思い出人

1 名前:山羊太 投稿日:2003/12/03(水) 00:52
どこかで何かをちょこちょこ書いていた駄目者です。
紺野さん主役で、リアルの様なアンリアルの様な
非現実物を書きたいと思います。

2 名前:−1日目 投稿日:2003/12/03(水) 01:01

信号機は赤が止まれ。黄色は注意。青が進め。

その定義を疑う事はなかった。

すでに日も傾く中、一人歩道を歩く。
目の前の信号は青。
私はあたり前の様に横断歩道を進む。

私は信号機を信じていたから。
目の前の青信号だけを見ていた。

3 名前:−1日目 投稿日:2003/12/03(水) 01:14
気が付くと私は知らないビルの屋上に立ち尽くしていた。
空には星が散らばっている。

「…どうしてこんな所に居るんだろう?」

てか、どうやってここに来たのだろう?
周りを見渡す。静まり返ったこの場所で、とある違和感を感じた。

「さっきまで吹いていた風が止んだ?」

いや、違う。風は確かに吹いている。
目の前に捨てられていたコンビニのビニール袋が音をたてて揺れている。
…私が風を感じていない?
ビルの下には人が集まっている。
その中心には一台の救急車。

「…まさか…ね」

変な考えは止めて、とにかく下に降りよう。
4 名前:−1日目 投稿日:2003/12/03(水) 01:28
私がその人ごみに辿り着いた時には救急車は走り去った後だった。
唯、ここに来るまでに確信した事が有る。
屋上で、非常ドアのノブに手をかけた時、私の手はノブを掴めなかった。
それどころか、体がドアをすり抜けてしまう始末。

これは、世間一般で言う幽体離脱だろうか?
それならば体に戻ればいい。
だけど、もし今の救急車で運ばれたのが私だとすれば
そ、そんな事ないよ…。

その考えを否定する。
私はその救急車を追わない事にした。

真実を知るのが恐かったから。


だけど、真実は知りたくなくても向こうから、やって来てくれる。
5 名前:0日目 投稿日:2003/12/03(水) 01:45
何処にも行くことが出来ず、ベンチに座ったまま朝日が昇るのを待った。
もしかしたら、朝が来ないのではと言う恐怖も有ったが、朝はちゃんとやって来た。

とにかく誰かに会いに行こう。
このままじゃ何も解決しない。
ただの幽体離脱だし。案外、簡単に戻れるかも。

自分に言いきかせたのに。
それを聞いたのは、歩き始めて10分も経っていなかった。
目の前で流れる大型テレビには、何故か私の顔。
テレビのアナウンサーは淡々と人気アイドルグループの誰かが交通事故で死亡しました
と、私に教えてくれた。

誰かの部分に入るのは私「紺野あさ美」の名前。
懐かしのドッキリか何かでしょ?
だって、私はここにいますよ、皆さん。
両手をブンブンと振りまわす。


だけど私に気付いてくれる人は、一人として居なかった。
6 名前:山羊太 投稿日:2003/12/03(水) 01:47
広い心でお読み下さい…。
基本CPとしては紺野さんの片想い話しです。
7 名前:2日目 投稿日:2003/12/03(水) 23:33
私が何もしなくとも周りの時間は進んでいた。
昨日は丸1日色々な所を歩き回った。
もしかして私に気付いてくれる人がいるかもしれないから。

歩いても歩いても疲れない。
お腹も減らない。
次第に実感する死と言う現実。

それなのに私は自分でも恐いぐらい冷静だった。

8 名前:2日目 投稿日:2003/12/03(水) 23:41
死を受け入れない所で真実は変わる訳ではない。

後悔したくても、何に後悔すればいいかわからない。

この先自分が何をすればいいのかも。

わからない事だらけ。

「あ、今日お葬式だ」

まるで他人事。
からっぽの体と、からっぽの心で自分の葬式会場に向かう。
みんなの顔が見たいから。
そして…

後藤さんに会いたい…。


9 名前:2日目 投稿日:2003/12/03(水) 23:48
死ぬって知っていたら告白したのになぁ。
あ、でも死ぬのだったら告白しても無駄か。
どう転んでも行き止まりだ。

あまりにも陽気な浮遊霊。
それはきっと心のどこかで、これは夢だと信じているから。

諦めの悪い私と諦めの良い私の葛藤。
10 名前:2日目 投稿日:2003/12/03(水) 23:57
葬式会場には、思っていた以上に人がいた。
カメラを回す人や、原稿をチェックする人。
知らない人が沢山。

会場の中に入ると、メンバーがいた。
みんな泣いている。


あぁ、泣いてくれているんだ…。

ありがとう…。


11 名前:2日目 投稿日:2003/12/04(木) 00:06
きっと周りがみんな泣いていたから目立ったんだと思う。
一人だけ険しい表情で私の写真を見つめていた人。

「後藤さん」

届かない声を送る。

何処を見ているんですか?
写真を見ていないでこっち向いてくださいよ。
私はここに居ますよ?

わからないんですか?

「後藤さん!後藤さん!!!!!!」


手を伸ばしても、この手は後藤さんの体をすり抜ける。
こんなに近くにいるのに…
どうして気付いてくれないんですか?

12 名前:2日目 投稿日:2003/12/04(木) 00:17

「誰か…誰か!!私はここにいます!!!!」

一気に押し寄せて来た恐怖と孤独。
精一杯の声で叫ぶ。
だけど、誰も私には気付かない。

会場の中を走り回る。
一人一人に声をかける。
でも視線が交わる事はない。

「飯田さん!私です!紺野です!」

この手は宙を舞うばかり。
誰の体にも触れることはできない。

「安倍さん…矢口さん…」

誰も私の声に答えてくれない。

13 名前:2日目 投稿日:2003/12/04(木) 00:24

「…気付いてくださいよ…。お願いだから…」

幽霊でも涙は出るんだ…。
だらんと、その場に崩れ落ちる。
そんな私の体を、みんなはすり抜けていく。

どうして、私はここにいるんですか?
天国は何処にあるんですか?

神様、この苦しみから解放して下さい…。

14 名前:2日目 投稿日:2003/12/04(木) 00:37
…。これからどうすれば…?

メンバーの顔を見渡す。
誰もこっちを見ていない。
見ていないけど…。
一人だけ困った顔のメンバーがいた。
顔面蒼白で、何かぶつぶつ言っている。

「…藤本さん?」

私がその名前を口にすると、肩がピクンと跳ねた。
もしかして…見えているんですか?
顔を覗き込む。

「…私が見えますか?」
「う〜ん。見えちゃうってさぁ、ありえないよね」

小さな声で私の声に答えてくれた。
15 名前:2日目 投稿日:2003/12/04(木) 00:55

「他の人には見えないの?」
「はい、気付いてくれたのは藤本さんが初めてです」
「美貴だけ。それはちょっと嬉しいかも」
「…はい?」
「いや、何でもない」

周りから見れば、藤本さんの独り言。
だけど、私の口は止まらない。
誰かとお喋り出来る事がこんなに嬉しいなんて。

「そっか、困っているんだ。
 良かったら、家においでよ」

今までの事を全て話し終わった後、藤本さんが言ってくれた言葉。
いいんですか?私、幽霊ですよ?
これって憑いちゃうって事かもしれないんですよ?

頼る所の無い私は、その親切を受け入れる。
今日から私は藤本さんにお憑きの幽霊。
16 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/04(木) 06:05
山羊太さんの新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
たのしみにしております。がんばってくださいまし。
17 名前:たか 投稿日:2003/12/04(木) 23:32
面白いです作者さん!これからの展開とても期待していますよ〜〜。
孤独に包まれていた紺野さんの美貴さんによっての気持ちの変化の感じが好きっす。
美貴さんは他のメンバーよりなんか独特だもんな〜。役の配置も絶妙でいいっす。
18 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/06(土) 17:36
すごいです。
引き込まれました。
楽しみにしています。
19 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 22:52
お葬式が終ってから今後の事やら何やらで。
藤本さんの家に案内されたのは午前0時を過ぎていた。
私は土足のままズカズカと家に上がる。
靴の脱ぎ方がわからなかったから。

「まあ適当に座ってて」
「は、はい」

ちょこんとソファに腰掛けて、少し頭の中を整理した。
考えた事は幽霊について。
壁はすり抜けたけど、床はすり抜けられない。
物は触れないけど、椅子には腰をかけられる。

って、これは私の幽霊に対するイメージだ。
もしかして私のイメージが今の私を作り出している?

考えれば考えるほど、頭の中がパニック状態に陥る。
とりあえず今は色々と様子をみる事が正解かもしれない。
20 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 23:05
考える事をやめて、部屋の中をフラフラしていると藤本さんが着替えを片手にやってきた。

「今からお風呂に入るけど、覗いちゃ駄目だよ」
「の、覗きませんよ!!!」
「トイレもね」
「だから覗きません!」

念に念をおされた。
確かに幽霊だから、間違えてひょっこり壁から顔を出してしまうかもしれないけど…。


藤本さんがお風呂から上がるまではじっとしておこう。
21 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 23:15
お風呂から上がった藤本さんは、私にお茶を出してくれた。
飲めないんだけど、でも嬉しい。

「藤本さん、霊感が強いんですね。知らなかったです」
「んーん、無いよ。そんなの」

そう答えた後、ズズズと音をたててお茶を啜る。
無いって…。無いのならどうして私が見えるんですか?
質問しようと口を開いたが、その質問は藤本さんの言葉に遮られる。

「…。美貴じゃなくて、ごっちんのが良かった?」
「え?」
「だって、好きっしょ?ごっちんの事」

頭の中が真っ白になる。
どうして…知っているんですか?
22 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 23:24
「どうしてって顔だね。
 だって、お葬式ん時ごっちんの前で叫んでいたじゃん。
 すっごく、ね」
「あ…」

あの時から、藤本さんは見ていたんだ。

「まぁ、薄々気付いてたんだけど」
「へ?」
「いや、何でもない」

藤本さんはお茶を一気に飲み干す。
空になったコップを私の前に置き、代わりに私のコップを手に取る。
そして、そのお茶を飲み出した。

23 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 23:34
二人の前には二つの空のコップが並んでいる。
そのコップを片付けないまま寝室へ案内された。

「おかしいね。下布団には寝れるのに、上布団はすり抜けるなんて」
「本当におかしいですね」

私が死んだあの日以来、寝ていない。
寝る必要が無いから。
本心は寝るのが恐い。
次の目覚めが来る確証が無いから。

「あのさぁ」

布団の中で、目を瞑りながら語りかけてきた藤本さんの声は真剣で。
無い心臓がドキドキした。

24 名前:3日目 投稿日:2003/12/06(土) 23:48
「美貴だけが紺ちゃんが見えるのは…きっと美貴が一番、紺ちゃんの事を」

事を。そこまでは聞こえた。
だけどその次は携帯の着メロに邪魔された。

事を…?事を…大切なメンバーだと思っていてくれたから?
そうか、藤本さんが一番メンバー想いだったんですね。
電話に対応している藤本さんの背中にありがとうの言葉を送った。

25 名前:山羊太 投稿日:2003/12/07(日) 00:01
16> 名無し読者様
が、頑張ります。ちなみに前回より話しが軽かったり重かったり。

17> たか様
ありがとうございます。
役の配置はかなり迷いました。特に主役を誰に持ってくるかが。

18> 名無し読者様
恐縮です。最初のノリよりは軽い話しになる予定です。
26 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/07(日) 01:54
最後の部分、うけました。

紺野さん最高ですw
藤本さんも、個人的には推しです。
楽しみにしてます。
27 名前:たか 投稿日:2003/12/09(火) 18:02
う〜ん。面白い。今はほのぼのいい感じの物語ですが、これからどんな展開
が来るんだろう。すっごく楽しみです。なんかふたりの言葉のかけあいが面白い(笑)
ほんのちょっとだけ見える本音もきになってます。面白いです。
28 名前:ROM読者 投稿日:2003/12/09(火) 20:32
珍しいCPなので、展開が楽しみです。
29 名前:3日目 投稿日:2003/12/13(土) 14:20

「紺ちゃん…」

それは私がテレビのチャンネルを一生懸命触ろうとしている時。
藤本さんが不安そうな声で私を呼んだ。

「おはようございます」
「…あ、おはよう…。そっか、夢じゃなかったんだね」

藤本さんは私の傍に歩み寄り、手を伸ばす。
そして、その手は何にも触れる事なく宙を舞った。
きっと私の存在を確認したかったんだと思う。


まぎれもなく、これは現実です。

もし…もしもあの事故が夢ならば…。

後藤さんに告白したい…。

この声で、この想いを伝えたい。
30 名前:3日目 投稿日:2003/12/13(土) 14:33
メンバーは、短い休みをとるらしい。
心を整理する時間とか必要だから。

藤本さんはテレビのチャンネルを手に取って私に向けた。

「テレビ、見たかったの?」
「いえ…触れないかなって」
「ずっと起きていたんだ」
「…まぁ」

寝るのが恐いなんて言ったら、笑われるかな?
寝る必要が無くなったので、その余った時間で色々試した事を話した。

例えば、藤本さんに触れれないかと、2時間ほど悪戦苦闘してみたり。
実は飛べるんじゃないかって、屋上から飛び降りたり。
結果は、凄いスピードで落下して、普通に地面に着地。
そして朝まで集中すれば小さい物なら動かせるかもってチャレンジ。

「…。美貴が寝ている間に大冒険してたんだねぇ…」

藤本さんは引きつった笑いを浮かべた。
31 名前:3日目 投稿日:2003/12/13(土) 14:52
軽く朝食を済ませ、今後について話し合う。
昼間は好きな所へ行っていいよと、言ってくれた。
ただし、門限には帰ってこいとの事。
私が不安定な存在だから心配らしい。

色々と決め終わり、沈黙が流れた。
藤本さんはボーっと天井を眺めている。
私もつられて上を向いた。

嫌な沈黙じゃない。
この空間が心地好かった。
32 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 15:07
今日からメンバーは仕事復帰。
いつまでも休んではいられないから。


「おはようございます」

私を引き連れた藤本さんは、いつものトーンで挨拶をする。
楽屋の中は重苦しい空気。
いつもの元気な笑い声は何処からも聞こえない。

一瞬、なぜみんなが落ち込んでいるのか分からなかった。
藤本さんも同じで。
あたり前の様に私が傍にいたから。
私が死んだ実感がわかなかったらしい。
藤本さんだけが私を失っていない。

「あ、紺野…」

そう呟いて私を見た。
33 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 15:18

「何…それ?」

私に向けたその言葉は矢口さんにも聞こえていた。

「何だよ!その言い方!!まるで忘れてたみたいに!!!」
「ちょ、違いますよ!」

藤本さんに突っかかってきた矢口さんを慌てて他のメンバーが止める。
私はただ、その光景を見る事しか出来なくて。

二人っきりの時は感じなかったのに。
ここでは痛い程感じてしまう。
私の死を…。

空気はますます重苦しくなり、藤本さんは入り口で立ち尽くす。
そして何も言わずに楽屋を後にした。

34 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 15:26
藤本さんは自販機の前のベンチに座る。
私もちょこんと隣に座った。

私にはかける言葉が分からない。
なんか、泣きたい。
だって元を正せば私が死んだから…。

「大丈夫…」
「…藤本さん?」
「うん、大丈夫」

私に言ってくれたのか、自分に言い聞かせたのか。
藤本さんはジッと足元を見ながら呟いた。


35 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 15:46
長い間、椅子に座っていた気がする。
藤本さんは、「よしっ」っと気合を入れて、いきなり立ち上がった。
吃驚した私の頭に手を置く。

触れれないんだけど。感触のない私の頭をよしよしと撫でる。

「紺ちゃんはここにいるから」

その言葉は、やっぱり私の為じゃなくて、自分に言い聞かせているみたいで。
私はそんな藤本さんの行動が嬉しくて、笑顔になる。

「じゃあ、美貴は先に楽屋に戻るから、紺ちゃんは10分後にでも帰っておいで」
「一緒に帰りましょうよ」
「駄目」
「…わかりました」

10分。
この10分は私にとって、とても長い10分になる事だろう。
36 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 15:54
ベンチでボーとしてるのも何だし、少し歩くことにした。
うろうろしていると、とある名前が書かれた楽屋を見つける。
動いていないのに胸が苦しくなるのはどうしてだろう?

今の私ならばこの壁をすり抜けられる。

そんな事したくないのに…。
顔が見たいんです。ただ、顔が見たいだけなんです!

「後藤さん…」

壁に手をかけたその時、後ろに誰かの気配を感じた。
恐る恐るふり返ると、そこには知った顔が。
その人は私の存在に気付かないまま、後藤さんの楽屋へ入って行った。
37 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 16:08
そんな気はなかった。
だけど、足が勝手に動いていた。

私は後藤さんの楽屋にいる。

「……どうしたの?」
「……」
「おいで…」
「…」
「来ないの?じゃあ、こっちから行くよ?」

どうして、私はここにいるんだろう?
何をしているんだろう?
目の前で抱き合う二人。

「なっち…」
「……ごっちん…」

だって、知らなかったんです…。
二人がそんな関係だなんて…。

38 名前:6日目 投稿日:2003/12/13(土) 16:13
ふらふらと後ろに下がると、私の体は壁をすり抜けた。
そのまま廊下にペタンと座りこむ。

目の前の現実は今の私には辛すぎて。

逃げたい私の体は色を失っていく。



39 名前:山羊太 投稿日:2003/12/13(土) 16:18
のんびり者参上ですたい。


26> 名無し読者様
紺野さんぼっけぼけなので、苦労する藤本さん。

27> たか様
いきなりほのぼのになったり、ほのぼのじゃなくなったり。
そんな話しです。

28> ROM読者様
珍しいですか?私はマイナー大好きですが。珍しいのか…。
 

40 名前:6日目 投稿日:2003/12/14(日) 00:26

「紺ちゃん!!!」

突然呼ばれた名前にはっとする。
その瞬間、体全体に色が戻る。

「藤本…さん…」
「…」

どうしてそんな顔してるんですか?

「何かあったのですか?」

確かに美貴は見た。
目の前の彼女が消えそうになるのを。
全てが不安定な存在。
この子は何て脆いんだろう…。

「…それはこっちのセリフだよ。何あったの?」
「別に何でもないです」
「ごっちん?」
「…。藤本さんには関係ないですよ」

決して傷つけるつもりではなかった。
だが、その言葉は美貴の心に想像以上に突き刺さる。
41 名前:6日目 投稿日:2003/12/14(日) 00:39
楽屋に帰ると、みんなは先程と変わらず黙っている。
だけど、さっきより重苦しい雰囲気じゃない。

―10分後に帰っておいで―

思い出すその言葉。
藤本さんは10分の間に何をしたんだろう。



それからしばらく経って収録の時間が来た。
バタバタと慌しくメンバー達が楽屋を去る。
私はみんなを追う事もなく、一人そこに残った。

42 名前:6日目 投稿日:2003/12/14(日) 00:52
一人になると、頭の中で色んな映像が流れる。
さっきの後藤さんの楽屋での出来事。
私を心配してくれた藤本さんに言ってしまったあの言葉。
そして、それを聞いた時の藤本さんの顔…。


心のもやもやが大きくなる。


「忘れ物した!」

勢いよくドアが開く。
少し、複雑な表情の美貴がそこに立っていた。
そして、あさ美に向かって元気よく指をさす。

「忘れ物!」
「…え?私ですか?」
「そう、忘れ物。行くよ」

あんな事言った私を心配してくれたんですか?

藤本さんはメンバー想いだから…。
だけど私は「ごめんなさい」も「ありがとう」も言えなかった。
43 名前:山羊太 投稿日:2003/12/14(日) 01:01
一方通行大発生。
44 名前:つみ 投稿日:2003/12/14(日) 01:09
おお!
新作があったなんて・・
出遅れてしまいました・・・
そしてまた・・・みんなが切ないです・・・
次回もまってます!
45 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 05:03
藤紺好きなのでちょっと嬉しいです。
どうなっていくのか楽しみです
46 名前:たか 投稿日:2003/12/15(月) 17:25
面白いです。藤本さんの見えてるからこそつらい立場だというのがとても切なく
すたわってきてとても良いと思いました。でも紺野さんも可哀想だなァ。
二人の複雑な感情の描写がとても美しいっすねぇ。でも物語はつらい物が・・・・
山羊太さん。とても面白いからこれからも頑張ってください!!!!
47 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/18(木) 18:39
2人の関係がすごく微笑ましいです。
でも、もう紺野さんは……。

切なく、楽しく読ませてもらってます(謎)
頑張ってください。
48 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 20:18
このままじゃ駄目だ。
隣で寝息をたてている美貴を眺めながらあさ美は思った。

お昼以来、何だかよそよそしくて
あんな事言っちゃったから当然だけど藤本さんは何も訊かない。
それに余計な事を言わない様にと口数も少ないし。
視線だって合わない。
このままじゃ嫌…。
藤本さんが起きたら一番に謝ろう。
そして、ありがとうを言おう。

「…ごめんなさい…ありがとう…ごめんなさい…ありがとう…」

その言葉を何回も繰り返す。
美貴の寝顔に向かって予行練習。
49 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 20:29

「変な夢見た…」

美貴はげっそりとした顔で起きてきた。

「美貴が、メンバーに片っ端からごめんなさい、ありがとうって頭下げる夢…」
「へ、へぇ…」

朝一番に言いたかった言葉を先に言われた。
夜の練習が裏目に出るなんて…。
本人じゃなくて写真に向かってやれば良かった。

「あ、あの…」
「ん?」
「昨日は…ありがとうございました…」
「…?何が?」
「あ、その、えっと…色々と」
「別に何もしてないよ」

私の感謝の言葉は軽く流された。
でも、藤本さんがいつの間にか笑顔。

結局一つは言えたけど、一つは心に閉まったままに。
私が本当に言いたかった言葉はどっちなんだろう?
50 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 20:41

「今日は何する?」
「そうですね、何します?」

お仕事までには少し時間が空いている。
出来る事は限られているんだけど。
ビデオでも見ようかと、美貴が適当にデッキにビデオを入れる。
再生ボタン。
少し早送り。

「………あっ…」

一瞬にして凍りつく二人。
テレビの中で真希が歌っている。
51 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 20:52
美貴は慌てて停止ボタンを押す。

「…あれだよ!研究?なわけなくて、ダビング!?」
「…」
「違う!ダビングって意味わかんないよ!」
「…」
「コント!そう!コントが目的で録画したわけで!」

一人喋る美貴に対して、あさ美は無言で。
美貴は心配そうに顔を覗き込む。

「紺ちゃん…。あのさ、美貴が」
「私やっぱり後藤さんが好きです」
「へ!?」

あんな場面見たけど…でも、好きなんです。
想う気持ちは自由だって言うじゃないですか。
だから、これからも好きでいさせて下さい。

「あ、ごめんなさい。何か言おうとしてましたよね」
「いや、別に、大した事じゃないから…」

そう言って美貴は肩を落としながらビデオを取り出した。
52 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 21:01
何のビデオを見たのか覚えていない。
頭の中が後藤さんでいっぱいだ。
あの場面を見てから…逆に想いが強くなった気がする。
私って天邪鬼?

楽屋はやっぱり昨日と同じ感じの空気で。
そしてやばいぐらいに、なつみの事も意識している。
駄目だ。平常心保てないかも。
なつみの顔が見れなくて一人楽屋を出る。
だけど、美貴が後ろからついて来た。
53 名前:7日目 投稿日:2003/12/19(金) 21:16
出来る限り一人にさせたくはない。
嫌がられてもついて行く。
そう決めた。

「意識しすぎだよ。その内、何見ても後藤さん〜ってなっちゃうよ?」

後ろから茶化すように声をかける。
あんまり気持ちを暗い方へは持って行きたくない。

「わかってます」

あさ美はほっぺをぷくぅと膨らまして美貴を見る。
その顔が面白かったのか、美貴は声を出して笑った。
あさ美としては複雑な心境だ。
そしてもう一人複雑な心境な人が。

「みきたんが…おかしくなった…」

偶然通りかかってしまった亜弥。
当然の事ながら、あさ美が見えていない。
彼女の目に映るのは一人で楽しそうに笑っている美貴の姿。
美貴に声をかけられないままその場を去った。
54 名前:山羊太 投稿日:2003/12/19(金) 21:29
藤本さんが可哀想キャラになっていく…。

44> つみ様
はい、新作始めちゃっていました。今回も切ない方向で。でもギャグまじりで。

45> 名無し読者様
いえいえ両方片思いです。藤本さん…ヘタレ。

46> たか様
藤本さんが辛い上にこんな立場で…。
紺野さんは前向きに頑張っています。

47> 名無し読者様
内容が内容だけに微笑ましくできるのはここだけです…(汗
切なく楽しく頑張ります!
55 名前:たか 投稿日:2003/12/20(土) 21:56
面白かったです!!本当に言いたかった言葉はどっち?って思う紺野さんの
微妙なる気持ちが良かったです。二人のかけあい、楽しいけどこれからは
どうなってくるんでしょう?めっちゃ気になります!!
にしても最後の松浦さんの言葉が良かったです。周りから見る藤本さんが
とても面白いです。ほんと次期待してます。
56 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 00:28
いや…切ないんですけど…。
なぜか笑いが…。
57 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/21(日) 13:02
从;‘ 。‘从>みきたん〜?

川VoV从>ん?

おもしろいです&切ないです…

58 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/06(火) 16:39
おもしろいです!
そりゃ見えない人から見ればおかしくなったと思いますよねw
59 名前:10日目 投稿日:2004/01/10(土) 22:32
「………」

見つめる先はリモコンのボタンと右手人差し指の先。
押すイメージ…。ボタンを押すイメージ。
まだ日も昇らない午前4時。
夢の中の美貴の横であさ美は一人リモコン相手に奮闘中。

「…とう」

リモコンをすり抜ける指。
集中してもう一度。

これを美貴が起きるまで続けるのが日課。
いつかボタンを押せる日を信じて。
60 名前:10日目 投稿日:2004/01/10(土) 22:42

「じゃん」

いつもより早く楽屋に入ると思った。
まだ誰も来ていない楽屋。
藤本さんは鞄の中からカメラを出してきた。

「写真にさ、霊って写るよね」
「心霊写真の事ですか?」
「そうそう。撮ってみようと思って」

心霊って…私ですか?
てか、藤本さんカメラ向けてくれてるし。
心霊写真って霊の一部しか写ってないですよね?
もし、その写真に私の顔だけ写っていたら…ショックです。
そんな私の気持ち無視で藤本さんはシャッターを押した。
61 名前:10日目 投稿日:2004/01/10(土) 22:55
10枚程撮った所で美貴の手が止まる。

「2ショットで撮った方がいいかも」
「はい?」
「だって、美貴は紺ちゃんに憑かれてるでしょ?
 憑かれてる美貴が入った方が紺ちゃん写るかもしれない」
「そ、そうですね」

問題はカメラマン。
誰かに撮ってもらわなくては。
だけど早く来過ぎて当分は誰も来ない。
そして思い出したある人の存在。

「亜弥ちゃんなら、いてるかも」

早速二人は亜弥の楽屋へ。
62 名前:10日目 投稿日:2004/01/10(土) 23:08
休憩中。
亜弥は楽屋で一人考えていた。
美貴の行動が最近おかしいと。
あの場面を目撃してから連続的に聞く美貴の独り言。
壁に向かって微笑む彼女。

「やっぱり…忘れられないんだ」

美貴の気持ちは前から気付いていた。
だって、ずっと見ていたから。
彼女の視線の先に誰がいるかなんて、すぐにわかった。
深く考え込む前に思考はストップした。
亜弥の考えを妨げたのはノック音。

「亜弥ちゃん、いる?」

そして今の今まで考えていた人の声。
63 名前:10日目 投稿日:2004/01/10(土) 23:17
亜弥が扉を開けると、そこには笑顔でカメラを持っている美貴の姿。
そして見えていないがその横にいるのはあさ美。

「写真、撮って欲しいんだけど」
「しゃ、写真!?」
「うん。あ、この机中心で撮って欲しい」

美貴は机の端の方に立つ。
そして机の前にあさ美を立たせた。

「できるだけ気持ち込めて撮ってね。
 フィルムは使い切っていいから」

さっきから笑顔の美貴に不信感を抱いた。
今、そんなにニコニコできるわけないから。
好きな人が死んだのに、何してるの?

結局何も聞けないまま亜弥はシャッターを押し続けた。
64 名前:山羊太 投稿日:2004/01/10(土) 23:19
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
こちらの事情で更新が遅くなり気味です。
とりあえず一方通行追加。
65 名前:山羊太 投稿日:2004/01/10(土) 23:26
55> たか様
本当にこれからどうなるのでしょうかねぇw
色々な意味で重要人物登場です。
前回から登場しているけど。

56> 名無し読者様
切なく楽しくどろどろで。
どうぞ笑ってくださいw

57> 名無し読者様
彼女はこれからどんどんと二人に関わってきますような予定です。

58> 名無飼育さん様
他の人は見えないから、これからも紺野さんには試練が。
そして藤本さんはみんなから心配される道へ…。
66 名前:つみ 投稿日:2004/01/10(土) 23:46
何が写るんでしょうね〜?楽しみです!
微妙にあやみきも交じってるのかな?
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 22:14
ずっと待ってました!
続きだ〜♪

ちゃんと写るんでしょうかね?
切ないのに、テンポよく楽しく…。

本当に最高です!
68 名前:ROM読者 投稿日:2004/01/18(日) 15:23
紺ちゃんどうなるのでしょう。(ドキドキ
松浦さんの関わりにも期待します。
69 名前:11日目 投稿日:2004/01/31(土) 00:30
昨日閉店ギリギリに駆け込んだカメラ店。
ギリギリ駆け込んだので出来上がりは今日。
朝一番に張り切って写真を取りに行った。

「絶対に写ってると思うよ」

自信満々で美貴は写真の束を取り出す。
あさ美は複雑な表情で写真の裏側を見つめている。
一枚目の写真には楽屋が写されていた。
あさ美が写らなきゃ、ただの風景写真にすぎない。

「本当に写っているんでしょうか?」
「大丈夫。お店の人の変な顔が物語っていたから」
「それは違う理由だと…」

写真の内容とか取りに来た人物とか。
店員さんが変な顔をした理由はきっとそっちだと思います。
70 名前:11日目 投稿日:2004/01/31(土) 00:38
楽屋の写真は全滅だった。
風景だけの虚しい写真に終わった。
次は美貴と二人で撮った写真。

「うわ…。きっつ」
「何がですか!?」

隅の方で一人笑っている美貴の写真。
メインは机。
あさ美が写らなければこちらも痛い。

「バカみたいだね」
「気持ちいい笑顔ですね」

そんな写真が何枚も続き部屋のテンションが下がってきた。
残り3枚になったその時。

「あ」
「はい?」
「写ってる…」
「本当ですか!?」
「ほらっ!手、ここに手が」
「手!?」

そこには立派な心霊写真が出来上がっていた。
71 名前:11日目 投稿日:2004/01/31(土) 00:47

「手…ですね」
「うん。残りの2枚は何も写ってなかった」
「手…だけですか」
「でも、写ってたよ」

それって、ここにいるって証だよ。
紺ちゃんはたしかに、ここに存在している。
少なくとも私の目の前では生きている。
誰が何と言おうが…生きているんだ。

「飾っとこっか」
「縁起悪くないですか?何か呼びそうですよ?」
「縁起善いよ」

手だけだったけど、嬉しかった。
写真撮って本当に良かった。
72 名前:13日目 投稿日:2004/01/31(土) 00:57

低い確率だけど写真に写る。
もしかするとカメラにも写るかもしれない。
だから収録中はスタジオの隅で見学することにした。

本当は楽屋で待ちますって言ったんだけど
藤本さんがスタジオに来なきゃ駄目って。
駄目って言われてもなぁ…。
スタジオの中心でメンバー達が何か打ち合わせをしてる。
それをボーっと見つめるだけ。
見つめるだけで終わるはずだったのに。
不意に誰かが私の横に立った。

そちらを見なくても分かる。
無い心臓が騒いでいる。

「…後藤さん…」

届かない声で名前を呼んでみた。
73 名前:13日目 投稿日:2004/01/31(土) 01:07

「どうしてここに?」

聞えるわけがない。
返事が返ってくるはずも無い。
皆が心配で見に来たのですか?
それとも個人的な…。

………。

あのシーンが鮮明によみがえる。
触れる筈も無いその手で、真希の手に手を重ねた。

「どうして…触れないんでしょう…。ねぇ…」

その光景を美貴は遠くから見つめていた。
74 名前:山羊太 投稿日:2004/01/31(土) 01:09
すみません。遅くなりました。
とりあえず小説内では安倍さん未卒業です。
75 名前:山羊太 投稿日:2004/01/31(土) 01:14
66> つみ様
今後松浦さんは絡んでくると思います。 微妙にあやみきですね。

67> 名無飼育さん様
待たせすぎです。すみません。写真はこうなりました。ふ、複雑。

68> ROM読者様
今後は松浦さんに暴走に期待してください。今の所は藤本さん暴走中。
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 02:35
このお話、ホントに最高です。
77 名前:つみ 投稿日:2004/01/31(土) 10:06
こんこん切ない・・特に最後の一言がしみました・・
写真の結果はどういうことなんでしょうね?
次回も待ってます!
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 22:17
写真、一応効果はあったんですね…。

もしこれでテレビに映っていたら、世間は大騒ぎでしょうね〜。
期待しちゃいますw

今回も最高でした。
79 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/01(日) 05:43
動きが出てきましたね。

是非、紺ちゃんの思いが成就できることを願っています。
でも、そうすると藤本サンが切ないですね。
80 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 17:13
ただ無言でメンバーを見つめている真希。
その横顔を見つめるあさ美。

「後藤さん…」

すぐ隣に居るのに。誰よりも一番近い所に居るのに。
なのに…誰よりも一番遠い。

触れたい…。
他愛もないお喋りでいいから…
私を見て、笑いかけてください。

「……の…」

…はい?
後藤さん…。今、何て言いました?

聞き取れなかったその言葉を、真希がもう一度繰り返すことは無かった。
81 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 17:19
まだスタジオが騒がしい中、真希はその場を去った。
本当はついて行きたかったけど…足が動かなかった。
何て言ったのですか?何を想っていたのですか?



…どうして…泣いていたのですか…?


82 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 17:35
一人静かに廊下を歩く真希。
その心には決して消えることの無い罪悪感。

私のせいだ…。私のせいだ…。

あの日から繰り返している言葉。

紺野を殺したのは私だ…。
私があの日、紺野の手を離してしまったから…。
後1分長く引き止めていたら…紺野は今もあそこに立っていた。
みんなの笑顔も消えなかった。

あの日の帰り際、何かを言いかけた紺野。
なのに私は「明日聞くから」と突き放した。
…明日なんて無かった。

いくら悔やんでも時間は戻らない。
伝えたい言葉も届かない。
だって…ここにはもう紺野はいないから…。
83 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 17:48

「終わったよ」

小さな声で美貴が話しかけてきた。
今日のスケジュールを全てこなして帰り支度。
楽屋の中で笑顔なのは美貴だけ。

「はい。お疲れ様でした」

あさ美も笑顔で答える。
美貴にしか届かない声で。
バタバタとメンバー達があさ美の体をすり抜ける。
その度に痛感する自分の立場。

暗い顔をすると藤本さんが心配するから…。
笑わなきゃ。
84 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 17:59
お弁当を途中で購入して二人でのんびり家に帰る。
玄関前に到着して、美貴は不器用に鞄から鍵を取り出す。

―カチャリ―

鍵を回してドアノブを捻る。

―ガチャガチャ―

「あれ?開かない…。何で?」

もう一度鍵をさし込み回す。

―カチャリ―

「…開いた…。って事は…あれ?鍵…え?」

慌ててドアを開ける。
部屋には電気が点いていて、見知らぬ靴が一つ。
せ、先客ですか?
85 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 18:07

「おかえりなさい〜」

呆然と立ち尽くす美貴を迎えたのはエプロン姿の…

「あ、亜弥ちゃん…?」
「暇だったからご飯作りに来た」
「え?ん?鍵?鍵!鍵!?」
「合鍵持ってるよ」

不思議そうに美貴を見る亜弥。
確か以前に合鍵を渡した覚えが…。

逃げるわけにもいかないので部屋の中へ。
86 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 18:18

「私…邪魔ですか?」

困った顔であさ美が訊いた。
邪魔じゃないよと困った顔で美貴は訴えた。

「みきたん…サラリーマンみたい」

亜弥は買ってきたお弁当を見て、苦笑。
少しお説教まじりで料理を運んでくる。

「やっぱり…邪魔ですよね」
「じゃ、邪魔じゃないから。ここにいて…」
「え?何?何か言った?」
「な、何でもないよ」

二人の声が聞える美貴と、あさ美が見えない亜弥。
そして居心地悪そうなあさ美。
美貴はかなりのパニック状態に陥っていた。
87 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 18:31
この場の空気を換えようとテレビをつける。
テレビをつけた瞬間に目に入ってきたのは
昨日飾ったばかりの写真。

やっば…。

慌てて写真の所まで走り寄る。
しかし途中、机に思いっきり足の小指をぶつけた。

「くぉわ!!!」
「え!?」

その場に蹲る美貴に、あたり前だけど心配して駆け寄ってきた亜弥さん。

やばい、どうしよう…。写真…。
とにかく亜弥ちゃんの気をこちらに…。

「あ、亜弥ちゃん…痛い。小指腫れてない?」
「え?今は腫れてないけど…」
「だ、台所から…氷…取ってきて欲しい」
「うん。わかった」

亜弥が後ろを向いたと同時に立ち上がり写真をテレビの裏に隠す。
自分のお約束体質を恨みながら。
88 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 18:51
二人のやり取りを見ながらあさ美は思った。

邪魔じゃないかな…?
前々から思っていたんだけど、藤本さんって…絶対に松浦さんの事好きですよね。
でも、二人は恋人同士だったんですね。

藤本さんは優しいから気を使ってくれてるけど…。
私としては二人の時間を邪魔したくない。

やっぱり…おじゃまはいけない。
おじゃまは退散しなきゃ。

「私、少し散歩してきます」
「へ!?ちょ」
「どうしたのみきたん!?痛いの?」
「違っ…あ…」

とめる美貴を無視してあさ美は部屋を出てしまった。
89 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 19:00
小一時間して戻ってみると亜弥は部屋にはいなかった。
どうやら帰ったらしい。

「ただいま」
「…おかえり」

ソファの上で不貞腐れている美貴。

「どうして怒ってるんですか?」
「勝手に出て行くからだよ」
「でも、邪魔かな〜って」
「何で邪魔なわけ?」
「だって…二人の時間は大切ですから!」
「…?」

いまいちあさ美の言ってる事がわからない。
大切って…。2人の時間って…。

「紺ちゃん…亜弥ちゃんはただの友達だよ?」
「気を使ってくれなくていいですから」

何かムカクツなぁ。
一人で勘違いしてるよ。
90 名前:13日目 投稿日:2004/02/01(日) 19:06

「あのさぁ、紺ちゃん…美貴が」

好きなのは…。
言いかけた。でもやめた。
―後藤さんが好きです―
言おうとしたら、その言葉が頭の中で響いたから。


言ったところで…どうにもならない言葉がある。
91 名前:山羊太 投稿日:2004/02/01(日) 19:08
さぼっていた分を更新です。
今回は藤本さんメインって感じになりました。
92 名前:山羊太 投稿日:2004/02/01(日) 19:13
76> 名無飼育さん様
ありがとうございます。頑張って書いていますよ〜。書いてて混乱してきた。

77> つみ様
みんな平等に切ない形でいきたいです。書き手は鬼になります。

78> 名無飼育さん様
写ったら世間は大騒ぎですな〜。そこまで規模を拡大しちゃったら紺野さん大変だ。

79>ROM読者様
やっとこさ動き出しました。後藤さん…どうなんでしょうね。ふふふ…
93 名前:つみ 投稿日:2004/02/01(日) 20:51
言ったところでどうにもならない・・・
しみました心に。
でもなんか言ってしまったらこんこんは・・・
妄想はこのへんにして次回も待ってます!
94 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/01(日) 22:56
何だか、あっちこっちでやたら切ない展開になっていますが。
今日のおじゃマルでまた切なくなりました。
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 19:39
切ないのに楽しくて…はうぅ。
本当に、毎回楽しみです。

今回は、あの人が悩んでいたことも明らかになりましたし…。

更新が早いのがうれしですw
96 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 16:20


―ブンッ―

いつもの様にリモコンと格闘しながら朝を待つ。
いつもと違うのは…

「…押せた」

テレビがついた事。
チャンネルを変えてみる。
1・2・3。
ボタンを3つ押した所でドッと疲れた。
喜んでいる所に藤本さんが起きてきた。

「紺ちゃん…」
「あ、藤本さん私」

押せました!と言おうと思ったけど、藤本さんの顔を見て凍りついた。

「ふ、藤本さん、鼻血出てますよ!!!」

今日の藤本さんの鼻線はゆるゆるらしい。
97 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 16:29
鼻がゆるゆるな美貴はダンスレッスン中にも鼻血を出した。
血が止まるまでティッシュで鼻を押さえながら隅の方に座る。
あさ美の隣に。

「大丈夫ですか?」
「んー。止まらない」

真っ赤になったティッシュを床に置く。

「止まった?」

なつみが笑顔でやってきた。
なつみはあさ美の上へ座る。
あさ美は慌てて壁をすり抜けた。

98 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 16:37
壁をすり抜けて、なつみに重ならない場所へと移動。
こんな行動したくないんだけど…。
幽霊らしい行動は極力しないって決めたのに。
とっさにしてしまう。


もと居た場所に戻ると、藤本さんはそこにはいなかった。
ドアの方へフラフラと歩いていく。
顔を洗いに行くのかな?
99 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 16:46

「ふぅ」

洗面所で鼻の下に付いた血を洗い流す。
ふと自分が拭く物を持っていない事に気付いた。
仕方ないので服を掴む。

「みきたん、女の子らしくないよ」
「あ」
「はい。コレ使って」
「ありがとう」

亜弥ちゃんに貸してもらったタオルで顔を拭く。
てかさ、何で、いるわけ?
今日はここに現れるわけないよね。

「何してるの?ここで」
「みきたんに会いに来たに決まってるよ。
 だって明日から会えなくなるでしょ。
 だから顔見に来たの」

いつも以上にストレートな彼女がそこにいた。
100 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 16:59
明日から亜弥はお仕事で関東を離れる。
もちろん泊りがけで。

「この前は追い帰されたから」
「気持ちは嬉しいけど」
「嬉しいんだったら受け止めてよ」

ぐいっと亜弥が迫ってくる。

一昨日、告白された。紺ちゃんが出かけてる間に。
『もぅ死んだ人の影追うのやめてよ。
 現実見つめてよ。あたしの事を見てよ』って。
わかってるよ。でも、生きてるんだ。
美貴の前では生きてるんだから。

「ごめん」

今はその言葉しか言えない。
101 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 17:02

藤本さんが帰ってこない。
顔を洗いに行ってからもう5分は過ぎている。
まさか、途中貧血で倒れたとか!!??
鼻血出しすぎたんだ、きっと!

あさ美は余計な心配をかかえ洗面所に向かった。
102 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 17:21
逃げれない。
亜弥の両手は美貴の肩をしっかりと捕らえている。
壁に押しやられて身動きも取れない。

「あたしは…みきたんの事、こんなにも好きなのに」
「…ごめん。放して欲しい」
「どうして…あたしを見てくれないの?」
「亜弥ちゃん。痛いよ。放して」

冷静さを失っている亜弥のおかげで美貴は冷静さを保てている。
目の前でこんなに取り乱してくれると逆に冷静になれた。

「ごめんね。やっぱ美貴、紺ちゃんの事好きなんだ」

その言葉を聞いて亜弥の手の力は一気に抜けた。
その手をゆっくりと払い除けて美貴は洗面所を後にする。

亜弥に言った言葉をもう一人、違う人物に聞かれたなんて知る事も無く。
103 名前:15日目 投稿日:2004/02/04(水) 17:29
足早に廊下を歩いていると、あさ美が向こうからやって来た。
何故か表情が強張っている。

「紺ちゃん?どうしたの?」
「ふ、藤本さん!よかった。無事だったんですね!」
「無事?」

言ってる意味が少々理解できない。
無事って…。何かしたっけ?
まさか、亜弥ちゃんに追いやられている所見られた!?

「大事にならなくて良かったです」
「う、うん。そうだね」

微妙な会話のズレを感じながらも2人は廊下を歩く。
誰かの視線を背中で受けながら。

104 名前:山羊太 投稿日:2004/02/04(水) 17:31
暴走中。やっと100超えた。
105 名前:山羊太 投稿日:2004/02/04(水) 17:36
93> つみ様
言っちゃったらどうなるでしょうね。色々と妄想しちゃってください。

94> ROM読者様
早くそのおじゃまるを見たいです。田舎なので一週間遅れています。だから今週はひひーんでした。

95> 名無飼育さん様
例のあの人が今後どう絡んで来るのでしょうかねえ。今は少し出番が少ないです。
106 名前:山羊太 投稿日:2004/02/04(水) 17:38
川o・-・)<今日も頑張ってリモコン押しています。頑張って隠しもします。
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 17:47
あぁ〜・・・うぅ〜・・・
続きが気になる・・・
108 名前:つみ 投稿日:2004/02/04(水) 20:20
もう一人というのはやはり・・ねぇ・・
誰かの視線がまぶしいですね〜!
話が少し核心に迫ってきているようなので楽しみにしてます!
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 21:15
あぁ…あやみきの行方も気になるし…かといって…ああ…
とにもかくにも気になり過ぎる…
110 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/04(水) 21:48
亜弥ちゃん可哀想・・・でも面白い展開。
すごく読みごたえがあります。どうなるのでしょう。

> 早くそのおじゃまるを見たいです。
あぁ〜、ごめんなさい!何も考えずに失礼しました。
最近見掛けなくなったけど久し振りに・・・逝ってきます。
111 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 15:41
毎日のぞいてますw

この先の展開がとても楽しみです。
112 名前:16日目 投稿日:2004/02/16(月) 21:18



あの日から私の心は壊れていたのかもしれない




113 名前:16日目 投稿日:2004/02/16(月) 21:26
真夜中に突然の電話。
今から行っていい?
弱々しい声。
何があったの?なんて聞けなかった。


「ごめん。こんな時間に」

視線を落とした彼女は玄関先で立っていた。
泣きそうと言うよりは無気力で。
ただ呆然と玄関先に立っていた。
114 名前:16日目 投稿日:2004/02/16(月) 21:46
靴を脱いで3歩進んだ所で抱きつかれた。
抱きついたと言うよりは、押し倒された。

動けない…。

そのままボーっと天井を眺める。
押し倒したっきり動かない彼女を背中に腕を回して。

「もし…」

消えそうなくらい小さい声。
声も体も震えている。

「明日…なっちがいなくなったら…
 後藤は…死んじゃうかもしれない
 なのに後藤は…後藤は!!」

ゴンッ!
真希は言い終わると同時に床に頭を打ちつけた。

「ごっちん!?」
「…が…え…だよ…」

喉の奥から絞り出した声はなつみには届かない。
115 名前:16日目 投稿日:2004/02/16(月) 21:56

信じられない光景が目の前に広がっていた。
亜弥と美貴が口論をしている。
ただの喧嘩じゃないってわかった。
そして美貴の口から出た言葉。

その言葉を聞いた時、目の前が真っ白になる。
ひび割れていた心の亀裂が広がっていく。

亜弥と別れた後、美貴は一人で笑った。
その光景を確かに見た。


そして…もう1つ。
信じられない物を見た。

116 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:05
大発見です。
テレビのリモコンだけじゃ無かったんですよ!
携帯のボタンも押せるんです。
藤本さんの前で得意げに携帯のボタンを押す。

「おぉ!凄い!」

藤本さんはパチパチと小さく拍手。
ダンスレッスンの休憩中に和む二人。

117 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:12
「あ」
「え?」

美貴が入り口の方を見て小さく声をあげた。
あさ美もつられて、そっちを見る。
入り口には真希の姿が。
明らかに美貴を見ている。

「用事なんじゃないですか?」
「何だろう?行ってくる」

美貴は一人真希の方へと歩いて行った。
118 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:18
取り残されたあさ美はメンバー達を眺める。

みんな、頑張ってるな。
私も死ななければ……あそこに…
やめよう。
こんな事考えたって…


「…頑張ろうよ」

不意に聞えてきた言葉。

「あさ美ちゃんの分まで頑張ろう…」

私の分まで?

ぐらり。
世界が、歪んだ。
119 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:23
頼んでないよ。私の分までって。
私の分まで頑張ろう?
私は頑張れないから?

どうして?


ここには、私はいないの?


私はこの世界には存在しない?


我慢していた、隠し抑えてきた感情が一気に溢れ出す。

ここから離れなくちゃ。
おかしくなりそう。
120 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:27
メンバー達をすり抜けて、美貴の元へ。
異変を察した美貴はあさ美の元へと駆け寄る。

「美貴ちゃん?」
「ごめん、ごっちん。急用」

そのまま、あさ美を連れて外へ出る。

あさ美は
美貴の手を必死で握ろうとしていた。
121 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:34
触れたい。
触れたい。
触れたい。

つかめない手をつかみたい。
一瞬でいいから温もりを感じたい。

私はここにいるのに。

「…紺ちゃん?」

あさ美の姿は次第と色を失って
美貴の前から消えた。
122 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:34



何が起こった?


123 名前:17日目 投稿日:2004/02/16(月) 22:42

「すみません。ちょっと取り乱しちゃいました」

目の前で謝るあさ美。
今、あさ美が一瞬消えた。
目の錯覚?

血の気が一気に引いた。
押し寄せる恐怖感。

紺ちゃん、気付いていないの?
それとも本当に目の錯覚だったの?

ねぇ、誰か、教えて。

124 名前:山羊太 投稿日:2004/02/16(月) 22:44
今回はここまでです。
更新が早かったり遅かったり…
125 名前:山羊太 投稿日:2004/02/16(月) 22:51
107> 名無飼育さん様
どんどん気にしてください。 どうなるのでしょうかねぇ。

108> つみ様
やはり…でしたねぇ。山はまだです。もうちょっと。もうちょっと。

109> 名無飼育さん様
あやみき気になりますか。あっちを立てるとこっちが立たず。う〜ん

110> ROM読者様
ちゃんと見れましたよ、おじゃまさん。だから逝かないでくださいw

111> 名無飼育さん様
毎日ご苦労様です。更新遅くてすみません。頑張ります。
126 名前:山羊太 投稿日:2004/02/16(月) 22:53
川VvV从<隠しますよ?
127 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/17(火) 00:17
ただいまです。(早っ!
ますます面白くなってきました。それぞれの思いがどこへ行き着くのか。
まだまだ波乱は続きそうですが。それもまた楽しみです。

>だから逝かないでくださいw
はるばる羽生まで逝ってきました。一生懸命に踊ってる紺ちゃんを見てたら
途中でこの作品とダブッて、涙が止まらなくなった。(恥
128 名前:つみ 投稿日:2004/02/17(火) 00:42
ああこんこん・・・
時が近づいて来てしまってるんでしょうか・・?
これからのふじもとさんの動向に注目します!
129 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:12
自分の気持ちがわからない。


「知らなかったでしょ。こんな所に公園があったなんて」
「はい。あ、ブランコ乗りたいです!
 懐かしいですね。二人で乗ったりしませんでした?」
「今はさすがに出来ないよね」

気分転換にと藤本さんに散歩に誘われた。
私に気を使ってくれているんだと思う。
二人並んでブランコに腰をかける。

藤本さんは余計な事を聞いてこない。
だけど側に居てくれる。

昨日、私は藤本さんに触れたかった。
隣に居た後藤さんじゃなくて藤本さんに。

どうして?
私が見えるのは藤本さんだけだから?
それとも…もっと他に理由が…
130 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:20
って、駄目だよ。考え込んじゃ!
藤本さんには松浦さんがいるんだし
それに私は後藤さんが好きで…
でも、後藤さんには安倍さんが…。
あ〜!もぅ!後藤さんには私が見えないんだし。
てか、私はもう…。
…。うう、自分で自分を追い詰めてる。

「紺ちゃん」
「ふぁえ!!?」
「うぇ!どうしたの変な声出して」
「べ、別に何でもないです」

藤本さんは笑顔で「帰ろうか」と言った。
私はぎこちない笑顔で頷く。
どうしよう。
私、後藤さんが好きなのに。

藤本さんを凄く意識しちゃってる。
131 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:27
藤本さんの一歩後ろを歩いていたけど
横においでと手招きされる。

ど、どうしよう。顔が見れないんですけど?
さっきあんな事考えたせいだ!
確かにずっと一緒で、凄く優しくしてもらって。
でも、生前も藤本さんは優しくしてくれて…。
あぁ!だから変な事考えちゃ駄目だよ私!
藤本さんはメンバー思いでいい人です!
みんなに優しいです。そして松浦さんと恋人です。
うん。うん。

「あれ?誰かいる」
「え?」

ずっと下に向けていた顔をあげる。
藤本さんの家の前に誰かが座っている。
あれは…

後藤さんだ。
132 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:38

後藤さんは藤本さんに気付き、腰をあげて手をヒラヒラと振る。
凄くドキドキする。
このドキドキは後藤さんの前でしかならないドキドキ。
やっぱり私、後藤さんが好きだ…。
後藤さんへの想いが溢れてくる。その時だった。

一瞬、後藤さんと目が合った。
体が硬直する。
藤本さん以外の人と目が合うなんて初めてだったから。
どうして、後藤さんには私が見えないのだろう…。


「携帯、携帯しろー」
「あ、ごめん。携帯、家に置いていったよ」
「鍵開けて。家入れて」
「何しに来たの?」
「昨日の話の続き」

とても大切な話。と最後に付け加えた。
133 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:45
私は一人でさっきの公園のブランコに座る。
大切な話だ。私が聞いちゃいけない。

人のいない公園を眺めながら考えた。
後藤さんに会ったとき、凄くドキドキした。
藤本さんに対してのとは違う感情。
一体、この感情は何なんだろう?
相談する人がいない。

遠くで学校のチャイムが鳴り響いている。

私の悩みは考えれば考える程、大きくなるばかり。

134 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 21:53

真希が泣きながら目の前で謝っている。
紺野を殺したとか、ごめんとか。
何を言っているのか訳わからない。

自分が殺した?そんなわけないじゃん。
ごっちん。おかしいよ?

美貴は今この現状が把握できない。
何て声をかけていいのかも分からない。

謝られたって困るよ。
今は他に考えなきゃいけない事があるのに。


彼女を精神状態はすでに限界だった。
彼女を支えているのは一本の細い糸。
その糸が切れるのは、もう時間の問題だ。
135 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 22:02
あさ美が家に帰った時には、美貴しかいなかった。
大切な話は終わったらしい。

「お、おかえり」
「あ、た、ただいまです」

何故かギクシャクする二人。

テレビでは天気予報が明日は雨だと告げている。

136 名前:18日目 投稿日:2004/02/22(日) 22:07



雨は全てを流してしまうだろう

切れてしまった糸も


彼女達の関係も


137 名前:山羊太 投稿日:2004/02/22(日) 22:09
こんばんわ。今日はここまでです。
次回は大波乱。
138 名前:山羊太 投稿日:2004/02/22(日) 22:12
127> ROM読者様
おかえりなさい!紺野さん波乱万丈ですね。 次回は大が付いていますし。

128> つみ様
さて、どうでしょう?藤本さんに注目してください!注目していなくても目がいきますが。
139 名前:山羊太 投稿日:2004/02/22(日) 22:14
(〜^◇^)<隠すぞ〜
(●´ー`)<矢口、出番少ないってか無いよね
140 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/22(日) 23:16
大が付きますか・・・心の準備をして待ってます。でもなんか怖い・・
141 名前:つみ 投稿日:2004/02/23(月) 13:22
なんか・・次回が来るのが怖いっすね。
でも次回までまってます!
大波乱を心して待ってます!
142 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 20:47

「おはよう!起きてた?」
「…寝てた」
「もう9時だよ。今日の夕方頃には、そっちに帰れるから」
「…へぇ」

亜弥のモーニングコールでお目覚め。
美貴は迷惑そうに携帯を切る。

あんな事があったのに…。
どうしてこうも元気に電話かけれるかなぁ?
いつもよりだるい体を起こしてベッドから降りる。

「…寝た気がしない」

あくびを噛み締めて、あさ美の待つリビングへ。
143 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 20:56


傘を差してご出勤。
あさ美には雨は関係ない。
濡れないから。
だけど美貴は傘をあさ美の方へと傾ける。
何事も気持ちが大事。


「藤本さん、肩濡れてますよ」
「平気だよ」
「あ、あの、ありがとうございます」

あさ美は真っ赤になって俯いた。
美貴はそんなあさ美を優しく見つめる。

とても、心地よい。

144 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:05

今日も、頑張っているみんなを見つめているだけ。
みんなは日に日に上手くなっていく。
私は、ただ、見つめているだけ。

みんなは目標に向かって
頑張って
上達して
また違う目標を持って
頑張って


…。

私は何の為に、ここに居るんだろう?

145 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:13

藤本さんは笑顔で私を側に置いてくれるけど
本当にそれでいいのだろうか?

私は藤本さんに何もしてあげれない。
それどころか、藤本さんの自由な時間を奪っている。


このままここに居ても…何も出来ないし
この先には何も待っていない。

藤本さんの優しさに甘えていたけど
本当にこれでいいの?

だって私は
私は…


146 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:19

あさ美の様子がおかしい。
遠目からでもわかった。
美貴は慌てて駆け寄る。

「どうしたの?暗いよ?」
「…」
「紺ちゃん?」
「…」
「どうしたの?」

返事がない。

「どうしたの!?」

今度は少し大きな声で。
その声に近くにいたメンバー達が振り返る。

美貴は壁に向かって叫んでいた。
147 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:28

発声練習?
それにしては姿勢がなっていない。
それに普通は「どうしたの!?」って言わないし。
不思議に思ったなつみが美貴に近づく。

「藤本?」

その言葉がスイッチ。
あさ美は何も言わずに壁をすり抜けた。
この場から逃げる様に。

「紺ちゃん!!!!!」

そして美貴も部屋を飛び出す。
死んだ人の名前を叫びながら。

その場にいる全員が言葉を失った。
148 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:32

足には自信があった。
だけどあさ美は壁をすり抜ける。
美貴は当然だが壁はすり抜けられない。

案の定、すぐに見失った。

降りしきる雨の中、美貴は傘も差さずに走った。
思いつく所を全てあたって行く。
早くしないと…
嫌な予感がする。

知らない間に日が暮れていた。
149 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:37

何となくそんな気がした。
だからここに立ち寄った。

そのブランコをとても気に入っていたから。


「紺ちゃん…。見つけたよ」
「…藤本さん」

ゆっくりと近づく。
大丈夫。はっきりと彼女が見えている。
冷たい雨が火照った体を冷やしていく。
しかし美貴の言葉に、あさ美は首を横に振った。

「私、帰りません」

150 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:47

「だったら美貴も帰れないよ」
「どうしてですか!?帰ってください!」
「どうしたの?美貴の事、嫌いになった?」

その言葉に、あさ美はもう一度首を横に振る。

「じゃあ、帰ろうよ。ね」
「駄目です。このままじゃ駄目なんです。
 迷惑なんです。私は何も出来ないし
 私は…私は…みんなと違う!!」
「同じだよ」
「違います!それに…もう、嫌なんです!
 辛いのは嫌なんです!
 頑張っているみんなを見るのが辛いから!
 逃げたい…。もぅ、逃げたい!
 私は大人になれないから!
 だから、これ以上私に無い物を持っている
 みんなを見るのが!」

泣き叫ぶ。
雨音に吸い込まれていく想い。

「私は…何の為にここに居るんですか?」

そして美貴に問いかけた。
151 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 21:56

「それは…分からない」

本当にわからない。
でも、1つだけ言える事がある。

「美貴は、紺ちゃんが居てくれるだけで幸せだよ?」
「…え?」
「それじゃ、理由にならないか」

藤本さんはいつもと同じ笑顔で。
私をゆっくりと抱いてくれた。
触れれないはずなのに、藤本さんの体温を感じる。

「美貴はさぁ、紺ちゃんの事好きだよ」
「あ、ありがとうございます」
「ずっと好きだった」
「あ、ありがとうございます…」
「ずっと、ずっと…言いたかった」

…。何か変。
152 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:03

「ごっちんが好きだって知ってたから
 言わなかったけど…。
 今、言わなきゃ、きっと後悔する」
「あ、あの」

さっきとは違う意味で胸の奥がザワザワしている。
ドキドキとも言える。

「美貴と、一緒に大人になろ?」
「はい」

すんなりと返事してしまった。
流しきった筈の涙が溢れてきた。
何だろう?この気持ちは…

「帰ろ」
「…はい」

二人の距離が一気に縮まる。
153 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:07
家に着いた途端に藤本さんはベッドに倒れこんだ。
濡れた服で。
慌てて声をかけたけど、応答が無かった。
寝ちゃった?

「藤本さん。お風呂に入らなくちゃ…」

返事なし。
顔を覗き込む。
美貴はぐったりとしている。
意識が無い。
154 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:12

「ふ、藤本さん!」

触ろうとしても、すり抜ける。
人を呼びたくても誰もあさ美が見えない。

どうしよう!どうしよう!
混乱していると、携帯の着信音が鳴った。
携帯は、運のいい事に開いている。
画面にはメール受信のマーク。

送り主は亜弥。
155 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:23
そうだ!メール!
電話が出来なくてもメールならできる!
ボタンだって押せる。
松浦さんなら合鍵を持っている。

亜弥からのメールの本文は読まずに返信画面に。

『いますぐあいたい』

文は単刀直入に。
どうして?とか聞かれたらどうしよう?
ボタンを押すのには凄く体力がいる。
これ以上押す自信は無い。
しかし、あさ美の悩みは無駄だった。


亜弥は、すぐに来た。
156 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:30
亜弥は一直線に美貴の元へ。
そこには倒れ込んで動かない美貴の姿が。

「み、みきたん!?」

軽く頬を叩かれて美貴は意識を取り戻す。

「…あれ?亜弥ちゃん…何やってんの?」
「ちょ、服濡れてるよ!着替えなきゃ!」
「体が…重い」

美貴は動かない。
正確には動けない。
亜弥は一つ溜め息をついて、軽く謝った。
そして、服を脱がせていく。
あさ美は慌てて隣の部屋に。
157 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:41
タオルと着替えを持って、部屋を走る亜弥。
それをおろおろと見つめるあさ美。

全身を拭いて、服を着替えさせて、布団の中へ。
体温計を渡し熱を計らせる。

「38.9だって。そりゃ体動かないよ」
「…」
「病院いく?タクシー呼ぶ?」
「まだ、平気。明日行くから…」
「…」
「ありがとう」

朦朧とする意識の中で美貴が囁いた。
あんな酷い事をしたのに…ありがとう。
弱々しい笑顔に亜弥は胸が締め付けられる。

158 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:47
仕方ないよ。どんな事されても好きだから。
こんなにこんなに好きなんだから。
ゆっくりと美貴に顔を近づける。

「好き…」

亜弥は美貴の唇に自分の唇をそっと重ねた。
美貴は抵抗する事無く受け入れる。
意識がはっきりとしない。
体も動かない。
唇の感触だけが伝わってくる。



「…もう大丈夫かな?」

あさ美はそっと部屋を覗いた。
そして、その光景を見てしまった。
159 名前:19日目 投稿日:2004/02/28(土) 22:48


一気に縮まった距離が


一気に遠ざかる。


160 名前:山羊太 投稿日:2004/02/28(土) 22:49
私的大量更新?頑張りました。
161 名前:山羊太 投稿日:2004/02/28(土) 22:51
140> ROM読者様
大波乱はまだ続きます。そりゃそうですね。

141> つみ様
待たせてしまいました。そして次まで又、待ってください!
162 名前:ROM読者 投稿日:2004/02/29(日) 23:16
更新お疲れ様です。
波乱とはいえ、みんなの純愛モードに
救われてます。


163 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 00:55

月明かりの下で揺れる影が4つ。
小さい影に大きい影。
4つの影は足早に歩いている。

「深夜だよ?迷惑だよ?」

一番小さな影。真里が困った顔で抗議する。
しかし他の3人は抗議を軽く流す。

「仕方ないよ。ごっちん待っていたら深夜になったんだから」
「ご、ごめん」
「謝らなくていいよ。ごっちんは悪くないべさ」
「さぁ、チャキチャキと歩くよ。藤本の家はすぐそこだから」

圭織が一人どんどんと前に進む。
それを皆が追いかける。

「…携帯鳴ってない?」
「え?なっちのじゃない。ごっちん?」
「あ、本当だ。亜弥ちゃんだ。どうしたんだろう?」

のんびりとした口調で携帯を取る。
もしもしと言う真希に対して亜弥は
真希以外の人にも聞える大きな声で。

『助けて!』

と叫んだ。
164 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 00:58

「ど、どうしたの?」
『みきたんが…みきたんが!』
『ちゃん!!…紺ちゃん!!!』

亜弥の声の後ろから響く美貴の声。
4人は顔を見合わせて、そして走った。
美貴の家はすぐそこだから。




美貴の家に着いて、一番最初に目に入った光景。
玄関で亜弥が美貴の上に乗っかっている。
まるで警察官が犯人を取り押さえている図だ。

「な、何やってんの!?」
「みきたんが…壊れた…」
「壊れた?」

床に押さえつけられた美貴の顔は血色が悪く息も荒い。
定まっていない視点で、何かを訴えかけてきている。

「紺ちゃんを…探しに行かなきゃ…」
「藤本?」
「紺ちゃんが…いなくなったんだ!!」

亜弥の下で暴れる美貴。
真里と圭織が美貴の両手両足を押さえる。

真希は動かない。
165 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 00:59

なつみはパニック状態で泣き始めた。

「ど、どうしよう!?救急車呼ぶ?警察?」
「警察は駄目!救急車も!」
「えっと、どうしよう!どうしよう!」
「なっち、落ち着いて」

真希は、冷静に美貴を見つめる。
この前と正反対。
一人リビングに入っていく。
そして、テレビの上の写真立てを見つけた。
その写真立てを、他のメンバーに見つからない様にそっと自分の鞄に入れた。
166 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 01:02

目の前で、何が起こっているのか分からない。
藤本さんと松浦さんのキスシーンを目撃して
藤本さんと目が合って
それから…藤本さんは私の名前を叫んだ。
私はビックリして返事をしたけど
藤本さんは私の名前を叫び続ける。

「ここにいますよ?」

駆け寄る。
だけど藤本さんは遠くを見ていて。
そう。まるで私が見えていないみたいに。
ベッドから転げ落ちて、部屋を飛び出した藤本さんを慌てて松浦さんが止めた。
私も慌てて藤本さんの前に飛び出したけど…

藤本さんは私をすり抜けた。

こんな事、初めてだった。


「紺ちゃん!?紺ちゃん!!」

嗄れた声が部屋中に響き渡る。
松浦さんは携帯を取り出して、助けを呼んだ。
藤本さんは叫んでいる。


…見えていないんですか?

167 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 01:04

顔を覗き込む。
視線が交わらない。
名前を呼んでみる。
聞えていない。

藤本さん?
私、見えないんですね?

…私、ひとりぼっちになったんですか?

呆然と立ち尽くしていると、飯田さん達が家に入ってきた。
その中に後藤さんも…いた。

皆が慌しく藤本さんを取り押さえる中
後藤さんはリビングに入っていってしまった。
どうして?
後藤さんの後を追う。

何をしているんですか?
写真立て?私と藤本さんの写真。
何処に…持って行くのですか?
168 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 01:08

後藤さんは、深く大きな溜め息をつく。
そして、困った顔をして、こっちを見た。

「美貴ちゃんには見えなくなったみたい」

全身が凍りつくのを感じた。

「おかげで、見える」
「ぁ…」
「3回目だけど、今回は…一瞬って訳じゃなさそうだね」


真希は手を伸ばし、あさ美の頬に触れた。

「凄いね。触れれる」
「…ぇ…ぁ…」
「とにかく、今は美貴ちゃんだね」

真希は、あさ美の手を握り玄関へ戻る。
あさ美は、込み上げてくる涙を必死に抑える。
人の感触と今の現状に。

169 名前:20日目 投稿日:2004/03/01(月) 01:09



神様…こんなのって…遅すぎます。



170 名前:山羊太 投稿日:2004/03/01(月) 01:10
前回いきたかった所まで更新しました。
171 名前:山羊太 投稿日:2004/03/01(月) 01:12
162> ROM読者様
ある意味、これから純愛開始って感じがします。はい。
172 名前:つみ 投稿日:2004/03/01(月) 10:03
あいたたた・・・
こんなのってアリですか?!
どうなるのだろう・・・?
173 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 00:29
それぞれの気持ちを考えると切なくなりますね…。
これから一体どうなるのか、続き期待してます。
174 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/02(火) 05:48
更新お疲れ様です。
後藤さんの洞察力、凄いです。
波乱の展開、痛いし泣けるけれど、でも
この先がすごく楽しみです。
175 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 12:00
胸が痛いです。
まさかこんな展開になるとは……。
紺ちゃんがどっちを選ぶのか、楽しみに待ってます。
あ、純愛大好きですw爆
176 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/02(火) 21:00
こうきたか
177 名前:名無〜し 投稿日:2004/03/06(土) 02:20
読んでるうちに、なんだか藤本さん好きになってきました。
最後はみんな幸せになってほしい…。
178 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 00:55
薄暗い廊下に設置された椅子。
無言で皆が腰をかけている。
私は、後藤さんの横に。

「…知らなかった。ここまで傷ついてたって」

矢口さんが、小さく呟いた。

「力になれなかったのかな?」
「…」
「あの日から、藤本は壊れていたと思うよ」

真希とあさ美は、ただ聞くだけ。
大事にならない様に、事務所が色々と手を回してくれた。
年下のメンバー達には、風邪が悪化したと伝えている。

病院。それも精神科医。
運ばれた本人は鎮静剤で大人しく寝ている。

廊下に重い空気が漂う。


椅子に座っていても、何もできない。
それどころかこんな所、人に見られたらやばい。
亜弥以外の皆は帰宅する事にした。

あさ美は

真希の後を追った。
179 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 00:57


「いいの?美貴ちゃんの側にいなくて」
「…松浦さんが居ますから」
「ふぅん」

でも、邪魔だったですか?
もし安倍さんが…来たりしたら…。
少し、戸惑う。
だけど、安倍さんは矢口さんと帰ったから…。
そんな事じゃなくて、問題は後藤さんが迷惑じゃないかって事。


だって、さっきから、会話が無い。

180 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:00
初めて入る後藤さんの家。
私は玄関で止まった。
靴が脱げないから。
藤本さんの家では靴を脱がなかったけど、それは慣れでここは藤本さんの家じゃない。
私が固まっていると、後藤さんが近づいてきた。

「入りなよ」
「あの、靴が」
「靴?脱げないの?」

後藤さんは私を玄関に座らせて、靴に手をかけた。
足首を掴まれて、ドキっとする。
こんな所、普段触られないので抵抗力が…。
そんな抵抗力聞いた事無いですけど。

「はい。脱げた」
「あ、ありがとうございます」

脱げなかったのに。
一度も脱げなかったのに。
靴の無い足に違和感を感じながら、お邪魔する。
一歩。二歩。三歩。
四…
歩目は出なかった。
後藤さんが、抱きついてきたから。
181 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:02

「やっと、会えた」
「後藤さん?」
「紺野…ずっと…謝りたかった」
「…」
「ごめん。後藤があの時、紺野の話を聞いてあげれば」
「後藤さんのせいじゃ無いですよ」

この腕を、後藤さんの背中に回したかった。
だけど…何かが邪魔をする。

「あれは偶然で、たまたまで、しょうがない事なんですよ」
「そんな!しょうがないって」
「きりが無いですよ。もしもとか、そんなのを幾つ上げても」

過ぎ去った事は、元には戻せない。
私は、死んだ。
それは紛れも無い事実。
182 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:04

そして、藤本さんを傷付けたのも事実。
もしも何て言葉を幾つ使っても仕方ないけれど…
もしも、私があのまま成仏していれば…
藤本さんは…


「明日、美貴ちゃんに会いに行こう」


お互いの体は、まだくっついたまま。
後藤さん、私…
どうしてここに居るのでしょうか
その存在意味は一体何?

わからないけど…
私にはまだ、やり残した事がある。
183 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:06

「1つ、お願いがあるのです」
「ん?」
「今から言う事を怒らずに受け止めてください」
「わかった」
「藤本さんには、私がここに居ると言わないで下さい」
「…。どうして?」
「…」

告白されたけど
私は藤本さんの気持ちに応える事は出来ない。
私よりも、もっと大切な人に気付いて欲しい。
誰よりも藤本さんを大切に想っているあの人を。

「言いたくないんだね。わかった」
「ありがとうございます」
「でも、紺野はそれでいいの?」
「それでいいも何も…それしか選択肢は無いんですよ」

184 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:07

私にはその先が無いから。
わかっているから。

私がもうすぐ消えるって事。

それが来るのはそんなに遠くない。

それまでに…

185 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:08

「あのさ、紺野…」
「はい?」
「あの時、何を言いたかったの?」
「え?」
「聞けないままだったから」

後藤さんの私を抱く力が強まった。
あの時、言いたかった事。
私の気持ち。
安倍さんと付き合っているって知らなかったから。
伝えようとした気持ち。
186 名前:20日目 投稿日:2004/03/11(木) 01:10

もうすぐ消えるなら…伝えてしまう?
でも、後藤さんが困る事はしたくない。

「たいした事じゃないですよ」
「…」
「後藤さん?」
「そっか、ごめんね。無理に聞こうとして」

やっと離れた二人の体。

もしも…

もしも安倍さんと付き合っているって知らなかったら
私は伝えていたのだろうか?
今、ここでこの想いを。

たとえ消えると分かっていても…

187 名前:山羊太 投稿日:2004/03/11(木) 01:11
あっちにふらふら
こっちにふらふら

今回はここまでです。
188 名前:山羊太 投稿日:2004/03/11(木) 01:16
172> つみ様
おおありです。これからどうなるのか…。どうなるのでしょう…。

173> 名無飼育さん様
まだ、ハッキリ気持ちが分かっていない人もいますねぇ。しかも多数。

174> ROM読者様
後藤さんは謎の多い人です。今後大活躍予定。多分。
189 名前:山羊太 投稿日:2004/03/11(木) 01:20
175> 名無飼育さん様
純愛来そうで来ていない感じで、実は始まっていたり…したりしなかったりです。

176> 名無しさん様
こうきたさ(笑

177> 名無〜し様
どんどん好きになって下さい。私も藤本さん大好きですw
190 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/11(木) 06:52
更新お疲れ様です。

この切なさがたまらないです。
靴が脱げた所で何故か涙が止まらずに・・・
後藤さんの大活躍、楽しみにしています。
191 名前:つみ 投稿日:2004/03/11(木) 09:42
あ〜・・・
こんこん切ないね・・どちらにも思いを告げられず。
そろそろクライマックスっぽいので
次回も楽しみにしてます。
192 名前:名無〜し 投稿日:2004/03/12(金) 02:24
やっぱ消えちゃうんですね…。
更新楽しみに待ってます。
193 名前:山羊太 投稿日:2004/03/14(日) 23:39
真希は布団の中にあさ美を招く。
あさ美は戸惑いながら、真希の横へ転がる。
上布団はあさ美をすり抜けた。

「こうしたら、すり抜けないよ」

あさ美を抱き寄せて、自分の腕で布団を浮かす。
何もかもが、美貴とは違う。

「あ、ありがとうございます」
「…紺野」
「はい」
「最初から居なかった事にする?
 それとも、途中で消えた事にする?」
「あの、できれば…最初から私は居なかった事にして欲しいです」
「分かった」


真希は深い眠りについた。
あさ美は、眠らなかった。
194 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:40
朝。
病院へと。
病室には美貴一人だけ。
ただ、窓の外を眺めているだけ。

「おはよう。具合はどう?」
「…最悪だよ」

美貴は弱々しく笑う。
今までの出来事が夢か現実か。
あさ美が死んだのは夢か現実か。
全てが分からない。

「…藤本さん…」

一応、名前を呼んでみたが、返事は無い。
見えていない。
195 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:41
「亜弥ちゃんは?」
「一旦、家に帰ったよ。お昼にまた来るって」
「…へぇ」
「ごっちん…。紺ちゃんを知らない?」
「美貴ちゃん、紺野はとっくに」
「知らない?」

遮られた。
だけど、言わなくてはならない。
現実を見せなくては。

「死んだよ。」
「…」

その言葉が重く圧し掛かる。
美貴は、黙って俯いた。
196 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:43
知っている。真希は全てを知っている。
あさ美が見えていた事。
あさ美に好意を寄せていた事。

そしてあさ美が―

だからこそ、この空気が重い。
真希だけが気付いている真実。
美貴もあさ美も気付いていない真実。

「紺ちゃんは!美貴の前にいたんだ!
 確かに昨日まで一緒に!」
「それは、美貴ちゃんが作り出した幻覚だよ」
「違う!そうだ、写真!あの写真!」

あさ美と一緒に写った写真。
それは今、真希の家に有る。
あさ美が居たと言う証拠は、全て抹消する。
美貴の為に。

「無かったよ。そんなの」
「嘘だ!嘘だ!いい加減な事!」

美貴は叫ぶ。
197 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:43
これ以上騒がれたら誰かが来てしまう。

「美貴ちゃん、現実見てよ」
「…」

これだけ、ボロボロにすればいいだろう。
亜弥の優しさが痛いほど感じるには、これぐらい。

「じゃあ、帰るね」
「…待って」
「何?」

振り返らずに、足だけ止めた。
表情で何かを感じ取られるのはまずい。
この、表情で。


「…死にたい」



それは、決して口にしてはいけない言葉。
198 名前:――― 投稿日:2004/03/14(日) 23:44

―死にたい―

その言葉を聞いた時、あさ美の意識が一瞬途絶える。
怒りと悲しみ。
ふざけないで下さい!叫びたいのに

体が動かなくなる。
全身がギシギシ痛い。
熱い。まるで燃えている様に熱い。

息が出来ない。
自分の体じゃないみたいに熱くて苦しくて
ここから消えてしまいそうだ。
消えたくない。まだ、消えたくない。

目の前に真っ白の壁。
真希の姿が見えない。
右手に温かい者を感じた。
それを握り返す。

意識が、戻る…。
199 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:46
病室のドアの前で。
さっきの場面に戻ってきた。
真希と美貴は、さっきの続きを。

「バカ言ってないで…前見て」
「…っくぅ…」

真希は、結局振り返ることは無かった。
これは、重症だ。
亜弥に全てを託すか。
それとも、ここで戻ってあさ美の存在を言ってしまおうか?

「後藤さん?」
「…」

心の葛藤。
あさ美には選択肢が一つしか無いかもしれない。
だけど、自分ならもう一つの選択肢を作ってあげれる。
それが吉と出るか凶と出るかは分からない。
自体を悪化させるかもしれない。
200 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:47


今の、あさ美の意志に反する。
だけど、きっと後悔する。

真希は心の中で深く謝った。

―ごめん、なっち


恋人への謝罪。

「紺野、とにかく家に帰ろう」
「はい」

あさ美の手を握る。
心は決まった。
201 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:48

家に着いて、真希は荷物を置いて、ソファにへたりと座り込む。
あさ美を手招きして。

「紺野も座りなよ」
「は、はい」

少し間を空けて座る。
真希はその間を詰める。
あさ美はドキッとする。

「もっと近くにおいでよ」
「え、えとー」

どぎまぎしていると、手を握られた。
真希の顔が近づく。

「知ってるんだよ」

耳元で囁かれる。
あさ美は必死に呼吸を整える。
保てない平常心。
真希は続ける。


「私の事、好きでしょ?」
202 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:48


時が
思考が
呼吸が
全てが
止まる。

203 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:50

「え!?」
「知ってるよ。ずっと前から」

半ば強引に抱き寄せられる。
言葉が出てこない。
あさ美は口をパクパクさせながら
言葉を探す。

「私も好きだよ。紺野の事」

嘘です!
だって後藤さんには安倍さんがいるじゃないですか!
私、知っているんです!

頭の中でしか叫べない。

あさ美が混乱している間にも真希は次の行動に移る。
あさ美の頬に唇を落とした。

真希の顔が近すぎる。
目が合って、そして再び顔が近づいてくる。
今度は唇に。
204 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:51

「ぃやっ!」

遮ったのは、あさ美の両手。
大粒の涙を流しながら。

「や、やめて下さい…。後藤さん変ですよ?」
「…嫌?」
「あ、あああ…あ」

嫌?嫌…
後藤さんにキスされるのが嫌?
答えが見つからない。

「これが、美貴ちゃんだったら、どうしてた?」
「同じ事をしてました」
「分かんないよ?」

近づいていた二人の距離が離れた。
205 名前:21日目 投稿日:2004/03/14(日) 23:52

真希は、あさ美の頬に触れた。

「紺野、好きと憧れは違うよ?
 …。
 きっと、紺野の心が離れたから
 美貴ちゃんに見えなくなったんだよ」

とんと、胸を押される。
離れたから…見えなくなった?
あの、キスを見たから…私の心が離れた?

それって…

「本人が気付いていない恋心…だよ」
「私が…藤本さんの事を?」
「うん」



「本当の気持ち、伝えなきゃ伝わんないよ。
 言葉で伝えなきゃ、何も伝わらないよ」
「だけど、そんな事をしても…」

意味が無いんです。
届いても、届かない。
気持ちが通じ合っても
結ばれない。

「だったら、一生伝えないの?」
「一生って…私はもうすぐ消えるんですよ…」
「…」
206 名前:――― 投稿日:2004/03/14(日) 23:54


美貴は病室で祈る思いで両手を握り締める。
風が花を優しく揺らす。

「紺ちゃん。帰ってきて…」




他には何も望まない。
ただ、君が側にいればいい。

君の声が聞きたい。

207 名前:山羊太 投稿日:2004/03/14(日) 23:55
今回はここまでです。
どうやら終わりは近いですね。
208 名前:山羊太 投稿日:2004/03/14(日) 23:56
わーい。200越えました。
209 名前:山羊太 投稿日:2004/03/15(月) 00:00
190> ROM読者様
後藤さん…活躍してないかもしれない。

191> つみ様
はい。終わりも近いです。今月中には終われそうです、多分。

192> 名無〜し様
それが運命なんでしょう。いやいや、でもでも…
210 名前:つみ 投稿日:2004/03/15(月) 00:11
リアルタイムに来てしまった・・・
>>206はやばいくらい切ないです・・・泣いた・・
クライマックスになってるっぽいので
ハンカチ片手に更新まってます。
211 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/15(月) 00:24
せつない・・・
胸が苦しいです。
212 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 10:41
せつないよお・・・
仕事中にちょっとのぞいてみたら、こんなふうに・・・
すごい筆力ですね!続きがきになってしかたありません。
まってますよ!
213 名前:名無〜し 投稿日:2004/03/17(水) 23:04
更新お疲れ様です。
皆さんおっしゃってるように、ホントせつないです・・・。
続き楽しみにしてます。
214 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/20(土) 00:03
更新お疲れ様です。
・・・胸が苦しい・・・

> 後藤さん…活躍してないかもしれない。
重要な役割を担っているのでは。と、勝手に妄想
してたりなんかして。
215 名前:22日目 投稿日:2004/03/24(水) 14:23

「紺野、病院に行くよ」
「え?」
「美貴ちゃんに紺野が見えないのなら
 後藤が通訳してあげるから」

後藤さんって早起きなんだなと思っていたけど
病院に行く為の早起きだったんですか!?
通訳って…私はもうすぐ消えるから…

「もうすぐ消えるって言いたい?
 紺野、それ自分が逃げる為の口実。
 何も言わないで消えちゃう方がズルイよ」
「だけど」
「だけどじゃない。
 今の紺野は伝えられるんだよ?」
「…」
「ちゃっちゃと行く。時間が無いのなら尚更」

強引に腕を?まれる。
引っ張られる形で後藤さんの家を後にした。
216 名前:22日目 投稿日:2004/03/24(水) 14:24



伝える…。何を?
今更何て言えばいい?



病院が前の時より近く感じた。
時折襲う体中を蝕む熱さ。
不安定な視界。
この世界から消える時間が迫っているのが分かった。

217 名前:22日目 投稿日:2004/03/24(水) 14:26
藤本さんの病室は…あそこだ。

一人、病院の敷地内にある芝生で佇む。
真希には一人で行きたいと告げた。


さよならをしなくちゃ…

ちゃんと、言えるかな?
その前に、私が見えるかな?

私が見えていなくても、顔を見て言わなくちゃ。
ちゃんと私の声で届けたい。


長くて、短かった。
藤本さんをいっぱい知れた。
本当の自分の事も知った。
ここは、私が居ていい世界じゃない。
自分の足で、自分の意思でこの世界から消えたい。

空は快晴。

218 名前:22日目 投稿日:2004/03/24(水) 14:27

病室に行く途中に、松浦さんとすれ違う。
家に帰るのかな?

本当は、悔しかったのかもしれない。
藤本さんと仲が良い貴方が。
決して勝てない相手だと知っていたから。
だけど、勝ち負けじゃなかったんですよね。
私は、まだまだ子供でしたね。

その背中を見送った。

219 名前:22日目 投稿日:2004/03/24(水) 14:29

病室は静かで、藤本さんが一人ベッドに居た

白い病室で白いベッドで、静かに横になっている。
その目は、天井を見つめていた。

「藤本さん」

言葉は届かない。
一度離れた心は、簡単には戻らない。

「たくさん、言いたい事が有るんです」

目頭が熱い。喉の奥がキュッとなる。
うまく、喋れるかな?

「…」

どの言葉を選べばいいんだろう?
世界から色が消えていく。
早くしないと、消えちゃう。
喉の奥から搾り出した言葉。

「ありがとうございます…。そして、さよなら」

全身が麻痺していく。
視界が暗くなる。
熱い。体が熱い。

本当に言いたかった言葉は…これ?
違う!
本当は!
220 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:30

「どうして、さよならなの?」

暗闇の中で、声が聞えた。
微かに聞えた声は、私を温かく包み込む。

「だって…もう行かなくちゃ駄目なんです…」
「どこへ?」
「どこって…」

天国?それとも地獄?
分からない。

「わかりません。でも…お別れなんです」
「駄目だよ行かせない」

白い世界が広がった。
首を動かしたいけど体が動かない。
視界には、藤本さんだけが映っている。
221 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:31

「私も…行きたくありません…」
「じゃあ…行かないでよ」
「私は、ずっと藤本さんの側に居たい…」

叶わないと分かっていても、願いたい願いがある。
側に居るだけで良いから。
私は

「美貴も、ずっと紺ちゃんの側に居たい」

藤本さんが、私の右手を優しく握る。
私には握り返す力が無い。
喋るのも、苦しい。
涙だけが、無造作に流れる。
藤本さんの涙が、私の頬に落ちる。
視界がぼやけて、藤本さんの顔がハッキリ見えない。

「藤本さん、私、藤本さんが……」
222 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:32
ずっと…ずっと…心の奥に隠していた想い。
隠しすぎて、自分でも気付かなかった想い。
今、届けてもいいですか?
まだ、間に合いますよね?
遅くはないですよね

「好きです…」

もう、体に力が入らない。
本当は笑顔で言いたかったのに。
もう、喋る事も出来ないみたいです。
223 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:33



「美貴もだよ」

いつもと同じ優しい笑顔。
私は、その笑顔が大好きだった。

ちょっとずつ、惹かれていた。

知らない内に好きになっていた。
想いを告げて私の意識が途切れた。

224 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:33




おやすみと、遠くで藤本さんの声が聞こえた。
遠くで、誰かが泣いていた。


225 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:35



次、目が覚めた時
横に藤本さんが居たら嬉しいな。


そんな事を願いながら
私は深い眠りへと戻っていった。




226 名前:――― 投稿日:2004/03/24(水) 14:37
 
  おわり
227 名前:山羊太 投稿日:2004/03/24(水) 14:47

曖昧な形ですが完結です。
今まで読んでくださった方々ありがとうございました。
はっきりした終わり方をして欲しかった!って方はいますか?(汗)
はっきりガッカリバージョンございます。
228 名前:山羊太 投稿日:2004/03/24(水) 14:52
210> つみ様
ハンカチ、ちり紙忘れずに。一応完結です。もしかしたらつづくです。

211> 名無し読者様
すみません。胸を苦しくしてしまい。もう大丈夫ですか?まだまだ?

212> 名無飼育さん様
お仕事中に覗くなんて悪ですのうwお褒め頂きありがとうございました。
229 名前:山羊太 投稿日:2004/03/24(水) 14:54
213> 名無〜し様
つづきお待たせしました!ある意味切ないつづきです。

214> ROM読者様
後藤さんは小さい活躍を沢山しているって事でお願いましす。大は無かった。
230 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 17:12
せつなすぎだよぉ(T_T)できれば後日談とか書いてくれるとうれしいです。少しでもいいです・・勝手ですが少しでも作者様の文を読みたいです。すいません
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 18:03
完結お疲れ様でした。
山羊太様の書かれる紺野さんと藤本さんが大好きでした。
この様な不思議な世界観が素敵でした。
素晴らしいお話をありがとうございました。
232 名前:tsukise 投稿日:2004/03/24(水) 18:15
脱稿お疲れ様ですっ。
ずっとROMってましたが、完結と言う事でひっそり参上デス(笑
どうしよう…仕事場なのに泣いてしまってます…。
切ないけれど、どこか胸が温まるお話で更新をいつも楽しみにしてました。
お疲れ様でしたっ。……つづき……ひっそり期待したり…えぇ…ひっそり(マテ
233 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/24(水) 19:44
完結お疲れ様でした。
この切なさがいい!楽しいのもいいけれど、切なさや悲しみが
分かる人間でありたい。とても素敵な作品でした。

>作者様 お盆もお彼岸もあるし、時節前倒しでも(略
234 名前:つみ 投稿日:2004/03/24(水) 21:18
完結お疲れ様です。最後まで切ないのをどうもでした。
やはりハンカチは必要でした・・・

続編的なものがあるんですか?
楽しみにしてます!
235 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/05/08(土) 23:20
山羊太さま
はじめまして。
面白くて一気に読んでしまいました。
完結、お疲れ様までした。次回作も期待して待ってます!
PS:娘。小説の保存もさせていただいているのですが、もしよろしければ保存させてください。
   よろしくお願いします。できればですので…。
   当方のHPは[ http://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/index.html ]です。
236 名前:山羊太 投稿日:2004/05/11(火) 00:14
230> 名無飼育さん様
ありがとうございます。後日談はまだ書けません。
さかのぼり談が始まります。

231> 名無飼育さん様
ありがとうございました。不思議すぎて難しい部分もありました。
読んでくれてありがとうございます。

232> tsukise様
こんな所までわざわざどうもですー。
仕事場で泣いちゃ駄目じゃないですか。
つづきひっそりと始めます。

233> ROM読者様
ありがとうございます。楽しさだけじゃ駄目なんですよね。
切なさ伝えられて良かったです。

234> つみ様
ハンカチ必要でしたか!それは嬉かもです。
次の話しは続編ではなくてこの話しの表の部分になります。

235> ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます。私なんかの作品を保存してくれるのですか?
喜んでお願いします。
237 名前:山羊太 投稿日:2004/05/11(火) 00:21
続編を更新をさせていただきます。
自身の都合で更新は遅めになりますが、前の作品よりは短めかと思います。
根本的な部分からこの作品の雰囲気を壊すと思いますのでひっそり更新を選びました。
この作品は前の作品の表の部分です。

では、思い出人はっきりガッカリバージョンスタート。
238 名前:−??日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:22

目の前の彼女はきょとんとした顔でこちらを見ている。
美貴は肩で息をしながら彼女を見ている。

「…えっと、それって」
「まんまの意味だよ」

困惑する彼女に、近づく。
困らせるって分かっていた。
だけど、もう限界だったんだ。

239 名前:−??日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:23

「すぐにとは言わないから、返事がほしい」
「あの、その」
「待つから」

彼女を一人残して、その場を立ち去る。
平静な顔しているけど、心臓はバックンバックンで。
不自然に右手と右足が一緒に出ている歩き方。

気分的には、山に登って叫びたい気分。心の内を全部。
海でもいい。

「紺ちゃんが好きだー!!!」

って。
その横で紺ちゃんが「私もー」って叫んでくれるのが理想。
だけど知っている。紺ちゃんは…紺ちゃんはごっちんが好きって事。
でも、諦めきれないから告白したんだ。
スッパリ振られて終わりか、曖昧な答えを言われてこの気持ち持ち越しか。

その答えは紺ちゃんが持っている。

240 名前:−1日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:25

あの告白から数日が経った。
美貴はまだ答えをもらっていない。
それどころか、あさ美に避けられる始末。
二人っきりになれない。
話しかける前にどっかに行ってしまう。
待つと言ったからには催促のメールも出せない。
二人の関係大後退。

気分はどん底。


「今日も…紺ちゃんと喋れなかった」

肩を落として、一人歩道を歩く。
241 名前:−1日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:26

ビデオ借りて、家で一人寂しく見ようかな。
ボーっと考えていると鞄の中で携帯が鳴った。
一瞬、あさ美から?なんて思ったが画面には『ごっちん』の文字。
溜め息ついて、低いトーンで電話に出た。


「もしも…」
『美貴ちゃん!』
「え?」

電話の向こうから、尋常じゃない真希の声。
何か…遭った?

『ちょ、あぁ、もう!大変!大変なんだよぉ!』
「何が!?」
『紺野が!!』


大変の後に紺野と言う単語。
体中の血の気が一瞬にして引いた。
242 名前:−1日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:27
部分部分しか、読み取れなかった真希の言葉。
言葉を繋ぎ合わせて的確な答えを出す。

紺ちゃんが交通事故にあって救急車で運ばれて今手術中。

やっと、その言葉を理解できた。
理解できたと共に頭の中が真っ白になる。
美貴は携帯を切り病院へと走り出した。


しかし病院まで走りきれる距離じゃない。
すぐに体力が尽きる。タクシーを拾った方が全然早い。
運がいい事に、タクシーはすぐに見つかってくれる。
素早く乗り込み、目的地を必要以上な大声と早口で告げる。
発進されたタクシーの窓から、のんびりと気色が流れる。
タクシーってこんなに遅かったっけ?
気持ちだけが先へ先へと走っていく。

「もっとスピード出せないんですか!?」

苛立ちと焦りで運転手に怒鳴った。
243 名前:−1日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:28
病院に到着すると、お札を渡して走る。
お釣りは要らない。受け取っている時間が惜しい。
足が縺れながら、躓きながら、病院内を走る。
途中看護師に場所を教えてもらい、力の限り走った。
目的地で誰かが美貴を手招きしている。
そこには数人の知った顔が。

「はぁ…っはぁ…は…」

喉の奥で血の味がする。肺が熱い。今にも張り裂けそうだ。

「はぁ…んっく…。こ、紺ちゃ…は?」

一番近くにいた人の肩を掴む。
えっと、誰だっけ?この人。メンバー?
混乱と、動揺と、呼吸困難。記憶がぐちゃぐちゃしている。
脳の中が、うまく機能していない。
世界から冷静と言う言葉が消えた。
244 名前:−1日目 投稿日:2004/05/11(火) 00:29

手術中のランプがついたドアと名前が思い出せない彼女を交互に見た。

「…」

あぁ、思い出した。安倍さんだ、この人。

なつみは、混乱している美貴を抱きしめた。
抱きしめられた美貴は大人しく力なく、なつみに体重を預けた。

「大丈夫。難しい手術じゃないって
 だから安心して」
「よ、良かった…」

美貴はその場にずるずると崩れ落ちる。
訪れたのは安心感。
良かったと繰り返しながら泣いた。







245 名前:山羊太 投稿日:2004/05/11(火) 00:30
今回はここまでです。
まだまだはっきりガッカリ見えません。
246 名前:ROM読者 投稿日:2004/05/12(水) 12:38
更新お疲れ様です。
怖いけど、読まずにはいられないオタの悲しさ・・
247 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/05/12(水) 23:22
山羊太さま
続編の更新お疲れ様です。
保存の件、了承ありがとうございます。
続編も引き続き保存させていただきたいと思います。
では。次回更新も楽しみに待ってます!!
248 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/16(日) 01:35
おぉ!!つづき(?)が!!!いつのまに!!?
紺ファンの私には見逃せませんね!!
作者様、どうぞ続きがんばってください!!!
249 名前:2日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:29
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
大丈夫って言ったよね?
明日になれば目が覚めるって言ったよね?
だけど、この目の前の現状は何?
大した怪我じゃない?大丈夫?何が?大丈夫?

明日っていつさ?今日が来てもまだ明日?
明日は来ないの?明日って何日?

ぐちゃぐちゃでぐるぐるでむかむか。
この怒りを何処にぶつければいいかも知らない。

病院内ではお静かにしてください。
そんなフレーズが頭の中で響く。

静かに出来ないよ!
不安と不安と不安!


目の前に広がるのは白い世界。
白い布団の中で、白い包帯を全身にぐるぐると巻きつけられて
本当に生きているの?と疑いたくなるほどに白い顔色の君。
250 名前:2日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:30

どれだけ明日になっても目覚めないあさ美を目の前にただ、呆然と立ち尽くす。
メンバーは泣き崩れて、家族はただ待つばかり。
ふと、目線が何かを捕らえる。
やけに冷静にあさ美を見ているのは…真希。
これだけ、乱している人間の中じゃ冷静な人間はかえって目立つ。
声をかけようと思ったが、そんな気力も無かった。

真希は、なつみに一声かけて病室を後にした。
そんな真希に疑問を覚えた。

追いかけようかと思ったが、やはりそんな気力は無い。
今、追いかけて何かを聞いても、きっと頭に入らない。
美貴はそっとあさ美の右手を握った。

「待ってるから…」

ずっと、待ってるから…。
紺ちゃんが目覚めた時に、傍にいたいから。


ほんのりと温かいあさ美の右手に、少し安心した。
251 名前:3日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:31
時計の針が0時を過ぎる。
真夜中の病院は不気味すぎる。
なかなか寝付けない体を、だらりと動かす。
無理を言って泊まらせてもらった。
家族の人は美貴に任せてくれて近くのホテルに帰って行った。

コップにティーパックを入れてポットのお湯を注ぐ。
温かいものでも飲んで眠気を誘おう。

「…飲む?」

バカみたいだけど、紺ちゃんにも訊いてみる。
252 名前:3日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:31
あたり前だけど返事は無い。
机の上にコップを二つ置いてお茶を啜りだした。

「いつ起きてもお茶飲めるよ」

その声が虚しく部屋の片隅に消える。
253 名前:3日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:32

「…。美貴じゃなくて、ごっちんのが良かった?」

これは、自分で言っていても辛いな。
だけど、紺ちゃんにとっては、ここに美貴が居るよりも
ごっちんが居る方が嬉しいかも。
そんな事を考えていると涙が出てきた。
だけど

「美貴が…一番紺ちゃんの事、想ってるから」

まだ、返事もらっていないから。
諦めるにはまだ早すぎるから。
早く、目を覚まして、早く笑って欲しい。


家族用にベッドが用意されているんだけど、少しでも傍にいたい。
美貴は、椅子に座ったままの体勢で眠りにつく。


朝、椅子から転げ落ちて床で熟睡している美貴を見て、
人々はパニックになった事は言うまでもない。

そして、美貴の体がぎしぎしになった事も。
254 名前:6日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:34
メンバー達が暇を見つけてはあさ美を訪ねてくる。
眠っている彼女を見ては、肩を落とす。
美貴は、昼夜を問わずに病院に来ていた。
泊まれる日はもちろん泊まって、病院から出勤。

今日も、病室内であさ美の目覚めを待つ。
病室には美貴をはじめ、なつみ、真希、真里が無言で座っている。
この病室には笑顔は無い。
お互いに会話を交わすことも無く。
ただ不安と言う言葉が取り付いている。
無言の空気に耐えられなかったのか、美貴が口を開いた。

「もし、このまま目覚めなかったら…どうしよう」

不安が積み重なって、言葉になった。
思っていても誰も決して口には出さなかった言葉。
255 名前:6日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:35
「何…それ…」

その言葉に一番に反応したのは真里だった。
みるみる内に顔色が変わる。

「何だよ!それ!!」

襟元をつかまれる。
今にも押し倒されて、殴り合いになりそうな態勢。
美貴も何かが自分の中で壊れる音を聞いた。

「だって、不安じゃないですか!!!もう、一週間ですよ!!
 どうして目覚めないんですか!!!」
「目覚めるよ!!そんな事言うな!!!」
「そんな事って、矢口さんは不安じゃ」
「二人とも、うるさいよ。出てって」

二人を止めたのはなつみ。
そのまま病室を追い出される。
256 名前:6日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:36
美貴と真里は無言のまま、廊下を歩く。
口喧嘩の続きをする場所を探して、ただひたすら早足。




うるさい二人が消えた病室はとても静かで
さっきの二人の怒鳴り声が頭から離れない。
みんな不安だよ。だからこうしてここに来る。
ほんの少しの希望を辿って。
あんな事言われたら、もっと不安になる。
なつみは、必死にその感情を殺す。

「なっち」
「ん?どうしたのさ、ごっちん」
「我慢、してるよね」

そっと抱き寄せられる。

「顔、凄い事になってるよ。それじゃ不安丸出し」
「…」
「なっち一人が我慢する必要ないんだよ」

その優しさに、涙が溢れる。
257 名前:6日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:37
真っ白いシーツが気持ちよく風になびいている。
太陽の日差しは心地よく、景色も一望出来る。
いつもよりほんの少しだけ近い空の下を、口喧嘩の場所へと選んだ。

「こんのばっきゃろおおおおおおお!!!!」
「な、何っすか!いきなり始めないでくださいよ!!」
「不安なのは皆一緒だって言ってるんだよぉ!!!」
「分かってますよ!!!分かってますけど、だけど!」
「だけど?自分が一番苦しいとでも言いたい?」

言葉が止まる。
図星だ。

「藤本の気持ち、全部知ってるよ。」
「え?」
「でも、思う形は違うけど、皆にとっても紺野は大切な人なんだ」
「…」
「その心配する気持ちに重さや一番ってつけないで欲しい」


皆、不安だけど、こうやって信じている。
あさ美が目覚めるのを待っている。
その気持ちを、その不安定な今を崩すような言葉言わないでと、真里は泣いた。
美貴はただ、その小さな体に触れるのが精一杯だった。
258 名前:6日目 投稿日:2004/05/29(土) 00:37
病室に戻った時には、出て行った時よりもメンバーが増えている。
二人手を繋いで皆に「ごめんなさい」と謝った。
その場に居なかったメンバーは状況が把握できない。
目をパチパチさせながら美貴と真里を見る。
なつみと真希は、それが可笑しくて優しく笑った。
みんなもつられて静かに笑う。

少しだけ、みんなに笑顔が戻った。


259 名前:山羊太 投稿日:2004/05/29(土) 00:38
はっきりガッカリしました
260 名前:山羊太 投稿日:2004/05/29(土) 00:42
246> ROM読者様
ごめんなさい、笑ってしまいました。オタの悲しさ、分かります。

247> ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます。ガッカリバージョンですが、宜しくお願い

248> 紺ちゃんファン様
こっそり知らない間に更新するのが目的でございます。
こっそり頑張ります。
261 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/29(土) 15:08
はい、知らない間に更新されてました。
作者さま、これからもがんばってください!
続きへの期待大です。
262 名前:ROM読者 投稿日:2004/06/01(火) 19:48
更新お疲れ様です。
わかって頂けましたか。ほら、やっぱり覗きに来てるし。
どっぷり藤本サンに感情移入して・・・切なさ100%
263 名前:つみ 投稿日:2004/06/01(火) 20:59
_| ̄|○ ・・・・・

知らなかった・・・続編があったなんて・・・

はっきりガッカリ・・・どのようになるかわからないですけど
楽しみです!
264 名前:7日目 投稿日:2004/06/21(月) 22:58

「変な夢見た…」

美貴はまだ起きないあさ美を目の前にゲッソリした顔で椅子に座る。
リンゴを剥きながら亜弥が興味半分で訊いた。

「どんな?」
「ごっちんに頭下げられる夢」
「変だね」

病室にはあさ美と美貴と亜弥の3人だけ。
親友の亜弥しか聞いていないので、美貴は本音をバンバンと喋りだす。

「内容がねぇ…凹んだ」
「凹んだの」

皮を剥いて半分に切ったリンゴを「はい」と渡される。
これ、食べ難いんですけど…。
不安定に刺されたフォークを握り締めてリンゴにかぶりつく。
265 名前:7日目 投稿日:2004/06/21(月) 22:59
本当に、変な夢だった。

「ごっちんが、『美貴ちゃん紺野が私を好きでごめん』って頭下げるんだよ。
 なんじゃそりゃ!そんな事知っているよ!!でしょ?
 亜弥ちゃん…。美貴、やっぱり紺ちゃんが好きだよー」
「知ってるよ。何回言うつもり?」
「だけど、紺ちゃんはごっちんが好きで…」
「それ、本当に?」
「わかるもん」
「わかるもんって…子供みたい。
 みきたん、意識しすぎだよ?」
「わーってるよぉー。あーもぉ、わっけわかんなーい!
 世界がわっかんなーい」
「みきたんが…おかしくなった…」
「おかしくなるよー」

溜め息をついて、美貴の頭が亜弥の肩の上に。
亜弥はドキドキを押さえながら、ふざけた言葉を美貴に飛ばす。
266 名前:7日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:00

美貴から毎回聞かされていたあさ美への想い。
その度に励まして元気付けて、自分を押し殺して。
美貴があさ美に告白したと知った時、一人で泣いた。
この想いは光を見る事は無い。



一途な想い届く事無く…

267 名前:10日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:02

誰が言い出したのか忘れたが、皆で写真を撮る事になった。
あさ美の病室に置く提案で。
病院に行けない日も側に居るって証。


「じゃん」

真里が嬉しそうに鞄からカメラを出す。

「買ってきたの?へぇー撮らせて」
「やだー、なっち壊すもん!」
「壊さないから!」

キャイキャイとちびっ子先輩方が騒いでいる。
皆、笑うようになった。
それが美貴にとっては不安で堪らない。

皆がこの状況に、慣れてきている。
あさ美が居ないのが、あたり前になってきている。
美貴にはそれが、とても恐い。
268 名前:10日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:03
「タイマー使って、集合写真にしよっか?」
「んー、でも矢口、カメラ何処に置くの?」
「…。ん?」
「カメラ立てる道具無いっしょ?ちょうど良い台もないよ?」
「…。うん」
「うんじゃなくて、…虫カメラマンさん?」

問題発生。
やいやい相談していると、後ろから救世主。

「だったら、あたしが撮ろうか?」
「亜弥ちゃん」
「楽屋に言ったんだけど、誰も居なかったからね」

笑顔でカメラを持つ。

「ありがと。助かったよ」
「いえいえ。さぁさ、並んでください」
269 名前:10日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:04
全員が入る位置まで下がる。
カメラ越しに見える想い人の顔。
ぎこちない美貴の笑顔に溜め息が出そうだ。
今回の提案は、あまり乗り気じゃ無いみたいだね。
好きな人が頑張っているんだからさ、もっと頑張ってよ。

複雑な思いで亜弥はシャッターを押した。



その後、個人々々の写真を撮り、それにメッセージを書いた。
270 名前:11日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:04
出来上がった集合写真は写真立てに。
その他の写真はアルバムにして病室に。


今日は5、6期の面々が病室であさ美の目覚めを待っている。
昨日の集合写真を眺めながら美貴は唸った。
271 名前:11日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:05


「うー…」
「私は面白いと思いますよ」
「高橋…面白いって…」
「私も!私も!これ、芸術じゃないですかー」
「君達ねぇ、これ手でしょ」
「手ですねぇ」
「手と言うより指ですよ」
「いやいや、もしかして心霊写真では?」
「それは無いから」

笑顔で並ぶメンバーの左上にでっかい何かが写っている。
272 名前:11日目 投稿日:2004/06/21(月) 23:06

その正体はカメラマン亜弥ちゃんの指。
カメラの画面で撮れた写真を確認したのは亜弥ちゃん。
と、言うよりも最初からこのつもりだったと思う。
亜弥ちゃんが言うには自己主張らしい。

「あと数ミリずれていたら、藤本さんの顔と被っていましたね」
「……」

これからこの写真を見る度美貴は複雑な思いを巡らせるのだろうか?
最近亜弥ちゃん変だよ。
態度がよそよそしいって言うか…とにかく変。

今度、話そう。
273 名前:山羊太 投稿日:2004/06/21(月) 23:08
今回はここまでです。
主役の紺野さんの出番がまったくありません。
なので何だかとっても松藤小説。
274 名前:山羊太 投稿日:2004/06/21(月) 23:13
261> 紺ちゃんファン様
こっそりと更新しているのに更新が遅くてごめんなさい。
本当にいつ更新しているのか分からない小説です。

262> ROM読者様
どんどんこっそり覗きに来て下さい。
藤本さんより切ないかもしれない人登場です。

263> つみ様
どんまい!こっそり分からなく更新しているので大丈夫です!
気付かない人いっぱいですから。
275 名前:山羊太 投稿日:2004/06/21(月) 23:14
遅いわりには更新量が少なくてすみません。
次は…たっぷり更新したいです。
276 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/22(火) 19:35
作者さま、更新待ってました!
いや〜紺ちゃんが出てなくとも素晴らしいですねぇ。
うまくは言えないですけど・・・。
更新、遅くても大丈夫です。
きちんと待ってますからね。
がんばってくださ〜い!!!
277 名前:ROM読者 投稿日:2004/06/24(木) 19:38
更新お疲れ様です。
恋愛は、楽しさよりも辛いことの方が多そうですね。
ROMもいろんな人に憑依しつつ切なさを味わいたいと思います。
278 名前:ぉっぽ 投稿日:2004/08/22(日) 22:39
待ちます。
279 名前:夏の終わり。 投稿日:2004/10/14(木) 18:43
そろそろなんか更新等あってもいいんじゃないか?
これじゃ読者がかわいそうだ。
280 名前:名無し紺紺中。。 投稿日:2004/10/16(土) 23:24
ttp://offtime21.hp.infoseek.co.jp/break/vote.html
みなさんの力で紺野さんを1位に!
281 名前:七誌さん 投稿日:2004/12/30(木) 18:12
放置または放棄ですか?
放棄なら放棄で読者に宣言してください。
私は約半年待ってます。

スレ汚しスマソ。楽しみにしてます。
できれば放棄はしてほしくないです。
282 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 23:43
待ってます。続きが、とても気になります。
283 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/02/12(土) 17:36
初レスさせて頂きます。
かなり続きが気になるのですが、放棄するなんてかなりもったいない
作品です。更新いつまでも待ってます。

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