記憶より彼方で
- 1 名前:雪ぐま 投稿日:2003/11/30(日) 17:39
- これまで皆様の作品を楽しませていただくだけだったのですが
勇気を出してスレを立ててみることにしました。
どきどきです。
「いしよし」でございます。
最初、わけあってちょいと暗いのですが、後ほど明るくなっていきます。
なるべく毎日更新いたしますので、もしよかったらぜひ。
- 2 名前:雪ぐま 投稿日:2003/11/30(日) 17:40
-
『記憶より彼方で』
- 3 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:42
- カチャリ。
重い錠を開け、慎重に扉を開く。
古びた扉がかすかにキィキィと音を鳴らすから、
あたしはいつも首をすくめてヒヤヒヤする。
殺風景な牢屋の床に横たわっていた少女が、身を起こした。
ほっそりとした美しいシルエットが浮かび上がる。
彼女は、心配そうに眉を八の字にひそめた。
「だめだよ。こんな月の明るい夜に」
彼女の頬に鉄格子の影がくっきりと映っている。
また、痩せたような気がする。
- 4 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:43
- 「平気だよ。今日は宴があったから、みんな寝てる」
あたしは安心させるように微笑みを浮かべると、忍び足で彼女に近づいた。
そして、彼女のそばに膝をつき、唇に唇を寄せる。
「だめ。伝染っちゃう」
「いいよ」
なんど、この会話を繰り返しただろう。
両手で唇を押さえて嫌がる彼女の手首をつかんで無理矢理広げ、
そのやわらかくて熱い唇を奪う。
顔をそらせるのを何度でも追いかけて、何度でも奪う。
彼女の頬に涙が流れるまで。
- 5 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:45
- 「……嫌だった?」
「嫌なんじゃないよ。わかってるくせに」
彼女は両手で顔をおおうと、嗚咽をこらえるように唇を噛んだ。
細い指の隙間に、月明かりにてらされた涙が光ってみえる。
「あなたにだけは、うつしたくないのに……」
「大丈夫。あたしは頑丈にできてるから」
「そんなの、わからないじゃない」
「絶対に大丈夫だから、そんなに心配しないで」
胸に抱き寄せると、かすかにためらいながらも身を預けてくる。
その肩があまりにも華奢すぎて、いつもあたしの胸を痛ませるのだ。
かわいそうに。
世が世ならお姫さまだったのに
こんなところに幽閉されて。
- 6 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:46
- 彼女は、戦乱の世の犠牲者。
戦いにやぶれて権力の座を追われた一族の末裔。
直系の彼女が殺されなかったのは当時まだ幼く、そして女だったからだろう。
だが、殺されなかったのが果たして幸運だっただろうか?
彼女はもう10年も隔離されたこの牢に閉じこめられているのだ。
絶対に逃げられないように足の腱を切られて……。
最低限の食事は与えられているが、それ以外は何もない。
ただ生かされている……というより、自然に死ぬのを待たれているだけ。
「あ、そうだ。はい、薬。飲んで」
「……こんなことして、大丈夫なの?」
「心配しないでよ。うまくチョロまかしてるから」
あたしが渡した薬包を、おずおずと受け取る。
あたしが彼女を知った時、彼女はすでに肺病におかされていた。
- 7 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:49
- あたしの父親は、彼女の一族を滅ぼした一族の長に仕えている。
父が重鎮の立場だったこともあって、
2年前、15歳になったのを機に、あたしもこの城に上がることになった。
父の身の回りの世話をするのが一番の仕事だが、
男まさりの身体能力をかわれて、特別に武術の訓練も受けている。
主君にも目をかけられて張り切っていたのだが、
ひょんなことから知ってしまったのだ。
闇に葬られた哀れな少女の存在を。
父の道具入れのなかに仕舞われていた一本の鍵。
一日に一度、必ず決まった家臣が借りに来る。
「何の鍵?」と父に問うと、「余計なことに興味を持つな」とたしなめられた。
ある日、とうとう好奇心が抑えられなくなって、家臣の後をつけた。
彼は、手に食膳を持って、城の裏手の林のなかに入っていった。
そして、あたしは、この小さな牢屋を見つけたのだ。
- 8 名前:第一章 投稿日:2003/11/30(日) 17:51
- 「あなたが初めてここに来た時は、びっくりしたなあ」
「あたしもびっくりしたよ。まさかこんなにキレイな人がいるなんて」
「キレイ? フフッ、嘘ばっかり」
「ほんとだよ。あなたは鏡を見たことがないから」
彼女が首をかしげて、あたしの頬にそっと手を伸ばす。
「キレイなのはあなたのほう。太陽の神様が降りてきたのかと思った……」
まったく照れくさくなるようなこと言う。
あたしが太陽の神だというなら、彼女は月の神だ。
あたしたちが恋に落ちるのに時間はかからなかった。
彼女が激しく咳き込む。
最近、とくにひどい。
食欲もないようだし、ひどく衰弱していてみていられない。
ぜいぜいと上下する背中を撫でると「ありがとう」と薄く微笑んだ。
- 9 名前:雪ぐま 投稿日:2003/11/30(日) 17:58
- 本日は、ここまでにいたします。
名前が出てこないのでわかりにくいかと思いますが
「あたし=吉」、「彼女=石」です。
ご感想等いただけると励みになりますです。
- 10 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 23:00
- すんごい(・∀・)イイ!!
設定とかツボです。
初連載頑張ってください。
次回の更新を楽しみにしております。
- 11 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/01(月) 02:35
- 10> 名無し読者様
ありがとうございます。
ツボと言っていただけてホッとしました。
悲しい設定での始まりですが、石川さんのけなげな感じとか、
吉澤さんの無垢な雰囲気などを出せたらいいなと思っています。
よろしくおつきあいくださいませ。
- 12 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:38
- 彼女は美しい。
しかも、どことなく色のある美しさだ。
なぜ彼女が殺されなかったか、主君をよく知るあたしにはわかる。
それは、情けなどではない。
成長したら慰みものにしようと……そういうことだと思う。
あたしは、床にそっと彼女を横たえた。
床の冷たさが体にさわらないように、上掛けをくるむように巻きつける。
憎むべき病だが、この病を得たために、慰みものにならずにすんだわけだ。
あたしは複雑な気持ちになって、唇を歪める。
- 13 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:40
- 彼女の隣に寝そべり、首の下に腕を差し込む。
あたしは彼女に腕枕をするのが好きだ。
彼女があたしの腕のなかでとても安らいだ表情をするから。
甘く見つめ合う幸せな時間。
一緒にいると鼓動が早鐘を打つほどうれしくて、胸がしぼられるように切ない。
こんな気持ちを教えてくれたのは、あなたが初めてだ。
だけど、救われやしない。
あたしたちがどんなにずっと一緒にいたいと願っても。
- 14 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:41
- 「いいの。私、幸せだよ。あなたに出会わせてくれた神様に感謝してるの」
こんな宿命のなかであなたがそんなことを言うから、
あたしはまた発作みたいに何度も何度も口づけてしまう。
ぎゅっと抱きしめると、彼女は切なげな吐息をもらして、
でも、やっぱり病がうつることを気にして、くるりと背を向けてしまった。
- 15 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:43
- あたしは後ろから彼女を抱きしめたまま、
そのすんなりとした首筋に唇をつける。
「大好きだ」
彼女の体が震えて、かすかに甘い声がもれる。
「私も……」
あたしはたまらなくなって彼女の着ているものに手をかけた。
また、いつものように小さな格闘があって、
でも彼女はあえなくあたしを受け入れる。
- 16 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:44
- 「いつも負けちゃうのが、後ろめたいの」
ことが終わった後、褐色の肌を月の光にさらしながら、
まだ荒い息の下で彼女が呟いた。
「何が後ろめたいのさ」
「うつしちゃいけないと思うのに……、こうされるのがうれしいから」
あたしは微笑んで、彼女の髪を撫でた。
「うつらないったら。それより、咳が止まらない人を襲っちゃうあたしのほうがひどくない?」
そういえばそうかも…と、言いかけている最中にも体を丸めて咳き込む。
あたしは慌てて彼女をあたためるように抱きしめた。
- 17 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:47
-
あなたが好きだ。
気が狂いそうだ。
どうしたらいいのか、わからない。
- 18 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:48
- 逃げられるものなら、このまま連れ出して逃げてしまいたい。
だが、まともに歩くこともできない彼女を連れて、
一体どこまで逃げおおせるというのか。
あたしは絶望的な気分になって、呟く。
「一緒に死のう」
彼女は力なく首を振った。
「そんなことをしたら、あなたの一族に迷惑がかかってしまう」
あたしは顔をしかめる。
確かに、ここに通っていることが露見するだけでも
父が失脚することは間違いない。
母や、まだ幼い弟たちの顔が瞼の裏に浮かんで奥歯を噛みしめる。
- 19 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:50
- 「じゃあ、次の世でも出会えるように竜神さまにお願いする」
「竜神さま?」
「そう。大きな滝つぼには竜神さまがいるんだよ。知らないの?」
「初めて聞いた……何も知らなくてごめんね」
「また謝る。謝るのは後ろ向きな証拠だよ?」
口を尖らせるあたしに、彼女がふわっと微笑む。
「ごめんね」
「ほら、また!」
あたしたちはクスクスと笑いあった。
- 20 名前:第一章 投稿日:2003/12/01(月) 02:52
-
あと、どれくらいかな。
彼女の命の残り火は、たぶん、とても少ない。
- 21 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/01(月) 02:53
- 本日は、ここまでといたします。
- 22 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/01(月) 10:16
- 泣いちゃいました。
これからを楽しみにしています。
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/01(月) 14:40
- ヤバイ、すごくイイです!
なんていうか、これぞ「いしよし!」ですね。
次回がすごく楽しみです。
- 24 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003/12/01(月) 19:38
- いい雰囲気の小説ですね
いしよし久しぶりなので期待してます
頑張ってください
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/01(月) 22:08
- 何度も読み返してしまう程、気にいってしまいました。
これからも更新楽しみにしています。
- 26 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/02(火) 01:08
- 皆様、レスいただいて、ありがとうございます。
とても励みになります。
22> 名無し読者様
どのあたりで泣いていただけたのでしょうか。
いずれにしても感激です!
まだまだ修業中の身(?)ですが
頑張ってなんとか細やかな感情を表現する力を身につけたいと思います。
23> 名無し読者様
いしよしって、最高ですよね?w
なんというか、すごい組み合わせだと思っています。
1+1が3以上という類い稀なる魅力を
なんとか小品にも滲み出させることができたらいいなあと思っています。
24> 名無し読者様
いしよしって、自分のなかではまだアツいんですが、
世の中的にはすたれてきてるんでしょうか。w
ご期待に添えるよう、精一杯頑張ります。
よろしくおつきあいくださいませ。
25> 名無し読者様
おおっ!緊張してしまいます……ボロが出てないといいのですが。
でも、とてもうれしいです。
何度読んでも面白くて、登場人物に入り込んでいただけるような作品を
目指したいと思います。遠い道のりですが……。
- 27 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:11
- あたしは唐突にひとりになった。
ある日、いつもの時間に例の家臣が鍵を取りに来なかったのだ。
嫌な予感がして、あたしはまだ陽が落ちる前だというのに
転がるように彼女の牢へと走った。
そして、彼女がこの世にいなくなったことを知った。
- 28 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:12
-
空っぽになった牢屋をぼんやりと見つめる。
鉄格子の影が、冷たく床に落ちている。
- 29 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:12
- その時が迫っていることはわかっていたのに、
結局、あたしには何もできなかった。
彼女を看取ることさえも。
……苦しんだだろうか。あたしの名を呼んだだろうか。
- 30 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:13
- あたしは震える足を踏みしめ、父の部屋に戻った。
鍵をいつもの場所に仕舞い、引き出しを閉める。
フッと皮肉な笑みが浮かぶ。
父たちが、彼女に過酷な生を与えたのだ。
あたしを慈しみ育ててくれた、逞しくやさしい父が。
ゆらりと立ち上がった。
あたしは、これから消える。
父には生涯、その理由がわからないだろう。
- 31 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:14
- 城を抜け出して、林の奥に続く山に入り、一番近い滝を目指す。
這い上がるようにして辿り着いた高い崖の上で、あたしは妙に静かな気分だった。
死ぬことなど怖くない。
むしろ彼女の元へはやく行かなければと気が急く。
このまま置いていかれたくない。
どうどうと流れ落ちる水音を感じながら、
あたしは遥か眼下の滝つぼを見つめた。
- 32 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:15
-
竜神さま、あたしの命を捧げます。
どうか願いを叶えたまえ。
- 33 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:16
- 次の世では彼女が、太陽の下で幸福に生きられるように。
元気な姿で、思うぞんぶん駆けまわれるように。
おいしいものや美しい着物、そしてたくさんの人たちに囲まれて、
いつでも笑顔でいられるように。
- 34 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:17
- そして、竜神さま。
どうか生まれ変わった世でも、あたしと彼女を出会わせてください。
二人がすべてを忘れていたとしても、必ず。
- 35 名前:第一章 投稿日:2003/12/02(火) 01:18
- あたしは、ゆっくりと瞳を閉じた。
彼女がいつもあたしにくれた儚げな微笑みを脳裏いっぱいに思い浮かべる。
そして、そのまま滝つぼへと身を踊らせた。
- 36 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/02(火) 01:22
- 少ないですが、きりがいいので
本日はここまでとさせていただきます。
そして、第一章、終了です。
お読みいただいて、ありがとうございました。
- 37 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 01:41
- 引き込まれます。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 03:19
- 続きが気になります。今年読んだものの中で一番です。
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 18:41
- すげ…。溜息が出た。
大型新人登場のヨカン……
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 20:24
- すごすぎ。
一瞬にして引き込まれました。
- 41 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/02(火) 21:27
- 皆様、ありがとうございます。
37> 名無し読者様
この先も読んでいただけるように頑張ります。
38> 名無し読者様
光栄です! は〜、思い切ってスレ立ててみてよかった……。
楽しんで読んでいただけるって、うれしいものですね。
39> 名無し読者様
すごく光栄です! 今後ちょっとテイストが変わるので
そちらのほうも気に入っていただけたらいいなあ……。
40> 名無し読者様
ありがとうございます。今後も読み続けていただけるよう頑張ります。
ラブコメっぽくなるんですけどお好きでしょうか……。
- 42 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/02(火) 21:30
- まだ日付が変わらないんですが、今日はなんか激しく眠いので
ちょっと早めに更新します〜〜。
第二章は、ガラッと変えて明るめに。
やっと現代の「いしよし」コンビ登場です。
( ^▽^) < ヨシコ、行くよ!
(0 ^〜^)< 行くか!
それでは、第二章スタートです。
- 43 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:31
- 「うははは、んだこの写真。キショッ!」
「んもー! キショとか言わないの、よっすぃはぁ!」
梨華ちゃんが口をとがらせて、あたしをぶつ真似をした。
あー、おもしれー!
あたしが手に持っているのは発売されたばかりの『石川梨華写真集』。
同期の彼女は、娘。のなかでも超人気があって、かわいくって。
そ。誰が見たってかわいいよ、梨華ちゃんは。
だから、あたしもほんとはキショなんて思ってないよ。
お月さまみたいに目を細めた笑顔がかわいかったから
だからつい、いじわるしちゃっただけ。
- 44 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:32
- なのに、今日の梨華ちゃんはホントに傷ついちゃったみたいで。
あたしの手から写真集をとりあげると、
胸に抱え込んで、くるりと背を向けてしまった。
「梨華ちゃ〜ん?」
「…………」
顔をのぞきこんだら、目にいっぱい涙をためている。あらら。
「うそうそ。冗談に決まってるじゃ〜ん?」
「……どうせキショイですよ」
「梨華ちゃん、かわいいって」
「……いいよ別に、無理しなくったって」
うわ、手ごわい……っていうか梨華ちゃん、マジでネガティブモードに突入?
あたしは少々あわてはじめる。
「あの、梨華ちゃん……?」
「わー、よっすぃ〜が梨華ちゃん泣かしたー!」
「泣かしたのれすー!」
「だー! うっせえよ、つじかごぉ!」
楽屋に乱入してきた子供コンビをあたしが怒鳴りつけている間に、
梨華ちゃんはタッと楽屋を走り出ていってしまった。
- 45 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:33
- 「あ……」
「あーあ」
「あーあ、なのれす」
呆然と見送るあたしに追い討ちをかけるような辻加護の声。
あたしは困った顔をして、妹みたいな二人を見下ろした。
「やばいかな?」
「やばいよ」
「じゃれあいも、たいがいにせなな〜」
「れすね〜」
「おめーらに言われたくねえっ!」
辻加護が、ちらっと横目であたしを見た。
「きっと梨華ちゃんはよっすいに一番に写真集を見せたんれすよ?」
「ふえっ?」
「だって、うちら、まだ見てないもんなあ?」
いやあ、そりゃたまたまでしょ。
今日はあたしが一番に撮影が終わって、梨華ちゃんがその次だったってだけで。
- 46 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:34
- 「とにかく追いかけるのれすよ」
「えー……」
ほんとは心配なんだけど、あたしってほんとに素直じゃない。
辻加護に、梨華ちゃんを追っかけてくとこなんて見られたくないよ。
「あーあ、梨華ちゃん、便所の窓から飛び降りるかもしれんな」
「便器に頭つっこんで溺死するかもしれないのれす」
「トイレットペーパーで首つるかも」
「ううっ、泣ける話れすねぇ……」
「あーもう、わかったよ、行けばいいんでしょ、行けばぁ!」
あたしはしぶしぶを装って、楽屋を出た。
- 47 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:34
- 梨華ちゃんは、楽屋から少し離れた人気のない廊下で
壁に額をくっつけてめそめそ泣いていた。
あんなことで泣くかね、ったく……いや、あたしが悪いんだけどサ。
「梨華ちゃん」
びく、と梨華ちゃんの肩が震える。
あたしだってわかってるはず。
でも振り向かない。
か〜なり意地になってるな、こりゃ。
さて、どーするか。ここからがジゴロ吉の腕の見せどころ、なんちって。
- 48 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:35
- 「ご飯でも食べいかない?」
「……いかない」
「んな怒んないでよ。あんなのいつもの冗談じゃん?」
「………」
「キショいわけないじゃん。一番人気のくせに〜、このこのっ!」
「でも、よっすぃは、あたしのことタイプじゃないから」
タイプ? ああ、こないだ番組の収録で聞かれたあのことね?
あたしが彼女にしたくないタイプは石川梨華、って……言ったけど、
うーん、あんなのは番組を面白くするための回答じゃん?
てか、むしろ仲がいいから言ったわけで。
……あ、もしかして言いすぎだったとか?
そーいえば梨華ちゃんの顔がひきつってたよーな。
あたしは内心「うへえ、こりゃまいったなあ」なんて思いつつ、
おちゃらけて続けた。
- 49 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:36
- 「あんなの気にしてんのぉ?」
「気にしちゃだめ?」
「うーん、そっか〜、梨華ちゃん、あたしの彼女になりたいんか〜」
「なりたいよ」
ああ、そう……って、ええええええっ?!
あたし、冗談のつもりでしたが何か?
思わぬ展開に、どどっと汗が出る。
梨華ちゃんは、すっごく怒った顔をして、くるっと私のほうを振り向いた。
涙で潤んだ目がキィッとあたしを睨む。
「嘘だよ、バカッ!」
「あ、な、なんだ……」
本気かと思ったじゃんよ……まだドキドキしてる。
あたしは照れ隠しにヘヘッと笑って、
ふくれている梨華ちゃんの頭をよしよしと撫でた。
あーあー、目ぇぐしょぐしょにしちゃってさあ。
メイクどろどろ、しかも鼻水だらだらですよ、いしかーさん?
- 50 名前:第二章 投稿日:2003/12/02(火) 21:37
- 「あーあ、かわいい顔が台なしだぁ」
あたしはポケットからハンカチをとり出すと
ちょいちょいと涙をふいてあげた。ついでに鼻水も。
なのに、梨華ちゃんはぐしゃっと顔を歪めると
両手で顔をおおって、またポロポロ泣き出した。
そして、聞き逃しそうなほど小さな涙声でつぶやいたんだ。
「嘘じゃないよ、バカぁ……」
あたしの手がとまる。
「……梨華ちゃん?」
「よっすぃはヒドイよ。いじわるしたり、や、やさしくしたり……」
震える梨華ちゃんの肩が、やけに華奢に見えた。
ふえ〜と変な声をあげて泣き続ける梨華ちゃんを、
あたしは呆然と見ているしかなかった。
- 51 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/02(火) 21:40
- 本日はここまでといたします。
単なる作者の好みなのですが、二人の年齢は
(^▽^)<チャーミ石川でぇす!
とかやってたあたりと想像していただけると助かります。
それでは……。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 22:37
- 引き続きまして、すんごい(・∀・)イイ!!
吉澤さんがサバサバしてるんだけど、
キチンと(?)女の子してて好きです。
前世編がどう絡んでくるのかが非常に楽しみです。
- 53 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/03(水) 00:36
- 久々に心動かされるいしよしにめぐり会わせていただいて、感謝の極みです
前世で号泣、現代も楽しみです
私も作者さんと同じく当時の石川さん好きですよ〜
- 54 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 02:19
- 52> 名無し読者様
自分も、吉澤さんがキチンと(?)女の子してる作品が好きです。
ボーイッシュを越えちゃうのであれば
なにも「いしよし」小説でなくてもいいような。
まあ、好みは十人十色なのでしょうけれど。
53> ラヴ梨〜様
おおっ。よくお見かけしている方にコメントをいただけて感激です。
お褒めいただいてありがとうございます。
今の石川さんもいいですが、当時のいかにも「少女」な感じ、いいですよね。
それでは、本日の更新をいたします。
なんか更新するのって楽しいですね。毎日にハリがある(w
- 55 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:21
- 思えば、初めから変だった。
オーディションで初めて会った時、梨華ちゃんはニコッと、
ほんとうにニコニコッと満面の笑顔をあたしに向けたんだ。
あの時、あたしはなぜか思った。
「あ、この子はあたしのもの」って……変だよね、変だよ自分。
結局、あたしたちはオーディションに受かって、同じ道を歩き始めた。
梨華ちゃんは何もそこまでってくらい一生懸命で、
無駄にすごいとか言われるくらい頑張ってて。
あげくに空回りして落ち込んで、あたしのところに泣きついてくる。
そのくせお姉さんぶって、うざいくらいに世話をやいてきて。
- 56 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:22
- ピンクが好きで、甘いものが大好きなブリブリの女の子。
あたしとはまるで正反対。
こんな友達って、マジであたしのまわりにはいなかった。
クラスメイトだったら、ぜったい違うグループ。
だけどあたしは、これまでの友達のなかで一番、梨華ちゃんが好きだな。
一緒にいると、なんか落ち着くってゆうか、
あたしは気がつけばいつも梨華ちゃんの近くに寄ってってしまう。
なのにあの日、あたしは梨華ちゃんに気の利いた事もいえなくって、
3日経った今もなんとなく気まずいまま。
いや、あたしはそこそこ話しかけたりしてるんだけどぉ、
梨華ちゃんが八の字眉毛でごにょごにょ言って、
そのうちピャーッって逃げちゃうんだ。
- 57 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:22
- 「……ふぅ」
「よっすぃ、暗いで?」
「ん? ああ、ちょっと寝不足かな」
「なんや恋煩いとちゃうんか」
ブッ!と飲んでいた午後ティーを吹き出す。
こ、こ、こ、恋煩いだとぉ?
「何言ってんの、最近の中学生はまったくもぉ〜」
「あれ見て妬いてるんかと思たわ」
あいぼんがちょいと指さす方向を見ると、
楽屋の隅のほうで、中澤姐さんが梨華ちゃんが寄り添うように並んで
なにやら楽しげにキャッキャと本をみていた。
姐さん、なんでアンタがここに……って、今日はハロモニの収録だっけ。
- 58 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:23
- 「あら〜、いい表情じゃない、これ」
「これ、けっこう研究したんですよぉ、鏡の前でぇ」
「えらいなー。ん〜、これもいーなー、石川はホンマかわいなったよな〜」
「キャッ☆ありがとうございますぅ」
どうやら二人は梨華ちゃんの写真集を見ているらしい。
それこそキショッ!なくらいの姐さんの猫撫で声に
梨華ちゃんはサブイボも立てずにうれしそうな声で応えている。
……フン、どうせあたしはキショとか言っちゃったし。
- 59 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:24
- あまりに子供っぽかった自分にズーンと落ち込むあたし。
てか、姐さん、梨華ちゃんとくっつきすぎっ!
うおおお、肩抱くな、離れろっ、離れろってばよ、オイッ!
「「……ちっ」」
ん? 舌打ちのハモりにあたりを見回すと、
いつの間にかあたしの隣で矢口さんが百面相をしていた。
あたしと目が合うと、ジロッと睨んでコソコソと囁いてくる。
「ちょっとよっすぃ〜、ちゃんとアゴンの管理してくれないと困るんだけど」
「てか、やぐっつぁんこそ、あのオッサンなんとかしてくださいよ」
「んだとゴルァ!」
「やっかフォルァ!」
あたしと矢口さんは額をゴツンと合わせて、ぐりぐりと押しつけ合った。
んだよ、んだよ、やぐっつあんがあんなの放し飼いにしてっから悪いんでしょぉ!
今日は手加減しないんだからなあ〜!
ぐりぐり、ぐりぐり……
ゴキッ!
「いでっ!」
「吉澤ァ、オマエ、裕ちゃんのヤグチに何すんねん」
- 60 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:26
- いつの間にかオッサン、もとい中澤姐さんがあたしと矢口さんのそばに立っていた。
その手がグーに握られている。
「な、殴ったあ〜〜!かわいい後輩をグーで殴ったなぁ〜〜〜!」
「かー! 自分でかわいい言うなっちゅうねん!」
んだよ、梨華ちゃんが「チャーミーかわいい?」とか言うと
目尻下げてニヤけてるくせにさっ。
んとにもぉ……おー、いてぇ。
「吉澤ァ、いくら矢口がかわいいからって、おかしな真似したら地獄見るでぇ?」
「んなことしませんっ!」
「フン、どうだか」
「キャハハッ☆裕ちゃんヤキモチ妬いてんのぉ?」
矢口さんはさっきまでの怒りはどこ吹く風で超ご機嫌だ。
調子いいんだから……と思いながら、あたしはなんとなく梨華ちゃんを探す。
梨華ちゃんはさっきの場所に座ったまま、じっとこっちを見ていた。
なのに、あたしと目が合うとパッと目をそらしてしまう。
ああ……。
- 61 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 02:26
- 中澤さんと梨華ちゃんはハロプロワイドの収録に出ていった。
楽屋にぽつんとひとり残される。
あたしも皆みたいに収録を見に行けばいいのかもしれないけど
なんだかあたしが行ったら、梨華ちゃんを困らせるような気がした。
- 62 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 02:29
- 本日はここまでといたします。
なんか「第一章」とか「第二章」とか大仰に書いてるけど
二章で完結なのですよ。後からちょっとそぐわないなあと気がつきました。
すんません。
- 63 名前:23 投稿日:2003/12/04(木) 18:04
- 更新、お疲れ様です。
第一章はせつなくて苦しいふたりでしたが、第二章は現代の女の子っぽいけれど
少しぎこちなく・・という感じで、これまた良いです。
この先どうなるのか、ワクワクドキドキでございます。
リアルないしよしを見ていると、本当に「この子達は絶対、運命に導かれて来た
んだ」って思ってます。何か、「赤い糸」ってヤツでしょうか?
ここのいしよしにも幸あれと願っております。
- 64 名前:40 投稿日:2003/12/04(木) 20:09
- もちろん読み続けますよ〜
ラブコメも全然OKです!
これからも楽しみにしています。
- 65 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 21:49
- 63> 23様
いしよしって、何か特殊な雰囲気を匂わせる組み合わせですね。
運命の導き、赤い糸。しかも、なにかちょっと影があるんだ(w。
そんなドラマを感じて書いている次第です。
64> 40様
リアルないしよしは、かなりおもろい子たちなのではないかと。
あの感じを出そうとするとどうしてもラブコメ味に(w。
お気に入っていただけて幸いです。
さて、本日も激ねむなので、はやめ更新いたします。
寒いと眠くなりますよね?(命の危険を感じつつ)
- 66 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:50
- 梨華ちゃんと、一度だけキスをしたことがある。
いや、娘。のなかでキスなんて挨拶程度のことなんだけど(とくに辻加護)
あたしと梨華ちゃんの間では、そういうことってあんまりない。
手を繋いだり、ハグしたり以上のこと、あたしはなんか照れくさくて。
いや、梨華ちゃんがさ。
……なんでも梨華ちゃんのせいにしちゃいけないけどさ。
なんていうの? 変な感じなんだもん。
- 67 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:51
- 四期で並んで収録を見てた時、
辻が加護にチュってして、加護があたしに抱きついてチュってしてきたから、
あたしは笑って、すぐ隣にいた梨華ちゃんにリレーするみたいにチュってしたんだ。
梨華ちゃんはびっくりして「もうっ!」って怒ったんだけど、
その後、恥ずかしそうにうつむいて、
人さし指で確かめるみたいに自分の唇をフッとさわった。
その仕草が、妙に大人っぽくて、あたしは。
いつも鼓動がはやくなる。いつもいつも。
たった一つだけ年上の梨華ちゃんに、なぜかもどかしい思い。
置いていかないで。
- 68 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:51
- あたしは家に帰りかけた足を、くるっと方向転換した。
今日も収録が終わると、あいさつもそこそこに帰ってしまった梨華ちゃん。
このまま離れていってしまうのは嫌だ。
彼女を追いかけよう。
梨華ちゃんのマンションの前まで来て、
あたしは梨華ちゃんの携帯に電話をかけた。
いきなりインターホンを鳴らしても、一人暮らしの彼女はきっと出ないから。
- 69 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:52
- けっこう長くコール音が続いて、やっと梨華ちゃんは電話に出てくれた。
「……もしもし」
「梨華ちゃん、いま家?」
「あ、うん」
「あのさ、いますっごい近くにいるんだけどぉ」
「えっ?」
「もしよかったらご飯でも食べないかなーとかって」
たっぷり20分くらい待たされた後、あたしは梨華ちゃんの部屋に入れてもらった。
慌てて片づけたっぽいピンクだらけの室内。
なんでこんなにモノを飾りたがるのか、ほんと不思議だ。
部屋の隅には、ファッション誌がしこたま積み重ねられている。
賭けてもいいけど、クローゼット開けたら服がドサドサッって落ちてくると思うよ。
- 70 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:53
- あたしは外で食事でもって思ってたんだけど、
梨華ちゃんはちょうどご飯をつくってたとこだったみたいで。
結局、パスタをご馳走になってしまった。
「悪いね」
「いいよ、一人も二人も変わんないし」
食後の紅茶を入れてくれながら梨華ちゃんが微笑む。
食事中も、ぽつぽつしゃべっただけだけど、あの気まずさはなんとなく解消された。
うん、来たかいがあったのかなーなんて、あたしは満足する。
「ごめんね」
唐突に梨華ちゃんが謝ってきた。
- 71 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 21:54
- 「え?」
「私が変だから、よっすぃ〜、来てくれたんでしょ?」
「や、そんなんじゃないよぉ、梨華ちゃんと遊ぼぉって思っただけでぇ」
にへらっと笑うあたしを、梨華ちゃんは「嘘」って軽く睨んだ。
「よっすぃ〜って、調子いい」
「なに急にぃ」
「八方美人だし、優柔不断だし、ヘタレだし……子供だし」
カチンとくる。とくに「子供」ってところに。
- 72 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 21:55
- 「んだよ、梨華ちゃんのほーが子供でしょ」
「私は子供じゃないと思うよ」
「なんで?」
「自分の気持ち、ちゃんとわかってるから」
今度はドキンとする。
それってそういうことだよね、やっぱり。
梨華ちゃん、ほんとにあたしが好きなのか……
あたしは頬が熱くなるのを感じてうつむいた。
いや、告られるなんてこと実はけっこう慣れてるけど
でも、オンナノコに、一緒に仕事をする仲間に、
……いや、梨華ちゃんに好意を向けられたことにあたしは戸惑ってる。
あたしも、このコはあたしのものって思った、だけど。
「でも、もういいんだ」
どこかカラッとした梨華ちゃんの声に、あたしは顔をあげた。
- 73 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 21:56
- 梨華ちゃんは笑っていた。傷ついたみたいな微笑みだったけど。
それでいて、軽い調子で話し始める。
「私、思い込み激しいみたいで、運命だとか思っちゃってたの」
「………運命?」
「よっすぃと私」
ハジメテアッタトキニ。
そう言う梨華ちゃんの唇の動きに目を奪われる。
「初めて会った時にびっくりしたの、よっすぃを見て」
「…………」
「私、この人のものって」
「うそ……」
なんで? 私の鼓動がはやくなる。
「ほんとキショいよね?」梨華ちゃんがあははと声を上げて笑う。
あたしはブンブンと首を振った。だって。
- 74 名前:第二章 投稿日:2003/12/04(木) 22:01
- 「私、よっすぃも同じ気持ちって思い込んでたの。その、特別に大事にしてくれてる気がしたし、また勝手に空まわっちゃって……ごめんね、迷惑かけちゃった」
「梨華ちゃん、ちょっと、あの」
「もう平気だから。明日から元通り、ね?」
エヘヘーと梨華ちゃんが笑って、首をかしげた。
- 75 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/04(木) 22:03
- 本日はここまでといたします。
仕事仲間との恋はなかなかつらいっすね。
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/04(木) 22:11
- ああーーーもう大好きです。この小説が大好きです!
「私のもの」じゃなくて「この人のもの」って
言い方がすごくイイ!!
あ、挨拶が遅れましたが初めまして。
続きも楽しみにしています。
- 77 名前:40 投稿日:2003/12/04(木) 23:39
- うわぁ〜!もう顔がにやけちゃいますよ。
いしよし最高!雪ぐまさん最高!
暖かくして眠って下さいね。
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/05(金) 05:43
- うおー!すげぇー!すっげーイイっす!!
雪ぐまさん、アナタ最高です!!
続きすっごい楽しみです。
がんがってください!
- 79 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/12/05(金) 17:30
- むはー!こりゃ久々に私的CP界にいしよし革命ですなぁ。
とんでもなくイイんで、続きが素晴らしく楽しみー!
作者さんこの先も、頑張ってくださいませ。
陰ながら一人でむはむはさせていただきますですw
- 80 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/05(金) 18:47
- 76> 名無し読者様
激しく応援していただいて感激です!
自分も、石川さんはやっぱ「この人のもの」だろうと思うんですよね。
いしよしとは、そういう組み合わせであろうと。w
77> 40様
毎日お読みいただいているようで、とてもうれしいです。
しかも、お気遣いまでいただいて……(感涙)
うち、寒すぎなんですよ。ガスストーブ買おうかなあ。
78> 名無し読者様
最高ですかーーー?(って、なんかありましたね)
激しくお褒めいただいてドキドキしております。
がんがります! 引き続き、ぜひお楽しみくださいませ。
79> 名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 様
むはー! 革命とは……ありがとうございます。
ますますむはむはしていただけるよう精進してまいります。
書いてる自分が一番むはむはしてるんですが。w
さて、本日は飲み会が夜通しになりそうな悪寒なので
先に更新をすませてからでかけたいと思います。
- 81 名前:第二章 投稿日:2003/12/05(金) 18:48
- 梨華ちゃんは、口をきゅっと結んで、
もう一度、「ごめんね」と言った。
あたしは我ながら情けないくらい慌てた。
食器を片づけようと立ち上がりかけた梨華ちゃんの手首をひしっとつかむ。
「ちょ、ちょっとタンマ!」
「キャッ、な、何よ?」
「あ、いや、何ていうか……」
ちょっと待って。置いていかないで。
頭がぐるぐるする。くらくらする。
あたしはバカで子供だけど、
なんもわかってないかもしんないけど、
でも、梨華ちゃん、あたしは。
「つーか、り、り、梨華ちゃんはあたしのものだからっ!」
「ふえっ?!」
うお、噛んだ! 自分かっこわりいっ!!!!
梨華ちゃんが口をポカンとあけて、目を真ん丸にする。
あたしは頭をかかえた。
- 82 名前:第二章 投稿日:2003/12/05(金) 18:49
- 「あー、わがんねっ!」
「よっすぃ〜?」
「何、これ?」
心配そうに覗き込んでくる梨華ちゃんの瞳から目が離せない。
その黒い輝きに、胸がざわざわする。
喉の奥が詰まったみたいに息苦しくて。
次の瞬間、あたしの唇はやわらかく塞がれていた。
あたたかい、梨華ちゃんの、くちびる。
二度目のキス。でも一度目とは全然、違う。
鼻の奥がツンと熱くなる。
しずかに目を閉じて、彼女がくれたキスを感じる。
ゆっくりと唇が離れると、梨華ちゃんはひとつ息をつき、
まつ毛を伏せて囁いた。
「大好きなの」
そうか。
もしかしたら、あたしはずっと
気づかないふりをしていたのかも知れない。
「あたしも……」
- 83 名前:第二章 投稿日:2003/12/05(金) 18:50
- 梨華ちゃんの目から涙が零れた。
あたしの目からも。
あたしたちは不思議な力で惹かれ合い、恋におちた。だから。
「どこにも行かないで。ずっと一緒にいて」
「うん」
あたしたちはかたく抱きしめ合う。
その細い背中。もう離さない。
もう後悔しない。なぜか、強く、あたしのなかに、やってくる思い。
もう空っぽになるのはいやだ。
ひとりになるのはいやだ。
この人と、いるんだ。
膝立ちのまま互いを掻き抱いて、何度も何度も深い口づけを繰り返す。
ずっと足りなかったものを補うみたいに夢中になって奪う。
ああ、これまでこうしなかったなんて信じられない。信じられないよ……
梨華ちゃんは切なげに眉をよせて、呼吸が苦しくなったみたいな甘い息をつきはじめた。
そして、見たこともないような大人の顔ですっと立ち上がると、
すばやく部屋の電気を消した。
- 84 名前:第二章 投稿日:2003/12/05(金) 18:51
- もしかして、今日は満月?
月明かりって、あんがい明るいものなんだと知る。
ブラインドの隙間から差し込んでくる仄かなあかり。
梨華ちゃんが、あたしを潤んだ瞳で見つめているのが、わかる。
彼女は、ひどくかんたんにするりと服を脱ぎ捨てた。
あたしのほうは、どぎまぎしてしまう。
「もう?」
「だって」
何も問題ないじゃない?
そう言って微笑む彼女の頬にブラインドの影がくっきりと映っているのを見た時、
なぜかあたしの目からは、また涙がポロポロこぼれおちはじめた。
あれ、どうして……かっこ悪ぅ……。
あわてる気持ちとはうらはらに、次から次へと熱い流れが頬を伝う。
- 85 名前:第二章 投稿日:2003/12/05(金) 18:52
- 「どうして泣くの?」
「わ、わかんない、よ……」
「もしかして怖いの?」
「なわけ、ない……でしょ!」
ごしごしと両手で顔をぬぐうあたしの手首を、彼女がやわらかくつかむ。
そのまま広げられて、唇を奪われた。
何度も、何度も。
だめだよ、そんなふうにしたら、
また涙が溢れてしまう……。
「……嫌だった?」
「嫌なんじゃないよ。わかってるくせに」
ぐしゃぐしゃになりながら軽ぅく睨むと、
彼女は照れくさそうに微笑みながら首をかしげて、両手を広げた。
「はやく」
あたしは、吸い寄せられるようにその胸に飛び込んだ。
彼女の肌は、なんだかひどく安らぐような
どこか懐かしくてあたたかい香りがした……。
- 86 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/05(金) 18:55
- 本日の更新はここまでといたします。
ああ、やっと二人をまた出会わせることができました。
次回で完結でございます。
- 87 名前:みそっかす読者 投稿日:2003/12/05(金) 19:43
- すっきりと無駄の無い文章、引き込まれます。
次回で完結とは寂しいですが。
待ってます!
- 88 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/05(金) 21:00
- 前世での会話を相手を入れ替えて持ってくるとは。
そりゃ、吉澤さんもよく判んないままに涙が出るってもんだわ。
雪ぐまさん、本当、すんごい(・∀・)イイ!!
完結を楽しみにしております。
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/05(金) 21:46
- 涙がこぼれそうでした。
切ない。切ないのだけど好きです。
完結楽しみにしています。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/06(土) 00:00
- 飲みの前に更新してくださるなんて。やさしすぎる〜(T_T)
そのやさしさへの感謝を噛み締めながら読みました。
月明かりの照度が前世の記憶を持たないよっすぃ〜の魂を揺さぶり、
ブラインドで出来た影が彼女のいなくなった日の鉄格子の影を思い出させていたとしたら。。。
そう思うと、私も涙が頬をつたってしまいました。
- 91 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/06(土) 02:39
- 感涙しました
前世のエピソードがこれほど効果的に涙を誘うとは…感激です(号泣)
竜神様(私的には作者様)の素晴らしい計らいに感謝!!
私も終わるのが寂しいですよ
- 92 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/06(土) 17:27
- はじめて読みました。
すごくいいです。
完結は寂しいですけど、楽しみにしています。
- 93 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 00:31
- ぐええ〜、二日酔です。
87> みそっかす読者様
文体はあれこれ悩みつつ、言葉選びもいよいよ惑いつつ。
お気に召していただけて幸せです。
88> 名無し読者様
うちの石川さんは前世でものすごくいろんなことを我慢してたので
今生ではわりとイケイケなんですね。w
そして、よっちゃんは死に遅れたぶん、おこちゃまと。
雪ぐまの中では、一歳年下なのもそういう理由。w
89> 名無し読者様
雪ぐま自身、切ない話が好きなので、そう言っていただけて嬉しいです。
いしよしにはなんとなく切ない気配があるから好きなのかも。
90> 名無し読者様
記憶がなくても、魂が覚えてる。
うちのよっちゃんは鈍感ですけれど、たぶん。
91> ラヴ梨〜様
おおっ、雪ぐまが竜神なら、
もう何回でもいしよしを生まれ変わらせて、何回でも恋をしてもらいます。w
それで、その様子を滝つぼからウハウハ見る。w
92> 名無し読者様
はじめまして。レス、ありがとうございます。
最後まで気に入っていただけることを祈りつつ……。
それでは、ぼちぼち本日の更新をはじめさせていただきます。
- 94 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:32
- 容赦なく差し込んでくる朝の光に目を覚ますと、
隣に裸の肩をむき出しにしたの梨華ちゃんがすぅすぅ眠っていた。
「うわあ!」
あー、びっくりした。
そっか、そうだっけ、そうだったっけ。
ドキドキする心臓をおさえながら、そうっと寝顔をのぞきこむ。
あんがい、まつ毛長いな。
あ、よだれたれてる。
ふふっ。
なんかニヤニヤしてしまう。
なんて幸せなんだろう。
朝起きた時に、大好きな人が隣に寝てるのって。
- 95 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:33
- 「ん……」
梨華ちゃんが目を覚ました。
「おはよ」
「ん、おは……あっ…!」
言いかけて、固まる。
このシチュエーションに気づいて、やっと本格的に目が覚めたらしい。
「あ、そっか……」
なんて言って、さりげに胸を隠しながら頬を赤く染めてる。
そうだよ。うちら、やっちゃんたんだから!……なあんてね、ハハッ。
あたしたちは見つめあって、そして朝っぱらから濃厚なキスをした。
梨華ちゃんが素足をからめて、あたしにしがみついてくる。
あ、ちょっと、そんな、また理性がぁ〜〜〜。
- 96 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:34
- 「あー、幸せ。仕事行きたくなぁい!」
「サボったら目立つかなあ?」
「……当たり前でしょ」
ああ、でも、もうちょっと。
もうちょっとだけこうしたい。
まだ早いんだし、さ。
あたしは梨華ちゃんに腕枕をした。
彼女があたしの腕のなかで目を細める。
その光あふれる幸せそうな微笑みに胸が熱くなる。
「ふふっ、ずっとこうなりたかったんだぁ」
そんなドキッとするようなことを言いながら、あたしの鎖骨を指でなぞる。
昨日まで友達だった梨華ちゃんが、今はあたしの恋人。
不思議な感じ。
ううん、今、恋人だってことがじゃなくて、
これまでただの友達だったことが、すごく不思議。
- 97 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:35
- 「それはぁー、ひーちゃんがお子様だったから」
「……すいませんね」
「私は、わかってたもん。ひーちゃんと私は運命だぁって」
「やっぱりね」なんて、勝ち誇ったように言う梨華ちゃん。
んだよー、めそめそ泣いてたくせにさぁ。
それに、“ひーちゃん”ってなんかくすぐったいよ。
「キショッ!」
「もー、キショとか言わないでってば!」
梨華ちゃんは、くるりと背中を向けてしまった。
でも、それは怒ったふり。ほら、クスクス笑ってるよ。
だって、彼女はあたしの心の奥をもうちゃんとわかってるから。
- 98 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:36
- あたしは、後ろから梨華ちゃんを抱きしめて
彼女のすんなりした首筋に唇をつけた。
その瞬間……
「あ……」
「あれ……」
梨華ちゃんが振り返って、あたしたちは顔を見合わせる。
これ、知ってる……こういうのなんていうんだっけ? えっと。
「デ・ジャ・ビュー?」
「びっくりしたね」
「うん」
「……ねえ、私たちさあ」
梨華ちゃんがあたしの目をのぞきこむ。
- 99 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:37
- 「前世でも、こんなふうに一緒にいたのかも。その前の世界でも、そのもっと前も、繰り返し出会って、それで今があるの」
うっわ、梨華ちゃんってホント女の子……でも。
「キショとか言わないの?」
「言わないよ」
あたしは微笑む。
だってあんがい、そうかもしれないって思うんだ。
うーん、記憶の底の、もっともっと奥のほうに梨華ちゃんがいる、みたいな?
- 100 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:38
- そう言うと梨華ちゃんは「キャー」とはしゃいだ。
「ほら、やっぱり私たち、運命だよねぇ〜〜」
「かもね」
「私ね、誰にもこんなふうに思ったことないよ。もう、すごいびっくり!」
「あたしもびっくりだよ。よりによって梨華ちゃんだなんてさ」
「ちょっと! よりによってって何よ!」
あはは。
「運命の人」ね。そんなことってあるのかな?
まあ、どっちだっていいや。ただの思い込みだったって、かまわない。
ねぇ、梨華ちゃん。アイドルなんてやってるこの世界を二人で生きよう。
- 101 名前:第二章 投稿日:2003/12/07(日) 00:40
-
どうやらあたしは、
いつでもあなたのそばにいたいみたいだから。
☆完☆
- 102 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 00:43
- 『記憶より彼方で』完結いたしました。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
ご感想等、いただけると幸いです。
皆様からあたたかいレスをいただき、
こんな我でも書いてもいいんだなあとうれしくなっている次第です。
雪ぐまに尽きせぬ妄想を抱かせるいしよし……というわけで
スレの残りももったいないですし、明日から次回作にいこうかと思うのですが、
また、おつきあいいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 00:50
- 完結お疲れ様です。
前世から続く恋ステキでした。
次回作もかなりかなーり楽しみにしております。
- 104 名前:90 投稿日:2003/12/07(日) 00:52
- 完結、お疲れ様でした。本当に幸せな一週間でした。
次回作あるんですね!
雪ぐまさんの書くいしよしにまだ浸れるなんて。
感謝、感謝ですm(__)m無理せず頑張ってくださいねっ!
- 105 名前:40 投稿日:2003/12/07(日) 01:29
- 完結お疲れ様です。
毎日ほんと楽しみに過ごすことが出来ました。
と、同時に明日から淋しいなぁ…
なんて思ってたんですが、次回作があるんですか?!
嬉しい限りです。
自分は雪ぐまさんにどこまでもついていきま〜す!
- 106 名前:23 投稿日:2003/12/07(日) 01:45
- 完結、お疲れ様です。
いやぁ〜、本当にイイモンを読ませていただきました。
久々に「いしよしの王道」を見た想いがしてます。
前世での伏線がすごくカチっと嵌っていて、ひたすら感嘆です。
(この作品を読んでいたら、ふと「愛と死の間で」っていう映画を思い
出しました。全然関係無いんですけど・・)
次回作もあるんですか!?楽しみですわい。
是非私も「ひとりむはむは」させていただきますです、ハイ。
- 107 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/07(日) 02:22
- 現世ハッピーエンド完結最高です
私も切なく少し痛いのを乗り越えたラブラブ甘々いしよしがツボなので、今作はクリティカルヒットでしたよ
寂しくなると思いきや、すぐ次回作とは…
至福のひとときです
- 108 名前:みそっかす読者 投稿日:2003/12/07(日) 04:23
- 雪ぐまさんありがとうございます。大切にしまっておきますね。
私は文章、きっとくどいと思うので、こんな風にシンプルに、
だしの効いたモノを作れれば理想、と思ってます。
次作も、お目にかかれれば幸いです。
- 109 名前:名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 投稿日:2003/12/07(日) 13:35
- むははー!素晴らっすぃ作品でした!作者さんお疲れ様です。
早速次回作にとりかかるそうで...次回作も良さげな雰囲気むんむんですw
今回以上のむはむは、期待してまーすw
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 15:35
- 素晴らしい作品をありがとうございます。
「いしよし」ってなんでこう、運命って感じがするのでしょうか。
みんながそう感じるってことは本当にそうなんじゃないか、と思ってみたり。
リアルいしよしにこの作品を見せて、「あんたたちはどう思うのさ?」
と問いたいです。
次回作も楽しみにしてます。
- 111 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 22:25
- 皆様、あたたかいお言葉ありがとうございました。
とても励みになります。
103> 名無し読者様
いしよしは前世では悲しい恋だったような陰がある、という発想から書きました。
妄想ですが、現世ではぜひハッピーな恋をしてほしいものです。w
104> 90様
レスをいただき、雪ぐまも楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます。次回作もぜひおつきあいください。
105> 40様
ついてきてくださ〜い。w
と、自信をもって言えるようなものを書きたいです。がんがります。
106> 23様
その映画は存じ上げないですねぇ。今回、とくに参考にしたものはないのですが
影響されているとすれば、これまでに読んだ珠玉のいしよし小説群でしょうか。
素材(いしよし)を上手に調理した素晴らしい作品がたくさんあると思います。
- 112 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 22:34
- 107> ラヴ梨〜様
一度、切なく痛いだけというのも書いてみたいのですが
でも、やっぱり幸せになってほしいんですよね〜。w つい甘くなっちゃいます。
108> みそっかす読者様
光栄です。だしはやっぱり「いしよしだし」ですよね?w
みそっかす読者様はどちらかで書かれているのですか?
109> 名無し小説屋さん( ‘Д‘)ノシ 様
良さげむんむんでいけたらいいなと思っております。
でも、けっこうテイストが違うのですよ。またお気に召していただけることを祈りつつ。
110> 名無し読者様
雪ぐまも本人達に「で、どうなのよ?」と問いたいです。あらゆることを。w
いずれにしても、なかなか稀にみる名コンビですよね
- 113 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 22:36
- さて、新作にまいります。
新人ナースの石川さんが気になってるのは、かわいいあの子。
かわいいあの子は誰でしょう?(バレバレですな)
アンリアル。
かわいいあの子は17歳で、ナース石川さんは22歳で、ちょっとお姉さん。
石川さんの純真なイメージを大切にされたい方は
お読みにならないほうが賢明かも。
たいしたこたぁありませんが、ちょびっとだけ大人の恋も経験済みの石川さんです。
おかしくって、切なくって、ちょっとまぬけな恋模様。の、予定。
前回作よりは長めになります。
それでは、お楽しみいただけますよう祈りつつ。
- 114 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:37
-
『かわいいあの子』
- 115 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:47
- 「石川さんが、あたしの孫だとうれしいねぇ〜」
「何いってるんですかぁ、おばあちゃんには素敵なお孫さんがいらっしゃるじゃないですかぁ」
「うんうん、圭はあたしなんかにゃあ、もったいないほどいい孫じゃよぉ」
「そうですよぉ、保田主任はとっても優秀なんですから。私、憧れちゃいます」
「ありがとねぇ、ほんとに石川さんはやさしいねえ」
保田のおばあちゃんが両手をすりあわせて拝むみたいにしたから
私はすっごく照れてしまう。
ナースになってまだ半年。
バリバリの新人の私だから、いろいろ不手際もある。
やさしい患者さんに助けられている毎日。
軽くスキップしながら廊下を歩いてたら、
曲がり角から突然にゅっと手が出てきて、ぺろんとお尻を撫でられた。
「キャッ!」
「相変わらずええケツやな〜」
「もう! 中澤先生!」
- 116 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:48
- 振り返ると、外科のドクターの中澤先生がニコニコして立っていた。
白衣には不似合いな金髪と青いカラーコンタクト。
でも、腕は一流。面倒見がよくて、患者さんにも人気がある。
けど、若いナースにセクハラしまくる悪いクセがあって……。
軽ぅく睨んだ私を見て、中澤先生はますますニヤニヤ。
「裕ちゃん、女やからセクハラちゃうもーん」
「関係ないですよ、そんなの」
「石川ってほんま、そそるわー……、もっかいつき合う?」
ドキン、と心臓が脈打った。
私は慌ててくるりと背を向ける。そして小声で抗議。
「やめてください……、誰かに聞かれたら」
「せやな」
中澤先生は涼しい顔。
いつもひょうひょうとして、心の中が読めない人。
- 117 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:49
- そう、私は去年まで中澤先生の恋人だった。
看護学校の実習に来た時に口説かれて、
最初は戸惑ったけど、結局すごく好きになってしまった。
私って女のヒトが好きなのかもって感じた出来事。
なのに、晴れて中澤先生と同じこの病院に勤め始めて、すぐにわかった。
中澤先生が、私にナイショで二股をかけてたこと。
先生の目が本当にあたたかく注がれていたのは、外科のナースの……
「矢口さんに殺されます、私」
「キャー、裕ちゃんも殺されるぅ〜」
精一杯のイヤミにも、そんな調子。
腹が立つけど、憎めない。
……ほんと、勤務する病棟が違ってたのが不幸中の幸いだわ。
- 118 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:50
- 「ところで、どうして内科にいらしてるんですか?」
「いや……、保田主任、結婚するんやって?」
急に心配そうな顔になった中澤先生。
ほんとは気のいい人なんだと思うのはこんな時。
「ええ、来春に決まったそうです」
「急やな」
「おばあさまのご病気もあるので、なるべくはやくということです」
「ああ、ここに入院してるんやっけ。肝硬変やったか」
「急を要する容体でもないのですが、なにぶんお年なので」
私は小声で、でも微笑みをくずさずに答える。
中澤先生が、かすかに私の目の中を探るような表情をした。
保田主任は、同じ内科の先輩ナース。
そして、今の私の想い人。
厳しくてよく叱られたから最初は怖かったけど、
患者さんに接する姿は誠実さに溢れていて、
いつしか私は彼女に憧れ以上の気持ちを抱いていた。
もちろん、そんなことは口に出していない。
だって、保田主任はフツウに男の人が好きな女の人だから。
- 119 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:51
- 「平気か?」
「何の話ですか?」
「無理しちゃって」
中澤先生が私の肩をこづく。
何も言った覚えはないけど、中澤先生は私の気持ちに気づいてるみたい。
ことあるごとにうるさく冷やかしてくる。
でも、今日は噂を聞きつけて、わざわざ慰めにきてくれたんだろう。
「ムシャクシャしたら、いつでも相手するで?」
「結構です!」
問題は、いまいち励まし方が間違ってるとこなのよね……。
「石川、新患の担当、お願いしたいんだけど」
「あ、ハイ」
噂をすれば影。
保田主任がカツカツと靴音を響かせながら、こちらへ歩いてきてた。
- 120 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:52
- 「中澤先生、うちの新人にまでセクハラしないでくださいよ?」
「ははっ、保田主任にはかなわんなー。で、おめでたなんだって?」
「まだ子供はできてませんって」
笑顔で軽ぅくジャブを打ち合う二人。
私もチクチク傷む胸のうちを気づかれぬよう、笑い声をあげる。
保田主任に恋人がいることは知ってたし、
いつか結婚しちゃうっていうのも最初からわかってた。
でも、好きになっちゃったんだもん。
あーあ、忘れるのに時間がかかるかも、ね……。
保田主任はひとしきり愛想をふりまくと、
スッと仕事の表情に戻って、私にテキパキと新患の説明を始めた。
「17歳の子なの。ストレス性の急性胃潰瘍で倒れたらしいわ」
「17歳で?!」
「そう、最近の若い子は大変ね。もっとも、何のストレスか本人は心あたりないって」
「そんなはずないでしょう」
「おおかた、受験ストレスちゃうん?」
「さあ、どうでしょうね……あ、来たわ。あの子よ」
- 121 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/07(日) 22:53
- エレベーターから、車イスに乗せられた少女が
母親らしい女性につきそわれて降りてきた。
痛みがひどいのか、背もたれに体を預けてぐったりとしている。
すぐ脇を通り過ぎていくその青白い横顔がとてもきれいで、私は目を見開いた。
なんて大きな瞳。
それに柔らかそうなほっぺた……。
「ストライクゾーンか?」
ニヤつきながら小声で囁いてきた中澤先生のお尻を
保田主任に見つからないようにこっそりと、でも思いっ切りつねってやった。
- 122 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/07(日) 22:57
- 本日はここまでといたします。
ナース石川……作者の妄想が爆発です。w
- 123 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 23:00
- まずは新作更新お疲れ様でした。
リアルタイムで見たのって初めてで、
それがこの作品だったことを本当に嬉しく思います。
これからも楽しみにしています。頑張ってくださいませ。
- 124 名前:23 投稿日:2003/12/07(日) 23:14
- おぉ〜、早速新作が始まりましたか!
なんたってタイトルからしてヤラレマシタ!「かわいいあの子」だなんて・・
前作とはまたひと味違って「ちょっと大人な石川」さんがツボです。
そしてあの子は何故病気に・・そして何故か病弱な役が似合うような・・
次回も楽しみにしておりますです。
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 23:54
- 大好きな設定です。感激。作者さんの書かれる話って、設定がまた
萌えますね〜。
- 126 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/08(月) 00:02
- ナースチャーミー…
夢のような設定!
ちょっぴり大人な梨華ちゃんの看護を想像するだけで期待がふくらみますね(妄想)
- 127 名前:110 投稿日:2003/12/08(月) 00:06
- 新作!嬉しいです。
ストレス性・・・意外に複雑そうな
「かわいいあの子」のキャラ設定に期待ふくらみまくりです。
- 128 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/08(月) 21:08
- 皆様、あたたかいご声援ありがとうございます。
123> 名無し読者様
光栄です。ご期待に添えるよう頑張ります。
124> 23様
石川さんって、よっすぃ〜のことかわいくてたまらないとか思ってそうな気がするんです。
ずばり「タイプ」とでも言いましょうか……いや、妄想ですが。w
125> 名無し読者様
どうやら「萌え」ポイントなんですね。気が合いますね。w
もう妄想爆発でむはむはしながら書いております。
126> ラヴ梨〜様
はい。ぜひとも白衣の梨華ちゃんを想像しつつ、
そしてパジャマ姿のよっすぃ〜を想像しつつ、お読みいただければと思います。w
127> 110様
よっすぃ〜って掃除が趣味で、ちょっと神経質なんですってね。
そんな情報から発想しています。
それでは、本日の更新にまいります。
- 129 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:09
- 新しい患者さん、吉澤ひとみちゃんは、
イマドキの女子高生らしく明るい茶髪で、ピアスが片耳に3個もあいていた。
むずかしい子だと困っちゃうなと思ってたけど
彼女はとっても礼儀正しい女の子だった。
「はい、吉澤さん、お熱計りますねー」
彼女は、口を結んだままかすかに微笑んでうなずく。照れ屋さんな笑顔。
ちょっと人見知りなのか、検温の間、所在なさげに窓の外に目をやったりしてる。
白い病室のなかで光に照らされて、白い肌がますます透きとおるみたい。
私は思わずみとれてしまう。
色白って、ほんとにうらやましいわ……。
「はい、終わりましたよー」
「ありがとうございます」
かーわいい!
こんなにいい子が胃潰瘍だなんて、一体、何があったのかしら。
びっくりするくらいたくさんのお友達がお見舞いにくるし、
きっとクラスの人気者なんだと思うんだけど。
- 130 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:10
- 「ご両親も、まったく理由がわからないんですって」
「んー、いい子なんですよー、本当に。スレてないっていうか」
「美人だしね〜……って、これはあんま関係ないか」
アハハと豪快に保田主任が笑う。
怖いカオをネタにされてる主任。
でも、私はとっても素敵だと思いますよ。なんて。
その時、病棟のロビーが急に騒がしくなった。
「よっすぃ〜、いつ退院するの〜?」
「先輩、試合までにぜったい治してくださいね〜」
「さみし〜ですぅ、先輩がいないとぉ〜」
あらら、ほんとに人気者。
吉澤さんを囲んで、女子高生の輪ができている。
彼女たちはすごく無邪気にキャッキャとはしゃぎあってて、まるで怖いものなしって感じ。
うーん、ほんの少し前まで私だってあんなふうだったのよね。
なんだか遠い昔のことみたい。
社会人って悲しいね……。
- 131 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:11
- お年寄りばかりの病棟だから、こんな光景はめったに見ない。
だから、私と保田主任はその様子をほほ笑ましく眺めていたんだけど
しばらくして、主任が「なんとなくわかったわ」と呟いた。
「あの子、脇を通る患者さんの顔色をいちいちうかがってんのよ。で、ムッとしてるみたいだと、ちょっと頭を下げるの」
「あ、ほんとだ」
それは、気をつけて見ていないとわからないほどのかすかな仕草。
「でも、お友達に『静かにして』とは言えないのね」
保田主任は、そう言って苦笑した。
なるほど。吉澤さんって呑気そうにみえるけど、本当は。
- 132 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:11
- 「しょうがない。静かにしろって注意してくるわ。あのままじゃ、ますます吉澤さんの胃がやられちゃう」
ナースセンターを出ていく背を見送りながら
保田主任ってやっぱりすごいなあって思う。
嫌な役も患者さんのために引き受けて……憧れちゃいます私。
そんな保田主任のやさしさに気がついた彼氏さんだもん、
きっと主任のこと、大切にしてくれますよね……。
◇ ◇ ◇
- 133 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:13
- 帰り仕度を終えて更衣室から出る。
今日は急患が入らなかったから、珍しく定時退出。
ひさしぶりに駅のほうまで出て、冬物でも買っちゃおうかな?
買物したいがヒマがない〜♪(古っ!)っていうのはほんとだったのね。
毎日目が回るほど忙しくて、お休みの日もぐったりしちゃって、
お陰で貯蓄は順調。寮生活だしね。
たまにはお給料使わなくっちゃ〜なんて考えながら通用口へ向かっていたら、
渡り廊下の窓から、中庭のベンチに座っている吉澤さんの姿が見えた。
メールでもしているのか、俯いてしきりに携帯をいじくってる。
私は、眉をしかめた。
あの子、あんな薄着で外にいちゃだめじゃない!
「吉澤さーん、風邪ひくわよー」
窓から顔を出して大声で呼びかけると、
吉澤さんはギョッとした顔で見上げてきた。
ふん、どうせアニメ声ですよーだ。
- 134 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:14
- 「もう夕方だから冷えちゃうよー」
「平気ですよー」
「だめよー」
しぶとく呼びかけたかいあって、吉澤さんはしぶしぶ腰をあげた。
そうそう。ちゃあんとナースの言うことは聞いてもらわなくっちゃね!
私は、中庭の出入口に続く階段を小走りに駆け降りた。
階段を降りきるのと、彼女が中庭のドアを開けて入ってくるのとほぼ同時だった。
その彼女の姿を見て、あたしは目を丸くする。
「背、高いのね」
いつもベッドに横になってるか、座ってるかのどっちかだから気づかなかった。
そういえばこんなふうに立って向かい合ったのは初めてかも。
- 135 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:15
- 「バレー部なんです」
吉澤さんも、なんとなく不思議な表情で私を見下ろしている。
ああ、白衣じゃないから驚いてるのね?
どお? このピンクのワンピース。
なかなかおしゃれなお姉さんでしょ?
「……微妙」
「え?」
「なんでもないです」
何なのかしら?
まあ、いいわ。とにかく風邪ひかないように注意しとかなきゃ。
「だめよ、もう秋なんだから、夕方に外にいたら冷えちゃう」
「はぁ」
「入院してるのにメールでもないでしょ?」
「んー。退屈なんすよ。話し相手いなくて」
そっかぁ。年の近い患者さん、いないもんね。
じゃあ、お姉さんが退屈しのぎにつきあってあげよう。
急いで帰ったって、なにか約束があるわけじゃないしね。ううっ。
- 136 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:16
- 胃に負担の少ない果汁100%のリンゴジュース(もちろん常温)を手渡すと、
吉澤さんはやっぱり律義に頭を下げてうけとった。
あんがい背が高い吉澤さん。首がスッと長くてかっこいい。
なのに背を丸めてソファに腰かけて、ちゅうちゅうとストローをくわえている姿が
なんていうんだろう、ちょっとありえないくらいかわいいの。
絶対、絶対、この子モテると思う。とくに女の子に。
私だって、ついこんなトコでジュースなんておごっちゃってるし。
はぁ、こんなとこ中澤先生に見られたら、死ぬほどからかわれちゃうよ〜。
「吉澤さんって、お友達多いよね」
「んー、多いのかな?」
「昨日もおとといも、たくさんお見舞いに来てたじゃない?」
「あいつら、学校帰りにマック寄るくらいのつもりなんすよー。ジュース飲んでしゃべるだけしゃべって帰ってくんだもん。何しにきてんのーって感じ」
ふうん、あんがい気さくなしゃべり方なんだ。
やだ、私、なんか観察してるみたいじゃない?
- 137 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:17
- 「吉澤さんって、みんなの人気者って感じ」
「えー、んなことないっすよ」
誉めたつもりなのに、吉澤さんの表情にかすかに影がさしたような気がした。
あれ? 私はさりげなく目をこらす。
私だってナースのはしくれ。
患者さんの変化を見逃すわけにはいかない。
そっか、もしかしてこの子、またお腹痛くなってきたんじゃないの〜?
「とかいって、石川さんのほーがモテモテって感じじゃないすか?」
「えー、私は全然ダメ」
「うそぉ?」
「ほんとほんと。なんかギャグが寒いとかキショイとか言われてー」
「わかる。ちょっとからかいたくなるっていうか」
「ガビーン、年下の子にまで言われちゃうし」
「てか、ガビーンとか死語だし」
ひゃひゃひゃと吉澤さんが屈託なく笑う。
でも、だめ。わかっちゃったよ、私。
- 138 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:18
- スッと手のひらを彼女のお腹に当てると、案の定、ギクッとした顔をした。
「お腹、痛いでしょ?」
「…………」
吉澤さんって、ほんと気いつかいなんだ。
ナース相手にさえ「話盛り上がってるのに、お腹痛いとか言ったら悪いかな」なーんて
いちいち考えちゃうくらいに。
「な、なんでわかったの?」
「ナースだから♪」
彼女は「嘘ぉ」と声をあげて、それから「イテテテテ……」と体を丸めた。
あーあ、ほら大声出すから〜。
- 139 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/08(月) 21:18
- かわいそうなくらい神経の細い女の子。
なのに、お腹に手を当てられたまま、おとなしく目を閉じてる吉澤さんは
なんだか呑気なくまのプーさんを思わせて、私は必死で笑いをこらえていた。
ダメダメ、吉澤さんはお腹痛いんだから……。
「痛いの治まったら病室に帰ろうね?」
「ン……」
きゃっ、かーわいい!
- 140 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/08(月) 21:21
- 本日はここまでといたします。
(0^〜^)< 昨日、梨華ちゃんにジュースおごってもらった。
って、マシューTVかなんかで言ってましたよね。にやり。
- 141 名前:110 投稿日:2003/12/08(月) 21:43
- 胃潰瘍のプーさん・・・(はぁと)。
私も惚れそうです。
吉はなんかまだまだ謎がありそうで、さらにさらに、
期待ふくらんでふくらんでふくらんでます。
- 142 名前:90 投稿日:2003/12/08(月) 22:08
- 新作もしっかり読ませていただいています(笑)
よっすぃ〜の「微妙」発言。わたくしのツボでした!
外でPDAで読んでたので絶対可笑しい人って思われてます。
だって笑いとにやけをこらえるのに必死ですごい顔していたはず。
次も楽しみに待ってます。
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/08(月) 22:44
- この新作いいですね〜
もうメロメロっす♪
- 144 名前:名無し読者A 投稿日:2003/12/09(火) 19:37
- 本当に、ここの小説にやられちゃってます!
2人とも可愛くて、ツボですw
ぷーさんには、ふきだしちゃいました。なるほど…
いしよしってすごくいいですよね〜。
次も楽しみにしてます。
- 145 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/09(火) 21:34
- 141> 110様
吉が石にピンクのプーさんをプレゼントしたのは有名ですが
それを知った時に雪ぐまは「はいはい、もー、わかった、わかった」という心持ちになりました。w
142> 90様
PDAですか。最先端ですなぁ。
それにしても石川さんのセンスってどこで培われているんですかね。微妙です。
143> 名無し読者様
メロメロですか〜。光栄です。ありがとうございます。
144> 名無し読者A様
いしよしっていいですよね〜。なんでこんなにハマってるんだか
自分でもかなりキショいです。w
それでは、本日の更新にまいります。
- 146 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:35
- 懐中電灯で床を照らしながら、一つひとつの病室の前で耳を澄ます。
なかから苦しげな声が聞こえてこないか、
おかしないびきが聞こえてこないかと確かめる。
夜勤の巡回は、すごく気をつかう。
眠りの浅い患者さんも多いし、なるべく足音を立てないようにそっと歩く。
そこまで気にしない同僚も多いけど、
私はなんとなくセオリー通りにゆっくり歩いている。
「あれ?」
私はふと足を止めた。
うそ、話し声? どこからか話し声がする!
チラッと腕時計を見ると、深夜2時を軽くオーバー。
こんな時間に起きてるなんてとんでもないわ、どこの病室?
……まさかオバケじゃないでしょうね?
- 147 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:36
- じっと耳を澄ませると、ボソボソとした声の出どころがわかってきた。
そのドアに目をやる。吉澤さんのところだ。
おかしいわ、個室なのにどうして?
ひとりごとでも言ってるのかしら?まさか。
わかった、きっと携帯で誰かと話してるのね?
院内は携帯禁止なのに、まったくもう!
私は抜き足差し足でドアの前に近づいた。
「…………ご……」
「…よ……………」
やっぱり、ここね。よ〜し。
私は、精一杯怖い顔をつくって、カチャッとドアを開けた。
「ええっ!」
そこに見たのは、なんと吉澤さんのキスシーン。
っていうか、その子は誰ーーーーっ?!?!?!
- 148 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:37
- 音に気づいた二人がハッとこちらを向く。
ベッドに半身を起こした吉澤さんと、
ベッドに乗って吉澤さんに覆いかぶさるように膝立ちをしている女の子。
あわてたように「あ……」と声をあげる吉澤さんに対して
相手の女の子はどこか冷めたような瞳で私を見た。
長い髪がサラリと風に揺れる。
月明かりに浮かび上がる美しい少女たち。
私は不覚にも一瞬みとれた後、ハッと我に返る。
ちょっと靴のままベッドの上に上がらないで!……じゃなくて、
いま、キスしてましたよね、あなたたち、って、
そんなこともこの際どうでもよくて〜〜〜
「どこから入ってきたの?」
おどかさないように、なるべくやさしい声を出す。
うちの病院は完全看護で、夜の付き添いを認めていない。
つまり、髪の長い彼女は面会時間を過ぎてもこっそり残っていたか、
あるいはどこかから忍び込んだかしかないわけで。
- 149 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:37
- 髪の長い彼女は、冷めた表情のまま肩をすくめた。
「窓からだよ」
「窓?!」
ここ、3階なんだけど!
「ほら」
彼女はまるで大したことじゃなさそうに窓の外を指さす。
「ちょうど木があるじゃん。物騒だね。カンタンに登れる」
「カンタンって……危ないじゃない」
「別に」
彼女はひらりとベッドから飛び降りた。
プリーツのミニスカートからすらっと伸びた足。
その格好で3階まで這い上がってきたっていうの?
あっけにとられる私のことなど気にする様子もなく、
そのままトコトコと窓のほうへ向かう。
ちょ、ちょっと! まさか窓から帰る気じゃないでしょうね!!
- 150 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:38
- 「通用口を開けるから、そこから出て」
「それ、どこ?」
「送るわ」
彼女の背を押して部屋を出ようとすると
吉澤さんの声が追いかけてきた。
「ごっちん!」
まるですがるような声。
「また、来てくれる?」
ごっちんと呼ばれた少女は、かすかに笑って首をかしげた。
「気が向いたらね」
- 151 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:39
- 通用口まで案内してIDカードをスキャンし、ドアを開けてあげる。
彼女はちょいと会釈をすると、ためらいもなく真っ暗な病院の中庭に足を踏み出した。
この子、オバケとか怖くないのかしら?
「今度は、面会時間に来てちょうだいね」
「面会時間って早いんだもん」
早いって、20時まででしょうが!
まったく、たまたま見つけたのが私だったからよかったけど
もし婦長とかだったら大問題だったのよ?
わかってるのかなあ、この子。
彼女が明るい道に出るまで見送ってから、
あたしは吉澤さんの病室へと戻った。
一応、事情を聞いておかなくちゃいけない。
……てゆうか、何なのあの子たち。
まるで、恋人同士みたいだった。
- 152 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:39
- 吉澤さんは半身を起こした姿勢のまま
へッドボードによりかかり、ぼんやりとしていた。
戻ってきた私に気がつくと、申し訳なさそうに頭をさげる。
「すいませんでした」
「びっくりしたわ。窓から忍び込んでくるなんて変わった子ね」
「……ははっ」
わかりましたよね?と目が言ってる。
あたしは軽くうなずいた。
吉澤さんがため息をつく。
「彼女が、好きなんです……女の子なのに変かもしれないけど」
「別に、変だなんて思わないよ」
あたしもそうだし。って、そこまでは言わないけど、
あたしの声色に理解を感じたのか、吉澤さんは安心したように頬を緩ませた。
- 153 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:40
- 「片思いなんです」
「え? だって」
キスとかしてなかった?
「彼女には恋人がいるんです」
「じゃあ、どうして?」
「んー……彼女の恋人が浮気するから」
「…………」
「だから、ごっちん、つらいのかな」
寂しそうな吉澤さんの声。
なるほどね。
いまどきの女子高生も複雑なんだなあ。
もしかして吉澤さんの胃潰瘍には、彼女もかかわってるのかも。
あのコ、なんとなく気まぐれっぽい感じだし、振り回されそうだもんね。
- 154 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/09(火) 21:41
- いずれにしても深入りするわけにはいかない。
私はナースであって、カウンセラーじゃないんだから。
私は話を終わらせようと、なるたけ気軽な調子で肩をすくめた。
「そっか、片思いか。吉澤さん、こんなにかわいいのにね〜」
「……好きな人に好かれなかったら意味ないです」
口を尖らせるその顔がやっぱりとってもかわいくって
あたしはよしよしと彼女の頭を撫でた。
やだ、職権乱用かしら、こういうのって。
「もう、寝なさい」
「……はい」
かわいい吉澤さんは、おとなしく布団にもぐりこんだ。
- 155 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/09(火) 21:44
- 本日の更新はここまでといたします。
不思議少女、ごっちん登場。
( ´ Д `)< んあー
ごっちんも魅力的な女の子ですな。
- 156 名前:23 投稿日:2003/12/09(火) 22:44
- 更新、お疲れ様です。
もう一人、欠かせない人が登場ですね。
しかしこれは意外な展開に・・ふむふむ。
ここの石川さんはちょっと落ち着いてて、吉のことを可愛くて仕方ない
って感じがして素敵です。
リアルな石川さんもすごく大人っぽい表情をする時があるので、これも
いしよし効果なのかと妄想してみたりw
これからふたりがどう距離を縮めて行くのか、楽しみです。
- 157 名前:110 投稿日:2003/12/09(火) 23:31
- さくさく更新ありがとうございます。
「…………ご……」
「…よ……………」
なんかこれ、ツボでした。ひらがな2文字と点36個で、ごちんの登場と
キスシーンを予見させるなんて! ブラボーです。
吉→後は予想外・・・んー、どうなっていくんでしょう?
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 00:00
- >>157
さすがに思いっきりネタバレすんのはやめた方がいいのでは…
- 159 名前:しがないいち読者 投稿日:2003/12/10(水) 00:02
- まだ更新分を読んでいない者としては、
せめてネタバレレスは控えて欲しいんですけど。
ダメですかね?>>157さん
- 160 名前:40 投稿日:2003/12/10(水) 00:17
- ガーン…続きが気になって眠れない。
これは、雪ぐまさんについていきます、とか言っておいて、
レスしなかった罰でつか…?
自分、なぜか吉→今回の人物がダメなんですよね。
(逆は全然OKだったりするのに。)
あぁ個人的なこと書いてほんと申し訳ないです…
や、でもこれからですよね?
とかしつこく言ってみたり…
- 161 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 00:44
- >>160
こらこら、そんなこと書いちゃだめだよ。
作者さんが困るでしょ。
自分好みの展開を期待するのは勝手だけど、
それをねだるようなレスは反則(案内板をよく読むように)。
とくに、雪ぐまさんはすごく才能のある作者さんなんだから(と思う)、
好きに書いてもらいましょう。当たり前のことですが。
- 162 名前:40 投稿日:2003/12/10(水) 11:06
- >>161
雪ぐまさんもいしよしがスキだとおっしゃってるので、
素直な感想を述べたまでですが…
気にさわったらのならスミマセン。
タメ口で言われる筋合いはないかと思いますけどね。
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 11:13
- >>162
とりあえずこんなとこでケンカふっかけない。
161の言い方が偉そうに見えちゃったのかもしれんが、
実際常識的に考えてちょっと160のレスはどうかなと思います。
マターリいきましょ、マターリ
- 164 名前:40 投稿日:2003/12/10(水) 11:40
- そうなんですか…
あのレスはまずかったんですね。
ほんと重ね重ね申しわけないです…
レスって難しいですね。
おとなしく読むだけにします。
他にも気分を悪くされた方いらっしゃいますよね、
すみませんでした。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 12:05
- 楽しみに読ませてもらってます。
文体もスリムだし、テンポがいいっていうか、読みやすいです。
展開もハラハラで飽きさせないのがすごいって思います。新キャラ登場で、今後に期待!
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 15:47
- そうそう、スリムでテンポ良くて、充分伝わって来るモノがあります。
なんていうか、マライヤ、キャリーとかが、声抑えめで唄ってる感じ。
(なんじゃ、そらw)
とにかく応援してますです。
- 167 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/10(水) 17:38
- ( ´ Д `)が登場したとたん、いろんなことが起きているので驚きました。
ある意味、興味深いですね〜。ふむふむ。
レスをいただけるのは励みになりますので、「ここにヤラレタ」「あそこはナゼ?」等、
どしどしお聞かせいただければと思います。
その際のマナーに関しては、案内板(小説板自治スレ)をご覧になってください。
ちなみに今回、小品にごっちん登場とあいなったのは、
つかみどころのない少女という感じが魅力的だなあと常々感じているから。
リアルでは切ないほど後→吉のようですが、そこは妄想小説なのでご容赦を。
また、よろしくです。>>40様
リアルで、ふと大人っぽい表情をした石が吉をやさしい目で見つめる一瞬が、
雪ぐま的にはかなーりツボなのでございます。>>23様
- 168 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/10(水) 17:39
- ひらがな2文字と点36個。あはは。数えてくださったんですね。w
なんか感激しました。>>110様
皆様がとても楽しみに読んでくださっているのが伝わってきました。
作者冥利に尽きます。今後も楽しんでいただけるようがんがります。>>158様、159様、161様、163様
お褒めいただいて恐縮です。軽ぅく読んでもらって
後でじわっと……マライア並にきかせたいものです〜。w >>165様、166様
それでは、マターリと本日の更新にまいります。
- 169 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/10(水) 17:40
- あの夜のことは、私の胸のなかだけにしまっておくことにした。
ほんとはいけないんだけど、高校生の女の子がしたことだもの。
不法侵入だの違反だの、うるさいことはあんまり言いたくない。
つまり、そういう年頃なのよ。
ちょっと規則を破ってみたくなるような。
無茶をしてみたくなるような。
まあ、私は3階にはフツーに階段で上がってたけどね。
お咎めなしだったこともあって、
あれ以来、吉澤さんは私に気を許したみたいだった。
体育会的な堅苦しさは抜けて、小犬みたいにふにゃふにゃした笑顔を向けてくる。
これがまた、かわいいんだぁ〜。くうっ!
- 170 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/10(水) 17:41
- 「このジャージ、よくない?」
炎メラメラの柄が入ったジャージをうれしそうに羽織っている吉澤さん。
「夏は甚平にビーサンでビシッと決めてたんすよ」
そう言って花火大会の写真を見せてくれる吉澤さん。
「髪とか、わりと自分で染めたりするのが好きっていうかぁ〜」
そう言いながらジャキジャキ前髪を切って髪をまき散らす吉澤さん。
そのたびに最近の若い子のセンスはわかんないわなんて
オバサンっぽく思ったりするんだけど、
でも、気がつくと私は吉澤さんの話をニコニコ聞いてる。
ちょっと病室にいないと、どこ行っちゃったのよ?なんてウロウロ探してたりして。
- 171 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:42
- なんだろう、この気持ち。
ただ、とにかく、かわいいの。
彼女の存在そのものが、きゅっと私の心をつかむ。
口説かれたわけでもないし、尊敬してるわけでもない、
私にだけ特別やさしいってわけでもないのよ? なのに、どうして?
……困るわ。すごく困る。
きっと、あのキスシーンがいけないのよ。
私は、いけないことを考えてる。
吉澤さんも、女の子が好きなのよね、なんて。
ふとした拍子に思ってる。
- 172 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:42
- そんな時にかぎって目が合うの。
あいかわらずたくさんのお友達に囲まれながら
吉澤さんはごっちんという子のことを想っているのかもしれない。
時々ぼんやりとしていて、その彷徨う目が
不埒な私の視線をとらえて疑問符を浮かべる。
ああ、いけない。
5つも年下の、そうよ、患者さんなのに!
◇ ◇ ◇
- 173 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:43
- 「今日はつき合わせて悪かったわね。おごるわよ」
「わぁ、ありがとうございますぅ」
オフの日。久しぶりに保田主任とお出かけ。
保田さんのキツい目元を見ながら、私は妙に感慨深くなる。
好きだったのよねぇ……
ただ買い物に誘われてるだけなんだけど、
少し前の私はいちいち「デート?」とか思って、かなり空まわってた。
だけど、今日は、わりと平気。
その理由はたぶん……
- 174 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:43
- 「どしたの?ぼんやりして」
「あ、いえいえ」
こんなおしゃれなフレンチレストランで
女子高生に思いを馳せてるなんて、私ってヘンタイ?
あー、もう私のバカッ!
ええ、確かに保田さんのことは忘れたいと思ってたわよ?
でも、そのかわりにあの子じゃマズいのよ!!!
「ところで、吉澤の調子はどう?」
「うえっ?!」
「……何よ?」
「あ、いえいえ、スミマセン」
なんかあんた今日は変ねぇ?と保田さんが首をかしげる。
あー、もうヤダよ、私。
- 175 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:44
- 「術後も良好です。予定通り来週には退院できるはずです」
「そう。若いからかえってむずかしいかと思ったけど、あんたのケアがよかったのね」
「そんなぁ」
「うちのばあちゃんも誉めてたわよ。石川さんは今どきめずらしく気遣いのできる子だって」
保田さんがニッコリ微笑む。
うわー、感激!
これって、憧れのヒトに認めてもらったってことだよね。
「あとはもうちょっと場が読めれば完ぺきね」
「ぐっ……」
- 176 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:45
- ワインを飲んで上機嫌になった保田さんは、カラオケに行こうと言い出した。
もちろん私に異存はない。
せっかくだからと病棟に電話をかけてみると
仕事上がりの同僚たちも勇んで駆けつけてきた。
みんな、ストレスたまってんのかしら。
よ〜し、今日は梨華も飲んじゃうぞ〜〜〜♪
ところが。
ほろ酔い気分でわいわい騒いでいると、とんでもない客が乱入してきた。
「キャハハハ!盛り上がってんじゃん!」
「おっしゃー!夜はこれからやでぇ!」
ギャーー!! 中澤先生! しかも矢口さん付き!
私は酔いが一気にさめた。てゆうかむしろ青くなった。
ちょっとおーー、中澤先生、どういう神経してんのよぉっ!!
- 177 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:45
- 「いよっ、アゴン久しぶりぃ!」
「あ、お久しぶりですぅ〜(汗)」
「も〜、たまには外科にも遊びに来てよぉ〜」
「は、はぁ〜」
横目で中澤先生の様子をうかがうと、ニヤニヤしながら知らんぷり。
鼻歌交じりに選曲なんかしちゃって、ほんっとイイ性格してるわね、あんた!(怒)
やぐちゅーコンビの銀恋なんかを聞きながら、私はピーチサワーをぐいっとあおる。
なにが悲しゅうて元・恋人と本妻のデュエットなんざ聞かなきゃいけないのよ。
……やってらんないわ。やってらんないわよっ!
「あ、すみません。ピーチサワーもう一つ」
壁の受話器、ガツンとつかんで、もう一杯。
ちょっと字余りね。
- 178 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:46
- 「ほれ、石川。持ち歌きたわよっ」
例の曲の前奏が流れて、ウインクかます保田さんから放られるマイク。
OK!とりあえず唄うわ。唄ってやるわーーっ!!
「ちゅーきーにゃーひとーぎゃっ♪」
カチャ。
一番の聴かせどころで、バイトっぽい店員さんがピーチサワーを運んできた。
やだ、なんか唄ってる時に店員さん来ると恥ずかしいんだよね……って、
あれ、この子どこかで……?
ピーチサワーを運んできた店員さんに見覚えがあった。
わかった! この子、こないだ吉澤さんのところに忍び込んできた子だ!
- 179 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:47
- 彼女も私に気づいたみたいで、なぜかクスッと笑って出ていった。
ちょっとぉ……感じ悪くない?
私の歌になんか文句あるってゆーの?
思わぬ横ヤリにムッとしつつソファに戻る。
だけど一難去って、また一難。
今度は、すっかり酔っ払い状態の中澤先生が私のほうにドッと倒れ込んできた。
ギョッとして押しのけたけど、懲りずにへらへらしながら迫ってくる。
「なー、石川も裕ちゃんとデュエットしよ?」
「ええっ?!」
「キャハハ!アゴン、いいぞー!もっと唄えー!」
- 180 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/10(水) 17:47
- ちょっ、ちょっとぉーー!!
かんべんしてよぉーー!!
誰も知らない私のピンチ。帰りたい。いますぐ帰りたい。
ってか矢口さん、ほんとに何も知らないんだよね?
コワイ、コワ過ぎるよぉ……。
私は呻くように「ト、トイレ」と呟くと、すっくと立ち上がった。
中澤先生が「なんや、ウンコか?」と、えげつないことを言う。
「しないよ!」
私は憤然とボックスを出た。
- 181 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/10(水) 17:50
- 本日の更新はここまででございます。
うちの石川さん壊れ気味ですw
そして、焦って最初のほう名前欄間違えてしまった〜!
作者も壊れ気味。すいません。
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 18:25
- ギャー!石川さん最高!作者さん最高!
- 183 名前:110 投稿日:2003/12/10(水) 22:13
- 病室で絡み合う視線…萌。石川さん、仕事中ですが何か?
>>158様 >>159様、その他読者様、そして作者様
レスは本文を読んだ後に読む(または読まない)ものと思い込んでおりました。
当方の不注意により、皆様の楽しみを半減させるようなことになってしまい、
大変申し訳なく思っております。今後は気をつけます。
本当にすみませんでした。
- 184 名前:23 投稿日:2003/12/11(木) 00:20
- 更新、お疲れ様です。
随所に小ネタが満載で、ひとりニヘラニヘラしながら読みましたw
いしよしってネタの宝庫ですよねぇ〜はぁ。
壊れかけの石川さん、イイです!
(壊れかけの雪ぐまさんも最高ですわい)
次回更新、まったりひっそりお待ちしておりますです。
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 02:59
- あんたいい人やね、作者さん。惚れたわ〜。ポワワ
陰ながら応援してるで〜。
- 186 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/11(木) 17:59
- お寒うございます。壊れかけの雪ぐまです。
182> 名無し読者様
ギャー。ありがとうございます!
183> 110様
仕事中もかわいいあの子ばかり見てる石川さんであってほしいですw
184> 23様
雪ぐまもひとりニヘラニヘラしながら書いておりますw
185> 名無し読者様
はは。いしよしレベルのアツい恋でもしますか?w
さてさて本日の更新、スタートします。
- 187 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:00
- はあっ。
今日は厄日だわ……。
お手洗いの鏡を見ながら呟く。
心なしか目の下のクマも濃いように思えて憂鬱になる。
あーあ。大人って怖いな。
いろんな秘密を隠しながら、ニコニコ笑ってつつがなく。
平和のために、幸せな関係を壊さないために、
時には知ってても知らんぷり……もしかしたら矢口さんも。
鏡のなかの自分を指で弾く。
私もいつの間にか大人になっちゃった。
真実が必ずしも人を幸せにしないってわかるくらいに。
お手洗いから出ると、受付のところにさっきの店員さんが座っていた。
ごっちん、だっけ?
何をするでもなく、ぼんやりとしている。
ガラスのような目は、どこを見ているのか。
なんだか、危なっかしい女の子。
- 188 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:01
- 私の視線に気づいたのか、彼女がふと顔をあげる。
バッチリ目があう。まあ、一応あいさつしとこうかな。
「こんばんは」
「どうも」
くにゃっと笑う。
へえ、思ったより親しみやすそうかも。
「こないだ、ありがとう」
「え?」
「誰にも言わないでくれたんでしょ? 助かりました。ヨシコが怒られちゃうかなって気になってたから」
ぺこりと頭を下げる。
なんだー、フツウにいい子じゃない?
私はすっかり気を許して、カウンターに肘をついた。
- 189 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:02
- 「こんなとこで会うなんて、びっくりしちゃった」
「ははっ。なんかオネーサンたち、すっごいね。ナースってストレスたまるの?」
「あー、騒がしくてごめんね……」
「いーよ、騒ぐとこだもん」
くにゃくにゃ。ニコニコ。
いい感じにくだけてて、思ったより話しやすい。
ちょっとおしゃべりしていこうかな。
あの魔のボックスに帰るのも気が進まないし。
「ねえ、吉澤さんって学校ではどんな感じなの?」
「んあー? バカだよ」
「バカ?」
「かわいいバカ。すごい人気あるよ」
かわいいバカかぁ。
うーん、なんかわかるかも。
鏡の前で熱心に変顔の研究とかやってるもんねぇ。
- 190 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:02
- 「病院ではどんな感じなの?」
「そうね、いい子よ。全然困らせないの。痛いとかも言わないし」
「へー。まあ、気ぃつかいだからね」
さすがにわかってるのね。
私は、うなずく。
「ねぇ、なんで吉澤さんが胃潰瘍になっちゃったか知ってる?」
「えー、知らない。いろいろあるんじゃないのぉ?」
「そっかぁ」
「そういう理由って大事なわけ?」
「そうねぇ、せっかく治っても、また同じことで再発しちゃったら可哀想だし」
ふうん。彼女はそう言うと少し考え込むような表情をした。
こぼれるような二重の大きな目。
うさぎっぽいおちゃめな口元。
とりたてておしゃれしてるふうでもないのに、スタイリッシュなその感じ。
なんだか、すべてがうらやましく見えてため息をつく。
ねぇ、吉澤さんは、あなたが好きなの。
わかってるんでしょ?
- 191 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:03
- 「バイトしてるから、面会時間に来れないのね」
「ウン」
「お休みの日は来てあげてね。吉澤さん、待ってるみたいよ」
「メールしてるよ」
「メールじゃなくて、お顔を見せてあげてよ」
よけいなお世話だけど、言わないではいられなかった。
お友達に囲まれているのに、時々ぼんやりと寂しげな吉澤さんを
あれから何度も見ていたから。
「……休みの日は約束があるから」
なのに彼女はそんなことを言う。
「お友達の病気より大事なこと?」
「あんたには関係ないと思うけど?」
素っ気ない声。
カチーンときた。ちょっと、あんたって何よ。大人に向かって!
- 192 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:05
- 私はわざとらしくため息をついて腕を組む。
「あのねえ、どっちつかずとか二股かけられるのとかって、すっごくつらいのよ?」
とたんに彼女が、妙に神妙な顔をした。
そうだ、この子も誰かにつらい恋をしてるんだっけ。
しまった。言い過ぎたかな? 遅いけど。
「オネーサン、二股かけられてんの?」
「ち、違うわよ……過去の話よ」
そうよ、過去の話。
私はすっごくつらかった。
どうしても忘れなくちゃいけないのがつらかった。
ひとりの時にどんなに泣いても、
患者さんの前では笑ってなくちゃいけないのがつらかった。
「あー、いた! 石川ぁっ、何ナンパしとるんやぁ〜」
……今となってはなんで好きだったか、ちっともわかんないけどねっ。
- 193 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:05
- 足元があやしい中澤先生は、ふらふらと近寄ってくると、べたっと抱きついてきた。
もう、勘弁してよーーー!!
「ちょっ、離してっ!」
「裕ちゃん、心配したでー。帰ってくるの遅いんやもーん」
「もう、探しにとかこないでよぉっ」
「なんでー? やっぱウンコやったん?」
「しないよ!」
必死で逃げる私にタコチュー口で迫ってくる中澤先生。
カウンターのなかの彼女が「オネーサン、モテるね」と笑った。
◇ ◇ ◇
- 194 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:06
- 「吉澤さん?」
夜の11時。消灯時間はとっくに過ぎてる。
なのに、隣の病棟に続く渡り廊下の窓際に
背の高い人影を見つけて私は立ち止まった。
外を眺めていたらしい吉澤さんの手には携帯電話。
私に気がつくと、それを隠すようにさりげなく後ろにまわした。
「またメールしてたのね?」
「……すいません」
「眠れないの?」
吉澤さんが困ったみたいにうなずく。
そうね、普段ならまず寝てる時間じゃないもんね。
体が治ってきたから、高校生らしいサイクルを取り戻しつつあるのかもしれない。
- 195 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:07
- 「テレビ、見たら? イヤホン使えば隣の部屋の人の迷惑にもならないし」
「石川さんって、理解あるよね」
「なあに、急に」
「ごっちんのことも怒んなかったし、とにかく寝ろとか言わないし」
「だって、こないだまで吉澤さんくらいの年だったもん。わかるよ」
なんて、若さを強調してみたりして。
吉澤さんは「そっか」と笑う。
気を許してくれてるみたいなやわらかい笑顔に、
私の胸にじわっとあたたかさが広がる。
吉澤さんは窓辺に手をついて、
「ここってけっこう星が見えるね」と夜空を見上げた。
その横顔は、やっぱり少し寂しそう。
- 196 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:08
- 昨日、あの子に会ったよ。
そう言いかけて、やめた。
吉澤さんは病院に閉じこめられてるみたいなものだもの。
偶然とはいえ、会いたくて会えない人に私が会ったと知ったら
うらやましくて、ひどく悲しい気持ちになるかもしれない。
こんなふうに思ったことをそのまま口に出さなくなったのはいつから?
それはやっぱり苦しい恋を知ってから。
なんてことない言葉に切ないほど気持ちが乱されることを、覚えてから。
吉澤さんが言い出すまで、あの子のことを話すのはやめとこう。
このかわいい女の子は、たぶん生まれて初めての苦しい恋と
一生懸命戦ってるところだから。
「そろそろ満月なんすね」
ほら。そう指を指されて、私も窓際まで行って夜空を見上げた。
月が丸に近い状態でキレイに空に浮かんでいる。
明るい夜だから見える数は少ないけど、二人で知ってる星座を探してみたりした。
- 197 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:09
- 「宇宙の外には何があるのかなあ?」
「あー、私もそれ、よく考えるかも」
「何があると思います?」
「うーん……」
なんだろうね。わからないな。
人の心の中と同じくらい、わからないな。
そう言うと、吉澤さんは「石川さんっておもしれぇ」と笑った。
ふふっ、だって吉澤さんは知らないでしょう?
まさか隣で一緒に星を眺めてる新米ナースが、
あなたのことかわいくてたまらないなんて思ってること。
勤務中なのに、このままずっとおしゃべりしたいかもなんて
いけない考えを抱いて心の中で苦笑してること。
「さて、もうそろそろお部屋に戻りなさい」
「えー?」
「風邪ひいちゃうもん」
- 198 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:10
- 吉澤さんの背を軽く押して、病室に戻るように促す。
なのに、いつも素直な吉澤さんが、なぜか重い足どり。
「あの部屋にいたくないんです」
「え?」
吉澤さんの顔をのぞきこむと、らしくない気弱な笑顔。
「どうして?」
「……また、ごっちんが窓から来てくれるんじゃないかって考えちゃうのが」
個室のベッドに横たわって、
いつまでも開かない窓を切なく見つめる吉澤さんの姿が浮かんだ。
期待してしまう自分がいやだと、彼女は自虐的に微笑む。
私は、困ってしまう。
患者さんの恋の病まではケアできないわ。
- 199 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:11
- 「あはは、確かにあの子ならまたよじ登ってくるかもねぇ」
私は、暗くなりそうな空気を振り払うように明るくそう言った。
まるで吉澤さんの悲しい気持ちなんて気づかないみたいに。
「もう絶対、来ないんです」
「え?」
「ふられたんです。完ぺきに」
彼女はそう言うと携帯を差し出した。
メール? 読んでいいの?
その小さな画面には、短くて切ない決意が紡がれていた。
『どっちつかずはもうやめる。友達でいたいけど、吉子がつらいなら消える』
私は息をのんだ。
どっちつかずはもうやめる……うわぁ、ごめん!
吉澤さん、これ、私のせいかもしれない。
ど、どうしよ……。
- 200 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:12
- そんな私の動揺に気づくことなく、吉澤さんは投げやりな感じに言葉を吐き出した。
「まあ、わかってたからいんだけど」
吉澤さんは、携帯を玩ぶようにいじくった。
私は思わず、疲れたようなその肩を、そっと撫でた。
背中が、震える。泣くかなと思ったけど、彼女は泣かなかった。
その代わりに、ちょっとふてくされたように、皮肉な感じに頬を歪めた。
「あたし、なんで生まれたのかな?」
「え………」
「17年しか使ってないのに胃袋はブッ壊れるし」
「治ったんだからいいじゃない」
「……もー、面倒くさい。なんか、生きるのとか全部」
そんなこと言わないで。
そんな卑屈な笑顔で、無気力な瞳で。
- 201 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:13
- 私は、悲しくなった。
神様に特別に愛されてると思うほど端正な顔立ちが
暗い考えにねじれて、その輝きを失くしていく。
私は、すうっと息を吸うと、吉澤さんを叱りつけた。
「胃袋くらいなによ!」
まさかこうくると思わなかったんだろう。
吉澤さんの目が、驚きに見開かれる。
「吉澤さんはもう治ったんだからいいの! 肝臓とか心臓とか壊れちゃって、生きたくっても生きられない人、いっぱいいるんだよ。面倒くさいとか、冗談でも言わないの!」
バシーン!
景気づけみたいに肩をひっぱたく。
ちょっと力が強過ぎたのか、吉澤さんはよろめいた。
あ、ごめんね……
- 202 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:14
- 「痛ってぇ〜。なによ、ちょっとは慰めてくれたっていいじゃん」
「コラ、甘えるな!」
ほんとに怒ってるんじゃないのよ?
そうわからせるために、私はニコッと微笑む。
あなたに元気を出してほしいから。
恋を失うのは悲しいことだけど、負けてほしくないから。
なのに吉澤さんには、その気持ち、伝わらなかったみたい。
ムッとした顔で腕を組んで、そっぽを向く。
あっ、怒っちゃったかな?と思ってその顔を見上げると
彼女はチラリと冷たい視線で私を見下ろした。
そして、突然、とんでもないことを言い出したのだ。
- 203 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:14
- 「ねえ、石川さんって、あたしのこと気になってるでしょ?」
「ふえっ?」
吉澤さんの口元が薄笑いを浮かべ、
薄茶色の目がいじわるそうに細められる。
いやだ私、こんな時まで、なにじっくりと観察してるの?
でも、ああ、なんてきれいな瞳。
吸い込まれちゃいそう……。
一瞬、うっとりしたのがいけなかった。
まるでよけられなかった。
吉澤さんの唇が、私の唇に重なるのを。
- 204 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:15
-
あ。
反射的に目を閉じる。
あ…。
あ……。
なんてやわらかい、の……。
あまりにもカンタンに私の唇を奪った吉澤さんは、
フッと唇を離して恐ろしいほどの至近距離で囁いた。
「おやすみなさい」
私は、あっけにとられたまま、
彼女がスタスタと歩み去るのを見送っていた。
- 205 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/11(木) 18:16
- 病室のドアがパタンと閉まる。
とたんに腰の力が抜けて、壁にくらりともたれかかった。
え、何? どういうこと? キスって?
頭がパニック状態でぐるぐるする。
『石川さんって、あたしのこと気になってるでしょ?』
バレてるし……。
でも、だからっていきなりキスとかする?
しかもいじわるげに笑ってたわ。
いくらムカついたからって。
うわ、すっごいヤな子じゃん吉澤さんって!
「最悪ぅ……」
思わず涙ぐみながら、唇を手で押さえる。
一番最悪なのは、こんなキスでも心拍数が150を超えていそうな私だった。
- 206 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/11(木) 18:17
- 本日の更新はここまででございます。
ふふふ。
- 207 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 18:30
- 巧いっすね。あなたの才能が悔しいくらいに。
更新待ってます。
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 18:48
- 素敵です……。
あ〜、作者様、私の愛を受け取ってください!(笑)
>>202からの変化がとても気になります。
話の持って行き方、うまいですよね…。
次も楽しみにしています。
- 209 名前:142 投稿日:2003/12/11(木) 21:27
- 梨華ちゃん、バレてるし(笑)
でもバレちゃうのわかる気がします。
よっすぃ〜、どーか気持ち酌んでやってください、ハハ
- 210 名前:23 投稿日:2003/12/12(金) 00:04
- 更新、お疲れ様でございます。
ふぁ〜、そう来ましたか・・
さすが雪ぐまさん、一筋縄ではいきませぬなぁw
思わず唸ってしまいましたよ。
これは続きがはげし〜く気になって夜も眠れませんわい!
むはむはしつつ、続きを待っておりますです。
- 211 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/12(金) 14:50
- 細かい表現が好きです
心拍数150とか、しないよ!とか(笑)
ついに2人の距離がせばまって、内心、ごっちん離脱を喜んでる私を許してください
- 212 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/12(金) 18:10
- 忘年会シーズンですね。
毎週金曜日になると痛飲するはめになっている雪ぐまです。
207> 名無し読者様
どちらかで書かれている方ですか? もし良かったら教えてください。
気に入っていただけたのなら、小説の趣味があうのかなーと思うので。
208> 名無し読者様
はい、もう、がっつりと。いしよしレベルにめくるめく恋をお約束しますw
209> 142様
しかし、吉は天然ジゴロですからねw さてさて、どうなりますことやら……
210> 23様
雪ぐまもむはむはしながら今日も妄想書き散らかしてます。いや〜、たまらんわい。
211> ラヴ梨〜様
( ´ Д `)<親友はよっすぃ〜。とか言って、意地でも梨華ちゃんの名前を出さないあたりに、妙に萌えたりしてる雪ぐま。
それでは飲み会前に本日の更新を……。
- 213 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:11
- 翌日、吉澤さんは昨夜のことなどまるでなかったような顔で検温を受けた。
その飄々とした横顔。さわやかなほどのあいさつ。
小悪魔という文字が脳裏に浮かぶ。
これじゃあ、ごっちんって子と変わらないじゃないの!
ホントに神経細いのかしら、この子。
ああ、イジられキャラだとはわかってたけど、
高校生にまでからかわれるなんて……鬱だ、死にたい。
それから私は、吉澤さんと顔を合わせるのが妙に恥ずかしくなってしまった。
彼女は憎らしいくらい前と変わらないんだけど、
私のほうは、なんだか前みたいに自然に話せない。
だって、吉澤さんの唇が、ピンクすぎて。
吉澤さんの瞳が、茶色すぎて。
吉澤さんの声が、やさしすぎて。
吉澤さんの仕草が、無邪気すぎて。
……あかん、むっちゃ、意識してるわ私(中澤先生ふうに)。
- 214 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:12
- バカみたい。
吉澤さんの病室から出て、小さくため息をつく。
困っちゃうくらいかわいいあの子。
きっと、自分がきれいだってこと、よくわかってるんだと思う。
女子高だし、女の子に好かれることも、きっとわかってる。
だからあんなふうにいじわるにキスとかしてくるし、
それでドギマギしてる私を見て楽しんでるんだわ。
それって、ちょっとひどすぎる。
いくら失恋してむしゃくしゃしてるからって、
こんなに私の心をかき乱して知らんぷりなんて。
「はあ」
今日、何度目かのため息。
患者さんに、しかも5つも年下の高校生に
こんなに振り回されちゃうなんて、私ってほんとに鈍くさいなあ。
- 215 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:13
- ここ3日くらいそんなことばっかり考えてたから、
私はもしかしたら大切なシグナルを見落としてしまっていたのかもしれない。
保田のおばあちゃんの病室のドアを開けて、私は愕然とした。
「おばあちゃん!!!!」
保田のおばあちゃんが、胸をおさえたまま、ベッドの脇に倒れていた。
◇ ◇ ◇
- 216 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:13
- これまで何人の先輩ナースたちがここで泣いてきただろう。
屋上の手すりに腕をついて、眼下に広がる街並みを眺める。
たくさんの人が笑ったり泣いたりご飯を食べたり勉強したり仕事したり恋をしたりして、
……そしてここに来て死んでいく。
流れる涙をそのままに、私は街並みを眺め続けていた。
ナースになって、こんなにショックを受けたのは初めてだった。
保田のおばあちゃんは、持病の肝硬変ではなく、心筋梗塞で急逝した。
私が見つけて、すぐにドクターが蘇生措置を施したけど手遅れだった。
個室だったこと、付添の方が頼まれた買物に出ていたこと、
そしてなぜかナースコールを押していなかったことが死に繋がってしまった。
- 217 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:14
- 「ううっ……」
こらえようとしても、嗚咽が喉からもれてしまう。
休憩時間ももうすぐ終わる。
なんとか涙を止めないといけないのに。
昨日は、ううん、今朝の巡回の時だって、おばあちゃん元気にしてた。
変わったところなかった……でも、本当に?
私が見落としただけなんじゃないの?
胸がキリキリとしめつけられる。
たいしたことじゃなくてもすぐにナースに甘えたり、わがままを言う患者さんもいる。
でも、おばあちゃんは一回も無理を言ったことがなかった。
「ありがたい、ありがたい」が口ぐせで、いつもにこにこしていた。
体調が悪くても、言い出せなかったのかもしれない。
担当の私が気づかなきゃいけなかった。
- 218 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:15
- 「やっぱりここにいたわね」
後ろから聞こえてきたのは保田主任の声だった。
わかってるけど、私は振り返れなかった。
保田主任の顔を見ることができない。
大切なおばあさまの担当に、新人の私をつけたのは他ならぬ主任だった。
うれしかった。保田主任に信頼されてるって思った。
なのに私は、その期待を裏切って。
「……も、申し訳ありません」
「何言ってるの」
謝ってすむことじゃないよねと、私はますますうつむく。
なのに、保田主任はそっと肩を抱いてくれた。
以前なら、震えるほど胸がときめいたはず。
だけど今はそのぬくもりが、ただ苦しい。
- 219 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:15
- 「ありがとね、石川。お世話になりました」
「…………」
「ばあちゃんね、石川のこと一生懸命でいい子だって。あたしもそう思う」
「……だめです、私なんて。おばあちゃん、が、た、体調悪いの、き、気づかなくて」
「泣かないで、石川。そんなのあたしだって気づいてなかっ、た」
詰まった声に顔をあげると、保田主任の頬にも涙が流れていた。
初めて見る主任の涙に驚く。
「そんなこと言ったらさあ、うちのばあちゃん、ナースコール押してなかったじゃん?」
「…………」
「ばあちゃんのこと無理矢理うちの病院にいれちゃったんだけど、あの人、わがままいうときっとあたしに迷惑かかるとか思っちゃってさあ、一回もコール押したことなかったんだよね。死にそうな時くらい押せっての!」
アハハと笑いながら、保田主任の頬には次から次へと涙の筋が流れた。
私の後悔、保田主任の後悔。もうどこにもいきようがない。
- 220 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/12(金) 18:16
- 私は、保田主任の涙を止めたくて、いつもの強気な笑顔を見せてもらいたくて
必死で必死で必死で考えて言った。
「おばあちゃん、この病院で幸せだったと思います。主任のこと、自慢の孫だっておっしゃってました。大好きなお孫さんの病棟で、幸せだったと思います」
保田さんが、泣きながら顔をくしゃっとさせてニッと笑った。
「サンキュー。……運命ってことよね」
- 221 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/12(金) 18:17
- 本日はここまでといたします。
- 222 名前:名無し読者A 投稿日:2003/12/12(金) 20:30
- あ〜、もどかしい…。
今回は、しんみりした気分になりました。
それにしても…。
この更新の速さはすごい!
毎回、感動しつつ楽しませてもらってます。
- 223 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/13(土) 00:43
- (T▽T)<おばあちゃーん!
すごい。憎いね。泣かせるね。
- 224 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/13(土) 20:13
- 街はクリスマスイルミネーションですね。
222> 名無し読者A様
リアルいしよしも、もどかしいですねw
223> 名無し読者様
石川さんはいつだってお仕事に一生懸命取り組んでいるのでした。
それでは、本日の更新にまいります。
- 225 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:14
- 夜勤で良かった。
懐中電灯で足元を照らしながら、そう思う。
昨日よりはだいぶん落ち着いたけど、油断すると涙があふれる。
ほら、こんなふうに、空っぽになったおばあちゃんの病室の前を通ったりすると。
おばあちゃん、苦しかったかなあ。
ごめんね。ごめんね。気づいてあげられなくって私。
こすると目が腫れちゃうから、私は涙をほったらかしておく。
それがいけなかった。こんな真夜中でも、患者さんが起きていないとは限らない。
トイレの前を通り過ぎた時、ちょうど出てきたらしい患者さんの声が聞こえた。
「お疲れさまです」
ハッと振り向く。
トイレの前に立っていたのは、よりによって吉澤さんだった。
- 226 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:15
- うわっ……。
思わずまばたきをしたはずみに、また一粒、涙がこぼれ落ちた。
吉澤さんが、私の涙に気づいて驚いた顔をする。
「な、なんでもないの」
私は焦りまくって手の平で涙をぬぐった。
でも、患者さんに涙を見られたってパニックと、
しかも吉澤さんだよオイってパニックと、
ああ吉澤さんのことばっかり考えてたからって苦い後悔が一気に押し寄せてきて。
「ううっ……」
だめだ。
私は両手で顔を覆って俯いた。
目が、もう大洪水状態。……どうしよう、止まらない。
唇を噛みしめても漏れてしまう嗚咽。
- 227 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:16
- 「ぐすっ……くっ……ううっ……」
パジャマ姿の吉澤さんは何を思ったのだろうか。
トコトコ歩いてきて、私のすぐ前に立ち止まると心配そうにちょこんと首をかしげた。
やだ、こんな時まで無邪気な仕草。
ほんとにかわいくて、困っちゃう。
「……ふっ……あはは」
私は、泣きながら笑った。
吉澤さんが、ほっとした表情をみせる。
「大丈夫?」
「ん……こんなの見られて、あたしナース失格だよね」
「失格なんてことないよ。前、あたしがお腹痛いの、すぐ気づいてくれたし」
心配してくれてるんだろう。
吉澤さんはボソボソとした声で照れくさそうに私を励ましてくれたけど、
その言葉は、ますます私の涙腺を刺激した。
だって、あの時気づいたのは保田主任が吉澤さんの神経の細さを先に教えてくれてたからで
何もヒントがなければ、おばあちゃんのこととか気づけないわけで……。
- 228 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:17
- 「ううっ……」
「わ、わっ」
「あ、ご、ごめん……」
白衣のポケットをごそごそ探って顔をしかめる。
ハンカチ、ないし。持ってくるの忘れちゃった。
あーもう、自分のズボラさが恨めしい。
すると。
ぺたっ、と、いきなり頬に何かを押しつけられた。
びっくりして顔をあげると、眉毛を八の字にした吉澤さんが、
パジャマの袖で涙を拭いてくれようとしていた。
うわ、この子、やっぱりすごいやさしいかも……。
うつむいた拍子に私の頭が、吉澤さんの肩にもたれかかるように当たる。
吉澤さんは息を潜めて、そのまま肩を貸してくれた。
ああ、なんだか大きな樹みたい。
こんなのいけない。そう思うけど、私は顔を上げられなかった。
このまま、あたたかい吉澤さんの体温を額に感じていたかった。
- 229 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:17
- ごめんね。患者さんに甘えちゃいけないよね。
でも、もうちょっとだけ寄りかからせて。
なんだか、安心するから……もうちょっとだけ。
どのくらいそうして突っ立っていただろう。
私はやっと復活して、鼻をすすりながら吉澤さんから身を離した。
「ありがと」
「大丈夫?」
私はコクリと頷いた。
吉澤さんが、ポンポンと私の頭を撫でる。
恥ずかしいな。何だかいつもと逆みたい。
「どしたの?」
「昨日、担当の患者さん……、吉澤さん知ってるかな? 保田のおばあちゃんが急に亡くなっちゃってね」
吉澤さんの目がギョッとしたように見開く。
あいさつくらいは交わしていたのかな。かなり動揺したみたい。
ごめんね、高校生にはヘビーな話かな。
「一昨日は全然元気だったの。でもきっと調子悪かったんだよね。私、なんで気づけなかったのかなあって申し訳なくて……え?」
- 230 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:18
- 吉澤さんの目にみるみるうちに光るものが盛り上がり、一筋の涙がこぼれた。
私は、驚きながら見つめる。
まさか泣くなんて、思わなかった。
見た目よりずっと繊細な彼女の、きれいな涙。
「やさしいのね」
ほほ笑ましい気持ちで呟く。
彼女はうつむいて、ひとつ息をついた。
「保田のおばあちゃんに、ジュースおごってもらったことあるよ」
「そうだったの」
やっぱ吉澤さんにはジュースおごりたくなるのねぇ。
「もういないなんて、信じられない」
「そうね、私も信じられないなあって思ってたの」
それから私たちはまた二人で少し泣いた。
突然消えてしまった命を、
やさしかった保田のおばあちゃんを思って。
- 231 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:19
- すこし落ち着いたところで、
私は懐中電灯で足元を照らしながら、吉澤さんの手をひいて病室まで送った。
ベッドに寝かせて、布団をかけてあげていると、
横たわった吉澤さんが、目をあげて私を見た。
「ごめんなさい」
「え?」
「こないだ、あたしイライラしてて」
「ああ……」
あのキス。
フラれたばかりの腹いせみたいなキス。
「石川さんは、こんなふうに、死、とかと」
こんなふうに毎日、死とかと一生懸命向かい合ってるのに。
再び、こぼれる涙。
キラキラ、キラキラ。
やさしくて、繊細な。
だからちょっと神経質で、いじわるな。
かわいい女の子。
- 232 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:19
- こんなふうに少しずついろんなことを知って、
少女の身勝手や残酷は消えていく。
それは少しだけ残念なことだけど、
代わりにきっとしなやかなココロを手に入れるから。
「おやすみなさい」
「ン……」
艶やかな髪をそっと撫でた。
おやすみなさい、かわいい人。
◇ ◇ ◇
- 233 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:20
- 「見たでーー」
ナースセンターに戻ってじゃぶじゃぶ顔を洗っていると、
背後から、いじわる〜な声が聞こえてきた。
「中澤先生、今日宿直だったんですか」
「わっ、キッチンペーパーで顔とかふかんといて。イメージ、くずれるわぁ」
「ほっといてください」
石川ちゃん、かわいかったのになーとかなんとかブツブツ言う中澤先生に
ツーンとして見せる。別に怒ってるわけじゃないけど、
ちょっとビシッとしとかないと、この人は何を言い出すかわからないから、ほんとに。
一緒に夜勤をしている同僚は仮眠室で仮眠中。
こういう夜中に二人きりみたいな状況は危ない……経験上。
「さっきぃ、ラブシーンやってたやろジブン」
ほぉら、きた。
私は平静をよそおって看護日誌を広げる。
- 234 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:21
- 「あれ、例の吉澤って子やろ? いい雰囲気やったやん。ホレたんか?ん?」
「中澤先生には関係ないでしょ?」
「なんやー、悔しいわぁ」
そんなことちっとも思ってない声色に、プッと吹き出してしまう。
ホント、憎めない人だなあ。
「ちょっと泣いてるの、見られちゃったんです。ナース失格です」
「保田主任とこのばあちゃんか。気の毒やったな」
日誌を書くペンが止まる。
あいかわらず勘がいい。
「石川は、真面目なのがいいとこやけど、あんま自分を責めたらあかんよ。人の生き死にだけはどーしょーもないわ」
「お医者様のくせに」
「一生懸命やってもダメな人もおるし、こらアカンわって人がひょいと治ったりするんや。医者はみんな運命論者になるで」
「……もしかして慰めにきてくれたんですか?」
- 235 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:21
- 中澤先生は、黙って隣のイスに腰かけると、
私の肩をぐいと抱き寄せて、顔を近づけてきた。
そんな目論みはハナから承知の私は、両手でおもむろに唇をガードする。
「ダメ」
「なんや、あかんの?」
「別に矢口さんに殺されるからじゃないですよ」
「何?」
「ナイショです」
「なんでー? 教えて?」
「誰にも言わない?」
「神に誓って」
私は久しぶりに至近距離で見た元・恋人の青い瞳を覗き込んで、うふふと笑った。
「吉澤さんにキスされた唇だから」
「うっそーーー」
中澤先生がムンクの叫びみたいに両手を頬にあててのけぞった。
- 236 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:22
- その後、私の説明を聞いた中澤先生は、
なぜか張り切って「いける、いけるで石川」と言った。
「いけるって、何が?」
「アホ! 落とせるってことやんか」
「落とすって……中澤先生じゃあるまいし」
「なんや石川、吉澤とデキたくないの?」
「バカなこと考えないでよ」
明け方のナースセンターでこんなこと話してるなんて
患者さん達が知ったら卒倒しちゃうと思う。
だけど、張りつめた職場の中で、ぽっかりと楽しいこんな秘密の時間。
私は職場のお約束の敬語も忘れて、いつの間にか元・恋人の軽口につき合っている。
「吉澤さんは明後日退院するんですーだ。元気になってくれてうれしい、それでいいのっ」
「そや、明後日退院やろ? バーンと当たってくだけても、明後日でバイバイや。な?」
「もう、ほんとにバカなこと言わないで。ほら、もー帰ってよ」
私は、笑いながら中澤先生の背中を押して追い出しにかかる。
そろそろ同僚が仮眠から起きてくる時間だった。
- 237 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:23
- 背中をぐいぐい押されながら、中澤先生はまだ言い募る。
「ほんと、イケるって。あの子、石川のことぎゅってしたそうにしてたし」
「え?」
ぴたっと私の動きが止まる。
してやったりの表情の中澤先生。
「手がなー、ちょっとなんていうか空中をこう……」
「もう、やめてよ。テキトーなこといわないで」
「ホントやって。マジ、信じて?」
「裕ちゃんだけは信じない」
「うわ、へこむわー」
それに。
私は、口を尖らせる。
「17歳って、ちょっと犯罪的じゃない?」
「あれ、石川かってあん時、17くらいじゃなかった?」
「私は18だったもん」
「変わらんやんか、そんなの。やってまえ。な?」
- 238 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/13(土) 20:24
- 私は今度こそ中澤先生をナースセンターから追い出した。
バタンとドアを閉めたそののぞき窓越しに、中澤先生が口パクで何か言ってる。
『す・な・お・に・な・れ』
何言っちゃってんの、もう!
私は思いっ切り「イーーーッ」としてやった。
- 239 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/13(土) 20:26
- 本日の更新はここまでといたします。
かわいい吉澤さんも退院しますし、明日が最終話でございます。
どうやって?という気もしますが……w
- 240 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/13(土) 20:44
- 相変わらず雪ぐまさんの話しはツボだなあ。
裕ちゃんとの関係もイイ感じだし・・・
次回が最終話なんて寂しい。
- 241 名前:23 投稿日:2003/12/13(土) 22:40
- 更新、お疲れ様です。
う〜む、何だかほんわかとして参りましたです。
吉はやっぱり「かわいいあの子」なんですねぇ〜
(頑固一徹と同一人物とは思えないようなw)
「かわいいあの子」が石川さんを「気になる彼女」として意識し始め
てるのかな?次回も楽しみにしておりますです。
毎日更新がすごく楽しみなので、終わってしまうのが寂しいですぅ。
朝の連続テレビ小説のように、毎日あるのが当たり前のように
感じている自分がいますw
- 242 名前:209 投稿日:2003/12/13(土) 23:13
- 今日のツボは >>235「ダメ」 でした(^_^;)
鼻血でそうでした(笑)
明日は正座してお待ちしております。
- 243 名前:名無し読者A 投稿日:2003/12/14(日) 11:37
- うわ〜〜。
今回の吉澤さんに萌えです♪
次で終わっちゃうのは残念ですが……。
楽しみにしています。
- 244 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 13:42
- ハンカチないとか、キッチンペーパーとか細かなズボラ描写に笑いました。
作者様は、いしよし大好きなんですね〜。
- 245 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/14(日) 18:22
- 今日のハロモニの「吐息吹きかけ」にすっかりやられています。
240> 名無し読者様
中澤姐さんのセクハラキャラは、個人的にかなりうらやましいw
241> 23様
朝の連ドラですか〜。光栄です。ご安心ください、まだまだ妄想は続きます(自分でもどうかと思います)。どうぞよろしく!
242> 209様
よっちぃも梨華ちゃんに「ダメ」とか「ヤダもう」とか言われてるにちがいない。あ、鼻血が……w
243> 名無し読者A様
よっちぃの「かわいさ」って、女の子にはたまらないものがあるように思います。とくに石川さんのような「お姉さん」にとっては。ニヤリ。
244> 名無し読者様
はい。勝手にあたたかく見守っております。「梨華ちゃんって実はおっちゃんっぽい」って誰の発言でしたか、ありましたよね? それをヒントに。
それでは本日の更新、スタートします。
- 246 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:24
- まったく中澤先生の能天気ぶりには呆れちゃうけど、
おかげで落ち込んだ気持ちが上向きになったのは事実。
なんだかんだ言ってかまってくれるのが、あの人流のやさしさなのかもしれない。
夜勤明けの朝の空気に、吐く息が白い。
不規則なシフトにも慣れてきた。
もう一年以上、恋人がいないことにも。
「ふふっ」
うつむいてマフラーに顔を埋める。
18年間ずっと恋人がいなくて当たり前だったのに、
一度恋人ができたら、恋人がいるのが当たり前みたいに思ってた。
3年間“恋人アリ”に慣らされて、突然ひとりになって、
ただ淋しくて淋しくて、気を抜くと崩れ落ちそうになる心をもてあまして
いろんなことをしてみたんだ。ちょっとイケナイことも。
でも、また私をきちんと立たせてくれたのは
結局、お仕事に打ち込むことだったような気がする。
- 247 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:24
- いつか保田主任みたいになりたいな。
そこにいるだけで患者さんに安心してもらえて、頼りにしてもらえるような。
「吉澤さん、退院かあ。明後日……違う、もう明日だ」
淋しいな。
そう思ってしまって、私は苦笑しながら首を降った。
元気になってくれて、うれしい。そうでしょ?
何かに傷ついてぐったりとしていた女の子。
入院中にフラれちゃったけど、彼女の顔色は最初の頃にくらべたらずっといい。
大丈夫。きっと乗り越えてくれる。
怪我の治った翼で、もっともっと高く飛べるよ。
- 248 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:25
- 夕方に出勤した私は、面会時間が終わる頃を狙って、
吉澤さんの病室へと向かった。
もちろんバーンと当たって砕けるつもりじゃなくて
「退院、おめでとう。良かったね」って、ちゃんと伝えたくて。
吉澤さんは、明朝の退院に備えて
ベッドの周りの荷物を大きな鞄に詰めていた。
私の顔を見ると、顔を上げて照れたように微笑む。
「目が腫れてるぞ」
「石川さんこそ」
フフッと微笑み合う。
「明日、退院だね。はやいね」
「はい。お世話になりました」
「うーん、吉澤さんって礼儀正しいんだかイマドキの若い子なのか、よくわかんないな」
イマドキ?と吉澤さんは首をかしげる。
- 249 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:26
- 「イマドキの若い子って、なんかオバチャンくさい」
「うっ、まだ22なのにぃ」
「えー、22なんすか?」
「なによ、もっと年上だと思ってたの?」
「うん、しっかりしてるから」
「……しっかりしてないよぉ〜」
私は思わずうつむいてしまう。
「昨日、ごめんね。みっともないとこみせちゃって」
「あ、いえ。そのぉ、アタシこそ勉強になったっていうかぁ」
「勉強?」
「命について考えたっつーか……うまくいえないけどぉ」
わしわしと頭を掻く吉澤さんに、
私は思わず目を細める。
「とにかく、石川さんはすごいなあって。てか、ナースのお仕事、マジですごい」
「……ありがと」
ふふっ。吉澤さんって、やっぱりかわいいな。
おせじかもしれないけど、私みたいな新米にそんなふうに言ってくれるなんて。
- 250 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:27
- 胃潰瘍になっちゃった茶髪のイマドキの女子高生。
残り少ない高校生活、めいっぱい元気に楽しんでほしいな。
そんなふうに思いながら、私は吉澤さんの胃のあたりをポンポンと叩いた。
「やさしくって気がまわるのが吉澤さんのいいとこだけど」
「はい?」
「もっと気楽にね、自分の気持ちに正直に」
我ながらキマった!
そう思ってたのに、吉澤さんはニヤニヤ笑って、またからかってくる。
「なんか石川さんって、まさに白衣の天使ってカンジー」
「なによ、またからかって」
「からかってないよー、正直に、思ったことを言ってんじゃ〜ん!」
「もう!」
ほんとに悔しいなあ、もう!
でも、こうやって言い合えるのも今日が最後かあ。
……そう思ったら、しゅんとしてきた。
- 251 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:28
- この半年で、患者さんとの別れはいくつも経験してきた。
ある人は元気になって退院して、
ある人は保田のおばあちゃんみたいに永遠の別れ。
仲良くなっても「また来てね」と言えないところが、このお仕事のつらいとこ。
それに元気になって退院した人は、病院のことはすぐに忘れてしまう。
そりゃそうだよね。病気のことなんて、だれも思い出したくないもの。
吉澤さんもきっと、すぐ忘れちゃうね、私のこと。
自分はこの子のなかの通り過ぎてく風景なんだって思ったら、
胸がきゅんと切なくなった。
ふと黙りこんでしまった私に、
吉澤さんは、また無邪気な様子で首をかしげる。
元気になった証拠の、天使みたいな薔薇色の頬っぺたで。
よく見ると神経の細さが見え隠れする薄茶色の瞳で。
年下の女の子にじっと見つめられて、やっぱり暴れ出してしまう情けない私の心臓。
ああ、やっぱりなんてかわいいの……
- 252 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:29
- よし。
私は、軽く深呼吸をした。
吉澤さん。ちょっとでもいい、私のことを覚えてて。
石川梨華ってナースがいたことを、時々でいい、思い出して。
「最後だから」
「へ?」
「仕返ししようかな」
私はやおら吉澤さんの腕をつかむと、
すっごい至近距離で、彼女の瞳を覗き込んだ。
長いまつ毛に胸がときめく。
「え、何?」
慌ててる、慌ててる。
真っ赤になっちゃって、かーわいいの!
内心、自分の大胆さに自分であきれてる。
年下の女の子にこんなことして、これじゃあ中澤先生みたいじゃない、私。
でも、はじめちゃったら、もう止まらない。止まらないので有名なの、私。
- 253 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:29
-
………ちゅっ。
- 254 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:30
- わざとらしく音を立てて、私は吉澤さんにすばやくキスをした。
あたたかくって、びっくりするくらいくにゃっとやわらかい感触。
ああ、もう、しばらく誰ともキスしたくないかも。
「こないだのお返しだよ!」
一応、いいわけしながら、小さく舌を出した。
ぽかんと口をあけて私を見下ろす吉澤さん。
ふふん、大人をからかった罰だぞ!
「じゃあ、元気でね。もう来ちゃだめよ」
私はちょっと涙ぐんじゃった自分に気づかれないようにサッと踵を返した。
バイバイ、かわいい吉澤さん。
……それから、バイバイ、私の小さな恋。
あっけにとられたまま見送ってる吉澤さんの視線を背中に感じながら病室を出た。
後ろ手にパタンとドアを閉めて、ふう、と息をつく。
- 255 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:31
- 笑っちゃう、私。
患者さんにあんなことして、大問題よ?
きっと真っ赤になってる頬を両手で押さえたまま、私はくすくす笑う。
明日からもう会えないことにズキズキ痛み続けてる胸を
他人事みたいに「困ったなあ」なんて思いながら。
こんなふうに出会いと別れを繰り返して、少しずつ慣れていくんだわ。
そしていつか、密かに患者さんに恋しちゃった新米ナースの頃を懐かしく思い出す。
真っ白な病室の中で、光に溶けちゃいそうだったあの子の笑顔とともに。
私は俯いて、ちょっと鼻をすすった。
さて、お仕事、お仕事。
軽く頭を振って歩き出そうとした時、いきなり真後ろのドアが開いた。
ガチャ!
「石川さんっ!」
「キャッ!」
いきなり降ってきた声に飛び上がっちゃいそうになりながら振り向くと、
かわいいあの子が妙にふてくされた顔で、私をまっすぐに見ていた。
- 256 名前:かわいいあの子 投稿日:2003/12/14(日) 18:32
- 「ど、どしたの?」
「あ、えっと」
彼女は、なんだか困ったような目をして首をかしげる。
そしてチラッと周囲を気にすると、遠慮がちに、囁くような声を漏らした。
「あの、恋人とか、……いるの?」
その言葉は、まるで心臓を打ち抜かれるみたいな衝撃。
やだ、止まっちゃったら困るじゃない。
「……いない、よ」
私は両手で胸を押さえながら、やっと返事をする。
それから、あわててとびきりの笑顔をつくった。
どうかこのかわいい人との新しい恋が始まりますようにと祈りながら。
☆おしまい☆
- 257 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/14(日) 18:33
- 『かわいいあの子』これにて完結です。
また、ご感想などいただけるとうれしいです。
(# ^〜^)<石川さん、反則〜。
(# ^▽^)<仕返しだモン。
さて。
終わってそうそうなんですが、この話、続編があるんです。
今度は、かわいいあの子の新しい恋のお話(にやり)。
明日から、始めます。またおつきあいいただけると幸いです。
ああ、こんなに妄想がとまらないなんて。
いしよしって罪……。
- 258 名前:242 投稿日:2003/12/14(日) 18:53
- 泣いていいですか?
続編が読めるなんて...幸せすぎます(T_T)
明日からも雪ぐまさんについていきます&鼻血流します(笑)
よろしくお願いしますm(_ _)m
- 259 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 19:12
-
⊂⌒~⊃。Д。)⊃
悶え氏にました。
明日からの続編も楽しみにしています。
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 19:13
- うわ〜い!
完結&続編、めちゃうれしいです!
これからも読ませていただきます。
がんばってください。
- 261 名前:207 投稿日:2003/12/14(日) 19:50
- 終わり方も良いですね〜
私はいしよしでは書いてませんが、以前違うジャンルで少し。
こちらレベルが高い方多く、結構満足してしまいまして。
自分のいしよしが完成する日が来るのだか?って感じですけどw
次作心よりお待ちしています。
- 262 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003/12/14(日) 20:04
- 感動しました。爽やかで綺麗な作品をありがとうございます。
続編も期待しています
お疲れ様でした
- 263 名前:23 投稿日:2003/12/15(月) 00:17
- 完結おめでとうございます!
とっても清清しく素敵ないしよし作品でした。
石川さんがちょっぴり大人で、でもすごく可愛いところもあり、
吉はかわいいけど繊細な心をもった女の子ってところがツボでした。
そして何と続編もスタートとは・・
嬉しすぎます、またこれで毎日の楽しみが続く訳ですねぇ〜
(実は吉視点のサイドストーリーが読めたら嬉しいな、なんてコソっと
勝手に思ってたんで、メチャ楽しみです、ハイ)
もう雪ぐまさんに「吐息吹きかけ」10回位したいほどうれすぃ〜ですw
- 264 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/15(月) 12:11
- 無駄のないキレのある文体、キャラの魅力、
いい意味で読者を驚かせる巧みな展開……
一級品、いや特級品だと思います! 感謝!
だらだらせずにサッと終わらせるのも憎いですね。
もっともっと読みたくなります。続編、超楽しみです。
- 265 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/15(月) 12:28
- 毎日ホント感謝でした
どうやら雪ぐまさんのおかげで、いしよし病悪化してしまいましたよ
重症です、ステキすぎです(笑)
- 266 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/15(月) 22:56
- 皆様、あたたかいご感想をありがとうございました。
258> 242様
雪ぐまも妄想爆発で鼻血を流しています。最近、リアルのネタも多くていいですね。
259> 名無し読者様
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ←雪ぐまもリアルいしよしネタがくるたびにこんな感じです。
260> 名無し読者様
めちゃ、頑張ります! 今後ともよろしくお願いします。
261> 207様
終わりは片思いのままのほうがかっこいいかな〜と一瞬思ったのですが、やっぱりくっつけちゃいました。いしよし好きだから甘いですw
262> 名無し募集中。。。様
お褒めいただき、ありがとうございました。綺麗と言っていただけて、とてもうれしかったです。
263> 23様
よっちぃもちゃんと女の子してる話が好きなんです。最近のリアルよっちぃは美少女復活してきていて良いですなあ〜。
- 267 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/15(月) 22:57
- 264> 名無し読者様
過分にお褒めいただいてありがとうございます。長編も書いてみたいのですが、それだけの力量があるかどうか迷うところです。
265> ラヴ梨〜様
雪ぐまのいしよし病も、ほんとヤバイですからw まだまだ壊れますよ〜w
それでは続編にまいります。
- 268 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/15(月) 22:58
- 胃潰瘍でブッ倒れたかわいいあの子は
病院で出会った白衣の天使にもう夢中。
やさしくて、ちょっぴりセクシーで、可憐なお姉さん。
なのに、彼女の笑顔の影にはなんだか秘密がありそうで……
前編の時も書きましたが、石川さんの純真なイメージを大切にされたい方は
くれぐれもお読みにならないほうが賢明かも。
なんてったって、ちょびっとだけ大人の恋も経験済みの石川さんなんです。
では、その後の二人の恋物語、スタートです。
- 269 名前:ジェラシー〜続・かわいいあの子〜 投稿日:2003/12/15(月) 22:59
-
『ジェラシー〜続・かわいいあの子〜』
- 270 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:00
- 「まさか、吉子があのヒトとつきあうなんてねー」
「あのヒトとか言わないでよ。ちゃんと石川さんって名前があるんだからさ」
「はいはい。ナースの梨華ちゃんでしょ。なんか、やらしー」
「なんでよ!」
学校からの帰り道。
ごっちんは、飽きもせずに何度でもあたしを冷やかす。
仕方ない。あたしはさんざんごっちんを追いかけてたんだから。
ぐちゃぐちゃしてた気持ちが、すうっと溶けたことに自分でも驚いてる。
「今日は、これから遊びに行くんだぁ」
「んあー」
「あのね、日勤と準勤と夜勤とあってー、準勤の日はわりと早く帰れるんだって」
「んあー」
「病院の近くに寮があってね、これがけっこーキレイなワンルームマンションなのよ」
「んあー」
聞いてるんだか聞いてないんだかわからないごっちんに、嬉々としてしゃべりまくるあたし。
ほんとこんなのキャラじゃないけど、あたしはマジで浮かれてる。
病院で出会ったナースの石川さん。石川梨華ちゃん。
あの声、あの腰、あの笑顔。
あー、もう、マジで好きになっちゃったんだよーーぅ!
- 271 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:00
- ♪♪チャーミー石川でぇす♪♪
浮かれるあたしの耳に突然、携帯メールの着ごえが響き渡る。
このウルトラかわいい着ごえは、もち、梨華ちゃんから。
でも、この時間になぜ? げげ、嫌な予感……。
『ごめん。急患が入っちゃった』
ガビーン(死語)。予感的中。
ひ、ひ、ひどいよぉー。また、ドタキャンなの?
でも、命にかかわる仕事だからって言われたら、文句も言えない。
いや、もともと文句なんて言えない性格だけど。
- 272 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:01
- 退院してから3ヶ月。
なんだかんだ言って、梨華ちゃんとは週イチくらいしか会えてない。
それも術後の通院を含めてだよ!
梨華ちゃんは休みが不規則だし、夕方に会おうと思っても
急患だの容体の急変だのでダメになることが多くて。
「夜中に行けばいーじゃん」
「ウチ、わりと門限厳しいから……」
「あはっ」
気のいいごっちんは、哀れなあたしにジュースをおごってくれた。
◇ ◇ ◇
- 273 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:02
- その週の週末は、彼女の数少ない土曜休日だった。
あたしは学校に行くより早い時間に家を出て、
母さんに「どこ行くの?」なんて目を丸くされる。
「ごっちんと図書館だよ。夕飯、いらないから」
彼女のためなら嘘だって平気。
入院中に知り合った看護婦さんとデキてますなんて
きっと彼女に迷惑がかかっちゃうからね。
「ひとみちゃん、会いたかった!」
マンションのドアを開けると、愛しいあの人が飛びついてきた。
あたしって、なんて単純。
会えなかった不満なんてどこかにいっちゃって
ただただ幸せな気持ちで華奢な体をぎゅうぎゅう抱きしめる。
「入院してるほーが良かった。毎日会えるし」
「何いってるの。もう来ちゃだめよ」
梨華ちゃんはそう言いながらも
うれしそうな顔をしてあたしを部屋にあげてくれた。
- 274 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:02
- たいして広くもないワンルームだけど、相変わらずちょっと散らかり気味。
ぴしっときちっと整頓されてないと気がすまないあたしは思わず
落ちてた本を拾って本棚に戻したり、くしゃっと丸まってた服をたたんだりしてしまう。
梨華ちゃんはそんなあたしを気にするでもなく、
へたっぴいな鼻歌を唄いながら、のんびり紅茶を入れてくれる。
いきなりガチャンとか食器を鳴らして、あたしをビクッとさせたりしながら。
ほんと、あたしたちって性格と見た目が逆。
あたしは大らかそうに見えてけっこう神経質だし、
梨華ちゃんは繊細そうに見えてわりとズボラ。
ほんと、わかってきた。
「梨華ちゃんに点滴してもらってたとか怖いよね、かなり」
「なによ。痛くなかったでしょ? あーゆーのはブスッとザクッとね」
「はいはい……」
梨華ちゃんが、するりとあたしの腕の中に入ってくる。
上目遣いで見つめてくるのは反則。
ああ……梨華ちゃん!
- 275 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:03
- 「今日は準休の日だから、途中で携帯鳴っちゃったらごめんね?」
キスしようとしたあたしの唇に指をあてて、
愛しい人はかわいらしく現実的なことを言った。
準休っていうのは、緊急事態の時は呼び出される休日なんだって。
そんなの休みじゃないよねぇ?
「人が足りないから仕方ないのよ」
そう言いながら梨華ちゃんは細い指をあたしのパーカの下にもぐりこませる。
あたしはドキドキしてもう大変ですぅ〜な気分。
ああ……梨華ちゃん! 梨華ちゃーーーん!!
◇ ◇ ◇
- 276 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:04
- コトが終わると、梨華ちゃんは必ずグーグー寝入ってしまう。
あたしはちょっと寂しいけどガマン。
いつも目の下のクマが消えない。
きっと疲れてるんだと思うから。
こんなコトとかしちゃったけど、まだ時計の針は午前中。
細く開けた窓からヒンヤリした風がピンク色のカーテンを揺らす。
あたしも少しお昼寝しようかな。時間はまだたくさんあるし。
ウトウトしかけた時、梨華ちゃんの携帯がとんでもなく大きな音で鳴った。
ギャッ!と飛び起きるあたし。
梨華ちゃんもすばやく身を起こして通話ボタンを押す。
その表情は、さっきまでのとろけるような甘さじゃなくて
責任ある仕事をしてる社会人の顔。
ちぇっ、恋人と裸でベッドのなかにいるくせにさ。……なんだか、遠く感じるよ。
- 277 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/15(月) 23:04
- 電話を切ると、梨華ちゃんはくるっと振り向き、
まだドキドキがおさまらなくてシーツをギュッと握っているあたしを見てフッと笑った。
「ひとみちゃんてぇ、動物みたい」
なにそれ?
「怖がりでぇ、脅かされるとビクッって毛が逆立つの。かわいい」
チュッと頬っぺたにキスをしてくれる。
あっ。なんか、なんかごまかされてる気がするよ、なんか。
「あのねぇ、2〜3時間で帰ってくるから待っててくれる?」
ほら、やっぱり。
嫌だって言っても行っちゃうもんね。お仕事だもん。
不服ながらもこっくりとうなずいたあたしの髪を、彼女はにっこり笑って撫でた。
「いい子ね」
- 278 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/15(月) 23:07
- 本日はここまでといたします。
午前中からこんな調子のうちのいしよしでした・・・。
- 279 名前:258 投稿日:2003/12/15(月) 23:23
- 続編スタート、ありがとうございます。
またまたうれしい展開ですね〜。顔が緩みっぱなしでした(笑)
>>272で「またかいっ」って突っ込みもしっかりさせていただきました。
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/16(火) 00:16
- お姉さんな梨華ちゃん、とってもツボです。
いいなぁよっちい(*´Д`)
- 281 名前:260 投稿日:2003/12/16(火) 01:51
- んあああ!
早々と続編ありがとうございます!
今回のもまたなんともいえずいいです!
よすぎです。
雪ぐまさんすごいです。
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/16(火) 08:25
- よっちゃん口癖移ってるw
かわいいっすねえ
- 283 名前:リムザ 投稿日:2003/12/16(火) 22:29
- 某場所で某小説を書いているリムザです。
いしよし好きなので、面白くかつ感動しつつ読んでいます。
話のスムーズな展開とか、雰囲気の出し方とか最高です。
大人な白衣の天使石川さんと、小悪魔吉澤さんに期待大です。
- 284 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/16(火) 23:54
- 仕事がらみでフグを食べました〜。しかも、おごり〜♪
279> 258様
お約束のつっこみ、ありがとうございますw
リアルよっちぃは、ののにまでジュースおごられてるらしいですな。
280> 名無し読者様
雪ぐまも書いててかなりよっちぃがうらやましいです。
よっちぃみたいな年下の女の子もかなりいい感じなんですが。←節操なし。
281> 260様
んあああ! 今回はさらに雪ぐまの妄想炸裂です。
キモくなったらごめんなさい。
282> 名無し読者様
リアルいしよしのシンクロぶりも、かわいいっすよねえ。
最近だとTOMMYのパーカー&前髪とか。
283> リムザ様
作者さんにお褒めいただいて感激しています。
ぜひ某所の場所だけでも教えてください〜。
それでは本日の更新、スタートします。
- 285 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:55
- 彼女の部屋にはプレステがない。
土曜の昼なんて、テレビもロクなのやってない。
本とか好きに読んでいいよと言われても
看護の専門書か全然趣味の違うファッション誌、
それかあたしが苦手な恋愛小説ばっかで、
いまいち手を伸ばす気になれず困ってしまった。
約束の時間が過ぎても、梨華ちゃんは帰ってこない。
鍵は置いていってくれたし、自由に出かけていいんだけど
あたしはなんだか部屋から動けなくて閉じこめられた気分。
お腹が空いたから、台所にあったカップラーメンを失敬して食べる。
なんかムナシイ。
ふと目をやると、テレビの下の棚にビデオテープがごちゃっと置いてあった。
映画でもないかと思って手を伸ばしてみると、なんとどれもラベルが貼ってない。
信じれん……と呆れていると一本だけ「ハワイ」と書かれたラベルが貼ってあった。
ハワイ? なんの番組だろうと思ってデッキにかけてみる。
- 286 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:56
- ザーッという砂の嵐のあと、現れたのは
太陽の下で弾けるような笑顔を見せる梨華ちゃんの姿だった。
「ハワイ旅行のホームビデオ……?」
わー、すっげえいいモノ、見つけちゃった!
いつの梨華ちゃんだろう、まだ真っ黒な髪。
もしかして、今のあたしとおない歳くらいかも……
ちょっとー、黒髪マジかわいいじゃん。ヤバいよー。
あたしはあっという間に画面にのめりこんだ。
ノースリーブのざっくりしたワンピースをきた梨華ちゃんが、
砂を蹴るみたいに楽しそうに歩いている。波の音が絶え間なく聞こえる。
と、いきなり服を脱ぎ始めた。おおっ!
その下から現れたのは白のビキニ。
おっぱいがぷるん。
ヒューー。ナイスバ〜ディ!!
画面の梨華ちゃんが、ふいにこちらを……つまりレンズを睨む。
- 287 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:57
- 『恥ずかしいから撮らないでよ』
『ええやん、減るもんやなし』
突然聞こえてきた関西弁の若い女のヒトの声。
画面のなかの彼女がやさしく微笑みかけるカメラマンは誰?
友達? お姉さん? それともまさか……
『なー、梨華。裕ちゃん好きって言って?』
『やだよ』
『言ってー、一生のお願い』
『もう……裕ちゃん、好きだよ』
ブチ。
あたしは思わずビデオの停止ボタンを押していた。
何アレ? 何アレ? ラブラブビデオ?
嘘ぉ……。あたしは床に転がった。
治ったはずの胃が、しくしくと傷み始める。
しかし、怖いもの見たさというんだろうか。
いや、とにかく真実が知りたくて。
- 288 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:57
- あたしはおそるおそるまた再生ボタンを押す。
とたんに画面にパッと広がる梨華ちゃんの笑顔は、
あまりにも幸福に満ちあふれていて。
『梨華〜、もっかい言って〜』
『ヤダ! もー、カメラ貸して』
画面が揺れて、カメラが梨華ちゃんに手渡された。
彼女が写したのは、金色に髪を染めた細くてきれいな女のヒト。
VネックのTシャツを着て、風に舞う長い髪を手でおさえながら、やさしげに笑ってる。
『ハイ、じゃあ裕ちゃんも言って?』
『何を?』
『梨華好きって』
『梨華〜、愛してるで〜〜』
『キャーやめてやめて!』
じゃれつかれてカメラが砂浜に落ちる。
砂の向こうにはどこまでも青い海と、限りなく高い空が見えて……。
- 289 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:58
- 「ただいまー」
「わっ!」
慌ててビデオを消そうとしたけど、間に合わなかった。
怒られる!と一瞬ヒヤッとしたけど、
コートを脱ぎながら部屋に入ってきた梨華ちゃんは、
「やだー。こんなのどこにあったの? 恥ずかしいなあ」
と、のんきな声をあげただけだった。
「お、おかえり」
「ん、ごめんね遅くなって。うわー。私、若っかーい」
画面には、楽しげにショッピングをしてる梨華ちゃんが映し出されていた。
その自分の姿を懐かしげに梨華ちゃんは見つめる。
「あの、これって……」
「ハワイ旅行に行った時の。んーと、4年くらい前かなあ」
「その、こ、恋人と?」
思わず小さくなったあたしの声に、
梨華ちゃんはなんだかいじわるげに微笑んだ。
- 290 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/16(火) 23:59
- プチンとビデオを切って、あたしのほうに向き直る。
「気にしちゃってるんだ?」
「……別に」
「ひとみちゃん、かーわいい」
ムギュ。
おっぱいに顔を押しつけられるように抱きしめられて
あたしは瞬間、うっとりとなる。
い、いかんいかん!
「前のヒトだよ。もうぜんっぜん、好きじゃない」
「………」
「今はひとみちゃんだけよ?」
あたしはおっぱいの隙間から、上目遣いで梨華ちゃんを睨む。
「今は」って何よ。今だけ? これからは?
もちろん、そんなつまんないこと言えるわけない。
- 291 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 00:00
- かわりにちょっとばかし虚勢をはってみる。
「ま、いっけどぉ。あたしも別に梨華ちゃんが初めてってわけじゃないしぃ」
「生意気〜、高校生のくせに」
梨華ちゃんがかすかに眉を寄せたような気がした。
ヤキモチ、妬いてくれてる?
思わずハネ起きたけど、梨華ちゃんはいつものほにゃーんとした笑顔で、
あたしは心底がっかりした。
あーあ、あたしなんてこんなに胃が痛くなっちゃってるのにさ。
◇ ◇ ◇
- 292 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 00:00
- 「22でしょ? そりゃ前のヒトくらいいるよ」
あれから不眠症気味のあたしに、ごっちんが呆れた声を出した。
トボトボ歩くあたしの手を引いてくれるごっちん。
いつもいつもすいませんねぇ……。
「今日は病院の日?」
「うん」
「じゃあね。また入院しないでよ」
「おー……」
自信ない。
いつか梨華ちゃんにジュースをおごってもらった外来のソファに腰かけて
名前を呼ばれるのを待ちながら、あたしはため息をつく。
あのビデオがいけない。
18歳のあどけない梨華ちゃんが、知らないネーチャンに微笑みかける。
『裕ちゃん、好きだよ』なんて言っちゃってさ。
あのネーチャンも、『梨華』なんて呼び捨てにしちゃってさ。ううっ。
なんだよ、あんなヤンキーみたいの、どこがいいんだ……。
- 293 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 00:01
- ブツブツ言いながらあたしは顔を上げて、「うわっ!」と叫んだ。
そいつがその声に気がついて、
缶コーヒーを飲みかけのまま「ん?」と振り向く。
すぐそばの自販機の前に、あのビデオのネーチャンが立っていた。
ただし、Tシャツじゃなく、白衣を着て。
胸ポケットに無造作に聴診器がつっこまれている。
い、医者かよっ!!!!! 胃がキーンときた。
「アイタタタタタ……」
「おおっ、吉澤、どうした? だいじょぶか?」
「な、なんであたしの名前、知ってるんすかっ?」
「え? いやー、ほら、あれやろ? 入院しとったやろ石川んとこに」
「キャー、ひとみちゃんっ」
あたしの顔を見るために病棟から降りてきた梨華ちゃんが
体をくの字に折り曲げて悶絶するあたしに気づいて駆け寄ってくる。
「ちょっと中澤先生、何やってるんですか!」
「し、知らんって。何か、急に苦しみだしたんやもん」
「なんか変なことしたでしょっ!」
「してない、してないって! 裕ちゃん、無実やもん」
ははっ、まるでコント。
ああそう。職場恋愛だったのね……なるほど。
- 294 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/17(水) 00:03
- 本日はここまでといたします。
- 295 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 00:20
- ヤバイ…更新読まないと眠れなくなってますワタクシ。
立派な雪ぐま様小説依存症患者がここに。
- 296 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 00:29
- 毎日更新してくださるので私の日々の楽しみになっています。
これからも拝見させていただきます。
- 297 名前:272 投稿日:2003/12/17(水) 00:31
- はぁ〜梨華ちゃんはほんとに大事にしてますね、よっすぃ〜の事。
かわいくてかわいくてしょうがないって全身で表現してそう。
それ以上に梨華ちゃんの虜になっちゃってる感のあるよっすぃ〜には
自分に自信を持てる別メニューの治療も必要そうですね(笑)
- 298 名前:23 投稿日:2003/12/17(水) 01:01
- 遅れ馳せながら、新作おめでとうございます!
いつの間にかこんなに進んでいたとは・・うっかりしておりましたです。
吉視点、イイっすねぇ〜!
ほぼ自分が望んだ形なので、かなりうれすぃ〜ですわい。
いつの間にか石川さんの魅力にメロメロな吉がまた可愛いです。
好きだからこそのジェラシー。
これがいしよしだとホント、ハマリますね。あまりにリアル過ぎてw
次回も楽しみです。
- 299 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/17(水) 17:02
- 昨晩は更新が遅かったのでお待ちいただいてた方もいらしたようですね。
作者冥利に尽きることでございます。
というわけで、今日ははやめに更新しますね〜。
295> 名無し読者様
依存症ですか〜、光栄です。なかなか同じ時間には更新できないんですが、日刊ペースはしばらく続けていこうと思ってます。
296> 名無し読者様
毎日読んでくださってるんですね〜。うれしいです。雪ぐまも楽しんでます!
297> 272様
リアル石川さんも、よっちぃがかわいくてしかたないんじゃないかと小一時間妄想……。
298> 23様
いしよしヲタの友人と、「いしよしはどっちのほうがヤキモチ妬きか」というネタで盛り上がったことがw
雪ぐまは「石川さん!」と主張しましたが、
友人は「いや、吉澤さんだ」と一歩も譲らず。どうすかね?
それでは本日の更新、スタートします。
- 300 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:03
- 休み時間に教科書を読んでいるあたしを、
ごっちんが気持ち悪そうな顔で見た。
「吉子、いまさら無理だって」
「やっぱそー思う?」
「うちら、そういう学校じゃないでしょ、ははっ」
確かに。
卒業生で医大に行ったなんて話は聞いたこともない。
いいとこ2流の私大で、半分が短大か専門学校、
残りが就職というのがルート。
梨華ちゃんの前カノは、10歳年上の医者だった。
あたしは5つも年下のバカ女子高生。
なんで別れたのかしらないけど、
なんかずいぶんレベルダウンしてない?
- 301 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:04
- 「吉子はペット」
「ううっ」
痛いところを突かれて、あたしは胃をおさえる。
思い当たるフシは山のよう。
「いい子」「動物みたい」「かーわいい」が梨華ちゃんの口ぐせ。
「あれだねー、自立した女は愛玩物を求めるとかってやつ。つまりヒモ」
「はあっ?」
「いーじゃん吉子。ヒモ、似合ってるよ」
あたしはヘッドロックでごっちんを瞬殺した。
倒れ伏すごっちんをしり目に、あたしはため息をつく。
今日、進路希望の紙がまわってきたから、
思いっきり「進学コース」に丸をつけてみた。
昨日だったら「就職コース」に丸をつけてただろう。
べつにやりたいこともないし、卒業したら適当にプーでもすっかと思ってたけど。
- 302 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:05
- 梨華ちゃんとずっと一緒にいたい。
でも、ヒモなんてやだよ絶対。
対等に、そうだよ、対等につきあいたいじゃん!
てことは、あたしもいずれはなんかマトモに稼いだりしなきゃいかんわけで。
職業選択の自由アハハ〜ン♪って、古いなあたし。
梨華ちゃんうつってきたかも。
マジに悩むあたしの乙女心も知らず、
梨華ちゃんは今日もあたしの顔をうっとり見つめる。
「かあいぃ……」
お茶を飲んでいても、パスタをすすっていても、
腹のあたりをボリボリ掻いてもその調子。
「梨華ちゃんさ、あたしのどこが好き?」
「えー、顔?」
- 303 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:06
- がっくししたあたしを見て、梨華ちゃんはキャッキャと笑う。
「嘘うそ。ひとみちゃんはね、心がキレイだから」
「え?」
「やさしくって、繊細。胃がやられちゃうくらい」
「中澤先生は?」
「……やっぱりヤキモチ妬いてたのね?」
「いいから! 中澤先生のどこが好きだったの?」
いつにないあたしの剣幕に戸惑いながら、
梨華ちゃんは首をかしげる。
「じゃあ、ひとみちゃんはごっちんのどこが好きだったの?」
「へ? ちょっとあたしの話じゃないでしょ?」
「教えてくれたら教えてあげる」
仕方なく考える。
ごっちんのどこが好きだったかって?
えーーーーーー………?
- 304 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:07
- 「……忘れちゃった」
「なによ、ほんとに好きだったの?」
「好きだったよっ……と、思うよ? ブッ倒れたし」
「なるほど、ひとみちゃんの胃潰瘍はやっぱりごっちんのせいなのか」
あ、しまった。口、すべっちゃった。
梨華ちゃんは気の毒そうな、悲しいような、なんともいえない複雑な表情をすると
おもむろにあたしのジャージをめくって、お腹の傷をむきだしにした。
「ちょ、ちょっと」
「梨華は、ひとみちゃんにそんな思いさせないよ。絶対」
ちゅっ。
お腹の傷にキス。
あたしは猛烈に感動した。
- 305 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:07
- 「梨華ちゃん! あたしも梨華ちゃんに絶対に悲しい思いはさせないからっ!」
「じゃあカップラーメン食べないで。胃に負担でしょ?」
「あ、あれは梨華ちゃんがなかなか帰ってこないから……」
「問答無用」
梨華ちゃんは、そのままあたしのジャージをスポンと脱がせてしまう。
バンザイの格好のまぬけなあたしに、梨華ちゃんが三日月の目で微笑む。
「吉澤さん、ちょっと検診しましょうね〜?」
ナース石川にあたしは完全ノックアウト。
っていうか、中澤先生のことちっとも聞き出せてないんですけど。
あーあ、ほんと手のひらで遊ばれちゃってるよね、あたし。
◇ ◇ ◇
- 306 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/17(水) 17:08
- それにしても。
梨華ちゃんって、うまい。
うますぎる……
「あ……ん……」
「ふふっ、気持ちいい?」
ん、すごい気持ちいい、よぉ。
でも、今日は妙にその「うまさ」が気にかかる。
誰に教えてもらったの?なんて。
あたしは下手じゃないかな? 大丈夫?
ぞくっとするくらいきれいな曲線を描く梨華ちゃんのカラダを前にして
あたしはうっとりするより前に、ただ必死になってる。
「…ん…ああん……」
こうかな? ここかな?
「あ……ひとみちゃん…好きぃ……」
えへっ。
「…あ……もぅ、欲し……ひとみちゃ…の……指ぃ…」
あ、はいはい。
ああああああ、もう、なんかタイミングがうまくわかんないんだよねぇ!!!
- 307 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/17(水) 17:10
- 今日はここまでといたします。
(# ^▽^)<好き!
(# ^〜^)<えへっ。
逝ってきます……。
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 17:53
- 萌え氏んでいいですか?
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ <雪ぐまさん、最高!
- 309 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 18:32
- ハァ━━━━ *´Д`* ━━━━ン!!!!!!
今一番お気に入りのいしよしです。(#´▽`)´〜`0 )
- 310 名前:297 投稿日:2003/12/17(水) 19:14
- いろんな意味でほんと可愛がられてるぅ、よっすぃ〜。
かなりうらやますぃ〜 *´Д`*
しかし今日は最高に萌えました!
タイミングぅぅぅ...青春ですね〜(照)
- 311 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 20:11
- こら、こら、こらーーーーーー!
本編と番外編の、この雰囲気の違いはどうした事じゃ!
でも、良いでは無いか!
たまらん!
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 20:13
- がんばれ!よしこ。タイミングはカラダで覚えろ〜!!
お早目の更新ありがとうございます。
おかげで今日は早く眠れそうな依存症患者でございます。
風邪が流行っておりますので、作者様もお体大切に。
- 313 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/17(水) 22:11
- よしこ可愛い!でもそれ以上に羨ましいです〜!!
私はよしこにジェラシーですわw
- 314 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003/12/18(木) 11:47
- ひそかに毎日愛読してます、たまりませんね〜
「うまい」梨華ちゃん…「大人」な梨華ちゃん…
そりゃ翻弄されまくりですよね
ジェラシー感じますよ
誰に、「仕込まれた」とかね〜(笑)
- 315 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/18(木) 16:49
- 皆様、激しいレスありがとうございます〜。
308> 名無し読者様
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ <ありがとうございます
309> 名無し読者様
ハァ━━━━ *´Д`* ━━━━ン!!!!!!
↑これ見るたびに「ごっちん?」って思いますw
310> 297様
タイミングぅぅぅ。誰もが通る道ですな。
たぶんいしよしも……逝ってきます。
311> 名無し読者様
わはは。片恋と蜜月の違いですw
312> 名無し読者様
お気遣いうれしいです。
やっぱりタイミングは「カラダ」で覚えるものなんですねw
313> 名無し読者様
石川さんなうえに「お姉さん」で「白衣の天使」で「うまい」とw
すいません、作者の妄想爆発です。
314> ラヴ梨〜様
うちの吉澤さんは見事に翻弄されまくっております。
う〜ん、青春ですなあ。
それでは本日の更新、スタートします。
- 316 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:51
- 週末、ごっちんから「ご飯食べよー」と電話が入った。
やたら、ご機嫌な声。
どうやら市井さんと一緒にいるらしい。
市井さんは、ごっちんの恋人。
うちの学校の先輩で、今はセミプロのミュージシャンっていうの?
ライブやったり、あとクラブDJもやってて、けっこう人気がある。
その人気が、ごっちんを苦しめてるわけだけど。
あたしが顔を出すと、市井さんは涼しげな目を細めて
「おー、久しぶり!」と軽く片手をあげた。
気さくだけど、どこかミステリアスな気配。
これにハマる人はハマっちゃうんだろうな。
- 317 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:51
- 「吉澤は進学する気なんだって? またなんで?」
「いちーちゃん、吉子はショックを受けてるの。カノジョの前カノが、医者だったんだって!」
「あちゃー、やられたねー」
「けなげでしょー? あたしより成績悪いのにさぁ」
「後藤より? そりゃダメだあ」
市井さんとごっちんはゲラゲラ笑う。
くっそー、こいつらヒトの気もしらないで。
「てゆうか、ナースのカノジョ、見たい!呼んで呼んで〜」
「んあー、あたしもひさぶりに会いたーい」
「えー、だめだよー。勤務中だもん」
「終わってから来てもらえばいいじゃん。うちらカラオケでもやってたら2〜3時間すぐだし」
あたしは、「急患とか入ったらドタキャンありだからね?」と念をおすと
しぶしぶ携帯を取り出して梨華ちゃんにメールを打った。
嫌そうな素振りはポーズ。
あたしだって梨華ちゃんに会いたいし、
きれいな恋人を自慢したい気持ちも、もちろんあるわけで。
- 318 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:52
- 幸運なことに急患は入らなかったらしい。
カラオケで熱唱すること2時間、
梨華ちゃんから携帯に電話が入った。
『お待たせしてごめんね。今、下まできたよ』
「うん、呼び出してごめんねー、203号室だから」
『なんか緊張しちゃうなあ〜』
「へーきへーき、一応マトモな人たちだから」
「おいおい、一応ってなんだよ」
「ねえ?」
市井先輩とごっちんは、ブツブツ言いながらも
カラオケの音を切って、梨華ちゃんを待ってくれる。
口は悪いけど、いい人たちだ。うん。
ドアが小さくノックされて、あたしはうきうきと立ち上がった。
この後、ちょっとした悲劇が待っているとはつゆ知らず。
- 319 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:52
- ドアをあけると、恥ずかしそうな笑顔を浮かべた愛しいヒトが立っていた。
急に誘ったけど、ミニスカにロングブーツのセクシー系のカッコ。
あたしはもう「どうだ!」って感じで、市井さんとごっちんを振り返った。
ところが……。
「あっ!」
市井先輩が、目を丸くして、小さく声をあげた。
梨華ちゃんが一瞬不思議そうな顔をして、
それからハッとしたように口に手をあてた。
「え? あっ!」
え、なに? 知りあい?
あたしは、きょろきょろしただけだったけど、
固まる二人の様子にごっちんは女のカンがピンときたようで、
ゆらりと立ち上がって市井さんを上から下ま〜で睨め付けた。
「いや、違う、後藤。誤解だから……」
「ふうん、別にあたし何も言ってないけど?」
ボックスの空気がますます凍った。
◇ ◇ ◇
- 320 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:53
- 「絶対やってるよ、あの二人」
ごっちんは断言した。
放課後に久しぶりに遊びに来たごっちんの部屋で
あたしは正直言ってへこんでいた。
「いちーちゃん、嘘つくと鼻の上に皺が寄るの。だから、すぐわかる」
「……思い込みはよくないよ」
「何もないよって言った時、思いっきり皺、よってた」
「……信じようよ、ごっちん」
梨華ちゃんと市井さんは、市井さんが回してるクラブで知り合ったってことだった。
……それってつまりナンパってことじゃないの?
確かに限りなくアヤシイ。
あたしは、そもそも梨華ちゃんが
あのクラブに出入りしてたってことがショックだった。
女の人だけが入れるゴージャスな空間。
あたしもごっちんに連れられて一度だけ行ったことがある。
あの非日常な雰囲気。品定めのように見交わされる視線。
何人もの女の人に声をかけられた……きっと梨華ちゃんも。
- 321 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:54
- 「ちょっと興味あったんだよ。今は行ってないよ」
梨華ちゃんはそういうと、悪びれるでもなく、かわいらしく舌を出した。
このヒトは……、あたしはちょっと恐ろしくなる。
入院してた頃、なんて感じのいい看護婦さんだろうと思った。
清純そうなやさしい笑顔で、ちょっとからかってみたくなるほど一生懸命で、かわいくって。
白衣の天使ってこういうヒトのことだろうと思った。
つきあってからも、もちろんその印象は変わらないけど、
なんだか思ってもみないことがポロポロ出てくる。
やけにズボラだったり、10歳も年上の職場恋愛の元カノがいたり、
ハワイ旅行のラブラブビデオなんかあったり、
それで今度はクラブに通って、人気DJと知り合いだってぇ?
「吉子はまだいーよ。いちーちゃんと梨華ちゃんがヤってたとしても、つきあう前のことでしょ? あたしなんてまた浮気されたんだよ、浮気!!!!」
「いや、だからごっちん、決めつけはよくないって……」
- 322 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:54
- 「梨華ちゃんは何て言ってるの?」
「聞けないよ、そんなの……」
「もう、吉子のヘタレっ!!!」
ははっ……。
梨華ちゃんが市井さんと寝たかもしれないと思うと
打たれ弱いあたしの胃袋がまたシクシク痛む。
一夜限りというやつだったとしても、それはそれでショックがでかい。
たぶん、あたし、耐えられない。
だから、聞けない。
聞きたいけど、聞けない。
打ちひしがれたあたしとごっちんは、お互いに寄りかかるように支え合った。
人と言う字は〜なんて、ぼんやり考える。
ハハッ。つまんね。
「吉子。あたしらも浮気しよっか」
「えぇ?」
「ね、前みたいに」
ごっちんがとんでもないことを言い出した。
- 323 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:55
- ちょっと目の離れた、でも端正な顔がいきなり目の前に迫る。
ちゅっ。
唇が触れた。
やめてよと言う前に、ガラスみたいな目をしたごっちんが
あたしの髪をつかんでめちゃくちゃに唇を降らせてくる。
あたしはなんか、もういっか、という気分になってきた。
これ、ごっちんの病気。市井さんが浮気するたびにあたしのカラダをつかう。
前は、それでもいいって切なく思ってた。
今は、忘れさせてよって投げやりに思う。
ごっちんがパパッと制服を脱いだから、
あたしものろのろと制服のシャツのボタンをはずす。
ああ、これからあたし、浮気するんだなって思った。
ごっちんは市井さんを好きでたまらないから、
あたしは梨華ちゃんを好きでたまらないから、あたしたちは共犯になる。
胃なんかよりもずっと痛い、胸の痛みを消すために。
- 324 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/18(木) 16:55
- ごっちんのカラダはあいかわらずキレイだったけど、もうドキドキはしなかった。
そのカラダに梨華ちゃんを重ねて、梨華ちゃんを思って、やけっぱちに。
きっと、ごっちんもずっとそうだったんだね。
素っ気なく終わった後、あたしもごっちんもなにげに無口だった。
もうすぐ春なのに、桜が咲くっていうのにねぇ。
「吉子ぉ」
「ん?」
「うちら、親友でいようねぇ?」
「おー」
あたしたちの、ちょっとばかり行き詰まった恋。
ごっちんと市井さんの何度目かの春。
あたしと梨華ちゃんには、初めての春。
無事に花見にたどり着けるかどうか、かなり怪しい雲行き。
- 325 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/18(木) 16:56
- 本日はここまでといたします。
さてさて……
- 326 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/18(木) 18:36
- うわぁ〜
吉が切ないです…。
今回、>>323がすごくツボです。
雪ぐまさんは、いつも更新が早くて嬉しいです。
もう、大好きですw(爆)
- 327 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/18(木) 18:57
- せつねええぇぇぇえええええ
つーかあかんやん!話がどう動いてくのか?楽しみです
- 328 名前:23 投稿日:2003/12/18(木) 19:12
- んが〜、うおぉ〜、何という展開に持って行くのですかぁ〜!?
続編に突入してからは更新ごとの変化が大きいので、まるで
絶叫系アトラクションに乗っているようですわい。ひゅぅ〜!
いしよしだと、こういう展開はどう〜もリアルに感じて仕方がないですw
「恋は盲目」っていいますが、好きになって付き合い始めてからの方が
山あり谷あり大変なんだなぁ〜、とふと思う今日この頃・・
次回更新がすっごく楽しみです。まったりお待ちしておりますです。
- 329 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/18(木) 20:27
- こら、こら、こらーーーー!
なんちゅう展開やねん!
でも、良いでは無いか。
よしこ、気にするな、どんと行けーーーー!
- 330 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/18(木) 21:34
- あ〜、もう、よしこったら流されやすいんだから!
おバカおバカ!
私はリアルいしよしも「運命の二人」と信じて疑いませんが(逝けよ私)、
運命の障害となっているのは、ほかでもない吉自身だと思うんです。
そのへタレであまのじゃくで流されやすくフラフラしてる吉の性格。
ここの吉は、そんな私の思う吉像そのもので、もうツボツボツボ。
- 331 名前:リムザ 投稿日:2003/12/18(木) 23:40
- おねーさんな石川さんが素敵すぎます。
小動物とは違ったペット扱いされる吉澤さんも可愛い。
できる限り毎晩覗きにきてます。
空板にいるヘタレより。
- 332 名前:310 投稿日:2003/12/19(金) 00:52
- これでよっすぃ〜はごっちんの気持ちも理解できて
対等になったって感じでしょうか?
こういう友情の深め方って...この二人なら許すっ!
- 333 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/19(金) 13:28
- 一週間ははやいですね〜。もう金曜日です。
326> 名無し読者様
切ない恋をされているのですか? あのシーンは雪ぐまもすごく描きたかったところです。
327> 名無し読者様
あかんですよ〜。やっちゃったほうは、それほど「あかんこと」とは思わないものですが。さてさて。
328> 23様
ジェットコースターロマンスw そうです、つき合うのは簡単、
育むのがむずかしいのではないかと。とくに性格が真逆の場合w
329> 名無し読者様
こらこらー。なんとお返事したら良いのでしょう〜w
330> 名無し読者様
雪ぐまも「いしよしは運命の二人」と信じて疑っておりませんw
そして、たしかに吉よりも石のほうが胆が座ってる感じがしますね。
331> リムザ様
空板行ってきましたよ〜。とっても素敵でした。
石川さんは、どうやらちょっと天の邪鬼。雪ぐまもそう思います。
332> 310様
対等、そうですね。同士のような感じでしょうか。
友情と同情と憐情と身勝手、そして共犯意識と投影と。
本日は例によって忘年会。なので、はやめ更新いたします。
- 334 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:29
- 「どうしたの、ひとみちゃん。こんな夜中に……」
「ウン……」
マンションのドアを開けた梨華ちゃんが驚くのも無理はなかった。
時計は0時をまわっている。
梨華ちゃんに会うのは、あれから2週間ぶりくらい。
いつもバカみたいに会いたい会いたいとせがんでたあたしだったけど、
なんだか梨華ちゃんのことがわかんなくなって、
しばらく自分のほうから電話とかメールとかしなかった。
梨華ちゃんは、毎日欠かさずメールをくれていた。
でも、会いたいとかは言ってくれなかった。
例によって忙しいのかもしれないけど、
あたしが会おうっていわなきゃ会ってくれないのかと思うと寂しかった。
- 335 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:30
- だから、ちょっと意地になってみたけど、2週間で電池切れ。
悔しいけど、あたしは梨華ちゃんに会いたくてたまらない。
親が寝たのを見計らって、家を抜け出してきちゃうくらいに。
「来てくれてうれしいな。入って」
梨華ちゃんは2週間ぶりなんてことや、
あたしの思い詰めた顔なんてまるで気にしてないふうに
やさしい笑顔であたしを招き入れてくれた。
年上のお姉さん。何を考えてるかわからないヒト。
「ああ、こんなにカラダ、冷えちゃって」
部屋に入るとすぐに、梨華ちゃんはあたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
お風呂上がりっぽい梨華ちゃんは、湿ったいい匂いがする。
梨華ちゃんはいつもみたいにあたしの首に腕をまわしてキスをしようとしたけど
あたしの顔を見ると首をかしげて、動きを止めた。
「ひとみちゃん、どうしたの?」
- 336 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:30
- あたしがいきなり泣いてるから、梨華ちゃんは困ってる。
いつかと逆みたいに、あたしは梨華ちゃんの肩に頭をのっけてすすり泣いた。
梨華ちゃんはあたしの背中をそっと撫でると、小さくため息をついた。
「何が聞きたい?」
梨華ちゃんが静かに言う。
あたしは考えた末、答えた。
「全部」
梨華ちゃんは、また小さくため息をつく。
「聞きたくないこともあるかもよ?」
胃がキリキリ痛む。
だけど、聞かなきゃいけないと思った。
そうじゃなきゃ、あたし、梨華ちゃんのこと何ひとつ信じられなくなりそうで。
- 337 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:31
- ◇ ◇ ◇
梨華ちゃんはあったかいココアをいれてくれると、
「風邪ひくといけないから」といって、
ベッドサイドで三角座りしているあたしを
毛布でぐるぐる巻きにしてから話しはじめた。
看護学校の実習で、中澤先生に出会ったこと。
口説かれて最初は戸惑ったけど、結局すごく好きになってしまったこと。
3年も付き合ってから、二股をかけられてたことに気づいたこと。
その相手が、お世話になった先輩だったこと。
諦めなくちゃいけなかったのに、なかなか諦められなかったこと。
「それが苦しくて、雑誌で見たクラブに行ってみたの。忘れさせてくれる人がいるかなって」
「そういう人いた?」
「ううん」
梨華ちゃんはふるふると首を振った。
- 338 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:32
- 「市井さんは?」
「何回かしか会ってないし」
「……寝たの?」
梨華ちゃんは、軽く唇を噛んで目を伏せた。
どう話すべきか、考えているようだった。
それが答えだった。
あたしは絶望的なため息を漏らしてしまうのに気づかれたくなくて、
うつむいて膝に頭を押しつけた。
毛布で巻かれているせいで、自分がイモ虫みたいだと思った。
イモ虫は、膝に頭をつけたまま、横目で梨華ちゃんを見る。
寝たの、市井さんだけのはずない。
たぶん、その頃の梨華ちゃんには仕方のなかったこと。
頭ではわかっても体が理解できなかった。
涙がどんどんあふれた。
「ひとみちゃん、あのね……」
「いいよ。大丈夫」
「………」
- 339 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:33
- 「ごっちんが言ってた。あたしは、出会う前だからいいって」
「………」
「出会う前のことだから、問題ないよ……」
言葉とうらはらに、あたしの涙は止まりそうになかった。
それは狂おしいくらいの嫉妬の感情。
そいつがあたしの胸に蛇みたいに黒く渦巻いて、
まるで言うことを聞いてくれない。
熱い、熱い、胸の中。
蛇が噛む。あたしの胸のなかをギリギリと。
あたしの心臓を噛みちぎる。
凶暴な牙から、だらだらと血をしたたらせながら、
赤い目をして、笑う、笑う……
だめだな、とあたしは直感的に思った。
あたしは身をよじって毛布から脱出すると立ち上がった。
「ごめん、帰る」
「ひとみちゃん……」
- 340 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:35
- すがるような梨華ちゃんの目。
このヒトを殴ってしまうかもしれないという恐怖に目をそらす。
いつの間にか、こんなにも好きになっていた。
嫉妬のあまり、独占欲のあまり、壊してしまいたいと思うほどに。
スニーカーを履いてドアノブに手をかけた時、
不安げにあたしを見送っていた梨華ちゃんが、か細い声で呟いた。
「次、いつ会える?」
次? 次だって?
いつだって忙しいのは梨華ちゃんのくせに。
いつだって決めるのは梨華ちゃんのくせに。
あたしのこと子供だと思って、いつだってうまく誤魔化してた。
そう、中澤先生のことだって、市井さんのことだってずっと言わないつもりで。
あたしは、振り返った。
10センチちかく背が低い梨華ちゃんを見下ろすように威圧的に。
「次も会いたい?」
「会いたいよ」
「あたしが浮気しても?」
黒い黒い蛇が、あたしの内側を喰い荒らしていた。
- 341 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/19(金) 13:36
- 「……ひとみちゃんは浮気なんてしないもん」
「さあ、どうだろ」
「浮気なんかしたら、もう会わないから」
「じゃあ、もう会えないね」
梨華ちゃんの目が見開かれた。
黒い蛇がとうとうあたしの体を食い破って、梨華ちゃんに襲いかかる。
「あたし、またごっちんと寝た」
「………うそ」
「梨華ちゃんが市井さんと寝たからだよ」
次にドアノブに手をかけた時、
梨華ちゃんはもうあたしを止めなかった。
部屋から駆け出したところで、胃の激痛に足がもつれた。
………そこから、記憶がない。
- 342 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/19(金) 13:39
- 本日の更新はここまでといたします。
- 343 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 14:31
- 切ない・・・。痛いです。予感的中、ですか。
続きが気になります。
- 344 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 16:57
- う・・・ん、辛いなぁ。
この話しの石川さん視点も読んでみたい。
- 345 名前:なち 投稿日:2003/12/19(金) 17:59
- 話に引き込まれていくぅ〜マジ面白いです♪
ウチも切なくて胸が苦しい(>_<)今一番好きな小説です!!
これからもムリせずガンバって下さい☆彡
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 18:14
- うわ〜リアルですね〜いい感じです。
痛い恋を思い出してしまいますた。
作者様も酒は好きなのですか?ふぐで一杯とか良いですよね〜
今年も飲み会ラッシュを乗り切って下さいませ。
お体お大事に。
- 347 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 21:08
- 若いな〜。青いな〜。
こんなふうに失敗と恥を重ねてみんな大人になるんだよね(遠い目)。
とくばんの吉は近年稀に見るベストコンディションでしたので、
早速、小説の場面を妄想する時も「12/18のとくばんの吉」でとり行いました。
- 348 名前:332 投稿日:2003/12/19(金) 23:57
- こういう苦い体験は、しといても損はないよなぁ〜って思います。
付き合ってる人の 出会う前の事や想像だけで勝手に傷付いてしまったり、
本当は好きで好きでたまらない人をふいに現れたもう一人の自分を
セーブする事が出来ずに傷付けたり。
これで学習するんですよ。本当に大事な人にしちゃいけない事や
好きだって気持ちを隠さず一番前に出す大切さを。
出来ればその過ちを犯してしまった相手に素直に謝れて、
相互理解を深めていけたら最高なんですけどねぇ〜。
- 349 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 01:57
- >>348
あの、良いシーンなのでつい考えを述べたくなる気持ちはわかるんですけど、
完結後ならともかく物語の途中でそこまでテーマを自己流に解説しちゃうと
作者様に失礼じゃないでしょうか?
とくに最後のほうとか、展開の強制っぽくて心配になっちゃいます。
>>作者様
毎日、楽しみに読ませてもらっています。
レス汚し、申し訳ありません。
- 350 名前:348 投稿日:2003/12/20(土) 08:16
- 349様、ご指摘ありがとうございました。
おっしゃる通りです。以後気を付けます。
不快な思いにさせてしまった読者様、ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした。
何より雪ぐま様、大事な作品を汚してしまってすみません。。。
- 351 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 11:41
- 初めてレスしますが楽しませてもらってます。
巧みな比喩表現は最高で痺れました!
このいしよしの続きが早く読みたいです。
次の更新も楽しみにしてます。
- 352 名前:23 投稿日:2003/12/20(土) 13:55
- 更新、お疲れ様です。
ふはぁ〜、こう来ましたか・・
吉だけでなく、読んでいるワタクシも胃が激痛に襲われておりますですよ。
シクシクシク・・
次回更新、固唾をのんでお待ちしております。
- 353 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 18:11
- いつの間にか感情移入していたようで、胸にぐさっときました。
326ですが…。
切ない恋なんてしてません〜
失恋しちゃったんですよ(笑)
次も楽しみにしています。
- 354 名前:260 投稿日:2003/12/20(土) 21:49
- いつも楽しませてもらってます。
テンポは早いのに、展開に無理がなくて
ほんとうまいなぁと毎回おもいます。
石川さんと吉がどうなっていくのか、ほんとどきどきです。
- 355 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/20(土) 22:38
- 明日はたしか梨華ちゃんと安部さんのドラマですね。
BSの入る方がうらやまし〜い。雪ぐまはイブ待ち組です。
343> 名無し読者様
予感的中w はい、思うツボでございます。よっちぃったら。
344> 名無し読者様
リク(ですよね?)ありがとうございます。
たしかに石川さんはむしろよっちぃよりも苦しみが深い。
しかし、それを描くと冗長になりそうなので、今作では両視点は避けたいと考えております。石川さんの想いは皆様のお心に委ねます。
345> なち様
励ましのお言葉、ありがとうございます。
とりあえず電池切れまで突っ走る予定です。よろしくお願いします。
346> 名無し読者様
お酒も色恋も、おいしいものをちょっとだけが好みですw
ふぐひれ酒は最高でしたよ♪
- 356 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/20(土) 22:40
- 347> 名無し読者様
なにしろよっちぃ〜17歳ですから〜。皆さんが通る道ですね。
でも、自分の場合、失敗や恥とは考えないかも。
子供には子供の誠実が、大人には大人の誠実があるのかなあと。
348> 332様
そうですね。相手が許してくれればですが……な〜んて
この先の展開をちょっと目くらまししてみたりしてw
あまりお気になさらず、これからもぜひお楽しみください。
349> 名無し読者様
大切にしていただいて恐縮です。
それほどのものを書いているわけじゃないのですが……ううっ。
351> 名無し読者様
はじめまして。うちのかわいいあの子はいろいろなものに変身してますね。
くまプーとか、いも虫とかw
352> 23様
書いてるワタクシも胃が激痛に……っていうのは暴飲暴食してるからですがw
いつもありがとうございます。
353> 名無し読者様
失恋でしたか。つらいですね……。あたたかくして睡眠をよくとって
甘いものをいっぱい食べて、自分を大切にしてあげてください。
354> 260様
お褒めいただいて光栄です。いや〜、展開はけっこう強引です〜w
リアルいしよしがじれったいから、妄想ではさくさくとねw
それでは、更新をはじめさせていただきます。
- 357 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:41
- ◇ ◇ ◇
満開の桜の花の夢を見た。
春の陽射し。視界いっぱいの薄いピンク色。
きっと梨華ちゃんは桜が好きだと思う。
夢の中で梨華ちゃんは笑ってた。
あたしも笑ってた。
梨華ちゃんは缶チューハイを、
あたしは桜の花びらが浮かんだあったかいお茶を飲みながら
二人は満開の桜を見上げて笑っていた。
幸福な画像がふいに歪んで、あたしはあわてて目をこらす。
まだ消えてしまわないで。
せめて、夢のなかだけでも、夢を見させて……
◇ ◇ ◇
- 358 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:42
-
………………………………………………
…………………………………………
……………………………………
………………………………
- 359 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:43
- 目を覚ますと病室だった。
ナース姿の梨華ちゃんが、ベッドサイドのパイプ椅子に座っていた。
あたしは瞬間、タイムスリップしたみたいな気持ちになる。
あれ? まだあたし入院してたっけ?みたいな。
だけど、すぐに違うと気づく。
梨華ちゃんは、ひどく切なげな瞳であたしを見ていた。
担当のナースじゃなく、恋人の顔で。
あたしが目を覚ましたことに気づくと、
彼女はホッと表情を緩ませた。
「気分はどう?」
「……あたし、また倒れたの?」
梨華ちゃんが頷く。
- 360 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:43
- あたしの腕には、入院中もお世話になった痛み止めの点滴が打たれていた。
「点滴、してくれたの?」
再び、梨華ちゃんが頷く。
見回すと、病室は小さいけど個室のようだった。
「急患室だよ。救急車乗ったの、覚えてる?」
「全然。……あたし、また入院するの」
「ううん。ちょっと出血があるけどお薬で大丈夫だよ」
「なんだ、残念」
また、梨華ちゃんに毎日会えるチャンスだったのに。
「バカ。何言ってるの」
梨華ちゃんの顔が、くしゃっと歪んだ。
- 361 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:44
- またたく間にポロポロとこぼれる彼女の涙を、
あたしはじっと見ていた。
「……ごめんね……ひ、ひとみちゃん、を、こんな目にあわせないって、言ったのに私……」
しゃくりあげる。
両手で顔をおおって。
息を詰める隙間からこぼれる嗚咽。
この人はいつも、思いきり泣かない。
まるで泣くのが申し訳ないみたいに、恥ずかしいみたいに、泣き虫のくせに。
「……ひとみちゃんが、全部、忘れさせてくれたんだよ」
「…………」
「……好きなの」
好きなの。
どうしようもないくらい、あなたが好きなの。
好きなの、好きなの……
何度も繰り返す。
それしかないみたいに繰り返す。
壊れたオルゴールみたいに繰り返す。
- 362 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:45
- 好きなの。
ずっと好きなの。
どうしようもないくらい好きなの。
どうしてこんなに好きになっちゃったのか、わからない。
いけないと思ってたのに、
あなたの目が。声が。
離れなかったの。
ひとみちゃんのこと、誰よりも好きなの。
誰かをこんなに好きになったことない。
一緒にいられて、ほんとにうれしいの。幸せなの。
きっと、愛してるんだと思うの……
- 363 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:46
- あたしはたまらない気持ちになってガッと身を起こすと、
梨華ちゃんの腕をつかんでグイと引いた。
よろめく梨華ちゃんの唇を奪う。
ガシャンと椅子が倒れる派手な音。
ハッと振り返る梨華ちゃんの頬をつかんでこっちを向かせる。
「あたしだけ見てよ」
がむしゃらに口づけた。
「あ、待っ……」
点滴が外れるのを案じる梨華ちゃんの胸ぐらをつかんで噛みつくように口づけた。
苦しげな呻き声も、針の刺さった左腕を必死で固定しようとする細い腕も
あたしは全部無視して、むちゃくちゃにキスをした。
- 364 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:47
- 激しい息をつきながらやっと彼女を解放した時、
あたしの腕からは血が流れていた。
ひっこ抜けた針が、あたしを傷つけて、空中を舞っている。
とくんとくんと流れる熱い鼓動を感じて、
あたしは赤い血をぼんやり眺める。
「あ、もう、やだぁ」
自分のほうが痛いみたいに眉をしかめる梨華ちゃん。
あわてて身を翻して消毒薬やらガーゼやらを取りに行こうとする彼女の細い腰を
タックルするみたいにガシッとつかまえた。
「行かないで」
「何言ってるのよぉ」
「こんなのすぐ止まる」
こんな血なんて、すぐ止まる。
傷ついたって、死ぬほどじゃない。
黒い蛇に胃壁を食いちぎられたって。
だから。
- 365 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:49
-
「そばにいてよ」
勝手に来てぶっ倒れたあたし。
過去に嫉妬して、浮気したあたし。
こんなあたしのことを、まだ好きと言ってくれるなら。
- 366 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:49
- 梨華ちゃんは、あたしに背を向けたまま身を震わせた。
うつむいて、また両手で顔をおおう。
泣かないで。もう泣かないでよ。
そのまま後ろから抱き寄せると、
鼻をすする音にまじって漏れ聞こえてくる、蚊の鳴くような声。
「怖かっ……」
「え?」
「ず、ずっと、怖かった、の……もし、あなたが怒っていなくなっ、たら……」
「梨華ちゃん……」
「ご、ごっちんのことも、いつも……」
私より、好きなんじゃないかって。
まだ好きなんじゃないかって。
年上の私なんかより、同い年の彼女のほうが……
震える華奢な肩は、まるで小さな女の子のよう。
いつでも余裕しゃくしゃくのお姉さんはどこに?
むき出しの梨華ちゃん。
しとしとと降り続ける涙。
- 367 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:50
- ああ、この人は。
なんて一生懸命で、
なんて怖がりで、
ほんとうの気持ちを隠して、
周りのことや、人の気持ちばかり気にして。
「梨華ちゃん……」
ごめんね。あたしもあなたを傷つけた。
あなたが一番、嫌なことをした。
どうやって償ったらいい?
ううん、もう償えない。
過去を償うなんてできない。
ただ、今、あなたのことが好きだと。
あなただけが好きだと、それしかないんだろう。
- 368 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:51
-
「こんなに、梨華ちゃんだけが、好きだよ」
あたしは彼女に血のあとがこびりついた腕を差し出す。
彼女は困ったような、泣き笑いの表情を浮かべた。
そして両手でつつみこむようにあたしの腕をとると、
その傷口にそっと唇をつけた。
静かに、永遠の愛を、誓うみたいに。
- 369 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/20(土) 22:52
- 愛おしさに、心が震えた。
確かに梨華ちゃんを愛しはじめた、あたし。
その美しい瞳を、褐色の肌を、やわらかい唇を
そしてほんの少し不器用に一生懸命に生きてきたそのココロを
あたしは手に入れて、あたしだけのものにして
そしてもう二度と離さない。
「愛してる」
生まれて初めて使う言葉。
梨華ちゃんが、驚いたように目を上げる。
あたしは、もちろんちょっと照れた。
彼女は頬を染めて、なぜか口を尖らせた。
「そんなこと言っちゃっていいの?」
「なんでよ」
あたしは、このちょっとばかり経験豊富な、
それでちょっとばかりひねくれちゃってるに違いないお姉さんの目を覗き込んだ。
見つめ返してくるくせに、不安げに揺れるその瞳を。
それから、ゆっくりと唇を寄せたんだ。
震えながら何かを言いかけた臆病な彼女の唇に、
あたしが抱えてるありったけの想いを注ぎ込むために。
- 370 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/20(土) 22:56
- 本日はここまでといたします。
次回、最終話となります。
- 371 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 22:59
- ウワワワワーーーーーーーーン
。・゚・(ノД`)・゚・。
すっげーいいっす!
涙が止まらん!
- 372 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 23:27
- もうね、なんかね、完敗。
今まで私はリアルいしよしが結ばれるためなら自分の運や幸福を全部あげてもいい、
って思ってきたけど(痛いよ私)、
雪ぐま様にあげることにする!(って迷惑?)
- 373 名前:リムザ 投稿日:2003/12/20(土) 23:44
- 泣きました。
石川さんの本心の描写が巧みでした。
もう最終回ですか。。。
次回作品も期待してます。来年の冬まで待ちますとも。
- 374 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 00:30
- 泣いちゃいました。
明日の最終話が待ち遠しいです。
- 375 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 00:43
- …いしよしもいいなぁ(コソーリ
実はよしごま推しですがそんなの関係なく読めました。
最終回、楽しみにしてます。
- 376 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 12:41
- 涙が出そうでした。
本当に、すごいですよ。梨華ちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきました。
優しいですし、雪ぐまさん大好きです♪
さっきまでハロモニ見てたんですが…。
いしよし、最高ですよね〜w
- 377 名前:344 投稿日:2003/12/21(日) 16:25
- すみませんσ(^_^;)アセアセ...
リクじゃないんです。。。
余裕を見せれば見せるほど苦しいんだろうなぁと。
366はいつぞやの祭りを思い出しました♪
- 378 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 18:17
- あーいい所で。次が気になります!
今夜で終わってしまうのは残念ですけど
とても楽しみにしております
- 379 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/21(日) 23:24
- 今日のハロモニのじゃれあい、大好物でしたw
「なによ!」とか「アンタねー」とか乱暴な感じがなんとも。
371> 名無し読者様
リアルタイムで読んでくださったようなすばやいレス。
しかもうれしいお言葉、大感激です。
372> 名無し読者様
いえいえ、すごくうれしいです。その愛、しかと受け止めた〜〜!w
共にリアルいしよしの幸福を祈りましょう。
373> リムザ様
うちの石川さんは、かなり頑固で意地っ張りw
なにしろ石川さんですから、お姉さんぶるの好きなんですよね。
374> 名無し読者様
ありがとうございます。最後までお楽しみいただけることを祈っています。
375> 名無し読者様
いしよしもいいですよ〜w ごっちんもとっても魅力的な女の子。
最近、痩せ過ぎがちょっと心配ですね。
376> 名無し読者様
最高ですよね〜w 今日は吉がかまってちゃんでしたね。
なんなんでしょうね、あの二人の間に漂う桃色の雰囲気はw
377> 名無し読者様
あの祭りはリアルタイムでは見逃したんですよ〜。
さぞかし鼻血ものだったんでしょうね。あ〜、神様もう一度……。
378> 名無し読者様
ええもう、いい所でw 最後までお楽しみいただけるよう頑張ります。
それでは、最終話の更新をはじめさせていただきます。
- 380 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:25
- 静かに唇を離した後、
あたしはやっぱり照れくさくてヘヘッと笑った。
彼女も、恥ずかしそうに微笑みながら俯いた。
初めて、喧嘩したね。
さあ、仲直り、しよっか。
「ひとみちゃんのバカ。浮気者」
「あっ、そーゆーこと言う?」
ったく、このオネーサンは。
横抱きにして再び唇を近づけると、
彼女は安心したように身をもられ静かに目を閉じた。
やわらかくて甘い、梨華ちゃんの唇。
あたしはなぜか懐かしいような思いであたたかい唇を感じて
もっと深く味わおうと、いつもみたいに舌をからませはじめる。
と、梨華ちゃんがパッと身を起こした。
「だ、だめだよ」
あれ、どうして?
- 381 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:26
- 「なんで?」
「だって」
困った顔でドアの外を気にする梨華ちゃん。
もしかしてもうすぐ見回りの時間?
ふーーーーん……
あたしのなかで囁くいじわるな悪魔。
そうだ、このかわいくないオネーサンを困らせちゃえ。
あたしはやおら彼女の体を抱き上げるようにベッドに引っ張り上げた。
「キャッ!」
足が跳ね上がって白いナースシューズが脱げる。
あわてて起き上がろうとする梨華ちゃんの肩を、あたしはらくらくと押さえつけた。
「ちょっ、ひとみちゃん!」
「梨華ちゃん……」
「だ、だめ!絶対だめ!」
- 382 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:26
- 「絶対?」
「絶対!」
もちろん、無視。
あたしは梨華ちゃんをあたしのものにするべく、
首筋にキスの雨を降らせはじめる。息をのむ音。
「ひひひひひとみちゃん、ほんとに、お願い!」
じたばた暴れながら、声を潜めて懇願する梨華ちゃん。
もちろん、無視。あたしは、白いスカートのなかに手を伸ばした。
太ももがぎゅっとかたく閉じられる。
あたしはなんとかもぐりこもうと必死になる。
「だめ、ほんとにだめ、許して」
「許さない」
「お願い、ひとみちゃん、何でもするから」
「じゃあ、やらせて」
わざと乱暴な言い方をすると、梨華ちゃんはギョッと目をむいた。
あたしは、にやりと笑う。
- 383 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:27
- 「梨華ちゃん、あたしのものになって」
「……ひとみちゃんのものだよぉ」
「いますぐだよ」
コツコツ……と廊下から巡回の足音が響いてきた。
梨華ちゃんがもう生きた心地のしない顔で息を詰める。
コツコツ……。
廊下の足音は病室の前を通りすぎ、遠ざかっていく。
「ほら、行っちゃったよ」
「また戻ってくるもん」
「平気。音立てなきゃ、入ってこないじゃん」
「だからそれが無理だって言ってんでしょ!」
真っ赤な顔で睨む梨華ちゃん。
なるほどね〜ぇ。
ふ〜ん。
- 384 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:28
- あたしは再び、梨華ちゃんに襲いかかる。
梨華ちゃんはなんとか逃げようと必死でもがく。
ちょっとぉ、おとなしくしてよね。
あたしは、わざといじわる〜な声をつくって梨華ちゃんの耳元で囁いた。
「あー、つらかったぁ」
「………!!」
「梨華ちゃん、隠しごと多いんだもん」
「……か、隠してたってわけじゃ……」
「また胃がやられちゃうかと思った」
「〜〜〜〜ハンカチ取ってよ!」
梨華ちゃんは、やけっぱちになったみたいにそう言うと
ハンカチを口にくわえてギュッと噛み、かたく目を閉じて横たわった。
目尻のところが見たこともないほど真っ赤に染まっている。
ふふふ。
とうとう観念しましたね?
では、いただきまぁ〜〜〜す………
◇ ◇ ◇
- 385 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:29
-
- 386 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:29
- 「あれさあ、けっこう気持ち良かったんじゃないの?」
「……うるさいなぁ」
「やっぱ、あーゆーシチュエーションって燃えるよね」
「……黙んなよ」
あー、おかしい。何度からかってもこのネタはおかしい。
だって、梨華ちゃん、あんときさぁ……。
梨華ちゃんは、頬をピンク色に染めてグラスのなかの氷をストローでざくざく刺した。
「なによ、子供のくせに」とかブツブツ言いながら。
あ、またお姉さんぶって。超むかつくー。
「ハワイかぁー」
「……何よ」
「や、いいなーと思って。海とか、すげーキレーなんだろーなー」
「ふうん。連れてってあげよっか?」
「ええ?」
やだよ、そんなの。
ヒモみたいじゃん。
- 387 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:30
- 「へー、そういうの気にするんだ」
「うるさいな」
「か〜わいい、ひとみちゃん」
あたしが口を尖らせると、梨華ちゃんは妙にうれしそうに笑った。
「バイトして金貯めるから、ちょっと待っててよ」
「だめだよ、受験生のくせに。勉強しなさい」
「えー、んなこと言ってたら来年まで、どっこも行けないじゃん」
「いいじゃない」
私はいいよ。
そう言って、ふわりと梨華ちゃんは微笑んだ。
私はいいよ。ひとみちゃんと一緒ならどこにも行かなくても。
ずうっと部屋のなかにいたっていいくらい。
あたしは赤くなる。
そりゃあ、あたしだって、梨華ちゃんと一緒なら病院だっていいけどさ。
でも、たくさんきれいなもの見たいじゃない?
二人でさ。
- 388 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:31
- あたしは、「よし!」と膝をたたいて立ち上がった。
「そろそろ出かけよ。場所、なくなっちゃう」
「どこ行くの?」
「花見」
満開の桜の花を見よう。
春の陽射し。視界いっぱいの薄いピンク色。
きっと梨華ちゃんは桜が好きだよね?
梨華ちゃんは缶チューハイを、
あたしは桜の花びらが浮かんだあったかいお茶を飲みながら
二人で満開の桜を見上げて笑うんだ。
- 389 名前:ジェラシー 投稿日:2003/12/21(日) 23:31
- 「ひとみちゃんって、あんがいロマンチストだね」
「なによ」
「んーん。うれしいな」
梨華ちゃんがうきうきした様子で立ち上がって着替え始める。
あれこれ悩みながら、よりによってそれかよ?みたいな服を着始める。
あたしは、玄関先で待ちきれない声をあげた。
「はやくしなよ」
「はーい」
年上のお姉さんが、かわいいお返事をして微笑んだ。
☆おしまい☆
- 390 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/21(日) 23:33
- 『ジェラシー〜続・かわいいあの子〜』完結です。
やはり萌え妄想炸裂で終わるあたり、申し訳ないw
ご感想等、いただけると幸いです。
いしよしのおかげでほどよく壊れてきてる自分ですが、
壊れついでに、明日からまた次回作いってもいいですか?
- 391 名前:371 投稿日:2003/12/21(日) 23:35
- 待ってましたぁーーーー!!
かぁいいな〜梨華ちゃん。
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
新作ですか。
いっちゃって下さい。
ずばーーーーーーーーーんと!!!!
- 392 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 23:37
- リアルタイムキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
そして結末キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
もう最高でした。もうリカちゃん素敵!よしこ素敵!!!!
素敵な月日を本当に有難う御座いました!!!!
って思ったら明日から次回作!!??
もう死にそうに嬉しいです。大好きです!!!!(迷惑
- 393 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 23:44
- 梨華ちゃんもよっすぃ〜も普通にちゃんと(?)エッチで最高!!
明日から新作ですか?もちろんOKです。
いっちゃってください。待ってます!
- 394 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 00:00
- 完結おめでとうございます。
雪ぐま様はいったい何人の萌え死読者をだせば気が済むんですか!?
明日から新作だなんて、何人の雪ぐま小説依存患者を作るつもりですか!?
でも、好き(ってまたまた迷惑?)。
今日はハロモニ。で吉が最初からずーっと梨華ちゃんの動きを
気にしていたよう(いしよしフィルター3重通し)。
ゲスト出演あな真理では「そんな梨華ちゃんもかわいいんですけど」発言。
リアルいしよしもいい感じの今日この頃ですね。
- 395 名前:260 投稿日:2003/12/22(月) 00:08
- もうやばすぎ!
石のお姉さんなとこと、よしにからかわれちゃう
バランスが絶妙でかわいすぎ。
繊細なよっすぃーがまたかわいいよぉー。
雪ぐまさんそのままいっちゃってください!
- 396 名前:リムザ 投稿日:2003/12/22(月) 00:59
- 最高です!逸脱です!!
ピンクの服に身を纏った石川さんが脳裏に焼きついてます。
おねぇさんな石川さんと、無邪気に甘えるけどプライドの高い吉澤さん。
最高のバカップルですね。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 06:18
- 場違いレスですいません。
い、いちごまの二人はどうなっちゃったんでしょうか…
できればごっつぁんにも救いが欲しいなぁ…なんて。
いしよしはほんともう最高でした!!
すばらしい萌えを本当にありがとう!!
- 398 名前:チャミ 投稿日:2003/12/22(月) 06:50
- ごちそうさまでした。
満腹です、でも『いしよし』は別腹ですので、じゃんじゃん出してやってください。
胃薬を用意して待ってま〜す。
(昨夜のめがね梨華ちゃんが目の前にちらついて離れません)
- 399 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 11:04
- もう何も言うことないです、ただただ萌え死にました
新作はこちらこそぜひぜひお願いします!
また萌え死にさせていただきます。
最後に雪ぐまさん最高!いしよし最高!
- 400 名前:大ファンより 投稿日:2003/12/22(月) 11:17
- 「かわいいあの子」から読み返してあらためてジーンとしました。
前作も大好きでしたが、今作はさらに好き。これまでで一番好きな小説です。
完成度が高くて心理描写が巧み、さらに泣かせどころや萌えシーン満載と
雪ぐま様の素晴らしい才能に大拍手です!本当にお疲れさまでした。
新作もありがとうございます。感謝しつつ、読み続けさせてもらいます。
- 401 名前:雪ぐまさんファン 投稿日:2003/12/22(月) 15:47
- お疲れ様です♪
もう、最高でした…w
本当に、ここの2人が大好きなんですよ〜。毎日チェックしてます。
雪ぐまさんの、レスもあったかくて好きです。
大ファンです♪
リアルの2人も、何かいい感じですよね〜。
次回作も楽しみにしてます。
- 402 名前:348 投稿日:2003/12/22(月) 20:45
- 完結お疲れ様でした&優しいお言葉ありがとうございます。
すごくうれしい終わり方で号泣でした(T_T)
新作も楽しみに待ってます。
- 403 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/22(月) 20:52
- 皆様、あたたかいレスをありがとうございました。
リアルいしよしはプチ祭りでしたね〜。
391> 371様
またもリアルタイムで読んでくださったようなすばやいレス。
ずばーーーーーーーん!と行かせていただきます。
392> 名無し読者様
激しい告白(?)、超うれしいです〜w リアルいしよし並に……(こればっか)
次回作も楽しんでいただけると幸いです。
393> 名無し読者様
ええ、もう普通にちゃんとエッチしていただきますよ〜w
だって、リアルいしよしってエロいんですもん!
394> 名無し読者様
いや〜、自分の萌え妄想を書き散らかしてるのでお恥ずかしいです。
もし、一緒に萌えていただけるのでしたら幸福の極みでございます。
395> 260様
はい、もうとことん壊れてみようかとw
リアルいしよしの絶妙さをなんとか表現せんと、今日も観察を続けますw
396> リムザ様
うちのいしよしは、どーも漫才夫婦なのですw
言い合い萌え、揚げ足取り萌えの雪ぐまなのでバカップル度がさらに増す……
- 404 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/22(月) 20:54
- 397> 名無し読者様
あ、やっぱり気になります? うーん、いちごまは市井さんがどうにもねぇ……
どうしても書けなかったので、読者の皆様のお心に委ねます……
398> チャミ様
おそまつさまでした。めがね梨華ちゃん、いーですよねぇ。
いつか優等生梨華ちゃんを描いてみたいと思っています。
399> 名無し読者様
嬉しいお言葉、ありがとうございます! いしよし最高!
こんなに偏ったマンセーぶりの作者でよいのでしょうかw
400> 大ファンより様
わざわざ最初から読み返していただけたんですね。感激です。
次回作はかなり気が抜けてるんですが、またお楽しみいただけることを祈って。
401> 雪ぐまさんファン様
ヘタレ作者でございますが、これからもよろしくお願いします。
リアルいしよしは、どーなっちゃってんの?ってくらい大サービスですね、最近。
402> 348様
あたたかいお言葉、ありがとうございます。
次回作も、ぜひご感想をよろしくお願いします。
それでは、僭越ながら新作を始めさせていただきます。
- 405 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/22(月) 20:56
- 大人っぽくてセクシーな石川さんも素敵ですが、
妙にトボけたかわいい石川さんもいいですよね。
そしてかわいくって繊細な吉澤さんも萌えですが、
小学生男子みたいなひねくれ吉澤さんも魅力的。
というわけで。
頑固トメ子さんの妹“トメっち”と、幼なじみの“よっすぃ〜”。
腐れ縁のふたりは、友達以上恋人未満の微妙なカンケイ?
キショキャラvsひねくれ娘の、
ちょっぴり切ないアホな毎日をお楽しみください。
- 406 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 20:57
-
『愛するトメっち』
- 407 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 20:58
- ビシィ!
あたしのアタックが相手コートに突き刺さる。
「キャアアアアーーーーーーーーーーーー!!!!」
「吉澤さぁーーーーん!!!!」「こっち向いてぇ!!!」
「よっすぃ〜ーーーーー!!!」「よっすぃ〜ーーーー!!!」
今日は、春の校内バレーボール大会。
ほとんど悲鳴のような大歓声が、あたしをつつむ。
あたしは笑顔で手をふって応える。
さらに大きな歓声が体育館に響きわたった。
試合終了。もちろん、あたしのクラスの優勝。
ヒーローインタビュー(いや、ヒロインか?)も、あたし。
ふふん、ま、こんなもんよ。
差し出される放送部のマイクに、わざと低めに響かせた声を吹き込む。
「皆さんの応援のお陰で、実力以上の力を発揮できました」
これはどっかでみた誰かの受け売り。
なのに、またもや大きな歓声があたしに降り注がれる。
ハハッ、まいっちゃうなあ。
- 408 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 20:59
- 「吉澤さん、お疲れさま☆」
「タオルつかって☆」
「アクエリアス買ってきたよ☆」
「はちレモつくったの、食べて☆」
たちまち女の子たちに取り囲まれるあたし。
うーん、やっぱ悪い気はしないよね。
まあまあキミたち、順番に……。
「ちょっと、よっすぃ〜」
チームメイトのカオリンが、あたしを肘でつついて後ろを指さす。
「ん?」
「……あれ何?」
そう言われて振り返ると、
体育館の扉に隠れてこちらを覗き見ている影ひとつ。
三角巾にかっぽう着、そして黒いサングラスをかけているその女は……
- 409 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 20:59
- 「ト、トメっち!!!!」
「やっぱ、トメちゃんか……」
あたしに気づかれたトメっちは、そんなロックな格好ですたこら逃げ出す。
サンダル履きなのにすげえスピード。
あっという間に姿が見えなくなった。
「なに、あれ……?」
「てゆうかあのカッコ……」
一瞬、体育館の空気が凍りついたのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
- 410 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:00
- 学校からの帰り道、
家のすぐそばにある小さなお弁当屋さんに立ち寄った。
お弁当を買いたいわけじゃない。
カウンターから、ひょいと中を覗き込む。
いたいた。
古びたキッチンには、夕方の混雑に備えてせっせとコロッケを揚げてるトメっちの姿。
さすがにサングラスはしていない。
「おーい、トメっち」
彼女がパッと振り向いた。
だけど、あたしの姿を認めると、プイッと横を向いてしまう。
「トメっち?」
「………」
「トメ〜〜〜?」
「………」
「トメちゃーーーん?」
カウンター前で百面相するあたし。
案の定、彼女はすっかり拗ねてるらしくて、
まったくあたしのほうを見てくれない。
- 411 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:00
- じゅわじゅわじゅわ。
聞こえてくるのはコロッケを揚げる音だけ。
あたしは、ため息をついて最後の一声をかけた。
「仕事終わったら、ウチ遊びにきなよ」
「……やだよーだ!」
彼女は盛大にアッカンベーをしてみせた。
フン、そんなこと言ったって結局遊びにくるくせにさ。
- 412 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:01
- あたしは吉澤ひとみ。
私立岡村女子高の2年生。
そして彼女は、幼なじみのトメっち。
石川梨華なんてかわいらしい名前があるんだけど、
あたしらの仲間うちでは、だれも彼女を本名でなんて呼ばない。
なんで、“トメっち”かって?
彼女のお姉ちゃんが、今どきマジでトメ子って名前なんだよね。
それがおもろいのと、彼女自身がキショキャラで周囲を凍らせまくるから。
「いいかげん、やめれ〜」「STOP!」ってこと。
もちろん彼女は自分がなんでキショキャラなのか、いまいちわかってないみたい。
あたしは、何度目かのため息をついた。
今日も、仕事が終わってから遊びに来てくれたのはいいけど、
さっきからクッション抱えてイジイジしてるだけ。
話しかけても答えないくせに、放置しとくとチラッと上目遣いで睨む。
なんなのよ。
- 413 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:02
- 「いいかげん、やめれ〜〜〜!!!」
あたしがわめくと、彼女は両耳に人さし指をつっこんで顔をしかめるという
かなり古典的な仕草を披露した。
「なに拗ねてんの」
「別に」
出たっ、「別に」!
やっぱ超拗ねてんじゃん。
なんだかなあ、もぉ。
「やな予感がしたのよ、バレーボール大会なんて」
「へ?」
「楽しそうだったね」
「そりゃまあ」
「手なんてふっちゃってさぁ……」
「応援してくれるからさ」
「鼻の下のばしちゃってさぁ……」
「の、のばしてないよ」
「……もぉ、ヤダ。なんでそんなにモテるのよぅ!」
足をバタバタさせて苛立ちを表現するトメっち。
その姿に、あたしは思わず吹き出した。
- 414 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:03
- 「なんだ、またヤキモチか」
「またって何よ!」
「またじゃん。なんなのもう、トメっちは」
「え? ひとみっこファンクラブ会長?」
ちなみに彼女は大まじめである。
こんなに激しくヤキモチなんぞ妬いてるが、
トメっちは断じてあたしの恋人とかではない。
いつの頃からだったかな。
そうそう。まだ、あたしたちが同じ中学に通ってた頃、
なにかとあたしにまとわりついてるのをからかわれたトメっちが
「いいの! 私はファンクラブ会長だから!」とか言い出したんだ。
「会長として、ファンが増えたことを喜びなよ」
「ああいうミーハーなファンは不許可なのっ!」
クッションを投げつけてくる。
あたしはひょいっとそれを受けると、すばやく投げ返した。容赦なく。
- 415 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/22(月) 21:04
- 「キャア!」とか言って妙なポーズでよけるかと思ったら、
トメっちはビシッとそれを受け止め、ニヤリと笑ってあたしの顔面にバコーンと当ててきた。
い、いってぇ……無念じゃ。
「百年はやいのよ!」
腰に手をあてて勝利宣言。
あんた、ほんとにあたしのファンですか?
ムッとしたので、からかってみることにする。
あたしは、ずいっとトメっちににじり寄った。
彼女の顔に、あきらかに動揺が走る。
あたしはかすかに目を細めると、
ちょっと顔を傾けて鼻先をスウッと彼女の顔に寄せた。
そう、まるでキスするみたいに。
「ちょ……ちょっと」
トメっちは、真っ赤になってあたしを突き飛ばすと、
ピャーッと帰っていってしまった。
……ふん、なにがファンだよ。口ほどにもないヤツめ。
- 416 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/22(月) 21:06
- 本日はここまでといたします。
今回はちょっと軽めのやや長めという予定でございます。
ご感想等、お待ち申し上げております。
- 417 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 21:12
- 祝・新作!でございます。
初めてのリアルタイムが雪ぐま様で良かった・・・(はぁと)。
娘。小説界も驚きのニューキャラ登場ですね。
今回は梨華ちゃんで笑い萌えできそう。楽しみです!
- 418 名前:371 投稿日:2003/12/22(月) 21:26
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
ええっと、既に4回読み返してしまいました。
ああ、素晴らしい
毎日毎日幸せです。
愛してます(迷惑
- 419 名前:チャミ 投稿日:2003/12/22(月) 21:37
- またまた、幸せに浸っておりまする。
トメっちの鼻の頭はやっぱり赤いのでしょうか?
赤鼻の梨華ちゃんに萌えるのは私だけ?
- 420 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 07:13
- おもしろすぎです!
- 421 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/23(火) 12:20
- 皆様、あたたかいレスをありがとうございます。
417> 名無し読者様
勝手にキャラつくっちゃいましたw トメ子さん大好きなんですが
さすがにトメ徹では書けなかったんです……w
418> 371様
何度も読んでいただけるってすごく作者冥利につきます。
雪ぐまも幸せでございます。愛してます!w
419> チャミ様
なるほどお鼻にこだわりが……。細かなビジュアルは皆様のお心に委ねます〜。
雪ぐまのなかではトメ子よりも若い感じでしょうか。
顔色がいいっていうかピチピチしてるっていうかw
420> 名無し読者様
ありがとうございます! ラブコメってほどでもないのですが
ほのぼのと書いていければいいなと思っております。
本日、夜の行動が読めないのではやめ更新いたします。
- 422 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:21
- 「馬っ鹿もーーーーーん!!!」
ドンガラガッシャーン!
目の前でちゃぶ台がひっくり返って、茶碗やらお皿やらが弾け飛ぶのが
まるでスローモーションみたいに見えた。
「あなたやめて!」
「止めるな、トメ子!」
一徹にすがりつくトメ子さん。
ぴょんぴょん逃げ惑うひとすじとふたすじ。
あたしとトメっちは、あわててトンズラした。
夕食にお呼ばれのはずだったのに、一口も食べられなかったよぉ。
- 423 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:22
- 結局、二人でマックに入ってポテトなんかを齧るはめになる。
「トメっちの姉ちゃん、なんであんなオッサンといるの?」
「うーん。あれでも恋愛結婚だったんだよ」
「マジでぇ?」
あの二人がどーやって恋愛したのよ。年の差、いくつだ?
トメ子さん、ちょっと鼻の頭赤いけど、でも美人なのにさ。
……まあ、トメっちもお姉さんそっくりなんだけど。コホン。
「一徹さん、いい人なんだよ。お子さん、二人もいてたいへんなのに、うちにもお金入れてくれてるし」
へぇ。そうなんだ。
とんでもねー頑固オヤジだけど、あんがい人情派なんだな。
でも、それを言うならトメっちだって今どき珍しい親孝行娘。
事情はよく知らないけど、トメっちの家は昔からお父さんがいなくて、
お母さんが小さなお弁当屋さんを切り盛りして二人の娘さんを育ててた。
でも、数年前に腰を痛めてしまったお母さんを心配して、
トメっちは高校は通信制にして、家業を手伝ってるんだ。
- 424 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:23
- 「一徹さんってさあ、トメ子姉ちゃんに『恋女房』って言うんだって」
ゲッ、あの顔で?
あたしがおののいているのにもかまわず、
トメっちは、ちょっとうっとりしたような目で言葉を続ける。
「なんか男らしいよねえ、一徹さんみたいな人って」
「はぁ? 姉妹そろってオトコの趣味悪すぎじゃない?」
「そーお? じゃあ、よっすぃ〜はどんな男のヒトが素敵って思うの?」
トメっちが、ぐっと身を乗り出してきた。
おいおい、テーブルにこぼしたソースが袖につくよ?
ってか、アンタあたしにそーゆー質問する?
- 425 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:23
- 「……好きになった人がタイプだよ」
「えー、その答え、ずるくない?」
ずるいずるいとトメっちは足を踏み鳴らす。
ちょっと離れた席にいた女子高生たちが、指をさしてクスクス笑った。
あたしは、そいつらをギロリと一瞥して震え上がらせる。
「どしたのよっすぃ〜、怖いカオして?」
「……なんでもないよ」
あたしは、ため息をついてポテトをつまみ、トメっちの口元にさし出す。
彼女は条件反射みたいに、ぱくっと食いついた。
◇ ◇ ◇
- 426 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:24
- 「ははっ、アンタも気の毒な女だね〜」
話を聞いた美貴が、ベッドにうつ伏せに寝ころんだまま可笑しそうに笑った。
むきだしになってる腰からお尻にかけてのラインが、エロいことこのうえない。
藤本美貴は、高校になって知り合った友達。
そんで、たまーにHなことをするようになって、もうすぐ半年。
だけど、彼女も断じて恋人ではない。
……まあ、いわゆるセフレってやつ?
キャアキャア言ってる下級生たちのイメージをぶっ壊しちゃうと思うけど、
なにかと元気いっぱいのお年頃なんだから、
多少のオイタには目をつぶっていただきたい。
「フン。美貴だって気の毒じゃんか。松浦はさぁ〜〜」
「黙れ」
美貴が口を尖らせて顔をしかめる。
- 427 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:25
- あたしと美貴がこうなったのは、さばさばした性格で気が合ったからってだけじゃない。
ほんとの理由は、二人とも女の子にむくわれない恋なんてしちゃってるから。
つまり、その……告白してしまうと、あたしはトメっちに。
美貴は、クラスメイトの松浦亜弥に。
「あいつら、無邪気すぎなんだよ」
「んっとに、こっちの気もしらないでさあ」
あたしらはぶうぶう言う。
美貴も、松浦にはかなりなつかれている。
しょっちゅう、ほっぺにブチューとかされている。
だけど、松浦が美貴とマジでつきあいたいかっていったら、それはどうかな?
答えは神のみぞ知るだけど、微妙に読めないところ。
トメっちだってそうだ。
ヤキモチやいたり、ファンだって騒いでみたりするけど
それはあたしがちょっとボーイッシュだからなだけじゃないの?
- 428 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:26
- あたしは美貴の様子を見ていて、すぐにコイツあたしと同じってわかった。
松浦に飛びつかれた時に、一瞬、不自然に強ばる笑顔。
はたから見れば、あたしと美貴は、
冷めてるっていうか、引いてるみたいに見えるだろう。
だけど、ほんとうは怯えてるんだ。
女の子特有のべたべたした関係やじゃれあいってのは、
あたしたちには危険な罠だから。
「あーあ」
美貴が、冷えたビールのプルタブをぷしゅっと引く。この不良娘め。
あたしも一本いただいて、やけっぱちにごくごく飲む。
うえ〜、苦っ!……はぁ。
今ごろ、トメっちはコロッケを揚げる時間だろうか。
シャケを焼いてる時間だろうか。
白い三角巾にかっぽう着の細い背中を思い浮かべる。
- 429 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/23(火) 12:26
- 「一回、トメに会ってみたいな、あたし」
「変な女だよ? 服のセンス悪いし」
「その変な女が好きなんでしょうが」
「初恋だよ、悪いけど」
美貴には本音をズバズバ言える。
トメっちには、時々、嘘をつく。
いじわるばかり言ってしまう……。
- 430 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/23(火) 12:29
- 本日はここまでといたします。
ほんと、うちの吉はオイタが過ぎてすいませんw
ちょっと悪ぶりたいお年頃っていうかねぇ、
ほんとは純情なんですよ(なんか保護者みたくなってきた)。
- 431 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 12:55
- 今度はあやみきも登場ですか!!
そっちの方も密かに楽しみです。
- 432 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 17:24
- 新作も凄く面白いです!
また雪ぐまワールドを堪能させてもらいます。
- 433 名前:チャミ 投稿日:2003/12/23(火) 20:31
- うゎ〜、なんて展開でしょ。
頭の中でトメコ、トメっち、一徹、よしこ、が混ざり有ってぐちゃぐちゃに・・・・・・。
トメっちの鼻の頭は当然、ピンクです。
- 434 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 22:20
- うわ〜。トメっち、かわいいっすね〜。
前作の大人っぽい梨華ちゃんもすごい良かったし、
雪ぐまさんはキャラづくり、ほんと上手いっすね。
- 435 名前:リムザ 投稿日:2003/12/23(火) 23:16
- >頑固オヤジだけど、あんがい人情派
この部分に笑いました。元祖?男前。
今回は色々なメンバーが出てきて別の楽しみになってます。
ミキティとよっすぃ〜は 同じ穴の狢ですね。
- 436 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/24(水) 23:24
- ハッピーメリークリスマス!
石川さんのドラマが見れて、ますますハッピーです。
431> 名無し読者様
あやみきもなにやらただならぬ感じがしますよねw
ちょこちょこですが登場します。どうぞよろしくお願いします。
432> 名無し読者様
えらくヘタレなワールドですが、お気に召していただけたなら幸いです。
萌え妄想、書き散らかしまくってます。
433> チャミ様
あれからさらに考えたんですが、トメっちはトメ子さんよりも
かなりキャピキャピしてますね。チャーミーまざってますw(ますますぐちゃぐちゃに)
434> 名無し読者様
お褒めいただき、ありがとうございます。キャラづくりっていうか
大人梨華ちゃんも、子供梨華ちゃんも萌えっていうか……w
435> リムザ様
そうそう。ムジナ同士です。傷を舐め合ってたってしょーがないんですが
二人ともきっと怖がりなんでしょうね。
それでは、本日の更新にまいります。
- 437 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:25
- 日曜日、あたしはトメっちとピクニック。
「お天気がいいから、河原でお弁当を食べようよ」
そんなかわいい言葉に誘われて、あたしはかなりご機嫌。
さりげなく、おろしたてのジャージでビシッと決めてみる。
なのに、お弁当屋に迎えに行くと、
トメっちは両手に大きなビニール袋を下げて
三角巾にかっぽう着姿のままキッチンから出てきた。
「ねえ、そのカッコで行くの?」
「あ、そっか。じゃあ、着替えてくるね」
おとなしく着替えに行くのはかわいいけど、
指摘しなかったらそのままで行くつもりでしたか?……はぁ。
まるで緊張感のないうちらの関係。
そりゃそうだよね、幼稚園の時から一緒なんだもん。
- 438 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:26
- 「おまたせ」
ピンクのセーターにミニのプリーツスカート。
あいかわらずピンクの面積大きすぎだけど、かっぽう着よりはいい。
あたしがうなずくと、くるっと回ってみせる。
だから、そういうとこがキショイんだっての!
トメっちが下げてる大きなビニール袋が重そうだったから、手を伸ばした。
「自分で持てるよ」というのを無理に奪いとってみると、やっぱりずっしり重い。
なんだこりゃ。何が入ってるの?
「よっすぃ〜って、やさしいんだぁ」
「バカ。ねえ、何なの、この荷物」
「お弁当だよ」
「えー? なんでこんないっぱい?」
「夏の新作候補だよ〜。よっすぃ〜に味見してもらおうと思って」
あ、なあんだ。そういうことか。
つまりピクニックはついでなのね。ちぇっ。
- 439 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:27
- 河原に着くと、トメっちは大きな敷物を広げて
そこに次々とお弁当を並べはじめた。
ひぃ、ふぅ……10個もあるじゃん!
「このへんもコンビニが増えたから、競争がたいへんなんだよね〜」
「ふうん。もぐもぐ……あ、これウマイじゃん」
「あ、これはねー、ホタテと長ねぎを〜……」
お弁当屋さんだから当たり前だけど、トメっちは料理がうまい。
っていうか、うまくなった。
最初のうちはなぜかトイレの匂いがしてたけど。
「これは、おいしいけどボリューム不足っていうかぁ〜」
「ふんふん」
「うーん。これ、ちょっと甘すぎない?」
「あ、そお?」
なんだかんだ言っていちいちコメントしてるあたし。
腹がはち切れそうにもかかわらず、次の弁当にとりかかるあたし。
これって、かなりけなげだと思わない?
うえっぷ。こりゃあ、また太りそうだな……。
- 440 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:27
- 5個食べたところでさすがにギブアップ。
あたしは、「休憩!」と叫ぶと、河原にごろんと横になった。
トメっちは、まだあたしのコメントを熱心にメモしている。
その真剣な横顔に、あたしの目は吸い寄せられる。
ちょっとだけ切れ長な二重まぶた。
くるんとしたまつ毛。
すっと通った細い鼻すじ。
それから、上唇がちょっとだけめくれた、ぽってりとした唇。
お腹の底からわきあがってくるように胸がざわざわする。
最近、ほんとにきれいになったと思う。
ちっちゃい頃はぽっちゃりしてて、
正直、こんなに美人になるとは思わなかった。
すらっと背が伸びて、女らしくなった。
いいことだ。でも、複雑だ。ありとあらゆる意味で心配だ。
もしかして普通の高校とか行ってたら、むちゃくちゃモテるんじゃないの?
三角巾にかっぽう着なんかじゃなくて、
ファッション誌から抜け出てきたようなおしゃれをしたら
世のオトコどもが放っとかないんじゃないの?
- 441 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:28
- ぐわーーーー!!!
あたしは思わず手元にある草をガシガシむしる。
あたしはずっと前から好きなんだっ!
こんなふうに妙にきれいになる前から好きなんだっ!
三角巾にかっぽう着だって好きなんだーーーーっ!
「はぁ、はぁ、ぜえ、ぜえっ……」
「よっすぃ〜?」
「あ、食べ過ぎてちょっと……」
「やだ、ごめんね?」
トメっちが心配そうに眉をひそめて、あたしの顔を覗き込む。
食べ過ぎと言った手前、大げさにお腹をさすって見せると、
彼女は「太っちゃうねぇ」と呟いた。
そうだよ、太っちゃうよ、これじゃあ。
「んー、でもそのほうが安心かなあ」
「は?」
「よっすぃ〜、モテすぎだもーん」
「へー、トメっちは、あたしが牛みたくなってもOKなんだ」
「それは嫌かなあ。かっこいいほうがいい」
どっちよ、一体!
あーあ、もう。トメっちの言葉にいちいち反応してたら疲れちゃう。
あたしは苦笑いして、青い空を見上げた。
- 442 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:29
- ああ、草のいい香り。ぽかぽかとあたたかい陽射し。
そよ風が髪を撫でる心地よさに目を細める。
トメっちが、「よっすぃ〜、眠そう」と軽やかに笑う。
晴れた河原で二人きり。
うん、こういうの、ちょっと幸せだよね……
「ね、膝枕とかしてあげよっか?」
「キモっ」
反射神経レベルで、とことん素直じゃないあたし。
なんか、すっげーチャンスを逃してませんか?_| ̄|○
ひそかに激しく後悔していると、突然、上から知らない声が降ってきた。
「やあ、石川さん。こんなところで会うなんて奇遇だね」
何だ、誰だ? あわてて起き上がると、
目の前に髪の長い詰め襟の美少年が薔薇をしょって立っていた。
- 443 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:30
- 「あ、文麿さん。こんにちは」
知り合いだろうか。
トメっちは満面の笑顔であいさつを返す。
ムッ。あたしのなかで警笛が鳴る。
美少年は一瞬だけあたしに笑顔を向けると、すぐにトメっちと話し始めた。
「おいしそうなお弁当がいっぱいだね」
「春の新作候補なんです。あ、そうだ、おひとついかがですか?」
「いいの?」
「ええ、ご意見をいただけると助かります」
じゃあ、遠慮なく。
文麿とやらは惜しみない笑顔をふりまきながらトメっちの脇に腰をおろした。
あー、コイツほんとに食べちゃってるよ。
あたしはムカムカしてくる。
なんだよ、全部あたしが食べるはずだったのにさ。
「誰よ、こいつ」
肘でトメっちをつついて、小声で聞く。
トメっちは、シーッというように人さし指を立てて囁いた。
- 444 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/24(水) 23:30
- 「知らないの? 綾小路さんのところのお坊ちゃんよ」
「ええっ、あの角のデカいお屋敷の?!」
「そう。うちのお客様なの」
綾小路文麿は、優雅な箸使いですでに2個目のお弁当に取りかかっている。早っ!
「僕はこっちのほうが好きだな。コロッケも入ってるし」
「フフッ、文麿さんはコロッケがお好きですね」
「まあね。石川さんちのコロッケは特に好きだよ」
誉められてトメっちがポッと赤くなった。
あたしは背筋がぞっとする。
うわ、嫌な予感……ものすごく嫌な予感がするよ……
- 445 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/24(水) 23:31
- 嫌な予感がしたところで、本日はここまでといたします。
うーん。クリスマスだというのに。
- 446 名前:ナナシ 投稿日:2003/12/24(水) 23:45
- おもしろすぎるっ〜〜〜!!!
雪ぐまさんっホントにサイコーですっ
マンガ化とかして欲しいくらいっ(ハート)
いままで、ロムッてましたが、一言、言わせて下さ〜い
メリークリスマス!!!こらからもがんがって下さいませ(ペコリ)
- 447 名前:なち 投稿日:2003/12/24(水) 23:46
- 雪ぐまさんメリクリ♪さっそく読ませて頂きました!さぁ〜てよっすぃはドースルんだ!!次回楽しみにしてマッスル( ○^〜^)人(^▽^ )
- 448 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/25(木) 18:06
- さてさて、いしよしの二人はどんな聖夜を過ごしたんでしょうね。
446> ナナシ様
初めまして! これからさらにマンガっぽい展開になっていきます。
ばっちり楽しんでいただけますよう、がんがります!
447> なち様
うちのよっすぃ〜はひねくれてますからね〜w なんともはや。
応援よろしくお願いしマッスル( ○^〜^)人(^▽^ ) (←かわいいっすね)
それでは、本日の更新にまいります。
- 449 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:07
- 学校帰りに駅裏のほうをブラブラ歩いてたら、
後ろからいきなり声をかけられた。
「お花、いりませんか?」
いまどき花売りってアリ?
ある意味ビビって振り返ると、
そこには造花をかかえたトメ子姉さんが立っていた。
「あら、ひとみちゃんだったの」
幸薄げに笑う。
うわ、なんかまた痩せてない?
顔色、悪くない?
「ちゃんと食べてます?」
思わず、そんな失礼なことを聞いてしまうあたし。
トメ子姉さんは、「つくってもひっくり返されちゃうのよねぇ」と
またまた幸薄げに微笑した。
- 450 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:08
- 公園のベンチで、ひと休み。
トメ子姉さんは、自販機のミルクティーをおごってくれた。
あたしは思わずジッと缶を凝視する。
まさかこれで一日の稼ぎがパーってことないよなあ。
「こないだはごめんね。せっかく来てくれたのにうちの人が」
「いや、なんつーか、すげえっすね、一徹さん」
「あれで、やさしいとこもあるのよ?」
ポッ、だって。
あっそ。ほんと、よーわからん。
思わず呟く。
「恋愛結婚なんすよねえ……」
「やだ、梨華がしゃべったのね。もぉ」
なぜかくねくねするトメ子姉さん。
いや、別に冷やかしてるんじゃないから。むしろ呆れてるから。
- 451 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:09
- そんなあたしの心の声などまるで気づかず、
嬉々としてトメ子姉さんは話し始める。
「一徹さんねぇ、毎日コロッケ買いに来てくれたのよぉ。キャッ!」
「はぁ、お客さんだったんすか」
「そうなの。トメ子さんがつくるコロッケが一番おいしいって。キャッ!」
「はぁ」
ねぇ、キショキャラってのは遺伝子レベルなの?
誰か教えてほしい。
さんざんノロケをきかされて、ふらふらしながら帰ってくると
お弁当屋さんの前に、河原で会った美少年・綾小路文麿の姿があった。
「コロッケ2つ」
ブッ。ミルクティーを吹き出す。
「いつもありがとうございます」
「最近、学校帰りに石川さんちのコロッケを食べるのが一番の楽しみなんだ」
「うれしいです、そんなふうに言っていただけて」
はにかんだようにトメっちが微笑む。
文麿もかすかに首を傾けて、品のいい笑顔をさらりと見せると、
「じゃあ、また明日」とキザに片手を上げて、颯爽と去っていった。
- 452 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:10
- こころなしかトメっちの見送りタイムが長いような気がする。
いや、気のせいだ……でも、やっぱり……
あいつ、いつから通ってきてるんだろう……
トメっち、何も言ってなかった……
なんで……?
トメっちが鼻歌でも唄いださんばかりの笑顔で
くるりとかっぽう着の裾をひらめかせてキッチンへと戻っていく。
ちょっと目を上げれば気づくはずのあたしに目をやることもなく。
あたしは、右手を喉にかけた。
そのまま、ぐっと押さえる。
命の危険を感じる圧迫感で、暴れ出しそうな嫉妬心をやっと抑えこむ。
こんな時、自分が男だったらと胸がビリビリに裂けそうなほど思う。
そしたら絶対に誰にも渡さないのに。
彼女の前に脆き、世界一あなたを愛しているのは自分だと
ありったけの情熱を捧げて口説き落とすのに。
- 453 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:11
- 「………………………………………」
だめだ。苦しい。
胸のなかが真っ赤に焼けるみたいだ。
あたしは携帯を取り出すと、即座に美貴に電話をかけた。
けっこう長くコール音が続いた後、やっと美貴が出る。
なぜかちょっと慌てた様子で。
「美貴、会えない? 今すぐ」
「うーーー。今はちょっと無理。亜弥ちゃんといるんだ」
美貴の背後から『だれー?だれー?』と騒いでる松浦の声が聞こえる。
お姫様はどうやら遊んでる最中に美貴が電話に出たのが気にくわないらしい。
「……そっか」
「どした? 何かあった?」
「や、何でもない」
「夜中なら」
「ん、……いいや、大丈夫。ありがと」
- 454 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:11
- ピッと携帯を切って、眉間のところをアンテナでぐっと押す。
肺の奥のほうから、深い深いため息がもれる。
大丈夫、電話しただけでも少し落ち着いた。
あたしは肩を落として踵を返すと、家路についた。
履き古したローファーの先を見ながら、トボトボと歩く。
大丈夫、これまでだってトメっちは、誰にもなびかなかったじゃん。
トメっちのこといいとか言ってた中学のクラスメイトだって
キショキャラだってわかったらなにげに引いてたじゃん。
あたしは、もう一度、深い深いため息をつく。
……いつかは、覚悟しなきゃいけないんだろうけど。
でも、まだ大丈夫。大丈夫だ。
コロッケが何だ。
◇ ◇ ◇
- 455 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:12
- 「よっすぃ〜、ひじき煮食べる?」
その夜、トメっちがお弁当屋の残りを持って遊びに来た。
うちの親って好き勝手させてくれて楽なんだけど、
どーも育児放棄気味だから、食生活は偏りがち。
もしかしたら、トメっちのお陰であたしまともに成長してるのかも。
「んまい」
「ちょっと甘さ控えめにしたんだよ」
よっすぃ〜、そのほうが好きでしょ?
トメっちがニコッと笑う。
うわ、かわいいこと言っちゃって。
ズキズキ傷んでた気持ちが、ほわんとあったかく和らぐ。
- 456 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:13
- でもさ。あたしは呆れ顔で指摘する。
「ねぇ、なんで三角巾そのままなの?」
「あ、外すの忘れてた」
ごそごそ。
目を伏せて首の後ろに手をやるトメっち。
その仕草が、今日はなぜか妙に色っぽくみえて。
「ぐほっ! ゴホゴホーーーッ!」
「きゃっ! ど、どしたの?」
「ひ、ひじき、変なトコ、入ったっ……」
もー、がっつくから。
トメっちが笑ってあたしの背中をポンポンと叩く。
うぐ、ゴ、ゴホッ……かっこわり。
いやもう、なんかほんと最近ヤバイよ。
トメっち、なんか急に大人っぽくなっちゃったんだもん。ヤバイよ……
あーあ。
なんか超かっこ悪くない? 最近のあたし。
これでも下級生人気ナンバー1なんだけどな。
- 457 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:13
- あたしは冷静さを取り戻そうと、すました顔で自慢のサラサラヘアをかき上げた。
それを見たトメっちが、そういえばというふうに口をとがらせる。
「アンタねー、髪の毛自分で切るのやめなさいよ」
「なんでよ」
「前髪、ギザギザなのよ。好き勝手に染めるから後ろのほうとか色ムラになってるし」
「いいじゃん別に」
「よくないよ。私がやってあげよっか?」
「いーよ」
あ、また素直じゃないことを。
不愉快そうなあたしの声に、トメっちが拗ねたように膝を抱えた。
「もう、よっすぃ〜、ちゃんとしてよぉー」
「えー?」
「すごいキレイなのに、もったいないよー」
えへ?
そっかなあ? そう思う?
ふーん、そっか、そっか。
トメっちがそーゆーなら、週末はフンパツして美容室に行くか!
- 458 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:14
- んなことをヘラヘラ考えてたら、いきなり携帯が鳴った。
ディスプレーを確かめる。美貴だ。
そっか、心配してかけてきてくれたんだ。
でも、苛立ちの元凶が目の前にいるのに、なんとも出にくい。
どうしよう、ここはやり過ごして後でかけなおすか……
ちゃらっちゃっちゃ〜〜〜〜♪
迷っている間も着メロは鳴り響く。
トメっちが不思議そうに首をかしげた。
「出ないの?」
と、プチッと着メロが消えた。
どうやら諦めてくれたらしい。ほっ。
「なんか、あやしいな」
トメっちが疑わしそうに目を細めた。
- 459 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:15
- 「なにがよ」
「ねぇ、私に隠し事とかやめてよね」
ギクッ。
な、なんだよ、自分だって文麿が通ってきてること言わないくせに。
あたしは動揺を隠しつつ、何気ないそぶりでチクッと言ってやる。
「そーいえば、さっき、文麿だっけ? 買いにきてたじゃん」
「なんだ見てたの? 声かけてくれたらよかったのに」
ん? 心なしか顔が赤くなってないか?
あたしはジッとトメっちの顔をのぞきこむ。
彼女は動揺したように、あごを引いた。
「何?」
「や、どーなのアイツ」
「どーなのって?」
「イケんの?」
「は? 何いってるの? お客さんだよ?」
変なよっすぃ〜。
そう言って、トメっちはプイと横を向いた。
でも、その頬はやっぱりピンク色に染まっていて。
- 460 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:16
- あたしはにやにやした冷やかし笑いをくずすまいと、
思わずぎゅうっと携帯を握りしめた。
震える拳が真っ白になるくらい。
めき。
「ああっ!」
「え、何?」
「携帯、割れた……」
「ええっ?」
怪我しなかった?
そう言って、あたしの手をとって熱心に確かめだすトメっち。
その指にさえ、どぎまぎしてしまうあたし。
「へ、平気だよ」
サッと手をひっこめる。
あーあ、携帯買い替えだよ。
もう、今月ピンチなのになぁ。とほほ。
- 461 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/25(木) 18:16
- 「携帯って必要?」
いまどき携帯を持ってないトメっちが首をかしげる。
必要だよぉー、メールとかするし、必需品だろぉ?
「ふーん、私も買おっかな」
「そーだよ、買いなよ」
「じゃあ、お揃いにしない?」
「ええっ?」
うそ。ちょっといい話じゃない?
なのに、あたしったらまた。
「えー、全然センス違うじゃん」
「そうだけどぉー」
トメっちがプーッとふくれる。
あたしはあわててフォローした。
「ま、とりあえず一緒に見に行くか」
「うん」
トメっちが機嫌を直してニコッと笑う。
あたしもヘヘッと笑った。
- 462 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/25(木) 18:17
- 本日はここまでといたします。
- 463 名前:371 投稿日:2003/12/25(木) 18:29
- 最高っす!
これ、ハロモニ劇場でやってくれないかな?
ε=ε=ε=ε=ε=(o ´ Д )o<コロッケェ〜
- 464 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/25(木) 20:32
- 怪力よっちぃ〜キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
よっちぃ〜、トメっちが好きなんだね、よっちぃ〜。
髪の毛についての会話といい、にやにや笑いが止まりません。
- 465 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/25(木) 22:00
- 最高ですー
キショキャラでもいい、彼女が好きですw
- 466 名前:チャミ 投稿日:2003/12/25(木) 22:25
- よっち〜、我慢だ! がんばれ! 魚顔なんかに負けるな!
- 467 名前:344 投稿日:2003/12/26(金) 00:13
- >>466
文麿さまはカッケーよ
( ´ Д `)<んぁ、魚顔じゃないよぉ
よっちぃ
その態度、ある意味男の子だよw
- 468 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/26(金) 00:24
- ナニゲに岡女の吉澤家具合が見え隠れしてるあたり(w
こういうネタ具合、凄い好きでーす。
- 469 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/26(金) 20:40
- 仕事納めだった方、一年間おつかれさまでした。
463> 371様
コロッケに走る文麿様のAA、超かわいいですね。
ハロモニ劇場かぁ〜夢ですねぇ〜(遠い目)
464> 名無し読者様
天使と悪魔、最近やりませんよね。あれ、すごく好きなのですが。
いしよしけんか萌え。逝ってきます……。
465> 名無し読者様
キショキャラをつくるために石川さんがやりそうなキショいことを考える日々です。
石川さん、すまない……w
466> チャミ様
うちのよっち〜はヤキモチ焼きで困ります。
たぶん「自分のほうが文麿よりカッケー」とかは思ってますがw
467> 344様
文麿様は超美少年。雪ぐまはけっこう好きです。うちのよっちぃもやばいですが、
リアルよっちぃも時々ボーイッシュと男子の境界線を超えてますよねw
468> 名無し読者様
小ネタに気づいてもらってうれしいでーす。
岡女のあの家族はみんなすごかったですよね。とくに飯田がツボだった……
それでは、本日の更新にまいります。
- 470 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:41
- ちょっとばかし携帯依存症気味のあたしは、
次の日の朝、さっそく携帯を扱ってる24時間ショップへと足を運んだ。
トメっちは仕込み前のかっぽう着姿で、
ズラリと並んだ機種を一個いっこ手にとって真剣に選び始める。
そして案の定、んなの誰が買うんだよ!な機種に手を伸ばし……
「これ! これお揃いにしよ!」
「うええ?」
「いーじゃん、色違いにすればさあ。私ピンクにするから、よっすぃ〜は白か黒にすれば?」
いや、そういう問題じゃなくデザインが。
厚みがありすぎっていうか。
「かわいーじゃん。コロンとしてて」
自信満々だよ。だめだ、こりゃ。
まあ、いいや、ガッコ遅刻しちゃうし。
あたしはあきらめて、黒いほうを手に取った。
- 471 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:42
- ガリガリガリガリ。
授業の合間にヤスリで必死に携帯を削っていると、
美貴が不審げな目で声をかけてきた。
「買ったばっかなんじゃないの?」
「いや、ちょっとこのでっぱりが気に入らなくて」
「だからって、フツー削るか?」
ピロン♪
唐突にメール着信音が響いた。
ディスプレーに近年見たこともないような文字列が並ぶ。
『はつめーるですまじめにべんきようしてますか』
「…………」
トメっち、全然変換できてないじゃん。ベタなやつ。
覗きこんだ美貴が「かわいーじゃん!」と大爆笑。
まったく冗談じゃないよと顔を赤くしてると、ピロピロピロピロ♪と
着メロ設定前のスタンダードな着信音が教室中に鳴り響いた。
クラスメイトの非難の目がいっせいに向けられるなか、あわてて電話に出る。
- 472 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:42
- 「もしもし?」
『ねーねー、メール届いたあ?』
トメっち、今度はメール確認かよ。オバハンみたいなやつ。
てか、学校の時間にかけてくるな!
『ねーねー、返事送ってみて』
「後でね。もう授業始まるから」
「えー、一言でいいからっ!」
お願い、お願い!
電話の向こうでわめく声。
あー、わかった。わかったからっ!
あたしは電話をガチャ切りすると、音速でメールを打った。
『キショ!』
ブチ。
送信して携帯の電源を切る。授業だからね。
美貴が「素直じゃないね〜」と呆れた声を出した。
◇ ◇ ◇
- 473 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:43
- まるで素直じゃないあたしだけど、
もちろんトメっちに全然やさしくないってわけじゃない。
時代遅れなトメっちに携帯の使い方を教えてあげようと、
放課後、まっすぐにお弁当屋さんに向かっちゃったりしてるんだから。
これって、けっこうけなげだと思わない?
なのに。
お弁当屋の前には、またしてもにっくき綾小路文麿の姿があった。
しかも、二人はカウンター越しに新しい携帯を覗きこんで頭をつき合わせてる。
おいコラ! 顔が近すぎだっつーの!
「こうして……こう、ほら、これで変換できるんだよ」
「あ、ほんとだ。ありがとうございます〜」
よ、余計なことしやがって!
あたしはむかむかしながら、ずんずん二人に近づいていった。
「おーす」
「やあ、キミは確か吉澤さんだよね?」
「あー! もー、よっすぃ〜何なのあのメール!」
案の定、トメっちは盛大にふくれてる。
- 474 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:44
- あたしは、カウンターに肘をついてニッと笑った。
「笑えた?」
「笑えなーい! もう、記念すべき初メールなのに!」
「なんでー? あたしの愛が伝わったでしょ?」
「えー、ぜんぜん伝わらなーい!」
「一体、どうしたんだい?」
めくるめく仲良しトークを繰り広げようと思ったのに、
文麿はなんの遠慮もなく口を挟んでくる。ちぇっ。
トメっちが勢い込んで文麿に話しかけた。
「もう聞いてくださいよ文麿さん、この子ひどいんですよー」
「どうしたの?」
「もー、せっかくの初メールなのに、あたしのこと……あたしの……」
トメっちが、なぜか突然言いよどんだ。
かすかに頬を赤らめて、あたしのほうをチラリと見ると「えーと……」と目を泳がせる。
あたしはまた不穏な胸騒ぎを感じて、じっとトメっちを凝視した。
- 475 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:45
- 文麿が不思議そうに首をかしげる。
「何だい?」
「あ、えっと……忘れちゃいました」
「忘れた? フフッ、石川さんっておかしな人だなあ」
忘れた? そんなわけない。どうして?
口をつぐんでしまったあたしにかまうことなく、二人は楽しげに笑いあう。
文麿がコロッケをむしゃむしゃ食べて満足そうにうなずいた。
「今日もおいしいね」
「わー、ありがとうございます」
「うちのコックがつくるよりおいしいよ。石川さんはセンスがあるんだね」
「えー、そんなあ」
わかったぞ。
トメっち、キショキャラって言われてること、文麿にバレたくないんだ。
たちまち、あたしの胸の中にもくもくと暗雲が立ちこめはじめる。
- 476 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:46
- そんなことは知るよしもなく、文麿はますますトメっちを誉める。
「確か、僕ら同い年だよね」
「あ、そうですよね」
「なのにすごいなあ、石川さんって。尊敬しちゃうよ」
「やだ、何いってるんですかぁ」
ケッ、お坊ちゃんがつるつると調子いいこと言いやがって。
なんだよトメっちも、うれしそうにニコニコしやがって。
あたしはまた携帯を握りつぶしそうになって、ハッと自制する。
危ない、危ない。今度壊したら、しばらく買えないよ。
はやく帰れ! はやく帰れ!
神様仏様イエス様、さらにはアラーの神様にまで祈ってるのに
なかなか文麿は立ち去らない。
気が合うのだろうか、世間話で楽しげに笑いあう二人。
これはもう美貴に電話をかけるしかないっていうギリギリのとこで
文麿は「じゃあまた」と涼しげに微笑んで去っていった。
トメっちが「ありがとうございました」と、にこやかに頭を下げる。
- 477 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:47
- 「ふうん……」
あたしは我ながらいじわるげに肩頬を上げて、ゆっくりと腕を組んだ。
トメっちがスッと頭を上げ、横目であたしを見る。
あっ、なんだよさっきまであんなにニコニコしてたのに、その顔はぁ!
「何よ?」
「別に」
「いいでしょ?」
「だから、何が」
彼女は赤い顔をしてプイと横を向いた。
「よっすぃ〜、ひどいんだもん。……キショとか」
「みんな言ってるじゃん」
「みんなもひどいよ」
彼女がうつむく。
その悲しげな様子にちょっと慌てた。
苛立ちまぎれにからかってやれと思ってた言葉をぐっと飲み込む。
- 478 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:48
- あれ? キショって言われてけっこう喜んでたよね?
「そりゃ最初はね……でも、なんか……そんなに私、キショいかなあって」
ますますうつむく。
しまった!
頭からザバッと水をかけられたような後悔があたしを襲う。
そっか、トメっち、気にしてたんだ!
もうからかうどころじゃない。
あたしはなんてフォローしようかと、あせって唇をなめた。
え、えーとぉ……
「ばっかじゃないの?」
「ちょっ、何よ!」
「みんなトメっちのこと好きだからからかうんじゃん? 何、いきなり気にしてんの?」
え? トメっちが不安げにあたしを見上げる。
あたしは腕を組んで、口をヘの字にしたままうなずく。
「ほんと?」
「そうだよー。バカだなー」
「よっすぃ〜も?」
「そ、そうだよ」
ちょっとトメっちが思うのとは違う好きかもしれないけど、うん。
- 479 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:49
- 「そっか」
トメっちは、とたんに安心したような嬉しそうな顔になった。
うーむ。とことん単純なヤツ。
でも、……ほんとに女の子だな、トメっちって。
「あ、ご飯炊けた」
トメっちが、かっぽう着をひらめかせて小走りにキッチンの作業に戻る。
くるくると一生懸命に立ち働くその姿。
妙に胸が熱くなる。
あーあ。
悪かったな、初メールにキショとか送っちゃって。
なんか違うメッセージにすればよかった。
たとえば……たとえば……他に思いつかないけど。
でも、あたし、いい加減いじわるやめなきゃマズいよね。
このままじゃ、どんどん文麿の引き立て役になっちゃう。
そんなの、ぜったい嫌だよ……
◇ ◇ ◇
- 480 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:51
- 「みきたん、みきたーん」
べた。ブチュー。ベチョッ。
いつものように松浦に抱きつかれて、ほっぺにチューされて、
しこたま鼻水をつけられた美貴は、情けない顔で「ははっ……」と笑った。
松浦は美貴の隣のイスに陣取ると、
耳元でなにやら機関銃のように話し始める。
うんうんと頷きながら聞くばかりの美貴。
教室の片隅でほとんどクラス名物と化している光景。
やれやれ。
あたしは肩をすくめながら、そのほほ笑ましい姿を眺める。
細く開いた窓から初夏の風が吹き込んで、彼女たちの髪をさらさら揺らす。
陽光の中で楽しげに肩をぶつけあう美少女ふたり。
まさか、その片方が秘めた恋に身をやつしているとは誰も思うまい。
- 481 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:51
- 「にゃはははは〜」
顔に似あわぬ(いや、似合ってるのか?)松浦の大爆笑が聞こえてくる。
「みきたんって心配性〜」
「いや、マジで気をつけたほうがいーって」
「へ〜きだよぉ」
「ストーカーとかなったら困るし」
「んな根性ないって」
ひらひらと松浦が手を振る。
笑みを浮かべつつも複雑な心境が見え隠れする美貴の表情。
どうやらまた松浦に言い寄ってるオトコでもいるんだな。
きらきらした光をまとってるような松浦は、やたら目立つ。
女子高だから校内では心配ないけど、
隣町の男子高なんかでは岡女のアイドルと噂されるちょっとした有名人。
街でも通学路でも、しょっちゅう男の子に声をかけられるらしい。
あしらうのも手慣れたものらしいけど、そのたびに美貴はゲッソリ。
その気持ち、なんだか今日はいつにも増して身に染みるな。
- 482 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:52
- 渋谷のコギャルじゃあるまいし、
そう簡単にナンパなんかになびいたりしないだろうけど、
いつかヒットがきて「好きな人ができたの」なんて相談されたらどうしよう。
年齢がひとつあがるたびに、このロシアンルーレットは危険度を増す。
あたしたちは17歳になった。
カレシがいたって、もうおかしくない。
トメっちも。
「……よっちゃんさん」
松浦が他の友達に話しかけられた隙に、
ふらふらと美貴が寄ってくる。
「なんだい、美貴ちゃんさん」
「今日さ」
はいはい。
ちょうどあたしもブルーになったとこでした。
軽くうなずくと、美貴はまたふらふらと松浦のもとに帰っていく。
見えない鎖でつながれてるみたいに。
- 483 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:53
- かわいらしい二人のまわりにはいつも女の子達の笑顔。
話のうまい松浦は人気者。
ざっくばらんな美貴も人気者。
だけど、松浦といる美貴は少しだけ引き立て役に見えてしまう。
それはきっと、口に出せない切ない秘密が美貴の表情に影を落としているから。
あたしとトメっちはどうだろう。
中学の時は、あたしのほうが断然目立ってた。
トメっちは「コバンザメみたい」なんて言われてへこんでたっけ。
だけど、今はもしかして、あたしのほうがコバンザメに見えるかもしれない。
怖いくらい輝きはじめたトメっち。
それがもし、綾小路文麿のせいだとしたら。
- 484 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/26(金) 20:54
- あいつが現れてから、嫌な考えが頭から離れない。
帰り道、ショーウインドーに映る自分の姿にふと目をとめる。
そこにいたのは、背が高くて目つきの悪い女子高生。
あたし、こんなヒネた顔、してたっけ?
ショーウインドーから目をそらす。
好きだったタータンチェックのミニスカートの制服さえ憂鬱に思える。
あたしとトメっちはただの友達……、女友達なんだ。
お弁当屋さんの前を通る気がしなくて、ちょっと遠回りして家に帰った。
着替えもせずにベッドに寝ころんで、ぼんやりしながら美貴を待つ。
学校用の仮面をつけたあたしたちは、いつもどこか斜に構えていて
仮面を外したあたしたちは、いつもなにかを諦めている。
たったひとりよりずっとマシだけど、
このままじゃ、どんどんダメになってく気がする。
- 485 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/26(金) 20:55
- 本日はここまでといたします。
よっちぃとミキティ、切ない気配でございます。
- 486 名前:なち 投稿日:2003/12/26(金) 21:10
- よっちゃん&みきてぃがいつになくヘコみぎみですね(○^〜^;)切ないケド今を乗り越えてもらいたいですね( ○^〜^)人(^▽^ )
- 487 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/26(金) 22:06
- うわぁ〜
切ないです…。
トメっちとあややは何を考えてるのか〜。
続き楽しみにしてます♪
- 488 名前:23 投稿日:2003/12/27(土) 02:18
- うぉ〜、1週間ぶりにお邪魔したら新作が始まっててビックリですわい!
遅れ馳せながら「続・かわいいあの子」、完結お疲れ様でした。
甘くてキュンとせつない、でもこれがいしよし!って感じの作品でした。
そしてこの「愛するトメっち」、大好きです!!
雪ぐまさんのタイトルのセンスは本当に最高ですよね。
また小ネタが大量に混じっていて、PCの前でグフグフしてますですよw
自分は常々、石川さんは「日本一三角巾が似合うアイドル」だと思って
ますので、今回の設定はマジでツボでございますw
こういう幼馴染のいしよしも可愛いなぁと思ってますです、ハイ。
次回更新、まったりとお待ちしております。
- 489 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/27(土) 10:56
- よっちゃんさんも美貴ちゃんさんも
キズの舐めあいはイクないよ。
がんばれガンバレ。
- 490 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/27(土) 19:24
- 今日は大掃除をしました。
モー娘。関連のモノが収納しきれなくなったことに愕然。
486> なち様
よっちゃん&みきてぃは気が合うだけに
似たような悩みを抱きそうな気がしてます。
487> 名無し読者様
トメっちとあややねぇ……。どっちもつかみどころがないタイプですね。
そして、よっちぃとミキティは悩みまくると。
488> 23様
ひさぶりです。雪ぐまも石川さんと三角巾の組み合わせは黄金かと。
あんなに幸薄そうでいいのかと小一時間問い詰めたい気もしますがw
489> 名無し読者様
イクないですよね〜。ほんと悪友状態ですな。
ガンバってもらいたいところですが、妙にヘタレのふたり……w
それでは、本日の更新にまいります。
- 491 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:26
- 「あたしって、亜弥ちゃんとこういうことがしたいのかな?」
ちょっと乱暴にコトを終えた後に、美貴がぼそっとつぶやいた。
自分の気持ちなのに、まるでわからないと言いたげな戸惑った声。
まあ、わからないでもないかな。
好き=やりたいとはつながらない複雑なオンナゴコロ。
「ねぇ、トメっちとしたい?」
ブッ。午後ティーを吹き出す。
そ、そんなはっきり口にするなよぉ!
「いや〜、どうだろ?」
それは正直な気持ち。
こんなこと、まさかあのトメっちと。
想像もつかないといったほうが正しい。
だけど、もし、トメっちが誰かとそんなことをするとしたら。
想像するだけで、カッと喉元に火がつく。
- 492 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:27
- 「うん、わかるな」
美貴が頷きながら笑った。
「でもさ、キスはすっごいしたいでしょ?」
「あー、そうそう」
そうなんだ。
もう、くらくらするくらい。
唇なんて誰にでもついてるのに、
トメっちのものだけが特別に光ってるみたいに感じる。
特別においしそうで、特別に甘そうな
その誘惑に眩暈がする禁断の果実。
「美貴はいーじゃん。したことあるでしょ?」
「あるけどぉ」
ちょっとかすっただけだよ。遊びだもん。
美貴は皮肉げに頬を歪める。
なるほどね。禁断の果実を目の前でチラつかせられるんだもん。
こいつ、あたしより修業レベルが高いかもしれないな。
- 493 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:27
- 「もう、やっちゃいそうだよ」
「やっちゃえば?」
「バカ、キモいよ」
だよね。
友達がいきなりマジチューしたらキモいよな。
あたしと美貴だって、キスはあんまりしない。
これって不思議だけど、キスってそういうものなのかもしれない。
あたしは可哀想な同志の髪をよしよしと撫でた。
美貴が、よよとすがりついてくる。
「よっちゃんさん、好きだよ〜」
「その愛、しかと受け止めました〜」
ああ、ほんとに美貴を好きになれれば楽だよね。
だけど、こんなことまでしてるくせに友達以上に好きになれない。
どうして、あたしはトメっちなのか。
どうして、美貴は松浦なのか。
そのスイッチがどこにあるのかわからないんだ。
どうしてこんなにトメっちだけが特別なのか、わからない。
あの笑顔。すんなりとした立ち姿。いつでも陽に焼けたような肌。
キショいくらいの無邪気な仕草で、あたしの心の中にするりと入ってくる。
それで、たまらなく独占したい気持ちにさせるんだ。
- 494 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:28
- ◇ ◇ ◇
美貴を駅まで送りがてら歩いていたら、
お弁当屋の前で、かっぽう着姿のトメっちが掃き掃除をしていた。
腕時計を見ると、20時。
そうか、ちょうど店じまいの時間。
「あ、よっすぃ〜」
あたしたちに気づいたトメっちが、笑顔をみせかけて、
でも、ちょっとはにかんだように身を縮めた。
あたしの隣に知らない人がいるから、人見知りをしてるんだ。
「同じクラスの友達」
「藤本美貴です。トメちゃんだよね?」
「こんにちは」
「わー、ホントにすっごくかわいい声だね〜」
目を丸くした美貴の言葉に、トメっちはますます頬を赤くした。
- 495 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:30
- どうやら美貴は、トメっちに好感をもったらしい(興味本位かもしれんが)。
「仕事終わったんなら、一緒にお茶しない?」
だって。
トメっちが、行ってもいいの?というふうにあたしを見る。
あたしが頷くと、彼女は「じゃあ着替えてくるね」とうれしそうな笑顔を見せた。
「トメちゃんって、ピンク好きなんだね」
そういう美貴の頬がかすかにひくついている。
どうやら笑いをこらえているらしい。
気持ちはわかる。
張り切って着替えてきたらしいトメっちは、ピンクのカットソーにピンクのスカート。
白いスニーカーの靴ひもまでピンクという念のいれようだ。
「こいつ、ピンク好きすぎなんだよ」
「なによぅ。別にいいでしょー?」
「いいけど」
「なによ」
カフェで言い合いを始めたあたしたちを、
美貴がおかしそうに見ている。
- 496 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:32
- ふとトメっちの手元に手をやった美貴が目を丸くする。
「トメちゃん、ナニそれ?」
「あー、これぇ? こないだ買ったの、かわいいでしょ?」
トメっちはピンクのハート型のポーチを自慢気に掲げた。
「いや、つーか、どこに売ってんの、それ?」
「えー、普通にお店で売ってるよぉ」
あれぇ?かわいーと思うんだけどなあ、と
トメっちはポーチを撫でながら、ちょっと不安げに首をかしげた。
- 497 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/27(土) 19:32
- 「藤本さんって、おもしろいね。ツッコミきついけど」
「あいつ、影でツッコミキティとか言われてんの」
「あはは。ぴったりだぁ」
美貴と別れての帰り道、トメっちはそう言ってクスクス笑った。
さんざんいじられたトメっちだけど、それはそれで楽しかったらしい。
「明日はチューチュー♪」なんて、調子はずれの歌まで唄ってご機嫌だ。
ホント、こういうとこ、かわいいよね。
あたしは、目を細めた。
「藤本美貴ちゃんかー。新しいお友達ができてうれしいなっ」
そうか。通信制だと、友達とかできないから。
だったら、もっとはやく紹介したらよかったのかな。
もちろん、セフレだなんて口が裂けても言わないけどさ。
- 498 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/27(土) 19:33
- 本日はここまでといたします。
- 499 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/27(土) 22:56
- 初カキコです
いつもわくわく楽しませていいただいてます>雪ぐま様
セフレ・・・嵐のヨカン。。。どきどき
(って別に嵐を期待してるわけじゃないので)
ていうか、ピンク好きならそれを活かす組み合わせにしよーよ(^^;>トメっち
- 500 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/27(土) 22:57
- トメっちばれやしないかとひやひやしてるのは私だけ?
>492 「そうそう」と大きく頷いてしまいました(^_^;)
リアルよっすぃ〜も目線が梨華ちゃんの口唇って事ありましたよねー
- 501 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/28(日) 13:57
- 本日のハロモニ裁判は、よっちゃんと小川の仲の良さに
微妙〜な表情をみせる石川さんに萌えw
499> 名無し読者様
初めまして! どきどきしていただいてるようで光栄です。
ピンク好きについてはリアルでもミキティはばしばし突っ込んでるようですねw
500> 名無し読者様
折り返し地点(?)のキリ番ゲット、おめでとうございます。
何も差し上げるものがないので、情報をひとつ。
うちのよっすぃ〜は嘘の天才ですw
それでは、本日の更新にまいります。
- 502 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 13:58
-
今夜の手土産は、茎ワカメと根菜の炒め煮。
気のせいか、ここんとこカロリー低そうなものしか持ってこない。
そんなにヤバいかな。
思わず二の腕をつまんでみる。
「そんなんじゃないよ。栄養があるから」
トメっちはそう言っておかしそうに笑った。
そう? じゃあ、いいけどさ。
「クラスの連中が太った太ったゆーんだよ」
「そーだね。中学の時よりはね」
「うぐ。やっぱバレーやめるんじゃなかった……」
「別にいいじゃん」
「えー、かっこいいほうがいいんでしょ?」
「なにそれ?」
むっ。
自分がこないだ、そー言ったんじゃん!
「よっすぃ〜は、よっすぃ〜だもん」
肩をすくめる。
- 503 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 13:59
- ありがたいけど、なんでこう毎回言うことが違うんだろ。
女心と秋の空ってやつ?
「じゃあ、髪の毛もこのままでいい?」
「それはダメ。だらしないじゃん」
ガクッ。
やっぱりあたしのお財布は、しばらくピンチを免れそうもない。
トメっちはコンビニで買ってきた少女マンガをガサゴソと取り出すと
勝手にベッドに寝ころんで、熱心にページをめくりはじめた。
中学の頃から、ずっと同じコミック誌を読んでる。
そろそろ、もうちょっと大人っぽいの読めばいいのに。
てゆうか、なぜヒトんちでマンガ読む?
テスト前だから邪魔されなくていいけどさ。
あたしは食べかけの炒め煮を脇にどけると、英単語の暗記を始めた。
- 504 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:00
- 白いノートがどんどんアルファベットで埋まっていく。
手を休めることなく、あたしはぼんやりと美貴の言葉を思い出していた。
『トメっち、すごい美人じゃん』
えー、そうかな?
あたしは照れ隠し半分、複雑な気持ち半分でそう答えた。
『センスはあれだけどさ、なんていうの? 色気あるよね』
やっぱりそうなんだ。
あたしが欲目で見てるんじゃなくて、
トメっちってやっぱりそうとう……
ふと、ペンを止めた。
パラリパラリと聞こえていたページをめくる音が
いつの間にか止んでいる。
チラッと振り返ると、
トメっちはなんとマンガを読みかけのまま放り出し、
大の字になって、ぐうぐう眠っていた。
- 505 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:00
- なんだよヒトんちで。
苦笑しながら、イスごとくるんと振り返る。
ところが、これがいけなかった。
恋する相手とはいえ、まさかガキの頃から一緒に育った幼なじみの寝姿に、
一瞬にして心臓をブチ抜かれてしまうなんて!
煌々とした灯のもとで、なんとも無防備にその身を投げ出している彼女。
いまにもめくれそうなフレアのミニからすらりと伸びた素足。
Tシャツをくっきりと押し上げながら上下する胸のふくらみ。
まるで贅肉のないお腹に、チラリとのぞく縦長のおへそ。
すげぇ……
カーーッと頬が赤くなった。
ドクドクと音を立てて鼓動が激しく暴れ始める。
ヤバイよ、これ。
なにドキドキとかしてんの?
男みたいじゃん、あたし。
……嫌だ。
- 506 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:01
- あわてて机に向き直る。
だけど、英単語なんかちっとも頭に入ってきやしない。
いつの間にトメっち、あんな女っぽくなった?
色っぽいっていうか、あれはちょっと犯罪的。
だって、まだドキドキがおさまらない。
あたしは気を落ち着かせようと、左胸を抑えて軽く深呼吸をした。
なのに、密やかな寝息が容赦なく耳に流れ込んできて
脳みそまでじんじんと痺れてくる。
「……う……ん……」
寝返りをうった気配。
それはなんて危険な囁き。
愚かな小羊は、息を潜めて、おそるおそる振り返る。
そして、ねじれた肢体から、また目が離せなくなる。
- 507 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:02
- 魅入られるというのは、こういう状態なんだろうか。
あたしはふらふらと立ち上がった。
起こさないようにベッドの脇にそっとひざまづいて、
もう百万回も見たはずのトメっちの顔をのぞきこむ。
美しい人形みたいに豊かな睫毛に縁取られたまぶた。
薄く開かれてすうすうと寝息を漏らす濡れた唇。
あたしはもう絶望的な気分になって、一瞬、強く目を閉じた。
キス、したい。
どうしよう。キスしたくてたまらない。
それだけじゃない。このまま彼女を押さえつけて、もっと、先まで。
- 508 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:02
-
そう、この子を、全部、あたしだけのものに。
- 509 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/28(日) 14:03
- 悪魔じみたあたしの影が、ゆらりと彼女の顔にかかる。
ほっそりとした首筋に、いまにも吸い寄せられてしまいそうなあたしの唇。
これじゃあまるで血に飢えたドラキュラ。
いけない。こんなことはいけない。
頭の中にわんわん鳴り響く警告。
ああ、だけど。
一度でいい。これっきり嫌われてもいい。
我慢、できない。
トメっち……あたしは…………
- 510 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/28(日) 14:04
-
本日の更新はここまでといたします。
- 511 名前:ぽろろん 投稿日:2003/12/28(日) 14:45
- 雪ぐまさん!今までROM専でしたがついに出てきてしまいました。
うまい。うますぎる・・・。は、はやく続きを!!苦しい・・・
もうすっかり雪ぐまさんとこのいしよし中毒です〜
- 512 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/28(日) 15:22
- なんつーとこで切るんですかぁっ!!(つД`)
苦しくて俺もどうにかなってしまいそうです…
続き…続きを〜〜
- 513 名前:なち 投稿日:2003/12/28(日) 17:26
- 今回の更新凄いドキドキしましたー(*゜▽゜)続き楽しみにしてます( ○^〜^)人(^▽^ )
- 514 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/28(日) 17:59
- ぐわああ、続きを・・・中毒ですわ、もうw
年賀状書きとダビング(お正月特番のため)に追われている今日この頃ですが。
すっかり雪ぐまさんの小説が日常に入り込んでしまって、毎日楽しみに
しております。
今日の石川さんの表情は本当に萌えでしたねw
なぜか雪ぐまさんの小説を思い出してしまいました。
- 515 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/29(月) 02:43
- 昨日のハロモニ、よっすぃ〜に裁判の時…。
ずっとテンション低かった石川さんに妄想しちゃいましたー。
リアルいしよしは、じれったいです…。
いしよし不足は、小説で補えましたが☆
本当にどきどきですっ
次が楽しみですー
- 516 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/29(月) 10:19
- >505、506…
ドキドキしますた。わたくち女なのに…
o(;−_−;)oドキドキ♪
- 517 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/29(月) 17:18
- 年賀状も書かずに妄想小説にいそしむ雪ぐまです。
511> ぽろろん様
初めまして! どんどん出てきていただけるとうれしいです。
これからもよろしくお願いします。
512> 名無し読者様
やはり皆様にも、うちのよっちぃと同じ苦しみをw
てゆうのは冗談ですが、ハゲシク求めていただいてうれしゅうございます。
513> なち様
雪ぐまも書きながら石川さんの寝姿を想像し、鼻血でそうでござんしたw
かなり壊れております。
514> 名無し読者様
思い出していただけて、すごく光栄です!
いや〜、昨日の石川さんはマジすぎでございましたな。やられました。
515> 名無し読者様
やぐっつあんが「キモいキモい」言ううちは、二人も素直になれないと妄想w
カオリンにも「メンバー内(恋愛)禁止」と言われてしまいましたしw
516> 名無し読者様
石川さんのフェロモンは同性にも有効でございます。
ちなみに吉澤さんのフェロモンはむしろ同性のほうに有効でございますw
それでは、本日の更新にまいります。
- 518 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:19
-
◇ ◇ ◇
神様。
あなたはあたしを助けてくれたんですか?
それとも、もっともっと苦しめるために?
◇ ◇ ◇
- 519 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:20
- 炎に飛び込む虫のごとく愚かな欲望に身を任せかけたその時。
ぱちっ。
いきなりトメっちが目を覚ました。
とたんに、あたしは我に返って「うわっ!」とのけぞる。
トメっちもびっくりしたようにパッと身を起こした。
「な、なに?」
「あ、いや、……読んでないなら貸してもらおっかと思って」
咄嗟に枕元のマンガを指さす。
危ないとこだった……
やっちゃうとこだった……
へなへなと床に座り込む。
「なんだ、よっすぃ〜も読みたいんじゃ〜ん」
「へ?」
「いっつも馬鹿にするくせにさ〜」
トメっちは、邪なあたしの心など想像もつかないんだろう。
めずらしくあたしが少女マンガに興味を示したと思って、
うれしげにページをめくると、おすすめの漫画家のページを開いた。
- 520 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:21
-
あたしはもうほとんどぐったりしながら、言われるままにのぞきこむ。
目の中にお星さまキラキラ。
一生懸命がんばるドジな主人公の女の子。
女の子と見分けがつかない男の子。
なんだこりゃ。
「こっちきなよ。一緒に読も?」
ベッドをポンポンと叩く。
ギャーー!!トメっちのバカーーッ!!!
もうあたしは床にガンガン頭をぶつけたい気分。
「あ、後でいいよ」
「なんでぇ? せっかくだから一緒に読もーよ」
せっかくって何がっ?
あいかわらずトメっちの話はわけがわからない。
ねぇねぇと騒がれて、観念してベッドにあがる。
もう絶対あたし、すごい真っ赤な顔してる。
わかる。嫌な汗が出てるもん。
- 521 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:22
-
トメっちはかなり挙動不審なあたしの様子など気にかける様子もなく
コロンとうつ伏せに寝ころぶと、壁際に寄ってあたしが寝そべるスペースを空けた。
あたしはトメっちの身体にふれないように慎重に距離をあける。
だけど哀しいかなシングルベッド。
一冊の本をのぞきこむと、どうしたってふれてしまう肩と肩。
「えへへー、なんかこうやって一緒に本読むの久しぶりだね」
「一緒に読んだことなんてあったっけ?」
「なによ、小っちゃい時はずっとこうしてたでしょ?」
ほんとによっすぃ〜は冷たいんだからとトメっちはブツブツ。
そういえば、そうだった。
よくこうやって一緒に絵本を読んだっけ。
トメっちは確か、シンデレラが好きだった。
あたしはもちろんピーターパン。
ネバーランドに行って、一生、子供のままでいられたら。
そんなことを真剣に考えてたっけ。
ああ、ほんと。子供のままでいたかったよ。
トメっちにふれてる肩が、嫌になるほど熱すぎる。
よりによってこんな大人になっちゃって。
- 522 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:23
-
「ちょっとぉ、ちゃんと読んでるの?」
「あ〜、はいはい」
ぱらりとページをめくる細い指先。
水仕事をしてるのに、桜色の貝みたいにつやつやした爪。
ストーリーなんてほとんど頭に入ってこない。
とにかくありえないほどクサい展開ってこと以外。
「ぐすっ」
隣を見てギョッとする。
泣いてるよこいつ!
「どのへんが?」
「なによー、いい話じゃない」
ぶはっ。
あたしは吹き出した。
「うははははは、マジーー?」
「なんだよー!」
ああ、助かった。
やっぱりトメっちって、トメっちだなあ。ははっ。
- 523 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:24
-
あたしはやっといつものペースを取り戻す。
そうそう、トメっちがキショくて、あたしがからかって、
トメっちが超ムキになって怒るんだ。
危なかった。
全部失うとこだった。
「もー、よっすぃ〜ってほんとヤダ」
トメっちは「イーッ!」とすると、コミックを放り出した。
うつ伏せのまま、拗ねたように足をパタパタさせる。
余裕を取り戻したあたしは、片ひじを枕にそんなトメっちをほほ笑ましく眺める。
あっ、そんなにバタバタしたらパンツ見えるじゃんっ!
「ちょっとトメっち、スカート短すぎ」
「そお? こないだ美貴ちゃんだってこんくらいだったじゃん」
「でも、夜中に歩くんだからさー」
「大丈夫だよ、すぐそこなんだし」
そういえばそろそろ帰んなきゃと、トメっちが身を起こす。
時計の針は、とっくに11時を過ぎていた。
- 524 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:25
-
ベッドからパッと立ち上がった時、案の定、パンツばっちり見えまくり。
おっしゃ、白! じゃなくて、バカ、気をつけなよホント。
「減るもんじゃなし」
「バカ、マジでやばいって」
どこで誰が見てるかわかんないんだぞぉ〜。キモいんだぞぉ〜。
しつこくスカート丈を気にしてるあたしに、トメっちがニヤッと笑う。
「心配なんだったら送ってくれてもいいよ」
「ばっか、何言ってんの?」
しっしっと追い払う仕草をすると、アッカンベーと舌を出して身を翻らせた。
はいはい、なんでいちいちそうキショいのよ?
あ、ちょっと、マンガ忘れてるよ?
「全部読んじゃったから、あげる」
「げっ、いらないよ」
「恋の勉強でもすれば?」
「はぁ?」
「よっすぃ〜だって、いつか好きな人くらいできるでしょ?」
……………!!!
絶句しているうちに、パタパタとトメっちは帰っていってしまった。
ったく、何が恋の勉強だよ。キショキャラのくせに。
あたしの気持ちに、まるで気づかないくせに。
- 525 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:25
-
あたしはブツブツ言いながら、
そうっと部屋の窓を開けて身を乗り出した。
ちょっと無理すればかろうじて見えるトメっちのお弁当屋さん。
薄暗い街灯の下を、吹けば飛んじゃいそうな細い背中が歩いてく。
やっぱりちょっと危なくないかな、あのカッコ。
窓枠に手をかけて身体を支えながら、トメっちが無事に帰りつくのを見届ける。
彼女がお弁当屋さんの勝手口に消えたのを確かめて、あたしは窓を閉めた。
ふぅと息を吐いてベッドに腰かける。
布団が、トメっちとあたしの形につぶれてる。
だけど、指でふれてももう彼女のぬくもりはない。
自分ちにいるみたいに、すっかり気を抜いて爆睡していたトメっち。
まるで緊張感のないうちらの関係。
- 526 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/29(月) 17:26
-
携帯メールの着信音が鳴った。
トメっちだ。
『家についたよ〜(^_^)/~これからお風呂♪はいって寝るよ o(>▽<)oおやすみなさい☆彡 』
ちょっと使い方覚えたらこれだよ。
あたしはフッと笑って、短い返事を打った。
『煮物ごちそーさん オヤスミ』
まるで緊張感のないうちらの関係。
でもそれは、信頼という大切な絆でできているんだ。
- 527 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/29(月) 17:27
-
本日はここまでといたします。
おっしゃ、白!w
- 528 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/29(月) 17:34
- どうも、本日も美味しくいただきました。
吉澤まるで男子(リアルでも)で、いい感じです。
私も女子でありながら、特別な人には異性モードでして。
ここの吉澤さんの気持ちがわかります。
応援すてますだ。
- 529 名前:23 投稿日:2003/12/29(月) 22:44
- 更新、お疲れ様です。
年の瀬ではございますが、雪ぐまさんの小説のおかげで心がホカホカ
しておりますですよ、ハイ。
ハロモニ。裁判の時には、不機嫌そうな石川さんと、その横でいしよし情報を
絶対何か知っていそうな矢口さんの表情が良かったです。
ここのトメっち、か〜あいい〜なぁ〜とニヘラニヘラして読んでますw
あぁ、ワタクシもトメっちの作ったコロッケとおかずが食べたいですわい!
吉は今回かなりせつないですけど、読んでる自分もせつなくなって来ます・・
- 530 名前:なち 投稿日:2003/12/29(月) 22:49
- やっぱ改めていしよし&雪ぐまさん最高(ノ^▽^)ノ
ほのぼのとした日常の中の、ちょっとドキドキする情景や会話の一つ一つが大好きです♪
- 531 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 00:03
- トメっち・・・案外わざとやってたりしてw
- 532 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 02:44
- おっしゃ、白!
- 533 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 10:37
- 雪ぐま様、ワタクシめが代わりに年賀状を書いて差し上げたい。
それで雪ぐま様に妄想小説をガンガン書いていただきたい。
そんな気分の師走です。
今日もお疲れさまです。マジで応援してま〜す!!
- 534 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/30(火) 17:26
- 年の瀬、年の瀬。
528> 名無し読者様
応援ありがとうございます。うちのよっちゃん、たしかに少年のよう。
なるほど、トメっちの前で異性モードになってるのですね。モード切り替え。
529> 23様
雪ぐまも食べたいですわい! うちのよっちぃはどうやら切ないまま年越し。
リアルいしよしは多忙でしょうけど楽しく年越ししてもらいたいものです。
530> なち様
いつもありがとうございます。まさになちさんがおっしゃってるようなことを
書きたいなあと思っているので、とてもうれしかったです。
531> 名無し読者様
ふふふ、どうでしょうねぇ。そのくらい気の利いたトメっちなら
作者も苦労しないのですが……w
532> 名無し読者様
パンツは白。そして、よっちぃも罪をおかさずにすんだってことで白w
533> 名無し読者様
あーもー、まだ書いていないでございますよ。てゆうか印刷するだけなのですが
宛名ソフトがあぼーんして号泣しております。
それでは、本日の更新にまいります。
- 535 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:27
-
夏休みが始まった。
予備校に通う気もないあたしは、毎日ゴロゴロ。
たま〜に学校の補習に出たり、ぶらっと映画観たり、美貴と遊んだり。
「学生さんはいいわね〜」
いつものように仕事を終えて遊びに来たトメっちがブツブツ言う。
ちょっと扇風機の前、陣取らないで。
こっちにぜんぜん風こないじゃん!
「だから、店手伝ってもいいって言ってんじゃん」
「バイト代とか出せないもん」
「んなの、いーよ。メシ食わせてくれれば」
「お気持ちだけいただいときます」
キッチンって、すっごく暑いんだよ。
よっすぃ〜貧血っぽいし、きっと倒れちゃう。
そう言うトメっちも、なんかヒョロヒョロしてきた。
どうやら彼女は冬に蓄えた脂肪が、夏にスカッと落ちるタイプ。
うらやましいけど、夏バテが心配。
- 536 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:28
-
「文麿さんねぇ、夏休みはずっと軽井沢の別荘なんだって」
トメっちの口からいきなり文麿の名前が出てビクッとする。
彼女からヤツの話題をふってくるのは珍しい。
「別荘かよー」
「ウン、絵はがき来たよ」
なにっ?!
あたしは咄嗟に、見せろと言わんばかりに手を出す。
「持ってきてないよ」
トメっちがクスッと笑った。
あたしは手のやり場をなくして、ぽりぽりと膝のあたりを掻いた。
いかんいかん。ここは心を落ち着けてうまく情報をだな。
「あ、そ。で、アイツ、何て?」
「え? 涼しいけど、石川さんちのコロッケが食べられなくて残念な夏ですって」
あの人、ほんと口うまいよね。
トメっちが三角座りした膝にこめかみをのっけてクスクス笑う。
ぐわーーー!!! あんにゃろ!!!
少女マンガみたいなツラのうえに、いちいちイカしたこと言いやがって!
- 537 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:29
-
でも、待てよ。
夏休み中ずっといないってことは、
コロッケも買いにこないってことだよね。
よし! あたしには平和な夏だ。
トメっちには……どうなんだろ?
「つまんない」
「うええっ?!」
「何? 急に大きな声だして」
いや、だって。
つまんないって、つまんないってトメっち。そんな。
「よっすぃ〜、どっか行こーよ」
「ふえ?」
「何にも予定がない夏なんて、つまんない」
ああ、そういうことか。
びっくりした。
「ね、どっか行こ?」
トメっちが三角座りのまま、甘えたような上目遣いであたしを見た。
ぐわっ。瞬殺されかけて、あわてて目をそらす。
悪魔に魂を売りそうになって以来、
どうもあたしはトメっちをまともに見られないんだ。
- 538 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:30
-
トメっちが、みるみる口を尖らせた。
「ちょっとぉ、なんかよっすぃ〜、最近冷たくない?」
「ええ?」
「なんか、すぐそっぽ向くしさぁ」
それはぁ。言えるわけないでしょ!……もう、どうしよ?
あたしはとりあえずぷうっと鼻の下をふくらましてファルコン化すると
飛行機みたいに両手を広げて、ぐわあっとトメっちに顔を近づけた。
「そお〜んなことないよん」
「きゃあっ!」
ベチッ! 思いっきし額を叩かれる。
いってーー。なんだよ、冷たいのは自分のほうじゃんか。
あたしは苦笑すると「じゃー、どこ行く?」と、にっこりスマイル。
おどかされて真剣に心臓がバクバクしたらしいトメっちは
“お代官様、それだけは堪忍してください”の町娘みたいな格好で胸をおさえている。
「ちょっとアンタねー、いちいち行動が読めなさ過ぎなのよ!」
「トメっちに言われたくないなー」
「私はフツウよ!」
どこが。
フンと鼻を鳴らしたあたしに、トメっちはベーッと舌を出した。
- 539 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:30
-
「で、どこ行く?」
「うーん、夏っぽいとこ」
「プールとか? あっ」
思い出した。
そういえばカオリンたちに海に誘われてたんだっけ。
まだ返事してないけど、あれ、どうなってるのかな?
「トメっちも、一緒に行く?」
「いいの? 高校のお友達で行くんでしょ」
「でも、カオリンとかやぐっつあんもいるし」
彼女達は中学から一緒だから、当然トメっちのことも知ってる。
ひさぶりに旧友と遊ぶのもいいんでないの?
「そうだね。じゃあ、日にち決まったら誘って」
トメっちはそう言うと、
うれしそうに海の歌を口ずさみはじめた。
◇ ◇ ◇
- 540 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:31
-
「いよーっ! アゴン、ひさぶり〜!」
「ちょっと真理っぺ! アゴンはやめてって言ってるでしょ!」
「キャハハハ、真理っぺ言うな〜、キショッ!」
駅で会うなりぎゃあぎゃあやりあってるトメっちとやぐっつあん。
海に行くメンバーは二転三転して、結局、
カオリン、やぐっち、それから美貴と松浦ってことになった。
予定より人数少ないけど、このくらいが楽しいかもね。
「あ、美貴ちゃん久しぶり〜」
トメっちがうれしそうに両手を振りながら美貴に駆け寄る。
美貴も笑顔で「トメちゃ〜ん」なんて手を上げかけて
ハッとマズいことに気づいたような顔をした。
美貴の隣にいた松浦が、不思議そうに首をかしげる。
「みきたん、知ってる子?」
ああっ! あたしもハッと気づく。
そうか、カオリンたちと違って、美貴と松浦は高校でできた友達。
美貴があたしの幼なじみのトメっちを知ってるのはおかしい。
- 541 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:32
-
どうする?
あたしと美貴の目がすばやく見交わされる。
妙なカンケイが松浦に疑われるとヤバい。
そんな状況を知るはずもなく、トメっちがぺらぺらとしゃべった。
「美貴ちゃんが、よっすぃ〜んちに遊びに来てた時にお茶したんだよねっ」
うおっ。あたしと美貴は内心のけぞる。
みきたん、よっすぃ〜んちに遊びに行ったりするの?
意外だというふうに松浦がますます首をかしげた。
「ふうん」
微妙なニュアンス。
怒ってるってわけじゃないけど、なんとなく気にくわない。そんな感じ。
美貴があわててすっとぼける。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「きーてない」
「いつだっけ、日曜に駅んとこでぐーぜん会ったから」
嘘つけ。制服着てたじゃん。んっとにもう。
でも、美貴は松浦と通学電車が一緒だから、そう言うしかないか。
松浦よりも一駅先に降りる美貴は、その後にあたしんちにきてるみたいだから。
- 542 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:33
- 当然、トメっちは美貴の嘘に気づいて小声で囁いてきた。
おかげで今度はこっちがヤバそうじゃん。
「なんかマズかった?」
「いや、そーゆーわけじゃないんだけど」
オンナノコって友達にも嫉妬すんだよね。
チクッと嫌みを交えつつ、そう言って肩をすくめてみせると、
トメっちは「よっすぃ〜だって女の子のくせに」と笑った。ホッ。
電車に乗り込んでからも、
松浦と美貴は、まだジャブを打ち合っている。
「みきたん、あたしんちに来るの嫌がるくせに」
「嫌がってないじゃん。けっこう行ってるじゃん」
「こないだヤだって言ったー」
「あれはテスト前だったからでしょー。もー、こないだお釜まで洗ったじゃん!」
「ありがと」
「そんだけ?」
「チューする?」
「そういう意味じゃ……ギャーー!」
がばっと抱きつかれて美貴が悲鳴を上げる。
頬っぺたにブチュッと一発かまして、
松浦は「にゃはは!」と勝利の笑顔を見せた。
- 543 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:34
-
そんなのあたしらは見慣れたもんだけど、トメっちはギョッとしてる。
それを見て、美貴が「たはっ」と情けない顔で照れ笑い。
「なんか美貴ちゃん、こないだとキャラが違う」
トメっちが呟く。
おー、トメっちのくせに鋭いじゃん。
ってか、誰が見てもぜんぜん違うか。
松浦といると、まるで情けないもんね。
こういうの何て言うんだっけ、恋は盲目? 違うな。
恋の奴隷? それはちょっと言い過ぎか。
「最近は、友達のほっぺにチューとかってアリなの?」
ブッ。きりりを吹き出す。
トメっち、何言いだすのいきなり。
それに最近ってなんだ、最近って。オバハンみたいだよ?
「だって、フツーのガッコ行ってないからわかんないもん」
「あ、そっか。んー、うち女子高だからじゃん?」
「よっすぃ〜もチューとかされるの?」
「松浦に?」
「とか、ほかの女の子とか」
- 544 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:35
-
あれっ?
あたしはニヤリと笑う。
「会長、またヤキモチっすか?」
「なによ! あのね、そーいうことは会長に報告していただかないと」
真夏の太陽があたしを浮かれさせてるのかな。
トメっちが、もっともっとヤキモチを妬けばいいじゃんなんて思う。
それで、あたしのことをほんとに好きになっちゃえばいい。
あたしは、ぐーんと伸びをした。
ふわあっとアクビまでかましてみる。
まるで彼女の質問を白々しくかわすみたいに。
トメっちが、イライラしたみたいに口を尖らせた。
「それで、どうなの?」
「ナイショ」
「ちょっと、何よ!」
バシッ!
肩をひっぱたかれる。痛ってぇ〜。
- 545 名前:愛するトメっち 投稿日:2003/12/30(火) 17:35
-
予想以上の反応にうれしくなって、
あたしは大胆にもトメっちに頬を差し出した。
「してみるぅ?」
ちょっと〜、今日のあたしってばノリノリじゃない?
トメっちが真っ赤になって、あたしの顔をぐいと押しのけた。
「しないよ!」
あはは。やっぱりね。……ちぇっ。
- 546 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/30(火) 17:36
-
本日はここまでといたします。
- 547 名前:23 投稿日:2003/12/30(火) 22:36
- 更新お疲れ様です。
今は年の瀬ですけど、この小説の中では真夏の設定なんですよね。
夏は人を情熱的に変えてくれる季節!
トメっちの心にも微妙に変化がありそうな・・
我らがいしよしにも、ハッピ〜♪な展開があることをコッソリと祈っておりますです。
ところで、今ふと「ネバー・エンディング・ストーリー」を観たくなりましたよw
う〜ん、白同士でそう来たか!ってな感じですわい。
- 548 名前:雪ぐま 投稿日:2003/12/31(水) 10:14
-
いつもご愛読ありがとうございます。雪ぐまです。
まことに勝手ながら、大晦日(今日ですね)から1月4日まで
年末年始のお休みをいただきとうございます。
間が空いてしまって恐縮ですが、また読みにいらしていただけると幸いです。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。
2004年も、いしよしに幸あることを祈って。
2003年12月31日 雪ぐま
- 549 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/31(水) 13:01
- 雪ぐまさん、よいお年を〜。
来年もご活躍を楽しみにしています♪
- 550 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/01(木) 00:29
- 雪ぐまさん、あけましておめでとうございます。
11月末から毎日アップ、本当にありがとうです。
だからここらでゆっくり休んでください。また5日からの再開を心から待っています!
それまでにリアルいしよしあるといいなぁ。
- 551 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/03(土) 10:56
- 雪ぐま様、あけましておめでとうごじゃいます。
新年早々、前の2作をあらためて読み返し、またまたジーンとしちゃいました。
今作はあやみき(炎からの脱出、見ました?)もからんでて
もう気になってしかたないです。今年もお体に気をつけて頑張ってください!
- 552 名前:499 投稿日:2004/01/05(月) 10:03
- あけまして おめでとうございますです!
つじかごショックからまだビミョーに立ち直れてません・・・
なので、リアルいしよしは心配ばかりですが、
雪ぐま様の物語でかなり癒されました。ホント感謝してます。
今年も雪ぐま様の妄想炸裂マターリお待ちしております。
色々お忙しいと思いますが、がんがって!
- 553 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/05(月) 13:04
- 新春のお慶びを申し上げ……って、辻加護卒業?ゴルァなんじゃそりゃー!
ハァハァ……と心乱れた年明けでございました。
でも可愛い子には旅をさせろといいますし、艱難辛苦を乗り越えて
いしよし夫妻がますます仲睦まじくあらせられますよう
本年も心からお祈り申し上げております。
547> 23様
季節外れの夏の描写に苦労しておりますw
ところで、よっちぃって、時々ファルコンに似てません?w
もちろんよっちぃのほうが数百倍かわいいですが〜♪
いつもご愛読ありがとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
549> 名無し読者様
ありがとうございます。549さんも、よい年越しをされましたでしょうか。
雪ぐまは紅白のゴガールスタートでセンター石川さんが娘。さんたちを引き連れて
お姫さまのようにドレスの裾を持って階段を下りてきたのを見た時に、
なぜか泣きそうに感動いたしましたw まるで親戚の子の活躍をみるようにw
550> 名無し読者様
あけましておめでとうございます。
リアルいしよし、ハロモニSPでチラッとあったみたいですね。
雪ぐまはワケあってこの番組、観られなかったんです! あ〜〜〜〜〜!!!
551> 名無し読者様
新年早々、拙作を読み返していただき感激でございます。
あやや脱出、観ましたよ。あのミキティの表情がねぇ、やはりただごとではな…(ry。
友人のあやみきヲタは新年早々萌え氏んでおりました。なんとうらやましい……。
552> 449様
うれしいお言葉をいただき光栄でございます。やはりいしよしヲタとしては
愛娘たちの卒業は心中複雑なものがございますね。
でも、明るい未来を信じて共に応援をしてまいりましょう!
それでは、新年初の更新にまいります。
- 554 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:06
-
海の家に着いて、さて更衣室に着替えに行くかと思ったら、
トメっちはその場でいきなりTシャツを脱ぎ始めた。
そのへんにゴロゴロしてた人たちが、ぎょっとして見る。
「ちょ、ちょっと何してんの」
「え? 下に水着、着てきたから」
ギャッ! じゃあ ノーブラで着たんかよっ!
てゆうか、女の子がいきなり服とか脱いだら。
……わかってないんだろーな。
あたしは服を脱ぎかけのトメっちの耳を引っ張って更衣室に連行した。
まったく手がかかる。
あたしの水着は競泳用の白黒コンビのワンピース型。
日焼け対策に麦わら帽子をかぶって、上から半そでのシャツをさっと羽織る。
トメっちはピンクと赤のしましまのタンキニ。
ちょっと子供っぽいけど、お気に入りみたい。
- 555 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:07
-
海の家に戻ってぷうぷう浮き輪をふくらましていると、
「先、行ってるよーーー!!」と声がした。
顔をあげると、松浦と美貴が砂浜で手を振っている。
おおー。あたしは思わず賞賛の声をあげた。
ふたりとも眩しいビキニ。
松浦はアメリカ国旗みたいな派手なやつ。
美貴はスカイブルーのちょっと大人っぽいやつ。
夏の陽射しのなか、砂を蹴って楽しそうに海に駆け出していくふたりは、
いかにも健康的な魅力に溢れてる。
目を細めて見送っていると
トメっちがチラッとあたしをみた。
「やらしー」
「は?」
「うれしそうに見ちゃって」
あんた、何言ってんの?
あたしは呆れた声を出す。
「やめてよ、男じゃないんだから変なこと考えないって」
「そう?」
「あたしのことなんだと思ってんの、もう」
- 556 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:08
-
ったく。
ブツブツ言いながら、再び浮き輪に空気を吹き込もうとしたその時、
目の前に立ちはだかった影に、思わず「うおおっ」と声をあげてしまった。
「ん? どーかした?」
カオリン!
あんたほんとに高校生ですか?!
黒いビキニに身をつつみ、腰に長いパレオを巻いたその姿は、ほぼ人魚。
長い髪を背に揺らし、くねくねと歩くその腰に思わず目が釘付け。
「やっぱビキニ好きなんじゃん」
「いやっ、あれは特別だよ! だってほら、やぐっつあんを見ても何とも!」
「はーー? 聞こえてんぞ、ゴルア!」
自称セクシー隊長のやぐっつあんが、デニムっぽいビキニでぷんすか怒る。
ははっ、ごめん、ごめん。
にしても、みんなビキニかよ。すげえ。
「あーあ、あたしも新しいの買えばよかったかな」
トメっちが情けない声をあげて、タンキニをつまんだ。
- 557 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:09
-
「ビキニ?」
「ちょっとそれは勇気ないけどぉ」
でも、もうちょっと大人っぽいの。
そう言って白い歯をチラッとみせながら照れたように笑う。
うわあ、こりゃ来年の夏はヤバいよあたし。
いやもう、今年だってヤバいんだけど。
去年と同じ水着なのに、なんだかまるで違って感じるのは
やっぱりトメっちが大人っぽくなったからなのかな。
タンキニでも十分、はい、じゅうぶんアナタ、セクシーですよ。
はっきり言って、誰よりも。カオリンよりもね。
真っ赤になった顔をごまかそうとぷうぷう膨らましたおかげで
すぐに浮き輪はパンパンになった。
よし! うちらも行くか!
「あ、ちょっと待って」
「何?」
「背中んとこ、日焼け止め塗って」
ぎゃああああっ!
ああ、あたし最近、こんなのばっかじゃん?
◇ ◇ ◇
- 558 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:11
-
「えーっと、うちら全員カレシいるんでー」
もう何度目かのやぐっつあんのセリフ。
ひと泳ぎして、みんなで海の家でかき氷食べてたら来るわ来るわ。
「ビーチバレーしない?」
「俺らとバーベキューしない?」
「帰り、送ってくよ」
ビーチバレーはちょっとそそられたけどね。
でも、ほんとにスポーツだけしようって目的でもないだろうし。
「あーもー、師匠がいるとこれだから」
なぜか松浦のことを師匠と呼ぶやぐっつあんは、
そんなふうに言っておどける。
「にゃははははー、みんな悪いねー」
「亜弥ちゃん、調子乗りすぎ」
おっ、ツッコミキティ炸裂。
さっきトメっちの前でチューかまされたののお返しだな。
- 559 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:13
-
まあ、松浦のせいだけでもないんじゃない?
あたしはメンバーの顔を見回す。
うん、こりゃ声かけるわ。
そんな騒ぎには目もくれず、
トメっちは縁日みたいな焼きそばを食べながら
なにやらブツブツ言っている。
「これで500円かー。高いなー」
そっか、お弁当買える値段だもんね。
もぐもぐと食べて、納得いかないというように何度も首をひねる。
その様子にあたしは笑って声をかけた。
「いい商売だよね。マズくたって売れるし」
「これじゃあ私なら200円取れないな。材料費だって」
「おいしくつくろうって気がないんじゃないの?」
二人でわいわい悪口を言いあってると、どこからか声が降ってきた。
「こらーー!! いいかげんにせんかーーい!!」
駆け寄ってくる影ふたつ。
おダンゴ頭にハッピ着て、黒いグラサン、手には銀色のヘラ。
なんだなんだ、この幼稚園児たちは。
- 560 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:14
-
「幼稚園児じゃねーのれす!」
「焼きそばつくった張本人や!」
げっ、聞こえてた?
「丸聞こえなのれす!」
「あいぼん&のの印の焼きそばに文句つけるたー、いい度胸や」
「営業妨害なのれす!」
「そや、営業妨害で訴えるで!」
耳元でぎゃあぎゃあわめく。
うわ、営業妨害だって。ヤッベーよ。
思わず情けない顔になったあたし。
だけど、トメっちはキッとちびっ子たちを睨みつける。
「なによ! あなたたちねー、こんなので500円もとってて恥ずかしくないの?」
「な、なんやて?」
「肉もたいして入ってないし、材料費なんて一食50円くらいでしょ? 10倍なんて取り過ぎなのよ!」
「材料費なんて関係ないわ! うちは味で勝負や!」
「味〜? こんなのただのオタフクソース味じゃん! 出汁くらい入れなさいよ!」
- 561 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:15
-
トメっち、マジギレ注意報。
どうやら同じ職業として、ぬるい商売が許せないらしい。
やおら、すっくと立ち上がってキンキン声を張り上げる。
「それに野菜が生焼けなのよ! 夏なんだから気をつけなきゃだめでしょ!」
「焦げるよりマシやないか!」
「マシとかそういう発想がダメなのよ!」
「くそー、揚げ足とりやがって!」
「なによ! プロとして恥ずかしいって言ってんの!」
「ア、アゴン、ちょっとやめなよ、みんな見てるよ」
あわてて止めに入る矢口さん。
素知らぬ顔でかき氷を食べ続けるカオリン。
松浦はポカンとあっけにとられ、美貴はなぜかヒーヒー笑い転げてる。
あたし? うーん、どのへんでストップ入れるかなぁなんて、
わりと冷静に考えてたり。もう慣れてるもん。
トメっちが真っ赤な顔で叫ぶ。
「こんなの焼きそばじゃないわよ!ただのソバ焼きよ!」
「かー! 黙ってきいてりゃいい気になりやがってなのれす!」
キランと舌足らずのほうの目が光って、
トメっちの肩を狙ってシュッと回し蹴りが繰り出されたのが見えた。
- 562 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/05(月) 13:16
-
「キャッ!」
「危な……」
めき。
思わず振り上げたあたしの拳が、ちびっ子の眉間にヒット。
あ、しまった。ぐーで殴っちった。
ぽて。
ひっくり返るなり、みるみるうちに目に涙がたまって。
「うわああああああーーーん」
「あー、暴力ふるったあ!」
「だ、だってそっちが先に」
「子供に暴力ふるったあ〜」
「あーーーー(滝汗)」
ごめんごめんとちびっ子たちに平謝りのあたしに、みんなは大爆笑。
トメっちだけが「よっすぃ〜、ゴメンね」としゅんとした。
- 563 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/05(月) 13:18
-
本日の更新はここまでといたします。
この回は年内に書いていたのですが、
まさかあいぼん&ののが卒業することになろうとは……(涙)。
- 564 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/05(月) 13:26
- あ、それから、やぐっつあんの
「うちらみんなカレシいるんでー」は、ナンパを断るための嘘ですから。
さっそく読んでくれた友人から「どーゆーこと?」と確認が入ったので念のため……。
- 565 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/05(月) 13:27
- あーもどかしい…!!
いしよしにもやきもきですが、あやみきにも悶えてしまう…
続き、楽しみに待ってます。
- 566 名前:なち 投稿日:2004/01/05(月) 14:31
- 雪ぐまさん♪あけおめ〜(^-^)
うーんやっぱみんな可愛い(ノ^▽^)ノ既にウチもウキウキな夏気分になりました☆
今年も頑張って下さいm(__)m
- 567 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/06(火) 00:02
- あけおめです。
再開、楽しみにしてましたよ。
- 568 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/06(火) 14:30
- 正月気分で仕事する気になりませぬ。
565> 名無飼育さん様
もどかしくってすみませんw
にしても、あやみきって人気あるんですねぇ。ナルホド……
566> なち様
あけおめです〜♪今年もよろしくお願いします。
ハロプロの子たちはみんなかわいいですよねぇ。癒されます。
今年もそんな彼女達のパワーを借りて楽しく書いていけたらいいなと思っております。
567> 名無し読者様
あけましておめでとうございます。
リアルいしよし、ハロモニSPでチラッとあったみたいですね。
雪ぐまはワケあってこの番組、観られなかったんです! あ〜〜〜〜〜!!!
551> 名無飼育さん様
あけおめです。年末年始に休んだら人イネ状態になったらどうしよと思ってましたので
そう言っていただけて、ホッと一安心いたしましたw
それでは、本日の更新にまいります。
- 569 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:32
-
じゅうじゅうじゅうじゅう。
「へんなことになっちゃったなー」
「ごめんね、よっすぃー。せっかくの海なのに」
全治3時間とわめくちびっ子たちの勢いに負けて
あたしとトメっちは焼きそば屋で働かされていた。
青と赤の揃いのハッピを着せられて。
「きりきり働けい」
「うまい焼きそばをつくるのれすよ」
「言われなくったってわかってるわよ!」
トメっちがキイッとちびっ子たちを睨む。
成り行きだってのに、かなりマジモード。
猛然と出汁をとったり、電光石火のキャベツ切りを見せたり
無駄にすごいことこのうえない。
- 570 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:33
-
「む、黒いの、なかなかやるな」
「黒いのってなによ!」
「黒いのと白いの」
あいぼんと呼ばれてるほうが、あたしたちを交互に指さす。
「悔しいぃぃぃぃ。これでも美白してんのよぉっ!」
「トメっち、落ち着いて」
これ以上ケンカされたらかなわない。
そう思ってるのにトメっちは、つくったばかりの焼きそばを
ほ〜れどうだとばかりにちびっ子たちの鼻先に突き出した。
その挑戦的な仕草に、ちびっ子たちは、むかっとした顔で皿を受け取る。
でも、しぶい顔で一口食べて、ののという子が驚いたように声をあげた。
「おいしいれす!」
「のの! そんな簡単に誉めたらあかん!」
「だっておいしいれすよ。ほら」
「……ほんとや」
「当然よ! 当たり前田のクラッカーよ!!」
トメっちは腰に手を当てて勝利宣言。またかよ。
- 571 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:34
-
でも、確かにこれ、おいしいだろうね。香りが違うもん。
じゅわじゅわと休みなく手を動かしながら鼻をひくひくさせる。
それに気づいて、トメっちがあたしにお箸を向けてくれた。
「よっすぃ〜も、あーん」
「あーーん」
「なんだこいつらいちゃつきやがって」
思いがけないツッコミに、ふたりで真っ赤になる。
「い、いちゃついてないもん!」
「手がふさがってるからだろっ」
もー、なんてこというの、最近のガキんちょはあ。
赤くなった顔を手でぱたぱたとあおいでいると、最初の客がやって来た。
ガラの悪そうな背の高いオッサンと、ヤンキーみたいな若い男の二人組。
いかにも口の悪そうなふたりは、盛り付けた皿を見るとぶうぶう文句をたれはじめた。
- 572 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:35
-
「ちょっとぉ、これで500円って高くない? まけてよ〜」
「あ、えーと……」
あいぼんとののを振り返る。
両手で、大きくバッテン。
「すいません、まけられないんですよ〜」
「え〜〜〜」「え〜〜〜」
ゴネられて、トメっちの眉が八の字に下がる。
どうしよ。ふたりで顔を見合わせる。
もーいいじゃん買ってもらえなくても。
すぐにあきらめ顔をしたあたしに、トメっちがダメよとばかりに首をふった。
そして、にっこりと笑顔をつくって二人組に話しかけはじめる。
「じゃあですねー、おまけできないかわりに私が面白い話します」
「ふうん、言ってみてよ」
「あのー、こないだ〜、五本指ソックス履いてたんですよ〜。そしたら、それ見た人に『水虫なの』って」
あはははは。そうそう、言われちゃったんだよね〜。
おもれー。水虫だって。五本指ソックスで水虫だって。
あはははははははは。水虫だよ、水虫。トメっち水虫。
これって、かなりキてるよねえ?
なのに、かんじんの二人組は妙な顔をするばかり。
- 573 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:36
-
「あの……面白くないですか?」
「どーよ?」「どーなの?」
首をひねる。
あー、やっぱダメかあ。
「「でもなんかクセになる〜〜〜」」
二人組はそう言うと500円払って焼きそばを買っていってくれた。ほっ。
「やるじゃん、トメっち」
「まー、ざっとこんなもんよ」
おいしそうな匂いにひかれたんだろう、
その後からは、次から次へとお客さんが押しかけてきた。
あたしは汗をたらたら流しながら必死で焼く。
トメっちは材料を切りながら接客してたんだけど
お客さんが多すぎててんてこ舞いになってきた。
あいぼんとののは、高見の見物をきめこんでニヤニヤ。
うーん、このままじゃ焼きが間に合わなくなっちゃうよ〜。
- 574 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:36
-
「だめだ。トメっちも焼いてよ」
「だって接客しなきゃ」
言いあってても仕方ない。
どうしようかと考えてたら、
ちょうど海のほうから美貴と松浦が戻ってくるのが見えた。
「あ、美貴に手伝わせよ」
「そんなの悪いよ、よっすぃー」
「平気平気」
「だめだよ、美貴ちゃん怒っちゃうよ」
「平気だよ」
悪いよやめてと連呼するトメっちを無視して
あたしは大声を張り上げた。
「美貴ぃっ!」
美貴が、ひょいとこちらを見る。
「ちょっと手伝って」
「マジかよー」
そう言いながらも美貴はのそのそとやってきた。
ほらね。あんがい気がいいんだよ、こいつ。
- 575 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:37
-
「ビキニで売って」
「フン、高いよ」
ああみえて愛想がいい美貴は、なかなかうまく客をさばきはじめた。
てゆうか、ビジュアルでさらに客を増やしてるかも。
と、ますます客を増やしそうなヤツが美貴をぴょこぴょこ追っかけてきた。
しめしめ。
「まつーらも手伝う!」
「ほんと? 悪いね〜」
「ご、ごめんね、美貴ちゃん、松浦さん」
「みきたん、どっちがいっぱい売るか競争しよ」
「はあっ?」
「絶対、負けないっ!」
めらめら。
負けず嫌いの松浦に火がついた。
「みんなー、めっちゃホーリデーーーィ? すげえ焼きそば食べてってーー(ウインク)」
めらっ。
松浦に負けたくない美貴の目が光る。
「はーーい♪ ロマンティック焼きそばモードで日曜日ーー!(Wウインク)」
……わけわかんね。
- 576 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:38
-
まあ、売るのはアイドルふたりにまかせときゃいいや。
あたしとトメっちは、とりあえず焼きそばを焼くのに専念する。
「なんか、売るほうが楽しそうかも」
みるみる集まってきた黒山の人だかりに、なぜかトメっちはうずうず。
なによ、アイドルになりたいの?
だめだよ、一緒に焼きそば焼いてよね。
トメっちがほとんど踊りだしかけてる美貴と松浦を見てしみじみ呟く。
「ふたりとも色白いなあ」
「だね」
じゅうじゅうじゅう。
じゅうじゅうじゅうじゅう。
「やっぱ色黒いとだめなのかなあ」
「んなことないよ。早見優とか黒いじゃん」
「……古すぎよ」
まったく慰めになってないわとブツブツ。
いいから焼きなよ。トメっちの焼きそばはおいしいんだから。
そう言うと、トメっちはあたしを見て首をかしげた。
- 577 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/06(火) 14:39
-
「私の料理、好き?」
「え? ああ、おいしいんじゃん?」
「そっか。じゃあ、張り切ってつくろっと!」
かわいいこと言っちゃって。
あたしはニヤつく口元を必死で隠しながら、
じゅうじゅうと焼きそばを焼き続ける。
焼きそば屋の前は、ほとんど美貴と松浦の握手会。
「……ねぇ、よっすぃ〜。ほんと〜に私の焼きそばがおいしくて売れてるのかな」
「細かいこと気にしないほうがいいよ」
とにかく売れりゃいいんだから。
そう言うと、「よっすぃ〜はオンナゴコロがわかってないな〜」だって。
そうかなあ?
- 578 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/06(火) 14:40
-
本日はここまでといたします。
トメっち&よっすぃ〜印の焼きそば、食べてみたいなあと。
- 579 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/06(火) 14:49
- よっちぃ、オンナゴコロがわかってないよ、よっちぃ!
美貴ティを呼ぼうとするよっちぃを止めるトメっちに萌え〜。
あ〜、もどかしいいいい!
- 580 名前:23 投稿日:2004/01/07(水) 03:07
- 遅れ馳せながら、あけおめ&ことよろです!
いやはやぁ〜、今回もまた細かい小ネタが満載ですなぁw
(570の藤田まことネタが分かってしまう自分がせつないですw)
楽しい夏休み!って感じが伝わって来ますね。ウキウキな夏希望♪
そして黄金の4期登場に何故かちょびっと泣けました。
いしよし共同作業の焼きそば、ワタクシも食べたいですわい。
次回も楽しみにしてます。
- 581 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/07(水) 06:54
- ぴょこぴょこ追っかける松浦さんに激しく悶えてしまいました…。
ああぁ〜もどかしい!!!
- 582 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/07(水) 10:25
- グラサンかけたぶりんこの店でハッピのいしよしがつくって、
ビキニのあやみきが売る……なんて豪華なんだ!
想像してすっごく楽しいキブンになりました。
「ほとんど踊りだしかけてる美貴と松浦」とか、
それを見て「色白だ」と気にする梨華ちゃんとか〜。
こんなシチュエーションを書いちゃうアナタが大好きです!
- 583 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/07(水) 13:37
- あいかわらず正月気分。そろそろマズイです。
579> 名無飼育さん様
もどかしくってすみませんw リアルでも梨華ちゃんって、
吉にべたべたするミキティのことを妙に意識してるような気がしませんか?w
580> 23様
あけおめ&ことよろです!ヨンキーズは奇跡!とか新年早々叫んでみたり。
焼きそばは昨年末の「うたばん」ネタですが、他の小ネタはいちいち古くてすみませんw
なんかナツメロとか古いギャグとか好きなのでございますよ。
581> 名無し飼育さん様
まことにもどかしくってすみませんw
にしても、やっぱりあやみき人気ありますねぇ〜、ふ〜む。さすが美少女コンビ。
松浦さんも藤本さんも中性的な凛々しい少女の魅力がありますね。
582> 名無飼育さん様
妄想、書き散らかしておりますw 今回、雪ぐまの密かなツボは、
アイドルあやや&ミキティに「私も!」とウズウズするトメっちと
まるで我関せずのマイペースよっちぃなのでしたw
それでは、本日の更新にまいります。
- 584 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:38
-
トメっちの味つけがおいしかったせいか、
あたしのダイナミックな焼きが素晴らしかったからか、
はたまたあやや&ミキティのビジュアルが最強だったおかげか、
お客さんの列は途切れることはなく、最後にはあいぼんとののも一緒になって
汗を流しながら次から次へと焼きそばを売りまくった。
海に夕陽が沈む頃、材料がすっからかんになって焼きそば屋は本日閉店。
ちょうど3時間くらい働いたし、ちびっ子たちも許してくれるだろう。
「お疲れさん」
「お疲れさんでしたなのれす」
「あー、もー疲れたよ。これで勘弁してよね〜」
おどけてそう言うと、あいぼんとののは笑って
ポッケから“大入”と書かれた赤いポチ袋を4つ取り出した。
「お礼れすよ」
そう言って、あたしとトメっち、それから松浦と美貴にひとつずつ配る。
中を見ると折りたたまれた5000円札。
あたしたちは顔を見合わせると、慌てて一斉に突っ返した。
- 585 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:38
-
「いいよ、こんなのいらないよ」
「とっときなって」
あいぼんとののは手を振って受け取らない。
あたしは困ってしまった。
もとはといえば、あたしとトメっちが悪口言いまくってたのが悪かったのにさ。
「こんなにもらえないよ」
「ほんの気持ちや。えらい儲かったしな」
「レシピも教えてもらったから、明日からも商売繁盛れすよ」
トメっちが「あんなの、レシピなんてほどじゃないよ」と慌てる。
「ほんと、受け取れないよこんなに……」
「ええって」
「そのかわり、来年も遊びに来てほしいのれす」
「感じ悪いやっちゃ思ったけど、友達になれてうれしかったで」
にこにこ笑うあいぼんとのの。
じ〜んときた。
さすが浜育ち、人情あるねえ。
- 586 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:39
-
「約束れすよ」
「うん、じゃあ約束」
あたしたちは再会を誓って指切りげんまんした。
ののが「なんか淋しいれすね」と呟いてトメっちの腰にしがみつく。
トメっちは涙をこらえたお姉さんの顔で、その頭をやさしく撫でた。
あたしとあいぼんも目を見合わせて笑い、
一瞬ぎゅっと抱きしめあって別れを惜しんだ。
「あんたたち、親子みたい」
長い髪を揺らしながらカオリンがそんなふうにクスクス笑う。
親子ぉ?! はっ、そういえばあいぼんとののって、
トメ子姉さんのとこのひとすじとふたすじに似てるっ!
てことは何、あたしが一徹ってことぉ?!
- 587 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:40
-
「ママー」
「パパー」
ソッコーで悪ノリするちびっ子ふたり。
トメっちが「ママだって!」と両手で口元を抑えてきゃあきゃあ笑う。
あたしは妙にうれしーよーな、なさけないーよな……
「やっぱあたしがパパかよぉ……」
「いいじゃん、アンタ似合ってるよ」
気を利かせたつもりなのか、美貴がそう言ってあたしにウインク。
ちょっとやめて。トメっちにキモチがバレたらどーすんの。
そう思いながらも、あたしの口元は自然に緩んでいた。
夕陽が沈みゆく海を背に、帰っていくあたしたちを見送ってくれたあいぼんとのの。
何度振り返っても、ぴょんぴょん飛び跳ねながら元気に手を振ってくれた。
そのたびにトメっちは立ち止まって両手をブンブン振り返す。
だからちっとも前に進まないんだけど、
あたしはその姿をすごくほほ笑ましいなと思った。
- 588 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:41
-
そんなうちらを見てニコニコしながらも、
やぐっつあんはわざとらしく口をとがらせる。
「あーあ、バイト代でるんならオイラも手伝えばよかったなー」
ははっ、都会っ子はゲンキンっすね。
「みきたん、これで何買うー?」
「特上カルビ食べよーかな」
「また焼き肉ぅ?」
帰りの電車のなかで、臨時収入にはしゃぐ松浦と美貴。
トメっちは「かえって悪かったよね」なんて、まだ気にしてる。
あたしはなんか上腕がだるくて、ぐるぐると腕を振り回した。
「なんか腕が筋肉痛」
「よっすぃ〜、一生懸命焼いてたもんね」
「しゃーないよ。殴っちゃったし」
「でも、助けてくれてうれしかったよ」
そう? ならいいけど。
あたしはヘヘッと笑った。
- 589 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:41
-
「トメっち、これでなんか買う?」
ポチ袋をぴらぴらさせると、トメっちは「んー」と考え込んだ。
「よっすぃ〜は?」
「なんか最近、欲しいもんないんだよね」
「水着買おっか」
「は?」
「お揃いのビキニ」
ぎゃーーー! 勘弁してよ!
トメっちがにやにや笑う。
「よっすぃ〜、きっと似合うよ」
「やめて。てか、トメっちとオソロだけは絶対イヤ」
「なんでよ」
「あんたねー、イヤミ?」
どーせ最近太り気味だよ。ブツブツ。
「いいじゃん、よっすぃ〜、胸大きいし」とトメっち。
あのね、あんたと違ってハラにもついてんの! 内緒だけど。
- 590 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:42
-
「いいと思うけどな〜。よっすぃ〜のビキニ、見てみた〜い」
「それ以上言うとブッ殺すよ?」
「じゃあ、いいもん。私だけ買おうっと」
マジ?
「みんな着てるし、変じゃないよね?」
恥ずかしそうにトメっちが足をブラブラさせる。
「うん、まあ、変じゃあないよ」
てか、むしろヤバいよ。たぶん。
ううう、どんなの買う気だろ。
うれしいよーな、心配なよーな。
「キャハハ! アゴンが、ビキニだって?」
「なによ、真理っぺだって着れるんだから平気よ!」
「あっ、セクシー隊長のやぐっちになんてことを!」
すかさずやぐっつあんにからかわれてぎゃあぎゃあ言い返すトメっち。
あーあ、真っ赤になっちゃって。
恥ずかしいなら着なきゃいいのにな。
そんなに急いで大人っぽくならないでよ、お願いだから。
いつまでも子供みたいに仲良くしよう。……なんてね。
- 591 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:43
-
駅でみんなと別れての帰り道、
トメっちが、あたしの顔を覗き込んだ。
「ねえ、よっすぃ」
「ん?」
「来年も絶対、あの海の家に行こうね」
あたしは笑ってうなずく。
そうだね、あいぼんとののに会いに行かなくちゃ。
「みんなが行かなくても、私たちは行こうね」
「そうだね。うちらだけは行こう」
毎年、一緒にあの子たちに会いに行こう。約束だよ?
トメっちがうれしそうに微笑みながら、そう念を押した。
あたしはなんだか目頭がツンと熱くなる。
約束したら叶うかな?
ほんとうに毎年、一緒に行けるかな?
あの子たちに会えるかな?
あたしたちも、あの子たちもずっと笑顔で。
ずっとずっと子供のままの笑顔で。
- 592 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:44
-
あたしはちょっぴり切なくなって、星空を見上げた。
未来のことはわからない。
変わらないことなんて世の中に何ひとつないけど、
せめて来年もみんなが笑ってますように。
ふいにトメっちが、あたしの腕に腕をからめてきた。
あたしはドキッとしてちょっと慌てる。
「な、何?」
「よっすぃ〜、なんか淋しそうだったから」
ちぇっ。ばれてるし。
いつもなら「キショ!」とか言ってブンブン振りほどくとこだけど、
今日は腕にあたたかな体温を感じたまま、ゆっくりと家までの道のりを歩いた。
街灯の下を通ると、仲良く寄り添ったあたしたちの影が長く伸びる。
身長差が強調されて、まるで男と女みたい。
「生まれ変わったら男になりたいな」
「ええ? やだな、また女の子同士で生まれようよ」
それでまた幼なじみしようよ。
あたしの肩に頭をもたれながら、無邪気に笑うトメっち。
フフッ、あたしもトメっちみたいに無邪気に笑えたらそれでもいいんだけど。
- 593 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/07(水) 13:44
-
思わず俯いて苦笑したあたしをトメっちはどう思ったかな。
へんちくりんな夏の思い出は、なぜだか切ない思いに溢れてて、
トメっちと一緒にあたしもやっぱり大人びてきたんだと気づかせた。
「よっすぃ〜、ずっと一緒にいようね」
「ん? ウン……」
からめた腕にキュッと力を力を込められて、嫌になるほどドキドキする。
ずっと一緒になんて、ずいぶん能天気な約束だね。
そんな野暮なことは今夜だけは言わないでおこう。
だって、真夏の星空がこんなにキレイだから。
あの子たちがくれた笑顔が、とってもかわいかったから。
- 594 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/07(水) 13:45
-
本日はここまでといたします。
- 595 名前:なち 投稿日:2004/01/07(水) 17:46
- 更新お疲れ様です(ノ^▽^)ノ今回は嬉しいケドそれと共にジーンとする様なシーンが多かった気がします。
この年頃は子供と大人の境目ですもんね。よっすぃの気持ちが伝わってきます。何かラストに近づいて来た様な…
- 596 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/07(水) 17:47
- ヨンキーズが切ないよ〜
・゚・(ノД`)・゚・
- 597 名前:ナナシ 投稿日:2004/01/07(水) 19:56
- いまさらながらに、あけおめ&ことよろですぅ〜
ひたすらロムって参りましたが、雪ぐま様の書かれた590の・・・なんてね、が
思いっきり、ストライクゾーンだったモノで、思わず、出てきてしまいました
これからも、がんがって下さいませ
影ながら、ずっと応援して参りますです
- 598 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/08(木) 14:39
- いしよし不足です。
595> なち様
まだしばらくラストではございませぬ〜。てゆうか、長過ぎ?
前作、前々作が一週間で終わる程度だったので、今回はちょっと長過ぎかもと自分でも思いつつ。
596> 名無し飼育さん様
状況は変わりますが、来年もみんなが活躍していてほしいものです。
597> ナナシ様
「……なんてね。」がツボでしたか。よっすは、すぐにこういうふうに言いそうだと
雪ぐまとしては妄想しております。これからもよろしくお願いします。
それでは、本日の更新にまいります。
- 599 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:40
-
「舞踏会ぃ?!」
トメっちがいつも以上に素っ頓狂な声をあげた。
たまたま居合わせて一緒に話を聞いてたあたしも目を丸くする。
舞踏会ってあれ? ドレスとか着て踊ったりするヤツ? マジ?
「そんなに驚かないでよ」
綾小路文麿が、困ったなあというように首をかしげた。
「僕の誕生会の余興だよ。うん、誕生パーティーと思って来てもらえれば」
新学期が始まるやいなや、
また文麿がトメっちのコロッケを買いに日参するようになっていた。
あたしとは滅多に会わないけど、会えば愛想よく話しかけてくる。
キザだけど悪いヤツじゃない。
育ちのいい、やさしくて上品なお坊ちゃん。
あたしは少し安心してたんだ。
トメっちをやたら誉めまくるのは気になるけど、
おかしな真似もしないし、へんに口説いてるような様子もない。
ほんとにトメっちのコロッケのファンなのかなあなんて、思い始めてたんだ。
- 600 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:41
-
なのに、いきなり「僕の誕生会に来ませんか?」だってぇ?!
どーゆーことよ、それ。
いきなり自宅にお招き攻撃ですかぁ?
てか、「舞踏会があるからきっと楽しいよ」って、なんなのその世界観はぁ!
思いもよらない申し出にトメっちは動揺しまくって
三角巾がずれるくらいブンブンと首を振った。
「そ、そんな、あの、着てく服とかありませんし……」
「もし良かったらウチにあるものを貸すよ」
「でも……」
「あ、ぜひ吉澤さんも」
文麿は、隣でブスッと話を聞いてたあたしを見て、鷹揚に微笑んだ。
「へっ? あたし?」
「美しい女性は大歓迎さ」
文麿がパチンとウインクする。
えー? あたしも誕生会に来いってぇ?
たいしてしゃべったこともないのになんでよと絶句してると、
あたしも一緒と聞いて安心したのか、
トメっちが「じゃあ、お言葉に甘えて……」と恥ずかしそうに頷いた。
ちょっとちょっとぉ、これって文麿の作戦なんじゃないの?!
- 601 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:41
-
満面の笑みで文麿が立ち去ってから、
あたしは不機嫌を隠さずにトメっちに文句をたれた。
「あたし、ヤだよ」
「えー、そんなぁ。よっすぃ〜も一緒だからOKしたのに」
「あたしがいつ一緒に行くって言った?」
「えーーー、じゃあ私一人で行くのぉ……」
しょぼんとするトメっち。
あたしはため息をついた。
ひとりでなんて行かせられるはずがない。
「てか、なんでOKしちゃうのよ」
「え? なんか楽しそうじゃん、舞踏会とか見たことないし」
「はあ?」
「それに、あのお屋敷のなかがどうなってるのか、見てみたいんだよね〜」
胸の前で両手を組んで、目をきらきらさせるトメっち。
はぁ、あいかわらず好奇心おう盛のようですね。
てか、夢見る夢子さんってやつ?
あたしはもう一度、大きな大きなため息をついた。
◇ ◇ ◇
- 602 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:42
-
ここらで一番のお金持ち、綾小路家。
広大な敷地にそびえる洋風のたたずまいは、
あきらかに周りの家とは一線を画してる。
初めて見る人は、きっと美術館か博物館の類だと思うんじゃないかな。
馬車でも出てきそうな綾小路家の重厚な門の前に佇んで、
あたしとトメっちは、なかなかインタフォンを押せずにいた。
約束の時間は過ぎている。
あたしはトメっちを肘でつついた。
「はやくピンポン押しなよ」
「う、うん……。でもこんな格好で追い返されないかな」
トメっちが心配そうに自分の服をつまむ。
ドレスは貸すから普段着で来てと言われてたんだけど
彼女は一応、薄いピンク色のワンピースを着てきていた。
あたしも一応、ジャージじゃなくてシャツとジーンズ……あんま変わんないか。
「いいよ、普段着でって言われたじゃん」
「うん……」
「あー、もう! じゃあ押すよ」
なんだよ、自分がOKしたくせにさ。
あたしはブツブツ言いながら、思い切ってインタフォンを鳴らした。
- 603 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:43
-
うお! なんかすっげぇ重厚な音。うちのチャイムとは一味違うね。
しばらくすると、家政婦さんらしき若い女の人が迎えに出てきた。
「石川様と吉澤様でございますね。ようこそいらっしゃいました」
ふえ〜、吉澤様だって。
なんかカユいなーと思いながら石畳を歩き、
玄関へと一歩踏み込んで、あたしは目を疑った。
そこに広がっていたのは、今までに見たこともないような世界。
いや、見たことはある。
でも、それってTVとか映画のなかだけって思ってたんだけど。
ホテルのロビーみたいに広々としたエントランス。
吹き抜けの高い天井。
そしてキラキラ輝くシャンデリア。
――ここ、お城?
「すっげぇー!!」
「さぁ、どうぞこちらへ」
あ、いかんいかん、騒いじゃった。
口をポカンと開いて呆然と立ち尽くしていたトメっちも、
家政婦さんの声でハッと我にかえって背筋を伸ばす。
だけど、案内された次の間で、あたしたちはますます目をチカチカさせる羽目になった。
- 604 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:44
-
「こちらから本日のドレスをお選びください」
「「ええーーーーー?!?!?!」」
クリーニング屋さんのごとく部屋中に無造作にかけられてる色とりどりのカクテルドレス。
何十着あるのよ、これ! こんななかから、今すぐ選べってぇ?
家政婦さんは「決まったらお声をかけてくださいませ」と言ったっきり部屋の外。
あたしとトメっちは困って目を見合わせる。
「てか、ここってドレス屋?」
「ここだけでうちの店より広いわよ……」
コソコソ囁きあってると、ドアがノックされて文麿がひょいと顔を出した。
その姿を見て、ふたりでのけぞる。
ぎゃーーー! なんじゃその格好は!!!
「やあ、今日は来てくださってありがとう」
文麿は濃紺の詰め襟に金のボタン、金の飾り紐、
それに白いパンツといういかにもな王子様ファッション。
しかもご丁寧に踝まで届きそうな赤いマントまでひらめかせていた。
あまりに現実離れしたコスチュームに口をぱくぱくさせるあたしたちに
文麿はさすがにちょっと頬を染めて「舞踏会だからね」と恥ずかしそうに言い訳した。
- 605 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:44
-
「さあ、石川さんと吉澤さんも好きなドレスを選んで」
「いや、でも困っちゃったな〜って……」
「たくさんありすぎて選べないかな〜って……」
慣れない状況に身をすくめてモジモジするあたしたちを見て
文麿はクスッと笑うと、自らガサガサとドレスをかきわけ始めた。
「石川さんは、きっとこれが似合うよ。吉澤さんは、これ」
文麿がトメっちに選んだのは、シフォンのフリルが清楚な白いドレス。
あたしには、黒に金ラメの入ったちょっとゴージャスなドレス。
どっちも裾は長いものの、肩と背中がむき出しになる大胆なシルエット。
あたしたちは真っ赤になった。
「これはちょっと……」
「大人っぽすぎるっていうか……」
「平気だよ。皆さんこんな感じだし」
きっと二人とも、とても美しいと思うよ。
真面目な顔でさらりとそういうと、
文麿は長い髪をなびかせて去っていってしまった。
- 606 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/08(木) 14:45
-
「マジでこれ着るのぉ?」
あたしは情けない声をあげる。冗談じゃないよぉー。
トメっちも困ったように自分のドレスをしげしげと見つめてたけど、
しばらくするとどことなくワクワクした声で「じゃ、着替えよっか」と言った。
「はぁ……」
「いいじゃん、よっすぃ〜。こんなのなかなか着られないよ」
「そうだけどぉー」
「せっかくだから、楽しんじゃお」
ね?
いたずらっぽいその微笑みに、あたしはため息をついた。
- 607 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/08(木) 14:47
-
本日はここまでといたします。
- 608 名前:23 投稿日:2004/01/08(木) 16:14
- 更新、お疲れ様です。
夏の終わりって何故かふとせつない時がありますよね。
しかしまた今回は・・ふはぁ〜、ついに来た!ってな感じですね。
(何か白百合かおる&つぼみも出て来そうw)
全くもって個人的ですが、「はいからさんが通る」でのいしよしダンスを
思い出しました、てへ。
次回も正座して楽しみに待っておりますです。
次回も
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 17:14
- うわっ、すごい展開です!
石川さん、きっと可愛いんだろうな…(妄想)
- 610 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 00:16
- トメっちの気持ちもよくわからないけど
文麿様もあなどれませんねw
- 611 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/10(土) 00:22
- ヤボ用にて、たいへん遅くなってしまいました。
お待ちいただいていた方(いらっしゃるのでしょうか……)、申し訳ありませぬ。
608> 23様
せっかく夏の終わりでしっとりしていたのに、
あいかわらずマンガのような妄想展開でございますw
雪ぐまとしても、そろそろ大人っぽい展開に移りたいのですがなかなかw
609> 名無し飼育さん様
はい、そりゃあもう可愛らしゅうございますよ〜。
もちろん吉澤さんもたいへん美しゅうございます。
610> 名無し飼育さん様
ええ、もう文麿様もあなどれませぬ。
なにしろ何を考えているのか皆目見当がつきませんw
そんなとこ、けっこう好きなのですがw
それでは、本日の更新にまいります。
- 612 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:23
-
うが。化粧ってカユい。
あたしは顔をかきむしりたくなる気持ちを必死でこらえながら
控室のソファにどすんと腰かけていた。
あれからあたしとトメっちは別の部屋に通され、そこで着替えた。
文麿が呼んでくれてたのか、用意周到にヘアメイクの人まで待っていて
あっという間にお姫さまみたいな髪形と顔にされてしまった。
「まあ、ほんとにおきれいですわぁ、吉澤様」
ヘアメイクのお姉さんがそう言って誉めちぎってくれた。
そうかな? マスカラばちばちの目をぱちぱちさせる。
派手な顔がますます派手になったって感じだけど。
「若いってうらやましいわぁ。ファンデのノリが違いますもの」
「はぁ」
つーか、ノリすぎで顔がカユいんすけど。
- 613 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:24
-
ぎゅっと顔をしかめると、お姉さんは苦笑してあたしをたしなめた。
「だめですよ、そんな顔しちゃ。ほら、にっこり笑って」
にま〜〜〜〜っ。
鏡の中で笑って見せると、お姉さんはなぜか呆れたような顔をして
「次は石川様のご準備をしますから、控室で待ってらしてください」と素っ気なく言った。
あー、カユいカユい。気が狂いそう。
控室に誰もいないのをいいことに、
あたしは借り物のハイヒールを爪先に引っかけて、組んだ足を揺すった。
遠くから、オーケストラみたいな音楽が聞こえてくる。
ワルツとかいうの? よく知らない。とにかく誕生会はもう始まってるらしい。
「ふあああ〜〜っ、眠っ」
退屈で眠くなってきた。
トメっち、遅過ぎ。何やってるんだろ。
- 614 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:25
-
その時、ドアの外から家政婦さんの声が聞こえてきた。
「石川様? まだこんなところにいらしたんですか?」
「あ、えっと……あ、待って、心の準備が……」
焦ったようなトメっちの声が聞こえて、カチャリとドアが開いた。
ドアを開けたのは、さっきあたしたちを案内してくれた家政婦さん。
その後ろには………うわぁ……。
あたしは一瞬、声を失った。
ちょっと、すごくない? きれいすぎない?
耳が真っ赤になってるけど、そこにいたのは絵本から抜け出したお姫さまみたいなトメっち。
やわらかな巻髪とメイクでくっきりと浮かび上がった美しい顔立ち。
きらきらした薄いラメで縁取られた瞳。艶やかに光るグロス。
それに、なんてきれいな鎖骨。すんなりした腰。
銀色のティアラと白いドレスが、まるでウエディングドレスみたい。
あたしはしばし呆然とトメっちの姿に見とれていた。
トメっちもドレスの裾を握りしめたまま、
驚いたようにかすかに唇を開いて、あたしを見つめている。
たぶん、いつもと全然違うあたしを。
- 615 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:25
-
耳がカーッと熱くなったのを感じた。
ヤバい。ぜったい赤くなってる!
あたしはあわててそっぽを向いた。
「遅っせーーよ」
「ご、ごめん」
ドアを開けた家政婦さんは、あたしたちの姿を交互に眺めやると
こぼれ落ちそうな大きな目にカッと力をこめて
グッと拳を握ると、妙に満足げにカックンとうなずいた。
「完璧です!」
「は?」
「あ、いえ。失礼いたしました」
すっと元の表情に戻る家政婦さん。
なんか妙な人だな。ま、いいか。
家政婦さんが目で「ついてきてください」と合図を送ってくる。
- 616 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:26
-
「行くよ、ほら」
あたしはまだドキドキしながら、
トメっちの横をすり抜けて家政婦さんの後をついていった。
あー、もう、ハイヒールが歩きにくいったら!
慌てて追いかけてきながら、トメっちが上ずった声で話しかけてくる。
「なんか、やっぱ恥ずかしいね」
「ウン」
「あ、あの、よっすぃ〜……似合うね」
「……トメっちもね」
それっきり、うちらは黙って家政婦さんの後ろを歩いた。
◇ ◇ ◇
- 617 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:27
-
案内された大広間では、マジで舞踏会が繰り広げられていて、
あたしたちと同じように正装したたくさんの人たちが
流れてくる音楽に合わせてくるくると踊っていた。
華々しくいくつも吊り下がったシャンデリア。
中央には大きな階段。金色の手すり。赤い絨毯。
うわーーちょっと、なんてゆーか、こういうのって
宝塚とかディズニーとか、そういうとこにしか生き残ってないのかと思ってたけど。
トメっちも感心したように、おずおずと広間を見渡す。
「ねぇ、社交界っていうのかな、こういうの」
「なーんか、ディズニーランドのホーンテッドマンションに似てね?」
「シーッ!よっすぃ〜。お化け屋敷と一緒にしちゃだめでしょ!」
壁際のテーブルには、これまた豪勢なオードブルがずらりと並んでる。
トメっちがそれらを興味深そうに凝視する。
「これが噂のキャビアってやつかしら」
「フェラガモってのはどれだ?」
「フォアグラでしょ!」
こそこそ貧乏くさいことを囁きあっていると、
蝶ネクタイのボーイさんがすいっとあたしたちに近寄ってきて
足が長くて背の高いグラスを手渡してくれた。
注ぎ込まれたのは、しゅわしゅわと音を立てる金色の飲み物。
- 618 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:28
-
「これってシャンパン?」
「えー、お酒じゃん。飲んでいいのかな?」
ちょろっと舐めてみる。
ぶっ、なんだよこれ! シャンメリーじゃん!
「ダッセーーー!!!」
「あはは、お酒のわけないよね〜」
「ね、この料理、勝手に食べていいのかな」
「ちょっと、よっすぃ〜、まだ誰も手をつけてないじゃない」
食べていいかと訊こうにも、なにしろまわりは知らない人ばかり。
同い歳くらいの女の子たちもいるけど、みんな学校が同じなのか
固まってホホホとしゃべくってて、あたしたちには目もくれない。
しょうがなく壁際で二人でコソコソしゃべってると、
周囲から「キャア」とか「あら」とかいう声があがった。
顔をあげると、そこにはいつの間にやら文麿の姿。
「やあ、二人とも想像以上にお美しい」
文麿はそう言ってキザにシャンメリーを掲げた。
うちらに気づいて、どうやらわざわざあいさつに来たらしい。マメなオトコだ。
- 619 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:28
-
トメっちは誉められて照れくさそうにしながらも、
すっと背筋を伸ばし、愛想よくにっこりと微笑む。
「今日はお招きいただいてありがとうございます」
うえっ。
あたしはシャンメリーを吹き出しそうになった。
そんな気取った挨拶、どこで覚えたのさ、トメっち。
思いがけず礼儀正しいトメっちに気をよくしたのか、
文麿がフッと目を細めて仰々しく腰をかがめた。
「こちらこそ、石川さんのようなお美しい方に来ていただけるなんて光栄です」
ぎゃー!! もうやってれんわ。
あたしは吹き出しそうになるのをこらえながらソッポを向く。
トメっちが靴の先ですばやくあたしのスネを蹴った。
「いてっ!」
「? 吉澤さん、どうかしたの?」
「いえいえ、何でもないんです。それにしても盛大なパーティーですね」
トメっちは素知らぬ顔でにっこり。
いってえ〜な〜。何すんだよっ。もぉ。
- 620 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:29
-
涙目で睨むあたしにはおかまいなしで、
トメっちと文麿は楚々とした社交界トークを繰り広げる。
「両親がヨーロッパかぶれでね、お恥ずかしいよ」
「そんな。私、社交ダンスって初めて見ました。素敵ですね」
「おや、興味ありますか?」
「絵本で見てキレイなんだろうなあって。……ふふっ、子供っぽいですね」
「せっかくだから、石川さんも踊ってみませんか?」
「えっ、でも全然わからないし……」
「大丈夫。僕がリードしますから」
トメっちが、困ったようにあたしを見上げた。
んな顔されたって……。あたしは肩をすくめてトメっちを見下ろす。
自分が言い出したんじゃん。自分で決めなよ?
……断ってほしいけど、さ。
「簡単ですよ。さあ」
文麿が人懐っこい笑顔で再び手を差し出す。
トメっちは緊張したようにきゅっと唇を結ぶと、おずおずと文麿の手をとった。
- 621 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:30
-
ムカーー………
あたしは内心かなりぶんむくれて壁の花と化していた。
甘ったるいシャンメリーをぐいっとあおる。
トメっちのダンスはおせじにも上手とは言えなかったけど
文麿のリードがいいのか、それなりにサマにはなっていた。
ステップを覚え始めて、トメっちの顔に楽しげな笑顔が浮かぶ。
それを見つめる文麿の涼やかな瞳。
信じられないほど細い腰に、やんわりとまわされる腕。
くるくると回りながら楽しげに踊る二人。
ムカーーーー………
たっぷり5曲も踊って、やっと二人は戻ってきた。
周囲から、ほほ笑ましげな拍手が起こる。
「どちらのお嬢様?」「なんてかわいらしいの」なんて声も聞こえてくる。
そこの弁当屋の娘ですよ、ったく!
ちなみに三角巾にかっぽう着でも美人です!
- 622 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:31
-
「ああ、楽しかった。よっすぃ〜も踊ってみたら?」
「いい」
それよっか。
「やい、文麿」
「なんだい、吉澤さん」
「あたしも、それ着てみたい」
は? 自分の王子様ファッションを指さされた文麿の目に疑問符が浮かぶ。
トメっちが、あわててあたしをたしなめる。
「よっすぃ〜、変なこと言わないの。せっかくドレス似合ってるのに」
「トメっち、止めるな!」
「止めるわよ!」
いきなり素丸出しでぎゃあぎゃあやり合うあたしたちを見て周囲はポカン。
文麿は可笑しそうに、いたずらっぽく笑った。
「まあまあ石川さん。いいんじゃないかな、仮装みたいで面白いよ」
仮装? このドレスだってじゅうぶん仮装だっつーの!
- 623 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 00:32
-
鼻息荒く控室に戻って髪をわしゃわしゃと解くと、
ヘアメイクのお姉さんがまたまた呆れたような顔であたしを見た。
「あんた、アホちゃう?」
「は?」
「いえ、なんでもございませんわ〜」
アホ? 今、関西弁でアホって言ったよねぇ、この人。
あたしは目を細めて、鏡のなかのお姉さんをジロ〜リと凝視する。
青いカラコンを入れた金髪のオネーサンは、素知らぬ顔。
むっかつくー。アホで悪かったなぁ、アホで。
「ビシッと決めてください、ビシッとぉ!」
「はいはい」
フン、見てろよ文麿。
そのカッコは、あたしのほーが絶対似合うんだからなあっ。
- 624 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/10(土) 00:33
-
本日はここまでといたします。
- 625 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 09:12
- トメっちネタ満載でチョー楽しいのれす。
思わずにま〜っとしてしまいますよ。
段々登場人物も増えて、ますます楽しみです!
最近リアルでは見てないけど
王子様ファッションのよっちゃん、
ゼッテーかっこいいと思う!見たいぞー!
- 626 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 11:58
- 毎回楽しませてもらってます、いしよし不足解消には最高です。
また良いところで終ってますね。
次の展開が待ちきれません。
- 627 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 12:33
- ふと思い出しました。
よっちゃんは髪切ったんだろうかw
- 628 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/10(土) 15:31
- 三連休ですね。石川さんと吉澤さんには連休とかあるのでしょうか。
625> 名無し飼育さん様
登場人物は増えましたが、あまり物語にはかかわらない予定でございます。
まあ、隠れキャラみたいなものでしょうかw
王子様よっちゃん、ちょっとどうかと思うくらい似合いますよね〜。
626> 名無し飼育さん様
いつもありがとうございます。
ぜひ今後も、ご感想等、レスいただけると励みになりますです。
627> 名無し飼育様
あ、切りました。リアルいしよしのように、注意されたらすぐ切っておりますw
あれは雪ぐま的にはけっこうツボでしたね〜。
それでは、本日の更新にまいります。
- 629 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:32
-
「あーあ、せっかくかわいしたったのにな〜」
ヘアメイクのお姉さんはブツブツ、
ええまあ、あれはあれでいいんですけどぉ、
ちょっとね、気に入らないことがあったんで。
「はい、できましたよ」
「おっ、いいっすねぇ」
鏡の中には髪を後ろでひとつにビシッとまとめたシブいあたし。
右サイド確認、OK。左サイド確認、OK。
うん、やっぱこっちのほうが落ち着くよぉ。
「吉澤様、お衣装は、赤と白がございますが」
タイミングよく、たれ目の家政婦さんが声をかけてくる。
あたしが選んだ衣装は白。
トメっちとお揃いの白で勝負だ!
がるるるるるるるる。
- 630 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:33
-
ぐふっ。
我ながら似合ってる白い詰め襟に金ボタン、金の飾り紐。
似合いすぎて、正直どうかと思うくらい。
一緒に鏡を確認していた家政婦さんがぽうっとした顔をする。
さっきまで呆れ顔だったヘアメイクのお姉さんも、
そんなあたしの姿を見て「ほぉ」と感心したような声をあげた。
ほらね? こっちもけっこうイケるでしょ?
「完璧です!」
「よし、行ってこい、男前!」
「ういっす!」
◇ ◇ ◇
- 631 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:33
-
金色の派手なマントをひらめかせながら大階段をおりてきたあたしに、
会場からはワッと大きな歓声があがった。
わはは、男装の麗人登場!
自分で言うなってか?
案の定、すぐにたくさんの女のヒトたちが集まってきて
あたしのまわりは賑やかに取り囲まれてしまう。
どーだ文麿! まあ、ざっとこんなもんよ。
「うーん、主役の座をとられてしまいそうだね」
文麿が腕を組んで口を尖らせる。
「まあまあ、余興、余興」
あたしはしてやったりとばかりにニヤニヤしながら、
ひとしきりご婦人方に愛想をふりまいた。
なんか春のバレーボール大会を思い出すなあ。
あたしって、どーしてこういうの得意なんだろ。
自分でも妙にぴたっとはまってる気がするんだよね……
「天然ジゴロ」
「は?」
「いや、なんでもないよ」
文麿がひょいと肩をすくめる。
- 632 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:34
-
まあ、いいや。トメっちはどこだ? あ、いたいた。
遠くの壁際からジロッと不機嫌そうな視線を投げてくるトメっち。
あたしはとたんにご機嫌になる。
まあまあ会長、ヤキモチ妬くなって。
すぐに行くからさぁ〜、ふっふっふ。
スキップでもかましそうな勢いで歩きかけた時、
いきなり後ろからツンと引っ張られるような感覚がした。
「ぅおーーーっほほほほほ、ぅおーーーっほほほほほ!」
鼓膜をつんざく笑い声にぎょっとして振り返ると、
すごい厚化粧のオバ……、いや、有閑マダムが
なんと、あたしのマントの裾をヒールの爪先でちょいと踏んづけてる。
な、なんすか一体?!
マダムはあたしと目が合うと、頬肉を盛り上げながらにまぁっと微笑みかけてきた。
「あなた、あたくしのお茶会にいらっしゃらない?」
ふぇ? お茶会?
有閑マダムは、羽根の扇子で口元を隠しながら
あたしにチラと流し目をくれた。ぞわっ。
- 633 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:35
-
「おや、白百合伯爵夫人。彼に目をつけるとは、相変わらずお目が高い」
文麿がニヤリと笑って愛想よくマダムに声をかける。
は? 彼ってなんだよ、彼って。
「文麿様に負けず劣らずの美少年ですワァ」
「いやあ、僕なんて彼の前ではかすんでしまいますよ。はっはっは」
「うちの娘にも紹介したいワァ。白百合つぼみって言いますの。わたくしに似て、なかなか美人ですのよぉ?」
そりゃ期待薄っすね……。
ってか、んなことはどうでもよくてー。
伯爵だかなんだか知らないけど、このままじゃたいへんなことになる!
あたしはあわててマダムに弁明スタート。
「奥様、せっかくですが、私、女なんです。だから、あの」
「んっまあ〜、そんなことを気になさるなんて古風なお方」
「や、古風ってゆーか、なんとゆーか……」
「ぅおーーーっほほほほほ、ぅおーーーっほほほほほ!」
んぎゃっ!
ひっくり返りかけて、背筋でなんとかこらえる。
のけぞったあたしに覆いかぶさるように
白百合伯爵夫人は容赦なく顔を寄せてきた。
- 634 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:36
-
「遠慮なさることは何もありませんのよ。恋愛は自由ですわ」
「は、はぁ……」
にじり寄られてヨロッと後ずさる。
白百伯爵夫人は、あたしの顔をチラと見上げると
まるで少女のようにポッと頬を染めて囁いた。
「わたくし、あなた様なら夫を裏切ってもかまいませんわ」
「は?」
「後ほど、お揃いのブレスレットをお届けしますわ。受け取ってくださるわね?」
「えっ? いや、あのぉ〜〜……」
やけにねっちりとした白百合伯爵夫人の視線があたしにまとわりつく。
こめかみにたらりと冷や汗が流れた。
こ、こまるなぁ〜、そんなマジになられると。
あわてて文麿を見ると、可笑しそうに笑いをこらえながら知らんぷり。
くっそぉ〜〜〜、助ける気ゼロかよ!
- 635 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:36
-
あたしは冷や汗を隠しつつフッと微笑むと、
すばやく体勢を整えて、さらりと髪をかきあげた。
「奥様、あなたは罪な方ですね」
「えっ?」
「ブレスレットで私の心を縛ってしまおうだなんて」
「まあ、そんなつもりじゃありませんわ」
おろおろする白百合伯爵夫人。
あたしはこれでもかってほどの憂え顔で、
かすかに首をかしげて彼女の頬にそっと指をふれた。
「もしも、二人が運命ならば、そんなものは必要ないはず……」
「ああん、ス・テ・キ……。」
ふぅぅぅ〜〜〜〜っ。
身悶えしながらいきなり昏倒する白百合伯爵夫人。
キャンキャン吠える小犬ちゃんとともに夫人が担架で運ばれていってしまうと
あたしはふうっと息を吐いて、額の汗をぬぐった。
あー、助かった。もう、勘弁してよ。
- 636 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:37
-
「吉澤さん、なかなかやるね」
文麿はニヤニヤ。
こいつはよぉー!! ぜったい楽しんでたんだ、嫌がらせだ!!
ギロッと睨むと、とうとう耐えきれなくなったように文麿はプーッと吹き出した。
心底おかしそうにくっくっと肩を揺すりながら続ける。
「せっかくだから、お嬢さんのこと、紹介してもらえばよかったのに」
「なに言ってんの、アンタ」
「ほんとに美人だよ、奇跡的なことに」
へえ。そうなの。
でも、悪いけど興味ないや。
「アンタが紹介してもらえばぁ?」
「残念ながら、僕も興味ないんだ」
文麿は肩をすくめる。
ほーお、じゃあ誰に興味があるっていうの?
聞きたいけど聞けない。あたしは苦い薬を飲んだみたいな気持ちになって
口をヘの字に歪めると、プイッと横を向いた。
- 637 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:38
-
ド迫力の白百合伯爵夫人がいなくなったからか、
あたしと文麿のまわりには再び女のヒトの輪ができていた。
うちらと同じくらいの歳の女の子、年上のお姉さん、美しいマダム。
それぞれにきらびやかで、まるで色とりどりのお花畑にいるみたい。
文麿は、慣れた様子でにこやかに話し相手をしている。
いつもこんなにたくさんの女のヒトに囲まれてるんだろうか。
だから、あんなにつるつると調子いいことばっかり平気で口にできるの?
……やめてほしい。
トメっちはオトコに慣れてないんだ。
あんたみたいなきれいなオトコに甘い言葉を囁かれたら
きっとすぐにその気になってしまう。
あたしは嫌な考えを振り払うように頭を振ると、
今度こそトメっちのところへ行こうと、そっと輪を離れた。
と、また、ワシッとマントの裾をつかまれてしまう。
「どちらにいらっしゃるんやの?」
おそるおそる振り返ると、今度は同い年くらいの純朴そうな女の子。
ああ、これなら逃げれそう。なんか、なまってるし。
- 638 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:39
-
あたしはホッと安心して、少し身をかがめると耳元で囁いた。
「ごめんなさい。友人を待たせているので」
「また戻ってくるかの?」
「ええ、たぶん」
ちょっと首を傾けてニコッと微笑んでみせると、
彼女はポッと頬を赤らめて「ズワーイ!」と小さくはしゃいだ。
ははっ、よっくやるよ、あたしも。
このスケコマシぶり、文麿のこと何も言えないかも。
トメっちは所在なさげに壁際にポツンと佇み、
手にしたグラスにじっと目を落としていた。
人知れずひっそりと咲いた百合のようなその姿。
松浦や美貴みたいに、パッと目立つ女の子じゃない。
だけど、どことなくしっとりとした色を身に纏っていて。
「トメっち〜、どお、このカッコ〜」
なにか考えごとをしてたのか、
声をかけるとトメっちは驚いたようにハッと顔をあげた。
そして、あたしをかるぅく睨むとツンと横を向いてしまう。
「なにやってんのよ、もう」
あれ、かっこよくない? なんで怒るのさ。
- 639 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:39
-
やだなあ、追いすがるご婦人方を振り切って馳せ参じたわけですよ?
あたしは、わざと低い声をつくってトメっちに手を差し出してみる。
「おいで、踊ろう」
「……踊れるの?」
踊れません。冗談です。すいませんでした。
「まー、二人ともかわいいわねぇ」
「ほんとの王子様とお姫様みたいねぇ」
また集まってきた女のヒトたちが、そう言ってはため息をつく。
さっきまでは放置だったのに、なんで急にこんなに囲まれちゃってんだろ。
あたしたちは目を見合わせた。
「なんか、すごい見られてんね」
「もう、よっすぃ〜がそんなカッコするからでしょ」
「やっぱ怒ってんの?」
「怒ってないよ、別に」
「嘘だ、なんかムッてるよぉ」
ムッてないよ。
そう言ってトメっちはシャンメリーを一口飲むとうつむいた。
あたしは心配になって、その顔をのぞきこむ。
トメっちは長いまつげをふせたまま。
- 640 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:40
-
困っちゃったなあ。
ちゃんと顔見て話してよ。
なんか、なんか気まずいじゃん。
あたしは急に喉が渇いてきた。
でも、こんな時に限ってボーイさんが近くにいない。
あたしはトメっちが持ってるグラスを指さした。
「それ、一口ちょうだい」
「あ、うん」
グラスを受け取り、口に持っていきかけてハッと手を止める。
薄いガラスの縁にほんのりとついている口紅のあと。
トメっちの唇がふれた場所。
うわ……。あたしは妙にドキドキしてさりげなくグラスをまわす。
そして、ピンク色のあとがついてない場所を選んで唇をつける。
はーーー、あたしってホント意気地なし。
グラスを返す時に、トメっちは顔を上げ、
あたしの目を見て「ほんとに怒ってないよ」と呟いた。
なのに、ホッとして微笑むと、またパッと視線をそらしてしまう。
あたしは口を尖らせた。
- 641 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:42
-
「じゃあ、なんでそっぽ向くのさ」
「……なんか、恥ずかしーのよ」
「なにが?」
よっすぃ〜、かっこよすぎじゃない?
確かにそう呟いて、トメっちは照れくさそうに小さく笑った。
マジで? あたしのことそんなにかっこいいって思ってくれてるの?
うひゃー、それだけでもわざわざ着替えたかいがあるよね。
にやついてくる口元を必死で抑えようと小さく咳払いをする。
「んっと……トメっちも、きれいだよ」
こんな格好してるから? あたしも、生まれてはじめて素直にそう言えた。
いつもみたいにキショく照れまくるかなと思ったら、
トメっちは三日月のように目を細めて、ふわりと笑っただけだった。
まるで、生まれながらのお姫様みたいに。
うわ。
光がこぼれおちるようなその笑顔に、あたしは思わずぽうっとなる。
ねぇ、女の子って、着る服でこんなに雰囲気が変わるものなの?
だとしたら、こんなふうにキラキラした世界にいるほうが、トメっちは幸せ?
- 642 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/10(土) 15:42
-
満ちた潮があっけなく引くように、あたしは急に寂しくなった。
おそろいみたいな白い衣装で、王子様とお姫様ぶってるあたしたち。
だけど、あたしは所詮ニセモノの王子様。
目を上げると、赤い絨毯の上に気品溢れる、ほんとの王子様がいる。
文麿は、まだたくさんの女のヒトに囲まれていた。
なのに、時々こちらを見て、何度もやさしく微笑みかけてくる。
あきらかにトメっちの視線をとらえて。
トメっちも、そのたびに驚くほど優雅に微笑みを返す。
あたしは天をあおいだ。
トメっちは、本物のシンデレラになれるのかもしれない。
- 643 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/10(土) 15:43
-
本日はここまでといたします。
- 644 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 16:54
- 完璧です!(笑)
登場人物が増えて、小ネタも満載。言う事なしです〜
石川さんの描写もいいし、夫人にも笑わせていただきました。
しばらくいい気分で過ごせそうですw
- 645 名前:23 投稿日:2004/01/10(土) 17:00
- 更新、お疲れ様でした。
いやはや〜、何気に登場ですか、有閑マダムw
マジでうれすぃ〜っす!
何だか最後の一行がちょっとせつなかったです。
自分はかねがね、よっちぃ主演で「リボンの騎士」を実写化して欲しいと願っておりましたが、
何と雪ぐまさんがその夢を叶えて下さいました。ふはぁ〜、感激ですわい!
いしよしの美しい姿が今、脳裏に・・(妄想)
次回も正座で身を清めてお待ちしておりますですよ。
- 646 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 11:51
- よっちぃ切ないね、よっちぃ。
- 647 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/11(日) 18:08
- 今日のハロモニは、一徹さんの「肩揉んでほしいんだよ!」が
鼻血が出そうに素晴らしかったですね。
よっちぃ、あんた仕事人や……w
644> 名無し飼育さん様
ありがとうございます。今後もお気に召していただけることを祈っています。
ちょっと(やっと?)展開が変わるのでドキドキです。
645> 23様
いつもありがとうございます。なにげにマコ好きな雪ぐまですw
「リボンの騎士」実写版、ぜひ見たいですねぇ!
コスプレだけでもやってくれませんかねぇ……事務所に投書しようかなw
646> 名無し飼育さん様
切のうございます。そして今後ますますうちのよっちぃは試練の時……
それでは、本日の更新にまいります。
- 648 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:09
-
学校がはやく終わったから、
トメっちのところに遊びに行くことにした。
今日も文麿が来るかと思うとなんとなく落ち着かなくて。
「な〜んか仮装大賞って感じだったねぇ」
じゅわじゅわとコロッケを揚げながら、
三角巾のしっぽを震わせてトメっちがクスクス笑う。
仮装大賞ねえ。確かに。
「まさか、ご近所であんなことが起こってるなんて思わなかったよ」
「ほんとにね。別世界だよね」
「別世界とは心外だなあ」
そののんきな声に振り返ると、噂の主、
綾小路文麿がニコニコ笑ってカウンターの外に立っていた。
ちぇ、やっぱり来やがった。
「コロッケ2つ」
「はいはい」
あたしは立ち上がって揚げたてのコロッケを袋にガサガサ突っ込むと、ホイと手渡した。
トメっちはまだ揚げものの最中で手が離せなさそうだからね。
な〜んて、ほんとは文麿とできるだけ話をさせたくないだけ。
- 649 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:10
-
文麿は、ピポピポ会計するあたしを不思議そうに見た。
「今日はバイトしてるのかい?」
「ってわけじゃないけどぉー」
キッチンの奥を覗き込もうとする文麿の視線をさりげなく遮ってみたりして。
なのにトメっちは、かっぽう着の裾で手を拭きながら
わざわざあいさつに出てきてしまった。
「こんにちは、文麿さん」
「やあ、石川さん。昨日は来てくれてどうもありがとう」
「こちらこそ、とっても楽しかったです」
「それなら良かった。あのドレス、とてもよく似合っていたね」
「そんなぁ。あんな素敵なドレス、生まれて初めて着せてもらって」
ポッと紅潮するトメっちの頬。
なんだよ、やっぱうれしかったんじゃん。仮装大賞じゃないんかよ。
胸の底が活火山なみにグラグラと沸き立ってくる。
あたしはガッと話に割って入った。
- 650 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:10
-
「ねーねー、あたしはどーだった?」
「キミはとってもハンサムだったねぇ。すっかりご婦人方の人気を奪われてしまったよ」
「わはは、悪いね〜?」
「もう、よっすぃ〜ったら」
トメっちが口元に手をあてて、おかしそうに笑う。
「ごめんなさいね。文麿さんのお誕生会なのに、この人ったら」
およ? なんかまるで奥さんみたいな言い方じゃない?
うわ、ヨシコうれしいかも……
だけど、ポワワとしたのはあたしだけみたい。
文麿とトメっちは、なにやら身を乗り出して楽しげに話し始めた。
「ところで、今日こそ阪神優勝、決まりますよね?」
「たぶんね、ああもうドキドキするよ!」
「キャー、どうしよう〜」
いきなりトラ話かよっ!
てか、文麿って阪神ファンなんか……
- 651 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:11
-
「ね、石川さんは道頓堀ダイブ、行くの?」
「うーん、お店がありますから」
「そっか。僕もじいやがどうしてもダメっていうんだ」
「お互い、残念ですね」
「まったくだね。くやしいよ」
やっぱり、なんか妙にウマがあってるんだよなあ、この二人。
てゆうか入り込めない。まったく入り込めないトランスワールド。
あ、けっこううまいねあたし。なんて考えてる場合ではなく。
「でも、思いがけず身近にトラファンがいてうれしいよ」
「あ、私もです。関東だと少ないですよね?」
「僕、大学は関西にしようかなあ。でも、そうすると石川さんちのコロッケが食べられなくなっちゃうし」
「フフッ、またまたぁ」
「ほんとだよ?」
「お世辞でもそう言ってもらえるとうれしいな。ありがとうございます」
「ほんとだったら」
文麿が大まじめな顔でそんなことを言うから、
トメっちは恥ずかしそうに目を伏せた。
その二人の横顔。
王子様みたいだった文麿に手をとられ、
楽しそうに踊っていたトメっちの姿が、イヤミなほど鮮明に脳裏に蘇る。
- 652 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:12
-
トメっちが、甘えたような上目遣いで小さく呟いた。
「文麿さんは、ほんとにお上手ですね」
文麿はふにゃっと表情を崩してうつむくと、
アイツらしくもなく照れくさそうに囁いた。
「だって、ほんとにそう思ってるんだよ」
あたしは鼻先をガンと殴られたような気分。
もうだめだ。
胸の中にドス黒い渦が巻きあがって息もできない。
呼吸困難で、頭がガンガンする。
あたしはくるりと踵を返してキッチンの奥に隠れると、
すばやく携帯を取り出して美貴に電話をかけた。
◇ ◇ ◇
- 653 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:13
-
「ったく、デリバリーピザじゃないんだから」
「ごめんごめん」
「まー、いいけどね。お互い様だし」
裸の肩をむきだしにしたまま、
フーッと煙草のけむりを吐き出す美貴。
そんなに張りきったってわけじゃないのに
彼女は、ひどく疲れたような横顔。
「そっちも何かあった?」
「んー? 毎日生きた心地しないよ。亜弥ちゃん、モテるから」
「でも、誰にもなびかないじゃん」
「……次はなびくかもしれない、今度はおちるかもしれないって」
なるほどね。
あいかわらず恐怖のロシアンルーレットってわけか。
- 654 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:13
-
美貴はかすかに頬を歪めると、
ビールの空き缶にもみ消した煙草をポイと投げ入れた。
そして、投げやりに呟く。
「忘れたい」
驚くほど暗い声色。
あたしは美貴を抱き寄せた。
「言わないうちに?」
「言えないよ」
胸に額を埋めてくる。
きめ細やかなぴかぴかの肌。細い肩。
東洋の花のようなちょっと大人びた香水の香り。
こんなに魅力的な女の子なのに、口に出せない想いをかかえて。
そうだね。言えないよね。
世の中にはいくらだってオトコノコがいて
なにも好き好んでオンナノコとつきあうことない。
あたしたちはなぜか親友のオンナノコに、
勝手に捕らわれの身になってしまっただけで。
- 655 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:14
-
文麿と言葉を交わしながら、頬を赤く染めたトメっち。
恥ずかしげな、ちょっと媚びるような上目遣いでアイツを見た。
胸が焼けるような腹立たしさと、なんとも言いようのない恐怖があたしを包む。
ほんとになびくかもしれない。落ちるかもしれない。
きっと美貴よりも先にあたしのほうがロシアンルーレットの弾に当たる。
心の中の水晶玉に映るのは
粉々に打ち砕かれて奈落の底に落ちてゆく未来の自分の姿。
あたしは震えながら美貴をぎゅうっと抱きしめた。
美貴が、憐れむようにあたしの背を撫でる。
「あたしたち、同じ日に告って玉砕してみる?」
「ハハ、それで慰め合って恋人同士になるの?」
「なれるかな?」
「かもしれない。わからない」
臆病なあたしたちは、互いの傷口を塞ぐみたいに、そっと唇を寄せた。
ところがその直後、とんでもないことが起こった。
油断してたんだ。まだ全然、時間が早かったから。
- 656 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:15
-
ガラッ、バタバタバタバタバタバタバタ……
「やべっ!」
誰かが階段を駆け上がってくる!
しかも、この音は……!!!
あたしと美貴は飛び起きてベッドの下に散乱していた制服をわしづかみにした。
が、間に合うはずもなく。
バタン!
「よっすぃ〜〜!阪神優勝〜〜〜!………え?」
三角巾をつけたままのトメっちの動きが凍りついた。
当たり前だ。ベッドのうえにハダカの女が二人でいたら。
……ああ、なんてことだ。よりによって。
- 657 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:17
-
「ひ、ひさぶり〜」
美貴が場違いなあいさつをぶちかます。
トメっちがかっぽう着の裾をぎゅっとつかんで、一歩後ずさった。
そして、あたしのほうを見る。
生真面目そうな細い眉を思いっきり八の字にひそめて。
心底、怯えたような目で。
「……どういうこと?」
「や、どういうことって……」
こういうことだよ。
あたしは、ため息をついて目をそらした。
そんな化け物を見るよーな目で見なくても。
トメっちは、くるっと踵を返すと、
そのままバタバタと階段を駆け下りていってしまった。
玄関の扉をピシャッと閉める音が冷たく響いてくる。
ガクッ。あたしは思いっきりうなだれた。
「……終わったな」
「ごめん」
「美貴が悪いんじゃないよ」
- 658 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/11(日) 18:18
-
どうせ最初からダメだった。
彼女の表情によぎる一瞬の嫌悪を、あたしは見逃していなかった。
女と寝てるあたしを、信じられないという目で……
肩に落ちるあたしの髪を、
美貴が壊れものに触れるみたいにそっと撫でた。
「あたし、玉砕してこようか?」
「バカ。いいよ」
あたしはフッと頬をゆがめて、自分を嘲った。
粉々に打ち砕かれて奈落の底に落ちてゆく。
なんだ、あたしのせいじゃんか。
こんなにすぐのことだったのか……
- 659 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/11(日) 18:19
-
本日はここまでといたします。
ああ、ついにやってしまった……
- 660 名前:teru 投稿日:2004/01/11(日) 18:25
- ああ、ついにやってしまった
リアルタイムで見てしまった・・・
しかも初レスやっちまったw
これからも見続けるんで焦らず頑張ってくださいね
- 661 名前:シバシバ 投稿日:2004/01/11(日) 18:27
- 初めまして!全部読みました。最高です
よっすぃ〜とトメッチ・・・想像つきません・・・ベストシーンです!頑張って下さいm(_ _)m
- 662 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 18:47
- おいらも初レスっす
よっちぃ・・・せつないです
いつも楽しみに読ませてもらっています
頑張ってください
- 663 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 19:28
- まさかこんな展開が待っていようとは!?
よっすぃ、ついにやっちまいましたね
好きという気持ちが抑えられないがゆえにしてしまった大きな代償
うわ〜これからどうなるのか気になります
- 664 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 20:36
- ギャアアアアアア!
眠れません。マジで眠れません……
作者様お得意のジェットコースターロマンスが始まるヨカン……
- 665 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 21:27
- 私も初めて書かせていただきます。
いつかはこんなシーンがあると予想してはいたんですが…。
藤本さんの「わたし、玉砕してこようか?」に優しさを感じました。
今回のシーンは、二人の切ない感じがものすごい伝わってきます。
次の更新も楽しみにしてます。
- 666 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 22:11
- うわぁぁ!!
……いきなり叫んでスイマセン。
なんていうか、ここできられちゃったら眠れませんよ!(笑)
藤本さんの描写がいいな〜w
なんて、でれでれしていたらこれですもん…。
本当に気になります!楽しみにしてますー
- 667 名前:なち 投稿日:2004/01/11(日) 22:57
- あ〜ついにこの瞬間が( ̄□ ̄;)!!
トメっちの本当の胸の内が気になる(>_<)
- 668 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 23:13
- おいおいおいおいっ!!
なんつーとこで……(泣
トメッチどうでるのか…そして密かにあやみきにも期待!!
とにかく待ってます。(マジで
- 669 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 00:17
- あちゃ〜〜〜〜っ、遂にやっちゃいましたね(××)
これが、トメっちに良い薬になると良いのに。。。
ともかく、よっちゃんにリベンジのチャンスを(・・O
- 670 名前:23 投稿日:2004/01/12(月) 00:32
- 更新、お疲れ様です。
ひょえぇぇ〜っ!来たよ来ちまったよ、ついにこの瞬間が・・・
今日のハロモニ。NG集でなごんでいたところに、この展開とは雪ぐまさん、
むごい、むごぅございますぅ(泣)
今回は美貴ティにもせつなくなりましたわい。
文麿さんがマジでイイヤツなだけによっちぃは心配ですよね。
続きが気になって今夜は眠れませぬw
- 671 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 02:28
- ミキティ優しいね
- 672 名前:達吉 投稿日:2004/01/12(月) 20:53
- 初めてレスさせてもらいます。
オイラ的には藤本のキャラがすごい好きです。
なんか・・・惚れるw(笑)
このシーン大好きですw^^
これからの展開が気になりますねぇ〜。
頑張ってください!
3作とも、最高ですね^^
こんな小説に巡り合えて嬉しいです!!!^^
- 673 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/12(月) 22:04
- 皆様、あたたかいレス、ありがとうございます。
とてもとても励みになります。またよろしくお願いします。
初レスくださった方、とても嬉しかったです。またご意見聞かせてくださいませ。
660> teru様
初めまして! あのシーンをリアルタイムとは当たりなのか、はずれなのか…w
今後ともよろしくおつきあいくださいませ。
661> シバシバ様
初めまして! 初心者作者でございますが、頑張りたいと思います。
今後ともぜひご愛読をお願いします。
662> 名無し飼育さん様
初めまして! いつもお読みいただき、ありがとうございます。
うちのよっちぃ、思春期&青春まっただなかの青い切なさでございます。
663> 名無し飼育さん様
はい、ついにバレちまいました。この大きな代償の後始末を
うちのよっすぃはうまくできますでしょうか。……見守ってくださいませ。
664> 名無し飼育さん様
あんなにのんびり進んでたのにすみませんw
やっぱり恋愛はジェットコースターが最高でございますw
- 674 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/12(月) 22:05
- 665> 名無し飼育さん様
初めまして! 藤本さんってこういうこと言いそうな気がするのですよ。
ヤンキーっぽい仁義とか人情味を持ってそうというかw
雪ぐまのなかでは、かなり魅力的な女の子に映っています。
666> 名無し飼育さん様
でれでれしていただけたようで光栄です。雪ぐま自身も萌えまくって書いておりますw
そしてジェットコースターロマンスへ突入ですw
667> なち様
まったく、うちのよっちぃには困ったものです。
いくらキショキャラトメっちだって普通の17歳の女の子なのに
たぶんうちのよっちぃは自己中なうえに、油断しすぎなんですな。
いつもお読みいただいてるなち様にはご心配をおかけしておりますw
668> 名無し飼育さん様
いしよしとあやみき、まったくテイストの違う二つの恋を
なんとかうまく書きこなしたいと思っておりますです…
669> 名無し飼育さん様
あちゃ〜〜〜っ、ですよね。良い薬にはなってると思うのですが
うちのヘタレよっちぃにうまくリベンジできるかは不安でございますw
670> 23様
いつもお読みいただいてるのに、むごい仕打ちで申し訳ございません(汗
この話の中では、文麿ははっきり言ってよっちぃよりもイイヤツw
よっちぃには心を入れ替えるように言っておきますw
671> 名無し飼育さん様
こんな友情もアリだと思っておりまする。
672> 達吉様
初めまして! あたたかいお言葉、とっても光栄です!
うちの藤本さんを気に入っていただけてありがとうございます。
雪ぐまもすごく好きなキャラなのでございます。リアル本人も好きw
それでは、本日の更新にまいります。
- 675 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:06
-
その夜、珍しくトメっちから携帯に電話がかかってきた。
いつも「電話より直接行ったほうがはやい」なんて言って
すぐにうちに乗り込んでくるくせに。
キモくて顔も見たくないってか?
あたしはちょっとばかし傷つきながら、ピッと通話ボタンを押した。
『ごめんね、さっき。ちょっとびっくりしちゃって……』
耳に流れ込んでくる鉄琴みたいに高い声。
明るい声を出そうとムリしているのが丸わかりだ。
あたしは聞こえないように小さくため息をつくと
ぶっきらぼうに声を出した。
「こっちこそ、脅かしちゃって」
沈黙。
あわてたようにトメっちが言葉を紡ぐ。
- 676 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:07
-
『よっすぃ〜って、オンナノコが好きなの?』
「……まあね」
『そっかー。もしかしてそっかなー?っては思ってたけど』
「…………」
『美貴ちゃんって、恋人だったんだね』
「いや、その……」
『もー、言ってくれたらよかったのにー。応援したのにー』
なんだよ応援って。
野球かよ。
『そう言えば“美貴”って呼び捨てにしてたもんねー』
「…………」
『海でも、すっごい仲良さそうだったし』
「…………」
『あ〜全然気づかなかったなぁ〜。あはは〜、私って鈍感だよねえ?』
携帯を通じてキンキンと響いてくる
その距離のある声。
軽やかなリズム。
目の奥が熱くなる。
世界がぼんやりと潤んでくる。
だから、唇をヘの字に歪ませながら、あたしは毒を吐く。
- 677 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:08
-
「うるさいなー。べつに恋人ってわけじゃないし」
『え?』
「たいしたことじゃないし」
『……なにそれ?好きじゃないのにそういうことしてるってこと?』
あたしはトメっちが。
トメっちが、トメっちが、あんたのことが。
いまさら言えない想いは胸の奥底でくすぶって
あたしの肺をドス黒い渦でいっぱいにする。
そして唇から、偽りの真っ黒な噴煙があがりはじめる。
「悪い?」
『へ、へんだよ、そんなのって』
「ふん」
『ちょっと、何よ!』
「まあ、トメっちには一生わかんないキモチかもね」
ピッ!と、いきなり電話が切れた。
- 678 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:08
-
……ツー、ツー、ツー。
「つーつーつー、ってか?」
あたしは携帯を床に放りだした。
お揃いだっけ、これ。
爪先で軽く蹴って、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。
それからガバッと起き上がって携帯を拾い、胸にぎゅっと抱きしめた。
◇ ◇ ◇
- 679 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:09
-
次の日、トメっちはあたしと目も合わせてくれなかった。
勇気を出して帰り道にお弁当屋さんを覗き込んだんだけど、
あたしとわかると表情をこわばらせて、フイッと作業に戻ってしまった。
仕方ないけど。
トメっちにとんでもない隠し事してたわけだし。
そのうえ、あんなふうに言っちゃったし。
当たり前だけど夜も遊びに来なくて、あたしはどんどん後悔しはじめた。
だって、気持ちを伝えて気まずくなったんじゃない。
あんなことで、あたしたちの17年間がフイになっちゃうなんて。
どうせこんな状態なら、せめて気持ちを伝えようか。
あたし、ただの幼なじみみたいな顔してトメっちのことがほんとに好きで、
好きで好きでどうしようもなくて、
あなたにカレシができたらと思うと気が狂いそうだった。
自分が女だってこと、嫌いになっちゃいそうだった。
だから、美貴と寝た。
………まるで理屈になってないな。
- 680 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:10
-
次の日の放課後も、あたしは懲りずにお弁当屋さんをのぞいた。
これまでだって喧嘩くらいしたことある。
どんなにプリプリしてても、謝ったらすぐにトメっちは機嫌を直してくれた。
むしろトメっちから謝ってくることのほうが多かったじゃん。
こんなにヘビーな喧嘩は前代未聞だけど、
もしかして素直に謝れば案外するするっと。
萎えちゃいそうな気持ちをそんなふうに奮い立たせて
カウンターからそっとキッチンを覗き込む。
とたんに、思わず顔をしかめた。
ものすごく不機嫌そうに眉をしかめながらコロッケを揚げてるトメっち。
うわ、やっぱりこれはかなりキてるかもしれない。
「トメっち」
勇気を振り絞って、声をかける。
トメっちの肩がピクリと動く。
だけど、彼女はこちらを見もしなかった。
「ねえ、トメっち。あのさぁ……」
「……帰ってよ」
返ってきたのはゾッとするほど冷たい声。
- 681 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:11
-
「ねぇ、ちょっと聞いて」
「よっすぃ〜は、私のこと、バカにしてるよ」
「は?」
バカにした覚えなんてない。
もしかして「トメっちには一生わかんない」と言ったことだろうか。
「あれは……」
「帰って」
ぎゅっと唇を引き結んだ、かたくなな横顔。
じゅわじゅわとコロッケを揚げる音だけが響く。
だめだこりゃ。あたしは、ため息をついてカウンターを離れた。
離れ際に、やけっぱちになって吐き捨てる。
「文麿とうまくいくといーね」
「え?」
トメっちが、驚いたように顔を向けた。
ふうん、この話なら聞くってわけ?
あたしは腕を組んで眉を吊り上げた。
- 682 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:11
-
頭にカーッと血がのぼってくる。
ほんとはこんなこと言いたいんじゃない。
だけど、キリキリ痛むココロをごまかすように口が勝手に動き始める。
「トメっち、好きなんでしょ? アイツのこと」
「な、何いってるの?」
彼女の顔に、あきらかに動揺が走る。
フン、やっぱりね。言い当てられてびっくりした?
あたし、だてにトメっちのこと見てたわけじゃない。
それって、悲しいことだけど。
あたしは掠れる声を搾り出した。
「よかったじゃん、王子様みたいなオトコで」
「王子様?」
「シンデレラだっけ? 好きだったじゃん」
なぜか、トメっちの目に強烈な怒りの炎が浮かび上がった。
みるみるうちに赤くなると、いきなり持ってた菜箸を床に投げつける。
カシャン!と乾いた音がキッチンに響いた。
- 683 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:12
-
「……よっすぃ〜は、ほんとに私のこと、バカにしてる……」
震える声。
ぎりぎりと睨みつけてくる黒曜石のような瞳。
こんなに怒ってるトメっちを見るのは生まれて初めてだった。
かなりビビったけど、あたしはまだ虚勢を張ってギッとトメっちを睨み返す。
「別に、そんなつもりないよ」
「どうせ私は子供っぽいよ」
「んなこと言ってねーよ」
「じゃあ、何なのよ! シンデレラって何よ! バカにしないで!」
彼女の目から吹き出すように涙が溢れ出した。
たちまちその頬に幾筋もの光る筋がしたたり落ちるほどに。
何にふれた? 何の地雷を踏んだ?
混乱する頭で必死で考える。
そしてふと、ある考えに思い至って青くなる。
トメっちがもしも、決して豊かとはいえない境遇にコンプレックスがあるとしたら。
「もう帰ってよ! アンタなんか大っ嫌い!」
キインと耳に響く悲鳴が、
かまいたちみたいにあたしをずたずたに切り裂いた。
- 684 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/12(月) 22:13
-
ああ、今度こそ、終わりだ。
視界が潤んで、世界がぐにゃりと歪み始める。
あたしはせめて涙だけはみせまいとトメっちに背を向けた。
- 685 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/12(月) 22:14
-
本日はここまでといたします…。
- 686 名前:なち 投稿日:2004/01/12(月) 22:33
- うわぁ修羅場だ…(゚д゚)
こんなにもすれ違ってしまう彼女達…
お互い胸の内を吐き出せれば…何て語ってしまってスイマセンm(__)m
もう言葉に表せません。黙って見守ってます。
やっぱ雪ぐまさん最高です( ○^〜^)人(^▽^ )
- 687 名前:23 投稿日:2004/01/12(月) 23:02
- 更新、お疲れ様です。
くはあぁ・・く・苦しい〜!
よっちぃと同じように、ワタクシも身を切り裂かれるような痛みを
感じております(泣)
このお話は今まで一番苦しい恋ですなぁ・・
いしよしに幸あれとお百度参りしたい気分ですわい。
次回も正座してお待ちしておりますです。
- 688 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/13(火) 02:12
- ずっーとROMってたんですが…今雪ぐまさんの文に切り裂かれました。
すいません、初レスします。
まず、いつも更新してくださる雪ぐまさんに感謝です。
人間味がある描写にただただ圧倒されました。
私の胸も苦しくて…どうしてくれるんですか!?なんて…w
よっすぃの行き場の無い心の痛み、そしてトメっちの心の痛み、
浄化される事を願ってます。勿論ミキティも!!ついでに私も(嘘ですw)
執筆頑張って下さい!!
- 689 名前:わく 投稿日:2004/01/13(火) 14:59
- 雪ぐまさん・・・・あなた天才です☆
ずっと前から読んでました。僕もいしファンのいしよし好きです♪
それにしてもこの展開・・・・ぐはぁっ!!って感じです・・・・・
(0^〜^)(^▽^)
いしよしに幸アレと願うばかりです!!
- 690 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/13(火) 16:00
- 皆様、連休あけとは眠いものですね……
686> なち様
まったく修羅場でございます。そして修羅場がなぜかハマるいしよしw
リアルの二人にはぜひラブラブしていてほしいものです。
687> 23様
今までで一番苦しい恋、そう言われればそうですね。
今回は二人揃って子供なのが原因ですな、たぶん……
688> 時限爆弾様
初めまして! お褒めいただき光栄です。
うちの子たち、一生懸命恋しております。
どうぞこれからも見守ってやってくださいませ。
689> わく様
初めまして! ご愛読ありがとうございます☆
雪ぐまもいしよしに幸アレ!なんですが、なんでこんな展開になってるんだろ……w
それでは、本日の更新にまいります。
- 691 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:01
-
トメっちがいなくなった世界はモノクローム。
ずるずると足を引きずって歩くせいで、
ローファーの踵がいきなり減った。
もう何日、彼女と口をきいてないんだろう。
我ながら往生際が悪いと思うけど、
学校の行き帰りは必ずお弁当屋さんの前を通る。
今日はトメっちが許してくれるかもしれない。
明日は声をかけてくれるかもしれないって。
だけど、そんな気配はまるでなかった。
カウンターに出て接客をしてる時さえ、
トメっちは完璧にあたしを無視した。
文麿は相変わらずコロッケを買いに来る。
アイツに見せるその笑顔があたしの胸を切りつける。
いや、喉元かもしれないな。
ひゅうひゅうと苦しい息が漏れ続けてる。
- 692 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:02
-
とたんに痩せてきたあたしを、美貴が心配そうな眼差しで見ている。
あたしは「そのうち元気になるよ」と肩をすくめるしかない。
美貴と寝る気はまったくしなかった。
人間、とことん落ち込むとヤる気力もないもんだね。ははっ。
わかんない。もう少ししたら狂ったようにヤリまくっちゃうかもしれない。
ファンですとか言ってくる下級生とか喰いまくっちゃうかもしれない。
もうどうでもいい。マジでどうでもいい。
どうでもよくないのは、深刻なトメっち不足。
あの笑顔が見たい。
あの声を聞きたい。
ため息をついてばかりのあたし。
だから、お店が閉まる20時、
あたしは部屋の電気を消して窓を開ける。
窓枠に寄りかかって、トメっちのお弁当屋さんを見つめる。
外の掃き掃除を始める顔もよく見えない小さなトメっちを、あたしは見つめる。
白い三角巾にかっぽう着でくるくる働くその姿を。
- 693 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:02
-
ひととおり掃除を終えた後、
トメっちがふとこちらを見上げるような気がする。
気のせいかもしれない。
でも、あたしを見るような気がする。
その瞬間、あたしの目から涙がこぼれる。
毎日、律義にこぼれる。
悲しいというのとも少し違う。
たぶん彼女がそばにいないということに、慣れないせいで。
あたしは窓を閉めると、軽く頭を振った。
ほら、今夜もトメっちが遊びに来そうな気がするんだ。
「グッチャー!」とか「ハッピー?」とか言いながら……
◇ ◇ ◇
- 694 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:03
-
どうしてあたしはトメっちのことが好きになったんだっけ。
アルバムのなかの、ちょっとぷっくりした幼いトメっちを見ながら
あたしはゆっくりと考えを巡らせた。
だめだ、思い出せない。
小さな頃から一緒にいすぎて、
記憶のファイルがめくりきれない。
だけど、覚えてる。
人見知りでまともにあいさつもできなかったトメっち。
あたしはいつだって彼女のナイト気取りで
彼女を自分の背中に隠してる時は、
ガキ大将だって、ノラ犬だって怖くなかった。
『ひとみちゃん、ごめんね。いつもごめんね』
お父さんがいないトメっちは、バカな子供たちに時々いじめられた。
あたしは絶対に許さなかった。何人いても許さなかった。
いじめられるたびに、トメっちはあたしに駆け寄ってきた。
そのくせ、かばわれるたびに謝りながら、ぐしぐしと泣いた。
泣き虫だなあなんて呆れながらあたしは、どこか誇らしい気分だった。
彼女があたしだけを頼ること。
ちゃんと守れたこと。
- 695 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:04
-
小学校、中学校と上がっていくうちに
トメっちの家庭のジジョーをからかうようなガキはいなくなった。
好奇心おう盛なトメっちは新体操なんてやってみたり、テニスを始めてみたり、
おだてられたらどこでもY字バランスかましてキショいとかからかわれながら、
きゃあきゃあと明るく笑い、どんどんきれいになった。
彼女が普通高校に進学しないとわかっても、
だれも気の毒だとは思わないくらいに。
いつもおどけてたトメっち。
胸の前で指を組む芝居じみた仕草で、
いつの間にかみんなと同じように呼び始めたあだ名で呼びかけながら、
彼女はあたしに、こんなふうに打ち明けた。
『よっすぃ〜、ほんとはよっすぃ〜と同じ高校に行きたかったな』
『どうしても、ダメなの?』
『ん〜、無理すれば行けるんだろうけど、お母さんが無理するの見たくないのよね』
そう言ってすっきり笑った、いまどき珍しい親孝行娘。
空回りなくらい明るく振る舞うオンナノコ。
- 696 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:04
-
アルバムのなか、一枚の写真であたしの目が止まった。
中学を卒業する頃、写真部の保田さんが撮ってくれた写真。
カッコつけてトメっちの首に腕をまわしたあたしは、
自分でもおかしくなるくらい緊張した笑顔。
トメっちは笑いをこらえたような妙に女っぽい表情でレンズを振り返ってる。
『ほれ、もっといつもみたいにいちゃつきなさいな』
『キャーー!』
『はぁ? 何言ってるんすか?』
そう言いながらも、あたしがノセられるままにトメっちの首に腕をまわしたから、
トメっちはくすぐったそうに身をすくめたんだ。
シャッターを切り終えた保田さんは、
ギョロッとした目をからかうように細めて言った。
『ほんと、あんたたちはお似合いね〜』
『も〜、いっつもラブラブなんですよ〜』
『あ、嘘ですから、それ』
『ちょっと何よ!』
はしゃいだ声をあげるトメっち。
いつもみたいにオトすあたし。ぷんすか怒る彼女。
いつものあたしたち。お決まりのやりとり。
- 697 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/13(火) 16:05
-
アルバムの上に、ふいにパタパタと涙が落ちた。
フィルムに弾かれたその涙を慌てて袖でぬぐい、アルバムを閉じる。
そしてあたしは机に両肘をつき、
目頭の熱さに空しさを感じながら、じっと頭を抱えた。
一人きりの部屋の静寂の音を耳の奥に感じながら。
- 698 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/13(火) 16:06
-
本日はここまでといたします。
- 699 名前:なち 投稿日:2004/01/13(火) 16:50
- 更新お疲れ様ですm(__)m
よっちゃん…死ぬ程切ないです(;_;)
梨華ちゃんは今どんな気持ちなんだろう…。
- 700 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/13(火) 18:39
- あーまたもう少し読みたいところで。
早く次を読みたくさせる話のトメ方も最高です。
トメっちの心境が知りたい・・・。
もうすっかり嵌ってしまいまして
「一日一雪ぐま」をしないと一日が終らないくらいです。(敬称略)
明日も楽しみにしております。
- 701 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/13(火) 18:43
- あ、学校から帰ったら更新されてた!と今喜んでます(^o^)
今日もお疲れ様でした。
本気で一生懸命素敵な恋愛できる人って、今日日、なかなか
居ないものですよね。…とか思ってみたりします。
凄く私事で申し訳ないのですが、私にも幼馴染みが居て、
大好きで、生まれた時から一緒でした。
酷くよっすぃの気持ちが届いて、届いて(ToT)
執筆、頑張って下さい。
- 702 名前:23 投稿日:2004/01/13(火) 21:36
- 更新、お疲れ様です。
どうして好きになったか分からないくらい、ずっとそばにいることが当たり前だった人が突然
自分から離れていく・・
自分だったらきっと耐えられないと思います、うむ。
(特に692-693のくだりがせつないなぁ・・)
よっちぃが早くモノクロームからカラフルな世界に行けますように(切望)
次回も楽しみにしてます。
- 703 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/14(水) 13:43
- 写真部の保田さんが撮ってくれた写真は、
懐かしのいしよし写真の中でも雪ぐまがとくに好きなものでございます。
699> なち様
よっちゃん、身から出た錆でございます……。
トメっち、とばっちりでございます……。
700> 名無し飼育さん様
「一日一雪ぐま」w 日々のご愛顧、ありがとうございます。
ますますはまっていただけるように頑張りたいと思います。
701> 時限爆弾様
あらら、うちのよっちぃと同じとは……切ない恋をされているのですね。
素敵な恋になることをお祈りしております。
702> 23様
うちのよっちぃも、かなりやられております。なにしろ痩せ……(ry
さて、よっちぃにお灸を据えたところで(?)、本日、お話は動きます。
それでは、本日の更新にまいります。
- 704 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:44
-
仲直りのきっかけは、唐突にやってきた。
それは、夜更けに突然かかってきた一本の電話。
「ひとみ、電話よ」
「誰から?」
「さぁ?」
頼むから相手の名前くらい聞いてほしいと思いつつ、母さんから子機を受け取る。
受話器から聞こえてきたのは、意外な声。
なんとも申し訳なさそうなトメ子姉さんの言葉だった。
『こんな夜更けにごめんね。梨華が『ひとみを呼べっ!』って言ってきかないの』
「え?」
『恥ずかしいんだけど、うちの人が悪ノリして飲ませちゃって……』
ひとみを呼べ? トメっちが?
状況がよくわからないまま、あわててトメ子姉さん家に駆けつけると、
そこはもうたいへんなことになっていた。
お約束のようにちゃぶ台がひっくり返っているのはもちろん、
一升瓶やらビール瓶やら、いいちこボトルやらが床に散乱している。
さらに酔いつぶれた一徹と、なぜかひとすじとふたすじも転がっていた。
- 705 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:45
-
そんななかで、トメっちがまだビール瓶をつかんでグラスをあおっている。
トメ子姉さんは赤い鼻をますます赤くしておろおろするばかり。
「ちょっと、梨華!もうやめなさいったら」
「トメ子、止めるら!飲まなきゃやってらんね〜ろっ!」
「もう梨華ったら……。一体、何があったのよ」
トメっちはグイと飲み干したグラスをバンッと床に置くと、
手の甲でプハーーッと口元をぬぐう。
ヒャー、カッケー!!! などと言っている場合ではなく。
あたしはかなり緊張しながら、
ひさぶりに間近で見たトメっちに話しかけた。
「トメっち、もうやめときなよ」
「あー、ひとみが来た〜!待ってたろ〜、ホラ飲め〜っ!」
ずっと無視してたなんてこと、すっかり忘れちゃたみたいにご機嫌なトメっち。
差し出されたのはなみなみと酒がつがれたコップ。
てか、これビールじゃなくて日本酒だけど、マジ?
マジで、これ全部飲めって?
- 706 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:46
-
トメっちが妙にすわった目でこっくりとうなずく。
トメ子姉さんがあわててコップを取り上げようとしたけど、
トメっちはイヤイヤをしてきかない。
あたしは、透明な液体で満たされたコップを見てごくっと唾を飲んだ。
うーむ、こりゃあ倒れるかもしれん。
でも、これで仲直りできるなら。
あたしは、おそるおそるコップに口をつけ、エイヤッとあおった。
トメっちがパチパチと手を叩いて歓声をあげる。
それ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ……
うひ〜、キク〜〜!
「おい! ひとみっ!」
トメっちが両手でバンッ!と床を叩く。
「なーにがシンデレラだ、ばっかやろぉ〜」
「あ〜、悪かった、悪かったよ」
「だっから、ひとみはなんもわかってね〜っつってんだよ!ヒック!」
「あ〜、ごめん、ごめんって」
「ば〜ろ〜、んとにわかってんのかぁ? 人魚姫のほ〜が、ず〜っといい話だろぉ〜?」
ガクッ! そこかよっ。
あいかわらずわけがわかんないトメっち。
てか、人魚姫ってやたら悲しい話じゃなかった?
忘れちゃったけど。
- 707 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:47
-
「よ〜し、ひとみも飲んらし、トメは帰るろ〜〜!」
超酔っ払いのトメっちが、よろよろと立ち上がる。
ミニスカートの足から伸びた足までマッカッカ。
おいおい、大丈夫かよ?
でもまあ、大通りでタクシーに乗せりゃいいか。
「ひとみちゃん、ごめんね。迎えにこさせちゃったみたいで」
玄関のところでトメ子姉さんが
折りたたんだ一万円札をそっと握らせてきた。
「あ、こんなにいいっすよ。タクシー2000円くらいっすから」
「いいのいいの。残りは二人でおいしいものでも食べて。ね?」
申し訳なさそうに、八の字眉毛で笑う。
まさかこれ、一ヶ月分の食費ってことないよなあ。
あたしは思わず万札を凝視する。
ううっ、トメ子姉さん苦労人や……。
- 708 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:48
-
それに、ひきかえ。
「ウィ〜〜、ヒック!」
このガキはよぉ。
酒は飲んでものまれるなって、昔のエラい人が言ってただろぉ?
「う〜〜〜、ぐえ〜〜〜〜」
「うわ、吐くんか?」
「う〜〜〜、ごくん」
「ギャー!飲むなぁ〜〜!!!」
星空の下、よれよれのトメっちの肩を抱いて支えながら歩く。
二人並んで、ふらりふらりと千鳥足。
ふふっ、『ひとみを呼べっ!』かぁ。
あたしは、お月さまを見上げて、にやついた。
ったく、かなわねーなーと思うけど、素直にうれしい。
トメっちなりに仲直りしたいと思ってくれてたんだよね?
良かった。
もう一生、口も聞いてもらえないかと思った。
トメっちといるだけで、ものすごく簡単に世界に色が戻ってくる。
お月さまが金色に輝き、数えきれないほどの星がまたたく。
もうこれでいいよ。これでもう。
そばにいられたらそれでいい。
- 709 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:49
-
酒くさい息をまき散らしながら、ぐったりと寄り掛かってくるトメっち。
そのあんまりにも軽くて頼りない体。
いつかコイツのことを誰かが連れてってしまうんだろう。
んで、あたしは結婚式かなんかで暴露するわけさ、今夜のことを。
トメっち。
せめて、いいヤツ見つけろよ。
大事にしてくれるオトコをつかまえろ。
一徹みたいなのは、ちょっとやめてほしい。
綾小路文麿……、うん、あいつなら。
あいつなら。
不覚にも、涙がこぼれた。
いけない。あたしはトメっちから顔をそらして肩で頬をぬぐう。
酔ってるとホント涙もろくなるよね……ハハッ。
やっと大通りが見えてきてホッとする。
遅い時間だけど、タクシーもそこそこ走ってるみたいだ。
- 710 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:50
-
なのに、トメっちはいきなり「うーー」と呻いて立ち止まってしまった。
「何?気分悪い?」と覗き込むと、ちょびっとしゃくれた顎をグイと上げて、
やけにエラそうにあたしをジロリと睨めつける。
うわ、なんなの、今度は。
「おい、ひとみ!」
「な、何よ」
「あそこに連れていけっ!」
妙にすわった目で、トメっちがビシッと指さしたのは、
なんとネオンがぎらぎら輝く悪趣味なラブホだった。
はーーーーーーーー??????
あたしはギョッとして、思わずトメっちの頭をはたく。
「バカ、なに言ってんの?」
「なんら、お前はぁっ! 藤本にはできて、あたしにはできないのかあっ!」
はたかれて頭にきたらしいトメっちは、
よろめく足どりであたしにタックルをかましてきた。
思いっきし体重をかけられて、さすがに耐えきれずに道路にひっくり返る。
- 711 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:51
-
「イテテテテ……」
「ばーろー。このヘタレ!スケコマシ!ヘタレ!スケコマシ!ヘタ……」
トメっちは、あたしに馬乗りになったまま、
両腕を振り回して、むやみやたらにビシバシ叩いてきた。
ちょっ、マジで痛い。つーか、あれかよ。
あたしを形容する言葉は「ヘタレ」と「スケコマシ」だけかよっ!
「テメ、酔ってんのもいーかげんに……」
「ズルいよ! 卑怯だよ! もう信じらんらい!」
「はあっ?」
「藤本よりあたしのほうが先に決まってるれしょ!」
……コイツ、また妙なヤキモチ妬きやがって。
なんだよ、先って。競争かよ。
お前の頭の中には勝ち負けしかないんか。
あたしはだんだん腹が立ってきた。
なんだよ、大嫌いとか言って、さんざん無視して、
挙げ句の果てにこんなに酔っぱらって、好き勝手わめき散らしやがって。
あたしの気持ちなんて、これっぽっちも知りもしないで。
- 712 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/14(水) 13:51
-
「連れてけったらぁ!!!」
そうかよ。
じゃあ、やってやるよ。
あたしは憤然と立ち上がると、トメっちの首根っこをつかんだ。
そのまま、わめき続ける彼女をひきずるようにしてラブホのドアをくぐると
トメ子姉さんが握らせてくれた一万円札をすばやくカウンターに差し出す。
ごめんねトメ子姉さん、こんなことに使っちゃうよ……。
- 713 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/14(水) 13:52
-
本日はここまでといたします。
ギャー! マタ、ヤッテシマッタ…
- 714 名前:わく 投稿日:2004/01/14(水) 14:23
- ぐはっ・・・!!
どうなる?どうなる??ワクワク(笑)
とにもかくにも!!いしよしに幸アレ☆☆
- 715 名前:23 投稿日:2004/01/14(水) 16:01
- 更新、乙です。
おぉ〜っ!
こりゃまた急展開ですなぁ〜、さすがジェットコースターロマンスw
もぅ〜いいところでお止めになってw
それにしても、トメっちもよっちぃもグッジョブ!グッジョブ!
人間は開放された状況でこそ、本心が表れるものでございますよ。
ということは!?
これ以上何があっても、トメ子、止めるな〜!!
では、次回もソワソワと挙動不審にお待ちしておりますですよ。
- 716 名前:達吉 投稿日:2004/01/14(水) 17:17
- うわうわうわぁ〜〜〜ww
つ、ついに!?w
ドキドキっスねww
受験勉強ほっぽって、ドキドキしながら待ってますw
- 717 名前:なち 投稿日:2004/01/14(水) 17:46
- うわぁ衝撃的な展開に(ノ^▽^)ノ
ドーナルんだ〜!!ドウスルんだ〜…♪
続きメッチャ楽しみです☆彡
いしよし…繋がれェェェ(笑)
- 718 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 18:04
- うっひゃー、そうきたか〜。
泥酔トメっち、かわいすぎっすね。
んで、よっすぃーは漢だな(w
オモシロも切なさもある雪ぐまさんの小説にハマりっぱなしっす。
無理せず頑張ってくださいな〜。
- 719 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 18:50
- この展開たまりません!もう本当に面白いです。
よっすぃ、こうなったらとことん行ってまえー!
明日も楽しみにしてます。
- 720 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 18:53
- トメっち、ステキすきです。
あのセリフにしびれました(笑)
- 721 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 20:24
- ヤッちゃえ、まずヤッちゃえ。
古〜いCM思い出しましたw
よっちゃん、トメっちサイン出してるよ〜
- 722 名前:499 投稿日:2004/01/14(水) 20:30
- うわぁぁ〜っ
今度はトメっちがやってしまいましたね〜
重苦しかった雰囲気が一転して、良かったと思ったら
この展開は・・・ドキドキなのれす
- 723 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/14(水) 22:47
- あー今日も脳みそ疲れたぁw、あ、更新されてるぞぃ!
ということで(どういうことだよ)ノリツッコミしつつ
今日も更新お疲れさまです。
そうだ!この酒の手を使おうか、幼馴染みにw
私の場合相手が異性ですが、幼馴染みはよっすぃみたいな
性格なんです。優柔不断ヘタレwそうな。
なんて事酒癖悪くても死んでもできる訳がなく…なんですけどねw
色々考えさせられます、考えさせて下さって有り難うございます。
執筆頑張って下さい。
- 724 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 15:05
- は、はやく続きをー!続きを頼むー!
なーんておねだりしちゃいかんよな。
でもマジで待ってます。嵌まりきってます。
- 725 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/15(木) 15:07
- 人魚姫ですか〜もしかして、そういう事でしょうかぁ。。。
- 726 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/15(木) 17:06
- 714> わく様
さあ、どうなる?どうなる??w
とにもかくにもトメっちに振り回されっぱなしのうちのよっすぃ〜です。
715> 23様
それにしても酒の力を借りないと本心が言えないとは困ったものですw
二人ともどろどろに酔っぱらって、マジでジェットコースターみたいなロマンスw
716> 達吉様
なぬ、受験生?! 勉強しなさーーい! なんちってw
しっかり勉強しつつ、息抜きにぜひのぞきにきてくださいませね。
717> なち様
繋がれェェェとは、また直接的なw そんななち様が素敵です♪
ドーナルんだ〜!!ドウスルんだ〜…♪ ……どうしようかな、ホント。
718> 名無し飼育さん様
そう、うちのよっすぃ〜は漢ですよw
ヘタレですがそれなりに心意気のあるオンナです。のはず。
719> 名無し飼育さん様
お褒めいただいてありがとうございます。
こうなったらとことん書かせてもらいますw
720> 名無し飼育さん様
あのセリフってどのセリフでございましょうか?
「藤本にはできて…」「ばーろー、ヘタレ、スケコマシ!」「連れていけっ!」w
並べてみると、トメっちってすげー女……w
- 727 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/15(木) 17:07
- 721> 名無し飼育さん様
ギャー、古〜いネタ、大好物でございます。
トメっち、サイン出してるっていうかわけわかんない女になってますが…w
722> 499様
やってしまいましたよ〜。トメっちの酒グセが心配ですw
「いつもとキャラが全然違う(石川さんスポフェスマジギレ事件)」みたいですw
723> 時限爆弾様
いや〜、トメっち流はマズいでしょw 自爆率高いですよ、あれは。
いろいろ考えるきっかけにしてくださっているようで、作者冥利に尽きますです。
724> 名無し飼育さん様
お待たせして申し訳ありませぬ。クマなりに社会生活もありますゆえ、
なかなか決まった時刻には更新できないのでございます。ご理解くださいませ。
72> 名無し読者様
さあ〜て、どういう事でしょうかぁ。。。
友人に言われて気づいたのですが、
CP分類版等で拙作をご紹介くださった方がいらっしゃるのですね。
『記憶より彼方へ』『かわいいあの子』『ジェラシー』も……
ほんとうに感激しました。ありがとうございますm(_ _)m
感謝しつつ、本日の更新にまいります。
- 728 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:08
-
二人で転げるように部屋に入ると、
そこは全面ビロード張りのウルトラ悪趣味な部屋だった。
うわ、すげぇ……。
ぶっちゃけラブホに入るのは初めてじゃないけど、
ここまで古くさくて悪趣味な部屋は初めてだ。
カーッときていた頭がスーッと冷めた。
いくらが腹が立ってても。
もしかしたら生涯一度のチャンスかもしれなくても。
ここで「初めて」っていうのは、あまりにもトメっちが可哀想だ。
入口のあたりに佇んだまま、ブツブツそんなことを考える。
や、ほんとのことろは知らないけど、
でも、トメっちはたぶん初めてだと思うんだ。うん。……だよねえ?
「トメっち、おとなしく寝よ……えっ?」
いきなり“ぐわしっ!”と腕をつかまれた。
「わーっ!」
あっと思う間もなく、ベッドにぶん投げられてしまう。
酔ってるとはいえ、あの体のどこにこんな力が?
- 729 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:09
-
脳しんとうを起こしそうになった頭を振りながらあわてて半身を起こすと、
ギシリと音を立てて、トメっちがベッドに乗ってくるところだった。
ちょ、ちょっとまった……タンマ!
あたしはヘッドボードのところまで飛び退くように後ずさった。
壁にゴツンと後頭部があたる。い、痛えっ!
ゆらり。
膝立ちのほっそりとしたシルエットが、あたしの前に立ちはだかる。
そこにいるのは、もういつものトメっちじゃなかった。
その潤んだ眼差し。
初めて見る、切なげな女の瞳。
ごくっと喉が鳴る。
本気? 本気なの、トメっち……。
彼女はあたしの頭を閉じこめるように、壁にゆっくり両手をついた。
酔いのせいか興奮のせいか、頬を上気させながら口を開く。
「ねえ、よっすぃ〜……名前、呼んで?」
「と、トメっち……?」
「バカッ!本名よ!」
あ、し、失礼しました……。
- 730 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:10
-
「ねえ、梨華って呼んでよ」
ますます顔を近づけられて、酒くさい息が鼻にかかる。
ヤバい。心臓が痛いくらい早鐘を打ってる。
ものすごく近くにあるトロリと潤んだ瞳。
何度も見つめた、あのふくよかな唇がいまにも触れそうに。
あ、だめだ。追いつめられる……追いつめられてる……
「り、か……」
呻くように呟いた。
喉が、カラカラだ。
彼女が、満足そうに目を細める。
「もっと言って」
「梨華……」
「もっと」
「梨華……」
「……ドキドキする…ひとみちゃん……」
彼女はうっとりとしたように甘い息をつくと
長いまつ毛を伏せて、ゆっくりと唇を寄せてきた。
う、わ、わ、わ、わ……
あたしはなすすべもなく、ギュッと目を閉じる。
- 731 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:11
-
そのやわらかい熱が唇に重なってきた時、
電流が走ったようにあたしの体は震えた。
ずっと、どんな感じだろうと想像してた、あの、唇。
その胸せまる感触に。
やり方がわからないのか、彼女はただやみくもに押しつけてくる。
そっと舌を出すと、すこし驚いたみたいに、でも素直に唇を開いた。
かすかにお酒の味が残る小さな舌。
あたたかく濡れたやわらかな粘膜。
ぎこちなく舌がからまる水音が、薄暗い部屋に響く。
ああ……。
もうどうなってもいい。死んでもいい。
意識が朦朧としてくるような、逆に研ぎ澄まされていくような浮遊感。
激しい鼓動が体中を貫いてる。
あたしはトメっちを掻き抱いて、
もつれるようにベッドに転がった。
トメっちが掠れた声で「ひとみちゃんっ!」と叫んでぎゅっとしがみついてくる。
もう夢中になって噛みつきあうようなキスを何度も繰り返した。
上になって、下になって、唾液が口のなかでぐちゃぐちゃにまざって。
- 732 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:12
-
一体、どうなってるのか。
どうしたらいいのか。
あたしは狂いながら戸惑う。
初めてのことに戸惑う。
大人びた石川梨華に。
だけど、あたしは唐突に気づく。
彼女の体がかすかに震えていることに。
ハッとして、思わず唇を離した。
「やめないで!」
彼女は小さく叫ぶと、
あたしの手をとって、自分の頬にもっていった。
しっとりとなめらかな陶器のような肌。
困ったような八の字眉毛。
薄闇のなかでもなお輝く黒い瞳が、せっぱつまったようにあたしを見つめている。
息がかかるほどの距離で、ぽってりと可憐な唇が囁いた。
「梨華にも、してよ」
あたしの回線はすべてショートした……。
- 733 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:13
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・。
◇ ◇ ◇
- 734 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:14
-
「う、うええ〜〜〜〜」
次の朝、あたしを起こしたのは眩しい朝の光でもなく
さわやかな小鳥の声でもなく、トメっちが盛大にえづいている声だった。
二日酔でガンガン痛む頭を抱えながらむくっと身を起こすと、
洗面所に顔をつっこんでいるトメっちの後ろ姿。
どこから探し出したのか、ちゃっかりとピンクのバスローブを着ている。
あたしだけ裸で起き上がるのも気がひけて、キョロキョロ探す。
あ、あった、あった……。
ベッド脇のソファの上に置いてあった水色のそれを、そうっと手を伸ばして取り、
ごそごそ着込んでいると、音に気づいたトメっちがパッと振り返った。
「あ……」
あたしたちはただ見つめ合う。
喉に何かが詰まっているように言葉が出てこない。
と、その時。
ちゃらっちゃっちゃ〜ちゃ〜ららららら〜ら〜♪
トメっちの携帯が盛大に鳴り響いた。
- 735 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:15
-
「わわっ!」
「あ、ヤダ、お母さんだ! はい、もしもし……え? もうそんな時間?!」
時計の針は9時すぎを差していた。
あ、だめだ。あたしも思いっきし遅刻。
「ごめんなさい。あ、うん、よっすぃ〜と一緒だよ、え? 今? どこって……え、えっとぉ……」
いきなりトメっちが困った顔で携帯を差し出してくる。
な、なによぉ〜。言い訳しろってか?
『もしもし?』
心配そうなおばさんの声。
「あ、ども。おはようございます……」
『ああ、ひとみちゃん? よかった心配したのよ〜。トメ子は二人で帰ったっていうし……』
「すいません、えっとぉ……具合悪そうだったんで、あたしの友達のうちに……ハイ、近くに住んでる子がいたんで〜」
ちょっと休むつもりが寝こけてしまったというと、
おばさんはすっかり信用して『ごめんなさいね、梨華が迷惑かけて』と恐縮した。
ごめん、おばさん。ほんとはラブホだよ……。
おたくの娘さんとやっちゃったよ、あたし……。
- 736 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/15(木) 17:16
-
「ありがと……」
話を終えて携帯を返すと、トメっちは小さな声でそう言いながら受け取った。
そして、恥ずかしそうにうつむいたまま続ける。
「ここ、友達んち?」
「うるさいな」
「よっすぃ〜って、嘘、上手なんだあ」
「あのね、トメっちが困ってるから……」
「美貴ちゃんのことも、ずっと隠してたもんね」
なによ、いま、その話?
あたしはムクれた。
「んなことより、なんか感想ないの?」
「え?」
「痛かったとか、気持ちよかったとか」
トメっちはみるみるうちに真っ赤になって、
手にしていた歯ブラシを投げつけてきた。
- 737 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/15(木) 17:18
-
本日はここまでといたします。
トウトウ…
- 738 名前:わく 投稿日:2004/01/15(木) 17:26
- うおっ・・・・!!!!
ついについに・・・・・・
あ〜これからどうなってくんでしょうか?!
期待が膨らんで倒れそうっす(笑)
「梨華・・・」って(///)
もう逝っていいですか?!
- 739 名前:なち 投稿日:2004/01/15(木) 17:35
- んぁ!!つ・ついに…♪
よっちゃん!!トメっち!!
おめでとゥゥゥ(ノ^▽^)ノ なちは、とっても嬉しいよォォ\(^O^)/
言いたい事はたくさんあるケド、あの
名前を呼び合う所でウチもスイッチが
入ってしまいました(*^∀^*)
続き楽しみにしてマッスル♪
更新お疲れ様でしたm(__)m
- 740 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 17:38
- ぐあああっ!トメっち、けなげすぎ!かわいすぎ!!
あ〜もう、たまりません。>>732なんてツボすぎる!!!!
そして>>730あたり想像しまくって職場のPCの前で身悶える私はキモすぎる。
逝ってきます……。
- 741 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/15(木) 19:33
- 今となっては、ネタバレじゃないよね。
人魚姫って口をきけないんですよね。
好きだと言えば泡になっちゃうんでしたっけ?
(うろ覚えで御免なさい)
折り込みというか、前ふり?上手いな。と。
シンデレラより、人魚姫を好きな梨華ちゃん。
「薬指のリングより、人目しのぶ恋えらんだ〜」
これは不倫の唄ですけど。by竹内
なかなか。。。
なんだ、そうなんだ。
人魚姫を好きな梨華ちゃん。みたいなw
違ってたら御免なさい〜
雪ぐまさんって、ロマンチストやな〜
(書き逃げw)
- 742 名前:260 投稿日:2004/01/15(木) 19:50
- 最近かきこんでませんでしたが、今日のは
もう我慢できません。
740さんと同じく>>732の梨華ちゃんがぁぁぁ・・!
すっごいツボ
- 743 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/15(木) 20:21
- >>732も良かったが、>>736の最後の3行目にはまってしまった!
腹痛い!!
- 744 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/15(木) 20:26
- モンモン…更新されてるかな…いつもの如く私のパソ開いて…
……はい、読み終えましたが、雪ぐまさん、なぜだか私の頭の中は
始終罪と罰(リンゴ)が流れていましたw うーんなぜだ?
雪ぐまさんの官能的な文で、私にはどうやら鎮火が必要になりました。
以下、火事の詳細w↓
(月)リカちゃんが壁にゆっくり手…辺りからコンセントがショート開始
(火)名前を…のとこで、発火
(水)最後の一行で頭全体へ燃え広がる。
あつい!!雪ぐま消防署へ119!!w
え?そんなん知るか?ギャアーーーーーー!!!w
と言う事でw私は雪ぐまさんのせいで焼失しなければなりません!!w
鎮火して下さったなら幸いですが、これからの焼失な展開も希望してます!!!
執筆、頑張って下さい。
- 745 名前:ゆんせ 投稿日:2004/01/15(木) 20:46
- いつもはROM専な私ですが今回は黙っていられませんでした!
だって、ドキドキしたんだもん!
テストシーズンの枯れた私に潤いをくれた雪ぐまさんに感謝(人´∀`)
応援してますます。。。
- 746 名前:ファンA 投稿日:2004/01/15(木) 21:12
- うわー!
本当にすばらしいです!私てきには、>>730がツボです。
2人の掛け合いにドキドキしました…
どのいしよしでも、梨華ちゃんの「ひとみちゃん」に萌えちゃんですよね。
実は、毎回レスをつけていたのですが…。
名無しのままでは惜しくなったので、名前を入れてみました。
…名前になってませんね。
- 747 名前:23 投稿日:2004/01/15(木) 22:10
- 更新、お疲れ様です。
「食わず嫌い」を観てからお邪魔してみたら・・
あらまぁ〜、イヤだよぅ〜この子達ったらもう!
しっかり口を半開きのまま読ませていただきやした。
ゴチでやんした、ハイ。もう何も言うことはありませぬよ。
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ 萌え尽きました・・グッジョブ!
いしよし万歳!雪ぐまさんに完敗de乾杯!
次回の動きに期待ですわい。
- 748 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 01:41
- う〜〜〜ん・・・
これで仲直りしたことになるんかな〜??
なんか大事なこと忘れてる気がするぞ!>ふたりとも
てかまじかあいかったね>くわずぎらいの、よっちゃん
- 749 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 09:07
-
+ 激しく誘い受け +
無駄に凄くありがとう!!!!!! (←バカw
毎回、ヲタならではのネタづかい、さらに丁寧な展開、感服です。
さ、どーなるのかな…
- 750 名前:達吉 投稿日:2004/01/16(金) 17:00
- 更新だぁ〜!
萌えますたw
そうなんですよ。受験生なんです。
一校目の受験まであと半月しかないです^^;
この小説でパワーうPして頑張りますよ〜!!!
- 751 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/17(土) 00:41
- 理由あって遅くなってしまいました。申し訳ないですm(_ _)m
738> わく様
おーい、帰ってきてくださいなw さてさて、ご期待に応えられるのいいのですが。
「梨華……」は書いてる自分もかなり赤面しましたw
739> なち様
ながらく見守っていただいてましたもんね。
名前を呼びあうのはツボですか、そうですか。ふふふのふw
740> 名無飼育さん様
戻ってきて〜〜〜ェ!w 「キモすぎ」にマジウケしましたw
ええもう、ぜひ見悶えまくっていただきとうございます。
741> 名無し読者様
まだトメっちは一言も本心を打ち明けてはおりませぬ。
登場人物の心理を推測されるのは読者として当然のことですが、
その理由を分析して書き込まれてしまうと、当たっていても外れていても
作者としては先を書きにくくなるのが正直なところ。
「こ〜だから、こ〜だよね?」みたいに書かれてしまうと
なんともレスしがたく困惑するということです。どうぞ“秘すれば花”でお願いいたしまする。
詳しいマナーに関しては、案内板(小説板自治スレ)をご覧になってください。
742> 260様
お久でございます〜♪ 「してよ」がツボですか、そうですか。メモメモ…
あれ、書いてて「どーよ?ジブン」とか思いましたけど……ハイ、雪ぐまもツボなんですw
- 752 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/17(土) 00:43
- 743> ちゃみ様
お久でございます〜♪ あれもね〜、書いてて「どーよ?ジブン」とか思いましたなw
でも、どうやらトメっちにはあーゆー冗談は通じないようでございます。
744> 時限爆弾様
ちょいと。時限爆弾様に火がついたら爆発しませぬか?w 危険、キケン……w
でも、そこまで言ってくださって感激です。恋の成就をお祈りしております。
745> ゆんせ様
初めまして! てか、テスト勉強しなさーーーい!w
でも、お忙しい時期にわざわざ読みにきてくださってうれしいです。これからもよろしくです♪
746> ファンA 様
ありがたいHNをつけていただき感涙でございます。
これからもドキドキしていただけるように頑張ります。今後ともどうぞご贔屓に。
747> 23様
お江戸でござるのようなコメント、ありがとうございます。マジウケw
「完敗de乾杯!」もオヤジギャグっぽくていいですね〜。グッジョブ!
748> 名無飼育さん様
忘れてる気がしますね。てか、はっきり言って酒の勢いやん!
こーゆーのヤバイってハッと気づかれるあなたはきっとオ・ト・ナですね?w
749> 名無飼育様
ええ、ええ。そりゃあもう石川さんといえば誘い受けでございますよw
てか、リアルでも絶対にそうだと思うのですがいかがなものでございましょ?
750> 達吉様
人生、今が踏ん張り時でございますよ。パワーうPして(できるのか?)頑張ってください。
雪ぐまも更新、頑張ります♪
それでは、本日の更新にまいります。
- 753 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:44
-
ああ、もう授業なんか聞いてられない。
あたしは、単調な教師の声を遠くに聞きながら、窓の外を眺めた。
青々としたポプラの樹が、気持ちよさげに風に身を任せている。
信じられない。
あたし、トメっちと寝たんだ。
ひとりで赤くなりながら、
さっきからもう何度も反芻してる。
途切れ途切れの夜の記憶を。
剥き出しの肌がこすれ合った時、一瞬、気が遠くなったこと。
彼女があたしの肌にがむしゃらに唇を押しつけてきたこと。
背中に爪を立てられて、ひどく切ない気持ちになったこと。
- 754 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:45
-
ほっそりとして、でも女らしい曲線を描いてたそのカラダ。
このまま溶けてしまいたいと思った。
メチャクチャだった。血が逆流する感じ。
自分が何をしているのかよくわからなかった……。
だけど。
あたしはうって変わって目の前がぐらぐら揺れるほど不安になる。
あの悪趣味な部屋で、真っ赤になって歯ブラシを投げつけてきた後、
彼女は憤然と服を身につけ、部屋を飛び出そうとしたんだ。
ドアのところであわてて腕をつかまえた時、
トメっちの目には薄く透明な雫が光っていた。
『ごめん』
あたしは素直に謝った。
さすがにあのセリフは無神経すぎたと思ったから。
あたしの声色にそれなりに誠意を感じてくれたんだろうか、
トメっちはコクンとうなずいてあたしが着替えるのを待っていてくれたけど、
帰りのタクシーのなかでも、ジッとうつむいたままほとんどしゃべらなかった。
膝のうえにこぶしをギュッと握りしめて。
- 755 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:46
-
それが照れてるからなのか、
後悔してるからなのか、
はたまたまだ怒ってるのか、
……あたしは確かめるのが怖かった。
『梨華にも、して』
確かにそう彼女は言った。
だけど、「好き」とは一言も言わなかったような。
そこまで考えて、あたしは頭を抱えた。
酔ったはずみの、好奇心の、いわゆるアヤマチとかいうやつ?
まさか。トメっちはそんな子じゃない。
だけどもしかして、朝になったらむちゃくちゃ後悔してるとか?
秋の空みたいにくるくる変わるトメっち。
あのすさまじい酔っ払いぶり。
考えれば考えるほど、不安ばかりが大きくなる。
さっきまで、喜びに打ち震えていたくせに。
- 756 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:47
-
「キモい」
ギョッとして顔をあげると、美貴が腕を組んで立っていた。
やけにニヤニヤしている。
「なんかあったでしょ、アンタ」
「べ、べっつに〜」
「嘘つけえ!ひとりで百面相しやがって、超キモいんだよっ!」
くそー、悪かったなっ。
どうせキモいよ、キモいですとも。
あたしの許容量を超えた展開なんだよ。仕方ないだろっ。
- 757 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:47
-
この愛すべき同志に昨夜の顛末を話すと、
がっくりと肩を落として「うらやましい……」と呻いた。
あたしは「気持ちはわかるけど」と前置きして、深いため息をつく。
トメっちとあんなことしてうれしくないわけない。
うれしくないわけないけど、でも、ずっと胸の片隅から離れない懸念。
「なんか一回こっきりって気もする。酔ったはずみだし」
「この際、一回こっきりでもいいじゃん! あー、うらやまじい!」
がりがりと頭をかきむしる美貴。
なに、やりたいかどうかわかんないんじゃなかったの?
こりゃあキテんな、そうとう。
でもさ。
人間って欲張りなんだよ。
一回手に入れたら、もっと欲しくなる。
もう、絶対に手放したくなくなる。
それがかなわないならブッ壊しちゃいたいとか、思うんだ。
- 758 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:48
-
ヤバいよね。
あんだけ無視されて、
もうただの幼なじみでいい、
そばにいて見守れるだけでいいって
思ってたのに。
ほら。
あたしはもう許せなくなってる。
トメっちの店の前に、文麿が立っていることさえ。
「いつもありがとうございます」
「石川さんのコロッケは最高だからね。僕にはわかる」
文麿はすずやかな目を細めると、
キザに軽く手をあげて立ち去っていった。
その後ろ姿を、彼女がにこやかに見送る。
そのことさえ、もう。
- 759 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:50
-
キッチンに戻りかけたトメっちが、ふとこちらに顔を向けた。
ぴたっ。彼女の動きが一瞬止まる。
ばっちり目があった。なのに。
彼女はこわばった顔で、サッと目をそらした。
うわっ。
あたしは、反射的にくるっと背を向けた。
ヤッベ。超きまずい感じじゃん。
胸のなかが熱をもったみたいにじんじんする。
喉の奥がクッと締めつけられたみたいになって、じわっと視界が霞む。
ど、どうしよう。どうしたらいい?
勇気を出してこっちから話しかけるべき?
でも、なんて?
………………………………………
………………………………………
………………………………………
……トメっちが誘ったくせに。
いや、違う! これは絶対違う!
またトメっちを怒らせる!
- 760 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/17(土) 00:54
-
………………………………………
………………………………………
………………………………………
……トメっちには、遊びじゃないよ、とか?
いや、これもだめだ。ボツ。
………………………………………
………………………………………
………………………………………
……マジで好きだよ、とか?
いや、ちょっと待ってよ……え〜〜???
- 761 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/17(土) 00:56
-
作者も惑いつつ、本日はここまでといたします。
勝手な申し出で恐縮ですが、明日(もう今日か…)はお休みをいただきとうございます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
- 762 名前:ファンA 投稿日:2004/01/17(土) 00:59
- はじめてのリアルタイムです♪
ドキドキしました〜
読者としては、よっすぃ〜にこのまま突き進んで欲しいです。
雪ぐまさん、更新お疲れ様です。今日もいいものをありがとうございますw
ゆっくり休んでくださいませ。
- 763 名前:ゆうぴ 投稿日:2004/01/17(土) 03:47
- レスありがとうございました。
これからも楽しみに待ちます、待ち続けます。
ゆっくりお休みください。
今後ともよろしくお願いします。
- 764 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/17(土) 06:38
- 雪ぐまさん、こちらこそお久です。
皆さんがたくさんレスされているので、ROMってましたが
我慢出来ずに出て参りました。
よっちゃんにはもう少し悩んでもらうしか無いですね。w
- 765 名前:なち 投稿日:2004/01/17(土) 07:40
- んートメっちの気持ちが知りたい!!(笑)
何かよっちゃん可哀想になってきた。
よっちゃんの、自分ダケのモノにしたいっていう
束縛心?が痛い程伝わってきます。
だってあんなに好きなんだもんね。
次回も楽しみにしてます♪
無理せず頑張って下さい( ○^〜^)人(^▽^ )
- 766 名前:23 投稿日:2004/01/17(土) 11:58
- 更新、乙です。
う〜む、ふたりが自分の気持ちにどう正直になれるのか・・
17年間の変わらない気持ちにしっかり向き合って欲しいなぁ。
順番が違っちゃっても、着地点が同じならいいと個人的には思います。
と、今回はマジレスしてみましたw
今日は雪が降ってて寒いですから、あったかくしてゆっくりお休み
下さい。まったりのんびり待たせていただきやす。
- 767 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/17(土) 12:28
- 失礼しました。
ホテルに入っちゃった所で自分的に
答えが出たと早とちりしてしまいました。
- 768 名前:達吉 投稿日:2004/01/17(土) 13:48
- おぉぉ!!!
パワーうP!(笑)
今日も雪ぐまさんの小説でパワーうPさせていただきましたよ^^
吉澤、辛そうですねぇ〜。
トメっちのことをどれだけ大切に思ってるかが伝わってきますよ〜!
- 769 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/18(日) 19:29
- 自分が時限爆弾って事すっかり忘れてましたw
更新お疲れ様です。よっすぃ、悶々としてますね。
彼女が百面相する様に、私もPCの前で百面相しておりますw
それにしてもトメッチの心情はキワドク分からないですね。それが更に
私をも悶々と…w
雪ぐまさんの毎日の更新、勿論有り難いですが、
雪ぐまさんのペースでお体にお気をつけて、更新して下さいませ。
いつででも、待ってます。(・∀・)ノ
- 770 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/19(月) 11:37
- 石川さん、お誕生日おめでとうございます。
19歳、喜びも悩みも多き年頃。
仕事に恋に、充実した一年をお過ごしになられますよう
心からお祈り申し上げております。
762> ファンA様
お気遣いいただきありがとうございます。
今日こそよっちぃ、大躍進なるか?! 乞うご期待?!
763> ゆうぴ様
こちらこそ、いつも癒していただいております。
また折りにふれてレスさせていただきとうございます。
764> ちゃみ様
ちゃみ様はオトナのご意見ですなあw うちのよっちゃんは、まだかなりガキですが
今回のことで少しは大人になれそうな感じでございます。
765> なち様
雪ぐまも知りたい!w 17歳くらいって何かと不安定な時期でございますから
こんがらがったりパニックしたり。うちのよっちゃん、鍛えられてる最中でございまする。
766> 23様
人は皆平等に自分の気持ちしかわからないのに、相手の気持ちを推測したり誤解したりとせわしなく。
恋愛とはまったく難儀なものでございますね。と、雪ぐまもマジレスw
- 771 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/19(月) 11:38
- 767> 名無し読者様
厳しいことを申し上げてしまい恐縮でございました。
どうぞ今後の二人の心理戦をお楽しみくださいませ。
768> 達吉様
大切に思えば思うほど、失うことに臆病になるものでございますね(とくに10代は)。
パワーうP!したら、受験勉強に励んでくださいませねw。
769> 時限爆弾様
きわどいですね〜。トメっちがキショキャラだけに、綱渡りの難易度も増すというw
よっちぃには試練の時。悶々も青春でございますな(遠い目)
さて、更新が遅れてしまいご心配をおかけいたしました。
初のスランプってやつをやっておりましたw
それでは、本日の更新にまいります。ちょっと長めです。
- 772 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:39
-
鞄を胸にぎゅっと握りしめ、往来で立ちすくんだままのあたしを、
ご近所の奥さんたちが不思議そうに見やりながら歩いていく。
秋の冷たい風がぴゅうと吹き、制服の短いスカートが頼りなく揺れた。
さ、寒っ。
だめだ、とりあえず帰ろう。
ちょっと後で。
また後で。
そう思って歩き出しかけ、あたしはピタッと足を止めた。
うつむいた視線の先に、履き古して薄汚れたローファー。
まるであたしの気持ち、みたいだ。
自分の手のうちを見せずに、
相手のカードばかり気にする卑怯な恋を続けるうちに
なんだか薄汚れてきちゃったあたしの想い。
あんなことになってさえ、なお、
あたしはあたしの想いを彼女にさらけだしてしまうのが怖い。
- 773 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:40
-
トメっちの指の隙間からチラチラ見えるカードはランダム過ぎる。
ハートのエースなのかジョーカーなのか、確信が持てなくて迷ってしまう。
迷いながらじりじりと自分のカード握りしめて
くしゃくしゃにしてしまっているあたし。
結局、あたしにわかるのはあたしのカードだけなんだ。
あたしは目を閉じて、ココロのなかでそっと想いを確かめた。
情けないほど自信がなくて、浮き沈みの激しいあたしのココロ。
彼女の仕草ひとつに、言葉ひとつに一喜一憂して、いつも逃げ出す。
こんなままでいいの?
あたしは唇を舐めた。
もしカードを広げるとしたら、今がその時。
薄汚れた靴を履き続けるのは、もう嫌だ。
- 774 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:44
-
よし。
あたしは、再びくるっと振り返った。
いつの間にかカウンターからこちらをうかがっていたトメっちが
驚いたようにぴくんと肩を震わせる。
ああ、やっぱり照れてただけなんじゃん?
たぶん、怒っては、いない。
大丈夫、きっと大丈夫。
自分を奮い立たせるように心の中で繰り返しながら
あたしは静かにお弁当屋に歩み寄った。
17年間を賭けた真剣勝負に足が震える。
でも、そんなことはおくびにも出さずに
カウンターに肘をついて、トメっちをジッと見つめる。
あたしが近寄ってくるのを緊張した様子でみつめていたトメっちは、
胸の前で手を組んだお得意のポーズで、ちょっと後ずさった。
- 775 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:47
-
「トメっちあのさ」
「…………」
トメっちは一体何を思ったんだろう。
ますます表情をこわばらせると
踵を返してキッチンへと逃げ込んでしまった。
ちょっと、なんでよ?!
勇気を出したのにとショックを受けつつ、あたしはあわてて彼女を追いかけた。
カウンター脇の勝手口に駆け寄り、
ガチャリと開けて勝手になかに入り込む。
トメっちは、あたしに背を向ける形で作業台の前に佇ずんでいた。
うつむきかげんの細い背中から漂ってくる拒否の気配に、あたしは一瞬ひるむ。
「……トメっち?」
「なんか、よっすぃ〜って怖いね」
「は?」
怖い? 何が?
「……美貴ちゃんだけじゃないでしょ? 」
あたしは耳を疑う。
なにを言い出すの一体。
- 776 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:48
-
「はあっ?!」
「平気で嘘つくし」
「ちょ、ちょっと待って、それは」
「誘われたら、誰とだってしちゃうんじゃん」
ぐわっ! あたしはのけぞった。
アンタ、誘っといてそれかよ!
「んなわけないでしょ!」
あたしは思わずデカい声を張り上げた。
トメっちが振り返ってキッと睨む。
「怒鳴んないでよ!」
「てか、あんた何なの? 人のこと誘っといて」
そう吐き捨てると、彼女は唇を噛んでうつむいた。
三角巾が揺れる。頬と目元が真っ赤に染まっている。
あ、こんがらがってきてる予感。
いけない。喧嘩しにきたんじゃない。
あたしは深く息をついた。
そして、勇気を振り絞って低く呟く。
「誰とでもあんなことしないよ。……トメっちだから」
- 777 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:49
-
うわ、言った! 言っちゃったよおい!
心臓が恐ろしいほどドクドクと暴れはじめる。
うわわわわわわわわ。マジで腰が抜けそう。
小刻みに震える膝を、必死で踏みしめる。
なのに、トメっちはチラッとあたしの顔をみると
またパッと目をそむけてしまった。
「嘘だ……」
ガアン! 信じてもらえないあたしって何?
痛恨のアッパーカットをくらって、あたしはよろめいた。
いまにも消え入りそうなトメっちの声。
「……馬鹿にしないでよ」
「してないって!」
「顔が笑ってんのよ」
えっ?!
あわてて頬に手をやる。嘘っ!
あたし、なんでこんなにニヤケてんの?
も、もしかしてずっとニヤついてましたか、あたし?
ギャーーーーー!!!!
- 778 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:50
-
その時、カウンターのほうから「すいませーん」と声が聞こえた。
お客さんが来たらしい。トメっちはサッと身を翻すと、
うつむいたままあたしの脇をすり抜けてカウンターへと出ていった。
その後ろ姿を見送りながら、あたしはくらりと作業台に寄りかかる。
あああああ、自分の顔に裏切られるとはっ!
なんでこんな大事な時に笑っちゃうんだよ、あたしのバカッ!
いずれにしても。
あたしは深いため息をついた。
わかったのは、彼女はもうあたしのことをまるで信用してないってこと。
自分を誤魔化して美貴と寝てた、すなわちこれが代償。
さあ、どうしたらいい?
目を上げると、お客さんに屈託のない笑顔を見せる清楚な姿。
あたし、ほんとにこの子と寝たんだよね。
またそんな不埒なことを思って、カアッと赤くなる。
『誘われたら、誰とだってしちゃうんじゃん』
そんなことを確かめるために誘ったの?
まさか、そんなわけない。
あたしは考えをまとめようと目を閉じた。
- 779 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:51
-
昨夜の、ひどくぎこちなかった彼女を思い出す。
きっと初めてだった。キスもしたことなさそうだった。
なのに、どうして誘ったの?
……ねぇ、あたしのこと、好きなんじゃないの?
降りてきた答えはうぬぼれ気味の希望的観測。だけど。
さっきあたしを責めながらトメっちは、
何かに怯えてるみたいに自分のカラダをぎゅっと抱きしめていた。
その姿は後悔してるようには見えなかった。
むしろ、あたしの気持ちを探るように、
あたしの気持ちを確かめたがっているように、見えた……
「ありがとうございましたぁ」
お客さんが帰る。
あたしは顔をあげた。
迂闊に笑ってしまわないように、ぎゅっと口を引き結ぶ。
言うしかない。全部ぶちまけて、嘘をついてたことを許してもらう。
わかってもらう。絶対に、わかってもらう。
この気持ちが嘘じゃないってこと、わからせる。
今度こそ。
- 780 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:52
-
トメっちはずいぶん長い間、お客さんを見送っていた。
道の先を見つめながら、どことなく所在なさげに佇むその姿。
戻ってくるのが気まずいのかな。そうだろうな。
こっちから声をかけようとしたその時、彼女がくるっと振り返った。
完全な逆光で、表情がよく見えない。
目を細め、表情を探りかけたその時、
澄んだ鈴音のような彼女の声が聞こえてきた。
「昨日、ごめんね。忘れて?」
「……は?」
「ごめんね、酔ってヘンなことしちゃった」
いきなり、あたしの足元がガラガラと崩れ落ちた。
……え、あ、そういうこと?
「あーー……」
了解とも納得ともつかない、我ながら情けない声が喉から漏れる。
力を込めて引き締めてた頬がぐにゃりと緩みだすのがわかった。
- 781 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:53
-
トメっちは照れくさそうにクスッと笑って、かわいらしく肩をすくめた。
「なーんか、私ってあんなことできるんだね。自分でもすごいびっくりしちゃった」
「はあ」
「ほんと、気にしないで。あたし、変だったし」
あー、ヤだ。もー、お酒って恐いねー。
そんなことを言いながら、トメっちは軽やかな足取りでキッチンに戻ってくる。
恐いのはアンタだよ……。
なんなの、いきなりそのキャラ転換はなんなの?
あたしは再び腰が抜けそうになり、作業台にくらりともたれかかった。
すかさずトメっちが不服げに頬を膨らませる。
「よっすぃ〜、邪魔」
「え?」
「そこにいられたら仕事できないでしょ」
シッシッと犬を追い払うような仕草。
帰れってか? きゅーっと胸が痛くなる。
マジ? マジで失恋決定??
うわ、美貴、どうしよう? 一回こっきり決定っぽいんだけど。
- 782 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:54
-
ぐるぐると脳裏を駆け巡る行き場のない感情。
信じたくないこの状況。
あ、だめだ、ニヤけてきた……ヤベ……
「クックックッ………」
「な、何?」
いきなり笑いだしたあたしに、
トメっちがギョッとした顔をする。
「アハッ、ハハ、ハハッ…」
「な、なんで笑うのよぉっ?」
なんでって、わかんないよ。
自分でもわかんないよ。
あたしはどうしようもなく震えはじめた自分のカラダを抱きしめた。
魂が抜けてくみたいに、腹筋がぶるぶる震えて喉から息がもれる。
どうしよう、止まらない。
作業台に寄りかかったまま、痙攣のように小さく笑い続けるあたしを
トメっちはおびえたような目で呆然と見つめた。
- 783 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:55
-
どうしよう、止めなきゃ。
ヒクヒク震える横隔膜を必死でこらえ、息を何度も吸い込む。
その息を吐こうとして、うまく吐けないことに気づいて青くなった。
ヤベッ、過呼吸? こ、こんなとこで。
その苦しさに顔にどんどん血液が集まり、カラダがくの字に折り曲がる。
「ちょっ、よっすぃ〜、どしたの?」
見ないで、トメっち。
今のあたしを見ないで。
すぐにでも逃げ出したいのに、それどころじゃないこのピンチ。
ひそかに悶絶しながら、薄汚れたローファーを見つめる。
くそぉ。鼻の奥がカッと熱くなり、じわりと視界が潤んだ。
ぽたり。
ふいに床に落ちた雫をあわてて靴で踏む。
トメっちに気づかれたくなくて。
だけどあたしの体はまたあっけなくあたしを裏切った。
ふわっと息が吐けて安堵した瞬間に、
堰を切ったようにボロボロと零れ始めた涙が、
雨あられのようにローファーに降り注ぎはじめる。
- 784 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 11:55
-
「ううっ……」
好きなのに。こんなに好きなのに。
両手で目を押さえて唇を痛いほど噛みしめる。
知られたくないのに。もう知られちゃいけないのに。
なぜ、小刻みに震えて止まらないカラダ。
どうしてあたしはいつだってアマノジャクに。
よりによって、こんなみっともない姿を、見せる羽目に。
「どうして、泣くの?」
心配そうなトメっちの声。
「泣かないで」
わかってる。
あたしは両手で目をふさいだまま、コクリとうなずいた。
好きだった。ずっとあなたが好きだった。
友達じゃなくて、恋人になってほしかった。
口に出せなかった想いはどこに行くのか。
透明な雫となって流れ落ちるしかないのか。
- 785 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:02
-
「よっすぃ〜……」
ふいに、ものすごく近くから声が聞こえた。
えっ? 思わずパッと手を離して目を開けると
触れそうなほどすぐそばにトメっちが立って、不安げにあたしの顔を覗き込んでいた。
あたしたちは一瞬、見つめあった。
トメっちの目がかすかに見開かれる。
たぶんボロボロのあたしに驚いて。
あたしは、「ごめん」と呟くとサッと目をそらした。
制服のジャケットの袖で、ゴシゴシと目を拭く。
もう、バレてしまっただろう、あたしの気持ち。
これじゃあ誤魔化しようもない。誤魔化す気力もなかった。
ぐったりとしながら、大きく息をつく。
叶わなかった想い。あとは捨てるだけ。
「…………………………」
「…………………………」
妙に気まずい沈黙があたしたちを包んでいた。
何を思ったか、彼女はジッとあたしの顔を凝視したままだった。
その不安げな視線は容赦なくあたしの弱さを暴く。
最悪だあたし。今にも彼女を絞め殺してしまいそうだ。
一瞬でも浮かれ上がった馬鹿馬鹿しさと、怒りと悲しみ。
彼女と重ねた年月の記憶。
- 786 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:07
-
ぎゅっと拳を握りしめた。真っ白くなるほど。
だめだ、耐えられなくなる。
あたしは我ながら無理してニッと微笑むと、「帰るね」と呟いた。
「待って」
トメっちが、ふいにポツンと言葉を落とした。
「……好きな人が、いるの」
あたしはもう驚かなかった。
何、今その話?と、かすかに拳を震わせて、やけっぱちにフッと笑っただけだった。
凍えそうに冷えた風が胸の中にびゅんびゅん吹き込んでくる。
はいはい、文麿ね? つまり、チクるなってことね?
「誰にも言わないよ」
「え?」
「昨日のことでしょ?」
あたしは鼻をすすった。
あー、かっこわる。誰がバラすかっつーの。
トメっちがあわてたようにあたしの腕をつかんだ。
- 787 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:08
-
「違くて……」
「え?」
「そういうことじゃなくて」
そのかぼそく震える声に、心臓がドキンと大きく波打った。
あたしの腕をぎゅっと握りしめるその細い指先。
不安げにゆれる瞳。これでもかってくらいの八の字眉毛。
……あ、れ?
「……信じて、いいの?」
彼女の声は、もう空気に溶けちゃいそうなくらい震えてた。
あたしの気持ちを探るように。
指の隙間から細くこぼれ落ちる砂のように。
あたしは反射的にトメっちを強く抱き寄せていた。
トメっちは小さく息を呑んだけど、逃げなかった。
心臓が、痛いほど鳴っている。
トメっちにバレバレなほど鳴っている。
- 788 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:09
-
うっそ。マジで?
ぎゅうううううと確かに腕の中にいるトメっちを抱きしめながら、
あたしはぱちくりと目を見開いて、トメっちの肩越しの床を凝視した。
トメっちが、かすかに甘く息をついたのを耳元で感じた。
ああ、ほんとに? さっきとは違う涙がじわりと浮かんでくる。
だけど、その時、いきなり気づいたんだ。
レジ脇の棚にきれいにラッピングされた薔薇の花束が置いてあることに。
薔薇の花束だってぇ? とたんに頭にカッと血がのぼった。
「何あれ?」
「え……?」
自分でもおっそろしいほど低い声が出た。
トメっちがビクッと身を固める。
あたしは彼女をぐいと脇にどけると、つかつかと棚に歩み寄った。
乱暴に花束を手にとる。小さなカードがついている。
書かれている言葉はたった一言。
『Dear, Rika』
なんだと?
- 789 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:10
-
あたしはくるっと振り返った。
トメっちに花束を突き出す。
「文麿?」
「あ、うん……」
「なんで?」
「え……その、いつも、おいしいコロッケありがとうって」
バカ!
あたしはトメっちを睨んだ。
んなわけないじゃん! 下心ありありじゃんか!
トメっちもそれがわかってるのか、バツが悪そうに視線を泳がせる。
あたしはますますカーーーッときた。
「……なんでこんなのもらっちゃうの?」
「え、だって、お得意様だし」
「お得意様だから何だよっ!」
ほとんど怒鳴っていた。
いけないと思うのに、もう止まらなかった
花束をつかんだまま、店の外に走り出す。
トメっちが何か言ったみたいだったけど、もう聞こえなかった。
なんだよ、薔薇の花束って? テメー、口説いてんじゃねーよ!
ぐんぐん走る。あのキザな文麿を追って。
- 790 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:11
-
お屋敷の門まで一気に走り、
息を切らしながらインタフォンを鳴らしまくった。
ギョッとした顔の家政婦さんが駆け出してきた後に、
まだ制服姿の文麿が「やあ、吉澤さん」と、のんびり顔をのぞかせる。
すかした顔しやがって、コイツ。
あたしはギッと奥歯を噛みしめて、花束をバサッと文麿の胸に押しつけた。
「……あのね、こういうことやめてくれる?」
「な、なんだい、いきなり」
「あの子には、もう恋人がいるんだよ、悪いけど」
だからもう、許さない。
トメっちに、こんなふうに近づいてくるヤツは許せない。
沸騰しまくった頭に、ぐるぐる回る独りよがりな感情。
文麿はものすごく驚いた顔をして、突っ返された花束と激高してるあたしを交互に見た。
そして、ゆっくりと首をかしげる。
「キミ、何か勘違いしてないかい?」
「へっ?」
「これは、ほんとにちょっとした感謝のしるしなんだけど」
文麿は、きれいな顔に苦笑を浮かべてさらりと言った。
- 791 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:12
-
うっ。あたしの頭からサーッと血がひく。
いやマジで血の気がひく音が聞こえた。
や、ヤバ……あたし、アツくなり、すぎ?
思わずボーゼンとしていると、
後ろから、トメっちのカン高い声が追いかけてきた。
「文麿さん!」
「ああ、梨華さん、これは一体……」
梨華さんだとぉぉぉぉ!!! いつの間にっ!!!
再び脳血管がブチ切れそうになりながら振り返る。
だけど、息を切らせたトメっちの姿を見て、あたしはギャッとのけぞった。
あたしなんて通り越して、文麿をひしと見つめるその瞳。
瞬時に、絶望のどん底に叩き落とされる。
え? なに? トメっち、やっぱ文麿のことが?!?!
- 792 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/19(月) 12:13
-
あ、貧血……
くらりと眩暈がして額をおさえたところで、
いつもよりもハイレベルにうわずったトメっちの声が聞こえてきた。
「あの、ごめんなさい。ホントにお気持ちだけで十分なんです」
「やだなあ、感謝のしるしだってば」
「で、でも、あの、私の、お、お、お付き合いしてる人がっ……」
トメっちはありえないくらい真っ赤になって、かっぽう着の裾をギュッと握った。
その様子を見て、文麿がフッと微笑む。
「あなたの恋人が気にするの?」
「ハイ……」
あたしは、へなへなとその場に崩れ落ちた。
目の前が真っ白になる。
気を失う瞬間に、あわててあたしに駆け寄ってくるトメっちの姿と
なぜかあたしに向かってバーンと指鉄砲を打つ文麿のキザな笑顔がかすんで見えた。
- 793 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/19(月) 12:17
-
本日はここまでといたします。
Congratulations!
- 794 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2004/01/19(月) 12:42
- ずっと愛読してましたがひさびさにレスせずにはいられませんよ
かな〜りの急展開
よっすぃ〜暴走描写の嵐ですね(笑)
トメっちの言葉で気持ちを語るのが待ち遠しいです
ホント雪ぐまさんの小説素敵です
- 795 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 12:51
- ヲヲヲッ!と思ったり、ギャッ!と思ったり、ヤタッ!と思ったり、エーーッ?!と思ったり
カナーリハラハラしました。圧巻です。私も倒れそうです……。
声を大にして言います。雪ぐまさん最高!!!!!
- 796 名前:吉澤@大好き 投稿日:2004/01/19(月) 13:30
- 雪くま様>初めまして以前より作品を読ませて頂いてます。ものくすごくドキドキソワソワしながら毎日楽しみにしてます。これからも頑張って下さい。昨日、名古屋ライブを見てきました、夜公演で雛壇の二人は(吉と石)とても楽しそうに話をしてましたよ(*^_^*)
- 797 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/19(月) 13:58
- 梨華たん、19歳、おめでとう!
てなところで、よっちゃん、1人で突っ走ってますね。
やはり、よっちゃんには暴走キャラが似合います。
もう少しの我慢だよっちゃん、幸せになれるよ、たぶん?
- 798 名前:499 投稿日:2004/01/19(月) 14:04
- 更新、乙れす!
雪ぐまさんの使われる“ココロ”というコトバ、
なんかさりげなくて、含みがあり大好きです。
>781の うわ、美貴、どうしよう? 一回こっきり決定っぽいんだけど。
のとこ、よっちゃんには悪いけど思わず笑ってしまいました(^^;
- 799 名前:なち 投稿日:2004/01/19(月) 15:53
- 梨華ちゃんおたおめ〜(ノ^▽^)ノ
てかドキドキしまくりでした!
よっちゃんアツいねぇ♪
二人とも気持ちが全部伝えれればイイね!!
- 800 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/19(月) 16:42
- 更新、お疲れさまです。
おーめーでーとーうーヨシトメ!!!そして梨華ちゃんも19歳おめでとう!!!
もうね、変化球投げ過ぎですよお互い。もうね、綱渡りし過ぎですよお互い。
もうね、キワド杉ですよ雪ぐまさんw
始終ハラハラでした。浮いては沈み、浮いては沈み…
でも良かった!!やっぱり、長い付き合い、変化球だって届くし、
綱渡りだって、歩み寄れるよね。
ウンウン・゚・(ノД`)・゚・。
素敵でした。もうタッチアップ成功みたいな?w
執筆、頑張って下さい。見守ってます。
- 801 名前:23 投稿日:2004/01/19(月) 16:53
- 更新、乙でございます。そして梨華おめ!
聖誕祭に更新とは、おぬしもやるよのぅw
何だかぎこちないふたりがイイ感じです!
そして何気に文麿、グッジョブ!
( ´ Д `)<んあ〜、僕には分かる!
次回更新もまったりお待ちしてますですよ。
- 802 名前:わく 投稿日:2004/01/19(月) 20:15
- もう最高すぎ・・・・(T_T)
(^▽^)はあと(^〜^0)
つつつついに!!読んでてなんだか泣けてきました!!
雪ぐまさん最高☆いしのBDに粋なことを(笑)
あ〜やっぱいしよし最高♪
- 803 名前:ぽろろん 投稿日:2004/01/19(月) 20:51
- 興奮して余計な事書いちゃいそうだったので、今までレスをひかえて
いたのですが・・・心がえぐられるようです。吉の気持ちが痛いほど
分かった・・・そして今、涙が止まりません・・・。
適当につけたHNだったのに、その名の通り涙ぽろろんになって
しまいますた。
- 804 名前:ファンA 投稿日:2004/01/19(月) 21:50
- 石川さん、誕生日おめでとうございます。
本当に、生まれてくれてありがとうですよw(何
今回…
かなりドキドキと読ませていただきました。
最高です。>>782〜>>784、胸がいっぱいでした。
いっぱいすぎて言葉が出てこないです。
よっすぃ〜、おめでとう♪
そして雪ぐまさん、今回もありがとうございます。
- 805 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/20(火) 00:10
- 先日、更新が遅れましたので、本日は日付が変わるや否や参ります。
794> ラヴ梨〜様
お久です〜♪ はい、もう暴走列車w ずっとずっと隠してたくせに、
プチッときたらこれですよw 書いててかなり可笑しかったですね。
795> 名無飼育様
お褒めいただき、ありがとうございます。
キリキリ舞いするよっすぃ〜の巻でございましたw
796> 吉澤@大好き様
初めまして! コンサレポ、ありがとうございます。そうですか、楽しそうでしたか。ポワワ。
「雛壇の二人」で一瞬お内裏さまとお雛さまのいしよしを想像してしまった自分……逝ってきます。
797> ちゃみ様
とにかくはやく意識を取り戻さないとw 暴走よっちゃん、長い一日でございました。
あのトメっちが相手じゃ〜仕方ないってことにしといてくだされw
798> 499様
表現に凝るよりも、なんてことない言葉に含みを持たせるほうが好きなので
おわかりいただいてとてもうれしゅうございました。
そして、どうにも美貴を頼るくせが抜けないうちのよっちゃんにも、しっかりお気づきですねw
799> なち様
ドキドキしまくっていただき、珍しく苦労して書いたかいがございました(いつもは妄想のままに書きまくってるだけなので)。
二人はやっと素直になれそうでござんす。
- 806 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/20(火) 00:11
- 800> 時限爆弾様
ヨシトメ……そっか、これいしよし小説じゃなくてヨシトメ小説?!w
キワド杉で申し訳ないw 時限爆弾様もキワドイ恋が叶いますように……。
801> 23様
801(ヤオイ)、誰が踏むかなあと思ってたら23様で思わず笑ってしまいましたw
あいかわらずオヤジギャグ冴えてますねw けなげな文麿くんには外伝を用意したいと考えております。
802> わく様
つつつついに? 光栄でございますw 石川さんのBD狙いだったわけじゃなく
あれこれいじり始めたらドツボにはまったというスランプ状態での遅れ……申し訳なしw
803> ぽろろん様
お久です♪ うちの吉はこの日、かなり成長したと思われまする。
一皮剥けて、人間的にひとまわり大きくなってると……いいのですがw いや、大丈夫ですw
804> ファンA様
石川さん自身も「生まれてきてよかった」と思えるような
素晴らしい恋&仕事をしていってほしいものでございますね。ともに祈りましょうぞ。
それでは、ハッピーな本日の更新にまいります。
- 807 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:12
-
目を覚ますと、なんと救急車のなかだった。
あわてて飛び起きると、泣きそうな顔のトメっちと
白い帽子をかぶった救急隊員の皆さんが「わっ!」「キャッ!」とのけぞった。
病院に連れ込まれそうになるのを、ただの貧血だと言いつのって
やっと家のほうに車をまわしてもらう。
救急車をタクシー代わりにつかったなんて、あたしくらいかも。
「ほんとに、ほんとに大丈夫?」
トメっちはなかなか信じない。
あたしをベッドに寝かしつけると、熱を計ってみたり、
頭は痛くないかとしつこく尋ねたり、
指を差し出して「これ何本に見える?」と言ってみたり、たいへんな騒ぎだ。
「大丈夫だって」
「でも、頭打ったっぽかったし」
「へーき」
「やだよぉ、もし……」
もし、よっすぃ〜がいなくなっちゃったら、私。
両手で顔を覆ってポロポロ泣き始める。
ぐしぐしと盛大に鼻なんかすすりながら。
- 808 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:13
-
『私の、お、お、お付き合いしてる人がっ……』
文麿にそう言いながら、ありえないほど赤く頬を染めていたトメっち。
気持ちバレまくりで暴走しまくったあたしに、彼女がくれた答え。
あたしは、肺の奥の奥のほうから深く息をついた。
ああ、今まで何を見てたんだろう。
トメっちは、いつだってあたしのこと一番大事にしてくれてたのに。
あたしのまわりをうろちょろして、ニコニコ笑ってくれていたのに。
友達以上恋人未満の距離を、たぶんちょっとずつ恋人に近づけようとしながら。
怖がって、いきがって、つまんない遠回りをしてたのはあたし。
彼女の言葉をまっすぐに受け取ってなかったのもあたし。
そしてとうとう酔った彼女にあんなことまでさせちゃったのも。
だから、今度こそ、ちゃんと言わなくちゃ、ね。
あたしは、身を起こしてトメっちの手をとった。
驚いたように顔をあげたその黒い瞳を見つめる。
すうっと深呼吸。よ、よし!
- 809 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:13
-
「トメっち、あたし、ずっとトメっちのこと……」
「キャーーーッ!」
何を思ったか、トメっちは真っ赤になってキーンとくるような雄叫びをあげると、
あたしの手を振り払って、両手で耳をおさえた。
ぎゅっと目を閉じて、ぶんぶん頭を振る。
「やだやだやだやだ、恥ずかしいよおっ!」
「なんでよっ!!」
ああ、もうなんでこんな時までキショキャラなの!
くそぉ、もうこうなったら実力行使。
あたしはベッドから飛び出て、えいっとトメっちを抱き寄せた。
案の定、派手にジタバタしやがったけど、こうなったら意地でも離してやらない。
てゆうか、もうこれからは絶対に離さないんだから。
いてっ、蹴るなよぉ……
横抱きにぎゅうぎゅう抱きしめて、やっとおとなしくなる。
はぁ、はぁ。もう、ムツゴロウ王国かよ、ここは。
トメっちは、ぎゅっと抱かれて放心したみたいにあたしの胸にもたれている。
そして、パチパチとまばたきをすると、深く深く息を吐いて目を閉じた。
- 810 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:14
-
閉じられたトメっちの瞼から、はらはらと涙がこぼれる。
みるみるうちに頬に涙の筋ができる。
あたしの胸元がしっとりあたたかくなる。
彼女の熱い涙で濡れて。
彼女の熱い想いに触れて。
腕のなかから、トメっちのくぐもった声が聞こえてきた。
「……ず、ずっとそばにいられるだけでいいって、思ってたの」
「え?」
「人魚姫、みたいに」
あっ!
ずっと忘れていたストーリーが鮮やかに蘇る。
美しい声をなくしてまで愛する王子様のそばに寄り添った人魚姫。
いつか気づいてくれる。いつか愛してくれると信じ続けて。
そうだ。
あの頃のトメっちが一番好きだったのはシンデレラじゃない。
「そうだよ、人魚姫だよ、このピーターパン!」
よくわからない悪態をつきながら、トメっちが恨みがましい目で睨む。
ほんとによっすぃ〜は冷たいよ、私のことバカにしてるとため息をつく。
あたしはガックシうなだれた。
なんなの、あたし、もお。記憶力、なさすぎ。
- 811 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:15
-
「愛が足りないのよ」
「ばっ、そんなことないよ!」
好きだよ、もうむちゃくちゃ!
でも、ちょっとばかし分が悪いこの状況。
あれぇ、でも。
「人魚姫って悲しい話でしょ? 最後、泡になって消えちゃわなかった?」
「そうだよ。だから、私も泡になっちゃうんだって」
すごく後悔したの。
そばにいられるだけでいいなんて、嘘。
一番近くにいたのに全然相手にしてもらえなくて、
カンタンにほかの女の子にとられちゃって、
このまま一度もあなたに愛してもらえずに死ぬんだと思ったら
すごく、すごく、悔しかった。
耐えられなかった……
- 812 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:16
-
しゃくりあげながら、ぎゅうっとしがみついてくる。
あたしの鎖骨に痛いほど額を押しつけるヤキモチ妬きの人魚姫。
そうか。ごめんね。待ってたんだね。
ずっと待っててくれたんだよね。
ごめんね、あたし、とんでもないバカで。
あなたのこと、すごく傷つけて。
あたしはたまらない気持ちになって
ほんの少し腕を緩めて、そうっとキスをしようとした。
その瞬間……
むぎゅ。
頬袋……もとい、頬っぺたをつかんで押し戻された。
「……何よ」
「美貴ちゃんは?」
「は?」
「美貴ちゃんと、もうしない?」
潤んだ上目遣いでジトッと睨む。
そうか、そんなにヤキモチ妬いてたのか。そうか。そうだったのか。
- 813 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:17
-
あたしは真剣な顔で頷いた。
「しないよ」
「ほんと?」
「ほんとに。誓うよ」
「じゃあ、“美貴”とかも呼ばないで」
「ええ?」
「他の子の名前、呼び捨てにしないで!」
あたしのことは“トメっち”のくせに。だって。
そうか、そんなことまで気にしてたのか。そうか。そうだったのか。
「じゃあ、“梨華”とか呼んでみる?」
「……恥ずかしいからいい」
「なんだ」
「ねぇ、ホントにもう絶対しない? ホントに? もーすっごく心配。ずっとついて歩きたいよぉ」
アヒル口をちょんと尖らせながら、
あたしの腕の中でそんなかわいいことをわめくトメっち。
- 814 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:17
-
「ずっとついて歩いてよ」
あたしはやっと素直になって、
腕の中の人魚姫の耳元で、ずっと隠し続けた長い長い恋を告白した。
きゅっと胸をおさえたまま耳たぶまで真っ赤になった彼女は、
「よっすぃ〜って、やっぱり嘘つき」と恥ずかしそうに、でもうれしそうに呟いた。
「何でよ」
「えー、だって全然わかんなかった。いつもうるさそうにしてたじゃん」
こっちは毎日、通ってるのにさあ。
一生懸命しゃべってるのに、キショとか、オチがないとか言うしさあ。
もうメゲそうだったもん。彼女はそう言ってクスクス笑う。
アマノジャクですいませんね。あたしは口を尖らせた。
「トメっちだってわけわかんなかったじゃん」
「何が?」
「えー、言うことしょっちゅう変わるし」
「そぉ?」
そっちはやっぱ天然かよっ! はぁ。
- 815 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:18
-
トメっちはまたクスッと笑うと、
かわいらしい上目遣いでチラッとあたしを見上げた。
「あのね」
「ん?」
「舞踏会の時ね、うれしかった」
きれいだって言ってくれて。
ちょっと……ううん、すごく。すごく期待したの。
着替えてきたのも、もしかしてヤキモチとか、妬いてくれてるのかなって。
だから一生懸命、笑ったの。気づいてほしくて。
よっすぃ〜を待ってるって。
よっすぃ〜しか、好きじゃないって。
あの光がこぼれおちるような笑顔。
ええっ。あれって、そういうことだったの?
その時の感情をなぞるように、うっとりとトメっちは目を閉じた。
祈るように両手を胸の前で組みながら。
- 816 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:19
-
「あの時、キスしてもらえたら素敵だったんだけどなあ」
「うぐ………」
わかんないよ、そんなの……。
そう呻くと、トメっちは「鈍感なのよ」とからかうような声。
「ちぇっ」
「バカ」
憎たらしいことばっかり言いながら、トメっちはずっと目を閉じたまま。
長いまつげと艶やかな唇がじれったそうに震えて、あたしはアッ!と気がついた。
ヤッベ。またサインを見逃すとこだった。
あたしはトメっちをきゅっと抱き直すと、おずおずと唇を寄せた。
情けないほど震えてるのは、トメっちにばれまくりと思う。
でもいい。かまわない。恐いくらい、好きなんだ。
- 817 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 00:20
-
ゆっくりと唇を重ねていく、ふれるだけの、静かなキス。
びっくりするほどやわらかくて、熱い。
あたしはやっとこうすることが許された唇から
なかなか離れることができなかった。
頬に感じた熱い涙が自分のものなのか彼女のものなのか
胸の中を叩きまくる鼓動が痛すぎて、まるでわからなかった。
- 818 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/20(火) 00:22
-
本日はここまでといたします。
ハッピーー!
- 819 名前:260 投稿日:2004/01/20(火) 00:50
- 更新おつかれさまです。
リアルタイムでよんでしまいました。。
ああ、今日はほんと幸せな気分でねむれます。
雪ぐまさま、ほんと人をドキドキさせすぎです!
スランプとのことですが、無理しないで下さいね。
- 820 名前:ゆんせ 投稿日:2004/01/20(火) 01:47
- 更新乙ですヽ(´〜`;
もぉ〜、喉の奥からクワッとなるくらいサイコーです!
テストも終わり、心置きなくこの作品を楽しんでます
あんまり無理せず、自分の納得のいくよう存分に作品に取り組んでください
私はいつも楽しみにしながら待ってます
長文スマソ
- 821 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 09:02
- 物語が私の想像と違う角度から進行していくので凄く面白い。
特に>>809
ここでソレかよ!って
よっすぃ〜とシンクロして突っ込んでしまいましたw
- 822 名前:23 投稿日:2004/01/20(火) 12:51
- 更新、お疲れ様です。
そして夏休み以来登場していないやぐ誕生日おめ!w
(〜^◇^)<オイラの誕生日にカップル成立で〜す!キャハハ!
いやはや、これこそまさに雪ぐまマジック!てな感じになって来ましたね。
トメっち可愛いよトメっち!「ひとりむはむは病」になりそうですわいw
そしてなんと文麿外伝をお考えに!?それもこっそりと楽しみにしておりますわ。
チームいしよしも次回更新が一段と楽しみになってます。
- 823 名前:なち 投稿日:2004/01/20(火) 13:55
- はっぴぃー( ○^〜^)人(^▽^ )♪
よかったA(;_;)嬉泣き(笑)
よっすぃとトメっち気持ちが繋がるまで長い道のりだったね!!
でもホントよかった(^皿^)
- 824 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/20(火) 21:30
- やぐっつあん、お誕生日おめでとうございます。
おかげさまで(〜^◇^)<成立で〜す。
819> 260様
お気遣いありがとうございます。スランプは脱出いたしました(たぶん)。
ラブラブモードで爆走いたしまする。
820> ゆんせ様
「喉の奥からクワッと」なってくださって光栄です。クワッ(←気に入った)。
テスト終了お疲れさま〜。
821> 名無飼育さん様
雪ぐまのなかのトメっちが勝手に動くんでございます〜〜〜w
本人はよっちぃのマジ顔に思わず叫んだふうでございますよw
822> 23様
やっぱりけなげだったトメっちでございました。よっちぃはただの空回りでしたがw
さ〜て、これからは超ラブラブモードでございますよ〜。妄想炸裂キターー!!w
823> なち様
いや〜、長い道のりを見守っていただき、ありがとうございました。
まったく手のかかる二人でございました。はぁ、疲れたw
それでは、本日二度目の更新にまいります。
- 825 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:31
-
「というわけなんだ」
「そっか、おめでと」
ちょっと寂しいけど。
そんなふうに美貴は肩をすくめて笑った。
放課後、人気のない渡り廊下。
あたしはトメっちのヤキモチを胸のなかで飴玉みたいに転がしながら宣言。
「つーわけで、これからはミキティって呼ぶことにする」
「うわ、なんかキモっ」
「いたーーー! みっきたーーーーーん!」
ぎょっと振り返る美貴。
いつものように松浦が美貴を発見して全速力で駆け寄ってきた。
彼女にしか見せない満面の笑顔で。
そして、一瞬の迷いもなくジャーーーンプ!!
めきっ。
派手に飛びつかれて軋む美貴の腰。
美貴の顔が「たはは……」と情けなくなる。
うーん、いつかコイツがぎっくり腰をやることは間違いない。
- 826 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:32
-
愛すべき同志。
美貴にも、幸せになってほしい。
あたしは腕を組んで、じゃれあう二人を眺めた。
「そんなに怖がらなくてもいいと思うんだ」
「なによ、自分がうまくいったからって」
美貴が口を尖らせる。
あたしは、頭を掻く。
「何の話?」
不思議そうにあたしたちをキョロキョロ見る松浦。
あたしは「何でもないよ」と微笑む。
とたんに不服そうに松浦の頬がふくれた。
「ねー、なーに、みきたん。何のハナシー?」
「あーー……」
「なんでぇ? なんで教えてくれないのー?」
じたばた。
背中で暴れられて美貴の顔がますます情けなくなる。
あたしは声をあげて笑った。
- 827 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:32
-
「美貴……じゃないやミキティ、幸せなあたしにあやかってさ」
「自分でゆーなよ」
「まあまあ。一世一代の賭け、しない?」
「賭け?」
あたしは、腰をかがめて美貴の目を覗き込んだ。
「コインの表が出たら言う。裏だったら言わない」
「!!!!!!」
「ねー、何の話なのよー、もー!」
冗談じゃないよ!と言うかと思ったら、
美貴はごくっと唾をのんでしばし考え、低い声で「いいよ」と呟いた。
いよっ、オンナだねぇ〜。
「な・ん・の・は・な・しーーーーー!」
じたばたする松浦を、はがいじめにしてひきはがす。
許せ、美貴。一時のことじゃ。
- 828 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:33
-
「もぉーー、よっすぃー離してよーー! みきたーん、みきたーん!」
じたばた。わめく。じたばた。わめく。
んー、やっぱ怖がらなくてもいいような気がするよね?
でも、確率が100%ってことはないわけで。
そんなことは神様しか知らないわけで。
美貴は緊張のあまり青い顔をして、ポケットから100円玉を取り出した。
手を軽く握って、親指の爪にコインを乗せる。
「い、いくよ」
「な・ん・の・は・な・し・よーーーーー!」
「しーっ、松浦、ちょっと静かにして」
美貴はすうっと息を吸うと、ピン!とコインを弾いた。
コインは夕陽を受けてキラキラと回転しながら高く舞い上がり、ストンと床に落ちる。
カタカタカタカタカタ………ピタッ。
- 829 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:34
-
「……裏だよ」
美貴が安堵ともなんともつかぬ大きな息を吐いた。
なるほど、神様は反対か。
なのに呆然と床のコインを見ていた美貴は、キイイッと顔をあげた。
そして、やけにすわった目で、あたしと松浦のほうをぐるんと向く。
えっ? まさか美貴? まさか?
あたしは松浦をはがいじめにしたまま硬直する。
松浦はまだ無邪気に足を踏みならしている。
「もーー!ハナシ見えなーい! 何が裏なのーーーー!!!」
「……教えてあげる」
「教えて?」
マジかよ?!?!?!
美貴はヤンキーばりにぐいっと肩をいからせると、
あたしに磔になってるみたいな松浦の顔をずいっと覗き込んだ。
- 830 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:34
-
「あのね、あたしが、亜弥ちゃんの恋人になりたいって話」
ぴたっ。
松浦の歯車が止まる。
美貴は真っ赤な顔で、なぜだかふてくされたように続けた。
「だからマジで好きなんだってば、ずっとっ」
ずるずるずるずる〜〜〜〜
松浦の腰が抜けて、あたしの腕からすべりおちた。
◇ ◇ ◇
- 831 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:35
-
すごかった。美貴の一世一代の大告白。
あの後、どうなったかな。
二人きりにして帰ってきちゃったから知らない。
それよりもとりあえず今は。
あたしはトメっちを膝にのっけてキスの最中。
彼女はあたしの首に腕をまわしてもう夢中。
「んっ……」
どうやらうちの人魚姫は、キスにハマったみたい。
仕事が終わるとすっ飛んできて、もっともっととせがまれる。
んー、あたしって粘膜弱いのかなあ。
ひりひり赤くなって、ちょっとタラコっぽくなってきた。
あーあ、唇のカタチ変わっちゃうね、きっと。
え? 贅沢な悩みだって? うれしい悲鳴?
ははっ、そうだね。はい、すいません。めっちゃ幸せです。
- 832 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:36
-
「……はぁ」
甘いため息。
とろんと瞳を潤ませたトメっちが、
すっごい至近距離であたしの目を覗き込む。
「キスって気持ちいいね」
「だね」
「すっごいドキドキする」
んー、ドキドキっていうかあ。
むらむらしない?
「しないよ、バカ」
「うっそぉ?」
なんかもう、腰のあたりがムズムズっていうかさぁ。
背骨のあたりがぞわぞわっていうかさぁ。
ぜったいトメっちもそうなってると思うけどな。
「えぇ?」
恥ずかしそうに笑いながら、また彼女はあたしの頭をつかんで唇を重ねてくる。
うーん、たいへん積極的だ。イイヨイイヨー。
- 833 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:37
-
覚えたてのトメっちのキスはかわいらしい。
唇であたしの上唇をはさんで引っ張ってみたり、
ちゅって吸ってみたり、あたしの舌を誘うみたいにちょこっとだけ舌の先を差し入れてみたり。
そして、まんまと誘われてしまうあたし。
「……ん……う……」
うわぁ、そんな甘い声出さないで。
マジでへんな気持ちになってきちゃうじゃん。
あたしはたまらなくなって彼女のおっぱいにそろそろと手を伸ばす。
とたんに彼女は、パッと唇を離した。
「だめ!」
ええ? いいじゃん。
行き場をなくしてグーパーしてしまうまぬけなあたしの手。
「だめ。下によっすぃ〜のママがいるでしょ?」
「絶対、上がって来ないもん」
「やなの」
えー。マジで?
そんなこと言ってたら、いつまでたってもできないじゃん。
- 834 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:38
-
「トメっちは、したくないの?」
「えぇ?」
トメっちの頬が、サッと赤くなる。
なのに、わざとらしく首をかしげるんだ。
「何の話?」
「キショ! サムっ!」
「なによぉ」
「あん時は、あたしのこと襲ったくせにさ」
「お、襲ってないもん!」
プイと横を向く。
えー? みんなはどう思う? あれってあたし、襲われてたよねえ?
あーあ、こりゃもう一回お酒飲ますしかないのかなあ?
「あ、そういえばあの時のお部屋代」
「ああ、あれトメ子姉さんからもらったお小遣いだから」
「うそっ?」
ほんと。二人でおいしいもの食べなさいってくれたの。
あたしは、ニヤッと笑ってトメっちの鼻をつついた。
- 835 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/20(火) 21:39
-
「世界一おいしいもの、食べたよね?」
「バカ」
トメっちが笑う。恥ずかしそうな、でもとろけそうに幸せな顔で。
なのに、「もう一回食べたい」ってねだったら、「今度ね」だって。
今度っていつよ? ああ、もうこんなにじらされて。
「ねぇ、よっすぃ〜、もっとキスして」
「ふえぇ」
ここは天国、それとも地獄?
彼女は天使のような微笑みで、甘い使役をあたしに命じる。
「17年分、してよ」
うわ、もうヨシコ、萌え死にそう……。
- 836 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/20(火) 21:40
-
本日はここまでといたします。
ぐわわわ〜っ、何書いてんじゃ自分……逝ってきますw
- 837 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/01/20(火) 22:04
- 初レスです。
いつもおいしいいしよしをありがとうございます。
更新の早さに驚いております。
これからも作者さんのペースで頑張ってください。
- 838 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/20(火) 22:30
- 藤本がんばった!!よくやった!!
- 839 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 23:03
- イイヨイイヨー。
跨いでるんだろうか、女の子座りなんだろうか
と変なことが気になるワタクチ。
エロオヤジ化しておりますw
ミキティの恋が上手くいくといいなぁ。
- 840 名前:なち 投稿日:2004/01/20(火) 23:03
- イイヨイイヨ〜♪(笑)
ぃやーん。積極的なトメっち素敵♪
よっちゃん贅沢な悩み抱えやがって(笑)
でも幸せそうで嬉しいわ( ○^〜^)人(^▽^ )
あやみきの行方は?!
ぅーん…気になる!!
- 841 名前:わく 投稿日:2004/01/21(水) 00:09
- 萌え死に決定☆
雪ぐまさん、フォーエバー!!!!
「17年分してよ・・・」
よっちぃ!!17年分ってどんくらいよ??してやってしてやって(笑)
(^▽^)(^〜^0)この人らの周りにははあとマークぎっしり!!!!
あやみきにも幸あれ!!!祈るっきゃないっす!!!!!
- 842 名前:23 投稿日:2004/01/21(水) 01:37
- 更新、乙でございます。
「イイヨイイヨ〜」がカナ〜リ気に入りましたw
覚えたてって何でも嬉しくてハマっちゃいますよねぇ〜。もうトメっちったら♪
石川さんって、確かにイメージ的にアリエルっぽいですよねぇ。
そして今回は美貴ティ、カッケ〜!さすが男前娘。ですわいw
チームいしよしがイイ感じですから、ここはチームあやみきにもハッピ〜♪
になっていただきたいものです。
- 843 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 07:03
- わめくあやや。歯車が止まるあやや。ずるずると腰を抜かすあやや。
かーわーいーいー!すっごい想像ついちゃいました。
なんか作者さんの書くキャラってかわいいですよねー。
グーパーしちゃう手とか。いつも応援してます。
- 844 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/21(水) 07:56
- なるほど、ヨシトメか新CP誕生だな。
よっちゃん、違う意味で我慢の日々ですな。
でもご馳走はお預けを喰らったほうが美味しいので、我慢我慢!
- 845 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 16:33
- なるほど、あれは「襲い受け」か(笑
しかし美貴帝、ここぞという時の腹の据わりが違う。サスガ。
>>844
水を差すようで申し訳ないけど
「トメ子さん」はちゃんと「トメっち」のお姉さんとして居るから
ヨシトメじゃないんじゃん?
- 846 名前:達吉 投稿日:2004/01/21(水) 16:57
- 萌え死にますたw(笑)
昨日で最後のテストも終わって、いよいよ入試に向けての勉強もラストスパートをかけないといけません。
勉強机の前でイライラしたら、PCの前でこの小説を読んで、ニヤニヤしようと思いますw
痛かったり、甘かったり・・・w
この小説やっぱ最高!!!!!!!!
- 847 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 18:17
- 初レスです。
あやみきシーン、すっごくいいなーと思って思わず書き込みたくなった次第です。
なんでこんな素敵なシーンをさらっと書けるんだろう…。
もう、雪ぐまさんの小説を読むのが日課であり、
一番の楽しみって言ってもオーバーじゃないくらいです。
良い意味で「こうきたか!」って驚かせてくれたり、「そうそう、こうなってほしかった」って泣きそうになったり、
同じいしよしヲタ(でしたよね?)、モ娘。ヲタとして
まさに夢のような世界を極上バージョンで見せて下さってると思っています。
これからも陰ながら応援しています。長文失礼しました。
- 848 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/21(水) 18:30
- 二度の更新お疲れさまです!!
一回目で感想述べたかったんですけど、変な話時限爆弾、
風邪ひいて熱が出ちゃいました。
それで字が書けなかったんです。(大人しく寝ろ自分w)
ぜぇぜぇ言いながら必死で読みました。
脳みそ溶けちゃいました。それはもうほんとに。w
ヨシトメ(いしよしよりも今回はw)もキワドかった。
そして私もキワドかったw
二人の進展で、昨日よりかなり元気になれました。
熱がヒイタ(・∀・)ノ
ヨストメあにがとうw、雪ぐまさんありがとう。
弱ってながらも、勇気を貰いました。
私のキワドイ恋も、いつか決着つけたいです。
雪ぐまさんも風邪にお気をつけ下さい。
お体に十分お気をつけて、執筆の方は頑張って下さい。
- 849 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/21(水) 18:43
- >845
>>800に掛けてみました。
- 850 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:22
- 戻ってまいりました♪
837> ごまべーぐる様
うおっ! いいいいつも拝読しております(ドキドキ)。ストーリー展開はもちろんですが
そこはかとなく盛り込まれた笑いやエロ、AA劇場wなどカナーリ大好きでございます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。ヤッスー今夜は離さないでぇぇ!!w
838> 名無し読者様
やるときゃ〜やるオンナですな、ミキティはw
839> 名無飼育さん様
ぐふふ、どちらの座り方が萌えるのですか?w 雪ぐまは膝の上でお姫さま抱っこですかねぇw
皆様のお好きな萌え妄想でお楽しみいただければ幸いです。
840> なち様
あ、やっぱあやみき気になりますかね? 友人のあやみきヲタからは
「続きを書け。はやく!……なんでもするから」という脅しだか懇願だかわからんメールがきましたw
841> わく様
萌え死に! 光栄でございますw 書いてる時は「自分どーよ?」って感じで
頭のなかで小田和正の「もぉ、終わりだね〜♪」という歌が流れておりましたw
- 851 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:22
- 842> 23様
石川さんはねー、梨華ヲタを敵にまわすのを覚悟で申し上げますが、
かーなーり「スキモノ」の素質があると思いますよw 将来有望ですw
843> 名無飼育さん様
ぁゃゃって、実はちょっと謎。すっごい女の子してる感じとボーイッシュな感じが混ざってるし、
明るそうでいて暗そうっていうか掴めない。楽しんでいただけてホッとしました。
844> ちゃみ様
お預けくらってるうちに関東大震災とかきたりしてw
それでは可哀想なのでそろそろご馳走を食べさせてあげようかと思っちょります。うひひ。
845> 名無飼育さん様
襲い受け! 新しい用語でございますなw うーむ、かなり難易度高そうですねぇ。
トメっちおよびリアル石川さんくらいしかできない技かもw
846> 達吉様
あらー、なんか青少年の勉強を邪魔しそうな展開に行きそうなんですがw
達吉様は18歳超えておられますか? そうじゃなきゃ読めないようなこと書いちゃいますよ?w
847> 名無飼育様
初めまして! なんていったらいいんでしょう……ジーンときました。ありがとうございます。
思い切ってスレ立ててみて良かったと感涙。今後ともご贔屓いただけるよう頑張ります。
848> 時限爆弾様
お風邪なのに読んでいただけとは! 感激です。キワドイ恋がうまくいくといいですね。
病の時などは、先方の気持ちが見えやすいのでは? お見舞いに来てくれるとか。よくご観察を。
- 852 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:23
-
さて、まだスレの容量が残っていますが、
どうやらこのままだとおかしな箇所でぶっちぎれて「完」になりそうでして、
それならばということで、思いきってスレのお引っ越しをさせていただきとうございます。
このスレの残りは責任を持って、後日、短篇などを上げて埋めさせていただきます。
それでは、お引っ越し先をつくってきま〜す。
立てたらURL貼ります。
- 853 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:43
-
引っ越しました〜♪
スレ数が最も少なかったので、また雪版でお世話になることにしました。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/snow/1074691719/
今後とも、よろしくお願い申し上げます。
Converted by dat2html.pl 0.1