〜あたしはホスト〜

1 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:39
お久しぶりです。ホストなひとみ、書きます。
2 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:39


”ずっと、好きでした。付き合って下さい。”

うぅ・・・また、告白ですか・・・
しかも、あなた誰・・・?

「・・・ごめん。」

それしか言えなかった。不器用な自分を恨む。
そんでもって、女の子はぶわっと泣き出してしまった。
・・・はぁ。なんで泣くのさ・・・。

あたしは肩を持って強引にキスをした。もちろん、相手も抵抗するわけないけど。

「・・・このくらいならいつでもしてげるからね。泣かないで。」
そう言ってあたしはスタスタと裏庭を去っていった。

こんなのぶっちゃけ日常茶飯事なんだよね。
しかも、すんごいこういうの苦手。告白とか好きとか愛とか恋とか・・・
信じてないし。

「「よっすぃー、やっほー!」」
廊下を歩いてると、友達がふたり手を振ってきた。
「うぃ〜っす。ミホたちは部活?これから。」
こうやって軽く挨拶してくれるのはすごく嬉しい。
でも中にはさっきみたいにマジであたしを好きになって告白してくる人・・・
っていうか、ミーハー状態な人たち。マジで苦手。

「そーだよ♪よっすぃー、帰るのー?」
「おー。ヒマ人ですからね。」
アハハッとみんな笑ってそれぞれの部室に入っていった。

こんな感じで、”人気者”だけならまだいいのに。
なんで本気で告白してくんのかな?
誰がミーハーなんかと付き合うかっつーの。
3 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:40



名前は吉澤ひとみ。
全国トップレベルのこの女子校に、特別選抜で合格。
現在、現役の高校1年生です。
女子校だからもちろん女子しかいなくてって、
さっき言ったとおり、女同士で好きだのあーだのこーだのいっぱいある。

「オッス、吉澤。」
軽快にこっちに歩いてくるのはあたしの1個上の先輩。現役高校2年生。
「市井さん。こんちわです!」
この人は、市井紗耶香先輩。あたしは、市井さんって呼んでるんだけどね。
先輩の中でも仲の良い先輩なんだよね。良い人だしっ。
「何、裏庭にいたの?あぁ、また告白か?」
ケタケタッと笑って、こいつーっとつついてきた。バレバレですか・・・・。

「あ、よっすぃーじゃぁん。」
「矢口さん。こんちわー。」
この人も先輩。同じく2年生。矢口真里先輩。
ちなみに市井さんの彼女です。2年間も付き合ってるそうで・・・
すごいね、純粋な愛の物語だね。なんて。

「紗耶香、一緒に帰ろ?」
矢口さんは市井さんの腕を引っ張る。ちっちゃくてカワイーんだよね、こういう行動が。
「おー、荷物取ってくるよ。じゃぁね、吉澤。」
はーい。っと愛想良く返事をして、あたしも教室に荷物を取りに戻った。


・・・

「「吉澤先輩、さようなら!」」
友達・先輩・後輩・・・っていうか全校生徒は、廊下ですれ違うたびにみんながあいさつしてくる。
「バイバ〜イ。」
相手の名前すら知らないけど、とりあえずそう言ってニコッと笑う。
もちろん、それでみんな満足。っていうか顔真っ赤。キャーッって、あたし怪物じゃないんだから。
半分ミーハーだな、この子らも。

あたしは誰とも付き合う気は全くない。

でも

―――このモテっぷりを、あたしが利用しないわけがなかった。

4 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:40

あたしは、ちゃんと利用するものは利用するタイプだからね。小悪魔?カワイイな、オイ。


学校が終わると家と逆方向の電車に乗り、新宿に着いた。
制服姿の女子校生がいるのは相当不自然だけど・・・・・・

「ねぇねぇ、お嬢ちゃん、M高校でしょ?お嬢様高校だよね〜
お金あるでしょ?ホストとか行かないの?ウチはかっこいい人いっぱいいるよ?」

決まり文句のようにスーツ姿のお兄さん方が話しかけてくる。
うっぜぇなー・・・
しかし、あたしが振り向くとギョッと目を見開いて言う。

「あっ・・!!し、失礼しました!!」

よしよし、わかればよろしい。
あたしはさらに進んだ繁華街の中の一軒の店に着いた。。


”ホストクラブ・【MM】”

そして、蛍光色の看板の店にずんずん入っていった。

・・・あたしがホストクラブに通ってるって?んなわけないっつーの。

ドアを開けるとズラーッとホストの皆さんがお出迎え。
「おかえりなさいませ、ひとむ様。」
ただいま。とひとこと言って、あたしは奥の部屋に向かう。
店内にはホストの写真と名前がズラーッと並んでいる。
もちろん、みんなホストだから男だよ?

あたしは奥で他のホストと同様、スーツに着替えて店内に戻った。
うん、やっぱ我ながらめちゃめちゃスーツ似合うじゃん、とか思った。

「ひとむ様、今日のご指名19名でございます。」
下っ端のホストが名簿を渡してきた。
「常連順に指名させておいて。」
ハイッと嬉しそうに下っ端は戻っていった。

そう。


あたしは高校生であり、


このホストクラブのナンバーワンホストなんです。


吉澤ひとみ、♀

ホスト名・”ひとむ”

今夜もガッポリ稼ぎます!
5 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:40


あたしは新宿では超有名な高校生ホスト。
しかも、働いてるのは普通の男ばっかりのホストだよ?

そう、あれはあたしが中二の時だった・・・・・
家は裕福で、お小遣いもたんまりもらってて。
それでもって有名お嬢様高校付属の中学も通ってて。

・・・・・・


『お嬢さん、かわいいね。ホスト来ない?初回安いよ〜〜』

・・・ホスト?あほかっつーの・・・。そんな無駄金使わないってば。
しかもあたし、まだ中学生なんですけど・・・・・・・・・・

あたしは新宿にたまたま来た時、たくさんのホステスの誘いを受けた。
もちろんホステスなんか興味ないし、全部断っていた。
でもその時、あるホストクラブの社長が話しかけてきたのだ。


『君、女の子だよね?』
『うん。』
『ホスト、やらない?』

・・・ホスト?って、男がやるんでしょ?
何いってんだこのオッサン・・・・

『あたし、女なんで。』
『アハハ、わかってるよ。まぁとりあえず一度来てみてよ。』

そう言って渡された名刺。

【ホストクラブ ””MM 代表取締役 つんく♂】
つんく・・・??なんだそりゃ・・・変な名前。

あたしはずっと無視してたけど、高校受験が終わった直後、
ヒマ潰しに興味本位で行ってみた。





『来てくれたんだね。とりあえず、今日働いてみてよ。』

社長の言うとおりにお客さんに新人ホストとして出された。
もちろん、そんな経験ないのに、突然出された相手はシロガネーゼ系のおばさんだった。
6 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:41

『どうも、新人の”ひとむ”です。』
この名前もどーかと思うけど・・・・・・
『可愛いー!!ひとむくん、新人?』
『はい。でも、実は女なんですよ・・・。』
店長は”別に女だって即バラしていいからね”なんて言うから、すぐに暴露した。

『えぇ!・・・』

そりゃ驚くよな・・・って言うか、やっぱりちょっと無理あるっしょ。
だって、女だよ?女。ホストっておかしいでしょーが。
ごめんなさい、シロガネーゼのおばさん・・・・・・・・・・・・・






『でも、それでもすっごい可愛いわぁ・・・』

・・・マジかよ・・・


女の子と言っても誰も指名変更はしなかった。
あたしの容姿に、みんな男女なんか関係なく指名するようになった。
そして、だんだん一日10万単位で稼ぐようになって、

いつの間にか、今では他の”男の”ホストを抜いて、ナンバーワンホストになった。



・・・・・・

そんで今に至るってわけ。

「あ、社長ご無沙汰しております。」
久しぶりに本店に社長”つんく”が現れた。
他にも実は”ホストクラブQ”の支店はあって、かなり売れてるんだよね。

「おぉ、ひとむじゃないか。ナンバーワンホストの気分はどうだ?」
笑いながら社長はタバコを口にくわえた。
あたしはすかさずMyジッポで火をつけた。社長が煙を吐くのを見てから話し始める。
「変わらず絶好調ですよ。社長のおかげです。」
そう言うと満足げに社長はホッホッホと笑った。・・・結構ウケる。


7 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:42


そして夜21:00 OPEN
どんどんお客さんが店に入ってくる。
仕事帰りのOL、社長婦人、などなど。みんなウチらのカモ。

「山本様、つばさ指名入りまーす!」

「加藤様、マサト指名入りまーす!」

ナンバーツー、ナンバースリーなどがどんどん指名されていく。
つばさもマサトももちろん仮名だよ?
さて、あたしの今日のお客様様は・・・・・


「平家様、ひとむ指名入ります!!」


あ、平家さんだ。

平家みちよ。この人はあたしがナンバーワンホストになった頃に来るようになって、
人気ナンバーワンのあたしの指名を軽く取ってしまう。
なぜなら、彼女はいつも○○十万もするお酒をバンバン頼んでくれるからであって、
他のあたし狙いのお客さんも、いつも指名を平家さんに奪われてしまうのだ。


「こんばんわー♪」

ニコニコっと笑って平家さんの隣に座った。
平家さんはタバコを吸いながら笑い返してくれた。

「今日も学校だったんー?」
あたしの手を握りながらそんな風に話しかけてきた。
「そうですよ〜。現役高校生ですから〜。」
そうやな。現役女子校生やもんな。と関西弁で平家さんは言う。

「あ、好きなの頼んでええよー。」
本当ですか?と、あたしがそんなこと聞くわけが無い。
何も言わずに長いディープキスをして、従業員に指で超高級ワインの注文をサインした。
唇を離して、ぺろっと彼女の口をなめると、超ハデハデなBGMがかかった。

『平家様、ワイン80万円入りま〜す!!』

ワーッという歓声と、周りのホストの拍手であたしも平家さんも気持ちがいい。
そしてワインのお礼にひとこと。





「平家さん、このあと店の外で会いましょう?」



甘いささやきだった。
8 名前:とみこ 投稿日:2003/12/29(月) 20:42
更新終了。ホストクラブQじゃなくてMMです。修正。
9 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 08:22
いい感じです。楽しみにしてます!
10 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:21


「今日も楽しかったわ。ホンマありがとうな。」
夜11時ごろになると平家さんは席を立ってそう言った。
「いえいえ。あたしは平家さんのために働いてますから。」
何言うてんのや、とツッコミを入れられた。

そして、平家さんから手渡されたカギ。
「ロイヤルホテルの最上階。ほな、待ってるからな。」
はーい。と笑顔で手を振った。

・・・ロイヤルホテルの最上階・・・一泊したら十万単位するだろうな。
ホストごときによく金を貢ぐもんだ。関心関心。
っていうか、あたし高いところ苦手なのにな。

・・・

「佐藤様、ひとむ指名入りま〜す!」

「はーい♪」
新しく指名された人の席に即向かった。
この人は結構なオバサンで(40ぐらい?)でも着てる服は高そう。
・・・うーん、今日はシャ○ルのネックレスとグ○チのスカートですか。ほぉほぉ。

「ひとむくん久しぶりぃ〜」
「お久しぶりです。っていうか、やせました?」
あたしがそう言うと、佐藤さんはテレながらそんなわけないでしょ〜と笑っていた。
だって、別にやせてないもん。うん。むしろデブ。

「今日夫の給料日なのよ。1番高いの入れちゃおうかしら?」
マジですか!!っていうか、この人の旦那さんはどっかの社長なんだよね。
100万なんて子供にあげるお年玉程度だろうな・・・

「ありがとうございます。さすが佐藤様。ひとむマジ惚れちゃいますよ?」
いやーんとかホザいている佐藤さんをニコニコ見ながらあたしは最高級シャンパンを頼んだ。
他のホストが騒がしくご注文を繰り返すと、佐藤さんはひとこと。

「今日、このあと会えるかしら?」
っていうか、今日は・・・・

「ごめんなさい。今日は母の誕生日なので早く帰るんです。」
健全的なウソをつくと佐藤さんはすぐに納得してくれた。
本当は、平家さんと会うんだけどね。


そして閉店の時間になった。

11 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:21



「お先失礼しまーす。」
おやすみなさい!と他のホストに頭を下げられ、苦笑いして店を出た。
タクシーをすぐに止めて、乗り込んだ。

「ロイヤルホテルまで。」
かしこまりました。と運転手は低い声で言い、車を発進させた。
「お兄さん、そこのホストさんかい?」
運転手の質問に、アハハッ笑った。
「そう見えます?」
え、ちがうのかい?と不思議そうに運転手は言った。
「女ホストです。」
あたしが笑いながらそう言うと、運転手さんはエーッ!と驚いた。
でもそれは”女のホスト”というのに驚いてのではない。

「こんな有名な方に会えるなんて。MMのひとむさんですよね。」
あたしは、そうです。と言って鏡越しにニカッと笑った。

そしてホテルの前に着くと、あたしは万札を渡してもちろんおつりはいらないとひと言。
「頑張って下さいね。ホストさん。」
運転手の笑顔にあたしも微笑して車を降りた。


でっけぇなー、やっぱ値段が高いだけあるわ。うん。
あたしはホテルに入ると鍵を持ってそのままエレベーターで最上階に行った。
もちろん、そこには部屋はひとつしかなかった。

ガチャッ
「おじゃましまーす・・・」
部屋に入ると、平家さんはバスローブ姿でテレビを見ていた。
「あ、来てくれはったん。」
当たり前じゃないですか〜と言い、スーツをハンガーにかけた。
「シャワー借ります。」
脱衣所でネクタイをするっと外した。
大きな鏡に映る自分を見て、一息つく。
そして全部服を脱いでシャワーをザッと浴びる。
あたしは備え付けのバスローブを着て、部屋に戻った。
12 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:22
ベッドに座ってこっちを見ている平家さんは、
妙に色っぽくていい感じだった。
大人だよなー・・・やっぱり。あたし、17だよ?ガキだな・・・
ある意味援助交際だろ、これ。

「この部屋、いいですね。」
あたしは窓の前に立って外を見た。
っていうか、高いところ苦手なんだけどね。暗いからよくわかんないや。

「そうやろ?」
ふふっと笑う彼女は、ベッドに腰掛けたまま窓を見ていた。
東京の夜景ってすっげーキレイ。
ただ、どこか悪魔の匂いが霞んで、嫌なことは全部吹っ飛んじゃう。

それであたしは”悪魔の仕事”をやってるんだから。


「ねぇ、平家さん。」
まだ窓際で夜景を見ながら、問いかけた。
平家さんの相づちはないけど、そのまま続けた。

「どうして平家さんは貢ぐんですか?」
なぜホストなんかに金をつぎこむのか。それはお客に聞いてはいけない質問。
店の決まりでそうなっている。でも気になって聞いてしまった。
13 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:22

「・・・じゃぁひとみはなんでホストなん?」
平家さん、質問に答えてないじゃないですか・・・。
でもあたしは素直に質問に答えた。
「平家さんに出会うためにホストになったと今は思います。っていうか、本名呼ばないで下さいよ。」
”ひとみ”と呼ばれたことに指摘しつつ、ホストらしい理由を述べた。
「あたしに出会うため、か・・・それ今まで何人に言うたセリフ?」
んな、厳しいこと言わないで下さいよ。100人とか言えないじゃないですか。

「何言ってるんですか。平家さんだけですよ。」


そう言ってベッドに向かって歩き出し、彼女の細い肩を掴み、押し倒した。

「職務質問はおしまいですよ、平家さん。」
「すまん。好きにしてええよ。」


そのままリモコンで電気を消して、一夜をささげた。


・・・

この手で、この言葉で、ささやきで、

何人の人を騙したんだろう。

もう、覚えてないや。


本当は平家さんに聞かれた質問はごまかしたんじゃない。

本当にわからなかった。

誰か教えて。

”どうしてホストなんかやってんの”

”あたしは、いったい何が目的?”





あーあ。


・・・何やってんだろ、あたしは。
14 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:22



朝は3時ごろにホテルを出た。
書置きで紙切れを一枚、置いていった。

『またのご来店お待ちしています。学校行ってきます。』

そのまま一度家に戻った。

・・・

ガチャ、とドアの音が静けさを裂く。
ちなみにあたし一人暮らしだからさ、誰もいない。
電気を付けて、そのままソファーにダイブした。

「あ"ー疲れたぁ〜・・・」

仕事も疲れるけど、そのあと、あぁやって客と会うと他の体力使うからヤダ。
ま、平家さんはいいけど。
実際、平家さん意外とホテルですることしたりする人はほとんどいない。
オバサンとはさすがにカンベンだし。



眠気に吸い込まれて夜が明けた。

あたしは何もなかったように登校して、今日もまたタダで人気者を演じるのだ。
ばっかみたい。あたしの人生なんて。


本当に、最近そう思う。
15 名前:とみこ 投稿日:2004/01/02(金) 17:24
>名無し読者さん
ありがとうございます!初レスだぁー♪
頑張ります!!!!!
16 名前:96の名無し 投稿日:2004/01/02(金) 22:47
とみこさん、おかえりなさい。ずっと待ってましたよ!
「女のホスト」とは・・・。今後の登場人物が気になります。
とみこさんと言えばあのカップリングのはず。
これからも頑張ってください!!
17 名前:なち 投稿日:2004/01/07(水) 12:23
今日初めて拝見しました!!メッチャ面白い♪もっと早く発見したかったーっと後悔(>_<)次も期待してマッスル(ノ^▽^)ノ
18 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:40

「うぁ〜だりぃ〜・・・」

朝遅刻しそうでダッシュで学校に行った。
まぁ、そのせいで超ダルくて、しかも二日酔いだし・・・・

「吉澤先輩っ♪」
・・・う?こ、この声は・・・
顔を上げるとあたしはため息をついた。
「やっぱ松浦か・・・。」
なんですかその反応はー!と怒りながらドツいてくる。
・・・こっちはダルいのに・・・ったく。

「なんかダルそうですね?どうしたんですかぁ??」
ほっといてくれよ・・・あたしは二日酔いなんだよ・・・
「二日酔いなんだよー・・・」
って・・・ヤバッ!本当のこと言っちゃったよ!
「へ?二日酔い?吉澤先輩お酒飲んだりするんですか?」
松浦は不思議そーに目をクリクリさせて聞いた。
「ば、バーカ。冗談だよ。」
あたしがそう言うと、ですよねー!と素で信じた。
はぁ、よかったよかった。

「よっすぃー!中澤先生が呼んでたよ〜」
友達が教室のドアの方で手を振って教えてくれた。
っていうか、これで松浦と離れる口実ができた。
「ありがとー!今行くっす!じゃ、松浦またな!」
「えぇ〜、行っちゃうんですかぁ?」
そのままあたしはダッシュで教室を出た。





と、その時誰かが目の前に・・・・
  
  ドンッ


19 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:40

 
・・・へ?って、痛っ・・ん??


「ごめん。」

目の前の女の子はそう言った。あ、ぶつかったのか?あやまらなきゃ。
「あたしこそごめん。大丈夫?」
彼女の顔をのぞきこんで聞いた。
「平気。」
と、その一言だけ言うとその子は教室を出て行った。
・・・なんなんだ?

でも、あたしの頭にその子の顔がもう一度浮かんだ。
・・・なんか、すっげー美人だったなー・・・うちのクラスだよね?
名前なんていうんだろう。・・・って、あたし女好きみたいじゃん・・・
髪がメッチャ綺麗で、長くて、超つやつや。そんでもって無表情でクールな顔・・・
そうそう、ちょうどこんな感じ・・・・って・・へ?

あたしの足元に、さっきの子の顔写真が載っている生徒手帳が落ちていた。
・・・お、落としたのか?
そっと生徒手帳を拾うと、さっきの美人な顔立ちが写真となって目の前に。
【後藤真希】・・・それが彼女の名前だった。

「後藤真希、か・・・」
ま、美人な人なんてたくさん出会ってきたけど。
あとで返そうっと。
20 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:40


次の授業は体育だった。
ちなみに競技はバレーボールだった。
あたしは実はスポーツ大好き。

「おりゃっ」
ドカーン!!!バコーン!!ビシーッ!!
あたしは次々に強烈なスパイクを打ちまくって、現役バレー部をもぶっ飛ばした。
「「「キャー!!!!カッコイイー!!!」」」
ファンの子の黄色い声援をメチャメチャ受けながらあたしは体育を楽しんでいた。
「・・・ん??」
突然、はじっこのベンチに座っていた後藤さんが体育館をスーッと出て行くのが見えた。
・・・どうしたんだろう??あ!ってか生徒手帳!!
あたしは後藤さんを追いかけて体育館の外にでた。
「「あー!よっすぃー行かないで〜〜〜」」
女の子たちにゴメンと言って体育館を出た。


「後藤さんっ!」
かったるそうな後姿は、ゆっくり振り向いた。頭の上には「?」マーク。
「なに。」
うぉー。思ったとおりのクールっぷり・・・ってか、やっぱ美人。
「これ、さっきぶつかった時おとしたよ。」
あたしはさっきの生徒手帳を渡してニコッと笑った。
それでも後藤さんは、ありがとう、と言ってまたスタスタと歩き出してしまった。
あれー・・・何、嫌われてる?あたし・・・

「ねーねー、まだ体育終わってないよー?」
そう言ってあたしはゆったりと話しかけた。振り向いてくれるかなー?
「ちょっと具合悪いだけだから。」
向こうを向いたままボソッと言った。いや、具合悪いって・・・
「大変じゃんっ、保健室つれてくよ。」
すたすた歩く彼女を追いかけながらそう言った。それでも後藤さんは、
「いいよ。ひとりで行ける。」
そんな風にそそくさと進んでいく。・・・なんだかなー・・・
「でも、途中で倒れたら大変だよー?一応あたし、学級委員だし・・・」
そう言うと、後藤さんは突然こっちに振り返った。

「嘘。具合なんか悪くないから。かったるいだけ。」
・・・へ?う、ウソ??
21 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:40


あたしはちょっとムッとした。
「なっ・・・なんだよ〜〜、心配したじゃんかぁ。」
ウソはよくないでしょーがー!と、あたしは軽くデコピンをした。
「・・別に心配してくれなんて言ってないし。」
ムッツリした表情でつぶやいた。・・・何、デコピンはNGでした?
「わかったよー。ごめんごめん。」
手を合わせて軽くあやまると、後藤さんはスッと立ち去っていった。
「先生にはテキトーに話あわせておくからねー!!早く帰ってくるんだよー?」
聞こえてるかわかんないけど、後藤さんの後姿に向かって、大声でそういった。

”不思議ガール”だな・・・後藤さんって。あたしの苦手なタイプかも。
いや、ミーハーな女の子よりは何倍もイイけどね、ああいうサバサバタイプも。
あ、体育戻らなきゃ。


「よっすぃーってば、ドコ行ってたのー??」
ゴメンゴメンっと女の子たちに謝って、あたしはまだバレーボールを再開した。
・・・後藤真希か。何者なんだろ??そんなことばっかり考えていた。

と、その時足元にコロコロっとバレーボールが転がってきた。・・・ん?
「これ誰のー?」
あたしはヒョイッと片手で拾うと大きい声でそう言った。
すると目の前に恥ずかしそうに一人の女の子が歩いてきた。
「あ、君の?はい。」
ニコッと笑ってボールを渡すと、顔を真っ赤にしていた。
「あっ、ありがとうございます!!」

えぇ?!声、高っ!!

22 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


その強烈ボイスの女の子の体育着には【石川】と書いてあった。石川サンっていうんだ・・・
あぁ、たしかテニス部の!!
っていうか、ヘリウム吸ってる??・・んなわけねぇか。

・・・

昼休みになって、あたしはお弁当を持ってウロウロしていた。
・・・どこで食べよっかなー。
「「あっ!王子、一緒に食べませんか?」」
数人の女の子があたしに向かってそう言って来た。
っていうか王子って?!だ、誰だよ!!
「何ソレ!もしやあたしのあだ名?!」
「「そうでーす★」」
そうでーすって・・・しかも「★」付き・・・何、王子って・・・アハハ。
「かぼちゃパンツ履いてるみたいじゃん・・・」
王子っていうとそう言うイメージなんだよね・・
「「「キャー王子おもしろーい!!」」」
・・・どこが。多分市井さんの前で言ったら超バカにされるギャグだぞ・・・今の。
「っと・・・ごめん、今日はひとりで食うわ。」
えーっと泣きそうな顔をしてみんな去っていった。
実は、とっておきの場所があるんだよね♪

あたしの”癒しの場”♪

23 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41

そう、それは・・・定番・屋上!!であーる。
この学校の屋上ってなにげ広くてさ。ここでお昼食べるって決めてたんだ♪
んでもって、11階建ての屋上だからかなり気持ちいし。
あたしはお弁当を持ってウキウキで屋上のドアを開けた。

気持ちいー♪最高だね。空気がウマイ!
・・・が、しかし。
フッと目をやると、目の前にふたりの生徒が居た。
・・・・・・・・・・しかも・・・・・


なっ・・・


な、


な・・・


えぇ?!


××の真っ最中?!!

ひとりがもうひとりの上に四つん這いで乗っかっている状態だった。
幸いにも2人とも制服は着たままだけど、あきらかに上に乗っている人の手は・・・・
もうひとりの服の中に入っていた。
これはまさに××する直前?!だよね・・・???
あたしは驚いてアタフタしていた。まだ2人はあたしに気づいていない。
早くこの場を去らねば!!
・・・ん?っていうか・・・
あの2人ってまさか・・・?!
もう一度目をこすって見ると、逆光の中にいたその2人は、

市井さんと・・・・後藤さんだった。


そ、そんなー・・・
24 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


・・・って、知り合いならもっとヤバイ!!
あたしは急いでドアを開けた。すると立て付けの悪いドアは、”キィ・・・”と嫌な音を立てた。
もちろん、2人が気づかないはずがなかった。

「誰?」
聞き覚えのある低い市井さんの声が聞こえた。
ひぃ!!どうしよう!!あー・・・もうダメだ・・・神様・・・
市井さんは四つん這いの形からムクッと起き上がり、こっちに歩いてきた。
「え、吉澤・・・?」
そうです吉澤です・・・ごめんなさい・・・
「す、すみませんっ、見るつもりは全くなかったんです!!でも、お昼を食べようと思って・・・あの・・・」
「頼む!!!」

・・・へ?
市井さんは顔の前で手を合わせて頭を下げた。・・・な、何!?
「この事は黙っててくれないか・・?」
はい?どういう意味?っていうか、いえるわけないじゃん・・・
「い、言いませんよ。」
すると後藤さんもムクッと起き上がり市井さんの横に立った。
「あ、体育の時の人・・・・」
後藤さんは片手にネクタイを持ち、乱れたワイシャツのボタンを止めながらのんびりそう言った。
っていうか・・・下着チラ見してるんですけど・・・・・・・

「吉澤、絶対この事は言わないでな?」
市井さんは念に念を押す。
「言わないですってば。っていうか、いえないですってば。」
「特に矢口には絶対言わないで。」

「はい・・・でも、ど、どういう意味ですか?っていうか後藤さんは・・・・?」
意味がわからない。矢口さんが彼女なのに、
じゃぁ××するような関係な後藤さんは・・・・??
「まぁ、浮気みたいなもんだよ。お前が気にすることじゃねーよ。」
「・・・はぁ。」
気になりますよ・・・!浮気って・・・

市井さんのイメージって、もっと誠実で優しくて友達思いで。
なのに後藤さんと××してて、でも矢口さんっていう彼女がいて・・・・

最低だよ。

そう思った。

でも、あたしが言える立場じゃねーなって、思った。
だって、ホストだし。
25 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


屋上を出て頭かかえながら廊下を歩いていると、前から誰かが手を振っていた。
「おーい!よっすぃーじゃん!」
へ?
「あ、矢口さん・・・」
彼女はキャハハッと笑った。
でもあたしは頭の中に色んな考えがグルグル回っていた。
(・・・浮気されてるって知らないんだよね・・・かわいそうなんだよね・・・)
とか。

「ねーねー、紗耶香みてない??」
「jhdb、ょ&@kΩえ"gW?!?!?」
思いっきりキョドってしまった。ひぇー!!
「何キョドってんだよー?どうしたの?紗耶香が女でもタラしてた?」
矢口さんはキャハハッと笑いながら言う。
・・・冗談抜きでタラしてました。っていうかヤってました。
「い、い、いや、そんなわけないですよっ」
だよねー!とまた彼女は笑う。
「紗耶香は何だかんだ言ってマジメで誠実なやつなんだよ♪」
どうやら、それは大きなカンチガイのようですが・・・・・

「あー、矢口そろそろ部活行かなきゃ!」
「剣道部大会近いですからね。」
「そうそう。マネージャーの矢口も大変なんだよっ!。」
矢口さんは剣道部のマネージャーであり、剣道部主将の市井さんとカップルなわけです。
「じゃぁね!よっすぃー!バイバイ♪」

矢口さんのパワフルさに、なんだか屋上事件はすっかり忘れていた。
26 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


しかし、市井さんと廊下でバッタリ会った時は、さすがにまた思い出してしまった。
「あっ・・・こ、こんにちは。」
「おー。吉澤。中澤先生が呼んでたぞー。」
あれ、意外と普通にふるまうんだ。まぁ、気まずくても困るけど・・・
っていうか・・・中澤先生が??
・・・・・・あ!!!
そうだ、朝呼ばれたんだった!やべー!殺される〜〜!!
「あ、ありがとうございます!!では!」
あたしは猛ダッシュで職員室に向かった。
また中澤先生という口実に助けられた気がする。

「中澤先生ならもう帰りましたよ。」
他の先生はつんとそう言った。あらら。出張かな?
まーいいや。怒られなくて済んだし♪


それにしても、どうして市井さんは浮気をするんだろう。
矢口さんの気持ちも考えたらどうなのかな。
あたしはホストだから浮気の中で生きてるようなもんだけどさ。
後藤さんは・・・いやじゃないのかな。市井さんの愛人?みたいな関係で・・・・・・

っていうか、どうでもいいや。
あたしは今日も仕事に向かった。

27 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


「あーっ!ひとむ君、あたしのあげた時計してるー!」
今日のお客さんはOLで、こないだ彼女がくれた時計をあたしがしていて、
それを見てとても嬉しそうだった。
「当たり前ですよ。これだけは、他のお客さんのときも付けてるんですよ。」
えー!嬉しい!と喜ぶ彼女。でも100%嘘。
他のお客さんのときはそのお客さんがくれたものを身に付けないとね。

「今日、あたしの家に来ない?」
24歳OL、ゆみこさんはそう言った。あたしより7個年上。
「何言ってるんですか。まだゆみこさんの事もあまり知らないし・・・」
しゅんっ・・・と彼女は暗くなった。ここで技を出す。
「でも、もっと知りたいな。またお店来てよ?もっとたくさん話そうよ?」
「・・・うんっ!わかった、行くね!」
こうして客はどんどんハマっていくんだ。ホストに。

しかも、女ホスト。しかも、高校生ホスト。

バッカじゃないの?

あんたらも、

あたしも。



・・・

「あれー、ひとむやんか。」
店を出て駅に向かい、電車のホームにいると誰かが話し掛けてきた。
「平家さんっ!」
そう、会社帰りの平家さんだった。キャリアウーマンって感じの服だった。
「今日の営業は終わったん?」
「はい、っていうか、今から家に帰るところです。」
平家さんは、ハハっと笑ってあたしを見た。
あたしは”?”マークを頭につけた。
「ひとむの制服姿。」
・・・へ?
「初めて見たわ〜。ほんま、なんでも似合うなぁ。」
あ、そっか。いつも店やホテルではスーツだから・・・
「いえいえ。メチャメチャ女の子ですよね。」
「そうやね。でもやっぱあたしはスーツ姿が好きやね。」
2人で笑ってそんな会話をした。一緒の電車じゃないけど、電車が来るまでずっと2人でいた。
28 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:41


あたしが乗る電車が来ると、平家さんは手を振って言った。
「ほな、また店行くからな。」
はーい。と営業スマイルで彼女に手を振った。
あたしは電車に乗って最後まで平家さんに笑顔を送った。
彼女の姿が見えなくなるまで。

・・・

「ただいまー。」
っつっても誰もいないんだけどね。一人暮らしですから。
今日もマジで疲れたぁ・・・・
ふっと掛け時計を見ると、長い針も短い針も12時を指していた。
もう1日が終わったんだ・・・・変なの。メッチャ早いや。

なんか、ぜーんぜん眠くないや。
あたしは近くのコンビニまでのろのろと出かけた。







「いらっしゃいませー。」
24時間営業のコンビニになんて、今じゃ当たり前。
あたしはパンとかおにぎりとかテキトーに買って、外に出た。

そして外にある自販機で温かいコーヒーを買った。
その時、突然横から誰かの手がスッと出てきて、小銭を自販機に入れた。
あたしは思わずその人の顔を見る。



「・・・後藤さんっ!」

その人は、あの市井さんの浮気相手(今の印象)の後藤さんだった。
っていうか、なんでいるの・・・?
「誰だっけ。」
彼女はボソッとそう言った。ひ、ひどいっス!!
「吉澤ひとみだよ。忘れないでよ〜」
あたしがそう言うと、彼女はピッとココアのボタンを押して言った。
「・・・バカ。嘘だってば。ちゃんと覚えてたよ。」
そう言って、ほんの微かに彼女は・・・笑った。
29 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:42



「い、今・・・笑った?」
思わず唐突にどう聞いてしまった。
後藤さんは自販機から出たココアをとる前に驚いてこっちを見た。
「なっ・・・別に、笑ってないもん!」
そう言ってがむしゃらにココアを自販機から取り出した。

「笑ってでしょ〜!もっと笑いなよ!可愛いよ!」
あたしはニコニコしながら誉めまくった。
これは本当の気持ちとして誉めた。
「あっ・・・」
後藤さんはココアを手にとってこっちを見た。
「ん?ど、どうしたの?」
あたしが尋ねると、彼女はフッと笑った。


「コーヒーをココア、まちがえて買っちゃた・・・」

照れくさそうに笑う彼女は

なんか、めちゃめちゃ可愛かった。

「・・・バカだね、あたし。」
そう言ってすぐにココアをパーカーのポケットにしまおうとした。
あたしは言葉をすぐかけた。
「あ!あたしもコーヒーとココア間違えちゃった!」

「・・・え?」
後藤さんはあたしが手に持ってるコーヒーを見て不思議そうに言った。

「取り替えてくれない?そのココアと。」
あたしはスッとコーヒーを差し出した。
すると彼女も素直に取り替えて、ひとこと言った。

「・・・・ほんっと、バカだね。あんたって。」
・・・へ?
「バカ・・・かな?」
そんなこと言う後藤さんでも、顔は笑っていた。
なんか、すっげー嬉しかった。


あたしたちは近くの公園でしゃべることにした。
もちろん、2人は交換したばかりのコーヒーをココアを持って。
30 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:42


夜の公園はすごい静かで、すごい真っ暗だった。

「後藤さん、こんな時間に何してたの?」
ココアを飲みながらそう言うと、全然予想外の答えが返ってきた。
「後藤さんって、なんかヤダから・・・真希でいいよ。」
へ?何、いいの??っていうか、あなたそんなキャラでしたっけ?!
「本当に?でも・・・呼び捨てって苦手なんだよね・・・」
「じゃぁ何?」
うーん・・・・後藤だから・・・
「ごっちん!」

後藤さんは目を丸くしてこっちを見た。
それがだんだん笑顔へと変わって、しまいにはぷはっと噴き出した。
「何それ。おもしろいよ、なんか。」
さっきよりも頻繁に笑う後藤さんを、あたしはたまに目を合わせて話した。
「じゃぁ決定ね!ごっちん!あたしは、よっすぃーでいいよ!」
矢口さんが命名してくれたこのあだ名!全校生徒共通なんだよね。
まぁ、一部”王子”とか呼んでる子がいますが・・・・
「ん、わかった。よっすぃーね。」
あたしはへへーっと笑った。
そのあとの少しの沈黙は、別に気まずくなかった。


あたしは、ごっちんに聞きたいことがあった。

「あのさ・・・」
なかなか言い出せず、”あのさ・・・”って3回ぐらい繰り返した。
「何よ?もどっかしいなぁ。」
ごっちんはいつもの拍子で急かしてきた。
その勢いであたしは聞いた。

「ごっちんはさ、・・・嫌じゃないの・・・?」
その質問だけで、彼女は悟ったようだった。
「何で?」
そう返ってくるのは読めていた。

「市井さんの、1番になりたくないの?」
質問するのも躊躇したけど、やっぱり聞いてしまった。
・・・

「あたしは、きっかけを間違えただけなの。」

31 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:42



「・・・きっかけ?」
そう。と彼女はうなづいた。そして話を続ける。
「もっと慎重に、違う形で出会ってたら・・・・よかったのに。」
そう言って黙ってしまった。そんで、あたしも、黙ってしまった。

「帰ろっか。」
あれ以上、何も聞けなかった。聞く必要もあったかわからない。
・・・・でも、知りたいってどこかで思ってた。
「そうだね、もう遅いし。」
ごっちんの返事を聞いて、立ち上がった。
「家まで送るよ。」
あたしがそう言っても、ごっちんは首を振った。
「平気。」
最初に聞いた”平気”の時よりも、なか仲良くなった気がする。

最後にアドレスとか交換してバイバイした。
もう携帯の時計は、2時過ぎを指していた。


・・・
32 名前:とみこ 投稿日:2004/01/08(木) 16:47
>96の名無しさん
>とみこさん、おかえりなさい。ずっと待ってましたよ!
ありがとうございます!!帰ってきましたヘボ作者・・・・
「女のホスト」・・・・おもしろいでしょう?w
設定のアイデアを崩さないように頑張ります!
>あのカップリング
どうでしょぉーーーーー?!wでは、お楽しみに!

>なちさん
メチャ面白いだなんて!メチャ嬉しいです!!w
よかったぁ、見てくれる人がいて^^嬉しいです。
更新は不規則ですが頑張ります!!

33 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/08(木) 22:11
ホストの吉子カッケー!
モテ吉なんで、話が自分好みです。
平家さんとの絡み結構良いです、他の人との絡みも期待してますね。
やっぱ、最後にはあのお方と・・・ですか?
34 名前:なち 投稿日:2004/01/08(木) 23:42
更新お疲れ様です(^-^)
よっちゃんカッコイイ(*^O^*)そして平家さんもスキ〜♪
次の更新も楽しみに待ってマッスル(^^)v
あっ作者さんが他にも書いてる話があったら教えて下さいm(__)m
35 名前:サクラ 投稿日:2004/01/09(金) 01:15
こんにちわ〜
今日初めて発見しました!!!
めっちゃ面白いです〜♪ハマりそうw
よっすぃ〜めちゃめちゃかっけぇっすよ!!笑
とみこさんの作品前にも読んだことがあるようなないような・・・・
どの作品書いてましたっけ???
がんばってくださいね!!
36 名前:名無子 投稿日:2004/01/10(土) 08:28
さやまりはいちごまに勝てないことが多いからちょっと複雑・・・。
よしごまの雰囲気もいい感じです。
37 名前:サクラ 投稿日:2004/01/12(月) 04:54
初めましてぇ〜☆
いい小説見つけましたよぉ〜(^O^)
面白いですコレ!!
がんばってくださいね♪
38 名前:TAKU 投稿日:2004/01/14(水) 11:35
初めて書き込ませていただきます。
とみこさんの作品は前々から拝見させていただいてるんですけど、最高です!
私も別版で書かせてもらってたんですが、seek以外でよしごまも書いています。
とみこさんの作品でいろいろと勉強もさせてもらってるんです(笑)
特によしこがホストって設定は大好きなので、これからも頑張ってください!
応援しています!
39 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:24

「先生、昨日はすみませんでした。」

朝、職員室で中澤先生に頭を下げた。
頭下げるのって超キライなんだけどね。
「あぁ、別にええよー。」
先生は軽くそう言ってコピー室に行ってしまった。

ん?なんで?
あたし先生に呼ばれてるのにすっぽかしたのに。
「失礼しましたー・・・」
絶対ドツかれると思ってたのに。
・・・ま、いっか。ラッキーってことで!


朝からツイてるなーとか思いながら教室に戻った。
「よっすぃー、席替えだって!」
クラスの女の子があたしにそう言った。
っていうか、結構どうでもいいんですけど・・・・
「本当に?いいねぇ♪」
とりあえずそんな感じでノっておいて、くじを引いた。
すると・・・

バッ
・・・と、みんな一斉にあたしを見た。
「16番。」
あたしがそう言うと、みんな今度は一斉に自分の番号に目をうつす。

「16番かぁ・・・。あたし、7番だ。全然離れちゃった。」
「私も〜。よっすぃーと隣になりたかったのにー!!」
「あっ、あたし同じ列だ!」
「「「いいなぁ〜〜〜〜」」」

女子が口々にそう言って、あたしはアハハ〜微笑んだ。
いいじゃん、別にあたしの隣になったからって何かあんの・・・?
あたしがアンタらを好きになるわけじゃないんだから。
なんて、絶対口には出さないけど。・・・出せないけど。

っていうか、隣、だれ・・・?

あたしは黒板に書かれた隣の人の名前を見た。

40 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:24



そこには”後藤”の文字が。


・・・おっ!
ごっちんじゃ〜ん♪

「ごっちん、隣だねぇ〜」
あたしはニコニコしながら彼女に近づくと、すぐにスッと遠ざかってしまった。
・・・ありゃ?乗らないなぁ〜〜

その時・・・

「あの〜・・・・・・」

突然、超高い声で誰かがそう言った。
・・・この声は!!!

「石川さんじゃんっ!」
そこには、あのアニメボイス石川さんが居た。
「あっ、よ、吉澤さんっ・・・あの、あたし後ろです。吉澤さんの。」
彼女は恥ずかしそうにそう言って笑った。
「マジで!よろしく〜♪」
愛想良くそういうと、嬉しそうにニコッを笑ってくれた。

なんか、久しぶりにこういう子見たな〜
だいたいみんなはミーハー系だからさっ。

・・・

席に座ると、もちろん隣にはごっちんが居た。
「元気ー?」
笑いながら話しかけると、うっさい。といってフッと向こうを向いてしまった。

・・・・・でも、向こうを向いている彼女の口元は笑っていた。

「あ、笑ったっしょ!今、笑ったね?!」
あたしがそう言うと、彼女はまた”ハイハイ”と言って無表情に戻った。
やっぱ少しは仲良くなったっぽいな♪

なんて思ってた。

41 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:24


席替えというと、やっぱり役割分担でしょ。
ということで席をみんなで向かい合わせた。

この班のメンバーは、ごっちん・石川さん・マサエ、ミキティ・あたしだった。
「あたし絶対班長やらねー!」
マサエはそう言ってギャハハッと笑った。
ちなみにこのマサエっていうのは金髪でショートカットの騒がしいやつだ。
でも何かと面白くてノリいいし、いいやつ。
「じゃぁさーウルサイ人が班長やろー。」
あたしが笑いながら提案すると、
「あたしじゃんっ!!」
といってマサエはまた笑った。
ってことで班長はマサエに決定。

「石川さんは、ゴミ捨て当番とちりとり当番どっちがいー?」
あたしがリーダーシップを取ってると、マサエは”お前が班長やれよー!”とか言ってた。
「あ、じゃぁゴミ捨てが、いいな。」
あたしはOK〜と言ってメンバー表に書き込んだ。
・・・っていうか、”なんでもいいよ”とか言う子かと思った。
意外とちゃんと自分の意見言うんだ。そういう子はいいよね。

さてと、次はミキティか。
あ、ミキティっていうのは藤本美貴って言って、学年でもトップクラスの美人なんだよね。
しかも!!実はミキティは、一個下の松浦亜弥に片思い中なんだよね。
あんな騒がしい後輩のどこがいいんだか。
っていうか、松浦はあたしに惚れてるっぽいけど・・・

「ミキティはちりとりっぽいからちりとり当番ね〜」
あたしは勝手に決めて笑いながらメンバー表に書き込んだ。
「こらー!よっすぃーズルイよぉ!ってかちりとりっぽいって何だよ〜!」
あたしとミキティのやりとりにみんな笑っていた。

まぁ、ひとりだけ笑ってもないですけど。
もちろん、その人はごっちん。
ボーッとしているごっちんをチラッと見ると、ちょうどごっちんもこっちを見た。
わっ、目合っちゃったよ・・・
とりあえずあたしは目が合ったのでニコッと笑った・・・・が、しかし。
「あたし、楽なヤツね。」
ごっちんはそう言って、あたしの笑顔をシカトした・・・。ひ、ひどいっす!!

ってな感じで班は楽しい感じです。
42 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:25


そしてお昼休み・・・

「真希〜、食堂行こぉ〜」
ミキティは教室のドアからごっちんを手招きしていた。
「うん、今行く〜」
へぇ〜。このふたりって仲良いんだ?ちょっと意外。
っていうか最近わかったんだけど、なにげごっちんって友達多いみたい。
いつも休み時間とか友達に囲まれてるし。

あっ、っていうか、ごっちん今日は屋上には行かないですね。
さすがに、そう続けて市井さんとあんなことは・・・できないよね。
あたしはそんなことを思いながら自分で作ったお弁当を持って廊下に出た。

その時目の前に女の子が。
「あー!よっすぃーじゃぁん♪」
突然ちっこい人が表れたと思ったら・・・、それは矢口さんだった。
「矢口さん!おはようさんです!」
なんだそれー!といいながら彼女はキャハハッと笑った。
「笑いすぎですよ、矢口さん。」
でもまぁ、この笑顔はたまらなくかわいいんだけどね、矢口さんって。
他のミーハーなファンの子たちと違って、ノリいいし。

「よっすぃー、一緒にゴハン食べない?!」
「へ・・・?あたしとですか?」
突然の誘いに結構戸惑った。だって、矢口さんに誘われたことないからさ。
そりゃぁ、市井さんと同じくらい仲良い先輩だけど・・・・
「だめー?矢口今日はよっすぃーと食べたい気分なんだよ〜」
あたしの制服をぐいぐい引っ張りながら上目でそう言った。
・・・うっ、負けましたよ矢口さん。
「いいですよ。じゃぁ中庭行きましょう。」
そう言ってふたりで中庭にお弁当を広げた。

・・・

中庭には全然人がいない。だって、みんな学食行っちゃうからさ。
ってことで草っ原の中にふたりっきりだった。

「あのー、なんであたしなんかを誘ってくれたんですかぁ?」
おにぎりの手に持ちながら聞いてみた。
だいいち、ふたりっきりであたしと会ってて市井さんは怒らないのかな??
「んー、なんか今日はよっすぃーとしゃべりたかったんだよ〜〜」
ごまかしたようにそう言って、サンドイッチをもぐもぐ食べていた。
・・・なんか、ハムスターみたい・・・・
43 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:25


「あたし、あとで市井さんにシメられないですかね?」
質問すると、すぐに矢口さんはキャハハッとお得意の笑顔で笑った。
「大丈夫っしょ〜。紗耶香だって他の子とゴハンくらい食べるし♪」
そうですかー・・・といいながら、他の子とゴハン食べてるだけじゃないのに・・・
とか思っていた。だって・・・ごっちんとあんなことしてたし、さ・・・

「ねーねー、よっすぃー。」

・・・?

「なんでしょう?」

改まってそんな、どうしたんだろ??







「矢口って、セクシーかな?」

・・・!?

突然矢口さんは真剣な顔であたしに聞いてきた。

「な、な、ナンデスカ突然!!!!!」
驚いてキョドってしまうと、矢口さんはまたあの笑顔で笑い出した。
「アハハっ、そんなキョドらなくていいよー!」
だって、矢口さんがハレンチ(?)なこと聞くから・・・・・・・・
「ねー、矢口ってセクシー?」
まだ聞くんですか!!!もうカンベンしてくださいよ〜・・・
「せ、せ、セクシーですってば!もう、お色気ムンムンですよ!!」
あたしは場を和めるためにそうそう言った。

すると矢口さんは突然下を向いて黙ってしまった。

「・・・・あれ、矢口・・・・さん?」

あたしなんか悪いこと言った?!
いや、言ってないよね・・・・ちゃんとセクシーって言ったし・・・
じゃぁなんで黙るのー・・・?

「・・・矢口、本当にいい女かな?」

・・・え?

「はい。い、いい女ですよ?」





「じゃぁ、なんで紗耶香はごっつぁんを見るのかな。」














矢口さん・・・?

「まさか・・・ごっちんと市井さんのこと・・・」
あたしの言葉に、矢口さんはふっと笑った。
でもその目には涙が浮かんでいた。
44 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:26





「・・・やっぱよっすぃーも知ってたんだ・・・」




「・・・はい・・・。」
矢口さんに黙っていたことを悔やんだ。
いくら市井さんに口止めされていても、やっぱ言っておけばよかったかも・・・

「あたし、知ってたよ。紗耶香が二股かけてんの。」
悲しそうな声でそう言った。
あたしまで切なくなって、妙に胸が軋んだ。
「そうだったんですか・・・」
そんなことぐらいしかいえない自分が嫌だった。

「ねぇ、よっすぃー。」
涙でいっぱいになった瞳で、あたしをじっと見た。
そして、”ねぇ、よっすぃー”という言葉も、震えていてうまく聞き取れないぐらいだった。

そしてあたしが返事をする間もなく、
矢口さんはあたしの肩に顔をうずめた。

そして、声を殺しながら、泣いた。



「矢口さん・・・」

あたしはギュッと彼女を抱きしめた。
矢口さんの声も殺しきれなくなり、声を出して泣いていた。






どうしようもなく、歯がゆかった。





45 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:26


こんな気持ちになったのは、何年ぶりだろうか。
もしかしたら、初めてかもしれない。
人のせいで、こんなに切なくなるなんて・・・・・・・・・

あたしがもっとまともな人間だったら、
今すぐ矢口さんを救ってあげたいって思う。
でも、あたしは未熟で、しかも最低な仕事をしている。
”ホスト”なんかに、矢口さんを幸せにすることはできない。


「・・・矢口さん。」

あたしはそっと彼女を肩から離して、説きかけた。
もちろん、まだ矢口さんの目には大粒の涙が浮いていた。

「ちゃんと、市井さんに言うべきですよ。」
右手の人差し指で矢口さんの涙をぬぐいながら言った。
矢口さんはギュッと目をつぶると、ポタッと足元に涙が落ちる。

「でも・・・紗耶香に言って、もし紗耶香がごっつぁんの方に行っちゃったら・・・」
こんなに真剣に訴える矢口さんは、初めて見た。
いつもふざけあって、キャハハッて笑って、すっごい可愛くて。

・・・・でも

その涙が、矢口さんの本当の弱さを語っているようだった。


「そんなことないですよ。矢口さんみたいな人捨てたら、あたしが許しませんから。」
そう言って、力強く励ました。
本当はそんな責任、あたしじゃ取れないんだろうけど。
でも、その言葉に矢口さんはニコッと笑った。
・・・いつもの矢口さんに戻った。

「よっすぃー。」

「はい?」



「一緒に来てくれる?紗耶香の所。」



・・・
46 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:26


断れなかったって言うか、断ろうとも別に思わなかった。
あたしは放課後市井さんの教室に行った。

「おー、吉澤。どうした?」
ニコッと笑う市井さん。
これから何が起ころうとも知らずに・・・・

「矢口さんが呼んでます。ちょっと、中庭来て貰えますか?」
あたしは返事も待たずに教室を出て、矢口さんの待つ中庭に向かった。
市井さんは少し焦ったような表情であたしのあとを追ってきた。

中庭に着く前に、市井さんは心配そうに言った。
「まさか矢口って・・・お前バラしたんじゃないよな?」
挙動不審?珍しいですね〜市井さん。
自分がしたこと、わかってんですか?
・・・なーんて、あたしは心の中で笑った。
でも顔は冷静沈着そのもので。

「あたしは何もバラしてません。

でも・・・矢口さんは知ってましたよ。」

あたしの言葉に市井さんは青ざめていた。
そしてそのまま強引に市井さんを中庭に連れてきた。


・・・

そこには毅然と矢口さんが立っていた。
っていうか、待っててもらったんだけど。

市井さんと矢口さんを向かい合わせると、
あたしは3歩下がってふたりの会話を聞くことにした。
矢口さんは口パクで”ありがとう”と言った。


そして


最初に口火を切ったのは矢口さんだった。


47 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:26



「・・・紗耶香が、二股かけてるのは知ってる」


・・・最初から結構厳しいんだね、矢口さん。
予想通り市井さんはうつむいて黙ってしまった。
でもすぐに顔を上げて、言った。

「矢口、ごめん!」
そう言って市井さんは思い切り頭を下げた。
・・・なんだ、意外と普通にあやまるんだ。

矢口さんは黙っている。


「・・・矢口、あたしに嫌気がさしてるなら、別れてもいい。」
市井さんは頭を下げたままそう言った。
なんだそれ。自分勝手だな・・・・・・・・・・

「でも・・・」
市井さんはそのまま話を続けた。


「だからといって、後藤に移りかえるわけじゃない。どっちも失う覚悟はできてる。」


・・・・


市井さん・・・・


・・・

矢口さんは黙ったまま下を向いた。
・・・泣いてる?

っていうか市井さん、やっぱそういうところはシャキッとしてるじゃん。
まぁ、反省してるみたい。
それなら最初から浮気なんかすんなって感じだけど。



矢口さんはそっと、顔を上げた。


その目にはまた、大粒の涙が。

48 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 16:26







・・・



「バカ・・・。別れたいわけ、ないじゃん・・・。」
矢口さんはそう言って市井さんに抱きついた。
・・・目の前でちょっと気まずいんですけど・・・

あたしは、ぶっちゃけ市井さんの好感度は下がったって思う。
だいいち、浮気するなんてひどい。
あんな素敵な彼女を置いてさ。
・・・いつもははしゃいで強がってるけど、本当は弱いんだよ、矢口さんは。



まぁ、でも・・・

矢口さんが幸せならそれでいいや。




あたしはそう思って抱き合うふたりを背に、
気づかれないようにその場を去っていった。




幸せってなんなんだろ?

あたしにはわかんないものなんだろうな。


49 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:03

次の日。

あたしはいつものように中庭でお弁当を食べていた。
なんかあれ以来、屋上は行きたく無いんだよね・・・

「チィーッス、よっすぃー!」

・・・ん?
突然誰かが来たと思ったら、矢口さんだった。

「あ、矢口さん。チィーッスです!」
キャハハッと笑いながら矢口さんはあたしの隣に腰をおろした。
いつもの笑顔だ。よかった。

「昨日はありがとう。より戻せたよ。」
あぁ。別にあたしは大したことしてないけんですけど・・・
でも、まぁとにかくね。
「よかったですね。でも、ごっちんは・・・?」

あたしはちょっと気になっていたので聞いてみた。
矢口さんに聞くのはどうかって思ったけど、
他に聞ける人いないし。
ごっちん本人に聞くなんてとんでもない。

「うーん・・・わからないけど、紗耶香がどうにかすると思うよ。」
矢口さんはちょっとテンション低めでそう言った。
「そうですね・・・」
あたしがそう言うと、お弁当の玉子焼きを食べてから矢口さんは話し出した。

「でもさ、ごっつぁんも・・・かわいそうだよね。
あたし、ごっつぁんと結構仲いいしさ。結構複雑・・・。」

確かに。矢口さんとごっちんは幼馴染らしい。
家も近くて、小学校から仲良いとか。それで中学も高校も同じで先輩と後輩の仲ってわけ。

それでも・・・
ごっちんを恨む気持ちなんて全然ない矢口さんは、すごいと思った。
あたしだったら恋人の浮気相手なんかボコボコにしちゃうだろうな。
それか、一生恨むか・・・。


「とにかくありがとねはあとはあと」
矢口さんはそう言って笑っていた。

なんか、

・・・世界が平和なら良し!って感じかな。

50 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:03


「んぁー、ねみぃ・・」
今日はホストは休業だ。
なんかつんくさんが突然あたしたちに”休養も大事だ!”とかいって有給をくれた。
あの人も何考えてるかわかんねぇなー・・・

放課後、あたしはお昼に矢口さんとお弁当を食べた中庭にもう一度来た。
あたし、ここ大好きなんだよね。
癒しの場パート2って感じ?パート1は屋上だったんですけど・・・ね。

誰もいない。
静かな風が吹いている。
あたしは少しうとうとしながら、草の上に寝転がっていた。

・・・あー、なんか仕事ないとあたしってやることないなぁ・・・・
そんなことを思っていると、突然頭の上に影が。

「吉澤先輩はあとはあと」
・・・むっ、この声は・・・!!!

「はぁ・・・やっぱり松浦か。なんでいるんだよ。」

寝転がったままのあたしの隣に、松浦はちょこんっと腰掛けた。
そのまま黙っている松浦に、不信感を覚えた。
・・・黙ってるなんて珍しい。
いつもはベタベタしてくるのに。


・・・するとその時松浦は口を開いた。






「先輩、キスしてもいいですか?」


「はっ?!」

な、何いきなり?!

あたしはがばっと起き上がった。
51 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:03


「先輩とキスしたいです。」
なぜか上目遣いで真剣な目でそう言った。

「やだよ、今そう言う気分じゃないもん。」
あたしはプイッとそっぽを向いて、立ち上がった。
「なんでですかー!松浦は本気ですよ?!」
あほか。と言って、あたしは服についた草をパンパンッとはらった。

ぐーっと伸びをした、

その時―――――――――・・・




「・・・んっ」


スキをつかれた。

キスをされて、
そしてその勢いでそのままドサッと、あたしと松浦は草の上に倒れた。
「痛っ!何すんだよ松浦ぁ・・・・・・・」
「えへへっはあとはあと」
えへへじゃねぇーよ!!ったく・・・・

「重いってば、どいて。」
あたしは倒れたあたしの上に乗っている松浦を振り払おうとしていた。


・・・


「よっすぃー。」


・・・・へ?


突然。

なんと目の前にごっちんが現れたのだ。



52 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:03


「わっ、ごっちん!」

あたしは思いっきり松浦を振り払って立ち上がった。
”ひどーい!”と怒っている松浦を無視して、ごっちんに駆け寄った。

「ごっちん、誤解だよ?松浦がいきなり押し倒してきて―――」
あたしは必死に弁解した。
でもごっちんはそれを完全に無視してひとこと。

「先生が呼んでるよ。」

「・・・え?」
先生?っていうか、それだけ?

「じゃぁね。」

冷たい目でにらまれ、そのままごっちんは去っていった。
・・・っていうか・・・・


嫌われた??


「ま、松浦のバカヤロー!!」


バカヤロー

  バカヤロー

     バカヤロー




・・・・ごっちんっ・・・ぐすん。

53 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:04



放課後ってことでだいぶ夕日がさしていた。
松浦のせいでまた体についた草をはらいながら校舎に戻った。
するとちょうど帰ろうとするごっちんがいた。

「ごっちん!」
彼女はふっと振り向く。
「何。」
う・・・冷たい・・・

「あたしのこと呼んでた先生って誰?」
少しでも機嫌を取ろうと、ニコッと笑って聞いた。
「・・・裕ちゃんだよ。」
そういって即Uターンして歩き出した。

「わざわざありがとね、ごっちんはあとはあと」
そう言って、ごっちんの肩をポンッと叩いた。

パンッ


「さわんなよ!」


・・・・・へ?




ごっちんは肩に置いたあたしの手を叩いて振り払った。



「あたしを、そこらへんの女と一緒にすんな!」



・・・・ごっちん・・・?


54 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:04


そのまま去っていくごっちんを、あたしは無言で見るしかなかった。
・・・・なんで?
こないだまでは仲良かったじゃん・・・?
一緒にココアとコーヒー交換したじゃん・・・?
あれは夢ですか・・?

・・・

考えながら廊下を歩いていると、目の前に中澤先生が居た。


「あ、中澤先生!」

職員室に向かう途中、偶然目的の人に会えた。

「今日は、はよ帰らんでええの?」
・・・???どういう意味?
あたしが不思議そうな顔をしていると、先生は言った。
「いつも学校終わるとそそくさと帰るやんか。」
笑いながら先生はそう言った。
あぁ、ホストに行くときのことね。

「あぁ、いつもは用事があって急いで帰っているんです。」
ま、本当はホスト行ってただけなんだけど。なんて死んでも言えない。
「ふーん。」
先生は生徒指導室の鍵を指でくるくる回しながら廊下を歩き出した。
・・・なんで生徒指導室の鍵??
話って、いったい何なんだろうか・・・・・
あたしも、そのままついていく。

そして鍵を開けながらまた質問が始まった。
「その急な用って何なん?」
は?何いきなり。先生には全っ然、関係ないっつーの。
「・・・塾ですよ。」
信じやすそうな嘘を即答した。だいたい、職務質問みたいでムカついてた。

「何が塾やねん。アホ。」

え?

先生はそう言って生徒指導室に先に入った。
あたしは何か疑いながらもあとに続いた。

「まぁ、座れや。」
はい。といって固いイスに腰掛けた。先生は立ったままだ。

55 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:04


「なんであたしが生徒指導室に呼ばれるんですかね?」
ニコッと笑いながら聞いてみた。
でも先生は何も答えなかった。
だって、あたし生徒指導室に呼ばれるようなこと、してないし。
正確には、してないんじゃなくて、したけどバレてないし。ってこと。

”何が塾やねん。アホ”

その言葉が少し引っかかっていた。
でもまさか、って思ってたから気にもしなかった。

「率直に聞いてええか?」
先生は座ったままのあたしを上から見下ろした。
「何ですか。」

青いカラコンが光った。




「もうバレてんねんで。」




・・・・は?

その言葉に、微妙に口が笑ってしまった。
それは、おかしいからではない。
妙な予感に対しての表れだった。

「な、何がですか・・・?」
次第に焦っているのがわかる。
自分でも、冷静になれない。
「とぼけんな。」

な、何・・・
は?バレてる?何が?

いや、ありえない。
まさか。


そんなハズは・・・・・・・・・・




「ホストやってんやろ。」















・・・





ついに、




バレてしまった。
56 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:13
>名無飼育さん
なんだか皆様に”あのカップリング”を期待されてますね^^;
いやぁ、今回はどうでしょうか?
吉と絡みそうなのがいっぱいいますからねぇ〜
いしよし・まつよし・やぐよし・よしごま・よしへい?!どれでしょう〜(w
それともこれ以外?!w お楽しみに〜

>なちさん
ありがとうございまーす^^
平家さん好きですか?なんかよしこと平家さんはいいですよね?w
ちなみに他には作品は今は書いてないです〜
以前は数えくれないくらい書いてましたよ!
過去ログにあると思います!わからなかったらまた言って下さい^^

>35のサクラさん
>今日初めて発見しました!!!
ありがとうございます!どんどんハマってくださいww
>とみこさんの作品前にも読んだことがあるようなないような・・・・
いっぱい書いてますよ^^過去ログにあると思います^^

>名無子さん
>さやまりはいちごまに勝てないことが多いからちょっと複雑・・・。
いやいや、そんなことはないですよ!!
私は裏の裏の裏の裏の裏をかきますwwww(どっち?!)
>よしごまの雰囲気もいい感じです。
ありがとうございます!!!

>37のサクラさん
あれれ?35のサクラさんとは違う人ですか?同じHNなんで^^;
いい感想ありがとうございます!!
これからも頑張るので見てくださいね^^
お楽しみに!!

>TAKUさん
初めまして!
他の作品も見てくださっているんですか!!ありがとうございます!
私の作品がお手本だなんて・・・嬉しいです^^
どこで書いていらっしゃるんですか?
よかったら教えてくださーい♪
57 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:14
>修正

小説中にハートの画像が出てませんね・・・
不自然な・・・
変なミスしてごめんなさい。
逝ってきます・・・・・・・・・・・・・
58 名前:TAKU 投稿日:2004/01/16(金) 17:40
更新お疲れ様です。
リアルタイムで読みました♪
ごっちんには冷たくされちゃうし・・・中澤さんにはバレちゃうし・・・。
よしこはどうなっちゃうんでしょうか?
続きが気になります。

とみこさんの作品は探して全部拝見しました。
ホントに勉強になってますよ!
私のは、風版にまだ残ってるみたいです(笑)
よしごまとは無関係のCPですけど(汗)

次の更新を楽しみに待ってますね^^
59 名前:なち 投稿日:2004/01/17(土) 07:56
うわぁよっちゃんドースル( ̄□ ̄;)!!
ホストやめちゃうのかなぁ?
次回も楽しみに待ってますね♪ とみこさんの前の作品の一つは
発見しましたが、後見つけれませんでした(;_;)
60 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 09:38
>TAKUさん
ダブルパンチですよね^^;どうなっちゃうんでしょう!
え!全部見てくださったんですか?!きゃー!笑
全然だめですよ〜〜〜〜〜w↓に今までの作品書いてあります^^;
風板ですか!今度みてみます!

>なちさん
ドースルって感じですねぇ〜〜
ホスト、どうなんでしょう・・・心配だぁ(ぇ
どの作品を発見してくれたんですか???
ちなみに今までの作品のせておきます^^

青板・・・【ピアス】【羊を数えてどこまでも】
銀板・・・【線香花火】
空板・・・【君といつまでも】
黄板・・・【スノードロップ】【サンキュ。】
雪板・・・【彼女たちの事情】【ひとつ屋根の下。】

です・・・あんまりショボいのは省きました。笑
61 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:48



「・・・なんで、わかったんですか。」
イスに座ったまま、あたしはずっと下を向いていた。
こんなに悔しい思いをしたのは久しぶりだ。
屈辱。今すぐ逃げ出したい。

「あたしとみっちゃん、友達やねん。」
先生は背を向けたままそう言った。
・・・みっちゃんって、誰・・?
「みっちゃん・・・?」
わざととぼけてるんじゃないけど・・・
あたしのお客さんでみっちゃんなんて居たっけ?

すると先生はこっちを振り向いた。



「・・・平家みちよ。わかるやろ。」


・・・・っ!


平家さん・・・
中澤先生と友達だったんだ・・・
・・・不覚だ・・・

「お前、わかってんのか?」
先生の青いコンタクトがあたしをにらむ。
・・・怖い。

「何がですか。」



・・・・




「みっちゃんは、旦那を亡くして、それからホストに通ってんやで。」




・・・・え?


62 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:48


旦那を・・・亡くして・・・?

そんな、あたし平家さんからそんなことひと言も・・・
いや、当たり前か。ホストなんかにいちいち話さないよね・・・
じゃぁ、あたしは旦那の代わり・・?


「こないだみっちゃんと会ったんやけど。みっちゃん、アンタと一緒にうつっている写真を持っていた。」
先生は未だきつい目つきであたしを見てきた。
思わず目をそらしたくなった。
・・・っていうか、こんなバレ方って・・・ありかよ?


「みっちゃんがホスト通ってんのは知ってた。でもそれがまさかウチの生徒とはな。」



・・・・・。


「退学ですが?」
こんなお嬢様学校、つまり進学校で、
ホストの生徒なんて学園の恥だ。どうせそういうんだろう。
もう、覚悟はできていた。



「アホか。」


・・・え?


中澤先生は首を横に振った。
・・・なんで・・?


「どうしてですか?学園長に言って、退学じゃ・・・――――」
あたしの言葉に、先生はふぅっとひといきつくと、きつい表情で言った。

「・・・あんたがみっちゃんに金を貢がせてるのは許せへん。」

・・・わかってますよ。
あたしがいけないんです。これは悪魔の仕事だから。
今まで平家さんに何百万貢がせたか・・・・


「でも、・・・」



・・・?



63 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:48




「今みっちゃんを支えてんのは”ホストのあんた”だけやねん。」


先生の表情はゆるくなっていた。
それは、"仕方が無い"という表情にも取れた。


どうして・・・?

「退学はさせへん。・・・ただ、みっちゃんを大事にしてやれ。」

中澤先生・・・・・・
でも、大事にしてやれといっても、
所詮あたしはホストである。
お金がからまないと、平家さんとは赤の他人。
あたしに、どうしろって言うの・・・・・・・・・・・・・・・・


「ホストをやめろって言うんですか?」
あたしはこわばった表情で先生に問いかけた。
ホストをやめるのは怖くない。
ただ、あたしの生きている意味が、なくなる。

「みっちゃんは、アンタの退学のことを考えて、ホストにはもう行かへんて言うてる。」

え・・・?
あたしのために・・・?


「みっちゃんの気持ちも考えろや。そしたら、あんたもホストなんかやってる場合とちゃうやろ。」


ガラッ・・・・・ピシャン。


それだけ言って先生は教室を出て行った。
・・・あたしはひとりだけ残って、頭をかかえた。



・・・


64 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:48



平家さんはお客さんだよ・・・?
あたしが退学したって、関係ないじゃん。
なのにどうしてあたしをかばうの・・?
旦那さんを亡くして、ホスト通って。
もしかして・・・
平家さんは本気であたしを支えに・・・――――



・・・



初めて、自分の小ささに気づいた。

なんてあたしはちっぽけな人間だろうか。




あたしの罪は、償えますか?







65 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:48

複雑な気持ちで帰ろうとすると、教室にはごっちんがひとりで居た。


「あれ、帰らないの?」
あたしはいつもの笑顔で話しかけた。
「帰るよ。」
・・・冷たい・・・。

今日の記憶が蘇ってくる―――

”さわんないで!”

”あたしを他の女と一緒にすんな!”



・・・怒ってるのかな?



「・・・ごっちん。市井さんとどうな・・・―――」

「フラれたよ。」
あたしの言葉をさえぎって、そう言った。
いつになく無表情で、ごっちんは自分の手帳をパタンッと閉じた。

「ごっちんっ、本当は市井さんのこと好きなんでしょ?」
おせっかいかもしれない。そう思ってたけど、聞いてしまった。
だって、ごっちんが辛そうだから・・・

「よっすぃーには関係ないって。」
ごっちんはカバンを持って席を立った。
あたしたち以外誰もいない教室で、ごっちんの去っていく足音だけが響く。



「待って!」

あたしはごっちんのカバンに手をかけた。

バサバサッ



「あっ・・・!」
荷物が教室に散らばってしまった。
・・・や、やべっ・・・
もっと怒らせちゃった・・・?
あたしはしゃがんで一緒に荷物を拾った。

「いい、自分で拾う。」
ごっちんは目をそらしてそう言う。
・・・・なんで・・?
66 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:49


その時、ふっと落ちている手帳が目に入った。
ちょうど開いてしまっていて、そこには写真があった。

「ごっちん、これ・・・」

------・・・その写真は、市井さんとごっちんがふたりで写っている写真だった。
フラれたのにまだ持って・・・

「さわんないでよ!!」

バッ

「ごめっ・・・」
彼女に勢いよく手帳を取り上げられ、
あたしはすかさず謝った。



「でも、ごっちん・・・やっぱりまだ市井さんのこと・・・・」

「うるさいな!!!」





・・・・ごっちん・・・・・・・






大声が静かな教室に響いた。
夕焼けで、彼女の目に浮かぶ涙が光った。

泣いてるの・・・・・?



あたしは、何も言わずにごっちんを抱きしめた。



67 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:49



「ごめん、あたし・・・勝手に首突っ込んで。」
ごっちんは何も言わずにしゃがみこんだ。
あたしは抱きしめていた手を離して、ごっちんの肩に両手を置いた。

コツンッとおでことおでこをくっつけて、ごっちんの目を見ていた。
「市井さんがごっちんの全てじゃないじゃん?」
ごっちんは黙ってあたしの目を見ていた。

「ほら、ごっちん、友達多いし!あゆみなんか特に仲いいじゃん?みんな真希のこと好きだよ。」

「・・・・。」
ゆっくりうなづいてくれた。



「それに・・・・・・・・」






「あたしも、いるし。」



キメ台詞といわんばかりに、あたしは見つめながらそう言った。
”あたしもいるし”っていうよりは、
”あたしがいるし”って、本当は言いたかった。
でも恥ずかしくってなんだかいえなかった。



そのまま、自然に、ごく自然に・・・唇を近づけた。


あと、1センチ・・・・・・・








「いやっ」




・・・へ?

68 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:49



突然、近づいていたごっちんの顔は横を向いてしまった。

「あれ?」
あたしは半分笑いながらとぼけた。
なんだよ、今・・・ちょっといいところまでいったのに・・・・

「松浦、亜弥だっけ?」
・・・へ?
松浦がどうかした、の?

「うん、松浦・・・が何?」



「あの子とか、それから・・・アンタが今までキスしてきた子・・・」


・・・?


「みんなにできるからって、あたしはそう簡単にはさせないよ。」


彼女はどこまでのクールだ。
そう思った。
そしてまた話し出した。












「あたしに触りたいんだったら、あたしだけ見な。」





・・・





なんだ、


結構ごっちん、あたしのこと好きだよね。


あたしは、その何倍も好きだけど。



・・・

改めて触れた唇は、

メンソレータムのほろにがい香りがした。
69 名前:とみこ 投稿日:2004/01/17(土) 18:50
更新終了です。>68のごっちんの台詞一同、聞き覚えが?w
感想待ってま〜す^^
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/18(日) 02:07
なんか吉澤がすごくいいかげんな感じでいいですね。立ち直りが早いって言うか…そのうち他の子にもばれる日がくるのかなすごく期待してますんで、更新おまちしております。
71 名前:なち 投稿日:2004/01/18(日) 09:22
ごっちんとよっすぃイイ感じじゃん(・∀・)!!
でもホストやってる事がごっちんにもバレたら…(゚Д゚;)ブルブル
んー次の展開が読めない♪
次回の更新の楽しみ倍増です(ノ^▽^)ノ
あっ作品教えてくれてどーも
ありがとうございましたm(__)m
今日から読みまくります(〜^◇^)
ウチが前に読んだのは、とみこさんが
紹介してなかった話です。
72 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:36

「ホストをやめる?」

つんくさんはサングラスをスッと外した。
目は怒っていて、今にも殴られそうだった。

「・・・すみません。」
思い切り頭を下げた。
最悪。頭を下げるなんてあたしのキャラじゃない。
まぁ、今はキャラなんて言ってる場合じゃないか。

「ワケを説明せや!!せやないと、わからへんやろ!」
・・・っ。
コワ・・・・・・。
周りのホストたちもあたしとつんくさんを見ていた。
もちろん、みんなビビっていた。
まだ開店までは1時間ほどあって、静かな店内には怖いほどだった。

・・・

「学校にバレました。うちの教師と客が知り合いでした・・・。」
やば、泣きそうだよ・・・
だって、あたし・・・これでも女の子だよ?
カンベンしてよ・・・・・。

「その客って誰や。」

「・・・平家さんです。」
あたしの言葉に、つんくさんの顔はさらに険しくなった。

「お前・・・っ!!あの客を捨てたんか!!儲けがどんだけ減るかわかってんのか?!」
つんくさんの怒りはだんだん頂点に達していた。
そう。平家さんはナンバーワンホストのナンバーワンの客。
つまり、このホストMMの儲けの源とも言えるお客さんだった。
あたしがいなくなる→平家さんが来なくなる→店が儲からない。ってこと。




「すみません・・・・」




73 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:37



数秒、沈黙が続いた。
他のホストも、もちろんあたしも息を飲んだ。


そして口火を切ったのはつんくさんだった。

・・・


「やめるんなら、あと1ヵ月タダ働きせや。」

「・・・・え?」

どういう・・・意味?



「それで勘弁したる。給料が欲しいなら、学校やめて働け。」
つんくさんはそう言い捨てて、店を出て行った。
そして、ベンツのエンジン音が遠くなっていった。

・・・あと1ヵ月、タダ働き・・・・・・・




それで



それで報われるなら・・・




決めた。あと1ヵ月だけ、あと少し・・・頑張ろう。

そしたらホストをきっぱりやめよう。


そして最後の日に・・・平家さんに会いに行こう。

74 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:37



言い訳なんかしてる場合じゃない。
今は実行することだけだった。
ホストは最低な仕事だってわかってた。
ただ、平家さんのことを支えることもできた。


平家さんと改めて話がしたい。

謝りたい。

そのためには、まずホストをやめるんだ。








75 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:37


「わかった。吉澤がわかるやつでよかった。」

翌日、学校で中澤先生に昨日の経緯を話した。もちろん、ホストをやめると約束した。
そして、やめた日には平家さんに謝りに行くと。
そのための一ヶ月間は、許してくださいと頼んだ。中澤先生も、わかってくれたし。


・・・
教室に戻ると、廊下でごっちんが掲示物を貼っていた。


「あ、ごっちんじゃん!手伝おっか?」
彼女よりも背の高いあたしは、スッと手を差し伸べた。
「ありがと。」
少しぎこちない笑顔で笑ってくれた。
・・・やっぱ、可愛いよ、ごっちんって。

「これで全部だね!」
古い掲示物をごっちんに渡して、ニコッと笑った。
「・・・よっすぃーは、何してたの。生徒指導室から出てきたじゃん。」
・・・うっ、それは聞かないで下サイ・・

「うーん、中澤先生に誘惑されてた・・・」
冗談でそういうと、ごっちんは目をパチクリさせて驚いていた。
「う、ウソだよ!ウソ。ごめん、ちょっと成績のことで怒られてた。」
あたしが弁解すると、・・・ふーん。といって歩き出した。

今日もクールだね、ごっちん・・・。

「ねぇ、今日一緒にお昼食べない?」
真rを歩いているごっちんの横に並んでたずねた。
「いいよ。」
・・・マジ!!やったぁ!

そのままあたしはお昼休みまでウキウキで授業を受けていた。

76 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:37


お昼は屋上で食べることにした。
ここはある意味思い出の場所・・・・いや、なんでもない!!
新たな思い出を作るんだから!!
市井さんとごっちんのことは、忘れよう!

「ここ、よっすぃーにバレた場所だよね。」
って、言うなよっ!!!!
せっかく苦い思い出として胸にしまっておこうとしたのに・・・・

「そ、そうだね!」
あたしはごまかすように元気にそういってお弁当を開いた。
結構質素なんだよね、あたしのお弁当って。

ごっちんもパカッと自分のお弁当箱を開いた。
なんとも丁寧につめられた色とりどりのお弁当だった。
・・・すっげー・・・
「なんか、ごっちんのお弁当こってるね!朝ヒマなの?」
「ちげーよっ。」
そうやって、あたしのノリに冷たくツッこんでくれるこの会話があたしは大好きだった。
Mじゃないよ?違うよ?

「ねぇ、ごっちん?」

「何?」

「・・・キス、していい?」

「・・・・・・。」


返事がなかった。
でもじっと、じーっと、ごっちんはあたしの目を見てくれた。
あたしは彼女のキレイな髪をそっとなでて、手を頬に添えた。

「・・・んっ」

そのまま自然と唇が重なった。



77 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:37




「バカ・・・」


・・・へ?

ごっちんは突然つぶやいた。



「バカっぽくて、好き。」





ごっちん・・・・




あたしたちは、そのまま何度も口付けした。







やっと幸せ掴んだよ。

人を好きになるって、こういうことなんだね。

初めて知った。



あたし、

この人を・・・ごっちんを、




本気で好きになっちゃったみたい。



78 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:38


・・・・どうか、

あと1ヶ月間の間に、

ホストのことが、もう誰にもバレませんように。



特に、ごっちんには。



手放したくない。





大好きだよ、ごっちん。


79 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:43
>名無飼育さん
>なんか吉澤がすごくいいかげんな感じでいいですね。
いいかげんな吉澤・・・(w
でも中澤先生にバレて、さらに初めて本気で人を愛したことで、
少しはマジメな吉澤に変わっていっています・・・よね?!w
応援ありがとうございます。頑張ります!!

>なちさん
>ごっちんとよっすぃイイ感じじゃん(・∀・)!!
はい!いいっすね!!!w
>でもホストやってる事がごっちんにもバレたら…(゚Д゚;)ブルブル
はぁ・・・怖い怖い。あと1ヵ月ですね・・・・
>他の作品
マジですか!!じゃぁそうとうショボい作品読みました?!(w
ちなみにナンテ作品デスカ・・・・?(コソーリ
80 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:43
>>75
【真rを歩く】→【前を歩く】です。修正。
81 名前:とみこ 投稿日:2004/01/18(日) 10:44
更新少なくてすみませむ。。。
更新終了です。
明日から学校かぁ・・・・(鬱
82 名前:PAN吉 投稿日:2004/01/19(月) 00:42
ごっちんのクールなキャラがまたイイ!
続き期待してますね。
83 名前:Nanathing 投稿日:2004/01/21(水) 20:51
最近よしごまって少ないですよね??
頑張って下さい。
84 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30
>PAN吉さん
>ごっちんのクールなキャラがまたイイ!
さすが!お目が高い!!ww
クールなごっちんってめずらしですかね?
頑張りまーす。

>Nanathingさん
>最近よしごまって少ないですよね??
そうですか?私はよしごま派ですよ^^

85 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30

「ウイスキー入りま〜す!!!」
ホストたちの威勢のいい声で、注文が入った。
もちろん、あたしを指名した客が入れてくれたお酒。

「ゆかさん、マジで大好きです!」
お客さんの目を見て、真剣に言ってみた。
「ひとむくん・・・」
何本気にしてんの?バカじゃん。
って、言えるわけ無いけど。
心の中ではバカな客をあざ笑っていた。

・・・

あと1ヶ月だけ。1ヶ月の辛抱だ。
これでキッパリホストをやめて、マジメに生きる!
平家さんのことも、わからなきゃいけないし、
それに・・・

――――愛してるのはごっちんなんだから。
こんなところで油売ってるわけにはいかないんだ。






営業時間が終わると、下っ端ホストが嬉しそうに話しかけてきた。

「ひとむさん、スゴイっすね!今日の稼ぎ80万ですよ?!」
「アハハ、ぜーんぶ寄付だよ、寄付。」
あたしはそう言って笑いながらスーツをたたんでいた。
なんか一生懸命ホストやってるこいつとかの方が、よっぽど偉いと思う・・・。

「本当にホストやめちゃうんスか?」
他のホストたちも質問をなげかけてきた。
・・・そんな名残惜しまないで下サイよ・・・
「うん。もともとホストって言っても、一応あたしも女だし?」
なんちゃって。とか言って笑ってごまかした。

そしてあたしは一息ついて言ったんだ。

「・・・もう、けじめ付けるよ。」







つんくさんには悪いけどさ。
しょうがないっつーか、あたしが悪いんだし。
もともと、新宿でスカウトされた時断ってればよかったのかも。

あーあ、不覚だ。
でもある意味、いい経験になったかも。
86 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30


「お疲れ様でしたー。」

店をあとにして、タクシー乗り場でボーッと待っていた。
あー、なんか疲れたな。
甘いもの食べてぇ〜〜。っていうかごっちんのお弁当食べたい・・・。
ごっちん、元気かなー?
メールしてみよっかな!!

そう思って携帯を取り出した、その時――――



「吉澤先輩?!」

・・・へ?

目の前に現れたのは、なんと制服姿の松浦だった。
な、なんで新宿なんかにいるんだよ!!
しかも制服で・・・っていうかあたしもだけど。

「松浦・・・!お前何してんだよ?」
焦りを隠しながらたずねた。
まだあたしがスーツじゃなくて制服だからよかった・・・
あやうくバレるかと思ったよ。

「予備校ですよ!今終わったんです♪先輩は?」

「え?あー・・・あたしはちょっと。」
変な理由も思いつかず、おぼついてしまった。
「なんですかー!ちょっとって!」
ツっこむなよ!しつこいなー・・・松浦は・・・。
「も〜〜〜、別にいいじゃん。早く帰りなよ」
そう言ってポンッと松浦の背中を押した。

「あれ?先輩・・・」
・・・ん?な、な、何??
「先輩のと違う香水の匂いがするー!!」
へ??香水?!
あ!ヤバ、お客さんの香水の匂いがついたかも・・・

「は?き、気のせいじゃん?っていうか松浦、あたしの香水の匂いおぼえてんのかよ!」
変なカンすんなよ・・・マジびびるから。
ホストがバレたら、今度こそ、もう絶対退学なんだから!

「先輩のことなら何でも知ってますから!っていうか女といたんですかぁ?!」
何でも知ってますって・・・ストーカー?!キャー、怖い〜
・・・じゃなくて!!

こうなったら・・・
87 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30


・・・


「そう、女。」

あたしはサラッとそう言った。
彼女といたってことで、これでホストだなんて疑わないと思うし、
松浦から離れるチャンス!!
あたしに彼女がいるなんてわかったら、諦めるっしょ!

「女ぁ?先輩、じゃぁこれは何ですか?」
え?
松浦はあたしの制服のポケットから紙を取り出した。
・・・あっ!!そ、それは!!

「・・・ホストMM。??」
その紙は、なんとあたしのホストクラブでの名刺だった。
・・・ピンチ・・・!!

「ちが・・・っ!それはさっき落ちてて・・・」
ありえない嘘が口から出てしまう。
どうしよう、なんかごまかす方法・・・・

「わっ!先輩お酒くさぁーい!」

「えぇ?!」

ついにお酒のことまでツっこまれて、あたしは青ざめた。


そして、松浦は通り道のホストクラブに目を向けた。
もちろん、それはあたしの勤める”MM”だった。
さらに名刺と店の名前を照らし合わている。
・・・もう、だめ・・・


「先輩・・・・もしかして・・・」



88 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30


もう・・・ダメだ。




「このホストに通ってたんですね?!」








・・・へ?!



「な、何言ってんの・・・?」
あたしは思わず耳を疑ったと同時に、一瞬ホッとした。
ホストに通ってるって、バカかお前!!
でも、あたし自身がホストってことがバレてないから一安心。

「だって、お酒くさいし、ここから出てきたし、あれ?でも・・・」
何?!今度は何なの松浦さん!!!
「・・・この名刺、”ひとむ”って・・・?」
ゲゲッ!!やっばー・・・・・・・・・・・・・・

と、その時だった―――

「あっ♪ひとむくん!」
・・・へ?
なんとそこには常連の川野さんが・・・!

そして追い討ちをかけるように、
松浦の目の前で川野さんはこういった。


「あらっ!その子誰ぇ?お客さん?ナンバーワンホストはいいわねぇ〜」

か、川野さん・・・言いたい放題ですね・・・・・


「・・・・・・・・先輩、どういうことですか・・・・?」




松浦のカンチガイにホッとしたのもつかの間、

ついに、松浦にも、ホストのことがバレてしまった。

89 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:30

その後、すぐにあたしは松浦と一緒に同じタクシーに乗った。

「運転手さん、この子の家まで。えっと・・松浦どこに住んでんだっけ?」
あたしは隣に座った松浦に尋ねた。
「先輩送ってくれるなんて優し〜い♪○○駅ですよ♪」
・・・ハイテンションだな、お前・・・
こっちは超ブルーだっつーのに。
っていうか、これからどうしようって感じだよ・・・・・・

「じゃぁ○○駅まで。」
運転手は”はい。”と言って車を発進させた。


・・・

夜景が次々に過ぎていく。
新宿の街を、あたしたちを乗せたタクシーは悠々と走る。

「で、先輩、どういうことですか?」
松浦は率直に聞いてきた。しかもグイッと顔を近づけて目をパチパチと・・・
ちょっと可愛い。
・・・じゃなくて!!

「見りゃわかんだろ。あたしホストやってんだよ。しかもナンバーワンホスト。」

「えぇー!!すごーい!!」
すごーいって・・・人事みたいに言うなよ!!
まぁ、人事だけど。
「あのさ、松浦。」
数センチの距離にある松浦の顔を突き放しながら言った。


「頼むからさ、とりあえず学校や友達には黙っといてよ。」

その言葉に、松浦は黙り込んだ。
「松浦?聞いてる?」
何黙っちゃってんだよ。よくわかんねーな・・・


90 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:31


黙ったかと思うと、突然またバッと顔をあげた。
・・・っ!
びっくりしたぁ・・・

「いいですよ!黙っときます♪」
マジで!!よかったぁ〜〜〜〜〜
「た・だ・し!!」

へ?
”ただし”・・・・??


「つまりですね?あたしは、先輩の弱みを握りました!」
・・・はい?だから何だよ。
まさか、金の要求?!
そのくらい100万でも200万でも・・・

「あたしのお願い、聞いてくれます?」
お願い・・・?
「何。とりあえず言って。」


松浦はニヤリと笑った。




「あたしと、付き合ってください。」





・・・・は?



91 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:31



松浦はニコッと笑いかえった。
お前、どんだけ小悪魔だよ!!あたし以上だよ。
っつーか・・・


「それは無理。」
即答。アホなお願いすんじゃねーよ。ったく。
「へぇ、じゃぁバラしていいんですねぇ〜?」
なっ・・・メチャクチャだなお前・・・・

あたしは一息ついて、少し顔を赤らめて言った。



「彼女・・・、いるから。付き合うのだけは無理。」



松浦はそのことばに目をパチパチとさせて固まっていた。
「先輩・・・彼女いるんですか?!松浦聞いてないですよ!!」
アホか!言うわけねーよ!
あたしは松浦を黙らせてとりあえずため息をつく。

「とにかく、バラさないでよ?もっと現実的なお願い考えとけ。」
わかりましたよぉ〜とふくれっつらで松浦は言った。
そして駅に着くと、彼女を降ろした。


「バラさないでね。お願いだから。」

松浦はニコッと笑ってそのまま去っていった。



・・・大丈夫かなぁ・・・・・


92 名前:とみこ 投稿日:2004/01/26(月) 14:31
更新終了です!!松浦の”お願い”とは・・・(w
レスお待ちしています。
93 名前:翡翠 投稿日:2004/01/27(火) 14:54
すごい面白いです!
せっかく、ごっちんとラブラブになったのに・・・。
よしごま幸せになってほしいです!!
これからも、頑張って下さい☆
94 名前:名無子 投稿日:2004/01/28(水) 10:58
さやまりおめでとう!
よっすぃーはかなりピンチですね。がんばれ!
95 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:19

部屋に帰って、ソファーにどさっと寝転んだ。

「はぁ・・・疲れた。」
今日はややこしい1日だった。
松浦にはホストの仕事、バレちゃったし・・・
どーすりゃいいのかな、あたし。
松浦はどーも信用できん。

あたしは起き上がって棚に置いてあるカレンダーを見た。
・・・・。
「あと、20日か。」
ホストを辞める日までのカウントダウン。
平家さん。
ごめんなさい。
あなたを支えることはもうできない。
今、あたしは愛してる人がいるから。

でも、
あなたをひと時も忘れたことはありません。
待っててください。


「・・・寝るか。」



・・・
96 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:19


ドカッ

「おっはよー!よっすぃー♪」
突然、友達が思いっきり体当たりしてきた。
いってぇ・・・・
「おぉ、かなやん。痛ぇよ〜〜。」
こっちは二日酔いなんだから、とか思いつつ教室に入った。

・・・

「あれ?」
教室に入るなり、ごっちんが居ないことに気がついた。
「ごっちんは?」

ミキティにたずねると・・・
「あ!真希なら保健室だよ。ね?」
「そーだよ!なんか熱あるみたい。」
マサエもニカッと笑って答えた。

「保健室ー??」
カバンを机に置きながらミキティたちに返事をした。
「そうだよ、結構つらそうだったよー?」
マジで!!・・・お見舞いしなきゃ・・・

「よっすぃーに会いたがってたよ。」
ミキティとマサエは顔を合わせてそう言った。
へ?ごっちんが、あたしに・・・?
そんな感情をあらわにするコでしたっけ??

「っていうか・・・」


「2人とも、なんでごっちんとあたしの関係を?!」
あたしの言葉に、ミキティとマサエはアハハッと笑っていた。
・・・なんだよぉ、知ってたのかよ・・・


あたしは早速保健室に向かった。


97 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:19



ガラッ


・・・あれ?先生いないんだ。

「ごっちーん?」
ベットをのぞきこむと、ふとんにくるまっているごっちんが居た。
「ありゃ?寝てる?」
「起きてる。」
・・・さようですか。
あたしはベッドの横にイスを持ってきて座った。

「なになにー、熱あるって聞いたよー?平気なの?」

「・・・・・。」
あたしが心配そうに聞くと、枕に顔をうずめてしまった。
そういう行動すら可愛い。






「キス、していい?」



あたしはベッドにひじをついたまま囁いた。
ごっちんは黙って枕にうずめていた顔をこっちに向けた。
「・・・・・。」
「ごっちん顔あかーい。熱だから?それとも・・・」

あたしは言いかけて、そのまま彼女の唇をふさいだ。
いつものキスより、少し熱かった。




98 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:19



唇を離すと、ごっちんはベッドからせーいっぱい手を伸ばした。
「・・・?」
あたしは不思議がって体を近づけると、
ごっちんはあたしの首に手を回してきた。

こんな大胆なごっちん、初めて見た・・・

・・・
黙ったまま、そのままごっちんにギュッと抱きしめられた。

「ごっちーん?熱でちょっとおかしい?」

「・・・・うるさい。」
素直じゃないけど・・・可愛いっス・・・
ほんっとに愛してるよ、あんたを。

「ごっちん・・・今日はやけに甘えたさんじゃん。」
そう言って軽くキスをした。



ガタッ


・・・ん?

「なんか今物音しなかった?」
変な音に気づいてあたしはごっちんに聞いた。
「ううん、別に。」
・・・ならいいんだけど。


あたしはもう一度キスをして、

彼女におやすみを言った。



99 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:19



「よっすぃー、おかえりー!」
教室に戻ると、ミキティとマサエがニヤニヤして見ていた。
なんですかその顔は・・・・・
「ただいま。」
2人の近くの席に座って、一息ついた。

「それにしても、真希をゲッチューするとは、さすがよっすぃーだよねぇ。」
ミキティは頬杖をつきながらそう言った。
「真希って告られても誰とも付き合わないのにねー。」
ははん、そういうことですか。
だって、あたしはハンパなくごっちんを愛してるもの!!

「んで?ミキティたち、なんで知ってたのさ。ごっちんとあたしが付き合ってること。」
夜から付けっぱなしのピアスを外しながらたずねた。

「だって・・・ねぇ、マサエ。」
「ねぇ、ミキティ。」

・・・なんじゃそりゃ。






「幸せオーラ出してるもん、真希。」



ミキティは優しい表情でそう言った。
もちろん、マサエもニカッと笑った。
”幸せオーラ”ねぇ・・・・真希が?キャラ違うっしょ!
あたしの前ではクールなのにね。

「幸せにしてあげなよ、よっすぃー。」
マサエのことばに、あたしはニコッと笑った。
少し、頬が赤くなってしまったと思う。

「当たり前だよ。愛してるもん。」



・・・

100 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:20



「吉澤先輩のことが好きです。付き合ってください。」

放課後、あたしは後輩に中庭に呼び出されていた。
まぁ、わかってたけどもちろん告白された。

「あのさ、なんなの?結構ウザいぞ、お前・・・。」
あたしはそのこに向かってそう言った。
え?
なんでそんなに冷たいって?

だってコイツは・・・


そう、あのお騒がせ少女・・・松浦亜弥だから。


「先輩、ひっどーい!」
そのこは泣きまねをして抱きついてきた。
「あーあーあー。うっせー。」

なんでこりずに告白してくるかな?!
うっぜーなぁ・・・・・・・・

「先輩、あたしは先輩の弱みを握ってるんですよ?」
松浦は満足そうにそう言った。
「っつーか、離れろよ。なんで抱きついてんだよ。」
あたしはグイッと松浦の体を離した。


「あのさぁ、彼女いるっつっただろ!!」
あたしはつい怒り気味で怒鳴ってしまった。

「・・・・・。」
あれ?珍しく素直に聞いた?










と思いきや、松浦はすぐに顔をあげた。





「あたし、見ちゃいましたよ?」
101 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:20




”あたし、見ちゃいましたよ?”


「は?何が。」
あたしは彼女の視線を外して話を聞いていた。
目合わせたら食われそうなんだもん。
っつーか、またキスされたら困るし。

「保健室ですよ♪」
彼女は自信満々で、そう言った。

「保健室?」


「熱ぅ〜〜〜いキス、してましたね♪」



なっ・・・!!
まさか、ごっちんとあたしのキスシーンを?!

「あの物音、松浦だったのかよ!」
あたしは思わず松浦の腕を掴んで問い詰めた。
「痛ぁ〜い。やめて下さいよ〜」
松浦はふざけながらニコニコしていた。
なんだよその余裕っぷりは!!

「ほぉ〜。後藤先輩だったんですねぇ。ふーん。へぇ〜」
妙な発言だな。
何たくらんでんだ、こいつは。

「だ、だから何だよ。それに、どっちにしろ松浦とは付き合えねぇから。」
念を押すと、松浦はニヤッと笑った。
・・・今度は何?!



「ホストのこと、後藤先輩にバラしちゃっていいですか?」

は?

「何言ってんの?約束がちげぇじゃん!」
あたしは背の低い松浦を見下ろしながら言った。
まるでカツアゲ・・・・・・・
どっちかっつーと、あたしが脅されてる立場なんだけどさ。
102 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:20


「じゃぁ、バラさないから・・・あたしと浮気してください♪」
松浦はあたかも友達と会話するような口調で軽く言った。
・・・んな、バカ言ってんじゃねーよ。

「無理。ごっちんにバレたらどーすんだよ、バカ。」
あたしは表情を緩めて松浦から一歩離れた。
すると彼女はフフッと笑ってこう言った。

「彼女にしろとは言ってません。ただ、たまに松浦とデートとかしてください♪」

「・・・デート?」
そんなの浮気っていうのか?
浮気って言うのは彼女意外とキスしたりエッチすることじゃないの?!
そういえば、まだごっちんとはキス止まりだな・・・
・・・ってそうじゃなくて!!

「そうです!映画みたり、遊園地いったり♪」
小学生かよっ!!
今時のデートの常識はラブホテ・・・いや、なんでもない。

「・・・そのくらい別にいいけど。」

「ホントですか?!やったー!!」
松浦はピョンピョン飛び跳ねて喜んでいた。
この小悪魔が・・・・

「じゃぁ約束どおり、ホストのこと誰にもバラすなよ。」

「はい♪」
そう言って松浦とバイバイした。


・・・
意外とスムーズに交換条件成立?
ラッキーじゃん♪


・・・

103 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:20


帰ろうとして下駄箱に行くと、もうそこには誰もいなかった。
夕日が・・・なんかロマンチック〜。
あたしはしばらくそこに立ち往生していた、

その時・・・


「っく・・・ひっく・・・」


へ?

「ふぇーん・・・・・」

どこからか悲しそうな泣き声が聞こえてきた。
その声は弱弱しくて、今にもつぶれてしまいそうな声だった。

でも誰もいないし・・・・
どこから・・・?

あたしは隣の列の下駄箱を見た。
そこは3年生の下駄箱・・・・・・・・・・


「あ・・・・。」


なんと、そこには座り込んで泣いている女の子がいた。



しかも・・・









「・・・矢口さん?」










その日、ホストを休んだ。

104 名前:とみこ 投稿日:2004/01/29(木) 22:23
>翡翠さん
>すごい面白いです!
キャー!!あっりがとうございますぅ!!www
>せっかく、ごっちんとラブラブになったのに・・・。
うむ、確かに・・・でも今回もふたりはラブラブみたいですけどw
でもホストがバレなければいいのですが・・・・ね。w
>よしごま幸せになってほしいです!!
どうでしょぉ?!w頑張ります!

>名無子さん
>さやまりおめでとう!
ありがとう!(ぇ)
>よっすぃーはかなりピンチですね。がんばれ!
っすよねぇ。w
しかも矢口と松浦がさらに絡んできました。
さてさてどうなるやら・・・・・・・


更新終了です!







・・・・石川の出番はいつぞや?!w
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 22:03
うわぁーーー矢口どうした?
吉子も、次から次へと大変ですね。
頑張れ!
106 名前:名無子 投稿日:2004/01/31(土) 23:17
あれ?さやまりをお祝いしたはずなのに・・・。
後藤さんはよっすぃーとラブラブなのに・・・。
謎が深まります。
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 00:29
うわっつらだけというか…中身がなくない?
ホストとかおこちゃまが軽く書いてんじゃないよ(w
108 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 01:41
それは言わないでおいてあげなよ。
おこちゃまだから軽く書けるんだろうし。
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 02:44
一人称が「うち」ってのは何か間抜けだよね。
中身がないって意見に同意。すかすかな感じ。
110 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 06:42
>>107-109
つまらないと思うなら読まなければ良いのに・・・。
内容に関するだけではなく、わざわざ作者さんをバカにするようなレス
までしてさ。
111 名前:なち 投稿日:2004/02/01(日) 07:56
≫107-109
軽い荒しもどき?(笑)
文句あんなら読まなきゃイイ。
話の中のキャラクターを作るのは
作者さんの自由でしょ?
作者さん気にせず頑張って下さい。
いつも楽しみに読ませて頂いてます♪
112 名前:通りすがり 投稿日:2004/02/01(日) 16:57
まぁまぁ、落ち着いて。
ちょっと白い空間が多いんじゃないかな?それですかすかとか思うんじゃないかな?
あとは、もう少し難しい言葉を使ってみたら?
内容的には面白いから、頑張って。
あとは、他の作者サンの作品を見て研究すればいいと思う。
特に同じ年代(中3)のヒトシズク氏とか見ればどうかな?
作品は
青板 『2番目』(処女作)
空板 『GIVE ME A LOVE』(現在連載中)
青板 『金魚鉢』(現在連載中)
赤板 『私のマリア』

読者の意見も反映するのが書き手としては難しいけど、期待しているので頑張って。
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 22:31
>>112がヒトシズク本人だという説
114 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 23:45
中3…
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 00:09
罵倒されて当然な話と文章力じゃん。
フォローしてるのって実は作者の自己レスだったりして。マンセーレスってほぼ厨みたいだし(W
116 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 01:01
見たくなけりゃ、見るなよ!
すげぇ不愉快。
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 03:07
自分も苦手なCP小説や嫌いな設定小説なんかいくらでもある
だけど、気に入らないからってスレ荒したり文章や作者を罵倒するのはどうか
と思うよ
そこには現行の話を楽しみにしている読者がいる訳で、そうした荒し行為で作
者さんが書く気なくしたりしたら、楽しみにしてる読者に申し訳ないからね
118 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/02(月) 10:47
なんか荒れてますが、
気にせず頑張って下さい。
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 16:15
>>116じゃぁageんなよ。
120 名前:名無し。 投稿日:2004/02/02(月) 23:21
どう考えても作者がフォローしてるんじゃないの?
>115に同意見。

121 名前:ナナシ 投稿日:2004/02/03(火) 01:31
なんでおもしろくないのに見てるの?たしかにまだまだって感じなとこはあるけど放置したりする人よりよっぽどいいよ。とみこさんにはこれからもたくさん書いてうまくなって欲しいな。
122 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:09
目の前では、矢口さんが座り込んで泣いていた。
 「矢口さん・・・?」
あたしに気づいた矢口さんは、フッと顔をあげた。
真っ赤になった目が、あたしを動揺させた。
 「よ・・っすぃ・・・?」
言葉が出なかった。
なんで泣いてるのか理由も分からないのに、
胸がギュッと締め付けられるような声だった。

何も言わずに、あたしは覆いかぶさるように抱きしめた。
しゃがみこんだままの矢口さんは、あたしの腕の中で泣いていた。
 「矢口さん・・・、何があったかわからないですけど・・・・
あたしは、矢口さんの味方ですから。あたし、ここにいますから。」
・・・何言ってんだろ、あたし。
文法おかしいし、曖昧な言葉だし・・・

・・・いっそ、あたしのものにしてしまいたかった。
”あたしが矢口さんを守るから”って、言ってしまいたかった。
何で泣いてるのかもまだわかんないのに・・・。
泣きっぱなしの彼女はコクッとうなづいた。
そのまま、数分が過ぎていった。
それはまるで、何時間もにも感じられた。
123 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:09
 「落ち着きました?」
泣き声が止まったのを確認すると、あたしはそっと体を離した。
・・・・なんか、勝手に抱きしめちゃったけど、どうすればいいんだろ。
 「ごめん、ね。」
矢口さんは片言でそう言って、制服の袖でゴシゴシと涙を拭いていた。
「あ、そんな強くこすっちゃダメですよっ」
 「・・・え?」
左手を矢口さんの頬にそえて、顔をこっちに向けた。
そして右手の親指で涙をそっと拭った。

 「あ、あのぉ、とりあえず事情聞かせてください・・・?」
あたしの質問に矢口さんはだいぶ落ち着いた声で答えた。
 「・・・・紗耶香が・・・」
サヤカ・・・・市井さん?
まさか、また市井さんが浮気したとか・・?!
 「市井さんが、どうしたんですか?」
焦る気持ちを抑えながら質問を続けた。
もし、浮気だったら今度こそ市井さんを一発・・・―――――
そんな風に思っていた。しかし、矢口さんから出た言葉は意外だった。

 「紗耶香が・・・・・学校、やめるんだって。」

え?
今なんて言った・・・・?あたしは思わず耳を疑った。
 「何で!そんな・・・いきなり。」
んな・・・あんなに矢口さんを大事にしてるのに・・・
あたしは矢口さんを見つめながら聞いた。
つらそうだから、これ以上矢口さんをしゃべらせたくなかったけど・・・・

矢口さんは、首を横に振った。
 「・・・あたしのせいなの・・・・あたしのせいで紗耶香は学校を・・・」
・・・また泣き出しちゃった・・・っていうか、まだ内容がつかめない。
矢口さんのせいで市井さんが退学?
 「うーん・・・矢口さん、大丈夫です。とりあえず泣かないで下さい。」
自分よりも背の低い彼女の頭をポンポンッと叩いた。
いつもなら”子供あつかいするなー”とかいって怒りかかってくるけど、
今日の矢口さんはすごく小さかった。

 「そんで、理由は何なんですか?」
それを聞かないと何も始まらない。市井さんが学校をやめる理由なんて、想像もつかなかった。
124 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:10
 「・・・矢口にからんできた他校生と紗耶香がケンカして大騒ぎになって・・・
  ほら、紗耶香ってケンカ強いじゃん?だから本当にボコボコにちゃってさ、
  他校生は病院行ったんだけど、紗耶香は・・・警察行って・・・」
震えながら事情を話す矢口さんは、今にもフッと魂が無くなってしまいそうだった。
あたしもさすがに話を聞いたあとは、何もいえなかった。
その場に沈黙が走って、体育館でバレー部があげている大声だけが玄関まで響いていた。

 「そんな・・・でも矢口さんは悪くないですよ!悪いのはからんできた人たちです!」
必死に彼女を励まし続けた。それでも矢口さんは今度は涙も出ないぐらい悲しそうだった。
”でもっ・・・”とためらって矢口さんはまた黙り込んでしまった。
あたしは言いたいことたくさんあったけど、なかなか言葉にできなくって、
結局あたしなんて・・・って珍しくネガティブになってしまうほどだった。
その時、矢口さんがほんの小さい声で話し出した。
 「紗耶香は・・・まだ警察なんだけど、さっき裕ちゃんが帰ってきて・・・多分退学だろって・・・」

それだけ言うと、またひざを抱えて泣き出してしまった。
あたしはどうしようもなく締め付けられる胸を、どうにか押さえたかった。
こんな弱い矢口さん、初めて見た・・・・
でもあたしは何もできないの?言葉をかけてあげるしかできないの?
だって・・・あたしだってそんな強い人間じゃない。
ただ・・・・それでも、あたしにだってできることあるはず。

 「矢口さん・・・・俯いてはつらいだけですよ。」
そう言って、あたしは勢いよく立ち上がった。
 「よっすぃ・・・」
そのまま矢口さんの手を引っ張って立たせた。
もう、決めていた。こうなったら、最後の最後まであたしは矢口さんの味方。
そして、市井さんの味方でもある。だから・・・
 「戦いましょう。市井さんを無罪にして、学校なんかやめさせないって。」
そうあたしは力強く言った。今までに無い、自信に満ちていた。
こんなに何かに一生懸命になったことってあったっけ?
しかも、自分のためじゃなくて、誰かのために・・・・・・・・
 「・・・うん、そうだよね。落ち込んでる場合じゃないよね!!」
矢口さんもやっと元気でいつもの彼女に戻った。
125 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:12
更新少なくてすみません。
皆様のアドバイスを最大限に生かして書いてみたんですが・・・
確かに空白が多いのはだんだん直していったのですがまだまだでした。
未熟者ですが、この作品を少しでもよいと思ってくれる方が居れば、
これからもよろしくお願いします。

今回の更新に対しての書き方への指摘はどんどんお待ちしています。

ps 中三がホストという設定を書くなという指摘ですが、
   それはお答えできません。
   設定をどのようにしようが、年齢に関係なく個人の自由です。
126 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:42
あたしがホストを辞める日まで、10日を切っていた。
なんだか、最近たくさんのことを抱えすぎている気がする・・・。
松浦にバレないように必死なこととか、ごっちんをメッチャ愛してること(?)とか、
矢口さんと市井さんのこととか、それから・・・・
平家さんのこととか。

 「何ボーッとしてんの。」
目の前に突然、長い髪をみつあみに縛ったごっちんが現れた。
 「う、うわっ!」
あたしは思わずイスから落っこちそうになって焦った。
だって、いきなりごっちんが目の前に・・・・!!
 「どうしたの、授業中もずーっと目イッちゃってたし。」
へ?っていうか、今・・・何、学校?!あたし学校に居たんだっけ?
ビビッた、・・・っていうかどうやって学校まで来たんだろう。記憶に無い。
 「んー、ちょっとごっちんのこと考えてたらボーッとしててさ♪」
てへへっと笑うと、ごっちんは疑っているような目であたしを見ていた。
な、なんですかその目は・・・ごっちん。何やっても可愛いけど。
 「そんなにあたしのこと考えてたんだ?」
 「え?え?・・・そ、そうだよ!だって愛してるもん!」
あたしがそう言うと、ごっちんは時計を指差した。
 「もう放課後だよ。」
え?!放課後?!あたし、てっきりまだ朝だと・・・・
やっべぇな、あたし本当に授業全部ボーッとして過ごしてのかよ。

 「アハハ、どうりで教室にあたしとごっちんしかいないと思ったよ〜〜〜」 
あたしがそう言うと、ごっちんはフッと笑ってあたしの隣の席に座った。
 「で、本当はどうしたの。それほどボーッとするには理由があるでしょ。」
・・・やけに長文を喋るごっちんに驚いた。
 「うーん?考えすぎかな。悩みがたくさんありすぎて・・・トホホ。」
わざと苦笑いしてあたしは言った。

すると、ごっちんはだんだんあたしを見て驚いていた。
え?な、何、あたしの顔になんかついてる?
127 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:42
 「泣いてる・・・。」
ごっちんはボソッとそう言った。なっ・・・え?
あたしは指でそっと目尻をこすると、涙のしずくがついた。
 「あ、あれ?あたし、どうしたんだろ?別に悲しいことなんか何も・・・」

その時・・・ごっちんが包み込むようにあたしを抱きしめた。
あたしは何が何だかわからなくなって、抱きしめ返すこともできなかった。
それでもごっちんはギュッとあたしを抱きしめたままだった。
切なくて、切なくて、どうしようもなくって歯がゆかった。
抱きしめられて、初めてその温かさに気がついて、涙が止まらなくなった。
 「よっすぃー・・・どうしたの・・・。」
ごっちんも泣いていた。抱きしめながら、泣いていた。
やっぱり、あたしは彼女がいないとダメだと思った。
改めて、愛してるって思った。
・・・でも、ごめん。ごめんね、ごっちん。
まだあたしはごっちんに隠していることがあるんだ。
あと少し、あと少ししたらその隠し事もなくなるから。
128 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:42
ホストをやめるまで、あと9日。
129 名前:とみこ 投稿日:2004/02/03(火) 09:43
も少し更新できたのでしました。
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/03(火) 21:22
いつも楽しく読ませて貰ってます。
吉子を助けられるのは、ごっちんしかいないですね。
応援してるんで、最後まで頑張ってください。
131 名前:名無子 投稿日:2004/02/03(火) 23:41
よっすぃーの考え方が徐々にしっかりしてきてるのがいいですね。
その分苦労は多いでしょうが・・・。
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 01:34
本日、初めて読ませて頂きました。
とても面白い設定でしかもヨシゴマ!
サクサク読みやすくって
すっかりはまってしまいました〜
これからどういった展開になるのかワクワクです。
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/09(月) 23:30
ホントに中学生ですか!?
って言いたくなるぐらいしっかりした文体だと思いますよ。
作者さん自身の考えもしっかりしていて今後がとても楽しみです。
下手な大人よりよっぽど大人なんじゃないかな。
134 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:07
その夜、あたしはひとりで自宅謹慎中の市井さんのモトへ訪れた。

 「わざわざ吉澤が来るとは、意外だよ。悪いな。」
いいえ、と言って市井さんの出してくれたコーヒーを眺めていた。
一人暮らしって聞いてたけど、なんか金持ちなんだなって、思ったりして。
だって、でっかいマンションの一室を市井さんひとりで住んでるみたいだし。

 「自宅謹慎っつっても、もう退学決定だな。」
テーブルにつくと、市井さんは落ち着いた表情でそう言った。
なんだか、市井さんには不似合いな苦笑いが、妙に市井さんの背中を小さくさせた。
あたしの知ってる市井さんは、こんな人じゃない。
もっと、何に対しても胸をはって生きていて、誰にでも好かれる素晴らしい人だ。
そう思ってた。

なのに、弱音を吐く市井さんを見て、あたしは本題よりも先に違う言葉が出てしまった。
 「見損ないましたよ、市井さん。」
それでも、市井さんは怒っていなかった。怒らない市井さんにも呆れた。
そんなにプライドを捨ててしまったの?カッコイイ市井さんはどこにいったっていうんだ。
 「吉澤の気持ちもわかる。何も考えずにケンカしたあたしがバカだ。」

そういうことじゃないんですけど・・・。
そう思ったけどそれはさておき、あたしは本題に入った。
 「矢口さんは自分を責めてましたよ。」
その言葉に、フッと市井さんの表情が一転した。矢口さんに反応したのか?
 「どういう意味?」
さっきよりも少し焦ったような口調で市井さんは言った。

135 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:07
無実をはらすことを市井に納得させる。
それがあたしと矢口さんが話し合った上で、出した結論だった。
果たして市井さんがその意見に対してどう思うかは、わからなかった。

 「市井さんが学校をやめても何もなりません。」
頬づえをついたまま、下向き加減で黙っている市井さんに対して、あたしは真っ直ぐ市井さんを見ていた。
 「無理言うな。それに、別に矢口との関係がなくなるわけじゃないだろ?」
だんだん苦笑いも薄れてきた市井さんは、悪い意味でいつもの短気さが出てきた。
怒らしたら怖いな。とりあえず、矢口さんを盾に話を進めよう。

 「矢口さんの気持ちも考えてあげてください。」
荒い口調になりそうなのをどうにか抑えて、話を進めた。
市井さんは黙ったまま何も言わなかったから、あたしは話し続けた。
 「”自分のせいで紗耶香が”って、そうやって矢口さん、自分を責めてました。昨日、泣いてたんですよ?」
え?っと、思わず顔をあげて市井さんは驚いていた。
彼女の涙には弱いって?まぁ、それはあたしも一緒なんだけど。
 「無実が晴らされれば、矢口さんのそう言った罪悪感もなくなるし、
 それに・・・市井さんも後味悪いのは嫌でしょう?」
最後の決め手?にはならなかったけど、あたしはそれで大体のことは伝えたつもりだった。

市井さんは黙ったまま、何か考え込んでいるようだった。
あたしも黙って様子を見て、市井さんの答えを期待していた。
そして、数秒して、市井さんはハキハキとした喋り方でこう言った。
 「あたしに、なにかできるの?」
その時、市井さんはわかってくれたと確信した。
なんでかって?それは、そう、阿吽の呼吸ってやつさ。

 「できます。だから、あたしも、矢口さんも一緒に戦います。」
あたしは、強く、頑固な口調で最後に言った。
実際わかってほしかったのは、矢口さんの気持ちだった。
市井さんとあたしにいくら阿吽の呼吸があっても、矢口さんの気持ちは、市井さんにうまく伝わってない。
だから、自分の意思で、わかってほしかった。
136 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:07
 「わかった。あたしも前向きに考えるよ。」
市井さんは立ち上がって、手を差し出した。
長くてキレイな掌が、あたしの掌と音を立ててつながった。
 「市井さんならわかってくれると思ってましたよ。」
そういうと、市井さんはいつものはにかんだ笑顔でニカッと笑った。
やっぱり、歯が白くてカッコイイって思った。

いつまでも、市井さんはあたしにとって憧れの市井さんで居て欲しい。
矢口さんのことを大事に思って、みんなの人気者で、
正義感が強くて、優しくて心強くてたくましくて頼りがいのある市井さんがいい!

あたしも、できるだけ・・・いや、本気で協力したいと思った。

137 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:08

次の日、あたしは校長室を訪ねた。
矢口さんも一緒に行くって言ってきたけど、何か校長に言われたら泣いちゃいそうだから、断った。

・・・

 「市井先輩は、矢口先輩を守ろうとして手を出したんです。正当防衛だと思います。」
あたしがそう言うと、校長は両手をあわせ、その上にあごを乗せて、あたしの方を見た。
そして、ハァ、とため息をつき、口を開いた。

 「何かと思えば、そんな話か。君に有無を決める権利は無い。そして私にも無い。」
校長は淡々とした口調でそう言い返してきた。
明らかに自分勝手な発言にカッとしそうになった。でも、矢口さんのためにやめた。
 「でも、警察と市井先輩ともう一度話し合って、決めることはできるはずです。」
 「いいかげんにしたまえ!」
突然、校長は大声で怒鳴りあげてきた。
一瞬、あたしもビビッてしまうぐらい、怖かった。そしてツカツカとこっちに歩いてきた。

 「出て行きなさい。今後、二度とその話をしないように。」

バタンッという音とともに、校長は他の部屋に逃げてしまった。

悔しい、悔しかった。すごく、メチャメチャ。
あたしは初めてこんなに一生懸命に何かに取り組んだことはなかった。
さらに、一生懸命取り組んだことを、認められない悔しさも、初めて知った。
心底悔しくて、思わず涙がこみ上げてきた。
どうすればいいかわからなかった。

本当に、あたしは今まで何をして生きてきたんだ。
こんなに本当はモロい人間だったの?
おかしいな、自分は強いと思ってた。絶対泣かないし、悲しいなんて思ったこと無い。
それが実際はこうですか。

あたしに、何ができるの?
138 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:08

放課後、あたしは中庭で矢口さんに今のことを報告した。

 「そっか・・・校長も薄情者だよね。結局は厄介者が居なくなればいいって思ってるんだよ!」
矢口さんは強気でそう言っていた。
あたしは変わらず少しテンション低めだったけど。
 「何かいい方法ないですかね。」
うーん、と矢口さんも首をひねって考え込んでいた。
ここで一発大逆転!みたいな提案があればいいのに。っていうか、思いついたら楽じゃないってか。

 「署名とか、集めれば?」
突然、目の前にごっちんが現れてそう言った。
 「ごっちん!!え?署名・・・・?」
あたしは突然の助言に特に頭が働かなくって、一生懸命考えていた。
そのとき、矢口さんが口を開いた。
 「署名か!いいかも!それ!!」
矢口さんはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいた。
ごっちんはあたしの方に来て、よかったねっとひとこと。
 「さすがごっちん。」
ニコッと笑ってあたしは言った。ごっちんは特に思いっきり喜ぶわけでもなくて、少し笑った。

署名か〜。いいかも!友達とか、ファンの子とか・・・。
それから、ホストのお客さん・・・いや、それはやめておこう。怪しまれる・・・。
その夜、あたしはいつもより清清しい気持ちで仕事に行った。
139 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:08

 「うぉ〜遅刻だー。」
学校が終わってタラタラ昼寝をしてたらあっという間に20時を回っていた。
あたしは急いでホストに行った。

すると、黒いレザーコートに身をつつんだ、つんくさんが立っていた。
あたしは思わずビクッとした。こないだのことがフラッシュバックしてきたのだ。
今日も怒られるんだろうか・・・。
そう思いながらあいさつをしたその時だった。

 「業績ええやないか。すごい売り上げや。この調子ならすんなりやめさせたるで。」
意外な言葉がつんくさんの口から出た。
確かに、業績は先月の倍は上ってる。しかも、全額店に寄付だから大した値段だ。 
 「はいっ!ありがとうございます!」
なんか今日はいいこと続きで、なんだか明日にでも不幸が来そうだよ。
市井さんも納得させたし、矢口さんとごっちんと署名活動も始めるし!
140 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:08

仕事が終わって、あたしは鼻歌を歌いながら、混んでいてタクシーがとれないので、駅に向かって歩いていた。
するとその時、前から携帯で電話をしながら歩いてくる女の人がいた。
カツカツとハイヒールの音が定期的にこっちに向かって響いている。
なんとも思ってなかった。
気づいたのは、すれ違った瞬間だった。

あたしはその女の人とすれ違った瞬間、脚を止めた。

平家・・・さん・・・

彼女が過ぎたときに、懐かしい香水の香りがした。
平家さんは変わらず仕事を続けているようだった。今の電話も取引みたいだったし・・・?

そのまま平家さんはカツカツと遠ざかっていった。
気づかなかったのかな?
そんな風に思いながら、あたしは妙に鳥肌が立った。
自分だけが、置いていかれている気がしたのだ。

平家さんは、もうあたしのことやホストのことなんて忘れて、仕事に専念している。
あたしは、何やってんだろ。早く、ホストなんてやめてしまいたい。

夜の新宿には物騒な制服姿の自分が、ショーウインドウ映っていた。
その姿は暗く、二枚の影が見えた。
本当の自分と、偽りの自分。
141 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:08

ホストをやめるまであと7日。
142 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:13
>名無し飼育さん
>いつも楽しく読ませて貰ってます。
本当ですか!とても嬉しいです!!ありがとうございます!
>吉子を助けられるのは、ごっちんしかいないですね。
はい、確かに。でもこれからもまだ荒波はたくさん・・・
どうなるのでしょうかぁ!!
頑張ります!

>名無子さん
>よっすぃーの考え方が徐々にしっかりしてきてるのがいいですね。
ふむ、そうですね。ホストをやめる日に近づくにつれてマジメになってます!
はい、その分苦労は多いでしょう^^;
これからもよろしくお願いします!!

>名無し飼育さん
>本日、初めて読ませて頂きました。
初めまして!長々と書いてあるのにわざわざ最初から・・・ありがとうございます。
>面白い設定でしかもヨシゴマ!
>サクサク読みやすくって
いやぁ、本当にありがとうございます!
だいぶ私も修行しまして^^;
すっかりはまってしまいました〜
期待していてください!!

>名無し飼育さん
>ホントに中学生ですか!?
はい、^^;もうすぐ高校生ですがw
いや、文才はまだまだないですよ^^;
大人の皆様の足元にもおよびません。
でも中学生の作品として軽い目で見てやってください。

143 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:20
もう少し更新します!!
144 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:20

次の日は雨が降っていた。
放課後、あたしは玄関でごっちんを待っていた。
ごっちんが、あ・・傘忘れた。なんていうから、あたしは嬉しくて仕方なかった。
即一緒に帰ろうって誘って、そんで今、待ってるってわけ。

 「せーんぱいっ」
その時、目の前に1番会いたくないヤツ=松浦があらわれた。
 「なんだよ。」
あたしは松浦に背中を向けてムスッとしていた。
その態度が不満だったのか、うしろから思いっきり抱きついてきた。
 「も〜〜〜先輩っ、いつデートします?」
力強く抱きしめられて、あたしは身動きが取れなかった。
 「あー・・・そんな約束したっけ?」
すっとぼけた態度に松浦は、ひっどーい!!といってさらに強く抱きしめてきた。

 「待った?」
その時、ちょうど校舎からごっちんが出てきた。
あたしは力ずくで松浦を体から振り払うと、右手で松浦の肩を押して離した。

 「ごめん、彼女来たから。」
そういうと松浦はムスッとして、今度はごっちんの方を見て、ビッと指をさした。
 「後藤先輩!!」
頭に”?”マークをつけたごっちんは、無表情のまま相づちも打たなかった。
 「そのうち、吉澤先輩を奪いますからね!」
キメ台詞と言わんばかりに、(捨て台詞?)それだけ言って去っていってしまった。
何が吉澤先輩を奪うだよ。それ以前にあたしはごっちんを離さないっつーの。

 「なんか愉快な子だね。」
ごっちんは冷静沈着にボソッとつぶやいた。少し笑ってて、かわいーなんて思っちゃったり。
 「ははっ・・・。うっと〜しいほどね・・・。」
ごっちんがこうやって笑って松浦をかわしてくれるのが嬉しかった。
松浦があたしに抱きついてきても、ごっちんからあたしを奪うなんて言っても、
あたしがごっちんから松浦に乗り換えるなんて思ってないこと、わかってくれてるんだね。
ごっちんは、あたしを信じてくれてるんだ。
145 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:20

数日後、昼休みに、ごっちん・あたし・矢口さんは中庭に集まった。
お昼を一緒に食べようってことだったんだけど、本題は署名の集まった枚数。

 「すっげー!!」
思わずあたしは大声を上げた。だって、集まった署名は300人程だったから。
矢口さんは幅広い友達から、あたしはファンの子から、ごっちんはマサエやあゆみから。
そうやって集まった署名は、友情の証を表しているようだった。
 「市井ちゃんのファンの子もいっぱい書いてくれたよ。」
ごっちんはそう言って一束見せた。
そっか、市井さんのファンだって市井さんが学校辞めたら困るもんね!
そうかぁ、300人集まった理由はそれもあるかも。

 「じゃぁよっすぃー、放課後頼んだぞ!!頑張るんだぞ!!!」

矢口さんに渇を入れられ、あたしは署名を持って放課後校長室に向かった。
もちろん、もう怖くなんてないぞ!!
あたしには、矢口さんやごっちんがついてるんだ!
146 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:21

校長の机に、署名をドサッと置いた。
 「これだけの人が、やめてほしくないといって署名してくれました。」
校長はあたしの言葉を聞いてるのか分からなかったけど、
じっと黙って一枚一枚、署名を呼んでいた。
 「こんなに愛されてる人がこの学校にいることは、恥なんかではありません。誇りです。」
市井さんのやったことは正しいことなんだ。
それが認められないはず無い。この署名がそれを物語っていた。

そして校長はゴホンッとせきをして口を開いた。
 「君たちの気持ちはよくわかった。警察の方にこれを提出しよう。」
校長の言葉に、あたしは思わずブワッと涙を流してしまった。
ありがとうございます!!と大声でお礼を言って、あたしは市井さんの家に向かった。

・・・

 「おう、吉澤。矢口と後藤も来てるぞ。」
市井さんの家にあがると、そこには2人もいた。
あたしの結果を待っていたみたいで、ソワソワしたようすであたしを見た。
 「校長先生は・・・・」
あたしの言葉に、みんなゴクリと息をのんだ。

 「署名を持って警察に行ってくれるって!!」
ニカッと笑ってガッツポーズをして見せた。
 「うそ・・・!!紗耶香、紗耶香・・・やったじゃん!!」
矢口さんは泣きながら市井さんに抱きついて喜んでいた。
市井さんの目にもキラリともらい泣きした涙が光っていた。

 「よかったね。」
ごっちんは少しだけ笑ってそう言った。
うん、といって、あたしとごっちんはそっと市井さんの家を出て行った。
だって、なんだかあの2人を邪魔しちゃいけない気がして・・・・・・

147 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:21

帰り道、ごっちんを家まで2人で並んで歩いていた。
夕日がなんとなーく雰囲気を作ってくれて、ごっちんに素直に声をかけた。
 「ありがとね、ごっちん。」
ううん、平気。といっていつも通りのごっちんだった。

その時、目の前を女の子が通り過ぎた。
あたしは見たことある顔に思わず呼びかけた。
 「あれー?石川さんじゃん。」
ドキッとしたように彼女はバッと振り向いた。
ごっちんも、どーもー。と軽く挨拶していた。
 「吉澤さん・・・!」
石川さんはごっちんの姿を見ると、だんだん悲しそうな表情になっていった。
ん?なんでそんな顔・・・・
石川さん?と呼びかけると、すごい勢いで去っていってしまった。

なんなんだ?
あたしは不思議でしょうがなかった。
 「好きなんじゃん?よっすぃーのこと。」
突然、ごっちんが冷静にそう言った。
・・・へ?石川さんがあたしを好き?
頭の中でぐるぐる思考回路が回った結果、それはないとあたしは思った。
 「それはナイでしょー。石川さんとは、班が同じくらいだし。」
アハハッと笑ってごっちんの頭をポンッと叩いた。
不機嫌そうにしてから、ごっちんはまたあたしの目を見て言うのだった。
 「片思いかもしれないよ。」
珍しくひとつの話題に食いつく彼女に、少し疑問がわいた。
 「何、ヤキモチ?」
からかうように笑うと、ごっちんはプイッと顔をそらして、早足であたしの先を歩き出してしまった。
ツカツカと歩くごっちんを後ろから見ているしかなかった。
・・あれ?怒っちゃった?冗談なんだけどなぁ・・・・

 「ごめんね。」
あたしはそれだけ言って少しごっちんの後ろを遠慮そうに歩いた。
その時、ごっちんは聞こえないような声でこう言った。
 「ヤキモチじゃないよ。信じてるし。」

その言葉にあたしは嬉しくてたまんなかった。
少し先を歩く彼女に追いついて、ごっちんの家まで並んで歩いた。
148 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:21

次の日、昨日の逆恨みか?っていうほど、松浦が廊下で付き纏ってくる。
 「先輩、次の日曜はどうですか?」
あたしの制服の裾をグイグイ引っ張ってしつこくついてきくる。
 「あー・・・ごめん無理。」
えーじゃぁいつならいいんですか!とバタバタしてあたしの背中を叩いてきた。
まったく。あ〜、もう、しつこいな!あたしはバッと振り向いて松浦の方を見た。

 「とりあえず仕事やめるまで待ってよ。」
そういってツカツカ歩きはじめると、松浦は後ろのほうでうだうだ叫んでいた。
 「先輩ひど〜〜〜〜〜〜〜い。」
そんですごい足音が聞こえたと思ったら、後ろから走ってきてガバッうしろから抱きついてきた。
思わずびっくりしてあたしも大声をあげてしまった。
 「バカッ、歩きにくいっつーの!」

そこに、またもやごっちんが現れた。なんか最近松浦といる時ばっかり会っちゃうな・・・
ごっちんは、あたしたちの目の前でピタッと脚をとめる。
 「ごっちん。」
こないだ”愉快な子だね”って言ってたみたいに、
また”大変だね”なんて思いながら流してくれると思ってた。

なのに、ごっちんはそのままスッと目をそらして去っていってしまった。
あたしはビックリして何も言えなかった。ごっちんをとめられなかった。

なんで?
やっぱり、松浦とあたしが絡んでるのは嫌なの?
じゃぁどうしてこないだは”愉快な子だね”なんて”笑って流したんだ?
でもごっちんは昨日だって言った。
”ヤキモチなんかじゃないよ。信じてるし”って。

 「もー、松浦のバカ!ごっちんに嫌われちゃったじゃんかぁ〜!」
とりあえず松浦は一発どついてあたしは怒っていた。
 「へっへーん、知りませ〜ん!」
・・・このナマイキ娘め!!!!

149 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:21

なんでだよ、ごっちん。
あたしが松浦なんか本気にしないって分かってるでしょ?
信じてるって、そういう意味でしょ??

あたしはバンッと、教室のドアを開けた。
 「ごっちん!」
思いっきりあたしが名前を呼んだから、教室にいたみんながザワザワし始めた。
ごっちんはマサエとミキティとしゃべっていたみたいだけど、ピタッと話をやめてしまった。
 「ごめん!!」
そういって手を合わせる。あたしはクラスの全員に見られてるのなんかどうでもよくて、
とにかくごっちんは何かあたしに怒ってるって思ってたから、あやまった。

 「別に。あたしのことは気にしなくていいから。」
ごっちんはとそう言ってミキティたちと再び話し始めた。
 「でも・・・」
絶対今のはごっちんの本音じゃないと思った。
だかあたしは何も考えずに”でも”と言って黙ってしまった。

 「気にしなくていいって言ってんじゃん!」
そう言ってプイッと向こうを向いてしまった。
ごっちんが大きな声で怒るなんて・・・って、みんなが驚いていた。マサエやミキティも、あたしも。
クラスはシーンとして、あたしたちのやりとりを見ていた。

完全にごっちんを怒らせてしまった。
あたし、自意識過剰だったんだごっちんはあたしを信じてるって、それはそうかもしれないけど、
ごっちんだって、普通の女の子なんだ。
好きな人・・・すなわちあたしが誰か他の女と絡んでるの見たら嫌に決まってるよね。
あたしが松浦のこと本気じゃないってわかってても、嫌だよね。

150 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22

 「あたし・・・いちばん好きなのは、ごっちんだよ?」

何も考えずその言葉が出た。
別に、だからって松浦と仲良くしたっていいじゃないっていう意味じゃない。
そうじゃなくて、・・・恋愛にはやっぱり”言葉が”必要で、
お互い分かってても、やっぱり”言葉”がないと不安なんだ。
だから、あたしが・・・1番好きなのは君だって、そう言った。

ごっちんはゆっくり振り向いた。
あたしはまだ教室の入り口から、教室の真ん中にいるごっちんに向かって話し続けた。
 「あたしって軽いし、チャラチャラしてっかもしれないけど・・・」
そこまで言うと、ごっちんは遮るように喋りだした。
 「わかってる。ちゃんと、よっすぃーが想ってること、理解したから。」
そういって、微かに笑ってくれた。
本当に理解しあえるっていうのは、お互い気持ちがあって、さらに言葉があって成り立つんだ。
 「おいで?」
あたしが手招きをすると、ごっちんは席を立ち上がってあたしの方に歩いてきた。

教室の入り口で、あたしはそのままごっちんを抱きしめて、頭をぽんぽんっとした。
 「よちよち。」
ぎゅーって、いつもの何倍も強く、でも優しく抱きしめた。
ごっちんの長くてキレイな髪が鼻をくすぐるのがどうにもくすぐったかった。
 「バカ・・・子供じゃないし。」
ごっちんがボソッとそうつぶやいたその時・・・
151 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22

湧き上がるように教室は拍手でいっぱいになった。

へ?何、あ・・・そっか。みんないたのか。
あたしは自分がクラスメイトの前で堂々とごっちんに愛の言葉を囁いていたことがやっとわかった。
そっとごっちんを抱きしめた手を離した。

顔を赤くさせて下を向いたごっちんを、ミキティとマサエはポンポンッと頭をなでた。
 「あーあ、ほんっと羨ましいよね、よっすぃーは。」
そういって笑っていた。クラスのみんなはごっちんとあたしを祝福してくれていた。
なんだか照れくさくってしょうがなかった。

ごっちんが赤くなってミキティの肩に頭をうずめているのが、どうにも可愛くてしょうがない。
やっぱりあたしは、後藤真希を愛してる、そう改めて思った。
弱くてモロいあたしだけど、ごっちんはもっとモロいから、守ってあげたい。
もっともっと、好きだよ、ごっちん。
152 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22

別に今日は雨ではなかった。
ついでに、ごっちんも傘を忘れたとかそんな理由もなかった。
でも自然と、なんとなく、流れで、ごっちんと一緒に帰ることになった。

玄関を2人で出て正門にさしかかった時だった。
 「ちょっと待ってください!」
松浦が突然あたしたちの前に立った。
今度はなんなんだよ・・・。あたしはそう思ってため息をついた。
 「後藤先輩、ちょっと話があるんですけど。」
・・・ごっちんに?
 「松浦、何のつもりだよ。」
あたしが松浦の前に出て、背の低い松浦を軽く見下ろした。
すると、ごっちんはあたしをよけて松浦の前に一歩でた。

 「いいよ、よっすぃー。」
え?とあたしはごっちんの顔を見た。
何、どういう意味・・・・
 「先、帰ってて。」
ごっちんはそう言って松浦と体育館裏の方に行ってしまった。

あたしはあっけなく取り残されてポツンっとしていた。
まさか・・・松浦バラさないよね?

あたしはふたりの会話が気になるまま、ホストに行った。

今日は、ついに最後の日だった。
153 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22

 「いよいよ今日でやめちゃうんですね。」
新米ホストやらが悲しそうにそう言った。
あたしはハハッと笑ってスーツを脱いだ。
最後のスーツを、キレイにたたんで新米ホストに渡した。

その時、そこへつんくさんがやってきた。
そして、あたしに大きな大きなバラの花束を手渡したのだ。
ふわっといい香りが店中に漂った。
 「今日までよう頑張ったわ。今日はもう店閉めるから、パーティーしよか!」
つんくさんがそういうと、他のホストたちは大きな拍手をしてくれた。

なんだか、大嫌いな場所だったのに、中途半端に嬉しくなった。
そして、あたしのサヨナラパーティは夜中まで開かれた。
154 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22


AM1:00。
まだみんなはパーティをするみたいだったけど、あたしはそろそろ帰ることにした。
みんながプレゼントやら色々くれたけど、あたしはつんくさんからの花束が1番嬉しかったね。

帰りにタクシーを待っていて、あたしはポケット携帯を取り出した。
そしてメモリーから”平家さん”の番号を選んでピッと通話ボタンを押した。
プルルっと少しなってから、すぐに平家さんは電話に出てくれた。
 「もしもし、平家さん?」
あたしの声を聞くなり、平家さんは少し黙ってから喋った。
 「どうしたん?いきなり・・・」
仕事中だったかな?あ、もしかして寝てたとか・・・
えーい!!とりあえず、主題を伝えなきゃいけないな。
 「あのー・・・今日、会いたいんですけど・・・ダメですか?」
平家さんは、え・・・と黙り込んでしまった。
155 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:22
その時・・・―――――

 「よっすぃー。」
電話の向こうの平家さんの沈黙を待っていると、突然後ろから名前を呼ばれた。
あたしは驚いて振り向くと、そこに居たのはなんと・・・
ごっちんだった。

 「ごっちん・・・?!」
思わず大声をあげて驚いてしまった。
な、なんでこんなところにごっちんが・・・?!
しかも、今・・・夜の1時過ぎだよ?な、なんで・・・
 『吉澤?どないしたん?』
電話の向こうで平家さんはあたしに話し続けていた。
とりあえず今はごっちんのほうを・・・
 「あ、平家さん、あとで掛け直します!」
そう思ってあたしは電話を一方的に切ってしまった。

目の前にいるごっちんに、あたしは驚きを隠せなかった。
 「ごっちん、どうして・・・!?」
ホストをやってることも知らないはずだし、それに場所だって・・・

 「・・・松浦さんから聞いて、来ちゃった。」
なっ・・・やっぱり松浦言ったんだ・・・!!あのやろ・・・
その時、じわっとごっちんの目には涙が溢れ出した。
感情を激しく表さないごっちんが見せたその涙が、あたしの胸を締め付けた。

 「本当だったんだ・・・ホストやってんの。」
・・・・黙るしかなかった。どうしていいかわからない。
よりによって、今日でホストが最後の日だったのに・・・。
今まで隠してきたのが水の泡となってしまった。
 「ばか・・・!」
ごっちんはそういって走り去っていった。

あたしは、声をかけることもできなかった。
それに、・・・
彼女を止める権利は、あたしになかった。
156 名前:とみこ 投稿日:2004/02/10(火) 19:23
更新終了です!!!
157 名前:とみこ 投稿日:2004/02/11(水) 12:31
ちなみに空板に新作立てました。
よかったら見ていただけると嬉しいです^^;
158 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/13(金) 19:19
続きが気になる!!
更新待ってます。
159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 21:09
>>158
半角で『sage』といれないと、ageになっちゃうYo!
160 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:32
仕方なく、あたしはさっき切ってしまった平家さんに電話をした。
数回プルルっと鳴ってから、平家さんは電話に出た。
 「あ、吉澤です。さっきはすみません。」
別にええよ。といって平家さんは電話の向こうで笑っているのがわかった。
久しぶりに聞いた声は、それが電話の声でも、なんだか懐かしくて心が軋んだ。

 「会うんやろ?あたしも仕事終わったし、じゃぁ、ホテル取ろか?」
平家さんはいつも通りの口調でそう言う。その発想が普通になってしまったのが嫌だった。
まぁ、今までが、会う=ホテルだったから・・・
 「いえ、そうじゃなくて・・・話があるんです。」
あたしがそう言うと、話?と不思議そうに聞き返してきた。
161 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:32

そのままあたしは平家さんの住んでいるマンションについた。
平家さんが、話すだけなんやったら、家来てくれたらええよって言うから。
インターホンを押す前に、足音で気づいたのか、平家さんはドアを開けた。
 「あ、こんばんわ。すみません。」
ぺこっと頭を下げると、彼女はよいしょっとドアをもう少し広くあけた。
 「ハイってええよ。」
おじゃまします。といって部屋に入る。
実は、平家さんの家に行くのは初めてだった。いつも会うとしたらホテルとかで・・・
部屋の中はとてもキレイで、片付いてきれいっていうのもあるけど、
それよりもなんだか雰囲気が平家さんっぽかった。

コーヒーを出され、平家さんは口を開いた。
 「で、話って何なん?改まっちゃって。」
クスッと笑う平家さんは妙に大人っぽくてよかった。
 「あの・・・何か用事ってわけじゃないんですけど・・・」
どもるあたしに平家さんはまたクスクス笑っていた。
子供っぽいあたしを見て、笑ってるのかな?

 「あの、あたし・・・・平家さんに出会って、初めはお客さんとして過ごしてたけど、・・・」
何も考えずに思っていたことを話し出すと、平家さんはだまって聞いていてくれた。
あたしも話を進めた。
 「中澤先生にバレた時、気づいたんです。ホストなんかやってる場合じゃないって。」
平家さんは依然、黙ったままだった。気まずかったけど、一瞬躊躇してまた話し出した。
 「今日でホストはやめました。これからはマジメに生きます。平家さんのおかげで気づけたんです。今日はそのお礼と、今までのことを謝りたくて。」

あたしがそういった時、初めて平家さんはまともに話し出した。
 「謝ることなんかあらへんよ。」
・・・・え?
 「あたしも、ホストの吉澤に出会って気づかせられたことたくさんあるし。それに、ホンマに楽しい時間過ごせた思うてるし。こちらこそありがとうな。」

・・・なんだか、そういって笑った平家さんは、ホストじゃなくなった自分から見れば、どこにでもいる女の人だった。
普通の女の人なのに、旦那さんがなくなったショックをおさえて仕事に励んでる。
すごいなって、思った。それ以前に、自分がどんなにちっぽけな存在だか、気づいた。
162 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:33

その日、どうやって話を切り上げたかは覚えていない。
でも、あたしはその日、よく眠れた夜だった。
163 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:33

次の日中澤先生のところへいって、昨日のことを全て話した。
ホストをきっぱりやめたこと。
今までのことを謝ったこと。
そして・・・・・平家さんがありがとう、と言ってくれたこと。

 「そうか、みっちゃんと解決できてよかったな。」
以前の中澤先生とは違い、あたしを少しは認めてくれたのか、青いカラコンは優しく微笑んだ。
はい、っと笑って返事をすると、中澤先生は思い出したように立ち上がった。
 「それと、あんたらの集めた署名を持って警察行ってきたんやけど・・・」
市井さんの話題だった。あたしは突然の話にゴクリと息を飲む。
 「・・・どうだったんですか?」

緊張も束の間、先生はニコッと笑って右手でオッケーのマークを作った。
あたしの中の思考回路が、いい方向にスイスイ進んでいくのがわかた。
 「釈放やって。矢口に絡んできた奴らが悪い言うてな、まぁもちろん紗耶香もボコボコしすぎやけどな。」
まじですか!!とあたしの問いかけに笑った先生の目を見て嬉しくなった。
 「まぁ、紗耶香のパンチは正当防衛ってことやな。停学で済むらしいで。」
そのままポンッと背中を叩かれた。

やったぁ!これで矢口さんも元通りになるし、罪悪感もなくなるよね。
署名を集めてくれたみんなも、喜ぶかな?

・・・ごっちんも・・・・
164 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:33

報告しようにも、ごっちんとはあんなままで・・・
とりあえずあたしは矢口さんに報告するために3年生の教室に行った。
 「矢口さん!!」
自分の席でぼーっとしていた矢口さんは、バッと振りむいた。
 「市井さん、釈放されたって!」
あたしの言葉に少し矢口さんは口を開けたままポカンっとしていた。
そして右手で口をおさえてブワッと泣き出したのだ。
矢口さんを軽く抱きしめて、よかったですね。といって離した。

 「市井さんの所、行ってあげてください。」
そういうと矢口さんは、ありがとうといって教室を出て行った。
あーあ、カバンももたずに市井さんの家に・・・
フッと苦笑いしてあたしは教室に戻っていった。

よかった。やっぱり矢口さんは、笑っているほうが似合ってる。
そう思った。
165 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:33

教室に戻ると、ごっちんはいつものようにミキティたちと雑談していた。
あたしは昨日のことを思い出して、なかなか近づくのに躊躇してしまった。

ごっちんに、ホストがバレてしまった。
あたしは本当に哀れだと思った。だって、ごっちんを大事にするって決めたのに・・・・・
ごっちんを裏切ったんだ。最低だよ。

 「・・・・ごっちん、市井さんの無実晴れたよ。それに、停学で済むって。」
あたしはボソッと話しかけると、ごっちんはあたしの方を見なかった。
そして向こうを向いたまま、立ち上がった。
 「うん。裕ちゃんから聞いた。」
それだけ言ってごっちんは教室を出ていってしまった。

完全に嫌われてしまった。あたしは思いっきり黙りこんで席についた。
 「どうしたの?!こないだバカップル公開したばっかりじゃん!」
マサエはあたしの前に来てそう言った。
ミキティも、そうだよ〜ケンカでもしたの?とか言ってきたけど、
 「ごめん。何とかするから。」
あたしはそう言ってまた黙り込んで、あたしの落ち込みようにマサエたちもそれ以上何も言わなかった。

これからあたし、どうすればいい?
わかんないよ・・・、やっぱり、ホストをやってたことは事実だし、
もうごっちんとは、別れなきゃいけないのかな。
もしそれで罪が償えるなら、それでいい。

それで、いいのに・・・・
166 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:52

 「あ、先輩〜!!」
廊下を歩いていると、向こうの先で松浦が手を振ってきた。
あたしは・・・なんとも言えない怒りがこみあげてきた。
 「・・・松浦、ちょっと話あんだけど。」
そう言って中庭まで松浦の腕を引っ張って言った。

・・・

 「こんな人のいない所呼び出して、告白ですかぁ?!」
松浦はいつものふざけた様子で笑っていた。
 「バカ。」
なんで笑ってられんだよ・・・自分がしたこと、わかってんの?
あたしの言葉に、本気で怒ってると悟った松浦も少し凹んでいた。
そしてため息をつくと、あたしは口を開いた。もちろん、松浦のことをキツク睨んでしまった。

 「なんでごっちんにバラしたんだよ、ホストのこと。」
松浦は何も言わずに黙っていた。
「約束が違うだろ?!何とか言えよ・・・・」
攻め立てるあたしに、松浦は泣き出してしまった。余計怒りがこみ上げる。
泣いて済む問題じゃな・・・―――

 「待ちなよ。」

・・・え?
そこに現れたのは、ごっちんだった。
 「ごっちん・・・」
なんでごっちんが・・・。あたしはさっきまでの冷たい態度とは逆に怒ったごっちんに少し驚いた。
ごっちんが怒ったトコ、見たことなかった。愛想が悪いとか、そういうレベルじゃなくて。
 「松浦さんを責める必要はない。悪いのはよっすぃーだよ。」
ごっちんの言葉に、あたしは何も言えなかった。
「ごめん、ホストなんてやってたあたしが悪いんだ・・・。」
「ちがう。」
遮るようにごっちんはそう言った。
違う・・・?どうして。だって、ホストをやってたことがショックだったんでしょ?
だから、泣いたんでしょ?初めて、あたしのせいで・・・。
あたしはごっちんの言いたいことが理解できなかった。
167 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:52


 「あたしは、よっすぃーがホストをやってたことなんてどうでもいい。」
ごっちんはあたしを睨むように見て、そう言った。
強い口調だったから、空気がピンッと張ったように耳を切った。
それでも、ごっちんの言いたいことへの疑問は深まるばかりで、ごっちんは離し続けた。

 「何か事情があるからやってんだと思ってたから。ホストのこと知ったぐらいで、関係崩れるとは思ってないし、」

ごっちんは極めつけのように最後に言った。


 「あたしは、よっすぃーが嘘を付いてたのが嫌だったんだよ。」

それだけ言うと、ごっちんは去っていった。
あたしは、ひと言も言葉が出なかった。ただ泣く松浦への怒りなんてもうなかった。
ごっちんの言っていることが、ふわりとあたしの中で宙に浮いてつかめない。
でも、あたしが間違ってることは、確かなんだ。
そう思った。
168 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:52

 「先輩・・・」
松浦は涙をふいて話し出した。
ふたりっきりの今、あたしはどうしていいか分かんなくなって、
呼び出さなきゃよかった。なんて思ってた。
 「あたし、先輩にとって特別だと思ってた・・。先輩はあたしのこと妹としか見てなかったけど、それでもよかった。先輩にとって特別な存在でいたかったから。周りのファンの人より、先輩はあたしにかまってくれた。自分だけが特別って思ってたから、嬉しかった。」
中途半端に松浦の目を見て、あたしは話を聞いていた。

 「なのに先輩は・・・後藤先輩のことを、あたしと違う意味の特別な目で見てた。」 
 「なんでそんなに優しい目で他の人を見るの・・・・・」
 「悔しかったんです・・・」
 「もうあたしは特別じゃないんですか・・・?」

ずらずらと言葉を並べる松浦に、あたしは思わず涙が出そうになるのをグッとおさえた。
特別・・?
確かにあたしは松浦のことは他のファンよりも親しく思ってた。
っていうか、松浦はいくら突き放しても付いてくる。そう思ってた。
だから別に松浦は本気であたしと付き合えないことぐらい分かってると思ってた。
あたしが松浦の告白を本気にしなくても、傷つかないと思ってた。

でもそれは、違ったんだ・・・・。
中途半端に優しくしてたあたしがいけなかった。
彼女に告白されて断っても、その後松浦があたしにベタついてくれば、
あたしは思わせぶりな態度してた。

結局、傷ついてたんだ、松浦は。
いっつも笑ってたからわかんなかったけど・・・
まったく、演技の上手い子なんだ。
169 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:53
 「・・・松浦の気持ちは嬉しいよ。あたしに懐いてくれるのは嬉しかった。」
自分の両手で松浦の手を取り、彼女の涙が滴るのを見ながら言った。
松浦のその顔が、弱弱しくてしょうがなかった。

「ファンや友達の中では、松浦はあたしにとって、1番特別だよ。でも、あたしがごっちんを選んだのは、特別とかそういう意味じゃない。」

「毎日、24時間一緒にいたい。好きで好きで、しょうがない。それがごっちんなんだよ。」
その言葉に泣きじゃくる松浦を、あたしはちゃんと、しっかり、今度は中途半端なんかじゃなく、抱きしめる。
ごめんね、松浦はちゃんとあたしを見ててくれたんだね。
中途半端に思わせぶりな態度して、ちゃんと見てなかったのはあたしだった。

松浦の涙に、何か気づかされた気がした。
170 名前:とみこ 投稿日:2004/02/15(日) 11:53
更新終了です。
171 名前:名無子 投稿日:2004/02/16(月) 23:10
誰にもまっすぐに向き合おうとするよっすぃー、後藤さんの女心、よっすぃーを思う人々、みんながんばれ!
今度こそさやまりおめでとう。
172 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:27
上辺ばかりを撫で回されて、急にすべてに嫌気がさしたあたしは、
自分の中に潜んだ暗闇を、無理やりほじくり出してもがいてたようだ。

今までの自分を振り返ってみた。
あるがままの自分が何かもわからず、自然体もナチュラルも信じなかった。
自分を偽ることが、自分の幸せ。
自分を好きな自分へと作り上げれば、きっと自分が好きになれると思ってた。

でも、実際はあたしの考えは間違っていた。
悪く言えば、ただの現実回避だったのかもしれない。

ただ、今の自分はどうだろうか?

例えば人のために何かをしたいと思うこと。
それがいったい自分にどんなプラスになるのかはわからない。
でも、してみないとわからない。

【なせばなる。】そんなごく当たり前の思考回路が、あたしにはなかった。
いったい、いつ、あたしの頭の中にそんな思考回路が出来上がったんだろう。

でもひとつだけ言える事があった。

あたしを変えたのは、ひとりの女の子だ。

それは他の誰でもなく、【後藤真希】という女の子なんだ。
彼女と出会って、何が変わったか、言葉ではいえない。
でも、心の底にあったヘドロを、きれいさっぱり無くしてくれた。

好きになった。
彼女がいなければ、死んでしまいそうだと思うくらい。

あの華奢な体と色素の薄い瞳、そして長い髪は、触れていないと消えてしまいそう。
守ってあげたい。それ以前に、自分の支えだった。
173 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:28

ホストを始めた理由は、情けないけど、ただの暇つぶしだ。
それなりに学んだことはあったし、実際お金も儲けることができた。
ただ、儲けたお金は一円も使わず今も銀行に納めている。
なぜだろう。

なぜそこで気づかなかったのだろうか。
”自分がホストをやる意味のなさ”を。
自分を、どん底に自ら陥れていたことを、気づかなかったのだろうか。

なぜ

なぜ

なぜ?


出口の無い自問自答を何度繰り返しても、
やっぱり自分は自分でしかないなら。

でも、今は、それを問い詰める必要は無い。
心のゆとりは、彼女にあるから。

やっと気づいた。

全てに。

彼女が、自分で、自分が彼女なんだ。
174 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:28


あなたへの、この素晴らしい、煩わしい気持ちを

真空パックしておけないものかなぁ・・・・・・・――――
175 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:28

 「あの!吉澤さん・・・」
廊下のど真ん中で、名前を呼ばれた。
 「石川さん?」
大胆にも、顔を赤くしてあたしの名前を呼んだあと、あたしの手を握った。
もちろん、その行動に周りの生徒たちの目線は釘付けだった。
あたしだって突然の石川さんの行動に、あたしもどうしていいかわかんなかった。

そして石川さんは、小さな両手で自分の顔を覆った。
なぜ、泣く・・・・?

 「ごめんなさい・・・ごめんなさい、吉澤さん・・・」
さらには謝りだした石川さんに、あたしはどうにも困ってしまった。
だって、周りのみんなが不思議そうにコソコソしゃべってるし・・・・・。

 「え、ちょっ・・・石川さん?あたし、なんか謝られること・・・」

 「好きなんです・・・!」
?????
え、好き?な、いきなり・・・・

ピタッとみんなの声も止まった。あたしは石川さんの頭を中途半端になでて落ち着かせようとした。
 「え、あたしを?」
石川さんはコクッと頷いた。以前、ごっちんが言っていたとおりだった。
本当に石川さんはあたしのこと、好きだったんだ。

 「後藤さんと付き合ってるの知ってるのに・・・・ごめんなさい・・・・」
石川さんはそう言ってあたしの手を離した。
さっきの”ごめんなさい”は、その意味だったんだね・・・・・――−

妙にもらい泣きしそうになりそうだった。

 「ごめん、あたし・・・―――」
176 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:28


言いかけたその時。
目の前にごっちんが歩いてきた。
 「ごっちん・・・・・・・」
そして、あたしの前で脚をとめ、石川さんとあたしを交互に見ていた。

 「・・・い、石川さん、ごめん。」
あたしが急いだようにそう言うと、フッと顔をあげて石川さんは涙目であたしを見た。
そして数メートル先のごっちんのほうを見た。

・・・

 「真希。」
ファーストネームは歯切れがよく、知的な彼女に合っていると思う。
ただ本当は甘えたくて繊細な彼女には、あたしは”ごっちん”というあだ名がスキだった。

右に一列、左に一列。
廊下はまんべんなく人だかりが出来ていた。

廊下のど真ん中に、彼女とあたしは向き合った。
ザワザワっとみんなが騒ぎ出し、「何、告白?」とか言ってる人もいる。
実際、告白なんかよりずーっと大事な話なのに。

 「ごめん。上手く言葉にできないんだ。」
数メートルの距離が、川のように長く感じた。
彼女の表情はいつになく無表情なのに、怒ってる風にも笑ってる風にも見える。
きっと、それがもとからのごっちんの表情なんだろう。

目と鼻の先には矢口さんも立っていた。
人ごみにまぎれながら、心配そうにあたしたちのことを見つめている。

手を汚さず奪うんだ。傷つけずに殴んだ。
それがうまく生きる秘訣で、人類は醜くても、人生は儚くても、
愛し合える時を待つのがいい。

 「でも・・・」

177 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:28


 「好きなんて言葉じゃ、器が小さくてこぼれてしまいそうなくらい、あなたを想ってます。」

8ミリフィルムのような思い出のスクリーンにモノクロームのあたしがいる。
君との恋が、いつか、いつか、花を咲かせ、本当の真実の実をつけるまで。
愛し続けます。
必ず。嘘も偽りも無く、心の端から端まであなたへの想いでいっぱいです。
178 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:29

 「よっすぃ・・・」
こらえきれなくなった涙が、ごっちんの大きな瞳から零れ落ちた。
ひろってしまえばもったいないくらい、キラキラしていた。

あたしが2歩で彼女に近づき、思いっきり抱きしめた。
その時、狭く長い廊下に、大きな拍手が沸きあがった。どうもかゆいくらい恥ずかしい。
夢の続きのように君の笑顔も霞んでく。
恋に落ちたあの夜から・・・

ごっちんはあたしの心を永遠に消えないウイルスで感染させた。

まるで温かいお湯の中にいるような心地よい抱き心地に、
あたしは目尻が熱くなる。

向こうに歩き出した石川さんが、あたしの方を振り向いた。
 「あ・・・」
そして、まだ少し涙目な彼女は、笑って・・・軽く頭を下げてくれた。

目を見開いて、言葉が出なかった。
石川・・・さん・・・
179 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:29

頼り無く二つ並んだ不揃いの影が、北風に揺れながら延びてく。
あたしとごっちんは、一緒に家路を歩いていた。

 「石川さんに、告られちゃた。」
申し訳なさそうに苦笑いをするあたしに、ごっちんはフッと笑った。
 「やっぱりね。それで?泣かしちゃったんだ?」
クスクス笑うごっちんに、あたしは”む〜”っと冗談まじりで怒っていた。
なんだよぉ〜、ごっちんがいるから泣かせちゃったのに。

 「でも石川さん、よっすぃーに告白できてよかったんじゃない?」
ごっちんの言葉に、あたしは”へ?”と頭を上げた。
なんでもないっ。と、ごっちんは少し先をてくてく歩き出してしまった。


・・・
なんだかなぁ・・・・・・。
どーしてこんなにも、君は愛しいの?

あたしは

凸凹のまま膨らんだ君への想いは、この胸のほころびから顔を出した。

180 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:29


市井さん。

矢口さん。

平家さん・・・

松浦、

中澤先生、マサエ、ミキティ。


そして



ごっちん。

全ての人が、あたしを支えてくれる。
きっとみんなも、大切な人に支えられて生きてるんだよね。

それだけがあたしに安らぎをくれた。苦しい時も、それはただ一つの真実。
いつしか全てはうつろう運命だとしても、
今ならば・・・・・きっと取り戻せる。
初心に戻った、出会った日の輝きを。
181 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:29

だから君も、安心して泣いていいよ。

誰も笑ったりしないよ

愛を抱いている君の側に勇気、空に放つ。




 「よっすぃー?」

 「ん?」


・・・

 「「ずーっと、一緒に居ようね。」」


そろった声に、2人は目を見合わせた笑った。


果てしない宇宙の海で

真実の愛 抱きしめる

遠く輝く星の瞬きのように

強く君を照らすよ。





・・・・fin
182 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:31
>名無子さん
応援ありがとうございました!
183 名前:とみこ 投稿日:2004/02/17(火) 22:33
連載終了です。
影でやっていた作品なので、あんまり知れては無かったですが、
その中でも読んでくださっていた方、本当にありがとうございました!

尚、空板で同時連載中の方にこれからは集中します。
よかったら見てくださると嬉しいです。
私のM-Seek最終作です。

とみこ
184 名前:TAKU 投稿日:2004/02/18(水) 14:23
脱稿、お疲れ様でした。
とにかく良かったなぁと安心しました。
よしこ、かっけーっすよ!!
あんな風に思われてみたいなと思いました。
次のが最終作ですかぁ・・・なんか淋しいです。
頑張ってくださいね!
185 名前:MIRAI 投稿日:2004/02/19(木) 15:01
完結おめでとうございます!!
最後、素直になったごっちんとハッピーエンドになって
安心しました。
・・・空板が最終作ってマジですか!?
これからも、続けていってほしいけど・・・。
とにかく、空板の方の連載頑張ってくださいね!!
186 名前:名無子 投稿日:2004/02/20(金) 23:31
お疲れ様です。
前向きで登場人物みんなを温かく見守りたくなりました。
終始よっすぃー視点なのも読みやすくて好きです。

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