短編集。A

1 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/09/28(日) 00:50

なちまりのみの短編を書かせていただきます。
駄文でひたすら甘いですが、よろしくお願いします。

前スレ 森板「短編集。」
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1060446763/



2 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:52







「・・ちょっ…と待って!」


そのままキスしそうになったけど

間一髪、やぐちの唇を手の平で押さえた。


なっちの目の前には、自分の手の平。


「んぐっ・・・」


やぐちの変な声。


ゆっくりと手の平を離すと、
やぐちとなっちとの隙間は5センチもないくらい。








3 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:53










「ちゅぅぐらい…いいじゃんか。」


やぐちの息が顔を掠めてくすぐったい。


「・・・・いきなりだと恥ずかしいんですぅー」


冗 談。

ただビックリしただけ。



「あぁそうですかー」


そんななっちの気持ちを知らないやぐちは


『結局はしたくないだけなんでしょ?』


って言いたげな瞳、口調、二人の間に流れる雰囲気。









4 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:53










「べっつにいいけどぉー。」


投げやりにそう言うと

首の後ろに組まれてた両手がするり、と離れていくのが分かる。




「いいんだったら始めからしないでよ」



やぐちの両手が離れたおかげで、

かがんだ姿勢からさっきの姿勢に戻る。





拗ねた子供のようなやぐち。

それがまたなっち的にはおもしろくて、

思ってもない事を言ってやぐちを挑発する。










5 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:54











「・・・・・・もういい。寝る!」



吐き捨てるように言ってから

唇を尖らせて、ついには本当にご機嫌ななめ。


目を瞑って大きな溜め息を漏らした。



「・・・・怒った?」


んふふ、とこみ上げる笑いを必死に抑えながらやぐちを見る。




「・・・・・・・」


そんななっちの表情を知らないやぐちはなっちを完全に無視。



あぁーあ…冗談だったのに。

本気にしなくてもいいっしょ?



バカだなぁ。









6 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:55









さっきみたいに髪をなでようと触れたら、「ぺしっ」と手で払われたから止めた。



ほっぺたを突付こうと触れたら迷惑そうな表情をされたから止めた。



一気に機嫌が直る方法、知ってるんだけど
勿体ぶってまだやらないまま。



「やぐたー。

 あっ、やぐたんの方がいい?」



可愛いねぇ、やぐたん。



やぐちの反応は


「・・・・・・・・・・・・・キショッ」



一言。



「・・それじゃ・・・真里ちゃん?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・うっさい。」










7 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:55










何を言ってもご機嫌ななめなやぐち。



そろそろなっちもやぐちをからかうの、飽きてきたし。

機嫌直してもらおうか。



「・・・やーぐーちぃー」


なっち的に、甘い声で呼んでみるけど



「・・・・・・・・・・・・・・・」



反応なし。



「・・・寝たの?」


「・・・・・・・・・・・・・・」


本当は、知ってる。


全く寝てない事も。

薄目を開けてこっちをキョロキョロ見てる事も。


バレバレなのに、やぐちは一人気付かれてないって思ってる。


そんなやぐちを見て、また笑いがこみ上げてくる。








8 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:56










「・・・寝ちゃったんだ。

 
 ・・・・・・・それじゃー…ちゅぅしても気付かないよね。」



「…………!?」



クスクス笑いながらなっちが言った言葉にビクッと反応するやぐち。



やぐちの機嫌が一気に直る方法、キス。



そっと、指でやぐちの唇をなぞる。



多分寝たフリしてるやぐちの心の中はパニックに陥ってると思う。








9 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:58










「いい、よね・・・」


指を離して、かがんだ姿勢になって



「・・・・・・・・・」



   ちゅっ。



軽いキスを、やぐちに。




離れると目を開けて呆然としてるやぐち。

それを見て、思わず笑ってしまった。


そしてどんどん顔が真っ赤になっていくのがまたおもしろかった。









10 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:58










「ウソつきー。
 起きてたの、知ってたんだからね?」



軽くやぐちの額にデコピン。





「・・・・・・・・・そ、そっちこそ…したくないとか言ったのに
 自分からする、ってどういう事なんだよぉ…」



やぐちはデコピンされた事も気付いてないくらいに、

キョドりながらなっちの方を見る。



「したくない、なんて言ってないもーん。」


エヘ。

ってやぐちがいつもする愛想笑いをおまけとして付け足し。




「・・・・なっちズルイよぉ…」


「んふふ…何言ってんのさー。

 ちゅぅぐらい、いいっしょ?」



あ、コレ何か聞いた事あると思ったらさっきやぐちが言ってたね。









11 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 00:59











「・・・・・・・もっかいして?」



本当におもしろいくらいに一気に機嫌が直るやぐち。

まさになっちの予想通り。


調子にのって、催促する辺りも薄々予想はしてたけどね。






「・・・・・・だめー。」








「・・・・・・・・・だめなら、おいらからする。」


右手を首の後ろへ。

ぐいっと簡単に引き寄せられて、そのままキス。


やぐちが離れたのを感じてから、

そっと目を開けると少し視界が霞んで見えた。










12 名前:愛 楽 投稿日:2003/09/28(日) 01:00










「・・・好きだよ。」

「・・・・・・・・知ってる。」

「うん。」







「・・・・・・・すきだよ。」

「・・・・・・・・もっと言って?」

「・・・バーカ。」

「…それも……愛を感じマス…」




それからベッドに移動して、

二人でゴロゴロ転がりながらまた「好きだよ」って言い合った。









13 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/09/28(日) 01:09

新スレです。

容量とか全然考えてなかったんで
ただビビりまくってしばらく呆然としました(笑)

新スレ、立てていいものか悩みましたが立てさせて頂きました。
妄想の泉が・・・・・・ヤバイんで(苦笑)



「愛 楽」
あいぎょう、と読むらしいです。

内容が薄っぺらいのはいつもの事です…。



14 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/09/28(日) 01:29
>417 タケさん。
レスありがとうございます!
ちょっと砂糖多すぎだったような…(笑)
でも、よいと言われて嬉しいです(w
これからも頑張ります。


>418 名無し一読者さん。
レスありがとうございます!

「カレーライスシリーズ」
結局は矢口さん幸せ企画だったような気が…(笑)
書いてる私も楽しかったです(w

これからも相変わらず
生温く、砂糖多めな話が多いと思いますが読んでやって下さい。


>419 なちまり大好きっ子さん。
レスありがとうございます!
そして、お久しぶりですー(w

書いてる内にいつのまにかこうなってました(笑)


>「カレーライスシリーズ」の話。
矢口さんの背中に安倍さんの額をつけるのがポイントです(笑)
あぁ〜実際にやってほしい!!!(笑)

>なちまりの甘々小説最高峰だと思います!
マジですか!?
何か最高の言葉を頂いたようで、本当にありがとうございます。




15 名前:なちまり大好きっ子 投稿日:2003/09/28(日) 19:36
単純な矢口とそれを可愛いと思えるなっち。いいですね〜。
余談ですが
ぐっと近寄って両足でやぐちを挟んで、両腕をお腹に回した。

ぎゅっと抱きしめて抱きしめて、額を背中につける。
これとASAYANの矢口乱入の時のなちまりがかぶって
一人にやけている日曜の午後です(w
16 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/30(火) 12:30
はう!新スレおめでとうございますん。
甘!うひひ!にひひー!
泉が枯れないようにお祈りしております。
17 名前:タケ 投稿日:2003/10/01(水) 16:14
珍しく(?)安倍さん視点でしたね
甘〜いお話でよかったです
キョドキョド(?)な矢口さんがまた可愛いです
砂糖の量はいくらでもかまいませんよ?(w
18 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:43

歩いていた。

ただ長い廊下を。

授業中だから当たり前だけどとても静か。

この長い廊下をまっすぐに進んで、突き当たり手前の右手にある階段を上がる。

その階段の前には、たるんだロープと『立ち入り禁止』って書いた看板。


それを気にするわけもなく、ロープを越えて上に行くのはいつもの事。



この人気の無さ、何年も利用していないのが土埃とひんやりとした空気で分かる。






19 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:44









薄暗い階段を上がっていくと、目の前にドア。

重く、錆び付いたドアの取っ手は触る気もしないくらい。


少し顔を歪めながらゆっくり開くと

「ギ、ギギッ・・・」

って鈍い音がした。



ドアを開けたその先にはきつい日差しと真っ白な雲、そして青空。


ここは屋上。




薄暗い階段を上ってきたせいで、
急に明るい場所に出たら目がジーンとして痛かった。

これもいつもの事だけど。







20 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:44







「おっせぇーぞー。

 遅刻厳禁、罰として今すぐにあまーぃキッスをひとつ!!」



「・・・・・・うるさぁーい!

 5限始まる直前に呼び出すそっちが悪い。」



ムカッとして、上にいるちっちゃな恋人に向かって

キッスの代わりに文句をひとつ、プレゼント。








21 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:45









ここへ来たわけは他でもない、ちっちゃな恋人のせい。

5限の世界史が始まる直前に携帯が鳴ったから見ると


『すぐ屋上に集合なり!!!!!急げ、今すぐ走れ!!!!!!!』


読んだ直後、またか…って呟いた。

今月に入って昼から授業を受けた回数は数えるくらいしかないと思う。
なっち自身受ける気満々だけどそれを邪魔する人がいるから。


先生達の間では普通よりちょっと上の、
つまり優等生として見られていた感じなのに

昼からサボる事が多くなって、
最近じゃ「要注意人物」としてチェックされてる気がする。



それもこれも『授業妨害の天才』と先生達の間で有名な「ちっちゃな恋人」のせい。








22 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:46








この「呼び出し」を無視ったらまた「ブーブー」言われるから
仕方なく机の上に出していた世界史の教科書を机の中にしまって、
屋上へ向かったというわけ。



「そっち言うな!!
 まぁ、とりあえず上がっといで。」


「んー。」


ドアの前から左に曲がって梯子を上る。

上りきると、まるでピクニックを思わせるような
散らかしたお菓子とペットボトルのジュース。


このちっちゃいのはこんなトコで何してるんだか。



「・・・・・・真里チャン一人でピクニックでちゅか?」


クスクス笑いながらからかうように赤ちゃん言葉。

スカートを気にしながら隣に座った。







23 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:46








「・・おぅ、コラ。何だその言い方は?喧嘩売ってんの??

 なちゅみチャンが早く来ないせいで真里チャン焼けちゃったよぅ。」


 
ホラ、見てみ。

真っ赤真っ赤。


捲くっているシャツから出た腕を見ると真っ赤。

 
触るとすごく熱かった。


顔はお気に入りのプーさんのタオルを頭から被っているおかげで焼けてはなさそうだ。








24 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:47








「あッつー・・・マジで溶ける・・・」


タオルをバタバタさせてるその姿も
見てるこっちとしてはものすごく暑苦しい。



「・・で、今日は何さ。

 くだらない用だったら戻るからねー??」


まぁ大体予想はつくけれども…


…ねぇ、矢口さん?









25 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:47









シャツを捲くりながらそう言うと、やぐちは



ニコッと笑って


「ただ今よりぃー…バトミントン大会、開催し、ま、すッ!!」



イエーーーーッ!!!!!!


なんてノリノリでなっちに向けてダブルピース!




・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・



「・・・・・・帰っちゃってもいいですか?」


「却下!」














26 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:50










こういうやぐちの思いつきに振り回される事は、数え切れないくらい。

やぐちからの「呼び出し」は大抵コレだから。

それは決まって5限目の屋上で行われる。


この前は確か『燃やせ!卓球魂!!!ゴゥゴゥピンポン!』だったような。
(この屋上全部が卓球台として、ひたすら打ち続けるという競技)

そしてその前は『血の汗流せ!涙を拭くな!!!ゴゥゴゥキャッチボゥル!』だったっけ。
(この屋上全部を使って、ひたすらキャッチボールをするという競技)



他にも『宇宙の果てまで追いかけろ!!!レッツ鬼ゴッコ!』(別名校内鬼ゴッゴ)
『全神経を集中させろ!!!屋外神経衰弱!』(ひたすら屋上で神経衰弱をするという競技)
『息を潜めて忍者になりきれ!!!校内かくれんぼでごじゃる!』(そのままの意味)

・・・とまぁ、よくもこんなの思いつくなぁと感心する。

(↑いずれもなっちとやぐち2人だけで行われている)








27 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:51








・・・・・校内かくれんぼやった時
授業中の教室の掃除箱に隠れたやぐちと
それを見つけに教室に入ったなっちは当たり前だけどものすごく怒られた…。

なっちもなっちで授業中、なんて事頭に無くて
教室に行って速攻掃除箱をオープンして叫んでた。


「見つけたぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ぅあ゛ーーーーーー!!!

 何で分かったんだよぅ!?」

「ベタだよ、隠れる場所がベ・タ。

 はい、次やぐち鬼ねー」

「おーし、5秒で見つけてやるから!
 何せおいらは幼稚園の時のセンセーに
『かくれんぼのチャンピオン』って言われた事あるんだからな!!」

「とにかく100秒、数えてね」

「ちょっと無視られた気がするけど……まぁいいや、数えるぞー」







28 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:51







授業中の教室で大きな声を出しながらこれだけ会話して、
ふと前を見ると大勢の生徒と怖い先生の冷めた視線。


その時やっと気付いた。

『もしかしなくても授業中・・・』



その後は授業終了と共に
生活指導の先生の所へ連れて行かれて1時間。

ずーーーーーーーーーっと同じ事を言われながら怒られた。







29 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:51








やぐちは全く気にしてない所か逆ギレしてた…

「次すぐに見つけてたらおいらの勝ちで
 なっちからキッスもらえるはずだったのに!」

って言いながら。


その態度と口調、全てが先生の気持ちを逆撫でして、余計に怒られた。




そんな事があってから
「もうやぐちに呼び出されても行かない」って決意してたのに

いつのまにかまた一緒にワケ分かんないような遊びの為に
授業サボって無駄な汗かいてる。



こんなのでいいのかなぁ、と自問自答しながら今日も呼び出された。













30 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:52










やぐちに却下!と言われるのは予想がついてたけど…。
そんな速攻言わなくてもいいんじゃない?

とりあえず・・・


「・・・・・タイトルコールは?」

溜め息混じりにこうやって聞くのはいつもの事。

始めはワケ分かんなかったけど、それももう慣れた。


聞かれたやぐちはいつも満面の笑み。

それは今日も同じ事で、自信満々に


「この命尽きるまで…
 シャトルと共に空を飛べ!!!
 バトミントン…ウィーズ、ミーーーーーッ!!!!!!!!」


すくっ、と立ち上がってテンションアップアップ。
右手を太陽に突き上げて拳を握り締めてたりなんかして。


全く理解不能なのはいつもの事なんだけど。
いちいち気にしてられないし…








31 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:52










「・・・・・さっさとやって終わろ。

 ラケットどうせ体育準備室から持って来たんでしょ?」


「おぅ、物分りがイイね。

 やろー!!!負けたら罰ゲェムね。」


「はいはい。」



何もかも分かってる。

前に断って、ひどい目に遭ったんだから。

確かあれは

『いざ、尋常に勝負!スポーツチャンバラフェスティバル☆』の時。


本当に嫌で嫌で。


多分前回にやった

『宇宙の果てまで追いかけろ!!!レッツ鬼ゴッコ!』がすごくしんどくて。
その次の日筋肉痛で動けないくらいで。

それもあって嫌さ倍増だったのかもしれないけど。












32 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:53








何でやぐちとチャンバラやんなきゃいけないのさ!?
絶対やだ。やんないから!!

って断った直後の事。


それまで何回も断ろうと思ったけど実際した事なくて、これが初めてで。

やぐちの輝いていた目が急に変わった時、ちょっと嫌な予感が脳裏をよぎった。

それを感じている時、わざわざ作ったチャンバラ用の新聞紙の丸めた棒を
横に持つとそれでいきなり両手を押さえられた。

はぁ!?なに、なんなの!?

って思った時にはもう遅くて。







33 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:53







「・・・スポーツで汗流すの嫌なら、他の運動しかないよねー」

とかニッコリ笑って一瞬目が合ったかと思うと
シャツのボタンを次々にはずされて・・・


嫌がる事も出来ないくらいの早業。


このあっつい屋上で。
しかも学校だし。
ついでに言うと授業中だったし。




・・・・こういう事があってから、どうも断る気が失せた。

あーいう事されるよりも
卓球でもかくれんぼでもバトミントンでもやってやるってモノ。













34 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:54









「あいよ。ハンデ欲しい?」


ラケットをなっちに渡しながら、
早くもやぐちはやる気満々。


「欲しいに決まってるっしょー。

 なっち体動かす事苦手なんだからさぁ…。」


よいしょ、って言いながら梯子を降りて、まだ上にいるやぐちを見た。


ジリジリ暑いのは、慣れたって感じ。


今は焼けちゃうなぁって心配してるけど、
それもきっとバトミントンが始まったら気にしてなんかいられないんだろう。






35 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:54








「オケーッ!

 どんなハンデよ。何でもどぅぞ、なちゅみチャン。」



やぐちのバカにしたような表情と笑い声。
それのせいで「ただの遊び」では片付けられなくなる。
「悔しい」って気持ちと「絶対勝ってやる」って強く思う。




「サーブは全部やぐちから。なっちサーブミスばっかするからさぁ」


「そんなのでいいんだ。

 おいらとしてはラッキィだねっ。


 そーいじゃ、始めますかぁ!!」



とぅーーーーーーっ!!!!!


そのまま上から飛び降りてきてなっちの目の前で着地。

猿?やぐち猿なの?









36 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:54








ダダダッと勢い良く走ってなっちと10メートルくらい離れて




「さて、始めるなり!」


気合い十分!


頭に被っていたプーさんのタオルを首にくくってラケットをなっちに向けて一言。



「罰ゲェム、キッスね。

 おいらが勝ったらなっちからおいらにキッス。」



ニヤニヤした表情。

っていうか罰ゲェムいっつもそれなんですけどー。







37 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:55









「それじゃ、なっちが勝ったら

 一週間こういうので呼び出さないでね。」


なっちも対抗して、やぐちにラケットを向けてやる。

いつもなっちが考える罰ゲェムもコレなんだけどね。



「・・・まぁ、おいらが勝つと思うけど〜。」


フフン!

おいら、体育のセンセーにバトミントンの貴公子って呼ばれてんだよ?


「いいから早くして。」


いつものデタラメの自慢話はいいから。










38 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:55









そうまでは言わなかったけど雰囲気的に分かったらしく、
やぐちは「あぃ。」と短く返事した。


「いっきまーーーーす」


シャトルを少し上に投げて、ラケットで打つ。

綺麗な弧を描いたようにこっちまでシャトルが飛んできて走って打ち返す。



いつのまにか集中して、今はシャトルしか見えてない感じ。



バトミントンは久々。
体育の選択でもとった事なかったから。

ちゃんと打てるかどうか心配だったけど、案外大丈夫だった。









39 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:55









「そ、いえば…何点までなのこれ!?」


段々と本気になって口数が減ってきた。

やぐちも本気になったせいか
打ち返してくるシャトルのスピードが、始めと全く違って早い。

息切れして声も思うように出ない。



「・・・にじゅー」

スパン!

「多すぎ!」

スパン!

「えぇー…んじゃ……じゅーご」

・・・・スパン!

「多い!」








40 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:56







なっちの話に意識がいってしまっているせいで、
やぐちの打ち返してくるシャトルが弱々しい。



・・・・・・・・・チャンスかも。



スパン!




「はぁ!?・・・じゅー??」

スパン!


「・・・・・・・5でイイ、よッ!」



思い切りラケットを振って、
わざと打ち返しにくい左側に・・・





スパン!!










41 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:57












「えっ・・ご、っ・・・ぅあ゛ーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」



ヤグ、ダッシュダッシュダーーーーーーーーーッシュ!!!!!!!!!!


・・・必死のヤグダッシュ空しくシャトルは



・・・・・・・・・・・・・・ポト。


無残に落ちた。



「う゛ぁーーーーーーーー…スッゲ卑怯!」


その場に崩れ落ちるやぐち。

相当悔やんでる姿が、なっちにとっては嬉しい光景。









42 名前:アオハル。 投稿日:2003/10/04(土) 00:57










「・・・集中しないやぐちが悪いんですー。

 あ、5点で終了ね。」



現在

やぐち 0−1 なっち



1点リード。



「・・・・・・・くそぉぉぉぉぉ!!!!!!!
 

 絶ッ対負けないから!貴公子★矢口の名にかけて!」


「はいはい。貴公子、早くサーブして。」



ニヤリ、と笑うなっちにやぐちのボルテージはMAX!




――再び、試合再開!











43 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/04(土) 01:04
アオハル。


青春モノが書きたいと急に思ったんですが…
泉が枯れたせいでバカっぽい話しか思い浮かびません!(笑)
一応二人共高校生という設定で。
かなり迷惑な矢口さんと振り回される可哀想な安倍さんです。


青春スポーツ小説?って感じですが
バトミントンの部分はかなりデタラメなんで表現変です。

その前に読み直してないから
矛盾点あると思いますが軽く流して下さい。

ていうかこの話自体かるーく流して下さい(苦笑)




44 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/04(土) 01:08
>15 なちまり大好きっ子さん。
レスありがとうございます!

矢口さんまるで単純バカみたいですが
私の想像するキャラ的に矢口さんはこんなのです(笑)


>ぐっと近寄って両足でやぐちを挟んで、両腕をお腹に回した。
>ぎゅっと抱きしめて抱きしめて、額を背中につける。

この部分、実は矢口乱入の時のなちまりを思い浮かべながら書きました(w



45 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/04(土) 01:16
>16 名無しさん。
レスありがとうございます!

前スレで終了の予定だったんですが新スレ来ちゃいましたー。
泉が枯れきってかなり心配なのですが
ダラダラ続けていきますので見守っていて下さい(w




46 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/04(土) 01:20
>17 タケさん。
レスありがとうございます!

私もずっと思っておりました。
安倍さん視点が少なすぎる、と(笑)
私的に、矢口さん視点の方が書きやすいので
つい書いてしまうんですが今回は安倍さん視点で頑張りました。

砂糖の量が多すぎるとただのエ(ryになってしまいそうで怖いです(苦笑)
あくまで目指しているのは甘エロです!!




47 名前:タケ 投稿日:2003/10/04(土) 15:39
更新お疲れ様
『アオハル』最初は長く感じるかと思ったんですけど
読んでたら終わってしまいました(w
(そういう技術がほしい・・・っていうかそもそも自分の文才ry )
かくれんぼ時に授業中にあんな会話できる2人が可愛いかったっす(w

またこういうのみてみたいですね
次の話も期待しております
48 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:04






始めはさっきと同じでゆっくりと。


2人共会話ゼロ。


シャトルを追いかけながら、

なっち…世界史の授業サボって何やってるんだろう…

って一瞬我に返る時があった。


バカっぽいなぁ…真剣に勝負してるなんて…

やぐちのせいで5,6限サボる事多いから単位足らないかも。
・・・やぐちは大丈夫なわけ?








49 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:04







ボーっと考え事してて、つい高く打ってしまったシャトルが命取り。



ニヤリ、と笑ったやぐちの表情を見てハッと気付いた時にはもう遅くて。



「スマーーーーーーーーーーッッシュ!!!!!!!!!!」


「・・・あ、ちょッ・・・!!」


スパン!!!!

と勢い良く飛んできたスマッシュに対応できず、
シャトルがコンクリートの床に落ちた。



「イエーーーーーーーッ!!

 貴公子★矢口の素晴らしきスマッシュでしたぁ〜。」


ヘヘン!ざまぁみろ!!

あざ笑うやぐちはまさに有頂天。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・すっごい腹立つんですけど!!








50 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:04









「よろしくキッス!

 言っとくけどほっぺたとかダメだよ?」


「分か……ッてる!」


へらへら笑うやぐちに軽くシャトルを飛ばす。

 



現在


やぐち 1−1 なっち


同点。










51 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:05















それからお互い無言の接戦。


なっちが一点取ると、やぐちも一点。

そういうのが繰り返されて、
なかなか終わらないこの試合にちょっとうんざり。




「…おいらと張り合うなんて、やるじゃん」


「・・・・・・やぐちが弱いだけですー。」


「あーそーですかッ!

 貴公子★矢口の美しき舞いをこれから存分に見せてやるから。」


「はいはい」










52 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:05






一時休憩を入れて水分補給。

やぐちにコーラをもらった。
でも温くてマズかった。
しかもコーラだし…。

それのせいでちょっと喉が痛い。



お互いシャツ脱ぎ捨てて、Tシャツっていう気合いの入った格好。
我ながら笑えてくる。


鞄からタオルを出して、やぐちと同じように首にくくる。


Tシャツから出た腕も、あっつい顔も、スカートと靴下の間の膝小僧も全部真っ赤。

完全に日焼け。

それは隣で「貴公子伝説」を自慢気に話してるやぐちも同じ事。








53 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:05











何ていうの、なっち達小学生みたいだねぇ。
小学生の頃ってガムシャラに遊ぶ事だけに一生懸命になった。
日が暮れるのも忘れて。
日焼けとか気にしないで。

今、そういう頃の気持ちに戻ってる気がする。

まぁ、こんな高校生いないと思うけど。


さてと、そろそろ…

「…始めよっか、貴公子★矢口さん?」

「おぅ、望む所!!!」




試合再開。



現在

やぐち 3−3 なっち


なっち、意外にバトミントン上手いかも。










54 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:06












「とぉーーーーーーー!」


スパン!





2人共大分慣れたせいで、始めからハイスピード。



さっきから思ってたけど、やぐちはどうやらなっちを疲れさせる作戦に出たらしい。



やぐちが打ち返してくるシャトルは、一定の所に落ちなくて
左端、右端の端から端まで。


そこまで走らせて疲れさせる作戦。



なっちはそれのせいで勢い良く打つ事さえ出来ない。
今はやぐちから返って来るシャトルを落ちないように拾うので精一杯。



フワフワ、ゆっくりっていう感じにしか打ち返せないせいで
いつスマッシュが来るか不安で仕方ない。








55 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:06








「なちゅみチャン疲れちゃったんじゃないでちゅか??」


ニヤニヤして、今度はわざと近づいてくる。


「そ、んな事…ないッ!」


スパン!!!


なっちはまだまだ余裕ですー!ってそんな所をアピールするように
思い切りラケットを振る。




そのせいで勢い良くシャトルが、やぐちを越えて後ろへ行く。





「ぅお!?マジでぇーーーーーーー!?」



あせりながら猛ダッシュ!!!!!!

シャトルを見上げながら全力疾走しているのがここからでも分かる。








56 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:07













それを見ながら、なっちは歓喜の声…


「・・・・・ゃった!」


・・・のハズが…




「ダァァァァァーーーーーー!!!!!!!


 ハーーーーーーーーイバァァァァック!!!!!!!!!!!!!!!」



シャトルに追いついたやぐちがなっちに背を向けてギリギリ打ち返したシャトル。




しかもそれは勢いがあって、



―――スパンッ!!!!


いい音が鳴った。













57 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:07












「えぇーーーーーーーーーーーーっ!?」



・・・・・・・ポトン・・・



シャトルはなっちを越えて、後ろへ。



「やったぁーー!!

 見たか、貴公子★矢口の華麗なるハイバック!」


ゼェハァ言いながらこっちに走ってきてガッツポーズ。



「・・・・・・・ハイバックって、何さー?」



こんな技持ってるとは思わなかった・・・


後ろに落ちたシャトルを拾って打ち返す。











58 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:07









「奥に打たれた時に使うショットー。
 
 格好良かったでしょー?」



は、腹立つんですけどーーーーー!!!


流れてくる汗をTシャツの袖の所で拭った。



「貴公子★矢口をナメてもらっちゃー困るねぇ、なちゅみチャン?」


ヘヘン!!



やぐちのあざ笑う姿、本日2回目。


その瞬間、なっちのボルテージはMAXを越えた。





59 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:08




・・・・・・・・ごめんやぐち、使わないでおこうと思ったけど
今からとっておきの技使うから。


覚悟しててね。





現在

やぐち 4−3 なっち


やぐち、1点リード。








60 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:08









「あぁーあ、コレで終わりかぁ〜。

 なっち、よろしくキッス!」


悪いね、エヘ。


まるで勝ったような素振りのやぐち。



「なっち、今からとっておきの技使うから。

 やぐち覚悟しててね?気をつけて〜。」



でも、やぐちのそういう態度も気にならないくらい。


なっちは満面の笑みで笑ってやった。



コレは絶対に打ち返す事が出来ないって自信があるから。

ちょっと、っていうかかなり汚い技だけど。


でも勝負は勝負だし!


いいよねぇ〜。










61 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:08











「負け惜しみは余計に悲しくなるよ??

 この勝負、おいらがもらった!」



「まぁまぁ、早く始めよ。」



「最後のサーブ、いっきまぁーーーす!」



自信に満ちた顔で、シャトルがこっちに来る。

始めの3,4回は今まで通りに打ち返す。

やぐちは「何にもして来ないじゃん」って感じで余裕の表情。



この技の決め手は、やぐちが気を抜き始めた一瞬が狙い目。











62 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:08












「・・・・・そろそろスマッシュ打っちゃうよぉ?

 なちゅみチャン、いいんでちゅか〜?」



ひどく長いラリーに飽き始めたやぐちは、からかうようにヘラヘラ笑う。


そんなやぐちが打ち返してきたフワフワしたシャトル。










63 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:09












今が―――チャンスッッ!!!!!!!!








「やぐちぃーー!




 ・・・・・・・世界で一番、愛してるーーーーーーーーッ!!!!!!!」





とびっきりの大声で愛の告白をしながら打ち返した
シャトルはさっきのようなスピードだけど、どこか違う感じ。



愛の告白を聞いたやぐちの反応は




「・・・・・・・・・・・・・!?」



・・・・・・硬直。



ポトン・・・・と静かにやぐちの前でシャトルが落ちた。














64 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:09









「・・・・・・な、な、・・・な…っち今なに・・・?」



打ち返せなかった事に大喜びしたい所だけど、
やぐちが固まったまま片言でなにか言ってるからちょっと我慢。

なっちのとっておきの技がコレ、なんて気付いてない様子。



「・・・やぐちの事、世界で一番愛してるッ!って言ったの。」


ニコッ!!と満面の笑み。

・・・・をしながら心の中は同点、同点!と大喜びなわけなんだけど。










65 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:10








ダダダダダッッ!!!!!

そんななっちの思いを知らないやぐちは
ラケットを持ったまま突っ走ってきてそのままなっちの所へ。

そして、ぎゅっと抱きしめられた。


ちょっとよろけながらも、ラケットを持っていない方の左手で
ポンポン、と頭をなでた。



「・・・おいらも、好き!宇宙一、なっちの事愛してる!」


「やぐち、ありがと。」


世界を上回る宇宙、と言うなんてまるで小学生みたいだけど。


なっちもそう言われて嬉しいよ。


お互いニッコリ笑い合って、
さっきのピリピリした雰囲気とは正反対の柔らかい雰囲気が流れる。











66 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:10











だけどね、やぐち。




忘れないで








「……今さっきの、点数入ってるから4−4の同点ね。」



ニッコリ、さっき以上に微笑んだ。






・・・・・・・・・・・・沈黙








「・・・・もしかして・・今の・・・勝負の…ため、とか?」



きょとん、とした顔から少し強張った感じの笑顔。


ねぇ…なっち、もしそうなら嘘って言って?って顔。










67 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:10








「・・・・さ、さぁね。」



あえて言葉を濁すように、
ニッコリ笑っていた顔も素に戻して目を逸らす。



抱きついてたやぐちがさっ、と離れていった。

やぐちをチラッと見るとなっちを睨んでいる。


ピリピリした空気、再び。



「このやろー騙したなぁ!!!
 
 すっげ腹立つ!汚ッ!!!


 おいら絶ッ対負けないから!!!!!」


そう言うと、ダダダダダッ!と向こうに戻って行った。










68 名前:アオハル 投稿日:2003/10/11(土) 20:10










「騙される方が悪いんですー。


 なっちだって負けないもーん。」



今度はなっちがヘラヘラ笑ってやる。



勝負もクライマックス。
もはや何でもあり、って感じだけどとりあえず絶対負けたくないね。



現在

やぐち4−4 なっち


同点。
あと1点で勝ち。


最後に笑うのは、どっち??









69 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/11(土) 20:16
>47 タケさん。
レスありがとうございます!

「アオハル」続編です。
相変わらずアホな感じですが(笑)
矢口さんが、アホなせいで安倍さんが迷惑して(ry


>(そういう技術がほしい・・・っていうかそもそも自分の文才ry )
いやいや、そんな事ないですよー!!
技術なんて全くないですから!!!(笑)
実はひっそりとタケさんの小説、読ませていただいてます。
頑張って下さい(w




70 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/11(土) 20:19
「アオハル」続編です。
かなり長いので一区切り。
後でもう一回更新します。

アホな話ですが
最後までお付き合いいただけると嬉しいです(笑)



71 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 20:54
「アオハル」、読んでいると
元気なふたりの様子が想像できて、とても和みます。
アホ矢口さんが愛おしくてたまらないw
次回の更新も楽しみに待ってます。
72 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:41







「とぉぁーーーーーーーーー!」



気の抜ける貴公子★矢口の声と共に最後のサーブ。



スパン!!!


スパン!


スパン!!!


スパン!





「・・・なっち、好き!愛、してる、ぞぅ!!!」



無言の打ち合いの中、やぐちの愛の告白が屋上に響く。


・・・どうやらさっきのなっちが言った告白をパクったらしい。


『なっちもおいらが急に告白したら動揺するかも』

っていう甘い考えみたいだけど。



甘すぎますよ、矢口さん?







73 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:41








なっちの集中力は変わらずに



「・・・・知、ッてる…よ!」



普通に返す。


スパン!!!



「動揺しろよぅ!!」


スパン!



「しーまーせーんー。」


スパン!



太陽が眩しくて、思わず眉間に皺を寄せる。

ジリジリとした暑さ。


首にくくっているタオルも意味ないくらい。



ラケットを持っている右手に汗がかいてきて滑るけどぎゅっと握りしめる。
こんなにも勝負に真剣なの、数えるくらいしかないかも。









74 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:41








「なっち、数Uのプリント…なかったでしょ!?」


スパン!


「・・・なかったけど、どーして?」


スパン!



急にそう言われてさっきの「告白」よりも驚いた。



そう、今日の3限目が数Uで。

この前もらったプリントを提出する予定が

教科書に挟んでおいたはずなのに、失くなってて結局提出出来なかった。









75 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:41









「それ、おいらが持ってる!ってかゴメン名前書き換えて出しちゃったよ!!!」



・・・・・スパン






「な、何でさぁぁーーーー!?

 バカ!超バカ!いつ取ったの!?」


一瞬集中力が途切れたけど、我に返って慌てて打ち返す。


スパン!といつものいい音。



「プリント写させてもらおうと思って

 4限始まる前の休憩時間になっちの所へ行ったらいなくてさ。

 それで、勝手に机の中見て、パクっちった!」


スパン!
 

早口で言い終わった後、ゴメンね!!って反省の色、全くなしの声。



そりゃ気付かないはず。
なっちのクラスは4限目体育で授業が終わってすぐに着替えに行ったから。





しかし、こんな時に言うなんて・・・・・したらなっちだって…











76 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:42









「ごめん、なっちも言うけど

 この前やぐちにあげたヨーグルト。


 ・・・・・・・・・賞味期限、一週間前に切れてたの!!!」



美味しそうに食べてたやぐちの顔が目に浮かぶ。

『うまい!うまい!』って言いながら。


ちょっと「賞味期限切れてるんだけどね」って言おうとしたけど言えなかった。
だってすごく美味しそうに食べてたから。






「マーージーーでぇーー!?っと、危なッ!」


なっちの衝撃の告白?に驚きながらも前のめりになりながら打ち返してきた。

・・・・・スパン


少し力が入ってないせいか
なっちの所まで届かなくてちょっと小走りして打ち返した。








77 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:42









「ごめんねっ!」



「・・・・・・・可愛いから許ーす!!!」

 
「ありがとっ!」



いつのまにか心理作戦を通り越して、懺悔大会。


それでもバトミントンのラリーは続いていて
会話しながらのせいで本当に息切れしてきた。




「んじゃ、おいらも・・・・・先に謝っとく!ごめんね!」



スパンと打ち返してきたシャトルを拾う。









78 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:42








「なにがー?」


まだ何かあるわけ?





「……なっちの部屋に泊まった時に、たまたま早く目覚めてさ。

 その時に・・・・・・・・・・」



スパン!!




「微妙ー!その時に、なにさー?」









「・・・・写メでなっちの寝顔撮りました!!!!!



 で、しかもその画像…今おいらの携帯の待ち受けにしてるーーーー!!!!」










79 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:42













・・・・・・・・・・ぽとん。




「はぁーーーーーー!?」

「やったーーーーー!!!!!!貴公子★矢口の勝利ッ!!」



これぞ衝撃告白ってヤツ?

やぐちの歓喜の声とハモった。



ダダダッと近づいてきて、左袖で汗を拭きながら


「貴公子★矢口に愛のこもったキッスを・・・」


少し照れた素振り。


顔の筋肉が完全に緩みきっている。



でも今のなっちは
「やぐちに愛のこもったキッスを」とか
それ以前に
「なっちは貴公子★矢口に負けた」とかどうでもよくて。




どうでもよくないのは、待ち受けでしょ?


やぐちの

携帯の

待ち受け。










80 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:43











「・・・―――は?」

「んぇ?なに?」


「携帯は?」


「・・あー…上だけど。」


「取ってきて。」


どうやらやぐちは「なっちは許してくれた」って勘違いしてるようだけど…。
許した覚えなんてこれっぽっちもない。


画像消すまではね。



「ぇー…キッスは??」
「その後!」

「・・・・・・・ぁ、あぃ!」



ダダダッとダッシュして
携帯を取りに行くやぐちの後ろ姿を見ながら
何となくなっちが勝負に勝ったような錯覚がした。

だって怒っているのが分かったのか、やぐちはちょっとキョドっていて
いつもより行動力は5倍速。









81 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:43











梯子を勢い良く上って携帯を探すのに鞄を漁っているやぐちを気にしながら
なっちはその場から少し歩いて梯子の横に座り込んだ。


ここはちょうど日陰になって、少し吹き出した風も心地良い冷たさに感じる。
くくっていたタオルをほどいて、首にかけたまま汗を拭く。
暑さで全身真っ赤。


ラケットを横に置いて
そういえば負けたんだっけ、って今頃自覚した。

ちょっと悔しくなってきた。
あんなに頑張ったのに。




――ダンッ!!


大きな音と気配がして上から何か降ってきたと思ったら、やぐちだった。









82 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:43









「・・・・・携帯。」

ん、って短く言いながら携帯を受け取った。
紺色の所々削れまくってる汚い携帯。
後ろには、なっちとのプリクラが貼ってある。

いわゆる「ラヴプリ」ってヤツ。


データボックスの中のカメラ画像を見ると
全部の画像にタイトルがつけられてた。

こういうトコだけ几帳面。



やぐちを見ると、なっちの横に胡坐をかいてこっちを気にしている。


まるで悪戯をして見つかった子供状態。



「・・・・・見た?」


「まだ見てない。っていうか、上に取りに行った時
 待ち受け変えたっしょ?」


待ち受けはあからさまにすぐ変えましたって感じのカレンダーだった。

なっちが怒ってるの見て咄嗟に変えたんだと思う。









83 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:44



「・・・・・・・うん。」


「今見るから別にいいけど。」



画像のタイトルを見ると


「シャカリキ体育祭’03」
「ピカイチ★親友」
「可愛い後輩、ごっつぁんとラヴショット」
「よっすぃーと炎のバレー対決」
「女王様松浦とヘタレ藤本のバカップル隠し撮り」

・・と細かくタイトル付けしている。
(ちょっと最後の画像が気になる)





でもなっちの画像は一枚もなくて、まさか消したんじゃ…って思いがよぎる。

もし消してたらもっと怒るけど。



「・・・・・・・消した?」

携帯を触りながら目線だけ動かしてやぐちを見ると妙に焦っている。

「消してない消してない!!

 なっち、別のフォルダ見てるんじゃないの?」


「フォルダ?」

 
「うん、画像もフォルダ分けしてるから。

 ちょ、貸して。」


「・・んー。」








84 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:44










携帯を渡すと、すぐにボタンを押して「これ」って言いながらまた渡された。

何となく見られたくないなぁって素振りのやぐち。
・・・・そんなに・・・変な画像あるの?


受け取ってからフォルダ名を見ると、一瞬眩暈がした。




フォルダ名 『Lovers Shot』



・・・・・・・一気に嫌な気分。



嫌な気分のまま、画像のタイトルを見ると





「なちゅみの秘蔵写真@後ろ姿」
「なちゅみの秘蔵写真A制服」
「なちゅみの秘蔵写真B風呂上り」
「なちゅみの秘蔵写真C寝顔」
「なちゅみの秘蔵写真D体育祭」







・・・・・・・・・へ…変態?










85 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:44










画像を1つずつ開くと全部撮られた覚えがないものばかり。


肝心の寝顔は、寝てるのにすっごい笑顔のなっち。


やぐちを睨むように見ると


「・・・・・・・だって可愛いんだもん。仕方ないじゃんか。」


って唇を尖らせて開き直って言ってる感じ。

ちょっとその態度に苛立ちながら
他の画像を見るとやぐちと撮ったモノばかり。
ベッドでゴロゴロしてる時、暇つぶしに撮った2人寄り添ってるラヴラヴな画像。
テンション高い時にノリで撮った、キス画像。


半年くらい前の画像なんかもちゃんと保存してて、それには驚いた。


でも、見るだけで恥ずかしい・・・・・










86 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:44









とりあえず「なちゅみの秘蔵写真」@〜Dまでを
全て綺麗サッパリ削除してやぐちに携帯を返した。



「・・・秘蔵写真全部消したから。」


「・・ぅ、うぇぇ!?まじで!?」


携帯を見ながら「ほんとに消してるぅ〜〜〜!」
ってショックを隠しきれないやぐち。


なっちだってショックだっつーの。
撮られた覚えのない画像あったなんて。










87 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:45











でも・・・


「・・・そんな撮らなくてもいーっしょ?」


「何でー?撮るの楽しいじゃん。

 それにどんななっちも残しておきたいしー。思い出だよ、オモイデ。」


エヘ!

いつもの愛想笑い。





ちがう。




「・・・・・・そんなのじゃなくてさ・・」



「・・・なに?」




「・・だから、撮らなくても…」



「・・・・・・・・・・・・・撮らなくても・・・なに?」










88 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:45











分かってよ、なっちの気持ち。

このバカ。



「そんな撮らなくても・・・
 

 なっち、ずっとやぐちのそばにいるっしょ?って言ってるのー!!!」



「・・・・・えっ・・・」




「・・・・・・とか思ったようで、思ってない感じ・・・・・」



照れくさくて、ちょっと言葉を濁すような事したけど
ちょっと遅かったかも。


赤い顔は、日焼けだけのせいじゃない。










89 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:45











やぐちの顔も見れないまま、俯いていると
いきなり太股の辺りに重みを感じて前を向くと、やぐち。




なっちの太股の辺りに腰掛けて、ちょうど向かい合ってる感じ。

ゆっくりと顔を近づけてきて


「バトミントン。

 なっち負けたから、おいらにキッス。

 まだしてもらってないよ?」


「え??

 あ、あぁー…うん。」



不満そうなやぐちの唇に、なっちの唇を重ねる。



罰ゲーム終了。





っていうか、それもいいんだけどさ。


さっきのなっちが言った事、ちゃんと聞いてた?
なっち一人だけが何か恥ずかしい感じ・・・・・・・











90 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:45











離れると、満足そうなやぐち。


「・・・嬉しい。」


「・・・・・・・・・・うん、おめでと。」


「・・・・ありがと。」



気になるのはさっきの話の反応だけ。



さっきの・・・・・とか言いながら自分で聞くのも嫌だなぁ…って思ってると




「・・・ずっとそばにいる、とか言われたら嬉しくて仕方ないんですけど?」


「・・・・・・・・・・・・・・えぇ?」




両手でほっぺたを覆われて、ぐいってつねられた。


痛いよ、って言うとすぐにやめてくれたけど目線は合わせたまま。



柔らかく笑うやぐち。











91 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:46










「ほんとに、本ッ当に離れられなくなったら……なっちせいだよ?」



なっちのほっぺたを覆う小さな手。


なっちもやぐちのほっぺたを両手で覆った。




「・・・・・・・いいよ。


 逆に離れられたら、なっちが困る、から。」



イヒッって笑ったら、
「バーカ」って呟くように言われて笑われた。











92 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:46










「っていうか、やぐち重いよー。

 足攣った!ジンジンするもん!!」


両手でほっぺたを挟んで押してやる。

「んぐー」ってブチャイクな顔。

パグだ、パグ。





「んじゃ、そーのーまーまー倒れこむ!」


ズズズ、って押されて横に倒れた。

押し倒されたって感じ。



背中、コンクリートに擦ったから多分白く汚れてると思う。
こういうのって気になるものだ。









93 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:46








「・・・暑い」

「おいらも暑いよ」



やぐちがゴロン、と離れて横に移動。
2人並んで寝そべってる状態。




「しっかし・・・なーにやってるんだろうね、なっち達」



考えたら本当におかしくなってきた。

授業サボって全力でバトミントンだよ?
体育でもこんな本気になった事ないって。


Tシャツ一枚で、汗かいて。
スカート…暑苦しいよ。



「だねっ!!・・・・・・・・でもさ、これもセイシュン。」


あつい、を連呼しながら何かバタバタする音が聞こえる。
多分、やぐちの黒いTシャツ。

見えないから分かんないけど。

見えるのは、一面に広がる青空だけ。










94 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:47










「青春?」


「・・・授業サボってバカするのも。

 日に焼けるのも。

 屋上で空見つめて寝転ぶのも。

 もちろん、全力で恋愛するのもね。


 ぜーんぶ!全部、今しか出来ない事。


 今は楽しけりゃそれでいい、って感じじゃない?


 それがおいらの青春ー!!!」



横を向くと、満足そうなやぐちの笑顔。


「・・・・・何かいいね、青春時代ってヤツ?」

「そーそー。」









95 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:47










今は今しかないから。
今やりたい事、目一杯しよう。
思い切りバカな事しても、思い切り泣いても
きっと10年後、笑い話になってるよね。


やぐちとの「恋愛」も青春時代限りかもしれないけど





「この唄は聞こえているのかーい もし聞こえているのなら
下手くそな唄 いーっしょに歌おーぅぜぇぇ!!!」




でも、でもね



「中途半端!

 サビ歌ってよ。」




今は、「ずっと一緒にいたい」なんて思ってるから









96 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:47










「あぁーあぁ!あぁーあぁ!
 
 青春のー日々よぉーーーーー!!!!!!」



青春の真ん中で、矢口っていう一人の人と出会えた事。



恋した事。



愛し合った事。






「・・・・・・下手くそー。」




本当に良かったって思うよ。



この気持ちが、なっちの心の中で一番輝いてる気がする。



だって、









97 名前:アオハル 投稿日:2003/10/12(日) 02:47









「うん、おいらも思った」





やぐちとバカやってる時だけなんだよ。


笑って、転げて、たまに本気で怒って。



愛し合って。

愛を語り合って。


本心でぶつかりあって。




そんな時間が楽しくて仕方ない。



だから「ずっと一緒にいたい」って思うんだろうね。
だからさっき「ずっとそばにいる」って言えたんだろうね。
本当は「ずっとそばにいたい」なんだけどね。






やぐちを見ていた視線を青空に戻した時、5限終了のチャイムが耳に響いた。












98 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/12(日) 02:53
>71 名無し読者さん。
レスありがとうございます!

「アオハル」
無意味に長いですがお付き合いいただき嬉しく思います(w
短くまとめられないのが欠点ですねー。

えっと、私の書く矢口さんは大体アホなんですが
アオハルは特にアホだと思います。しかも迷惑なアホ(笑)
そんな矢口さんを愛おしく思っていただいてありがたいです。




99 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/12(日) 02:58
「アオハル」続編の続編。
一応これで「アオハル」は終了です。

最後の後半部分が書きたくて書いた話なので
後半部分気に入ってます。

後半より前の部分は
私の文才のなさが滲み出て
意味不明な事を書いてると思います(苦笑)
雰囲気で感じ取って下さい(笑)

機会があればまた書きたいなぁ…。


次からまた砂糖多めの短編に戻りますー。




100 名前:タケ 投稿日:2003/10/12(日) 04:43
うおー!!よかったっす!!
最初は子供っぽかった2人だったのに(w)
最後は真面目な話になって・・・

>・・・・・・・・・へ…変態?
ウケター(爆笑)
(〜^◇^)<へっ変態?オイラが!?

続き期待してますよ!!
砂糖多めで結構っす!(w
101 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 00:35
この話読み終えた時、幸せな気持ちになったよ。

ありがとう。
102 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:27




目を開けると、ゆらゆらした世界。
ぐにゃーって世界が歪む。

一緒に水になった気分だ。


そのままどっか行きそうな。

どこかは全く分からないんだけど。










おいらの事、子供子供言うくせに
おいら的になっちも相当子供だと思うんだよね。









103 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:28








「風呂入るぞー!水風呂水風呂!!」


「え〜…暑くないのに?」


「いーから入るの!レッツ入、浴ッ!」




何となく、あの狭い空間で一緒にいたくて。

プカプカ浮いていたくて。



急にそう言いながらなっちを置いて、風呂場へ直行。



バスタオルを用意して、着替えを用意して。

ちょっとしたプールに来たような気分で自然に顔の筋肉が緩む。


エヘ。







104 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:28







おいらが用意しながら微笑んでいた時、ドアが開いた。


少し遅れて入ってきたなっちの手の中には、あひる。


・・・・・あ、あひる??



「・・・・・・・・・ナニソレ。」



「……ガー子。」




・・・・・・が、ガー子??



黄色の体。

オレンジの口ばしが印象的。



ガー子。



名前・・・・・・・可愛くないよ。








105 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:29








「・・・んなの、いらないじゃん。」



きっと、アレだ。

あのー、風呂場へプカプカ浮かせちゃったりするんでしょ?



「いるよー!
 ガー子も入りたいって言ってたからー、ね?」



ガー子に笑顔を向けるなっち。


た、ただのプラチックのくせに・・・・・・



ガー子・・・・


お前は、おいらとなっちの仲を邪魔しようとしてるんだな!?な!?


そうはさせねぇぞー!!!!!


おいらとなっちの間には、あひるすら入る隙間もないのだ!!!









106 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:30







「・・・・・・・ま、まぁ……いーけど。」




・・・・とは思っても、ガー子要チェック。


可愛さなら言わなくても、おいらの方が勝ってると思うけど〜。





少し温めのお風呂。

水風呂じゃーないね。



勢い良く入ったら、温度がちょうど良くって

「あーーーーーーー…」

って声が出たよ。









107 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:30









おいらの隣になっち。

そして、目の前にプカプカ浮かんでいる・・・・ガー子。



「気持ちーね。」


「そだねぇ、ガー子も喜んでるし。」



「・・・・・・・・・・・・ガー子どうでもいーよ…」


「ん?何か言ったかい?」

「いやー?別に??」



プカプカ、ユラユラ。

ガー子はどこまでもマイペース。



勝手に浮いてくれてるんなら別にいいんだけどさ。

なっちが、ガー子ばっか気にしておいらを見てくれないよ。


あひる恐るべし・・・・・・・


ちょっと見くびってたぜぃ…









108 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:31










「でもさぁー…もっと広いお風呂入りたいねぇ…」



ガー子を敵視していたおいらに届いたなっちの声。


・・・・・・なに、それって・・・・



「…安倍さん、矢口さんトコのお風呂じゃ不満なんですか?」


「えー…そういうワケじゃないけどさ。
 何か・・・・温泉に入りたいなぁって。」



ガー子も広いトコで浮きたいよねぇー?



何だそれ。


確かに温泉はおいらも好きだよー。
家の風呂とは大きさだけじゃなくて、雰囲気とかも違うでしょ。
あの温泉の雰囲気、好きだなぁ。









109 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:31








でもさ、でもさ


「おいらはこの方が好き。てかこれくらいじゃなきゃ困る」



両手で水を掬っては流す、掬っては流すっていう単純且つ無意味な行動。
掬った手の中にある水を見ると窓から差し込む柔らかい光でキラキラしてた。
それを指の隙間から流すと微温湯が揺れてガー子が浴槽にぶつかった。



「・・・どうして?」



2人仲良く並んで体育座りしてるこの光景、小学生みたいだなっ!!

なっちにからかい半分に水をかけてやったら逆に思い切りかけられた。
濡れたせいで金色の髪の毛からポタポタと水滴が落ちる。
なっちはそんなおいらを見て

「ズブ濡れのひよっこだぁ!!」

って嬉しそう…。

まぁ虫って言われるよりかはましだけども。










110 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:31









あぁ、話がズレちゃった。


小さい浴槽で2人仲良く肩並べて浸かるのが好き、っていうのどうしてって?







「だってさ、こーやってぇ…抱きしめられるから!!」





実践して実践して。



急にぎゅっと隣で体育座りしてるなっちを抱きしめた。
微温湯は大揺れ。
なっちは「!?」って声出ないみたい。
ガー子はまた浴槽にぶつかってるー。

ガー子にとっちゃ、この揺れは津波くらいの衝撃?

ごめんねガー子。









111 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:32









目の前になっちの驚いた顔。
おいらと同じで、濡れてる前髪。
微温湯から出てる肩。

・・・色っぽい。



「温泉だと、こうやって手を伸ばしても抱きしめらないじゃん?」

ほら、広いからぁー、ねっ?


とか言いながら頭の中は大興奮なワケなのですが。





あぁーヤバイヤバイ。



・・・・・・・・・・・ちゅぅしたい。




こういうチャンス見逃す矢口さんじゃないから!!
今しかないでしょ?









112 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 01:32
すごく暖かくて爽快感もありつつ、
最後が切なくて泣きそうになりました。
自分も「今」を大切にしたいと改めて思いました。
個人的には、またこういうお話も読んでみたいです。
砂糖多めなお話も大好物なので、次回も楽しみです(w
113 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:32



なっちを見ると真っ赤な顔しておいらを睨んでる。
何も言わないけどおいらには分かるのだ、なっちの言いたい事が。

『もう分かったから、離れなさい』ってね。


・・・もうすぐ頭ぺしっ!って叩かれるか水かけられるかだろうな…

ピンチはチャンス!!だもんね。

怒られるの、しょうちのすけでやっちゃおう。










なっちの目を見て、「エヘ」ってお得意の愛想笑いをしてから
ぐっと近づいて瞼にキス。


そして、唇にキスをした。



いつもと違うキス。
濡れているせいか、冷たく感じた。


触れるだけのキスだけど、ちゃんと感触があって。
・・・・柔らかい。


こういうの考えると生々しいよ。



幸せの余韻に浸りながら離れると何か言いたげななっちの微妙な表情。


・・・・・・・幸せなのはおいらだけ……みたいですね。




114 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:33









さっきとは全く違うドキドキする鼓動を抑えながら瞬きを数回。

ちょっと微温湯から出た肩が冷たく感じてきた。
髪から滴り落ちる雫が肩に落ちて余計に冷たい。




抱きついたままなっちの表情を伺うようにチラッと見る。







「・・あの…な、なっ・・・・・」




なっち?

















115 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:34









・・・・予想的中。いや、それ以上か。




頭ぺしっ!って叩かれて「いてっ!」
微温湯かけられて「ぁっ・・ぐぅ!!」←苦しい故、声が出ない。

ここまでは予想してたけど…


おいらのひよっこ頭に手を置いて、思い切り押されて
おいらはそのまま微温湯の中。


・・・・・・沈められた。








116 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:34









急すぎて反応出来なくて溺れそうになったけど慌てて顔を出した。

鼻に水が入ったせいで超痛くて涙が出そうになったけど我慢して
手で顔をごしごし拭いて周りを見ると、既になっちの姿はなかった。



ぽつん、と浴槽においらと…ガー子だけ。





その瞬間ほんの少しだけどガー子が愛しく思えたり…


「ガー子…」



おいらの事を無視するかのように
ガー子は変わらず浴槽の中を上機嫌に浮かんでいる。




『お前バッカだなぁ!
 欲求に流されないでなつみの事考えろよ!!』


…オレンジ色の余計な事まで喋りそうな口ばしを見て、そう言われた気がした。


・・・つーか何でガー子が「なつみ」って呼び捨てなんだよぉ!?
おいら「なっち」なのに…
自分で考えた事なのに腹が立った。










117 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:35








「あぁーもぅ!!!」


苛立ちを吐き出すように言うと、いい具合にエコーがかかって響いた。




そして勢い良く微温湯に潜った。



ブクブク、ユラユラ。


口から吐いた息が丸い空気になって上に行く。

視界が歪む。









118 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:35









端っこを見るとガー子の黄色の体。
下から見ると大分マヌケだ。



笑うと、苦しさが増してきて慌てて顔を出した。
じゃばーん、って音が大きくした。



「ハァァァ…」酸素酸素。



ポタ、ポタ…って髪から滴る雫。



何だかその音が寂しさを倍増させて、無意識に


「なっちぃー」

って呟いた。






・・・・・・・謝ろ。




自由奔放なガー子を持って、浴槽を飛び出した。

あぁーあ…バカな事してばっかだな、おいら。















119 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:35









体を拭いて、服を着た。
ガー子も適当に拭いてやって適当な場所に放置。
拭いてやったんだから感謝しろよなっ!



なっちの所へ行くと不機嫌そうな表情をしながらソファに座っている。




「・・・なっちぃー。」


ちょこん、と隣に座る。



・・・・・やっぱ怒ってる…。
何ていうか、オーラ?で分かったけど。









120 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:36











「あ、あの・・・」


「…びっくりするっしょ?」





「・・えっ?」




何かいつものパターンと違うんですけど…


いつもならしばらく無視されて、
何回も謝って、
最後に散々「バカじゃないの?」って攻められて
やっと許してもらえるんだけど…



「…あ・・・・・」


「な、なに??」


「勘違いしてると思うから言うけど、なっち怒ってないからね?」




マジですか?










121 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:36









「・・・そ、そうなの!?」


「・・うん、怒ってないよ。


 でもさ、急にされたらびっくりするっしょ?」



体育座りで両膝に顎を乗せてるせいか、なっちがちっちゃく見える。
でも今のおいらにはそんなの気にもならなくて、ただ安心感に浸っていた。


また「バカバカ」言われるんだと思った…。
しばらく口聞いてくれないと思ってた…。

本当によかったぁぁ〜。




・・・ん??






でも待て待て…。










122 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:37













「おいらの事沈めたのは何で?

 あれすっごい苦しかったんだけど!?」


半端じゃなく、苦しかった。
あーほんと、そのまま逝きそうになった。
鼻が痛くて痛くて、潰れるかと思った。

・・・これこそ本物のパグになっちゃうトコだったんだよ?







「あーれはー…いきなりされてー、びっくりしてー…

 恥ずかしくて…気付いたら沈めてた。」










123 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:37









両膝に顎を乗せたままおいらの方を向いて
「ごめんねっ」って言われたら、もう許しちゃうしかないでしょう?




うぅー…苦しかったけど…



「・・・ゆ、許す」


「ありがと。」



お礼と共になっちスマイル☆


・・・・もうそれだけでさっきの苦しさも忘れちゃいました!








124 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:37








そのあまりの可愛さに気持ちが昂ぶってなっちになだれかかる。
ぐいーって。ぎゅーって。

なっちは重ーい、とか言いながらもおいらを受け止めてくれる。


それから今度はなっちにお返しされた。
ぐいーって。ぎゅーって。

おいらは重ーい、痛ーい、って叫びながらさり気なくなっちの肩を抱いて引き寄せる。



結局は2人重なって寝転ぶ体勢。

おいらが下でなっちが上。

なっちの濡れた髪がおいらの顔に触れて冷たい。
きっとなっちもそう思ってるんだろう。



体の全部がくっついて隙間がないくらい。

これでちゅぅすれば全身がくっつくね、と思ったからちゅぅした。


なっちの「んふぅ…」って色っぽい声。

ドキドキした。



ほら、ちゅぅなんて普通にするじゃん。
さっきは何で恥ずかしかったの?










125 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:38









「でもさぁ、ちゅぅとかいっつもしてるじゃん。

 いくら急にされたからって恥ずかしがるほどの事じゃないと思うけどー。」



おいらにとっては日常茶飯事なのだ。


この前、一日でなっちに何回ちゅぅするか密かに数えたら
20回は軽く越えてたよ。


もちろんおいらからちゅぅしてばっかだけど。


でも寝る時に「してくれなきゃ寝なーい!」って我侭言ったら
仕方ないなぁ、って顔をしながらしてくれた。

幸せだった。


「もっとしてくれなきゃ寝なーい!!」って調子に乗って言ったら
冷めた表情で「寝なさい」って言われて「あぃ」って素直に返事して寝た。









126 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:38








「バカー。

 お、お風呂だよ?

 そんな所で…だ、だ、抱き合って…キス…とか・・・・恥ずかしいっしょ??」




何でこんなドモってるんだ、この人。





一気に紅潮するほっぺたが可愛い。
林檎だ、林檎。


食べるぞ??






「今もしたじゃん。

 抱き合ってぇー、キス。」


ちゅっ、って音をたてるように軽くキスした。


んぅー、なっちの唇、最高に柔らかい。

…とか冗談で言っちゃったり。


・・・・怒られるかも、って思いながら。



でもなっちはおいらの言う事なんて聞いてなかった。









127 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:38










「バカー!

 なっちが言いたいのはそこじゃなくて・・・
 お風呂でそういう事するのは恥ずかしいって言いたいの!


 だ、だ、だ・・って…裸・・・・・だし。」



あーもう!何でこんな事言わせてるの!?

バカやぐちぃー!

もぅパグ!!

いや、もぅ虫!

虫ーーーーー!!!



何でおいらここまで言われなきゃいけないんだ??

ってかなっち・・・考え方が














128 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:39















「・・・・・・・・・・・・・・エロぃよ。」








「・・・・・・・はっ!?


 やぐちが?」




「・・・いやいや、


 なっちさんの、考え方が。



 ・・・エロぃよ。」





いやーエロなっつぃ!?


ちょいツボかもぉー。




そんななっつぃーは全然オッケェなんだけど。

いつでもカモンナ!!







129 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:39











ニッコリ笑って「エロぃね。」って言ってあげると
なっちはただ小さく「ち、違うもん…」って心細い、弱々しい声で
呟きながら真っ赤な顔を伏せるようにおいらの肩に顔を埋めて抱きついてきた。



濡れた茶色の髪の隙間から見える耳に唇を寄せて

「なっちさん、やぐっさんよりエロぃですよ?」

って追い討ちをかけるように言ってやった。


そして柔らかい髪をなでた。
濡れているせいで触れると冷たかった。




なっちの反応は

「違うって言ってるっしょぉー!?」


ってくぐもった声で言いながら
さっきよりももっときつくおいらに抱きついてきた。










130 名前:baby girl 投稿日:2003/10/13(月) 01:40









ほら、ね。


おいらと同じぐらいなっちは子供だよ。
ちょっとの事で騒ぐし、笑うし、怒るし。

でもそこがおいらとしては可愛いんだけどね。



さて。


そろそろなっちの事からかうのも止めにして、ベッドに移動しよっかなぁ〜。

移動してから何するかは・・・・・・・秘密だけど。





あぁー…後でもう一回風呂入る事になっちゃうけど……いいよね?









131 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/13(月) 01:48
>100 タケさん。
レスありがとうございます!

やっぱり幼すぎましたか!!(笑)
そりゃ屋上でバトミントン、からして幼いですよね(笑)

>・・・・・・・・・へ…変態?
自分の知らない所であんなのされてたら…ねぇ(w
変態としか、言えないですよ(笑)


>101 名無し読者さん。
レスありがとうございます!

>この話読み終えた時、幸せな気持ちになったよ。

長々しい話だったけど書いてよかったなぁ、と思いました。
お付き合いいただき、ありがとうございます。




132 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/13(月) 01:55
>112 名無し読者さん。
レスありがとうございます!

とにかく「青春」って言葉を使いたいのと
後半部分を書きたいっていうだけの気持ちで書いたので
そう思っていただいてありがとうございます。
ちょっと、いやかなりバトミントンをしてる部分が
邪魔のような気がしますが(笑)




133 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/13(月) 02:06
『baby girl』

速攻ですが終わり方が気に入りません(笑)
やっぱそれかよ!って感じなのですが。

もっと精進します。


でも話的には好きだったり。
特に後半部分じゃなくて、前半部分。
「一緒にお風呂に入る」という行為を拒否しない安倍さん。
・・・・・・(・∀・)イイ!!
…と勝手に思って書きました(笑)



自分内、妄想の泉がいつのまにか戻ってました。
どうやって戻ったのかは分かりませんが…。

・・・・バンバン甘いの書く!!…あくまで予定です(笑)





134 名前:タケ 投稿日:2003/10/13(月) 10:03
(〜^◇^)<エロなっち!エロなっちぃ!!

砂糖が多くて(・∀・)イイ!!かったです!!
エロやぐなち最高〜〜〜!
両方子供っぽくて最高〜〜〜!!

次の話も期待しておりますよ〜!
135 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 15:07
なちまり(・∀・)イイ!!!ですね♪
なっち最高!矢口最高!
これからも期待して待ってますんで頑張ってください♪
136 名前:112 投稿日:2003/10/13(月) 22:43
昨日はお話の途中に邪魔をしてしまい、
ほんとにすみませんでした…。(ノД`)
今回は、幸せ太り出来そうなくらい甘甘な
なちまりを、ごちそうさまでしたw
次回の更新も楽しみにしておりますー。
137 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:58




春は、一緒に桜見ようね。

牡丹桜。

枝垂れ桜。


いっぱいいっぱい綺麗な桜あるけど、全部見ようね。
全部二人で手つないで歩きながら見ようね。





いいねぇ桜。
おいら桜大好きだよぉー。
なっちの髪についた桜の花びら、おいらが取ったげるね。
あぁーおいらの春は幸せイッパイ胸イッパイ間違いなしだぁ〜!







・・で、夏は!?夏は何する!?





138 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:58





んー…夏はねぇ、一緒に花火してーかき氷食べてぇー…
とにかく夏っぽい事たくさんしよ?





おぉぅ、花火だよ花火!!
ロケット、打ち上げ、線香花火!!
おいら、なっちの目に映る火を見るよ!!!

後ねぇ、クーラーガンガンにつけて昼寝しよ!!
それで、寒すぎて抱き合って寝る!!
あぁーおいらの夏は幸せイッパイ胸イッパイ間違いなしだぁ〜!







それで秋は!?秋は何する!?







139 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:58






秋はー…今の季節っしょー。
やっぱり食欲の秋だね。
焼き芋食べたいねぇー。

あ、あと紅葉とか見たい。





焼き芋!!
一緒に落ち葉拾って焼き芋しよ!!
うまいよねぇー。

紅葉も見に行こー。
まさに秋って感じだねぇ。
あぁーおいらの秋は幸せイッパイ胸イッパイ間違いなしだぁ〜!







冬は!?冬は何する!?







140 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:58








冬はねぇ、落ち葉踏みながら手つないで並木道歩いたりー…
あと2人だけで鍋パーティーとかもいいね。
こたつでさ。





いいねぇいいねぇいいねぇ!!!
落ち葉踏んだらバリバリいうんだよね、あの音好きだよ。
ちょっと木とかさ、葉っぱなくて寂しい感じもするけど。

鍋パーティー大賛成!!!
しゃぶしゃぶとかいいよね、あ!すき焼きもイイね。
キムチ鍋もありかもー!
どんな鍋でもいいけど、2人だけでってのが一番嬉しいね。
あぁーおいらの冬は幸せイッパイ胸イッパイ間違いなしだぁ〜!







141 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:59










はるなつあきふゆ

春夏秋冬


なっちとなら幸せ。


世界中の幸せ独り占めした気分だよ。




まさに笑いの絶えない生活だねっ!!


顔の筋肉緩みっぱなしだよ。



はるなつあきふゆ。

いちねんじゅう。




・・・・・・・・・・んん?一年中?






「…って事はさ、これから一年はずぅーっと一緒って事だよね?」







  まるで『幸せ家族計画』を語る夫婦のような気分だったんだけど。












142 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:59







もう寝よっか、って言いながら電気を消してベッドに潜り込んだ。
何も見えないくらい真っ暗な部屋。
シーン、として溜め息でさえ大きく聞こえてた部屋。
バカだけど真っ暗なせいでおいら一人ぼっちじゃないか、って急に寂しくなったよ。


その寂しさを消すようにもぞもぞと右手を動かした。


そしてなっちの手を握る。



指を絡めてぎゅってすると、寂しさもなくなった。
心があったかくなったよ。







143 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 01:59








「・・眠れないの?」


幸せだなぁ、ってなっちの手の暖かさに喜びを感じながら目を瞑った直後。


なっちの声。



「・・んー…ちょっとね。」


急に寂しくなっちゃった、なんて恥ずかしくて言えなかったから
誤魔化すように曖昧に答えた。
 


「・・・何か話する?」


「・・うん。」





そういう些細な優しさが温かいね。

そんなところ、だいすきだよ。






144 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:00









「段々寒くなってきたねぇ。」

「・・・夏も嫌いだけどさ、冬もやだなー」

「なっちは春が好きだよ」

「おいらも好きー。」

「やっぱり桜だね。」

「あぁーそだねぇ。」



「春は・・・・・







他愛ない季節の会話から突然一緒にどうやって過ごすか、って話になって
いつのまにか夢中になってた。














145 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:00









春はお花見で
夏は花火。
秋は紅葉見て
冬は鍋パーティー。



嬉しそうななっちの声で、
きっと微笑みながら話してるんだろうなって思って
おいらまで嬉しくなった。



「…って事はさ、これから一年はずぅーっと一緒って事だよね?」



ちょっと自信過剰気味でそんな事をさらり、と言っちゃうよ。


だってさ、本当にそんな事思ったから。



横を向いてもなっちの顔は見えないのは分かってるけど、横を向いた。
やっぱり真っ暗で何も見えない。







146 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:00








「・・・なっちもう寝るからー。

 おやすみー」


するり、と絡めていた指が解けて。
手も離れていった。

残ったのは、なっちの温かい手の温もり。




・・・って、おーぃ!!







「何だよぉ・・・」



ごろんとなっちがおいらに背を向けるのが分かった。
布団がちょっとなっちの方へ寄っていっちゃったから。



「そうだね」とも「やだー」とも言わなかったけど
おいらに背中を向けたって事は「やだー」って言ってるのと同じって事でしょ?


なんだよぉ、寂しいじゃんか。



なっちの姿が見えないせいで余計に寂しさが増す。

手の中に少しだけ残っている温もりをぎゅっと握りしめた。
なっちの手。
なっちの手の温もり。









147 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:00














「春も夏も秋も冬も・・・やぐちと一緒に過ごしたいって思う。


 ずっと、ずーっと。


 これから一年とか…じゃなくてさ・・・一年も二年も三年も。


 一緒に・・・・色んなもの、感じたい。」




・・・・とか思ってるのは……なっちだけなの?



真っ暗な部屋に、なっちの声。

静かな部屋に、なっちの声。

すごく響いて聞こえた。









148 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:01









暗くて見えないけどおいらに背中を向けてるなっちはきっと真っ赤なんだろう。

だってこんな事さらり、と言う人じゃないから。

だって最後の方、声が小さくて少し震えてるように感じたから。




じわじわと温かい何かがおいらの体を包んでいく。
それは手から全身へ広がっていったように感じた。

なっちの手の温もりがおいらの体を電流のように流れてる。



・・・・・・・しあわせだ。









149 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:01









『おいらだってそう思ってる。
 春夏秋冬なっちと一緒に笑い合いたいよ。
 一回だけの春じゃなくて
 春を二回も三回もなっちと過ごしたい。
 もちろん夏も秋も冬も。』


そう言いたかった。


でも言わなかった。


それは、先になっちを抱きしめたから。








150 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:01










「な・・・なにっ?」

いきなりの事で驚いてるなっちの背中にぴったりと体をくっつける。

 
お互いの鼓動が聞こえるくらいに、ぴったりと。



「・・・・・うー…しあわせ、だッ!!


 ・・・愛、してる。」



何かもうさっき思ってた事を言うのも忘れて、本望のまま出た素直な気持ち。


愛してる、なんて意外と言わないんだよね。
いつも好き、だもんね。


ドキドキしたよ。
なっちに伝わってる?
おいらのこのドキドキしてる気持ち。










151 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:02









「・・・・・なっちも、しあわせだぁー」



やぐちといれば……なーんてね。


んふふ、って笑いながら冗談交じりに言って
ごろんとこっちを向いたから首筋に抱きついた。




なっちの首筋に回した腕も
おいらの腰に回されたなっちの腕からも温かさが伝わってくる。
ジリジリした温かさじゃなくて、
ポカポカしててまるで太陽みたいな暖かさ。

温かいのは体だけじゃない。
なっちの「しあわせだぁー」って言葉だけで心まで温かくなったよ。
後から付け足された「やぐちといれば」は
温かさだけじゃなくて思わず顔がにやけたよ。









152 名前:はるなつあきふゆいちねんじゅう。 投稿日:2003/10/19(日) 02:02








首筋からゆっくりと離れる。
でもおいらの腰に回されたなっちの腕はそのまま。
真っ暗のせいではっきりとは見えないけど、目の前になっちの顔。



「…なーんてね、は必要ないデショ。」

「・・・・・必要だよ。だって冗談だもん…」

「・・マジで?」

「・・・嘘」

「知ってるよ」

「言わせないでよ」

「・・・・・ごめんの代わりにキッスね。」

「・・んぅー」




真っ暗で何も聞こえない静かな部屋に「ちゅっ」と音をたてるようにしたキスが響いた。





 


153 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/19(日) 02:06
>134 タケさん。
レスありがとうございます!

エロなっちも意外とツボです(w
安倍さんがエロなっちなら
矢口さんはそれを上回るエロエロ矢口だと思いますが(笑)

砂糖多め、満足していただき嬉しいです(w



>135 名無し読者さん。
レスありがとうございます!

なちまり最高!
なっち最高!
矢口最高!
そして読んで下さってる方全員最高です(笑)




154 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/19(日) 02:11
>136 112の名無し読者さん。
レスありがとうございます!

話の途中にレス(w
ビビりましたが嬉しかったです。
ありがとうございます。

基本的に甘いor甘すぎの話ばっかなんで痛いのは滅多にないです。
甘いのが書いてる自分も楽しいので。
痛いのは苦手っていうのもあるんですが(笑)




155 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/10/19(日) 02:18
「はるなつあきふゆいちねんじゅう。」

平仮名って読みにくいです(笑)

前半アホっぽいのに後半アホっぽくないっていう微妙さ。
終わり方は気に入ってます。
無理矢理終わらせた感がありまくりですが(笑)
今回自分的にそんな甘くない…と思います。




156 名前:タケ 投稿日:2003/10/20(月) 00:49
2人ともずっと幸せに暮らしてほしいものですねぇ
個人的には砂糖の量は多めかと(w
次はどんな出来事が2人を待ってるんでしょう?
期待してますよ〜
157 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:40







「掃除するよっ!」


「・・・・・ぇー…やだ。」


「駄目!!すーるーのー!!!」



・・・掃除掃除って…お母さんみたいだよ、なっち。








158 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:40








朝起きて目が覚めると隣にはなっち。
最近はこれが普通で、当たり前なんだけど改めて嬉しさを噛み締めたよ。


今日はどこへも出掛けずにずっとこうしてたいなぁ。
ベッドから動かないでずっとこうやってゴロゴロすんの。
ゴロゴロしてイチャイチャすんの。
・・略してぇー…ゴロイチャ。
なっちと一日中ゴロイチャしたい。



そんな気分だったのに。







159 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:40







なっちは目覚めてから妙にやる気満々。

今日はすごい、いい天気だから掃除しよ。
洗濯物干してぇー
布団干してぇー
掃除機かけてぇー
・・・ねっ?



違う意味のヤる気満々ならおいらも大賛成なのにね。
こう思ってる事、絶ッ対に言えないけどねっ!!





「いーやーでーすぅー。

 おいら今日布団から絶対出ないから。」


こうなりゃ意地でも布団から出てやるもんか。
ほんとはなっちとゴロイチャしたいんだよ?


布団に包まってベッドの前でやる気に満ち溢れた様子で
立っているなっちを軽く睨む。







160 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:41









「・・・・なっちさぁ…掃除したいの。」


ふぅ、となっちのついた溜め息ははっきりとおいらの耳に届いた。




な、なんだ??


急に真面目な表情でおいらを見るなっち。
しかも真面目な声。



そ、そ、そんな顔しても・・・手伝わないよ?









161 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:41








「・・す、すればぁー?」



「……でもね。


 体がダルぃの。


 すごくすごくダルぃの。



 何でだろうね?」




・・・・・・・・それは……




「おいらが昨日なっちを愛したから!!!」



テンション高めで自慢気に大声で言ってやると
(ついでに人差し指を思い切り立てちゃったり)








162 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:41







「だよねー。


 嫌だ、って言ったのに・・・

 何回も嫌だ、って言ったのに・・・」



 
あ・・あれ・・・・・??


さっきとは違って、すーーーーーーっごい気まずい雰囲気なんですけど。




そりゃ確かにさ、確かにそれは本当だよ。
事実だよ。
嘘なんかじゃないよ。

矢口さんは嫌がる安倍さんを無理矢理・・・ね。



だって可愛いんだもん。
誘ってたんだもん。


・・・とは言っても……おいらが当たり前に悪い。







163 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:42







「・・・・・・ご、ごめん。

 でもさ、終わった事だ・・し?

 ・・・・・・・ね??」


「・・悪いと思ってないっしょ?」


なっちはおいらから目線をはずそうとしなくてずっと睨んでいる。
い、痛いよなっち。


ほ、ほんとはさ『誘ったなっちが悪いんだよ』とか思っちゃったりしてるけど…
でもそんな事、言えません。
言える訳、ありません。

だからね、ここは「思ってる」って。
思ってなくても、「思ってる」って。
言っとかないと。







164 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:42








「…な、何言ってんの!?

 思ってるよ!!

 すーーーーーーーっごい悪いと思ってる!!!」
「それじゃ、掃除しよ?」




・・・・・・ズルいよなっち・・・




「な、何でそうなるんだよぉ!
 昨日の事と掃除とは全く関係ないじゃんか」


「・・・・・償いだよ。

 つーぐーなーいぃー。」




だよねぇ、やぐちっ!!


そう言いながらニコッて笑いかけられたらもうおしまい。


おいらは一言


「・・・・・・頑張りまーす…」







165 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:42








洗濯機を回しながら
布団を干す。
そして掃除機をかける。




布団は重くてよたよたしながらベランダに干しに行った。
ベランダに出ると心地良い太陽の光。
ポカポカ温かい。

それもいいんだけど・・・ふ、布団が重い…



「・・・なっちぃ〜…た、助けて……」



「何やってんのさぁ…」

なっちは呆れながらも
よいしょ、って言いながら布団に埋もれたおいらを助けてくれた。








166 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:42








それにしてもなっちってほんとにお母さんみたいだなぁ。

おいらがそう思っている事を知らないなっちは
布団を干した後すぐに洗濯カゴを持ちながら洗面所へと行ってしまった。
やる事早ーい。
そういう所もお母さんっぽい。










洗濯物を干すのは2人で。
掃除機をかけるのも2人で。

・・とは言ってもほとんど
「やぐち邪魔」って言われて部屋の隅っこに追いやられた。



考えるとおいらが手伝う必要って全く無い。
・・・ってなっちに追いやられて飛び乗ったベッドの上でぼんやりと思った。








167 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:43











一通り掃除が終わって正午過ぎ。

窓から入る日差しと風。
部屋全体が明るい。



開けた窓の下でごろん、と寝転んで日向ぼっこ。
見上げると建物の隙間から見える青い空に大きな雲。
干している布団が陽に当たって気持ちよさそうだ。

あぁー猫の気持ち分かるかも。
ここから動きたくないもん。


「やぐち邪魔ー。

 今から布団取り込むんだからぁー」


目線を声のする方に切り替えるとおいらを見下ろすなっち。
腰に両手を添えて呆れている所が可愛い。







168 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:43










「・・動きたく、ない」

「・・・踏むよ?踏んじゃうよ?」

「・・やだ」

「それじゃ、どけなさい」

「・・はぁーい」


よいしょ、って声を出しながら起き上がっても
頭の中はボーッとしたまま。

髪の毛をかき混ぜるようにグシャグシャに掻くと
陽に当たっていたせいで温かかった。







169 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:43








「あーったかーい!!!きもちぃ〜」

「んー?」

なんだ?

眩しそうに目を細めてベランダにいるなっちを見ると
干していた布団に体をくっつけている。


何か…いいな。

おいらもしたい。


急いで立ち上がって裸足でベランダに飛び出た。

そして布団にべったりしてるなっちの背中においらの体を重ねる。







170 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:43










「おもーい!」

なっちの可愛い反応を無視して


「へっへー…きもちいー!ぬくーい!」


おいらのご満足な声。



布団を合わせて三段重ねってヤツ。
体中がポカポカ温かい。
その温かさが気持ちよくて、なっちの肩に顔を埋めた。

なっちはくすぐったそうに肩をすくめるけど気にしない。
こうしてると落ち着くんだよねぇ〜。


でも落ち着いているのも束の間。








171 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:44








「やぐちぃー邪魔ー。

 布団入れられないっしょ?」




ぺしっと頭を軽く叩かれて無理矢理離された。


「…もうちょっといいじゃんか。」

「だめぇー!」


おいらの声空しくなっちはハッキリ言うと
「邪魔だから中に入ってなさい」っておいらをベランダから追い出した。

渋々中に入ってなっちが布団を叩く姿を見る。

「パンパン」っていう布団を叩いた時の音が響いた。
ちょっと体を乗り出して叩いている所がまた可愛い。






172 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:44









・・・お母さんっていうより若妻みたい。
旦那は勿論おいらだけど。



暇のせいで目を瞑って現実逃避。

おいらが旦那ってちょっと頼りなさすぎかなぁ…
でもなっちの相手はおいらしかいないし。
なっちを幸せに出来るのはおいらだけだし。
って自信過剰気味?
いや、そんな事ないよねぇー。


きっとなっちとだったら幸せな家庭を築ける気がするよ、おいら。



毎日おいしいご飯食べて。
朝出て行く時と帰ってきた時は必ずちゅーすんの!
それでぇー…夜は・・・ねッ?

「なっち」じゃなくて「なつみ」って呼んでみたり。
なっちも「やぐち」じゃなくて「あなた」って……!?
・・・あ、あなたってそんな…なっち大胆だよ、駄目だよ・・
でもおいらは全然オッケーなんだけどね。
あなた・・・ひ、響きがいいね…あ、あな・・・



・・・・バフッ!



い・・・・痛い、重い…?









173 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:44











「あ、やぐちそこにいたのかい?
 
 ごめんごめん。大丈夫?」



いきなり重い何かが降ってきて一瞬パニクったけど
でもなっちの声ですぐに分かった。


布団をかけられたって事。


それのせいで「なっちとの幸せな家庭を築くにあたって」の妄想が一気に頭からなくなった。





痛かったけど、重かったけど
体全部が布団に包まれて温かくて気持ちいい。



おいらが微動だにせず固まっているのを心配したのか
バサッと布団をあげられたせいで陽が入って眩しい。

目を細めて見ると目の前になっちの顔。








174 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:45









「…痛かった?大丈夫?別に悪気なんかないんだよ?」

「あー別に痛くも何ともない。

 温かいせいで動かなかっただけだから。」


イヒッて笑ってやると安心したようになっちもイヒッて笑った。

陽のせいで眩しいんじゃない。
きっとなっちが眩しいんだ、なッ!!

わけ分かんない事を思ってると


「ベッドに運んでね。

 敷き布団取り込むから。」








175 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:45









なっちはそう言ってまたベランダに行ってしまった。
視界が真っ暗になったかと思うと
「パンパン」っていう布団を叩く音が聞こえてきた。

さっきみたいに前のめりになって叩いてるんだろうな。


おいらは布団を被った状態のまま立ち上がって
右手で布団を少し上げてベッドまで歩いていった。


「よい、しょ」


バサッと体を前に倒して布団をベッドに置くと
おいらの背後に敷き布団。

敷き布団の後ろになっちがいるはずなんだけどおいらからは見えない。








176 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:45









「なっち大丈夫?」


そう言いながら敷き布団を持ってベッドに置いた。
ちょっとよたよたしたけどここは頑張らないと、未来の旦那さん!


「ありがと。」

「どうって事ないよ。」


フフン!って得意気になって言ってやる。
これくらいは軽くこなさないと、未来の旦那さん!









177 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:45









そして布団をちゃんと敷いてやっと掃除終了!



「終わった?ねー終わった?」

「うん、終わりぃー」

「いぇーーぃ!!」


笑いながらベッドに寝転ぶ。

ごろん、とすると一気に体が温かくなった。



干した後の布団はほんとに気持ちがいいもんだ。
おひさまの匂いがする。


この瞬間ようやく思う。
『掃除やってよかった』って。

この布団だとよーく眠れそうだ。










178 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:46










「疲れたぁー」


なっちもおいらの隣にごろん、と寝転ぶ。



少しの間目を瞑ってからなっちを見る。
なっちも目を瞑っていて何だかそのまま眠りに入っていきそうな感じ。



「・・眠たい?」

「・・・んー…布団がね、温かいせいで…寝、そう」

それにはりきりすぎて疲れちゃったし。
ちっちゃいちっちゃい誰かさんは手伝ってくれなかったしぃ?

おいらの方をクスクス笑いながら言ってる。
ちっちゃいちっちゃいってどれだけ小さいんだよぉー!!
そんなちっちゃくないっつーの。

それにさ、なっちが全部勝手にやったじゃんか。
おいらの事「邪魔邪魔」言ってたくせにー。








179 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:46










ブスゥー、と顔をブチャイクにしてそう思いながらも
急になっちに触れたくなる。


いきなり抱きつくのも。
いきなりキスするのも。
いきなり襲うのも。

ちょっと「いきなり」すぎると思うからとりあえず…



「腕枕してあげる。」


こういう所から攻めないと、ね。

ニッコリ笑いながら言うと
それがやけに怪しかったみたいでなっちは速攻


「えー…やだ」

とか言う。

まぁ予想はしてたけど。


でもここは強引にいかないとね。

何せ未来の旦那さんだから!!!
(ただ言いたいだけ)









180 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:46










「遠慮すんなって!!ほらー」

「んー・・・」

無理矢理なっちの頭を右腕にのせる。


「腕、痺れるよ?」

「別にいい。幸せだもーん!」


なっちはおいらを見て苦笑い。


腕枕するのも素敵だけどさ、おいらはこうしたいわけ。

ニヤッと一瞬笑ってなっちに被さるように抱きつく。
一気に距離が近くなって幸せ倍増。







181 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:46









「・・最高」

「寝にくい…ねぇ、離」

「やだ。」

全部言い終わらないうちに速攻却下。
なっちの言いたい事くらい分かる。

離れません。


「…おやすみ、なっち」
「・・・・・うん」


掃除終わってすぐに寝るのも変だけど仕方ないよね。
だって布団が温かく包み込んでくれるんだもん。
この温かさが眠気を誘う。

すぐに寝れそう。


すぐそばのなっちを見ると既に熟睡。
・・・猫っぽい。
可愛いなぁ・・・。









182 名前:晴れた日の過ごし方 投稿日:2003/11/01(土) 00:46








気持ちよく眠ってるなっちを見るとおいらも本気で眠くなってきて
なっちの唇に軽く触れるだけのキスをした。
おやすみのキスってヤツね。


温かいのは干した布団のせいだけじゃない。
なっちが太陽みたいに温かいんだ、なッ!!!

・・と最後にワケ分かんない事を思いながら目を瞑った。








183 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/11/01(土) 00:52
>156 タケさん。
レスありがとうございます!
砂糖多めでしたか(w
何か自分だけ麻痺してるっぽい(笑)
もっと甘いのを自分が欲している感じです。
特に甘エロを……!!!(笑)




184 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/11/01(土) 01:02
自分的に久しぶりの更新です。
風邪でぶっ倒れてまして
先週は更新出来ませんでした。・゚・(ノД`)・゚・。

すこぶる調子が悪いのは体調だけではなく。
文章が相当グダグダです。
いつもの如く雰囲気で感じ取って下さい(苦笑)


えっと、かなり急ですがそろそろ終盤。
あと1回で終わる予定です。
これだけの短編を書いた自分が一番驚いてますが
感想は今度にしてとりあえず書きます。
最後こそグダグダな文章にならないように(笑)




185 名前:タケ 投稿日:2003/11/03(月) 15:21
今回も砂糖多めでよかったです!(w
やっぱり旦那矢口さんは安倍さんに尻にしかれるんでしょうか?
2人のやり取りはやっぱり可愛いです!

あと1回!?そうですか・・・
頑張って下さい!
186 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:34





「せーんろは続くぅーよぉーどーこーまーでーもぉー!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「…続きは?」



「・・・・・・・し、知らなーい」


「だったら唄わなーい!」


「あーぃ!」




バカな会話をしながら、バカな事をしてる。









187 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:35








『散歩しよ?』

ちょっとやぐちの口調が、態度が、雰囲気が。
いつもと違うって思ったなっちは「いや」というワケもなく、
すんなりと「いいよ」って言った。




外に出ると少し肌寒さを感じる風。
夕方だから余計に風が冷たく感じるんだろう。
日も暮れ始めて全てがオレンジに染まる時間。



なっちが気にしてたのが嘘のように
やぐちは何ら変わりなく、いつものアホやぐち。

「この白線を辿って最後には何処に辿り着くのか!?
 調査隊、出動します!!!」

って道路に引いてる白線を踏みながら行進。
踏み外さないようにちょっと慎重に慎重に歩いているのが伝わってくる。






188 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:36








途中で急に履いていたミュールを両手で持って裸足で歩き出したのには驚いた。
痛くない?って聞いたら
一言、へーき。って言った。

ペタペタとやぐちのちっちゃい足の足音に続くなっちの足音。




「・・・感じたいんだ、裸足で。」



なにを?

って何となく聞けなくて、ただ後ろで頷いた。


なっちはそんなやぐちの背中を見ながら後について歩く。







189 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:36








「これの先には何がありますか?安倍隊長ッ!」


目の前のちっこい背中を見つめながら歩いていたら
急に「調査隊ゴッコ」を開始したやぐち。
後ろからだから微妙だけど敬礼のポーズをしながら行進している。



「えっ!?・・んーと…何もない、白線は先の先まで続いてるか、ら。」



わけ分かんない。って自分で思いながらも
自然と目の前のちっこい背中の隊長さんに言ってた。


やぐちは振り返らずに


「・・・・・・了解!!

 ロードオブメジャーだね。」


イヒッ、って笑って敬礼のポーズをしていた手をおろした。


そして「そうだね」って言いながら、
ロードオブメジャーってどういう意味なんだろう?って思った。







190 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:37









「いぇーぃ、いぇーぃ 教科書にないー ぼーくらだーけの歌
 いぃーぃ、いぇーぃ いーまでも消えーずに おぼえていますかー」


「・・・なっちは大切なものの方が好きー。」


「こーのー空のしたぁー 同じ星見上げて 悩む僕らーはー
 夢をにぎったままー  泣き笑い支えあい信じてくぅー」


「そうそう、いいよねー。
 アルバム出たっしょ」


「うん、初登場1位だったらしいよ」


「へぇー、すごいねぇ」


「うん」


さっきの『線路は続くよどこまでも』を遊び感覚で唄ってた声とは違って
真剣なやぐちの声。


すごく好きだ。
心にね、ジワーッて溶けてく感じがするんだ。


穏やかな気持ちになりながら、まだまだやぐちは一直線に進んでいく。
なっちもその後を追うように進む。









191 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:37










「ミュール持ってー」

「もぅー…」



両手でひとつずつ持っていたミュールをいきなり振り返って
ポーン、と投げられたから落とさないように慌ててキャッチした。


よろしくぅー。
エヘッ!!ってお得意の笑みをなっちにプレゼントして
またやぐちは白線と睨めっこ。

白線が左に曲がったから、やぐちもそれを追うように白線を踏みつけた。









192 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:37











「あの飛行機雲…イナズマみたいじゃない?」


やぐちに言われて見上げるとオレンジ色に支配されている空。
空がオレンジ。
雲がオレンジ。
やぐちもオレンジ。
なっちもオレンジ。

温かい色だけど、何だか寂しい感じがするね。
・・気のせいだよね。


オレンジの雲と雲の間にやぐちの言うイナズマみたいに曲がった雲。
イナズマ雲の先の方はオレンジが濃くて赤に見えた。


「あぁー…ほんとだ。

 日が暮れるのも早いねぇ…もう秋だもんね。」







193 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:38








考えると本当に月日が流れるのって早いね。
あの暑い暑い夏が終わって秋になったんだよ?
今年の夏は色んな事したね。
やぐちと色んな思い出作ったね。
色んなもの一緒に感じたよね。

ケンカも一杯したけどその倍以上一緒に笑い合って、愛し合った。


ほらクーラーが壊れちゃった時、覚えてる?
あの時からかっただけなのに本気にして
洗面所に立てこもった時には子供だなぁって呆れたよ。
タオルケットごとぎゅって抱きしめた
あの感触、感覚、雰囲気。全部覚えてるよ。





194 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:38






床に寝転がって手をギュッて握り合った時も
キスマークしてって言われたあの日も
一緒にお風呂に入った日も(ガー子もね)
急に不安になってなっちから「好きだよ」って言った事も。


ぜーんぶ昨日の事のように覚えてるんだよ。

なっちはね、この夏の日だけで改めて思った事があるんだ。








やぐちといたらずーっと幸せだ、って。
ずーっと笑っていられるって思ったよ。

楽しいんだもん。
やぐちがバカな事をして呆れる時もあるけど
そこがまた可愛いな、って思っちゃうなっちの心はやぐちに染まりまくってるね。
恥ずかしいから絶対に言ってやんないけど。







195 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:39









少し目を瞑って夏の日の事と
目の前にいるやぐちの事を思い出して顔を綻ばせていた時



「卒業オメデトゥ。」
やぐちの真剣な声がなっちの耳に届いた。


「・・・ぁ、」


「って言ったけど、やだよ。
 ・・・・おいらは、いやだ。」

ありがとう。
そう言おうとしたのにやぐちがそれを遮った。






何が何だか分からなかった。








まだまだ白線は進むよ、どこまでも。
なっちとやぐちはそれを追うよ、どこまでも。








196 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:40










「なっちはよくおいらの事子供だ、って言うでしょ?」


「・・・・あぁ、言うねー・・・」


「あの時、嫌だ!って言いながら思い切り泣き叫んでやろうかと思ったよ。

 本当に聞き分けの無い子供になってやろうかと思ったんだよ?」




さっきまでの雰囲気が信じられないくらいに真剣。
アホアホやぐちとアホアホなっちのアホアホトークじゃない。

今のやぐちはモーニング娘。の矢口真里じゃなくて
なっちの恋人としての矢口真里。


頼もしかった調査隊、隊長やぐちの背中が
小さな小さな背中に見える。

俯いてるのは白線を見てるんじゃなくて、
心の中に溜め込んでた気持ちを言葉にするのに必死になってる証拠。











197 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:41









「だってさぁ・・・もう一緒に唄えないんだよ?

 同じステージで、大好きな歌。

 一緒に唄えないんだよ?


 いつもなっちと当たり前にしてた事、出来ないんだよ?」



「まだ時間ある、って言い聞かせてた。

 でもさ、夏が終わって秋になって。

 日が暮れるの早くなって、部屋の窓から夕暮れ見る度に実感すんの。


 時間が過ぎてる、って。」









198 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:42










「本当に・・やだ。

 その瞬間の事、考えるとホントに怖いんだ。

 卒業オメデトウ。
 お互いに頑張ろうね、今度一緒にご飯食べようね、おいらはなっちが大好きだよ。

 ・・・・・そんなありきたりな事言って

 涙我慢して顔歪ませてるおいらが目に浮かぶんだよ。 
 




 だからぁー…その瞬間の時に
 なっちが卒業するからおいらも卒業しまーす!なーんて言っちゃおっかなぁとか思っててぇー。
 なっちが卒業しないんならおいらも卒業するなんて言わなーい!とか我侭言って
 なっちを困らせようと思っちゃって。



 ・・・・・・困るだろぉ?

 それが嫌なら・・・・・・・・・卒業なんかすんなよ。




 ・・・・・・・・・一緒に、歌唄ってバカやろーよ?」


















199 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:42










咄嗟の事で頭が混乱した。


なっちがやぐちにその事を告げたあの日から
今日まで一回も真剣に話をした事がなかったのに。

冗談混じりで「後は頼んだよ」って言ったりした時はあった。
その時やぐちは「任せとけぇー」ってなっちを安心させるような笑顔で答えてくれた。


まさかやぐちがこんな事を思ってたなんて。
なっちはやぐちらしく受け止めてくれていたとすっかり思っていたのに。





ピタッと白線を追っていたのが急にストップして、
なっちも同じようにストップした。



ドキドキする気持ちはどんどん大きくなって
急に不安になってくる。
体中が暑くて、唇を自然と噛み締めた。










200 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:43














「・・・・イッちゃうとこまでイッた考えばっか。

 頭ん中、ぐーるぐーる回んの。


 どうすればぁ…なっちは卒業しないか…。

 ・・・そればっか、考えてた。」


途切れがちに1歩、2歩、3歩…ゆっくりと歩き出す。

やぐちの心細い涙声がなっちの胸を締め付ける。
心臓を抉り出されるんじゃないか、って思うくらい。
冷や汗が出て喉がカラカラに乾いてきた。
ミュールを持っている手は汗をかいて風が通り過ぎる度に涼しく感じる。


やぐちにかける言葉が見つからなくてなっちは沈黙のまま。
ぐるぐると色んな事が駆け回る。

あの時のやぐちの表情。

唇を噛んでなっちの事をじっと見つめていたあの表情。
なっちはそれを見てただ曖昧に笑ってた。

あの瞬間みたいに、何も言えなくてやぐちの背中を見て呆然としてる。









201 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:43














「・・・・・・でもさぁ…考えると、考えると。


 ・・なっちの夢はぁ…ソロでさ。



 ・・・・んでもって、その夢はぁ・・・・・








    おいらの夢。









 なっちの夢は、おいらの夢。



 なっちが笑うなら、おいらも笑う。

 なっちが泣くなら、おいらも泣く。

 なっちが苦しいなら、おいらも苦しい。

 なっちが楽しいなら、おいらも楽しい。

 
  
 ・・・・・・・だから…やーーーーーーーめたっ!!!」














202 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:45








振り向かずに歩いていくやぐちの後ろ姿をただ見つめるだけ。
歩く事すら出来なかった。
口を開けたままのなっちの表情はすごくだらしないって自分で思った。

どんどん距離が開いていく。

やぐちの小さい背中がまた小さくなっていく。

でもなっちはそこから一歩も動けなかった。








203 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:46












「・・・なっちの夢、おいらが壊してどーすんの?って感じじゃない?


 ・・・・心、狭かった。ごめん。

 自分の事ばっか考えてた。ごめん。

 

 ・・・・・・その瞬間の時はさ、笑うから。
 それ以前に泣いちゃってたら、ごめん。
 顔グシャグシャかも。パグってたら、ごめん。

 
 でも、これだけは覚えてて。


 なっちの事、一番に応援してるのはぁー


 家族でもない。

 メンバーでもない。

 ファンの人達でもない。



 ・・・・・・・・おいらだって。」


視界が歪む。

ぐらぐらと
ゆらゆらとオレンジ空とやぐちの金色の髪が混ざった。


鼻をすすったらツーン、と痛かった。

 








204 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:47















「この白線がなっちの人生だとしたら。



 ・・・・・おいらなっちの隣、歩くから。



 お互い・・・・支え合っていこ。


 全力で、好きな歌・・唄って。

 
 もう同じもの感じる事ないし同じもの乗り越える事もないけど…。
 

 でもさ…


 その笑顔だけは変わらないで。


 

 おいら、なっちの笑った顔がだいすきだから。
 もちろんどんななっちもだいすきだけどさ。

 

 ……って事でぇー・・・この話終わりッ!!!」







目から溢れんばかりの涙が出て下を向きそうになったけど我慢した。
涙のせいではっきりとは見えないけど遠くにいるやぐちの後ろ姿を見つめた。

空を仰いでいるそのちっちゃな背中。
なっちに隠すようにした溜め息がはっきりと聞こえた。








205 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:47









それにしても勝手に言いたい事ぶっちゃけて
勝手に終わる、なんてひどい。

なっちも言いたい事、いっぱいいっぱいあるんだよ。


でも何と言うか…そんな所もやぐちらしい。




なっちが立ち止まった分、距離が思い切り開いていて
俯いてるやぐちが離れた所で見える。


不安な気持ち。
ドキドキする胸の高鳴り。


全部吹き飛んだ。



その代わりに溢れてきた気持ちは、愛しさ。








206 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:48










滅多にしないダッシュ、気が付いたらしてて
精一杯走ってた。
涙をつたった頬が冷たく感じる。


早く


早く



やぐちに触れたい。


後ろから抱きしめる?

それとも名前を呼んで振り返ったやぐちの小さな胸に飛び込む?



どっちも却下。









207 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:49









走るスピードが遅いのは
ミュールを持ってて手が思うように振れないせいかもしんない、なんて都合良く思うよ。



やぐちの影を右足で踏んだ所で勢い良く飛びついた。


「ぅおぁっ!!!」


変な声と共に倒れそうにヨロヨロするやぐち。
しかも後ろへ倒れそうだからなっちの方が危険。
でも、しがみつく。
ぐいーって首に腕をまきつける。
両手はやぐちのミュールで塞がってるからぶらーんとしたまま。



「な、な、なんだよぉ!?」


「おんぶ。」


なっちの顔を見ようと斜め後ろを向くやぐちに
エヘ、って笑みをプレゼント。

はぁ?って表情を浮かべてるやぐちにもう一言
「おんぶー!!」
ってやぐちのツボってヤツを刺激するような可愛い言い方をすると
仕方ないなぁ、って顔をしながら歩き出した。









208 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:49










やぐちの目が潤んでた事、頬に涙の跡があった事、
すぐに気付いたけど気付かないフリをした。
だってやぐちも気付かないフリをしてくれたから。



「なっちさん…おいらの方がちっちゃいんですけど。」


無理があるよ、無理が。


ねぇ聞いてる?


って言ってるけどなっちは無視。



だってさ、ここで抱きしめ合ったら白線の調査が出来ないっしょ?

白線の調査も出来て、ぎゅって出来る。

これしかないっしょや。


今じゃなきゃ駄目なのさ。

今。

今ぎゅってしたいの、されたいの。


 
ちょっと違う感じがするけど…これでいいのさ。









209 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:50











「あ…この道。

 前になっちがやぐちをおんぶして歩いた道だよね。」


周りを見るとあの道だ。
確か近くに公園があるはず。
涙したせいでお互いに鼻をすすりながら辺りを見回した。



「そんな事あったっけ?」


「覚えてないのー?

 やぐちが足捻ったって言うからおんぶしてあげてたのにそれが嘘でさ、
 ケンカしたっしょ?あのー…青痣出来た時の。」


ちょっと無様だったよ、あの青痣。
思い出したら笑えてきたけど頑張ってこらえるようにお腹に力を入れた。
笑ってるのがバレるとやぐちが怒るから。








210 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:50









 
「あーアレか。

 青痣、本当に痛かったよ!!

 超バカみたいだったじゃん。」


「だって本気で心配してたのに嘘だったから腹立っちゃって。

 ・・・でもいいっしょ。

 元々バカなんだから。」


「あぁーそうかぁ!そうだよねぇ!!ってふざけんなよーぅ!!!」


「んふふ、いいね。
 いい感じのノリツッコミだったよ、今の。」

「ありがと。」

「いえいえ。」



またアホアホやぐちとアホアホなっちのアホアホトークに逆戻り。
さっきの真剣な話はどこへやら。


でも、ちゃんと忘れてなんかないんだよ。


・・・・今から言うから。










211 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:51










腰いたーい!
って騒いでるやぐちの右耳に顔を寄せてくっつけたら温かかった。


「・・・やぐちぃ。」


「何でちゅかぁー。なつみチャン。」


むかつく。
人が真面目な事言おうとしてるのにこのバカにした態度。


「真面目な話なの!

 黙って聞いてて!!」



「・・・・・分かった」


なっちが少し強い口調で言ったらすんなりと黙った。

絶対今のやぐち、口尖らせてるよ。








212 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:52










でもいざ言おうってなったら黙られてるのは妙に緊張が増す感じ。

我侭だけど。
 

それにね、いっぱい言いたい事があるくせに
言葉にしようとすると分かんないし恥ずかしい。


結局言えた言葉は



「・・・ありがとう」


たったの5文字だけ。



―あのね、その…もっと言いたい事あるんだよ!?
でも何ていうか…頭では分かってるんだけど言葉に出来ないっていうか…。
・・・・・・・・・・・ごめん。


途切れがちに自分でも驚くくらい心細い声でそう言うと
やぐちは「何となく分かるよ」って言ってくれた。
斜めから見たやぐちの表情は笑っていた。


たった5文字にどれだけの気持ちがつまってるか分かってくれたらしい。


全身に鳥肌がたつくらいに嬉しかった。
思わずぎゅって心なしかさっきよりもきつく抱きついた。








213 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:53












「……っていうかありがとうじゃなくて愛してるって言えー」

やぐちの冗談交じりの声に


「・・愛してる」


ご希望通りに。
いつもなら言わないけど今日は自然と口にした「愛してる」
恥ずかしくなって耳まで真っ赤になった。









214 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:54










「もっと言って」

「調子に乗ると怒るよ?」

「言わないと落とすよ?」

「落としたら二度と口聞かないよ?」


「・・・・・愛の言葉くらい…いいじゃんか…」


拗ねたやぐちを宥めるように一言


「・・すき。」


愛の言葉を。


そっか…。
フーン、みたいな態度とは裏腹になっちと同じで耳まで真っ赤なやぐちさん。

滅多に言わないから言われ慣れてないせいだと思う。









215 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:55










「・・矢口さん安倍さんからのほっぺにちゅぅが欲しーぃ」

「・・・あのねぇ、調子に乗ると本気で怒るよ?」

「やらないと落とすよ?」

「落としたら二度と口聞かないよ?」


「・・・・・ほっぺにちゅぅくらい…いいじゃんか…」


もぅー!!
って怒りながらも拗ねたやぐちを宥めるようにほっぺに軽くちゅぅ。



は、始めから…しろよぅ…
当たり前ー!余裕!みたいな態度と裏腹なのはさっきと同じ事。


でもこんなのが。
こんなくだらない会話のひとつひとつが









216 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:57









「・・・楽しいね。」


「・・おいらといるんだから楽しくないわけないでしょー。」


そうだね、って笑った。
そうでしょ、って笑い返してくれた。


「ずっとこうしていたい。」


「離れる事なんかあるわけないでしょー。」


おいらがなっちを愛してる限り、離しませんから。
例えなっちが他の人を好きになったとしても。
おいらはなっちから一生離れてなんかやんないよ?
しつこいよ、おいらは?
何せ虫だからねぇ、おいらは。


イヒッって笑って「ご愁傷様、なつみチャン」って言われた。








217 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:57








「・・・なっちもその気ですから、別にいいですよ?

 なっちだって……離れてやんないもーん」


やぐちに対抗してイヒッって笑い返してやった。


やぐちはまさか言われるとは思ってなかったらしく
相当驚いたようでなっちを支えていた両手をぶらん、と下げて急に立ち止まった。


やぐちの両手が下がったせいで自然と体がやぐちから離れて
なっちは久々に地面に足がついた。
ちょっと足がジンジンした。


「きゅ、急にそんな事言うなよぉ…」



「急なんかじゃないしぃー。

 ほんとの事だしぃー。」

なっちの方を向いたやぐちの顔は真っ赤。

さっきから何回照れてるんですか、やぐちさん。
逆になっちは全然平気なんだけど。








218 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:58









ほら、そんな事よりミュール履きなよ。

ずっと持たされてたミュールを地面に置いて言った。
さすがに痛い、という前に足が冷たそう。


「足汚い?」

「黒くなってる。汚いよ」

右足の裏をなっちの方へ向けてこの体勢にちょっと苦しそうな表情。

真っ黒な足の裏。

そりゃあれだけ歩いたら黒くもなる。


ミュールを履いたやぐちはさっきよりも背が高くなった。
なっちの目線のすぐ下にやぐち。
それでも小さいのには変わりないんだけど。








219 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:58









「・・・・・・」


じぃっとなっちを見つめるやぐちの視線。

 
「・・なに?」


・・・・・ぎゅっ。


きつく抱きしめられた。
いきなりの事でちょっと驚いたけど腕をやぐちの背中に回して
同じくらいぎゅっとした。

肌寒かった体がやぐちと抱き合う事によって温かくなっていく気がする。
首筋に顔を埋めたら髪のいい匂いがした。
なっちと同じシャンプーの匂い。







220 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:59










幸せの余韻に浸っていたけど少し下を見ると白い線。
・・・・・・・・白線の調査。



「・・・白線の調査はイイの?」


止まってたら調査できないよ?
一応「最後には何処に辿り着くのか」って調査してたはず。



「ホントは知ってる。

 
 ・・・・・なっちのマンションの前に辿り着くんだよ。」


知らなかった?
気付かなかった?


得意気にフフン、って鼻で笑ってみせた。








221 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/12(水) 23:59










「そ、そーなの?」


「うん。

 マンションの周りをぐるーっと一周しただけ。

 でも白線を辿ったのはほんとだよ。」



そういえば…気付くともうすぐマンション。
一周しただけなのにかなり時間が経ってる気がするんだけど…


オレンジの空はやがて闇に侵食されて辺りは薄暗くなっていた。
この暗さだと多分6時過ぎくらいだと思う。









222 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/13(木) 00:00









「さーってと、帰ってなっちの愛情たっぷり手料理でもいただきますか!!」

先になっちをいただいてもイイけどね!!

「作るのはいいけどやぐちもちゃんと手伝ってよー?」

先になっちをいただいても…は無視。


「うん、やぐちさんに任せろぉ!!
 
 んじゃ、早く帰ろ?」


抱きしめ合ってた体をお互いに離すとやぐちのご機嫌な表情が見えた。
それを見てなっちも嬉しくなる。
なっちもご機嫌になる。






223 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/13(木) 00:00










差し出された左手に当たり前のようになっちの右手を。
勢い良く重ねたら「パン!」っていい音が鳴った。

そして恋人つなぎ。


「帰るべ!?」

「帰るべ。」


夕方で人がいないせいでバカップルみたいに
つないだ手をブンブン振って歩いた。

少し寒かったけど手をつないでいるから全然気にならなかった。








224 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/13(木) 00:01












『この白線がなっちの人生だとしたら。
 ・・・・・おいらもなっちの隣、歩くから。』

なっちの心の中でやぐちの言葉が蘇る。

辺りが薄暗くなって見えにくいけど足元に白線。
なっちの、やぐちの足元に一本の白線。
ずっとずっとこの先の先まで続いてる白線。
なっちの通った事のない道にまで続いてる白線。


なっちの人生はこんなに一直線じゃない。
きっと曲がりくねってて寄り道してると思う。


でも、どんな道でもやぐちがいれば大丈夫だよね。
やぐちと手をつないで歩いていけるよね。

行き着く所に行くのが遅くなっても。
途中で迷ったり道が分からなくなっても。

なっちは楽しいよ。

やぐちがいるから。


なっちは笑っていられるよ。

やぐちが隣で笑っている限り。







225 名前:この白線を辿れば あの一線を越えれば 投稿日:2003/11/13(木) 00:04











やぐちの手の温かさがじんわりと伝わってきて
こういう事が幸せなんだって思った。
大好きな人と、手をつないで帰る帰り道。
例え辺りが暗くなっても、
例え風が吹いて寒くても。
このつないだ手が全てを温かくしてくれる気がする。

そんな思いを噛み締めながらふとやぐちの顔を横目で見た時、
何故か夕飯はシチューにしようと思いついた。









226 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/11/13(木) 00:11
>185 タケさん。
レスありがとうございます!
やっぱり基本は砂糖多めで(w
私も書いてて楽しいです(笑)

>やっぱり旦那矢口さんは安倍さんに尻にしかれるんでしょうか?
私的に矢口さんはそうであってほしい感じがします(笑)




227 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/11/13(木) 00:19
この白線を辿れば あの一線を越えれば

最後です。
最後はこの話にしたい、と思って結構前から書いてたんで
最初の方内容が古いと思います。

最後のくせに話が意味不明で
理解し難い部分多々あると思います。
本当にすいません。
ふ、深くはつっこまないで下さい(苦笑)

やたら長いので読むのに時間がかかったと思います。
読まれた方、お疲れ様でした(笑)




228 名前:銀色カレースプーン。 投稿日:2003/11/13(木) 00:26
以上で『短編集』は終わりです。
拙い文章、矛盾した話が多すぎましたが
自分自身書いてて楽しかったです。

レスをくれた方、一回でも目を通してくれた方
全ての方に感謝します。
本当にありがとうございました。




229 名前:jinro 投稿日:2003/11/13(木) 17:43
なちまり…。
最近メディアでの露出がやたら多くて感化されまくりだったのに…

トドメを刺されますた。(●´ー`(^◇^〜)
230 名前:タケ 投稿日:2003/11/13(木) 18:35
お疲れ様でした

とにかく感動しました
やっぱりやぐなちは最高でした


きっといつまでたっても2人はこうやってバカやってるんでしょうね


改めて・・・完結おめでとうございます!

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