アメオンナ。
- 1 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/09/27(土) 21:49
- どうも、雪板では初参戦の名無しです。ペコリ。
つい先日まで月にて連載しておりました。
まぁこんな感じの文体ってコトの参考までに。
宜しければ全読おねげーしますw(チャッカリ)
「夢の中」
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/moon/1056379390/
というわけで書かせていただきますです。
内容は半リアルぐらいで、なちまりっぽく行きたい所存。
ともあれ皆様に良いモノを披露できたらいいなと思っております。
それではこれからの間、皆様宜しくお願いしますです。
- 2 名前: 投稿日:2003/09/27(土) 21:53
-
雨。
決して好きじゃないけど、嫌いなわけでもない。
どちらかといえば、好きな方。
雨の匂い。
アスファルトが乾いた匂い。あんまり好きじゃないけど
地面が染みていくのを見るのは好き。
雨の日。
好き。
だってそう、アナタに逢える...
- 3 名前: 投稿日:2003/09/27(土) 21:53
-
---- アメオンナ。----
- 4 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 21:57
-
快晴。
もし今日が日曜日だったら、私は心底神様を恨んだであろう。
私は雨が好き。いや、雨によって運ばれるその日の流れが好き。
でも、仕事の日はちょっと憂鬱。
アイドルっていう立場上、世間に私の秘密を知られるわけには行かない。
けれどこんな日、こんなに真っ青に晴れた日は
自分の気持ちを、思いっきり叫びたくなるんだ。
- 5 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 21:58
-
その日も丁度快晴。
7月の終わり。いよいよ暑くなりそうな天気だった。
私が安倍なつみという女の子に出会ったのは、その日。2ヶ月と6日前。
完全なオフなんて滅多に無い私達は、前の晩から行き急いで計画を立て
朝8:00に渋谷!なんて無茶苦茶なこと決めてた。
まぁ案の定、寝坊するでしょ。
朝から気分最悪なわけじゃない。
かといってもう時計見たらお昼前。
このまま寝て過ごそうか...なんて思った。
でもここからが、変な偶然。
- 6 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:00
-
何だか目が冴えて、完全に覚醒してしまった私は
しょうがなく、みんながいるはずもない渋谷へと向かった。
一歩外に出ると、ムシムシと太陽が照り付け、有り得ないぐらいの速さで汗が出た。
タクシー拾うまで、汗ダラダラだったかな。
ところで正直な話、一人で渋谷なんて来たことがなかった。いつも二人以上。
ほら、一人で歩いてる人?あれってなんか、友達いないみたいでイヤなの。
それに、バレた時に複数のほうが楽なの。逃げやすい。
- 7 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:03
- 通りなれた道。
この流れから行けばみんなはきっと、ご飯を食べてるに違いない。
この辺りにあるメシ屋さんは...
あっ
後姿で分かる。左からイシカワ、よっすぃ、あいぼん、のの、カオリにごっちん。
コッソリ後ろつけて驚かせよう。
テレビドラマの探偵のような明らかにバレそうな尾行。
それでも、みんなは気付かなかった。
鈍いなみんな。
- 8 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:03
- 何だかこういうことしてると、子供の頃のこと思い出す。
見つかっちゃいけない見つかっちゃいけないと思いつつも
ほんのちょっと気付いて欲しい感じ。
ほら、かくれんぼの時とかなかった?
すっごい良い隠れ場所にいてさ、みんな捕まってるの聞こえるの。
でもね、一向に私は見つからなくて、みんなが必死で探してる。
心の中では、ざまーみろ!って思う自分がいる。
でも、何だかこのまま忘れ去られてしまいそうで怖い自分もいる。
いっつも最後まで残って、すぐに出てきて降参してたっけな、私。
- 9 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:04
- いつもよく行くお店の前。どうやらあそこだな。
信号待ちしてる間に追いついて驚かしちゃおう。
で、みんなが止まった。
よし、行くぞ!
一歩一歩、慎重に気付かれないように歩を進め、少し後ろに立つ。
呼吸を整え、せぇ〜ので驚かす!
せぇ〜のっ!
「あのぉっ…」
「へっ?」
- 10 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:06
-
突然の呼びかけにビックリして振り返る。
とそこには、一人の同い年ぐらいの女の子が瞳をキラキラさせ
私からの応答を心待ちにしていた。可愛い子だなって、真っ先に思った。
「矢口さんですよね…?モーニング娘。の…」
「そうですけど…ファンの方ですか?」
「ハイ!とっても好きで、特に矢口さんなんか憧れで!」
綺麗な瞳してるな、この子...
- 11 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:07
- 何てコト考えてるうちに、信号は青へ変わっていた。
みんなが信号を渡ったのなんて、気付きもしなかった。
「あぁっ!ちょっ、ちょっと待って!」
点滅は気をつけて渡れ。走れば間に合う!
走り出そうとしたその瞬間だった。
お腹にうっという鈍い衝撃。
わき腹から伸びた手が、へそのトコロで、がっちりと握手してる。
「ちょっ、何すんのっ!」
「ダメだってばぁ!危ないっしょぉ!」
訛りに訛った道産子弁。
北海道から渋谷に来てるのか?
- 12 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:08
- そんなコトに感心してる場合じゃない。
信号は気付けば赤で、まだ見えていたメンバー達も、次第に人ごみに消えていった。
「あぁ!もう!みんな見失っちゃったじゃん!」
あっ
言ってしまったコトはしょうがないが、いくらなんでも今のは酷すぎた。
急いでフォロー、っていうと聞こえが悪いけど、謝る。
「ごめん!そんなつもりじゃなかったんけどさ…ホント、マジごめん!」
「いえ、そんな…せっかくの休みなのに、何か気分悪くさせちゃったみたいだし…」
- 13 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:08
- もう、最悪。
超私が悪者。まぁ、どう見てもそうなんだけどね。
こんな時ほど、周囲の人間は特異な人間の存在に気付く。
あちこちで「あっ」という、芸能人の存在に気付いた声。
マズいな。
思った通りのサイン&写真責め。これは本気でマズい。
丁寧に断ろうと文章を頭の中でまとめた辺りの時だった。
- 14 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:08
-
えっ
私の左手は、あの子の右手がしっかりと握っていた。
そして、いつの間にか私達は走り出していた。
「ちょっちょ、ちょっと!いきなり危ないってば!」
「せっかくの休みなんだべさ!ファンサービスなんていつでもできるっしょ!」
どうやらこの子は、興奮した時に訛りが出るみたいだ。
地方の子は優しいというか、世話焼きが多いとかたまに聞くけど
どうやらあながち、ウソではないみたい。
- 15 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:09
- 3分ぐらいだろうか。久々の全力疾走に、私はフラフラだった。
割とヒールの低いものを履いていた幸運もあって、足はそこそこだった。
でも、どうにもギシギシ体が唸ってる。
こりゃみっともないなぁ…
「もう大丈夫だべな!矢口さんも大変なんだべなぁ〜…あっ、スイマセン…また…」
困ったときの顔が子供みたいな可愛い子で、その童顔と訛りのギャップに
思わず可笑しくって笑ってしまった。
不安そうな目で見てるけど、私はただアナタが可愛いって思ってるだけ。
取って食っちゃおうなんて、思ってないよ。
でも、食べたいぐらいにぷにぷにしたほっぺしてるな…なんて。
- 16 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:11
-
「さっきはどうもね。そうだ、サイン欲しいんでしょ?」
「ハイ!すっごく欲しいべさ!」
「その訛り可愛いねぇ。名前は…?」
「安倍なつみ。なつみは、ひらがなです。」
安倍なつみ。
まるでこの子のためにあるような、可愛い名前。
太陽みたいな笑顔って、こーいう顔のことか。
- 17 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:16
-
「安倍なつみ...可愛い名前だね。そーだ、メアド交換しようよ。」
「えっ、いいんですかぁ!やったぁ〜!嬉しいぃ〜!」
「そこまで露骨に喜ばれるとなぁ…ま、いいや。とりあえず、ヒマな時送って」
「ハイ!もぅ、絶対送ります!」
「そんじゃあ、またね。メールちょーだい」
「ハイ!お仕事頑張ってください!応援してます!」
そしてその子はバイバイと手を振り、背中を向けた。
- 18 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:19
-
ハッと妙な感覚に気付く。
バイバイと知らない間に手を振っていた自分が
何だか妙に恥ずかしくて、ファンの一人ぐらいで...と思い返した。
そう考えればそうだ。だいいち、会ったその日にアイドルとメール交換できるなんて
そこらの芸能人でもできないようなことなんだ。
私、何でメアド交換しようなんて言い出したんだろ…?
無意識下の自分の行動に、思わず自分で首を捻る。
頭で考えてから行動するようにしなくちゃなぁ…
正直このまんまじゃ、すぐにボケちゃいそうで怖い。
- 19 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/27(土) 22:20
- それに、よく考えても、別にメールなんてしないだろ...この先。
ていうか、ファン一人とメール?
私はそんなちっちゃいアイドルじゃない。
無意識のうちに、フリッパを開け、親指を動かす。
安倍なつみ。
ほんの1分前に入れたばかりのアドレス。
本当に心から嬉しそうな背中が、まだハッキリと見える。
ピッという軽い電子音と共に、あっという間に彼女は私の中から消えた。
- 20 名前:jinro 投稿日:2003/09/27(土) 22:38
- おおう、新作ぅ。
今までにない感じで…楽しみにしてます。
- 21 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/09/28(日) 08:02
- >>20
jinro氏即効レスさんくすぁーー!!!
見事にその日のうちに見つかりましたねw
ちょっと前作が重すぎたかななんて思い、もっと楽しい感じで
行けたらいいな...なんて思ってはおります。
jinroさんのストライクゾーンにえぐり込むような
なちまりを書けたらいいなと思ってるので、この先も宜しくです!w
私的な話ですが、只今ブレイクダンスを習得中。
まぁ、来週ぐらいには飽きてるでしょうが...w
- 22 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:31
-
それから数日後。
その日は朝からどしゃ降りの雨で、何だか仕事がめんどくさかった。
けれども行かなきゃいけない。
眠たい目をこすって、顔を洗い、服を着替え、メイク。
一連の動作に、普段の倍以上時間がかかった。
慌ててタクシーを拾う。
時計が進むのがいつも5倍は速い。
タクシーから降りると同時に、気持ちも足早に、スタジオへと駆け出した。
「遅い。」
楽屋に入って一発目が「遅い。」って。えらくストレートなのは相変わらず。
モーニング娘。というグループは私を入れて7人。
噂ではもうじき新メンバーを入れると何とかって、週刊誌で読んだけど
肝心のつんくさんは、もう少しこのままやなといつもどおりの返事ばかり。
まぁ、何人増えようが、そんなに知ったことじゃないけど。
- 23 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:32
-
「やぁ〜ぐちさんっ♪」
よっすぃこと吉澤ひとみ。この子、スッゴイ美少女。
のわりに天然で、盛り上げ屋さん。とってもボーイッシュ。
今までに出逢ったことの無いタイプの子で、加入当時から仲がいい。
「やぐちさぁん、聞いてくださいよぉ。梨華ちゃんたらね…」
「よっすぃ!ちょ、矢口さんも聞かないでいいですよぉ〜!」
この梨華ちゃんこと石川梨華は、典型的なお嬢様タイプの顔。
まぁ、見事にどんくさいし声もすんごいアニメ声。でもまぁ、顔はかなり可愛い。
ところで、加入当初からなんだけど、私への目線が怖い気がする。
というか、私と一緒にいる人への目線かな。
ちょっとまだ、性格とか詳しくは分かんない子かな。
- 24 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:33
-
「のののおかしがねーのれす!あいぼんたべたろー!」
「てっ、てきふぉうなふぉふぉいふなや!」
相変わらず分かりやすい二人。ののこと辻希美と、あいぼんこと加護亜依。
まぁ、わりとも何も見ての通り。
仲が良くて、本当に芸能人には見えないぐらい子供。
この二人から見たら、私ですらオバサン世代なのかな。
というか、加護。口に含みながら言い訳するって。
- 25 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:33
-
「なぁーに考えてんの?」
おっ、ようやくマトモ。まぁ、一応中澤のゆーちゃんが辞めてから
リーダーに大抜擢されたカオリこと、飯田香織。
まぁ、スタイルもいいし美人。頻繁に宇宙と交信する。本気で。
一番年長さんってこともあって、年の近い私も辻加護も甘える。
よきお姉さんって感じ。
っと、肝心な子がもう一人いるんだけどぉ…遅刻か。
まぁじきに分かると思う。
なんせそのもう一人ってのは私のオンナノコだから。
- 26 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:34
-
「おっはよぉー!って、やっぱり遅刻か…あははっ」
「笑ったら済むと思ったら大間違い。一日お菓子没収ね。」
「んえーーー!カオリィー!ひどいよー!」
と、まぁお菓子でダダこねてるこの子。ごっちんこと、後藤真希。
さっきも言った通り、私のオンナノコ。彼女ってとこかなぁ。
言いづらいんだけどさ、ごっちんが入って来た時から可愛いなって思ってて
まぁ向こうも何となく私に気はあったみたいで、2ヶ月ぐらいで付き合いだした。
まぁ、今に至るってとこかな…そういえば最近色々してないな。
- 27 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:34
-
「よっしゃ!これで全員そろったね。1時間後から収録ねー。」
バタンとドアが閉まり、カオリがマネージャーさんと消えると同時に
さっきの音量を4段階上げたような声でみんなが騒ぎ出す。
おかげでうるさくてロクに話もできやしない。
ごっちんに目で合図して、時間をずらして外へ出る。
こうでもしないと、結構みんな勘が良いみたいで、気付かれたら危うい。
ごっちんが出てから1分後、立ち上がる。
みんな各々の会話に夢中で、そこまで気にしてはない様子。
一番気にすべき子、梨華ちゃんも、よっすぃ達と楽しげに喋っている。
パタンとドアを閉める。ふぅっとため息。
向こうの方にごっちんが手を振ってる。
手を降りかえした。本当に嬉しそうな笑顔でコッチを見てる。
- 28 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:35
-
「今夜大丈夫?ごっちん最近、ソロとか忙しいじゃん」
「んーん!全然へーき!それに、ソロよりやぐっつぁんのが大事っ!」
「そっか、サンキュね。そしたらまた、帰りにね。」
そっけなく相槌を打つ。
流石にこのまま行くとこまで行くのは、マズい。
昔からごっちんは、後先考えないし、場所とか全然気にしない性格だったから
こーゆー展開の時の対処法は、私はキッチリと知っている。
ヘタに「私もだよ」なんてラブラブモードに入ると、それこそ収まりがつかない。
ごめんね、ごっちん。
でも私、ごっちんと別れたくも無いし、娘。を辞めたくもないの。
理解、してね…?
- 29 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:36
-
けれど、振り返ろうとした瞬間。
後ろから抱きしめられた。
ちょいちょい、ここじゃ流石にマズいよ…
「ちょ、ちょっと...今夜できるじゃん...焦らないでいいよ?」
「私...今すぐにでもしたいもん...」
この子のおねだりは自分が引くということを知らない。
しょうがないなぁ…もう。バレてもしんないよ…
- 30 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/29(月) 19:36
-
ゆっくりと顔を近づける。唇が触れる。
同時に、ざらついた感触。
始めてキスしたとき、顔を真っ赤にして歯をカチカチ言ってたごっちん。
何だか最近は、やらしいキスをするようになった。
ひょっとして、私のせいかな…?
「んっ…やぐっつぁん…ごとぉもう…」
「いいよ、我慢しないで。トイレ、行こ?」
周りに人がいなくて本当に良かった。
早めに終わらせないと、怪しまれちゃうな。
足早に、個室へ入り、カギを閉めた。
- 31 名前:LOVE 投稿日:2003/09/30(火) 10:32
- なちまり発見!!
今後の展開に期待です!
- 32 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:45
-
こっからはまぁ、お手の物。っていうか。
ごっちんの弱いトコは知り尽くしてる。
耳、首筋、乳房、それと、アノ辺り。
まぁ比較的感じやすい子だから、逝っちゃうのも早いといえば早い。
ん…でも、ごっちんのほっぺたが真っ赤になって
必死で声を我慢してるのを見てると、たまらなく愛しくなった。
夜の前の、まぁ予行練習、みたいなトコで私もちょっと燃えてきたかも。
急激にピッチを早める。
一瞬ビクッとしたけど、すぐにまた感じ始める。
必死で声を我慢してるごっちんの耳元で、囁く。
- 33 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:46
-
「…我慢しないでいいよ…」
「んっ・・・はあぁっ!だっ、だって…聞こえ…ちゃうから…」
しぶといな。
時間が気になってきたから、そろそろスパート。
思いっきり感じてね...ごっちん。
「あぁっ!ご、ごとぉ…もぉっ!イっ…ちゃうぅ…はああぁんっ!」
誰もいないトイレ。
目の前で余韻に浸るごっちんの荒い息遣いだけが響いている。
ごっちんの呼吸が整うのを待って、私達は足早にトイレを出た。
と、ここで見つかっては意味が無い。
細心の注意を払いつつ、平然と歩く。
何だか、誰か見てる気がする。
見て...ないよね。勘違いだ。
- 34 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:46
-
楽屋の中は何も変わらず、20分前と同じありさまだった。
「矢口遅い!トイレに何分掛かってんの!」
いきなり怒られても。
それに、私はどっちかといえば加害者で...って、わかんないよね。
まぁ、とりあえずバレてないみたいだ。
さっきの視線が引っ掛かったけど、まぁ疑心暗鬼ってヤツだ、きっと。
まぁ、知っての通り。
人生どこで誰が自分のこと見てるか分からない。
収録が終わって、スタッフさんに「トイレ長かったねぇ」なんて。
やっぱり見てたのね...
と、なるとメンバーもこの調子では見てないとは言いづらい。
マズいかも。
- 35 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:47
-
まぁ、はかなくもこの予感、的中しちゃうわけ。
んで、今私がいるのが駐車場。
スタジオが遠かったせいか、帰りのバスを手配してくれていた。
滅多に無い送迎バスに、みんなは大ハシャギで席決めしてる。
辻加護、石川吉澤、カオリはまぁ、遠足で言う先生の席に座るだろう。
おのずと私はごっちんの隣に座る、はずだった。
「アタシ、矢口さんとがいいなぁ〜…」
へっ?
思わぬところからのパンチに、声が裏返った。
梨華ちゃんがまさか、私の隣がいいなんて言うとは思ってもない。
それは、ごっちんも同じなわけで。
「んあー!ちょっと!やぐっつぁんは、ごとぉの隣!」
「何でごっちんに譲らないといけないわけ!アタシが先に言ったんだから!」
とまぁ、喧嘩。
もしかして、私のせい?
- 36 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:49
-
そんでもって、結局ジャンケンで決められた私の隣は
「矢口さぁん♪お弁当、アタシの分、食べてくれませんかぁ♪」
この子。石川梨華。
もうベッッッッタリ。
5分前に乗車してからずっとこの調子。
梨華ちゃんってばいい匂いするし、よく見るといい体をしてる。
でも、ここまで露骨だとヤグチ、引くわ正直…
時間が経つのが、とんでもなく遅いよーな。
あと、1時間...
- 37 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:50
- あれから何分経っただろうか。
外を見ると、朝からの雨は未だに勢いを緩めず降り続いている。
この調子だと、明日も雨か。
そろそろライブで全国を回る。
とまぁ、ゆっくりと寝る時間も少なくなる。
今のうちに寝ておこう...
メンバーを見渡す。
時計は10:09。出発してからまだ15分しかたってない。
けど、みんな疲れたのだろう。
遠足帰りのバスのように、車内は寝息しか音を発していない。
反対車線を走り去る車の音が規則的な眠気を誘う。
到着予定はおそらく11:00。
20分ぐらいなら、寝ても平気だろう…
そして、あっという間に眠りに落ちた。
- 38 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:53
- 目が覚める感覚がして、同時に目を開ける。
時計は10:39。あと少しか。
と、ケータイが鳴っていることに気付いた。
慌てて取り出すと、メールが2件。
最初のメールは...ん?
石川からだった。
「矢口さん...起きてますか...?」
突然発せられた声に、小さい声だったにも関わらず
心臓が飛び出るぐらい驚いた。
「んっ...ビックリしたぁ...メール、どしたの?口で喋ってくれればいいのに」
「あの...悪いことしちゃったかもしれないんですけどぉ...」
「はぁ?どしたの?万引きでもした?」
「あの…昼間、見ちゃったんです。あの...その...ごっちんと矢口さん、が...」
- 39 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 19:54
-
案の定、悪い予感はドンピシャで的中。
やはりマークが甘かったのだろうか。
バレてしまったものはしょうがない。口止めしてもらおう。
「でっ、でも!アタシ、諦めません...矢口さんのこと。」
へっ?
どゆこと?
「ずっと...好きでした。矢口さんのこと。ごっちんの彼女、だったんですね...」
この展開、明らかにマズい。
「でも、気にしませんアタシ。矢口さん、アタシと、付き合ってくれませんか…?」
さては悪い予感って、このコトか…
って、ちょいちょい!ちょっと待ってよ…急にそんな…
- 40 名前:ヤグチ 投稿日:2003/09/30(火) 20:00
-
「あの、お返事はいつでもいいです!その、気持ちが固まったらっていうか...」
有無を言わさず。
梨華ちゃんたら言いたいことだけ言って黙っちゃった。
おーい。それってば絶対にOKじゃんか。
ちょっと梨華ちゃ…
この子はのび太くんか?
5秒。僅か5秒で梨華ちゃんはあっという間に、満足げな顔で、寝息を立て始めた。
また沈黙。
でも何だか、さっきより自分の鼓動の音がハッキリと聞こえる。
ドクッドクッて、唸ってるみたい。
規則的な呼吸音と規則的な鼓動音のみが呼応する車内。
起きてるのは私だけのようだ。
数秒間考え、そして天井を見上げ、ふぅとため息。
目を閉じるとぼわーって頭がクラクラする。
何かもう、グッタリって感じだよ。
私はそのまま、眠ってしまった。
- 41 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/09/30(火) 20:08
- てなわけでまぁ、更新っす。
って、いきなりこのペース...イーブンなんて保ってられるか畜生め!
今に週一もままならなくなりそ...w
>>31
LOVEさん、レスさんくす!
未だになちまりは数えるぐらいしかでてませんが今に出てくる...はずですw
この先の展開に期待しておいてくらさいです。
この先って結局いつのこと?なんて質問は受け付けませんがw
これからも引き続き読んでいただけたらと願っておりまする!
次回更新はまぁ、そのうち...でw
感想レス等あれば一言でおkですので書き込んでください。
それでは引き続き、宜しくお願いします。
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 08:08
- なちまり楽しみです。
ていうか、ヤグもてもてですね。
- 43 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:03
-
外は、雨。
現在時刻、おそらく11:10。
降り続いてる雨が窓を叩いてる。
時折遠くで、雷の音も聞こえる。
月の光も、普段より薄い。
真っ暗な部屋。
目の前にあるものしか見えないような闇の中で
私達は、あれからずっと愛し合っている。
何度キスしただろうか、何度果てただろうか。
数え切れないぐらいの快感を何度も体感した。
そして、今も。
「んはああぁっ!ダメ…そんな…はあっ…はああぁんっ!」
これで何度目だろうか。
ごっちんは今、今日最高の絶頂を迎えた。
優しく唇を重ねる。
さっきまでの舐めるようなキスじゃなくて、可愛い子供みたいなキス。
ゆっくりと唇を離すと、笑顔のごっちんがそこにいた。
- 44 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:04
-
「先、シャワー浴びてくるね・・・」
少し疲れた私は先にシャワーを浴びることにした。
降ってくる温かい水の粒が、全身を暖める。
でも、疲れは取れないみたいで、ため息が出た。
このまま寝てしまいたい...
寝ぼけ半分で、体を洗い始めた。
いつしか眠ってた。
- 45 名前:アベ 投稿日:2003/10/05(日) 20:05
-
あんまり早いとお仕事の迷惑になると思ったから
ちょっと遅い時間に送ってみた、のはいいんだけども。
メールって、なっちはあんまりやったことないから分からないんだけど
送って2,3時間もしないと返信がこないもんなのかなぁ?
もしかしたらアドレス間違ってるとか…?
でも、そんなに頻繁にアドレス変えたりとかしないよねぇ・・・
結構なっち、勇気出したんだけどな…ご飯食べよって言うの…
さっきから雨の勢いが強くなってる。
私は今、コンビニの外で雨宿り。
- 46 名前:アベ 投稿日:2003/10/05(日) 20:05
- 次第にお客さんも来ないのか、閉店を早めるお店もあちこちに見えてきた。
ケータイを開く。何度この動作を繰り返したろう。着信音も鳴ってないのに。
時間は11:20。もう、今夜は諦めよう…うん。しょーがないっしょ。
相手は芸能人なんだし...
でも、まだ間に合うかもな...
一通だけ。
一通だけ、送る。
とりあえず、11:40まで待ってみよう。
返って来たらいいな…
- 47 名前:ゴトー 投稿日:2003/10/05(日) 20:05
- 聞きなれた着信音で目が覚めた。
向こうからはお風呂場の光とシャワーの音。
すぐ横で、やぐっつぁんのケータイが光ってる。
メロディは、ごとぉとオソロの「LOVEマシーン」。
ちょっと今時古いけど、この曲のお陰でやぐっつぁんと仲良くもなれたし
何かと思い出深い曲だから、これにした。
でも、こんな時間に誰だろう。
おそらく、メンバーか。
最近そういえば、梨華ちゃんがやぐっつぁんのコトずっと見てるの思い出した。
気があるのは、まず間違い無い。
でも、ごとぉが付き合ってるコト、知ってると思うんだけどなぁ…
- 48 名前:ゴトー 投稿日:2003/10/05(日) 20:06
- 見たい欲望に駆られる。
でも、もし見てる時にやぐっつぁんがお風呂から上がってきたら…
やぐっつぁんは、どこかプライベートで誰にでも一線引く癖があるみたいで
ケータイとか見られるの、すっごい嫌がる。
でもそれってもしかして、浮気してるってこと…?
急に不安の波が襲う。心臓がドキドキする。
もし、もしもだよ?もしもで、ごとぉの知らない子からのメールなら…
ピッ
電子音と共に、液晶の周辺が明るくなる。
真っ暗な部屋の中では、その僅かな光さえもハッキリと見てとれる。
着信アリ。未開封2件。
- 49 名前:ゴトー 投稿日:2003/10/05(日) 20:08
-
ためらいは、もう無かった。
表示された文字は...見慣れない名前だった。
あべ…なつみ?
雨の音が、何だか大きくなった気がした。
- 50 名前:アベ 投稿日:2003/10/05(日) 20:08
-
奇跡ってこういうコトのコトを言うんだ!って思った。
返信が返って来た!それも、「OK]の返信!
急いで今からでも開いてるお店を探す。
すると即効で深夜2:00までのレストランが見つかった。
ここしかない!と思ったから、即効で予約をした。
でも、この雨のせいかなかなか電話が繋がらない。
まぁ、場所さえ分かっているのだから行って直接予約すればいい。
傘買えばよかったんだけど、嬉しすぎて、濡れても全然平気だった。
そのまま、目的地へ走リ出した。
- 51 名前:ゴトー 投稿日:2003/10/05(日) 20:09
-
マズいことをしちゃったみたい。
あべなつみって子、本気にしちゃったみたい。
私のメールとも知らずに、勝手に舞い上がってしまったみたい。
まぁ、やぐっつぁんとご飯を食べに行こうだなんて
ごとぉ以外の女の子には100年早い。
それに、こんな芸能人聞いたこと無いからおそらく一般人。
何でやぐっつぁん、一般人とメールなんか?
ごとぉがいるじゃん。ごとぉのこと好きだよね?
ごとぉとあんなに愛し合ってるじゃん。ごとぉのこと愛してるよね?
無意識に親指が動く。頭で考える前に、指が動く。
「「誰アンタ、バッカじゃない。やぐっつ」」
そこまで打った時。
「誰アンタ、バッカじゃない…勝手に誰にそんなの送ったの?」
ハッと気付いて顔をあげると、ケータイを覗き込むやぐっつぁんがいた。
- 52 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:10
-
どうしてこう勝手に見るかね…人のケータイ。
どうやらこのメール、あの安倍なつみって子に送ろうとしたみたいだ。
まぁヤキモチ焼きなごっちんの考えることぐらい手に取るように分かるけど
流石にやりすぎってもの。ちょっと叱らないとね。
「でもやぐっつぁん、ソイツ嘘つきだよ。だってホラ、この雨。どの店も閉めてるはずだよ」
一理ある、というか正解。
こんな雨で客が見込めるはずが無いし、何より人がいないわけだから
閉店時間を早めることは、いくらでも可能なわけだ。
でも、段取りも決めた上で誘ってくれてると思うし...
- 53 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:10
-
『♪♪♪』
電話。あの子からだ。
出ようか出まいか迷うなぁ...
このまま出れば、誤解解くのめんどくさいし。
かといって無視するのも気が引ける...
パシッ
あっ
一瞬のスキを突かれ、ケータイを取りあげられた。
鳴り響くケータイは、ごっちんの手の中に。
- 54 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:14
-
「ちょっとごっちん!返してよ、電話出るんだから!」
「イヤ!ごとぉの知らないトコで知らない子に逢っちゃイヤ!」
「わがまま言わないの!ほら、電話切れちゃうじゃんか!」
「わがままじゃないもん!やぐっつぁんが好きなだけだもん!」
強引に押し倒され、唇にさっきの感触が蘇ってくる。
歯のスキマから強引に舌が押し入ってくる。
- 55 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/05(日) 20:14
- 絡み合う舌。ピチャピチャと鳴る唾液の音。
唇が離れる。私が何か言おうと考える。そのスキに。
ピッ
「やぐっつぁんが困ってるから切った。やぐっつぁんはごとぉだけを愛して…」
再び溶けるようなキス。
投げられたケータイが、ゴツッと鈍い音を立て床に落ちた。
再びケータイが鳴ることは無かった。
- 56 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/10/05(日) 20:25
- 疲れたぁ・・・w
中途半端っぽいですが更新です。
またもや、なちまりは絡みなしで…いっ、今に!今に出ますから!w
>>42
名無し読者さん感想レスさんくすぅー!
なちまり、頑張りますです!最近なちまりの絡みが多いのでウハウハですw
確かにヤグチさんモテモテですねぇ…
こっからどう心境が変わるかが見所でしょうか。
とにかく頑張りますので、これからも宜しくお願いします。
- 57 名前:LOVE 投稿日:2003/10/06(月) 23:06
- 遅くなりましたが更新乙です。
なんだか続きが気になる終わり方・・・。
次回更新に期待してます。あと、なちまりにも・・・
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 17:39
- 更新お疲れ様です。
やぐごま好きっす!(wやぐモテ〜♪
っつーかごっちん色気ありすぎ…(;´Д`)ハァハァ
次回も期待して待ってます。
- 59 名前:アベ 投稿日:2003/10/09(木) 22:32
-
呆然と立ちすくむしかなかった。
降りしきる雨。電話が繋がらなかったのではない、人がいなかっただけだ。
この雨のせいか、やはりこの店も閉店してしまっていた。
雨は止むことを知らず、一層強くなっているようにも思える。
今更傘を差したトコロで、体はビショビショに濡れている。
あれから、コンビニを飛び出してから何十分経っただろうか。
ケータイを開こうにも、雨で壊れてしまいそうで。
でもいっそ、ケータイを濡らして。
矢口さんとの関係も、こんな中途半端な関係も断ち切ってしまって。
思い返せばなっちの思い上がりで、結局は一般人と芸能人。
一日中お仕事してる人と、フリーターのなっちでは、明らかに不釣合い。
でも、そんなことぐらい分かってた。
それでも、もうちょっとだけでいいから、近づきたかった。
- 60 名前:アベ 投稿日:2003/10/09(木) 22:33
-
アレ以来、矢口さんからの連絡は無いまま。
鳴らないケータイ。
もしかしたら、鳴っているのかもしれない。
雨の音がかき消してるだけかもしれない。
でも、それならそれでいいの。
勝手に舞い上がったなっちが悪いんだから…
行くあてなんてない。家まではあと何キロもある。
こんなカッコじゃ、タクシーだって、コンビニにだって入れっこない・・・
店の屋根の下から一歩出た瞬間、滝のような雨が私を打つ。
バチンバチンと音を立てている。
私の心までも濡らしそうなこの雨は止む気配を微塵も感じさせない。
歩き出すと同時に、雨が強くなった気がした。
雨音にかき消されて自分にすら聞こえないぐらいの声で、私は泣いた。
ケータイは、鳴るはずがなかった。
- 61 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/09(木) 22:33
- 疲れた。
とにかく、疲れた。
ごっちんの家からタクシーで帰って、現在時刻12時ジャスト。
どうなってんだかねぇ・・・まったく。
ベッドに倒れこんでしまうと、そのまま明日の昼まで起きれそうに無い。
目覚ましに、シャワーでも浴びようか。
着替えていると、ゴトッという鈍い音がした。
ケータイが床に落ちたみたい。
そういえば、あの子…
まさか、ね。
外は雨。勢いは増すばかり。ラジオでもしきりにアナウンサーが騒いでた。
こんな時にお店なんて開くわけない。
イタズラだろう。
- 62 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/09(木) 22:34
- でも、何か変。
胸騒ぎっていうか、ほら、ヤグチの悪い予感。当たるじゃない?
一度思ってしまうと当分はそれが頭から離れない性格だから
シャワーなんて浴びてる場合じゃなかった。
大急ぎで着替え、家を飛び出した。
場所は...そういえば分からない。
大雨の中飛び出したはいいが、行くあてもないんじゃどうしようもない。
諦めかけた。
でも、私の責任もあるし、一応行ってみることにした。
始めて出あった、あの場所。
あそこの近くには、深夜営業のお店があったはずだ。
この時間帯に誘うなら、あそこしかないと思う。
傘を差すのももどかしくて、家の前に投げ捨てた。
雨なんて気になんなかった。
私は、走り出していた。
- 63 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/09(木) 22:34
-
ビショ濡れでタクシーに入って来た私を、運転手さんは快く受け入れてくれた。
丁寧にタオルとミニドライヤーまで貸してくれた。
何でも、娘さんがくれたらしい。
運転手さん、とっても幸せそうな顔してた。
到着。と同時、いや少し早いぐらいで立ち上がる。
ここで待ってますから。と運転手さん。優しい人ってのは、とことん優しい。
雨で視界が白い。
雨音が滝のように聞こえる。人の気配なんてわからない。
吐息だけが、白くハッキリと見える。鼓動音と呼吸音がシンクロする。高まっていく。
どこだ?どこだ?どこだ?
焦れば焦るほど、見つからない。
- 64 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/09(木) 22:35
-
さっきから降り続く雨はまた勢いを増していた。
もし本当に、あの子が来ていれば。
この雨の中、私のことを待っていてくれているのならば。
降りしきる雨。
もう、諦めようか。
何だろう、なぜかは分からない。でも、諦めきれなかった。
髪はズブ濡れ、服も下着まで濡れて、もうスゴイ状態。
それでも私は、帰りたくはなかった。
絶対に、帰りたくなかった。
そして神様の、ちっちゃなきまぐれ。
- 65 名前:アベ 投稿日:2003/10/09(木) 22:41
- 涙と雨で滲む視界は、一人の待ち焦がれた女性だけを映した。
もう、迷惑かけっぱなしだよ、なっちったらさ…
本当に…ゴメンなさいね…矢口さん…
涙が、止まらなかった。
憧れの人の前で泣きはらした顔なんか見せたくなかったけど
もうどうしようもないぐらいに、嬉しかったの。
ちゃんと、迎えに来てくれたってこと。
こんななっちのために、ちゃんと来てくれたこと。
本当に…ありがとう…
涙と一緒に、降る雨も穏やかになった気がした。
穏やか涙が、何度も頬を一筋濡らした。
- 66 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/10(金) 13:41
- 時間が止まった瞬間。
脳で考えるより早く、体は動き出していた。
私は、彼女を抱きしめていた。
おたがいにズブ濡れなのに、不思議とぬくもりが伝わる。
暖かい感覚に、急に自分が情けなくなった。
私は一体何をしてるんだろうか。
本当に、本当に私は、何をしているんだろうか。
さっきよりもギュッと抱きしめた。
ごめんね…ごめんね本当に…ごめん…
涙が、頬を伝った。
降りしきる雨が、零れ落ちる大粒の涙を流していく。
それからずっと、泣きながら私達は抱き合っていた。
言葉はいらなかった。
- 67 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/10(金) 13:42
-
この時。
この時から。
この時からだ。
私達の出会いと始まり。
安倍なつみとの出会いと始まり。
本当の自分との出会いと始まり。
ここからが、始まり。
- 68 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/10(金) 22:27
- 色々ありつつも更新しましたですー。
もう10月も半ば...いやいや、あっという間です。
3連休ですねぇ。清清しい夜長w
金曜日の夜ってテンション上がりませんか?w
お話のほうはようやく本編って感じです。
こっからが本番ですので、気合入れなおして頑張りたいっス!
>>57
LOVEさん、毎度レスたんくす!
なちまりちょこっとだけ出ましたw
今回は文章力の無さを痛感しました。
もう少し具体的ににしたかったのですが…w
次回からはなちまり前面に押し出して行く予定ですので
これからも飽きずに見続けてやってくらさい!
>>58
名無し読者さん
感想レスたんくすです!
やぐごまはいい感じになってるようで光栄でございます。
エロごちんは自分も正直、ハァハァです…w
期待に添えるモノを頑張って書いていくので、これからも宜しくお願いします!
- 69 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/10/10(金) 22:29
- えぇっと、ヤグチじゃありませんw
疲れてるんでしょうか…w
気合入れなおせ!俺w
次回更新予定は、3連休以内に予定。
予定通り行くように頑張りたいと思いますです。
- 70 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 06:47
- なちまりきましたね。
ごっちんともどうなるのか楽しみです。
- 71 名前:名無し小説屋さん( ‘Д*)ノシ@左眼再生中…w 投稿日:2003/10/17(金) 18:44
- しばらくの更新停滞、誠にすみませんです。
ちょっとした事故で左眼の黒目がちょっと傷ついちゃったもんですから
ちょっとの間パソコンを長く見つめるのを控えてました。
完治はもうすぐで、明日再検査受けます。
早ければ明日には更新を再開できるはずなので、もうしばらくお待ち下さい。
あっという間に下がっちゃいますたね。
ストック0ですが治り次第更新頑張りたいので応援宜しくでございます。
>>70の名無し読者さんへのお礼は次回更新時に…
- 72 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:13
- ここまでが最初の最初の私達の出会い。
そんでもってこっからも、私達のお話。
そんなわけで、快晴。
明日以降3日間は久々のオフというわけで
メンバーのテンションも今日は最高潮だった。
- 73 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:14
- 今、私達はロケバスの車内にいる。
この前のコトがあってから、私は梨華ちゃんを避けるようになった。
そして向こうも、何か悟ったのか滅多に喋りかけてこなくなった。
どこか寂しいけど、何だかあのまま行くとややこしくなりそうだったし
何より今は、なっちのことで頭がいっぱいなんだ。
あの日のコトが、いつまでたってもキュンと胸に響く。
こーいう感じ、何だか久しぶりで、ワクワクする。
- 74 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:15
-
「♪♪♪」
真新しい着信メロディ。
この前、一緒にオソロのケータイを買いに行った帰りのカラオケで
なっちと唄った「I WISH」。
何だかこのメロディだけでもにやけちゃいそうで怖いけど
二人の証として、なっちのメロディを設定した。
隣に座っているのは、カオリ。
あぁ〜、やっぱ良い。やっぱ年が近いってのは大事。
絶対隣が加護や辻だったら大声ではやしたてるものを
カオリはチラッと見ただけで、また視線を窓の外に移した。
大人の配慮っての?カオリはやっぱり、リーダーだ。
- 75 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:15
-
「矢口」
「へ?」
急に名前を呼ばれたから怒られるのかと思ったら、そうじゃなかった。
「ごっちん…さっきからずぅっと見てるよ…何かしたでしょ」
ハッと振り返ると、わざとらしく視線を外すごっちん。
あぁ〜…モロ怒ってるなありゃ。
でもまぁ、もう終わった関係だし。
「ちゃんとバイバイ言ったの?」
カオリったら事情通。
- 76 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:16
-
「それがさぁ…ほら、機嫌悪い時のごっちんて無茶苦茶近寄りがたいじゃん…」
「で、言ってないわけね?」
そのとーり。
「そーいうの、キチンとしといたほがいいよ?」
「分かってるってば。今日の仕事終わりにでもするよ」
「あっそ。こっちまで雰囲気悪くしないでよね」
ちょっとだけ微笑んで、カオリはまた窓の外を見つめだした。
夕陽がカーテンの隙間から差し込んで、車内は何だか修学旅行の帰りのバスみたいで。
委員長と副委員長って感じかな…ウチらって。
そんなこと考えてるうちに、スタジオへ到着。
最後のお仕事が始まる。
メールは、最後の楽しみ、ってことで。
と、その前に。
やんなきゃいけないこと、あったんだっけ。
- 77 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:29
-
「お疲れ様でしたー!」
猛ダッシュでバスやタクシーに乗り込むメンバー。
相変わらず私と”委員長”は、ノンビリと支度。
あいぼんが大阪弁でスゴイ勢いで急かすから、何だか悪い気もするんだけれども。
ホラ、ちょっと用事あるっしょ?
カオリは敏感に察知してくれて、一足先にバスへ。
とまぁ、残ったのは…
- 78 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/21(火) 23:30
-
「なんで…?」
思わぬタイミングの速さに一瞬ドキッとした。
この楽屋の中には、私とごっちん。二人っきり。
今までの二人なら、キスとか、それ以上のことだってしてたかもしれない。
けれど、もう違う。そのことをハッキリさせておかないと、ごっちんにも悪いはず。
けれどこの雰囲気、言い出せるような空気じゃない。
しかもごっちん、涙声。
この展開、明らかにマズい。
- 79 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/10/21(火) 23:56
- たいっへん長らくお待たせしやすた。
とりあえず、申し訳!w
色々と多忙な日々を送っておりましたけれども
明後日以降は更新がいつもどーりのペースで進められる予定ですw
まぁ予定って言葉の信憑性ほど危ういものはありませんがw
>>70
名無し読者さん感想さんくす!!!
よーやっとなちまり来ました、ついでにやぐごまも。
とは言いつつイキナリ修羅場ですが…w
この先の展開に期待しつつ今後も引き続き応援よろしくです!w
とまぁこんな感じで頑張っていくので、今後とも感想レス及び応援宜しくお願いします。
- 80 名前:矢安侍 投稿日:2003/10/22(水) 16:11
- 前作からこっそり読んでました。
今回もかなり楽しみにしていますので頑張って下さい(w
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 22:14
- 後藤ちょい恐ッ(w
しかしながらいつも次の更新が楽しみです。
期待してますので、頑張って下さい!
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 23:14
- ちょっと唐突に話しが動いちゃった気がします
石川さんの告白とかこの先意味持ってくるんでしょうか
- 83 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:04
-
どことなく私も、なっちとの件があってからはそういう態度っていうか
そんな感じのうまもちゃんと電話とかで伝えた。
まぁ、流石にそれだけじゃ失礼かなって思ったから、直接言おうと思ったんだけど。
ごっちん、全然聴く耳持ってない。
「ねぇ…なんでぇ…?」
「あっ、あのさぁ…ごっちん。ほら、言ったじゃん。電話で…その…」
「何で?何でごとぉがイヤなの…?何でそーいう話するのぉ…」
あと30秒長引けば泣く。まず間違い無い。
あー、こーなることは分かってたんだけど、いざなってみると…キビシイものが。
- 84 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:05
-
「着メロ…」
「あっ、あぁ。ほら、ちょっと古いじゃんか。新機種探すの大変で昔の…」
「安倍なつみ」
不意に。
不意に心臓を直接締め上げられたような感覚。
その名前だけは登場を避けたかったのだけど。
「あの安倍なつみって人なんでしょ…?」
「ゴメンね…あの、何かやっぱり適当な気持ちとかでごっちんと付き合いたくないし…」
沈黙。
- 85 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:35
- そろそろバスで待っているメンバーしびれを切らすころだろう。
このタイミングで、誰か来てくれれば…
気まずい空気だけが漂う楽屋を、私は出られずにいた。
ガチャッ!
勢いよくドアが開く。見えた影は、よっすぃ。
よっすぃ、今度何かおごったげる。
「もぉ〜!矢口さん遅いですよ…って…」
えっ?
さっきまで空気に触れていただけの唇に
暖かい人の温もりとこそばゆい吐息が流れ込む。
自体を把握するのに、10秒ぐらい掛かった。
- 86 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:36
-
ゆっくりと離れる唇。揺れる怪しげな瞳。
さっきまで子供のようなか細い声で今にも泣き出しそうだった彼女は
とても13歳から知っている後藤真希の顔ではなかった。
思わず、息を飲む。
「やっ、矢口さ…え、ごっちん…?な、何してる…んですか?」
言葉が出てこない。
思いっきり勘違いされる要素しか含んでいない今の状況。
言い訳すら、ごまかしの笑いすら、声に出せない。
- 87 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:37
-
「あはははは!」
「ご、ごっちん…?」
「よぉっすぃったらぁ、何か変な勘違いでもしたぁ?」
「もーごっちん!みんな待ってるんだからさー、矢口さんも!」
「う、うん…」
もしかして私、助けられた…?
- 88 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:38
- 次の瞬間、耳元にこそばゆい感覚がして、ごっちんの匂いがした。
耳元で小さく囁かれる。
吐息混じりのその声はとても美しく、そして怪しくて背筋がゾクッとする。
ごっちんの子供みたいな匂いとのギャップに、動揺してしまう。
「ごとぉは…まだやぐっつぁんの味方だよ…」
「えっ、ちょっ、ちょっとごっちん…」
「ごとぉだけのやぐっつぁんでいて…約束だよ…」
そういって、ごっちんは私の耳に口付けた。
人に気付かれないぐらい、優しく小さく。
そしてごっちんは、よっすぃと一緒に楽屋を後にした。
- 89 名前:ヤグチ 投稿日:2003/10/24(金) 23:38
-
ゆっくりと流れている時間に反比例して
急速に動いてる私の周囲の時間。
頭だけが全速力で駆け抜けているよう。
いろいろなことが消えては浮かぶ。
一人取り残された私。
立ちすくむしかない私。
その後、よっすぃがまた迎えにくるまで私はその場を動けずにいた。
時はゆっくりと、その速度を増してきていた。
- 90 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/10/25(土) 01:03
- 一日スタート遅れました、スンマセン。
今回は少し短めの更新だったので満足いただけたか定かではないですが
そのへん、どんなもんでしょうか?
>>80
矢安侍さん、感想レスたんくっすぅー!
前作から読んでいただいてくださってたのですか!
これはこれは誠に光栄です!ありがとうございます。
今作は前作とは少し雰囲気が違った感じに書いてる”つもり”ですがいかがでしょうか?w
面白いと言っていただけて再度光栄です。最高ですっ!!w
今後とも暖かい感想や応援、宜しくお願いします!
>>81
名無し読者さん、感想ありがとーッス!
ごとぉさんコワメにしてますが…怖いですねw
着実にごとぉさん、魔の手を拡大させてる様子ですので
この先もニーズに応えることができるはずっす、コワごまニーズに。w
これからも応援並びに続けて読んでいただけるよう頑張ります!
>82
名無し読者さん、指摘さんくすです!
確かに結構省いたりなんだりして短くなってしまいまして
伴って展開もポンポン行き過ぎた感は言われたとうりっす。
あと梨華ちゃんの告白は...後々意味をなしてくるはずです、多分w
今後も厳しく変なトコとか指摘+応援お願いしますです!
夜中めっきり寒くなりましたねぇー…
未だに寝巻き半そで半ズボンなんですが、風邪引きますよね今にw
でも冬の匂いが確実に近づいてきてるので私的にはこの寒さも嬉しかったりw
あっという間に11月。光陰矢の如しです。私も日進月歩で頑張りたいものです。
- 91 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/10/25(土) 01:07
- ↑、>>82です。ミスです。凡ミスです。すいません。
あと、全て読むって表示されてますが
それ以降何も書いてないので別に押す必要ないっす。
読みにくくしてしまって、スミマセン。
- 92 名前:矢安侍 投稿日:2003/10/26(日) 01:13
- 今一番楽しみにしてる小説です。
こういう後藤さん意外に好きだったり(w
私的に今作の雰囲気の方が好きです。
勿論前作も好きですが(w
ちなみに全く関係ない話ですが私も未だに半袖半ズボンですよ。
でもそれのせいで風邪引きました(笑)
- 93 名前:ヤグチ 投稿日:2003/11/09(日) 21:28
-
快晴。
まったくの雨女の私だけど、どうやらなっちは晴れ女らしい。
今日からの3連休はこの先一年あるか無いかの大事な休みだから
雨降らないで本当に良かった。
現在時刻は朝の10:20。
昨夜から何故だか緊張してたふーのなっちは、もーすぐ来るはずだ。
鏡の前に座る。
髪型良し。お化粧良し。ピアスよし。
うん、笑顔良し。
早く会いたいよ、なっち。
- 94 名前:アベ 投稿日:2003/11/09(日) 21:29
-
うわぁ…すっごい今なっちドキドキしてるよ…
まさか憧れの矢口さんと…その…デ、デートなんて…
うわぁ、恥ずかしいなぁ…やっぱり辞めようかな…でもなぁ…
『♪♪♪』
一瞬心臓がバクンッって動いた。
ゆっくりと呼吸を整えながらフリッパを開ける。
メールが届いてる。送信者は、もちろん。
「起きてるー?ゆっくり来ていいよ、ちゃんと待ってるからね」
今のなっちの顔誰かに見られたらどんな風に見えるのかな。
真っ赤なのかな、それともにやけてるのかな、それとも真っ青なのかな…
はあぁぁぁ…キンチョーするよぉ…
- 95 名前:ヤグチ 投稿日:2003/11/09(日) 21:30
-
メール送信完了!
ゆっくり来ていい…
なんて書いたけれど、ホントは今すぐにでも逢いたい。
こんなにも人に逢いたいって思ったのは久しぶりな気がする。
普段滅多に逢えない関係だけに、こんなに待ち遠しいのも分かる。
何だか…ちょっとだけドキドキしてきたかも…
なっち、そろそろかな…
- 96 名前:アベ 投稿日:2003/11/09(日) 21:33
-
部屋、ここであってるよね…
うああぁ…緊張するべぇ…
おそるおそるインターホンへ指を伸ばす。
頑張れ、なっち!頑張るんだべ!
『♪♪♪』
静寂。
もしかして聞こえてないのかな…?
もう一度。
『♪♪♪』
「や、やぁぐち…さん…」
今度は聞こえた…よね?
- 97 名前:アベ 投稿日:2003/11/09(日) 21:34
- あぁ…いよいよ緊張してきた…
えーっと…ケータイ、サイフ、えーっと…大丈夫だべなぁ…?
バッグから手鏡を出す。
あぁ〜何かもうブサイクだなぁ〜…もぉ…
鏡に映る私の顔。
ちょっと…お化粧濃かったかな…
深呼吸を3回。
ゆっくりと目を開ける。
映るなっちの顔。
うん、大丈夫だべ…!
ゆっくりとドアが開く。
久しぶりに逢う、矢口さん。
やっぱりいつもどうり、可愛かった。
- 98 名前:アベ 投稿日:2003/11/09(日) 21:34
-
「おはよっ」
「おっ…おはようござします…」
「そんなに照れないでいーじゃぁん」
「でも…なんか緊張するっしょ、こんな二人っきりなんて…」
「真っ赤…可愛いね、なっち」
スッと左の掌に暖かい感触。
ハッと手を見る。矢口さんと繋がってる左手。
このままだと、顔がヤケドしそうだべ…
- 99 名前:アベ 投稿日:2003/11/09(日) 21:35
-
「じゃ、行こっか」
「ハ、う…うん」
まだ恥ずかしいけど…
何だか嬉しい一日が、たった今、始まった。
ギュッと、握り返した手をずっと放さないように。
見下ろす青空が、二人を優しく見守ってる。
そして一歩ずつ、歩き出す。
たった今、私達の『今日』が始まった。
- 100 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/11/09(日) 21:48
-
次回からなちまりをもっと増加させる予定、っていうか願いw
>>92
矢安侍さん毎回丁寧にレスありがとーごぜます!
おいらの作品を楽しみにしてくださって誠にありがとうございます。
こんな拙い小説と区切っていいのかどうかも曖昧なお話に
そうやって期待を寄せていただけるとは本当に嬉しいことです。
これからも末永く応援よろしくお願い致します!
さてまぁこのサボリの言い訳ですが
忠告どおり、風邪引きました見事に。あ、有り得ねーw
そんなこんなで今回の更新内容もグダグダです。
こんなにも感想やレスで元気を頂いているのに
できる限り最高のモノと最高の更新頻度をお返しできず…スミマセン。
次回からは…と次に持ち越す悪いクセを直したいと思いますw
また少し日が空くと思いますがどうか永き目で見守ってくだされますよう…
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/10(月) 09:43
- 風邪ですかー。大丈夫ですか?
作者さんの小説楽しみにいつも読んでます。
ゆっくりでいいので、ご自分のペースで続けていってください。
応援してます。
- 102 名前:矢安侍 投稿日:2003/11/11(火) 03:05
- 更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
やっぱりなちまり最高っ!!
これからが楽しみです。
体調を崩されているようですが
マターリ待っていますので頑張ってください。
- 103 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:39
- ゲームセンター、映画館、服屋さん靴屋さん、それからー、たくさん。
話し出したらきりが無いぐらいの思い出。
永遠に終わることのないような時間に思えて。
好きな人と一緒にいると時間がたつのを忘れるとかって言うけど
ホントにそのとおりだな、って思った。
あっという間に、夕方になっちゃって。
本当はもっと遊びたいし、何よりも矢口さんと一緒にいたかった。
でも、矢口さんは私だけの都合で生活してるわけじゃないし
何より、矢口さんにはテレビというお仕事がある。
矢口さんに迷惑だけは、かけたくないから。
それでも、もうちょっとだけ一緒にいたくて...
辿り着いたのは、私の家の近くの公園。
- 104 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:40
-
夕暮れの公園は、どこか切なくて。
子供のころの楽しい思い出とか悲しい思い出とか、たくさん思い出して。
砂場ではしゃいでる子供が、私に見えて。
なんだか、切なくなって。
遊んでた時が楽しければ楽しいほど、別れが辛くなってた子供のころを思い出す。
何年経っても、その気持ちは変わらないんだな、ってしみじみ感じた。
キリキリときしむブランコ。
穏やかな時間が、流れてる。
今日一日歩き回ったのに、ちっとも足は痛くない。
矢口さんといると、自然と笑顔しか出てこないんだ。
- 105 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:40
- 「ねぇなっち」
「は…あ、うん?」
「あのさぁ、もー敬語使うクセはやく直してってばぁ」
「ご、ごめんなさい…あっ…」
「ほらまた使う!なっちってどっか抜けてんだよなぁ〜」
「ごめん…」
「そーやってすぐ謝るのやめなよ。ほら、笑顔笑顔!」
「うん…」
- 106 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:42
- さわ...と涼しげな風が流れて、二人を包む。
ふと、静寂が訪れて別れへのタイマーをちょっとだけ、早めた。
何だかこのまま、二度と逢えないような気がして
繋いだ左手を、放せずにいた。
思わず、左手に力が入る。
ギュッってしとかないと、この左手で、矢口さんと私を繋いでおかないと。
私は二度と矢口さんに、逢えない気がしたんだ。
「なっち…どした?」
「え…あ…いや、また…遊べないんだろうなぁって…」
- 107 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:42
- 心からの気持ちだからこそ隠さずにはいられなくて。
本当はこうやってワガママをいうコトで、矢口さんが困るのも分かる。
でも、でもね、矢口さん。
考えずには、いられないんだよ…
なっちは、本当に矢口さんのこと、好きなんだよ…
- 108 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:43
- さっきよりも長い沈黙が、タイマーを早める。
これ以上はもう、ただのワガママでしかない。
目をつぶる。
勇気を、勇気を出すんだ。
ゆっくりと、左手を放そうとした瞬間だった。
1秒前まで冷たい風に当たっていた私の唇が、急に暖かくなった。
唇の温もりが、体中にめぐって、ぽかぽかする感じがして。
目をつぶっても分かる矢口さんの匂い、温もり、気持ち。
ギュッって逆に握り返された左手を、私はもっと強く握り返した。
ゆっくりと、目を開ける。
矢口さんは、優しく優しく、微笑んでた。
- 109 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:43
- 私は何を心配してたんだろう。
私は何に不安を抱いていたんだろう。
私はやっと、まっすぐに矢口さんを見れる。
私はやっと、まっすぐに矢口さんを受け止めれる。
私はやっと、はじめの一歩を踏み出したんだ。
「矢口…さん…」
「もぉ…こんな時ぐらいさぁ、真里とか、まりっぺとか…」
「あ…ごめん…」
「まぁ…それが”なっち”らしさ…なのかな…」
「私…らしさ…」
「さ…帰ろっか、なっち」
「うん…」
今までよりも、心が近づいた気がするから。
握り返した矢口さんの手にも、なっちの心臓の声、聞こえるかな…?
- 110 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:45
- 立ち上がった矢口さんの顔を、じっと見つめる。
矢口さんと、視線が繋がる。
ゆっくりと立ち上がる。もう一度、視線が繋がる。
さっきよりも近づいた気持ち。
今だけは、ワガママを言わせて、矢口さん…
「まりっぺ」
「へ?」
ほんの1秒、いや、実際に唇が重なったのは1秒もなかったかもしれない。
でも、それでも、本当に、嬉しかったから。
なっちからの、最初で、最後のワガママ。
- 111 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:46
- 目を開けると、矢口さんはさっきよりも、優しく優しく、微笑んでた。
照れくさくなるぐらいに、その笑顔は、優しかった。
「もぉ…なっち、ズルいよそんなの…」
「えへへ…ズルかった…かな…」
さっきまでの静寂とは違う、もっと違った意味での、静寂。
気付いたら矢口さんは、向こうのほうにいて。
遠くのほうにいる矢口さんの顔は、あの優しい微笑で。
どれだけ離れてても、分かる。
あの優しい笑顔だけは、どんな暗闇でも、輝いて見えるんだ。
あの笑顔に向かって、私は走っていける。
どこまでも、どこまでも。
- 112 名前:アベ 投稿日:2003/12/01(月) 19:47
- 沈んでいく太陽が、ゆっくりと矢口さんの影を伸ばしていく。
見えなくならないように。
消えてしまはないように。
繋いだ手の温もりは、さっきと変わらずにそこにあった。
本当に最初の一歩かもしれないけれど、着実に、確実に。
私達の記念すべき新たな一歩目。
「「せ〜の」」
ぴたっとくっつけた左足が、長くてヘンテコな影を伸ばしてる。
並んだ左足。ほんのちょっとだけ、私のほうがおっきい靴。
これからもずっと、こうしてアナタの左足を見ていられるように…
二人にとって最高の未来へ。
私達はゆっくりと、左足を踏み出した。
- 113 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/12/01(月) 21:24
- なちまりずむ全開!なんて言ってるうちに12月。
どーもおひさすぶりでございます。あと一ヶ月で...2004年。
ほんっと光陰矢の如し!
>>101
名無し読者さん励ましレス、誠にさんくすです!
こうやって応援して貰うの、夢でしたw
これからも粗雑ながら頑張って更新していきたいと思う所存です。
末永く、励まし&応援レス、お願いしまぁーーす!w
>>102
矢安侍さんキターーーれすさんくす!w
今回の更新分はフルになちまりでしたが
やはり力量の無さを痛感しました。もっと、もっと萌えるのが書きたいのに!w
待たせてしまった分のなちまりずむは堪能できましたでしょうか?w
今後とも応援ヨロシクお願いします!
どうもお待たせしました、復活…ではありませんがお久しぶりです。
いやいや一ヶ月近く待たせてしまったことを、お詫び申し上げまする。
風邪が治ったはいいけど中耳炎を併発し、まぁ阿呆丸出しでしたがw
まだ完全に更新ペースを取り戻せるかというとそうではないですが
徐々にストックを増やしていきたいと、思っておる次第でごぜます。
毎度期間があきますが、末永い目で応援よろしくお願いしますです。
- 114 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/05(金) 22:50
- 今日は、色んなことがあった。
月明かりが差し込んで、部屋の中は薄暗くて、何だか色っぽい。
天井をじっと見つめると、思い浮かんだのは、なっちの笑顔。
今日は、ぐん、と私達の距離が近くなった気がする。
きっとなっちも、それを感じてると思う。
なっちとケータイの同じところに貼ったプリ。
私の今の顔、絶対二ヤけてるだろうなぁ…
自分でも分かるぐらいに、ほっぺたが緩んでる。
もしかしたらなっちも、今ごろ私のこと、考えてくれてるのかな…
- 115 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/05(金) 22:51
- 『♪♪♪』
と、手の中のケータイが鳴り響く。
多分なっちからのメールだろう。
バッと布団をめくって、上半身だけ起き上がる。
私の掌の中。
まるで、はやくとってといってるように、着信音は鳴りつづける。
鳴りつづける。
『♪♪♪』『♪♪♪』『♪♪♪』
鳴りつづける。
『♪♪♪』『♪♪♪』『♪♪♪』『♪♪♪』『♪♪♪』『♪♪♪』
鳴りつづける。
え…?
- 116 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/05(金) 22:51
-
おかしい
なっちじゃない
このメロディは、なっちじゃない!!!
脳がそう判断してる
絶対に、触れちゃいけないって
鳴り止まないあのメロディ。
そう、2ヶ月前までは毎晩聞いていたあの音色。
どうして、今…?
- 117 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/05(金) 22:53
- 急速に脈打ち始める心臓。
じわりと出てくる汗。
喉がカラカラになる。
口が、閉まらない。
ケータイを持つ指先が震える。
自分が揺れているのか、世界が揺れているのか。
未だに鳴り続く着信音はもはや一秒感覚ではない。
明らかに、明らかに故意に誰かの意志で、次々と送られてきている。
心当たりは、一つだけ。
いや、もう送信者は、分かっている。
鳴り続く着信音の中、ディスプレイをおそるおそる見る。
そこに表示されていた文字は、私の予想と一致していた。
ゴトウ マキ
- 118 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/05(金) 22:54
- 見慣れていた文字。何度となく交わした言葉。
でも今は、今の私には、恐怖しか覚えさせない。
目の前のベッドが、大きく左右に揺れ始めた。
私はもしかしたら、とんでもない事をしてしまったのではないか。
触れてはならないはずの、奥底に満ちている狂気に触れてしまったのでは...
急速に音を立てて、周囲の空気が私を包みだす。
呆然とただ、鳴り続く音とケータイを受け入れている。
背筋が凍りついたかのように、その場を動けなかった。
そして次の瞬間、一番大きくベッドが揺れた。
私はそのまま、その場に崩れ落ちた。
私の手から抜け落ちたケータイは、いつまでもその声を止めることはなかった。
- 119 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/12/05(金) 22:59
- ガラッと雰囲気変えたつもりですがいかがでしょうか?w
こんぐらいのペースで更新していけたらいいなーと思ってますです。
週末に再度更新したいと思う所存れす...
気長にお待ちくださいましー。
- 120 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:42
- 「やぐっつぁん…どーして昨日の夜、返信してくんなかったの?」
外は、雨。
楽屋の中には、私と、ごっちん。二人きり。
他のメンバーは、とっくの昔に収録を終えて帰ってるから
誰に見られたりとか、そーいう心配をしないでもいい。
今日で、終わらせるんだ。
「やぐっつぁんが返してくんないから、ごとぉ何回も送っちゃったじゃん」
「ごっちん」
短い沈黙の後、さっきとは違う甘えた調子で、ごっちんが口を開く。
- 121 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:43
- 「なぁにぃやぐっつぁん…?もしかして、したいのぉ〜?」
「真面目に聞いてよ」
目の色が変わった気がした。
やはりこの子の中には、何かがある。
恐ろしく重く暗い眼光が、私を真正面から捉える。
思わず、息を飲む。
けれど、今ここでひるんでいては先には進まないし
何よりこれ以上、ごっちんが変になっていくのを止めたかった。
これは、私の責任だから。
- 122 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:44
- 「真面目な話ってさぁ…その前にやぐっつぁんが真面目じゃないよ」
「どうして…?」
「だって、真面目にごとぉのこと見てくれてない。昨日だって、何で無視したの」
「昨日って、アレはいくらなんでもおかしいってことぐらい分かるでしょ?」
「何が?何がおかしいの?やぐっつぁんがごとぉのこと無視するからじゃん!ねぇ!」
とんだ考え違い。
もう、止められるものじゃなかった。
- 123 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:44
- 「ねぇ、何で?何でごとぉのこといやになったの?ねぇ何で!答えてよ!やぐっつぁん!」
「嫌いになったんじゃないよごっちん。」
でも、でももう何かが変なふうになってるんだ。
「ごとぉはこんなにやぐっつぁんのこと愛してるのに!どーして無視するのぉ!?」
通路を通った人には聞こえているだろう。このやりとりが。
メンバーがいなくてよかった。
いたら、もうどうにかなってるよ。
ふとドアに目をやる。
誰も、いない。
ドンッ!
- 124 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:46
- 目をそらした瞬間を、逃すはずがなかった。
肩をおされ仰向けに倒された私の上へと、覆い被さるようにしてごっちんが倒れこむ。
「ちょっ…ちょっ…やめてっ…!!!」
「昔はどこだってしてたじゃん!何で?何でそんなにごとぉのこと避けるの?!」
乱暴に脱がせられるというよりは剥ぎ取られていく服。
以外に力があるごっちんに、私じゃ叶うはずがなかった。
ごっちんの手が、止まった。
まさか、とドアの方を見る。
そこには固まったまま震えてる梨華ちゃんがいた。
どうして、ここに…?
- 125 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/07(日) 13:46
-
「ごっちん…矢口さんから離れて…はやくっ!」
「ちょっ、ちょっと梨華ちゃん!何勝手に入ってきてんの?!今ごとぉとやぐっつぁんが」
「いいからはやくっ!じゃないと人呼ぶから!」
「ちぇっ…どーしてこうも邪魔がはいるかなぁ…」
パシッ!
乾いた音。普段聞きなれない音が、小さな楽屋中に響く。
左頬を抑えて固まってしまったごっちん。
泣きながら真っ赤になった右手を胸に抱え込む梨華ちゃん。
そしてただ、呆然と見るしかない私。
雨はまだ、止みそうにない。
- 126 名前:LOVE 投稿日:2003/12/16(火) 01:06
- 一歩を踏み出したなちまりに期待!!(笑
それにしても、なんだか気になる展開。
ごっちん、梨華ちゃん・・・どうなるんだ??
マターリ続き待ってます。
- 127 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/23(火) 10:48
- あれから何十分経ったのだろう。
ただただ泣く梨華ちゃんに、俯いて固まったまま微動だにしないごっちん。
そして、二人が動き出すのをただただ待つ、私。
僅かな雨音と、梨華ちゃんの鼻をすすって泣く声だけが響く。
自分自身、何がどうなってしまったのか、整理できずにいた。
「矢口さん…はやく…出ましょう…?」
「梨華ちゃん…」
泣きはらしながらそう言う梨華ちゃん。
でも、動けなかった。
- 128 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/23(火) 10:48
-
今のことは、私自身が招いた危険だったわけだし。
それに何より、ごっちんと梨華ちゃんの関係まで悪くさせたくない。
今ここで、私が梨華ちゃんと楽屋を後にするとしたら。
それはきっと、ごっちんと私の終わりなのだろう。
でも、それだけで終わるはずがない。
今のごっちんにはあの天然ボケでほげっとした少女の面影は微塵も感じさせない。
今のごっちんは、いや、後藤真希は、何か恐ろしく大きな闇を抱いてる。
どうすべきか。
- 129 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/23(火) 10:49
- 「出てけば…」
「ごっちん…」
「矢口さん、早く…」
「さっさと二人とも出てってよ!二度と出てこないで!」
一際大きな声で怒鳴ったかと思うと、ガクッと俯いた。
丸くうずくまったその体は、本当に少女としかいいようがなかった。
小刻みに震える背中と、僅かに聞こえる小さな声。
ふと、出会ったころの面影がぴったりとリンクした。
でもここで、弱みを見せたらもう二度と、終わることはできない。
私は無理やり、頭の中に見える幼いごっちんを、かき消した。
- 130 名前:ヤグチ 投稿日:2003/12/23(火) 10:50
-
「矢口さん…行きましょう…」
梨華ちゃんに引っ張られながら楽屋を後にする。
心のどこかで罪悪感を感じた。
そして、楽屋のドアを、バタンと閉めた。
「許さないから…」
一瞬。
ほんの、一瞬。
ドアが閉まる直前、私にはそう呟いたのが聞こえた気がした。
でもその言葉は、あの幼い背中に感じられた無邪気なごっちんの笑顔と共に、私の中から消えていった。
- 131 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/12/23(火) 16:48
- >>126
LOVEさんまったりとお待ちいただき感謝でございます!
更新頻度が遅いのが売りですのでw
なかなか時間もなければストックもそこまでないという連鎖でして
年内中にはもう何回か更新したいと思ってはおりますが…
一歩を踏み出したなちまりは当分出てこないんじゃないかなぁ…(遠い目w
何はともあれ来年度も残りの今年度も応援よろしくお願いします!
ところで明日はイヴです。はやっ。
皆様、どうぞよい日をお過ごしくださいッス!
- 132 名前:ヤグチ 投稿日:2004/02/24(火) 16:05
-
「さっきはホント…ありがとうね、梨華ちゃん…」
「そんなことないです…その…無事でよかった…」
きっと梨華ちゃんも気がかりなんだろう。
ごっちんのことが。
現に私だって、どこかもやもやしたものが心の隅っこに残っている。
あの部屋の空気を持って帰ってしまったのだろう。
私達の周りに流れる空気は、どこか重たく、暗い色をしていた。
ポーンという音が鳴って、エレベーターが来る。
中には、誰もいない。
- 133 名前:ヤグチ 投稿日:2004/02/24(火) 16:05
- 私が1階のボタンを押そうとした瞬間だった。
隣にいる梨華ちゃんが、泣き出した。
「ちょっ、ちょっ、梨華ちゃん…どした?」
「グスッ…だってぇ…グスッ…もしかしたらアタシ…勘違いで…」
「どーいうコト?」
「だってさっきから矢口さん…グスッ…黙り込んでて…」
狭い空間だからなのだろうか。
梨華ちゃんの気持ちが、痛いぐらい伝わってきた。
きっと、この子は本当に繊細な子なんだ…
「急にごっちんをぶったりして…グスッ…変な風にして…アタシ…さいてぇ…」
ぽろぽろと堰を切ったように流れ出した涙。
ひいてあるマットの上に、大きな染みを何個も作り出した。
- 134 名前:ヤグチ 投稿日:2004/02/24(火) 16:06
-
「梨華ちゃん…もういいよ…それは勘違いだよ…」
スッと抱きしめた梨華ちゃんの体は、イメージどおりか細くて。
何だかこのまま、壊れてしまいそうなぐらい震えている背中。
強く強く、抱きしめた。
「や…ぐち…さぁん…グスッ…」
「もぉ…泣くなってば…」
「だぁってぇ…グスッ…うううぅ…」
ありがとう、梨華ちゃん…。
何十回、何百回。いや、それ以上。
梨華ちゃんの涙が枯れるまで、言いつづけた。
ありがとう、梨華ちゃん。
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 19:56
- ho
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/19(土) 10:22
- ho
- 137 名前:ヤグチ 投稿日:2004/07/25(日) 18:32
- 次の日から、モーニング娘。は一人減った。
僅か13歳にしてトップアイドルに上り詰めた彼女の姿は、もうどこにもなかった。
あれほど憎み恐れたものが、途端に姿を消した。
それはきっと、ほんのつかの間の休息。
そして、もう止められない深く、重たい、流れ。
未来を憂い、尊ぶ余裕なんて微塵も残されてはいないようだった。
重たい楽屋の雰囲気は、かおりの一言を待っていた。
- 138 名前:ヤグチ 投稿日:2004/07/25(日) 18:33
- 理由なんてない。
私はそう思っていた。肌で感じていた。
マネージャーは走り回り、ドタバタとスタッフさんが駆け回る。
廊下の熱気とは180度違う空気が、私達を包み、時を運んでいる。
誰もが、一言を発することを恐れていた。
言ってしまえば、何かが分かってしまいそうで。
おおまかな理由は、私自身では理解している。
ゴトウマキが、消えた理由。そして、真意。
ただ、その失踪の裏に見え隠れする深く濃い闇を、私は読み取れずにいた。
- 139 名前:ヤグチ 投稿日:2004/07/25(日) 18:34
- 朝からずっと泣いている加護が視界の端に映る。
ゴトウマキという少女は、こんなにも愛される人間だというのは
私自身、一番よく理解している。
ただ、何か根本で本当に愛した人にしか見せないような
内に秘めた狂気を、私は感じ取ってしまった。
真実の彼女。
あれが、真実の。
果たして、そうなのだろうか…?
- 140 名前:ヤグチ 投稿日:2004/07/25(日) 18:35
- 私は加入当初からの彼女を見てる。
だからこそ、私や香織には、どうしても納得しきれない何かがある。
何かが、彼女を変えた…
何か?
「ちょっ、矢口!矢口!どこ行くの!」
香織が叫んでるのが分かった。
でも、足を止めることはできなかった。
そう、気付いてしまった。
私は、気付いてしまった。
ゴトウマキを変えた何かは、「私」だった。
彼女の肉体も精神も、「私」が汚した。
私が汚した
- 141 名前:マルタちゃん 投稿日:2004/08/10(火) 15:54
- 待ってましたっ。
更新お疲れ様です&有難うございます。
次回更新まってます。
あっ初めまして、マルタ
ちゃんといいます(笑)
Converted by dat2html.pl v0.2