吟遊詩人が伝える物語
- 1 名前:始まりのとき 投稿日:2003/12/29(月) 11:52
- 「さあ、みんな集まって。今日は素敵な話を伝えようじゃないか」
今日はこの国の跡継ぎさまの成人の儀。
国中がお祭りムード一色だった。
この国全体が、今日という日を待ち望んでいたことであろう。
城下の町では、みんな跡継ぎ様の姿を一目見ようと、たくさんの人たちが、お城のすぐ近くに集まっていた。
そして、町から外れた小さな丘には吟遊詩人が一人、町を見下ろしていた。
彼の周りには数人の子供たち。
子供たちは、お祭りから少しはなれ、これから彼の語る物語を興味深く耳を傾けていた。
彼は、子供たちを自分の周りに座らせ、そして自分も座った。
今から彼が語る物語は、これから先何百年と受け継がれていくことになるだろう。
いま、ここにいる子供たちによって・・・・・・
- 2 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/29(月) 11:54
- ここは西の国のお城。
この国のを治めている王様が王室をぐるぐると回っていた。
「まだか、まだなのか!」
王様は何かを待っていた。
そんな王様の姿を、家来たちははらはらしながら見守っていた。
“おぎゃーおぎゃー”
そのとき、赤ん坊の大きな泣き声が聞こえた。
その赤ん坊を持った家来が、王様の所にきた。
「汪様、御生まれになりました。世継ぎ様です」
「おお、そうかそうか!」
王様はうれしそうに赤ん坊を手に持った。
そして赤ん坊の顔を見て、決めた。
「名前は“ひとみ”だ。この子の目は力強い目をしている。きっと、この国を大きくしてくれるはずだ!」
そういうと、王様は赤ん坊を天高く掲げた。
西の国の子、ひとみの誕生だった。
- 3 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/29(月) 11:55
- 「サヤカ」
王様は名を呼んだ。
「・・・・はい、ここに」
と、いつのまにかそこには、19か20歳ぐらいの一人の女性がいた。
サヤカと呼ばれた女性は、王様の前に来ると方ひざをついた。
王様は赤ん坊をサヤカに渡した。そしてサヤカはそれを受け取った。
「この子を立派に育ててくれ。お前が持っているすべての知恵と力を、この子に与えてくれ」
王様の願い、サヤカは赤ん坊を抱き、立ち上がった。
そして、王様に一礼をすると、王室から出て行った。
「仰せのままに、国王様」
サヤカの言葉に、王様は満足そうに微笑んだ。
「これでこの国はワシの・・・・ひとみのものになる」
- 4 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/29(月) 11:57
- 西の国の世継ぎが生まれる三ヶ月まえ。
ここ、東の国の王室にも赤ん坊が生まれていた。
「マキ、マキは居らぬかー」
西の国の国王は大声で人の名を呼んでいた。
「王様、お呼びでしょうか?」
国王の目の前に、17,18ぐらいの少女が来た。
「マキ,いたか。実はな・・・・・」
国王は小さなベットに寝かされていた赤ん坊を抱き上げた。
「この赤子、リカという名の私の子供」
「はい。先日お生まれになりました」
- 5 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/29(月) 11:57
- 「そうだ、このリカを育ててくれぬか?」
「は?」
「そう、マキの永き経験をこの子にすべてを教えてほしいのだ。出来るだけでいい。マキが知っていることすべて」
国王はまきに赤ん坊を手渡した。
マキは受け取り、赤ん坊の顔を覗き込んだ。
赤ん坊はマキの顔を見て、うれしそうに笑った。
「かしこまりました。私の知っているものをすべて、リカ様に」
マキは赤ん坊を連れて王室を出た。
その姿を見て国王は笑みを浮かべた。
「これでこの国はワシの・・・・リカのものになる」
- 6 名前:最後の国 投稿日:2003/12/29(月) 11:58
- 東と西、それぞれの国の跡継ぎが生まれた。
そしてそれから17年の時が流れた。
- 7 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:10
-
「てやっ、てやっ」
17歳になったひとみはお城の庭で剣術の練習をしていた。
ひとみはすっかり大人っぽくなり、見る人すべてが目を奪われるほど、華麗に気高く成長していた。
「ひとみ、だいぶ良くなったな」
ひとみの練習を指導していたのは、ひとみの教育係のサヤカだった。
サヤカは見た目は20歳ぐらい。サヤカの姿はまったく成長していなかった。
「ほら、少し休憩しなよ」
サヤカはひとみにタオルを渡した。
ひとみはそれを受け取ると、サヤカをみた。
「ん?どうした?」
「いや・・・サヤカさん小さくなったなと思って」
そう、今のひとみはサヤカを見下ろすぐらい、身長も伸びていた。
ここ数年、ひとみはグングンと伸びていき、あっという間にサヤカの身長を抜かしていった。
- 8 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:10
- 「お前が大きくなったんだよ。大量のご飯を食べ、激しい運動を毎日すれば、身体も成長していくだろ。でも、ホント大きくなったな」
サヤカはうんうんとうれしそうに頷いていた。
そんなサヤカを見てひとみは思わず笑った。
「なんかサヤカさんっておばさんみたい」
「なっ!!」
ひとみの言葉にサヤカは思わず言葉を詰まらせた。
そして、“はぁ”とため息をつくと、ひとみからタオルを奪い取った。
「・・・昔は可愛かったのにな。大きくなるにつれてだんだんに生意気になっていって・・・・・ひとみ、打ち込み3セット追加な」
「えーーー鬼―――」
「やれ!」
ひとみは文句を言いながらも再び剣術の練習を始めた。
- 9 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:11
- サヤカはそんなひとみの姿を見て、少し寂しげに笑った。
「ひとみが生まれて、どんどんと大きくなっていって、私より大きくなっていって、私より大人になっていく。うれしいけど、寂しいもんだな」
サヤカは腰につけている刀を手にとって。
いつのころからずっと持っている刀。サヤカの相棒になっている。
「今は、ひとみの成長だけ願うか・・・」
サヤカは刀を構えながらひとみに近づいていった。
「ひとみ、相手になろう」
刀を構えたサヤカを見て、ひとみはうれしそうな顔をした。
そして、ひとみもサヤカに向かって持っていた剣を構えた。
「・・・負けませんよ」
「おもしろい」
お城内の庭では、刀同士がぶつかる音が響き渡った。
- 10 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:11
- 「マキちゃん、クッキー作ってみたの。どうかな?」
東の国の跡継ぎリカも、17歳になった。
リカは見た目も性格もすごく女の子らしくなり、趣味はお菓子作りというほどだ。
「んあ?リカちゃん、出来たの?」
マキは読んでいた本から目をあげた。
マキの姿はサヤカ同様まったく成長しないまま、見た目18歳ぐらいだった。
「うん♪今日も上手に出来たよ。ねぇねぇ、食べてみてよ」
リカはうれしそうにマキにクッキーを差し出した。
マキは、出されたクッキーをひとつつまみ、口に運んだ。
「・・・・うん、美味しいよ。リカちゃんますます腕を上げたね」
「そう?良かった〜。今度は隠し味に・・・・・・・」
マキに褒められ、リカはうれしそうにクッキーについて語り始めた。
マキは、リカの話半分に聞きながらクッキーをどんどん食べ始めた。
(ますます大きくなって・・・・)
マキは一生懸命話をしているリカを見てうれしそうに微笑んだ。
リカが赤ん坊のころからずっと世話をしていたマキ。
そんなリカの成長はマキにとってうれしいことこの上ない。
- 11 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:12
- 「もう、マキちゃん聞いている?」
実はあまりはなしを聞いていなかったマキを、リカは少し頬を膨らませて怒った。
マキはばつの悪そうに笑った。
「ごめんごめん。少しボーとしていた。美味しいクッキーに美味しいお茶。幸せだね〜」
「何それ〜?マキちゃんおばあちゃんみたい」
「そう〜?びっくりだな」
「雰囲気がね。でも、見た目は若いよ。だって、私より若く見えるもん」
「そうかな?へへ・・・・」
マキは照れたように笑った。
笑っているように見えているマキだが、実は本心から笑っていない。
だが、マキは悲しみを表に出すことは出来ない。
悲しみだけではなく、喜怒哀楽すべて出していない。
今のマキには必要ないことだから。
- 12 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/29(月) 12:13
- 「ばあやは姫様の花嫁衣裳を楽しみにしていますぞ」
「マキちゃん、なにそれ?」
「ん?ばあやの真似。リカちゃんはきっといいお嫁さんになれるよ」
「そうかな?きれいな花嫁衣裳着たいな」
リカはウキウキしていた。
女の子なら一度はあこがれる姿。
マキはリカの花嫁姿を想像した。それはそれは素敵な姿だった。
(私が手塩を掛けて育てたリカちゃん・・・この子の旦那になるのは一体どんな・・・・一回ぐらい殴らないとね)
マキはそのうち起こるであろう事を思い出して、クスッと笑った。
- 13 名前:今日はここまで 投稿日:2003/12/29(月) 12:17
- 初めて書かせていただきます。
なんせ駄文なのでsageでお願いいたします
では、ごきげんよう
- 14 名前:つみ 投稿日:2003/12/29(月) 14:44
- なにか新しい感じでいいですね!
- 15 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:25
-
・ ・・・・・西の国・・・・・・・
夜も更けてきたのでサヤカは自室に戻った。
サヤカの部屋は一介の使用人にしては、かなり大きな部屋を使っていた。
それは、ひとみの教育係だから、それともまたほかの理由があるのか。
まあ理由はどうあれ、サヤカには大きな部屋を与えられている。
しかしサヤカはせっかくの大きな部屋をまったく活用していなかった。
部屋の真ん中にはベットがあり、部屋の隅に机があり、そしてあとは無造作に置かれたギターが一本。ただそれだけだった。
サヤカは置かれていたギターを手に取った。
そして窓際に座ると、弾き始めた。
それは、今の時代なかなか聴いたことのないような曲調。しかし、どこが懐かしくて、暖かい曲だった。
サヤカは夢中に弾き始めた。
「・・・・なんだ・・・どうして・・・・」
何故かサヤカの目から涙が流れていた。
それはもう突然。だが、この曲を弾いて涙を流すのは今回だけではない。
今日みたいに月がきれいな満月の夜。月に向かって曲を弾くと、どうしても涙が出てしまう。
- 16 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:27
- 「くそっ・・・・強くなれ・・・・強くなれ、自分・・・・・」
サヤカは涙を流しながら曲を弾き続けた。
誰から聴いたわけではなく、記憶のそこにあったこの曲。
この曲を弾き続ければ、年をとらない自分の身体、出生の秘密がわかるかもしれない。
当てのない手がかり、サヤカは眠くなるまで弾き続けた。
- 17 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:28
-
・ ・・・・・東の国・・・・・・・
マキは部屋にいた。
頭の中に聞こえてくる、ギターの音楽。
マキがいるお城の近くで、こんな夜更けにギターを弾いている人はいない。
だが、マキには音が聴こえる。
マキは座っていたソファーから立ち上がった。
そして、頭の中で響く曲に合わせて踊りだした。
マキもかなり部屋を与えられていたので、踊るにまったく不自由はなかった。
マキが踊る踊りは、ギターの音とうまく合っていた。
まるで、この踊りのために曲があるように。
だが、マキの聴いている曲、どこで誰がどんな風に弾いているのかわからない。
ただわかるのは、マキにしか聴こえない、マキのための曲がこの時間に鳴り響いているということだ。
- 18 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:29
- 「♪〜♪〜〜」
マキは踊りながら、唄を歌った。
踊りに合わせて自然に口ずさむ歌。
マキは操られているように踊り続けた。
「あっ・・・・・」
マキの踊りが止まった。マキの頭の中に響いていた音楽が止まったからだ。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
踊っていたので、少し呼吸が荒くなった。
マキは火照った身体を冷やすために、窓を開け、テラスにでた。
今日はとてもきれいな満月。
マキは月を見た。
「泣いてる・・・・泣かないで・・・・お願いだから・・・・」
マキは月に向かって言った。
一体誰に言っているのか?マキにしか見えない相手なのか?
それとも、いつの間にか泣き出している自分に言っているのか・・・・・
マキは流れている涙を指で拭き取り、その場にしゃがみ込んでしまった。
- 19 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:30
-
・ ・・・・・西・・・・・・・
「ふわぁ・・・・・」
ひとみは朝起きて、朝食の席に着いた。
さすがは王家。朝から豪華な食事となっていた。
「おはようございます、ひとみ様」
メイドの一人が、ひとみの席に食事の準備をしていった。
ひとみは周りを見渡した。
大きなテーブルに、ひとみがひとり。その周りを数人の使用人が囲むように立っていた。
ひとみは誰かを探すようにきょろきょろとあたりを見回した。
「サヤカ様ですか?」
食事の準備をしていたメイドが、ひとみに聞いた。
「あっ・・・・うん」
ひとみは何故か少し照れたように言った。
そんなひとみをみて、メイドは少し微笑んだ。
ひとみは小さなころからずっとサヤカと一緒にいた。
だからひとみにとってサヤカは親以上に近い存在になっていた。
- 20 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:31
- 「サヤカ様なら、朝食をお済になられて今はご自分のお部屋にいらっしゃると思いますよ」
「そう、ありがとう」
ひとみは急いで朝食を食べ始めた。
あまりかまずに飲み込んでいく。
この場にサヤカがいたら、行儀が悪いと注意されるところだが、一刻も早くサヤカに会いたいので急いで食べた。
「ご・・・ごひぃほーはん」
ひとみは口にたくさん詰め込んだまま、席を立った。
メイドたちが水を差し出そうとしたが、ひとみは構わずダイニングを後にした。
- 21 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:33
-
“トントン”
「サヤカさん?いる?入っていい?」
ひとみはサヤカの部屋の前にきた。
ドアを叩いて中の伺いを立てていたら、ドアが開いた。
「ん?なんか用?まあ、入って」
サヤカはひとみは自室に快く招きいれた。
ひとみはサヤカの部屋の中に入っていった。
「相変わらず、何もない部屋だね」
ひとみは部屋を見渡した。
ベットと机しかない殺風景な部屋。
何度も来ているひとみは、この何もなさ過ぎるのを少し不思議に思っていた。
「何もないわけじゃないよ。ほら、ギターがあるし」
サヤカは部屋の隅に置いてあるギターを持った。
しかしひとみは指を一本立てて“ちっちっち”と言った。
- 22 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:34
- 「普通、年頃の女性の部屋には洋服が溢れんばかりあるんじゃないの?あと、かわいい小物のとか??」
「年頃って・・・ひとみはいったい私が何歳だと思っているんだ?」
「・・・・さあ?」
少し呆れ顔のサヤカ。
ひとみが生まれたころからすでに今の姿でいたサヤカ。
はっきりとした年齢はひとみにはわからなかった。
「サヤカさんって最低でも20歳は超えているよね?私が子供のころから、まったくかわっていないよね。てことはかなり年取ってる?」
ひとみの興味津々の質問。
しかしサヤカはひとみの質問には答えず、ベットに座ってギターを弾き始めた。
サヤカの弾いている曲は、昨夜弾いていた曲ではなく、今この地方で人気の曲だった。
ひとみは、質問をあきらめてサヤカの隣に座った。
「今城下でよく流れているよね。歌うたいが広場で歌っているみたい」
「そうだな。ここにもよく聴こえてくる」
「サヤカさん、ギター弾くの好きなの?」
「・・・そうだな。ギターもって旅するの楽しそうだな」
- 23 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:35
-
サヤカはポツリとつぶやいた。
そんなサヤカの言葉を聞いて、ひとみはあわてたようにサヤカに向き直った。
「サヤカさん、どこにもいかないよね!?」
慌てたひとみ。サヤカはそんなひとみを見て、優しく笑った。
そして、子供をあやすようにひとみの頭を優しくなでた。
「お前が成人するまで私がビシビシと教育してあげるよ」
「ホント?」
「ああ、王様との約束だしね」
「父上は・・・・いいよ」
ひとみは急に暗くなってしまった。
最近の王様は、ひとみとはまったく関わりを持たなかった。
最近・・・ていうより、以前から。以前から王様はひとみにはまったく興味なかったみたい。
王様にとってひとみは、ただ国を受け継ぐだけの存在でしかなかった。
- 24 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2003/12/31(水) 23:35
-
「父上は、私のこと見てないんだ。だから、私がいなくなっても気づかないよ」
そういうひとみの言葉はもっともだった。
ひとみが最後に王様に会ったのは、もう一週間も前の事だった。
いったいどこで何をやっているのやら。
「親がいるだけ、いいと思うのだけどな」
「えっ?」
「何でもない」
小さくて聞き取りにくかったサヤカの言葉を、ひとみは聞き返した。
しかしサヤカは、もう一度答えることもなく、持っているギターで曲を奏でただけだった。
- 25 名前:今日はここまで 投稿日:2003/12/31(水) 23:42
- >>14つみ様
ありがとうございます。がんばります。
とりあえず、西だけ書きました。
市井さんの誕生日にあわせたかったので。
では、来年も良いお年を。
ごきげんよう〜
- 26 名前:つみ 投稿日:2004/01/01(木) 01:55
- なにか秘密がありそうですね〜!
次回もまってます!
- 27 名前:S 投稿日:2004/01/02(金) 00:44
- とてもおもしろい設定ですね。つづき、待ってます☆
- 28 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/02(金) 18:07
-
・ ・・・・・東の国・・・・・・
「マキ、マキ起きてよ、朝だよ」
リカはベットで寝ているマキを起こしている。
すでに太陽は真上に昇っている。
しかしマキはまだ起きていなかった。
いつまでたっても起きてこないマキを、リカはしびれを切らして起こしにかかった。
「んあ〜・・・・」
激しく揺さぶられて、もぞもぞと起き上がってきた。
いったい何時間寝ていたのか、それでも眠そうな顔でマキは起きてきた。
「もう、マキちゃん。もうお昼よ」
リカは少しふくれっつらになっていた。
早くマキと遊びたかったのに、なかなか起きてこないマキに八つ当たりをしていた。
「んー、もうそんな時間?」
マキは近くにあった時計をみた。
時刻はすでに12時近く。
特別扱いのマキでも、一応使用人だからさすがに寝すぎであろう。
マキは仕方がなく起き上がった。
- 29 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/02(金) 18:07
-
「おはよ〜リカちゃん」
「うん、おはよう、マキちゃん」
まだまだ眠そうなマキに、やっと起きてくれたことにうれしいリカ。
リカはクローゼットにしまってある、マキの服を取り出した。
「マキちゃん、これでいい?」
リカが持ってきた服は、異様に露出度が高い服だった。
マキは思わず絶句した。
「リカちゃん・・・なんでそんなの選ぶの?」
「だってクローゼットにあったし。マキちゃん、似合いそうじゃない?」
リカはマキに服を差し出した。
マキはしぶしぶ服を受け取った。
金色の東洋系の肌を強調する服。普段だったら絶対に着れないだろうという服。
「こんなの、着れないよ」
「じゃあ、なんで持っているの?」
「・・・なんでだろう?」
マキは服を見つめた。
いつのころかずっと持っている服。
ここ数年、着たのは数回しかなかった。
- 30 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/02(金) 18:08
-
「ねえマキちゃん着てみて」
「いや!」
「即答しなくても・・・・・お願い、少しだけでいいから」
「う〜・・・」
「後でピスタチオ持ってくるから」
「やる!」
リカの必死に願い(?)に胸を打たれた(?)マキは、手渡されていた服に着替え始めた。
目の前にリカがいるのだが、小さいころからの付き合いなので、目の前で着替えることに躊躇なんてまったくなかった。
ちなみにリカが言ったピスタチオとは東の国の端の地方で収穫される豆の一種である。
「じゃーん、どう?」
「うわー、綺麗〜」
マキは露出度の高い服に着替えた。
見た目は何処かの国の踊り子みたいだった。
リカはマキの艶姿にうっとりしながら見つめていた。
- 31 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/02(金) 18:09
- 「マキちゃん、本当の踊り子さんみた。ねえ、何か踊ってみて」
「んも〜仕方がないな」
リカにねだられ、マキは踊り始めた。
マキが踊っている踊りは、ちょうど城下町から聞こえる音楽に合わせた踊りだった。
昨夜、踊っていた踊りとはまったく違う雰囲気の踊りだった。
マキの動きはしなやかで、この国のプロの踊り子以上の素晴らしい動きをしていた。
「マキちゃん・・・すごい・・・」
リカはただボー然とマキの踊りを見つめていた。
プロ以上のプロの動き。
今まで複数の踊り子たちを見ていたリカも,初めて見る踊りだった。
「ふぅ・・・もういい?」
マキは動きを止めた。
ボーと見つめていたリカが、はっと気づいた。
「あっ、ごめん・・・お疲れ、マキちゃん」
リカは置いてあったタオルをマキに手渡した。
マキは汗を拭きながら、その場で座った。
そしてリカはマキの隣に座った。
「マキちゃん、すごい上手だね」
「そう?ありがとう」
「前に何かやっていた?」
「・・・・昔過ぎてわかんないや」
そういってマキはあっけらかんと笑った。
マキの年齢は、リカはもちろん、城にいるすべての人も知らなかった。
いつのころからマキは、この城の使用人としてここにいた。そのときから、この姿、まったく変わっていなかった。
- 32 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/02(金) 18:09
-
「ねぇマキちゃん。マキちゃんは踊り好き?」
「踊り?・・・・好きだよ」
「じゃあ・・・踊りのお仕事したい?」
「・・・・・そうだね」
マキの言葉に、リカはびくっとした。
もしかして、マキは・・・・・・
「マキちゃん・・・どこにも行かないよね?」
「え?・・・・うん・・・・まぁ」
歯切れの悪いマキの言葉。リカはますます不安になった。
「ね、お願い。どこにも行かないで」
「・・・うん。リカちゃんが素敵なお嫁さんになるまで、一緒にいるよ」
「ほんと?」
「うん、王様もそれが願いだし」
「・・・パパ?・・・そう・・・・でも、いいの。マキちゃんがずっと私と一緒にいてくれるなら」
「そだね」
マキは必死にすがっているリカの身体を優しく抱きしめた。
小さなころからずっと見ていたリカ、今はリカのことだけしか考えられない。
身体が大きくなっても、まだまだ小さなお姫様を、マキは優しく包み込んだ。
- 33 名前:今日はここまで 投稿日:2004/01/02(金) 18:18
- >>26つみ様
また読んでくださったのですね♪ありがとうございます。うれしいです。
一応終わりまでの構想はあるのですが、それをうまく文章に出来るか少し不安になっています。
でも、がんばります。
>>27S様
設定、面白いですか?そう言って下さるとうれしいです♪
未熟者なので、上手く文章に出来るかわからないのですが、精一杯がんばります。
細々とやっているのですが、見てくださる人がいると思うだけで、やる気が出てきます。
本当に、ありがとうございます。
それでは、新年おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
ごきげんよう〜
- 34 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:18
- ・・・・・・西の国・・・・・・
- 35 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:18
- 「サヤカさん、遊びに行こう」
「はっ、何を唐突に・・・」
ずっとギターを弾いていたサヤカに、ひとみは外出の誘いをした。
突然のことに、サヤカは驚いた。
ひとみは一応王家の一人娘。
そんなひとみの外出は護衛で十数人。行く場所の下調べは数日前に行い、当日まで警備にあたる。
そして、外にいていい時間はたった数時間だけ。
つまり、ひとみが外出したいと思ったら、もっと前に言わないといけない。
「・・・いつ?外出手続きするよ」
「今!今すぐに」
「無理!」
サヤカはあっさりと断った。
あまりにもあっさりしすぎるサヤカの言葉に、ひとみは少し不機嫌になった。
- 36 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:19
- 「ひどいよ、サヤカさん・・・サヤカさんだけは私の気持ちをわかってくれると思ったのに・・・・」
「・・・ひとみ?」
何か今にも泣き出しそうなひとみの雰囲気に、サヤカは少し戸惑った。
ひとみはチラッとサヤカを見ると、言葉を続けた。
「他の使用人たちは、何かしようとしても口をそろえて“してはいけません!”って言う頭の固い考えの人しかいないけど、サヤカさんだけは私のことを考えてくれて・・・・・・」
そういうと、下を向いて肩を振るわせ始めた。
泣いているのか?あの何があっても弱い姿を見せない気丈なひとみが。
ひとみはもう一度サヤカの様子をみた。
サヤカは何も言わずひとみは見つめていた。
(よし!もう少しだな・・・・)
「お願いサヤカさん。サヤカさんは私の気持ちわかってくれるよね?」
「まぁ、お前が幼子のころから見ているからな」
「誰にも見張られずに外に出たい。だから・・・・いいでしょ!?」
- 37 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:20
- ひとみはバッと顔をあげてサヤカを見た。サヤカの答えを聞くために。
ひとみの目からはいつの間にか涙が流れていた。
(確実に堕ちるな・・・・)
ひとみは心の中で勝利を確信していた。
サヤカは、無表情ながらひとみをみつめていた。
そしてにこっと笑って口を開いた。
「・・・・ダメ」
「えっ!?」
思いがけない言葉に、ひとみは驚いた。
絶対に大丈夫と確信していたので、まさかそんな言葉が出るとは露聊かも思わなかった。
ひとみは驚き隠せないまま、口をパクパクさせながらサヤカを見つめていた。
そんなひとみを見てサヤカは意地悪く、ニヤッと笑った。
「まだまだだね、演技。泣き落としをしたいなら、チラチラと様子を見るな。バレバレだった」
さすが、ひとみを小さなころから見ているサヤカ。ひとみのことならだいたいわかっている。
だから、ひとみが嘘を吐いているかどうか、演技かどうかはサヤカから見ば一目瞭然だった。
ひとみは悔しそうにサヤカを見つめた。
サヤカは相変わらず、ニヤニヤと笑い続けていた。
- 38 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:21
-
「ちっ・・・・情に流せば絶対に墜ちると思ったのに」
「ふんっ、涙なんかで墜ちるものか。あっ、もしかしたら色っぽく迫られたらどうだろう?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「そっか・・・」
サヤカのからかい言葉。ひとみは何かを思った。
そして、サヤカのすぐ前に立ちはだかった。
このひとみの行動に、サヤカは疑問符を浮かべた。
「どうした?ひとみ」
「いや〜サヤカさんに色仕掛けで迫ってみようかな?と思いまして・・・・」
と言ってすぐひとみは少し背の低いサヤカの頬をなでた。
サヤカは今から何をされるか、期待をした目でひとみを見つめた。
ひとみはサヤカの頬に手を添えたまま、サヤカの顔を少し上向かせた。
上から見つめるサヤカの顔は、この国の人間には珍しい感じで、目鼻立ちが整った顔、そして中世的な雰囲気が醸し出されていた。
- 39 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:21
- (サヤカさんってこんなに綺麗だったんだ・・・・・)
ひとみは思わずサヤカの顔に見入ってしまった。
長年一緒にいるサヤカだが、こんなにも近くで見ることがなかった。
(ごくっ・・・・いいよね?・・・・)
ひとみは一回生唾を飲むと、そっとサヤカに近づいていった。
サヤカはというと、ひとみの行動を何をするわけでもなく、ジッとひとみの顔が近づいてくるのを見つめ続けた。
- 40 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:22
- あと数センチで、唇が触れる。・・・・・と、その時。
“コンコン”
「ひとみお嬢様、サヤカ様。お飲み物をお持ちしました」
と、メイドの一人が飲み物を持って部屋に入ってきた。
ひとみは突然のメイドの登場に、サヤカに触れることなく、サヤカの顔を通り越し肩に顔を埋める様な形になった。
サヤカは肩にもたれ掛かっているひとみの頭を、“ぽんぽん”と叩くと笑った。
「残念だったね、ひとみ」
「うー・・・・・・」
ひとみは本当に悔しそうにサヤカを見た。
サヤカは笑いながらひとみのほっぺを“びよーん”と伸ばした。
そんな二人の様子は、仲の良い姉妹のようだった。
「あらあらお二人とも、仲のよろしいことで」
様子を見ていたメイドも、微笑ましい光景に頬を綻ばせていた。
- 41 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:25
- ☆ ☆ ☆ ☆
- 42 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:25
- 「本当にダメですか?」
「ダメ」
サヤカの部屋で、メイドの持ってきたお茶を飲みつつ、ひとみは何回もサヤカにねだった。
その度にサヤカは、一言で拒否し続けた。
「本当に本当に?」
「本当に本当」
なかなか食い下がらないひとみに、サヤカは少し嫌気が差し始めた。
くじけないように、すぐにあきらめないように、と小さなころから教えていたサヤカにとって、このひとみの諦めの悪さは喜ばしいことなのだが、今回は自分に被害が来ているので複雑な気分になっていた。
「じゃあ、決着をつけましょう」
「・・・ああ」
ひとみの言葉にサヤカはうなづいた。
そしてお互い持っていた木刀を構えた。
- 43 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:26
- ここは中庭。
いつまでたってもひとみが諦めないので、ついに力で諦めさせることにした。
ひとみはサヤカの教育の上、どんどんと力をつけている。
はっきり言ってこの城の兵士より強いかも知れない。
しかしサヤカには勝算があった。
いくらひとみが強くなったといっても、サヤカは負けるはずがない。余程のことが起こらない限り。
それほど、サヤカには自分の力に自身はあった。
そう・・・・余程のことがない限り・・・・・
- 44 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:26
- 「ではルールを説明する」
「はい」
「私はひとみをから10本とれば勝ち。ひとみはハンデとして、一回だけ私から一本取るだけでいい」
「本当?」
「ああ。私が10本取るか、ひとみが一本取るか。簡単だろ?でも、これで負けたら外出は諦めるんだよ」
「・・・・わかった」
「では・・・・・始め!」
サヤカの言葉で、試合が始まった。
開始早々、ひとみはすぐに面を取られてしまった。
すばやい秒殺。
打ち込むひとみにサヤカはたやすく交わし、隙をついてひとみに打ち込む。
必死なひとみに対してサヤカには余裕を感じられた。
それもそのはず、サヤカにとって剣術は得意分野であり、昔から身に付けている生きる術だった。
- 45 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:27
- 「ひとみ、後一本だよ」
いつの間にか、9−0でサヤカがラスト一本になっていた。
「はぁ、はぁ・・・・」
ひとみの表情は今にも倒れそうなほど、つらそうだった。
しかしサヤカは涼しげな顔を浮かべている。・・・・・実力の差がかなりはっきりしている。
ひとみは木刀を杖にして、自分の身体を支えている。
今のひとみは、支えなしで立てないほど身体も疲れ果てている。
この状況に、ひとみの勝ちはありえない。
今、サヤカがひとみを目掛け木刀を振りかざせば、確実にサヤカの勝ちになる。
しかしサヤカはそのようなことはせず、ひとみの体力が戻るのを待っていた。
たとえ戻ったとしても、ひとみの実力ではサヤカには勝てない。
では、どうして?
- 46 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:27
-
〜〜まだ、まだだもん。まだ、負けじゃないもん
〜〜おっ、まだやるのか・・・。どんなにやっても・・・には勝てないよ
〜〜そんなのわかんないよ、・・・ちゃん。
〜〜うしっ、かかって来い・・・
〜〜いくよ、・・・ちゃん
- 47 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:28
- (なんだ・・・これは・・・・)
サヤカの頭には不思議な言葉が響いていた。
誰かと誰かの会話だか、話をしているのがいったい誰なのか良くわからない。名前部分がかすれて聴こえないから。
しかし、声の感じからしたら、片方は自分のような感じがしてならない。l
だったら相手は誰なのか?
目の前のひとみ?・・・・まさか。
ひとみは相変わらず、ふらふらになりながらも、目線だけはサヤカを見ていた。
絶対に負けない、という気迫はあった。
しかし、ひとみの身体はすでに限界になっており、あと一振りが精一杯であろう。
- 48 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:29
- (誰だ、いったい誰だ・・・・)
サヤカは思いっきり頭を振った。
声をどこかに消すために。
そしてひとみに向き直った。
サヤカもあと一振りで決着付けることができる。
目の前には今にも倒れそうなひとみ。
教育係のサヤカとしては、可愛い教え子を早く楽にしてあげたい。
サヤカは木刀を構えた。
それをみたひとみも、ふらふらしながら木刀を構えた。
「ひとみ、これで終わりだ・・・・」
「くっ・・・・・」
サヤカはひとみに目掛けで木刀を振り落とそうとした。
これで終わり・・・・・と、その瞬間。
- 49 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:29
-
【どこにいるのーーーーーー】
- 50 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:30
- 突然サヤカの動きが止まった。
サヤカの頭に大きく響いた、懐かしい声。
その言葉で、なぜか金縛りに会ったように動けなくなったサヤカ。
そんなサヤカを見て、ひとみはすばやく行動した。
「もらった、サヤカさん」
一瞬の隙を突いて、ひとみはさやかに木刀を振りかざした。
ハッと我に返ったサヤカは、持っていた木刀をガードにまわした。
“ばしっーーーーーん”
- 51 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:30
- ・・・・・・東の国・・・・・・
- 52 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:31
-
「ふぅ、マキちゃんの綺麗な踊りも見れたし、お散歩行かない?」
「そ・・そうだね」
リカはいまだうっとりした顔でマキを見つめていた。
マキは、踊り子の衣装から着替え、いつもの動きやすい服装になっていた。
マキはリカの手を取り、中庭に向かった。
- 53 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:32
- ここのお城には庭がたくさんあった。
大きな敷地内には、リカの好みに作られたような庭が数箇所ある。
なかでも、ここ中庭はリカの一番のお気に入りになっていて、マキとリカのお散歩の定番になっていた。
「ん〜気持ちい」
リカは手を上にあげ、思いっきり背伸びをした。
天気もとても良い。太陽も程よい暖かさを放っていた。
木々に反射する光で、庭はものすごく快適な空間になっていた。
「んあ〜なんか眠くなっちゃった」
マキは近くにあったベンチに座った。
ぽかぽか陽気に誘われて、マキ眠気が誘ってきた。
- 54 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:32
-
「おやすみ〜」
「んもーマキちゃん。なんで眠いの?さっき起きたばかりなのに」
「だってリカちゃんが躍らせるだもん。体力使ったよ」
「そんなにも長く躍らせてないじゃない。ねね、起きて遊びましょう」
「リカちゃん一人で遊んで。ここで待ってるよ」
リカがどんなに起こしてもマキは起きようとしなかった。
ベンチに座って気持ちよさそうに目を閉じているマキ。
そんなマキを見て悲しそうな顔をしたリカ・・・・だが、一気に笑顔になった。
そしてマキの耳元でささやいた。
「起きないと、一人でお城出ちゃうわよ」
“ばちっ”と、マキの目は開いた。
そして慌てた様にリカをみた。
「それはダメ」
「だったら私と遊んでね」
- 55 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:33
-
慌てているマキと、ニコッと笑っているリカ。
これはリカの作戦だった。
リカが一人でお城の外に出る。それは危険すぎることだった。
王様からリカの教育の全てを任命されているマキが、そんな危険なことをやらせるわけにはいかない。
マキはリカを見つめた。
蔓延の笑みを浮かべたお姫様。自分はリカの作戦に見事に引っかかってしまった。
「はぁ・・・リカちゃんには敵わないや。で、何して遊ぶの?お花摘み?」
「ん〜それも魅力的だけど・・・私ねマキちゃんのこと聞きたいな。何でもいいから」
「なんでもいいって言われても・・・・・・」
「じゃあさ、前はどこで何をしていたの?」
「前?前ってどれぐらい?」
「私の生まれる前とか」
「んー、いつの間にかこのお城にいたしね・・・・そのもっと前となると、何百年も前になるからよくおぼえてないな」
「えっ、マキちゃんってそんなにも生きてるの?」
「うん」
- 56 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:33
- マキの言葉にかなり驚いたリカ。
リカの生まれたころから、今の姿でずっと一緒にいたマキ。
どんなに時がたっても姿は変わらない、そういう体質だから、と以前にマキに聞いたことがある。
どうしてそんな体質なのかリカには理解できなかったけど、実際に目の前にそのマキがいるから納得するしかなかった。
リカと一緒にいた17年間。その前から生きていたというわけだから20年ぐらい足した、37歳ぐらいがマキの年齢だと思っていた。
「マキちゃん、40歳ぐらいかな?と思ってたのに・・・・」
「違うよ〜、だってここの王様の生まれるときもこのお城にいたよ」
「パパが?・・・・今のパパ確か50過ぎてるよ・・・・マキちゃんは50歳以上??」
「だから〜何百年生きてるって」
「うそっ?!」
- 57 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:34
-
驚愕な事実を突きつけられたリカは、頭が混乱していた。
まぁ、リカが混乱することも仕方がない。
混乱するような体質のマキが目の前にいるわけだし。
(ふわぁ・・・・説明するの、面倒だな・・・・)
マキは大きなあくびをした。
目の前ではリカはなにやらブツブツといっていたが、マキの耳までは聞こえなかった。
何百年も生きる人間なんているはずがない。
しかし、マキは生きている。だったら、マキは人間ではないかもしれない。
では、マキは何なのか?
マキはリカをみた。
何かを一生懸命に考えているリカは、微笑ましく感じる。
それは、マキがリカを小さなころから見ている、という親心から出ているものかもしれない。
(一生懸命になっちゃって、リカちゃん可愛いな・・・・)
マキは改めてリカをみた。
そして、リカの目を見てマキは一瞬驚いた。
(・・・・似てる。リカちゃんの真剣な目・・・・あの人に・・・・・)
- 58 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:34
-
〜〜まだ、まだだもん。まだ、負けじゃないもん
〜〜おっ、まだやるのか・・・。どんなにやっても・・・には勝てないよ
〜〜そんなのわかんないよ、・・・ちゃん。
〜〜うしっ、かかって来い・・・
〜〜いくよ、・・・ちゃん
- 59 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:35
- マキはハッとした。
突然頭に広がった懐かしいであろう光景。
そして多分、自分と自分の知っている人。
その人の真剣な目が、今のリカの目と似ていた。
でも、マキはその人が一体誰なのかわからなかった。
多分、知っている相手・・・・・・
(誰?・・・・知っている・・・よね?)
マキは空を見上げた。
雲ひとつない青空。
マキは天に向かって叫んだ。
- 60 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/05(月) 01:35
- 「どこにいるのーーーーーー」
普段出すことのないマキの大声。
リカもマキの叫び声を聞いて、驚いてマキをみた。
しかしマキは気にせずに、空を見続けた。
(声・・・届いたよね?)
- 61 名前:今日はここまで 投稿日:2004/01/05(月) 01:38
- 自分個人でいちよしが結構お気に入りなので、少し入れてみました。
でも、これはいちいしにはしませんけどね。
アンリアル系は苦手としているので、少し書きにくいです。かなりめちゃくちゃな文章になってしまいます。
でも、読みやすいように、意味が通じるようにがんばって書きます。
では、ごきげんよう〜
- 62 名前:つみ 投稿日:2004/01/05(月) 13:31
- この2人にはどんな事が・・・
気になります!
- 63 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:01
- ・・・・・・西の国・・・・・・
- 64 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:02
-
「はぁ、まさかひとみに一本取られるとはな」
「へへ、ウチだってサヤカさんに鍛えられて力つけたもんね」
結局サヤカはひとみに一本取られてしまった。
そして約束どおり、城の外に出かけることになった。
もちろん、ほかの使用人には内緒で、二人っきり。
今は昼を少し過ぎたぐらい。
夕方には帰るという約束で、外に出た。
町だと,住民に見られる可能性があるので少し遠い場所。
今いる地のより、東方向に向かって歩き出した。
- 65 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:02
- サヤカは護身用にいつもの刀。
そしてひとみのお願いで、小さなギター。弾いてほしいそうだ。
ひとみは髪型を少し変えた。髪形を変えるだけで印象がまったく違ってくる。
さすがにお姫様とばれると厄介なので、極力変装をしてみる。
服装も、いつもの豪華な服ではなく、一般市民が好んで着るようなラフな格好。
「この服動きやすくてかっけー」
と、ひとみはわけのわからないはしゃぎ方をしていた。
こうしてみると、ひとみはやはり普通の17歳の女の子だった。
(ひとみもなんだかんだいって、まだ子供なんだよな)
サヤカは無邪気にはしゃぐひとみをみて、しみじみとおもった。
- 66 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:03
- サヤカとひとみはどんどんと東に向かって歩いていった。
町を抜け、野原を抜け、森を抜け、そしてまた町を抜け、野原を抜け・・・・・
気がついたら、お城からだいぶ離れた場所に来ていた。
「結構歩いたな。疲れた、少し休憩しよう」
サヤカはその場所に座った。
ここは少し小高い丘のうえ。
見晴らしがよく、この西の国を一望できる。
「何だよサヤカさん。もう疲れたの?やはり年だね」
ぎろっ・・・・
ひとみの年発言にサヤカはひとみを一睨みした。
やはりサヤカもれっきとした女性。年のことを言われると、気になります。
「おーこわいこわい」
ひとみはおどける様に、サヤカの元を離れた。
そして、この丘を楽しそうに走り回っていた。
- 67 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:03
- 「ふう・・・これで落ち着けるか」
サヤカはそのまま横にねっころがった。
サヤカの目には西の国全体が見えている。
何百年も見続けてきた、この国。
(・・・・変わりすぎだよ。何も面影残ってないじゃん・・・・)
サヤカの少し寂しそうな顔。
何を思い出しているのだろうか?
(このままでは、この国・・・・・終わるかもね)
そう、かつてあった国のように。
サヤカはなぜか確信していた。
- 68 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:04
-
「サーヤカさん。ギター弾いて♪」
と、そこに一人で遊ぶのが飽きたひとみがやってきた。
サヤカが持ってきたギターを指差し、わくわくしながらサヤカの目の前に座った。
「ん?ああ、いいよ」
サヤカは横に置いてあったギターを持った。
そして、簡単な曲から弾きだした。
サヤカの奏でる音楽は、人々の心を暖かくする。
そういう力が天性のものである、とひとみは思っている。
どんなにいらついていても、サヤカの曲を聴けば心落ち着かせることができる。
そう思うのは、ひとみが赤子のころからサヤカのギターを聴いて育っているからであろう。
サヤカのギターはひとみの子守唄だった。
「相変わらず、綺麗だね」
「そう?ありがとう」
褒められるのは悪い気はしない。
サヤカはどんどん複雑な曲を弾いていった。
- 69 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:04
- そして、サヤカが毎晩弾いている曲を弾こうとした瞬間、ひとみはいきなり立ち上がった。
「どうした?ひとみ」
「・・・呼んでいる。行かなきゃ・・・・・・・」
ただ、そういうと、ひとみはさらに丘の上に駆け上がっていった。
この丘の先にあるものは・・・・
サヤカの顔に焦りが出た。
「ダメだ、行くな!」
サヤカはすぐに立ち上がり、ひとみを追いかけて行った。
- 70 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:05
- ・・・・・・東の国・・・・・・
- 71 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:06
-
「ねえマキちゃん。私、お外に行きたいな」
「ダメ」
リカのお願いに、マキは速攻却下した。
すぐに断られたリカは、やはりいい顔はしなかった。
「何で、ダメなの?マキちゃんが一緒に行けば安全でしょう?マキちゃん、うちの兵士さんより強いんだから」
そう、リカの言うとおりマキは強かった。それはもう半端じゃないほどに強かった。
この東の国でマキに勝てるものがいないほどに強い。
「いくら私が強くても、リカちゃん一人で外出は認めないよ」
「・・・一人じゃないもん。マキちゃんとふたりだもん」
「一人でも二人でもダメ。外に出たいなら事前に許可とって・・・・・」
「いや!」
「はっ?」
- 72 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:06
- リカの反抗。
マキの言葉をさえぎって、リカは言った。
普段、まったくわがままを言わないリカなので,このリカのわがままには少なからず驚いてしまった。
リカは、少し目に涙を潤ませていた。
「マキちゃん、お願い・・・・外、出たいの・・・・」
「うっ・・・・」
可愛いリカの上目遣い攻撃。
リカの育ての親でもあるマキは、そんなリカの目を見て困ってしまった。
(リカちゃん、相変わらず、かぁーいいな。わがまま叶えてあげたいんだけど、こればかりは・・・・)
マキは困ってしまった。
リカは両手を前で組んで、お願モーポーズを続けていた。
「外に出してくれたら何でも言うこと聞くから・・・・・」
「う〜ん・・・・」
「お城でしっかりとお手伝いするから」
「いや、それはしなくていいよ。リカちゃんお姫様だし」
「勉強もしっかりするよ」
「・・・・・今までもしっかりしてたじゃん」
- 73 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:07
-
リカとマキ。お互いに引かなかった。
でもどうして突然リカが外に出たいと言い出したのか?
今までも外に出たいというときもあったけど、その場合はちゃんと外出許可をとって後日外出する、という方法をしっかりととっていたのに。
どうして今日に限って?
「ねぇどうしたの?急に外に出たいって言い出して」
マキは不思議そうに聞いた。
出る、出ないにしても理由は聞いておきたい。
「ん・・・何故だろう?」
リカは人差し指を口につけ、考えるポーズをとった。
自分がどうして急に外に出たくなったのか、はっきり言ってわからない。
何故だが、急に、なんとなく・・・・・
「呼ばれているから」
と、リカは呟いた。
- 74 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:07
- 「はっ?」
リカの答えに、マキは驚いた。
呼ばれたって、誰に?いつ、どこで?
マキの頭にはいくつもの疑問が浮かび上がってきた。
でも、そんな理由で外に出すわけにはいかない。
「リカちゃん・・・そんなことじゃ・・・・」
「お願い、マキちゃん。今日しか、ダメなの」
マキの言葉を遮って、リカは必死にお願いした。
今までにないリカの必死さ。
何故ここまで必死になっているのか?
「ふぅ・・・」
マキは一回ため息をついた。
そして、にこりと笑顔になってリカの頭をなでた。
- 75 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:08
- 「マキちゃん?」
「・・・勉強、今以上にがんばってね」
マキの外出許可に、リカは蔓延の笑みを浮かべた。
そしてマキに抱きついた。
「ありがとう、マキちゃん」
「うん、いいよ」
そう言ったマキ。でも、心のどこかで不安を感じていた。
(本当は、いけない気がする)
このマキの判断、ひとつの大きな分岐点になることであろう。
吉と出るか、凶と出るか・・・・・
(ははっ、私には関係ないや)
マキの無責任な発言。
マキはいったいどういうつもりで、この国にいるのだろうか?
- 76 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:08
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 77 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:09
-
「んーやはりいい天気」
リカはお城の外に出られて、すごくうれしそうだった。
マキはリカの少し後ろをついて歩いていた。
付かず離れず一定の距離を保っていた。
「マキちゃん、見てみてー可愛いお花」
「そうだね」
はしゃいでいるリカと対照的なマキ。
マキは今日何かが起こりそうな予感がすごくしていた。
(何も起きなければ、いいのだけど・・・・・)
マキはリカの後ろをトコトコとついて歩いていった。
- 78 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:09
-
「ねえ、マキちゃん。ここ、すごいねー」
いつの間にか、東の国が一望できる丘まで来ていた。
国の境目。東の国の端っこまできていた。
「この国、発展したね」
マキは東の国を見つめた。
マキはこの国が変わっていく様子を見続けていた。
始めから、そして、終わりまで、見ることになるだろう。
「マキちゃんはどれぐらい前を知っているの?」
リカはマキに聞いた。
物心付く前からいる、しかも自分の父親の生まれる前からいる不思議なマキ。
マキの秘密が聞きたい、と思っているリカ。
でもマキは“ふふっ”と笑っただけで、答えようとしなかった。
- 79 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:10
-
マキとリカは小高いこの丘で、のんびりとした時間を過ごしていた。
結構時間がたって、もう帰る頃になった時、突然リカが丘の上を見つめた。
「ん?どうしたのリカちゃん?」
「私・・・・行かなきゃ」
「ん?もう、帰る時間だね」
「違う・・・呼んでるの。私のことを・・・・」
そう言うと、リカは丘の上を駆け上っていった。
突然のリカの行動に、マキはすぐに反応できなかった。
「・・・・はっ、いけない。この先は・・・」
マキはあわててリカの後を追った。
どんどん小さくなっていくリカの姿を急いで追いかけた。
- 80 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:10
- ・・・・・・西の国・・・・・・
- 81 名前:最後の国〜西〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:11
-
「はぁ、はぁ・・・・」
ひとみは丘を登りきった。
頂上はかなり大きい金網が、場所を遮っていた。
金網の向こうは、この大陸のもうひとつの国、東の国が見えていた。
「あっちが東の国」
ひとみは引き寄せられるように、金網に近づいていった。
- 82 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:11
- ・・・・・・東の国・・・・・・
- 83 名前:最後の国〜東〜 投稿日:2004/01/11(日) 00:11
- 「・・・・はぁ・・・はぁ・・・」
リカは今にも倒れてしまいそうになりながら、丘を登りきった。
頂上はかなり大きい金網が、場所を遮っていた。
金網の向こうは、この大陸のもうひとつの国、西の国が見えていた。
「向こうが西の国」
リカは引き寄せられるように、金網に近づいていった。
- 84 名前:名無し屋 投稿日:2004/01/11(日) 00:18
- >>62つみ様
いつもご感想ありがとうございます。すごく励みになります。
のろのろペースですが、とりあえず次回から急展開するつもりです。
・・・遅くて申し訳ないです。
あるお方に名前を考えていただきました♪ありがとうございます。
なんとか、やっと出会う場面まで近づいたかな?と思います。
相変わらずの読みにくい文章。何とか少しでも読みやすくできるよう、改善指定校と思います。
では、本日はここまでで・・・ごきげんよう〜
- 85 名前:名無し屋 投稿日:2004/01/11(日) 00:20
- >>84
改善指定校と思います。→改善していこうと思います。
・・・なんだよ、指定校って?自分・・・・
お目汚し、失礼いたしました。
- 86 名前:つみ 投稿日:2004/01/11(日) 01:11
- おお!であった!
この2人が出会って、もう2人はどうなるのだろう?
次回もまってます
- 87 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:24
- 金網に近づいていくうちに、向こう側に人の姿を確認できた。
「キミは?」
「あなたは?」
ひとみとリカは互いの姿をみた。
そして、自分の思うまま、引き寄せられるままに、近づいていく。
あと、ほんの少しで金網に触れる距離になった。
- 88 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:25
- 「やめろ!」
突然ひとみの身体が引っ張られた。
ひとみの身体は、後ろに倒れた。
「サヤカさん!?」
ひとみを引っ張ったのはサヤカだった。
ひとみを引っ張った反発力で、サヤカの身体は金網にぶつかってしまった。
「うわっっ!!」
金網にぶつかった瞬間、サヤカは悲鳴に近い叫びを上げた。
そして、サヤカの身体が一瞬電気が走ったように光った。
「・・・・くっ・・・」
サヤカはその場でうずくまった。
そして、動かなくなってしまった。
「サヤカさん!」
ひとみは急いでサヤカに近づこうとした。
- 89 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:26
- 「触らないで!死んじゃうよ」
しかし、向こうから聞こえてきた言葉にひとみは止まった。
声をした方を見ると、先ほどの少女と、少女を抱き捕まえている女性。
女性のほうが、声を出したのだろう。
「そこの女の子、その人に触らないで」
「なんで!?なんで触っちゃいけないの?サヤカさん、苦しそうだよ!」
「サヤカ・・・・?」
女性はサヤカを見つめた。
- 90 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:27
- 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
フラッシュバック
・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
- 91 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:27
- 「どうなっているんだ?いったい・・・・」
丘から町を見下ろした。
目に映る光景、仲間同士が殺しあう阿鼻叫喚。
つい先日までは、仲良く暮らしていた相手にも平気で武器を向ける。
道には動かなくなった仲間。
自分が傷つきながらも、相手を傷つける。
まさに、殺るか殺られるか・・・・・・
「いちーちゃん、いた・・・・・」
「ごとー・・・」
「ねえどうなってるの?なんでみんな戦ってるの?」
「いちーにもさっぱり・・・」
「何が壊れたの?」
「わからない」
「なんでいちーちゃんがわからないの?いちーちゃんは、いちーちゃんは・・・・」
- 92 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:28
- 「いたぞ!いちいのサヤカだ」
「ごとうのマキも一緒にいるぞ」
丘かから町を見下ろしていたサヤカとマキのもとに、武器を持った仲間たちがやってきた。
彼らの思考は完全に麻痺をしていた。
ただ、頭にあることは、破壊のみ・・・・・
「ごとー、いくぞ」
「えっ?いちーちゃん?」
サヤカはマキの手を握ってこの丘を後にした。
後ろから、仲間が追ってくる気配がしていたが、裏道をすり抜け上手く巻いた。
- 93 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:28
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 94 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:29
- 「・・・・・いちーちゃん、何が起こってるの?」
ある家に着き、やっと一息つくことが出来た。
マキはいまだに何が起こっているのか分からなかった。
突然仲間が武器を持って仲間同士で殺し合い。
何か前触れがあったわけでもなく、いつの間にかこうなっていた。
マキはサヤカを見た。
「いちーちゃん!?」
マキは思わず悲鳴のような声を上げた。
ふとサヤカを見ると、サヤカは床にうずくまっていた。
背中には大きな傷がついていた。
「あはは・・・さっき、喰らっちゃった」
サヤカは極力明るい声を出した。
しかしこの傷は相当深いみたいで、サヤカの額には汗がにじみ出ていた。
サヤカは立つことも倒れこむことも出来ず、その場でうずくまったままだった。
- 95 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/01/18(日) 02:29
- 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
- 96 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:30
- サヤカはうずくまったままだった。
何かに耐えているように。手を地面についている。
ひとみは女性を見た。
「キミはいったい誰なのさ?なんでサヤカさんに触るなとか言うの?」
ひとみは金網の向こうの女性に、荒々しく言った。
普段絶対に見ることができない、サヤカのこの姿。
ひとみは少なからず、パニックになっていることは確かである。
「・・・・・自己紹介が遅れたね。私はマキ。この子はリカちゃんだよ」
マキは抱きしめているリカの身体を放しながら言った。
リカはひとみに向かって軽く頭を下げた。
- 97 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:31
- (うわっ・・・可愛い子だ・・・・)
ひとみは思わず、リカに目を奪われてしまった。
正真正銘の純粋な女の子、という雰囲気がリカを取り囲んでいた。
100人の男がいたら99人がリカにほれてしまいそうな感じ。
(清楚で奥ゆかしくてか弱くて、守ってあげたくなる・・・・そう、自分とは正反対だ)
ひとみはすっかりとリカに心まで奪われてしまった。
「そこの子、自分の名前は?」
「え・・・はい・・・ひとみって言います」
痺れを切らしたマキに促され、ひとみは自分の名前を言った。
マキはひとみの名前を聞くと、“ふーん”と興味なさそうにつぶやいた。
そして、マキはサヤカを見つめた。
- 98 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:32
-
マキは,金網に近づいた。
金網に触れるか触れないかの所まで来ると、そっと手を伸ばした。
「マキちゃん?」
リカは心配そうにマキの名前を呼んだ。
しかし、そんなリカの言葉も聞こえてないように、マキはただサヤカを見つめ続けていた。
「・・いちー・・・ちゃん?」
マキは恐る恐る声を出した。
「・・・・ごとー・・・・か?」
サヤカはうずくまったまま言った。
そしてサヤカはゆっくりと身体を起こした。
「サヤカさん、大丈夫?」
「ああ」
ひとみは心配そうにサヤカに聞いた。
しかしサヤカは一言だけつぶやいただけで、ひとみの方は向かなかった。
そしてゆっくりと金網に近づき、マキの顔を見た。
- 99 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/18(日) 02:33
- 「・・・本当に、ごとーなのか?」
「うくっ・・・・そうだよ・・・・いちーちゃんの・・・・ばかーーーー」
マキはそう叫ぶと、その場で座り込んでしまった。
そして、人目をはばからず、ワンワンと大声で泣き出してしまった。
「いちーちゃん、いちーちゃん、会いたかったんだから。ごとー、寂しかったんだから」
「悪い、悪い。いちーだって会いたかったよ」
大声で泣き続けるマキ。
それを優しく見守るサヤカ。
二人の間には特別な空気があり、誰も入り込むことができなかった。
「サヤカさん・・・・」
「マキちゃん・・・・」
それが、17年一緒にいた人物だとしても、ただ見ているだけしかできなかった。
- 100 名前:名無し屋 投稿日:2004/01/18(日) 02:38
- >>86つみさま
やっと本格的に出会わせました。
なかなか進まなくてホント申し訳ないです。
やっと、ここまできたなって感じです。
あと一人、出る予定なのですが、いつだそうかと迷い中です。
なるべく早く出さないと・・・・
では、本日はここまで。ごきげんよう〜
- 101 名前:つみ 投稿日:2004/01/18(日) 10:02
- であった・・・・
少しこの2人には謎がありますね〜
次回も楽しみにまってます!
- 102 名前:名無し屋 投稿日:2004/01/20(火) 05:22
- 突然ですが、いきなり違う話を書かせてもらいます。
これは、いままで書いている話とはまったく違うのもです。
まったくストーリに関係ありません。
舞台は現代なので・・・・
では、申し訳ないですが、少々お付き合いくださいませ。
- 103 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:23
- あの人にあったのは、今日みたいな粉雪が舞い落ちる寒い日だった。
- 104 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:24
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 105 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:24
- 幼い頃両親に先立たれ、親戚中からは厄介者扱いされ、私は一人孤独だった。
ある日、自分に対する扱いに腹を立て、思わず世話になっていた親戚の家から飛び出してしまった。
もう、あの家に戻ることは出来ない。
行くあてもお金もなく、一人町を歩いていた。
12月という寒い日、空からはハラハラと粉雪が舞い降りていた。
「う〜寒いな・・・飛び出すのだったらもう少し暖かい格好をしてくるのだったよ」
私の格好はお世辞にも暖かそうとはいえなかった。
トレーナにジーンズ。室内なら平気かもしれないが、外だとさすがに寒い。
お金も持ってくることが出来なかったから、防寒具を買うこともできない。
駅の構内に行けば寒さを防ぐことが出来るかも?そして、今日の宿も確保できるかな。
私は急いで近くの駅に向かった。
- 106 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:25
- 駅に着くと、たくさんの人がいた。
今電車を降りたばかりの人や、今から電車に乗ろうとしている人。
誰かを待っている人や、楽しそうに話をしている人たち。
それに、ギターを弾きながら歌を歌っている人や、ダンスをしている人たち。
そして、その中に絵を描いている人もいた。
私は絵を描いている人の向かい側の壁にもたれ、腰を下ろした。
飛び出してから、一回も休んでいないからもう身体がくたくたになっていた。
そして、おなかも空腹を訴えていた。
「今日はここを宿にするか・・・・」
駅なら暖かいままだと思うし、趣味で来ている人たちも結構遅くまでいると思う。
特にあのダンスを踊っている人たちなんかは、あのままずっと踊り明かすことだろう。
一人ぐらい、ここで眠っていても不審がられることもないと思う。
私はひざを抱え、顔をうずめて目を閉じた。
おやすみ、明日はいい日になるといいな・・・・
- 107 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:25
-
「ねえ、生きてる?」
ん?何だ?どうした?
眠りに付いた瞬間、私は揺り起こされた。
目を開けて顔を上げると、反対側にいた絵描きが私のことを揺らしていた。
私が目を開けて絵描きを見ると、絵描きはほっとしたような顔をした。
「良かった。死んだかと思ったよ」
「・・・どうして起こすの?」
寝起きで不機嫌な私は絵描きに文句を言った。
しかし絵描きは私の不機嫌さをもろともせずに、笑っていた。
「だっていきなりあたしの真正面に来たじゃない?かと思ったらひざを抱えて動かなくなるじゃない?てっきり死んだかと思ったよ」
絵描きは愉快そうに笑った。
ただ眠っただけなのに、死んでるなんて思われるなんてたまったもんじゃない。
なんだ?このふざけた奴は。
- 108 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:26
- 私は絵描きを見つめた。
男だと思っていた絵描きは良くみると女の人だった。年齢は私より少し上ぐらい。中世的な顔をして、はっきりいって綺麗な顔立ちをしていた。
そして、愉快そうに笑っている顔、よく見たら悪戯っ子みたいな笑い方で、憎めるもんじゃなかった。
こういう顔に生まれていれば、みんな優しくしてくれるんだろうな。
絵描きは持っていたものを私にくれた。ベーグルとカフェオレだった。
二つを手渡すと、絵描きはにやっと笑った。
「ベーグルはいいぞ。歯ごたえもあって腹持ちもいい。あたしはいつも持ち歩いてるんだ。どうせ腹減ってるんだろ?早くたべなよ」
- 109 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:26
- 私は絵描きに言われ、ベーグルを口に入れた。
おなかが空いていたので、夢中になって食べた。
ただのプレーンベーグル。シンプルなんだけど、私にとっては最高のご馳走だった。
必死に必死に食べた。
勢いよく食べたので、のどに詰まらせた。
そしたら絵描きは笑いながら、私の背中をさすってくれた。
私はカフェオレを飲んだ。
だいぶ前に買っていたのだろう。この寒い中、すっかりと冷えていた。
でも、私の口に入った瞬間、とても暖かく感じた。
飲み込んだ瞬間、涙が溢れた。
今まで我慢していた涙。
両親が死んで、親戚の家に行くことになって泣くのをがまんした。
だって、泣いたって何も変わらないから。
だから、ここ数年泣かなかった。
どんなにひどい仕打ちをされても泣かなかった。いや、泣けなかった。
私の涙は両親の死で枯れてしまったと思っていたから。
- 110 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:27
- でも、今。私の目から溢れ出てくる熱いもの。
「うくっ・・・うくっ・・・・」
「ほらほら、ゆっくりたべなって。身体に悪いぞ」
泣き続ける私の頭を、絵描きは優しくなでてくれた。
絵描きの優しさに触れ、私の心の氷は溶け出した。
「落ち着いたか?ん?」
絵描きは私の顔を覗き込んで聞いた。
人前で泣いた私は、絵描きの顔を見るのは少し恥ずかしかった。
- 111 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:28
- 「お前、名前なんていうの?」
「吉澤・・・ひとみ」
絵描きは私に名前を聞いてきた。
親切にしてくれたし、わざわざ内緒にすることもないので素直に名乗った。
絵描きは私の頭を豪快に撫でた。
そのおかげで、髪がぐちゃぐちゃになってしまった。
「そっかそっか、ひとみって言うのだな。あたしは紗耶香。苗字は諸事情によって内緒な」
そういうと絵描き・・・紗耶香さんは絵を描く道具が置いてあるところに行った。
荷物をまとめてもつと、再び私のそばにきた。
「ひとみ、行こうか?」
「えっ?どこに?」
突然の紗耶香さんの誘い。いったいどこに行くつもりなんだろう?
私の疑問に紗耶香さんは、またもやにやっとした。
「行く場所ないんだろ?だったらあたしの家に行こう」
紗耶香さんはそういうと、私の手を引いて立たせた。
そしてそのまま、引っ張られ連れて行かれた。
- 112 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:28
-
紗耶香さんに連れてこられた場所は、お世辞にも綺麗とはいえない、アパートだった。
とても女性が住むような場所ではなかった。
紗耶香さんは二階の一番端のドアの前にたった。
ここが紗耶香さんの家なのか。
紗耶香さんは鍵を開け,ドアを開いた。
「さっ、入って。何もないけど」
紗耶香さんに促され、私は中に入った。
部屋のつくりは2Kといった感じだった。風呂トイレは部屋にあったけど、ユニットで一緒にあった。
玄関も狭く、二人分の靴を置くといっぱいいっぱいになった。
私は中に入っていった。
一つの部屋はテーブルあるだけでほかには何もなかった。テレビも、CDデッキも、ゲームといった娯楽物が一切なかった。
- 113 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:29
- もう一つの部屋を見た。
「うわぁ・・・すごい・・・」
私は思わず、見とれてしまった。
この部屋は先ほどの部屋とはまったく違い、いろいろなものがおいてあった。
キャンバスやキャンバスやキャンバス・・・・・たくさんのキャンバスが所狭しと置いてあった。
大小さまざまなキャンバス。そこには風景だったり、人物だったり、動物だったり。
たくさんのものが描かれていた。
そして、部屋の中心にある一際大きなキャンバス。そこには一人の女性が描かれていた。
「この人は?」
「ん?こいつはあたしのいいやつね」
- 114 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:29
- 紗耶香さんはそういって照れたように笑った。
ここに描かれている女性は、紗耶香さんの恋人らしい。
紗耶香さんは女性で、描かれている人も女性。
普通だったら変に思うかもしれないけど、紗耶香さんとこの絵を見たらまったく変には思わなかった。
むしろ自然な形にも思えてきた。
紗耶香さんが描いたこの人は、誰が見ても惚れてしまいそうな優しい表情をしていた。
「まだ、完成してないんだ。何かが足りないんだよね。あと少しなんだけど」
そういった紗耶香さんは、なぜか悲しそうだった。
完成していないというけど、私から見たらすでに出来上がっているように見える。
このまま、どこかの展覧会に出品しても引けを取らない。
最高の仕上がりだと思う。
でも、紗耶香さんが完成していないというなら、そのとおりなんだろう。
- 115 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:29
- この日から、私と紗耶香さんの共同生活が始まった。
- 116 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:30
- 紗耶香さんは朝起きると、すぐに絵を描き始めた。
完成していないという女性の絵の前に座り、なにやら考える。
と、思ったら他の絵を描きだす。
最近は私の絵を多く描くようになった。
スケッチブックに絵を描きながら「いい被写体が出来てよかったよ」とうれしそうに笑う。
そんな紗耶香さんをみて、私もうれしくなって笑う。
夕方になると画材道具を持って、駅に向かう。
駅の構内に座って、流れる人を見ている。
ただ見ているだけではない。紗耶香さんはここで商売をしているのだ。
紗耶香さんは、頼まれた人の似顔絵を描いている。
カップルだったり、親子連れだったり、友達同士。一人というひともいる。
紗耶香さんは色紙に15分程度で似顔絵を描いている。
私はその隣で、絵の具を準備したり、水を片付けたりお手伝いをしている。
- 117 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:31
- 紗耶香さんは描いた似顔絵に値段をつけていない。
描きあがってお客さんに見てもらって値段を決めている。
描いてもらった人が、思った金額を紗耶香さんに渡している。
千円の人もいれば、十円の人もいる。
私は一度「十円なんてひどすぎるよ」と文句言った。
でも紗耶香さんは笑って「その人にとっては私の絵は十円の価値しかなかったということだよ。その人の出した金額が、私の絵に対する評価。もっとがんばれっていうことなんだね」と、言った。
その言葉を聞いて思った。なんて紗耶香さんはすごい人なんだろうって。
親戚の家を意地になって飛び出してきた私が少し恥ずかしいように感じた。
日付が変わってやっと紗耶香さんは帰る準備をした。
一日に5,6人ぐらいのお客さんしかこない。
空いている時間はほとんど話をしていた。
紗耶香さんは私の話をよく聞いてくれた。でも、紗耶香さん自身のことは話したがらなかった。
唯一話したことといえば、紗耶香さんも家が嫌になって飛び出したのだそうだ。
そっか、だから紗耶香さんは私のことを拾ってくれたんだ。
- 118 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:32
- 家に帰り、画材道具をしまうと、何もない部屋のほうに布団を敷く。
布団は一組しかなく、私と紗耶香さんは一緒の布団で寝る。
紗耶香さんは私より身体が小さいから、私の腕にすっぽりと収まる感じで眠る。
優しい紗耶香さんを腕に抱きながら、私は一人ではないということを実感する。
- 119 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:32
- 私は午前から夕方までのバイトを入れることをした。
紗耶香さんは「しなくてもいいよ」と言ったのだが、私自身がそれを許せなかった。
夜は紗耶香さんと一緒に駅の構内に行きたいから、昼間だけ働くことにした。
時給のいいところと思い、パチンコ店で働き出した。
紗耶香さんは「被写体がいなくなった」と悲しんでいたけど、週に一度はお休みを取って紗耶香さんと過ごした。
その日だけは紗耶香さんも絵を描くことはせず、私に付き合ってくれた。
「紗耶香さん、もっと食べてください」
「えっ、十分食べているよ」
私はバイトを始めたせいか、どんどん力が付いていった。
反対に紗耶香さんはどんどんと痩せていった。
普段からあまり食事をしない紗耶香さん。
私が来る前は平気で、ベーグルだけを食べ続けていたそうだ。あっ、あと絵を描くときに消しゴム代わりに使ったパンの耳・・・・それじゃあ栄養足りなくなるよ。
- 120 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:33
- だから、私は給料が出た日、お肉屋さんでサーロインステーキを買った。
家で料理をして食卓に並べると、紗耶香さんはびっくりしていた。
「どこからか盗んできた?」なんて聞いてきて・・・やはりおかしな人だ。
でも紗耶香さんはおいしそうに食べてくれた。
そして、食べ終わると紗耶香さんはねっころがった。
「食べてすぐ寝ると牛になりますよ」
「ん〜?牛になったら、ひとみに食べられちゃうかな?」
まったくもっておかしな人だ。
紗耶香さんはそのまま目を閉じた。
私は食器の後片付けをした。
全て片付け終わると、まだ寝転がっている紗耶香さんに近づいた。
やはり、少し細くなっている。最初に会ったときは普通の体型だったけど、今は痩せすぎのような感じがする。
明日も栄養付くものを作らないとな。
- 121 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:33
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 122 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:34
- 私はバイト先であるものを見つけた。
「店長・・・これ、買うことはできませんか?」
景品コーナーにあったものを指差した。
店長は困った顔をした。
「景品の金銭やり取りは禁止なんだよね」
そりゃそうだ。普通に考えればいけないことだろう。
でも、私はどうしてもこれがほしい。
「店長、本当にほしいのです。いけないとわかっているのですが、そこをなんとか・・・・」
「ん〜困ったな・・・・」
店長は困りつつも「内緒だよ」といいながら、それを売ってくれた。
私はうれしくなり、大事そうにそれを家に持って帰った。
紗耶香さん・・・なんていうだろう?
「おおっ、すごいじゃなか〜」
「ポラロイドカメラ。紗耶香さんと一緒に写りたくて」
私が買ったのは、ポラロイドカメラ。
普通のカメラ屋さんでも売っているが、パチンコの景品だと何故か安い。
紗耶香さんはポラロイドカメラを珍しそうに眺めていた。
私はカメラを手に取ると、紗耶香さんの横に並んだ。
「紗耶香さん、記念に一枚撮りましょう」
「そうだね」
“カシャッ”
カメラから出てきた写真は、私と紗耶香さんが並んで写っている写真。
一人じゃない、二人で写っている。
私はその写真を大切に胸ポケットにしまった。
- 123 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:34
- 「そうそう、写真といえばもってるんだな、これが」
紗耶香さんはそういうと、向こうの部屋から一枚の写真を持ってきた。
写真を見ると、紗耶香さんと紗耶香さんの恋人が仲良く写っていた。
「可愛いだろう?あたしのいいやつ」
紗耶香さんはそういって幸せそうに笑った。
彼女さんは幼さが残る、でも大人びた感じもする女性だった。
紗耶香さんには彼女さんがいる。だけど、私がこの家に来てから一回も会いに行った形跡がないような・・・
そのことを聞くと、紗耶香さんは「禁断の恋でね。今会えないんだよ」と寂しそうにつぶやいた。
禁断の恋か・・・それはただ女性同士だからというものなのか、それともまた別の理由があるのだろうか?
そういえば、紗耶香さんの苗字って聞いたっけ?
- 124 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:35
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 125 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:35
- それから数ヶ月
夕方までは私はバイト。紗耶香さんは家で絵を描いていた。
そして、夜は一緒に駅に行って似顔絵を描いた。
私も少し絵を覚えてきて、まだまだ下手だけど少しずつ絵を描くようになっていった。
平和な日が続くと思っていた。
だけど、転機は突然やってくるもので・・・・・
- 126 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:36
-
「ごほっ、ごほっ・・・」
「紗耶香さん、大丈夫ですか!?」
突然紗耶香さんは咳き込んだ。
そしてトイレに駆け込み、咳き込むと・・・・
「血・・・・・?」
「心配するなひとみ。ただ調子悪いだけだ」
紗耶香さんは血を吐いた。しかも大量の。
私はものすごい量の血に腰を抜かしかけた。
でも紗耶香さんは、いつもの優しい笑みを浮かべると、私の頭をぐちゃぐちゃになるまで撫でてくれた。
「ほーら、そんな顔をするなって。あたしは平気なんだから」
平気じゃないです。平気なんかないです。
そんなにも血をはいているじゃないですか。
そんなにも腕が細くなっているじゃないですか。
そんなにも、顔が蒼白しているじゃないですか。
- 127 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:36
-
「病院、行きましょう」
「はっ?いけるわけないじゃん。保険証もないことだし・・・」
「今はそんなことを言っている場合じゃありません。紗耶香さん血を吐いたのですよ。それに、日に日に痩せて行ってるじゃないですか。病院にいくべきです」
「病院・・・行けないよ」
紗耶香さんは寂しそうに言うと、トイレの水を流し、血を洗い流した。
そして、にやっと笑って私の頭を小突いた。
「あたしは大丈夫だから心配するな。これしき、平気なんだよ」
紗耶香さんの元気に振舞う言葉。
そんな様子を見せられたら何も言えなくなるじゃないですか。
だからそれ以上私は何も言えなかった。
- 128 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:36
-
私は少しでも紗耶香さんに栄養をつけてもらおうと思って、たくさんの料理を作った。
でも、紗耶香さんは半分も食べれなくなっていった。
そして相変わらず、夜は一緒に駅にいっている。
本当は無理せず休んでいてほしいけど、紗耶香さんは頑固だから駅に行くことをやめなかった。
ある日、紗耶香さんは私に写真を手渡した。
紗耶香さんと恋人が写っている写真。
何故これを私に渡すのだろう?
紗耶香さんは「ひとみに持っていてほしい」というだけだった。
- 129 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:37
- そして突然、二人の生活は終わりを迎えた。
- 130 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:37
- 「紗耶香お嬢様、探しましたよ」
ある日、アパートに数人の黒尽くめの集団が現れた。
紗耶香はそいつらを見ると悔しそうに唇を噛んでいた。
「紗耶香さん?」
私は心配そうに紗耶香さんをみた。
紗耶香さんは優しい笑みを浮かべて、私の頭を撫でてくれた。
「心配しなくていいよ。ひとみは大丈夫だから」
「紗耶香さんは?紗耶香さんは大丈夫じゃないでしょ?」
「あたしは・・・まだ、つかまるわけには・・・・ごほっ・・・」
紗耶香さんはその場で咳き込んだ。
口からは大量の血が。
そして苦しそうにその場に方ひざを付いた。
- 131 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:38
- 「紗耶香お嬢様、大丈夫ですか?」
黒尽くめの男たちは紗耶香さんの近づいた。
そして、紗耶香さんを捕まえた。
「離せ!あたしはあの家には帰らない」
「何を言ってるのですかお嬢様、そんな身体で。病気だって完全に治っていなかったのですよ」
「あたしは大丈夫だ!」
「大丈夫じゃありません。ご実家のちゃんとした病院でしっかりと治しましょう。それに、市井家を継ぐのはお嬢様だけです。こんな勝手なことをされたらお父様だって悲しみます」
「父上なんで知るもんか!あの家は、あの場所は窮屈すぎる。私は絵を描きたいんだ」
「わがまま言わないでください。さあ、行きますよ」
- 132 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:38
- 紗耶香さんと男たちのやり取り。私は何も出来ず、ただ目の前の現状を呆然としながら見てるしか出来なかった。
紗耶香さんは必死にもがいていた。
そして、私のほうを見て叫んだ。
「ひとみ。絵を完成させてくれ。完成したら、あたしのいいやつに届けてくれ。場所は写真の裏に書いてあるから」
紗耶香さんの必死の叫び。
私は力強くうなずいた。
紗耶香さんは私の頷きをみると、安心した。そして、観念したように男たちに連れて行かれた。
紗耶香さんのアパートには私だけが残った。
私は大きなキャンバスに向かった。
ほぼ完成している絵に、筆を伸ばした。
これを完成させるのが、紗耶香さんとの約束。
私は意地でもこれを完成させて、紗耶香さんの恋人に届けなければいけない。
紗耶香さんが苗字を言わなかった理由。
それは紗耶香さんが、あの有名な市井財閥の一人娘だったから。
そういえば昔に、市井財閥のお嬢様が行方不明になったって、テレビで言っていたな。
そして紗耶香さんは病気に掛かっていた。
だから、日に日に痩せていって、食事もあまり食べなくなったんだな。
前は自分の家が経営する病院で治療していたけど、家を出て治療しなくなったので、病状が悪化して血を吐くようになってしまったんだ。
- 133 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:39
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 134 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:39
- 私は絵を描いた。
生活のために昼間はバイトを続けた。
夜は、一人で駅の構内で似顔絵を描いた。
となりに紗耶香さんはいないけど、私は何故か毎夜、ここにこないといけない気がしていた。
そして、あまった時間は大きな絵の前に座った。
完成させるにも、どうしたらいいのか分からない。
筆を持ったまま、絵を見つめた。
いったいどうすればいいのだろうか?
- 135 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:40
-
この日も、私は駅の構内に行った。
いつもの画材道具を広げると、お客さんが来るのを待った。
「ねえキミ、似顔絵描くの?」
と、そこに一人の女性が私の前にきた。
「あっ・・・・・」
なんとその女性は、紗耶香さんの“いいやつ”・・恋人だった。
女性は私の持っていた画材道具を見た。
この道具、紗耶香さんのものだと気が付いたのかな?
しかし女性は何も言わなかった。
- 136 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:41
- 「え・・・あの・・・・」
私はしどろもどろになりながら女性に声をかけた。
女性は、私の目の前に座った。
「ねえ、絵、描いてよ」
「えっ?はい!」
私はあわてて色紙を用意した。
女性の顔をよく見つめ、描いた。
私が絵を描くのに要した時間は30分にもなった。
紗耶香さんみたいに、15分みたいにすばやく描くことは出来なかった。
「・・・・・お待たせしました」
私は女性に絵を渡した。
女性は絵を無表情に見つめていた。
・・・・いけなかったかな?私の絵は。
女性はかばんを開け、財布を取り出して私に千円くれた。
「綺麗に描けてるね。キミ、なかなかセンスいいよ。ねぇ、キミの名前は?」
女性はにこっと微笑んで、私の絵を褒めてくれた。
- 137 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:41
- この女性の微笑み、紗耶香さんが描き続けていたキャンバスに描かれている通りだった。
紗耶香さんは、この微笑を思い出してずっと描き続けていたのだろう。
女性は私の名前を聞いてきたので、私は正直に答えた。
「吉澤ひとみ」
紗耶香さんとのつながりは言わないでおこう。
だって、まだ絵が完成していないもの。
「そっか。吉澤だから、よっすぃ〜ね。私は後藤真希。また今度会えるといいね」
そういって、真希さんはもう一度微笑んでから、どこかに行ってしまった。
そうか。紗耶香さんが毎夜、この駅に来ていたわけは、真希さんに会うためだったんだ。
でも、ずっとずっと会うことが出来なかったから、あの絵が完成させることが出来なかった。
だったら、いまなら完成させることが出来る。
だって、私が見たから。・・・・真希さんの微笑を。
- 138 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:41
- 私は急いで画材道具を片付け、アパートに帰った。
部屋に入り、すぐに絵の前に座った。
記憶に残っているうちに、描かないと。
今日中に完成させるんだ。
私は一心不乱に筆を動かした。
- 139 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:42
-
「・・・出来た」
やっと絵を完成させることが出来た。
紗耶香さんの描き続けた真希さんの絵。最後の仕上げを、することで絵に命が吹き込まれたような感じになった。
私は大きなキャンパスを大きな袋に入れた。
多分この日のために、紗耶香さんがこの大きな袋を準備していたんだ。
私は紗耶香からもらった写真を見た。
紗耶香さんと真希さんが写っている写真の裏側に、住所が書かれていた。
きっとこれが真希さんの家の住所だろう。
私は、真希さんの家に向かうために家を出た。
- 140 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:42
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 141 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:43
-
「うそ・・・・大きい・・・」
住所の通りに来て、着いた先はすごい大豪邸。
表札は“後藤”となっていたから、ここが真希さんの家なんだろう。
私は恐る恐るインターフォンを鳴らした。
『はい、どちらさまですか?』
「あの、吉澤といいますが、真希様いらっしゃいますか?」
『・・・しばらくお待ちください』
インターフォンの声は、少し怪訝そうな感じがしていた。
突然の来訪者。予定入れでないから、もしかして会うことが出来ないかもしれない。
それにしても真希さんって大きな家に住んでいるんだな・・・・
ん?ちょっとまて。後藤っていったらあの、後藤財閥の後藤なのか?
そういえば、前に紗耶香さんが『禁断の恋』といっていたけど、それは女同士というわけではなく、財閥同士だからという意味なのかもしれない。
となると、紗耶香さんは禁じられた恋をずっと貫いていたんだ・・・・
- 142 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:43
-
「おまたせ、よっすぃ〜」
と、そこへ真希さん本人が出迎えてくれた。
門を開けてくれて、豪邸に向かう長い道を黙って付いていった。
そして、そのまま真希さんの部屋に案内された。
「どうしたの?よくここが分かったね?」
真希さんが驚くのも無理がない。
真希さんは、駅で一回会っただけだし、そこで住所のやり取りをしたわけでもないから。
私は持ってきた絵を袋から取り出した。
そして、真希さんに見せた。
- 143 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:43
-
「これって・・・・・」
真希さんは驚いて、口を手で閉じていた。
私は静かに語り始めた。
- 144 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:44
- 「私、紗耶香さんに拾われたのです。そしてしばらく厄介になっていました。その間に絵の勉強もしましたし、真希さんのことも聞きました。毎夜、あの駅にも一緒に行っていました」
「それで・・・市井ちゃんは?」
「・・・つかまりました。ある日、数人の男性がアパートにやってきて、連れて行ってしまいました。そのとき紗耶香さんの病気も悪化してしまっていて・・・・」
「そっか、まだ完全に治っていなかったんだね、病気」
「ええ。紗耶香さんは連れて行かれる直前私にこう言いました。“絵を完成させてあたしのいいやつに届けて”と」
「いいやつ?」
「はい。紗耶香さんは真希さんのことを“あたしのいいやつ”と言って照れたように笑うのですよ。紗耶香さんは絶対に名前を言わなかった。だから、昨日駅で真希さんに会っても名前、知らなかったのです」
「そっか・・・昨日すでによっすぃ〜は私のこと知ってだんだね」
「はい。あの時、真希さんの微笑を見て、やっとこの絵を描くことが出来たのです。完成間近だったこの絵を完成させる、最後の一塗り。帰って急いで描きました」
「でもどうやって住所を知ったの?」
「はい、これを見てきました。これも、紗耶香さんに渡されていたので」
- 145 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:44
- 私はそういって写真を渡した。
紗耶香さんと真希さんが仲良く写っている写真。その後ろの書かれている住所を指差した。
真希さんは、写真をそっと手に取りいとおしそうに紗耶香さんのところを触れた。
そして、写真を抱きしたまま、声を押し殺してないていた。
私は、ただ見つめることしか出来なかった。
- 146 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:45
- 私はアパートに帰った。
帰っても紗耶香さんはもちろんいない。
そして、大きな真希さんの絵ももうない。
私は二つの大きなものをなくしてしまった。
でも、寂しいとは感じない。
なにかをやり遂げた、達成感でいっぱいだった。
「終わったのは、紗耶香さんの仕事だけ。今度は私の仕事をしないとね」
私は絵の部屋の中心にまっさらなキャンバスを置いた。
かつて、真希さんの絵が置いてあったここに、同じぐらいの大きなのキャンバスを置いた。
そして、しろい画面に向かって描きだした。
私が描くべき絵を・・・・このキャンバスいっぱいに。
- 147 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:45
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆ ☆
- 148 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:46
-
数年後、私は画家として成功した。
そして、念願の初個展を開くことになった。
絵を描き始めたばかりの頃の絵や、最近しっかりと描いた絵。
今まで、私が描き続けていた沢山の絵が、会場狭しと飾られていた。
中でも一際目を引く、大きな絵。
この絵は中心の一番目立つところに飾られていた。
会場はたくさんの人が来てくれて、なかなか盛況だった。
路上絵描きから始まっった私の絵描き人生。
でも、わたしが絵を描くきっかけになったのは紗耶香さんの影響。
この、今の私の姿を見たら、紗耶香さんなんていうのかな?
- 149 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:46
- 「家出娘が、偉くなったな」
- 150 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:47
-
なんて言うのだろうね・・・・えっ??
私はあわてて振り向いた。
なんとそこには、懐かしい人が・・・・
「ひとみ、おめでとう」
「よっすぃ〜すごいね」
なんと、そこにはずっと会いたかった、紗耶香さんと真希さんがいた。
紗耶香さんと真希さんは手をつないだまま、私をみて笑っていた。
「紗耶香さん・・真希さん・・・・」
私は二人の顔をみた。
前みたいに、優しい微笑み。
私の目から、思わず涙か流れていた。
- 151 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:47
- 「おいおい、泣くなよひとみ〜」
「市井ちゃん、似てないよ」
紗耶香さんはアニメのキャラクターの口真似をしたが,真希さんにすぐにダメだしされていた。
二人の変わっていない姿。
なんだか、うれしかった。
「あは・・・あっははは・・・」
私は何故か楽しくなって笑い出してしまった。
そんな私を見て、紗耶香さんはそっと私にちかづき、私の髪の毛がぐちゃぐちゃになるまで撫でてくれた。
- 152 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:47
- 紗耶香さんはあのあとすぐに病院に入れられて、必死に病気を治したそうだ。
さすが市井財閥の力、とからかったら凄く嫌そうな顔をされた。
そして真希さんは、絵を受け取り紗耶香さんに連絡とろうとしたそうだ。
やはり家柄、すぐに阻まれたけど、あきらめずに何度も連絡取っていたら、紗耶香さんの耳にも入り、紗耶香さんも必死になって真希さんと連絡を取ろうとした。
二人の必死な姿に、頑固者のお互いの親もとうとう折れた。
愛するもの同士、止めることが出来ない。ということで、いまや、両家公認のカップルになっているそうだ。
やはり、財閥で女同士、周りの声はすごく良く響くけど、お互いが一緒にいることが出来るから、怖いことなんて何もないそうだ。
- 153 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:48
-
「ねえ、写真撮りましょうよ。この絵をバックにして」
私は近くにおいてあったポラロイドカメラを取り出した。
昔、バイト先の景品から買ったこのカメラ。まだ一枚しかとっていなく、ネガはたくさん残っていた。
紗耶香さんと真希さんは少し恥ずかしそうにしたけど、快く承諾してくれた。
今回の個展の中で一番大きな絵。その前に、私と紗耶香さんと真希さんは並んだ。
私は近くにいたスタッフにカメラを渡した。
スタッフは、絵と私たちを見比べて、少し笑った。
そしてシャッターを押して、出てきた写真は・・・・
- 154 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:48
- 私が描いた絵とまったく同じ様に並んでいる、私たち三人の姿。
少し違うのは、絵は出合った時の若い姿のまま。
でも、私たちはいろいろと成長した大人な姿で写っていた。
- 155 名前:絵描き 投稿日:2004/01/20(火) 05:49
- ふと、外をみると、粉雪がハラハラと舞い降りていた。
☆☆END☆☆
- 156 名前:名無し屋 投稿日:2004/01/20(火) 06:05
- >>101つみさま。
いつも見て下さって本当にありがとうございます。
とつぜん、本編とはまったく関係ない話を書いてしまってすこし申し訳なく思います。
次は、ちゃんと話を進めようと思います。
この話は、ふと頭に浮かんで勢いだけで書きました。
書き始めて約6時間。勢いだけで書いた話です。自分でもまさかこんなにも書くとは思っていなかったですが・・・
でも、書いていてすごく楽しかったです。でも、自分的に満足いくものがかけてよかったなと思います♪
次は、しっかりと異世界話を書きます。
よろしければ、また見てやってくださいませ。
- 157 名前:つみ 投稿日:2004/01/20(火) 19:52
- いや〜ホントに久々に心温まる作品ありがとうございました!
最初はいちよしかと思ってたんですけど・・・
ハッピーエンドですね!
何となくお暇があれば続編を希望したいです・・・
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/26(月) 23:41
- よかったです。
続き、希望します。
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 00:39
- ageレスはダメですよ。レスはsageで。
- 160 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:08
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 161 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:09
-
「・・・・お騒がせしました」
ひとしきり泣き叫んだマキは、少し恥ずかしそうに言った。
四人は丘の頂上にある大木のそばに座った。
この木は円周10Mはあるのでないかと思われる、大きな大きな木だった。
この木の真ん中から金網が張ってあり、国を西と東に分けてある。
「ねえ、いちーちゃん。もう身体大丈夫?」
マキは心配そうにサヤカに聞いた。
「おうよ!あんな電流痛くもかゆくもないぜ!」
と、元気いっぱいに言ったサヤカ。
そんなサヤカをみてマキもうれしそうに笑った。
「いちーちゃんはつよいねー」
「おいごとー。いちーたちはこんな事じゃ死なないって」
「そうだったね〜」
「ねー」
サヤカとマキは一緒に「ねー」と言って笑いあった。
そして、目が合うとお互いニコリと笑った。
- 162 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:09
-
普段の様子ではまったく想像もつかない、自分たちの教育係り。
ひとみとリカは、我が目を疑うように、二人の光景を見ていた。
こんな様子がしばらく続いたので、痺れを切らしたひとみがサヤカに向かって手を出した。
「ねぇ、サヤカさ・・・・いたっ」
ひとみはサヤカに触れた瞬間、痛みを感じた。
何か、電気が走ったような感じ。
サヤカはそんなひとみを見て、地面に片手だけ手をついた。
「あっ、悪い。まだ、電気が抜けてなかったみたいだ。ほら・・・これでもう大丈夫」
サヤカは地面につけていた手をはなすと、ひとみに触った。
触れられる瞬間、ひとみは思わず身を強張らせたが、触れられてももう電気は走らなかった。
「・・・な?」
サヤカはひとみから手を放した。
「もしかして、そこの女の人・・・・」
「マキ」
「・・・マキさんが、サヤカさんに触らないでって言ったことと何か関係あるの?」
ひとみはマキを指差して聞いた。
途中、マキはひとみの言葉を遮って名前を言った。その表情は怒っている、というか何故か不機嫌だった。
- 163 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:10
-
「ああ、この金網には高圧電流が流されている。東と西を遮るためにね」
サヤカは金網を指差していった。
ただ見ただけは普通の金網。
その気になれば、よじ登ることもできそうな普通の金網。
それなのに、電流なんかがはしっているなんて。
「なんで・・・なんでサヤカさんは平気なの?高圧電流に触っても大丈夫なの?」
ひとみはサヤカを見た。
生まれてからずっと一緒にいるけど、謎が多すぎる。
高圧電流に触っても平気な人なんているわけがない。
しかしサヤカは何も言わずただニコッと笑っただけだった。
- 164 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:10
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 165 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:11
-
「へぇ、リカちゃんがずっとマキさんと一緒にいるんだ」
ひとみは大木を背にして、金網越しにリカと話を始めた。
「うん。ひとみちゃんもサヤカさんと一緒なのね」
リカも大木を背にして、その場に座ってひとみと話をした。
ひとみの中にはいろいろと疑問が残っているが、あまり深くは追求しなかった。
追求しなかったというより、できなかった。全て、はぐらかされてしまいそうだったから。
そして、あまりしつこく聞くと、サヤカがいなくなりそうだったから。
ひとみは、同じぐらいの年齢のリカに興味を持った。
そして、リカも同様にひとみに興味をもった。
「リカちゃんっていくつ?」
「私は17だよ。ひとみちゃんは?」
「ウチも同じ17歳」
「そうなの?偶然ね」
「うん。ウチのまわりに同じぐらいの年の子がいなかったから、リカちゃんと知り合えてうれしいよ」
「本当?私もそうなんだ。いままで知り合いになった人、みんな年上。同い年ってなんだかうれしいな」
お城以外で初めて知り合った友達に、ひとみもリカもうれしそうだった。
- 166 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:11
- 「リカちゃんの家族ってどんな人?」
「えっとね、ママは小さい頃死んじゃったからパパと二人なの。でもね、マキちゃんがずっと一緒にいて、姉妹みたいに育ったの」
「へぇ、また奇遇だね。ウチも父さましかいないんだ。母さま死んだからね。ウチもサヤカさんとずっと一緒にいるんだよ」
「一緒だね」
「うん、一緒だね」
ひとみとリカ。まったく同じ境遇で育っている。
そして、国王の子供という事までもが一緒だった。
しかしお互い、自分が国王の子供ということは言えなかった。
せっかくできた友達。しかも敵対しあっている国の友達。
身分を明かすことによって、いなくなってしまうのが怖かった。
だから、打ち明けることはできなかった。
- 167 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:11
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 168 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:12
- 「ねえ、いちーちゃん。あの子なに?」
「ひとみ?この国の国王の子供だよ。ごとーのほうは?」
「一緒だね。リカちゃんはこっちの国の国王の子供。可愛いでしょ?」
「・・・・そうだな」
サヤカとマキは少しはなれた場所で話をしていた。
サヤカはリカを見た。
ひとみと楽しそうに話しているリカは、普通にみて可愛かった。
だから、マキの問いかけに素直に言った・・・・それなのに。
「へぇ〜いちーちゃんはリカちゃんみたいな子が好きなんだ。ふ〜ん、そうなんだ」
と、少し拗ねたようにマキは言った。
そんなマキをみて、サヤカは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「なんだ?焼きもちか?ごとーも妬くことがあるんだ」
「べーつにー。・・・あっ、ひとみちゃんってなかなかりりしい顔しているね・・・誰かさんと違って」
「誰かさんって誰だよ」
「べーつにー。数百年もごとーのことを放っていた誰かさんのことじゃないですけどね」
「・・・・いちーのことかよ!?いちーだって好きで数百年もごとーを放っておいたわけじゃないぞ」
「どうなんでしょうね。どうせ、ごとーのこと忘れていたんじゃないの?何百年もたっていると、忘れちゃうからね」
「ごとーだって、忘れていたんだろ?どうせ。昔っから忘れっぽい奴だったからな」
「なによー」
「なんだよ」
- 169 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/01/31(土) 12:12
- 金網越し、火花が飛び散ってしまうのではというほど、にらみ合っていた。
「ふっ・・・」
「くすっ・・・」
だがすぐにお互いに噴出し、笑顔で笑いあった。
そして、声をそろえて言った言葉。
『17歳の子供には興味ないよ』
サヤカもマキもすでに今の年齢がよく分からなくなっている。
分からなくなるほどの長い年月を過ごしている。
だから、17年はほんの一瞬の年月にしか過ぎなかった。
「いちーちゃんに、触れたいよ」
マキは金網越しでサヤカを見つめた。
そして、金網に手を伸ばそうとした。
「バカ、やめろ!金網に触るな」
金網に触ろうとしたマキを、サヤカは大きな声を出しやめさせた。
マキはサヤカの声に驚き、伸ばしていた手を止めた。
でも、マキはサヤカの言葉に不満を感じた。
「ねえ何で?こんな電流、私たちが触ってもどうってことないでしょ?私たちは死ぬわけじゃないのだから・・・・」
マキの言葉はもっともである。
サヤカとマキは滅多なことでは死なない身体になっている。
さきほどサヤカが金網に触って電流をあびても、うずくまっただけで死んではいない。
だから、マキも金網に触れても大丈夫なはずである。
だが、サヤカはマキに金網を触れさせたくなかった。
「死ななくても、苦痛は感じるんだよ。ごとーが苦しむ姿、いちーはみたくないよ」
「いちーちゃん・・・・」
サヤカの言葉。
マキは伸ばしていた手を引っ込め、サヤカをみつめた。
その表情は、感激と寂しさ、複雑な思いが表れていた。
- 170 名前:今日はここまで 投稿日:2004/01/31(土) 12:21
- >>157つみさま
うれしいお言葉ありがとうございます。
いちよし、実は結構好きなのでもう少しいちよしっぽいのを入れようかと思ったのですがw
機会があれば続編書いてみたいです。
>>158さま
ありがとうございます。
続編なんとかがんばります。
>>159さま
落としてくださり、ありがとうございますm(_ _)m
上にあげるほど良い作品じゃないもので・・・すみません。
- 171 名前:つみ 投稿日:2004/01/31(土) 16:03
- せつない事情ですね。
ここからのいしよしの発展を見守りたいと思います。
- 172 名前:そして、出会い・・・・ 投稿日:2004/03/09(火) 02:34
- 「日も暮れてきた。もう、帰ろう」
サヤカは立ち上がりながら言った。
大陸の中心、国の境目であるこの場所から、今すんでいる城に戻るには結構な時間がかかる。
今ここを出発しても、城に戻る頃には星も出ている頃だろう。
「そうだね。これ以上は遅くなれないね」
マキもサヤカの意見に賛同し、立ち上がった。
しかし二人が立ち上がったのをみて、不満そうな声が二つ漏れた。
「えー、もう帰るの?」
「もう少し、いいでしょう?」
ひとみとリカだった。
ひとみとリカは金網をはさんで、ピッタリと近くに座っていた。
この数時間で凄く仲が良くなったようだ。
金網には触れないこそ、後数センチ横にずれてしまえば、触れてしまいそうな距離に座っている。
この距離が限界いっぱいの距離だろう。
「もう帰るの」
「これ以上遅くなると、みんな心配するでしょう?」
サヤカとひとみは怒り口調で言った。
その声に、しぶしぶ立ち上がるひとみとリカ。
「リカちゃん・・・」
「ひとみちゃん・・・」
立ち上がっても、見つめあってなかなか離れようとしない二人。
しかし、これ以上遅くなると本当にまずい。
仕方がないので、力ずくで連れて行くことにしよう。
「ほら、ひとみ行くぞ」
「リカちゃんも、行くよ」
サヤカとマキは、ひとみとリカの首根っこを掴んで歩き出した。
「リカちゃん〜また会おうね」
「うん、ひとみちゃんも・・・」
ひとみとリカの声が、この小高い丘に響き渡った。
- 173 名前:夜の逢瀬 投稿日:2004/03/09(火) 02:37
- 「やはり、来てくれたんだ」
「お前こそ」
この日の夜、サヤカとマキは再びこの丘に来ていた。
特に約束をしていたわけでもなかったのだが、自然とこの場所に来ていた。
「何か、久しぶりだね。いちーちゃんに会うのって」
「そうだな。・・・150年振りぐらいかな?」
150年。普通の人間だったら生きていられるはずもない年月である。
そう、普通の人間だったら。
「そっか、まだ150年しかたってないのだね。私たちが離れ離れになってから」
「そうだな。まだ150年しかたってないよ・・・・・いちーたちの国がなくなってから・・・・」
サヤカの言葉。この言葉を聞き、マキは目を伏せた。
金網越しに俯いているマキを、サヤカは慰めようと手を伸ばした。
しかし、電流が流れている金網があるため、やはり触れることが出来なかった。
- 174 名前:夜の逢瀬 投稿日:2004/03/09(火) 02:39
- 「ちっ、忌々しい金網だな。これさえなければごとーを抱きしめることが出来るのだが・・・・」
サヤカは手を引きながら、舌打ちをした。
この金網に触っても無事なサヤカなのだが、やはり高圧電流、触れば多少なりとも痛い思いはする。
だから、触るのには躊躇してしまう。
「こんなのがあるから、いちーちゃんに抱きつけない。こんなのを作った、この国の国王が憎い」
マキの言葉には憎悪が含まれていた。
この大陸を二分するために張られたこの金網は、この国の数代前のそれぞれの国王が張ったもの。
この大陸には、はるか昔にいた種族が創っていた文明があった。
しかしその種族が滅びたときに、新たに出てきた種族の二人が国を分けた。そして、それぞれの王が自分の国を区切るために、中央にこの金網を張った。自分の陣地を守るために、愚かなモノを作り出した。
「この大陸、本当はいちーのものなのにね」
「ホント、そうだよ。いちーちゃんが“一”だったから」
- 175 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:40
- 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
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- 176 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:41
-
「くっ・・・」
「大丈夫?いちーちゃん・・・・」
相変わらずうずくまっているサヤカに、マキは心配そうに見つめていた。
ここはとある一軒家。
背中に深手を負ったサヤカは、先ほどからずっと唸っていた。
いくら深い傷を負ったとしても、死ぬことはない。サヤカたちはそういう体質だから。
でも、死なないと言っても、怪我をすれば痛い。死にそうになるくらいに痛い。
サヤカは痛みと必死に戦っている。
「もう・・・・なんでそんな傷を負うのかな?」
と、そこへ新たな女性が現れた。
サヤカやマキより少し年上の、この猫目の女性はてにタオルと何か液体の入ったビンを持っていた。
「ケイちゃん・・・・」
マキは不安そうにこの女性をみた。
ケイと呼ばれたこの女性は、ため息をつきつつサヤカに近づいた。
- 177 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:41
- 「ほらサヤカ、背中を出しなさい。消毒をしてあげるから」
ケイはタオルに液体を染み込ませた。そして、サヤカの背中を捲り上げた。
「・・・・これはひどいわね」
ケイは少し驚いた様に言った。
サヤカの背中には大きな切り傷が一つ、背中全体に入っていた。
そしてその傷から化膿が始まっていた、
「これは・・・・剣に毒が仕込んであったようね」
この傷は相当深いようだった。
剣に毒を塗って切り込む。多分、相手を弱らせてから一気に止めを刺すつもりだったのだろう。・・・・・唯一殺すことの出来る方法で。
「そんな!?ねぇ、ケイちゃん、早くいちーちゃんを助けてよ」
「ちょっと放しなさい。消毒液がこぼれるでしょう!」
取り乱したマキがケイの腕にしがみつき、激しくケイを揺さぶった。
その衝撃で、ケイは危なく消毒液をこぼしそうになってしまった。
- 178 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:42
-
- 179 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:42
- 「ふぅ・・・・これでよし。後は治るのを待つだけか」
消毒をし終わったケイは、サヤカをベットで寝かせた。
そして、やっと落ち着きを取り戻したマキに、暖かい紅茶をいれてあげた。
マキはそっと紅茶に口をつけた。
「それにしても・・・酷い事になったわね」
ケイは外をみた。外では今でも争いを続けている。
家族、友人。そんなことも関係なく、傷つけあっている。何かが壊れたように・・・・・
「なんで・・・・なんでこんなことに・・・・・」
「何で・・・だろうね?サヤカは“一”なのにね。この“数の種族”の最高位なのに」
- 180 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:43
- “数の種族”
これが、サヤカたちの種族の名前である。
数字ごとに位があり、数が少ないほうが上の位になる。特に王とかはいないのだが、自然と一番上である“一”の位の人物が、この種族を治めることになっている。
そして、その数字は名前の上に表されるようになっている。
“一”のいちいサヤカ。
“五”のごとうマキ。
そしてこのケイも“八“のやすだケイだった。
数多くある数字。“一”を中心に一桁の人物が、この国の中心人物であった。
- 181 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:43
- 「みんな、おかしいよ・・・・仲良く暮らしていたはずなのに・・・・・」
マキはそういうと、目を伏せた。そして、肩を振るわせ始めた。
しかしケイはそんなマキの様子を気にするわけでもなく、紅茶を飲んだ。
「国の、種族の崩壊だよ」
そこへ、起き上がったサヤカが言った。
まだ、痛々しい感じがするのだが、傷の治りも早いこの種族。起き上がることも出来るようになった。
「いちーちゃん、まだねてなくちゃダメだよ」
マキは慌ててサヤカを横たわらせようとした。
しかし、サヤカはマキを制し、ケイを見つめた。
- 182 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:44
- 「この国崩壊するんだよ。いちーたちは滅びるんだよ。そうだよね?ケイちゃん」
「・・・・なんでそんなこと言うの?サヤカ」
「だって・・・・生も死もよく分からないこの種族が長らく栄えていくわけないじゃない。やはり、国は変化することで栄えていくんだよ。それを一番良く知っているのは・・・・ケイちゃんだよね?」
「・・・・何が言いたいのかしら?」
「さあね。いちーはただ思ったことを言ったまでさ」
サヤカとケイ。二人は無言で見つめあった。
二人の間に流れている、奇妙な空気。
マキはただ、戸惑うだけだった。
- 183 名前:―−―記憶に残る思い出―−― 投稿日:2004/03/09(火) 02:44
- 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
- 184 名前:夜の逢瀬 投稿日:2004/03/09(火) 02:45
-
「いちーの言ったとおり、いちーたちの種族は滅んだね」
「・・・・うん。でも、こうしていちーちゃんに会うことができたんだもの・・・他の人なんていなくてもいいよ」
「あはは・・・恐ろしいことをいうね、ごとーは」
「だって、ごとーにとって、いちーちゃん以外の人はどうでもいいもん。いちーちゃんさえいてくれれば・・・・」
「ごとー・・・・ごとーに触れたいよ」
「うん・・・ごとーもいちーちゃんに触れて欲しいよ。昔みたいに、優しく抱いてよ」
サヤカとマキを阻む、この金網。
この金網が取り払われるときは、来るのだろうか?
だが、この金網が取り払われると言うことは、この大陸を二分している西と東の国が、終わると言うこと。
そんな日は、いつくるのだろうか?
「案外すぐに来たりしてね」
「そうだね。そんな空気が流れているよ」
そう遠くない将来の夢を胸に、二人はくすくすと笑いあった。
- 185 名前:今日はここまで 投稿日:2004/03/09(火) 02:48
- >>171つみ様
切ない事情・・・一応あるのですが自分に上手く表現できるのかどうか・・・
いつも感想ありがとうございます。すごく感謝しています。
一ヶ月以上空いてしまっても、なかなか進めることが出来ない・・・
書きたいことは山ほどあるのに。
そして、絵描きの続編(?)も書いてしまいそうな勢いがある、今日この頃・・・
ああ、時間がほすぃ・・・・
それでは、ごきげんよう〜
- 186 名前:つみ 投稿日:2004/03/09(火) 18:54
- あの2人が金網を取っ払って欲しいですね。
お互いのためと教育係の2人のために・・・
次回までまってます!
- 187 名前:A 投稿日:2004/03/19(金) 06:27
- 更新ありがとうございます!待ってました!
いちごま大好きなので続き期待しています。
- 188 名前:まめ大福 投稿日:2004/03/25(木) 21:02
- 設定も珍しく、面白くて良いです。
同じくいちごま好きーなので作者さんのペースで頑張って下さい
期待sage
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 10:17
- 続き待ってます
意味無いけど、一応保全
- 190 名前:A 投稿日:2004/06/12(土) 14:26
- 作者さんお元気ですか〜?
まだまだ続き待ってま〜す!
- 191 名前:A 投稿日:2004/08/08(日) 19:02
- いつまでも待ってます。
- 192 名前:ミッチー 投稿日:2004/08/26(木) 02:54
- 初めまして。
この話、面白いです!
いちごま好きなので嬉しいです。
続き楽しみにしてマス。。。
- 193 名前:帽子屋 投稿日:2004/09/16(木) 03:53
- お久しぶりです。長い間、放置してしまって申し訳なく思っています。
本当は本編更新しないといけないところですが、どうしても書きたい衝動に懸かれたので、ついついと書いてしまいました。
「絵描き」の少し前の話・・・・良かったら見てやってくださいm(_ _)m
- 194 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:53
- あいつに会ったのはこんな雪が降る寒い日の夜だった。
- 195 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:54
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 196 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:54
- 「紗耶香さま、先生がお待ちです。医務室に行きましょう」
「いやだ、行きたくない。行っても同じでしょ?医務室に行ったから、あたしの病気が治るわけがない」
「しっかりと治療すれば、きっと・・・・・」
「そんなセリフ、聞き飽きた。もう出て行ってくれ」
あたしは部屋の中にいたメイドを外に追い出した。
メイドが出てから、部屋の鍵を閉めた。
部屋の外でメイドが何かを行っていたが、あたしには聞こえなかった。聞きたくも無かった。
どうせ、いつも同じことを言っているだけだから。
- 197 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:55
- 「ホント、うるさいな」
あたしは部屋の外にいるメイドに対して、悪態をついた。
あのメイドはあたしのために言ってくれている事ぐらい、あたしにも分かる。
あたしの病気はしっかりと治療したほうが良いに決まっている。あたしの専属の医師も、あたしの病気を治すために、足重も無く家に来てくれている。
みんな、あたしのためにしてくれていることぐらいは、分かっている。
でも、どうしても素直に聞くことができない。
- 198 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:55
-
「よし、行くか・・・・」
あたしはボストンバックに入るだけの服を入れた。
そして、毎日飲めと言われた薬を持った。
それから、今までに親からもらった結構な大金を財布にしまった。
こんなときにまで、親のくれた金を持っていこうとする自分が少し情けない気がする。
それでも、もって行かなければ生活が困ってしまう。
「・・・・さよならだ」
月明かりの夜、あたしはこの家を出た。
- 199 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:55
-
- 200 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:56
- 「うーん、うちだと未成年が家を借りるときは保護者を保証人にしてもらわないといけないんだ」
「お金はあります。なんだったら前払いでもいいですよ」
「そうはいってもね・・・・」
私は朝一に不動産屋を訪ねた。
昨日の晩は公園で野宿をしたのだが、今日もそういうわけにはいかない。
何とか早めに家を借りなければ・・・・
「そこをなんとか」
「でも決まりだからね」
先ほどからこんなやり取りが続いている。
不動産屋のおじさんは困っている。
おじさんの言うことは確かである。
あたしみたいな子供に家を貸すには、親の保障が必要になる。それが決まりだから。
分かっているのだけど、あたしはどうしても親の保証がなくして家を借りたい。
このおじさんは凄く人が良いみたい、真剣に悩んでくれている。
これ以上迷惑をかけることは出来ないな。
- 201 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:56
- 「・・・分かりました、迷惑をいってごめんなさい」
「こっちもごめんね、部屋を貸せなくて」
あたしは不動産屋を後にした。
この他に数件回ってみたが、どこも同じ答えが返ってきた。
やはり、子供には部屋を貸せない。
「はぁ、世間は子供に厳しいな」
- 202 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:57
-
17歳、高校中退。
働こうにも住む場所がないから、働くことも出来ない。
住み込みの仕事を探そうとしても、この病気持ちの身体、いつ発作が来るか分からないので、あまり激しい仕事は出来ない。
あたしは仕事が出来ない身体だ。・・・・・と、思っているだけで、自分は甘えている証拠だと思う。
家を出て独り立ちしようとしたのだが、何やっているのだろう?自分。
- 203 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:57
-
気が付いたら、町外れまで来ていた。
辺りも薄暗くなっていて、人工的な光がぽつぽつと付き始めていた。
「あー、もう疲れたよ」
あたしはその場で座り込んでしまった。
これ以上歩けない。
「このまま死ねたら、楽かもね・・・・」
ふと、そんな考えが口から出てしまった。
「こんなところで死なれたら迷惑じゃ!」
「イテッ」
- 204 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 03:59
- 突然声がしたと思ったら、頭に痛みが走った。
あわてて顔を上げると、そこには一人のおばあさんが杖を持ってあたしの前に立っていた。
恐らく、その持っている杖で私の頭を叩いたのだろう・・・痛かったぞ。
「そこの若いの。どうしてワシのアパートの前で死のうとしている」
えっ?
私はおばあさんの言葉に後ろを振り向いた。
そこには、木造二階建てのぼろアパートが建っていた。
「ぼろは余計じゃ」
おばあさんは再び、杖で私の頭を叩いた。
「・・・聞こえていた?」
「ふん、考えていることぐらい分かるわ」
私は叩かれた頭をさすりながら、おばあさんに聞いた。
おばあさんは杖を片手にふんぞり返っている。
考えていることがわかるなんて・・・・やはり長年の勘?
- 205 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:00
-
「それで、どうした?若いの。どうしてこんなところで座り込んでいる?」
「あ・・・うん。家、飛び出してきてね。どこもアパート貸してくれないから、このまま死ぬのかな?と思っていたんだ・・・・」
「この寒さじゃ、凍え死ぬかもな」
そう、今は12月。こんな寒空で、防寒具もなく眠ったら死ぬかもしれない。
それに、あたしは身体が弱いし・・・・
「家、ないのか?」
「ええ、まぁ・・・」
「なら、家を貸してやる。あの二階の一番端でいいのなら、自由に使うがいい」
「えっ??」
あたしはおばあさんの声に驚いて立ち上がった。
後ろを振り向いたらやはりぼろアパート。
でも、それでも住めるなら・・・・
「ばあちゃん、マジ?」
「ああ、ここで死なれるよりマシじゃからな」
「やりー、ばあちゃんありがとう」
あたしはうれしくなり、ばあちゃんに抱きついた。
そして、飛び跳ねて喜んだ。多分、今まで生きていた中で一番うれしいことに違いない。
- 206 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:00
-
あたしの新しい生活は、このぼろアパートから始まった。
- 207 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:00
-
親からもらっていたお金を少しずつ使った。
本当は、こんなお金を使わずに自分で稼ぎたかったのだが、この身体がいつ壊れるか分からないので、下手に働くことは出来なかった。
せっかく手に入れた自分の生活、少しでも長く味わいたい。
このアパートのつくりは2Kという造りだった。ユニットバスだが、個人に風呂とトイレがついていたのもありがたかった。見た目より、なかなかしっかりとした部屋だった。
二部屋ある部屋の一つは、自分の生活のための部屋にした。
もう一つの部屋は・・・・
「よし、描くか・・・・」
もう一つの部屋には、イーゼルにキャンバスを置いた。
真っ白で大きなキャンバス。ここに何かを描こう。
自分の力で何かを描きあげたい。完成すれば、幸せになれるはず。
そう信じて、線を入れた。
- 208 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:01
-
- 209 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:01
-
「はぁ、描けないな・・・・・」
あたしはキャンバスを前にしてため息をついた。
何かを描こうと思ったのだが、何を描けばいいのか分からない。
とりあえず描いてみようと思うのだが、そのとりあえずというものさえも浮かんでこない。
あたしは持っていた筆を置いた。
「気分転換に外にでも出てみるか」
あたしは絵の具セットとスケッチブックを持って、部屋をでた。
あたりは薄暗く、時はすでに夜になっていた。
こんな時間ではとてもじゃなく、風景は描けない。
あたしは近くの駅に向かった。
- 210 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:02
-
「ここならどんなに遅くても明るいな」
あたしは駅の構内にビニールシートをひいてその上に座った。
そして持ってきたスケッチブックに道行く人たちを描いていった。
あたしの目の前を通り過ぎていく人々。
みんな目的があって、目的の方向に歩いている。
そしてあたしは目的もなく、その人々を描き続けている。
- 211 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:02
- 「あの・・・・・」
「はい?」
突然、道行く人に話しかけられた。
あたしはふと顔を上げた。そこには若い男女のカップルがいた。
女はものすごく大きな花束を両手いっぱいに抱えていた。
男はものすごく大きな紙袋を両手に二つ持っていた。
そして二人の表情はどこか幸せそうだった。
「はい、何か用ですか?」
あたしは目の前にいるカップルに聞いた。あたしに話しかけてきたのだから、あたしに用事でもあるのだろう。
男はもっていた荷物を地面に置くと、優しく女の肩を抱いた。
ん?目の前でいちゃつくのか?それをあたしに見て欲しいと・・・・露出狂カップル??
あたしは少し恐くなってカップルをみた。
しかしカップルはとてもさわやかに笑っていた。そして男のほうが口を開いた。
- 212 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:03
- 「実は僕たち、今入籍してきました」
はい・・・・・それはおめでとうございます。
男の言葉に少し拍子抜けしてしまった。
でも何故このカップルは見知らぬあたしに入籍報告をしているのだろう?
不思議そうにしているあたしに気にせず、今度は女のほうが口を開いた。
「今、友人たちがパーティを開いてくれて・・・みて、大きな花束でしょ?」
女はうれしそうに花束を抱きしめた。
大きな花束で、良かったですね。
となると男が持っていた紙袋には、友人たちからのプレゼントがたくさん入っているのか。
「大きな花束にたくさんのプレゼント。とても良い友人たちをたくさんお持ちなのですね」
あたしは素直な気持ちを述べた。
カップルはうれしそうな顔をして頷いたが、何故か少し寂しそうな顔をした。
どうしたのだろ?一体?
- 213 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:03
- 「・・・・実は、写真は撮っていないのです」
男はそういうと、ぎゅっと女を抱き寄せた。
二人の話はこうだった。
まだ若い二人は、結婚をしたけど式をあげるお金までなかった。それを知っている友人たちがパーティを開いてくれたのだが、やはりドレスを着たかったとのことだった。
「だからキミ・・・・描いてくれないか?」
「はい・・・・?」
- 214 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:04
-
あたしは目の前のカップルを描いている。
頼まれて描く絵なんて、なんだかすごく緊張してしまう。
あたしはカップルの頼みを一応引き受けた。
女が自分の着たいドレスの写真を持っていたので、それを参考に、女のドレスを描いていった。
男のほうはいたってシンプルなタキシード。
あたしの目の前で普通の服を着ているカップルは、あたしのスケッチブックの中ではとても素敵な新郎新婦になっている。
「・・・出来ました」
あたしはスケッチブックの紙を一枚破り、カップルに渡した。
カップルは無言で絵を見つめていた。
まったく何も話さないまま、じっと絵を見ていた。
・・・・そんなにも下手くそだったかな?
少し心配になってカップルを見た。
- 215 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:04
-
「えっ?」
あたしは驚いてしまった。
だって、女が涙を流していたから・・・・・
「ありがとう、本当にありがとう」
男は私の手を握ると思いっきり上下に振り回された。
女は周囲の目も気にしなく、ワンワンと泣き出してしまった。
何だ?何だどうした?
「キミ、最高な絵を描いてくれて本当にありがとう。僕が想像していたもの以上に、素敵な絵を描いてくれた。本当にうれしいよ」
「うん・・・私、ドレス着れたんだね・・・・うれしい・・・・」
あたしはカップルに散々感謝された。
絵を描いただけなのに、こんなにも喜んでくれるなんて・・・・・なんだかうれしいや。
- 216 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:05
-
- 217 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:05
- あたしは連日、夜は駅に出かけることにした。
いつもの位置に来ると、いつものようにビニールシートをひいてそこに座った。
そして、いつものように絵を描き始めた。
あたしの前には小さな看板を置いた。
【似顔絵、描きます】
という看板を置いた。
あの日のカップルは、あたしの描いた絵に対して、5千円というお金をくれた。
あたしはそんなつもりで描いたわけではなかったから、お金を受け取るのを断ったが、カップルは無理矢理あたしにお金を持たせた。
そして言った。
(キミの描く絵は、僕たちを幸せにした。だからこれは受け取って欲しい。僕たちを幸せにしたキミへの報酬だよ)
だから、あたしは似顔絵を描こうと思った。
「あのー、似顔絵おいくらですか?」
「値段?ないよ。出来上がった絵に対して、自分で思った値段をあたしにくれればいいよ」
- 218 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:05
-
そう、あたしの描く絵には値段を決めなかった。
モデルになった本人たちが、自分が思った値段をつければいいのだから。その値段が、あたしへの報酬。
この商売はなかなか好評だった。
一日に5,6人は描いていて、大体5千円ぐらいは手に入る。
多いときなんて、1万を越すときもある。
ある寒い日、いつものように駅の構内に来た。
いつものように絵を描いていたら、あたしの座っている正面の壁に、1人の女の子が座った。
あたしとそれほど年齢が変わらない、幼顔の少女。
誰かと待ち合わせでもしているのかな?こんな寒い日に大変だな・・・でも、関係ないか。
あたしは気にもせず、絵を描き始めた。
- 219 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:06
-
- 220 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:06
- ふと、外を見ると雪が降ってきた。
もう雪の降る季節になったか。だから今日は寒かったのか。
あたしは前を見た。相変わらず少女は壁にもたれかかって座っていた。
まだ、待ち合わせの人は来ないのか?
待たせるなんて、ひどいな・・・・と思ったそのとき。
「おいっ!」
あたしは思わず立ち上がってしまった。
なんと、少女は地面に倒れこんでしまったから。
あわてて少女に駆け寄ると、そっと抱き起こした。
少女の身体は凄く冷えていた。顔色もすごく悪いようだった。
「おい、大丈夫か?」
あたしは少女を揺すった。
少女はうっすらと目を開けた。
「あなた・・・だれ?」
そういうと、少女は再び目を閉じてしまった。
「おい、おい・・・・ったく、どうしよう・・・」
あたしは少女を腕に抱いたまま、途方にくれてしまった。
- 221 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:07
-
- 222 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:07
- 「ん・・・・」
「・・・目、覚めたか?」
あたしは布団で寝ている少女に聞いた。
少女は目を開け、あたりを見渡している。そして、私と目が合うと少し不思議そうな顔をした。
まあ、それもそうだろう。目を覚ましたら見知らぬ部屋に見知らぬ人といれば。普通は恐がって悲鳴を上げるはずだ。それとも、あまりの恐怖に泣き出しちゃうかも・・・・
「ここは?・・・・まっ、いいか、オヤスミ〜」
「はい、オヤスミ・・・ってなんでやねん」
あたしは思わず乗り突っ込みをしてしまった。だって、少女が再び眠りにつこうとしたから。
なんていうのか神経が図太いと言うのか、マイペースというのか・・・・
これじゃあ話が進まないと判断したあたしは、少女を布団から引っ張り出した。
少女も何とか出まいと、必死に抵抗をしていたが、あたしのほうが力は強かった。
- 223 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:08
-
「で、キミはどうしてあんなところにいたの?」
あたしはテーブルを挟んで、向こう側に座っている少女に問いただした。
少女は何も言わずに、頬を膨らませてふてくされていた。
・・・・そんなにもあたしに眠りを拒まれたことが悔しいか?
少女は目の前に置かれている、コップに手をのばした。
コップの中身は暖かなココア。こんな寒い日にはピッタリの飲み物だろう。
少女は一口二口飲むと、視線をコップの中に落とした。
「・・・どうした?美味しくないか?」
「ううん・・・美味しいよ。これ・・・・」
少女はポツリとつぶやいた。少女の顔は何故か暗かった。
「どうした?何があったんだ?どうしてあんなところにいたのだ?」
あたしは少女に聞いた。
誰だっていいたくないことはいくつかある。でも、あそこにいた理由ぐらい、聞いてもいいと思った。
少女は一瞬悲しそうな顔を見せると、すぐに笑顔を作った。
- 224 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:08
-
「んーどうしてあんなところにいたのだろう?もしかして、迷子になったからかな?あはは」
少女はそういうと笑った。・・・笑ったと言うより、笑うという仕草をした。
あたしは少女を見つめた。
少女は相変わらず笑っていたが、あたしに見られて、笑いをとめた。
「どうして、あそこにいたの?」
あたしはもう一度同じ質問をした。
今度は少女は悲しそうは表情をだした。・・・今度は作ってはいない。
「だって、だって・・・・お父様がお見合いさせるって。私、イラナイ子だからお見合いさせて厄介払いをさせたいんだ。私をあの家から追い出したいんだ・・・きっと」
少女はそういうと、大きな声を出して泣いた。その姿はまるで小さな子供が、自分のことを見てもらために必死に叫んでいるように見えた。
その姿はとても悲しくて、切なくて・・・・気づいたらあたしは思わず少女を抱きしめていた。
「お前の親がお前をイラナイというのなら、あたしがお前をもらってやるよ。だからずっと・・・あたしと一緒にいよう」
少女はあたしの言葉を一瞬不思議そうな顔で聞いていたが、すぐに目を閉じて理解したように小さくうなづいた。
- 225 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:09
-
雪の降る寒い日に、あたしは少女を拾った・・・・
- 226 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:09
- 「いちーちゃん、おきてー。お買い物いこうよ〜」
「ウグッ・・・って突然乗ってくるな!重いだろう!!」
少女の名前は後藤真希と言った。
真希は布団で寝ているあたしの上に飛び乗ってきた。
気持ちよく眠っているときに、突然上に飛び乗られるとさすがに苦しいものがある。・・・ただでさえあたしは身体が弱いのに・・・
しかし真希はまったくお構いなしにいまだにあたしの上に乗ったままである。
「ねえねえねえ起きてよ〜。お買い物行こうよ〜。私の生活道具買いに行こうよ〜」
真希は上に乗ったまま、私を揺さぶっている・・・・って、早くどけよ、苦しい。
「ごとー・・・重い・・・苦しい」
「ひどいー、ごとーそんなにも重くないもん」
あたしの言葉に怒った真希は、あたしの上でじたばたして・・・って本格的に苦しくなってきた。目の前が薄れていって・・・・・
「きゅう〜」
「えーいちーちゃん、目を覚ましてーーー」
真希の声を遠く聞きながら、意識が遠くなっていった。
- 227 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:10
-
「いちーちゃん、ごめんね。ごとー、わざとじゃないんだよ〜」
真希はあたしの腕に軽くぶら下がりながら、甘えるように言った。
あの後、あたしは軽い失神をしてしまった。
あたしは真希のことを無視をして、目的地に向かって歩いていった。
「ほらよ、必要なものを買いなよ」
目的地、生活雑貨の店についたあたしは、いまだ腕にしがみついたままの真希を引き離し、お店の奥のほうに押し込んだ。
これから真希と生活していくために、真希自身のものが必要になるから。だって真希は見るからに女の子という感じで、あたしみたいに必要最低限のものでいいという感じではないから。
「うわぁ〜、可愛いね〜」
やはり真希は目を輝かせながら、いくつかの小物を手に取っていた。
「ねえいちーちゃん、これなんかどう?あっ、これもかわいいね」
真希はうれしそうにいろいろなものを見ていた。
あたしはそんな真希を微笑ましく思い、壁にもたれかかって真希の様子を見ていた。
- 228 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:10
-
「ねーいちーちゃん、ハブラシは青と緑どっちがいい?」
真希は二本のハブラシを持って、あたしに聞いてきた。
どっちか迷ったので、あたしに選ばせようということか。でも、青と緑なんて女の子らしくない色だな。
あたしは、真希が持っていた二本のハブラシを見比べた。
「んー、あたし的には青色のほうが好きかな?」
「分かった〜。じゃあ、このマグカップは?」
今度は動物の顔をしたコップを二つ掲げた。熊と狼の形。
「なんだよそのコップ・・・まあ、どっちかといえば狼かな?」
「そっか、じゃあこのお茶碗は?」
「水色の水玉」
「じゃあこの箸は」
「お茶碗の色のおそろいの水色」
「このお皿」
「これも同じ色の右側のほう」
「じゃあこれ・・・・・」
「そうだな・・・・」
- 229 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:11
-
このお店に来てから、数十分。真希が持っているかごの中は、今選んだもので溢れかえっていた。
でもおかしいな?コップや茶碗でこんなにもかごがいっぱいになるかな?
あたしは真希の持っているかごを覗き込んだ。
「あっ!」
あたしは思わず声を上げてしまった。
だって、かごの中にはどのものも全て二つずつあったから。
あたしが選んでいたものとはまた違った、ピンクや赤といったコップや茶碗・・・・
「おいごとー、どういうことだ?」
「どういうことって?」
「なんで二組ずつあるんだ?」
「だって、いちーちゃんとおそろいにしたかったもの」
そう言ってにこっと笑った真希。
・・・・わぁー可愛いな。女の子だなー
あたしは思わず、顔をにやけさせてしまった。
でも、にやけているのを悟られないように、手で顔を隠した。そして、クールな振りをして真希にいった。
「ん・・・まあ、あたしが今まで使っていたものが古くなっていたから、変えてやってもいいかな・・」
あたしの言葉を聞くと、真希はうれしそうに飛び跳ねた。
ああ、そんなに飛ぶとかごの中のコップが割れるって・・・・
- 230 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:11
-
「たくさん買ったね」
あたしと真希はアパートに戻ってきた。
あのあと近くのデパートに行き、服もたくさん買い込んできた。
お金はどうしたのかって?・・・・あたしが家から持ってきたお金を使った。仕事をしていないあたしには収入がないからね。・・・本当は、自分で稼いだお金で買ってあげたかったけどね。
真希はうれしそうに、今買ってきたものを袋から取り出して、いろいろと並べている。
洗面所には、赤と青のハブラシ。キッチンにはピンクと水色の食器。そして・・・・
「いちーちゃん、並べて寝ようね」
と、とりだしたおそろいの枕。枕・・・
「あっ、布団買うの忘れたな」
「えっ、こんな狭い部屋にどうやってひくの?」
狭い言うな。
確かにこの部屋は狭いが、布団二組ひけないことはない。一つに布団で寝るなんて、真希は嫌がらないのかな?
- 231 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:12
-
「もう一回、買いに行こうか・・・・」
あたしは財布を持って立ち上がろうとした。
しかし、真希があたしの手を掴んで再びあたしを座らせた。
「ごとー、いちーちゃんと一緒に寝たいから・・・いいでしょ、ねっ?」
ねっ?って言われたら・・・・いいに決まってるじゃない。
「・・・・仕方がないな」
こんなときにも素直になれないあたしって、ちょっといやだな。
- 232 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:12
-
- 233 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:12
-
真希と暮らし始めて、数週間がたった。
部屋の中心にあるキャンバス相変わらず真っ白だったが、小さな絵はたくさん描き集まっていった。
昼はのんびり絵を描いて、夜は駅の構内に行き商売を始める。
毎日毎日代わり映えもない日々だが、何もないこういう日常がなんとなく好きだ。
「ふう、疲れた・・・」
あたしは持っていた筆を置くと、ふと窓の外をみた。
アパートの入り口で、真希とばあちゃんが何かを話していた。
少し場所が遠いけど、聞き耳を立てれば聞こえないこともない。
- 234 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:13
- 『真希ちゃん、お買い物かい?』
『ええ、今日はすき焼きにしようと思ってたくさん材料を買ってきちゃった』
『すき焼きか、いいねえ』
ほう、今日はすき焼きか。楽しみだな。
あたしは狼のマグカップに、コーヒーを入れた。
そして、二人の姿をもう一度見た。
『おばあちゃんも一緒にどうですか?』
『んーあたしゃ遠慮しとくよ。ばばあだから肉はあまり食べれないからね。それに、精力つけただんなもこんなばばあが一緒にいたら、襲うに襲えないからね』
『もーおばあちゃんったら。でも、いちーちゃんなかなか襲ってくれないのですよ。こんな可愛い女の子が一緒に寝ているのに、手を出さないなんて・・・いちーちゃんってイン・・』
『真希ちゃん、女の子がそんなこと言ってはだめじゃよ。でも、お前さんのだんな、よほど意気地がないのか?男ならガバッと襲わないとな』
『そうだよねー』
- 235 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:13
- ぶーーーー
あたしは二人の会話を聞いて、思わず口に含んでいたコーヒーを吐き出してしまった。
ったくあの二人は、男だのイン・・・だの、あたしの性別をなんだと思っているんだ?
二人は、なにやら楽しそうに話し続けていたが、これ以上話を聞く気にもならなくて、あたしはキャンバスの前に座った。
相変わらず、真っ白なキャンバス。一体何を描いたらよいのやら・・・・・
“ガチャ”
「ただいまー」
真希が帰ってきた。両手にビニールの袋をぶら下げて。
あたしはキャンバスの前から立ち上がり、真希を出迎えた。
- 236 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:13
- 「おかえり、今日はすき焼きだってな」
あたしは先ほどの真希とばあちゃんの会話を思い出して、真希にきいた。
そして、精一杯のイヤミも付け加えてみた。
「肉を食べたら精力つくかな?」
「うん、いっぱい食べてね」
あっら?真希はイヤミが通じてないみたいににこっと笑っていた。
なんだ?こいつ。鈍感なのか?
真希は買ってきた食材を冷蔵庫に入れ始めた。
うれしそうに鼻歌なんか歌っちゃって・・・・まっ、いいか。
- 237 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:14
-
『いただきますー』
やはり、夕食はすき焼きだった。
真希は今日は少しいい肉を買ってきたというが、普段と比べてあまり変わらない。実家にいたころは、高級かなにか知らないが、異様にやわらかい肉ばかりで食べた気にもなれなかった。
でも、今食べている肉は、筋があって脂身がたくさんあって硬くて噛みごたえがあって・・・美味しい。
目の前にいる真希も、美味しそうに食べている。
真希が美味しそうに食べているのを見ると、あたしも美味しく感じる。そして、真希もそんなあたしを見て、ますます美味しそうに食べていく。
食事はこうやってとるものなんだな。1人で食べるのは美味しくないよね。
- 238 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:14
-
『ごちそーさま』
「ふー食った食った」
あたしはコロンと、その場で仰向けになった。
おなかも満足でとても気持ちがいい。
「もーいちーちゃん。食べたままでねっころがると牛になるよ」
真希はそういいながらあたしの身体を起こそうとした。
このまま起こされてなるものか。この気持ちよさを真希にも伝えないと。
あたしは真希の手を引っ張った。
「うわっ・・・・ちょっと・・・・」
真希はそのまま、引っ張られるように倒れこんできた・・・・あたしの胸の中に。
突然身体にのしかかった衝撃に、一瞬息が止まりそうになったが、目の前には真希の顔があった。
- 239 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:15
-
「いちーちゃんの・・・・ばか・・・」
真希の顔は少し赤くなっていて、少し震えていて、目も少し反らしていて・・・・・なんていっていいのか分からないくらいに・・・・可愛い。
「ごとー」
あたしは無我夢中で真希を抱きしめた。そして、何かに取り付かれたようにキスの雨を降らせた。
額、目じり、頬、鼻、そして唇。
「ごとー、ごとー」
狂ったように真希に触れた。
「いちーちゃん、いちーちゃん」
真希もあたしを受け入れてくれた。
あたしは真希と数え切れないぐらい、キスをした。
そして、そのまま真希を組み敷いた。
- 240 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:15
-
- 241 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:15
-
「んっ・・・朝・・・・・」
顔に射した光に、あたしは目を覚ました。
窓から光が射していて、すでに日は昇っていた。
あたしはいつの間にか眠っていたらしい。
「ん〜・・・・」
すぐ近くから声がした。
声がしたほうを見ると、真希がいた。
真希はまだ目を覚ましていなく、気持ちよさそうに寝ている。
「ご・・・ごとー・・・・・」
光を浴びている真希にあたしは目を奪われた。
普段、馬鹿なことばかりしている真希ではなく、聖母のような慈愛に満ちた顔・・・・・
- 242 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:16
-
「こ、これだ!」
あたしは近くにあったシャツを羽織ると、キャンバスの前に座った。
そしてペンを執ると、無我夢中に描き続けた。柔らかな、真希の微笑み。
この大きなキャンバスは真希を描くためのものに違いない。
「・・・ねー、何してるの?」
寝ぼけ眼の真希が、一心不乱に筆を振り続けているあたしをみていた。
あたしは真希の言葉にも答えもせず、キャンバスの白い部分を消していった。
「むー・・・私に構ってよ・・・」
真希は後ろから抱き着いてきた。
ふと後ろをみると、いつもの真希の顔があった。
「ん・・・おはよう、ごとー」
あたしは真希を抱き寄せ、そして頬に軽くキスをしてやった。
真希はうれしそうに目を細めて笑っていた。
「おはよう、いちーちゃん」
- 243 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:16
-
ああ、こういうのが幸せって言うのかな?
- 244 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:17
-
「いちーちゃん、今日は何が食べたい?」
「ごとーが作ったものならなんでもいいよ」
「もう、それじゃあ困るよ」
「ははは・・・」
あたしと真希が特別な関係になってから、ますます毎日が充実していった。実家にいたときとは大間違いなぐらい、毎日が楽しかった。
「じゃあ、お買い物に行ってくるね」
「ああ、気をつけてね」
- 245 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:18
-
真希は今日の食材を買いに、出かけた。もう、すっかり料理も上手くなり一端の主婦みたいだった。
あたしは真希を見送った後、大きなキャンバスの前に座った。真希の顔が一面に描かれている大きなキャンバス。あたしはこれを完成させるために、筆をとった。
あたしにいい人ができ、やりたいこともでき、いいこと尽くめだな。ただ・・・・・
「ごほっごほっ・・・・」
急に胸が苦しくなり、咳き込んだ。咳をするときに口を押さえ、咳が止まるのを待った。
「・・・ふぅ・・・」
少し落ち着いたので、手を外した。そして、その手を見てみると、真っ赤に染まっていた。
実家から持ってきた薬も、少し前に底をついたので飲まずにいた。そうしたらやはりすぐに身体が危険信号を出し始めた。
本来なら、こうなる前に薬を飲んで押さえないといけないが、飲む薬さえない。だからといって、家に帰って薬をもらいに行くわけにはいかない。このまま我慢するしかないのである。
- 246 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:18
-
「完成、出来るといいな・・・・」
あたしはキャンバスの中の真希をみた。
見た目は完成されているのだが、何かが足りない。これではいけない。でも、何がたりないのだろうか?
あたしはキャンバスの前から立ち上がると、洗面台に向かった。
手と、口周りについている血を洗い流すために。こんな姿、誰かに見られたら大変なことになる。
「ハァ・・・この身体、おんぼろだな・・・・このアパートと一緒だ・・・いてっ!」
突然後頭部に痛みを感じた。
あわてて後ろを見ると、ばあちゃんが立っていた。
「おんぼろアパートで悪かったな」
聞かれていたか。
- 247 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:18
-
「ほら、これ」
ばあちゃんが手に持っていたものをあたしに差し出していた。
ん?なんだそれは?
あたしは素直にそれを受け取った。中を見ると・・・薬だった。
「お前さん最近咳き込んでいるだろ?だからわしの行きつけの医者に話して薬を処方してもらった。本当は本人が行って診察受けたほうがいいのだが、お前さんはそうもいかないだろ?でも安心してええよ。その薬はなわしが信頼している医者が精魂こめて作った薬だからな、はっはっは」
ばあちゃんはそういうと、何故かうれしそうに笑った。
でも薬って本人相手じゃないと、処方できないはずなんじゃないのか?ばあちゃんの信頼している医者って一体何者なんだ?もしかして・・・・ヤブ?
でもまあ気休めぐらいにはいいだろう。ありがたくもらっておくよ。
- 248 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:19
-
- 249 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:19
-
「ふ〜ん、おばあちゃんって不思議な人と知り合いなんだね」
あたしは真希を布団の中で腕に抱いたまま、ばあちゃんからもらった薬のことを話した。
真希もうすうすあたしの身体のことを気づいていたらしく、心配していたそうだ。
ばあちゃんからもらった薬は、あたしの身体のことを知っている人間が作ったかのように、とても的確な配合がされていた。だから、少し身体が楽になった。
「でもいちーちゃん、ちゃんと病院に行ったほうが良くない?どうなるか分からないんだし・・・」
真希は心配そうにあたしを見つめていた。
病院ね・・・本当は行ったほうがいいだろう。でも・・・・
「病院いったら二度とごとーをこうして抱けなくなりそうだから、いかない」
「やん」
あたしは真希を強く抱きしめた。
素肌で感じる真希の肌は、あたしを優しく包んでくれるみたいで心地よかった。
こうしているだけで、幸せを感じることが出来る。
- 250 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:19
-
あたしのいい人、離したくない・・・・・
- 251 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:20
-
「写真、撮ろうか?」
真希と買い物から帰ってきたとき、急にばあちゃんがカメラを手に言った。
ばあちゃんは、自分の孫からポラロイドカメラをもらったから、とってみたいそうだ。
「初写真ならばあちゃんを撮ってあげようか?」
あたしはばあちゃんからカメラを受け取ろうとしたが、ばあちゃんは首振った。
「初写真だから、わしはお前ら二人を撮ってみたい。中睦まじい夫婦みたいなお前さんたちを」
夫婦・・・・何言い出すのだ?
あたしはふと真希を見た。真希はあたしと目が合うとうれしそうに笑っていた。
そっか・・・夫婦、いいな。真希が奥さんならあたしは旦那さんだな。
- 252 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:20
-
ばあちゃんはあたしと真希の写真を撮ってくれた。
そして、初写真の記念にと、その写真をあたしたちにくれた。
「綺麗に撮れているね。さすが美人だね」
うんうん、あたしは美人だよ。
「さすが、美人な真希ちゃんだ」
「って自分かよ」
あたしは空かさず突っ込みを入れてみた。
突っ込みを受けた真希は、笑いながら写真をとると、裏返しにして何かを書き出した。
ふと覗き込むと、どこかの住所だった。
「はい、これがあたしの家の住所ね。何かあったら迎えに来てね」
真希はそう言うと、写真をあたしに差し出した。
何かあったらって・・・・何があるのだろう??
- 253 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:21
-
その、何かは突然やってきた。
- 254 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:21
-
「今日もたくさん食べて栄養つけてね」
「うん」
あたしは真希と買い物に行き、アパートに帰ってきた。
結構長く使っている、見慣れたアパート。でも、今日に限って、不自然さがいっぱいだった。
だって、なんたって・・・・黒尽くめの人がたくさんいるなんて・・・・
「げっ・・・なんだ、あいつら」
「どうしよう、見つかったよ」
そう、黒尽くめ集団。半分はあたしに見覚えがある。
そして多分、もう半分は真希に見覚えがあるのだろう。
「真希、逃げよう」
あたしは真希の手を握って今来た道を戻ろうとした。
- 255 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:21
- だがしかし・・・・・
- 256 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:22
- 「紗耶香お嬢様、探しましたよ」
「真希様、ご自宅に帰りますよ」
あたしと真希、それぞれつかまってしまった。
そして、あたしたちは引き離された。
「いちーちゃん、いちーちゃんーー」
「ごとー、くそっ、離せ!」
あたしは真希に向かって必死に手を伸ばした。
でも、あたしの手は真希に届かなかった。
「離して、いちーちゃんと一緒にいるんだから」
「何言っているのですか?あいつは市井家の紗耶香ですよ。われわれのライバル社の・・・・・」
「いちーちゃんはいちーちゃんだよ・・・・やだよ〜はなしてーーー」
「真希様、後藤家を継ぐのは真希様だけです。立派な婿を取って、世継ぎを・・・・」
「いやーーーー」
- 257 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:22
-
真希は必死に抵抗している。あたしに向かって思いっきり手を伸ばしている。
そっか・・・真希の父親は家を継がせる世継ぎを早く欲しいために、真希を見合いさせようとしたんだ。
あたしの家、市井より早く世継ぎを作り、会社を安定させるために・・・・・
「助けて、いちーちゃん・・・・」
「ま・・・まきーーーー」
あたしも真希に向かって必死に手を伸ばした。
あたしの身体も、黒尽くめ達に押さえられているから、思うように手を伸ばすことが出来ない。
それでも、何とか真希を助け出さないと・・・・
「離せ、あたしに触るな」
「紗耶香お嬢様、おとなしくしてください。お身体に障ります」
「うるさい、知ったことか」
「お嬢様!」
「うっ・・・・・・」
- 258 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:23
-
突然、胸か苦しくなった。
周りの声が小さくなった。
目がだんだん霞んでいった。
真希を見ると、目に涙を浮かべて何かを叫んでいた。でも・・・・聞こえない・・・・
そして、何も見えなくなった・・・・
「紗耶香―――――」
- 259 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:23
-
- 260 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:24
-
「ここは・・・・」
目を覚ますと、あたしはベットに寝かされていた。
見覚えがある、自分の部屋のベット。
「目覚めたようね」
ふと声がしたほうを見ると、猫目の女性がいた。あたしの専属の医師、保田圭先生。
先生はふとため息をつくと、あたしに薬を差し出した。
「飲みなさい。貴女の身体はしっかりと治療しないといけないのに」
分かっている。そんなこと分かっている。でも、飲んでどうする?治してどうする?治ったら真希みたいにお見合いさせて、婿を取って世継ぎを作らせるんだろ?健康な世継ぎをつくるために、母体も健康でなくちゃ・・・・ね。
ははっ、そんなこと冗談じゃない。意地でも治してやるもんか。
あたしはぷいっと横向いた。
「い・い・度胸・・・してるわねーーーー」
「あわわわ・・・」
突然保田先生に顔を掴まれて、薬を無理やり飲まされた。
なんて乱暴な先生なんだ・・・・・
- 261 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:24
-
「久しぶりね、紗耶香」
「先生・・・・」
「先生なんて水臭いね、いつものように呼んでよ」
「ケイちゃん・・・・」
「はい」
圭ちゃんは優しい微笑をくれた・・・・のだろう。少し怖い・・・
圭ちゃんはあたしのたった三つ上のお姉さん。小さいころから、一緒にいるから、もちろんあたしの身体のことも分かっている。分かっているから、あたしの病気を治すために医師になったと言っている。
圭ちゃんは、あたしにとって大事で大切な人だから。だから、全部話そう・・・・・・
「圭ちゃん、あたし、大切な人が出来たんだ・・・・・名前はね・・・・」
名前は真希といって、少しのんびりしている奴なんだ。
圭ちゃんはあたしの惚気ともいえない話を、真剣な表情で聞いてくれる。だから、あたしも全部圭ちゃんに話そう。
- 262 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:25
-
「・・・・・でも、絵はまだ完成していない。完成させたい」
どれぐらい話をしていたのだろう?
全部話した。あたしが今描いている絵のことも話した。
アパートにおいてきたキャンバス。どうにかして完成させたい。
「ふむ・・・そうね・・・・・・」
圭ちゃんはなにやら考え込んでいた。
そして“ギッ”と目を見開いた・・・・怖いよ。
「紗耶香、いきなさい。完成させないのに逃げ出すなんていけない子ね」
何を言ってるんだ?
- 263 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:25
-
「旦那さんにはあたしが上手く言っておくわ。それに、上手く屋敷から逃げ出させてあげるわ」
「圭ちゃん・・・でもあたし、身体が・・・・」
「少しなら薬で抑えることも可能よ。本格的な治療は絵が完成してからでもいいから」
「薬って・・・でも、薬がなくなったら?」
「そのときは、ばあちゃんにいいなさい。わたしてあげるから」
「うん・・・・へっ??」
「あら?知らなかった?貴方がいたアパート、私の祖母が経営しているのよ“ メゾンダーヤス”」
「・・・はい??」
「ちなみにばあちゃんにカメラをプレゼントしたのも私よ。ホホ、気が付かなかったようね」
「気づくかーーーー!」
圭ちゃんは昔からなぞが多い人だったが、まさか、ばあちゃんの孫だったとはまったく知らなかった。
二人とも知っていたら、いってくれればいいのに・・・・はっ、と言うことは、あのアパートのことを黒尽くめ達に教えたのは圭ちゃん?
- 264 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:25
-
「違うわよ」
そっか・・・違うか?・・・・ええっ??
「何であたしの考えていることが分かったの?」
「さー何故でしょう?ホホホ」
うえぇ・・・・
- 265 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:26
-
結局、数日家で治療を受けたあと、あたしは再び家を抜け出し、アパートに戻った。
数日振りに来るアパートを見て、愕然となった。
「そんな・・・・部屋が・・・・・」
あたしがいた部屋の表札、“ 井藤”という名前が出ていた。
「あたしの部屋が・・・あたしの絵が・・・・」
すでに他の人が入っているなんて・・・・
「おお、さやちゃん、久しいのう」
ふと後ろを見ると、このアパートの大家でもあるばあちゃんがいた。
あたしはばあちゃんの顔を見ると、ふらっと歩き出した。だって、もうここにはあたしの場所はないもの。
しかし、あたしは動くことが出来なかった。
- 266 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:26
-
「おいおいおぬし、どこに行く?」
「だって、あたしのいた部屋、違う人がいるんだもん・・・・」
「ほら、よく見ろ。表札・・・・・」
「うん・・・井藤さんがいるんだね」
「ったく・・・・少しは頭の回転を良くしろ。わしが、まだ住んでいる部屋を勝手に別の人に貸したりはしないよ。カモフラージュだよ、カモフラージュ」
「へっ?」
「だから・・・・“市井”の井、“後藤”の藤・・・・・それで井藤じゃよ」
「え・・・ええっ!!」
「あの黒い集団、何回か来たから、なんとかごまかしておいた。これなら、すでに違う人物が入居しているように見えるからな。・・・・あの部屋はおぬしと真希ちゃんの部屋だよ」
「ばあちゃん・・・ありがとう!」
あたしはばあちゃんに思わず抱きついてしまった。
圭ちゃんといい、ばあちゃんといいなんていい人ばかりなんだ・・・・ん?圭ちゃんといえば・・・・
「そうだ・・・ばあちゃん、圭ちゃんのおばあちゃんだったんだね。あたしのこと気づいてたなら早く言ってよ・・・・」
「はて、何のことじゃ?圭ちゃん?だれそれ?」
「ったく・・・・このばばあ・・・・」
「そうそう、圭坊からの伝言“早く絵を完成させて治療に専念しなさ”だと」
「・・・うん!」
あたしは自分の部屋に戻った。
部屋に置いてある大きなキャンバス。中心には真希の絵・・・・・
「完成させるから、もう少し待ってて」
- 267 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:27
-
再びあたしは、筆を持つことが出来た。
- 268 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:27
- ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 269 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:28
-
「ふぅ・・・今日は寒いな」
今日は一段と寒さが厳しい。夜になると、特にだ。
あたしは絵の具セットを持って、ある場所に向かっていた。
たくさんの人たちを吸い込んで吐き出しているように見えるその場所は、あたしの仕事場であり、真希と初めて会った場所。
雨の日も雪の日も、毎日欠かすことなく通っている。だって、真希が再びあたしの前に座るかもしれないから。
駅の構内に着くと、あたしはいつもの指定席にシートを引いて座った。
そして、絵の具を広げると、いつでも商売が出来る体制をとった。
- 270 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:28
-
「さて、今日はどんな人がくるのかな?」
あたしは壁にもたれ、スケッチを始めた。
ふと外を見ると、雪がハラハラと降り出した。道理で寒いはずだ・・・・
再びスケッチを始めたら、あたしの座っている反対側の壁際に誰かが座った。
あそこは、真希が座った場所・・・・でも、あれは真希じゃない。
座った子は、あたしより少し年下っぽく、少年のような少女だった。
少女は、ひざを抱えると目を閉じた。
- 271 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:29
- 「おいおい、こんな寒い日にこんなところで寝ると、死ぬって・・・・」
- 272 名前:絵描き2 投稿日:2004/09/16(木) 04:30
- あたしは夜食にと思って持ってきたベーグルとカフェオレと持つと、少女に近づいた・・・・・
終わり・・・?
- 273 名前:絵描き2、あとがき 投稿日:2004/09/16(木) 04:50
- >>186つみさま
本編の続きでなくて大変申し訳ありませんm(_ _)m
一体いつになったらいちごま、いしよしは触れ合うことが出来るのでしょうか?(汗)
・・・・はやく、触れさせれるよう努力します。
>>187
>>190
>>191Aさま
いちごま大好きですか。仲間ですね♪いちごま話がめっきりと少なくなってしまっているので、自分はいちごまを貫きたいと思っています(だって大好きですもの)
待っていただき、ありがとうございますm(_ _)m
>>188まめ大福さま
設定を気に入ってくださり、ありがとうございます。本当はもっと深く書きたいのですが、それを表現する力量がなくなんかよく分からない話になってしまっています。
何とか、まとめて完結させたいです。
>>189名無し飼育さま
保全、大変ありがとうございますm(_ _)m私の話で保全をしていただけるなんて感激です。
何とか、間を空けずに更新できるようがんばります。
>>192ミッチーさま
いちごま好きさん、お仲間ですね♪
なかなか上手く話はかけないのですが、いちごま愛には溢れているので、書き続けたいと思ってます♪
皆様、本当に本当にお優しいお言葉、ありがとうございますm(_ _)m自分にはもったいないくらいの暖かい方々なので、ものすごく感激しています。
次は、本編をもっとさくさくと進めたいと思っています。
それでは、ごきげんよう〜
- 274 名前:ミッチー 投稿日:2004/09/16(木) 17:40
- うを〜!更新されてる!お疲れ様デス。。。
絵描き2、すごくイイっすネ。
本編の方も楽しみにしてます!
いちごま〜☆
- 275 名前:A 投稿日:2004/09/16(木) 21:48
- こっ、更新されてるぅ〜!
作者様お帰りなさ〜い!!
更に新作までアップしていただいて…(涙)
本当待ったかいがありました!
私もずっといちごまを貫く作者様の作品を
これからも楽しみにしています。
だっていちごま大好きなんだも〜ん♪
- 276 名前:みるく 投稿日:2004/09/28(火) 20:06
- 凄くいいです♪
めっちゃ気に入りましたo(^-^)o離ればなれになった後のごっちん視点も読んでみたいなーなんて(^_^;)すみません…
これからも楽しみにしています☆
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/19(金) 20:57
- 待ってます
- 278 名前:A 投稿日:2005/01/06(木) 20:57
- あけおめです〜♪
今年も気長にお待ちしていますので
続きをお願いしま〜す!
- 279 名前:A 投稿日:2005/02/12(土) 22:12
- お元気ですかぁ〜?
続き待ってま〜す!
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