LIFE
- 1 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:49
- 目の前の分かれ道を右に行くか左に行くか?
たったそれだけで人生は大きく変わってしまえるんです。
- 2 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:50
- Act1. あたしのLIFEはあの眉毛に握られた?
乾いた風の中であたしはコートのポケットに手を射したまま立ち尽くす。
駅のレンガ塀をバックに、愛ちゃんが来るのを待っていた。街を行く人
の流れと携帯の交互に視線を動かしていると。
「あさ美おまたせぇー。」
軽快に足音を響かせながら近付いてくるのが、愛ちゃん。
ふたつに縛った髪がくりっとしたつり目に似合って、それだけじゃなく
スタイルも良くって女のあたしから見てもそぉとぉ可愛い自慢の友達。
「うぅん。」
首を振りながらあたし。愛ちゃんの吐く息が一瞬白く色付いて、そして
消えていく。冬の日曜日、私達のデートが始まった。
- 3 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:50
- ……というのは嘘で、今日は愛ちゃんとあたし以外の仲良しトリオの内
のもうひとり、麻琴への誕生日のプレゼントを探しに街へ来ている。
「麻琴はああ見えてロマンチックやからなぁ。」
「女の子っぽいの好きだもんね。」
星座模様のついたネックレスを見比べる愛ちゃんとおっきなぬいぐるみ
を抱えたあたしの会話。ちなみにあたし達は高校一年生です、念のため。
それまでの友達と別れて私立の高校に進学したあたしが、唯一つくった
友達。それが愛ちゃんと麻琴。年中ベッタリしていて、親友ってだって
胸を張って言える……かな。恥ずかしいけれど。
- 4 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:50
- 「ほな、また明日な。」
「じゃあね、愛ちゃん。」
結局あたしは薔薇の模様で飾られたティーセット、愛ちゃんはファーの
ついた鏡を買って、その後ファーストフードで減ったお腹と疲れた脚を
満足させてから別れた。その代わりしゃべりっぱなしで喉が疲れたけど。
ふと振り返る。
ハーフコートから黒のミニスカートのすそとすらりとした脚を覗かせる
愛ちゃんが遠ざかって行くけど、その足取りも何だか楽しそうに見える
のはあたしの気のせいじゃないはず。愛ちゃんもきっと同じことを考え
ながら帰ってる。感動屋の麻琴は明日きっと泣くだろうなって。
- 5 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:50
- 歩くのに合わせて右手に持った紙袋がカチャカチャとリズムを奏でる。
あたしの家は駅からちょっとだけ遠くて、あたりもちょっとだけ薄暗く
なってしまったけれど、あたしは足を早めない。白い息を手に吹きかけ
ながらこの瞬間と今日の余韻と明日の想像を楽しむように、ゆっくり。
そう、理由なんてたったそれだけ。
それだけの理由であたしは、いつもと違う道を通って帰ろうと思って、
角を逆に曲がって初めて歩く道を選んだの。十六年もこの辺に住んでて
初めて通る道を。
今になって思えば、それまでその道を通らなかったのはきっと無意識に
避けていたからなのかも知れない。なのにあたしは通ってしまった。
- 6 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:51
- 街灯がだんだんと減って明るさを消していくその道に、あたしが不安を
憶えて引き返そう、と思って振り向いたら、そこに「その子」は居た。
愛ちゃんと同じようにふたつ縛りの髪をしてるけど、その顔は小さくて
すっごくスタイルが整ってて愛ちゃんも負けちゃうかもってくらい。
ってかピンクのミニスカートも可愛いし、あたしは負けてるな。
「どうやってここに入って来たの?」
眉を釣り上げて怒ったようにその子。よく見るとその眉は男の子のよう
に太くてキリッとしてる。
「どうやってって…その角を曲がって来たんだけど。」
- 7 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:51
- 急に怖い声で聞かれてちょっと警戒しながらあたし。でもあたしがそう
言うと、その子はがっくりとうなだれちゃった。
「普通に来れたんだ。うわぁ、ごめん。こっちのミスだわ。…でも。」
「でも?」
「規則だから。ここを見ちゃった人間は殺さなきゃいけないの。」
「えっ?」
あたしがぱちくりと瞬きを繰り返してると、その子はいつの間にか手に
身長よりも大きな鎌、って言うんだっけ、を持っていた。
「次期女王のリサが直々に手を下すことを光栄に思いなさい。」
これはマジでやばいです。逃げようとするも足が動かない。いつ抜けた
か知らないけれど、あたしの腰はぺたりと地面に貼り付いていた。いつ
座ったのか記憶もないのに。
- 8 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 16:51
- 「ちょっと、嘘でしょ…。」
鎌を振り上げたままその子がにこりと微笑みを浮かべて、あたしもそれ
ににこりと微笑みを返した。次の瞬間。その鎌がすっと、あたしの目の
前に降りて来てあたしは瞳を閉じた。
「きゃっ!」
- 9 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 17:03
- 瞳を開けると、あたしは高いところからあたしとリサって子を見ていた。
自分の手を見ると、透けていてその先の風景が見える。
「ねぇねぇ」
リサが空を見上げて笑った。倒れているあたしの体を、鎌の柄でつつき
ながら。
「この体、ちょーだい。一度人間の世界に行ってみたかったんだぁ」
止める間もなかった。その子があたしの体に手を触れた瞬間、リサの体
ががくりと崩れ、あたしの体が立ち上がった。
「うわぉ!」
空に向けてピースサインをつくるあたしは、一箇所だけあたしの体じゃ
なかった。眉毛が、かなぁり太くなってた。
- 10 名前:RINN 投稿日:2003/12/31(水) 17:09
- 「いってきまぁっす!」
そう行ってあたしの体は来た方向へと走って行き、ふっと消えた。残さ
れたあたしは呆然とするだけ。
はたと気づく。あの子の体にあたしは入れないのでしょうか?
よくわからないけど空中で必死にクロールをするあたし。だんだんと地
面が近付いてきて良い感じ。そしてリサの体にタッチ。
「うわぁ!」
光に目がくらんだ。恐る恐る開くと、今度は手が透けてなかった。よし
追いかけようと走り出そうとしたとき、後ろから声。
「リサ様!やっと見つけましたよ!」
ふりむくとタキシードの女が立っていた。…かなり怒った顔で。
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