ヽ^∀^ノ  T―G ( ´ Д `) 祭り

1 名前:ちょっぱや 投稿日:2003/12/31(水) 22:10
いちごまです。
全話にわたってすべていちごまの短編になっております。
ヽ^∀^人( ´ Д `)の人、ここへ集え!(w
2 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:11



あたしの心にはあなただけ――――


3 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:12



「―――市井、いったぞ!」


カーンと金属がぶつかる音が響いて、あたしは頭上に上がった
眩しい太陽の光に目を細めながら白い球を追いかける。
その球は予想以上に伸び、センターラインを超えた所まで風をきりつつ飛んでいっている。
それを見事にジャンピングキャッチして、ホームへ返し、額に薄っすらと浮かんできた汗を拭った所で午前中の練習は終了した。

4 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:13



「なんだよ。今日調子いいじゃねーか」


ニコニコ顔の髭の生えたコーチに言われ、あたしは苦笑しながら「えぇ、まぁ」と気の無い返事を返す。

「はは…」

コーチは普段から怒ってばっかりの人だったので、褒められたあたしが意外そうな顔をしたのに気づき、少し照れたように短い髪の毛をかいた。


その後、顔の髭を触りながら「この調子でな」とだけ言い残し、ベンチへ戻った。

5 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:13




―――


「―――あっ……」


少し日焼けをして汗ばんだ顔を冷たい水道水で洗い、後輩からもらったプーさんの絵柄がついているタオルでその濡れた部分を拭いている時に、可愛らしい掛け声と共に女子バスケ部の集団があたしの横を走り去った。


「―――ファイト!ファイト…! みんな声出てないよっ!」
「「「…はいっ!」」」

6 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:14



今日は水曜日。
一週間の中で体育館を使えないのは今日だけらしく、バスケ部の中では地獄の体力作りの日と言われているらしい。
学校の周りのコースを何10周も走って、みんなの表情はすでに死にそうになっていた。


「大変だね…」


あたしの所属している野球部もランニングなど走りこむメニューはある。

でも毎年全国にいっているバスケ部ほど、
そこまで強くないのでそんなに厳しいものはない。


野球部で良かった……と密かに思いながら。
でも、ここまで短くさせなくても。と、入部条件にある『女子も絶対短髪!!』という規則に少し怒りを感じながら、入部当初からすっかり短くなった後ろ髪をガシガシと乱暴にかいた。

7 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:14


「…ん?」


そしてあたしがフト目をバスケ部が走り去った方へ向けると
集団からはずれて一人、胸に手を置いて肩で息をしている少女がいた。

―――大丈夫かな?
そう思って、水道の蛇口をキュッと閉め、あたしはゆっくりその子に近づいていった。
規則の厳しいバスケ部らしからぬ、茶色に輝くセミロングの髪。
顔を上げた瞬間、いかにも爽やかスポーツとはかけ離れたような、そんな事を言ったら失礼かもしれないけれど。よく駅周辺で何をするでもなくブラブラと目的もなくさ迷い歩いているギャルにそっくりな顔が眉を顰めて、つらそうに呼吸を繰り返しているのが見えた。


「………」

あたしはその異様な光景に一瞬足が止まり、彼女に出しかけた手も引っ込めてしまっていた。

8 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:15


そんなあたしに気づきこともなくフラフラと危なっかしい足取りで歩き始めた彼女は、ゆっくりと呼吸を戻しながらあたしの横を通り過ぎていった。
ゴクリと息を呑む音が自分の耳に届く。
何か話しかけようとして後ろを振り返った時には、彼女の姿はもうそこにはなかった。


―――なぜかその時、無性に声が聞きたかった。

彼女と話がしたくなった。



「―――市井、どこだぁっ!」


代わりにコーチの練習再開の声が耳に響き渡り、あたしは
「ふぅっ」と一回溜息をついて、ガックリ肩を落としながらその場を去る。

9 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:15



あたしがその後練習中いくつかおとした溜息も、緑色に生い茂る木々達が風に揺れてザワザワと騒ぎだし、溜息をつく度に思い出すあの子をあたしが胸中に溜めてしまう前に自然とかき消してくれた。

10 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:16








7月のある日曜日の今日、あたしは人生で初めて、
ある感情を手に入れたような気がした。

11 名前:@恋心 投稿日:2003/12/31(水) 22:17

わかりにくでしょうが、いちごまです。
誰がなんといおうといちごまです。
そしてこの話はここで終わりです(w
ごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・

12 名前:ちょっぱや 投稿日:2003/12/31(水) 22:20

白板で、現在色んなカップリングの短編を書かせて頂いてるものです。
あちらの方でいちごまばかり書いてるうちに、たくさん話が思いついてしまいスレを立ててしまいました。
あちらの方は暇をみつけて更新致します。
リクをくださった読者様方、申し訳ありません。
もう少し時間をくださいm(_)m

レスは喜んでお待ちしています。

13 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:48




「さ〜やかっ!今日は一体何の日でしょう?」


「えっ?」

14 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:49



今日は何の日かって?
決まってんじゃん。あれだよ。
バレンタインデー、ってやつだろ?
市井だって一応オンナなんだからそれくらい知ってるよ。


「2/14。バレンタインだね」


「……当たりっ♪
 さやかは誰かにチョコあげるの?」

15 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:49



「別にー?好きな人もいないし。 やぐっちゃんは、あげるの?」


ニコニコと笑顔だったやぐっちゃんの顔が一瞬だけ引き攣って。
サラッと言った市井は不思議そうにその顔を見つめる。


「うーんと。…はいっ!」


手渡されたのは綺麗にラッピングされている長方形の箱。
周りはリボンで巻かれていて、ご丁寧にメッセージカードに『さやかへ』と
ハートマーク付き(大量)で書かれている。


これは、もしや…。

16 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:50


「………」


「あの…これって…?いちーに?」


やぐっちゃん顔、赤いけど。

17 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:50



「やぐっちゃん…」


チラッとやぐっちゃんの表情を伺いながらとりあえずチョコを受け取ったけど。
まさか、これ本命じゃないよね…?
ここまで豪華だと義理ってことはなさそうだし。
友達にあげるにしては豪華すぎるし。
でもでも…半分以上は自惚れかもしれないけどさ。
なんてったって市井もやぐっちゃんもオンナだしね。
いやでも、まさか……

18 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:50



そんな事を思いながら市井は『それ』を鞄にしまって席についた。
1時間目の授業の準備をしようと机の中に手を入れると、ゴツゴツとした見覚えの無い感触がたくさんする。

「………」


嫌な予感。
バッと周りを見渡すと、興味津々の顔で市井の行動を見守るクラスメート達。


(……え〜…?…)

19 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:51


そ〜…っと手を引き抜いて、それが何かを確かめると、
さっきのやぐっちゃん同様、チョコの匂いが漂う豪華な箱がゴロゴロと机の中から出てきた。

「うわっ!?」


まじかよ!


…みんなの視線が痛い。

とりあえずこれは…全部鞄にしまっとこう。

20 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:51







21 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:52



放課後。
市井は疲れていた。
なんでかって?
市井は女の子のパワーを思い知ったんだよ。

22 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:52




「市井さーん!!!」


逃げても逃げても執念深く追いかけてくるあのしつこさ。
とっくに体力なんか限界を超してるはずなのに、追い詰めた市井に汗だくの笑顔で
チョコを渡してきた1年生の集団。
ちょっと(かなり)怖かった。


続いては、教室まで来て市井を取り囲んだ3年生(先輩)達。
マジでリンチされるのかと思った。
あんなでっっかいチョコレートケーキなんて食べきれないよ…。
市井に渡すチョコの『共同合作』とか言われても、こっちは困る。



「さやかああぁあぁぁーーー!!!」


でも、一番強烈だったのは同い年の子。
大体はやぐっちゃんが体を張って助けてくれたんだけど、結局市井は襲われる(?)始末。
みんなこの学校に男子がいなくてつまんないからって、なんであたしを集中攻撃するかな。
1年の吉澤とか、他にもかっこいい女子なんていっぱいいるじゃん。

23 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:53



―――


「ふぁ…」


裏庭の草の上に腰をおろして大きな溜息をつく。

そのままゴロッと芝生に横になって、空を見上げた。

24 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:53


家に帰って寝れば良いんだけど、そんな体力が無くて。
ちょっと一休みしていこうと、誰も来ない市井とっておきのこの場所に来た。


「あー!?…いつの間にか、こんなとこにもチョコが……」


寝転ぶと制服の上着がやけにゴツゴツするので、中を確かめると、
内ポケットなどにいつの間にかチョコが数個ねじ込まれていた。
ここまですると感心するよ、ほんと。
市井はアイドルかっての。

25 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:54



「あっほくさ…」

そう眩いて、そのチョコも鞄に無理やり押し込んだ。
捨てるのは、やっぱり可愛そうだから。

26 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:54




「…………………さっきから、五月蝿いな」


「…へっ!!?」



「1人でブツブツブツブツ…こっちは気持ちよく昼寝してたってゆーのに」


昼寝…って、今はもう夕方。
…そんな事言ってる場合じゃないけど。
あんた……誰?

27 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:55


市井の視線に気づいたのか、向こう側に向けていた顔がこっちに向く。
少し離れ気味の目が、市井を見た瞬間に驚いたかのように大きく見開かれた。


「あぁ。……有名人は大変ですね。市井さん?」


「……?……」

28 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:55



市井が訝しげにその少女が伸びをするのを じっと見つめていると、
その少女はこちらを向き、ニヤッと笑って一気に距離を縮めてきた。


「市井さんって、なんでそんなに女の子にもてるんですかね……」

息がかかるくらいの距離まで顔を近づけられて。
市井が自分の胸を押さえながらたじろいでいると、更にその空間も埋められた。


「…ちょ、―んっ!」

29 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:56



息が出来ないくらいに深く深く口付けられる。

こんなキスをされるのは初めてだった市井は、ただただ短く呼吸を繰り返しながら
目の前にいる少女の胸元を強く押し返すのだが、相手も相当力が強いらしくまったく離れる気配が無い。


「…んっ……ん、ぅん…っ……」


なんだこれ……
頭がクラクラする。
こいつ、キス上手いな…。

30 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:56


柔らかくてそれでいて弾力があって、綺麗な形をした少女の唇が
市井のそれを味わうように角度を変えて、何度も何度も口付けてくる。
強張っていた体に少しずつ力が抜け落ちていった瞬間。
狙ってたかのように口の中へヌルッとした舌が侵入してきた。


「――――やっ!」

31 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:57


「……っと…」

市井は全身で拒否するかのような大声をあげる。
すると。少女は以外にあっさりと顔を離し、唇の端の唾液をグイっと制服の袖で拭った。


「んー、ちょっと、予想ハズレだったかな…」

チラッと市井の顔を見て、不思議そうな表情でそんなことを呟く少女。

32 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:57



「………何がだよ………」


自分でも相当怒ってるってのが分かる。
どんどん背中が冷たくなっていく感じ。
男のような低い声が自然と自身の口から発されたのに少しびっくりした。



「そんな怒らないでくださいよぉ。
市井さんって、そーとー『遊んでる』って噂があったから、ちょっと確かめてみただけです。」
33 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:58


「はぁ?」


「でも、そんなことないみたいですね。
こんな事いきなりしちゃって……すいませんでした」


そう言って深々と頭を下げる少女。
茶色をした髪がサラッと下に流れるのを市井は冷めた目で見つめていた。

34 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:58


「あのね、あんた1年でしょ?どんな噂が流れてるかなんて知らないけど、
今、いちー、すっごい気分悪いんだ。謝ってくれなくて良いから早くどっか行ってくれない?」


「ごめんなさい…」

さっきの妖艶な印象はどこへいったのやら、今目の前にいる少女は幼い顔をした高校1年生の女の子だった。
しゅんとした様子でうな垂れながらトボトボ校舎の方へ歩いていく。
その背中を見て、なんだか市井の方が悪いことをした気分になった。

35 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:58


「ねぇ」

市井が声をかけると、少女はピタリと足を止めた。

「名前、なんていうの?」


自分でもなんでこんな事を聞いたのか分からない。
けど、振り向いた少女はめいっぱいの笑顔で答える。

36 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:59



「―――後藤真希ですっ!覚えといてください!

 ごとー……市井先輩のこと、好きになっちゃいました!!」

37 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 08:59



突然の言葉。

急な告白。

市井が鯉のように口をパクパクさせている間に、
後藤は校舎の影に走っていってしまった。



「………」



無意識にまだ唾液で濡れている唇を指で摘んだ。
一瞬だけ感じたトロッとした舌の感触を思い出して、
しばらくの間裏庭に立ちつくしたまま1人で顔を紅潮させていた。

38 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 09:00







39 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 09:00


その後。
毎日のように後藤は市井のクラスに通い始め、2ヶ月経った後、再び告白をうけた。
その答えは友達にも読者にも内緒。



ここからは後藤といちーだけのお話。

40 名前:A年下の女の子 投稿日:2004/01/02(金) 09:01

更新終了です。
皆様明けましておめでとうございます!ヽ^∀^ノ
41 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/01/02(金) 09:03

( ´ Д `)< まだあと2作ほどストックがあります。

いちごま熱はまだ冷めそうにありません…
42 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/03(土) 01:01
ご馳走様でした
いちごま大好きなんで、どんどんお願いします
43 名前:K 投稿日:2004/01/04(日) 00:19
あけましておめでとうございます☆

いちごまはやっぱりいいですね〜(>〜<)
次回も待ってます!!


44 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:12




「………」


・・・・



「……うーん…」


「………」


…これは、拷問ですか?

45 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:13




――――――



同じバスケ部の後輩、『後藤真希』が市井の家に泊まりに来ることになったのは
本当に突然の事だった。


―――1週間前。
「今度泊まりに行くねっ!」という後藤の言葉を、笑って「いいよ」と返す。
この時はほんの冗談だと思っていたから。

46 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:14



なのに、昨日の練習が終わった後、部室に最後まで残っていた市井を後藤はドアの前に座りながら待っていて、

「さ、行こ?」

なんて手を引っ張られて、どこに行くのかと思ったら―――市井の家で。
自分の家の前に着き、呆然と立ち尽くしている市井を、後藤は笑って、まるで自分の家に招きいれるのかのように
「はやく入ろうよぉ」と袖を引っ張った。

47 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:14


市井は我にかえり、鍵穴にポケットから取り出した鍵を差し込む。

その間、後藤は口笛を吹きながら
大きめのバックを揺らして変なリズムを取っていた。

48 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:15







49 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:16



「わぁ〜!おっきい部屋」

「……そう?」

「綺麗だねぇ。いつも掃除してるの?」


居間にいる家族に「これ、後輩の後藤真希」と紹介してから自分の部屋へ入った。
突然の訪問に親は目を丸くして、それから「いらっしゃい」とだけ言葉を返していた。

50 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:16


「………」


親も、何か他に言いたいこといっぱいあったはずだけど、後藤が「どうも♪お邪魔します!!」なんて元気よく挨拶したもんだから、何も言えなくなっちゃったんだろうな。

51 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:18



後藤も後藤で、今、ニコニコと笑顔のまま市井の部屋を物色中。


「………ねぇ…」

「んー?」

後藤は返事をしながら、勝手に本棚から漫画を取り出して、ベットの上に寝転ぶ。


「…なんで、急に市井の家にきたの?」


「あれ〜? だって、前に約束しなかったっけ?」
52 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:18


不思議そうな表情で、首を傾げながら当り前のように言った後藤。
もう何も言うまい…
ここまで連れてきちゃった市井も悪いんだし。






53 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:18


「お風呂はどうする?」


夕食も食べ終わって、すっかり市井家に馴染んだ後藤は、ポリポリと市井のスナック菓子を食べながら漫画本を読破中。

その後姿に声をかけ、市井はタンスの中からタオルとパジャマを取り出す。

「………」

本気で熱読中なのか、ピクリとも反応しない後藤。

54 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:19


「うーん…」

下着…とかは、どうすっかなぁ…。
チラッと後藤の持ってきた大きく膨らんだバックを見て、もしかしたら持ってきてるかもしれないから、聞こえてるか分からない後姿に再度声をかけた。


「ごとー?下着とか、歯ブラシとか持ってきたの?」

「………」

「コンビ二まで買いに行かなきゃ、市井の家に新しいの無いんだけど。」

55 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:19



そう言っても、漫画を捲る手もお菓子をつまむ手も止まらない。
どうやら聞く気が無いんじゃなくて、本当に漫画に集中しているらしかった。



「………」
市井は1回溜息をついて、黒のジャンパーを羽織り財布をポケットにつっこむ。


「そのまま寝るなよ」なんていう市井の忠告も多分聞こえてないけど。
まったく反応しない後藤の後姿を見つめながら市井は部屋を出た。

56 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:20






57 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:21



「……あれ?いちーちゃんは…?」


20何巻まである漫画をすべて読み終えて、ぐ〜っと伸びをして周りを見渡すと。
自分の部屋なのに市井ちゃんの姿が見当たらなかった。
ごとーが漫画にはまっちゃってつまんないから居間にでもいるのかな?

「よい、しょっと」

積み重なっている漫画本をベットの端に移動させて、ゴロッと市井ちゃんのベットに寝転がった。
白い天井に外国のポスターが張ってある。
いかにも市井ちゃんらしい。
この整理整頓された部屋とか、雑誌が年代ごとに几帳面に並べてあるところとか。


枕に顔を埋めると市井ちゃんの香りが鼻いっぱいに広がる。
なんか気持ちいい…
このまま寝ちゃいそうだぁ……

58 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:22


なんだか安心して うとうとしてると、バタンとドアが開く音がした。



「…あっ!やっぱり寝やがった……」


どうやら市井ちゃんが部屋に入ってきたみたいだった。
市井ちゃんは、もうごとーが寝てると思ったみたい…
面白いからこのままでいてみよう。

59 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:22



「まったく、こいつはいきなり来たと思ったら
いちーに構いもしないでさっさと寝やがって〜!」

悔しそうに言ういちーちゃん。
部活中には見せないその子供みたいな声と表情が、なんか可愛い。


「……でも、部活で汗かいてるはずだし、さすがに風呂には入れないとなぁ」


ガサガサと袋を机の上に置いて、市井ちゃんがベットの方にゆっくり歩いてきた。
…うわぁ。なんか凄いドキドキするんだけど…
60 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:23


「ごとー、起きろ。風呂入って寝ないと、肌荒れるぞ」

市井ちゃんの手がごとーの肩に触れる。
ただそれだけのことなのに、必要以上に体をビクッと揺らしてしまった。


「…あれ?」
61 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:23



「い、…いちー、ちゃん。どこ行ってたの?」

「なんだ。起きてたのかよ〜!いちーはごとーの下着とか買いにコンビ二行ってたの。
ほらっ、さっさと風呂入ってきなよ。親達はもう寝てるからさ」


ぐいぐい肩を押されてごとーは風呂場まで誘導された。
「ここ置いとくから」と、いちーちゃんはタオルとパジャマとかを置いて
さっさと部屋まで戻っていく。
黒いジャンパーを脱いだら寝巻きみたいな格好だったから、多分いちーちゃんはもうお風呂入ったんだろうな。
そういえば泊まりにくるのに寝巻きとか何も用意してなかったよ。

62 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:24



―――後藤のバックの中身がお菓子や遊び道具ばかりとは知らずに、市井は部屋で後藤が汚したベットの上を片付けていた。

63 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:25



「あいつー!!食ったら食いっぱなし。出したら出しっぱなし!!
高校1年生にもなって、いいかげんその性格直せよなー!!」


市井と後藤は中学も同じで、しかも同じバスケ部だった。
ちゃんと練習してるのか?と、たまに疑問に思うほど気の抜いている表情。
でも、試合になると人が変わったかのように活き活きと動き出す。
市井達3年を抜いて2年にしてレギュラーで試合に出てる後藤のバスケセンスは本当に天下一品で、県の優秀選手賞に選ばれたりもしていた。

しかし、まさかあの(といったら失礼だけど)後藤が、市井と同じ高校に来れるなんて思いもしなかった。


まぁ…『バスケ推薦』ってことを聞いて後で納得したけど。

64 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:25



「いちいちゃ〜ん。お風呂ありがとうございました〜!!」


「おー。ってかもう夜中なんだから、もうちょっと小さい声で話せよ〜」


聞いてるのか聞いてないのか、返事もしないで
後藤は鼻歌を歌いながらパタパタ髪を乾かしている。

65 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:27


と、そしたら急にじっと市井の顔を見つめてきて。


「いちーちゃん……」


少し細められた潤んだ瞳。
66 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:27



後藤の風呂上りで紅潮した頬が、なんともいえず色っぽい気がしてきた。

…って。後藤に対していちーは何考えてんだよ!?


「あのさ…」
「な、なに?喉渇いたならジュースも買ってきたけど」

市井は焦ったようにコンビ二の袋を漁る。
なんだか後藤を見てるだけで恥ずかしくなってきて、段々顔が赤くなっているのがばれないように。
なんか、今日の市井は変だ。

67 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:28


「違う」

ガサガサと袋を漁っていたその腕をギュッと掴まれた。


視線を合わせると、さっきよりも潤んだ瞳で市井をじっと見下ろす後藤。
座っているせいか、雰囲気からか、身長もさほど変わらないのに、いつもより後藤が数倍大きく感じられた。


「………あのさぁ……」
68 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:29


顔が近づけられて。
市井は思わずギュッと目を瞑る。

―――そしたら、鼻をデコピンされた。


「なに考えてんの〜?髪乾かして、って言おうとしただけなのに」


はぁ!?

69 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:29


市井が口を開けたままポカンとした表情を浮かべて、後藤はそれを見てにくたらしいくらいの笑顔をみせた。


「…キスされるかと思った?」

「思ってないし」


即答。
なのに…
70 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:30


「か〜わいい〜! いちーちゃんっ♪」


ふんっ、と鼻を鳴らして背中を向けると
「拗ねないでよ」と後ろから思いきり抱きつかれた。
こいつ…なんか勘違いしてないだろうな…。
市井が後藤のこと好きだなんて、そんな事ありえるわけないし。


「ほら、もう寝よっ」

ぐいっと強めに腕を引っ張る。
あれ?
声がなんか…いつもより出ない。

71 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:30


「照れてる?」

肩に顎を置いて、後藤に尋ねられた。
照れてる…?まさか。
そんな事ありえるわけないし。


「ばーか。いつまでそんなこと言ってんの。早く寝るよ!」


パチンと電気を消して、さっさと布団の中に潜った。

72 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:31


「おやすみなさ〜い」

73 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:31



突然来られて布団の用意もしてなかったから、市井と後藤は必然的に一緒のベットで寝ることになった。
女の子同士だから恥ずかしがることもないし。
と、言った母親の穏やかな顔を思い出して、ちょっとだけ自己嫌悪におちいる。
だって、なんか、今日の市井はおかしいんです。


「…………」

なんでこんなに後藤にドキドキするんだろ……
熱でもあるのかも…
後藤は市井に背中をピタリとくっつけて、しばらくしたらすぐに寝息らしきものをたてて眠っていた。
しかし市井はというと……


「寝れない…」

74 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:32


ぐぅぐぅ寝てる後藤の顔を半身だけ起こしてじっと見つめてみると、寝言で
「いちーちゃん」と口を動かしているのを発見してしまった。
なんだこいつ…夢の中でもいちーのことを…
変なことを考え出した自分にハッと気がついて、ブンブンと顔を左右に振る。


そうしたらちょっとだけ頭が冴えた気がした。

75 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:32


「寝よ寝よ…」

そうだよ。変に意識するからいけないんだ。

なるべく後藤から体を離して、壁にくっついて眠りにつく。

76 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:33


「……うーん…っちー、ちゃん……」

ムニャ。
後藤は寝言を言いながらゴロンと寝返りをうち、またしても市井の背中に貼りついてきた。


「…ぅわっ」
…暖かい体温と、リアルに伝わるあの感触。
カーッと一気に頭に血が上る。汗も顔から噴出してきそうな感じで。
市井の首にギュッと後藤の腕が巻きついて、もう限界!!って状態になった瞬間、
部屋の中に携帯の音が鳴り響いた。

77 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:33



後藤のバックの中でずっと鳴り響いている携帯。
…当の本人はまったく起きる気配なし。

しばらくして、携帯のメロディーは仕方ないな、といった感じで鳴り止んだ。

78 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:33



「………」


「ごと〜…」


もうなんか情けない声しかでない…。
弱弱だ…いちーは…
………もう駄目。降参です。

79 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:34







もやもやした気持ちを抱えたまま、市井は一睡もしないまま朝を迎える事になった。

80 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:34



それからはもう、後藤の顔を見るだけであの時のことを思い出して真っ赤になってしまう状態が続き。
81 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:35


「いちーちゃん?」


そんないちーを見て、後藤はニヤリと子悪魔な笑みを浮かべた。

その笑顔に見事にやられてしまった市井。

―――囚われた市井は罪ですか?

82 名前:B小悪魔 投稿日:2004/01/04(日) 08:35



B小悪魔 終

83 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/01/04(日) 08:39

感謝のレス返しです♪

>>42 名無し読者さん

どんどんいければいきたいと思います。
初レス嬉しいです。有難うございました!

>>43 Kさん

こちらにも来てくださりましたか!
レスがあるとほんとにやる気が起きます。
今回の『小悪魔』は妄想時間約20分で完了しました(w
いつもながらの駄文なのはお許しを…

84 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/01/04(日) 08:41

何か萌えシチュなどあれば、これからの参考にしていきたいので
なんでも構わないので情報や自分の妄想をお聞かせください。


それではまた。
85 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/05(月) 05:08
おぉ!!いちごまだぁ!!
飼育ではもう珍しくなってしまいましたね…
今でも大好きなカップリングです!!更新期待!!
86 名前:K 投稿日:2004/01/07(水) 00:31
後藤さんの小悪魔っぷりが最高でしたよ〜!!

おいら的には2人がラブラブであればどんなのでもOKっす☆
これからも頑張ってください。

87 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:41




(* ´ Д `)< 先輩っ!   
              
                 えっ? >ヽ^∀^ノ


88 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:41




「市井先輩って…」
「市井さんって……」


最近みんなが口にする人の名前。
ごとーは、なぜかこれだけ騒がれているのにこの人と会ったこともないし、顔も知らない。
ただ興味がないだけなのかも。


「ねぇ、いちーさんって、どんな人なの?」

89 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:42



「はぁ…!?真希、あんた市井さんのこと知らないのっ!?」

ある日友達にそう尋ねると、まるでごとーを天然記念物のような目でじろじろと見てきた。
他の友達は「ありえない〜」と大声で叫んでいる。

えー? そんなに有名人なわけ…?

90 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:42



「市井紗耶香先輩。この学校の3年生。
成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群。ちょっとクールで冷たいのが玉に傷だけど、まぁそこが良いって言ってる子も大勢いるしね。
家は有名な大学病院を経営するお金持ち。ねっ、非の打ちどころがないでしょ?」


「へ〜…」


「反応薄っ!」


…だって、そこまで揃ってる人って、逆になんか胡散臭いもん。



人間なんて絶対どっかに欠点あるはずだしさ。

91 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:43




「………じゃあさ、真希も実物見てみれば、市井さんの凄さが分かるって!」
「えぇ〜…」

めんどくさい…。


「ほらっ、市井さんのクラスまで見物しに行こっ!」



友達に引きずられるようにして教室を出る。
はぁー。しょうがないなぁ。
そこまで言うなら、どんな人かじっくり見てやろうじゃん?

92 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:43





――――

93 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:45




「…あれ?」


市井さんのクラスまで着いても、中には人がおらず、静まり返っていた。

机の上にはブレザー・カーディガン・スカートなどが無造作に置かれている。
どうやら次は体育の授業で、みんな体育館に行ってるらしかった。


「残念だねぇ。さっ、帰ろっか」

94 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:45



ごとーが頭の後ろに腕を組みながら来た道を戻ろうとすると、

友達の1人がガックシうな垂れながら、ごとーの襟首を掴んだ。


「…ぅわぁっ!? 何すんのさ!」


「市井先輩ファンのあたしが…、時間割りを忘れてたなんて……
ファンクラブの人間として、失格だ!!」


…んぁ…
ファンクラブなんてものまで存在するんだ。

95 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:46



「どーでもいいけどさっ、離してよ〜!!」


襟首を掴まれたままジタバタして掴んでいる手を振り払おうとする。
しかし、背が高くバスケ部なこの友達は力が強いので、中々離れる気配がない。



「…だめっ!真希、あんたはこのまま体育館へ連れてくよ!」
「ええー!!授業はー!?」
「そんなの知らない。市井さん拝めるなら授業なんてやってらんないよ!
ってか、あんたに市井さんの良さを分かってもらわないと気がすまないんだよっ!」


ごとーを見下ろしながらキラリと光る彼女の目。
どうやら、どうしてもごとーに市井さんを見せたくてしょうがないらしい。
ってか……授業がどうでも良いなんてほんとにそこまで重要な人なの!?

96 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:46




「はいっ、出発進行―!!」



ごとーはまた引きずられるようにして体育館へ向った。
ちなみに、この子以外の友達は単位がやばいらしく「感想聞かせてね〜♪」
と、笑顔で教室へ帰っていってしまった。
…くそぅ。 裏切り者ぉ―!!

97 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:47








98 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:47




「普通に中入って先生に見つかったらヤバイよね〜」


授業をサボっているというのに、やけにノリノリな彼女。

ごとーは抵抗するのに疲れてしまって、もう何も不満を言うことはしなかった。



「上のぼって見てみよっか?」

「うん…」

99 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:48



2階へ上がる階段を先生に見つからないように低姿勢で上っていく。
2階へ着くと、キャー!とかワー!とか歓声のようなものが体育館内に充満していた。


「予想はしてたけど……すっごいなぁ」

「ふ〜ん」

(これはそうとうな人気だねぇ)

100 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:49



「…あっ、あれ、あれっ!市井さんだよっ!!」


「……どれ〜?」


興奮気味な友達に対し、目の上に手を翳しながら
ごとーはのんびり歓声の上がっているコートの方を見つめる。
バスケの試合やってんだ〜。良いな〜、なんて思っていたら、
そこには。2人をドリブルでかわして、物凄く綺麗なシュートを放つ人物がいた。

「…あっ」


――――一瞬時が止まる。
素人のごとーが見ても見とれちゃうようなものだから、それは相当凄いに違いなかった。

101 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:49



スパっという気持ちの良い音がしてそのシュートが決まった瞬間、
更に体育館内の温度が上がる。


「…さやかぁー!!」

「市井さーん!!」



「へ…」


あれが、市井…さやか…。

102 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:50


「ね、ねっ!?凄いっしょ…?市井先輩!」


「………」


鼻の穴を広げながら興奮最高潮の友達はごとーの肩をガクガク揺らしてくる。
なんか、凄いってゆーか……


…頭ん中が、真っ白。



なんであの人のこと今まで知らなかったんだろう―――

そのことを激しく後悔した。

103 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:50



「……かっこい………」


「でしょ?」


得意げに言う友達をその場に残して、ごとーの足はいつの間にか階段を駆け下りていた。
「真希!」という友達の声も聞こえないくらい、夢中になって市井さんの試合をやっているコートまで走っていく。

104 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:51




――――――



「市井先輩―!!」


なにこの子?という視線を周り一面に浴びながら
ごとーは市井さんを大声で呼んでいた。

105 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:52



試合をしていた人の動きが止まり、市井さんがゆっくり汗を拭いながらこっちを見つめる。


その澄んだ綺麗な瞳に、ごとーは、吸い込まれそうになる錯覚におちいった。



「…市井先輩っ!かっこ良かったですっ!!」


ごとーはありったけの大声を発してから、じっと市井さんの姿を見つめた。
何度見ても…綺麗な瞳、色の白い整った顔、細身だけど筋肉がついている腕など
市井さんの魅力をますます引き立たせるような部分がたくさん目の中に飛び込んできて。
自分がどんどん市井さんにはまっていってるのが分かる。

106 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:52




「…いちー?」


冷めた顔が一瞬にしてキョトンとした表情に変わり、
周りを見渡してから不思議そうに自分のことを指差した。
んぁ〜…めっちゃ可愛いっ!


「市井せんぱ……」

107 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:53



両手を広げてコートの中へ走りこみ、市井さんに抱きつこうとしたその瞬間。
再びガシッと制服の襟首を掴まれて、誰だか知らないけど「何すんの!」と涙目で訴える。
市井さんあと1歩のところで…。誰だよっ!?
キッと睨みつけながら振り向くと、そこには怖い顔をした先生が立っていた。



「1−10 後藤真希。」


「は、はい…」

108 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:53



金髪!?カラコン!?
教師がそんなスタイルでいいわけ…?


「お前の噂はよぅ聞いとるわ…。
 しかし、まさか3年生の授業中に乗り込んでくるとは思わんかったなぁ」


先生の迫力にビビって間に、その先生は内線でうちの担任に「お宅のバカ生徒がやらかしたしたよ」と話し、再び首根っこを掴まれながらごとーは体育館の外に放り出された。

109 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:54




「…………」
ヒソヒソ声がやけに耳に届く中、今頃になって自分の恥ずかしい行動を思い出して
ちょっぴり泣きそうになりながら振り向くと、優しい柔らかい笑顔でこちらを見守っている市井さんがいた。



もう、それだけで。
なんか…。

110 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:54


「市井せんぱぁ〜いっ!また、来ますから!!」


「来んでえぇ!!」


また不良教師が歩いてきて、「さっさと教室帰れ!」と 頬をつねられた。
市井さんの方を見ると、市井さんはくしゃっと顔を崩して笑っていた。







111 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:55



「いちーちゃぁ〜ん♪」

小走りで近づいて。
思いっきり抱きついて胸に顔を埋める。


「なんだごとー、こりずにまた来たのかよ〜
 …早く帰んないと裕ちゃんに怒られるぞ?」


優しい声で言いながら、ごとーの頭をなでなでしてくれるいちーちゃん。
なんでこんなにかっこいいんだろ。
ごとーが「いいもん」と口を尖らせるといちーちゃんは困ったように笑って、でも、そんなごとーをキュッと抱きしめ返してくれて。
…も〜、めっちゃくちゃ好きだよ〜

112 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:55



――――ガラッ


「…くぉらぁあー!!!後藤!!さっさと教室戻らんか!!」


「ぜったいやですよー♪」

ニコッと笑っていちーちゃんの胸に顔をギュー!と押し付ける。

113 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:56




「分かればいいねん…。
 まったく飽きずに毎時間毎時間来おって…他の先生も迷惑してる……って、なんやとぉ!?」


ごとーがあまりにサラリと言ったもんだから、裕ちゃんは気づくのに少し時間がかかったみたい。
だって…こんな幸せなとこから、離れたくないんだもん。


もっともっと、ずっと一緒にいたい。
授業中はさすがに無理でも、空いた時間は誰よりも傍にいきたい。

贅沢かもしれないけど、もうごとーはいちーちゃんがいないと駄目みたいなんだよ。

114 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:56



裕ちゃんと格闘すること数分、力に自慢があるごとーも
迎えにきたクラスの担任が加わり2人でおさえつけられるとさすがに抵抗するのを諦めた。
べしっと頭を叩かれながら泣きそうな顔でいちーちゃんに「また来るねっ!」
と伝える。
そうしたら、いちーちゃんは軽く手を振りながらこっちを見て。


「ははっ。待ってるから、おいで」…て。

115 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:56




―――後藤真希。15歳。
人生で初めて、本気の恋をしちゃいました。


116 名前:C憧れの先輩 投稿日:2004/01/08(木) 12:57



C憧れの先輩 終

117 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/01/08(木) 13:03

今年もいちごまラウ゛で頑張ります。


>>85 名無し読者さん

ここに同士発見!
いちごまがこれからもっと広がってくれれば良いですねぇ。
感想とか頂けたら嬉しいんで、これからも宜しくお願いします。

>>86 Kさん

ラブラブですかー。
実は次のはちょっと痛い話なんですよね(w
苦手でしたら飛ばし読みしてください。
今回の話は王子様的存在ちゃむで(wそして、その1ファンのごまです。
118 名前:K 投稿日:2004/01/08(木) 22:05
更新お疲れ様です!!

痛い話なんですか??
でも、読ませてもらいますよ〜☆
いちごまラブなんで(w
それにもてる市井さん好きなんですよ(w
続き待ってます!
119 名前:K 投稿日:2004/02/28(土) 21:45
もう書いてくれないんっすか(T_T)
痛くてもかまわないんで読みたいっす…
120 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:39

ちょっぱやです。
待っていてくれた読者の方、すいませんでした。
これからはochi更新で、下の方でひっそり続けさせて頂きます。
現実の世界でそうなろうが、私の中ではいちごまはずっと続いていくものだと思っておりますので。
こんな作者で良ければストックを全部のっけられるくらいまでついてやってきてください。

それでは更新です。

121 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:39



S:市井

122 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:40


後藤とは、幼稚園の時から親友だった。
家はそんなに近くなかったけど、お互いお父さんがいないってこともあって、町内会の集まりでたまたま出会ってからすぐに仲良くなれた。


「後藤まきちゃん?」

「そ、そうですけど……」

俯きがちに母親の影に隠れて、その袖を引っ張る少女。
第一印象から、可愛い子だなって思った。

123 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:41


恥ずかしそうに足を擦りあわせて後藤はじっとこちらを伺っている。


「あたしねー、いちーさやかっていうんだぁ。
 良かったらトモダチにならない?」


そう手を差し伸べた瞬間、
後藤は今と変わらないお日様のような笑顔を見せたんだ。

124 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:41


毎日のようにいちー達は遊んだ。
砂遊びをしてお城を作ったり2人だけで鬼ごっこをしたり、どれも後藤と一緒にいるならつまらないものなんてなかった。
毎日がとても楽しくて、ほとんどの時間を後藤と過ごした。


「いちーちゃん…」

125 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:42


そして小学校に上がった頃、後藤はよく男の子にいじめられるようになっていた。
いちーは学年が2つも上なので詳しい事はわからないけど、その度、後藤は泣きながらいちーの所まで来て手を繋ぎながら一緒に家まで帰ってあげた。

「……きょうは誰にやられたの?」

「…んと…っ、ゆーた君とけいすけ君……」

「…そっかぁ」


また違うやつの名前。


―――後藤をいじめる奴が憎くて堪らなかった。


なんで、こんな可愛くて素直な子に嫌がらせするんだ。
この子は、自分が、守ってやらなきゃ。
いちーはこれから後藤が泣かなくてすむように、なるべく傍で見守ってあげようと決心した。

126 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:43


「ごとーをいじめると、いちーがぶっとばしてやるからなっ!」


それからいちーは、まるでガキ大将のように、女ながらにして町内一の腕っぷしを持って
後藤を守り続けた。


「うわっ、またきやがった! いちーが来たぞぉ!」
「みんな退散しろー!」

「こらっ おめーら逃げるな!」


「このやろこのやろ!!」

「いてっ いててっ …くそ、待てこらぁ!!」

127 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:43


それも後藤が小学4年生に上がった頃からは男子との筋力の差を感じ始め、喧嘩をしても勝ったり負けたりといった感じだった。

「…ぇっ…いちーちゃ…っ、やだぁ…っ!」


「もう、大丈夫だよ。 ごとー、いちーは平気だから…」


いちーが喧嘩に負けてボロボロになってくると、その度に後藤は悲痛な表情で泣き叫んだ。

……悲しい表情をさせたくなくて後藤を守っているのにな…
なんでこう上手くいかないんだろう。

128 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:44


―――――


中学・高校と後藤はいちーを追うように同じ学校を選択し、
昼休みは一緒にお弁当を食べたり、放課後一緒に帰ったりして、なるべく後藤の傍にいるよう心がけてはいたが。
後に、いちーが部活をやりはじめた事によって
後藤と会う回数はどんどん少なくなっていったんだ。

129 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:44


「今日部活でミーティングがあるから。ごめんね。」


ある日。
一緒にお昼ご飯を食べれないということを登校途中隣にいた後藤に伝えると、
後藤はとても悲しそうな顔で「わかった」と返事をしてから俯いた。


いつも一緒だったからこそ、一度近くを離れると、傍にいきにくくなる。

そんなことを誰か言っていたけど、いちーと後藤は、そんな風にならない自信があった。
どんなに離れていてもだいじょうぶだって、勝手に心の中で決め付けていた。

130 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:45


「ごめん もうすぐ大会でさぁ… 練習終わるの遅くなるから、
しばらくの間後藤先帰っててよ」

「え…っ、でも……」

「もう冬だし外も暗くなるの早いし…。後藤に何かあったら心配だから。 ねっ?」


だから気にしなかった。
後藤もそう思ってくれていると考えていたから。

131 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:45


そんな日々が1ヶ月ほど続いて。

会えなくなればなるほど。


「…………」


なぜか後藤は、いちーに、異常な執着を見せ始めた。

132 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:46






133 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:47


クラスの友達と他愛のない話をして盛り上がっているところに、
教室の外から後藤に呼び出された。


「後藤?なにか用?」

「………」


「…ねぇ?……黙ってちゃわかんないじゃん」

134 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:47


この頃、後藤は不機嫌な状態の時が多い。
多分いちーと一緒にいるほとんどの時、眉間に皺を寄せて泣きそうな表情でいる。
そんなにいちーが嫌なら傍に来なければ良いのに、とも思う。


「……あのさぁ…昨日…どこに行ってたの?
 ごとー、なんかいも、なんかいもいちーちゃんちに電話したんだよ?」


「あっ…ごめん。 昨日、部活の友達と遅くまで遊んでたから気づかなかった」



夏練が終わったということで、その『打ち上げパーティー』というものがバスケ部の伝統であり、いちーはいつもより帰りが遅かった。
お父さんやお母さんはもう寝てしまっていて、いちーは後藤から電話があったことをまったく知らなかったのだ。

135 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:48


「ふ〜ん。 いちーちゃんはごとーより、その人達のほうがたいせつなんだ…」

「…えっ? なんでそうなるんだよ…?!
気づかなかったって言ってんじゃん!」


「知ってるもん。いちーちゃんが最近ごとーを避けてるってことぐらい」


「…はぁ?何言ってんだよ」

「………」

136 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:48


「………最近後藤……おかしいよ。
いちーの後ろばっかついて来るようになってさ。後藤自身も前を見なきゃ、全然前に進めないし考え方も大人になれないんだよ。そりゃぁいちーも後藤の傍にいたいって思ってるけど、子供の時みたいにずっと、ずっと傍にいてあげることは出来ないんだからね」


『子供の時みたいに、ずっと傍にいてあげることは出来ないんだから』


すっと無表情だった後藤の顔が、この台詞を言った瞬間に、一瞬だけ歪んだ。

いちーは間違った事言ってないはずだ。

いちーは後藤を傷つけるようなこと言ってない。

137 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:49


「も、いい…」

後藤はそう言ってその場から走り去っていく。
いちーは追いかけようとも思ったが、今後藤が何を考えているのか分からないので
踏み出した足をピタリと止めた。

ほんとに…わけわかんない……後藤…。


「………」

小さくなっていく後藤の後姿を見ながら、いちーは小さく溜息を漏らした。

138 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:49



S:後藤


139 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:49


いちーちゃんっ いちーちゃんっ いちーちゃんっ


―――なんだよ、ごとー。


そうやっていつも傍にいて、2人で笑いあっていたのはいつまでだろう。

140 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:50


小さい頃からずっと見つめてきた。
ずっとずっと好きだった。
いつも一緒にいた。
近くにいすぎて、傍にいすぎて。
なんだか『告白』なんてものは2人には必要なものに思えてきた。


中学・高校といちーちゃんのファンは徐々に増えていったけど、「ごとーが一番好きなんだ」って胸を張って言える。
ほんとにほんとに大好きだったよ。
いちーちゃんに守ってもらったぶん、ごとーもいっぱいいっぱいいちーちゃんを愛してあげようって思ったの。

141 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:50


「ごとーっ!」

いちーちゃんが笑ってくれるだけで、ごとーはいつも心の温かい部分が満たされて。
笑って「いちーちゃんっ」甘えるように抱きつくと
優しく包み返してくれる腕も、ぜんぶ全部大好きだった。



――――――

142 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:51


でも、今は……


ごとーの知らない所でいちーちゃんは生活している。
ごとーの知らない人達と楽しそうに会話している。
ただ、それだけで強烈な嫉妬に駆られてしまう自分が怖い。
…あぁ。こんなにいちーちゃんのことが好きになっていたんだ。
好きすぎて、好きすぎて、自分が壊れてしまいそうになるくらいに。
いけないと思っていても、ごとーはいちーちゃんしか好きになったことがないから
他の人なんか愛せなくなっちゃったんだよ。
 何度か、告白してきた人と付き合ったりもしてみたけど、やっぱり失敗に終わった。

143 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:51


「後藤?」

「…いちーちゃん…」


行かないで。行かないで。
ごとーから離れないで。
遠くに行かないで。


「どした?気分、悪い?」

いつも優しいいちーちゃん。
みんなに優しいいちーちゃん。

ごとーだけに見せてると思った笑顔も、みんなみんな、嘘だったの…?

144 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:52


いちーちゃんの手がごとーの肩に触れた。
ビクッと体が大きく反応してしまって、気づいたらいちーちゃんの手を思い切り振り払っていた。
いちーちゃんはびっくりして固まっていた。
その赤くなった手の平を見て、ごとーは何も言えずにその場から走り去った。


でもいちーちゃんは追いかけてはこなかった。


145 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:52






146 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:53


それから2ヶ月が過ぎた。
ごとーは、あれから一切いちーちゃんと関わりを持たないよう
朝も放課後も1人で行って帰って、お昼ご飯も友達と取るようにしていた。
いちーちゃんの顔を思い出すだけでツキンツキンと胸が痛んだ。


もう駄目なんだよいちーちゃん。
ごとーは、自分が壊れるのが嫌だからいちーちゃんから離れたんだよ。
いちーちゃんより、自分をとった。
それがもうごとーが駄目になった証なんだよ。
よくわからないけど、きっと、そうなんだよ………

147 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:53


そう何度も自分に言い聞かせて、持っていた教科書を乱暴に机に叩きつけた。
近くにいた友達はびっくりしていたけれど、睨みつけるようなごとーの表情を見ると何も言ってはこなかった。
いちーちゃんを無くして、すぐに普通の生活に戻るのは困難だった。

148 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:53


毎晩、自分の部屋で1人きりになった途端。
後悔の念が込み上げてきて、ごとーの心の中をじわじわ支配し始める。
MDの音量を最大にして、ぎゅぅっと顔を枕におしつけてみても、決していちーちゃんは頭の中からこびり付いて離れることはなかった。


――悲しい。

寂しいよぅ。いちーちゃん、つらいよぅ…。

149 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:54


涙が出てくる。
一体、いちーちゃんから離れてから、何回涙を流しているんだろう。
それは数え切れないくらい。
肌を伝う雫は、ぜんぶ枕に吸収されていって、鼻水やらなんやら余計なものまで
出てきてもうぐちゃぐちゃだった。


「……っぇ…っく、ぅぁ……」

150 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:54


いちーちゃんから離れたことは、悲しいだけじゃない。

つらくて、つらくて…耐え切れずに。


悲しいことを考えるのがイヤになって、
いつしかごとーは抜け殻みたいになっちゃった。

151 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:55


周りのものがみんなみんな全然楽しくなくて、
友達がバカ笑いしてると『なにがそんなに楽しいの?』って怒鳴りたくなる。
面白いものも、何も感じなくなって、笑えなくなって。
ごとーはそのうち常に無表情になり、感情がどんどん壊れていくの。


「…っちー、ちゃ…っ、ぅ…っ…」


バカみたい。
いちーちゃんから先に離れたのは自分なのに。
壊れないように、拒否したのに、結局ごとーからは全部無くなっちゃった。

152 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:55


――――――


「真希っ!?」


―――体育の時間。
ごとーはランニングの途中で目眩がして倒れてしまった。
視界がぼぉっとしてよくわかんなかったけど、
そのまま先生が支えられながら、保健室に送られた……気がする。

153 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:56



■■■■

□□□□



『ごとー!』

154 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:56


……え?


辺り一面が花で。
ちっちゃいごとーとちっちゃいいちーちゃんがその中を走っている。
手を繋いで、楽しそうに2人で駆け回っていた。


『ねぇねぇいちーちゃんっ!お花で髪飾り作らない?』

『いいねぇ〜。っていちー、作ったことないけど』

『だいじょうぶだよぉ。ごとーが教えてあげるっ!』

155 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:57


あぁ…懐かしいなぁ。
ごとー、あの頃に戻りたい。


『いちーちゃん、だぁいすきっ!』

自分の気持ちを素直に言えた、あの頃に。
いちーちゃんが大好きだった、あの頃に。

『いちーも…』

156 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:57



――――戻れるよ。


誰かの声が、じんじん鳴ってる耳の奥で聞こえた気がした。

157 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:57


―――――――――――



目を覚ますと、まず最初に白い天井が目に飛び込んできた。
あ…そっか。倒れちゃったんだよね…。
倒れた時にどこかぶつけたのか、体が痛い。

「いたた…っ」

158 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:58


ゆっくり半身だけ起こして周りを見ると、いつも机の近くに座ってるはずの保健の先生がおらず、代わりにごとーの手を握ったまま眠っている人物がいた。
ベットの横に椅子を置いて座り、ゆっくり肩を上下させながら天使のような寝顔で。


「…ぅ、あ…っ…」

ぷるると体が震え始めてとまらなかった。


昔と変わらない黒髪のショートカット。

ごとーを男の子達から守るためにできた腕の傷。

何度も何度も優しい言葉をくれた、いちーちゃん。

いつもいつも柔らかい笑顔をくれた、いちーちゃん。

159 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:59


「……いっ…いちーちゃん…?……」



「……んー…ごと〜…」


寝言のようにそう呟いて、くぅくぅ眠り続ける。
手は離せないくらいに強く強く握られている。
むにゃむにゃ口を動かしながら、しきりにごとーの名前を呼んでるみたいだった。

160 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:59


「……ぅっ………っ」

涙が出てきた。
また泣いちゃった。
でも今度は悲しくなんてないんだよ。

嬉しくて、大袈裟だけど、死んでもいいとも思った。
いちーちゃんが傍にいるなんて、夢みたいだけど、これが現実なら―――



目が覚めた時にちゃんと伝えよう。
ごめんなさいって。―――あなたが好きです、って。
ごとーは、やっぱりいちーちゃんがいなきゃ、ダメみたいだよ。

161 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 08:59





162 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:00


内緒だけど、眠っているいちーちゃんの唇に1回だけキスをした。


目を覚ましたいちーちゃんは『ごとー、大丈夫かっ!!?』って
必要以上に慌ててごとーの肩を揺さぶった。
ごとーが『だいじょうぶだよ』って苦笑しながら言うと、安心したように頬を緩ませた。


「良かったぁ…」


「……い…いちーちゃん、なんでここに…?」


「後藤が倒れてたって聞いて、すっ飛んできちゃったよ……
心配で心配で堪らなかった。…いちーも、全然小さい頃から変わってないのな」

163 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:01


「いちーちゃん……」

その優しい表情に胸が高鳴り、そして言った。
小さい頃から思い続けて、言えなかった想いを。
踏み出した一歩と勇気に気持ちをのせて。


「…好きだよぉ」


「ん?」


「ごとぉね、いちーちゃんが好きなの……」

164 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:01


いちーちゃんはびっくりしたような顔をして、それから小さく笑った。


「……そーゆうことはさぁ…もっと早く言えよ………」

少しだけ繋いだ手に力を込めて、憎たらしい口調でそっぽを向く。
それが、いちーちゃんにとって最高級の愛情表現であり、照れ隠しだった。

165 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:01









166 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:02



「後藤っ!」

「見てみてっ!でっかいよ、魚っ!」

「そんなとこに立ってたら危ないってば!落ちるぞ!!」

「ってか、見てよ。魚っ!ほんとにでっかいんだって!」

「……わかったから、見るから、こっちに来いってばっ!!」

167 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:02


晴れた日の今日、ごとーといちーちゃんは2人きりで川へ釣りに出かけた。
2人共釣りなんてしたことなかったけど、なんか楽しくて。
幸せで。


傍にあなたがいることの大切さ。

繋いだ手をずっとずっと離さないで。

このまま二人で歩いて行こうね。

168 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:03


「いちーちゃん?」
「んー?」
「好きだからね?」
「…う?うん」
「大好きだよぉ」
「…ぅん…」
「いちーちゃんは?」
「ぇ……」
「言ってよ」
「ぅ、ぇーっと……ゴホゴホ」
「ずるい」
「……き、だよ」
「はぁ?」

わざとらしく耳に手をあてたりなんかして。

169 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:03


「大好きっ、だっ…、つってんの!!」


過去も未来も、大好きなあなたと一緒に。

170 名前:D親友クエスチョン 投稿日:2004/03/16(火) 09:04


D親友クエスチョン 終

171 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/03/16(火) 09:09

>>118-119 Kさん

更新遅れて申し訳ありません(平伏
今回の話どうでした?痛かったですか?(w
なんか途中から自分でもよくわからなくなってきてしまいました。
まだ2〜3作作ってあるのでまた時間を見つけて更新したいと思います。
レス有難うございました!
172 名前:まめ大福 投稿日:2004/03/20(土) 08:00
初めまして
更新お待ちしておりました。
作者さんのいちごまはホンワカとした雰囲気がとても良いです。
白板の方も読んでますので頑張って下さい
173 名前:S 投稿日:2004/03/21(日) 20:33
更新おつかれさまでした。
今回の話も、すごくよかったです☆
次回作も楽しみにしています。
174 名前:K 投稿日:2004/03/21(日) 21:29
更新おつかれさまです。
おいらは痛い話だとは思いませんでしたよ?
いろいろあったけど、作者さんのいちごま大好きなんで
次回も楽しみに待ってます!
175 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 08:58



□□□□



ある日、後藤が、市井の家に遊びに来た。


176 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 08:58


「おっす!」
「おす。久しぶり」
軽く片手をあげてお出迎え。
「あはっ なんかいちーちゃん男の子みたいだよ?」

なぜか嬉しそうに言う後藤。
髪を切ってから、いつの間にか男前キャラが定着してしまったようで…。
もう市井も、男っぽいと言われても、いちいち凹んだりはしない。


「いーのいーのもう言われ慣れたから…はは」
177 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 08:59


「仕事は順調なの?」
「うん!最近は楽屋によしことかやぐっつぁんとかなっちとか、いっぱい遊びに来てくれるし。
ライブもめちゃめちゃ盛り上がるしね」
「ほぉー」
「娘。にいた時よりもちょっと余裕が出来て、歌ってる時に、お客さんの反応とか観察できたりするんだよぉ♪」
「そっかそっか……大人になったなぁ…後藤も」
「へへー♪ いちーちゃんのお蔭です」


はじめは他愛のない話をしたり。
その後、年相応な雑誌を読んで「これ可愛いね」なんて言い合ったり、TVゲームで遊んだりして。



久しぶりに会ったということもあって会話も弾み、あっという間に楽しく時間は流れていき―――

178 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:00


「ふぃー なんか疲れたねぇー?」
「ってか、ごとー…、なんでそんな強いの…」

連戦連敗。
このゲーム、少しは得意だと思っていたものなのに、一気に自信喪失した……

「さぁ?ユウキと昔ゲームでいっぱい遊んでたからかな?」
「……」
179 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:00


「ねぇねぇ、少し休まない?」
「そうだね…喉も渇いてきたし」


2時間ほど同じソフトの対戦ゲームをしていたら(と、ゆうかこれしかソフトを持ってなかったから…)さすがに飽きてきて。
市井は、一息つこうと、居間へ紅茶とお菓子を取りに行った。
180 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:00


「お待たせ…」

トレイにカップとクッキーを乗っけて戻ってみると、後藤がにや〜と顔を綻ばせている。
なに? 気持ち悪いなぁ…


「お帰り〜 いちーちゃん♪」

「……」

「ん? どしたのー?」

「…ぃや…、っつかなんで笑ってんの?」


「べぇ〜つに〜?なんでもないよぉ」

いや…ぜったい……なんか企んでるぞ…あの顔は……
181 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:01


「……」

その表情。
小悪魔みたいな黒い微笑み。
なに考えてんだ…?
いっつもこいつの頭の中だけは読めないんだよな。
きっと、なにも良いことなんて―――企んでないと思うけどさ。

市井には分かるんだ。
後藤がこの表情をする時は大抵、後藤にとって楽しいことであり、市井にとって嫌なことを思いついた時で。



こいつのこの思いつきのせいで何度市井がひどい目にあったか…
………
…うっ…思い出すだけで恐ろしい。

182 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:01


市井は一度溜息をついてから、机の上にトレイを置いた。

「……なに? 今度は、何企んでんの」
「なんも」
「嘘付け」
「………聞きたい?」
「ぅ? …うん…」


……なんかなぁ。聞きたいような聞きたくないような。
183 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:02


「え〜聞きたいのぉ? どうしよっかなぁ〜」

後藤は唇に指を置いて、わざともったいつけた言い方をする。
く…っ 腹立つ…っ!!


「また、『圭ちゃんの鼻にピスタチオを入れてくる』とかいう
度胸試しじゃないだろうね…?」


マジで、本当に、あれだけは勘弁してほしかったのに。
後藤が目を潤ませて『やろーよぉ』なんて言ってくるから思わず実行しちゃったけど。
怒り狂った圭ちゃん(うちのクラスの担任:22歳 独身)に捕獲された市井は、その日1日中圭ちゃんのパシリ(ある意味奴隷?)にされてしまった。
184 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:02


「さぁーねぇ?」

「…なっ! 違うって言えよ!
もう市井やれって言われてもやらないからなっ!」

「ふーん…どうだか」
後藤は、自信満々な表情で、ふふんっと鼻を鳴らす。


…はいはい。
どうせ市井は後藤ちゃんには敵いませんよ。
185 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:03


「……ほんっと、お前はくだらないことしか考え付かないんだから」

「そんなことゆーと教えてあげなぁ〜い、ぞっ☆」


キモイ2と言われているうちの高校の石川のようなポーズを取って、後藤は首を傾げる。
可愛いといっちゃ可愛いけど…。
なんか、後藤がやるとめっちゃくちゃ違和感があるような……
186 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:03


「ごとーちゃん?」

「んん?」

「で 結局、市井は、なにをしなきゃいけないの?」

「聞・き・た・い?」
ぅわっ また出た石川!!


でも、もういい加減…

187 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:04


「………ってか、その言い方ムカつくんだよ…
 早くはきやがれっ!!」


「…ぅきゃぁっ!」

188 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:04


不意をついて唯一の弱点とされる脇腹をくすぐった。
後藤が涙目で「降参っ!」と言われるまで10数分の間。
負けず嫌いな後藤と市井は、どちらも抵抗し続け、くすぐり続けて―――

「ふはぁ…っ、はぁ…ほんと…も、ダメ……」

無駄な戦いの末、先に白旗をあげたのは後藤。
ひくひくと後藤はつらそうに顔を引き攣らせながら、未だに笑いがひかないのかお腹をおさえている。
ばかやろう…


「ごとー…がっ、さっさと、降参…しないから……だろ…っ」


市井も呼吸を整えながら、額に薄っすらかいた汗を服の袖で拭い取った。
部屋の中は後藤が暴れまわるからぐっちゃぐちゃの状態。
汚した犯人の後藤は絶対手伝ってくれないだろうけど、後で片付けとかないとなぁ…
189 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:05


「はぁ…はぁ……ふぅっ」


荒い呼吸をおさえこんで。「…で?」
一瞬忘れそうになったが、後藤から本来の目的を聞き出す。


「聞きたい?」


ここまできてまだそんな事を…

市井が両手をワキワキ動かすと、「わかったから!!」と焦ったように後藤はその手を掴んだ。

ふん 分かれば宜しい。
190 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:05


「ちょっと待っててね…」

そう言って、部屋の隅まで追いやられていた自分の鞄の中を漁る後藤。
なかなか目的のものが見つからないのか難しい顔をして一生懸命手を動かしている。
しばらくそうしていて、結局後藤はちょっと切れ気味に「もうっ!」と鞄をひっくり返して、中身を放出させた。

「ぅわっ」

中からは、出るわ出るわの大量のお菓子たち。
他には鏡や化粧ポーチなども入っていたが、膨らんでいた鞄の中身はほぼ90%お菓子の束だった。
191 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:05


「ごとー…太るよ」

「うっさい。いちーちゃんは、黙ってて」


むっ。
人が心配してやってんのに……
ってゆーか市井、これでも一応年上なんだけど。
192 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:06


ブツブツ言ってたら、後藤が目を輝かせながら市井の目の前に『あるもの』を持ってきた。


「これこれっ♪」

差し出されたのは、1本の、黒いビデオテープ。
ラベルも何も貼っていないやつ。



「一緒に、見よっ?」

193 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:06


…ぁゃしぃ。


そんな妖しげなものを…一緒に見ようだなんて…。
先にそれが何かを確認しておく必要があるな。


「それ…、中身、なに入ってるの?」
194 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:07


「ごとーもまだ見てないからわかんないんだぁ」


「……ふ〜ん。見た感じ販売されてたものっぽくないよね。
後藤、それどっから持ってきた?」


…大体見当はついたけど。

後藤は、なぜかえばったように胸をはって「ユウキのベットの下!!」と
市井の予想を確信させる一言を言い放った。
やっぱりな…
195 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:07


「後藤…。それ、……多分…さぁ…」

言葉を濁らせる市井に、後藤がそのビデオを面白げに見つめながら口を挟む。


「これねぇ〜、ユウキが『超レア物だぁっ』とか言って、ベットの下に喜んで隠してるの見ちゃった時からずぅーっと狙ってたんだよねぇ。
 中に何入ってるのかすっごいワクワクしない??」

ね?って言われても…。


ワクワクはしないよ。
たぶん、ってか、あんまり見たくないものだと思うけど。
196 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:08


「ねっ、早く見ようよ」

キラキラ輝く後藤の瞳。
ぜったい、絶対に市井がイヤダって言っても見る気だな。

それ『ェ○ビデオだから見たくない』って言えれば良いんだけどさぁ…。
後藤に「いちーちゃんって、ウブなんだねぇ」なんて、からかわれるとムカつくし。

「いいよ…」

しょうがないなぁという言葉を飲み込んで、年上のプライドを崩さないように
無表情でそのビデオテープを素早くビデオデッキに突っ込んだ。

197 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:08



ジー……

真っ黒な画面。
もうすぐ始まるであろう男の子のいう『レア物』な映像が。


市井もこーゆうビデオ見るの初めてじゃないけど、やっぱり慣れない。
好んで見ようとは思わないし、友達がいて、ノリで何回か見たことがあるくらいだ。

「………」

真剣な表情で画面を見つめる後藤。
部屋の電気はまるで映画を見るときのように消されて、部屋の中は真っ暗になっている。
こんな所で女の子2人がェ○ビデオ見るなんてちょっと…ってか凄く変な光景じゃない?
198 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:09


「まだかなぁっ」なんて楽しそうに言う後藤を見て顔を歪ませて。
市井がTVに目を戻した瞬間、黒い映像がプツッと途切れ、1人の女の子が出てきた。


『こんにちわぁっ!』

「おぉ、可愛い子だねぇ」

「うん…」


真っ白な部屋の中にある1つのベットの上に腰掛け、笑顔でカメラに向って手を振っている少女。
見た感じは15・6の今時の女の子だった。
199 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:09


『女子高生のまみでーす♪
 あ〜ぁ… なんか今日は予定も無いし、退屈だなぁ。』


どうせこの後むっさい中年の男優が出てきて、この子とそいつが
あ〜んなことやらこ〜んなことまでして…

うぅっ。考えたくない…。
200 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:10


その白い部屋のドアが、突然ガチャリと開いた。
あぁ…なんか、自分達と同年代ぐらいの女の子だから…始まる前から嫌な気分。
…見たくないなぁ。


「ん〜…」


チラッと後藤を見ると、視線は画面に釘付けで。
少し体を乗り出してジッとTVの少女を見守っている。

やっぱり後藤ぐらいの年の子ってこーゆうのに興味あるんだ。
201 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:11


『さやかちゃん!』

――――えっ!?


急に自分の名前を呼ばれてびっくりしながら画面を見ると、そこにはもう1人の同年代の女の子が部屋の中に入ってきていた。


『まみ!久しぶりだね〜』


えー…っ? …お、おじさんは?
202 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:11


「さやかだって…。いちーちゃんとおんなじ名前だね」


後藤も少し驚いたような顔で市井の顔を見る。
その頬の色が微妙に赤く変化しているのには、部屋が暗いせいで気づかなかった。

203 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:11



――――――


普通にベットの上に腰掛け、談笑を始める2人の少女。
いったいこのビデオはなんなんだろう……

204 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:12


キモいおじさんは出てこないし。
予想に反して、なんか、普通の映像しか流れないし。

「ふあぁ〜…―」

別にガッカリしたってわけじゃないけど…拍子抜けたって感じでさぁ。
後藤も、つまんないのか、今にも寝ちゃいそうになってるし。
口を手で隠さずにおっきく欠伸なんかしてる。
205 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:13


気合を入れていた体から力を抜く。
変なビデオだけど、市井が心配するような『そっち系』のビデオではなかったみたい…?


―――そう思った矢先、『さやか』(一緒の名前ってかなり嫌なんすけど)と呼ばれる少女が、『まみ』の肩に腕を廻した。



『ねー、まみさぁ…、なんか最近胸おっきくなってきてないー?』

『そ…っかな?』


『…確かめてもいー?』

206 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:13


「えっ」
「ちょ…、ごとっ、これ…?」

ビデオの中の部屋の電気が急に妖しいライトの光りに切り替わる。


紫がかった画面には、
躊躇いがちに答えた『まみ』の服の上から、胸の部分を触りだす『さやか』が。
おいおいおいおいおいおい…っ
207 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:14


『…ん…っ…』


すぐ横にいる後藤と顔を見合わせた。
すると後藤は恥ずかしいのか市井から視線を逸らして、TVのほうに向き直った。

うーん…ユウキ君の持ってたビデオ…これは、問題だな……


『…っや……さやかぁ…っ』


…うっ…、これってさぁ…
208 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:14


「ね、ごと…」


(もう止めない?)

そう言おうと、再度隣に顔を向けると、
みるみるうちに後藤の表情に変化が現れて(視線はTV画面に釘付け)
刹那、勢いよく市井の腕に抱きついてきた。
209 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:15


「ひゃあぁ…、いちーちゃんっ! あ、あの子たちっ、◇△×○◆×…!!」

「なっ、なに!?」


意味不明な後藤の言葉でTVに目を移すと、
『さやか』が『まみ』の服の中に手を入れて、ベットに押し倒していて。
それで…

210 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:15



『…ぅあっ…ぁっ…やぁん…っ…』

『まみ……気持ち、い?』

『…っ!…ふぅっ……んぅ…』

211 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:16


「………」

絶句。

市井も後藤も画面を見ながら体が凍り付いて、未知の世界の様子を目の当たりにしているような感じだった。


女の子同士で…あんなこと…女の子同士なのに…そんなこと…


そんな事が頭の中をぐるぐるまわって、息をするのも忘れてしまうくらいに
市井と後藤は映像の中の2人の動きを見つめ続けた。
212 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:16



■■■■


213 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:16


しばらくそのままの状態でいて、その行為が大体中盤あたりに差し掛かった時。
市井の腕に掴まったままの後藤が、小さい声でとんでもない事を眩いた。


「……あの『さやか』…って子さぁ。 いちーちゃんに似てない…?」


…えぇっ!?
マジっすか!


正直、少しだけそんな要素があるなぁとは感じていたけど…
まさか後藤までそう思っているなんて。
214 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:17


画面の中の『さやか』は黒髪のショートカット。
白い肌、鼻が高く、体は細身で。
声もなんとなーくだけど市井に似ているようで。


「…そう?」

声が少しだけ震えてしまった。

なんとなく、あんな事をしている『さやか』と似ているとゆうことが
市井にとって嫌だったから言わないでおいたのに、それを後藤に指摘されてしまって
なんか言い逃れ出来ない状態になってしまって。

「似てるよ」
「似てない」
「似てるってっ」
「似てないってば!」

まるで母親に間違いを指摘されて、それを認めたくない子供のように
市井は拗ねた感情を露わにしてしまっていた。
215 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:17


『…ぁっ!…ぁあっ!…んっ、んん―!!』

…でも、そんなこと言ったらさ…


216 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:18


「あの『まみ』って子も、後藤に似てない…?」


同じように、画面の中の『まみ』は
茶髪のストレート。長さは肩より少し長いくらいで。
目が少し離れ気味で、ぼやぁっとした印象をもっていて。
甘く高い声なんか、隣にいる後藤にそっくり……


そこまで考えて、ふっと思考を止めた。


なんだか、それじゃあ市井と後藤が…その。…してる、みたいじゃん。

217 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:18



途端に体の体温が上昇した気がした。


隣にいる後藤は気づいてないだろうけど、段々と鼓動も早くなってゆく。
『まみが後藤に似ている』とい問いには後藤は何の反応も見せないで。
いつもなら「照れてんの?」なんてからかってるところだが
今の市井にそんな余裕は無い。
218 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:19


「………」

「………」

やらしい喘ぎ声だけが、部屋の中に響く。


気まずいなぁ…
なんなんだろこの妙な空気は……


市井の両親は今日町内会の集まりで帰りが夜中だって言っていたので
この家には市井と後藤の2人きり。
親がいなくて気楽だと喜んでいた市井は、今猛烈に親達がなるべく早く帰ってくることを望んでいた。
219 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:19


なんだか恥ずかしくなってきた。
こんなビデオを、女の子と。しかも後藤と見てるって事が。
二人ともくっつきすぎて、ほんのり汗をかいてきたかなぁってくらいの温度で。


後藤と触れ合ってる部分が熱い。
隣に後藤がいる。
その距離は近くて。



…まだ、変な気分には、なってないけど。

220 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:20



□□□□


―――そして。
その30分後、事件は起こる。


221 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:20



「…んっ?」

あれ?

腕にかかる後藤の重みが、一瞬無くなったかと思うと
一転して市井の視界が急にぐらついた。


「ぉわっ!?」


初めは、何が起こったのか分からなかった。
視界が白い天井に変わって、背中に床の冷たい感触がする事に気づいて。
やっと市井は「後藤に押し倒された」って状況に気づいたんだ。
222 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:20


ゴチンとカーペットの上に頭を打ちつけ、「いたた…」なんて頭を擦ってる暇もなく。
市井の体の横に膝をついて、上から見下ろしている後藤が顔を近づけてきた。

ま、まさか…?

223 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:21


「な、なっ、なにしてんのっ? 後藤、重いって。早くどいてよ」


焦って、どもって舌がまわらなくって、早口になる。
こんな時、年上のプライドも何もあったもんじゃない。

「やだ…」

「ちょ…っ!」


グッと後藤の肩を押すと「やだっ!」と、一際大きい後藤の声が上からした。
224 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:22


それに驚いてる間に、いつの間にか後藤のすべすべした手が市井の熱い頬を包みこんでいる。


市井の存在を確かめるように、何度も、何度も頬を優しく撫でて、
―――再び 後藤の顔が近づいてきた。
225 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:22


顔にかかる温かい吐息。
後藤の顔が本当に近い位置にある。思わず体をちぢこまらせる。
ギュッと目を瞑ると頬に「ちゅっ」っと柔らかい感触が広がった。
キス…されちゃったなぁ。
ほっぺにだけど。


「…後藤…?」

226 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:22


「いちーちゃん…」

TV画面には、まだ最中の2人が激しくベットを揺らしながら行為を続行している。
ビデオを見るために部屋を暗くしたから、TVから漏れる明かりしかなくて。
後藤の顔半分が青い光りで照らされて、後藤の真剣な表情と、とろんとした瞳が市井の目に映し出された。


「いちーちゃん…」


後藤がもう一度市井の名前を呼ぶ。
いつもの甘えるような声に、やけに艶っぽい印象がプラスされて。
鼻にかかったような甘い声に、市井は、ノックアウト寸前だった。

227 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:23


「ごとー…もう、我慢できないよ……」

「へ…?」



「…いちーちゃんと、したい…」

228 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:23



………


……市井も。

なんだか、今、無性に後藤に触れたい。

すごい変な気分だ…


女の子の後藤にこんな風に思うなんて。

229 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:24


返事をしないで。後藤の唇に、自分のそれをそっと重ねた。
初めて感じる感触は、とても柔らかく、繊細で。

「…んっ …ちーっちゃん……んん」

「ごとー…」

後藤が市井の首に腕をまわしてきて、ギュッと強く抱きしめられる。
それに応えるように市井もしっかりと後藤の腰へ腕をまわした。


段々激しくなるキスも。

荒くなる息遣いも。

もうどちらのものかわからなくなってきて。

ただお互いの体温と、唇の熱さだけを感じて、しばらくの間キスだけに夢中になった。

230 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:24


「…んはぁ…っ…あっ…ぁ…っ」
「ん…」


唇を離すと二人の間にかかる透明な橋。
どうしても荒くなる呼吸をなんとかおさえこんで、後藤の頬に触れる。
あっついなぁ…
231 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:24


もっともっとごとうにくっつきたい。

もっと後藤の体に触れたい。


キスだけじゃ全然もの足りず、あと、求めるものは…

232 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:25


「後藤…」
「ん…っ…いちーちゃん…」
「触っても…いい?」
「……」
「………ダメ?」

暗闇でもわかるぐらいに顔を真っ赤に紅潮させて。
それに気づかれるのがイヤなのか、後藤は顔を自分の手で隠した。


「だっ…だめじゃないけど…… いちーちゃんに見られるの、恥ずかしいから…」


ドカーン!!!


おいおいおい。
やっべ……ごとー…かわいぃぞ…
233 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:25


「大丈夫…」
「ん…?」
「可愛いよ」


再び顔を隠そうとする手をとって、荒々しく唇を奪う。
市井の欲求はどんどんどんどん昂ぶっていき、もう止められそうになかった。
たぶん、後藤も…


このまま、いっちゃってもいいかな…?

後藤とならいいや。
そんな風に思っていた。
が…

234 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:26



ガチャガチャ…

バーン!!


「たらいま〜」

235 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:26



……!!!?



か、か、帰ってきたー!?
予想以上じゃん!
なんでこんなに帰りが早いわけ?!
夜中って言ってたのに!!

236 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:27


目にも留まらぬ速さで、ビデオデッキまで走り、電源を消す。
薄暗い部屋の中も、すぐにスイッチをつけて明るくさせた。


ガチャ。

「ただいま」
「お、おかえり…」
「なんだ。真希ちゃん遊びに来てたの?
いやー邪魔して悪いねぇ」
「いえ…」
後藤…不自然なくらい顔が赤いけど…だいじょうぶかな……
237 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:27


「なんでこんな帰り早かったの?」


「いやいや、なんか思ったより早く話し合いが終わってね。
帰りにおいしいものでも食べて帰ろうかと思ってたんだけど、財布を家に忘れて……」

あはは と気さくに笑う両親たち。


……アホだ……


せっかく、せっかく、あとちょっとで…

……


………って、いちーなに考えてんの!?

238 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:28


「じゃあ、せっかくだから、真希ちゃんも連れて食事に行こうか?」
「そうねぇ」
「え…!?」
「そんな…っ良いですよぉ」
「まぁまぁ 遠慮しないで」


半ば強引に腕を引っ張られ、家族+後藤で夕飯を食べに行くことになってしまった。

「ほら、さやかっ! 早くしなさいっ」


…っるさいなぁ。
239 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:28


市井と後藤は、軽く変装してから、車に乗り込んだ。



□□□□


240 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:28


「着いたぞー!」

「あらあら真希ちゃん焼肉なんかで大丈夫?」

「はい…」

「……」


目的のお店へ到着。
ずーっと車の中でうちの親達に話しかけられまくって、後藤困ってたし。

241 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:29


「いちーちゃん」
「ん?」
「…あのさぁ…」


「……手、繋いでもいい??」


「…うん」

ちょこっと触れてきた手を、つよく強く握り締める。
嬉しそうに微笑む後藤の顔が、また最高に可愛いんだ。


邪魔はされたけど……
・・・まぁ、いっか。

242 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:29



―――市井の日記。


243 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:29


■  ○月×日 (晴れ)


今日は家族と後藤とで焼肉を食べに行った。
久しぶりに食べる大量の肉は、お腹がはちきれそうになるくらいいっぱい食べたけど
やっぱりおいしくて。
隣で頬を綻ばせて肉をつまむ後藤。可愛かった。
今度仕事が休みの日に、また、どこか食事でも連れて行ってやるか。

244 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:30


「………」

そこまで書いて、ペンを置いた。


今日は色々あって疲れたけど楽しかったな……

日記を机の中にしまって後藤にメールを打つ。


『今度のオフ、いつ?』


送ってすぐに着メロ炸裂。
245 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:30


返ってきた返事に笑みを漏らして返事を打ち、布団の中へ入った。
おやすみ…ごとう……



カーテンの隙間から漏れる月明かりは、どこまでも優しく市井の頬を照らした。



…今日は…良い夢が見れそうだ。

246 名前:Eイケナイコト 投稿日:2004/03/23(火) 09:32


 Eイケナイコト 終

247 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/03/23(火) 09:33


皆様、レス有難うございました。
作者これから仕事に行ってきます。遅刻しそうです。
レス返しはまた今度。
それでは…(逃げ

248 名前:( *´ Д `) 投稿日:2004/03/25(木) 07:31
( ´ Д `)<いちごま作者ガンガレ!

そして更新キてタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
249 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/25(木) 09:09
>248
嬉しい気持ちもわかりますが、
作者様がochiでと書かれているのだから、
sageましょう。
ということで、落としときます。

楽しく見させていただいています。
同じようなことしかいえませんが、
がんばってください。
250 名前:K 投稿日:2004/03/25(木) 16:11
更新お疲れ様です!!

今回の話は、読んでてどきどきしました。
おいらも見てみたいと思っちゃいましたよ(>_<)
次回も楽しみにしてます!
251 名前:S 投稿日:2004/03/26(金) 23:58
更新おつです〜☆
今回の話もよかったです☆
次回も楽しみに待ってますね。
252 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:33

詩みたいなものです。
短いですが、いちごま風味。良かったら目を通してやってください。
253 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:34



□□□


□□□□


254 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:34



体は寒いけど心は温かくて
アタシの手握り締めるアナタの手、ちょっと震えてて
「かっこわるい」なんてアナタは言ってたけど
全然格好悪くなんかないんだよ
 アタシは、そんなアナタが大好き
静かに二人寄り添って満天の星空を見上げた
アナタの肩に体を預けて、寄りかかって見上げるともっとキレイ
頬が赤くて 二人。
どちらともなく顔を近づけ、唇を重ねた
繋いだ手も、一瞬だけ触れた唇も、照れたように笑うアナタも
みんなみんな
 だいすき

255 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:35


「…へへっ」
「なんだよ」
「なんかね 今、すごいしあわせ……」
「……」


「あのね」
「んん?」
「ごとぉ ずっとこうしてたいなー いちーちゃんと2人で」
「うん…」

256 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:35



これから先もずっと好きだよ
ずっとずっと後藤の傍にいるよ
そう言ったらキミは泣いた
くしゃくしゃに顔を綻ばせて
キミは泣いた
汚いなぁなんて言いながらハンカチで鼻をふいてやって
ガキかよって言いながら頭を撫でたら、ほんとに子供みたいにえへへと笑った
キミの笑顔もキミの優しさも温もりも
いつになったってどんなことがあったって
忘れずに生きていくから

257 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:36



ただ、このままでいつまでも過ごしていけたらいいね
何もこれ以上望むことはないよ
アタシの隣にアナタがいれば
アタシの隣にキミがいれば
手を繋いで歩いてゆこう
この宇宙のどこまでも

258 名前:ショート 投稿日:2004/04/07(水) 20:40


 FIN



( ´ Д `)< レスのお返しを致します

259 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/04/07(水) 20:50

>>172 まめ大福さん

初めまして!
初レス読者様キタ━━(゚∀゚)━!!
読んで下さってありがとうございます。
作者痛い系なものを書くと気持ちが暗くなっていくんで、どうしても甘い話になってしまうらしいです(w
こんな作品で良かったら、応援していてくださいね。

>>173 Sさん

有難うございます。
楽しみにしてくださっている人がいるのはとても嬉しいです(ノ∀`)
これからも宜しくお願いします。

>>174 Kさん

やはり痛い系書けないみたいです(w
もっと勉強しないと・゚・(ノД`)・゚・
甘いものだけではなく、これから色んなジャンルのものを書いていきたいと思ってます。

260 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/04/07(水) 20:57

>>248 ( *´ Д `)さん

喜んでいただけて幸いです。
これからも応援よろしくお願いします。

>>249 名無し飼育さん

わざわざありがとうございますm(_)m
レスを頂けるのは嬉しいです。
これからも頑張ります!

>>250 Kさん

今回の話はですねー・・・
妄想が暴発しましたw
こんな状況あったら自分も見てみてぇー!!(ノ∀`)
きっとKさんとは作者は話が合うはずです(ぇ

>>251 Sさん

有難うございます。
ヽ^∀^ノ < 次回も楽しみにしていてください!

261 名前:まめ大福 投稿日:2004/04/08(木) 17:38
更新キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
改めてスレを1から読み返しちゃいました(w
いちごま好きな自分にとって、このスレは大変有り難いです(嬉

相変わらずの作者さんのいちごまっぷりに完全にヤラレました
次回も白板も楽しみにしてます
マターリ頑張って下さい
262 名前:K 投稿日:2004/04/09(金) 15:45
更新おつかれさまです!
話、合うかもしれませんよね(w
作者さんのいちごま大好きですし、
今回のもおいら好みでしたし!
それにそういっていただけるのはすごいうれしいです☆

次回も白板の方も頑張って下さい!
263 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/29(木) 23:36
凄く久々にいちごまを読んだんですが、やっぱり自分はいちごま好きにゆるぎなし、という確認ができました。
特に【イケナイコト】が最高でした。
応援してますんでこれからも頑張って下さい!
264 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:26



言えない。
言えるもんか。
あなたが好きです・・なんて恥ずかしい言葉・・・
ただ恥ずかしいだけならまだいい。
相手に伝えられないってことが一番つらい。
そんな自分がもどかしくて。
頭を撫でられたり、お遊びで抱きつかれたり
ちょっとしたことで、おかしいくらいにうろたえてしまう自分が、格好悪くて。
でもあの子には絶対にこの気持ちを気づかれたくなかった。
だから、いつも冗談を言って誤魔化していた。
自分の本当の気持ちを。

265 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:26



だって

もしこの気持ちを伝えたら


あなたは苦しむでしょう?


266 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:27



困らせたくはないんだよ。



「ん?どーしたの?いちーちゃん」



あたしは、あなたの笑顔が大好きだから。

267 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:28


「おまえは・・・本当にかわいいなぁ」
「は!?きゅ、急になに言ってんのさ!」
「・・・・」
「・・いちーちゃん・・?」
「・・・・」


「・・・・・ほんとに・・・」

268 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:28



伝えられなくても。
抑え切れなくても。
苦しくても。
後悔だけはしない。
こんな恋あったって良いだろう?
普通じゃない恋があったっていいだろう?
だれかあたしの気持ち止められるなら止めてみろよ。
初めは歩きだったスピードが、自転車、バイク、車、やがて新幹線飛行機に変わり。

今は宇宙船。

好きっていう気持ちにどんどんどんどん拍車がかかる。速い、速い。
宇宙のように広くて深いあたしの想い。
あたしの想いは、自分で思っていた以上に広すぎて、重すぎて。
鉛のようなものを、あなたが胸に受けたら、重すぎて胸を痛めてしまうだろう?
269 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:29



「・・・・いちーちゃん?」


今はこれでいい。
いまはこれがいい。
近くにいてくれるだけで、あたしを思って心配してくれるだけで。
そんなぬるま湯に浸かって・・・だんだん平静を取り戻す。
いつも。


それであたしを、その笑顔で癒してくれよ。

270 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:34



「そんな顔すんな」


くしゃっと

髪を一撫で
271 名前:言えない 投稿日:2004/05/05(水) 21:35


後藤とあたしだけの空間、時間。


「・・あはっ・・・」



至福のとき。

272 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/06(木) 02:43
やっぱいいなぁ!!
待ってたかいがありました!!
最近ごまは年上組に分類されるので甘えごま不足だったんですよ。。
ごまが甘える相手といったら市井ちゃんでしょう!!!!
(あとはよしごまぐらい!?こちらも減少傾向にあり)
ということで次回もがんばってください!
またーりお待ちしております!!
273 名前:イーグルボーイ 投稿日:2004/05/07(金) 20:57
いちごま・・イイですねぇ。大好きです。
更新お待ちしております。
274 名前:K 投稿日:2004/05/20(木) 01:10
更新ありがとうございます!

毎回同じことばかり書いてますが、次の更新もお待ちしてます☆
275 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/20(日) 01:36
いつまでもお待ちしております
276 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/04(日) 07:12
matteruyo
277 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/11(日) 17:26
こっちの方の更新もお願いします(:_;)
作者さんのいちごまが読みたいです〜。
278 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:55



忙しい仕事の日々を、繰り返し繰り返し―――
…そんな毎日。
でも、今日1日はゆっくり過ごせそうだ。

「…くぁ」


大きな欠伸をひとつ。
最近ずっと寝てなかったんだよね。
せっかくのオフだけど、丸1日寝て疲れをとるのもいいかもな。

279 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:56


「あぁ、セミ鳴いてら…」


あー、なんか夏だ。
外はめちゃめちゃ暑そうなのに、1人暮らしの部屋の中は冷房がガンガンにきいてて
マジで心地よい。基本的に1人って好きなほうだし、すごい癒される。
久々の休みだ。なにして過ごそうかな……

280 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:56



ピポピポピポー―――ン

ドンドンドン!!!


外から、けたたましいインターフォンの嵐に続いて
ドアを壊されそうな勢いで叩かれまくる。


「誰だぁ…?」


うっさいなー
なんて迷惑なやつだっ!

281 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:57


ドンドンドンドンドンドン
「――はいはい。今開けますよって」


いちーは頭に寝癖をつけながら、ゆっくりとドアの前まで歩いてゆく。
よくよく時計を見てみると、まだ朝の7時30じゃねぇか。
なんって非常識なやつ!
これでくだらないセールスマンとかだったらマジでぶっ殺すからな。


「こらぁーっ!!」

282 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:57


「…んあ?」


なんか聞き覚えのある声……


「こんないい天気なのにいつまでも寝てないのっ!
 ほらほらほらっ お出かけするよーっ!!」


「……やっぱりお前かよ……」


ドアを開けると、そこには頬を膨らまして怒る仕事仲間の姿があった。
もう19にもなるのにその表現の仕方にはちょっと違和感があったけど、可愛らしさには特に問題が無かったので、突っ込まずにほおっておく。

283 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:57

「あのね、いちー疲れてんだ。わかるでしょ?
今日は1日ゆっくりぐっすり過ごしたいの。」

「…そんなのだめっ!」

「はー? 後藤も久々の休みなんだからゆっくりしとけって。」
284 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:58


「せっかく一緒のオフになったのに、何かしなきゃつまんないじゃんっ!」
「じゃあ友達でも誘って映画なり遊園地なり行ってくりゃいいじゃんよ。」
「後藤はいちーちゃんとがいいのっ!」
「はいはい。いちーは今すっごく眠たいの。だから寝かせて。」
「もー!ばかっ!!」


怒鳴られながら、ボカッと頭を一撃された。
後藤は軽くやったつもりだろうけどけっこう痛い。
せっかくの休日なのになんでこんな目に合わなきゃならないんだ…

285 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:58


「じゃあ、家の中で遊ぼうよ。ビデオでも借りてきてさ」


しょうがない…
後藤が家に来た時点でゆっくりした休日を過ごせるとは思ってなかったからな。


「うんっ!」

286 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:59


「ビデオ屋は近くにあるし…、あ、財布は持ったっけ?」
「あれ?…いちーちゃん…まさかその格好で外行く気?」
「うん」
「ちょ!ダメっ!ちゃんとした服着てきてよーっ!」
「なぁんでよ…めんどくさい……」


『どうせ近くだからいいじゃんよー』
という市井の言葉を無視して、勝手にクローゼットの中を漁る後藤。

287 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:59


「あ、これなんかいいんじゃない?」

げ…


「それ…間違えて男友達の服持って帰ってきちゃって…そのまんま返すの忘れてた…」
288 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 10:59
「はいっ!これとこれで決定ね〜」


上は髑髏のイラストなんか書かれてる悪趣味なTシャツの上に、黒の上着を着て
下は少し大きめ(ってかかなり)のサイズのジーパンを穿かされて、外に出た。

289 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:00

「う〜…、これサイズでかすぎだって…
腰あたりまできてる…」


さっきから腰からずり落ちそうになっているジーパンを元の位置まで戻すのに四苦八苦。


「いいじゃん♪かっこいいんだし、ねっ?」
「かっこいいって…いちー女なんですけど。」

しかも寝癖を隠すために被ってきたキャップで、余計に…
その、男みたいになってるし。

290 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:00


「ほらっ さっきからあそこにいる女子高生とか超こっち見てるし〜」
「はぁ…気のせいだって……」
「……むぅ…」
「んん?」


「なんか、やっぱりあの格好のまま来るべきだったかも」


「は!?」

じゃあ市井がわざわざこんな格好してきた意味無いじゃん!!

291 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:01


「いちーちゃんは後藤のものだからねー!!?」
「ばっ 声でかい!! しかもそんなくっつくな!」
「なに照れてんのさ〜」
「後藤こそ、なんで今日はこんなにいちーに絡むんだよっ!」
「えー、だって仕事場でこんなこと出来るわけないでしょ?」
「…そりゃそうだけど」


ってか、したら怒るし。
今も怒ってるけどさ…。


「あのねー、こうゆうのは彼氏にしてあげな?
後藤だったらきっと喜ぶと思うし。」

「………」
292 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:01


「後藤?」

「いちーちゃんは、後藤にこうされて、嬉しい?」

「はぁ…?」

「後藤、彼氏なんかいないもん」

「…そうなの?」

293 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:01



「後藤は、いちーちゃんがいればいいんだよ…」


294 名前:F伝えられない 投稿日:2004/07/19(月) 11:02


…っ!
な、んだそれ…?


「……あ、ビデオ屋着いたぞ! 後藤なに見たい?」


上手く話題がそれればいいけど…。
さっきから後藤が市井の腕を掴んで離さないから、さっき言った後藤の言葉が
頭の中から離れなくて…困る。

295 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/07/19(月) 11:02


ヽ^∀^ノ < とりあえずここまで!

296 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/07/19(月) 11:13

( ´ Д `)< レスのお返しを致します。

>>261 まめ大福さん

こんなスレを始めから…・゚・(ノД`)・゚・
ご苦労さまです(嬉)
遅れて申し訳ありませんでした。

>>262 Kさん

今度いちごまで語りましょう(笑)
2人とも脱退した今、読者様がいることはとても嬉しいことです。
いちごまよ永遠なれ!(・∀・)

>>263 名無し飼育さん

いちごま同士キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
色々ありましたが、好きでいるぶんには全然構わないですよね。
これからも頑張ります!
297 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/07/19(月) 11:16

>>272 名無し飼育さん

王子的ごま増えてますねー。(と、ゆうかほとんどですか…)
そっちもいいですが、一番ぐっとくるのはやはい甘えごまでしょう!(強制)

>>273 イーグルボーイさん

大好きですか♪
その言葉がいちごま作者的に、1番嬉しいです。
いちごま好きがもっと増えるといいなぁ…

>>274 Kさん

毎回のレス、本当に励みになっております。
有難うございます。頑張りますね!( ´D`)
298 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/07/19(月) 11:18

>>275->>277 名無し飼育さん

お待たせしました…
遅くなってすいません。
レス有難うございました!
299 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/07/19(月) 11:19

後半は、また次回。
レス励みになります。有難うございます。


次はもっと早めに更新できるように頑張ります…_| ̄|○
300 名前:275 投稿日:2004/07/20(火) 01:42
甘えごま最高
後半も期待しております
301 名前:K 投稿日:2004/07/20(火) 21:18
更新お疲れ様です。

今回の話の市井さんかっけ〜!
男前な市井さん大好きなんで、すごく楽しませてもらいました b(゚ー^)
もちろんそんな市井さんに甘える後藤さんも大好きです。
続き楽しみにしてます!
302 名前:まめ大福 投稿日:2004/07/21(水) 00:21
お待ちしてました!!
いちーちゃんカッケー
ごっちんもキャワイイし…
次回も楽しみに待ってます
303 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:01



( ´ Д `)< 続きです


304 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:02


・ビデオ屋の中

305 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:02


「………」

「後藤、あれ!あれ面白そうじゃないっ?」

「…………」

「ほらー 後藤、この映画見逃したって言ってたじゃん。」

「………」

「いちーも見てないからけっこう楽しめるかもよ」

306 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:02


「…………」

「…おーい ごとーちゃーん?」


おいおいおい
完全無視ですか?

307 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:03


そう思って露骨に顔を引き攣らせていると、その顔を見たのか
ずっと黙っていた後藤がポツリと一言だけ。

「それ…、もう借りて見た」

「……あ、そう」


なんなんだよ。
なんで市井がこんな気を使わなきゃいけないんだよ。
後藤はさっきから異常に不機嫌だしさぁ。
・・・せっかくの休みにおしかけて来たくせに!

308 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:03


「じゃー、適当にこれとこれ借りていく?」


そう考えると急に後藤の機嫌をとるのも面倒になってきた…。
その辺にあった『話題作』と書かれたコーナーの中から2本を手に持って
後藤の返事も聞かずにレジへ行こうとする。


「――っと」
すると、さっきからずり落ちそうになっていたジーパンを引っ張る後藤。

309 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:04


「ちょ、後藤そこ引っ張るなって。 脱げるから、脱げるから!」
「…ごめんなさい」


…もう。こいつは。
さっきまで怒ってたくせに。
なんでそんな泣きそうな顔してんだよ…


「別にいちーは怒ってないぞー?」

310 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:04

「だって…」

「後藤が謝る必要ないんだよ?」

「…いちーちゃん…っ」

「泣くなよぉ。ってゆうか、お願い。それ以上引っ張んないで。ね?」


「……ぅっ、…ふぇ…っ…」

311 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:05

「げっ!泣くなぁ」


結局泣きやがった…
ほんと子供みたいなやつ。
昨日TVで言ってた『感情のキフクが激しい子』ってまさに後藤のことじゃん。

312 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:05


『…痴話喧嘩は店の外でやれよなー…』

313 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:06


はっ!?

いつの間にか、店内にいる客や店員の注目の的になっていた市井達。
そんなに広くない店だから、後藤の泣いてる姿はそうとう目立ってしまっていたらしい。


「あっ、これとこれ借ります!」
「ご利用期間は?」
「一週間ぐらいで!」
(ってか、もーなんでもいいから早くこの場を去りたい・・・)

314 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:06


「ありがとうございましたー」


市井は後藤の手を引っ張り、店内中の人に冷めた目で見られたまま、逃げるように外へ出た。
そりゃあっちから見れば彼氏が彼女を泣かしてるみたいに見えたんだろうけどさ。


「………」


――ってやっぱり、市井が「男」に見えるってことか!
ちょっと、ショック…。

315 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:07


「…・・・まだ泣いてんの?」

「…っく…、ぇっ……ごめんなさい…っ」


「だから謝んなくて良いってば」


よしよしと頭を撫でてやると、それが後藤にとって逆効果だったのか。
涙の次に鼻水まで出てきて、ますます顔全体がぐちゃぐちゃになっていった。

316 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:07

「鼻水出すなよ…きちゃないな。」
「…ん、…いちーちゃん…っ」
「ん、なに?」


「ごっ、…ごとーねっ…」


その後もしきりに「ごとーね」と繰り返して、話が進まない。
何か市井に伝えたいことがあったんだろうけど、やっぱりこのまま外にいるのもね…。
317 名前:F伝えられない 投稿日:2004/08/01(日) 21:08


ほんとに市井が彼女を泣かしているダメな彼氏みたいで。
そんなことを考えている自分に苦笑しながら足早に市井の住むマンションへと向った。

318 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/08/01(日) 21:09


( ´ Д `)< ここまでです!

319 名前:ちょっぱや 投稿日:2004/08/01(日) 21:17

ヽ^∀^ノ < レスのお返事です。


>>300 275さん

まだ半分程しか話が進んでないのですが、更新遅くてすいません・・・
受け弱甘え系ごっちん最高!(妄想ダメ人間/苦笑)

>>301 Kさん

今回はボーイッシュちゃむです。
クールだけど、凄く優しい彼氏(?)の方って理想ですね。

>>302 まめ大福さん

後藤さんは、外見強そうに見えて、
市井さんの前では弱いってところがイイ(・∀・)!です。
レス有難うございました。

320 名前:K 投稿日:2004/08/11(水) 00:14
続きいつまでも待ってます!
おいらも理想だと思いますよ。
いいですよね〜、そんな彼氏(?)(>_<)
321 名前:ミッチー 投稿日:2004/08/16(月) 02:45
初レスです。
白板の方も、拝見させていただいてます。
やっぱ、いちごまが一番イイっすよネ!!
カッコイイ市井ちゃんと、可愛い後藤が一番好きです。
322 名前:S 投稿日:2004/09/04(土) 02:53
あまえごま、いいですね〜。つづき待ってます♪
323 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/31(金) 17:19
( ´ Д `)いち〜ちゃん、おめでと〜☆
324 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/09(水) 01:30
待ってます。

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