ美って人の心の中が読めるんかなぁ?なんて時々思ってしまう。
今だって考えてたことだったし。
「焼いたよ〜・・・あさ美があんなこと言うから」
あさ美をぎゅっと自分の方に引っ張って抱きしめる。
らしくないこと言うなーとか、顔が赤くなってるなぁーとか思ってることはバレないよね?
「ふふっ」
私の腕の中で小さくあさ美は笑って、私の耳元で小さく言った。
「夢でも現実でも会いたいって思うのは愛ちゃんだけだから」
・・・何であさ美は言って欲しいと思うことを簡単にしかもさらっと言ってしまうのかな?
何て、少し笑って傍に置いてあって掛け布団を思いっきり被った。
小さい隙間から入り込む明るい光と闇の中で私たちはそっと呟いたんだ。

         「「夢でも会いましょう」」



                       end.
76 名前:夢でも会いましょう 投稿日:2003/09/27(土) 11:38
【あとがき】
少し甘くて初々しいたかこんを書いてみたかったもので(笑。
少しキャラが違いますが(2人とも)
まぁ・・・そんなことはいいんです。(マテ
ろ、テーマは『夢でも会いましょう』
77 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/09/30(火) 22:15
かなり私情ですが、テストがあるので10月6日以降、もしくはもう少し前まで更新は出来ません。
みきりか、をまず更新する予定です。
では。
78 名前:tsukise 投稿日:2003/10/01(水) 07:46
更新お疲れ様ですっ。
ごまこん・たかこん読みました〜っ。
高橋、可愛いですね〜っ!甘々な展開に頬が緩んだり(^^
テスト大変でしょうが、頑張ってくださいね。
ゆっくりお待ちしています。
79 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/10/02(木) 19:02
一気に読ませていただきました!

たかこんが、すごく可愛い感じですw
何か、すごく癒されます。嫉妬が可愛くて…

みきりか、楽しみにしています。
テスト、疲れすぎない程度に(?)頑張ってくださいね♪
80 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/04(土) 13:01
少し時間が出来たので、レス返しだけでも先に・・・

>tsukise様
読んでいただけましたか〜ありがとうございます♪
高橋さん最近大好きなんですよ〜(マテ
もう、頬緩みまくってください!(爆
では、又のお越しをお待ちしております〜

>ゆうゆ様
たかこん、よかったですか〜ありがとうございます♪
そう言っていただけると本当に嬉しいです!
みきりか、頑張ります♪
テストはー・・・はい、疲れ過ぎないように頑張ります(マテ
では、又のお越しをお待ちしております〜
81 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/07(火) 22:21
やっとテストが終わったので更新。
ごまこんで、後藤さん視点。
『花とキミ』
82 名前:花とキミ 投稿日:2003/10/07(火) 22:27
道端に咲こうとする
一輪の花に水を上げよう
誰が何と言おうと
それがどんな雑草だろうと
ただ一度咲こうとする花は花に変わりないのだから

タンタンタタンタン・・・
小刻みに刻まれるダンスステップ
そして鏡に映る一生懸命なキミの姿
「あ・・・紺野・・」
思わず呟いてしまった口を反射的に右手でふざいで、そっと小さくドアを開けてその隙間からキミの姿を見つめる。
キミは何度か踊っては立ち止まり、滴る汗をティーシャツの襟や袖で強引に拭いては鏡の自分と睨めっこ。
そして、又踊りだす。
他のメンバーはもう帰ったはずなのにただ1人黙々とダンスを踊るキミは固い固いコンクリートのひび割れた所から必死に咲こうとする花に似ていた。
83 名前:花とキミ 投稿日:2003/10/07(火) 22:31
たった一度咲こうとする花の幻影にキミを合わせてみる。
ほら、そっくり。
いつか鮮やかに咲く花のようにキミと言う花もいつか大きな花をつけるだろう
その時は一緒に笑ってあげよう
「よかったね」ってほんの少しの言葉と共に。


いつか咲くキミと花に
私は水とキミへの愛を
溢れんばかりに何度も何度でも望むほど上げよう
そして咲いた時に
「よかったね」
とほんの少しの言葉と笑顔を上げよう
そしたらきっとキミと花は笑顔――――


                           END
84 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/07(火) 22:32
【あとがき】
何となくごまこんを書いてみたらこんな風に・・(マテ
やっとミュージカルの写真集を手に入れたので、練習熱心な紺野さんを書いてみました♪
テーマは『花』
85 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/09(木) 22:21
今日の更新。
みきりかで『Show and tell』
86 名前:Show and Tell 投稿日:2003/10/09(木) 22:28
話して私に
いろんなことを。
見せて私に
あなたの愛を。
見せて話して
あなたの全てを


「梨華」
いつもとは違う
囁きが
私の中でぐるぐる回って
おかしくなりそう。
大人びた雰囲気のあなたは私の前でしか表してくれない子供の表情を持つ悪魔
私に嫉妬させて悲しく思わせて泣かせといて甘い甘い囁きで何もかも私の中にあるものを全て消してくれる。

ねぇ、いつも嫉妬してるわ。
亜弥ちゃんと仲がすごく良くて
遊びでもキスして、抱きしめて、甘く甘く囁くから

ねぇ、あなたは悪魔ね
私に嫉妬や悲しみばかり与えるから
それでいてあなたは魔法使いね
私の中にある憎い気持ちも嫉妬もいとも簡単に消してしまうから

ねぇ、見せてよ
私だけに色んなあなたを
ねぇ、話してよ
あなたの思ってることを
私をあやす時だけに囁く甘い言葉も
もっと、もっと言ってよ、不安になるから

見せて見せて
話して話して
あなたの全てを。
魔法使いのあなたと
小悪魔なあなたを。


                    おわり。
87 名前:Show and Tell 投稿日:2003/10/09(木) 22:29
【あとがき】
めっちゃ短いですが、石川さん視点です。
特にコメント無しでお願いします。あと、苦情は受け付けません(笑
テーマも特になし。
ただ、タトゥーのShow me Loveと言う曲を元にしました。
88 名前:tsukise 投稿日:2003/10/10(金) 17:48
うにゃーっ!!更新お疲れ様ですっ!
ごまこんっ!ミュージカルネタですねっ!
紺野の練習熱心な姿が浮かぶようです…きっと輝く日はすぐそこに…(ぉ
みきりかもいいですねぇっ!コメント無しでということですが、かなり好きです〜♪
嫉妬っぽい感情がなかなか…。
これからも楽しみにしていますので、頑張ってくださいねっ
89 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/10/11(土) 22:13
更新お疲れ様です!
ごまこん、萌えました〜(爆)
紺野さん、可愛いです♪

そしてそして…みきりか。
ありがとうございました〜♪無理を言ってごめんなさい!
でも、最高ですw
コメント無しで…ですか?

とにかくよかったです。

次も楽しみにしてますw
90 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 13:14
ageるなよ
91 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/12(日) 22:53
更新は明日を予定してます。
結構新作が出来たので・・・(笑
では、レス返しです〜♪

>88 tsukiseさん
毎回毎回のレス本当にありがとうございます☆本当に嬉しいです!
みきりか、ごまこん気に入っていただけた様で嬉しい限りです〜
みきりかは自信が無かったのでコメント無し、とさせていただいただ
いたのですが、そう言って頂いてありがとうございます(マテ
では、又のご来店をお待ちしております〜

>89 ゆうゆさん
レスありがとうございます〜♪毎回毎回嬉しさの舞を・・・(ry
みきりかのレスありがとうございました☆これでレスを解消出来て
ほっとしてます(オイ 
コメントは無しで(笑 私の代わりにコメントを(マテ
では、又のご来店をお待ちしております♪

>90 名無し読者さん
私的にここではage sageなどはあまり気にしてないので・・・
せっかくのお気遣いありがとうございます♪

92 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 22:40
がんガって下さい!すごくいいです。
93 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/16(木) 22:14
しばらくの間事情のため更新できませんでした・・・
申し訳ありません。

>92 名無し読者様
どうもありがとうございます♪
そう言って頂いて本当に嬉しいです。
では、又次回のお越しをお待ちしております。

では、今日の更新。
いしごまで
『私はキミの月』
94 名前:私はキミの月 投稿日:2003/10/16(木) 22:19
空が暗くて見えないと
キミが言うなら
私が月になって照らそう
そしたらキミは笑っていてくれるから
私の好きな輝いてるキミのままでいてくれるから


「ねぇー?」
真っ暗な夜の公園
公園の真ん中に大きな電灯が1本あるだけだから、端っこにあるジャングルジムに登っている私たちに光はあまり届かない。
そのせいか、すぐそばにいるキミの姿さえぼやっとでしか見えない。
「何?」
新曲のMDを聞いていた私はキミの呼びかけにイヤホンを外して答えた。
外したイヤホンから、かすかに聞こえる音が夜独特の静けさを壊してしまうようで私はウォークマンの電源を消した。
「・・・月がね・・・綺麗」
95 名前:私はキミの月 投稿日:2003/10/16(木) 22:26
さっきまでは私より下の方にいたのにいつの間にかキミはジャングルジムの一番上に登って、空を見上げていた。
キミの姿を見て、私も空を見上げると久しぶりに見た満月が光っていた。
空には星が一つも無くて、悲しいほど真っ黒だけど大きい月が空を照らして薄青い光が何とも言えないほど、綺麗で幻想的だった。
「星が無いから、余計に綺麗に見えるのかな?」
キミの後ろに大きい満月があって、その光を浴びて優しく笑うキミは満月に飲み込まれてしまいそうで怖かった。
「星が無い夜があっても別に何とも思わないのに、月が無い夜って不安になるの。道が見えなくなって、1人ぼっちになりそうに思うの」


月が見えなくて怖いなら
私が月になってキミを照らそう
キミは一人じゃないって、教えてあげるから


ジャングルジムに登ると、届きもしないのに空や星や月に手が届きそうな気がしていつも空に向かって一生懸命手を伸ばしていた。
後でバカバカしく思って投げやりに笑うけど、本当は心のどこかで手が届かなかったことに悔しく感じる。
96 名前:私はキミの月 投稿日:2003/10/16(木) 22:30
月や星や空がどれだけ遠いか知っていても手を伸ばしてしまうのはどうしてもそれらを手に入れたいから。
他人が持っていないものを欲しがるのは欲しいものの良い所しか見えないし、自慢したいから。
手に入れたいものはいつだって遠く綺麗に見えるからこそ、手元に欲しくなるだけ。

だからキミのこともそう。
今、私がキミを欲しいのもキミが遠く綺麗だから。
ガラスのように壊れやすいから、この手だけで壊してみたくて
鋼のように固いから、この手でどうしてでも曲げてみたくて


――――手を伸ばしてみた。
97 名前:私はキミの月 投稿日:2003/10/16(木) 22:34
ほんの数段しか変わらないのにキミは遠くて
青い光に照らされるキミは光に包まれて今にも消えてしまいそう

「梨華ちゃん」
だから、キミを呼んで捕まえた。
「なーに?ごっちん」
私の腕の中でくすくす笑うキミにただ微笑みだけ返した。

手に入れたいものはいつだって遠くに感じるけど実はすごく近くにあって、手に入れるためには陥っていた錯覚から抜けるだけ。

月が見えなくて道が分からないなら
私を呼んで。
私が月になって、キミを照らそう。
月がいつも君を見守るように
私が君を見守るから。

―――だから


「月がなくなっても、私が梨華ちゃんを照らすから」



                          END
98 名前:私はキミの月 投稿日:2003/10/16(木) 22:36
【あとがき】
いしごま、後藤さん視点でした。
何となくいしごまが書きたくなって書いたものです。
テーマは『夜の公園』と『月』
99 名前:tsukise 投稿日:2003/10/19(日) 15:58
更新お疲れ様ですっ!
甘いハズなのに、どこか切なくて惹き込まれてしまいましたっ!
いしごまも、中々萌え…(ry でなくて(爆
ごっちんの心理描写がとっても丁寧で、かなり気に入ってしまいました♪
次回も楽しみにお待ちしていますねっ!
100 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/25(土) 22:20
>tsukise様
毎回のように褒めていただいて本当に舞い上がってますが・・(笑
いしごま、最近私も萌えてます(爆
では、またのご来店をお待ちしております♪

今日1本目の更新。
初おがたかで「いっつ あ れいにぃ でぃ」
101 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:23
雨が降ったなら
傘を差して、どこかへ行きましょう
青・黄・ピンク・赤・緑・・
色とりどりの傘を差して
あなたと出かけましょう
そうすれば憂鬱な気持ちなんて雨が洗い流してくれるから。


      「いっつ あ れいにぃ でぃ」


102 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:30
「―――雨」
青色のカーテンを少し開けて外を覗いていた愛ちゃんがポツンと呟く。
「あーいっぱい降ってるねー」
愛ちゃんの肩越しに窓ガラスの外を見つめて、私も独り言のように言う
せっかくの休日に朝から雨が降る、と言うのはとても気分がよくなくて、湿気のせいで少し湿っているベッドにごろんと寝転がってシーツに包まる。
さっき洗濯しようとシーツを換えたばかりだからか、パリパリした感触が少しむずむずして、私はしかたなくタオルケットに身をくるみ、まだ外を見ている愛ちゃんを見た。
「今日、そうすんの?」
いつまでたっても何も言わない愛ちゃんに痺れを切らして私は早口にそう言う。
短気なのか、待っているのが出来ない性格なのかこういう雰囲気などは嫌いだ。
タオルケットの中はじんわりとちょうどいい程度に温かくなっていて、軽く目を閉じるとすぐにでも寝てしまいそうだ。
元々今日はあさ美ちゃんと理沙ちゃんと愛ちゃんとの4人で隣町の少し大きな公園へ行ってピクニックをする予定だった。
雨が降ったからと急に雨を止ますことも出来ないから、これからの予定を愛ちゃんに聞いただけ。
103 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:37
「雨降ったからピクニック行けないでしょ?買い物でも行く?」
最近、近くに出来た大きなショッピングモールに愛ちゃんが行きたい、と言っていたのを思い出して言ってみるけど愛ちゃんの反応は無しに等しい。
ふぅ、とため息を一つ吐くと息は白くなってもわっと雲のように宙に浮かんで消えた。
「―――外、見て」
いつの間にか私を見ていた愛ちゃんが言った言葉は何故か綺麗でさっきの白い息みたいに雨音にかき消されて消えた。
包まっていたタオルケットから抜け出して、愛ちゃんの隣に立って窓の外を見る。
日曜の授業参観なのか小学生と思われる大群が列をきちんと作って歩道を歩いていた。
色とりどりの傘と模様が歩道の中に勢ぞろい。

「外、行こっか?」
何となく外に行きたくなって何となくあの集団の中に入りたくなって、愛ちゃんの返事も聞かず愛ちゃんの手を引っ張って外を出た。
104 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:43
傘を差すとポツ、ポツと傘が大粒の雫を受け止める。
むせ返るような雨の匂いが辺りに充満していてほんの少し顔をしかめる。
小学生の大群の中に紛れ込んで、歩く色とりどりの歩道の中に見つけた小さな水溜り。
同じ世界を映す水面の向こうは新世界なんだろうなぁーと何となく思う。
「麻琴ー、どこ行くん?」
少し大またで歩いているせいか、歩幅が小さい愛ちゃんは少し早足
「公園。行こうよ、雨降ったって傘があるんだから」
にこっと微笑んで、傘の外に片手を出した。
片手で水滴を集めようとするけれど閉じたはずの指の隙間から水滴が逃げていく。
冷たい感触、それはすぐに生ぬるくなって手の溝を伝い、アスファルトに落ちて溶ける。
見上げた空は雨のフィルターを通ると銀色に見えた。

雨が降ったって
傘を差して外へ出かけましょう
大好きなあなたと一緒なら
雨だって、雪だって、あられだって
何も気にしない
105 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:47
濡れて黒くなったアスファルト
遠く聞こえる雨の音
滴る水滴がついたどこかの看板

雨が降って憂鬱なら
雨の中へ出かけましょう
憂鬱な気持ちなんて雨が洗い流してくれるから


だから雨を嫌いにならないで
今から皆を呼んで
たくさん遊ぼう
雨の中のピクニックだってきっと晴れの日のピクニックよりも楽しいはずだから


傘を差して
あなたと雨の中


――――今日は雨模様。



いっつ あ れいにぃ でぃ  おわり。
106 名前:いっつ あ れいにぃ でぃ 投稿日:2003/10/25(土) 22:49
【あとがき】
初おがたか。
自分はたかこん派なんでおがたかなんてーと思っていたらいつの間にか書いてた作品(マテ
雨の日のピクニックっていよなぁーとか何とか思いつきで(笑
テーマは『雨』と『傘』と『水溜り』
107 名前:tsukise 投稿日:2003/10/27(月) 22:04
更新お疲れ様です♪
ほのぼのですね〜♪おがたかって二人ともしっかりしてるようで
どっかぬけてたりしますしね(笑
雨の情景がハッキリ浮かんできて、やっぱりヒトシズクさんの
描写が凄く好きだなぁ〜と改めて実感(ぉ
次回も楽しみにしていますので頑張ってくださいね♪
108 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/29(水) 22:58
とりあえず、今日はレス返しだけ、と言うことでご勘弁を(笑。
明日には2本ぐらい更新しますので。。。

>tsukise様
毎回のご来店本当に嬉しく思っております〜♪
初おがたかだったんですが、喜んでいただけたようでホッとしてます〜
これで調子に乗ってまたおがたかを書いてしまいそうです(マテ
実はヒトシズクは雨が大好きでして、今こうやって読み返してみると雨系の作品が多いんですが。。(笑
その好きな雨にそんなに褒めていただいていいのでしょうか?(w
では、又のご来店お待ちしております〜♪
109 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/10/30(木) 16:08
では、予告どおりに(めずらしい・・)今日1本目の更新。
みきあやで藤本さん視点。
「Love is a game」
110 名前:love is a game 投稿日:2003/10/30(木) 16:10
何かを手に入れたくて
何時も遠くばかり見渡してた
手に入れたモノは手放したくなくて
何かを手放さなければ手に入れられないモノを恐れてた
大事な今まで集めてきたモノが壊れてしまいそうで。

111 名前:love is a game 投稿日:2003/10/30(木) 16:16
命・友達・親・テレビ・お気に入りの服・アクセサリー・・・
大切なモノをあげてみれば数え切れないほど
そして手に入れたいものはただ一つ。
そのために何を失うのか怖かった、でもそれを手に入れたかった。

「みきたーん」
笑顔で私を呼ぶキミは私の心の中などまったく知らない。
どれだけ悩んで悩んで、迷って悩みぬいているのか知らないのは当然だけど、ほんの少しむかつく。
手に握り拳を作って、キミを軽く殴ろうとするけれどその手は誰もいない宙を切って、行き場のない手はそのまま一時停止。
次の瞬間ぽふっと私の胸の中に飛び込んできたキミによろけそうになりながらも笑顔を作る。
宙を切った手は当然の流れのようにキミの頭を優しく撫ぜていた。

ねぇ、キミを手に入れるために
私は何を犠牲にするの?
ねぇ、キミをこの手で捕まえるために
私は誰に何を差し出せばいい?
112 名前:love is a game 投稿日:2003/10/30(木) 16:23
キミが欲しくて
キミを手に入れたくて
いつもうずうずしてる
でも何を犠牲にするのか怖くて
心のどこかで何時も震えてる
何を犠牲にするのか分かれば怖がらなくて済むのに、と考えるけど
それをどこかで楽しんでいる私がいる。

人生はゲームだと、よく誰かが言うけれど
そんなもの最初っから道があってそれをただ進むだけの面白くない売れないゲーム
選択肢があったとしてもせいぜい2択か3択ぐらいで小さな子供たちがするゲームよりも簡単だし退屈。
それよりもキミを手に入れるか、入れられないかのゲームの方がよっぽど面白いはず
だって私が何か一つすると先が変わるから
だって私が何か一つしないと先が変わるから

敵との勝負の行方も道も決まったゲームなんてゲームじゃない
この手で一つずつ先を変えられるのが本当のゲーム

キミを手に入れられたら私の勝ち
キミを手に入れられなかったら誰かの勝ち
そんなもの知らないし知る必要も無い。

私はただゲームをプレイするだけでつまんないエンディングなんていらない。
エンディングをやってる間にキミと逃げてまたゲームを始めればいい
のんびりとした時間なんて私に入らないから。

113 名前:love is a game 投稿日:2003/10/30(木) 16:27
キミを手に入れたくて
何時もゲームを始めるけれど
何かに負けてばっかりで腹が立つ
でも、何か1つ進歩すると嬉しくて
1つキミに近づけた、と舞い上がって
また何かに負けて
キミから1つ遠くなったと思って落ち込んで・・・の繰り返し。

キミを手に入れるために
何か一つ犠牲にするならば
犠牲にすればいい
キミを手に入れた後に
また取り返せばいいだけの話
私は欲張りだから。

怖がる必要なんて無かった
ほんの少しの発送の展開をすれば誰も知らないゲームの裏技になるから


ゲームは難しくなきゃ、ゲームじゃないんだよ。


また始めよう、何度も続けよう、いくらでもチャレンジしよう



―――キミを手に入れるために。



おわり。
114 名前:love is a game 投稿日:2003/10/30(木) 16:29
【あとがき】
特にエピソード(?)とかは無いんですが、ミキティは欲張りだと言う事を頭の中に置いて書いた作品。
最初はあまあまにしてたんですが、ミキティっぽくなかったのでこっちに変更(笑
ミキティはやっぱこういう方が似合うのかなー?と思ってみたり。。。
テーマは『欲張り』とミキティらしさ、で。
115 名前:tsukise 投稿日:2003/11/01(土) 08:24
更新お疲れ様ですっ!
みきあやっ!いいですね〜っ!!
こんな乱暴な恋もミキティだから様になるってカンジで♪
でも、どこか繊細なトコロがかなり好きです〜♪
次回も楽しみにしていますので頑張ってくださいねっ。
116 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/01(土) 10:23
>tusukise様〜
いやー毎回のご来店本当にありがとうございます〜☆
本当に嬉しすぎて毎回喜びの舞を踊らさせて頂いております〜(マテ
みきあや、最近の私のブームです〜♪
では、又のご来店お待ちしております〜


では、ここで今日1本目の更新
いしごま、後藤さん視点で
『秋桜』
117 名前:秋桜 投稿日:2003/11/01(土) 10:28
「散らないで」
風に吹かれて1枚、又1枚と散っていく桜の花びらを見てあなたはぽつりと言う。
「無理だよ」
苦笑しながら、あなたの冷たい細い手を握って私は言った。
こうしてる今も風は吹き、桜は悪戯に散る。
空中に舞う淡いピンク色はゆらゆら揺れて、ゆっくりと円を描きながら落ちる。

散らないで
あなたはそう言う
時間と共に散っていく
秋桜に向かって
寂しそうに

「桜は散るために咲くんだから」
何もいわず桜を見続けるあなたの横顔に言う。
「そんな事言ったらダメだよ」
夕暮れの赤い光とオレンジの光があなたの横顔を色づけていく。
強くも無く弱くも無い風は、花びらと悲しみを運んで、つれさっていく。
118 名前:秋桜 投稿日:2003/11/01(土) 10:34
「じゃあ」
あなたは桜を見たまま
一枚、一枚、散っていくピンク色
「桜、咲いて、もっと咲いて、は?」
オレンジ色に少し茶色が混じった頃に途切れ途切れに呟かれたあなたの言葉。
「さぁ」
あなたの横顔を相変わらず見続けたまま簡潔に答えた。

「散らないで、もっともっといっぱい咲いたままでいいのにね」
少し笑った口元
揺れる花びら
散る桜色

桜咲けよ、もっと咲け
桜散れよ、もっと散れ

「運命は変えられないんだよ。だから、この桜は咲いて散る。それだけ」

青黒い色の空が、どんどん広がっていく。
透明な水に絵の具のついた筆を少しずつ入れていくように。
色が色を侵食して、あなたの横顔も色づいていく。
119 名前:秋桜 投稿日:2003/11/01(土) 10:39
「桜は可哀相ね」
あなたはまだ桜を見たまま。
「それが使命だから」

舞う花びらに
そっと手を伸ばして
捕まえた。
そっとポケットに押し込んで、ふっと笑う。

「来年の秋もこうやっと咲いて散るのも運命?」
少し悪戯な笑顔を浮かべて、私を見るあなた。
「そうかもね」
私もあなたにつられるように笑う
「じゃ、来年もこの桜を見に来るのが私達の運命にしよっか?」
「いいね、それ」

そっと空を見上げてそう答えた。

さくら咲く
木の下で
あなたともう一度
この秋桜を見れるように
この空の下にいれるように、と願った。


秋桜の下で。



おわり。
120 名前:秋桜 投稿日:2003/11/01(土) 10:43
【あとがき】
秋頃に書いたんですが、仕上げるのに最近までかかりました(笑
ちょっと石川さんがいじめっこキャラですが、許してください。。。
それと後藤さんも少しキャラが違うような気が・・・ま、それは(ry
特にこれと言って無いんですがiNSPさんの曲が元です。はい。
曲名は何となく言いません、時間がある方は探してみてください(笑
テーマは『秋桜』と『いしごま』で。
121 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/01(土) 22:30
いしごまは掴み所がなくていいですね
ヒトシズクさんのいしごまって好きです
122 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/02(日) 21:18
>121 名無し読者様
そう言って頂いて本当に嬉しいです♪ありがとうございます☆
いしごま、いいですよねぇ〜^^

では、今日の更新1本目。
たかこんで、高橋さん視点。
『簡単な寓話』
123 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:20
例えばそれは簡単な寓話。
魔女に眠らされたお姫様はカッコイイ王子様に起こされた。


―――それならお姫様と手を取って逃げた少女の場合は?

124 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:27
(重たい・・・・)
瞼は閉じたまま、頭のどこか一部がそう呟く。
やっと眠れたのに・・・とぼーっとした意識の中そう思う。
真っ暗な目の前、手探りで重さの原因を探したってそう簡単には見つかりはしない
頭の半分くらいが、まだ眠たい、と指令を出すけれど一度開けた瞼をもう一度閉じることを何となくめんどくさく思う。
ふと、読んでいた本をお腹の上に乗せて寝ていた様な気がして、それを手探りで探す。
でも、手の先に触れたのは固い冷たい本じゃなくて、あったかくて柔らかい人の身体・・・・

「ぅえぇぇぇぇ!???」

思わずそんな声を出して、重さも忘れて上半身を起き上がらせる。
よく見てみると、私の上に覆い被さるようにして眠る人が一人・・・

125 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:38
ありえない。
そんな単語が頭をよぎる。
この人は今日、麻琴ん家にいるはず。
2人っきりで過ごすって麻琴がニヤニヤした嬉しそうな笑いを浮かべながら話していたのを覚えている。

―――まずは起こしとく?

誰に言うわけでもなく、何となく自分に問い掛けてみて私の上にのっかっている人の体を揺さぶる。
「んー・・・」
せっっかくの眠りを邪魔するな、と言わんばかりに顔をしかめて、1つ寝返りを打つ。
薄明かりの下で見えた彼女の寝顔はため息が出るほど綺麗で、思わず手を伸ばして、ハッと我に返ってその手を宙に彷徨わす。
(いくじなし)
自分で自分に自嘲気味に笑ってみても虚しいだけ
「あさ美、あさ美ー?」
何度呼んでも起きない彼女にため息を一つ吐いて、ふっと思いついた1つのこと。
【王子様は眠っているお姫様にキスをして、呪いを解きました】
やってみる?
いいよね・・・寝てるんだし・・・
ドキドキ、バクバク
心臓が脈打つ音が、彼女にも聞こえてしまいそうに思う。
ゆっくりと顔を近づけて、そっと・・・

「残念でしたっ」
見たのは今にも笑い出しそうな彼女のドアップ
126 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:46
「あ・・・あさ美?!起きとったん?!!!」
ばっと後ろに飛びのいて、早口にそう言う。
頭がついていかない。
「んーさっき起きた。てか、愛ちゃん・・・逃げよう?」
何を言いだすんだ、この子は。
人をビックリさせといて、この子はまた私をビックリさせるようなことを言う。
「何で?ってか何処に?」
「麻琴から。だって、私が好きなのは愛ちゃんなのに分かってくれないんだもん」
少しすねたような顔をしてあなたは笑う。
たぶん今の私の頭には?マークが100個は余裕でついていただろう。
「え・・だって・・・」
「いーの!話は後で。はい、着替えてくるー」
はい、はい、とあさ美に背中を強引に押されて私は着替えて、あさ美の差し出した右手に何も分からずつかまって、逃げ出した。
「ねぇ、愛ちゃん。私これから世界で一番嘘つきな少女になるよ」

127 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:49
例えばそれは簡単な寓話。
魔女に眠らされたお姫様はカッコイイ王子様に助けられた。


―――それらな、お姫様と手を取って逃げた少女の場合は?

そんなの簡単。
真っ暗な夜が2人を隠している間に2人は何処までも逃げて永遠を手に入れるの。

そう、それは簡単な寓話。
あなたと私の。

「―――世界で一番嘘つきな少女達になる、やろ?」


おわり。
128 名前:簡単な寓話 投稿日:2003/11/02(日) 21:53
【あとがき】
こういう話が好きなんでよ、ヒトシズクは(笑
関係は微妙なたかこんで紺野さんに恋してる小川さんみたいな感じで。
小川さんが名前だけで出演して可哀相ですが(マテ
テーマは『嘘つきな少女』と『寓話』
129 名前:ゆうゆ 投稿日:2003/11/04(火) 00:28
いいですね、何かw

もて紺ですし。
紺野推しとしては、うれしいばかりです♪

おがこんも、たかこんも好きですよ〜
期待してます
130 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/08(土) 13:19
>ゆうゆ様
レスありがとうございます〜♪
もて紺ですね〜^^実はこういうの好きでしたり(マテ
では、又のご来店をお待ちしております☆

今日の更新1本目
高新で『umbrella's love』
131 名前:umbrella’s love 投稿日:2003/11/08(土) 13:27
傘はキライ
雨もキライ
でも、あの子は好き、大好き
全部の理由はなんとなく。


今日の朝見た天気予報ではメガネのおじさんが『全体的に晴れでしょう』と言っていた。
嘘ばっかり。
学校の脱靴所でそう心の中で呟いた。
周りは雨、めちゃくちゃの大雨。
私のように顔をしかめて外を睨みつける生徒やら、カバンを頭の上に載せて雨の中走っていく生徒らの姿が見える。
ふぅ、と軽くため息をついて、雨の中を歩いて帰る。
雨の匂いがイライラするほど胸の中に入っていって、意味もなくイライラする。

靴の中に入ってきた雨の雫が歩くたびピチャピチャ喜んで
空から落ちる雨はザーザー音を奏でる

何かの歌みたいだとふと思って
雨の日によくあの子がよく歌っていた歌を思い出す。
132 名前:umbrella’s love 投稿日:2003/11/08(土) 13:33
「―――愛ちゃん?」
うるさい程の雨の音が一瞬聞こえなくなって、変わりにあの子の声が聞こえてきた。
声がした方をすばやく振り返るとあの子がいて私を見ていた。
「あ・・・里沙・・・」
ザーザー降る雨が私を濡らして、里沙は差していた傘の中に私を入れてくれた。
「傘、忘れたの?」
にっこり微笑んで聞いてくる里沙に私は頷くしか出来なかった。

充満する雨の匂い
あの子が差す赤い色の傘

ピチャピチャ水が笑って
ザーザー雨が私たちの間を裂こうとするから
私はぎゅっと彼女を抱きしめた

「好きだよ」

133 名前:umbrella’s love 投稿日:2003/11/08(土) 13:35
傘は少し好きになろう
私の持っている傘と同じ色の傘をあの子が持っていたから
雨はあのこと同じくらい好きになろう
私にきっかけを与えてくれたから
でも、あの子の方がもっと好き
大好き、この世界よりもっと大きいほど好き

全部の理由はあの子が好きだから。

おわり
134 名前:umbrella’s love 投稿日:2003/11/08(土) 13:36
【あとがき】
なんでしょう?これは(マテ
あー・・・ま、意味はないということで。。。
テーマは無しです〜(逃
135 名前:tsukise 投稿日:2003/11/09(日) 12:51
更新お疲れ様ですっ!
ぐはっ!見に来れなかった間に3編もっ!
いしごまに、たかこんに、りさたかまでっ!
いしごまの不思議な雰囲気に惹き込まれ、たかこんのイタズラっぽい
話に頬をゆるめて、りさたかのちょっと甘切ない話にノックダウンです(ぉ
いつも楽しく拝見していますので、これからも頑張ってくださいね
136 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/15(土) 12:15
>135 tsukise様
ノックダウンですか〜それはよかったです♪
更新は遅くなりますが、どうぞよろしくお願いします〜
では、またのお越しをお待ちしております♪
137 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/15(土) 12:17
今日の更新1本目。
たかこんで高橋さん視点。
『行方』
138 名前:行方 投稿日:2003/11/15(土) 12:23
―――真っ青な空を流れる真っ白な雲は何処へ向かう?


          『行方』


「わー速ぇー」
茶色いフローリングにごろんと寝転がって、閉めきった窓の内側から空を見上げてそう言った。
真っ青なスカイブルー色の空に真っ白な雲がいくつも浮かんでは台風の為か強い風に吹かれて高速で空を滑って移動する。
「風が強いからね」
床から数10cm上のベッドに寝転がって私と同じように空を眺めながら言うあさ美はいつもののんびりとした口調。
窓から差し込む光が床を明るく照らして、クーラーで冷やした床をすぐ温かくする。
茶色く染めたあさ美の髪が太陽の光に透かされて余計茶色く見えて白い肌がぼやけて見えた。
「雲にさ・・・乗りたいなぁ」
床に肘をついて、流れる雲を見ているといつだって思うこと。
さっきまで見ていた大きな入道雲はいつの間にか遠く彼方へ行ってしまってもう小さい。
139 名前:行方 投稿日:2003/11/15(土) 12:30
「乗れないよ。雲は水蒸気なんだから」
相変わらずな口調のあさ美は私の夢のような言葉をジェンガや積み木のように容易く壊してしまう。
「知ってるよ、それくらい」
中学生だって知ってるよ、と頭の中で付け加えた。
少しくらい夢に付き合ってくれたっていいじゃん、と口の中でモゴモゴ言って横目であさ美を盗み見た。
大きな黒い透明な瞳にはどんな種類の色も映っていなくて、ほんの少し見とれた。
時々あさ美は綺麗な横顔をする。
ただ綺麗だけのそれ以外何も思わせない表情を。
「夢って・・・素敵なものだよ。それは現実では叶わないものであるからこそなおさら輝いて見えるんだから」
淡々とした口調が何か授業中に国語の教科書を読んでるみたいな錯覚に陥る。
クーラーの風の音にあさ美の言葉が少しずつかき消されて本の中から抜粋されたような言葉の最後には、ほんの少しの単語しか残らない。
「あさ美ってさー・・・現実派だよね」
首をひねって、あさ美を見て言う。
あさ美は私の視線に気が付いたのか、首をひねって私を見る。
「それじゃ・・・愛ちゃんは空想派?」
少し冗談気味の言葉が私たちに笑顔を戻してくれる。
140 名前:行方 投稿日:2003/11/15(土) 12:36
夢だって、空想だって、現実だって
そんなに変わりはないさ。
そう心の中で呟いて笑った。

さっきまで見ていた雲はいつの間にか姿を消して、さっきの雲があった場所には違う雲がいて不思議な気持ち。

ねぇ、流れる雲は何処へ向かう?
それはあなたの気持ちを知るよりももっと困難で
あなたと私に笑顔を取り戻すよえいもっと容易い

「ねぇ、あの雲何処で行ったと思う?」
「さぁ・・・水になったとか?」
「もっと夢的に答えてよ」
「んー・・風と一緒に旅行したとか?」
「あさ美ーそれは無理があるよ」
「えー?そう?」

流れる雲は
何処へ向かう?


おわり。
141 名前:行方 投稿日:2003/11/15(土) 12:38
【あとがき】
この話の設定は夏、ということで(マテ
夏に書いたんですが、今やっと出来上がって・・と言ういい訳。。。
ちょっとそっけない紺野さんと夢見る少女の高橋さんっつーことで。
テーマは『行方』『雲』
142 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/16(日) 12:18
ちょこっと中編を。
いしごま、後藤さん視点で
『Dont’t return,Don’t come back』
143 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/16(日) 12:19
人はみなこの恋のことを
『浮気』などと決め付けて
あらかさまに嫌な顔をするだろう
人の心も知らないで。


144 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/16(日) 12:26
校門にもたれかかって、少し斜め上を見上げる。
私と同じ制服を着た名前も知らない人達がチラホラ視界の隅に入ってキャハハと女子高生特有の甲高い笑い声が耳を掠める。
右手の中の携帯にはほんの2〜3分前キミから届いたメールが開いたまま。
もう1度そのメールが届いた時間を見ようと、携帯を開くと同時に背後から聞きなれた声が届く。
「待った?」
とっさに振り向くと、少し息を弾ませたキミの姿。
「特にたいしては」
携帯を閉じてブレザーのポケットに突っ込む。
学校の壁にかけてある大きな時計を見て少し不機嫌そうに答えた。
キミは少しほっとしたように笑うと「行こっか?」と私の腕をとって先を歩き出す。

この人はいつでも年上だからとお姉さんぶりたがる。
ほんの少しだけ年が違うだけなのに。
ドジばっかりするのに
泣き虫なのに

ま、そういうトコも可愛いんだけどね、と心の中で呟いて大きく1歩踏み出す。
145 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/16(日) 12:36
ほら、もうキミと同じ場所に立ってる。

「行きたいトコある?」
ポケットの中で携帯をパカパカ開いたり閉じたり繰り返しながら聞く
嬉しい時の自分の癖だとわかっていても、止めることはしない。
「んー・・・ないなぁ。真希ちゃんは?」
ふふっと子供のように笑って、梨華ちゃんは私に質問を返してくる。
2人きりの時だけ彼女が呼ぶ‘真希ちゃん’という言葉がくすぐったくて少し顔をしかめた。
「どこでもいーけど・・・うち来る?」
1人暮らしをしている私のうちに梨華ちゃんが来るのは毎回の行事のようになるくらいのこと。
146 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/16(日) 12:36
更新は分けてしたいと思います。
また、明日に。
147 名前:tsukise 投稿日:2003/11/16(日) 20:11
更新お疲れ様ですっ!
たかこん…どこかゆっくりした時間が過ぎる感じでいいですね♪
現実的だけど、ちょっとボケボケっとした発言に頬を緩ませました(笑
そして、中編のいしごま…出だしから気になるカンジですっ!
一体、どんな展開になっているのか楽しみにしながら次回をお待ちしてます!
ムリのない程度に頑張ってくださいねっ♪
148 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/17(月) 22:36
>tusukise様
いしごまこれから完結へ向かって行きますので、ごゆっくりどうぞ♪
いえいえ、無理などと言うのはtukiseさんに言う言葉でありまして・・
では、又のご来店をお待ちしております!
149 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/17(月) 22:39
「うん」
そう彼女が答えた後はたわいもない会話
昨日捨て猫がいたとか
おととい見かけた犬がクラスメイトの一人に似ていたとか
駅前にケーキ屋さんが出来たとか
そんなのばっかり。



・・・・・


150 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/17(月) 22:45
「ね?」
「んー?」
「昨日何してた?」
キッチンでお茶を入れていた私へ梨華ちゃんが問い掛けてくる。
普通の会話なのに私たちの場合はそれが危険信号と言うか危険地帯の真ん中
「んー・・・結構普通にしてたよ。ね、お茶入ったよ」
めちゃくちゃ気まずい、と言う雰囲気が周りに溢れ出して、私はそれを拭い去るように何もなかったように話題を変えて、私達は危険地帯から逃れる。
危険信号が鳴り響いて、危険地帯に踏み込んで、逃れての繰り返し。
それは私たちに恋人がいる、と言う事実があるから。
こうやって会っているのは、世の中で言う『浮気』ってやつ。
恋人は大切だし愛してるし大好き
でもそれと同じように梨華ちゃんのことも大切だし愛してるし大好き
梨華ちゃんも私のことそう思っているからこんな関係が続いている。
151 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/17(月) 22:49
1歩動くとすぐにでも積み木やジェンガのように壊れてしまうそんな関係
私たちが危ない面白いリアルなゲームのような恋を続けているのは臆病だから。

「ねぇ、あさって遊びに行こう?」
「あー・・・ごめん、その日はちょっと」
「んじゃ、その次の日は?」
「うん、その日にしよう。どこ行きたい?」

――――

私達は
この場所から動けなくて、動きたくない
だから臆病者を装って
もう1つの恋に燃えるの

もう、この恋を手放せない
キミのいない世界なんて
私には見えないし考えられない

もうこの恋がなかった場所になんて

もどりたくない。

もう、戻れない。
もう、戻らない。


おわり。
152 名前:Don’t return,Don’t come back 投稿日:2003/11/17(月) 22:51
【あとがき】
別に分ける必要もないほど短いなぁーと今更ながら思ってしまいました
結構重たい話なのにそう考えられないのは何故ですか?(苦笑。
てか、いしごまは難しいですね。。。特にごとーさんが(笑
ごとーさんつかみ所無いに等しいから・・・(大汗
テーマは『罪』で。
153 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/19(水) 11:22
いしごまの偲ぶ恋って絵になりますね
相手はだれだろう(^^;
ほんとのごとーさんは子供っぽいですけど
作者さんの描く大人な雰囲気もある不思議な人ですね
154 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/24(月) 12:37
>153 名無し読者様
どうもありがとうございます♪
相手はご自由に、ということで(マテ
ごとーさんは色んな雰囲気を持ってる方で、子供っぽいのや大人びたのなど何でも似合いますよね^^
では、またのご来店をお待ちしております♪

今日1本目の更新。
あやみきで『順調計画』
155 名前:順調計画 投稿日:2003/11/24(月) 12:40
雨が降ったら、サヨウナラ
雨が止んだら、私はもういない

溢れ過ぎた嘘に1つくらい新しい嘘を加えてもそんなに変わりはない、例えそれが大きすぎたとしても。
そろいすぎた駒は捨てればいい、不足しすぎた駒は拾えばいいだけ。


        『順調計画』
156 名前:順調計画 投稿日:2003/11/24(月) 12:47
降水量80%の日に私はキミと隣町のデパートへ買い物に行く。
いつもは電車を使うけど、傘を1本持っただけで歩いて出かける。
計画は順調、今にも雨を落としてきそうな重たい空は重要項目
丁度線路に通りかかった所で私は走り出す。
事前に調べておいた結果から、今は赤いランプが点滅中
降りてくる遮断機とうるさい音は気にしない
私はキミを残して遮断機の向こう側
電車は来ない、タイムリミットはあと1分30秒
雨は予想外に早く降り出して、大きな雫が頬を伝う
「もうお別れだよ、サヨウナラ」
大きな声を張り上げて、視線はどこか遠く、キミはもう見ない
電車がやって来る
雨は急に激しく降り出す
キミの姿はもう見えない
見えるのは次々と移り変わっていくオレンジ色の電車体
もう、何も聞こえない
ただ聞こえるのはうるさいガチャガチャ言う電車独特の音

157 名前:順調計画 投稿日:2003/11/24(月) 12:52
雨は激しく降ったまま
透明なコンビニ傘はキミの手に
最後の電車の車両が目に映る前に私は走り出す
キミの方はもう振り返らない


『亜弥ちゃんって泣けないんだって。泣こうとしても何かに躓いて前に進めない』
『―――きっかけを作ばいい訳?』
『美貴ちゃんにしか出来ないっしょ?』

涙を知らないキミは童話の中のお姫様
笑顔の似合うキミは涙を知って、それ以上に笑顔が似合うようになる
私はただのきっかけ。

雨が降ったら、サヨウナラ
雨が止んだら、私はもういない
キミは私の変わりに涙を手に入れる
溢れすぎた嘘は私の罪
計画は95%成功
大体は上出来
順調計画



――――キミは泣けていますか?


おわり
158 名前:順調計画 投稿日:2003/11/24(月) 12:54
【あとがき】
あやみき、みきたん視点でした。
何となく思いついたもの。最近雨ばっかりで(苦笑。
あややが泣けるようにみきたんがきっかけ(別れ)を作ったと言うお話。
テーマは『計画』
159 名前:tsukise 投稿日:2003/11/25(火) 23:05
更新お疲れ様です…。
い、痛いですね…。けど、それが1つの『優しさ』の
形なのかもしれないですね…うぅ…。
次回も楽しみにしていますねっ!
160 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/01(月) 22:23
>tsukise様
最近みきあやにハマっておりまして(笑。こういうの好きですね(爆
『優しさ』には色々な形がありますからねー・・・ま、これはその一つってことで(苦笑
では、又のご来店お待ちしております♪


では、今日の更新。
紺→後で紺野さん視点
『人魚姫』
161 名前:人魚姫 投稿日:2003/12/01(月) 22:30
―――人魚姫のように
泡になって消えてしまったら
あなたは私を少しでも愛してくれるでしょうか?―――



「紺野?」
少し不安げな私を呼ぶ声がして振り返ると後藤さんが笑って立っていた。
「お久しぶりです、後藤さん」
ふにゃ〜と独特の優しい笑顔を浮かべた後藤さんにあなたに会った嬉しさがバレないように微笑み返した。
「久しぶり〜紺野。あ、童話とか興味あんの?」
何のことかと思って、あなたが見ている視線の先を見ると私が持っていたグリム童話の本。
「さっき愛ちゃんに借りたんです、後藤さんは興味あるんですか?」
深緑色と黒色を混ぜたような重い色の表紙をじっと見つめているあなたに私は少しの間見とれてしまった。
「ん?あー・・・人魚姫は好きだなぁ」
何かを思い出すように伏せられた瞳に、優しげな色が浮かんでドキっと心が弾む。
あなたが私を見てくれるなんてありえない現実なのに。。。
「人魚姫って、あの泡になっちゃうお話ですよね?」
162 名前:人魚姫 投稿日:2003/12/01(月) 22:36
さっき愛ちゃんからあきれるほど人魚姫の話を聞いたのに霧がかかったようにおぼろげで曖昧で上手く思い出せない。
小さい頃聞いたり見たりした絵本の人魚姫とグリム童話の人魚姫のお話が少し違うことを思い出してそう答えた。
「うん、何かねぇすっごく頭に残って離れないんだ。紺野はまだ読んでないでしょ?読んだら分かると思うよ、ごとーの言ってること」
ふふっとお姉さんみたいに笑って、あなたは少し先の藤本さんの所へ駆け出してしまった。


頭に残って離れない
それは、私にはあなたのことしかない
離れなくて、離れなくていつも溺れてる
そこの見えないあなたの海で

あぁ、また溺れてしまうんだ
水なんか形やカケラもなくても、あっさりとあなたの海の中に沈められて
口から吐き出される息は白い泡になって水に溶け、私の身体はどんどん沈んでいくばかり
163 名前:人魚姫 投稿日:2003/12/01(月) 22:44
泳ぎなんか得意じゃない
いつも苦し紛れに手足を動かしてもがいているだけ
息継ぎだって上手く出来ない
ぎゅっと目を固く閉じて赤ん坊のように小さくなるだけ

あなたが他の人と話をするのを見るたび
人魚姫のように泡になれたら、といつも思う
そうしたら、こんなにも苦い想いをしないでもすむのに、といつも苦笑い


私はゆっくりと泡になって
ほんの少しずつだけど
いつかは消えてしまう
泡になっていく時間はどんなに願っても
声を押し殺してあなたの名前を呟いて泣いたって
戻せない
これはほんの少しの罪と罰と泡になる薬の副作用

あなたの海の底に背中があたっても
このまま泡になり続けて息を吐き続けるなら
私はどこまで沈んでいけるのだろう?

何も見えないほどの暗闇は
私の苦しげな呼吸すら
ペンキで真っ黒に染め上げて
何も感じさせない
怖いなんて思わない
それすらもどこかと置くの果て
暗い
感じない
見えもしない
いつかは私も染まっていくだろう

夢も見ないで
現実も見ないで
見えない水の中で先を見ることも出来ないで
ただただ
あなたを想う

助けて、何て思わない
いつか生ぬるい酸素を吸い込んで荒い息を整えることが出来るなんて思いもしない
いいじゃない
あなたに愛してもらう方法なんて、もうないの

苦しくたって平気
一人ぼっちだって平気
こぽこぽ
溢れていく酸素に微笑んだ



あれ?
どうして涙が出るんだろう?



END
164 名前:人魚姫 投稿日:2003/12/01(月) 22:48
【あとがき】
切なめの紺野さんです。。
人魚姫の本を読んで思いついたんですが・・・紺野さんのキャラじゃねー(笑
後藤さんもあんま出てきてないしね・・・(汗
言い訳でこれは後紺じゃないっつー訳で(爆
テーマは『グリム童話』と『人魚姫』です。
165 名前:名無し 投稿日:2003/12/12(金) 22:27
こういうの弱いんだよなー 泣いちゃいそうだ。
やっぱり作者さんの築きだす世界はすごいなぁ、好きだなぁと再確認
次回作も楽しみにしてるよ。
166 名前:tsukise 投稿日:2003/12/17(水) 23:12
せ、切ないですね…紺野…。
どこか物悲しい『人魚姫』の話の雰囲気がそのままでてて
すごくイイ感じです…。
紺野の心理描写にすごく惹きこまれてしまいました…。
次回も楽しみにお待ちしていますねっ
167 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/19(金) 22:15
>165 名無しさん
そう言って頂いて本当に嬉しいです♪実はこういうのが好きでして、私も。
これからもどうぞよろしくお願いします。
では、またのご来店お待ちしております♪

>166 tusukiseさん
『人魚姫』はヒトシズクの好きな童話の一つでして、雰囲気が出てると言って頂いて本当に嬉しい限りですっ!
私は切ないのしか書けないみたいです・・はい(ぇ
では、またのご来店お待ちしております♪

久しぶりの更新
おがたかで小川さん視点
『青い水と絵の具と花火』
168 名前:青い水と絵の具と花火 投稿日:2003/12/19(金) 22:22
白い風船に青い絵の具を入れて
ライフル銃で撃ってしまえ
透明なガラスの水槽に青い絵の具と水を入れて
線路の上に置いて電車に跳ね飛ばされてしまえ

飛び散った風船のカケラと
青い絵の具が花火のように四方八方に飛んで
そして、落ちていく

割れたガラスの破片と、青い液体が
パーンと乾いた音を立てて
飛び散る花火のように散っていく

青い水は私に近い場所でほんの少しだけ空のように浮かんで
放射線を描いて次第に地面に近い場所で空のようになる。
透明だったガラスには青い液体がついて空中でその液体を落としていく

空中に投げ出されたガラスは熱いほどの太陽の光を浴びて
白く黄色くオレンジ色のような綺麗な光を作るけど
それはほんの少しだけのことで
すぐに地面に叩きつけられて
ガラスの破片は粉々に潰れる。
169 名前:青い水と絵の具と花火 投稿日:2003/12/19(金) 22:27
青い水も茶色い土の上に青い水玉模様をいくつか作って
奇妙な模様を私たちに見せるだけ
白い風船のカケラはゆらゆら風に吹かれて、白く薄っぺらい紙のように空中のお散歩を楽しむ。

「花火みたいだね」
呟くキミの周りにも奇妙な模様が広がっていて気持ち悪い。
「あまり綺麗じゃなかったけどね」
青い水玉の上に足で砂を気まぐれにかけてやった。
乾いた砂に水が浸透して、また青く染まる。
「実験だからいいんだよ」
くすっと笑うキミに私も笑って空を見上げた。
殺気まで浮かんでいた青い花火はもう姿、形もなくてただ空色の空が今日も何も変わらず浮かんでいるだけ。


「―――今度はいろんな色を使って、虹にしよっか?」


青い青い空に作った私たちの実験花火は
もう消えた。

end.
170 名前:青い水と絵の具と花火 投稿日:2003/12/19(金) 22:30
【あとがき】
気まぐれに書いた作品。おがこんはどうしても友達関係にしかならない(汗。
娘。のサスペンスドラマの紺野の『双葉』が気に入って書いたやつと思われる。
テーマは特になし。ってか、あとがきも特になし(笑。

171 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/19(金) 22:32
2本目の更新。
田亀で田中さん視点。
『Promise you』
172 名前:Promise you 投稿日:2003/12/19(金) 22:34
友達とかから聞く恋愛バナシはいっつも複雑で
聞くたび恋なんてしない、と思ってた。
だって、そんなに乙女チックじゃないし
めんどくさそうで
自分に向いてなくてすぐ飽きてしまいそうだったから。
複雑なのや
めんどくさそうなのは
面白くないからキライ

173 名前:Promise you 投稿日:2003/12/19(金) 22:43
「好き」
単純でストレートな言葉で幼馴染の絵里から告白されたのはほんの2日前のこと。
好きでも嫌いでもなかったから返事に困って何も気を使えなくて子供みたいに
「ごめん」
って繰り返してた。
曖昧な言葉ばっかり呟いて並べても自分じゃないような気がしたし絵里にも悪いような気がしたから。


「あー・・・」
寝転がっていたベッドの上で寝返りを一つ打って枕に顔を沈めた。
あの日から頭の中を日に日に埋めていくのは絵里のこと。
小さい頃から泣き虫なのに強がって人前で泣くことを嫌っていた絵里がはじめて私の前で泣いた。
「だから、どうしたんやけん」
一言に早口で呟いて、手の平で視界を覆った。

あの日からすごく変な感じに陥っている
言葉では言い表せない変な感覚
自分の周りが皆真っ暗で宙に浮いたようにフワフワしていて・・・

「れーなー?いるー?」
コンコン、とノックの音と絵里の声が聞こえた。
何故か絵里とは会いたくなくて無視しようとしたけれど
身体が勝手にドアを開けていた。
「どうしたん?こんな時間に」
ドアを開ける前に見た時計は9時半を指していて、絵里が夜に家に来る事は滅多になかったから驚く。
「入らんの?」
いつもならドアを開けた瞬間部屋の中に入るのに絵里はそっぽを向いたまま。
「―――あのさ、あれ忘れて?れいな困らしたくないから」
174 名前:Promise you 投稿日:2003/12/19(金) 22:56
この子はいっつもストレートだなぁ、と少し羨ましくなった。
「別に困っとらんと。用はそれだけ?」
早口にそう呟くように言った。

自分が今、どんな顔をしているのかわからない。
たぶんいつもと同じ顔だろう
心はこんなにも困惑してるのに。

「うん。ごめんね、こんな時間に。じゃ、おやすみ」
「あー送ろっか?もう外暗いし」
「いいって、私のほうが年上なんだし」
「いい。送る」
絵里の手を掴んで強引に歩き出す。
何故か心は雨模様。

心の中のモヤモヤを
ほんの少し分かった気がした。
それは忘れたい、と思う気持ちと愛しいと思う気持ちがぶつかって
できた雲なんだ、と思うことにした。

忘れたい、いとおしい
忘れられない。
『忘れろ』なんて無造作な言い方
言うならもっと早くに言ってくれれば忘れられたかもしれないのに

「1つ、言っときたいことがあるけん」
「ん?」
「――絵里のこと好きかもしれん」

掴んでいた手を離して
ほんの少し歩幅を大きくした
絵里との間に出来た距離はどんどん大きくなっていって
薄白く光る街灯に照らされる
冷たい風に空を仰ぐと、薄い曇り空が広がっていた。
木の葉が揺れる音がやけに大きく聞こえる。

「―――でも、気持ちがはっきりしたらちゃんと言うけん。今のは予告」
心の片隅に転がっていた感情をジグソーパズルのように心にはめたら一番に言うよ

「約束だからね。ちゃんと言ってよ?」
背中にぎゅっと抱きついてきた絵里はきっと笑顔に違いない
だって、私も笑顔なんだから

キミに約束したよ
いつか心の中の感情をそのまま言うよ、って
それがいつになるのか分からない
明日か明後日かそれとも来年か
そんなの誰にも分からないけど、約束は変わらない
色褪せない、水に流されたりなんてしない

いつまでも色鮮やかな約束は
きっと私とキミの中で輝いて
いつか約束は消える。

約束したよ、キミと


end

175 名前:Promise you 投稿日:2003/12/19(金) 23:00
【あとがき】
不器用な田中さんを書いてみました♪実は田亀も好きです(オイ
田中さんのキャラが少し違うような気がするんですが、そこは置いといて。
博多弁は難しいですね・・・間違ってたらスミマセンっ!!!そして苦情は受け付けません(ぇ
実は題はBOYSTYLEの曲から頂きました。この曲好きなんで少しアピールで(マテ
テーマは『約束』です。
176 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/20(土) 13:55
今日1本目の更新。
たかこんで紺野さん視点
『私の気持ち』
177 名前:私の気持ち 投稿日:2003/12/20(土) 14:03
ただ会いたくなったからあなたに会いに行ったの
だから玄関のドアを開けて驚いたように『どうしたの?』と言うあなたに何も返事を返さずに抱きついた。
雨が降った後の湿っぽさと冷たい空気に長い時間触れていたせいかあなたの体温がやけに温かく感じて少し眠気を覚えた。
部屋から溢れるあなたの香りとか触れ合った体から流れ込んでくるようなあなたの温かさとかが私を少しずつ安心させていく。

           「私の気持ち」


冷たい私の体温があなたの温かい体温を下げていって
温かいあなたの体温が私の冷たい体温を上げていって
どちらもぬるくなる。

あなたは少しするといつものように私をぎゅっと抱きしめてくれて
私は人慣れしている猫のようにあなたの肩に頬を摺り寄せて
ゴロゴロ喉を鳴らしてみる。
あなたはふふっと優しく笑ってただ私の頭を撫ぜるだけ。
「外、寒いね」
「雨が降ってたからね」
ほんの少し交わす言葉だって今はみずみずしい空気に包まれる。

あなたに会うと、抱きしめられると
私は本当の自分に戻れるの
嘘ばっかりついた私じゃなくて本当の私に。

178 名前:私の気持ち 投稿日:2003/12/20(土) 14:06
「ねぇ、愛ちゃん」
「ん?」
あなたは少し微笑んで、首をかしげる
その動作で揺れたポニーテール
「―――会いたかったから会いにきたの」
我侭でもかまわない
甘えたでもかまわない
あなたに会いたいと思ったから大好きなパンプキンパイのおやつも抜いて会いにきた
「そう」
嬉しそうにあなたは笑って、よく出来ました、と小さく呟く

会いたくなったから会いにきた
悲しくなったから泣いた
嬉しくなったから笑った

全部私の気持ち。


end.
179 名前:私の気持ち 投稿日:2003/12/20(土) 14:07
【あとがき】
あー・・・あれ?(オイ って感じなお話(マテ
もう、これはノーコメントの方向でお願いします(ぇ
テーマも特になし。
180 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/21(日) 14:08
今日の更新。
高紺で紺野さん視点
『鏡の中のアリス』
181 名前:鏡の中のアリス 投稿日:2003/12/21(日) 14:09
夢を見た。
嫉妬をするほどあなたは優しく綺麗で
触れても届かない鏡の向こうで笑ってた。


182 名前:鏡の中のアリス 投稿日:2003/12/21(日) 14:20
――――あと20分

深緑色の黒板に白と赤と黄色のチョークを使って慌しく文字を書き並べていく国語教師。
少し前そこに書かれていた文字は黒板消しで消されてパラパラと落ちるチョークの粉
私はお世辞でも綺麗とは言いがたい文字を目で追っていく。
手に握ったシャープペンシルはある一定の間隔ごとに机を叩いて、音を刻むメトロノームのよう。
黒板に文字を書き終えた白髪頭の国語教師が腕の時計を一度見て、ある生徒を使命し本を読ます。
くあっと出てくるあくびをかみ殺して滲み出る涙をぬぐって教室を見渡した。
一番前の席でめんどくさそうに本を見つめる麻琴、その後ろの席で本を壁にしてその中で手紙を書く里沙。

・・・そして。
窓際の席でつまらなさそうに顎に手を当てて窓の外を見つめる愛ちゃん。
冬の今頃にしては温かいのか窓は全部開けられていて、そこから入る風に吹かれて揺れる愛ちゃんの茶色い髪
さっきまで見ていた夢の愛ちゃんとが重なって一瞬眩暈を覚えた。
「―――次、高橋」
余所見をしていたのがばれたのか教師は愛ちゃんを使命する。
愛ちゃんはヒソヒソと前の席の子にページを聞くとスラスラと読み始める。
そう言えば国語は好きな方だって前に言ってたっけ、と思い出した。
私の目の前に広がった教科書には見慣れない古文文字がずらっと並んでいてそれだけで眠気を感じる。
183 名前:鏡の中のアリス 投稿日:2003/12/21(日) 14:24
気が付くと銀色の世界が広がっていた。
じっと見ていると銀色と思っていたのは鏡で、遊園地やテーマパークの中にあるアトラクションの1つにあるような鏡の世界。
周りを見渡しても誰もいなくてそっと鏡に触れるとその向こうに愛ちゃんが見えた。
愛ちゃんはひどくつまらなそうな顔をして椅子から半分ずり落ちるような格好で座っている
その姿が何故か嫉妬をするほど綺麗で触れようとするけれど手に伝わるのは冷たい鏡の感触だけ
ふと私を見た愛ちゃんは笑って―――

184 名前:鏡の中のアリス 投稿日:2003/12/21(日) 14:33
目が覚めたのは丁度愛ちゃんが最後の文字を読み終えて椅子に座る所だった。
国語教師は愛ちゃんが上手に読んだせいか、物足りなさそうに愛ちゃんを見て手元の紙に何かを書き込む。
そこへ丁度授業の終わりを示すチャイムが鳴った
国語教師を学級委員長が何かを言うけれど、うたた寝の後の明瞭な空白が頭の中を埋め尽くしていて何も分からない。

「あさ美?何しとん、ぼーっとして」
ぽんっと頭の上に何かが乗って声が降りかかる。
「あ、愛ちゃん」
頭の上に置かれているのが愛ちゃんの手だと分かって笑うと視界の隅に弁当を手にもって慌しく教室から出て行く数人の男子の姿が入る。
「さっきの時間もぼーっとしとったやろ?」
「愛ちゃんもでしょ?」
ふふっと笑って机の上に出しっぱなしだった教科書やノートを机の中に放り込む。
「夢みたいなの見てたんだ」
机の横にかけていたお弁当の袋を手にとって椅子から立ち上がる。
「へぇ、めずらしいな。どんなん?」
「鏡の国のアリスみたいなので、愛ちゃんがアリスなの」
「何それ?」
バカにした問うな口調と子供みたいな無邪気な笑顔に私も笑い返す。
「鏡の中もいいけど、やっぱ現実の方がいいな」
そう言って、愛ちゃんの腕にしがみついた。

鏡の向こうのあなたは
とても綺麗で優しくてため息が出るほど
でも
そのあなたには触れたくても触れられない
嫌いよ
鏡の中のあなたは。


end.
185 名前:鏡の中のアリス 投稿日:2003/12/21(日) 14:37
【あとがき】
たまーに高橋さんがする無表情な表情がすごく綺麗で書いた作品。
最後の部分は紺野さんの遠まわしな言い方を使ってみました。
簡単に言っちゃえば、鏡の中にいる高橋さんには触れたくても触れられない。だから現実の高橋さんの方が好き。
と、こんな感じですね。
童話をモチーフにした(?)作品の第2弾目(第1弾は『人魚姫』)
テーマは『遠まわしな言い方』と『表情』で。
186 名前:nanasi 投稿日:2003/12/26(金) 17:44
いいねぇ。好きだよ、こういうの。
遠まわしな言い方がコンコンっぽくてまたいい。
自作も待ってるよ。
187 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/28(日) 16:01
>nanasiさま
ありがとうございます♪そう言って頂いて嬉しい限りです〜
では、またのご来店お待ちしております♪

たぶん今年最後の更新。
やぐよしで矢口さん視点
『NO MINE』
188 名前:NO MINE 投稿日:2003/12/28(日) 16:03
世の中って公平だと言うけれど不公平ばかりだと
いつも彼女が去っていったあと痛いほど思う
彼女に出会わなかったらこんな恋なんてしなかったのに
私がここに生まれてなかったら、彼女にすがりつき何てしなかったのに

―――私が願ったものばかり悪戯に離れていく

189 名前:NO MINE 投稿日:2003/12/28(日) 16:11
ふぅっと白い煙が細く長く部屋の中で延びる
人工的な光を灯す蛍光灯が煙をライトアップして煙は白く透明に光る
彼女はどこか遠い目をしていつもタバコをふかす
私がそれを知ってるなんて思いもしないで。
彼女の吐く煙は天の川
私と彼女の間を流れて近いのに遠い思いをさせる。
「―――もう帰えんの?」
タバコの先を灰皿に押し付けてパーカーを着ようとする彼女に言った。
「起きてたの?」
私の質問には答えず少し驚いたように彼女は振り向いて笑う
優しい声
温かい瞳
優しすぎる手

―――でも彼女は遠い
190 名前:NO MINE 投稿日:2003/12/28(日) 16:18
手を伸ばしても届かない、いつか届いたとしてもそれは幻
彼女が私の質問にも答えないから私も答えないでいる
「子供扱いすんなって」
優しく頭を撫でる彼女に照れ隠しで言ったって彼女に私の心は丸見え
次の瞬間にはもう彼女の腕の中で私は嘘と現実の狭間に一人ぼっち
「―――もう帰らなきゃ。梨華ちゃんが心配するし」
「ん。玄関まで送ろっか?」
「いい。ずっと居たくなっちゃうから」
彼女と私はほんの薄っぺらい嘘でつながった関係
そこに愛情があったとしても
ただの一方的な愛かニセモノだけ

「じゃあね」
ドアの向こうに飲み込まれていく彼女はどんな顔をしているのだろう?
愛しい彼女に会えると喜んでいるか
私との関係に冷たい瞳を向けているか
そんなのは分からない。

彼女とおそろいのブラックライトも青い光を絶え間なく一点に注ぎ込んで
その下に揺れる水槽には彼女の好きな熱帯魚
赤いひれをゆらゆらと揺らして狭い、狭い水槽の中を泳ぐ。
ゆらゆら揺れる水面は暗闇の星空や宇宙で彼女はきっと綺麗に輝く遠い遠い星

191 名前:NO MINE 投稿日:2003/12/28(日) 16:24
ガランとした部屋の中で彼女のタバコの煙の匂いと香水の香りが私に笑う
どうしていつも私が愛する人は優しい嘘をついて、愛しい彼女が居るのだろう。
私の手の中には数え切れないほどの優しい嘘が溢れて私を満たす。

公平とばかり言う世の中は嘘つきで不公平ばっかり
私の望んだことは全て手に入らなくて残ったのは嘘の山と虚しさだけ
「―――みんな大っ嫌い・・・」
言ったって明日になれば私はいつもと変わらず彼女の腕の中に居るのだろう
彼女はあのコとのペアリングを外して私とのペアリングをはめて
きっとまたあのコの前では吸わないタバコを吸って笑うのだろう
私の好きな笑顔で『喉、壊すよ』と私が言ったって『大丈夫っすよ』って。

お願い
私のものじゃなくていいから
あなただけは
嘘でいいから、私のそばにいて。

END
192 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/28(日) 16:27
もう1本の更新
小⇔紺⇔高⇔新で高橋視点
『ブルームーンライト』
193 名前:ブルームーンライト 投稿日:2003/12/28(日) 16:36
夢のような思いを↓後はいつもあの子の面影が残っていて
青い青い月の光が私を責めていた

カーテンを半分開けた窓からは青い月の光が絶え間なく差し込んで
犯した罪は大きく照らされる。
夢は始まりと終わりがあるもので永遠なんて儚い物
「・・・愛ちゃん」
包まったベッドは光に照らされて青い
「ん。じゃ・・・帰るわ」
あさ美を抱きしめていた手の力を抜いて生ぬるいベッドから抜け出す
「愛ちゃん・・・帰らないでよ・・・」
泣きそうなあさ美の声は私をここにとどめるのには充分過ぎるけど
始まりがあれば終わりがある夢の今はただ終わりなだけ
「あさ美、もう帰らなきゃ。もうすぐ麻琴が帰って来るんだよ?分かるでしょ?」
なだめるように言って、あさ美をまた抱きしめた。

どうしてこんなことになってしまったんだろう
思っても無駄だ
避けられない運命なのだから
「―――じゃあね」
泣きそうな顔がばれない様に笑顔を無理矢理作って思い鉄のドアを開けた。

大きすぎる満月はかすんで見えない
目に溜まる涙は何の涙なのだろう
悲しみ?愛しさ?離れる怖さ?
どうしてこんなことになったの?
愛してるのに、愛し合っているのに、1歩が踏み出せない
みんな犯した罪を背負っている犯罪者
怖いの
あなたを失うことが
孤独になることが

月はもう見えない
溢れ出した涙は止まらない
あなたはいない
私の心は見えない
194 名前:ブルームーンライト 投稿日:2003/12/28(日) 16:40
私が家に帰ると里沙は笑うだろう
『さみしかったよ』とか『今日は遅いね』とか
言葉を紡いでくれるだろう
その度に胸が苦しくて息が出来ない私なんか気がつかずに

もう1度会いたくて
ずっと一緒にいたくて
でも出来なくて
背負った罪は数え切れないほど

私は誰を愛しているのだろう
私は誰を必要としていて
誰と一緒にいたいのだろう
自分の心の中にある答えのことなのに
分からなくて分厚い雲に遮られたよう

月の光は青すぎて
私は飲み込まれてしまいそう
いつも責められる青い光
心や体に残っているあの子の面影や体温、匂い

―――逃れられない罪は溺れるほど愛しい


END
195 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/28(日) 16:44
【あとがき】
これは今日更新した2本で1本、みたいな感じのお話。
まぁ言っちゃえば同じ日の同じ時刻に、ということです。
えっと・・・あおがきは特にないんですけど。。。
未成年の人はタバコを吸わないように、とこれだけっす。
『よっすぃーって未成年じゃん!ダメじゃん、タバコ吸わしちゃ!』
などの苦情は聞きませんのでよろしくお願いします〜

あー・・・明日も更新する予定(ぇ
まだ2本残ってるんスよ・・・たかこんと田亀が(マテ
ま、今年中に更新する予定っス(あくまでも予定ね。
196 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/29(月) 19:02
訂正。
193の一行目
×夢のような思いを↓後はいつもあの子の面影が残っていて
○夢のような思いをした後はいつもあの子の面影が残っていて

です。申し訳ありません^^;
では、今日の更新。
たかこんで紺野さん視点
【ストロベリー・ラブ】
197 名前:ストロベリー・ラブ 投稿日:2003/12/29(月) 19:04
あなたと私の
始まったばかりの赤い恋は
いつまで続くのでしょう?
イチゴのように真っ赤ですっぱくて
でも時々甘ったるい。
ずっと続けばいい
永遠に一緒がいい
永遠なんて無いモノだっていつからか知ったけど
作ればいいの、私たちで
甘くて時々すっぱいストロベリー・ラブ
198 名前:ストロベリー・ラブ 投稿日:2003/12/29(月) 19:14
この時期には珍しく与えられた2日間の休日
彼女は朝からご機嫌で私の知らない鼻歌を歌いながらパンにジャムを塗っていた
私の知らない曲を楽しそうに歌う彼女にほんの少し嫉妬してそれが顔に出ないように私はさっきまでいたベッドにまた寝転がる。
皺の多い生ぬるいシーツが私を包み込んで、もう1度まどろみの世界に迎い入れようとする中で彼女の鼻歌がどんどん小さくなっていく。
ぽふっと枕に顔をうずめると彼女の香水の匂いが香ってそれだけでふっと心が落ち着いて行ってさっきまでの嫉妬が嘘のように消えていく
「あさ美ー?起きてー」
そんな声がして、身体をゆすぶられる。
シーツの生ぬるい体温は私のなのか、それとも彼女のなのか、私と彼女のものなのかとふと疑問に思ったけど、考えるのは後に回す。
「やだ」
小さい子がねだるみたいにそう言って布団にもぐりこんだ。
外は寒い、それに彼女が知らない歌を歌っていた、一人ぼっち
「あさ美ーパン、冷めちゃうよ・・・」
私を起こすように伸びて来た彼女の腕を掴んで、力を入れた。
予想以上に彼女は簡単に私の上に倒れるような形になって、呼吸が一つになる。
ほんの数条、初めてする子供のようなキスをして彼女に微笑んだ。
199 名前:ストロベリー・ラブ 投稿日:2003/12/29(月) 19:20
ずっと溢れてる
私の中であなたへの想いが
それのほんの一部を
形にしただけ
溢れてる全てを形に出来るほど
私は強くないし
全てを形にする術を知らない
溢れ出して止まらない
そんな想いをたまに、ほんの一瞬
形にしたいだけなの

「――めずらしー・・・あさ美からキスするなんて」
少し照れたように笑う彼女にぎゅっと抱きついた。
優しく抱き返してくれる彼女はベッドの隅に置いていた携帯を手にとると、電源を消した。
「もう、誰にも邪魔できないね」
にこにこ笑う彼女に私も笑顔を返した。
「2日間は2人だけの世界にいるってのもいんじゃない?」
彼女からのキスを貰う前に呟かれた言葉に私は満足げに頷いた。

焼きたてのパンは冷めちゃう
でも、もう一度温めて食べてしまえば変わりなんてない
200 名前:ストロベリー・ラブ 投稿日:2003/12/29(月) 19:23
永遠なんてないけれど
いつか形にして、現実にするの
私とあなただから
きっと出来るはず

甘くてすっぱいこの恋の行き先なんて
誰にも分からないのよ
ねぇ、ストロベリー・ラブ

赤くて綺麗で甘くてすっぱい苺にあなたが夢中なように
すぐにはまってしまうストロベリー・ラブ
もう抜け出せないのよ
赤い赤い世界からは

―――抜け出す気なんて無いけどね。

end
201 名前:ストロベリー・ラブ 投稿日:2003/12/29(月) 19:24
【あとがき】
んー・・・特にあとがきなし。
何か読み返してるとハズいねぇ・・・何か(ぇ
テーマは『苺』で。
この季節苺が恋しいからねぇー・・・(マテ
202 名前:tsukise 投稿日:2003/12/30(火) 20:30
更新お疲れ様ですっ!
やっぱり冬は『苺』ですよねー…っ。
あ…甘々…こ、好物で見ながら頬が熱くなったり…(笑
次回も楽しみにしていますねっ
203 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/01/03(土) 17:33
>tsukiseさま
『苺』テーマにしたんですが実は後から紺野さんが苦手と思い出して焦ってましたが。。。(苦笑。
微妙に甘いですねぇー・・・思いっきり甘くしたいんですが性格上難しいです(ぇ
では、またのご来店お待ちしております♪

では、今日の更新1本目。
田亀で田中さん視点
『アクアリム』
204 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 17:34
青白く光るライトに照らされた水槽の中で
ただ気まぐれに一生泳ぎ続ける
アクアリウムの住人達
彼らが幸せかどうかなんて知る訳が無い


205 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 17:47
「れいなぁー、れいなってば」
少しイラ立った、でも抑え気味の聞きなれた声が耳に届く。
夢を見ていたような感じにふけっていたのを邪魔されて腹が立って無視しようとしたけれど止めて見つめていた水槽から視線を離してくるっと1回転する。
「なん?」
少し低めの銀色の丸い手すりに背伸びして腰掛けて声の主を見た。
長椅子に座って私を見る絵里はめちゃくちゃ退屈って顔をしていて、絵里に聞こえないように小さくため息をついた。
「れいな、水槽ばっか見てそんなに面白いの?」
座っていた椅子から立ち上がって、こっちに向かってくる絵里の顔は青く照らされて変な感じ。
「面白いってか・・久しぶりに来たから何か夢中になっとった」
宙に浮いた両足をぶらぶら揺らして視線を彷徨わした。
ポンプの吐き出す泡を見つめ、その低い唸るような振動音に耳を澄ましているといつか外界は溶け出し始め意識は絶え間なく昇って行く泡となって水の中を漂っているような錯覚に陥りそうになる。
「どこがいいの?魚とかエイとかが水の中泳いでるだけじゃん」
飯田さんみたいなこと言わないでよ、と小さく呟かれてやっと絵里が隣にいたことに気づく。
「まー・・・そうやけん」
短くそう言って、手すりから降りて水槽を眺める。
魚たちは水底から立ち昇る泡の間を縫っていつものように泳いでいる。
この気持ちを言葉で表すなんてとてもじゃない程難しい、それに言葉にしようなんて思わない。
言葉に出来たとしても、きっとこの気持ちと同じじゃない、って分かってるから。
「前に水族館に来たのっていつだっけ?れいな覚えてる?」
「さぁ・・・絵里は覚えとるん?」
「んー・・・」
丸い手すりに肘をついて手の平に顎を乗せ目を瞑って思い出そうと焦点を合わそうとするけれど今はただそこだけ霞のようにぼやけていくばかり。
206 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 17:55
頭の中でその画面は溶け始め、周りの風景もやがて曖昧。
決定的なピースの欠けたジグソーパズルみたいにそこだけは依然として空白でどんな絵が浮かび上がるのか、どうしても掴めない。
「もーええ。めんどくさい」
何かを投げ出すように背伸びをして、ふと思い出す。
誰がいつ言ってたか何て覚えてないけど『水族館は牢屋だよ』って言ってた。
たぶん、そんなことを言うのはさゆか飯田さん辺りなんだろうと分かるけど。
「―――牢屋・・・か・・」
確かに見方を変えればそうかもしれない。
そして、水族館を牢屋とすると魚たちはある意味で囚人だろう。
ガラスの狭い檻の中を身体のどこか一部が腐って死ぬまでポンプの吐き出す泡の間を縫って泳ぎ続けるだけ。
「牢屋がどうしたの?」
「ん?」
「さっき言ってたじゃん」
知らないうちに口に出してたらしい。
「あー・・・昔、誰かが水族館は牢屋だって言ってたのを思い出して。それなら魚はある意味で囚人やなって考えてただけやけん」
207 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 18:04
「―――へぇ・・・」
面白くなさそうに絵里は言う。
「じゃあさ、れいなは牢屋で私は囚人ね。もうずっと出れない牢屋に入った囚人。酸素が足りない金魚みたいに息の出来る方へもがいて、もがいて地表を目指す雪山の遭難者みたいな囚人」
「―――牢屋から出る気も無い囚人」
付け加えて私が言うと、絵里は嬉しそうに満足そうに頷く。
「そろそろ出よっか」
独り言のように言って歩き出す。
入る時愛想のいい受付の人から貰った長方形の薄いパンフレットは手の中で小さく丸まって、力を入れると折れた角が当たって痛い。
照明が入ってるか入ってないか分からない暗闇の中で水槽を眺めていると水底に沈められて薄暗い影に覆われているみたいになる。
あちこちの水槽で魚のうろこがキラリと青白い光を反射する。
天井には私たちが黒い小人のような影となって映り、その周りを回遊魚の泳ぐ水槽の波が投げかけてくるおぼろげな光と影が揺らめいていた。
208 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 18:14
外へ出ると柔らかい風が吹き抜けていく。
すえた、お世辞にも品とは縁の無い匂いだ。
「何か水族館って地球の中じゃないみたいだね」
疲れた、と力なく笑う絵里は水族館の余韻でどこか遠く手の中に収まっていたパンフレットを手の中で小さくちぎった。
タイミングよく吹いてきた夕方の冷たい風に乗って、散り遅れた花びらのようにパンフレットだった紙は空を舞った。
後ろに流れていく偽の花びらに手を振った。

ここに来た証拠なんていらない
欲しいのは瞬間が永遠になる魔法
望むものは彼女と一緒の未来

「れいなー置いてくよー」
夕日に背を向けて私に笑いかける彼女に走った。
置いてく気なんてあるわけないくせに、と笑って。

影法師の揺れる指に
誘われて、あなたと一緒に
夜から夜へ
夢から夢へ
向かうのは抜けられない牢屋と
抜け出す気の無い囚人のいる
近くも無い
遠くも無い
未来のアクアリウム

ほら、聞こえる
ポンプの唸るような振動音。
ほら、見える
青白いブラックライト

影法師の揺れる指に
誘われて―――


end,
209 名前:アクアリウム 投稿日:2004/01/03(土) 18:18
【あとがき】
長っ・・・(汗。 特に意味は無いんですが天井に海の表面みたいなのが映るライトを買って気に入ったので書いてみた作品。
水族館の独特な雰囲気を書きたくて書いてみましたけど、難しいですねぇ・・(汗。
テーマは『水族館』です。
題のアクアリウムは『水族館』の英語をちょっと崩したものです(笑。
210 名前:東風 投稿日:2004/01/03(土) 19:42
田亀いい!!
頑張ってくださいww
211 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/01/25(日) 13:55
>210 東風様
嬉しいお言葉ありがとうございます!
212 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/01/25(日) 14:18
今日の1本目更新。
いしごまで後藤さん視点
『ブランコ』
213 名前:ブランコ 投稿日:2004/01/25(日) 14:19
ぐんぐん風を切って
空を覆い尽くす雲も破って
どこまで行けるだろう?

214 名前:ブランコ 投稿日:2004/01/25(日) 14:26
「ねーえ」
ひゅん、と風を切る音が耳に響く
無意識のうちに出していた声が震えていたことを彼女は分かっただろうか。
そんなことを考えながら見る遠ざかり近づくを繰り返す青い空は立体感を持ったみたいで変な感じ。
「んー?」
彼女は声だけの返事を返してくる。
このままサビ臭い鉄の鎖を握る手を離したら、この手で空を掴めるかな?なんて子供じみたことを考えながら心にあるはずなのに言葉に出来ない感情に苦笑いを浮かべた。
しなった鎖が戻る時、つなぎ目がガチャンと音を立てて、きぃーっと鳴く金属音が嫌で顔をしかめた。
「寒いね」
やっと探し当てた言葉はこの時期どこにでも溢れているありきたりなモノで必死に探した意味がなくて誤魔化すようにまた笑った。
「うん」
ふと盗み見た彼女の横顔はとても綺麗で真っ青な空の色によく映えて、彼女はきっとこのまま汚れないで綺麗なままなんだろうなぁと一人思う。
「ブランコって久しぶりだね」
215 名前:ブランコ 投稿日:2004/01/25(日) 14:30
彼女がポツンと言う。
彼女の乗っているブランコはほんの少ししか動いてなくてぎぃーぎぃー唸る音は小さい。
「この年になったら普通乗らないからね」
両足を力いっぱい踏ん張って、ぐんぐん漕ぐと一瞬足が空を向く。
空に浮いているような感覚に酔ったら、空を飛べるかなって何かの本の一文を思い出した。
もう、そんなことを思える程子供ではなくなった私は今日笑ってばっかりだ。
「空も飛べるかな?」
私を見て笑う彼女は子供じみていてまぶしかった。
「飛べるんじゃない?」
笑って言って2人でブランコを力いっぱい漕いだ
216 名前:ブランコ 投稿日:2004/01/25(日) 14:34
どんどん空に近づく
でも手は届かない
探し物も見えない
魚が水を柔らかくくぐって泳ぐみたいに私達は風をくぐった。

思い出す昔話はまたいつか話そう
忘れたらまたこうやって空に教えてもらって
キミと笑いあおう

空は青い
雲は白い
風は笑う

片手を茶色くさびた鎖から外して、彼女と手を繋ぐ
表面上の冷たさも体温の温かさも今は気持ち良い

217 名前:ブランコ 投稿日:2004/01/25(日) 14:39
足はふわっと青と赤の板から離れて
身体は宙を舞う
風は2人を包み込んで
そしてブランコ
主のいなくなったブランコは
急にガチャガチャ揺れて、そして眠りにつく。

私達は翼のない天使
だから、いつも失くした翼をさがして
夢を見る、それの繰り返し。
いつも見る夢はブランコのように
近づいたり遠ざかったり曖昧で悪戯
手を伸ばすのに掴んだはずのものは無くて
いつも固く握った手の中は空っぽ
喪失感やあきらめに慣れきった私の心は
見えない侵略が押し寄せて
カギのかかったままの扉の向こうは永遠に知らないまま。

ねぇ、翼を下さい
いつか大空をあなたと飛べるように
あなたと私だけの世界にいけるように

ブランコから飛んだ私達は
ただ翼を欲しかっただけ。

Fin.
218 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 20:59
ヒトシズクさんのいしごまって詩的で好きです
219 名前:tsukise 投稿日:2004/01/28(水) 20:43
更新お疲れ様です。
どこか切なさを感じさせる一文一文が好きです…。
一つ一つの言葉が綺麗で、いつも惹きつけられるんです〜♪
220 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/01/31(土) 16:01
>218 名無しさん様
詩的ですか〜どうもありがとうございます♪
全体的にどんな作品でも詩を入れるようにしているのでそう言って頂いて本当に嬉しいです♪
では、またのご来店お待ちしております〜

>219 tsukise様
実は最後には『死』を迎えてしまうような終わり方すみません^^;
でも、それを感じられないように、と工夫したので切なさが感じられる、と言って頂いてありがとうございます♪
惹きつけられますかぁ。。。(汗。
それはとても嬉しいお言葉でとても緊張を・・・(ry
では、またのご来店お待ちしております♪

では、今日の更新
またまたいしごまで、辻加護の卒業ネタ含みます^^;
『No think,need you』
221 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:02
いつも傍に誰かがいて
笑っていて、泣いていて、怒っていて
それが当たり前だと思ってた。

222 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:07
「真希ちゃん!」
そう言って、楽屋のドアを勢いよく開けて飛びついてきた加護。
急だったから、少しよろけながらも小さな身体を抱き止めた。
「どーした?」
抱きついてくるなんて最近なかったことだから少し驚きながら平静を装って、加護の髪を撫でる。
ぎゅっとしがみつく加護は何故かいつもより小さく感じて、あぁ、と思いつく。

ふと,蘇った声を押し殺して泣いた日
初めて自分が我侭だと、とても強く思った日
離れたくないと涙を流して隠した日
そして、時が過ぎるのが怖くて恨んだ日

「―――真希ちゃんは・・・」
いつも無邪気な声は泣いていると勘違いしそうな程弱くて震えていた。
「今、何を思ってる?」

223 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:13
震えているくせに、弱いくせに、その言葉は真剣さを持っていて私に刃を向けた。
「私は―――」
嘘をつくのは簡単だった。
加護の向けた刃を玩具の刃にしてしまうことだって出来た。
心を見透かすことなんて誰にも出来ない
ただ出来るのは勝手な想像だけ
「あいぼん」
優しい声が響く。
ドアがいつ開いたかなんて分からなかった。
「次、あいぼんだって」
ドアに背を預けて微笑む梨華ちゃんはどこか寂しげだった。
「うん。真希ちゃん、またね」
バイバイ、と手をふる加護はいつもの加護だった。
さっきの声なんてまるで別人のように思わせてしまう笑顔を振り撒いてドアの向こう側に飲み込まれていった。
「さっき」
彼女は笑顔を浮かべたまま
「何て言おうとしてたの?」
「聞いてたんだ」
「ただ聞こえただけよ」
しれっと答える彼女は私の中の彼女と違っていて取り残されたような感じに陥る。
224 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:18
「―――何も、って」
「・・・そう」

何も思わないんだ。
あの日も悲しい、離れたくないってそれだけで
もう次の日には何も思っていなかった。

「あいぼんの言いたいこと分かってたでしょ?」
ゆっくりと近づく彼女
それは綺麗でそして怖かった。
「うん。想像だけど」
蛍光灯はチカチカし始める、何か嫌な気分だ。
それでいいのよ、という風に笑う彼女
きっと、加護はあの時の私の気持ちだっただろう
辞めないで、と言って欲しくて、でも言って欲しくない
そんな曖昧な中途半端な気持ち

私はたった一人なのだ
だから仲間も友達もたくさんいても、ずっと心はヒトリボッチで
その感覚に慣れてしまったから
もう何も思わない

何を思ってる?と聞かれた時
すごくビックリして、そしてすごく困った
だって何も考えてないし、何も思ってなかったから

225 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:24
「お願い」
梨華ちゃんの両手が頬に触れる
いつもの温かい手じゃなくて、とても冷たい手だった
「何も変わらないでいて・・・あなただけは」
吐き出された言葉は聞き取るのも難しい小さな声で
震える頬に触れた手がとても冷たかった。

カチッと音を立てて蛍光灯は眠りについて
間近にいる彼女の表情すら窺えない。

あぁ、彼女は寂しいんだ
彼女は私と違って最初から友達や仲間がいたから
その仲間が居なくなると不安になるんだ
それが妹のように可愛がっていた子だからこそ、とても辛くて
周りが真っ暗なんだろう。

「―――うん」
私が呟いて声は
声を押し殺して私の肩で泣いていた彼女に聞こえていただろうか

私は彼女が必要で
彼女は私が必要で
だから私はそのままで
何も考えないでいることにした。
ただ、それだけのことで
私が変わるのをやめただけ。
誰も悪くはないはずだよ?
だから、
そんなに泣かないで。

おやすみなさい。


FIN.
226 名前:No think,need you 投稿日:2004/01/31(土) 16:27
【あとがき】
『最近の子供は自分で考えることが出来ない』と、よく新聞などでも目にします。
それをちょこっと作品の中に入れて見ました。
テーマは『卒業』で(笑。
227 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/02(月) 23:16
つけたし。
いしごまで、後藤さん視点でした。
228 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/03(火) 01:10
いしごま、やっぱりいいですね。
好きです。
229 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/09(月) 23:51
ヒトシズクさんのいしごまは2人の持つ
神秘的でクールな一面が描かれていて好きです
230 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/12(木) 22:29
>228 名無飼育さん様
どうもありがとうございます♪
いしごま、書いているうちに私自身もハマってしまいまして(苦笑。
これからもドウゾヨロシクお願いします。

>229 名無しさん様
神秘的ですか〜とても嬉しいお言葉ありがとうございます♪
2人とも、フッとした時に表すクールな一面を出せたらいいなぁと思っていたので。
またのご来店お待ちしております。
231 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/16(月) 17:11
2日過ぎたバレンタイン物をあげてみようかなぁと。
みきあやで松浦さん視点
『かなづち金魚と嘘つき熱帯魚』
232 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:12
夢なんていらない
見えない未来も知りたくない
戻れない過去にすがりたくない
ただ

―――あなたが欲しいだけなの。



『かなづち金魚と嘘つき熱帯魚』

233 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:17
楽屋のドアの前で待っているあなた
そっと気づかれないように近づいたのにあっけなくバレてあなたの笑顔を貰った。
「亜弥ちゃん。遅いよ」
少しすねたような口調のあなたにぎゅっと抱きついて深呼吸。
「みきたん」
そっと呟くように言葉に出した単語は私の胸の中でうずめいていて溢れている愛しくてたまらないもの
「ん?」
呟きにもちゃんとした返事を返してくれるあなたは、抱きついた私の頭を優しく撫ぜるだけ。

ねぇ。はぶらかさないでよ
ホントはわかってるんでしょ?
私のしたいこと
そうやって余裕ぶって、クールぶって
めちゃくちゃムカツクのに、大好きなの
おかしくなっちゃうかもってくらいあなたの事考えてて
バカみたいって笑っちゃうくらいあなたの名前を囁いて
あきれてため息つくくらい胸や頭の中はあなたの事だらけ

234 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:21
「―――チョコ、いる?」
あなたの服に鼻を押し付けているせいか、少しくぐもった声
「いるってか、もらって欲しいんでしょ?」
目に浮かぶ笑顔が優しくて、余裕の態度がムカツイて掴んだ服に力を入れた。
「そんな事言って、欲しいんでしょー?」
あなたの真似をして余裕ぶるのに心はドキドキで苦しくて死んじゃいそう
「うん」

ほら。こんな時だけ素直になって
こんな時だけぎゅっとしてくれて

「そのために待ってたもん」

反則だよ。
優しく髪を撫でたり
手を握ってくれたり

まるで私の気持ち知ってて知らんぷりしてるみたい

235 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:25
ねぇ。はぶらかさないでよ
私はいっつも苦しくて悔しくて愛しくて
訳分かんない気持ちに押しつぶされて埋もれてるって言うのに
そうやって、先を望んでしまうような仕草しないでよ
私は、金魚みたいに口をパクパクしてるのに
あなただけ綺麗な水槽の中を余裕で泳ぐ熱帯魚みたいにならないでよ

「じゃ、私のこと好きになって、愛して。そしたらチョコあげる」

ホントはチョコなんてどうでもいいの
分かるでしょ?
勘の鋭いあなたなら
あなたが欲しいだけなのよ

「どーしよっかなぁー?」

ほら。また余裕ぶって
分かるでしょ?
乙女心に鈍いあなたでも
あなたの愛が欲しいだけなのよ

236 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:27
「ほら、また余裕ぶって。ホントは私のこと好きなんでしょ?」
「さぁ?」

ねぇ。どこまで余裕ぶるの熱帯魚さん
ねぇ。どこまで嘘つきなの熱帯魚さん

私は変な気持ちに埋もれて
泳げないで溺れてるのに。

夢なんていらない
当たるかどうかの予想もいらない
戻ったってどうしようもない過去もいらない
ただ
欲しいのは

あなたの全てと

―――あなただけなのよ。


fin.
237 名前:かなづち金魚と嘘つき熱帯魚 投稿日:2004/02/16(月) 17:31
【あとがきのような駄文】
えー・・・・すいません(土下座。
こんなのしか思いつかないヒトシズクはチョコの甘さに倒れています(ぇ
一応ですが、かなづち金魚とは松浦さんのことで、嘘つき熱帯魚とは藤本さんのことです。
『金魚』と例えた表現が作品の中に多いのもこのスレの『金魚鉢』から来ています(ぉ
では。
238 名前:tsukise 投稿日:2004/02/17(火) 18:29
更新お疲れ様ですっ。
この微妙な駆け引きが、二人にはピッタリですね〜っ!
飄々している彼女達が、かなり好きなんです〜♪
次回も楽しみにさせていただきますので、程ほどに頑張ってくださいね♪
239 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/29(日) 16:09
>238 tsukiseさま
嬉しいお言葉ありがとうございますっ!
こんな私めにお気を使っていただき、もう何と言っていいのか・・・!
みきあやはあまあまが好きなんですが、自分が書くと悲しい系に行っちゃう様で。。。
またのご来店をお待ちしております♪
tuskiseさまもお体にはお気をつけ下さいませ〜

240 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/29(日) 16:11
今日の更新一本目。
いしごまで石川さん視点
『ユメナミダ』
241 名前:ユメナミダ 投稿日:2004/02/29(日) 16:12
雨の音がしきりに淋しくさせる
いつになれば
誰か
私のために
私の傍にいてくれるの――――?


     『ユメナミダ』

242 名前:ユメナミダ 投稿日:2004/02/29(日) 16:20
雨の音、湿気、雨の匂い、憂鬱、青い闇
全てを遮っても私の中に入ってくる侵略者
この時だけは私の味方のお月様もどこか遠くの果てで
涙溢れる湖に沈められた気分

「・・・・っ・・・」

もう泣かないって決めたのに。
雨は魔法を使って涙の雫を1粒落としていく
後から後から流れるのは塩辛い味しかわからなかった。

「お願い、お願い、お願い・・・・」

月を夜空に置き去りにしないで
私に雨を降らさないで

―――お願い。愛しい人。

「梨華ちゃん」

闇からのびた冷たい白い手で抱きしめられる
どくどく脈打つ音は邪魔で仕方が無い

お願い、愛しい人
どうすれば
誰か
私のために
私の傍にいてくれるの?

243 名前:ユメナミダ 投稿日:2004/02/29(日) 16:28
「ほら、こうすれば何も聞こえない」

ぎゅっと優しく胸に押し付けるように抱きしめるあなた

「雨に涙する兎よ、泣かないで」

ゆっくり何かを唱えるように呟くあなたの優しい声だけが響いて
雨の音は幻を連れてくる音に、怖い夢は幻となるの

雨がガラスを叩く
湿気が身体の周りをまとわりつく
夢が頭から離れない

流れる涙はあなたの胸に
降りしきる雨は見えない、聞こえない
雨の匂いはあなたの香水の匂いでかき消され
一定間隔の鼓動に瞼を閉じる。
244 名前:ユメナミダ 投稿日:2004/02/29(日) 16:32
お願い、愛しい人。
優しくしてくれるだけじゃ満たされないの
私の中で溢れるだけの水を外に流してよ

お願い、愛しい人
夢や雨を遮るだけじゃ足りないの
1つくれるなら全部頂戴
全部くれないのなら何も差し出さないで

お願い、愛しい人
その声で、その瞳で、その表情で
私を満たしてよ
あまりが出るほどに
その腕で、その囁きで、その優しさで
私を此処から連れ去ってよ
あなたとなら何も見えない闇だって怖くないから

あなたが例える雨に涙する兎は私であって私じゃないの
その兎は雨の降る日しか生きられないの
私と違って。

いつからか知ってるんでしょ?
雨のナミダはニセモノだって

お願い、愛しい人
まだ気づかないで

気づかないで、愛しい人
私が孤独じゃないと気が付くまで。

ユメナミダ、ユメナミダ、ユメナミダ
雨にナミダする兎よ
泣かないで
月はやがて姿を見せ
雨はどこか遠くへ行くでしょう。

FIN
245 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/04(木) 21:54
ユメナミダは弱気な石川さんとほんわか後藤さんでしょうか
逆も可ナリな組合せで好きです
246 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/03/07(日) 15:20
>245 名無しさん様
どうもありがとうございます♪
ほんわか後藤さんに惹かれていく石川さんが書きたくて(何
また読んでいただければ幸いです。
ご来店お待ちしております〜
247 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/03/07(日) 15:35
更新一本目。
後藤×吉澤で
後藤さん視点
『I'm free in the world』
248 名前:I'm free in the world 投稿日:2004/03/07(日) 15:36
同じ制服を着て
同じ体操服を着て
同じ机に座って
同じ時を過ごす

――― 鳥かごの中の小鳥はまだ飛ぶことが出来ないの?

249 名前:I'm free in the world 投稿日:2004/03/07(日) 15:44
「―――で?」

ひゅっと冷たい風が頬を撫でていく。
雲ひとつ無いスカイブルーの空はまだ冬模様ですこし淋しくて、見上げるのを止めた。

「つまんない、と思って」

首を後ろにそらして答える。
カキーンと金属音がして男子の低い声がやけに響く。
野球部、だろうか?
そもそも部活のことなんて関係ないから知らないし、野球部がこのガッコウにあつのかさえ分からなかった。

「―――知ってるよ、んなの」

少し大雑把な言い方をした彼女は怒っているんだろうか?

「でも、よしこのつまんないと私のつまんないは違う」

そらしていた首を起こして、少し先で胡座をかいて座っている彼女を見た。
私を見ているようで見ていない彼女と視線が絡むことは無い、そういつものことだ。

「まぁーね」

のんびりとした口調で答える彼女はにかっと笑って私を見た。
悪戯をする前の子供のような笑みを浮かべた彼女は小悪魔みたいだ、と心の中で笑って、手に持っていたジュースの紙パックを啜る。
じゅる、と音を立てて口の中に入ってきたジュースはその場で吐きたくなるほど甘くて、あと50円出して水を買っておけばよかったと後悔する。
250 名前:I'm free in the world 投稿日:2004/03/07(日) 15:51
「同じ教室に閉じ込められて、同じ制服で個性を失われて、同じテストで実力ごとに差別される。こんな所にいる間に外で何か面白いことが起こっているかもしれないのに」
「―――逃げたいんだ?ごっちんは」

疑問形の問いなのに確信を持ったような言葉

「面白くない所より面白い所にいる方が幸せだと思うから」

まだ残りが半分以上ある紙パックをよしこに投げた。
それは綺麗に弧を描いて太陽の光に照らされた。

待たないでもやって来る明日は
いつもインキ臭くて、めんどくてつまんなかった

皆と同じ私は
いつも皆と違う部分を消しゴムで消して
面白くも無い所で皆と一緒に笑って
たいして興味もない話題で熱くなるフリをする。

ふと見えた明日のしっぽは見えただけで、それを掴むことは出来ない。

ありふれた校則
そんなの別にここで学ばなくなってどうにでもならないし、ここにいる時間があるなら早く飛び立ちたいの
251 名前:I'm free in the world 投稿日:2004/03/07(日) 15:55
もう、鳥かごの中でじっとして四角に切り取った空を見るのは飽きたの。

「ケイタイ、番号変えないでいるから」

愛想のいい笑みを浮かべた彼女が言う。
何でもない、そんな気まぐれな言い方に一歩をくれた。

「自由になって、気が向いたら連絡する」
「あはは。ごっちんらしいね」

小さく呟かれた相槌はほんの少し淋しかった。

「また今度」

252 名前:I'm free in the world 投稿日:2004/03/07(日) 15:58
サヨウナラは嫌い
だって、もう会えないみたいで悲しいから
私はただ彼女より早く先に進むだけで
彼女が私を追いかけたり
私が立ち止まったりしたら
いくらでもいつでも会えるんだから

もう、手を離さないと
そう言って、手を離して
またすぐに掴んだ
でも、また手を繋ぐ為に、と
ゆっくり羽ばたく代わりに手を離した

きゅうくつな鳥かごを抜け出して羽ばたいた少女を
誰も正しいか正しくないかなんて判断できない。

くだらない
つまらない
面白くない

少女はただ少ない欲しいものと自由を欲しがっただけ。

誰も彼女が正しいか正しくないかなんて判断できない。
彼女はただいつか出る鳥かごを他人より少し早く抜け出しただけなのだから。


END.
253 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/03/07(日) 16:00
もう少ししたら『さくら感謝祭』たるものをしたいなーなどと(笑。
ただ、さくら関係のお話を書くだけなんですが(ぇ
今2,3作出来てるので、もう少し出来たらUPします。
では、予告みたいな予告じゃないのでした(マテ
254 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/03/13(土) 22:34
さくら感謝祭一本目。
後紺で後藤さん視点
『ずっと・・・』
255 名前:ずっと・・・ 投稿日:2004/03/13(土) 22:35
目を閉じれば
今でも色鮮やかに浮かぶ
あのキミの笑顔ともったいない程散る桜の花びら
ねぇ、安心しなよ。
私からキミの元を離れるなんてありえないから。
256 名前:ずっと・・・ 投稿日:2004/03/13(土) 22:44
ふわっと柔らかい風が頬を撫でて通り過ぎていく。
いつも溢れているノイズは全然聞こえなくて
心地良い音だけの世界にいるみたいな錯覚に陥る。

「来ないだろうなー」

何度も心の中で繰り返し呟かれている言葉を口に出してため息をついた。

約束なんてしてない。
ただ偶然を感じてみたくなっただけだから。
電話もメールもしてない。
キミを縛るようなことはしたくないから。
それに
「あの木の下で会いましょう」
なんて自分らしくないと思ったから。

数日前に言われた言葉がバカみたいに響いて離れない。
『私ばっかり好きみたいで悲しいんです』
何言ってるんだよ、バカ紺野。
言わなくても分かれよ、バカ紺野。
好きだから傍にいるんだよ
大事だから大切にしてるんだよ
愛してるから好きって言わないんだよ

不安なら言ってよ
いくらでも不安を消し払ってあげるから
悲しいなら言ってよ
悲しくならない程好きにしてあげるから

ねぇ、いつも言葉にならない想いを抱えて
溢れるほどに積もった花びらの中を歩いてるんだよ
時にはその中に埋もれて呼吸をするのも忘れて想い
時にはそれを手に取り中に落として嫉妬をし
時にはそれを蹴散らしてその中に隠れてため息をついて

こんなの初めてなんだよ。
もう、何も見えないみたいなんだよ、キミ以外。
こんなの変な魔女にかけられた魔法にかかったみたいじゃない。


257 名前:ずっと・・・ 投稿日:2004/03/13(土) 22:47
昨日買ったばかりのCD
買ったときからずっと休みなくリピート、リピート
何か今の自分みたいで耳から離れなくて
忘れようとしても余計頭に響く

ねぇ、今でも簡単に思い出せるよ
ただ、目を瞑っただけで瞼に浮かぶ
忘れられないんだよ
忘れないんだよ
忘れたくないんだよ
258 名前:ずっと・・・ 投稿日:2004/03/13(土) 22:55
「あっ」

どこかでね

「―――後藤さんっ?!」

繋がってたいんだよ

「何で―――」

ずっと、キミと一緒に。

「遅いよ」

久しぶりに見たキミは優しくて、泣きそうな顔をしてた。

「―――だって・・・」

口をパクパクして『だって』ばかりを繰り返すキミ。
そんな言葉が欲しいんじゃないんだよ?

「だって、約束してないもん。でも来るって思ってた。来るまで待ってた」

ほら。
早く笑顔を見せて。

「―――後藤さんが・・・悪い・・んですよっ」

ぐっと乱暴に涙を拭くキミはとても愛しく思えて
やっぱりキミしかいないんだと、心で笑った。

「バカ紺野」

「そんくらい言わなくても分かってよ。好きだから言わないの。大事だから大切にしてるの」

ぎゅっとキミを抱きしめて

「バカ紺野。紺野から離れていくなんてありえない話じゃん」

ほら、その笑顔。
ずっと見たかったんだよ。

どこからかキミはやってきて
舞い落ちる花びらのように私の心を桜色に染めていって

ねぇ、安心しなよ。
キミしか愛せない魔法にかかっちゃったみたいだから。

目を閉じれば
今でも色鮮やかに
桜が咲き誇っている。

end.


259 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/03/18(木) 19:46
今日の1本目。
高紺で高橋さん視点
『帰り道』
260 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 19:48
深緑色の黒板の前で小さくなって
先生の言うことにただ小さく頷くキミに
夢中で何度も心で叫んだ
だって口に出すとキミが困って笑う表情が浮かぶから。
261 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 19:54
「――― 一緒に帰ろう」
みんなが帰ったって一人椅子に座って動かないキミにそれだけ言った。
机には溢れるほどのプレゼントが山積みで袋に入りきらないこぼれモノが音を立てて落ちた。
振り向いたキミはいつもと同じ優しい笑顔を浮かべただけだった。

照れくさくて距離をおいてトナリを歩いて
時々淋しそうに呟く言葉に相槌を打つしか出来なくて
元気付けるようにその右手を力強く握ることも出来なくて
いつもより早く過ぎていく景色に笑うしかなかった。

「桜、一緒に見れないね」

「うん」

「約束したのにね。ごめん」

「いいよ」

聞きたい言葉はそんなのじゃないのに
言いたい言葉はそんなのじゃないのに
『気にするな』とか『忘れないよ』とか
次々に言葉は生まれるのに、次の瞬間にはどこかへ行っちゃって
口に出す言葉をいつも手探りで探してばかり
262 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 19:57
瞬きをするほどで着いてしまうキミの家
いつも見ているのになんだか違う家に感じて
夕焼け空がやけに淋しく感じた。

どうして。
これからすぎる時間と今まで過ぎた時間は一緒じゃないんだろう
どうして。
決められた月日は過ぎていくのだろう

門の前に立ったキミの姿を真っ直ぐ見れなくて
可愛げも無い表札ばっかり目に映してた

「バイバイ」

「うん、バイバイ」

キミはキレイに笑えているのに、と上手く笑おうとするけれど
頬がピクピク動くだけで、すぐに下を向いた。
263 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 20:02
滲む向こう側のキミが少しずつ小さくなる
何も分からない後ろ姿だけがただひたすら涙を誘って
こらえようと唇をきつく噛んで手を強く握った。

走って逃げたキミの家
ドアの開く音すら聞かずに遠ざかった
どこかの家から延びた梅の花が
小さな花びらを私の上だけに散らして
散る花びらの向こう側は見えなくなった

いつもトナリで笑ってることが当たり前で
いつもトナリでボーっとしていることが普通で
さよならするなんて信じない
私の普通が当たり前が無くなったら
誰が普通や当たり前になってくれるの?

264 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 20:07
店のショーウィンドウに映った作った笑顔は
笑っちゃうほどおかしくて涙で赤く腫れた目で一人笑った
もうトナリは空っぽなの?
浮かんでは消える思い出のキミは全部笑ってなくて
生まれては胸を締め付ける思い出もたいしたものじゃなくて
思い出す度蘇るあの後ろ姿

どうしてよ、と
理由を問えることも出来なくて
待ってよ、と
その後ろ姿を振り向かせることも出来なくて
行かないでよ、と
少しだけでも時間稼ぎを出来なくて
思い出すこともヘンなのばっかりで
キミの笑い顔さえ思い出せない
忘れないよ、とも言えなくて
気の利いた言葉も口に出せなくて
265 名前:帰り道 投稿日:2004/03/18(木) 20:09
一緒に見れない桜は写真に撮って、違う場所でお互い見よう
一緒に触れない花びらは段ボール箱にいっぱい入れて送ろう
一緒に食べれないお弁当はまた今度。

さようなら。
でも、またいつか。

FIN.
266 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/04/01(木) 17:22
今日の更新。
田亀で亀井さん視点。
『行方知れず』
267 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 17:32
耳を塞ぎたくなるような大きな音が出るように力を一杯入れてドアを閉めたのに、思ったより音は出なくて、胸の蟠りを紛れさすように音を立てて真っ黒いアスファルトを歩いた。
電源を切った意味無しの携帯を少し大きめのポケットの中で躍らせて、指先で音を奏でる。
お気に入りの曲を口ずさんで暗闇を照らすライトを避けてわざと迷子になった。


何も知らなかったらよかった。
そしたらただ夢中になって気付けば『おやすみ』も忘れてた少し前のままで
毎日会って話して、話すことは何も無くて、特に何も無いんだけど
何度も話した話や冗談やTVの話でいっぱいいっぱいで
あなた知らないでしょ?
今まで与えてくれたモノが1つでも欠けたら足りない、息苦しい、不安って
小さなコトでもいいの、その1つを補うような別のこと
それが手の平からゆらゆら零れ落ちるたび少し悲しい

268 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 17:40
10歩前に進んでは3歩後ろに下がって
また13歩前に進んでは5歩後ろに下がって7歩前に進む
「1,2,3・・・」と数えてはため息夜にこぼして左胸の服をきつく握りしめた。
弱くはないんだ、と自分に言い聞かせて変に強がったりして、でも弱いまま

白い「止まれ」の文字や歩道と車道を分ける一直線の上を意味もなく踏み外さないように平均台の上にいるように歩いて、落ちて、無理に笑って、心が泣いた。真っ黒なだけの空も泣いてるように見えた。

あなたのことしか見えなくて
無我夢中で愛を覚えて、形にして、不器用に想い合って
たくさん知りたくて、でも知りたくない矛盾誤魔化して
臆病な心、言葉の裏に隠して距離また遠くなった
あなたの歩幅大きくなったんじゃなくて、私が立ち止まって背中見てただけ
269 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 17:50
車のようにエンジンかけたらブレーキ踏むまでずっと走ったままがいい
今の私にはまたエンジンかける勇気がないの、だから止まらないで、と願うの
差し出した左手その右手でひっぱって、痛くても許してあげるから
あまりにも距離が遠くて手が触れられなかったら戻ってきて怒って

「―――絵里・・・?」

あなたが呼ぶ声に笑って立ち止まった。

「んー?」

「何でいんの?ってか今の時間分かっとうと?」

がざっと音がして、ぐいっと右腕を引っ張られて少し怒ったような表情と向き合う

「メールも返ってこんし、電源切っとうし・・・・」

「子供扱いしないで。分かってるもん、それくらい」
270 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 17:55
腕を引っ張る手から逃げようと腕を振るけど、振る度手の力が強くなるばかり
触れた部分が熱を持って、服を通り越して体に伝わる。熱くて息苦しくてしょうがない。
「危ないけん、こんな時間に。はよ帰ろ?」
片手で取りにくそうにポケットから携帯を取り出す隙をついて手を振り払って逃げる。

これ以上触れていると呼吸困難になっちゃいそうで
跳ねるような心の音が丸聞こえになりそうで
こんなの本当はしたい訳じゃない
ぎゅっとしがみついて笑って、あなたの匂いに包まれたいのに
ケンカしてないのにしてるように思っちゃって
心の中にある全ての気持ちつき通せなくて上辺ばっかりで心の中ため息で溢れてる
もっと可愛くなりたくて
あなたの前で素直になって、可愛くなりたいのに。矛盾ばっかりで嫌になる。
271 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 18:07
心配して欲しくて逃げてもっと迷子になった。
よく分からない公園で砂場に埋もれるように座りこんで泣くことも分からなかった。
手に当たった忘れ物の赤いおもちゃのスコップ、汚れるのも気にしないで胸に抱えて何も無い空で星を探した。
1りぼっちでまるで捨て猫みたいって笑ったら後ろから殴られた。

「―――バカ。何しとん。ちょっと待っとれ」
全部命令形にボロカスに言われて中身いっぱいのコンビニ袋とれいなの上着が投げられる。
ぶかぶかのコートを上から被って体育座りで縮こまった。
れいなの匂いが溢れてて、優しくて思いきり笑った。今度は心は泣かなかった。
ケンカする度れいなのコートの中で1人大丈夫、と強がる私は何だかバカみたいで笑ってくれるのはいつもあなたの役割。

どれくらい、どれほど、どんなに、どれだけ
あなたを愛しいと思ったんだろう、愛しいと泣いただろう、どれだけ・・・
272 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 18:12
「―――ん」
頬に当てられるように渡されたお茶の缶
受け取って飲みだすと、れいなが隣に座り込む。
少し呼吸しにくい響きそうな心の音
何かを言おうとするけれど何も言えなくて悔しい。
「別に何も言わんでいいけん。これ飲み終わったら帰ると」
よしよしって頭を撫でられて目を細めたら「ネコみたいやね」って笑われる。
「ネコはネコでも飼い猫だからねっ」
あなたの、は心の中で叫んだ。

私はネコだから、いつも自由に動いて、悩んで、笑うけど
どうしようもなくなったら、あなたが来てくれるの。

だから。
もう見失わないで。

cat isn't know whereabouts.

end.
273 名前:行方知れず 投稿日:2004/04/01(木) 18:16
【あとがき】
両想いなのに片想いみたいな気持ち、と言う尽くし形の亀井さんのお話。
亀井さんぽくないなぁ。。と言うのは内緒の方向で(笑。
274 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/04/05(月) 14:38
今日の更新。
田亀で亀井さん視点。
『甘えんぼ、怒りんぼ』
275 名前:甘えんぼ、怒りんぼ 投稿日:2004/04/05(月) 14:39
雨の中で
背の高いビルとビルの狭間で
傘も差さずにいたら
何だか淋しくなってきた。


              『甘えんぼ、怒りんぼ』
276 名前:甘えんぼ、怒りんぼ 投稿日:2004/04/05(月) 14:46
歌番組の収録が終って、帰ろうとしたら雨が降っていた。
一緒に帰ろう、と言ってたれいなはおとめの打ち合わせでさゆと行っちゃってただ窓の外を眺めてた。
さっき届いたれいなからのメールは『長引きそうだから先帰っといて』と言う内容で、一人ぼっちの楽屋でため息をこっそりついた。


たまにね
どうして恋愛なんかしてるんだろう、って思うの。
こんなに
悔しくなったり、淋しくなったり、愛しくなったり
どうして
あの子なんだろうって。
私が10回愛情を表現したって、あの子はせいぜい1回ぐらいしか返してくれなくて。

携帯を机の上に置いて、楽屋を出る。
出る時にあの子専用のメロディが鳴ったけど、閉じた扉で音は聞こえなくなった。
心配して欲しくて、一人ぼっちになったの。
コンビニで買った透明な傘はあの子の傘の隣に立てかけたまま
水分を含んで重くなる服は気にせずに
雨に濡れた体と髪も気にせずに
よく分からない、ビルとビルの狭間にすべり込んだ。
空を仰ぐと四角く切り取られた灰色の空が雨を無数に散らしてきて
ほんの少し淋しくなった。
277 名前:甘えんぼ、怒りんぼ 投稿日:2004/04/05(月) 14:50
「――何、やっとうと?」
ふっと視界に見慣れた傘が割り込んできて、左手があったかくなる。
顔が笑顔にならないように彼女を見ると私の傘と自分の傘を差して、私の携帯を持って少し怒った表情
「打ち合わせは?」
彼女の質問にわざと答えないで、質問する。
「さっき終った。で、走って探しとった」
怒っているせいか、走ってきたせいか彼女は苦しそう。

ね、不安にならないように
何かで繋ぎとめていて
ね、凍えてしまわないように
その左手を離さないで


「ありがと」
278 名前:甘えんぼ、怒りんぼ 投稿日:2004/04/05(月) 14:53
小さく、彼女が聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言って抱きつく。
抱きついた彼女は彼女の匂いがして柔らかくてそっと目を閉じる。
「猫みたい」
くすっと笑う彼女の手はぎゅっと抱きしめてくれる。
「あー服濡れるー」
口ではそう言っているのに手は離されなくて、少し見上げた口元は笑っていた。


雨が降ったら抱きしめて
その左手を離さないで。
そしたら逃げ出さないから
ね、魔法をかけて
一番優しいあなたしかかけられない魔法を


279 名前:甘えんぼ、怒りんぼ 投稿日:2004/04/05(月) 14:56






「れいな、あったかい」


「バーカ」
見上げたあなたは優しい笑顔で
優しい言葉はもう胸の中


怒りんぼなあなた
早く甘えんぼな私を捕まえて
そしたら笑顔咲く夢の中
甘えんぼな私 あなたの胸の中
怒りんぼなあなた たまには魔法をかけて
とっておきの一番優しい愛を。



おわり。
280 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/09(金) 21:39
あああ最高ですよここの田亀ワールド!
甘い情景が浮かんできます。
281 名前:永井紗月 投稿日:2004/04/09(金) 23:32
更新お疲れ様です。
いやー…いいですね。温かな雰囲気が伝わってきました。
不器用な優しさと甘え方が微笑ましいです。
282 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/04/10(土) 16:57
>>280 名無し飼育さん様
嬉しいお言葉ありがとうございます♪
田亀ワールド広がりっぱなしですが、温かい目で見ていただければと思います。
では、またのご来店お待ちしております。

>>281 永井紗月様
ご来店ありがとうございます♪
うちの田中さんと亀井さんは不器用です(笑。
嬉しいお言葉ありがとうございます。
またのご来店お待ちしておりますね。


では、今日の更新。
ちょっと長めなんで2日ぐらいに分けて更新する予定。
田亀で田中さん視点。
『ねこがいなくなった日』
283 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:04
何だか異様に眠れなくて
やっと眠れそうだとうとうとしてたら携帯がやかましく鳴った。
眠りの余韻が残っている体を起こして
白く薄い霧が覆っている頭に泣き声が響いた。
やけに頭に残り響く声は妙に甘くて
彼女の頬から流れ落ちた雫が心を潤し波紋を広げた。


『ねこがいなくなった日』
《The water broke into white foam.
 Boundless bottom go to the bottom.
 Breathlessly breahte》


284 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:12
今日は卒業式で3年以外は休み。
委長やら部長なんかは朝早くから行くらしい、と誰かが呟いてたのをふと思い出す。
ごろんと寝転がっていたベッドで寝返りを1つ打って、壁にかけてある時計を見る。
「今頃、校長の話?」
小さく呟いて昨日の夜に彼女が残していった淡いピンク色の紙を手を伸ばして机から取る。
2つ折りのその紙の中には手書きの見慣れた彼女の文字がずらり、と並べられていてご丁寧に予想と書いて何時何分だとか書いてあるのを見て笑いをこぼす。
彼女らしい、と心の中で笑って、蹴飛ばして小さくなった布団の中で丸くなる。
迎えになんか行くか、と朝方近くにかかったきた電話で不機嫌丸出しで言ったけど今はそう言う気分じゃない。
何分に家を出て、どれくらいの速さで歩いて、とか頭の中で考えながらゆっくりと目を閉じる。
どこか遠くでにゃーと猫が鳴いていた。

285 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:13







286 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:18
まるでコピーしたような新しく出来た住宅地
一定間隔で並ぶ邪魔な灰色の電柱
空に一直線の線を引っ張る面白くもない黒い電線

お気に入りのパーカーのポケットに両手を突っ込んで、最近お気に入りの曲を口ずさむ。
モノクロームな世界は昨日やおとつい見た時と同じでリアルがない。
高校生の先輩にずっと前借りた本をまた自分でも買おうと思い笑う。
こんなことを言ったら彼女はきっと細い目をもっと細めて意外そうに口の端を上げて笑うだろう、と思い浮かべた。
聞きなれたメロディーが流れた右のポケットから携帯を出してメールを読む。
彼女からのメールは式が早く終った、との内容で返事も返さずに歩くスピードを駆け足までに速める。
287 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:26
「――― あ」
息が上がり始めた頃少し先に見つけた影に立ち止まる。
重たそうに色鮮やかな花束を持つ姿がモノクロな世界で唯一刺激的で目がチカチカして痛む。
まるで暗い所に居て急に明る過ぎる太陽を見た時と同じで一瞬に周りが黒く映る。
「れーな!」
さっきまでの表情なんて考えられない程明るい笑顔を浮かべた彼女が笑って走り出す。
危なかしい足取りで近づいてくる姿に変なリビドーを感じる。
揺れる黒髪に見とれる自分にバカにするように自分で笑って思考能力を頭から追い出す。
これ以上考えると変になってしまいそうだ、と空を仰いだ。
「何?迎えに来てくれたの?」
目の前に来た彼女は胸に抱えていた花束を私に押し付ける。
くしゃっとオレンジ色の包装紙の先端が潰れて花の花粉が白いパーカーについて黄色い跡を残した。
「別に。近くにおっただけやけん」
今更になって自分のしたことが恥かしくなってきてシャットアウトした筈の思考能力をフル回転させて上手くも無い嘘を付く。
288 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:33
「ふーん」
たいして興味もなさそうに先を歩き出す彼女に聞こえないようにため息をついて後を追いかける。
先を歩いていた筈の彼女は歩幅が小さいのかすぐ隣に並ぶほどの距離になって大きく一歩前に出て歩く。
後を追いかけるように歩くのは嫌いだ。
理由なんて聞かれたって困るだけだけど、ただ何となく。性に合わないのだ。
前をふらふら歩かれたら、ゆっくり歩くことも出来ないから。ただそれだけ。

「――― 絵里?」
急に足音が1つ消えて足を止めて振り返ると道端にしゃがみこんでいる彼女の横顔。
数歩元に戻って、彼女の近くでしゃがむ。
「どした?気分でも悪いと?」
下を向いている彼女の表情を窺おうと身を前に倒す。

「――― 猫」
289 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:37
「はぁ?」
もうちょっとで表情が見える、と言う所で呟かれた言葉。
「だからっ!猫さん!」
急に立ち上がった絵里の手には真っ白い猫。
「あー・・・・で?」
ビックリして尻餅を付いた姿勢から「よっ」と起き上がって猫を覗き込む。

真っ白い猫を見て
もうすぐいなくなるだろう、と思った。
でも、それは口に出さずに好きにさせた。
ずっと一緒になんて居られないのだ、猫も彼女も私も
いつかは1人になっていく、それだけ。

青すぎる空を仰ぐと変にデジャビュを感じて
誤魔化すように何も無い空に笑いかけてみた
でもそれはどこか作り笑いで
返事すら届かないでどこか悲しいまま。
290 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/10(土) 17:43
「絵里ん家、猫飼えないよ?」
愛しそうに目を細めて猫の背を撫ぜる彼女に言う。
心は何故か穏やかじゃない、まるで嵐のようだ。
右手に持った花束が妙に重たく感じた。重りでもつけられたみたいに。
じっと撫ぜられている猫も彼女と同じように目を細めてどっちが猫か分からないなぁと心で笑った。
「知ってるもん」
小さい子が怒っているように頬を膨らまして、それでも猫を撫ぜる手を止めない。
「じゃ、元居た場所に戻し」
猫を撫ぜる手を掴んで言った。
驚いたように目を見開いている彼女を見て、やっと自分のしたことに気付く。
「あ・・・や・・・ごめん」
上手く言葉が言えないまま謝って手を離して、ポケットに突っ込む。

彼女の体温の余韻が
彼女の手の柔らかさが
まだ、手の平に残っている。


291 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/04/10(土) 17:44
今日はここまでで。
では、また明日にでも・・・
292 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:23
この感覚を知っていた。
でも分かりそうで分からない気持ちはよく分からない。
前に知っていたかさえ、急に分からなくなってしまいそうだ。
掴めそうで掴めない雲や霧みたいで
分かりそうで分からないテストの問題みたいで
知ってそうで知らない遠く昔の物語みたいで
知りたくて知れなくて、分かりたくて分からなくて、掴みたくて掴めたくて
胸の中がイラ立ったまま。

「れーな」
いつもの名前を呼ぶ声が急に甘く感じて
「なん?」
まるでケーキやチョコレートを食べ過ぎた時みたいに胸が苦しくてモヤモヤして
「えらそう。年下のくせに。背、低いくせに」
これじゃまるで恋じゃないかと
「背や年は関係なか」
友達が話していた恋愛バナシを思い出して苦く笑った。
『バカみたい』だと。
293 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:31
「うー・・・もーいい。バカれーな!バイバイ」
背中を見ただけで怒ってると分かりそうな程早足で歩いて
でも、走っては無くて微妙な感じ。
1gや2g違って天秤でゆらゆら揺られてるような、よく分からない感じ。

「こっちが怒りたいけん・・・」
はぁ、とため息をついて道路にしゃがみ込む。
にゃーと気まぐれなネコが鳴いて私を見てくる。
「お前はいーよな・・・気まぐれやけん」
おいで、と差し出した手先にぺろっと1回舐められて、思いっきり噛まれる。
血が出たけど気にしなかった。胸の方が痛かったから。

痛いとか気持ち悪いとか気分が悪いとか
よく分からない。
だからムカツイて腹が立って飽きれてくる。
言葉では言い表せない気持ちが胸の中をぐるぐる回って
もう分からない。
294 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:31




道路に浮かんだ水溜りに映った私は
どんな顔をしていたの?


295 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:37
風呂上りに黒いジャージを着てオレンジジュースをがぶ飲みした。
酸っぱくて甘いジュースが喉を潤して、その酸っぱさであの想いも消えそう。
濡れた髪を大き目のバスタオルでガシガシ拭いて、そのままベッドに寝転んだ。
顔に当たるタオルがこしょばくて両手で顔を覆う。
「―――どうしてっ・・・?」
どうして?
そんなの分からないから呟いてるんじゃない
教えて欲しいから問いてるんじゃない
「バカみたいやけん。こんな考えて」
忘れて眠ろうとするけど、その度に目が覚めて
時が進まない時計がおかしいと携帯で確かめて
ため息ついてばかり。
296 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:42
〜♪
流れ出した音楽を途中で切って通話ボタンを押す。
『なんね?』
『れーな!!!ネコがっ・・・』
『はぁ?ネコ???』
『ネコいなくなっちゃったのー』
今にも泣き出しそうな声は甘く甘く頭に響いてくらくらする。
『―――分かったと。今から絵里ん家行くから待っといて』
返事も聞かずに電源を切って、慌ててジャンバーを羽織る。
「どこ行くん?」と怒りの混じった母さんの言葉も無視して、自転車に飛び乗る。


甘い甘い甘い甘い・・・・
何かが掴めそうだった。
クラクラする、響く、夢見心地
何かが分かりそうだった。
頭に響く意味のないノイズ

297 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:51
「おじゃまします」と早口で言って玄関のドアを開けて階段も2段飛ばしで駆け上がって

「絵里っ?!」
叫ぶように呼んだ名前と共にドアがバンッと音を立てて壁にぶつかる。
「れーな・・・・」
床に座り込んで上目遣いで私を見る彼女
床に散らばっているコンビニの袋と何種類かのネコ缶の山。
そっと近づいて、ぎゅっと抱きしめる。
彼女の細い体はやけに軽くて柔らかくて今にも壊れそう。
「泣いちゃいかんよ。ネコにまでバカにされるけんね」
背中にまわされた腕が熱い。触れた体がやけに熱を持っている。
自分でも何を言っているのか分からなかった。
ただ自分の胸の鼓動がやけに早かったのと絵里のしゃくりあげる声が耳について離れなかった。
298 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:54
何かが分かりそうで知れそうで掴めそうな日
ふと私達の前に現れたネコはすぐに姿を消した。
この気持ちの正体が知れそうな一瞬
私は彼女に捕まった。
ネコの代わりに傍にいるよ、と言ってキミが笑ったことを覚えてる。

【the cat in my and your heart】

end.
299 名前:ねこがいなくなった日 投稿日:2004/04/12(月) 20:55
【あとがき】
変に長かったですが、田亀で田中さん視点でした。
いつも短いのに長いのを書くと疲れますね・・・(笑。
これからも田亀が増えると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
では〜
300 名前:七誌 投稿日:2004/04/17(土) 15:48
いいねー田亀。
やっぱり甘えんぼな亀井といじっぱりな田中がいい!
新しいの期待してるよ!
301 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/05/08(土) 19:37
>300 七誌さん
ありがとうございます。
久しぶりの田中さん視点でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。
またのご来店お待ちしております♪

では、今日の更新。
いしごまで後藤さん視点
302 名前:melt hue,melt away 投稿日:2004/05/08(土) 19:40
いつからか思ってた。
夢も空想も空の果て
キミがいるならどこまでもついていこう
気の向くまま

303 名前:melt hue,melt away 投稿日:2004/05/08(土) 19:48
ぽちゃん。

手先から離れた小石が水面に吸い込まれる。
綺麗な弧を描いた小石はいつかTVで見たプールにダイブする水泳選手のよう。
揺れた水面は小さな波紋を作って、次々に波立っていく。

「――― 泡になれたら」

静かな空間はキミの声さえも静かにかき消していく。

ぽちゃん。

元の平らな水面に戻った湖にまた石を投げる。
少し力を入れた石はさっきよりも遠くへ飛んでいって水面で2,3回跳ねる。

「何も考えないで済むのにね」

淋しく微笑むキミは私の知ってるキミとは別人みたいで
見間違いじゃないか、と眼を何度も擦った。

「人魚姫?」

近くに転がってる小石を手にとって言う。
何度も何度も繰り返し読んだ本
何度も何度も自分と照らし合わせた物語

「私とそっくりなの」

目を細めて遠くを見る横顔から目をそらした。
何となく見てはいけないような気がして気分が悪かったから。

「想いを口に出せないところか、ずっと夜泣いてるとことか」

ぽちゃん。
キミの言葉を遮るように手の中の石を投げた。
今度はそんなに遠くへは飛ばなかった。
何度も同じように波紋を作る水面を殴った。
でも感覚は全然無くて、向かってきたのは飛んできたしぶきと冷たい水の感触だけ。
304 名前:melt hue,melt away 投稿日:2004/05/08(土) 19:51
「なればいいじゃん。なりたいんなら」

話が噛みあってない、と言った後に思った。
そんなの、もうどうでもいい。

ゆっくり息を吐いて
体中の酸素が無くなっても吐き続けて
立ち昇っていく白い泡をずっと見つめて

――― 怖かったんだと思う。

それしか方法が無い、としても怖かったし、淋しかっただろう
何も見えない水の中でただ一人ぼっちで
淋しさとか紛らわす為に微笑んで
きっと、最後の最後の泡になる前まで呟いてたんだろう
「愛してる」って、誰にも聞こえない声で―――

305 名前:melt hue,melt away 投稿日:2004/05/08(土) 19:55
ゆっくりと、湖に浸かって行く。
キミはじっと私を見たまま
生ぬるい水がカラダを包み込んで、私は岸辺に両手を預けた姿勢

「おいで」

手を伸ばして、微笑む。
キミが泡や人魚姫になりたいのなら、ならせてあげる。
最後の最後まで声を聞いてあげるよ。

「―――何やって・・・ごっちん・・・」

私を呼んだキミはハッと何かに気付いたように手を口にあてる。

「おいで」

もう一度言った。
ゆっくりと、でも出来るだけ優しく。
差し出した私の手を取るキミはとても綺麗に微笑んでいて、ほんの少し嫉妬する。

306 名前:melt hue,melt away 投稿日:2004/05/08(土) 19:57
ゆらぁり
ゆらゆら
ゆらぁり
ゆら
舞い落ちる花びらのように、水のするがまま
ゆらぁり
ゆら
ゆらぁり

いつまでも願おう。
キミが笑っていますように、と
一人ぼっちな人魚姫は寂しかったんだ
でも、キミは一人ぼっちじゃない
私がいるから。

ゆらぁり
ゆら
ゆらぁり

end.
307 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/05/26(水) 21:34
今日の更新。1本目。
308 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:37
しゅっ。しゅ。紙と何かが擦れる音。
少しアドリブの混じったお気に入りっぽい鼻歌
開けっ放した窓から入ってくる生ぬるい風と遠慮無しのノイズ


『れーなー、クレヨンはぁ?』
『は?クレヨン?何に使うと?』
『ないしょー、ね?ちょーだい?』
『―――多分押し入れん中か机の引き出しにあるけん』



          『日曜日の過ごし方』

309 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:43
彼女が何かをするのはいつも突然で、
予想範囲なんて軽々と飛び越えてくる。
それはいつも気まぐれで、
でもどこかノルムか何かに従ってるような気がしてならない。
だって、いつも彼女の気まぐれは日曜日に起こるんだから。


9時にセットした目覚し。
うるさい機械音を数秒で止めて、まだ起きてないぼーっとした頭を無理矢理起こす訳でもなくベッドに寝転んだまま。
うすく開いた瞼は重くて、少しの間開いては閉じての繰り返し。
白っぽいクリーム色の天井に貼り付けられているタイルの数を数えたり、時計の針の音を数えたり。
お腹がすいた、と主張する音にやっと重い体を起こす。隣りの彼女は予想通りもう居ない。


ひんやり冷たいフローリングを素足でペタペタ歩く。
見慣れた猫背の小さな背中と重いほどの黒髪
起きてそのままな自分の髪に手ぐしを入れて冷蔵庫を開けて小さなペットボトルを無造作に引き出す。
カチッとキャップの開く小さな音がして彼女がゆっくりと振り返る。

310 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:47

目が合う。
何もしなくても上がったままの口角がもっと上がって八重歯が覗く。
風に乗った甘い香りが夢の中のあたしまでもを揺らす。


何でもない様に彼女の近くのソファに座る。
飲んだペットボトルの中身はいまいちよく分からない、喉も渇いたまま
「何しようと?」
床に寝そべった彼女に視線をやりながら聞く。
寝起きだからか低めの声だったけど、彼女は何でもない様に笑う。
「ないしょー」
妙に間延びした甘ったるい声
細めた目と声にだから猫っぽいって言われるんだ、と納得して笑った。


311 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:52
絵里の周りを取り囲むようにクレヨンはノンシャランに色鮮やかに散りばめられて
大き目の画用紙は汚れ一つない真っ白で
差し込んだ光に反射して染まる真っ黒な黒髪

時間も忘れて見惚れてた。
キミは気まぐれにあたしの知らないキミを見せるから。

「何?らくがき?」
ちらばったクレヨンから1つ手に取って、紙の隅っこに重ねて文字を書いた。
小さな小さな字で、誰も読めないように、あたしも読めないように
手についたクレヨンの色、紙に擦り付けて、キミが笑って怒った。
上がった口元、「もうっ」って言葉似合わずに、2人で笑った。

「ないしょのらくがき」
しゅっ。しゅ。
紙とクレヨンの擦れ合う音。
どんどん小さくなっていく小さなとんがりぼうし
どんどん色鮮やかになっていく真っ白ペーパー
312 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:55
あたしの書いたないしょのらくがき
彼女が書いた未完成ならくがき
それは意味を持ってるようで持ってない気まぐれ
絶え間なく歌う鼻歌
うるさいノイズも壊す最終兵器、リーサルウェポン

猫のように笑った彼女のらくがきと
隅っこのちっちゃいちっちゃいあたしのらくがきは
いつだった気まぐれで、意味も持たない、日曜日の過ごし方。

end.
313 名前:日曜日の過ごし方 投稿日:2004/05/26(水) 21:57
【あとがき】
田中さん視点で田亀でした。
タイトルは特に意味は無し。センスが無いのはいつものことで(汗。
のんびりとした田亀を書きたかった、とそれだけです。
では、またの更新で。
314 名前:tsukise 投稿日:2004/05/27(木) 19:07
更新お疲れ様ですっ(平伏
ゆっくりとした時間が流れている中での
二人のやり取りが微笑ましいです〜♪
ひっそりと応援してますが、更新頑張って下さいね♪
315 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/07/20(火) 13:39
>>314 tsukise様

毎回の様に嬉しいレスありがとうございます♪
まったりした感じをイメージしたので、そう言って頂けると幸いですっ
では、これからも宜しければお付き合い下さいませっ

で、今日の久しぶりな更新。
田亀で田中さん視点。
『夏の入り口』
316 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 13:41
夏真っ盛りみたいな蒸し暑さ。
薄いカーテンもしないで開けっ放した窓
床に無造作に広がった丸まった靴下とうちわ


           『夏の入り口』


317 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 13:45

「例えばね。それだけでいいと思える事ってあるじゃない?」

ひどく大人びていてそれでも尚幼いと感じる声で彼女が笑う。
何かの本の一部を抜き出したような言葉はやけに木霊して聞こえた。
目の前で風に髪をなびかせながら、私の手を取る絵里はそこだけ霧がかかったようにぼやけて見えた。

包み込むような空気は暑くて暑くて死にそうでたまらないのに
手首から広がる彼女の体温だけは別に思えて、心地良かった。

318 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 13:51

「―――絵里、どこ行くと?」

ずんずん何も喋らないで歩いてばっかり。
駅のホームが見えた所でずっと心の中にあった言葉を吐き出すけど、丁度タイミング良く入ってきた電車の音にかき消されて自分すら聞こえなくなった。
生あたたかい風が顔や体に当たって、汗が噴出し顔をしかめる。
タオルは買ったばかりのハーフパンツの後ろポケット。取れそうなのに取れない。
人もまばらな電車に乗り込んでガタゴト揺られて、よく知らない駅の名前を胡散臭いアナウンスで何回か聞かされて、ドアが開いて、絵里が立つ。
強くも無く弱くも無く掴まれた手首に従って後を追いかける。

いつもは彼女が追いかける役なのに。
非日常的な行動が何だか面白くて新鮮で声も上げずに喉を震わせて笑った。

319 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 13:57

ずんずん、ずんずん。
これから歩く道は彼女の背中が邪魔でよく見えない。
見えるのはとんでもなく高い所にある空と
断片的に聞こえるメロディ

ふと。彼女が立ち止まる。
ぶつかりそうになった背中を一歩横に動いてかわす。

「あのね」

照りつける太陽の光が眩しいのか目を細めて猫みたいに笑って
小さな口から覗く八重歯。風に揺られる黒髪とTシャツのはしっこ

「海行くの」

疑問系でもなくて肯定した形で未来系
行きたい、でもなくて、行く?でもなくて、行った、でもなくて
『行くの』

「―――言うの遅いけん」

怒ったように言ったって「はい、行くよー」って何考えてるか分からない笑顔でかわされて、済まされて
結局はそれに従って歩き出す。

「何で海なん?」

少し先に見えた水平線
握られたままの手首とピクニックに行く時みたいに腕を振る笑顔

「夏だー!海だー!バーベキューだー!って思ったから」

何かのコマーシャルでよくありそうな言葉の羅列。
まぁ、いっか。ため息混じりに呟いて笑う。


320 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 13:59
海の上を飛び回る白い白いカモメ

「鳥みたいに飛べたらいいのに」

ふにゃっとした微笑みのまま彼女が言う。
それは幼い幼い夢のカケラ

「飛べないから歩くと」

空を目指して羽ばたくように。
風を感じるように。

321 名前:夏の入り口 投稿日:2004/07/20(火) 14:02
真っ青な空はとてもとても高い所にあって
どんなに手を伸ばしたって届きそうになかった。
いつか現れる入道雲は触れそうなのに。

青く青く透き通りそうな空
見つけた風の中に潜む優しさのカケラ
眩しいほどの光の中で溢れる幸せのかけら

「たまにはこういうのもいいよね」

「まだ夏じゃないけど」

さっきのテンポのいいコマーシャルで使われてそうな言葉を口の中で繰り返した。


ほら、今度は見えるこの先に
君と夏の入り口を見た気がする。


end.
322 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/07/26(月) 21:37
今日の更新。
田亀で『優しい嘘』

最近田亀が多いのは、気にしないで下さい(笑)
323 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 21:43
一人ぼっちでも歩いていかなきゃいけなくて
人込みの雑踏の中に埋もれながらいつもある隣りの温もりに手を伸ばした。
いつもなら起きてないハズの時間。
諦めつつ電話をかければ君は直ぐに出て、「どした?」と何度も聞く声に何だか上手く返事が出来なかった。

324 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 21:44




君が立って、いた。



325 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 21:50
「なん?早よぉ帰ると」

れいなが目深に被った帽子の下から絵里を覗き込む。
その場に突っ立ったままの絵里をれいなの吊り目がちな黒目が映す。

「ほら」

右手をれいなが掴んで歩き出す。
絵里の口角は上がって目は細められて

「れーなー」

「なん?」

絵里がタッタッと走って、れいなとの距離を縮める。
隣りに並んだ頃にれいなが絵里の手を離す。

「ありがと」

「何が?」

照れ隠しのつもりで言ったれいなの言葉は早すぎて不自然。
それでも絵里はふにゃふにゃ笑ったまま

326 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 21:50
「迎えに来てくれたじゃんー。れーなお休みなのに」

語尾の延びた緊張感の無い言葉。
ぷくっと頬を膨らまして絵里が言う。

「買い物のついでやけん」

れいなは絵里の膨れた頬を両指でさす。
ぷすっと空気が漏れて元に戻った顔はあのふにゃふにゃ顔。

「れいな、れーなー」

327 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 21:59
絵里が甘えた声でれいなの右手を掴む。

一度離れた手は、もう一度元通り。
一度離れた手、掴むのが勇気いるなら離さなくていい
君とならいつだって笑えそうな気がした。

「なん?」

れいなは絵里の顔など見ずに前を向いたまま

「なんでもなーい」

悪戯っ子のように笑って、絵里が繋がれた手を大きく振る。

「あっそ。ちゃんと歩かんとぶつかるとよ?」

328 名前:優しい嘘 投稿日:2004/07/26(月) 22:02
この近くにスーパーやコンビニが無い事は誰でも知っていた。
だけど2人は気が付かないフリをする。
れいなの手に買い物袋は無い事も。

ここは現実と嘘の絡み合う世界だから。

見え透いた嘘
照れた時の頭かく癖
赤くなった頬と耳
ぶっきらぼうの温かい言葉


ほら、君の右手がこんなにも温かい。


end.
329 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/08/26(木) 19:59
田亀更新。
『花火の夜』
330 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:00
いつからか気付いてた気持ち。
だけど、認めず隠してたらどんどん膨らんで
キミにその言葉を伝えるのはとても難しいと気付いた。


         『花火の夜』


331 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:06

「ねーねーねー」

いつもみたいにTシャツの端っこをつんつん引っ張ってくる絵里。
タコみたいに口を尖がらして上目遣いの黒い瞳。
そんな姿をする時は、何かを頼んでくる時の仕草で早めに進めていた歩調を止めて振り返った。

「なん?」

にこっと細い目をもっと細めて絵里は笑う。
何だか照れくさくなって、Tシャツの端を持つ手を少し俯いて視界の端っこで見つめた。

「今日ね、お祭りがあるんだって!行こう?」

ふにゃ、っていつもみたいににこにこ笑って
ちょこんと傾げられた顔

「さゆにはもぉ誘っとうと?」

ふぅってため息1つ付いて次の言葉を口から吐き出す。
それは、いつもの言葉で次に絵里が言う言葉もいつもの言葉だと当たり前に思っていた。


332 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:09

「ううん。絵里はれーなと2人で行くの」

「―――は?」

いつもの言葉は影すらなく、あたしの頭はついていけない。

「さゆは藤本さんと吉澤さんと行くんだってー」

ふにゃっと笑った絵里はあたしの手に自分の手を重ねてきて、
ちょこんと首をかしげて小動物みたいに言葉を待つから「うん」と言って頷く事しか出来なかった。

333 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:14
初めて見る浴衣姿。
後ろで光る夜店のライトが明る過ぎて上手く見れない。
空はもう真っ黒で数えられる程の星しか見えない。

「れーな、遅いー」

間延びした声であたしの姿を見つけると駆け寄ってきて一言。
その手には大きなリンゴ飴が握られていて、齧られた跡1つ。

「人、混んどったけん」

早口に言い訳を呟いて、どこ行く?と誤魔化した。


家を出る前に丁度タイミング良くかかってきた電話。
それは、あたしの普通を裏切ったさゆからで後ろのノイズが五月蝿くてあまり言葉が聞き取れなかった。
『ちゃんと絵里に言いなよ』とか『チャンス作ってあげたの』とか『報酬はリンゴ飴とわたあめでいい』とか
途切れ途切れに聞こえる言葉にあたしは返事を上手く出来なかった。

334 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:17

「ね!花火上がるんだって〜」

嬉しそうに笑って指差すのは電柱に張り付けられた紙切れ。
少しあたしの鼓動が速いのは
浴衣姿やリンゴ飴のせいで赤く染まった唇で知らない人みたいな絵里と
さゆが言った言葉たちのせい。

335 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:20

「もーすぐかなぁ?」

時計と睨めっこして

「―――何?れーな、どしたの?」

「何でもないっちゃ」

「リンゴ飴?食べたいの?」

「――ばっ!違っ・・・」

「じゃあ。何?」

「いや・・・・あの・・・・」


「・・・・あの・・・」



        ド      ン   ッ

       「――――――――――――」




336 名前:花火の夜 投稿日:2004/08/26(木) 20:23

「うわぁ・・・・すっごーい」

初めて口に出した
キミへの想いは花火に隠され暗闇の中へ

少し落ち着いた鼓動。
花火が上がり続ける空を見つめ続けてる横顔をこっそりと盗み見た。

まだ胸には溢れそうなほど想いが積もってる。
キミはあたしを見て目を細め笑って、あたしは段々速くなる鼓動に笑った。

色鮮やかな夜空を見上げながら君へちゃんと伝えられるのはいつだろう、と答えの出ない自問自答をしたんだ。


end.
337 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/30(土) 14:02
ぶっ通しで読んでたのですが、すごくよかったです。
季節とか変わり目があるのがスキですね。
更新待ってます。
338 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/11/11(木) 19:54
>337 通りすがりの者さん。

ありがとうございます。
そう言って頂けてとても嬉しいです♪
よかったら今後ともどうぞ宜しくお願いします。


では、今日の更新。
いしごまで「カンタービレ」
339 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 19:56
夜の中の散歩、しっかり手を繋いで
曲がり角ある度に右、左、交互に進んで
見つけた灰色の灰ビルに入ろうと言ったのも、出ましょうと拗ねた表情を見せたのもキミだった。




             『カンタービレ』
340 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:01
何度目かの曲がり角を曲がって、私たちを出迎えたのは薄く汚れた黄色の看板「立ち入り禁止」。
無意識に灰色の壁に沿って見上げると壁は何処からか黒い夜色と混ざって見えなくなった。

「―――廃ビルかなぁ?」

私と同じ様に見ていた梨華ちゃんがポツリと呟く。
木の葉が揺れる音がやけに大きく聞こえ、ひゅうと通り過ぎる風は季節に似合わずかなり肌寒い。

「そうじゃない?荒れてるし」

片足に重心を乗せた崩れた立ち方で地面の砂利石を靴の裏でこすった。静かな静寂に響く軽い音。

「入ろう?面白そうじゃない?」

子供の様な無邪気な瞳が何も、有無をも言わせない。
繋いだ手が先へ先へ、連れて行かれる身。何だか面白くない。

341 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:05

「暗いね」

呆れるほどバカみたいに静かな空間にペタペタ鳴るキミのサンダルの音とジャリジャリ擦って歩くあたしのスニーカーの音。

「夜だからね」

携帯のライトで先を照らして進んでいく。懐中電灯なんて都合の良い物持ってない。散歩の途中。


キミの濡れた様な黒髪が取り巻く闇と混ざって
繋いだ手の体温と優しい声音だけがキミの存在の全てで
自分たちのいる空間と世界を切り離したみたいだった。

342 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:11

階段は途中からコンクリートの塊と変化して、上には登れない。

「―――あれって風船・・・?」

キミが指差した先に風船は闇に白く浮かび上がって見えた。
それに向かって進んでいく、少しだって怖くはなかった。キミといるから、と言う理由は考えなくたって分かってしまって、思わず笑みを浮かべる。
灰色の冷たそうな床にはゴロゴロした岩みたいな石や色んな葉っぱやゴミが散乱いていた。
窓になる予定だったのだろう。それは壁にぽっかり開いた穴。
昼間、見える青すぎる空が、夜、巨大な闇になった。
闇は全てを隠してくれて正直になれるから、人は夜に涙を流すのだとインキ臭い言い方でいつかのブラウン管が頭の中で喋っていた。

343 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:20

コンクリートから飛び出したクギに見事に引っかかった風船。
触れると壁は冷たく、ヒモは細く、クギは痛かった。
鉄の錆びた匂いがする、血の味とは微妙に少し違う匂い。

「―――欲しい?」

握った手を軽く引っ張って聞く。主導権はあたし寄り。
携帯のちっぽけなライトだけじゃキミの全ては見えない。

「このまま、ここに閉じ込められてるのって悲しいじゃない?」
灰色ばかりで、この四角い未完成な窓から見えるモノだけが世界の全てなんて可哀想。

キミは何にでも優しすぎる、と呟いたら、どうして?と笑う。
分かってる癖に理由を聞きたがるから無視した。あたしはキミみたいに優しくないし大人じゃないから理由なんて言わない、言いたくない。

344 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:23
風と共にふわっと揺れる度、まるで夢の中のように白い残像が映る。
錆びたクギのせいで茶色く一部染まったヒモは討論無しでキミの手の中。
チューブから出したばかりの絵の具の様な真っ白な風船と黒く沈んだ海の底の様な黒とのコントラスト。
ライトは白く光り、目がチカチカ、闇は大きい。
繋ぎ合った手に力を入れて、簡単な力の副作用。
抱きしめはしない、手は錆びや土で汚れているから。
それは唇と唇が触れ合うだけの幼稚なキス。それだけじゃ子供じゃない大人でもない私は満足しない。
耳を噛む。痛くすると怒られるから、甘く。体は触れ合っている。
どくどく脈打つキミのうるさい心臓があたしの皮膚までも弾いている様。
「・・・真希ちゃん・・・」彼女はあたしを呼ぶ、キミだけの特別な呼び方で。
切ない、愛しい、苦しい、全ての感情が集まって愛を形造るみたい。

345 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:30

「帰りましょ」

怒ったような凛とした声。表情は見えやしない。
繋いだ手は自然に解かれ、手の平に纏わりつく熱が邪魔。
冷たい空気に触れてるポケットへ突っ込んだって熱くて仕方ない。
彼女はあたしの先を行く、走り出すことはなくだけど止まる事も無く。
お姉さんぶるキミは嫌いな訳じゃない。でも好き好む訳でも無い。

ふわり、と風が吹く。生ぬるい緑の匂いなんて一つもしない都会の風。
白い風船がコンクリートから飛び出した茶色のクギに触れる、
キミが持った白い糸が垂れ落ちる、
紙キレみたいなゴムははらりと宙を舞う。
それは何故か全てスローモーションに映った。キミの驚き悲しむ色の混じった表情。
キミの細い指が触れる、あたしの手。
346 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:35

手を繋ぐのに理由なんて要らないでしょ、とキミが笑った。
空っぽになった手が寂しくなったんだ、と私は勝手に理由をつけてみた。
眠れないと甘い声で電話をかけてきたのはキミで、夜の散歩に行きましょう?と大人っぽく誘ったのもキミで、廃ビルから帰りましょ、と言ったのもキミで。
あたしは大人ぶるキミに振り回されてばかり。
それに付き合うあたしはキミだけに優しいのかもしれない。

「―――今度ピンクの風船買ってあげるよ」

静かな暗闇の中、歌うようにキミへと囁いた。
もう2度と来ないだろう、この廃ビルに口の中でお別れの言葉囁くように歌った。

end.

347 名前:カンタービレ 投稿日:2004/11/11(木) 20:36
[あとがき]
題のカンタービレとは音楽発想標語の1つで「歌うように」の意味。
乱暴っぽく、雑な感じの文体で書いてみました。
一応後藤さん視点。
348 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/11/12(金) 21:46
いいですね、ごまりか。
自分的に思うことがあります。
この廃ビルにある闇がごっちんで白い風船が梨華ちゃんみたいな感じ
がします。
そしてちょっとだけ切ない…更新待ってます。
349 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/11/21(日) 14:48
>>348 通りすがりの者様。
ありがとうございます。いしごまは私の中では対照的な存在であることを分かって頂けて嬉しい限りです。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。


今日の更新。
田亀で田中さん視点
「I'm So Jealous.」
350 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 14:51

暑い暑い、と下敷きで顔をあおぐ
外はまだ夏で空が透き通るように青く高い
茶色の土に生えたように見える青いラインの入った体操服がやけに目に付いた3時間目の始まる前。


         「I'm So Jealous.」


351 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 14:57

「暑い・・・」

パタパタと下敷きで風を作るけどそれでもちっとも涼しくならない。
だから、夏は嫌いだ、と小さく口の中で呟いた。

「あ!あれ、絵里じゃない?」

窓から身を乗り出すようにグラウンドを見ていたさゆが1人の人を指差して、あたしを首だけで見る。

「絵里、体育あったっけ?今日」

さゆが指差す方向を首だけで見ながら、問い掛ける。10分の休み時間はまだ終わらない。

「知らないー。時間割変更とかじゃない?」

さゆはにこにこしっぱなしで、こっちを見ようともしない。
絵里の後姿を見つける。後ろで軽く跳ねた綺麗な黒髪。


352 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 14:59

あれ?変な感じ。胸の中で何かが暴れているような。
辛さよりももっと切なくてドキドキするような感情が
胸に絶え間なく波のように押し寄せて
胸の奥に氷のような冷たい塊が、ぽつんと現れた
だけど頭は興奮した時みたいに、カッと燃えたみたいに
熱くてどうしようもない。

353 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 15:06

「―――帰る」

机の横にかけたいたカバンを手に持って、イスから立ち上がる。
何だか頭の中で熱湯が沸騰してて、今にもこぼれ出しそうだった。
だけど窓に映った自分の顔はいつもと大して変わっていなかった。

「え?れいな?何?!どうしたの!?」

さゆが驚いて追いかけようとするのを、教室のドアを勢いよく閉めることで制して早足で緑色の廊下を歩く。
たまに、キュッと上履きか廊下がか知らないけれど鳴るのが不愉快でたまらない。
突然自分でもよく分からない衝動が痛みとして胸に突き刺さって、
その痛みを逃すために言葉に変換して口から出してしまっただけで。

354 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 15:11

ただ、絵里が友達とじゃれ合っているのを見ただけなのに
キュッと胸が鎖でキツく縛られたみたいに痛く
ただ絵里が見学の人とオデコくっつけてただけなのに
息が出来ない、急に水の中に押し入れられたみたいに、水面は黒くしか映らない。
綺麗な水色と波紋は何処へ行った?
だけどあたしはちゃんと呼吸の仕方を覚えていて本当は胸を鎖で縛られたんじゃない事を知っている。

「どうしたの?」と聞く母親を無視して、階段を駆け上がり自室のベッドにごろんと寝転がる。
そのまま制服を器用に脱いで、部屋着に着替えて目をぎゅっと瞑った。

355 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 15:17

「バカ、れーなのバカ」

何時の間に来たのだろう。何故か驚きはしない、学校の授業の事なんて論外で考えもしない。
気付けば絵里は視界の隅にいて、相変わらずな言葉を並べている。

「バカばか、五月蝿いと」

投げやりに答えて上半身を腹筋を使って起き上がる。
うたた寝の後みたいに明瞭な空白が頭の中を埋め尽くしている。

「―――れーな」

次の瞬間ふわっと前髪がかき上げられて目の前の彼女の顔と向き合う。
少し切り目がちの夜色の瞳。
絵里の手が眉間に伸びる。触れた体温は暖かくて、あたしより少し高め。

356 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 15:22
ぐりぐり、ぎゅうぎゅう、ぐりぐり
人差し指で押されたり皺を伸ばすようにされたり、まるで彼女の抵抗しないナマモノのオモチャ。
肌色の指で絵里の表情は見えない。

「―――痛い」

胸が、彼女が触れてる眉間が。どこもかも痛い、頭も胸も。
もう病気だ、と心に言葉を落とした。

「何、怒ってるの?れーな」

指は離れない。彼女の表情は見えない、あたしの表情も見えないはず。

「別に怒ってなか」

暑いから、と言ってその手を振り払う事も出来なくて、

「怒ってるもん。口調も目も」
ほら、皺いってる。彼女は拗ねたような怒ったような声。
これじゃあ、まるであたしじゃなくて絵里が怒ってるみたい、と笑う。
手が離れて彼女の顔が見える。眉間にじわっと残った体温。

357 名前:I'm So Jealous. 投稿日:2004/11/21(日) 15:34

「れーなのバーカ」

「絵里のバカ」

心は何だか平穏すぎて何も無かったみたいに爽やか。
鎖は氷で出来ていて、水は誰かの悪戯で跡形も無く栓から抜かれた。

「れーなのやきもちやきー」

ふにゃふにゃ笑っている彼女は青いラインが入った学校の体操服姿。
何だか勝ち誇ったみたいな満ちた感情が胸に流れ込んできた。
あたしは笑う、絵里も笑う。たいして別に面白い訳でもないのに。

あたしはやきもち焼きで、彼女も多分そうで。
今度は困る側じゃなくて困らしてやろうかと考えたんだ。
バカばか言われるだけじゃあ、やっていけやしない。
あたしは彼女の抵抗しないオモチャのままじゃあない。

end.
358 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/12/10(金) 12:46
今日の更新。
田亀で小川さん視点「愛情の確かめ方」
359 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 12:50

例えば、人それぞれに恋や愛のカタチがあるように
それを確かめる方法も人それぞれなんだろう、と

今頃、あの子は白い息を吐きながら、どこかを愛しい人の為に走りまわり
今頃、彼女は溢れ出す笑顔を隠そうともせず、どこかで息を潜めているのだろう、と

―――思った。


           『愛情の確かめ方』


360 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 13:04

「―――あれ?」

ガラッと勢いよくドアが開かれ、それとほぼ同時にすかした様な声が聞こえた。

「絵里?」

確かめるように、もう1度。心なしかその言葉が寂しそうにあたしには聞こえる。
きょろきょろ、とドアから1歩中へ入った所で立ちすくむ田中ちゃんの姿を座っていたイスを半回転させて、やっと目に映す。

「―――田中ちゃん?どーしたの?」

押し付けられた部費の計算の為の計算機を散らかった机の上に置いて
肩で苦しく息をする田中ちゃんを見る。
361 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 13:15
閉め切った、人の体温のせいで生ぬるい部屋に、冬独特の冷たい皮膚を刺すような空気が開けっ放したドアからなだれ込んでくる。
「寒いなぁ」と口には出さずに思う。
ふと、仕事をほったらかして、あたしを置いて、こんな寒い外へマフラーもせず遊びに行った愛ちゃんの姿が目に浮かんだ。
まぁ、いっか。風邪を引いたら引いたで自業自得なんだ、と少し心配しながら笑みを浮かべた。

「―――亀井ちゃんなら、ここにはいないよ?」

彼女たちが意識してか、している鬼ごっこは、もう何度目かで、言いなれた言葉を吐き出した。
探されている彼女に頼まれて付いた嘘は口から滑らかに滑り出て、罪悪感にも少しは慣れて少ししか胸は痛まなかった。

そうですか、と落胆した彼女の言葉を聞く。
「もしかして、それ絵里の仕事ですか?そうだったら、すみません。後で言っときますから」
なんてペコペコと頭を下げて慌てて部屋から出て行く。
ドアがゆっくり閉まって、小さくため息をついた。
彼女はせっかちすぎる。答えも聞かずにフライングで帰ってしまって。この仕事は愛ちゃんのもので謝るのは彼女でも探されている彼女でもない矛盾。
362 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 13:25

「行っちゃったよ」

首だけで後ろを向いて、声をかける。共犯者も辛いなぁと自嘲気味に笑ってみせた。
のそのそと机の下から這い出してくるあの子の探し人の亀井ちゃんの気配を背後で感じながら、口をゆっくりと開いて

「―――なんで―――」

「だって、れーなが探してくれるから、ですよ」

言おうとした事を見透かしたように淡く微笑んで
言いかけた言葉をゆっくりと遮って
駆けて行くあの子の足音が小さくなるにつれて
その優しい声は次第に大きくなっていった。

制服についたゴミをパンパンと手で払いながら
「―――あんな顔してるけどホントはすっごく優しいんです」って
とても嬉しそうに言って。「知ってるよ」と言ったら
「小川さんが知ってるより、もっとです」なんて、目を細めたまま頬を膨らまして。

目は微笑むように細められ
口角はキレイに上向いて
そんな優しい視線で、表情で、あの子の事を変なプライドで「大嫌い」と言ったって
「大好き」という意味でしか聞こえないんだろう、と思った。

363 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 13:38

「探してくれるって事は少しでも気にかけてくれてる、って事で」

「それは、愛してくれてる、ってことでしょ?」

満足そうに言い終えて、まるでこの先の未来までも分かってしまっているかのように。
ムズかしくって、ややこしくって、掴めない言葉はバカなあたしにはよく分からなくって

ただ1つ分かったコトは

素直に愛情表現出来ない不器用なあの子に不安で
自分を探させるって事は、それは彼女なりの

『愛情の確かめ方』

―――なんだろう、と思った。
だから

それで彼女たちが上手く、仕掛け人の彼女が見る夢や未来にいつかなるのなら

あたしは、いくらでも嘘をつこう。

trivial behind

end.

364 名前:愛情の確かめ方 投稿日:2004/12/10(金) 13:43
[あとがき]
小川さん視点でお送りしました、愛情の確かめ方。
結局言っちゃえば、小川さんはいい人なんですって事(笑)
自分が書くと亀井さんのキャラが松浦さんっぽくなるのは何でだろう?
田中さん、こんな役でゴメンなさい(平伏
365 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/12/25(土) 20:47
クリスマスって事で更新。
一応原点の高紺で(今は田亀が主ですが・爆)。高橋さん視点。
『グロッソラリア』
366 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/25(土) 20:50

「キミ、何してるの?」

駐在所で眠るおまわりさんの声マネをして、目の前の肩に手を置いた。
自分よりも少し高い位置にある肩、時刻は暗い黒い真夜中なんかじゃなくて光が眩し過ぎる正午ちょっと過ぎ。
こんな時間におまわりさんが話し掛けたら、ある意味ナンパじゃないかと声を出さずにキミの背中へ向けて笑った。

367 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/25(土) 21:07

振り向いたキミは隠し切れない動揺を瞳の中で分かり易い程揺らしていた。
あたしの声マネが本物のおまわりさんだと思ったのか、よくぼーっとしてる子だから声を聞き逃してナンパかと思ったのか、それとも別の事か、あたしにはそんな理由分からないけれど。

「どーしたの?」

あたしがキミを恐がらせた張本人の癖に知らん振りして出来るだけ優しい口調で話し掛ける。
目にかかった前髪が邪魔でキミが思うように見えない。
3分の2ぐらいファッションで付けた少し度入りの眼鏡も太陽の光を反射して上手くキミが見えない、役立たず。

「あぁ。愛ちゃん」

ふわっと空から振る雪のように、キミは笑顔を浮かべ、私と向き合うように立った。

行き交う人の中、キミとあたしは立ち止まって
機関銃の様に喋る事も無く、大声で人なんか構わず笑い合う訳でも無く
切ない音で鳴く鼓動が溢れる体の中。
色とりどりの色彩の渦、晴れない霧はキミすらも見せてはくれなくて
響く水滴零れる音が心の中のあるモノ動かすように木霊して消えない。

368 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/25(土) 21:36

噛み合わない会話なんて、当の昔に慣れていた。
だからか、どんどんスピードをあげて進む会話はどうしても好きに慣れなかった。
―――だから、キミは丁度いい。

「ビックリした〜。どうしたの?買い物?」

1枚のガラスで隔たれたキミとの距離はいつもより遠いけどハッキリと見える黒い瞳。

「うん、そんなトコ。あさ美は?」

キミは気付かないんだろうか、まだ。こんなにもパトロネージュしていると言うのに、誰よりも。
特別な笑顔、口調、態度。誰かに『好きなの?』と聞かれる度『好きでも嫌いでもない』って答えてたけど。
『大好きだよ』って言ってるのと同じだよ、なんて何度もからかわれて。
だけど自然に生まれる柔らかい表情や甘い声は止める事なんて出来なかった。自覚なんて無い特別扱い。

「あたしもそんなトコ」

お互い見詰め合って、噴出すように笑った。笑う時は面白かった時だけじゃないと知ったの。
369 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/25(土) 21:42
「―――明日ね、一緒に行かない?」

同じ時間にスタジオ入りでしょ?なんて勝ち誇ったような笑顔と不安そうに揺れる瞳。

「いいよ」

即答に近い感じで出てきそうな言葉を必死に喉の辺りで止めて、心で3数えて吐き出した。
嬉しそうに、大人っぽく、満足そうに微笑むキミに胸が高鳴る。満たされたバロメーター。
止まりそうな呼吸。弾け飛びそうな心臓。愛しいフィルターのかかった瞳。

キミはまるでシアンみたいで。
無透明の儚さ、不安定さに恋焦がれて。胸を痛めた。

あたしは探す、変なプライドを捨て
カルトンで囲まれた赤い心の独占欲の仕方を
空に向かうブランコに乗って
この手、空へ伸ばして進もう、子供の様に道具なんて使わずに
手をまぁるく丸めて、遠くまで、遠くまで

370 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/25(土) 21:49

「じゃあ、後でメールするね」

「うん」

後ろを向いて、手を振って渦に紛れようとするキミに、ひとつ大きな深呼吸
口をパクパク金魚みたいに。手を大きく振りながら。

バイバイでもなく
また明日、でもなく
寝坊するなよ、でもなくて

ゆっくりとキミに、誰にでも分かるように。分かっただろうか?
こんな言葉キミだけに分かれば充分意味を成し遂げる。
この世に、サンプルみたいな愛やディスプレイに飾られてるような恋なんて存在しない、1つとして。
それは、それぞれの2人の形だから。だから強がったり、乙女ぶったりする必要はないのに。

オレンジ色に光る空間が、小さくなっていくキミをも飲み込んだ。
キラキラと輝く夕日が眩しくて、目を細めた。
『好きだよ』今度は口に出して呟くように、あぁ、こんなにも愛しい人がいる。

明日、一番に会ったキミに「キミ、何してるの?」なんて
忙しそうに動き回るおまわりさんのマネをしてみようか。

end.
371 名前:グロッソラリア 投稿日:2004/12/26(日) 17:04
[あとがき]
グロッソラリア-glossolalia-
・・・訳のわからない戯言、意味不明の呪文。

最近、田亀ばっかり書いてたんで腕が訛ってますね(高紺の)。
文中にカタカナ語が多いのは最近カタカナ語辞典を手に入れたからです(爆w
辞書見るの好きです(笑w
では、今年中にもう1回更新出来たらいいなぁと。
時間はあるんですけどね、気持ちがついて来ないんですよ(爆

では。


372 名前:七誌さん 投稿日:2004/12/27(月) 19:49
すごいいい。
安心した和音が流れ出すような、風景が頭に浮かんで良かった。
これからも頑張って下さい。
373 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/01/08(土) 20:07
>>372 七誌さん様。
ありがとうございます。
久しぶりの高紺で自信が無かったので、嬉しいです。


では、今日の更新。
あやみきで藤本さん視点
『ディスタンス』

374 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:08

閉じ込めて、とじこめて、トジコメテ
きっとキミには敵わないと分かってる、進む先へ仕掛けるトラップ
先へ先へ、最初っから距離は離れすぎてたんだ。
追いつけない、縮まらない、広がらない手一本分。

375 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:20
目の前に差し出されたカップに目線をやる。淵から立ち上がる白い湯気が徐々に消えてゆく。
キミの手にも同じカップ、色違い。綺麗なピンクと淡白なスカイブルー。

「―――はい、レモンティでいいでしょ?」

コトッ、と音がして白いテーブルに並んだカップ。目の先には笑顔の華。

「いいでしょ?って選択肢なかったんですけど」

あぐらをかいた上に乗っかる雑誌。自分の趣味じゃない色鮮やかなパステルカラー。
カップに手を伸ばす、手に馴染む慣れた感触、形。

「にゃははは」

わざとらしくキミは笑って、気付けば左腕はキミのモノ。

「たんが決めるコトは、あたしが決めるの」

自信満々に、キミは独占欲が強すぎるから、あたしはいつも困る。
コテッ、と肩に頭を乗せて、ネコや赤ちゃんみたいに鼻を押し付けてくるその癖。

376 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:22

鉄色の牢屋に、肌を傷つけない鎖で、濁った赤の首輪で
キミを閉じ込めてしまって。
独占欲の見えない真っ赤な血が流れて
誰も気付かない中でキミだけが気付けばノープロブレム。
キミの中のあたしのスペース拡大で穴が開く、ジェル状の血纏わり付いて

キミを瞳の中に閉じ込めた。

377 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:30
「亜弥ちゃんって、独占欲強いよね」

言って、レモンティーを口に含む。猫舌なのはあたしでキミは犬舌。
キミが鼻を押し付けてる辺りがくすぐったくて、頭を押して離す、戻ってくる。の繰り返し。

「美貴たんだからだよ」

唇が頬に押し付けられて、その体を抱きしめる。見える肩に柔らかい歯形を。

「限定?」

暖かい空気が生まれる、2人の間。キミはあたしの悪戯に怒らない。
笑って言ったのは、その答えがピッタリ予想通りだったから。

「そう、限定。あたし美貴たんがどっか行っちゃったら捕まえに行くもん」

簡単に言ったらアダムとイブ、みたいな感じだよ。なんて。おかしな例え。
378 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:35

あたしのベビードール。少しのヘビーデューティーがとても可愛い。
寄り添って、逃げて、追いつかれて、ほっていかれて。
だけど振り向いて手を伸ばす仕草、優しく切ない。


「ね、知ってる?」

墨汁をぶちまけた空。キミの好きな色のカーテンを開けたのは距離感感じてるあたし。

「星って、すっっっごく遠くにあるんだよ」

「知ってるよ」

中学校の教科書の内容。何億光年なんて計算したくない、出来ない。
必要ないものは削除されるだけ。きっと何年か経てばそんな計算、教科書上から消えるだろう。
人間が頭を使うのではなく、機械を使う時代。

「あんなに綺麗に見えるのにね」

379 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:39

儚く咲く空の華。
愛しているのは確かにキミだけ
ムーンウォークするのがあたしならキミはここからだって裸眼で見えそう


「あたしと美貴たんの距離は」

「ないよ」

それは無に等しいけれど、だからこそ遠い見えない距離。
離れてる気がしない距離なんて意味ない、キミが消してしまった自由な足幅。
手加減されて、手を引かれて。変わらないのは、当たり前。

「それも知ってる」

何て悲しいんだろう。キミだけしか見えないなんて。
何て幸せなんだろう。キミしか愛さないなんて。

つながれた手。キミが先で、あたしは後ろ。
拒みやしない、逆に心地良いキミの手一本分の支配空間。

end.

380 名前:ディスタンス 投稿日:2005/01/08(土) 20:42
[あとがき]
とにかくぶっちゃけた話を書きたかったんです(爆)
色々詰め込みすぎたかなぁと、少し不安ですよ・・・
まぁ、あやみきはあやや関白ってことで(ぇ
381 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/08(土) 23:07
ほんとに裸眼で見えそうですね(w
あやや関白>賛成w
382 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/01/16(日) 20:29
>>381 名無飼育さん様。

ありがとうございます!メル欄の方も・・・(笑w
裸眼で見えそうですよねwあとあやや関白もw
これからも、どうぞ宜しくお願い致しますっ!

では、今日の更新。
石川さん卒業ネタで後藤さんと吉澤さんのお話。後藤さん視点。
『run stair,mellifluous lather』

383 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 20:32

この時期には考えられない1日オフ。
特にやる事もなくて、やりたい事もなくて
ぶぉー、ぶぉー、行き交う車のノイズの中に隠れたあの子の悲しみを見つけた。


384 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 20:44
彼女から今日のスケジュールは耳にタコが出来るほど聞かされていた。
「いいなぁ」なんてため息のオマケ付きで。
ごろん、と横になっていたベッドで手を伸ばして金属の冷たい固形物を手の中に収める。
時刻をチェックして、うん、と小さく頷いてメール作成。送信。
休憩中だったのか2,3分後に届いたメールに思わず小さく笑った。
目に浮かぶ困ったような不思議そうな顔で書いてくれた場所を何度か呟いてインプットして、身支度を整える。
トントン、小刻みに足の爪先をタイルに打ちつけた。

丁度タイミングよく捕まえたタクシーに乗り込んで、何度も呟いた場所を早口に伝える。
「お客さん、そんなに焦らないで」
困ったような運転手の声が耳に届く。
何で焦っているのかさえ自分でも分からない、理解不能な心。
洗剤の匂いのするシートに背を預けて、口に放り込んだガムを強く噛んだ。

385 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 20:47

イライラする。
親友を置いていく親友に。
進化し続ける留まる事が出来ない彼女たちに。
少女から大人へ、羽ばたいていく彼女に。

もしも魔法が使えるなら、って信じてた子供に戻りたかった。
何も知らないで、どうしようもない事がある事も知らないでいたら
こんな風に諦めもせずにお姫様の君の願いをどんな手段を使ってでも叶えたのに。


386 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 20:56
目的のテレビ局に着いて、目的の楽屋を見つける。
紙に書かれたのは、少し前まで自分がいたグループ。
どうして自分がこんなにもイライラしてるのか分からなかったから、困ったように笑ってドアをノックした。
「どうぞー」なんて言葉が聞こえる前にドアノブを回して、力強く引っ張る。開く明るい懐かしい視界。

「どったのさ?」

座ってた椅子から立ち上がって、こちらに向かってくる目的人。
金髪の髪が足を進める度ふわり、ゆれる。

「暇だったからさ」

へぇ、と目を大きく開いて彼女が言う。
あ、後藤さんこんにちはー、と絶えず出入りするメンバーが声をかけてくる。
ここにいた時は忙しいのが普通だったなぁ、と呟く。
離れてみないと分からない非日常。

387 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 21:12
「―――で、今日は誰待ち?」

まるでホストやホステスを指名する客を相手にするように彼女は言って、笑顔を浮かべる。

「ん〜・・・よしこかな?」

冗談をジョウダンで返して、だけど余裕のない一杯一杯な心の容量。
えぇーウチ?なんて笑ってても、その目は言ってる『分かってたよ』って。
優しい瞳、こんなにもイイ子なのに、と言いたくなる、あの人に。

「どしたの?今日は」

いつも変だけど、今日はもっと変だね。って余計な言葉を並べて。

「よしこが泣くと思ってさ」

あの表情と声が忘れられない。
あの涙が忘れられない。
ひとみちゃんをお願いします、なんて何で言うの梨華ちゃん。
君の存在が無くなるわけでもないのに。ズルイよ。

388 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 21:32
「何で、ウチが泣くんだよ〜」

分かってる瞳が揺れている。
本当に泣きたいのは君を任されたあたしで、目の前の君で。

「―――寂しくなるね」

自然に目が向いたのは、こちらの気も知らないで心理テストに熱くなる梨華ちゃん。

「ここてさ、学校と同じじゃん?集団行動の小さいバージョン」

「梨華ちゃんは、もう集団行動する年じゃないから出てっちゃうんだよ」

優しく言い聞かすように、自分に、他人に。
ふと盗み見た彼女の横顔はとてもおだやかで、何だか泣きそうだった。
389 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 21:41
「よしこさぁ、もっと言い方なにの?面白くないー」

意地で、悪戯っ子のように言ってやる。面白くないのは本当で。
君まで泣いたら、あたしはどうしたらいいの?

「何ぃ?!ごっちん失礼だよー」

笑って、笑って、笑って。
泣いたって引き止めも出来ない困らすだけの悲しいシズク。

雨は黒く今も泣いてるわけじゃない
空は赤く今も怒ってるわけじゃない

あたし1人が動いて我侭を言ったって変わらない見え隠れする未来
泣いて我侭を言ったって困った顔をして謝るだろう優しすぎる彼女

本当に泣きたいのはきっと不安な彼女で
どうしようもにのはきっと寂しい君で
あたしはただ君と彼女が好きなだけなのに

涙を隠してのぼっていく大人の階段の後姿が
ただ眩しいだけで
ただ悲しいだけで

悲しいけど越えなければいけない壁がある
あたし達は時々投げてくれる彼女の優しさを受けながら
まだ壁をのぼってる途中。

390 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/16(日) 21:42
「ねー、よしこ」

「んー?」

「梨華ちゃんが笑ってる間は頑張って笑ってようね」

「おー、たりめぇだ」

君が困った顔をしないように。

泣いたってどうしようもない時がある。

end.

391 名前:run stair,mellifluous lather 投稿日:2005/01/18(火) 20:01
[あとがき]
来る石川さん卒業について、でした。
後藤さんと吉澤さん、置いていかれる者と置いていく者について自分なりに書いてみました。

・・・ちょっと吉澤さんの言葉が雑っぽいですけど(笑。


392 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/01/23(日) 15:39
私事情でも、やっと一段落。
・・と言う事で田亀更新ーw

「たった7秒」

393 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 15:40


あたしは 彼女の事が好きで
彼女もたぶんきっと あたしの事が好きで

――― それだけじゃ 足りない事だってある。


394 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 15:51

「――― ゴメン、別れて」

当たり前のように、校門であたしを待つ君にメールをして。
ニヤけそうな顔を止めてわざとらしくため息ついて君の顔なんて見ずに言った。
呼び出したあたしの教室に、人はあたし達以外誰もいない放課後。

「何で?」

間髪もいれずに飛んできたいつもはふにゃふにゃした甘い声は硬くトーンが低くて。
あたしがそうさせたんだ、と気付いてどうしようもない気持ちに包み込まれる。
地平線の先に沈む朱色の深さよりも切ない気持ち。

いつもひらがなで表せる君の声は、今は漢字やカタカナ。
ひらがなは曲線が多いから柔らかく感じるらしいけど、今はトンガってばかりで硬い感じのカタカナ。
君の笑顔までもが消えて、何だか泣きそう。

こんなコトなら昨日の晩、睡眠時間を削ってまで
こんな言葉を言う決意なんてしなかったら良かった、と戻れないさっきの言葉にさっそく無駄な後悔。




395 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 15:55

胸が苦しい。
言いたくない、戻りたい、別れてなんて。
まだ甘い夢を齧ってたいのに。

見つめ合えばただ切なくて、いつも視線を外してばっかりだった。
いつからか君は、あたしの傍に来なくなり、他人と君が楽しそうに喋ってるのを見るのが多くなった。
突き刺さるような痛みなんて幻想だと言い聞かしオブラートに包み飲み込んで
その甘いココロの音、酸素が足りないかのように細く息を繰り返しながら聞く夢を見た。


396 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 16:18
「絵里とおったらおかしくなりそうやけん」

側にいるのに寂しくなる、側にいるのに恋しいと思う。
今あるコト以上を望んで夢見てしまう。
あたしはそれを我慢出来ないほど子供で、何時の間にか大人に近づいてる君には手を伸ばしても届かない。

何も言わず、君が優しく見つめ笑うから、何故か泣き出しそうになって
太陽があたしを刺して出来た影を必死になって睨んでた。

君は何も言わない、あたしは何も言えない。
チクチク、動き続ける秒針の音が君の笑顔の破片で胸を刺すみたいで
油断するとすぐに何かが襲ってくる、とルールデタラメに決め付けて、瞳乾いて涙にじむぐらい黒い影と睨めっこを続けた。
君は今、何考えてるの?君は今、どんな顔してるの?
1分1秒がバカみたいに長く感じて、思い浮かぶのは胸、締め付けられる泣き顔。
あぁ、こんなにも空が晴れてちゃ声上げて泣けないね。

397 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 16:27
キュッ、音が鳴いて目を上げると出て行こうとする、君の後ろ姿。

指に絡まる髪の感触が
   においが
胸を打つ鼓動が

一気に、この体に甦りフラッシュバック

あぁ、行かないで。
何だか叫びたい気分だった。
声の限り、音にならない声で叫びたかった。
どこの誰かに、自分に、通りすがりの奴に、バカな自分に
刻み付けて思い知らせてやりたかった

自分が今、何を失ったのかを。

吸い込まれるように君の姿が半分見えなくなって。逸らせない、逸らさない視線。
反射的に駆け出した体。得意なんかじゃない短距離走、運動。
この腕、のびる限り伸ばして、その手、強く引っ張って、噛み付くようなキスをした。
溢れ出しそうな想いを抱えて、伝えたかったただ1つの好きという気持ちを表現できるなら、その形は何でもよかった。
キスの途中にどうしてお互いの名前を呟くのかドラマや映画を見ては不思議だったんだ。
だけど、あぁ、分かったよ。
キスをするのは言葉に出来ない気持ちを相手に示す方法で、心の中で溢れた気持ちを逃がす方法だったんだね。


398 名前:たった7秒 投稿日:2005/01/23(日) 16:36
「ゴメン、やっぱさっきのナシにして」

たった7秒間、目の前の君に触れられないのは突き刺さる幻想より苦しくて
君の名前を意味も無く呼べないのは切なさ以上に悲しくて

「――― れーな、それ嫉妬だよ」

全て見透かしたような、優しさで包み込むような笑顔で、繋がった2人のその熱すら眩暈を起こす程切なく愛しい。

純粋と情熱を併せ持った優しい桃色ピンク、体中に染み込むココロの音、匂い、熱。

「れーなは絵里から離れられないよ、きっと」

悪戯っぽく笑う君に切ない気持ちを隠すようにキスをして。ため息が漏れる。

好きで好きで、それだけじゃ足りない事があるなら逃げ出さずお互いで満たせ合えばいい。
溢れた想いは2人で優しく包み込んで きっと色褪せないように。
たった7秒の君が側にいない世界で、君の大切さを感じたんだ。

もう、きっと離れられない。離れない。
君と一緒にいると心地良くて
きっとその為だけに生まれたんだと思った。

end.

399 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/01/23(日) 16:37
[あとがき]
えっと・・・ごめんなさいm(_ _)m
田中さんは何気に亀井さんにゾッコン(死)と言うお話でした。
400 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/23(日) 21:31
田亀、やっぱ良いですね。
401 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/26(水) 22:49
変わらず詩人ですね。
もちろん、いい意味で。(笑)
ヒトシズクさんの文体は他とは
また違う味わいがあって、いい感じです。
これからも期待してます。
402 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/03/12(土) 19:39
>>400 名無飼育さん
ありがとうございます。田亀、いいですよね〜w

>>401 名無飼育さん
ありがとうございます。嬉しいお言葉、本当にありがとうございます。

では、今日の更新。
あやみきで『cozy crimson』
403 名前:cozy crimson 投稿日:2005/03/12(土) 19:39
狂おしいほどの想いを重ねた夏
愛を吐いて捨て猫みたいに身をきつく抱きしめあった冬
甘い匂いの中顔をくっつけて笑った春
わざと長いマフラー2人包んで落ち葉の絨毯歩いた秋
404 名前:cozy crimson 投稿日:2005/03/12(土) 19:40
いくつもの過ごした季節は星のように今も光り輝いて誰にも負けないジュエリー
誰にも向けない眼差しで笑顔で、身に纏うジュエリーでこの上ない特上なおめかしして
あたしを特別な真っ赤な椅子へ招いて、胸の中で咲く見る度、虜にする誘惑に咲く紅い薔薇で満たして
――― 特別なキミだからこそ意味ある証拠

裂けたって、愛の言葉は溢れる喉を持つキミが
黒曜石で出来た瞳にちらちら揺れる甘い炎が
切なさで胸を痛めながら隠しきれない溢れる水が
愛しくてたまらない。
405 名前:cozy crimson 投稿日:2005/03/12(土) 19:41
「みきたぁん」
少し先を行く背中、跳ねるような軽やかな足取り、見上げた視界に映る横顔。
「なに?」
家を出る時に風邪引くでしょ、なんて優しい笑顔に似合わない小言を一緒にぐるぐる巻きつけられたマフラーを指で弄ぶ。
すっ、と伸びてきた腕、マフラーに触れていた手に絡まる指。じんわりとした包まれるような熱。
「手、寒いんだけど」
黒ぶち眼鏡の天気予報士は、今日1日寒いでしょう、なんてありきたりな言葉を機械口調で、手の平を神経質にペンの先で叩いてた。
繰り返す呼吸、空へと立ち昇る白く滲む声。掠れて消えそうな"普通″の輪郭。

時が経って、後ろに流れてく四季の中であたし達は沢山の事を覚えた。
飛び交う言葉の端っこに尽きない欲望を乗っける事も
心まるごと掴んで離さない愛を口の中で転がす事も
涙集めて心潤して満たして笑いあう事も。

当然のように去っていった恋を浮かべた夏の後ろ姿。
心の端で思い浮かべてる、いつも。
残った影を手の中で大切に真空パックして、ビー玉みたいに太陽に透かして。
遠くて手が届かない、戻らない過ごした日々。
不器用さすらも愛に変えて、視線を合わせるだけで溢れた切なさ。
406 名前:cozy crimson 投稿日:2005/03/12(土) 19:42
ユメを見る夢を見る為に瞼を閉じる日常。
果てない都合のいい夢のまどろみに飲み込まれて抜け出さない。
夢が覚めるなら、どうかキミがあたしの隣にいる間に。

「みきたぁーん。何、考えてるの?」
ゆるやかな坂道。くらくらする、キミの後ろから刺すオレンジ、美しすぎる微笑。
正直に答えるのは笑って誤魔化して、だって、こんなにもキミとの事考えてるなんて恥ずかしい。
「―――」
ふざけてるフリして、顔をよせた耳元、手をキツく握って、二度と離れなくなったらいいのに。
囁く愛、わざと顔作ったって心は真面目、言葉越えて想い伝わればいいのに。

誘惑に咲く紅い薔薇。あたしをいつも虜にする警告色。
胸に突き刺さったまま抜けない、抜かない、根を張り広がっていくのは愛という魔法。
鉄の模型の摩天楼の隙間、あたししか見えない鮮やかな警告。赤はあたし以外近寄るなの警告。
407 名前:cozy crimson 投稿日:2005/03/12(土) 19:42
「―――っ!ちゃんと答えてよっ!」
頬に咲く気の早い春。果てない都合のいい夢じゃないことを祈る、キミは。
「昔の事考えてたんだよ、出会った時のこと」
頭を乱暴に掻く。恥ずかしいことは寒さの次に嫌いなんだ。
「昔のあたしも可愛かったでしょー?」
「はいはい」

君の可憐な喉から溢れ出したあいのことば、手に触れる全てが色づいてく。
空を映した瞳の色、禁じる愛おしさで、これ以上愛さない、もう。
ただ素直に、好き、と言えなくて、誤魔化した、頬に咲く花。

「早く行こっ!お腹空いちゃった」
「そうだね」

過ぎ去った夏の後ろ姿が切なくて、そっと指を絡ませた。
出会って、恋を浮かべた夏があるから、今がある。忘れずに歩いてく、切なさで胸を傷めながら。

キミが好き、と囁いて、赤い花が胸にまた1つ咲いた。

end
408 名前:ヒトシズク 投稿日:2005/03/12(土) 19:56
以上あやみき、藤本さん視点でした。


今日、ここで2年弱の連載の終止符を打たせて頂きます。

この『金魚鉢』で紡ぎ続けた作品は、『愛』をテーマに書いてきたものです。
自分の中である『愛』の形を全て出し尽くした、と思い連載終了にさせて頂きました。

ここで、たくさんの作品を書かせて頂き、本当にありがとうございました。
そして、今までお付き合い下さいました皆様、ありがとうございました。
心の底から、ありがとうという気持ちで一杯です。
感謝の気持ちは書き表せないほどです(平伏。

今まで書かせて頂いた作品は、つい最近作りました自サイトで公開していく予定です。
また、これからもサイトでSSを書いていくつもりなので、もし宜しければお越し下さいませ。

http://i.cool.ne.jp/mm-er1x07atok/

では最後になりましたが、今までお付き合いありがとうございました。

2005.3.12 ヒトシズク


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