A Silent Sin.
- 1 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:25
- 震える将星および外伝を書かせていただきました作者です。
EPISODEUとして、ゆっくり、じっくり行きたいと思いますので、
どうぞ宜しくお願い致します。
- 2 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:26
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.0
馬鹿め、この先は袋小路だ。
俺は全身から闘志が吹き出るのを自覚しつつ、後を追った。
いや、この場合は闘志という表現は不適当だな。
復讐への渇望だ。
この世で一番大切なものを傷つけ、その未来を絶った男をのさばらせて置くほど俺は寛大じゃ
ない。
社会的に抹殺するだけでは生ぬるい。
あの世で土下座でも何でもしてもらおう。
- 3 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:28
- 道は行き止まりの前で右にもう一本の路地を穿っていた。
正面の壁までの空間に遮蔽物はない。
右に折れると、両側にビルの背壁がそびえていた。道というよりも、二つのビルが穿つ空間と
言ったほうがよいだろう。
裏口のドアが二つ向かい合った両サイドには、ありがちなポリバケツやダンボールが山を作っ
ている。
・・・阿呆が。
手近なやつを派手に蹴り上げると、奥から「ひっ」とひと声あげて中央へ転がり出た奴がいる。
「念仏は済んだか」
「ひいっ。やっややややややめてくれぇ」
我ながら古い脅し文句と思ったが、効果は絶大だったようだ。
おそらくここへ入り込んだ直後にもそうしたと思われる、ほとんど凹凸のない壁をよじ登ろうと
する背へ、俺は愛用の銃を向けた。
- 4 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:29
- ドン
少し外した狙いは違うことなく、顔から30cmズレた壁面に拳大の弾痕を穿った。
そいつを凝視したまま固まった奴へ近づきながら、俺は場違いと知りつつ話しかけた。
「日本語が話せるなら、あのとき彼女が叫んだ言葉も理解できたはずだ。『やめて』と聞こえな
かったか」
壁に手をついたまま首を下げた背中が震えている。
今さら後悔しても遅いぜ。導火線の燃え残りはあと僅かだ。
あと3m。
ぽつりぽつりと空から落ちてくるのは、涙雨か。
俺は天を仰ぎ、いまでもその笑顔が失われていないことを祈りながら歩を進めた。
見ててくれ、いま無念を晴らす。
だが。
- 5 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:29
- パン
自分のよりだいぶ口径の小さい銃の発射音を聴覚にとらえて立ち止まった俺は、ほぼ同時に
腹部から背中にかけて抜けた衝撃を被弾したものとは感知できなかった。唐突すぎたのだ。
2・3歩そのまま進み徐々に湧き上がってきた痛覚に膝を着いた標的を残し、狙撃者が去って
いく。震える脚で横をすり抜けていくとき、出そうとした脚も、すがりつこうとする腕も動かない。
小口径ながら、この至近距離では殺傷力十分だ。
気がつくと、右の頬が冷たかった。どうやらアスファルトに臥したらしい。そんなこともわからな
いほど、全身が痺れているのか。
それでも。腹の下に温かい液体が流出していくのは感知できた。
同時に、自分の生命の灯がその輝きを失っていくのも。
- 6 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:30
- すまん。仇を討つどころか、返り討ちに遭っちまった。
思えばこれまで、いつこうなってもおかしくない無茶を何度もしてきた。
当りを引くのがたまたま今回だったのかもしれない。
火の玉ジョーもこれまでということだ。
あの世で謝りたいが、果たして逢わせてもらえるだろうか。
閻魔様と大天使は同一人物という噂は本当だろうか・・・・。
薄れ行く意識の中でそんなことを考え、この状況で馬鹿かと思いつつ俺は眼を閉じた。
- 7 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:35
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.1
カフェは7分ほどの客の入りだった。都心の隠れ家的場所にしては、むしろ入りすぎかもし
れない。
その場で店内を見回すと、ほどなく右手奥の席に待ち合わせ相手を見つけた彼女は、脱い
だコートを左手に持ち替えながら近づいていった。
「珍しいですね、こんなところで」
- 8 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:36
- 中澤裕子は、少し揶揄するような口調を言葉の隅っこに乗せて微笑んだ。
そんなに繁茂に会うわけではないが「彼」との待ち合わせはバーや居酒屋が多かった。
「悪いね急に」
申し訳なさそうな顔をしたこの男を見るのは初めてかもしれない。
警視庁捜査1課の腕利き、逢坂俊幸刑事であった。
「別に都合ついたから。で、話って?」
「まあまあ、何か頼みなよ。ここのコーヒーけっこう美味いぜ」
言われるまでもなくメニューをめくりながら、何か言いにくそうだな、と中澤は感じた。
「どうだい最近は、うまく行ってる」
とりようによっては微妙な質問だ。
中澤はメニューから眼を離さず「どうってぇ、まあボチボチやってますよ」と答えた。
- 9 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:38
- 二日間にわたったスポーツ・フェスティバルを無事に終え、今日は午後から取材と打合せ
があっただけだ。明日以後もそれほど詰まってはおらず、いわゆる年末のとの端境期に
あたる。こうして友人と会う時間もきちんと確保できるのもいまのうちだ。
「へえ、じゃ彼氏とも」
「何でそうなるのん?あ、アイスカフェオレ」
注文を終え、中澤はちょっとキツめの視線を向けた。
「あんたに心配されるって、ああ、あたしも終りやわぁ」
「別に心配なんかしてないって。挨拶代わりだ」
- 10 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:39
-
ハロー・プロジェクトの総リーダー(いや、総長か)とこんな軽口を叩ける国家公務員は、
日本広しといえどこの男だけだろう。
共通の友人の快気祝において、ワインの飲み比べで死闘をくりひろげて以来の仲である。
その晩からして、逢坂のマンションに転がり込み一夜を明かすという暴挙をやってのけた。
以後も度々、二人で飲み歩いてはどちらかの部屋に泊まったりホテルに投宿したりして
いるが、不思議と男女の関係になったことはない。
中澤にはれっきとした恋人がいるからお互いわきまえているとしたいところだが、逢坂に
言わせれば「俺にも好みというものがある」のだそうだ。
そんな二人だからカフェでおち会うこと自体おかしいのだが、目の前で煙草をくゆらせる
警視庁捜査一課の腕利きは、さらにいつもとは違う雰囲気をまとっていた。
- 11 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:40
-
「本題に入ってくださいよ」
京都弁特有の優しいイントネーションに微笑みつつ切り出そうとした逢坂は、中澤の眼を
見て内心ギクリとした。
頬に薄い笑みを刻みながら、彼女の眼は笑っていなかった。
下手なオブラートに包むのはかえって逆効果と判断し、逢坂はストレートを放つことにした。
「『東出 晃』知ってるよね」
「とうで?・・・・ああ」
思い出すのに要した時間は僅かだった。
- 12 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:41
-
東出晃とは中学生の頃、男友達としてけっこう仲がよかった。違う高校へ進んだのだが、
よくお互いの夜遊びに付き合って、オールも少なくなかった。
ここ数年はたまに電話がかかってくるぐらいだったが、中澤のブレイクを心から喜んでくれ
た、プライベート・フォンの番号を知っている数少ない地元の男友達である。
つい先日、ひょんな場所で再会したばかりであった。
「とうちゃんがどうかしましたのん?」
「亡くなった」
「は・・・・亡くなったって、死んだんですか」
「ああ。ホテルの部屋で」
「そんな・・・」
この女性でも呆然とすることがあるのか。
ある事件での活躍を元同僚から聞かされるに連れ、全てお見通しの千里眼を持つのでは
ないかと疑い始めていたのだが、思い過ごしだったようだ。
テーブルを見つめて数分、中澤は急に思いついたように姿勢を直し正対した。その瞳に
うっすら浮かんで見える涙を気にもせず、いつもの彼女に戻る。
- 13 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:41
-
「もしかして殺された」
「ご名答」
逢坂は『鋭い』と膝を叩くのを寸前で止めつつ、刑事の眼で中澤を観察した。
「いったい誰に?」
「それがすぐにわかったら刑事はメシの食い上げだ」
「とうちゃんが・・・」
考え事をするときの彼女の癖で、頬と顎の境目あたりをポリポリと掻くその仕種を見て、
逢坂は自らの直感を確信へと変える。
中澤の頭脳は瞬時にフル回転をはじめていた。
- 14 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:43
-
合コンという思わぬ場面での再会に良悪織り交ざった思い出が去来する中、若干の緊張を
隠さずに向かい合ったものの、すぐにそれは氷解した。
東出が持つ人懐っこい笑顔は、10年以上前と全く変わっていなかったのである。
他の参加者に遠慮していたのも僅かな時間で、東出が「写真誌にチクるぞコラ」とグラス
片手に寄ってきてからは、ほぼかつての二人に戻った。
当然ながら二次会にも進み、今度ふたりで飲もうや、と口約束をかわしたところまでは
覚えているのだが・・・。
(何か大事な話をしたような気もするんやけど・・・あかん、思い出せんわ)
- 15 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:43
-
「何か気づかなかった?」
「へ?」
気づくと、逢坂がじっと眼を覗き込んでいた。
「東出だよ。何かに怯えていたとか、人目を気にしていたとか、そういうのなかったかい」
「怯えてた?うーん・・・・・」
「心当たりなさそうだね。じゃ質問を変えよう。そのあと、東出と会ったりしたかな」
「合コンの後?会ってな・・・・・・って、何、あたし疑われてるん」
「少なくとも俺は違うがね」
接触をはかってきた以上、被害者の交友関係を洗うという捜査の初動段階から脱しきって
いないことを意味すると考えるのが普通だが、中澤の推理は一歩先んじていた。
- 16 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:44
-
同級生が亡くなったというのに、彼女のもとへは何の知らせも届かなかった。
マスコミで報道されたかどうかは分からないが、少なくとも耳に入るぐらいはあってもよい
はずだ。
これは政治的な力が働いたからに違いない。東出の死が中澤裕子に知られてはマズい
都合が当局側にあったのだ。
「ふーん。ま、そういうことにしとこ。言っとくけど、アリバイはないで」
東出が殺されたとされる時間、彼女は既にプライベート・タイムであった。
約束の相手に急用が出来、仕方なく行きつけのバーへ寄って一杯ひっかけ・・・どころでは
なく泥酔に近くなるまで飲み、気がついたら自分の部屋で衣服も脱がずにベッドにひっくり
かえった翌朝であった。
したがって誰かと一緒にいたということもないし、何時までバーにいたというはっきりした
記憶もない。アリバイは無きに等しい。
- 17 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:45
-
逢坂は中澤の途切れ途切れの話をメモると、意味深げな笑みを浮かべた。
「だれも聞いてやしないだろ。ま、承ってはおくけど」
「わ、気持ち悪い。で、いつになりそうやのん」
「さあ。個人的な知り合いってことで、俺はチームから外されたから。いいかい、もし呼ばれ
ても、余計なことは話さない。いいね」
本当はこうして接触しているのも譴責ものなのだが、あえてそれを犯して助言に来たので
ある。
中澤は逢坂の心中を察してか、両肘をテーブルに着いて身を乗り出し、芝居がかった調子
で、囁くように言った。
「わかってます。あたしを誰や思うてますのん。高科穣也の二番弟子ですよ」
- 18 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:46
-
潔白とはいえ証明するだけのものがない以上、事態を受け止めるしかない。
だがこの女性ならば、笑顔でそれを受け切ってしまう。そう思わせるだけのものが、表情と
言葉から醸し出されていた。本当の大人の女性が持つ余裕といってもいい。
「そうか・・・・そうだな。いや、余計なお世話だった」
逢坂は頭をかきながら笑い返した。
その笑顔が納得してのものなのか、自分の心中を察してのつくりものなのかは、中澤には
わからなかった。
- 19 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:47
- 「今度はいつ飲もうかね」
「んー、年末は厳しいなあ。みんな呼んで新年会ってとこやね」
「新春のラストはいつだっけ」
「あんたらしくないなあ。6日やろ6日」
「年末年始の特別警戒が解けるのは5日だ」
「OK。そしたら、みんなにも話しとくわ」
「頼むぜ。それじゃ」
「達者でなぁ」
最後はいつもの軽口で別れたが、手を振る中澤の笑顔が少しだけ硬いように見え、逢坂は
接触したことを後悔しかけた。
だがすぐに、何の予備知識もなく巻き込まれるよりはマシだと思い直した。
彼女なら事実を冷静に受け止めて、自分と周囲に最も良い対処法をとるはずだ。
小さくなる後姿に背を向けタクシーを拾おうと車道へ出た彼は、捜査一課のベテランにも
気取られないほど巧みな尾行が中澤についたことには、ついに気づかなかった。
To be continued...
Next time is start at Chapter 2.
See you again and good luck !
- 20 名前:新人 投稿日:2003/11/04(火) 14:50
- 作者です。
初の更新を終了させていただきます。
構想はまとまったのですが書く時間がとれず、あまり進んでおりません・・・。
更新は前作よりゆっくりになるかと思いますが、どうか御容赦下さい。
では、御感想等お待ちしております。
- 21 名前:つみ 投稿日:2003/11/04(火) 15:03
- おおおおぉぉぉぉ!!!
遂にはじまったぁぁぁ〜〜〜!!!
作者さん!ずっと待ってました!この日が来るのを・・・
Chapter.0の内容が凄く気になります・・・
予告編の通り中澤さんが・・・楽しみにして次回も待っています!!
- 22 名前:名も無き読者 投稿日:2003/11/04(火) 21:55
- はぁじまった〜〜〜〜!!!!!
毎日見に来てて良かったよ〜(涙
いろいろ気になることだらけですが・・・
次回も期待しながら待っております!!!
- 23 名前:名無し読者。。。 投稿日:2003/11/05(水) 22:25
- いよいよですか・・・
また楽しみに更新待ちます
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/07(金) 00:08
- 始まりましたね…待ってましたよ。
最初から気になる内容ですね。
それがこれから徐々に明らかになっていくのかと思うと、
楽しみで楽しみでしょうがありません。
落ち着いて待ってます。
- 25 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:15
- こんばんは作者ですm(__)m
ご存知の方も多いと思いますが、市井が引退しました。
それによって修正を余儀なくされており、ペースがなかなか上がらない状況となっております。
今夜の更新も少しとなってしまいますが、どうか御容赦を。
- 26 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:16
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.2
バスルームから出ると、電話が鳴っていることに気づいた彼女は少し慌てて受話器に向か
った。この時間にかけてくるとしたら、娘。の現役かOGか、とにかくハロプロの関係者以外
には考えられない。
ところがナンバーディスプレイに表示されたのは、友人の愛称でも事務所の人間の名前
でもなく、見覚えのない携帯の番号であった。
「・・・・・・もしもし」
保田は、やや警戒しながら受話器に話しかけた。
「は?なっ、何言ってんのあんた。・・・・そんな話に乗ると思ってんの!」
温厚で通る彼女がこんな怒声をあげるとは珍しい。もともと大きな瞳が大きく見開かれて
いるのは憤怒のせいに違いなかった。
「あんたねえ、いいかげんにしなさいよ!名乗りもしないで失礼じゃないよ!もうかけて
来ないで!」
- 27 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:17
- 激しい憤りを受話器に叩きつけると、保田はバスローブを着たままベッドに寝転がった。
まったく、冗談じゃないよ。手紙の次は電話なんて。
一週間ほど前に届いたレターは、何の飾り気もないことで逆に彼女の眼を引き、直後に
戸惑いと怒りの同居した不思議な表情を浮かべさせた。
いまかかってきたのは、それと同内容の電話だった。まったくこれから忙しくなるってのに、
そんなヨタ話につきあってられないよ・・・・・まてよ、でも他の人にも声かけてるって言って
たな。まさか・・・・・。
保田は手早くナイト・ウェアを身につけると、受話器をとった。リダイヤルではなく、彼女が
頼りにしている人物にである。
「・・・・・・・・もしもし裕ちゃん?」
グループのリーダーとして君臨(?)していた頃から夜中の電話は少なくなかったが、ソロに
なってからお互いの時間的余裕もあって回数は増えていた。とはいえ、保田にハロプロか
ら独立してのピンの仕事が多くなり始めた現在では減り気味ではある。
- 28 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:17
- ハロプロの総リーダーとサブリーダーである。はじめは下の娘たちの話題から始まり、
フェスティバルで怪我したあの娘はどうしたとか、他愛のない話題がひと段落したところで
若干おそるおそる、切り出してみた。ところが・・・・・・
「あのさ、最近変なこと言ってくる奴いなかった?いやそーじゃなくて、条件がどうとかこう
とか・・・・・・・ちょっと何それ!マジなの?ヤバいじゃん!」
人のよさが出て自分の相談もすっかり忘れ、中澤の話に聞き入ってしまう保田である。
「裕ちゃんって何でそんな人事みたいに言えるわけ。きちんと話し通しておかないと」
『まあ今日や明日にってワケでもないやろし、こんな時間やしな。それより圭ちゃん、そん
な話に乗ったらあかんよ』
「人の心配してる場合じゃない!もう、何でこうも楽天家なのよぉ」
『はは、まあなるようになるって。少なくとも私やないんやから心配せんとき。ほんじゃなあ
おやすみぃ』
「こら待て、裕ちゃんってば!!・・・・・・はぁ信じらんないよ」
自分が相談しようとしたことをロクに話せなかったこともあるが、新たな心配の火種が心に
くすぶりはじめた保田は、その晩なかなか寝付けなかった。
しかし、それがまさかハロー・プロジェクトはおろか外の世界をも巻き込んだ事態に発展しよ
うとは、さすがの彼女も想像だにしていなかった。
- 29 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:18
-
携帯の着信履歴を見たとき、不思議な気分になった。ライヴが終わった夜である。自分達
はまだ首都圏に近かったのでその日のうちに帰京したが、彼女たちはそれは叶わず現地
に一泊することになっていた。
もうすぐ4年に及ぶキャリアの中にあって、ライヴの後に一緒でないというのはなかなか
ないことだった。
着信は、昼の部の公演直前と夜の部が終わった直後に入っていた。もちろん自分達も
同時刻に公演があり、最近は一人でテンションを高める工夫を覚えたので気づかなかった
のも無理はないけど、もどかしそうに携帯を耳に当てる姿を想像すると少し申し訳ない気も
する。
最近は意識して距離を置こうとしている部分もあるが、やはり最後の部分で頼りになった
り愚痴を言えたりするのは、頼れる同期だ。全くもって不思議な関係の二人であった。
- 30 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:19
- とりあえず、そのまま通話ボタンを押した。
「・・・・・・・・・・・・おーっす。そっちはどうだい梨華ちゃん」
『遅いっ。何時だと思ってるのよ。二度とも出ないでぇ』
「いやいや、ちょっとね。携帯のこと忘れて集中してたからさ」
『嘘っ。何か食べるのに夢中になってたでしょ』
「違うって。そんなら気づくよ音デカいし」
『ふーん、本当かなあ』
「あのさ、用ないなら切るけど」
吉澤は若干ムッとした声を出して威嚇(?)した
夜の部が終わったあと、サッと汗を流しただけで車に飛び乗った。
名古屋で「のぞみ」に乗っても寝付けなかったので、とっとと寝ようと思いつつ風呂から出た
ところだったのである。
「さくら組」単体でのライヴが初めてだったせいもあり、いつもの倍は観客席を近く感じたし
自分に注がれるファンの視線も強く多いような気がして、たとえMCでも一瞬たりとも気を
抜けなかった。最初だからかもしれないけど、3倍は消耗した気がする。
疲れてないのかね梨華ちゃんは・・・・・『待ちなさい!用があるから電話したんでしょっ!』
という反撃は、やや遠いものに聞こえた。
- 31 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:20
- 「だから何よ」
『眠そうな声して。ちゃんと聞きなさいよね。ね、そっちに変わったことなかった?』
「そっちって『さくら』?んー別に、ちょっと緊張したけど、ライヴは大盛り上がりしたよ」
『そうじゃなくて、周りよ、ま・わ・り』
「はぁ?」
石川によれば、リハーサル中に保田から『緊急』の電話がかかり、「周りにおかしな奴が
ウロついてたりしない?」と聞かれたのだという。あまり詳しくは話しを聞けなかったが、
スタッフに紛れていそうな「おかしな奴」にはじゅうぶん気をつけろと言われたのだそうだ。
おかしなのって言われてもなあ。アリーナとかじゃないから隅っこのファンまでよく見えた
けど、別に普通のファンだなって思ったし。出待ちの中にも変なのはいなくて、手振ったり
コールしたりしてるだけだったよな。
吉澤は思ったとおりのことを答えた。
石川は安堵したようだったが、同時に気になることも言った。
- 32 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:20
- 『でもね、出がけに飯田さんが呼ばれたんだよね。あたしたちは先にホテルへ行ってな、っ
て感じで。それも、部屋へ入ったのさっきだよ』
「あ、それこっちもあった」
吉澤は東京駅でのことを思い出した。
普通ならば八重洲口で車に乗り込み個々に解散となるのだが、安倍と矢口だけは同じ車
へ乗せられ、どうやら事務所へ向かったようなのだ。
これから打合せ?それともライヴの出来が悪いって話にでもなったのかな。
二人を見送ったメンバーからはそんな疑問の声も出たが、それなら新幹線の中で矢口が
怒ったはず、と吉澤は5人を諭して帰したのである。
自分も気にはなっていたのだが、時間も時間だ。明後日にはハロモニ。の収録があるから
緊急事態でないのならそのとき聞けばいいと判断したのだった。
- 33 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:21
- 『安倍さんたちも?うーん何か引っかかるなあ。重なるなんておかしいよね』
飯田に確かめようにも「ごめん疲れた」と言って既に交信モードに入ろうとしており、おとめ組
初の公演の成功を労おうとした石川と藤本は肩透かしを食らっていた。
確かに、最年長の3人が場所こそ違え同時に呼ばれて何事かの密談をかわしたとすれば
石川以下のメンバーには現時点で知られてはならない事態が動き出している可能性もな
いとはいえない。
「変なこと考え出したら止まらないからさ、やめよ。とりあえず今夜は祝!おとめ・さくらの
初ライヴ成功ってことで」
吉澤はわざと能天気にしめくくった。
- 34 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:23
- 少し前までなら「どうしよう、何か悪いことだったらどうしよう・・・・」とまるでこの世の終わりの
ように落ち込んだはずの石川も、吉澤の明るさに合わせるように軽口をたたいた。
自らの事件が発端となった大人への変貌は、現在も着々と進んでいる。もともと大人っぽ
かった藤本も、ハワイでの事件を期に格好よい言い方をすれば「メンバーへの愛」を表出
させるようになり、年少組の信頼を集め始めていた。
その二人が飯田の左右に控えているのだ。たとえ今夜の一件を年少組が不安がっても、
おとめ組に余計な動揺が走ることはないだろう。
こっちじゃあたしがしっかりしなきゃな・・・・・吉澤は睡魔との闘いに土俵際まで追い詰めら
れながら、明日以降に自分がとるべき行動を考えていた。
そして夢うつつの中でも、何だか梨華ちゃんあたしに似てきたなあ、などど考えていたの
だった。
To be continued...
Next time is start at Chapter 3.
See you again and good luck !
- 35 名前:新人 投稿日:2003/11/11(火) 21:24
- 今夜の更新は以上です。
少なくて申し訳ありません・・・。
- 36 名前:つみ 投稿日:2003/11/11(火) 21:43
- なんだか謎めいてきましたね〜
事件のにおいがしてきました!
- 37 名前:みっくす 投稿日:2003/11/12(水) 05:51
- レスがおそくなりまして。
おまちしていましたよ。
いよいよ事件の予感?
続きたのしみにしてます。
- 38 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:00
- こんばんは。
作者です。
スポーツ・フェスティバル大阪大会(プロレスみたいだ)での
ごっつぁんとよっすぃーの勇姿、ご覧になった方いらっしゃ
いますか?
私はめざましテレビで観ただけなのですが、二人は輝いて
いましたね。
辻ちゃんが過呼吸症候群になってしまい、フットサルへの
出場を涙ながらに訴えたらしいですが・・・もらい泣き。
では、少しですが今夜の更新です。
- 39 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:01
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.3
逢坂はそのドアをためらわずにノックした。中から「どうぞぉ」という、似つかわしくない返事
が聞こえるのは予測できていた。
「やあ」
「何や、あんたが担当?」
椅子を引きながらかわした挨拶は、緊急事態を忘れさせるほどのほほんとしたものだった。
「まさか。二日前に接触したことがバレてね。5日間の自宅研修をたったいま言い渡された
ところだよ」
「は、謹慎かぁ。ま、仕方ないわな」
中澤は手にしたアイス・ティーのグラスを揺らしながら微笑んだ。
- 40 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:03
-
逢坂はチラリと目線を右に流すと、自分も笑顔を作った。
二日前の夜に接触した際、中澤に尾行がついていたのを今日になって知らされる失態を
後悔するより、事実上の謹慎と引き換えに最初で最後の調書をとる権利を得たことを活か
す方が得策と、中澤の笑顔を見て判断したのである。
「断っておくが、おれは冤罪だと強行に主張したぞ」
「わかってますよそんなの。で、なんでウチがこんなところに来なあかんの」
さすがだな、と思った。こちらの意図をちゃんと汲んでいる。高科が「あの女、ただものじゃ
ねえ。違う業界でよかったぜ」と大真面目な顔で言っていたのを思い出しながら逢坂は
続ける。
「アリバイの件は省く。理由のひとつはこれだ」
デスクに広げられた写真を見て、中澤は僅かに眉を寄せた。
殺された旧友のものらしい部屋の壁は、中澤裕子のポスターや写真で埋め尽くされていた
のである。
流行と言っては変だが、こりではまるでストーカーだ。
「これがとうちゃんの部屋?・・・おかしいなあ」
「どう思う」
「どうって、電話番号まで知ってる中学時代からの友達ですよ。こんなことありえないと
思うのが普通ですやん。でも・・・・・・」
- 41 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:04
-
知り合って半年以上経つが、中澤の瞳が潤むのを見るのはこれが2度目だ。
親友の死が実感として湧き上がってきたのだろう。二日前まで知らされていなかったこと
もあるし、自分が疑われていると看破した彼女のことだから、事件のことをずっと考えてい
たのかもしれない。それによって悲しみを遠ざけようとしていたものか。
指先に僅かに乗せた涙の雫を見られないように素早く手を引っ込めた中澤を見て、逢坂は
けっして虚勢を張っていないと判断した。残りの「理由」を並べるのに躊躇はなかった。
『犯行時刻に目撃された、中澤とよく似た背格好の女性の後姿』
『二次会で話し込んでいたという証言』
『犯行現場となった部屋で見つかった頭髪』
中澤は最後のひとつに顔を上げた。
「髪の毛・・・それあたしのなん」
「ああ。DNA鑑定で一致したよ」
「おおかた吸殻やろけど、いつ採取したん?日本警察も侮れんなあ」
「そこまでは。捜査から外された人間だからね」
答えながら舌を巻いた。
某テレビ局のタレント・クロークで昨日採取された吸殻によるものだが、半分言い当てるとは。
- 42 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:04
-
「髪の毛に心当たりは」
「さあ。酔っ払って背負われた覚えもないしな」
「状況証拠、アリバイ不明、物的証拠。呼ばれても仕方ない要素が揃った。でも決定的に
足らないものがある」
「動機」
「そうだ。君には動機がない」
「はっ、ちゃちな手に乗るあたしやないですよ」
不敵ともとれる笑みを浮かべた中澤に僅かに頷くと、逢坂は腕時計を見た。接見に許され
た時間は10分であった。
「どうです管理官殿。これでもまだ、彼女を引き止めるつもりですか」
右手の鏡=マジックミラーをチラと見た逢坂が独り言にしては大きすぎる声を出したので、
中澤は少しビクっとした。これまで彼女が聞いた事のない口調と声色だ。
「もう時間ですから退出しますが、国倍訴訟で莫大な補償金を請求されたくなかったら、
早く帰した方が良いと思います。冤罪では済みませんよ」
最後の「よ」にあわせてウインクしてみせると、逢坂は立ち上がった。
- 43 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:05
-
この場合、別れの挨拶は必要ないだろう。いや、どんな言葉を使っても不適切だ。
二人は警視庁に喧嘩を売ったも同然なのだった。
逢坂がドアを開ける直前、デスクの上で組まれていた彼の両手の下にあったと思われる
紙片に気づいた中澤は、現れた捜査一課長の声が聞こえる前にそれを掌の中へしまい
こんだ。
「これは課長、見送りですか」
「いいかげんにしろ。管理官は呆れて行ってしまったぞ」
行ってしまわれた、と表現しないところに幾らかの救いを感じ、逢坂は微笑んだ。
「へいへいすんません。じゃあ、家で謹慎してますわ」
「本当だろうな。必要なら監視をつけざるを得んぞ」
「またぁ。俺には高科のような覚悟はできないっスよ」
「む・・・・」
既に4年が経過したが、未だに記憶の隅に燻っているのは課長も同じのようだ。
苦笑いのような表情を浮かべると、一礼して逢坂はエレベータへと歩き始めた。
- 44 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:07
-
閉まりかけたエレベータのドアを再び開けた彼は、彫像のようにその場を動かずに見送る
課長にこう言い残した。
「あんまり『彼女たち』を甘く見ない方がいいですよ。味方は俺だけとは限りません」
階下へと移動していくエレベータを見送り、捜査一課長は同じフロアへ設置された捜査
会議室へ消えた管理官を追った。
その顔には出来の悪い息子を持つ親のような、複雑な微笑が浮かんでいた。
ドアの向こうに二人の声を微かに聞きつつ、中澤は手の中のメモを伸ばし目を通した。
短い文章に眼を通した彼女は、その日はじめての穏やかな笑顔になった。
それはまるで、悪戯っ子が「してやったり」と言っているかのようであった。
To be continued...
Next time is start at Chapter 4.
See you again and good luck !
- 45 名前:新人 投稿日:2003/11/18(火) 21:19
- 今夜の更新は以上です。
ゆっくりとしか進まず申し訳ありません。
ちょっと仕事的に、あまり時間を割けない状態でして。
でも、頑張って書きますので今後とも宜しくお願い致します。
36 つみさん
ご期待に応えられるよう頑張ります。
謎が謎を呼ぶ展開にできればと思ってます。
ところで、つみさんは誰のファンなのですかね?
よろしかったらお聞かせ下さい。
37 みっくすさん
遅れたなんてとんでもないです。
また小説館に載せてくださって、光栄の極みです。
途中で削除されないように頑張ります。
22〜24
名の無い読者さんたち・・・
こんなに読んでいただいていたなんて、感激です。
前作・番外編を上回るものを書きたいと、私も願っております。
よろしければまた、御意見、御感想をお聞かせ下さい。
それでは。
- 46 名前:さゆLOVE 投稿日:2003/11/18(火) 22:08
- 初レスです
作者さんの文章に凄い引き込まれます
もう作者さんのファンになった言ってもお釣りがくるくらいです
いつも更新楽しみにしてますので頑張ってください
余談ですが大阪スポフェス行きました
ごっちんも凄かったですが
やはり吉澤さん!クソ女ブービーとは思えない豹変ぶりの大活躍でした
- 47 名前:つみ 投稿日:2003/11/18(火) 22:36
- このコンビはかなりいいんじゃないですかぁ〜?
息もぴったり合ってるしね〜^^
そろそろ『彼女たち』が動きそうだ・・・
- 48 名前:みっくす 投稿日:2003/11/19(水) 01:35
- 更新おつかれさまです。
新しいコンビ誕生ですかね。
よっしーのあのセリフがいつでてくるのか楽しみにしてます。
- 49 名前:丈太郎 投稿日:2003/11/19(水) 07:16
- 更新おつかれさまです!裕ちゃんって、本当にこんな感じで警視庁
に乗り込みそうです…。みっくすさんの「あのセリフ」って何だろ
う?ストーリー以外にも気になるなあ。
- 50 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:12
- こんばんは作者です。
今日かなり進めることができたので、少ないですが更新したいと思います。
- 51 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:16
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.4
「おはようございまーす、ってあれ?」
藤本のノリ突っ込みは珍しくない。
持ち込んだ菓子を食べ尽くして暇を持て余している年少組(といっても、食べたのはほとんど
食いしん坊3人組だが)が反応を示さないのがそれを裏付けている。
だが、通達された時間まであと僅かだというのに年長組3人が誰もいないというのは、そう
あることではなかった。
少しハードな一日を終えてまったりしている石川を見つけ、藤本は奥へと進んだ。
「飯田さんたちは?」
「美貴ちゃんお疲れー」
今イチ緊張感がない声も、彼女のこれが潤滑油になっているという見方がある。良い具合に
力が抜けるというのだ。
「まだ来てないの?」
「安倍さんは見かけたんだけどね。どうしたんだろ」
「言い出しっぺなのにな飯田さん」
- 52 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:17
-
ここにいるほぼ全員が、今朝早くに届けられた飯田からの携帯メールによって目を覚ましてい
た。今日は本来バラバラのスケジュールで動いているはずだったのだが、安倍・矢口らが
レギュラー出演している番組のアテレコスタジオに部屋を用意したから集まるように通達され
たのである。
初めてではないにしても、よほどのことがない限り緊急ミーティングが召集されることは考え
られなかった。何か悪い話が待っているのかな・ ・ ・ ・ ・ その思いは同じなのか、既に集まっ
た年少組は、眠りこけている高橋を除いていつも以上に嬌声を絶やしていない。
「やっぱあれかな、こないだの」
石川が用意しておいてくれたドリンクをひと口飲りつつ藤本が発した一言が、全てを代弁して
いるかもしれない。
「うーん ・ ・ ・ あたしもそれしか考え付かない」
- 53 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:19
-
翌日の帰途にそれとなく訊いてみたのだが、「おとめ組」単独公演の直後に姿を消した訳を
飯田は話してくれなかった。年下チームとの橋渡し役として信頼の厚い石川でさえ駄目なの
だから、神速のツッコミで恐れられる?藤本は推して知るべし。
二人で顔をつきあわせて「「う〜ん」」と唸ってしまうのも無理はなかった。
「おはよーございまーす」
底抜けの楽天家にしか聞こえない挨拶は小川だ。誰にかけたのだろう?
ふたりはドアに視線を向けるとほぼ同時に眉をよせた。
そこにはどう逆立ちしても勝てないスマイルが、少しだけ翳をまとっていたのである。
「おはよーみんな。ごめんね疲れてるのに」
安倍なつみであった。
みんな口々に挨拶をかわすなか高橋だけは爆睡から覚めなかったが、安倍は笑顔を絶やさ
ない。この母性感が「子供っぽい」と言われながらも慕われる所以である。
- 54 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:21
-
「おはよ」
「おはよーございます」
同郷の後輩にいつものように声をかけた安倍は、藤本と傍らで不安げな顔の石川を
「ちょっといい?」
と別室へ誘った。
どうやら年上チームだけで話をしたいらしい。先に立つ安倍の小さな背中に無言で続きながら
石川はいよいよ覚悟を決めた。
「よっちゃんは」
「あ、なんか電話がありました。ラジオの収録が押してて、ちょっと遅れるみたいですよ」
答えつつ(いきなりテンション落ちてるしぃ…)と覚悟を通り越してネガティブに落ちかける石川
を藤本が肘で小突く。(梨華ちゃんが暗くなってどうすんのよ)(だってぇ)などとやっていると、
ドアの前で立ち止まった安倍に危うく追突しそうになった。
「ここに?」飯田と矢口が待っているというのか?
そこはフロアの一番奥。スタッフが寝止まりに使う仮眠室であった。ミーティング・ルームに
しては場所が突飛すぎはしまいか。
不安が微かな恐怖へと変わっていく。
無言でドアを開ける安倍に続き中へ入ると、眼にした光景に二人は言葉を失った。
- 55 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:22
-
「う ・ ・ ・ ・ん。あれ、石川さんはぁ」
ようやく高橋が起きた。
「いまごろ起きても…行っちゃったよ、もう」
小川のツッコミは全くそれらしくない。のんびりしすぎである。
学業の都合でここにはいない新垣なら、その特徴である早口で藤本並みのツッコミを入れた
かもしれない。
「んーっ、はあ。安倍さんの声が聞こえたなと思ったんやけどぉ」
大きく伸びをした高橋は、三人が消えたドアを見つめている紺野に気付きドキッとした。
(え…あさ美ちゃんも?)思わず凝視する。
言わずと知れた才女である。ここに集められた「理由」に深慮を重ねていてもおかしくない。
- 56 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:24
-
「ふう…」
微かなため息とともにドアに背を向けた紺野の目に、空気などおかまいなしに騒ぎ続ける
『ツートップ』よりも、自分を見つめる高橋の方が先に飛び込んできた。
高橋の顔からは、いつもの微笑が消えている。
整った顔立ちであるがゆえ、真剣な表情のときは同性でもドキッとすることがあるのだが、
いま紺野に投げかけられているのは過去に感じたことのない心の中を見透かされるような
視線であった。
外した目を一瞬だが泳がせると、高橋は「ジュースでも買ってこー」と立ちあがった。
まるで取り繕うかのような言いかたに、紺野の方もハッとする。
(まさか愛ちゃん?)
傍らを通りすぎる高橋が寄越したアイ・コンタクトにより、それは確信へと変わる。
「あ、あたしも行く」
慌てて後に続いた紺野の背に『あたしコーラ!』『あたしもぉ!』という加護と辻の注文が入る。
残念やけど、こたえられませんわ加護さん。
のんつぁん、ちょっと無理。ごめんね…。
並んで歩きながら、高橋と紺野は同じことを心の中でつぶやいていた。
- 57 名前:新人 投稿日:2003/11/23(日) 20:26
- 今夜の更新は以上です。
また火曜日にできればと思っています。
余談ですが、ごっつぁんの新曲、あれ松浦のですよね・・・。
では
- 58 名前:つみ 投稿日:2003/11/23(日) 20:58
- 何があったんだ・・・
一体その部屋にはなにがあるんだぁぁぁ!!
- 59 名前:みっくす 投稿日:2003/11/23(日) 21:49
- みきてぃ達の入った部屋には何が?
愛きゅんと紺ちゃんの行動も気になるところ。
次回楽しみにしてます。
- 60 名前:とこま 投稿日:2003/11/24(月) 19:28
- おおっ!ついに復活ですか!(←遅っ!)
いったい部屋には何が・・・?
事件のにほひが・・・。
- 61 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:13
- こんばんは作者です。
さきほどまでハロモニ。のVを観てました。
来週のスポフェス特別編がとても楽しみじゃありません?
サンスポ特別版も出るみたいですが、よっすぃーの活躍
といいごっつぁんの金メダル連発といい、早く観たいな
読みたいな、って感じです。
では、今夜の更新です。
例によって少ないですが・・・。
- 62 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:15
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.5
用意された部屋はとりあえずツインだった。
車で5分ほどの場所にしては静かなたたずまいである。
バッグを放りだし、着替えもせずに中澤はベッドへひっくりかえった。
(ったく、冗談やないわ。人の過去を根掘り葉掘り…)
参考人の話を聞くというより、ほとんど尋問に近い数時間であった。
常套手段である「弁護士を呼んでください」というリピートも通用しないほど超法規的な力が
働いているらしいことを悟り、今度はだんまりを決め込んだ。
相手の刑事もさすがは1課のエリートというべきか、身体がむず痒くなるような淡々とした
ペースを崩さなかった。しかも、今日は一切、事件には触れなかったのである。
- 63 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:16
-
生い立ちから始まり、中学・高校と若干だがアレていた時期の話や、同時期に東出と知り
合い、夜遊びに明け暮れた日々のこと。
就職後、上京を決意するまでのさまざまな紆余曲折。どこで調べたのか、「事実と違うなら
そう言いなさい」と前置きした担当刑事は、事細かに中澤の人生を物語ってみせた。
普通の女性ならば「いいかげんにして!」とデスクをひっくりかえすところである。
だが、これを「心理戦」と理解している彼女は、涼しい顔で聞き流してみせた。
その泰然自若ぶりが担当官の心理に微妙に影響したものか、軟禁状態に置かれるこの
ホテル『ダイヤモンド』では、部屋に入ってすぐ鍵を取り上げられた。
携帯電話も没収されたし、この分では外線をかけようとしても無駄だろう。回線が内線のみに
切り替えられているに違いない。
ルーム・サービスだけは許してもらったものの、ワゴンを入れるときも下げるときも、いまも
エレベータ・ホールのチェアに腰掛ける女性刑事がチェックするはずだ。
- 64 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:17
-
ポケットの中から取り出した紙切れを見てため息をひとつつくや、中澤はバス・ルームへ
向かった。慣れない環境でどこまで叶うかわからないが、まず疲れをとらなくてはならない。
入浴と睡眠が必要と考えたのである。
この状況で風呂なんて、肝が据わっているを通り越して無神経なむんじゃないの!って
叫ぶやろな、圭が知ったら。
バスタブに満ちて行く湯を見つめながら、中澤は自嘲気味の笑いを漏らした。
それどころか数分後、バス・ルームからは『I wish』の鼻歌までが聞こえてきた。
彼女にこうまでリラックスをもたらす理由は何だろうか。
それが、ベッドの上に脱ぎ捨てられた衣服の傍らで空調の僅かな風に揺れるメモ用紙で
あるとは、警視庁捜査1課の精鋭とて見ぬけまい。
「これからよっすぃーに会ってくる」
飲み友達が残したこの短い文章をよりどころにしているのだった。
- 65 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:18
-
安倍が開いたドアの内部には、飯田と矢口、モーニング娘。のリーダー二人がいるだけで
あった。ここまでは予想通りだ。
頬を伝う涙を見るのも、初めてではない。矢口など、アダルトチームの中でも涙もろい方だ。
だが、宙に泳ぐ二人の瞳は何も見ていなかった。
その聴覚も、何も捉えていない。
言わば「虚無」に支配されているのだ。
安倍が後ろ手にドアを閉めても、何の反応もなかった。
「さっ、座って」
安倍がすすめてくれたソファに腰を下ろしながら見ると、彼女も化粧こそ直しているが目が
赤く、僅かに瞼が腫れているようだ。
- 66 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:22
-
小さな身体にみなぎるパワーで、グループを引っ張るムードメーカー。
彼女の意志がモーニング娘。全体の意志となる、皆に認められ頼りにされるリーダー。
それが矢口真里であり、飯田圭織のはずだ。
石川と藤本が知っている二人は、ここにはいなかった。
牽引車をここまで虚脱状態にする何かが待っているのだと瞬間的に悟り、石川も藤本も
息苦しささえ覚えたのである。
「圭織、矢口、連れてきたよ」
安倍が声をかけてようやく、感情が動いたように見えた。
「しっかり」
安倍が手を重ねて囁くと、飯田は鼻をひとすすりしてため息をついた。
同じようにされ、矢口も思い出したようにティッシュを取り出す。
ようやく二人の時間が動いた。
- 67 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:23
-
「遅くに悪いね。よしこは?」
飯田の声は鼻声だった。
「ちょっと遅れるみたいです。あの ・ ・ ・ 何があったんですか」
「うん ・ ・ ・ 」
ただ言い難いだけじゃなさそうだ。また誰か卒業が決まったのかな。それなら皆そろってる
ときにするよね。何かすごい悲しそう。何があったんだろう…。
精神感応をはじめた石川の横で、藤本は冷静さを保っていた。
「とにかく話してくださいよ。そのために呼んだんでしょう」
「わかった。いい二人とも、いまから話すこと、落ちついてちゃんと受け止めてほしい」
頷きつつも、石川の喉がゴクリと鳴る。
飯田は矢口と、安倍とも目線をかわし、口を開いた。
- 68 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:24
-
「きょうのことなんだけど、裕ちゃ・ ・ ・ 中澤裕子さんが」
「中澤さんが?」
藤本が眉を寄せる。思ってもみなかった名前だった。
「警察に ・ ・ ・ 身柄を拘束されました」
「え ・ ・ ・ 警察に?こ、拘束って」
二の句を継げず押し黙ってしまった石川に合わせるかのように、室内を沈黙が支配する。
既に石川は泣きそうになっていた。
「どういうことですか。何か事件に巻き込まれたんですか」
逆に藤本は怒っているかのようだった。
そんな二人を悲しそうな瞳で見つめる飯田にかわり、矢口が補足する。
「うん。正確には『警視庁に参考人として呼ばれた』んだけど ・ ・ ・ いまは監視付でホテル
だって」
「どうしてそんなことに?」
再び疑問の声をあげる藤本の肘をきつく掴むことで石川は堪えていた。
確実に大人への階段を昇りつつはあっても、持って生まれた性格は変えようがないのだ。
- 69 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:25
-
「何日か前にね、殺人事件があったの」
「さっ、殺人!?」
「うん。そのね ・ ・ ・ ごめん矢口」
飯田はうずくまっただけでなく、イヤイヤをするように頭を振った。
リーダーが後輩二人の前でこのような仕種を見せるとは。
「事件の重要参考人なんだ裕ちゃん」
かわって答えた矢口も、必死に冷静を取り繕っているのは明らかだ。
「重要参考人?」
ニュースで聞いたことがある。ドラマで使われているのも耳にしたことがある。
「それって容疑者と変わらないじゃないですか!ありえないですよ!!」
藤本はぶつけようのない怒りを宙へ発散するかのように叫んだ。
- 70 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:26
-
「どうして人を殺すなんてこと考えられるんですか。あの中澤さんですよ?そんなの
間違ってる。絶対に間違ってますよ!」
藤本がこんなに悲壮感あふれる声を出そうとは、誰が想像できるだろう。
この5人の中で一番つきあいが浅いとはいえ、姉御肌の中澤と性格的な相性は抜群だった。
カヴァー・アルバムをレコーディングした頃、ソロとしてまだ駆け出しに近かった彼女の実力を
認め、後藤の危機感を煽ったのは中澤である。それは嬉しいを通り越して光栄あまりある
ことであり、尊敬する所以だった。
「わかってる。けど現実に裕ちゃんは呼ばれちゃったんだよ藤本 ・ ・ ・ 」
悲しげな矢口の声に、藤本は我にかえった。
姉以上に慕う初代リーダーの身を心配する司令塔の瞳から涙が床へ落ちて行く ・ ・ ・
自分も床を見つめるしかなかった。
- 71 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:27
-
あの夜、年長組3人がそれぞれの公演後に姿を消した理由がこれであった。
飯田たちは「そういうことになるかもしれない」と会社の上層部から告げられたのだ。
事実関係を調査中ということで、心構えだけはしておくようにと言われたのだが、警察の
動きは早かった。
この日の午後、何の前触れもなく事務所を訪れた私服警官2名によって、中澤は身柄を
「確保」されてしまったのである。
本来は「そうなってしまうかもしれない」と皆に話すつもりであったのだが、はからずして
事後報告という、あまりにも酷な状況になってしまった。
でも、話さないわけにはいかない。いまの今まで、3人は悲しいミーティングをもっていた
に違いなかった。
「でも ・ ・ ・ 美貴ちゃんの言う通りです。中澤さんがそんなことするなんて常識で考えれば
ありえないことぐらい、けいさ ・ ・ ・ 警視庁だってわかるはずです」
意外にも強い意志を持った言葉に、4人は顔を上げた。
涙がこぼれるのを寸前で防いだ石川梨華は、固く拳を握り締めていた。
- 72 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:28
-
「そうだ、弁護士。弁護士なら」
法律の専門家なら、警視庁の盲点を突いて助け出してくれるんじゃないか。藤本は藁にも
すがる思いで口走った。
だがそれは、静寂が支配する空間を別の色に染めるだけであった。
絶望の残響だ。
誰も応えられないのは、ただ絶句しているだけではない。
その常識を覆す何かを警視庁が掴んでいるのは想像できるからだ。
既に会社から事情説明を受けている飯田たちが何も返せないということは、弁護士の力を
もってしても?
- 73 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:31
-
いったいどうしたらいいの?
裕ちゃんの窮地を、あたしたちはただ指をくわえて見てるしかないの?
悄然と立ち尽す娘。たちを、誰が救えるというのだろう。
いや、一人だけいた。
「このまま諦めろっての。あたしはゴメンだね」
『!?』
愕然と振り向いた視線の先に、壁を背に佇む吉澤ひとみの姿があった。
To be continued...
Next time is start at chapter.6
See you again and good luck !
- 74 名前:新人 投稿日:2003/11/25(火) 19:42
- 今夜の更新は以上です。
46 さゆLOVE さん
初レスありがとうございます。
う〜ん、ナマで観たかった。
よっすぃーの「岡女体育祭」は、体調が極端に悪かったか、あるいは
気が乗らなかったのでしょうね。
金メダルふたつに銅ひとつ・・・ジョーが知ったら何て言ったんでしょうか。
また御感想をお聞かせ下さい。
47,58 つみさん
あまりサプライズがなくてすいません。
でもきっと、石川と藤本はこうなったと思いません?
二人に関してのサプライズは、まだ先によ・・・あわわわ。
59 みっくすさん
高橋と紺野については、次回をお楽しみに。
最近、紺野が良くなってきたなあと思うんですが。
フットサルのキーパーに1500mの金メダル。そして頭脳明晰。
彼女はもしかしたら、すごい女性になるのでは。
60 とこまさん
事件は石川誘拐のときよりも複雑に絡まります。
次回から徐々に明らかにしていきますので、お楽しみに。
それでは、皆様の御感想をお待ちしております。
- 75 名前:つみ 投稿日:2003/11/25(火) 22:28
- かっけ〜YO!!
待ってました〜YO!!
逢坂さんも味な事を・・・
こうなったらもうとことんいってもらうしかないっすね^^
- 76 名前:みっくす 投稿日:2003/11/25(火) 22:40
- いよいよですね。
もうすぐあのセリフがでそうですね。
次回楽しみにしてます。
- 77 名前:名も無き読者 投稿日:2003/11/26(水) 18:00
- かっけ〜ッス!
次回が待ち遠しい…
よっすぃ〜の活躍に期待して待ってます。
- 78 名前:丈太郎 投稿日:2003/11/27(木) 13:24
- 更新お疲れさまです。よっすぃーかっけー!遅れたのに態度デカい
けど(^^)それにしても「あの男」の影も形もないですね。どんな登場
の仕方するんだろう。きっとそっちも、かっけー!ってなるんでし
ょうね(^^)
- 79 名前:とこま 投稿日:2003/11/27(木) 20:32
- 更新お疲れ様です。
楽しみに待ってますよ。
- 80 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:01
- ごっつぁん紅白出場大決定(懐かしい・・・)記念
連続更新!
です。
とくにごっつぁん押しというわけでもないのですが、彼女の能力は
間違いなくハロプロのトップという枠を逸脱した凄まじいものだと
思っております。
ようやく、後藤真希という稀代のパフォーマーのポテンシャルが
全国に知れ渡る日がやってくるのですね。
いまから一ヶ月と4日後が待ち遠しいです。
- 81 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:02
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter6
「よっすぃー!?」「よしこぉ!?」「よっちゃん!?」
いつのまにか増えた相性が連呼されると、吉澤は組んでいた腕をハーフ・コートの両ポケットに
移した。その仕草が様になるのは、メンバーの中では彼女だけだ。
「顔つきあわせて泣くために集まったの?それが本当に中澤さんを信じることになるの?」
まるで5人を責めているようだが、悪気がないのは全員が理解している。
誰もが考えないようにしていた厳然たる事実であった。
吉澤の口調は、唇を噛むメンバーたちをむしろ慰めているようにも聞こえる。
- 82 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:03
-
「証拠が出たから仕方がないよ。けど、指をくわえてるだけなんて悔しい。そうだよね、高橋?
紺野?」
最後の言葉は、開け放たれたままのドアの外へかけられたものだった。
「ほら、こっち来なよ。立ち聞きなんて真似しないで、堂々と入ってくればいいじゃん」
「た、た・・・・・こ・・・・?」
飯田が呆然としつつひねり出した声と同時に、やや俯き加減の高橋愛と紺野あさ美が姿を
現した。
「あんたたち・・・」
「盗み聞きなんて、許されることじゃないよ」
矢口が声に恐いものを混ぜたので、二人は肩をピクリと震わせた。
もともと紺野は大人びたところがあり、天然ボケとのギャップが凄まじいところが年上チームに
可愛がられているし、高橋は年齢的なものもあって徐々にだがスタンス的に年長組と近くなっ
てきているところはある。
だが、それとこれとは別次元の話だ。矢口はそう言いたいのかもしれない。
- 83 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:04
-
「そんなキツい言い方しなくても。何か悪い話じゃないかって、心配だっただけだよね」
「はい・・・」
「あんまないことだなと思って」
吉澤が出した助け舟にこれ幸いとばかり乗る二人。悪気があってしたことでではないと分かっ
てもらいたいのだろう。
そんな二人に微笑むと、吉澤は飯田、いや年長組3人に言った。
「で、どうするの。あたしは一人ででもやるよ」
矢口がハッとする。事実の重さを噛み締めたことで押し潰されそうになっていたが、目的は別
にあったことを思い出したのだ。
自分たちに何かできないか、何ができるのか。中澤が拘束された今となっては、「防ぐ」ことは
かなかわなかったけど・・・・・。
- 84 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:05
-
「その前に、証拠って何よ」
サブ・リーダーに強い意志を持った瞳で凝視され、一瞬の躊躇を吉澤は見せた。
だが、ことここに至っては、話さないわけにはいかない。
「ふう。仕方ないか」
ソファの隅っこへ腰掛け、全員の顔を見回しながら話し始める。
「『証拠』には二種類ある、ってみんなわかるよね。【状況証拠】と【物的証拠】、そのどちらも
揃っちゃったらしいんだ」
「うそ・・・・・そんなはずないよ」
矢口の拳が固く握りしめられている。
誰もが聞きたくて、しかし認めたくはないことを吉澤は話そうとしているのだ。
- 85 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:06
-
「ひとつは、中澤さんには犯行時刻のアリバイがないこと。二つめ、目撃者の証言」
どちらも衝撃を受けずにはいられない内容なのに、吉澤はむしろ淡々と話していた。
まるで、覆すことができると確信しているようだ。
「後姿がよく似た女性が、犯行時刻に現場近くで目撃されてたんだ。ひどく慌てた様子だった
って」
「そんな・・・・・そんなんで呼ばれちゃうものなの」
安倍が半ば呆然と呟く。
顔をはっきり見たわけじゃないのに?
「まさか。それだけじゃ無理ですよ。決定的なのがあったんだ」
誰がそうしたのか、生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
- 86 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:08
-
「犯行現場に落ちていた髪の毛、中澤さんのものだったんだ。DNA鑑定までしたらしいから、
ちょっと覆すのは無理だね」
吉澤が集合時間に遅れた理由が、これではっきりした。
逢坂刑事から知らされたものか、「教授」の裏情報からか、情報を収集してきたのだ。
五里霧中の中で涙にくれるよりいい、と判断したに違いない。
高橋が、紺野が息を飲むのを見て、吉澤は話したことを後悔しかけた。
ショックが大きすぎたか・・・が、がっくりとうなだれる安倍と藤本の肩を抱く石川や、飯田の
手を握り締めつつこちらを凝視して動かない矢口を見て、後悔が杞憂へと変わる。
そうだよ、そうなんだ。あたしが言いたいこと、わかってくれるよね。
「これで全部。どうします、やぐっさん」
吉澤は師匠に判断を委ねた。
彼女の底力に期待してのことである。
- 87 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:09
-
「探そう」
そして応えてみせるのが、矢口真里という女性であった。
彼女らしい力強さに僅かな悲壮感をブレンドした声に、全員の視線が集中する。
「裕ちゃんのアリバイを証明してくれる人を探すんだ。犯人の目撃者がいるなら、裕ちゃんの
目撃者だっているよ絶対!」
視線の定まらなかった飯田が、大きくその瞳を輝かせる。
安倍は、重ねられた石川の手を強く握り返した。
石川が、藤本が、高橋が紺野が、その瞳に強い光を宿らせた。
裕ちゃんのアリバイを、あたしたちが証明するんだ!
- 88 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:10
-
警視庁が調べなかったはずはない。
けれど、裕ちゃんのことだからきっと、あたしたちに心配かけまいとして話していないことも
あるに違いない。
モーニング娘。の周囲へ捜査の手が及べば、悪戯に動揺を増長することになる。きっと、そう
考えてるはず。
自分たちにはわかる。敬愛する元リーダーの性格も、行動パターンも知ってる。
コネクションをフルに使えば、きっと証明できるはず。
「そうだよ。アリバイを証明さえすれば、きっと解放される。どうするのかおりん、ここにいる
メンツだけでやるの?それとも」
言葉にするのは簡単だ。けどあたしたちはアイドルという「職業」を持っている。
生半可な決意でできることじゃない。もしバレたらそれこそ、グループの活動そのものが
停止しかねない。
リーダーは重い決断を迫られた。安倍も、矢口までも、答えを出すことはできない。
- 89 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:17
-
ところが・・・。
果てしなく続くと思われた沈黙に終止符をうったのは、意外な人物だった。
「やりましょう飯田さん」
「!?」
「あたしたちみんなの力で、絶対にできます。いえ、やってみせます」
高橋愛であった。
「高橋・・・・」
「理沙ちゃんたちには、私と愛ちゃんから話します」
紺野が微笑を浮かべ補足する。
飯田の顔にも、思い出したように笑みが広がっていった。
石川梨華の危機。安倍なつみの悲恋、加護亜依の傷心・・・それらすべてを、自分たちは
力をあわせて乗り越えたのではなかったか。
この15人なら。
- 90 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:19
-
「わかった。行こう」
立ち上がったリーダーに、迷いは感じられなかった。
「どこへ?」
ともに知り合ったことを「運命」と言い切る大親友に、安倍は笑顔で問いかける。答えはわかる。
でも圭織の口からそれを聞きたいんだ ・ ・ ・ 。
「のんちゃんたちに話すの。がきさんたちには明日、私から言うよ。これでいいよね高橋?」
モーニング娘。のリーダーは、気迫のこもった声で、確かに宣言した。
「飯田さん!」
よかった!いつもの頼りになるリーダーに戻った!
「よっしゃ!」
矢口の気合を合図に加護たちの待つ部屋へ向かう。
娘。たちの戦いが、静かに前奏を奏で始めた。
To be continued...
Next time is start at chapter.7
See you again and good luck !
- 91 名前:新人 投稿日:2003/11/27(木) 23:21
- 今夜の更新は以上です。
みなさん、いつも本当にカキコありがとうございます。
ただ一言
「頑張ります!」
では・・・
- 92 名前:つみ 投稿日:2003/11/27(木) 23:56
- お〜!!始まった〜!
いよいよ始動しましたね^^チームモーニング娘。が!
- 93 名前:みっくす 投稿日:2003/11/28(金) 10:06
- おお〜〜、いよいよはじまりましたね。
今回は15人全員フル出動ですね。
楽しみにまってます。
- 94 名前:さゆLOVE 投稿日:2003/11/28(金) 16:24
- オラわくわくしてきたぞ
と、サイヤ人の血が騒ぎ出しましたw
今回はジョーは脇役なんですかね?
ジョーのファンなんで・・・早く活躍するとこが読みたいです♪
ま、まずは娘。さん達の活躍を拝見させていただきましょう←偉そう:汗
- 95 名前:とこま 投稿日:2003/11/30(日) 13:54
- 更新お疲れ様です。
いよいよ娘。が動き始めましたね。
今度はどんな手法を見せてくれるでしょうか?
- 96 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:01
- こんばんは。
来週の「笑う犬」をいまから楽しみにしている作者です。
年末は歌番組のSPが数多く放送され、娘。たちが歌手であることを確認する
ことができ嬉しい期間です。
では、今夜の更新を。
- 97 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:02
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.7
「ちょっと、いいかげんにしい!そんなうまい話に乗る思うてるんかアホ!」
周囲の視線を気にもせずまさに電話を「たたっ切る」と、彼女はカウンター席に座りなおした。
「冗談やないわもう。裕ちゃんのことでこんなんなっとんのに」
頭の横で髪をぐしゃぐしゃ、とかきまわす真似をしたのは、ハロー!プロジェクトの重鎮・稲葉
貴子である。
「シッ!声が大きいよあっちゃん!」
と軽くショルダー・タックルを見舞った方は、さすがに気にしている。
「ああスマンスマン。しつこいわーこの電話。今日だけでもう3回やで3回」
稲葉は憤懣やる方ないといった表情だ。
- 98 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:03
-
そして、隣で「あっちゃんもかぁ。あたしもそれぐらいかかってきたけど、もう無視!」と
グラスを傾けた、瞳の大きさが際立つ女性は、言うまでもない。
今や『ハロプロ』の役員(?)を勤める保田圭であった。
「そやなあ、年収が倍なんて話ウマすぎるわな。いまはンなこと考えてる場合ちゃうし」
今日はもともと夜に待ち合わせしていた。
保田と同じく、稲葉も数日前からかかるようになった「移籍話」の電話に悩むと同時に、中澤に
もアプローチがあると知って対応策を"3人で"考えようとしていたのである。
本来ならば、この場に中澤も同席しているはずであった。そうなった場合、協議もそこそこに
ただの飲み会になってしまう危険性ははらんでいたが。
ところが、仕事を終えて事務所に戻ってみると驚愕の事態に社内が狂奔していた。
話を聞いて稲葉も卒倒しかけた。
『中澤が警察に引っ張られた』
- 99 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:04
-
T&Cが解散となりソロに転進して活動の場を拡げた稲葉は、今やハロプロのワイルド・カード
的存在である。夏のツアーも、歌唱力とコリオグラファーとしての力を兼ね備えた彼女抜きには
為しえなかった部分が少なくない。
『太シス』のデビュー当時に中澤のソロ・キャンペーンに同行して以来、稲葉は「肝がすわった
姉御」として後輩に慕われ、かつ中澤の親友とも言うべき存在としてプロジェクトを支えてきた。
その彼女をして、社長はどこやぁ!と取り乱したほど衝撃は大きかった。
やや遅れてやってきた保田が本人から聞いた話を耳打ちしなかったら、本気で社長の胸倉を
掴んで「はよ出してやらんかい!何のためにウチらから甘い汁吸うとんのや!」と詰め寄って
いたかもしれない。
「あんた、よう落ち着いて飲んでられるなあ」
「まあ、予防接種は済んでたからね」
グラスを揺らしながら保田が答える。一昨夜の電話のことを言っているのだ。
- 100 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:04
-
「裕ちゃんのことだから、けっこう堂々とやりあうんじゃないかな。少なくとも、石川事件って
下地はあるんだし。冤罪なのは間違いないんだから」
「おいおい、相手は犯罪者ちゃうで、日本警察やで」
稲葉が心配するのも無理はない。
あのとき誘拐犯グループとの闘いに勝利を収めることができたのは、冷静に展開を読んで
先回りする仕事をしてみせた、中澤裕子の力が大きかったと聞く。
だが今度の相手は、体質はともかくその捜査技術と検挙率では世界に名高い警視庁である。
どんな手を使ってくるのか、想像もできない。それは中澤とて同じだ。
「確かにね。けど、あの娘たちがいるよ。よしこがジッとしてると思う?」
「よっすぃーか・・・」
この春まで一緒だった保田は言うまでもないが、稲葉も吉澤のことはよく知っている。ラジオ
番組で長く一緒だし、性格的な相性も良くライヴのリハーサルなどで繰り広げられるかけあい
は、ほとんど漫才コンビだ。
彼女もいまごろ、飯田たちから事情説明を受けているだろう。
- 101 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:08
-
「なるほど…裕ちゃんの大事やからなあ。頼りになるのは、あのコだけかもわからんなぁ」
本来ならば、ムードメーカー兼サブ・リーダーに期待すべきところなのだろうが ・ ・ ・ 。
中澤を慕う娘。の司令塔が受けたショックは、察してあまりある。今回ばかりはキツいかも
しれない。
「圭織たちだって、捨てたもんじゃないよ。いざとなったら行動力あるし」
「ふん・・・任せてみるかね」
「の方がいいと思う」
二人とも、社長およびつんく♂から「下手に動くな」と言われていた。
ハロプロの屋台骨的存在である二人があたふたしては、果てはキッズに至るまで動揺が及ば
ないとも限らない。子供の感性は鋭いのだ。
それでは事件が白日の元にさらされるも同然である。
保田はまた、つんく♂の言葉の裏に「動くのは最後でいい。あの娘らが黙ってるわけないやろ」
という意味合いを感じ取っていた。
ハワイでの事件を聞かされた人間が一様に驚愕したように、彼女たちの結束と成長は一年前と
比較にならないぐらい固く、そして確かな足跡を残している。
その基礎をつくりあげた人物の危機に、じっと見守っているだけのはずがない。
- 102 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:09
-
本当は自分も力を貸したいと思っている。しかし、いま保田は第二の岐路ともいうべき仕事に
取り組んでいる真っ最中なのだ。
それに、確信めいたものがあった。
石川の事件を内々に解決できたのは、本場・アメリカのバウンティ・ハンターの関与という幸運
に恵まれたこともあるし、中澤の活躍によってという見方もできる。
だが、スカウトを受けるほど短期間で成長を見せた吉澤ひとみの力は、そこらの探偵社ならば
超一級のエージェントになれるという表現も、けっして誇大とはいえない。
あのコなら、何とかしてくれるのではないか。
そう信じ、自分は別口をあたろうと思っていた。
はた迷惑では済まない引き抜き話の、根っこを押さえようと考えていたのだ。
- 103 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:10
-
「あっちゃん、あたしたちはさ、引き抜きの方を何とかしようよ」
「ふん。ウチと同じ腹やったんか。大人になったなぁ圭ちゃんも」
「茶化さないでよ。出所を突き止めて、根絶やしにしないとマズイと思うんだ」
中澤が大変なときに、おかしな噂によってマスコミのターゲットになるのを避けなくては。
「話の中身からして胡散臭いけど、何やウチらだけのことを言ってるんやない気もするんやけど
どう思う」
おや?と保田は思わず稲葉の横顔を見る。意見が同じだけではない。
切り替えがやけに早い。もともと男っぽい性格だけど、この一大事!ってさっきまであんなに
騒いでいたのに。
もしかしたら、裕ちゃんの件は最初から娘。たちに任せる気だったのかな、あっちゃんも・・・。
- 104 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:12
-
「あたしも。才能だのギャラだの甘い言葉並べてるけど、ただの作り話に聞こえないんだよね」
「圭ちゃんも同じかぁ。なら話は早いわ」
「何かあるの?」
「ちょい待ち。マスター、ジン・ライム」
「同じのください」
2杯目の酒をともに注文した二人の密談は、店が看板になるまで続くことになるのだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.8
See you again and good luck !
- 105 名前:新人 投稿日:2003/12/02(火) 21:13
- 今夜の更新は以上です。
あ・・・娘。たちが出てない。
次章を早めに更新できるようがんばりますので、今夜のところは
ひとつ、ご勘弁を・・・。
では
- 106 名前:とこま 投稿日:2003/12/02(火) 21:43
- 更新お疲れ様です。
まったり待ってますよ。
- 107 名前:つみ 投稿日:2003/12/02(火) 22:29
- 大人な会話ですね〜
- 108 名前:名も無き読者 投稿日:2003/12/02(火) 23:15
- 更新乙彼です。
謎が深まっていく…
次回も期待してます。
- 109 名前:みっくす 投稿日:2003/12/03(水) 02:55
- 今回は2つの事件が微妙に絡みながら
進んでいきそうですね。
次回楽しみにしてます。
- 110 名前:丈太郎 投稿日:2003/12/03(水) 10:24
- 更新お疲れさまです。オールスターキャストって本当だったんだ…
これからどんなハロプロの面々が登場するのかを勝手に推理しなが
ら待つのもまた、愉しみ方の一つかな(^^)
- 111 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:28
- こんばんは。作者です。
FNS歌謡祭について一言。
久々に聴く生「シャボン玉」よりも
番組後半でアダルトチームが魅せた
チャイナドレスにやられました。
では、今夜の更新です。
- 112 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:29
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.8
チップを弾んだためか、タクシーの運ちゃんは妙に愛想よく走り去った。
この時間だし、未成年の女性が来てよいとはけっして思えない場所である。
口止め料のつもりで「お釣はいいですから、領収書だけお願いします」と言った意味を分かって
くれたらしい。
ドアをくぐると、客は彼女のほかに奥のテーブルの3人だけであった。
「おう、いらっしゃい」
カウンター内で店主が笑顔を見せた。
「こんばんは。まだ来てないみたいですね」
カウンター席に座ると、こちらも笑顔をプレゼントした。
- 113 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:29
-
「きょうはあのコは一緒じゃないのかい」
「へ?」
一瞬、誰のことかわからなかった。
「ほら、例の」
「ああ。いつも一緒ってわけじゃないですよぉ。今日はぜんぜん、スケジュールが掠りもしなか
ったんで」
「そうか。何にする?」
「んー、マルガリータ」
初めて来店したときの美味しさを思い出したカクテルを頼み、カウンター背後の棚に目を移す。
並んでいるのは見たこともない「世界の酒」だ。大人になったら飲ませてもらえるのだろうか。
- 114 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:30
-
シェーカーを振る姿がかっこいいなぁ、などと考えていると、注文の品をコースターの上に置き
ながら店主が「大変なことになったね」と耳打ちした。
「うん・・・・」
「無実なのは間違いない。元気を出すんだ。俺も協力できることはする」
あまり愛想の良い方ではない店主も、言葉が優しくなっていた。
「大丈夫、落ち込んでなんかいないよ。このあとどうするかだよね」
「打開策を考えるために集まるんだろ」
「うん。もうすぐだと思う」
まるで最愛の恋人を待つような少女の表情は、滅多に笑わない店主の頬を緩ませるほどに
魅力的だった。
「誰が来るかね」
「わかんない。もしかしたら・・・」
「彼女ひとり?」
「・・・」
- 115 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:31
-
実は、昨夜から一睡もしていない。眠り姫と言われるほどいつでも、どこででも寝るという
特技がまったく影を潜めていた。
いくら振り払おうとしても、悲しい光景が次々と脳裏に浮かんでは消えた。
「あたしが話す」と自信に満ちた表情で言い切った親友に任せたのだが・・・何度か携帯に
かけても留守電のままで、ついに「ハイパー・マイペース少女」と異名をとる彼女も心配し
はじめていたのである。
きっと泣くよね、下の子たち・・・。
「おお」
「え?」
「ご到着だ」
「「ごっつぁん!」」
店主の視線を追って振り向くのと、彼女の愛称が店内に響くのは同時であった。
- 116 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:32
-
「かおりん、やぐっつぁんも。ってことは・・・」
てっきり吉澤ひとりで来るものと思っていた後藤は、飯田の隣で微笑む親友に目を移し、
自らも笑顔を見せた。
「うまくいったんだ」
「うん。まあちょっとはあったけど、ねっ」
吉澤は飯田と視線を重ね、さらに微笑む。
「渡さん、おひさしぶりでーす」
さっさとカウンターに座った矢口の声が明るい。無理にそうふるまっているのだろうか。
「いらっしゃい。夏以来かな」
「ですねぇ」
「矢口、ひとりで来たことあるの?」
飯田もカウンターに座った。5席しかないカウンター席の残り二つのうち、ひとつは吉澤
が占めた。
残る一席も埋まるのだろうか。
- 117 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:32
-
「へへっ、何度かね。あっ、もちろん一人ばっかじゃないよ」
「ふーん」
もちろん、矢口は成人しているから問題ない。
だが、まだ18になったばかりの後藤が先に飲んでいても飯田が何も言わないのは、例の
復帰祝いの2次会以来となるこの店に、こんな時間にやって来た意味を理解しているか
らに違いなかった。
でなければ、規律に厳しいこのリーダーが「元」とはいえ後輩を叱らないはずがない。
「ねえ、あいぼんたちはどうだった?」
後藤は聞きたくて仕方がないようだ。いつものクールさが影を潜めている。
「まあひと息つかせてよ。なぁに飲もっかなー」
親友の心情を知ってか知らずか、吉澤ははぐらかすように棚に並ぶ洋酒に目を走らせる。
「焦らさないでよぉ」
この三人が揃っていることでだいたい想像はつく。
しかし、感受性が高く涙もろい高橋や、実は誰よりもメンバーのことを想っている小川たち
後輩の反応を知りたくて、また心配で、居ても立ってもいられないのだ。
- 118 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:33
-
「よっすぃ〜」
「ごっつぁんらしくないなぁ。落ちつきなって」
「なによ、やぐっつぁんまでぇ」
「本当だよ。ドライ・マティーニお願いしまぁす」
カクテルを注文した飯田を左に、その声をヒントに注文を決めたらしい吉澤を右に、後藤は
珍しく怒声をあげた。
「よっすぃー!怒るよもぅっ!」
いつもほんわかしている後藤真希のよく通る声がけっして低くないボリュームのBGMを
凌駕したことに、さすがの吉澤も折れた。
「わぁかったから」
「そんなに心配?」
真っ先に『モスコ・ミュール』を注文してひと口飲んだ矢口が揶揄するように言う。
「だってさぁ」
「んー、まぁわかるけどね」
- 119 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:34
-
「何から話せばいいんかなぁ。あ、あたし『ハーヴェイ・ウォール・ハンガー』お願いします」
飯田と後藤、二人を挟んで矢口と頷きあった吉澤がようやく話す気になった、その時であった。
「ほう、そのカクテルを知っているとはお主、なかなかの通じゃな」
「!?」
全員が一斉に振り向けた視線の先に、ステッキ片手の小柄な老人が立っていた。
「教授!」
いつの間にやってきたのか、かつて石川の絶体絶命を救うべく奔走する娘。たちを全面的に
バック・アップしてくれた愛すべき老医師が、愛用のステッキを片手に微笑んでいた。
- 120 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:35
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.9
「ワシの前に、そちらの事情を聞いておこうか」
「い、いつの間に!?」
飯田が笑顔で空けてくれたど真ん中の席に腰を下ろす老医師を、娘。たちばかりか元ハンター
までが驚愕の表情で見ていた。
別に話に夢中になってはいないし、スペンサー・渡もこちらを向いて話を聞いていた。
引退したとはいえ、元ハンターである。気配には人一倍敏感のはずだ。
ではこの老医師は、ドアに付けられたチャイムを鳴らしもせず、店主にも気配を気取られずに
店へ入ってきたというのか。
- 121 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:36
-
「何をしておる。君も来なさい」
「げっ、み・・・・」
教授の声を眼で追った吉澤が、今度こそ絶句した。
「こら、椅子が足らんぞ。奥に転がっておるのを拭いて持ってこい」
スペンサーが慌てて奥へ姿を消すのとほぼ同時に、ドア横の暗がりから姿を現したのは
「美弥子さん!」
であった。
「こんばんは。みなさん、お久しぶりです。後藤さん、メールどうも」
薄暗い照明をものともしない天与の美貌は、それ自体が輝きを放っているかのようだ。
しかし、得体の知れないと言っては失礼だが、見るからに曲者の老医師はともかく、この
美女も、まるでドアを抜けたかのように気配もなく入店したのか。
言い知れない不気味さと紙一重の驚嘆に全員の顔が染まる中、吉澤だけは表情を僅かに
曇らせた。
- 122 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:37
-
店主がようやく持ってきた椅子に看護師が腰掛けると、教授は「何を驚いておる。ワシと、
みんなの運転手じゃ。帰りはそうだの・・・よっすぃーの膝の上がいい」と笑った。
「それぐらいかまわないけどさ・・・・」診療所にいる以上いずれわかることだが、吉澤は
教授へ依頼の電話をかけたとき、わざわざ美弥子さんには秘密に、と念押ししていた。
「美弥子は、相手の精神に同化していつのまにか癒しちまう。使うエネルギーを考えて
みろ。お前にできるか」
"相棒"の言葉が甦る。
患者の病ばかりか心をも癒すのを生きがいとする看護師に、余計な心配はかけたくない
のが本音だったのだ。
それがここにいるということは、知り合って以来メールを交換しているという後藤からその
耳へ入ったらしい。
吉澤に睨まれた後藤は案の定、舌をペロっと出してすっ惚けようとした。
「ちょっと真希ちゃ・・・・」
「待てい。あいぼんたちの話が先じゃ」
「そーだよ、はやく聞きたいっ」
吉澤はここぞとばかり加勢する後藤に苦笑いするのだった。
- 123 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:38
-
冷蔵庫を物色すると、いかにも石川が好みそうなドリンクがずらりとホルダーに並んでいた。
中から封を開けていない一本を失敬し、一口飲りかけた藤本は何者かと電話する石川の声を
耳にして立ち止まる。
プライベートに電話を立ち聞きするほど野暮ではない。リビングでひと休みすることにしよう。
今夜は急遽、石川の家に泊まることになり、たったいま入浴を済ませたところであった。
(ふう・・・。参ったなあの子たちにゃ)
ひと息ついて、つい2時間ほど前のことを思い出す。
飯田が言葉を切ると、先ほどと同じようにメンバーの間にわだかまる空気は沈黙で支配された。
いつのまにかすっかり片付けられたテーブルを見つめる加護、寄り添う安倍の手を握り締めた
まま動かない辻。そして、「親分」と慕う吉澤の側で唇をきつく結んでいる小川。
三人だけではなかった。
ドア一枚を隔てて話を聞いていたはずの高橋と紺野も、あらためて聞く事の重大さを噛みしめて
いるものか、一言も発することが出来ないでいる。
- 124 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:39
-
加護の対面に腰を下ろしていた藤本は、愛らしい瞳に涙が浮かんでくるのを恐れていたのだが、
その兆項は現れなかった。
ハワイで、行き場を失った恋心がささやかな暴走となってしまった加護亜依。
終りを告げた悲恋がもたらした変化は、少なくとも日常では表出してこなかった。
だが。
「そんなことや思ってたわ」
下がっていた視線が、一斉に集中する。
加護はテーブルを見つめたままだった。
「ウチらしかおらん。そうやろ、のの?」
何かを決意した表情で、相方を見る。
今度は辻が注視される番だった。
「 ・ ・ ・ 」
無言で頷き賛意を示す彼女の表情は、ソロ写真集でかいま見せた大人のそれに近かった。
- 125 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:39
-
もっと派手に泣き叫ばれるものと覚悟していた年長組の顔を、安堵の色が染めていく。
同時に浮かぶのは、微笑であった。
「やりましょうよ。中澤さんのアリバイを証明してくれる人、探しましょう!」
小川がいきなり力瘤を作ったので、アッパー・カットを寸でのところで避けた吉澤が驚いている。
その鮮やかなスウェー・バックも驚嘆ものだが。
「見つかりますって、絶対!」
もともと低くないトーンが、さらに高くなっている小川である。
この楽天家ぶりは、けっして彼女本来のものではない。
場の空気を察して、咄嗟に自分の役割を判断したのだ。番組のレギュラー・コーナーで中澤の
薫陶を直接うけている賜物であった。
- 126 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:40
-
いつもと変わらない天真爛漫な笑顔に、まず安倍が「ぷっ」と吹き出した。続いて矢口が、
石川が、クスクスと笑い出す。
ハワイで、ともすれば人間関係に亀裂を生みかねない危機を全員の奮闘で乗り切った彼女
たちだからこそ、出し得る笑顔かもしれない。
「そうこなくっちゃ、まこっちゃん!かおりん、ウチらもやるよ。中澤さんの足取りを確かめれば
いいんやから簡単やわ。よっちゃん、あとで詳しいことメールしてな。のの、行こ」
詳しいこと、とは、おそらく犯行時刻のことを指しているに違いない。その時間に別の場所に
いたことさえ証明できればいい。
しかし、「行こう」とは・・・この時間からいったい?
- 127 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:40
-
飯田と顔を見合わせた矢口が「あいぼん、こんな時間からどこへ行くのよ?」と聞くのも無理
はない。
「決まってるやん!理沙ちゃんたちのとこや」
気合が乗っているときの加護は、普段は出さないよう意識している関西弁になる。
「こっ、これから?」
「そっ。ののんとこに集合かけんの」
「のんたちから話す。ちょっとショック大きすぎるからね」
飯田からだと、という意味か。
辻はあくまで明るく、新垣以下のジュニア・チームに話す腹づもりなのだ。
意外な申し出に大きな黒瞳をパチクリさせたものの、リーダーはすぐに笑顔に変わった。
- 128 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:42
-
「ほんとに大丈夫なんだね?」
念を押す安倍の目を見つめ返し力強く頷いた辻に目を細め、飯田はあらためて加護に
「任せたよあいぼん」
と告げた。
「うん!愛ちゃん、明日の朝作戦会議ね。まこっちゃん、あさ美ちゃん、遅れないでよ」
「わかりました!」
年長組の心配をよそに、加護たちはとっとと各自がとるべき行動を決めていくのだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.10
See you again and good luck !
- 129 名前:新人 投稿日:2003/12/04(木) 23:45
- 中途半端ですが、今夜の更新を終ります。
明日からちょっと忙しくなるので、多めに更新しました。
といっても、前作のときは毎回これぐらい更新してたんですよね・・・。
まるで菊地先生みたいだ。
みなさん、菊地秀行氏の新作、超面白いですよ!
私のと同じで、小説の世界を知らないとチンプンカンプンですが(w
では、次回の更新にて
- 130 名前:つみ 投稿日:2003/12/04(木) 23:58
- 役者がそろってきましたね^^
後はあの2人かな・・?
次回もまったりまってます!
- 131 名前:みっくす 投稿日:2003/12/05(金) 06:03
- 徐々にそれぞれの役割が決まってきまってきたかんじですね。
梨華ちゃんの電話の相手はもしかしてあの人?
もう1つのコンビがみれるのかな?
次回も楽しみにしてます。
- 132 名前:とこま 投稿日:2003/12/05(金) 20:22
- 更新お疲れ様です。
いよいよ総動員で行動開始ですね。
楽しみに待ってます。
- 133 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:33
- こんばんは。作者です。
少し早い時間ですが、今週の更新を。
その前に・・・
130 つみさん
「あの二人」とは?うーむ。私の方が気になってしまいます(--;)
リクエストにおこたえしようにも、既にプロットは出来あがっていますし・・・。
サプライズはまだこの先にあり、とだけ申し上げておきます。ご期待にそえれば
よいのですが。
131 みっくすさん
石川の電話の相手ですか?多分、ご想像通りだと思います。
今回ではありませんが、稲葉以外にも新しいキャラクターは登場します。
丈太郎さんと同じようにしてお楽しみいただければ(^_^)
132 とこまさん
ハロプロ王国総動員態勢?
うーん・・・実は、保田と待ち合わせて独自に動くのは市井のはずだったんです。
彼女は頭脳明晰だし(引退は別として)適役かと思ったのですが、ご存知の通りの
状況で、半ば強引に稲葉を登場させたのですが・・・同時に「総動員」という
副産物も生み出しました。
成果は、今後をご覧いただいてご確認いただければ(^^)
では、前置きが長くなりましたが今夜の更新です。
- 134 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:34
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.10
大人になってきてるのかな、あの娘たちも。
藤本は、石川梨華誘拐事件の真相を知らされたときの衝撃を思い出した。
絶対の緘口令と引き換えにマネージャーから告げられ、卒倒しかけたのを覚えている。
命の危険がないとはいえ、今回のケースはひとつ間違えばハロプロ崩壊にもつながる
一大事だ。衝撃は石川のときと大差なかった。
加護以下の年少組も、もし石川の事件を解決前に知らされたら取り乱すでは済まなかった
はずだ、と藤本は考えている。
ところが先刻の彼女たちときたら、拍子抜けするほど冷静だった。
もしかしたら、よっすぃーが先に電話で予防接種してたのかな・・・聞けばよかった。
- 135 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:34
-
「ホントですかぁ!ありがとうございますっ!」
ドリンクの残りを一気に空けようとした藤本は、耳に否応なしに飛び込んできた石川の叫びに
眉を寄せた。
敬語と声色からして、相手はハロプロ関係者ではありえない。誰だろう?
「はい、お願いします!また電話しますね。この時間でいいですか?・・・・・はい、わかりま
した。それじゃあ・・・」
挨拶を考えている間に電話は相手から切られた。
よかった、どうにかなりそう。
満足そうな笑みを浮かべてリビングのドアを向いた彼女は、そこに腕組みをして壁に寄り
かかる藤本を発見し「きゃあっ」と飛び上がった。
- 136 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:35
-
「きゃっ、じゃないよ。いまの誰?」
「な、何のこと?」
「こっちが聞いてんの。彼氏じゃないよね」
「まっさかぁ。ちょっとした知り合いだよ」
「む・・・・隠すなんて怪しい。くりゃっ」
藤本は素早く接近し、ヘッドロックをかけた。
「わーっ、ちょっとやめてよー」
「ならば言え。相手は何奴だ」
ドラマから仕入れたのか、必殺仕事人みたいに時代劇かかった口調だ。
「言わぬか」
石川はどうしても口を割ろうとしない。
「もうっ!明日の朝、安倍さんを起こさなきゃいけないんだよっ!」
三分の一ぐらい怒った石川の訴えに、ようやく藤本は縛めを解いた。
いけね、忘れるところだった。早く寝なきゃ。
- 137 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:36
-
明日の朝、安倍・石川・藤本の3人で中澤のマンションへ行くことになっていたのだ。
加護たちを送り出したあと、飯田と矢口は関係者への根回しとコントロール・タワーを、
目撃者探しの先兵には加護たちになってもらい、安倍ら3人は中澤の側から探ろうという
ことでまとまった。
第一歩として、中澤の部屋に何か手掛かりがないか探してみようと安倍が提案し、石川と
藤本はそれに乗ったのだ。
安倍も一緒に泊まろうと誘ったのだが、ちょっと行くところがあるから、とモーニング・コール
を約束し今日のところは解散となった。
「じゃ、お風呂はいってくるね。眠かったら先に寝ちゃって」
「はいよぉ」
何がそんなに楽しいの、と聞きたくなるようなスマイルを残し、石川は退出していった。
自分の入浴中にちゃんと敷かれていた布団に入ると、すぐに睡魔がやってきた。特別に
意識はなかったが、やはり衝撃は肉体的疲労をも呼んでいたらしい。
はじめて泊まるのに、これじゃ何も話せないなぁ・・・・・と思う間に、藤本の意識は暗闇へと
落ちていった。
- 138 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:37
-
吉澤は話し終えると、ようやくカクテルを口にした。
「・・・・・・ほほ、あいぼんもなかなかやるのぉ」
中澤の危機を冷静に受け止めただけでなく、早くもアリバイ証明に動き出したことを知り、
日本一のアイドル・グループを孫の如く可愛がる老医師は破願した。
「正に教育の賜物じゃの。かおりん?」
「え・・・・・はぁ。そう言われると照れますね」
飯田が珍しく顔を赤らめている。
「何だよぉ教授、オイラはぁ」
「ふむ。矢口真里が厳しく指導せなんだら、ミニモニ。の二人が今の如き成長を示したかどうかは
疑問の残るところじゃ」
「てへへっ」
- 139 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:37
-
二人とも無理に作ったり、機嫌をとるために笑顔をプレゼントしているのではない。
石川救出作戦の裏方として力を貸してくれた老医師が好きなのである。たまにどうしようも
ないエロジジイになったりするが、それでも憎めない。
中澤救出へ向けて「しょい!」で気合を入れたあと、「かおりん、ちょっと付き合ってほしい
んだけど」と誘った吉澤の一言は、結果的にファイン・プレーとなった。
「どこへよ」「んー、この時間だし、保護者について来てもらおうかなと思って」という会話に
鋭く反応した矢口までがついてきたのだから。
(このもったいつけた展開は・・・)相当な情報を持ってきている。吉澤は期待感に身を震わせ
ていた。自分以外のメンバーも一緒に情報をもらう、と明言したのが功を奏し、かなりの気合
を入れて調査したようだ。
- 140 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:38
-
「ならば話してもよかろう。さて、何から行くか」
手にしたシングル・モルトのグラスを揺らしながら、しばし思案顔になる。
全員の聴覚が老医師へ集中した。
「まずは・・・・・被害者の素性からじゃな」
教授にしてはセオリーどおりだな、と吉澤は思った。
○被害者 東出晃 享年30才 職業はエンジニア。
○出身 京都府 中澤裕子とは小・中学の同級生であった
○殺害現場 赤坂プリンセス・ホテル1605室
○犯行時刻 検死の結果5日前の午後8時30分から9時30分までの間と断定された
○死因 後頭部を鈍器のようなもので複数回殴られたことにより起きた脳挫傷
- 141 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:39
-
「とまあ、ここまではよかろう。ごく普通の被害者じゃな」
教授がこんな話し方をするときは、次にサプライズが待っている。
「さて、これをどう見るよっすぃー」
カウンター上へ置かれた写真は・・・・・。
「なっ・・・・なにこれ。もしかして被害者の部屋?」
「ご名答」
「まるでストーカーじゃん」
壁を埋め尽くされた中澤の娘。時代のポスター、カレンダー、生写真・・・。
「プライベートな電話番号も知っている同級生のストーカーとは、はて、奇特な奴じゃ」
回ってきた写真に見入る飯田たちは、言い知れぬ不気味さを感じたものか押し黙っている。
「そのまま信じるわけにはいかないかもしれないね。他には?」
「ふむ。副業かの」
「ただのエンジニアじゃないんだね」
「見るがいい」
- 142 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:40
-
老医師の内ポケットから二つに折りたたまれた雑誌が取り出され、吉澤の手に渡った。
巻頭グラビアは、見たこともないタレントのヌードである。内容も、風俗や社会に広く散らばる
ゴシップを無造作に掲載した、いわゆる「エロ本」だ。
こんなのの何を見ろって言うのかな教授は・・・パラパラとめくっていた吉澤は、やがて眉間に
皺を寄せ手を止めた。タレントの醜聞を並べ立てた特集記事である。
もちろん、その内容に目を奪われたわけではない。
「取材・文 ・ ・ ・ ・ 西野 ・・・晃一」
「ほう。さすがじゃ。奴がスカウトするのもわかるわい」
「これが?」
「その通り。殺された東出の副業は、フリーのライターじゃ」
「ライターか。そうか・・・・・」
二人の会話を黙って聞いていた矢口が、はっとする。
- 143 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:41
-
「まさか、あの話!?」
「知っておったか。まあ二人の仲じゃからの」
中澤と矢口が、という意味だろう。
矢口なら知っていても不思議ではない。
そっか、なるほど・・・と一人で頷く矢口に、飯田は怪訝な顔で「何よ矢口、話してよ」と詰問
しかけたが、吉澤の次の一言に遮られた。
「そっちはどうだったの教授」
「まず間違いなかろう。裕子ちゃんだけではないぞ。圭ちゃんにも話が及んでおるらしいわ」
「だから何よぉ」
飯田が声を荒げることで打開をはかるまでもなかった。
「引き抜きだよ」
手にしたグラスを見つめつつ答えをはじき出したのは、後藤真希だった。
- 144 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:43
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.11
「ごっつぁん!?」
「真希ちゃんにもか」
「うん・・・・・・一度だけ電話で話した。思い切って移籍して、やりたいように仕事をしてみないか
って」
「ちょっと待ってよ!」
今度は矢口が声を荒げる番だった。
「裕ちゃんだけじゃないって!?いったい何が起きてるのよ!」
「落ち着きなさいマリー。いまは中澤裕子を救い出すことだけ、考えればよい」
教授だけは、他の誰も使わない愛称で矢口を呼ぶ。諭すような口ぶりだが、深堀は断固と
して許さない胆力を備えた声だった。
- 145 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:45
-
「そうだね。中澤さんを助けるために頼んだんだ。余計なこと言ってすいません、やぐっさん」
「ぐう・・・」
まだ何か言いたそうだったが、矢口は引き下がってカクテルのおかわりを要求した。
「いまのあたしにピッタリなやつ」
と粋な注文をしたものの、まだ表情は晴間を見せない。
「ホテルの部屋は『中島裕美』という女性の名で予約されておった。漢字の使い方からみて、
当局が裕子ちゃんに疑いの眼を向けても致し方あるまい。加えて目撃証言と頭髪が出ては、
たとえアリバイがあっても呼んだであろう」
教授が話を結ぶと、内容とは裏腹に飯田の顔に明るい光が宿った。
やるべきことがはっきりしたからだ。
5日前の午後8時30分から9時30分までの1時間に、中澤裕子がどこで何をしていたのか
調べればよいのである。
必ず助けてみせる!
- 146 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:45
-
「ありがと教授。助かったよ」
「なんのなんの。それで、まだ連絡はつかんのか」
「え?うん・・・・・」
途端に吉澤は暗澹とした表情に変わってしまった。
「俺も昔のツテをあたってみたんだが、どうやら少々厄介な仕事を手がけてるらしくてな」
「もしかして・・・」
「うん。昨日から電話もメールもしてるんだけどさ」
「出ないの?」
「ぜんぜん」
これにはいったん自重した矢口も、明らかに顔を紅潮させた。
教授という心強い味方がついてくれたのだ。たとえ忙しいスケジュールをこなしながらでも
何とかなりそうなものなのに、吉澤は何を案じて「あの人」とコンタクトを取ろうとしているのか。
ただの疑心暗鬼からだけではあるまい。本職が認めたハンターとしての感性が、異常事態に
対処するだけでいっぱいのメンバーたちとは違う警鐘を鳴らしているのだ。
- 147 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:47
-
「吉澤、何がそんなに怖いの」それでも静かに訊いたのは、さすがはサブ・リーダーである。
「えっ!?」
席が矢口のすぐ隣であったら、どうなっていたことか。
飯田を誘い出したのが、この時間にこの店で教授と会うためだ、と見抜いた司令塔に全てを
悟られているような寒気を感じ、吉澤は絶句した。
そう…彼女の危惧は別のところにあったのだ。
東洋人bPのハンターも認めた才能が囁く。
誰が、いったい何のために?
- 148 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:48
-
他の同様なプロジェクトがどう逆立ちしても勝てない牙城を築くアイドル軍団の総リーダーが
殺人を犯す。
何者かが描いたシナリオは、不自然を通り越して荒唐無稽だ。
この冤罪事件の裏には、何者かの遠謀が蠢いているのではないのか。
犯人に仕立て上げられたのではない。
最初から中澤裕子を殺人者とする必要があったのだ。
自らの恐ろしい疑念を晴らすために、せめてアドバイスだけでもと「相棒」にコンタクトを取ろう
としていたのであった。
- 149 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:49
-
「何とか言いなよ」
「・・・・・」
まだ仮説にすぎない。中澤救出に全力を傾注しようとするメンバーたちに、いま余計な動揺は
与えたくないんだ。お願いやぐっさん、わかって・・・。
「矢口さん、後輩の子を叱るときって、何を考えていらっしゃいます?」
「え?」
矢口は思わず声の主を凝視した。
それまで一言も発さずに、話を聞いているのかすらわからなかった看護師が、何の前ぶれも
なく問いかけてきたからである。
- 150 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:50
-
「自信がないことって、言いにくいですよね。はっきり答えを提示できませんもの」
「・・・・・」
「まだ始まったばかりです。いま少しの時間を、とは思われませんか」
頭の回転の速い矢口だからこそ、何も返せなかった。
吉澤が抱いている疑念が果たして自分のそれと同じなのかどうか確かめたかったが、いまの
段階では不確実な要素が多すぎるのは明らかだ。
裕ちゃんのことで、ちょっと焦ってたかな。
「そう・・・・ですね。わかりました。よっすぃー、はっきりしたら話してよ」
「はい。すいません」
答えながら美弥子と視線を重ねる。
かばってくれたんですね。ありがとう。
思うとおりにやってみていいと思いますよ。きっとわかってくれます。
かわした会話は、しっかりと心へ届いた。
- 151 名前:新人 投稿日:2003/12/09(火) 17:51
-
「留守電も入れたんだろう?そのうち連絡あるさ。奴に限って、期待を裏切ったりすることは
ない」
空気を変えるべく店主が発した一言で、ようやく場が和んだ。
激震の一日が終わる。
娘。たちの戦いの序曲は、大使館街の片隅にあるバーで、その前奏を終えたのであった。
To be continued...
Next time is start at chapter.12
See you again and good luck !
- 152 名前:みっくす 投稿日:2003/12/09(火) 20:58
- いよいよですね。
皆がどう動くのかたのしみです。
それに今回は梨華ちゃんがポイントになりそうな気が・・・
次回楽しみにしてます。
- 153 名前:とこま 投稿日:2003/12/09(火) 21:41
- 更新お疲れ様です。
いよいよあの人が登場ですか。
楽しみに待ってます。
- 154 名前:つみ 投稿日:2003/12/09(火) 22:30
- おお!
梨華ちゃんまさかあの方と電話番号交換してたの・・?
役者は後はハンターの2人ですね^^
次回も楽しみにまってます!
- 155 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 21:58
- こんばんは、作者です。
スポーツ・フェスティバルの速報、やっと手に入れました。
田舎暮らしは損です。
では、今夜の更新です。
- 156 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:00
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.12
中澤の住むマンションは、閑静な住宅街の中で集合住宅が集まる一角にあった。
管理人は、身分を明かしただけで快く入室を許してくれた。
お孫さんがファンだというので、あらかじめサインを用意して行ったのが効いたかもしれない。
安倍は何度か訪れたというが、石川と藤本は初めてである。
エレベータの中では、三人とも咳払いひとつしない。
部屋のある11階までの時間が、とてつもなく長いような気がした。
いよいよである。
警視庁に囚われの身となった中澤をこの手に取り戻す、第一歩だ。
鍵を開ける寸前、安倍は両隣の後輩を交互に見やった。
自らにも言い聞かせるかのように頷いた石川と藤本へ微笑むと、安倍は差し込んだキーを
右へ廻した。
- 157 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:01
-
「おはようございまーす」
いつもの調子で挨拶したのに皆の笑顔が固いのを見て、ようやく道重さゆみの頭脳は目を
覚ました。
もともと朝は弱い方だ。今朝が輪をかけて眠いのには、れっきとした理由がある。
昨夜、寝入りばなを襲った加護の「集合!」電話には驚いたが、同期の二人とともに伝え
られた話には、思わず幽体離脱しかけた。絵里もれいなも、似たようなものだったと思う。
中澤さんが・・・・・・。
初の単独レギュラーとなった番組で迎えた彼女は、矢口から聞いていたとおり仕事には厳し
いが、人には優しい女性であった。
つき合いの長い飯田たちだけでなく、後輩の誰もが慕う理由が何となくだがわかる気がする。
「そんなアホな・・・・・」田中がそう呟くのがやっとだった。
- 158 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:02
-
しかし、4期の二人はさすがであった。
「こらっ、落ち込んでる場合じゃないよ!あたしたちが助けなくて、誰がやるのっ!!」
あまりの事態に周囲の干渉を遮断しかけた三人の精神は、辻の叫びによって引き戻され、
「しっかりしぃ!うちらが探すの。中澤さんのアリバイを証言してくれるヒト。ね、わかる?」と
肩を揺らす加護によって正常に帰したのだった。
「おはよ。エリは」
「もう着くって。さゆ寝られたぁ?」
「うーん3時間ぐらいかな」
「似たようなもんやね」
れいなもか ・ ・ ・ 中澤さんのことがバレちゃうサイアクの結末、想像しないわけにいかない
もんね。
そんなことを考えているうちに、最後に亀井が入室したのを確認した加護と辻が壇上(?)に
立った。
- 159 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:03
-
「みんな、大変なことになってるのは昨日の話のとおりだよ。でもね、あたしたちの力で
何とかするの。助けるの。まずそれを、心の中にきっちり、持ってほしい」
全員の顔を見回しながら話す加護の顔にクマができかけている。
驚愕すべき事態を静かに受け止めながらも、彼女も眠れぬ夜を過ごしたのだ。
「どんな小さな手がかりでもいい。中澤さんの足取りを追えることを探して。できるならその
・ ・ ・ 『裏』までとってほしいの」
辻の声に悲壮感はなかった。ここで泣いても始まらないことを、彼女だけでなく全員が理解
していた。
「いい、それじゃ決めるよ。帰るならいまのうちに出てね」
- 160 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:04
-
昨夜、新垣以下の中学生メンバーを集めて事情を説明したあと、わざわざ高橋たち一人ひとり
に電話してまで、加護が言い渡したことがある。
自分には無理だと思ったら、明日の朝は来ないでほしい。
事は最高レベルの秘匿性を必要とする。バレたらお終いなのである。
中澤は過労で入院したことになっている。この偽情報自体も秘匿すべきものだし、絶対に
違和感を相手に与えてはならない。
60秒だけ待ち、加護は辻と顔を見合わせて微笑んだ。
全員、決意みなぎる顔で二人を見つめ、身じろぎすらしないのだった。
- 161 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:06
-
個々の考えを聞き、それぞれ目的と内容が重ならないように打合せを終えると、スケジュール
にあわせて動き出そうとするメンバーを紺野が止めた。
「待ってみんな。あいぼん、「あれ」やろう」
「? ・ ・ ・ あ、そうだね。よし、集合!」
ドアに向かいかけていたメンバーも、察して引き返してくる。
いつもは大きな円陣が、今日は小さなものになった。しかし、パワーはむしろ大きい。
「いい、絶対に、絶対にあたしたちが助けるの。手がかり掴んだら、先走らないで知らせて」
「わかったな、みんな」
『はいっ!』
「あたしたちならできるよ!」
『おーっ!』
「「がんばっていきまーっ」」
『しょい!!!』
かくして、かつて南の島で組織された捜査線が、メンバーを変えて再び躍動を始めた
のであった。
- 162 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:07
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.13
敷地内に足を踏み入れると、建物の中から帽子を目深に被った女性が出てくるのが目に
入った。少し歩くと、向こうもこちらに気付いて眼を伏せる。ここで変なリアクションを起こした
ら元も子もない。
すれ違う寸前、両手をポケットから出した拍子にハンカチを落とした。
「あ ・ ・ ・ 落ちましたよ」
すれ違った女性が、親切にも呼びとめた。
「おっ、これはご親切に」
素早く顔を寄せたのは、稲葉貴子である。
- 163 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:08
-
(どやった)
(言われたとおり、届け出してきましたよ)
(受理されたんやろな)
(of course! 泣き真似、上手いんですよこれでも)
(よう言うわ。昼にでもまた電話する)
(アイアイ・サー)
僅か数秒で会話をかわすと、再び逆方向へと歩き出す。
人選に誤りはなかったようだ。
建物の中に入り、ざっと見回すとすぐに対象の窓口は見つかった。
「あのー、お忙しいとこ悪いんやけど」
「どうしました?」
書類の束をトントン、とまとめつつ応対してくれた職員の頭上数センチまで迫る、部署を示す
看板は『生活安全課』とあった。
- 164 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:08
-
敷地を出てすぐに、都合よく流してきたタクシーを拾ったその女性は、次に控えるメンバーへ
メールを打った。
生活安全課は、入っ
てすぐ右の部屋だった
よ。ぜんぶ終るのに30
分ぐらいかな。
がんばってね!
Ayaka
送信後、微笑を浮かべシートに身体を預けたモデル級のルックスを誇る美女は?
今や二人となってしまった「ココナッツ娘。」の看板を守り続けつつも、新たなユニット活動に
心血を注ぐ純粋ハワイアン娘・アヤカであった。
それにしても、メールの相手は誰なのだろう。それも「がんばってね!」とは。
ルームミラー越しに感じる若いタクシー・ドライバーの視線を流しつつ、アヤカは目的地を告げ
ると眼を閉じた。
自分に続いて「突入」した稲葉のことでも想像しているのか、その顔に浮かぶ微笑は、消える
ことなくドライバーを魅了し続けた。
- 165 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:09
-
飯田と矢口は、2時間近くに及んだ談判を終えて部屋を辞した。
中澤のスケジュールと事件を隠匿するための理由は既に会社側が用意していた。
彼女たちはそれを腹にはめると、中澤のアリバイ証明に動くことを切り出す。
上層部は当然ながら猛反対したが、絶対にバレないようにやると強硬に押した。
あくまで法律家に任せようとする社長以下を押し切る決め手のひとつとなったのは、春の
石川事件である。
「本職」も顔負けの探偵術を身につけた自分たちなら、犯さないわけにはいけない危険を
最小限のものに留められる。
さらに矢口は大胆にも、昨夜、教授からもたらされた情報を示し「あたしたちだけじゃない。
味方はいる」と断じてみせた。
興信所を使っても知り得ない情報をこともなげに並べてみせたサブリーダーに、ついには
社長も折れた。
はっきりと知らされたわけではないが、彼女たちのバックで「情報」という形をとり無償の
愛情を注ぐ存在に、事件を知る誰もが思いを馳せていたのもプラスになった。
- 166 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:13
-
用意した謝礼をついに受け取らずに再渡米した男の直接の指導を受けた彼女たちに、
全権を預ける裁断が下されたのである。
ただし、おかしな噂がたったらすぐに中止という条件だけは譲らなかったが。
それぞれの現場へと別れる寸前、二人は唇をきつく結んで頷きあった。
もう、後戻りはできない。
皆に知らせよう。
バレても、諦めてもそこで終りだと。
飯田は、安倍と、全く別口で動いている吉澤と後藤へ。矢口は加護分隊長の指揮によって
動き始めているはずの年少組へ。
歩きながら携帯に話しかける二人はかつて経験したことのない緊張感をみなぎらせ、道行く
人が思わず退くほどであった。
To be continued...
Next time is start at chapter.12
See you again and good luck !
- 167 名前:新人 投稿日:2003/12/15(月) 22:21
- 今夜の更新は以上となります。
152 みっくすさん
鋭いご指摘、震えあがりました。
女優としては数段各上のなっつぁんと互角に渡り合ったという
チャーミーですからね・・・。
153 とこまさん
もう少しだけ、娘。たちの動きをお楽しみ下さい。
あの男には、彼らしい場面を用意してあります。
154 つみさん
まさか・・・交換なんて出来ないでしょう(^^;
そのあたりの事情は、もう少し先の更新にて。
さて、もしかしたらハロプロbPの美貌とスタイルを持つやもしれぬ
アヤカが出てきました。
次回は誰が登場するでしょう。丈太郎さん、わかります?
では次回の更新にて。
- 168 名前:みっくす 投稿日:2003/12/15(月) 23:20
- 皆の決意は相当のものですね。
実際の裕ちゃんもそれくらい慕われてるのでしょうね。
今回は、ハロプロメンバー総動員?
あとは出てきてないのメロンくらい?
- 169 名前:つみ 投稿日:2003/12/15(月) 23:38
- ホントに今回はメンバーが多いですね〜^^
いろいろなキャラを楽しみにしてます!
- 170 名前:とこま 投稿日:2003/12/16(火) 21:26
- 更新お疲れ様です。
ハロプロ総出演♪
後は・・・
- 171 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 20:57
- えー,作者です。
紅白歌合戦の演目が発表されました。
後藤真希 − オリビアを聴きながら
言葉を失いました。
セクガイでド派手にやってほしかった。
いや、やらせてあげたかった。
腹いせに更新します。
- 172 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 20:58
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.14
主のいない部屋は、当然ながら無言で彼女たちを迎えた。
本来なら真っ先に飛び出してくるはずのロングコート・チワワ「ハナ」は、とりあえずマネが預か
っている。今日中にはメンバーのもとへ託されるはずだ。
無事に戻れたときに一緒に迎えてあげたい。中澤のことを誰よりも理解する矢口の発案により
交代で面倒を見ることになったのである。
- 173 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 20:58
-
「よし。じゃあやろっか」
安倍は勝手知ったる、といった雰囲気で奥へと進んで行く。
「何を探せばいいんですかね」
2LDKの中心となるリビングで、藤本が訊いた。
「うーんと、まずは服かな」
「服?」
石川も不思議そうな顔だ。
「上も下も。ポケットを全部ね」
安倍はジェスチャーで示した。豊かな表現力はドラマで培われた、他のメンバーの誰もが
到達できないレベルにある。無論、映画女優に続いて時代劇に挑戦中の藤本もだ。
「そうか。さすがぁ」
藤本は手をポン、と打ち合わせた。
- 174 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 20:59
-
よく行く店のマッチ、名刺大のカード。いずれも大きな手がかりとなるだろう。
「じゃ、あたし見て来ます」
別室に消える背中を見送り、今度はリビングを見まわす安倍を見て石川はふとした疑問を
持った。
いくら付き合い長いっていっても、こんなにテキパキと・・・わかるもんなのかな?
「あ、みーっけ。梨華ちゃん手伝ってくれる?」
安倍はリビングの隅まで行くと手招きした。
「は?はい」
妙に明るいなあ、と思いながら行ってみると、そこには紐でまとめられ、捨てられるのを待つ
ばかりとなっている雑誌がいくつかの山を作っていた。
- 175 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 20:59
-
「これを?」
「うん。ちょっと大変だけど、ぜんぶ見てみよう」
「・ ・ ・ なるほどぉ」
藤本と同じように掌を打ちあわせた石川は、同時に昨夜の安倍の言葉を思い出した。
「ちょっと行くとこあるから」
誰かと会うんだろうなとは思っていたが、ひょっとして…。
「涼子さんですか」
「へっ?どうしてそれを」
安倍は笑顔を返しながらも、驚きを隠せないようだ。
- 176 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:00
-
彼女は昨夜、中澤宅の「家宅捜索」が決まったあとすぐに、石川事件で知り合った女性検事と
連絡をとり、アドバイスを求めたのである。
遅い時間にもかかわらず、逢坂刑事を通して事件を知っていた涼子は嫌な顔ひとつ見せる
ことなく相談に乗ってくれた。
検事正となってからはそういった現場に出ることも少なくなったが、一課時代の家宅捜索に
おいて何がポイントであったか、惜しげもなく話してくれたのだ。
さらに安倍は、「参考人」のうちは証拠物件をおさえることは法律上許されていないと知った。
ならば、権利を持つ自分たちに有利だ。
友人宅に忘れ物を取りに来て、何が悪いと指弾されることもあるまい。
- 177 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:00
-
中澤は京都で生まれ、大阪でOL時代を謳歌した女性である。食にはうるさい方だ。
最近は、多種多様な酒と創作料理が楽しめるダイニング・バーの発掘に力を入れていた。
目の前に積まれているのは20代半ば以上の女性が読む情報誌だった。その手の情報も
載っているに違いないし、中澤なら行ってみたい店に印をつけていて不思議はない。
「よし、やりましょう!」
見え始めた一筋の光明に、石川の明るい声はぴったりハマる。安倍の笑顔も輝きを増した。
間もなく、衣服のポケットを調査し終えた藤本も加わり、三人はライヴなみの集中力を発揮し
雑誌をめくって、めくってめくりまくった。
そして2時間後、数々の品を「押収」した三人は、午後からスケジュールに入っているダンス
レッスンへ意気揚揚と向かったのであった。
- 178 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:01
-
舗道へ出て、背後のビルをふりかえってみた。
(まさか、ねぇ…)吉澤は浮かびかけたものを再び心の奥へと沈める。
枝葉末節に至るまで推理を巡らすには、足らない要素がまだ多い。
一人目との接触に失敗した。今はただ、それだけだ。
手近の喫茶店に入り、次のターゲットを確認することにした。
注文を聞いたウェイトレスが下がると、ポケットから1枚の紙を取り出す。6名の男女の
名前と勤務先が記されていた。
別れ際に手渡してくれた老医師は、珍しく険しい表情だった。
「美弥子君はああ言ったが、かなりの危険をともなうと思った方がいい。単なる腕試しでは
ないと肝に銘じることじゃ」
二人の旧友が再会を果たした合コンの参加者の中に、鍵を握る人物が必ずいる ・ ・ ・ 。
後藤の協力を得て、残る参加者男女6人に探りを入れようとしていた未来のバウンティ・
ハンターは、全幅の信頼を置く存在に思わぬ釘を刺されたのである。
- 179 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:02
-
確かに、自分たちが動いていると知れたら守秘義務などこれっぽっちも無い人たちの口
から洩れる可能性はある。それはすべての終焉を意味するだろう。
しかし、中澤の目撃証言とは別に、参加者たちを洗うという道は避けて通れない気がする
のだ。
そしてそれは、一人目が面会を求めた吉澤に会おうともしないことでより強い"予感"へと
変わりつつあった。
「ん・・・」携帯が後藤の着信を告げた。「もしもーし、どうだった?」
(ごめん、だめだったよ・・・)
親友の声には、落胆の色が濃かった。
(顔見た途端に『すいませんいま忙しいので』とか言って、逃げるんだ。ひどいよ)
彼女のことだから、名乗らずに会えるよう工夫を施したのは想像できる。それでも取り合って
もらえなかったのが、よほど悔しいのだろう。
- 180 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:02
-
「そっかあ。あたしなんて会ってももらえなかったよ。何か変にガード固い気がしない?」
(だよね。いくらなんでもおかしいよねぇ)
どうやら後藤も同じ疑問を持ったようだ。
捜査の初動段階において、彼らには警視庁捜査一課が事情聴取を行っているはずだ。
同じ合コンに参加した者どうし情報交換し、中澤の件に気づいていても不思議ではない。
だが、まるで自分に守秘義務があるかのように口をつぐむのは不自然な気がする。
たぶん残りの人たちも似たようなものだろうな、と思いながらも吉澤は後藤を励まし、電話
を終えた。
ソロ・ツアーの真っ最中である親友に無理は言えない。本来ならば捜査に加わるだけで
も負担は大きいのだ。
合コン参加者への接触を思いついた吉澤に「どうしてもやる!」と言い張った後藤だから
少々のことでネを上げたりはしないだろうが・・・。
- 181 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:03
-
自らの予感が何度目かの杞憂におわってほしいと思いながら、吉澤は傾き始めた陽に眼を
移した。
この瞬間も、中澤は過酷な刻を過ごしているのだろうか。
待っててください。必ず皆で助けますから。
柄じゃないな、と自分で自分に苦笑し「夕陽への誓い」を胸に席を立つ。
5時には仕事場に入らなくてはならない。その前にもう一人、合コンの参加者にあたってみる
つもりだった。
たとえ門前払いを食ったとしても、あきらめるわけにはいかない。
自ら抱いた戦慄の疑念に白黒つけるためにも。
- 182 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:03
-
このとき、彼女を知る人間が通りかかっていたら、モーニング娘。のメンバーと気づかずに
すれ違ったかもしれない。
大胆にも地下鉄の入口へ歩を進める吉澤ひとみは、既にハンターの顔になりつつあった。
閉じたばかりの携帯が鳴った。吉澤からのリダイヤルではない。
「ほ・・・着いたかな」
意味不明の独り言を発して携帯を耳に当てた。
「もしもーし。着いたのー?」
(うーんとー、たぶん合ってると思うんだけど。ちっちゃい?)
「建物はホントちっちゃいよ」
(住所も間違いないみたい。うー何だか緊張するよ〜)
「だいじょうぶだよぉ。二人ともすっごく優しいからっ」
(うーわかりましたー。勇気出して行ってきます)
「ほーい。頑張れよー」
- 183 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:04
-
携帯を閉じ、後藤は気合を入れなおす。よーし、次いってみっかぁ。
このめげないところが、数ある長所の中で最大の魅力だという関係者もいる。
自らのツアーに加えて中澤の危難。精神・肉体の両面において、この1年で格段の成長を
遂げた彼女だから平然を取り繕っていられるのかもしれない。
ただし、多少おっちょこちょいなところは変わっていないようだ。
「よっしゃ! ・ ・ ・ いけねっ」
派手にガッツポーズを作ってしまい正体がバレかけ、ダッシュをかける後藤であった。
- 184 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:05
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.15
着メロが「部下」からの着信を告げた。午後になってこれで3本目だ。
バッグからメモを取り出し、通話ボタンを押した。
「はいはーい稲葉でーす。おお、どやった?」
(大丈夫だと思います。久しぶりにいいお芝居したーって感じですね)
「うん、ようやった。ご苦労さんやったね」
(今夜、例の店で?)
「遅れるかもわからんから、先にやっててかまへんよ」
(わかりましたぁ)
「圭ちゃんにも電話したって。心配しとるやろからな。じゃあなぁ」
電話を切ると、手にしたメモ帳に"○"印を書き込む。
人物名と項目が星取表のように並べられた縦軸には、ayaka,satoda,ohtani などの文字が
判読できるが、横軸の 警察 電話 の文字は、いったい何を意味するのか。
「よっし、順調、順調」
ひとりほくそ笑むと、稲葉は思い出したように小走りで仕事場へと戻っていった。
- 185 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:06
-
後藤との短い電話を終えて建物の入口を見ると、ちょうど患者を見送りに看護師が出て来た
ところだった。
(うわぁすっげぇ美人!間違いないわこりゃ)
「あなたは ・ ・ ・ 」
僅か5m先で輝く美貌が、自分に気づいて動きを止めた。
(わっわっ、見つめられてるー)
小さくない動悸をおぼえながら、おそるおそる話しかけてみる。
「あのー、こちら『加来クリニック』ですよねー」
言いながら(噛みそうな名前だな)と思った。
「ええ間違いないですよ。初めまして。和久井美弥子と申します。中澤さんのことですね?」
「はい。そのー、えーと…教授さんにお力をお借りしたいと思いまして」
「ふふ。『さん』なんていりませんよ。モーニング娘。の方たちも後藤さんも、みんな呼び捨て
です。どうぞ、教授は診察室の方におります」
看護師は笑顔でドアを開けてくれた。
- 186 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:07
-
「♪〜嬉しかったな〜♪と」
既に診療時間は終了した。このあとは美弥子がいれてくれるコーヒーを携え、ハロプロ関連の
DVD鑑賞を、これも美弥子が作ってくれる夕食までの時間いっぱい楽しむのが最近のスタ
イルだった。
デスクの深い引出しに収められたDVDコレクションを物色する仕種は、可愛い孫娘たちの
活躍を楽しみにしている祖父というよりもただの「年齢不相応にアイドル好きの年寄」である。
そもそも、診察室のデスクにそんなものをしまい込む医者など、ありえないとは ・ ・ ・ いや、
この老人に常識は当てはまらない。
だが、この日は規格外の老医師の中にも僅かに息づく彼なりの「常識」を覆す椿事が、何の
前触れもなくやってきた。
- 187 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:08
-
とても裏の情報に精通する曲者とは思えない後姿に、遠慮がちな声がかかったのである。
「あのー」
途端にピタリと動きを止め「何じゃ美弥子君、終了の札をまだ出しとらんかった ・ ・ ・ 」
いつもの調子で回転椅子を向けた町医者は、柄にもなく凍りついた。
「はじめましてー。お願いがあって看護師さんに入れていただいちゃったんですけど、いけな
かったですか…」
「お、おまえさんは ・ ・ ・ 」
肝の据わり方では警視庁捜査1課の現役をも遥かに凌ぐこの老医師が、声もなく凍りつこうとは。
心底すまなそうな上目遣いになった美少女に釘付けの視線を、戸締りを済ませて戻った
美弥子が解凍してくれた。
- 188 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:09
-
「教授、椅子をお勧めもせずに何ですか。いまコーヒーを入れてきます」
「おお、すまんの。いやまさか ・ ・ ・ お前さんまでとは考えてもおらなんだわ」
ようやく人懐っこい笑顔になった白衣の老人に微笑みかけると、すすめられた椅子に腰掛け
て室内を見まわした彼女は、壁に貼られた写真に気付く。
矢口さんだぁ、あららぁ飯田さん!などと嬌声をあげる姿は、普段着でもトップ・アイドルの
オーラを放っていた。
やがて美弥子がコーヒーを持って現れたタイミングで、彼女は危険を犯してまで町医者を
訪れた理由を話し始める。
- 189 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:10
-
1時間後、白衣の老医師と美人看護師は訪問者を見送りに玄関まで出た。
彼女の場合、ここから次の現場まで一人で移動するにも危険がともなう。美弥子は当然、
車で送ろうと申し出たのだが、笑顔で断られた。
後藤から「なるべく迷惑をかけるな」と釘をさされたらしい。
「それじゃ、なにとぞ、宜しくお願い致し申す」
彼女らしい茶目っ気で深々と頭を下げる姿につられて目尻を下げかける教授に肘鉄を
お見舞いし、美弥子は「気をつけて」とこちらも笑顔で挨拶した。
「ぐぉほっ、ぐぉほっ。おほん!任せておきなさい。一両日中に朗報を届けることを約束する」
「はい!」
- 190 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:11
-
120点満点の笑顔で手を振りながら去って行く美少女の姿が角を曲がると、アイドル好きの
医師は「しまった!」と叫んだ。
「サインと写真 ・ ・ ・ く〜ワシとしたことが」
「今ごろ気付いても…また会えますよきっと」
現役のトップ・アイドルすら言葉を失う美女が母屋へきびすを返しても、小柄な白衣姿はまだ
地団太を踏んでいた。
To be continued...
Next time is start at chapter.16
See you again and good luck !
- 191 名前:新人 投稿日:2003/12/18(木) 21:17
- 今夜の更新は以上です。
曲の良さは認めよう。
しかし、なぜ持ち歌を歌わせんのだ?
10代のソロアイドルで、彼女級の活躍を見せた人間が今年どれだけいる?
よく事務所もOKしたもんだ。ひとみが「裏を暴いてやる」って言い出さない
ことを祈るぜ。
ジョーならば、こうコメントしたかもしれません。
NHKホールで歌謡界の重鎮たちが注視する中、衝撃のバット・スタイルで
その実力をアピールする彼女を見たかったです・・・
では、次回の更新にて。
- 192 名前:つみ 投稿日:2003/12/18(木) 23:50
- ほう・・・前の石川さんの電話の相手はあの方でしたか・・・
やはりあの方ですよね^^最後の人は。
次回も楽しみにまってます!
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 02:15
- まじですか…すっごい豪華ですね、今回。
ますます目が離せなくなってきました。
次の更新を心待ちにしてます。
- 194 名前:みっくす 投稿日:2003/12/19(金) 05:01
- おお〜、ホントに総出演って感じですね。
まいちゃんにまさを君もでてきましたしねぇ。
やっぱり最後の少女は・・・ですよね。
次回楽しみに待ってます。
- 195 名前:名も無き読者 投稿日:2003/12/19(金) 10:56
- ホントごっちんの件残念ですよね〜…
あ、ここで出す話じゃないッスね。
本編も豪華キャスト揃い踏みという感じでますます目が放せません。
次回も楽しみにしてます。
- 196 名前:とこま 投稿日:2003/12/19(金) 21:15
- 更新お疲れ様です。
楽しくなってきましたね♪
楽しみに待ってます。
- 197 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 22:56
- こんばんは作者です。
みなさん、暖かいレス、本当にありがとうございます。
「あの娘」が誰なのか、もう少し先までお待ち下さい。
と言ってもバレバレなんですが。
いま、さんま師匠のスペシャル番組が終ったところですが、皆さんは
ご覧になりましたか?
我々にとっては嬉しいひと刻でした。
60'Sメドレーでの娘。たち。
よっすぃーの美しさ、なっつぁん・チャーミー・ミキティのキュートさ・・・
格別でした。
松浦のジャズ・セッションには驚きましたね。歌唱力は、ひょっとしなくても(?)
若手bPなのでは。
そして
後半で杏里さんのエスコートのもと実現した、なっつぁん×ごっつぁんの
伝説の2トップ復活!
選曲の良さもあって、いつのまにか涙が浮かんできました。
願わくば、同一コンセプトの衣装をまとって、隣に並んでほしかった・・・。
おっと、いつまでも感傷に浸っている場合ではないですね。
先週は忙しかったのであまり進まず、今夜の更新は少しとなってしまいますが
御容赦下さい。
- 198 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 22:57
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.16
「そのー、タクシーの運行記録っていうんですか?そういうのって、頼めば見せてもらえる
ものなんですかねぇ」
あんまり慣れない言葉を使うもんじゃないなあ、と思いながら高橋は必死に意思を伝えようと
していた。
新春に放送されるドラマの、収録の空き時間である。
(はあ、いちおう企業機密に該当しますんでね、そう簡単にお見せするわけにはいかないんで
すが)さすがにガードは固い。ここで高橋は、加護たちと綿密に打ち合わせた作戦に出た。
- 199 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 22:58
-
「実は ・ ・ ・ 福井の田舎から出てきたんですけどぉ、お姉ちゃんがこっちで連絡つかなくなっ
ちゃって。その ・ ・ ・ 失踪、って感じで」と福井弁丸出しの沈んだ声で打ち明ける。
(失踪!?) 相手は少し怯んだようだ。チャンス。
「お姉ちゃんの友達で、こないだ六本木でタクシーに乗るのを見かけたっていう人がいたん
です。どこのタクシーかわからないんですけど、これしか方法がなくって ・ ・ ・ 何とかお願い
できませんか」
(しょっ、少々お待ち下さい)
やった、こりゃ行けるかも!
高橋はこんな調子で、ちょっとした空き時間を使って電話をかけまくっていた。
もちろん、加護も辻も同様である。
- 200 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 22:59
-
まだ初動段階の捜査において、まず安倍・石川・藤本が数々の「押収物」の中から、中澤の
足取りを追えそうな手がかりを全員にメールで届けた。
それに呼応したかのように、中澤と番組でMCを勤める道重が、六本木ヒルズのテレビ局
前からタクシーに乗った目撃情報をゲットしてみせた。
時間は犯行時刻より早く、直接のアリバイとはいかないが、光明であるのは間違いない。
報告をうけたミニモニ。の3人は、会社から説明を受けていたミカをまじえ、策を練り上げた。
正攻法は中澤を乗せたタクシー運転手を探すことだが、都内に何万台運行されているか
わからないタクシーの一台一台をあたるなど、とても出来ない。
- 201 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:00
-
そこで、攻めるなら本丸だと考えた加護キャップは、飯田と矢口の意見を聞いたうえで都内の
タクシー・ハイヤー会社にアプローチを試みる断を下したのである。
ただし、ストレートでは勝負にならないとみて、あえて変化球を連投する作戦だ。
彼女たちはこのミッション【disappeared sister】(=ミカ命名)によって、既に1社への切り込みに
成功していた。
いまごろ在京地方局でレギュラー番組を収録しているはずの新垣以下の部隊も、スタッフや
メイクに聞き込みを行っているはずだ。
まだそちらからは情報があがってこないが、初日としては上々のスタートといえるだろう。
- 202 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:00
-
(ああ、休憩が終わっちゃうよー待たせすぎやてぇ)公衆電話コーナーで地団駄を踏む高橋で
ある。それでも、通りかかったスタッフに会釈しながら待っていると、配車担当と名乗る人物が
電話に出て、コピー等外部に洩れる可能性を排除という条件付で調査をOKしてくれた。
「ありがとうございますっ!明日にでも私かお姉ちゃんの友達が行きますんで、よろしくお願い
します!」
思わず電話に向かって深く頭を下げた純情娘は、期待に顔を輝かせつつ受話器を置いた。
アポイントを確保したら、あとは事務職の若い女性が友人役を勤めればいい。
待っててください中澤さん。みんな頑張ってます!
スタジオへ走る彼女は、弾けるような、無邪気な笑顔であった。
行く手には、光が見えているに違いない。
その時点では、高橋だけでなくメンバーの誰もが、光の先に待つものが恐怖と新たな
闘いであるとは想像し得なかった・・・・・。
- 203 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:01
-
普通なら窓外を見遣る余裕など持てないはずである。
取調べが始まってまだ二日だというのに、「今日は何日でしたっけ」と時間感覚を失う
「容疑者」もいるほどだ。
もしいま、この取調室に入ってくる者がいたら、泰然と窓外の風景を眺める中澤裕子の
後姿に何を感じるだろう。
あの娘たち、無茶してないとええんやけどな・・・。
弁護士の面会で「どうやら動いているらしい」と聞いた彼女は、おかしな冤罪を着せられる
よりも娘。たちの方が心配になっていた。
逢坂と吉澤が会ったということは、そうとうの情報が娘。たちに流れているとみていい。
もちろん、自分を助けるために頑張ってくれるのは涙が出るほどに嬉しいのだが、捜査術の
初歩を身につけている年上チームは逆にそれが仇となってしまわないか、と気が気では
なかったのである。
- 204 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:02
-
とくに、吉澤は他のメンバーとはレベルが違う。拘束が今日で3日めとなり、身柄が警察
から検察へと移されるのにともない「参考人」から「容疑者」へと扱いが変わったことを知って
いるかもしれない。
最終局面を迎えた工場で、銃声がこだまする中へ敢然と突入した吉澤である。何をやらかし
ても不思議ではないと思っていた。
背後の人の気配に、中澤は自然な仕種で振り向いた。
そこには、ある意味で心配の種を作ったとも言える飲み友達が、まったく似合わない姿で
立っていた。何のつもりか、エプロンをつけている。
- 205 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:03
-
「大丈夫か?」
特別にドアをそっと開けたわけでもないのに気配に気づかなかった中澤に一抹の不安を
感じたのか、逢坂刑事は差し入れらしい飲物を載せたトレイを持ったままの姿勢で訊いた。
「別にぃ。何や、そのカッコ。謹慎やなかったん?」
いつもと変わらない口調に安心し、どうだい容疑者になった気分は、と笑いながらドリンク
を置く逢坂である。
「別の事件で人が足らなくてね。君とは世間話以外はいっさい禁止って条件付で休暇は
お預けをくらった」
何だか少し言葉づかいがおかしい気もするが、一人よりも心強いことは確かだ。
小さくため息をついたものの、微笑をその顔に浮かべた中澤は目の前に置かれたアイス
コーヒーを一口飲った。
「ん…美味しいやんこれ。どこの出前?」
「馬鹿いえ、俺がいれたんだ。感謝して飲めよ」
- 206 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:03
-
言いながら逢坂は、下に置かれていた紙製のコースターをわざわざ手元まで寄越した。
(?ははあ…)その不自然さに意図を察した中澤は、僅かに頷いてみせる。
「容疑者って言ったってなぁ、やってないもんは仕方ないやん」
「ま、そりゃそうだ。ときどき様子を見に来てやるよ。泣くなよ姉さん」
「アホ!」
もうすっかり、と言っては変だが、外での二人と変わらないと見抜ける人間が、マジック
ミラーの向こうにどれだけいることか。
事実、この最強タッグは、徐々にではあるが勝利を手繰り寄せようとしていた。
その向こうに待つものには、まだ気づかないまま・・・。
To be continued...
Next time is start at chapter.17
See you again and good luck !
- 207 名前:新人 投稿日:2003/12/23(火) 23:10
- 今夜の更新は以上となります。
明日はイヴですね。
私は仕事です。
あーあ。
では皆様、よいクリスマスをm(__)m
- 208 名前:みっくす 投稿日:2003/12/23(火) 23:21
- 更新おつかれさまです。
なんか事件にはかなりの裏がありそうですね。
次回楽しみにしてます。
- 209 名前:つみ 投稿日:2003/12/23(火) 23:56
- 裏にはとてつもないものがありそうですね・・・
いいクリスマスプレゼントをありがとうございます。
- 210 名前:新人 投稿日:2003/12/24(水) 23:37
- 更新ではないのですが・・・
女優・安倍なつみ おそるべし
女優・石川梨華 侮りがたし
つみさんの言葉をお借りして
「いいクリスマスプレゼントをありがとう」
なっつぁん、チャーミー万歳。
おやすみなさい・・・
- 211 名前:つみ 投稿日:2003/12/25(木) 00:49
- 同感です!
- 212 名前:とこま 投稿日:2003/12/25(木) 20:41
- 更新お疲れ様です。
裏に待ち受けているものは・・・何でしょう?
次回も待ってます。
- 213 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:03
- こんばんは作者です。
ある日の師匠と弟子の会話・・・
「桜井幸子が結婚したんだって?」
「らしいね。この年末は多かったよ。ヒロスエにオキナも」
「く〜俺の憧れの君が」
「んだってぇ?」
「いい女優だったのに・・・元アイドルらしからぬ演技力でなあ」
「悪かったね現役で」
「ま、お前は心配ないわな」
「んだよ、切るよもう」
「待て待て。目指すもんが違うって言ってんだ」
「?」
「誰かの嫁さんじゃなくて、ハンターだろ」
「・・・・・プツッ ツーツーツー・・・・」
「ありゃ。電波が悪いんかな」
乙女心がわからないジョーとよっすぃーの明日はどっちだ?
・・・では、今夜の更新を。
- 214 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
- 川o・-・)
- 215 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
- 川o・-・)
- 216 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
- 川o・-・)
- 217 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:10
- すいません、先に次章をのせてしまいました。
あとで削除依頼を出します。
では、あらためまして・・・。
- 218 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:14
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.17
いつもと違う空気を誰もが感じ取っていた。
週にそうに何度もない全員が揃っての仕事だというのに、訪れたスタッフが嘆息と苦笑を
同時に漏らすような、あのかしましい雰囲気はどこにもなかった。
理由ははっきりしている。
「そっかぁ・・・・」
安倍が長い沈黙に耐えかねて発した一言が全てを物語っていた。
- 219 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:15
-
舞台設定まで考えてアポイントに成功した何社かのタクシー会社では、芳しい成果は
得られず、指揮をとる形だったミニモニ。の3人はやや落ち込み気味であった。
中澤の足取りは事件当夜に六本木ヒルズにあるテレビ局のロビーで目撃されて以後を
掴めていない。
吉澤と後藤も合コン参加者に接触を拒否され続けていた。
既に2日が消費されていた。拘束時間の長短こそあれ、監視付のホテルと警視庁を往復
する中澤の心労は察してあまりある。メンバー達には徐々に焦燥感が現れてきていた。
もともと叱り役でもある司令塔がこのところ妙に怒りっぽいし、つられたわけでもないだろう
が、年少組の姉貴分として自他共に認められている石川も少し小言が多くなっているよう
だ。
二日後には「おとめ」「さくら」に分かれての、二度目のライヴが鳥取と奈良で行われる。
こんなんじゃライヴに集中なんて出来っこない・・・。
- 220 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:15
-
「どうしたのよっちゃん?」
腕組みをしたまま一点を見つめ動かない吉澤に、石川の心配そうな声がかかった。
「ん・・・・やっぱ変だよ」
「何が」
「タイミング。中澤さんのことと引抜き、同時に起こるなんてさ」
「そうかな。たまたまじゃないの」
「悪いことは重なるって言うじゃん」
側にいた藤本が言ってからしまったという顔になったが、飯田たちは別に怒った風もなく
聞き入っているようだ。
それをチラと見た吉澤は続ける。
「あたし聞いたんだよね。圭ちゃんと稲葉さんにさ」
- 221 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:16
-
その結果、驚くべき事態が発覚した。
引き抜きのオファーを受けているのは、先に判明している4人だけではなかったのだ。
カントリー娘。ココナッツ娘。さらにメロン記念日のメンバーまでその対象となっていたことを
稲葉から聞かされたのである。
また、稲葉と保田は独自に捜査班を組織。ほぼ全員が所轄警察と携帯電話会社に被害届
を出し、引き抜き首謀者のあぶりだしにかかっていることもわかった。
着信履歴によって判明した番号は、都合5種。いまのところ、3つは持主の特定が不可能な
「飛ばし」の携帯番号であることがわかっている。
残る二つは家庭用番号であるためNTTか警察を動かさなければならず、被害届という策に
出たのだ。
- 222 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:17
-
「話の中身からして、下手な鉄砲なんとかってやつじゃない。中澤さんのことと関係がある
ような気がして仕方がないんだ」
突拍子もない話のようで、実はほぼ全員の心の隅で燻っていたことは、誰も反論の手を
上げないことで明らかだ。
いや・・・吉澤の推理の先を全員が知りたいのである。
「どうつながるってのよ」
矢口がようやく絞り出すような声で言った。
『BALALAIKA』で詰問しかけた吉澤の腹の内が、いま姿を表そうとしている。
「あくまで仮説として聞いてほしいんだけど・・・」
次の一言に全員が聞き耳をたてる。室内はエアコンの音だけが低く響いていた。
- 223 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:17
-
「中澤さんが犯人じゃないことは確かだよ。けど、もしこのまま拘束が長引いたりしたら、
事務所はどう動くかな」
漠然とした問いに誰もが首を傾げる中、一人だけ気づいた。
「まさか・・・・・・」
自らの大事以来、進境著しい石川である。
「なに梨華ちゃん、言ってみて」
「う・・・」
矢口の顔色をうかがいながら、おそるおそる言ってみる。
「解雇してもおかしくな・・・い」
新垣たちが「はっ」と息を呑むのがわかった。
中学生に「解雇」という言葉は生々しすぎたかもしれない。
- 224 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:18
-
そう、金銭的な損害はともかく、もしも発覚すれば著しいイメージダウンは免れないだろう。
ひいては事務所全体にまで波及する可能性もないとは言い切れないのだ。
未然に防ぐための解雇は、視野に入っていても不思議ではない。
おそらくは「引退」とされるだろうが。
「ちょっと待ってよ。じゃあ中澤さんはハメられたってこと」
今度は吉澤がハッとする番だった。
矢口も思わず腰を浮かせかけ、寸でのところで踏みとどまる。
言い難いことでもズバリと言い切ってみせる。それが藤本美貴の良いところであり、悪い
ところでもあった。それにしても、今の一言は鋭い。
「うん・・・・。長引けば長引くほど、崖っぷちに近づいていくんじゃないかな。中澤さんが
もし首を切られたりしたら、あたしたちもそうだし、圭ちゃんたちも黙ってないよね」
- 225 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:18
-
殺人事件への関与によってタレント生命を絶たれかけたトップ・アイドルOGが、その再起を
かけて事務所を移籍。彼女を慕って後を追ってきた元同僚とともに、起死回生の策に出る。
話題性としては申し分ない。小学生にも分かるシナリオだ。
では、中澤は引抜きを容易にするための罠にかかったというのか。
「それともうひとつ」
静寂を保つ室内に響く吉澤の声は、誰よりも淡々として聞こえた。
「これだけ大掛かりな引き抜き話に、欠かせないものがあると思うんだけど」
吉澤は、ただ自らの推理を明かしているのではない。
皆に感じ取ってほしかったのだ。
朧げながら見え始めている「危機」を・・・。
- 226 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:18
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.18
「うーっと・・・・・・んあぁ」
今日も退屈な一日だった。
三日目になって身柄は警視庁から検察庁扱いへと移り、容疑者へと呼称も変わった。
大げさにも捜査本部とやらが設置され、担当刑事の訊問はより具体的に事件の内容へと
切り込んできた。
それなのに、聞いていたような激しい詰問はなくむしろ淡々としたものだった。心理作戦が
通用しないとわかっているのに、まだ真綿で首を絞めてこようとしている。
さすがの中澤も辟易とし、ため息が多い一日であった。
- 227 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:19
-
衣服を脱ぎ捨てとっとと楽な姿になったところで、密かに持ち帰ったコースターを手にベッド
へひっくりかえった。あらためて裏に書かれた文字を読んでみる。
【疲れもたまってるだろう。ホテルでマッサージを呼べ】
男にしてはきれいな字だな、と感心するよりも、中澤にはその語尾が気になった。
「呼んだら?」ではなく「呼べ」である。
警視庁に拘束されて以来、警察官とホテルのフロント、そしてルームサービスを運ぶベル
ボーイ以外は一切の接触を絶たれている彼女に、娑婆の空気を感じてもらおうとでもいうの
だろうか。まだ心が折れてなんかいないのに・・・・。
それでも彼女は、入浴後わざわざエレベータ・ホールに待機する監視役の女性刑事に断り
を入れてまでマッサージを頼んだ。飲み友達のいらぬおせっかいだが、ちょっとした気分転換
にはなると思ったのだ。
- 228 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:19
-
10分後、チャイムが鳴った。
訪れたマッサージ師は、やや猫背だが長身で無精髭を生やした男性であった。サングラス
姿のため正確なものはともかく、同年代と思われた。
これなら1時間、退屈しないですむかな。
しかし、中澤の期待は違う意味で裏切られることになった。
やや俯き加減のまま、白いステッキ捌きも鮮やかに部屋の中央まで進んだマッサージ師
は、きわめてゆっくりと背筋を伸ばすと振り向き、おもむろにサングラスを外したのである。
「よう。どうだい容疑者に格上げされた気分は?」
「あ、あんた・・・・・」
大きく見開かれた中澤の瞳に映ったのは、懐かしささえ覚える顔であった。
- 229 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:21
- ・
・
・
・
帰り支度を整えながら、吉澤は自分が追う合コン参加者に夜襲をかけてみようかな、と考え
ていた。
収録の合間に教授に電話をしてみると、参加者たちの自宅住所が判明したのでメールする
と言われた。住基ネットに進入でもしたのか、いま確認した携帯宛のメールには、任意指定
住所直結の地図サイトのアドレスまで付加されており、まるで訪ねてみよと言っているよう
なものだったのだ。
「よっ、と。じゃあ・・・・」
お疲れー、と言いかけ、突き刺さる矢口の視線を感じた。
「・・・・」
一歩も引かずに受けながら、数時間前にこの部屋で同じように視線をかわしたことを思い
出す。
- 230 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:21
-
---モーニング娘。のOGのみならず、稲葉や他のユニットもメンバーまでも。
多数の引き抜きに、どうしても必要なものって・・・・?
芸能界に身を置きながら、ビジネスという面では徹底的に距離を置かされている彼女たちに
正解を答えよというのは無理な話かもしれない。
いや、ただひとりを除いては。
「お金だ。移籍金はハンパじゃないよ。相当の資金がいるよね」
娘イチの切れ者・矢口真里であった。
「さすがやぐっさん。そうなんだ。バックにかなりの資金力を持った組織でもついてないと、
これだけの引抜きは不可能、ってあの人も言うと思う」
あの人・・・・・・・その隠語が誰を指すのかは言わなくてもわかる。
- 231 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:22
-
春まだ浅かりし頃、モーニング娘。を未曾有の危機から救った男。
メンバーたちの隠れた才能を引き出し、結束がより強固なものとなるきっかけを作った男。
ハワイで去来したさまざまな想いを遂げさせようと奔走した、バウンティ・ハンター。
今回の事件が想起したときも、全員が同じ思いを抱いたに違いない。
『こんなとき、あの人がいてくれたら』
「組織って・・・」
やはり、考えてはいても口に出すのは少し引いてしまうことを言ってくれるのは藤本だ。
「だいたい想像つくでしょ。ヤバい連中だと思う。かなり高い確率でね」
変わらず淡々と、吉澤はそう告げた。
- 232 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:22
-
楽屋内を再び静寂が支配する。
まだ決まったわけではないが、整理すればするほど、推理を深めれば深めるほど、事態は
穏やかでなくなっていくような気がしていた。
自分たちで解決しようなんて甘かったのか。もし『そいつら』が出てきたら・・・。
悔しさにかみ締められる唇。
絶望を表に出すまいとこらえる涙。
姿なき恐怖に耐えようとするが、止められない震え。
それらの全てを、吉澤は受け止めようと思っている。
事件の裏に蠢く存在に確信に近いものを抱いたとき、彼女は決心していた。
「たとえ自分のタレント生命が絶たれようと、この手で解決してみせる」
みんなには悪いけど、そのテの連中が出てきたとき、メンバーではどうにもならない。
立ち向かえるのは、「あの人」がいない以上、ただ一人。
捜査術のみでなく、射撃と格闘術の修練をも積んでいる自分だけだ。
- 233 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:23
-
任せろって言っても、みんなやるって聞かないだろうな。
けどそれは、メンバーの命が危険にさらされると同時に、モーニング娘。崩壊への序曲が
始まることも意味する。
一人の方が気楽でいい。
あらためてその想いを噛み締めた吉澤は、果てしなく沈み行くメンバーたちを救うつもりで
明るい声を張り上げた。
「逢坂さんに相談してみる。教授も力を貸してくれると思うし、何とかなるよ。他にもアテは
あるから。みんな元気だそう!」
ふと気づくと矢口がジッとこちらを見ていた。眼と眼が合った数瞬、何を言いたいのか、
お互いがわかったような気がした。
- 234 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:24
-
「よっし・・・と。よっすぃーの言うとおりだよ、みんな」
深く座っていた椅子からピョン、と立ち上がると、矢口は皆の顔を見回した。
「あたしたちに出来るのは裕ちゃんのアリバイ証明まで。そっから先は警察の仕事だよ。
どーせすぐ立ち消えになるよ引抜きなんてバカな話はさっ」
大げさに両腕を大きく広げた矢口の一言で、彫像のようだったメンバーたちがようやく
メイクに着替えにと動き始めた。
笑顔と会話が、いつものようにとはいかないが戻ってきた。
矢口が何を言いたいのかは全員が理解している。
私たちはプロなんだ。
たとえどんな悲しいことや心配事があっても、仕事でそれを出しちゃいけない。
いまはこのあとの収録と、明後日のライヴに集中するんだ。
- 235 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:25
-
吉澤は再び矢口と視線を重ねた。
姉以上に慕う中澤の窮地を誰よりも心配しているはずの小柄な司令塔の瞳からは「これで
いいんだろ。でも、あんま無茶するなよ」との想いがぶつけられてきた。
・
・
・
・
引くわけにはいかないんだ。ごめん、やぐっさん。
あたしにもしものことがあったら、みんなのこと、お願いします。
- 236 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:26
-
瞳で語りかけたつもりだった。そして思いは通じたのである。
唇をきつく結び、生唾を飲み込むのと同時に矢口は、周囲にはわからないように頷いた。
止めて聞き入れる妹分ではない。気の済むようにやらせてやろう・・・・・。
しかし、二人の思いは予期せぬ訪問者によって、意外な形で結実することになるのだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.19
See you again and good luck !
- 237 名前:新人 投稿日:2003/12/28(日) 21:41
- 今夜の更新は以上です。
いま確認したところ、既に削除されていました。
顎さん、素早いご対応感謝します。
208 みっくすさん
「かなりの」裏であればよいのですが・・・もう書いてしまっており
ますので、サプライズが足りることを祈ります。
HPの娘。メンバー紹介、いつ読んでも考えさせられるとともに楽し
ませていただいております。なっつぁん卒業後どう変わるのか楽しみ
です。
209 つみさん
「とてつもない」だなんてそんな・・・。期待していただいているかと
思うと、身が引き締まる思いです。
現実にはあり得ない、けどあっても不思議ではない「裏」を用意した
つもりですので、後の更新をお待ちいただければ、と思います。
212 とこまさん
「裏」を推理しながらお待ちいただけると、当っても外れても楽しい
かと思います。丈太郎さんの受け売りですが(汗
さて、次回はいよいよ・・・
番外編以上に待たせたので、本人に怒られそうですね。
では
- 238 名前:つみ 投稿日:2003/12/28(日) 23:21
- おぉ〜!!
謎はすこしづつですが、方向性がでてきましたね。
吉澤さんには無茶だけはして欲しくない・・・
マッサージ師・・・もしかして・・・
- 239 名前:みっくす 投稿日:2003/12/29(月) 01:55
- おお、やっとあのセリフがでましたね。
あいての本当の目的は何なんでしょうかね。
マッサージ師って・・・・
- 240 名前:丈太郎 投稿日:2003/12/29(月) 15:45
- 更新お疲れさまです。よっすぃ〜っていつの間にか「よっちゃん」
って呼ばれてたんですねえ。
彼女による謎解きが始まり、そしてついにあの男が…? 楽しみに
待ってます!
- 241 名前:とこま 投稿日:2003/12/29(月) 15:50
- 更新お疲れ様です。
かなり危険な匂いが・・・
マッサージ師の正体は・・・
- 242 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:45
- こんばんは作者です。
SMAPとのコラボレーション、皆さんはご覧になりましたか?
盛りだくさんすぎて書ききれないのですが、私が印象に残ったのは
よっすいー、その髪型、一番似合ってるんじゃないか?
藤本、動きにキレがなかったなあ。ドラマで疲れてるのかな。
元祖ミニモニ復活!矢口、楽しそうだったなあ。
ってところです。
それでは、本年最後の更新を・・・
- 243 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:46
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.19
「よしこ、何やらかすつもり?」
「けーちゃん!?」
いつの間に訪れたのか、晩春にグループを去ったあとも現役たちに多大な影響を及ぼす
OGがドアの穿つ空間に立ち塞がっていることに気づいたのは、意味ありげな視線を送る
藤本や紺野の追及を逃れようと足早にドアへ向かいかけた吉澤だった。
「な、何ってあたしは別に・・・・」鋭い視線に思わず怯む。
「あいかわらず嘘が下手だね。矢口、あんたもだよ」
矢口もバツが悪そうに視線を逸らす。
さまざまなキャラクターが揃う大所帯の司令塔といえど、苦楽をともにしてきた同期であり
姉貴分である保田には敵わないらしい。
- 244 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:47
-
「好きにさせてやりたいけどさ、もうあんた一人でどうにかなる事態じゃなくなってるんだよね」
保田の言葉は、引き止めるというよりも引導を渡しているようだった。
「どういうことケメちゃん?」
すべてのやり取りを離れたところから見守っていた飯田が、近づきながら訊いた。
「うーん・・・・・」
「話しにくいことなの」
安倍も心配そうに寄ってきた。よほどの事態でない限り、ハロプロのサブリーダーが動くこと
はあり得ない。
道産子ふたりの目線に怯みかけた保田だが、やがて意を決してバッグから紙の束を取り
出した。
何だろう・・・・・全員の目が集中する。
- 245 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:47
-
「これ、見てみな」
差し出されたものを見た吉澤の瞳が、最大限に見開かれた。
「こんな・・・・・ばかな!」
【中澤裕子、殺人事件に関与!?】
- 246 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:48
-
保田の説明を待つまでもなく、手にしたそれは明日の朝刊に違いなかった。
普段は凡庸なスポーツ紙だが、たまに思いも寄らぬタレントのゴシップや大物同士の結婚
をスッパ抜くことで有名な新聞である。
記事は東出晃の殺人事件から中澤が容疑者となるまでを、彼女たちが知っている情報の
すべてを網羅しただけでなく、芸能面の大半まで使ってニュースの重大さを伝えていた。
「うそ・・・・・」
安倍が早くも瞳に涙を浮かべ、飯田の胸に顔を埋めた。その肩を抱く飯田の大きな瞳も
潤みかけている。
「さっき事務所に届いたんだ。いまのところ一紙だけだけど、噂が広まるのは早いからね」
たまたま打合せに訪れていた保田は、中澤連行の直後より遥かに狂奔する中を抜け出し、
後輩たちのもとへ駆けつけたのである。
「どうして?あたしたち何かヘマした!?」
かつて聞いたことのない吉澤の怒声に年少組も駆け寄り、トップを飾る巨大なロゴを見て
一様に絶句した。
どうして・・・・・・なんでこんなことに。バレないように、本当に一生懸命に考えたのに。
- 247 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:49
-
「みんなは巧くやってたと思うよ。正義の味方とかいう男のタレこみだって」
「密告?」
矢口も怒ったような声だ。
自分達の隠密捜査が発覚したより、もっと始末が悪い。
外部に、事件のことをよく知る人間が息を潜めていることになるからである。
「容疑者って書いてある!?」
光速の突っ込みを誇る藤本も動揺を隠せない。
いったい誰が・・・・・アリバイ証明が思うように出来ないジレンマに加え、ついに事件が白日
のもとにさらされるショックがモーニング娘。たちを苛む中、吉澤は痛々しいものを見る眼に
なっていた。
一番恐れていた事態に直面し、さすがのハンター候補もなす術がないのだろうか。
- 248 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:49
-
いや、彼女の危惧は既に別へ移っていた。
切り替えが早いのは、相棒のバウンティ・ハンターも認めるところだ。
こうなった以上、次に考えるべきなのは・・・・。
「まずいな。取材が殺到するよ。呑気にライヴなんかやってられないよ」
『!!!』
明後日はふた組に別れての地方公演である。会場だけでなく、移動中も取材陣が殺到する
だろう。
避けるのに一番てっとり早いのは公演を中止してだんまりを決め込むことだが、明日のこと
では如何ともし難い。だいいち、大所帯では難しい、地方の小ホールでのライヴで娘。の
パフォーマンスを楽しんでもらうというコンセプト自体が瓦解してしまう。
いったいどうしたら・・・・・。
- 249 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:50
-
「無視するしかないね。少しくらい悪く思われてもいい、とにかく何もしゃべっちゃだめ」
これほど説得力のない保田の発言も珍しい。彼女とて、内心は慌てふためいているのを
ひた隠しているのだ。
「その通りや。黙して語らず、が一番ええ」
「つんくさん!?」
いつの間にやって来たのだろう。保田が、おそらくは深い絶望の欠片を懐に隠しつつ開いた
ドアに立つ影は、彼女たちを発掘し、育て、開花させた異能のプロデューサーであった。
その顔に浮かぶのは、苦渋の色だ。
「外はえらい騒ぎやで。お前ら、みんな今夜からホテルに缶詰や。家の方もおかしな連中が
うろうろしてるそうやからな」
- 250 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:51
-
つんく♂は皆の中心までやってくると、ひとりひとりの顔を見つめた。
6期の3人のみならず、大人への階段を行く手に視認できるはずの5期も、師匠に今まで
みせたことのない質の不安を刻んでいる。
さすがに石川や藤本は取り繕っているが、瞳の暗さは隠しようがなかった。
このまま帰したら、アイドル生命を絶たれていたかもしれへんな・・・・・。
つんく♂は緊急事態発覚に事務所へ駆けつけるや否や、モーニング娘。以下ハロプロの
メンバー全員をホテルに隔離せよ、と社長に提案したことを、正しい処置と確信した。
いずれバレることを計算してスケジュールを変更し、公演先のホテルも変更させたのだ。
バラバラのスケジュールとはいえ、何といっても40人を超す大所帯だ。一箇所に集める
のは危険と譲らず、5ヶ所に分けて部屋を確保できたことを確認してから、親心満載の
大プロデューサーは事態の急転直後に姿を消したという保田の後を追ったのであった。
- 251 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:51
-
「吉澤、気持ちはわかる。けどやな、一人では限界っちゅうもんがあるわ」
いきなり話を振られてびっくりするより、何か含みのある言い方がひっかかった。
「一人じゃないですよ。真希ちゃんも」
「揚げ足とんなや。まだプロやない、いうこっちゃ」
困ったような顔で諭したつんく♂は、しかし次の瞬間には笑顔に変わった。
(こんなときに何を笑ってんの!?)
食って掛かろうとした矢口を制し、音楽ビジネス界の異端児は続ける。
「みんなようやったわ。中澤のアリバイは証明できてへんけどもやな、それはつまり、殺人
があった時刻にアイツが現場におったっちゅうことにもならんわけや。中澤も感謝しとると
思うで」
さすがは師匠である。成果の上がらない捜査に心が折れかけていた彼女たちにとっては、
何よりの労いになるだろう。
- 252 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:54
-
「けど・・・・・・それじゃ何も解決しない」
悔しさを隠さず呟いた吉澤は、自らをも責めているようだった。
「うむ。中澤はまだ拘束されたままや。そこでや」
何を思ったのか、つんく♂は廊下へ通じるドアを開放し、一歩外へ出た。
「おっ、大人しく待っとったな。偉い偉い」と手招きしている。
いったい誰を連れてきたのか。
変なのだったら承知しないからね!という顔の矢口が、つんく♂の目線を追い眉を寄せた。
やけに下向きになってる。まさかキッズの誰かじゃないよね・・・・・・。
矢口の疑問が融けるのに要した時間は、僅かなものだった。
入口のすぐ内側に置かれたソファの影から漆黒の四足歩行動物が姿を現し、3mの距離を
置いて「お座り」をしたのである。
その顔は穏やかで、大きな黒目が「覚えてる?」と問いかけているようだ。
- 253 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:55
-
「・・・・・ゼン?」
矢口が呟いた名前は、誰もが求めていたかもしれない。
つんく♂もその顔に穏やかな笑顔を湛えていた。彼も待っていたのだ。
「ゼンだよねっ!?」
・・・・・・くぅん
はにかむような仕種を見せると同時に小さく尾を振りはじめたラブラドール・レトリバーに、
矢口は神がかり的ダッシュをかけた。
「ゼンだぁ、ゼンがいるよぉ!」
一瞬の間を置いて、室内を娘。たちの嬌声が飛び交った。
- 254 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:55
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.20
入口で顔を見た瞬間にだいたいわかっちゃいたが、その口から聞くに越したことはない。
「よっ。どうだい、容疑者に格上げされた気分は?」
「あんた・・・・・火の玉ジョー」
コケそうになるのを堪え「その接頭語はやめろ。何とかの一つ覚えか」と毒づいてやった。
「どないして入りこんだん?」
「はん?見りゃわかるべ」
- 255 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:56
-
成田に着いて真っ先に思いついたのは、リーシャ・近藤に衣装の手配を頼むことだった。
ホテルに軟禁されているという中澤にコンタクトをとるには、これしかなかった。ホテル側に
頼むことはできないし、ついているに違いない監視役のガードを甘くできるのは、黒いサン
グラスと白いステッキだけだろう。いくらうまく化けても、つい昨日まで休暇をとっていたベル
ボーイじゃ通らんだろうしな、俺の人相じゃ。
実は「盲目のマッサージ師」に化けたのは初めてじゃない。探偵社のエージェント時代には
ガードの堅い標的に対して何度か使った手だ。裏メイク師の最高峰に施してもらったメイク
より自分の演技力が心配だったが、中澤に正体がバレなかったのなら、まだ捨てたもんじゃ
ないな。
返す刀で教授にコンタクトを依頼し、リーシャに連れてきてもらったこのホテルに出入してる
本物のマッサージ師に「悪いが1回分の仕事を譲ってくれ」って2万包んだのだが、本当に
盲目の彼は指先で確かめたあと涙を流し、逆に感謝されちまったい。
近くで開業してるって言ってたから、いずれ寄るとしよう。
- 256 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:58
-
「何やそのムサ苦しい顔。髭ぐらい剃りぃな」
そんな暇あるか、と言い返すと、ようやく中澤は柔和な微笑に変わった。
「お客さん、マジでマッサージしてさしあげましょうか」
「プッ・・・・・・はははははは、アンタでもそんなギャグ言うんやなぁ」
爆笑しやがってくそ。別に駄洒落じゃねえぞ。
しかしまあ、ちっとは安心したわ。
逢坂から聞いた話じゃ、飄々としてる反面けっこうストレスがたまってきてるんじゃないか
ってことだったが、これだけ笑い転げるならな。
「失礼な女だな。成田から直行してやったっつーによ」
リーシャが用意した衣装と小道具は、ホテルの地下駐車場で受け取った。
「会ってないんか?」
娘。たちにか、それとも未来の相棒にという意味か。
「いや、つんくにゼンを預けた」娘。たちは仕事中だったからな。
「ふーん・・・・」
- 257 名前:新人 投稿日:2003/12/29(月) 23:59
-
それだけかよ・・・少しは感謝しろってんだ。まあいい、ボチボチ本題に入るとするか。
「これを見ろ」
と懐から取り出したものを渡す。都合3回折りたたまれたそれは、肝っ玉姉さんの顔を
絶望寸前と思えるレベルまで曇らせてようやく留まった。
苦い顔のつんく♂から手渡されたスポーツ紙の朝刊には、一面トップで「中澤裕子、殺人
事件に関与か?」の巨大な活字が躍っていたのだ。
「どうしてこんなことになった?」
記事に見入ったままベッドへひっくりかえった中澤に、ズバリ切り出す。
口調でわかるだろう。俺が聞きたいのは事件の内容じゃない。そんなこたぁ逢坂と教授から、
いらないっつってもドカドカと入ってくる。
俺が来日したと聞きつけ電話してきた涼子による、彼女も「聞いたんだけど」という話の真偽を
確かめたい。
- 258 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:01
-
今日の隆盛を誇るハロー!プロジェクトの総リーダーを務めるこの女性は、俺すら名前を知る
敏腕弁護士がさんざか頭を捻り倒して考えついた「拘束を解くため」の手段を、何のつもりか
跳ね除けたというのだ。
「出してやる」と言ってるのに「いや、そこまでしなくていい」とは・・・あまりのことに、弁護士
は怒り心頭でその任を下りてしまったという。
涼子が担当であればもっと確かな情報として伝えられるのだろうが、残念ながら検察内部
にも守秘義務ってやつは厳然と居座っている。
かくなるうえは、本人の口から語ってもらおうじゃないか。
- 259 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:02
-
「答えろ」
声に若干の怒りを乗せると、思い出したように起き上がる。
「久しぶりやってのに・・・・そんな怖い声出さんといて」
言いながらミニバーから取り出した缶ビールを放ってよこした。俺もつきあって一口飲ると、
ようやく顔を正面から見る。
「もうちょっと優しくしてぇな。これでも消耗してるんやから」
冗談めかした口調だが、半分は本音だとわかる。
「答え次第だ」
観念したのか、ため息をひとつついた。遅いんだよ踏ん切るのが。
「・・・・・・しゃあないな。あんな、とうちゃん・・・殺された東出晃なんやけど、あたしが・・・・」
ぐっ・・・・そんなとこで間を開けるな。
- 260 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:02
-
「あたしが殺したのかもわからん」
「何ぃ!」
思わず叫んじまった。防音のしっかりしたホテルでよかったぜ。
「そんな驚かんでもええやん。この手でやったわけやないんやから」
先に言えバカ。ってことは、原因を作ったとでもいうのかよ。
「あの夜なあ、ホンマはとうちゃんと会う予定やったんや。けどな、直前に向こうからドタキャン
してきてな、仕方ないから時間潰して、テキトーな店で飲んで・・・・・」
あたり前かもしれないが、中澤裕子が声を詰まらせるのを初めてナマで見た。
それからの30分間、逢坂や教授でも知り得ない事実を頭へ叩き込もうと、俺は必死になった。
- 261 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:03
-
全てを聴き終え、俺は元通り変装しなおした。
「じゃぁよ、中澤容疑者」
「ふん、結局それかい。涙みせて損したわぁ」
憎まれ口はお互い様だ。けどよ、その顔は全部吐き出して楽になったって風に見えるぜ。
おっと・・・・大事なことを忘れてた。サングラスをかけなおし、ドアに手をかける寸前でふり
返る。
「お前を助けたいと思ってるのは、飯田たちだけじゃない。俺が来た以上、って言いたい
とこだけどよ、吉澤もお株を奪われそうなのが一人いる。すげぇ後輩ばっかだな」
「???」
「先のことを考えろ。引き抜きの件も含めてな」
「・・・・わかった。みんなに伝えてな、裕ちゃんは大丈夫やて」
- 262 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:04
-
最後の最後に真顔へ変わった中澤を残し、部屋を後にする。
壁伝いにエレベータ・ホールへたどり着くと、居眠を中断し女性刑事が慌てて立ち上がった。
くそ、これなら非常口から脱出できたな。ま、無下に事を荒立てる必要もないか。
背筋を伸ばして「調べさせていただきます」・・・威厳を保とうとしたのはわかるが、教育がなっ
ちゃいねえ。こんなのが本庁の現役と胸を張れるなら、俺だってまだまだいけるぜ。
何しろ、白衣のポケットや上半身をチェックされている間、頭の中では「あたしが殺した」
という台詞が無制限リピートをはじめてるのに、全く気付かなかったんだからな。
To be continued...
Next time is start at chapter.21
See you again and good luck !
- 263 名前:新人 投稿日:2003/12/30(火) 00:14
- 本年の更新は以上となります。
238 つみさん
よっすぃーに無理するなと言っても聞くと思います?
「無茶」はしないとは思いますが・・・。
マッサージ師の正体はご想像通りでしたか?
239 みっくすさん
裏に潜むものは、徐々に明らかにされていきます。
娘。たちの闘いは、まだ始まったばかりです。
美弥子もそう言いましたでしょ(^^)
240 丈太郎さん
お久しぶりですね。謎解きは、前作や番外編はジョー一人でしたが
今回は二人の共同作業になると思います。「相棒」ですからね(^^)
241 とこまさん
危険な匂い・・・実はまだ先にも?
仕掛けはひとつではありませんので、お楽しみいただけると嬉しいです。
それでは皆様、よい年越しをお迎え下さい。
来年、また。
- 264 名前:つみ 投稿日:2003/12/30(火) 00:16
- おお〜!!
遂に来ましたね!!
これでやっと、役者がそろいましたね〜。
でも中澤さんのことが気になりますね。
それにしてもお株を奪われそうなやつって・・・
- 265 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 02:22
- あの子かな…そうですよね、作者さん?
- 266 名前:みっくす 投稿日:2003/12/30(火) 04:47
- やっとそろいましたね。
お株を奪われそうなヤツって・・・
やっぱりあのひとでしょうね。
- 267 名前:とこま 投稿日:2003/12/30(火) 15:48
- 更新お疲れ様です。
よっすぃ〜のお株を奪うほどの人は・・・
誰だろう?
- 268 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:19
- みなさま明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。
元旦の各番組の娘。たち、まあ笑わせていただきました。
中でもやっぱり、我等がよっすぃーはもう・・・。
長島ジャパンの4番をヨシノリ呼ばわりするわ、珍解凍で
スタジオを凍りつかせるわ。
挙句の果てにかくし芸で暴走しかけやがってからにもう!
臓がよじれましたわい。
ただ、ひとつ気になったのが、紅白で覇気がなかったことです。
そのコントラストが何となく、彩っぺに似てきたような・・・。
まさか、彼女に限ってそんなことはないと思いますが。
正月休みで書き溜めた分を更新したいと思いますが、来週から
仕事が忙しくなりそうなので(明日が仕事始めだし・・・)更新が
遅くなるやもしれません。
どうか御容赦を。
- 269 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:20
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.21
『わぁ、ゼンーっ!!』
漆黒のレトリバーだけではない。この日初めて、娘。の楽屋をいつもの彼女たちが訪れた。
首にかじりついていた矢口をようやく引き剥がした加護だけでなく、自分を知らない6期
以外のメンバーにかわるがわる抱きつかれたゼンは、目を白黒させながらも次第に尾の
振りを大きくし喜びを伝えていた。
吉澤の傷心を癒すのみならず、獅子奮迅の活躍で石川誘拐事件解決の功労者となった
ゼンは、フェアウェル・パーティーでも大変な人気だった。
各人のもとを訪れては捜査班に身を摺り寄せて甘え、留守を預かっていた年少組に呼ばれ
ては芸を披露して主役の座を飼い主から奪った彼を、誰が忘れるだろう。
- 270 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:21
-
来てくれたんだ・・・
「あの人」が。
「歓喜の輪」を見守る石川と藤本の顔には、穏やかな笑顔が浮かんでいる。
「やっぱり・・・・・・」
思わぬことを呟いた石川に吉澤が気付く。
「なに梨華ちゃん」
「え?」
「『やっぱり』って」
「ああ・・・うーん、二日前にね、ロスアンゼルスの空港にいたんだってジョーさん」
「なんでそんなこと知ってんの!?」
今度は藤本が声をあげた。
- 271 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:21
-
(ははぁ・・・・)吉澤はファインゴールを決めたときのような会心の笑顔を隠さない石川に
確信を持った。
「銀香さんか」
「!?」
何度かくっついてきた彼女のトレーナーが営む店で店主に頼み込み、銀香とコンタクトを
取ろうとしていたのは知ってる。
真希ちゃんと行ったときは、まだ連絡が取れないって落ち込んでたって聞いたけど・・・。
「そっかぁ、電話だ」
「しっ!美貴ちゃん!!」
「隠さなくてもいいじゃん。あれ国際電話だったんでしょ」
「う・・・・」
石川の家に泊まったとき、メチャクチャ嬉しそうな声で電話していたのを思い出した「女王」に
突っ込まれては、観念するしかない。
「実はね・・・・・」
- 272 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:22
-
混乱の中で忽然と姿を消した「恩人」に、どうしても、もう一度会ってきちんとお礼を言いたい。
いろいろな意味でそう願っていた石川は、吉澤の師範を勤める元ハンターを通じ夏前から
接触をはかっていたのである。
かつてその名を全米に轟かせていたというスペンサー・渡は快く引き受けてくれたが、何しろ
ジョーをして「神出鬼没」と言わせる男だ。彼のコネクションを使っても、そう簡単にコンタクトを
とれるわけがない。
加えて、ハワイでのニアミスだ。帰国してから足繁く『BALALAIKA』を訪れては、まだか、
まだかとせっついた。
自分より早く常連となっていた後藤と一緒に訪れたときなど、意を汲んだ彼女まで加わって
「まだなんですかぁー」コールを連発し、店主をタジタジとさせたものだ。
それが今月になって、急転直下の展開をみせた。スポーツフェスティバル大阪大会の直前、
懐かしい声と口調で、「私に用があると聞いたが」と国際電話が喋ったのだ。
- 273 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:23
-
「よっちゃんも探してると思ったけど、銀香さんなら心あたりがあるんじゃないかな、って」
ハワイ最後の夜にも見せた、周囲をも巻き込んでそうさせてしまう石川梨華の笑顔が
吉澤に向けて輝きを放つ。
「二日前にロスアンゼルス国際空港から出国したらしいって、昨日知らせてくれたの。」
「会ったって?」
「ううん・・・空港で見かけた者がいる、ってだけ」
「ふーん」
再びもみくちゃにされるゼンを見ると、さすがに辟易として吉澤に助けを求めている眼だ。
ふん、あんたも同罪だよ。何の連絡もなしに。
つんく♂にゼンを預けたということは、自分に連絡をつけるぐらいはできたはずだ。いまどこに
いるのか知らないけど、現れたら死刑だな。とムクれる相棒に抗議のつもりか、ゼンは一声
「ウォン」とやった。心なしか声が苛立っているみたいだ。
- 274 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:24
-
「ん?」
「あ・・・ちょっと待ってみんな」
「やぐっさん破らないでよ」
「わかってるって。ゼン、ちょっと上向いて・・・・うえ、びっちり貼ってある」
ゼンが吠えた拍子に見えた首輪に、透明テープで貼られた白い紙らしきものに気づいたのは、
矢口と吉澤だけだった。
慎重に慎重に、ゼンがジッとしていてくれたのも助かった。ようやく剥がし終えたそれは・・・
「えーとぉ。『矢口、このメッセージに気づくのは多分おまえだろう』って、え?」
小さく折りたたまれたジョー直筆のメッセージだ。
あれほど騒いでいたメンバーたちが静謐な表情に変わり、読みあげる矢口を見つめている。
「『情報を集めてから行く。今夜はちとキツいかもしれん』って・・・・どこ行ってるんだろう」
キツいって、合流できないってことかな。
「矢口さん、続き」
思案顔の「おやびん」を加護が肘でつつく。
「わかったよぉ。えー『隅っこでぶんムクてるひとみに伝えてくれ。早まるな。以上』」
ジョーの口調を真似た矢口の朗読が終わると、何度目かの歓声が上がった。
- 275 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:24
-
「きゃー、やったー!」
「ひとみだって、うわー」
吉澤は聞き終えて思わずため息をついた。
皆の反応を承知の上でそう呼んでくれたのか、ただの嫌がらせなのかはわからない。
だがとにかく、高科穣也がやってきたことだけは確かだった。
全員の顔を歓喜と安堵が染めるなか、石川と藤本だけは最後の一行に疑問を抱き吉澤を
見る。
そこには文字通り「ぶんムクれ」状態の彼女がいるだけだったが。
(何するつもりだったのかなよっすぃーは・・・)
浮かんだ疑問は、少なくとも自分の中で解決しないと気がすまないのが藤本美貴である。
「よっすぃー・・・何」やらかすつもりだったの、と訊こうとしたのだが、つんく♂がパンパン!と
手を叩いたのに遮られた。
「はいはい、そこまで。地下に車が来てる。分乗して脱出や。もうホテルには荷物が届いて
る頃やろ」
あまりに急なスケジュール変更に戸惑うのは、家族も同じである。大変だったはずだ。
- 276 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:29
-
「明日は幸いレッスンが主や。他の細かいのはキャンセルしてあるから、いまは明後日の
ライヴに集中するんや。ええな?」
部屋のあちこちで「はいっ」という返事があがり、つんく♂は満足そうに頷いた。
口々に今後の展開を話し合いながら退出していくメンバーたちの最後尾でつんく♂の前を
通り過ぎる際、吉澤は正対し言ってやった。
「あたし、プロじゃないけど、素人でもないですよ」
ひとりだって、どうにかなったのに。
だが、エレベータへ急ぐ後姿は、「頼れる相棒」の出現に心から安堵しているようだ。
(どこまでやれるか見てみたい気もするが・・・・まだ早いわ)
後姿を見送るつんく♂が複雑な心境に陥っているのも知らず、未来のバウンティ・ハンターは
歩み去って行った。
- 277 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:30
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.22
中澤が軟禁されるホテル『ダイヤモンド』を出て二ヶ所ばかり寄り道し、アップフロントがおさ
えたホテルに着いたときは既に12時近かった。
PCに届いたメールによると、交差点を隔てたはす向かいのホテルに、飯田以下の年長組と
後藤が身を隠しているらしい。
今日はレギュラー番組の収録日だったとかで、局の地下駐車場から5台の軽自動車に分乗
して脱出を成功させた他のメンバーは、保田と共に2駅ほど離れた公共の宿泊施設にいると
のことだ。
- 278 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:31
-
中澤の件がマスコミに洩れた以上、直接の同期や後輩にあたる彼女たちを一ヶ所に集める
のは危険−−−ゼンを預ける際に提示した案を、つんく♂はそのまま実現したのだ。
明日に予定されているふた組に別れてのレッスンは、元のスタジオをキャンセルしたうえ別
に場所をおさえたという。さらに、今日使った軽自動車ではなく弁当屋やクリーニング店など
業務車を偽装したワゴン車を人数分、手配済みだとか。いったいどんなコネでおさえたのか
聞いてみたいね。
まあいい。そんなことより、明日からのことを組み立てておかにゃならん。
ベッドへ荷物を放り出すと腹の虫が鳴いた。
この時間ではルーム・サービスも終わっている。成田へ着いた直後に2分でカレーを食った
だけだから、えらく腹は減ってる。さて、どうしたもんか。
メニューを引き出しへ戻した俺の眼は、ベッド上に放り出した携帯を捉えた。
ある事情でつんく♂に用意してもらった代替機だ。あたり前だがプリクラは貼ってない。
ただ食うだけじゃもったいねえ。作戦会議と行くか。
- 279 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:32
-
『Prururururu・・・・・・・』遅い。何秒待たせやがる。
腹の虫はもう限界だ。舌打ちしつつ電話を切ると、途端にメールが入った。
そっちが来い
の一言だ。くそ、お見通しかよ。
壁にちょこんとくっつけられたボタンを押すと、すぐにドアの向こうで人の気配が動いた。
ちゃんと確認してやがる。ま、ハンターってよりもトップアイドルとしちゃ当然だろう。
がちゃ
「ありゃ」
- 280 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:32
-
意外な笑顔に迎えられた。
「おーっす。久しぶりだねぇ元気だった?」
後藤だ。
(ごっつぁーん、誰ぇ)
なぜお前が、と訊く前に奥から石川の声が聞こえた。となると藤本もいるなこりゃ。
「んー、ジョーさんだよぉ」
(ホントに来たの!?)
この声は ・ ・ ・ 「お前が呼んだんだろうが!」日本へ着いて初めて覚える怒りを胸に叫び、
後藤を押し退け奥へと進む。
ツインのベッド・ルームには、ソファで寛ぐ石川梨華と藤本美貴。そして…
「ひとみ!どういうつもりだこの ・ ・ ・ ・ ・ 」
詐欺師!と叫ぼうとしたのだが。
- 281 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:33
-
「ったく、来なきゃ食べれたのになぁ」
窓側のベッドに寝そべっているひとみの側には、ルーム・サービスのものらしいワゴンが
その存在を主張していた。
メニューはローストビーフ・サラダにベーコンポテトピザ、そしてシャブリ。
どれも手つかずだ。
水を満たしたグラスの水滴の付き具合からみて、つい先刻この部屋に運ばれたらしい。
「どーせすぐに中澤さんとこ行ったんでしょ。頼んどいてやったよ」
やれやれ、という顔でひとみが呟くのを、別の赤ワインのグラスを傾けている石川&藤本に
壁側ベッド上の後藤が笑顔で見守っている。
こいつら ・ ・ ・ 読んでやがったのか。
正直、涙が出るほどありがたい心遣いだが、ここで変に遜っても笑われるだけだな。
- 282 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:34
-
「お前たちは食ったのか」
「ちょっと前に軽くね」とひとみ。
「あんまり入らなかったですけど」内容と顔が一致しとらんぞ石川。何だその嬉しそうな面は。
「わかるが、食わんともたんぞ」
「ウチらのことはいーよぉ。食べるの、食べないの」笑いながら言うなよ後藤。
しかし・・・・こいつの笑顔に抵抗できる男なんているのか?
「わかった。ありがたく頂戴する」
とりあえず腹を満たしてからにしよう。このメンツなら最初の議題は決まりだ。
「どけ」
「んだよもう!」
伸ばしたままのひとみの脚を「どかし」、まずワインを一口。ふむ、安物だが味は悪くない。
ゆっくり味わっている時間はねえ。時折4人の視線が注がれるのを無視してがつがつと
やり、最後にグラスいっぱいのワインを一気に流し込むと「ゼンはどうした」と誰にともなく
言ってみた。
「やぐっさんと一緒にいるよ。あのさ、他に言うことないの?」
「おお。ごちそうさまでした」
「・・・・この!」
至近距離を飛来した枕をパシ、と受け止めると、石川が「プーッ!」と吹き出した。
- 283 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:38
-
「何か文句あるの梨華ちゃん!」
「だってぇ、変なんだもんジョーさんとよっちゃん。きゃははははは」
後藤と藤本もつられて爆笑してやがる。ふん、今に見てやがれ。
「ひゃはははは、じぇねえ石川。訊きたい事がある」
「へっ、あたしですか?」
途端にパタっと止まった。
「おまえ、銀香とコンタクトをとったな」
「え ・ ・ ・ 」
張本人だけじゃない。ひとみと藤本も「どうしてそれを?」てな顔になった。後藤だけがキョトン
としている。
「どういうつもりだ」
「・・・・・・・・・・・・」
そんな言い方ないでしょ、と言いかけるひとみを制して、俺は経緯を話し始めた。
To be continued...
Next time is start at chapter.23
See you again and good luck !
- 284 名前:新人 投稿日:2004/01/02(金) 22:52
- 今夜の更新を終ります。
280レスを経てようやくジョーとよっすぃーが再会を果たしました。
さて、今後の展開ですが・・・私自身もちょっとばかりワクワクして
ます。
あっと驚いたりはしないかもしれませんが・・・。
では、次回の更新にてm(__)m
- 285 名前:丈太郎 投稿日:2004/01/02(金) 22:58
- 更新お疲れさまです!
あけおめ!作者さん!
いや〜2度目のリアルタイム更新でした。やっぱ名コンビですね、
笑いが止まりませんでしたわ(^^)
次回も楽しみにしてます!
p.s.作者さんが上げ忘れたみたいなんでageときます
- 286 名前:つみ 投稿日:2004/01/02(金) 23:57
- おお!ついに名コンビが!!
しかももう一組の方まで・・
やはりあの電話はそうだったんですね!
次回からの展開を期待します!
- 287 名前:みっくす 投稿日:2004/01/03(土) 00:05
- 更新おつかれさまです。
やっと名コンビ復活ですね。
やっぱりポイントは梨華ちゃんになりそう?
- 288 名前:とこま 投稿日:2004/01/03(土) 11:27
- 更新お疲れ様です。
名コンビ復活ですね。
いよいよ本格的に開始しましたか。
- 289 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:34
- みなさま、こんばんは。作者です。
あいぼんとののが…ついに。
昨夏から予感めいたものがあり、番外編では
エピソード・ヒロインの下に配したのですが…
まさか現実になるとは。
二人の成長が目覚しいのは、古いビデオを
再生してみれば瞭然としています。
まだ先の話ながら、新しいユニットを組む二人の
前途が洋々たることを祈ってやみません。
では、少しですが更新したいと思います。
- 290 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:35
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.23
2日前、俺は厄介な事件をひとつ片付けて、2週間ぶりに事務所へ戻った。
厄介な、というのは、命の危険はないにしても相手が知能犯で、追い詰めるのに梃子摺った
という意味だ。
特許級の社内発明を持ち逃げした大手製薬会社の研究員を追っていたのだが、こいつが
頭の切れる奴で、警察も知り合いのハンターもお手上げで俺におハチが回ってきたんだな。
どう切れたかというと、複数の替え玉を用意し同時に出没させるという手を使い、追撃を
かわすこと10回以上、煙に巻いていたのだ。おそらくIQは相当なもんだろう。
- 291 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:36
-
で、目撃証言に振りまわされた挙句、たまたま追い詰めたムエタイを使う影武者に骨折を
負わされた某ハンターが、自らの復讐もあわせて俺に依頼をよこしたってわけだ。
血が滾ったねぇ。命の危険なら珍しくないが、こういう知能犯を相手にするのは久し振りだ
ったからな。
結局、自分も偽者をふんづかまえる失敗を2度ほどカマした挙句、ふとした発想の転換で
首根っこをおさえることが出来たんだが、まあ疲れたこと。野郎、いつ尽きるともわからん
影武者攻撃を放つ一方で、自分はフロリダにある元愛人の別荘で悠々自適に過ごして
やがった。
ここ半年は社内で言葉をかわしたこともないという元不倫相手の言葉を鵜呑みにした前任
の腕っこきが気付かないわけだ。俺も、日本人でなかったらここまで手の込んだ逃亡の
シナリオを描いた奴が、密かに別荘の合鍵を複数作ったうえで別れ際に何食わぬ顔を
装いそのうちの一つを返していた、なんてこたぁ浮かんでこなかったろう。
「灯台下暗し」
ありゃあ今まで生きてきた中で、日本人であることを一番感謝した瞬間だったね。
- 292 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:36
-
目星をつけた俺は、報酬を3倍に吊り上げたうえで乗り込んだ。
真昼間にSIGの安全装置を外して別荘を訪れると、野郎は呑気に庭の芝を刈ってやがった。
ゼンも牙を剥くのを忘れてその場へコケた(ように見えた)もんだ。
ふん捕まえた野郎を依頼主へ引き渡し報酬を受け取った俺は、その夜から丸一日は爆睡
するつもりで事務所へ戻った。すぐにシャワーを浴びてベッドへひっくり返ろうとすると、ゼン
が何のつもりか電話をジッと見つめてやがった。
LEDの点滅を無視して寝るわけにもいかず、渋々ながら再生ボタンを押してみたら・・・。
「24人分の留守電だぞ。英語とスペイン語とポルトガル語、頭ン中で整理するのがどんなに
大変か想像してみろ」
強い口調で言うと、石川も藤本も天井を見て考えているようだったが、後藤は目を閉じてる。
そのまま寝るなよ。
- 293 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:37
-
大量のメッセージは、うち18件が同業の入れたもので言語は違うが内容は同じだった。
「スペンサーがお前を探してる」
傷が癒えてこちらへ戻ってから仕入れたスペンサー・渡の伝説は置いておくとしても、奴の
残照がいまも鈍くロスの街を照らしているのを思い知ったね。メッセージの主の中には、
俺の5倍のキャリアを持つ凄腕も混ざってやがった。
問題は残る6件だった。
4件はそら、そこで「早く言えよ」って顔してる未来の相棒からだったんだが、うち一つは
とんでもない人物からだったのだ。
「石川さんに捜索依頼を受けた。いつまで留守にするつもりかね」
そこへ至って、3日ほど前に例の替え玉の一人ともつれあって河へ落ちた際、うっかり防水
パウチに携帯を入れておくのを忘れていたことをようやく思い出したってわけだ。何通送った
が知らんが、肝心の画面がブラック・アウトしてちゃあな。
- 294 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:38
-
そういう自分のミスもあったから、3時間の仮眠をとる間に用意させたゼンの検疫証明書と
着替えだけをバッグに詰め込み空港へ走ったのは、我ながら早業だったと思うぜ。
出国手続を終えてフライトまで一杯飲るかと店を物色していたところへ、件の人物が何の
前触れもなく現れても、別に驚きゃしなかった。
「昨夜ひとつ仕事を終えたと聞いたが」
「商売じゃねえ。東洋の島国へバカンスによ」
「ほう」
「おかしなことを吹き込んでないだろうな」
「私は専ら聞き役だ」
「そうか。あばよ」
宿敵とかわした会話はそれだけだった。
「彼女たちが全てを託す存在は、君だけのようだ」
ってな台詞が後を追ってきたことを除けばな。
- 295 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:39
-
「ちょっと待った」
話し終わると同時に、ひとみが突っ込んできた。
「どうして『宿敵』なのよ銀香さんが」
「そうですよぉ。約束まもってくれたんだ銀香さん・・・」
掌を組んで夢見る乙女・・・じゃねえぞ石川。
「おまえ、あんなのと何を約束したんだ」
「あんなの!?ひどい!!!」
石川は俺から枕を奪い、投げる素振りで威嚇した。
「ジョーさんを探して、伝えてほしいって頼んだだけですっ!」
「興奮するな。けどよ石川、あいつは過去に俺の仕事をだな」
「邪魔したことがある、でしょ。それがどうしたっての」
ひとみが絶妙のタイミングで遮る。くそ、こいつら何でこんなにコンビネーションがいいんだ。
- 296 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:40
-
「ハワイで何があったかもう忘れた?」
「ありゃお前・・・・」
まあしかし、そいつを持ち出されると黙るしかねえな。
あのとき奴が現れなかったら、いまここで、こうして喧嘩できているかどうか。
「悪く言わないでください。あの人は・・・・・『頼りになる友人を大切にしたまえ』って・・・・・」
泣くなよ石川、おまえ強くなったんだろうが。
とは言えなかった。
これまた抜群の間で後藤の携帯が鳴ったのだ。
「はいもしもーし。おーっ」
いつもの調子で会話を始めた後藤をひと睨みしてやったが。
「もういいでしょ。ジョーさんの負けですよ」
藤本に試合終了を宣告され、俺は仕方なく「わかった、お前の勝ちだ。石川、ありがとよ」
実はこれが本音だった。
- 297 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:40
-
ひとみのメッセージだけでも十分だったが、この娘に頼られた銀香が現れたことで事態が
逼迫していると腹にハマったのは確かだった。
おかげで搭乗開始までの間バカ高い料金を払って国際電話をかけまくり、おおよその事情
を頭へ叩き込んだうえで、機中の夢の中でも対処法を考えられたのだ。
ま、2回あったはずの機内食は一度も腹に入れられなかったがね。
「?」
白旗をあげた俺を不思議そうな眼で見る石川に微笑みかけ、いよいよ会議というところで
後藤が「うっそ、凄いじゃん!やるねぇ」と叫び、切り替えようとしていたひとみまでコケた。
一度ならず二度までも。相手は誰だ?
「んー何かうるさいねぇ。いまどこにいるの?・・・・・電車ぁ?」
ピン、と来た。
この時間に動いている電車といったら、ひとつしか考えられない。
- 298 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:41
-
「え、たかし・・・・ああジョーさんかぁ。来てるよ。何で知ってんの」
コケたのは今日三度目だ。苗字ぐらい覚えとけよ後藤。
彼女の口調からするに、相手は教授が大興奮で初遭遇の衝撃を一気にまくしたてた娘に
違いない。
「かわるの?ん」
差し出された携帯には、後藤×ひとみのツーショット・プリクラが貼られていた。
「高科だ」
(ジョーさんですかー?着いたんですねえ)
語尾が伸びるのは後藤と同じだが、微妙に違うな。
「今日はそっちに泊まるんじゃなかったのか。スケジュールはそうなってたぞ」
(の予定だったんですけど、裏をかいて戻ることになったんです。そうだ聞いてくださいよー!)
何の自慢話だ、と思ったんだが。
- 299 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:42
-
「・・・・・!!!あうっ、ぐぅ?」
自分でも意味不明のうめきをあげちまった。
どうしたって?
こんなのを聞いて、凄いじゃん!で済ませる後藤の方がどうかしてるんだ。
「ああ・・・・わかった。俺が会えばいいんだな」平静を装うのもひと苦労だった。
(はい!よろしくお願いしまーす)
「任せとけ。後藤とかわるわ」
携帯を返し、隣へどすん、と腰を下ろした俺へ、ひとみの怪訝そうな声がかかる。
「ひょっとして・・・・」
「ああ。動いてるのは知ってたろ」
「見つけたって?」
「いや、それらしいのをピックアップしただけだ。明日の昼に会うことになった」
「まさか目撃者!?」
今度は藤本か。生半可なことじゃ眉一つ動かさない「女王」も、そりゃ驚くわな。
「すごーい。どうしてぇ」
石川の眼がまん丸になるのはハワイ以来じゃないのかね。
- 300 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:43
-
いずれにしろ中澤の件には光芒が差したと言えそうだ。
とすると、残るは。
「お前はどうなんだ」
「・・・・・」
話しにくいのはわかる。だが、意見を戦わせにゃあ何も始まらんのだ。
「全てが仕組まれた、そう思ってるんだろ。中澤を陥れた真犯人を挙げたいってよ」
自分でも重々しい口調だと思った。
石川が、藤本が、のほほんと電話を終えた後藤が、息を殺して次にどちらが口を開くか
見守っている。
「うん・・・・・おかしいことだらけだよ。どうして合コンに出た人たちは会ってもくれないの?
なぜタイミングを合わせたみたいに引き抜きなんて話が出てくんの?それも何人も」
ちと興奮気味なのが気になるが、黙って聞くことにしよう。
- 301 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:44
-
「被害者の部屋だっておかしい。あからさまにストーカーを偽装してる。あんなの信じる
警察も警察だよ。皆で中澤さんを犯人に仕立て上げようっての!」
次々と明かされるひとみの胸の内は、他の三人も薄々感じていたことに違いなかった。
その証拠に見ろ。石川が全く似合わない厳しい表情へ変わっていくじゃないか。藤本も
同じだ。ひとみと手分けして聞き込みにあたっていた後藤なんざ、唇を噛んで泣きそうに
なってる。
無論、一番悔しいのは吉澤ひとみのはずだ。
自分だけで抱えこんじまうのがこいつらしい。
本来は端正な横顔に浮かぶ険が、渦巻く怒りで荒れ狂う胸中を伝えてくる。
解決の糸口すら掴めない自分に、朧げなままの恐怖に。
- 302 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:45
-
「おまけに秘中の秘だった中澤の情報リークか」
「許さない・・・」
握られた拳に掌を添えてやると、ようやくひとみは落ち着きを取り戻した。
「ふむ。お前らも聞け」と後藤・石川・藤本へ振り向き、おやっと思った。
三人とも、言われるまでもないという顔だ。いいね、それでこそエージェントだ。
「お前たちは間違ってないぞ。二つの事件が無関係だとは、俺もこれっぽっちも思ってない」
石川誘拐事件の捜査で身につけた術が拙かったんじゃない。
ひとみのアプローチが間違ってたわけでもない。
緒戦は相手が上を行っただけだ。
どこのどいつか知らんが、俺が来たからには、とっとと逆転してみせるぜ。
言葉に出さずとも理解していたであろう4人は、タイミングこそ違え俺の眼を見て、全員が
頷いた。
少しは言葉を選ばにゃと覚悟してたが、これなら衣を引っ張り出さずに済みそうだ。
- 303 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:46
-
85年カルテットとの作戦会議を終え、舗道へ出たところで見上げたひとみの部屋はまだ
灯りが点いていた。
「晩飯サンキューな」と額を指で小突いたときに見せた『相棒』の笑顔は、いつもより少し
固く見えたが・・・練り直したりしないで早くとっとと寝ろ、ってなメールでもしなきゃだめかね。
そんな想いを懐にしまい歩き出した舗道には、人の気配ってものが全くなかった。
すっかり冬らしさをまとった風が、とびきり可能性の低い「幸せな眠り」への願望を洗い流す
かのように吹いているだけだ。
ふん、似合いの雰囲気じゃねえか。
- 304 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:47
-
ああそうだとも。
闘いはこれからだ。
俺は身体が僅かに震えるのを自覚しながら道路を横断した。
寒さに身を削られたわけじゃない。
手強い賞金首を相手にしたときと同種の、心地よい武者震いがおそってきたのだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.24
See you again and good luck !
- 305 名前:新人 投稿日:2004/01/10(土) 22:49
- 今夜の更新は以上です。
展開が遅くて申し訳ありません。
次回からはスピードアップする予定です。
では、次回の更新にて。
- 306 名前:つみ 投稿日:2004/01/10(土) 23:53
- やはり動いてるのはあの子ですよね〜^^
ジョーも本格始動ですか。
いよいよ始まりますね!
次回もまってます
- 307 名前:みっくす 投稿日:2004/01/11(日) 03:18
- 更新おつかれです。
鍵をにぎってるのはあの娘ですね。
次回も楽しみにしてます。
- 308 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/11(日) 12:54
- 乙彼です。
動き出しましたねぇ。。。
次も楽しみにしてます^^
- 309 名前:とこま 投稿日:2004/01/11(日) 19:14
- 更新お疲れ様です。
ジョーまで始動しましたか。
次回も楽しみに待ってます。
- 310 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:54
- 皆様こんばんは。
首都圏でも雪が降ったようですが、風邪など患わぬよう
お気をつけ下さい。私の周りは風邪引きばかりです。
306 つみさん
バレバレの種明かしはもう少し先になります。
ただ、仕掛けはひとつでは・・・。
307 みっくすさん
鍵を握っているのは・・・確かに。
ここまではそうですね(^^)
でもほら、まだあの娘が表に出てきてません。
308 名も無き読者さん
事件は動き出しました。
というかジョーの登場で、メチャクチャに
ならないといいのですが。
309 とこまさん
遅ればせながら・・・
ただ最近、実際の娘。たちを見ていて
思うのですが、彼女たちの成長力は
既に成熟したジョーを凌駕している
気がしてなりません。とこまさんは
どう思います?
では、今夜の更新を
- 311 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:56
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.24
8時半にセットしたアラームを止め、カーテンを開放した。ふむ、晴天とはいかないが雨の
心配は無さそうだ。
ベッド備え付けの小さな目覚し音でも反応できるように、普段から身体を作ってある。
体調は悪くなかった。「よくおやすみでしたね」と降り際に客室乗務員から笑いかけられる
ほど、機中で大爆睡してたからな。時差ボケが解消するのも早いってもんだ。
シャワーの熱湯と冷水を交互に浴びること3セットで、頭もスッキリした。
まだ時間はある。ラウンジで飯を食いながら新聞でも読むか。
中澤裕子の記事がどれだけの紙面を席巻しているか知らんが、おかしな論調があれば
涼子を通して釘を刺しておかにゃならん。
久々に会ってすぐに切り出したら、灰皿で殴られそうだがね。
- 312 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:56
-
出口へ向かいかけたところで携帯が鳴った。
代替機の着信音は変えてないから誰だかわからん。
「もしもし」
(おはよ。起きてた?)
「なんだお前か」
(なんだとは何だコラ)
ほう、いつもの調子に戻ってやがる。切り替えが早さは毎度の事ながら、悪いことじゃない。
(朝ご飯まだでしょ。こっちで食べよう)
「何でえ、食欲あるじゃんか」
(バカっ。安倍さんと矢口さんが話を聞きたいって)
そういうことかい。
レッスン用に確保したダンス・スタジオがちと遠い「おとめ」の石川と藤本は朝が早いと随分
こぼしてたが、近隣で何とかなった「さくら」はまだゆっくりできるってだわな。
正直、ほいほい出かける気分じゃなかったが10分で行くと答え、パソコンだけを持って部屋
を出た。
- 313 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:57
-
エントランスをくぐったところで、都心のこんな幹線道路では珍しい光景に出会った。
移動パン屋である。
焼きたてパンの香りが漂うワゴン車に、通学途上の少女たちが群がって・・・。
微笑ましい光景は、長く続かないもんなのかね。次の瞬間、パン屋の前に止まるワゴン車
から響く怒声に、眼を剥く破目になるとはな。
「こらっ!あんたたちいつまで選んでんの!」
どっかで聞いた声だ・・・・げっ、飯田じゃねーか。ってことはあの子たちは?
バレたらコトだ。ここはすーっと。
「あーっ!!」
予告もなしに振り向くんじゃねえ辻!
「賞金稼ぎがこそこそしてる!」
「ぉあ、ジョーさん」
辻と小川が嬌声をあげると、開いたバックドアにかじりついていた道重と田中まで寄って
きやがった。
「「「「おはようございまーす!」」」」
囲むなこら。
「おおおおお、おはよう」
声がデカいって。せっかく御揃いのブレザーで女子高生してんのに。
おおかた飯田たちを待ってる間にパン屋がやってきたのだろう。こんなご馳走を目前にした
辻が「危険を顧みる」という言葉を思い出せるわけないやね。
- 314 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:58
-
「もう行くの?」
「お昼じゃなかったでしたっけぇ」
はん、石川か藤本が話したな。どうりで、中澤の件があるにしちゃ、と思ったぜ。
「はは、ちょっと吉野屋の朝定を食いによ。これからレッスンだろ。飯田が怒ってるぞ」
「いっけね。じゃ、待ってますねぇ」スポーツフェスティバル第二戦で鬼神の如き活躍を見せ
たという辻が、手を振りつつ離れていった。
「待つ」?よくわからんが「おお」と応えておこう。
髪を上げた彼女しか見たことなかったが、普通に下ろすと意外や意外、大人っぽいじゃ
ないか。無理すりゃ俺でも作れないこともない娘の年齢なのに、ドキッとするわ。
思わず眼で追ってると、後席のスライド・ドアにかけた辻の足元にひょっこり、ゼンが顔を
出した。別に迷惑そうな顔じゃないから、朝っぱらからのハイテンションに馴染んではいる
ようだ。
「ゼンも一緒でーす」小川の嬉しそうなこと。すっかり「おとめ組」のマスコットだな。
だがよ、お前さんの役割は「癒し」じゃないってことを忘れてもらっちゃ困る。
おっ、先生(わかっとるわい!)と吠えてもおかしくない顔だな。そっちは任せたぜ。
- 315 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:58
-
「行ってきまーす!」
弾けんばかりの笑顔で辻が後席へ消えると、前席の窓から顔を出す飯田と眼が合った。
既にワゴン車はウインカーを出している。
思わぬ場面に相好を崩しかけた襟元を正させるようなトップモデル級の視線に、俺は唇を
きつく結ぶことで応えたつもりだ。
頼みます
身につけた読唇術が間違っていなければ、彼女の唇は確かにそう動いた。
最後席で手を振る田中と道重に応えダッシュをかけたのだが、予告した時間を2分ばかり
オーバーしちまった。
7割ほど埋まった席の、最深部に「さくら組」の3人はいた。近づいていくとテーブルの上に
は水だけが置いてある。
- 316 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:59
-
「遅れてすまなかった」
果たして俺は、何に詫びたのだろう。
「あ、おはよーございますジョーさん。久しぶり」
安倍の笑顔にほんの少し救われた。
正直、来日が遅れたことには申し訳ない気持ちがある。携帯さえマトモなら、もう少し早く
気づいてやれたのだが。
「おひさしぶりっすジョーさん。遅くなんかないっすよ」矢口もいつもと変わりない。
「だよねえ」
わかってくれてるのか二人とも。ありがとよ。
「とりあえず食べてからにしましょうか」
二人に感謝しろよ、という顔のひとみに続き、バイキングの献立を整える。
- 317 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 21:59
-
「「いただきまーす」」と声を揃えてからも、「なちまり」コンビ(fromアイドル通・逢坂)は
意外なほど静かだ。
この二人のパワーが融合したとき、下手をすると加護・辻コンビを遥かに凌ぐのはハワイで
思い知ってる。例えるなら、デリンジャー2丁がニトロ・エクスプレスに変わるに等しい。
その二人がこうも大人しいとは・・・俺が切り出すのを待ってるとみた。
3人が食後のドリンクへ手を伸ばすまで待ち、パソコンを開く。
「整理しとくぞ」
言うなり、二人の顔に緊張感が漲った。やっぱな。
「矢口、お前も同じだって?」
事件の背景にひとみが抱いたものとさほど変わらない疑念を抱いたのは、この小柄な
サブリーダーだけだったという。石川や藤本がいくら成長したっつっても、総合力では未だ
抜きん出ているらしいな。
いや失礼、後藤もだって言ってたわ。
「うん。引き抜きとかさ、どうしてもね・・・・」
別に昏くならんでもいいと思うが。
- 318 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:01
-
さて、俺なりに整理したところ、ポイントは3つだ。
○動機無き殺人
○口をつぐむ合コンの参加者
○同時に起きた移籍騒動
中澤には親友を殺す動機など皆無だ。だいたい合コンでの再会が3年ぶりで、学生時代にゃ
喧嘩した記憶すらないって話だ。無理矢理そうしようとしても、殺意を抱くことすら叶うまい。
なのに、東出がストーカーだったことも含めて、中澤を殺人者と疑わせる証拠だけが揃って
いた。何者かが企図した罠だった可能性は、否定できないを通り越して「高い」といえる。
ひとみが事件を単なる冤罪ではないと気付いたの理由は、この「揃いすぎた証拠」だった。
モーニング娘。を離れて一人歩きを始めたハンターの勘が、逆説を導いたのだ。
「なぜ、東出晃が中澤裕子に殺されねばならなかったのか」
言い換えればこうなる。
「真犯人は、何を狙って中澤を陥れたのか」
- 319 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:02
-
自らの仮説を真実ならしめる手がかりを求めてひとみと後藤が接触をはかった合コンの
同席者たちが二つ目のポイントなのは、この見地からすれば当然の話だ。
しかし、彼・彼女たちは、なぜ二人の接触を取り付くしまも無く退ける?
傍目からは、参加者が殺されたことに恐れ慄き一切の関与を拒絶している「ように見える」
ものの、ひとみのハンター候補としての経験は、この不一致の一致を逃さなかった。
彼らは別のものに恐怖しているのではないのか。
そして、気付いたのだ。
自分の居た酒席が、大いなる陰謀の起点であったことに。
最後に、タイミング良過ぎであると誰もが感じながら、中澤の容疑とは逆に確証が無いため
踏み込むことが出来ないでいた引き抜き騒動だ。
- 320 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:02
-
矢口真里や吉澤ひとみのみならず、保田圭と稲葉貴子(はじめて聞く名だ)が見過ごすことなく
咎めたこの怪事は、前の二つを腹にはめたとき初めてその鈍い輝きを恐怖に変え、「資金」
「体制」「戦略」のどれが欠けていても為し得ないことに思い至った瞬間、新たな脅威となる。
全てを備えた存在が確かな勝算のもとに仕掛けたのなら、あえて訊かせてもらおう。
「勝利」とは何を指す?
手にしたフレッシュ・ジュースを口に運ぶ事も忘れて、身じろぎもせず見つめる安倍・矢口、
あらためて噛み締めているような顔のひとみに語りかけながら、俺は自分にも言い聞かせた。
この娘。たちの未来を護ることが、いまの自分に課された「仕事」だと。
護るという表現が正しいかどうかはわからないがね。
- 321 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:03
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.25
他にもいろいろと考えてることはあるんだが、短い時間でツアー中である『部下』たちの
負担を軽減しつつ腹にはめてもらうためには、これぐらいに絞ったほうがいい。
「以上だ」
呼吸を忘れるほど集中していたのか、安倍と矢口はそれぞれに大きく深呼吸した。
「オイラたちはあんまり派手に動かない方がいいかもね」
僅かな表情の変化も捉えようと強い瞳で俺の顔を凝視していた矢口が呟くと、一字一句
必死にとっていたメモを手に、安倍が頷く。
「だね。裕ちゃんが自由になれば、引き抜きの方が動きそうだもん」
「とにかく裕ちゃんだ。こっちも気をつけないとね」
思わず「ほう」と出かかるのをどうにか堪えた。
- 322 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:03
-
「いいだろう。秘匿性は変わらんと思えよ」
頷く矢口の眼は爛々と光っている。こいつ何か考えてやがるな。ま、聞こうとは思わんが。
「うん。情報交換は頼むねジョーさん」
「携帯番号が変わってなかったらな」
「変わってないよぉ。定時連絡は入れるからさ、よろしくねっ」
石川事件のときもそうだったが、この娘は自然とツボをおさえてる。たいしたもんだ。
アイドルなんかやってるより、探偵事務所でも開いた方がいいんじゃないのかね。
「例の参加者は?」
へえ、痒いところまで手が届くじゃないか安倍も。
「教授に調査を依頼してある。結果が出てからだな」
「真希ちゃんもツアーあるし、ジョーさんとあたしでやります」
力を備えたひとみの声に満足そうな笑みを浮かべ、安倍が「よし、じゃあよっちゃん、
下で待ってるよ」と腰を上げた。
おや、番組で矢口より子供だと全員に指摘されてマジ切れしたって聞いたが、すっかり
お姉さんの顔だ。
- 323 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:04
-
「余計なことかもしれんが、仕事は普通に頑張るんだぞ」
「うん!さあ忙しくなるぞぉ、って感じだね。矢口、行こ」
「おっし、今日もやるぜぃ!よっすぃー、遅れるなよ」
「そんな子供じゃないんだから・・・」
若干ムッとしながらも笑顔で二人を見送るひとみの横顔を見てると、その成長がわかる。
昨夜の会議で悔しがる後藤を強引に説き伏せたんだが、そいつを「真希ちゃんと」と表現
しないことで、遠まわしに伝えたのだ。後姿が頼もしい二人も、気を利かせただけじゃあ
あるまい。察するあたりは、さすが年長組といったところか。
ひとみは俺の分もドリンクのおかわりを持って戻ると、正面へ座り直した。
「で?」
世界一短いセリフだが、これで通じる。
「寝る前に考え付いたってぇか、思い出ついたことがあってな。お前にもちと頭を捻って
もらいたい」
マジな口調に、ひとみの喉がゴクリと鳴った。
- 324 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:05
-
「お前、自分なりにやってみて、浮かんできたか」
「浮かぶ?」
「犯人像だ」
「あ・・・」
何者かの意思によって事態が動いているのは間違いない。大局的なものも、おそらくは
矢口とひとみが考える通りだと思う。
ただ、いくら考えても輪郭すらはっきりしてこないことがある。
「どう頭を捻っても犯人の顔が浮かんでこねえ。そうだろ」
「・・・・・」
ひとみは口を噤んだきり下を向いちまったが、落ち込む必要がこれっぽっちもないのは、
昨夜に話したとおりだ。
- 325 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:05
-
中澤が明かした衝撃の事実は、85年カルテットに伝えてある。
「引き抜きの話な、とうちゃんに相談したんよ、あの夜」
売れないライターを副業とする東出は、独自調査のうえ突き止めた「本丸」を攻めようとして、
城壁に跳ね返されるに留まらず返り討ちに遭ってしまった、と中澤は信じているようだ。
今日も警視庁に拘束される彼女は、今も激しい自戒を心中に、涙なき号泣を続けているに
違いない。
気持ちはわかるぜ。敏腕弁護士考案の救済策を突っぱねる理由も、心情的にはな。
だが、深慮せねばならない事が悲劇の影で鈍い輝きを醸してるのは忘れてもらっちゃ困る。
ハロプロの主力級をごっそり引き抜こうとするならば、いっそのこと株を買い占めて会社
そのものを手に入れちまう方が簡単かつ合法であるのに、あえて引き抜きという策をとる
理由は?
- 326 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:07
-
引き抜き話をネタに何を要求したんだか知らんが、東出晃を「殺さねばならなかった」
人物とは、いったい何者だ?
この2点にヒントが見つからない限り、ひとみがそうしたように「結果的にお膳立てを整えた」
例の参加者たちから攻めていくしかない。
そのための教授頼みである。あのじいさんならば、今日中にも瞠目すべき材料を仕入れる
だろう。
どう料理するかは「俺たち」次第ってことだ。
「仕事しながらでいい、考えろ。賞金首の視点で組み立てるのが基本だ」
「・・・わかった。浮かんだらすぐ電話する」
こいつの真剣な顔は、不謹慎なのを承知で言えばえらく魅力的だ。おっさんキャラだの
グループ唯一の「男子」だのと揶揄されながら、中世的な輝きを放つことができるが故に
メンバーにモテるんだろうな。
最後にシークワーサー(なんで東京にこんなものがあるんだ)ジュースをひと息に飲り
「頼んだぞ」と立ち上がると、ひとみは妙な微笑へと変わった。
わかんねえなやっぱ。ジェネレーション・ギャップってやつは埋まらんわ。
- 327 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:08
-
「んだ?」
「いやぁ、認められてんのかなと思ってさ」
「・・・」
答えず伝票を押し付け、先にラウンジを出た。
ええい、こんな時に限ってエレベータが来ねえ。
見ろ、追いつかれちまったじゃんか。
「相変わらず照れ屋っていうか、素直じゃないっていうか」
朝っぱらから何を言い出す?
「何の話だ」
「ほらまたソレだ」
大人をからかいやがって。ロクな大人にならねえぞ。
「まあいいや。で、待ち合わせは?」
「12時半だ。文京区立図書館だとよ」
「へえ。普通は喫茶店とかじゃないの」
「確かにな。ま、話が聞けりゃどこでも構わん」
「そりゃそーだ」
- 328 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:09
-
部屋があるフロアで一旦停止したエレベータを降り際、ひとみは「じゃあよ」とこめかみを
突ついてきた。悪い気はしないが、やられっぱなしじゃ東洋人bPハンターの名が廃る。
「お前、その歳でもう健忘症か気の毒に」
「はぁ?」
「認めたんじゃねえ。才能に惚れてんのは最初っからだ」
「なっ・・・・こ」
続きを聞く前にドアは閉まった。再び開くためのボタンを押さなかったのは褒めてやろう。
To be continued...
Next time is start at chapter.26
See you again and good luck !
- 329 名前:新人 投稿日:2004/01/19(月) 22:13
- 今夜の更新は以上となります。
次回は・・・実はあの娘の見せ場です(^^)
間隔が少し開く(今回ぐらい?)かもしれませんが
怒らずお待ちいただけたら幸いです。
では今夜はこのへんで
- 330 名前:みっくす 投稿日:2004/01/19(月) 22:35
- 更新おつかれさまです。
そうなのよ。そう。
事件は謎だらけなのですよね。
次回の主役はだれかな?
- 331 名前:つみ 投稿日:2004/01/20(火) 00:46
- 顔が思わずほころんでしまいました♪
ジョーの最後の言葉はいいっすね、なんか愛されてるって感じがします!
次回のあの娘も楽しみにしてます。
- 332 名前:丈太郎 投稿日:2004/01/20(火) 09:14
- 更新お疲れさまです!謎ばかりなのに、何だかジョーが自信満々に
思えるのは私だけでしょうか?
次回の「あの娘」ってのも気になりますね。写真集まだ買ってない
けど、どんな活躍するのか楽しみ(^^)
- 333 名前:とこま 投稿日:2004/01/20(火) 21:28
- 更新お疲れ様です。
やはり発展途上だからこそ成長が驚異的なんでしょうね。
完成されたものより未完成品というところでしょうか。
事件は謎だらけ・・・。
- 334 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:00
- みなさま今晩は。
『安倍なつみ卒業記念 次代の娘。よ頼んだぞスペシャル!』
今週はなっつぁん卒業ウィークで、あちこちの局で特集が
組まれ録画が大変でした。
一気に放送しやがって、元旦の生放送すら編集してないって
のに!HDの残りが…。
私が印象に残ったのは、うたばん と Fan ですかね。
まだ安倍なつみの凄さがわかっていなさそうな6期。
おそらく卒業の瞬間まで泣かないことを誓っていたであろう5期。
自然体が清清しかった4期。
矢口の号泣。
飯田の愛が詰まった贈る言葉。
なっつぁんの愛溢れる手料理「食べてぇ〜」とのた打ち回ったのは
私だけではないはずです。今田に食わすぐらいなら(笑)
今ごろ、ラストステージを終えた安倍はどうしているのでしょう。
そして、安倍を送り出したモーニング娘。はどこへ行くのでしょう。
舵取りを果たすのは、もしかしたらこの娘かもしれません。
- 335 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:01
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.26
レッスンは全員で行うソーティと、個々に動く今のようなパートタイムとに分かれる。
明確にテーブルが用意されているわけではないので、全員の時ほどではないにしても
個々にMDを聴きながらの自主練も少なくない。
藤本はスタジオ全体が見渡せる位置で鏡と向かい合っていた。隣では「シゲさん」こと
道重が同じように励んでいる。
明日は「おとめ組」の2度目の単独ライヴである。人数が少ない分、いつも以上に気合を
入れるメンバーもいれば、自然体のまま臨む娘。もいる。
静かな闘志を燃やすタイプである彼女は、石川が奇声をあげようが辻と小川が戯れようが
おかまいなしに集中していたはずなのだが。
- 336 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:01
-
鏡の下部に移ったものがきっかけであった。
黒い物体が移動していく ・ ・ ・ 隅に寝そべっていたはずのゼンである。
吉澤から「ハンパなく頭いい犬だよ。言葉も理解するみたいだし」と聞いていたためもあり、
ふと気になって行方を眼で追った。
(?)一瞬立ち止まったゼンが目配せをしたように見え振り向くと、彼は後足で立ち上がり
ドアに嵌め込まれたガラス窓に前足をかけた。外をじっと窺っているようだ。
「どした」
まるで友人に話しかけるように話しかけ、自分もドアに寄ってみた。
「誰か来たの?」
並んで覗いてみたが、踊り場に設置された自販機にドリンクを補充するメーカーの配送
らしき男がいるきりだ。
しかし、何か異常を感じたのでなければゼンがわざわざ知らせるような素振りを・・・ん?
補充を終えた男と眼が合った一瞬、ツナギ姿の男の顔に驚いたような表情が掠めた気が・・・。
- 337 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:02
-
帽子からハミ出す髪はやや茶髪で、背はあまり高くない。膨らんだ胸ポケットから、携帯の
イヤホンマイクらしいコードが胸元まで伸びている。補充の残りを整理する姿に異常は感じ
られない。
でも、どこかおかしいよね・・・と傍らを見ると、ゼンも藤本を見つめていた。
その優しい瞳を見つめ返しながら藤本は、ジョーのアドバイスを反芻する。
「直感を大切にしろ。だがそれだけで突っ走るな」
相応のアンテナを張り巡らせていたときに獲たインスピレーションを疎かにしてはいかん。
何かを感じたなら、背景を考えて、確かめるんだ。
意味は自分なりに理解したつもりだったが、密かに明滅する警報ランプが何なのか判然と
しないまま、世界で最も売れている清涼飲料水のロゴマークが去っていった。
- 338 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:03
-
「美貴ちゃん鳴ってるよー」
タオルと共にベンチへ置いた携帯への着信を、石川が教えてくれた。
(よっすぃーか・・・何だろ)『Mr.Moomligjt』の音源へと向かい始めた藤本は、その場を動か
ないゼンに気付き振り返った。
『ウォン!』
彼は藤本を見つめたまま、訴えるようにひと吠えする。
「携帯・・・・」
そうだ、携帯だ!
首にかけたタオルをその場へ落とし、藤本は猛然とダッシュした。
「美貴ちゃん電話!」
「出といて!」
聞きようによってはおかしな返事をかえすと、エレベータホールを素通りして階段に通じる
ドアへほとんど体当たり同然に突っ込んだ。スタジオのドアを出た瞬間、エレベータが1階
で停止しているのを確認したためだ。
- 339 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:04
-
(ええい!)1段ずつなんてまどろっこしくて踏んでられない。半分ほどまで降り、残りは跳び
下りた。ちゃんと付いてきていたゼンが苦手の降りで引き離されていく。
最後にこれまた体当たり同然に1階のロビーへ通じるドアを開けると、そのまま外へ飛び
出した。路上にそれらしき車はない。
(地下だ)ビルの直下に15台分ぐらいのスペースがある。自分たちもそこでワゴンを降りた。
すぐ脇に穿たれた駐車場の出入口を一気に駆け下り始めたそのとき、一台のセダンが
凄まじいスピードで突進してきた。屋内とは思えない運転だ。
(!)あやうく轢かれそうになったのに腹をたてるより、助手席の顔に反応した。あの男だ!
「待てぇ!」
「ウォンオン!」
必死に後を追った彼女が叫ぶのと、どうにかドアを開けることに成功した漆黒の弾丸が
追いすがるのは同時だった。
狭い路地では車が出せるスピードには限界がある。快速を誇るゼンは瞬く間に助手席側で
の併走に持ち込んだ。
- 340 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:06
-
(品川 330 さ・・・)遠ざかる両者をただ見送るだけでなくb記憶せんと呟く姿はしかし、
「あぶない!」と叫びその光景を眼にするまいと顔を背けた。
セダンの助手席ドアが開いたのだ。
(!)力の限り疾走していたゼンが危うく避け、脇の植え込みに突っ込んだのを見て自分も
ダッシュをかける。
「ゼェン!」
既に路地を左折した車のbヘ覚えた。あとからでも素性は調べられる。
そんなことより、怪我でもさせたらジョーさんに申し訳が立たない。お願い、無事で・・・。
がさがさ。
「ゼン?」
「ワン」
緑塊の中から姿を現した「相棒」に、思わずその名前を口にした。
悲痛にも聞こえる藤本の叫びに応えた声は、つい先刻の猛々しさは無く、かと言って弱々
しくもなかった。
- 341 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:09
-
「・・・よかった」
しゃがみこんで顔を上向かせ、その瞳がしっかりとした光を保っているのを確認し頭を
撫でてやる。細い体躯のどこにも怪我は見当たらなかった。
まだ息は荒いものの、その瞳は「よく気付いたね。やるじゃん」と言っているようだ。
「そうだね、ジョーさんとよっすぃーに知らせておこ」
あらためて車が消えた方向に鋭い視線を飛ばし、藤本はゼンを従えて戻り始めた。
外へ飛び出した一瞬で気付くなんて、凄い犬だな。
自らの行動が既に尋常ではないことには気付かず、身体をすり寄せるようにして歩く
ゼンの「ハンター」ぶりに舌を巻く藤本であった。
To be continued...
Next time is start at chapter.27
See you again and good luck !
- 342 名前:新人 投稿日:2004/01/26(月) 01:13
- みっくすさん、予想は当りましたか?
つみさん、もし裏切っていたらすいません。
とこまさん、その通り。娘。たちはまだ未完成ゆえ、未知の力を秘めて
いるはずです。
どなたか安倍なつみ卒業の瞬間を目の当たりにした方、いらっしゃい
ませんか?
いずれDVDや民放で観られるとは思うのですが、待てません(^^)
では、次回の更新にて・・・。
- 343 名前:つみ 投稿日:2004/01/26(月) 15:51
- さすがゼンですね〜!
藤本さんともいいコンビでがんばってますね。
次回も待ってます。
- 344 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/26(月) 16:37
- ゼン、君はホントに犬か…?w
事態が動きつつあって、楽しみです。
次もお待ちしてます。
- 345 名前:とこま 投稿日:2004/01/26(月) 17:05
- 更新お疲れ様です。
卒業紺横浜で見てきました。
ただひたすら感動あるのみでした(T_T)
緊急事態が発生!?
次回も楽しみに待ってます。
- 346 名前:丈太郎 投稿日:2004/01/26(月) 21:13
- やられた〜。てっきりあのコかと思ってました。
あっ、更新お疲れさまです!
ゼンって本当に凄いっスね。三毛猫ホームズかと思いました。
ミキティもカッコいいです!
なっちの卒コン、自分も行けなかったんですけど、めざましテレビ
で観ました。ののが切なかった…あいぼんの言葉も泣けました。
作者さん、DVDが出るまで我慢しましょう!
- 347 名前:丈太郎 投稿日:2004/01/26(月) 21:13
- やられた〜。てっきりあのコかと思ってました。
あっ、更新お疲れさまです!
ゼンって本当に凄いっスね。三毛猫ホームズかと思いました。
ミキティもカッコいいです!
なっちの卒コン、自分も行けなかったんですけど、めざましテレビ
で観ました。ののが切なかった…あいぼんの言葉も泣けました。
作者さん、DVDが出るまで我慢しましょう!
- 348 名前:みっくす 投稿日:2004/01/27(火) 06:45
- おいらもてっきりあの娘。かと・・
みきてぃ切れますね。
次回楽しみにしてます。
横アリいてきましたよ。
雪景色すごかったです。
ほんとに感動的な卒業式でした。
- 349 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:28
- こんばんは。作者ですm(__)m
今週のハロモニ。くりかえし見てしまいました。
矢口の強さや加護の愛らしさ等、卒業セレモニーの見所は多々あったと
思いますが、浮かんだ感想はひとつでした。
なっつぁん、本当に卒業しちゃったんだなあ。
卒コン翌朝のめざましテレビで、軽部さんだったかな、言ってましたね。
中澤裕子が卒業しても、安倍なつみがいた。
後藤真希が卒業しても、安部なつみがいた。
しかし、今度は安倍なつみがいなくなる・・・。
よっすぃー推しの私としても、安倍の存在感の凄さには
脱帽です。
今夜は少し多めに更新します。
- 350 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:29
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.27
「わかった。調査は任せろ。ひとみにもな」
(了解です。ジョーさんはこれから?)
ほう、藤本もわかってるじゃねえか。報・連・相が大事なのは、この稼業も一緒だ。
「なんてったか・・・い、稲葉とメロンだっけ?ちっと面通ししとこうと思ってな」
(そうですか。じゃ、ボスによろしくって伝えてください)
ボス?ハロプロに中澤以外の頭領がいるのか?よくわからなかったが「おお」と答えて電話
を切り、車のドアをロックした。
パーキングメーターのリミットは60分。独自に進められているという引き抜き首謀者暴きの
経過を聞くだけなら十分だ。
- 351 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:29
-
エレベータの扉が閉じたところで、逢坂提供の資料を確認する。
稲葉がレッスンをつけているという「メロン記念日」のメンバーの顔と名前ぐらい一致させとか
なきゃ、いくらなんでも失礼だろう。
ふむ・・・・斉藤・村田・大谷・柴田か。キャラが被らないだけで本質はアイドルの王道を行く
モーニング娘。に比して平均年齢が高いせいもあるが、一筋縄では行かないオーラを感じる。
6階にあるダンス・スタジオは、競技ダンスの大先生が持つ分室だとかで、通常は夕方から
開くのを、知り合いだった稲葉貴子が頼み込んで借りたという。表に看板も出ていないし、
隠れ蓑として使えるというわけだ。
エレベータを降りると、マネージャーらしき人物が椅子から立ち上がって迎えた。
「高科です」名前を告げIDカードを提示すると、手渡された名刺には「チーフマネージャー
補佐」とあった。
「よろしくお願いします」とドアを開ける姿は慇懃にも映る。つんく♂から何を吹き込まれたか
知らんが、気遣い無用なのによ。
- 352 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:30
-
よく磨かれたフロアと壁一面の鏡が眼を引くスタジオ内に「彼女たち」はいた。
中央に集まる5人の中で、ただひとり眼鏡をかけた娘が気付いた。確か村田だったな。
彼女が何事か囁くと他の4人もこちらを向いた。毎度のことながら、一斉に見られると妙な
気分になる。
「高科という。話は聞いてるな」初対面だが、ざっかけない調子で話しかけた。
「ほ・・・・・初めまして稲葉です」
返事を寄越したのは、一度眼にしたら忘れようがない大きな瞳が印象的なハロプロの重鎮
(とひとみは言ってた)稲葉貴子だ。
メロン記念日のメンバーもそれぞれに挨拶を口にする間、稲葉は俺を頭のてっぺんから足先
まで、値踏みするかのようにねめつけていた。ま、変にかしこまられるよりはいい。
- 353 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:31
-
「値踏み」が済んだのか、稲葉は「立ち話も何やから」と奥へ誘った。
普段はダンスの教師陣の居室らしい小部屋でテーブルを囲むなり、俺は「経過を聞きたい」
と切り出した。
「色気ないなあ。この娘ら見てどうとも思わんの?ブレイク中なんやで」
何となくだが、中澤に近い匂いを感じる女だ。1月に舞台を控えた保田に代わり別働隊を
指揮するこの女は、確か中澤とひとつ違いのはずだ・・・大人の女ってやつかね。
「解決したらゆっくり話してやる」
「あら冷たい。誰かさんのダーリンとは思えんなぁ」
「なっ!?」
思わず口ごもっちまった。何を言い出しやがる?
見ろ、斎藤や大谷、小さなキッチンでコーヒーをいれてる柴田までクスクス笑いだやがった
じゃねえか。
「帰る」と腰を上げると「まあまあ、ちょっとしたイジりやないの」と腕を掴みやがる。くそ、
ペースを握られちまったい。
「真面目にやらんのなら行くぞ。12時半に待ち合わせだ」
少し強めの口調で突き放すと、ようやく真顔になった。
わかったかよ。これは「仕事」なんだ。
いれたてのコーヒーを「どうぞ」と置いてくれた柴田が座るのを待ち、稲葉の説明を受ける。
- 354 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:31
-
引き抜きの話を受けたのは、ここにいる5人の中では斎藤・大谷、そして稲葉の3人。
藤本と紺野がサポート・メンバーとして加入している「カントリー娘。」は3人全員、「ココナッツ
娘。」も丸ごとだそうだ。これに中澤・保田・後藤を加えると11人にもなる。
条件面はさすがに教えてくれなかったが、現在の年収以上は保証され、かつ仕事の自由度
は大いに広がると甘言を並べたてたという。
彼女たちの携帯電話に表示された番号は、当初の5種から現在は9つまで増えた。
粘り強く警察や電話会社と交渉を続けているものの、回数が少ないうえ現時点での犯罪性
の低さから、当局を動かすには至っていない。
ただし、メンバーたちの住まいに届けられた移籍打診の書簡は複数回にわたっており、これ
を逆手にとって「被害届」という形で所轄を突ついているらしい。
- 355 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:32
-
人海戦術をとれるモーニング娘。と違い、別スケジュールで動く3つのグループを束ねたうえ
で司直を相手に渡り合うなんざ、この稲葉って女、只者じゃねえな。
「もう少しやと思うんやけど、何か決め手に欠けるっちゅうかその ・ ・ ・ 自分でも歯がゆい
ねん」などと悔しがる姿は、どうみても「やり手」だ。
が、いつまでも感心しちゃいられん。少しはハンターってものを知らしめてやらにゃ。
5人とも無言で聞き耳をたてているようだが、お手並み拝見って顔にも見える。
ふん、いまのうちだけだぜ。
まず、引き抜きの対象となったハロプロ主力級の連絡先が、住所を含めてどうやって敵の
手に陥ちたかという問題だ。石川事件のときのように内通者という線も考えられるが、その
類の裏情報屋とコネクションがあるという見方も成り立つ。だとすると、首謀者は果たして
業界の同類なのか、それとも別世界の住人なのか。
- 356 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:33
-
さらに、本人たちが動くかどうかは別としても、危険を犯してまで番号を晒しているのはなぜ
だ?という疑問がある。簡単にアシがつかないとタカをくくっている(実際そうだがね)にしちゃ、
周到に発信元の数を増やしてるしな。
「どう思う?」
メロン記念日のメンバーも見廻しながら言ってみたが
「 ・ ・ ・ 考えなかったわけやない。けど、想像もつかへんのが正直なとこやね」
と稲葉が答えるのがやっとだった。
当然だな。俺だって想像の範疇でしか言えないことだ。
だが。
「最後に、全部ひっくるめた話にもなるけどよ」
ひと呼吸おくと、誰かがゴクリと喉を鳴らした。俺みたいなのとは隔離された世界で生きて
きた彼女たちの緊張が伝わる。少しでも緩和しようとコーヒーをすすってみたが、雰囲気は
変わらなかった。
- 357 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:34
-
「俺ぁ芸能界のことはよくわからん。だから教えてほしいんだが、もし引き抜きが成功したと
して、移籍したお前たちに仕事は廻ってくるのか?芸能界って世界は、仁義ってやつには
無頓着な連中ばかりの集まりかい?」
これには「そんなのわかんないよ」といった顔が揃った。
もちろん、考えなかったはずはないだろう。移籍してしばらくは仕事を干されることは充分に
あり得る。再出航後すぐに順風満帆の風に恵まれるとは、誰も思うまい。
だがそれでも、あえて引き抜こうとする意図は?
「まさか・・・」
呟いたのは意外な人物だった。
「どした柴田」
稲葉の問いに、全員の視線が一斉に集まる。
2冊のソロ写真集を出しているという美少女だけは、どうやら気付いたようだ。
「言ってみ」稲葉が促すと、柴田はおそるおそるといった表情でこう口にした。
- 358 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:34
-
「タレント活動以外にも何か目的が」
これには指揮官も「はん?」と首を傾げた。
同僚の3人も眉間に皺を寄せたり、目を泳がせたりとさまざまな反応を見せる。
共通するのが「?」疑問符なのは仕方ない。
本人たちに直接関係ない話なんで昨夜の85年カルテットとの会議や今朝は持ち出さなかっ
たが、俺が最も危惧しているのは、まさに柴田が挙げた「目的」だった。
多分、柴田は自分なりに答えを持っているのだろう。口にするのがはばかられる内容のな。
さんざんヒントを与えたとはいえ、そこへ思い至るにはある程度の経験と知識が必要だ。
この柴田あゆみという娘もまた、並のアイドルではないようだ。
吉澤ひとみ、矢口を司令塔に据えたモーニング娘。の年長組、そしてここにも。
若干の寒気をおぼえながら、俺は「そう考えるのが自然だな」と返した。
- 359 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:35
-
「考えなくていい。頭の隅っこに置いといてくれや。突き止めるのは俺とひとみの仕事だ」
「へっ?」おかしな反応を示したのは斎藤だ。そういや、この娘も「ひとみ」だっけ。
「いや失敬。俺と吉澤の役割だ。コーヒーごちそうさん」と立ちあがると、稲葉がおそらく最も
訊きたかったであろう事を切り出した。
「なあ、その ・ ・ ・ 裕ちゃんがどうにかなりそうて本当なん?」
『太陽とシスコムーン』結成時に行動を共にして以来の親友という彼女もまた、切に願って
いる一人だろう。気持ちはわかる。
「可能性は低くない。正しい証言だったら・・・明日ぐらいには自由の身になるかもな」
まだ決まったわけじゃない。七・三ぐらいに考えてもらいたい、という意味を込めて答え、
小さなミーティング・ルームを出た。そろそろ図書館に向かう時間だし、下を向いちまった
指揮官を「大丈夫ですよ稲葉さん、きっと自由になります」と、励ます声が聞こえたため
もある。
- 360 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:36
-
それでも、五人全員が見送りに出てくれたのは大したもんだ。
「中澤の件は任せろ。そっちも頼むぜ」全員がしっかり頷いたのを確認しスタジオを
出る寸前、思い出して「ボスってな誰だ?」と訊いてみると、四人が一斉に斎藤を見た。
へえ、この娘か。さっきの稲葉を励ます声の主だ。
「あたしが何か?」
「いや、藤本がボスによろしくとな」
「ミキティが・・・頑張ってます?」
「おお。ついさっきも情報をくれたところだ」
「そうですか。こっちは任せてと」
「伝えよう。じゃあな」
もう少し気の利いた挨拶をしてもよかったかな。
稲葉貴子、斎藤瞳、柴田あゆみ・・・どいつも強い眼を持っていやがる。
あのレベルの娘たちがセカンド・グループにいるんだから、凄い集団なわけだよハロプロは。
そんなことを考えながら、リミットまで5分を残したパーキングメーターから、車をリ・スタート
させた。
- 361 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:37
-
昼食が届けられるとの報に、吉澤はメンバーとともにドリンクを買いに出た。
本当は地上にあるコンビニへ行きたかったが、いまの状況では絶対に駄目と矢口が譲らず、
仕方なく自動販売機で買物を済ませたメンバーたちを見送り、ひとりその場に残った。
(やるな美貴ちゃん・・・)着信履歴を見てため息をついた。
予想していたわけでもないだろうがジョーは昨夜、どんな些細なことも見逃さないようにと、
自分と藤本にアドバイスをくれた。たとえ通りすがりの事象でも、感じるものがあったら無闇に
過ごすな・・・なぜ石川でなく藤本であったのか、わかる気がする。
「自分たちの様子をビデオで盗撮してる奴がいた」と知らされたのには軽い戦慄が走った。
携帯のイヤホンマイクに見せかけたコードが不自然に太いことと、身体の中心線に固定され
たクリップに僅かに光ったレンズの気配を見逃さなかったのは、相棒も褒めたことだろう。
もちろん、自分も看破できた自信はある。
しかし、藤本はハワイで一度会ったきりのジョーから手ほどきを受けてはいないし、渡の
コーチングを享受してもいないのだ。それを考えると凄いと驚く他はない。
- 362 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:39
-
いまのところ、レッスン場が地下ということもあり「さくら組」に異常と思われる事態は起きて
いないが、けっして慢心しない吉澤である。
階段は常用・非常用ともに封殺されているし、唯一地上との行き来に使えるエレベータも
地下へ関係者以外の人間が降りないように、1階の乗降口でガードされていた。
「おとめ組」のように『賊の侵入』に遭う確率は低いと思うけど…。
「事件の成り立ちからして、こっちが予想もしない手を使ってくるかもしれん」
この時間なら「情報提供者」と接触しているはずの『相棒』の言葉を思い出し、吉澤は背に
していた壁を右拳でこつん、と叩いた。
- 363 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:40
-
来るなら来いよ。
あたしが護ってみせる。
唇をきつく結び、メンバーのもとへ戻り始めた吉澤の背を、階段につながるドアの異音が
叩いた。
がちゃがちゃ
まさか・・・・侵入者?
吉澤は瞬く間に全身の細胞を戦闘態勢に切り替えていった。
To be continued...
Next time is start at chapter.28
See you again and good luck !
- 364 名前:新人 投稿日:2004/02/03(火) 22:52
- つみさん、そうなんです。書いていて浮かんだんですが、藤本とゼンはけっこう
相性が良いのではないかな、と。なぜそう思えたのかは自分でもわからないの
ですが・・・。
名も無き読者さん、「犬です」(w
ゼンのモデルは愛犬(享年14歳)なのですが、こいつが人間みたいな目を持って
まして、それがまた冷めてたんです。ゼンにはまだまだ動いてもらいますよ。
とこまさん・・・その瞬間を共有できたのが羨ましいです。紺野が居なかった
のが残念ですねえ。同郷の先輩をどう送り出すか、贈る言葉を楽しみにしていた
んです実は。緊急事態は、さくら組をも襲うのでしょうか?こうご期待。
丈太郎さん、二重カキコになってます(w 三毛猫ホームズとは巧い!ゼンは闘う
ことができるので、彼女(ホームズは雌です)より上手と信じたいですね。
みっくすさん・・・羨ましすぎます。でもですね、おとめ組が来るんですよ
近いうち!ミキティが本当に切れ者なのか、この眼で確かめて来ます。
では、次回の更新にて。
- 365 名前:つみ 投稿日:2004/02/03(火) 23:32
- おお!一体何が?!
よっすぃ〜ファイト!
それにしても事件は謎が深まりましたね。
奥が深い・・・
- 366 名前:みっくす 投稿日:2004/02/04(水) 04:54
- 別働隊もやっと表にでてきましたね。
それにしてもまったくわからん。
事件は謎だらけです。
次回楽しみにしてます。
- 367 名前:丈太郎 投稿日:2004/02/04(水) 07:36
- 更新お疲れさまです。二重カキコすいませんでした(>_<)携帯から
だったもので(:_;)ついによっすぃーの見せ場かな?待ってました!
って感じですね。次回も楽しみにしてます!
- 368 名前:とこま 投稿日:2004/02/06(金) 21:00
- 更新お疲れ様です。
かなり奥深い事件ですね。
- 369 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:28
- こんばんは作者です。
今週から来週にかけて忙しく時間がとれそうにないので、
多めに更新します。
365 つみさん
少しずつですが、ヒントを散りばめていますのでお楽しみに。
娘。たちにも推理は依頼してます(?)
366 みっくすさん
あまり謎だらけにしすぎましたかね・・・。でもちょっとしたきっかけで
解ける知恵の輪のようにしたつもりです。
別働隊には後半にも動いてもらいますのでご期待下さい。
367 丈太郎さん
よっすぃーの見せ場が遅くなってすいませんでした。
でも、たっぷり用意しましたよ(w
368 とこまさん
奥が深いかどうか・・・真相が明らかになったとき落胆されないと
よいのですが。
では今夜の更新を
- 370 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:28
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.28
「Hey!!」
汗を拭う相方へ、ミカがスポーツドリンクを放った。
「Thanks!」
ナイスキャッチと手を叩きたくなるフォームで受けたエアバイク上の美女は、当たり前だが
アヤカである。
ココナッツ娘。の二人は、都内のスポーツジムで汗を流していた。
既に昼に近く、ジム内の人影はまばらである。
ほとんど化粧を施していない二人は、幸か不幸かジムの職員以外には気付かれず、その
美貌とスタイルに磨きをかけることができた。
- 371 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:29
-
「ふーん。盲点ってあるんだねえ」
ミカが汗を拭いながら言うと、アヤカはドリンクを飲みながら頷いた。
「ぷは。でもね、ジョーさんはきっと気付いてて言わないだけだって。自分にやってみろ、っ
て言ってるんじゃないかと」
「考えすぎじゃ・・・そんな凄いの、ジョーさんってハンター」
「西海岸では有名らしいよ。『東洋人bP』だっていうし」
アヤカはエアバイクを降り、壁際で胡坐をかいた。そんな仕種も様になる。
「ついて行った方がいいんじゃない?」
「言ったんだけどね。一人でいいって」
「うー、ちょっとだけ心配だな」
「大丈夫でしょ。れっきとしたAdult Teamだし」
「Adultねぇ・・・」
- 372 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:30
-
傍で聞く分には能天気なアヤカを、まじまじと見つめる。
相方とはいえ、ハロプロ1の呼び声も高いプロポーションの持ち主へ注ぐミカの視線は、
若干だが羨望が混じっていた。加入当初と比べれば多少は大人っぽくなったものの、
未だトランジスタグラマーの域を出ないミニモニ。のリーダーは、徐々に事件が深く、そして
危険度を増していくことを肌で感じていたのだ。もちろんアヤカもそうだと思うが。
信じていいのかな・・・・あの娘の力を。
大船に乗った気でいるようなアヤカと、期待と不安が50:50のミカ・・・今日に限っては、
見事なコントラストを描くココナッツ娘。であった。
- 373 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:30
-
吉澤の全身からは、漲る闘志とは裏腹に力が抜けていた。最近になって僅かな時間で
済むようになっている、スペンサーから授けられた自己催眠術の成果だ。
(何でも来い・・・・・・・・・ありゃ?)
扉は身構える暇もなく開き、薄暗い階段から、大きな箱を抱えたマネージャーの姿を
浮かび上がらせた。
(何だよビックリさせやがって)心の中で舌打ちし「手伝いましょうか」と吉澤は声をかける。
「おっ吉澤。悪いけどそっち持ってくれるか」
「何ですかこれ」
「弁当だよ弁当。こんな穴倉に引きこもってるんだから、せめてメシだけでも豪華にってさ」
- 374 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:31
-
反対側を持つと確かに重い。15人分かと思った。
こりゃ重箱かな、と喜びかけた次の瞬間、ふとした疑問が湧いた。なんで階段から?
「エレベータ使えばいいのに」
「故障したんだと。ただ突っ立ってないで手伝えって、な」
おそらく急遽手配された警備員のことを言っているのだろう。護衛するVIPがモーニング娘。
だとは彼らにも知らされていないから、そうもいかないのだが。
「さっきまで動いてたじゃないすか」
「受け取って戻ってみたら電源が落ちてたんだよ」
「へ?」
落ちてた?
おかしい。
- 375 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:31
-
「よっちゃん、どした?」
運び込まれた巨大な弁当に歓声をあげる加護たちを見ようともせず腕を組む吉澤に、安倍が
気づいた。
「エレベータの電源が落ちたって・・・」
「落ちた?」
「停電じゃないよね。こっちついてるもん」
「!」
訝しげな顔の矢口が呟いた一言が、吉澤を貫いた。
「しまった!」
只事ではない叫びに危うく手にした弁当を落としそうになるメンバーが続出する中を、声の主は
既にエレベータ・ホールに向けてダッシュしていた。
・・・かたかた
- 376 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:32
-
突き当たりで閉ざされたエレベータの扉に、射抜くような視線を浴びせる吉澤の研ぎ澄まされ
た五感は、微かな音と気配を逃さず捉える。
(甘いんだよ!)
スポーツ・フェスティバルで負った肉離れをモノともせず、恐るべき瞬発力で扉にかじりつくと
僅かな隙間に指をこじ入れ渾身の力を左右に解放する。
(く・・・の・・・)
徐々に開き始めた扉の向こうで、はっきりと人の気配がした。
(やっ・・・きしょー、・のドアのバカ・ヤ・ロ・・・)
「よっちゃん!?」
背後まで追ってきていた加護がびっくり顔で叫んだが、かまっている余裕はなかった。
僅かに見えたエレベータの室内に、宙に浮く人の脚らしき物体が見えたのだ。
「こ・・・の・・・・ぐぁっ」
「手伝う!」
気合とともにフルパワーをこめた吉澤に、加護が、矢口が安倍が、次々と加勢した。あと少し!
- 377 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:34
- せーの!
全気合に抗しきれなかったドアがようやくロックを開放した。
「!」
飛び込みざま天井に穿たれた黒い空間を確認した吉澤は、一瞬の躊躇もなくジャンプする。
脚の負傷は気にならなかった。
人一人通れるのがやっとの穴だ。肩幅並みに狭いフォームでは懸垂もままならず、脚が空を
蹴った。その視界には、頭上3mに見える1階の部分で扉をこじ開けようともがく人影を捉え
ているのに。
「待てコラァ!」
師匠そっくりの叫びに、リーダーが鋭く反応した。
「みんなよっちゃんを!」
「はいっ!」
紺野に続いて新垣と亀井が、スニーカーの底を押し上げる。
「せーのぉ」
「よっすいー無理すんなよ!」
残念ながら身長が足りない矢口の声に送られ、吉澤はエレベータ本体の天井に立った。
- 378 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:35
-
「みんな戻ってて」
下から見あげるメンバーたちに告げ、既に開き始めている扉にかじりつく人影を睨みつけた。
逃すか!
ワイヤーをよじ登りはじめると、ついに開いた扉をくぐって賊が脱出した。
ささくれ立った鉄製のロープに掌が傷つくのにもかまわず、吉澤はたちまち1階に達した。
半開きのままの扉からよじり出ると、二人の警備員が床に長々と伸びていた。侵入時に
やられらしい。大した怪我はないと判断し、吉澤は素早く狭いホールを見渡した。
既に賊の姿はない。
(ちいっ!)追跡を決断し、疾走に移る。
昼食時でもあり、通り過ぎるときに視界に入った管理室の窓には『12:00〜12:45休憩中』の
札のみが留守を預かっていた。気絶している同業二人の存在が仇となったかもしれない。
エレベータはビルのグランド・フロアにある来客用ではなく、業務用である。裏口直結なのも
凶と出た。
- 379 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:36
-
裏口からビルの谷間をうねくる通路へ飛び出し、素早く左右を見廻したが人っ子一人いない。
(大通りはこっちだ)まず人波に紛れようとするだろうと考え、吉澤は流れてくる喧騒の方へと
ダッシュした。
すぐ脇に黒々と息づく気配には気づずに。
- 380 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:37
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.29
受付の女性に会釈をかえし閲覧室へ進むと、公立図書館らしい質素な机は半分ほど埋まっ
ていた。
確かに、密談には最適な環境かもな。
客層というのが正しいかどうかはともかく、さまざまな区民が憩いの場として使っているらしく、
男は見るからに「司法試験に毎年落ちてます」って風の子連れから、余生を本と共に過ごそう
と決めたらしい老人まで。女は少なめだが、惰眠を貪る女子高生からレポートに集中する大学
生、恋愛小説を山積みにして異様に光る眼で読み耽る正体不明のでぶと、多士済々といって
よかった。どいつも自分の世界をバリアーで覆ってやがる。
待て待て、人間ウォッチングをしに来たわけじゃねえ。相手を探さにゃ・・・・ありゃ?
- 381 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:37
-
「・・・・・・」
奥の窓際に立ち、こちらを凝視する男が眼に入った。白のワイシャツにグレーのベスト、机に
たたまれた白い手袋。間違いない。しかし、気付いたのは向こうが先のようだ。
思ったより若い。まだ40前だろう。がっちりとした体躯の上に、現役ラガーマンでも通用しそう
な、無骨と表現すべき微笑が乗っかっている。
他にそれらしい人物がいないのを確かめて寄っていくと、向こうから話かけてきた。
「根本と申します。失礼ですが・・・高科さん?」
「はあ。わかりましたか」
素人に小細工は無用だ。ストレートに聞くと「はは。暖房が効いてるのに上着をお脱ぎになら
ない方は、こういう場所では珍しいと思いますよ」
正直ドキッとしたね。革ジャンの下にゃホルスターを付けたままだったのだ。
職業柄、人間観察の眼は鋭いのかもしれんと思いつつ、きょう二つめの名刺をコレクションに
加える。
- 382 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:38
-
『個人タクシー 根本大輔』
とあった。
はて、どっかで聞いた名前だなと思ったが、互いに座るまでの間にははっきりしなかった。
「新聞を見て驚きました。連絡をいただいた方から聞いてはいたのですが、まさか殺人事件
だなんて」
「冤罪なのは間違いありませんからご安心を。しかし彼女を助けるには、こちらも証拠を
揃えなくてはなりませんので」
「・・・私もそう思います」
「早速で申し訳ないですが、東出晃が殺された夜に中澤を乗せたと」
「はい。間違いありません」
見せてくれた営業記録によると、事件の晩8時過ぎに六本木から上野まで乗せたとある。
上野は東出の自宅に近い。到着時刻は8時42分。注目すべきは、そのすぐ後の記述だ。
8時55分・・・。
- 383 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:40
-
「またすぐに中澤をお乗せに」
「ええ・・・実はお降りになったすぐあとにまた呼ばれまして。何でも待ち合わせがドタキャン
になったとかで、さっき降りた場所にいるから来てくれないかと」
「で、赤坂で降ろした」
「どこか良いバーはないかとおっしゃるもので、大使館街にご案内を」
「なるほど」
中澤が最後にタクシーを降りた時間は午後9時27分。
犯行時刻が最大に遅く見積もって9時半として、僅か3分でプリンセス・ホテルに駆けつけ
殺人を犯すことなと到底不可能だ。
ん?この『#5』ってな何だ?
「使っていただいたのが5回目という意味です」
やや照れ臭そうに話してくれたところによると、3ヶ月前に初めて乗せて以来、渡した名刺を
とっておいてくれたらしく、度々呼んでくれているという。
競争の激しい業界では積極的に営業しないと満足に稼げないのだと苦笑いしながら根本は
続ける。
- 384 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:40
-
「何を気に入ってくださったのか・・・あの日も、とても優しい声で配車依頼が」
言いながら根本は携帯をデスクの上に置いた。
朴訥という表現が似合いそうなこの運転手は、僅かに東北・・・福島あたりの訛りが言葉の
隅っこに残っていた。中澤が繁茂に使うのも、なんとなく分かる。
聞けば、モーニング娘。のリーダー時代からのファンだそうだ。彼女の個人的ファンがどれ
だけいるのか知らんが、こんな素朴な人物もいるんだな。
「着信記録を拝見しても?」
「どうぞ。仕事専用ですので」
カメラなんぞ付いていないシンプルな携帯電話の着信履歴をめくっていくと、思わぬ文字が
表示された。
「これは・・・中澤から直接ですか」
「あの日の二度目です」
- 385 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:41
-
そこには090で始まる番号と「中澤さん」という文字が表示されていた。着信記録は嘘を
つかん。こりゃ決まりだな。
しかしあの女・・・供述に先駆けて調べさせりゃいいものを、東出の死に対する自戒って
やつはそうとうなモノらしい。
時間をメモして返すと、朴訥なドライバーは席を立ち、営業記録をコピーしたあと原本を
「どうぞ。きっと役に立ちます」と差し出した。
こっちから頼もうとしていたところだったから少し驚いたね。原本をしかるべき機関で調べ
れば、本物か偽造かなんざ昼飯を食ってる間に判明しちまうのをわかってるのだ。
「感謝します。二・三日でお返しできるかと。このお礼は会社の方から」
俺は一応それらしく頭を下げた。UFAの特務社員ってことになってるからな。
「いえ、お役に立てればそれで。科警研なら半日とかからないでしょう」
- 386 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:45
-
後半の台詞が気になったが、そういつまでも話し込んじゃいられない。
立ち上がって握手を求めると、根本は破願して握り返した。この掌…思い出したぜ。
「全てが終わったら電話します。また乗せてあげてください」
「すべて?」
おっといけね。しかしこの男、妙な親近感を持っちまうな。
会ってから30分と経たないのに、なぜか建物の出口まで同行しちまった。
「それではこれで・・・・吉報をお待ちしております」会釈した根本運転手は帽子を被ると、
最後まで無骨な笑顔で別れを告げた。
「同じ警察の飯を食った仲間です。あまり気を使わないでください」
背を向けようとしたタクシードライバーは、えっという顔で動きを止めた。
「どうして?」
「科警研なんて隠語、一般人は知りもしませんよ。まあ任せてください。必ず解決して
みせます」
- 387 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:46
-
中澤裕子はこの男に、全てではないにせよ「例の件」を話したのではないだろうか。俺で
さえうっかり口を滑らせかけたんだから。
「そうですか・・・あなたも御存知で」
再び帽子をとったところをみると、どうやら当りだ。
「本庁のやり方に異議を唱えたいのは私も同じです。待っていてください。全てのソース
で冤罪だったことが大々的に報じられると思います」
「はい」
「ご家族はお元気で」
「いえ・・・離婚しましてね。いまは一人身です」
「そうですか。ではこれで」
最後に深々と一礼した根本と俺は、同時に背を向けた。
- 388 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:47
-
数年前、妻の親友が殺されるという事件がもとで退職した警察官がいた。
害者が覚醒剤中毒だったため強い怨恨の線で捜査は動き始めたが、彼は状況証拠が残り
過ぎており行きずりの強盗殺人を主張、本部と真っ向から対立した。越権行為だと咎められ
ながらも独自に動く彼を、左遷せよとの声が圧倒的な波となって苛んだ。
挙句の果てに愛妻を参考人として無断で取り調べられ、彼が独自捜査で逮捕した犯人が
害者と縁もゆかりもない街のチンピラであったことが判明しても、当局から全く何も、謝罪の
意思表示すらないまま、事件は解決したとされた。
ショックから痴呆同然となった妻を残し、彼は刑事部長のもとを訪れ「全てを白日のもとに
さらす」と詰め寄った末、どうしても非を認めない上司に全治一ヶ月の重傷を負わせた故に
懲戒免職となった。
- 389 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:49
-
数ヵ月後、とある所轄の内部をも巻き込んだ覚醒剤コネクションの内幕が世間を騒がせ、
大スキャンダルとなった。刑事部長は平の警部に降格、本庁で管轄にあたっていた方面
部長も責任を取る形で野に下った。
その裏に彼の影があったことに、関係者の誰もが拍手を贈りながら追求しなかったのだ。
根本大輔・・・最終階級は巡査部長。当時の所属、都内某署「鑑識課」。
おかしなところに縁ってのは転がってると、あらためて思うぜ。
警視庁内の柔道大会で優勝候補と騒がれながら二回戦で敗退したときに、受身を取ること
すらかなわぬ内股を喰らった相手と確信したのが記憶に刻まれた手の感触だとは、俺の
体細胞も捨てたもんじゃない。
- 390 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:51
-
彼のおかげでもうひとつ、助かったことがある。
真っ向勝負を挑むモーニング娘。たちを護ろうとするならば、中澤を冤罪で拘束した連中を
逆に使ってやるのも面白い。
昨夜から頭にまとわれついて離れない、ひとみよりもう一歩だけ深い「疑念」を晴らすため
にもな。
次の目的地に向かって車を走らせながら、そんなことを考えていた。
To be continued...
Next time is start at chapter.30
See you again and good luck !
- 391 名前:新人 投稿日:2004/02/11(水) 18:52
- 今回の更新は以上となります。
次回はさらに、フットサルチームの主将が動きます。
それでは
- 392 名前:つみ 投稿日:2004/02/11(水) 18:55
- リアルタイムでいきました。
深いね〜・・・
いや深い・・
入り込んでしまいますね!
- 393 名前:みっくす 投稿日:2004/02/12(木) 00:02
- ですね。
深いねぇ。
なにかキッカケがつかめそうな感じですね。
- 394 名前:丈太郎 投稿日:2004/02/12(木) 07:24
- 更新お疲れさまです。ジョーは何か掴んでますね…。
よっすぃーに何が起きるのかも心配です。どっぷり浸かってます
私もf^_^;
- 395 名前:とこま 投稿日:2004/02/12(木) 21:10
- 更新お疲れ様です。
相手が動き出しましたね。
同じく首まで浸かってます。
- 396 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:33
- こんばんは作者です。
少しですが更新します。
- 397 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:34
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.30
「・・・この!」
二軒のビルが作る僅かな空間から音もなく現れた人影に背後から組みつかれ、吉澤は思わ
ず呻いた。逃げるどころか隙をうかがっていたとは。
(こんなのジョーさんに知られたら破門だよ)
姿が無いだけで逃げ失せたとする判断も甘かったし、アメリカで同じ状況に陥ったら瞬殺され
ていただろう。
しかし、スリーパー・ホールドに近い体勢で頚部に腕を回されもがきながらも、むしろ安堵して
いた。完調ではない脚で鬼ごっこをしなくて済みそうだ。
危惧していた「奴等」が動き出しているなら、ここで捉えて正体を吐かせるほうが楽だし。
- 398 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:35
-
(ナメるなよコラっ!)吉澤は呼吸を読み、力をこめて膝を屈曲させた。体勢を
崩され前のめりになった相手を、下半身を伸身させる力のみで今度は前方へ放り出し、
苦しくなりかけていた息を吸い込む。その間にも身体は自然と戦闘体勢をとっていた。
一回転しただけで立て直した相手と、正対する形である。
左足をやや後方に引き、握った左拳を腰に、右手刀を胸前に構えて静止した吉澤に、敵は
驚いているようだ。様になっているだけでなく、隙が無い。
持って生まれたセンスは、スペンサーが播いた「戦闘術」の種を急速に花開かせ、今では
果実を実らせようとしていたのだ。
マスクとサングラス、さらには帽子で変装した姿は、身長はさほど自分と変わらない。パワー
では敵わないかもしれないけど。腹を括ったモーニング娘。の戦闘班長は、殺気で身を包み
間合いをはかった。
- 399 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:35
-
下がっていた相手の腕が型をとりはじめたのを視認し、息を止める。
ふん、やってやろうじゃないの。
放たれている殺気からみて「使い手」ではないと判断し、殺気を闘志へと変えていく。
ジリジリと縮まる距離。
ボクシングの右構えに似た構えをとる相手は、動こうとしない。―――誘ってるのか。
息が詰まりそうな沈黙。
下半身に力を込め、気合を発しようとした、そのとき。
ピピーッ
「え?」
二者をつなぐ殺気の糸は、路地へ進入してきたスクーターの警笛にぷっつりと間を絶たれた。
- 400 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:36
-
「!」
「しまったぁ!」
邪魔者が昼食をとりに外出していたビル付の警備員と気付いた瞬間、対峙を解いた「賊」が
逃走へ移ったのに、僅かに反応が遅れた。
「おわぁっ!?」
がしゃーん。
正面衝突コースで突進してきた人間を避けようとするのは当たり前の心理だ。たいして
スピードが出ていなかったこともあり避けたかわりに、警備員はスクーターごとゴミの山へ
突っ込んだ。
鴉避けのネットに絡みつかれてもがく姿を確認しながら後を追う。癒えない傷はスピードの
全開を妨げ、取り逃がす覚悟をせざるをえなかった。
だが次の瞬間、吉澤は驚くべき光景を眼にした。
ものの2秒で交差点へさしかかろうかという「賊」の行く手に立ち塞がる影があったのだ。
それもふたつ。
- 401 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:37
-
「行かさんよ!」
「止まりなさい!」
何と、人影は聞き慣れた後輩の声で叫んだ。
「高橋!紺野!」
両手を真横に開いて逃走阻止を主張する二人は、一度も見せたことのない厳しい表情で
立ちはだかっていた。
吉澤をエレベータの天井へ送り出した彼女たちは、レッスン場へ戻る途中でとって返し、
階段を1階へ登ったところで吉澤と何者かが争う気配を耳にした。
そのまま加勢してもよかったが、吉澤の力を信じた二人は逃走経路を塞ぐべく正面へ廻った
のだ。
- 402 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:38
-
(しめた!)吉澤は頼もしい後輩に驚きながらも接近を再開する。
だが、安心するには早すぎた。
その気迫に2mまで迫った逃亡者が立ち止まったとき、勇敢なモーニング娘。5期生二人の
背後にスキール音を響かせて急停止した車から、クラクションの大音響が放たれたのだ。
パパーン!!
「ひゃっ!?」
思わず振り向いた二人の一瞬の隙を逃さず、逃亡者が間を割った。
「きゃっ!」
正に一瞬であった。飛び込むと同時にドアは閉まり、かわりにウィンドゥが下がった。
これは・・・!
- 403 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:39
-
「くそおっ!」
「吉澤さん!」
尻餅状態から立ち上がりかけた後輩二人をまとめて抱え、吉澤は横っ飛びに跳んだ。
数瞬後、パワーウィンドゥが閉じていく僅かな機械音とともに漆黒のベンツが走り去って
いくのを確認すると、吉澤は緊張を解いた。
抱きすくめていた後輩二人を立ち上がらせ、その頭をコツンとやると「無茶すんなよ」と
矢口と同じ台詞を口にした。
「あんな危険な真似、二度と許さないからね」
「すいません・・・」
立場上、いちおうは怒ってみせる。内心は二人に驚き、かつ感謝していた。
高橋と紺野が侵入者の動きを止めたのは僅か数秒であったが、その背格好はしっかり頭に
叩き込むことが出来たし、車のナンバーも見た。
東洋人1の男が認めたハンターの資質は、自らの窮地にあっても冷静に立ち回ることが
可能な精神的マージンをも同時に備えつつあったのである。
- 404 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:40
-
「・・・何者なんでしょう」
並んで歩きながら、高橋が当然の疑問を口にする。
おそらくは藤本が気付いた輩と同類だったのだろうが、吉澤は「さあ」と流した。ここで真実
を伝えても、不安を助長するだけだ。
「動き出したんじゃ・・・」
「!?」
紺野の呟きに危うく反応しそうになった。
復活したエレベータの到着を待つ間、カウントダウンされる表示を見ながら言った。
「ライヴに集中しろって言われたよね」
声もなく自分を見つめる二人へ注ぐものは・・・。
- 405 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:41
-
「やぐっさんの雷が必要?だったら頼んだげるけど」
言いながら(やべ、ジョーさんみたいなこと言っちった)と心の中で舌を出したが、高橋が「そん
な滅相もない」と眼前で手を振ったところを見ると、効果はあったようだ。あわせるかのように
首を激しく横に振る紺野に(嘘つけよ)と思いながらも、可愛い後輩の頭を「ポンポン」とやる。
「はい、飯食って再開っ」
高橋と紺野の背中を押し、自らも空腹を自覚しながらもう一度自販機の前に立つ。先に買った
一本は、ワイヤーをよじ登るときにポケットをこぼれ落ちていた。
(危かったな)と思う。映画でしか観たことなかったけど・・・。紺野の言ったこと、たぶん当っ
てる。
- 406 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:42
-
全てにスモークを施した中で開いた、ただ一枚のウィンドウ。奥まで暗く見えたのは気のせい
だとしても、確かに視認した。
奥からのぞいていた、ひどく禍々しいもの。
口径7.62ミリ。アサルト・ライフル。
トリガーが引かれなかったのは、最初から威嚇のつもりだったのか。それとも、スコープの
中に捉えた自分たちをタレントだと認識したためだろうか。
どっちでもいいや、と思いながらボタンを押した。
- 407 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:43
-
ドリンクを手にメンバーの元へ戻る吉澤は、身体が僅かに震えるのを抑えられなかった。
何でだろう、危機は去ったのに。
地上で自分と侵入者が対峙していたことを高橋と紺野が黙っていてくれているのを確認し
「逃げられちゃったー」と弁当の包みを開けても、まだ小刻みな震えは止まらない。
それが、前夜に高科穣也の元を訪れた「武者震い」と同種であることを、知る由もなかった。
To be continued...
Next time is start at chapter.31
See you again and good luck !
- 408 名前:新人 投稿日:2004/02/16(月) 21:56
- 今夜の更新は以上です。少なくて申し訳ありません。
つみさん
私も入り込んでます。暇さえあればネタを考え、読み返して校正して・・・。
ご期待に応えられるかどうかわかりませんが、この後は仕掛けを徐々にですが
出していきますので。
みっくすさん
きっかけは、ひょんなところに転がっているものです。
ジョーの場合は・・・彼には酷かもしれませんが、通らなければならない
関門なのは、よっすぃーも同じかも。
丈太郎さん
心配ご無用。よっすぃーは強いですよ。繊細ではあるけど、ある意味で娘。の
中で一番強いかも。この小説世界の中でだけ、かもしれませんが。
とこまさん
まだまだ、序の口ですよ。闇に息づく「奴ら」にジョーと娘。たちがどう立ち
向かうか、お楽しみに。
では、みなさん・・・名無し読者様たちも、暖かくなってきたからと油断なさ
らず。
次回の更新にてお会い致しましょう。
- 409 名前:みっくす 投稿日:2004/02/16(月) 22:17
- それぞれ前回の事件で成長しているようですね。
徐々に相手も姿を見せて来たってとこですかね。
次回も楽しみにしてます。
- 410 名前:つみ 投稿日:2004/02/17(火) 00:45
- かなり危険な相手な様ですね。
よっすぃ〜には気をつけて欲しいですホント。
こんこんと愛ちゃんもがんばってくれましたね!
次回までまったりまってます!
- 411 名前:とこま 投稿日:2004/02/17(火) 20:28
- 更新お疲れ様です。
徐々に動き始めましたか。どこまで連係プレーが維持できるかが
勝負ですね。
次回まで楽しみに待ってます。
- 412 名前:丈太郎 投稿日:2004/02/18(水) 10:24
- 更新お疲れさまです。
危ない場面もあったけど、よっすぃーかっけー!しかし銃器が出て
くるとは…プロローグがまた気になりだしましたよ。
- 413 名前:名も無き読者 投稿日:2004/02/18(水) 23:36
- いや、危なッ!!
よっすぃ〜、気をつけて。。。
次回も楽しみにしてます。
- 414 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:34
- こんばんは作者です。
前回の更新から1週間以上空いてしまいました・・・。
とりあえず更新します。
- 415 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:34
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.31
遅めのランチをかきこんで紫煙を深く吸い込み、俺はパソコンを開いた。
次のアポイントにはまだ時間がある。教授からそろそろメールが届いていてもおかしくない。
いざ食わんとしたところへ入った報告も整理しとく必要がある。
まずは未来を担う方からいくか。
さくら組に同様のことが起きるのは予想してた。問題はその後だ。
「逃げられた」と悔しそうな声だったひとみは、同時に背後に潜むものの暴力性をも指摘し
てきた。隙を見せたことより、格闘戦に持ち込んだ肝の据わり方に並々ならぬ決意を感じ
たね。
- 416 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:35
-
逃走に使われたという、お約束の『フルスモークド・ブラックベンツ』にその姿を垣間見た
らしいひとみは、ショックを考えてメンバーには話していないという。ま、当然の処置だな。
おそらくはガーランドかウェリントンの類だろう。威嚇のつもりで一発ブッ放そうとしたら相手
が年端も行かぬ女の子じゃ、向こうもびっくりしたろうよ。
もっとも、侵入者に組み付かれたときにDVC大の異物を感知したとか、逃走を阻止せんと
立ち塞がったのが矢口じゃなくて高橋と紺野だったとかにゃ俺の方もびっくらこいたけどな。
「おとめ組」とのタイムラグの無さ、そのタイミングが昼食時に近いという人間の緊張感が
緩む心理を衝いた時間であったことからみて、「動き出した」と思って間違いなかろう。
吉澤と後藤が進めていた「疑惑の同席者」に対する聞き込みの影響か、それともメンバー
たちの動きが情報屋にキャッチされたか、いずれにしてもこれで二つの事件の関連性は
証明されたと言ってよさそうだ。
- 417 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:37
-
これは予感に過ぎないが、敵さんもの焦りはもっと表出してくる。移籍話が一向に進まない
ばかりか逆手に取られてるし、ひとみや藤本みたいなのがいるんじゃ監視もままなるまい。
加えて旧知の刑事に預けたアリバイの裏が取れたら、事態は急転する可能性がある。
となると・・・短期決戦になりそうな気もするな。望むところだけどよ。
そこまでまとめて、パソコンを閉じ、眼も閉じた。
実力行使とまではいかないが、相応の手を使ってきたならばこちらも方針を転換しなきゃ
ならん。
ハロプロの面々に危険を犯させるわけにはいかないとしたら、本来の仕事を活かした
役割を担ってもらうとしよう。
「寝てるの高階君」
「お?」
- 418 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:37
-
やや下向きで熟慮していたから、こんな第一声も仕方ない。
「すまんな忙しいのに」
「あら殊勝なこと。珍しいわね」
苦笑しながらコーヒーを注文したのが誰かって、だいたい想像がつくだろう?
もと警視庁捜査一課の同僚で現在は検事正の、加えて言うなら旧友・津村涼子だ。
「アリバイの件はどうなった」
「連絡は受けたわ。いま検証しているところ」
「どれぐらいかかる」
「携帯の着信記録があるからね。科警研も含めて、遅くとも明日には」
わかったと答え、再び開いたパソコンから矢口にメールを打つ。心待ちにしているだろう。
他のメンツへの転送は彼女に頼むとするか。
- 419 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:38
-
「で、用件は何?」
さすがに話が早い。動きを知りたいだけではないことを承知してくれてる。
殺人事件の捜査状況に興味は沸くが、呼び出したのは別件だ。
「須崎は最近、おとなしくしてるか?」
「すざ・・・って、あの須崎忠正?」
「他に誰がいる」
「ちょっと待って・・・」
取り出した手帳を何頁かめくっているのを見りゃだいたいわかる。
「ここ半年ぐらいは表に出てきてないわね。『若いの』が恐喝で挙げられたぐらいかな」
と答える涼子の眼が妙な光を帯びていくのには、苦笑いするしかない。女狐め。
そうか、とだけ答え、速攻で返ってきた矢口のメールを開いた。
- 420 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:39
-
「おーい、なっちー」
矢口が安倍を呼んだ。
昼食後のまったりした時間も、あと少しでピリオドというタイミングである。
「さくら組」のメンバーは、外の空気を吸ってくると言って屋上へ向かった吉澤を除いて、思い
おもいの休憩を過ごしている。
「どした矢口」
「これ、ジョーさんから」
携帯の画面を見せる矢口の顔が妙に明るい。
変だな、と首を傾げつつ文面を読んだ安倍も、たちまち顔を輝かせた。
「矢口ぃ〜」
「なっちぃ〜!うーっ」
「「ゲッツ!!」」
「わっ、ななななに?」
ソファでうたた寝していた加護が飛び起きた。
- 421 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:40
-
「みんなぁ、裕ちゃんが!」
「へっ!?」
安倍が作ったVサインの意味・・・理解するのに1秒もいらなかった。
「もしかして」
「きゃーっ!!」
「マジ?マジで?やったぁー!」
次々に花開いていく歓喜の輪の中で返信を済ませた矢口は、しかし厳しい表情で全員を
制した。
「こらっ、まだ早いよ。大事なこと忘れちゃダメ!」
途端にシンとなるフロア内。安倍は隣の「小さな巨人」を頼もしげに見つめた。
「こっからだよ。裕ちゃんが自由になれる。けど、それで終わりかな本当に」
挑みかかるような口調に、メンバーは沈黙でこたえた。
「さっきのこと思い出して。たぶん避けて通れない。やめるなら今のうちだから」
司令塔の厳しい表情に、紺野が息を呑む。まさか、矢口さん気付いてる?
- 422 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:42
-
「仕事とは別次元の話だと思う。ジョーさんとよっちゃんについていく自信、ある?」
今度は矢口が驚く番だった。視線の先には、トレードマークの微笑はなく、しかしいつもの
母性を湛えた親友が佇んでいたのである。
卒業まで2ヶ月を切った娘。のマザー・シップが、その舳先を風上へ向けようとしていた。
「あたしたち今まで、スタッフさんや家族や、みんなに護られてきたよね」
「こっからは期待できないよ。よく考えてね」
親友の後を矢口が継いだ。
一分だけ待った。
フロアの空気が動かないことに安堵し、微かな不安を見せぬようともに気を使いながら、
安倍と矢口は笑顔を見せた。
「わかった。じゃあ再開しよ。先生とよっすぃーを」
「呼んできます」
駆けていく亀井へ母のもとを飛び立つ雛鳥を見届けるような視線を注ぎ、矢口はほっと
安堵のため息をもらす。
- 423 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:42
-
ジョーは言わなかったが、ハロプロ全体を覆いつつある陰謀は絶対に排除しなくてはなら
ない。そのために彼はわざわざ来日し、力を貸してくれるのだと思っている。
第一関門として「自分の身は自分で守る」ことを、下の娘たちの腹に嵌めさせなければ、
と考えていたのである。
安堵する小さな肩を安倍がポン、と叩いた。
(がんばろ矢口)
微笑を湛えた瞳が語りかけてくる。
視線を重ねて頷くと、つい先ほど自分が打ったメールを携帯の画面に出した。
『ありがとージョーさん
これで奴らにかかれる
ねっ!』
自らに言い聞かせるように、あらためて唇を噛み締める矢口であった。
- 424 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:43
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.32
ふむ、やはりな。
ひとみちゃんよ、話してないって言ってたが、司令塔はハナっからお見通しみたいだぜ。
この分じゃ飯田率いる「おとめ組」も、似たようなもんだろう。
藤本は恐いぐらい切れるし、石川もコツを掴んできてることだし、娘。たちは心配なさそうだ。
となりゃ、こっちも本腰を入れるぜ。
- 425 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:46
-
「あれいつだっけか、傘下のモデルに運び屋をやらせたんは」
再び閉じたパソコンをしまいおもむろに涼子へ尋ねる。この女なら、それで察してくれる
はずだ。
「古い事件を持ち出すわね。確か・・・5年半ぐらい前かしら」
「あん時に稼いだ資金、どれぐらいだと思う」
「ちょっと・・・まさか奴らが絡んでるって?」
質問に質問で答えやがったか。
「安倍から聞いてると思うが、いまUFAが同じような状況に陥ってる。ことによったら発覚
してないだけで他所のプロダクションにも波及してるかもしれん。似てるとは思わんか?」
コーヒーをすすってひと呼吸置く間、涼子がめまぐるしく頭を回転させているのがわかった。
「あの前も・・・」
思い出すのが遅い。感覚が現場とかけ離れちまったのかよ、津村涼子ともあろう者が。
豊富な資金力にモノを言わせて弱小プロダクションのモデルやらレースクィーンやらごっそり
引き抜いた挙句、ニューヨークから末端価格数十億に及ぶクラックの運び屋をさせ、まんまと
成功させやがった「奴ら」を忘れられるかってんだ。
「似てるわ確かに」
「だろ」
「けどあのルートはアメリカも含めて一網打尽になったはずよ」
「問題はそれだ。覚醒剤ともなるとこっちのマークもキツい。簡単には手を出さんだろう」
- 426 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:46
-
涼子の眼が徐々に鋭さを増してくるのを確かめ、俺は満足した。
まだ決まったわけじゃねえ。が、遊軍と化してる逢坂とこの女が組むなら、往年の名コンビ
どころじゃない、無敵タッグの再結成だ。必ず白黒つけてくれる。
けしかけようとして一つ咳払いをした俺は、次の一言を口に出す前にやってきた訪問者に
タイミングを奪われた。
「津村君!?」
役職に全くそぐわない素っ頓狂な調子の、ある意味で懐かしい声が遮ったからである。
「同席するとは聞いとらんぞ高科。どういうつもりだ」
抗議しているようで、その実かつての有能な部下が居合わせたことを歓迎している・・・
胸の内がバレバレなだけじゃない。今は部外者の俺の呼び出しにホイホイ応じるアンタも
アンタだよ。
「これは課長、相変わらず時間には正確で」
「余計なお世話だ問題児」
笑いを含みつつ涼子の隣へ腰を下ろしたのは、警視庁捜査一課長・田宮嘉朗そのひとで
あった。
- 427 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:47
-
稽古が徐々にヒートアップしているのがはっきりと感じられ、思わず入口で固まってしまった。
関係者に許可を得たとはいえ、近寄り難い雰囲気があるのはミュージカルと少し違う。
大御所・中堅あわせて10人足らずの役者が動いているだけなのに、スタジオを劇場と錯覚
するだけのものがある。
(誰も衣装なんか着てないのに・・・)
時に怒声も飛び交うフロアを、あさみは畏敬の念で見つめていた。
隣に立ち尽くす里田も同じ思いなのか、一言も発しない。
今日付のスポーツ紙だけでなくテレビでも追報道されている中澤の事件は、この現場では
一切シャットアウトされている。スタッフの配慮というよりも、芝居には全く関係ない話を
持ち込まれるのを制作者が嫌ったものらしい。
- 428 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:48
-
1時間近くが経ち、ようやく休憩に入った。
既に二人に気付いていた保田は(待ってな)と眼で合図すると、共演者たち一人ひとりに
「ありがとうございました」と挨拶しはじめた。彼女らしい気遣いである。
控え室へと移動していく大物たちに、あさみと里田も「おはようございます」「お疲れ様です」
とこれも彼女たちらしい愛嬌で挨拶したが、関心を示す出演者はいない。僅かに実力派の
女優がカントリー娘。だと気付き、会釈してくれたぐらいだ。
(こっちの世界じゃこんなものよね)と妙に納得するあさみである。
全ての関係者が出払ったあと、保田は汗を拭きふき二人のところへやってきた。
「おはよ」
「お疲れさまです」
後輩が可愛らしく頭を下げたのを見て、ようやく緊張を解いたようだ。
(これだけの面子の中で、初めての本格的な芝居だもんね)里田は「悪いね」と椅子を勧め
る保田の横顔を見ながら思う。消耗するエネルギーはライヴ以上だろうな・・・。
- 429 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:49
-
「渡したいものって何です?」
持っていた緑茶のペットボトルを渡しながらあさみが訊くと、保田は自分の荷物を持ち出し
がさごそやりはじめた。
何だろう?思わず顔を見合わせる二人のカントリー娘。・・・
「これ」
手渡されたのは二つに折りたたまれたコピー用紙であった。都合3枚。何か印刷されている
のが裏から見える。
「これをジョーさんに?」
「そのまんま渡せばわかると思うから」
「見てもいいですか」
保田が頷くと、あさみはおそるおそる開いてみた。
里田も顔を寄せて覗き込む。
「中澤さん・・」
- 430 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:51
-
街に佇む姿、あるいはタクシーに乗り込もうとする瞬間、敬愛すべき総リーダーが「盗撮」
に近いアングルで撮影されたものであった。
おそらくストーカーまがいの人間が開設しているホームページから拾ったのだろう。3枚の
いずれも日時が付記されているが、例の事件よりも前の日付でアリバイ証明には役立ち
そうもない。
僅かながら怪訝な表情を浮かべる二人を気にせず、保田は汗を拭い水分を補給している。
こんなのをどうして?
「保田さん」
「ちょっと待って」
画像に何か意味があるんですか、と訊こうとした里田を、あさみが制した。
「男の人・・・」
「・・・あ」
再び食い入るように見つめる二人。
あさみが気付いたのは、日時も場所もバラバラの3枚の背景に服装こそ違え必ず写りこ
んでいる男の姿だった。
3葉の中で置かれた距離はほぼ等しい。ずっと付きまとっていたのだろうか。
- 431 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:52
-
「そうか・・・一歩先を」あさみが微笑する。
「今朝方みつけたんだけど時間なくてさ。使っちゃって悪いけど、ジョーさんに調べてもら
ってくれないかな」
淡々と語る保田の眼がよく見ると赤い。徹夜でもしたのだろうか。
きっと何百枚と見たんだろうな。あたしには真似できないや。
あさみと里田だけでなく、キッズを除いたほぼ全員のハロプロメンバーが矢口からメール
をもらい事態の進展を把握しているが、中澤が自由になったとして次に何が起きるのか、
漠然としたものすら浮かんでこない。
しかし、保田は違った。
石川誘拐事件で情報戦を担当した彼女は、昨夜「どうにかなりそう」と矢口から聞いた時に
は既に、次の戦いを挑もうとしていたのだ。
自らのタレント生命をかけた舞台に取り組む彼女は、残念ながら全面協力は不可能だ。
睡眠時間を削るしかなかった。
それでも「中澤裕子」「情報」という二つのキーワードから辿り着いたものとしては最高レベル
に近いと言えた。
今日の新聞にスクープされる噂がネット上を一人歩きし、普段の倍以上ヒット数があった
にしても。
- 432 名前:新人 投稿日:2004/02/25(水) 23:53
-
「これ携帯の番号。よろしく言っておいてね」
ジョーの連絡先をメモして渡し、二人の後輩を送り出した。
何のヒントも無しに気付いたあさみは、さすがは矢口に次ぐ切れ者といわれるだけのこと
はある。そういう期待もあるが、高科という別世界の人間との接触は別ジャンルの経験値
を上げてくれるはずだ。
「自分の分もやってくれる」と自らに言い聞かせ、保田は瞑想とともに「女優」モードへと切り
替えていった。
To be continued...
Next time is start at chapter.33
See you again and good luck !
- 433 名前:新人 投稿日:2004/02/26(木) 00:05
- 今夜の更新は以上となります。
中9日も開いてしまったので、多めにしました。
みっくすさん
今回の相手は、まともに力づくの勝負に出られない相手だと、ジョーも
よっすぃーも分かってます。・・・仕掛けはまだこの先に用意してます。
つみさん
最近、紺野の成長ぶりが目覚しいと思うのは、私だけではないと思い
ますよ。高橋にも、娘。生え抜きとして頑張ってほしいので、二人を
鼓舞する(何を勝手に・・・)つもりで書きました。危険な相手にどう
よっすぃーが挑むか、お楽しみに。
とこまさん
連携プレーですか・・・・鋭いですねえ。今回は娘。たち以外にも
動いてますし、本当に大事ですよね。そこを巧くエージェント化する
のが、ジョーの腕の見せ所かも。
丈太郎さん
プロローグはあまり気になさらず・・・・ジョーが死んだら、この
小説が完結編になっちゃいますね。どうしようかな。
名も無き読者さん
気をつけてほしいですが、ハンターたるもの、多少の危険を省みて
いては・・・ジョーも怒ってないでしょ?
さて、次回はいよいよ(?)疑惑のうち一つが解き明かされることに。
何が出て参りますか、お楽しみに。
では今夜はこの辺で、次回の更新にてお会い致しましょう。
- 434 名前:つみ 投稿日:2004/02/26(木) 16:11
- 更新おつかれさまでした!
新たな仲間?が増えてきていよいよっすね!
次回は疑惑のうちの一つがついに・・・楽しみにしてます!
- 435 名前:みっくす 投稿日:2004/02/26(木) 21:12
- 更新おつかれさまです。
全員の腹も決まった様で。
次回、疑惑が一つ解決っすか。
楽しみにしてます。
- 436 名前:桃ノ木権三郎 投稿日:2004/02/26(木) 23:17
- ああ、もう楽しみルンルンです。(壊れ気味)
- 437 名前:丈太郎 投稿日:2004/02/27(金) 23:33
- 更新お疲れさまっす!なちまりコンビ、いいですね。現実ではもう
あまり見られないんですよね…。
どんな謎が解き明かされるのか、気になるなー。ま、茶でもすすり
ながら待ってますよ(笑)
- 438 名前:とこま 投稿日:2004/02/28(土) 09:32
- 更新お疲れ様です。
まず一つ目の疑惑が解決されますか。
でも新たな疑惑が出たりして・・・。
- 439 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:35
- こんばんは作者です。
このところ寒暖の差が激しく、若干ながら体調を崩し気味でしたが、なんとか
2話分を更新できます。
これも皆様の暖かいレスのおかげです。
- 440 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:36
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.33
宝石店を狙った連続窃盗事件の聞き込みを終えた逢坂刑事は、報告のため課長の席に
向かいかけた脚を止めた。
警視庁捜査一課を束ねる田宮課長が、滅多に見せぬ腕組みをしていたのだ。
「腕組みはイコール悩みだ。長が見せるべき姿ではない」という単純な理由も、それなりに
部下の支持を受けているはずなのだが。
「ただいま戻りま・・・した」
デスクに置かれた空の湯飲みを見つめて動かない田宮課長に、珍しく遠慮がちに声をかけ
てみる。
「・・・・・・・」
全く反応が無い。
「腹でも壊したんですか」
「ん・・・おお逢坂か。いつ戻った」
いつもならジョークのひとつでも返して寄越すところなのに、心ここにあらずといった表情で
ある。何かあったな、と思っても、突込みを入れられる部下は限られる。
- 441 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:37
-
「中澤裕子の方はどうです」
聞き込みの成果を並べ終え、いきなり核心を突く。
無表情を装う田宮の眉が一瞬動いた。いわゆる「図星」のときに見せる仕種だ。
「うむ。アリバイが成立しそうだ。いま裏をとってる」
「・・・ですか。本人には?」
「まだだ。お前が伝えた方がいいと思ってな」
「わかりました」と一礼し自分の席へ向かいかけた部下を呼び止めたきり、捜査一課長は
再び黙りこくった。珍しくタイミングを見出しかねているようだ。
「何か悪いニュースでも」
「高科に呼び出された」
声色は苦いものを含んでいる。といっても、かつての部下のせいではあるまい。婚約者の
死によって自らを退職にまで追い詰めてしまった有能な刑事を最後まで慰留したのは、
課長になる前の彼であったのだから。
「津村検事も一緒でな・・・」
逢坂は話を聞くにつれ、空気が凍りついていくのを体感した。
在職中にすらファーストネームを愛称に使っていた親分肌の男が明かす再会の産物は、
いまも親しい関係を保つ黄金トリオの生き残りに驚愕の表情を浮かべさせたのである。
- 442 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:37
-
「じゃあ・・・・・高科は既に目星を?」
「つい最近も名前が浮かんだ移籍ブローカーがいただろう。何といったか・・・」
「確か・・・日浦とか」
「うむ。あいつのことだ、接触するだろう」
容疑者がトップアイドルのOGであるうえ現役のタレントであるという特殊性から、単なる
殺人事件としては異例の捜査本部が本庁に置かれ厳重な緘口が通達される中、殺人
と所属事務所の引き抜き騒動が繋がっているのではという意見は捜査員の末端からも
出ていた。
勇敢にも捜査本部長たる管理官に意見具申する者もいたが、噂の域を出ないただの
憶測に人手は割けないと却下され、別線で動いているのは目下のところ勤務時間外の
逢坂だけという有様だ。
キャリア組にありがちな、大局観の欠如が招いた事態とも言える。
「言わんこっちゃない。昔と違って高科をコントロールなんかできませんよ?どうします」
危惧が現実のものになろうとしている・・・逢坂は上司の判断を仰いだ。
「うむ・・・・・涼子君も動くと言っていた。猪乃旗興業ともなれば検察も傍観はしておれん
だろう。逢坂、すまないが頼む」
「そうこなくちゃ」
指をパチンと鳴らして破顔した逢坂に「あくまで密輸ルートだぞ」と念押しすると、田宮は
席を立って部下を自販機コーナーへと誘ったのだった。
- 443 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:38
-
暖房が効きすぎとも思われる取調室には、中澤ひとりだけがいた。
自分を見て微笑した顔に昏さはない。その眼には屈してなるものか、という意思が今も
小さいながら激しい炎を点していた。
つくづく強い女だと思うよ本当に・・・。
「何かあったん?もう2時間近くになるけど」例の情報がもたらされて以降、取調担当は
退席したままらしい。
「実はアリバイが証明されそうでね」
「ウチの?」
「他に誰がいる。事件当夜、姉さんが乗った個人タクシーを探し当てたとさ」
「・・・」
「いまそいつの携帯を調べてる。着信記録もあるし、心当たりの店を教えてくれた」
「・・・・・・迷惑かけちゃったな」
「本当に高科の言った通りなのか?」
逢坂は親友から聞いた顛末を話し、飲み友達を諌めようと考えた。
- 444 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:38
-
自戒の念はわかる。けどな、もし冤罪が成立したらどうするつもりだったんだ。
後輩がしてくれそうだからいいものの、アリバイが証明されないままだったら、立件され
ても不思議でない証拠が揃ってたんだぜ。
かかわってはならないという縛めが消失したと判断した彼は、自らの推理も折り混ぜて
現況を伝える。
「巧妙に証拠を隠滅して司直の追及を逃れてきた奴らだ。俺たちに任せろ」
そう結んだものの、中澤の瞳は明らかに別の色を帯び始めていた。
「・・・やっぱカラクリがな・・・ふーん」
「妙な考え起こすなよ。素人が太刀打ちできる相手じゃないんだ」
「確かになぁ、あたしらは素人や」
- 445 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:39
-
面と向かって言っても無駄だろうなとは思った。沈黙を破った中澤が言葉を継いだとき、
逢坂が感じたのは親友と彼女たちを繋ぐものに対しての歓喜と戦慄であった。
「けど、ウチらには高科穣也がいる」
澄み切った瞳でむしろ淡々と言い切った彼女は、既に容疑者ではなかった。
東洋人bPのバウンティハンターも畏怖する「中澤裕子」が、しなやかな肢体に闘志を
蓄えていく・・・逢坂にはそうとしか見えなかった。
正面の壁で、この業態特有の大型テレビスクリーンに「中澤裕子逮捕!?」が繰り返し
報道されていた。津村涼子=検察庁を通した規制も、「報道の自由」を盾にした連中にゃ
効かなかったようだ。
ふん、いまごろUFAが慰謝料と損害賠償請求のソロバンを弾いているとも知らずに数字
とることだけ考えやがってバカ共が。
芸能マスコミのモラルの低さは今に始まったことじゃないが、もはや金魚すくい状態だと
語る逢坂のあきれ顔を思い出す。確かにこりゃ救いようがないわ。
- 446 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:40
-
と、スクリーンの脇に相棒の姿が現れた。ジーンズにニット帽、上着は米空軍のフライト
ジャケットだ。アイドルが何ちゅうカッコで・・・・・いやいや、バレるよりはマシだな。
店内を見廻してスーツ姿の俺を見つけ(何よそのカッコ)とでも言いたげな眼になったものの
疲れを感じさせぬ笑顔で対面に座ったひとみは、ニットの帽子を脱いで頭をひとふりした。
シャンプーの香りがほのかに漂う。感心にもシャワーを浴びてきたようだ。
「よ」
「時間通りだな」
既に午後8時を廻り、時差ボケを感じる暇もない一日の締めくくりに選んだ都心のファミレス
も混雑のピークを過ぎている。
「似合うじゃん」
つんく♂に用意してもらったチェスター・バリーを皮肉られるのは計算済みだ。
こんなものを着込んでるのにゃ、ちゃんとしたワケがある。
俺たちはいま、囲碁将棋で言えば中盤戦の難所にさしかかっているのだった。
- 447 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:41
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.34
「取締役だからな、ジーンズに革ジャンじゃマズいべ。誰かさんは良くお似合いだがな」
反撃かと思いきや、ひとみは無視してアイスティーを注文した。くそ、効かねえ女だな。
今日は朝から一本取られてばかりだが、ここは喧嘩をふっかけてる場合じゃない。
ダメージを与えられる憎まれ口を考えてる間に、ターゲットが現れたのだ。
顔写真は頭に叩き込んである。立ちあがって名前を呼ぶと、すぐにこちらへ近づいてきた。
「溝口?」ひとみが怪訝な顔になる。飯食いながら状況を報告しあうってんで呼んだから、
若干ムッとしても仕方ないか。
「ひとみちゃん!?」
ターゲット・・・溝口可奈美は、背を向けて座っていた相手が吉澤ひとみと知ると、かつての
愛称を口にした。
ひとみはひとみで、自分だけのときには会ってくれなかった合コンの幹事に複雑そうな表情
を一瞬だがかいま見せた。とはいえ、すぐ引っ込めたのはさすがだ。
- 448 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:41
-
「この間はゴメンね。ちょっと忙しくて」
「いえ・・・もう仕事終わりですか」
「うん。この時間なら大丈夫」
ばつ悪そうに答えた可奈美を見つめる眼は、既にハンターのそれに近い。
こいつなりに、わざわざ呼ばれた意味をちゃんと理解しているのだ。
親しげに聞こえる会話も、成長したアイドルとデビューから1年半近くの間メイキャッパーを
務めた人間の再会にふさわしいといえるかどうか。
雑念はさて置き、本題に入るか。
注文の品がテーブルへ置かれると、俺はひとみに目配せして口火を切った。
おもむろに名刺を取り出し、「高科と申します。遅くにお時間をいただきまして申し訳あり
ません」と挨拶する。
肩書きは『UFA 非常勤取締役』石川事件でパーティー潜入に使ったやつだ。
まさか二度目があると思わなかったが、ひとみと後藤、二人ががりで果たせなかった例の
『参加者』たちへの接見が、拍子抜けし倒すほどに簡単だった。コネってなぁ作っとくもんだ。
- 449 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:42
-
「ご挨拶代わりと言っては何ですが・・・中澤は明朝にも釈放されます」
「本当ですか?よかった・・・」
「ご心配をおかけしましたね。アリバイが成立したので、いま手続き中です」
「そうですよね。裕子ちゃんがあんなことするはずありませんもの」
もとは『シャ乱Q』専属メーキャッパーの助手を務めていた縁で、本人の独立を機につんく♂
がモーニング娘。のメイクに据えたという溝口可奈美は、中澤と同い年である。
「当然です。しかし、まだ懸念が去ったわけではありません」シリアスな俺の物言いに、
可奈美の顔にあからさまな拒否反応が出掛かって消えた。ふん、ハンターをナメるなよ。
「私は何をお話すれば・・・」
前の3人もそうだったが、解決しそうなものに波風を立てようとしている輩に見えるらしい。
必要なら席を立てばいいと思っているんだろう。
いいぜ。いつでもキレてくれや。こいつを聞いてその勇気があるんならな。
「我々は、中澤が罠に嵌ったと考えています。その発端は貴女が主催した酒宴であると
推測できるので、こうして同席した方々にお話をうかがっている次第でして」
「そんな!私は何も」
「まあお聞きください。失礼かとは思いましたが、皆さんを少し調べさせていただきました。
結果、驚くべきことが判明しましてね」
ひと呼吸いれ、俺と可奈美をゆっくりと往復するひとみの視線が平静を保っているのを
確認する。前もって「何を聞いても驚くな」と言ってあるとはいえ、なかなかやる。
- 450 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:47
-
「・・・・・」
ひとみが(こういうことだったのかよ)とでも言いたげな顔になっていた。騙したわけじゃ
ないぞ。誰も『俺が』とは言ってねえ。二人きりともな。
さて、結婚式場と個別に契約し花嫁を専門にしている元・メイキャッパーは黙りこんで
しまうのみならず、瞳に怯えを宿していた。悪いが追い討ちをかけさせてもらうぜ。
「貴女と中澤は旧知の間柄、しかし殺された東出晃さんとは面識がありませんね」
後半部分で肩がピクリと反応した。直後に表出しはじめた震えは何を意味するのか。
「もっと驚いたのは、溝口さんと男性側の幹事に接点が無かったばかりか、参加者の殆ど
が当日はじめて顔をあわせたということです。普通ではあり得ないですよね」
- 451 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:48
-
一気呵成の攻めに、小刻みだった可奈美の震えが徐々に大きくなっていく。
もちろん教授が調べ上げた情報だが、メールを読んだときにゃさすがの俺ものけぞった。
参加者には、ただ一点を除いて共通項というものが全く無かったのである。
彼らは結果的に加担した形である事件への関与を、避け続けていたのではない。
自分が操り人形であったことに慄然と立ち尽くし、彼らもまたさざ波の如く迫る恐怖に対し
孤独な籠城戦を強いられていたのだ。
溝口可奈美の胸中に苦悩が濃さを増つつあるのが、手に取るようにわかる。さて、むしろ
問題はここからだ。変化技はいくつか用意してある。どれが一番望む方向へ引っ張ってくれ
るかね。
(痛っ!)
思わず声に出しそうになった。
ひとみの奴、急かすつもりか脛を蹴りやがって・・・しかもつま先でかよ。
まあ待て、いま決めたとこだ。
傍らに置いていた鞄をテーブルの上に出すだけでビクッと過剰な反応を示すのにかまわず
俺は「次の一手」を繰り出す。
- 452 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:51
-
「・・・・・私は・・・・・・ただ『人は集めるから幹事をやってくれ』と・・・・」
溝口可奈美がようやく絞り出したものに、俺は確信を持った。
「何の見返りもなしに?」
「・・・」
「ですよね。借金をチャラにするとでも言われたのではありませんか」
「!?」
努めて丁寧に優しく言ったのが余計に動揺を増進してしまったものか、可奈美の眼に大粒の
涙が盛り上がってきた。
隣でひとみが(借金?説明しろよ)ってな視線で見つめるのを無視し、俺はわざとらしく手帳を
取り出した。
「貴女をはじめ、工藤亮純、宮野幸喜、高島雪乃、木田広子・・・中澤と被害者を除いて、
全員にマルチ商法がもとの借金がありますね。債権者名はさまざまですが、いずれも実体
はありません。闇金に近い業者です」
一瞬ながらひとみの顔を驚愕が過り、可奈美の頬をひとすじの雫がすべり落ちていった。
- 453 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:52
-
教授からもたらされた、きょう最大の収穫がこれだ。
表向きは出会い系サイトのチャット仲間ということになっているが、実際は面識もクソもない
参加者たちが唯一、共有していたもの。
中には一千万まで届こうかという者もいる。債権放棄とまでは行かなくとも、何割かを引いて
やると言われたら、訝りながらも話に乗るのが人間ってもんだ。
裏にどんな謀意が蠢いているのかに考えが及ばないのも、な。
別に泣かすつもりで呼んだわけじゃない。
だが、ずる賢い言い方をさせてもらえば、予測していたことでもある。
溝口可奈美に限らず他の参加者たちも、程度の大小こそあれ同様の経過を辿ってここまで
来たはずだ。
- 454 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 22:53
-
踏み越えてしまった自分に対する後悔と、恐怖。
最も抱えたくない想いを無理に心の引出しへしまい込んだつもりの彼らが、第三者にそいつ
を抉られたとき、去来するものは何なのだろう。
ゆっくり心理を読みたいところだが、このまま落ち着くのを待つわけにもいかねえ。
過呼吸かと思えるほどに上下していた肩の動きが小さくなるまで待ち、俺は手帳をめくった。
悪いが、勝負手を使わせてもらうぜ。
To be continued...
Next time is start at chapter.35
See you again and good luck !
- 455 名前:つみ 投稿日:2004/03/02(火) 23:07
- なるほど・・・そんなことがありましたか・・・
中澤さんも本領発揮っすかね!
次回までワクワクしながらまってます!
- 456 名前:新人 投稿日:2004/03/02(火) 23:08
- 今夜の更新は以上となります。
小説とは関係ないのですが、先日のハロモニを観て感じたことを少し。
さまざまな意味で、安倍がモーニング娘。に居たことを噛み締める事は、
過去を認め、未来へ踏み出すことなんだな、と思います。
吉澤は、安倍と仲が良くないと言われていました。
その彼女が流した涙が、全てを物語っていたと感じています。
モーニング娘。に、幸多からんことを。
では、次回の更新にて。
- 457 名前:みっくす 投稿日:2004/03/03(水) 05:46
- なるほど、事件の奥はふかそうですね。
次回も楽しみにしてます。
- 458 名前:とこま 投稿日:2004/03/03(水) 21:30
- 更新お疲れ様です。
事件の裏はかなりの深さが有りそうですね。
次回も楽しみに待ってます。
- 459 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:33
- みなさま今晩は。作者です。
遅くなりましたが、更新したいと思います。
455 つみさん
裕ちゃんの本領は、まだまだ、これから動いてもらいますので。事件の始まりと
終りは<そして真実はひとつです。
457 みっくすさん
深いかどうか・・・・単なる殺人と冤罪ではなく、さまざまな人物が絡んでくる
ことは確かです。今日の更新でも(あわわわわ)。
458 とこまさん
ジョーと皆さんの推理合戦、許されればきいてみたいです。結末はもう決まって
いるので、ネタばれの危険が高いですが(w
今夜はあの娘の見せ場を用意しました。
では後ほど。
- 460 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:34
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.35
「これが証拠ってわけ」
「どれ・・・」
藤本は写真を覗き込んだ。
「ふ・・・この男が」
「顔をよーっく頭に叩き込んでおけって」
答えた後藤と娘。の次期エース格がいるここは、昨夜とは違うホテルの一室である。
- 461 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:35
-
一切の雑音をシャットアウトされたためもあり、ツアーのリハが順調に進んだ後藤は夕刻
にはホテル入りしていた。
一方、賊の侵入を許した「おとめ組」は、広がる動揺を飯田がおさえ、こちらもほぼ予定の
メニューを完遂した。後藤よりは遅かったものの、一部を除いてシャワーと食事を済ませ、
既にリラックス・タイムへ入っている。
今夜は「おとめ」「さくら」に分かれての宿泊になっていた。明日の朝はまた、極秘のうちに
羽田へ向かい、時間ギリギリを計算して搭乗する予定だ。
マスコミのマークは当然きついことが予想されるため、当初の予定は変更されている。
「さくら組」は直接でなく福岡から陸路で会場入りすることになっているし、「おとめ組」に
至っては新幹線の方が早いのをわざわざ関西空港から廻り込む作戦だ。それぞれが元々
おさえていたルートは変更せずチケットはおさえられたままである。これをジョーが考えた
「陽動」と聞いたのは、つい先ほどのことだ。
もっとも、明日の朝には中澤が自由の身になる予定だというから、念には念を、で終わり
そうだが。
- 462 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:37
-
「・・・違うか」
藤本は残念そうな表情を作った。
昼間、ゼンと二人で追いすがった侵入者であれば一気に事態が進展すると思っていたの
だが、そんなに簡単な相手ではないようだ。
「でもさ、悪い人には見えないよね」
後藤の声はいつものように「のほほん」とはしていない。
確かに、中澤の背後に決まって写りこんでいる男は、人相が悪くないというより「いい人」
に見えた。周囲の場景から察するに背はあまり高くない。飯田より少し高いぐらいだろう。
「ジョーさん他に何か言ってた?」
藤本の問いに後藤は首を横に振った。
リハも終わり近くになって奇襲に等しい訪問を受けた彼女は、ただカラーコピーを渡され
「保田のお手柄だ。この顔を頭に叩き込んでおけよ」
とだけ言われたらしい。
よくわからないけど、鍵を握る人物かもしれない・・・察した後藤は、藤本を呼んだのだ。
石川にも見せておきたかったが、携帯も部屋の電話も出なかった。疲れて爆睡してるの
を邪魔しちゃ悪い。
- 463 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:38
-
問題の人物の顔と背格好を頭へ叩き込むと、二人はソファへ身を移し、点けたままのTV
に眼を移した。
報道番組は、発覚から丸一日が経過しようとしているいまも、中澤の殺人容疑をくり返し
電波へ乗せている。
『新たな証拠が発見されたという未確認情報もあり、予断を許さない状況です』
「ふん、いい気になってりゃいいのよ。明日の朝になったら、誰だって驚くんだから」
「こういうときって、あからさまに『敵』だよねマスコミって」
滅多に怒ることのない『ごまっとう』コンビが、静かな怒りを放出し始めている。
「きっと引き抜きに関係あると思うんだよね。ね、どう思う」
藤本が話を写真へ戻した。
「裕ちゃんを陥れるような人には見えないね」
答えた後藤には、藤本が自分なりの推理を組み立てているとわかった。
「そうじゃなくて、どうして中澤さん、稲葉さん、柴っちゃん達まで移籍させようとするの?」
- 464 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:38
-
言いたいことはだいたいわかる。
少し前にも、将来を嘱望されていた若手女優が忽然と表舞台から姿を消し、極秘裏に
事務所を移籍する事件があった。
もとは金銭トラブルだったというが、芸名を変えて復帰するまで1年以上の冷却期間を
必要としたし、今では泣かず飛ばずとなっているように移籍が円満に済まなかった場合、
余程の大物でない限りしばらくは仕事に恵まれないはずだ。
少しでもこの業界でビジネスを齧っているなら、わかりそうなものなのに・・・。
「ムチャクチャだよ。仕事なきゃ意味ないもんね」後藤の口調も明らかに変わった。
当事者の彼女は誰に相談するまでもなく「無理やり移ったってロクな事がない」ときっぱり
断っている。相手はそれでも「仕事の心配はない。稼ぎは減るどころか増える」と食い下が
ろうとした。以来、非通知はもちろん登録のない電話番号が表示されても携帯に出ては
いない。
諦めたと思ったのに、稲葉さんや圭ちゃんのところには未だにあるって、しつこいにもほど
があるよ。
- 465 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:39
-
「仕事の心配はない?」
後藤に釣られるかのように、藤本はほどんど怒声に近い疑問符を放った。
部屋の空気が冷えていくように感じるのが、昨夜から少しだけ前進した先に見えてきた
影に対する怒りを、二人が放出しはじめているのだと察知できるのは、ごく少数の者に
限られるだろう。
幸運にも目の当たりにできた人間は、こぞって眼を剥くに違いない。
空気はやがて、怒りから殺気へと変わっていたのだから。
「バカな奴等だよね。こっちらが指くわえて見てるとでも思ってる」
藤本の言葉には凄みすら感じられた。
「裕ちゃんをあんなメにあわせておいて・・・・・」
のんびりとした彼女と、戦術モードに入ったいまと。どちらが本当の後藤真希なのだろう。
室内に満ちた殺気は、訪問者を告げるチャイムが空気を揺らしても、微動だにしなかった。
- 466 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:41
-
安倍の部屋には、ジョーに呼ばれた吉澤を除く「さくら組」のメンバーが集まっていた。
同室の矢口は飯田と共に事務所に呼ばれて不在である。安倍の傍らにはゼンが寄り添い
司令塔の留守を預かっていた。
「・・・で、あさ美ちゃんの結論は?」
意外にも、この場を仕切っているのは加護であった。中澤救出作戦の実質上の指揮官を
務めた彼女は、自分達が証明できなかったことに満足していない。レッスン場を探しあてた
うえ侵入を企てたのは何者で、狙いは何なのか・・・。メンバー各人に推理があるなら、照ら
しあわせて、少しでもジョーさんを手伝いたい・・・悔しさを滲ませつつ呼びかけたのである。
「吉澤さんに怒られるかもしれないけど・・・」
言いにくそうな紺野だが、誰も口を挟む者はいない。すべてを一度、まな板の上に乗せる
のは総意だ。
- 467 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:42
-
「組織的な力が動いてるんじゃないかな。すぐに車が来て脱出したことからみて、外部から
私たちを監視してたのは間違いないと思う」
顔からいつものスマイルが消失している紺野の隣で「私も同じです」と高橋が小さく手を上
げる。
上京して2年を経ても未だ残る訛りで高橋は「普通じゃ考えられません。あれはその・・・
専門家じゃないかなと」と自説を告げた。偽装故障させたエレベータのことを言ってるのだ
ろう。
「うん・・・・そやね。あたしもそう思う。バレたんじゃなくて最初からマークされてたんだよ。
次はどんな手を使ってくるやら」
言葉の意味にそぐわぬ余裕を感じさせる加護へ、安倍は頼もしげな微笑を注いでいる。
ホテルへ移動する車の中で自分の隣に陣取った彼女から「きっと情報を集めたがってるんだよ。
そうはイカの何とかだよね」と耳打ちされたときは爆笑しかけた。少し前に矢口と同じことを
話し合っていたのだが、加護にかかるとこうである。抱きしめたくなる愛くるしさとのギャップ
は、キャリアを積むにつれ凄まじくなる一方だ。
- 468 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:42
-
「?」
足元に寝そべっていたゼンが立ち上がりドアへと歩いていくに気付き、安倍は「どしたゼン」
と声をかけた。かまわず直前まで達した彼は、こちらへ向けたままの尾を振り始める。
間もなく、電子ロックが解除される僅かな音がするとドアが開いた。暗証番号を知っている
のは、「さくら組」の中では二人だけだ。
「ただいまー。おーゼン、出迎えご苦労っ!」
これでもかと尾を振るゼンに、入るなり抱きついたのは言うまでもなく矢口真里である。
「お疲れさまでーす」
年少組五人が出迎える中、安倍だけは眉を寄せた。笑顔が固い。
いつもと変わりなく見える親友に、明らかに違うものを気取ったのだ。僅かだが目が腫れて
いる。
「うー疲れた。おー風呂はいろっかなー」
上着とマフラーをポン、ポンと脱ぎ捨てる矢口へ、娘。の母親が問いかける。
「どした矢口?」
これだけで通じてしまう娘。の名コンビである。
- 469 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:43
-
答えずベッドにひっくりかえり、矢口は天井を見つめ動かなくなった。
唇が固く噛み締められているのを見ては、安倍以外のメンバーも硬直してしまう。
自他ともに認めるムードメーカーである。黙っている時間の方が短いぐらいのひとなのに。
「矢口さん・・・・・・?」
亀井の声に不安が宿る。
パワー漲る彼女を、これほど落胆させるものとは?
1分が5分にも、10分にも感じられる沈黙の後、やがて矢口は堰を切ったように語り始めた。
- 470 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:44
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.36
同時刻、エレベータを降りた石川は、ためらいなくドアを押した。
入ってすぐ「ここは違う」と思った。ワインレッドを暗くしたような壁と印象派と思しい数枚の
絵を見ただけで、ここは自分のような「女の子」ではなく、男女とも「大人」をターゲットにした
店とわかるこの店で、10日ほど前に開かれた何の変哲もない酒宴が、全ての始まりだった
のだ。
目の当たりにしてみると、ふさわしい空間に思えるから不思議である。
入口に立ち尽くす気配を察した店員が奥から姿を現したのに気付き、石川はすべての思い
をしまいこんだ。
- 471 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:44
-
「いらっしゃいませ・・・・・」
出迎えた30前後に見える男性店員が固まったのは、彼女をモーニング娘。のメンバーと
認識したからではない。
黒のスパッツに近いスラックスに、セーター・コート共にピンクのいでたちの彼女が、客と
してはあまりに場違いだったからである。
ほぼスッピンながら、髪型と伊達眼鏡で別人のようにダサく変身できるのが石川梨華と
いう「女優」である。いつもより低い声で「ちょっとお伺いしたいことがありまして・・・」と切り
出しても気付かれないところを見ると、完璧な演技だ。
「は?・・・・ああ、アルバイトですか。失礼ですが、おいくつ?」
いい具合に誤解してくれた。内心ほくそ笑む。
「違うんです。実は・・・人を探してるんですけど」
「人探し?」
オウム返しとともに怪訝そうな顔に変わった相手へ、綿密に練ったストーリーを伝える。
1ヶ月ほど前に失踪した恋人を探している。親しい友人の話では、界隈の複数の店で
働いている姿を見たというので、一軒一軒聞いて回っている。目撃された時間がほぼ
同じ事から、短い期間で店を転々としている可能性があるんですが、この店で働いて
いたアルバイトで、つい最近そういう人はいませんでしたか?
- 472 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:46
-
恋人への慕情を全面に押し出して話し終えた石川は、とどめに懇願するような上目遣い
で見つめた。
動揺したように眼を泳がせた、ネームプレートによると『石原』という店員は、「最近ねえ」
と腕を組んだ。仕種が自然なのに満足し、石川は「いませんか・・・・」と床を見つめる。
店員との間を奥から流れてくるBGMだけが繋いだのは僅かな時間だったかもしれない。
彼女にはそれが数分間にも感じられた。
ダメかな、と顔を上げかけたとき、タイミングを合わせるかのように石原が「そういえば」と
口を開いた。
「ちょっと前になるけど、いたよ。三日だったか働いて、すぐ連絡が取れなくなったって
マネージャーが言ってた」
「本当ですか!?」
思わずチャーミー調になりかけ、寸前で踏みとどまる。
「名前は覚えてないんだけどね」
「偽名を使ってると思いますから・・・・いくつぐらいの人でした?」
「多分30ぐらいだと思うけど・・・もっと上に見えるときもあったな」
「この人じゃありませんでしたか」
- 473 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:47
-
バッグからとっておきの『武器』を繰り出す。保田を直撃して手に入れた、移籍の首謀者と
思われる写真のコピーである。
「似てるようにも思うけど、別人のような・・・」
手に取りまじまじと見つめる店員に、石川はふとした疑問を抱く。
コピーなのに怪しまないのかな?それともこの人、天然?
「はっきり言えないや」と返した表情を見ただけでは、疑問は解決しなかった。
「そうですか・・・・・・・・」
落ち込む演技も堂に入っている女優・石川梨華は、どっちでもいいや、と切り替えていた。
相手が話に乗ってきただけで、とりあえずの目的は果たせたと思う。背後に防犯カメラが
あるのも計算済みだ。
「お役に立てなかったかな」
「いえ・・・お忙しいところすいませんでした」
ペコリと頭を下げ、もし現れたりしたら連絡もらえますか、とメモを差し出す。もちろん携帯
の番号などではない。こちらが依頼したとおりの名前で応対してくれる「秘書代行」だ。
『34×9-5×94 鷲野今日子』と記されたメモがユニフォームらしいベストのポケットへと
収められたのを確認し、石川は再び礼を言って店を後にした。
- 474 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:48
-
雑踏の中に身を投じる直前、出てきたばかりのビルを見上げた。
鋭い視線が吉澤と似ていることを知る由もない。
娘。総がかりの大捜査線が展開する中でふと浮かんだ疑問が、親友と同じ発想であった
ことも。
「店の内部に、手引きした人物がいる。あるいは店自体がグルなのでは」
吉澤と後藤が苦闘を続ける一方で、それは大きくなるばかりだった。
ジョーが来日してくれたことで事態が好転するのは間違いないとしても、このままでは何か
気持ちが悪い。
一晩の夢うつつの中で考えた石川は、危険を承知で動こうと決断した。
- 475 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:49
-
昨夜、ジョーとの間でもたれたミーティングで、『現役』も『候補』も持ち出さなかったのは、
不自然だと思う。もしかしたら、あたしにやってみろって言ってるのかも・・・都合の良い
考えかもしれないけど、直感を大事にしろって言ってたし。
電話でなく直撃を選んだのは、演技力の自信に加え「バレたらバレたで、敵は必ず動く」と
判断したからだ。
本業を棚上げにして助けてくれるジョーに、長い滞在を強いるわけにはいかない・・・彼が
辞したあとの話し合いで決まったこともあり、大胆とも無謀ともとれる行動に出たのである。
果たして、反応はあった。
事実かどうかは、教授に頼んで調べてもらえばはっきりするだろう。
実在するならそいつを追えばいいし、偽証ならば店を調べるまでだ。
ひとつ収穫を得たことで自らをさらに鼓舞するかのように、石川は小さく右ストレートをビルへ
向けて放ち、人波の中へ歩みだした。
- 476 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:50
-
慎重に距離を置いて石川梨華を追い始めた直後、不意に肩を叩かれ愕然とした。
「彼女に用かね」
男の右手に木刀を認め、長身痩躯を「敵」と判断した。
「・・・・・」
「ならば私を通してもらおうか」
抑揚のない声が不気味だが、ここは先手必勝だ。
懐に潜ませた武器へ手を伸ばす。抜き打ちにはちょっとした自信があった。しかし・・・
「ぐ・・・・・・・」
鳩尾を襲った激痛に悶絶する直前、視界の隅に捉えた「敵」は、もとの体勢のままだった。
(くそ・・・)抜き打ちに至る寸前のコルトが踏みつけられる前に、男の意識は途絶えた。
サイレンサー付きの初弾が薬室に装填済みなのを確認し、自らの懐にしまい込んだ黒衣
の男は、石川の後を追いはじめた。尾行というよりも、見守るかのような視線である。
- 477 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:51
-
(気合はわかるが・・・・無茶はしないでほしいものだ)
既に夜陰に紛れようとしている少女の後姿を正確に追う彼が、「デス・マスク」の異名に
そぐわぬ感情を顔に刻んでいると、すれ違う人々には看破し得まい。
「手ぶら」なうえ身体の上下動が極めて少ない移動は彼独特のものだ。身体にフィットした
黒衣がまた、それを際立たせている。
だが一撃のもとに尾行者を倒した木刀は、どこへしまいこんだのか。
いや、そもそも、なぜここに居合わせたのか。
濃密に漂い始めた夜の空気は、彼の妹が知ったら詰問しかねない事実を覆い尽くして
なお、その色合いを深めていった。
To be continued...
Next time is start at chapter.37
See you again and good luck !
- 478 名前:新人 投稿日:2004/03/10(水) 21:58
- 今夜の更新は以上です。
ついに「あの男」まで姿を現しました。
娘。たちの魅力は、ジョーをして「感情が欠如しているのでは」とも
言われる元ハンターをも虜にしてしまったのか?
真相は彼に聞いてみなくては分かりません。
黒髪にして「おとめ組」でソロパートを与えられ、魅力を増している
今回メインの石川ですが、私はどうしても藤本に眼が行ってしまいます。
安倍が卒業したこともありますが、彼女のパフォーマンスがますます
他のメンバーとの差を広げているような気がしてなりません。
やはり彼女はソロで(いや「でも」ですね)やらせるべきなのかも。
では、次回の更新にて。
- 479 名前:つみ 投稿日:2004/03/10(水) 23:23
- ついにあの男がやってきましたね!
やはり気になるのかな・・?
それにしてもいしかーさんも行動派だこと・・・
怒られなきゃいいんですけど・・・
次回までまってます。
- 480 名前:みっくす 投稿日:2004/03/10(水) 23:30
- おお、登場しましたね。
もう一つのコンビがみれるのでしょうかね。
それにしても、やぐちぃが抱え込んできたことは
何なんでしょうか?
- 481 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/11(木) 11:58
- ・…出たw
さりげに物騒なシーンが多いのが心配でしたが、
彼ならなんとかしてくれそうですね。
しかし矢口さんが気になる。。。
- 482 名前:とこま 投稿日:2004/03/11(木) 20:56
- 更新お疲れ様です。
ついに彼も参戦してきましたか。
・・・となると、矢口さんの抱え込んだ内容と石川さんの疑問が
結び付くのでしょうか?
- 483 名前:丈太郎 投稿日:2004/03/12(金) 15:30
- 更新お疲れさまです。梨華っちにも驚きましたけど、銀の字は神出
鬼没すぎですね。影ながらというのも似合いすぎで笑えます。真里
っぺはどうしちゃったんでしょう?早く続き〜(w
- 484 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:49
- こんばんは。作者です。
このところ忙しくて推敲すら進んでおらず、今夜の
更新は1話分となってしまいますが、御容赦ください。
- 485 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:49
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.37
「数年前のことになりますが、売れないモデルやレースクィーンがある事務所にこぞって
移籍した事件がありました。あわせると億に近い移籍金が動いたことで噂になったのを、
貴女もご存知ですね?」
(何ぃ!?)ってな眼になったひとみに小さく目配せし、反応を待つ。
この質問は、つい6時間ほど前に元上司にもぶつけたものだ。
今時あまり有難くない「捜査一課の中村主水」の異名がハマりまくる叩き上げは、深い
苦悩の海に漂っているだろう。
言葉こそ違え同じ内容の質問(?)をぶつけたとき、ある意味で事件の当事者たる可奈美
は、何をもって葛藤渦巻く胸の内を開示するのか。
- 486 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:50
-
「わ・・・・・け・・・て裕子ちゃんをだま・・・り・・・」
「わかります。しかし結果はかくの如しです。つながりを指弾されても仕方が無いでしょう」
頬を伝う雫は、いつ果てるとも知らず机上を濡らした。
先刻からの動揺ぶりじゃ、どっちにしても期待の動きをしてくれそうだ。
「会えて・・・久しぶりで嬉しくて・・・・・・けど私は」
「それだけうかがえれば十分です」
可奈美の涙ながらの訴えを俺は遮った。
ひとみは、と見ると、動揺を見せないばかりかハンカチを貸すなど余裕たっぷりだ。
行ける、と判断して俺は場を収束させることにした。
「お時間をとらせて申し訳ありませんでした。中澤を陥れた輩は、貴女にかわって私共が
必ず」
「任せてください」
絶妙のタイミングでひとみが締めると、可奈美は声もなく立ち上がり深々と一礼した。
逃げるように店を出て行く姿が見えなくなるまで待ち、ひとみは俺の正面に座りなおす。
- 487 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:50
-
「ちょっと驚いたよ。借金だけなんて」
「同感だ。もう突っ込むまでもないだろ。名が違うだけで債権者は同じだ」
「そいつらが中澤さんを?」
「ああ。プラス首謀者だな」
「・・・・・・」
射抜くような視線を向けられ、柄にもなく眼を逸らしちまった。
溝口可奈美を黙って帰したのが「泳がせる」目的だってのをわかってるだけじゃねえな。
本来なら引抜が事件とつながっていることを匂わせるなど、もってのほかである。
あえて話したのは、はっきり言や『罠』だ。そこまで理解してなきゃ、この泰然は説明が
つかん。喜んでいいのか悪いのか、俺ぁ刑事になって2年たってもここまでの大局観を
持てなかった。
いくら惚れたっつっても、この才能には羨望すら感じるぜ。
- 488 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:51
-
「すべては中澤が出てきてからだ。あいつ抜きで進めちゃ、怒りを増進しかねん」
猪乃旗興業の件を伝えたときにハロプロの肝っ玉姉さんがどんな反応を示したかは、逢坂
から聞いているはずだ。
「もしかして・・・なんとか興業って奴ら、因縁があるね」
「昔のことだ」いずれ話そうとは思うが、先に片付けなきゃならん仕事がある。
「わかった。行こうか」
ひとみは伝票を朝とは逆に俺へ押し付け、さっさと出口へ向かう。
車へ乗る寸前、ひとみはいくらも星が見えない夜空にため息を放ちながら言った。
「ほんの序の口、か・・・・・手強そうだね」
- 489 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:51
-
答えず俺は乗り込んだ。
なぜかって?
先に言われちまったからさ。
一日のしめくくりにホテルまでドライブ・・・とはいかねえな。
車を地下駐車場に滑り込ませるまで、お互い無言のまま通した。
別に気を使った訳じゃない。
おそらく、こいつなりに組み立てていたんだろう。
賞金首と戦う手段ってやつを。
- 490 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:51
-
話を終え、飯田は辻が用意してくれたグラスの水を一口だけ喉へ流し込んだ。
飯田と後藤の部屋は、リーダーとソロ組のトップに相応しいジュニアスイートである。
おとめ組全員が入っても余裕の広さだが、石川の姿だけは無かった。
誰も口を開かない室内は、空調の微かな音のみが沈黙を阻止している。
都心に位置し、地下からエレベータで部屋へ直行できることから選ばれたホテルが誇る
抜群の眺望も、いまの彼女たちには歯牙にもかけられぬ虚物と化していた。
かようにリーダーが持ち帰ったものは重く、そして落胆させたのである。
「ひどいです・・・・・」
ようやく呟いた道重の瞳には、うっすらではあるが涙すら浮かんでいた。
「ひどいね。でも言い分はもっともかもしれない。うちらが動くのは危険と隣り合わせだし」
飯田は淡々としているようだ。いや、怒りを出し尽くしたあとなのか。
- 491 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:52
-
彼女は、矢口と二人で呼ばれた事務所で社長をはじめとした首脳陣に「中澤が無事に
戻ったのだからもういいだろう。これ以上の関与は許さない」と冷徹に言い渡された。
呼ばれたのを幸いに、期せずして一致していたメンバーたちの総意を伝え、支援を仰ごう
としていた機先を制されてしまったのである。
もちろん矢口は烈火の如く怒った。裕ちゃんが無実ならそれで終り、で済む話じゃない。
敬愛する姉貴分を窮地に陥れた輩を放っておいて、第二の事件が起きたらどうする気だと
首脳部に詰め寄った。
警察に任せろというのは正論だ。だが、冤罪を成立させかけたのもまた日本が世界に誇る
はずの組織であった。
それでも「忘れて仕事に専念しろ」と折れない会社側に、二人は使うまいと考えていた奥の
手を繰り出さざるをえなかった。
引き抜き騒動は正体不明の組織による大掛かりなものであり、中澤の冤罪事件は周到な
罠だ。彼女の解雇によってハロプロの主力級が総崩れになるのを狙ったものだと断言した
のである。
いち早く気付いて真相究明に動き出したモーニング娘。にその手を伸ばしてきた「奴ら」の
存在は、絶対に排除すべきだ。
- 492 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:52
-
「憶測で警察が動かないのはわかってます。だからあたしたちがやるんです!」
机を叩いて絶叫する矢口に、ようやく条件付でOKが出た。
しかしそれは、会社としての必要最小限の人的資源の提供と、損害を与えた場合に譴責を
甘んじて受け入れよ、という厳しすぎるものであった。
高科から連絡を受けたつんく♂が現れ「これはモーニングだけでなく、ハロプロメンバー全体
の総意だ」と割って入らなければ、二人とも「辞めてやる」と啖呵を切っていただろう。
事実、矢口の怒りは臨界点に達し、つんく♂が「条件は呑むから、やらせてやってほしい」と
交渉している間に部屋を飛び出してしまった。
屋上で悔し涙に暮れる矢口と後を追った飯田のもとに「俺もやらせてもらう」と師匠からの
連絡が入ったのは、実に1時間後のことであった。
- 493 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:52
-
「そう・・・・。仕方ないね。ウチらだけで頑張るしかないっしょ」
矢口の言葉が途切れるのを待っていた安倍が、精一杯の微笑を加護たちに向けた。
彼女とて、会社の全面的な協力が得られるとは思っていなかった。
つんく♂が1時間に及ぶ交渉の末に引き出したものは
【メンバーを二人一組にしてそれぞれに腕の立つ運転手をつける】
【会社の人間は、平時と変わらずマネージャーのみ】
という過小なものだったのだ。それ以上は、と頑なに首を横に振られたプロデューサーは、
高科穣也の全面関与と引き換えに妥協せざるをえなかったのだ。
一方で冤罪に対する国賠訴訟の準備を抜かりなく進めているというから、もはや金の亡者
に近い。もう少し所属タレントのことを考えてくれても・・・というのは今は肥大化してしまった
UFAには無理な話だろうと判断したらしい。
- 494 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:53
-
「ね、矢口」と優しく肩に手を置いても変わらない表情に、安倍のみが戦慄した。
小さな身体に蓄えられつつあるものが「怒り」であると、親友たる彼女にはわかったのだ。
戦慄が意味するものを考えまいと、安倍はゼンに「矢口はまだみたいだから、ゼン二人で
お風呂入ろっかぁ」と抱きつき、暗にメンバーへ解散を命じるしかなかった。
矢口は胸中に燃え盛るものを抑えようと必死であった。
まだ解放には早すぎる。自分一人で突っ走ったら皆に迷惑をかけると分かっているつもり
だ。少なくとも、ジョーさんにはGoサインを出してもらいたい。それまで溜めておこう。
中澤の危機に際し、誰もが小柄なサブリーダーの心情を察していたわってきた。
しかし、豊かな才能に裏打ちされた思慮深さをも秘める彼女が抱く物の「質」に思いが及ば
なかったことは確かだ。
- 495 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:54
-
兄貴分と慕うバウンティハンターが動いたことによって、溜めていたエネルギーが「負」から
「正」へ変換されたことも。今や所属グループだけでなくハロプロ全体の操舵手になりつつ
ある彼女は、ただひとつの思いにその身を染めていた。
オイラたちを敵に回したらどんなことになるか、思い知らせてやる。
矛先は、未だ正体を隠遁する「敵」か。
それとも・・・。
To be continued...
Next time is start at chapter.38
See you again and good luck !
- 496 名前:新人 投稿日:2004/03/17(水) 21:55
- 今夜の更新は以上となります。
479 つみさん
いつも早いレスをありがとうございます。
正月のスペシャルで「何事にもアクティヴに」と
言っていた石川ですが、どうやらこの頃から
胸中は燃え盛っていたようです。
実はくだ仕掛けを用意してあります。
お楽しみに。
480 みっくすさん
矢口は娘。一の情熱家だと思います。
安倍の卒業式で、石川と重なる思いを具間見せた
彼女は、きっと誰よりも娘。のことを考えているでしょう。
そして、礎を作った先輩のことも。
481 名も無き読者さん
見抜かれてましたか。いや、ハワイでも自らニアミス
しかけたように、意外と人情家なのかもしれません。
ひょんなことから深い関係を持つことになったのは
ジョーと共通していますし。
482 とこまさん
う〜む…深い読みに腕組みしてしまいます。
けど、これは小説ですから。破天荒にならぬように
気をつけますが、ご期待を裏切ってしまったなら御容赦を。
483 丈太郎さん
神出鬼没…確かに。
もしかしたらロスの空港でジョーと会ったとき渡航手続きを
していたのかもしれませんね。銀香については、次々と
アイディアが涌いています。このあともお楽しみに。
暖かくなってまいりましたが、まだ寒の戻りもあると
肝に命じて、次回また元気にお会い致しましょう。
では。
- 497 名前:みっくす 投稿日:2004/03/17(水) 22:03
- 更新おつかれさまです。
久し振りにリアルタイムで読みました。
今回はやぐちぃがかなりウエイトを占めそうな感じですね。
- 498 名前:つみ 投稿日:2004/03/17(水) 23:33
- やぐちさんがかっこいいっすね!
よっすぃ〜もすっかり板についてますね。
次回も楽しみにしてます!
- 499 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/18(木) 12:02
- 見抜けてましたかw
確かに彼ら、人情に厚そうですもんね。
おまけにシャイかも・・・w
今回は陰ながらつんくさんが活躍してるような気がします。
次も楽しみです。
- 500 名前:龍 投稿日:2004/03/18(木) 21:34
- 毎回、楽しく読ませてもらってます。
よっすぃ〜の活躍には、いつもビックリさせられます。
今回は特に藤本さんが大活躍のようで、かなりワクワクしてます。
今後の動きに、期待してます。
- 501 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/18(木) 23:28
- ↑いちいち上げるなよ
- 502 名前:丈太郎 投稿日:2004/03/19(金) 04:33
- 更新お疲れさまです。矢口を怒らせたら…考えただけで恐い…。も
うひとりのハンターの活躍、楽しみにしてます。
- 503 名前:とこま 投稿日:2004/03/21(日) 21:50
- 更新お疲れ様です。
いよいよ孤立無援の状態に追い詰められましたが
これで大人しくするようなメンバーでもないですし。
どこまで落ち着いて行動できるかが勝負の分かれ目ですね。
- 504 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:51
- こんばんは。作者です。
前回、自分で「元気でお会いしましょう」と言っておきながら
体調を崩してしまいました。ようやく立ち直りつつあるので、
お待たせしましたが更新します。
その前に。
497 みっくすさん
最近、矢口を注意して見るようにしてるのですが、彼女はあらゆる意味で
凄いと思います。おそらく、小説ごときじゃ表現しきれないと思いますが
頑張ります。
498 つみさん
写真集、ちょっとびっくりしました。いつのまにか大人に・・・小説世界の
よっすぃーも負けてはいられません(w
499 名も無き読者さん
鋭すぎる発言はお避けください(笑)
つんく♂は策士ですからね。何が出てくるかわかりませんよ?
500 龍さん
初レスですよね?ありがとうございます。
ミキティには、彼女らしい場面をまだ用意してますのでお楽しみに。
502 丈太郎さん
もうひとりのハンターとは?もしかしてあの人のことを指しているのでしょうか。
うーむ、いつもながら深いレスで恐れ入ります。
503 :とこまさん
孤立無援とはいえ、とこまさんのおっしゃるとおり彼女たちのバイタリティを
甘く見て痛い目を見るのはこちらですからね。締めてかかりましょう。
では、今夜の更新です。
- 505 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:53
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.37
風呂から出たあと、俺は稲葉プラス保田と今日の成果を共有した。
こちらの進展を伝えると、二人とも意外と冷静に受け止めたようだ。既に飯田から明日からの
指針を提示されていたとしても、自分たちが追っていた影が徐々に頭をもたげつつあることに
対してすぐに前を見られるなんざ、なかなかできることじゃない。
稲葉とは昼間と同じくメロン記念日のメンバーが、保田の方はカントリー+ココナッツ娘。とが
一緒だった。保田がつかんだ引き抜きに関与しているらしい人物と、これまで通りの警察と
電話会社相手と、二者を相手の勝負に出るつもりらしかったが、俺は無理やり引きとめた。
彼女たちには別の役目を担ってもらうつもりで、既につんく♂と準備を進めていたからである。
もっとも、彼女たちも相当の危険を覚悟して腹をくくりかねていた節がある。昼間に一度会っ
たカントリーの二人がかわるがわる電話に出たんだが、声に濃密な不安を漂わせてた。
ある意味、ストップをかけたのはベストの選択とタイミングだったようだ。
- 506 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:54
-
ハロプロの副総裁および官房長官ともいうべき二人は、渋々ながらも最後には期待に満ちた
声で受諾してくれた。彼女たちだけでなく、ソロ組にも事前に話を通すつもりだ。
つんく♂の話じゃ、既に事件の概要ぐらいは小学生を除いた全員が耳にしているらしいから、
僅かな手間で済むだろう。
保田は「任せる」と答える一方で、中澤につきまとっていたらしい件の人物をしきりに気にして
いた。なあに、明日からのこっちの動きを無視して安眠なんざできねえって。
稲葉の話で、生活安全課でなく捜査課のベテラン刑事が極秘裏に接触してきたこともわか
った。
ようやく重い腰をあげたか、あるいは逢坂が何かやらかしたのかもしれん。
一方、警察以上に動かなかった電話会社の方も「渉外担当」とやらが動き始めたようだ。
明日はどちらともアポイントがとれてると稲葉は気合が入ってた。報告を楽しみに待つと
しよう。
- 507 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:55
-
娘。たちに起きた怪事といい、好ましいものばかりではないにしても材料は揃いつつある。
明日はもう一丁、カンフル剤をかまして一気に流れを変えてやるぜ。
考えついた俺もそうだが、「面白いやないか」を身を乗り出すつんくもつんくだ。
ま、それもこれも娘。をはじめとしたハロプロメンバーの力を信じているからこそ、仕掛けられ
ることではあるな。
ん?パソコンのバッテリーが尽きかけて…しゃあねえな。
鞄からACケーブルを引っ張り出してると、マナーモードにしたままの携帯が震えているのに
気付いた。逢坂のやつ、こんな時間に何を・・・。
時計の短針は、既に12を通過しかけていた。
- 508 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:56
-
慌しく靴を引っ掛けたところで、移動手段がないことに気付き動きを止めた。
この時間に外出するのが危険なのは承知の上・・・でも、どうやって行けばいいんだろ?
タクシーを呼ぼうものならフロントにバレてしまうし、のこのこロビーに下りて行って騒ぎに
なってもコトだ。マネージャーに迎えに来てもらおうにも、ストップがかかるにきまっている。
どうしよう、せっかく中澤さんが・・・。
親指の爪を噛みしめるその耳へ、意外なプレゼントが届けられたのは次の瞬間だ。
ピンポン
こんな時間に誰?
ジョーからきつく言われていたためもあり、慎重にドアのレンズを覗いた彼女は、やや動揺
しながらもすぐにロックを解除した。
- 509 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:56
-
「あのー・・・・・・」
遠慮がちにかけた声に、相手は微笑で応えた。
「行くんでしょ」
「へ?」
「急ごう。時間がない」
「は、はい」
忘れ物を頭の中で反芻しつつドアを閉じると、訪問者は「地下に車があるから」と告げ、
エレベータへ向けて先をどんどん進んでいく。
まるであたしの動きを読んでたみたい・・・。
降下を始めたエレベータの中で再び微笑んだ同行者は、不思議な母性を湛えていた。
安倍が持っているものと質が違うそれは、初対面ではないにしてもほとんど話したことすら
ない人物の訪問を受けた彼女を、心地よい安堵で包んでいた。
- 510 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:57
-
『警視庁まであと2km』の標識を眼にしたひとみが「どうにか間に合いそうだね」と焦りを
余裕へ変換する横で、俺は8人乗りの巨大なミニバンのハンドルを右に切った。
早稲田から新宿までとっておきの裏道を使い、飯田たちを乗せ僅か15分でこの地点まで
来られたのは我ながら上出来だ。
「報道陣の包囲を考えて、今夜中に帰ってもらうことになった」
逢坂の奇襲にはさすがの俺も慌てたね。とりあえず着替えをとバタバタしはじめたところへ、
ひとみがチャイムをならしやがったのにはダメ押しされた。朗報は、俺だけじゃなく相棒にも
届けられたのだ。
こっちはパンツ一丁で荷物をがさごそやってんのに、涼しい顔で「読みが浅いなあ」などと
言いながら飯田に電話する冷たい視線といったらよ・・・。
もう一本かかってきた電話を終えて部屋を出るまでの間、無言のプレッシャーをかけやが
って。
- 511 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 20:58
-
こういうこともあろうかと風呂にも入らず、リラックス・タイムに入りかけてた安倍と矢口の
部屋で推理合戦を挑んでたってんだから、眠れぬ夜をどう過ごそうかと二人で頭を捻って
たらしい飯田×後藤も含めて一網打尽、今夜は吉澤ひとみの一人勝ちだ。
ま、明日の朝に間に合ったら年上チームを連れてってやろうと車種を選んでおいたことで
一本先取してるがね。
左にウインカーを出すと、ひとみはこの時間でもところどころ窓から灯りが洩れるビルを
見上げて「ここか・・・」と呟いた。
そう、逢坂と元上司を除いてすっかり敵に回っちまった連中の巣窟・警視庁は、ネオンが
皆無に近い夜空にその威容を黒々と誇っていた。
- 512 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:01
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.38
「大丈夫?」
後席で安倍が矢口の肩を抱いている。笑顔で帰還を喜びたいのは、最後席でひとみと
同じように窓外へ視線を向ける石川をはじめとして全員が同じのはずだ。しかし、小柄な
サブリーダーだけはそうもいくまい。彼女と姉貴分たる中澤の関係を知っている者は、皆
そう思うだろう。
明日、正確には今日の夜が明けてからのことを考えると涙はしまっておいてほしいものだ。
- 513 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:02
-
「お・・・」
正面玄関に三つの人影が浮かんだのは、到着から僅か2分後のことだった。
後藤が無言なままスライド・ドアを開くと、向こうも気付いたようだ。
「裕ちゃん!!!」
安倍が歓喜の叫びをあげる。人影のうちひとつは、待望の人、中澤裕子だった。
「裕ちゃん・・・」
まるで最愛の人との邂逅を果たしたかのような後藤の呟きと同時に、飯田が、石川が、
次々とダッシュしていく。
「よかった!裕ちゃぁん」
「ごめんなあ心配かけて」
「おかえりなさい」
「ありがとうなぁ」
たちまち輪と化した歓喜の渦は、数瞬の後ふたつに分かれた。
最後に車を降りた人物が、動くことも叶わず立ち尽くしていたからである。
- 514 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:04
-
「矢口・・・」
変な表現だが、俺には二人をつなぐ糸が見えたような気がした。
「・・・裕ちゃん」
頬に光る雫を拭うことなく、矢口は中澤の胸に飛び込んでいく。
「裕ちゃん・・・・・・裕ちゃぁん」
「許してな・・・・・・・」
先輩・後輩、姉妹、親友・・・・・・・そのどれとも違う二人が固く抱きしめあうのを見守る娘。
たちプラス後藤を見て、正直「おやっ」と思ったね。
全員が感涙にむせぶもんだという予想は、いい意味で見事に裏切られちまった。
いまにも泣き崩れそうな顔をしてるメンバーはひとりもいないどころか、別のものを心に宿し
ているのが、手に取るようにわかったのだ。
俺がハンターとして培った嗅覚が正しければ・・・・・これは『闘志』に違いない。
- 515 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:06
-
飯田から『事務所は力を貸そうとしてない』ことは聞いてる。UFAの首脳部はバカの集まり
かとも思うぜ。所属タレントをないがしろにするにもほどがあるってもんだ。
だが、この娘。たちを敵に回した連中はもっと阿呆と言える。
少し離れて見守る逢坂と涼子も同じ思いだろう。世話をかけちまったが、まだ礼は早いと
眼が言ってる。
同感だな。
中澤という最強の司令官が復活しただけなんだから。
「手ごわい、か」
「ええ。甘く見ると痛い目に遭うのはこちらかもしれません」
「一度火が点いた追及の手を逃れるのは至難かもしれんな」
「『そのスジ』では有名だそうです。尾行を阻止したのもおそらく奴でしょう」
「警察を離れても絡んでくるとは・・・蛇のようにしつこい男だ」
- 516 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:07
-
言いながら窓際に立った「上司」へ(蛇?あんたがだろ)という目を向けた部下は、日浦の方
はどうします、と訊いた。消しますか、と言わなかったのは相応の金を払っているためだ。
案の定「黙っているうちは放っておけ」と答えが返ってきた。
もともと、仲介役を担わせただけである。ハロー!プロジェクトメンバーで不遇をかこう彼女
たちを引き抜いて新事務所立ち上げという構想以外、こちらの情報は洩らしていない。
承知いたしました、と一礼し下がろうとする部下へ「監視は怠るな」と指示し、夜景に目を
移す。こめかみに浮いた血管が物語るのは、苦渋か、それとも殺意か。
高科め・・・また邪魔する気か。残る二人も、性懲りも無く出てくるだろうな。
警視庁捜査一課の「スリー・セインツ」と呼ばれた奴らはかつて、周到に用意されたダミー
を悉く撃破し、鉄壁と思われた密輸ルートを灰燼へと変えてみせた。
過去にあげた収益で十分に会社は潤っていたものの、あれほどの体制を再び敷くには
相応の資金が要る。
今回のプランは、昔日の栄華を取り戻すための布石ともなっていた。
- 517 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:08
-
どこまで高科が深く関わっているかは分からない。だいいち「彼女たち」との間に繋がりが
あるなどと、警視庁を退職した後のことを少しでも知っている者なら想像すらできないことだ。
当時は同業の誰もが恐れていた「スリー・セインツ」は、高科に続いて『頭脳』とも言われた
津村が警視庁を去り、脅威は消失したはずだったのだ。
ならばこちらも、プランを改めようじゃないか。
殺人事件はこちらとしても想定外だった。しかし練りに練った構想をこのまま崩落させるわけ
にはいかない。
猪乃旗興業代表取締役・須崎忠正は、どう始末をつけるかに思考を移した。下部組織は、
さまざまな分野に散っている。中には暴力沙汰専門で、金を積めば喜んで服役に応じる
輩もいるのだ。持駒に不足は無い。
- 518 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:09
-
備え付けのミニバーから取り出した洋酒を運ぶ口元には、邪悪な微笑が刻まれていた。
どうせボディガードもどきに決まっている。出しゃばるようなら排除すればいい。
やがて部屋に響きだした嘲笑からは、不思議な余裕が感じられた。
だが、須崎はまだ気付いていなかった。
「敵」は高科穣也ひとりではないことを。
モーニング娘。たちの心を、悲憤に染めてしまったことを。
「もう・・・・嫌だからね裕ちゃん」
「なに?」
「心配かけすぎ!いっちばん年上なのにぃ」
- 519 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:12
-
ようやく身を離した矢口が既にペースを取り戻しつつあるのを確認し、傍らにいたひとみが
歩き出した。俺の胸をポンポン、と叩きながら見せた微笑がとんでもなく魅力的だったのは
オマケに過ぎない。
「何やのんトシって。関係ないやん」とおどけて再び矢口を渾身の力で抱きしめる中澤へ、
ひとみは「お疲れさまでした」とこの時間にふさわしい落ち着いた声で語りかける。
「・・・・・・よっすぃー・・・・・」
「遅くなってすいませんでした」
矢口を抱いたまま、中澤は大きく首を左右に振った。
「いろいろ動いてくれたんやてな。ありがとう。感謝するわ」
「あたしなんか・・・・・結局何もできなくて」
ひとみは謙遜したが、中澤が拘束された晩のことを聞いた人間は誰も認めないだろう。
- 520 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:14
-
絶望の深淵に落ちかけた娘。たちを救い上げたのは。
ただ勇気づけるだけでなく、二手、三手先を読んでその夜のうちにアイドル好きの老医師
まで担ぎ出し、年長組に更なるパワーを与えたのは誰だ?
吉澤ひとみであるのは、みのもんたのコールも必要ないファイナルアンサーだ。
そして、もう一人。
背後に急停止した車のドアが開くや、すぐ脇を風のように走り抜けた小柄な影は。
「間に合ったぁ!」
一度耳にしたら忘れようがない愛嬌満点の声に、全員が一斉に振り向く。
- 521 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:15
-
「松浦ぁ!?」
「まっつん!」
「あやや?」
本名と愛称が入り混じった歓声は、彼女にこそふさわしいと思える。
「よかったです会えて!」
よく似合う白の帽子を上下させて息を整える間も先輩たちへ最高級の笑顔を見せるのは、
中澤解放の最大の功労者・松浦亜弥であった。
To be continued...
Next time is start at chapter.40
See you again and good luck !
- 522 名前:新人 投稿日:2004/03/25(木) 21:18
- 今夜の更新は以上です。
いま気付きました・・・今夜はchapter.38と39でした(汗
みっくすさん、名無しのよっすぃ〜さん、どうぞ更新時には訂正を
お願い致します。
今週末は、フットサルの大会ですね。
勝利を祈願しつつ、また次回お会い致しましょう。
では。
- 523 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/25(木) 22:08
- 更新お疲れサマです。
やはり彼女が・・・。
敵の影も見えてきましたね。
作品冒頭のシーンと何か関係があるんですかね?
ではでは次回も楽しみにしておりますw
- 524 名前:みっくす 投稿日:2004/03/25(木) 22:16
- これで、ハロプロ陣営は面子がそろいましたね。
いよいよ黒幕と対決ですね。
次回も楽しみにしてます。
chapter.の件 了解∠(⌒∇⌒)
- 525 名前:つみ 投稿日:2004/03/25(木) 22:20
- 敵サマも姿を表しましたね・・・
これからはかなり危険なことが起こりそうですね。
やはり彼女でしたね。
最大の功労者は・・・
- 526 名前:とこま 投稿日:2004/03/28(日) 21:28
- 更新お疲れ様です。
いよいよ闇との戦いが始まりますね。
次回も楽しみに待ってます。
- 527 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:00
- こんばんは。作者です。
時間も遅いので、さっそく更新したいと思います。
と言っても1話だけですが・・・。
- 528 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:00
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.40
「もう行っちゃったかと思いましたぁー」
おそらく後藤か藤本から知らせを受け、すっ飛んできたのだろう。松浦が投宿するホテルは
ここにいる中で最も遠い。
「いやー、焦りましたよー!中澤さん、おかえりなさーい」
自分の功績などおくびにも出さず心から喜んでいるのが、後姿からも感じられる。と思ったら
すっと俺を振り返り、先刻に負けない笑顔をプレゼントしてくれた。
- 529 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:01
-
「ジョーさん、お疲れ様でーす」
「おお。そっちこそ」
うーむ。お互い声だけで、面と向かうのは初めてのはずなのにこの親近感は何だ?
ロスのオフィスで聞いた膨大な量の留守電に混ざっていた日本語メッセージのうち、松浦
亜弥が入れたものがあったと知ったら、ソロ組トップを後藤と併走する超絶アイドル出現の
衝撃に硬直したままの逢坂は、マジで卒倒するんじゃないだろうか。
後藤から俺の連絡先を聞いた松浦は、加護たちが進めてたタクシー会社の調査にヒントを
得て「個人タクシーをあたってみようと思うんですけど・・・よかったら連絡ください」と携帯の
番号まで入れていた。大胆と言えば大胆。恐いもの知らずと言えば・・・。
しかし発想は正しい。すぐにかけてみたが、日本では真夜中にあたったためさすがに出な
かった。で、こっちも留守電に入れたってわけよ。
- 530 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:01
-
ちなみに、俺はテリトリーを絞って探してみろと言っただけで、教授を頼れぱなお確実だよ、
とアドバイスしたのは後藤である。
かつて深夜のテレビ番組でMCとして共演していた松浦は、楽屋で「面白い個人タクシー」
の話を中澤がしていたことを覚えており、加護たちの「おさえ」のつもりで調査を開始した。
教授がピックアップした50人を超えようかという運ちゃんたちに、たった一人で電話をかけ
まくって探し当てたのが、あの根本大輔運転手だったのだ。
昨日は仙台でのツアーがあり、例の記事がUFAを席巻したのはその真っ最中だった。
松浦の安否こそ最も懸念されるべきとつんく♂に打診したところ、既に手は打ったと笑って
いた。昨夜に電話で話したあのとき、彼女は宿泊をキャンセルして寝台特急に乗り込み、
一息ついたところだったのだ。
翌早朝に函館に着く列車なら、8時過ぎに空港を飛び立つ一番の便に余裕で間に合う。
どこで作ったコネかは知らんが、つんく♂はそれを実現させたってわけだ。
裏をかかれたマスコミは、次々に到着する新幹線から一向に降りてこない松浦亜弥を探し
求めて、東京駅を右往左往したことだろう。ご苦労さん。
- 531 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:03
-
考えながら、俺は松浦を凝視している自分に気付いた。
親友だという藤本や、いつものスマイルが戻った石川らと喜びをわかちあう姿は、逢坂が
言うところの「アイドルの中のアイドル」らしい眩さである。
うーむ。黙って見ていたい気もするが、ひとみのエルボーが飛んでくる前に場を動かすか。
中澤に視線を移すと、ほどなく向こうも俺を見た。そうとも、お前の過ぎた自戒が着地する
はずだった泥沼を、羽毛の園に変えたのはこの娘だぜ。
眼で訴えると、僅かに頷いたように見えた。
「裕ちゃん」
矢口に促された中澤が、ゆっくりと松浦の前に進み出る。
「あんたのおかげや松浦。ありがとうな」
「そんなぁ、ぐむっ」
おそらく矢口に対して以上の力を込めたのだろう。抱きしめられた松浦は胸に顔を押し付け
られ、二の句を継げなかった。
- 532 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:03
-
(ぅぉん・・・ぉん)
いけね、忘れてたぜ。
松浦、ひとりで来たの?もう電車ないべさー、などと盛り上がるのを聞きつつ、俺は車の
最後部に押し込めたままのゼンを開放しに向かった。
すまんすまんこの償いは必ずするからよ、と声をかけながらバックドアを開けると「クォン!」
と抗議のひと吠えを残し、ゼンはさっさと中澤の方へ駆けていった。
「おー、ゼーン!逢いたかったわぁ」と広げられた両腕の中心へ飛び込むゼンは、まるで
帰巣本能のみを頼りに数千キロを走破した愛犬のようだ。
ったく、矢口も溺愛してるし、さっきまでは安倍に寄り添ってやがって、この幸せモンが。
- 533 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:04
-
「へえ・・・・・あのコがゼンか」
いつのまにか隣に並んでいた人影の呟きが耳に届いたのは、数秒後だ。やっとその気に
なったらしい。
バックドアに手をかけた瞬間に気付いてはいたのだが、別にいままで無視してたわけじゃ
ない。久しぶりに会う「もと同僚」たちに遠慮しているのが分かったから、意を汲んだまでの
ことだ。
「ジョーさん、はじめまして。っても、アタシだけ?」
ついさっき、出撃準備中にかかってきた電話の主は、いまも現役で通用する微笑を送って
寄越した。
どうでもいいが、また一人、只者でない女が増えたことになる。
- 534 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:04
-
「あんた誰と一緒に来たん?」
「えへへ・・・救世主ですよ、救世主」
「なんじゃそりゃ」
話はいつの間にか松浦の同行者に移っていた。誰が真っ先に気付くかね。
「あれ・・・・・・・・ちょっと!?」
安倍が気付くとは、俺もまだ修行が足りん。
「え、なに?」
「うっそぉー!」
『タンポポ』の同期があげた嬌声にニッコリすると、モーニング娘。の初期メンバーたる彼女
はゆっくりと接近をはじめた。
- 535 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:05
-
中澤の瞳が最大限に開かれたのも無理はない。まさかこの女が絡んで来るとは、俺も全く
予想していなかった。
「裕ちゃん、あんま心配かけるもんじゃないって」
「あやっぺぇ!?」
脱退後4年以上を経てもなお、その美貌は些かも衰えを見せない二児の母、石黒彩がな。
To be continued...
Next time is start at chapter.41
See you again and good luck !
- 536 名前:新人 投稿日:2004/04/03(土) 00:16
- 今夜の更新は以上です。少なくて申し訳ありません。
523 名も無き読者さん
冒頭のシーンですか・・・あまり言及するとバレますので(w
このあとジョー自身もピンチを体感することになるでしょう。
524 みっくすさん
まだ一人いたんですよ。第三子ご懐妊記念ってことで許して下さい。
525 つみ
松浦を登場させるからには、相応の役を担ってもらうつもりでした。
そしてこの後も・・・いかん、口が滑りました(^^ゞ
526 とこま
闇の部分は、登場人物の殆どが持っていますよ。全くないのは逢坂ぐらいかも。
最大の闇は無論「敵」です。ジョー×よっすぃー×ハロプロがどう立ち向かうか
お楽しみに。
桜は今が満開ですね。花見は忙しくて行けないし、明日はフジの新番と
なっつぁんのドラマ・・・タイムマシンが欲しいです。
では次回の更新にて。
- 537 名前:つみ 投稿日:2004/04/03(土) 01:05
- こりゃまたえんらい人が来ちゃいましたね。
まつーらさんもがんばってましたね!
まだ彼女には役割があるのかな・・?
楽しみにしてます!
- 538 名前:みっくす 投稿日:2004/04/03(土) 03:30
- 思いがけない人物の登場ですね。
あややが1枚絡んでいたとは・・・
次回も楽しみにしてます。
- 539 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/03(土) 10:43
- 更新お疲れ様です。
なるほど、そういうことだったんですね。
新たな登場人物も出てきたコトで益々盛り上がってきそうな気配・・・。
次回も楽しみですw
- 540 名前:とこま 投稿日:2004/04/05(月) 20:32
- 更新お疲れ様です。
これはまた・・・驚きですね。
次回も楽しみに待ってます。
- 541 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:14
- こんばんは作者です。
前回からまたも一週間以上空いてしまいました・・もしお待ちいただいている方が
いらしたら申し訳ありませんので更新します。
- 542 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:16
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.41
オリジナル・メンバー4人が集結したモーニング娘。たちと、ようやく硬直が解けた逢坂と
涼子が握手を交わすのを見ながら、俺は昼間のことを思い出していた。
警視庁捜査一課の元上司プラス、津村検事正殿と別れた直後のことだ。
目星をつけた移籍ブローカーと、これから接触する合コンの幹事役と、二人をマークしなく
ちゃならないことに僅かだが頭を悩ませ始めていたところへ、教授から電話が入った。
よほどの急用でなければ直電なぞしてこない老医師が、受話器に向かって上ずった声を出し
たのは、俺がフリーになって以来となると思い出すのが難しい。
- 543 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:17
-
曰く「石黒彩が診療所を訪れ、捜査に加わると申し出た」
松浦亜弥と同様、アポイントなしで訪れた元アイドルは、つんく♂の了承を得て事件のいき
さつを全て聞いた後、自分もやると宣言したのだ。
「やる」というのは、例のマークすべき人物を任せろということらしい。
昼間は自分が、夜は美弥子が、ということでさっさと話をまとめ何処かへ姿を消したあと、
中澤解放の報を受けて松浦のところへ駆けつけるまでに何をしていたかは知らん。だが
彼女の参戦は正直、渡りに船だった。
石川事件のときはまだツアー前であり、つんく♂が石川とひとみを入院させるという強引な
手を使えた。
ハワイでは、グループごと休暇だった。
しかし、いまは年末に向けてスケジュールがタイトになりつつあるうえ、後藤もツアー中と
きてる。
逢坂&涼子とて、公務との兼ね合いには神経を使う。人手は圧倒的に足りなかった。
ツテがないわけじゃないが、UFAの支援をアテに出来ない以上、つんく♂と俺の私財を
はたくしかない。つんくはつもかく、俺の資金は無尽蔵じゃないから、少しでも安く上がる
手立てを考えてたんだわ。
「眼光が尋常ではない。言う事もまともじゃ。任せてもよかろう」
と教授が太鼓判を押す助っ人には、ちょっとした因縁を俺個人が感じてる。
- 544 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:18
-
俺が警察を辞めた頃、『石黒彩が「LOVEマシーン」を花道に引退する』と報じられたし、
民間のエージェントから転進をはかった時期に第一子が誕生したと聞く。不思議と節目が
一致してるのだ。
今回はというと、つんく♂と二人して「少しばかり懐が寒くなるのも仕方ない」と無理に納得
しようとしていたところへ救助船が現れたようなもんだ。
ただし、彼女には家庭がある。万が一にも、旦那や子供たちを悲しませることになっちゃ
いかん。そのあたりの覚悟を確かめておかにゃなるまい。
「ぐおっほん」
「?何よ思わせぶりに」
ひとみはもうちょっと旧交を温めさせろと言わんばかりだ。もっとも、理解せえっちゅう方が
無茶か。
- 545 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:19
-
「家族には話してあるんだな」
途端にパタと会話が止まる。石川がゴクリと喉を鳴らすのが分かった。俺の口調がマジ
だった為だけじゃない。対象と意味までも悟ったのだろう。
「ご心配なく。自分から危険な真似はしないと、固く誓いを立てさせられましたから」
石黒は数瞬の間を置き、惚れ惚れする微笑とともに答えを寄越した。
「わかった。明日の朝までに、ホットラインを用意してもらうようつんく♂に頼んである。朝
イチで受け取りにいってくれ。何かあったらすぐ俺に電話しろ」
「了解」
少し驚かしてもいいが、この余裕は崩れないだろう。石黒だけじゃなく、許した旦那も大し
たもんだ。
子供はともかく、旦那にしてみれば、本人の親友のためとはいえ容易に首肯できる事件
とはとても思えない。石黒の話は本当だろうが、思惑通りに行かないのがハンティングって
もんだ。どんな危険が落とし穴を穿っているか、命までは取られまいが、ある程度の危険は
避け難いと思った方がいい。
ただし旦那も、恋女房の意思を尊重する度量だけは持っていたのだろう。この時間に松浦
を連れ歩くだけで、危険は相当なものだと想像できないわきゃないしな。覚悟だけはして
いるとみた。
- 546 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:20
-
もっとも今から護衛の手配はできない。次善の策をとるしかねえな。
「明日の朝、いや松浦を送ってからでもいい、ここへ行け。話はつけとく」
とポケットから出した小物体を放る。体勢を崩さず片手で受けた石黒は「ここは・・・」と呟い
た。つんく♂か、あるいは中澤から聞いていたか。
「ジョーさん、いいの?」
マッチに印刷された『BALALAIKA』の文字を認めたひとみが、店の本質を知る全員を代表
して訊いた。怒らないところをみると、考えは俺と同じだったようだ。
「今回限りの特別措置だ。装備はスペンサーに選んでもらえばいい」
誰も反論しないのに満足し、俺は最後に「必要ない危険は冒さんでくれ。俺からも頼む」と
結んだ。
込めた意味をどう理解するかは本人任せにするしかないが。
- 547 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:21
-
「さあ、積もる話もあるだろうが、今夜はもう休めよみんな。明日はライヴだろ」
逢坂の声は別に名残惜しそうではなかった。石川誘拐事件以来、けっこう飲み会に顔を
出してるらしいから、余裕だなこいつ。一般人からすりゃ、いつまでだって見ていたい光景
だろうに。
「はい、とっとと乗った乗った」
俺が促すと、娘。たちは「ちぇーっ」(by矢口)だの、「安心したら、ふは・・・・眠くなってきた」
(by後藤)だの、「マネージャーみたい」(by石川)だのと不平不満?を漏らしつつ乗り込んだ。
誰の顔にも安堵が色濃いのがわかる。
先に見送ることにして車へ近づくと、松浦が助手席のウィンドゥを下げた。
「つんくさんから聞きましたよ。頑張ります」
若干だが声を潜めている。教授と接触したのなら俺たちが考えてる大仕掛けは石黒の
耳にも入っているはずだから、そんなのは必要ないぜ『あやや』?
「解決したら一杯飲りましょうね、裕ちゃんたちと」
ほれ、意味不明に近い松浦の一言にも余裕じゃんかよ。
- 548 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:22
-
「えーあたしも行きたーい」
「こら、まだ始まってもいないんだぞ」
「へへへ、じゃ、おやすみなさーい」
「おお。頼んだぞ石黒」
「お任せあれ。おやすみなさい」
思わず呼び捨てにしちまったが別に気にした風もなく笑顔を見せ、石黒は車をスタートさせ
た。おかしな尾行が付いてなさそうなのを確かめ、俺も車へ戻る。
いつのまにか逢坂と涼子の姿も消えていた。ま、あの二人に挨拶なんぞ必要ないな。
- 549 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:26
-
「よっしゃ、帰るぞ」
「運転大丈夫?」
多少窮屈そうな後席から安倍が声をかけてくれた。ふむ、口調が確かに母親っぽい。思わ
ず大丈夫だよ、と頭を撫でる手が伸びかけたのを堪えた。
「何の、まだ夜はこれからよ。なっ中澤」
ルームミラー越しに眼を合わせながら言うと、中澤は僅かに頷きながら「その通りっ。子供
とちゃうねんからなー矢口」とまたも矢口を抱きすくめながら返してきた。流石だな姉さん。
ちょっと裕ちゃん、と抗いながらも笑顔を絶やさない矢口に、飯田以下のメンバーも自然と
顔がほころんでいく。嵐の前の何とかってやつかね。
「うし」とパーキングブレーキを解除する隣でひとみが俺と中澤の顔を交互に見ていたが、
無視してアクセルを踏んだ。
同席するかは任せてもいいだろう。
- 550 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:27
-
津村涼子のマンションは、さほど遠くない都心の住宅街にある。逢坂はハンドル片手に
「お疲れさん」と労をねぎらう。もっとも、声をかけられた方は短いドライブ中に眠りこけて
いるが。
中澤さんを今夜のうちに出すわよ、と電話してきたとき、涼子は既にデータバンクから過去
の事件を洗いざらい抜いてきたあとだった。これから自分もそうしようとしていただけに、
猪乃旗興業に対する自分以上の怨念に驚いた。
高科と自分も勿論そうではあるが、親友が退職してから検察へ移るまでの数ヶ月間に
彼女の中で燃えていた物は、行き過ぎた敵愾心とも思える。それがいま再び、点火されよう
としているのかもしれない。
「ん・・・・ことみ・・・・・」
今は亡き肉親の夢でも見ているのか、涼子の寝言は普段の彼女からは考えられない悲し
げなものであった。既に3分ほど前に到着している。
「涼子、おい着いたぞ」
「は・・・・・あぁっ?」
- 551 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:28
-
滅多に見せないビックリ顔で起きた東京地検特捜部の紅一点は、「ありがと」と閉めかけた
ドアを再び開け「コーヒーでも飲んでく?」と訊いた。
「やめとくよ。彼氏に悪い」
郷里に帰った折、10年以上を経て再会を果たした同級生と交際がスタートした。と聞いた
のは3ヶ月ほど前のことである。知る限り学生時代以来の恋愛だ。大切にしたいだろう。
「そっか。別に向こうも知ってるんだけどね」
時間も時間だと涼子も判断したようだ。
じゃ明日ね、と小さく手を振りつつ姿を消したマンションは、独身女性には不釣合いなほど
広い間取りと、築年数を感じさせない瀟洒な作りとを備えている。
同僚が家族の仲間入りを果たした暁には二人に譲り、自分は賃貸住宅に移る準備をして
いた彼女のプライベートを知る者は、ごく僅かしかいない。
そのうちの一人、田宮課長が投げた一言を反芻しながら、逢坂は家路へと意識を移した。
- 552 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:29
-
「津村君を止められるのは、お前と高科だけだ」
直後は理解に頭を捻ったが、中澤釈放に奔走する姿を見た後のいまなら解る。
けっして表には出さないものの、「スリー・セインツのアテナ」が抱くものは、容易に消火し
得ない火焔だ。
火消しと岡引の二役か・・・・・高科がチームにいてくれりゃなぁ。
自ら望んだとはいえ、当初の読みと少しずつずれ始めた事態に若干憂鬱な逢坂であった。
To be continued...
Next time is start at chapter.42
See you again and good luck !
- 553 名前:新人 投稿日:2004/04/10(土) 23:40
- 今夜の更新は以上です。少なくてごめんなさい。
537 つみさん
松浦がこのまま引っ込むとは誰も思わないですよね?
私もその一人だったりします。
538 みっくすさん
私も同じです。書いてるうちに、自然と石黒が出てまして・・・実はデビュー当初
は彼女推しだったんです、私。
539 名も無き読者さん
お楽しみいただけてますでしょうか。
盛り上がりということなら、まだ活躍してないメンバーがいますよね。とくに
今のハロプロで最重要人物と思われる・・・。あわわわわ、また誘導尋問に(w
540 とこまさん
まだまだ、驚かせますよ?石黒とて、伊達に母親を張ってるわけじゃないし、
ハロプロのソロ組・・・いかん、これ以上は(w
では今夜はこの辺で。
次回の更新でお会い致しましょう。
- 554 名前:つみ 投稿日:2004/04/10(土) 23:59
- 津村さん燃えてますね。
燃えすぎないことが心配です・・・
ってか石黒さん・・・
中澤さんにひけをとらない人がココにもいましたね!
- 555 名前:みっくす 投稿日:2004/04/11(日) 05:41
- 津村さん、個人的に何かあるのですかね。
物語もいよいよ大詰めってとこですかね。
次回も楽しみにしてます。
- 556 名前:とこま 投稿日:2004/04/11(日) 10:33
- 更新お疲れ様です。
津村さんが暴走しないことを祈ります(-人-)
- 557 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/11(日) 17:43
- 更新お疲れサマです。
楽しんでますともw
最重・・・あの人ですかね?
てことは・・・。(意味深
次も楽しみにしてます。
- 558 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 20:55
- こんばんは。作者であります。
ハロモニ。をBGVに更新です・・・田中のヤンキー似合いますねえ。
亀井は在りし日の中森明菜みたいだし、道重は・・・あまり変わらんな(w
では、今夜の更新を。
- 559 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 20:56
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.42
エレベータの扉が閉まるまで、誰もフロアに現れなかった。この時間だから当たり前か。
目的は最上階にある。ビジターは1時で追い出されるけど、宿泊客は3時までOKとガイド
に書いてあった
果たして、エレベータホール直結の入口には「Guest Only」と書かれた小さな黒板があり、
ボーイに宿泊者カードの提示を求められた。
本名を使っているのに眉一つ動かさなかったのは、このクラスのホテルとしては当然だろう。
ジーンズにスウェットという思い切りラフなスタイルは半分ほど席が埋まった店内で明らかに
浮いていた。宿泊客たちが好奇の視線を向けている。
- 560 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 20:57
-
周りを気にせず自分と似た服であるはずのカップルを探すと、最深部のカウンターに姿を見つ
けることができた。
「ようそんなこと考えるなぁ」
女性客の姿は少なくないが、京都弁で、それも美しい高音となれば一人しか考えられない。
臨席にではなく、携帯電話の相手に対してのもののようだ。
「貸せ」と豹柄の物体を奪い取った男も、相手が相手だとすればごく少数しかいない。
吉澤のよく知る「教授」と逢坂刑事、そして「何するん!火の玉ジョーのアホ!」である。
「 ・ ・ ・ るほどな。悪くない。お前ひとりで考えたのか?ああ。選択は姉さんに任せよう」
「この後に及んで選択権を押し付けるか」
「うるせえ。黙ってやりゃいいんだよ」
「少しは労わろうと思わんの?」
声量を抑えているとはいえ、二人は『あの時』と変わらない掛け合いをくり広げていた。
っかしいな・・・・・勘違いだったのかな。
予想に反した空気に声をかけることも出来ず立ち尽くす吉澤に、中澤が気付いた。
「よっすぃー!?何やのんこんな時間に」
「何って・・・・・・呼ばれたから」
「はん?」
- 561 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 20:58
-
けっ、下手な芝居はやめろよ姉さん。さっき「遅いなあ」なんて入口を振り返ってたくせに。
思わず突っ込みそうになったが口には出さず、ひとみに「今夜はソフトドリンクな」と言い
渡すと、若干ムッとしながら中澤を挟んで座った。未成年のくせにスペンサーの店で幻の
カクテルなぞ注文しやがって、10年早いんだよ。
「レモネード、ホットで」
大人しく従ったのに満足し、話を元へ戻す。
「鉄は熱いうちに、プラス明日は四箇所でライヴだからな。もってこいだ」
「ま、分散はするわな」
敵さんの戦力も無尽蔵じゃあるまい。地方へ散る娘。と後藤、松浦に至っては首都圏での
ライヴだ。当然、警備は最も厳しい。一人や二人でどうにかなるほど、俺ぁ甘くないぜ。
「お前なら台本なぞいらんだろ。ドラマで鍛えた演技、とっくと見せてもらうからな」
「ただでさえ緊張するのにアドリブかぁ」
「よくわかんないけどさ」ひとみが割って入った。「コンセンサスは取ってるんでしょうね」
UFAにってことか。必要かどうかは微妙な気もするが。
「つんくから伝わってる。抗議がないってことはOKとみていいだろ」
「抗議?」
- 562 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 20:59
-
眉を寄せた後輩に初代リーダーがプランを話しはじめる。中澤のことだ、包み隠さず話す
だろう。俺はカクテルをちびちび飲りながら、横目で見守った。
ズバリだ。話が進むにつれ、中澤へ向いたひとみの横顔プラスうなじが、徐々にだが紅潮
して行くのがわかった。中澤が話を結ぶと、ひとみは一度俺を見たあと、グラスへ眼を移す。
突っ込まれるのは覚悟してる。さあ来やがれ。
だが、悪戯っ子みたいな眼になってる中澤の横で静かにドリンクを口へ運ぶひとみは、怒る
かと思いきや意外な一言を放ちやがった。
「なるほど・・・慌てるね向こうも」
ときたもんだ。まさかこいつ、俺とつんく♂の手の内を読んでたんじゃないだろうな。
- 563 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 21:01
-
動揺を隠しつつ「そういうこと。実戦部隊としちゃどうだ、やれそうか」と訊けば「無理っつっ
てもやらなきゃならないんでしょ」と憎まれ口で応戦しやがる。
ここで変に押し問答しても仕方がねえ。本当は直前に明かすつもりだった逆転のシナリオを
開示しよう。
「一度しか言わんからよく聞いとけ」と前置きし、口元を引き締めるひとみへ全てを伝える。
真綿が水を吸い込むように吸収していく相棒の泰然自若は、俺を妙な感覚で包んだ。
こちとら、伊達にキャリアを積んでるわけじゃない。つんく♂とて、魑魅魍魎が跋扈する世界
で一流の評価をほしいままにしてきた。
手前味噌にもなるが、その俺たちが捻り出した物をこの18歳の少女は凌駕したというのか。
ひょっとして、俺は大変なやつを選んじまったのかもしれんと考えながら「以上だ」と結ぶ
と、ひとみは手にしたグラスを見つめ静止した。
ときおり姿勢を変えるだけで何も言わず、時間だけが過ぎていく。
- 564 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 21:02
-
低い音量のBGMと客の雑談が流れる店内で、俺たちのいる一角だけが音を失ったように
錯覚しちまう沈黙が続いた。
こいつを破るのは俺の役目じゃねえな。
「真犯人、捕まえたいんよ」
呟いた瞬間、中澤はハロプロと自分を切り離していたに違いない。
親友の死を悼み、その嫌疑をかけられてしまった自分に激しい後悔と嫌悪を抱く、ひとりの
女性にすぎなかった。
「私も・・・・・許すつもりないです」
これが18歳の少女か、と腕組みしたくなるような胆力を備えた声は低く静かに、俺の腹にも
響いた。
ゆっくりと頷いたひとみもまた、同じ想いだったのだろう。堂々と言ってのけたことが、同時に
俺の責任をも重くしていることに本人が気付いているかどうか。
- 565 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 21:02
-
「もう寝ません?明日はもっと気力と体力使いますよ」
「せやな。お休みなさいしよか」
「にやってんの、行くよ」
腰を上げる二人に、俺は反応できなかった。
ひょっとしたら、二人に全て委ねた方が万事うまく運ぶんじゃないのか?そんな疑問すら
浮かんできていたのだ。
いやいや、荒仕事はまだ未経験だ。今回はそれに至る可能性も、危険そのものも高いんだ
と思い直しつつエレベータで追い付く。中澤が先に降りても中では無言だったが、自分の
降り際、ひとみは余裕とも開き直りともとれる表情で宣言した。
- 566 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 21:03
-
「明日は気合入れてこうぜ、相棒」
扉が閉まった後、不思議と笑いがこみあげてきた。
別に嘲笑ってわけじゃないぜ。むしろ逆だ。
だいぶ本物になってきたな。
本当の意味での「相棒」って表現を、はじめて使いやがった。
まるで、これがハンターとしての初仕事、とでもいうように。
To be continued...
Next time is start at chapter.43
See you again and good luck !
- 567 名前:新人 投稿日:2004/04/18(日) 21:19
- 554 つみさん
彼女に限って燃え尽きることはないと思いますが・・・有能なブレインであると
ともに、実は・・・いかん、これ以上は。
そして、母は強し、であります。
555 みっくすさん
津村さんの第一作で出てきたエピソードを思い出してください。ヒントが
隠れていたりして。
556 とこまさん
暴走・・・うーむ、保証はできませんが、彼氏も出来たことですし、無茶しない
ように言っておきますね。
557 名も無き読者さん
どんな推理をなさっているのかちょっと恐れてます・・・。いまから軌道修正
できないし(w まだまだ、仕掛けはありますのでお楽しみに。
しかし、ごっつぁんの「マキエル」・・・中澤の気持ち分かります。小説の中
じゃ、のほほんとしているようで実は鋭い彼女なのになあ。
では、次回の更新にて。
- 568 名前:つみ 投稿日:2004/04/18(日) 21:38
- よっすぃ〜かっけー!
非常に「明日」が気になります・・・
次回まで待ってる・・・
- 569 名前:みっくす 投稿日:2004/04/19(月) 06:47
- いよいよ決戦ですね。
「明日」楽しみにしてます。
- 570 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/19(月) 17:57
- 更新お疲れ様です。
どんな推理を・・・ですか?
正直読めないコトだらけだったりw
まだ仕掛けはあるとのコトなので楽しみです。
- 571 名前:とこま 投稿日:2004/04/19(月) 21:08
- 更新お疲れ様です。
決戦ですね。楽しみに待ってます。
マキエルはワロタw
- 572 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:38
- こんばんは。作者でございますm(__)m
昨日の「めちゃイケ」を観てて思ったんですが、藤本の顔つきが変わって
きたと思いませんか?
何となくですが、気迫を感じました。
ただそれだけですが。
では、今夜も少なくて申し訳ありませんが・・・
- 573 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:38
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.43
この時間に電話が鳴るのは珍しいなと思いながら、和久井美弥子は受話器を取った。教授
は母屋で朝食をがっついている最中だ。
「おはようございます。加来クリニックでございます」
(おはようございます。早いですね美弥子さん)
名乗らずとも判った。昨日、訪問を受けたばかりである。
「石黒さんこそ。おはようございます。こんなに早いお時間に、いかがされました?」
(どうせだったら密着してやれと思って)
- 574 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:40
-
穏やかな口調であっても、大恩ある初代リーダーを窮地に追い込んだ輩を許さず、という
意思は伝わってくる。既にターゲットの住居近くで張込みを開始したという石黒に、余計な
ことかもしれませんが、と前置きし、美しい看護師は尾行術を授けた。
「無理はなさらないでくださいね」
(ありがとう。また電話します)
「よろしくお願いします」
美弥子はまるで自分がした頼み事のように、深々と頭を下げた。受話器の向こうにも伝わ
る親愛と誠意は、本来のものとは違う集中力を要求されるはずの石黒に、それを克服する
パワーを与えるだろう。電話を切ると、揶揄するような声が背後から聞こえた。
- 575 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:41
-
「こんな時間からか。見掛けによらず、せっかちなようじゃの」
「教授こそ。いつもはもっとゆっくり召し上がるのに」
愛用のパイプを右手にコーヒーカップを口へ運ぶ老医師へ、美弥子はいつもの微笑を浮か
べ反論した。
「おかしいの?ペースは変わらんかったはずじゃが。ワシが急いておるのか、君の感覚が
狂っておるのか」
独り言のように答えデスクへ向かう背中を、美弥子は不思議なものを見る目で追った。
(私の?)自問しつつキッチンへ足を運んだ彼女は、すっかり片付けられたテーブルを見て
珍しく驚愕の表情を浮かべた。
いつもならこぼしたパンの小片すらそのままに席を立つ老医師が皿を片付けたうえ拭き
掃除まで施していたことより、それを可能にするほどの時間が経過していたことに驚いた
のである。
- 576 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:43
-
医療という本来の職務への責任感に加え、秘書としての情報処理でも師事する医師から
全幅の信頼を得ている彼女は、時に高科や涼子の揮下で優秀な非常勤エージェントをも
勤める。本業・副業ともに、能力は一級品なのだ。
後藤から事態を知らされたとき、彼女は怒りに燃えるよりも娘。たちと拘束された中澤の
身を案じた。機あらば自分も、と考えていたことは確かだが、進展を見せ始めた事態にも
泰然としていたつもりである。
石黒彩との共闘により、やっと自分も、と半ばホッとしている自分に気付いた彼女は、既に
いつもの彼女ではなかったのだろうか。
洗浄した皿を拭きながら自問しかけ、美弥子は決心したように頷く。
妹に等しい後藤たちにあらぬ決心をさせ、長い付き合いでもないのに姉のように良くして
くれる中澤を窮地に追い込んだ「敵」は、身寄りのない自分にとって家族をそうされたに
等しい。親代わりの教授の忠告も、今回ばかりは気にしないことに決めていた。
許さない。絶対に。
エプロンをきちんと畳み、ナース帽を被りなおした和久井美弥子の瞳には初めてとも言える
感情が灯っていた。
彼女を知る人間なら誰もが驚愕に慄いたであろう「復讐心」であった。
- 577 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:45
-
3本目の電話を終え、俺は駅にほど近いビルへ急いだ。
時間的に、授業へ向かう大量の学生と正対する形だ。このあたりは道幅も狭いし、学生と
きたら道路交通法を無視して横に並んで歩きやがる。日本だからいいが、これが米国なら
クラクションを鳴らしっぱなしだぜお前ら。
近くのパーキングへ入れてダッシュすると、どうにか5分前には扉の前に立つことが出来た。
「うス」
「おはようさん」
『おはようございまーす』
入室と同時に、つんく♂とメンバーたちが挨拶した。
ここは金に困ったビルの所有者が一般向けに開放している小会議室のひとつである。教室
みたいな作りで、10cmほどの演壇と背後にはホワイトボード。都合8セットの長机と椅子で
20人は収容できる広さだ。
面子はメロン記念日、ココナッツ娘。、カントリー娘。にハロプロ唯一の演歌歌手・前田夕紀、
昨夜の疲れを全く見せない微笑を湛えた松浦もいる。目を合わせた瞬間、声に出さず「おは
ようございまーす」と唇を動かし僅かに肩をすくめる松浦にゃ、逢坂ならずとも微笑んじまう。
- 578 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:46
-
最前席の隅には、つんく♂が悠然と腕と脚を組んでいた。
既に当局との接触に動いている稲葉、文字通り人生をかけた舞台に挑む保田、そして後藤
と中澤の姿がなかった。ふむ・・・中澤はともかく、後藤はどうした?
それにしてもまあ、これだけのメンバーが一同に会すると壮観だ。既に電話で話したアヤカ
とミカだけでなく、全く初対面のみうなまでもが、顔を見るとしっかり眼をあわせてくる。
誰もが基本をマスターしてるというより、何を告知されるのか覚悟を決めてる顔だ。
そして、共通してることがもう一つある。
全てを暴いた末、敵に制裁を与える意志。
にしても遅せえな。あの『眠り姫』が・・・・飯田が起こしたはずなのに二度寝しやがったか。
若干ながらイラついているのを感じたのか、「すぐ来ますよ」と里田が笑顔を作った。昨日、
引き抜きの関係者ではと保田が睨んだ男の写真を、隣のあさみと共に届けてくれた娘だ。
饒舌なあさみの横で、無言のまま射抜くような視線を浴びせてきた彼女の顔は、まるで
別人のように穏やかな微笑を湛えている。
察するに、話に聞いていたとはいえ、ひとみをはじめとする娘。の現役・OGが妙に買ってい
る高科穣也という男を値踏みしていたものだろう。
石川事件だけでも衝撃なのに、見ず知らずの『バウンティ・ハンター』とかいうのが関わった
とあっちゃ、誰でも多少は訝る。そいつがハワイだけでなく、今回の事件でも絡んできたな
ら尚更だ。
- 579 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:49
-
とはいえ、浮かぶ微笑を見るとどうやらお眼鏡には適ったようだ。
「あいつはいつもこうか?」
「はは、それは微妙ですねぇ」
ハロプロのセクシー担当ユニットとかいうのと掛け持ちでカントリー娘。の中核を担っている
という彼女は、確かに顔立ちは娘。たちと違うものを持っている。逢坂に言わせると「セク
シー1・まいちん」だそうだ。刑事がセクハラまがいのことを言っちゃいかんと思うが。
「おはよーございまーす!!」
はじめて見る焦った空気とともに後藤が転がり込んできた。すっぴんってことはズバリだな。
「遅ぇ。気合が足りん」
「すーいませーん」
俺とつんく♂にかわるがわる愛想笑いを寄越すと、とっとと前田の隣へ座りやがった。
こいつ、集めた理由をわかってるのか?少しは緊張しろ。
「全員揃ったな。ほな本部長殿、あとはよろしく」
つんく♂の合図とともに、俺は壇上へ立った。本部長?あんなロクでもない輩と一緒にする
なよ。心の中で毒づきながら、挨拶抜きで本題に入る。
- 580 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 20:55
-
「まず、中澤のことからな。ゆうべ無事に出てきた。ホテルでゆっくり、身体を休めてる」
室内にほっとした空気が流れたのもつかの間、俺が「マスコミがガタガタ動き出さないうちに
次の手を打つ」と宣言すると、後藤と松浦も真顔に変わった。
「今夜7時、中澤は記者会見を開く。主旨は殺人事件に関わってしまったことに対しての
お詫びだが、そこへ一捻り加える。で、皆にも協力してもらいたい」
予想通り誰も、何のリアクションもなかった。塞がりかけても不思議はなかった道が啓こうと
している…ひとりひとりの顔を見回していく間に、そんなオーラが伝わってきた。
「よく聞いてくれ」
誰かが喉を鳴らす音が空気を揺らした。
To be continued...
Next time is start at chapter.44
See you again and good luck !
- 581 名前:新人 投稿日:2004/04/25(日) 21:07
- 568 つみさん
動き出しましたよ、東洋人bPのハンターのミッションが。
担い手は娘。だけではないようです。
もうヒントは本人が言っちゃってますが。
569 みっくすさん
決戦の刻は来れり。各員奮闘せよ。
ジェネラルは果たしてジョーかよっすぃーか、それとも・・・。
ご期待を裏切らぬよう頑張ります。
570 名も無き読者さん
本当は読んでますでしょ・・・?
いまから軌道修正はできないので、サプライズになることを祈ってますです。
571 とこまさん
今回はまだのように思われますでしょうが、既に闘いは始まっています。
彼の中でも、彼女たちの中でも。
なんて、全部を伏線と思わせるようなレスしたりして(w
では、次回の更新にて。
- 582 名前:丈太郎 投稿日:2004/04/25(日) 22:35
- 一番レス盗ったあ!?
更新お疲れ様です。レスしてないけどちゃん
と読んでました(^^)
何やらすごいコトに…高科は何をさせるつもりなんでしょうか。
次回も楽しみに待ってます。
- 583 名前:つみ 投稿日:2004/04/26(月) 00:25
- 一体ジョーは何をやるんでしょうか?
楽しみです。
いろいろ動き始めましたね・・・
次回も待ってます!
- 584 名前:みっくす 投稿日:2004/04/26(月) 02:49
- はたして何をしかけるのですかね。
いよいよ総動員での決戦ですね。
でも、実際にも裕ちゃんってそれくらい慕われてるてるんだろうなぁ。たぶん。
次回も楽しみにしてます。
- 585 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/26(月) 17:02
- 更新お疲れ様です。
>ホントは読んで
ん〜、いつもより読めないトコが多いんですよね実際w
>藤本の顔つき
確かにまた一皮剥けた感じがしますね。
単に睨みがスゴすぎた、って噂もありますがw
続きも楽しみにしてます。
- 586 名前:silver bullet 投稿日:2004/04/27(火) 00:17
- はじめまして。いつも楽しく読んでいます。
いつも新人さんの展開には驚かされています。
次回も期待しています。
- 587 名前:とこま 投稿日:2004/04/27(火) 22:03
- 更新お疲れ様です。
美弥子さんも動きますか。
ところで、前田夕紀→前田有紀。
- 588 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:28
- こんばんは。
なっつぁんのドラマの途中ですが、作者です。
更新の前に・・・。
582 丈太郎さん
確かにお久しぶりです。
高科が彼女たちに託すこと・・・それは、今回で明らかに(^^)
583 つみさん
ジョーだけではないようですよ。
同席すべきあの女性が・・・。
584 みっくす
私も、中澤は「妹分たち」にとって、大きな大きな存在だと思ってます。
そして、ハロプロの礎を成したとも言える彼女を陥れた奴を許さないの
は、彼女たちだけでは・・・。
585 名も無き読者さん
謎解きは徐々にですが始まります。ついでに申し上げれば、登場人物の中に
鍵を・・・あわわわわわわわわっ(w
586 silver bullet さん
初レスありがとうございます。展開だけと言われないよう頑張りますので
今後も宜しくお願いしますm(__)m
587 とこま さん
またやってもた・・・。3作目になっても、誤字の多さと詰めの甘さが
直らず申し訳ありません。補えるよう頑張りますので、見放さないで
くださいね。
では、ドラマは凄いことになってますが、今夜の更新を
- 589 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:29
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.44
「これは情報戦だ。中澤が何を言っても冷静に受け止めて対処してくれ。以上」
頬杖をついていた村田がズルっとコケた。が、隣の斎藤と顔を見合せただけで笑ったりは
しない。他のメンバーも同じだ。とりわけ強い視線は後藤のものか。
こまごまと話している暇はねえ。彼女たちの大半が、モーニング娘。ないしは後藤・松浦の
ライヴにゲスト出演する。UFAから許された時間は僅か30分だ。
一言に込めた意味を、この娘たちなら自分なりに噛み砕いてうまくやってくれる。つんく♂
が乗ったのも、それを信じてのことだろう。
- 590 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:30
-
「逆だ・・・・・・・」早くもあさみの頭脳が回転し始めたのに、俺は顔に出さずニヤりとした。
その通り、マスコミに情報を売られたのは一杯食ったと言えようが、逆手にとってやるのさ。
厳重な統制化で進んでいたはずの作戦が、自己・他力を問わず漏洩したときの選択肢は、
苦悩の末に選ぶ場合が多いことを身に染みて知ってるからよ俺自身が。
考えてみるがいい。
悪名高き『ソマリア紛争』に多国籍軍の主力として乗り込んだ世界一の戦力を誇る米軍は、
なぜ当時の政権を揺るがす事態を防げなかった?
全世界が忌み嫌うテロリストが、未だその姿を公共の電波以外に晒さない要因は?
少なくない犠牲を払いながら、結果的には『圧勝』に終わったはずの『米・イ戦争』の後、
世界の、とくに欧州諸国からの外交的支持を米国が得られなくなりつつあるのはなぜだ。
- 591 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:32
-
俺に言わせりゃ、答えはひとつに集約される。
自らが巨大ネットワークを駆使して仕掛けた情報戦に、予想外の苦杯を喫したためだ。
たかがゲリラに毛が生えたような連中を相手に過剰とも思える戦力を投入しながら、情報
統制に生じた綻びを最後まで修正できず、周到な罠や奇襲戦法への対処能力不足を露呈
した結果が、ベトナム以来の屈辱を味わう不名誉となった。
あのニューヨークの惨劇から国をあげてテロリストへの報復を始めた矢先、隣国の衛星TV
を使って仕掛けられた情報の洪水に振り回された挙句、一方的な勝利宣言と後々も襲う
テロへの恐怖だけが残されたではないか。
つい最近は、自軍の一兵士によって完璧と思われた情報操作が狂いを生じ、残党狩りで
逆に損害を増やすばかりになっちまってるのみならず、ヤラせを暴露されて窮地に追い込
まれた。どれもこれも、理由は明白だ。
- 592 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:33
-
合衆国を例にとったが、何も軍事的なことばかりじゃない。
世界の、いや日本国内だけでもいい。トップに君臨する企業は皆、ライバルとの情報戦で
勝ち負けを繰り返しながら学び、大きく勝ち越してきたが故にトップなのだ。
石川のときは秘匿性を必要としたが、もはや今回はその必要性がないのも強みだ。
「質問を受けよう。いまのうちにしておけ」
「はい」
前田の手が上がった。
事務所側の協力はあまり得られないと聞いているが、車を増やすだけで大丈夫なのか?
娘。たちを二人一組にして腕に覚えのあるドライバーをつけるだけでは、ガードにならない
のでは。
もっともな意見だ。ソロ組やもともと少人数のユニットはともかく、ひとみを除いた14人÷2
をカバーするだけの人手は集められるのか?
答えを先に言おう。
「安心しろ。ちゃんと使えるのを手配した」
腕に覚えといっても、空手の経験があるとかチンピラ上がりとか、短時間で集められるの
は中途半端な奴らに限られるだろう。そんなのに任せられるかってんだ。
- 593 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:35
-
「お前たちの目には入らんかもしれんが、必ず護る」
我ながら自信たっぷりに言うと、ここにいるメンバー中では最年長の前田は溜飲を下げた
ようだ。
もともと俺を信頼しきってる後藤や松浦は別として、全員の不安を代弁したのだ。
続いて斎藤が「キッズはどうするの」と手を上げたが、これにはつんく♂が替わって答えた。
「仕事は休ませることにした。マスコミには、接触したら相応の処置をとると通達してある」
小学生も、3〜4年にもなれば報道の内容ぐらい理解できる。何でも新ユニット立ち上げの
構想があり、トラウマを抱えられても困るとつんく♂自ら事務所にゴリ押ししたそうだ。
「あたりまえやが、取材攻勢は避けられん。ジョーさんの期待に応えたかったら精一杯
やる。無理やと思ったら知らぬ存ぜぬで通す。選択は任せるで」
つんくが珍しく威厳を感じさせる口調で締めると、メンバーたちはそれぞれのスケジュール
にあわせて動き出した。
- 594 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:36
-
「じゃーねジョーさん。またあっとで」後藤が妙な敬礼とウインクを寄越した。掴めねえ女だ。
と思ってたら、今度は松浦がスタスタと前まで来ると、90度左回転して「ニィ〜っ」とVサイン
しやがった。余裕と虚勢、逢坂はどちらにジャッジングするだろう。
「ったくお前ら、ライヴだけぢゃねーんだぞ今日は」
「わかってますってぇ。じゃ、行って来まーす」
松浦に続き、カントリー娘。も出て行く。里田のウインクが色っぽかったのはオマケにしとけ。
その中で、席を立ち難そうな二人がいた。後藤と共に名古屋へ向かうメロン記念日の放っ
たウインクと投げキッスの時間差攻撃をやりすごした直後、正面に座るミカが口を開く。
『ジョーさん、あの娘は』
英語だ。ふむ、さすがアメリカン・ココナッツ。
『誰のこった?』俺の流暢な英語に驚いた風もなく、ミカは言葉を継ぎかけた。しかし・・・
『えっと・・・』と言い出しかねる相方の隣でアヤカが、ん?ハッ・ピー??
ハワイの夜に連発されたフレーズが記憶に残っててよか・・・いや、ありゃ焼きついてるわ。
- 595 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:38
-
しかしまあ、娘。のbP天然娘にゃ参った。
寝る寸前にかかってきた電話で、「あの店、怪しいですよ!」とのたまったのには、爆睡に
入りかけてた首根っこをわし掴みにされる思いだったぜ。
いずれ直撃してやろうとプランを立てていた機先を制されただけでなく、罠を張ってきたって
んだからな。よくやったと褒めておいたが、恐いもの知らずとも言える。ま、おかげで今日の
伏線にもなったし、敵に回したら最も手強いのがこっちについたらしいこともわかった。
いま無事でいるってことは俺の直感もまんざら外れじゃねえ。伝えたら大騒ぎするだろうか
ら黙っといたけどよ。
『ゆうべ聞いた。ちと驚いたがな、無事に帰って来てるし、ガードは一番すげえのがついて
るから心配すんな』
話しながら横目で見ると、つんく♂は目を逸らすところだった。
ふん、すっ呆けやがって。解決したらその化けの皮、とっくりと剥がしてくれる。
- 596 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:39
-
俺の一言に心配が吹っ切れたか、ココナッツの二人は同時に腰を上げた。
『Good Luck』
可愛らしいアヤカのVサインを最後に、会議室には俺とつんく♂だけが残った。
「根回しは任せてや」
とりつくろうように明るく言うプロデューサー殿には、これから奔走してもらうことになる。
「とくに会場の方は確実に頼むぜ」
せっかくつけた護衛を排除されちゃたまらねえ。服装と目印は伝えてあるらしいからまず
大丈夫だろうが、最近は経費削減とやらで現地のバイトを雇ったりするらしいから念を押し
ておこう。
他にもいろいろ注文をつけ、部屋を後にしようとする俺を、つんく♂が呼び止めた。
「何だ」
「前から聞きたかったんやが」と前置きし、つんく♂は『なぜここまでやってくれるのか』
と訊いてきた。
- 597 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:40
-
確かに、儲け話があるわけじゃない。石川事件のときみたいにプライドが許さないとか
いうのもない。逢坂と涼子の他にも内外に味方はいる。放っておいても時間をかけりゃ
解決したかもしれん。今回は謝礼も期待できないだろう。
俺なりに理由があるにはあるのだが、さて、どう答えたものか。俺だって人間だからよ。
少し考え「虫の知らせだ」とだけ告げ、つんく♂の反応を待たずに会議室を出た。
事務所で留守電を聞いたとき以来、胸中に燻り続ける不安は隠したつもりだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.45
See you again and good luck !
- 598 名前:新人 投稿日:2004/05/01(土) 21:49
- 今夜の更新は以上となります。
きょうのスポーツ紙の芸能面、なっつぁんと矢口がコスプレというより
着ぐるみ姿ばかりの中で、スポーツ・ニッポン。
ココナッツ娘。があんな大きなスペースを占めるとは、誰が想像したで
しょう。・・・実は嬉しいんですけど。
よっすぃーのNHKドラマ出演が判明し(遅いか)、娘。の未来がけっして
巷で言われるようなものではないことがはっきりしつつあります。
そう、彼女たちは我々の希望であり、未来です。
では、次回の更新にて。
- 599 名前:みっくす 投稿日:2004/05/01(土) 22:41
- 更新おつかれさまです。
いよいよ動き出しましたね。
皆の活躍期待してます。
- 600 名前:つみ 投稿日:2004/05/02(日) 09:42
- 虫の知らせですか・・・
何か不吉な事が起こるのでしょうか・・?
次回まで待ってます!
- 601 名前:とこま 投稿日:2004/05/02(日) 21:10
- 更新お疲れ様です。
確かに情報を制する者は世界を制す。至極当たり前なんですが
なかなか実践できないものです。
「彼を知り己を知らば百戦危うからず」娘。たちには
このことを叩き込んで欲しいものです。
次回も楽しみに待ってます。
- 602 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/03(月) 15:15
- 更新お疲れ様です。
・・・・。(←脳内フル回転中
あぅ〜、混乱しちゃってますw
次回までに何とか脳内整理せねば。。。
- 603 名前:silver bullet 投稿日:2004/05/07(金) 20:29
- 遅れましたが更新お疲れ様です。
『俺なりに理由があるにはあるのだが』少しばかり気になる言葉です。
次回も楽しみにしています。
- 604 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 19:55
- こんばんは。作者ですm(__)m
ハロモニ。ミニモニ。すぺしゃる をBGVに更新します。
みっくすさん:「彼女たち」の中によっすぃーが埋もれないよう祈ってて
ください(w 実は物語上の脇役さんたちの存在感に押されつつありまして…
つみさん:中澤が冤罪を被っただけでかなり不吉ですが、ジョーの予感は
それだけではないようですよ…なあんて、あまり深くお考えにならないよ
うに。
とこまさん:彼女たちに伝えておきました。備えは万全だそうですよ。
名も無き読者さん:今後、出てくるヒントをお見逃しなきよう・・・。
silver bulletさん:ジョーによれば、よっすぃーも同じ意見だそうです。
となれば、ヒントは既に・・・ なんて、煙に巻いておきますね。
では、これより・・・。
- 605 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 19:56
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.45
チェックアウトを済ませ、中澤はロビーを素早く見まわした。マスコミ関係者の姿はなく、
レイト・チェックアウトを済ませたり、待つ宿泊客がいるきりだ。もとより、思い切り地味な
服装と目深に被った帽子だ。周囲にバレる心配は少ない。
それでもロビーが気になったのは、視線を感じたからだ。
鋭さや刺々しさはなく、むしろ優しいものであったが、明らかに自分に向けられていると
なれば気になる。
- 606 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 19:57
-
(気のせいか・・・)周囲へアンテナを張った途端に消失したことに拍子抜けしつつも、中澤
はエントランスへ向かった。予定より早めに出たのは家に一度もどりたいと思ったからで、
預けたままのハナを抱きしめる渇望にかられた為もある。
ロータリーへ出ると、数台のタクシーが客待ちをしていた。
危険を考えると移動手段は限られるが、選ぶまでもなかった。
ただ一台『個人』と表示灯に書かれた車と、側に佇む運転手が眼に入ったのである。
「おはようございます。ご無事で何よりです」
一礼した彼は、いつもの僅かな福島訛を隠さず挨拶した。
どうしてあなたが、と言いかけるのを、中澤は無言の微笑に切り替えた。
「参りましょう。どこへなりとお申し付けください」
開いた空間へ身を滑り込ませ、運転手がドアを閉めるまで待つと中澤は一言「ありがとう」
と気持ちだけを伝えた。
先刻、ジョーが含み笑いと共に「手配済みだ」と明かしたガード兼・運転手には、その方が
ふさわしいと思えた。
- 607 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 19:58
-
「お気になさらず・・・・・私にはこれぐらいしかできませんから」
あくまで低いところから自分をとらえる彼に、中澤はあらためて感謝の念を深めた。
警察のOBであることは既に聞いている。触れてはならない傷を隠しているのも。
でも、アリバイを証言してくれただけでなく、こんな役まで買って出てくれたのはどうして
なのだろう。証言の謝礼は頑なに断ったというし、自分とは客としての付き合いしかない
のに・・・。
後席から注がれる中澤の視線は何とか表情からすくいとろうとしているようだったが、
根本運転手の顔は変わらず朴訥なままであった。
- 608 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 19:59
-
石黒は雑踏の中でもターゲットを見失わず、出社して間もなく外出した男をマークし続け
ていた。普段はイベント制作会社の渉外部で働いているという。
かなり手広くやっている会社の中で、芸能関連のイベントを手がける部署のbQである
男の人脈が狭いはずはない。しかし、彼ぐらいのポストなら外回りなどそうそうやらない
と思うのだが。
他にも疑問は抱いている。
裏の情報屋とはとても思えない小柄な好々爺から手に入れた資料によれば、過去にも
複数の移籍の影で暗躍していたというのだが、視界に捉えた男は、ブローカーというよ
りはマネージャータイプに見える。
自分に人の本質を見抜く慧眼があるとは思っていない。されど、ブランクの間に積んだ
経験は二つの異質な世界でのそれをミックスしたものであり、視界が晴れはしても自ら
フィルターをかけてはいないつもりだ。
(悪い奴には見えないんだよな・・・・眼鏡の度が合わなくなったんかな)追跡行の中でも
余裕を保つ彼女は、ターゲット・・・日浦に続いてカフェへ入った。
正午前のかなり広い店内は、7分ほどの客の入りである。100席はあろうかという窓側の
目立つ位置に目標は腰を下ろした。
- 609 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:00
-
2つのテーブルを間に置き、役に立つかと考えてバッグに入れたハードカバーの小説を
開く。読み耽るフリをして監視するには絶好の距離だ。
オーダーを済ませると、石黒の意識は約3m先へ集中した。
(?)古めかしいシステム手帳を取り出して何やら書き物をしていたらしい日浦が、見せた
仕種に不自然さを認め、石黒は無意識のうちに頁をめくった。
背をシートに押し付け、背筋を妙に伸ばしたのだ。姿勢としては座ったままの直立不動に
近い。
(おかしいな)顔だけは本から離さぬまま背後をうかがい眉を寄せる。
ターゲットの背後には、同じように背を立てたスーツ姿が見えた。それだけでは別に変と
も感じないが、日浦の眼が微妙に泳ぎはじめたことと微かに動く唇に気付いたのだ。
背中越しに会話しているように見えるな・・・。
行くか・・・・・本をテーブル上へ置き、代わりに携帯を持って席を立つ。
慎重にタイミングを合わせ、目標の至近で声をかけた。
- 610 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:03
-
「公衆電話はある?」
注文の品を運んでいたウェイトレスは一瞬「?」という顔をしたが、すぐに「奥にございます」
と答えた。石黒が手にする携帯電話がバッテリー切れと察したのだろう。もちろん芝居だ。
「奥ね。ね、テレカは・・・」
「あ」
売ってないかな、と問いかけ、石黒は硬直したウェイトレスの視線を追う。
『中澤裕子さん容疑晴れ釈放』
70インチ級のテレビモニターに映ったのは、昨夜の歓喜を報道する大文字であった。
【殺人事件の重要参考人として警視庁に身柄を拘束されていたタレントの中澤裕子さん
が、犯行時刻に別の場所に居たことが確認され、自由の身となりました】
- 611 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:04
-
正午前のこの時間、各局ともニュース番組が編成されている。復帰前はよく見ていた類
の画面で、警視庁の番記者らしい報道局員がマイクを握り興奮気味にまくし立てていた。
(ふん、ざまあみろって。あんたらにつかまりゃしないよ)
石黒は思わず笑みを浮かべかけ、慌てて思いをかき消した。
【混乱を避けるため昨夜のうちに警視庁を出た中澤裕子さんの所在は、現在わかって
おりません】
とくにファンでなかったとしても、気になるニュースではあるのだろう。店内の客でも、モニ
ターを凝視しているのが何人かいる。
(予測の範囲内です)
極めて小さな声量でかわされる会話に、石黒は集中していた。もちろん、視線はモニター
に向けたままだ。
(後付けの証拠を揃えても、動機がなければいずれ釈放されると思っていました)
(いた?なら、次の一手はあるのか)
(さて・・・これ以上荒っぽくならなければ、あるかもしれませんね)
何となく核心に触れる内容だと思ったが、残念なことにそれ以後の会話は聞くことが出来
なかった。
「すいません、テレホンカードは、販売機がコーナーにこざいます」と我にかえったウェイト
レスが耳元で喋ったのにかき消されてしまったのだ。
「そっ、ありがと」
- 612 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:10
-
これ以上この場に立ち止まっても不自然と考え、公衆電話コーナーへ入った。
受話器をあげ、日浦たち二人の席へ再び目を向けると、相手の方が伝票を手にレジへと
向かうところであった。残った日浦はというと、考え事をしているのか俯き加減である。
相手が気になったが、ターゲットを切り替えようとは思わなかった。どう見ても危険な輩だ。
ジョーに支持された「装備」は、昨夜のうちに手に入れてある。意外とすぐ手に馴染みはし
たものの、この真昼間に街中で使う危険に自ら踏み込めない。
電話で話すフリをしながら、石黒は耳にした内容を素早くメモにまとめた。
日浦と背中合わせの男は、ジョーが暗にほのめかしていた依頼主だろう。張本人ではなく、
部下だと思う。
会話からして、中澤を冤罪に陥れようとしたのは日浦ではなく依頼主側なのは間違いなさ
そうだ。しかも、本人が釈放された今となっては大幅な方針転換を迫られること必至…。
- 613 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:11
-
今さら遅いのにな、と思う。既にハロプロのメンバーたちは、引き抜きはおろかその首謀
者を排除することで意志を固めてしまった。このうえ奴らが動くなら、天岩戸を素手で叩く
どころか内側から倒され、下敷きにされかねない。気付かないような輩ではないだろうし、
全面的に敵さん側についているわけでもなさそうだ。
だとしたら、さて、どうする移籍ブローカーさん?
思いつくままにまとめ、石黒は席へ戻った。
再び開いた本の頁越しに見える日浦の姿勢は変わらず、一点を見つめたままであった。
To be continued...
Next time is start at chapter.46
See you again and good luck !
- 614 名前:新人 投稿日:2004/05/09(日) 20:15
- 今夜の更新は以上です。
再登場のオリジナル・キャラだけではなく、石黒にも
まだこのあと活躍してもらう予定です。
いや、しかし、笑いました「すぺしゃる」
おそろいの衣裳の彼女たちがもう観られないなんて・・・。
ミニモニ。Forever!
ではまた、次回の更新にて。
- 615 名前:つみ 投稿日:2004/05/09(日) 21:41
- 本格的に始まりましたね〜!
石黒さんがえらくファイトしてますね。
・・・何気に運転手さんが好きです・・・
- 616 名前:丈太郎 投稿日:2004/05/09(日) 22:23
- 更新お疲れさまです!
彩っぺは本当にこれぐらいやりそう…。
根本運転手、何となくですが光ってますね!活躍が楽しみです。
- 617 名前:みっくす 投稿日:2004/05/11(火) 06:27
- いよいよ開戦しましたね。
あやっぺ気合入ってますね。
次回もきたいしてます。
- 618 名前:silver bullet 投稿日:2004/05/13(木) 23:05
- お疲れ様です。
根本運転手がガードに付くとは!また驚かされてしまいました。
次回が楽しみです。
- 619 名前:とこま 投稿日:2004/05/14(金) 21:44
- 更新お疲れ様です。
さすがOGのあやっぺですね。
次回も楽しみにしてます。
- 620 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:18
- こんばんは作者です。
あまり時間もないので、早速更新します。
- 621 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:20
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.46
リハーサルを終えメンバーと離れた矢口は、誰もいないPA室へダッシュした。
心中に熱い怒りが荒れ狂っていようと、冷静さは失なっていない。
ドアへ到達すると素早く開錠し、なぜか大音響を気にせず閉め対面へ駆け寄る。
客席が一望できる窓のカーテンから下をうかがいながら携帯をプッシュする横顔は、誘拐
事件解決の起点となった「あの時」を彷彿とさせた。
- 622 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:20
-
「もしもーし。そっちはどう?・・・・・・・・OK、じゃあね・・・・・・・」
電話の相手に何やら頼みごとをしているらしい。ただし、優しい口調とは裏腹の厳しい表情
だけはいつもの彼女と違う。
「ん?こっちは大丈夫。よっすぃーに任せてる」
内容からすると相手は「おとめ組」のメンバーか。
「・・・だね、そんな感じ。ちょっとわざとらしいぐらいでいいよ。じゃ頼むねっ」
携帯を切った矢口は、PA席中央の一人掛けソファへ小さな体躯を沈めた。眼前に点滅する
赤いLEDが黒瞳に映り、燃え盛るものを代弁しているようだ。
(あとは裕ちゃんだな ・ ・ ・ )
年齢相応以上に肝が座っている中澤も、卒業会見以来となる多数の取材人を相手に冷静
なまま臨めるかどうか。緊張する条件を知っているメンバーの中には、若干の不安を拭い
去れぬ者もいたようだ。
しかし「心配いらない」と断言した者が、彼女以外に一人だけいる。
娘。たちのみならず他のハロプロメンバーからも信頼を集め始めている、高科穣也だ。
- 623 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:23
-
石川事件の解決後、重傷を負った彼を見舞ったとき、矢口は「なぜお前に任せたかわかる
か」と訊かれた。膠着状態から一気に流れを引き寄せた「大芝居」のことだ。
「お前がきちんと演ってくれなければ解決しなかったし、矢口しかいなかったと今でも思っ
てる」とまで言われ、恐縮するより驚きの方が大きかった。
演技や脚本よりも彼女たちの存在そのもののプロパガンダ的要素が強かった映画やミュ
ージカルを除けば経験はゼロに等しい自分にそんな大役が回ってきたこと自体、戦慄す
べきことだと気付いたのだ。
答えられない矢口に、傷ついたバウンティハンターは痛みを堪えつつ言った。
「それだけの力があるからに決まってんだろ。もっと自信を持てよ。グループをまとめるだけ
がサブリーダーじゃない」
当時は全ての意味を理解できたわけではなかった。しかし、中澤の危難を逆にエネルギー
へ変換し、自らはそうと気付かないまま本来の力を発揮し始めた今ならわかる。
- 624 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:25
-
中澤裕子の卒業が決まったとき、多くのスタッフが反対した理由。
より効果的にダメージを「敵」に与えられる、添加剤を投入する役割を任されたのは、誰で
あるのか。
きっとジョーさんも同じこと考えてるはず、とあらためて自分に言い聞かせ、メンバーのもと
へ戻るべく部屋を後にした。通路へ踏み出した脚が自然と速まっていく。
必ず勝ち名乗りをあげてみせる。
誰がために、ではない。
皆の未来のために。
瞳に闘志を満々と湛えた矢口真里は、灼熱の熱塊に等しかった。
- 625 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:25
-
二度目も異常なしと判断し、彼はもと居た場所へ腰を下ろした。
敷地内でも目立つ大木の根元である。幹に背を預けると気配を絶ち、瞑想に入った。
既にリハーサルは終了し開場を待つファンが列を作り始めていたが、明らかに異質な男を
眼にした若者もさしたる反応を見せない。完全に木と同化しているからだ。
(昼夜2回とは・・・身体を作っておかねば不可能だな)
いまも日本に在住する実妹が送って寄越した情報によれば、僅かな休憩を挟んで2度の
プログラムが組まれている。体力だけで乗り切れるものではあり得ない。気力が伴わなけ
れば糸が切れたときのブレーキは困難だろう。若さは諸刃の剣なのだ。
- 626 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:27
-
初冬を忘れさせるほどの陽光が注ぐ敷地内は、彼が鎮座する一角だけが違う色彩を帯び
ている。周囲を睥睨する大木は足元に何を思っているのか、僅かな風にも必要以上に枝
を揺らしているようだ。
気がつくと、次第に長くなりつつある列のあちこちで音程お構いなしの合唱とコールが始
まっていた。
(彼らのおかげか)
年端も行かぬ少女たちのエネルギー源が自身のモチベーションと添加剤としてのファンの
声援であることに思い至り、妙に納得する『デス・マスク』である。
騒ぎを聞き付けたか、『Stuff』の腕章を付けたガードらしきスーツ姿もチラホラしはじめた。
専属なのかどうかはわからないが、彼らは平時と変わらない警備を行っているのだろう。
だが、危険度が最も高いのは客が入れ替わる狭間だ。
隙あらば2度目もと考える連中のため化粧室すら封鎖されるという混乱に乗じ、彼女たち
に危害を加えんとする輩が侵入をはかったとしても、スタッフ章と服装の威圧感のみを
頼りとする彼らが見咎め、さらには阻止できるかどうか。
いまは稼業で袂を別っている、娘。最強の「味方」とて、思いは同じはずだ。
- 627 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:28
-
雲の合間から陽光が差す樹下に座していた銀香はやがて静かに腰を上げ、流れとは逆
方向へと歩み始めた。最後までもつとはとても思えないテンションの集団がいつの間にか
同一方向へ移動を開始している。
たどり着いたのは、たった二人の警備服を護りとしている解放状態の搬入口だ。彼らとは
既に当地へ着いた直後に顔を合わせている。
どうやら話は通っているらしく、「ガードを任されている」と告げたとき彼らは安堵の表情を
を浮かべ、黒ずくめの男を不振がりすらしなかった。伝聞を足がかりにコンタクトをとって
きた『彼女たち』のプロデューサーは巧く根回しを遂げたらしい。
直立不動に近い若者二人に「ひと息入れたらどうかね。私が見ていよう」と声をかけ、
ともに緊張を解いて屋内へ向かうのを見送った黒衣の元・バウンティハンターは、少し前
の慌しさが消失した壁を背に、再び瞑想に入った。
その佇まいは、場内に満ちる無数の気配中に『彼女』のそれを見出そうとしているように
も見えた。
- 628 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:29
-
あらためて皆の決意を痛感する思いだった。
そうさせたのは、大元を探れば事件の首謀者へ行き付くとはいえ、自分の所為ということ
は否定できない。
「ジョーさんとよっすぃーについてくから、頑張ろうね」
朝の挨拶をかわしたあと、安倍が極めて珍しい眉間に皺をともなう笑顔で肩を叩いたのが
全てを象徴している。決意とも開き直りともとれるが、吉澤は良い方へ解釈した。
裏付けるかのように、今日ここまでも決して楽ではなかったのに誰の顔からも笑顔は消え
なかったのだ。
始発の便で福岡まで飛ぶだけならモーニング娘。本隊でも経験があるものの、加えて陸
路による関門海峡突破と会場入り後すぐのリハーサルという強行スケジュールは、ここ
数年で最もキツかった。通常は落ち着いてありつくはずの食事を、今日は揺れる車内で
とるしかなかったことも疲労感に拍車をかけた。
ところが、いまの『さくら組』ときたら全くそれを感じさせないどころか、普段の空気と全くと
言っていいほど変わらないのだ。
さまざまな事件を、危機を乗り越えた彼女たちの精神的な成長は目覚しいを通り越して
驚異的ですらある。それを肌で感ずることができる吉澤が群を抜いているのも間違いない。
- 629 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:31
-
着いてすぐに次いで2度目の見廻りを終え、吉澤は会場をぐるりと囲むレンガの垣根に腰
を降ろした。
(とりあえず異常なし ・ ・ ・ )
缶コーヒーを一口飲りつつも周囲への探査線は張り巡らせている吉澤だが、その表情は
『さくら組』としてのデビュー曲に似合わない、曇り空に近いものだ。
一人のときにしか出すまいとする努力は実を結んでいるようで、どうにかここまで皆の笑顔
を曇らせずに来ているものの、師匠兼相棒をして「本物になりつつある」という未来のバウ
ンティハンターは、その美貌に翳りを抱いていた。
ハワイ以来の標準装備である『Cz75』の、世界的に評価の高い「初期型」をスペンサーに
頼み込んで手に入れたにしては、感触を確かめる横顔も寂しげだ。
いつ使うことになるか、メンバーに知られたらどう思われるかにも、懸念はある。しかし、
いま吉澤がとらわれているのは全く別の感情であった。
心の片隅に追いやっていた、本来は事件と無関係の想いが徐々にその容積を増し、解決
へのモチベーションと1%のせめぎ合いを展開していると知ったら、多くの人が驚くだろう。
相棒にしてみれば、メンバーとは異種の以心伝心を構築していることで必要はないと判断
しているのだろうが、彼女とてまだ18歳の少女である。本当は『捜査会議』の席で再会し
たとき問い詰めてもよかったのだが、事態が事態だけに自重した。
しかし、心中では炎が猛り怒っていたのだ。
- 630 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:34
-
「アタシのこと何だと思ってんだよ!」
確かに・・・相棒としては来てくれて嬉しいし、連絡なしでもいずれ会うのだから…。
そうだよ。相棒としか見ていないんなら、はっきり言ってくれていいのに。
意識を取り戻した病室で、深夜の中部太平洋を眼前に抱いた砂上で、共有したはずの想い
って、どこへ行っちゃったんだろう。
せめてハワイ最後の夜に肌を重ねていれば違ったのかなとも思う。けど、照れ隠しのつもり
か強い酒をグイグイ飲って、先にブッ倒れやがってあの男…。翌朝ピンピンしてたのには、
思わず殴りかかろうかと思ったぐらいだ。
今となっては、将来へのモチベーションと恋心、どちらが先に胸を支配したものか定かでは
なくなってしまった。けど、せめて来日してすぐ声を聞かせるぐらいしてほしかった。
この秋は新曲のリリースとツアー、個々のドラマや、さらにはスポーツフェスティバルが重な
ったこともあり、以前と比べてメールの回数も、電話での喧嘩も減っている。最後には結局
どちらかが折れ、笑いあって終る声のみのコミュニケーションがお互いのエネルギーになっ
ていると認めない、意地っ張り同士だから仕方ないけど。
- 631 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:36
-
こんなこと考えてる場合じゃないことは分かってる。なのに・・・止められない。
吉澤ひとみの胸中には、歌い出せない恋歌が沈黙のメロディを奏でていた。
To be continued...
Next time is start at chapter.47
See you again and good luck !
- 632 名前:新人 投稿日:2004/05/16(日) 21:41
- 今夜の更新は以上となります。
先日、ライブラリを整理してたら03年冬の ハロー!ライブのVが
出てまいりまして、思わず通しで見てしまいました。
・・・・いまこそ復活せよ!
ごまっとう!!
それでは、次回の更新にて。
行って来ます!?
- 633 名前:みっくす 投稿日:2004/05/16(日) 22:25
- 更新おつかれさまです。
よっしーの心の葛藤が切ないですね。
みんな頑張れ!
次回も楽しみにしてます。
- 634 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/17(月) 17:48
- 更新お疲れ様です。
ふつふつと溜め込んだエネルギーの余波が伝わってきますw
その爆発が楽しみだぁ。。。
続きも期待してます。
- 635 名前:とこま 投稿日:2004/05/17(月) 20:26
- 更新お疲れ様です。
よっすぃ〜の葛藤が伝わってきますね。
ただそれに囚われると足元を掬われるので・・・。
次回も楽しみに待ってます。
- 636 名前:つみ 投稿日:2004/05/21(金) 14:17
- 今回は少し乙女心が見られましたね。
あの方もひそかに頑張ってたんですね。
最強のボディーガードですか。
次回も待ってます!
- 637 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:17
- こんばんは作者です。
えー、いよいよ佳境に入ってまいりまして、校正にも力が入ります。
事件は、自分では結構ひねったつもりですが、なっつぁんのドラマに比べると
やはり素人の低レベル・・・。
ええい、こんなことで!
明日からはよっすぃーがNH○のドラマ出演!
皆様、チェックお忘れなく!!
では、今夜の更新を・・・。
- 638 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:17
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.47
気がつくと高度が下がり始めていた。注文どおりだ。
昔のツテを頼って借り出した『ベル206』が居住性の高さがを売りにしているとはいえ、
パイロットの腕もあるだろう。
回転翼機という特殊な機上では、携帯が途切れず通じる高度は周囲の遮蔽物を考え
るとこのあたりが限界だ。ホバリングをはじめた機内で、メモリーしたばかりの番号を
呼び出す。相手は3度目のコール途中で出た。
- 639 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:19
-
(もしもし・・・)
「高科です。異常はないようですね先輩」
(その呼び方どうにかなりませんか。本庁と所轄で先輩も何もないと思いますが・・・)
「はは、まあまあ。中澤の様子はどうです」
全幅の信頼を置くに相応しいガードは、別室で愛犬が寄り添い仮眠中ですと答えた。
爆睡中の本人からは到着直後に「いま無事に部屋に戻った」というメールが届いただ
けだから想像するしかなかったが、ホテルからの帰路、自家用車に乗り換えたうえで
車椅子の病人を装うという手を苦も無く考えつくタクシー運転手を口説き落としたのは
久々のファインプレーと胸を張れる。
マンション周辺を間違いなく包囲しているであろう報道陣をどうやって突破したものか、
おそらく彼女だけでは不可能だっただろう。
- 640 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:19
-
「外はどうです。まだ?」
(ちょっと待ってください)
そっちこそ丁寧語はやめてくださいよ、言いかけるのを踏みとどまりつつ、窓外を確認
するのを待つ。どんな輩がマンションを取り囲んでいようと柔道・剣道・合気道あわせ
て10段を超す猛者に心配は無用だが、穏便に済むに越したことはない。
数瞬後、大半は引きあげたみたいだがごく少数のカメラマンのみ残っているみたいで
すが問題ありません、という回答が得られた。
主の帰宅直後に夜の会見という情報を持ってマンションを出たマネージャーの演技力
が素晴らしかったということだ。この分なら再度の脱出も心配あるまい。いわゆるハパ
ラッチの隠遁術を見破る現役時代の勘を取り戻した「彼」が付くことで、100%に近い
安堵がやって来た。
- 641 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:20
-
「あと半日、宜しくお願いします」
(・・・私なんかで本当に?)
「当然ですよ。では」
向こうの挨拶を待たず、俺は電話を切った。謙遜が嫌味でないのが救いだ。
例の事件の顛末にも驚かされたが、頭が切れる以上に信頼できるのが腕っ節だ。
内股の切れ味はいまでも覚えてるぜ。一回戦から決勝までの技が全て同じだったの
もだ。ありゃ元世界選手権代表候補だからこそ為せる業ってもんよ。
- 642 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:20
-
気がつくと、高度はさらに下がっていた。足元を見ると、なるほど会場にごく近い陸上
競技場が見えた。スタンドだけでなく、トラックが未使用なのは事前に確認してある。
さっき上空から確認したし、距離を考えてもこっからなら迷わず行けるべ。
届け物の配達を終え、俺はふたたびパイロットに注文を出した。
「すぐに米子まで戻ってくれ。燃料がもつなら全速で頼む。時間がないんだ」
あ、その前に。少しばかりコースを外れてくれるようパイロットに頼むと、注文の多い
奴だと言わんばかりに急上昇しやがった。
バレたらどうしてくれるんだ?
- 643 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:21
-
―休憩入りまーす!―
スタッフの声に、後藤はスタンドに差したマイクの替わりにタオルを手にした。
昼の部開演まであと1時間半あまり。ちょっとだけ腹ごしらえしておきたいな・・・・・・と
ロビーへ出る。自販機を物色しカップラーメンを発見すると、指をパチンと鳴らしさっそく
ポケットをがさごそやりはじめた。500円玉・・・ん?
注がれる視線を感知した後藤は、ふとそちらへ目を向けた。目下展開中の「作戦」とは
関係なく、こういうことには普段から敏感なのだ。
気付かれた、とでもいうように柱の影へ隠れたのは会場入りのときから気になっていた
スタッフとは明らかに違う雰囲気をまとった若者であった。
目線が見事に合ったことに照れたらしい20台前半と思しきスーツ姿は、それきり身を
陰へ押し込めたままだ。
- 644 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:21
-
カップに湯が満たされると何を思ったのか、後藤はもと来たのと反対側へ歩き出した。
よりによって遠巻きに開場を今かと待っているファンの眼に触れる方へだ。
「目標」へ近づく窓外で『ごっちんコール』が始まるのも意に介さず、若者が隠れた角の
方へ「のほほん」と歩いていく。マイペースなのか何も考えていないだけなのか、相変
わらず判断し難いハロプロビッグ3の一人である。
(ったく、無駄に接触するなったって後藤真希だぜ後藤真希)ジョーに「おかしな騒動を
起こしたら即刻クビだ」と言い渡されたものの対象が問題だ。特にファンでもないのに、
やはり眼が行ってしまう。
ボヤく若者は、濃紺の上下に薄い黄色のワイシャツが似合う引き締まった体躯を壁に
預け、これまた紺地のネクタイを手にブツクサ言っている。
- 645 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:23
-
その眼前に忽然と
「食べます?」
と世界一売れているカップ麺が出現した。
「ん ・ ・ ・ ・ ・げげーっ!」
湯気の先に割り箸を手に微笑む後藤真希を認めて、若者は大げさに飛び摺去った。
「お腹空いてるんじゃないの?」
小首を傾げて歩み寄るトップアイドルに思わず頷く。い、いやそうじゃなくて!
- 646 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:24
-
「ん。もう1個買ってこよーっと」
嬉しそうに湯気の主を渡し小走りに去る後姿を半ば呆然と見つめる若者の胸中には、
自分へ向けられた彼女の親愛に対しての疑問が渦巻きはじめた。
二つめを手にした彼女が「先に食べてればいいのに」と長椅子へ誘っても収まろうは
ずがない。セオリーの3分が過ぎても、軽口一つたたけない自分を恥じているように
硬直している。
「もういいんじゃない」
「あ ・ ・ ・ ・ ・ いただきます」
苦笑いを帯びた後藤の声にようやく箸を二つに割り、なるべく隣を見ないよう黙々と
食べる。もちろん目が釘付けになるからだ。
そんな若者に悪戯っぽい微笑を贈ると、ようやく後藤も「いただきまーす」と二、三口
すすった。アイドルとカップ麺、似合うはずのない取り合わせも、若者には不思議と
馴染んで見えた。
- 647 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:24
-
一心不乱に近い食べっぷりに終止符を打った若者へ、後藤は食べつつ「ふぉーはん
ほはごーいうふぁんへー?」と訊いた。飲み込んでから言えばいいのに、と思いなが
ら、高校の先輩だよ、と若者は答えた。
「んっ・と。高校の?けっこう齢はなれてるよねえ」
「ああ。10ぐらいかな。部活の大先輩なんだあの人」
「へえ」
食べながら聴いてよ、と前置きし、若者…門倉壮大は言葉を継いだ。
To be continued...
Next time is start at chapter.48
See you again and good luck !
- 648 名前:新人 投稿日:2004/05/23(日) 20:39
- 今夜の更新は以上となります。
少ないうえ、またオリジナル・キャラが出てきて申し訳ありません。
しかし、ただ出てくるだけではありませんので・・・。
633 みっくすさん
ご声援ありがとうございます。よっすぃーを通じてメンバーには伝えておきます。
娘。以外のメンツの活躍もお楽しみに。
634 名も無き読者さん
彼女たちのエネルギーは、意外な形で・・・いや、何も言うますまい(w
635 とこまさん
正月のハロプロDVDを観る限り、よっすぃーには、意外な一面があるようです。
書いてしまっていたもので、安堵しました。ご心配には及ばないと信じたいです。
636 つみさん
ジョーすら舌を巻く男の活躍はまだこれから。果たして石川との邂逅はあるので
しょうか?用意しなかったら怒られそうですけど・・・。
では皆様、ご意見・ご感想お待ちしております。
次回の更新にてお会い致しましょう。
- 649 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/23(日) 21:10
- 更新お疲れ様です。
今回はオリキャラをクローズアップ及び追加ですか。。。
ホント魅力的ですよねw
なっつぁんのドラマもそーですが伏線が多くてイマイチ先が読めない・・・。
いやだからこそさらに続きが楽しみなんですがww
次回もマターリお待ちしてます。
- 650 名前:つみ 投稿日:2004/05/24(月) 00:07
- 新キャラが・・・
なんかいいキャラっぽい人ですね!
後藤さんともなかなか・・
次回も楽しみにしてます!
- 651 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:13
- こんばんは。作者です。
私の居住地域は電波の具合が良くなく、矢口のラジオ番組を聴くことが
出来ません。
そんなわけで、今朝の報道で知ったわけですが・・・
祝!
飯田圭織
石川梨華
卒業!!
昨夏、安倍の卒業以来、予感めいたものがあったのは既にお話ししまし
た。小説の中の彼女たちがけっして間違いではないことを感じて、胸を
撫で下ろしています。が、ひとつだけ外れました。
カオリんと一緒に卒業するのはやぐっつぁんだとばかり。
考えてみれば、この小説を思いついたのが
「仕事以外の部分で、彼女たちに遂げてもらえたら楽しい【成長】の側面、
過程で見てみたい【場面】を自分で描いてみたら」
という発想であったということからすると、もしかしたら大プロデューサーも
源は同じなのかも。
そしてそれは、我々皆が異句同音に唱えるテーマなのかもしれません。
ともあれ二人には祝福を。
城を預かることになった矢口と吉澤には、エールを贈りたいと思います。
頑張れみんな!(みっくすさんすいません)
では記念の二日連続更新を・・・
- 652 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:14
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.48
(どうしたらいいんだろ・・・)
ライヴ前に禁断とも思える心境に陥る吉澤の耳へ、先刻から大きくなっていたヘリの
エンジン音が鼓膜を震わせる巨塊となって届いた。
見上げると、あまり高度をとっていないヘリコプターが水平飛行に移りながら、頭上を
通過していく。
(民間機か…)ほんの一瞬だけ身を固くし、機体側面に描かれた新聞社のものらしい
マークを眼にして安堵する。ホバリングしたら狙撃の可能性もあるけど、あの速度じゃ
ゴルゴ13級の腕が必要だよな。・・・て、と。ぼちぼちか。
- 653 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:15
-
開演まであと30分。とっとと衣裳に着替えなきゃ、と歩み出した吉澤は前方から近づ
いてくるものに軽い衝撃を覚え静止した。
「ゼン・・・・・?」
ゆっくりと、周囲への警戒心を僅かに表しつつ歩み寄る姿は、もうひとりの相棒だった
のだ。足元で「お座り」の姿勢になったゼンの眼は変わらず優しかった。頭を撫でてや
りながら、首輪に結び付けられていたメッセージを器用に片手で広げ、眼を通す。
『夜の部の終演には迎えに戻る。寂しいかもしれんが、ゼンとさくら組を頼んだぞ』
視線がそのままヘリコプターが消えた上空へと、気分と共に上向いく。
(そうならそうと言えよ)
打合せがあるからと見送りにも来なかったくせに、もうちょっとマシな愛情表現をして
ほしいよな。
「おとめ」と「さくら」のどちらにも同行しなかった高科穣也の元祖・相棒が、わざわざ
いまというタイミングで自分に託された理由。それだけで充分だった。
- 654 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:15
-
しばらく文面を噛み締めて顔を上げた吉澤の顔には、余裕と微笑が戻っていた。
この場合、彼女を良い意味で単純と微笑むべきか、ジョーを褒めたものか。
いや、上空からたった一度、視認したのみで居場所へ正確に辿り着くレトリバーに
賞賛を贈るべきだろう。彼が吉澤にもたらしたものは、単なる勇気だけではない。
「行くよゼン」吉澤の口調に明るさが蘇っているではないか。
迎えに戻る、か…気合だ気合っ。
通用口へ歩むコンビを見たら、ジョーも驚くはずだ。
人語を理解すると評判の人懐っこいレトリバーは、高科の相棒である前に忠実なる
愛犬だ。躾はしっかりしているし、誰彼かまわず懐くわけではない。その彼が「ビハ
インド」の声を待たずして、後に続いている。
ゼンはいつの間にか、吉澤を主と認めていたのだった。
- 655 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:17
-
くく、ひとみのやつ、今ごろ感涙でメイクが台無しになってるべ。今回はお株を奪われ
っぱなしだ。ここらで師匠の威厳を ・ ・ ・ ・ ・ 示せてるといいが。
離陸準備完了の声に腰を上げかけたところで、携帯電話が着信を告げた。すぐに行
くと返答し、通話ボタンを押すと稲葉貴子のカン高い声が鼓膜を強襲した。ったく・・・
(お待たせ〜あっちゃんでーす)
何が"あっちゃん"だよ、いい歳こいてからに。とは言わず
「おお。どうだったそっちは」
(ん〜まあ、警察の方はな。会うた刑事だけやけど、動いてくれることになったわ)
先方さんは、独自に中澤の冤罪事件の情報収集をしたうえでやって来たうえ、稲葉が
まとめた推理も否定することなく受け容れてくれたという。所轄ならではの人情派って
ところか。
- 656 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:18
-
セオリー通りに捜査が進んだとすると、おっつけ引き抜きの先鋒と睨んだ日浦へ行き
着くことだろう。奴のもとにはじわじわと捜査の手が伸び、迫る恐怖に慄いてもらうこと
になる。
俺は現時点では満点に近い成果を褒め称え、気になる点を突っ込んだ。
「"は"って何だよ」
(へ?)
「へ、じゃねえ。いま"警察は"っつったろが」
(あ・・・・・・・・・)
ふん、甘いね。聞き逃すと思うのか。
「いいから話してみ。何かあったんだろ他に」
向こうにゃ見えないが両手を広げて迎えてやると、稲葉は「怒らんと聞いてな」と前置
きし語り始めた。
- 657 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:18
-
もはや新興という表現は過去のものと言えるだろう。『みなとみらい」とはよくつけた
もので、国際商業港を睥睨しつつ聳えるビル群は、かつて日本人があこがれたマンハ
ッタンを思わせるメトロポリスだ。ひと昔まえの近未来SF映画に登場する都市に酷似
したレイアウトで現実のものとしているのも、いかにも日本的といえるかもしれない。
その中で多目的文化ホールとして、欧州より招聘されたオーケストラや著名な音楽家、
最近は格闘技の饗宴まで開催されるのがここ【パシフィコ横浜】である。
建物の最上部、ほぼ壁一面が窓となっているスペースは、普段なら観光客の定番も
しくはカップルの場として利用されているが、今日に限っては立入禁止だった。
理由は簡単至極、壁際に置かれた長椅子の一つに横たわる美少女の貸切だからだ。
既に開場の時間を過ぎ、階下からは入場するファンが醸すライヴ直前独特の空気が
たちのぼってくる。
- 658 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:19
-
普段ならばこんな場所で一人の時間を作ったりしない。もともとプレッシャーには強い
彼女も今日は少しばかりナーバスになっているのか、瞑想に耽るたおやかな姿とは
裏腹に、既にオープニングの衣装へ着替えた胸元には僅かな汗がにじんでいた。
目を閉じたきり、ただ胸を上下させるのみで身じろぎひとつしない彼女は、果たして
数mの距離を置いて見守る青年に気付いているのだろうか。
(ほぐしてやりたいが・・・)
壁に背を預け絶えず周囲の気配をうかがう若者は、濃紺のスーツをはじめとした服装
ばかりか顔まで、名古屋で後藤と接触した若者と瓜二つだ。
一卵性双生児かとも思えるが、まとっている雰囲気は全く違う。後藤との急接近に慌
てふためくあちらとは逆で、トップアイドルを目の当たりにしても泰然としている。
- 659 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:20
-
開演時間まで30分を切った。
長椅子上の美少女が起き上がり「んんーっ」と伸びをすると、若者は露払いのつもりで
場を離れようとした。そこへ。
「よろしくお願いしまーす」
独り言ではあり得ない声が自分へ向けられたものと気付き、愕然と振り向いた。
武道に長けた彼は足音などたてぬどころか、自分の息遣いが聞こえない距離を計算
していた。少なくとも、全く武術の心得がない少女に気取られるなど考えられない。
しかし硬直した彼に近づいてくる彼女も、その美しい顔に浮かんだ微笑も現実だった。
「ジョーさんから聞いてますよ。大船に乗ってていいんですよね」
「・・・・・はい。必ず護ります」
接近しつつ小首を傾げる姿が奇しくも、後藤真希が双子の兄に見せた姿と酷似して
いると知る由もない彼は、兄とは違い正面から受け止める度胸を備えているようだ。
- 660 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:20
-
「お名前きいてもいいですか?」
目立ちたがり屋の兄と違いストイックそのものの彼も、この笑顔には抗えまい。
名乗りつつ名刺を差し出した。
『ウォリアーズ・コーポレーション 取締役 門倉亮大』
「うわー、取締役ってすっごぉ!」
物騒な社名を眼にしても笑顔に翳りすら見せない松浦亜弥に、亮大の顔にも微笑が
灯ったのだった。
To be continued...
Next time is start at chapter.49
See you again and good luck !
- 661 名前:新人 投稿日:2004/05/24(月) 20:22
- 今夜の更新は以上となります。
またも新キャラ出現・・・・申し訳ありません。
今夜は『17才』でも観ようかな。
では皆様、次回の更新にて。
- 662 名前:みっくす 投稿日:2004/05/24(月) 22:18
- レスする前に更新きてしまいました。
いよいよ本格的になってきましたね。
新キャラもいいかんじです。
次回も楽しみにしてます。
- 663 名前:つみ 投稿日:2004/05/25(火) 00:46
- もう一人・・・
なんかすごくこっちが緊張してきました!
ゼンとの疎通もよっすぃ〜さんは取れてきましたね!
次回も楽しみに待ってます!
- 664 名前:とこま 投稿日:2004/05/29(土) 19:21
- 更新お疲れ様です。
暫く離れていたらいつの間にかオリジナルキャラが(汗)
しかも二人!?
なちみドラマと同じく先行きが不透明・・・。
次回も楽しみに待ってます。
- 665 名前:silver bullet 投稿日:2004/05/31(月) 23:08
- おひさしぶりです。いろいろあって今日一気に読みました。
オリジナルキャラが増えましたね。門倉兄弟はどのような動きをするのか楽しみです。
次回も期待しています。
- 666 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:24
- こんばんは。作者です。
更新の間が開いて申し訳ありません。
読み返していて、誤字脱字の多さに絶句し、しばらくヘコみました。
この癖はいったいいつになったら・・・・。読んでいただいている
皆様に申し訳無いです。
662 みっくすさん
新キャラを受け容れていただいて、感謝です。
モデル、誰だと思います?・・・って、クイズ
出したりして。
663 つみさん
どうぞ緊張なさらず(^^)
まだ先に・・・・・おっととと(A^_^)
ゼンの活躍も・・・あわわわわわわ。
664 とこまさん
なっつぁんのドラマ、凄いですよね。岡本健一の芝居には
鳥肌が立ちます。この小説もそうなるとよいのですが。
665 silver bullet
お久しぶりです。門倉兄弟は、実は兄○だったりします。
実は一番凄いのは・・・このあとをお楽しみに。
では、今夜の更新をしたいと思います。
- 667 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:30
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.49
警視庁捜査一課長・田宮嘉朗は、部下からの電話を切ると窓際へ立ち、向かいの
ビルを見た。考え事をするとき、しばしば彼は意味の無い視線を窓外へ送ることが
ある。しばらく静止し再び席へ戻った田宮は、数刻前に切った電話を見つめた。
(ダミーか。あのときもそうだったな)
「何ですダミーって」
「ん?」
- 668 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:31
-
顔をあげると、事務職の女子職員がトレイを手に微笑んでいた。運ばれてきたカップ
が派手に湯気をあげている。
「珍しいですね独り言なんて」
(口に出てたか)と頭をかきつつ「いやいや、何でもない。仕事以外のことだよ」
「そうですか・・・・あまり気をお詰めになりませんように」
一礼して背を向けた女子職員はそれきり触れなかったが、田宮の脳裏からは容易に
『ダミー』の文字が消えなかった。
「このところ傘下で増えつつある店があります。ひょっとすると、ダミーかもしれません」
- 669 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:31
-
我ながら上司に挑戦的だな、と思った。たった一人で捜査するには、ある程度のヤマ
も必要だ。チームでの分担制に慣れた身には、久々の独断専行とも言える。
ここまでは、正しい選択だったと思う。まだ素材を集めている段階ながら、出来上がる
パズルが何となく見えた気がしていた。
強く吹き始めた風から身を護るように、逢坂はハーフコートの背を丸めて歩き出した。
とても刑事とは思えない後姿を、ビル群の間を縫う斜陽だけが見送る。
二度と再び組むことはないはずだった『スリー・セインツ』の脈動が、時を経て復活し
つつある。
違う畑で熟成された炸薬と、海外で爆発力を増した弾頭とが融合したとき解放される
殺傷力は、無限に近いだろう。
無論、ただひとり組織に残った自分の中にも、怒りぐらいはある。
- 670 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:32
-
近づく窮地を伝えたとき、親友のバディとなるべき妹分が浮かべた涙。
何よりも、中澤裕子の中に垣間見えた『悲』
それは囚われの身となる自分よりも、奪われた命に対してのものであった。
二人が流さざるをえなかった涙を再び、見たくはない。流させたくない。
捜査一課のベテランが醸すエネルギーが、高科にも劣らない爆発力を秘めることを
本人も自覚せぬまま、その瞬間は刻々と近づいていた。
ひとまず報告を終え、稲葉は残度数ひと桁に減ったテレホンカードを手帳のポケット
に挟んだ。
- 671 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:33
-
次の公演までに使える僅かな時間の大半を費やした割には、顔には満足感が溢れ
ている。半分棚ぼただったとはいえ、小さくない収穫を『本部長』に報告できたと思う。
またそれ以上に
「詳しい経過はあとで美鈴から聞く。ポイントだけ話せ」
と言ったことが、ジョーの性格を垣間見たようで面白かったし、嬉しくもあった。
・
・
・
あさみと里田をしたがえ、稲葉は表参道のカフェへと足を踏み入れた。
「まだみたいやな」「ですね」「早く来ませんかねえ」
泰然としている稲葉に比べ、カントリー娘。の二人は落ち着かないようだ。
その瞳に宿しているのは、ともに姿を現さない「護衛」と「敵」に対しての不安だろう。
自分たちの直後に入店した女性客の動きにも鋭い視線を飛ばしている。過剰反応に
近い。
- 672 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:33
-
ジョーがつけたというガードの腕は、気配すら感じさせないことで逆に信用していいと
思うが、若い二人はそこまで肝が座っているわけではないようだ。
「そうギスギスせんと、肩の力抜いて」稲葉はいつもと変わらないものの「はあ・・・こ
ういうの初めてなもんで」とあさみも不安を口にしている。
注文の品を飲みながら待っていると、さりげなく入口を注視していた稲葉の表情が動
いた。上下紺のスーツに、コートとアタッシュケースを手にした姿は、髪型がオールバ
ックであることとあわせて、とても刑事には見えない。しかし、ちょっとした会社の重役
に見える男は間違いなく、稲葉と申し合わせたとおり眼鏡を白いハンカチで拭きなが
らやってきた。
昨日のうちにこちらの写真は3人分を送付済みだから、すぐにわかったようだ。
- 673 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:34
-
「遅れて申し訳ない。道が少し込んでまして」
電話で『刈田』と名乗った刑事は、名詞を出しながら言った。肩書は警部補である。
30代後半から40代といったところか。課内でも発言力を持つベテランに見える。
「気にしないでください。私たちが早すぎたようですから」
刈田刑事の隣で、あさみが眉を寄せた。
(変だな・・・標準語だ)
その対面では里田も表情を変えかけていたが、当の本人は気にした風もなく本題に
入り、ペースを掌握しつつ進めていった。
「私たちが一番危惧しているのは電話でお話しした通り背後関係なんです。芸能界
縦のつながりが物凄く強い世界です。独立系の新興事務所に移籍するのはリスク
が大きいと誰でも思いますでしょう」
「はあ。あまり詳しくないのですが、そうなんですか」
「なのに、仕事の心配はするなと言う。裏があると思うのが普通ですよね」
「中澤さんが冤罪を被りかけた事件と関係がある」
「そうとしか思えなくて」
「考えすぎのような気もしますがね」
- 674 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:37
-
会話が途切れると刈田はしばらくの間、自分で取ったメモを熟読した。
「電話会社は動いてくれそうにないんです。何とかお願いできませんか」急かすように
懇願する稲葉を、あさみは無表情を装いながら探るような眼で見る。
おかしい・・・・電話会社の人ともコンタクトは取れているはず。ふと見ると、同じことを
考えているのか、里田も横顔をじっと見ていた。
確か相手の刑事とは・・・。
「わかりました」
快諾とはいかないまでも、聞く者に希望を持たせる刑事の声が耳を撫でた。
翳りかけていた稲葉の表情が途端に明るさを帯びる。
「一人でどこまで出来るかわかりませんが・・・やってみましょう。ひとまずアプローチ
してきてる相手から。なに、我々が動けば電話会社も協力せざるをえませんから」
「よろしくお願いします」
「ではこれで」
公務の合間に抜けてきてくれたのか、あまり時間がないとでもいうように注文すらし
ないまま、刈田刑事は席を立った。
- 675 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:38
-
これで終わり・・・・?二人の後輩が顔を見合わせ、稲葉に疑問を呈する前に、刑事は
振りかえった。
「あー、余計なことかもしれませんが、中澤さんはいまどうしておられるので?」
「さあ。あんたに答える義務ないと思うわ」
稲葉の返答と同時に、後輩ふたりともに驚愕の表情へ変わった。大阪弁へ戻ったこ
とに対してではない。
ようやく動いてくれることになった所轄の勇士を、稲葉は振り返りもしなかったのだ。
しかも笑っていた。
それは、かつて誰も眼にしたことのない、不敵な笑みであった。
To be continued...
Next time is start at chapter.50
See you again and good luck !
- 676 名前:新人 投稿日:2004/06/02(水) 21:44
- 今夜の更新は以上です。
いきなりやってしまいました。
込んで → 混んで
ですね・・・(>_<)
みっくすさん、名無しのよっすぃーさん、修正をお願いします(:;)
では皆様、次回の更新にて。もう間違えないようにしよう・・・。
- 677 名前:つみ 投稿日:2004/06/02(水) 23:29
- 稲葉さん・・・
その景色が浮かんできました・・
スリーセインツ・・・楽しみです!
- 678 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/03(木) 17:40
- 更新お疲れ様です。
おひゃぁ〜、ドキドキしてきましたw
もう皆さんカッコ良すぎ・・・。
続きもさらに楽しみにしてます。
- 679 名前:みっくす 投稿日:2004/06/03(木) 20:38
- 更新おつかれさまです。
スリーセインツ復活するのですかね。
次回も楽しみにしてます。
- 680 名前:とこま 投稿日:2004/06/05(土) 12:55
- 更新お疲れ様です。
スリーセインツ復活ですか。
皆さんかっこいいですね。
次回も楽しみに待ってます。
- 681 名前:わたなべ 投稿日:2004/06/06(日) 13:51
- うお〜〜〜
- 682 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 18:59
- こんばんは。作者です。
『おとめチック』
『さくら咲く』
両方手に入れた皆様は、どちらを先にご覧になりました?
私は当然(?)『さくら組』でしたが・・・。
正直、驚きました。
初めて生で聴く曲の数々もそうなんですが、個々の印象が
娘。本隊のライヴとは段違い!
とくに制服LOVEマシーンにはのけぞりました。
パートが増えたり、カメラがとらえる回数が倍になっていたりと
要因はいろいろあると考えられますが・・・。
ともあれ、娘。の原点ここにあり。一瞬たりとも眼を離せませんでした。
まりっぺ、さすがの司令塔ぶりじゃの
やはりあいぼんの魅力は歌唱力じゃな
総合力で台頭しつつあるのは高橋愛じゃ
いつの間にそんな歌が上手くなったんじゃ、え、こんこん?
ガキさんがますます良くなって来たわい
えりリンはビジュアルでチャーミーをも凌ぐようになったの
そして
よっすぃー・・・
本気出せば凄いのに普段は何をしとる!出し惜しみしとるのか!!
以上、最近出番が無くて不貞腐れ気味の教授の感想でした。
おとめ組の感想は次回に持ち越すそうです。
では、今夜の更新をしたいと思います。
- 683 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 18:59
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.50
たちまち表情を曇らせるベテラン刑事へ、稲葉は笑いながら言葉を継いだ。
「下手な芝居はやめやオッサン」
「「おっさん!?」」
眼を剥く後輩にニヤリとし、ゆっくりと振り向く。オッサン呼ばわりされた刈田刑事は、
雰囲気を察して傍の女性客が腰を上げても微動だにせず稲葉たちを見つめ・・・・・
いや睨みつけていた。
稲葉は平然と受け止め「よくできとる」と手にした名詞を何と真っ二つに切り裂いた。
「一瞬だけ信じかけたけどな。本物は2軒先で待ちぼうけや。里田、悪いけど電話
してくれるか。リダイヤルしたら番号出てくるから」と携帯を渡し、鋭く睨み返す。
- 684 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:00
-
独自の調査を進めるうち、こちらの動きを監視されている、あるいは読まれている・・・
と疑念を抱いた稲葉は、1%の確率を排除するため今朝になって待ち合わせ場所の
変更を依頼していた。電話を使わず、直筆のメッセージを知人を通じて届けたことで
機密は保たれ、ここへ現れた時点で「敵」と断定できたのである。
どんな手を使ってくるかわからない、電話一本も細心の注意を払え、とジョーがわざ
わざ厳命したことで目覚めた嗅覚がさせた業だ。やはり、そこらのOLとはふた味は
違うと言うべきか。
あさみと電話を終えた里田が隣に並ぶのを待ち、稲葉は「どないする?ま、大人しく
ウチらに捕まるか、騒ぎを起こして刑事さんの厄介になるか」と凄みをきかせる。
選択肢はないぞという脅しだ。
「甘く見られたもんだ。たった一人の刑事に、黙って捕まると思うのか」
偽刈田にしてみれば窮鼠に咬まれた形だが、表面上はまだ平静を保っていた。
- 685 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:01
-
お互いに派手な騒ぎを起こせないという事情を見越し、男は不敵に笑った。稲葉たち
など相手ではないという自信もあるだろう。
だが、真っ向から受けて笑みを崩さない稲葉を見て、さらにはその口から発せられた
一言に表情を厳しいものへ変えた。
「一人ならな」
自分たちを指すとも、他にも仲間が手薬煉を引いているともとれる嘲言に、偽刈田は
逃走に移った。この類の勘が外れたことはない。
「むむう!」
無念に滲む呻き声とともに、男が後方へ、稲葉たちの方へよろめいたのは1秒後だ。
いつの間にか背後に立ち塞がっていた影に軽く突かれた肩に走った激痛は、受けた
当人と手傷を負わせた影だけが知っている。
- 686 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:02
-
「なんで?」よろめいた男を見ず、あさみがあげた声は嬌声に近かった。
視線の先に佇んでいたのは、通路を隔てた傍の席に着いていた女性客だったのだ。
紺のスラックスに白いセーターが清楚な顔立ちを彩る黒髪の美女は、わざとなのか
無表情で逃走経路を塞いでいた。さすがに店内を満たしはじめた緊張の中で、何人
か当事者たち以外にも気付いた客がいるようだ。
腰まで届く黒髪が印象的なこの女性は稲葉が偽刑事とやりあい始めたとき、恐怖を
端麗な顔に刻み、レジへ向かったのではなかったか。
ならば、叫喚すべき事態に陥ってもなお余裕を絶やさぬ稲葉貴子は、気付いていた
のか?
彼女が【ガード】であることに。
- 687 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:04
-
おそらく肩を突いたのであろう右掌底を静かに戻し、「あと一度、当たれば一ヶ月は
腕が上がりません」と美しい守護者が予告した。
通報級の事態と誰もが気付きながら動くことが出来ない・・・5人を包む殺気が阻止
している。
だが、数的優位に立った彼女たちは、いま少し深慮すべきだったかもしれない。
「ふふ。甘いな、俺も、お前たちも」
偽刑事は海千の兵であった。
口調から何かを読み取ったのだろう。ガードたる女性が一歩を踏み出しかけた。
ガシャン!
「きゃあっ!」「ぅおぉっ!?」
「しまった」
大の男を後退させた技を再び揮う機会は失われ、かわりに派手な破砕音と、悲鳴と
驚嘆を意味する声が上がったとき、美人ガードもまた愕然と放物線を見送った。
前の二つは男が跳躍の踏み台にしたテーブルを占有していたカップルがあげたもの。
苦渋に近い後のは、テーブルとソファを足懸かりに3mも先の通路へと着地した男に
放たれたものであった。
- 688 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:06
-
対象であるスーツ姿は勇敢にも立ち塞がろうとした若い店員を排除し、たちまち入口
へ到達した。その間、僅か3秒足らずの早業である。
「ほっとき。敵さんも焦ってる証拠やて」
「・・・」
慰労ともとれる稲葉の言葉に無言で一礼した彼女が男を追わなかったのは、課され
た仕事が「警護」であると固く心に命じているからであろう。
カントリー娘。の二人とて、ここで荒立てれば「今夜」が台無しになる事を承知してい
るのか、静かに見つめているだけだ。
「ありがとう。暴れたらどうしようかと思ってたわ」
自分からは何も言わないだろうと踏んだ稲葉は、先ほどとは天地ほども違う優しい
声で礼じた。
「いえ・・・門倉美鈴と申します」
再び一礼した美鈴にあとみと里田が名乗ると、稲葉は「いま連絡しとるから、心配
せんといて」機先を制する形で店員と背後に続く店長らしき正装の男に言い渡し、
さっさと席へ戻る。
- 689 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:06
-
何事もなかったように着席した4人へ若い店員が何か言いかけたが、店長が肩に手
を置き止めた。テーブルを荒らされたカップルに「片付けて、お詫びの品を」と聞こえ
たのに満足そうな稲葉を、後輩二人が感嘆顔で見ている。完全に稲葉のペースだ。
まるで予想の範疇とでも言いたげである。
「さっきの何ていう業?ウチにも教えてほしいわ」
ハロプロ随一のコメディエンヌは興味深そうに美鈴の顔を覗き込んだが、微笑をたた
えたまま小首を傾げるのみで、答えてはくれなかった。きっと自分たちが知る武道と
は全く違う何かなんだろうな、と想起させる笑顔であった。
「まあええわ。にしても奴ら、焦っとるな。いきなり仕掛けてきよった」
「予想してたんですか」あさみの声に安堵が感じられる。
「ジョーさんにヒントもらったけどな」
「何でこんな人の多い店にって思ってたんですけどね」
携帯を返しつつ、さらに里田は「ごっちんたち大丈夫かな」と心配顔で呟く。
- 690 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:06
-
ライヴ会場内とて100%安全とはいえない。とくに問題なのは終演後だ。集まるであ
ろう取材陣に紛れ込まれでもしたら、ハロプロのエース二人が・・・。
里田の心中を読み、稲葉も表情を曇らせた。松浦のライヴにゲスト出演する彼女は、
覚悟すらしている。無事で済むとはとても思えない。
もっとも、今更ジタバタしても仕方ないのは事実だ。
こんなことで暗くなってどうする、と鼓舞しかけた稲葉は、思いがけない加勢を得た。
重々しいものを一掃する声が、つい数分前に知り合った女性から呈されたのだ。
「ご心配には及びません。後藤さん、松浦さんには兄たちがついております」
- 691 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:07
-
口調が穏やかながら確固たる自信に満ちているばかりか、さらに「稲葉さんの護衛
はいまも外で待機しています」ときた。
あさみを「私たちのだったんですか?」と驚嘆させたのを最後に、門倉美鈴は会釈し
て腰を上げる。別の席へ移る気だ。
背後で刑事らしき男が入店したらしい、ニュアンスが違う接客用語が聴こえた為と
理解するのに、1秒も要らなかった。
この人のお兄さんたちって、やっぱり凄いんだろうな・・・。よーし、これで集中できる。
あらためて刈田刑事との面談に臨む三人は、営業用のスマイルを作れるほどに余
裕を取り戻していた。
To be continued...
Next time is start at chapter.51
See you again and good luck !
- 692 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:09
- 今夜の更新は以上となります。
677 つみさん
スリー・セインツが稼動するとき、どんな地獄絵図が…って、違う
違う(^^)けど、お楽しみに。
678 名も無き読者さん
まだまだ、この先をご覧あれ。まだほら、エージェント達が(^^)
679 みっくすさん
目立ち過ぎですかね彼ら?もっとも、次回あたりで影が薄くなると
思いますので、許してやってください。
680 とこまさん
復活したとしても、最終兵器は彼らではありません。ヒロインが
黙ってるはずないじゃないですか(w
では皆様、次回の更新にて。
- 693 名前:新人 投稿日:2004/06/09(水) 19:14
- 追伸…
なっつぁんのドラマ、凄いことになってきましたよね。
連続殺人はおそらく・・・
そして葉音は、きっと運命に逆らうのでしょう。
噂では撮影が押しまくってて大変だとか。あの創りでは
致し方ないかも。
では。
- 694 名前:つみ 投稿日:2004/06/09(水) 19:38
- ほうほう・・・・
強いですね・・
門倉さんたちの実力を楽しみにして待ってます!
- 695 名前:とこま 投稿日:2004/06/09(水) 21:34
- 更新お疲れ様です。
門倉兄弟はさすがですね。
知と武が組み合わされば最強の力を放つはずです。
次回も楽しみに待ってます。
今週末からなっちのソロ紺が始まりますが頑張って欲しいものです。
- 696 名前:みっくす 投稿日:2004/06/09(水) 23:11
- なるほど、それぞれにしかっりガードがついてるのですね。
門倉兄弟もつよそうですね。
いよいよ決戦は近い?
>『おとめチック』
>『さくら咲く』
>両方手に入れた皆様は、どちらを先にご覧になりました?
おいらは当然(?)『おとめ組』でしたが・・・。
いやー行きたかった。
生でみたかった。
- 697 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/10(木) 19:05
- 更新お疲れ様です。
いやー更新ごとに期待が高まりますw
爆発の日も近いか!?
引き続き楽しみにしてます。
PS >なっつぁんのドラマ・・・。
自分は仮説を立てすぎてワケ分からなくなって来てますw
特に前回のアレが。。。
作者サマはどうですか?
- 698 名前:新人 投稿日:2004/06/10(木) 22:18
- 更新ではないのですが・・・作者ですm(_ _)m
おとめ組の方なんですが、地元に来たときに行って来ました。
ソニックシティより後だったと思うのですが、DVDのとおり『さくら』より
笑う場面が多く、しかし思わず「すげえ!」と唸ることもまた同じで、芸達者
が揃った『おとめ組』らしいライヴでした。
個人的には、石川・藤本・辻が良かったな、と。カオリんはリーダーなので
あれぐらいやって当然としても、石川の成長力に驚愕した次第。
DVD以上に後半でブチ切れていた藤本と互角に渡り合っていました。
思えば、あれが予兆だったのかも。
田中も順調に来てる気がしますし、真琴がまたいい味出してましたね。
影が薄かったのは・・・いや何も言うますまい。彼女はまだこれから
ですから。
なっつぁんのドラマですが、連続殺人の犯人は複数と想像しています。
葉音の想い人は、おそらく殺してはいないでしょう。誰かと問われると、
腕ずくという手口が多いことから男性と推理します。
気になるのは谷啓の刑事さん。彼が全てを解き明かすとき、悲恋が終りを
告げるような気がします。
では皆様、次回の更新まで推理を楽しみましょう。
- 699 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:19
- こんばんは。作者です。
今日『タンポポ シングルXクリップス』が手に入ったので、
王子様と雪の夜
をBGVに更新します。
- 700 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:20
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.51
話の途中で稲葉の謙遜に気付くのは御安い御用だった。
稲葉の深読みと対処能力だけじゃねえ。石黒が尾行術に見せた冴え、差し向けた
門倉ツインズに気付いた後藤と松浦。俺の立場はどうしてくれる?
日本へ来たのは余計なお世話だったか・・・・・・・若干ながら昔の石川みたいになり
かけた俺は、いいかげん遅いと呼びに来たパイロットが『いつまでサボってんです』
と毒づいたおかげでどうにか落ち込まずに済んだ。英語だったのが救いだ。
- 701 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:21
-
返事をせずに外へ出ると、100m先に自らのエンジンが作る陽炎に包まれBJ-400
が搭乗を待ちかねていた。
巡航速度805km/h、航続距離2800kmを誇るこのビジネスジェットは、原型初飛行
から30年が経過しようという現在でも、一線級の性能を保っている。開発した三菱の
手を離れ、米国のレイオセン社で製作され続けているのがその証明だ。
このビジネスジェットは、ハワイ事件(外伝 − Sink a tragic love in deep blue.参照)
で皆にも話した、世界的ホテルチェーンが共有してるものだ。ロスの空港でハチあわ
せした顔見知りの役員が日本へ年二回の視察に出かけるところだったのには、マジ
で小躍りしかけたぜ。
なぜって、ハワイでモーニング娘。のメンバーを歓待する(実際にされたのは俺かもし
れんが)きっかけとなった役員さまにゃ、その後も「腕の確かな日本人ハンター」とし
て重宝がられ、仲介を含め依頼を受けまくって「貸し」を作っておいたからよ。
どんなに厄介な案件でも、命の危険に見舞われたとしても、一切の割増料金は取ら
なかったおかげで
「私に出来ることがあったら何でも言いなさい」
「へーい」
ってな会話すら成立しちまう仲になってたからな。VIPに貸しを作っておきゃ、あとで
何倍にもなって還元されることは、ハワイの一件でガツンと腹に嵌ったのだ。
- 702 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:21
-
日本での高速移動を考えたとき、真っ先に浮かんだのは航空機だった。長距離列車
は事故で遅れる危険があるし、車は論外だ。で、10日間の予定で滞在するVIP殿に
「使わないなら貸してくれないか」と打診したところ、燃料代とパイロットの日当を負担
するという条件でOKが出た。腹が減っては飛ぶに飛べぬ、機械はどんなにコキ使っ
ても文句一つ言わねえが、人間はそうもいかん。
今回の場合、ひとみのもとへゼンを届けるフライトに始まり、米子−調布間を二往復
するわけだが、パイロットは鼻歌混じりもいいとこだ。米国で空港間が本州の南北よ
りも長いなんて日常だから、お茶の子ってところだろう。
ま、「飛行場」じゃなくて、民間とはいえ国土交通省管轄の「空港」を使えるってこと
にゃ、ある人物の口利きってのも加わるんだが、それはまた別の話だ。
- 703 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:21
-
ともあれ、定刻を外すこと10分でジェットは離陸した。直前にメール着信があったが
パソコンの電源は落とす。ルールは守らにゃあ。どっちみち1時間後には読めるしよ。
今のところ門倉兄弟が後藤と松浦に勘付かれた以外は、名古屋も横浜も問題なし。
飯田率いる『おとめ組』も、リーダーの話じゃ何も起きてない。何かあったとしても、
奴が未然に防ぐはずだ。
『さくら組』は、ひとみがきっちりやってる。
スペンサーから聞いた話じゃ昨夕に突然やってきて、あいつなりに研究した装備を
持ち出したという。何を参考にしたかはわからんが選択は間違ってなかったらしい。
だから加勢は余計なお世話だって言ったんだ。
となればあとは・・・。
- 704 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:22
-
俺がいないからって不安がるような姉さんじゃないが、伝え聞くあがり症に一抹の
不安だけは残る。
無論、本人との打ち合わせは抜かりなくやった。石川事件での矢口よりも信頼度
は高いと思うが、こればっかりはよ・・・・。
手元にドリンクが運ばれて思考が寸断したのは、幸いだったかもしれない。
報道陣が大波となって押し寄せる中、凶刃の前に立ち塞がる根本大輔と恐怖に
顔を歪ませる中澤を想像しかけてたからだ。
慌ててかき消してシートに身を沈めた。あと30分あまりだ。
ビジネスジェットの小さな窓外では、万人の希望の象徴である太陽が、訪れる夜の
深さを裏返すような残照を投げかけている。
こいつが象徴でないことを、俺だけじゃなくひとみも祈ってるだろう。
- 705 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:23
-
親しい友人にお気に入りの、しかもその人に合う着信メロディを設定するのは誰でも
想像できる。
では、CMと歌い手のライヴもしくはオムニバスCDでのみ耳にすることが出来た曲な
らどうだろう。
いまの根本のように、相手が特別な人間であることに思い至り妙な緊張を感じるうえ、
思い出せそうで出てこない曲名によって眉間の皺が深くなってしまわないだろうか。
事実、僅かなエンジン音のみに支配されて間が持たなくなりかけていた二人へ届け
られたメロディは、ドライバーだけを不思議な感覚で包んだ。
『女神〜Mousseな優しさ』
- 706 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:23
-
保田圭の卒業ライヴを最後にスポットライトと袂を別った伝説の曲は、モーニング娘。
創生期を知る者だけが初代『タンポポ』の面影を見て、追憶に胸を熱くする。
初代リーダーが最も大切にする現役娘。がコンタクトを求める知らせと想起できる者
がごく限られていることを知る由もない根本だが、通話ボタンを押したのみでうっすら
見え隠れしていた翳が中澤の顔から霧散したことだけは感知できた。
「そっちは大丈夫なん?電話してる場合ちゃうやろ」
(何だよぉ人がせっかく勇気づけてやろうとしてんのに)
「それはそれは。ありがとう。心配いらんからライヴ頑張って」
(人より自分の心配しろよ裕子!)
「わちゃ、デカい声」
- 707 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:23
-
和ませようというだけでなく、お互いに必要な時間なのだろう。たちまち明るさと余裕
が満ち始めた車内に中澤裕子の高音だけが響くのは、むしろ心地良くさえあった。
私だけで大丈夫でしょうか、と訊いたとき「だけ、じゃありません。矢口がいるじゃない
ですか。心配無用です」と高科が答えた意味がいまわかった。
こっちの様子が見えてるみたいだ。彼がべた褒めするだけのことはある。
「あんまり考えちゃダメだよ。インスピレーションの方がいいんだから裕ちゃんは」
(わかってる。伊達にトシ喰っ・・・・・なに言わせるのん!)
「ひゃっはははははは。ノり突っ込みが出るなら平気だね。んじゃ、オイラは歌いに
行ってくるよ」
(夜のニュース楽しみにしといてな)
「オッケー、がんばってね」
- 708 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:24
-
閉じた携帯をしばらく見つめ、祈るように額まで近づけるとポケットへしまう。
それほど今回の事件は重く、この先も辛い軌跡を辿るのだ。
「やぐっさん」
「へっ」
振り向いた先に、おそらく想いを同じくしているであろう吉澤ひとみの微笑があった。
昨夜、バーで簡単だが極めて重要な会議があったと聞かされたとき、きっと自分が
上梓した作戦も耳に入っているだろうと思った。ならこれもお見通しか。
「心配してもはじまらないですよ。こっちはこっちで、やるコトやりましょう」
ゼンが現れたときはさすがの矢口ものけぞったが、それまで翳を帯びていた美貌に
輝きが戻っていたのを感じ、さらにはアイドルのものではあり得ない眼光を放ちつつ
何処かへと姿を消す後姿に、バウンティハンターとしての彼女を見て安心した。
「うん・・・・・・ま、精神安定剤みたいなもんだよ」
「お互いに?」
- 709 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:25
-
茶化すような吉澤の問いに「そっちもだろ」と返す背へ、別の声がかかった。
「あの・・・・・」
「「へっ」」
師弟コンビが全く同じリアクションで反応した先には、何やら落ち着かない様子の
亀井が立ち尽くしていた。
「集合なんですけど・・・」
「そっか、悪い悪い。迎えに来てくれたんだ?」
最近は「道重よりボケキャラなんじゃ?」と言われ始めている亀井も、刻々と近づく
「その時」に緊張しているのか、さすがに笑顔が引き攣っているようだ。
ふと足元を見ると、ゼンがじっと二人の顔を見つめていた。
「何だよ、お前もかぁ」矢口がしゃがみこんで頭を撫でた。
きちんと座した彼の眼は、状況を忘れてしまいそうになるほど優しい。「肩の力を
抜きなよ」とでも言ってるみたいだ。
「探しに行くのがわかったみたいで、一緒に来てくれたんです」
- 710 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:25
-
二人の匂いを追って先導してくれたのだろう。吉澤を除けば単独で動くことすら咎
められかねない状況にある今は、彼の存在は精神的にも物理的にも頼もしい。
「行こっか」吉澤が明るくウインクすると、ゼンはお返しに眼を半分閉じてくれた。
(?)
並んで歩き出した三人は、通路の彼方で若いスタッフが二人、こちらを見ているの
に気付く。
慌てたように会釈し持ち場へ戻る後姿を、矢口は笑顔で見送った。
(よしよし、頼むぞ若い衆)
傍目からはスタッフに向ける優しい眼差しにしか見えないが、吉澤だけは戦慄を
おぼえた。ある意味、怖い先輩だよな・・・。
お固い報道陣だけが集まって粛々と進んでは効果が薄い・・・と考えた司令塔は、
大胆にも周囲を「使う」作戦を選択した。もちろんメンバー全員に通達してある。
見ざとい連中が噂を流布してくれれば、中澤の側方支援ができる。
ファンの中には、「関係者」という一線を挟んでスタッフと近しい者もいる。「関係者」
にしても、外部との接触は仕事を離れれば自由である。情報ソースとしてマスコミに
重宝がられている者がいることを、誰もが暗黙のうちに見逃しているのだ。
- 711 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:26
-
(梨華ちゃんたち、うまくやってるかな)楽屋のドアを前に、矢口は「おとめ組」メンバー
一人ひとりの顔を思い浮かべる。飯田と二人で考えた作戦の指揮は、石川がとって
いるはずだ。
しっかりもののくせに実は安倍と1・2を争う天然の二面性を持つ娘に任せて大丈夫
かと迷ったが、飯田が「だからいいんだよ」と不思議な説得力を発揮し決定した。
信じてるよ・・・裕ちゃん、圭織、石川、藤本。
そして託された少女たちもまた、着々と任務を遂行中であった。
To be continued...
Next time is start at chapter.52
See you again and good luck !
- 712 名前:新人 投稿日:2004/06/16(水) 22:32
- 今夜の更新は以上となります。
私がでしゃばったため、教授は傷心の挙句にボイコットという暴挙に・・・。
まだ出番あるのにな(A^_^)
では皆様、ご感想お待ちしております。
次回の更新にて。
- 713 名前:みっくす 投稿日:2004/06/16(水) 22:36
- 更新おつかれさまです。
久々にリアルタイムで読みました。
これからどういう作戦が展開されていくのですかね。
みんな頑張って!
次回も楽しみにしてます。
- 714 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/17(木) 01:04
- 更新お疲れ様デス。
むむ、ちょっとずつ何をやらかそうとしてるのか見えてきましたね。
しかし中々大胆なコトを。。。
ていうか許可取ってんのか・・・?
などといらん心配をしながら次回も楽しみにしてます。
- 715 名前:丈太郎 投稿日:2004/06/17(木) 23:53
- 更新お疲れさまです。 しばらくぶりに来たら、えらい事になってますね。
矢口らしい大胆さというか、確かに効果は大きいかもしれないけどかなりの危…
そのための門倉ブラザース?さすがジョーですね!次回も楽しみにしてます。
- 716 名前:とこま 投稿日:2004/06/25(金) 20:48
- 更新お疲れ様です。
これからどんな展開が待っているんでしょうね?
これは楽しみです。
なっちドラマは明日で終わるし(凹
- 717 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:19
- こんばんは作者です。
なっつぁんドラマFINAL前に更新したいと思います。
713 みっくすさん
展開が遅くて申し訳ありません。
今回は彼女たちの見せ場です。
714 名も無き読者さん
UFAの許可ですか?無理やり取ってると思いますよ矢口なら。
あの高音で迫られたら、誰でも寄り切られてしまうんじゃない
ですかね。
715 丈太郎さん
高科の懐の深さは、まだこれからです。ちょっとした仕掛けを
随所に・・・お楽しみに。
716 とこまさん
そう落ち込まずに・・・DVDボックスが出たら買おうかなと
思ってます。一回だけ録画を失敗したんです。この小説も凹ん
でいただけるように(?)がんばります。
- 718 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:19
- 震える将星 EPISODEU 『A Silent Sin.』
Chapter.52
「そもそも事件の成り立ちからしておかしいんですよ!」
飯田圭織の大きな黒瞳が記者を射貫いた。もとが美しいだけに、激憤に彩られた
表情はおびただしい迫力を帯びる。
「証拠が揃ったって何したって、裕ちゃんがやるわけないんです、あんなこと!」
聞きようによっては無茶苦茶な理論をぶつけた相手は、ライヴ前によくある取材で
訪れた地元紙の記者である。
- 719 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:20
-
もっとも記者の方は、眼を白黒させながら「渡りに船」状態を歓迎しているようだ。
自主規制でこちらからは訊けないと誘導尋問をしかけたところ、予想を上回る過剰
反応が返ってきたからである。
今夜の記者会見前に少しでも情報がほしいところだから、濡れ手に粟・・・とまでは
いかなかった。大きくため息をついたリーダーが気を取り直して言ったのだ。
「すいません大声出しちゃって。ちょっとナーヴァスになりすぎてますね」
「わかります。私たちも、中央のマスコミは節操がないな、と思っていたところです
から」
「そうですよ!昨日まで裕ちゃんが犯人みたいな報道してたのに、一夜明けたら
『真犯人は?そして事件の裏には何が!?』ですもん。あったま来ちゃいますよ」
- 720 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:21
-
返しながら飯田は(こんなもんなのかな)と考えていた。最も中澤と近い後輩が事件
に触れたのに、反応がイマイチに思えたのだ。かといって自分たちが力を尽くして
助けたことまでは明かせない。
しかし次の瞬間、飯田は思わず指をパチンとやりかけた。
「皆さんはその・・・どう考えていらっしゃるんですか?」
「ええーと・・・」
さも言葉を選んでいるような演技をしながら(やったぜ矢口!)と心の中で叫んだ。
「私たちの推理でよければ」
記者がゴクリと喉を鳴らすのを待ち、飯田はとっておきの上目遣いで、おそるおそる
切り出した・・・・・・・。
- 721 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:22
-
(よーし、さすが飯田さん!)
ドア一枚を隔てて聞いていた石川は小さくガッツポーズをとった。あとは二人で練り
に練ったストーリーを展開するだけだ。
よし次いくか、と呟くと、携帯を取り出す。
「あたしだけど、準備はいい?」用心深く周囲を見回し無人なのを確かめると、その
ままダッシュした。
角を曲がったところで「いた!道重、田中!」と凄まじい高音で叫ぶ。
呼び止められた二人は石川の顔を見ると(やっば!)と肩をすくめた。
「待ちなさい!あれほど言ったでしょ一人で出ちゃダメって!」
「す・・・・すいませ」
「だから二人じゃないですか」
謝りかけた田中を制し、道重が勇敢にも楯突いた。
「一人は危険だからって言われたから・・・それに建物の外には出てませんよ」
- 722 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:22
-
一瞬マジかと思ったが、石川は怯まず「そうじゃなくて、行く先を言わないでいなく
なるなって言ったでしょ?」と応戦する。
「ちょっと喉が渇いただけです。ジュースも買っちゃいけないんですか?」
何と道重は引き下がるどころかカウンターを見舞った。
癒し系の彼女にしては語尾がきつくなっている。傍らを通り過ぎるスタッフも驚愕の
表情だ。
「あたしの言うことが聞けないの?飯田さんに同じこと言える!?」
石川もさらに声を荒げた。
「そ・・・それは」
「さゆ、謝ったほうがいいよ」
田中が下を向いてしまった道重の顔を覗き込む。そろそろ終幕に近くなったが・・・
(こらっさゆ!笑っちゃダメ!)(だってぇ、石川さん怖くないんだもん全然・・・)
「わかったら楽屋に戻りなさい。すぐ集合よ」
(やり過ぎたかな・・・・ごめんねシゲさん)
笑いを堪える道重の表情を泣く寸前と勘違いし、石川は心の中で謝ったのだった。
- 723 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:26
-
行く手に藤本の細い後姿を認め、小川はスキップで接近した。どうやら携帯で話し
中みたいだ。
「ちょっとマジで!?大丈夫なの?」
珍しく声が裏返っている眼前へ「ふーじもーとさーん」と顔を出す。ほんの一瞬だけ
動きが止まったものの、かまわず藤本は話し続けた。
「怪我とかないの?・・・・よかった。稲葉さんに言っておいてよ『無茶すんな』って」
内容からすると、あさみか里田が敵との遭遇を伝えてきたものらしい。
「何かあったんですか横浜の方?」察した小川の唇へ「しっ!」と人差し指を押し付
け、藤本は「しっかりね」と自分にも言い聞かせて電話を終えた。
「麻琴ぉ!」
「わぁっすいませーん」
吉澤に次ぐ武闘派の藤本らしく(?)ヘッドロックで戒める。
「誰が聞いてるかわからないのにーもうっ!」
- 724 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:28
-
稲葉からはパシフィコに入った直後に連絡を受けている。これを使わない手はない
と、指揮を任された石川は既に決まっていた脚本を書き換えてまで二人へ託した。
最も効果を発揮するのは、不特定多数の人間が往来する場所だ。藤本の提案は
分隊長の賛同を得た。おっと、もう一人の相手役を勤める里田も納得ずくであった
ことも付け加えねばなるまい。
「次は許さないからね」
(やるじゃん麻琴)
「ごっこごごごごめんなさーい!」
(へへっ、コントに比べればこれぐらい)
「ふむ」
技を解いた藤本は、刺すような視線の主を確認すると笑みを堪えた。迫力十分の
鋭い眼に、演技と知りながら小川も硬直しかける。
撃退されたかのように遠ざかる気配は、正に彼女たちが仕掛けた罠の餌食だ。
よーし狙い通り。矢口さん、こっちは順調ですよ。歩き出した藤本に小川が続く。
高科穣也のエージェントたちは、それぞれに輝きを放っていた。
- 725 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:29
-
燃料補給とパイロットに休息を、と指示を出し、俺はバイクへダッシュした。
調布からなら電車で時間が計算できる。羽田は緊急だとゴネても着陸を待たされる
危険があるし、ハナっからフライトプランはこっちで出しといて正解だ。
このあと一仕事してまた米子へ戻らなくちゃならねえ。分刻みどころか一瞬たりとも
気を抜けん。自分でたてたものの、糸が切れたときの反動が怖いオペレーションだ。
人が多くなり始めた調布駅の自動改札を抜け、またもや疾走に移る。
ひと昔前までは特急だの通勤特快だのと難しかったダイヤ編成が、妙に分かりや
すくなっていたのには助かったぜ。
隅っこに空いていた席が優先席でないのを確かめ、俺は腰を降ろしパソコンを開く。
終点まで寝てもいいが、とりあえず確かめておきたいことがある。
プログラムの起動と同時にフレーム部分に表示された名前をクリックする。ふむ…
トレーサーは正常に稼動してる。中澤は会場まであと5分の距離だ。
もう一つの光点を探すと、定時連絡を受けた地点と動いていなかった。わざわざ近い
場所に設定してやったのにツレねえ野郎だ。日浦に張り付いているのは、二つある
出入り口の表には石黒と交代した美弥子、裏口を張っているのは逢坂である。二人
なら巻かれる可能性はゼロに近い。
- 726 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:30
-
次に数件届いていたメールボックスから石黒の報告を開き、思わず口笛を吹きそう
になった。民間エージェント並みの出来だ。やるねママさん。
時間を縦軸にとり、日浦の行動が網羅されていた中で眼を引いたのは、やはりカフェ
での一件だ。
さりげなくやってのける精神力というか胆力も尋常じゃないし、最後に書き添えられ
た「所見」が白眉だろう。
『一日、ついて回ってみて感じたことです。私には日浦が引き抜きのために罠まで
画策する人物には、どうしても見えません。
カフェで接触した、猪乃旗興業の社員らしい男と対等に話してた内容を思い出すと、
余計にそう思えます。
ただし、仕掛けたのが猪乃旗興業であるにしろ、日浦はマークすべきです。あるい
は直撃なんかいいかも。
では、夕ご飯の支度をしなくちゃならないので、この辺で。
今夜も頑張っていきまっしょいo(^-^)o 石黒 』
- 727 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:31
-
最後の今夜、ってのが意味不明だが、面白い見方だと思うね。日浦が悪人には見
えんとな。
彼女と、診察の合間に粛々とメールを送って寄越してる教授の調査や今日ここまで
の情報を一緒に鍋へブチ込むと、何やら奇天烈な味の料理が出来上がりそうだ。
もっとも、そのあたりは俺たちも織り込み済みである。状況は逐一、涼子のメールも
ちゃんと、ひとみに送ってある。返信は「わかった」「了解」ぐらいしか来ないが、いま
頃はある程度、形を整え始めてるんじゃないかね、あいつの中でも。
つい10時間前には皆目わからんかった『犯人像』がな。
- 728 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:31
-
パソコンをしまいながら窓外を見ると、まだ都心に入っていなかった。少し遅れそうだ。
やっとくか・・・・・俺は五感のうち触覚のみを残し、精神統一へ入る。
傍目から見たら爆睡してるようにしか見えないだろうが、ちゃんとエネルギー回復に
勤めてるんだぜこれでも。
本日のセミ・ファイナル間近だ。これまで消費した分は戻しておかなくちゃよ。
To be continued...
Next time is start at chapter.53
See you again and good luck !
- 729 名前:新人 投稿日:2004/06/26(土) 20:33
- 今夜の更新は以上となります。
さあ皆さん、なっつぁんドラマの最終回を、正座して(笑)
迎えましょう!
では次回の更新にて。
- 730 名前:みっくす 投稿日:2004/06/26(土) 22:23
- 更新おつかれさまです。
それぞれ着実に進行しているようで。
次回も楽しみにしてます。
- 731 名前:とこま 投稿日:2004/06/30(水) 21:02
- 更新お疲れ様です。
ワルツは最終話だけ録画してます。
10話は見終わった後消してしまった(泣)
エージェントはこつこつ動いてますね。
地道な活動が実を実らせるものです。
次回も楽しみに待ってます。
- 732 名前:新人 投稿日:2004/07/02(金) 11:35
- お詫び
ご愛読いただいておりました
A Silent Sin
ですが、前回をもちまして最終回とさせていただきたく
思います。
理由は、ファイルが破損し結末までもうすぐだった分が
すべて破壊され更新不能となってしまった為です。
ふたつとっていたバックアップも壊れていまして、元が
壊れていることに気づかず上書き保存してしまったため
どうにもなりません。
既にクライマックスにさしかかり、あとは終章のみとな
っていました。このショックから立ち直るのは不可能です。
まことに手前勝手ではありますが、この後の更新はありません。
読んでいただいた全ての皆様に
ありがとうございました
そして
ごめんなさい
新人
- 733 名前:丈太郎 投稿日:2004/07/02(金) 11:44
- ショック…久しぶりに来たのに…
本当に終わりですか?もう書かないの?嫌だあぁぁぁ!
- 734 名前:つみ 投稿日:2004/07/02(金) 16:57
- まじっすか・・・
- 735 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/02(金) 17:57
- 狽ワ、マジですか・・・。
残念です。。。
でもいつか、次回作でもいいので帰ってきて下さるコトを祈ってます。
今まで本当に楽しませていただきました。
ありがとうございました。
そしてお疲れ様です。
- 736 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 23:48
- まじですか!?
あまりに驚いたので、はじめてカキコします。
この作品はすごく楽しみにしていました。
定期更新でうれしい作品だったので、ざんねんです。
もし、書こうかなという気になったら、いつでも戻ってきてください。
待っています。
- 737 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/04(日) 08:13
- 非常にわがままかもしれないですけど、
すっげー続きが読みたいです。
もし、また続きを書いてもいいと思えるようになったら
是非書いてください。
- 738 名前:きーあん 投稿日:2004/07/04(日) 12:19
- まじですか。
楽しみにしてたのですけどあね。
書く気がおきたら、戻ってきてくださいね。
掲載の方は休載にしておきます。
- 739 名前:御挨拶 投稿日:2004/07/07(水) 15:27
- あたたかいお言葉の数々…皆様ほんとうにありがとうございます。
一年前から書き始め、週1〜2話のペースでコツコツやってきた結末が、こんな形になろうとは…
まだ見せ場はたくさんありました。よっすぃーのアクション、娘。たちの戦い、
裕ちゃんの会見もありますし、松浦と後藤のタッグに再会を果たす石川と銀香…
不完全燃焼と思われる方もいらっしゃるでしょう。ところが、無事だった3週ほ
ど前のファイルを開いても何ら気持ちが動かないのです。
おそらく、このまま潰えることになるかと。
みっくす(きーあん)さん、つみさん、とこまさん、名も無き読者さん、ななし
のよっすぃーさん、ほかたくさんの皆様、ジョー×よっすぃーコンビをご支持い
ただいて本当にありがとうございました。 さようなら…
- 740 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 08:22
- ファイル復元ソフトを使ってみればいかがですか?
バックアップしていたほうからなら可能だとは思いますが・・・。
以前、私も消えてしまったファイルをよみがえらせた事がありましたので可能だとは思いますが
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se192983.html
- 741 名前:新人 投稿日:2004/07/08(木) 09:37
- 名無飼育さん、ありがとうございます。
ダメでした・・・。
消したわけではなく、破壊されたわけで・・・。
エクセルとして認識してくれないなんて、拡張子が.xlsになっている
にもかかわらず・・・。
もはや万策尽きました。
- 742 名前:一読者 投稿日:2004/07/09(金) 02:28
- お使いのエクセルのバージョンはいくつですか?
古いバージョン(97とか2000)をお使いなら最近のバージョン(2002か2003)で読み込ませてみるという手はあるかもしれません。
最近のエクセルには壊れたファイルを修復する機能があります。
- 743 名前:とこま 投稿日:2004/07/11(日) 20:09
- ううっ・・・・゚・(ノД`)・゚・
唯一の楽しみだったのに・・・。
ところで「EXCELで作成したファイルが開かない」という項目が有ったので載せておきます。
[Excel 2003] ダブルクリックでファイルを開くことができない場合の対処方法
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=%2fdirectory%2fworld...
>それと、エクセルで作ったファイルをフロッピーからパソコン
>で開こうとしても開きません。
[XL2002]フロッピーディスクに保管されているファイルを扱う際の注意点
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;411154
[XL2003] ファイルにアクセスできなくなった場合の原因と対策
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;411636
後は、お近くにExcel2002があれば、修復機能でもしかすると
開けるかも知れませんよ。
[XL2002] ファイル修復機能を制御するレジストリ キー
http://support.microsoft.com/default.aspx?scid=kb;ja;289840
とりあえず参考にしてみてください。
- 744 名前:新人 投稿日:2004/07/13(火) 23:27
- とこまさん、ありがとうございます。
早速、試してみましたが、復活できませんでした。
本来はエクセルなのに、テキストファイル(拡張子.txt)として
認識してしまうという未知のトラブルで、諦めるしかなさそう
です。
- 745 名前:一読者 投稿日:2004/07/14(水) 01:15
- うーん、拡張子とプログラムとの対応が壊れちゃったのかな?
ダブルクリックではなく右クリックして「プログラムから開く」でエクセルを選択、とかできませんか?
- 746 名前:とこま 投稿日:2004/07/14(水) 21:51
- 一度、通常通り、Excelを起動していただき、
ツール>オプション>全般タブ と開いて、
「設定」にある「ほかのアプリケーションを無視する」
にチェックが入っていたら、チェックを外してみてください。
どうしてチェックが入ってしまったかは分かりませんが、
ここにチェックが入っていると、Explorerなどからの起動が
できなくなりますので...(つまり、アイコンをダブルクリッ
クして開くと言うことができなくなります...)
これではどうですか?
- 747 名前:新人 投稿日:2004/07/15(木) 08:01
- とこまさん何度もありがとうございます。
開くことは開くんです。ただテキストとして認識してしまうので文字化けして
膨大な焚字みたいなのが出てくるので、どうにもならないと言われました。
お詫びと言っては何ですが…いま新作のプロットにとりかかってます。その中で
今作の載せられなかった部分も明らかにしたいと思ってます。
次回は最後まできちんと書き上げてから、スレを立てますので…お許しください
- 748 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 18:51
- >747
騙されたと思って最後に試してみてください。
ファイルの拡張子を.xlsから.txtに変えます(Exploerのフォルダで拡張子を表示する設定にしてF2でリネーム。)
エクセルを起動してから
ファイル>開く
で「ファイルの種類」を「すべてのファイル」あるいは「テキスト」に指定して読み込みます。
エクセルのファイル拡張子を.txtに書き換えてメモ帳で開くと文字化けします。
それを上の方法で読み込むと元のエクセルファイルとして表示されるのでもしかするともしかするかもしれません。
- 749 名前:新人 投稿日:2004/07/15(木) 21:35
- >748 名無飼育さん
何とかして救おうとしていただいて、本当に感謝します。
実は一番最初に「認識できないならお望みどおり.txtにしてやろうじゃん」
と、まだ重大なトラブルと認識しないまま試しました。
結果は・・・・同じで、やっぱりエクセルで認識不可能なファイルと冷たく
切り反されたのです。
ここは「そうだ! We're ALIVE!」を思い起こして、先へ進みた
いと思います。
新作を書いているうちに思い出し(最初に書いたのとシーンbかなり入れ
替えまして・・・)て、また書く気になるかもしれません。そのとき暖かく
迎えていただけると信じて、新作にとりかかりたいと思います。前を見て。
新人
- 750 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/07/15(木) 22:20
- 新人さま
修復作業、お疲れ様です。
大好きな作品だっただけに修復できず残念です。
前を見て取り組む新作を楽しみに待っています!
新作も是非、保存させてください!
PS:もしご迷惑でなければ、破壊されたファイルをメールにてお送りいただけませんでしょうか?
修復可能か実物を見ながら挑戦してみたいと思いまして…。
『 kuni0416@infoseek.jp 』
- 751 名前:とこま 投稿日:2004/07/16(金) 22:18
- 新人さん
新作楽しみに待ってます。
ななしのよっすぃ〜さんも書かれていましたが、私のほうでも
挑戦したいと思うのでメールをお送りいただけますか?
- 752 名前:新人 投稿日:2004/07/22(木) 06:09
- ななしのよっすぃ〜さん、とこまさんへ
私の方からメールを送るとき、安全でないと判断され自動削除されてしまうようです。
今夜、もう一度やってみますが、多分だめだと思います。
潔く諦めましょう(A^_^)
- 753 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/07/22(木) 06:43
- 新人さま
添付で普通に届いていますよ?
安全でないと判断され自動削除は、メーラー側の設定なので受け取り側の設定ですので、送信側は関係ないはずですが…。
いろいろ試していますので…。
- 754 名前:とこま 投稿日:2004/07/26(月) 21:42
- 新人さま
ウィルスチェックにモロに引っ掛かっているようです。
うーむ、困った・・・。
- 755 名前:新人 投稿日:2004/07/29(木) 18:03
- とこまさん・・・
ありがとうございます。
もう十分ですよ。
ななしのよっすぃ〜さんからも「ダメでした」と
メールをいただいていますし、救済策は無い
ようです。
お礼と言っては何ですが・・・・
―予告―
「卒業を白紙撤回せよ。会場で恐ろしいことが起きるだろう 雪蓮」
飯田と石川のもとへ届けられた一通の、文面も差出人も同じ書簡。ほぼ
同時に、矢口の番組には同じ名前で全く違う内容のメールが。
二人の「雪蓮」は同一人物なのか?いや、そもそもこの二通のメールは
悪戯か脅迫か?スタッフ内の意見すらまとまらぬまま突入した秋のツアー。
娘。後藤、松浦、そして安倍。それぞれの会場で怪事が!
既に独断で捜査を開始していた吉澤は、門倉3兄妹に協力を要請。矢口も
差出人の調査に動く。さらには後藤・松浦・藤本も立ち上がった。
しかし、全員の想いを嘲笑うかのように起きる第二・第三の事件。
門倉3兄弟すら及ばぬ犯人とは?
蘇りし「ごまっとう」の行く手を阻むものとは?
メンバーと離れ、不穏な動きを見せる石川の真意は?
今度こそジョーの力を借りずに解決すると決意を新たにする吉澤が遭遇した
ものは?
震える将星 EPISODE.3 「希望の橋」(仮題)
製作開始!
- 756 名前:丈太郎 投稿日:2004/07/30(金) 08:24
- き、き、キター!
待ってます!
- 757 名前:とこま 投稿日:2004/07/31(土) 15:38
- 新人さま
お役に立てなくて申し訳ないっすm(__)m
Episode3を楽しみに待ってますよ。
- 758 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/12(木) 14:41
- おぁっ、予告がキテターーー!!!(・∀・)
いやコレまた面白そうな。。。w
楽しみに待ってます♪
- 759 名前:丈太郎 投稿日:2004/09/22(水) 07:36
- うーん…まだかなぁ。作者さん
元気ですかー!
- 760 名前:新人 投稿日:2004/09/25(土) 12:10
- 作者です。
お待たせして申し訳ありません。このところ動きが急なので、整合性を持たせる
のに苦心してます。が、ちゃんと買いてますので…
ラッキー7オーディション、私は藤本のソロ活動復帰へのプロローグと見ました
が、皆様のご意見や如何に?
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/20(土) 01:47
- 作者さん、新作待ってますよ〜
- 762 名前:新人 投稿日:2004/11/21(日) 22:16
- ご無沙汰しておりますm(__)m
名無飼育さん、書き込みどうもありがとうございます。
少しずつ書いておりまして、いま三分の一ぐらい(^_^A
ただ、プロットは固まっておりますので、もしかしたら
慎重に(あちらこちらに)保存したうえで脱稿前に新スレ
を立てるかもしれません。
いましばらくお待ちいただければ、ありがたいです。
- 763 名前:新人 投稿日:2004/11/24(水) 12:50
- ―特報―
同時に亮大は、腕がキツく掴まれていることに気付いていた。まるで何かに怯えるよ
うに。
「松浦さん?」
「あれ」
トップアイドルの視線の先。
2階席への通路と直結するドアが穿つ黒の狭間に、白く浮かぶこれは・・・・人面では
ないのか。
妙に白く、つるりとした顔に切れ長の目。口元は両端が切れ上がり、嘲笑を型作って
いる。
仮面!?
整っていく息とは裏腹に、後藤の鼓動は次第に大きさを増していった。
逞しい腕を掴む手に、松浦はさらに力を込めた。
順調とはとても言えませんが、いまこの瞬間も書いてます。
2004年11月24日
「FS3 LIVE」を観ながら
新人
p.s.もう新人でもないので、ペンネーム変えます。何がいいかな・・・
- 764 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/14(金) 02:07
- 新作楽しみにしてます。
- 765 名前:春水 投稿日:2005/01/18(火) 21:15
- こんばんは。作者です。
764: 名無し読者さん
新作、新スレで始めましたので宜しくお願いします。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sea/1101909223/
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