怪談 - KWAI DAN -
- 1 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:31
- 真っ暗な部屋に十五の灯り。
炎のともった蝋燭の後ろに少女がひとりずつ座っている。
その顔は下から橙に染められて不気味な影を作っていた。
物音ひとつせず、時間は夜中の二時をまわったばかり。
「……本日はよく、お集りくださいました。」
地を這うような呟きが上座から聞こえて、何人かの体が
ぴくりと動く。一言毎に蝋燭の炎がゆらゆら揺れていた。
「では早速、始めましょうか。」
- 2 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:32
- 飯田圭織の巻
圭織の実家は北海道だったけど、比較的海が近くに
あったから、夏は親戚一同で必ず海に行くってのが
恒例の行事だったのね。今はもう行ってないんだけ
どさ。ってわかるよね?
うちらの夏は仕事ばっかで休みなんか全然無いし。
……でも圭織がこの仕事を始めたからその行事が無
くなった訳じゃなくてね、そのちょっと前に事件が
あったからなんだ。
圭織の従妹に沙織ってお姉ちゃんが居てね、圭織よ
り三つ上ですっごく仲良かったんだけど、死んじゃ
ったの。海で溺れて。
- 3 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:33
- 当時は圭織が中学二年生で、沙織お姉ちゃんが高校
二年生。すっごく優しくて憧れのお姉さんだったん
だ。歌手になりたいって夢をただ一人真剣に聞いて
くれた人でね、って今はそれはどうでも良いか。
沙織お姉ちゃんは泳ぎが上手だったから、まさか溺
れるなんて思わなくて、一人で沖の方まで泳ぎに行
ってたのね。だからみんなが何か様子がおかしい、
溺れてるんじゃないか、って気付いてもすぐに助け
られなくて、助けに向かった時にはもう遅かったの。
つい一時間前まで元気だった沙織お姉ちゃんが、運
ばれて行く時には全身の血が無くなったみたいに真
っ白だった。顔も紺野みたいになってたし、ってそ
れは冗談。ごめんね、紺野。
- 4 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:33
- 圭織、そんなの初めてだったから驚きと怖さで呆然
としちゃって泣くことも出来なかった。で、すぐに
帰ってお通夜とお葬式をしてね、火葬場で骨になっ
た沙織お姉ちゃんを見てそこで初めて泣いたの。
あぁ、本当に沙織お姉ちゃんともう会えないんだな
って気がついちゃって……。
それからは叔父さん夫婦に悪いから、ってことで夏
に親戚一同で海に行くのは辞めちゃったってわけ。
ここからが本番。
圭織ね、それから二ヶ月くらいしてから、この時に
撮った写真をまだ現像してないことを思い出して、
現像しに行ったの。ほら叔父さん夫婦にしたら元気
な娘の写ってる最後の写真なわけじゃない。きっと
欲しいんじゃないかな、と思ってさ。
- 5 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:34
- でね、現像に出してから引き取りに行ったら、写真
はすべて光が当たってて現像に失敗しました、って
言われたの。それでも良いからください、って言っ
たら、それも渡せません、だって。おかしいよね?
圭織もそう思ったからさ、この写真は遺族に渡す必
要があるんです、お願いですから下さい、って喰い
下がったの。
そしたら写真屋さんってば、亡くなったのは高校生
くらいの娘さんじゃないですか、って聞いてきたの!
そうです、って答えたら、実は写真の現像には失敗
してません、もう亡くなられているのなら、って言
って持って来てくれたのね。
- 6 名前:U0 投稿日:2004/01/01(木) 20:34
- 見たとき圭織さ、叫んじゃった。
親戚みんなで撮った集合写真なんだけどさ、沙織お
姉ちゃんにだけ、足とか手とか首になんか透明で水
色っぽい子供がくっついてたの。
後から叔父さんに聞いたら、沙織お姉ちゃんは何回
も子供を堕ろしてたんだって。あんな優しいお姉ち
ゃんが、ってすごく驚いたんだけど、圭織ね、こう
思うの。きっとその子達が淋しくてお母さんを呼ん
だんじゃないかなって。……自分がそれまで居た水
の中にね。
これで圭織の話は終り。居ないと思うけど心当たり
のある人は、海に入るときは気をつけてね。あら、
なっちどうしたの。なんか顔色が悪いけど……。
飯田圭織がふっと蝋燭の炎を吹き消し、残り十四人。
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 18:40
- おもしろそう。期待してます。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/23(金) 00:22
- 残り14話、期待してます…。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 21:25
- おもしろい。続き楽しみに待ってます。
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