ペパーミントキャンディーはほろ苦く
- 1 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:37
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少し前に、花板で「『イエスタデイ』をもう一度」
月板で「さようなら『カントリー・ロード』」を
書いていた者です。
久しぶりにこちらに書いたものを載せようと思い、
再び参りました。
なお、この作品は『イエスタデイ』と
『カリフォルニア・ガールズ』を読んでいないと分からない箇所があります。
どうぞそちらを一読されてから、お読みください。
花板の倉庫に「『イエスタデイ』をもう一度」のタイトルで入っています。
- 2 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:39
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ペパーミントキャンディーはほろ苦く
- 3 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:40
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カーテンの掛かっていない開け放たれた窓からは、
昇り立ての太陽の光が段々と射し込んできている。
点けっぱなしの蛍光灯には宵のうちに進入を果たした羽虫たちがざわめき、
明かりに特攻を繰り返している。
使い古されたモスグリーンの扇風機はカタカタと耳障りな音を立てながら、
首を左右に振り続ける。
その近くには渦を巻いた蚊取り線香が細い煙を立ち上らせていた。
ぽとりと長くなった灰が落ちる。
部屋の中央にずんと座り込んだ飯田圭織はイーゼルを目の前に、
そこに掛かった描きかけの絵をじっと睨み付けている。
右手にはパレットが握られ、そこからは油絵の具の強い匂いが漂ってくる。
左手には道ばたで貰った宣伝用の団扇を持って、
自分の滑らかな白い肌の太股をパシパシと叩く。
蚊に食料を提供した部分が、所々ぷっくりと赤く腫れ上がり、
圭織は忌々しそうにその箇所を掻きむしる。
- 4 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:41
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「う〜ん」
圭織は低いうなり声を上げながら、時折角度を変えながら絵を眺めた。
キャンバスには薄暗い小部屋に少女が腰を下ろしている姿が描かれていた。
手を丁寧に組んだ少女の座る椅子は焦茶色の頼りない木製椅子で、
僅かにうつむき脇に流れる長い髪が少女の横顔を隠している。
閉じられた鎧戸からは、薄い陽の光が忍び込んでいる。
圭織は立ち上がると腕組みをして、
イーゼルの周りをぐるぐる回ったり、
距離を取ってみたりしながら絵を鑑賞した。
それからため息を吐くとパレットを置いた。
- 5 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:42
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団扇で我が身を扇ぎながら、髪を留めていたゴムを取ると、
ごろりとフローリングの床に寝転がる。
徹夜で酷使した目には疲れが溜まっており、
さらに外から突き刺すような陽の光が痛く染み入る。
圭織は絵の具で汚れた指先でゆっくりと目端をほぐすと、
恥じらいもなく大きな欠伸を洩らした。
横たわっているとコーヒーで押さえ続けていた眠気が押し寄せてきて、
圭織は口を半開きにしながら天井で光度の落ちた蛍光灯を見つめた。
長く弧を描きながら広がる髪や着っぱなしのTシャツは汗臭く、
圭織は自分の匂いに顔をしかめる。
- 6 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:43
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「シャワー、浴びなきゃなぁ」
圭織は呟いてみるも、ちっとも動く気になれず、
寝転がったままコーヒーカップを探った。
ようやく引き寄せたカップの中は、
コーヒーの残り粕がこびり付いているだけで、圭織は舌打ちをした。
外では雀の柔らかな囀りが一日の始まりを伝え、
人々の挨拶を交わす声や、犬の鳴き声などが聞こえてくる。
新聞配達夫のバイク音も近くから聞こえてくる。
もう間もなく新しい一日が目覚める時間である。
- 7 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:43
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圭織は物憂げに立ち上がると、う〜んと背伸びをして、首を捻った。
痛々しいほどに骨の鳴る音がして、
圭織は揉み砕くように肩に交互に手をやった。
もう一度生欠伸を洩らすと、仕方なさそうに浴室へと向かう。
このままベットに潜り込みたい気分であるのだが、
さすがに三日も風呂に入っていない自分の匂いには辟易する。
圭織は半分眠った顔で、どうにか風呂場に着くと、
浴槽に水を張るためにコックを捻った。
それからすっかり乾ききったタイル床に膝を付いて、
溜まっていく水に見とれるようにぼんやりと眺めた。
- 8 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:44
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- 9 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:45
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古く寂れたチャイム音が玄関口から聞こえてきた。
圭織ははっと頭を上げる。
僅かながら浴槽の淵に肘を付いて眠ってしまっていたようだ。
水は溢れ出しそうなほどに溜まり、
長く垂れた髪は一人勝手につかってしまっており、
しっとりと毛先を湿らせていた。
圭織は慌てて水を止めてから、
不機嫌そうに髪を絞ると、
重々しい我が身を引きずりながら玄関へと歩く。
途中足の小指を廊下の角にぶつけてしまい、圭織は目を見開いた。
「っう」
圭織は怒り任せに壁を拳で叩き、再び痛みに顔をしかめる。
圭織は心底腹立たしそうに、壁を鋭い目つきで睨んだが、
再び呼び鈴が音を立てたため、圭織はいそいそと玄関の覗き穴に目を当てた。
- 10 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:45
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「ったく、誰よ。こんな朝っぱらから」
外には隣りに住む紺野あさ美が携帯電話を片手に立っていた。
あさ美の顔にはまるでこの日にぴったりの笑顔を浮かべており、
それがますます圭織を不機嫌にさせた。
圭織はチェーンを外して鍵を外した。
がちゃりという重々しい音と同時に、遠慮のない力がドアを引いた。
圭織はドアノブを握りしめたまま外に引き出される格好になった。
圭織はあさ美をじろりと見やってから、視線を脇にずらした。
どうやら先ほどから何度も呼び鈴を押していたのは、
あさ美の同級生の辻希美であったようだ。
- 11 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:46
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「おっはようございま〜す」
「…あっ、…おはようございます」
希美の溢れんばかりの元気な声と、
あさ美のほっそりとした弱々しい声の波状攻撃に、
圭織は痛そうにこめかみに手を当てた。
あさ美の方はどうやら圭織が徹夜明けであることを見極めたようだ。
先ほどまでの笑顔が一瞬にして強張った。
希美にはそこまで見ろというのはかなり無理な話であり、
現に希美は圭織の腫れぼったい顔を見ても、
一向に意に介した様子もなくにこにこと普段のように輝かしい笑顔を浮かべていた。
「なぁに? こんな朝早くからさぁ」
とにかくベットに入りたい圭織は、露骨に冷たい声で二人を威圧する。
- 12 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:47
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「飯田さん。準備できましたぁ?」
圭織の様子など気にも掛けない希美は弾んだ声で尋ねてきた。
「準備? 何のこと?
大体何でののが紺野と一緒にここにいるの?」
「もしかして準備してないの。
昨日確認したでしょ。今日はみんなで海に行く日だって。
それでののは紺野ちゃんの所に泊まるってちゃんと報告したのにぃ」
「……海?」
圭織は記憶を探ってみる。
そういえばずいぶん前に希美から海に誘われていたような気がする。
その時は別のことを考えていたので生返事をして、
その場を流していたように思う。
昨日も希美が顔を見せに来たが、
ちょうど絵を描いている最中だったため希美の話など耳も傾けずに、
邪険に追い返した。
圭織は膨れっ面をして腕組みをした希美と、
携帯電話を握ったままおろおろとしたあさ美を交互に見た。
見れば纏められた手荷物が置かれている。
- 13 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:47
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「あ、あの、で、電話を…」
あさ美がおずおずと圭織の方へ電話を差し出してきた。
圭織は訝しげながらそれを耳に当てる。
「おっはー。カオリ、起きてるぅ?」
キンキンとした声が圭織の耳に突き刺さった。
圭織は思わず電話を耳元から離してしまう。
電話の向こうでも何か騒々しく、今度はキンキン声が引っ込み、
先ほどよりはやや落ち着いた声が聞こえてきた。
「おはよう。カオリ。起きてた?」
「何とか。…ねぇ、なっちと矢口も行くの? 海」
「え、だってそういう約束だったじゃん。
カオリが運転してくれるっていうからレンタカーも借りてるんだよ。
あ、後でお金ね。ワゴン車だからちょっと割高なんだけどさ」
「レンタカー? ちょ、ちょっと待ってよ。
いつ私が運転なんかするって……」
圭織はちらりと希美とあさ美を見やった。
希美はこくこくと首を振ってる。
圭織はこれも無意識に答えた末路であることを知った。
- 14 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:48
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「だって、私は免許持ってないし、矢口はあれだからさ。
運転できるのカオリだけなんだけど…。
それにののからカオリがオッケーだって聞いてたから」
「ちょ、ちょっと待ってよ。
……それって今日じゃなくちゃ駄目なの?」
「飯田さん!」
脇で希美が怒ったように両足をばたばたと鳴らした。
圭織はそれを手で制止ながら電話の向こうの返答を待った。
「だって、もう予定組んじゃってるし。
私たちもそのために今日バイトの休みもらったんだよ」
「……ねぇ、私、
徹夜明けでこれから寝ようとおもってた所なんだけど…」
「それは……声から想像できるけどさぁ。でも……」
圭織は沈黙の間に二人の様子を見た。
あの温厚なあさ美でさえ圭織のことを恨めしげに
(意外なほどの険しさに思わず圭織はたじろいでしまった)見ているし、
希美の方はすっかりむくれた顔で圭織を睨み付けている。
圭織は仕方ないようにあさ美に電話を返しながら
「せめてシャワーぐらいは浴びさせてよね」
と言った。
二人は顔を見合わせてにんまりと笑った。
圭織は深々と重々しいため息を吐いた。
- 15 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 01:49
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- 16 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:44
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入浴をしたためか、眠気が薄らぎ僅かながらの元気も湧いてきた。
排水溝に流れていく水音を尻目に、
圭織はまだ湿り気の残る身体に淡いブルーの下着を付け、
皺の寄ったシャツと洗い晒して色落ちをしたジーンズを着込むと、
濡れ髪をタオルで拭きながら、玄関先に顔を出してみた。
希美とあさ美が玄関前に小さく座りながら圭織を待っていた。
希美は、あさ美の肩に寄り掛かるように軽く舟を漕いでいる。
あさ美は希美を起こさないようにちょっとずつ身体を動かしながら、
希美の頭が落ちないように努力をしていた。
- 17 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:45
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圭織はリビングに戻ると、
使い古したベージュのリュックサックを引っぱり出した。
濡れたタオルを扇風機に掛けると、
自分の頭には大きめの麦わら帽子を被る。
うら若き乙女の姿としては少々センスに欠けたものであることは否めないが、
万年金欠の圭織にとってはこの格好が一番しっくりとくる。
圭織は開けっ放しになった窓に近づく。
蝉が窓の桟に身動きもせずにじっと止まっていた。
圭織が指先でつついて追い払おうとすると、
羽音を立てながら窓ガラスに飛び退いた。
それから報復でもするように凄まじい声で鳴き始める。
「うっさい」
圭織はぶつくさ言いながら強引に窓を閉めると、
蝉もからかい飽きたのか何処かへ飛び去ってしまった。
- 18 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:46
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最後に窓鍵とガス栓を確認すると、
冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出して一気にあおった。
リュックサックを片肩に掛けて、玄関に向かう。
「あ、準備、できました?」
あさ美が目を擦りながら振り返った。
同時に希美の頭があさ美の肩から落ち、
希美がバランスを失ったことに驚き、仰け反る。
「あへ、いいらさん?」
「寝ぼけてちゃってるんだから」
圭織は苦笑しながら、希美の額を指先で押した。
希美はぱちぱちと瞬きを繰り返し、
それから状況を思い出したように照れ笑いを浮かべた。
圭織は胡座をかいて、玄関口に座る。
- 19 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:47
-
「で、これからどうするの?」
「今、安倍さんたちが亜依ちゃんたちを迎えに行ってくれてますんで、
もうしばらくしたら連絡が入ると思います」
「何、加護とかも来るの?
一体何人の大所帯で行くつもり?」
「ええっと、あいぼんでしょ。まこっちゃんでしょ。
それに亜弥ちゃん。安倍さんに矢口さんと、ののに紺野ちゃん。
それに飯田さん。八人だ」
希美が指折り数え終えると、にこにこと笑った。
一方の圭織はうんざりしたように渋い顔を作った。
「本当は紺野ちゃんの家で一泊する予定だったんだよ。
だけどあいぼんたちは外泊許可が取れなくって、
そんでののだけ紺野ちゃんの家に泊まったんだ」
「その三人は置いていってもよかったんじゃないの。
小川なんか私には会いたくなんじゃないの?」
「そんなことないよぉ。
まこっちゃんも飯田さんを誘っていいって言ってたんだから」
希美が頬を膨らませて抗議をしてきた。
これは圭織にとって意外なことで、
「ふ〜ん」と気の抜けたような声を出した。
- 20 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:47
-
「あ、そ、そういえば、飯田さん。
また絵を描かれてたんですか?」
不機嫌そうな圭織を見てあさ美は、
話題を変えるように会話に割り込んできた。
「まぁね」
「あ、じゃ、じゃあ、今度、
描き終わったらぜひその絵を見せて下さい。
私、飯田さんの絵を見るの楽しみにしてるんです」
「あ、ののも見たいなぁ。
何せ飯田さんはののの絵の先生だし」
「今回も失敗作よ。
あんたたちにも見せるような価値のないのができちゃった」
圭織はぷいとそっぽを向いた。
希美とあさ美は困ったように顔を見合わせていると、
表の方で急ブレーキを踏む音が聞こえてきた。
それからあさ美の携帯電話が音を立てて鳴りだした。
- 21 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:48
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- 22 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:49
-
一応画家を目指している飯田圭織にとって、
今、絵の話題が出てくるのが苦痛であった。
描く気は十分に満ちている。
描きたい漠然とした構図もある。
だが、いざ筆を握って真っ白いキャンバスに向かうと、
その情熱は雲散霧消してしまい、
結局何を描けばいいのか分からなくなってしまう。
苛立ちだけが募り、いつの間にか強引に動かぬ筆を動かして、
出来上がったものにがっかりする日々が最近続いている。
今までにもこういうことはよくあったし、
得てして芸術家というものは好不調の波があることは、
過去の偉人たちの例からも学んでいた。
だからそういうときは筆を捨て、
絵のことを忘れていると突然神が舞い降りてきて、
圭織は再びキャンバスの前に向かわせた。
そういう時の作品は自分でもほれぼれするほどの作品であり、
他からも評判がよかった。
- 23 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:49
-
だが今回ばかりは違った。
五月の国立にある公民館での自由参加の展覧会に
自慢の一品を出展して以来、
圭織は満足のいく絵を描いていない。
その絵を見た希美が弟子入り志願などしてきて、
気分転換になるかと引き受けてみるも、全く変化は来なかった。
それどころか一層絵と自分の心が離れていく感じであった。
特に希美がようやく一枚の絵を仕上げたとき、
圭織は正直希美の絵に嫉妬をした。
出来などそこら辺の小学生が描くよりもひどいものではあった。
だが、それ以上に希美が、
描き上げた絵を満足げに眺めているその顔を圭織は羨ましく思ったのだ。
八月も末というのに
これほどの長いブランクは圭織にとっては初めてであり、
それだけに焦燥に駆られている状況だった。
- 24 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/13(月) 22:50
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- 25 名前:ななち 投稿日:2003/10/17(金) 01:14
- 『イエスタデイ』をもう一度」 さようなら『カントリー・ロード』」
両方、大好きでした!何度も読みました。作者氏の続編をリアルタイムで読めるなんて
超感激です。興奮のあまり読む前にレスしてしまいました。
今からゆっくりと一昨目から読みたいとおもいます。
- 26 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:03
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>>25
ななちさん、レスありがとうございます。
そのように言ってくれるだけで、
書いている者冥利に尽きます。
この作品も楽しめるものになるように
頑張っていきたいと思います。
- 27 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:04
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***
- 28 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:06
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A.M.9:00
は〜い、アロ〜ハ〜。
みんな元気にしてる? アタシはとっても元気よ。
今日もFMトウキョウから、
『ミカの電リク・ミュージック・カフェ』をお送りしま〜す。
DJはもちろん、キュートでいつも元気なハワイ娘、ミカで〜す。
この番組はみんなからのリクエストから成り立ってるから、
これから正午までどんどん電話、ファックス送ってきてね。
電話番号はみんながご存じの通り。
東京03−××××−〇〇〇〇
ファックス番号は、
東京03−※※※※−△△△△
今日初めて聞いた人はちゃ〜んと覚えて、たくさんのリクエスト頂戴ね。
- 29 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:07
-
そうそう今日の天気図、みんな見た?
太平洋高気圧が日本を覆っちゃってて、
台風でさえ手出し不可みたいな感じで。
暑苦しいスーツ姿の気象予報士が
『今日の天気と気温は昨日と同じです』だってさ。
温度計は35度を指してて、それ見てるだけでもうんざりよ。
アタシもハワイで暑いのには慣れてるはずだったんだけど、
こうもじめじめした暑さにはお手上げ。
ほんとにこう暑いと何にもやる気がしなくなっちゃうよねぇ。
- 30 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:07
-
そういうときは海!
きっとこの番組を海に行く車の中で聞いてる人もいると思うけど、
もしかすると渋滞に巻き込まれてるかもね?
そしたらザマーミロねぇ。
…な〜んて冗談なんだけど、ほんとうに羨ましいわ。
アタシもね、もし休みを取ることが許されるのなら、
絶対に海に行きたいなぁ。
それじゃあ、ここらへんでお話は一旦お休みして、
今日の一曲目、ミカからみんなへのプレゼント。
ミカもね、小学校の時、この花の観察、宿題でやったよ。
オアシスで『モーニング・グローリー』
- 31 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:08
-
CM
は〜い、じゃあ、
さっそくみんなからのリクエストもどんどん流していこうかな。
まずこのファックスから。
東京都武蔵野市のペンネームは
…ビューティー・ケメ子ちゃんから。
いつもありがとね。
『ミカちゃん、こんにちは…』
はい、こんにちわ。
『私、受験生なんですけど、この暑さはサイアク。
全然勉強する気にならないの』
うんうん、分かる分かる。
『今日は大好きな部活が休みで、
本当は勉強しなきゃいけないんだけど、
朝からベットでゴロゴロしながらこのラジオ聞いてるよ』
それじゃ今もベットでゴロ寝してるのかな?
それも羨ましいなぁ。
- 32 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:10
-
『しかもね、部活の後輩の中には、
呑気に海に遊びに行ってる連中もいるのよ。
何かすっごく腹が立って、
今度部活でしごいてやらなきゃな〜んて考えてるんだけど…』
あ、そういうのはどんどんしごいちゃいなさい。
アタシも一緒にしごいてあげたいわ。
『それで海に行けない哀れな受験生のために、
海に行ったような気分にさせてくれる曲をリクエストします』
はいはい。ほんと受験生は大変よね。
夏は受験のテンノウザンなんて言うけど、
この暑い中みんな頑張ってるんだもんね。
大丈夫、今頑張ってれば、きっとその努力が報われるよ。
それじゃあ、
東京都武蔵野市のビューティー・ケメ子ちゃんからのリクエスト、
桑田圭祐で『波乗りジョニー』。
これで気分をリフレッシュさせて勉強を頑張ってね。
- 33 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/19(日) 02:10
-
***
- 34 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:35
-
相模湾へと続く国道129号は車の群が列を成し、
一向に進む様子もなかった。
圭織は苛ついたようにハンドルを指先で叩く。
隣りの助手席に座った少女、
矢口真里もつまらなそうに道路地図を捲りながら、
ラジオから流れてくる桑田圭祐の渋みのある声に合わせて
鼻歌を歌っている。
やがて曲が終わると、
再び耳に突き刺さるようなDJのハイトーンボイスが
どうでもいいようなことを話し始めたため、圭織は音量を絞った。
「矢口が道を間違えなきゃよかったのに」
圭織の苛立った呟きを真里が耳敏く聞きつけ、首を向けてきた。
「何だよぉ。途中で急に246になってるんだもん。
どっち行ったらいいのか分かんなくなっちゃったんだよ」
- 35 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:38
-
「助手席に座ったらちゃんと標識見ててよ。
それに地図だって持ってるんだから」
「大体、オイラが道間違えたのはそんなに影響ないよ。
すぐに戻れたんだしさぁ。
元はといえば、この渋滞に引っかかった原因は圭織だよ。
一人でのんびりお風呂なんか入っちゃって、
みんなに迷惑かけてんじゃん」
真里が勝ち誇ったように下唇を出してくる。
もう間もなく二十歳を迎える少女とは思えぬほど
子どもっぽい動作だった。
長身の圭織は、
第二次成長期をまだ迎えていないのかと思える
小柄な真里を見下しながら、
不満を込めて言った。
「私はね、今日、急に海行くって言われたようなものなの。
しかも運転手。徹夜明けに最悪の状況だわ」
- 36 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:38
-
「だからさぁ、オイラが運転するって言ったのにさぁ」
真里はダッシュボード上に地図を放ると、
腕を組んで座席に背中をもたれた。
圭織も合わせるようにため息を吐く。
バックミラーには一向に車が進まないことを気に掛けた様子もない、
脳天気な少女たちがリクライニングシートを倒して広い平面を作り、
菓子袋を開けながら談笑に華を咲かせていた。
「何、何、どうしたのよ」
圭織の恨めしげな視線に気付いたように安倍なつみが、
前座席の隙間から顔を覗かせた。
口にはスティック状のスナック菓子をくわえている。
「なぁに、二人でぶすっとした顔してんの。
ほら、もっとスマイル、スマイル。
せっかくのお出掛けだよ。しかも絶好の海日和。
そんなつまんなそうな顔してないでさぁ」
なつみがからからと笑い声を上げた。
- 37 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:40
-
「あのね、渋滞で苛々しないドライバーなんていないの」
圭織は冷たく突き放すように言った。
「ねぇねぇ、さっきからさ、カオリ、文句ばっかりなんだよ。
こんなんだったらオイラが運転した方がよかったんじゃない?
なんなら今からオイラが変わってもいいんだけど…」
真里の言葉を聞いて、なつみは急に真顔になり、首を横に振った。
「ダメ! それだけは絶対にダメ。
矢口は自分がどんな運転してんのか分かってる?
なっちはね、
あんたがよくそんな腕で免許取得できたのか
今でも不思議なんだからね。
矢口の運転はレールを走らない
ジェットコースターと同じなんだから」
「何でさぁ。さっきも絶好調だったじゃん」
「信号が黄色から赤に変わろうとしてるのに、
平気な顔して交差点に飛び込んで、
お婆ちゃんを引きそうになってたじゃないの」
「だって、黄色は進めじゃないかよ」
真里が大真面目な顔で言ったため、
なつみは呆れたように首を振りながら圭織の方を見た。
- 38 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:41
-
「ね、こんな矢口に運転任せたら、なっちたち死んじゃうよ」
圭織は舌打ちをしてから、
サイドブレーキを下ろして、ブレーキに掛けた足を少しだけ上げた。
のろのろと車が前車に付いて進む。
圭織は思う。
こんな不毛な言い争いに参加している自分はおかしいと。
今までの自分なら人と接することを好しとはせずに、
芸術家として孤高の鷹を決め込んできた。
それが今こうして行きたいくもない海に車を動かしている。
昔から口下手で、
我の強い圭織にとって隣近所の付き合いほど困難なものはなく、
一人でじっと部屋に隠っている方が気が楽なはずなのに、
この面々から連絡があると強引ながらも
部屋から引っ張り出されてしまう。
圭織は言い争いを続けているなつみと真里を見ながら、
そしてバックミラーで騒ぎ続ける少女たちを見ながら、
深く長いため息を吐きだした。
- 39 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/24(金) 23:41
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***
- 40 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:29
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サザンビーチちがさきは、夏休み中の人手で最高に賑わっていた。
その名からも分かるように
『サザンオールスターズ』と縁の深い海岸沿いであり、
歌にも歌われている烏帽子岩を見て取ることもできる。
夏の長期休業中には
三十万人ものマリンスポーツを楽しむ客に溢れかえり、
夜には花火大会のために浴衣姿の艶やかな女性客や
それを目当てにする男性客などで賑わいをみせる。
柔らかな砂浜には造りの脆そうな海の家が建ち並び、
タオルを首に巻き、
Tシャツから見える素肌が真っ黒く焼けたアルバイトたちが
声を嗄らしながら客寄せをしている。
- 41 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:30
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圭織は車のクーラーを切ると、自然と息を洩らした。
外では燦々と太陽が輝き、
窓越しに海で楽しむ人々の声が響き聞こえてくる。
あれほど不機嫌そうに鼻の穴を膨らませていた真里も
海を目の前にした瞬間にぱっと顔を輝かせ、
まるで子どものようにはしゃぎ、
車が停まると、もどかしそうにドアを開けて外に飛び出ていく。
後ろのスライドドアも勢いよく開いて、
歓声を上げながら人影が出て行く。
圭織は車中で蒸し焼きになるわけにいかないため、
重々しい身体を引きずりながら車から降りた。
「あ、もぉ、ちょっとぉ、荷物、荷物」
圭織は荷物のリュックを腕にぶら下げながら、
駆け行ってしまった者たちを呼び戻そうとしている少女、
確か松浦亜弥という名前だったと思う、
がむくれているのを見た。
- 42 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:31
-
「私、呼んできますね」
大きなバスケットを引っぱり出しながら、
あさ美が最後に車から降りると、
ビーチサンダルをぱちぱちいわせながら行ってしまった群を追った。
圭織はスライドドアに鍵を掛けると、
黙ったまま亜弥の持つパラソルに手を添えた。
亜弥は驚いたように圭織の方を見たが、ちょこりと頭を下げた。
「あ、ありがとうございます」
高めの可愛らしい声だった。
圭織は「別に」と答える。
答えてから、ずいぶんぶっきらぼうな答え方だと
思わず亜弥の方を見やってしまった。
相手はそんなことを気にした様子もなく、
手で日差しを遮りながら少しだけつま先立ちをしながら、
駆けていったあさ美の背を見送っている。
- 43 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:31
-
「そういえば、…飯田‥圭織…さんで、いいんですよね」
亜弥が確認するように尋ねてきた。
にこにこと笑いかける亜弥に、圭織は訝しげながら答えた。
「そうだけど……」
「よかったぁ。初対面の人が多くって、
何か誰が誰だかちょっと分かんなかったんですよぉ。
でも、これで飯田さんはオッケーっと。
あ、でもちゃんと話には聞いてたんですよ。
ののちゃんとかに。いい人だって」
「いい人…ね…」
圭織は希美が『いい人』と語っている情景を思い浮かべた。
きっと自慢げな表情で、
あることないこと尾ひれを付けながら話しでもしたのだろう。
圭織の口元が自然と緩んだ。
- 44 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:32
-
「どうせ辻ぐらいなもんでしょ、
そんなこと言ってるの。
ほかの娘はねぇ、
…そうね、偏屈の変わり者だなんかって言ってない?」
圭織は意地悪く亜弥に聞くと、
図星だったらしく亜弥は顔を引きつらせ、
それから言葉を探すように目を激しくしばたたいた。
亜弥は困ったような曖昧な笑みを作って、
その場の空気を変えようときょろきょろと首を振りながら、
待ち人たちが来ることを望んだ。
その下手な誤魔化し方に、圭織は亜弥に好感を持った。
「……あやや」
圭織がぼそりと呟いた。
亜弥は圭織を見上げた。
「はい?」
「あ、うん、何でもない」
「あややって私のことですか?」
「うん? 何かそんな気分がしたから。
あんた、亜弥って言うんでしょ。
だから、あややって。…あだ名」
「あやや…ですか?」
亜弥は何度もその呼び名を確かめるように、ぼそぼそと呟いた。
- 45 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:33
-
「そう。あんたが気に入らなくても、
私はそう呼ぶから。その方が呼びやすいの。
まぁ、そんなに呼ぶ機会はないと思うけど」
「あ、いえ……。何かいいですね、あややって」
亜弥がそう言ってにこりと笑った。
「気に入ったの?」
「はい。今度からみんなにもそう呼んでもらうようにしよっかな」
「ふ〜ん。それじゃあさぁ、あやや」
「はい」
「このパラソル、取りあえず車に立て掛けとかない?
別に今すぐ運ぶわけじゃないんだから、重いでしょ」
- 46 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:34
-
「あっ、そうですよね」
二人は車にパラソルを立て掛けると、
じっとりと浮かび上がっている額の汗を腕で拭った。
圭織は隣で忍び笑いをしている楽しそうな亜弥を見ながら、
何がそんなに可笑しいのかと小首を傾げた。
「飯田さんっていい人っていうか、
…なんかおもしろい人なんですね」
亜弥が唐突にそんなことを言った。
「はい?」
不意をつかれた圭織は間の抜けた声を出してしまい、
それが面白かったのか亜弥は吹き出し、声を上げて笑った。
- 47 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:34
-
*
- 48 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:35
-
圭織はぼんやりと両膝に両肘をついて、
その上に頭を乗せながら、
打ち寄せる白波の向こう側で輝く空を
どのように表現しようかと考えていた。
天と海が一線で交わり、天上は幾重の層になり、
コバルトブルーから上昇するごとに空色へと近づいていく。
遠くに沸き上がった入道雲は力を誇示するように、
まるで力瘤を作るようにその範囲を広げている。
浜辺には人がぎゅうぎゅうに集まり、
色とりどりのパラソルが花を咲かせている。
芸術的な砂の城が建てられていたり、
日差しで肌を焼く女性たちがビニールシートに横になっていたり、
その間を縫うように棒アイスを売る商売人がいたりと
人間模様も様々である。
- 49 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:36
-
中には泳ぐ気など全くなさそうなTシャツ姿の初老の男性がいて、
肩から明らかに怪しい黒く大きな鞄をぶら下げながら
浜辺を行ったり来たりしている。
白いビニールボールがぽんぽんとリズミカルに宙に舞い、
それに合わせるように歓声が起こる。
波が徐々に浜辺の線を上げ始め、
その水に触ることを嫌がる子どもは泣き声を張り上げ、
一方では暑苦しい毛皮の上から水着を着せられた子犬たちは
物珍しそうに波に近寄っては
その前足でちょいちょいとちょっかいを出している。
- 50 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:36
-
圭織はビニールシートの上で座り直す。
立てたパラソルからは色のある影が落ち、
圭織は差し込んでくる日差しに眩しそうに、
麦わら帽子を下げた。
何もしていないのに、白い肌からは汗が吹き出、
じめじめとする長いズボンが恨めしい。
「ったくさぁ、あんたたちがいなきゃ、
オイラはアバンチュールな夏を過ごせたのにさ」
真里がぶつくさ呟きながら、ビニールシートに腰をついた。
長めの髪が水に濡れ、
きらきらと日に当たり輝いている。
フリルの付いたスカーレットのビキニを恥じることなく着込み、
その肌はすでに日に焼けて赤くなっていた。
真里の後ろに付き従うようにいたのが、
加護亜依と辻希美である。
亜依は南国風の紋様の描かれた向日葵色のセパレーツを身につけ、
両手に海の家で購入してきたであろう、
かき氷の入ったカップを抱えていた。
口元は真里の言葉に反論するように尖らせており、
つんと横を向いている。
- 51 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:38
-
一方の希美は気に掛けた様子もないように
かき氷のカップを片手に、一人満面の笑みを浮かべていた。
マリンブルーを下地にし、
薄いラインが斜めに入っているワンピースの水着は、
希美によく似合っていて可愛らしかった。
「そんなんうちらの所為やないもん。
あっちが勝手に勘違いしてただけやで」
亜依は不満そうに真里に噛みつく。
真里は人差し指を振りながらにやりと笑って見せた。
「違うんだなぁ。この矢口真里様一人だけだったら、
十分に対象に見えた訳よ。
つまりナンパ目的の男たちにとってオイラは魅力的な獲物?
ってな具合でさぁ。
事実途中まで上手くいってたじゃん。
それなのにあんたらが寄ってきたら『こぶつき』だ、
なんて言われちゃって。
ガキのお守りしてるように見えたんだ。きっと。
あんたたちが寄ってこなかったら、今頃上手くいってたのになぁ」
- 52 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:39
-
「『う〜ん、マリ、
どうしようっかなぁ。そんなに軽い女じゃないしぃ』
な〜んて、なよなよ腰振って、すっごくキショかったくせに。
矢口さんなんかに目取られて、
こ〜んなに可愛らしい亜依ちゃんのことが見えてへんなんて、
その男に目がなかったんですよぉ」
「な、なんだよ。矢口さんなんかって。なんかってさぁ」
圭織は二人の言い合いにうんざりしたように、
ビニールシートの座る位置をずれた。
この暑苦しいのによくも真里と亜依は
喧々囂々とやっていられるもんだ。
圭織は首に巻き付けたタオルで額の汗を拭った。
「飯田さんも食べますか?」
希美がイチゴシロップのかかったかき氷をにこりと差し出してきた。
「ありがとう。ののはいい娘だねぇ」
圭織は希美からかき氷を受け取りながら、
希美の頭をくしゃくしゃに撫でた。
希美は子猫のように目を細め、気持ちよさそうに笑った。
- 53 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:39
-
遠くでは他の面々が攻めては引く波に
きゃきゃっと歓声を上げているのが見える。
その中でも小川麻琴
(イアン・ソープにでもなったつもりか、
全身スーツ型の競泳水着を着込んでいて
周囲からかなり浮いているのだが)は、
ちらちらと圭織の方を見ては、
時折勢いよく海に潜ったり、泳ぎを披露したりしている。
濡れた身体を海から上げては、
圭織をまるで挑発するように勝ち誇ったような顔をしている。
圭織は隣りに座る希美がにこにことそれに手を振っているのを見て、
苦々しく麻琴を睨み付けてやった。
睨み付けてから圭織は吹き出してしまった。
希美が不思議そうに圭織を見る。
こういうのが大事なものを取られそうになる
父親の心境というものなのだろうか。
圭織はふとそんなことを思った。
- 54 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:40
-
「ねぇねぇ、なんでカオリは泳がないの?
せっかく海に来たのに水着にもならないでさ」
亜依との言い合いにも飽きたのか真里が圭織に擦り寄ってきた。
真里の濡れた髪がTシャツに触れ、ぽつぽつと斑点を作る。
「あのね、さっきも言ったでしょ。
私は今日急に言われたようなものなの。
水着なんか用意してないわよ」
「あ、分かった。飯田さん、太ったんやろ。
そりゃそうだわ、一日中こ〜んな辛気くさい顔して、
絵ばっか描いてるんやから」
亜依が自分の頬を両手で押しつぶし、からかいように言った。
「あのねぇ……」
圭織は反論をしようとしたが、
この暑いのに無駄な力を使うのは得策ではない。
圭織が押し黙ると、
亜依は調子に乗ったように圭織の顔を覗き込んできた。
「さっさと泳いできなさい。
泳がないんだったらさっさと帰るよ」
圭織が突き放すように言うと、
亜依はつまらなそうに希美の手を取り、
二人で海の方へと駆けていった。
- 55 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:40
-
「圭織もさ、
こんなところでじっとしてないでナンパでもされてくれば?」
唐突に真里がそんなことを言ってきた。
「はぁ? 何言ってるの?」
「オイラもオイラなりに圭織のこと心配してるんだよ。
いっつもそんなに偏屈そうな額に皺寄せてないでさぁ。
男の一つでもできれば、圭織も変わったりするんだろうね。
……って、オイラも泳いでこよっと…」
圭織の険しい視線から逃げるように真里も行ってしまった。
再び一人になった圭織はビニールシートに横になる。
亜依が置きっぱなしにしていった
プラスチックのカップが頭の上を転がっている。
パラソルに日差しは遮られているとはいえ、
目には柔らなった光が突き刺さってくる。
「…別に好きで額に皺寄せてるわけじゃないんだから……」
圭織はそっと瞼を下ろすと、波の音に耳を傾けた。
- 56 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 00:41
-
***
- 57 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:45
-
海の家で買い込んできた物と、
なつみが作ってきた物で遅めの昼食を終えた後、
圭織はそろそろ帰ることを提案したが、
多数決でその意見は却下された。
特に今時の女子高生というのはどこから力が湧いてくるのか、
疲れた様子も見せずに
今も浮き輪に掴まりながら波に漂い、遊んでいる。
なつみはすでにシャワーを浴びに海の家の方へ行っているし、
真里は圭織から少し離れた場所で俯せになっていた。
誰が悪戯したのか全身に砂をかけられ、
真里は苦しそうに呻きながら、
もぞもぞとそこを抜け出そうと努力をしている。
- 58 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:46
-
圭織は日焼け止めクリームを両手で擦り落としながら、
持ってきたナップサックから
小さなスケッチブックを引っぱり出した。
挟んである鉛筆を口にくわえながら、白紙のページを探す。
ペン先で幾度か紙の上を叩くと、
やがておもむろに鉛筆を走らせ始めた。
だが気に入るものにはならず、
苛立ったように圭織は描きかけのままページを捲った。
何度かそれを繰り返して、
結局はスケッチブックを放り投げ、鉛筆を転がした。
圭織は深々と息を吐くと、
いつの間にか疲れ果てて軽い寝息をたてている真里を
理由もなく憎々しげに見つめた。
(あんな空だったんだっけかなぁ)
圭織は何もかもを吸い寄せてしまいそうな広大な空を見上げながら、
そんなことを思い出した。
圭織は三角座りした膝の上に顎を乗せた。
自然と眠気が襲ってきて、
うつらうつらと圭織の意識が遠退き始める。
- 59 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:47
-
圭織が画家になりたいと思ったのはたわいもない理由からだった。
母親が買ってくれた真新しいクレパスと真っ新な画用紙の束。
どの親が子どもに与える遊び道具を
圭織も当たり前のように使って色々な絵を描き遊んだ。
小学校三年生の時に
圭織は北海道の絵画コンクールで銀賞を受賞した。
社会見学で行った牧場で遊ぶ子馬の姿を描いたものだ。
透き通るような空と青々と繁る草原の様子は好評だった。
それまで全校生徒の前で表彰など受けたこともない圭織は
舞い上がってしまい、
副賞として貰ったアルバムはしばらく抱いて眠ったほどだった。
- 60 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:48
-
それからの圭織はクラスで絵の上手い少女という位置づけを得、
先生からも同級生からも絵なら飯田圭織だ
と、いうように認識されるようになった。
そのこと自信となり、圭織の進路を決めた。
そしていつから東京に出て、
美大に行きたいという目標を持つようになっていた。
- 61 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:48
-
*
- 62 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:49
-
ぽんと軽く頭が叩かれ、圭織ははっと顔を上げた。
目の前には格子柄の入った薄桃色のワンピースに着替えたなつみが、
スケッチブックを片手に呆れた顔で立っていた。
スケッチブックからはぱらぱらと砂がこぼれ落ちている。
「な〜に、寝てるんだか」
なつみはよっと圭織の隣りに座ると、
スケッチブックをぺらぺらと捲る。
「これなんか描きかけじゃない。
ちゃんと仕上げなきゃページがもったいない」
「うっさいなぁ。なっちには関係ないことじゃんか」
圭織はなつみの手からスケッチブックを奪い返すと、
それを胸と膝の間に挟み込んだ。
なつみはやれやれと軽くため息を吐く。
- 63 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:49
-
上京したばかりのころ、
圭織は『蔓屋 東国立店』でアルバイトをしていたことがある。
一週間という店のアルバイト最短期間を作ることになってしまったが、
その時に知り合ったのが安倍なつみである。
なつみも大学入学したばかりで、
北海道出身ということもあり、
しかも誕生日が同年の二日違い、
その上同じ病院で誕生をしていることが分かった。
このことがきっかけになり、
唯一圭織が気を許すことのできる相手になった。
なつみの性格は穏和で人当たりがよく、
職場での態度も真面目で誠実なものであった。
厭世気質のある圭織とは正反対だが、
逆にそれが良かったのかもしれない。
圭織がバイトを辞めたあとも、何かとなつみから連絡があった。
そのため二人の親友関係は終わることなく続いている。
- 64 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:50
-
「何よ?」
脇から覗き込むように見ているなつみに対して
圭織は刺々しい言葉で応対をした。
なつみは鼻を鳴らしながら、妙なほどににやりと笑った。
「別に。カオリのこと見てちゃいけない?」
なつみの髪からは僅かに磯の香りが通ってくる。
「いけなくないけどさ。…照れくさい」
圭織はそう言ってから、
なつみのことを無視することに決めつけた。
間を持たせるようにスケッチブックを指先で弄くる。
なつみは一度海の方に目をやり、
それから再び圭織の方を見てふふっと柔らかな微笑みをこぼした。
- 65 名前:名無し作者 投稿日:2003/10/26(日) 22:51
-
***
- 66 名前:ななち 投稿日:2003/10/28(火) 14:21
- 作者さん、更新お疲れさまです。いっぱい読めて嬉しいです。
かって自分が悩んでいたことと同じ様な悩みを持つキャラクター達に
懐かしさと共感をおぼえます。
『カリフォルニア・ガールズに憧れて』が個人的に一番好きでした。
ビーチボーイズの何処か寂しげな曲が思春期の少女達の悩みと
上手くシンクロして聞こえます。
今回も楽しみにしています。がんばってください。
- 67 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/16(日) 20:46
- 初めて『イエスタディをもう1度』と『さよならカントリーロード』を読みました。
今まで読んだ中でも上位を占める程の上手さでここ毎日のように読み返しています(笑
それぞれのキャラがちゃんと立っていて、本当に尊敬します!
今後とも更新を楽しみにしております♪
では、無理などしない程度に頑張ってくださいね。
- 68 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:06
-
>>66
ななちさん、レスありがとうございます。
大量更新のあと、ずいぶんと間が空いてしまいました。
どうもすみません。
ご期待に添えるようにがんばりますので、
よろしくお願いします。
>>67
ヒトシズクさん、レスありがとうございます。
そして今までのものも読んでくださって、
ありがとうございます。
今後もどうぞ楽しんで読んでください。
- 69 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:07
-
***
- 70 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:07
-
前の車の点滅するテールランプを見ながら、
圭織は軽くブレーキを踏んだ。
それから忌々しげにバックミラーを見る。
後ろの席では疲れ切った面々が肩寄せ合って、
軽やかな寝息をたてあっている。
特に真里は遠慮もなくいびきをたてながら、
しかも涎を垂らしながら鷹揚に眠っていた。
行きといい、帰りといい圭織は
全く貧乏くじばかり引かされている。
「ほら、変わったよ」
助手席に座ったなつみの声に、
無意識に圭織はアクセルを踏んだ。
「みんな、疲れきっちゃってるね。
あんなにはしゃいでたら、まぁ、仕方ないか」
「私も十二分に疲れてるんだけど……」
圭織は痛む目を擦りながら、ハンドルを操った。
後ろを向いていたなつみが大丈夫かと覗き込んでくる。
己の死活問題になるためその目は心なしか真剣にも思え、
圭織は苦笑をした。
- 71 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:08
-
「大丈夫だよ。その代わり、
ちゃんとなっちも起きててよ。一応のために」
「オッケー、オッケー。その点は大丈夫だよ。
なっちはまだまだ元気一杯だから」
なつみはガッツポーズをして、
圭織ににこやかに答えて見せた。
ハイビスカスの飾りが付いた黄色いビーチサンダルを履いた足を
ぷらぷらと振りながら、
手持ちぶさたを紛らわすように地図を捲っている。
フロントガラスを唐突に雨粒が叩き始めた。
最初は柔らかな感じであったが、
それは徐々に勢いを増して、
ついにはバケツをひっくり返したような大雨が
窓ガラスを激しく打ちつける。
圭織は開けっ放しになった後ろの窓を閉めると、
ワイパーを高速で回し始めた。
どの車もしぶきを立てながら、急ぐようにスピードを上げていく。
街路灯の光は雨影にぼんやりと輝き、
頼りなさそうに道路を照らしつけていた。
- 72 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:08
-
「……最近、スランプでしょ」
暗い車中で、なつみが静かに言った。
誰かに話しかけるというよりは独り言を呟くような感じであった。
圭織は肩を微かに震わせたが、
なつみの言葉を無視して、
フロントガラスをぼんやりと見つめ続けた。
そこに薄い影のように映る不格好に歪んだ自分の頬に
僅かに赤みが差しているのが分かる。
「なっちにはす〜ぐ分かっちゃうんだから。
カオリがイライラしてたら、
『あ、うまくいってないんだな』って」
「べ、別に…イライラなんか…」
喉に何かが詰まるような感じで圭織はどうにか答えた。
「どれくらいなのよ。
ほら、なっちさんに言ってごらんなさいな。
優しいお姉さんがカオリさんのお悩みを解決して上げましょう」
- 73 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:10
-
「そ、そんなの、なっちに言ったって分かんないよ。
これは私の問題なんだからさ。
だいたい、あたしの方が誕生日早いじゃん。
お姉さんはあたしの方でしょ」
「あら、そう。だったら、
自分の問題をみんなの場に持ち込まないで欲しいな。
四六時中そのブスッとした顔してて、
みんな気にしてたわよ」
「…いつものことじゃないのよ。
言ったことあるでしょ。
私はそういう隣近所のお付き合いとか大嫌いだし、
人との馴れ合いなんて芸術家らしくないってポリシーがあるの。
孤高なんだよ、芸術家は」
圭織は言い訳じみた言葉で反論をした。
そしてむっつりと黙り、じっと睨み付けるように前を見つめた。
なつみはやれやれと肩をすくめる。
- 74 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/01(月) 23:11
-
*
- 75 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/02(火) 22:53
-
しばらく沈黙が続いた。
ワイパーがフロントガラスを擦る音がリズミカルに響き、
二人は濡れて視界の悪くなった前方を何の気なしに眺め続けた。
圭織は時々思いだしたかのようにサイドミラーに目をやっては、
手持ちぶたさを紛らわすかのように、
ギアの持ち手に手を置いてこつこつと指先で叩く。
「…私、歌、もう一回やろうかなって考えてるんだ」
なつみは言った。
圭織は軽くなつみの方に首を向けてから、
それから前が気になるように視線を戻した。
いつの間にか前を走っていた車の姿はなくなっており、
後ろから追い立てる車もなかった。
道にぽつりと取り残されたように、ワゴン車は走っていた。
「……そう」
圭織の気のない返事になつみはこくりと頷いた。
- 76 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/02(火) 22:54
-
「夏休み入る前だけど、
大学で歌やってるサークル回ってみてさ。
まぁ、ちょっとよさげなサークルがあったから、
もう一回やろうかなって」
「ふ〜ん。
…もう辞めたんじゃなかったの? 歌は」
「そう…なんだけどね。……だけどさ…」
なつみはちらりとバックミラーに目をやった。
「ほら、歌手なんてさ。
実際の夢にしちゃ大きすぎるじゃない。
プロになって、一人前に売れる人なんて、
ほんの一握りでしょ。
で、しかも売れなくなったら、はい、さようならって。
現実的な夢じゃないわけよ」
「そんなもんだろうね」
信号機が黄色く点滅をし、
圭織は余裕を持って二度ブレーキを踏んだ。
車はゆったりと止まり、圭織はギアをニュートラルに戻した。
- 77 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/02(火) 22:54
-
「でもさ、北海道にいたときはね、
なっちは絶対に売れるって思ってたんだ。
なっちは歌手になれるって。
何でだか分かんないけど自信があったんだよ。
絶対このバンドのメンバーでやっていけるし、
絶対にメジャーになってオリコンとかでいつも上位なの。
で、豪華なマンションとか買っちゃって、
そこで作詩したりして。
音楽番組には出て、タモさんとのトークとかしてさ。
「だけど、大学受験が近づくと、
私ん中でやっぱり大学行った方がいいのかなって。
ほら、歌手になるって言ったって、
実際には何すればいいのかよく分かんないし、
親もバンドやってることにあんまり賛成してくれなかったし。
で、まぁ、
こんなもんなのかなってつもりで大学受けちゃったんだよね。
それで東京に出てくることになって、
バンドも辞めることになって」
なつみの喋り口調は静かなものだった。
圭織は何も言わずにブレーキから足を離すと、
アクセルを踏んだ。
再びエンジンの低い唸り音が車中を駆け巡り、
勢いよく四つのタイヤが回り始める。
- 78 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/02(火) 22:55
-
「前も聞いたよ。その話」
「え?」
「なっちがバンド辞めて、東京の大学にきた話。
耳にタコができるほどね」
「あれ? そうだっけ」
「で、何が言いたいわけ」
「私さ、カオリが美大辞めたって聞いたとき、
正直凄いなって思った。
『自分の描きたい絵を描く!』
な〜んて格好よく決めちゃってさ。
だって入学して半年だよ。
美大って難しいんでしょ?
それをあっさりと辞めて、
自分の描きたい絵を描くっていうカオリはなんか凄いなって。
私、本当はちょっと失敗すればいいなって
思っちゃったりとかしてさ」
なつみは照れくさそうに笑い、
前髪を弄りながらその気恥ずかしさを誤魔化そうとしている。
圭織は何も言わずに、軽くハンドルを指先で叩いた。
- 79 名前:名無し作者 投稿日:2003/12/02(火) 22:55
-
「今、考えてみれば、
それがきっと羨ましかったんだよね。
私なんか、ただ毎日なんとなく講義受けて、
バイト行って、で、な〜んにもしたいことがないわけでしょ。
それなのにカオリには目標があって、
ちゃんとそれに向かってる感じがして」
なつみは真っ正面を見据えながら、ぼそぼそと言葉を続けた。
圭織は方向指示器を点滅させ、
脇にあるコンビニの駐車場へと入った。
目的があるわけではない。ただ少しだけ休みたかったのだ。
圭織はそこにワゴンを停めると、黙ってエンジンを切った。
- 80 名前:AKILAN 投稿日:2003/12/04(木) 22:20
- うわーい。更新だー。
圭織さん素敵。
- 81 名前:エド 投稿日:2003/12/23(火) 17:58
- 続きを楽しみにしています。
- 82 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:42
-
>>80
AKILANさん、レスありがとうございます。
素敵に飯田を書けているのか分かりませんが、
今後もよろしくお願いします。
>>81
エドさん、レスありがとうございます。
元来の遅筆で、更新が遅く申し訳ありません。
今後もよろしくお願いします。
- 83 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:43
-
*
- 84 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:44
-
「この前なんだけど、ちょっとだけ嬉しいことがあってね。
なっちの歌が良かったって言ってくれた娘がいるの。
北海道で歌ってた時のことなんだけど、
ずうっと覚えていてくれたみたいでさぁ。
なんかね、『あ、覚えててくれた人がいるんだ』って思っちゃって。
もう歌ってないのにそう言ってくれる娘がいるんだって。
その娘があんまり目をきらきらさせて言うもんだから、
これはなっち、本物かなってね。
それで簡単に悩んだ末に、色々とサークルとか回ってみてさ」
最後は冗談めいたように言って、
なつみはにこにこといつものように笑った。
「で、もう一回歌おうって思ったの?」
「そう」
「…単純だね。なっちは」
「そうかなぁ?
ま、でも単純って言われるとそうなのかもしれないな。
でもそんなもんじゃない?」
なつみが頭を掻きながら言った。
圭織は呆れたように、ハンドルに両腕を乗せた。
- 85 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:44
-
「私、ずっと考えてたんだ。夢って何のためにあるのかなって。
ほら、みんな、大人に近づくと、
子どもの頃の夢ってさ、
『あ、これって自分には不相応のものなんだ』
とかって分かってくるじゃない。
それで、分かっていながらいつまでもそれにぶら下がってるとさ、
世間的に白い目で見られたりとかしちゃってさ。
だけど、夢を諦めないで、
それにしがみついて、必死になるのも悪くないのかなって。
ほら、こういうのも戦いだと思わない?
何か大切なものを守る戦い」
「…戦いね。
……言っておくけど、
人生ってそんなに甘いもんじゃないんじゃないの。
…そんな夢ばっかりで何とかなるわけじゃないし」
「あらら、現実にそうやって生きてるカオリが
そんなこと言ったら身も蓋もないじゃない」
なつみは可笑しそうにからからと声を上げた。
- 86 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:45
-
圭織は脳天気ななつみの笑い声にいらだち、
「あのね、自分の好きなようにやりたくたって、
現実的にはそう簡単にいくわけないの。
第一お金がなきゃ生活だってできないんだよ。
何かするたびにお金、お金。
エロっちい雑誌のカットばっかり描いて、
週に幾度かレジ打ちのバイト行って、それで窮屈な生活…。
挙げ句の果てに自分が何を描きたいのかだって
分かんなくなってきちゃうよ」
と、だんだん声を荒げた。
なつみの語る「理想の夢」があまりにも無知で腹立たしかった。
「夢なんてインチキだよ。
自分が逃げ込める都合のいい避難場所なだけ。
どうせ全部インチキなんだよ」
圭織は煌々と明かりの輝くコンビニに目をやった。
店内にはこの大雨で出ることもできないようで、
困った顔で雑誌を捲っている人が多かった。
店員たちは暇そうにレジに立ちながら、呑気に欠伸などしていた。
- 87 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:45
-
(そう、どれもこれもウソの塊だ。
夢なんて現実の自分を誤魔化すための空想なんだ)
圭織は横を向いた。
じっと圭織を見つめていたなつみと視線がぶつかる。
その柔らかな目元がどこか悲しげで、
圭織は思わず目を背けたくなった。
「……だったら、圭織にとって絵って何なの?」
なつみの声は静かだった。
「私はそんな頭よくないし、
圭織ほど物事考えたりしないからよく分からないけど、
私ね、たまに何かを伝えたくなるの。誰でもいいんだ。
誰かに知ってもらいたいことが、ぽっと浮き出てきて、
そしたら歌いたくなるのよ。
ねぇ、圭織が絵を描くのって、そういうのじゃないのかなぁ?」
圭織はぎゅっと心を捕まれたように痛みを感じた。
- 88 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:46
-
二人はしばらく黙り込んだ。
激しく降る雨粒がボンネットを叩き、
暗い車中にさーと音が響き渡る。
フロントガラスを垂れる雨筋は、
黒い影を映し、ゆるゆると線を描きながら流れていく。
「あ、いつの間にかコンビ二に停まってたんだ。
ちょっと調子に乗って話しすぎてたね。ここで休憩?
だったら矢口たちも起こそっか」
なつみが気づいたように声を上げた。
気まずい雰囲気を壊そうとするように、
普段のにこやかな表情を浮かべ、
それから後ろに向かって何か大声を上げ、
眠っていた者たちを無理に起こすと、
慌てたように助手席を飛び降り、コンビニへと駆け込んでいった。
圭織は何も言わずにだた黙って、なつみの背中を見送った。
- 89 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:46
-
*
- 90 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:47
-
圭織は去年の九月に美大を辞めた。
入学をしてから半年、
まだ夏の日差しが緑葉からこぼれ落ちる、蒸し暑い日だった。
あれだけ努力をして、夢に向かって走ってきた、
その終着駅だったはずの美大に退学届けを出した。
北海道に住む両親には一度も相談をしなかった。
反対されるのは分かっていた。
特に父親は、
圭織が美大用の予備校に通うことさえ嫌悪感をあらわにしていたくらいだ。
決意の日になって大学の公衆電話から
両親に一方的に啖呵を切り、辞めることを伝えた。
それを弾みに教務課に行って、三行半を突き付けた。
全てが終わったあとは、さすがの圭織も言いようのない寂しさを感じた。
- 91 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:47
-
自分の描きたい絵を描くために美大へと入った。
あんなにデッサンやスケッチを繰り返し、
必死になって技術を身に付け、
渋る親を説得して美大専門の予備校へも通った。
それもこれも全部、自分の描きたいものを描くためだった。
しかし、大学に入ってみて、
それで自分の描きたいものを描いているのかと聞かれると、
圭織は答えられなかった。
(そもそも私の描きたかった絵って何?)
大学を辞めた次の日、真っ白なキャンパスを目の前に置いて、
圭織は一日それを眺めていたが、結局筆は動くこともなく、
ただ徒労と失望だけが心を支配した。
- 92 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:48
-
親からの正規の仕送りは打ち切られた。
妹が時折心配そうに電話を掛けてきてくれて、
母親は黙って僅かな金銭を振り込んでくれてはいるが、
父親は未だに圭織のことを話題に出すことさえも許していないそうだ。
じわじわと袋小路に追いつめられるように、
雑誌のカットのアルバイトだけでは、生活が苦しくなってきた。
好き嫌いも言っていられなくなり、
近くの洋菓子店『エトワール』に
週に三度レジ打ちのアルバイトに出るようになり、
何とか食いつないでいる。
絵を描くことは止めなかった。
美大を辞めてから、何かを求めるように絵筆をキャンパスに走らせ、
自分の描くべき絵を追い求めた。
その絵は未だに見つかっていない。
止められなかったのかもしれない。
今、ここで自分が絵を描くことを止めてしまったら……
夢と現実の狭間に落ち込んでしまった圭織は、
砂漠に迷い込み、水も地図も失った哀れな旅人のように
ただ呆然と、それでも何かに引きずられるように歩くしかないのだ。
いくら日々が空虚であれども、圭織に合わせて待ってはくれないのだから。
- 93 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:50
-
なつみの先ほどの言葉は、
圭織が胸に抱くもどかしい想いだった。
それを同郷で同年齢、
しかも同じ病院生まれのなつみに言われたのが悔しかった。
「…私だって…分かってるよ。
なっちの言ってることなんか……。分かってるんだ…」
いいようのないいらだった表情の圭織は
額に皺を寄せて、ハンドルに腕を乗せた。
- 94 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/07(水) 00:51
-
*
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 06:44
- 作者さん、頑張れ!
隠れて応援してるよ☆
- 96 名前:エド 投稿日:2004/02/12(木) 20:04
- 私も応援していますので、
これからも頑張って下さい!
- 97 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/06(土) 16:42
- 『イエスタデイ』をもう一度から一気に読ませていただきました。
なんというか…開いた口が塞がりません。感動です。
更新楽しみにしております。頑張ってください。
- 98 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:53
-
*
- 99 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:54
-
のそりのそりとコンビニで
気分を休めていた面子が車中に戻ってきた。
ビニール袋を持ったなつみが助手席に座ると、
シートベルトを締めた。
微かに赤みの残る頬にはえくぼができており、
大きめの瞼をそっと擦っていた。
後ろではどうしても起きなかった真里を放って、
元気を回復させた女子高生の一団が
コンビニで仕入れてきた菓子袋を次々に開けている。
圭織は一息付くと、車を発進させた。
まだ胸の奥底がひりひりと痛み、
伝えようのない焦燥感と倦怠感が残る。
隣りになつみが座っていることでさえ、
我慢ができないくらいで気分が良くない。
フロントガラスに映る圭織の顔が歪んでひどく見えるのは、
決してガラス特有の丸みのためだけではないだろう。
- 100 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:54
-
(せっかくの美顔も台無しだ)
雨はいつの間にか上がっており、
濡れた路上をタイヤが軽やかに走っていく。
車が国道二十号に入ると、圭織は知らず知らずにほっとして、
全身にどっと疲れを感じた。
隣ではなつみがごそごそとビニール袋を探っている。
「……はい」
なつみが脇から包みを取った何かを差し出してきた。
「何?」
「いいから、いいから」
圭織は怪訝そうに眉を潜め、舌を出して、
なつみが差し出した物を口に入れる。
飴のようで、すぐにすっと甘辛い味覚が広がり、
舌の上が急激に冷やされていく。
「どう? ハッカ飴。眠気覚めるでしょ。
うちのお父さん、それ舐めながら運転するんだよ。
さっきのコンビニで見付けちゃって、
ついつい買ってきちゃったよ」
圭織はそれを舌の上で転がした。
喉元まですうすうして、心地よさに圭織は目を細め、
それから思い出すように言った。
- 101 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:55
-
「…そういえば、昔はよく舐めたよなぁ。
婆ちゃんちの茶請けには絶対入ってた」
「あ、カオリんちも?
なっちもお祖母ちゃんち行くと、
絶対勧められたもん。これ」
なつみが銀色の光沢を放つ袋を見せて、
にこりと嬉しそうに笑った。
「ハッカって言ったら、やっぱり北海道だよね。
北見産のハッカ飴。ふふんふんふん」
なつみは歌うように言いながら、
もう一つ包みを取り出すと、
それを破いてから圭織の口の中に放り込んできた。
二つになると、ますます冷ややかで痺れる感触が
口内に広がっていき、圭織は一度大きく息を吸い込んだ。
先ほどまでの苛立ちが
すっきりと流されていくような感じである。
「ほれほれ、あさ美ちゃんもこれ、食べたことあるでしょ。
…………そうそう、はい、どうぞ。
…………あ、ほら、ののちゃん、
そんなに口に頬張ったら……。
あ、矢口の鼻の穴にも詰めてみるといいかもしれない。
すうすうして鼻通りがよくなるんじゃない?」
なつみは後ろを向いて、飴の袋を後部座席にもまわした。
亜依と麻琴の喉を鳴らすような笑い声が聞こえ、
それから真里が大きなくしゃみをした。
- 102 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:57
-
いつからハッカ飴を頬張らなくなったのだろう?
圭織は思い返してみる。
小学校の5年生ぐらいには、
もう祖母と話もロクにしなくなった。
そのまま、三年後には祖母が亡くなり、
菓子受けも見ることがなくなった。
小さいころは、今希美がやったように
ハッカを口一杯に頬張り、
そして吐き出した。
それを見て家族のみんなは笑っていた。
圭織もつられたように笑い声を上げた。
いつの間にか、そんな古い光景を忘れていた。
子どもの頃にはこんなに眉間に皺を寄せながら、
小難しそうな顔をして絵を描いているなんて
想像もできなかった。
好きな絵をいつまでも楽しく描いてるものだと
ずっと思ってたのに。
今の車を包む笑い声は、あの頃のものと変わらない。
みんなが楽しいから笑っている。
私も変わってないはずだ。
あの頃の夢を今でも大事に胸に抱いていたいと
いつも願ってる。
ただそれだけなのだ。
- 103 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:58
-
圭織は目が急に熱くなるのを感じた。
圭織は急いで手で目元にそっと触る。
圭織はバックミラーに目をやり、
それから助手席で後ろを見ながら
声を出して笑っているなつみをちらりと見た。
「なによ、カオリ。
ほら、あとちょっとなんだから気を抜かないで、
ちゃんと前を向いてよ」
先ほどまでの雰囲気とは違った圭織のおかしな行動に気付いたのか、
なつみは見られることに照れたように圭織の肩を叩きながら言った。
「…やっぱ、いいよね。ペパーミントキャンディーってさ。
懐かしい味がする」
- 104 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:58
-
「ペパーミントキャンディー?」
「ハッカ飴じゃ、何かセンスないじゃん。
芸術家っていうのは言葉を選ぶんだよ」
気取るように言う圭織をなつみは不思議そうに首を傾げた。
圭織は楽しそうに舌の上でキャンディーを転がし、
勢いづいたようにアクセルを踏み込んだ。
- 105 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:59
-
***
- 106 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 00:59
-
玄関前であさ美と別れの挨拶を交わすと、
圭織はナップサックを背負い直してから、
重々しいドアを開けた。
圭織は靴を脱ぐと、
蒸し風呂状態になった部屋を換気するために、
いそいそと窓に寄る。
カーテンを乱暴に引き、それから窓を全開にする。
先ほどまでの雨が効いているのか、
濡れた心地よい風がしっとりと吹き込み、
圭織の肩を撫でていった。
圭織は荷物をベットに放ると、
団扇を片手に仰ぎながら、扇風機の電源を入れた。
一間あってから、頼りない音を立てながら
扇風機が首を回し始める。
圭織はもどかしげにジーンズを脱いで、
ショーツ姿になると胡座をかいて
扇風機の前にどっしりと腰を落ち着ける。
Tシャツには汗が滲み、
長い自慢の髪がこの部屋ではうざったく感じられる。
- 107 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 01:00
-
圭織はしばらく扇風機に向かって声を出す。
声は羽によってかき回され、
不明瞭になりながら散らばっていく。
ふっと顔を上げて窓の外を眺めてみる。
空にはいつの間にかぼんやりとした月が優しい光線を降り注ぎ、
南方には一等星が燃えるような赤を輝かせていた。
どこか遠くで遮断機が下りる音が聞こえてくる。
犬のけたたましい鳴き声が聞こえ、
蝉が驚いたのかコーラスを止めて、
羽音を立てながら飛び立っていった。
立ち並ぶ住宅群には煌々と明かりが灯り、
街は静かな時間を楽しんでいた。
きっと今この瞬間に、心に沸き上がるものを絵にしたいんだ。
外の光景に見とれていた圭織はふっとそんなことを思った。
誰もが持っていて表現に困っているこの姿を描きたいのだ。
あの純真無垢な心で描いた風景のように…
- 108 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 01:01
-
感極まって圭織は鼻をひと啜りする。
それからいそいそと団扇で仰いだ。
生温い柔らかな風が圭織の髪を揺らして通り抜けていく。
圭織はそれでも心地よさそうに目を細め、
それから脱ぎ捨てたズボンを手繰り寄せると、
そのポケットから包みを取り出した。
なつみから帰り際に貰ったペパーミントキャンディーだった。
「…忘れちゃってた味だったなぁ」
圭織はその包みを破くと、中のキャンディーを口に放り込んだ。
それから、よしと膝を叩くと、
慌ただしく床に置きっぱなしになったパレットと絵筆を手に取った。
その口元にはここ久しく忘れていた楽しげな笑みが浮かんでいた。
終
- 109 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 01:25
-
***
- 110 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/07(日) 01:26
-
長らくお待たせしてしまいました。
とても遅い更新、本当に申し訳ありません。
元来の怠け者のため長い時間を掛けてしまいました。
本編は実は『カントリー・ロード』よりも
前に書き終えていたものですが、
長い間寝かせて置いたものです。
何度となく読み返しをして、手直しをしました。
何しろストレート過ぎて、説教くさい。
それでも読んでくれた方々に楽しんで頂ければ幸いです。
次の作品の予定は今の所ありません。
ただ五期メンバーの残り高橋について
少しずつプロットを立ててはいます。
いつ公開できるか、
もしかするとそういう機会さえ無いかもしれませんが、
気長に待って下さったら嬉しいです。
それでは
レスをくれた皆様。
ここでひとまとめのお礼になってしまいますが、
本当にありがとうございました。
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/08(月) 04:08
- 完結お疲れ様です。
自分も物作りをやっているので、今回の話は胸にしみました。
作者氏の綴る言葉は、透明感があり、とてもきれいで大好きです。
次回作、気長に待ちたいと思います。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 17:03
- 作者さんお疲れ様です。
今回のお話もとても良かったです。
次回作楽しみにしています。
- 113 名前:エド 投稿日:2004/03/21(日) 19:30
- おもしろかったです!
お疲れさまでした。
これからも頑張って下さい!
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