BLUE DREAM

1 名前:のっこ 投稿日:2003/12/22(月) 11:51
こんにちは&はじめまして!初心者なので誤字などがありますが、
暖かく見守ってやってください。サッカー好きなのでサッカー小説を!
内容は、聞いたことありそうな話ですが、その辺も見逃してください。


2 名前:プロローグ 投稿日:2003/12/22(月) 11:52
「試合終了――――!!!!優勝はブラジルです。日韓ワールドカップ決勝戦ブラジルVSドイツは2−0でブラジルの勝利!2大会ぶり5度目のチャンピオンです!」
2002年W杯はブラジルの優勝で幕を閉じた.前回優勝のフランスや強豪アルゼンチンの予選敗退、セネガル、トルコの躍進、今大会は驚きの連続であった.そしてアジアのナショナルチームにとっても忘れられない大会となったに違いない.韓国は4位、日本もベスト16と世界と対等に渡り合えるチームとなったのだ.しかしそのこと喜んでいる暇は無い.もう間もなく次のW杯へ向けて彼女たちの戦いは始まるのだから…
3 名前:第1話 投稿日:2003/12/22(月) 11:54
W杯終了後、選手たちには短いオフが待っている.しかし体を休める期間であると同時にこの時期は選手たちの欧州への移籍の噂が絶えない時間でもある.ほんの数年前までは日本人には夢のような話だったかもしれないが今大会の日本の目覚しい活躍により海外への移籍話はここ日本でも騒がれている.特に今大会の予選で3試合2ゴールと大活躍した浦和レッズ・吉澤ひとみには数々のオファーが舞い降りている.
「吉澤、バルセロナからオファー!移籍金は10億以上?」
「リヴァプールのフロント吉澤獲得を熱望!」
4 名前:第1話 投稿日:2003/12/22(月) 11:55
その中で吉澤が選んだチームはイタリアセリエAの名門ユベントスだった.吉澤は男気のあふれるタイプだ.“受けた恩は必ず返す.”と言う考えで今まで生きてきた.現在ユベントスの監督は昨シーズン急遽Jリーグ浦和レッズから来ていきなり3冠を達成させた名将レオナルド・ディカプリオである.実際、吉澤は、ディカプリオから直接指導を受けた期間はごくわずかであった.冬の高校選手権終了後Jリーグからのオファーが来なかった吉澤は推薦での大学進学を考えていた.しかし彼女のプレーを見たディカプリオは“将来確実に日本のキーマンとなるプレーヤーだ.”とフロントを説得し浦和への入団が決まった.
5 名前:第1話 投稿日:2003/12/22(月) 11:55
それ以来吉澤は「ディカプリオ監督に優勝をプレゼントしたい」という一心で練習を続けた.だがようやくトップチームのスタメンに選ばれたときディカプリオ監督はユベントスで指揮をとることが決まり彼女は彼のもとでプレーできなかったのである.その後吉澤は海外移籍を視野にいれ代理人を雇い、肉体改造などのフィジカルトレーニングを行った.試合でもガンガン指示を飛ばし浦和の王様となったのである.W杯でもキャプテンを任され2得点の大活躍.そしてついに念願のユベントスからのオファー.吉澤は入団会見の時に
「今度こそ必ずディカプリオ監督に優勝をプレゼントする」と流暢なイタリア語で話した.
彼女の夢を叶えるときが来たのである.
6 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/22(月) 23:47
スポーツものすきです。きたいしてます
7 名前:第2話 投稿日:2003/12/23(火) 05:24
高精度のフリーキックと滑らかなドリブル.彼女を一言で表すならば“華麗”だろう.石川梨華はW杯で得点・アシストこそ無かったもののポストに当てたフリーキックやボレーシュートは人々の記憶には新しいところだ.なかでも驚きなのがW杯でのドリブル成功率80%という高さ。つまり彼女がドリブルで仕掛ければほとんどシュートまで行くのである.そんな彼女へのオファーは少なくなかった.しかし彼女が行きたかったイタリアのチームからの移籍話は無かった.
8 名前:第2話 投稿日:2003/12/24(水) 07:12
Jリーグヤマザキナビスコ杯で浦和レッズと準決勝であたった横浜Fマリノス.石川は1.5列目で攻撃のファクターを任されていた.試合は石川が吉澤に完璧に封じ込まれ0−0のスコアレス.PK戦で辛くもマリノスが勝った.このとき浦和のエースだった柴田あゆみの両チーム合わせて唯一のPK失敗で勝負が決まったのである.ピッチの上で座り込む柴田、友人である石川は声をかけようと近づこうと思ったとき浦和キャプテンの吉澤は柴田に向かって
「立ちなよ.まだ仕事は終わってないよ.サポーターに挨拶するんだ.泣くのはその後でいい.私たちはプロなんだから.」と言って立ち上がらせサポーターに向かって頭を下げた.その一部始終を見ていた石川は思った“あぁ…きっと自分なら励ますだけで終わるんだろうなと.”これ以降石川は吉澤に対して憧れの気持ちを抱くようになりプライベートなどでも仲を深めるようになる.元々、人との交流が苦手であった石川だが相手は逆に社交的な吉澤わりとすんなり仲良くなった.そんな中、代表に初選出、その後の親善試合などで吉澤とのコンビネーションを高めW杯の時には名コンビとして世間では騒がれていた.
9 名前:みっくす 投稿日:2003/12/24(水) 07:40
サッカー好きなんで、期待してます。
あと、適度に改行を入れたほうが読みやすいですね。
10 名前:のっこ 投稿日:2003/12/24(水) 08:07
>>6
頑張っていこうと思います応援よろしくね!!
>>9
アドバイスありがとうございます.
またなんかあったらよろしくです
11 名前:のっこ 投稿日:2003/12/24(水) 08:07
というわけで続きです。
12 名前:第2話 投稿日:2003/12/24(水) 08:09
石川が最近思うこと“よっすぃーと代表以外でも一緒に戦いたいなぁ”W杯終了後の石川はマリノスでも浮いた存在だった.紅白戦でもドリブルしかしなくなった.以前から持ちすぎな嫌いはあったが最近は深刻である.後輩の右サイドバックの新垣に
「バカッ!パスよこせよ!早くっ!」
「なんだよ!トラップしにくいボール出すな!使えねーなぁ!」
と罵声をあびせる始末である.見かねた矢口が
「ちょっと石川言い過ぎ!」
と言っても
「フリーキック全部蹴らせてくれるなら黙りますよ.矢口さん!」
とか言っちゃう始末
マリノスのキャプテン矢口は日本代表左サイドバックそのスピードとキック力は世界でも有名である.なかでもフリーキックは直線的で破壊力バツグン.遠いところからはチームではもちろん日本代表でもキッカーとして重宝されている.矢口は人の扱いに長けた人物でもあり代表ではきってのムードメーカーである.石川の考えを悟った矢口はユベントス入りの決まった吉澤に連絡、代表では吉澤の指導係でもある矢口にとって呼び出すことは造作でもない.さらに石川の数少ない友達である柴田も呼んで4人でのミーティングが始まった.
13 名前:第2話 投稿日:2003/12/24(水) 08:10
「石川!あんたユーベに行きたいんだね.」
「まだ決めてないっスよ!っていうかなんで矢口さんに言わなきゃいけないんですか!」
返答に困る答え方だしムカツク!と矢口は思ったがそこはムードメーカー
「いやゴメンゴメンやっぱり気になるじゃんチームメイトとしてはさ!」
石川をなだめる矢口だった.すると吉澤が
「梨華ちゃんはまだ決めてないのかぁ〜.でも忠告するならイタリアはやめたほうがいいよ.っていうかやめて欲しい」
「なんで?なんでそんなこと言うのよ!よっすぃー?」
「だって梨華ちゃんフィジカル弱すぎだし、イタリアじゃ怪我するだけだよ多分.それに…」
「それに?」
「あたしは同じチームに一人だけにしかパスを出さないプレーヤーがいたら嫌だから…」
吉澤も矢口と同様にまた石川の考えをわかっていた.この状況は二人にとっても日本代表にとっても危険だということも.だからこそ今日のこの4人の集まりに快く応じたのである.
14 名前:第2話 投稿日:2003/12/24(水) 09:38
「…」
沈黙の石川.ここで矢口が口を開く
「なあ石川、お前ここ最近ゴールどころかアシストもないんじゃない?このままだったらあたしはまずいと思うよ.このままいけばおそらくアンタは代表からもはずれるとおいらは思う.」
たしかにそうである.W杯前の親善試合や練習でも石川はここ最近結果は出ていない.個人技で目を見張るようなプレーはあってもチームプレーでの評価は0に等しい.海外のスカウトもそこをしっかりと見ている.実際オファーが来ているのはユベントスのような名門クラブではなく実は弱小クラブがほとんどだった.
「梨華ちゃん.」
柴田も口を開く.
「いいの?唯一、一緒にプレーできる代表に選ばれなくても?」
吉澤も石川をあやすように話し掛ける
「あたしは別に梨華ちゃんが嫌いってわけじゃないの.でもこのままだったら二人ともだめになっちゃうよ.あたしはそんなの嫌だな.それにチームプレーができる梨華ちゃんのほうがずっと素敵だと思うよ.」
「柴ちゃん、よっすぃー…」
石川は泣いていた.こんなに自分のことを考えてくれるなんて…と
「わかりました!あたし頑張ります.」
「まぁ、しっかり頑張ってきなよ!石川!!」
「はい、矢口さん」
“ふぅ〜.やっと解決したよ.やれやれ”ほっと一安心の矢口だった.

15 名前:みっくす 投稿日:2003/12/24(水) 11:43
朝はリアルタイムで読んでたみたいですね。
あと、もうひとつ . でなくて 。 の方が文章の切れがわかりやすいです。
で 。 のあとは1行ごとに区切って改行したほうが読みやすいかな。
16 名前:第2話 投稿日:2003/12/25(木) 10:36
それから石川の移籍話はトントンと決まった。移籍先はマンチェスターシティ、プレミアの中堅のチームである。石川へのオファーの中では最もレベルが高かった。
自らのプレーの改革を目指す石川にとってはまずまずのチームかもしれない。石川の個人技は欧州のトップレベルなのだからここでチームプレーを学べればさらなる飛躍が期待できるだろう。
17 名前:第3話 投稿日:2003/12/25(木) 10:37
同じ日に海外への移籍が決まった二人がいた。後藤真希と市井紗耶香である。しかも二人とも同じチーム、リーガエスパニョーラのバルセロナに。
同チームに二人の日本人のプレーヤーは日本初であることから当然国内では注目を集めた。
後藤真希は浦和レッズでの正確なロングフィードとショートパスを武器に日本代表のボランチとして君臨した。一方、市井紗耶香は世界でもまれに見るオールラウンダー、GK以外ならほぼ完璧にこなせる人物だ。前所属のジェフ市原でも殺人的スケジュールだったW杯でも大活躍だった。
移籍先のバルセロナはピッチ内の監督.いわゆる舵取り役を失いチームは混乱状態だった。そんな中、後藤真希は最もバルセロナが欲しいところである。そして市井もその優れたユーティリティ性から獲得したわけである。また日本代表でも最もバランスのとれたコンビであり、スペイン国内でも高く評価された。
「世界中のどこにいっても市井は頑張ります。」
「浦和でもバルセロナでも後藤のやることは変わらないので特に緊張とかはしてません。それよりいちーちゃんと一緒にサッカーやれるのが嬉しいです。」
それぞれ“らしさ”のでたコメントだった。
18 名前:第3話 投稿日:2003/12/25(木) 20:38
そしてもう一人の海外移籍組は松浦亜弥、日本の10番である。
今回のW杯の日本初ゴールを決めた人物でもある。リフティングで相手GKを交わしてのゴールは予選ベストゴールになった。その技術の高さだけでなくヘディングも強い。
苦手なものがなくなんでもそつなくこなせるFWだ。
移籍先はイタリア、セリエAのACミラン。ジュビロ磐田では1トップでチーム得点王にもなった日本の点取り屋、目立つことがこの上なく好きな彼女はゴール後のパフォーマンスや試合後のインタビューもかかさない。
ラテン気質のイタリアはきっと合うだろうと大きな期待を寄せられた。
19 名前:第4話 投稿日:2003/12/27(土) 00:22
吉澤と松浦はイタリアでも注目選手だった。
プレーのレベルの高さも理由の一つだったが、一番の理由はすでに日本から来て大成功の選手が二人もいるからだ。
その選手とは福田明日香と安倍なつみである。
福田明日香はローマ所属のMF、より高い位置でチャンスメークするプレーを好む。
時にはFWとなりラインの裏へ飛び込みゴールを決める。
しかしローマにはイタリアの至宝、期待のトレクァルティエスタ、アンナ・ツッティがいた。
そのため出場機会は限られたものではあるが、出場するたびに結果を出す福田はチームメイトから信頼されティフォージからの声援も大きかった。
昨シーズンは4ゴールとゴールの数だけを見れば決して多くないが4ゴール全てが決勝ゴールや同点ゴールなど内容の濃いゴールである。
一方の安倍は生粋のCF。鳴り物入りで加入したボローニャでいきなり20ゴールの大台、日本人初のセリエA得点王にあと1歩まで迫った。
今シーズンからは新天地のラツィオでプレーすることが決まっておりすでにプレシーズンマッチでは3ゴールを決めている。
福田が所属するローマとのダービーマッチもすでにイタリアでは注目カードとされている。
この二人に負けないようにと吉澤も松浦も意気込んでいた.今シーズンのセリエAはイタリア国内でも日本でも注目されるシーズンだろうと誰もが思っていた…

20 名前:第5話 投稿日:2003/12/28(日) 09:40
欧州各国に比べて一足早く開幕するJリーグ2ndステージ、W杯直後とあってか選手もサポーターも例年より盛り上がっている。
1stステージの覇者はジュビロ磐田。
このチームを含め各チームは2ndステージへの補強を行い後半戦の優勝を狙う。
 2ndステージの開幕戦は因縁のカードが多く見られる。
ここは味の素スタジアム、FC東京VSガンバ大阪が行われている。
「甘いわっ!ののっ!」
「うわ〜!!」
激しいタックルを受けFC東京のウイング辻が転倒するが笛は鳴らない。
「まだまだや!甘いでのの!」
「くっそー!あいぼんには絶対に負けたくないのれす。」
必死に取り返そうとする辻。
「ののの単純なプレスでボール取れるわけないやろ?」
「あっ!」
ガンバ大阪の加護はユース時代から代表に呼ばれ続けている超エリートである。
ファウルぎりぎりのタックルやシュミレーション、審判の見えないように相手を削るのは大得意である。プレーの荒っぽさとは反対にイエローカードは極端に少ない。しかも洗練されたドリブルも持っている。
加護は世界の有名選手が言う“審判をだます行為はプレーヤーとして恥ずべき行為である”という理論に反感している。勝利至上主義の加護にとってそんなことは偽善であり、むしろ腹が立つ。だからこそ加護は“審判をだます”ことを続けるのである。
一方、辻はJ2時代からFC東京に所属し辛いシーズンも送ってきたいわゆる雑草プレヤーだ。しかし日本でも屈指の足の速さを持っていてここFC東京では右サイド全般を任されている。ガムシャラなプレースタイルがサポーターにも受け、未熟ながら今ではチームのシンボル的存在である。
21 名前:第5話 投稿日:2003/12/31(水) 01:38
すでに後半30分、スコアは0−0、ホームのFC東京が攻勢なものの得点が入らない状況だ。
そんな中、本日6度目の辻VS加護。
これまで加護は完璧に辻を抑えていた。
巧妙なディフェンスでシュートも打たせなかった。
この6度目の勝負も加護の圧勝だった。
「そんなドリブルで抜けると思ってるんか?ののはアホやなあ。」
ぎこちないフェイントをする辻からあっさりボールをカットさらに辻の股を抜いて上がって行く。
「あいぼん!!待つのれす〜!」
「だれが待つか!アホ」
そのままドリブルでFC東京のペナルティエリアまで侵入した加護。
だが辻もスピードに関しては負けてはいない。
すぐに追いつきスライディング。
「あああっ!!」
派手に転がる加護、その時審判は笛を吹きPKの宣告。
「審判!辻は触ってないのれす!あいぼんが勝手に転んだだけなのれす!」
必死の抗議も実らず加護は自分で得たPKをなんなく決めてガンバ先制0−1!
そして辻にはイエローカードの提示。
「いやぁ〜、ホンマ、のの見たいな相手はラクやな。」
「ぐむむむ…」
加護のイヤミに何も言えない辻。
しかしこの時FC東京のベンチはすかさず動いた。
22 名前:第5話 投稿日:2003/12/31(水) 01:39
「15番 亀井が入ります!」
場内アナウンスが響く。
亀井はFC東京がJ1に上がった年に加入した選手。
デビュー当時こそパッとしたイメージは無く出場機会も少なかったが去年の後半戦でJ初ゴールを決めるとそこからポンポンと面白いようにゴールを決めた。
背は低いし、足が速いわけでもない。別に何かFWとして特殊な能力を持っているわけでもないのだがとにかくゴールを決める。
しかも交代で出場したときの方がゴールを決めると言う不思議な選手である。
FC東京は亀井をFWに置き、さらに辻を右サイドハーフからFWに上げて2トップをそのままそっくり入れ替えた。
元々この試合、守勢にまわることの多かったガンバは先制した後も引いて守った。
FC東京の攻撃。辻にボールが渡った瞬間すぐに加護がマークについた。
加護はガンバでは右利きなのに左サイドを任されていてそこからクロスを上げるのではなくシュートを打つというプレースタイルだった。
辻がFWにあがってやや中央よりになったが今の加護にはポジションなど御構い無しだ。
23 名前:第5話 投稿日:2003/12/31(水) 01:39
「今日はウチの勝ちや!もうあきらめっ!」
「いやだっ!」
辻は今度はスピードで抜きにかかる。
辻加護7度目の1対1。実は加護はかなり疲労していた。
今日の試合で6回も辻と1対1をやってしかもサイドでゲームメイクも行う。スタミナの無さを弱点としている加護にとってこの状況はすでに限界だった。
しかし加護のには負けられないわけがあった。
辻VS加護は去年からJの名物であり週刊誌にもクローズアップされる対戦だったのである。しかしどの雑誌を見てもエリート加護に雑草の辻が立ち向かうと言うような内容の記事で加護自身にはかなりのプレッシャーだった。
加護はいつも辻との試合になると辻を罵倒していたが実は一目置いている存在だった。“あのスピードとスタミナはウチにはない代物や”
だからこそスピードにのる前に止めたかったし今までそうしてきた。
しかし体力の消耗は判断も鈍らせる。ついに辻が加護を抜いた今日7回目の勝負でついに辻は加護を抜いた。
「やったのれす!やっとあいぼんを抜いたのれす!!!!」
抜群のスピードで加護との差は開くもうスピードに乗ってしまったらDFはとめる事ができない。
そのまま辻はGKと1対1になってシュートを撃つがGKの足に当たり枠をそれる。
加護がホッとしたその瞬間、亀井がそのボールを詰めてFC東京、同点!1−1!!!
「なんでアイツがそこにおんねん!!ありえへん!」
加護は呆然。一方の辻は亀井に抱きつき大喜び。
亀井は照れくさそうに笑って声援に答えた。
結局この試合は1−1のドローで終わった。
今日のMVPの亀井がインタビューを受ける中、二人はユニフォーム交換をする。
「くっそー!またののとは引き分けかい!ほんまくやしいわ!」
「あいぼん。勝負は引き分けなのれす。」
辻も加護を尊敬していた。
そのセンスあふれるプレイは自分には無いものであることを知っていたからだ。
二人は握手をしてそれぞれのベンチへ戻っていった。
24 名前:のっこ 投稿日:2003/12/31(水) 01:41
ちょこちょこ書き込んでいたのですが呼んでくれている人に返事ができませんでした.
25 名前:のっこ 投稿日:2003/12/31(水) 01:43
みっくすさん、アドバイスありがとうございます。非常に助かります。これからもこの駄小説をよろしくお願いいたします。
26 名前:第6話 投稿日:2003/12/31(水) 01:44
 8月20日、今日は日本代表の新しい指揮官の就任会見の日である。
当初W杯で指揮をとった寺田光男が続投するものだと思われていたが
「神経使う仕事はごめんや!次はJFAの幹部にでもなろうかと思うとる。」
と言いあっさり監督を辞めてしまった。元々選手を育てるのに向いている彼のことだ。退任にはいい時期である。
その後新監督の噂はいろいろ出たが、白羽の矢がたったのはブラジルの名将トゥンクだった。
現役時代は鬼将軍としてブラジル代表のチームメイトを恐れさせた選手である。
日本でもジュビロ磐田で2年間プレーし常勝チームの基盤を作り上げた人。
日本を熟知する外国人監督。
日本代表新監督にこれ以上ふさわしい監督はいない。
「いつか日本代表の指揮をとってみたかった。このオファーは最高に嬉しい」
と本人も大喜びの様子。
「新任早々だがとりあえず今から一ヵ月後のコロンビア戦に向け9月1日には20人のメンバーを選考して行こうと思う。」
と言った。記者の“どのような采配をお考えですか?”と言う質問には
「私は特にこれと言ったシステムは使わない。その時に応じて一番実力が発揮できるポジションとシステムそれから作戦を決めていく。つまり“自由なサッカー”を心がけたい!」
と答え5〜6分で席を離れた。
そして9月1日トゥンクジャパンのメンバーが発表された。
27 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
川o・-・)
28 名前:第6話 投稿日:2003/12/31(水) 01:52
GK 
1中澤 裕子(京都パープルサンガ)
17道重 さゆみ(サンフレッチェ広島)☆
DF
2石黒 彩(コンサドーレ札幌)
3保田 圭(柏レイソル)
4矢口 真里(横浜・F・マリノス)
13紺野 あさ美(コンサドーレ札幌)☆
16飯田 圭織(鹿嶋アントラーズ)
19里田 舞(コンサドーレ札幌)
22新垣 里沙(横浜・F・マリノス)☆
MF
5吉澤 ひとみ(ユベントス)
7石川 梨華(マンチェスターシティ)
8藤本 美貴(名古屋グランパスエイト)
9後藤 真希(FCバルセロナ)
11市井 紗耶香(FCバルセロナ)
12辻 希美(FC東京)☆
14加護 亜衣(ガンバ大阪)
18高橋 愛(鹿嶋アントラーズ)☆
21平家 みちよ(ジュビロ磐田)
FW
6安倍 なつみ(ASラツィオ)
10松浦 亜弥(ACミラン)
15亀井 絵里(FC東京)☆
20福田 明日香(ASローマ)
☆は初代表
29 名前:第6話 投稿日:2003/12/31(水) 01:54
トゥンクは次のW杯を見越して6人ものメンバーを初選出、海外組もまだシーズンが開幕していないことから全員収集することができた。
代表は一週間前かに集合し合宿を行う予定。トゥンクジャパンの船出としては最高のメンバーである。
そして9月13日代表メンバーは東京に集合した。
ここは国立競技場、今日は代表の練習場所として使用されている。
緑のピッチの上には各々がアップをしたりパス練習をしたりしてトゥンクを待っていた。
矢口は初選出の6人を集め
「お前らが新人かぁ〜!みんな若いなぁ〜!」
と緊張しているメンバーに話し掛けている。
「じゃあ自己紹介をしてよ。まだみんなのこと知らない人もいるからさっ!」
全員を集合させ6人の自己紹介が始まった。
30 名前:第6話 投稿日:2003/12/31(水) 01:55
 「えっと、高橋です。アントラーズではトップ下をやってます。よろしくお願いします。」
高橋愛、アントラーズ期待の10番でありJ屈指のトップ下、今年に入ってからプレーのレベルは飛躍的に向上している。
次のW杯に期待を寄せられている選手である。
 「紺野です。紺野あさ美です。みなさんよろしくお願いします。」
紺野はコンサドーレのCB入団当初チームメイトからはこんな小さい体でCBできるのかな?と思われていたが、今ではコンサドーレの守りの要である。
その賢い頭を使いラインディフェンスや的確な読みを駆使して接触無しでボールを奪うことのできる選手だ。
 「横浜Fマリノスの新垣里沙です。右サイドバックです。」
矢口の同僚の新垣、マリノスの右サイドバックを務める彼女はまだ若いながらもマリノスでは不動のレギュラーである。
時にはFWよりもあがる矢口とは対照的に攻撃参加は極力控え守備に専念するタイプの選手である。
 「サンフレッチェ広島、GKの道重です。皆さんよろしく…」
サンフレッチェのレギュラーGKの怪我により最近デビューした新人GKである。
彼女の最大のポイントは出身地。ハイレベルなGKを産むイタリアで育った。
地面を怖がらないGKは今の日本では育たない。非常に貴重なGKである。
 「FC東京の亀井絵里です。あ、あの…よ、よろしくおねがいします。」
彼女は人前に出ると完全に浮き足だってしまう。
FC東京に入団したときもこんな感じだった。
試合終了後のインタビューもまともに喋れないくらいである。
そして6人目。
 「辻 希美れす。みんな辻のことののって呼んで下さい。」
全員がクスクスと笑う。
亀井とは対照的に緊張のかけらも無い自己紹介だった。
こうして6人の自己紹介も終わりトゥンクもやってきた。
新生日本代表の始動である。

31 名前:のっこ 投稿日:2003/12/31(水) 01:55
今年の更新はこれで終わりです。読者の皆さん良いお年を!
32 名前:みっくす 投稿日:2003/12/31(水) 20:35
更新おつかれです。
出てないメンバーは今後でてくるのかなぁ。
楽しみにまってます。
33 名前:のっこ 投稿日:2004/01/05(月) 14:21
あけおめです。ちびちび更新していくんでよろしく!
>>32
ハロプロ(元ハロプロ)できる限りだしていこうと思います。
娘。メンバーは、加入順は関係なく出して行こうと思ってます。
とりあえずコンフェデまでは突っ走って行こうと…
早く現実の日本代表に追いつきたいなぁ
34 名前:第7話 投稿日:2004/01/05(月) 14:22
トゥンクジャパン練習初日。
きっと厳しい練習になると誰もが思っていたが、
予想に反してこの日は軽いメニューで終わってしまった。
「なんか厳しい練習かと思ったら案外拍子抜けっすね。矢口さん。」
と練習大好きの吉澤が言う。
「まあ、ラクならラクでいいよ。それにおいら練習きらいだし。」
なんともいえない微妙な感じで初日は終わった。
二日目の練習日、トゥンクはメンバーを集めこう言った。
「わかっているとは思うが君たちは立派なプロだ。
午前は昨日のような軽めのメニューと基本的な練習を行う。
午後は試合形式での練習を中心にやっていく。
ただし午後の練習は本当の試合と思って望むように!
私はこの先、それ以外の全てを君たちの自主性に任せようと思う。
自分が最良と思う練習を重点的にこなすように!」
就任会見のときに言っていた“自由なサッカー”を象徴する言葉である。
午前中は、昨日の練習とほとんど変わらず行われた。
昼食後、紅白戦のメンバーが発表された。
35 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
川o・-・)
36 名前:第7話 投稿日:2004/01/05(月) 14:28
A組(4−4−2)
GK 
1中澤 裕子(京都パープルサンガ)
DF 
3保田 圭(柏レイソル)
4矢口 真里(横浜・F・マリノス)
16飯田 圭織(鹿嶋アントラーズ)
14加護 亜衣(ガンバ大阪)
MF
7石川 梨華(マンチェスターシティ)
8藤本 美貴(名古屋グランパスエイト)
9後藤 真希(FCバルセロナ)
11市井 紗耶香(FCバルセロナ)
FW
6安倍 なつみ(ASラツィオ)
20福田 明日香(ASローマ)
37 名前:第7話 投稿日:2004/01/05(月) 14:28
B組(4−4−2)
GK
17道重 さゆみ(サンフレッチェ広島)☆
DF 
2石黒 彩(コンサドーレ札幌)
13紺野 あさ美(コンサドーレ札幌)☆
19里田 舞(コンサドーレ札幌)
22新垣 里沙(横浜・F・マリノス)☆
MF 
5吉澤 ひとみ(ユベントス)
12辻 希美(FC東京)☆
18高橋 愛(鹿嶋アントラーズ)☆
21平家 みちよ(ジュビロ磐田)
FW 
10松浦 亜弥(ACミラン)
15亀井 絵里(FC東京)☆
38 名前:第7話 投稿日:2004/01/05(月) 14:29
今回の紅白戦の特筆すべき点、
それは新加入組全員が同じ組に入っていること。
A組はW杯のスタメンとほぼ一緒、唯一吉澤が違う組に入った。
“本当の試合のつもりで臨むように”というトゥンクの指示から紅白戦には試合用のユニフォームが配られた。
青のユニフォームはA、白のユニフォームはB。
試合開始、Aのキックオフ慣れた足さばきでボールをまわす。
A組はDFもMFもフラットのベーシックな4−4−2スタイルである。
一通りパスがまわったところでCHの市井が右サイドへ大きく展開、
待ち構えていた藤本の足元にピタリ。
そのまま得意のドリブルで進入する。
藤本は超がつくほどの攻め好き。現在JリーグではMFながら得点王である。
辻、里田の二人をあっさり抜いてクロスを入れた。
精度の高い素晴らしいボールがゴール前に。しかし道重があっさりキャッチ、そのままロングスローで吉澤へ。
「行くぞー!」
吉澤が号令をかけると同時にMF陣はダイヤの形になる。
B組はA組と同様の4−4−2だがMFはポジションチェンジを繰り返す。
ときにフラット、ダイヤモンド、ボックス型と様々に形を変える。
ゆえにMF陣はポジションが決まっていないというかなり高度なスタイルである。
新人の集まりであるB組がスムーズに行えるのは吉澤がいるから。
39 名前:第7話 投稿日:2004/01/05(月) 14:31
「高橋!もっと前!!」
「辻下がって!」
「平家さん!ボランチに入って!吉澤が上がりますから!」
状況に応じて的確な指示を出す吉澤。
前半の半ばまで見てみると、高橋がやや前で辻が左、
平家は常に吉澤をバックアップという形が多く見られる。
しかしメンツを見ればやはりA組に分がある。
実際、支配率は圧倒的にA組が上だった。
しかし吉澤は牙を研ぐ。ひたすら耐える。
熟練者たちに気づかれないように…。
センターサークル内でA組がファウル。
一番近くにいた平家がボールをセットして蹴ろうとした瞬間、
横を通り抜ける白いユニフォームがいた。
吉澤が松浦へまるでレーザービームのようなロングパスを送った。
A,B両組の動きが一瞬止まった。
吉沢と松浦を除いて。
40 名前:第7話 投稿日:2004/01/10(土) 17:21
松浦も吉澤と同様研ぎ続けていた。相手を一撃でしとめる刃を。
完全にフリーの松浦、あとはGK中澤を残すのみだった。
しかしさすがに中澤もベテラン。
瞬時我に返り松浦との距離を縮める。
(松浦ならまず間違いなくダイレクトで打ってくるはずや。)中澤は思った。
松浦が初めて代表に入ったとき中澤は松浦に紅白戦でハットトリックを決められた。
3点とも1対1からのシュート。
当時1対1には絶対の自信を持っていた中澤だったがそれを自分と一回りも違う少女に完膚無きまでに打ち砕かれた。
(思った通りや!今度こそ止める!)中澤はペナルティエリアぎりぎりで待ち構えた。松浦が飛び込んでくる。
しかし松浦は中澤のポジションをしっかりと見極める。
吉澤の蹴ったボールに対して飛び込んできた松浦はボールをスルー。
松浦が完全にブラインドになってボールはそのままゴールに吸い込まれた。
前半32分、先制はB組、0−1
41 名前:第7話 投稿日:2004/01/10(土) 17:23
A組はこの失点で目を覚ます。
市井にボールを集め安倍が、福田が、藤本が、そして石川がシュートを打ちまくる。
だがそれを道重はことごとくシャットアウト。
決定機は何度も訪れたが結局前半は0−1のまま終了した。
後半開始、B組のキックオフ。ハーフタイム、吉澤は
「多分、後半は飯田さんと圭ちゃん以外全員攻めてくる。カウンターでもう一点取ろう。」
とチームメイトに指示を出していた。
だがA組は予想に反して攻めて来ない。プレスもそこまできついものではない。
“いける!”高橋はドリブルで単身、突破にかかった。
辻、平家もフォローに行く。
その瞬間、市井、後藤、加護の三人が高橋に猛然とプレスをかける。
一瞬のうちにボールを奪われ高橋だけがその場に取り残された。
そのわずかな間に藤本、石川がそれぞれのサイドに広がっている。
市井はいきなり左サイドの誰もいないところにグラウンダーでボールを出す。
その先には矢口がいた。
前半一度も上がってこなかった代表のムードメーカーがここに来て仕事をする。
一方の右サイドもすでに加護が上がっていた。
これにより現在A組は変則的な2−4−4というスタイルにシフトチェンジ。
一方のB組はMFには吉澤しか居らず対応しきれない。
矢口のセンタリングからあっさり安倍に同点ゴールを決められた。
この後もA組は立て続けに福田、石川がゴール。
結局この日は3−1でA組の圧勝だった。
42 名前:第7話 投稿日:2004/01/10(土) 17:23
一週間の合宿は全て同じメニューで消化された。B組は序盤負け続きだった。
しかしだんだんとゲームに慣れ最終日はA組に勝つことができた。
そして9月20日、W杯終了後、始めての公式戦の日がやってきた。
43 名前:第8話 投稿日:2004/01/10(土) 20:00
9月20日、横浜総合競技場、日本対コロンビア戦。
スタジアムはほぼ満員、サポーターは彼女たちの登場を待つ。
7時きっかりにピッチの上に出てきた22人、注目するのは日本のスタメン。
トゥンクはスタメンを事前に発表しなかった。
メディアでも様々なスタメンが予想されたがそのどれもが紅白戦のA組だった。
しかし本日のスタメンは以下の通り。
GK 
17道重 さゆみ(サンフレッチェ広島)
DF 
4矢口 真里(横浜・F・マリノス)
13紺野 あさ美(コンサドーレ札幌)
16飯田 圭織(鹿嶋アントラーズ)
22新垣 里沙(横浜・F・マリノス)
MF 
5吉澤 ひとみ(ユベントス)
7石川 梨華(マンチェスターシティ)
9後藤 真希(FCバルセロナ)
11市井 紗耶香(FCバルセロナ)
FW 
10松浦 亜弥(ACミラン)
20福田 明日香(ASローマ)
GKを含むディフェンス陣の半分以上が新加入組で構成されている。
平均年齢はW杯の時に比べかなり若返った。
そしてMFとFWは全て海外組、人気、実力ともに申し分ない。
今回の試合は新戦力のテストとW杯ベスト16の実力を見せること。
それを考えればベストなオーダーかもしれない。
とにかく試合は始まった。
44 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/01/23(金) 21:25
期待保全
45 名前:のっこ 投稿日:2004/01/25(日) 18:31
保全ありです。更新します!
46 名前:第8話 投稿日:2004/01/25(日) 18:33
コロンビアのキックオフで試合開始。
コロンビアは4−4−2のカウンタースタイル。
スピードのある選手が多いのが特徴だ。
実際、試合が始まってもすぐに前に出てこない。
ゆっくりとボールをまわす。日本も最初は様子見、うかつに飛び出さない。
コロンビアのDFが大きく前に蹴る。その時審判の笛が鳴った。
「オフサイド!!」
紺野がラインをかなり上げている。カウンターに備えたライン統率だ。
これでコロンビアはうかつに前線へパスが送れなくなった。
日本はFWとMF、MFとDFの間を極端に狭くした超コンパクトな布陣を敷く。
日本のフォーメーションは先日B組が見せた4−4−2。
MFのポジションを特定しない流動的なスタイル。
だが紅白戦の時とは違い先発したMF陣は日本のトップ4。
練習のときのそれと違い洗練されている。
市井、後藤、石川、そして吉澤、この4人はとにかく良く動く。
日本のMF陣がボールを持つときは必ずと言っていいほどフリーでボールを持つのだ。
コロンビアも必死に対応するがマークの受け渡しがうまくいかない、完全に混乱している。
47 名前:第8話 投稿日:2004/01/25(日) 18:33
この混乱状態を日本の攻撃陣は見逃さなかった。
前半9分、右FWで先発した福田明日香がMFの位置まで下がってくる。
ここまで日本の2トップは敵の最終ラインで待っているだけだった、当然ボールは一度も触っていない。
福田のマークをしていたコロンビアDFは当然のごとく一緒に下がってきた。
福田が下がったその位置には市井がいた。
瞬時のアイコンタクトで市井がトップまで上がる。完全にフリー。
「いちーちゃん!!!!」
後藤が30mのロングスルーパス、スルッスルッと市井の足元へ。
「ナイスパァス!後藤!!」
GKと1対1、難なくゲット。
「ははっ!やったね!」
ゴールを決めた市井が歓喜の輪の中へ!日本先制1−0!
48 名前:第8話 投稿日:2004/01/25(日) 18:34
 完璧な連携から決めたゴール!コロンビア相手に力の差を見せつけた。
中盤でのボールポゼッションは圧倒的に日本、完全にゲームを支配している。
前半終了間際コロンビアDFが苦し紛れのクリア、ボールは日本陣内へ。
紺野は相変わらずラインを上げていた。
当然、GKとDFの間には広大なスペースができる。
紺野は道重がそのスペースをカバーするために上がってきているものと判断していた。
しかし本来いるべきはずの道重がいない。
その広大なスペースにボールは落ちた。
コロンビアFWはそれを見逃さずボール目掛けて走った。
紺野もそれを追うがスピードを武器にしているコロンビアのFWには追いつけない。
道重も慌てて前に飛び出すが時すでに遅しあっさり決められた。
ここで前半終了。1−1。
49 名前:第8話 投稿日:2004/01/25(日) 18:34
 「すいません…」
紺野が頭を下げる。
「何しとんねん!コロンビアのFWが速いのはビデオで見たはずやろ?なのに、あんなバカみたくラインを上げよって!」
中澤の怒号がロッカールームに響く。
「けどな、もう一人バカがおんねん!道重!お前やで!GKやったらコーチングは基本中の基本やろ?」
「…」
中澤の問いに道重は沈黙を守っている。
「後半は1点も許しませんから…。」
と言い残し道重はロッカールームを後にした。
終始無言だったトゥンクが口を開く。
「紺野。君は後半もクレバーなディフェンスをしなさい。怖がってラインを下げたりしては駄目だ。それに本物のライン統率とはGKも操らなくては。今日のディフェンスのリーダーは君だ。冷静になりなさい。」
と指示を出し、松浦と後藤にそれぞれ安倍と高橋に交代するように言った。
松浦は時差ボケからか動きが悪かった。後藤は飛ばし過ぎにより前半終了間際には運動量が落ちていたからだ。
50 名前:第8話 投稿日:2004/01/25(日) 18:35
その頃控え組はグラウンドでボールを使ってアップをしていた。日本のベンチから
「安倍、高橋後半アタマから行くぞ!一度ロッカールームへ行ってくれ。」
との指示に二人は引き上げていった。
「高橋、なっちはトイレ行ってくるから先に行ってて。」
安倍がトイレに向かう途中、空き部屋から話し声が聞こえてきた。
誰だろう?安倍はその部屋をのぞいてみた。
「さゆみ!何してるのよ!あの失点は完璧にさゆみの責任だよ!」
「だってあんなにラインを上げるなんて思わなかったから…」
「さゆみが一言、紺野さんに声をかければあの失点はなかった。さゆみはいつもそうなんだよ!実力はあるのに…」
「ごめん…気をつけるよ…」
亀井と道重が話し合っていた。というより亀井が道重に怒っていた。
“そういえばグラウンドには亀井はいなかったけ?亀井ってあんな子だったんだ。”
一週間前の自己紹介の時とはまるで別人だ。
「さゆみ、もう行こう!後半始まっちゃうよ。少しずつ声を出していけばいいよ。」
「うん。ありがと。絵里ちゃん。」
安倍は慌ててトイレに駆け込んだ。
(なんかちょっと意外なもの見たなぁ)と思い。ロッカールームへと急いだ。
後半、日本は松浦に変え安倍、後藤に変えて高橋を投入した。
安倍&福田は日本の誇るゴールデンコンビ、後半の得点が期待できる。
高橋は初キャップで海外組の先輩MFの中でどこまで自分を発揮できるか?
51 名前:第8話 投稿日:2004/01/27(火) 05:16
後半、日本は松浦に変え安倍、後藤に変えて高橋を投入した。
安倍&福田は日本の誇るゴールデンコンビ、後半の得点が期待できる。
高橋は初キャップで海外組の先輩MFの中でどこまで自分を発揮できるか?
日本のキックオフ!後半開始。
日本は前半終了間際の失点を悔やむことなく淡々とボールを回す。
石川がドリブルをしかける。
前半はショートパスで主体だったため得意のドリブルは封印していた。
後半は異なるリズムでしかけて落ち着いた相手を再び混乱に陥れる。これが石川の作戦だ。
あまりフェイントをかけずにスピードと少ないボールタッチで抜いて行く。
中央の高橋にボールを預けてそのまま左サイドを走っていく。
高橋はそのままダイレクトでボールを石川へリターンするところを体の動きだけでマークを外しドリブルシュート。
「高橋やるじゃん。あたしをおとりに使うなんて。」
「あっ!石川さん。どうもありがとうございますです!」
「高橋、あんた何処出身?」
「福井です。」
「なんかなまってるんだけど。」
「いや全然とれましたですよ。」
(とれてねーよ)と思いつつ石川は“まぁいいや”と自分のポジションへ戻った。
52 名前:第8話 投稿日:2004/01/27(火) 05:17
後半も中盤に差し掛かったときだった。
石川は再度ドリブルで相手を突破した直後、右サイドで待つ市井のもとへ寸分たがわぬサイドチェンジのパスを送る。
後半開始から左サイドから攻撃を仕掛けることがほとんどだった日本、おかげで右は手薄になっている。
石川はそれを見逃さなかった。
市井はフリーでボールを前線に運ぶ。
コロンビアの右サイドバックが慌ててチェックに行く。
市井は福田とのワンツーでそれをかわしてゴール前へ絶妙のセンタリング。
安倍が制空権を争うことなく、完璧なポジショニングで完全にフリー。
スライディングボレーで右サイドネットへボールを突き刺した。
日本待望の追加点!サポーターも沸き返る。
その後も優勢に試合を進め、試合終了間際に吉澤がPKを決めて3−1の勝利。
日本の初陣は問題なく快勝で終わった。
53 名前:第9話 投稿日:2004/01/27(火) 05:18
翌日、彼女たちはそれぞれの所属チームに戻った。
欧州各国のリーグ戦は間もなく開幕である。
セリエA第1節。本来ならば4人の日本人がTVに映し出されるはず。
しかしブラウン管にはイタリアでは見慣れた二人だった。
ここはジュゼッペ・メアッツァまたの名をサンシーロ、
ミラン、インテルの本拠地である。
行われている試合はミランVSラツィオ、
そう本来ならば松浦VS安倍という日本人注目のカードとなるはずだった。
しかしそこには松浦の姿はなかった。ピッチはおろかベンチにさえも…
松浦がイタリアに戻った翌日の練習日、
いつも通りのミランの練習が行われた。
練習の最後は紅白戦、松浦はレギュラー組の右FW。
この日は調子が良かった。前半だけで2ゴール。
開幕の先発FWの一人は松浦で確定だと誰もが思った。
後半に入って左サイドからアーリークロスが上がった。
松浦はハットトリックを狙う。
ボールに向かって飛び込んだ。
キーパーと交錯、ブチッと松浦にだけ聞こえる不快な音。
その場にうずくまる松浦、立てそうもない。
すぐにメディカル室へ運ばれた。

54 名前:第9話 投稿日:2004/01/27(火) 05:19
翌日、検査の結果が出た。右膝十字靭帯断裂。
サッカー選手にとっては死の宣告のような言葉。
今シーズンの復帰は無理だろうと言われた。
だが松浦は驚くほど冷静に診断結果を聞いていた。
しかしいつも笑みを絶やさない松浦の冷静な顔は通訳の日本人はもちろんまだ完璧に打ち解けていないミランのスタッフをも動揺させた。
「とにかく手術後半年くらいは安静にお願いします。リハビリはそれから」
「…」
これからの説明を受け無言で部屋を出て行く松浦。
廊下で松浦は一人泣いていた。
「何も悪いことなんてしてないのに…」
55 名前:第9話 投稿日:2004/01/28(水) 22:33
今日のサンシーロには日本人は安倍ひとり、
試合は安倍のゴールにより1−0でラツィオの勝利。
ミランは開幕戦黒星からのスタートとなった。
一方ローマのホームスタジアムであるスタディオオリンピコでは、
もうひとつの日本人ダービーが行われている。
ローマVSユベントス、こちらには福田明日香がスタメンで出場。
ホームのローマは今季、練習試合で、
イタリアの至宝と呼ばれるアンナ・ツッティと福田の同時起用に挑戦していた。
アンナはイタリアではトップ下のポジションを、
福田は日本代表ではFWをやっていることから、
昨シーズンのように福田をアンナの代わりとしてではなく
今シーズンは福田をFWで先発起用
練習試合では成功したこの布陣がうまくいくか?
56 名前:第9話 投稿日:2004/01/28(水) 22:33
対するユベントスには吉澤はいなかった。
ピッチにはおろかベンチにさえも。
吉澤はスタンドにいた。
入団してからシーズン開幕までに行われた数試合のうち、
吉澤は半分の試合に出場。
だから吉澤には開幕のスタメンは手に届かないものではなかった。
少なくとも自分ではそう思っていた。
しかし現実はスタンド観戦。
「ぜってー出場してやる。」
吉澤は燃える。
いつもそうだった、苦労しないで手に入れたものなど今までない。
高校のサッカー部、浦和にいた時もそう。ビリからのスタート。
ここユベントスでも同じだと思えばショックなんてない。
吉澤はオリンピコを後にして一足早くトリノへと戻った。
試合は2−2の引き分け。
前半立て続けに失点をしたローマだったが後半に追い上げ同点
戦術理解度の高い福田とアンナの両名が絶妙のコンビネーションで
それぞれ1得点、1アシスト。
二人の同時期用は間違っていないことを証明する試合となった。
57 名前:第9話 投稿日:2004/01/28(水) 22:34
一方のリーガエスパニョーラとプレミアリーグ。
市井、後藤は開幕戦のバリャドリード戦で鮮烈デビュー。
市井、後藤の2人はそろってスタメン。
市井は右ウイング、後藤はボランチでの出場。
市井は先制点を素晴らしいクロスからアシスト。
後藤も決勝点を演出。40mのロングスルーパスを見事に通した。
「スペインはプレスがなくてラクだね!いちーちゃん。」
「でもお前、何回か抜かれただろ?ボランチなんだからもっとしっかり守備しろよ!後藤!」
「いーじゃん!勝ったんだから。次はディフェンスもしっかりやるからさっ!ねっ!」
「わかったわかった。次はちゃんとやれよ。」
と日本語で喋りながらチームメイトと共にサポーターに挨拶。
世界でもトップクラスに過激なバルサファンはアジアから来た二人の少女に対して拍手。バルセロナで二人が認められた瞬間だった。
58 名前:第9話 投稿日:2004/01/28(水) 22:34
プレミアリーグ開幕戦、マンチェスターシティVSトットナム
石川はベンチからのスタート。
試合はここまで0−0相手の長所を消しあう両チームといった感じ。
ゴールを楽しむファンにとっては正直、余り面白い試合とは言えない。
後半15分、アップをしていた石川に声がかかった。
ハーフタイムに
「後半、出番だからアップは入念にしておけ」
と言われていたから体は温まっている。
任されたポジションはトップ下。
流れを変えろ。と監督に言われ、いざピッチへ。
交代直後いきなりボールが来た。
石川十八番の重心の低いドリブル。
2人、3人とリズミカルかつ優雅に相手を抜いていく。
ペナルティアークで倒された。
マンチェスターシティ初のビッグチャンス。
ボールをセットして腰に手をやる石川。
なんとなくだけど決まる予感はあった。
ゴールに向かう一本の白いライン。
相手GKは一歩も動けず、プレミア公式球は右のサイドネットを揺らした。
その後はトットナムを石川が圧倒してみせた。
ピンポイントのフリーキック、素晴らしいドリブルという石川らしさだけでなく、
長短を織り交ぜたパスやオフザボールの動き。
味方に使われることで輝きを放つ石川が味方を使うことを覚えた。
終了間際にもカウンターからDFを切り裂くようなスルーパスを出し追加点をアシスト。
結局2−0で完勝。石川号の優雅な船旅は幕を開けた。

59 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/01/29(木) 10:40
すげ〜おもしろいです!
ついにそれぞれが世界へ飛び立ちましたね〜
自分はユーベのずっとファンなので、吉澤さんに期待かなw
石川さんの爆発しましたね!
チームもリーグも結果も違いますが、我がユーベがデビュー戦の
中田に翻弄されたのを思い出しました。
長々すいません。期待してるんでがんばってくださいね
60 名前:のっこ 投稿日:2004/01/31(土) 13:42
<<59
ありがとうです!
やっぱりこういう言葉をかけてもらえるとやる気が出ます
ちょこちょこ更新してきます。

このぶんだとW杯予選に間に合わないので次話からはダイジェスト形式
で一気にコンフェデまで行こうと思っています。
61 名前:第10話 投稿日:2004/02/01(日) 02:29
「トゥンク解任説浮上!」
「ドイツへの道が危うい!」
就任からおよそ1年いまやトゥンク批判は日常茶飯事の出来事となっていた。
初戦のコロンビア戦は良かった。結果、内容共に完璧。
テクニックと強さを兼ね備えた前線とハートで守る守備陣。
個人個人が自分の仕事を理解して試合に望むことができた。
だがその後がまずかった。
日本代表はこの約1年間で6試合の国際試合を行った。
対戦国はコロンビア、ブラジル、韓国、韓国、アルゼンチン、ポルトガル
結果は一勝三分け二敗、得点8、失点12。
最悪の一言に尽きる。
62 名前:第10話 投稿日:2004/02/01(日) 02:30
2試合目のブラジル戦、安倍、福田、市井、後藤は所属チームがチャンピオンズリーグ出場のため収集見合わせ、松浦はケガによる欠場。
吉澤はユベントスで試合に出場どころかベンチ入りすらできない状況。
「海外組だからって優先的に選ばれるなんて納得できない。結果を残すまであたしは代表には戻らない。」
実に吉澤らしいセリフだ。
選ばれる嬉しさと試合に出られない悔しさを知っている彼女。
日本代表ユニフォームとはそのときに良いプレーをした選手だけがもらえる青の勲章。
吉澤はそう考えている。
トゥンクにもそのときが来るまで代表には呼ばないでくれと言った。
というわけでこの試合で収集された海外組は石川のみ。
試合は本気モードのブラジルが全てにおいて日本を上回っていた。
前半だけで3失点ボコボコにされた。
結果は4−1、唯一の得点は石川の直接フリーキックだけ。
「落ち込んでる暇なんてないっス!ポジティブにいかないと。」
石川は味方を鼓舞し続け、攻撃のリーダーとしてチームを引っ張った。
「石川やるじゃんか!成長したなぁ。マリノスの時とは大違いじゃんか!おいら感動したよ。」
試合終了後、がっくりと気を落とすメンバーの中で、
唯一明るさを放つムードメーカー矢口。
負け試合直後だというのに明るく振舞い選手全員に声をかけた。
吉澤という主将がいない今、キャプテンマークをまくのは矢口である。
タイプこそ違えど彼女もまたキャプテンにはふさわしい存在。
「矢口さん次こそ勝ちましょう!ポジティブ、ポジティブ…よーしみんなで頑張るぞー!」
「…」
全員何も喋らない。
「そんなに落ちこまなでよ…」
「いや、石川たぶん石川の発言が寒くてみんな引いてると思うよ…」
63 名前:第10話 投稿日:2004/02/01(日) 02:30
次に行われたのは韓国とのホーム&アウェーの2試合、
W杯予選で戦うことになるかもしれない日本永遠のライバル。
この2試合、日本、韓国ともに欧州組は一人も収集されなかった。
日本はMFを左から高橋、加護、今回初収集の斎藤美海(以下みうな)、そして藤本と現時点での日本最強メンバーで固めた。
所属するエスパルスで守備力に定評のあるみうなが藤本が上がることにより空いたスペースを埋めるといった感じだ。
前戦にも新メンバー木村アヤカ(以下アヤカ)、低迷するヴィッセル神戸唯一の明るい材料である。
日本では珍しく身体能力で勝負するタイプのFW。
第一戦は韓国のホーム。
序盤は藤本が再三ドリブルで仕掛ける。
高橋は加護とポジションチェンジを行い後方から攻撃を支える。
みうなは緊張はしているもののまずまずの出来だった。
アヤカは今日のツートップの相棒、浦和レッズの柴田と共にシュートを打ちまくった。
しかし、得点には至らない。
前半40分には相手MFの痛烈なミドルを決められ0−1劣勢の日本。
後半トゥンクは右サイドバック新垣を下げ、
ベテランの石黒を投入、矢口を左のサイドハーフに上げ
右は藤本、ダブルボランチに加護、みうな、トップ下に高橋と
3−5−2にシフトチェンジ。
これが大当たり。
前半よりもボールを支配して攻めまくる。
後半15分には柴田に代えて亀井、藤本に代えて辻を投入。
後半40分ついに攻撃が実る。
矢口が中央へ出したパスを高橋がダイレクトでアヤカへ
すかさずシュート一旦GKにはじかれるが
こぼれたボールを亀井が無人のゴールへプッシュ!
期待にこたえた亀井。
1−1でライバルとの第一戦は終了。
64 名前:第10話 投稿日:2004/02/01(日) 02:31
第二戦日本のホーム。
スタメンは第1戦の3−5−2を元にして少し変えてきた。
3バックはベテラントリオ飯田、保田、石黒
MF陣はボランチに戸田鈴音、村田めぐみの初選出コンビ、
左に矢口、右に辻、トップ下に高橋
2トップは木村、柴田
最後にGK道重
ボランチ二人は緊張でガチガチだったが
老練なバック陣がふんばった。失点は許さない。
トゥンクはボランチ探しに必死だった。
日本最強のボランチ吉澤を欠き代役のボランチを求める。
加護には運動量が無かった。
戸田、みうなは攻撃センスが劣る。
村田は守備が不安定。
4人が4人ともワンボランチでは結果が出せない選手。
足りないものを相棒が補うことでその才能が光る。
吉澤のように動けるボランチは現時点ではいなかった。
前半は持ちこたえた日本、
しかし後半ベテラン3バックの動きが落ち早々2失点。
劣勢を強いられる。
後半30分に高橋がPKをゲットして1−2とするが、
以前韓国ペース。
敗戦濃厚のこの試合
救世主は矢口だった。
残り5分でゴール正面、距離30mのところでFK。
これを弾丸のようなシュートで決めて同点。
結局2戦共に痛み分けのドローとなった。
65 名前:第10話 投稿日:2004/02/01(日) 02:31
続いて行われた。キリンチャレンジカップ。
対戦国はアルゼンチン、ポルトガル。
両国とも重要な大会が控えている。
アルゼンチンはW杯予選。ポルトガルはEURO2004。
手を抜くことなく。最強の布陣で来日。
迎え撃つ日本も安倍、福田、後藤、市井、石川の海外組が参加。
今度こそ勝てると思った。しかし結果は1敗1分。
初戦のアルゼンチン戦、海外組は動きに精彩を欠き。
相手に翻弄されまくる。0−4の惨敗
「もっと強いと思っていたが失望した。」
試合終了後のアルゼンチン代表監督のインタビューが全てを物語っていた。
続くポルトガル戦は海外組も調子を取り戻し1−1のドロー。
安倍のヘディングで先制したがその後PKで追いつかれてしまった。
トゥンクは
「ここまでの戦績は誉められたものではないが公式の大会ではない。この6戦で選手たちがどのように考え、どんなプレースタイルが好みなのかは解った。」
と批判の続くメディアに答えた。
そう、次はコンフェデレーションズカップ、もう言い訳はできないのだから。
66 名前:みっくす 投稿日:2004/02/01(日) 07:00
更新おつかれさまです。
いっぱいメンバーでてきましたね。
誰がどのポジションか把握するのが大変・・・
次回楽しみにまってます。
67 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 16:13
更新お疲れ様です〜
実際のA代表もU23代表も試合が立て続けにありますし、楽しみですね。
あせらずがんばってくださいね
68 名前:のっこ 投稿日:2004/02/02(月) 01:03
毎度毎度ありがとうございますです!
>>みっくすさん
コンフェデ終わった頃日本代表選手全員のプロフィールなんかをのっけようと思います。
>>67
2月にはリアル世界に追いつきたいなあと…
ムリせず頑張ります!
それでは続きをどうぞ!!
69 名前:第11話 投稿日:2004/02/02(月) 01:05
「トゥンクさん、話ってなんですか?」
ここは京都パープルサンガの練習場のミーティングルーム。
そこにいるのはトゥンクと中澤裕子。
ポルトガルに留学経験のある中澤はポルトガル語で喋る。
「裕子。ジツは君にやってもらいたい仕事がある。」
「なんですか?」
トゥンクはこう答えた。
「選手権監督になってくれないか?」
「あたしがですか?だって監督はトゥンクさんじゃないですか?」
「もちろん、公表はしない。世間の目からはあくまでわたしが監督だ。」
「じゃあなんで…」
「わたしは2010年のW杯も視野に入れているからだ。
この半年間を見てきて日本の力はわかった。有能な選手はいても
有能な日本人監督はいないのだよ。だから君を育て上げる。
わたしは総監督として指示を与えるつもりだ。いいかな?」
「なんか、よくわからないけど、とにかくあの娘らの教育係をやれと」
「まあ、そんなかんじだな。もちろん選手選考や布陣なども君が考えろ。
私はそれが良いか悪いかを判断する。」
「選考もやるんですか?大変だな…」
「裕子、君は引退した後、監督業をするつもりだろ?だったら今、この環境でやってみなさい。きっと君にとってプラスになるから」
70 名前:第11話 投稿日:2004/02/02(月) 01:05
実は、中澤は引退を考えていた。
トゥンク監督になってから、Aマッチの出場はゼロ。
ここパープルサンガでもJリーグでは散々だった。
前半戦わずか3勝しかも失点はワースト記録。
全てが中澤の責任ではないが正直、自信を失いかけていた。
そんな時に舞い降りたこの話。
このオファーを受けたら間違いなく代表には呼ばれ続けるだろう。
しかし、所属チームは降格の危機。
「トゥンクさん。あたしには無理です。できません。
あたしは代表である前にここの人間です!だから降格の危機を救うまで、
このオファーは受けれません。でもいい話だとは思います。だから時期がきたら
その時はよろしくお願いします。」
「そうか、わかった…気が変わったら連絡をくれ。」
こうしてトゥンクは京都を後にした。
練習場へ戻るときフロントから中澤へ連絡があった。

71 名前:第11話 投稿日:2004/02/05(木) 02:49
「中澤くん。きみを放出したい。」
フロントから告げられた言葉は冷酷だった。
「は?」
「君はわがパープルサンガにとって戦力外ということだ。」
「なんでやねん!あたしがサンガ一筋なのをアンタ知ってるはずやろ?何で…」
「すまない…解ってくれたまえこれはすでに決定事項だ。」
「そんな…」
ショックだった。
ついさっきトゥンクにも降格の危機を救うと言ったはずなのに…
その全てを賭けてきた自分のチームから
まさかこんな形で別れが訪れようとは…
「わかりました。減益は続行するつもりなので移籍先を探してください。
よろしくお願い致します。」
毅然と振舞う中澤、せめてものの抵抗だった。
練習場を後にして帰路につく。
「もしもしトゥンク監督ですか?」

72 名前:第12話 投稿日:2004/02/06(金) 22:45
日本代表コンフェデレーションズカップ収集メンバー
GK 
1中澤 裕子(京都パープルサンガ)
17道重 さゆみ(横浜・F・マリノス)
23大谷 雅恵(東京ヴェルディ1969)
DF
2石黒 彩(ベガルタ仙台)
3保田 圭(柏レイソル)
4矢口 真里(横浜・F・マリノス)
13紺野 あさ美(鹿嶋アントラーズ)
16飯田 圭織(鹿嶋アントラーズ)
19里田 舞(名古屋グランパスエイト)
22新垣 里沙(横浜・F・マリノス)
MF
5戸田 鈴音(ジュビロ磐田)
7石川 梨華(マンチェスターシティ)
8藤本 美貴(名古屋グランパスエイト)
9後藤 真希(FCバルセロナ)
10高橋 愛(鹿嶋アントラーズ)
11市井 紗耶香(FCバルセロナ)
12辻 希美(FC東京)
14加護 亜衣(ガンバ大阪)
21平家 みちよ(ジュビロ磐田)
FW
6安倍 なつみ(ASラツィオ)
15亀井 絵里(FC東京)
18柴田 あゆみ(浦和レッズ)
20福田 明日香(ASローマ)
73 名前:第12話 投稿日:2004/02/06(金) 22:46
開幕2週間前に発表された23人の戦士たち、
「あたしが見たところこんな感じや。監督、どうですか?」
中澤はトゥンクからのオファーを受け選手選考を行った。
新加入組はいなかった。その方が良いと中澤は判断したのだ。
確かに流れは悪いが実力的には申し分ない。後は経験だけだ。
そして自分を選んだことにも間違いはないと思った。
「問題ないと思う。」
トゥンクにもOKサインをもらい、中澤の監督補佐としての初仕事は終わった。
代表は明日、開催地であるフランスへ飛び、
そこで海外組と合流し開幕まで練習を行う。
74 名前:第12話 投稿日:2004/02/06(金) 22:47
渡仏当日。
「わたしたちヨーロッパに行くのはじめてなんですよ〜。」
と浮かれた気分でいるのは、紺野と高橋。
紺野は今年J2降格のコンサドーレからアントラーズへ移籍、
今季のJ前半戦では絶妙のラインコントロールを活かし
リーグ最小失点の立役者となった。
同僚の高橋とは年が近いからかプライベートでも仲がいいらしい。
今日もずっと一緒だ。
コンサドーレのJ2降格はその他の代表選手にも影響があった。
第3GKの大谷はヴェルディ
DFの石黒は今季昇格のベガルタ、里田はグランパス
ボランチの戸田はジュビロへ
これだけの代表選手を抱えるコンサドーレが降格したのは得点力の無さだった。
代表メンバーは全て守備寄り、前戦が貧弱すぎた。
同じ理由で降格したもう1チーム、サンフレッチェ広島。
このチームから離れた代表選手が一人。
日本正GKの道重である。
75 名前:第12話 投稿日:2004/02/06(金) 22:48
道重はW杯終了後最も天国と地獄を味わった日本人だろう。
プロデビュー、代表初選出、J2降格そして愛するチームからの移籍。
J2降格が決まっても道重はサンフレッチェに残ることを決めていた。
給料なんていらない。ここでサッカーが出来ればいい。
とまで思っていた。
しかし結局、道重は移籍することになる。
マリノスが獲得を希望したのだ。
J2は代表の試合などお構いなしに行われる。
大事な時期に正GKに抜けられては昇格が夢になる可能性もある。
そう判断したサンフレッチェがこのオファーを受けた。
愛するチームに捨てられた形となった道重、
かなりのショックだった。代表も辞退しようかと思った。
そんな中、説得にあたったのは中澤だった。
「プレーで見返してやらんかい。それができなきゃ負け犬やで。」
中澤の一言が道重を救った。
そしてマリノスで1stステージ優勝。
これ以上ないリベンジを達成できた。
「中澤さん。」
「ん?なんや、道重?」
「サンガからの移籍が決まったらしいですね。」
「かわいい顔して、すごい事ゆうなあ。」
「プレーで見返してくださいね。それができなきゃ負け犬ですよ!」
「はっ、ようゆうたわ。見とれよ道重!アンタには負けへんで」
半年間で二人の立場は逆転していた。追うものから追われるものへ
そして追われるものから追うものへ。
正直、最初のうちは代表の正GKは道重でいいとさえ思っていた。
あたしはおそらく2006年までこのユニフォーム着続けられないと感じたからだ。
けど今は違う。もう一度正GKに、あの緑の芝の上に。
移籍先が決まっていない中澤にとってはこの大会、絶好のアピールとなる。
中澤は燃えていた…
76 名前:第13話 投稿日:2004/02/06(金) 23:11
コンフェデレーションズカップ初戦、
相手はニュージーランド、サッカーに関しては後進国である。
今の日本にとっては格下の相手。
試合当日の6月18日の朝、
トゥンクの通訳を中澤が引き受けスタメンは発表された。
「まずFW陣、安倍、福田。」
「はい」
「お前ら、わかっとるやろうな。相手は格下や1点取って来いよ。」
「わかってるよ〜裕ちゃん。なっちにまかせてよ〜」
ヘラヘラとおどける安倍、
その笑顔は緊張しているメンバーにとても効果的だ。
対する福田はしっかりと授業を聞く学生のよう。
「次。MF。ハーフ陣はフラットでいく。左から石川、後藤、市井、藤本
石川、藤本はガンガン攻めろよ。」
「は〜い。」
二人には緊張など何処にも無い。あるのは試合への情熱。
「後藤、紗弥香は攻撃のビルドアップと全体のバランスを良く考えて…って
聞いとんのか?後藤?」
「後藤はいつもあんな感じじゃん。あたしから言っとくよ。」
後藤は爆睡中。やっぱり朝は辛いらしい。
「ったく。DFは左から矢口、飯田、紺野、新垣。
ライン統率をしっかりやって攻撃陣のフォローも忘れずにな。」
「はい!」
DF陣は基本的に優等生組。練習でも誰が声をかけるか?
フォローに行くか?をしっかり確認していた。今更言うことは何も無い。
77 名前:第13話 投稿日:2004/02/06(金) 23:12
「最後GK道重!」
「はい!」
正GKは現在道重であることの証明だった。
これで今大会アクシデントが無い限り正GKは道重だろう。
中澤はどんな思いでスタメンを発表したのだろう?
チーム全体が一瞬だけ凍りつく。
「最後に!今大会のキャプテンは矢口。ええな?」
開口一番。中澤は赤いキャプテンマークを矢口に渡し、
「はい。キャプテンの矢口から一言。」
と言って自分の席に座った。
「あ…うん。えーと、よし、じゃあみんな頑張ろう!」
元気良く声をかけた。
こうして日本代表はバスに乗って試合会場へ。
78 名前:第14話 投稿日:2004/02/06(金) 23:12
今日の試合ニュージーランドのユニフォームは上から下まで全て白。
対する日本は全て青色。
いつもは白いパンツだが見分けがつくように青にした。
ニュージーランドのスタイルは4−5−1。
守って守って一発のカウンタースタイル。
矢口を先頭に入場、国家を歌い終え、記念写真、
そして互いのキャプテンがコイントス。ボールは日本
国際試合お決まりの行事が終わると矢口は11人を中央に集めた。
円陣を組み一言。
「オイラからは戦術的なことはなんにもない。紗耶香何かある?」
「なんであたし?」
「そういうのは紗耶香の役目でしょ!」
やれやれと言った表情で
「はいはいっと。いい?みんな?多分相手は最初から引いて守ってくる。
だから序盤は攻めないでゆっくりとボールをまわそう。
そうすれば相手から上がってきてくれるそこを叩く!OK?」
残りの10人が首を縦に振る。すかさず矢口が
「よーし!!まず一勝!みんながんばっていきまっ」
「しょーい」
円陣が解けピッチへと散らばる。
日本VSニュージーランド。キックオフ!
79 名前:第15話 投稿日:2004/02/06(金) 23:14
市井の提案通りにボールをまわす日本。
試合開始から10分経過した現在でもニュージーランドはボールを持てないでいる。
自陣深くでパスをまわして時折前へ
しかし決して攻めないある程度まで行ったらボールを戻す。
この繰り返しだった。
業を煮やしたニュージーランドが前へと出てきた。
最終ラインもかなり前目に位置している。
この広大なスペースを市井が活かす。
道重のゴールスローを受け、左手をかざす。
その合図と共に矢口が左サイドを走る。
最後方から来た145cmの弾丸は硬く閉ざされた壁を打ち抜く。
パスを要求する矢口にこれ以上ないタイミングでロングフィード、
オフサイドぎりぎり、FWも真っ青の飛び出し。
ロブスピンがかかった市井のパスを受け
そのままサイドを駆け上がる。
必死で戻る敵DF陣。
それについて行くFW二人。
ペナルティエリアに入る直前に二人はポジションを入れ替える。
福田は左に、安倍は右に。
この絶妙のコンビネーションで二人は完全にノーマーク。
中を確認した矢口が二アサイドの福田へシュートのような低いクロス。
しかしこれにはGKもしっかり反応してシュートコースを消しに来た。
福田はそのクロスに対してさらにニアへ、
シュートコースが完全に無い位置まで行く。
そしてその場から突如バックステップで一歩戻る。
低く速いボールが福田の足元へ、
あきらめずにスライディングで止めに来るGKをしっかり見ながら、
左足ヒールで後ろに流した。
どフリーの安倍がトラップしてインサイドで丁寧にゴールへ。
大喜びする安倍ベンチに向かって
「見たかぁ〜!裕ちゃん!まずは1点だい!」
とガッツポーズ。
矢口、福田とハイタッチを交わし自陣へ戻った。
80 名前:第15話 投稿日:2004/02/06(金) 23:16
その後もニュージーランド圧倒する日本。
右サイドは藤本が完全に掌握。
左サイドは矢口、石川のコンビでゲームを支配。
残された中央も後藤、市井のバルサコンビが早い段階で攻撃の芽を摘む。
攻めることも出来なければボールを持つことすら許さない。
終了間際の前半42分ペナルティエリア内で福田が倒されPK。
これをファウルを受けた福田が蹴りこんで追加点。2−0。
100点満点ともいえる前半を終えた。
 後半に入っても勢いは止まらない。
前に出るしかなくなったニュージーランドは前戦のFW2枚を代え、
ロングボールによるパワープレーに出てきた。
しかし飯田、道重が完全に制空権を支配。
ゴール前に上がったボールは飯田のヘッドと
道重のセービングでシャットアウト。
「石川さんっ!」
道重のロングスローが石川の足元へ。
今日の石川の動きはかなりきれている。
相手もそれに気がついたのか石川を二人でマーク。
あっさりとかわす石川。
しかし追いすがるニュージーランドMFは
ユニフォームを掴み石川のドリブルを防ごうとする。
「あーーーっ!!もうっ!しつっこい!」
振りほどこうとしたてが相手の顔に、うずくまる敵MF。
するとすかさずもう一方のMFが石川に詰め寄って罵倒を浴びせる。
ホイッスルが鳴った。
ニュージーランドのMFにイエローとレッドの提示
石川にもイエローが出た。
“なんであたしにイエロー?”と出かかったが我慢した。
レッドカードなんかもらったらシャレになんない。
そそくさとその場を後にした。
81 名前:第15話 投稿日:2004/02/06(金) 23:17
日本のフリーキックで再開。時間は後半25分。
交代の指令が出た。日本は藤本に代えて辻、石川に代えて加護。
「えーーーっ!?」
二人とも仏頂面で辻加護の待つ場所へ。
交代を意味するタッチをすると
小さい二人は元気にピッチへ。
「二人とも良くやったで、お疲れさん!」
中澤がねぎらいの言葉をかけ、トゥンクも二人の肩をよくやったと叩いた。
二人はベンチに腰掛け
「フジ、おつかれ。」
「そっちこそねイシ。」
と声をかけシンガードをしてスパイクを脱いだ。
日本の左右のサイドハーフが一気に交代。
出てきたのはまるで子供のような二人。
日本に舐められている。ニュージーランドはそう思った。
しかし相手は知らない。この二人も石川、藤本に劣らない選手であることを。
82 名前:第15話 投稿日:2004/02/06(金) 23:18
平均身長が一気に低くなった日本は低く早いパスをまわす。
後藤から市井へショートパスが出る。
すかさず市井がFWへ、くさびのパスをいれた。
安倍がそのパスをトラップしてスペースへ落とす。
そこに飛び込んできたのは加護、
いつの間にかMFの4人はポジションを入れ替えていた。
後藤、市井がそれぞれ左右に散って中央に辻と加護
ボールを持った加護がドリブルで相手陣内に進入した。
DFがチェックに来た瞬間を見計らって辻へパス。
辻がダイレクトで加護に返した。
「あっ!」
足さばきが上手いと言えるレベルでない辻、パスが浮く。
ボールが腰の高さぐらいで加護の元へ返って来た。
「ヘタクソーーーーッ、ちゃんと出せ!」
悪態をつきながらも加護は右膝で再び辻へリターンパス。
「ミスキックは無しやでっ!ののっしっかり決めっ!」
辻はインサイドキックでゴールへ流し込んだ。
GKの股を抜けネットがゆれる。
日本3点目。
「あいぼん!やったのれす!」
「まだまだやけど、まいっか!初ゴールおめでとな!のの」
試合終盤、飯田が警告を受けたが失点は無く
結局、このままタイムアップ。
日本は初戦を3−0の完勝。Aグループの首位に踊り出た。
83 名前:第15話 投稿日:2004/02/06(金) 23:19
コンフェデレーションズカップ
Aグループ第1節
日本VSニュージーランド
3−0
日本出場選手 ()内は採点
GK
17道重さゆみ (6.5)
DF
4矢口真里 (7.0)
13紺野あさ美 (6.5)
16飯田圭織 (6.0)
22新垣理沙 (6.0)
MF
7石川梨華 (7.5)
→14加護亜衣 (7.5)
8藤本美貴 (7.0)
→12辻希美 (7.0)
9後藤真希 (6.5)
11市井紗耶香 (8.0)
FW
福田明日香 (7.5)
安倍なつみ (7.5)

得点者
13min 安倍(福田)
42min 福田(PK)
74min 辻(加護)

警告
70min 石川
89min 飯田

84 名前:みっくす 投稿日:2004/02/07(土) 00:42
いよいよ大会がはじまりましたね。
ポジションも確認できました。
次回もたのしみにしてます。
85 名前:のっこ 投稿日:2004/02/12(木) 12:20
読者のみなさんオヒサシブリです。
本日更新です。
86 名前:第16話 投稿日:2004/02/12(木) 12:22
ニュージーランド戦から一夜明け、今日は練習日。
中二日と言う強行で行われる今大会。
練習は軽めのものに設定した。
疲れを取るためのランニングと20分の紅白戦のみ、
後は自由時間となった。
その日の夜、マッサージを受ける市井と後藤。
日本代表メディカルドクター小湊美和は
選手の体調管理などの仕事を受け持つ。
マッサージも大切な仕事のひとつ。
87 名前:第16話 投稿日:2004/02/12(木) 12:22
「試合後のわりにはあんまり筋肉が疲労してないわね。」
「あ、そう?まあ昨日の試合は結構ラクだったからなあ。
あーあ、いつもこんな試合だったらいいのに。なあ後藤。」
両足のマッサージを受けながら市井は後藤に問い掛ける。
「んー。後藤はそうは思わないなぁ。」
珍しく反論する後藤。
「なんで?」
「なんていうかぁ…あんまりゾクゾクしなかった。もっとこう、
なんてゆーかマドリーと戦ったときみたいなヤツ。あれがない。」
後藤が言う“マドリー”というのはスペインが誇る世界一のチーム
レアル・マドリッドのこと。
“レアル”とは“王室公認の”と言う意味である。
リーガエスパニョーラで“レアル”と名がつくチームは
沢山あるのだ。
だからスペインでは、いや普通、世間一般ではマドリーが普通らしい。
後藤や市井もスペインに言った後、知ったのだが…
88 名前:第16話 投稿日:2004/02/12(木) 12:23
「あれはなあ…まあ確かに言いたいことはわかるけど。」
「いちーちゃん、あれってなに?」
「いいか、後藤バルサ対マドリーっていうのは…」
FCバルセロナVSレアル・マドリッド
それはスペイン国内を代表する両チームのプライドをかけた戦い。
本国では国を代表する試合である。まさにスペイン・ダービー。
伝統の一戦“エル・クラシコ”。
反スペイン精神のカタルーニャが産んだ
バルセロナと言う一つのチームがスペインの象徴とも言える
マドリーに立ち向かうこの試合。
バルセロナの人々はこのチームに勝たなければ
リーグ優勝など意味が無い。
ファンは、いやバルセロナの人々はそのくらい熱狂的にこの試合を応援する。
“勝てないなら死ね”と。
そんな中で試合するんだゾクゾクしないわけが無い。
と市井は後藤に説明。
「わかった?」
「ふーん。そうなんだ。」
「それだけかよ!」
小湊は二人の会話の一部始終を聞き、笑う。
「いいコンビね。二人とも。」
「そう?ったく後藤は…」
89 名前:第16話 投稿日:2004/02/12(木) 12:24
自由奔放の後藤とシステマティックな市井
相反する二人だからこそ馬が合う。
互いに無いものを補うことができる。
だがしかし、バルセロナ市内では市井と後藤は
コンビとしては評価されていなかった。
あるスポーツ雑誌は“マキは太陽ならばサヤカは月だ”と表現した。
後藤は既にバルセロナのアイドル。
次のシーズンのキャプテン候補にも上がっている。
対する市井はファンにとっては印象が薄い。
後藤は本当に自由にプレーをする。
時にそれが欠点となる場合もあるのだが、
バルセロナのスタッフはそれを容認。
“自由でこそマキの良さが発揮される。”と。
市井は逆に監督の命令を忠実に聞き、そして実行する。
時間稼ぎもするし汚いプレーもする。
また、そのユーティリティ性の高さから
いろいろな所をやらされた。
これが原因でファンからはブーイングなどは無いものの、
記憶に残るプレーヤーでは無かったのである。
市井はこの雑誌を見て傷ついた反面、
否定は出来なかった。そして自分自身に腹が立った。
“これでいいのかよ”
「なあ後藤、サッカー好きか?」
「んあ?好きに決まってんじゃん。いちーちゃんは嫌いなの?」
「いや嫌いじゃないよ。」
「変なの?なんかあったの?」
「んーん、なんでもないよ。美和ちゃん、もういいよ!ありがとう。後藤行くぞ。」
「あーい」
二人はマッサージを終え部屋へ戻っていった。
90 名前:第17話 投稿日:2004/02/12(木) 12:25
フランス戦当日。注目のスタメン発表。
普通、前の試合で勝ったのならばスタメンはいじらない。
しかし今日の相手はフランス。用心しすぎることは無い。
中澤とトゥンクは考えに考え抜いてスタメンを決めた。
DF、FW陣は変更無し。
MFを代えて来た。左から石川、後藤、みうな、市井
フランスの驚異的なサイド攻撃を防ぐため市井をサイドに
さらに中央にはみうなを入れて守備力を上げる。
これに意を挙げたのはもちろん藤本。
「あたしスタメン落ちですか?」
言いたいことははっきり言うこの性格。
ミーティングでのスタメン発表が終わると同時に噛み付いたが
このオーダーの理由を言うと藤本はしぶしぶ承知して席についた。
試合直前のロッカールーム。
今日も中澤がトゥンクの通訳係を引き受け喋る。
「ええか?相手はベストメンバーじゃないが腐ってもフランスや。
実力は日本より上。間違いなくこのグループ最強の相手やで!」
フランスはジャンヌ・ダルクと呼ばれる
世界最高峰MFジネディーヌ・フカキョンが欠場している。
基本的には若手とベストメンバーのミックス。
両サイドとFWにはアーセナルに所属する
キョウコ・カノーとミカ・カノーの二人
W杯では活躍できなかったが世界有数の万能型FWメグ・アンネ。
そしてキャプテンはユベントス所属のボランチ、ディディエ・ユーカ。
この主力に新人を収集したのが今回のフランス。
「実力は上でも勝機はうちらにも十分ある。前半はきっちり引いて守るんや。
勝負は後半。そこで一気に行くで!」
「よっし!じゃーみんながんばっていきまっ」
「しょーい!!」
矢口の掛け声で日本はロッカールームを後にした。
91 名前:第18話 投稿日:2004/02/12(木) 12:26
国家斉唱が終わり握手を済ますと矢口とユーカがピッチ中央へ。
コイントス、ボールは日本。
各ポジションに散らばると主審の笛がなりキックオフ。
フランスは4−5−1のスタイル、
5人で中盤を支配しサイド攻撃へ持っていく。
その強さは欧州一である。
日本も既に研究済み、右のキョウコ・カノーには石川
左のミカ・カノーには市井のマーク。
危険なところでは絶対にこの二人にドリブルをさせない。
石川はこの二人と対戦経験があるし
市井も日本MF陣の中ではディフェンスはトップクラス。
しっかりと押さえている。
中央も両国新人同士の対決はほとんど五分
後藤が中盤の人数的不利をカバーして動き回ることで
前半序盤はまずまずの出来。
時折訪れるピンチもDF陣が踏ん張り前半18分までで
フランスのシュートはわずかに1。
しかし順調にはいかない。
対戦経験があるといっても2回だけ、
加えて石川はディフェンスがあまり得意じゃない。
徐々に抜かれることが多くなる。
フランスもそれが分かったのかボールをキョウコの元へ。
あっさり石川を抜きさるキョウコ・カノー。
しかし矢口がしっかりカバー。
「こういうのはオイラにまかせとけって!石川!
今度はお前のドリブル見せてやんなよ!」
92 名前:第19話 投稿日:2004/02/12(木) 12:27
石川にボールが渡り、勝負を仕掛ける。
普通、ドリブラーは相手が動くのを待って、
それから抜きにかかる。
しかし石川はワザと自分から勝負を仕掛けて
相手が取りに来たところを抜きにかかる。
バクチ好きの石川らしいスタイル。
身を低く体を入れドリブルでキョウコを抜く。
目の前に出来たオープンスペースへ逆回転のかかった縦パス。
安倍がすかさず拾って前を向いた。
左45度の位置までボールを運ぶ。
最も安倍の好むシュートエリア。
キーパーも前に出ている。
迷うことなく右足で打ったループ気味のコントロールショット。
キーパーもボールの起動を見送るだけ。
よしっ!!とゴールを確信した安倍、
右手でガッツポーズを作ろうとする。
カンッ!
ポストに阻まれた。乾いた音が鳴り響く。
頭を抱える安倍。
「くそー!入ったと思ったのに〜!」
その安倍の背中をバシッと叩く福田。
「いいよ。なっちナイスプレー!」
「あ、うん…ありがとう。」
このとき安倍が感じた違和感。
それは福田の言葉だった。
いつもならあんなことは言わない。
とはいっても“珍しいなぁ”位にしか感じなかった。
そう。このとき福田は感じ取っていた。
日本の危機を。
93 名前:第19話 投稿日:2004/02/12(木) 12:28
「あたしポジション下げるから」
福田はFWからMFに突如ポジションチェンジ。
4−4−2から4−5−1へとスタイルをチェンジさせた。
“なんかヤバイ”安倍のシュート以降感じる言葉にならない不安。
福田がMFに入ったことにより、
中盤の人口密度が上がり、必然的にボールの奪い合いとなる。
お互いシュートを打たなくなった、もとい、打てなくなった。
互いの長所を完全に消しあう展開。
0−0の均衡状態が続くと思われた前半39分。
ディディエ・ユーカの放ったロングフィード。
これまでショートパスのみの美しい
シャンパンサッカーを見せていたフランス。
いきなり中盤を省略した攻め。
ボールは一気に日本のペナルティエリア付近に。
1トップのアンネにボールが渡った。
一瞬で飯田を振り切ってシュートの体勢へ
紺野がタックルを仕掛ける。
アンネは派手に転んだ。
主審はPKスポットを指差す。
正当なタックルだった。
紺野は賢いプレーヤーPKなど与えた事も無い。
必死に抗議する矢口。しかし受け入れられない。
キッカーはキャプテンのユーカ。
なんなく右隅にGET!均衡が崩れた!0−1。
94 名前:第20話 投稿日:2004/02/12(木) 12:29
前半終了。
「1点差ならまだいけるで!」
中澤がメンバーを元気付ける。
「このままでいく。交代はないで。後半勝負や。」
トゥンクと中澤の指示にうなずくメンバー。
「控えはアップしといてな、出番かもしれんから。」
後半開始。
日本は以前、福田が下がった状態の4−5−1。
フランスのスタイルは変わらず4−5−1。双方交代は無い。
膠着状態が続く。
しかし目に見えて動きの落ちた選手が一人。
福田明日香である。もともとFWだしMFが出来ると言っても
攻撃力を評価されてのもの。
プレッシングを計算できる選手ではない。
「監督、福田を下げた方が…」
中澤の問いに指揮官は
「後半10分までこれで耐える。」
と言って黙った。
“なんでや?ここで福田を下げな、中盤を支配されるで”
しかし中澤は口には出さない。
“きっとなにか考えがあるはずや。トゥンク、あたしは信じるで”
福田の足が止まり中盤を支配される日本。
ユーカは最終ラインにも上がるように指示を出す。
滅多打ちにされる日本。
しかし矢口が、飯田が、紺野が、新垣が、そして道重が
日本のDF陣が粘りに粘った。
そしてやってきた後半10分、ついに交代が提示される。
95 名前:第20話 投稿日:2004/02/12(木) 12:32
サイドラインに立つ選手は3人。高橋、藤本、保田
日本が一気に全てのカードを使う。
もう交代は使えない。
ピッチを去るのは福田、みうな、新垣。
「DFは3バック、矢口、あんたは左サイドに行って、後藤がワンボランチで
石川、高橋が前目でヨロシク。」
さらに日本はシフトチェンジ、4−5−1から3−5−2へ。
2トップは安倍&藤本。
藤本が攻撃陣に指示を伝える。
「あと5分たったら勝負に出ろってさ」
中盤の人口密度は以前変わらないため相変わらずのプレスの掛け合い。
しかし徐々にフランスは精彩を欠き始める。
あれほど鮮やかだったショートパスがつながらなくなった。
欧州はここ近年まれに見る異常な猛暑。
この暑さにフランスはやられたのだ。
対して日本人はこの気候には慣れている。
しかも交代したばかりの選手が3人、体も適度にアップ済み。
気の抜けたシャンパンなど誰も美味いと思わない。
96 名前:第20話 投稿日:2004/02/12(木) 12:32
ここからは日本の時間。
矢口、市井が両サイドでドリブルを仕掛け、
石川、高橋がスルーパスで決定機を作る。
安倍が、藤本がシュートを打ちまくる。
しかし得点には至らない。
今日のFW、特に安倍は運が無かった。
ポストに、GKのファインセーブに阻まれる。
フランスの若手のMFが急に倒れた。
どうやら足がつったらしい。
藤本が石川の近くに寄っていく
「駄目だ。今日は安倍さん決められないよ。」
「フジ!なんでそんなこと言うのよ!縁起でもない。」
「いや、多分だけど今日は駄目だ」
二人が言い合うところに安倍が来た。
「いや、藤本の言う通りだよ!なっちは今日はハズレだ。認めたくないけど…」
一流のFWにしか解らない感覚だった。
ダメな時は何をやってもダメ。ネットは揺らせない。
「だからね、石川、藤本あんたたち二人には…」
安倍は二人に耳打ち
「じゃーよろしくね。まかせたよ!」
と言って前線に戻った。

97 名前:みっくす 投稿日:2004/02/12(木) 21:16
更新おつかれさまです。
何をたくらんでいるのですかね。
あと、ひとついいですか?
みうなは召集メンバーに入ってい無い気が・・・
98 名前:のっこ 投稿日:2004/02/14(土) 16:08
みっくすさん
やっちゃいましたね〜!かなりのミスです。ほんとゴメン…
とういわけで
5戸田鈴音(ジュビロ磐田)→5斎藤美海(清水エスパルス)
に変更でお願いします。読者の皆さんホントにゴメンよ
そしてみっくすさん、ご指摘どうもありがとうです。
99 名前:第21話 投稿日:2004/02/18(水) 02:55
依然続く日本の猛攻。フランスは守るだけになった。
安倍はさっきの耳打ち以降ポストプレー主体の動きに切り替えている。
藤本、石川が頼まれたこと。それは
「あんた達はなっちより上がるんだ。点取る仕事はまかせた。」
と言うものだった。
一見、なんでもない普通の言葉、自分はムリだから任せる。
しかし生粋のFW、日本の得点の稼ぎ頭である安倍からの言葉。
決められないと感じたFWがプライドを捨ててまで発した言葉。
何よりも勝利を。
この気持ちに答えない訳には行かない。
藤本はペナルティエリア付近での勝負。
石川はゴールから2、30mあたりでの勝負を仕掛ける。
中央に高橋を置いてその衛星軌道上を二人が動くといった感じだ。
J屈指のトップ下である高橋はワンタッチでボールを捌く。
玉離れが早くフランスDF陣には捕まらない。
一方、藤本と石川はドリブルで真っ向勝負。
この形が10分以上続いた。
さすがにフランスも慣れてきたのか、
高橋からボールを取ることをあきらめ、
藤本、石川にきついチェックが行くようになる。
後半32分、高橋から石川へパスが行く。
トラップの直前にスライディングで倒された。
当然ファウル、フランスMFにはイエローカード。
「ってーな、チクショウ!」
石川は右足を押さえて立ち上がる。
「イシ、どうする?」
藤本が寄ってきた。
「そんなの狙うに決まってるじゃん。」
石川は平然と答えた。
「でも直接って場所じゃないよ、イシ?」
藤本の言う通りだった。
FKの場所はペナルティエリアの左横、
右利きの選手ならまだしも石川は左利き。
「フジ、相手はフランスだよ?普通のプレーしてたら一生勝てない。」
ボールをセットして石川が言う。
「でも今からやろうとしてる事は一人じゃできない。フジ、協力して。」
「あたりまえじゃん。安倍さんが二人に任せたって言ってるんだから。」
「じゃあ、フジはボールの横に立って…」
耳打ちをする二人。
「えーーっ!?マジっすか?」
「うん。あんたがちゃんとやんなきゃこのシュートは打てない。」

100 名前:のっこ 投稿日:2004/02/18(水) 02:58
ちょっとだけ更新。
そして100GET
101 名前:みっくす 投稿日:2004/02/18(水) 17:14
おお、何をするきですかね。
なっちの期待に応えるために、成功を祈りつつ
更新楽しみにしてます。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/04(日) 06:55
続きまだかな
103 名前:名無し 投稿日:2004/05/09(日) 13:01
保全
104 名前:名無しさん 投稿日:2004/06/20(日) 23:20

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