幻想的

1 名前: 投稿日:2003/10/24(金) 22:34
ひっそりと週1更新予定。
主役は5期と6期メンバー
ゆっくりですが、どうぞ最後までよろしくお願いします。

2 名前: 投稿日:2003/10/24(金) 22:37
ゆっくりとどこか知らないところまで
落ちてゆこう。
抵抗の文字も知らない様に綺麗に演じて、どんどん落ちていこう
見知らぬ土地も
見知らぬ人も気にしない
どんどんただ落ちて
水面に波紋が広がるように
幻想空間を見つけよう。

―――あなたと一緒に。

3 名前: 投稿日:2003/10/24(金) 22:44
1話 壊れる日常


静まり返った空間に、そっと足を踏み入れて息をすることさえ苦しく感じる。
パラパラと誰かが本のページをめくる音をどこからか聞きながら、隙間の無い本棚に手を伸ばす。
知らない人の名前が並ぶ文字
大量の文字に少し眩暈を感じながら昨日見つけておいた緑色のカバーを被った本に手を乗せて、ゆっくりと自分の方に引っ張る。
本と本の隙間が狭いせいか、スムーズに本が手元にこなくて少し苛立つ。
片手に数冊本を乗せた見知らぬ少女と視線が合って、どちらともなく視線を外す。
その少女の姿が後ろの本棚に隠れて見えなくなった時、するりとさっきまでかかっていた力が無くなって、無重力。
4 名前: 投稿日:2003/10/24(金) 22:53
「あさ美」
遠慮がちな小さな声が右隣から聞こえてきて、本を脇に抱えて首を声がした方に向けた。
無気力に視界に入った窓から校庭が見えて白い太陽を見た。
振り向くと、茶色すぎる髪を揺らした少女が視界に入る。
「何?愛ちゃん」
赤いバッジに高橋、と書かれた白い文字を見て何故か少し安堵する。
脇に抱えていた本がいつの間にか愛ちゃんの手に移動していて、小さい頃親と一緒に行ったサーカスや手品を見た記憶がほんの少しフラッシュバック
「外に麻琴と理沙がおるんやけど、どうする?」
いつの間にか日常になった、図書室に行くこと。
それを日常にする代わりに、ついさっきまで日常だったことを捨てる。

一つ手に入れたいものがあれば、一つ手の中にあるものを捨てるの
とりかえっこしなきゃ、不公平でしょ?

5 名前: 投稿日:2003/10/24(金) 22:54
以上、短いですが今日はここまで。
感想などいただけると嬉しいです。
では、次回の更新は次の土曜か日曜日
6 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/25(土) 04:22
一応指摘を
新垣は、「里沙」でつ
7 名前: 投稿日:2003/11/02(日) 21:54
>6 名無し読者さん
どうもありがとう。これからは気をつけます。
8 名前: 投稿日:2003/11/02(日) 22:00
第2話 殺切者

「コンノ アサミ」
この辺りじゃ有名な名前だ。
大人たちはいい人だとか悪いヤツだとか言うけれど、本当は誰も彼女のことを知らない。
噂だった。
風の流れに流された砂のようにその噂はすぐに人々の耳に入った。
『たった1人の少女が100人もの男をほんの数秒で倒した』と。
最初は誰も信じなかった、嘘だ、ありえないと言っていた。
でも、近くの山で数人の山賊の死体が発見された。その中で唯一生きている虫の息のヤツに聞くとそいつは彼女の名前だけ呟いて息を引き取った。
それからだ。
みんなが『コンノ アサミ』を恐れているのは。
誰も知らない『コンノ アサミ』を恐れている
怪物だとかプロレスマンだとか空手の有段者だとか好き勝手に噂しながら。
9 名前: 投稿日:2003/11/02(日) 22:11
「れいなー」
声のした方を向くと、向こうの方から人が走ってくる。
手に持っていた、刀を腰のベルトにはさんでじっとその人を見た。
「へへっ。おまたせ」
何か約束でもしたっけ?と思ってしまうようなこの言葉は苦手だ。
理由は何となくだけど、聞くのがめんどくさい。
「何?何かあったん、絵里」
彼女にそう言って、ふと自分の手を見つめる。
ついさっきまで争っていたためか手の所々に血の跡とうすよごれた泥がついている。
あぁ、洗わなくちゃ。と思う
「別に何も無いけどれいな見つけたから一緒に帰ろうと思って」
ニコニコ話す絵里はこの場には合わない、と何時も思う。
もう一人のヤツもだけど。
こんな戦場と化した場所でニコニコ笑ってられるというのがすごい
それに目の前で人が死んでいくのにそんな表情が出来るのがすごい
もしかしたら今すぐ、明日死ぬかもしれないのに・・・
「んじゃ、帰ろ」
自分の思考を遮るように絵里に声をかけて、歩き出す。

その辺りに散らばったコンクリート
粉々に潰れたガラスの破片
昼なのにピカピカいかれたように光る壊れた電灯
途中で折れた電柱

全てがいかれている
全てが壊れた

これがほんの数ヶ月前まで過ごしていた場所なのか、と疑いたいぐらいに。

いかれた
人も
物も
動物も

全てがいかれた
生き残るために。

10 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/03(月) 07:10
何か痛おもしろそう!
期待してます!
11 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 16:34
これからは適当更新。
まぁ言えば気が向いたら更新って感じです。

>10 名無し読者さん
適当更新ですが、どうぞよろしくです。

12 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 16:44
ほんの数歩あるいたところで、何かを感じる。
またか・・・と思いちっと舌打ちをして、ベルトにはさんでいた刀を抜き、手にとる。
あまり、こういうのは使いたくないなぁーとふと、そう思う。
ま、手も汚れてるし洗うのは家に帰ってからだ、だから今から汚れたって何の支障も無い。
勝手に頭が冷静に物事を考えていく。
いつからこんな風になったんだろう?と考え始めるが、それはもう少し先になりそうだ。
「絵里、あんたは先帰ってて」
絵里のいる後ろを振り向かず、そう言って私は回りを見渡す。
醜いほどの殺気が辺りに充満していて、それだけで吐いてしまいそうだ。
「いいけど、れいな大丈夫?」
私の性格をよく知っているためか絵里はすぐにそれを承知してくれる。
「大丈夫やって、こんなイカレタ奴に負けるほどバカじゃない」
「うん。じゃお先に」
会社でどっかのOLが上司や同僚に言う軽い形で絵里はそう言って、走っていく。
その姿が100mほど私から離れたところで、どっかのイカレタ奴は動き出す。
相手は一人・・・か。
手に持っていた刀を少し離れた場所に立てかけて、片足に重心をかけてだるそうな格好を作る。
相手を挑発するには馬鹿げた態度が一番だと、どこかの見知らぬオッサンは私に教えてくれた。
13 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 16:52
ゆらり、とそんな言葉が似合うような格好で現れたのはひょろりとした男。
せいぜい20代前半ぐらいだろう。
ふっ、と息を短く吐いて私はソイツに全速力で向かっていく。
元々走るのはそんなに好きじゃない、がこの世界が出来てからは走って逃げることが多くなった為かいつの間にか走りは速くなっていた。
まぁ、あんまり嬉しくないんだけど、と心の中で呟いて自嘲気味に笑う。
狙うは相手の懐。
焦点の定まっていない男とあと1歩という距離で体を曲げてその代り右手の拳を前に突き出す。

「ゴフッ」
肉が潰れる音と気持ち悪い音を頭の上で聞きながら小さくため息をついた
その数秒後には右肩辺りに血なまぐさいどろっとした液体が吐きつけられてそれだけでイライラが募る。
何回、何十回経験してもこの感触だけは嫌いなまま好きになろうとも考えたくない。
人の体内を巡っていたものが自分に吐きつけられる、と言うのは想像しただけでも吐き気を催す特注品だ。
後ろに倒れていく男の胸倉をひっつかんで顔面にパンチととび蹴りをくらわして、ノックアウト
14 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 17:00
以外に簡単に終わったことに少々不満を感じながら、右手を左手でさする。
どうも自分には人を殴る、ということは慣れていないらしい。
まぁ、もっとも普通の生活をしていた私にはとうてい縁の無いことだったが。

口からだらしなく血を流し続ける男の心臓に刀を一発で差し込んで、抜く。
本当は服にキタナイモノを吐き付けた代わりにもう少し痛めつけたかったのだが、良心というものがほんの少し痛んであまり苦しまずにあの世へいけるようにしてやった。

何が楽しくて人を殺すのか?
何が楽しくて人を敵にするのか?

答えは簡単。
駒は駒のまま、動かされるだけ
そこに意思や力なんて不必要。
ただ動かされるだけでいいのだ

政府が3年前に発表した『人類敵戦争』
人口が爆発的に多くなった地球で、食料が底をついた、と言うのがこの作戦の元らしい。
少なくなった食料を、よりよい国民が手にする。
簡単に言えば人類皆でバトルロワイヤルをやれ、ということらしい。
自分以外はみんな敵、生き残りたければ人を殺せ。
生き残るために、能力や力の無い者を殺せ。
歴史で言えば『下克上』のようなものらしい。
15 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 17:07
少し解説を。
殺切者:人を殺したり切ったりすることを言うための創造語。あまり出てきません
コンノ アサミ:殺切者の名前。ある意味有名人物。
れいな:田中れいな。武器は刀で中学1年生。人を殺すのが嫌いですが、少し悪い子。
絵里:亀井絵里。ほのぼの系ですが、戦うこと大好き人間。でも殺すのは嫌いだそうです。
駒:政府から見た国民のこと
人類敵作戦:自分以外は皆敵、ということをモットーに政府が発表した戦争。
16 名前:つみ 投稿日:2003/11/03(月) 18:32
おもしろそう!期待してます!
17 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 20:48
>16 つみさん
どうもありがとう。期待に添えるように頑張ります。
18 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 20:50
少し注意を。
視点はどんどん変わります。メル欄に書いていますので、よかったらどうぞ。
まぁ、見なくても本編を見れば何となく分かると思います。
19 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 20:53
ふぅーっと少し長めに息を吐いて、短く息を吸う。
昔近所に住んでいたおばさんから教えてもらった何とかという健康の呼吸法らしい。
何せ小さい頃の記憶なんて曖昧で霧がかかったように見えないからそれすらも曖昧。
パンパンと頬を手で2回叩いて、刀をベルトにはさんで歩き出す。

死ぬわけにはいかない。
守るものがあるから
私が死ぬとあの子達が泣くから

―――この戦争が終わるまで私は死ぬわけにはいかない。

20 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 21:01
第3話 コンノ アサミ

少し歩くと見慣れた茶色い壁のマンションがいくつも視界に入る。
その茶色い壁には馬鹿でかいA,B,C,Dなどのアルファベットが一つずつ白い文字で書かれている。
Aと書かれたマンションに入ったエントランスに見慣れた背中を見つける。
「さゆ!」
自分でびっくりしながら、その白い服を着た人に近づいていく。
やっぱり、さゆだ。
「何でここにいんの?部屋出ちゃダメって言ってるじゃん!ほら、危ないから」
さゆの右手を掴んで立ち上がらせる。
ぼけーっとしたいつもと変わりない表情が今日は嫌に目に付く。
「さゆ、何で部屋出た?絵里は?」
エレベーターに乗り込んで3Fのボタンをすばやく押して、さゆに言う。
絵里はもう帰っているはず、それに絵里がさゆを部屋から出すなんて考えられない。
と言うか私達の中で暗黙のルールになっていた。
【さゆを部屋から出すな】
21 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 21:07
さゆはお嬢様だ。
だからかは知らないが、武器を持てないし戦えない。
一度さゆがイカレタ連中に襲われそうになってから私達はさゆを外に出さない。
あの時は私が運良く傍にいたから助けられたものの武器も持てない子がまともにしかも大人相手に戦えるはずが無いから。

「れーなちゃん」
「何?」
「一人ぼっちは寂しいよ」
「・・・」
そう言えば最近は私と絵里がよく外に出るようになった。
だから、何時も部屋にはさゆだけ・・・
「しょーがないよ。コンノ アサミがこの辺りにいるって噂だし」
ね?と子供をあやすようにさゆの頭をぽんぽんと叩いて、ちょうどタイミングよくチン♪と鳴ったエレベーターから降りる。
「噂が消えるまでの我慢だよ」
部屋のドアを開ける前にさゆにそう言って、ドアを開ける。
22 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 21:15
「ただいまー」
「ただいまー」

靴を脱いで、洗面所に向かう。
まずは汚い手を洗わないと・・・と水を出す。
透明な水がジャーっとうるさい音をたてて流れてくる。
その中に手を突っ込んで石鹸で何度も何度も洗う。
さっき戦った時に付いた血のシャツも脱いで、シャワーを浴びる。
このTーシャツ結構気に入ってたのに・・・と少しがっかりしながらも、そのシャツをゴミ箱に投げ捨てる。
血は固まって取れないし、取れたとしても一度血が付いたものを着るというのは何となく嫌なのだ。
これから外に行く時はあんまり好きじゃない服にしよう、と心の中で決めた。

大きすぎるほどのバスタオルで全身を拭いて、白いTシャツと緑色の短パンを履く。
少し肌寒いがこの方が動きやすいし、動けばすぐにあったかくなる。
最近染めていないせいか、黒髪が目立ち始めた髪をガシガシ拭きながら広いとは言えないリビングに行く。
23 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 21:18
「れーなちゃん!」
急にさゆが目の前に現れて、心臓が止まりそうになる。
「さ・・・さゆ。。。どした?」
バクバク言う心臓を服の上から押し付けて、平静を装う。
後で、さゆをしめておこう、と思ったのは言うまでも無い。
「絵里ちゃんがいないの!家中探したけどいないの!」
「は?」
24 名前: 投稿日:2003/11/03(月) 21:19
絵里が姿を消した。
コンノ アサミがこの周辺に現れた。

―――あなたは何を犠牲にする?


誰の声かわからない声が聞こえた気がした。
25 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/04(火) 18:57
プロローグ(?)から、どうなったのか…。
紺ちゃんはどういうキャラなのか。
気になりますw
26 名前: 投稿日:2003/11/04(火) 22:23
>25 名無し読者様
プロローグはこの戦争後の生活、という設定になっています。
紺野さんはもうすぐでご登場です。これからもどうぞよろしくです。
27 名前: 投稿日:2003/11/04(火) 22:33
カチャカチャ・・・
金属と金属が触れ合ってでしかでない音が辺りに充満する。
その音が頭の中で嫌なほど響いて今日何度目かの顔をしかめる仕草をした。
「愛ちゃん、うるさい」
ごろんとひとつ寝返りを打って、天井を見つめながら傍にいる愛ちゃんに言う。
木の板で作られた天井はどこか遠くて、実際にある以上に遠く感じる。
遠近法・・・?いや、違う・・・なんだっけ?度忘れだ。最近脳を使うことなんてしてなかったからなー
頭の中で一人会話をして、でも視線は天井を見つめたまま。
さっきまでカチャカチャ鳴り響いていた金属音はいつの間にか消えていて少し変な感じ。
今まであったものが無くなると、不自然に感じるもの。
いつか、見た本に書いてあった。もうその本が何の本なのかどこにあるのかすら忘れて分からない
「なぁー」
高くも無く低くも無い私の声ではない声が耳に響く。
いつ聞いても、心地良いものだなーなんてふと思って少し笑いを浮かべる。
「何よ?」
また寝返りを一つ打って、愛ちゃんを横から見る。
あぐらをかいて、大事そうに抱えている2本の刀が薄白い光を放つ蛍光灯の光に反射する。
「今までで何人殺したん?うちら」
28 名前: 投稿日:2003/11/04(火) 22:42
「大体200人ってトコじゃない?計算外が100人ほどだし」
こういうことでも嫌に冷静で計算できる自分が怖い、と思う。
もう、慣れてしまった。
人を殺すことも、人を痛めつけることも
もう、忘れてしまった
人間の温かさ、人を愛すること

「仕方ないやよ。こういう世界なんだから、自分を守る為には人を殺さなきゃダメなんや」
「分かってるよ・・・てかさ、どうする?この子、愛ちゃん薬強すぎたんじゃないの?」
ちらっと横を見て、気持ちよさそうに寝ている少女を見た。
真っ黒い髪と猫目
はたから見れば結構美人なんじゃないかなー?と心の中で笑う。
「あさ美ちゃんが注射器に入れたの打っただけやよ!」
バンっと刀を床に叩きつけるように置いて、愛ちゃんは少し困った顔をする。
「まぁ、子供だし予定が外れることもあるね」
このままじゃ可哀相だな、と思って少しフォローしておく
元々、少し多めの量の睡眠薬を入れておいた
途中で目覚めて、暴れられると大変だしこの住処がばれると色々と大変だから。

それは私がコンノ アサミで
色々と皆が噂しているヤツだから。


29 名前: 投稿日:2003/11/13(木) 22:54
ふぁ・・・・
場違いながらもあくびを殺すことは出来なく、気の抜けた声が出た。
「あー・・・眠い。。。愛ちゃん後はよろしく。私、寝るから」
単語を並べて、文章とも呼べない言葉を発する。
人間とはおかしなものだ。
眠い、と思えば自然と眠くなる。

まぁ、人間がおかしいのは当たり前か、と何となく納得して床から起き上がる。
この時期となるとフローリングに寝転がるのは寒くて、そろそろカーペットか何かを引こうかと頭の中に浮かべる。
引くのなら、ふかふかの電気カーペットがいいなぁ。
それに掃除をしなくても汚れないやつとか。
考えていくほど面白くなって、自然と頬が緩む。
「じゃあね」と愛ちゃんにそう告げて、隣の部屋へと向かった。
この際、愛ちゃんが叫んでいた言葉は聞かなかったことにしよう。
30 名前: 投稿日:2003/11/13(木) 23:01
薄暗い廊下を出て、隣のふすまを開ける。
ギッ・・・立て付けか何かが悪いのか、重い音を立ててふすまはゆっくりと動く。
ロウを塗ったら動きやすくなるんだっけ、とふと思って蝋燭を探すがそんなものはこの部屋には無い。
ただあるのは、床に敷き詰められた白い布団だけ。
くぁ・・・
何かをかんだような言葉が出て、涙が出る。
ふすまを後ろ手で閉めて、すぐ目の前にひかれている布団にダイブする。
隣で愛ちゃんが何か言っているが、朦朧とした意識の中では眠り歌にしか聞こえない。

「おやすみ・・・」
独り言のように呟いて、瞼を閉じた。
真っ暗な闇のどろっとしたものが私を包み込んでいく・・・
31 名前: 投稿日:2003/11/16(日) 13:23
第4話  大きなクレーターと永遠

頭の中がぐらぐらする。
前にこんな感じになったことがあった・・・
そう。
初めて人を殺した時だ。
ゾクゾクして、止められない震えが体を襲って、金槌なんかで頭を叩かれたような感じでグラグラする頭
「―――探さなきゃ」
目の前が真っ白になる。
ふと現れたコンパスで書いただけの絵がくるくる回って何かを映し出す。
でも、それが何なのかは分からない。
科学館なんかに行けばあるアトラクションの1つのようだ。

「探さなきゃ。間に合わない」
自分じゃない誰かが喋っていた。
私は喋ってないのに、口が動く、言葉が出る。
何か意味を持った曖昧な言葉の羅列は何を意味するのだろう。
「れーなちゃん・・・」
今にも泣き出します、と断言できそうなさゆの声が耳の中で木霊する。

コンノ アサミが現れた、と隣の新垣さんが駆け込んできたのはすぐ後のことだった。
32 名前: 投稿日:2003/11/16(日) 13:39
何かが頭の中で繋がっていく。
ジグソーパズルを頭の中でしているような感じだ
「どこで見たって?」
息を弾ませた新垣さんの胸倉を掴んで叫んだ。
「ちょ・・・れいなちゃん。落ち着いてよ」
新垣さんはしんどそうに両手を肩の位置まで上げて、降参と言うように自慢の眉毛を下げる。
胸倉を掴んでいた手の力を緩めると、新垣さんは猫のように身を捩じらせて私の目の前から消える。
「ここから少し離れた所だよ。後藤組の小川麻琴って新人が見たらしい。でも、見たのは黒髪のポニーテールの少女が亀井ちゃんをおぶって山の中に消えるトコだけ。後藤組の話では黒髪のヤツはコンノと組んでる高橋愛って剣豪らしいよ」
「―――じゃ、そこに行けば絵里とコンノと高橋がいるんだ」
脳に叩き込むようにゆっくりと言葉を吐いた。
「話はここからだよ。後藤組の小川と組長の後藤がコンノを探しに行くらしい。それに噂だと魔術師の石川、空手家の吉澤、剣術師の藤本と松浦とか権力者がそこに向かうらしい」
どうすんの?といいたそうな顔で新垣さんは私とさゆを交互に見つめる。
「新垣さんはどうするんですか?」
短パンのポケットに手を突っ込んで、答えのわかっている質問を投げる。
「決まってんじゃん。行くよ」
帰ってくる答えは速球
そして言葉はキャッチボールと罠
「じゃ、途中まで一緒に行きません?情報通の新垣さんと一緒なら安心ですし」
愛想笑を顔に貼り付けて、右手を差し出した。
「いいねぇ。じゃ、10分後に下のロータリーでね」
新垣さんは右手を私の手にパンっと心地良い音を立てて叩きつけると、そそくさと出て行った。

取引成立
そんな単語が頭に浮かんで消えない。

「さゆ。話は聞いての通りだから、早く準備しな」
そう言って振り向いて・・・
―――寝ていた。
壁に頭を預けて幸せそうな寝顔を浮かべて。

一回殺してやろうか、と思った。
苛立ちでさゆの腹を足で踏んで、荷物の用意を始めた。
これで起きなかったら置いていこうかな、と本気でそう思った。
33 名前:名無 投稿日:2004/01/28(水) 21:36
更新おねがいしますw

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