サッカー小説「We Love Football !!」

1 名前:マルコ 投稿日:2003/11/16(日) 14:01
書き始めようと思います。
サッカーに興味がある方、ない方問わず楽しめれば、と思います。
主人公は特に決めず進めていきます。

拙い文章になってしまうと思いますが、どうぞヨロシクお願いします。
レスをいただけるととても嬉しいです。
2 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:05
右サイド深い位置からの低く速いセンタリング。
その小柄なFWは一瞬でDFの前へ入り込み、右足インサイドでゴールへ流し込んだ。
1度DFの視野から消え、次の瞬間にはDFとボールの間に体を入れているのだ。
DFは為す術なく蹴りこまれるボールを見送るしかなかった・・・。

「っしゃああああっ!」

両手を広げ、喜びにピッチを疾走する。

「我ながらナイスシュートやわ!」
「ホンマ、もうアンタは中学でプレーしてもおもんないやろ?」
「さすが関西トレセンやな、亜衣」
「ん?」

彼女の名前は加護亜衣。現在中学3年生の彼女はU-15関西トレセンのエースでもある。

「ウチのこと呼んだぁ?」

非常に小柄で、顔も幼い加護だが、そのサッカーセンスは類まれなものと評価されている。
その名は奈良県のみならず、関西地区、さらには全国のサッカー関係者にも轟いている。
3 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:06
「いや〜・・アンタとはレベルが違いすぎるわぁ〜」
「何言うてんのぉ?さ・い・の・う!の違いやもん、しゃーないって」
「よう言うはコイツ!」

こんなこと言っても嫌味にならないのも加護の天性なのだろう。
そんな加護だが、実際はただ単純にサッカーが好きで好きでたまらないだけの普通の中学生だ。
彼女のプレーはいつも笑顔とともにあった。
♀yしくて仕方ない″そういう雰囲気を持つところも彼女の魅力なのだ。
しかし、先月中学最後の大会、全日本中学総体を終えた。
決して強い中学校ではなかったが、チームメイトは背番号10加護に引っ張られ全国ベスト16まで進んだ。
引退した加護は普通なら受験勉強に追われてる時期だろうが、加護はすでに推薦で奈良育英高校への進学が決まってる。

「ええなぁ・・・、ウチらは勉強ばっかやで、最近」
「アハハ!がんばれよう!!」
「でも亜衣、良かったよね、推薦決まって。亜衣って頭、悪いもんね」
「うっさいわい!!」

実は加護は県外の高校からの勧誘も受けていた。
国見、東福岡、清水商業・・・長強豪高校からの誘いだ。
加護はすべて断った。
4 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:11
「帝京の誘いも蹴ったん!?」
「え?うん」
「アホやなぁ・・・。アンタFWなんやから、あそこの司令塔の人と組めば物凄いことになってたかも知れへんのに!」
「あ?司令塔?」
「知ってるやろ?あの金髪の!!」
「あ・・ああ。後藤真希ちゃんな」
「そうそう!何で行かへんかってん!!なぁ、何で!?!」
「いや・・そんなに責めんといて!ええやん、奈良育英、強いやん」

確かに帝京に誘われたとき、後藤真希という名を出された。
「加護さんとウチの後藤が組めば・・・」
みたいなことを言われたが、加護にとってはサッカーをする場があれば充分だった。
別にプロを目指してるわけでもない。
今は何か運がいいだけで関西トレセンなんかにも選ばれてるんだろう。
将来は地元に就職しよう。だから地元の高校なのだ。


そんな加護に転機が訪れようとしていた・・・

5 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:12
「えー・・来週の土曜に奈良市鴻ノ池陸上競技場で2部の試合やけど、あるんや。みんなで観に行くで」
「はいー?」

最近白髪が増えはじめ、下っ腹が出てきたこの男はサッカー部の顧問である。

「何で2部のゲームをわざわざ観に行かなあかんのよ〜?」
「まあまあ、観るんも練習や!文句言いな!!」

生徒との対等な立場での会話。決して上からものを言うようなことはしない。
その態度に生徒からの信頼は厚い。

「そんじゃあ今日の練習は終わり!お疲れ〜」
「お疲れ様ッス!!」

9月ももう半ば。夜7時を過ぎればもう真っ暗だ。
公立中学ゆえサッカー部にナイター施設などない。

「あ、そや、加護ちょ来い」
「あん?」

もう引退した加護だが、高校も決まっているので練習に出ている。
6 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:14
「何ですか?」
何や?何や?サッカーのことか?やっぱ勉強しろ!ってか?

「お前も今度の試合観に行くやろ?」
「え?行きませんけど?」
よかった、その話か・・・

「何でぇな!行こうで、加護ちゅわぁ〜ん」
「いやや!このキモオヤジ!!」

こんなやりとりができるのも学校内でこの教師だけだ。

「・・まあ、冗談はおいといて、お前プロ目指してないらしいな。何でや?」
「・・・・・・・・・」

いきなりの真剣な話に加護は口ごもった。

「何で・・・って」

自分でもそんなことよく考えたことは無かったが、なんとなくプロに対して抱いている悪いイメージを口に出してみた。

「何かプロって、厳しそうじゃないですか。ウチ、楽しみたいんですよね、サッカーに関しては」
「ほお。それが理由か?」
「ま、まあ、そんなとこ」
「もったいないわぁ〜・・お前みたいな才能、他におらんで。全国的にも、きっと」
「そうですか・・・」
「それに・・楽しくやりたい、言うたな」
「・・・・・・・・・」
「なら、なおさら試合観てみ。お前が言う楽しさとは違うかも分からんけど」
「は?」
「それと、お前に観てもらいたい選手がおんねん」

勝手に話をすすめられているのだが、先生の異様な雰囲気に加護は言葉を失っていた。
あたりはすでに加護とこの顧問しかいない。
遠くで部活帰りの生徒であろうか、楽しそうに話すのが聞こえた。
7 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:15
「さて、と。ま、お前も行く!で決定な」
「ま、まあええですけど」
「そんじゃ。お前も早く帰れよぉ」

坂田はくるりと振り返り職員室へ向かって歩き出した。
加護はその後姿を見つめていたが、ハッとした。聞きたいことが1つ残っていた。

「た・・対戦カードは!?」

その声に顧問が向き直った。

「そ・・そんなウチにとって、その・・大きな意味を持つチームって・・・」
「<nロプロや。そんじゃあな」

ポツリと言い放ち、顧問はさっさと帰ってしまった。
8 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:16
ハロプロォ〜〜〜〜!?!
あぁ・・何か聞いたことあるわ・・・
確か去年できて今年から2部になったっちゅう
だ〜れの名前も知らへん・・・

・・・・・・・・・
「まぁ、ええわ。帰ろ。ウチかわいいから夜道は危険はいっぱいやし」

部室で着替えつつ、ハロプロに思いを馳せてみたが・・・

何も思いつくことはない。

もともとサッカーを見る時間があればボールを蹴っているほうががよい加護は1部のチームなら分かるが、
2部のチームともなればほとんど知っているチームも選手もいない。

「あ〜・・今日の晩メシなんやろ?・・・うわ、ウチ独り言言うてるやん」
9 名前:天性 投稿日:2003/11/16(日) 14:18
1週間後の土曜日―――

「っかー・・うっさいのぉ〜。まだ試合開始まで1時間あるやん」
「何かハロプロって人気あるみたいですよ、加護さん」
「ふーん・・・」

ハロプロ・・・
加護は少し調べてみた。
監督のつんくが全国から才能はあるが埋もれてるプレイヤーを探してチームを結成した。
FWの安倍なつみ、福田明日香の攻撃陣を中心にMF石黒彩の攻守に渡る安定したプレー、DFのキャプテン中沢裕子と平家みちよ、GK飯田圭織の気持ちの入ったDF陣・・・。
主だったプレイヤーはこれらだろう。

この中で先生はウチに誰を見せようとしてるんやろうか。
まあ、FWのどちらかではあるんだろうが・・・
10 名前:ハロプロ.FC 投稿日:2003/11/16(日) 14:22
ハロプロvsビー・ナイス(※)

「う〜お〜・・・今日もメッチャ人入ってるぅ〜・・・良かったっぺ・・・」
「カオリ!なまり出てるべさ!!」
「いや、なっちの方がひどいべ・・・」

選手入場口からひょいと顔を出し不安そうに今日のスタジアムのお客さんの入りを確認していた。
ハロプロFW安倍なつみとGK飯田圭織だ。
北海道出身で同い年の2人はまだ若いが監督つんくにその才能を見出されハロプロのメンバーとなった。

「ホントによかったべ!人、たくさんで!!」

安心して控え室に戻る2人。

「裕ちゃーん!今日も人いっぱいだべー!!」

控え室に入るなり安倍がキャプテン中澤に報告する。

「おおぉ〜・・そかそか。そりゃあ良かった・・・・・・って!試合前に何やってんねん!!」

チーム最年長のキャプテン中澤。彼女のプレーは一言で言えば熱い。
ディフェンスには技術よりも精神力、という言葉を体現するプレイヤーである。

「出た!乗り突っ込み!!今日も行けんで、これ!」

彼女は平家みちよ。4バックの真ん中を中澤とともに固めるデェフェンダーだ。
彼女もまた熱いハートの持ち主である。


(※)芸能事務所ね。YOUが所属
11 名前:ハロプロ.FC 投稿日:2003/11/16(日) 14:25
「ちょっと明日香、悪いんだけどそこのテーピング取ってくんない?」
「ん・・あ、ほいほい」

石黒彩と福田明日香。
石黒はボランチとしてチームの攻守において要となっている。
無尽蔵なスタミナで相手のチャンスを潰し、味方の好機をサポートする。
チーム最年少のFW福田明日香は、その年齢からは想像できないようなプレイヤーとして成熟したプレーを見せる。
現在2部リーグで得点ランキング1位である。
何故これほどの選手が他の平凡なチームはおろか、強豪チームの目にも止まらなかったのだろうか、と口々に言われる。
すでに来シーズンの移籍が噂されている。

「準備はええな!?・・出番や!」

監督つんくが控え室のドアを半分開け、顔だけ覗かせ、言った。
その表情は興奮しているようだった。
今日の対戦相手FCビー・ナイスは現在2部で12チーム中9位。
目ぼしい選手はFWのYOUくらいしかいない。
残り6節。ハロプロはトップを走っているのだ。この試合も取りこぼさず1部昇格へ1歩前進したい。
そんな気持ちも混ざっているのだろう。

「よっしゃ行くでぇ!!」
「おう!!」

中澤の掛け声にチームメイトが応える。

「リラックスやぞ!リ・ラックス!!」

つんくが部屋を出る選手全員の背中を押す。
1部昇格を1歩近づけるんや!!
12 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:27
空が高い・・・突き抜けるようだ。
遥か上空を1筋の飛行機雲が走っている。
天気はいいが、風が爽やかで何とも気持ちのいい昼下がり。

“天高く馬肥ゆる秋”・・・とはよう言ったもんや。

本当の使い方は知らないが、加護は心地よい気候にうとうとしていた。
もともとじっとしていることができない性分であり、そんな加護にとって試合が始まるまでの時間は耐え難いものであった。
そのとき、急に歓声が上がる。太鼓が打ち鳴らされ、巨大な応援フラッグが上下される。

「うお!?何や!?!」
「選手入場っスよ、加護さん」
「おお・・!ようやく出てきよったんかいな。なぁ、センセ。センセがウチに見てほしい選手はどちら様?」
13 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:29
加護の真後ろに座っている顧問を、体を反らし覗き込むように見る。

「ああ、7番や。7番FW福田明日香」
「7・・・」

それを聞き、今度は前に体を乗り出し、ピッチの中央で横に整列しサポーターに挨拶するハロプロのスタメンに目をやる。

7・・7・・・、お!おった!!あの選手か・・・

加護の目が福田をとらえた。福田は静かに手を挙げメインスタンド、それからバックスタンドに挨拶した。


センターサーク中心でレフェリーと両チームのキャプテンがコイントスをする。
ハロプロのキックオフだ。
中澤はビー・ナイスのキャプテンYOUと握手を交わし、自分のチームメイトを呼び寄せる。

「よし・・聞こえるな?この歓声が」

全員うなずく。

「この声援に応えるんやで!そのためには勝つんや!!」
「うおおっ!!!」
14 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:31
試合が始まって数分・・・加護は福田のプレーを目で追っていた。
確かにこのピッチ上の22人の中では飛びぬけている。
2トップの1人と言ってもよく中盤まで戻ってゲームを作っている・・・言わば1.5列目だ。
少し自分に似ている、そう思った。
細かいステップで、たくさんボールにタッチするドリブル。そのプレーエリア。小柄なところ・・・。似ている。
だが、それだけで自分に大きな影響を与えはしないだろう。

何や・・・?何があんねん?この選手に。

その時だった。
中盤の石黒にボールが渡った。
加護は福田に注目しつつも、ボールの位置もしっかり視野に入れながら観戦していた。
石黒にボールが渡る、その刹那、福田がDFを引き離し、どフリーになっていた。

絶妙や!!ダイレクトでパス・・・・・・あれ?

石黒はワントラップし、前へドリブル。

見えてへんかったんかなぁ・・・。出せば絶好のチャンスやったのに。
15 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:34
だが、この後も何度もこのようなシーンが続く。
ハーフにボールが入る瞬間に福田が度々フリーになっているのだ。
その動きに気づく選手はいない。
むしろ福田はチームメイトから文句を言われてるようだ。
「動き出しが遅い」・・・そんな感じだった。
ワンテンポ早く動く福田だが、チームメイトはそれに気づかない。
そのため福田はスペースへ動いた分、ハーフへ顔を出すのが遅れてしまうからだろう。

「おいおい・・ハロプロよぉ〜、もっと7番に早めにボール入れたらんかい」

加護は納得がいかなかった。それは福田も同じようだった。
スタンドからもその表情が曇るのが見えるらしい。
しかし、スタンドからはその動きは速すぎに見えるようだ。
16 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:35
「えー・・でも加護さん。7番、動き出しのタイミング悪いっスよ?」
「ん?」
「速すぎですもん、動き出し」

速すぎ・・・?
いや、違う・・・。そのタイミングは絶妙や。だからフリーになれるんやろ。
それにそのタイミングでボール入れれば一気にチャンスになる。
DFがボールに集中する、その一瞬を狙って動いてるんや・・・。
しかも、ことごとくDFにとって危険なスペースへ・・・!!
ハーフが、あと30°、あと30°首回せば視野に入ってダイレクトでパスか、ワントラップしても早いタイミングでパスが出せるはずや・・・。
17 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:36
「ここっ!フリーッ!!」

福田がスペースに出る・・・が、やはりハーフの視界には入っていなかった。

「・・くっそ!」

「なっち!顔出してっ!!明日香、フォロー!!」

いったんDFラインに戻されたボールが石黒に渡り、ターン。すぐさま指示が飛ぶ。
少しためを作り、FWの安倍へ。福田も安倍のもとへ。
しかし、ここはくさびに入った安倍が体を張り切れず、潰される。

「しまった・・・!」
「!」
18 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:36
こぼれたボールは福田が拾う。
ゴールまで35メートル、DFは3人・・・・・・福田は迷わずドリブル突破を仕掛ける。
DF2人が潰しにかかり、もう1人は少し引いた位置で狙っている。

思わず加護は立ち上がった。そして鳥肌が立ち、息を呑んだ・・・。
疾風迅雷・・・。
2人の間を風のように抜け、カバーに入っているラストDFを背を抜け右足を軸にクルリとターン・・・。
DF3人を一瞬でかわし、ペナルティエリアに入ったところで稲妻のような強烈なシュート・・・。
しかし、何より驚いたのは自分が描いたプレーが、この一連の福田のプレーと一致したことだった。
胸の鼓動が聞こえる・・・
19 名前:明日香の風 投稿日:2003/11/16(日) 14:38
強烈なシュートにGKは反応できない・・・、ただ、自分の後ろのネットが揺れている。
この鮮烈なゴールにも福田は冷静な反応だ。
拳を突き上げるだけ。静かに天を仰ぐ。

「もっと喜べばええのにー!ね、加護さん」

加護の隣に座っている2年生の後輩が言った。彼女もやはり先刻のゴールシーンに心を奪われているようだった。

いや、あのシンプルなガッツポーズ、分かる気ぃするわ・・・。

加護は感じた。
福田というプレイヤーがどれほどサッカーを愛しているのか。
どれほどボールと戯れるのが好きなのか。

分かる・・分かるで、福田さんよぉ・・・!

福田の表情からゴールの悦び、そして何よりサッカーができる喜びが満ち溢れていた。

前半はこの福田のゴールによりハロプロ1点リードで終了した。
そして後半、点を取りにラインを上げてきたFCビー・ナイスの攻撃を中澤・平家・飯田を中心としたDF陣で潰し、カウンターから何度も好機を創り出す。
後半21分に安倍が、後半33分にはこの日2点目となるゴールを福田が決め試合は終わった。
20 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:43
帰りの電車の中。仲良く談笑したり、疲れて眠っている生徒もいた。

「・・どうやった?ハロプロは」

顧問がわざとらしく加護に聞いた。

「何か・・・ワクワクした・・・」

加護が率直に応えた。
その目は何かボーっとしていた。まだあのゴールが頭から離れていないようだった。

「ええチームやったやろ?福田もええ選手やし」
「あ!何やったんですか?ウチに見せたい言うてたんわ」
「福田見て、何か感じへんかったか?」
「・・・んと、似てるな、って。自分に」

こんな発言は少し厚かましいかもしれない・・・珍しく加護は謙虚にそう思った。
普段は傲慢な態度であるが、福田という選手はすごいと言わざるを得ない。
21 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:44
「ホンマは、こんなん調子こいた発言かも分かんないですけど」
「うん?」
「1点目のゴールシーン、たぶんあの状況にウチもおったら同じようにしてる思いますわ・・・。成功するしないに関わらず」

加護は本当にそう思ったのだ。
一瞬、福田の目線でDF3人の位置を確認できた気がした。

「それに、3点目の福田さんのゴールも・・・」


後半33分。中盤でボールをカットした平家がそのままドリブルで攻めあがった。
安倍と細かくパス交換して、ミドルレンジからシュート。


「何かそのシュート見たとき、『あ、これはディフェンスに当たってこぼれるな』って。で、『福田さんの前のスペースにボールころがるな』って・・・」

平家がシュートした瞬間、それまで絡んでいなかった福田が前方へダッシュ。
測ったようにボールがこぼれ、福田はダイレクトでゴールに流し込んだのだ。
22 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:47
「いや、何か胡散臭い話なんですけど」

ふふ・・・思わず顧問は笑った。思ったとおりだった。

「オレがな・・」

おもむろに話し出す。

「初めてハロプロのゲームをTVで見たとき、思たんよ。『あ、7番、加護やな』って」
「・・・・・・・・・」
「ドリブルの仕方や得点に対する嗅覚・・・瓜二つやなって」

淡々と話す顧問の隣で加護は少しうつむいて静かに聴いていた。
電車に揺られながら、後ろの窓から入ってくる夕日に後頭部や背中がジリジリ焼け付くようだった。

「今日、お前に見てもらったんはな、お前がもう一皮剥けるためなんや」
「一皮剥けるため?」
「ああ。気づいたやろ?あの動き出しの巧さ」
「・・・!!」
「あれやねん。この先プロで生きていくために必要なんは」

はっきり覚えている。
ドリブルなどははっきりそのプレーイメージを思い浮かべることができるのだが、あの動き出しだけは、どうも思い浮かべることはできなかった。

「お前のプレーはもう高校でも十分通用するやろ。もしかしたら2部くらいならプロとしてやっていけるかも分からんわ。けど、もっと上を目指すなら、あの動き出しを身につけなければあかん」
「・・・でも、あれは自分自身の問題やのうて、ハーフにもそれを感じてくれる選手がおらんことには」
「そう!そこやねん。福田は才能あるわ・・・。ホンマ、何で今まで埋もれてたんやろうなぁー・・・。でも運が無かった。もっと強豪クラブに発掘されていれば、もっとすごいMFと一緒にやっていれば、そらもう半端じゃなく得点量産してるやろな。今も2部の得点ランクじゃ1位やけど、その点のほとんどが個人技やこぼれ球押し込んだりやからな」
23 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:50
車内のエアコンが加護の火照った体を冷やす。

「そ・・それでウチは・・・?」
「身につけろ、あの動き出し。お前にはまだ将来がある。才能も福田と同等かそれ以上のもんがある。パートナー見つける時間もあるんや。・・・あ、でもお前プロになる気なかったっけ?厳しくてイヤ、とか何とか言うて」
「・・・・・・・・・」
「ハロプロ見て、どう思った?」
「た・・楽しそうやった!」

慌てて顔を上げる。思わず声が大きくなった。

「何か、その、メンバーみんなが一生懸命で、必死にボール追いかけて、勝とう勝とう・・って。そういうんが楽しそうやったです」

顧問が加護の頭を2、3度ポンポン叩き、その手を加護の頭の上に乗せる。

「プロも、悪ないやろ?」

大きくうなずく加護。
24 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:51
「でも、何でそうまでウチのことを?」

顧問は目を丸くし、笑った。

「ハッハッハ!何でって!オレや、このチームを全国に連れてったんはお前や。お前の実力だけじゃないにしても、どっから見たって中心はお前やった。俺も何年もサッカー見てきてたけどホンマお前の才能は尋常じゃないねん。見てみたいやん?W杯とかでお前が活躍すんの」
「え・・・」

正直、加護は照れた。
そんなにベタ褒めされるようなことした記憶が無い。
ただ自分はサッカーが好きでしょうがないだけなのだ・・・。

「どや?プロ目指してみんか?」

プロ・・・プロか・・・。
大好きなサッカーして生活していける・・・。

「・・・プロになりたくても、なれんヤツもおる。まして、サッカーしたくてもできんヤツも世界中にはいっぱいおんねん。その子らに、夢、あげようや、な?お前にはそれだけの力があるんやで」
25 名前:決断 投稿日:2003/11/16(日) 14:53
加護は唇をかみしめた。
自分がサッカーできるのは当たり前だと思っていた。
しかし、そうではない人もいる。自分と同年代の子供も、それ以下も・・・。

贅沢なことや・・・。
神サンはどういうつもりでウチにサッカーの才能くれたんか知らんけど、才能くれた。
そして、普通にサッカーできる幸せも・・・。

「・・・上、目指します。プロ、目指します」

絞り出すように加護がつぶやいた。
顧問もホッとした。よかった、才能を埋もれさせんで・・・

「ま、オレの育てたプレイヤー、ってことでヨロシク頼むわ」
「ブッ!センセ、何も教えてくれんかったやん!!」

プロになる・・・
そう堅く決意した秋の夕暮れだった・・・
26 名前:シックスセンス 投稿日:2003/11/16(日) 14:55
「・・!加護さんっ!!動き出し遅いっスよ!」
「・・・ッ!」

あの試合から1週間・・・。加護はあの福田の“動き出し”を習得できずにいた。
DFの一瞬の隙を突いて、素早くオープンスペースへ、しかもそれは相手に対し危険なスペースへ出ねばならないのだ。
“早く早く”と、そう焦るばかりでスペースを見つけることができない。

「・・くそ。すまん」

サッカーに対しここまで努力したことはなかった。
確かに加護はチームの誰よりも早くグラウンドに出、誰よりも遅くグラウンドを去る。
傍目から見ればその練習量は努力と映るかもしれない。
しかし、当の加護本人はそれを“練習”とか“努力”と感じてはいない。
ただ単にサッカーをしていたい、少しでも長くボールに触れていたいと考えてるだけ、それだけなのだ。

分からん・・・分からん!スペース見つけよとして考えると絶対遅れる。
しょせんウチは中学生やし、やっぱできんのかな・・・
27 名前:シックスセンス 投稿日:2003/11/16(日) 14:56
「センパイ、はい、ポカリ」
「・・ん、おおサンキュ」

ミニゲームの前半が終わり少し休憩を取る。コートの外に出て、ペタンと座る加護。
ぼんやりゴールを見つめながら、ポカリを1口飲む。
ふとこの前の試合が頭に浮かんだ。

ハーフにボールが渡る・・・
その時には福田さんはフリーになっている・・・
・・・・・・・・・

考えるんやなく・・・感じ取る・・・?

フッと脳裏にそんなことが過ぎった。
ハーフの選手にボールが渡ったとき、自分のマーカーや周りのディフェンダーがどこを見て、どんな動きをするか、それらすべての把握・・・。

感覚――――――

サッカーに限らず球技にはよくある。
何故自分はこんなプレーができたのだろう、ということ。
信じられないようなシュート、咄嗟のオーバーヘッド、芸術的なドリブル・・・。
それらの多くは、言葉では説明できない。「体が勝手に動いた」、そんなフレーズがよく使われる。

そんな感じやった・・・福田さんも・・・
28 名前:シックスセンス 投稿日:2003/11/16(日) 14:57
「後半始めるでぇ!コートチェンジな」

顧問が集合をかける。出場していた生徒は皆飲んでいたものをその場に置き、駆け足でコートの中の自分のポジションにつく。
指示を出し合ったり、ストレッチをしていたり・・・。
ただ加護だけは何か考え事をしていた。

・・・信じてみるか・・・自分の力ってやつを。

ピィーッ!
ホイッスルが鳴らされ、ミニゲームが再開された。

始まって6分。右サイドでボールを奪い、オフェンシブMFへボールが出た。

・・・・・・信じるんや。
29 名前:シックスセンス 投稿日:2003/11/16(日) 14:58
そのときの加護は何故か非常に落ち着いていて、むしろ少し冷めた感じでコートを眺めていた。
ボールの動き、味方・相手の動きや視線・・・
気づけば加護は走っていた。すべてがスローモーションで見えるかのようだった。

うわ・・あ・・・

自分のマーカーの顔が見える。さっかまで隣にぴったりつかれていたのに・・・。
誰も自分に気づいていない。
文字通りフリーになっていた・・・
30 名前:シックスセンス 投稿日:2003/11/16(日) 14:58
「パ・・パスや!ここっ!!」

オフェンシブMFがワントラップした瞬間にパスを要求したのだが、やはりこの動きは周りの敵味方問わず、把握されてはいなかった・・・

結局この日は何度かその動き出しができたが、一度もパスはこなかった。
オフェンシブMFの生徒はU-14奈良トレセンほどの選手であった。基本はできている。
パスをもらう前にしっかり回りを確認しているにもかかわらず、加護のプレーを捕まえることはできなかった。

しかし、加護はしっかり自信をつけた。これで巧いトップ下と組めれば・・・!
そんな加護の中学校生活は終わろうとしていた―――――――
31 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:01
加護が観戦した試合の日から2ヶ月。
秋も過ぎ、冬の足音がすぐ近くに感じられる11月の下旬、FCハロプロは2部リーグの最終節を迎えた。
現在トップを走るハロプロ。
1位から3位まで勝ち点4でひしめき合う。最終節の結果次第では2位、3位のチームにも優勝、昇格のチャンスがある。
この日のハロプロの相手は現在6位のACインセント。
シーズン当初は優勝候補にも名を挙げられていたのだが、思い通りの試合がなかなかできず、この順位に甘んじている。
ただ、ACインセントは代表入りも噂されている長身2トップ伊藤美咲と片瀬那奈を擁しており、
身長に不安を抱えるハロプロにとっては怖い相手である。

が、ハロプロのメンバーは浮かれていた。
すでに気持ちは来シーズンへ、2部優勝へ、と流れてしまってこの試合に集中できていない。
愚かにもこの試合を取らねば、今までの1年間が無駄になるという気持ちを持ってはいなかった。
ただ1人のプレイヤーを除いては・・・
32 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:03
「ちょっと!何チンタラやってんだ!!」

スタンドにも聞こえそうなくらいの大声でチームメイトを怒鳴り散らす。
ハロプロでただ1人地に足をつけて試合に臨んだ、そう7番福田明日香だ。
後半20分、スコアはまだ0-0.
ハロプロの選手も“こんなはずじゃない”と思いつつも“まあ、何とかなるだろう”という甘ったれた気持ちだった。
もともと甘えた考えを試合に持ち込んでいたので、そう簡単に集中を取り戻すことはできない。

「・・くっそ」

思わず福田が毒づく。
何せこの試合ほとんどボールに触っていないのだ。
また中盤でボールを奪われる。
しかし、インセントは長身FWを擁してはいるが、トップに当てるボールの精度が悪いため、
そほどハロプロDF陣に脅威を与えてはいなかった
33 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:04
だが・・・、良いボールが上がってこないことがハロプロに災いした・・・。
インセント、中盤の底から前線にロングボール。例によって精度はよくない。

このボールは大きいっぺ!

GK飯田は迷わずペナルティースポットまで飛び出しボールをつかもうとした・・・その時だった。
インセントFW18番伊藤美咲が強引に突っ込んできた。
飯田はその視野にボールしか入れてなかったため、無防備に伊藤のヘディングを顔面に受けた。

「うわあああ!!」

思わず顔を押さえ、もんどりうって倒れこむ飯田。
レフェリーが試合を止める。キーパーチャージだ。
ベンチでは控えGKのレファがアップを急ピッチで始め、ドクターの夏が飯田の元へ駆け寄る。
ハロプロのスタメンも飯田を心配して集まってきた。

「目が・・・左目が見えないよ・・・」

その飯田の言葉に皆が一瞬言葉を失った。

目が見えない・・・?

「と、とりあえず交代ね!」

夏が飯田を落ち着かせるように言った。

「交代!?ヤだよ、こんな大事な試合で!!」

飯田が交代を拒む。その目には大量の涙が溢れていた。
メンバーがどうにか飯田を説得させる。そんな中・・・

「だからさぁ」

1人、冷めた口調で福田が口をはさんだ。
34 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:05
「集中してないからなんだって」
「な、何言うてんねん!明日香!!そんな問題ちゃ・・」
「そういう問題だよ!!」

キャプテン中澤の言葉を制止し福田が怒鳴った。

「何のために今日までやってきたの!?優勝するため、1部へ上がるためでしょ!?!それなのに、なに!?このダラダラしたゲームは!」

みんな、ただただ唖然としていた。あの明日香がここまで・・・

「もう優勝決めたり、昇格を決めたならともかく」

周りの沈黙に合わせ、福田の口調も穏やかになった。
しかし、穏やかな中にもメンバーへの怒りと戒めが含まれていた。

「まだウチら何も成し遂げてないんだからね」

みんな自分自身の浮かれ、慢心が恥ずかしくなった。
初心を忘れていた。
35 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:06
「それからカオリ、早く出なよ。ハロプロをこれから支えるGKはカオリなんだから。今は無理しちゃダメ」
「・・・・・・・・・」

じっとだまって福田を見上げる飯田。

「あとは」

そこまで言って福田はメンバーの顔を見回す。
もうさっきまでの怒りの表情は消えていた。
それにメンバーたちも、もう甘えの気持ちは無くなっていた。

「ウチらに任せてよ。ね?」
「・・・うん。任せた」

しばらく考え飯田がつぶやいた。
そして福田と握手を交わし、飯田は医務室へ、福田はゲームに戻っていった・・・
36 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:07
試合は後半35分にハロプロがゴールを奪い1-0で勝利し、2部優勝、そして1部昇格を勝ち取った。
点を決めたのは、やはり福田明日香であった。
昔トヨタ杯で魅せたプラティニのゴールのように、芸術的なリフティングで相手を交わし、
空中にボールが浮いているうちにボレーで叩きネットを揺らした。
福田はいつになく激しいゴール後のパフォーマンスをみせた。
ゴール裏のハロプロサポーターに向け、何度も手でゴールネットを揺らしてみせたのだ。
そのパフォーマンスが福田のここまでの苦労、プレッシャーを表していた。

しかし、これが福田明日香のハロプロラストゴールだと知るものはまだこの場にはいない。
福田を除いて――――――
37 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:09
年が明け・・・ハロプロ1部リーグの1年目が始まろうとしていた・・・。
1部昇格に向けハロプロは選手補強を行った。

1人目はつんくが「類まれな才能」を感じるというMF市井紗耶香。
つんくとの評価とは裏腹に、プレーが小さくまとまっている感が否めないボランチだ。
2人目は145cmと小柄ながら成長が早く負けん気が強いMF矢口真里。
スタミナ豊富でDFからFWまでこなすユーティリティプレイヤー。
3人目はDFの保田圭。つんく曰く「期待値が高い」。
フィジカルが強くプレーが安定している。
そして、北海道出身のボランチりんねとFWあさみが加入した。


しかし、加入するものがいれば、退団する物もいる。
市井らが入団し、ハロプロはキャンプなどを通しチームのコンディションを上げ、
着々と新シーズンの開幕に備えていたある日のことだった。

「福田明日香、今日をもってハロプロ、辞めます」

福田があっさりメンバーに報告した。
皆それが理解できるはずもない。それも道理。そんなことを福田が示唆したことすらなかったのだから。
38 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:09
「それじゃ・・」
「ちょ・・ちょっと待ってよ、明日香!」

安倍が福田を引き止める。ちゃんと理由が聞きたかった。
じゃないと納得できない。今まで一緒にやってきたのに・・・。

「プロ生活に疲れたんだ・・・」
「・・・?」

メンバーはその意味があまり飲み込めてなかったが、福田が続ける。

「・・・アタシは、サッカー大好きだよ。それこそ自分がどんな病気でも、医者に止められてもグラウンドで死ねたら本望だと思うくらい愛してる・・・けど」

けど・・・なに?

「・・・契約更新のときさ、○○円とか言われるのは、何かイヤだな、って。正直、いろんなチームからオファーも来たんだけど、お金の話ばっかなのね。そういうので何か冷めちゃって・・・」

飯田は確かに、そうかもしれないと思ったが、辞めなくたっていいじゃないかとも思った。

「・・・それにプロって、勝たなきゃダメじゃん?アタシは楽しみたいんだよね。そりゃ確かにその勝ちに対する気持ちと楽しむ気持ちのバランスが重要なんだろうけどさ。アタシは無理だった。バランス取れなかった。息苦しいかったもん、試合中とか。もともとサッカー楽しみたくてプロになったんだけど、その楽しむことが頭の中から無くなってしまったら、一番大事なところが無くなってしまう、とアタシの中で不安になってきちゃうんだ。だから・・・」

みんなはもう福田を止めることはできなかった。
1番若かったのに1番プロ意識を持っていたのは、そういう無理をしていたからなのか。
そう思うともう何も言えなくなった・・・
39 名前:J1へ 投稿日:2003/11/16(日) 15:10
見送りはいいから・・・

福田はそう言い残し、静かにハロプロを去っていった・・・。

「友達になりたい」

市井、矢口、保田ら新メンバーに言った福田の言葉が彼女らの心に熱く残った・・・。
きっと、サッカーを楽しむためには友達にならなければならない・・・そんな気持ちからだったのだろう。

せっかく友達になったのに・・・

じわりと目頭が熱くなるのが分かった。
40 名前:天才たちの解雇う 投稿日:2003/11/16(日) 15:12
「加護、お前U-17日本代表選考合宿のための関西トレセンに選ばれたで」
「ホンマですか?ま、当然ちゃ当然ですけど」
「何調子こいとんねん!ちゃんとがんばってこいよ!」
「ハイッ!!」

加護亜衣高校1年。とうとう世界への切符を得るチャンスを得た。
奈良育英高校でも1年生にしてレギュラーポジションを取り、その能力の高さを示した。
しかし、その反面、やはりあの“動き出し”を感じてくれる選手はいなかった。
それがなくとも加護のスキルは充分以上のものであったのだが。
41 名前:マルコ 投稿日:2003/11/16(日) 15:13
↑やっちまった・・・
42 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:14
「加護、お前U-17日本代表選考合宿のための関西トレセンに選ばれたで」
「ホンマですか?ま、当然ちゃ当然ですけど」
「何調子こいとんねん!ちゃんとがんばってこいよ!」
「ハイッ!!」

加護亜衣高校1年。とうとう世界への切符を得るチャンスを得た。
奈良育英高校でも1年生にしてレギュラーポジションを取り、その能力の高さを示した。
しかし、その反面、やはりあの“動き出し”を感じてくれる選手はいなかった。
それがなくとも加護のスキルは充分以上のものであったのだが。
ほぼU-17日本代表は確実だと言われている。
当の加護本人もその自信は大ありで、今や自らの才能を自覚している。
この年代において自分よりも上の選手はいない、それほど自信があった。
だが、顧問の気になる言葉があった・・・。

「今回の合宿には、何か『天才』言われてる選手が入ってるらしいで」
「ハァ〜?天才〜?」
「ああ。もしかしたら、お前の独特の動き出しを感じてくれるかも分からんで」
「ハーフですか?」
「そうらしい」
「滝川第二の松浦亜弥ちゃんじゃなしに?」
「ちゃう。関東トレセンや」
43 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:14
「関東・・・?」
「何か、今回が始めてらしで、全国地区は。いつも地区止まりらしいし」
「地区!?それで天才ですか?」
うん。何か好不調の差が激しいらしくて。好調のときは凄まじく巧いらしい・・・」
「ふーむ」
「で、今回関東トレセンのハーフが次々に怪我してな、ソイツが選ばれたんやて」
「・・・ホンマに天才なんかな?名前は?」
「えっと・・・辻、辻希美や」
「辻・・・・・・。ホンマに聞いたことないなあ」

辻・・・希美―――――――

加護は辻のことが気になっていた。
曲りなりにも天才と関東で呼ばれているのだ・・・。

どんなヤツやろか・・・。
しかし、天才はウチだけで充分や!

そんな時、練習試合の相手校に東京から転校してきたという選手がたまたまいた。
試合後、加護はその選手に接触を試みた。
44 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:15
「あの・・スンマセン」
「はい?」

同じ高校生同士だが、他校となると何故か話しにくいものだ。

「東京から来た子がおる聞いたんですけど・・・」
「あ・・ああ。いますよ」
「ちょっと呼んでもらえませんか?」
「いいですよ。おーい!」

背が高くセミロングの髪のジャージ姿の生徒が呼ばれてきた。

(試合では見いひんかったな。まだ1年やろか)

「何でしょう?」

加護とは少し身長差があり、その生徒は加護を見下ろすように見る
45 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:16
「んと、東京から来たんやろ?」
「はい、そうですよ」
「あんな、辻って知っとる?辻希美」
「辻・・・あ、ハイ!知ってますよ。何度か試合したことありますから、その中学と」
「へー!そりゃええわ。どんなヤツなん?巧いん?」
「そうですね、巧いのかもしれませんけど、ウチの中学では評判良くなかったですよ」
え?どゆこと?」
「一言で言えば、個人プレーばっか、っていうか」
「・・・個人、プレー?」
「はい。試合のはじめはダイレクトでパス散らすんですけど、それが変なんですよ」
「変?と言いますと?」
「だ〜れもいないスペースへ何本も出すんです。それでしばらくして、パス出さなくなっちゃってドリブルで個人プレーです」
「誰もおらんとこに・・パス・・・」
「ええ。そんな感じですね。でも今回関東トレセンみたいですね。確かに巧いときは、半端じゃなく巧いですよ」
「ふーん・・・。そか。どうもありがとう」
「あ、いえいえ」


誰もいないところにパスか・・・

これが加護の頭に引っかかった。
もしかしたら、この選手も独特の感性を持っているのではないか?
しかし個人プレーというのも気になった。

ま、合宿で分かることやな・・・
46 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:17
そして――――
福島Jヴィレッジ――――

今回はU-17とU-20の合同合宿だ。
合同とはいってもU-20の方は親善試合のためのコンディション調整や、戦術の確認などですでに今回の代表はほぼ決まっているので、
U-17の代表候補とは大きく温度差があった。


「うっわぁぁぁぁぁ!!!!やべェ〜!!初日から遅刻やん!!!」

もうすでに皆グラウンドに出ているのだろう。
施設内には人の気配がほとんど感じられなかった。

「何でこんな日に遅刻すんのやろぉー!ホンマ、ウチあほやわぁー!!」

ロッカールームまで全力疾走。
と、その時だった。

「あ、あのぉ〜・・・」
「え!?」

人がいた。急に立ち止まる加護。
全力で走っていたため急に立ち止まることでバランスを崩した。

「うわ・・とと」

体勢を立て直し、その人影を確認する。

「どうしたのかなぁ〜?こんなトコに独りで」

見るととてもとても小さく(加護と身長は変わらないのであるが)幼い少女が立っていた。
目は大きく二重で少し垂れている。髪は黒くまっすぐのストレートヘアが肩にかかっていた。
顔立ちはしっかりしており、将来は美人になりそうだった。

「お嬢ちゃんここは入っちゃアカンねんで」
「いや・・あの、そうじゃないんれすよぉ・・・」
(この顔で舌足らず・・・いかにも!やな)「おっと!ヤバイ、遅刻しそうやったんや!!」
「あ・・・の・・・」
「ダァァァァァァァシュ〜〜〜!!!!」

「な、奈良の加護亜衣!ただ今参りました!!」
47 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/16(日) 15:18
案の定もう全員揃っていた。
と、加護は思ったのだが、監督の口から予想外の言葉が出た。

「何だ何だ、今回のU-17は!初日なのに2人も遅刻か!!」
「え?2人?」

その時、金髪の女性に連れられ、さっき廊下で出会った少女が現れた。

「あの〜、スミマセン。この子迷っちゃったらしくて・・・。ここでいいんですよね?U-17」

加護の周囲が突然ざわつく・・・。

あれって・・・
そうそう!ユース代表の後藤真希さんだ!!

後藤真希・・・あれが・・・

髪の毛は金髪で、一見やる気のなさそうなこの後藤真希という選手は、
現在帝京高校3年生にしてユース代表の10番を背負っている。
フル代表入りも近いと噂される超高校級のトップ下である。
その能力の高さを加護は感じ取った・・・。
後藤の体から溢れ出す、そのオーラ―――言わば獣の闘気。
その気に触れた加護は震えた。恐怖ではない。武者震いだ。
何だろう?それは相手を誘うかのような挑発的なオーラ。
しかし、嫌な感じはしなかった。
それは加護にもそんなオーラ(まだ幼い)が備わっているからだろう。
一瞬で分かった。この人なら、自分の動き出しを感じ取ってくれる、と。
いつか一緒にプレーしてみたい、そう思った。

「それじゃ、辻、がんばってね」
「あーい!テヘテヘ」

な・・・に・・・?辻やと・・・?

「スマンな、後藤」
「いえいえ〜」

後藤が去ったあと監督が辻と呼ばれる少女に自己紹介するように指示した。

「んと・・・辻希美16歳れす。東京から来ました。ポイション(ポジション)はトップ下れす。ろうぞ(どうぞ)ヨロシクお願いします」

ひどく舌足らずな喋り方にクスクス笑いが漏れたり、その愛らしい姿に「かわいい」など声が上がるが、
当の辻は何か照れて笑ったりうつむいたりしていた。

あれが“天才”なんか・・・?しかも、あんなかわいい顔して、いや、ウチの方がかわいいけども、個人プレー?
世も末やな・・・
48 名前:マルコ 投稿日:2003/11/16(日) 15:22
今日はここまで。
というかこの辺りはすでにweb上で公開してたのでコピペするだけなんで、超スピード更新♪

加護ちゃん主人公みたいな展開になってしまってます
49 名前:北都の雪 投稿日:2003/11/16(日) 23:11
はじめまして。
サッカー好きなもので、見つけたときに飛び付いてしまいました。
おもしろいっす。
実際のフットサルは散々だったそうですが…

加護辻のコンビの活躍楽しみです。
ごっちんも…どうなるんだろう?

加護主役かな?と思ったのですが、違うのですかね。
楽しみに待ってます。
50 名前:マルコ 投稿日:2003/11/17(月) 10:49
>北都の雪さん
レスありがとうございます!
ほんとに加護ちゃんの主演になってしまってますねw
まあ、これからどんどん娘。出していくんで、これからもヨロシクお願いしますね
51 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:50
練習が始まる。
はじめはアップがてらにピッチの周りを3週だ。
今回初めてこのような全国規模の選抜に入った辻にはもちろん誰も知り合いはいない。
さらにもともとシャイな性格であるため、ランニングでも一番後ろを控えめに走っていた。

もう・・・しゃーないなぁ

それを見たかごは気を利かせ、スピードを落とし辻の真横につく。

「よ・・よお」
「・・・・・・・・・」
「さっきは・・廊下で会うたときはごめんな。まさか選手だとは・・・」
「・・・加護・・亜衣さん、れすよね?」
「お?知ってんのかいな?ウチのこと」
「有名れすもん・・・」
「ま、まあなぁ〜。何か分からんことあったらウチに何でも聞きぃよ」
「・・・辻の方がうまいのれす」
カチン「ああ?」
「れったい(絶対)負けねえのれす!」
「アホか!このウチがアンタみたいなんのに」

加護が走るスピードを上げる。辻より体1つ前に出る。

「負けるかいな!」
「ム」
52 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:53
辻もさらにスピードを上げる。

「生意気なのれす」
「ムッカー・・このガキャ!」
「ガキじゃないれす!同い年らもん!!」

「コラ、お前ら、飛ばしすぎ・・・」

「うおおおおお!ついて来れるか、テメェ!!」
「駆けっ子なら負けねれす!!」

「き・・聞いちゃいねえ・・・」

「ゼェゼェ・・あっちの・・エンドライン・・・が、ゴール・・や!ゼェゼェ」
「ハッハッ・・・負けね・・ハッ・・ハッ・・のれす・・・!」

2人がハーフラインに差しかかる。

(・・・ヴァカめ!ウチのスタミナ&スピードをなめんなや!)
(マ・・マズイのれす!もう走れないのれ・・す・・・!!)
「ここまで、ようついてきたな・・ゼェゼェ。でも」
「・・・!」
「これで終わりやで!ラストスパートや!!」

加護が一気にスピードを上げる。
しかし、何故か思うように走れない。全力のはずが、むしろさっきよりもスピードが出てない。

(何や!?ウチ・・・のスピードが・・・)「あ」
「うふふ。奥の手れす」

見ると辻が加護のシャツを引っ張っていた。
加護を引っ張り、その反動で辻は前へ出、そのままゴール。

「辻の勝ちなのれーす!」(´∀`)ノ
「く・・汚ねえ!マジで汚ねえ・・・!!」
「むふふふ」
53 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:54
シュート練習―――――

ハーフコートの真ん中あたりからポスト役の選手にボールを当て、そのリターンをシュートする。
簡単なシュート練習である。

「・・シュウ!!」

左足で豪快に蹴りこまれるボールは、勢いよく逆サイドネットへ飛び込んだ。
全盛期のシニョーリを思い起こさせるようなシュート。
打ったのは加護だ。

「ナイシュウ!」
「おっしゃ!絶好調やで!!これ!」

「ム」

それを見た辻は下唇を突き出し不機嫌な表情を作る。
すぐさまボールをポスト役に当てる。
リターンパスに全力疾走でで向かう辻、しかし、インパクトの瞬間・・・
ボールと芝の間につま先を刺し込み、フワリとしたボールを上げる。
美しい放物線がGKの頭上を越え、ゴールネットを揺らした。
強いシュートを予測したGKは虚をつかれ、反応することはできず、ただ見送るだけだった。

「お・・おおおぉぉぉぉ〜」
「新人、なかなかやるぅ〜」
「ぶい!」

加護に向けピースサイン。

「む・・・。くそガキが」

(今度は思い切り曲げてやるのれす・・・ふふふ)

自分の順番が回ってきた辻は、わざと右足のアウトサイドでトリッキーにボールを出す。
そのリターンへのアプローチもトリッキーなステップだ。

(・・・もらったのれす!)

が、その時。
辻の視野にもう一つボールが横から入ってきた。
54 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:54
加護が辻のボールへ向けボールを蹴ったのだった・・・。

(・・・むむむ)
「あ・・・!」

その場面に全員が釘付けになった。
それは加護も例外ではなかった。
自分のボールをちょこんと浮かし、横からのボールをやりすごす。
辻の胸までボールが上がった。
それを見たGKはボールが落ちてからのボレーと読み、それにタイミングを合わせる。
が、辻はそうはしなかった。
辻はそうくることを読んでいた・・・というより感じ取っていた。
迷うことなく胸の位置のボールに合わせにいく。
ジャンピングボレーだった。
鋭いシュートがサイドネットに突き刺さった。
ドサッ・・と芝の上に落下する辻。

「ふぅ〜・・危なかったぁ」
「おお・・・、何かとんでもねえヤツが入ってきやがった」

周りがざわついていた。

(コイツは・・・・・・)

目を大きく開き、ボウ然と加護は立ち尽くした。
それは、確かにその辻の流れるようなシュートに驚愕したからでもあるが、
それ以上に福田明日香のプレーを目の当たりにしたときと“同じ”ものを感じたからであった。
あの場面では、恐らく自分もそのようにプレーしたであろう、と・・・。

ま・・また、見えた・・・。
福田さん時と同じように・・・。何者や、コイツ・・・


そして、決定的な出来事が起こる―――――
55 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:56
紅白戦―――――

赤いビブスには加護や、加護と同じく関西トレセンで17歳の松浦亜弥。
白には関東のあびる優がいる。

あくまで辻は今まで全国クラスの選考会には臨んだことがないため、リザーブとして出場機会をまっている。

「よーし!じゃあ15分ハーフを3本なっ!!はじめっ!!」

よう見とけや、辻とかいうヤツよ!
この年代でトップなんはウチなんや!!



「・・空いたっ!亜弥ちゃん!!」
「おっけー!」

加護がディフェンスのマークを巧みにかわし一瞬フリーになる。
中盤でボールをキープしていた松浦のルックアップとタイミングがぴったり合った。
この松浦亜弥というプレイヤーは中盤なら前・後ろ、左右サイドどこでもできるオールラウンドプレイヤーである。
この試合はトップ下に入っている。
意外性よりは堅実に仕事をこなす職人タイプのMFである。
そのため計算できる選手としてチームメイトや監督からの信頼は厚い。

その松浦から加護へパスが出る。ペナルティエリア外、ゴール右45度だった。
ディフェンスが慌てて加護のマークへつくが、加護はトラップでDFの前にボールをコントロール。
自らもディフェンスとボールの間に入り、ディフェンスを無効にする。
もしDFがタックルでも仕掛ければファールとなる。しかもペナルティエリア内であるため、1つのファールは即致命的になる。
56 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:57
(我ながら完璧なプレーや!)

GKも出てくるが、加護には関係なかった。
冷静にコースに流し込みネットを揺らす。

「っし!!!」

小さくガッツポーズ。今度は辻がそのプレーを見つめていた。

出たいのれす・・・緊張してるけど

その後、赤は加護が追加点を上げ、2本目のゲームには白が1点返す。
そして3本目・・・

「辻ッ」
びくっ「へ・・へい!」
「ん〜と、赤ビブス着て」
「赤・・・」
「そうだ。赤は・・・お前、交代。でボランチに松浦が下がって、トップ下に辻」
「ほ・・・ほい!!」
背番号22の赤いビブスを着る辻。
ビブスが大きいのか、辻が小さいのか、いやにビブスがぶかぶかだった。
恐らく辻が小さいのだろうが・・・。
加護も同じような風貌だった。
57 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:58
「気楽にね、辻ちゃん」
「あ・・ありがとございます」

松浦が辻に気遣いの言葉をかける。
そして、周りの選手の特徴を少しだが辻に説明してやる。
それを加護は腕組みして見ていた。
年齢も身長も同じだが、気分的には初めてこのような大きな合宿に参加し緊張している新参者を見下ろしていた。

(見せてもらうで、関東で“天才”言われるプレーを。・・ちゅうか、ウチについてこれるかな?)

だが一方で加護は思っていた。

・・・あの動き出し、試してみるか・・・

ゲームが始まった。

右サイドで松浦が白のボールを奪う。
辻がキョロキョロ周りを伺いながらパスを要求する。
すぐに松浦は辻にパスを出してやった。

このように緊張している選手は出来るだけ早くファーストタッチをさせた方が良い。
一見優しそうに見える松浦のプレーだが(実際優しいのだが)、このゲームだって選考の1つである。
そんな場で自分と同じチームとなった者がいつまでも堅さを残してプレーをしていたら
自分のプレーにも影響が出かねない・・・。
そんな打算的な考えもしっかり持っていた。

「辻ちゃんっ!」
58 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:59
辻にボールが渡る・・・
加護が周りのディフェンスの動きを感じ取り、フリースペースを嗅ぎ分ける・・・

あのシュートのとき感じたもんは、ホンマなんか!?

辻はフリーだった。右をむいていた体を開くように前に向ける・・・

その時だった―――――

ハーフウェイラインを少し越えたピッチ中央の辻の目と、
ディフェンスラインの左よりにフリーで待ち構えた加護の目とが合った―――――

ドクン・・・  心臓が高鳴る・・・

辻も加護もその場に立ち尽くす・・・
2人のイメージが完全に一致していた・・・
本人たちにとって、それは衝撃だった――――
59 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 10:59
今まで誰にも感じ取ってもらえなかった、この感覚。
それは加護のみならず辻も同様だった。
加護の脳裏に、練習試合の相手校の東京からの転校生徒の会話がオーバーラップしてきた・・・。
「試合のはじめはダイレクトでパスを散らす」

「そのパスは誰もいないスペースへ」

「そのあとは個人プレー」

・・・・・・・・・

つまり辻は、いつもDFにとって一番嫌なスペースへパスを散らしていたのであった。
そしてそのスペースとは加護が感じ取るスペースでもあったのだ・・・。
しかし辻にはそのスペースを感じてくれるほどのFWをパートナーとして持ち合わせてはいなかった。
だから、そのあとは自らチャンスを創り出すべくボールを持ちプレーした。
それが個人プレーと他人の目に映ったのだろう。
60 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:00
辻ッ!ぼやっとすんなっ!!ボール取られたんだから取り返しに戻れ!!」
「・・・あっ!す・・すいません!!」

結局、辻は加護へパスを送ることが出来なかった。
辻自身、あの場面でFWと目が合うなんてことは初めてで、パスどころではなかった。
驚き―――――
いや、それ以上に嬉しさだった。

これが全国なんら(なんだ)・・・・・・!

テヘテヘ笑いながらボールを取り返しに行く。
喜びに満ち溢れた背中だった。

これで大好きなサッカーでより高いトコロを目指せる・・・
今ならいくらでも走れそうな気がした・・・
61 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:01
白のシュートはGKがはじき出す。
リバウンドのボールを拾ったのは赤のチームであった。
クリアボールが前線へ向かって蹴られる。
FWが競るが、ここはDFが競り勝った・・・。しかし、そのセカンドボールに反応しているのは、辻だ。

・・・・・・ッ!!

再び目が、イメージが合う小さな天才2人。
気づけば加護はいつの間にか“その”スペースへ走っていた。
辻の横顔しか加護は確認できなかったが、その顔は微笑んでいるようであった。

この子は・・・ホンマにサッカー好きやねんな・・・
よっしゃ、パス来いやっ!!

浮いたボールを辻は迷うことなくヒールでとらえる。
そのパスは鋭く加護の元へ。

「なにっ!?」

ディフェンスが気づいたときはもう遅かった。
加護はそのパスを前方にコントロールしていたのだ。
62 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:01
ボールが・・・笑っている・・・?

トラップした瞬間にそう感じた・・・。
それは勝手に加護がそう感じただけかもしれない。
しかし、辻がどれだけサッカーを愛しているかは加護にはっきり伝わった。

鋭いパスだったが、その中に何か柔らかく、そして優しい気持ちが詰まっているようだった。

ホンマ・・・おもろいパス出す子やな・・・

キーパーとの1対1.
わけなく加護はゴールにボールを沈めた・・・
63 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:02
今日は終わり。お疲れ!」
「お疲れっしたぁー!!」

練習が終わった。
キャプテン決めということで17歳のメンバーの中心選手が集められた。
16歳だが、その中に加護の姿もあった。

30分くらい過ぎただろうか。
結局キャプテンはボランチのあびる優に決まった。
加護はグラウンドに戻ってきた。もう少しボールが蹴りたいからだ。
サッカーを始めてからずっとこうだ。
練習後も、誰よりも長くボールを触っていたのは彼女だった。

(あー、ちょい長引いたな。16のウチがキャプテンはできんやろ、やっぱ・・・。・・・ん?)

ボールを蹴る音がする。それも何とも楽しげなリズムで。
まるで、ボールが歌を歌っているような・・・

あ・・・―――――
64 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:02
辻だった。リフティングをしている。
ワンタッチワンタッチ、いちいち柔らかい・・・
どれだけ長い時間、ボールと遊んできたのだろう。
もしかしたら加護と同じくらい、いやそれ以上ボールと戯れていたのかもしれない。

ふいに、ボールを高く上げる。
落下してきたボールを思い切り叩き、ゴールへシュートを放つ。
悪魔のようなドライブがかかっていた。
そのシュートは生きているかのようだ。あたかも辻の意思の通りにゴールを襲う魔法のように・・・。
それだけ辻はボールと一体となっていた。

ガガンッ!!・・・クロスバーの上を叩き、大きく弾むボールは、加護の元へ転がっていた。

「ん・・・」

辻が加護の存在に気づいた。
65 名前:天才たちの邂逅 投稿日:2003/11/17(月) 11:03
「・・ほれっ」

そう言って加護がそのボールを辻に蹴り返す。
無言のまま辻がそのボールを受け取る。
加護も無言で辻に近づいていく。

そっと風が2人の間を吹きぬけた・・・

「サッカー・・・好きやねんな」

清清しいそよ風を体中で感じ、夕焼けでオレンジ色に染まった空を見上げながら加護が囁くように言う。
辻がこくりと頷く。

「ウチもや。・・・愛しとる、サッカーを」

再び風が通りに抜ける。
2人とも無言のまま・・・しかし、それだけで充分だった。

おもむろに加護が辻のボールを奪う。

「1対1や。来いや」



激しく入れ替わる攻守・・・

何万語の言葉を交わすよりも、

1つのボールを通したワンプレー、ワンプレーが

自分たちの中に何かを刻み込んだ・・・
66 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 20:14
「こっちや!」

U-17世界選手権ノルウェー大会アジア1次予選対ミャンマー戦
後半10分までにすでにスコアは3−0とU-17日本代表の圧倒的優勢だった。
しかし攻撃の手を緩めようとはしない。
今も背番号7番のFW加護亜衣が上手くDFラインの裏をついたのだ。
フワリを相手の頭上を越すパスが加護へ出た。
それを胸でワントラップすると、加護はGKが出てきたところを冷静にループで狙い4点目を決めた。
加護自身この得点でハットトリック達成だった。

1次予選はインド、タイ、ミャンマーとのグループであったが
A代表においても弱小の部類に入るこれらのチームに日本は何もさせず連戦圧勝だった。
インド戦4−0、タイ戦3−0ともはや日本の敵ではない。
ここまで5得点と大活躍の加護はU-17代表の中でエースの地位を築き上げた。
そして、もう1人初代表でセンセーショナルなパフォーマンスをみせる選手がいた・・・
67 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 20:23
ピィーッ!
ボールがタッチラインを割ると審判はゲームを止め、交代選手を入れる。
16番MF辻希美だ。

(やっと出番なのれす・・・!)

インド戦、タイ戦とともにスタメンに名を連ねはしなかったが、後半からの出場でチャンスを創り出す。
後半足が止まりゴール前に張り付いた相手チームDF陣をかき回し決定的チャンスを演出。
1次リーグとは違い韓国や中東の強豪国が相手となる2次リーグにおいて、
後半に流れを変えることのできるプレイヤーとして辻は徐々に信頼を厚くしていた。

「よーう!遅かったな、のの」
「おう!待たせたな、あいぼん」

ここまでの試合、加護の得点は辻が入ってからに集中している。
辻はまだ得点を記録してはいないが、その正確でいて意外性溢れるパスで多くのアシストを記録している。
とりわけ辻加護のパスワークは観衆を魅了した。
68 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 20:32
後半22分。
DFラインからパスを回す日本。
もう攻める気の無いミャンマーはプレスもかけずただただDFラインを下げ全員がゴール前に張り付いている。
そのため日本の選手はパスを回すだけでボールをゴール前に運ぶことが出来ない。
こういうときは辻だ。

ハーフウェイラインを少し越えた左タッチライン際で辻がボールを受ける。
相手はチェックに来ない。
辻は迷わずドリブルで相手DF陣の中に侵入する。
1人、2人、3人・・とおもしろいように相手をかわしていく。

(また出たで、のののドリブル!何でか取れへんねんな、アレ)

辻のドリブルには何か独特のリズムでもあるのだろうか。
相手プレイヤーをタックルの間合いに入らせない・・・そんなドリブルだ。
相手もスタミナがなくなっているのもあるかもしれないが、ファール無しじゃ止まらない、そんな感じだった。

「!」

ふいに加護へ辻がパスを出す。
パスと同時に辻も加護のほうへ走り出す。

「あいぼん!スイッチッ!!」
「・・!おうっ!!」
69 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 20:48
すれ違いざまに加護からボールを受け再びドリブルを開始する辻。
DF3人を引き連れ左ゴールエリア近くまで侵入した。
シュートを打とうにもDFとGKによりシュートコースはない。
しかも、すでに前方にはエンドラインだ。
辻は自ら狭いスペースへ閉じ込められる格好になった。
しかし辻は無理なコースへ左足でシュートを打とうとする。
DFがそれを防ごうと足を出しシュートコースを塞ぐ・・・

その時辻は、感じていた・・・
DFがこれだけ集中すれば必ずゴール前にスペースがあいているということを。
そして、そこに走りこんでくる日本の選手がいる、ということも。

ボールへのインパクトの瞬間、角度をつけたマイナスのパス。
そのパスはゴール前にぽっかり空いたスペースに転がっていた。

「ナイスパァス!!」

加護だ。加護が走りこんでいたのだ。
そのパスを落ち着いてゴールへ流し込み、日本の5点目を決めたのだ。

「ナイシュ〜」
「おお!ナイスパスやったでぇ」
「テヘテヘ」

この双子のような2人の選手はこの年代のアジアの各チームに名を轟かせていた。
結局この試合はその後日本が1点えお加え6−0の圧勝で終わり、順調に最終予選へ駒を進めた。
70 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 20:58
「うわっ!このアイス、ホントよく伸びるぅ!!」
「ホンマや!もっと混ぜたろ」

シンガポールで行われる最終予選のためにミニ合宿が開かれた。

「トルコの人はこんなアイス食ってるんやなぁ・・」
「・・そういや、あいぼん」
「ん?」
「何で7番なの?背番号」
「へ?」
「何かこだわってるよーに見えたから」
「・・・・・・・・・」

確かに加護は7番をくれと監督に頼んだ。
FWでありエースでもある加護には9番か10番が用意されていたのだが・・・。

「ハロプロ・・って知ってるか?」
「え?ワープロ?」
「ハロプロ!」
「パワプロ?」
「ハーロープーロ!!やっちゅーねん!!!」
「・・・・・・知ってる」
「何やねん!知ってんのかいなっ!!どつくぞ」
「まあまあ、そんなに怒らんといてぇなぁ〜。で、それがどした?」
「昨シーズン、ハロプロをJ1に導いたFWの福田明日香いう選手がつけとったんや、7番を」

アイスをほうばりながら加護が話を続けた。
辻もアイスを食べながらそれを聞いていた。
71 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:04
・・あれはな、ホンマ偶然やったんや。
中学ん時、サッカー部の先生がハロプロの試合観に連れてってくれたんや。
・・偶然言うても先生は、ウチがその福田さんにプレーが似てる言うてくれて、
プロになる、サッカーで食っていく気ィ無かったウチに明確な目標持たせようとしてくれてたみたいやけど。
・・・ん?そうやで、ウチ、プロになる気無かったんやで。ま、今は違うけど。
そうやな、こんな気にさせてくれたんも福田さんのおかげやからかなぁ。
あんなに楽しそうにボール蹴る人、初めて見たわ・・・。
うん、ウチはプロ言うもんは「勝つだけ」か思てたけど、福田さんみたいに楽しくサッカーしたいな、って。
そうできるんやったら、プロも悪うないな、って。
72 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:10
「ふ〜ん・・・。そうなんら(なんだ)」
「でも福田さん、ハロプロ辞めちゃったけどな」
「え・・何れ?」
「何か、“プロに疲れた”とか記事に書いてあったけど」
「・・・う〜む」
「バランス取られへんかったんやなぁ〜、サッカー大好きな自分とプロの自分との」
「・・・・・・・・・」
「でも、ちょい羨ましいな!そんなにサッカー好きになれるなんて!」
「辻はサッカー大好きらよっ!れったい(絶対)プロになるもんっ!!」
「おう!」
「一緒のチームに入りたいね、あいぼん」
「だなっ!せやから、今度のU-17の大会は本選に行くんや!!」
73 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:22
関西国際空港─────
U-17日本代表メンバーはシンガポールへ旅立とうとしていた。
この最終予選は1次予選を勝ち抜いた8チームを2つのグループに分け、
それぞれのグループの首位チームが本選に出場できるというものである。
Aグループに入った日本は、中国・ウズベキスタン・韓国という国々と争うこととなった。
日本の苦手とする中東のチームとは違うグループに入ったが、韓国が同じグループだ。

「んと・・、これも買おっと」
「ののっ!明らかに買いすぎやわ、そりゃ」

土曜に中国戦、水曜日にウズベク戦、そして日曜に韓国戦とシンガポールに1週間の滞在であるが、少女たちにとっては長い滞在に感じられた。

「らって(だって)・・しばらく日本に帰って来れないんらよ(だよ)!」
「ま・・まあな・・・。あ・・・」

辻がレジに走るのを横目に加護は大きなバックパックを背負った1人の女性に釘付けになった。
一瞬だったが、その横顔が目に入ったのだ。

福田・・明日香・・・?
74 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:37
間違いない!
何故かその時加護はそう確信した。
会ってみたい。何か話がしたい。
そんな思いに突き動かされるように、加護は自然にその福田と思しき女性の背中を追った。
バックパックに泥だらけのナイキのスパイク、左手にはネットにしまわれたボール・・・。
現実味が増してきた。
会って何を話すのか?アナタのおかげでプロを目指そうと思いました、とでも。そんなこと迷惑に違いない。
・・が、加護は走った。
そう、ただ目標だった、と。そのプレースタイルが、サッカーを愛してるところが大好きだったと伝えるため。
それだけのために・・・。

「・・!ちょ!通してくださいっ!!」

人ごみをかき分ける加護だったが、福田の背中はどんどん小さくなり、今にも見失ってしまいそうだ。

「福田さんっ!!元ハロプロの福田さんなんでしょ!?!」

もう我慢の限界だった。
たまらずその場でさけんでしまった。驚いた人々が振り返って加護の顔をジロジロ見た。
しかし、その声に振り返ったのは一般人だけではなく、当の福田自身もだった。
福田が加護の方に歩みよる。
加護の心臓は今にも爆発しそうだった。
こんなことをして福田の気を悪くしたのではないか、ただ心配だった。

「ス・・スイマセン!つい・・姿が見えて・・・・・・あの・・」

その女性が目の前にやってきた。紛れも無く福田明日香その人だった。
加護はとっさに誤った。
75 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:48
気まずそうに顔を上げる加護だったが、福田は笑顔だった。
ハロプロのに所属していたときとは表情が違う気がした。
少しふっくらして柔らかな印象・・・。
その目にはハロプロ時にたたえていた憂いも寂しさもなかった。
好奇心に満ち、きらきらとまぶしい瞳だった。

「・・U-17・・・?」

加護のジャージを見た福田が尋ねた。

「あ、ハイ!これからシンガポールで最終予選ですっ!!」
「シンガポール・・・」

ガチガチに緊張している加護とは対照的に福田は淡々としている。

「がんばってね」

そう言うと福田は手を差し出した。
慌ててその手を握る加護。手が震えていた。

「あ、ありがとうございます!」
「ん。それじゃね」

振り返り福田は歩き出した。

「・・あの!」

どうしても伝えたいことがあった・・・。

「福田さんのプレー・・大好きでした!!」

それを聞いた福田は照れくさそうにはにかみ再び振り返った。

「まだ、サッカーしてますよね?」

ふっ、と笑う福田。当然、そんな感じでうなづいた。

「こ、これからどこに行かれるんですか?
「世界中にね・・サッカーをしに」

そう言い残し福田は前へ歩き出した。
その背中を見送る加護。ただ呆然と立ち尽くしていた。
自分とそう変わらない身長の福田の背中が、そのときはとてつもなく大きく見えた・・・
76 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 21:53
きっと誰も理解できなかったのだろう。

その豊かな才能を捨ててしまう、そんな記事ばかりだった。

将来の日本の大エースになれる器だった。

だが、そのような評価は福田が望んだものではない。

彼女にとってそんなもの何の価値も無かったのだ。

ただ彼女が望んだもの、──それは自由なサッカー。

誰もそれを福田から奪うことは出来なかった・・・
77 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 22:00
「あいぼぉ〜ん!時間らよぉ(だよぉ)」
「お・・おう!」
「・・どしたの?」
「あ・・ああ、ちょっとな」
「ふ〜ん・・ま、いいや!早く行こ」
「おうっ!のの!絶対本戦行くで!!」
「おっけぇ〜」

いつか福田を越えてやる・・・・・・そう心に誓った加護だった。

試合の3日前にシンガポール入り。
待っていたのは過酷な暑さだった。異常な暑さだった。

「うう・・死にそ・・・」

みんな口々に暑さを気にしている。
しかし、それはどの国にとっても同じ条件なのだ。言い訳にはならない。
これから試合までどれほどコンディションを高められるか、そこが重要だ。

「っかー!アッチィな、おい!!」
「・・・くそアチィのれす」

その日は午後から軽くサーキットトレーニングで汗を流すだけだった。
78 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 22:12
「なぁ、のの、1つ話があんねん」

ホテル。辻と加護は同室だ。
風呂から上がりほてった体をエアコンで涼しくした部屋で冷やす辻に
風呂へ入る支度をする加護が言った。

「なに?あいぼん」
「やっぱな、これだけ暑いとなるとな、試合に影響出るやんか」
「うん。きつくなりそだね」
「せやからな、慣れとけばええやん?この温度に」
「そうらね。少しはマシになるかもね」
「だ・か・ら!ピッ、とな」
「ちょ!あいぼん!!エアコン消しちゃラメ(ダメ)〜!!蒸し焼きになるよう!!」
「ち!ち!ち!分かってへんなぁ〜・・」
「ム」
「こんな冷えた部屋におって炎天下の外に急に出てみぃ!それこそ死んでまうって!!」
「・・ぶぅ」
「本戦に行くためやって!我慢しょー」
「・・・ほい」

環境への順応・・・
これもアウェーでの戦いにおいて重要なことだ。
それも何かを賭けたギリギリの戦いにおいてはなおさら。

「やっぱアチィな・・・」
「あいぼんでしょー!言い出したのはぁ!!」
「せやけど・・・正直、眠れんな、この暑さじゃ・・・」
「ん?あいぼん何かシーツ濡れてるよ・・・まさか、お・おねしょ!?!」
「バ・・バーロー!!汗やっ!汗!!」
「・・どっちもあんまいいもんじゃないよ、あいぼん」
「ぐ・・・」
79 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 22:24
この“エアコン切り”が功を奏したのか、辻と加護はうまくコンディションを上げることに成功した。
だがチーム自体のそれは彼女たちと逆ベクトルを辿っているようだった。
明らかに動きの重たい選手が多数見られた。
やはりホテルで冷房をつけたままの選手はたくさんいるようだ。
この暑さの中、ケラケラ笑いながらいつも通りボールを蹴る2人のプレイヤーを恨めしそうに他の選手は見つめていた。
辻加護の環境への順応力も2人の才能の1つなのだろう。
そしてU-17世界選手権アジア最終予選が始まった。
1戦目中国、2戦目ウズベクを1−0、2−0と下した。
2連勝・・・結果は上々。
ウズベキスタン戦で2ゴールを上げた加護だったが一抹の不安を感じていた。
明らかにチームの状態は落ちていた。
勝利というものは、内容をあやふやにしてしまう・・・。
“いける、いける・・”そんな空気のまま日本は韓国戦へと突入していった。
80 名前:挑戦 投稿日:2003/11/17(月) 22:27
疲れた・・・。今日はここまで。
時間がある日はいいなぁ〜。明日はバイトだ・・・
81 名前:マルコ 投稿日:2003/11/17(月) 22:27
ミスっちゃった。名前のとこ・・・
82 名前:mj 投稿日:2003/11/19(水) 12:57
頑張れ〜楽しく読んでるよ!
83 名前:ititetu 投稿日:2003/11/19(水) 23:41
しっかり読んでますよ(^^)v
「ファイト!!」ですよ(^^)
84 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 13:16
>mjさん,ititetsuさん
どうも〜。あまりまたまった時間がなくて更新は遅れ気味。

あと思ったのは今、辻と加護しか出てないから彼女たちのファンじゃないときついかもねぇ〜
オレは辻ヲタなので楽しいですがw
85 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 14:26
韓国・・・
幾度も日本の前に壁のように立ちはだかってきたアジアno.1の国。
そんな韓国も今回の大会は今一つ調子に乗れていないようだった。
緒戦のウズベキスタンにこそ3−0と快勝したのだが、中国戦は1−1の引き分け。
現在、日本勝ち点6の1位。それに続くのが勝ち点4の韓国だ。
日本は引き分けでも予選通過となる。
そんな状況が、さらに日本に甘ったれた考えを植えつけてしまったようだ。
引き分けを狙って、それを実現できるほど韓国のオフェンス、いや気持ちは甘くはない・・・。
86 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 14:34
それでも日本はボランチのあびる優のミドルシュートがクロスバーに弾かれたこぼれ球を加護が押し込み1点先制する。
前半14分だった。
これで日本は完全に引いてしまい、韓国にいいように攻め込まれる。

「コラーッ!もっとライン上げろやぁ!!」

そんな加護の声も空しく韓国の迫力の前に消えていく。
そう、韓国にはもう後が無いのだ。

ピィーッ!

選手交代だ。
「16」と第4審判が電光掲示板を掲げる。

(ののか?)

日本の16番は辻だが、彼女はベンチで戦況を見つめていた。
交代は韓国だった。
真ん中で分けたストレートヘアをなびかせその16番はピッチへ入ってきた。

(ん・・ビデオでも見んかったな、この選手)

それは日本ベンチの全員同じだった。
見たことも無いこの16番はどんなプレーをするのか。
背中の背番号16の上に「BoA」、と書かれていた・・・
87 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 14:49
(・・BoA?どこの生まれやねん)

・・・だが、この16番によって前半終了までに2−1とスコアをひっくり返されようとは、このとき誰も思いもしなかった。

1点目───
日本陣内でボールを受けたBoA。
次々にチェックに来る日本のディフェンスを交わし、ボールをキープしながらペナルティエリア右(日本からは左)へ。
左足を踏み込みセンタリングを上げるふりをし、右足の裏でボールを軸足の裏へ移動させ方向転換。
その瞬間、ルックアップし逆サイドへ大きくボールを出す。
ボールをキープすることでBoAへマークが集中しすぎ、逆サイドのペナルティエリアはポッカリとスペースが空いていた。
そこへ韓国のプレイヤーが走りこみ、すかさずBoAもボールを出したのだ。
GKと1対1。韓国のFWは落ち着いてゴールに流し込み同点。

2点目───
日本ゴール前に攻め込んだ韓国。
ペナルティエリアには日本選手6人、韓国選手4人の超密集状態。
ペナルティエリア左に侵入した韓国左サイドバックがワンフェイントを入れ縦へ出る。
一瞬のダッシュでセンタリングのコースを作り、ゴール前へボールが上がる。
競い合う両国のプレイヤー。
弾かれたボールは転々とペナルティエリアを出ようとしていた。
そこへ飛び込んできたのが、BoAだった。
ゴール前には両国選手が入り乱れ、シュートを打ったところで誰かに当たりそうだったが、この16番は足を思い切りよく振りぬいた。
よくコントロールされたシュートは唸りを上げゴールバーの下を叩きそのままネットを揺らしたのだ。
後半40分の逆転ゴールだった・・・。
88 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 15:02
「・・くっそがっ!」

ドガッと壁を蹴り飛ばす加護。
ロッカールームはこれが世界の終わりかと思わせるほど暗い。
前半の疲れ、コンディションの悪さ、暑さ・・・口を開くことすら出来ない様子だった・・・。

(なんちゅーことや・・まだ前半やからまだ十分チャンスあろうに・・・)

加護は周りのプレイヤーのコンディションを見て絶句した。

(ホンマみんな死にそうな顔しとるな・・・あれ?)
「監督!辻ちゃんは?」

そう言ったところで急にドアが開いた。

「アップ終わったのれすっ!!」
「え・・・」
「よし、じゃあ辻後半いくぞ」
「へい!!」
「ちょ・・ちょっと待ってくださいよ!!」

咄嗟に加護が口をはさんだ。
全員加護のことを驚いたように見ていた。

「あいぼん・・・?」
「ぎゃ・・逆転できますって!うちらで!!」

初めて辻と出会ったとき、加護にとって辻は全国的に無名の選手、自分が支えなければならない、
けれどもどこか自分と似た感覚を持った選手として、特別な人物・・・そう感じていた。
しかし、そのような優越感もアジア予選を通じて、いつしか強大になる辻の存在に崩されていた。
韓国にアジアno.1と信じていた自分を遥かに凌駕する才能を持ったプレイヤーが存在し、それに対抗するために監督は辻を投入すると言う。

それはつまり自分より辻のほうが上ということなのか。
負けたくない───
同い年、同じような身体・・・
辻には負けたくない。そんな気持ちを今はっきりと認識した。
89 名前:マルコ 投稿日:2003/11/20(木) 23:59
「・・10分ッ!10分で同点にしてみせる・・・だから・・・!!」
「・・お前がそこまで言うんなら・・・。だがな!判断するのはこっちだ。10分経たなくてもダメだと判断すれば辻を入れる!分かったな」

ハイ、と小さく答え汗をぬぐう。
辻は明らかに不服そうだ。
自分が入れば流れが変わる、逆転もできる・・・
何より加護とプレーすれば不可能はないと思っていた。
90 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:10
静かに後半は始まった。
加護はアグレッシブに高い位置からプレスをかけ、ボールを持てばシュートに行く・・
が、チームとして機能はしていなかった。
後半7分、辻が投入された。

「・・のの」

ハーフタイムにどうしてあのようなことを言ってしまったのだろう。
監督にしてみれば、辻はただ単純に流れを変えられる選手という認識だったはずで、自分より実力が上とか下とか、そんな考えは無かったのだろう。
そんなこと当たり前じゃないか。
冷静に考えれば、そんなこと当たり前なのだ。
だが、ついチームのコンディションの悪さ、ゲーム展開、韓国の16番に対し苛立ち熱くなってしまった・・・
後悔の念が加護の心はさいなわれていた。

「・・・ごめんな、のの。・・さっきは・・・」
「・・・負けねぇのれす」

ホントにごめん、そんな感じで加護は俯く。
もしかしたら自分は取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。
91 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:14
「辻もあいぼんには負けないのれすっ」
「・・・・・・・・・」
「韓国にらって(だって)・・・!!」

そう言って加護の脇を通りに抜けポジションにつく辻。
その目は今までに無いほど集中しきっていた。

「のの・・・」

“負けねぇのれす”
前にも聞いたことがある・・・
確か初めてののと会ったときや・・・
92 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:24
後半15分───
ドリブルで攻め上がる辻。
相変わらずそのドリブルを止めることのできるプレイヤーはいないようだ。
1人でチェックに行っても無駄なことだった。
ペナルティエリア目前で辻はルックアップする。加護を見た。

「!」(・・のの)

しかし、それはフェイクだ。
これまでのゲームで辻がシュートに行くシーンなどほとんどなく、
ゴール前でボールを持てば必ずと言っていいほどパスを出し、そのほとんどを決定機に結び付けていた。
それゆえ韓国のDFも注意はパスへと注がれていたのだった。
加護へパスを出すと見せかける体重移動。
辻の前のDFがそれにつられると、辻は滑らかに体重をその逆へ移動させ、DFの逆を取る。
ポッカリとシュートコースが辻の目の前に開いた瞬間・・・
ボールは鋭くカーブに向かっていた。
93 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:41
「入れェーッ!!」

惜しくもシュートはゴールポストをかすめ、そのままゴールラインを割ったのだった。
自らの太ももをパシッと叩き、悔しそうに天を仰ぐ。

「・・・くそぅ」

その光景に加護は目を丸くし驚きを隠せない様子だった。
辻がシュートを放ったこと、そして本気で悔しがる姿に・・・。

(は・・初めて見たで・・ホントの試合でののがシュートするとこ)

そのとき加護の脳裏にあの言葉が浮かんだ。
“負けねぇのれす”
あの時、のの、ウチに対して負けんて言うたなぁ・・・
負けんか・・・

ののはウチのことを自分より上や、思ってくれてんねんな・・・
そのことにウチはどっかで優越感を持ってたんか?
こんなんじゃ、ののに置いて行かれる・・・
アイツの・・ののの才能・・・認めなアカン
ホンマはウチなんかよりすごい才能持ってるかもしれん・・・

だけどな───

韓国の猛攻をどうにか凌いだ日本がボールを前線へ蹴りだす。
ボールへ辻がアプローチする。

ウチかて負けへんで!絶対!!

「ののっ!!」

一瞬DFから逃れフリーになる加護を、辻の目は捉えていた。
DFのタックルより0コンマ何秒か先に辻が加護へパス。

「あいぼんっ!フリーッ!!」
「おう!任せろや!!」

ワントラップしてそのままシュート。
GKの脇をすり抜け加護のシュートはゴールネットに突き刺さった。
94 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:49
「よぉーっしゃ!!」
「ナイッシュ!」

さっきまでの気まずさは何も無く、何の違和感も無くハイタッチ。
お互いを真のライバル、親友と認めた瞬間だった。

最終的に韓国に追加点を許し、日本は予選敗退。
だが、辻と加護にとっては特別な大会となった・・・

「じゃあな、のの」
「うん。今度は・・・ユースらね(だね)」
「ああ、そうやな。今度は行くで、世界に!」
「へいっ!!」


偶然出会った二人の天才は、また別々の道を歩き出す

再び出会うために

世界を目指すために

また2人、ともにプレーするために───

2人の夏は、終わった
95 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 00:52
今気づいたけど、初めはちゃんとタイトルついてたのに、
いつのまにか普通に名前になっちゃってる・・・。

鬱だ・・・
96 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/21(金) 01:25
U-17日本代表のアジア予選敗退が決定したころ、J1初参戦となるハロプロは1stステージを終えていた。
福田を失ったが、新メンバー市井、矢口、保田がチームにうまくフィットし1stを6位で終了した。
初参戦としては上出来だった。
その躍進の立役者は、福田という強力な相棒を無くし孤軍奮闘するFW安倍なつみであった。

J1初参加、福田の退団、新メンバー入団・・・
これらがもともと責任感の強い安倍へさらに“責任”を与えた。
自らFWととしてチームの攻撃の核となるべくゴールへひたすら向かう。
「福田あってのハロプロ」・・・そんなこと言わせないために。

現在2トップを組むあさみもゴールの方を向いてプレーするのが得意なプレイヤー。
2トップがゴール前へ一緒に突っ込むことも度々見られ、中盤からFWへのパスが裏、裏となり単調になっていた。

ところが、1st6位という成績が示すとおり、あまり負けなかった。
そんな結果がハロプロの内容を省みることを奪った。
勝てていることが、自らの自信になっていた。
それは今の自分たちのサッカースタイルは正しいと思い込ませるのに充分だったのだ。
さらに、そんな成績が重圧のかかっている安倍の神経を麻痺させていた。
うまくいっているときには感じることが少ない疲労が安倍の体をひそかに蝕んでいたのだった。
97 名前:マルコ 投稿日:2003/11/21(金) 01:27
今回はここまで〜。
とうとう辻加護篇終わり、つーか中断。話はハロプロへ戻ってきました。

まあ、無理のある話ってのは承知していますんで見逃して下さいw
98 名前:mj 投稿日:2003/11/27(木) 23:43
がんばれ!
続きまだかな〜
99 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 22:52
J12ndステージの開幕を目前に控えていた、ある日・・・
第3節終了後に行われる国際フレンドリーマッチ 対ウルグアイ戦。
日本代表監督が語った。「次の試合で新戦力を試す。いいFWが出てきてるからね」と。

マスコミはこぞって伝えた───
『ハロプロ安倍なつみ、ソニー鈴木あみ 代表へ』と───
100 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:00
中澤:「ええなぁ・・なっち」
安倍:「え・・いやいや、決まったわけじゃないべ」
矢口:「でもさー」
安倍:「ん?」
矢口:「ほとんど決まりじゃん?」
保田:「そうそう」
石黒:「1stステージの得点ランク3位だしね、なっち」
中澤:「ああぁ〜・・ウチもあの青いユニフォーム着てプレーしたいわぁ」
市井:「日の丸背負ってね」
矢口:「・・裕ちゃん、戦わなきゃ現実と」
中澤:「む」
飯田:「にしてもこの鈴木あみって?」
石黒:「んと、確かソニーのFWでしょ」
安倍:「鈴木・・あみ・・・」
保田:「1stステージに当たったときいたっけか?コイツ」
市井:「記憶に無いなぁ」
中澤:「何か、ケガしとったらしいで。軽いみたいやったけど」
石黒:「あ、そうなんだ」
飯田:「確かソニーとの試合は・・・3節じゃん!」
矢口:「代表戦の直前とは・・・」
飯田:「負けんなよ、なっち」
安倍:「お・・おうっ!!」
101 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:04
J12ndステージ開幕

開幕戦 対オスカーFC
前半26分
中盤の底でボールをカットした石黒。
ミドルゾーンでの守備にはこの頃からすでに定評があった。

「あやっぺ!」

石黒のすぐ脇をダブルボランチで組む保田が駆け上がる。
スライディングでボールをカットした石黒は座ったままの体勢で保田へボールを預けた。

「頼んだっ!前空いてるよっ!!」

大きくスペースのできたフィールドを保田がドリブルで攻め上がる。
ルックアップ。安倍の動きを祖の目が捉えた。
102 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:09
「なっち!」

ライナー性のパスが安倍へ出される。
が、それは安倍の前で相手DFがヘディングでクリア。

「しまった・・・!」

しかし、そのこぼれ球が向かう先はトップ下に入る市井の足元だった。
一斉に相手DFが市井に渡ったボールを取り返そうと、これ以上ボールを前へ進めさせまいと群がる。
が、市井の視野に左サイドのオープンスペースが入った瞬間、ダイレクトでそこへパスが出された。

(さやかっ!こっちっ!!)
(・・矢口ッ!)

走りこむのは矢口だった。
そのスピードとスタミナは十分相手の脅威となっていた。
103 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:19
「ナーイスパス!」

ワントラップし中の様子を伺う。
ニアにあさみ、ファーに安倍。しかし、矢口が狙ったのはその間、つまりゴール正面だった。

「もらった!」

飛び込んできたのは、ボランチ石黒だ。
ほぼフリーでヘディング。
キーパーは一歩も動けず、ただボールを見送った。
ネットに突き刺さるボールを満足そうに見つめながら大きくガッツポーズ。

「うむ。なかなかいいパスだったぞ、矢口!」
「ぐ・・なかなかだとぉ!?」

勢いに乗るハロプロの先制点だった。

・・・しかし、後半に入るとガクンとスタミナが落ちる。
後半半ばに同点に追いつかれると防戦一方になる。
何とか同点のままゲームを終えたが・・・

続く第2節FC松竹戦同じように前半は有利に進めながらも後半スタミナが落ち立て続けに2点入れられそのまま2−0と負けた。
もともと無名の選手の集まり。
勢いに任せるゲーム運びで後半息切れしてしまうという展開。
経験不足を思い切り露呈してしまった。
104 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:33
そして第3節 FCソニー戦───

ロッカールームはいつも以上にハイテンションだった。

「さあ、さあ!さあっ!!なっちの代表入りが近づいてきたでぇ〜」
「もー!やめてよ、裕ちゃん!!」
「何?謙遜してんのかいな」
「というか、今は試合に集中しなきゃ!ってことだべ!!」
「お?偉そうに!分かってるっちゅーねん」

「おおっし!行くでっ!!」
「おう!!」

気合を入れロッカールームを後にするハロプロメンバー。
その時、ソニーの選手たちも控え室から出てきた。

「ム」
「・・ソニーの・・・」

気にしないように努めていた安倍だったが、どうしても“鈴木あみ”というプレイヤーへ興味がいってしまう。

「安倍・・なつみさん?」
「・・!」

不意に声をかけられた。

「安倍なつみさんですよね?」
「そ・・そうですけど・・・」
「アタシは鈴木あみ。ヨロシク」
「・・・!!」
105 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:43
「なっちー、早く行こうよ・・・・・・って!」

矢口が安倍を呼びにきた。

「す・す・・鈴木あみ!」
「あら?知られてんの?アタシ」
「そりゃあな!なっちと代表争ってんだかんな!それくらい知ってるっつーの!!」
「や・・矢口・・・」
「ま、アンタなんかよりなっちのが上だろうけどな。ふん」
「ちょ・・・やめて、矢口!」

そんな会話にまるで興味がないかのように鈴木あみは笑っていた。

「な・・・何がおかしい?」
「代表を争う?誰と誰が?」
「誰って・・アンタとなっちが、だろ!」
「それは違う。アタシはあっても安倍さんは、ない。うん」
「――!」

ズシンときた。
安倍は胸が詰まりそうだった。ここまでストレートに言われるとは・・・。

「な・・何だとテメエ!!!」

矢口が食って掛かる。
が、安倍はもう口を開くことが出来なかった。黙って俯いたまま足元をじっと見つめていた。

「なっちはな、チームのために一生懸命プレーしてんだっ!それが評価されたんだろ!!」
「チームのため?」
「ああ!点もたくさん取ってるっ!!」
「逆だよ。そのプレーがチームを良くないほうへ連れて行ってる」
「あんだと・・・?」
「そのプレーはチームを生かせてない・・・。ま、これ以上は・・・」

そう言い残し鈴木あみはピッチへと向かった。
106 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:47
チームを・・・生かせてない・・・・・・?

「何だってんだ?あのヤローは。なっち、気にすんな」
「う・・うん・・・」
「心理作戦か何かだよ。向こうも代表に入るために必死なんだよ」
「・・そうだべな」
「元気出せよ、なっち〜・・」

悩んでいても仕方ない。
何て言われようと自分はチームを引っ張ってきた。
自分を信じる。
自分はチームのためにプレーしてるんだから―――
107 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/28(金) 23:57
フィールドに1羽の蝶が優雅に舞っていた。
柔らかいタッチでDFを翻弄する姿は、あたかも蜜を求め戯れる蝶だ・・・。
だが、その蝶も獲物を見つけると鋭い毒針を持つ蜂へと豹変する。

柔らかく俊敏なドリブルでDF陣をかき回し、
一瞬でも隙を見つければそこへ走りこみパスを受け決定機を創り出す・・・
ハロプロはこの鈴木あみというプレイヤーに翻弄された。
前半だけで2−0の得点差。
メンバーのスタミナも残っていなかった・・・。

2ndステージが始まってからの2節のうちに気づくべきだった。
自分たちがまだ1勝もできていない理由に。
もうすでにチームとしての勢いは失われていることに。
そして、その一因が安倍にあることにも・・・―――
108 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/29(土) 00:10
結局、後半にさらに2点追加され4−0で負けた。
誰も何も言えなかった。
今までの成績はフロックだと言うのか・・・?
それを必死で否定しようとするが、2ndステージ0勝という結果がそれを無効にする。
特にショックを受けていたのが安倍だ。
責任感が強い分、自分の問題としてすべてを抱え込んだ。

鈴木あみの言った“チームを良くないほうへ”という言葉が胸に影を落とす。
そして彼女の真面目な性格は、彼女から休息を奪った。
毎日毎日繰り返されるハードなトレーニングにより疲労が蓄積され、彼女からキレを奪う・・・。
そんな状態の彼女はゲームでいいプレーが出来るはずも無く、またトレーニングへ、という悪循環へ陥っていた。
109 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/29(土) 00:44
練習後、安倍は一人グラウンドを走っていた・・・。
カーブはジョグ。直線に入るとダッシュ。

誰もが彼女を止めた。そんなに練習しても体を壊すだけだ、と。
しかし彼女は聞かない。
良く言えば真面目な彼女の性格も、悪く言えば頑固だ。

またカーブが終わろうとしている。再びダッシュだ。スピードを上げる。

「・・ん!」

全力疾走。

なっちは一生懸命やってきたんだよ
チームのために。
それに何よりサッカー大好きな自分のために。
まったくの無名だったなっちを拾ってくれ、そんななっちを仲間と認めてくれるチームのために。
そして、なっちはチームを引っ張ってるんだ・・・

「ふぅふぅ」

直線が終わる。徐々にスピードを落とす。
スピードが落ちるにつれ、安倍の心の中に暗い影が襲ってきた。

チームのために戦ってきた。
そう思いたかっただけなの・・・?
なっちは・・・
「チームを引っ張る」なっちは・・・虚像だった・・・

カーブに入り速度を落とす安倍。
いつしか立ち止まり涙を流していた。
こんなに走っても無駄だということは分かっている。疲れがたまって試合中にいいプレーができるはずもない。
だが、動いていないと不安だった。鈴木あみとの差がますます開くことが・・・
何より自分のせいでチームへ迷惑をかけたのだ。
何もしないでいると仲間として認めてもらえなくなるんじゃないか・・・怖かった。
自分が必死でトレーニングを重ねることが少しでもチームへの償いになれば・・・
110 名前:J1という舞台にて 投稿日:2003/11/29(土) 00:47
その後の試合もほとんど結果は出ず、結局2ndステージは15チーム中13位。
降格は1stステージが好調であったため何とか免れはしたが、チームとしてのまとまりも無くなりつつあった・・・。


しかし、J12年目を迎えるハロプロに転機が訪れる・・・
111 名前:申し子 投稿日:2003/11/29(土) 01:02
彼女を形容する言葉は幾つもある。
天才、サッカーの申し子、日本最高傑作・・・そのどれもが彼女を褒め称えるものだ。
帝京高校では1年で10番をつけレギュラーの座を獲得。
2年からユース代表に招集され、そこでもエースとして君臨する。
高3になってからはワールドユースベスト4、さらにオリンピック代表であるU-22にも選ばれた。
そんな彼女も高校を卒業。
Jの名門はこぞってオファーを出した。
海外のクラブからも多くの誘いを受けた。
しかし、彼女の選択したクラブはJでも弱い部類に入るチームだった。
そのチームはハロプロ。
この決断は多くのサッカー関係者を驚かせた。
それには彼女なりの理由があった。

“弱いチームを自分の力で勝利に導くこと”

勝利・・・、自分の力による勝利こそ彼女にとって最高の媚薬であり、快楽なのだ。
常に高いレベルのチームでプレーしてきた彼女にとって『勝利の探求』こそが目的であり、サッカーを楽しむことなど遠い昔に忘れている。
何故サッカーをしているのか?
それは勝利の快感を得るためであり、大金を得るためであった。
まるでハロプロのチーム方針とは逆の考え方を持ったプレイヤーが入団する。

彼女の名は―――後藤真希
112 名前:マルコ 投稿日:2003/11/29(土) 01:09
>>98
mjさん、どもですぅ。最近更新遅いですが勘弁。
なかなか進まず個人的に苦しいですな。
今や6期メンまでいるというのに、こっちじゃ初期メン揃ってますからねw
113 名前:mj 投稿日:2003/12/12(金) 07:51
忙しそう・・・頑張れ〜
114 名前:ititetu 投稿日:2003/12/14(日) 02:25
おつかれさま〜(^_^)
更新大変でしょうが、ご自分のやりやすいペースで無理なくね(^_-)-☆
115 名前:マルコ 投稿日:2003/12/15(月) 00:16
>mjさん ititetuさん
レスありがと。勉強&バイトでなかなかパソコン見る時間もなかったんですよ・・・
久々に見たらレスが・・・(涙)

ゆったりと更新しますね
116 名前:申し子 投稿日:2003/12/15(月) 00:21
そもそも後藤がハロプロに入団すると決めたのは、物凄く急なことだった。
高校2年生の時からすでにいろいろなチームから誘われていた。
さらに彼女は国内に敵はいないと信じていたため、海外へのチームへの入団希望があった。
取り分けそれはイタリアへのチームへと。
ディフェンスの堅さは世界最高を誇るセリエA。負けないことを第一とするサッカー。

それが彼女の好戦的な本能を刺激した。
ならば、自分がその強固なディフェンスを破ってやろう、と。
117 名前:申し子 投稿日:2003/12/15(月) 00:26
しかし、そんな彼女に衝撃的な出来事が起こる。
高校3年生最後の大会―――全国高校サッカー選手権ベスト8 帝京高校(東京A)vs斎武台高校(埼玉)
試合自体は帝京が3−0と快勝であった。
だが、初出場で全国的に無名の斎武台をベスト8まで引っ張ってきたプレイヤーがいる。
後藤はその試合、そのプレイヤーに完全に押さえ込まれる・・・。
118 名前:申し子 投稿日:2003/12/15(月) 00:44
“ヨシザワ ヒトミ・・・!!”

サッカー人生で初めての屈辱であった。
無名の高校の、しかも無名の選手に・・・。
そのチームはヨシザワというプレイヤーによってベスト8まで駒を進めたらしい。
たった一人でレベルの高い埼玉予選を切り抜け、全国大会でも1回戦、2回戦を突破した。
帝京との3回戦ベスト4をかけた試合では、
ヨシザワも相当後藤に対してライバル心があったのだろう、終始徹底マークだった。
後藤をマークし続けたためヨシザワは攻撃に参加せず、全体のバランスを崩し3失点。
逆に帝京は後藤を抑えられたが3得点。

まったく後藤は何も出来なかった。
ヨシザワのマークを振りほどけなかった。いくらフェイントをかけても、すべて見透かされてるような・・・。
だが、自分が機能していなくてもゲームには勝てた。
この2点が後藤のプライドに触れた。
大会後、自分が大注目されるはずだった。
実際に雑誌などで大きく取り上げられたのは、ヨシザワだった。
自分は全国的にも超名門校。ヨシザワは無名校でベスト8まで勝ち進んできた。

「おもしれぇ」

日本に自分より上のヤツがいるなら、ソイツを潰してから海外だ。
そして――――――


「後藤真希、と言います。ポジションはDF、GK以外ならどこでもできます。
今、ユースとオリンピックの代表です。ヨロシクお願いします」

このハロプロという“弱い”チームを、自分の力で優勝させてやる・・・っ!!
119 名前:ののみ 投稿日:2003/12/17(水) 13:19
はじめまして、結構面白く読ませていただいてます。今後の展開が楽しみです。
頑張ってください!
120 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 15:35
フットサルでは攻めのよっすぃ〜、守りのごっちんって感じだ
ったけど、この小説では逆みたいですね。
この二人が大親友になるのを待っています。
121 名前:マルコ 投稿日:2003/12/19(金) 21:59
>>119 ののみさん
>>120さん 
レスどうもありがとうございます。
やっぱリアクションがあると励みになるなぁ!とても嬉しいっす。
またレスしてくださいね
122 名前:クーマン 投稿日:2003/12/19(金) 22:15

はじめましてぇ〜、読ませていただきましたぁ〜。

たいへんおもしろいっす。辻しゃんが活躍する事を期待しつつ、

続きをまってま〜す!
123 名前:先輩市井と 投稿日:2003/12/19(金) 22:15
後藤入団を祝してハロプロでは歓迎会が開かれた。
後藤のそのキャリアはハロプロの選手にとっては目標であったし、ある種の憧れをもって迎えられた。
サッカーをしている者だれもが夢を見ていただろう。
中学、高校と日の丸を背負いアジアのみならず、世界と戦う・・・。
そして注目を浴びる。将来を期待される。プロから誘われる。
そんなサッカー選手の夢をすべて思い通りに手に入れてきた後藤。

みんなが羨望の眼差しで後藤を見つめていた。
歓迎会も盛り上がり・・・夜は更けていった。
124 名前:先輩市井と 投稿日:2003/12/19(金) 22:22
「あのう・・市井さんですよね?」
「ん?」

歓迎会も終わり、次の日練習もあるので1次会のみで解散した。
その帰り道。
後藤の帰る方向に、市井がいた。
不意に声をかけられた市井は驚き立ち止まった。

「後藤ちゃん・・・!・・家、こっちなの?」
「ハイ」
「そか。じゃ、一緒に帰るか」
「ハイ」

近くでじっくり後藤の顔を見ると、本当にまだ少女の顔だった。
これで本当にユース代表やオリンピック代表なのかと疑わずにはいられなかった。

「・・ねえ、1つ聞きたいことあんだけど」
「え、何ですか?」
「何でハロプロなの?もっと強いトコにも入れたんでしょ?」
「・・・・・・!」
125 名前:先輩市井と 投稿日:2003/12/19(金) 22:30
「まあ、答えにくいか」
「・・・・・・・・・」

ホントのことを言おうかどうか迷っていた。
普段はあまり本音を出さない。
肉親や、本当に信頼できる人にしか心を開かない・・・それが後藤だ。
しかし、この市井という人間を前に後藤は不思議な温かみを感じた。
それはサッカーセンスか、人間性か・・・。
ただ信頼できる、と後藤は思った。ただただそう感じた。

「それはですね・・」

すべてを話した。
ハロプロを弱いチームと言い、それを自分が変える、とも。
先輩の前では失礼だったかもしれない。いや、失礼だろう・・・。
だが、市井は違った。
市井自身も後藤に対し何かを感じてるようだった。
126 名前:先輩市井と 投稿日:2003/12/19(金) 22:42
「へぇ〜・・そうか」
「・・失礼・・・ですよね・・・」
「ん・・アタシはそうは思わないよ」
「え・・・」
「だってアタシも同じようなこと考えてるもん」

「ちょっと・・アタシの話、してもいい?」
「ハイ」

アタシはね、ちっちゃい頃・・・そうだな、幼稚園の頃だったかなー・・・
お父さんとお母さんが離婚しちゃってね。
え?うん、それでお母さんとお姉ちゃんと暮らしてたの。
そりゃあもう泣いた。泣いたね、毎日。これでもかってくらい。
それでさ、体も弱かったし、学校でもいじめられて、性格暗くなっちゃって・・・。
でも中学に入ってからね、サッカー始めたのよ。
東芝EMIの吉田美和さんに憧れてね。
性格暗くて、どーしよーもないアタシだったけどね、ボール持つと変われたんだ。
自分で言うのも何だけど、誰よりも上手く出来たのよ。
・・・だけどさ、何か日本の特徴かもしれないんだけど、“出る杭は打たれる”っての?
ますますいじめられて・・・。生意気だ、とか言われて・・・。
で、そのまま高校も卒業して、ずっと1人でサッカーしてたら監督のつんくさんに誘われて。
ハロプロ入って、人とサッカーする楽しみ始めて感じてね。
ホントに内気で暗かったアタシをサッカーが・・ハロプロが変えてくれたんだ。
だからね・・・
今度は、アタシがハロプロ変えてやろうと思って・・・

なーんて!
127 名前:先輩市井と 投稿日:2003/12/19(金) 22:50
「・・・・・・・・・」
「・・あ!ゴメンね、こんな話」
「いえいえ」

何だろう・・この人・・・
後藤は感じた。はっきりと市井の暖かさを。

この人のこと好きだ・・・。一緒にサッカーしてみたい・・・。

こんなこと思ったのは初めてだった。

「お!そうだ、何て呼べばいいかな?」
「普通に“後藤”でいいっスよ」
「そか」
「“市井さん”でいいですか?」
「ん〜・・“さん”付けは堅苦しいなぁ」
「じゃあ・・・・・・“いちーちゃん”で!」
「プッ!“ちゃん”付けかぁ〜・・・何年ぶりだろ。それでいいよ」
128 名前:新システム 投稿日:2003/12/19(金) 23:03
昨シーズンの3−5−2システムから今シーズンは4−4−2ボックス型へ移行。
DFラインを高く設定し、中盤の石黒・市井・保田、そして後藤のカルテットを軸にプレッシングをかける。
ミドルゾーンをコンパクトにすることにより必然的に相手との距離も縮まりプレスはかけやすいが、その分相手のプレスにもかかりやすくなった。(図1)

         18あさみ     9安倍

            20後藤 8市井

            10石黒 5保田

       11矢口          14アヤカ
            3平家  6中澤

              1飯田    (図1)
129 名前:新システム 投稿日:2003/12/19(金) 23:11
そこで、ボール奪取後は本来サイドバックの矢口とアヤカが大きくラインを上げ、サイドをワイドに使う。
そうすることで相手のプレス網を無効化する狙いがある。
しかし、両サイドバックが上がることで、カウンターを受けた場合そのスペースががら空きになってしまう。
そのためボランチ保田がリベロの位置まで下がり両サイドをケアするのだ。(図2)

         18あさみ    9安倍

           20後藤 8市井
    11矢口               14アヤカ 
             10石黒

       3平家           6中澤
              5保田

              1飯田      (図2)
130 名前:新システム 投稿日:2003/12/19(金) 23:17
だが、何より攻撃に移ったときに相手の激しいプレスを狭いエリアで受けながら
正確にプレーできる選手が必要とされる。
つんくはそれを後藤に期待したのだった。
その要求に後藤は難なく応える。
卓越したテクニック、キープ力、パスセンス・・・圧倒的な存在感だった。新加入の選手のはずだった。
後藤は新しいチームに慣れるとか、そういう次元を超越していた。
U-17、ユースと各世代で世界を経験してきた者はワンランクもツーランクも違っていた。

皆がその能力の高さに驚きを隠せなかった・・・
131 名前:マルコ 投稿日:2003/12/19(金) 23:22
>>122クーマンさん
どもー。実は自分も辻推しですなんですよ〜。
今回はたくさんレスがあって嬉しいっす。そんな嬉しさのあまり更新しました。
クーマンさん、これからも読んでくださいね。そしてレス下さい
132 名前:マルコ 投稿日:2003/12/19(金) 23:32
それとメール欄も見てくださいな。
ちょっとしたお楽しみ企画
133 名前:クーマン 投稿日:2003/12/20(土) 03:10

早速読ましていただきました。続きも期待して待ってます。

実は私も雪版でSILVER MOONってのを書いてます。

よかったら読んで見てください。一応メインは辻ちゃんです。
134 名前:マルコ 投稿日:2003/12/20(土) 11:53
雪板ですね。読んできます〜
135 名前:ぐわじん 投稿日:2003/12/21(日) 21:11
 マルコさん初めまして。私はpro gorosi(ペンネーム間違っていだらゴメン)
時代からの読者です。一時凍結?時は心配しましたがまた再興されるのを待ち望んで
おりました。そして、こちらのほうで復帰されたことを知りまた楽しく愛読さ
せていただいております。これからも体調に十分に考慮されよりよき作品にな
りますように楽しみにしています。不躾ではありますが、挨拶といたします。


136 名前:マルコ 投稿日:2003/12/22(月) 08:48
>>133クーマンさん
読んできましたよ〜。パート2まであるなんて、長い間書かれてるんですね。
まだ途中までしか読んでないですが、冒険モノはわくわくしますね。
早く続きが読みたいです・・・が、学生ゆえテストが近くあまりパソコン触れないんでゆっくり読ませていただきます。
ボクも早く更新できるようにしてパート2とか3とかまでいきたいなぁ〜。
それではこれからもお互いにがんばりましょう。
137 名前:マルコ 投稿日:2003/12/22(月) 08:56
>>135ぐわじんさん
初めまして〜。
前作をご存知ですか・・・けっこう昔から読んで下さってるのですね。ありがとうございます。
前作は4期メン加入時からの連載で、娘。の「楽しさ」を前面に出したモノでした。
しかもほとんど会話だけで進んでたし。
今回はその過去から始め、しかもちょいダークな感じで進めたい・・・とは思っています。
それではまた読んでください(更新は遅いですが)。そして是非感想でもこのメンバーをこうしてくれ、みたいな意見でもいいんでレス下さいな
138 名前:マルコ 投稿日:2003/12/22(月) 09:46
J1
FC.FLaMme:MF広末涼子 DF小雪
尾木.SC:FW華原朋美 MF仲間由紀恵
アバンギャルド.FC:FW小倉優子 FW山川恵里佳 DF藤崎奈々子 GK真鍋かをり
AC.エイジ:FW市川由依
FC.エス・エス・エム:DF池脇千鶴
オスカー.FC:DF菊川令 GK米倉涼子 (MF上戸彩)
SC.スターダスト:FW梅宮アンナ MF松雪泰子 MF常盤貴子 DF中谷美樹
FC.テンカラット:MF田中麗奈
ホリプロ.FC:FWゆりん MF和田アキコ MF平山あや MF優香 MFあびる優 MF新山千春 MF深田恭子 DFユン・ソナ DF坂井彩名
ソニー.FC:FW鈴木あみ DF中島美嘉 GK元ちとせ
SC.東芝EMI:FW椎名林檎 MF鬼塚ちひろ MF松任谷由実 MF矢井田瞳 GK大黒摩鬼
FC.イエローキャブ:FWMEGUMI FW山田まりあ MF佐藤江梨子 DF根元はるみ
エイベックス.AC:FW浜崎あゆみ FW今井絵里子 FW安室奈美恵 MFhitomi MF持田香織 MF島袋寛子 DF相川七瀬 DF上原多香子 DF新垣仁絵 GKケイコ (MFBoA)
CX.FC:FW高島彩 FW中野美奈子 MF佐々木恭子 MF千野志麻 MF滝川クリステル DF内田恭子 DF政井マヤ DF中村仁美 GK菊間千乃  

こんなもんか?何かあればレス下さい。
自分も何か思いつき次第追加・変更していきます
139 名前:センス 投稿日:2003/12/23(火) 08:39
「ねえ、いちーちゃん」
「は?」
「後藤、ハロプロに入ったの失敗だったかも」
「おいおい!何つーこと言うのよう」
「そうじゃなくてさ」
「あ?」
「後藤はさ、自分の力でハロプロを優勝させてやる、って思ってたし、ハロプロは弱いと思ってたんだ」
「そう言ってたね」
「うん。でもさ、みんな十分上手いじゃん」
「そお?」
「何で昨シーズンあんなに成績悪かったの?意味わかんない」
「そ・・そこまで言うか?」
「うん。それにいちーちゃんめちゃくちゃ上手いね」
「へへへ」
「いちおさ、ユースとか五輪代表とかでいろんなヤツ見てきたけど」
「・・・・・・・・・・」
「いちーちゃんは何で代表に入らないんだろ?って思うくらいだもん」
「オリンピック代表か・・・」
「今20歳でしょ?全然入れるじゃん」
「い・・いや〜、アタシなんか・・・」
「えー!絶対チームの中心になれるって!!」
140 名前:センス 投稿日:2003/12/23(火) 08:49
実際このときのハロプロに欠点らしい欠点はそう見つからなかった。
中澤・平家を中心とする矢口・アヤカのサイドバックを加えたDFラインは十分な守備力だったし、
中盤は言うまでもなく一定レベル以上。
唯一、不調を引きずっているFW安倍もハーフがボールをキープできるため裏に飛び出せば十分チャンスに絡めた。
一度ソニーとの一戦で否定された安倍のプレースタイルが、後藤加入で再び使えるようになったのだ。

ただ・・・1つだけ不安があるとすれば後藤と他のメンバーとの関係である。
市井以外と話すとすればキャプテンの中澤くらいである。
そして他のメンバーも後藤と話そうとしないのだ。
やはり、ずっと日の光を浴びてきた後藤と、いわば“落ちこぼれ”のメンバー(才能はあるにしても)の間に壁があるようだった。
それに加え、後藤の態度だ。
周りがミスをしたり、自分の要求通りの動きをしなければ先輩であれ容赦はしない。
そして普段の冷めた後藤の態度が「周りを見下している」と受け取られてもおかしくなかった。

後藤加入で確かに周りのプレイヤーが生き、チームとしての実力は上がった。
が、新たに火種が持ち込まれた・・・。


そんな状態でハロプロJ1、2シーズン目は開幕した―――
141 名前:デビュー 投稿日:2003/12/23(火) 08:57
ハロプロJ1、2シーズン目第1節 ハロプロvsFCテンカラット。
右ウイングに田中麗奈という日本代表クラスのプレイヤーを擁するチームである。
鋭いドリブルと正確なセンタリングでチームの攻撃の鍵を握る田中と、それにマッチアップするハロプロ矢口との勝負が大きく戦局を左右しそうだ。

この日、後藤はベンチスタートだった。明らかに不服そうだったが・・・。
前半も中盤に差し掛かっていた。
(つまんね・・・。・・・まずい眠くなってきた・・・・・・)
ベンチなんて何年ぶりだろう?
後藤はサッカーを始めてずっと試合に出ていた。試合に出れなかったことなんてケガをしていたとき以外有り得なかった。
いつしか後藤は、眠っていた・・・・・・。
142 名前:デビュー 投稿日:2003/12/23(火) 09:05
もっともそんな後藤はよそに、決して楽な試合ではなかった。
この試合の目玉、矢口×田中。
スタミナ、スピードで上回る矢口だったが、田中のテクニック、経験に翻弄されていた。
何度も、何度も抜かれた。

そして前半32分―――。
田中麗奈がコーナーフラッグ付近でボールをキープ。マークするのはもちろん矢口だ。
(ゼッテェ抜かせねぇ・・・!)
ふいに田中が左アウトサイドでボールに2度触れ、エンドラインから離れる。
後ろにフォローに来た選手がいた。
そして3度目、ボールに触れる・・・その瞬間、ボールをまたぐ。
「!」(・・ちっ!逆か!!行かすかいっ!!)
田中、そしてそれに続いて矢口も急激な方向転換。
「甘いっ!」
矢口が、田中のドリブルのコースへ足を伸ばしたとき、ボールは矢口の股間を抜けていった。
「・・・・・・!!」
完全に矢口を抜き去った田中は落ち着いてセンタリング。
どんぴしゃでFWのヘディングを導き、ゴールネットを揺らしたのだった。
143 名前:デビュー 投稿日:2003/12/23(火) 09:13
「・・藤ッ!後藤ッ!!」
「・・・!あいっ!?!」
その得点の直後、後藤がつんくに起こされた。
指揮官もこの展開にとうとう痺れを切らしたらしい。
「出番や。行ってこい」
「ふぁ〜い」
かくして、後藤のプロデビューとなった」

「ご・・ごめん、裕ちゃん。オイラがもっときっちりディフェンスしてりゃ・・・」
「気にすんな、矢口。まだ前半やで?これからこれから!」

その時、主審が笛を吹いた。選手交代だ。
ハロプロはりんねを下げ、後藤を投入する。
相手チームのみならず、J1、J2、後藤獲得を目論んだ関係者、そして何より日本中が彼女がどんなプレーをするのか、ということに注目した。

市井:「後藤ッ!アンタ、さっきベンチで寝てなかった!?」
後藤:「へへへ・・ちょっとね。眠たくなっちゃって・・・」
「バカッ!1点ビハインドだし、ずっとペース握られてんだからねっ!」
「そうみたいねぇ。ま、すぐ逆転しちゃうからさ、そう怒んないでよ」
「な・・・」
144 名前:デビュー 投稿日:2003/12/23(火) 09:24
実際、後藤には点を取る自信・・いや確信があったのだ。
相手ディフェンスラインの弱点、状況に応じたディフェンスラインの位置の高さ・・・、それらを完全に把握していた。
世界を相手に幾度も苦渋を舐めてきた後藤は、勝利のために何をすればいいのか理解している。
勝つために必要な自分の役割、ポジショニング・・・。
監督の指示に加え、自らの判断においてポジション、プレーを変える。
元来の日本人選手というものは、監督やチームの決め事はきちんと100%こなせるのだが、
それ以上の、つまりゲーム中に臨機応変にプレーを変えることが出来ないプレイヤーがほとんどだ。
後藤は違う。
チームの戦術、監督の指示が機能しないと見れば、声を出し、チームを動かしていく。

今回、つんくからの指示は・・・“自由にやってみ”
それだけだった。
ピッチに入るや否や後藤が他の中盤の3人と矢口を集めた。

後藤:「んと、とりあえず田中さんにけっこうやられてるみたいだから」
矢口:「ム」
後藤:「中盤、ボックス型からダイヤモンド型にしますか?」
石黒:「は?」
後藤:「あ〜・・でもちょいとダイヤモンドはキツいかも。ならあやっぺ、圭ちゃんでのダブルボランチはそのままで」
市井:「・・・・・・・・・」
後藤:「いちーちゃんが1人でトップ下に入って、後藤が左サイドに張るからさ。そしたら・・」
145 名前:デビュー 投稿日:2003/12/23(火) 09:30
矢口:「ちょい待てや!いいのかよ、勝手に」
後藤:「はい〜?このままじゃ負けますよ?やぐっつぁんのサイドから突破されて」
矢口:「・・ぐ、何だとテメ」
市井:「矢口、抑えて」
後藤:「まあ、任せてくれればいいから。んじゃ」

そう言い残し、今度は2トップの元へ向かった。

矢口:「・・ちっ、何だよアイツ」
保田:「まったくだよ。生意気なヤローだ」
矢口:「やっぱずっと注目されてきたヤツは違うってか?」
市井:「ちょ・・やめなよ。後藤は後藤なりに考えてサッカーやってんだよ」
保田:「あらあら。さやかは後藤の肩持ちますか?・・・・・・あ、キックオフだ。行くか」
市井:「・・・・・・・・・」
146 名前:クーマン 投稿日:2003/12/24(水) 22:48

読ませていただきました。試合がどう動くのか楽しみです。

それに、私のも読んでくれたみたいでありがとうです。

つづきを期待して待ってます。
147 名前:ののみ 投稿日:2003/12/25(木) 14:54
私もののたん推しの一人です。ののたんの活躍が今から楽しみなので
期待していますよっ。
試合のほうも個人が個性豊かに書かれているので、面白いです。
続き、期待していますね。頑張ってください。
148 名前:ititetu 投稿日:2004/01/02(金) 09:44
A HAPPY NEW YEAR!
BEST WISHES FOR YOUR
WONDERFUL YEAR!
149 名前:マルコ 投稿日:2004/01/03(土) 18:22
みなさま、明けましておめでとうございます。

>>146 クーマンさん
>>147 ののみさん
>>148 ititetuさん
2004年になりましたね。
ボクの大学は即効で後期のテストがあるので、慌しい年明けとなりました。
テストが終わればどしどし更新していこうと思いますのでそれまでまったり待ってて下さい。
今年もよろしくお願いします〜
150 名前:クーマン 投稿日:2004/01/04(日) 23:15

ガンバッテクダサーイ♪

マッテマース。
151 名前:ののみ 投稿日:2004/01/07(水) 13:48
こちらこそ、よろしくお願いします。テスト頑張ってください!
楽しみに待ってますので。。。。
152 名前:Y_S_A_S 投稿日:2004/01/10(土) 17:45
久しぶりに掲示板を見てみたらこんな所にいたなんて...
proさん久しぶりです。
これからも期待しています!!
早速お気に入りに登録
153 名前:mj027 投稿日:2004/01/10(土) 22:39
あけましておめでとうございます
今年も頑張ってください!
応援してますよ〜
154 名前:maru 投稿日:2004/01/13(火) 15:50
おお、ここでやってましたか。
yahooの時から読んでます。
がんばってください。
155 名前:マルコ 投稿日:2004/01/14(水) 05:24
>150 クーマンさん
>151 ののみさん
>153 mjさん
テスト、一段落つきました。生還ですw
単位は確保したはずだ。
>152Y_S_A_Sさん
お久しぶりです。今回もよろしくお願いしますね
>154 maruさん
どうもレスありがとうございます〜。
これからもよろしくお願いしますね。
156 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 05:33
自分たちのポジションに散る保田と矢口を難しい顔で見送る市井。
確かに後藤の言い方は彼女たちを腹立たせるものだった。それは認める。
・・・しかし。
市井は後藤の考えの意味をしっかり理解していた。
そうすれば試合の流れは変わるだろう、と。ただ何より、市井には後藤の言ったことが、すでに自身の頭に浮かんでいたのだ

今後このようなことが市井にたびたび起こった。
ずっとエリートだった後藤と同じことを考えてサッカーをしている、ということが市井の自信になった。
その自身は引っ込み思案だった市井を積極的に変えていくことになるのだった・・・。
157 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 05:43
キックオフ後、ハロプロはハーフを経由しディフェンス平家へ。
平家の蹴ったFWへのロングボールは相手にヘディングで撥ね返される。
そのボールは後藤のサイドへ転がっていた。
それを追う後藤だったが、物凄いスピードで田中がそのルーズボールを取る。
そのまま一気に後藤の脇をドリブルで抜いていく。

(へえ・・すげえスピード。しかも、そのスピードを維持しながらのドリブル・・・なかなかやるじゃん)

だが、この狭いハロプロのミドルゾーンでドリブルをすると・・・
「カバーッ!」
後藤が叫ぶ。
1対1で抜かれようが、最終的に組織でボールを奪えばなんら問題は無い。
その意味で後藤はわざと抜かれた。
こんなスピードのあるプレイヤーの相手をするのに、わざわざ攻撃に使いたいスタミナを消費するのはもったいない。

田中が目の前を通り過ぎたときには、後藤はすぐにパスをもらえる位置に移動していた。
センターサークルの中まで、ピッチの中央へしぼる。
158 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 05:50
「!」
後藤の後ろに位置していた左サイドバック矢口。
後藤を抜き切った田中だったが、この狭いスペースでのドリブルにおいて、抜いた相手のカバーの選手の存在を忘れてはならない。

「こっち!ダイレクトで出してっ!!」
田中も“しまった”という顔をした。
さらにスピードを上げ追いかけたが、ボールに先に触れたのはハロプロ左サイド矢口だった。
後藤がパスを要求していた。
確かに気に食わないやつであるが、矢口にとってこの状況では後藤にパスせざるを得なかった。
もの凄いスピードで突っ込んでくる日本代表田中の迫力に、ボールをキープすることは不可能だと瞬時に判断したからだ。
159 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 05:58
後藤はボールを受けるとすぐにバックパス。
そしてすぐさま反転し、田中が上がった裏のスペースへ猛ダッシュ。
まったく抜け目の無い動き出しだった。
「ロングボール、カモ〜ン!」
後藤がボールを預けた相手はキャプテン中澤。
ワンタラップし、ルックアップした中澤は、後藤とその前に空いたスペースをしっかり捉えていた。
「任しぃなっ!」
右足インステップで鋭く強いボールを蹴りだす。

“あちゃあ”中澤が小さく嘆く。
少々ボールが大きすぎた。せっかくのチャンスなのに、このままラインを割ってしまう、そう思った。
だが、中澤の耳に飛び込んできた声はそんな心配を吹き飛ばすものだった。
「ナイスパァース!」
ダッシュしながら右足で踏み切り、思い切りジャンプする後藤。
両手を軽く広げ、左鎖骨の下でトラップ。そのトラップも自らのスピードを落とさないようコントロールされていた。
160 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:05
一気に相手左サイドに侵入した後藤。
中を見ると、安倍とあさみがスペースへ飛び出すタイミングを見計らっていたが、
後藤は中ではなくマイナスに鋭いボールを折り返した。
ペナルティエリアのすぐ外で市井がフリーで待っていたからだ。

速く鋭い、そして市井の手前でバウンドする、とても合わせ辛いボールだった。
だが、ここで市井はキックセンスを魅せつける。
左足でボールの芯を完璧にとらえた。
「・・いっけ!!」
惜しくもシュートはGKの正面に飛んでしまった。
しかし、そのシュートは糸を引くような、そう海外のサッカーでよく見るような“伸びていく”シュートだった。
そしてその強力な威力はGKのキャッチング能力の範疇を超えていた。
こぼれたボールはDFがクリアした。
161 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:15
「チッ」
舌打ちしながら両手をパシッと叩く。
市井は悔しそうにゴールを見つめていた。
「どんまいっ」と、後藤が声をかけ背中を叩く。
「お、後藤・・・。わりいな、せっかくのチャンスを・・・」
「え?何謝ってんの?」
「だってミスったじゃん、シュート」
「い・・いや〜・・・・・・あんなムズいパスをダイレクトでジャストミートするだけですごいって」
「そうなの?普通だよ」
「・・・普通っすか?やっぱいちーちゃん、相当センスありだね」

セ・・センスあんのかなぁ〜・・・・・・
元の自分のポジションに戻る後藤の背中をぼんやり眺めながら市井は考えていた。
今までそんなこと自分で思ったことも、まして周りの人から言われたことは無かった。
ただサッカーが好きだった・・・。
しかし、そういう言われ方に悪い気がするはずもない。むしろ嬉しかった。
「・・そんなこと言っちゃうと調子こいちゃうよ、後藤ちゃんよう」
162 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:25
前半もすでに45分になろうとしていた。第4審判がロスタイムを表示する。ロスタイムは2分。

後藤投入から息を吹き返したようにリズムに乗るハロプロ。
テンカラットは攻撃のキーマン田中麗奈のいる左サイドを後藤が牽制し攻撃が組み立たず、徐々にペースをハロプロへ受け渡してしまった。
逆にハロプロは後藤が中央から左サイドを走り回りチャンスを作り出す。
しかし、テンカラットとてこのまま引き下がりはしない。
何しろ後藤はJで最も注目を浴びるルーキーだ。すぐにマークが2人つく。

(さっきから後藤のマークにちょこまかと2人ついてますが・・付ききれるかなぁ〜?)
初めて後藤とプレーしたハロプロのメンバーと同様に、今ハロプロの相手として戦っているテンカラットの選手もそのプレーに脅威を感じていた。
まだ彼女がピッチに立ってから10数分しか経過していない。
だが、そのたった10数分の間にテンカラットが受けた衝撃は今までに感じたことの無いものだった。
パス、トラップ、ドリブル、体の使い方、そして何より他を圧倒するカリスマ性・・・。
まだ18歳の高校を卒業したばかりの選手に何故こんな力が備わっているのか。
価値にこだわり続けてきたそのサッカー人生がそれを可能にしているのか・・・。
すでに彼女はこの試合の“ルール”となっていた・・・。
163 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:29
(・・ロスタイム2分か)
ゴール裏にある電光掲示板に目をやるとすでに45分になっていた。
1点を追う展開において、追いついて後半に入るのとそうでないのとではチームの士気がまるで違う。
“ここ、勝負どころだね・・・”後藤がつぶやく。
過去のスーパースターが持っているもの・・・それは力を入れるところ抜くところを使い分ける力。
後藤は持っている。
164 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:38
「圭ちゃん!パスッ!!」
ふいに走る方向を変えパスをもらえる位置へ。
しかし、2人のマークも瞬時にそれに反応し後藤を放しはしない。
(誰がお前なんかにパスやるかよ・・・!)
保田から出されたパスは後藤ではなく矢口へ出された。
(才能はあるんだろうが、先輩に対しての態度がなっとらん!)
保田は思っていた。後藤がピッチに入ってきたときの矢口への態度。
同期の友へ・・・あのような口のきき方、許せなかった。

後藤は今度は矢口からパスをもらおうと移動する。
が、矢口も保田と同じ気持ち、いやそれ以上だった。
「やぐっつぁんっ!!出せっ!!」
矢口に後藤へパスを出す気は毛頭ない。
それに2人のマークが付いている選手にパスを出すなんて・・・。
そこまでリスクを冒してまでも後藤に頼らなければならないというのは、自身のプライドにも関わる問題だった。
(後藤に2人もマークがついてるってこたぁ、誰かが空いてんだろっ!!)「・・さやかっ!!」
ボールはセンターライン手前にいた市井に出された。
ワントラップして安倍へボールを当てる。
ダイレクトで落とされたパスに反応するのは再び市井。そのままドリブルで攻め上がる。
2人のマークを連れた後藤も市井の攻め上がりに合わせ、市井と平行に走っていた。
165 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:44
「いちーちゃんっ!」
その声に市井が左を見る。後藤と目が合う。
“まだ・・だね?”―――アイコンタクト。
後藤が急に市井から離れるように進路を変える。
トップスピードで走っていたためマークの2人はその動きに相当慌てた。
何とか反応したのだが、反応して「しまった」ときには、すでに後藤は先ほどまで走っていたコースへ戻っていた。
巧くフリーになった後藤。

“・・今ッ!!”

後藤がフリーになったのを市井は見逃さない。
一瞬―――
その瞬間を逃さないよう、市井のパスはかなりのスピードを持っていた。しかし、それでいてよくコントロールされていた。
166 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:51
左足でトラップする後藤。
そのトラップでシュートモーションに入る。完璧なボールコントロールだった。
それゆえ、マークの2人、他のDF、GKはその動きに釣られた・・・。
インパクトの瞬間、ボールを横にずらし、シュートコースを広げる。
ちらりとゴールのほうに目をやる。獲物をしっかりと捕らえる・・獣の目だ。
そしてボールを良く見、その獲物の急所にピンポイントにシュートを打ち込む・・・。
完全にタイミングをずらされGKは動くことが出来ず、ただネットが揺れてるのを見つめていた。

シュートに至るまでの一連のプレー。
その美しく滑らかのプレーに誰もが息を呑んだ・・・。


ここで前半終了のホイッスルが鳴らされた。
167 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 15:57
「よし!最高の終わり方やったでっ!!」
ロッカールーム。
メンバーはそれぞれ自分のロッカーの元で座り汗をぬぐったり、他の選手と何か会話している。
つんくが選手をねぎらう。
ロッカールーム内のテンションは高い。
その中において冷めたプレイヤーがいる。
「つんくさん、いいんすか?」
「ん?何だ、矢口」
「ポジションのことっすよ!」
「そうすよ!練習と違うシステムで勝手に試合やって結果的に1点取れたからいいようなもんすけど」
「混乱しちゃいますって!」
保田も矢口に加勢する。つんくは困った表情だ。
あんなぁ・・、とつんくが口を開いたときだった。
168 名前:RULE 投稿日:2004/01/14(水) 16:07
一度に脱いだスパイクを再び履きなおしながら後藤が口を開く。
「こっちは明らかに左サイドを破られてた。日本代表の田中さんをケアするためにボランチのあやっぺがやぐっつぁんのフォローに行くだけじゃ、田中さんに高い位置をキープされて・・」
「後藤ッ!テメ、いい加減にしろよっ!!」
矢口が立ち上がり怒鳴った。
一瞬でロッカールームは静寂に包まれる。ピン、と空気が緊張で張り詰める。
「オイラが抜かれてる、なんて分かってんだよっ!それをゴチャゴチャ言うなっ!」
ますます語気を強める矢口。そんな声を荒げる矢口をまったく意に介さない後藤。
顔色一つ変えず、いや少しあきれたように笑っていたかもしれない。しずかにスパイクのヒモを結んでいた。
「お前・・んだよ?その態度はっ!?」
「矢口・・やめな」
市井が止めに入る。
「ユース?五輪代表ッ!?それがそんなに偉いのかよっ!?!ああ!?」
「矢口ッ!」
「サッカーやってることに変わりはないだろうがっ!!」
ほとんど後藤に殴りかかりそうな矢口を市井が必死に押さえつけていた。
「分かったから!矢口・・・!!落ち着いて」
「・・さやか」
「つんくさん、指示出して下さい。それなら矢口も・・・いいでしょ?」
169 名前:ののみ 投稿日:2004/01/20(火) 11:26
復活ですね!ますます、目が離せなくなりました。がんばってくださ〜い!
170 名前:マルコ 投稿日:2004/01/30(金) 13:04
>>169 レスどうもっす。がんばります〜
171 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:09
その後、つんくから改めて後半に向けての指示が出される。
・・とは言ってもほとんど前半、後藤が修正したものと変わりなかったのだが。
何とかその場は収まり後半へとチームは向かった。

「・・後藤ッ!ちょいと」
「何よ?いちーちゃん」
「アンタねぇ〜・・もうちょっとうまくできないの?」
「何が?」
「矢口のことだよっ!サッカーは1人、2人でやるもんじゃないっしょ!?11人の力で勝つもんでしょーが」
「・・・・・・・・・」
「特に矢口は・・チームの中でかなりキーになってんだから」
「ハイハイ・・分かったよ。いちーちゃんから謝っといて、やぐっつぁんに」
「う・・うん」
「じゃ、行きますか!後半」
172 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:17
後半が始まる。
前半から引き続き後藤の絶妙なポジショニングで田中麗奈に仕事をさせない。
そしてペースを握ったのもハロプロだ。

飯田のゴールキックを空いて最終ラインがはね返したボールを後藤が相手MFとの競り合いに勝ち、ボールをキープ。
激しく当たられても倒れない後藤。
プロを目指すにあたって毎日筋力トレーニングを怠らなかった成果だった。
高校時代から気づいていた。
プロと自分の差・・・。それはテクニックではなく、フィジカルだと。

「後藤ッ!パス出せっ!!」
市井がタックルを受ける後藤を見かねフォローに来た。
が、後藤はパスを出さない。
加えて前へ出ようとする様子も見えない。
市井には、後藤が自ら囮になり“ある人”を誘い出しているように見えた。
173 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:26
(・・動いたっ!)
“ある人”が動き出した。“ある人”とは・・・そう、相手右MF田中麗奈だ。
田中が動くことでそのスペースがポッカリ空いた。
後藤はそこへ文字通りのキラーパスを出す予定だった。
だが、誰も・・というよりそのサイドのはずの矢口が走っていなかった・・・。
(チィ!走んねえのかよっ!?)
「矢口!走らんかいっ!!」
「ダッシュ!!」
「ちぇ・・分かったよ」
市井や中澤に促され、矢口がトップスピードでサイドを駆け上がる。

相手の必死のチェックの中、左サイド深くへスルーパスが出された。
矢口はどフリーでDFラインの裏へ抜け出す。
FW安倍、あさみもペナルティエリア内へ入り飛び出すタイミングをうかがっている。
市井も前へ上がっていた。
そして、パスを出した後藤もフォローに走った。
ただ、もう自分が加わらずとも得点になるだろうと思っていた。
相手を引き付けてのパス。
エリア内の人数は5分だ。
さらにセンタリングを上げる矢口はフリー。
(・・こんなセンタリングの練習みたいな状況で決まらないはずはないっしょ)
と思いつつもいちお後藤も上がっていく。
174 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:35
だが、後藤の楽観的な考えは見事に打ち砕かれた。
矢口のセンタリングはミスキックだった。
「し・・しまった・・・!」
中途半端なコースに飛んだボールはニアに入ったあさみの頭上を越え、ゴールキーパーがパンチングで逃れる。
だが、キーパーも運がなかったようだ。
パンチングでクリアされたボールはゆっくりと上がってきた後藤のもとへ。

(・・あんなフリーの状態で、そんなキック精度かよ)
落胆した表情の後藤だったが、見れば自分のもとへボールが飛んできていた。
(あらあら、やっぱボールもちゃんと分かってるんだね)
胸でワントラップ。ちらりとゴールに目をやる。
前へ出てパンチングで逃れたため少しゴールマウスからキーパーが離れているのを後藤は見逃さない。
(しっかり蹴れる人に蹴ってもらわないと悲しいもんね)
迷うことなくループ気味に狙う。

シュートを放った後、ボールの軌道を見つめながらガッツポーズをすでに作っていた。
GKも下がりながら必死のジャンプ。
伸ばした手の先をギリギリかすめ・・・、ゴールネットを揺らした。
175 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:49
「うしっ!逆転ッ!!」
逆転ゴールを決めた後藤を中心に輪が出来る。
DFラインの中澤や平家、そしてGK飯田らはその場でサポーターにガッツポース。
さらに激しい応援を煽る。

「ナイッシュ!後藤」
そう言いながら後藤に抱きつく市井。
「なかなかいいシュートだったしょ?」
「いや、完璧だって!」
その時市井は1人うつむき、この輪に加わらないプレイヤーを見つけた。

矢口―――・・・

1人腰に手を当て、足元を見つめていた。
(くそ・・・)
「矢口ッ」
「お・・圭ちゃん」
少し笑ってみたものの、矢口に表情はすぐに曇った。
何せどフリーの状態でのセンタリングで、満足に見方に合わせることができなかったのだ。
しかも、そのプレーは後藤のパスで始まり、自分のミスを帳消しにしたのも・・・後藤だった。
「しょうがないよ、矢口。だったアンタ、ホントは右利・・」
「それは言うな!両足使える選手なんて普通にいるんだ」
「矢口・・・」
「オイラの練習不足なんだよ・・・」

市井がその様子を見つめていた。
なんだか急に自分の立場が妙なものになっていることに気づいた。
後藤と、反後藤の保田・矢口との板ばさみ・・・。
保田・矢口とは同期であって、かけがえのない仲間である。
後藤とは・・・後藤とは、今まで抑えていた自分が出せる気がしていた。
自分はどーすれば・・・・・・・・・
「いちーちゃん!」
「・・ん!?!」
「何ボォ〜っとしてんの?」
お前らのことで悩んでんだよっ!・・・とつっこみたかったが、それは心の中に閉まった。
「い・・いや、ちょっとね」
「ま、いーや。ね、やぐっつぁんって右利きでしょ?ホントは」
「・・そうだよ。分かっちゃった?」
「そりゃあね。あんなフリーの状態で利き足であの精度じゃ・・・」
「確かにな。・・・あんま矢口のこと嫌いになるなよ」
「分かってるって」
176 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 13:55
ゲームが再開される。
矢口はまだ1人靄の中にいた。
もともとボランチの矢口。
加入してからずっとボランチとしてプレーしていた。
だが、石黒の壁は厚かった。出場機会は巡ってこなかった。
一方で、同期の保田・市井はデビューを果たしていった。
145cmの身長ゆえフィジカルの足りない矢口にボランチはプロにおいて酷なものであった。
そこで矢口は決心した。そのスピードを生かしてのウイングへの転向。
右サイドはアヤカががっちりとレギュラーを掴んでいた。
左サイドは・・・固定された選手がいなかったのだ。
もう迷っている暇はなかった。矢口は焦っていた。
保田や市井に置いていかれたくなかった。
もともと苦手な左足のキックの練習に没頭したが、まだまだ安定性は乏しいのだ。
177 名前:RULE 投稿日:2004/01/30(金) 14:06
ハロプロがミドルゾーンでパスを回す。
右サイドのアヤカから石黒・市井・後藤とつなぎ、矢口へとボールが渡る。
「・・・ッ!」
後藤から矢口へのパス。
わざわざ右足を狙ったものだった。
「く・・・っ!!」
後藤は気を使ったつもりであったが、これは矢口のプライドに触れた。

その後、試合は後半38分にハロプロが1点を奪った。
DFラインからボールを回し、右サイドのアヤカがハーフラインを越えドリブル。
相手最終ラインに入った市井へグラウンダーのパス。
そのパスを市井がスルー。後ろにいた後藤がディフェンスの裏へパスを出す。
スルーした勢いで市井が裏へ飛び出したのだ。ピッタリのタイミングだった。
GKを釣り出した市井は中に折り返し、そのボールを後藤が難なくゴールへ突き刺しダメ押し。

ハロプロのJ1第一節は結局後藤のハットトリック、市井の2アシストで3−1と勝利。
結果だけ見れば幸先の良いスタートであるが、後藤と保田・矢口の確執が明らかなものになったしまった。
178 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 03:45
レコバ?
179 名前:K 投稿日:2004/02/11(水) 23:50
続きが読みたいよぅ(>_<)
180 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 21:20
181 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 23:02
うむ
182 名前:マルコ 投稿日:2004/02/13(金) 00:49
>>178
>>179
>>180
>>181
どうもどうも。もう2週間くらいほったらかしでしたね。すんません。
ちょいとバイトが忙しかったり、今フットサルやってんですけど、その練習でいっぱいいっぱいだったりと、
まあ、多忙な日々だったわけですよ。
中断はしませんから。

んで>>178さんのレコバって?
183 名前:矢口の決心 投稿日:2004/02/13(金) 01:02
8月29日月曜日―――・・・
AM7:30 ハロプロのクラブハウスに矢口はいた。
今シーズンからJリーグは2ステージ制を廃止し、ヨーロッパなどのリーグ日程を基本とした日程となったのだ。
この2日前、ハロプロは第1節に3−1の快勝を収めた。
が、1人煮え切らないプレイヤーがいる。MF矢口真里。
日曜は試合の翌日ということもありオフであった。
その日矢口は考えていた。
後藤について、そして自らの左足のキック精度について・・・。
ボランチというポジションを放棄して、足の速さのみで挑んだ左ウイング。
自分はこうも左足が使えなかったのか・・・。その現実に矢口は絶句した。
今までそこまで感じたことはなかった。
しかし、今シーズンから後藤というチームの中心としてゲームを組み立てるプレイヤーがいることで、
これまでのただサイドに放り込み、いわば“ドサクサ”に紛れてセンタリングを上げる、ということではなくきちんとした計算の上でサイドにボールを流し込むサッカーになった。
矢口は左サイド深くまで攻め上がり、フリーでセンタリングを上げる機会が増えた。
『フリー』
言い逃れの出来ない状態に置かれた矢口に、相当なプレッシャーが圧し掛かっていた。
184 名前:矢口の決心 投稿日:2004/02/13(金) 01:11
矢口は後藤が嫌いだ。
だが、この“嫌い”という感情は当事者同士の実力が対等であってはじめて成り立つものだ。
そうでなければ、ただの“ひがみ”だ。
矢口は現在明らかに後藤に“矢口はサイド『だから仕方なく』使われている”状態である。
まずその立場を逆転させなければ、と矢口は思った。
そのためには、何より練習するしかない。
考えて巧くなるならこんなに悩む必要はない。
行動しないヤツは変われない。矢口は信じている。
これまでそうやって生きてきた。
プロになりたくて、サッカーで食べていきたくて数多くのプロテストを受けてきたのだ。
“自分を信じる”・・・これこそ矢口の一番の才能である。
185 名前:矢口の決心 投稿日:2004/02/13(金) 01:34
あー・・夏の朝はすがすぃな

今日も天気は快晴。雲一つない。
8月も終わりに差しかかっているが、まだセミの声が聞こえた。
「さて、と・・・」
ジャージに着替えるためロッカールームへ入る。
先週の最後の練習が終わった後のロッカールームとは比べ物にならないくらいキレイに片付いている。
誰がどこのか、なんて決められていないが、みんな自分自身の場所を自分自身で決めていた。
入ってすぐのところはキャプテン中澤、そして平家、保田と続き、矢口の場所だ。
ウォークマンを外しながらまっすぐ自らの場所へ向かう。
(あれ・・・?)
矢口の席の向かい側―市井の席の隣―にいつから置いてあるのか誰かの私服が雑に置いてあった。
イヤな予感がした・・・

着替え終わりピッチへ近づく・・・
ボールを蹴る音が聞こえる。矢口は恐る恐る窓からコートを覗き込んだ。

・・・!ご・・後藤・・・ッ!!

カラーコーンを1列に並べ、そこをジグザグにドリブル。
まったく無駄のない動き。
そして今度はワンフェイントを加えコーンの間をドリブルする。
鋭い・・・

アイツ・・あれだけ巧いのにまだ練習かよ
・・・・・・!!!!!
はっ!?いやいや、まだアイツのことは認めちゃいねえ!!

後藤のその姿を見て矢口の闘志にますます火がついた。
矢口は昔のメインコートへ向かった。
このコートはハロプロが結成されたときから使われているものだ。
といってもJ1に昇格し、もう1面コートを増設してからはケガやコンディション不良のプレイヤーが別メニューをこなすコートとして使われているのだ。
あまり整備が行き届いていないのか、ところどころ芝がはげている。
「っし!やるかっ!!」
186 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/13(金) 02:02
9月4日(日)vsFCスターダスト 1−1引き分け 得点者:あさみ(後藤)
  11日(日)vsイエローキャブFC 0−1負け
  18日(日)vsFCアバンギャルド 2−1勝ち 得点者:市井 保田(後藤)
  21日(水)vsFCプロダクション尾木 1−0勝ち 得点者:後藤

ここまで5節終わってハロプロは3勝1分1敗とまずまずの結果を残していた。
第5節では今期初の完封試合。DF陣の調子も上がってきている。
しかし、第6節ホリプロ戦を前に後藤がオリンピック代表の韓国との試合に向けて召集された。
今シーズン、ハロプロは安定した試合を続けている。
3節に1度負けをきしたが、それも不運なゴールであっただけだ。
後藤に相手マークが集中することによりハロプロのほかの選手が比較的自由に動ける。
さらにそんなマークをここぞというときに必ず振りほどく後藤がチームを引っ張っていた。
この好調ハロプロの次の相手は強敵ホリプロ。
まだまだ序盤ではあるが、今の勢いを大事にしたいハロプロにとってはぜひとも勝ちたい試合である。
187 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/13(金) 02:19
9月25日(日)vsホリプロ――
この試合、ハロプロは昨シーズンまで採用していた3−5−2システムでホリプロに挑んだ。
トップ下に市井が入り、それまで後藤がやっていた仕事を任されていた。
現在勢いがあるハロプロであったが実際試合が始まると劣勢を強いられる。
MF和田アキ子、平山あや、優香、深田恭子ら実力者に主導権を握られていた。
さらにホリプロはロングボールを多用しハロプロのDFラインを下げさせることで、全体のゾーンを間延びさせハロプロのプレッシャーを無効化する。
ゾーンが広がりきったハロプロはプレイヤー1人1人の距離が離れてしまい連動したプレスがかけられない。
ホリプロはロングボールを多用しセカンドボールを拾い分厚い攻撃でハロプロゴールを攻め立てる。
加えて後藤の役割を任せられた市井が不調だった。
もともとそこまでオフェンシブなプレイヤーでない市井に、攻撃の鬼のような後藤の役割は酷だったのだ。
ただ、後半15分になってもまだスコアは動いていないことは幸運だった。
一方的な展開だったが、ホリプロも精彩を欠いていた。
188 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/14(土) 13:23
「さやかっ!もっと前にいなきゃ!!」
この劣勢に耐えかね、市井はどうしてもラインを下げてしまう。
チェックを受けたボランチ石黒が市井へパスを出す。
「・・・ッ!」
しかし、周りにフォローはなく一瞬で相手に囲まれる。
「・・くっそ!」
市井も必死にボールをキープしようとするが日本代表に名を連ねるような和田や優香の前にボールを奪われた。

後藤なら・・・・・・
そんな思いが市井の頭をよぎる。
所詮、ここまで順調にきたのは後藤がいたからなのか・・・?

ボールを奪った優香がすぐに左サイドの平山へロングボール。
ここはアヤカがヘディングで弾き返すが、セカンドボールを拾ったのはホリプロ深田だった。
ズルズルとラインを下げてしまうハロプロDF陣。

「!」
マズイ、そう中澤が感じた。
深田がシュートモーションを取ったのだ。
「誰かチェックに行けやぁ!!」
左サイドの矢口が慌てて中にしぼり、深田へプレスをかけようとするが、遅かった。
深田の右足から放たれたシュートはGK飯田の手をかすめネットを揺らしたのだった。
歓喜の輪ができるホリプロとは対照的にがっくり肩を落とすハロプロ・・・。
189 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/14(土) 13:27
後藤がいなければ・・・
ハロプロの実力なんてこんなものか・・・
そんな空気がハロプロに流れていた。

違う・・・違う・・・!!

ただ1人、市井だけがそんな空気を受け入れることを拒んでいた。
サッカーは11人でやるものだと信じている。
たった1人の力でどうこうするのとは違う。
これまでの好調さは・・全員が成長したから、そう信じている。
そして、自分だって・・絶対成長してる!!
「みんな、ちょっといい?」
190 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/14(土) 13:35
市井がイレブンを集める。
皆、驚きながら市井のもとへ駆け寄る。
今までどちらかといえば内向的な性格で、自己主張をほとんどしない市井が、今リーダーシップを取ろうとしていたから。
「ど、どした?さやか・・・」
中澤が思わず口を開く。
「あのね・・」
市井がしゃべりだす。
若干声が震え、手の平は汗でびっしょりだった。
学生時代の嫌な記憶が蘇る。
ずっと心の中に閉まっていた暗い過去。
後藤にだけは打ち明けた・・・いじめを受けていた記憶。
部活の最中に先輩に自分の意見を言ったら、生意気だと言われた。
次の日からパスがこなくなった。陰口も叩かれた。
直接暴力を受けたこともあった。
部内での孤立・・・

後藤に出会ってから、自分が変われる気がした。
自分とは正反対の性格、キャリア・・・。だからこそ、こうも惹かれ合うのかもしれない。
後藤からもらった自信は、今、市井を大きく突き動かし、大きく成長させた。
191 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/14(土) 13:42
「・・裕ちゃん、向こうのロングボールがキツイのは分かるけど、DFライン上げて」
「お、おう。けど上げた状態でまたロングボール出されたら、1発で裏取られるで?」
「うん。だから中盤のみんなはもっと運動量上げてプレスを速く。ロングボールを出させない」
「だ、大丈夫かよ?さやか」
保田が慌てて口をはさむ。
「大丈夫!!ここまでの試合でウチらには力があるってことは証明されてる!もっと自信持っていこう!!」
「・・・・・・・・・」
「あと、彩ちゃん」
「ん?」
「アタシの動きにあわせて動いてほしいんだけど」
「つーと?」
「アタシが下がったら、彩ちゃんがアタシのスペースを埋める。その逆も」
「・・うむ。分かった」
「よっし!こっからだよ、ゲームは!!」
192 名前:ハロプロ−後藤=? 投稿日:2004/02/14(土) 13:46
それぞれが各ポジションに散らばる。
「矢口」
「ん?何だよ、さやか」
「・・アンタ、朝早く練習してんだってね」
「・・・!!」
「後藤から聞いたよ・・・。ふふふ」
「うるさいなー!アイツも気づいてたのかよ・・・」
「・・パス出すからね。そん時は頼むよん」
「あ・・・」(さやか・・・・・・)
さやか・・・何か成長したな・・・・・・
193 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/02/14(土) 13:54
「チェック!チェック!!もっと運動量上げて!!」
盛んに市井から指示が飛ぶ。
だが、動いてるの口だけではない。誰よりも速く走り、誰よりも長い距離を走っていた。
「ライン下げんなやっ!マークもしっかり捕まえながらっ!!」
ラインをコントロールしながら中澤はミドルゾーンの攻防をしっかりと見つめていた。
それまでポンポンDFラインへ相手のロングボールが放り込まれてきていたのが、ハロプロのプレスの前にホリプロはそれが出せなくなっていた。
「よし・・よし・・」
市井を中心にした安定したハロプロのプレス網だった。

だんだんホリプロの選手も焦れてきた。
ハロプロがこうもでゲーム中に的確な修正を加えてくるなんて思ってなかったようだ。
優香が市井のチェックを受けたまま無理矢理大きくボールを蹴りだす。
「!」
来たッ!市井はこれを狙っていた。
素早く優香がボールにミートする直前に足を出し、ロングボールを阻止する。
転々とボールが転がる。
194 名前:ititetu 投稿日:2004/02/15(日) 20:53
おっ!再開ですね。
本編ももちろん楽しみですが、
タイトルの辻加護の会話も楽しませてもらってます。
それから、マルコさん、再開はうれしいですけど
体に無理だけはさせないでくださいね。

195 名前:mj027 投稿日:2004/02/16(月) 18:39
辻加護の会話・・・今きずいた!
196 名前:まるこ 投稿日:2004/03/06(土) 23:34
>>194 ititetuさん
いや〜、またもや長い休載でした。すいません!!
だんだん休む間隔が長くなってきている・・・・・・。むぅ・・・
>>195 mj027さん
・・・!!ショック!!!w
うそうそ。まあ、特に本編とは関係ないんでw

ちなみに休んでいる間、某フットサル大会で優勝しました〜。
自分たちが一番ビックリw
197 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/06(土) 23:43
一気に攻守が逆転する・・・。
「りんねちゃん!前にっ!!彩ちゃんにっ!!」
先ほど市井が石黒に話したように下がった市井の位置に石黒が入っていた。
「・・ッ!彩ちゃん!!戻してっ!」
石黒にボールが入った瞬間、市井が前方を確認し、リターンをもらう。
「さやかっ!裏だべっ!!」
「おうよっ!」
安倍がタイミングよく裏のスペースへ抜け出るのと同時に市井からフワリとしたパスが出た。
トラップし、ゴールに流し込む・・・今期安倍の初ゴールが決まった。
「よぉっし!!」
後半31分、ハロプロに歓喜の輪が広がった。



「・・ほっほぉ〜・・・さすがだね、いちーちゃん」
合宿先のホテルで後藤もこのゲームをTVで観戦していた。
(いちーちゃん・・才能あるし、ゲームの流れもちゃんと見えてるんだから、今日みたいに積極的に自分の意見を言わなきゃ)
ブラウン管を通じてみる市井の嬉しそうな表情に後藤も嬉しくなった。

だけどね・・・
このままじゃ、このゲーム・・勝てないよ・・・
どうする?いちーちゃん
198 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/06(土) 23:47
「さやかの作戦ばっちり決まったね!」
「おうよ」
矢口も喜んでいた。
市井はホッとしていたのだった。
自分がでしゃばって反感を買ったらどうしようなどと心配していたからだ。
だが、ここはハロプロ。
みんながみんなを信頼している。
今まで眠っていた市井の才能が今目覚めだしていた。

(・・さて、と。相手も攻め方変えてくるだろうから、勝負はこっからだ)
市井は唇をかみ締め、相手ゴールを睨みつけていた。
199 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/06(土) 23:55
ホリプロのキックオフで試合が再開されたあとも流れは変わらない。
ミドルゾーンのホリプロの選手の個々の能力は高い。
だが、試合の進行状態に応じた戦術の変更をするほどユーティリティーさは持ち合わせていなかった。
イタズラにロングボールにこだわる・・・。
その攻め方に対するハロプロは、ただ相手プレイヤーの「前」を封じていけばいい。
後半もすでに35分。
このままハロプロがペースを握り続け、もし逆転ゴールを奪えばもう試合は決まるだろう。
そんな状況にホリプロベンチは危機感を感じていた。
仮にも優勝を目指すチームなのだ、ホリプロは。
200 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 00:03
ここでホリプロベンチが動く。
DFを1人削って若手FWゆりんを投入。
引き分けなんて毛頭考えていない。勝つためのメンバー交代だった。

ボールを回すハロプロ。
最終ラインでパスを繰り返しチャンスをうかがう。
相手サポーターから激しいブーイングが飛ばされる。
市井もパスをもらえるようにポジションを変えながら、戦況をうかがっていた。
その時、妙なものを見た。
ゆりんを投入したことでそれまで4−4−2(ボックス)だったのが3−4−3(ダイヤモンド)になったまでは良いのだが、
中盤のサイド、平山あやと優香がやけにサイドに大きく張り出していたのだ。
そして、おそらく監督からの指示だろう、FWゆりんが中盤の選手に話をしていた。
201 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 00:33
(なるほど・・・、サイドをワイドに使うことで、うちらの狭いゾーンを無効にする・・・ってか)
すぐに市井は察しが付いた。
さらにハーフをダイヤモンド型にし、トップ下を置くことでそこを中心とした安定したパス回しで攻める。
それまでのロングボールとは違う。
サイドに大きく広がっている分、当然ハロプロの注意もそちらへ行ってしまう。
そして相手FWは3枚。
この日のハロプロは3−5−2、つまりDFはマンツーマンの形となった。
3バックが矢口やアヤカのカバーはできない。
そのためボランチがそこを抑えていかなくてはいけない・・・するとハロプロのラインは必然的に下がり、FWが孤立する。
(・・そういうことね)
202 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 00:41
あちゃ〜・・・ここまでかな?ハロプロ・・
TVで試合を観ながら後藤は渋い表情だ。
(後半40分近くでスタミナもほとんど限界に来てる状態で相手に細かくつながれたらそれこそ対応できないって・・・)
ロングボールへの対処はよかった・・・。
しかし相手だってそればかりで最後まで攻めてくるわけじゃない。ましてそれが防がれたのだから。
良くて引き分けだな・・・、そう思いながら後藤は席を外した。
ジュースでも買って来よ・・・。
部屋を出、ドアを閉める。ふいに天井を見上げる。
「いちーちゃん・・・自信持って」
203 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 00:47
タッチラインを割ったボールはホリプロのスローインへ。
スローされたボールをもらいに行く平山と、チェックするアヤカ。前を向かせない。
たまらず平山はDFラインへボールを戻す。
その時、ハロプロの背番号8がメンバーに向かって叫ぶ。
「みんな!あと5分、絶対気ィ抜かないでっ!!」
「・・さやか」
保田が驚いたように目を見開いた。
「相手は大きく広がってるけど、こっちはディフェンスのとき小さく!コンパクトに!!」
皆、一様に驚いていた。それはベンチにいるつんくも例外ではなかった。
あの引っ込み思案な市井が、チームを大きく動かした。
204 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 00:58
矢口のサイドで展開されるハイレベルな攻防。
ホリプロの細かく、そして速いパス回しにハロプロは何とかついていく。
市井がチラリと逆サイドへ目をやる。
(チィ!完全に開いてやがる!!)
ハロプロの狭いゾーンでのプレスはホリプロのサイドチェンジの機会を奪っていた。
が、後半40分を回っているのだ。スタミナ、そしてキレはそう残っていない。
「・・!なっち、プレス遅いッ!!」
「しまった・・・!!」
そう言ったときには、すでにボールは逆サイドへ展開されていた。
(・・クソッ!!)
ただホリプロのサイドチェンジにそれほどスピードが無かった。
さすがに狭いゾーンでさほど強いボールは蹴れなかったようだ。
「アヤカちゃん!!時間稼ぐだけでいいからっ!」
市井が走りながら、そう叫ぶ。この時間帯にまだ長い距離を全力で走れることは両チームの選手に驚愕を与えた。
205 名前:mj027 投稿日:2004/03/07(日) 00:59
フットサル優勝オメ!
206 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:11
フワリとしたボール。
ボールスピードが遅い分、アヤカが平山のもとへチェックへ時間があった。
しかし、それが災いした。
平山はトラップをわざと大きく出し、アヤカをワンタッチで抜き去った。
(ヤッバ!)
アヤカの脇を平山が抜けていく。
保田は何故かこの瞬間がスローモーションのように見えた。
この時間帯で、パススピードと相手のツメの距離感を見極め最善の方法で抜いてくるこの平山あやという選手の次の相手は自分だった。
敗北を意識してしまった。
いや、そう思わざるを得なかったのだ。
自分にはもうそれに対処するだけのスタミナもスピードも残っていなかったのだから。

アヤカを抜き去り、どんどん保田に接近する平山。
・・・来るっ!どーするっ!?
スタミナは残っていないし、足は重たい。
だが、何とか半身の体勢をとり、腰を落とし保田はその左サイドの侵入者を待ち構えた。
ゴクリ・・・。唾を飲み込む。
どーする?どーする!?どーする!?!
自分が抜かれればもう後ろにはキーパー飯田しかいない。
残り時間からして次の1点は勝負を決するものとなるだろう。
・・右か!?左か!?
207 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:15
平山は容赦なく突っ込んでくる。
・・・!
中に切れ込んでくる・・・フェイントだ!分かっちゃいるけど・・・
反応できねぇ!!
自分の右側を平山が通り抜けていく。
くっそが・・・!!
もうゴールまでそう距離は無い。やられた・・・そう思った。
そう思った保田は申し訳なさそうに振り返る。
「え・・・!?」
そこで保田は信じられない光景を目にした。
平山が誰かと・・いや正確に言えば、ハロプロのユニフォームを着た誰かともつれ、倒れていた。
208 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:24
「さ・・さやかっ!!」
保田の目がハロプロの「8」をしっかり捉えた。
しかしにわかに信じ難い光景であった。
なぜなら逆サイドのハーフラインからこちら(保田側=右サイド)のペナルティエリアまで戻ってきていたからだ。
(まだそんなにスタミナ残ってんのかよ!?!)

ペナルティエリアへ進入したプレイヤーへスライディングタックルのは並大抵の覚悟ではできない。
しかし、市井は知っている。そこでの躊躇が自らの命取りになることを。
すぐに立ち上がる。レフェリーの方にチラリと目をやる。ノーファール。
(よっしゃ!)
平山が市井のユニフォームを引っ張り妨害するが、市井はそれを力強く振り払う。
「カウンターッ!!」
市井の右足から繰り出されたボールは左サイド深くへ。・・・矢口が走っていた。
209 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:34
(・・さやか・・・)
場面は先ほどホリプロの攻撃が始まるトコロ。
安倍のプレスが遅れ、逆サイドへボールが展開されるシーンだ。
「ヤバイじゃん!」
「矢口ッ!アンタはそこに残っててっ!!」
「ハ?さやか、何言ってんだよ」
「いいから!絶対ボール取り返してカウンターにつなげる!!足の速い矢口が走ればそれだけゴールも近づくッ!!」

そして今に至る・・・。
市井のロングボールは寸分の狂いも無く矢口のスピードに合わせて飛んでいた。
(・・さやかの言ったとおりになってんじゃん)
ボールをトラップ。コーナーフラッグ付近で中を伺う。
この高速カウンターにまだハロプロのFW、そしてホリプロのDFさえもペナルティエリアにいない。
迷わず中に切り込む。
ペナルティエリアに入ったところで安倍、そしてそのマークに付くDF1人とフォローのDF1人が入ってきた。
「矢口!出せっ!!中だべっ!!」
右足を踏み込む矢口・・・・・・―――
210 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:40

「分かったよ。じゃあ矢口はここに残ってるからな!」
「おうよ!あとはアンタの左足にかかってる」
そう言い残し市井はディフェンスへと戻って行った。


「アンタの左足にかかってる」・・・・・・
矢口の頭の中に後藤の顔や市井からのその言葉、そして一ヶ月間の早朝練習のことが思い浮かんだ。
不思議と力みは無かった。
そして矢口の目にはニアに入る安倍ではなく、その後ろのスペースに走りこんでくるハロプロのプレイヤーを捉えていた。
(やっべ!前に出しすぎたかっ!?)
そんな矢口の不安をそのプレイヤーは吹き飛ばす。
ボールの落下点にスライディングで飛び込み、完璧にボールにミートする。
ネットを揺らすボール・・・後半44分、ハロプロの逆転ゴールが決まった。
決めたのは、
「さやかっ!!」
「おっしゃーっ!!!」
8番市井沙耶香。
211 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:44
試合終了間際の逆転ゴールにハロプロは歓喜。
もみくちゃにされる市井。
「矢口ィ〜・・もうちょっと精度上げろよ?センタリング」
「・・ム!でも上達したろっ!?」
「おう!ようやったぞ」
そう言って市井が矢口に抱きつく。矢口の頭をくしゃくしゃにする。
これで後藤と矢口の関係も良くなるんじゃないか?そう思った。
212 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 01:58
そんな歓喜の輪を遠くから見つめている選手がいた。保田だ。
荒い息遣いを何とか押さえ、額の汗をぬぐう。
足が重たい・・・。
ったく、いつからそんなにお前の背中がでかく見えるようになったんだ?さやかよ
あんなに動けて、しかも危険なトコ、そんでもってチャンスに絡んでたっけか?
・・・・・・・・・
そうじゃなかった。
さやかのことはアタシが1番知ってるつもりだ。
同期だし・・・、ずっと一緒に練習してきた。何よりライバルだ。
いったいいつから・・・?

だるい足に気合を入れるかのように屈伸する保田。

・・・後藤か。そうだ後藤が入ってきてからだ、さやかが変わってきたのは。
前から才能あると思ってたけど・・・
後藤と一緒にサッカーやってるアイツは・・そう、何だか伸び伸びしてる・・・・・・
・・クソがっ!
アタシや矢口とサッカーしてもそんな楽しそうじゃなったじゃん!!
アタシの“モノサシ”じゃあ、アンタの力は測りきれないっつーのかよ!
このままじゃ・・このままじゃアイツに置いてかれるっ・・・!!
213 名前:ゲームメーカー 投稿日:2004/03/07(日) 02:04
「・・さーってと!試合はどーなったかなっと」
そう言いながらテレビをつける後藤。手には買ってきたばかりのコーラ。
ブラウン管に映し出される映像にコーラを飲む手が止まる。
「・・素晴らしいカウンターでしたねぇ〜、ハロプロ」
実況の男の声が興奮気味に弾んでいた。
そしてそこに映る市井の笑顔と「Today’s goal 1」の文字。
「・・っと、それではリプレイが出ます」
「ここ、自陣深くでボールをカットした市井が・・・・・・ゴール前まで走って、ゴールという・・」
コーラを一口飲む。解説の男が何か言っていたが、後藤の耳にはもう入っていない。
「・・・やっぱすげえや、いちーちゃん・・・」
214 名前:マルコ 投稿日:2004/03/07(日) 02:07
>>205 mjさん
更新中のレスどうも。奇遇でしたね。
そうそう、フットサルね。楽しかったですよ。
しかし、サッカーしかやったことのない自分にとって難しかったです。ええ、予想以上に。
でもこれからはフットサルを主戦場にしていこうかな、と
215 名前:mj027 投稿日:2004/03/07(日) 12:43
更新中に邪魔してすいません。
小説もフットサルも頑張って下さいね。
216 名前:ititetu 投稿日:2004/03/07(日) 22:43
マルコさん、フットサル優勝(/^^)/★☆オメデトウ☆★
217 名前:ののみ 投稿日:2004/03/08(月) 14:01
フットサル&物語更新、乙でした!
218 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/11(木) 03:19
更新がんばって!待ってます!!
219 名前:mj027 投稿日:2004/03/28(日) 19:26
まだかな〜
220 名前:マルコ 投稿日:2004/03/29(月) 22:23
>>215mjさん
>>216ititetuさん
>>217ののみさん
>>218名無飼育さん
すいません!ものすごく更新遅れました。
しかし遅れたなぁ〜・・バイトのせいだ!
そういやハロプロのフットサルはぼろぼろだったらしいですね。
221 名前:翌日 投稿日:2004/03/29(月) 22:31
試合の翌日―――
9月の終わり。残暑も終わりに近づく初秋の朝。
チュンチュン・・・。スズメが道端で戯れる。
スズメの戯れを邪魔する人間が現れる。臆病なスズメたちは一斉に飛び立つ。
深くかぶったニット帽を取りながら朝日を眩しそうに見上げる。
ハロプロDF保田圭。
前日の疲れをものともせず自主トレを始める。
ゴール前を固めるDFが1試合を通じて全力で相手を止めることができない。
悔しさにいてもたってもいられずボールを蹴りにやってきた。
スタミナのない自分に、そしてライバル市井に負けたくなかった。
222 名前:翌日 投稿日:2004/03/29(月) 22:36
ロッカールームで着替え終わり、ドアに手を掛ける。
その時、外から誰かが先にドアを開けた。
保田:「!」
矢口:「・・ッ!!」
保田:「お?やぐ・・・」
矢口:「うぎゃああああああああああっ!出たぁっ!!妖怪っ!?助けて・・助けて、鬼太郎ッ!!!」
保田:「・・・落ち着けよ、矢口」
矢口:「・・・!はぁはぁ・・何だ、圭ちゃんか・・・。急に顔出さないでよ」
保田:「ど・・どーいう意味じゃ!ボケ!!殺すぞ」
223 名前:翌日 投稿日:2004/03/29(月) 22:44
グラウンドに出る2人。ストレッチを始める。
「つーか、何でこんな朝早くお前がいんだよ?矢口。それに今日オフだろ?」
「い・・いや〜、実はかくかくしかじかで」
「へぇ〜・・意外とがんばりやさんなんだな、矢口って。むふふ」
「ム!何故笑う!?そういう圭ちゃんだって何でここにいんだ?」
「ま・・まあ、何だ・・・ちょっとな」
「キキキ・・・昨日の試合だな?」
「ギク」
「さやか、確かにすごかったもんね。チームリーダーって感じだったし」
「ぐ・・・」
「圭ちゃんもけっこうかわいいトコあるんだね」
「うっさいなー!もういいだろ!!」
「ハイハイ!真っ赤になっちゃって・・・。さ、ボール蹴ろ」
「ぐむ・・・」
224 名前:翌日 投稿日:2004/03/29(月) 22:51
「お!帰ってきたか、後藤」
「ただいまー、いちーちゃん」
韓国で行われた今回のU-23韓日戦。
永遠のライバル韓国との戦いも90年代に入ってからはほぼ互角の戦いを演じているが、
実際日本は韓国での試合での勝率はかなり低い。
「1−1で引き分けだったな。テレビで見てたぞ」
「・・・勝てたのになぁ」
「つか後藤、スタメンじゃないんだな」
「うん。あのバカ監督・・・後藤がユース世代だからってなめてやがる。許さん・・・」
「ま・・まあまあ・・・」
「韓国なんて17歳のヤツが出てたんだよっ!?」
「ボアとかいうヤツな」
「そうそう!・・しかも後藤が入ってから日本はペース掴んで同点になったんだから〜」
(コイツやっぱプライド高ぇ・・・!五輪代表に入ってるだけでもすげえじゃん!!)
「んあ?何か言った?」
「い・・いやいや!ま、ハロプロに戻ってきたんだから、次はこっちに集中し・・」
「ぶつぶつ・・・くそが・・・ぶつぶつ・・・あの監督・・・ぶつぶつ・・・」
「・・・聞けや」
225 名前:成長 投稿日:2004/03/29(月) 23:05
11月19日(土)第10節 vsFCエス・エス・エム
『エスエスエム!中央は新人DF池脇千鶴がしっかりとハロプロ攻撃陣を押さえている!後半20分をすぎてまだ得点を許していません!』

(中央がダメならサイドから崩してやる・・・!)
ハーフライン付近でボールを回すハロプロ。そのボールが市井に渡った。
市井がルックアップするのと同時に矢口が左サイドを駆け上がる。
「さやかっ!タテだっ!!」
「オッケー!矢口ッ!!」
ゴールラインぎりぎりの位置からセンタリング。
深い位置からのセンタリングでエスエスエムGK、DFともにボールを見てしまい、ハロプロのオフェンス陣を放してしまう。
ニアに入ったDFの目の前に飛び込んだ安倍にぴったりのタイミングのボール。
頭を思い切り振り軌道の変わったボールはネットに突き刺さった。
矢口:「ホラーッ!キテルキテル!!矢口の左足キテルよぉ〜!!」チラリ

後藤:「あ・・スパイクのヒモが・・・。結ばなきゃ」

矢口:「・・って!何かコメントしろや!!」

後藤:「んあ?」

矢口:「死ね!クソ」
226 名前:成長 投稿日:2004/03/29(月) 23:17
11月26日(土)第11節 vsFLaMme
『さあ、時計は今ロスタイムに入りましたっ!スコアは2−1でハロプロがリード・・・っと!?広末がドリブルで仕掛けるっ!!』

「ふふふ・・・来なさいっ!」
保田と広末の1対1.
迫ってくる広末。半身になり、腰を落とす保田。
1つフェイントを入れる広末・・・動じない保田。もう1つ入れる・・・またも動じない。
一気にタテに抜けようとする広末。
それまでの2つのフェイントとタテへのダッシュ。完璧なリズムだったが、保田はそのリズムを読みきっていた。
抜かせない保田。
ボールを取られまいと広末は突破を諦め、保田に背を抜けボールを何とかキープ。
「けけけ・・もうアンタはアタシのテリトリーの中に足を踏み込んで・・・あ」
「ナイスディフェンス、圭ちゃん!!」
「さ・・さやか」
『市井がボールを奪取!・・ここで試合終了のホイッスル〜ッ!!』
市井:「よっしゃーっ!勝ったー!!・・お、裕ちゃんお疲れ」

保田:「・・ちょい待てや。あそこでアタシが華麗にボールを奪う予定だったのに・・・・・・って聞けや」

市井:「ん?どした?」

保田:「ぐ・・・」

矢口:「ぷくく」

保田:「矢口・・テメ・・・」
227 名前:mj027 投稿日:2004/03/29(月) 23:17
ども!更新おつです。
待ってましたよ。
228 名前:休暇前− 投稿日:2004/03/29(月) 23:26
12月21日(水)の第15節までハロプロは10勝2分2敗と勝ち点32の3位。
後藤の勝負を決するプレイ、市井のゲームの組み立て、
そしてそれに加え矢口のスピードを生かしたサイド突破と正確さが生まれた左足、保田のスタミナと安定さが増したディフェンス。
いつの間にかハロプロはJ1で十分優勝を狙える位置に付いていた。
229 名前:休暇前− 投稿日:2004/03/29(月) 23:32
12月21日(水)第15節 vsソニー
この試合を最後にシーズンは1月14日(土)まで休暇に入る。
上位のチームはこれまでの勢いを断たないように是非勝ちたい試合であり、
下位のチームにとっては少しでも上昇につながるゲームをしたいものである。
当然、現在のハロプロは前者に当たる。
鈴木あみ:「お!久しぶり、なっち」
安倍:「う・・鈴木あみ・・・」
鈴木:「なに?そんな嫌な顔して・・・」
安倍:「な・・何でもないべさ」
鈴木:「ふーん・・・。ま、今回もウチらが勝ちもらいますから」
安倍:「ぐ・・」
230 名前:休暇前− 投稿日:2004/03/29(月) 23:39
後藤:「ね、いちーちゃん」
市井:「あ?」
後藤:「あそこで安倍さんとしゃべってるエラソーなの誰?」
市井:「あ、あれはね・・」
鈴木あみ:「おっと!?アタシを知らないのかい!?」
市井:「・・・!」
安倍:「・・・あみーゴ」
後藤:「・・・・・・・・・」(だから誰だよ、コイツ・・・)
鈴木:「日本最高FWとはアタシのこと!その名も鈴木あみ!!オッケー?」
後藤:「・・・・・・ふーん」
鈴木:「ぐ・・・」(何じゃ、このガキ)
後藤;「知ってる?いちーちゃん」
市井:「ま、まあ・・いちお」
後藤:「あ、そーなんだ。ま、いーや。行こ、いちーちゃん」
鈴木:「・・・!!」
安倍:(いいぞいいぞ、後藤。こういう時に役に立つなぁ〜、あの後藤の性格。むふ)
後藤:「・・ん、そーだ」
鈴木:「ム?」
後藤:「勝ちは譲らないから。勝つのはハロプロだ」
鈴木:「何っって生意気な・・・!」
安倍:「むふふふ」
鈴木:「オメエも大変だな、あんなヤツが入ってきて」
安倍:「・・・ま、まあな」
231 名前:休暇前− 投稿日:2004/03/29(月) 23:48
試合は前半25分に後藤がFKを直接ゴールに沈めハロプロが1点先制。
その後、鈴木あみのドリブルを中心にハロプロのDFに襲い掛かるが、ハロプロの中盤からのプレスや保田の1対1の強さでそれを弾き返し1−0のまま試合終了を迎えた。

鈴木:「くそ・・・」
後藤:「ま、そんなもんだって。後藤がいれば」
市井:「ハハハ、すいません。ホラ、後藤もそんなこと言わないの!」
鈴木:「・・・でも、まだなっちが抱える問題は改善されてないみたいだけど」
後藤:「?」
安倍:「だ、だから何のことだべさっ!」
鈴木:「そのことに気づかないようじゃ・・・まだまだだな」
市井:「・・・・・・・・・」
鈴木:「調子がいいときには気にならないもんなんだよ」
安倍:「・・・・・・?」
鈴木:「それくらい小さいことだけど、歯車がいったん狂いだすとその小さな欠点はチームにとって大きなブレーキになる」
後藤:「・・負け惜しみ?」
鈴木:「ムカ。・・ま、いーや。今の調子が続くよう祈っときな。そんじゃな」


そしてシーズンは1月14日まで休暇に入る。
同時に各クラブチーム首脳陣はそれまでの戦いの中における欠点を補強する冬の移籍市場の開催でもある。
232 名前:寿 投稿日:2004/03/30(火) 00:01
ハロプロ、ここまで11勝2分2敗勝ち点35の3位。
好調を維持するハロプロに激震が走った。
MF石黒彩―――25歳。この冬、結婚を理由にハロプロ退団が決定した。
結婚後も自身のサッカー人生を続けるプレイヤーもたくさんいるが、女としての幸せを選ぶ者も同じくらいいる。
石黒がメンバーにそのことを発表したとき、みんな一様に驚いていた。
そして辞めてほしくない、そう思った。
ハロプロ結成時からチームを支えてきた、信頼は厚い。
だが、石黒のその幸せそうな表情にメンバーは何も言えなかった。
愛した男と一緒になる・・・。辞めてほしくない、という思い以上に羨ましくもあったから。

祝福されチームを去った石黒。
しかし、そんな幸せムードではいられないチーム首脳陣。
詳しくはいずれ説明するが、福田や後藤のような華やかなプレーを心情とする選手を陰で支えてきた石黒のいきなりの退団は、
監督つんくをはじめハロプロフロントは緊急に新たな“縁の下の力持ち”を探す必要があった。
233 名前:もう一人の天才 投稿日:2004/03/30(火) 00:08
イタリア ローマ
イタリアの首都ローマに本拠地を置くASローマ。
トップチームはセリエAでも屈指の強豪、そのプリマヴェーラに、ある日本人が在籍している。
「おーい、ヨシザワ!」
「・・・ん?」
「お客さんっ!」
「・・はぁ。誰だ?」

午前中の練習が終わったばかりで、タオルを片手にクラブハウスのフロントへやってきた。
それを迎えるのはハロプロ監督つんく。
「・・お!待っとったで」
「・・・・・・・・・」(誰?)
234 名前:もう一人の天才 投稿日:2004/03/30(火) 00:16
「吉澤ひとみ・・やな?」
「・・そースけど」
「オレはJリーグハロプロの監督をしとるつんくっちゅーもんや」
「・・・ハロプロ。そのカントクさんがアタシに何か用でも?」
「ふふ・・まどろっこしいことは嫌やろうから、ストレートに言う。ここ辞めてウチに来い」
「・・・!」
「高校選手権からずっとお前に目をつけてきたんや」
「そ・・そんな急に・・・」
「悪い話やないやろ。こう言っちゃ何やけど、ここローマのプリマヴェーラでお前は出番に恵まれていない」
「・・・・・・・・・」
「・・どやねん」
「・・・まだ、ここを辞めるわけにはいきません」
「何やと?」
「今日本に帰ったらただの負け犬だ。確かにアナタの言うようにこっちに来て出番は少ない・・・」
「・・・・・・・・・」
「けど、その中で少しでも本場のカルチョから吸収したい」
「ふむ・・・」
「それにまだ契約残ってますから。その契約が切れた時にハロプロも視野に入れて考えますから」
「・・そうか」
「それじゃ。午後の練習がありますんで」
235 名前:もう一人の天才 投稿日:2004/03/30(火) 00:21
そう言って吉澤はロッカールームに消えていった。
元気そうに見えたが、つんくにはそれは装っているように感じられた。
精神的な疲れがうかがえる吉澤の瞳・・・。
文化、言葉、生活習慣の違い。
日本人というだけで好奇の目で見られるカルチョの世界。
それはプリマでも同じだった。
カルチョに己の人生すべてを賭けた者たちの中で吉澤はボロボロになっていた。
つんくは心配だった。
あれほどのサッカーの才能が潰れてしまうのではないかと。
サッカーに対する愛情を・・・失ってしまうのではないかと―――・・・
236 名前:マルコ 投稿日:2004/03/30(火) 00:24
>>227 mjさん
またまたリアルタイムのカキコでしたね。
今回はここまで〜。次回更新は・・・いつかなぁ。
できるだけはやく書けるようにがんばりますんで
237 名前:mj027 投稿日:2004/03/30(火) 00:26
頑張って下さいね〜
応援してます。
238 名前:ののみ 投稿日:2004/03/30(火) 14:17
更新、お疲れ様です〜。
そろそろ、4期の出番ですね。。。。
楽しみ〜。
(´v`)/ 無理しないで、ボチボチ頑張ってくださいなのれぇす〜。
239 名前:マルコ 投稿日:2004/03/31(水) 12:17
>>237
mjさん!毎回気が合いますね!!
いつもあの時間帯にパソコンされてるんですか?

>>238
ののみさん!レスどもです。
4期の出番・・・と見せかけて、実はまだまだ。
この時点で辻加護は高2ですから・・・w
4期の出番まで続くのか!?!w
240 名前:ititetu 投稿日:2004/03/31(水) 19:26
おぉ!
更新お疲れ様です。
そうかぁ、辻加護は話のネタがないのか・・・
でも食べてばっかいるとぷくぷくに戻るよ!
・・・・って本文の感想書かんのかい、このおっさんは(^_^;)
241 名前:マルコ 投稿日:2004/03/31(水) 23:31
>>240
ititetuさん!辻加護、ピンチっすw


それにしてもサッカー見ましたか?
とりあえずジーコは辞めろと。海外組みVIP扱い&試合中突っ立ったままオロオロ・・・。
海外組みが入ったとたんにJリーグ組は出番が無くなる。久保、小笠原、遠藤・・・。
そりゃあキャバクラにも行くって!どうせ明日出番無いだろ〜、みたいなノリで。
あと、ジーコの言う「イメージの共有」。バカか、と。
一緒に練習して練習して培われていくのがコンビネーションってもんだろが。
なのに海外組みとJの選手はほとんど一緒にプレーすることは無い。海外組みの合流は遅いし。
あ、そうそう!選手交代のタイミングも変!変っていうか考えれてない。
どうせ試合前に「この時間になったら交代」みたいなこと決めて、それしか実行できないんだ。間違いない!
んで、今日も試合後「W敗予選に楽に勝てる試合はない」みたいなことぬかしやがって!
楽に勝てる相手に楽に勝たなきゃ、これから先勝てるかよw
242 名前:マルコ 投稿日:2004/03/31(水) 23:33
とりあえず

ジ ー コ は 辞 め て く れ


雑談スンマセン
243 名前:エイベックス 投稿日:2004/03/31(水) 23:46
1月14日(土)第16節 vsFCエイベックス

結局目立った補強ができなかったハロプロ。
年も明けシーズンの折返し地点である第16節を各チームが迎える。
ハロプロ、迎え撃つは強豪エイベックス。
当初ダントツの優勝候補に挙げられていたが今シーズンは不調が続き現在6位。

不調続きのエイベックスとは言っても、その抱えるタレントはハロプロとは比べ物にならない。
GKケイコ、DF相川七瀬、上原多香子、MF島袋寛子、持田香織、hitomi、FW今井絵里子・・・
そして何より90年代日本サッカーを引っ張りW杯へ導いた大エースFW安室奈美恵がいる。
エイベックス、そして日本代表のキャプテンとしてサッカーをする者すべての憧れである。
それはハロプロとて例外ではない
244 名前:エイベックス 投稿日:2004/03/31(水) 23:55
矢口:「やっべー!キンチョーしてきたぜい」
保田:「ああ!」
思わずざわつくハロプロの選手たち。
安倍:「あ・・出てきたべさ!」
自分たちと同じプロであるはずのエイベックス。
しかし、ハロプロにとってエイベックスとは違う次元の存在のようだった。
イレブンはほぼ全員が代表経験者であるエイベックスとつい数年前までは無名の選手の集まりだったハロプロの選手にとってはそう思っても仕方ないかもしれない。
飯田:「あれぇ?」
矢口:「ん?どしたの?かおり」
飯田:「いや・・エイベックスのキャプテンて安室さんだよなぁ?」
矢口:「そうだけど・・・・・・あら?」
灰色を基調としたエイベックスのキーパー用ユニフォーム。
それを着るエイベックスGKケイコの左腕に蛍光色でオレンジのキャプテンマークが巻かれていた。
通常それをつけているのは10番安室だったのだが。
安倍:「・・っかしいな。ケガか何かだべか?」
保田:「いや・・普通にさっきアップしてたし、その後も別にケガしてた様子は・・・」
飯田:「無かったよなぁ」
245 名前:エイベックス 投稿日:2004/04/01(木) 00:06
(何だってんだよ、みんな・・)
ゲートの前、1列づつ並ぶハロプロとエイベックスイレブン。
その1番後ろで面倒くさそうに後藤は立ち、そしてエイベックスを前にはしゃぐ“先輩”たちを見つめていた。
「・・天才、後藤か・・・」
「ああ?」
急に背後から声をかけられる後藤。
振り返るとエイベックスのユニフォームを着た選手が遅れて入場口の列に加わった。
(・・・36番?)
あまり他チームに関して興味のない後藤だが、さすがに日本代表を多数揃えるエイベックスのメンバーは知っている。
1番ケイコ、2番相川、5番上原、6番持田、7番島袋、9番hitomi、10番安室、11番今井・・・
36番・・・・・・?
「誰だよアンタ・・・ま、どーでもいいけど」
不適な笑みを浮かべそのプレイヤーはエイベックスの列の前のほうへ歩き出した。
(ハ・・ハマサキ・・・?)
その選手の背中にある背番号36の上に記される選手名。“HAMASAKI”の文字。
246 名前:mj027 投稿日:2004/04/01(木) 07:31
どうも〜更新おつです。
ここには1日2回は来てますよ〜
又、更新中におじゃまするかも・・・
247 名前:ののみ 投稿日:2004/04/02(金) 13:37
や、や、や、やられた・・・・。よっちゃんが出てきたからつい・・・。
4期絶対書いてください!
楽しみに気長に待ちますから・・・笑。
248 名前:ititetu 投稿日:2004/04/05(月) 17:56
更新おつかれさまです。
遂に「あゆ」登場ですか!
ごっちんとの対決が楽しみですな(^^)

ジーコ監督
確かに今のジーコジャパンだと、トルシエジャパンより
確実に弱いかと思われます。
サッカー、あんまり詳しくないんで偉そうなことは言えませんが・・・
今はジーコ監督を信じるしかないと思います。
W杯に出られれば、ジーコの「魅せる力」が発揮されるかと・・・

それより「アルビ勝利」が自分にとっては嬉しかったりする(^_^;)
249 名前:mj027 投稿日:2004/04/24(土) 02:53
元気ですか〜
250 名前:まるこ 投稿日:2004/05/10(月) 00:38
時間が無い・・・。申し訳ないっす・・・
251 名前:マルコ 投稿日:2004/05/15(土) 00:04
>>246>>249 mjさん
ホントに、ホントに長いお休みでした。
すいません!!今日は時間作れました。元気ですか?

>>247 ののみさん
ほんっとに気長に待っていてください・・・。
ボクも早く4期出したいですわ。
それにしても今のリアルな娘。は4期とかそんなこと言ってる場合じゃないですね。
辻加護はいないし・・・。まあ、実際ボクはもう娘。ヲタ卒業してますがw

>>248 ititetuさん
今までこんなに休載したのは初めてかと。すんません。
こんなに休載するのはハンター×ハンターの富樫くらいか・・・w
ま、ジーコもやっと国内組みの重要性気づいたみたいだし。こっから上昇してくれることを望みましょう。



とりあえずみなさん ま だ い ま す か ?
252 名前:安室奈美恵と浜崎あゆみ 投稿日:2004/05/15(土) 00:15
(浜崎・・ねぇ〜。全然知らねぇや)
それは後藤のみならず、おそらく日本全国においても浜崎の名を知るものはほとんどいなかっただろう。
それもそのはず。
浜崎というプレイヤーは今シーズン冬の移籍市場でエイベックスがJFLのチームから引き抜いた選手であるのだから。
それまで大エースとして君臨してきた安室を擁するエイベックスだったが、前回のW杯が終わった後から彼女に次々と襲い掛かる悲劇・・・。
祝福されるはずの結婚、そして出産にも非難の声が上がり、さらに肉親の死・・・。それからくる自身の不振・・・。
まだ若く、あと2大会はW杯を任せられるという評価も、それまではあった。
エイベックスも安室に多大な、そして過剰な信頼を寄せていた。
しかし、人の評価は残酷なものだ。
253 名前:安室奈美恵と浜崎あゆみ 投稿日:2004/05/15(土) 00:25
過去の評価も栄光も、現在の不調によりかすんでしまう。
不調の安室・・・といってもJリーグでは十分なプレーであった。
だが、それまでの他を凌駕するようなプレーぶりが鳴りを潜めていた。
彼女の並外れた才能が災いした。
彼女への期待は日に日に増すばかり。アッと驚くようなプレーをしなければファンは、評論家は・・許してくれなかった。
16歳からトップを走り続けてきた彼女へ、「限界説」さえ飛び出したのだ。
つまり、彼女への感覚が麻痺していた。
エイベックスは恐れていた。点が取れなくなるのではないかと。実際チームは不振を極め6位だった・・・。
麻痺した感覚は安室を過去のものへと変えた。
そしてそんな時エイベックスの目に止まったのがJFLで活躍していた浜崎あゆみだったのだ。
254 名前:安室奈美恵と浜崎あゆみ 投稿日:2004/05/15(土) 00:33
選手がピッチに入場する。
一斉に大歓声・・・、しかし、その歓声は次第にブーイングへと変わる。
安室がいないことへのブーイングだ。
この試合はエイベックスのホームであるにもかかわらず、だ。
だが、このブーイングを黙らせた・・いや歓声に変えた選手がいた。
その選手の名は後藤真希・・・ではなく、エイベックスFW浜崎あゆみ―――・・・。
255 名前:戦慄 投稿日:2004/05/15(土) 00:43
この試合のバックスタンドにサポーターたちの人ごみを避けるように後ろの席にある人物がメモを片手に座っていた。
東芝EMIのスカウティング部に所属する男だ。
東芝EMIといえば現在リーグ戦1位。ハロプロとの第10節の試合も2−0で勝利している。
抱えるプレイヤーも豪華なものだ。
ベテランの大黒摩季、松任谷由実、吉田美和が軸を固め、最近呼び盛りの若手椎名林檎、矢井田瞳、鬼束ちひろが上手く噛み合い首位に立っている。
(ハロプロかぁ〜・・)
メモを取る手が止まる。
安室がスタメンじゃなくてホッとしただろうなぁ〜。
ハロプロのディフェンスも悪くないけど、もし安室が出てたら1点、2点の失点は覚悟しなきゃいけないしな。
ま、今のJに安室を止めれるDFはそうはいないけど・・・。
・・・それにしてもあの浜崎という選手。
いくらハロプロが何の対策もしてないにしても、あれだけやるとは・・・!!
256 名前:戦慄 投稿日:2004/05/15(土) 00:54
「ハァ・・ハァ・・・」
GK飯田もDF中澤も平家も保田もうなだれていた。

ゲームが開始されたとき、エイベックスのベンチに座る安室の姿を見てどれだけほっとしたことだろうか。
安室を止める自信は、はっきり言って彼女たちには無かった。
それほど安室の実力は手の届かないように思っていたから。
その安室がピッチ上にいないのだ。安心もするだろう。
しかし、1つ重要なことを忘れていた。
安室の代わりに出ている浜崎についてだ。もし、浜崎が安室からポジションを奪っていたとしたら?
安室がいないという安心感は、同時に浜崎への警戒心を欠くことになっていた・・・
257 名前:mj027 投稿日:2004/05/16(日) 03:20
いますよ〜
更新乙です。
258 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 00:28
更新キタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!!
初レスですが、ほぼ毎日更新チェックしちゃったりしてますw
259 名前:ititetu 投稿日:2004/05/17(月) 23:15
しっかり読ませてもらってます(^^)v
更新お疲れ様です。
260 名前:マルコ 投稿日:2004/05/18(火) 00:19
>>257 mjさん
さっそくのレスありがとうございます!

>>258 名無しさん
どうもはじめまして。レスありがとうございます。
激しく更新遅いですが、今後ともヨロシクっす
261 名前:戦慄 投稿日:2004/05/18(火) 00:29
前半開始のホイッスルの直後、中盤の底の持田香織からトップの浜崎に強烈なパスが通る。
マークにつく中澤。
そのシュート程の威力のあるパスが浜崎のもとへ渡った瞬間、ボールは中澤の股間を抜けていた。
“何って正確なボールタッチやねんっ!”素早く反転する浜崎を目で追いながら中澤は思った。
すぐさまカバーに入った平家のスライディングを軽くかわす。
スライディングにいった足の上をチョコンとボールを浮かしたのだ。
残るGK飯田のタイミングを巧みに外しゴールネットを揺らした。
実に前半39秒のことだった。
262 名前:戦慄 投稿日:2004/05/18(火) 00:42
何が起こったのか理解できず静まり返るスタジアム。
それはハロプロにとっても同様であった。
呆然と立ち尽くすハロプロDF陣・・・。
「ハイ!ハイ!」
手を叩く乾いた音にハッとした中澤をはじめとするDF陣が顔を上げる。市井だ。
「まだ始まったばっかだから!気にしないでっ!集中しよう」
「お・・おう!分かってる」
そう、まだ試合は始まったばかり。
90分という試合時間の中で勝負をかけるところはいくつかあり、DFはそこに最大の集中力を持っていかなければならない。
それゆえゲーム開始直後の“不意打ち”攻撃はよく得点になる。
そしてそのような試合は荒れる。
荒れる、といってもイエローカードやレッドカードが乱れ飛ぶような試合ではない。
そこにはサッカーの醍醐味である多くのゴールシーンが詰まっている。
実際その15分後には次のゴールシーンが生まれる。
263 名前:戦慄 投稿日:2004/05/18(火) 00:53
DFラインでボールを回すハロプロ。
それを執拗に追うエイベックスFW浜崎。
エイベックスもハロプロも・・そしてスタジアムにいる全ての人間がその光景に驚いた。
何故このプレイヤーはこれほどボールを追い回すのか、と。
まだ前半15分、必死になるには早すぎる・・・ましてやリードしているのはエイベックスだ。それにスタミナは・・・。
しかし、その行為が次の得点を生むことになる。
最終ラインまで下がってきた左サイド矢口へボールが渡る。
その瞬間だった。浜崎が突然トップスピードで矢口へ詰め、そのトラップの瞬間ボールにつっかける。
「・・ッ!」(んだよ!?コイツ・・いきなり本気で走りやがって!)
こぼれるボール、追う矢口と浜崎。
「チィッ!」
先にボールに触れたのは浜崎だった。
そのボールを取り返そうと思い切り浜崎にぶち当たる矢口。
「どわっ!!」
しかし、逆に矢口が飛ばされる。びくともしない浜崎はそのままドリブルで前進する。
3対1。中澤・保田・平家vs浜崎。
矢口は見た。浜崎がうっすら笑みを浮かべているのを。この状況を、まるで楽しんでいるかのような笑みを。
264 名前:戦慄 投稿日:2004/05/18(火) 01:02
それは一瞬だった。
一筋の稲妻がハロプロDFを切り裂いた。
軽やかで、それでいて力強いステップで平家、そして中澤を抜き去る。
「け・・圭坊っ!!頼む!カバーや!!」
「任せろいっ!」
浜崎は右足アウトサイドでボールを押し出す。
つまり浜崎から見れば右へ、保田から見れば左へ抜きにかかる。
ウエイトをそちらへ移す保田・・・しかし、次の瞬間、浜崎は逆を抜けていた。
「・・・ッ!?!」
確かにボールに触れていた。
なのに、逆にボールが動いていたのだ。
足首だけで、ボールを押し出し自分をつり出し、逆へ一瞬にしてボールを動かしたのか・・・。
脇を抜ける浜崎を横目に保田は完璧な敗北を感じた。
265 名前:ののみ 投稿日:2004/05/18(火) 15:48
更新お疲れで〜す!!
早速、読ませていただきました。
大変でしょうが、がんがってくらさ〜い!
266 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 22:36
期待待ち
267 名前:mj027 投稿日:2004/07/12(月) 07:36
期待待ち
268 名前:マルコ 投稿日:2004/07/14(水) 20:26
あと少し・・あと少しでテストが終わる・・・!!
269 名前:ののみ 投稿日:2004/07/15(木) 14:21
テスト、ガンガって下さい!!期待待ち・・・・笑
270 名前:ititetu 投稿日:2004/07/17(土) 12:29
ちゃんと待ってますよ。
テスト、がんばってください。
271 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/29(木) 23:48
人気投票スレで見かけて来ました。
その紹介に
「145センチシリーズと遜色ない」
と言うようなこと書かれてましたが、個人的にはこの作品の方がかなり好きです。
まったり待ってますんで頑張ってください。
272 名前:mj027 投稿日:2004/07/31(土) 19:59
おいらもいつまでも待ってるよ
273 名前:マルコ 投稿日:2004/08/03(火) 00:52
みなさん、スイマセン。長らくお待たせしました!
テスト終わりました。で最近小説読みはじめたので、なかなか時間が作れませんで・・・。
まったり再開します。
>ののみさん、名無しさん、ititetuさん、mjさん
レス&長い間の放置すいませんでした。
>>271名無しさん
初めましてですよね。レスありがとうございます。
「145cm」シリーズは伝説ですよね!あの作品に比べたら僕なんて・・・。
最近初めて本格的に小説というものを読み始めたくらいですから。
とりあえすこれからもヨロシクお願いします。
274 名前:戦慄 投稿日:2004/08/03(火) 00:58
「か・・かおり!頼む・・・っ!!」
両足にしっかり体重を持っていき。左右どちらへのシュートにも対応できる姿勢をとる飯田。
保田を抜き去った浜崎は、迷うことなくシュートモーションに入る。
(・・来るっ!)
左へのシュート・・・そう見せかけた浜崎の勝利だった。
それはフェイントでボールは飯田の股間を抜け、静かにネットを揺らした。
275 名前:戦慄 投稿日:2004/08/03(火) 01:06
この後、しばらくはハロプロのDFも浜崎というプレイヤーに対し慎重に対処する。
それまで君臨していた大FW安室とは違う。
安室の得点センス、テクニックと同等、いやそれ以上の能力を持つ浜崎。
そして安室にはなかった泥臭さ、ハート、気迫・・・そう、何かDFに恐怖感を植え付けるようなプレイヤーだ。
安室も怖い選手であったが、それ以上に浜崎は精神的に敗北を意識せざるを得ないような鬼気迫るものがあった。

しかし、ハロプロのプレイヤーとてこのまま黙っているばかりではない。
特に後藤。
試合前、入場ゲート―――
「・・天才、後藤か・・・」その言葉と不適な笑み・・・。
挑発ともとれるその行為と浜崎の2得点が後藤の負けず嫌いな性格に火をつけた。
276 名前:祈り 投稿日:2004/08/03(火) 01:15
(何ちんたらディフェンスしてんだよ・・・。さっさとボール回せよ)
今井絵里子のシュートを飯田が弾く。平家がそれをクリアした。
エイベックスDF上原多香子がヘディングではね返し、そのボールを拾うhitomi。
ワントラップし周りを確認するhitomiに、突然強烈なスライディングが襲い掛かる。後藤だ。
ボールをかっさらいそのままハーフラインを越え相手陣内へ。
「カウンターッ!早く上がって来い!!」
孤立する後藤。とりあえずドリブルで歩を進めながらボールキープ。そうこうしている間にエイベックス持田香織が後藤にプレスをかける。
日本代表ボランチ持田はしつこいマークで相手エースを封じ込める『エースキラー』。そのエースキラーに対しては後藤さえも例外ではなかった。
「ぐ・・!」(コイツ・・何てプレッシャーかけてきやがる!?)
持田とボールの間に体を入れ自らを壁として使い何とか持田からボールを遠ざける。
絶えずボールを動かしながら、そうでないとすぐにでも持ちだの足がボールを奪うことになる。
その時だった・・・。
277 名前:祈り 投稿日:2004/08/03(火) 01:25
「後藤!パスだっ、出せっ!!」
「・・ッ!遅ぇーよ、いちーちゃん!!」
持田に苦しんだ後藤。ホッとしたように市井へパスを回す。
その時、後藤と市井は彼女たちの間に飛び込んでくるエイベックスの選手を見た。
「・・・っ!!」
DFの上原だった。タイミングよく上がりパスカットしたのだ。
「くっそが!!」
「な、なめんなぁーっ!!」
パスカットした上原に向かって後藤と市井がスライディングタックル。
一瞬早く上原が前線に大きくパス。
後藤が上原の足を削ったが、「プレイオーン!!」レフェリーは笛を吹かない。アドバンテージだ。
後藤と市井、一瞬目が合う。嫌な予感がした。2人ともゆっくりぱすの行方を確認する。
その予感は的中する。そう、ボールを受け取ったのは、浜崎だった。
市井はすぐさまディフェンスに戻る。
後藤は・・後藤はその場に座ったまま、祈っていた。いつの間にか、祈っていた。
もうこれ以上点を取られないように、これ以上失点しないように。
後藤は、これまでのサッカー人生の中で初めて他のプレイヤーに恐怖を感じていた。
278 名前:戦慄2 投稿日:2004/08/03(火) 01:31
DF中澤を背負ってボールを受ける浜崎。
ワンフェイントを入れて前を向き、すぐシュートモーション。それもフェイント。
そのフェイントにかかる中澤。ボールを横にずらし浜崎のシュート。
強烈なシュートに飯田が横っ飛び。何とか手を出しシュートの軌道を変え、コーナーに逃れようとする。
クロスバー直撃。何とか失点は免れた。
セカンドボールの落下点に入る保田。ジャンプの瞬間、何者かに体を預けられる。
「な・・何でお前が・・・!?」
「フン!絶対決める!!」
浜崎だった。ゴールへの執着心。それに保田は震え上がった。
279 名前:戦慄2 投稿日:2004/08/03(火) 01:36
2人が同時にジャンプ。ただ浜崎に体を預けられた保田は思い切りジャンプできない。
体をしっかり当ててることしかできない。そのため浜崎のヘディングは中途半端にGKの手前に落ちる。
着地の瞬間、恐ろしいスピードで反転し、浜崎はボールを追う。
シュートコースは左右に開いている。こんな状況での得点など余裕のことだ。
目でフェイントをかける浜崎。その時・・・。
「やらせるかよっ!!」
市井が体を投げ出しスライディング。浜崎の目の前に体を横にし飛び込む。
ボールがこぼれる。してやったりの市井。浜崎も驚いた表情だ。
280 名前:戦慄2 投稿日:2004/08/03(火) 01:44
「ナイスだべ、さやか!」
「へへ」
ボールに手を出す飯田。
「まだ・・まだ終わりじゃない!!」
「な・・!?」

気づいたときには飯田はゴールネットに寄りかかっていた。横には浜崎。・・そして、ボール。
レフェリーがゴールを告げるホイッスル。
「な・・何があったんだ?・・なあ、さやか・・・」
「あ、あの浜崎って選手・・・スゲェよ・・・」
市井が先ほどのゴールシーンを説明する。
自分のタックルでボールがこぼれ、飯田がボールをキャッチしようとしていた。
その時浜崎は迷うことなくボールに飛び込む。
蹴るとか、ヘディングとか、そんなケチなことにはこだわっていなかった。
浜崎は、ただただボールをゴールラインのの内側へ入れることだけを考えていた。
肩だろうが、顔面だろうが、腹だろうが、背中だろうが、どこでも良かった。ただゴールを奪いたいだけだったのだ。
281 名前:戦慄2 投稿日:2004/08/06(金) 22:32
前半だけでハットトリックを決めた浜崎。
スタンドにいる東芝EMIのスカウト。もう書き込む場所がないほどメモが書き込まれている。ほとんど浜崎についてだ。
テクニック、スピード、判断力・・・どれも飛びぬけていた。
しかし、彼を最も驚愕させたのはそのボディバランスとゴールへの執念だった。
特に3点目のシーン。いったんシュートがクロスバーに弾かれると、シュート時にバランスを崩していたにもかかわらず一瞬で体勢を立て直し、自らセカンドボールを拾いに行く。
そのボディバランスと執念。さらにこぼれたボールへの寄せ。市井に阻まれたシュート、しかし諦めず体を投げ出してゴールに迫る気迫。
対戦相手にしてみれば最も恐怖を植え付けられるようなプレイヤーだ。
スカウトの男は自分の携帯電話を取り出し、クラブへ連絡する。「・・至急、DFの強化が必要」
282 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 22:45
ハーフタイム―――
静かで重苦しい空気がロッカールームに充満していた。
3対0という結果に皆ショックを受けていた。現実を受け入れることはできなかった。
その時ドアが開いた。しかし、この充満した重い空気はそのドアから出て行かない。
「おー・・沈んでんなぁ〜」つんくが遅れて入ってきた。「浜崎っちゅー選手について調べてもろたで」
一斉に皆の目がつんくに集まる。
つんくがA4版のレポート用紙を読み上げる。試合中に指示して誰かに調べさせたのだろう。

浜崎あゆみ。ポジションFW。
現在25歳。新人とは言えない年齢だ。
福岡県出身、高校は名門東福岡。高校選手権3大会連続出場。ただ彼女はベンチにも入れないレベルだった。
高校卒業後、J2のチームへプロテストを経て入団。
2年目で契約解除。ここでも活躍はできなかった。解雇。
その後一昨シーズンまでの足取りは不明。
一昨シーズンは大怪我で治療。原因は不明。
JFLで復帰後、得点量産。そして今年の冬のマーケットでエイベックスに見出された。

「・・ま、そんなトコや」
そのあとで、後半に向けての具体的な指示が出された。
さらに点差を気にしないように、とも。
283 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 23:10
ロッカールームで円陣を組み、気合を入れ直す。
後半に向けキャプテン中澤を先頭に部屋を出る。選手通路の出口にエイベックスの選手が見える。エイベックスはすでにピッチに出ているようだ。
「ハハ・・」エイベックスのユニフォームをかすかにとらえ後藤は笑った。
「どうした?後藤」通路のすみでスパイクのヒモを結び直しながら市井が問いかける。「何笑ってんだ?」
「ヨシザワヒトミに浜崎さん・・・」ピッチの方を睨む。口元には笑みが残っている。
「・・・・・・・・・?」
「いちーちゃん、自分より上に選手がいるっつーのは」腰のストレッチをしながら続ける。「なかなか嬉しいもんだぁね」
「あ?」スパイクのヒモを結び終わり市井は立ち上がり、出口のほうへ歩き出す。
「ソイツらを倒せば後藤はもっと上手く、強くなれる・・・!」
「そうは言うけどよ」後藤の方を振り返らず真っ直ぐ歩きながら市井がそっけなく言う。「3−0だぞ?」
「相手より多く点取りゃいいんだ」
一瞬市井は立ち止まりそうになったが、構わず歩き続ける。
「・・・簡単に言ってくれるよな」
しかし、後藤が言うと妙に説得力があった。少し力が湧いた、それは他のメンバーも同じようだった。
前を見つめながら歩き続ける市井は、あらためて後藤の天才たる所以を感じた。
この飽くなき向上心、自分より上の選手を越えてその先を見ようとする執念・・・。
これが後藤のモチベーションなんだろうな。
アタシはただ、ただボール蹴るのが好きなだけ・・・。
やっぱアタシはそういう風にはなれないんだろうな。
悲しくもあるし、当然だとも思った。
後半が始まろうとしていた。
284 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 23:25
後半のキックオフはハロプロだ。FWの安倍とあさみがボールをセットする。
センターサークル付近で後藤と市井がストレッチをしている。
「とりあえずさ」
「うん?」ストレッチをしながら後藤が口を開く。何か考えがあるようだ。
「あの浜崎さんにボールを持たせたらまずいでしょ」
「だな。何か情報があってあらかじめ対策を立てられたら、また違ってたんだろうけど、前半のプレーだけじゃあな。どーにもならね」
「チーム力に差がありすぎるし、とりあえずの対策にしかならないだろうけど、あの人に入るパスを止めればいいじゃん?」
「そりゃそうだ」シャツをパンツに入れ直す市井。「だけどよ、攻撃もしなきゃなんねぇ、ア〜ンド、パスの供給を断たなきゃなんねぇ。んなスタミナ残ってっか?」
「ん〜・・・?」わざとらしくとぼけた表情を作り「後藤、前半あんま動いてないからいけると思う。つかいける」
「だよな!」その時レフェリーがホイッスルを吹き、キックオフ。走り出す市井。「へばるなよ!後藤ッ!!」
「いちーちゃんこそっ!!」

285 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 23:36
ハロプロ後半初めの攻撃は、右ウイングに入ったアヤカのアーリークロスで終わった。
うまくミートできなかったため、ボールはFWよりもはるか前方に変な回転を伴ったまま飛んでいった。
ゴール方向へ向かっていたため相手GKを一瞬ヒヤリとさせたが、キーパーもその軌道を見送った。
エイベックスのゴールキックで試合が再開されようとしていた。
286 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 23:49
「来るぞ、後藤・・・」周囲を見回しながら、自分と相手との位置を頭に入れる。その上で自分の最善のポジションを探す。
「任せなさいって」その時ゴールキックが蹴られボールが一気にハロプロ陣地まで入ってくる。
そのゴールキックにりんねとエイベックスMF持田香織が反応する。お互いに体を預け合い、うまくジャンプできず、そのままオールがこぼれる。
「セカンドボールッ!拾って!!」ポジションを移しながら市井が叫ぶ。「矢口ッ!!」
「分ぁってらーよ!」タッチライン沿いを転がるボール。矢口とhitomiが追いかける。「渡すかよっ!」
お互いにボールを譲るまいとスライディング。ぶつかり合う2人、こぼれるボール。
(後藤・・・ッ!)心の中で市井は叫んだ。ルーズボールを拾ったMF島袋。それに対峙するのは、後藤。
「へへへ・・」
287 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/06(金) 23:59
(前半だけでハットトリックやもんなぁ・・・)
中澤は後半も引き続き浜崎のマークにつく平家と保田の後ろでカバーできるポジションを取っていた。
まさかこんな選手が相手になるとは・・・、背中の36を見つめながら試合中にもかかわらず冷静にそんなことを考えていた。
そうこうしている間にハロプロの攻撃は終わり、ゴールキックから再開されたゲーム。2度ぼーるはこぼれ、結局エイベックスの島袋がボールをキープしている。
「・・!みっちゃん!圭坊ッ!来るでっ!!」
もう点はやれない。自然と声に力が入る。
とりあえずチェックに向かったのが後藤であったので少しホッとした。後藤なら攻撃を遅らせ、あわよくばボールを奪ってくれる。つまりエイベックスの攻撃にはならない。
しかし、後藤のポジショニングに妙なものを感じた。いや、妙なんてもんじゃなかった。
ボールを持つ島袋と浜崎が一直線に結ばれていた。本来絶対に結ばせてはならない線分が、結ばれていた。
「ご・・後藤・・・」思わず中澤が呟く。島袋が浜崎へパスを出そうとしていた。
288 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/07(土) 00:06
「なるほど・・・」後藤のポジショニングを見て市井は後藤の意図を汲み取った。「考えたな」
そう、後藤は“わざと”島袋に浜崎のパスコースを空けていた。
一見、浜崎にボールを触らせない、という後藤の考えと矛盾するものではあるが、前半3点も取った浜崎にボールが集まると彼女は読んだ。
コースを空けていればエイベックスのプレイヤーは迷わず浜崎にボールを集めてくるだろう。
それが狙いだった。
そのボールを奪えば、浜崎へボールを触らせること無く、ハロプロは攻撃に転じることができる。
(そういうこったろ?後藤)そう思った瞬間、島袋からボールが出た。(・・来たっ!)
後藤の脇を抜けるボールは、浜崎へ一直線だった。読み通りだった。
289 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/07(土) 00:10
(何やねんっ!!あのガキ!天才ちゃうんかい!!)
すんなり後藤はパスを通させる。そのパスは目の前の浜崎に向かっていた。
前半の対浜崎のプレーが中澤の脳裏に蘇る。鳥肌が立つ。
が、その時、島袋-浜崎間の線分を断つ何かが現れた。
290 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/07(土) 00:24
振り返る後藤。浜崎に目をやる。ボールは・・・、市井の足元に収まっていた。
「ナイス!いちーちゃん!!」エイベックスコートへ走り出すと同時に叫ぶ。「カウンターッ!!」
どうだ、と後藤は呟く。これで浜崎に勝ったわけではないが、エイベックスに比べチーム力の及ばないチームを動かし、チャンスを創り出した。
ただ、次の攻め手を後藤は用意できていなかった。今の方法で後半残り役40分乗り切れるほどエイベックスは甘くないないだろう、いやその前に個々人の能力に差がありすぎる。
ハロプロにはポストに入れるプレイヤーがいないが、縦へのダイナミックな攻撃は得意だ。そう後藤は認識している。
ワンタッチでボールがさばける自分と、正確なロングキックを持つ市井、そして縦へ抜けるスピードは日本屈指の矢口。今の攻撃はその特性を最大限に生かしたものだ。
だが、後藤には懸念がある。ここからどうするのか、と。
きっとエイベックスはボールを集める選手を意図的に散らしてくるだろう。すると個人技で劣るハロプロのラインが下がるのは必然だ。
押し上げの少ない状態で、しかもリスクを冒さずに攻めてくるエイベックス相手に少数で仕掛ける速攻だけで通用するとは思えない。
ポストプレイができる選手がいれば、守ってそのターゲットにボールを預けその間にラインを上げボールポゼッションを高めて攻めれるのに。
そうすれば攻め崩す自信があった。いや、ヨシザワ、浜崎を越えるためには崩さなければならない。
ポストプレイヤーが・・・
291 名前:自分より上のヤツ 投稿日:2004/08/07(土) 00:33
市井の右足から放たれたボールはエイベックスプレイヤーの間を見事に抜け、裏に飛び出した矢口へ渡る。
そのパスにスタジアムがどよめく。
1人、2人、3人・・4人の間を疾風の如く抜けていくボール。
一直線に矢口の元へ。もう前方にはFW2人とそのマークにつくDFとカバーのDFの3人しか残っていない。
一気にチャンスが訪れた。
ニアへあさみ、ファーへ安倍。DFは3人。自分も入れば3対3の状況、そう判断した矢口は中に切れ込む。
DFがマークを受け渡す。カバーのDFがあさみへ、あさみについていたDFが矢口へ対応する。
その一瞬を見逃さない―――
あさみがバックステップでゴールから遠ざかる、それとほぼ同じタイミングで矢口からマイナスの折り返し。
体勢を崩しながらあさみが左足でダイレクトシュート。一度はGKケイコのスーパープレーで阻まれるがこぼれたボールに安倍がDFともつれながらゴールに押し込み、後半6分にハロプロが見事なカウンターでスコアを3−1とした。
292 名前:天才に足りないもの 投稿日:2004/08/07(土) 00:55
(真ん中には後藤も上がってたのにな。ま、点入ったからいいか)
さすがに市井-矢口の高速カウンターにはついていけなかった後藤だが、送れてフリーでペナルティエリアでチャンスを伺っていた。
とりあえず一点は返すことができたので彼女もホッと一安心した。
振り向くと点を奪った安倍を中心に歓喜の輪ができていた。
(・・・・・・・・・)
ああ。後藤が呟く。
やはりあの人たちと自分は違う。はっきりどう、とは言えないが、基本的なスタンスが違う。
この後どう攻めればいいのか、とか心配したりしない。ただボールが蹴れればいい、そんな印象を受ける。
自分は・・・
「ご・と・お!」
ハッと顔を上げた。自分でも気づかないうちに足元を見つめていた。
先ほどまであの輪の中に加わっていた市井が1人でいる後藤に気を使ったのだろうか、声をかける。
「どしたの?何かうつむいちゃって」
「あ・・、いや」別に何、ということはない。しかし、何故こんなことを急に思うのかも分からなかった。「何でもないよ」
「いやー、しかしズバッと決まったね、後藤の作戦」
「ふふふ」得意げに笑ってみせる。「でしょー?」
「この〜、調子に乗んな!とにかくみんなにも言っといたから、アンタの作戦」
「・・・そう」
293 名前:天才に足りないもの 投稿日:2004/08/07(土) 01:02
後藤の曇りがちな表情に市井も不信感を抱かざるを得ない。「んだよ?どーした?」
「いや・・・浜崎さん止めても・・・他の選手が止めれないと意味がねえ」
「・・・・・・・・・」後藤の言いたいことが市井にも分かった。
「あと何分かは今の方法でいけると思う。けど向こうもバカじゃない。今は点取ったこともあってパースはこっちにある。けど、ペースや勢いでどうこうできない選手個々の“自力”の差が出て・・」
「なめんなよ」
「!」市井が睨んでいた。
294 名前:天才に足りないもの 投稿日:2004/08/07(土) 01:15
「後藤、お前はさ、試合に負けるのも嫌なんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「なら何故チームメイトを信じない?勝てるって信じない?ハロプロのメンバーをあんま舐めないほうがいい。お前も分かってるだろ?矢口、圭ちゃん、なっちに裕ちゃん、かおり・・・まだまだみんな相当なポテンシャルを秘めてるってこと」
市井のいつになく激しい口調に後藤はあっけに取られていた。ここまで言い終えた市井はいつもの間にかいつもの穏やかでさばさばした表情に戻っていたが、後藤はそれに気づいていないようだった。
「・・本気で勝ちたいって思ってるのはお前だけじゃない。けど勝てるって信じてないのはお前だけだよ」
間もなくエイベックスのキックオフだ。市井は後藤の背中に手を回し自陣へ戻ろうと促す。口調は穏やかな中に力強さが込められていた。
「・・試合と、いやサッカーと本気で向き合ってないのは後藤、お前かもしれない。今まで一番サッカー上手かっただろうし、今でも一番だろ。けどお前とサッカー人生において対極にいるハロプロのメンバーはどんな時だって諦めない。だからさ、そんなお前がチームメイトを信頼してやることで、みんな変わるんじゃないかな」
自分のように・・・、と言おうと思ったがこれは心の中にしまっておいた。
295 名前:マルコ 投稿日:2004/08/07(土) 01:21
今回の更新終了。ストック無くなりましたw
ちょっと書き方変えてみましたが(分かんないかもしれませんが)、読みづらいかも。
それにしても話が進まない・・・
早く4期登場させたい。まったり待ってて下さいな
296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/12(木) 01:50
わ〜い更新されてる。
やっぱり面白いな〜。
私も4期の登場まったりとお待ちしております。
297 名前:ののみ 投稿日:2004/08/20(金) 13:24
更新、乙です。
すんごく、目が離せない展開に、私の中ではなってます。
川´v`)>4期の登場楽しみなのれす!!がんがってくらさ〜い。
ぴったり、まったり、待ってます!!
298 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/23(月) 03:23
庚申乙です。
私も4期の活躍を楽しみに待っとります!
299 名前:マルコ 投稿日:2004/08/23(月) 12:06
>>296名無飼育さん
恐縮です〜。無い知恵を振り絞ってネタ作ってます。
まあ、けっこうネタ考えるの楽しいですがw
しかし4期って人気ありますな〜

>>297ののみさん
いや〜、嬉しいです。
目離さないで下さいねwお願いしましゅ。
がんばるんでずっとぴったりとお願いします〜。

>>298名無し読者さん
どうもっす。
やっぱ4期って人気ですな。何でだろ。
ま、ボク自身も4期推しですが。
個人的にも早く書きたいんで待っててくぅださい
300 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 12:11
完璧なカウンターが決まり士気の高まるハロプロを前に、しかしエイベックスは動じない。
強豪相手に対する1失点ならともかく、格下のハロプロの得点だ。特に気にする必要も無い。
エイベックスにはそれだけの実績と選手個人の実力、そして揺るぎない自身があった。
勢いに乗ろうとするハロプロを制圧していく。
301 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 12:14
「チッ!しまった・・・!!」
パスを出すと見せかけた島袋が保田を一瞬振り切り、シュートコースを開ける。
保田も瞬時に反転しスライディングで島袋のシュートをブロック。しかし島袋のシュートモーションはフェイント。
さらにボールをずらし迷わず右足を振りぬく。
「クッソが!」弾丸のような強烈なシュートがゴールへ向かう。「かおり!頼む!!」
302 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 12:19
保田に1つ目のフェイントをかけた時点で飯田はシュートへタイミングを合わせた。
(・・来るっぺ!)だが、それもフェイク。タイミングをずらされる。(・・・ぐ)
普通のキーパーなら、もう動けない。足が揃ってしまっている。だが飯田は、違う。
諦めない。ギリギリのトコロから体を動かしてくる。まだ誰も彼女の能力を認識していない、それは彼女自身さえも。
かつて福田から言われた。「ハロプロをこれから支えるGKはカオリなんだから」そこからくる責任感なのか、それとも天性の反応なのか・・・。
「うおおおお!」この場面でも飯田はボールに飛びつく。
303 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 12:27
高く上がるボール。落下店に選手が2人。中澤とhitomi。
飯田が何とか手に当てたシュートはゴールこそ割らせなかったがペナルティエリア内に高く舞い上がった。
中澤とhitomiが同時にジャンプ。こぼれるボールは若干hitomiが競り勝ったためゴール方向へ転がった。
すぐボールを拾う今井と、それをぴったりと追う中澤。
(・・我慢や)今井のキックフェイント。一度目のフェイントには動じない・・・しかしゴールがすぐ後ろにあるためいくら自分に我慢を言い聞かせても2回3回と繰り返されるキックフェイントについつい反応してしまう。
今井はその股を抜く。
「うおっ!?」脇を抜ける今井を目で追うしかない中澤。(やられた・・・)
304 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 12:35
矢口がタッチライン際へ転がるボールを追っていた。
中澤の股を抜いたhitomiのドリブルはGK飯田が何とかペナルティエリア外へ蹴り出す。
矢口の前を今井が走りそのボールを追っていた。
「やらせるか・・っ!」鋭いスライディング。
しかしそのスライディングを今井はボールを少し浮かしやり過ごす。そしてそのままドリブルでエンドラインへ向かう。
「・・やろう!」座った状態で今井を睨みつける。「行かせるかよっ!!」
立ち上がると同時に地面を蹴り一気にトップスピードへ。クラウチングスタートのようなスタートから、日本トップクラスの加速力がモノを言う。恐ろしいスピードで今井を捕まえる。
「これで終わりだいっ!」再び鋭いスライディング。が、今度は今井の切り返しでかわされる。「・・ゲッ」
305 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 13:17
今井のセンタリングはミスキックとなりゴールラインを割った。荒く息をつく今井、もう余裕は無かった。
矢口のスピード、それは今井の想像以上であり、いつの間にか追いつかれていた。
今井だけではない。保田と対峙し、タイミングを外し決まるはずだったシュートを飯田に防がれた島袋、こぼれたボールに冷静に反応した中澤を相手にしたhitomi。
エイベックス攻撃陣に、何か嫌な空気が流れる。“何だ、コイツら・・・”そんな空気。
1対1の勝負・・・、前半は完全に振り切っていたはずなのに、コイツら、少しずつ付いてきてやがる。
そして、まだエイベックス攻撃陣は自覚していない心理的プレッシャーが圧し掛かっていた。
それはハロプロの「負けたくない」という雰囲気。
普通のチームなら、3対0となった時点で少なからず心に「負け」の概念が生まれる。弱気になる、攻める気も失せる。そうなればもう勝ちは決まりだ。
どんな勝負も気持ちで負ければ、勝てはしない。
しかし、このハロプロというチームはどうだ?3失点なんてまったく気にしていない様子だ。それどころか格上の自分たちとの試合を、まるで楽しんでいるかのようだ・・・。
306 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 13:23
その後もエイベックスがペースを握っていた。しかし、ハロプロDF陣がその攻撃に粘り強いディフェンスで対応しつつあった。
浜崎がゲームから消えているのが不気味ではあったが、それ以上にエイベックスに嫌な空気が流れていた。
そんな空気を後藤も感じ取っていた。

「みんな!ナイスディフェンス!!」
後藤の後方で市井が手を叩きながらDF陣を鼓舞する。親指を立て勇気付ける。
“まだいける・・・、まだ・・勝てる・・・!”そして何よりもこんな格上の相手とのサッカーを楽しむ、そんな雰囲気がスタジアムに充満していった。
このようなテンションの時が一番反撃に向いていることを後藤は知っている。しかし、どうやって・・・
その時。
「ごっつぁん!」突然背中の方から声を掛けられ振り向く。安倍が立っていた。「どうすればいい?」
「え・・・?」
「攻めるには、なっち、どーすればいい?」
307 名前:信じること 投稿日:2004/08/23(月) 13:29
楽しむことを禁じ、勝負に徹するリアリズムを追及する後藤の中に何かが芽生えようとしていた。
いや、芽生えるのではない・・・はるか昔、まだサッカーを楽しみ愛していた頃の自分が今のシュールな姿勢を突き破ろうとしていた。
「仲間」との信頼関係を築こうとしていた・・・。
思えば今まで後藤は「仲間」と呼べる人間を持ったことはないし、持とうともしなかった。どの選手も自分より下に見えたから。
加えてそのずば抜けた才能と能力からか、周りの選手も後藤を特別扱いし、親しくなろうなんて思わなかった。

後藤は独りだった・・・。

しかし、それで成功してきた。そんな環境も、自らの姿勢も正当化された。
だが、ハロプロにいると後藤の姿勢が、信念が、ぐらつく・・・。
その暖かい雰囲気に飛び込んでしまいたかった・・・。
308 名前:サッカー狂の詩(うた) 投稿日:2004/08/23(月) 13:37
1年後―――・・・
とある大学のキャンパス内に立ち並ぶ真っ白な立方体の建築物。校門に近いほうから1号館、2号館・・と並び、それぞれが学部棟となっている。
3号館と4号館の間にある学食棟の隣にある図書館に彼女はいた。
土曜日の夕方、彼女は必死にペンを走らせていた。親の反対を押し切ってサッカー部に所属している。
勉強に対して口うるさい両親を持ち、新学校へ進み、大学では勉強の妨げになるからと部活動への参加は反対された。
だが、彼女のサッカーに対する情熱は狂気とも言えるほどのものだ。
きちんと勉強すると両親に約束し、反対を押し切りサッカー部へ入部。部活が早く終わったこの日、部活後、彼女は図書館へ直行した。
309 名前:サッカー狂の詩(うた) 投稿日:2004/08/23(月) 13:44
「ふぁ〜・・」大きく伸びをして、あくび。ペンを置き時計に目をやる。6:43.「・・・!ヤッバ!!」
勉強を切り上げ、いそいそと図書館を後にし、一人暮らしをするマンションへダッシュ。
この日はJリーグディビジョン1「ハロプロ×オスカー」の放送がある。
ちょうど一年前のエイベックスとの試合を観た彼女はハロプロの諦めない姿勢に、サッカーを楽しむ姿勢に心酔していた。

細身の体には人並みはずれたバネが備わっていた。一歩進むたびに揺れるストレートヘア。
石川梨華というサッカー狂が奏でる詩が始まる。
310 名前:マルコ 投稿日:2004/08/23(月) 13:53
もう我慢できなくて4期編へ突入。
舞台は1年後です。
石川21歳、大学3年生。吉澤20歳イタリア、ASローマのプリマヴェラ。辻・加護18歳、高校3年生。
年齢はこれで合ってるはず。
ここまで長かった・・・
311 名前:mj027 投稿日:2004/08/23(月) 14:02
更新乙です。
楽しく読んでますよ。
4期編突入ですか、待ってました!!
これからも、頑張って下さいね
312 名前:ののみ 投稿日:2004/08/23(月) 15:32
更新されてる・・・。お疲れです!!
4期登場。。。4期、4期・・・・と書きすぎちゃったかな(反省)。
これからも楽しみにしてるんで、がんばってくださいね〜。
313 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/24(火) 19:48
更新されてる、やったね♪
いよいよ4期登場ですね。ゴールデンコンビがどう成長してるか楽しみです。
314 名前:りんね 投稿日:2004/09/22(水) 14:18
(⌒ ー ⌒)ノ 待ってました
315 名前:マルコ 投稿日:2004/09/25(土) 23:07
>311 mjさん
約一ヶ月ぶりっす。
なかなか時間がなくて・・・書き溜めてはいたのですがね。
とりあえずまったり行きましょう(笑)

>>312 ののみさん
4期登場っすよ〜。
自分も書きたくて書きたくてしょーがなかったんで。
長い長い夏休みが終わってしまい、また更新スピードが遅くなってますが、お許しを。

>>313 名無飼育さん
どうも〜。
なんだかんだ言ってボクは4期から娘。を見るようになりましたからねぇ。
思い入れも深いわけです。ASAYANに初登場したときの辻ちゃんかわいかったな〜・・

>>314 りんねさん
りんねキター!(笑)
りんね、いいですよね。かなり好きでしたよ。
ああ、懐かしい・・・。これからも読んで下さいね。りんねも活躍するはず!?
316 名前:サッカー狂の詩 投稿日:2004/09/25(土) 23:21
「アチャ〜!もう始まってるぅ〜!!」
玄関を開け、何よりも先にTVの電源を入れチャンネルを合わせる。
照明に緑の芝が浮かび上がり、その上を22人のサッカープレイヤーがボールを追いかけていた。
今シーズンもすでに中盤戦だ。FW大谷、斉藤、MF村田、DF柴田を加えたハロプロは現在5位。

「がんばれぇ〜」
11番矢口、10番市井、8番後藤・・今シーズンから一新された背番号だが、スタメンの面子は普段どおりだ。
思い起こせば去年のエイベックス戦以来ずっとハロプロを見続けてきた。

あの日―――

3対1と2点ビハインドになってからのハロプロの粘り。
そしてハロプロから醸し出される充実感・・そう、格上の相手に自分の実力を試すことに対する喜びからくる充実感。
前半対応できていなかった1対1の勝負に徐々に対応しつつあった。
攻撃面においても拙い動きを出しながら安倍がポストに入ることでボールの収まりどころができつつあった。
結局浜崎に追加点を許し4対1で試合終了。数字だけ見れば惨敗だが、後半はハロプロがエイベックスを苦しめていた。
1試合でこれほど能力を伸ばすチームは他にはないだろう。

317 名前:サッカー狂の詩 投稿日:2004/09/25(土) 23:33
プロになるまでハロプロのプレイヤーは後藤を除いて皆、正当な評価を受けてはいなかった。
ただサッカーが好きなだけの下手くそだった。そんな選手たちに石川は共感を抱き、同時に勇気をもらった。
大学の体育連盟所属の部活には高校時代にそれなりに有名な選手ばかりで、中にはU-17代表経験者もいれば、どこかのユースで鍛えられた者もいる。
そんな環境に石川は飛び込んだ。下手くそは石川だけ。5軍まであるチームで、石川は当然のように5軍だった。
しかし、石川のサッカーに対する態度は真面目・・くそ真面目。練習中に手を抜くことは無い。
正直、大学のサッカー部なんて強豪校でもない限り、石川のようなプレイヤーはいない。
プロの厳しさも無い、大学の4年間はサッカーを辞めてもその大学に籍を置きいろいろ進路も考えられる。そういう意味では甘いものだ。
そんな選手の中にあって石川は異色の存在だった。1番下手だが、1番真面目。
そして空き時間に勉強する石川はノリが悪いと言われ、煙たがれる。
318 名前:サッカー狂の詩 投稿日:2004/09/25(土) 23:37
サッカーに限らず体育系の部活にはまずノリの良さが求められる。石川はそれに反発する。
変わり者といわれ、さらに陰口さえたたかれた。

石川は孤立していた。

そんな時だった、ハロプロ対エイベックスを見たのは。
自分がサッカー下手な変なヤツといわれていることを彼女自身も知っていた。
大学へ入りほぼ2年が経とうとしていたころ、もう部活を辞めようと考えていたときだった。
319 名前:サッカー狂の詩 投稿日:2004/09/25(土) 23:43
TVのスピーカーから聞こえる歓声が大きくなる。
身を乗り出し、こぶしを握る。矢口が左サイドを突破した。
「う・・わあ」矢口の鋭いクロスに思わず声が漏れる。
そのクロスに安倍が飛び込みヘディングで合わせる。ボールがネットを揺らした。
「よっし!」石川もガッツポーズ。

もう部活には行こうとは思わなかった。もっと「仲間」と楽しくサッカーがしたかった。
今年、ハロプロのテストを受ける決心をした。
確実に落ちるだろうが、自分のサッカー人生の“一つの区切り”に何かを残したかった。
テストはもう2週間後に迫っていた。
320 名前:悲しみと苦しみの果てに 投稿日:2004/09/25(土) 23:57
成田空港―――
白いヘンリーネックカットソーにグリーンのベロアブルゾン。グレイのダメージパンツにブラウンのワークブーツ。
まるで男のような格好で吉澤ひとみは帰国した。身長も高く、キャップをかぶっているため本当に男のように見える。
時差による眠さもあるだろうが、吉澤の瞳はトロンと力なく焦点が合っていないようだった。イタリアでの厳しい2年間を思い出したくはないが、自然と思い出される。
唇を噛み締めた。

高校選手権で大活躍、大会後の高校選抜のイタリア遠征でASローマに目をつけられ、鳴り物入りでプリマヴェーラへ入団。
しかし上手くいきすぎていた人生には落とし穴が待っていた。文化の違い、サッカーに対する考え方の基本的な違いはこの当時18歳の若者には厳しすぎた。
チーム内での孤立、出場機会の減少・・・契約はあと5ヶ月残っていたが、その前に契約解除を言い渡された。
321 名前:悲しみと苦しみの果てに 投稿日:2004/09/26(日) 00:11
「・・おう、帰ってきたな!」
「・・・む?」目の前に派手な髪の色をした男が立っていた。「・・アナタは?」
「何やねん!覚えてへんのかいな!!」
「はて・・」
「つんくって覚えてないん!?ハロプロの!!」
「あ・・ああ!」
思い出した。1年前の今頃、ローマを訪れた日本人だ。
「思い出したかいな。約束通りハロプロに来てもらうで」
「は?そんな約束してないッスよ。ケーヤク切れたら次のチーム探すときの1つに考えるって言っただけ・・・」
「んな細かいこと気にすんな!ええやん!!1回練習見に来いな!」
「・・・・・・もうサッカーはしない予定ッス」
「な・・・」
322 名前:konkon 投稿日:2004/09/27(月) 00:35
白版、緑版で書いてるkonkonといいます。
サッカー好きにはたまらないすばらしい作品ですね♪
よっすぃはどうなるんでしょうか?
交信お待ちしてます。
もしよければ自分の作品も呼んでくださいね〜。
323 名前:ititetu 投稿日:2004/09/30(木) 20:51
更新お疲れ様です。
遂に4期メン物語ですね。

よっすぃ〜がサッカーをやらない?
これからどんな展開になるか楽しみです。
マルコさんの一番良いペースで進めていってください。
無理は禁物ですよ。
324 名前:ののみ 投稿日:2004/10/01(金) 11:32
更新、お疲れ様です。
4期メン登場!!
ますますどんな展開になるか楽しみです!!
ムリせずがんがってください!!!
325 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/03(日) 03:08
がんばれよっすぃー、がんばれマルコ!!
326 名前:mj027 投稿日:2004/11/04(木) 17:45
元気かな〜
327 名前:マルコ 投稿日:2004/11/11(木) 22:24
>>322 konkonさん
はじめまして!読んでいただいてとても光栄です。
konkonさんも書いてるんですね。是非読ませていただきます。

>>323 ititetuさん
お久しぶりです〜。しかしもう最後の更新から一ヶ月以上経ってるとは・・・。
時が経つのは早いものです。今年も残すは今月と来月だけですからね。
関係ない話ですねwまたヨロシクです

>>324 ののみさん
4期です。そのうち辻加護編にも入りますが、今は石川吉澤編です。
この二人はけっこう掘り下げられて個人的に思い入れが強くなってきました。
ダメダメの石川と天才と称される吉澤、どーなっていくのか?とうご期待!?

>>325 名無飼育さん
頑張ります!気張っていきますYO!!

>>326 mjさん
元気っす!大変永らくお待たせしました〜。

読んでいただいてるみなさん、本当に本当に長い間お待たせしました。
必ず最後まで書こうと思いますので、長い目で見守っていて下さい。
それでは、再開します
328 名前:悲しみと苦しみの果てに 投稿日:2004/11/11(木) 22:54
思わず絶句した。つんくがあの時感じた嫌な予感が当たってしまった。
イタリアで出会ったとき、もうボロボロのようだった吉澤は、とうとう壊れてしまったのか・・・。
「そういうことっス。もう・・サッカー、怖いっス・・・」そう言う吉澤の瞳は力無く揺れていた。
「・・それでええんか?」
「・・・・・・・・・」
「そんな終わり方でええんか?」つんくの言葉に力が入る。「あ?」
「・・カンケー無いじゃないスか」俯く吉澤。
「関係無いことあるかい!選手権のころから」全国高校選手権のことだ。「ずっとお前を見てきたんや」
「・・・・・・・・・」俯いたまま鼻の頭を指で掻く。鼻をすする音が小さいが聞こえた。
「弱小校をお前が全国に導いた」諭すようにつんくが続ける。「その才能を・・」
「アンタに何が分かる・・・」俯いたままの吉澤が呟く。
「ん?」
「うっせーんだよ!」顔を上げた吉澤の瞳は充血していた。「うっせーよ、才能、才能って!!」
「・・!」
みるみる吉澤の瞳に涙が溜まっていく。「才能なんてどーでもいいんだ!楽しくサッカーしたいんだよ!!イタリアでもそうだった、天才やら才能があるやら勝手に言いやがって」
「・・・・・・・・・」
「結局それでチーム内で反感買って、独りぼっちだったんだ。」
口調を荒げる吉澤の様子がイタリアでどれほど辛い思いをしたかを物語っていた。
「・・サッカー・・・楽しくやりてえよ・・・」吉澤の大きな瞳から涙が零れ落ちた・・・。
329 名前:悲しみと苦しみの果てに 投稿日:2004/11/11(木) 23:23
ふぅー、と大きく息をついてからつんくが口を開く。
クールな見た目からは想像できないほど取り乱した吉澤の姿を前にして、できるだけ動揺を見せないようにつんくが口を開く。
「だからこそハロプロに来い。・・ウチにはオレがセンスある、と思った選手を集めたチームや」
「・・・・・・・・・」涙を隠すように再び俯く吉澤。
「オレが思うセンス・・・、才能ってのはな、まずサッカー“愛”ありきや」
一瞬吉澤の体がぴくりと動いた。
「どんなに上手いボールコントロールを持っていても、どんなにパス、ドリブル、シュート、ディフェンスが上手くてもな」
顔を上げた吉澤の瞳をじっと見つめながらつんくが続ける。「サッカーに対する愛が無けりゃあ、意味が無いねん。オレにとっては」
「ホ、ホントにハロプロってのは・・・」信じられない、吉澤はそんな表情だった。
「けっこう批判もあるけどな。甘いって。」自嘲気味に話す。「特にイタリアで本場のカルチョ体験してきたお前には特に甘いって思われるかもしれんけどもな」
セリエAのトップチームのユースチーム「プリマヴェーラ」ではもう選手はプロ契約をチームと結んでいる。つまり若い年代からすでに激しい選手間の競争とクラブとの信頼関係を築かなければならない。もちろんここでの信頼関係とは活躍できるかどうか、である。
「ま、ウソやと思うなら1回練習見に来てみ、な?」
「・・・・・・・・・」
「いつでもええで。それじゃあな」後ろを振り返り歩き出す。「・・あ、あと1つ言うとく」
体の向きを変えず首と目だけを動かし吉澤を見つめる。いや睨んでいた。
「サッカー辞めるとか言うなや。ええか?」口調に少し怒りが滲んでいた。「高校時代、お前のサッカーを信じてついていった連中に失礼や。それに何よりサッカーしたくても、大好きでもできんヤツなんてぎょうさんおんねん。その点お前は恵まれとる。そやろ?実力があるんや、サッカーしよ思たらどんなチームやって入れるやろ。それに」ここまで言ってつんくはにやりと笑った。「お前にはオレの言う“才能”あるしな」
330 名前:悲しみと苦しみの果てに 投稿日:2004/11/11(木) 23:27
必ず練習来いよ、そう言い残しつんくは去った。
呆然とその場に立ち尽くす吉澤。サッカーを辞める・・・。本気でそんなことを考えていた自分が恥ずかしかった。
確かにサッカーに対する恐怖心はまだ心を支配していた。だが・・・「行こう。ハロプロの練習を見に・・・1回行ってみよう」
331 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/12(金) 00:16
「ハハ・・来ちゃったい・・・」
つんくと空港で出会ってからほぼ2週間後、吉澤ひとみはハロプロを訪れた。
スニーカーにブーツカットジーンズ、トップスはカットソーを2枚重ねて黒いコートを羽織っていた。
2月半ば。風はまだ冷たく頬をなでるが季節は着実に春に近づいていると実感できる暖かな日差し。
一応サッカーのできる用意も持ってきていた。
クラブハウスのフロントでつんくの居場所を聞くと、練習中なのでAコートに出てもらえば分かる、と言われた。

「Aコート、Aコート・・」
クラブハウス内の案内図で確認する。どうやらAコートとBコートの2つあるらしい。Bの方はその場から窓を通して確認できた。紅白戦らしきものをしているようだ。
一瞬そっちかと思ったが、フロントで言われたとおりAコートの方へ出る。こちらではカラーコーンなどを出して本格的な練習が行われていた。
だがつんくの姿は見えない。
「あ・・あのう・・・つんくさんは今どこに?」一番近くにいたコーチらしき男に声を掛けた。
「つんくさんなら今Bコートの方だよ。で、アンタ誰?」
「吉澤ひとみです。少し前につんくさんに練習見に来いと言われまして・・」
「あ〜」その男は目を大きく開き「君が吉澤さんか。話は聞いてるよ。つんくさんは今Bコートで入団テスト見てるよ」
「は・・入団テスト・・・」
お礼を言いその場を後にしBコートに向かう。さっき覗いた時の紅白戦は入団テストだったのか。
(マズイときに来ちゃったかな)
332 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/12(金) 00:32
Bコートに入る。すぐにつんくの姿が見えた。先ほどの窓からはちょうど死角になっていたようだ。
コートがあり、入り口から後ろ向きにベンチがありそこにつんくが座っていた。
つんくの横に立ち声を掛けた。
「お!びっくりした!!」大げさに驚いたふりをする。「よう来たな」
「あの・・スイマセン」頭を下げながら続けた。「今日が入団テストなんて知らなくて・・・調べてくればよかったんスけど」
「ん・・そんなことええわい。ま、そこ座りや」
「ども」つんくの指示に従いベンチに腰をかける。
「そういや今日は練習見に来たんやったな」
「ハイ。そうですけど」
「じゃ・・」腰を浮かす。「こっちを見とるわけにゃいかんっちゅーことやな」
「え・・いいっスよ、別に」顔の前で手を振る。「急に何の連絡も無く来たアタシが悪いんで」
「そうか?じゃあ、もうちょいこっち見とこか」そう言って再びベンチへ座る。
コートの方へ目を向けるつんく。手にはノートが広げられていた。
つんくに続いて吉澤もコートを見る。22人がボールを追っていた。
333 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/12(金) 00:47
中学の頃からプロチームに目をつけられる選手もいれば、高校で活躍してプロチームにスカウトされる選手もいる。
そしてどこからも声を掛けられず、しかし夢を諦めきれずこうして入団テストという形で自分を買ってもらおうと必死にもがく選手もいる・・・。
何だろう・・?才能って、何なんだろう・・・?
海外サッカーを見るたびに思ってしまうことを、この入団テストを受ける選手たちを前にしても思ってしまった。
特にフランス代表でスペインの強豪レアル・マドリードで世界中の人々を魅了するZ.ジダンの美しいプレーを目の当たりにすると才能とは何なのか、と問いたくなる。
なぜこんな思いになるのか分からないが、ただ「不公平さ」に腹が立つ、この言い方が正しいかどうか分からないのだが。
もしサッカーに神様がいて、自分の思いをぶつけることができるのならば、ずべてのサッカーを愛する人々に平等に“才能”ってヤツを与えてやれ、と言いたい。

ふいにボールが吉澤たちのサイドのタッチラインを割ろうとしているのが目に入った。そしてそれを恐ろしいほどのスピードで追う選手も。
スライディングでボールに飛びついたが、結局ボールはタッチを割った。
「ハアハア・・クソ!あとちょっとで間に合ったのに・・・!!」
その選手は荒い息遣いを整えながらボールを拾い、相手のスローインをする選手へ渡した。
自然とそのプレイヤーに目がいく吉澤は、驚いた。およそこんな泥臭いプレーが似合わないような、そう美少女と言っても言葉が足りないくらい綺麗な顔立ちをした選手だった。
何か彼女には心を打たれるようなものがあった。その後しばらく彼女のプレーに見入った。
334 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/12(金) 01:00
ボールの扱いは上手い方ではない。ただその信じられないくらいのスピードと、何よりがむしゃらな姿勢には何かを起こしそうな・・・何かが備わっているような気がした。
それにどうだ?彼女の瞳の輝きは・・・。
どんなにこの22人の中で自らのテクニックが劣ろうが、そんなことは気にしていない。
ただただ一生懸命ボールを追い、ただただサッカーに身を委ねていた。
がんばれ・・、つい口に出しそうになってしまう。
あんな人とサッカーしたら楽しいだろうな・・・。
ちょっとサッカー上手いからっていい気になってるようなヤツなんかより、ああいう選手が“本物”に近づけると思うんだけど・・・。やっぱ無理だろうな、プロ入りは・・・。
ちょっとでも上手くて、ちょっとでもチームの勝利に貢献できる選手・・・プロが求めてんのはそこだ。
残念だ・・・、あの可愛い子ちゃん・・・。
クソ・・・、一番大切にしなきゃなんないのはああいう選手だろうがよ・・・。
335 名前:mj027 投稿日:2004/11/12(金) 22:09
更新乙です!
お久しぶりですね〜待ってましたよ。
お元気そうで何よりです
336 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:57
おつです。待ってました。
337 名前:マルコ 投稿日:2004/11/13(土) 00:04
>>335 mjさん
>>336 名無飼育さん

早速のレスどうもです。久々に連続更新です〜
338 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/13(土) 00:16
「うーむ。あの7番ええな・・・。おもろそうや」
「ハ!?」思わず声が出てしまった。「え、どっちの?」
「あ?さっきこっちのタッチラインまでボール追いかけてきた子や。赤いビブスの」あごをしゃくって吉澤を促す。
吉澤はまさかと思いつつ、ピッチに目を抜ける。間違いない、あの選手だ。・・・あの可愛い子ちゃん。
「おもろいのが見つかったで・・・!」独り言のようにつんくが呟く。「あの7番、アイツはきっとええプレイヤーになる・・・」
「・・・・・・・・・」(ハロプロって・・・)
「技術も無い、有名な選手でもない・・・それが何やねんな。あの7番にはもっと大切な、いや、一番大切なもんが備わってるやんか」
その時ホイッスルが鳴らされた。20分のミニゲームの3本のうち1本目が終わったのだ。
「さて、と。じゃあそろそろAコートの方行こか、吉・・・・・・アレ?」

「どこ行った?」
「つんくさん!!」
「お前、どこへ・・・・・・って、そのカッコは!?」
「スンマセン!ちょい動けるカッコに着替えてきましたぁっ!!」
「・・ハア!?まさか、お前・・・」
「へへ。あの7番と同じチームでアタシを出して下さい!」
「え、えーっ!!」
「いいじゃないスか。アタシもハロプロに入るかもしれないんだし」
「いや・・お前、レベルっちゅーもんを考・・・あ!」
「交代ね、審判。アタシがボランチに入るから」
「早・・・。ったくしゃーないな〜・・・・・・。おい!赤の5番交代や。ソイツ(吉澤)にビブス渡したれ」
「そうこなくっちゃ!」
339 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/13(土) 00:40
「ふぅ〜。疲れたぁ・・・」
1本目のゲームの終わりを告げるホイッスルとともに各選手がコートの外に歩き出した。石川も同じようにピッチの外に出た。
中には友達同士や、知り合い同士でテストを受けに来た者もいるがそれは少数派で、大多数は1人でこのテストを受けに来ている。石川も当然その1人だ。
スポーツドリンクが振舞われ石川はそれを受け取り、喉を潤すため一口口に運んだ。
(やっぱりテストを受けに来るだけに)ボトルを地面に置き、周りを見回しながらストレッチをする。(みんな、上手い・・)
そりゃそーだよね。思わず石川は苦笑いを浮かべた。
午前中行われたフィジカルテストでは石川はかなりの好成績を修めたのだ。特にスピードとスタミナ面では他選手を凌駕していた。そんな午前中だったから、午後のゲームでのテストでもやれるんじゃないか、と淡い期待を抱いていた。
(ま、いーや)もう一口スポーツドリンクを飲む。疲れた体内に浸透していく。(思いっきりやろ)
その時、自分のチームの選手に交代が告げられた。まさか自分も交代じゃないのかと嫌な予感がした。
そりゃそうか、一番下手くそだし。開き直ってみたが、胸の奥から熱い思いが込み上がってきた。
まだボールが蹴りたい・・・。
しばらくビクビクしながらストレッチをしたり、ダッシュを繰り返していたが、どうやらそれ以上の交代はないようだ。周りの選手たちも心なしかホッとしたように見えた。
(よかった・・・)まだサッカーができる、そう思うだけで妙にテンションが上がってしまう自分の単純な性格に吹き出しそうになった。
そこへボールが転がってきた、いや、その表現は適切ではない。パスが来た。そう、それは誰かが自分へ意図的に出したボールだったのだ。ボールをスパイクの裏で止める。
「・・・・・・・・・」ボールが来た方向に顔を上げる。「・・アナタは?」
そこには背が高く、その大きな瞳でこちらを見つめていた。赤いビブスを付けていた。どこかで見覚えのある顔だった・・・。
340 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/13(土) 00:52
「まさか、あの吉澤ひとみがこのテストに参加するとはな」つんくが続ける。「後藤と同等、そんなスーパースターが・・・。今日テスト受けてるヤツは幸せなんか不幸なんか分からんな」
ふふん、と鼻で笑い吉澤のほうに目をやり、なあと声を掛ける。
「いーや・・」スパイクのヒモを結び直しながら吉澤が答える。「誰もアタシのことなんか覚えてないスよ」
若くして天才と呼ばれた選手が少しの間でも活躍の知らせがないとほとんどの人がそのプレイヤーの存在を忘れてしまう。
そのくらい今の日本は良い若手の宝庫なのだ。入れ替わりが激しく、気を抜けない。
事実、当初ローマへ蟻のように集まっていた日本のマスコミの数は、日を追うごとに少なくなり最終的には0になった。海外にいる“だけ”の存在となった吉澤にはユース代表の招集もかからなくなった。
「そんなことないやろ〜」
「いや、ま、どっちでもいいんスけど」右の頬を掻きながら「とりあえず久々のサッカーなんで」近くにあったボールを蹴り出す。「楽しむだけっスよ」
ボールは真っ直ぐ7番をつけたプレイヤーの元へ転がっていた。丁寧なパスだった。サッカーの楽しさをようやく久々に感じられるかもしれない、その期待が込められていた。
341 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2004/11/13(土) 01:07
どっかで見たことあるんだけどなぁ〜・・・。テレビだっけ・・・
今、自分と同じチームでプレーしているあの長身のボランチの名前を思い出せそうで思い出せなかった。
周りのプレイヤーはさして気にも留めている様子は無い。自分の思い違いかと思おうとするが、どうにも腑に落ちないものがあった。


場面は先ほどの彼女が石川にパスを出してきたところだ。
パスを止めると彼女は真っ直ぐ私の方へ歩いてきた。何か余裕のある笑みを浮かべていた。
「名前は?」歩きながら彼女は聞いてきた。
「い・・石川梨華・・・」彼女の、何と言うかオーラのようなものを感じた。同時に、この人サッカー上手い、そうも感じた。
「石川梨華・・・。梨華ちゃんか」
「・・あ、あの」
「ヨロシク」手を差し出す彼女。
「は、はい」その手を慌てて握る。「ヨロシクお願いします」
彼女は柔らかい笑みを浮かべた。そして「アタシは」急に目に真剣な光が宿った。私の目を覗き込んできた。「梨華ちゃんのプレーを見てワクワクしちゃって、このゲームに参加することになったんだ」
え―――。アタシのプレーで?言葉にできない何かが胸に去来した。誰かにこんな風に言われたのは初めてだった。
やっぱサッカーは楽しまないとね。そう言って彼女はコートへ入っていった。


そんな言葉を掛けてくれたからか、いや違う。どこかで彼女を見たことがある。かなり有名で凄い選手だ。その証拠に、彼女はこのコート内において、格の違う選手だったのだから。
パスの正確さ、スピード、ディフェンスの鋭さ、ゲームを読む力・・・。こんな人がいるんだ・・・。私はテスト中なのに、ゲーム中なのに・・・彼女のプレーに見とれていた。
ただ一つ気になることがあった。うまくは言えないが、どうも彼女のプレーがギクシャクしているような感じがするのだ。ただの思い過ごしかもしれないが、何かミスを恐れているように見えた。
342 名前:マルコ 投稿日:2004/11/13(土) 01:10
そう言えばみなさんは応援してるチームはあるんですか?国内外のチーム問わず。
良かったら教えてください。何か急に気になった。
ちなみにボクはイタリアのユヴェントス好きです。もう彼此10年近く応援してます。
343 名前:ののみ 投稿日:2004/11/15(月) 10:18
更新お疲れ様です!!!
りかよしコンビの展開も面白そうで、続きが楽しみです!!
この小説を読んでいると、自分の頭の中で、実際のドラマみたいな感じで
想像して、いつも読ませてもらってます。
個々の特徴をよくつかんでますね。。。。笑

>応援しているチーム
わたしは、どちらかというとサッカーより野球派なんですが、球技観戦は大スキなんですけど。。。。
しいていうと、地元大阪のC大阪かな。。。。。海外チームは詳しく知らないんで。。。。
選手的には、モリシ・・・(この物語でいうと”やぐっちゃん””のの”あたり!?)
みたいなプレーヤーが好きです!!(シブすぎますかね。。。。汗)

344 名前:ititetu 投稿日:2004/11/18(木) 23:51
あの、自分はアルビです。
というか・・・ここ以外を応援すると「非県民」の扱いを受けそうで(^_^;)
地震は、大丈夫でした。
かなり揺れましたけど。
345 名前:mj027 投稿日:2004/11/19(金) 01:38
こんにちは更新おつです。
自分はアントラーズですかね。一応自分の出身県の選手がいましたから。
その選手は今はいませんがまあ来年帰って来るでしょう。
どの選手かわかったかな!
では
346 名前:ititetu 投稿日:2005/01/01(土) 12:07
謹賀新年
今年も読ませていただきます。
マルコさんのペースでまったりと続けてください。
347 名前:マルコ 投稿日:2005/01/26(水) 23:13
近日中に再開予定。
まだいますか?
348 名前:nonomi 投稿日:2005/01/27(木) 09:38
いますよ〜笑。楽しみにしてるんで。。。。
川´v`)ノ<無理せず、マルコさんのペースでがんがってくらさ〜い。
349 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/27(木) 20:50
おう待ってるよ〜
個人的に一番好きなサッカー小説なんで
350 名前:ititetu 投稿日:2005/01/28(金) 23:31
お待ちしてましたよ(^_^)v
再開楽しみです。
351 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 18:11
クッソ・・!アタシはまだイタリアでの嫌な記憶を引きずってんのか!?

ボールを求めるくせに、いざ自分の足元に来ると異常に体が硬くなってしまう。
ボランチというポジションゆえ、そこでのミスは即ピンチになるため確かにミスは許されない。
しかし、この緊張はどうだ。
脳裏をイタリアの連中が埋めていく。
パスを受ける。

集中しろ!イタリアがどうした。ここからアタシの新しいサッカー人生が・・・。

闇に包まれる。イタリアにいた頃のチームのメンバー、言葉の壁・・・全てのプレシャーがボールを媒介にして蘇ってきた。
「・・しまった!」トラップが大きすぎた。相手選手が詰めてくるのが見えた。「くそが!」
相手が一斉にラインを上げた。右サイド深くにスペースがぽっかり空いていた。

あそこスペース空いてんじゃん!!

味方の選手は相手の動きに合わせるように引いてきた。イタリアでもそうだった。無理矢理そのスペースにパスを出したことがあった。
言葉が通じないのでプレーで自分の意思を表したのだ。
怒鳴られた。何だそのプレーは、誰もいないだろう、と。恐らくそんなことを言っていたのだろう。
アタシにはそこが見えてるんだよ!そう唇を噛み締めた。必死に暗闇の中でもがいていた。いつしかもがく力も尽きていた。
そして日本に帰ってきたが、胸に刻まれた傷は思った以上に深かったようだ。

しかし、そこに一筋の光が差し込んできた・・・
その光は闇を切り裂き、吉澤を闇の出口へ導いているようだった・・・
352 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 18:19
「・・ああ」相手がボールに飛び込んでくるのを冷静に交わし呟く。「出口だ・・・」
石川梨華が、他の選手の動きに逆行してそのスペースに飛び出していくのを吉澤は確認した。
約55メートルのロングパスだった。大きく体を開き、ボールを蹴り出す。ダイナミックなフォームだ。
(この感覚・・懐かしい・・・)思い通りの弧を描くボール。
吉澤は全身に鳥肌が立つような感覚に襲われた。
(これだ・・これだよ・・・)誰かと心を交わす。理解し合う。言葉を持ってしてもそうそうできるもんじゃない。でもサッカーだとそれができる。
一瞬のアイコンタクトでお互いの考えが一致する。小さな、しかしそれでいてすごい奇跡・・・。
吉澤ひとみと石川梨華の考えは一致した。

“右サイド奥のスペースへ!!”
353 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 18:26
石川の驚異的なスピードにもそのパスは完璧に対応していた。そのボールをトラップする。
石川の頭の中に一つの確信が生まれた。
このロングボールを出すときのフォーム・・・間違いない。
あれは2年前の高校サッカー選手権。
たった一人でチームの全てをコントロールする大型ボランチ。
特にそのロングボールを蹴るフォームが石川には印象的だった。
大空に飛び立とうとする鷲――――。
堂々としながら貴賓のようなものも感じられる・・・まさにフィールドの王の風格。
天才後藤真希を抑えこんだ埼玉の・・・吉澤ひとみだ・・・。
354 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 18:42
すごい・・すごい人とサッカーしてるんだ・・・!

ボールを受ける。流れるような美しいトラップだった。石川自身もこんなに上手くトラップが決まったことに驚いていた。
吉澤のパスが丁寧で、コントロールしやすいボールだったこともあったが、何よりも2人の間に漂う空気がお互いのプレーを高めていた。

いいトラップすんじゃん!

吉澤も前線に向かう。相手のマークをかいくぐりながら。時に真っ直ぐ、時に方向を変え、そしてそのスピードにも変化を加えて。
「吉澤さんっ!!」石川が叫ぶのが聞こえた。何故自分の名前を知っているのだろうか。覚えている人がいたのか?
そんな疑問も自分を真っ直ぐ見据える石川の瞳で消えた。というよりそんな暇は無かった。

センタリングが来る。

ゴールとその前に立つ門番の位置を確認する。
石川の右足から放たれたボールはFWやGKから離れる軌道を描き、ペナルティエリアに少し入ったところにフリーで待つ吉澤のもとへピンポイントだった。
体を倒し、吉澤はボールを十分に引きつける。ボレーでボールを捉えた。
足を小さく振りぬき抑えの利いたシュートは、見事にネットを揺らした。
355 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 18:47
パンッと1つ手を叩き、石川は右手の拳を振り下ろす。我ながら完璧なボールだったと思う。
そこからきたガッツポーズだった。
「ヘイ」
越えのほうを振り向く。吉澤がこちらをずっと見つめていた。
左手を腰に当て、右手の人差し指は石川に向けられていた。

やるじゃん。

そんな目で見つめていた。
石川はガッツポースの右手の拳をそのまま吉澤に向けた。
356 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 19:10
3本目のゲームに吉澤は参加しなかった。
つんくの隣に座り、タオルを首にかけスポーツドリンクを飲みながらそのゲームを眺めていた。
久々の充実したサッカーを彼女は何度も何度も振り返っていた。目を閉じると、あおの石川へのロングボールの場面が蘇る。
ボールにインパクトした感触はまだ残っている。
「ねえ、つんくさん」汗をぬぐいながら横に座るつんくに声をかける。
「ん?何や」忙しそうに何やらノートに書き込んでいる彼は顔を動かすことなく答えた。
「才能って何なんスかね・・・」そう呟く吉澤はぼんやりと今行われているゲームを見つめていた。
「・・・そやな」ノートに書き込む手を休ませることなく答える。「ペレ、ジーコ、クライフ、マラドーナ、R.バッジオ、ロナウド、ジダン、ロナウジーニョ・・・。ま、すごいって言われてる選手はもっとおるけど、才能ってヤツはソイツらに共通したもんやな」
「・・・・・・・・・」吉澤は試合の模様を見つめたままつんくの次の言葉を待った。
「人それぞれに才能の定義はあるやろ。そやからオレが考える才能ってヤツしか答えられんで」
またも吉澤は黙ったまま。しかし一瞬その瞳がつんくの方へ動いた。
「オレの考える才能・・・そやな、それは“人の心を動かせる力”やな。うん」
それを聞いた吉澤はおもむろにつんくの方へ首を回した。
「もちろん」つんくも吉澤の方へ顔を向けた。「サッカーが大好きでたまらん、サッカーが楽しくってたまらんっていう気持ちが大前提やけどな!」
そう言ったつんくは吉澤へ笑顔を見せた。片側の唇を上げ吉澤が答える。
「それを聞いてホッとしました」瞳に力強さが戻ってきた。「アタシをハロプロに入れて下さい」
「アホ!ホッとしたのはこっちやで!!」

その言葉で2人とも笑った。
つんくがホッとした理由―――。
それは2つある。言うまでもなくハロプロに加入させたこと。吉澤の加入はハロプロにとって大きな戦力になることは間違いない。
そしてもう1つ。サッカーへの希望を失った若者をもう1度光の下に導けたことだ。
「あとはあの子やな」
そう言って2人は同じ選手に目を向けた。
357 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 19:24
吉澤は石川の横に並んで練習コートの脇の道を夕日に向かって歩いていた。
傾きかけた太陽が眩しかった。
正式な文書は今度送るから・・・。その言葉が頭の中を巡っていた。
ちらりと石川の方へ目をやると、彼女はぼんやりと前を見つめていた。
日差しに目を細めてはいるが、夢の中を彷徨っているかのようなトロンとした瞳だった。
「・・信じられない?」
ハッとした様子で我に返る石川は大きくうなずき「そ・・そりゃそーだよ!」
「ハハ」この慌てっぷり。思わず笑いがこみ上がる。
「だってアタシはホントに今日でサッカーやめようと思ってたし・・・」そこまで言って、1つ大きく息を吸い、改めて事態の急展開を振り返るような表情で「・・まさか、こんなことに・・・」
そんな姿を吉澤は目を細めて見つめていた。アンタにゃあ、その資格があるよ、と心の中で呟いた。
「あ〜・・これ現実?ねえ、ねえ」
「ハ?ほっぺつねったろか」言うより先に石川の頬をねじり上げる。
「イダダダダダ!!!!」
「現実。ね?」
「は・・はひ・・・」頬をさすりながら「ほんろにつねらなくてもいいじゃん・・・」
「ハハハ」
358 名前:胸の中に覚えた痛み、今・・・ 投稿日:2005/01/30(日) 19:32
その時、前方からこちらに向かって歩く2人の姿が見えた。
夕日のおかげで長い影だったが、すれ違うときに2人の背の低さが分かった。
幼そうな彼女たちの向かう先はハロプロのクラブハウスのようだ。というかこの先にはそれしかない。
「・・・今の2人・・・」おもむろに石川が口を開く。
「ん?」
「どっかで見たよーな」頭の中の記憶をひっくり返すかのように深く首を傾けながら石川が言った。
このサッカーマニアめ!吉澤は心の中で笑った。ただそのサッカー馬鹿は自分のことを覚えていてくれた。
きっといろいろな選手のことを調べているのだろう。自分の夢をそういう選手に重ね合わせていたのかもしれない。
「・・ユース代表・・・・・・だったっけ?」
「そうなの?」
「・・“片方は”ワールドユースに出てたよーな・・・」
359 名前:マルコ 投稿日:2005/01/30(日) 19:43
久々です、みなさん。明けましておめでとうございます。
今後ともヨロシクっす&超遅更新ご勘弁。
それにしても長い話になりそうですわ・・・。
360 名前:nonomi 投稿日:2005/01/31(月) 15:34
更新乙です。
そういえば、私も言ってなかったです。
あけまして、おめでとうございます!!!
今年もまったりでいいんで、頑張って、書いてくださいね。
楽しみにしてますから・・・。
昨日の横浜飯田さん卒コンより、ただいま帰宅のnonomiでした!!!
361 名前:ititetu 投稿日:2005/02/04(金) 22:46
更新お疲れ様です。

よっすぃ〜&梨華ちゃん編、いいですねぇ〜(^_^)v
せーしゅん!!って感じで。

梨華ちゃんの卒コン、よっすぃ〜はどんな言葉を送るのか・・・
チケット、捕れなかった・・・
362 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/06(日) 21:02
更新おつです
更新ついでに最初から読んでみたけどやっぱ良いね
お互いの求める所にいてくれる辻加護
しかも時々妙に維持張り合ったり
そしてアイコンタクトだけで通じ合ういしよし
この4人がはやくプロのフィールドで戦うところがみたいっす
363 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/03(日) 08:45
そろそろ更新こないかな〜
364 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/05/29(日) 23:54
事件はワールドユース出場を決定するU-20アジア杯3位決定戦で起こった。
日本対カタール。この試合に勝てばワールドユースへの出場権が得られる。
U-17世界選手権への出場を果たせなかったこの世代の、ワールドユースへ懸ける思いは並外れたものだった。
辻希美と加護亜衣もユース代表としてこの試合に出場していた。
加護はスタメンに名を連ね、辻は1−1の同点の状況で後半10分からの出場である。
近年急速に力をつけているカタールの猛攻を上手くかわし、日本は中盤で上手くつなぎゴールチャンスを作り出す。
後半17分、加護のシュートはわずかに枠を外した。
「チィッ!」
「どんまい、あいぼん!」
声の方向に向き直るとそこには自分にパスを出してくれた選手が親指を立てて立っていた。笑顔の辻だった。
「おう!次は決めるで」
365 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/05/30(月) 00:05
その目は集中し切っていた。それはどの選手も同じだ。勝利を渇望する空気が日本を包み込んでいく・・・。
カタールの10番が個人技で日本DF陣を切り裂く。
囲む。
激しいチェック。
見事なプレスだった。パスコースの潰し、ドリブルへの対応。ボールはこぼれ、辻の元へ転がる。
ラインを上げてたカタールのDFラインの裏へ加護をはじめ日本攻撃陣が侵入を試みる。
その動きを辻も当然視野に捉えていた。しかし。
「・・な!?」
ゲームを見る者、する者すべて言葉を失った。それはカタール側も同様に。
辻の足から放たれたボールは前線へ、ではなくタッチラインへ転がっていたのだ・・・。
366 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/05/30(月) 00:21
「な・・何やってんねんな!?のの!!」
加護が思わず口を開く。
そんな加護を(日本の選手全員同じ気持ちだっただろう)無視するかのように辻は倒れているカタールの選手の元へ駆け寄る。
「何やねん・・」
先ほどのプレッシャーの中でもんどりうって倒れたこの選手は今は太ももの裏を押さえて芝に顔をうずめていた。
辻が声を掛ける。レフェリーが担架を呼んだ。
(だからって・・・)
相手が怪我したからって、今の状況では何よりも勝利を、ワールドユース出場を優先すべきではないのか?
そして相手を突き放すチャンスだったのだ。
担架に乗せられ、顔を手で覆いながら10番は運ばれていく。
カタールのフィジカルコーチからすぐにベンチへ「×」のサインが出たことがこの選手の怪我の症状の重さを物語っていた。
スローインが日本側へ戻され、スタジアムからは拍手が送られる、カタールサポーターから。
日本サポーターは静まり返っている。
辻がタッチにボールを蹴りだしたとき、日本ユース代表監督はベンチを蹴り上げた。
367 名前:マルコ 投稿日:2005/05/30(月) 00:23
ひっそり更新・・・
スンマセン、ほったらかしで・・・
早いもので私ももう大学3年です・・・
いろいろ忙しいっす・・・
許ちて・・・
368 名前:ititetu 投稿日:2005/05/30(月) 20:32
おっ、更新お疲れ様です。
自分も色々忙しいです。
お互いに無理せず行きましょう。
369 名前:ののみ 投稿日:2005/06/01(水) 09:14
更新お疲れさまです。
無理せずいきましょう!!でも、楽しみにはしていますからね〜。
がんがってくらさい!!
370 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/05(日) 21:38
おう、更新されてたー
おつかれさまです。
どうなるんだろ?
371 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/08(水) 21:38
日本おめ!!!
372 名前:マルコ 投稿日:2005/08/14(日) 17:15
ホントなんていうか、ごめんなさいね
373 名前:ititetu 投稿日:2005/08/14(日) 20:11
いいから いいから、マルコさん。
まったりとやっていってください。
374 名前:(゜Д゜)… 投稿日:2005/08/19(金) 05:30
初期メンバーの扱いがひどいですね。

もっと、前にサッカー小説を書かれていた4126さんみたいに全メンバーに愛情を持ってもらいたいです。
375 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 09:37
娘。サッカー小説はこうでなきゃならないなんてことないでしょ
娘。小説には色々あるように、娘。サッカー小説にも色々あって欲しい
376 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 21:46
作者さんそれぞれのアプローチの仕方があるんだから良いんじゃないかな?
あんまりリクしても書きにくくなるし話はまだまだこれからって感じだから
ゆっくり待ってましょう。
377 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/16(金) 21:50
更新おまちしております
378 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/17(月) 00:14
初めて読みました。
なっちのエースとしての苦悩がいいですね。
4期が入ってハロプロがどう変わるか楽しみです。
379 名前:マルコ 投稿日:2005/10/22(土) 02:48
さ・・最終更新から5ヶ月・・・!?
まことに申し訳ありません。
ただ一つ言い訳をさせてもらえるなら、僕は今大学の3年でして就職活動やら何やらで忙しいのです。
いや、これは更新を待ってくださる方には何の意味も無いことでしょうし、その理由に自分が甘えているだけでしょう。
これだけ長い間更新が無いにもかかわらず、待っていてくださる方がいてとても嬉しく、
そして同時に更新をしなかった自分が恥ずかしくも感じました。
しかしやはりいろいろと普段の生活の中で色々と自分に制約があるのも事実でありまして頻繁な更新とはいきませんが、
頑張りますんで改めてヨロシクお願いしますね。
380 名前:マルコ 投稿日:2005/10/22(土) 03:15
>373 ititetuさん
ititetuさんとは長い付き合いになっていますねぇ。
ボクの初期作からだからもう5年くらいかな?あのときは高校3年生だったし。

>374さん 
そのご指摘はもっともです。正直に白状しますとボクが娘。ファンになったのは4期辺りからなんです。
ボク自身はできるだけ平等に扱おうとしていますが、そう感じられないのはボクの技量の無さゆえです。
どうかご勘弁を。そしてまた読んで頂けるのならこれからに期待してください。

>375さん >376さん
暖かいお言葉ありがとうございます。確かにいろいろなスタンスに立った小説も必要ですよね。
しかーし。ボクのは「小説」とはよべるほど立派なものではないですがね。
いやもちろん一生懸命書いてますけど。
当たり前ですけど東野圭吾の小説読んでしまうとある種嫉妬を感じちゃいますね(笑)。
自分もああいう文章が書けたらなぁと思いますね(まあ、向こうはプロなんで当たり前っちゃー当たり前ですが)。
とりあえずボクもできるかぎりみなさんに満足してもらえるように頑張ります。生意気ですね・・・

あ。ボクは東野圭吾が好きなんですよ。

>378さん
はじめまして!読んでもらえてとても光栄です。
もうお分かりだと思いますが更新の遅い作品です。ごめんなさい。
4期も加わり、なっちも覚醒し・・とまあいろいろアイディアは溜めていますんでお楽しみに。
また気が向いたり何か注文があればレスして下さいね。
381 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/30(日) 17:36
作者さんコメント着てたー!
待ってます。
382 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/25(金) 23:30
がんばってください。待ってます!
383 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/11/27(日) 23:03
その攻撃のほとんどを10番を経由し行ってきたカタールは、その後日本の猛攻を受けることになる。日本は加護、辻、松浦を中心に再三カタールゴールへ迫るのだがゴールを割ることができない。
もともとカウンターを主体とするカタール、ゴールに鍵をかけるのはお手の物だった。
結局このまま後半は終了し、延長戦へとゲームは突入することになる。

両チームが書くベンチの前へと戻り、座り込んだりマッサージを受けたり、またはスポーツドリンクで喉を潤す。
加護はペタンと地面に腰を下ろし、スポーツドリンクを口に含む。先ほどから監督が辻に対し説教をしている。
後半が終わり、辻に声を掛ける前に彼女は監督に呼ばれ、何やら怒られていた。
「・・えーやんか、そんな怒らんでも」ため息混じりに呟く。もちろん誰にも聞こえないようにだ。
ソックスを下ろし、レガースを外す。そしてストレッチをしながら目を閉じた。
意識を自分の内へ・・・。この試合に勝てば、いよいよワールドユース。U-17世界選手権出場を逃したこの世代の世界への思いは尋常ではない。
集中力を高める加護の耳にふいに監督の低い声が届く。「荷物、まとめろ」
思わず監督のほうを振り向く。すでに辻はそこにはおらず、一瞬頭が混乱した。辻はもうロッカールームへ向かっていたのだ。
384 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/11/27(日) 23:13
「・・のの!」
立ち上がり駆け寄る。
しかし、その小さくさびしげな背中が近寄ることを拒んでいた。
「ちょい早いけど、帰る・・・ね」加護の方を振り返り、必死に笑顔を作る。「試合・・がんばってね」
涙が出るのを堪えているのだろう、口元がピクピク動いた。それに辻自身も気づいたのかすぐに元の向きに向き直り、ロッカールームへと歩き出す。
肩が震えていた。
「のの!」思わず叫んでいた。ピタリと辻が立ち止まる。2人の間に一瞬沈黙が生まれる。
「・・ウチは!」何とか声を絞り出す。そこで一度言葉を切り息を吸う。「ウチは、のののプレー間違ってるとは思ってないで!!」
今度は辻は振り返らず、右手を少し上げただけでロッカールームへ消えていった。
385 名前:世界へ まだ見ぬ舞台、さらなる高みへ 投稿日:2005/11/27(日) 23:17
延長戦でも結局戦況は変わらず、PK戦までもつれ込んだ。
PK戦では、日本が5人全員が決めたのに対し、カタールは5人目が外した。
そして日本がアジア第3代表としてワールドユースへの切符を勝ち取った。
386 名前:メール 投稿日:2005/11/27(日) 23:37
「ふぅ・・」
試合後の簡単な祝勝会も終え、ホテルで選手たちはどこかの部屋に集まりまだ騒いでいるようだ。
加護はそんな気分ではなかった。
(ち・・ホンマにのの帰ったんかいな・・・)
辻とは同部屋だったが、試合後ホテルに戻ってきて驚いた。辻の荷物が無くなっていた。
ベッドに寝転がり、ケータイをチェックする。
「・・!ののからや!!」受信メールを開く。

<試合勝ったみたいだね!やったね>
<PK戦までいったで!むっちゃ疲れたわ>
<お!何番目に蹴ったん?>
<しょっぱな!ごっつ緊張したで>
<いいなぁ〜。辻もそこにいたかったなぁ〜・・・>

その話題に触れてよいのか分からなかったが、思い切ってメールを打つ。
さびしげな背中が思い起こされた。

<何言われたん?監督に>
<戦う意思が無いってさ>

ち、あのヤロー。それとこれとは違う話やろが。
あっさりとした辻のメールの文面に加護の目に涙が浮かんだ。

<ウチ、なんかやる気なくなったわ。代表辞退しようかな>

そのメールを送信した後、目を閉じた。
ボールを蹴り出す辻の姿が浮かぶ。
フェアプレーとは大事なものだ。もし逆の立場だったら、そしてもしゲームを切らずそのままプレーを続けられていたのなら・・・。
辻のプレーは正当なもの、当たり前のものだったはずだ。
387 名前:メール 投稿日:2005/11/27(日) 23:48
どんまい、あいぼん!

辻の声が頭の中に響く。後半17分、加護がチャンスを外した場面だ。
辻の加護の動きに合わせた絶妙のパスからのシュートだった。
シュートを外した加護を辻は笑顔で迎えた。まるで練習での紅白戦のような笑顔だった。
その中にこの試合へのプレッシャーは微塵も感じられなかった。どんな試合でも楽しむことを忘れない辻のらしさが出た。

急に眠気が襲ってきた。
ウチがあのシュート決めてればなぁ・・・
ののもあんなことにならんかったんやろか・・・
しかし今日は疲れた・・・
深い眠りに落ちていく加護の枕元で、ケータイがメールの着信を告げていた。
388 名前:ワールドユース 投稿日:2005/11/27(日) 23:57
「うわっ!?」
横からの信じられないくらいの衝撃で緑の芝に叩きつけられた。
「おい!レフェリーッ!!ファールやろ!!」上体を起こしレフェリーへアピールするが、レフェリーはこちらに構っている暇はないようだった。
先ほどまで自分がキープしていたボールは、もうすでに日本のゴール前まで運ばれている。
立ち上がろうとすると少し頭がクラクラした。「何ちゅー当たりやねん・・・」やっとのことで立ち上がり頭を左右に振る。
これが世界ってヤツか・・・、額の汗をぬぐいながら呟く。

加護は自信初となる世界の舞台、ワールドユースを戦っていた。
日本はグループ予選でチェコ、エジプト、マリと同組となった。実力の拮抗したグループは1つの取りこぼしが命取りとなる厳しい組だ。
現在日本は1試合目のチェコ戦の真っ只中である。
389 名前:ワールドユース 投稿日:2005/11/28(月) 00:03
前半はスコアレスで終了した。この世代に世界を知る者はいない。そのためか日本は動きに堅さが残っている。
相手の早く激しいプレス、力強いオフェンス・・・。アジアとは一味違った。だが、そんなゲームでも前半無失点で折り返せたことで日本に自信が芽生えてもいた。
ロッカールームで監督の指示を聞きながらイレブンは後半の巻き返しを誓っていた。もちろん加護もその中の1人だ。
もっと積極的に仕掛けなアカンわ。手の指をポキポキ鳴らしながら気合を入れなおす。
「よし!後半いくぞ!!まずは1点だっ!!!」
「おうっ!!」
監督の檄に選手たちが応えた。後半が始まる。
390 名前:ワールドユース 投稿日:2005/11/28(月) 00:14
左サイドに開いた加護に松浦亜弥からパスが出る。松浦とは出身が関西ということもあってジュニアユースのころからともに戦っている。
職人肌のセンターハーフだ。凄まじいスタミナと安定したプレーで日本の中盤を支える。目標とする選手はフランス代表ヴィエイラ。その如くチェコの攻撃を食い止めサイドの加護へ。
「カウンターッ!」叫びながら自身も前線へ。

試すで!ウチが世界とどこまでやり合えるか!!
前方に広大なスペース。迷わず加速する。
DFは3人。味方は2トップを組む幸田來美、そして後方から上がってくる松浦だ。
一瞬で状況を把握した加護。ニヤリ。
「・・行くで!」
ぐんぐん加速してトップスピードへ。ファーストディフェンダーがアプローチに来る。
391 名前:ワールドユース 投稿日:2005/11/28(月) 00:30
確かにスピードはかなりのものだが、前半でそのフィジカルの脆弱ぶりは証明されている。
目前に迫ろうとするプレイヤーを前にチェコDFはその対応策を判断した。
ここで自分が抜かれるとピンチになる。それは向こうも分かっているだろう。体を寄せ完全に抜かれる前にチャージをかければボール奪取だ。
もちろんパスコースも限定しながら。
「・・来い」
半身になり、身構える。縦か、中か・・・どちらにも対応できるように。
そのプレイヤーが自分のテリトリーに侵入してきた。縦に抜ける。そう判断したのと同時に、そのプレイヤーは、さらにスピードを上げ、一瞬で自分を置き去りにした。

GKが大声で指示を出す。突っ込んでくるプレイヤーのケアに1人当てる。中にいるFWにつくDFに後ろから上がってくる選手のケアも任せる。
もしあおのプレイヤーにマイナス方向のパスが出れば、2人のDFがその選手を潰すためラインを上げる。そうすればオフサイドを取ることも可能になるという読みがあった。
だが、その読みは早々に外れる。ボールがDFの股を抜けていた。
「クソが!」
飛び出す。2人も抜かれ焦ったが、股抜きのボールは少々強すぎたようだ。
先にボールをキープできる・・・そう思った瞬間。
目の前にあったのは相手のスパイクであり、ボールがネットに突き刺さる音が後ろから聞こえた。
392 名前:ワールドユース 投稿日:2005/11/28(月) 00:45
「ハッ、ハッ、ハッ」
静まり返るスタジアム。呆然とゴールの中に転がる加護の耳に届くのは自身の息遣いだけだった。
後ろから抱きつかれ、我に返った。スタジアムはどよめいていた。
何ちゅー気持ちええんや。ハーフラインからの2人抜き。我ながら痺れるゴールだった。

のの・・・
あの日―――、アジア3位決定戦の日。
眠りに落ちようとしている加護の枕元でメールの着信を告げるケータイがなっていた。
翌朝、メールを読んだ。
<辞退なんてダメ!サッカーしたくてもできない人もいるし。出たくても出れない人だっているんだから・・・。辻の分もがんばってよ!!>
中学のときにも顧問から同じようなこと言われたっけ。
見てるか?のの
ウチのプレーが通用するっちゅーことは、ののも通用するっちゅーこっちゃ。
ここにいないののの代わりにウチがののの分も証明してやるで、世界レベルだってことを。
それに、ここにいるのに相応しいってこともな!!
393 名前:マルコ 投稿日:2005/11/28(月) 00:54
ながらくお待たせしました〜。
スランプ・・・
394 名前:ititetu 投稿日:2005/11/29(火) 22:43
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
更新お疲れ様です!!!!!

辻ちゃん辞めちゃうのですか?
あかんでぇ〜ツートップいなくなったら!!

とはいえ・・・実世界も加護ちゃん一人仕事増えてるな・・・・
矢口さんは雑誌連載始めるし・・・
395 名前:マルコ 投稿日:2005/12/05(月) 01:44
>>394 ititetuさん
お久しぶりです。
辻ちゃんはユース代表落選です。・・といいつつ何か変な展開だなぁ。
まあ、あまり細かいことを気にせず読んでください(笑)


つーことで今日も更新↓
396 名前:ワールドユース 投稿日:2005/12/05(月) 01:58
その後、チェコに引き分けに持ち込まれ日本は初戦をドローで終えた。しかし続く予選リーグのエジプト、マリとの試合はそれぞれ1−0、2−1で勝利した。得失点差の関係でグループ2位での予選突破となった。
決勝トーナメント1回戦の相手は地元イタリア。
かつてはカチナチオに象徴されるような堅い守備と、それをベースにしたカウンター攻撃を信奉するチームであったイタリア。それに関しての批判は無数にある。
しかし、現在ではその状況は変わりつつある。攻撃陣のタレントが豊富に生まれ、もともとの守備の強さとあいまって世界でも有数のチームとして君臨している。間違いなく世界トップレベルのチームである。それはA代表のみならず、若い世代にも同じ流れがきている。
地元開催ということもあり、イタリアは優勝候補でもある。

対する日本ユースはとにかく加護のブレイクした。初戦の40mのドリブルからの得点で一躍脚光を浴びた。マリ戦では日本を勝利に導く2ゴールをマークし、さらにその評価を高めた。フィジカルの脆弱さは否めないが、そのスピードとテクニックは世界のレベルにあることを証明していた。
しかし、評価を高めることは同時に相手チームからの警戒を高めることになった。
加護にとっては願ったり叶ったりだ。自分の力を思う存分に試すことができるからだ。しかも次の相手は守備の巧さは世界でも最高峰のイタリアなのだ。
ただ、やはり相手はイタリアである。ここで日本は、そして加護は世界の厳しさを知ることになる。
397 名前:ワールドユース 対イタリア 投稿日:2005/12/05(月) 02:08
前半18分、イタリアの稲妻のようなカウンターが日本のゴールに襲い掛かった。
DFラインでボールを奪いすぐさま前線へフィード。そのロングパスをダイレクトで中に折り返し、さらにそのパスをダイレクトでシュート。
ダイレクトで繋がる一連のプレーに日本の守備陣は全くといっていいほど追いつけていなかった。
あっという間の先制点だった。
「は・・・?」
呆気にとられる日本ユース。
「マジかいな・・・」
正確なプレーの連続。一つ一つのプレーは単純なものだが、それを高速カウンターの中でこなすということの難しさは、他でもない同じピッチでプレーをしている者にしか分からない。
「す・・すご・・・」若きアズーリたちの歓喜の輪を呆然と見つめながら呟く。特にロングパスを出した選手、デ・マルティーノに加護は目を奪われた。

ラファエレ・デ・マルティーノ。現在スイスのベリンツォに所属する未来のアズーリを担うであろう逸材。
ASローマが保有権を持つ若きスターはアーセナルなども獲得に動くほどだ。
試合前のロッカールームで要注意選手をいくつか挙げられたが、その中にデ・マルティーノの名前も当然あった。頭の片隅に入れていた情報が、どうやら嘘じゃないと加護は確信した。
398 名前:ワールドユース 対イタリア 投稿日:2005/12/05(月) 02:24
カウンターの鋭さをまざまざと見せ付けられた日本は、1点のビハインドを負いながらも前へ出ることができなくなっていた。
点を奪いに行くためにラインを上げなければならないが、先ほどのカウンターのイメージが焼きついたイレブンはどうしてもさらなる失点を恐れてかラインを上げることを躊躇っていた。
イタリアも当然無理には攻めてこない。中盤でのプレスもむやみにはいかない。ミドルゾーンでの“つかみどころ”をしっかりと全員が把握し、そこを集中的に潰してくる。
戦術眼の高さも相当なものである。
この狙いの一つは日本のFWを孤立させることでもある。もちろん警戒しているのは加護である。グループ予選での加護のパフォーマンスはイタリアの目にも脅威に映っていた。

「んもー!」最終ラインまでボールを追いまわす。しかし加護1人ではどうしようもない。イタリアはリズミカルにチェックをかわしながらパスを回す。「ライン上げなアカンやろ!?」
タッチライン際では監督が必死にラインを上げるように指示を出しているが、時折見せるイタリアの攻撃に日本は完全に足を止められていた。

汗を拭う。加護はイタリアのミドルゾーンのプレスを前線から見つめていた。
「アカン・・こりゃアカンわ」再びバックパスを出しボールを前線に運べない日本を見つめながら、どこか他人事のようにため息混じりに呟く。
1人1人の、というよりもチーム全体のDFの巧さ・読みがイタリアは日本に比べ格段に上だった。時代は変われどイタリアの守備はやはり驚異的だった。
このDFを崩すには・・・、イタリアのリズムを崩すには・・・。イタリアの読みの“裏”をかくことができるプレイヤーが必要だった。たった1つのプレーで流れを変えることができるような選手が。
加護の頭の中にはっきりと1人の選手の名前が浮かんだ。
アジア予選の時もそうだった。試合が膠着しているとき、押されているときに出てきて、必ずと言っていいほどゲームの流れを変えてくれた。
そんな選手がいたじゃないか。
399 名前:ワールドユース 対イタリア 投稿日:2005/12/05(月) 02:33
「・・・のの」

どんまい、あいぼん!
あの笑顔が脳裏に浮かぶ。

ウチはののの分まで頑張らなあかんねん!

ボールを回す日本。加護が前線から顔を出し、パスコースを自ら作り出す。
何度も辻ならどんなパスを出してくれるのか想像した。ヒールで、そしてノールックで、フワリとした浮き球で、柔らかいパスで・・・。
いつ前線を確認しているのだろうかとたまに思うほどいいタイミングでパスを出す。
だからこちらも気を抜けない。といっても辻は味方のミスなど全く気にはしていない。あるのはサッカーを楽しみたいという思いだけだ。

松浦からパスが来る・・が、DFのカットにあう。
「・・ちっくしょーが!」加護はそのDFに猛チャージ。虚を付かれたDFは加護にやすやすとボールを奪われた。
この試合、初めて前を向いてドリブルを仕掛ける。迷いは無かった。
一気に2人を抜き去る。狭いスペースだろうが、孤立していようが関係ない。自分の持ち味をぶつけるのみ。
400 名前:ワールドユース 対イタリア 投稿日:2005/12/05(月) 02:45
当たられたらアカン、吹っ飛ばされる。そう念じながら巧みにDFをかわしていく。一歩目のスピードが相手DFのタイミングを外していく。
3人目、4人目・・とかわしていくが、やはり1人でのドリブル突破には無理があったようだ。何せイタリアの守備陣は整ったままなのだ。
囲まれ、一斉にプレスをかけられる。加護がいくらあがこうともボールはイタリアDF陣のものとなった。
地面に倒れこむかご。デ・マルティーノが前線にボールをフィードしようとしていた。
「や・・やらすかい!!」腕で地面を全力で押し、その反動でデ・マルティーノに飛びつかんばかりにパスブロックを狙う。
ボールは加護の足に当たり転々とこぼれた。イタリア守備陣が加護の執念と瞬発力に一瞬呆気に取られた。そこを加護は見逃さず、再びボールを自分のもにする。
日本の選手がフォローにきていた・・・しかし、かごはそれが目に入っていないかのように迷わずドリブルを開始する。
1点のビハインドなのだから、じっくり攻めるべきなのかもしれない。1人よがりなプレーかもしれないが、加護は1人でイタリアに挑戦することを選んだ。意地だった。
何とかしてやろう。この状況を打開してやろう。誰の力も借りずに、自分の力のみで。
辻のこの場面での必要性が加護の心に火をつけた。嫉妬といってもいいかもしれない。
U-17日韓戦で感じた、辻には負けたくないという気持ちが再燃した。

結局ボールを奪われた。そのカウンターで日本は追加点を奪われ、ゲームはそのまま2−0でイタリアが次のラウンドへ駒を進めた。
401 名前:ワールドユース 対イタリア 投稿日:2005/12/05(月) 02:54
うつむきピッチを去ろうとする加護の目の前に青いユニホームが立ちふさがった。
「む・・・」見上げるデ・マルティーノだった。
呆然とする加護に、そのプレイヤーは握手を求めてきた。
「あ・・」とまどいながらもその手を握る。「どうも」
ユニホームを交換する。デ・マルティーノが口を開く。「ヨシザワ。ユーノウ?」
「は?ヨシザワ?」首を傾げる「知らん、知らん」言葉は通じないだろうが首を傾げたことで加護の言ったことを飲み込めたようだ。
デ・マルティーノは何か言いながら去っていった。イタリア語だったので当然何を言ったのか分からない。
しかし、その離れていく背中を見つめていると満足感が込み上げてきた。自分は世界でも充分戦えると確信した。
「いつか絶対に・・・」アズーリのユニホームを握り締めた。「絶対に倒したるからな」

空を見上げる。イタリアの空は突き抜けるような青空だった。
402 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/05(月) 03:13
電車をいくつか乗り継ぎ、池袋でさらに東武東上線に乗る。目的地はそこから数駅だ。
残暑もそろそろ終わりを迎えようとする10月中旬の日曜日の昼下がり。この日は晴れということも手伝ってか、どこの駅も人ごみでごった返していた。
目的の駅の手前の河川敷では散歩をしたり、日向ごっこをしたり、スポーツに興じる人が電車の窓から見えた。その中にはサッカーをしている人もいた。

目的の駅で降り、教えられた住所へ行く。駅からはそれほど離れていないらしい。
昔は栄えていたのだろうが、今では駅周辺にそれほど活気はない。道路を挟んだ向こう側にアーケードが見えた。そこは人がたくさん集まっていた。
下町とはこういうものだろうか、とぼんやり考え歩いていると、目的地にたどり着いた。

インターホンを押す。〔辻〕と書かれた表札を確認していると玄関のドアが開かれた。
「スイマセン、突然」
「いいえ!とんでもない!!」希美の母と思われる女性は顔の前で大げさに手を振った。
つんくは辻の家を訪ねていた。現在高校3年生、ワールドユースのメンバーからは漏れたが、つんくの目には辻希美の持つポテンシャルは類稀なものと映っていた。
来シーズンの補強リストにつんくが自信を持って推薦したのが辻だった。加護・吉澤のリストアップに異論を唱える者はいなかったが、辻希美に関しては反対するものが多かった。
フィジカルの無さ、テクニックに走りがち・・・などなど言われたが、結局つんくがそれらを説き伏せリストアップさせたのだ。
つんく自身が獲得に動くほどの惚れ込みようだった。
プロ入りしてすぐに活躍、というわけにはいかないだろう。しかし、この選手は必ず大物になる―――そんな確信があった。
403 名前:マルコ 投稿日:2005/12/05(月) 03:15
今日はここまで。
何か読みにくくなったかも・・・。
もうちょっとで4期を加えたシーズンが始まる!・・・予定(笑)
404 名前:みっくす 投稿日:2005/12/06(火) 05:57
更新おつかれさまです。

面白くなってきましたね。
次回も楽しみにしています。
405 名前:ititetu 投稿日:2005/12/07(水) 21:29
更新お疲れさまです。

4期の活躍楽しみにしてます。
マルコさんの一番楽なペースで進めていってください。
無理は禁物ですよ。
寒くなってきたのでご自愛ください。
406 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:14
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
407 名前:マルコ 投稿日:2005/12/16(金) 23:32
>>404 みっくすさん
書き込みどうもありがとうございます。
すごい励みになります。
これからもまた気が向いたときは書き込みお願いしますね。
ボクも頑張りまっす!

>>405 ititetuさん
ボクなんかの体のことに気を遣っていただいて・・・(感涙)
しかし確かに最近ホントに寒いですね。日本のあちこちで大雪みたいで。
ititetuさん、はじめ読者の皆様も体調には気をつけて下さい!
408 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/16(金) 23:55
「それで、希美さんは・・・?」
「あの・・それが・・・」
「どうかしましたか?」
「今日、つんくさんが来られることはあの子も知ってるんですがね」申し訳無さそうに顔を上げる。「午前中部活行ってまして、昼食を家で食べてしばらくして、サッカーしてくるとか言って、また家を出てしまったんですよ」
玄関の下駄箱の上に視線を向けた。普段はそこにボールが置いてあるのかもしれない。
辻の通う学校のサッカー部は冬の高校選手権の東京予選ですでに敗退している。三年生の辻はもう部活を引退しているが、体を動かすために三年生が部活に顔を出すというのは珍しいことではない。
「・・というわけですので、上がって待っていていただけますか」そう言ってつんくに、家に上がるよう促した。「ちょっと呼んできますんで」
「あ、いえいえ」慌ててつんくは手を振りその申し出を断る。ちょうど希美の母親が先ほどそうしたのと同じような動作だった。「場所だけ教えてもらえれば、私がそちらに向かいますので」
「え・・でも」
「ええんです。希美さんと話がしたいんで」
彼女の顔に逡巡の色が伺えたが、それもすぐに消えた。「あ、そうですか・・・。あの河川敷・・分かりますか?近くにあるんですが」
「ああ!ハイ。電車の中で見ましたよ。そこですか?」
「恐らく。あの子、いつもそこでボール蹴ってますから」
「そうですか。ではそちらに行ってみます」名刺を差し出す。「何か連絡がありましたらここに電話してください」そう言って名刺に印刷してある自分の携帯の番号を指差した。
「ハイ、分かりました」丁寧すぎる動作で彼女が名刺を受け取る。「どうもお手数をかけます」
いえいえ、と手を振りながら辻家を後にし河川敷に向かった。
電車の中から見た光景が思い出される。散歩をする人、そしてサッカーを楽しむ人たち。
つんくは公園などでサッカーをしている人を見るのが好きだ。そこにはサッカー愛が溢れている。楽しさしかそこにはない。
大人も子供も一生懸命、笑顔でボールを追っている。ゴールもスーパープレーも、そしてミスさえも笑い合える。そんなサッカーが草サッカーにはある。
プロという自分の立場からしたら、そのようなサッカーばかり追い求めてもダメなのだろうが、間違いなく自分の目指すサッカーがそこにはあるのだ。
今日は天気もいい、自然とつんくは早足になっていた。
409 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/17(土) 00:03
土手の斜面に腰を降ろす。小学生くらいの子供たちとボールを追いかける辻の姿があった。
「何しとんねん」
思わず苦笑い。自分との約束を忘れるくらい熱中しているようだ。当然だが辻から少年たちがボールを奪うことはできない。
辻は、必死に向かってくる小さなサッカープレイヤーと楽しそうにサッカーをしていた。
「おねーちゃん、サッカーうめえなぁ!!」
「ふっふーん」ボールをおでこに乗せる。「取ってみそ」
「わ!すっげぇ〜!!」


微笑ましい光景をぼんやり見つめていると、いつしか子供たちは帰ってしまったようだ。時刻はすでに5時を回っていた。
日が傾き、影を大きく伸ばしていた。
1人でボールを蹴る辻。ドリブルをしたり、リフティングをしたり。
しばらくするとその場に座り込み、ボールを手の中で弄びながら川の流れをじっと見つめているようだ。
ちょうどつんくの位置から辻のいる場所は逆光になり、もともと背の低い辻の背中がさらに小さく見えた。
410 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/17(土) 00:18
「今、何考えてるか当てたろか」辻の隣に立つ。
「・・!!」思わず見上げる辻。
「ワールドユースに出たかった、自分が出れなかった大会で加護が活躍して悔しい。自分だって出場してたら絶対活躍できた」そこまで真っ直ぐ前を見つめながら話し、辻の方を向く。「・・そんなとこやろ?」
「・・・あ!」慌てて立ち上がる。「つんくさん!!」
「おう。見事に約束すっぽかしてくれたなぁ」
「ご・・ごめんなさい!!」ぺこぺこ頭を下げる。「ちょっとだけ、ほんのちょ〜っとだけサッカーするつもりらったんれすけど・・・」
辻がポケットから携帯を取り出し時刻を確認する。6時近くになっていた。「ゲ!・・・ホントにすいません」
「ふむ。まあえええわい」
それでもまだ辻は俯いていた。「・・当たりやろ?さっきの」
つんくを見上げる辻。瞳が若干潤んでいた。
「ん?」
一瞬ためらった後、辻は首を横に振る。「そ・・そんなことないれすよぉ!!」
「ム」
「・・辻なんて出たって、活躍できるわけないれす。代表にも入れないんれすもん」
「・・・・・・・・・」
「それに・・選手権にも出れませんし」自嘲的な口調になっていた。「辻なんてそんなもんれす」

はあ、と1つため息をつく。ここにもいたか、自信を失ってしまった才能豊かな選手が・・・。
ローマで出会った吉澤もそうだった。だが、幸いにも辻はサッカーへの愛はまだうしなっていないようだ。先ほどの小学生とのサッカーにはそれが溢れていた。
411 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/17(土) 00:50
「・・・ハロプロに来い」
「へ?」あまりにも唐突な言葉に辻は目をしばたかせた。
「お前はサッカーやらなアカン。それだけのもんがお前にはある。このまま終わっても後悔しか残らんで?」
2人は横に並び正面から夕日を浴びていた。眩しくてつんくは目を細めた。辻は俯いていた。
「自分もやれる、プロでも通用する・・・それをユース代表の監督に見せつけてやろうや。なあ」
「・・・・・・・・・」なおも辻は無言だった。
だがつんくも辛抱強く話を続ける。
「・・さっきお前ウソついたな」俯いたままの辻の体がピクリと動いた。「ウソなんて・・・」
「我慢せんでええやん」辻の言葉をさえぎるようにつんくが口を開く。「ワールドユース出たい、出れたら絶対活躍できた・・・。少なくともオレはそう思ってるし」
「れ・・れも・・・」
「何やねん」
「辻みたいに背の低い選手はプロじゃあ無理れす。それに・・」
「何や?言うてみ」
ごくりと唾を飲み込む。「監督に・・ユースの監督に・・・、お・・お前みたいなサッカーじゃあチームにも・・迷惑らって・・・」
あの日、ワールドユースアジア予選アジア第三代表決定戦対バーレーン戦で監督に言われた言葉を思い出した・・いや、いつも忘れようと心の奥の奥にしまっておいた記憶だ。
思い出したくも無い。今でも夢にたまに出る。何度泣きながら目を覚ましただろう。
今までの自分のサッカーを踏みにじられたのだ。そんな評価なら、なぜ自分を代表に呼んでいたのか。頭が混乱して吐きそうになる。
背が小さいことにその原因を求めた。そうでなければやっていけない。
正直テクニックはまだまだうまくなる自信もあるし、そういう意味では発展途上なのだろうが、自信は持っている。世界の舞台で、プロの舞台で試してみたいという気持ちもある。
ただ背の低さだけはどうすることもできない。自分の努力でもどうしようもない。
それがあの日、ユース代表落選の原因、とすることで少しは気持ちが楽になった。
412 名前:舞台へ 投稿日:2005/12/17(土) 01:17
「・・ホンマに小さいなぁ」ぽんぽんと辻の頭を叩く。
「・・・!!」
「背が低いっていうことも一つの才能やで?それがあるからお前はすごいテクニックを持ってるし、生かせてる」
声のトーンが少し落ちた。「お前のサッカーでたくさんの人を魅了しようや。世界には背の低い選手でも活躍した選手はぎょうさんおるで」
辻が涙を拭う。いつの間にか瞳いっぱいに涙が浮かんでいた。
「マラドーナ、ゲルト・ミューラー・・・おっと年がばれるな!」小さく笑う。「最近ではテヴェスやらメッシやら・・・往々にしてお前みたいなタイプの選手はフィジカルが弱いって批判を受けてるな。バッジョやアイマールとかもな・・・。ユースの監督がどういう意図でお前を外したのかは分からんし、興味も無い。だけどな、オレはお前を必要としてる」
必要としている、その言葉を聞いたと同時に辻の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。ボロボロ、と音がしそうなくらいの粒だった。
「だからハロプロに来い」
辻は涙を拭きながらうなずくのがやっとだった。
「・・そんな泣かんでもええやん」これにはつんくも苦笑いだった。
今まで心を落ち着けてサッカーができる「居場所」を見つけることができなかったのだろう。
現代のサッカーにおいてプロのみならず、学生のレベルにおいても戦術というものが浸透している。
その中で辻のように小さく、フィジカルの弱い選手はどこでも軽視される。それでも各年代の代表に選出されてきたことはもっと評価されてもいいだろ。
「ま、確かに小さいだけじゃ活躍はできん。他のヤツに比べて“何か”突き抜けたモン持ってることが必要だわな。もちろんお前にはさっき挙げたプレイヤーとおんなじモンが備わってるとオレは信じてるがな」
そこまで言ってつんくは振り返り辻の肩をポンと叩き、歩き出す。
「それじゃあな。また今度正式な文書送るから」
「ひゃ・・ひゃい・・・」
「あ。それから、もう1人小さいプレイヤーのこと忘れとった」
「・・・?」
「これは秘密にしようと思っとったんやけど」振り向きニヤリと笑う。「加護亜衣。アイツもハロプロに来るみたいやで」
「!!」さっきまでの涙がウソのように、満面の笑みがひろがる。
「現金なヤツやな・・・。もっと自分の力信じてみ。んじゃな」
涙で濡れた辻の頬を、夕日がオレンジ色に染めていた。
413 名前:マルコ 投稿日:2005/12/17(土) 01:36
今日はここまで!めでたく辻ちゃんハロプロ入り決定(笑)

ふと思ったんですが、この小説の中の世界観ってかなり変・・・。
Jリーグはハロプロだとかホリプロだとかエイベックスだとか・・・。芸能事務所があればレコード会社もあったり・・・。
海外は選手やクラブチームが実名だったり、韓国U-17代表にはBoAがいたり・・・。
娘。サッカー小説は4126氏の作品以外ほとんど読んだことありませんが、何か特殊な設定だ・・・。
まあ、あまり細かいことは気にしないで読んでくださいな(笑)。
独り言でした!


414 名前:ののみ 投稿日:2005/12/22(木) 15:57
マルコさん、ご無沙汰です&お疲れさまです。私も忙しくて、長らく来てなかったんですけど。。
久しぶりにきてみたら。。。更新されてる〜〜!!
まだ、更新されてる部分は読めてないですが、後でじっくりと読ませていったらっきま〜す!!

>Jリーグはハロプロだとかホリプロだとかエイベックスだとか・・・。芸能事務所があればレコード会社もあったり・・・。
>海外は選手やクラブチームが実名だったり、韓国U-17代表にはBoAがいたり・・・。

それが面白いんですよ、わたしは!!
ムリせずがんがってくらさ〜い〜。これからも楽しみにしてすので。。。
415 名前:ititetu 投稿日:2005/12/29(木) 14:40
更新お疲れ様です。

ツートップの伝説が始まる時ですね。

>ふと思ったんですが、この小説の中の世界観ってかなり変・・・。
小説だからこそおもしろいんです。
この世界観が最高!!
で、ふと思ったらフットサルの世界では現実化してきているのでは?
416 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/21(火) 16:53
更新待ってます!
417 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/11(日) 08:06
W杯始まったね
こっちも更新ないかな
418 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 23:05
生存報告だけでも待ってます
419 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/15(火) 02:34
作者さ〜ん
420 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/09(土) 04:54
お元気ですか〜

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