家族
- 1 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 03:50
- え〜っと小説をはじめて書きます。
つまらない小説になると思いますゴメンナサイ
至らないところがたくさんあると思いますがよろしくオネガイシマス。
感想や御意見など頂けたら嬉しいです。
登場人物は
安倍、矢口、吉澤、後藤、辻、加護
で姉妹のお話です。
スゴクつまらないかもです。ごめんなさい
- 2 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 03:52
- 晴れた青い空にお父さんとお母さんは煙に変わり高く高く上っていった。
この先どうしたらいいのか、どうやって暮らしていけばいいのか分からず、
ただただその上がっていく煙を見つめていた。
ジリリリリリリリリリリ…
バシっ
「夢…」
(ヤな夢見たな…はぁ…あれから半年か…)
半年はあっと言う間に過ぎていた。一番上の自分でもまだ13才で親代わりが必要だった。そして自分たちはたった一人の親戚である
『中澤裕子』という人にお世話になることになり、家は確保出来たものの
裕ちゃんは忙しくて家になかなか帰ってはこなかった。となると必然的に一番年上の自分がお母さん代わりである。慣れない炊事や掃除などに追われる日が続いていた。
「皆を起こして、朝ご飯作んなきゃ…」
重い身体に鞭をうち着替えて皆を起こしに行く。
- 3 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 03:53
- コンコン
「真里〜朝だよ起きて。」
「ん〜〜〜」
「ほら早く!」
「あ〜い」
「下に来る前にひとみ達起こして一緒に来てね」
「分かったぁ…」
しばらくすると皆降りてきた。
「「「「「なっちおはよ〜〜」」」」」
「はい、おはよう。さぁ早くご飯食べて学校行きなさい」
「うげ〜牛乳いらない。ののあげる!」
「コラっ真里っ!好き嫌いしない!」
「ゆで卵がない!」
「ひとみは文句言わない!!」
「あ〜ののがうちのベーコン取ったぁ!!」
「早いモノ勝ちれす」
「こら!のの!亜依のを取らないの!亜依もなっちのあげるからいいでしょ!?」
「zzz…」
「もぉ!真希!食べながら寝ないで!」
あぁもうっ!何で毎朝毎朝こんなに五月蝿いかなぁ〜!!
「いい加減にしなさいあんたたち〜〜!!」
毎朝一回はキレる。これがなっちの日課…はぁ…
「「「「「ご馳走様ぁ〜〜〜」」」」」
- 4 名前:つみ 投稿日:2003/10/10(金) 13:41
- おもしろそう!
作者さんがんばってください!
- 5 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 13:59
- >>4
つみさん、ご声援アリガトウございます!
頑張って面白くするように頑張ります!
- 6 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 14:02
- 「のの!亜依!遅れるよ!早く行きな。鍵忘れちゃダメだよ!?」
「「あ〜い!行ってきま〜〜っす」」
「はい、いってらっしゃい!」
2人は元気に飛び出していった。
「ひとみ!真希連れて早く行きなさい!」
「ほら〜真希行くよ〜、行ってきまぁっす」
「ムニャムニャ…行ってきます…」
「真希!自分で歩いてよ〜〜お〜も〜い〜!!」
半分眠ってる真希をひとみは引きずりながら出て行った。
「なっち!洗い物終わった!?早く行かないと遅刻だよぉ!!」
「今行く!よし、火は消したし電気も消した!鍵もバッチリかけたと。」
「なっちぃ!早く〜〜〜」
「あ〜〜〜い」
はぁ…朝から疲れる…
毎朝毎朝なんでなっちだけこんな忙しい目にあわなきゃなんないんだろ
なっちだって普通の中学生したいよ…
- 7 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 14:37
- キーンコーンカーンコーン
今日もギリギリ…何で皆もうちょっと早く出てくんないかなぁ…
「なっちオハヨ〜〜!」
「かおり、おはよ…」
「ん〜〜?元気ないぞ?どうしたぁ?」
「別に何も無いよ〜」
「む〜〜〜よし!元気つける為に帰りマクドでも行こ!!かおり奢ってあげるよ!!」
「ごめん放課後は無理だぁ…」
「そっかぁ仕方ないねぇ…んじゃ今度休日どっか行こ?その時奢ってあげるよ!!」
「ありがと、かおり」
なっちだって放課後遊びたいよ…自分の時間が欲しい…
- 8 名前:Crea 投稿日:2003/10/10(金) 17:57
- よしっアップ完了!^^
12時以降にまた更新する予定です。
リクなどありましたらお受けしますw
もしこの小説が好きって言ってくれる方がある程度いたら
シリーズ化も考えています。^^;
感想などドシドシ頂けたら嬉しいです。
- 9 名前:つみ 投稿日:2003/10/10(金) 21:49
- 中学生のなっちは大変ですね・・・
でも、こんな姉妹があったらいいでしょうね!
- 10 名前:ぺんた 投稿日:2003/10/10(金) 22:11
- ひとみと真希の、やり取りがいいですね。
寝ぼけた真希がかわいい。
- 11 名前:Crea 投稿日:2003/10/11(土) 00:06
- キーンコーンカーンコーン
学校終わっちゃったよ…はぁ…今日の晩御飯何にしようかな…
昨日は親子丼だったし〜…って何で若い身空でこんな主婦の考えしなきゃいけないのさぁ…はぁ…とにかくスーパー行ってから今日のは考えよ…
「ただいまぁ…」
「ウワーーーン!!!!!」
はぁ…まただよ…何で仲良く出来ないかなぁ!!もう!!
「なっちぃ〜ののが殴ったぁ〜ワーーーン!!!!」
「のの!!何で亜依のこと殴ったの!?」
「らって、のののオヤツ食べようとしたんれす!!」
「はぁ…だからって殴る事じゃないっしょ?亜依ものののオヤツ取らないの!自分のあるでしょ?2人ともちゃんとゴメンナサイしなさい!!」
「「ごめんなさい…グスッグスッ」」
「ただいまぁ」
「真里〜いいとこに帰ってきてくれた!!悪いけど夕食作んの手伝って?」
「え〜〜〜やだよぉ〜」
「も〜〜〜!!!ちょっとぐらいいいっしょ!?」
「やだ!!」
そういって真里は逃げるように部屋に入ってしまった。
「真里!!もぅ!!!!」
「「ただいまぁ」」
「「「オカエリ〜」」」
「帰ってきて早々ごめん、真希洗濯物入れてきて〜、ひとみはお風呂沸かしてくんないかな?」
「「え〜〜!!やだよ〜!」」
「お願いだから〜」
「真里ちゃんに頼んでよ!」
そう言うとひとみは走って部屋に逃げてしまった。
「あっちょっとまってよ、ひとみぃ〜」
真希もひとみを追いかけていった。
つまり、なんだかんだで逃げられた。
も〜〜〜〜!!!!!!少しぐらい手伝ってくれたっていいじゃん!!
今までずっとそうだ、絶対手伝ってくんないんだ。
なんだよ、誰のために夕食作ってると思ってんの!?
バカらしい!!も〜やだ!やってらんない!!
こんな家嫌いだ!!!!!
- 12 名前:Crea 投稿日:2003/10/11(土) 22:20
- 「なっちぃお腹すいたれす〜。」
「お腹すいた〜〜」
「ありゃ?あいぼん、なっちいないれす」
「ほんまや、どこ行ったんやろ」
「あいぼん、裕ちゃんの喋り方写ってますね」
「う、うちのことはええやん!!それよりなっちやって!」
「そ、そうれす!!真里ちゃんに言うれす!!」
「はぁぁぁぁぁ!?なっちがいない!?ちょっとやばいよそれ〜」
「どこに行っちゃったんれしょうか…もうお外は少し暗いれすぅ…グスッ」
ののは半べそをかいていた。
「と、とにかく!裕ちゃんに連絡しよ!!」
トゥルルルルルルルル ガチャ
『はい、中澤です』
「裕ちゃ〜〜〜ん ウエーーーン」
『真里か?何や!?どないしたん!?何で泣いてるんや!?』
「なっちが、なっちがぁ〜 グスッグスッ」
『なんや!?なっちにナンかあったんか!?ちょぉ待っときや!すぐに帰る!』
- 13 名前:Crea 投稿日:2003/10/11(土) 22:20
-
〜30分後〜
バタン!!
「真里、ひとみ、真希、のの、亜依!どないなっとんねん!?」
「「「「「ウワーーーーーン裕ちゃぁん」」」」」
「なっちは!?」
真里が頭を横にふった。
「なっちが行きそうなとこは!?」
全員で頭を横にふった。
「なんでそれぐらい知らんのや?兄弟ちゃうんか!?」
「だってなっちはいつも学校終わったらすぐ帰ってきてくれたんだもん!グスッグスッ」
真里が言い返す
「はぁ…そこらへん探してくるから家でおりや…」
「「「「「はぁい…グスッ」」」」」
もう外は薄暗かった。すでに7時を回っている。
(くっそ〜どこいったんや)
焦りだけがつのっていく。
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/26(日) 17:03
- おもしろそう。期待。
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/20(木) 00:11
- 作者さんがんばってください!
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/15(月) 11:38
- 面白そうと思ったらCreaさんが放棄宣言を案内板にてしていた……
スレッドがもったいないから、続きを代わって書いていいかな?
(Creaさんから、ご了承頂けるとありがたいんですが……って見てないか、もう)
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/15(月) 11:39
- スマソ
ageちまったい
- 18 名前:Crea 投稿日:2003/12/15(月) 17:46
- スレをもったいない結果にしてしまい、とても心ぐるしいのですが、
放棄、ホントに申し訳ありません。
名無し読者サマに代わって頂けると嬉しいです。
ホントに申し訳ありませんでした。m(__)m
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/16(火) 10:24
- ご承諾が得られたので、やらせて頂きます。
設定等は、このままで数人ほど加えた形にしたいと思ってます。
ご意見、ご感想、ご批判等ありましたらごうぞお気軽に。
近々、更新したいと思います。
- 20 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 03:26
-
〜その頃、当のなっちはというと〜
「もお、なっちの気も知らないで、みんな我侭ばっかり!」
バリ、ボリ、ボリ……
「なっちだってまだ中学生なんだよ?それなりに遊びたいのにっ!」
ズズズ〜ッ……
「なんでなっちばっかり家の事しないといけないのかな!?」
ムシャ、ムシャ……
「ねえ、圭ちゃんってば、聞いてますか?」
「聞いてるよ、うん、聞いてる」
なつみは自宅からホンの50m先のアパートにいた。
いつもお世話になってる圭の部屋。
裕子の焦りと不安をよそに、なつみはやけ食いをしていた。
育ち盛りとは恐ろしいもので、買ってきたお菓子やらジュースやらが見る見るうちに減っていく。
「なっちは一人っ子がよかったよ」
「なんで?」
「だって自由な時間が一杯あるじゃん。一人なんだもん」
「良いもんじゃないよ、一人って」
「そんなことないよ。羨ましいよ」
「そんなに一人になりたい?」
「うん」
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 03:33
-
「じゃあさ、これから二時間ほどこの部屋で一人でいてくれないかな?」
なつみは一瞬えっという表情を見せた。
「この後さ、圭織ちゃん家で二人の家庭教師しなくちゃならないんだ。
だからアタシが帰ってくるまでここにいてくれる?」
「なっちひとりで?」
「そうだよ」
なつみの顔からさっきまでの威勢が消えた。
不安そうに圭を見つめる。
「だって一人になりたいんでしょ?この際、体験してみたら?一人っ子の気分でも」
「で、でも……」
「あ、そろそろ時間だから、じゃあ頼んだよ?」
傍らにおいてあった教材を持って圭が部屋を出て行った。
静まり返る部屋になっち一人ぼっち……だ。
いつも圭ちゃんちにはお邪魔してたけど、こうやって誰もいないと……淋しい、かな?
イヤイヤ、そんなことないもんね!せっかく一人の時間ができたんだから好きな事しよう!
とりあえず、前から気になってたゲームでもやろう。
なつみはテレビの前に転がっているカセットを見た。
そして横には何やらメモが一枚。
「なんだろ、これ……“ス○ーソ○ジャー裏技”?」
やったことのないゲームのスイッチを入れてやってみる。
なんだか、妙に楽しい。
……。
なつみは一世代前のゲーム機『ファ○コン』にハマッた。
- 22 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 03:34
-
こんな感じで書き出してみたけど、どうでしょうか?
意見、批判等あったらご自由にどうぞ。
- 23 名前:名無しくん 投稿日:2004/01/02(金) 23:19
- いい感じですよ!
最近、なっちメインのものが少ないので期待してますよ!
更新待ってます
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/17(土) 15:45
-
Creaさんに代わって続きを書いた者です。
重ね重ね申し訳ないですが、これ以上この設定で続き書けそうにないです。
ホント、申し訳ないです。偉そうなこと言って、スイマセンでした。
名無しくんをはじめとする読者の方々、そしてCreaさんにこの場を借りてお詫び申し上げます。
ごめんなさい。
しかし、一端スレをお預かりした以上、きちんと使い切りたいので、
全く別のお話を載せたいと思います。
こんなんで罪滅ぼしになるかどうか判りませんが、どうかこれでご勘弁を。
- 25 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/17(土) 15:47
-
『愛物語。』
【キャスト】
飯田圭織(w)、保田圭(m)、矢口真里(m)、安倍なつみ(w)
* 矢口さんは真里と書いて“まさと”と読んでください。
- 26 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/17(土) 15:48
-
「……あの、ご卒業おめでとうございますっ」
「ありがとう」
「……」
「どうしたの?」
「……あの、私、ずっと前から先輩のこと……好きでした」
「そうなんだ……気がつかなくてごめんね」
「いいんです。最後に言えたから……」
「ありがとう」
「……あの、卒業する前に一つだけ、私のお願い聞いてくれませんか?」
「なに? 僕がしてあげられることならなんでも聞くよ?」
「私の…………ませんか?」
「そ、それはダメだよ。そんなこと僕にはできな……」
「お願いです! 先輩に彼女がいることも知ってます。私の恋が叶わないこともわかってます。
でも、でも……どうしても、先輩との思い出がほしいんです!」
「圭織ちゃん……」
「先輩……」
……。
嫌な夢を見た。
もう二年も前のことなのに、カオリの中ではきちんと整理がついた事なのに……。
なんで今更先輩のことを……私、まだ先輩のこと……。
- 27 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/17(土) 15:48
-
◇ ◇ ◇
既にお昼を回って、力強い日差しが真上から校舎とその周辺を照らしてる。
まだ夏は2ヶ月も先なのに、外を歩くのに長袖ではうっすらと汗を掻くくらいに暑い。
四方を近代的な造りの建物に囲まれた中庭、その中でも直射日光が防げる木陰のベンチで、
カオリは一人時間を潰してた。
「なぁ〜に一人で黄昏ちゃってるのさ」
木陰の後ろから声がして振り返ると、同級生のなっちだった。
なっちとは同じ出身地だったこともあって、すぐに仲良くなった。
大学進学と同時に出てきたなっちは、人一倍北海道を愛してる。
カオリは中学に入学すると同時にこっちに引っ越してきたけど、
カオリだって今でも生まれ育った故郷は好き。
だから必然的に、似たモン同士が集まった感じで意気統合しちゃった。
「カオリはもう授業ないの?」
「うん。もう終わり」
「いいなぁ〜。なっちあと、2コマ残ってるよ〜」
そう言って肩を落としてるなっち。
まだ授業始まって1ヶ月しか経ってないのに、もうダレてる。
気持ち、判らないでもないけどね。
今日の講義は午前中で終わり。
だから用がなければ、そのまま帰路に就いてる頃なんだけど、今日からは新しい用事ができた。
今日からバイトで家庭教師をすることになったから。
今の大学は付属高校からくる学生が大半で、カオリみたいに受験で入ってくる学生にはそれなりのレベル。
当然カオリも去年、寝る間も惜しんで受験勉強した。
でも勉強は好きなほうだったから、受験勉強もそれほど苦にはならなかった。
だから家庭教師のバイトは、カオリにとって楽しいお仕事になる……そう思っていた。
教え子になる生徒さんに会うまでは……。
- 28 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/17(土) 15:50
-
◇ ◇ ◇
約束の時間が迫ってきた。
前もって教えられた住所は、カオリの住んでる街の隣りだった。
土地勘は無いほうだけれど、きちんと区画整理された街並みだったお蔭で、簡単に辿り着くことができた。
辿り着いたのはどこにでもありそうな普通の一軒家。
けれど、そのお家の表札を確認した時、一瞬ドキッとした。
だって苗字が、高校時代に憧れてた初恋の先輩と同じだったから。
けどよくよく考えたら、同じ苗字の人なんていっぱいいるし、
仮に先輩のお家だとしても、先輩は私よりも一年上だし、
先輩には妹がいるらしいけど、歳が五つも離れてるって聞いた事がある。
カオリが教えるのは大学受験生だっていう話だから、先輩である可能性はほとんどない。
大丈夫、そう自分に言い聞かせて、でも恐る恐るチャイムを押した。
「は〜い」
中から可愛らしい声がして、ドアが開いた。
応対に出たのは、学校から帰ってきたばかりなのか、制服姿の綺麗な黒髪の女の子。
きっと妹さんなんだろう、目がクリッとしててちょっと驚いてるみたい。
「あの、今日からこちらで家庭教師をすることになった飯田といいますけれども」
「あ、はい。お話は伺っております。どうぞ」
なんだか礼儀正しい女の子だなぁ、なんて感心しながら、奥へと通された。
どうやらご両親は共働きみたいで、お家の中には女の子しかいなかった。
軽く御もてなしを受けてから、その子は席を外した。
「あの、今、兄を呼んで参りますんで」
「おそれいります」
私はどんな子なのか期待を膨らませながら、待っていた。
妹さんの話ではかなり大人しいとのこと。
ん〜、カオリも割りと大人しいほうだから上手くやっていけるかなぁ、なんて
ちょっと危惧していたら、2階から降りてくる2つの足音が聞こえた。
ちょうどカオリの背後に階段があるから、座っていた椅子から立ちあがって振り返った。
そして私の目の前に現れたのは……。
- 29 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/17(土) 15:51
-
「「あっ……」」
お互い時間が止まった。
相手は、妹さんが「知り会い?」と言う声も聞こえてないくらい、びっくりしている。
もちろんカオリも同じようにビックリして声すら出なかったけど、
目は瞬きもせずに、じっと目の前の瞳を見つめてた。
(あの頃となにも変わってないんだ)
そう、カオリが家庭教師をすることになったのは、高校時代に憧れていた初恋の先輩。
そして……卒業式の時に私の無理からのお願いを叶えてくれた、初めての異性――保田先輩だった。
- 30 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:42
-
「どうぞ……ちょっと散らかってますけど」
そう言って通された先輩の部屋。
男の人の部屋なんて見るのは初めてだったけど、漫画とかでよく見るような
乱雑なイメージとは違ってシンプルな感じのお部屋だった。
読書好きの先輩らしく、ベッドの傍の本棚は文庫本で溢れかえってた。
そう言えばよく先輩に本を借りてたっけ。
そんな昔の事を思い出してたら、先輩から声を掛けられた。
「とりあえず座ってください」
先輩は、既にテーブルの上に教材を置いて、私が座るのを待っていてくれた。
カオリの目の前に置かれたクッションに座るようにと、先輩は片手を差し出して促してる。
カオリは恐る恐るそこへ座って、荷物を置いた。
そしたら急に先輩の懐かしい匂いを感じた。
テーブルを挟んで目の前には、あの頃と変わらない先輩がいる。
距離にしておよそ30cmくらい。
こんなに間近で先輩を見るのはあの時以来だったから、不意にその時のことが頭に浮かんでしまって、
思わず真っ赤になっちゃった。
そんなカオリを見つめながら、先輩は優しそうな目で挨拶代わりに喋り始めた。
- 31 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:43
-
「久し振り……だよね」
「は、はい……」
「ビックリしたでしょ?」
「はい……」
「ちゃんと話しておいたほうがいいよね。実はさ、大学辞めたんだ」
「えっ……」
カオリはびっくりして顔を上げた。
だって先輩は、常に学年でも50番以内に入るほど成績が良かったし、
先輩が現役で入った大学は私の大学よりもレベルが高い大学だったから。
そんな恵まれ過ぎた環境にいた先輩がなぜそんな事をしたのか、カオリには理解できなかった。
あの頃よりも少しだけ痩せた頬を掻いて照れる先輩は話しを続ける。
「なんかね、大学に行ってても何の興味も湧かないんだ。行ってる意味がなくなっちゃってさ。
そう思ってた矢先に、交通事故の巻き添え食らっちゃってね、留年しちゃった」
「交通事故? 留年?」
「うん。ちょうど後期試験の一週間前に一ヶ月ほど入院する羽目になっちゃってね。
ちゃんと理由を言えばそれなりの対処はあったんだろうけど、もうどうでもよくなっちゃってね。
そのまま留年ついでに退学しちゃったよ」
「そう……ですか……」
「なんで、圭織ちゃん……あ、違う、えっと、圭織センセェが落ち込むの?」
先輩に久し振りの名前を呼んでもらった。
先輩とは同じ部活で、くしくも飯田って言う男の子がいたからカオリの事を名前で呼んでくれてた。
だけど言い直されちゃったから、嬉しさ半減。
それにカオリのほうが年下なのに、先生呼ばわりされてる。
なんだか偉そうに思われるのが嫌だったから、断りをいれておいた。
- 32 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:44
-
「あの、カオリのほうが年下だから、先生なんて呼ばなくてもいいですよ」
「でも、一応僕の家庭教師なんだから、それはできないよ」
「……」
先輩にそう言われると何も言えなくなっちゃうカオリ。
昔からそうだった。
自分の想っていることはいつ何時でも貫き通してきたけど、
先輩にだけは、貫き通せずにいつも自分から折れてしまってた。
勿論、そのほとんどは先輩の言い分が正しいからなんだけども。
先輩が急に笑みを浮かべて言った。
「相変わらず変わってないね。今も昔も」
「えっ」
「そうやって気を遣うところとか、直に折れちゃうところとか」
「そんな……」
私の性格をちゃんと覚えていてくれたことに、さっきまでの嬉しさが戻ってきた。
最後に会ってから二年経って、もうカオリの事なんか忘れてるんだろうなって思ってたから。
段々とカオリの心の奥底にしまっていた恋が甦ってきちゃう。
叶わないとわかってるのに……。
不意に先輩が質問してきた。なんか顔が意地悪そうに笑ってる。
「センセェはもう彼氏とかいるんでしょ?」
「そ、そんな……カオリなんか全然モテないですから」
「そうかな? センセェなら彼女にしたいっいう奴いっぱいいると思うんだけどなぁ」
「……ほ、誉め過ぎですよぉ」
「そう? だって可愛いじゃない」
先輩にそんな事を言われて、平然としてられなかった。
もう天にも昇るような気持ちになって……。
これじゃあどっちが先生かわかんないよ。
先輩のバカぁ。
- 33 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:45
-
今日は初日という事もあって、勉強はしなかった。
その代わりというか、運命の(?)の再会だったから、今日までのカオリを先輩に包み隠さず話した。
この2年間で自分がどれだけ成長したのかを、先輩に知ってもらいたかったから。
先輩は話しの腰を折らずに聞き手に回ってくれて、時には笑ったり驚いたり、
ちょっと拗ねてみたり茶々なんかも入れたりしてカオリの話を聞いてくれた。
話し終えた後に先輩が「大人になったんだね」って言ってくれた。
カオリのことを一人の大人の女性として捉えてくれたことが正直嬉しかった。
お返しとばかりに、先輩も自分の事を教えてくれた。
カオリも先輩みたく上手に聞き手に回ろうとしたけれど、先輩の口から出てくる事実に黙っていられなかった。
「先輩、別れちゃったんですか?」
「うん。卒業してから急によそよそしくなってね。久し振りに会ったらあっさり言われたよ、貴方とは遊びだったって」
「遊びって……あんなに仲良さそうにしてたのに」
「僕は単なる道化師だったみたい。僕と付き合う前から別の人と付き合ってたみたい」
「ごめんなさい、嫌な事思い出させちゃって」
「別に気にしなくてもいいよ。もう過ぎた事だしね」
「でも……カオリが昔話なんかしなかったら、思い出させたりしなかったのに……」
「圭織センセェは……優しい過ぎだよ」
そう言った先輩の愁いを帯びた顔。
たぶん、今先輩は過去のことを思い出しちゃったはず。
でも、その辛さを見せずに、却って落ち込んでるカオリのこと心配してくれてる。
そういう何気ない優しさに、他人思いの先輩にカオリは恋しちゃったんだ。
- 34 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:46
-
先輩よりカッコよくて、いいなって思った男の子はいたし、逆にそんな男の子から告白もされたりしたけれど、
その子たちに対して、好きとか付き合いたいとかっていう想いは膨らまなかった。
けれども、先輩だけは違った。
部活とかで接していくうちに、今まで感じなかった想いをいつしか感じてしまってた。
先輩の姿を見ただけで胸がときめいて、先輩に声を掛けられただけで舞いあがっていた自分。
次第にカオリの中で、先輩の占める割合がどんどん膨らんでいくのに時間はかからなかった。
先輩にはカオリが恋する前から彼女がいたことも知っていたけど、膨らんだ恋心は抑えられなかった。
だから、思い切って先輩が卒業する時に、全てを吐き出した。
先輩が好きになった事も、先輩にして欲しかった事も、そして……そんな先輩を諦めなくてはならない事も。
そうして封印した先輩と言う名の宝箱が月日を経て、カオリの目の前に現れた。
今すぐにでも開けたい衝動に駆られる。
開けてまた先輩との時間を作りたい……できれば先輩の隣りで。
でも心のどこかに、それを引き止めるもう一人の自分がいる。
あの時、最後と言って叶えてもらった願い――それが嘘になってしまうという恐れを抱いた別のカオリがいる。
本当のカオリはどっちなんだろう。
けれど、ふと今朝見た夢を思い出した。
なんの前触れもなく見た夢。
もしかしてあれは今日、先輩と出会う事を予言してくれたのかもしれない。
そして、その夢はカオリに何かを訴えたかったのかも。
……。
カオリはパンドラの箱を開けた。
- 35 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:47
-
「先輩は今……恋人はいないんです、か?」
「うん。一年ぐらいいないかな」
それを聞いて、カオリの中に眠っていた淡い恋心が一気に燃え始めた。
ようやく月日をかけて諦めたのに、その努力は簡単に打ち砕かれた。
いや違う。最初から諦めようなんて努力してなかったんだ。
本当に諦めてたら、今先輩を目の前にしてこんなに恋しくて、こんなにときめいたりなんかしないはず。
やっぱりカオリは、保田先輩が今でもずっと好きなんだ。
好きという想いが今のカオリを推してる。
もう誰の邪魔もない、今がチャンス!
会って急にこの想いを告白するなんて、カオリらしくないと思ったけど、でも言わなきゃ。
「先輩……あの時のこと、覚えてます?」
「あの時?」
「はい……先輩が高校を卒業する時のことです」
「ああ、あの時か。うん、ちゃんと覚えてるよ」
「……」
「圭織センセェ?」
「……あの時、先輩との思い出が欲しいって言いましたけど、あれ、訂正していいですか?」
「えっ……」
「……先輩との思い出じゃなくて、先輩が……欲しいです」
「か、圭織ちゃん!?」
先輩の驚く顔なんて見る余裕ない。
だって顔が真っ赤になって顔から火が出そうなくらいになってるから。
それでも、前に進まなきゃ行けないって思って、恥かしいけど目を瞑って告白した。
カオリの想い、届いてっ!
- 36 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:47
-
「私、保田先輩がまだ好きなんです。カオリと……付き合ってくださいっ」
- 37 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:49
-
目を瞑って思いの丈を吐き出してから、先輩の顔をそっと見た。
カオリと同じように、先輩も顔が真っ赤で突然の告白に驚いてるみたい。
予期せぬ出来事が起こった時、先輩の必ず顔が紅くなる癖は今も昔も変わらない。
そんな先輩がカオリは好きなんです。
お互いちょっと間が空いて、ようやく先輩が応えを出してくれた。
「圭織センセェ……いや、圭織ちゃん。気持ちはすごく嬉しい。
だって、同じ人から二度も告白されるくらい、僕の事好きでいてくれるんだから、嬉しくないわけないよ」
「先……輩……」
「けど、今の僕には圭織ちゃんと付き合う余裕も資格もないよ……」
「先輩……どうし……」
「今、僕はこういう状態だから……。だからせっかくだけど……」
やっちゃった……やってはいけない過ちを犯しちゃった……。
先輩は本当に申し訳なさそうに俯いてる。
先輩は悪いことなんか一つもしてない。
むしろカオリがバカだったんだ。
- 38 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 02:50
-
先輩は今年一年、頑張って勉強しなくちゃいけないのに、恋なんてしてる暇さえないのに、
そんな事も考えずに一人で勝手に突っ走っちゃった。
それに今日こうして会えたのも、先輩の家庭教師として雇われただけなのに。
せっかく先輩に大人になったなんて誉めてもらったけど、全然大人になんかなってないよ。
最低だよ、カオリは。
もう、自分が情けなくなって……思わず、先輩の前で泣いちゃった。
カオリは先輩にはむいてないんだ。
いっつも先輩に迷惑ばかりかけてばかりで。
今も、カオリの泣き声に駆けつけた妹さんに怒られてる先輩。
本当にごめんなさい。
でも今は、それしか言えません……。
- 39 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/20(火) 03:46
-
<訂正>
≫26 L28
もう二年も前のことなのに ⇒ もう一年以上前のことなのに
≫32 L19
最後に会ってから二年経って ⇒ 最後の会ってから一年以上経って
≫33 L3
この2年間で自分がどれだけ…… ⇒ この一年で自分がどれだけ……
以後、気をつけます。
- 40 名前:通りすがり愛読者 投稿日:2004/01/21(水) 21:28
- 謎解きをしてやって参りました。
今まで幾つかの作者様の作品を読ませて頂いてましたが、この組み合わせは初めてですよね?
違っていたらスミマセン・・・(汗
好きなCPなので舞上がっております。
出演予定メンバーも1、2期とあって楽しみにしてますのでまたーり続き待たせて頂きます。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 03:32
-
>通りすがりの愛読者さん
謎解きお疲れ様です。(簡単でしたか?)
こういう訳ですので、あまりデカイ顔できないんです。その辺をご理解願います。
以前から読んで頂いて光栄です。このCPは短編で二、三話書いてました。
まあこの四人だけの、しかもそのうちの二人が異性という設定も始めてですけども。
こちらの方は月一ぐらいで大量更新を考えてますので、マターリ待っていただけると有り難いです。
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 03:34
-
隠 し ま す 。
- 43 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 03:34
-
も う 一 回 。
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 03:35
-
も 一 つ お ま け 。
- 45 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:23
-
◇ ◇ ◇
それからというもの、カオリは複雑な気持ちで先輩のお家に通ってる。
本当は断ろうかって思った。
でも先輩に対してひどい事ばかりしてしまったっていう罪悪感が頭に引っ掛かってて、
先輩にマイナスの印象を与えたまま身を引くのが嫌だったから、結局続ける事にした。
やっぱりサヨナラとかは良いサヨナラのほうが気持ちいいでしょ、お互いにさ。
それに、一度引き受けたからには先輩をちゃんと合格させてあげたいし、
そうすることで先輩に少しでもカオリが犯した過ちを償いたかっし。
な〜んて綺麗ごとばかり言っちゃったけれど、実際は、先生として接しなくちゃいけないのに、
やっぱりまだ先輩に対して恋心があって、どうしても恥かしさが勝っちゃう。
こんなんじゃ、また先輩に迷惑かけちゃうよ。はぁ〜っ。
「……織……セェ……センセェ?」
「え、あ、はい。な、なんでしょうか?」
「ここの個所なんですけど、どう解釈したらいいのかわかんなくて」
「えっと、ここは……」
- 46 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:24
-
ふぅ〜、今日もなんとかドギマギしながら授業が終わった。
今日はいつもよりボ〜っとしちゃった。
もぉ、先輩も先輩でカオリが気付くまで見てなくてもいいのにぃ。
おまけに真っ赤になったカオリのこと「可愛い」なんていうから、余計に意識しちゃったよ。
ただでさえ先輩と同じ部屋に二人っきりってだけでドキドキするのにさ。
でも、こんなんでカオリ、先輩を合格させてあげられるのかな?
帰り際に先輩にやり難くないかって聞いたら「大丈夫だよ」って微笑んでくれた。
先輩のその優しさとその笑顔が今のカオリにはひどく辛い。
ああ言ってくれたけど、本当は困ってるんじゃないかって思う。
これでもし、学力が落ちてたりしたら、間違いなくカオリは当然、解雇。
おまけに先輩にまで嫌われるはず……。
でも先輩のことだから、表向きにはカオリの事気遣ってくれるんだろうな。
はっきり拒絶してもらったほうが楽かも……。
家までの帰り道、ずっとそんな悲観的な事ばかり考えてた。
- 47 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:25
-
◇ ◇ ◇
次の日もあまり気分が晴れないまま、学校行って講義受けて、空き時間に一人でぼ〜っとしてた。
周りの人たちは賑やかに今という時間を楽しんでる。
本当なら、カオリだってあんな風に楽しく過ごせたはずなのに……そう考えてまた一人、落ち込む。
「なぁ〜にしょげちゃってんのさ、こんな良い天気なのに」
西の方に傾きかけてる太陽がそのままカオリの横に腰かけてきた。
相変わらずの元気100%のなっちだ。
「……なっちのその元気、分けてもらいたいよ」
「よしっ、今から唄いに行こう!」
「え〜、いいよぉ。カオリ、そんな気分じゃないし」
「ダメダメ。落ち込んでる時はパァーッと発散したほうが良いんだって。ホラ、行くよっ!」
無理やりなっちに引っ張られて近くのカラオケボックスに連れてかれた。
マイクを手にする前から鼻歌なんか唄ってるなっちの後に付いてく。
なんか幼稚園児みたいだな〜って思った。
なっちってば顔が幼いから、黄色い帽子と黄色い鞄、水色のお洋服着せて、
ポンってどっかの幼稚園に放り込んだら、見分けつかなそう。
なっちが妙に店員さんと仲良さそうに話してるのを見ながらそんな事考えてた。
「ここはね、なっちがアルバイトしてるお店なの。だからちょっとおまけしてもらった。
さあ、思う存分唄っちゃうぞーっ!」
- 48 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:26
-
……。
なっちってすごく歌が好きみたい。
ここに来てからもう二時間以上経ってるのに、なっちのテンション上がりっぱなし。
カオリなんてもうレパートリーも尽きて、喉ガラガラなのにまだ踊りながら唄ってるし。
でも、なんだか元気を分けてもらった気がして、さっきまでの憂鬱感がなくなってた。
駅までの距離を二人で歩く。
隣りのなっちはまだ唄い足りなかったみたいで、CMソングを口ずさんでる。
「いやぁ〜、久し振りに唄ったよ。カラオケはいいねぇ」
「カオリもなんか気分転換できたよ。アリガト、誘ってくれて」
「良かった、元気になってくれて。なんかね、ここ数日、カオリ沈んでたみたいだったからさ」
「あ、うん、まあ、ね……」
「なに、恋の悩みかい?」
一瞬ドキッとした。
なっちってば以外と鋭いんだよね。
特に恋とかの話になると目輝いてるし。
それもそうだよね。
だってさ、なっちは気付いてないかもしれないけど、カオリ知ってるんだよ。
愛読書が『恋占い ―運命の赤い糸―』だっていうのも、縁結びの神様にお願い事したのも、
お財布の中に幸運の四葉のクローバー入れてるのも。
それから、消しゴムに好きな人の名前書いて使い切ろうとしてるのだって知ってるんだから。
そりゃあ恋愛に関するあらゆる事にも鋭くもなるよ。
「やっぱり恋人の一人や二人は欲しいよね、大学生にもなったんだし」
ん〜、カオリ的には恋人は一人で十分だよ、って言ってもほとんど叶わないんだけどさ。
……なんだか余計に切なくなってきちゃった。
- 49 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:26
-
なっちがカオリの前に踊り出て聞いてきた。
「カオリは彼氏いないの?」
「えっ、う、うん。いない……よ」
「でも欲しいとは思うっしょ?」
「そ、そりゃまあ、いないよりはいた方がいいよ」
「へへっ、よかった」
「???」
「じゃあ、今度の土曜日、合コン行こ」
「へ?」
「サークルの戸田先輩と前田先輩がね、誘ってくれたんだ。だから一緒に行こうよ。
そこで出会い捜してさ、ハッピーハッピーしよっ」
「え、ちょっと、そんな急に……」
「よしっ、決定ーっ! いや〜待ち遠しいね、土曜日が。どんな人が来るのかな〜。
あ、電車きた。じゃあ、なっちはこっちだから。またね、バイバーイ」
なっちはカオリの意見も聞かないで、ウキウキしながら電車に乗って帰ってった。
ちょっと待ってよ、土曜日はマズイって。
だって先輩の家庭教師の日だし、それに先輩にバレたらなんて言い訳するのさ?
それにカオリ、合コンなんてやったことないし、知らない人と話すの苦手だよぉ。
おまけに、カオリは彼氏がいないだけであって、好きな人ぐらいはいるんだってば。
あ〜どうしよ〜。
- 50 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:27
-
◇ ◇ ◇
「圭織センセェ? どうかしたの?」
「え、あ、いや、なんでもないです。はい、ごめんなさい」
「フフッ、変なの」
なっちから誘われた合コンのことで悩んでたら、あっという間にXデーが明日に迫ってた。
まだ先輩には明日のこと言ってないけど、なんて言えばいいんだろ?
「ちょっと用事があるから明日はお休みにしてください」って言えばいいのかな?
でも、なんでって聞かれそうだな……。
だったら正直に「明日合コンがあるから明日はお休みにしてください」って言えば……。
ダメダメ!! それって一番ヤバイじゃん。
はぁ〜、どうやって言い訳しよう。
浮気してる人ってこういう時どうやって切り抜けるんだろ?
カオリ、嘘ヘタだしなぁ……ん、アレ? なんかカオリ、勝手に先輩の彼女になって…ない?
「ここの問いな……圭織センセェ?」
んん? よくよく考えたら、カオリは先輩の彼女じゃないんだし、言い訳なんかする必要なんて元々ないよね?
それに用事の内容まで聞かれるほど親密な仲でもないし……。
そうだよ、カオリは先輩の彼女じゃないんだよ。
一人身なんだから、って自分で言ってて悲しいけど、気にすることないんじゃん。
なぁ〜んだ、思い悩んで損しちゃった。
もう、カオリったらオ・バ・カ・さ・ん♪♪
もぉ、先輩が傍にいるから変な妄想しちゃったよ。
先輩が近くに……
- 51 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:28
-
「……」
「あ……」
「ホントにどうしちゃったの、今日は?」
「いや、あの、えっとぉ……」
先輩のどアップが目の前にきてた。
なんか、不思議そうにカオリのこと見てるんだけど、目が、その……怖い。
「ぼぉ〜っと外見てるし。もしかして、飛行機100機を、誰にもバレずに見たら
願いが叶うとかいうの、やってた?」
「へ? なんですか、それ?」
「え、あ、いや、僕が中学の時にそういう噂があったからつい……」
初めて聞いたよ、そんな事。
ホントなのかな、先輩もやってたのかな?
なんか面白そうだなぁ……カオリもやってみよっかな〜、ってそんなこと考えてる場合じゃないって。
「センセェ?」
「あ、そ、そうだ。あの、明日なんですけど」
「なに? 何か急な用事?」
「は、はい。それですね、申し訳ないんですけれども、明日はちょっと……」
「わかった。……急な用事じゃ…しょうがないもんね」
そう言ってカオリに微笑んでくれた先輩。
でも顔にいつのもような覇気が感じられない。
なんだか一瞬だけ寂しそうな表情したのは気のせいかな?
とりあえず先輩にはバレずに済んだけど、ちょっと罪悪感があってこっそり謝っておいた。
先輩、ごめんなさい。
- 52 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:29
-
◇ ◇ ◇
週末の土曜日。
今日のことで昨日の夜遅くに色々となっちに相談して、なんとか無事平穏に迎えることができた。
けど正直、あんまり乗り気じゃなかった。
別に相手のメンツが悪いっていう訳じゃない。
むしろ大学生同士の合コンではかなり良い方かも。
カオリたちの方も平均レベルよりやや上って感じだし、なっちなんて挨拶した途端に、
目がキラキラって音が出るくらい輝いて興奮してた。
訛りが思いっきり出ちゃってたし、もうこっちが見てて叩きたいくらいにブリッ子になってたし。
でも他の人が和気藹々と和んでいるのを余所にカオリだけ段々ブルーになってる。
今なんかなっちに誘われたから仕方なく付いてきたっていうオーラがたぶん出てると思う。
現に今こうして席に座ってるけど、既に蚊帳の外だし、目の前にいる男の人と適当に話し合わせてる。
別に相手の男の人が嫌いってわけじゃない。
居心地が悪いとも思わない。
でも、なんだか……虚しい。
不意に先輩の、昨日一瞬だけ見たあの寂しそうな表情を思い出してしまった。
今頃一人で黙々と机に向かって勉強してるんだろうな〜って。
そう思ったらなんだかまた先輩に迷惑かけた気がした。
だって、個人的な理由で休みにしといた挙句に、カオリ遊んでるんだもん。
まるで出産中の奥さんをほったらかしにして、飲んでしまった旦那さんみたいな気分。
……カオリ、何やってるんだろ?
- 53 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:30
-
◇ ◇ ◇
結局、、カオリはこの後カラオケに行くなっちたちと別れて一人で帰る事にした。
一応なっちの顔を立てられたから良かったけど、でもその分先輩に対してまた罪悪感が残った。
なんだか日に日にそれが重くなってく気がした。
ううん、家に近づくにつれて大きくなってく気がする。
段々と足早になって、終いには家まで駆け出してた。
近所まで来た時に、曲がり角で誰かとぶつかった。
半ば泣き顔で下向きながら走ってたから、誰にもそんな顔見せたくなくて、立ち去ろうとした。
でも、できなかった。
カオリを呼び止める声がして、その声が聞き慣れた人の声だったから。
「圭織ちゃん?」
「先……輩……どうして……」
「圭織ちゃんに届け物があって」
「えっ……」
「手帳。玄関に落ちてたみたい」
嘘……。
ヤバイ……バレちゃったかも。
だって落し物でも一応誰のか確認の為に中身見るし、もし運悪く今日の予定見られてたら……。
聞くのが怖くなったけど、でも、でもぉ……。
「あのっ、中、見ました……よね?」
「ひどいなぁ。そんなゲスなことしないって。それに中身見なくても圭織ちゃんのだってわかったし」
「どうし……て?」
「毎週二回も顔合わせてるんだよ? 僕がいやだっていっても見えちゃうじゃない」
……そうだった。
スケジュール確認とかで何度か先輩の前で手帳は見せたことあった。
イヤでも目に付くよね。
- 54 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:31
-
「ところで、今、帰り?」
「は、はい……」
「そう。遅くまでご苦労様」
そう言ってニッコリ微笑んで、まだ地べたに座っているカオリに手を差し伸べてくれる先輩。
その言動にカオリ、スイッチ入っちゃった。
だって、先輩が一生懸命勉強してるのを余所に、カオリは今さっきまで見知らぬ人と会って喋ってたんだよ?
行く気なんかなかったのに、嘘までついて遊んでたんだよ?
それなのに先輩はなんの疑いも持たずに、カオリに労いの言葉掛けてくれるんだよ?
本当ならばカオリが先輩に「お疲れ様」って声掛けなきゃなんないのに……それなのに……。
「……ぅ……く……」
「か、圭織ちゃん!?」
「……なさ……ごめ……い」
「えっ、圭織ちゃ……」
「ぅ……ぅわあぁーん!」
先輩に抱き付いて思いっきり泣いた。
もう自分がイヤでイヤで、どうしていいかわかんなくて。
それに先輩に対して申し訳なくて、合わせる顔がなくて。
そんな気持ちが全部出ちゃって、人目もはばからずに先輩にすがりつくように泣いた。
そして先輩の胸の中で、何度も何度も謝った。
呪文を唱えるように何度も「ごめんなさい」って。
カオリの涙や鼻水、それに化粧が先輩の洋服に付いちゃったけど、
先輩はそんな事気にもせずに、カオリのことそっと包み込んでくれた。
先輩の匂い、温かさ、優しさ、全てが今、カオリに注ぎ込まれてる。
あやすように優しく頭を撫でてくれて、何度も「大丈夫。圭織ちゃんは悪くない」って言ってくれる。
その言葉が深くカオリの心の中に染み込んでく。
カオリが泣き止むまでずっとず〜っとそうしててくれる先輩。
- 55 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/27(火) 05:32
-
やっぱりカオリは保田先輩が忘れられないくらい好きなんだ。
いつもカオリがして欲しいことや言って欲しいことを感じ取ってすぐに行動してくれる。
優しい言葉と温かい手でカオリを癒してくれる。
カオリの抜け落ちたものを全て満たしてくれる先輩の気遣い、心遣い……。
それがいつどんな時でも欲しかった。
でも、カオリのこの想いは決して先輩の心に届くことはないんだ。
先輩の中にカオリの居場所なんてない。
カオリは先輩が生きてくうえで、出会う人たちの中の一人にすぎないんだ。
その中で今という時間をカオリと出会ってるだけなんだ。
だったら、今という時間、今だけなら先輩の傍にいられる。
……神様、お願いがあります。
今だけは、今日ぐらいは先輩の傍にいさせてください。
そして、甘えさせてください。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 05:33
-
余裕があったので早目に交信、いや更新しまひた。
なんだか書いてて、ヒロインは幸薄少女のほうが良かった気が……。
それに御二方の特徴が出てない気も……。
読んでくださる方はどう思うんだろう……。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 05:34
-
川‘〜‘)<とりあえず隠します。
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 05:35
-
川‘〜‘)<<もう一回。
- 59 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:07
-
◇ ◇ ◇
また日常がカオリの生活に戻った。
相変わらずなっちとはバカやってるし、先輩の家庭教師もだいぶ板についてきた(と思う)。
あの日の夜、自分の中に溜まっていた毒素を吐き出したからかな?
先輩と接していても前みたく恥かしくなったり、あがったりすることが徐々に減った気がする。
慣れ、なのかな?
カオリが思うことは、先輩もどうやら同じだったみたい。
休憩時間に先輩が聞いてきた。
「圭織センセェさ、なんだか変わったよね?」
「そ、そうですか?」
「うん。相変わらず敬語は止めてくれないけど、表情が活き活きしてるよ」
先輩に言われるとなんとなくそんな気がする。
そういうの、鶴の一声って言うんだっけ?
部活とかでも先輩が一言言うとなんでもできそうな気がして、みんな言うこと聞いてた。
その気にさせるのが上手い先輩の一声。
それを鵜呑みにするカオリ。
……前と変わってないじゃんねぇ。
- 60 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:07
-
「あ、雨だ……」
先輩が窓の外を見てぽつんと呟いた。
さっきまでなんともなかった青い空が、今は一面どんよりとした雲に覆われてる。
そういえばもう梅雨時なんだよなぁ。
洗濯物乾かないし、ジメジメしてるし、傘も手放せないし。
あ……傘がないや……どうしよう。
雨は一向に止む気配がなくて、むしろ強くなってきてる。
それになんだか気温も下がってるみたいで、薄着のカオリにはちょっと肌寒い。
今日の授業が終わって、外見たら相変わらず寒そうな雨が降ってる。
先輩の家からカオリの家まで濡れて帰るのか……。
ちょっと憂鬱な気分に浸ってたらたら、先輩が何やらお出かけの準備してる。
こんな雨の中出かけなくてもいいのに、なんて思ってたら……。
「よし、準備オッケー。じゃあ、行こうか」
「へ?」
「送るよ。圭織ちゃん、傘持ってないでしょ? それになんだか外、危なそうだし」
「い、いいですよ、そこまでしてもらわなくても。一人で帰れますから」
「そんなに遠慮しなくてもいいのに。こういう時は素直になったほうがいいんだよ?」
そう言ってカオリの背中を玄関まで押していく先輩。
妹さんに用件だけ伝えると、先輩は玄関を開けて、大きめの傘を広げた。
妹さん、なんか微笑んでた気がしたけど、なんでだろ?
外に出ると思ったよりも寒くて、なんだかいつもより暗い感じがした。
なんかこの間見たホラー映画思い出しちゃって、ちょっと一人歩きは怖くなった。
先輩のご好意に甘えて、素直に送ってもらおっと。
- 61 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:08
-
「圭織ちゃん、そんなところに立ってると風邪引くよ?」
先輩がカオリの手を取って傘の中に引っ張った。
カオリ、ボケっとしてたから、引っ張られた勢いで先輩の胸にダイブしちゃった。
転びそうになるカオリをちゃんと身体で支えてくれた先輩。
お蔭で玄関の真ん前で抱き合う先輩とカオリ。
恋愛ドラマのクライマックスシーンにぴったりの構図。
「大丈夫?」なんて声をかけてくれる先輩。
一瞬だけど、なんか……王子様みたいだなって思った。
白馬はいないけど。
先輩と並んで歩く夜道。
先輩はカオリが濡れないようにしてくれてるせいで、身体半分が傘からはみ出てた。
それだけならまだしも、車とかが通る時に跳ねる水飛沫がカオリにかからないよう、常に守ってくれてる。
先輩のジーンズなんて打ち水を引っかけられた時のように、いっぱい雨を吸い込んでた。
「先輩、それじゃ傘指してる意味ないですよ」
「あ、いいのいいの。どうせこのジーンズそろそろ手洗いでもしようかなって思ってたから」
前もって用意してたような言い訳に、カオリはちょっと疑いを持った。
なんでそこまでしてくれるんだろうって。
別にカオリ、先輩の恋人でも何でもない、ただの後輩なのに。
雨に晒されたほうの手が寒さで赤くなって、冬ならしもやけになってるとこ。
その手を見てたら、今すぐにでもカオリの両手で包んで温めてあげたくなるくらい、痛々しい。
でも先輩は、なんともなさそうな顔してる。
なんでだろう?
今まで色んな優しさを見てきたけど、ここまで優しくされると却って疑りたくなる。
ホントはなんか別の目的があるんじゃないのかなって。
先輩、教えて下さい、先輩の気持ちを……。
- 62 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:08
-
◇ ◇ ◇
次の日、昨日の大雨が嘘のようにスカッと晴れた。
でもカオリの気持ちはどんよりとした雲に覆われてる。
昨日の大雨のせいで、先輩は見事に風邪を引いちゃった訳で、
朝一番にメールで今日の授業は休みにしてくれって連絡があった。
あ〜あ、また悪いコトしちゃったよ。
罪悪感っていう容器があったら、たぶん溢れ出すくらい、先輩には迷惑かけっぱなし。
カオリといえばその容器を減らすことさえできずに、次から次へと罪悪感を溜めこんでばかり。
そんなわけで少しでも恩返ししたくて、お見舞いに行くことに決めた。
よくこういう時に恋が芽生えたりするらしいけど、カオリにはその気配はないんだよね。
だって既に恋しちゃってるから……ちょっと顔が熱いや。
大学での講義を終えて、なっちお得意の強引なお誘いもやんわり断って、
学校の近くにあるデパートでお見舞い用の品を買った。
でも、なんか変。
カオリの両手には、入院している患者さんとかに手渡すようなフルーツの盛り合わせの籠と綺麗なお花の束。
これじゃあまるで先輩が入院してるみたいじゃん。
カオリの頼み方が悪かったのかな? それともカオリが深刻な顔してたのがいけなかったのかな?
とにかくちょっと大げさなお見舞い品を持って先輩のお家に行った。
ちょうど先輩のお家に着いた時、妹さんが自転車に乗って出かけようとしてた。
ちょっとオメカシしてる。
この年頃はみんなお洒落に気を遣うようになるもんね。
ひょっとしてデートかな?
「あ、いつも兄がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
「あの、兄なら部屋で寝てますから、どうぞ勝手にあがって下さい。
私、これからちょっと出ちゃうんで、後のことよろしくお願いします」
「え、あ、ちょっと……」
- 63 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:09
-
妹さんは捲くし立てて一礼すると、あっという間に消えてった。
なんで判ったんだろ、って誰が見ても、カオリの荷物見ればわかるか。
でも妹さん、疑ってないのかな?
だってお年頃の男女が土曜日の昼間に、二人っきりになるんだよ?
いくら先輩が寝てるって言っても、いくら先輩が紳士でも間違いが起こらないとは限らないじゃない。
それにもしかしたらカオリのほうが……やめとこ。
ばかばかしい妄想思いついた自分がイヤになった。
気を取り直して、先輩のお家のベルを鳴らした。
あ、そう言えば妹さんが先輩は寝てるって言ってたっけ。
じゃあ出ないかな、って思ってドアノブに手を置いたら、ドアが勝手に開いた。
ビックリして二三歩下がったら、ちょっと足元が覚束ない先輩が立ってた。
「あのなぁ、忘れものなら自分で……あれ…圭織……ちゃん?」
「あ、あの、こ、こんにちは」
「ど、どうした…の? それに…今日はメールで……」
「あ、あの、昨日先輩に無理させちゃったと思ったからお見舞いに……その、カオリのせいで、ごめんなさい」
「……あ、ありがとう。ところで……圭織ちゃん……これから…病院にでも……行くの?」
「え?」
「だってさ……それ。…誰か入院……してるんでしょ?」
「あ、あの、これは、その、先輩にと思ったんですけど、カオリの勘違いで」
先輩ってば目を丸くしてる。
そりゃそうだよね、カオリだっていきなりこんな豪華な見舞い品渡されたら驚くよ。
カオリそそっかしいからなぁ。
先輩引いちゃってるし、受け取ってもらえないよね。
でもちょっと淋しいな。
- 64 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:09
-
「……なんだか悪いこと……しちゃった…なぁ」
「え?」
「だって…たかが風邪ごときに……こんな豪勢なもの…頂いちゃって」
「貰って……頂けるんです、か?」
「貰ったら…ダメ? ダメなら受け取らないけど」
「そんな、貰ってください。いくらでも差し上げますから」
「……いや、これだけで十分」
そう言って先輩は受け取ってくれた。
けど、やっぱり今の先輩には何かを持つのが辛いみたいで、フラフラしてる。
だからカオリは先輩から再度それらを受け取った。
玄関にとりあえず荷物を置いて、まずは先輩をベッドに寝かせなくちゃ。
足元がフラフラだから先輩を支えるようにゆっくりと二階に上がってく。
熱でちょっと赤くなった先輩は、意識が朦朧としてるみたいで虚ろ。
こんな時に不謹慎だけど、先輩と密着した時、先輩の普段とは違う横顔にドキッとしちゃったことは内緒っ。
先輩の部屋に辿り着いて、ベッドに寝かそうとした時、先輩の足が縺れた。
先輩は自分の足で立ってるのが精一杯で、体重がカオリの方にかかってたから、そのまましな垂れかかってくる。
カオリもなんとか踏ん張って華奢な身体の先輩を支えるんだけど、そこはやっぱり男の人。
女のカオリが支えられるわけがなくて……。
「あっ」「おっと……」
その勢いで、二人同時にベッドにダイブ。
ちょうどカオリが下で先輩が上から覆い被さるような恰好。
カオリの首筋辺りに先輩の吐息が……。
どさくさに紛れてカオリの両手は先輩の腰に……。
- 65 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:10
-
……ヤダ、どうしよう。
密着してるうちに、徐々にカオリの体温が上がってく。
ちょうど胸の辺りから聞こえる先輩の鼓動。
まるでカオリのほうが熱があるみたいに顔から真っ赤になってくのがわかる。
ヤダヤダ、どうしよう。
先輩に抱き付いてるよ……。
もしこれで誰か入ってきたら間違いなく、誤解されるくらい、怪しい態勢。
先輩もかなり恥かしいみたいで、アタフタして起き上がろうとするけど、身体が動かないみたい。
お互い顔を真っ赤に染めたまま、しばしそのままの態勢。
「……ご、ごめん……」
「だ、大丈夫……です……か?」
「う、うん……すぐに、退く……から」
そう言っても先輩は自力では退くことができない。
強引にカオリが退くこともできるんだけど、何故かそんな気持ちになれない。
むしろ、このままの態勢でいたいって思う自分がいる。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ腰に回してた両腕に力を入れた。
恥かしいけど、でも……幸せ。
- 66 名前:愛物語。 投稿日:2004/01/31(土) 05:11
-
ようやく先輩が起き上がって、退いてくれた。
カオリも起き上がって、先輩をちゃんと寝かし付けた。
それからはタオル絞って額に乗せたり、氷枕作ってあげたり、先輩の希望で玉子酒も造ってあげた。
でもその間、ずっとお互い顔は赤く染まったままで、一言も喋ってない。
目が合っただけ真っ赤になって、手と手が触れ合うだけまた真っ赤になったり。
その繰り返しで、もうホント、中学生の恋みたいな感じだった。
いつもなら普通に出来てた会話もガチガチで、内容もほとんど関係ないようなことばかり。
ちょっと喋って長い沈黙。
たまにお互いの言い出しが被っちゃったりして、まだしばらく沈黙。
ホントならすぐに帰りたかったけど、妹さんにお留守番頼まれちゃったから動くに動けない。
こんな経験は漫画の世界とかだけだと思って軽く見てたけど、実際こうなると何していいかわかんないもんだね。
おまけにカオリなんか、手まで震えちゃって先輩の額に乗せるタオル絞れなかったし。
こうも自分が純情だったのかと思うと、まだまだ子供なんだな〜って思う。
でもこういうのも……いいかな。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 05:12
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川‘〜‘)<次回更新は、二月下旬の予定。
- 68 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:01
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ようやく今日で一学期が終わった。
ちょっと不安だった前期試験もたぶん大丈夫……だと思う。
きちんと授業にも出てたし、少なくともなっちよりはマトモだと思ってる。
その肝心のなっちは、一昨日の試験終了後に「もうダメだぁ〜、うあぁ〜」って嘆いてたっけ。
あの様子じゃ、せっかく用意してたカンペも役に立たなかったみたい。
「ん〜、これからどうしよっかな〜」
明日からの長い休みに開放的だったカオリは、ちょこっと本屋に寄り道。
最近ゆっくりと読書する時間もなかったから、この休みにまとめて読もっかな。
その前に、定期講読してるファッション誌と、この間出たばかりの四コマ漫画の最新刊は手に入れてっと。
さて、どの本にしよっかな〜。
書店が薦めてる本とかってあんまり読む気にならないんだよね。
だって時代や流行に流されてる気がするから。
やっぱり読みたいものを読むのが一番、そう思って手にしたのは、有名女流作家さんのエッセイ。
この作家さんは小説が有名だけど、カオリが気に入ったのは初のエッセイっていう文句。
やっぱり初物にはちょっと弱いみたい。
そうやって他にも色々物色してたら、誰かに肩叩かれた。
一瞬だけこれって正真正銘ナンパだよね、って淡い期待抱いちゃった。
けどよくよく考えたらさ、こんな場所でひと昔のやり方でナンパしてくる人なんていないよねぇ。
ったくどこの田舎もんだよぉ、言っとくけどカオリは安い女じゃないよ。
少し呆れたように振り返ったら、カオリのほっぺに人差し指が当った。
そんなお茶目な悪戯をする犯人は、今カオリが生きてる中で一番付き合いがある人だった。
- 69 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:01
-
「もぉ〜、やめて下さいよ、そういう子供地味た悪戯するの」
「ごめんごめん。圭織ちゃん、なんか眉間にシワ寄ってたからさ。それより学校終わったんだ?」
「はい。先輩も予備校の帰りですか?」
「うん。今週は講習会だからね」
カオリの大学がある街の繁華街に、先輩が通う予備校がある。
予備校っていっても、街の私塾が大手予備校と提携して衛星放送を介した授業をする所だけど。
だから平日でも極たまに先輩に会う日がある。
おまけにその日が家庭教師の日だったりすると、先輩のお家まで一緒に帰ったりすることもできる。
だけど、今までそういう最高のシチュエーションには出会ったことがない。
ちなみに今週はさっきも先輩が言った通り、講習会だから家庭教師の予定はなし。
よって先輩に会うのは何日かぶりなわけで、ちょこっと嬉しかったりする。
「この後どっか寄るの?」
「いえ、もう用事は済みましたから、家に帰ろうかと」
「だったら途中まで一緒に帰らない?」
「いいんですか?」
「イヤなら独りで帰るけど」
「イヤじゃないです、一緒に帰りま、あっ!」
バラバラバラ……
焦って返事したら、持ってた本と雑誌類を全部落っことしちゃった。
カオリたちが居たコーナーは静かだったから、周りの人たちから白い目で見られた。
そそくさと片付けてたら、本を拾おうとした先輩と手が触れちゃって、また落っことしちゃった。
恥をかいた恥かしさと先輩の手に触れてしまった恥かしさでもう真っ赤っかなカオリ。
もうここの本屋立ち寄れないや。
- 70 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:02
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「大恥かいちゃたね」
「はい」
先輩と歩く帰り道。
なんか今日は小さな幸せが一杯あって嬉しいなぁ〜。
こういう風に先輩の隣りを歩くのってここんところ、ずっとなかったもんね。
でも、こうやって並んで歩いてたらやっぱり行き交う人たちには、恋人同士に見えたりするのかな?
不意に手とか繋いでみたいなぁ、なんて衝動に駆られてチラッと先輩の手を見る。
あの掌で握られたら凄く暖かいんだろうな〜。
そんな小さな幸せを噛み締めながら歩いて、そろそろ駅に着こうかという時に、
カオリの小さな幸せは誰かの元に飛び立ってった。
よく知った親友の声のせいで。
「あーっ! カオリじゃん!」
「うあっ!」
「ん? 友達?」
「は、はい……マズイところで会っちゃった」
なっちがどっかの買い物袋片手にブンブン振って、駆け足でこっちにやって来る。
普段はカオリを見つけてもこんなに急いでやって来ることなんかないのに、やっぱり気になったみたい。
隣りにいる先輩の存在が。
相変わらず反応がいいね、そっち方面には。
ズデェーン!
あっ……なっちが後数歩で辿り着く所で転んだ。
しかも漫画とかでよくあるみたいに大の字になって。
っていうか、自分の右足を左足に引っかけて転んだ人なんて初めて見た。
しかもきちんと舗装された歩道の、なんも変哲も傷害物なんかもない平地なのに。
- 71 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:02
-
「なんか大胆な娘だね、彼女」
そう言ってから、先輩は駆け寄ってって手を差し出してる。
それに手をかけて立ち上がるなっちは苦笑い。
あっ、手と手が重なった……(チクッ)
ああっ、なっちが先輩に笑顔見せてる……(ムカッ)
あああっ、先輩がなっちの服についた埃払ってる……(メラメラッ)
なんだろう、胸の中を掻き毟りたいくらいにイライラしてる。
興味深々な顔つきで先輩に喋りかけてるなっちの前までやって来ると、
満面の笑みを浮かべてカオリに話しかけてきた。
なっちが満面の笑みを浮かべてる時は要注意なんだよね。
マシンガントーク(って言っても一方的な質問攻めだけど)聞かされる羽目になるから。
「カオリってばなっちに内緒でこんなカッコイイ彼氏見つけてぇ、コノコノォ」
「いや、あのねなっち、先輩は……」
「ええっ、学校の先輩さんを彼氏にしたんだ? うひゃぁ〜、やるねぇ〜」
「いや、だからさ、その……」
「もぉ、彼氏がいるんだったら合コン誘わなかったのにぃ。早く言ってよ」
「ちょ、なっち! それは言っちゃ……」
「こないだはそれなりに楽しかったよね。でもなっちのお目当てに叶う人はいなかったけど」
「へぇ〜、圭織ちゃんも合コン、参加したんだ?」
ちょっとだけ先輩が冷ややかな目を向けた。
でも表情は怒ってなくて、微笑んでる。
気持ち的にはなんか複雑。
「え、あ、い、いや、その、えっと」
「また誘おうかなって思ってたとこなんだよね。でも、もうその必要なさそうだし、あ〜あ、いいなぁ。
羨ましいなぁ。なっちもさ……」
- 72 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:03
-
次から次へと余計な事を喋る出すなっち。
先輩は圧倒されながらも、時折カオリの方を向いてる。
それになんかジェスチャーで何かを言いたそうにしてる。
でもジェスチャーよりもその視線がカオリには凄く痛々しい。
だって秘密にしてたことがどんどん明るみに出ちゃいそうだったから。
お願い、どうか先輩に疑われませんようにっ。
「あ、そう言えばまだ自己紹介してなかったですよね。
初めまして、カオリとは同じ大学に通う安倍なつみです。なっちって呼んでくださいっ」
「こ、こちらこそ初めまして……や、保田圭です」
「保田さんかぁ。カッコイイですね。あの、カオリとはもう長いんですか?
どっちから付き合おうって言ったんですか? カオリのどこが好きなんですか?」
「えっえっ?」
「ちょ、ちょっとぉ、なっちってば! 何わけわかんないこと聞いてんのさっ!」
「え、なして? だって彼氏なんでしょ、保田さん」
「ち、違うのっ。カオリは今、バイトで先輩の家庭教師してるから、べ、別に恋人同士ってわけじゃ……。
き、今日はたまたま会ったから、一緒に帰ってただけっ」
「ええっ!? だって、凄く仲良さそうに歩いてたっしょ? 肩並べてさ」
「そりゃあ、前から知ってるんだもん。仲良くて当然でしょ」
……なんか自分で言い訳してて虚しい。
だって本当は勘違いされて嬉しいのに、先輩のことを考えて否定しなきゃならないんだもん。
それになんか必死になって弁解してるカオリの横で、先輩がさも当然っていう感じで二人の会話聞いてたから。
少しくらいは嘘でもカオリの彼氏っぽくして欲しかったな。
ちぇっ。
- 73 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:03
-
「ふぅ〜ん。カオリの彼氏さんじゃないんだ……そうなんだ……」
「??? どうしたの?」
「なっち?」
「じゃあ保田さんはフリーなんだ?(よかった)」
「え? なんか言った?」
「え? あ、うん、なんでもないよ。あっ、そうだ。
今日出会ったのも何かの縁ですから、これを機になっちとお友達になってくれませんか?」
「僕が? ま、まあ、別に断る理由はないから、いいけど……」
ん〜、なんかあんまり嬉しくないなぁ、カオリ的には。
だってなっち可愛いくて、カオリよりいいモン一杯持ってるんだもん。
そりゃ、なっちと知り合ってからは色んな物譲ったり譲られたりしたけど、先輩だけは絶対に譲りたくないなぁ。
これでも一応、告白して返事待ち状態だから、立場的にはなっちより一歩リードしてるんだけど、ちょっと怖いなぁ。
恋愛のイロハを知り尽くしてる(けど経験がない)なっちがどうでるか、心配だなぁ……。
「いやぁ〜、こっちに来て初めて男の人の知り合いができたっしょ。嬉しいなぁ〜、楽しいなぁ〜」
「こっちは楽しくないってば!」
バコッ!
「いったーいっ! 何す……」
「人待たせといて、なに他人のデートの邪魔してんのさ」
「他人じゃな……イタタ」
「どうもスイマセン、姉が邪魔しちゃって。ホラ、行くよっ!」
「ちょ、転ぶって、うわっ、危な、あぁ〜」
「……」
「……なんだったんだろ?」
- 74 名前:愛物語。 投稿日:2004/02/23(月) 03:03
-
ホントなんだったんだろ?
引っ掻きまわすだけ引っ掻き回して、妹さんに連行されてったなっち。
カオリなんか言い訳する暇もなかったし、先輩なんて一言二言しか喋ってない。
しかも、なっちに携帯引っ手繰られて番号登録させられてたし、
なっちが喋ってる間、ずっと唖然とした様子で見てただけだったし。
でも先輩って推しに弱いってことが判ったから、ちょっとはなっちに感謝しとかなきゃ。
でも、ホントなっちって異性が絡むと強大なパワーで人を圧倒するよね、感心しちゃうよ。
「ね、ねえ、圭織ちゃん」
「は、はい」
「安倍さん、だったっけ? 一体どんな人なの?」
「なっちはあんな感じですよ、いっつも。勉強や運動は苦手ですけど」
「ふ、ふぅ〜ん。圭織ちゃんは安倍さんのことが嫌い?」
「えっ?」
何を言い出すんだろ、先輩ったら。
別になっちのことが嫌いなんて思ったことはない。
っていうかまだ知り合って半年も経ってないし、大学で初めてできた友達だし、大切にしたいと思ってる。
それに未だ、未知数の可能性を秘めてる感じがするし、友達としては目が離せない存在。
それなのに、なんで先輩はそんな野暮なこと聞くんだろ?
なっちの事嫌いになったのかな?
「な、なんでそんなこと聞くんですか?」
「だって圭織ちゃん、安倍さんが転んだ時からずっと眉間にシワ寄ってるんだもん。
それにこめかみ辺りに青筋が浮かんでる時もあったから」
「そ、そんなことないですよっ」
「そうかなぁ? さっき僕がジェスチャーで教えたんだけどなぁ……」
え?あれって……そういう意味だったのか。
でも表情が出てたなら、なんでなっちは普通に接してくれてたんだろ?
でもなっちの事だからたぶん先輩に釘づけで、カオリのことなんて見てないか。
それはそれでムカツクんだけどね。
でもこれではっきり判った。なっちが先輩を狙ってるのが。
いくらカオリが恋愛に疎くてもそれくらいは判る。
女の勘ていうのかな、とにかくカオリの中でなっちは危険人物になった。
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/23(月) 03:04
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( `.∀´)<次回更新は三月下旬頃。
- 76 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:33
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「もう8月も終わりだね」
休憩してた時にふと、先輩が窓のほうを見てポツリと呟いた。
8月も残りあと僅か。
今年の夏、カオリはこれといって何にも予定はなかった。
まだ二週間ほど休みが残ってるけど、これからどこかに遠出するわけでもなく、
かといって何かに打ち込もうっていう気も起きない。
しいて楽しかったコトと言えば、先輩に頼まれて家庭教師をする日が増えて、
週に4日先輩に会えたことぐらいかな。
「センセェは今年の夏はどうだった?」
「特には何も……」
「そっか。ごめんね、僕のために夏休み犠牲にさせちゃって……」
相変わらず人に優しい先輩。
カオリはこうやって会えるだけでも十分なのにな。
川*‘〜‘)<ポッ
そんな幸せ一杯のカオリとは打って変わって、先輩は顎を掻きながら、何やら考えてる。
なんだか恥かしそうな顔して、段々顔が紅くなってってる気がする。
なんだろ? カオリ、なにか変なことしたかな?
それともカオリになんか付いてるとか?
まさか、服が破れて下着とか丸見えになってるとか?
でも……先輩なら見せても……いいかな。
川*∩〜∩)<キャッ。
「あのさ……明日、高校の近くで花火大会があるの、知ってるよね?」
「え、あ、はい。毎年行ってましたから」
「じゃあさ、明日、一緒に、行かない?」
「えっ……カオリと、ですか?」
「う、うん……。センセェさ、今年、何もなかったって言った後に、寂しそうな顔、してたから……
せめて一つぐらいは思い出、つくってあげたくて……ダメ、かな?」
ちょっと顔の赤みが強くて、そっぽ向いてる先輩。
そういえば今日は、いつもと違ってそわそわしてる気がする。
それに、今まで先輩からこんな大胆な誘いってなかったのに、一体どうしちゃったんだろ?
- 77 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:33
-
でも、きっと先輩のことだからカオリのこと気遣ってくれたんだろうな。
先輩って人混み苦手って言ってたし。
でもこれからこうやって先輩とどこかに出かけることなんて一生ないだろうし、
それにこんなチャンス滅多にないし、行かないと損だよね。
せっかく先輩が勇気出して誘ってくれたんだし。
「……行きます。先輩と……行きたい……です」
「ホントに? はぁ〜、よかった……。(断られなくて)」
「えっ?」
「いや、何でもないよ、うん。じゃあ明日、迎えに行くよ」
「そ、そんな、いいですよ」
「だってセンセェの家からのほうが近いじゃない。何か都合でも悪いの?」
「そんな事……ないですけど……・」
カオリ的にはすごく嬉しくて、飛び跳ねたい気分なんだけど、家に来られるとその気分も半減しちゃう。
だって明日は家族全員が家にいるんだもん。
カオリの家族はみんなゴシップ事が大好きで、余計な詮索までするんだよね。
もし先輩が来たら、みんな勘違いしちゃうよ。
そしたらまた先輩に迷惑かけちゃう。
ただでさえ、最近家族の標的にされやすい年頃なのに。
現に二年前にも、部活で遅くなって先輩に送ってもらったら、お母さん勘違いしちゃって
赤飯炊こうなんて言い出したし、妹なんかカオリの目の前で先輩とカオリの相性占いなんか始めたし。
だから先輩、送り迎えだけは勘弁してください。
「そこまで言うならしょうがないや。じゃあさ、センセェのうちの近くにある公園で待ってるよ。それならいいよね?」
「は、はい……」
「晴れるといいね、明日」
先輩はなんだか妙に嬉しそう。
先輩のその顔見てると、なんだか明日イイコトがありそうな予感が……。
カオリ勘違いしちゃいそうだよ。
明日何着て行こうかな〜。
- 78 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:34
-
◇ ◇ ◇
昨日の先輩の願いが通じたのか、朝から雲一つない晴天、絶好の花火日和になった。
カオリは朝からずっと鏡の前で衣装合わせ。
だって初めてのデートなんだもん。しかも、先輩からのお誘いで。
正直、カオリこういう経験ってなかったから物凄く嬉しい。
普通はさ、デートしてから、告白して付き合って、最後にエッチするでしょ?
でもカオリはさ、それを見事に逆走しちゃってるんだよね。
こういうのって非常識なのかな?
な〜んてこと考えつつ浮かれてたら、妹が入って来た。
カオリと違って現実派の妹は、部屋に散らかった洋服見て、呆れたように言う。
「お姉ちゃんもさ、今日の花火大会行くんでしょ?」
「行くよ」
「だったら浴衣着てけば? そんなさ、どっかのレストラン行くみたいな恰好してったら一人だけ浮くよ」
「そうかな?」
「誰と行くのか知らないけどさ、一緒にいる人まで恥かしい目にあうよ」
……確かに言う通りかも。
ん〜、さすが彼氏がいる子は違うよね。
なんでそんな簡単なこと思いつかなかったんだろ?
やっぱり浮かれ過ぎなのかな?
「浮かれ過ぎ」
……声に出してたみたい。
妹にツッコまれちゃった。
川*‘〜‘)> <テヘッ。
ちょっと気を引き締めて、箪笥にしまってあった浴衣を出した。
紺色の布地に夏らしい朝顔の花が散りばめられた浴衣と向日葵のような黄色い帯。
地味過ぎるけど、これっておばあちゃんが丹精込めて作ってくれたものだからすごく気に入ってるんだ。
それに誰に見せつけるわけでもないし、地味で落ち着いた感じのほうが先輩も一緒にいて疲れなそうだしね。
- 79 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:38
-
アッという間に約束の時間が来て、カオリは公園に向かった。
外に出ると、やっぱり浴衣姿の子供さんやお姉さんたちがチラホラ。
みんな結構派手な浴衣だなぁ〜なんて思いながら公園に向かうと、
丁度、カオリの横で待ち合わせしていたカップルが目に入った。
『ごめんね、遅くなっちゃった』
『大丈夫だよ。オレも今来たところだから』
『どうかな?』
『似合ってる。綺麗だよ』
……なんて甘い言葉交わして、二人とも嬉しそうに手を繋いで歩いていった。
そんな二人を目で追ってたら、先輩がもう待っててくれた。
その時、今さっきのカップルのような状況と同じ事が今からカオリの身にも起きようとしてる事に気付いた。
途端になんだか妙に恥かしくなっちゃって、足が思うように前に進まない。
公園の入口付近で固まっちゃってたら、先輩のほうがカオリに気付いてくれて、こっちにやって来る。
段々と近づいてくる度に顔が真っ赤になってく。
さっきの会話が頭に響いてくる。
『ごめんね、遅くなっちゃった』
『大丈夫だよ。オレも今来たところだから』
『どうかな?』
『似合ってる。綺麗だよ』
うわぁ〜、駄目だ、今日は先輩の顔まともに見れないかも……。
だって今日はいつもと違って、髪も上げて浴衣着て、夏女演出しちゃってるから。
「早かったね」
「で、でも、ちょっと、お、遅れちゃって……」
「……」
「せ、先輩?」
「圭織ちゃんは何着ても似合うけど、浴衣姿もいいね」
「そ、そうですか?」
「綺麗だよ」
- 80 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:40
-
浴衣姿もいいね……
ゆかたすがたもいいね……
綺麗だよ……
きれいだよ……
……もぉ、カオリ、立ってられないかも。
川*∩〜∩)<どうしよぉ〜。
お洒落に気を遣う年頃、言って欲しいなぁって言葉をすぐに言ってくれる先輩。
お世辞だと判ってても、やっぱり面と向かって言われると嬉しいもんだよねっ!
そんな先輩はいつも通り、ジーンズにクリーム色のサマーセーターといったシンプルな恰好。
素足にサンダル履いて、ちょっと夏気分を出してて、なによりも今日は眼鏡を外してた。
それを不思議そうに見てたら、先輩が気付いたみたい。
「ああ、眼鏡? 今日はね、圭織ちゃんとデートだから外してきた。変、かな?」
「いえ、そんなこと……ない……です」
「よかった。じゃあ行こうか」
並んで歩いてる間、先輩の言葉がカオリの頭の中を駆け巡った。
デートって言ってくれた……しかもカオリの為に眼鏡まで外して。
それだけで今日はもう満足……なんだけど、ほんのちょっと欲を言えば、手が寂しいかな。
付き合ってないから手は繋げないまま中をブラブラ。
ほんの数十センチの距離なのに……。
それだけがちょっと悲しかった。
川T〜T)<クスン。
- 81 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:41
-
会場近くまで来ると、人だかりで前に進むのにも一苦労だった。
先輩大丈夫かなぁ、そう思って隣りの先輩を見たら、ちょっと嫌そうな顔してる。
どっちかって言うとカオリも人混みは苦手なんだよね。
小さかった頃、よく人混みの中で全然知らない人の手を握ってたことがあって、
それが今でもトラウマになってる。
でも、ホントどうしよ。
カオリたちがいる所は、花火が見れる会場まではかなり遠い所。
時間も押し迫ってきて、これから人がどんどん増えるだろうから、早めに行って良い場所取りたい。
いい案が見つからないまま迷ってたら、急に手を引っ張られた。
よろけそうになりながらもなんとか態勢を整えると、先輩の手がカオリの手を握って引っ張ってくれてる。
「ここにいてもしょうがないから、覚悟決めて行こう」
先輩はカオリの返事を待たずにどんどん群衆に埋もれていく。
カオリも先輩と逸れないようにしっかり先輩の手を握ってついてく。
ピンボールの玉のようにあちこちに弾かれながらもしっかりと繋がれた手と手。
先輩の手から伝わる温かさが、気持ち良い。
ちょっと力入れて握ると、それにちゃんと反応して同じようにきつく握り返してくれる。
よくあるシチュエーションだけど、やっぱり嬉しいな。
そんなこと思ってたら何かしらの反動で先輩の手を離しちゃった。
急に無くなった温もりはカオリを物凄く焦らせた。
川;‘〜‘)<先輩、どこぉ?
……。
しばらくしたらまたカオリの手に温もりが返って来た。
ホッとして、その手を握ったままようやく人混みから外れられた。
落ち着きを取り戻して隣りを見たらびっくり!!
隣りにいたのは、先輩じゃなくて見知らぬ茶髪の男の子。
ちょっと背の小さいその男の子は、カオリの手と顔を交互に見つめてた。
「あっ、ご、ごめんなさい」
慌てて手を離したら、今度はその子がカオリの顔をじっと見つめて来る。
なになに? カオリ、なんかした?
そりゃあ、勝手に君の手を繋いだのは悪いと思うけど、でもそれ以外何もしてないよ。
決して誘拐とかじゃないから安心してよ。
ちょっと引きぎみなカオリに対して、その子は何かを思い出したようにはしゃぎ出した。
- 82 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:42
-
「やっぱりそうだ! 飯田先輩だ!」
「へ? なんでカオリのこと知ってるの?」
「先輩、オイラのこと知りませんか?」
「えっ、えっ、わかんない。誰?」
「オイラですよ〜、オ・イ・ラ」
わかんないよ〜。
カオリ、あんまり男の子と話したことないし、オイラなんて言う知り合いの男の子いないもん。
思い出そうとしても、しきりにオイラオイラって連呼するから、余計にわかんなくなっちゃう。
子供じゃないんだから、少し相手の事も考えてよ。
もし子供だったら、カオリが手繋いで一緒に御両親捜してあげるからさ。
「もー、わかんないかな? オイラですよ。いっこ下の矢口ですよ。矢口真里です」
「いっこ下? 矢口? 矢口真里……矢口……」
どっかで聞いた事のある名前だった。
一つ下ってことは高校の後輩、だよね。
後輩……矢口……オイラ……。
「あ、もしかして真里君?」
「そうですよ。さっきからそう言ってるじゃないですか〜」
ようやく思い出した。
カオリが三年生の時に、校内で超有名だった矢口真里君。
何かと話題に上がってたっけ。
でも随分と変わったような気がする。
確か、あの頃は金髪ですばしっこくて、よく笑ってた……あ、今でも笑ってるか。
(〜^◇^)<キャハハハハッ
「ラッキだな〜。飯田先輩に会えるなんてオイラついてる〜。そうだ、先輩、向こう行きましょうよ」
「え、あ、ちょっと」
一端こうと決めたら梃子でも動かない性格だからなぁ、真里君は。
強引に腕を引っ張られて群衆に埋もれてくカオリたち。
真里君、小さいから人垣を上手く避けてるけど、カオリはもうガンガン当りまくってる。
なんかカオリってば、子供が欲しい物を強請って急かされてる母親みたいじゃん。
っていうか真里君、どこまで行くの?
このままだと先輩と逸れちゃったままだし、今頃先輩は必死に捜してくれてるかもしれないのにぃ。
川;‘〜‘)<どうしたらいいの?
- 83 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:42
-
◇ ◇ ◇
真里君に連れられてきた所は、花火がちょうど45度前方に見える絶好の場所だった。
穴場なのかどうかわかんないけど、あまり子供や家族らしき人たちがいない。
その代わり、周りにはカップルだらけで、そこいら中からハートマークが飛びかってる。
こういう場所、慣れてないから、なんか恥かしい。
真里君は周りの事なんか気にもしないで、相変わらずカオリの顔をじろじろと見てる。
こういう状況恥かしくないのかな?それとも慣れてるのかな?
「飯田先輩、まるで女優さんみたい」
「そ、そうかな?」
「そうですよ。自信持っていいっすよ」
「ありがと」
微笑みかけたら真里君は「へへっ」って言って照れてた。
なんか小学生みたいで、可愛いな。
「……」
「な、なに? 人の顔じっと見つめて」
「飯田先輩、すごく綺麗です」
「もぉ……」
「オイラ、やっぱり諦めらんないや」
「えっ?」
ジッとカオリの顔を見つめて来る真里君。
すごく真剣な顔で見てくるから段々恥かしくなってくる。
こういうのに慣れてないからいざっていう時、どう対処して良いのかわかんない。
耐え切れなくなって顔を逸らそうとした時、真里君がカオリの手を握った。
そしていきなりカオリの手の甲にキスしてきた。
ヨーロッパ地域なんかでよく見かける、ご挨拶代わりのアレ。
「……オイラ、一目惚れでした」
「えっ……」
「オイラ……初めて見かけた時から飯田先輩のこと見てました。
先輩は気付いてなかったかも知んないけど、オイラはずっと先輩しか見てなかった」
「だって、真里君は後……」
「ごっつぁんはもう関係ないっす。自分の気持ち隠したまま付き合えなかったから、別れました。
別れる理由もちゃんと言いました。オイラには前々から好きな人がいるって」
「真里……君」
- 84 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:43
-
真里君が後輩の後藤さんとお付き合いしてるのは、学校中のみんなが知ってた。
いわゆる公認カップルっていうやつでカオリも当然知ってた。
真里君は他の生徒からも人気が高くて、人懐っこくて、明るくて面白くて、
それでいてちゃんと勉強もできるし、スポーツもお任せの万能タイプ。
かたや後藤さんも笑顔が可愛くて、人懐っこくて、それでいて甘えんぼさん。
カオリのクラスメイトも何人かは真里君や後藤さんに恋してたみたい。
そんな二人の仲はカオリが見てもすごく良さそうで、楽しそうに見えたから、
本当にお互いがお互いを大好きなんだろうなって思ってた……。
なのに、そんな真里君があまり目立たなかったカオリを見てたなんて、信じられなかった。
「飯田先輩、好きです。初めて会った時からずっとずっと好きでした。
だからオイラ、飯田先輩と一緒に色んなもの見たり聞いたり感じたりしたい……。
飯田先輩の一番近い所で同じ時間を過ごしたい」
「……」
「だからっ、オイラと付き合ってくださいっ!」
いつものふざけた調子とは違って、礼儀正しく頭を下げる真里君。
周りのカップルさんたちはカオリたちの事気遣ってくれてるのか、徐々にその場から離れていってる。
真里君の気持ちは彼の身体中から溢れ出てて、今でも繋いでる手からすごくよく伝わってきた。
それに今、ものすごくドキドキしてるんだろうなって思う。
だって自分も同じ経験を二度もしてるから。
でも、カオリはすぐに応えを出せなかった。
だって、急に会って想いを知らされて、そのままの勢いで告白されたんだもん。
カオリ不器用だし、頭の中が上手く整理できないで付き合うのは真里君に悪いと思ったから。
「……気持ちは嬉しいんだけど、カオリには今すぐに応え出せないよ。ごめんね」
そう言うことしかできなかった。
それにこの状況、カオリが先輩に再会した時と似てる。
たぶん、先輩も今のカオリと同じ気持ちだったんだろうなって思った。
正直、告白されたほうも応えを出すのが辛いんだなって。
だからなんとなくだけど、あの時の先輩の本当の真意が今更ながら判った気がする。
恋愛って奥が深いんだなぁ……。
- 85 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:44
-
「……判りました」
「真里君……」
「でも、まだ振られたわけじゃないですよね?」
「えっ……」
「飯田先輩の口からはっきりと応え聞くまで、何度でもアタックしますから。諦めないですからッ!」
そう言い残して真里君は走り去ってった。
薄暗い中、小さくなってく真里君の後ろ姿が何故か大きく見えた。
そんな姿見てたら、なんだか胸がキュッて痛んだ。
そして急に切ない気持ちになった。
あっ……これ。
そう、恋した時に感じる独特の痛み。
「……どうしよう」
この時、カオリの中では確実に先輩よりも真里君の方に気持ちが傾いてた。
認めたくなかったけど、真里君に……。
ヒュ〜……、ドォーン!!
いつの間にか色とりどりの花火が夜空に描かれてた。
それと同時に、周りにはカップルだらけだったはずなのに、今では家族連れや友達連ればかり。
そんな人たちが、一発ずつ打ち上がる花火に歓喜してる。
そんな中、ポンと肩を軽く叩かれた。
顔を上げると、ホッとした様子で立ってる先輩。
「ようやく見つかったよ」
「ご、ごめんなさい」
「ズルイな〜、圭織ちゃんは。こんな良い場所知ってたなら、教えてくれてもよかったのに」
そう言ってカオリの隣りに腰を降ろして夜空を見上げる先輩。
少しだけ、額に汗が浮き出てる。
懸命に捜してくれたんだなって思うと嬉しい気もするんだけど、でも今は真里君のことしか頭になかった。
その後もずっと先輩と一緒にいたけど、考えるのは真里君の気持ちばかり。
結局、先輩から誘ってくれた初デートは、カオリに複雑な問題を残す形で終わった。
- 86 名前:愛物語。 投稿日:2004/03/26(金) 01:44
-
川‘〜‘)<次回更新は四月の下旬予定。
- 87 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:32
-
予定より早めに更新します。
理由を申し上げますと、次に掲載する予定の物語の方が書き易いことと、
現在進行中の物語の話が向こうのスレと内容が被ってしまうのを防ぐ為です。
ご了承下さい(っていっても読んでる人いなそうだけど)
- 88 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:33
-
夏祭りの日に真里君と出逢ってから、週末はいっつもメールか直電でデートのお誘いが来るようになった。
でもカオリは毎回断ってる。
だって真里君は今年三年で受験生だし、二学期になってそろそろ受験にも本腰入れないとヤバイし。
ある時、その事を言ったら「オイラ専門学校行くんでカンケーないっすよ」なんて言ってケタケタ笑ってた。
それ以来、デートの誘いは少なくなったけど、平日の夜とかに電話で喋るようになった。
最初の頃はぎこちなかったけど、慣れてくるとお互い色んな事を普通に話せるまでフレンドリーになってた。
これってやっぱり真里君の明るさが成せる技なのかな〜なんて思ってみたり。
ちょうど十五夜の日の夜だったと思う。
いつも通りに他愛のない話をしていたら、真里君が思い出したように言った。
「そうだ。もうそろそろ文化祭なんですけど、飯田先輩来て下さいよ」
「文化祭かぁ……何か面白い事あるの、今年?」
「今年はちょうど三十回目なんで例年よりも盛大にやるんです」
「へぇ〜、じゃあそれなりに準備とかも大変そうだね」
「企画目白押しですよ。なんせ祝日入れて三日間ですから。遊びに来てくださいよ〜」
「去年までは主催する側だったから、今年は行ってみよっかな〜」
「マジっすか?ウォー、やったぁーっ!!」
電話の向こう側で絶叫してる真里君。
ガッツポーズとかしてそうだけど、なんでそんなに喜んでんだろ?
「約束ですよ?絶対に来てくださいねっ!!」
「う、うん……」
「イヤッホーイッ!!」
それから何日か経って学校近くには文化祭の宣伝ポスターが至る所に張り巡らされてて、
事の大きさを改めて知った。と同時に、学校側から招待状まで届いた。
ん〜、本格的だな〜。
- 89 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:34
-
「よくここまでやるよね」
文化祭の話を先輩に振ったら、他人事のように葉書きをヒラヒラさせて言う先輩。
そういえば先輩って去年行ったのかな?今年はどうするんだろ?
ちょっと気になって探りを入れてみる。
もしあれなら、誘っちゃおっかな……
川*‘〜‘)<……ポッ
「先輩は今年行きます?」
「ん〜、どうしよっかな〜。今のところ考えてはないけれどね」
「去年は行ったんですか?」
「去年は暇だったから同級生と一緒に行ったよ。それなりに楽しかった記憶があるなぁ」
そう言ってくれたけど、カオリ的にはそれほど面白かった印象はないんだよね。
なんだか文化祭の実行委員の顧問が厳しい先生で、色々規制がしかれちゃったんだよなぁ。
秋の長雨の時期の開催で人出も多くなかったし、中夜祭が中止されたり、
なにより文化祭の日が幾つかの部活の新人戦とぶつかっちゃったし。
終わった後、疲れしか残らなかったっけ。
不評の中で何が面白かったのかな?
主催側じゃないとやっぱり見方とかも変わってくるのかな?
「で、圭織ちゃんは今年行くの?」
「えっ?」
「圭織ちゃんから振った話なのに無視しないでよ」
「あ、ごめんなさい」
「謝らなくてもイイよ。それよりも、行くの?」
「ええ、一応。来てくれって後輩からのお誘いがあったんで」
「へェ〜、人気あるんだね」
「そうでもないですよ」
「いやいや、だって直に誘われたんでしょ?そんな事滅多にないよ」
先輩の言ってる事はもっともな意見。
だってカオリは特定の人に誘われたんだから。
「でも……一人で行くの恥かしいんですよね」
ちょっとカマをかけてみた。
上手くいったら乗ってきてくれるっていう期待を込めて。
- 90 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:35
-
「高校の時の同級生とかと一緒に行かないの?」
「カオリあんまり友達いなくて……」
「あ、ごめん、なんかイヤなこと聞いちゃったね」
「い、いえ、そんなことないですけど……」
ん〜、後もうひと推しかな?
そう思ってチラチラっと先輩を盗み見て牽制するカオリ。
……なんかいやな女だね、カオリって。
「……三連休は模試があるからなぁ。なかったら一緒に行ってあげてもよかったんだけど」
「模試って三日もですか?」
「違うよ。ちょうど中日の日曜だけだけど、ちょうど中日って一番面白いじゃない。
初日は様子見って感じだし、最終日はもうなんかダラ〜っとしてるでしょ?」
「でも、最終日辺りに掘り出し物があるかもしれませんよ?」
「ハハハハハ。掘り出し物ってデパートのバーゲンじゃないんだから。結構面白いよね、圭織ちゃんてさ」
「……」
「まあ、最終日か初日でよければ一緒に行ってもイイよ」
「ほ、ホントですか!?」
「う、うん……」
「ありがとうございますぅ!」
圭織の願いが叶って思わず先輩の手を握ってはしゃいじゃった。
気付いた時には先輩真っ赤になってた。
その数秒後、当然のように真っ赤になるカオリ。
川*‘〜‘)<……ボッ
- 91 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:38
-
待ちに待った(?)文化祭の最終日。
花火大会の時と同じように待ち合わせして久し振りに高校までの通学路を歩いた。
前評判が高いのか、学校に近づくにつれて人が多くなってく。
なんか学校周辺がお祭りって感じで、まだ敷地内に入ってもないのに来て良かったなって思った。
やっぱり主催する側と観覧する側とじゃあ、気分が違うんだね。
まあ、準備とかするのは面倒なんだけど、いざ取り掛かると意外と楽しかったり。
「なんか自棄に嬉しそうじゃない?」
突然そう言われて横を見たら、不敵な先輩の笑み。
「そ、そうですか?」
「ホント、圭織ちゃんてさ、気持ちがすぐ顔に出るよね?」
「えっえっ」
「僕みたいな口下手な人間には圭織ちゃんみたいな人は付き合いやすいけどね」
……へへっ、なんか幸せだなっ。
周りの友達にはちょっと近寄り難い時があるなんてよく言われるけれど、
少なくとも先輩の苦手なタイプじゃなくて良かったよ。
先輩の彼女になるための条件其の一はクリアかな。
川*‘〜‘)> <テヘテヘ
浮かれモード全開のまま校門を潜った途端、凄い光景が飛び込んできた。
ちょっとした中庭がオープンカフェに変身してて、既に親子連れやカップルなどで賑わってた。
其の隙間を忙しなく動き回るウェイトレス係の女の子たち。
かなり本格的だな〜、なんて横目で見てたら勧誘係の女の子に目をつけられちゃった。
「あの〜、よろしかったらちょっと休憩でもしていきませんか?見たところ恋人同士みたいなので、
それなりのコースもご用意してますよ〜」
それなりのコースってなに?っていうか、誘ってきたその子のアニメちっくな声に圧倒されちゃったよ。
それに見た目の恰好もなんだかマニアの人たちが喜びそうな恰好だし。
- 92 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:39
-
「どうですか? 今ならちょっとだけサービスしちゃいますよ〜」
そう言って隣りにいた先輩の腕を組んだその子。
色目遣って誘った挙句に、衣装の上からでもわかるくらいに盛り上がった部分押し付けてる。
あーっ!サービスってなにしてんのよっ!
もぉ−、カオリだってそこまでした事ないのにぃーっ!
っていうか、この子ほど立派なもの持ってないから、やろうとしても無理があるんだけどさ……。
ふと先輩を見ると、困ったような顔してた。
どうやらその子には興味がなかったみたい……良かった。
川;‘〜‘)<ホッ
ホッとしたのも束の間、今度はカオリの腕にその突起物を押し付けるように絡んできた。
「どうですかぁ? 彼氏さんと一時のティータイムでも」
「で、でも、カオリたち、今来たところだからさ、その」
なんだかその子の胸の感触が気になって何言ってんのかわかんなくなってきた。
後数秒で落ちようかとした時、先輩からの助け舟が。
「今、混んでるみたいだから後でね」
なんか怯えたような言い方をしてその場を離れてく先輩。
後を追うようにカオリもその場を後にした。
「どうしたんですか、さっき?」
「いやね、なんか回りから冷たい殺気を感じてさ、逃げてきた」
……何となくわかる気がした。
だってあの子の周りに座ってた人って男の子ばっかりだったから、多分あの子目当てだったんじゃないかな。
その後も色んな所を回る度に、色んな後輩たちに絡まれる羽目になった。
でもその度に聞かれる科白――お隣りにいらっしゃるのは彼氏さんですか?
そう聞きながらも先輩のことを怪訝な顔つきで見てる。
先輩ってひょっとして有名人なのかな?
カオリ的にはその科白は嬉しいんだけど、先輩はなんだか聞き飽きたみたいでウザったそう。
なんだろ?
- 93 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:43
-
「ところで圭織ちゃん、後輩に呼ばれたんでしょ? 行ってあげなくていいの?」
そうだ、なんか色々あって真里君の事すっかり忘れてた。
休憩もそこそこに真里君が誘ってくれた場所に行ってみる。
その道中でもやっぱり、生徒さんたちの視線はカオリたちに向いてる。
中にはワザとらしく声を上げたり、指差したりしてこそこそしたりする生徒さんもいて、気分悪い。
その雰囲気にカオリたちも飲み込まれちゃって、先輩とは会話も出来ない。
もぉーっ、カオリが何したって言うんだよーっ!!
思い足取りで真里君が誘ってくれた場所に付くと、受付にいた生徒さんが大きな声で叫んだ。
「おーい、矢口ぃーっ!! 来たぞーっ!!」
「マジぃー!?」
奥から真里君の声が聞こえたかと思うと、まるで弾丸のように飛び出してきた真里君。
相変わらず元気イッパイって感じで、カオリに満面の笑みを浮かべてる。
「飯田せんぱーいっ!! トオーッ!!」
「うわあっ!!」
ジャンプしてカオリの懐に飛びこんで来た真里君。
人目も憚らず結構大胆な行動に、被害者でもあるカオリの方が恥かしかった。
「お待ちしてましたっ!」
「あ…そお?」
「ハイッ!! ん?」
やっぱり気付いたみたい。
隣りにいた先輩を見ると、その表情が一変した。
喧嘩腰で先輩の前に立つと、舐め回すように先輩を見上げた。
- 94 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/12(月) 03:44
-
「アンタ、ここの卒業生なんだって?」
「え、あ、まあ、そうだけど、なにか?」
「別に。ただ、飯田先輩が好きな人ってどんな奴かなって知りたかったからさ」
「えっ?」
「ちょ、真里君、どうしてそれを!?」
「あのさ、後で体育館の方に行ってくんない? 見せたいモンがあるから」
「体育館?」
「三時ぐらいに体育館に来てくれればいいんだよ」
「構わないけど……」
「後、それまで飯田先輩は貸してもらうよ」
「へ? カオリが!? なんで?」
さっきからカオリ無視で対峙してる二人。
好戦的な態度の真里君に対して、未だ事態を呑み込めていない表情をする先輩。
それを囲むように生徒さんたちが状況を見守ってる……っていうより真里君に加勢してる気がする。
急に手を掴まれたカオリはビックリして繋がれた手を見ると、その先には真里君のいつにない真剣な顔。
「ちょっとお時間頂けますか?」
「え、う、うん。カオリはいいけど……」
「じゃあちょっとオイラの後に付いてきてください」
そう言われてその場から連れ出されるカオリ。
先輩と一緒のときとは違って、今度は自棄に温かい目を向けられた。
ちょっとずつだけど、これから起こる出来事に危機感を覚えた。
……ヤバイかも知れない。
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 03:45
-
(〜^◇^)<今月中にもう一回ぐらい更新する予定っ!
- 96 名前:Acer 投稿日:2004/04/19(月) 15:17
- ご無沙汰です。
通りすがり愛読者改め、Acerに改名致しました。
欠かさず読ませて頂いてたのですが、果たしてこちらにはレスして良かったのだろうか?とこの間書き込んだ後で考えまして様子を見ていました。
もし駄目でしたら遠慮なくおっしゃって頂ければと思います。
向こうからの謎解きは少しばかり考えましたが、ぱっと思いついたので案外すぐに来れました。
やぐさんの勢いがいいらさんいもあればと思ったりもします。
今一番好きなやすといいらさんなんで、作者様のペースでまたーりがんがってくらさい。
やぐさんの次の行動にハラハラしながら、次回まで楽しみにしています。
長レス失礼致しました。。。
- 97 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 01:55
-
真里君に連れてこられたのは体育館の裏手。
えっえっ、もしかしてカオリ、無理矢理押さえ込まれて、あんな事やこんな事。
恥かしい写真撮られて……嫌だ、ヤダァーっ!!
「あの…飯田先輩?」
「ねえ、真里君、カオリなんか悪いことした? したなら謝るから、だからリンチだけは……」
「……アハ、アハハハハ、キャハハハハ」
「えっえっ?」
「飯田先輩、面白いっス」
なんか周りにいた人たちもみんな笑ってるんだけど、何?
「ここに来たのは受付の為っすよ」
「受付? なんの?」
「それは後のお楽しみっス」
そう言って真里君は受付係の子にエントリーする意思を伝えてる。
よく見ると、周りには制服着た男女や私服の男女が一杯いる。
な、なんだ、カオリ一人で変な想像しちゃったよ。
てっきりタコ殴り、もしくは輪姦されるのかと思っちゃった。
川‘〜‘)<ホッ
「先輩、これ付けてください。じゃあ後で」
真里君が番号の札をカオリに渡してくれて、そのまま真里君は去ってった。
なんかよくわかんないけど、言われた通りに札を付けると、係りの女の子がカオリのところに来た。
「では、案内します」
なんかボーイッシュな子だなぁ、なんて思いながら後に付いてくと、女性ばかり数十人が椅子に座ってた。
どうやらカオリは最後みたい。
でも何なんだろ、これ?
- 98 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 01:56
-
「ではですね、今からコンテストの説明をします。え〜、まずは相手方の男性が舞台に登場し、
司会者の人に質問されます。その間に、私が番号順に呼びますから、呼ばれた方は
こちらのゲートの前に立ってもらいます。で、後はこの幕が上がったら、ステージに出て行って下さい」
なんか物凄く嫌な予感がするんだけど……。
そう思って近くにいた係りの女の子に尋ねてみた。
「あの〜」
「はい?」
「これってなんのコンテスト、ですか?」
「え? 知らないで参加なさったんですか?」
「ええ。言われるままに連れてこられたものですから」
「ちなみに番号は…二十番ですか。えっと二十番、二十番はっと……ああ、矢口君かぁ」
なんか急に表情が綻んだんだけど、気のせい?
って言うか、なんのコンテストなのか教えてよぉ〜。
ニタニタしてないでさ。
それにちょっとその笑い方、気持ち悪いよ?
「あの〜」
「フッフッフ、矢口君はなんでも急ですからねぇ〜」
「で、なんのコンテストですか?」
「輝け! オレの彼女は日本一!」
「へ?」
「つまりは彼女自慢コンテストですよ」
「えーっ!!」
カオリの大絶叫に出演者も、係りの人たちも一斉に振り向いた。
彼女自慢て、カオリ、真里君の彼女になった覚えなんてないのにぃ。
いつから真里君の彼女になっちゃったのさ〜。
カオリには保田先輩っていう意中の人が……。
カオリ違いじゃないの?ねえねえ?
- 99 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 01:57
-
「あの、今から辞退できませんか?」
「もう始まりますから、無理ですね」
「そんなぁ……」
「アレ? 飯田先輩は矢口君の彼女ですよね?」
「どうして?」
「有名ですよ、生徒間はもとより先生方も知ってますから。矢口くんの新しい彼女が卒業生の飯田先輩だって」
「ええーっ!?」
「このコンテストで、みんなに二人の仲を認めてもらうんだって、随分前から張り切ってましたし」
……だからか、校内を歩き回るだけで色々な目で見られてたのは。
でも仲を認めてもらうって、あの時真里君の告白OKしたわけじゃないのに。
これって一種の詐欺じゃん。ズルイよ、ヒドイよ、卑怯だよ。
でも……もし大勢の前で真里君の彼女じゃないなんて言ったら……カオリは間違いなく悪者だよね。
かといって素直に認めるとなると、先輩が……ハッ!そうだ、先輩が見に来るんだった。
ヤバイ、ヤバイよっ!
先輩が見てる前でカオリ、真里君の彼女にさせられちゃったらもう先輩とは……。
もしかして真里君、最初からカオリと先輩の仲を裂くつもりで……。
「はいっ、それじゃあ今から始まりますから、準備よろしくお願いしま〜す」
係りの子の掛け声で、その場が慌しく動き始めた。
華やかな音楽が響き渡る中、司会者の声が裏手にも聞こえてくる。
考える暇なんてないくらいに、既に体育館内には、かなりの人が入ってるみたい。
川;‘〜‘)<わあ〜ん、ホントにどうしよう?
見る見るうちに女の子が呼ばれていく。
数分後に湧き上がる歓声。かなりの盛り上がりよう。
どうしよう、どうすれば……答えが出ない。
それでも時間は止まらず、残り数人まで迫ってる。
選択なんかできないよ、真里君を取るか、先輩を取るかなんて。
どっちを取ってもカオリにとっては最悪の結果が待ってるんだもん……。
- 100 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 01:58
-
そして……カオリの出番が来ちゃった。
最後とあって、ゲートに立つとかなりの声が聞こえてくる。
真里君が司会の人の質問に嬉しそうに答える度に、声があがる。
優柔不断のまま時間と場の雰囲気に流されて、この場にいるカオリ。
後数秒で幕が上がって人前に姿を見せるカオリが願う事はただ一つ、先輩が見ていない事だけ。
どうか、先輩がこの会場にいませんようにっ!!
…………。
……。
結局、先輩と合流する事もできずに文化祭が終わった。
メールか直電で連絡取ろうと思って携帯見たら、先輩からメッセージが届いてた。
『急な用事ができたから先に帰ります。コンテスト優勝おめでとう。凄くお似合いだったよ』
……やっぱり誤解されちゃった。
川T〜T)<もう……ダメかもしれない。
真里君から打ち上げに誘われてたけど、先輩の方が気になったから、
真里君に断りのメール打って、急いで先輩の家に向かった。
先輩の自宅に着いて呼び鈴鳴らしたけど、人が出てくる気配なんか全くない。
居てもたってもいられなくなって、先輩の家の近所を虱潰しに捜した。
……どの位経ったんだろう、もう辺りはすっかり真っ暗で、雲一つない夜空には幾つもの星が煌いてた。
捜索も諦めて家に戻り、メールしたり電話しても、先輩からの返事は何一つ返ってこなかった。
川;‘〜‘)<……。
- 101 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 01:59
-
ベッドで横になって今日一日の出来事を考えてみる。
カオリから誘っておきながら、先輩を放置してそのまま真里君の口車に乗せられてコンテストに強制出場。
しかも大勢の人が見てる前で、真里君の彼女にさせられて、見事に優勝。
挙句の果てには、優勝の決まり事として口付けまでして……。
もしカオリが先輩の立場だったら、どうしたって自分への当てつけにしか見えない。
しかも好きだって告白しておきながら、別の人とキスしたんだもん。
恋人じゃないって言っても、あんな事があった以上気にならないほうがおかしいよ。
今更ながら自分の推しの弱さが嫌になる。
優柔不断な自分も嫌い。何もかもが嫌に思えてくる。
……もう先輩とは顔も合わせる事できない。
むしろ先輩のほうから会ってくれなさそう。連絡が取れないのが何よりの証拠。
そりゃそうだよね……こんないい加減なカオリのことなんか軽蔑したに違いないし。
悲しいけれど、もう会えない……。辛いけれど、サヨナラかな……。
川T〜T)<ウェ〜ン
次の日、急だったけど先輩の家に行ったらたまたまお母さんが居て、
一晩考えた事情(勿論ウソ)を説明して先輩の家庭教師を辞めさせてもらった。
色々先輩の家族の方には良くしてもらってただけに、かなり引け目を感じたけど、
でもこれ以上先輩に迷惑かけられないと思ったから、心を鬼にして綺麗さっぱりと縁を切った。
先輩の家の門を出て振り返って二階の先輩の部屋を見上げた。
もう二度とこの家の敷居を跨ぐ事なんてないんだ……。
もう二度と先輩とおしゃべりする事も、どこかに出かけたりする事もないんだ……。
先輩の顔( `.∀´)を見る事も……。
今までありがとうございました、そして……サヨウナラ。
- 102 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 02:00
-
先輩の自宅から帰る途中、一歩ずつ前に進む度に今までの思い出が甦ってくる。
まだ桜が咲いてた頃、偶然出会って、忘れてた想いのままに二回目の告白したっけ。
5月、初めての合コンの帰り道、自分が情けなくなって先輩の前で号泣しちゃったっけ。
長雨の季節、風邪を引いた先輩のお見舞いで顔が真っ赤になるくらい密着したっけ。
夏休み前、学校帰りのデート(カオリ的には)でなっちに邪魔されて、ジェラシー感じたっけ。
残暑が厳しい頃、初めて誘ってくれた花火大会で、浴衣姿誉めてくれたり、手繋いでくれたっけ。
ほとんど恋人同士の付き合いだった数々の想い出。
近所の公園に差し掛かった時には、我慢し切れずに一人で泣いてた。
まるで先輩との思い出を、誰にも知られずそっと流し出すようにして泣いた。
……どの位泣いてたんだろう。
ベンチに腰掛けて静かに涙してたら、急に誰かが抱き付いて来た。
ハッとして顔を上げたら、学生服着た真里君がちっちゃい身体でカオリの事抱きしめてる。
- 103 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 02:00
-
「……」
「自分のしたこと、かなり酷かったって反省してます。飯田先輩の妹さんの友達から、あの人がまだ
飯田先輩に告ってないって聞いたら、居てもたってもいられなくなって、それで」
「……もういいよ」
「でも、オイラ飯田先輩のこと好きだから、誰にも渡したくなかった。これだけは信じてください」
「もういいの、先輩のことはもういいの」
「えっ?」
「もう先輩とは終わったから……カオリじゃ……迷惑ばかり…掛けちゃう…から」
「泣かないでください、オイラが傍に居ますから」
「……」
「オイラが傍でずっと笑っててあげますから」
「そんなんじゃ真里君が疲れるだけだよ」
「オイラは飯田先輩がいてくれればいいんです」
「ダメだよ、カオリ、ヤな女なんだから」
「そんなことないですよ。オイラはそう思ってませんから」
ギュってカオリを抱きしめてくれる真里君。
しばらく真里君の肩に額を預けてたけど、その間真里君はカオリの頭撫でてくれてた。
本当は真里君の取った行動が許せなかったけれど、でもこの時はそれを許している自分がいた。
何故かわかんないけれど……。
- 104 名前:お返事 投稿日:2004/04/27(火) 02:01
-
>Acerさん
レスは一向に構いません。むしろ大歓迎します(長文レスもコテハンレスでも)
謎掛けにしたのは、一つにこのスレ自体を自分で立てたものではなかったこと、
もう一つにはこのスレを立てた作者さんの物語の続きを書くと言っておきながらも、
挫折してしまったという不甲斐無さがあったので、敢えて謎解きにしまひた。
ついでに言えば、掘り出し物を見つけた時の感覚を味わってもらえたらな〜と言うのもあります。
例えば、CD一枚買うにも、お店に行って買いますけど、運悪くなかったりすることもあります。
そうなると次の店へと行ったりして、目的のものが無ければ見つけようと色々探しませんでした?
で、ようやく見つけた時って結構嬉しかったりしませんでしたか?
その感覚を味わってもらえたらな〜ていう想いがありまして……こういう形にしまひた。
(ただそれに似合うだけの価値あるものを提供しなければならないんですけども)
まあ、何はともあれ、これからもここの所在は曖昧にしたままでいきますので、こっそりと見守ってやってくださひ。
いいらさんは勢いはあるんですけど、「受け」に弱いようなので今はちょっと……。
やぐさんは現実通りにいっぱい動きますよ(それが正しいかどうかは別ですけれども)
- 105 名前:愛物語。 投稿日:2004/04/27(火) 02:02
-
川‘〜‘)<次回は5月下旬頃更新予定。
- 106 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:01
-
秋って月日が流れるのがホント早くて、激動の9月からもう1ヶ月近く経った。
あれから真里君とは良く会うようになった。
あの日の涙の理由は聞かなかったけれど、まだカオリが落ち込んでるとばかり思ってるみたいで、
一生懸命慰めたり笑ったりしてくれる。
その笑顔と気持ちが嬉しくて、段々真里君との距離が縮まってった。
それと同時に、真里君のことをただの後輩から一人の異性として見れるようになってきた。
つまりは恋愛対象として見れるようになったわけで、そろそろあの時の返事でもしようかと思ってる。
自分から一方的に恋するのも悪くはないけど、真里くんから一方的に愛されるのも悪くはないんだってわかったから。
文化祭の時以来、手を繋ぐ事はあってもそれ以上はしてこなかったし、カオリのこと大事にしてくれてるって凄く感じる。
真里君くらいの男の子なら多分Hしたいんだろうなぁって思ったから、それとなく言ったら真里君に拒絶された。
「カオリさんがオイラの事完全に見てくれるまでは我慢しますから」って言われた。
……正直物凄く申し訳ないなって思った。
だって、真里君と一緒にいても、些細な事でどことなく先輩と重ねて見てしまう時があったから。
完全に先輩の面影が消え去るのは難しいみたい。
先輩と会わなくなったとは言っても、大学も予備校も同じ街にあるから、いつ何時会うかわからないし、
この間もバッタリ会ったわけじゃないけど、先輩がちょうど本屋から出てくる所を目撃した。
見かけただけなのに、まだ心が落ち着かなくなって、平常でいられなかったカオリ。
真里君と会う事で、なんとか落ち着きを取り戻してた時もあったけど、真里君はそんなカオリを見抜いてたんだ。
だからあんな事言ったんだと思う。
ハァ……ヤバイなぁ、これじゃあ先輩の時と同じように迷惑掛けちゃうよ。
だから、ここ最近ではカオリの方から積極的に誘うようにしてた。
勿論、真里君の予定に合わせてだけど。
そうすることで少しでもカオリの中を真里君で埋め尽くしておきたかったから。
「カオリさんと会うのが日課になって来たみたいで凄くオイラも嬉いっす」なんて言ってニカッと笑う真里君は、可愛かった。
- 107 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:02
-
今夜も真里君に定例の電話を入れる。
「もしもし?」
『カオリさん?』
「そうだよ〜」
真里君はカオリのこと先輩からさん付けで呼ぶようになってた。
これも二人の中がちょっと進展した結果かな?
で、そのうち
(〜^◇^)<カオリ〜
って呼び捨てになっちゃったりして……。
『お〜い、カオリさぁ〜ん?』
「あ、ごめん。ちょっと考えゴトしてた」
『もぉー、カオリさんから電話くれたのに何やってんすかぁ』
そう言って電話越しに聞こえる真里君の笑い声がカオリの気持ちを和ませてくれる。
なんかイイな、こういうの。
「あのね、もうそろそろカオリの大学でも学祭があるんだけど、見に来ない?」
『えっ、ホントっすか!?行く、行きます!』
「じゃあカオリが案内してあげるよ」
『ウオ−ッ!やったぁーっ!!』
「ちょっと真里君?」
『カオリさんと校内デートだぁーっ!イヤッホーイッ!!』
そんなに吠えたら夜も遅いんだし、近所迷惑だよ?
それに校内デートって……デートかぁ。
真里君と一緒に居たらきっとみんな間違うんだろうなぁ。
「アレ、弟さん? ちっちゃいねぇ〜」って感じで。
特になっちとかに「あんれぇ〜、僕迷子かな〜?お姉ちゃんが一緒にお母さん捜してあげるから、
お姉ちゃんと離れちゃダメだぞ〜」な〜んて言われちゃったりして。
フフフッ。それはそれで楽しみかな。
- 108 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:03
-
◇ ◇ ◇
ホントに月日が経つのは早い!
アッという間に学祭を迎える日になった。
なんで秋っていうのはこう色んな物が早く進むんだろ?
日が暮れるのも早いし、月日が経つのも早い。
おまけに今年は秋の長雨が長くて、気が滅入る。
ついでにいえば食欲の秋だからアッという間に体重なんかが猛スピードで増えたりして。
食べちゃいけないと思いつつも、美味しいものの匂いに惹かれてついつい……。
最近テレビで知ったんだけど、外見で痩せてる人ほど内臓とかに脂肪が多いって言ってた。
ここんところ、運動らしい運動なんかしてなかったから多分カオリも……。
あ〜あ、憂鬱。
だからカオリ的には秋が一番嫌い……と言いたいトコだけど、今年だけはスキかな。
だって、今年は人恋しい季節にちゃんとお相手が隣りにいるから……。
川*∩〜∩)<ジブンデイッテ、ハズカシイヤ
そんなコト考えながらぼ〜っとしてたら遠くから聞こえる彼の声。
「カオリさぁ〜ん、トオーッ!!」
「真里く、キャッ!」
待ち合わせに現れた真里君が大声でカオリの名を叫びながらダイビングして来た。
いっつもそうだけど、今日は特別威力があって、思わず転びそうになる。
「…もぉっ、嬉しいのはわかるけど、ちょっとは手加減してよ」
「……」
「真里君?」
なんか真里君、カオリに抱きついたまま固まってる。
どうしたんだろ?
- 109 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:03
-
「真里君?」
「……へへへっ」
「???」
「カオリさんの胸、暖かい」
「!!!」
ちょうど真里君の顔がカオリの胸の辺りにあった。
カオリも真里君を受け止めたからその分かなり密着してるわけで……。
「それに柔らかいなぁ……」
「ちょ、ま、真里君!?」
そ、そんな大胆なコト、こんな所でい、言わないでよぉっ!!みんな見てるじゃん!!
川*∩〜∩)<モォー、マリクンノバカバカァーッ!!!
「へへっ、気持ち良かった」
「……バカぁっ」
「カオリさん、顔真っ赤だぁ〜。可愛い〜」
いくら年下だからって、いくら背が小さいからって、そんな事しといて笑顔だなんて卑怯だよ〜っ。
怒るに怒れないじゃん。
もぉ〜、人生で一番恥かしいよ。
「さ、行きましょう!」なんて言って何事もなかったかのようにカオリの手を取って歩き出す真里君。
気分が凄く昂ぶってるみたいで、幼稚園児みたいに堂々と歌なんか唄ってる。
カオリはもうさっきの抱擁とその感想、それに今の真里君の態度でずっと顔が火照りっぱなしだって言うのに。
ホラ、擦れ違った人がクスクス笑ってるし、あ〜、もお、全く人の気も知らないでぇ……。
でもこれって第三者から見れば思いっきりバカップルに見えるんだろうなぁ。
- 110 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:04
-
そんなこんなでようやく大学に到着。
既に敷地内は色んな出し物で溢れ返ってて、高校の文化祭や地域のお祭りとは全然違う雰囲気だった。
そんな雰囲気の虜になっちゃった真里君、興奮状態のまま彼方此方ナビゲーター役のカオリを引っ張りまわした。
けど、その行く先々でカオリが事前に思ってたコトを言われた。
「君たちは姉弟かい?」って。
その度に真里君はムッとして大声で「オイラはカオリさんの彼氏だいっ!!」って叫びまくってた。
周りの人たちは微笑ましい笑顔を送ってくれたけど、当事者のカオリは恥かしさで顔真っ赤になっちゃってた。
だってねぇ〜、大きな声出さなくてもいいのに出すし、それに余計な事まで言うんだもん。
「カオリさんはスタイル良いし、ちゃんと出るトコ出て引っ込むトコ引っ込んでるんだからな。いいだろ〜」
こんなコト言われたら誰だって普通にしてらんないよね?
なんかカオリ、真里君のお陰で学校一の有名人になりそうな気がする。
川;‘〜‘)<ハァ〜ッ
少し勢いつき過ぎて回ったからちょっと一休み。
サークル棟の中にある休憩所みたいなところで忙しなく行き交う人の群れ見てたら、
カオリの大親友なっちがトテテと駆け寄ってきた。
そう言えば、なっちが所属してるサークルの出し物まだ見てなかったっけ。
「おおっ、来てくれたんだね〜。嬉しいな〜。後二十分ぐらいで始まるから」
「う、うん」
「アレ?」
なっちはキョロキョロと辺りを見まわしてる。なんか栗鼠みたい。
「あの凛々しい彼氏さんは?確か保田さんだっけ?」
「え、あ、えっと……」
「来てないのかい?それは残念だな〜。なっちの歌と演技、見て欲しかったのになぁ〜」
なっちが肩を落して項垂れてるところに、トイレから真里君が戻ってきた。
カオリの隣りに腰掛けると、カオリとなっちを交互に見つめてくる。
真里君の存在に気づいたなっち、すかさずなっち特有の質問攻めが始まった。
- 111 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:05
-
「アラァ〜、カオリってはもう別の彼氏さん見つけちゃったんだ?」
「いや、その、なんて言うか……」
「……」
「あ〜、なんでカオリばっかりそんなにモテるのかな〜?少しはなっちにも回してよぉ〜」
「だから、そういう事じゃなくて、その……」
「……」
助けて欲しくって隣りにいる真里君を見たけど、さっきから真里君は一言も喋んないでジーッとなっちを見つめてる。
いつもみたいに我先に自慢したがる真里君の大声も勢いもなくて、むしろ恐縮しちゃってる感じ。
なんでなんで?
「ん?なんだい?」
「あ、あのっ、お名前はなんて言うんですか?」
「なっちかい?安倍なつみだよ」
「安倍…なつみ……さん」
「真里君?」
なんか真里君の様子がおかしい。
瞬きもしないでジーッとなっちを見つめてて、口が半開き状態。
トイレからの帰りがけに買ったと思うペットボトルがスルリと真里君の手から抜けて床に転がった。
完全に硬直してるみたい。
「真里君?」
「ね、ねえ、カオリ。こちらさんは?」
「矢口真里君っていうんだけど……」
「へぇ〜、矢口君て小さくてなんか可愛いねぇ〜」
そう言ってなっちの手が真里君の頭を撫でた瞬間、真里君はなっちの手をギュッと握った。
「へ?」
「え?」
そしてカオリの目の前で、信じられない事を言い出した。
- 112 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:06
-
「オイラ、安倍さんに惚れました。安倍さんが好きです、オイラと付き合ってください!!」
「ええーっ!?」
「……」
今度はカオリが固まる番だった。
なっちも驚いて目を見開いて、少しだけ固まってた。
そんななっちを見つめつつ「可愛い」を何度も連呼する真里君。
はっきり言ってカオリの存在なんてもうどっかに行ってしまってるみたい。
「ダメですか?オイラじゃ」
「あ、あのさ、なっちとしては、その、とても嬉しいんだけど……」
そう言ってチラチラとカオリを見てくる。
なっちの言いたいコトは十分過ぎるくらい判った。
「君はカオリの彼氏なんじゃないの?」と。
でも、そんなことを全く気にしてないのか、更に信じられないコトを言った真里君。
「飯田先輩には告ってフラれてますし、今日も誘われたから付いてきただけです」
……目の前が真っ白になった。
再会した時に告白してくれたけど、断った覚えなんてこれっぽっちもなくて、むしろOKしようとしてたのに……。
一ヶ月前に至っては、大勢のが見ている前でキスしたのに……。
そしてそれが原因で泣く泣く、身を切られる想いで保田先輩と縁を切ったのに……。
そうまでして真里君と新しい恋を始めたばかりなのに……。
今日の数時間前まであれだけカオリにじゃれついてきて、恥かしい思いまでしたのに……。
なのに、真里君はあっさり掌を返した……。
- 113 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:06
-
気付いたらカオリは自分の住む街の駅のホームに座って、ただ呆然と過ぎ行く景色を見つめていた。
あの場所からどこをどうやって切り抜けてここまで来たかなんて覚えていない。
それに驚いたコトに、泣いてもいなかった。
あの時、泣こうと思えばいくらでも泣けたんだろうけど、そんな気が今でも全く起きない。
なんでだろう?
もしかしてカオリは真里君のコト好きじゃなかったのかな?
いや、そんなことはない。
じゃなきゃ、先輩と別れた後に真里君に抱きしめられた時、心が落ち着いて安心できるはずないもん。
もしあの時、なにも感じなかったら、今日まで真里君とちゃんと向き合ってこなかったはず。
じゃあ、なんで涙の出てくる気配がないんだろう?
なんでなんだろう?どうして?
いくら自問自答しても答えは見つからない。
それが歯痒くて、どんどん苛立って来る。
苛立ってる自分にまた腹が立って更に苛立つ。
こうなると何に対して怒ってるのか判らなるけど、とにかく怒らずにはいられない。
わかんない、わかんないよ!
どうして!?どうしてカオリだけこんなに惨めな思いしなきゃならないの!?
カオリ、なにも悪い事なんかしてないのに、なんでカオリばっかり!?
カオリは恋しちゃいけないの!?人を好きになっちゃいけないの!?
ねえ、誰か教えてよ!!誰でもいいから教えてよっ!!
ホームの反対側でいちゃついてる同世代のカップルが憎たらしくて、一目散にホームから駆け出した。
まるでバスケットの選手みたいなフェイントで人垣を避けながら、駅を出て猛然とダッシュ。
行き先なんかどこでもよくって、とにかく人がいない所へ行こうと走って走って走りまくった。
とにかく今は道行く人を見るだけでも苛立ってしょうがなかった。
みんながみんな、カオリのことバカにしてるようにしか見えなかったから……。
- 114 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:07
-
「ハアッ…ハアッ…ハアッ…」
どの位走ったんだろう。
ふと顔をあげて見れば、なんてことない見慣れた公園だった。
まだ5時前だというのに園内は閑散としてて、人っ子一人いなくて、ブランコが風に揺れてるだけ。
さっきまで人なんか見たくもないって思ってたのに、実際その光景を目の当たりにするとなんだかもの淋しくなる。
なんだか今日は感情の変化が著しいな。
近くのベンチに座って、空を仰ぎ見る。
茜色に染まった空は凄く澄んでて綺麗だった。
しばらく流動する空を眺めてると、さっきまで思い悩んでムカついてたのがちっぽけなもののように感じた。
っていうより、もうどうでもよかった、何もかが……。
真里君がカオリを簡単に振ろうが、なっちに一目ボレして付き合おうが関係ない。
なっちが真里君と付き合ってカオリに遠慮しようが、それが元で不仲になろうが関係ない。
そして……保田先輩が今どうしてて、受験が上手くいってるかどうかも関係……なかった。
カオリには欲するものも気になる事もなんもなくなってしまった。
だけど、それが今、一番心地良かった。
- 115 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:07
-
カオリが独りぼっちになってからもう3ヶ月が経った。
あれからみんなどうしたんだろうか?
カオリを凄く大事にしてくれて、時には茶目っ気たっぷりな行動を引き起こして懐いてくれてた真里君は、
大学の学祭で出会ったなっちに一目ボレして、そのまま二人は今でも付き合ってるみたい。
あれだけ熱心にカオリのコト口説いて慰めてくれたのに、あっさりと反旗を翻してカオリの元を去ってった真里君。
正直、真里君に気持ちが傾きかけてたから物凄くショックだった。
後に部活の後輩だった子に会って真里君のこと聞いたら、どうやら真里君は熱しやすく冷めやすい性格らしく、
真希ちゃんていう子ともホンの2ヶ月たらずで別れたって教えてくれた。
その後も色んな女の子と付き合っては別れてを繰り返してたらしい。
カオリもそんな真里君の都合に振り回された中の一人だった。
そしてそんな真里君とお付き合いしてるなっちともここ数ヶ月は喋った記憶がない。
別になっちに悪気はこれっぽっちもないけれど、でもどうしてもなっちの傍に真里君がいると思うと敬遠してしまう自分がいた。
その一方でなっちが心配でもあった。
付き合ってる今はいいけど、いずれなっちも真希ちゃんやカオリみたくあっさりと捨てられるんじゃないかって思うと……。
一見チャラチャラした風に見えるなっちだけど、根は物凄く真面目だからかなりショックを受けるんじゃないかな。
そんな複雑な想いがあるから、余計になっちとは話し辛くなってしまったんだ。
そして……一番親交のあった保田先輩はどうしてるんだろう。
結局、先輩との間に誤解を生んだまま、カオリは自分から先輩の家庭教師を辞めた。
今思うと、ほとんどカオリの身勝手な行動だったと思う。
にも関わらず、それ以来先輩からは何の音沙汰もない。
きっと先輩の事だから、自分を責めてるのかもしれない。
会おうと思えばいくらでも会う事ができるし、カオリを問い詰めたりもできた筈なのに……。
あの日以来、先輩を見かける事もなければ、受験が上手くいったのかも分からない。
- 116 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:08
-
結局、変な蟠りが残ったまま4月までの長い休みに入ってしまった。
前期、あれだけ頑張ったはずの一般教養の後期試験はボロボロだった。
あの時は忙しかったけど、それなりに充実感で一杯だったから、試験も苦になるコトなんてなかった。
でも、今は何をするにでも無力感だけしかない。
あれだけどうでもいいなんて思ってた事が今更になって気になり出してる。
特に保田先輩となっちのことが物凄く気になる。
春から夏にかけて、カオリの傍にはなっちも保田先輩もいてホントに温かかったのに、今は一人ぼっち……。
なんか取り残されたみたいでヤダなぁ……淋しいなぁ……。
ふと手の甲に冷たさを感じた。
「アレ?……なんでカオリ、泣いてんだろ?」
気付かないうちにカオリの目から冷たいものが流れてた。
なんでこんな時に一人泣いちゃってんだろ?
……しばらく考えてみた。
カオリはただ二人のこと考えてて、二人がいなくて一人ぼっちで淋しいって思って……。
…………。
……。
カオリは二人が本気で好きだったからなんだ。
なっちに対しては友情っていう意味の好きで、保田先輩に対しては恋情っていう意味の好き。
意味合いは違うけど、共通して言えるのはカオリにとって二人はかけがえのない存在だっていう事なんだ。
だから本気で二人の事が気になったし、二人のために泣く事が出来たんだ。
「……ハハハッ、カオリ、バカだなぁ……こんな簡単な事に今更気付くなんて……もう元には戻らないのに」
一人で声に出しながら、自分を責めてた。
後悔先に立たずっていう言葉が物凄く身に染みた。
- 117 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:08
-
それから数日間、後悔ばかりしてた。
後悔しては鬱になってく自分。
日増しにその頻度が上がってって、家族にも最近は気味悪がられる。
そんなある日、妹が「ずっと家に居てそうしてんなら、どっか行って来れば?」って言ってくれた。
なんかこのままずっと鬱になってると自分でもホントにヤバイと思ったから、
気分転換も兼ねて一人で自由気ままな旅に出る事にした。
ホント必要なものだけ持って、電車に乗って、行き当たりバッタリの計画性のない旅。
たまにはこういうのも良いかな。
でも妹から立ち寄った土地の名産品を買ってきてくれってお願いされた。
なんだよ〜、自分がどっか行って来いって言ったのはそれが目的だったのか。
ホントしっかりしてるよ、我が妹は。
そんなこんなで、迎えた次の日。
この旅の中で何かが変ればいいなって思いながら、カオリは街を離れた。
誰に言うでもないけれど、とりあえず、行ってきま〜す。川‘〜‘)/~~~
- 118 名前:ご報告 投稿日:2004/05/13(木) 01:10
-
矢口ファンの方には気分を害してしまって、ごめんなさひ。
- 119 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:10
-
一人で行き先もなく自由気ままな旅行から帰ってきた。
行く前に期待していた変化はほとんどなかった。
けれど、多少は気分転換になったから、前よりはすっきりしてる気がする。
久し振りに戻ってきた街並みは何やらどんよりとした雲に覆われてた。
電車に乗ってた時から雲行きが怪しかったけど、やっぱり降ってきちゃったか。
急ぎ足で家路を辿ったけど、ちょうどカオリの家と駅の中間辺りにあるこじんまりとした公園で足止め食らった。
滑り台の下であまり雨避けになってないけど、とりあえず雨宿り。
ハンカチで水滴を拭き取るけど、予想以上に雨を吸い込んでた。
とりあえず簡易的な応急処置をして、一息つく。
ちょっと強くなって来た風の音、重力に導かれるように地へと斜めに叩きつけられてく雫、そんな雨空を無心で眺めてた。
どれくらいそうしてたんだろう、ふと視界に透明なビニール傘が入った。
ゆっくりと振り返ったら、どこか心配そうにカオリを見つめてる猫目。
……5ヶ月ぶりかな、こうして会うのは。
そう言えば、待ち合わせはいつもこの公園だったっけ。
「こんなところに居たら、風邪引くよ?」
「……放っておいて下さい」
「なんで怒ってるの?」
「せ、先輩には、関係、ないですから」
……こんなこと言うつもりなんてなかった。
ホントは謝りたいのに、昔みたいな関係になりたいのに、後悔したくないのに、「ごめんなさい」っていう一言が言いたいのに……。
素直になれなくてどうしても憎まれ口しか叩けないカオリ。
「関係なくても、やっぱり放ってはおけないから」
「しつこいですよ」
……思わず出た言葉にハッとして先輩を見た。
同じ過ちを繰り返しちゃった……しかも最低な言葉でもって。
もう、後悔したくなかったのに……。
謝ろうとしたけど、何故か「ごめんなさい」の六文字が言えない。
- 120 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:11
-
先輩はショックを隠しきれない様子で、しばし無言になってから持っていたビニール傘をカオリに手渡した。
それから鞄の中から折り畳み傘を取り出して、器用に開くとそのまま雨の中を歩いていく。
風がまた出てきて、先輩の射している傘が撓ってる。
3mほど離れてから、先輩の背中に向かって訊ねた。
「なんでそんなに優しくするんですか?」
「……」
「先輩の優しさ、間違ってますよ」
「……」
それは嘘だ、間違ってるのはカオリのほう。
だけど、まだ素直になれないみたい……。
「カオリは……そんなコトされても……嬉しくないです……から」
意地を張ってる自分がとことん嫌になる。
ホントは飛び付きたいくらいに嬉しいことなのに……。
カオリの言葉に振り返ってじっとカオリを見つめてきた。
( `.∀´)<……。
いつもの先輩じゃない雰囲気に自分の言ったことをつくづく後悔した。
けれど、それは一瞬の事で、返ってきた先輩の返事に頭が正確に働かなくなった。
「好きな人に優しくするのは、間違ったこと?」
「えっ……」
「圭織ちゃんが好きだから、大好きだからそうした」
「先輩……」
「でも、仮にそれが間違いなら、圭織ちゃんと過ごした日の事も……いや、再会したこと自体が間違いだったんだろうね」
「……」
「あの日、正直自分でもどうしていいかわからなかったよ。でもさ、よくよく考えたらそれが嫉妬だったってことに気付いたんだ」
「えっ……」
「その時、はっきりとわかったんだ。僕は前から圭織ちゃんが好きだったんだって」
突然の激白に、何がホントで何を信じていいのか判らなかった。
- 121 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:13
-
「でも気付くのが遅かったみたいだね。気付いたら圭織ちゃん、僕の傍から離れてっちゃったからさ。
でも圭織ちゃんの事だから、きっと僕に気を遣ってくれたんだよね、受験のこともあったしさ」
「そ、そんなっ……」
「だから一生懸命頑張ったよ。圭織ちゃんと同じ立場になるために、圭織ちゃんの期待に応えるために、
圭織ちゃんに振り向いてもらうために、そして圭織ちゃんにあの時の応えを言えるためにって」
「……応えって」
「でも、また遅かったみたい」
「えっ……」
「この数ヶ月間で僕自身が変わったように、圭織ちゃんも変わったんだよね。そんな事にも気付かないなんて……」
「ま…待って……」
「元気でね。さよなら」
先輩はカオリの傍から離れていく。
いつにない先輩の冷たくてでもハッキリとした意見に未だ動けないカオリ。
先輩の後ろ姿が徐々に小さくなって、公園の外へと消えてった。
視界から先輩が消えた途端、カオリの目から何かが流れた。
泣いていた。やっぱりそうだ。
先輩にサヨナラって言われて悲しいって思ったから、だから泣いちゃったんだ。
先輩のこともうなんともないと思ってたら、泣くことなんかないはずだもん。
やっぱりカオリには先輩が必要なんだ。先輩がいなきゃダメなんだ。
カオリは知らないうちにそこを駆け出して、先輩が消えてった方へと傘も持たずに向かった。
まだ夕方なのに、辺りはドス黒い雲に覆われて、所々外套が点き始めている。
そんな中でも、消えかかってる外套の灯りが今のカオリの心とダブって見えた。
早くしないと先輩が消えてっちゃう。消したくないっ!!
ようやく見えた紺色の傘を射す先輩は前よりも肩が下がって、弱々しく見えた。
その姿を見た時、どこかホッとする自分がいた。
先輩の姿を見ただけでこんなに安心する自分。
やっぱりあの時の答えは間違いじゃなかったんだ。
「待ってっ!待って下さいっ!」
自分の意思の赴くままにカオリが叫ぶと、先輩の足が止まった。
- 122 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:13
-
カオリと先輩との距離はおよそ10m。
でもその距離が、カオリには何故か生と死の分かれ目のように感じた。
振り返りもせずに先輩がまた足を進める。
闇の向こうに先輩が消えて行ってしまう。
自然と湧き上がってくるマイナスの想い。
そんなのイヤだっ!一人は嫌い!離れたくないっ!
カオリは無我夢中で先輩の背中を追いかけた。
見慣れた先輩を後ろから抱きしめた。
「行かないでっ!行っちゃやだっ!」
「離してよ。もう圭織ちゃんとは……」
そう言って無理からカオリをつき離して、カオリの前から去ってこうとする先輩。
ヤダ……ヤダ、ヤダ、ヤダ!
先輩を離したくはない、置いてかないでっ!
解かれた腕をもう一度、これでもかっていうくらいにキツクきつく抱きしめて喚いた。
「独りにしないでっ!もう独りはヤダっ!ヤダぁ……離れたくないぃ……カオリぃ……
ホントは、先輩と、離れたくないんです……一緒にいたいんですぅ……一緒に」
今度はちゃんと素直な言葉が出てた。
そこでやっと本当のカオリが出せた。
意地張って、素直になれなくて、本当の気持ちを隠していたもう一人のカオリがこの時、崩れ落ちてく。
心の中じゃずっと先輩のこと想ってたカオリが本当のカオリ。
だからこうやって先輩のこと追いかけて来たし、抱き付いて涙流したりした。
カオリは保田先輩が本当に大好きなんだ。
- 123 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:14
-
「ごめんなさい……ごめんな…さ…い……ごめ……」
「圭……織ちゃ……ん?」
「カオリ……素直に…なれなかった……先輩と、会わなくなってから……ずっと淋しかった……
独りでいても、どこかで先輩のコト考えてた……どうしても忘れられなかった……忘れることできなかった……」
「……」
「でも……なんて言ったらいいのか…わかんなくて…ずっと意地はって……」
「……」
「でも……それでもカオリは……先輩が好きなんだもん……他の人が、カオリのコト好きでも、
先輩が、他の人を好きになっても、やっぱりカオリは、カオリはぁ……先輩しか…見えない……」
「圭織…ちゃん……」
「先輩の返事……せっかく聞けたのに、離れるなんて……ヤダよぉ……ヤダぁ!!」
「……圭織ちゃん!」
「カオリ、先輩と離れたくないよぉっ!!わあーっ!!」
もうわけわかんなくなって、その場にしゃがみこんで号泣してた。
雨も人の目も関係なく、まるで子供みたいに泣き喚いてた。
振り返った先輩はそんなカオリを思いっきり抱きしめてくれた。
傘も射さずにここまで走ってびしょ濡れになったカオリの身体を、まるで暖めるようにギュッと抱きしめてくれる。
先輩が射してた傘が風に煽られて飛ばされてくのも構わずに、カオリを抱きしめ続ける。
久し振りに先輩の匂いを感じた気がした。
先輩の身体から滲み出るオーラみたいなものが優しくカオリを包み込んでくれる。
- 124 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:15
-
「圭織ちゃんが好きだ」
「……うん」
「圭織ちゃんがホントに好きなんだ。圭織ちゃんが僕の家庭教師になった時から、ずっと圭織ちゃんが好きだった」
「先……輩」
「言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、圭織ちゃんからの告白の返事を一年も待たせちゃったのは、
圭織ちゃんと同じ立場に立ちたかったからなんだ。せっかく圭織ちゃんの彼氏になったのに浪人生じゃ、
圭織ちゃんが、イヤな思いするんじゃないかと思ったから……ホントはあの時、すぐにOKしたかった。
だけど、圭織ちゃんの立場を思うと……」
「そんなコト……」
「ごめんね。気を遣ったつもりが却ってずっと気を遣わせちゃった。そのせいで色々と嫌な思いや淋しい思い、
悲しい思いさせちゃってホントにごめん!!」
カオリは首を振ってその意思がない事を伝える。
確かに淋しい思いや悲しい思いはしたけど、決して嫌な思いはしなかった。
むしろ良い思いをさせて貰った事の方がずっと多いかもしれない。
「でも、もうそんなコトさせないから。独りになんかさせないから。傍から離れないから。一緒にいるから」
「先輩……保田…先輩っ……」
「辛い思いも、嫌な思いもさせない」
「…ヴん……」
「圭織ちゃん、好きだよ」
二人ともびしょ濡れになったまましばらくその場で抱き合ってた。
勿論、お互いの唇は塞がったままで。
- 125 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/13(木) 01:16
-
川‘〜‘)<次回もちょっと早めに更新予定!
- 126 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:39
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
外の雨もだいぶ小降りになってきて、さっきまで五月蝿く窓を鳴らしていた風の音も今はない。
電気も点けないでただ暗闇の中で毛布に包まってた。
数ヶ月振りに来た先輩のお家は何も変わってないし、どことなく懐かしささえ感じる。
今夜は誰もいないらしくて、ひっそりと静まり返ってる。
なんでも、先輩のご両親はお仕事の関係で、月に二回ほど家を空けるみたいで、
妹さんは今晩、お友達のお家へお泊りに行ってるとか。
だから必然的に今夜は先輩と二人っきり……。
一応、家には今日は帰らないって連絡を入れておいた。
でも、電話を切る時に「今度紹介しなよ」って言われた。
……バレバレですか。あ〜あ、今頃カオリを肴に飲んでるんだろうなぁ。
「どうしたの? 電気も点けないで」
いつの間にか先輩がタオルを頭に乗せて、カップを手にしたまま目の前に立ってた。
お風呂上がりの先輩はちょっと頬が赤くて、可愛らしく見える。
でも、男の人らしい体つきに凛々しさを感じた。かっこいいなぁ〜。
「ごめんね、着るものがなくて。一応、濡れた洋服は乾燥機にかけてるから、もうちょっと我慢してくれる?」
「大丈夫ですよ。さっきお風呂に浸からせてもらって、まだポカポカしてますから」
「……相変わらず嘘が下手だね」
「えっ……」
嘘は言ってない。
部屋の暖房もこれでもかってくらいに高く設定してくれてるし、更に二枚の毛布ですっぽり包まってるし、
なにより先輩と二人っきりって言うことに、ドキドキしてるから決して寒くはない。
カップをテーブルに置いた先輩が、カオリの前に座って手を握ってきた。
カオリとは違ってものすごく暖かかった。
それと同時に自分の手がものすごく冷たいのに気がついた。
……やっぱりまだ素直じゃなかったみたい。
- 127 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:40
-
「ホラ、こんなに冷たいじゃない」
「あっ……」
「寒いんじゃないの?」
「寒くはないです……」
「そう……なら他に何か欲しい物でもある?遠慮なく言って」
「今は……ないです」
そう言ってみたけど、本当のところは心も身体もものすごく寒かったし、欲しい物もあった。
それは、ついさっき二年越しの願いが叶って、晴れて先輩とカオリは恋人同士になった、その記念となる確証が欲しかった。
それを手に入れたらきっと心も身体も温まれると思う。
でもハッキリと言うのはなんだか照れる。
だから敢えてまた気丈に振舞ってみる。
きっと先輩なら察してくれる筈。
カオリのこと一番近くで見てきてくれた人だから。
「圭織ちゃん」
「はい」
「……いい加減、素直になろうよ? 僕も圭織ちゃんも」
「先輩……」
「他人じゃないんだし、僕ら」
そう言ってカオリが包まっていた毛布を丁寧に剥ぎ取ってく。
そして、生身のカオリをそっと自分の懐に抱き寄せると、再度毛布で包まる。
一つの毛布で先輩と一緒に暖まるだけで、心も身体もぽっかぽかになってく。
その温かさをもっと味わいたくて、そっと先輩の身体に手を回した。
先輩も更にカオリのことしっかりと包み返してくれる。
これでもかっていうくらいに肌が密着する。温かい。
知らないうちに涙が出ちゃってた。
でも先輩は優しくそれを拭うと、さっきよりも一層温かくしてくれる。
エッチな気持ちなんか全然なくて、それでも嬉しくてまた涙が出そうになる。
こんなに幸せを感じちゃってバチ当らないかな?
- 128 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:41
-
「……今まで辛い想いさせて、ごめんね」
先輩がカオリの耳元でそっと囁いた。
それだけでゾクゾクしちゃって、でも嬉しくって涙が出っぱなし。
「二年も前からずっと僕のこと好きでいてくれてたのに、僕はずっと逃げてたんだよね。
圭織ちゃんがどんな気持ちのまま過ごしてたかも知らないでさ」
「……」
「さっきの繰り返しになっちゃうけど、圭織ちゃんと再会した時、自分の気持ちにちょっとした変化があったんだ。
でも無理にその気持ちを抑え込んで、嘘を偽ってた」
「……」
「でも、圭織ちゃんとプライベートでも接していくうちに、自分を偽ることが出来なくなってた。
でもね、もう遅かったんだ。偽りの自分が完全に壊れた時には圭織ちゃんには彼がいたから」
「真里君とはすぐに終わっちゃいましたから……」
「そうなんだ……でも、圭織ちゃんと彼の姿をあそこで見た時に思ったよ。
これは自分が今まで仕出かしてきた罪なんだなって……」
先輩の顔はホントに申し訳なさそうに見える。
その顔を見ているのが辛いから、先輩の身体に回してた腕に力を込めてギュッと抱きしめた。
言葉にしないけど、カオリは気にしてないですからっていう意味と、
カオリは先輩の気持ちわかってましたからっていう意味を込めて抱きしめ続けた。
「……でも、そんなことが却って圭織ちゃんを余計に悲しませてたなんて知らなくってさ。
情けないけど、妹に説教されちゃったよ。英語や国語ばかりじゃなくて、
少しは女の子の気持ちのわかる恋の勉強とかもしなって」
「……」
「おかしいよね、カッコ悪いよね、ホントにさ……」
目を閉じて反省している先輩は、いつになく弱々しくて、カオリがこうして支えてないと崩れそうなくらい沈んでる。
だからもっと先輩を抱きしめている腕に力を込めた。
- 129 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:41
-
「ホントにごめんね。謝って済むようなことじゃないけれど」
「そんなことないです。今日まで辛いとか淋しいって思ったことはない、なんて言い切れないですけど、
でも、先輩には感謝してるんですよ?」
「僕に感謝?」
「はい」
先輩の胸に預けていた顔を上げて、先輩の大きな眼を見つめて、今日までの想いを告げる。
ちゃんとした素直な自分をありのままに。
「先輩といて色々なこと体験できたし、イイ思いも数え切れないほどさせてもらったんです」
「圭織ちゃん……」
「なによりも今、こうして先輩がカオリの傍にいて、こうしてカオリを包み込んでくれるだけで幸せです。
それで今までのことは全て帳消しです」
「でも……」
「もし、それでも納得してくれないのなら、一つだけお願いがあります」
「なに?」
「これからもカオリに幸せな思い、させてくれますか?」
「……どういった事が圭織ちゃんにとって幸せな思いかわからないけど、
圭織ちゃんが幸せだなって思えそうなことならいくらでもしてあげるよ」
「約束ですよ?」
「うん。約束するよ」
「先輩……」
「でも、口約束だけだとアレだから……」
誓いの言葉と一緒に、誠意がこもった証として口づけまでしてくれた。
言ったそばから幸せをくれる先輩がやっぱり大好きだけど、でもそれだけじゃ今のカオリには物足りないかも。
せっかくこんなシチュエーションなんだし、今夜はとことん幸せ味わっちゃいたい気分。
ふと先輩を見ると、先輩も同じ気持ちだったみたいで、しばらくジィーっと見つめ合った。
徐々に顔が真っ赤になってく先輩とカオリ。
- 130 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:42
-
ふいにあの時のことが甦る。
ちょうど二年前の、先輩と初めて肌を重ねた卒業式の日のことが……。
あの日も夕方から雨がぱらつき始めてたっけ。
あの時も最初はお互いジィーっと目を見つめ合ったっけ。
あの時は先輩後輩の関係だったけど、今は紛れもなく恋人同士。
「圭織ちゃん、覚えてる? あの時のこと」
「……覚えてます。忘れません」
「あの時は、圭織ちゃんの方から思い出が欲しいって言ったんだよね?」
「……なんか恥かしいです」
「だから、今日は…その……」
さっきまでのカッコよく自分の気持ちを言ってくれた先輩はどこへやら、いつのも口下手な先輩が物凄く真っ赤になってる。
やっぱり男の人でも言いずらいことなんだね。
それとも単に先輩がピュアでシャイなだけかな?
「先輩……」
「な、なに?」
「ちゃんと言ってください。カオリ、先輩の口からはっきりと聞きたいです」
これくらい念を推しておけば大丈夫かな?
相変わらず真っ赤だけど。
「……わ、わかった。か、圭織ちゃんが……」
「……」
「圭織ちゃんを……抱きたい……圭織ちゃんが、欲しい……」
「……貰ってください」
- 131 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:42
-
少し間があってから、先輩の唇がカオリの唇と重なった。
これまで何度かキスはしてきたけど、先輩とするキスが一番気持ち良かったし、一番落ち着く。
長くて熱いキスが終わると、先輩がカオリを優しく抱き上げてベッドの上に寝かせてくれる。
その拍子に包まってた毛布がスルリと床に落ちた。
生まれたままのカオリを見下ろす恰好で先輩が見つめる。
恥かし過ぎて手で顔を隠しながら、呟いてた。
「あ、あんまり……見つめないで……下さい」
「どうして?」
「だって……カオリ、そんなに、スタイル良くないし……」
そう言ったら先輩の顔がカオリの真横に来て、耳元で囁くように「もっとよく見せてよ、圭織ちゃんの全てを」なんて言われた。
さっきまでの先輩どこ行ったの〜?もしかしてさっきの演技?
川*∩〜∩)<ソンナアマイコトバイワレタラ、カオリドウシテイイカ……
顔を覆っていた両手をゆっくりと外していく先輩。
そして、片方の手を自分の手と繋いで、指と指を絡ませた。
何か意味あるのかなって思ったら、先輩がまた耳元で囁いた。
「手……繋いでても良いよね? 少しでも圭織ちゃんの気持ち、知りたいから」
さっきまでの先輩とは全然違うよぉ〜。
なんでそんなにカッコいい事ばかり言うの〜?
何も言えないじゃん、そんなコト言われたらぁ。
先輩の唇がカオリの首筋をゆっくりと伝わってく。
絶妙なタッチがどんどんカオリの気分を高める。
首筋から段々と下に降りてって、鎖骨の辺りにまで来ると今度は上へと這い上がって行く。
強弱をつけた感触がカオリの理性を麻痺させようとしてくる。
なんか目の前が霞んでくような感じ。
これが官能の世界なんだ、これが大人の世界なんだ、って初めて知った。
二年前にはこんな事さえ思えないほど緊張してたからなぁ……。
- 132 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:43
-
また先輩の囁きが聞こえてくる。
「圭織ちゃん、声、聞かせてよ」
「そ…そんな…の……はずか…しい…ですぅ」
「聞きたいな……圭織ちゃんの声」
そう囁いた先輩の唇がカオリの、ううん、女性特有の場所に落ちてきた。
思わずその感触に悲鳴みたいな声上げちゃった。
だけど、それが先輩には合図だったみたいで、水を得た魚のようにカオリの反応を確かめながら、攻め立ててきた。
「アアッ……そ…んなぁ……ダ…」
「もっと聞かせてよ、圭織ちゃん」
「い…やあ……ン…ハァ……っく…」
ダメぇ〜、我慢しようとしてもカオリの意思に反して声が漏れちゃう。
恥かしいのに、先輩に聞かれたくないのに、だけどもっとして欲しくって……。
繋がれた手に力がさっきから入りっぱなし。
だけど、カオリの気持ちを感じ取って先輩はしっかりと握り返してくれてる。
「圭織ちゃん、すごく可愛いよ」
「ヤ…ダァ……そんな…コト…いわな……いでぇ……」
「もっと可愛い姿、見せて」
そう言って先輩の手がゆっくりとカオリの秘蜜へと滑り込んできた。
ピチャッ。
微かにだけど水のような音が聞こえた。
- 133 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:44
-
「ひゃああっ!!」
全身に電気が走ったように身体を思いっきりのけ反らせちゃった。
とても言葉では言い表せないほどの快感。
何々、これぇ、一体なんなの? なんか全身の力が痺れて抜けてくような……。
「怖がらなくてもいいよ」
「先…輩……カオリ…」
「僕がちゃんと導いてあげるから、ね?」
先輩の言葉を信じるように、カオリは身を任せた。
段々と襲ってくる何か。
心は不安で一杯でも、身体はそれを気持ち良く受けとって、もっと欲してるのがわかる。
さっきまで恥かしくて我慢してた声なんてもうどうでもよくなって、先輩の優しい愛撫に敏感に反応してた。
依然としてどんどん迫ってくる何か。
怖くて空いてたほうの手でシーツを目一杯掴んだ。
なんだか頭の中にぽつんと白い球体が浮かんで、それがどんどん大きくなってく。
と同時にカオリの中にも快楽が広まってくる。
「ア…アア……何かが……くる…くるよぉ…きちゃう…」
「圭織ちゃん、凄い綺麗だよ」
「先…輩ぃ……こわ……いやぁ……だぁ…だめぇ……」
先輩の言葉がカオリの中に来る得体の知れないものに拍車をかけたみたい。
一気に頭の中に浮かんでいた大きな球体が弾けて、それと同時に……
何かがカオリの中を貫通して行った。
- 134 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:45
-
無意識のうちに大絶叫してたみたいで、暗闇の中で自分の声が微かに木霊してた。
「ハアッ……ハアッ……ッハアッ……」
なんだか息苦しくて、身体も熱い。
自分の中で何が起こったのかもわからない。
はじめて先輩と肌を重ねた時にはこんな感覚味わえなかったのに。
なんだったんだろう?
「……圭織ちゃん?」
「……先……輩っ……か、カオリ……」
「気持ち良かったんだね」
「え……う、うん……でもぉ……」
「圭織ちゃんはイッちゃったんだよ。エクスタシーを迎えたの」
そう言えば、なんかの雑誌で見た事がある。
エッチしてる時に、気持ち良過ぎて頭の中が真っ白になったりするとかなんとかって。
じゃあ、カオリも……。
ヤダヤダっ!! 一番恥かしい姿先輩に見られちゃったよぉーっ!!
うぇ〜ん、穴があったら入りたいぃ〜。
「別に恥かしい事なんかじゃないんだよ。むしろ誇らしいコトでもある、かな」
「そ……そうなん…です…か?」
先輩が微笑みながら頷いた。
そうなんだ……でも、あんまり良く覚えてないや。
まだ息遣いの荒いカオリを先輩が見下ろしてる。
ちゃんと手は繋がったまんま。
先輩が口付けしてくれた。すごく気持ちいい。
「圭織ちゃん、もっと気持ち良くなってみたいと思わない?」
「え……もっと……ですか?」
「うん。きっと圭織ちゃんにとってものすごく幸せなコトだと思うよ」
幸せなコトかぁ……先輩となら幸せになりたいなぁ。
- 135 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:45
-
カオリは黙って頷いた。
先輩はゆっくりと身体をカオリの上に重ねてくる。
そして耳元で囁いて来た。
「痛かったら我慢しないで言ってね?」
そう言った直後に、先ほど感じた言葉じゃ言えない快感が走った。
そして……カオリの中にものすごい圧力が押し入って来る。
この感触、はじめて先輩を受け入れた時と同じものだった。
だけど、あの時みたいな人生最悪の痛みは感じられない。
むしろ、心地良く受け入れて気持ちが良かった。
「痛い?」
マトモに答えられないで目に涙を溜めてたカオリを見て心配そうに聞いてくる先輩。
だけど、答えられないのは痛いからじゃない。
先輩と繋がってる嬉しさと、その気持ち良さで答えられないだけ。
だからカオリの口からは、必然的に甘い声が漏れてて、空いてたほうの手も先輩をしっかりと抱きしめてる。
ゆっくりとした動きでカオリのお腹の辺りが蠢いてる。
ちょっと苦しいけど、でもその苦しみから逃れたいとは全然思わない。
だってそれはさっき先輩が言ってた幸せに他ならないから。
またさっきみたいな感覚が甦ってきた。
頭の中に白い球体が浮き出てるけど、さっきみたいに大きくなってはこない。
「先……輩……カオ…リ……幸せ…ですぅ……」
「僕もだよ」
今日で何度したかわからないほどのキス。
白い球体がちょこっと大きくなった。
けど相変わらず快楽……ていう名の幸せは昂ぶってる。
- 136 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:45
-
先輩の動きが徐々に早くなって来た。
それと同時に頭の中の球体が大きくなってく。
それにも増して幸せが一杯イッパイ膨れあがってく。
「圭織ちゃ……ん……凄く……いい、よ」
「先……パ…イ……カオリ……も」
すごい、さっきとは違う何かが襲ってくる。
だけど怖くはない。
その理由、何となくわかる。
先輩がカオリと同じような気持ちになってるから、先輩と一緒に幸せ感じてるから。
ああっ、凄い、段々、大きくなる……
「先輩、カオリ、またぁ……」
「圭織ちゃ……んっ」
……。
さっきのような何かがカオリの中を駆け抜けてったけど、その時に水飛沫のようなものが頭の中で弾けた。
そしてその残骸みたいなものがキラキラ光って、まるでSFの世界にいるような感じだった。
凄い……綺麗……だ…なぁ……。
- 137 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:46
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……いつの間にかカオリは眠ってしまってた。
深い眠りから目覚めると、別の幸せがカオリを待っててくれた。
カオリの頬を撫でてくれてた先輩が微笑んでる。
不意にさっきまでのコトを思い出して、恥かしさを隠すように先輩の胸に顔を埋めると、
今度は頭を撫でながらそっと抱きしめてくれた。
ドラマの世界でしかないような出来事に出会えて凄く感動してる。
こっそり顔をあげて先輩を見たら、まだニッコリと微笑んでくれてた。
なんだか先輩と目を合わしてると、変に思われちゃいそうだなぁ。
「何か言いたそうだね?」
「そんな……言えないですよぉ」
「ん〜、気になるなぁ」
「ダメです。秘密です」
言えるわけない。
昨日の先輩はとても優しくてカッコよくて素敵だったとは言えるけど、カオリはどうでしたなんて死んでも言えないよ。
川*∩〜∩)<ソンナコトイッタラ、カオリヘンタイジャン…
先輩としか肌を重ねた事ないけど、まだ二回しか経験ないけど、その二回ともカオリにとっては
大切な時間だったから、今更面と向かってそんなこと言うのもねぇ……。
こういう時ってみんなどうやって切り抜けてるんだろ?
なっちにでも聞いとくんだった。
……。
あ、でもなっちって経験あったかな?
- 138 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:47
-
「今日は雨か……」
先輩が窓の方を見ながら呟く。
その言い方がとてもつまらなそう。
カオリ的には雨は色んな思い出があって好きなんだけどな。
雨が降ると、必ず先輩との距離が縮まってったからね。
しばらく窓の向こう側を見てた先輩がカオリの方に向き直った。
アレ?なんか嬉しそうな顔してるんだけど……。
そして……有無を言わさず抱きしめてきた。
えっえっ?
「可愛いなぁ、圭織ちゃんは」
「……もぉっ」
「よしっ、今日は一日、圭織ちゃんとピッタリしてよっと」
「ピッタリ」っていう部分でカオリを更にギュッて抱きしめ直したから、さっきまでの眠気なんかすっかり飛んで、
嬉し恥かしくって真っ赤になるカオリ。
もぉ、どうしよう、カオリ壊れちゃうよぉ。
よくなっちには「カオリってロボットみたいな時あるよね」なんて言われてたっけ。
ロボットなら直すことできるけど、今のカオリは人間なんだから壊れたら直せないのにぃ。
壊れないうちに話題を反らしておいた。
「先輩」
「ん?」
「ご家族の方、帰ってこないんですか?」
「今日の夕方ぐらいには戻ってくると思うよ。だからそれまでは圭織ちゃんと一緒」
結局はこうなるのか……。
もお、いいや、壊れても。
でも、良かった。もし戻ってきてたら、大変な事になってたかも。
今だって生まれたままの恰好で、二人一緒にベッドに居るんだもん、誰だって妖しいって思うよね。
でも、こういうシチュエーションにちょこっと憧れてたりして。
むしろヤミツキになりそう。
川*‘〜‘)<ヘヘッ、シアワセッ
- 139 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:48
-
なんか妙に落ち着いたら、眠くなってきちゃった。
でも、どうせならちょっとおねだりしちゃおっかな。
遠慮する必要もなくなったしね。
「先輩、腕貸してもらってもイイですか?」
「腕? まあ、いいけど」
ちょっぴり恥ずかしかったけど、勇気出して言って良かった。
それじゃお言葉に甘えて、抱き枕みたいに先輩の腕にピッタリ密着。
女の人みたいな白さと男の人ならではの筋肉のつき方をした、それでもやや細い先輩の腕。
そこから伝わる温もりがちょうどいい感じで眠りを誘ってくれる。
これもまた、幸せっ。
「圭織ちゃん、眠いの?」
「……はい」
「じゃあ僕も寝よっかな」
そう言って一つ欠伸をしながら、繋いだ腕を解いて、逆にカオリをすっぽりと包み込んで来る先輩。
このうえなく暖かいんだけど、やっぱり恥かしさが勝っちゃって眠れない。
昨日はずっと先輩に愛されてたから眠る暇さえなかったし、ちょっと体力がね……。
川*‘〜‘)<ポッ
「先輩、嬉しいんですけど、眠れないです……」
「ん〜、でも圭織ちゃんを離したら、僕が眠れないからさ」
……ズルイ。
カオリを寝かせてくれなかったのは先輩なのにぃ。
相変わらず意地悪な所は変わってないんだから。
( `.∀´)<フフフッ
- 140 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/22(土) 21:48
-
川‘〜‘)<次回最終話だよ〜
- 141 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:31
-
もうすっかり周りは春、はる、HARU……。
今日は大学に成績表を取りに行く日。
それと同時に先輩……圭ちゃんとデートする日。
恋人同士になってから、先輩って呼ぶの止めたんだった。
気をつけなきゃ。川‘〜‘)> テヘッ
昨日、圭ちゃんからメールでお誘いがあった。
今はお互い学校もないから毎日会ってるけど、やっぱりどこかへ出かけるのは嬉しいもんだよね。
はぁ〜、なぁ〜んか、もの凄くシ・ア・ワ・セ。
その幸せを今日も味わいたいし、少しでも長く一緒にいたいから早めに大学行っておかなきゃ。
お昼の待ち合わせに間に合うように、身支度を整えて、早めにお家を出たら……圭ちゃんがいた。
なんで?約束の時間よりも2時間も早いのに。
「おはよ」
「どうして……?」
「家に居ても暇だし、どうせだから圭織ちゃんが通ってる大学でも見てみたくてさ。マズかったかな?」
「いえっ、そんなことないですけど」
「そ、よかった。じゃあ行こっか」
予定より早まったデートに小さな幸せ感じてる。
そう言えば去年の夏の花火大会の時、こんな状況だった気がするなぁ。
あの時は、ホンの僅かな距離が埋まらなくて淋しかったんだよなぁ。
でも今は大丈夫だよね?
そう思って視線をちょっと下にずらす。
すぐそばにある圭ちゃんの温かそうな手。
- 142 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:32
-
「ん、どうしたの?」
「あの……圭ちゃんの、手が」
「手? 手がどうかした?」
「えっと、そのぉ……」
なんだか上手く言えない。
あの時と違ってハッキリ言える立場なのに、自分がこれほどまでシャイな人間だなんて……。
これじゃあ昔も今もたいして変わんないじゃん。
そう思ってたら、急にカオリの右手が温かくなった。
見ると、カオリの右手を包み込むようにして、圭ちゃんの左手がしっかり握ってくれてた。
顔を上げたら、圭ちゃんが優しい笑みを見せてくれてる。
「こうするの、嫌いだっけ?」
「……こうして欲しかったから、凄く嬉しいです」
「そ、良かった」
ちゃんと通じてくれてた。
圭ちゃんはいつでもカオリのして欲しいことを行動で示してくれる。
今だって歩きながら手を握ってるけど、恋人同士がするように、指と指を絡めて
しっかりと離さないようにしてくれてるし。
川*‘〜‘)<ヘヘヘッ。
なんだか春の陽気につられて踊り出しちゃいそうだよ。
- 143 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:33
-
大学のある最寄り駅に着いた。
電車内でも手は繋いだままで、カオリを他の乗客から庇う様にしてくれた圭ちゃん。
凄く嬉しかったけど、ここからはちょっと恥かしいかも。
別に一緒に歩くのは構わないんだけど、知ってる人に会う可能性があるから、ちょっと手を繋ぐにはね……。
イチャイチャしてんな、って石投げられそうだし。
「圭ちゃん」
「ん? なに?」
「あの、ここからは手離してもらっていいですか?」
「なんかマズイ事でもあるの?」
「そういう訳じゃないですけど……ただ、知ってる人に会ったら、恥かしくって……」
「そっか。残念だなぁ」
「えっ……」
「僕的には自慢したかったけども、圭織ちゃんがそう言うなら、そうするよ」
そう言ってカオリの手から離れた圭ちゃんの頼れる手。
急に今まであった温かさが外気に触れて失われてく。
その途端ひどく淋しさがこみ上げてきた。
ほんの僅かな時間だけ離れるだけなのに、自分からそう言ったのに、
すぐそばに圭ちゃんはいるのに、また手を伸ばせば届くのに……。
カオリの手はいつの間にか圭ちゃんの手をさっきよりもきつく握ってた。
圭ちゃんはちょっと驚いて、握られた手とカオリを見返してたけど、
何も言わないでそっとカオリの手を握り返してくれた。
「行こっか」
また圭ちゃんと手を握って歩き始める。
もう知ってる人がいても、石投げられてもそんなのどうでも良かった。
さっき感じた恥かしさが、今は誇らしさに変わってた。
みんなに胸張って自慢したいって感じ。
- 144 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:33
-
大学に着いてから、カオリは圭ちゃんを少しだけ待たせて、成績表を取りにいった。
貰ってすぐに進級したかどうかだけ確認する。
ちゃんと進級できてて、とりあえず一安心。
成績は後でゆっくり見るとして、急いで圭ちゃんの元に帰る。
少しでも長く一緒に居たいから、久し振りに大爆走しちゃったよ。
圭ちゃんは案内板みたいな所に居て、何やら校舎とそれを見比べてた。
なんだかとても真剣な顔つきで、一体なにしてるんだろ?
「どうしたんですか?」
「え? あ、いや、ちょっと確認をね」
「???」
「イヤ、四月からお世話になるところだから」
「へ? そ、それって……」
「あれ? 言ってなかったっけ? 僕、ここに入学したんだよ」
「ええーっ! そんな話、全然聞いてないですよぉーっ!」
「いやぁ〜、圭織ちゃんがよく大学の話をしてくれてたじゃない?
そしたらさ、なんか受けてみよっかな〜なんて思っちゃってね。ちょうど志望する学部もあったことだし」
「もぉ〜、相変わらず意地悪なんだからぁ〜」
「それにさ、ここに入れば、圭織ちゃんと少しでもまた一緒に居られるかもしれないって思ったし」
「えっ……」
「まあ受からなかったり、仮に受かったとしても圭織ちゃんと仲直りできなかったら、意味なかったけど」
「そ、そんなぁ……」
「でもね……」
そう言って人が見てる前でカオリを抱き寄せてくる圭ちゃん。
呆気に取られてたお陰で、抵抗する間もなくカオリは圭ちゃんの胸の中にスッポリと収まる。
うわっ、うわっ、うわっ、みんな見てるよぉ〜っ。
- 145 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:34
-
「ここを受けて良かったと思ってる。さっきも言ったけど、圭織ちゃんと少しでも一緒に居たいから。
同じ場所で同じものを感じたり経験したいから」
「圭ちゃぁん……人が……見てますよぉ…」
「僕だって結構勇気出してるんだから付き合ってよ」
「そ、そんなぁ……」
流石に人前ではキスはしないよね、なんて思ってたら……。
……。
キス……しちゃった、みんなが見てる前で。
圭ちゃん、いつからそんなに大胆になったの〜!?
もぉ〜カオリ、顔から火が出るくらい恥かしいのに、圭ちゃんったら笑ってるし。
あ〜ん、もお、圭ちゃんのバカ、バカぁ〜っ。
「おおっ、カオリも圭ちゃんも何気に大胆なコトするねぇ〜」
「!!! なななっちぃ!?」
「僕的には結構頑張ったんだけど、どうかな?」
「いいなぁ〜、そんな大胆なコトするなんて。あ〜、裕ちゃんもしてくんないかな〜」
いつの間にかなっちがカオリたちの背後にいた。
なんか指咥えて駄々捏ねる子供みたいに、カオリ達をジィーっと眺めてる。
圭ちゃんと仲直りしてから、圭ちゃんの立会いの元、なっちともちゃんと仲直りする事が出来た。
なっちから「これからもよろしくねっ」って言われて握手を求められた時、また泣いちゃった。
やっぱりなっちはカオリにとってかけがえのない存在だった。
- 146 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:34
-
なっちは結局、真里君とは2ヶ月足らずで別れたみたい。
真里君の元彼女だった後藤さんが真里君と縁りを戻したいと言ってきたらしくって、
その話を聞いたなっちは自ら別れを切り出したって言ってた。
ホントかどうかはわからないけど……。
そしてまた今まで通りに合コンに精を出してたら、ようやく運命の人に巡り会う事ができた。
カオリたちが通う大学の院生で中澤裕(ゆう)さんっていうちょっと見た目怖そうな人。
でも物凄く砕けた人で、なっちに紹介された日にすっかり友達付き合いできるほどまで仲良くなれた。
でもそれ以上になっちにはベタ惚れって感じで、もう目のやり所がなかった。
なっちも満更ではなかったんだけどね。
まあでも何はともあれ、みんながみんな丸く収まって良かったと思う。
紆余曲折あったけど、その分これからの生活に十分期待したいな。
圭ちゃんと一緒に。
ね、圭ちゃん♪♪
「なに?」
「へへっ、なんでもないですよっ」
- 147 名前:愛物語。 投稿日:2004/05/28(金) 01:35
-
『愛物語。』
〜fine〜
- 148 名前:編集後記 投稿日:2004/05/28(金) 01:36
-
思った以上に難産でひた。(初めてエロい描写なんかも書いて、自爆ったし)
それに、4人だけで進める筈が、いろんな人をイメージとして出してしまいまひた。(実年齢を思いっきり無視して)
いいらさんの妹には福田さん、やすらさんの妹には高橋さん、やすらさんの元彼女には石黒さん、
高校の後輩には石川さんに市井さんといった感じです。
ホントもう節操がなくて申し訳ないです。
しかも何気に矢口さんだけ悪者扱いだし……(矢口さん推しの方、ごめんなさひ)
でも、出なかった人に比べれば……イヤイヤ、なんでもないです、ハイ。
- 149 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/28(金) 01:40
-
川‘〜‘)<次回は短編の予定
- 150 名前:Acer 投稿日:2004/05/28(金) 15:38
- 川*‘〜‘) <ビバかおけい>(`.∀´*)
完結お疲れ様でした。
いつもはヘタれなやすもやるときゃやるっていうのが本物そっ(ry
やぐさんはね・・・
(;〜T◇T)<・・・
何はともあれ、ハッピーエンドで終わってほんと良かったれす。。。
作者様の描画には本当に頭が上がりません。
今回はAA登場で、それがまたちょっとした感情がよく伝わってきました。
次回の短編もこのお二人の話と期待しても宜しいですかね??
続けてこっちとあっち<どっちだ!?
今後も両方楽しみに待たせて頂きヤス!
( `.∀´)<呼んだ?
- 151 名前:マルタちゃん 投稿日:2004/05/29(土) 13:01
- 完結お疲れ様です。短編楽しみにしてますぅ。
真里君と後藤さんの話も読んでみたいなあ。なんて
これからも頑張って下さい。
- 152 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:47
-
『御恩と奉公?』
- 153 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:47
-
今日も長いようで短い一日が終わった。
収録が押して遅くなったけど、久し振りにメンバーだった輩と一緒の仕事で、
賑やかに楽しく過ごせたから、すこぶる気分が良い。
出来ればこのままの状態で一日が終わってくれればなぁ、と思ったんだけど……そうは問屋が卸さなかった。
自宅の前から見上げると、いつもは点いていないはずの灯りが目に入った。
やっぱりと言うかまたかというか、今日は一緒だったから来るかな〜と頭の片隅で予想はしていた。
誰かと約束でもしておけばよかった、と後悔してみても時既に遅し。
毎度のことなので半ば諦めも入っているから、これといって驚いたりはしない。
むしろ呆れることのほうが最近では多いかも。
もう23にもなるのに……なにやってんだか。
さてさて今回はどんな恰好で出迎えてくれるんですか、コスプレイヤーなつみさん?
- 154 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:48
-
「ただいま〜」
鍵は掛かってないので、帰宅したのを挨拶で知らせる。
するとアタシの声と同時に、玄関までトテテテと駆けて来るコスプレイヤー。
けど勢い余って目の前で止まれず、そのままアタシに激突する辺り、この娘のこの娘たる所以なのかも?
「イタタ……あっ、お、おかえりなさいませ、ご主人さまっ」
「ご、ご主人様!?」
「エヘッ。あっ、お鞄、お持ちしますねっ」
「……今回はメイドさんなわけね」
(*´ー`)<エヘヘッ
黒い衣装にフリルのついた腰巻きエプロン、太腿ぐらいまであるロングソックス(?)、
それに頭にもなんだかフリルの付いたものを被っている。
ちょっとスカートの丈が短いのが妙に猥褻な雰囲気を出してて、正直……エロい。
有名な漫画『G―TA○TE』に出てくる森○奈々とかいうキャラクターと良い勝負だ。
いや、アタシ的にはなっちゃんの方がレア度、オタ度は高いだろう。
こっちは実物だし、超有名アイドルだし……ってなに分析してんだろ?
今回も妙に似合っている(って言うか彼女に似合わない衣装ってあるのかな?)なっちゃんに招かれてリビングへ向かう。
すると目の前には、レストランにひけを取らないほど豪華な手料理が並んでいた。
ここは高級レストランでもなければ、どっかの豪邸の優雅な晩餐でもないよね?
目が点になって呆然とするアタシになっちゃんが席につくよう急かす。
おずおずと席について周りを見渡すが、そこはやはり自分の部屋だった。
- 155 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:49
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「なっちゃん、これって一体……」
「本日はお魚料理がメインなので、白ワインでよろしいですか?」
「は? いや、いいけどさ、それどっから……」
そう言いながら高級そうなン年ものの白ワインをグラスに注いでくれるなっちゃん。
ソムリエみたいに丁重な注ぎ方じゃなかったけど、でもなっちゃんなりに丁寧だ。
「お口に合うかどうかわかりませんが、どうぞ召しあがってください」
「人の話聞いてよ?」
問いかけても、ニコニコするだけで無視された。
まるでそこに全てが含み込まれたような満面の笑顔。
(●´ー`)<ニコッ
その笑顔に意味を感じて、今日なんかの記念日だったっけ、と自問自答してみても何の心当たりもない。
でも、せっかく作って頂いたので、なっちゃんの好意に甘えてリッチな夕食を楽しむ事にする。
考え事なら後回しでも別に構わないだろう。なっちゃんのことだし(?)
見た目もお味もけっこうなもので、どんどん箸が進むのは良いことなんだけど、一つだけ気になることが……。
「あの……なっちゃん?」
「なんでしょう?」
「なんでアタシの目の前に座ってジーッと見てるわけ? 恥かしいじゃん。それに見てないで一緒に食べようよ?」
「ダメです。ご主人様と同じ食卓につくなんて出来ません」
「なんでよ? 目の前で凝視されると気になるし、それにご主人様って呼び方、やめてよ」
「ダメです。それがメイドのお仕事ですから」
完全になりきってしまったなっちゃんには何を言っても無駄だった。
今だってアタシの正面に座って、両手に顎のっけて両肘ついて嬉しそうに見るのはちょっと……。
元々見つめられるのは得意じゃないのに、しかも食事の一部始終をバッチリ見られるのってどうなの?
ヨネ○ケみたく小洒落た感想なんて言えないですよ、アタシは。
- 156 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:49
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それに、色々と料理に関して説明をつけてくれるのはいいんだけど、その間にも冷めていく料理があって、
アタシが一口入れるたびに感想やらを求めてくる。
しかもその感想次第で対応が様々だ。
例えば……
「どうですか?」
「ん〜、おいしいよ」
(●`ー´)<……
「あ、あの、その、中まで味が染み込んでて、香りもいいよ」
「ありがとうございますっ!」(ニコッ)
「でもちょっと、濃い、かな」
(●T−T)<……
「いや、それは、普通の人がそう思うかなってことで、あ、アタシはこれくらいがちょうどいいかと」
(*´ー`)<エヘッ
「……」
「あ、そちらはですねぇ……」
……と、こんな感じの連続。
昔、ツアー先で夕食を食べに行った、とある高級しゃぶしゃぶ店のコト思い出しちゃったよ。
なんでも素材が最高級を売りにしているらしく、しゃぶしゃぶなのに、「しゃ」で肉を掬われてしまったっけ。
「もう十分食べられますから」って言われたけど、正直美味しくはなかったなぁ……まだ火が通ってなかったし。
結局そのあとコンビニで買ったアイスの方がとても美味しかった。
閑話休題。箸は進めど、お味はわからず。
ずっと恥かしさで真っ赤になりながら食事の時間を過ごすのは、後にも先にも今日だけだろう。
美味しいはずの手料理が、なっちゃんに見つめられていたお陰で、複雑なお味になってしまった。
- 157 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:50
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食べた気がしない内に食事を終え、複雑な気分のまま、一日の疲れを癒す為にお風呂に入ろうとした。
なんか微妙に部屋とかも片付いてて、まるでビジネスホテルにでも泊まってるかのような気分。
着替えを持って浴室へ向かうと、既に万全の体制が整っていた。
「い、いつの間に?」
「あ、先ほど用意しておきましたから」
「……そう。ありがとう」
まあ、直に入れるのなら有り難い事だ。
ようやく一人の時間が持てるな、と思って着ている服を脱ごうとすると、
隣りではなっちゃんが履いていたソックス(だと思ってたら実はガーターストッキングだった)を脱いでいた。
なんか嬉しそうに鼻歌まで唄ってる。
(●´ー`)<♪♪
「……なにしてんの?」
「え? いや、お背中でもお流ししようかと」
「いいよっ! そこまでしなくっても」
「でもそれがメイド……」
「いいからっ! 用があったら呼ぶから!」
「そうですか? じゃあ何かありましたら、何なりと申し付けてください」
平然とした顔で脱衣所から出ていくなっちゃん。
戸が閉まる際、「ちぇっ」という残念そうな声が聞こえたのはアタシの気のせいですか、なつみさん?
「全く油断も隙もあったもんじゃな……」
ガチャッ
「わっ!」
「あの、シャンプーとリンス、新しく詰め替えておいたんで」
「わ、わかった。わかったから早く閉めてってば」
「じゃあ、ごゆっくり」
また閉まる寸前に、「もうちょっとだったのになぁ」って声がしたのは空耳なんかじゃないですよね、なつみさん。
- 158 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:50
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カポ〜ン
……ちょうどいい湯加減だ。檜の香りが漂ってかなりリラックスできる。
ようやく一人になれたアタシはしばらく目を瞑って無心になる。
肩まで浸かっているから直に汗が額から滴り落ちるけど、それさえも気にせずじっと頭の中を真っ白にしていた。
途中色んな雑念(カオリの駄洒落とか矢口の笑い声、石川の寒い話等々)が入り交じったけど。
……どれ位そうしてたのか定かではないが、ほどよく気分もすっきりしたところで、ふと気配を感じた。
よく水気の多い所には霊が集まりやすいと言うけど、生憎アタシはその手の能力を持ち合わせてない。
真横からする邪気に、目を開けギロッと睨みつけるように横を向いた。
すると視界には思いっきりメイド顔のキョトンとしたドアップ(写真集でも十分使えそうなカット)が。
(●´ー`)<???
「うわあっ!」
「わあっ!」
驚いた拍子に態勢を崩したアタシは、頭から湯船に浸かる羽目に。
意外と湯船の中は熱かったから、一瞬顔が火傷したかと思った。
「ぶはっ! ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……なな、なんで入ってくんのよ!?」
「え? いや、物音一つしなかったものですから、てっきり湯船の中で寝てらっしゃるんじゃないかと……」
「……だからってなんで手にボディーソープとスポンジ持ってんのさ?」
「ついでにお背中でもお流ししようかと」
「だから、いいってば。お風呂ぐらいゆっくり入らせてよ?」
「そうですか? では、ごゆっくり」
そう言いながら何事もなかったかのように浴室を出ていくなっちゃん。
お決まりのように、戸が閉まる際「湯気で見えなかった……」と残念がってた。
今更なにを言ってんのよ? ずっと前から何度も見てきたくせに(勿論アタシだって見てきたけど)
それにさっきより微妙に色気が出てたんですけど、疚しい事考えてませんか?
- 159 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:51
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変な意味でのぼせそうになったアタシは結局、お風呂でもゆっくりと出来ず、直に上がってリビングで寛ぐ事にした。
一人になろうとすると却って邪魔しに来るので、最初からなっちゃんの見える範囲にいる事にした。
こうすれば前もって怪しい行動は制御できるし、なっちゃんもニコニコしてるし。
多分、一人になるのが嫌で、それでちょっかい出して少しでも一緒に居たかったんじゃないかと思う。
何気に淋しがり屋だしね。
「お風呂上りに一杯どうぞ」
「これはどうも」
差し出されたビールを受け取って一口飲む。
わざわざご丁寧に、小さ目のグラスを選び、それにお酌をするなっちゃん。
今更ながらしばしなっちゃんの恰好を見てみる。
誘うような香水の匂いと、ボディーラインが意外とハッキリと出てるメイド服。
スカートはちょっと短過ぎやしないかというくらい短くで、なっちゃんの生太腿が妙に猥褻感を演出する。
この恰好で『22歳の私』を唄ったら、間違いなくロ○ータアイドルの頂点に立てると思うのはアタシだけだろうか?
絶対に世の男性諸君の夜のおか……失礼。
それほど今のなっちゃんは可愛くて、幼くて、それでいて……エッチだ。
傍でニコニコするなっちゃんを見ながら、こんな事までして何の目的があるのかと一人考えてみた。
前はナースの恰好で迫ってきたし、もっと前はウサギの着ぐるみなんぞ着て甘えてきたし。
アタシに付き合ってチューハイをチビチビと飲んでるなっちゃんを見ながら考えたけれど、
その答えなど本人以外に判るはずもなかった。
わかったらそれこそ怖い。
「ねえ」
「はい、なんでしょう?」
「なんでこんなことするの? 何が目的?」
「教えませんっ」
「……」
もうどうでもよくなってきた。
考えれば考えるほどアタシにはアホらしいことしか思いつかないから。
- 160 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:52
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グラスを置いて、グデ〜っとソファーに凭れる。
今日は予想以上に疲れた気がする。勿論、家にいる時に疲れが増したのだが……。
なっちゃんがいるのも構わずダラしなさを曝け出し、頭の中を空っぽにしていた。
「あの〜」
「なに?」
「お肩でもお揉みしましょうか?」
「……いいよ、肩凝ってないし」
「まあそうおっしゃらずに……」
人の意見などお構い無しになっちゃんは、背後に回って肩を揉んでくれる。
思ったよりも上手で、かなり気持ちよかった。
なっちゃんがつけてる香水の匂いが余計にリラックスさせてくれる。
「上手いね」
「ありがとうございます」
お得意の“なっちスマイル”で応えるなっちゃん。
こういう人が奥さんだったら、どんなに仕事で疲れて帰ってきても、一発で疲れなんか吹き飛ぶんだろうなぁ。
ここいらで、ちょっと妄想なんぞしてみよっかな。
カオリにも「妄想は頭を柔らかくするんだよ」って薦められたことだし。
まず設定としては……結婚してまだ半年の新婚さんってとこかな。
勿論、アタシが旦那さん(名前が男っぽいからね)で、なっちゃんが若奥さん。
- 161 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:53
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〜妄想の世界 その1〜
圭「ただいま……はぁ…」
な「どうしたの?」
圭「ケガ……しちゃった」
な「大変! すぐ横になって! えっと、用意するものはっと……」
圭「そ、そんなたいしたケガじゃないんだ。枕があればいいよ」
な「枕?」
圭「そう、枕……(なっちゃんの太腿を指す)」
な「えっ(ポッ)」
圭「枕……」
な「こ、この枕?(カァーッ)」
圭「うん。その枕がイイ」
な「……もお〜っ。今日だけだからねっ。ハイ……(ポンポン)」
圭「ふう〜(プニプニ)」
な「あのさ、ケガしちゃったのはもしかして……」
圭「そういうこと」
――ハートブレイク――
〜妄想の世界 その1 完〜
- 162 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:53
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……。
ん〜、我ながらかなり痛い妄想だった気がするなぁ。
でもなっちゃんの太腿は温かそうだし、なにより夫婦っていうのがポイント高いよね。
妄想も中々面白いもんだと気付いたアタシは、もうひとつ想像を膨らませてみた。
こんなのはどうかな?
- 163 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:54
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〜妄想の世界 その2〜
― 時は12月24日午後3時 ―
圭「あ、雪だ」
な「ホワイトクリスマスだね」
〜そっとなっちゃんの手を握る〜
な「!!!」
圭「行こっか」
な「なんか……今日は熱いね(ポッ)」
圭「雪、降ってるよ?」
な「……。ねえ、圭ちゃん」
圭「ん?」
な「ううん……なんでもない」
圭「変ななっちゃん」
な「もぉ……圭ちゃんはロマンの欠片もないんだから」
圭「え? ロマンス? なっちゃん、ROMANS好きなの?」
な「……圭ちゃんのバカっ」
圭「???」
〜妄想の世界 その2 完〜
- 164 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:54
-
……なんかイマイチだなぁ。
やっぱりアタシには妄想は向いてないみたい。
カオリ、ゴメン、仲間になれなくて。
妄想を止めてしんみりしていたら妙な違和感を持った。
さっきまで揉まれていた感触が肩からではなく、違う部分からきていた。
我に返って見ると、なっちゃんの手はアタシの両脇から伸びて胸を鷲掴みにして揉んでいた。
しかも手馴れた手つきで、なっちゃんに襲われてるのでかなりエロい!!
「なっちゃんっ! どこ揉んでんのよっ!」
「え? いやぁ〜、随分と凝ってらっしゃったので……(ムニムニ)」
「んなところなんか凝るかっ!」
「そう言われるとなんだか妙に柔らかいような……(ムニムニ)」
「早く離しなさいっ!!」
「え? ああっ! い、いつの間に!?」
しらばっくれるなっちゃんだが、表情は明らかに確信的な笑みを浮かばせている。
おいっ、感触を確かめるように指動かすなっ!
人をその気にさせる恰好しておきながら、意識はスケベオヤジと化しているなっちゃん。
ホントこの小娘は……。
(●´ー`)<エヘッ
- 165 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:55
-
「あ、あの、お詫びといたしまして全身マッサージなど……」
だから、その手つき止めなさいって!
あんな手でマッサージされたら、それこそ身が持たない。
明日もメンバーだった娘。らと仕事だし、クタクタな状態で現場へ行ったらあの娘らになんて言われるか……。
特にカオリや矢口になんて言われるか判ったもんじゃない!!
「いらないっ! もうお終い!」
「そ、そんな事おっしゃらずに……」
「今度はアタシがしてあげるから」
「え!? そ、そんな、ご主人様、自らそんなことなさらなくても……」
「ご主人様に逆らうの?」
「いえ、そんなこと……」
「メイドだかマッサージ師だか知らないけど、素直にご主人様の指示に従いなさい」
そう言ってアタシはサッとなっちゃんの背後に回りこみ、なっちゃんを無理からソファーに座らせると
やや小振りな肩をやんわりと且つ力強く揉んであげる。
「ああっ、くう〜〜っ、き、気持ちいい〜っ、んはあ〜っ」
なっちゃんは肩が凝っていたらしく呻き声を上げながらも、快感を楽しんでいた。
こんなに疲れてんならアホなことしてないで身体休めりゃいいのに、とトロ〜ンとした表情をするなっちゃんの横顔を見て思った。
こんな優しいご主人様で良かったでしょ? 少しは感謝してよね?
- 166 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:55
-
しばらく保田先生のカイロプラクティックを施してたら、なっちゃんから声が掛かった。
「あ、あの〜」
「なに?」
「もう少し下の方を……」
「下の方?」
アタシは何のことか判らずに揉んでいた手を止めた。
肩より下でマッサージする箇所と言えば、腕か背中、もっといえば脹脛とかぐらいなんだろうけど、
なにせこの態勢じゃあちょっと無理がある。
迷っているアタシに痺れを切らしたのか、なっちゃんが急に振り返ってアタシの両手を取り、
そのまま禁断の場所へと誘った、というよりも強引に持っていった。
そう、さっき誰かさんがしてたように……。
「!! ちょ、な、なにさせんの!?」
「ここも揉んでもらうと気持ちいいんで……」
「そこは、違う意味の気持ちいいでしょうが!」
「違う意味の気持ちいい、と言いますと?」
「……」
「どうなさったんですか、ご主人様? お顔の色が優れませんが?」
「……」
アタシが下ネタ言えないのを知ってて質問するなっちゃん。
手を引っ込めようとしたアタシの手をガッチリ掴んだまま、強引に揉ませるなっちゃん。
手の平からなっちゃんの柔らかい感触が伝わってくる。
- 167 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:56
-
「あっ……もう少しぃ……力を……ああっ……入れて……くださ…い」
「ちょ、なんかヤダ……こんなん、ヤダぁ〜」
「んくっ……け…圭ちゃ……ん……い、いっ……ああっ……」
いつしか、メイド兼マッサージ師のなっちゃんは普通の(?)なっちゃんに戻っていた。
そして、そんななっちゃんはいつもより妖艶だった。
目を潤ませて、頬を真っ赤に染め、いつでも準備OK状態で、アタシを誘ってきた。
「圭ちゃん、行こう」
「は? ど、どこへ?」
アタシの問いに答えずに、強引に腕を掴まれたまま寝室へ連れてかれ、なっちゃんと一緒にベッドへダイブ。
ちょうど枕に顔を埋める形になったアタシは身体ごと向きを変えると、すかさずなっちゃんにキスの嵐を受ける羽目に。
正直こういう形で、Hに持ち込まれるパターンは今までにない。
だからちょっと抵抗を見せる。
「や、やだーっ!! こんなパターンはっ!!」
「ダメ、ダメぇっ! 大人しくしなさいっ!」
「安倍さんのお母さぁーん!!」
「ムダムダっ! 今は通信回路切ってるからっ!」
「ひ、ひぃーっ!!」
「けぇちゃぁ〜ん!!」
(以後自粛)
強引にキスされ、抱きつかれ、終いには……。
ああ……明日をちゃんと迎えられますように。
- 168 名前:Tea Break 投稿日:2004/06/05(土) 02:56
-
『御恩と奉公?』
〜FINE〜
- 169 名前:編集後記 投稿日:2004/06/05(土) 02:58
-
なっちゃんのコスプレシリーズ第3弾でひた。
半ば勢いで書いたものなので、よくわかりません(なにが?)
以後第4弾、5弾と続く予定です……多分……。
次回更新から『愛物語。2』をお届けします。
- 170 名前:お返事 投稿日:2004/06/05(土) 02:58
-
>Acerさん
ご愛読ありがとうございます。
ウチの圭ちゃんはやる時ゃヤリますから(笑)
矢口さんの役柄は……しょうがなかったんです。
他のメンバーでも適任者はいたとは思いますが、どうしても旧メンのみだけで進めたかったんで。
ハッピーエンドにしたのは、恵まれない旧メンを救うという個人的な想いからそうしまひた。
(あんまりいい待遇受けてなさそうだったんで……)
次回作も一応旧メンのみという方向になるかと。
但し、ちょっとエッチでダークな内容になります。
>マルタちゃんさん
ご愛読ありがとうございます。
真里君と後藤さんのお話は、本編にも記載しまひたが、
付き合った期間が2ヶ月足らずなんで、ありきたりな感じです。
後は読者さんのご想像にお任せということで……。
- 171 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 19:53
- お初でございます。
長い事謎解きをしていたんですけど、今日いきなり閃いて発見できました♪
こういう圭圭は読んだ事がなかったので新鮮な感じでしたヨ。
『御恩と奉公?』は無理やりされる圭ちゃん萌え〜。
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/18(金) 05:01
-
落します
- 173 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:38
-
『愛物語。2』
主演:矢口真里(♀)、保田 圭(♂)、他
- 174 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:39
-
私の名前は矢口真里。
近くの高校に通う高校2年生。
見た目が小学生と変わんないくらい背が小さいことがコンプレックス。
でも一応、こんなんでも好きな人はいるんだからっ。
私には兄妹が一人いる。
名前は矢口圭。
今年の春から大学生になったばかりの頼れるお兄ちゃん。
圭兄ちゃんは私よりも2歳年上で、すごく優しい。
頭が良くてよくテスト前になると、勉強教えてもらってばっかりだった。
その代わり運動にはちょっとだけ疎くて、特に持久走とかは大の苦手みたい。
そして、とても努力家で何事にも一生懸命だけど、それでいて褒めるとすぐに照れて顔を真っ赤にする。
厳格で怒るとすごく怖いんだけど、実は超がつくほど抜けてて、天然さん。
そんな圭兄ちゃんが私は昔っから大好き。
家族として好きだし、兄妹としても好きだけど、なによりも一人の男性として好き。
そんな圭兄ちゃんから貰った物で、今でもずっと大切にしているものがある。
それは、一冊の絵本。
もう随分昔のものだから所々痛みがきてたり、ページの端っことかが黄ばんでたり、
中にはページが取れちゃってセロテープで貼り付けた部分とかもある。
だけど、これだけは一生捨てられない私の一番の宝物なんだ。
だってこれは私がまだ幼稚園生の頃に、初めて圭兄ちゃんがプレゼントしてくれたものなんだもん。
- 175 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:39
-
あの頃、私は幼稚園児で、絵を描くのがすごく好きだったんだ。
周りの子とかが奇声あげながら庭を駆け回ってても、一人教室で色んな絵を描いて過ごしてた。
他にもそういう子がいたから、特に先生から注意されたりはしなかったけど。
幼稚園でそんなんだから、当然家に帰ってきても部屋でずっとスケッチブックに色んな絵描いてた。
だからうちの両親は、私が将来デザイナーにでもなるんじゃないかって心配してたみたい。
そんなある日に、いつも使ってるスケッチブックとクレヨンが見つかんなくて、
家の中を探し回ってたら不思議なもの見つけたんだ。
それは、俗に言うエッチな本。
今それを見たらホント顔を背けたくなるようなものだけど、5歳児には不思議でしょうがなく映ったんだよね。
だってさ、お母さんとお父さんみたいな人が裸でいて、なんかモザイクがかかってるんだもん。
あのモザイクは小さい子はなんだろうって興味示すでしょ?
(*^◇^) エ? ワタシダケ? ナンカハズカシイヨォ……
ま、まあともかく、私自身、それに興味持っちゃってさ、それを題材にお絵描きしてたんだ。
今思うととんでもない幼稚園児だよね。
きっと全国どこ探しても、私ぐらいじゃないかな、エッチな本でお絵描きする幼稚園児なんて。
っていうかさ、そんないかがわしい本が置いてあったこと自体、問題じゃない?
うちのお父さん、エッチだからなぁ……。
- 176 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:40
-
そんな時、ちょうど小学校から帰ってきた圭兄ちゃんが、その光景見て怒ったんだ。
「どっから持ってきたんだよ、こんなのっ! 真里は女の子なんだから、こんなの見ちゃダメッ!」って言って
エッチな本取り上げて、ごみ箱に捨てたの。
その時の圭兄ちゃんがすごくカッコよく見えたんだけど、でもひとつ疑問に思うんだ。
小学生になったばかりの圭兄ちゃんがどうしてエッチな本のこと知ってたんだろうね?
普通さ、中学生ぐらいからそういうのに興味持つじゃない、男の子も女の子もさ。
だとすると、早い時期からそういうの知ってた圭兄ちゃんて、かなりマセタ子供だよね。
ホントはものすごくスケベなのかな?
それは置いといて、その後、圭兄ちゃんに連れられて本屋さんに行ったんだ。
怒られた私が泣きそうになってたのを慰めながら、手繋いでね。
で、絵本があるコーナーに行ったら、圭兄ちゃんが私に言ったの。
「真里が気に入った絵本を一冊買ってあげるから、好きなの選んでいいよ」って。
それまで泣きそうだったのが一転して、浮かれモード全快でいっぱいある絵本を一冊一冊吟味してた。
一人であーでもない、こーでもないって呟きながら悩んでる間、圭兄ちゃんは飽きることなく傍に居てくれたんだ。
それで、一時間ぐらいかけて選んだ絵本を圭兄ちゃんは、自分のおこずかいとお年玉で買ってくれたの。
「僕が自転車を買うために貯めたお金、絵本に使ったんだから大事にするんだぞ」って言って私に渡してくれた圭兄ちゃん。
このときからだと思う。私が圭兄ちゃんのこと意識し始めたのって。
だから私の初恋は、2歳年上の圭兄ちゃんなんだ。
- 177 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:41
-
それから11年。
ずっと圭兄ちゃんのこと追っかけてた気がする。
小学生の低学年までは、圭兄ちゃんに引っ付いて遊んでたし、圭兄ちゃんの誕生日には
お母さんと一緒にケーキ作ってあげたし、バレンタインも圭兄ちゃんには手作りあげてたっけ。
でも思春期に入ってからは、何にもしなくなっちゃった。
圭兄ちゃんもそれほど気にしてないし、成り行きでうやむやに終わったって感じ。
でも、今でも圭兄ちゃんのことは恋愛対象として見てるつもり。
ただ口に出して「好き」なんて、言える訳ないけど……。
(*^◇^)<ダッテダッテ、ハズカシイジャン
圭兄ちゃんのどこが好きって訊かれると、困るんだよね。
だってさ、どんな答え言っても多分100%返ってくる言葉って「のろけかよっ!」だから。
あ、目の前にそっくりな顔がある。
そうだなぁ……ちょっと目つきが怖いところも好きだし、口元にある黒子なんか意外とセクシーだし……。
あとはぁ……。
……ん?
「何してんの?」
「うわあっ!!」
「わっ!」
びっくりした拍子に、目の前に居た圭兄ちゃんを突き飛ばしちゃった。
ちょうど前かがみになってた圭兄ちゃん、勢いに任せて後ろの箪笥に思いっきり激突しちゃったよ。
その衝撃で、箪笥の上に置いてあった大きな箱が揺れ落ちて、まるでドリフのコントみたいに圭兄ちゃんの頭を直撃。
圭兄ちゃんてば膝から崩れ落ちて、何が起こったのかわかんない様子でしばし呆然としてる。
そんな姿が私の笑いのツボに嵌っちゃって、思わず涙交じりに大爆笑しちゃったよ。
- 178 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:42
-
「そんなに笑うことないだろ」
「だって、アハハハハ。圭兄ちゃん、ドリフみたいで、キャハハハハ」
「笑い過ぎだっ」
そう言って圭兄ちゃんが手刀を私の頭目掛けて振り翳してきた。
難なくそれを一歩下がって避ける……筈だった。
空を切った圭兄ちゃんの手刀は、そのまま私のちょうど胸の谷間(あんまりないけど)に綺麗に入った。
「「あっ」」
ほんの数秒間、お互い見つめ合う圭兄ちゃんと私。
そして真っ赤になって大絶叫。
「キィヤアアーーーーーーッ!!!」
思わず自分の胸を両手で隠して、その場にしゃがみこんだ。
「わあっ!! ご、ごめん、悪気はないんだ、ホントに」
「圭兄ちゃんのエッチぃーっ!!」
もう恥ずかしくって、傍にあったクッションを2、3個、圭兄ちゃんに目掛けて投げつけた。
急いで圭兄ちゃんは自分の部屋に逃げてった。
私もソファーに飛び込んで、思いっきり顔を残ったクッションに埋めながら、一人身悶える。
しばらくそうしてから、ふとさっきのことを冷静に考えてみた。
あの時は咄嗟に恥ずかしさがこみ上げてきたけど、でも嫌じゃなかった。
むしろ、ちょっと嬉しかった……かな。
だって圭兄ちゃん、顔真っ赤になって慌てふためいてたんだよ?
いくら兄妹でも、あそこまではなんないよね、普通。
それって、私のこと「一人の女」として見てくれたってことなのかな?
そうなのかな、そうだよね、ね、ね?
(*^◇^)<ヘヘッ、ナンカウレシーナ
- 179 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:42
-
あれから、なんか圭兄ちゃんの様子がおかしい。
さっきのことがあってから私と会うと、妙によそよそしくて落ち着きがなくなってるんだ。
夕食の時に、トンカツだったからソース欲しくて取ろうとしたら、ちょうど圭兄ちゃんと手が触れたの。
そしたら圭兄ちゃん、それだけでオタオタして、ソース床に落としてお母さんに叱らちゃう始末。
それにさ、今も私がお風呂から上がって、ちょうどリビングでテレビ見てた圭兄ちゃんと鉢合わせになったら、
圭兄ちゃんてばすごく驚いて、慌てて自分の部屋に戻ってったし。
一体どうしちゃったんだろ、圭兄ちゃん?
私、何か悪いことしたっけ?
タオルで髪の毛拭きながらそのこと考えてたら、圭兄ちゃんと一緒にテレビ見てたお母さんが一言。
「真里、年頃の女の子がそんな恰好で近くに居たら、誰だって逃げますよ」
「え? あっ……」
自分の恰好見て、ようやく全てを理解した。
私、バスタオル一枚を身体に巻き付けたままだったんだ。
うっわぁ〜、すごい大胆な恰好してるよ、我ながら。
こりゃあ、いくら兄妹だって言っても、圭兄ちゃん逃げちゃうよね。
今時珍しいくらいにピュアでシャイだもん、こんな恰好は刺激強すぎ……。
あ、でも、ここでも逃げたってことはさ、やっぱり私のこと「一人の女」として見てくれてる証拠だよね。
(*^◇^)> ヘヘッ、ナンカシアワセダナァ〜
- 180 名前:愛物語。2 投稿日:2004/06/24(木) 01:43
-
「真里」
「ん〜、なぁにぃ〜?」
「いつまで親に自分の裸体、見せつけるつもり?」
「へ? ああっ!! わあっ!!」
いつの間にか、バスタオル落ちちゃってるじゃん!
ここに居たのがお母さんだけでよかったよ。
圭兄ちゃんはおろか、お父さんが居たら……。
(〜T◇T)<イヤダァ〜
「それにしても、真里は背も伸びないけど、胸も成長しないわね〜」
「なっ、なに自分の娘つかまえて、そんなこと言うのさっ!?」
「だって事実でしょ。今見たことだし」
「うぅ〜。そ、そういうお母さんだってそんなに大きくないじゃん」
「真里が全部吸い尽くしちゃったんでしょ。暇さえあれば、オッパイ吸ってたし」
「あ゙〜、もお、昔のこと言わないでよーっ!」
自分でも微かに覚えてるから、余計に恥ずかしい。
圭兄ちゃんの時に比べて乳離れが遅かった私。
それなのに、体型には全くといっていいほど成長が見られないのは何で?
あれだけいっぱい栄養もらったのに、どこいっちゃったんだろ?
ホントだったら今ごろは、バレー選手並にデカくなってる筈なんだけどなぁ……。
(〜T◇T)<ワタシノオサナカッタヒビハ、ナンダッタンダロウ……
- 181 名前:お返事 投稿日:2004/06/24(木) 01:43
-
>名無し飼育さん
謎解き、お疲れ様です。
いいらさんの乙女チックさが伝わってもらえれば、幸いです。
『御恩と奉公?』はお遊びなんで、こういうのもアリかな、と。
なにはともあれ、旧メン救済企画(?)第二弾もよろしくお願いします。
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/24(木) 01:44
-
(〜^◇^)<次回は7月の下旬頃。
- 183 名前:171 投稿日:2004/06/26(土) 15:17
- 更新お疲れ様〜。
個人的にこのカプ一押しなので楽しみにしてます♪
しっかしダークな設定ですね(^^;)
- 184 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/06(火) 03:12
- やぁ〜っと、見つけました!!長かった…。
KK凄く切なくてキュンとなってしまいました。
夏祭りのとこ前半は私も同じようなもどかしさを経験した事があって懐かしくてカオリと一緒にドキドキしましたw
コスプレイヤーなつみは想像してニヤニヤしつつ、楽しませていただきました。また違う衣装で(ry
今度のは一波乱も二波乱もありそうなんで
(●´ー`)<楽しみに待ってるべさ♪
- 185 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:42
-
◇ ◇ ◇
三連休前の金曜日の昼休み。
いつものようにおとなしく過ごしてたら、急にある男子生徒から声を掛けられた。
「ちょっと付き合ってくんないか?」
見ると、私より一コ上の先輩で、校内ではかなり怖いって噂の飯田圭織(かおる)先輩だった。
な、なに? なんだろ?
私、飯田先輩の事知ってるけど、でもほとんど面識ないんだよね。
それに呼び出しをくらうことなんかした覚えないのに……。
飯田先輩の後に付いてきながら、そんなこと考えてた。
通り過ぎてく生徒がみんな私たちの事振り返って、こそこそ話し出してる。
やっぱり目立つよなぁ、飯田先輩って。
怖いって言われてるけど、一方じゃあ女子生徒に人気あるんだよなぁ……ちょっとツッパリ入ってるし。
<(;^◇^)<アンマカンケーナイカ
「ここいら辺でいいか……」
周りに人の気配がない校舎裏まで来ると、先輩が急に振り返った。
動作が大げさだったから、思わず尻込みしそうになっちゃったよ。
先輩と私じゃあ20センチぐらい背丈違うから余計にそう感じるんだよね。
「そんなにビビることないだろ〜」
「す、すいません……」
「別に謝んなくてもいいよ」
そう言ってニコッて笑った飯田先輩。
その笑みがなんかものすごく大人っぽくて、カッコよかった。
でも、先輩が何か言う度に上からもの言われてる気分になるから、なんか恐縮しちゃう。
- 186 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:42
-
「あ、あの〜、それで私に、何の用ですか?」
「俺さ、まどろっこしい言い方、嫌いだから単刀直入に言うよ。俺と付き合ってくんないか?」
「へ?」
「俺さ、矢口のこと好きなんだ。知らないと思うけど、結構上級生に人気があるんだぜ、矢口って」
「う、そ……」
「何人かが狙ってるって言ったから、早めに告っておきたくてさ……俺じゃあ彼氏になれないか?」
……知らなかった。
背がちっちゃくて大人しいからから、目立たない生徒だと自分では思ってたのに、人気があったなんて。
非公認の男子生徒による人気投票とかいうのに、名前すら挙がることもなかったのに。
でも、私なんかじゃ先輩の彼女には相応しくない気がする。
控え目で、大人しくて、人見知りするし、緊張しいだし、賢くないし、スタイルも良くない。
それに比べて先輩は見事に私の逆の性格らしいし、先輩と付き合ったら他の人から白い目で見られそう。
挙げれば欠点だらけの私のどこが良いのかな?
それに私にはもう意中の人がずっといるし……(ぽっ)
「矢口?」
「あの、ひとつ聞いても良いですか?」
「なに?」
「私なんかのどこがいいんですか?」
「全部」
「え?」
「だから、全部」
「ぜ、全部?」
「そう、全部。矢口真里っていう女の子の全てが好きなんだ」
「そ、そうですか……」
そう言われちゃうと、返す言葉もない。
一見すると「パーフェクト」って見えるかもしれないけど、でも言い換えれば私らしい特徴がないとも言えるんだよね。
やっぱり私には先輩と付き合うには、荷が重過ぎる気がした。
それに私には、十年以上も片想いしてる人を諦めることができなそうだから……。
- 187 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:43
-
「先輩には申し訳ないですけど、お付き合いできません。ゴメンナサイ」
「好きな奴、いるんだ?」
「……ハイ」
「振られたついでに訊いていいか? その人って、俺の知ってる人?」
「知らないと思います。先輩よりも一つ年上ですから」
「そっか……。邪魔して悪かったな」
そう言って去っていく飯田先輩の後ろ姿を眺めながら、これでよかったのかなって不安になった。
自分の恋は一生涯、叶うことなんてないって判ってるのに、それでもずっと想い続けてる私。
先輩の姿が見えてる今なら、先輩と付き合って、普通の恋愛ができるかも知れないのに。
(;^◇^)<モシカシテ、ジンセイサイダイノアヤマチヲ、オカシチャッタカモ……
しばらくグランドが見下ろせる斜面に座って、遠くを見てた。
漫画の世界だけだと思ってた、実の兄を好きになるって事。
現世で兄妹になった場合、前世ではその二人は恋人同士だったっていう話をなんかで聞いたことがある。
それを妬んだ神様が来世ではそうならぬようにと、二人を兄妹関係にしてしまったとか何とか……。
ホントかどうかは知らないけど、でももしそうなら私には残酷過ぎるよ。
神様の馬鹿ヤローっ!!
私は自分の恋や行く末について考えたくて、滅多にサボらない授業をサボって、放課後までボ〜っとしてた。
- 188 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:44
-
家に帰ってきても、ボ〜っと今日遭った出来事の続きを考えてた。
夕食のとき、お母さんに気持ち悪がられる位、魂が抜け落ちてたらしい。
終いには、強制的に熱を測る羽目にもなっちゃったし。
「ハァ〜っ」
「ん? 珍しいな、真里が何もしないで、ボ〜っとしてるなんて」
「あ、圭兄ちゃん……おかえりぃ」
「お帰りって、夕食の途中で帰ってきたの忘れたか? しっかりしてくれよ」
「そうだっけ?」
「……熱でもあんのか?」
そう言って自分の額を私の額に押し付けてきた圭兄ちゃん。
直後に私の心拍数は急激に高まって、それと同時に顔全体に熱が集まってくる。
目と鼻の先には圭兄ちゃんのおっきな目と、温かそうな唇が……。
(*^◇^)<ワッ、ワッ、ワッ!? ヤ、ヤバイヨ、ヤバイッテ!!
「ホラ、熱っぽいじゃんか。顔も赤くなってるし、今日は早く寝な」
そう言って戸棚の中を漁ってる圭兄ちゃん。
熱っぽいのも、顔が赤いのもみんな圭兄ちゃんのせいじゃんか!
……なんて怒鳴ることできなくて、私はボ〜っとしたまま、自分の部屋に戻ろうとする。
そしたら、再び圭兄ちゃんから声が掛かって、腕引っ張られて台所まで連れてかれた。
- 189 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:45
-
「ホラ、風邪薬。気休めだろうけど、念のため」
「ええっ、い、いいよぉ。大丈夫だから」
「真里の大丈夫はアテになんないの。今まで何度騙されてきたことやら……」
「ホ、ホントに風邪なんか引いてないから」
「じゃあ、なんであんなに熱っぽかったんだよ?」
「ゔっ…そ、それは……」
圭兄ちゃんのどアップに恥ずかしくなったなんて口が裂けても言えない。
あ〜、もぉ〜、どうしたらいいのぉ〜?
私のこと心配してくれるのは嬉しいんだけどさ、今日だけは放っておいて欲しいのにぃ。
黙ったまま俯いてたら、圭兄ちゃんがコップをテーブルに置いて、食卓の椅子に腰掛けて私を見つめてきた。
さっきまでの圭兄ちゃんとは違って、真面目モード全開って感じ。
そんな顔しないでよぉ、余計に何も言えなくなっちゃうじゃん。
「……学校でなんか遭ったのか?」
「えっ、べ、別に、何も、ないよ」
「……本当に何もなかった?」
「何もないってばぁ……」
「……」
圭兄ちゃんは腑に落ちないって表情のまま椅子から立ち上がって、何故か自分で風邪薬を飲んでしまった。
健康な状態で風邪薬飲むと、却って体に毒だよ。
それにしても、何でアンナに鋭いんだろ?
普段なら、誰でも気付きそうなことですら素通りしていくほど天然ボケなのに。
私のこと、気にしてくれてるのかな?
もし気にしてくれてるのなら、それは家族としてなのかな?
それとも……
- 190 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:46
-
翌日、朝から冷たそうな雨が降ってた。
せっかくの三連休の初日が雨だと、なんか三日間気が滅入るような気がした。
都立の高校に通ってるお陰で今週の土曜日はお休み。
いつもより遅めに起きたら、圭兄ちゃんがダルそうに朝食を摂ってた。
「おはよぉ〜」
「ん? ああ、今起きたのか、っていうか、まだ眠そうな顔してんなぁ」
「だって、眠いんだもん」
「じゃあ、寝てろよ。どうせ休みなんだろ?」
「お腹、空いちゃって……」
「眠気よりも食い気が勝ったってわけね。隣りの真希ちゃんみたいだな」
「そこまで言わなくてもいいじゃん」
私の隣りの家に住んでる真希ちゃんは中学三年生だけど、
会う度に寝てるか、食べてるか、にへっと笑ってるかしか見たことがない。
マトモな姿なんて一度たりとも見かけたことがないんだよね。
もう近所付き合いも長いのに……。
それに私、ちょっと苦手なんだよね、真希ちゃん。
会うといつも私の事からかって弄ぶし、そのくせ圭兄ちゃんにはべったり甘えるんだもん。
苦手って言うよりも、真希ちゃんに嫉妬してるっていうのが正しい見方かもしれない。
できることなら私だって圭兄ちゃんにベタ〜って甘えてみたいよ。
- 191 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:46
-
私が朝食を摂り始めると、圭兄ちゃんは大学へ行く準備に取り掛かる。
こんな雨の中、大変そうだな〜。
パンをかじりながらそんなこと考えてると、圭兄ちゃんが私に聞いてきた。
「今日の夕飯、何食う?」
「え? お母さんいないの?」
「いつもの通り、父さんのとこ。さっき車で駅まで送ってった」
「そうなんだ」
「いい身分だなぁ。あんだけドタバタしてたのにもかかわらず気付かないなんて」
「爆睡してたから」
「こっちは朝の6時に叩き起こされて、タクシー代わりですよ」
「お疲れ様」
私たちのお父さんは今年、お仕事の関係で一人単身赴任してる。
だから、三連休になるとお母さんがお父さんの元へ出向いてって、夫婦で週末を過ごしてる。
日頃私たちのことで迷惑掛けちゃってるから、せめてお父さんと一緒にいるときぐらいは羽根伸ばしてもらいたい。
そんなこともあって、お母さんがいない三連休は家事の全てを圭兄ちゃんと分担してやってる。
買出しとお風呂の用意、ゴミ出しは圭兄ちゃんの担当で、洗濯と掃除は私の担当。
料理は一応二人で共同ってことになってるけど、専ら外食が多い。
(;^◇^)<ダッテ、ワタシモケイニイチャンモ、リョウリニガテナンダモン
分担を決める際、「年頃の女の子の洗濯物を扱うのはおかしいだろ」って言って洗濯係を押し付けた圭兄ちゃん。
確かに圭兄ちゃんの言う通りかも。
でもなんとなく圭兄ちゃんの方が楽なものばかりなのは気のせいかな?
- 192 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:47
-
「で、今晩何にする?」
「お好み焼き」
「は?」
「お好み焼き食べたい」
「……なんで?」
「普段あんまり食べないじゃん」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ決まりね」
「でも俺、作り方知らないぞ。真里は知ってんのか?」
「知らな〜い」
「却下だな」
「え〜、食べたいよぉ」
「我侭だなぁ。どうなっても知らないぞ?」
「どうにかなるよ、きっと」
「ハイハイ。んじゃ、ホットプレートの用意しといてな」
「いってらしゃぁ〜い」
私なりに元気よく圭兄ちゃんを送り出してあげた。
へへっ、なんか今夜は楽しくなりそうな予感がする。
別に今晩の夕飯がお好み焼きだからじゃない。
久し振りに圭兄ちゃんと二人で過ごす週末に、嬉しさを感じちゃってるだけ。
二人で台所に立ってお料理かぁ。
圭兄ちゃん、料理苦手だから材料切ってる最中に指なんか切っちゃうかもなぁ。
それで私が「大丈夫?」なんて言いながら、指をパクッて口に咥えて消毒してあげて。
で、その態勢のままお互い見詰め合っちゃったりなんかして……。
へへっ、楽しみだなぁ〜。
(*∩◇∩)<ハッ!! アサカラナニカンガエテンダロ、ハズカシッ!!
- 193 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:47
-
せっかくの休日を雨で潰された私は、DVD鑑賞でもしようと思って、圭兄ちゃんの部屋に入った。
いまどき珍しく、私が勝手に入っても全く怒られないくらいプライバシーのない圭兄ちゃん。
映画好きの圭兄ちゃんらしくDVDが棚に綺麗に並んでる。
ジャンルも多様で昔のものから、ちょっと前まで最新だったものまで一杯置いてある中から、
コメディーものと、ホラーもの、アクションものと恋愛ものの4つをピックアップ。
そんな中で、圭兄ちゃんには似つかわしくないDVDを見つけた。
それを取ってパッケージを見て私は目が点になった。
「なっちのDVDだ。圭兄ちゃんて安倍なつみのファンだったんだぁ……」
よく見たら、シングルにアルバム、シングルVと安倍なつみが今までリリースしたものが全て揃ってる。
今最も勢いがあるアイドル、安倍なつみ。
そんななっちのファンであろう圭兄ちゃん。
そういえば、圭兄ちゃんが高校時代に付き合ってた人もなっちに似てたような気が……。
……なんか悔しいのは何でだろ?
「それと、これは一体……『安倍な○き大全集』? これってAVじゃん」
パッケージに映るのは、私から見たらとっても羨ましくらいにプロポーションが良い一人の女性の裸。
多分、名前からしてなっちのそっくりさん女優だってことぐらい、私にも判る。
でも全然なっちに似てないじゃん。
たぶん、名前に惹かれたんだろうなぁ……。
圭兄ちゃん……いくらなっちのファンだからって、そっくりさんのAV買わなくたって……。
私の中でちょこっとだけ圭兄ちゃんの株が下がったことは言うまでもない。
(〜^◇^)<デモ、スキダケドネッ!!
- 194 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:48
-
◇ ◇ ◇
ピックアップしたDVDを見ながらどのくらい時間が経ったんだろう。
ちょっと怖かったけど、ホラー映画を見ている時、ふと窓の外に目をやると、かなりの大荒れだった。
画面の中もちょうど外と同じように大荒れで、なんだか怖い。
一応部屋の灯りは点けて、リビングのテレビで見てるから安全性(?)は問題ないんだけど……。
「見なきゃ、よかった、かな」
ちょっとホラー映画を選んだことに後悔してた時、ブラウン管の向こうで大絶叫がして思わず身を縮めた。
なんかゾンビみたいなのが、家の主を襲ってるシーンが映ってる。
襲われてる家の主が何故か自分とダブっちゃって、思わず家の中を見渡してた。
ここ、日本だし、ゾンビなんかいないよね、ね、ね?
ガチャッ
「っひぃ〜っ、えらい目に遭ったぁ〜」
「うわあーっ!!」
「わっ!! なんだ、どうした!? って真里?」
急に背後にあるリビングのドアが開いて声がしたもんだから、ビックリし過ぎて腰抜かしちゃったよ。
リビングのドア閉めてたから良かったけど、もしドアが開いてて急に肩なんか叩かれてたら、
間違いなく私、チビっちゃってたかも……
(〜^◇^)<ヨカッタ、ケイニイチャンニソンナチタイヲミセルコトナクテ……ホッ
「どうしたんだよ、急に?」
「……腰……抜けたぁ」
「ハア? なんでまた?」
「だってぇ、急にドア開いて、悲鳴みたいな声あげるんだもん!! ビックリするじゃん!!」
「そっかそっか、ごめんごめん。真里は昔っから怖がりさんだったもんな」
そう言いながらしゃがんで私の頭撫でてくる圭兄ちゃん。
ちょっと小バカにされてる気がした。
ムカツクぅ〜。
- 195 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:49
-
そろそろお腹が栄養を欲しがってくる頃。
圭兄ちゃんが買ってきてくれた食材と冷蔵庫の中にあった食材使って、お好み焼き作りスタート。
いろんな具材のもの食べようってことで、二人揃って食材を適度な大きさに切る。
豚肉切ってぇ〜、海老の皮剥いてぇ〜、キャベツも食べ易い大きさに切ってぇ〜、指切ってぇ〜♪♪
グサッ
鼻歌唄って調子に乗ってたら、見事に自分の指切っちゃった。
慣れないことするもんじゃないね、やっぱり。
「ん、どうした? 指でも切ったか?」
「そうみたい。やっちゃった……」
「どれどれ? あ〜、ザックリいっちゃってるなぁ」
そう言いながら私の手を取って、傷口見た圭兄ちゃんが、無意識に私の人差し指をパクッて口に咥え込んだ。
(;^◇^)<エッ、エッ、エッ???
私の指の傷口が圭兄ちゃんの口の中で消毒されてる。
舌で傷口舐めてる感触が生々しく伝わってくる。
血が止まったか確認しながら、何度も何度も私の指が圭兄ちゃんの口の中に出たり入ったり。
その度に伝わってくる生暖かい感触とピリッとする痛み。
多分、今の私って茹でタコみたいになってると思う。
それくらい身体がとっても熱い。
って言うか、なんか変な気分になってきちゃいそう……。
- 196 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:49
-
「全く、そそっかしいのも直さないと、モテないぞ?」
ちょうど良いタイミングで圭兄ちゃんが咥えていた私の指を離した。
そしてスーパーの袋の中から何かを漁ってる。
呆然と見てると、中から出てきたのはカットバン。
しかも普通のじゃなくて、ちょっと女の子っぽくて可愛らしいやつ。
用意が良いって言うか、私が怪我するってこと予測してたのかな?
「良かったよ、買っておいて。多分、真里が指切るんじゃないかな〜って思ってさ」
出血が止まった傷口に可愛らしいキャラクターのイラストが描かれたカットバンが巻かれる。
だけど私の意識は、カットバンよりもさっきまで圭兄ちゃんの口の中で消毒されていた人差し指に集まってる。
まだ圭兄ちゃんの舌の生暖かさが残ってる。
「後は俺がやるから、真里は座ってていいよ」
「えっ、で、でもぉ……」
「指全部、カットバンだらけにしたくないだろ? ホレ、向こう行った行った」
「う、うん……」
食卓の椅子に座ってキッチンに立ってる圭兄ちゃんの背中を見つめる。
それから、カットバンの巻かれた人差し指に視線を戻した。
圭兄ちゃんが舐めて消毒してくれた指。
もし今、この指を自分で舐めたら……ううん、もっと言っちゃえば、口の中に含んだら、
圭兄ちゃんと間接キスしたことになるよね……。
圭兄ちゃんの口の中に入ってた指……それを自分の口の中に……。
チラッと圭兄ちゃんを見たら、食材を切って、それをお好み焼き専用の粉と水、卵で混ぜてる。
……。
やるなら、今しかないっ!!
- 197 名前:愛物語。2 投稿日:2004/07/19(月) 04:50
-
パクッ
……。
カットバン独特の匂いみたいなもんがしたけど、気にしない。
ついさっきまで圭兄ちゃんが舐めてた人差し指を今、私が口に含んで舐めてる。
ちょっと変態チックだけど、圭兄ちゃんと間接キスすることに無事(?)成功した。
途端に全身から汗が噴き出す感じがして、身体中に熱が走って恥ずかしさがこみ上げてきた。
(*∩◇∩)<ワッ、ワッ、ワッ!! ワタシ、ナニナニシテンダロ!? ナンデコンナニコウフンシテンダロ!?
「真里、そろそろホットプレート温めといて」
「……」
「真里? お〜い、真ぁ〜里ぃ」
「ふぇっ!! え、あ、はい」
「???」
危ないアブナイ。
無意識のうちにお花畑を飛び回ってたよ。
気をつけなきゃ……。
その後は大変だった。
圭兄ちゃんと二人だけの食事は何度か経験してるけど、こんなに一杯イッパイになったことなんてないから。
喋る相手が圭兄ちゃんだけだから一応は話すんだけど、話の内容なんてそっちのけ。
目なんて合わせらんないし、合わせたらそれこそ……ねぇ〜。
でも、もっと大変なことが次の日に起こるなんてこの時は思いもしなかった。
- 198 名前:お返事 投稿日:2004/07/19(月) 04:51
-
>171さん
今回は前回苦い思いをした矢口さんを押し出しました。
とはいっても、元気な矢口さんではなく、少々控え目な感じで、
恋しちゃってる乙女の矢口さんが表現できれば良いな〜と。
今回のテーマは『恋したっていいじゃない、兄妹でも』ですので、
ダークな感じになるのは当たり前かなと……。
>名無し飼育さん
>夏祭りのとこ前半は私も同じようなもどかしさを経験した事があって懐かしくて
カオリと一緒にドキドキしました
今時、こんな奴いねえよって言われるのか内心不安でしたけど、
こういう感想を頂けると、書いて正解だったなと思います。
コスプレイヤーシリーズですが、一応次作の安倍さんの衣装は決まってます。
けど、どういった内容にするかは考えてないので、ボツになる可能性も……。
とりあえず、愛物語。2が始まったばかりなんで、気長に考えときます。
- 199 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/19(月) 04:52
-
(〜^◇^)<次回はちょっと期間が空いて、9月の下旬頃の予定っ
- 200 名前:Acer 投稿日:2004/07/29(木) 01:23
- ぎゃー!!とっくに愛物語2が始まってた・・・<遅!
しかもやぐさんメイン。
ダークと初めにおっしゃってたので、前回裏の役回りをされたやぐさん救済になるのか?って感じですが。
なって欲しい・・・<願
兄貴やすすがかっけーッス。
自分も妹にして下さい!
何ぼでも指切りますよ、マジで。<壊
そしてやぐさんと取り合いますので。
紺夏・・・いえ、今夏も酷暑ではございますが、お体にお気をつけてお過ごし下さいませ。
またーりお待ち致しております。
- 201 名前:名無し読者。 投稿日:2004/08/16(月) 11:55
- 今日発見。全部読みました。やぐの甘甘っぷりがいいっすね〜
更新まっています。
- 202 名前:〇っ〇さん好き 投稿日:2004/08/17(火) 03:10
- 恋する乙女なやぐが可愛い。圭兄ちゃんとこれからどうなるのか、あちらの話ともども楽しみにまっています。
- 203 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:41
-
翌日。
昨日に引き続いて朝からどしゃ降り。
この様子じゃあ、せっかくの三連休が雨で潰れそう。
起きてても家の中じゃあすることがないから、私は朝から"ド○ク○X"をしてる。
RPGって知らない間に時間が経ってるから、こういう時便利だなって思う。
一応ゲームには多少うるさい私だから、RPGじゃなくても長時間プレーしちゃうんだけどね。
まあ、注目作ぐらいは一度プレーしておかないと、ゲーマーとしての名が廃る。
……なぁ〜んてデカイ口叩いてるけど、実はPS2を買ったのは圭兄ちゃんだったりする。
まだ価格が三万ぐらいの頃に買ったんだけど、圭兄ちゃんはゲームしないでDVD見るだけだから、
買って一ヶ月ぐらいでほとんど私のものになっちゃってた。
テレビラックの中なんて、前まで一杯有ったDVDソフトがいつの間にか無くなって、ゲームソフトばっかり。
おまけに圭兄ちゃんてばこの間、自分専用のDVDレコーダーとテレビ買っちゃったし。
いいなぁ……自分の部屋にテレビがあるの。
- 204 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:42
-
……。
相変わらず外は薄暗くて、部屋の中にはゲームのBGMしかしない。
圭兄ちゃんも今日は家に居るんだけど、ずっと自分の部屋に篭り切ってる。
でも、私にとってはそっちの方が都合がいいかな。
だって、昨日のことがまだ脳裏にハッキリと残ってて、会うだけで赤面しちゃうと思うから。
現に今朝だって洗面所ですれ違った時、まともに口も利けなかったぐらいだから。
その時だった。
急に外が一瞬だけ明るくなったと思ったら……。
ガラガラガラッ、ドォーンッ!!
「キャアーッ!!」
物凄い爆音が響いて、テレビや部屋の灯り、ビデオデッキの時計が一斉に消えた。
突然の閃光と爆音に耳を塞いでその場に伏せた私。
実を言うと、雷は大の苦手。
昔っから雷が鳴ると、布団の中に潜り込んで丸くなるほど苦手中の苦手。
だから雷鳴が轟く度に、悲鳴を上げて床に伏せてる私。
ソファーにおいてあるクッションをあるだけ手繰り寄せて、身を縮めるように丸くなる。
稲光は見えないけど、雷鳴だけはクッションで防音してても聞こえてくるから避けようにも避けられない。
(〜T◇T)<コ、コワイヨォ……
こんなことなら、自分の部屋にでも居ればよかったぁ〜。
- 205 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:43
-
ピカッ!
「ヒッ!」
ピシャァーン! ガラガラガラッ!
「ヒイィ〜ッ!! 怖ぁーいっ!!」
ゴロゴロゴロ……パッ、パッパッ!! ……ドッゴォーーンッ!!
「イヤアーッ!! ヤァーッ!!」
Pururururu……
「ヒイィ〜ッ!!」
思いっきりタイミングよく部屋の電話が鳴ったから、ソファーから転げ落ちちゃった。
そこへ今までで一番大きな雷鳴がしたもんだから、もう頭の中が大混乱で喚きながら泣いてた。
だってだってぇ、『13日の○曜日』みたいな状況なんだもん。
私、何も悪い子としてないのにぃ〜、うぇ〜ん。
一向に鳴り止まない雷が、まるでこの世の終わりを告げてるように思えるほど恐ろしくて怖くて、
もう部屋中転げ回って、泣き叫ぶ私。
「怖いよぉーッ! 誰か助けてぇーッ!!」
誰かって叫んでからふと、圭兄ちゃんが二階に居たのを思い出した。
咄嗟にリビングを飛び出して、二階の圭兄ちゃんの部屋に駆け込む私。
ドアもノックしないでいきなり飛び込んだ部屋で待っていたのは……。
- 206 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:44
-
「Zzz……」
ベッドの上で大の字になって居眠りこいてた圭兄ちゃんだった。
一度寝ちゃうと、どんなことが遭っても起きないって豪呼してただけあって、この雷鳴の音にも全く気付いてない。
でもそんなことお構い無しに、私は圭兄ちゃん目掛けて飛びついた。
とにかく誰かと一緒に、傍にいて欲しかったから。
「Zzz……ウ、グハッ! んな、なんだ、なんだ!?」
突然のことにパニックして辺りを見回してるだろう圭兄ちゃん。
そんな圭兄ちゃんをよそに、私はしっかりと圭兄ちゃんに抱きついたまま身を縮ませて丸くなる。
(〜T◇T)<イヤァ〜、ヤァ〜、コワイ、コワイヨォーッ!!
雷鳴が響く度に、圭兄ちゃんにギュッとしがみ付いて目を閉じる。
こうしててもやっぱり怖いもんは怖い。
「ちょ、真里、痛いって。おい」
「ヤダッ!! ヤダヤダヤダッ!!」
「落ち着けって」
ピシャァーン!!
「うわっ!」
「ヒイィーッ!!」
「雷か……おい、真里?」
「……もぉ、ヤダァーッ!! うわあーん!!」
年甲斐もなく大号泣しちゃった17歳の私。
さっきの落雷(だと思う)で驚いた圭兄ちゃんが、私を一瞬だけ抱きしめたけれども、
そんなことどうでもよくて、圭兄ちゃんの服にべっとり鼻水と涙が付くくらい縋ってた。
内心は物凄い大胆なことしてる自分に驚いて恥かしいんだけれど、こんな状況じゃ、そんな感情は二の次。
とにかく早く雷が止んで欲しかった。
(〜T◇T)<ゲエニイジャァ〜ン、ダジゲデェ〜
- 207 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:45
-
…………。
……。
段々と稲光も雷鳴もしなくなってきた。
「全く怖がりだなぁ、真里は」
「じょうがぁ、ないじゃん……ヒッ!!」
「大丈夫だよ、もう峠は超えたし、雨脚も弱くなってるから」
「……ぐずっ…ホントぉ?」
「ああ、もう大丈夫だって」
「…よ、かった……ぁ……」
「……」
「……」
ちょっとした沈黙。
不意に今置かれてる状況が物凄いことに気がついた。
だって私、圭兄ちゃんに抱きついてて、涙流しながら、圭兄ちゃんのこと上目遣いで見てるんだもん。
圭兄ちゃんもなんか真剣な顔で私のこと見つめ返してるし。
よくドラマとかであるように、このままいたら自然とキスとかしちゃいそうな感じ。
なんか圭兄ちゃんの心臓の鼓動が早いし、もしかして興奮してくれてるのかな?
それだったら、いっそのことキスしちゃっても……えっ?
……。
何が起きたのか、わかんなかった。
唯一判るのは、今私の唇には何かが触れてて、そこだけがすごく温かいこと。
- 208 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:46
-
思考回路が正常に戻ると、置かれてる状況が段々判って来る。
つまりは、圭兄ちゃんが私の唇を塞いでて、右手が私の後頭部を軽く抑えつけてる。
それでもって、左手で私のちっちゃい身体を支えてる、というか抱きしめてる感じ。
私、圭兄ちゃんとキスしちゃった……と言うか正確にはされちゃった。
私にとってのファーストキスがこんな形で訪れるなんて夢にも思わなかった。
そりゃあ、大好きな圭兄ちゃんだから文句はないけど、もうちょっとムードがあった方が……。
「……ン、ァ……」
ようやく圭兄ちゃんが私の唇だけを開放してくれた。
圭兄ちゃんの両手が私の身体に巻きついて軽く締め上げてる。
かく言う私の両手も圭兄ちゃんの身体に巻きついたまま。
そんな態勢が恥かしくって離れようとしたら、急にそのままの態勢からベッドに寝転ばされた。
(*^◇^)<エッエッ? ナ、ナニナニィ?
ビックリしてると圭兄ちゃんが私の顔を眺めてくる。
いつになく真剣で、それでいて顔は紅く染まってて、熱い視線を私に投げかけてる。
もしかして、これって……
「……真里が……悪いんだからな」
「えっ、な、なんで? 私なんか悪いことした?」
「そうやって知らないフリしていっつも俺のこと弄んで」
「そ、そんなことしてないよぉ」
「いくら妹だからって言っても、あんな風な接し方されたらさ……」
そう言うなり圭兄ちゃんが私の唇をまた塞いだ。
今度はさっきとは違って圭兄ちゃんの舌が私の唇をこじ開けてくる。
なんか気持ち悪くて、キュッと口閉じてたら、圭兄ちゃんが私の上唇を吸い上げてきた。
ちょっと荒々しい圭兄ちゃんのキスに、私もなんだか酔ってきちゃって、固く閉ざしてた口の力を解放してた。
圭兄ちゃんの舌が私の舌と絡まったり、時折吸い付いて来たりして、それがなんか妙に気持ち良い。
多分、これが大人のキスっていうものなんだろうって思った。
- 209 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:46
-
圭兄ちゃんが私の唇から距離を置くと、ちょっと粘っこい糸ひいてた。
それがとてもイヤらしくて、私自分の手で顔隠して恥かしがった。
だってさ、あんなの間近で見たらさ、その……ねえ〜。
でも、圭兄ちゃんの手が私の両手を顔から剥がす。
圭兄ちゃんが私の前髪をそっと払いのけて、額に軽くキスしてくれた。
「真里……」
「な、なに?」
「いい?」
圭兄ちゃんが言ったその意味は説明しなくてもわかった。
「うん」とか「いいよ」なんて面と向かって言えるわけなくて、黙ったままコクンと頷いて知らせた。
つ、遂にこの時が来ちゃったよ……。
よかった、前からそれなりの知識覚えといて。
でも、圭兄ちゃんとこれから初エッチするんだって思ったら、なんだか怖くなってきた。
その、私のバージンを大好きな圭兄ちゃんに捧げるのは嬉しいことなんだけど、
頭の中にはやっぱり道徳っていうものがちらついてる。
そんな複雑な思いを秘めた私の胸に圭兄ちゃんの手が触れようとした時だった。
♪♪〜、♪♪〜
「ひゃあっ!!」「うわっ!!」
急にその場に相応しくない着メロが流れてきた。
ちょっとの沈黙の置いて、圭兄ちゃんと目が合っちゃった。
顔から火が出るくらい、真っ赤になった圭兄ちゃんと私。
なんだか物凄く大胆なことしようとしてた自分が恥かしくって、慌てて自分の部屋に引っ込んだ。
ベッドにダイブすると、そのまま枕に顔押し付けてジタバタと暴れてみる。
やっぱり神様がどっかから見てて、警告したのかな?
やっぱり兄妹でそういう関係になったらいけないのかな?
人を好きになるのに、兄妹なんて関係ないのにな……。
- 210 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:47
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
連休も今日が最終日。
外は相変わらず雨だけど、昨日みたいなどしゃ降りじゃなくて、優しく降ってる感じの雨。
やることがないから私は、圭兄ちゃんの部屋に朝から入り浸ってる。
昨日みたいなことが起きないかなっていう期待は、してないといえば嘘だけども、
でもなんとなく一緒に居たい気分だった。
それと同時に私の中でまた一歩、圭兄ちゃんに対する想いが強くなってった。
圭兄ちゃんはネットサーフィン、私は自分の部屋から持ってきた漫画を圭兄ちゃんのベッドの上で読んでる。
けど、なんか視線を感じる。
ふと顔を上げると、圭兄ちゃんと目が合った……のに直ぐに逸らされた。
(〜^◇^)<???
しばらくしたら、また視線を感じる。
ふと顔を上げると、圭兄ちゃんと目が合った。
ハテ?なんだろ?
今までもこんな風に接してきたのに、今日はどこか勝手が違うみたい。
やっぱり昨日のことが引っかかるのかな?
もしかして……なぁ〜んてちょっと期待してる自分。
また顔を上げると、圭兄ちゃんは私の方を向いて何か言いたそうにしてる。
「ん? なにぃ?」
「……別に」
「???」
- 211 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:48
-
さっきからこれの繰り返し。
圭兄ちゃんもハッキリ言えばいいのに、どこか躊躇ってる。
実は前から迷惑だったりするのかな?
それともいきなり襲いかかってきて、嫌がる私を無理から……ってそれはないか。
じゃあ一体???
今日で何度目になるんだろうか、お互いの目が合った。
「なぁ〜にぃ?」
「あのさ……なんで今日はずっと俺の部屋に居るわけ?」
「迷惑?」
「な時もあるんだけど」
「それって、エッチなDVD見れないから?」
「んなわけないだろ!」
口調はハッキリ怒ってるけど、でも顔が真っ赤だよ?
ってことは半分は当たってるんじゃんねぇ。
もしかして新しいの購入してきたのかな?
また“なっち”似の人のやつなのかな?
……へへへっ、ちょっと興味あるなぁ。
- 212 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:49
-
「何なら一緒に見ようよ、『安倍な○き大全集』だっけ?」
「バ、バカっ! 何が悲しくて、妹と一緒にAV見なきゃならないんだ。それになんでそんなこと知ってんだ?」
「この間見つけたんだ。でも圭兄ちゃんが大ファンの“なっち”に全然似てないよね、その人」
「!!! な、なんでそんなことまで……」
「へへ〜っ。とにかく見せてよ、って言うか見たい」
私は興味津々で圭兄ちゃんのDVDラックの裏から例のDVDを取り出した。
ん〜、何度見ても“なっち”には似てないけど、でも色気はこの人の勝ちかな。
慌てふためく圭兄ちゃんをよそに私は素早くデッキにDVDを入れて、再生させる。
止めようとする圭兄ちゃんを身体目一杯使って動けないようにする。
へへっ、圭兄ちゃん固まっちゃったよ。
だって無理に動こうとすると私の胸が腕を挟むし、動くたびにわざとエッチな声出したりするから。
画面には“なっち”もどきの可愛い娘のイメージ映像が流れてる。
「圭兄ちゃんさ、彼女のどこが気に入ったの?」
「……なんだよ、急に? べ、別にいいだろ、どこだって……」
「声? 顔? それとも仕草? 女の子っぽいとこ?」
「う、うるさいなぁ」
「あっ、わかった! 胸が大きいとこだぁ。もぉ〜、スケベなんだからぁ」
「勝手に人をおっぱい星人みたいに言うな」
「じゃあさ、圭兄ちゃんは胸ちっちゃい娘のほうが好きぃ?」
「だから、胸だけで人を好きになったりしてないっつーの」
「私も一応あるんだよ。へへ〜っ、見たい〜?」
そう言ってちょっと強引に胸を圭兄ちゃんの腕に押し付けてみた。
柔らかい感触に圭兄ちゃんってば顔から火が出そうなほど真っ赤になってる。
それにしても今日の私ってなんか大胆だよね。
つい昨日までは、顔が近づいただけで真っ赤になってたのにねっ。
なんでだろ? やっぱり昨日のことがあるからなのかな?
- 213 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:50
-
「い、いいよ。遠慮しとく」
「え〜。私、圭兄ちゃんにだったら見せてあげてもいいんだけどなぁ〜」
「ば、馬鹿なこと……」
「ね〜、ホントは少し気になってるでしょ?」
「い、妹相手に、マ、マジになる兄が、どこに……」
「ここ」
そう言って圭兄ちゃんを指差した途端、拘束の呪縛から抜け出した圭兄ちゃんがDVDを止めた。
それから直ぐに私を部屋から追い出そうと私をつっぱって押し出してく。
「ちょっとぉ、怒ったの?」
「そんなんじゃないの。いいから出た出た」
必死に抵抗するんだけど、体型がちっちゃいから抵抗力も小さくて、あっけなく部屋から追い出されちゃった。
(〜`◇´)<モオーッ、ヒトヲオスモウサンミタイニアツカワナクテモイイジャン!!
ちょっと悔しくてドア蹴ったら、ものの見事に突き指した。
なんか無性に虚しさだけが私の中に広がってった。
何してんだろ、私……トホホ
- 214 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:50
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ちょっとしたハプニングのあった連休が終わって、またいつも通りの日々……には戻らなかった。
ガッコから帰ると、珍しくお母さんがせわしなく部屋の中を行ったり来たりしてる。
なんかリビングにはひときわ大きな旅行鞄が置いてある。
どっか旅行にでも行くのかな、こんな中途半端な時期に。
首傾げてたら、お母さんに「暇なら手伝って」って言われた。
言われるままに指示されたものを家の中から探し出す。
っていうか、旅行にしてはお父さんのものばかりな気がするけど……。
- 215 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:51
-
「ただいま〜」
圭兄ちゃんが帰ってきた。
今日はバイトが無い日だから、いつもより早い。
いつの間にか外は薄暗くなってて、時間ももう六時半過ぎてた。
「あ、おかえり」
「なにしてんの?」
「わかんない。私は言われるままに手伝ってるだけだから」
「???」
「圭、真里〜。ちょっと来てぇ〜」
リビングからお母さんの声が掛かる。
私は卸し立てのタオルを抱えながら、圭兄ちゃんは鞄をぶら下げながらリビングへ。
部屋にはお母さんが家中から探し集めたものを大き目の鞄に入れてた。
旅行に行くにしては、荷物多過ぎるけど、何なんだろ、一体?
- 216 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:51
-
「なぁにぃ〜?」
「二人に言っておかなくちゃいけないことがあるの」
「なに?」
「あのね、明日からお母さん、お父さんのところに住むから」
「「はあっ!?」」
重大発言に圭兄ちゃんと声がかぶっちゃった。
やっぱり兄妹なんだなってふと思った。
(〜^◇^)<チョットウレシカッタケドネッ
「さっき電話があって、お父さん、入院が決まったのよ」
「「ええーっ!?」」
「慣れない単身赴任のせいで、ストレスが溜まって、更に食生活が偏っちゃって、胃をやられたみたい」
あ〜、なるほどね〜。
私には無縁の世界のことだけど、良くあるパターンだよね。
ウチのお父さん結構頼りにされてるみたいで、色んな事で頭抱えてたしなぁ。
それに食事も好き嫌い激しいし、そのうえ脂っこいものが好物だし。
かく言う私も圭兄ちゃんも好き嫌いは結構あるんだけど……。
「病気自体はそれほど深刻ではないんでしょ?」
「そうね、一ヶ月ぐらいで退院できそうって言ってたけど」
「けど?」
「退院しても誰かが体調管理してあげないと、また入院しちゃうから、それならいっそのこと」
「って事はしばらくは向こうにいるってこと?」
「そうね、こっちに戻ってくるまでは」
「……」
- 217 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:52
-
お母さんは平然と言ってのけたけど、私には少し理解し難かった。
だっていくら兄妹とはいえ、年頃の男女が二人で暮らすんだよ?
確かこっちに戻ってくるのは来年の春だから、8ヶ月も圭兄ちゃんと二人っきりになるんだよ?
これから夏休みもあって、更には人恋しくなる秋が来て、恋人たちのイベント目白押しの冬が待ってるんだよ?
これって私に過ちを犯し放題って言ってるようなモンでしょ!?
私的には極上の生活なんだろうけど、いいのかなぁ。
なんか罰当たりそうで怖いよ。
隣りでは圭兄ちゃんが物凄く不安そうな顔してる。
「あ、あのさ、ちょっとそれはその……」
「大丈夫よね? 圭も真里もお母さんがいなくても平気な年頃だし」
「そうだけどさ、でも……」
「これを機に、ちょっとだけ仮想の新婚生活を体験してみなさい」
「「はあっ!?」」
新婚生活ぅ!?
ウチのお母さんってこんなにアバウトな性格だったっけ?
ひょっとしてお母さん、私の気持ち知ってて試してんのかな?
もしそうなら、物凄くヤバイんですけど!!
だってさ、公然と兄妹間恋愛を認める親なんて、世界中どこ探しても居ないでしょ。
「あのさ、それって……」「新婚体験って、真里とぉ?」
綺麗に台詞が被って、圭兄ちゃんのほう見たら、物凄くイヤそうな顔してた。
そういえば、さっきから私と二人で生活することに消極的過ぎる気がする。
なんだか小バカにされてるみたいでムカつく。
私だって一応(?)女の子なんだから、それなりにやればできるんだからねっ!
「別に構わないよ、私は」
「ええっ!?」
「文句ある?」
- 218 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:52
-
絶望的な表情を浮かべる圭兄ちゃんを自信たっぷりの表情で見つめてやった。
「私じゃあ頼りないの?」って言いたそうな表情でもって。
もうこの際、圭兄ちゃんとの距離を一気に縮める覚悟を決めた。
恋する乙女のパワーってやつ、見せてやるっ!
こんなチャンス滅多にないし、神様がくれた最高のプレゼントだと思ってとことんやってやるぞぉっ!
圭兄ちゃんと唯一無二の存在になって、圭兄ちゃんの口から
「俺には真里しかいない」って言わせてやるんだからっ!!
(#`◇´)<ヤデモテッポウデモモッテコイテンダ、バァーロォッ!!
「そう。じゃあ、急で悪いんだけど、しっかりやってね」
「こっちは大丈夫。お母さんもお父さんのこと、よろしくねっ」
「ちょっとぉ、勝手に……」
「明日の朝、また駅まで頼むわよ、圭」
「またぁ〜?」
そんなこんなで私は圭兄ちゃんの心配をよそに、明日から「本格的」な二人暮しを始めることになった。
でも、正直言うと私の中では二つの気持ちが交錯してるんだ。
ひとつは飛び跳ねたくなるほど嬉しい気持ちと、もう一つは普通のままでいられるのかっていう不安。
さっきまでは強気だったんだけど、いざそうと決まるとちょっとね……。
ホラ、よく恋人と二人きりになると何話していかわかんないって耳にするじゃん。
私もその口だから、たぶん意識し過ぎちゃって自分の殻に篭っちゃいそうだよ。
(;^◇^)<ハァ~、ドウナルンダロウ
- 219 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:53
-
その日の夜、私は圭兄ちゃんのベッドの上で日課表なるものを作成してた。
相変わらず二つの気持ちが居座ってたけど、圭兄ちゃんに悟られないように
極力普段通りにしようと努力することにした。
だから、今まで通りに家事も分担制なんだけど、今までとは違って怠けたりしないように
日課表作って規律ある生活を心掛けたい。
仲睦まじい夫婦の秘訣っていうのかな、やっぱりこういうところはきちんとしないとね。
そんな真面目モードな私を他所に圭兄ちゃんは、まだ納得いかないような顔でテレビ見てる。
「こんな感じかな、うん、我ながら上出来」
「ハイハイ。どうせほとんど実行できないで終わるか、もしくは俺がやることになるんだろ」
「そんなことないもん。私だって女の子なんだから……」
「はぁ〜、真里と二人暮らしか。どうせだったら、違う子と……」
圭兄ちゃんが聞きづてならぬこと言い出した。
なんか、近いうちに彼女つくって、それでもって家に呼んだりしそうな勢い。
一見ドン臭そうに見えて、意外と圭兄ちゃんてばモテるんだよね。
どうしよう、圭兄ちゃんのお眼鏡に適う娘が私の前に現れたら……。
その娘は私なんかよりずっとずっ〜と家事が上手で、可愛くて、ちょっと"なっち"に似てて……。
……ヤダッ、ヤダヤダッ!!
そんな娘に軽々と「真里ちゃん」なんて呼ばれたくないっ!!
- 220 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:53
-
「ダメっ!」
「はぁ? 何がダメなわけ?」
「この家に私以外の女の子呼んじゃダメだからねっ!」
「なにそれ。遠まわしに彼女つくるなって言いたいわけ?」
「そうだよ、圭兄ちゃんは恋愛禁止っ!」
「なんでよ? 俺が誰と何しようが真里には関係ないことだろぉ?」
「よくないっ!!」
言葉だけじゃ物足りなかったから、身体全身で抗議する。
圭兄ちゃんが多分弱そうな、頬を目一杯膨らませて、ほんのちょっとだけ目に涙溜めてみる。
(〜^◇^)<コレデドウダッ!!
「はあ? なんで真里にそんなこと言われなきゃいけないわけ?」
「うっ……い、いいじゃん」
「そっちの方がよくないよ。なんでよ?」
「だから、色々と私にも事情が……」
「真里の事情も含めた理由聞かせ……」
「と、とにかくダメなものはダメっ! もう寝る、おやすみっ!」
言い訳が見つからなくて、強引に話し終らせて圭兄ちゃんの部屋を出た。
自分の部屋に戻ると、ベッドにダイブしてさっきのことをよくよく考えてみる。
あんなこと言ったら、ムキになって圭兄ちゃん、彼女作りそうだなぁ。
そうならないうちに、手打っとかないと、私勝ち目無くなっちゃうかも。
ハァ〜、恋する乙女は辛いなぁ〜。
結局、うやむやな気分のまま明日を迎えることになった。
- 221 名前:お返事 投稿日:2004/09/09(木) 01:55
-
(〜^◇^)<少し早めに更新しちゃった、ゴメンネ〜
>Acerさん
ええ、やぐさんメインですから汚名挽回って感じでしょうか。
時には積極的で、時にはしおらしいやぐさんが表現できれば良いかな、と。
圭兄ちゃんカッコイイですか?
まあ、カッコ良くなきゃやぐさんも惚れちゃったりしませんからね〜。
妹になっていただくのは構いませんけど、やぐさんは強敵ですよ?
なんせやぐさんは……
- 222 名前:お返事 投稿日:2004/09/09(木) 01:56
-
>名無し読者さん
一読ご苦労様です。
やぐさんの甘々ぶりは今後エスカレートするかもしれません。
なんせやぐさんは……
>○っ○さん好き
やぐさんの頭の中は、一に圭兄ちゃん、二に圭兄ちゃん、三四がなくて、五に圭兄ちゃん!!
なもんで、恋する乙女よりかは、「圭兄ちゃんマニア」になりつつあります。
だってやぐさんは……
- 223 名前:愛物語。2 投稿日:2004/09/09(木) 01:57
-
(〜^◇^)<これからは月一の割合で更新していくからよろしくねっ
- 224 名前:名無し読者。 投稿日:2004/09/09(木) 13:48
- 真里っ! 早く圭兄ちゃんをものにしてしまえ!
じゃないと、お隣の真希ちゃんや肌黒さん、天使さんが、圭兄ちゃんをかっさらってくぞ!
次の更新も楽しみです。
- 225 名前:名無し。 投稿日:2004/10/09(土) 06:52
- 兄が圭ちゃん、妹が矢口というのが、みょ〜にエロい感じがして、とてもイイです!!
更新が楽しみです!
- 226 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:15
-
「真里ぃーっ!! いい加減起きろっ!!」
次の日の朝、いきなり圭兄ちゃんの怒声で叩き起こされた。
寝ぼけ眼で時計見たら、まだ七時になったばかり。
普段なら後三十分は寝れたのに、一体全体何のさ。
まぁ〜だ、眠ぅい〜。
「昨日言った事忘れたのか?」
「き、昨日ぉ? なんか……言ったっけぇ、私ぃ……?」
「……案の定、初日からこれだよ。だから言ったのに」
圭兄ちゃんが呆れてものも言えなくなってる。
まだ全然寝ぼけてる私には何の事だかさっぱりわかんない。
いい加減教えてよ、もったいぶってないでさ。
圭兄ちゃんみたいに寝起き良い方じゃないんだから。
「今日からおまえと二人暮し。んで昨日の夜、おまえが役割表みたいなの、書いたろ?」
「役割表ぉ? そぉ〜言えばぁ〜、書いたけどぉ〜、それがぁ、どうしたのぉ〜?」
「そこに“朝の七時、起床”って書いたのどこのどいつだよ?」
そう言って圭兄ちゃんが役割表を私に突きつけた。
半目でジーッと見ると、確かに朝の七時に起床、それからゴミ出し、洗濯って書いてある……。
このちょっとした丸文字も確かに私が書いたのに間違いない。
「それに昨日の晩、俺に向かって「私だって女の子だから、やればできるもん」なんて見栄張ったの誰だ?」
「そんなこといったってさぁ〜、まだ眠いんだもぉ〜ん」
「やっぱり他の誰かと一緒に……」
「……!!」
- 227 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:18
-
そう言われてようやく、目が覚めた。
勢い良く起き上がったけど、ふと思った。
(私、寝起きの顔をマトモに圭兄ちゃんに見られちゃった?)
自問自答しても、答えははっきりとYESだと思う。
多分だけど、頭とかグシャグシャで、目脂とかついてそうな気がする……。
途端に、物凄い自分が恥かしくって布団被ったら、圭兄ちゃんに布団剥ぎ取られた。
「だから、いつまで寝る気だ!」
「ヤダヤダ、見ちゃヤダッ!!」
「はあ? 今更なに可愛い子ぶってんの? 真里の寝顔なんて見飽きてるって」
「ええっ!?」
「なんかボケ〜っと口開けて、たま〜にニヤけたりし」
「圭兄ちゃんのバカぁーっ!!」
「へぶっ!」
圭兄ちゃんに思いっきり枕投げつけて、勢い良く部屋を出た。
だってだって、そんな間抜けな顔見られてたなんて思ったら、居ても立ってもいられなかったから。
家族だから仕方ないけどさ、やっぱり女の子だからそういう姿見られたくないよ。
(〜T◇T)<オトメノキモチ、ワカッテェ〜
- 228 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:20
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日一日何かとついてなかった私。
朝、圭兄ちゃんに叩き起こされた挙句に寝顔まで見られたし、朝食の用意までさせちゃった。
ゴミ出しに手間がかかって、いつも乗ってる電車に乗り遅れて、見事に遅刻。
休み時間に職員室で担任の先生からお説教されて、放課後、一人で教室のお掃除というオマケまで付いた。
お説教が終わってトボトボ廊下歩いてたら、上履きの紐を踏んづけて転倒。
その際、そこを通りかかった数人の男の子たちに思い切りパンツ見られちゃった。
ちょっとイラついた手つきで紐結ぼうとしたら、ブチッて切れちゃうし、ブカブカになった上履きのまま
階段降りてたら、残り四段ほどの所から滑って転げ落ちた。
その時、ちょうど角を曲がって来た先生とぶつかっちゃって、まぁ〜たパンツ見せちゃったよ。
(〜T◇T)<ロシュツキョウジャナイノニ〜
午前中だけでもかなりの災難に遭ったのに、まだまだ不幸は私の身に降り掛かってきた。
お昼休み、お弁当食べようと思ったら、いつもお母さんが作ってくれてたお弁当が今日からないこと忘れてて、
急いで売店行ったけど、財布家に忘れてきてダブルショック。
案の定、午後の授業中お腹鳴りっぱなしで、クラスメイトや先生にまで笑われる始末。
放課後、掃除終わってゴミを焼却炉に持っていこうとしたら、ちょうど焼却炉の前でテニス部の石川さんが、
サッカー部の吉澤君に告白してる最中に遭遇。
しかも、いきなり後ろから両方の部活の人たちに連れ去られて、色々文句言われる始末。
私はただ、ゴミ捨てに来ただけなのにぃ……。
とにかく踏んだり蹴ったりの一日。
こんな日はとにかく早く家に帰って、圭兄ちゃんとマッタリしたい。
圭兄ちゃんが居るだけで、イヤなこととか哀しいことなんか直ぐに忘れられる。
世の中では色んな癒しグッズとかあるけど、今の私には圭兄ちゃんが一番の癒しなんだよね。
ついでに我侭言っちゃえば、圭兄ちゃんの方から癒してもらえたら最高なんだけどなぁ……。
(*∩◇∩)<キャァー、ナニコクッテンダロ? ハズカシィー
- 229 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:20
-
でも……私の心が癒されることはなかった。
家に帰ると、キッチンのテーブルの上に私の携帯とお財布が置いてあって、その下にメモが一枚。
慌てん坊の真里へ
今日は高校の友達と飲みに出かけるので、夕食は一人で食べて下さい。
後、帰りは深夜になると思うから、戸締りして先に寝てなさい。
頼れる兄、圭より
そんなぁ〜。
せっかく朝の借り返そうと思って、夕食は圭兄ちゃんの好きな餃子にしようと考えてたのに。
それでもって圭兄ちゃんに「美味しいよ」って言ってもらいたかったのになぁ。
あ〜あ、なんか拍子抜けしちゃったよ。
一人で勝手な妄想に耽ってたのがバカみたいじゃん。
その時、電柱にぶつけた瘤、どうしてくれんのさ。
私は制服のままリビングのソファーに鞄持ったままダイビングした。
夕暮れ時、部屋の窓から差し込む西日が、ちょっと私の心をセンチメンタルな気分にさせた。
「ちょっと寂しいな……」
泣くまではいかなかったけど、でもそれに近いくらい落ち込んでた。
自分の身体を抱きかかえるよう身を縮ませて、膝を抱える。
丸くなった私の姿が、テレビのブラウン管に映った。
前から小さいって自覚してたけど、今日の私はいつもよりもっと小さいなって感じた。
寂しい気持ちは相変わらず私の中を占領してて、ストレートにそれを口に出してた。
「圭兄ちゃん……グズッ……寂しいよぉ……」
目をつぶって、そればかり唱えてた私はいつの間にか眠ってた。
- 230 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:23
-
…………。
……誰かが私を呼んでる?
「…ぃ……里……」
そう感じてゆっくり目を開けると、真っ白い天井を背にして黒い影が私を見つめてた。
段々意識が戻ってくると、それが圭兄ちゃんだってことに気付いて、名前呼んでみた。
「……あ……圭兄ちゃん……」
「どうしたんだよ、こんなところでそんな恰好のまま」
「あ、う、うん……今、何時ぃ?」
「十一時ちょっと過ぎ」
「圭兄ちゃん、もっと遅いんじゃなかったっけ?」
「意外と早くお開きになったんだよ」
そう言った圭兄ちゃんの顔はどことなく優しそうで、今も私の頭を撫でてる。
そういえば昔、私が熱出して学校休んだ時、同じようにしてくれたっけ。
(*^◇^)<……キモチ、イイナァ〜
なんだか懐かしい気持ちになれた。
でもなんでこんなに優しいんだろ?
どうしちゃったんだろ、圭兄ちゃん?
「どうしたの、急に?」
「……別に。それより学校でなんかあったのか?」
「……ううん、なんもないよ」
「……俺にも言えないんだ?」
「ど、どうして、そんなこと、聴くの?」
「だって、真里の頬に泣いた跡が残ってるから」
そう言って圭兄ちゃんは私の顔に手鏡を持ってきた。
そこに映る私には、確かに涙を流した跡がうっすらと残ってた。
私、あの時泣きながら寝ちゃったんだ……。
ってことはもしかして、寝言とかも言ってたのかな?
もし言ってたの圭兄ちゃんに聞こえてたら、相当恥かしいんだけどな。
- 231 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:23
-
「!?」
いきなり圭兄ちゃんが私をお姫様抱っこして持ち上げた。
なんだか判らないで圭兄ちゃん見たら、ちょっと顔が赤い。
「こんな事……今日だけだからな」
圭兄ちゃんは私を担いだまま、二階の私の部屋に入った。
こうして運ばれてる間、私は恥かしかったけど圭兄ちゃんの首に腕を絡めさせてもらった。
束の間の幸せ……今はこれだけでいいと思った。
欲張ると、幸せが逃げていっちゃいそうだから。
私をそっとベッドに下ろすと、圭兄ちゃんがさっきみたいに優しく微笑んでる。
なんだか今日の圭兄ちゃんは、カッコイイ。
だからかな、私の心臓の鼓動が、段々早くなってく。
ダメだよ、そんなに優しく微笑まないでよ。
「……真里に何があったかはわからないけど、安心しな」
「えっ……」
そう言った圭兄ちゃんはなんだか、動揺してるみたいでやたら目を泳がせてる。
圭兄ちゃんがこういう表情するってことは、やっぱり言っちゃったんだ、私。
あ〜、なんでこんな大切な時に、しかもなに言ったか全く覚えてないなんて……。
はぁ〜、なんて言ったんだろ?
この状況から言ったら……「圭兄ちゃん、抱いて」かも?
(*∩◇∩)<ヒャァーッ!! シヌホドハズカシイーッ!!
「その……俺は、いつでも……真里の、えっと……」
「……」
「…味方……だからさ」
そう言って私のおでこに軽く口付けして部屋を出てった圭兄ちゃん。
ホント、今日はどうしちゃったんだろ?
普段、こんなに大胆でしかもやたら滅多に優しくすることなんてないのに。
- 232 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:25
-
……。
あれからだいぶ時間が経って、もう夜中の二時。
なんだか眠れなくて、私は大胆にも圭兄ちゃんの部屋にそっと忍び込んだ。
「Zzz……」
しばらく、暗闇の中で圭兄ちゃんの寝顔見つめてた。
お酒飲んだからか、ちょっとだけ布団がはだけて、すっかり爆睡しちゃってる。
けれどこうして見ると、なんだか起きてる時より凛々しい感じがする。
……ズキッ
胸が痛い。
狂おしいくらいに、張り裂けそうなくらい胸が痛すぎてどうしようもない。
圭兄ちゃんのことがずっとず〜っと頭から離れない。
圭兄ちゃんと一緒になりたいよ……繋がっていたいよ……。
血の繋がりだけじゃなくて、男と女としての繋がりが欲しいよ。
もう我慢の限界だよ。
そんな想いが知らず知らず行動に出てた。
寝てる圭兄ちゃんに抱きつくように、自分の身体をそっと密着させた。
ちょっとした圧迫感で圭兄ちゃんが少し唸った。
それでも私は怯むことなく、圭兄ちゃんの唇を奪った。
前の時に感じたあの感触が蘇ってくる。
最初は優しく、そして徐々に荒々しく圭兄ちゃんを味わっていく。
- 233 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:26
-
「……ン…ック……ンンッ!!」
圭兄ちゃんがようやく起きたけど、それでも私は塞がった唇を離さなかった。
これくらいで怯んでたら、この先に待ってるだろう天国、もしくは地獄なんて絶対に絶えられないしね。
私の下で圭兄ちゃんが暴れるけど、それでも私は渾身の力で圭兄ちゃんを抑えつけてく。
こんなやり方、正直好きじゃないけど、でももうどうにもこうにも止まらないんだ。
今日だけ、今日だけだから……わかってよ、圭兄ちゃん。
「……ンクッ……な、なにすんだよっ!!」
「……」
「オイ、真里ッ!! 聞いてんのかっ!?」
「圭兄ちゃんは……圭兄ちゃんは私が他の人とエッチしても平気なのっ!?」
「んなっ……何を急に……」
「私は……私は圭兄ちゃんが他の女とエッチするのイヤなのっ!!」
「ま、真里?」
「私はぁ……私は、圭兄ちゃんが好き……愛してる……」
「!!!」
「圭兄ちゃんが好きだから……大好きだから、他の女に渡したくないの!!」
もう頭の中がこんがらがってて、半分自棄になってた。
だから今まで溜め込んでた圭兄ちゃんへの想い全てをぶちまけることにした。
後のことなんか考えずにとにかく、この何とも言い難い気持ちを晴らしたかった。
- 234 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:26
-
「だ、だからっておまえと俺は」
「判ってる。血の繋がった兄妹だって事も、そんな二人が愛し合っちゃいけないって事も、
何もかも十分承知してるよっ! でもさ、好きなんだもん……愛しちゃったんだもん。
圭兄ちゃんを一人の男性として好きになっちゃんだもん、しょうがないじゃん!!」
「真里……」
「圭兄ちゃんが私のことどう想ってるか知らないけど、でも、私は幼かった頃からずっと圭兄ちゃんしか見てなかった。
ついこの間、学校の先輩に告白されたけど、私には圭兄ちゃんしか見えてなかった。だから断った。
隣の真希ちゃんが私の目の前で圭兄ちゃんとじゃれ付いてるの見てるだけで物凄く嫉妬した。
圭兄ちゃんが大ファンの安倍なつみにだって私は絶対負けたくないんだ。
それくらい、それくら…い…私は圭兄ちゃんが…好きなんだもん……大好き…なんだ……もん……」
「……」
「だからぁ……私……グズッ……圭兄ちゃん……誰にも…渡し……たくぁ……なぃ……エグッ」
真っ赤になって告白しながら泣いちゃってる私。
もう最後の方なんて涙声で何言ってるかさえわかんなかった。
それでも自分の中に溜まっていた10年分の想いを晴らしたから、気分的にはすっきりしてた。
後は圭兄ちゃんがどんな反応を示すかだけ。
圭兄ちゃんのことだから、想いなんて伝わらずに説教で終わるんだろうな。
「……俺は……俺は」
圭兄ちゃんの反応が返ってきた。
- 235 名前:お返事 投稿日:2004/10/13(水) 19:29
-
今回は短い割に、内容が急展開過ぎた気がします。
なんで、突込み所満載かも知れませんが、
あんまり突っ込まないでくださひ(願)
>名無し読者。さん
いやぁ〜、ここのやぐたんはシャイですから、決心が中々つかないみたいで。
でも、お隣りの真希ちゃんはまだ恋愛の「れ」の字も知らない子供ですし(設定上)、
肌黒さんは出てきませんし(というか出しません)、天使さんは……なんで(ちょっと言えない)、
焦らなくても大丈夫でしょう。
(あ、でも飯田さんが諦めきれずに……っていう手もあった)
>名無しさん
私的にはそれほどこの二人がエロくは感じなかったんですけども、
やっぱり禁断の愛が絡んでくるとエロく感じるんでしょうかね?
まあ、一応それがテーマなんですけども。
- 236 名前:愛物語。2 投稿日:2004/10/13(水) 19:30
-
(〜^◇^)<次回は11月更新予定。
- 237 名前:名無し読者。 投稿日:2004/10/13(水) 22:32
- 真里、とうとう勝負に出ましたね〜
圭兄ちゃん! 真里の気持ちに答えてあげて!!
次の更新が、非常に楽しみです。
- 238 名前:名無しさん。 投稿日:2004/11/05(金) 01:00
- やぐが可愛い。
圭ちゃん、やっちゃいなさい!
- 239 名前:名無し読者。 投稿日:2004/12/04(土) 15:28
- 続きまだですか〜
- 240 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 00:59
-
「真里のこと、今から一人の女として見てもいいんだな?」
「好きっ」
「父さんや母さんにバレて勘当されても、世間から後ろ指さされてもいいんだな?」
「好きなのっ」
「彼氏とかできたり他の奴と寝たら、本気で怒るからな?」
「好きだからっ」
もう圭兄ちゃんが何を言っても「好き」しか答えなかった。
それくらい私の覚悟は決まってるから。
だから圭兄ちゃんをその気にさせるまでずっと「好き」って答えようと考えてた。
「……」
「好きっ」
「……真里」
圭兄ちゃんが私の名を呼んだ時、何かが変わった。
声質も顔つきもさっきとは違う圭兄ちゃん。
なんだか今まで見てきた中で一番ていうくらいカッコイイ圭兄ちゃんが目の前に居た。
うっ……ヤバイ……なんだか、泣きそう。
っていうか、私がそう思う前に、目から涙が流れ出てた。
「……真里」
- 241 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:02
-
私の名を呼んでから、圭兄ちゃんが流れ出る涙を唇で優しく吸い取ってくれる。
普通なら手で拭い取るんだろうけど、圭兄ちゃんは私の目尻辺りに何度も唇を落としてくれる。
それがとても気持ち良い。
「嬉しいのか?」
「……(コク)」
「いいよ、好きなだけ泣きな。真里の流した涙は全部吸い取ってあげるから」
「……ふえぇ……」
そんなカッコイイこと言われたら、余計に涙が出てきた。
なんだか、もうどうでもよくなってきた。
エッチとかしないでこのままずっと圭兄ちゃんに甘えてたい。
でも、やっぱり心の奥底には圭兄ちゃんと繋がってみたいっていう欲もある。
折角圭兄ちゃんもその気になってるから、雰囲気壊したくないし、どうしよう。
迷ってたら、いつの間にか涙が止まってたみたいで、圭兄ちゃんの唇は私の唇に移ってた。
この間の嵐の日にしたあの感触が蘇ってくる。
段々頭の中がエッチしたい気分で満たされてって、顔が熱くなってく。
知らない間に、圭兄ちゃんが私の着ていたパジャマのボタンを外してた。
圭兄ちゃんの温かい手の平が私の胸に直接触れられる。
ビクン!
ホンのちょっと触れただけなのに、私……感じちゃった。
……恥かしいな。
- 242 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:04
-
「……ンッ」
唇塞がったままで声出せないから、ちょっと身を捩っちゃった。
抵抗してるって思われちゃったかな?
ホント、初めてだからどういう反応していいのかわかんない。
前に友達が言ってたけど、大げさに感じたら演技してるって思われるらしいし、
かと言って無反応だと逆にマグロだっけ(?)、そういう風に思われたりもするって言ってたっけ。
あ〜ん、どうしよう。
「……真里」
「……???」
「真里は何も考えなくていいよ。気持ち良かったら、素直に感じていいし、大声出しても構わないから」
「……ホントにぃ?」
「ああ。大声出したからって、真里のこと軽蔑なんてしないから」
「……うん……」
「真里ぃ……好きだよ」
「私も……大好きだよ」
そんな圭兄ちゃんの愛撫が、官能の世界の幕――禁断の愛の扉を開けた。
- 243 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:05
-
…………。
……。
- 244 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:06
-
……それからはもう何も考えられなくて、ただずっと圭兄ちゃん任せだったような気がする。
気がついたら、圭兄ちゃんが息切らしながら私の上に覆い被さるように倒れ込んでて、
そんな圭兄ちゃんの身体を目一杯抱きしめていた私。
多分思いっきり感じてただろうし、思いっきり声出して乱れてたかもしれない。
初めてだったにもかかわらず、痛みはあまり感じなかったし、血も出なかった。
とにかく気持ち良かったことしか覚えていない。
私ってホントは淫乱なのかな?
ようやく私も圭兄ちゃんも落ち着いた頃、言葉を交わす事に成功した。
「圭兄ちゃん」
「ん?」
「私の我侭聞いてくれて、ありがとう」
「どうしたんだ、急に改まって」
「初めてが圭兄ちゃんで嬉しかったよ」
「そっか」
圭兄ちゃんは優しく頭を撫でてくれてる。
でも、子供っぽい扱いにはちょっと抵抗がある。
悔しさ隠すべく、ちょっとした意地の悪い事聞いちゃおっと。
- 245 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:09
-
「圭兄ちゃんは私が初めてじゃないのがちょっと悔しいけど」
「……悪かったな」
「ひとつ聞いていい?」
「なんだ?」
「圭兄ちゃんの初体験の相手ってさ、やっぱり前の彼女?」
圭兄ちゃんが真っ赤になった。
どうやら図星みたい。
意外と圭兄ちゃんも可愛いところあるんだね。
「……じゃあさ、私と元カノどっちが気持ち良かったかな?」
「はあっ!?」
「答えてよぉ」
「ば、馬鹿、そんな事言えるか」
「えー!! いいじゃん、知りたい知りたい〜」
「アー、うるさいってば」
「ぶぅ〜、いいもん!! 私の方が良いって言うまで何度でもエッチするからっ!!」
「ちょ、コラ、真里っ!! 何処触って、あっ!」
さっきまでのしおらしい私は何処へやら。
今度は自分から積極的に、圭兄ちゃんを求めてた。
夜中の二時過ぎに若い男女がベッドの上でプロレスごっこ。
……やっぱり私ってスケベな女の子なのかな?
- 246 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:10
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
圭兄ちゃんと迎えた朝。
寄り添うようにして一緒に寝てたから、ちょうど圭兄ちゃんの寝顔が一番最初に見えた。
へへっ、なんか嬉しいなっ。
もうちょっと見てたいけど、起きなきゃいけない時間だったから、そっとベッドを抜ける。
腰の辺りが重たい感じがしたけど、でもそれは昨晩の出来事が嘘じゃないって証拠。
あんまり大きい声じゃ言えないけど、大好きな人にバージンを捧げる事ができた。
本当は一番やっちゃいけない事なんだけど、でもやっぱり嬉しい。
だって初体験て、意外と彼氏じゃなかったりする人が多いって聞いてたし。
これで私も晴れて大人の女の仲間入りってとこかな。
(*^◇^)<キョウノバンゴハンハ、オセキハンデモタコウカナ〜
もう気分はすっかり若奥さんて感じで、朝食の用意。
今日は気分良いから、洋食に決まりっ!
目玉焼き作ろうとして卵割ったら、ラッキーな事に黄身が二個入ってた。
もしかして神様が祝福してくれてんのかな〜、なんてバカな事を考えちゃうほど今の私は浮かれモード全開。
へへっ、仮想新婚生活って案外良いかもっ。
- 247 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:11
-
なぁ〜んて思ってたら急に……
「ひゃあっ!!」
急に後ろから抱き付かれた。
しかも首筋辺りにそっと息吹きかけてきて、軽いキスまで付いて。
こんな事をこの家の中でするのは、私の除いて一人しかいない。
っていうか、こんな接し方されたの初めてだよ。
どうしちゃったの、圭兄ちゃん?
「ねえ、その、動けないんだけど?」
「ん? 気のせいだろ?」
「気のせいなんかじゃないよぉ。ホラ、目玉焼き焦げちゃうからぁ……」
「関係ないよ」
「ちょ、圭兄ちゃんてばぁ、どうしたのぉ?」
「ちょっとね……足りないんだ」
「な、何が?」
「真里が足りない。真里の全てが足りないんだよ」
そう言って私を抱きしめる両腕に少し力が入る。
無理に動こうとすると却って圭兄ちゃんを喜ばせてるみたい。
おまけに首を動かすと、圭兄ちゃんの息が吹きかかって変な気持ちになる。
「んな、なに言って……ふぁああっ……」
「もっと真里を感じたいんだ。ずっとず〜っと感じてたい」
「ダ……ダメ、だよぉ……こんな…朝、からぁ……」
「真里のせいだからな」
「……れ、れもぉ……私ぃ……学校が……」
「いいよ、今日ぐらい休んじゃえ。一日休んだって平気だよ」
「……はうぅん……けぇ、にいちゃぁ……ん……」
- 248 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:12
-
私の甘えたような声を聞いて、圭兄ちゃんは私が堕ちたと思ったみたい。
圭兄ちゃんはゆっくりと私を自分に向かい合わせると、強引にキスしてきた。
荒々しいようで、それでいて気持ちのいい感触に、持っていた菜箸が床に落ちた。
自然と私の両腕は圭兄ちゃんの背中に回ってて、完全にエッチモードに入ってた。
多分、このままいったら目玉焼き焦げちゃいそうだったから、とりあえず火は止めておこう。
舌を絡めながら、圭兄ちゃんの手が私の胸に添えられる。
ゆっくりと、それでいて丁寧に刺激を与えてくる圭兄ちゃんの愛撫。
昨日もそうだったけど、なんか圭兄ちゃんが作り出すその雰囲気だけで
私は既にメロメロ(恥かしいこと言っちゃうと、それだけで濡れちゃってた)
足に力が入らなくて、なんとか流し台に手をついて踏ん張ってみる。
けど……圭兄ちゃんの愛撫する手が胸から股へと移ったら、我慢できずに床にへたり込んじゃってた。
「……身体は素直だな……」
「……や、だぁ……言わな…いでぇ……」
「可愛いな、真里は」
結局、私たちが朝ご飯を取ったのは、なんと十時過ぎ。
一応その場でエッチしたんだけど、やっぱり気分的にすっきりしなくて、圭兄ちゃんの部屋でもう一回しちゃった。
勿論、私は学校を休む羽目になったし、圭兄ちゃんも無断休講。
っていうか、休んで正解だったと思う。
だって昨日の夜から今日の朝にかけてたった数時間のうちに4回(昨日の晩だけで2回)もしちゃったんだよ?
お陰で欲張りすぎちゃってさ、腰がね……ちょっと重くて……。
- 249 名前:お返事 投稿日:2004/12/08(水) 01:12
-
ほとんど言い訳に近いレス返しです。
>名無し読者。さん
勝負に出たはいいんですが、肝心のエロ描写ができずに……ごめんなさい。
(っていうか、今現在SEEKにてエロ書いてる小説ってあるんだろうか?)
>名無しさん。
やぐたんの可愛さがエロ描写で台無しになる可能性があるかも……
って考えたら、こんな形になってしまいました。
>名無し読者。さん
遅れてスイマセン。
- 250 名前:愛物語。2 投稿日:2004/12/08(水) 01:14
-
(〜^◇^)<次は一月更新予定っ。
- 251 名前:名無し読者。 投稿日:2005/01/08(土) 17:30
- 二人はこれからどうなるんだろう。
続きが楽しみです。
- 252 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:44
-
結局1日中まったりして過ごした日の晩。
今夜は圭兄ちゃんが夕食当番の日。
いつもなら圭兄ちゃんが呼びに来るまで自分の部屋にいるんだけど、
今日はなんだか一緒にいたくて、食卓用の椅子に座って圭兄ちゃんの背中眺めてた。
男の人がエプロンかけてキッチンに立つ姿は、なんとなぁ〜くだけどカッコ良い。
圭兄ちゃんだからかな?
後ろ姿しか見えないけど、全然飽きないし、ちょっとした仕草が微笑ましく感じられる。
……なんか私相当ハマっちゃってるね。
「え〜と、次は玉葱を切ってと……ん? なに見てんだ?」
「なんとなく」
「んなに眺めてても、なんも出ないぞ?」
「いいの。忙しなく動いてる圭兄ちゃんを見てるだけで楽しいんだから」
「???」
「おかしな奴」なんて言いたそうな顔しながら、玉葱の微塵切りを始めた圭兄ちゃん。
傍らに目を向けると、卵に椎茸、筍、ねぎ、人参、御米、それと焼き豚が置いてある。
どうやら今日の夕食はチャーハンみたいだけど、すごい本格的だなぁ……。
野菜なんかは、私だとミックスベジタブルで誤魔化しちゃうのに。
今だって微塵切り、結構上手にこなしてるし。
「なんか凝ってるね、今日の夕ご飯」
「ん〜? まあね。たまには手の込んだものを作ってみようと……思ってさ。ホレ」
圭兄ちゃんが振り向き様に、私の口内へ焼き豚を一切れ押し込んできた。
その際、ちょっとだけ圭兄ちゃんの指が私の唇に触れた。
モグモグモグ……結構美味しい。
美味しいし、なんだか嬉しい。
「なにニヤニヤしてんだよ。ホラ、もう少しでできるからあっち行ってな」
「え〜、ここにいてもいいじゃん」
「無言の視線を感じながら料理できるほど、まだ慣れちゃいないんだってば」
「ブゥ〜、ブゥ〜」
- 253 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:46
-
仕方なく、ソファーの方へ行ってそこからキッチンの方を見ることにする。
私が遠退いたのを機に、圭兄ちゃんの料理の腕に火がついた。
前にテレビで言ってたけど、チャーハンはササッと炒めないと美味しくできないらしい。
圭兄ちゃんはその事を知ってたのか、手際良く食材を炒めてく。
ちょっと前まではぎこちない手つきだったのに、やっぱ慣れって凄いもんだね〜。
私なんかてんで……。
あっという間に、イイ匂いのする焼き豚チャーハンが2人前できあがった。
匂いだけでもかなり食をそそる感じがする。
でもなぜか、一人分しかお皿に盛らないで運んできた圭兄ちゃん。
しかも分量は2人前ぐらいだから、結構多い。
まさか、巷で良く見かける“○分間でジャンボ○○、食べきれたら一万円”っていうこと、やんないよね?
私一人じゃ、どう見ても食べきれないんだけど……圭兄ちゃん食べないのかな?
「よし、それじゃあ夕飯にするか」
「ねえ、圭兄ちゃん、これってどうやって……」
「ん? まあ見てなって」
そう言って私の直隣りに腰掛けた圭兄ちゃんの手には、一本のスプーンだけ。
そして、目の前には大盛りの特製チャーハン。
一体どういう事?
未だに謎が解けない私を他所に圭兄ちゃんは早速一口分掬った。
そして「はい、ア〜ン」って言いながら、圭兄ちゃんはそれをそのまま私の口へと運んできた。
「ええっ!? い、いいよぉ、そんなことしなくてぇ」
「なんでよ? たまには兄妹睦まじく食事しようよ」
「だ、だってぇ……は、恥かしいよぉ……」
「誰も見てないんだから恥かしがらなくてもイイさ。ホラ」
「……もぉ……(パクッ)」
圭兄ちゃんが物凄く哀しそうな顔で見つめてくるから、思わず口開けちゃったよ。
出来たてでちょっと熱かったけど、でも味はちゃんとしてるし、普通にお店とかで食べるチャーハンだった。
- 254 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:47
-
美味しいんだけど、正直味はほとんど二の次だった。
だって圭兄ちゃんたらさ、何回も何回も同じ事してくるんだもん。
一口食べるごとに、私の顔色窺って微笑んでくるからどう対応していいのか、わかんなくてぇ……。
そんな私の気持ちを悟ったのか、急に圭兄ちゃんが箸(スプーン)を止めて、私を見つめてきた。
「な、なに?」
「嫌だとか言っときながらも、顔は満更でもなさそうじゃん?」
「!! そ、そんな事、ないってばぁ……」
「……」
「な、なにぃ?」
「……いや、別に」
「……なんか余計に食べ難いじゃん。そうやって毎回見られるとさぁ」
「それもこれも、さっきのお返し」
「……もぉ〜、バカぁ」
「可愛いなぁ、真里は」
そう言って私の頭を撫でてくる圭兄ちゃん。
今更ながら思うけど、圭兄ちゃんて私の事、子供扱いしてんのかな?
それとも一人の女として扱ってるのかな?
私的には複雑な思いだよ。
一人の女として見て欲しいんだけど、でも時と場合によっては妹でいたい時もあるし……。
- 255 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:48
-
こうしていつもよりもかなり長い夕食の時間が過ぎてった。
なんか違う意味で胸焼け起こしそうな、そんな夕食だった気がするのは、気のせいかな?
でも、この出来事が私の中に眠っていた欲情を呼び起こしたのも事実。
後片付けしてる圭兄ちゃんの後ろ姿見てるだけで、ちょっと身体が疼いてた。
今日の朝、あれだけ一杯愛してもらったのに、まだ足りないって私の意思とは関係なく身体が欲してた。
おかしいな、ついこの間までこんなになる事なんて一度もなかったのに……。
昔っから圭兄ちゃんが好きだったけど、ここまで圭兄ちゃんを求めてるなんて……。
私、ホントどうしちゃったんだろ?
「真里ぃ〜、先にお風呂入っちゃいな」
「あ、あの、わ、私は、まだ、いいや……先に、圭兄ちゃん、入りなよ」
「どうしたんだ? なんか顔色が……」
「な、なんでもないよ……ほんと、なんでも、ない…から」
「そうか? じゃあ、お言葉に甘えて……」
圭兄ちゃんがお風呂場へと消えてったら、余計に圭兄ちゃんが恋しくなった。
うわぁ〜ん、ホントに私、どうしちゃんだよぉ〜?
もう頭の中圭兄ちゃんに愛されたいって、メチャメチャにしてもらいたいってことしか考えらんない。
圭兄ちゃんに優しい言葉で囁かれたい。
圭兄ちゃんの口からまた、ちゃんとにはっきりと「真里が好き」って言ってもらいたい。
圭兄ちゃんに身体の隅々までいとおしく愛されたい。
圭兄ちゃんと……
- 256 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:48
-
私は知らず知らずにお風呂場へと出向いてた。
そしてほとんど無意識に近い感じで着ていたものを脱いで、お風呂場のドアをそっと開けていた。
一応はタオルで前は隠したけど、でも今更って感じかな。
今朝方いっぱい見られちゃったしね……(ポッ)
丁度圭兄ちゃんは湯船に浸かったところで、顔に軽く湯をかけてたせいか、私が入ってきたことに気付いてない。
普通なら、気配を感じ取ったりするんだけど、今は全く無防備なまま。
へへっ、こういう所が結構天然って言われる所以なのかな?
「圭兄ちゃん」
「えっ、う、うわあっ!!! なっ、なに入ってきてんだ!?」
「いいじゃん。たまには一緒に入ろうよぉ」
「一緒にって……」
「あ〜、もぉ〜、何処見てるの? エッチなんだからぁ」
「いや、こんな至近距離に真里がいてどこを見ろと?」
圭兄ちゃんが目を逸らした隙に、私はさっさと湯船の中に身を投じる。
私が入った分だけ、お湯が外へと流れ出る。
丁度圭兄ちゃんの足と足の間に挟まる恰好で、身を縮めた。
ほんの少し手を伸ばすだけで、圭兄ちゃんの大事なアソコに手が届くくらい近い。
へへっ、触っちゃおうかな?
「ちょ、真里っ! どこ触ってんだ? こら、こらっ」
「嫌?」
「嫌って言われても……ここ狭いし」
「……へへっ、そんなこと言っても、ここは元気になってるよぉ?」
「!!!」
「圭兄ちゃんの、エッチぃ〜」
「……」
- 257 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:49
-
何にも言えなくなった圭兄ちゃんだけど、私の手の中にあるアレは元気一杯だった。
ちょっと刺激を与えると、圭兄ちゃんが色んな反応見せてくれるから、それが結構面白い。
今は手で弄ってるけど、これを私の口でやったら、どんな反応するんだろ?
正直、口でするのなんて初めてだけど、でもそういうのって男の人好きなんだって、なんかの雑誌に載ってた。
ちょっと怖いけど、何事も経験が必要だよね。
「圭兄ちゃん」
「ンッ……な、なんだよ?」
「そこに座って」
「な、なんだ、急に?」
「いいからっ」
「??? こ、こうか?」
「……あのね」
「ん?」
「イヤだったら……イヤッて言ってね」
「は? な、何を……ってちょ、ま、真里ぃ!? はうっ!」
圭兄ちゃんの答えを待たないで、私は行動に移した。
とにかく見よう見真似で、圭兄ちゃんのアレを口の中に含んでみた。
それからぎこちないけど、ゆっくりと愛撫してみる。
口の中でアレが脈打つのがわかる。
圭兄ちゃん、気持ち良くなってくれてるのかな?
そう思って、上目遣いで圭兄ちゃんを見たら、なんだか目をつぶって何かを堪えてるみたい。
ヤバイ、なんかいけないコトしちゃったのかな?
「ふぇいにふぃふぁん、ふぃふぉふぃふぃふぃ?(圭兄ちゃん、気持ちイイ?)」
「……ま、真里ぃ……すごく…いい……よぉ……」
「……ンハァ……ねえ、圭兄ちゃん」
「な、なに?」
「どうしたらいい? どうやったらもっと気持ち良くなってくれるの?」
「……今のままでも充分だけど…」
「私、もっと圭兄ちゃんの気持良さそうな顔が見たいよ」
「……い、いいのか?」
「うん……だって、圭兄ちゃんが好きだから……好きな人にはしてあげたいから……」
「…わかった。じゃあ……」
- 258 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:50
-
…………。
……。
それからしばらくの間、私は圭兄ちゃんから男の人のアレの愛撫の仕方を色々と教わった。
圭兄ちゃんは「AVの受け売りだけどな」って言ってたけど、私にとってはかなり衝撃的なことだった。
だって初めてだったし、それに愛撫の仕方にも色々あるんだってわかったから。
実際やってみて思ったけど、結構顎疲れし、息できなくなったりするんだね。
でも、こういうのってAVの世界だけだと思ってたけど、実際のカップルとかもこんな大胆な事やってんのかな?
今度友達にこっそり聞いてみよっと。
- 259 名前:お返事 投稿日:2005/01/14(金) 01:51
-
去年に引き続き遅筆ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
>名無し読者。さん
二人はこれから、更に進んでいくかと思われます……たぶん。
ということは、そのうちHシーンとかも増える?かも。
- 260 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/14(金) 01:51
-
(〜^◇^)<次回は2月更新予定。2005年もよろしくっ!
- 261 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:42
-
(〜^◇^)<オイラ、誕生日迎えちゃったから、気分良く更新しちゃうねっ!
- 262 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:43
-
今日は圭兄ちゃんと1日デート。
朝から雲一つない天気で、まるで私を祝福してくれてるみたい。
気温も過ごし易くて、将に絶好のデート日和。
え、同じ屋根の下に住んでるんだから今更何を言ってんだって?
わかってないなぁ〜、たまには場所や気分を変えるのも、恋を長続きさせる秘訣なんだよ。
マンネリになったからって直に別れちゃうなんて、そんなのはただのオバカさん。
そんな人は私と圭兄ちゃんを見習うようにっ!
待ち合わせは一応午前10時、二人がいつも使ってる駅の傍にある変なオブジェの前。
実はこのオブジェ、私の学校の卒業生で美術部だった村田さんとかいう人が高3の時に作ったもので、
なんでもコンクールで文部科学大臣賞を受賞したんだって。
私、美術センス無いからわかんないけど、どこがいいんだろ?
でも、物珍しくてよく待ち合わせとかで使われてるから、そういった意味ではいいのかもね。
そのオブジェの前には既に圭兄ちゃんが私を持っていた。
「遅いよ、何してたんだよ」
「へへっ、ちょっとね、家出た時に真希ちゃんに捕まっちゃった」
「また弄られたのか?」
「うん。相変わらずしつこくて」
「でも珍しいな。いつもならまだ寝てるくせに」
「なんかねデートだって言ってた」
「へぇ〜、真希ちゃんも色気づいてきたか」
「……圭兄ちゃん、顔がエッチ」
「な、何を言うか。……と、とっとと行くぞ」
「あ、待ってよぉ〜」
追っかけてって、圭兄ちゃんの腕に抱きついてみた。
別に振りほどかれる様子も無くて、圭兄ちゃんは普通にしてる。
前はこんな事すると真っ赤になって振り解きにかかったのに、圭兄ちゃんも大人になったんだね。
( `.∀´)<マリニイワレタクナイヨ
でもやっぱり、こうして普段と違う雰囲気って新鮮でいいよね。
こうしてるだけで、私物凄く幸せだもん。
- 263 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:44
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 264 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:44
-
そもそも今日デートしようって事になったきっかけは、昨日の夜の事。
普段、滅多にゲームしない圭兄ちゃんが夢中になってゲームしてた。
傍においてあるケースを見ると、有名な『機○戦士Zガ○ダム』のPS2版だった。
でもこれって、結構前に発売された気がするけどなぁ……。
画面には主人公のガン○ムみたいなのが黄色いのを一方的に攻撃してる。
黄色いのが攻撃される度に「早っ」とか「なんで?」とか連発してる。
CPとバトルしてるみたいで、圭兄ちゃんてば結構やられまくってた。
「圭兄ちゃん下手だねぇ〜」
「うるさいなぁ。いいだろ、初めてやってんだから」
「私より下手かも」
「な、なにを〜、ああっ!」
一瞬だけ、私の方を向いたからその隙に攻撃食らったみたい。
圭兄ちゃんの健闘虚しく黄色いのが破壊されちゃった。
あ〜あ、余所見なんかしてるから。
あっ! いい事思いついちゃった、へへへっ♪
「ねえ、私と対戦しようよ」
「え〜」
「あ〜、さては負けるのが怖いんだぁ〜、カッコ悪ぅ〜い」
「(ムカッ)あったま来た。いいよ、やってやろうじゃん」
相変わらず挑発されるとムキになる所は昔から変わってないよね。
短気は損気っていうでしょ?
圭兄ちゃんもそろそろ我慢のできる大人になろうよ。
そんなんじゃ女の子から嫌われちゃうぞ〜。
あ、でも私的にはその方が都合がいいかな、無駄に敵が増えないしね。
- 265 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:45
-
「でもさ、ただやるだけじゃつまんないから、なんか賭けようよ?」
「何を賭けるんだよ?」
「ん〜、じゃあ私が勝ったら、明日の休日1日デートしよ」
「デート? なんでまた? 毎日会ってんじゃん」
「いいのっ。するの、したいの」
「わかったよ。じゃあ、こっちが勝ったら、そうだな……」
「圭兄ちゃんが勝ったら、エッチさせたげる」
「んなっ、なんだよ、それ?」
「いいじゃん。はい、決まり、じゃいくよ〜」
「え、ちょっと待て、あ」
圭兄ちゃんが迷ってる間にバトルスタート。
先手必勝といわんばかりに、ビームライフルを打ち込む。
防御態勢も整ってない圭兄ちゃんの黄色いのが吹っ飛んでく。
ちょっと強引過ぎたかな?
どっちみちこの勝負、勝っても負けても私にとって有利なのは確か。
へへっ、こういうのは言っちゃったもん勝ちだからね。
「ひ、卑怯だぞ、真里」
「勝負に卑怯なんて言葉ないもんね」
「って言うかなんでそんなに上手いんだよ?」
「え〜、だってこれ、発売直前に店頭でやったことあるんだもん」
「はあっ!? なんだよ、それ!? そういうことは先に言えよ」
「だって言っちゃったら面白くないじゃん」
圭兄ちゃんが悪戦苦闘しながら防御、時に攻撃を見せるけど、
私はそれを嘲笑うかのように黄色いのにダメージを与えていく。
ちなみに私が選んだ赤いのは、未だにノーダメージ。
データー上では私の方のやつが弱いらしいけど、そこはテクニックでカバーでしょ。
それにしても、なんかこういう対戦モノって気分がスカッとするよね。
特に自分がミスしてなくって、相手に面白いようにダメージを与えてる時って。
- 266 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:45
-
「くっ……なんで当たらないんだ?」
「へへっ、教えてあげよっか? それは、圭兄ちゃんが下・手・だ・か・ら」
「あーっ!!」
結局、ノーダメージのまま勝負は私の圧勝。
圭兄ちゃんたらコントローラー握ったまま固まっちゃってる。
そりゃあそうだよね、女の私に1回もダメージ与えられないまま負けちゃったんだから。
で・も・勝負は勝負っ。
(〜^◇^)v <イエーイッ!!
「じゃあ約束通りに明日、デートしようね」
「……」
「朝10時に駅前のオブジェの前ね」
「……」
「聞いてる?」
なんか漫画とかでよくある灰色になっちゃってるって感じ?
当然私の言った事なんか耳にも入ってない。
(*^◇^)<モォ〜、ショウガナイナァ…
私は圭兄ちゃんの唇に自分のを重ねた。
ちょっと強めに押し当ててみる。
「!!!」
「……起きた?」
「な、な、なにして」
「お目覚めのあつ〜いキッス」
「ば、バカっ、何言ってんだ」
「それより、明日朝10時に駅前のオブジェの前だよ? 忘れないでね」
「……ちぇっ、わかったよ」
- 267 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:46
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 268 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:47
-
「で、何処行くんだ?」
「んとね〜、えっと〜」
「……考えてないだろ?」
「へへっ、バレちゃった?」
「ったく、真里はいっつも後のこと考えないで行動するんだから」
「ごめん。でもさ、私、デートっていうデートするの初めてだから、どうしていいかわかんなくって」
そう、私はデートというものをしたことがなかった。
だって好きな人とはいつも家で一緒だし、誰かに告られても全て断ってきたから、
そういう機会なんて私には必要ないと思ってた。
でも、友達とかの話聞いてると、羨ましくて自分もしてみたくなったんだよね。
私だって女の子だもん、デートぐらいしてみたいよ。
でも、そう簡単に上手くいくはずないんだよね……はぁ〜っ。
そんな気持ちが出てたのか、圭兄ちゃんが改めて手を繋ぎ返してきた。
「しょうがないなぁ。とりあえず、定番だけどなんか映画でも見るか?」
「うん」
「で、その後お昼食べて、どっかで遊ぼう。後はその時の気分次第だ」
「うんっ」
「真里から誘ったんだから、もっと楽しそうにしなよ。それとももう帰るか?」
「イヤだっ」
「だったら、そんなに落ち込むなって。気にしてないから」
「うん、アリガト」
こういう時って年上の男の人は頼りになるよね。
まあ、歳だけ取ってて中身が子供のままっていう人もいるけどね。
私の周りじゃ、性は違うけど、真希ちゃんがそうかな?
今頃、彼氏に甘えてんだろうなぁ……。
( ´ Д `)<ハ、ハ、ハックシュンッ!! ンア〜、ダレカガゴトーノウワサ、シテル〜
- 269 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:48
-
…………。
……。
「圭兄ちゃん、大丈夫?」
「……あ、ああ……」
繁華街の片隅にある小さな公園のベンチで、私たちは休んでいた。
私は水で濡らしたハンカチを圭兄ちゃんの目の辺りにそっと置いてあげる。
圭兄ちゃんの提案通りに映画を見たんだけど、圭兄ちゃんたら感動して泣いちゃったんだよね。
元々涙脆い体質で、ドラマは勿論アニメやドキュメンタリーなんかでも感動して泣いちゃうほど。
前にMステでG○AYのTERUさんが『ベイブ』観て泣いたって言ってたけど、
実は圭兄ちゃんも、夜中に1人でこっそり観て泣いてたのを私は知ってる。
レンタルしてきたから、一応私も見たんだけど、これといって泣けるような場面は無かったと思うんだけどなぁ。
それくらい感受性が以上に高い圭兄ちゃん。
「ごめん、もうちょっと休ませて」
「うん、いいよ」
「ジャンル選択誤ったよ。朝から感動巨編選んだ俺がバカだった」
「でも、凄く良かったよ。圭兄ちゃんほどじゃないけど、私も泣いちゃったし」
「周りの人らも啜り泣きしてたしな」
「圭兄ちゃんは号泣だったけどね」
「ほっといてくれ」
そう言って圭兄ちゃんは目元にハンカチを当てたまま、ジッとしてた。
でもなんだか姿勢が窮屈そう。
幸い、この公園には人が疎らで私たちの事気にする人もいなそうだし、ちょっと頑張っちゃおっかな。
こういうところでもポイント稼いでおかなきゃね。
- 270 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:49
-
「圭兄ちゃん、横になったほうがいいよ。その体勢だと首が辛いでしょ」
「ん? ん〜、そうだな」
「じゃあ、はい、ここに頭乗っけて」
「へ?」
「早く、はやくぅ」
「あ、いや、人が、見て……」
「大丈夫だって、ホラ」
相変わらず恥かしがってる圭兄ちゃんを強引に寝かせた。
圭兄ちゃんの後頭部が私の腿の上にちょこんと乗っかる。
……。
勇気出してやってみたけど、なんだか妙に恥かしいや。
誰も見てないってわかってるけど、それでも顔が赤くなるのは隠せない。
それは圭兄ちゃんも同じで頬が赤くなってた。
片方の手を自分の頬に添えて、もう片方の手を圭兄ちゃんのに添えてみると、
やっぱりお互い熱があって、恥かしいんだって再確認した。
「やっぱり恥かしいね、こういうのって」
「真里がそうさせたくせに」
「でもね、恥かしいけど、嬉しいな」
「まあ……嫌いじゃ……ないけどな……」
圭兄ちゃんがハンカチをチラッと捲って意地悪そうに笑う。
つられて私も思わず顔がヘニャッと崩れる。
なんだか圭兄ちゃん、今日のデートを楽しんでる気がした。
企画した(?)甲斐があるってもんだね。
(〜^◇^)<チョットウレシッ!!
- 271 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:49
-
圭兄ちゃんの回復を待って遅い昼食。
って言っても私がファーストフードに行ってセットメニュー買ってきただけの質素なお昼。
ここからどっかお店捜すの面倒臭かったし、お店入ってもなんか怪しまれそうだったからね。
いい歳した男の人が昼間っから目腫らしてるの、おかしいじゃん。
下手したら一緒に居る私が何かしたような目で見られるかもしれないしさ。
それに、たまにはこうやって御日様の元でランチってのも悪くはないしぃ。
「圭兄ちゃん、買ってきたよ」
「……サンキュ、ん?」
「な、なに?」
「なんか嫌な事でもあった?」
「聞いてよ〜。セットメニュー頼んだら、店員さんに、お子ちゃまのオモチャ付きの勧められてさぁ。
並んでた人たちに笑われちゃったよぉ〜、あ〜、もぉ〜、ムカツクゥ〜」
「……背が小学生並だからな」
「……なんか言った?」
「レジに手、届いたか?」
「あ〜ん、もぉ〜、圭兄ちゃんのバカァーっ!!」
持ってたチキンレタスバーガー投げつけてやったけど、簡単にキャッチされた。
不適に笑う圭兄ちゃんお顔がなんかムカツク。
悔しくて、私の頼んだダブルチーズバーガーも投げつけたら、それも簡単にキャッチされる。
( `.∀´)<ニヤニヤ
ニタニタ笑う圭兄ちゃんが無性に憎たらしい。
打つ手がなくなった私に残る手段は、不貞腐れて拗ねるだけだから、思いっきり拗ねてみた。
嬉しそうな顔で圭兄ちゃんは冷やかしにかかる。
- 272 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:50
-
「お〜い、真里〜? 真里ちゃぁ〜ん」
「……知らないっ!」
「そんな顔してると折角の美人が台無しですよ〜」
「……私はどうせ子供だもんっ!」
「おなかがちゅきましたかぁ〜? これをたべれば、きっとげんきになるでちゅよぉ〜?」
「……」
もう、何をやっても振り向かないで拗ねてやった。
圭兄ちゃんはいっつもそうだ。
私が圭兄ちゃんの事大好きだってこと利用して、私を子供扱いしてさ。
そのくせ、私の弱い所を容赦無く突っついてくるし。
全てが圭兄ちゃんの思い通りになると思ったら大間違いだからねっ!
そう思って圭兄ちゃんが近寄ってきても、ずっと背中向けて知らん振り……しようと思ったけどできなかった。
キュゥ〜、キュルルルゥ〜
目の前に差し出されたハンバーガーの匂いに、私のお腹が思わず反応しちゃったから。
「早く頂戴」って言いたそうに、何度も何度も大きな声で鳴り続ける。
なんでこんな気緊迫した場面で鳴るかなぁ!?
わぁ〜ん、これじゃあ、私が怒って拗ねてる意味ないじゃんかぁ!!
お腹抑えながら、そっと上目遣いで笑ってるだろう圭兄ちゃん見たら、意外にも微笑んでた。
圭兄ちゃんがそっと私の横に並んで、改めてハンバーガーを私に手渡した。
「容姿に似合った可愛い声出すんだな、お腹の虫も」なんて言いながら。
も〜、そんな言い訳もできないこと言われたらさ、怒るにも怒れないじゃん。
あ〜、もぉ〜、恥かしくって穴があったら入りたい。
- 273 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:50
-
なんとも言いがたい気分で終えたお昼の後、私と圭兄ちゃんはデパートに向かった。
冷やかし過ぎたお詫びにって、私に洋服買ってあげるって言ってくれた。
現金な私はその言葉ですっかり浮かれモード。
へへっ、やっぱり圭兄ちゃんは優しいなぁ。
デパートにつくと、圭兄ちゃんを急かすように売り場へ直行する。
私が欲しいのは、ついこの間から売り出し始めた「あるもの」。
そろそろ季節だし、こういうのは早めに買っておかないと、出遅れちゃうし。
洋服も勿論欲しいのは幾つかあるんだけど、今回は保留。
嬉々として売り場に到着すると、既に何人かのお客さんがアレコレと吟味してた。
「ちょ、ま、真里? ここって」
「へへっ、男の人にはちょっと居づらい場所だけど、我慢してね?」
そう、私が欲しかったのは、水着だった。
水着は毎年新作が出るから、その年その年で買い換えなきゃいけない。
今年の流行は、ちょっと肌の露出を多めにする大胆なものみたい。
色も割りと派手目が多くて、正直20代の女性向って感じのが目立つ。
実際に選んでる人も20代前半の人ばかりで、それに皆さんプロポーションが良い。
洋服着てても出てる所はちゃんとに出てるし、引っ込む所は引っ込んでる。
それを見て、自分のを見るとちょっと凹む。
お姉さんたちに混じって、自分に合った水着を真剣に選んだ。
幾つかいいなと思うのがあって、決めかねるのは他のお姉さんたちも同じみたい。
ただ、他のお姉さんたちと違って、私が見せたいのは圭兄ちゃんだけだから、
自分に合ったって言っても、半分ぐらいは圭兄ちゃんが好きそうなのも候補にしなくちゃいけない。
って言っても圭兄ちゃんってどういうのが好きなのかな?
私は一端、水着選びを中断して、圭兄ちゃんの元へ戻った。
- 274 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:51
-
「ねえ、圭兄ちゃん。圭兄ちゃんてどんなのが好き?」
「は? 急に何だよ?」
「だから、圭兄ちゃんはどんな水着が好み? 色とかは?」
「んなっ! 何言ってんだ!? お、俺は別に……」
「だって圭兄ちゃんに喜んで欲しいじゃん」
「い、今更水着ぐらいで、よ、喜ぶような歳でもないし……それにさ……」
「ん? なぁにぃ〜?」
なんだか圭兄ちゃんの顔がさっきから真っ赤っかなんだけど?
それになんか言いたそうにして黙っちゃったけど、そんなに言いづらいのかな?
あ、もしかして人前じゃ言えないほど凄いの期待してたりして。
圭兄ちゃんてばエッチだなぁ、なんて呑気に考えてたら、
「それに、もう真里の水着姿よりも、大胆なもの、見ちゃってるし……」
- 275 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:52
-
「……け」
「け?」
「圭兄ちゃんのぉ……」
「???」
「圭兄ちゃんのエッチぃーっ!!」
バシィーンっ!!
「いってぇーっ!!」
思わず圭兄ちゃんの頬引っ叩いちゃった。
思った以上に引っ叩いた音と、圭兄ちゃんが叫んだ声が館内に響いて、
フロアーに居たお客さんから作業していた店員さんの目が全部、私たちに注がれてた。
ただでさえ、このフロアーに男の人が圭兄ちゃんだけだったから余計に怪しまれたかも?
店員さんのヒソヒソ話が彼方此方で聞こえてきた。
結局、その場に居づらくなってそそくさとその場を退散した。
圭兄ちゃんがちゃんと好みを言ってくれれば、あんな事にならなかったんだけどなぁ。
でもあの場所で買わなくて正解だったかも。
まだまだ水着なんて、これから色んな所で売り出し始めるだろうし、今買って後で後悔するかもしれないし。
もうちょっと色々研究(友達と意見交換したり、圭兄ちゃんの好みを聞き出したり)してから、買いに来よっと。
圭兄ちゃん、さっきはごめんね。
- 276 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:53
-
その後、しばらく色んなお店回って、約束通りに洋服(スカート)を買ってもらった。
周りにカップルがいなかったせいもあって、結構目立ったけど、さっきよりは幾分マシだった。
お会計の時、ちょっと年上のお姉さんに「いいわね。彼氏と仲良く買い物できたうえに、買ってもらっちゃって」って
冷やかされるように言われから、その時はさっきみたいに恥かしかったけどね。
でも、恋人同士に見られたことが私には物凄く嬉しかった。
帰り際、さっきに店員さんの言った事思い出して笑ってたら、圭兄ちゃんが不思議そうに訪ねて来た。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「へへっ、だって、さっきの定員さん、私たちの事カップルだって思ってくれたみたいだから」
「嬉しいのか?」
「当たり前じゃん! 私、背ぇ低いからさ、絶対兄妹だと思われてるし」
「まあ、兄妹には違いないけどさ」
「……そうだけど……やっぱり、女の子だもん、恋人同士に見られたいよ……」
一応手は繋いで歩いてるけど、でも、見方によっては兄妹にも見えなくもない。
今だって通りすがりの人たちの何人かには、きっと迷子にならないように手を繋いで歩く兄妹って映ってるはず。
圭兄ちゃんと並んで歩くのは嬉しい反面、嫌いでもあるんだよね。
ホント、どうしたらいいんだろう……。
- 277 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:54
-
そんな気持ちを知ってか、圭兄ちゃんは救いの言葉を掛けてくれた。
「じゃあ、そうなるように努力しないとな」
「……うん」
「まだ、真里とは始まったばかりだから、急には無理かもしれないけどさ」
「うん」
「だから、真里」
「なに?」
「好きだよ」
「私も、好きだよ」
圭兄ちゃんが急に立ち止まって、いつも通りの優しい笑みでそう言った。
人の流れの邪魔になったけど、私も立ち止まっていつも通りの笑顔で言った。
この時は何故か照れたりする事なく、はっきりと自分の気持ちが言えたね。
なんだか今日は色んな事があって、酸いも甘いも感じたけど、凄く充実した1日を送れたような気がしたよ。
私にとっても、圭兄ちゃんにとってもね。
- 278 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:55
-
(*^◇^)<恥かしいから隠すよっ
- 279 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:55
-
(〜^◇^)<もう一回っ
- 280 名前:愛物語。2 投稿日:2005/01/21(金) 01:56
-
(〜^◇^)<今度はちゃんと2月下旬頃に更新するからね〜
- 281 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:38
-
一学期の期末も無事に終わって、後は夏休みを待つばかり。
答案が戻ってきた時はまあまあかなって思ったけど、平均点聞いたらそんな気も失せた。
だから全体的な結果は……あんまり人様に言えるような成績じゃないと思う。
あれだけ圭兄ちゃんに教えてもらったのに、ヤマ外れたからかなぁ?
いや、違うね。
数学教えてもらってる時、ご褒美くれなかったのが悪いんだ!
あれ貰ってたらもっと良かったのに……圭兄ちゃんのバカっ。
学校終わって、午後から私はこの間買い損ねた水着を友達と一緒に買いに行った。
それぞれの目的(彼氏に見せるためとか、ナンパされるためとか)を言い合いながら、
お互いあーでもない、こーでもないと色んな所を物色。
その甲斐あって、気に入った水着をゲットできた。
私にはちょっと派手かなって思えるくらいの赤いビキニタイプのやつ。
赤にしたのは、圭兄ちゃんが好きな色だから。
圭兄ちゃんて男の人なのに、何故か赤が好きなんだよね。
なんかちょっとエッチ。
( `.∀´)<エッチナノハ、マリノホウダロ〜
- 282 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:39
-
帰り際、マックで一休みしてたら友達に「この間公園で彼氏に膝枕してるの見たよ」って言われて驚いた。
圭兄ちゃんといるとこ見られちゃったんだけど、ちゃんと彼氏だと思ってくれたみたい。
そう思われたことが嬉しくて、皆からの質問攻めにも終始ニヤけ顔で応えてた。
でもその時ふと聞かされたことに少々戸惑う。
前に飯田先輩に告られた時も言ってたけど、私って結構人気があるって言う事。
彼氏持ちの娘が友達にいると、こういうのって結構有りがたいんだよね。
具体的に誰から想いを寄せられていたかも教えてもらった。
有名所だと、飯田先輩は知ってたから良いけど、ハンドボール部の大谷先輩、
隣りのクラスの藤本君、更には以前石川さんの告白現場にいたあの吉澤君には驚いた。
だって3人ともちゃんと付き合ってる人がいるって言う話だから。
大谷先輩、一つ下の柴田さんと付き合ってるし、藤本君にはやっぱり一つ下の松浦さんがいるし、
吉澤君もアノ後付き合いだしたって聞いたから。
皆浮気してまでなんで私なんかと付き合いたいんだろ?
私、皆が想ってるような女じゃないのにな。
皆がしてる浮気よりももっとしちゃいけないコトしてる女だよ?
なんか……申し訳ないな。
- 283 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:39
-
なんだか言いようのない気持ちのまま帰宅した。
けど家に戻ったら、そんな気持ちもどっかに吹っ飛んでた。
私って結構単純?
まあいいや、とりあえずさっき買った水着でも試着してみよっかな。
あ、でも汗かいたし、お風呂入ってからにしよっ。
そう思って下着姿のまま着替え用意してたら、ドアの向こうから圭兄ちゃんの声がした。
「お〜い、真里〜、いるのか?」
「いるよ〜」
「入るぞ〜?」
「いいよ」
そういえば今日圭兄ちゃんとは一回も喋ってないし、見てもなかったっけ。
出かける時、お昼過ぎてたのに、まだ寝てたもんね。
たぶん、私がキスしたのも気付いてないと思う。
その時軽くルージュが付いちゃったんだよね、圭兄ちゃんの上唇のところに。
鈍感な圭兄ちゃんの事だから多分、まだ残ってるんだろうなぁ……。
へへっ、なんだか顔見たら笑っちゃいそう。
- 284 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:40
-
ガチャッ
「あのさ、うわっ!!」
「ん? どーしたの?(やっぱりまだ残ってるよ)」
「き、着替えてたのかよ?」
「ちょっとさ、水着の試着しようと思って(プププッ、圭兄ちゃんカッコ悪っ)」
「だったら、入っていいって言うな!」
「そんなにさ、ハズカシがんなくて良いじゃん。すでに私の裸いっぱい見てきたのに」
「そ、そういう問題じゃないっ!」
「で、なぁにぃ?」
「……もういい」
「??? 変なの」
なんか慌てて出ていった圭兄ちゃん。
思った通り、まだ後が残ってた。
やっぱり圭兄ちゃんてば見てても全然飽きないし、最高だよ。
それにしても、なんでまだあんなに恥かしがるんだろうね?
Hしてる時に裸は勿論、人には言えない恥かしい姿も見たのに……(ポッ)
まだまだ圭兄ちゃんの中で、私はちゃんとした一人の女として存在してないのかな?
- 285 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:40
-
……よしっ、決めたッ!
今日は寝るまで、この恰好でいよう。
そして、圭兄ちゃんから恥じらいを無くそう。
そしたらちゃんと私のこと女として見てくれるし、圭兄ちゃんの方から積極的に誘ってくるだろうしね。
水着の試着はまた今度。
水着よりもこっちの方が刺激的だもんね……(ポッ、ポッ)
へへっ、今の私ってちょっと魔性の女って感じ?
そろそろ夕飯の用意する時間だから、作戦開始。
もう夏だから、夜までこの恰好でいても平気平気。
男の人が憧れる裸エプロンとはちょっと違うけど、これでも結構嬉しいと思うんだよね。
下着姿(エッチなピンク)にエプロン姿って。
圭兄ちゃんも男だし、果たしてどんな反応するのかな〜?
案外、見た瞬間に狼に変身しちゃって、いきなり襲いかかってくるかも。
でも、たまにはそんな荒々しいのもイイかな〜。
(*∩◇∩)<イヤァー、ハズカシーッ!!!
あ、来た来た。
「さてと、今日の夕飯で、んなっ!! なんて恰好してんだ、家の中でっ!?」
「だってぇ〜、今日熱っついんだもん」
「じ、じゃあ冷房、い、入れれば、いいだろ」
「そこまで暑くないんだもん、それに電気代もったいないじゃん」
「だったら……ぁあっ、もういい! と、とにかくなんか着ろ。め、目のやり場に、困る……」
そう言ってソファーにドカッと腰を下ろした圭兄ちゃんは、顔が真っ赤っか。
手にした新聞逆さまだし、煙草吸おうとして逆に火点けてるし、動揺してるのがバレバレ。
なぁ〜んか結構楽しいかも。
へへっ、今日の私は魔性の女だしぃ、これくらいじゃ、終われないんだよね〜。
- 286 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:41
-
「いいじゃん。それよりさ、圭兄ちゃんてこういう恰好好き?」
「!! は、早く服着てこいって」
「え〜、せっかくなんだしさ、もっと良く見て〜」
「だぁーっ!! 寄ってくんな、真里っ!」
「なんでぇ? 私的にはここのところがさ……」
「バ、バカ、いちいち強調するな。コラ、脱ぐな」
「いいじゃん、誰も居ないんだしぃ」
説明するフリして、肩からブラ外しにかかる。
わざと手で胸隠して、猥褻さをアピール。
圭兄ちゃんは、逃げ場が無くなって必死に近づいてく私を手で制止してる。
目を逸らそうとしても、わざとそっちの方に身体を持ってく。
圭兄ちゃんの腰らへんに跨るように乗っかる。
当然下着姿のままだから、かなり大胆な恰好になってるはず。
……へへっ、圭兄ちゃん、アソコがなんかモゾモゾしてるよ?
ここまできたら、後はお決まりの台詞言えば、圭兄ちゃんも流石に堕ちるかな?
「ちょ…ま、真里ぃ……ダメだ…って」
「……圭兄ちゃぁん……私って、魅力、ない?」
「い、いや、そ、そんなことは、決して、ないかと」
「だったらさ……ね?」
「ねって、こないだした、ばっかじゃ……」
「Hしたけど、でもまたしたい。圭兄ちゃんが好きだから、ダメ?」
目に涙(ウソ)を溜めて、圭兄ちゃんをジッと凝視する。
ここまでやって堕ちなきゃ、男性として失格だよ、圭兄ちゃん。
さあ、どうだ、どうする!?
- 287 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:41
-
「ダ、ダメって訳じゃないけど、でもさ、その……」
「ダメ…なんだ……」
「いや、だから、ダメって訳じゃ…」
なんだか急に虚しさがこみ上げてきた。
ここまで色々と頑張ったのに、結局私の独り善がりだったのかな?
やっぱり、兄妹だから本気で愛せないのかな?
そんな思いが躊躇い無く声に出てた。
「……圭兄ちゃんさ、私のことホントに好き?」
「ど、どうしたんだよ、急に深刻な顔して」
「だって、圭兄ちゃん、自分からは全然誘って来てくれないよね?
私は圭兄ちゃんが好きだから、圭兄ちゃんとHしたい。
でも、私女だし、女の自分からHしたいなんて言うと、変って思われるのイヤだったから、
だから言葉じゃなくて行動でアピールしてた」
「……」
「でも、圭兄ちゃん、いっつも恥かしがって気付かないフリして、やり過ごしてるんだもん。
そんな態度取られたら、いくら好きって言われても、ウソに思えちゃうよ。私、間違ってるかな?」
思ってる事長々と喋ったら、私知らないうちに泣いてた。
泣きたいなんて思ってもなかったのに、泣いてる私。
最近涙脆いし、ちょっと変……。
- 288 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:42
-
そんな私を圭兄ちゃんはそっと自分の胸に抱きしめてくれた。
そのうちいとおしいくらいにしっかりと抱きしめてくる圭兄ちゃん。
でも、今の私にはそんな態度も気休めとしか思えない。
「……間違ってない。間違ってなんかないさ」
「じゃあどうして、圭兄ちゃんは……」
「確かに真里の言ってる事は正しい事だよ。でもな、それだけじゃないだろ、恋愛って。
一緒に居るだけでも幸せとか、手を繋いでるだけで幸せとかいう人も一杯いると思うんだ。
少なくとも俺は、真里とこうして二人きりで生活してる今がとても幸せだと思ってる」
「……」
「そういう気持ちでいつもいるから、だからたまに真里とするHが物凄く気持ちいいんだ。
今までガマンして抑えてきた真里への愛情を、そこで一気に発散させるって感じ。
俺が一度に何度もしたがるのは、そういう事なんだ」
「……」
「これって我侭かな?」
「……ゴメン、私なんか勘違いしてた。てっきり圭兄ちゃんは私のこと、ちゃんと見てないと思ってたから」
「こっちこそ、ゴメンな。真里のそうした気持ちに気付かなくて。
それよりもさ……なんか真里のその恰好で涙流すの見たら、したくなった」
「えっ……」
「もう抑えられないからな。我慢できない」
いきなり圭兄ちゃんがキスしてきた。
しかもいつもみたいな軽い感じのキスじゃなくて、マジモードのキス。
つまりはディープキスなんだけど、なんだか物凄いエッチで、段々と荒々しくなっていく。
吸いついたり、絡め合ったり、時にはピチャピチャ音がしたりして……。
その間、圭兄ちゃんの手は私のブラホックを器用に外してた。
丁度圭兄ちゃんの上に跨ったたままだったから、圭兄ちゃんの手は自然と背中に回ってて、
ブラ外した後にはお尻撫でたり、時には鷲掴みにしたりして、いつもよりちょっと荒々しい。
だから普段よりも、物凄くいやらしく感じた。
何気に圭兄ちゃんてエッチなコトする時だけ、器用なんだよね。
( *`.∀´)<ギコチナイエッチヨリマシダロ?
- 289 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:42
-
どのくらいキスしてたのかわかんないけど、ようやくお互い唇を離すと、唾液で糸引くくらいにエッチになってた。
そのまま圭兄ちゃんの唇は私の首筋を通って、胸の辺りに到着。
そこでちょっと不適な笑みを浮かべて私に言う。
「なんか前よりおっきくなってない?」
「そ、そんなことぉ……ない、よぉ……」
「柔らかさはかわんないけどさ」
「……バカぁ……ンッ」
圭兄ちゃんが私の胸に顔を埋めた。
実を言うと、圭兄ちゃんがエッチする度に一杯胸揉んでくれたお陰で、前よりもちょっと大きくなったんだよね。
それと同時になんか感度も良くなっちゃったみたいで、揉まれる度に声が漏れそうになる。
って言うか、ここ明る過ぎ。
「け、圭兄ち、ゃぁん……」
「なに?」
「こ、ここ……明る…過ぎるよぉ……」
「誰もいないって言ったの真里だろ? だったらどこでしたって一緒」
「でもぉ……」
「エッチになると急にしおらしくなるなぁ……さっきまでの威勢はどこ行ったわけ?」
「ダ、ヒャンッ!」
もぉっ、圭兄ちゃん意地悪し過ぎっ!!
なんか言おうとすると直におっぱい舐めるんだもん。
そんなんしたら、もう私……
私の反応楽しみながらも、圭兄ちゃんの指は一番敏感なところへ。
アアッ、今触ったら……
- 290 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:42
-
「アレ? もうこんなに濡れてるぞぉ?」
「ヤァ……言わぁ、ないでぇ……言っちゃ…ヤ、ダァ……」
「下着にも染み、できてるしぃ」
「ヤ、ヤダァ……イヤ、イヤァ……」
「もっと触っちゃおっと」
そう言って圭兄ちゃんが私のアソコを下着越しに触ってくる。
撫でたり、軽く叩いたり、時には摘んだり……。
まだ直接触られてないのに…なのに、狂いそうなくらいに気持ち良い。
ヤダヤダ、私、物凄い感じちゃってる……。
「ンッ……ハァ……ァン……」
「嬉しいな、ちょっと触っただけでこんなに感じてくれてるなんてさ」
「……んむぅ…っ…ふぅ…んんんっ」
ヤダヤダヤダッ、どうしよ、どうしよ!?
私…私、おかしく…おかしくなっちゃうよぉーっ!!
(*∩◇∩)<イヤァ〜〜〜
- 291 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:43
-
「……んっ、ひやぁぁぁぁんっ!!」
- 292 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:44
-
……私、今までにないくらい簡単にイッちゃいました。
- 293 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:44
-
(*∩◇∩)<恥かしすぎるから、隠すよっ!!
- 294 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:44
-
(*∩◇∩)<もう一回っ!!
- 295 名前:愛物語。2 投稿日:2005/02/25(金) 02:45
-
(*^◇^)<穴があったら入りたい……
- 296 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 00:29
- 交信待ってやす
- 297 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/03/13(日) 13:03
- 楽しみにしてますよ
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/28(月) 15:38
- 待ってます×100
- 299 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:56
-
「……ハァッ……ハァッ……」
「……なんか今日は感度がよろしいようで」
「……バカッ」
「……ほんとに真里はエッチなんだから。未来の旦那さんがこんな真里見たらどう思うかなぁ?」
急に圭兄ちゃんが現実的な話持ち出してきたから、ビックリしちゃった。
目の前に居る圭兄ちゃんはとても真面目な顔で私の事見つめてくる。
なのに両手は相変わらず私の下半身撫でまわしてるんだけど……。
エッチなのは圭兄ちゃんじゃん!
「あ、でも却って喜ぶかもなぁ……エッチが好きな若奥様」
「私……結婚しないもん」
「へ?」
「結婚しない。私、圭兄ちゃんと一生暮らすから結婚なんてしない」
知らず知らずのうちに口が動いてた。
将来の事なんて漠然としか考えてなかったから、たぶん今言った事は本音じゃないと思う。
でも、よくよく考えたら、それはそれでアリかも。
傍に圭兄ちゃんが居れば、私はそれだけで……
「で、でもさ、父さんや母さんは、その、真里の花嫁姿を、見たいと思ってんじゃ……」
「圭兄ちゃんは結婚するの?」
「え?」
「圭兄ちゃんは将来、結婚考えてるの?」
「そりゃあ、その時が来ればいずれは……」
「なんで?」
「へ?」
「なんで結婚なんかするの? しなくてもいいじゃん」
- 300 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:57
-
……。
正直、自分が一番驚いた。
私の冷めた一言で、イヤらしそうに撫で回してた圭兄ちゃんの手の動きが止まる。
ヤダ、私、なに言ってんだろ?
なんでそんな事言ったんだろ?
そんな事微塵にも思ったことないのに、なんで、ナンデ?
圭兄ちゃんが信じられないって顔してる。
私も、信じられない。
「ま、真里?」
「どうして結婚しなくちゃいけないの? 私がいるじゃん。どうして他の女の人と一緒になるの?」
「どうしたんだよ、急に?」
「答えてよ。ねえ、どうして? 私じゃ不満? 私がいちゃダメなの? ねえっ、ねえってば」
ヤダ……ヤダヤダヤダ!!
なんか怖い、怖いよっ!!
私の意思とは関係なく口が喋ってるよっ!
私の中に誰か居るの?
ねえ、誰!? 誰なのよっ!
圭兄ちゃん、助けてっ!
- 301 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:57
-
「真里、おい、真里っ! 一体どうしたんだよ!?」
「……なんで答えてくんないのさ」
「答えろって言ったって……」
「……答えられない理由があるんだ? そうなんだ」
「ちょっと待てって」
「圭兄ちゃんは、そういう人だったんだ……そうなんだぁ……」
「お、おい、どこ行くんだよ?」
私の身体は圭兄ちゃんから離れて、キッチンへ入ってった。
別にお腹が空いたからとか喉が乾いたからって訳じゃない。
そんな事思ってもないし、意識した事もない。
でも、身体が勝手に動いてる。
そして私の手には一本の出刃包丁。
勿論、そんなものを持とうという意思など全くないのに、身体が勝手に動き回る。
なに、これっ!?
ねえ、どうしちゃったのよ、私の身体っ!?
私の魂の叫びも虚しく、身体は再びリビングのソファーで呆然と私の様子を窺い続けている圭兄ちゃんの元へ。
圭兄ちゃんの顔から余裕がなくなってく。
私の顔を手元の出刃包丁を交互に見つめながら、後ろへ交代する圭兄ちゃん。
「なっ! バ、バカっ! なにそんなもん持ち出してんだ!」
「圭兄ちゃんは私のもの……誰にも渡さない」
「真里……おまえ……」
「圭兄ちゃんが私以外の女と一緒になるくらいなら……」
もう完全に私は誰かに支配されていたと思う。
だって、自分の意思に反した言動ばかりで、何をどうしても成す術が無かったから。
- 302 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:58
-
私の腕は、圭兄ちゃんに向かって出刃包丁を振り翳す。
道にもならないと判ってても、なんとかその行動を止めようとするけど、身体は勝手に動いてく。
運動神経の疎い圭兄ちゃんが俊敏に避ける。
それを追う私の身体。
「やめろっ! 真里っ、目ぇ覚ませっ!」
「なんで逃げるの? どうして逃げるの?」
ブンッ! ブンッ!
「おまえがそんなもん振り回してるからだろ!!」
「……どうして、どうしてぇっ!!」
ブンッ! ブンッ!
「ねえっ!どうしてっ!?」「このっ!!」
圭兄ちゃんがタイミングを計って、出刃包丁を持っている私の手を掴んだ。
乱暴に振り払おうとする私の身体と、そうはさせまいと必死に抵抗する圭兄ちゃん。
力の差は歴然としてるはずなのに、何故か今の私には圭兄ちゃん並の力が漲ってた。
やっぱり今の私は私じゃない、違う誰か。
でもその正体なんて私には分からない。
- 303 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:58
-
部屋中の色んな物にぶつかりながらも、一進一退の攻防を繰り返す私と圭兄ちゃん。
さっきまでの甘々な雰囲気はなくて、そこにあるのは殺気だけ。
部屋の灯りに照れされて、研ぎ澄まされた包丁の刃先が怪しく光ってる。
「渡さない……誰にも……誰にもおっ!!」
「このっ……いい加減にしろっ!!」
「圭兄ちゃんは私の……私だけのもの……私だけのぉーっ!!」
私の意思とは関係ない絶叫に、圭兄ちゃんがテーブルに足を取られた。
その反動でお互い縺れるように床へ転がった。
天を向いていた鋭い刃先が、一瞬だけ視界から消えた時、
グチュッ
私にも圭兄ちゃんにも、何が起こったのかわかんなかった。
- 304 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:59
-
しばらく放心状態だった私。
気付いたら、視界にはちょっと眩しい灯りと、圭兄ちゃんの蒼ざめた顔。
アレ、なんだか身体がいつもみたいに動かないんだけど、どうしちゃったんだろ?
私、圭兄ちゃんとエッチしてたはずなのに、なんでこんなに寒いんだろ?
「……ま、真里? 真里っ!! しっかりしろっ!!」
ヤダなぁ……私はいつでもしっかりしてるじゃない。
圭兄ちゃんの方こそしっかりしなきゃ。
アレ、アレレ? なんだか圭兄ちゃんが見えなくなってくんだけど、なんでだろ?
「今、救急車、呼んでやるからな、絶対に死ぬんじゃないぞ!!」
死ぬ? 私が?
圭兄ちゃん、頭おかしくなっちゃったんじゃないの?
私、今まで病気らしい病気したこと無い、健康優良児だよ?
どっちかって言うと圭兄ちゃんの方が病気や怪我が多い方じゃん。
「おいっ!! しっかりしろよっ!! 何笑ってんだよっ!!」
だってさ、圭兄ちゃん、意味もなく泣いてるんだもん。
なんか鼻水出てるしさ、それにその顔、ちょっと不細工だよ?
なんか沖縄とかで見かける石の彫刻に似てるかも。
笑うなって言うほうがおかしいよ。
「結婚なんかしないっ! 結婚しないで真里とずっと一緒に暮らすよ!
ずっとずっと一緒に居る!! 傍に居るから一人にしないでくれよっ!」
ハハハ……圭兄ちゃんがそんな事言うの珍しいよね。
でも嬉しいよ、私も圭兄ちゃんの事大好きだし、愛してるから。
ずっと一緒に居るよ、居るに決まってるじゃん。
- 305 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 04:59
-
……寒いなぁ……夏が来るのになんでこんなに寒いんだろう。
それにさ、なんで私、身体動かないんだろ?
おまけに喋ろうとしても、上手く喋れないし。
あ……もしかして、コレって夢?
だから私の言葉が圭兄ちゃんに届いてないんだ。
そっか、夢かぁ……
でもなんで夢なのに、眠いのかな?
なんか物凄く眠い……。
……段々と意識が無くなってきた。
なんか…夏なのに…寒い……や。
……圭兄ちゃん……なんで、そんな、哀しそうな顔して、泣いてるの?
笑ってよ……いつもみたいにさ……
圭兄ちゃんが……私の名前…呼んで……くれ……て……る……
圭……にぃ……ち……ゃ……
- 306 名前:愛物語。2 投稿日:2005/04/12(火) 05:01
-
『愛物語。2』
〜fine〜
- 307 名前:編集後記(言い訳) 投稿日:2005/04/12(火) 05:06
-
……申し訳ないです、ホント。
今回のやすやぐは正直、無理があったとも思ってます。
と同時に、エロい描写を書く文才が無いことも分かりました。
最後辺りは友人の体験(なんでも彼女と興味本位で心霊スポットに行き、
何事もなく部屋に戻って、普通にエッチしてたら、急に彼女が怯え出したとか。
行為を止めて彼女が落ち着くのを待って聞いたところ、友人の背後に……)
をやや猟奇的にしました。
なので、半ば強引な展開で強制終了した感は拭えません。
駄文の中の駄文を読んでくださった読者の方々には、心からお詫び申し上げます。
ごめんなさい。
次作は、前の圭圭のようなソフトな感じに戻って出発したいと思います。
ちなみに、キャストは保田さん、安倍さん、高橋さんです。
(←3日放送のハロモニが妙に良かったので)
- 308 名前:お返事 投稿日:2005/04/12(火) 05:06
-
>名無飼育さん
交信し過ぎてました。ごめんなさひ。
>名無し募集中。。。さん
これで楽しめるかどうか、不安です。
>名無飼育さん
長らく待たせた上に……ごめんなさひ。
- 309 名前:愛物語。3 投稿日:2005/04/12(火) 05:07
-
( `.∀´)<愛物語。
- 310 名前:愛物語。3 投稿日:2005/04/12(火) 05:07
-
(●´ー`)<第三弾
- 311 名前:愛物語。3 投稿日:2005/04/12(火) 05:08
-
川’ー’)<お楽しみに〜
- 312 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 01:00
- お疲れ様でした
第三弾も楽しみにしてます
- 313 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/06(金) 01:23
- 更新、待ってます
- 314 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/17(火) 23:48
- 第3段まだかなぁ?
- 315 名前:sage 投稿日:2005/05/21(土) 22:01
- 多分、しばらくここは更新されないと思われます。
ここの作者さんは某板にもレスがありそこでしばらく書けないと書いてあったからです!
- 316 名前:age 投稿日:2005/05/21(土) 22:04
- とことん待ちます
- 317 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/21(土) 22:06
- ↑落とすつもりが間違えた(*_*)
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/21(土) 22:08
- 落ちてませんよ!なので落としてあげます。
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/21(土) 22:09
- 保
- 320 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/21(土) 22:13
- 待っております
- 321 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:56
-
【登場人物紹介】
(●´ー`):なっちママ。天然でおっちょこちょいけど愛くるしい笑顔が魅力的。
( `.∀´):やすパパ。冷静沈着でも恥かしがり屋で、褒められるとかなりのヘタレに。
川*’ー’):愛ちゃん。両親の良い所を授かった愛娘。意外と毒舌だとか。
( `_´):マサオくん。私情が混じる語り手。噂の彼女がいるらしい。
川‘〜‘):お隣りのいいらさん。風格漂う容姿だけど、実は尻に敷かれてる。
(〜^◇^):真里っぺママ。好奇心旺盛で笑い上戸。とっても感情表現が豊か。
川o・‐・):あさ美ちゃん。おっとりしてて、物知り。愛ちゃんのお友達。
( ^▽^)とか( ´ Д `)、从~∀~从、川VvV)もチョイ役で登場。
- 322 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:57
-
『鯉のぼり』
今日は良く晴れた5月の5日。
保田さん一家はのんびりとお家でお過ごしになっていらっしゃるようです。
圭「今年も鯉のぼりが沢山見えるなぁ」
愛「パパぁ〜、みてみてぇ」
おやおや、一人娘の愛ちゃんがなにやら鯉のぼりを穿いて(?)
人魚ならぬ人鯉になっちゃってます。
子供ならではの可愛らしい光景ですね〜。
圭「可愛いなぁ〜。よぉ〜し、パパ釣っちゃうぞ〜」
愛「キャッキャ♪♪」
アラアラ、保田さん目が垂れ下がっちゃってます。
よほど目に入れても痛くないほどなんですね〜。
- 323 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:58
-
おや?
そんなやり取りを横目で見ていた若奥様のなっちさん、
なにやらゴソゴソとやっております。
何してるんでしょうかね〜?
な「圭ちゃぁ〜ん」
圭「ん? わっ!! なっちゃんまで……」
愛「わぁ〜、ママ、おっき〜」
……どうやら愛ちゃんの真似をしているようですが、
第3者の私から見てもちょっと……ですよ、なっちさん。
な「なっちも釣ってぇ〜」
圭「……いいけど、でも」
な「???」
圭「……なんかマグロの一本釣りみたい」
愛「おいしそ〜だね」
な「(シクシク)」
ホラ、やっぱり言われちゃいましたね。
さり気なく毒吐く保田さんと無邪気な感想を言う愛ちゃん、良いコンビです。
負けるな、なっちさん!!
- 324 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:58
-
『母の日』
今日は母の日です。
保田さんのお宅ではどうするんでしょうか?
圭「今晩の夕飯は二人で作ろうか」
愛「うん」
日頃の感謝を込めて、お料理でおもてなしですか。
心がこもってて、なっちさん羨ましい限りです。
圭「まずは下ごしらえとして玉葱を切る」
愛「はぁ〜い」
トントントン…
順調に進んでるようですね〜。
でも、玉葱は気をつけないと……
圭「……っ〜」
愛「……」
圭「……目ぇ、痛い……」
そうですよね、痛いですよね、泣けてきちゃいますよね。
そうならない工夫として、1分ぐらいレンジで温めるといいらしいですよ。
おや?
何処からともなく音楽が流れて来ましたけど、何でしょうね?
しかもなんだか、妙に淋しい雰囲気が……。
圭「……ううっ……」
愛「……ぐずっ……」
圭「……」
愛「……ひぃ〜ん」
- 325 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:59
-
アラアラ、愛ちゃんが泣き出してしまいました。
一体全体、どうしちゃったんでしょう?
圭「……もう我慢できない。ちょっとなっちゃん!!」
な「え、何?」
圭「中島み○きの曲、流さない!!」
な「いやぁ〜、やることないし、一人だと心細くて」
圭「だからって『家○き子』のテーマ曲かけるなっ!!」
ダ、ダメですよ、なっちさん、その曲は。
ただでさえもの哀しいのに、そんなことしたら……
愛「びえ〜んっ!!」
あ〜あ〜、愛ちゃん号泣ですよ。
折角の母の日のプレゼントを、自ら台無しにしちゃって……。
知りませんよ、どうなっても。
圭「ごめんごめん、もう泣かない、よしよし」
な「ゴメンね、愛ちゃん(ナデナデ)」
愛「うぅ……ぐずっ……」
圭「……なっちゃん、今夜の晩御飯は抜き」
な「えーっ!? 今日は母の日なのにぃ……」
ホラ、言わんこっちゃない。
自業自得ですよ、なっちさん。
- 326 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 21:59
-
『戦場』
な&愛「「……」」
?「……」
ど、どうしたんでしょう。
今日はいつもとは様子が違うようですが……。
な「……」
愛「……ママぁ」
な「……ダメ、今動いちゃ」
?「……」
なにやら二人共ジッと堪えてるようですね〜。
一体何があったんでしょうか?
愛「……もうたえられないよぉ〜」
な「頑張って!」
頑張ると言っても運動をしているわけでもないですし、
かと言ってなにかを作っているわけでもなさそうですし……。
愛「……もぉ……ダメ…」
な「アアっ、愛ちゃん!?」
ああっ!!
遂に愛ちゃんが降参し……。
- 327 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:00
-
シュウウーッ
愛「パパァ!!」
おおっ!!
娘の危機を救ったのは保田パパです!!
しかも何やら手にはスプレーを持ってますけど、
でも保田さんは至って呆れたご様子です。
さてさて、事の真相はいかに?
圭「ゴキブリごときに何してんの?」
な「だってなっちたちが動くと動くんだもん」
圭「そりゃ生き物だもん、動くに決まってるよ」
な「だってなっちたちの方に寄って来るんだもん」
圭「そりゃあ、ゴキブリホイ○イが二人の後ろにあるんだもん」
な「あっ……」
……という訳だったんですね。
皆さんも気をつけましょう。
(私は小さい頃、ゴキブリをカブトムシの牝と間違えた事がありました)
圭「……間違えるか、普通?(ボソっ)」
う゛っ……
- 328 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:00
-
『DASH』
梅雨入り前のポカポカ陽気の日曜日。
愛ちゃんは鼻歌を唄いながらお絵かきに夢中みたいです。
バンッ!!ドタドタドタ!!
オットット、隣りのお部屋からなっちさんが血相変えて飛び出てきました。
なにやら額にはびっしょりと汗なんか掻いてます。
どうしたんでしょう?
愛「あれぇ、ママ、どうしたの?」
な「……なんでもない」
愛「でもぉ、かおあおいし、パパとケンカでもしたの〜?」
な「ちがう」
一生懸命否定してますけど、なっちさん、随分と顔が青いですよ?
愛ちゃんが心配するのも分かります。
愛「これいじょうきかないほうがいいのかなぁ?」
な「ウン、聞かないで」
愛(ん〜、ママ、どうしたんだろ?)
な(言えないよ…コワイ夢見て、飛び起きて、気を紛らわそうとしてテレビつけたら、
心霊番組やってて、マジで怖くなって飛び出てきたなんて……)
そりゃあ、言うに言えないですね〜、ましてや子供の前では尚更に。
でも、なっちさんも意外と子供なんですね〜。
- 329 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:00
-
ガチャッ
圭「どうした…」
な「ぎゃぁーっ!!! でたぁーっ、ば、化け物−っ!!」
圭「!!!」
愛「わっ!」
うわっ、なっちさん、危ない、アブナイってば!!
そこいら辺のもの投げちゃダメだって。
いくら保田さんがシェービングジェル付けて出てきたからって、
そこまで驚かなくてもいいのに。
そんな態度取ったら……。
圭「(シクシク)」
愛「あ〜あ、パパ、いじけちゃったよぉ〜」
……保田さん、ドンマイっ!
- 330 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:01
-
『ジューンブライド』
本日はお隣りのいいらさん宅にお邪魔しているなっちさんと愛ちゃん。
家族ぐるみのお付き合いができる環境って中々無いですから、貴重ですね。
さてさて、今日の話題はなんなんでしょ?
な「六月は何も行事がなくてつまんないね」
里「あるじゃん、一つ」
な「何?」
里「ジューンブライド、六月の花嫁! やっぱり女の憧れでしょ。オイラは違かったけど」
「いいなぁ〜」を連発する真里っぺさん。
でも、私からすれば、誕生日に結婚式を挙げた真里っぺさんが
物凄く羨ましい気がするんですが……。
人それぞれ価値観が違うんですね〜。
あ「ママ、こわいはなししちゃダメだよぉ」
な&里「「怖い話?」」
あ「うん。だってパパがこわいことばだって…」
里「あぁ……そりゃ……父親にとってはね」
な「泣いちゃう人もいるくらいだしね」
愛(そうなんだ……。あとでパパにもきいてみよっと)
世のお父様方には、耐えがたい時ですもんね。
- 331 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:01
-
その日の夜、早速愛ちゃんは保田さんに尋ねました。
保田パパも愛ちゃんがお嫁に行くとき、どうなるんでしょうね〜?
愛「ねえ、パパ。じゅーんぶらいどってこわいの〜?」
圭「ジューンブライド? なんで?」
愛「だってね、あさ美ちゃんのパパが、こわいことばだって」
圭「ん〜、まあ、怖い人もいるけど、パパは嬉しいかな」
愛「なんでぇ?」
圭「それはね、パパとママが結婚したのが6月だったから」
愛「そうなの?」
傍で洗濯物をたたんでいるなっちさんが小さく微笑んでます。
満更でもないご様子です。
な「ちょうど、梅雨の中休みで晴れてくれたんだよね」
圭「そうそう。6月に結婚した花嫁さんは幸せになれるって言われてるんだよ。
愛はパパたち見てて、幸せそう見えないかい?」
愛「みえるよぉ。だってママ、ニコニコしてるもん」
な「もぉ……愛ちゃんたらぁ……」
圭「そういうことなんだよ」
良いっ!! 実に理想的な家庭ですっ!!
こういった家庭がこれからも増えると良いですね〜。
私は……微妙、かな。
- 332 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:02
-
『乙女の悩み』
この季節、毎日毎日雨ばかりでイヤですね〜。
オヤオヤ、何やら愛ちゃんが浮かない顔をして両親の元へ。
どうしたんでしょうか?
愛「……うぅ……(どよ〜ん)」
圭「どうしたの?」
愛「パパ……っ(ポロっ)」
圭「うわっ、あ、愛!?」
な「どどどうしたんだべ?」
普段、あまり泣かない愛ちゃんが泣いてしまいました。
なもんだから、保田さんもなっちさんも大慌て。
愛ちゃん、一体何があったんでしょう?
愛「ふ、ふとったこはキライ?」
な「へ?」
圭「ど、どうして?」
愛「わたし、すごくふとってぇ……」
圭&な(ゴクリっ)
愛「きょねんのおようふくがはいらないの〜(うぇ〜ん)」
な(なんだ、そんな事か……ホッ)
ホッと胸を撫で下ろしたなっちさん。
いやぁ〜、第3者の私でさえもちょこっと安心です。
それにしても女の子らしい悩みですね〜。
私も昔は……オットット、私の事なんかいいんですよ。
- 333 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:02
-
圭「それは愛がおっきくなったからだって」
愛「ほんとぉ?」
圭「そうだよ。愛もいずれママみたいに女らしくなってくんだよ」
流石は保田さん!
いかに人を傷つけず、サラッと慰めの言葉が出てくるところが大人ですね〜。
私もアイツに言ってやりたいっスね〜(遠い目)
……あ、またまたスイマセン。
私の事なんかホント、どうでもいいんです。
な「早く愛ちゃんもおっきくなるべさ」
愛「……それもヤ」
な「ええっ!?」
圭「なんでだい?」
なんと!?
愛ちゃん、この年でもう反抗期でしょうか?
手塩にかけて育ててきたお二人の目が点になってます!
愛「だってママのおなか、プニプニなんだもん」
な(ドキッ!)
圭(……リバウンドしちゃったんだね)
……。
愛ちゃん、違った意味で反抗期ですね。
- 334 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:03
-
『色とりどり』
あ゛〜、鬱陶しいですね〜、この雨。
洗濯物が乾かないし、部屋の中ジメっとするし。
こう思ってるのは私だけじゃないはずです。
ねえ、なっちさん。
な「雨ばっかりでイヤだねぇ」
愛「♪♪」
な「春は色とりどりの草花が綺麗で、気分も良かったのに」
どんよりとした空模様を見つめながら愚痴るなっちさんを他所に、
愛ちゃんは何やら楽しそうです。
な「はぁ〜、早く綺麗な青空が見たいよぉ……」
愛「こっちもきれいだよ〜♪♪」
な「ん?」
ハテ?
綺麗な物とはなんなんでしょうね?
まあ、愛ちゃん自身は綺麗というより可愛いが似合ってますけど。
- 335 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:03
-
愛「ほらぁ〜」
な「わぁーっ!! それ、触っちゃダメぇーっ!!」
愛「え〜、でもきれーだよぉ?」
な「きれいじゃなくない!!」
なっちさん、日本語変ですよ。
それにしても、カビの生えた食べ物が綺麗だなんて……。
確かに彩りや模様が愛ちゃんぐらいのお子さんにして見れば、そう見えなくも無いですけど。
圭「早く捨てないから……」
な「うっかりしちゃったべ」
愛「あ〜ママ〜、すてちゃダメぇ〜」
なっちさんのエプロンを引っ張って抵抗してます。
愛ちゃん、カビの生えた食べ物が気に入ったみたいです。
な「なんで?」
愛「せっかくおえかきしてたのに〜」
圭「……愛、もうちょっとマシなものにしなさい」
……愛ちゃん、ひょっとしたら将来物凄い芸術家になるかもしれません。
- 336 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:04
-
『遅っ!!』
やっと梅雨が明けました。
これから開放的な夏本番です!
さてさて、保田さんのお宅では……
アラアラ、かなりダレちゃってますね〜。
圭「梅雨が空けてから暑くなったなぁ」
愛「うん(ぐて〜)」
圭「もう夏だなぁ……(あちぃ〜)」
愛「そうだね〜(だら〜)」
圭「夏、どっか行きたい?」
愛「えっと、んっと〜」
本来ならば微笑ましいところなんですけど、この状況下でこういう親子の会話、
なんとなく気持ちいいものではないですねぇ〜。
おっと、そこへ洗濯物抱えたなっちさんがあることに気付いたみたいです。
実は私、敢えて言わなかったんですけども……。
な「あっ!! 炬燵もうしまわなくちゃ」
愛「!!!」
圭「うわあっ、そーいえば!?」
- 337 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:04
-
そうなんです。
なんとこの時期に炬燵が出しっぱなしなんですよ!!
そりゃ、ダレますって、誰だって。
あ……今のダジャレじゃないですよ?
な「あっ、でもそのままでいっか」
圭「え、なんで?」
私も保田さんと同意見です。
何故、そのままでいいんですか、このクソ暑い中で???
いくら暑いのがお嫌いななっちさんでも、この暑さじゃどうしようもないでしょうに。
な「この暑い時期に炬燵ダイエットなんていいかなって思って」
圭「炬燵!?」
愛「ダイエット!?」
な「ダメかい?」
圭&愛「「絶対反対っ!!」」
……つくづく思いました。
自分がこの家の人じゃなくてホント良かったな、って……。
お二人とも、ご愁傷様です(チィーン)
- 338 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:05
-
『気をつけます』
夏です……海に行ったら必ず叫びたくなるとです……夏です……。
うおっ! 私とした事が某芸人さんのネタをパクッてしまいました。
ゴメリンコ(古っ)
さてさて、今日の保田家は何やら楽しそうですね〜。
な「新しい水着買おっか?」
愛「わーい」
な「どういうのがいい?」
おおっ、いいですね〜。
水着はもはや夏ファッションとも言っても良いくらい、大事ですからね。
さてさて愛ちゃんはどういったのを好むんでしょうか。
まだ幼いですからね〜。
愛「ん〜と、こうね、うえとしたがわかれたの」
な「あ、ビキニね。愛ちゃん、大胆だね〜」
お〜、大人顔負けの大胆さでアピールとは、侮れません。
将来きっといい女になることでしょう。
イヤァ〜、最近のお子様は進んでます。
愛「えへへ♪♪ パパ、そういうのがすきだからぁ」
ズゴン!! ドン、ガラ、ガッシャーン!!
圭「ちょ、あ、愛、何を……(焦)」
愛「だってぇ、パパがママのしゃしん、いっぱいもってたんだもん」
ハハ……そういうことでしたか。
愛ちゃんにしてはちょっと過激かな〜と思ってたんですよ。
- 339 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:05
-
オヤオヤ、愛ちゃん、何やら持ってきましたよ。
どれどれ……。
な「なっ!? 何処にあったの、それっ!」
愛「パパのつくえのなかにあったぁ〜」
圭「ヤバっ……」
な「いやぁー、やめてよっ!! 圭ちゃん、なんでそんなの持ってるのさ!? もう恥かしいんだから!」
圭「いや、だって……」
な「圭ちゃんのばかぁーっ!!」
バチィーンッ!!
うおーっ!!
こ、これは、ヤバイ、ヤバイですよぉーっ!!!
こんなの世間の人様には見せれないし、ある種犯罪です!!
こんなの撮りたくなる気持ち分からなくもないですけども……(ボソッ)
で、でも、保田さん、これだけはやっちゃいマズイですって!!
愛「あとね〜、おっぱいほしい。おっきいの」
な「それは売ってませんっ!!」
圭「売ってはないけど、でも大きくする方法は知って……」
な「けぇちゃぁんっ!!(ギューッ)」
圭「イダイ、イダイっ!!」
愛「???」
あ〜あ、可哀相に保田さん、袋叩きです。
でも、正当な仕打ちかもしれませんね。
だってねぇ……。
- 340 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:06
-
『HAND』
夕食の買い出しに出かけたなっちさんと愛ちゃん。
帰り道、アーケードの一角に何やら良いものを見つけたようです。
な「あ、孫の手だ」
愛「かわい〜」
な「ひとつ買っていこうかね」
斬新なデザインと懐かしさから一個買ってしまいました。
さっそくお仕事帰りの保田さんが使っています。
どうですか、感触は?
圭「ん〜、イマイチだなぁ(トントン)」
愛「やっぱりママのてがいちばんだねっ」
圭「そうだね」
な「ヤダァ〜、もぉ〜、上手なんだからぁ」
圭「またまたご謙遜を」
アラアラなっちさん、顔赤くなっちゃってます。
やっぱり疲れを吹き飛ばすのは、妻の愛情が一番なんでしょうね。
うらやまし〜。
- 341 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:06
-
な「でも、なっちは猫の手が欲しいな」
圭「なんで?」
な「……」
ハテ、なんでしょう?
なっちさん、キッチンからジッと保田さんを見つめてます。
手には餃子の皮と、ボールを持ってますね。
ひょっとして……
圭「あっ……」
な「判ってくれた?」
圭「お手伝いします」
愛「わたしも〜」
夫婦円満の秘訣は、持ちつ持たれつ、といったところでしょうか。
ア〜、とことん羨ましぃ〜。
- 342 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:07
-
『KISS』
今日も後2時間ほどでお終いです。
保田さんは皆でドラマをゆったりと見てます。
おや?
その横では、愛ちゃんがキスシーンを何やら真剣な眼差しで見つめてます。
愛「……(ポッポッポッ)」
圭(純だなぁ……って言っても愛にはまだ早いか)
そうですね、いってもまだ幼稚園児ですから。
これでキスだとか愛してるとかいった言葉を知ってたら、それこそ将来末恐ろしいですよ。
そうこうするうちに愛ちゃん、何やら一人演技を始めちゃいました。
愛「んっ」
圭(???)
愛「……ちがう、こうかな、んっ〜」
圭(なぬっ! キスの練習してたのか!?)
おおっ!
これはなんという早熟さかっ!!
この年でキスの仕方を会得しようとは、愛ちゃん恐るべしっ!!
- 343 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:07
-
な「何してるの、愛ちゃん?」
愛「んとね〜、ちゅ〜のれんしゅ〜」
な「そういう時はね……」
圭(オイオイ、まだ幼いのに何教えてんだか)
そうですよ。
もっと他に教えるべき事は一杯あるでしょう、なっちさん!!
しかも教え方が妙にリアルで、エロいんですけど……。
な「……なの、わかった?」
愛「ん〜、わかんなぁ〜い」
な「あれま、まだ愛ちゃんには早かったかね」
圭(そりゃあ、早いだろ。まだ幼稚園生なんだし)
愛「ううん。そうじゃなくてぇ、ママがキモかったからわかんなかったぁ」
圭「ブハッ!!」
な「(シクシク)」
こ、この結果は、笑っていいのか、泣いて、良いのか……。
実の親に向かって「キモイ」と言える愛ちゃんが素晴らしいです。
なっちさん、めげるなっ!!
- 344 名前:お返事 投稿日:2005/07/02(土) 22:08
-
長らくお待たせしました。
今年もまた安倍さんのコンサートにやすらさんが帯同しているという事で
やすなち、解禁いたしまひた。(高橋さんは私的に気に掛かる存在なもので……)
が、あっちの板じゃ、当分やすなちは出てこないんで、
ここで思う存分、発散したいと思いまして、やってみましたけども……。
まあ、こんな感じでほのぼの、マッタリとやっていく予定です。
よろしければお付き合いください。
>312〜320の名無し飼育さんたちへ
お待たせ致しました。
またよろしこ。
- 345 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:10
-
(●´ー`)<隠すよ〜
- 346 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:10
-
( `.∀´)<もう1回
- 347 名前:愛物語。3 投稿日:2005/07/02(土) 22:11
-
川*’ー’)<もう1回おまけ
- 348 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/03(日) 15:19
- 作者さんのスレってどこですか?
- 349 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:46
-
『ヒ・ミ・ツ』
今日はお隣りの真里っぺさんとお買い物に行ったなっちさん。
近くの公園で子育て談義に花を咲かせてます。
でもお二人とも、そろそろ旦那さんが帰って来る時間ですよ?
な「あ、そろそろ帰らないとね。あれ? 愛ちゃんたちは?」
里「あちゃー、話に夢中になっててすっかり忘れてた。お〜い」
真里っぺさんの呼びかけに反応無しです。
時間も時間だし、早く見つけないと、どっかの変質者に愛娘を狙われちゃいますよ?
そこへ、仲良く帰ってきたいいらさんと保田さん。
お二人とも同じ会社の同僚らしいです。
暑い中、お仕事お疲れ様です。
織「あれ、なにしてんの? こんなトコで」
里「あ、おかえり。ねえ、二人どこ行ったか知らない?」
織「さあ? 今帰ってきたばっかりだから。圭ちゃん、知ってる?」
圭「ん〜、あ、たぶん秘密基地じゃないの?」
織「あ〜、そうだね、うん、きっとそうだと思う」
アリャリャ、普段一緒にいる時間の短いパパの方が知っているとは……。
お二人共、しっかりしないといけませんよ。
里「なんだよぉ、知ってんじゃんか」
圭「イヤ、秘密だからわかんないんだってば」
な「あ、そうか」
- 350 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:47
-
お子さんにとって初めての先生は、お母さんといわれています。
その先生が自分の愛娘の言動を知らないとは、ちょっと問題ですよ、お2人とも。
子供の秘密ぐらいは見抜けないと……。
織「そう! 秘密は人に知られないから秘密というんであって、バレるまでは……」
圭(あ、バカ……)
里「……なんか疚しい事隠してるでしょ?」
織「ギクッ!!」
圭(……ご愁傷様)
いいらさん、根っからの正直者なんですね……。
尻に敷かれっぱなしというのもわかる気がします。
怒ると怖そうですもんね、真里っぺママは(ボソッ)
里「(ギロリッ)」
ヒィ〜ッ(ブルブル、ガクガク)
- 351 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:48
-
『口は災いの元』
折角の日曜日、雨でお外に出られません。
なので保田さん家では、みんなでトランプをしてます。
こういうコミュニケーションはとても大切ですよ、世の中の皆さん。
圭「久し振りだよ、神経衰弱なんて」
な「1回やると結構時間掛かるしね」
愛「でもたのしいよぉ?」
な「そうだね。結構熱中しちゃうし」
そうなんですよね。
一見ダルそうなゲームほど、やると熱中しちゃうものです。
世の中上手い具合にできてますね。ホントに。
圭「でも、昔“真剣衰弱”って勘違いしてたよ」
な「真剣衰弱?」
圭「そっ、うろ覚えだったから」
な「でもさ、今はなっちを真剣に愛し過ぎて衰弱しそうでしょ?(ニコッ)」
圭「かもね。愛もいるし、願ったり叶ったりだよ」
愛「へへ〜(ポッ)」
カァーッ、なぁ〜にを言ってるんでしょうか、この若奥さんは。
しかもそれに対して保田さん、平然と答え返してるし。
ケッ、やってられませんよ、全く。
唾吐いちゃえ、ペッペッ
- 352 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:49
-
次の日、なっちさんたちは一家でデパートへやって来ました。
色々あって目移りしちゃうんですよね〜、こういう所って。
オヤオヤ、保田さん、物凄く困っちゃってます。
どうしたんで、あっ!!
もしかして昨日の“アレ”が原因じゃ……
な「なっちを愛してるなら、これ買って」
圭(は、嵌められた……財布が、衰弱しそう……)
愛「パパぁ、これほし〜」
圭(うぅっ……愛まで……)
な「幸せなんだから、これも家族の為に買って」
圭(……もぉ、イヤ)
……。
保田さん、自業自得ですよ(フッ)
- 353 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:49
-
『却って損したかも?』
午後3時、おやつの時間です。
なにやらなっちさんと愛ちゃんがキッチン内を動き回ってます。
今日のおやつは結構大掛かりなもののようですね。
圭「へぇ〜、手作りケーキかぁ」
愛「ママとふたりでつくったんだよ〜」
な「上手くできてるといいんだけど」
いいですね〜。
親子でお菓子造りなんて、幸せ家族の見本ともいえる光景です。
さてさて、そのお味はいかがですか、保田さん?
圭「(パクッ)……うん、美味いっ!」
愛「ホント!?」
な「良かったね」
愛「うんっ!!」
圭「これならそこいらの店で売ってるケーキにも負けないなぁ」
愛「えへへ♪♪」
圭「何よりも自家製だから安上がりだし、店だとショートケーキ一個で350円もするからなぁ……」
な「……」
確かにケーキって小さい割りに高いんですよね〜。
カロリーも高いし、値段も高いし、良いこと一つも無いのに
どうして世の女性は好きなんでしょうかね〜、不思議です。
- 354 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:50
-
大好きなパパからお褒めの言葉を貰った愛ちゃんは、ニコニコ顔です。
アレ? なんだかなっちさんの顔は対照的に浮かない表情ですねぇ。
一体、どうしたんでしょう?
な「当分の間、お家で作らないと……(ヒソヒソ)」
愛「これ、たかかったもんね(ボソッ)」
な「シィーっ!」
−ケーキ作りの道具一式、2万円−
……なるほど、一回ぐらいじゃ、元取れないっすもんね。
でも、お菓子造りが上手になるから、良いんじゃないですか?
愛する人に食べてもらえるし、親子の絆も深まりますし、結果オーライということで。
な「太ったらどうすんのさ?」
……さ、さあ?(焦)
- 355 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:51
-
『良薬は口に苦し?』
今日は珍しく有給休暇を取った保田さん。
朝からどこかへ出かけてたらしく、何やら溜息交じりに帰ってきました。
アレレ、何やらとても深刻そうです。
な「圭ちゃん、どうだったの?」
圭「う〜ん」
愛「パパ、どこいってきたの〜?」
圭「お医者さんに行ってきたんだよ」
オヤオヤ、この若さでお医者さんにかかるとは、ちょっと心配ですねぇ。
若い人によくある「3大成人病」にでもかかっていたら大変です。
な「で、やっぱり夏バテ?」
圭「ん? ん〜」
愛「だいじょうぶぅ?」
な「最近暑くなってきたからね、ただの疲れだといいのに」
圭「ん、まぁ……そのぉ……」
若いとはいえ、この暑さと連日の寝苦しさから身体を壊してしまったんでしょうね。
こういう時こそ早め早めの治療は必要なんです。
皆さんも、肝に銘じておきましょう。
- 356 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:51
-
な「お薬貰ってきたの?」
圭「……一応は、ね(コトン)」
そうです、こういう時こそちゃんとした処方箋を飲んで一刻も早、え?
や、保田さん、それって……。
な「ああっ!! 圭ちゃんだけズルいっしょ」
愛「パパ、ズル〜い」
圭「いやぁ〜、夏バテには一番のお薬だと思って……」
なんと、差し出したのはうなぎ屋さんのマッチ。
……つまり、保田さんの病名は「夏バテ」というわけでした。(チャンチャン)
あ〜、うな重食べてぇ〜
な「なっちも食べたぁ〜い(ジィー)」
愛「わたしも〜(ジィー)」
圭「うっ……あぁ……お、おごります」
な&愛「「イェーイッ!!」」
……やはり食べ物の恨みって怖いんですね。
- 357 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:52
-
『アルコール』
今日もお仕事が終わって保田さんは一杯やってます。
やっぱり仕事帰りの一杯はまた格別なんでしょうね〜。
ア〜、私も飲みたくなってきました。(ゴクリッ)
圭「(ゴキュ、ゴキュ……)プハァ〜、美味いっ!!」
愛「おいしいそうだね」
な「美味しいわけないっしょ、そんなの」
愛「そうなの?」
圭「違うよ、ママは飲むと酔っ払っちゃうからああ言ってるだけ」
な「うっ……」
アラアラ、なっちさん、痛いところ突かれちゃいましたね〜。
保田さん、ニヤニヤしてます、愛ちゃんまでも……ん?
愛ちゃんまで???
愛「ママのよったところみたぁ〜い」
な「え゛っ」
うおっ!!
こういう時、子供は強いんですよね。
圭「だって。ハイ、一杯どうぞ」
な「い、いいよぉ……」
圭「我が子のお願いぐらい聞いてあげたら?」
愛(ワクワク♪♪)
な「……ちょっとだけ…だからね」
- 358 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:52
-
なっちさんも流石に愛ちゃんのお願いを聞かぬわけにはいかなかったようです。
恐る恐るそれを近づけて、目を瞑って……
−クイッ−
さあ、どうなるんでしょう?
暴れるんでしょうかね? それとも脱ぎ出すとか?
私も第3者ながら、なんだか興味が出てきましたよ。
な「……」
圭「……そろそろ、かな」
愛(ワクワク♪♪)
愛ちゃん、目がランランとしています。
おや? 始まったようですよ。
な「……ん……からぁ……」
圭「始まった」
愛「ママぁ?」
な「……なっちはぁ、ホントにぃ、幸せなんだよぉ……圭ちゃんはぁ、
ずっと愛してくれてるしぃ、ずっと守ってくれるしぃ、なっちの事見つめてくれるしぃ、
愛ちゃんはぁ、なっちの言うことぉ、ちゃんと聞いてくれるしぃ、可愛いしぃ、
ホントにぃ、なっちは圭ちゃんとぉ、出会ってぇ、結婚してぇ、最高にぃ、良かったしぃ、
愛ちゃんを産んでぇ、ホントにぃ、ホントにね、よかったのぉ……」
- 359 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:53
-
圭「……わ、わかったかい?」
愛「……なんかはずかしい」
圭「だね」
な「ウニュぅ〜、なっち、幸せぇ……エヘ、エヘへ……」
あ、あの、関係ない私までもが、その、恥かしかったです、ハイ。(ポッ)
今も保田さんにしな垂れ掛かって、愛ちゃん並の幼い寝顔を見せちゃってますし。
こんなこと、シラフで言われたら、もっと恥かしいんじゃないかと思いますが、
いかがでしょうかね、保田さん?
「……(ボッ!)」
アリャリャ、保田さん、茹でダコになっちゃいました。
熱中症には気をつけて。
- 360 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:53
-
『アプローチ』
今夜は皆で映画鑑賞ですか。
どうやらラブロマンスものみたいで、なっちさんの目が輝いちゃってます。
結構世界に入り込んじゃうタイプなんですね。
でも、こんな暑苦しい時に、何でまた顔が赤くなるような恋愛ものなんでしょうか?
な「いいなぁ〜、出会ったその日にプロポーズなんて、最高だよ」
圭(なっちゃんてこんなロマンチストだったっけ?)
な「圭ちゃんは中々してくんなかったよね」
圭「そ、そういうのは、恥かしい、から……さ」
な「期待してたのになぁ〜」
なっちさん、理想と現実は違うものです。
余りに期待し過ぎると後から却って凹みますよ?
って言っても、この一家にはそんな言葉なんて無意味でしょうけど。
圭「で、でもさ、その代わりにアプローチはバッチリだったでしょ?」
な「そうだっけ?(ホントは覚えてるけど)」
圭「覚えてないのか……哀しいなぁ」
アラアラ、それは旦那としてはこの上なく哀しい事です。
わかる! わかりますよ、保田さんっ!!
私もね、一生分の勇気振り絞って告ったのに、アイツときたら「知らない」の一点張りですよ!
ったく、なんで覚えてねえんだよ、あんだけ頑張ったのに……クソっ!!
……ハッ!!
私とした事が……あ、あの、い、今の、無しで、ね、ね?
- 361 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:53
-
愛「なんでかなしいの〜?」
圭「それはね、ママはパパの事嫌いなんだって(ペコーン)」
愛「え〜、そうなの!?(ウルッ)」
な「な、何言ってるベ! そんな事ないっしょ!!(焦)」
なっちさん、急に顔色が悪くなりました。
何か疚しい事があるんでしょうか?
圭「はぁ……真冬の公園で勇気出してなっちゃんを後ろから優しく抱きしめて、
『こうやって一生、安倍さんを守っても良いですか』って言ったのに……。
あの時なっちゃんは顔を真っ赤にして可愛く頷いてくれたのに……」
な「ちょっ……(カァーッ)」
愛「わぁ〜、パパカッコイイ〜」
か、カッケーっ!!
私、保田さんに弟子入りしよっかな。
んでもって再度アイツに言ってみよう、うん、そうしよう。
圭「そうかい? あ〜あ、あの時の照れた顔が一番好きだったのになぁ……残念だなぁ(チラッ)」
な「……なっち、忘れてないもん(プクッ)」
圭「でも、そうやってふくれた顔も好きだけどね」
な「……もぉっ、圭ちゃんのバカぁ……(ポッ)」
愛「あっ、ママかわい〜」
圭「そっ、愛のママは可愛いんだよ」
な「……(カァーッ)」
くはぁーっ!! 最高だァーっ!!
保田さん、貴方をこれから師匠と呼ばせてください、いやそう呼びます、師匠っ!!
私にも、女心をくすぐる台詞、レクチャーしてくださいっ!!
- 362 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:54
-
『種明し』
家事を終えたなっちさん、愛ちゃんと一緒に推理ものの映画を見ているようです。
でもね、こういう時に限ってお邪魔虫が……。
圭「あ、その映画、観たことあるよ(ニヤニヤ)」
な「ああっ!! 絶対に犯人言っちゃダメだよ?」
圭「五千円くれたらね(ニヤリ)」
な「た、高い。五百円」
圭「じゃあ四千円で」
な「ダメダメ、千円まで」
いるんですよね〜、こういうヤな人って何処にでも。
私も以前同じ目に遭った記憶がありましてね……。
でも、なっちさん、映画観なくていいんですか?
圭「二千円!」
な「千五百円!」
圭「千八百!」
まだ続いてますけど、映画もう佳境ですよ?
いい加減に打ち切らないと……。
ホラホラ、見かねた愛ちゃんが助け舟を。
愛「ねえ、ママぁ」
な「これ以上は上が、ん? なんだい?」
愛「…えいが、おわっちゃったよ?」
な「え? あ゛ーっ!?」
ホラ、いわんこっちゃない。
この映画、DVDの発売はまだ先ですから、それまで犯人が判らずじまいで悶々とするでしょうね〜。
可哀相に。
- 363 名前:愛物語。3 投稿日:2005/08/03(水) 21:54
-
−翌日−
オヤオヤ、今度は保田さんが推理小説を読んでます。
相変わらず読書が似合う大人ですね〜。
そこへ昨日の仕返しとばかりにしたり顔のなっちさん、復讐開始です。
な「へへ〜。なっち、その小説の犯人知ってるんだ〜」
圭「へ〜、で?」
な「言っちゃおっかな〜、それともやめとこっかな〜?(ルンルン)」
圭「○○が犯人でしょ?」
な「ええっ!? なんで知ってんの!?」
圭「一回読んだから」
な「読んだのに、なんでもう一回読んでるの?」
圭「この小説、犯人が誰って事よりもトリックが面白いからね、何度読んでも飽きないの」
な(くそぉ〜)
保田さんの方が一枚上手でした。
やはり、デキル人は違います。
- 364 名前:お返事 投稿日:2005/08/03(水) 21:54
-
>名無し飼育さん
申し訳ございません。
それをお教えすると、向こうでココを隠している意味が無くなってしまうので
どうか自力でお探し下さい。
- 365 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/03(水) 21:55
-
( `.∀´)<いつものように隠しますよ〜
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/03(水) 21:56
-
(●´ー`)<は〜い、居ない居ない〜
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/03(水) 21:57
-
川*’ー’)<バァ〜
- 368 名前:名無し読者。 投稿日:2005/11/10(木) 06:07
- 保田さん一家、ほのぼのしていていいですねー
続きも期待しています。
- 369 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:07
-
『月とスッポン?』
仲良く夕飯を終えて一家団欒の保田さん宅。
なっちさんと愛ちゃんはテレビ鑑賞、保田さんは新聞を乱読中です。
TVはどうやら特集でスッポンを取り上げていますね。
これが意外と効くんですよね〜。
え? 何に効くかって?
それはねぇ……品行方正な私の口からはとても言えません。
愛「ねえ、ママぁ。すっぽんてなあにぃ?」
な「ん? 食べるとね、ものすごぉ〜く元気になるの。全身ハッスルハッスル!!になるんだよ」
なっちさん、御子さんの前であの独特のポーズをやってます。
なんかものすごくイヤらしく見えたのは私だけでしょうか?
どうやらチラ見で保田さんが見ていたようです。
圭「余計なこと教えなくていいのに……」
な「余計なことって何ぃ?(ニヤニヤ)」
圭「な、何を言わせようと……」
な「え〜、知りたいなぁ〜」
妙に保田さんに絡むなっちさん。
離そうとする保田さんにしがみついちゃってます。
お酒でも飲んでるんでしょうかね?
今日のなっちさん、なんだかエッチです。
- 370 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:08
-
圭「は、、離れなさいって!」
な「秘技、『スッポンの術』!」
圭「なんだ、それ!?」
な「必殺技っ!!」
愛「あ〜、あいもやる〜(ガシッ)」
不思議そうに見ていた愛ちゃんも興味を持ったご様子。
両手に華状態の保田さん、顔真っ赤です。
圭「ちょ、こら、やめなさいってば(ポッ)」
な「へへ〜、テレ屋さんなんだから〜」
愛「パパ、かおまっか〜」
圭「あ゛〜、もおっ!!」
こういう家庭、見習いたいですね〜。
仲睦まじい部分だけですけど。
- 371 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:09
-
『迷子の迷子の子猫ちゃん?』
3連休を利用して遊園地に来た保田さん一家。
でもこういう時に限って何かやらかしてくれるのがこの一家なんです。
ほらね、やっぱり……。
な「圭ちゃぁ〜ん?」
愛「パパぁ〜」
どうやら保田さんだけ逸れちゃったようです。
あの人らしいというかなんと言うか。
な「あ〜、も〜、圭ちゃんどこ行ったんだろ?」
愛「ママぁ、まいごになったときにいくあそこにいこぉ」
な「そうだね、そこで捜してもらおうね」
その頃、保田さんはというと……
圭「どこ行ったんだろ、二人とも」
予想通りといったところでしょうか。
- 372 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:11
-
♪〜ピンポンパンポ〜ン〜♪
アナ『お呼び出しいたします。東京都からお越しの保田圭様、
とっても可愛らしくって笑顔が素敵なお二人の娘様が、
悲痛な想いでお父様をお待ちになっていらっしゃいます。
至急園内の総合案内までお越しください。繰り返し……』
圭(ええっ!! 二人の娘!? もしかして……)
なんか嫌な予感がしますね〜。
こう言っちゃ何ですけど、なっちさん童顔ですからねぇ。
そうこうしているうちに案内所へ行ってみると……。
圭(オイオイ、マジで!? 恥ずかしくて迎えにいけないじゃんか!!)
グハッ!!
なっちさん、愛ちゃんと一緒に手を繋いで飴舐めて待ってました。
しかも完全にお子様になりきってます!!
もう2○さいなのに(ボソッ)
な「……なんか言ったかい?」
い、いえ、何も……(コワっ!)
- 373 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:12
-
『喜怒哀楽の怒楽抜き』
そろそろお日様が顔を覗かせる時間がなくなってきたこの頃。
久し振りにお布団を干したなっちさん、ホッカホかになったお布団をしまおうとしますけど前が見えません。
そこへ……
圭「なっちゃん、これ……」
な「え?」
ドンッ!
圭「わっ!」
な「きゃっ!」
ドサッ
圭「ご、ごめん(カァーッ)」
な「だ、大丈夫?(カァーッ)」
圭「……大丈夫、じゃない」
な「えっ」
なんだなんだ!?
どうしたんでしょう!?
お二人とも顔が真っ赤っ化です。
一体何があったんでしょうか!?
- 374 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:13
-
圭「コーヒー、思いっきり零れ…」
な「あ゛ーっ!! お布団がぁっ!!」
あ〜あ、日本地図ができちゃいました。
おや?
騒ぎを聞きつけた愛ちゃんが駆け寄ってきました。
愛「パパぁ〜、なにしてるの〜?」
ドンッ! バシャッ!
な「あ゛あ゛ーっ!!」
圭「あっちーっ!」
愛「ふに?」
な「き、昨日まで綺麗だった、羽毛布団が……(シクシク)」
あちゃぁ〜
日本地図が世界地図に大変身しちゃいました。
結構高そうなお布団みたいですし、そりゃあなっちさんじゃなくても泣きたくなりますって。
お二人とも反省……
愛「あ〜、パパがママなかしたぁ〜、い〜けないんだ」
圭(ええ〜!? パパのせい!?)
愛ちゃん、罪を親になすり付けてます。
結構ズル賢いんですね。
- 375 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:14
-
『お褒めの言葉』
いやぁ〜、ホントこの御家は幸せそうですよね〜。
リポートしてるこっちまで色々分けてもらっちゃって、最近じゃ私の生活も安泰ですから。
ありざーあすっ!!
さてさて、今日はどんな幸せを分けていただけるんでしょうか?
愛「パパぁ」
圭「なんだい?」
愛「あいのことほめて〜」
圭「なんで急に?」
愛「じぶんでおようふくきたの〜、だからほめて〜」
圭「そうかそうか、愛はお利口さんだなぁ〜(ナデナデ)」
愛「えへへっ」
も〜、のっけから幸せ満開なこの遣り取り。
私も将来はこうした会話してみたいっす。
まあ、私のことはさておき、そんな遣り取りを見ていたなっちさん。
すかさず自分も褒めてもらおうとします。
な「圭ちゃん、なっちも褒めて」
圭「な、なんで?」
な「綺麗にお掃除したから。だから褒めて」
圭「……(プイッ)」
な「あ゛ーっ!! 無視したぁ!!」
圭「んなことで褒められません」
- 376 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:14
-
まあ、当然でしょう。
家事のひとつをやって褒めてたら、それこそ全ての家事で褒めなきゃなりませんからね。
それに褒めるのはたまに褒めるからいいんですよ、なっちさん。
な「じゃあ、えっと……圭ちゃんを愛してるから褒めて」
おおっ!! そうきましたか。
これは褒めないとその後の夫婦関係に支障をきたす可能性が…。
圭「……まだ駄目」
な「なんでよ〜?」
何故でしょう?
私にも分かりかねます。
圭「なっちゃんよりも僕の方がずっとなっちゃんを愛してるから」
な「……(カァーッ)」
カッケー!!
アンタはサイコーの漢だぁーっ!!
- 377 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:15
-
『お寿司』
ようやく秋晴れが顔を覗かせるようになってきた今日この頃。
オヤオヤ、保田さん、お休みなのに久々にお独りですか?
圭「ん〜、お昼、どうしよ」
ガチャッ
圭「ん〜、昨日のお刺身が残ってるか……」
パカッ
圭「ご飯も残ってる……そういえば、すし酢あったっけ」
ペタペタ、コポコポ、シャッシャッシャ……
なるほど、今日のお昼はお手製のアレですね。
でも美味しく出来上がるんでしょうかね?
圭「あとは、この刺身を乗せて……完成! やすパパ特製お寿司!!」
おおっ!!
見た目はお寿司そのもの!と言いたいところですけど、お味はいかがなもんでしょうか?
パクッ
圭「……なんか違う……あ……胃にもたれそう……」
- 378 名前:愛物語。3 投稿日:2005/12/01(木) 22:15
-
夕方、なっちさんと愛ちゃんが仲良く帰ってきました。
お二人ともホクホク顔です。
愛「パパにおみあげぇ〜、ハイっ、おすし〜」
圭「……う、そ……ゲフッ」
な「アレ? お寿司、嫌いだったっけ?」
圭「……今日、だけは、ね」
な&愛「???」
正直、見てただけの私も今日だけは遠慮します。(ゲフッ)
- 379 名前:お返事 投稿日:2005/12/01(木) 22:20
-
>名無し読者さん
あまり言葉が無い分、雰囲気が伝わってもらえれば幸いです。
しばらくほのぼのマッタリでいきます。
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 22:21
-
( `.∀´)<またまた隠しますよ〜
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 22:22
-
川*‘ー‘)<は〜い。いないいな〜い
- 382 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 22:23
-
(●´ー`)<ばぁ〜
- 383 名前:ご報告 投稿日:2005/12/01(木) 22:27
-
今月の6日、保田圭聖誕記念の短編を載せます。
注目のお相手は……やぐたん、です。
お楽しみに。
- 384 名前:ご報告 投稿日:2005/12/01(木) 22:28
-
( `.∀´)<今度こそホントに隠すから
- 385 名前:ご報告 投稿日:2005/12/01(木) 22:29
-
(●´ー`)川*’ー’)<はぁ〜い
- 386 名前:名無し読者。 投稿日:2005/12/02(金) 01:33
- 更新待ってました!
相変わらずの暖かい保田一家最高です。
聖誕記念のやすやぐ、楽しみにしています。
- 387 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:01
-
二日ほど早いですけど、圭ちゃん聖誕祭です。
やや物足りないかもしれませんが、どうぞ。
- 388 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:03
-
『 圭ちゃん聖誕祭 〜 I'm on your side 〜 』
- 389 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:04
-
某テレビ局の楽屋。
今、アタシは一人の女の子を目の前に何をしたらいいのか考えている最中だった。
目の前の女の子(って言っても違和感ない娘)はアタシをずっと見つめ続けている。
ジット上目遣いで見つめられ続けると、段々と照れてくるのがわかる。
何故なら、見つめてくる理由が何なのか?が分からないから。
まあ、普段からそうされると弱いのがアタシの弱点なんだけれども……
恥ずかしさ隠すためにとりあえず、ぐしゃぐしゃに頭撫で回してみた。
でも、ボサボサになったヘアスタイルを気にせず見つめ続ける女の子。
ただジッと何にも喋らずに佇んで見上げている。
ちなみに彼女の名前は矢口真里と言う。
御年22歳で普段は陽気なかしまし娘さん何だけど、今日は……
「何なのよ、人の楽屋来て、何にも言わずに見つめちゃって」
「……」
「矢口?」
アタシと再度目が合うと、なんだかもの悲しそうな表情を見せた矢口。
それがアタシの中の琴線に触れたらしく、身体が勝手に動いていた。
小さな身体を両腕で覆うように抱き込む。
けれど、そっと抱きしめても、なお上目遣いのままの矢口。
段々と目が潤んできそうな視線になるべく優しく声を掛けた。
「どうしたの? アタシにできることならいくらだってしてあげるよ?」
そう言うと、矢口はパフッっとアタシに寄り掛かり、そっと告白してくれた。
- 390 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:07
-
「……甘えたくなった……」
「珍しいわね。いつもならなっちとか裕ちゃんに甘えるのに」
「ないよ」
「えっ?」
「なっちや裕ちゃんには甘えたことなんかないよ」
「そ、そうだっけ?」
「矢口が甘えるのは……矢口のこと一番判ってくれてる人だけだよ」
「それで、アタシなわけ?」
「そうだよ……圭ちゃんは誰よりも矢口のこと理解してくれてる人だから……」
そう言った後、アタシの身体を引き寄せるようにギュッと腕に力を込めた矢口。
普段から明るく振舞う矢口の内なる想いにアタシは驚いた、と同時に申し訳ない気持ちになった。
だって、アタシの仲で矢口は、同期でライバルで友達ぐらいの感情しかなかったから……。
そして、アタシ同様に矢口もアタシの事そう思っているんだ、とばかり思っていたから。
そんなアタシの口から出た言葉は謝罪の言葉だった。
「……ごめんね」
「どうしたの、急に」
「矢口がアタシの事そんな風に見てたなんて知らなかったからさ」
「違うよ。矢口が勝手にそう思ってみてただけで、圭ちゃんは何も悪くないよ」
「でも……」
「謝る必要ないよ……謝ったりしたら、矢口、圭ちゃんに甘えられないじゃん……」
「矢口……」
「矢口は圭ちゃんに、圭ちゃんだけに甘えたいんだ……それだけでいいんだよ……」
矢口はそう言うけど、ホントにそれだけでいいんだろうか?
できることなら矢口の力になってやりたいと思う。
今日の今まで色んな修羅場やら苦境を隣りで歩んできたから。
でも、矢口がそう望んでいるのならそうさせてあげよう。
「わかった。じゃあ甘えたくなったらいつでも来てよ。待ってるから」
「……うん」
- 391 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:10
-
それからしばらくの間、アタシは矢口の全てを受け入れていた。
仕事や私生活における愚痴や悩み、忘れかけてた温もりまで、矢口が望むこと全てを。
勿論、その間ずっ〜と矢口を懐に抱えたままで。
しかし、こうして誰かを抱っこしているとまるで母親にでもなった気分だ。
近い将来、自分の子供を抱っこしながらあやすかも知れないから、シュミレーションにはもってこいかも。
矢口にはちょっと悪いけどね。
そんな邪な気持ちが出ていたようで、矢口に不思議がられた。
「顔、ニヤけてるよ?」
「ちょっとね……」
「……変なの」
今のアタシはちょっと変化も……ね。
- 392 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:12
-
…………。
……。
何時の間にか二人揃って夢の中へと旅立っていたようだ。
二人折り重なるように寝ていたけど、しっかりと矢口の腕はアタシにしがみついたままだった。
勿論、あたしの腕もしっかりと矢口を抱きかかえていたけどね。
何気ないことだけれども、繋がっている部分から伝わってくる温もりが物凄く心地良いし、温かい。
でも、目覚めるにはちょっと身震いするほど部屋は寒かった。
「何か掛けるものは……と」
ちょうど目の前に着てきたコートがあったから、それを取ろうと身体を動かした際、握られていた手に力が入った。
見ると、無意識的に力を入れていた……なんてことはなく、矢口はジッとアタシを見ていた。
その様は将に赤子同然。
「……どこ行くの?」
「どこって、目の前にあるコートを取るだけだよ」
「……ホントに?」
「そうだよ。それぐらいのことにウソついたってしょうがないでしょ」
「……よかった」
アタシに置いてかれる夢でも見てたんだろう、ホッと安堵の表情を見せる矢口。
大丈夫だよ、腕はしっかり絡まったままなんだし――そういう意味をこめて頭をぽんと撫でると、
「ちょっとびっくりしちゃった、へへっ」とはにかむ矢口。
そんな矢口になんともいえない幸せを感じてしまった。
ちょっぴり矢口みたいな子供が欲しくなったのは内緒にしておこう。
「眠いなら寝ていいよ、支えててあげるから」
「ううん、眠くなんか無いよ」
「ならいいけど」
「あ、でも……」
「なに?」
「頭、撫でてもらいたいからちょっと借りるね」
「どうぞ」
再びクタッとアタシに凭れ掛かった矢口の頭をそっと撫でてあげる。
光沢を帯びた髪の毛から乙女っぽい匂い、イヤ、矢口の匂いがした。
矢口しか持ってない矢口だけの匂いが……。
気持ちよかった。
- 393 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:13
-
そうしてしばらく矢口に身体を貸したまま、頭を優しく撫でであげていた。
矢口もだいぶ気持ちが落ち着いてきたみたいだった。
けれど収録時間が迫り、離れようとすると、また不安げな表情を浮かべる矢口。
その仕草が普段の矢口からは想像もできないほど可愛らしくて寂しそうだった。
相当心が参っていたんだろう、益々放っておけなくなった。
「あのさ、圭ちゃんの出番が終わるまで、待っててもいい?」
「いいよ」
「……いいの? 迷惑じゃ……」
「なんで? 矢口がいいならいくらでも待ってなよ」
「ホントに? ホントにいいの?」
「いいよ……」
「……よかったぁ……今日は独りになりたくなかったんだ」
「なんで?」
「……独りで居ると、なんだか泣いちゃいそうで……」
そう言ってアタシの手をギュッと握る小さな手からは哀愁まで感じた。
その時、改めて矢口真里という一人の女の子は可愛い、と。
そんな可愛い子をこれ以上放っておくわけにいかない――不思議と男心が沸き起こるアタシ。
「いいよ、今日はずっと矢口の傍に居てあげるから」
「……うん」
「だから、これ……」
そう言って今日着てきた大き目のコートを矢口に掛けてあげた。
ただでさえ小さくなっている矢口にはちょっと大きいアタシのコート。
ホントならこれくらいじゃ足りないんだけど、でもいいんだ。
きっと矢口にはアタシのすることを理解してくれるだろうから……。
- 394 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:16
-
「アタシのコートの包まってれば、ずっとアタシと一緒に居られるでしょ?」
「……ありがと」
「いえいえ、どういたしまして。なるべく早く帰ってくるから」
「……うん」
アタシのコートに目一杯包まった矢口は、笑顔でアタシを見送ってくれた。
やっぱり矢口には笑顔が似合っている。
あの笑顔を見るためにアタシは今日も頑張ろうと思った。
いずれ、矢口にも一番傍に居て欲しい人が現れるだろう。
そうなれば、アタシの役目はそこで終わる。
でもいいんだ。
今、矢口にとって傍に居なきゃいけないのは
紛れもなく、アタシなんだから……。
- 395 名前:愛物語。スペシャル 投稿日:2005/12/04(日) 16:17
-
『 圭ちゃん聖誕祭 〜 I'm on your side 〜 』
- FINE -
- 396 名前:編集後記 投稿日:2005/12/04(日) 16:22
-
……思ったよりも短くなってしまいました。
でも、か弱いやぐたんを寛大な心と身体で以って
受け止めてた圭ちゃんがカッコよく写ってくれたように思います。
まあ、あくまでも私的見解ですが……。
とりあえず、無事にお届けできてホッとしてます。
後は向こうの方の“圭ちゃん聖誕祭 なっち編”を挙げないと……。
頑張りましゅ。
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 16:23
-
( `.∀´)<隠すよ〜
- 398 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 16:24
-
(〜^◇^)<おっけ〜
- 399 名前:お返事 投稿日:2005/12/04(日) 16:44
-
>名無し読者。さん
お待たせしました。
これから寒い季節なんで、温かくなってもらえましたかね?
聖誕祭もよろしくです。
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 16:45
-
( `.∀´)<またまた隠すよ〜
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 16:45
-
(〜^◇^)<おっけ〜
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 16:46
-
川T〜T)<圭ちゃん、カオリの出番はないの〜?
- 403 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:28
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 404 名前:愛物語。スペシャル 2 投稿日:2005/12/12(月) 23:14
-
『圭ちゃん聖誕祭 〜大事なもの〜』
- 405 名前:愛物語。スペシャル 2 投稿日:2005/12/12(月) 23:16
-
ふと気付くと、アタシの正面に座ったカオリはまたアタシを描いてる。
カオリと一緒に過ごすと決まって、お互いやりたいことをする時間というのが訪れる。
アタシはその時々で色んなことをするのだけれど、カオリは一貫してアタシの観察および描写だ。
もう数え切れないほど色んなアタシを描かれた気がする。
ちなみに今回は、ネイルのお手入れ最中の所を狙われた。
でも未だかつて完成した絵を見たことがない。
何度か頼んではみたものの、カオリが首を縦に振ることはなかった。
カオリ曰く、「これはカオリの心の中を描いたものなの。だからカオリだけの宝物」とのこと。
カオリの心の中を描いたとはいうけど、モデルは全部アタシですよ?
アタシには見る権利が少なからずあるでしょ、普通。
でも頑固なカオリはダメの一点張りで、いっつも大事そうに抱えてしまう。
フンっ、いいよ〜だ。
アタシにだっていっぱいっぱぁ〜いカオリには見せられないもん持ってんだから。
そのためにも、今自分がやってる作業は大事なんだ。
- 406 名前:愛物語。スペシャル 2 投稿日:2005/12/12(月) 23:17
-
アタシがいつも以上に熱心にお手入れをしているのが気になった様子で、カオリが訊ねてくる。
「どうしてそんなに念入りにお手入れしてるの? 熱にマニキュア塗ってるわけじゃないのに」
「その訳、知りたい?」
「知りたい」
「こうして綺麗にしとかないと、カオリのエッチで一番感じる部分を傷つけちゃうでしょ」
アタシはしてやったりの顔で以って、カオリの問いかけに答えてやった。
案の定、カオリは真っ赤っかになって下を向く。
こういうカオリは普段見ることがないから、もっと意地悪してやろっと。
- 407 名前:愛物語。スペシャル 2 投稿日:2005/12/12(月) 23:18
-
「傷なんかつけちゃったら、カオリのエッチな声聞けなくなっちゃうし」
「もう言わなくていいよ」
「カオリがイッちゃった時の顔見れなくなっちゃうし」
「もうっ……バカっ」
「今夜も聞きたいな〜、カオリの甘えた声」
「バカバカーっ!!」
そう言ってアタシに向かってクッションを投げつけてくるカオリ。
それをニヤけ顔で受け止めるアタシ。
絵が下手だけど、心の中にカオリのそういう表情とか描くのは大得意なんだから。
だから、これからもいっぱい一杯描かせてね、カオリっ。
- 408 名前:愛物語。スペシャル 2 投稿日:2005/12/12(月) 23:19
-
『圭ちゃん聖誕祭 〜大事なもの〜』
− Fine −
- 409 名前:編集後記 投稿日:2005/12/12(月) 23:21
-
なんかいいらさんだけないのも変かな、と思い急遽載せまひた。
出来は……なんとも言い難いです。
おまけに物凄く短いし……。
これにて圭ちゃん聖誕祭SPは終了です。
お粗末さまでひた。
- 410 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 23:22
-
( `.∀´)<例のごとく、隠すよ〜
- 411 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 23:22
-
(〜^◇^)<おっけ〜
- 412 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 23:23
-
川*‘〜‘)<圭ちゃんのエッチ……
- 413 名前:作者より 投稿日:2006/02/09(木) 21:36
-
スレッド整理が入りそうなので、一応ご報告。
今月中には更新します。
- 414 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:08
-
『どっちがどっち???』
- 415 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:10
-
「圭ちゃ〜ん」
「なに?」
「つまんない」
「そう言われてどうしろと?」
「だからね、今から圭ちゃんに甘える」
そう言ってアタシに覆い被さってくるのは、おっきな子供。
猫のように「ゴロニャ〜ン」とまとわりついてくる。
でも身体が大きいから、纏わりつくというよりも押し潰しにきていると言ったほうが正解かもしれない。
あ〜もぉ〜、図体ばかりおっきくなって、ちょっとは頭ン中も大人になってよ。
そう願う相手は皆さんご存知の通り、飯田圭織さん。
そう、モーニング娘。二代目リーダーさんだ。
カオリはこうして二人きりになると、必ずアタシに甘えてくる。
テレビで見るカオリとは180度違うので驚くのも無理はない。
何より一番この豹変振りに驚いたのが、何を隠そうこのアタシなのだから……。
カオリと付き合いだしたのはもう一年近くも前。
その時は、立場が今と逆転していた。
つまりは、アタシがカオリの彼女ということであって、アタシが専らカオリに甘えてた。
だって、カオリのほうから告って来たし、カオリなら絵的にもバランスが取れてていいかなって思ったから。
そう、カオリからの告白も凄かったっけ。
- 416 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:11
-
* * * * * * * * * *
- 417 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:12
-
あれはちょうど、バレンタインデーが終わった頃だった。
珍しくカオリからお誘いが来て、二人で昼間から街をぶらついてた。
至る所で、バレンタインデーの余波が残ってたから、成り行きで恋話になった時、
「圭ちゃんはさ、年下って好き?」とさりげなく聞いてきたカオリ。
こう言っちゃ失礼だけど、カオリからこういった積極的な発言が出てくるのは珍しかった。
長年リーダーという立場に居たせいで、控えめになってた感があったからね。
ちょっと驚きながらも、「好きになったら年齢なんて関係ないよ」とありきたりな答えをしておいた。
段々と市街地から住宅街へと移り変わっていくうちに、またカオリから意外な質問。
「やっぱり恋人は背が高い方がいい?」と。
……なんだか今日のカオリはちょっと変だって思った。
でも、ストレートに言うと怒るから、「まあね、ないよりあったほうがいいよ」とややごまかし気味に言っておいた。
本心で言えば、そんなこと気にしないんだけど。
いつの間にか、まだまだ満開には程遠い桜並木を並んで歩いてた二人。
と、急にアタシの手を掴むカオリ。
そのまま引っ張られて、桜の木陰に隠れる恰好になった。
勿論アタシは、桜の幹に押し付けられて、身動きができないんだけど……。
「な、なに? どうし……」などと訳を聞く間もなく、いきなりカオリにキスされた。
普段から(っていうのもどうかと思うが)挨拶代わりにする軽いものでもなく、本格的な恋人同士がするような感じで。
キスが終わってから、放心状態のまま真っ赤になってるアタシを抱きしめるカオリ。
そして……
- 418 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:12
-
「カオリね、圭ちゃんが好きなんだ」
- 419 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:14
-
これぞ将に衝撃の告白!!っていうのかしら。
でもなぜか、ドキッとしてときめいてる自分が居たのも事実。
「だからね、カオリが圭ちゃんの彼氏になってあげる」
「へ?」
「嫌?」
……なんか辻褄が合ってないのは気のせい?
っていうか、ちょっと図々しくないか!?
だって自分から好きだって言っておきながら、彼氏になってやるって……。
昔のカオリだったら、許してやったけど、もう立派な大人なんだから、ここはビシッと言ってやらないとね。
……まあ、嫌いじゃないから、ちゃんとしたら受け入れるつもりなんだけど。
「あのさ、ちょっとおかしくない?」
「なんで?」
「だってさ、カオリから告白してきたんだよ」
「そうだよ」
「なのにどうして彼氏になって“やる”って言えるの? 普通は彼氏になって“いい”とか、“なりたい”って聞くところじゃない?」
「ん〜」
オイオイ、難しく考えるなよぉ……。
言葉の言い回しが苦手過ぎるにも程があるぞ。
でも、こういうところがカオリのカオリたる所以なのかも、と改めて思った。
- 420 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:15
-
しばらく待つうちに、何か解決案が出たらしく、カオリが真面目にこう言った。
「難しいことは良くわかんないけど、でもね、好きなんだよ?」
「……」
「カオリは、圭ちゃんが好きなの」
「それはわかってるよ。でもさ、物は言い様っていうでしょ? そしたらやっぱり……」
「ん〜、じゃあこう言ったらいいのかな? カオリが圭ちゃんの彼氏になってあげてもいいかな?」
「……それもどうかと思うんだけど」
「え〜、じゃあどうやって圭ちゃんの彼氏になったらいいの〜?」
なんだかよくわかんないことでキレ始めてる圭織。
っていうか、アタシはもうカオリの彼氏になることが決定しちゃってるのね。
なんかもうどうでも良くなって、半ばアタシが折れる形でこの問題は幕を閉じることにした。
カオリは自分が正論といわんばかりの勢いで、今度はアタシに説教なんかたれてるし。
おまけに彼氏っぽく振舞いたいのか、腕を組むように要求なんぞしてくるし。
でも乗りかかった船だ、アタシもとことん甘え尽くしてやると密かに誓っていた。
そう誓って始めた恋人関係だったのに……。
- 421 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:17
-
それはカオリと付き合い始めたまだ十日も経っていない日の夜だった。
いきなり、
「圭ちゃんずるい。カオリだって圭ちゃんに甘えたいし、わがままだって言いたい」
と、カオリがとんでもないことを言い出した。
アタシは前に誓った通り、カオリと一緒に居るときは自分なりに目一杯甘えていた。
人様から見れば、そんなの普通じゃんと言われるかもしれない程度のものだったけれど、それで十分だった。
なのに、そんなアタシの甘えたいという言動がカオリの琴線に触れたようだ。
「なんで圭ちゃんばっかり甘えられるのかな?」
「いや、だって、カオリはアタシの彼氏なんでしょ?」
「そうだよ。カオリは圭ちゃんの彼氏なんだもん」
「彼氏に甘えるのは彼女の特権じゃないの?」
「そうだよ。でも、カオリも圭ちゃんと同じ女なんだよ。甘えてみたいじゃん」
「イヤイヤイヤ。いい? いま、自分で彼氏って言ったのはどこの誰?」
「圭ちゃんの目の前に居るカオリ」
「そのカオリは彼氏なんでしょ?」
「そうだよ」
「うん。じゃあ次、アタシはカオリの何?」
「圭ちゃんはカオリの彼女」
「そうだよね。その彼女が彼氏に甘えるのは当然だよね?」
「そうだよ」
「なら、アタシがカオリに甘えるのも当然でしょ」
「普通の関係ならね」
「はい?」
さも当然といった感じで見つめてくるカオリ。
こ、こいつの頭はどういう思考回路になってんだー!?
こんなのが(って言い過ぎか)よく大所帯のリーダーなんてやってたな、と呆れそうになる。
- 422 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:19
-
でも、ふと思った。
色々と支離滅裂な言動でアタシを困惑させているけれども、これがカオリなりの恋人への愛情表現なんではないかって。
ああみえて、実は恋愛にはかなりの奥手なカオリ。
楽屋とかで恋話になるとあまり参加しないで違うことしてるし、意外とエッチネタに弱い面もあるし。
乙女チックを押し出してるブリブリキャラなアイツと違って、ホントは純な乙女なのかも。
ホントは普通に女の子していたかったのに、周囲の環境とかがそうさせてはくれなかった。
リーダーとしての重責、世間の目、その他色々な要素がカオリから女の子である大切なものを奪ってしまったんじゃないか。
(まあ、その点に関しては、カオリ以外にも当てはまるのがいるけど)
そんな中で成長してきた等身大のカオリが目の前に居ると思うと、付き合うまでにしでかした言動にも妙に納得してしまう。
イヤ、納得どころか、哀しくなってきちゃったよ。
「ねえ、カオリ」
「なに?」
「もういいんだよ。見栄とか、意地張らなくてさ」
「えっ……」
「外見が大人っぽいからやせ我慢してたんだよね? ホントは普通の女の子らしく甘えたり、我侭言ったりして振舞いたかったんだよね?」
「……」
「だから業とヘンな理屈で以って言い包めたりしてたんだよね?」
「……違うもん」
もうこのとき既に、カオリの負けは決まってた。
言葉遣いが完全に女の子ぽかったから。
でも、それがアタシには嬉しかった。
「カオリには似合わないよ、彼氏役なんて」
「……そんなこと、ないもん」
「カオリは普通に女の子してればいいよ。そっちの方がアタシより断然似合うし」
「圭ちゃん……」
「今日からはアタシがカオリの彼氏で、カオリはアタシの彼女。いい?」
「……うん」
- 423 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:19
-
* * * * * * * * * *
- 424 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:20
-
改めて振り返ると、カオリはある意味、策士だったなぁ……と思う。
アタシのヘンな思い込みが正しければ、だけど。
まあ、今じゃそんな様子これっぽっちも無いけどね。
「圭ちゃん、なにぼ〜っとしてんの」
「あ、ごめん」
「ぼ〜っとしてる圭ちゃんにはお目覚めのチュ〜しちゃうぞ〜」
そう言って、有無を言わさずにキスをしてくるカオリ。
こんな歯も浮くような甘〜いこと言うカオリがアタシは大好きだ。
- 425 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:21
-
『どっちがどっち???』
−fine−
- 426 名前:編集後記 投稿日:2006/04/06(木) 09:26
-
とある方(確かへろんさんだった気が…)からのリクエスト、圭圭でしたが、
どうしても女の子な圭ちゃんが書けませんでした。
次回も引き続き、リクエストで。
- 427 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:27
-
( `.∀´)<隠すよ
- 428 名前:愛物語。4 投稿日:2006/04/06(木) 09:28
-
川*‘〜‘)<いいよ
- 429 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 14:56
-
『キミ、キス(貴美、き好)』
- 430 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 14:57
-
いつも傍に居るはずの娘が居ないとやっぱり淋しい気がするのは当然のことなのかもしれない。
けれど「いつも傍に居てよ」と強制するのはどうかと思う。
相手のことを考えれば、それは我侭でしかないから……。
アタシにとって大切な娘である美貴こと、藤本美貴が今日は居ない。
なぜなら、美貴にはちゃんとした恋人が居るから。
内心では「行くな」と引き止めたかったけれど、そう強く言える立場じゃない。
なるべく冷静な態度で強がっている自分。
でも、そうでもしなきゃ自分を抑えられそうになかったし……。
- 431 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 14:58
-
美貴の居ない夜はやっぱり静かだ。
いや、静かというよりも部屋の雰囲気が冷たいっていったら分かり易いかな。
前は一人だとネガティブに感じたこともあったけど、それが当たり前だと思っていたせいで立ち直りは早かった。
慣れっていうのはつくづく怖いもんだと思う。
一人の食事時もどこか味気ない。
ブラウン管の中では大爆笑なのにちっとも面白くない。
好きな本を読んでても、どこか落ち着かない。
全ては美貴という暖かい存在が傍に居ないから……。
何をやっても、今ごろ美貴はどうしてるんだろう、って考えてる自分がいる。
頭ン中では美貴で溢れ返ってる。
- 432 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 14:59
-
だけど、良いことばかりでなく段々と不安で満たされてく。
美貴がここに来なくなったらどうなるんだろう……嫌われたのかな、遊ばれてたのかな、捨てられるのかな?
美貴との関係がバレたらどうなるんだろう……軽蔑されるのかな、殴られたり蹴られたりするのかな、殺されちゃうのかな?
考えれば考えるだけ深みに嵌るから、もう寝よう。
次に目覚めたら、美貴が隣りで寝てるといいな……。
オヤスミ、美貴……。
- 433 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 14:59
-
- 434 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:00
-
…………。
……。
何かに揺すられて目が覚めた。
視界に入ってきたのは、寝ていた美貴じゃなくて、外から帰って来たままの美貴だった。
「ズルいですよ〜、せっかく早く帰ってきたのに先に寝てるなんて〜」
「ゴメン……ところで、今、何時?」
「まだ10時前です」
「嘘……そんなに早いの!? てっきりもう深夜を回ってるかと思った……」
「起きて待っててくれると思ったのになぁ〜」
ちょっと膨れっ面の美貴。
でも、どうしてこんなに早いんだろう?
恋人のところにいったのだから、それなりに遅くなると思ってたのに。
大人の事情を考えると、これからが恋人同士のイベントでしょ?
そう思ってたのが顔に出てたみたいで、美貴が理由を答えてくれる。
- 435 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:01
-
「だって、落ち着かないんです。保田さん、もしかしたら怒ってるんじゃないか、とか、
美貴のこと軽蔑してるんじゃないかとか色々考えたら、いてもたってもいられなくて……」
理由を説明してるうちに段々と美貴の声が小さくなってく。
と同時に、うつむき加減で頬を赤らめてく美貴。
どうやらお互い考えていたことは同じだったみたい。
「で、急いで帰ってきたら、保田さんちっちゃくなって寝てるし、拗ねて怒ってるのか確認したくて、無理やり起こしちゃいました」
「……そっか」
「怒ってます?」
「全然」
「ホントに?」
「うん。むしろ、嬉しいかな」
「えっ? なんでですか?」
「だってさ、こうやって美貴がアタシのために帰ってきてくれたから」
「いや、べつに、そんな……」
「幸せ、かな」
- 436 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:02
-
歯の浮くような台詞に美貴はペタンとしゃがみ込んで照れまくり。
それを見たらなんだか無性に抱きしめたくなった。
照れた美貴はホント人形さんみたいで凄く可愛い。
普段、強面のイメージがある分、余計に可愛らしく見えるのかもしれない。
なんかガマンできなくなって、布団被ったまま美貴に飛び掛った。
ちょうどいい感じで美貴を懐に抱きしめると、布団がアタシらを包んでくれた。
まるで布団までもが美貴を求めていたかのようにね。
「ちょ、や、保田さん……苦しいですよぉ……」
「だってさ、可愛いんだもん、美貴が」
「そ、そんなこと……」
「やっぱり大好きだわ、美貴が」
「……美貴だって、大好きですから」
- 437 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:02
-
それから数日後、美貴は恋人と別れたみたい。
「美貴を大切にしてくれる度合いが保田さんとは違いすぎましたから」、だって。
可愛いよ、美貴。
- 438 名前:編集後記 投稿日:2006/04/22(土) 15:06
-
momoyamaさんからのリクで、やすみき(初の試み)です。
が、もう何もかもが支離滅裂で、ホント申し訳ないです。
タイトルも、中身もなんか中途半端になった気が……。
もちっと精進します。
- 439 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:10
-
川VvV从<は、恥ずかしいから隠すよ!!
- 440 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:10
-
( `.∀´)<可愛いなぁ、美貴は。
- 441 名前:愛物語。5 投稿日:2006/04/22(土) 15:11
-
川*VvV)<そんなこと、公の場で言わないで下さいよ!!
- 442 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:16
-
『愛、故に……』
- 443 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:18
-
外はもう桜が散ってしまったというのに、夕方から冷たい雨が降り出した。
仕事から帰ったアタシを待っていたのは、久し振りの連休。
手始めに、録り溜めていた映画の鑑賞をすることにした。
けれども、アタシの楽しみは冒頭の2,3分で中断させらてしまう。
時刻は21時ちょっと前。
不意に訪れた訪問者が原因だ。
「もぉ〜、誰だよぉ」と一人愚痴りながら対応に出ると、声の主は良く知ったあの娘だった。
「どちらさまですか?」
「……矢口、だけど」
「矢口? 今、開ける」
「……」
……何かおかしい。
今日はこれといった約束事は交わしていないし、何か貸借があった記憶もない。
最近ドラマの撮影が忙しい矢口とはむしろ疎遠になりつつある状態だった。
そんな矢口がなんでここに???
というか、いつもの“矢口らしさ”が伝わってこなかった。
妙に落ち着いた雰囲気、というか神妙な感じがしたような。
言っちゃ悪いけど、こういう態度で以ってアタシの所に訪れるのは決まって「アイツ」しかいないはずなんだけど……。
そんなこと考えつつ、ドアロックを解き、ドアを開けると……。
「ちょっ!! どうしたの!? 全身びしょ濡れじゃないの!?」
「……」
「と、とにかく、中、入んな!」
せかすように濡れそぼった矢口を引き入れ、ドアを荒々しく閉めた。
すかさずバスタオルを取りに奥へと行き、洗い立てのタオル二枚を持って戻る。
それでも矢口はずっと俯いたまま、静かに水滴を滴らせてた。
矢口の身体ぐらいのおっきなバスタオルを頭から被せてやると、それを拒むかのように勢いよくアタシに抱きついてきた。
当然アタシは、重くなった矢口(濡れてるからって意味ね)を支えたまま、玄関先で豪快に倒れた。
矢口と壁に挟まれる形でアタシは痛みを訴えることもできずに、呆然とするだけ。
一体、どうしたというのだろう?
- 444 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:20
-
突然の出来事に慌てふためくアタシを余所に、矢口は震える声でポツリポツリと喋り始めた。
「……オイラ、フラれちゃった……」
「えっ?」
「……ついさっきね、彼にフラれちゃったんだ……もう終わりにしよう、って」
「……」
「なんでだろうね? オイラは今までどおりに接してきたつもりだし、彼に迷惑掛けた覚えなんてないのに」
「……」
「彼と付き合うことで失ったものは大きかったけど、でもオイラはとても幸せだったんだよ。
無い時間無理から作ってこっそり会ったりしてさ、そんなことしてる自分が輝いてたし、楽しかった。ほんとに楽しかったんだよ、ホントに……」
「……」
「なのにさ。どうして急にさ……どうしてぇ……」
「矢口……」
「ねえ、圭ちゃん、教えてよ。どうして? ねえ、なんで?」
全身使って目一杯アタシを揺する矢口。
と同時に、矢口の瞳からは既に大粒の涙がとめどなく流れてた。
アタシはただそれを黙ってみることしか出来ない。
そして、矢口の問いかけには正直、応えを出すことはできない。
だってアタシは第三者であって、当事者である矢口でもなければ、彼でもないから。
揺する度にアタシは身体を壁に打ち付けられ、且つ矢口の爪がアタシの皮膚に食い込む。
普段のアタシならば、ここでキレていただろう。
なんでアタシを頼ってくるのかと、振られたぐらいでギャアギャア喚き散らすな、と。
でも、このときはそんなこと微塵にも思わなかった。
矢口だから?
いや、矢口であっても石川であっても同じだと思う。
ではなぜ?
……分からない。
分からないけど、でもそんな悲しみにくれる矢口にアタシが出来たことは……。
- 445 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:21
-
「け、圭ちゃ……」
ずぶ濡れになって冷め切った矢口の身体をきつく抱き寄せる。
そして……アタシは知らずうちに泣いていた……。
第三者であるはずのアタシが何故泣いていたのかは、自分でも分からない。
でも、今なら矢口の心の内が物凄くわかる気がした。
想いを共感することで一緒に感情を味わう――これって愛じゃないだろうか?
つまり、この時アタシは矢口を愛してしまったことになる。
アタシ……矢口が好きなんだ……。
そうと分かるとアタシは卑怯かもしれないけど、身体が勝手に動いていた。
半ば強引に矢口の唇を奪い、片腕で矢口の身体を固定したのち、空いた方の手を矢口の胸へと滑らせていく。
矢口が敏感に反応して、声を漏らそうとするも、自らの唇でそれを制止する。
やがて胸を弄っていた手を下半身へと滑らせると、一層矢口の反応が大きくなる。
それでもアタシは腕と唇で矢口の抵抗を抑えていく。
それを幾度となく繰り返すことで、徐々に矢口の理性を奪っていく――本当の慰めとは似ても似つかない慰めをしていた。
火照った矢口の身体にアタシは一層の興奮を覚えた。
矢口の秘密の花園に指を埋没すると、矢口が一番の抵抗を見せる。
それでもアタシは行為を止めることなく、むしろ激しさを増していく。
勿論、暴れる矢口を腕で押さえ込み、唇は依然塞いだままで。
やがて矢口が耐え切れずに身体を仰け反らせる。
そして一気に襲う脱力感でぐったりすると、アタシは一連の行為を止めた。
そして先ほどのように両腕で優しく矢口の身体を抱きしめる。
けれども、塞いでいた唇はまだ離さずにいた。
さっきまでの荒々しいものではなくて、今度はソフトに優しく触れ合う程度のものに切り替えて。
- 446 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:23
-
これほど矢口がいとおしいと思ったことはなかった。
でも、こんな形じゃ納得いかないのも事実。
ようやく長い口付けを終えたアタシは恥ずかしさ隠しに、矢口の顔を自分の胸元に隠して言った。
「……好き、だよ」
「……」
「矢口がアタシに問い掛けたときね、知らないうちにアタシ泣いてた」
「……えっ……」
「矢口の気持ち判ったのかもしれない。だから泣いたんだと思う」
「……」
「それってさ、矢口のこと好きじゃなきゃできないよね?」
「……」
「アタシ、矢口を愛しちゃったんだ……」
「……」
「だから矢口にしたこと、悪いなんて思わないから。後悔なんてしないから」
そう言って矢口と合い対峙した。
こんな歯の浮くような台詞吐いて告白したの、人生で初めてかもしれない。
でもその気持ちに嘘偽りなんて無い。
はたしてその気持ちが矢口に通じたんだろうか?
さっきから俯いたままで反応が無い矢口を見てると、不安になってくる。
「……だよ」
「えっ?」
「……嫌い、だよ……」
「……そっか」
想いは矢口の心に届かなかった。
でも、悔いなんて一つもなくすっきりとしている。
- 447 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:24
-
矢口を開放しようと手を離そうとしたら、その手を掴まれた。
一瞬ドキッとするも、
「……かっこつけた圭ちゃんなんて、嫌いだ」
「へ?」
「いつも通りの圭ちゃんじゃなきゃ、オイラ許さない」
「や、矢口?」
「真面目だけど天然で、おっかないけど、でも優しくて、それでいてちょっとエッチな圭ちゃんじゃなきゃ、オイラ好きになんかなんない」
「……」
「圭ちゃんらしい圭ちゃんが好きなんだから……」
泣きながらアタシの懐に飛び込んでくる矢口。
なんか凄い言われようだけど、想いは伝わったようだ。
だって、ずぶ濡れになってた矢口の身体がこんなにも熱くなってアタシに伝わってくるんだから。
お陰ですっかり水気が飛んで洋服が乾いちゃってるし。
いつの間にか矢口もアタシもいつも通りの二人に戻ってた。
ただ一つ違うのは、矢口とアタシの関係に新しく一つの項目が加わったことだ。
同期、親友、戦友、ライバル、以心伝心の仲、そして……恋人。
- 448 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:24
-
『愛、故に……』
−fine−
- 449 名前:編集後記 投稿日:2006/05/14(日) 14:27
- 再びヘロンさんより、やすやぐ、でした。
どっこにでもあるようなシチュエーションなんで、
あんまり萌え要素などは無いです。
ただやぐさんが可愛く見えればもうOK!!
以上ッ!!
- 450 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:28
-
(*^◇^)<け、圭ちゃん、早く隠してよっ!!
- 451 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:29
-
( `.∀´)<矢口、可愛いっ!!
- 452 名前:愛物語。6 投稿日:2006/05/14(日) 14:29
-
(*^◇^)<もおっ、余計なこと言わなくていいよっ!!
- 453 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:43
-
『愛物語2 リターンズ』
主演:矢口真里(♀)、保田圭(♂)
- 454 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:45
-
私の名前は矢口真里。
近くの高校に通う高校3年生。
見た目が小学生と変わんないくらい背が小さいのが、コンプレックス。
でも、そんな私にも素敵な彼氏がちゃんといるんだからっ。
彼氏の名前は、矢口圭。
そう、私の彼氏は2歳年上の圭兄ちゃん。
どうしてそうなったかって言うと、今から数ヶ月前。
私は、圭兄ちゃんが小さい頃から大好きだった。
その想いが強すぎて、圭兄ちゃんを包丁で刺し殺そうとしたんだよね。
そしたらさ、逆に自分のお腹刺しちゃって……。
幸いなことに大事には至らなかったけど、1,2ヶ月ぐらい入院する羽目になっちゃった。
でもね、その間、ずっと圭兄ちゃんが傍に居て世話をしてくれたんだ。
それだけでも十分嬉しかったのに、ある時、私のこう言ったの。
「真里は覚えてないかもしれないからもう一回言う。オレは真里が好きだ」って。
私、正直あの事件のこと全然覚えてなかった。
だから圭兄ちゃんから全部聞いた時は、もう何もかもお終いだと思った。
けど、圭兄ちゃんは私のこと許してくれたんだ。
勿論、両親にはホントの事言えないから、嘘ついてごまかしたんだけど、
全部圭兄ちゃんが私の罪まで被ってくれたの。
メチャクチャに怒られまくって、お父さんにブン殴られたりしたんだよ。
それでも、圭兄ちゃんは「真里の気持ちに気付かなかった俺が悪いから」って。
改めて惚れ直しちゃった。
(〜*^◇^)<ヘヘッ
- 455 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:45
-
退院した後に、圭兄ちゃんは私をとある有名な霊媒師のところに連れてってくれた。
私が入院してる間、圭兄ちゃんはあの時私のとった行動に疑問を持ってたみたい。
自分なりに調べた結果、霊的なものの仕業じゃないかって言ってた。
自分じゃ何も覚えてないからわかんないけど、それほど酷かったのかな?
事情を説明したら、案の定、霊媒師の方から衝撃的なこと言われた。
「彼女にはあまりよくないもの(霊)が憑いてます」って。
私が取った行動はやっぱりその霊の仕業だったみたい。
恋人を失って自殺した人の怨念(?)が、同じ境遇にあった私に憑依したんだって。
いつどこでその霊にとり憑かれたのか、わかんないけど、正体がわかってホッとした。
ちゃんとお祓いをしてもらっったら、なんだか気分が物凄く楽になった気がした。
言い方が悪いかもしれないけど、リフレッシュ!って感じ。
そんなこんなで色々あったけど、今は前みたく平凡な暮らしをしてます。
ただ前と違うのは、私と圭兄ちゃんの関係が一歩前進したこと。
それからもう一つ、二人とも前よりちょっとエッチになったこと、かな。
(〜*^◇^)<ハズカシッ!!
- 456 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:46
-
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 457 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:47
-
今年、受験生な私。
周りの娘は、学校終わったら予備校行ったりしてるけど、私はのんびり帰宅。
だって、家にはサイコーの先生がいるんだもん。
受講料払わなくていいし、なによりご褒美がついてくる最高の予備校。
「だから、ここはさっき言ったろ? 進行形じゃなくて過去形になるんだって」
「え〜、知らないよ〜、初耳」
「真里がボヘ〜っとしてるから。どこ見てんだよ」
「圭兄ちゃん」
「は?」
「だ・か・ら、圭兄ちゃん見てた。真剣な表情する圭兄ちゃんもカッコいいな〜、なんて」
「……バカ(ペシッ)」
「痛っ」
ホントのこと言ったのに叩かれた。
圭兄ちゃんが頭良いからこうやってマンツーマンで教えてもらうのはいいんだけど、
熱心な姿見るとどーしてもそっちに気が入っちゃうんだよね〜。
わざわざ時間割いて教えてもらってるから、ホントは頑張んなくちゃいけないのに……。
「……となるわけ。わかったか?」
「なんとか」
「じゃあ、この問題集のこっからここまで、やってみ」
「え〜、多いよぉ」
「文句言わないでやる」
正直、習ったことを活かして解ける自信が無い。
でもさ、こういうときってホラ、あれがあると頑張っちゃうもんでしょ?
愛の力ってやつ?
だから圭兄ちゃんに聞いてみた。
- 458 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:49
-
「圭兄ちゃん、これできたら、チューしてくれる?」
「は?」
「全部出来てたら、チュ−して」
「……ご褒美作戦、てわけか。いいよ」
「ホント!?」
「ああ。全部出来たらな」
「じゃあごとーはいまして〜」
「んな、ごっちん!?」
「ま、真希ちゃん!?」
いつの間にか、隣りのごっちんこと、後藤真希ちゃんが家に上がってた。
最近めっきりうちに来なくなったな〜、と思ってた矢先だったからめっちゃビックリ。
しかも前よりも数段パワーアップしてる!?
( ´ Д `)<アハッ
「んあ〜、やぐっつぁんなにしてんの〜?」
「何ってベンキョーだよ。今年受験生なんだから、邪魔しないの」
「え〜、別にやぐっつぁんの邪魔しに来たわけじゃないよ〜」
「じゃあ帰りなさい」
「やだ〜、けーちゃんと遊ぶ〜。ねえねえ、けーちゃん。“でこチュ−”って知ってる〜?」
「で、でこチュ−? なにそれ?」
「おでこにチュ−すること。やって、やって〜」
そう言って自分のおでこを圭兄ちゃんに差し出すごっちん。
“でこチュ−”って確か、最近発売になったゲームの中で、主人公の妹が大好きな特技(?)のやつ。
今流行りの「萌え」要素たっぷりの技だ。
もしかしてごっちん、今プレイしてんじゃないの?
「ごっちんさ、『キミ○ス』やってるでしょ?」
「んあ〜、なんでやぐっつぁん知ってんの〜? もしかして経験済み〜?」
「ち、ちがうよ。なんかで話題になってたからさ……」
「ふぅ〜ん、まあいいや。けーちゃん、早く、はやく〜」
ふにゃ顔で圭兄ちゃんに迫っていくごっちん。
っていうか、私の前でなんてことしてんのさ!
圭兄ちゃんは私のなんだから!
いくらお隣りさんでも、チュ−はさせないっ!!
- 459 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:49
-
「ダメっ!!」
「え〜、なにすんの〜?」
「今は勉強中なのっ! 邪魔しない」
「やぐっつぁんはベンキョーしてていいから」
「私がしてても圭兄ちゃんは先生なんだから、一緒」
「そ、そう、今は真里の先生だから、そういうことはここでは、ね」
「え〜、じゃあごとーもけーちゃんの生徒になる〜」
「ダメっ! 授業料払えないくせに」
「授業料はゴトーってことで。今が食べ頃だよ〜」
「ブーッ!!」
「尚更ダメっ!」
つい一年前まではこんなでもなかったのに、一体どうしたらこんなエロ可愛くなるんだろう?
いや、エロ可愛いっていうか、エロエロって感じ?
女子高生には見えないよ、その胸、その腰、その色気。
私もごっちんぐらいエロ可愛かったらな〜。
( `.∀´)<マリハイマデモジュウブンエロイダロ
その後結局、引っ掻き回すだけ引っ掻き回してごっちんは帰ってった。
しかも夕食までたいらげてね(しかもご飯三杯もお代わりして)
お母さんはまた来てね、なんて言ってたけど、当分来なくていいよ。
ごっちんを相手にすると、こっちが一週間分ぐらい疲れるから……。
お風呂から上がって、圭兄ちゃんにちょっと聞いてみた。
「圭兄ちゃん、さっきの"でこチュー"して、って言ったらしてくれる?」って。
そしたら圭兄ちゃん、ちょっと笑み浮かべてから、耳元で
「でこチュ−より、真里の唇にチュ−したい」
だって。
(〜∩◇∩)<イヤァー、ケイニイチャンテバ、ダイタン!!
- 460 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:51
-
(〜*^◇^)<オイラの時代がまた来たよ
- 461 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:52
-
( `.∀´)<今度の矢口は……
- 462 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/17(土) 09:53
-
(〜*^◇^)<あ゛ーッ!! それ以上言っちゃ、ダメッ!!
- 463 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/18(日) 00:47
- 続編キター!!!!!!
隣のマキちゃんが、どう絡んでくるのか楽しみです!
- 464 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:27
-
今日は花の金曜日(古いけど、圭兄ちゃんが教えてくれた言葉)、私はかなりハイテンションです。
なぜかって?
だってぇ、今夜からぁ〜、圭兄ちゃんとぉ〜、二人だけのぉ〜、生活だからっ。
前にも説明したと思うけど、ウチのお父さん、単身赴任してるんだ。
本当は一年だけだったんだけど、なんか延びちゃったみたい。
で、週末になるとお母さんがお父さんと過ごす為に、向こうに行くの。
だから、週末は決まって圭兄ちゃんと二人だけ。
誰の邪魔も入らないから、思いっきり圭兄ちゃんとイチャイチャできるんだぁ〜。
(〜*^◇^)<ヘヘヘッ
そう思って学校から帰ると、厄介なお客さんが来てた。
最近よくウチに顔を出す、あの娘。
「んあ〜、やぐっつぁん、遅かったね〜」
「受験生は忙しいんだってば。誰かさんみたいに午後の授業サボったりできないの」
「なんだ、真希ちゃんサボってきたの? いけないな〜」
「今日はサボってないよ」
「今日は、ってことは、いつもそうなんだ?」
「うっ……だってつまんないんだもん」
圭兄ちゃんに責められてちょっと不貞腐れるごっちん。
と、その横にはもう一人の女の子。
確か名前は……。
「あ、矢口さん。お邪魔してます」
「えっと……テニス部の石川さん、だったっけ?」
「はいっ!!」
勢いよく返事したのは良いけど、なんか声のトーンが高い。
それになんか存在自体が「私を構って〜」みたいなオーラを発してるような気がする。
( ^▽^)<ヤグチサァ〜ン
……深く関わんない方が良いかも。
- 465 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:28
-
「で、何しに来たの?」
「別に〜。ごとーがウチに着いた時、けーちゃんとばったり会ったから、そのまま来ちゃった」
「来て早々に、アイス平らげたけど」
「んあ〜、余計なこと言わなくていいよ〜」
「しかも真里も分まで」
「えーっ!!」
ふと見れば、テーブルの上には私の大好きな『ガ○ガリ君』。
さすが、圭兄ちゃん! ちゃんと私の好みをわかってくれてるね!
ってそういうことじゃなくてぇ!!
「なんで人の分まで食べちゃうのさ!?」
「だってやぐっつぁんが遅いし〜、アイス溶けちゃうじゃん」
「冷蔵庫に入れとけば問題ないじゃんか!!」
「うわぁ〜、やぐっつぁんが怒ったぁ〜。梨華ちゃ〜ん、助けてぇ〜」
「えっと、その、あ、当たりが出なかったので、もう一本食べられることはなかったですよ?」
「……」
何なんだろ、この娘。
人の話を聞いてなかったのか、それとも天然なのか、全然関係ないことを真顔で喋ってるよ。
しかもちょっと泣き入っちゃってるし……。
ちょっと、怖い……かも。
「……もういいよ」
「今度はごとーがなんか奢ってあげるから〜」
「期待しないでおくよ」
いっつもそうだ。
ごっちんからそう言われて奢ってもらった試しなんか一度も無い。
なんせ、昨日の晩御飯に何を食べたかすら忘れてしまう人だから……。
( ´ Д `)<アハハ
- 466 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:29
-
でもさ、さっきから気になることが一つ。
石川さんの圭兄ちゃんを見る眼がさ、私と同じなんだよね。
圭兄ちゃんに話を振られると、ちょっと恥ずかしそうに小声で応えるの。
(*^▽^)<ソ、ソウナンデスゥ〜
で、ごっちんが圭兄ちゃんと喋ってる時は、ずっと羨ましそうに見てるし。
( ^▽^)<……イイナァ、ゴッチン
多分、圭兄ちゃんのこと、好きになっちゃいましたって感じ?
ちょっとヤバイなぁ……。
圭兄ちゃんとちょうど釣り合う背丈だし、顔可愛いし、足首細いし、黒髪のストレートだし、
出るトコ出てて引っ込むトコ引っ込んでるらしいし(byごっちん談)
(〜;^◇^)<ハァ……
- 467 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:30
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 468 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:31
-
ようやく二人も帰って、至福の時が来た。
けど、ちょっと不機嫌な私。
今日、はっきりと石川さんが圭兄ちゃんを狙ってるのがわかっちゃったから。
確か石川さんて、サッカー部の吉澤くんとお付き合いしてたはずなのに……。
まさか、告白の時に邪魔した仕返し!?
だとしたら、私……。
ちょっとヘコンでる私に追い討ちをかけるように圭兄ちゃんが聞いてきた。
「今日来た石川さんのこと、真里はよく知ってんの?」
「……詳しくは知らない」
「なんかモテそうな娘だな。普通にしてたら、だけど」
やっぱり圭兄ちゃんも薄々感じてたんだ。
あの雰囲気は引いちゃうよね〜。
ちょっと元気回復。
「人気はあるみたい。男子生徒には」
「へぇ〜」
「なんで? 気に入ったの?」
「いや、帰り際に『また来てもいいですか?』なんて聞かれたからさ」
「ええっ!? だ、ダメだよ。好きになっちゃ!!」
「まさか」
「圭兄ちゃんは誰にも渡さないんだからっ!!」
そう言って圭兄ちゃんの腕を抱きしめた。
その時、ふと頭にあのアニメ声したぶりっ子が浮かんだ。
(*^▽^)<リカハ、ヤスダサンガ、スキナンデスゥ〜
ム、ムカツク〜!!
- 469 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:31
-
「わかってるよ」
「ホントに? ホントに浮気とかしない?」
「する訳ないだろ? 俺には真里がいるから」
微笑んで私の頬を触ってくれる圭兄ちゃん。
でもそんなこと位じゃ私には物足りないよ〜。
もっとしてシテ〜。
「じゃあ、証拠ちょうだい。ん〜」
「なに甘えてんの? ひょっとして疑ってる?」
「いいじゃん!」
「ハァ……信用されてないことが哀しいなぁ」
「だから、チュ−してくれたらちゃんと信じる」
「じゃあダメだな」
「なんでよ!?」
「チュ−だけじゃガマンできない。いっそのこと……」
そう言って圭兄ちゃんの手が私の胸を触った。
……もぉ〜、エッチなんだから〜。
( `.∀´)<ハッハッハ〜
- 470 名前:お返事 投稿日:2006/06/24(土) 21:31
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>名無しさん
最近、妙に『やすやぐ』にハマってまして、以前のがどうも消化不良気味だったので
あえて復活させました。
隣りのマキちゃんは勿論、圭兄ちゃんと真里ちゃんもパワーアップしてますので、
よかったら読んでやってください。
- 471 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:32
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(〜^◇^)<隠すよっ!
- 472 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:33
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( `.∀´)<遂に矢口がエッ……
- 473 名前:愛物語。2 Returns 投稿日:2006/06/24(土) 21:34
-
(〜*^◇^)<あ゛ーッ!! それ以上言っちゃ、ダメッ!!
- 474 名前:ご報告 投稿日:2006/08/06(日) 11:11
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スレッド整理が近いようなので……
忙しくて更新できずにいますが
保全でお願いします。
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