イタリアの風が運んだ夏物語
- 1 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:51
- 私は空港にいる。
夏休みはこれからだから、まだ人はまばら。
大人の人が多い。
みんな仕事なのかなあ。
飛行機がまた降りてくる。
・・・
あと4機。
あと4機あとの飛行機で、圭姉ちゃんが帰ってくる予定だ。
- 2 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:52
- 圭姉ちゃんは4年前、高校卒業と同時にイタリアへと飛び立った。
料理の修業のため留学したのだ。
4年前は私はまだ小学生。
びっくりするだろうなあ。
- 3 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:52
- 私がまだ小学校に入る前、両親は亡くなった。
私たち姉妹は、急きょおじさんの家に預けられた。
おじさんは、かなりの経営者で、
「お前らに食わせる飯なんかねえ!」
というタイプの人間とは程遠い人物。
そのおじさんが仕事の都合でイタリアへ行くことになったとき、圭姉ちゃんもついていった。
あの時は、わんわん泣いたっけなあ・・・。
- 4 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:52
- それからはおばさんと過ごしていたけれど、今年から高校生になり、
その高校がおばさんの家からは遠かったので、思い切って一人暮しを始めた。
借りたのがアパートだったから、少しギャップがあったけれどもう慣れた。
それに、今日からは二人で生活するからね。
そしてそのときはやってきた。
感動の再開!
のはずだった。
けれども・・・
- 5 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:53
- 1時間たっても圭姉ちゃんは見つからない。
たぶん、どこかで見失っちゃったんだと思う。
どうしよう、いや
困ってる場合じゃない。
早く受付に行って呼び出してもらわなきゃ。
人の集団がなくなったと同時に、
私は、この空港内を猛ダッシュ。
これが、人生でも何番目かの悲劇になるとは思わなかった。
- 6 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:55
- ピンポンパンポ〜ン
「迷子のお呼び出しをいたします。
東京都からお越しの、保田あさ美ちゃん。
東京都からお越しの、保田あさ美ちゃん。
1階、出会いの受付までお越しください。」
なっ!・・・
迷子!・・・
高校1年生の私が!・・・
迷子!・・・
「ちゃん」?・・・
行くに行けなくなってしまった。
- 7 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:55
- でも、圭姉ちゃんが待ってるんだ。
恥をしのんで、行かなきゃ。
出来るだけ、保田あさ美だとばれないように
出会いの受付に用が無いように歩いた。
ス〜〜〜
ハ〜〜〜〜〜〜
よしっ!
- 8 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:55
- 「すいません、あの、その、
先ほど呼び出しされた保田あさ美ですけど・・・」
「はい、少々お待ちください。」
そして感動のご対面。
お姉ちゃんだ。
間違いない。
高校生のときよりも少し大人の顔になった圭姉ちゃんだ。
「おね・・・」
- 9 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:56
- 「う〜ん、たぶんこの娘じゃないです。
もっと小さいはずだと。」
はあ?
「同姓同名ってことですか?
確かに、こんな大きい子が迷子になるとは思えませんけど・・・」
えっ?
「すいません、もう1回放送してもらえますか?」
「かしこまりました。」
ちょっ・・・
そして無惨にも、もう一度その放送は流れてしまった。
- 10 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:56
- 「圭姉ちゃん!あさ美だよ、本物の。」
驚き振り返る圭姉ちゃん。
だって、見ず知らずの女子高生に呼ばれたんだもん。
でも、ここは昔っから冷静な圭姉ちゃん。
「もう、人の名前を勝手に呼ばないでちょうだい。」
冷静すぎて、完全に私を別人と思い込んでる。
じゃあこれならどうだ!
「圭姉ちゃん!」
ポヨン
下ろした髪の毛を払い上げて、
封印していたほっぺを、実に3年ぶりに解放した。
- 11 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:56
- 「もしかして、もしかして、
もしかしてあさ美!?あさ美〜〜〜」
感動の再会はこうして訪れた。
受付にお礼を言い、二人で空港を出る。
その間も、圭姉ちゃんは疑っていた。
「本当にあさ美?」
「さっきから言ってるでしょ!」
もう・・・
・・・・・・
あ゛あ゛ーーーーー
迷子を撤回するのを忘れていた。
しばらく旅行は無理だ。
- 12 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:57
- 家に帰ると、いつもの腹の虫が鳴き声を上げる。
グーッ グーッ
これはお昼を待つ音、ちなみに朝は1回、夜は3回。
「圭姉ちゃん、せっかくだからなんか作ってよ。」
そう言うが早いか、動くのが早いか、圭姉ちゃんはもう、台所に立っていた。
「ハラペコパンダをほおっておけないよ。
早速修行の成果を見せちゃうから。」
イタリアといえば・・・
パスタ〜、ピザ〜、リゾット〜、う〜ん、あとは・・・
「はいっ」
ゴトッ
- 13 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:57
- はやっ!
しかも何?今の品の無いゴトッて音は。
しかもこの目の前にあるもの。
う〜ん、これって・・・
麺類ってとこまではパスタと一緒だけど・・・
イタリアって言うよりも、讃岐とか稲庭とかの方が・・・
要するにうどんなんだよね。
・・・
・・・
そうか、私に気を使って早くできるものにしたんだ。
そういえば、昨日のうどんの汁がまだ残ってた。
- 14 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:57
- でも、食べてみると、なんか違う。
昨日の麺よりも歯ごたえがあって、ただのインスタントとは違う。
なにこれ?
ふと見ると、圭姉ちゃんは、自分の器に、
ご丁寧にも天ぷらまで添えてもってきた。
な〜んかやな予感がする。
こういうときは、何か違う話をしよう。
「ねえ、イタリアってどんな感じだった?」
- 15 名前:7月20日 投稿日:2003/09/20(土) 01:58
- 「それがね、聞いてよ、向こうの料理の学校の最初の課題が
自分の国の料理だったのよ。
それで、途中で日本食食べたくなったときのために持っていったインスタントうどんを作ったら
もう、先生が大喜びで。
それで、どういうわけかその先生が持ってる日本食研究の
団体の特別顧問にされちゃったわけ。
それ以来うどんの修行、うどんの修行で4年間。」
途中でうどんの味がしなくなっていた。
そのうどんの先には、誇らしげに語る圭姉ちゃん。
「この修行を日本でも生かそうと思ってね。」
そのあと圭姉ちゃんはとんでもないことを言い出した。
「立ち食いうどん屋を始めよう。
夏休みの間は手伝ってね。」
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 01:59
-
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 01:59
-
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 02:02
- 新連載始めました。
どんな酷評でもかまいませんので、感想をください。
日記形式なので、夏休みの分を一ヶ月ずらして書き込んでいくつもりです。
完結してあります。
ちなみに更新は、不定期ですが1週間は空かないと思います。
よろしくお願いします。
- 19 名前:7月21日 投稿日:2003/09/21(日) 02:02
- 気がついたら、私は店員ということになっていた。
接客員兼チーフ、副店長兼、うどんこねのサポーター。
はあ・・・。
だいたい二人で本当に務まるの?
初夏の太陽の下、
私は一人でブーブー文句を言っていた。
大丈夫。
圭姉ちゃんは物件探しで、私の文句は全然耳に入っていない。
あの笑顔で、夢を託す店を求めて2件目。
駅の階段が、目の前に見えるベストポジションを手に入れた。
価格は恐ろしく安い。
前の主が一家心中したらしい。
- 20 名前:7月21日 投稿日:2003/09/21(日) 02:02
- 明日は開店日。
建物の中が立ち食いうどん屋になってゆく。
はあ・・・。
ついに私はここで働くのかあ・・・。
荷物が少なくなってきたトラックを見ていると絶望感があふれて、
反省ざるのように、
壁に手をつい・・・
『ボコッ!』
「あ゛っ」
・・・
・・・
よかった・・・圭姉ちゃんは店の中で、指示を出している。
ばれてない。
そっと、こぶし大の穴の前に直立する私。
- 21 名前:7月21日 投稿日:2003/09/21(日) 02:03
- 「食券の券売機はどうしますか?」
「う〜ん・・・中・・・」
「外、外、外でお願いします!
ねっ、圭姉ちゃん、外のほうが目立つからさ。」
「そ、うね、そうします。」
「じゃあ、ここにお願いします。ここ、ここ。」
上手くお兄さんと券売機を誘導する。
「あれ、ここの穴・・・」
シーッ、シーッ!
私の勢いが通じた。
「ここでいいです!はいお願いします!」
- 22 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 02:03
- 明日は開店日です。
- 23 名前:つみ 投稿日:2003/09/21(日) 17:59
- おもしろそう!
期待して待ってます!
- 24 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:02
- 次の日の朝、私は少し大きめの観葉植物を店内に運んだ。
ちなみに、この観葉植物は、壁をはさんで
ちょうど券売機の位置に配置。
そして、イタリアじこみのうどん屋は開店した。
せっかくだから、私はアンケート用紙を用意した。
こういうところは副店長のアイデア。
ただの副店長じゃないもん。
お昼が近くなったころ、ついに、ついに
ついにお客さんが来た!
- 25 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:02
- よく覚えている。
あまり背の高くない、しかも少し童顔。
でもすごく大人っぽい格好。
彼女は急いでる様子なのに、しばらく券売機の前にいた。
「これお願い、早く、早く、
なっち、ち、遅刻しちゃうべさ、早く〜」
その場で足踏みをしている。
なるほど、これが立ち食いそばの客なのか。
食券をチェック。
- 26 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:03
- え〜と。
たぬきうどん大盛りに天ぷら。
あれ、重なってた。
あとは・・・たまご、わかめ・・・
また天ぷら。
これってかき揚げとイカと両方ってこと?
しかもご丁寧に、サイドメニューのおにぎりまで買ってるし。
圭姉ちゃんは、精神統一をしているらしく、
ただ一・五人前のうどんをゆで始めた。
この、不思議さに全く気付いていない。
- 27 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:04
- うどんをゆでて、汁を加えるまでが圭姉ちゃんの仕事。
それに具を加えるのが私だった。
それがいきなりの大試練。
天ぷらは、どうやっても二つは入らない。
しかたがない・・・。
うどんのどんぶりには、一応たまごとわかめ。
天ぷらは入りきらなかったから、別のどんぶりに入れて
先に出したおにぎりを笑顔でぱくつく彼女の前に出す。
ズルズルズルッ
・・・早い・・・
しかもあれだけの量を平らげたと思ったら、
ついには汁まで飲み干していった。
- 28 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:05
- 「プハ〜 おいしかったあっと、
ああ、そうだ、遅刻するっ!」
「あ、あの・・・アンケート」
「ごちそうさまっ!」
彼女は、再び走り出した。
しばらくあっけにとられていた。
気がついたときには、昨日がんばって考えたアンケートを
持っていたことに気付いて、
その場でめちゃくちゃに破り捨てた。
副店長のアイデアは早速ぼつになった。
そういえばありがとうございましたって言うの忘れてた・・・。
- 29 名前:7月22日 投稿日:2003/09/21(日) 19:06
- その後も、お客さんは後を断たなかった。
大繁盛というわけではなかったけれど、
予想以上にお客さんが入った。
でも、最初の女性が強烈な印象を残していったので、
他にどんなお客さんが来たかは覚えていない。
それにしても・・・
疲れるなあ、この商売。
しかも、お昼ごはんは、お客さんが一時絶える午後3時くらいに
食べるうどん。
メニューをはじから順に食べていってもすぐに終わる。
どんな夏休みになるのだろう。
- 30 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 19:08
- >つみ様
ありがとうございます。
2ヶ月遅れの日記なので10月いっぱいの予定です。
次のお客様は、28日に来る予定です。
- 31 名前:つみ 投稿日:2003/09/21(日) 21:39
- 人間模様がいい感じですね^^
- 32 名前:7月28日 投稿日:2003/09/28(日) 00:58
- やはり、時間によってお客さんの人数の差が激しい。
特に午後や深夜なんかは一人、二人いれば珍しい。
今日の午後のお客さんは不思議な人だった。
時間もはっきり覚えている。
5時55分。
これが4時44分だったらミステリーとか思ったからね。
でも、その娘の実体は・・・
ミステリアスだった。
- 33 名前:7月28日 投稿日:2003/09/28(日) 00:58
- 「ここで食べてっちゃおうよ。」
「うん・・・。」
と言って入ってきたのは、私と同じくらいの女子高生。
片方は、どこにでもいる、とは言いがたいけれど、
髪を二つに結んだ、う〜んとなんだろう、
・・・豆・・・っぽい・・・で分かるかなあ。
とにかくそんな感じの子で、もう一人の娘に
聞いている、聞いていないを別としてよく喋っていた。
問題は、その片方のほう。
- 34 名前:7月28日 投稿日:2003/09/28(日) 01:00
- なんとなくボーっとした感じで、私のほうに視線を向けている。
私は別段変わったことも無い。
たしかに、圭姉ちゃんと私を見比べて
「親子かなあ?」とひそひそ話をするお客さんはいる。
でも私だけを見ているというのは、う〜む・・・
ミステリアス。
「はい、きつねうどん。」
と、少し手前に置いたのに、気付かないでどんぶりの手前で
割り箸を動かしてる。
大丈夫かなあ・・・
心配だなあ・・・
- 35 名前:7月28日 投稿日:2003/09/28(日) 01:00
- 通称「豆」が、
(特徴あるお客さんを命名する癖がついちゃった!
ちなみにあの最初のお客さんは「なっち」
自分のことをこう言ってたからね。)
早く帰ろうと言ってるのに
その茶髪の「ミステリアス」は暖簾の外で、看板を見ていた。
と、ここまでは百歩譲って許せたとしよう。
彼女は・・・
彼女はその後も、午後5時55分になると
やってくるようになった。
そういえば、この物件は、
一家心中があったんだっけ。
圭姉ちゃんは、とっくにこんなこと忘れてるみたいだけど。
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/28(日) 01:01
- >つみ様
2度目の感想ありがとうございます。
次の営業は、明日、29日です。
- 37 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:35
- 「ミステリアス」は、不気味な存在ではあるけれど、
無害な女の子だ。
それどころか、あの女の子を見てるとなごむ。
むしろ有益な存在。
今日もまた来て欲しいな。
彼女は、今日も来た。
雨だったけれど、今日も来た。
まあ、それはいいとして、今日は
大きな声じゃ言えないけれど、
すごく迷惑な客が来た。
- 38 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:35
- 昼過ぎだろうか。
その二人組はやってきた。
「ねえ、お昼ご飯なら私が作ってあげたのに、
何でヨッスィ〜、急に外で食べることにしたの?」
「だって・・・梨華ちゃんの作ったものってなんか、
あの、その、・・・ぃれの匂いが・・・」
「えっ、なになに?悪いところがあったら教えて?」
「あっ、ここでいいや、ねっ?立ち食いうどん屋だって。」
と会話しながら入ってきた二人組、
いや、ここはバカップルとでも言いたい。
だって、食券のボタンが堅いとか言って彼氏に押させるのってどうなの?
私なんか、壁をぶち破っちゃったけど。
たぶん、ばれたら圭姉ちゃんに
壁じゃなくて、自分をぶち破られると思う。
- 39 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:36
- その「バカップル」は、待っている間もあいっかわらずイチャイチャイチャイチャ。
もうっ、恥ずかしくなってくるよ!
そっとカウンターの奥を見る。
ヤバイ・・・
圭姉ちゃん、こういうの大っ嫌いなんだよね。
あの目は、相当ご立腹。
ヘンなことしなきゃいいけど・・・
出来上がったうどんが私の前に置かれた。
そっとうつわの中のうどんをめくってみる。
・・・やっぱり。
- 40 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:37
- いくらなんでも、これだけ七味唐辛子入れたら辛いと思うよ・・・。
彼氏のほうのうどんは、すこしピリ辛になっていた。
ちょっと考えた後、その「バカップル」を見る。
・・・
・・・
彼氏のほうが、彼女のほうの胸を突っついてる・・・
彼女のほうもまんざらでない顔・・・
・・・
年頃の娘の前でそんなこと、そんなこと、そんなことぉ!
私も、じゃあお言葉に甘えて・・・
恋愛に障害はつきものだもんね。
七味唐辛子に手を伸ばして
サッサッサッ・・・
- 41 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:37
- ザザッ!
「うわっ!」
今のは私の叫び声。
だってこれを見たら誰だって叫んじゃうよ。
中ブタが外れたせいで、ビン一本分の七味唐辛子。
うどん汁は真っ赤に染まってしまった。
でも、今の圭姉ちゃんに「もう1回作って」なんて
口が裂けてもいえない。
困った・・・困った・・・。
そうだ!
「お客さん、おすすめのかき揚げなどいかがでしょう?」
「天ぷらかあ、いいね、入れて。」
- 42 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:38
- 早速かき揚げを少し大きめに揚げて、
うつわの上にかぶせる。
ほら、見えなくなった。
「お待たせしました。」
ちょ、ちょっと・・・
彼氏のほうが、七味のビンに手を伸ばす。
待って!これ以上かけたら・・・
ああ・・・
やばいよ、彼氏のほうのあの顔・・・。
顔中の筋肉に力が入ってる。
こ・ろ・さ・れ・る
(圭姉ちゃんに)
- 43 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:39
- ところが、天は我を見放さなかった。
「ヨッスィ〜、どうしたの?大丈夫。」
「う・・・うん・・・大丈夫大丈夫。
これしきのことで折れたら、
梨華ちゃんなんかとうてい守れっこないよ。」
「ヨッスィ〜!」
「梨華ちゃん!」
あさ美!
二人で抱き合ってる中に、
なんだか私も混じりたくなった。
助かったあ・・・「バカップル」が本当に「バカ」ップルで・・・
- 44 名前:7月29日 投稿日:2003/09/29(月) 00:39
- ニコニコ笑顔で、お客様を見送る私。
でも、その「バカップル」の彼氏のほうが
とんでもない捨てゼリフを残していった。
「おばちゃん、次も負けねえからな!」
それは言ってはいけないことだよ。
気持ちは分かるけど・・・。
たぶん、次に来るときは、
ビン一本じゃ済まされないよ。
カウンターの奥に、「はんにゃ」がいるのが見えた。
鳥肌が立った。
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 00:43
- 更新しました。
次回の営業は1日の予定です。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 02:55
- やすこん姉妹が良い味出してますねえ
続き期待してます
- 47 名前:リエット 投稿日:2003/09/30(火) 23:31
- ミステリアスも気になりますけど、
今回のいしよしに爆笑しました。
吉澤さんかっこいいいですw
- 48 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:04
- 駅の近くに店を構えたせいか、利用者はすごく多い。
まあ、お客さんのタイプは、おじさんが多いかな。
で、次に多いのは、以外にも女子高生。
ほら、あの「ミステリアス」と、「豆」。
あの二人が通ってるらしい女子高が近くにあるらしい。
学校っていろんなイベントあるでしょ?
たとえば運動会とか、文化祭とか。
ほかに、こんなのもワクワクしなかった?
転校生とか・・・
- 49 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:05
- 「ああ、行っちゃった・・・」
お店の前で、一人の女子高生がこうつぶやいた。
この時間帯、つまり午後4時ぐらいってこの店の穴場。
昼、夕ご飯を食べに来るおじさんも来ないし、
女子高生は、運動部に所属している子は
夜、だいたい7,8時に来るから。
だから、こんな時間に来る女子高生は、この店始まって以来初めて!
おめでとうございます!
その女の子、う〜ん・・・顔立ちはいいんだけど。
なんか田舎くさい。
ジーッと食券機を見てる。
この子もあだ名がつきそうな予感。
- 50 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:05
- 食券機を見ること数分。
本来ならこの数分で、食事を済ませてでてゆく人もいる。
なのにこの子は、その間ずっと食券機とにらめっこしていた。
立ち食いうどん屋の概念をブチ破りそう。
「何で、このメニューはこんなにちいさいんかのお」
やっぱり・・・
使い方がわかんなかったのかあ・・・
ただでさえ暇なのに、ここでお客を逃がすのはもったいない。
手取り足取り教えてあげる。
でも、そんなにいちいちびっくりしなくてもいいと思う。
- 51 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:06
- 「あのぉ、これ見せればいいんかぁ?」
訛った声とともに入ってきたのは、その細い女の子と、
その体には決して似合わない、どでかいバック。
関わるのはやめよう。
ここは黙って、うどんだけ出して・・・
「私、福井から出てきたんですよぉ」
計画はすっ飛んだ。
話し掛けられたら断るわけに行かない。
「ということは、そこの学校に編入されたのですか?」
「うん、で、朝はよかったんやけどぉ・・・」
!?
- 52 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:06
- 朝はよかった?
じゃあ、じゃあ彼女は。
私は妄想の中で、この子が
昼休みに、スケ番に体育倉庫の裏に連れて行かれるのを思い浮かべた。
ちょこっとだけど、
私こう見えても、武道をかじったことがある。
血が騒ぐ!
「で、その後どうなったんですか?」
「聞いてくれるんですかぁ?」
食いついた!
「はい、私でよかったら!」
「今日の朝はぁ・・・」
- 53 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:06
- 「駅で待つとったらぁ2分後に電車が来たんですよぉ」
ずいぶん前から話すな、この子は。
「すごいラッキーですよね?あと3分遅かったら、
1時間くらい待たなきゃいけないからのぉ」
ん?なんか話が違う方向に・・・
「でも、朝で運つかっちゃったみたいでぇ・・・
今、ちょうど電車出てっちゃった見たいなんやよ
あの、この駅って、電車一日何ぼんなん?」
話のおちが分かった。
活字では分からなかった人もいると思うから説明するけど、
この子の訛りははんぱじゃない。
こういう子には現実を知らせるのが一番。
「電車はだいたい5分おきです。」
- 54 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:08
- 彼女は暖簾の外を見た。
うわあ・・・すごいびっくりしてる。
なんかまずいこと言ったかなあ・・・。
「本当に・・・5分なんですかぁ?」
無言でコクリ。
「じゃあ、もうちょっとここでゆっくりしててもいいや。
どうせすぐ電車は来るんだから。
それにしてもぉ、都会ってすんごいなぁ。
五分おきに来とったら、うちの近くだら貸切やよぉ。」
・・・ゆっくり?
彼女は、立ち食いそばの存在する意味を
この都会の真っ只中で間違って覚えてしまった。
- 55 名前:8月1日 投稿日:2003/10/01(水) 00:09
- 彼女が帰るとき、とりあえず荷物を減らすように忠告した。
あと、満員電車はチカンに気をつけるようにも言った。
そしたらチカンの意味を聞かれたのでちょっと恥ずかしくなって、
自分の顔が赤くなったのがわかった。
その少し赤くなった顔を近づけて小声で教えたら、
彼女の顔に赤さが移った。
「なまり娘」は、
たまたま立ち寄った都会のうどん屋で、
また一つ都会の言葉を覚えた。
ちょっとうつむいてたけど、
だいぶ真っ赤な顔してたけれど、
大丈夫かなあ・・・。
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 00:16
- >46 名無し読者様
紺野さんと姉妹になりそうな人って結構多いですよね。
本当の「やすこん」はどうなのか。
この話では、むやみに紺野さんがビビってますけど・・・。
>47 リエット様
わたしも、この吉澤さん気に入ってます。
彼女の去り際の捨てゼリフ、よく思い出してください。
何日かあとに、再び・・・!?
次回の営業は4日。
うどんの通は何を選ぶ?
- 57 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 15:57
- いい意味で感動できない所が好きです。
しかし立ち食いうどん屋とは随分キレてるせっていですなぁ・・・。
- 58 名前:リエット 投稿日:2003/10/01(水) 20:39
- 更新お疲れ様です。
それにしても出てくるキャラそれぞれが個性的だなぁ。
次は誰が出てくるか楽しみです。
- 59 名前:122 投稿日:2003/10/02(木) 19:17
- 名前↑のままで。
ネタモノもイイですね。お気に入りはなまり娘かな。
梨華ちゃんみたいな小ネタをばんばん希望します。
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 01:07
- >57 名無し読者様
「感動できない所が好き」はコメディ作家冥利です!
ちなみにうどん屋なのはわたしがうどん派で、かつモデルの店があるからです。
>58 リエット様
色々なお客様が入れ替わり立ち代わりやってきます。
ただ一人、彼女を除いては・・・。
>59 122様
むしろ前作のほうがわたしにとっては異色ですからね。
本業はこういうのです。
ちなみにわたしも「いしよし」の場面の小ネタ、気に入っています。
- 61 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:09
- 券売機をじっと見る。
汚れによって、売れている商品が分かったりもする。
「天ぷらうどん」のボタンはすでにかなり汚れている。
ということはこの店の一番人気は天ぷらうどん。
前に、あの「バカップル」の彼氏のほうにすすめたのも、あながち嘘ではない。
そういえば、カレー南蛮って頼んだ人いたかなあ。
腕組みをして考えても、思いつきはしない。
やっぱり邪道なのかなあとか考える。
たしかに天ぷらのほうがうどんに合うかも。
まあ、私は何でも食べるけど・・・。
- 62 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:10
- 5時55分に「ミステリアス」はちゃんと来た。
そして、同じ学校の生徒、二人組が入れ違うように入ってきた。
いや、正確には,券売機の前でなんかもめてるところからはじまる。
「ののはどうするん?」
「う〜ん、ど・れ・に・し!カレーライスにするのれす!」
・・・なんで「し」で決めるんだろう・・・
「カレー?うどん屋でか?そんなん邪道や!
ほらみてみい、この指紋の後!
この店の通は絶対天ぷらうどんにしとるはずや。
のの、天ぷらにしとき。」
片割れがボタンを押すのをもう一人が阻止。
「だめえ!ののはカレーがいいのれす!」
どうでもいいけど、声がでかい・・・
- 63 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:11
- さんざん言い争いをした結果、関西弁の子のほうが折れたみたい。
「ふん、ええわ、なんぼでも後悔するがええ。」
一方の八重歯の子はニコニコ顔。
背伸びして、食券を渡してきた。
あっ、これは幻の「カレーうどん」の券。
そしてもう一つは、もう見飽きるほど見た「天ぷらうどん」。
ちなみに私の立っているカウンターの中は、外よりも一段高いところにある。
男の人なら目線が丁度合うくらい、でも、この二人はかなり小さい。
ここは、副店長のサービス能力の見せ所。
私は、ビール瓶のケースを用意した。
- 64 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:12
- 50cmくらい背の高くなった二人の前に、うどんが二種類用意される。
ただし匂いは1種類。
カレーの香ばしい香りが、この空間を取り巻いている。
そりゃあ、もう、八重歯の少女は大喜び。
逆に関西弁の子はむすっとしてる。
しばらく黙ってうどんを食べ続ける二人。
実は、関西弁の子はちらちらとカレーうどんを見ている。
チラッ、チラッ、チラッ
「どうしたのれすか?」
「えっ?あ、なんでもないわ・・・」
そうしたら意外なことが起きた。
八重歯の子が口を開いた。
- 65 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:12
- 「カレーうどん、食べる?」
・・・
「うん・・・」
二人の友情の美しさを見た!
お互いに一口だけ、交換する。
「・・・カレーうどん・・・」
「天ぷらおいしいのれす。」
関西弁の子はまだ素直じゃないなあ。
「天ぷら、もっと食べたい・・・そうら!」
ビールケースからピョンと飛び降り外へ猛ダッシュ。
- 66 名前:8月4日 投稿日:2003/10/04(土) 01:14
- ついていった関西弁の子と二人で持ってきたものは、
「天ぷらうどん」と「カレーうどん」の食券。
『友情は食欲を二倍に、食欲は友情を四倍にする。』
そして、今度は関西弁の子の前にカレーうどん。
八重歯の子の前に天ぷらうどん。
「「おいし〜!」」
二杯とも汁まで飲みきった二人は満面の笑みで店を出て行った。
ところで、通が頼むうどんってなんだろう。
圭姉ちゃんに聞いてみようかな。
圭姉ちゃん・・・
イタリアじこみのうどんなんて、絶対邪道だ!
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 01:27
- 更新しました。
次の営業は8日。
史上最悪の、迷惑な客がやってきます。
- 68 名前:つみ 投稿日:2003/10/04(土) 11:11
- 史上最強の迷惑な客・・・
やつか・・・?
- 69 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:37
- 「小学女子高生コンビ」の片割れといい、
あの「なまり娘」といい、訛ってる人はなんとなく殿堂入りの傾向が強い。
ただし、ここまでの殿堂入りは害を与えることは無かった。
この日、私は、うどん屋の敵に出会う。
ことの始まりは、訛ってる人からではなかった。
「いらっしゃ・・・ぃ」
私は、この界隈の小学生はガラが悪いのかと思った。
なんてったって、まず、すごい金髪にすごい化粧。
黙って食券を手渡そうとする。
背伸びをして。
- 70 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:37
- と思ったら、しまおうとした財布の中の定期券が見えた。
あれ?
「学」の字が書いてない。
もしかして、もう大人?
のわりには小さいなあ。
圭姉ちゃんがうどんをゆでている間、私は悩みに悩んでいた。
ビールケースを出すべきか否か。
出したら怒りそうだな・・・。
でも、出さなくても怒りそうだな・・・。
「ねえ・・・」
- 71 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:38
- 「なんか踏み台無いの?
届かないんだけど。」
やっぱり怒られた・・・。
ビールケースを出したとき、ちょこっとにらんでた気がした。
ま、まいったなあ・・・。
淡々とうどんを食べている間、
その、問題の客がやってきた。
うん、今思い出しても、うどんの敵と呼べる女だ。
そして、うどん屋のメニューから、あるものが消えた。
- 72 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:39
- 「うどんかあ、ええなあ、おっ、ビールもあんのかいな。」
その熟女が差し出した券はたぬきうどんと瓶ビール3枚・・・。
何度も言いますが、ここは立ち食いうどん屋。
変な注文をするはずだ。
酒臭い・・・。
すでに少し出来上がってる。
とりあえずビールを出す。
「はあー・・・なんでやろなあ・・・」
頭をかかえて何度もつぶやく。
「なあ姉ちゃん、話聞いてくれへんか?うちもうダメや・・・」
ちょっと待って、こういうのはもっと別の店じゃないの?
ビールをぐいぐい飲む。
- 73 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:39
- 「ごちそうさん」
「金髪さん」が店を出ようとするのを身をもって制止した。
本当に身をもって。
頭にからみ付いた。
「ちょっと、離してよお!」
「なあ、あんたも聞いてんか?うちの悲劇を、いや、こんなん喜劇や!」
「あのお・・・たぬきうどんですけど・・・」
「ああっ!うちはホンと、このうどんそっくりや。
周りにあるのは天カスばっか、男はみんなカスばっかりや。」
「だからあ、矢口を離せえ!」
「あのお・・・天カス、もう少しサービスしましょうか?」
「もうええ!カスなんか増えんでもええ!
うちはたった一人でええから中身も立派なのと出会いたいんや!
こら待て!矢口とかゆうたな、最後まで聞かんかい!」
閉店も近い中、店は大混乱状態。
圭姉ちゃん助けて!
- 74 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:40
- 「もう、あさ美、何してんのよ!」
救世主登場!
「ん?この子のおかんか?あんたも話し聞いてや。
あ、お嬢ちゃん、よい子はもう寝てええで。」
「姉です!あ・ね!」
「あ゛あ゛っ!何で矢口のベルトに自分のベルト通してんだよ!」
「ああ、姉ちゃんか、まあええわ、一杯やろ。」
「お姉ちゃん・・・私どうすればいいの?」
「話聞いたら帰ってよね。で、どうしたの?」
「聞いてくれるんか?やっぱここは大人に話すに限るわぁ。
こら矢口、よお聞いとけよ。」
「くそお、いつの間にやったんだよお。全然外れないし。」
私は将来の勉強ということで、いつも圭姉ちゃんのいる
奥からこのありさまを見ていた。
- 75 名前:8月8日 投稿日:2003/10/08(水) 22:40
- ・・・
さっきから黙ってみていたけど、
ちょっとビール瓶の量増えてない?
しかもいつのまにか三人とも意気投合してるし。
とりあえず、閉店時間が過ぎたから暖簾は下げよう。
しかも、この様子を見られたら、明日から客が激減しそうだから
入り口も全部閉めた。
「金髪さん」は酔いつぶれてしまったらしい。
圭姉ちゃんは目がすわってる。
「酔っぱらい」は相変わらず男について愚痴ってる。
ところでこれいつ終わるの?
おろおろしていたら、三人とも寝ていた。
このまま一人で帰るわけにはいかない。
私はこの三人と、かなりのアルコールの匂いと共に店の中で一夜を明かした。
- 76 名前:8月9日 投稿日:2003/10/08(水) 22:42
- 「う〜・・・またやってもうた。
あれ、ここは?
また家まちごうてしもたか?」
「うん・・・むむむ、あれ、なにこの匂い。
え?この人誰?」
「いたたたた、あれ、私いつの間に・・・?
ハッ、あさ美!ど、どうしたの!?」
「ン、ムムム・・・・・・はっ!
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!妖怪!」
よくよく思い出してみると、圭姉ちゃんが私を起こそうとしたんだと思う。
ただ、あの時は寝ぼけてて・・・
私の叫び声で、三人は正気になったらしい。
結局、最長滞在記録を残し、二人は帰っていった。
とりあえず、お店を片付けることが先決。
もう、訛りのある人には来て欲しくない。
メニューから、あるものが消えた。
- 77 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 22:45
- 更新しました。
次回の営業は12日。
上下関係っていったい・・・。
>つみ様
史上最悪な客、いかがでしたか?
未成年あさ美は大人の世界を垣間見ました。
- 78 名前:つみ 投稿日:2003/10/09(木) 22:41
- 確かに史上最悪な客ですね・・・^^
自分の姉を妖怪て・・・
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/10(金) 03:40
- 楽しいです頑張ってください
- 80 名前:匿名の名も無き名無し 投稿日:2003/10/11(土) 18:48
- >>メニューから、あるものが消えた。
なるほど、それで天ぷらうどんがなくなったんですね(違)
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 00:57
- >つみ様
まあ、寝起きで、寝起きの顔を見たわけですからね。
店員も史上最悪?
>名無し読者様
もしかして初めてレスをくださった方ですか?
推敲に推敲を重ね、頑張っていきます。
>匿名の名も無き名無し
消えたのはビールです。
なぜなら、天ぷらうどんと再び戦う女?がいるから・・・。
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 00:58
- ごめんなさい、匿名の名も無き名無し様の「様」が抜けていました。
- 83 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:00
- 鼻のいい人には分かると思う。
あの騒動から何日かたったけれども、まだアルコール風味の店内なのだ。
そんな中、恒例の女子高生が来た。
今宵のお客さんは四人組。
の内三人が、先に席に座った。
ってことは、外で食券を買ってる人は後輩なのかな?
のわりには、ずいぶん自信たっぷりに、店内に入ってきた。
食券を四枚手にしている。
その後輩に三人が三人、声をそろえて、
「「「藤本先輩、ありがとうございます。」」」
・・・この人、やっぱり先輩かあ。
いい先輩だなあ。
実はそうではなかった。
- 84 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:00
- 三人の前に四枚の食券を裏にしてかざす。
その様子、こう例えればわかると思う。
ババ抜きで、ジョーカーをとりやすい様に、少し高くする。
まあ、ベタな技だけどね。
その代わり、この「藤本先輩」がやったのは
明らかに、三枚が高くなっている。
私からの角度だと、よく分かる。
とりやすい三枚は、一番安いたぬきうどん。
そして、右手に半分隠れているのは、
一番高い天玉うどんセット。
なるほど、後輩三人に選ばせようとしてるのか。
- 85 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:02
- まず一人目。
「亀井!この三枚のどれかがいいよ。」
「ハア、はい、じゃあこれにします。
あ・・・。」
「ああ、残念、たぬきうどんでしたあ。」
素直だなあ。
本当に選んだみたい。
二人目は
「この二枚のほうがいいんですよね。
分かりました、これにします。」
「もう、田中もはずれだよ。」
「あ〜あ、先輩にだまされちゃった。」
・・・いや、これはわざとはずしたな。
私にはわかる。
世渡りが上手そう。
そして・・・何か通じるものがある三人目に順番が回ってきた。
- 86 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:04
- 「さあ、道重、あたりはど〜っちだ?」
と言いつつも、たぬきうどんの食券を近づけている。
ど〜っちだ?とか言いながら、
目は、「分かってるな」と言っている。
まあ、ここまで来れば、流れで分かるもの・・・。
ところが、この子はわかってなかった!
「・・・私はこっちがいいです。」
なんと、天玉セットの食券に手を伸ばす。
「はあっ!?ちょっと、道重!こっちにしなさい。」
「・・・でも、そっちの券は、はずれのような気がするんです。」
だから、はずれのほうを引かせようとしてるんだって。
面白いからもう少し見ていよう。
- 87 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:05
- 「・・・先輩・・・こっちがいいんですけど。」
「ダメ!こっち選びなさい!」
「・・・こっちでもいいじゃないですか・・・こっちにします・・・。」
「そっちははずれかもしれないでしょ!」
「当たりかもしれない・・・。」
がんばれほっぺ!
私はほっぺの味方。
思わず握りこぶしで応援していた。
しかし、勝負はあっさりついた。
「はい、こっちがあんたのっ!残念でしたっ!」
「・・・・・・・・・。」
泣いちゃうかな、って思ったけれどあんまり反応は無かった。
この子もかなりミステリアスだ。
- 88 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:06
- ここまでの健闘をたたえて、あと、注文の差があまりにも激しすぎるので
三人だけサービスしよう。
まず、少し大きめのかき揚げを作る。
それを三等分。
天ぷらうどんの大きさには程遠いけれど
このサービスはすごいでしょ。
もちろん、足りない材料は埋め合わせをする。
天玉セットの天ぷらは、
まず、普通より少なめの具を、普通よりかなり多めの衣で包む。
どこを食べても一応具が入るようにするのは私の腕の見せ所。
- 89 名前:8月12日 投稿日:2003/10/12(日) 01:07
- 「藤本先輩」とやらは、かなり得意げにうどんを食べる。
ククク・・・それはただの天カスだよ。
そのとき、あのほっぺのかわいい子が、
「・・・このうどん・・・おいしいですね・・・」
なんていい子なんだ!
どうせなら、海老とかも入れてあげればよかった。
まあでも、さすがにそれは圭姉ちゃんが許さない。
「ところでこの天ぷら、スカスカじゃない?」
「そんなはずはございませんが。」
「ふ〜ん、まあいいか。」
私を含む五人が満足している。
私はいいことをしたんだ!
・・・きっと・・・。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 01:08
- 更新しました。
次回の営業は16日。
復讐を誓った女の秘策とは?
- 91 名前:つみ 投稿日:2003/10/12(日) 08:30
- どんな復讐が待ってるんでしょうかね〜?
楽しみに待ってます!
- 92 名前:たか 投稿日:2003/10/16(木) 17:05
- 最高に面白いじゃないですか!!!
新しいタイプですね。このほのぼのとした雰囲気がとても良いです。
僕藤本ファンなんですけど、藤本はこうゆう役似合いますよね。
今日営業ですね。楽しみにしてます。
- 93 名前:8月16日 投稿日:2003/10/16(木) 19:12
- 天災は忘れたころにやってくる。
こういうことわざも忘れたころに思い出す。
あの人間は、宣言どおりやってきた。
七月の終わりごろ、彼は言った。
「おばちゃん、次も負けねえからな!」
そういえばあの時、私と圭姉ちゃん特製の、激辛うどんを食べたんだっけ。
いつのまにか、記憶から消えていた。
そうか、わざわざもう一度チャレンジしに来たんだ。
なんて男らしい!
・・・男らしい?
- 94 名前:8月16日 投稿日:2003/10/16(木) 19:14
- ちっとも男らしくない!
なぜなら、今日は一人で、
しかも化粧はばっちりの、格好は素敵だの
はっきり言って見事なくらいかわいい。
ただし、のがれぬ証拠は顔中のほくろ!
これが決定打となって、あっさり私に見破られた。
でも、圭姉ちゃんはちっとも気付いていない。
それに、別に今日は七味唐辛子なんか入れるつもりないし。
あんなことしょっちゅうやってたら、お店の信用がなくなることくらい
小学生でも知っている。
普通に、注文どおりの天ぷらうどんを差し出す。
なるほど、天ぷらは気に入ったそうだ。
- 95 名前:8月16日 投稿日:2003/10/16(木) 19:14
- おかしいな。
全然手を付けようとしない。
しかも、たまに私のほうをちらちら見る。
ここは駆け引き勝負!
私はどんぶりを洗いつつ、横目で彼女の様子を見ることにした。
あっ!
わたしは見のがさない。
彼女がこっそり、謎の白い粉をどんぶりに入れたのを。
白い粉、やばい人かも・・・。
いや、あれは、あくまで予想だけど、
砂糖・・・じゃないかな。
なんて男らしくない!
・・・あ・・・女なのか。
- 96 名前:8月16日 投稿日:2003/10/16(木) 19:16
- どういう結果が待っているのかちょっと期待している私。
・・・
・・・
あ〜あ、ひどいな、この前よりすごい顔。
そりゃあ、砂糖大さじ一杯くらい入れたらそうなるよ。
しかも、今日は唐辛子入ってないし。
今日は例の「キショイ彼女効果」もなく、
半分も食べないで店を飛び出して行った。
どれどれ、ちょっと、あ・じ・み!
・・・
・・・
・・・鼻からうどんが出そうになった・・・。
・・・あま〜いうどんが・・・。
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/16(木) 19:19
- >つみ様
よっすぃ〜の復讐は失敗に終わりました。
もう彼女はこの店にはこないでしょう。
>たか様
じつは、あのシーンについて
「藤本ファン」の怒りを買うのではとひそかにビビっていました。
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/16(木) 19:20
- 更新しました。
次回の営業は21日。
あさ美の身に最大の危機が!?
- 99 名前:たか 投稿日:2003/10/17(金) 09:58
- いえいえ僕は怒ってませんよwああゆう藤本も面白いじゃないですか。
作者さんの小説大好きです。ほんと面白いです。ところで作者サンは
前の作品とかあるんですか。あったら教えてください。
- 100 名前:つみ 投稿日:2003/10/17(金) 16:57
- よっすぃ〜は一体何がしたいんでしょうね^^
もうこないだろうな・・・
- 101 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:16
- 今日は目が回るくらい忙しかった。
昼間も夕方もお客さんがどっと押し寄せた。
こんな日もあるんだなあ。
普段なら一日に休憩時間が何時間もあるから、
疲れなんて感じなかったけれど、今日は特別。
もうだめだ・・・。
そしたら、今日は、珍しく圭姉ちゃんが仏に見えた。
えへへ・・・。
今日は居眠りを許してくれた。
観葉植物の隣りに椅子を置いて。
壁に寄りかかったらスーッと眠りに入っていくのが分かった。
- 102 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:17
- ・・・お客さんが入ってきたみたい。
「・・・今日は面白かったね。」
「・・・もう遅くなっちゃったけど。」
「・・・はい、わかめうどんお待ち。」
「・・・私まだ遊び足りない。」
「・・・もおあゆみ、なに言ってんのよ。」
・・・はっきりとじゃないけど会話が聞こえる・・・
・・・4人組の女の人たち・・・
・・・たぶんね・・・
・・・眠いからよくわかんない・・・
・・・まだ会話が聞こえる・・・
- 103 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:18
- 「・・・ねえ、さっきから気になってんだけど。」
「・・・あれでしょ、本物かなあ。」
「・・・まさかあ。偽物でしょ。」
「・・・かわいいよね。」
「・・・うん、わたしああゆうのほしい。」
「・・・こっそり持っていったらまずいでしょ。」
「・・・大丈夫じゃない。」
・・・何の話してるんだろう・・・
・・・まあいいや、いよいよ本寝に入りそう・・・
ZZZ・・・
- 104 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:19
- う〜ん・・・どれくらい寝たんだろう・・・
「・・・やっぱり持ってきちゃまずかったんじゃない?」
「・・・だって欲しかったんだもん。」
・・・あれ、まだこの人たち店の中にいたんだ。
・・・じゃあ、まだあんまり時間は経ってないのか・・・
・・・でもなんかおかしいな。
・・・体が妙に揺れる。
うっすら目を開けて見た。
!!!
地面が後ろに流れていく!?
なにこれ!
一体全体なにがあったの?
思わずじたばたする私。
「うわっ!動いた!?」
- 105 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:20
- どうやら私は、あの4人組の、
一人の小脇に抱えられて持って帰られそうになっていたらしい・・・
ひどい話だ!
人を何だと思ってるの?
「ごめん!本当にごめん!
部屋が寂しいから枕もとに飾ろうと思って・・・」
そう謝って、彼女達は帰っていった。
枕もとに飾るだって!?
人権侵害だ!
- 106 名前:8月21日 投稿日:2003/10/21(火) 15:21
- とぼとぼと歩きながら今のことをもう一度考え直す。
もしもあのまま寝続けていたら・・・
たぶん枕もとに座らされて、
今日何があったのかを全部聞かされて、
で、たまに変な質問してきて、
「何で答えてくれないの?」とか言われて。
でも、毎日あの「あゆみ」って言われていた人と一緒に過ごして、
たまに抱かれたまま寝たりして・・・
持って帰ってもらってもよかったかなあ・・・
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 15:28
- >たか様
http://yordorhinny.hp.infoseek.co.jp/yor-dor-hinny.htmlがHPです。
過去のといってもあまりありませんが、できれば見てやってください。
>つみ様
「男前キャラだけど、いざとなると結構かわいい。」
吉澤ひとみはそう見てます。
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 15:30
- 更新しました。
次回の営業は27日。
世の中には、こういう店とは全く無縁の人もいるわけです。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/21(火) 15:31
-
- 110 名前:つみ 投稿日:2003/10/21(火) 17:09
- 柴田さん・・・これは『誘拐』ですよ・・・^^
たぬきの置物とでも勘違いしたんでしょうか?
- 111 名前:リエット 投稿日:2003/10/26(日) 18:12
- 小脇に抱えられてっていう表現に笑いました(w
本当に色んな人がきますねぇ。
次は全く無縁の人。誰だろう……(w
- 112 名前:たか 投稿日:2003/10/27(月) 17:32
- 作品読ませていただきました。作者さんは紺野さんが好きなんですね。
僕も紺野は良いと思いますよ。今日ですね。更新。楽しみッス。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/27(月) 23:36
- 客層に変化は無い。
会社員と女子高生。
そして、特別枠で「ミステリアス」。
今日もまた女子高生が来た。
けれど、よく見る女子高生とは何か雰囲気が違う。
帽子を深くかぶり、サングラスをかけるという、
いかにも「変装」をしていた。
店に来るなり、私に「なんか食べたい。」と言ってきた。
あっけにとられそうになったけれど、ここは副店長。
ちゃんと食券販売機まで誘導。
そしたらその子は、たかが食券販売機に感動していた。
- 114 名前:8月27日 投稿日:2003/10/27(月) 23:38
- 変な子だなあ、と思って顔をみる。
販売機に驚いていたといえば、あの「なまり娘」だけれど
・・・違ったかあ。
何者?
「ねえ、これ何?あやや、うどんって聞いたこと無い。」
「うどんっていうのは・・・えーっと・・・」
そういえば、うどんって何?
「と、とにかく食べてみれば分かりますよ。」
「あやや、おなかすいたからなんか作ってよ。」
「じゃあ、天ぷらうどんでよろしいでしょうか。」
「天ぷら?それも知らない。」
なんか大変なことになりそう・・・。
- 115 名前:8月27日 投稿日:2003/10/27(月) 23:39
- 「じゃ、じゃあここにお金入れて、このボタン押してください。」
「うん。」
・・・
大丈夫じゃなさそう・・・
券売機の前で悪戦苦闘してるもん。
いったい何を?
一万円札が、硬貨のところに入らなくて困っていた・・・。
数百円のうどんを売る機械に一万円札は使えない。
両替かあ。
券売機の鍵を持ってきて機械を開けて、
千円札を10枚取り出す。
「すっごーい!ねえ、今の手品?」
はあ・・・
- 116 名前:8月27日 投稿日:2003/10/27(月) 23:39
- 店の中でも、彼女は落ち着かない感じ。
きょろきょろ周りを見ている。
そんな珍しいものあったかなあ。
むしろ珍しいのは彼女のほうだし・・・
「はい、天ぷらうどん。」
「へえ、これが天ぷらうどん?
いただっきま〜す。
・・・あっつい!
ねえ、あややこんな熱いの食べらんない。
フ〜フ〜して〜。」
この子はいったい・・・。
- 117 名前:8月27日 投稿日:2003/10/27(月) 23:41
- フ〜ッ、フ〜ッ。
「はい、どうぞ。」
チュル。
「おいし〜い。」
お客様の笑顔が私の一番の幸せです。
ちなみに店の奥で、こういうタイプの女の子が嫌いな圭姉ちゃんが、
私も含めてにらんでいた。
彼女は最高の笑顔でお礼を言ってくれた。
しかしその声は、不覚にも外に漏れてしまった。
- 118 名前:8月27日 投稿日:2003/10/27(月) 23:43
- 黒服の大男が中に入ってきた。
「今の声は!
あや御嬢様!?よかったあ。
もしもし?たった今、日本料理店でお嬢様を発見、保護いたしました。」
やっぱりお嬢様だったのか・・・
いまさらびっくりはしない。
「ねえ、この娘、すごく優しいんだよ。
うちでお礼してあげてよ。」
彼女のその一言が、かけつけた7人の黒服の大柄な男を一瞬で動かす。
数時間後、私は、なんて言ったらいいのやら、
とにかくすんごい車(中がものすごく広い)でこの子の屋敷に連れて行かれた。
その先は、なんだか夢心地で覚えてない・・・。
小脇に抱えられて拉致されるのとはえらい対偶の違いだ。
でも、逆になんだか妙に疲れて返って気がする・・・。
- 119 名前:8月28日 投稿日:2003/10/27(月) 23:43
- 次の日、さらにお礼が待っていた。
あの屋敷で働く人たちが、
全員この店にうどんを食べに来た。
圭姉ちゃんは大喜びだった。
でも、私はてんてこ舞い。
だって、昨日の7人どころか、
今日は数え切れないくらい来るんだから。
いったいあの屋敷には何人の人間がいたんだろう。
この店にはいろんな人間が来る。
たとえばすごいお嬢様とか。
- 120 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/27(月) 23:47
- >つみ様
ラジオ以来、「しばこん」がおきにいりになったので・・・。
>リエット様
最後は、ぜひあの人に締めて貰いたいと思います。
>たか様
今まで紺野さんの話ばっかりだったので、今回はキャラ設定に苦労しました。
- 121 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/27(月) 23:48
- 更新しました。
次回は31日。
最後の営業日!?
お客様は、当然!
まだ来ていないあの人でしょう・・・。
- 122 名前:たか 投稿日:2003/10/28(火) 18:31
- ほう。またこれも面白い。あややファンの僕としては待ってましたという感じですな
つぎは最後の営業日ですかぁ。さびしいですな。
- 123 名前:つみ 投稿日:2003/10/28(火) 18:51
- 次のあの人がどう絡んで来るかが楽しみです^^
- 124 名前:8月30日 投稿日:2003/10/31(金) 23:50
- もう、明日でこのバイト生活ともおさらばだ。
思えば変な客が何人も来た。
そして、そのうちの一人は現在進行形で、
33日連続で来ている。
「ミステリアス」またの名を「5時55分の女」
そして、今日、最後の変な客が来た。
長いきれいな髪。
こういう人って仕事場で人気なんだろうな。
背も高いし。
・・・にらまれた。
よくみるとちょっと怖そうな顔だ・・・。
- 125 名前:8月30日 投稿日:2003/10/31(金) 23:50
- ざるうどんを頼むその女。
店の中にはほかにも数人お客さんがいたけれど、
私は、その女の動向だけを気にしていた。
その女は、うどんを一本選び、
汁につけずにすすった。
・・・もしかしたら、これが通の食べ方なのかな。
前に、「カレーうどんは邪道か否か」で争っていた二人組を思い出した。
その女は眉をしかめた。
「ちょっとお嬢ちゃん、これ、あなたが作ったの?」
へっ!?
「い、いえ、これは奥にいる姉が作ったもので、で、えーと・・・」
- 126 名前:8月30日 投稿日:2003/10/31(金) 23:51
- 少し笑みを浮かべている。
不思議な人だなあ。
最初、何か変な味がしたのか心配になったけれど、
今日は別に唐辛子をこっそり入れたりとかはしていない。
でも、その女は、食べきったあと、何も言わずに去っていった。
???
ざるうどんの汁と、謎が残っていた。
その後は、特に何も無いまま(ミステリアスは普通どおり来たけれど)、
あと10分で閉店時間というところまで来た。
その女は、再び現れた。
- 127 名前:8月30日 投稿日:2003/10/31(金) 23:51
- 「お嬢ちゃん、ちょっとお姉ちゃん呼んでもらえる?」
「へ、へい!圭姉ちゃん、ちょっと来て!」
「もう、また何かやったの?」
「少しお時間をいただいてよろしいでしょうか。」
「は?はあ、まあいいですよ。」
二人は、奥で話をしているらしい。
いったい何があったのか。
軽く夜食のうどんを食べながら、考えていた。
うん、夜食はあっさりわかめうどんがいいな。
- 128 名前:8月30日 投稿日:2003/10/31(金) 23:51
- 話が終わったらしい。
その女、本名飯田さんは帰っていった。
そして、明日は8月31日。
夏休み最後の日。
そして、この店も明日で最後となった。
- 129 名前:8月31日 投稿日:2003/10/31(金) 23:52
- はあ、今日が最後なんだ。
店の前には、張り紙が悲しく揺れている。
最後の営業日ということで、全品30円引きにしたせいか、
お客さんはいつもより多い。
ありがたいことに、今までこの店で伝説を作っていった面々が
みんな来たので嬉しかった。
そして、例え1ヶ月ちょっとでも常連さんになっていたお客さんたちは少し残念そうだった。
常連さんと言えば「ミステリアス」。
そういえば、彼女は今日は姿を見せなかった。
どうしたんだろう。
そう思ったとき、私は彼女をかなり意識していたことに気付いた。
- 130 名前:8月31日 投稿日:2003/10/31(金) 23:52
- 昨日のあの女性は、
WUO(世界うどん機関)のメンバーの一人で、
日本の食文化を世界に・・・なんとかかんとかする目的で、
全国のうどん屋を調査していたそうな。
で、うちのうどんに白羽の矢があたったらしい。
言われてみれば、イタリアで修行して出来たうどんが
そうそうほかの店にあるわけが無い。
世界と日本をうどんでつなぐには、こういうものが必要なんだ
と飯田さんは言っていたらしい。
このへんは私もなんか胡散臭いと思ったけれど、
名刺に書いてある電話番号に公衆電話から間違い電話のフリをしてかけてみたら
たしかにつながったから本当にあるみたいだ。
世界に、圭姉ちゃんのうどんが羽ばたく日が来た。
- 131 名前:8月31日 投稿日:2003/10/31(金) 23:53
- そんなわけで、圭姉ちゃんはその団体に参加することになった。
とりあえず2年間、四国のほうに住むことになって、
また、明日から私は一人暮しだ。
だから、今日は朝から寂しい気持ちで一杯だったのかもしれない。
閉店の直前、飯田さんがやってきた。
いよいよ、私は圭姉ちゃんと別れることになった。
涙が止まらないよお・・・
ぎゅっと抱きしめられて、
圭姉ちゃんはまた遠くへ行ってしまった。
でも、今回は海外じゃないし、
冬になったら、会いに行こう!
- 132 名前:そして3年後 投稿日:2003/10/31(金) 23:53
- あれから3年。
圭姉ちゃんがいるWUOは
予想以上の大きな団体になった。
名前もWWO(世界和食機関)になって、
いまや、世界中で日本食がブームになっている。
信じられないけれど本当。
で、圭姉ちゃんはそのうどんの部の代表になったせいで
結局2年経っても帰ってこなかった。
まあ、この前も会いに行ったんだけどね。
- 133 名前:そして3年後 投稿日:2003/10/31(金) 23:54
- 一方、日本はというと、別段変わったことも無い。
和食が世界のブームになっているにもかかわらず、
日本ではいわゆる欧米出身のファーストフード店の熾烈な争いが続いている。
そして、今日は、元祖ファーストフード店が開店する。
シャッターが開いた。
- 134 名前:そして3年後 投稿日:2003/10/31(金) 23:54
- あの日突然、圭姉ちゃんが開いた立ち食いうどん屋が
3年の充電時間を経て、今日復活した。
復活、つまり見た目も中身もそれほど変わっていない。
変わったのは店員ぐらいかな。
圭姉ちゃんが残していった、イタリア風うどんを
何度も何度も失敗しながら、ついに作ることが出来た。
そう、今日から店長は私、
あさ美です!
そして、副店長には、
「ミステリアス」、「5時55分の女」、そしてその実体は!
「小川麻琴ちゃん」!
料理学校を卒業してやってきた実力派。
そして、かつてのこの店の味を、世界でベスト3に入るくらい知り尽くしている。
- 135 名前:そして3年後 投稿日:2003/10/31(金) 23:55
- 開店して数十分。
一人目のお客さんが、
息を切らして駆け込んできた。
「「いらっしゃいませ!」」
- 136 名前:イタリアの風が運んだ夏物語 投稿日:2003/10/31(金) 23:55
- 〜完〜
- 137 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003/11/01(土) 01:34
- つみ様、たか様。
御両名とも、たくさんの感想ありがとうございました。
また、リエット様もありがとうございました。
さらに、ちらりとでも覗いていかれた方もありがとうございました。
前回作に比べて感想が多かったので、制作意欲が非常にわきました。
- 138 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003/11/01(土) 01:36
- 夏休み分という短い期間でしたがお付き合いいただき、ありがとうございました。
この話のネタばれは私のHP内の作品の最後に入れたいと思います。
http://yordorhinny.hp.infoseek.co.jp/yor-dor-hinny.html
何日後かは分かりませんがなるべく早く入れたいと思っています。
- 139 名前:つみ 投稿日:2003/11/01(土) 17:11
- 最後は感動的でしたね〜!!
WUOは笑いました・・・^^
作者さんありがとうございました!次回作も待ってます!
- 140 名前:たか 投稿日:2003/11/04(火) 08:57
- 作者さん感動をありがとう。またいつか新作を!!!
最後は感動的でしたね!あのミステリアスを入れてくるとは。
次回作も読んでいきたいと思います。
- 141 名前:名無し娘。 投稿日:2003/12/01(月) 19:07
- タイトルに惹かれて今日初めて読みました。
おもしろい!と思ったらヨードーケッテイさんだったんですね。
短編集では何度か作品を拝見しましたが、本スレは初めてです。
文体などシンプルな印象なのに小ネタ満載で得した気分です。
- 142 名前:たか 投稿日:2003/12/10(水) 17:08
- 名無し娘。さん。ヨードーケッティさんが138で紹介してるホームページ
に感想をかかれて見ると良いですよ!!!お返事が来ると思いますから。
すみませんこんなおせっかいなことを書いてしまって。
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