そんなあなたと、こんなわたし
- 1 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/05(月) 01:24
-
ここで作品を読み続けるうちに、
妄想を自分の内で留められなくなってきました。
駄文ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
sage進行でよろしくです。
- 2 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:30
-
ありえない。こんなこと…
『ペット大集合! ポチタマはこの後すぐ!』って、たしかに一緒にやった…。
Mステのライブの衣装もそりゃあ、ね、だったけど…。
どーして? 何で?
何で美貴ちゃんに耳としっぽがついてるのー!
※ ※
- 3 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:33
- 何か鼻がくすぐったいなあって思って目を覚ましたんだよね。
美貴ちゃんはいつものよーに、私の左腕を枕にして胸に顔をうずめて眠ってる。
何かね、安心するんだって。
二人きりのときはすっごく甘えてくるんだよねー。
って、のろけてる場合じゃなくて。
そうそう、くすぐったいなぁって美貴ちゃんを見たら、何か私の鼻息に合わせてぱしぱしとあたる三角。まるで、『あのー、くすぐったいんですけどー』って言わんばかりに。
…っていうか、っていうか…これって、もしてかして…。
- 4 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:35
-
美貴ちゃんを半分抱えるように抱き寄せて、そーっと右手でお尻の辺りを探ってみると、パジャマが不自然に盛り上がってる。
指先にはふわっとした毛の感触。そーっとたどってみると、パジャマのズボンから飛び出しているそれは、美貴ちゃんの背中でなんとなく丸くなってた。
これってさぁ、だよねぇ…
もう一度、今度は撫でるようにたどってみると、するっと、絡み付いてきた。そして、その先っぽが私の二の腕をぺしっ。
『…えっち』
そんな言葉が耳元で聞こえてきそうな感じで。
うっわ! 顔が熱い。
でも、これって、間違いない…よね。
- 5 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:36
- 美貴ちゃんを起こさないようにそっと上半身だけがんばって起こすと、布団を上げてみた。
ベッドサイドの明かりをつけて、改めて再確認。
人って、あんまり驚きすぎると、言葉って出ないものなんだね。
「へっ!?」
触ったとはいえ、あまりにもまぬけな、でもそれが見た瞬間の第一声。
思い返してほーっとため息が一つ。
私のパジャマをきゅっと掴んで丸まって眠っている、猫の耳と長いしっぽがついた美貴ちゃん。
あー…。そのカッコ、何か反則だよぉ…。
- 6 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:39
- とりあえず起きてベッドに座ったまま、どうしよう、起こそうかなって思っていると、ベッドサイドの明かりで美貴ちゃんが目を覚ました。
「…りかちゃん?」
むーっとちょっと機嫌悪そうに見上げてくる。あー…どう説明したらいいのかなぁ。
「どしたの?」
「えっ?」
「んー…。だって、むずかしー顔して美貴のこと見てるから」
「そ…そうかな?」
「そうだよ。どうしたの? ん?」
『まゆ毛がハの字になってるよー』なんて言いながら、うにうにと体を動かして頭をひざの上にのっけて、眉間を突付いてくる。
思わずため息が出た。
- 7 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:40
- 「なにー! ため息ついちゃって。イヤ?」
「違うよ。そうじゃなくって」
何て言ったらいいんだろ。ただでさえかわいいのに、しっぽと耳までついちゃってさ。それで膝の上から見上げてくるんだよー!!
「…美貴ちゃん、反則だよ…」
「へっ…! なにが!?」
「うん。いちいちかわいすぎるの」
しっぽが不満げにふにふに揺れてる。っていうか、気付いてなんだよね。やっぱり…。
「モー! 一人で納得しないでよー」
唇をタコにして膨れる美貴ちゃんの頭を撫でてご機嫌をとってみると、不満そーな顔をしたまま首をかしげた。
「ごめんね。うん、あのさぁ、鏡、見てきてくれる? そしたらわかるから」
「鏡?」
撫でていた手を止めて、うなずいて返すと、しぶしぶ起き上がった美貴ちゃんは、鏡を見に行った。
- 8 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:41
-
ドタドタドタドタドタ…
『リッ…梨華ちゃん!』
戻ってきた美貴ちゃんの慌てぶりはすごかった。
『ちょっとー! 何これ! 何でしっぽついてんのー!』
『何で梨華ちゃんはなんにもなってないのよー!』って。肩を掴んでがくがくと揺さぶられる。
そんなこと言われても困るんだけど、でも、それが普通なのよね。私の場合もうなんか、慌てるというよりも、今の美貴ちゃんをみてると、ドキドキしか…。
- 9 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:41
- そんなこんなで10分経過。
ひとしきり慌てて落ち着いたのか、今はちょこんとベッドに座って自分のしっぽを手にしてなにやら観察してる。長くて茶色の、ちょっとしまが入ってるしっぽ。耳も明るい茶色で髪の色とよくあってる。
「三毛猫みたいだね。なんかかわいい」
「そうかな?」
「うん。しっぽもきれいだし、やわらかくて気持ちいいよ」
毛並みのいいしっぽ。触ると恥ずかしそうにふにっと手から逃げた。
「梨華ちゃん、何かえっち」
「えっ。そうかな? でも、えっちってちょっとひどくない?」
「ひどくないよー。ホントのことじゃん」
あぁ、なんか慌ててたかと思えば、もう人のことからかってさ、なんかネコになったのわかる気がするなぁ…ってぼんやりしてたら、美貴ちゃんの顔が目の前にあった。
「ま、でも、美貴はそんな梨華ちゃんも好きだけどね」
また、そんなことをさらっと…。そんなに顔近づけて言わないでよ。もう…すっごく嬉そーに…。
「あーあー。梨華ちゃん、真っ赤だよ」
そりゃ、真っ赤になるでしょ、フツー。
- 10 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:42
- 「ところでさぁ、これ、どうしようか?」
美貴ちゃんの手の中であいかわらず、パジャマのズボンのゴムに締め付けられたしっぽがうにうにと動いてる。
「窮屈そうだしね、やっぱ、穴を開けるしかないよね」
「うん…。それしかないよね。じゃあさ、梨華ちゃん」
ちょこんと首を傾げる美貴ちゃん。私にやれ、と、そういうことだよね。それって…。
自分を指差すと、美貴ちゃんはにっこりとうなずいた。
「他に誰がやるのよ」
「そうだよねぇ」
「あー、またやらしーこと考えてるんでしょ。もう、えっち」
言葉の最後にハートマークを感じつつ、なによ、美貴ちゃんだって…って言おうと思ったら、「とりあえずハサミとってくるねー」ってベッドから飛び降りていった。
- 11 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:43
- ハサミを持って戻ってきた美貴ちゃんは、私にハサミを手渡すと、くるっと後ろを向いた。
これ以上からかわれるのはしゃくなので、気合を入れなおしてみる。
「どう切ろうか? パジャマ切っちゃうの、ちょっともったいないかなぁ」
「なーに言ってんのよ。一番稼いでるくせにー」
ぺしって、しっぽで頭をたたかれた。
「でもさ、切らずに済むんなら、それにこしたことなくない?」
「うーん。まぁね。裾が長いから、隠れるかなぁ」
パジャマの上着の裾は大体ひざ上15cm。ぎりぎり隠れるかなぁっていう感じ。
「大丈夫じゃないかな。別に外に行くわけでもないし」
「そうだね。じゃあ、パンツだけでいっか」
そういって美貴ちゃんはさっさとパジャマの下を脱ぐ。
そこで気付いた。
パジャマから伸びるきれいな足。
その格好、エロいよ…美貴ちゃん。
- 12 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:44
-
『梨華ちゃん、やさしくし・て・ね』
『なんか手つきがやらしー』(しっぽで軽く手を叩かれた)
『あっ…そこ…』
などと散々からかわれながら、ようやく簡単に切り目を入れてしっぽを出す。
「ありがと」って満面の笑顔の美貴ちゃん。しっぽも自由になって満足そう。
「…どーいたしまして」
「ほらほらー。そんなにすねないの」
むにって頬を引っ張られる。
「らっへ…みひひゃんひゃ、ひゃらひゃうんひゃひょん」
「ん? 何々?」
にかーっ笑う美貴ちゃんの手がほっぺから離れる。
「だって、美貴ちゃんがからかうんだもん」
「だって、梨華ちゃんかわいいんだもん」
そんなうれしそうに笑わないでよ。美貴ちゃん。
あぁ、なんかじれったくなってくる。
ペースが狂うっていうか、今日の美貴ちゃん、やっぱりいつもと違うんだもん。
- 13 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:45
- ため息がこぼれた。
美貴ちゃんが『ん?』って顔をのぞこんでくるから、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてみる。
「今日の美貴ちゃん、素直すぎ」
「なに? それですねてるの?」
「…すねテル? 私が?」
「違うの?」
「どうだろ…」
かもしれない。だって、さぁ。
「今日の美貴ちゃん、かわいすぎる」
「今日のって、じゃあ、普段の美貴はかわいくないわけ?」
にじりよって向かい合わせに私の膝の上に乗って首に手を回してくるから、私も自然に美貴ちゃんの腰に手を回す。
「そうじゃないけど、耳としっぽだよ? ただでさえかわいいのにさぁ…。なんか悔しいよ。独り占めしたくなる…。今だって、けっこう我慢してんるだよ…」
なんか恥ずかしくなって、ついうつむいて目をそらしてしまう。
- 14 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:47
- 「そっかぁ。じゃあさ、我慢しないで独占してよ」
「そういうわけにはいかないよ。みんなのものなんだから、建前でも、私たちは」
「まぁねぇ」
「そりゃあ、ココロは…美貴ちゃんに独占されてるよ。だから、でも…その、ココロだけじゃ物足りないなぁって、思ったから…。なんかね、もどかしいっていうか」
顔を上げてみると、美貴ちゃんはちょっと照れくさそうに笑ってた。
「ふふっ。くすぐったいね、なんか。美貴も同じだよ。梨華ちゃんのこと、独り占めしたいって思ってる」
すっごくうれしいって思ったのもつかの間、美貴ちゃんの顔つきがなんか険しくなってる。
- 15 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:48
- 「なんせ、けっこうライバル多いしね」
「それは美貴ちゃんだって…」
反論しようとしたら、アヒル口にすねた美貴ちゃんの言葉がかぶさってきた。
「ヨシコに辻ちゃん。矢口さんでしょ、あっ、あと田中ちゃんに、何気に飯田さんとか、まこっちゃんもだよね…って、乙女って何気にライバル多いじゃん!」
「そんなこと言われても…」
「まっ、梨華ちゃんは美貴のものだけどね。だけどけっこうやきもきするんだからー!」
「美貴ちゃんだって…けっこうよっすぃ〜とかののとかとくっついたりしてるじゃん。それに亜弥ちゃんだって…」
「美貴はいいの〜!」
「えー! なんでよー!」
「なんでもっ」って、アイドルスマイルでウインクする美貴ちゃん。完璧なまぶしい笑顔。うぅ…何にも言えなくなっちゃうじゃん!
- 16 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:50
-
って、あれ、なんか大切なことを忘れてたような……。
「あっ、そうだ!」
メンバーの名前が出てきてようやく思い出した。
「美貴ちゃん、どうしよう明日?」
「明日? オフだよね、たしか。だからこうして美貴がお泊りしてあまーい時間を…」
「そうだけど、それは今日だよ。もう日付変わってるんだから」
「あっ、そうか。明日って……あ゛っ」
美貴ちゃんも思い出したみたい。
いちゃいちゃしてる場合じゃなかったりするのよね、本当は。
- 17 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:52
- 「明日って、何だっけー」
「収録だよ。ハロモニの」
「それならまだ何となるかなぁ。衣装もスカートにしてもらえばいいんだし、耳は帽子で隠せばいいんだし、出かけるのも問題はないんだよね」
「そうだねぇ」
そう、収録だろうがリハだろうが、それ自体は問題ないかなと思う。なにが問題って…。
「まーどっちにしても、戻らなかったら、これでみんなに会わなきゃいけないんだよね」
そう。それ。まさにそれ。
「うん。ねぇ、美貴ちゃん…」
ここで、ちょっと上目遣いでおねだりをココロミル。
- 18 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:53
- 「明日のお仕事、風邪ってことでさぁ、お休みしない?」
「何で? サボる理由ないじゃん。病気じゃないんだし」
「そうなんだけどね、今の美貴ちゃん、あんまり見せたくないなぁって」
「えー! どーしてぇ。耳としっぽが生えてるだけじゃん」
「だからだよ。今の美貴ちゃん、殺人的にかわいいんだからぁ! 危険がいっぱい過ぎるよぉ!」
「危険?」
こっくりとうなずき返す。
「そりゃね、その格好でお仕事するわけじゃないけどさ、でも、仕種とか表情とか…。あんまり見せたくないなぁって…」
私の膝の上で腕を組んでむうってうなっていたかと思ったら、美貴ちゃんはふふって笑って顔を近づけてきた。
「やきもち?」
ぼって顔に火がついた。あぁ、もう、今日こんなんばっかだよぉ!
「ふふふっ。うれしーなぁ。じゃあさ、梨華ちゃんも一緒サボってくれる? だったら、いいよ」
「それはだめだよー。そうしたいのはやまやまだけどさぁ」
あれ、美貴ちゃん? フジモトさーん。目が怖いんですけどー。
- 19 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:54
-
美貴ちゃんはふいっと目をそらすと、ずりずりと私の膝から降りて、くるりと背中を向けた。
耳はしゅーんと倒れて、しっぽが不機嫌にパタンパタンと左右に揺れて布団を叩く。
はぁーっ…。ちょっとぉ。なんなのよ。なんなの、なによぉ…。
「ふーん。梨華ちゃんは美貴よりも仕事のほうが大事なんだ…」
「そっ、そんなことないよぉ…。でもさぁ、ほら、ねぇ」
「…何」
首だけで振り向いて、じとっとした目をあたしに向ける。ぴたっとしっぽが動きを止めた。
- 20 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:54
- 「何って、きっとカオたんが、ミキティがミケティになったーって、オヤジギャグとばしてさ…。『なんだそれー!』ってまりっぺが爆笑するの。」
あー腹いてーって泣きながら。あーなんかもう、目に浮かんでくるし笑い声が耳を離れない…。
「そのまりっぺの美貴ちゃんを見た最初の一言が、『ミキティ、なんかエローい』でさ…」
「なにそれ……。ちょっとさぁ、考え過ぎだって。……わからなくもないけど…」
ぼそぼそといいながら、まだいじけてる美貴ちゃん。あーあぁ。だめだなぁ。私…。
「ののとかあいぼんとか絶対しっぽとかおもちゃにしてくるよ」
「…安倍さんも?」
ノーコメントというか否定できないかも。それはそれでかわいいんだけど。安倍さんらしくて…。
- 21 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:56
- しかし私はまだまだ止まらない。
「紺野は『これって本物ですか?』って目、キラキラさせてさ。 よっすぃ〜はかっけー連発しながらなんかニヤニヤ笑ってて」
「で、愛ちゃんがいつも以上にびっくりした顔をする…。別に問題ないじゃん」
じとっとした目が私を射抜く。
負けじと上目遣いで睨み返した。
「梨華ちゃん、誘ってる?」
「違うよ」
なんかくすって笑われたような気がしたようなしないようなだけど、その言葉そのまま返したいくらいだよ、私は。
- 22 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:57
- 「で、なによ。ガキさんと田中ちゃんが軽ーくひいて、重さんと亀井ちゃんがきょとんとするくらいじゃないの? 重さんはちょっと読みづらいけど」
美貴ちゃん何気にノッてきてるよね、話に。っていうか楽しんでる? もしかして。
まぁいいけどさ、それで…。
「マコトがさ、鼻血出すんだよ」
「口ポカーンってあけたまま?」
こっくりとうなずくと、ぱっと顔を背けた美貴ちゃんの肩が小刻みに震えていた。どうもツボだったらしい。
笑うのをかみ殺し、肩を震わせながら、
「梨華ちゃん、それってちょっとひどすぎ」
って、目じりをぬぐってるし。
しかし、すぐに美貴ちゃんからの反撃。
少しだけ体を私に向けるとひざを抱え、そこにちょんと頭を乗せていじけた目で見つめてくる。相変わらずしっぽはぱたんぱたんって、布団に八つ当たりを続けてて。
- 23 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:59
- 布団をいじいじと突きながら、ぷーって頬を膨らませた。
「梨華ちゃんの妄想はおもしろい。けどさ、何で美貴はお留守番なわけ?」
「だって、危険なんだもん。鼻血だよ、鼻血。それにさ、いやらしー目で見られるんだよ。お持ち帰りされちゃうかもしれないし、私がいないときにへんなことされちゃうかもしれないじゃん…」
別に鼻血を強調したいわけじゃないし、メンバーを信じてないわけじゃ決してない。だけど、ねぇ、用心にこしたことないわけだし。それにほら、男の人だっているわけだし。
すると、美貴ちゃんがあきれ返ったようなため息をついて顔を上げた。
ぺしって、茶色しっぽに『こらっ』って頭を叩かれる。
「なーにネガティブになってんのよ。んー、まぁ、気持ちはわかるよ。梨華ちゃんがこーなっちゃったら気が気じゃないもん」
「でしょ?」
「だからー、だったら、梨華ちゃんが『美貴は梨華のものだーっ!』って守ってくれればいいじゃん。ってか守ってよ」
「え…」
ちょっと媚びる様な眼差し。
- 24 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 01:59
- 「守ってほしいな」
そして、甘えたような口調。
心臓に矢が突き刺さる、まさにそんな感じ。きゅんって胸がなった。
しっぽがふにふにって笑ってる。
カオたんやまりっぺをも圧倒するアグレッシブな“つっこみきてぃ”じゃない、こんな、ここまで甘えたさんな彼女を見れるのは私だけ。そう思うと優越感と一緒にしびれるような甘い痛みが体を走る。
ぎゅっとパジャマの胸元を掴んで、うつむいて、声を搾り出すように…。
でも、でもさ…
「私が嫉妬で狂っちゃいそうだよ…」
「梨華ちゃん…」
言っててわがままだなって思ったけど、今の美貴ちゃんを見てると、どうしようもなく不安になる。ころころ変わる表情や仕種がかわいいってだけじゃなくって、なんか…うまく言えないけど。
- 25 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:00
- そしたら、美貴ちゃんの右手が私の頬を包みこんだ。
顔を上げると、ちょこんと正座した美貴ちゃんの満面の笑顔。
「だったら、ますますお留守番はヤダ。梨華ちゃんが嫉妬に狂うとこ、見てみたい」
「…ぇ?」
「愛されてるって感じするじゃん。それに」
「それに?」って繰り返したら、ふっと真剣な表情に変わった。怖いくらいに、でも、綺麗な…。
「嫉妬に狂った梨華ちゃんって、どんなことをしてでも守ってくれそう」
体にカーッと火がともる。まさにそんな感じ。
あぁ…ダメ。くらくらする。心臓を鷲掴みどころか握りつぶされたって言ってもいい。
そんな私を見て美貴ちゃんはふふふって笑うと、首をちょこんと傾けた。
「だから、おるすばんはヤダ。美貴もつれてって」
わざと舌ったらずで、しかもヤダにゃーって、かしかしって私のひざを引っかくまねをしながら。
なによ、それ…。もう…ホントに何から何まで反則だよ…。
- 26 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:01
-
頬を包んでいる美貴ちゃんの手をとって、そのまま引き寄せる。
不意をつかれた美貴ちゃんが『なに?』って目をしてるのが何かおかしかった。
顔を近づけて、さっと掠め取るように唇を奪う。
「梨華ちゃん?」
「…うん」
目を真ん丸くして私を見る彼女にあいまいに返事を返しながら背中を向けさせると、私に寄りかかるように後ろから腰に手を回して抱き寄せた。そう、ぬいぐるみを抱くように。
ネコ耳の付け根の部分にキスしたら、パシパシッて耳が瞬いて、くすぐったそうに美貴ちゃんが肩をすくめる。
「私の負け」
「へっ?」
そして、左肩に顔をうずめた。
- 27 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:03
- 「やっぱり離れてるのヤダもん。私も」
そしたら、美貴ちゃんがくすぐったそうに笑った。
「じゃあ、守ってくれるよね」
「もちろん」
「よかった。がんばったかいがあったよ。梨華ちゃん、すっごいかわいかった!」
にーって、ものすっごいいたずらっこな笑顔。振り回されてるなぁとは思ってたけど、まさか…。
「もしかして、今の…演技…なわけないよねぇ?」
「さぁ。どうだろうねぇ」
しっぽの先がふにふに動いてて、なんかまだからかわれてるような感じ。
美貴ちゃんは横座りするように体をこちらに向けると、私に体を預けながら首に手を回す。右手がすうっと髪をかき上げるように滑り込んできた。
- 28 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:04
- 「でも言葉にうそはないよ。美貴は素直だからね。誰かさんと違って」
「私だって素直だよ。たぶん」
「たぶん、ね。リアクションは確かにね。あと表情とか」
「……リアクション?」
「うん。ほら、ねぇ。愛し合ってるときとか…ね」
うわっ…! 今日何回目だろ、顔が真っ赤になるの。
「ほらっ! 今も。照れちゃって。かーわいい! ああ、そっか。こんだけわかりやすいから、やっぱり素直かもね」
「…そうだね」
「だから、ね。時々は照れないで言葉にもしてよ。うん。まぁ、そーゆーことだから、これからはよ・ろ・し・く・ね」
「…はぁ」って返したらかるーく睨まれた。
「はぁ、じゃなくて、返事は?」
「はい!」
「よろしい。すっごく…感動したんたぞ」
言いながら、美貴ちゃんもちょっと照れくさそう。
かわいいんだけど、ちょっとずるいぞー。
- 29 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:06
- もっとも、私も美貴ちゃんのおかげで改めて実感したんだよね。やっぱりすきなんだなーって。
「美貴ちゃん」
「なに?」
「すき」
耳元でささやいたら、カーってあっという間に真っ赤になっちゃって、そうだね、素直だよね。美貴ちゃんも。だけど…。
「言葉も大事だけど、やっぱり体でも感じてほしいよね」
驚いている隙にそのまま押し倒して上にかぶさると、しっぽを捕まえてスーッと撫で上げた。
「ちょっ! 梨華ちゃん?!」
「なぁに? 美貴ちゃんの素直なリアクションが見たいだけなんだけどなぁ」
すーっと白くて綺麗な首筋を指でたどると、いつも以上にいい反応。どうやらそういうところもネコと同じみたい。
「ゴロゴロ鳴ったりするのかな?」
何か反論しようとしようと口を開きかけたから、じらすように首筋をくすぐってみると、何か頬を赤らめながら戸惑った顔をして小さく体を捩じらせる。
- 30 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:07
- 「ホントのネコみたいだね、気持ちいいんだ?」
言っててちょっと恥ずかしいけど、きゅとパジャマを掴んで、潤んだ瞳でちょっと睨みつけるようないじけた目がかわいくて。
ちゅって跡がつかないように首筋にキスをしたら、
「…あっ…!」
かすれた声が零れ落ちた。
「あーあ。本当に誰にも見せたくないなぁ…」
「りか…?」
「だから、うんと愛させて?」
嫉妬に押しつぶされないように。どうせ満たされない。好きになるほど欲しくなるから。
小さくうなずいて、背中に腕を回すあなた。
キスから始まって、深く深く求め合って、そして溺れていく…。
明日のことは、もう頭の中から消えていた。
- 31 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:09
-
※ ※
結局、元には戻らなくって、そのまま仕事に行った。
で、予想通り、カオたんのオヤジギャグが炸裂し、まりっぺは爆笑してた。
「ミキティ、なんかエローい!」
これも予想はしてたけど、やっぱり美貴ちゃん、キレかかってた。
だってねぇ、あいぼんとののが「エローい!」って面白半分に連発するんだもん…。ましてや、よっすぃ〜もにやにやしながら、ののたちと一緒になってるし。
「ちょっ! ちょっと安倍さんっ!」
「ミケティのしっぽおもしろーい!」
しっぽにじゃれつく安倍さんに、びっくりする亀井ちゃん。
後ろから重さんの「いーなー」っていうのと、「さゆ、そのいーなーって…どーゆー…」って田中ちゃんの動揺した声が聞こえたのは、きっと、気のせい。たぶん…。
なんか目をキラキラさせてる紺野の隣で高橋が固まってるし…。
- 32 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:10
- そして…。
「まこっちゃん!?」
それまでこの微笑ましいやり取りに笑ってたガキさんの驚愕の声。
「鼻血…」
「うん…」
ほけーっと高橋にティッシュをつめてもらってる小川の顔が真っ赤になってるのは、鼻血が恥ずかしいのか、美貴ちゃんに悩殺されたのかわからないけど。
みんな遊ばれちゃってる美貴ちゃんもかわいいんだけど、もう、いいよね。本気で切れちゃいそうだし…。
それに、ちょっとみんな調子乗りすぎ! もう!
「こらー! 美貴は梨華のものだー! いい加減にしなさーい!!」
そしたら、みんなの動きがぱっと、止まって一斉に…
「「「「「「「「「「「「「きしょーい!!!」」」」」」」」」」」」」
だって。ふ…ふんっだ。いいよぉだ。言われなれてるもん。
美貴ちゃんはっていうと、くすぐったそうに少し頬を赤くして、ウインクで返してくれた。
『やればできるじゃん』
って。
- 33 名前:三毛猫とわたし 投稿日:2004/01/05(月) 02:13
- その次の日には元に戻ったんだけど、しばらくみんなからは”ミケティ”って呼ばれたのは言うまでもなく…。
で、どうして戻ったか? それは、ヒ・ミ・ツ!
END
- 34 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/05(月) 02:21
-
書いてて思ったのは、
いしかーさん、何気に男前なような…。
はたしてこーゆーミキティはありなのか…。
なんかこう、藤本さんは、自分的にはネコっぽく感じるんだよなぁ…と。
あの5秒CMマジ反則…。
書き上げたら一気に更新しますので、それまでしばし時間を…。
一週間かそれくらいには更新できたらと思ってます。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/05(月) 03:32
- すいません、かなりツボです(笑)
自分もあのCMにやられました(*´▽`)
なんかもうなっちゃったミキティ想像しちゃって凄いです(w
マータリお待ちしてますので、頑張ってください。
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/06(火) 15:46
- ここ何日か
りかみき探しまくってたんで嬉しいです!
男前いしかーさん、ミケティ
同じくかなりツボです
これからも楽しみにしてます。
頑張ってくださいね。
- 37 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/09(金) 03:52
- うおーっ! 初レス嬉しいよぉぉぉっ!
>>35
レスありがとうございました!
> なんかもうなっちゃったミキティ想像しちゃって凄いです(w
自分も書きながらずっとニヤニヤしてました。異様までに書きやすかったです。ミケティ(w
正直かいてて不安だったので、レスを見てホッとしました。
精一杯がんばりますので、これからもよろしくお願いします。
>>36
> ここ何日か
> りかみき探しまくってたんで嬉しいです!
喜んでいただけて本当に嬉しい。これからもご期待沿えればと思います。
あんまりないんですよね、たしかに…
> 男前いしかーさん、ミケティ
> 同じくかなりツボです
自分的には、なんかりかみきって、いし攻って感じがするんです。何気にけっこう強気だったりするし。
甘えたミケティを受け入れもらえたのでホントよかった。
さて、新作です。
また、りかみきです。
- 38 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 03:53
- 放課後の尾上。
赤い夕焼けの空。
振り返れば、そこに……。
こわーい顔したおねぇさん達が9人。
あーあ。かったるい…。
美貴が何したっつーの。
- 39 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 03:59
- 「あんた人の彼氏誘惑したでしょ!」
だって。何言ってるのかさっぱりわからないんでけすどー。
心当たりなんて全くないし。
だいたいさぁ、そんな奥から怒鳴ってないで、美貴の真ん前で言ったら?
しっかしさぁ、よく集めたよねー。格闘系の部活の子が8人かぁ。
あー。めんどくさい。
- 40 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:00
- だいたい、美貴、あんたの彼なんて知らないし。
好きな人いるし。片思いだけど…。
そんなこっちの気持ちなど知る由もなくわめいてる。
いい加減うんざりしてるところに…
キィッ…。
屋上のドアが開いた。
ちょっとだけ、もしや助っ人現る? なーんて、ヨシコ登場を期待したけど、すぐにため息に変わった。
あーあー。タイミングの悪い。まぁ、彼女らしいけどね。
- 41 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:01
- 現れたのはお姫様。
いしかーさんはフェンスに寄りかかってうんざりしてる美貴と、それを囲む怖いお姉さま方、もとい女王様と魔物の群れを見ると、眉間に少ししわを寄せた。
「美貴ちゃん?」
まぁ、言っても遅いと思うけど。
「早く戻った方がいいよ。危ないから」
いしかーさんの目がお姉さま方に向けられる。
ブレザーのポケットに突っ込んでた手をだして、しっしっと追い払うように振ったけど、彼女に動く気配がない。
おいおい! やばいって…。
- 42 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:01
- 「え、でも…」
いしかーさんの視線に促されてドアの方を見ると、しっかり一人立ちふさがっている。
「当然よね。それに、あんたも何気にけっこう目障りだし」
とは悪い女王様のお言葉。
そうなんだよね…。
ヨシコ曰く、『梨華ちゃんとミキティってさ、学園内での因縁つけやすさTOP2だよねー』だそうで、美貴は生意気、梨華ちゃんは嫉妬を理由によく呼び出される。
女って同性には容赦ないからね。そのたんびに美貴がどれだけドキドキしてるか、梨華ちゃんは知らない。
まぁ、いつも何事もないから、それはそれでホッとするんだけど。それに、そばにはいつも騎士(ナイト)が控えてるわけだし。
けど、今日はその騎士もいないわけで…。
- 43 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:01
- 「ちょっとぉ。あんたたちのターゲットは美貴じゃないの? 関係ないでしょ。梨華ちゃんは」
注意をこっちに引きつけつつ、梨華ちゃんをかばうように前に立つ。
「うるさい! 二人まとめてつぶしてやるっ!」
だって。こわっ…。
それが合図になって、子分どもが一斉にかかってきた。
こーなると、お姫様を守るのは騎士のお仕事。
「梨華ちゃん、美貴から離れないで」
「美貴ちゃん…」
軽やかに拳をかわすと、有無を言わさずみぞおちに重い一発を叩き込む。
こーゆー目にばっかあってると、自然と強くなっちゃうんだよね。たぶん。
まして、守るのは何気に愛しい愛しいお姫様。
最初は確かに嫌いだった。むこーも避けてたし。
でもさ、知ってみると、たとえ服のセンスが悪かろうが、言うこと寒かろうが、ピンク怪人だろうが、優しくてちょっとした天然振りがかわいくて、何気に熱いそんな彼女は、美貴にとっては笑顔の眩しいプリンセス。
ヨシコには悪いけど、ちょっとラッキーとか思ったりもして。
張り切っちゃうよ、悪いけど。
- 44 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:02
- 一人沈めたもののまだ7人。
蹴りだの拳だのがあっちこっちから雨あられ。
背中にはお姫様。
ちょっとやばい。なんとか逃げないと…。
- 45 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:03
- 攻撃をかわしながら周りを伺うと、ふっと、美貴の背後から黒い影が飛び出した。
黒い影は子分Aの背後でひらりと反転しながらジャンプして高く右足を上げる。
それに気をとられて反応が遅れた。
「ちっ!」
目の前に殴りかからんとする便宜上、子分A。
ところが…
「うげっ!」
そいつがくぐもった悲鳴を上げ、ずるっと美貴の視界から消えていく子分A。
「マジ…」
それは見事なまでのかかと落しだった。
華麗に着地を決めた梨華ちゃんは、わかってるとばかりに滑らかな動きでくるっと体を反転させ、後ろから掴みかかろうとした子分Bのこめかみに容赦なく裏拳を叩きつける。
ってか、強いじゃん…。
- 46 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:03
- 「がっ!」下からアッパー一発で背後から襲いかかった子分Cを退治する。
そして、向かってくる子分Dにくるりと軽やかに一回転。
「ぐっ!」
美貴の自慢のハイキックをプレゼント。
「美貴ちゃん!」
駆け寄ってきた梨華ちゃんは何気にスイッチ入ってるらしく、いつもの天使のようなやわらかい笑顔て消えて、そこには一人の鬼がいる…そんな感じ。
フツーに見たらかなりひく。
現に女王様たちがちょっとおびえてるし…。
でも、こーゆーマジな梨華ちゃん、美貴はかなり好きだったりする。まして今となっては頼もしい。
「なによー! 強いじゃん。梨華ちゃん」
「そーゆー美貴ちゃんだって」
って言葉を交わしながら、互いをかばうように背中合わせに立って、相手を警戒する。
「でも、助かったよ。お礼は跡でね」
「OK」
さて、これで後4人。
悪いけど、容赦しないよー。
- 47 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:04
- で、まぁ、そんなこんなで悪い女王たちは逃げていった。
捨て台詞をはいて逃げてくのを見届けると、どちらからともなく、片手を挙げて高らかにハイタッチ。
そのままぎゅって握り締めた。
「ありがと」
「どーいたしまして」
- 48 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:05
- 見上げれば、太陽は山にかかって沈む直前。東の方にはなんとなく一番星の姿。
戦場もとい、屋上に静寂が訪れた。
「そういえばさ、何で梨華ちゃん、ここに来たの?」
「あぁ。それ? 美貴ちゃん、教室にケータイ忘れてたから」
そう言って、梨華ちゃんがブレザーの内ポケットから携帯を取り出す。
そういえば…と確認してみると確かにない。
「はい」って手渡しながら、「それにね…」って、続けた。
「見ちゃったんだよね。呼び出されるところ。だから…」
だって。ちょっと、ちょっと待って…
「はぁ!? だからって…危ないじゃん!」
「うん。でもね、気になって…」
「気になってって! 相手が武器とか持ったらどーすんの!」
「大丈夫だよ! そんなのなれてるもんっ!」
「なれてるって…」
そりゃ、美貴もなれてるけどさー。あなたもそんなに修羅場くぐってるわけ? あーなんか、笑えてきちゃったよ。とんでもないお姫様だね。
- 49 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:05
- 「バカだねー。だからって、危険承知で飛びこんじゃうわけ?」
梨華ちゃんがむっと眉間に少しだけたてにしわが寄る。
「でもまぁ、わかるよ。美貴も同じことするよ。きっと」
「美貴ちゃん?」
ふふふって、笑って見せたら、梨華ちゃんも笑顔に変わった。
「でもさ、残念だったな」
「なにが?」
「だってさ、お姫様を守る騎士になれるかなって、思ってたから」
そしたら梨華ちゃんがくすくすと笑い出した。
「ちょっと! ここ笑うとこじゃないから」
「だってなんか乙女チックなんだもん」
「いーじゃん。乙女なんだから」
「だよね。でもさ…」
って、梨華ちゃんが右手がおずおずと美貴の左手を絡まる。
「どうせなってくれるなら、騎士より、王子様のほうがいいなぁ」
「何で? 何で王子様なの?」
「だって、騎士だったら家来になっちゃじゃん。王子様だったら、その…恋人なわけでしょ?」
だって。顔が赤いのはまだ空を赤く染めている夕焼けのせい? それとも?
っていうか、これって……!
- 50 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:06
- 「いいの? 美貴が王子様でも?」
「いいよー」
くすぐったそうにと微笑んで…。頬が赤いのは、なるほど夕焼けのせいじゃないってわかった
「じゃあ、梨華ちゃんがお姫様か。でも、王子様と一緒に戦うお姫様って、あんまりいなくない?」
「いないねぇ。でも、心配してやきもきするくらいなら、一緒に戦いたいな」
ふわっと笑ってなんかかわいいんですけど。言ってることが物騒なのはともかく。
「何気にすきなんでしょ? ケンカ」
って苦笑いしながら聞いてみてたら、速攻で「美貴ちゃんもじゃないのぉ?」だって。
しばらくむーっと顔を見合わせて、同時に出た言葉が、
「「かもしれない」」
なんかみょーにおかしくてしばらく笑ってた。
だってさ、二人ともカワイー女子高生なのにさ、屋上でケンカの話してフツーに盛り上がってんだよ。
- 51 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:07
- ふと、少しだけ真剣な表情で梨華ちゃんが言った。
「美貴ちゃん。もし、また呼び出しうけたら、誘ってね」
「何でよ」
「だから言ったじゃん。さっき」
「はいはい。わかってるって。じゃあ、梨華ちゃんも、そーなったら、言ってね」
「わかった」
でもまぁ、ケンカ売られる2TOPだから、あんがいこの方がいいのかもね。
- 52 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:07
- 「じゃあさ、御礼もまだだし…」
「いいよぉ。わたしが勝手に飛びこんだんだから」
って言う、繋いだままの梨華ちゃんの右手を取ると、そっと手の甲に口付けた。
「…美貴ちゃん!?」
「御礼だよ。美貴の気持ち。そして、これからの為の誓い」
「なんか、ホントに王子様みたい…」
「だって、王子様なんでしょ?」
ふふって微笑み返す梨華ちゃんの肩に手を置いて引き寄せると、そっと唇を重ねた。
- 53 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:08
-
※ ※
次の日、梨華ちゃんの師匠がヨシコ(基礎担当)とヤグチ先輩(技術・メンタル担当)だと判明。なにしてんだか二人とも…。
しかも…。
それは朝の出来事。ヨシコが放った挨拶だった…。
「おはよう。おーじ様」
「へっ!?」
ちょっと待て! なぜ知ってる?
ぱっと梨華ちゃんを見ると、「お姫様、おはよー!」って言われて真っ赤になってうつむいてる。
にやにやと楽しそうに笑いながら、美貴と梨華ちゃんの肩を覆うようにがしっと抱いて囁いた。
「昨日さぁ。みちゃったんだよね。王子様とお姫様が仲良く悪者退治してるの」
かーーーーーーーっと顔が熱くなってくる。
梨華ちゃんが妙に必死になって屋上に向かうのを見て、後をつけたらしい。ごっちんやヤグチ先輩も一緒だったらしい。
「ヤグチ先輩、梨華ちゃんのかかと落とし感激してたよ。あと、ミキティのハイキック。これからはケンカの時よべだってさ」
で、その後ごっちんにもさんざんからかわれる。(特に梨華ちゃんね)
- 54 名前:王子様とお姫様 投稿日:2004/01/09(金) 04:09
-
けどさ、さんざんからかっといて、『まぁ、でもよかったじゃん。二人とも』だって。
変な形の始まりだけど、まぁ、それもありでしょ。
隣にいるお姫様と顔を見合わせてくすくす笑った。
二人の冒険はどんな風になるんだろうって、思いながら。
おわり
- 55 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/09(金) 04:16
- 更新完了ということで。
本当はネコ化いしかーさんを次に更新するつもりだったのですが、考えているうちにうかんできたので形にしてみました。
どっ…どうなんだろ? こっ…これって?
萌えどころないですが、『いいなぁ漢の友情』みたいなものになってるし!?
なんでしょう、いしかーさんの青い目の侍並みのかかと落としと、フジモトさんのハイキックと二人のハイタッチが書きたかったということで。
もちろん、王子様のキスもね。
っていうことで、また次まで、お待ちくださいませ。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 18:39
- 私もりかみき大好きです。
喧嘩になると強くなる石川さんかっこかわいかったです。
しかも師匠が二人。担当分けもしっかりしてあって(笑)
藤本さんに続いて、ネコ化いしかーさん楽しみにしてます。
- 57 名前:@ 投稿日:2004/01/09(金) 19:41
- はじめまして りかみきいいですよねぇ
王子様とお姫様 夜王子と月の姫ってかんじでしょうか(なじょ
これからも数少ないりかみき路線でかんばってください。
- 58 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/09(金) 22:44
- 初レスのうれしさに
>>35名無しさん様と、>>36名無し飼育様のお名前と敬称を忘れる大失態!
お二方、遅ればせながら非常に申し訳ありませんでした。
>> 名無し飼育様
かっこかわいいっていってくださりうれしいです!
ネコ化したいしかーさん、この次に更新する予定です。
ご期待に沿えるようがんばりますよぉ。
>> @様
こちらこそ、はじめまして。
私、ずっと@様の作品は読んでおりましたので、お名前見たとき、うれしくて驚きました。
りかみきいいですよ。精一杯書かせていただきます。
夜王子と月の姫なんかかっこいいですね。RPGのシナリオ作れそう。でも、この二人ってそういう感じかもですね
読み返すと誤字や変換ミス多発でとほほなまでに恥ずかしいですが、どうぞ脳内変換でよろしくお願いします。
確認してるつもりじゃだめっすねぇ
- 59 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/12(月) 14:42
- やばいくらい萌えました。
前作の甘々な感じも今回のかっけー感じもどちらもたまりませんでした。
これからもりかみき大いに期待、そして楽しみに待ってます。
- 60 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:30
-
ちょっと待ってよ! なんでそーなるの!?
『ペット大集合! ポチたまはこの後すぐ!』って、一緒にやったよ。
Mステのライブの衣装でも、そんなコスプレさせられたし。
それに、美貴もそーなった…。
けど、だからって… だからってさぁ!
何で梨華ちゃんに耳としっぽがついてんのよー!
※ ※
- 61 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:31
- 何か触ったんだよね。
梨華ちゃんのほっそい腰に手を回して抱き寄せようとしたら…。
そしたら…すすっと絡んできて、『なぁにぃ?』って。なんかね、先の方(?)がくすぐるように手を撫でるの。
明日はオフ。だから今日は美貴のお家で甘い時間をすごしていたわけで…。
今梨華ちゃんは…っていうと、美貴を抱いて幸せそうに夢の中。
やわらかい胸の奥から聞こえる鼓動も穏やかで…。さっきまでの激しさがウソのよう。
あー、何がとか聞かないように。
でもね、すっごい愛されてるって感じるんだよねー。だから美貴もがんばっちゃうんだけどねって…
ちょっと! 何言わせんのよー!
って、美貴、一人で何やってんだろ…。
それはさておいて、これってさぁ…
- 62 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:31
- 相変わらず美貴の手の甲をくすぐるそれをぱっと捕まえると、名残惜しいけど、ちょっとだけ体を起こして、そーっと強く握らないように手に触れる毛並みに逆らって撫でてみた。
「ん…」
かすれた声を零して梨華ちゃんが美貴に擦り寄るように身をよじらせる。
思わず手が止まった。
手の中にある長いそれは、ぴたっと美貴の腕に沿うようにくっついて『ダメ』ってたしなめる。
ドキッ!
ちょっとまって…。し…心臓に甘ーい痛みが…。
とにかく、そんなお願いを無視して手を進めると、膨らんだのパジャマのお尻に突き当たった。
はぁ…。
がっくし。そう。そうなのね…。
- 63 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:32
- ということは…。
腕枕してくれてた梨華ちゃんの左腕をどかして、代わりに美貴が梨華ちゃんの頭の下に腕を通して胸に抱きかえる。
それは近づくとすぐに美貴の目に飛び込んできた。薄暗がりの中でもはっきりとわかる三角がぴょこんと二つ。
ついでにと、そっと髪を撫でながらその三角の付け根の後ろを軽くくすぐってみると、
「う…ん…」
美貴の腕の中で梨華ちゃんがふ…と息をついて胸に顔を押し付ける。
うわー! ちょっとぉ! なによー! エロいよーっ! どうしよー!
って、マジでどうしよ。
っていうか、とりあえず起こさないとね…。
ごそごそと布団を上げてベッドサイドの灯りをつけると、腕の中には黒いネコ耳としっぽを美貴の腕に絡めた梨華ちゃん。
思わずため息。
『…美貴ちゃん、反則だよ…』
言われた意味がよーくわかった。
「梨華ちゃん…それ反則…」
- 64 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:32
-
眺めること早10分。
げんじつとーひチックに思い返してもう一つため息。
とりあえず起き上がった美貴が、梨華ちゃんに膝枕をしてあげてつつ頭を撫でて途方にくれていると、小さくうめく声がした。
「みきちゃん?」
梨華ちゃんが目をこすりながら不思議そうに見上げてくる。
あ゛ーもうっ! そんな目で見ないでよぅ! かっ顔が…あつっ!!
「どうしたの?」
「…うん」
とりあえず理性総動員で平静を装おうと試みる。
にしても、美貴も気づかなかったから、たぶん気づいてないよねぇ…。
当の本人はというと、起きぬけでほけーっとしてるし。
「ねぇ? みきちゃん? 寝れないの?」
って言うと、両腕を伸ばしてうーっって伸びをしたから、なんとなくいたずら心でわき腹を撫でたら…
「うにゃっ」
って丸くなって、ごろんと美貴に背中を向けた。
そして、「くすぐったいよぉ」って、困ったように笑いながら上半身だけこちらに向ける。
やばっ…。まーじーでーやばい! どうしよう……。
すっっっっっっっっごく、かわいい…。
- 65 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:32
-
『この間はほんっとうにゴメン! 美貴が悪かった』
『ふぇ? どーゆうこと?』
『とにかくゴメン! よーくわかったから』
『だからぁ。なにが?』
『鏡…』
『鏡?』
『見てくればわかるから』
土下座しました。ハイ。
だってさ、あれはないでしょ。
破壊力抜群だって。
美貴もあーだったのかっていうのは棚に上げても、ねぇ。ものっっっっすごい危機感感じるんだもん。地球滅亡くらいなクラスの…。
「みっ…美貴ちゃーんっ!!」
ドタドタドタドタドタ…。
そうそう…。美貴もこんなだったよね、たしか…。
- 66 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:33
-
のーてんきにも、まさか自分がなるとはどっかで思っていなかったらしい梨華ちゃんは、
『どっ! どっ!』
『どりふのだいばくしょー?』
『違うってば!』
『どーしよ! 耳! しっぽ!』
『見ればわかるって』
『もう! なんでそんなに冷静なのー!!』
って、顔真っ赤にして凄まじいくらいのうろたえぶり。
美貴、ちっとも冷静じゃないですよー。冷静になれるわけないじゃん。ドキドキしっぱなしだよ…。そんなフリでもしてないと……。
- 67 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:34
-
しかしながら、自分がなったとはいえ、こーゆーことはこれで2度目。
10分もいないうちに落ち着いた梨華ちゃん。
どーしよーって目をしてしっぽをじーっと見つめている。
本人も気にしてる色黒だからかなんだろうか、黒いしっぽと耳。でも、艶があってほんのり赤いベッドサイドの灯りを受ける黒はすごく綺麗。
本人はお気に召してないようだけど。
「せめて白はダメでもトラがよかったな…」
「いいじゃん。黒で。梨華ちゃんらしくて」
「ええーっ。でもさぁ…」
しゅんって、耳が倒れた。
けど、そんな姿もまたかわいいんだよね。理性総動員中でも自然と顔がニヤついてきそうになっちゃう。
「梨華ちゃん?」
ぽんぽんとひざを叩くと、ぴくっと耳が起き上がって、納得いかないですーって顔をしたままちょこんと向かい合うように美貴の膝の上に乗り、自然と肩には手が。
だから、自然と美貴の手も梨華ちゃんの腰に回る。
- 68 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:34
- しっぽが不機嫌にゆらゆらと揺れてる。右手でそれを捕まえると優しく撫でてあげた。
「綺麗だけどなぁ。宝石みたいで…美貴は好きだよ」
「……そうかなぁ」
「そうだって。それとも、美貴の言ってること…信じられない?」
「うーうん。そんなことないよ。でもなぁ…って…」
舌ったらずな口調。ほんのりと赤く膨らんだ頬。まだちょっと拗ねてる梨華ちゃん。
「…くすぐったい…」
撫でている手の中からしっぽが逃げようとする。
「うそ」
「うそじゃないもん」
「うそだよ。…気持いいんでしょ?」
そしたら、いじわる…って呟いて耳まで真っ赤にしてうつむいた梨華ちゃん。
「すきだよ」
顔にかかった髪を掻き揚げて覗き込むと、強引に視線を絡めたまま、見とれるような黒い綺麗でしなやかなしっぽの先にキス。
そしたら、ふっ…て目をそらされて、ぺしってしっぽの先でかるーく頬を叩かれた。
「……えっち…」
どっちがだよ…。
- 69 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:35
- 理性総動員しても、もう限界。
なんでかネコになってみると、なんかね、なんていうかいつも以上に甘えたくなる。それはよーっくわかる。
けど、今日の梨華ちゃんはいつもと違う。
普段も二人っきりの時は確かに甘えてくれる。でも、二人きりになると、どーしても美貴の方が甘えちゃったりするから、なんだかんだとお姉さんモード。
でも、なんか今は子猫みたいで、無邪気でなんかいじらしい。
ねぇ、どこまでが無意識なの? わざとじゃないよね…?
- 70 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:35
- しっぽがするりと手の中から逃げる。
空っぽになった右手を顎にやってついと顔を上げさせると、そのまま頬を包み込みこんで薄く開いている唇に、美貴を唇を近づけた。
「…ダメ」
トンと唇に触れる人差し指。
その指先をパクって口にくわえて、『なぜ』って目で問いかけても、またすっと目をそらしてうつむいて答えない。
「ねぇ?」
どうして?
開放された手でさりげなく頬に添えた美貴の手をとって指を絡める。指先が唇にかすれて触れて、きゅっと戸惑いを浮かべながら唇を結んだ。
悩ましげな表情に押し流されていく理性。
腰に回してる左手であやすように背中を撫でると切なげにこぼれるため息。戸惑う瞳は潤んでいて、そこにはちょっといじわるく笑ってる美貴。
かわされて、じらされて、惑わされて…。
でも、振り回されるのも悪くない。
- 71 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:36
- すーっと、ずっとそれまで肩に置かれてた左手が滑り降りて腕をやんわりと掴む。
背中を撫でる手を止めると、膝の上から降りて、ちょっと横にずれて足だけを膝に乗せたままもたれかかって、右肩にちょこんと頭を預けきた。
「梨華ちゃん?」
ちょっと睨むように見上げてくるその目がなんだかいじらしくかわいくもあり、妖しげに誘っているようでもあり…。
「なぁに?」
「みきちゃん…ずるいよ…。今日はいじわるだよ…」
「そうかな?」
そうだよ。だって、あなたが悪いんだよ?
「あんまりかわいいから、ついついいじめたくなっちゃうんだよねぇ」
「えー。いつもいじめてるのに?」
んーまぁ。たしかに、梨華ちゃんはツッコミどころ満載だからね。だけどさ…。
「いつもいじめてるっけ? 二人でいるときはむしろ梨華ちゃんにむしろいじめられてるほーが…って、いゃひゃいっへ」
むにってほっぺをつねられた。
あーあー。耳まで赤くするんなら言わなきゃいいのに。
- 72 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:37
- 梨華ちゃんはほっぺから手を放すと、ふーっとため息をついた。
「…先回り…しないで…」
「んー? なんのこと?」
「とぼけちゃってぇ…」
「その言葉、梨華ちゃんにそのまんま返してあげる」
「えー…」って、まだ何か言いたげに唇が開いている。
美貴に思いっきり体重を預けて不安そうに見上げる梨華ちゃんのネコ耳の後ろを撫でると、
「…ん」
くすぐったいよぉ…って、目を細めて小さく肩をすくめた。
そのまま髪を梳くように撫でながら、指を下に下に滑らせていく。
「美貴ちゃん!?」
しっぽがぺしぺしと腕を叩く。
背骨の上をたどってしっぽのせいで膨らんだパジャマのズボンの中に手を滑り込ませると、しっぽの付け根を軽く引っかくようにくすぐった。
「やぁっ…!」
ぴんとしっぽと背中を逸らして掠れた声と吐息が耳にかかり、ぎゅっと腕を掴む手に力がこもる。
体を走る甘い痛みと弾ける鼓動にくらくらと目の前がゆがんでくる。
- 73 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:38
- 梨華ちゃんはもたれかかっていた体を起こして、ガツンと一言。
「…エロ大臣」
エ…エロ大臣って…
「ひどっ。なにそれ。梨華ちゃんに言われたくないよ」
「だってぇ…。さっきからさぁ…」
って、ごにょごにょと口ごもり、ズボンの中に入ったままの手首を掴む。
「でも…とりあえず、しっぽ…ちょっと窮屈」
「あぁ、そういえばすっかり忘れた。でもいいじゃん。どーせ結局は脱ぐ…って…いっいひゃいって!」
今度は両手で頬を思いっきりひっぱられた。
- 74 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:38
- 「痛いって。梨華ちゃん」
「だってぇ…」
あーわかったから。だから、そんないじけたような目で見ないで。押し倒しちゃいそーだから。
「はいはい。わかったから」
梨華ちゃんもちゃんと穴開けてくれたしね。ハサミを取りにいくのも面倒だったから、というか、この空気を壊すのはイヤなので、足を膝の上から下ろして横座りしてもらうと、梨華ちゃんを思い切り抱き寄せて胸に顔をうずめさせた。
「美貴ちゃん??」
「ちょっとまってて」
とりあえず、パジャマのズボンを少し下ろして、上着のすそを捲り上げる。
そして何気に改めて再認識。
この姿勢、ひっじょぉーにエロいです…。
- 75 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:39
- しっぽの上辺りを少しだけ裂いて穴を開けてあげると、『美貴ちゃん、なんかとってもワイルド』ってお言葉の後に、
「ありがと」
だって。
ごそごそとパジャマのズボンを脱ぎ捨てると、またコテンともたれかかってくる。
上着のすそから伸びる褐色の細い綺麗な足。
いつの間にか指を絡めて繋いでる手。
髪を撫でている指先にうっとりと幸せそうに目を細めて…。
ここまで我慢してる美貴が正直エライなと褒めてあげられるくらい、いつもより(当社比)200%セクシーな梨華ちゃん。
なるほど、あのときの梨華ちゃんの気持ちがよくわかる。
やだなぁ。誰にも見せたくない。今の梨華ちゃん。
- 76 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:39
- 明日はお仕事。
何せ美貴にはライバルが多い。こんな梨華ちゃん見ちゃったら…いったいどうなることか…。
はぁっとため息が一つ。あの時してくれたように後ろからだっこした。
「どーしたの? 怖い顔して」
「うん。明日…いくのやだなぁ…って思って」
「どうして?」
「だって、今の梨華ちゃん、見せたくないもん」
肩口に顔をうずめて強く抱きしめる。
「今の梨華ちゃん、存在が反則だから、なんか怖い…。どうにかされちゃうんじゃないかって…」
すると、ふわっと頭に梨華ちゃんの手。ゆっくりとなでめるようあやすように髪を撫でて…。
「気持ちはすごいよくわかるよ。でも、そういうわけにはいかないじゃない。それに、美貴ちゃん、何事もなかったわけだし」
いや。あった。
「ミケティって飯田さんに言われた」
しまったって…一瞬そーゆー顔をして、ぴたっと手が止まった。
- 77 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:39
- 「ヤグチさんに爆笑されたし」
しかも涙流して…。
「ののとあいぼんとヨシコには『エロい』って言われたし。安倍さんにしっぽおもちゃにされたし」
絵里ちゃんが引いてましてたよ…安倍さん。
「しげさんがうらやましそうに見てるし、田中ちゃんは動揺するし…。コンちゃんなんか、目…きらきらしてたもん」
愛ちゃんだけがある意味いつもどおりのリアクョンだったわけで。
「そういえば、ガキさんは第一発見者だったよね」
「うん。まこっちゃんの鼻血…」
驚きから我に帰った愛ちゃんがティッシュをつめてかいがいしく世話を焼いていた様子が思い返される。
「でも、それはあくまでも美貴だったからなわけで…」
言葉を濁した意味を察したらしく、梨華ちゃんがちょっと唇を尖らせる。
「梨華ちゃんだとシャレじゃすまないよ」
美少女大好きな飯田さんは間違いなく視姦してくるだろうし、ヤグチさんは困ったように笑いながらたぶん真っ赤になって『梨華ちゃん、えっちだー』ってうろたえるだろうし。あいぼんとののもさすがに真っ赤になって軽くひくだろうな…たぶん。
- 78 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:40
- 「美貴ちゃん…。考えすぎ」
「え!?」
呆れ顔の梨華ちゃん。どうやら全部口に出てしまってたみたい。
「だって…。心配なんだもん」
「紺野が目をきらきらさてよーと、しげさんがうらやましがって田中ちゃんが動揺しても、高橋が凍りついてもガキさんがそれをほほえましく見てても…ね」
「うん…でも…」
「ね、たとえよっすぃとマコトが鼻血を出しても」
って言うと、顔だけ美貴に向けて鼻先にチュって…。
「梨華は、美貴ちゃんのもの」
ふつーなら、キショーイってなるところだけど、もう、わけわかんない! かっ…体が…熱い…。
梨華ちゃんはそんな美貴を見てくすくす笑ってる。
あぁーーーっ! もぉーーーーーーーっ!
- 79 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:40
- 「やっぱダメ。梨華ちゃんはお留守番」
「えーっ! なんでーっ!」
「なんでって、ねぇ!」
「怒んないでよ。何でダメなのよぉ」
「だから言ったじゃん!」
「わかんないよ!」
「あーもーーっ!」
「もう! 耳元で怒鳴らないでよぉっ!」
むーって上目遣いでにらみつけてくるんだけど、明らかに誘ってるようにしか思えなくなってくる…。
「みんなを悩殺してどーすんのよ。それは美貴だけにして」
「へ?」
「気が気じゃないんだから…。心臓に悪いよ」
そしたらっくすぐったそうに笑った。
「やきもちやいてくれるんだ。うれしい」
こんなやりとり、そういえば美貴の時もしたなーって、なんとなく思い出した。
- 80 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:40
- 「よかった。じゃあさ、美貴ちゃん?」
「何?」
「私のこと、守ってくれるよね?」
ちょこんって首を傾げて、すがるような目を向ける。
「当たり前でしょ」
「だったらさ…」
うつむくと繋いでいた手を離して、うにうにと手のひらをもんだり、指先でくすぐったりしながらいじり始める。
「お留守番はやだにゃ〜。たいくつなんだもん」
こーなるだろうなって、わかってた。美貴もやりましたから。でも、あーノックアウト。そんな感じ。
「美貴ちゃんと一緒にお出かけしたいな?」
「お仕事ね」
つっこまれてむっと、また唇を尖らせる。
「りーかちゃん。お芝居したって無駄だよ」
「気づいてたの?」
「そりゃそうでしょ。美貴も同じこと梨華ちゃんにしたもん」
あーそっかぁって、ちょっと拗ねる梨華ちゃんに、
「けど、すっごいかわいかったよ」
って、耳元で囁いてすばやく唇にキスをした。
- 81 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:41
- ぱって目を見開いてきょとんとしていた梨華ちゃんの顔がすーっと赤くなっていく。ぐしゃぐしゃと頭を撫でると、体ごとこちらに向けさせた。
そして、真正面からまっすぐに目を見つめて言う。
「わかった。一緒に行こう。ちゃーんと守ってあげるから」
「うん」って、とろけそうな満面の笑顔でうなずく梨華ちゃん。
「だって、梨華ちゃんは美貴のものだもん。誰にも指一本触れさせないから」
「ほんとに?」
「ほんと。じゃないと、美貴がどーにかなりそうだもん」
梨華ちゃんの手がすうっと美貴の首に絡みつくように回る。
「でも、嫉妬に狂う美貴ちゃんも見てみたいかも」
ちょっと! 怖いこと言わないでよ。
「あー。そんな意地悪なこと言うんだ」
「なによぉ。美貴ちゃんだって言ったもん」
確かに言ったけどさぁ…。
「愛されてるって感じ、しない?」
「そんなことないよ。じゅーぶん、愛されてるって思ってるよ」
おでこをこつんって美貴のおでこにくっつけて甘く甘く囁く。
そっと頬を両手で包み込んだ。
- 82 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:41
- 「じゃあ、足りない?」
「…うん」
「欲張り」
そして、唇にキス。
「美貴も足りない。梨華ちゃんの全部がほしい」
親指でそっと薄く開いたままの唇をなぞる。
何もかもをあげる。すべてを感じて…
噛み付くようなキスをして、荒々しく押し倒す。
背中に回された腕が切なげに美貴の体を締め付けて、全身をめぐる甘い痛み。
じらされていた分の熱を吐き出すように、体に触れる指先に熱がこもる。
あらわにした胸元に口付けを一つ。
零れ落ちる吐息と掠れた声。
きっと満たされない。だからすべてをあげる。だから全部をちょうだい。
それでもたぶん満たされない。
だけど止まらない。だから愛したい。
もう、どうなってもいいや。
- 83 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:42
- ※ ※
結局、梨華ちゃんも元には戻らず、そのまま仕事に行くことに…。
で、まぁ、予想通りだったわけで。
飯田さんはじーっと梨華ちゃんを見つめたまま動かない。更新してるのかなとも思ったんだけど、なんかよく見ると視線がこう、たてによこにななめにと…。
矢口さんは来た早々、梨華ちゃんを見て真っ赤になって、
「梨華ちゃん、それ…やばいって! マジで」
と、10分の間で23回。
ののとあいぼんは飯田さんの後ろに隠れて赤くなってる。まぁ、それはそれでかわいいよね。
「いーなー。いしかわさん」
「「さっ…さゆ!?」」
横の方から聞こえたしげさんと動揺する田中ちゃんと絵里ちゃんの会話は、たぶん、気のせい。うん。美貴は何も聞いてない 。
- 84 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:43
- しっぽにじゃれ付こうとしている安倍さんを目で牽制したら、なぜかガキさんが怯えた顔したし。
コンちゃんのキラキラしたまなざしと、落ちるんじゃない勝手くらいに目を見開いてワンダーランドに飛んでった愛ちゃん。
意外だったのはヨシコ。鼻血は出さなかったものの、鼻の下がずーっと伸びっぱなしでニヤニヤが止まらないといった感じ。肩をもめれてるときの一徹さんよりやばい表情。
そして、それは起こった。
「あーっ! おっ…おがわー!」
ヤグチさんの絶叫に全員の目が一点に。
そこには鼻血を出してへにゃっと倒れたまこっちゃんが…。
「あーあ…。悩殺しちゃったみたいだね」
「うん。でも、ここまで予想通りだと…」
苦笑いする梨華ちゃん。
我に帰った愛ちゃんがまこっちゃんの頭を膝の上に乗せて、ティッシュを両方の鼻に詰めたまま頭をよしよしと撫でてる。
あれじゃあさぁ、鼻血止まんないと思うけど…。
- 85 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:43
- 「梨華ちゃーん! おまえエロすぎ!」
「真里ちゃん、ひどーい!」
「だってほんとのことじゃんかぁ!」
「えー。そんなこと言ったってぇ」
梨華ちゃんのマユゲがハの字になってくる。
「あー。ほんとはヤグチさんだって、メロメロなんじゃないんですか?」
美貴からの反撃にヤグチさんが耳まで真っ赤になる。
「梨華ちゃんは美貴のものですから。手、出さないでくださいね」
梨華ちゃんを後ろから抱きしめて、とどめにウインク一つ。完璧です。
「んだょ、梨華ちゃんニヤニヤしすぎだぞ!」
だって。
梨華ちゃんは小さくありがとって。
遠くから『そこーラブラブすぎてあっついんですけどー』とか、『ムスメ内禁止だぞー』とか聞こえてくるけど、気にしなーい!
- 86 名前:黒猫とあたし 投稿日:2004/01/13(火) 21:43
- で、その次の日、美貴の時もそうだったけど、元に戻った。
どうして戻ったか? ダーメ。教えないよー。それは、ナイショ!
おわり
- 87 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/13(火) 21:53
- 更新完了。
ネコ化いしかーさんの巻です。
えーもう。書いててにやにやにやにやにやにやしておりました。ハイ。
甘くなっとるか萌えてていただけるかわからんですが…。
なんか、前回よりもエロさ爆発チックに感じるのは気のせい?
ネコないしかーさん。じらしじらされなフジモトさん。こーゆー二人って書きやすい…。
>> 名無し読者様
やばいくらい萌えていただきましたか。ありがとうございます。
今回も萌えていただけたらうれしいです。
今後ともよろしくです。
- 88 名前:sai 投稿日:2004/01/13(火) 23:42
- ハァ━━;´▽`━━ン
また次のも期待してます。
というか何気に初めましてな感じですw
いしごまが好きなんですが、最近はりかみきが…。
作者たん頑張ってくらさいヽ(゚∀゚)ノ
- 89 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/16(金) 03:24
- >>88 sai様
こちらこそはじめましてです。
喜んでいただけた様でうれしゅうございます。
自分は何気にいしよし好きなんですが、あちこち回って気づけば惹かれておりました。
何気に需要があるのねん、と、実感しつつ、がんばらせていただきます。
不勉強ですが、これからもよろしゅうに。
- 90 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:25
-
たぶん……たしか、そう…高い塔の中…。
きらびやかな宝石がついていた折れた剣。
服についた乾いた血の臭い。
…体中が痛い。
散々暴れまわってもなすすべもなく、いつしか力も入らなくなった。
いつからここにいるんだっけ…。
冷たいに床に転がって、鉄格子の小さな窓の向こうに見える満月。
闇を余すことなく照らそうと輝きは疲れたこの体にも降り注ぐ。
最期にこんな綺麗な月を見れたんなら、それもいいか…。
鉄格子の間をすり抜けた冷たい風を埃を巻き上げる。
ふと、気配を感じた。
見上げるとそこには人影。
蒼い満月を背に、夜空の中に透けるように儚いお姫様が月明かりの中で微笑んでいた。
戸惑いのまなざしに彼女が小さくうなずいて、すっと手を差し伸べる。
最後の力を振り絞って起き上がり、その手を取った…。
- 91 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:26
-
…………
……
…
「…。……みき……。美貴ちゃん」
「…ん…? あ…」
目を開けると、梨華ちゃんが微笑んでいた。
周りを見回すと、事務所の前みたいだ。
「着いたよ。みんなもう降りてるから、行こう?」
肩から手を離して梨華ちゃんが手を差し伸べる。
ふと感じる違和感。
「美貴ちゃん?」
「あ…うん」
手を借りて立ち上がり、荷物を手にするとそのまま手を繋いで「疲れたねー」ってごまかすように笑ってみた。
車から降りて空を見上げると、そこには眠らない都会の光の中でも見劣りしない満月。
「綺麗だね…」
刺すような冷たい空気の中にはぁっと白い息をこぼしながら梨華ちゃんも空を見上げていた。
- 92 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:26
-
何度目だろう。最近よく見るあの夢…。
いつもなら、その手に触れそうになるところで目が覚めた。
でも、今日は…違った。
- 93 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:26
-
はっきりと手に残る彼女の手の感触。
ぎゅっと握り締めて顔を上げた。
目の前には螺旋状に続く石造りの階段。窓すらないそこは心もとない蝋燭の明かりで薄暗い。
時折行くてを塞ごうと襲い掛かってくるヤツを手にした剣で切り倒しながら、ひただひたすらに階段を駆け上がる。
顔についた返り血を拭いながら、ただ、ただひたすらに…。
ようやく見えた扉を蹴破ると、鎖に繋がれてそこに彼女はいた。
途中で奪い取った鍵で枷から開放してやせ細った華奢な体をきつく抱き寄せる。
彼女は剣を持ったままの手を取って口付けるように頬に当て、
『………』
何かを囁いた。
返事の代わりに、彼女の頬に手を添えた。そして…。
- 94 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:27
-
体が小さく揺れて、はっと目を覚ました。
また梨華ちゃんが微笑んでいて、「着いたよ」って。
よほど疲れてると思ったのか、気遣ってくれた梨華ちゃんが解散した後、「近いから」って誘ってくれたのを思い出した。どうもタクシーの中で眠ってしまっていたらしい。
「大丈夫だから」
笑って見せたけど、それでもまだちょっと不安そうな顔。
梨華ちゃんの家の中に入っても、それはなかなか消えてくれなかった。
入れてくれた紅茶を一口飲んだら、思わずため息零れた。
「どうしたの?」
「うん…」
- 95 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:27
-
美貴はたぶんどこかの国の王子様かなんで、 敵に捕まって塔に閉じ込められていた。
どうしてもそこからにげなきゃいけなくて、でも、ダメで。
もう死ぬんだろうと思ったとき、月の光の中から現れたお姫様。
その手を取ると、景色が変わった。
たぶん、逃げ出せたんだと思う。
理由はわかんない。
けど、その人を助けなきゃいけなかった。
だから走った。塔の中をひたすら走って、敵を殺して、走った。
扉を開けると、そこにはあのお姫様がいた。
助け出して、抱きしめた。
彼女は美貴の手を頬に寄せて、囁いて…。
愛しいって…思った…。
- 96 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:28
-
お湯につかりながら、ぼんやりと思い返していた。
梨華ちゃんは時々何か考え込むような顔をしながらも、真剣に聞いてくれた。
わからないのは何で美貴だったのか…。
王子様だったら、美貴じゃなくてもよかったはずだから。
お風呂から上がって、借りたシャツとジャージに着替えて戻ると、火照った体をすーっと冷気が撫でていった。
部屋の電気が消されていて、ガラス戸が開いている。
ベランダにいるらしく、もたれ掛かって空を見上げている後姿。
「梨華ちゃん?」
近づいて声をかけると、ゆっくりと振り返って微笑んだ。
「…え…!」
背中越しに蒼い蒼い満月。闇に溶けるような褐色の肌。
そして、差し出された手。
- 97 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:28
-
ぐわんと目の前が揺れた。
誘われるようにベランダに出てその手を取ると、ぐっと引き寄せられて抱きしめられた。
息苦しいくらいキツク、強く…。
「りか…ちゃん?」
「こうしてくれた……あの時…。うれしかった…」
頭の中を流れる映像。繋がっていく線。
梨華ちゃんは美貴の手を取ると、口付けるように頬に寄せた。
「そして、私はこう言うの。『ありがとう』って」
「だから、美貴は…」
梨華ちゃんの頬に手を添えて、そして、あの時のように今梨華ちゃんがそうしているように、きつく抱きしめる。
「そういえば、まだ…だったよね?」
「うん…」
そして唇は重なった。
- 98 名前:たぶん、それは満月のいたずら 投稿日:2004/01/16(金) 03:29
-
『美貴でよかったの?』
っ聞いたら、
『私でよかった?』
って逆に返された。
顔を見合ってくすくすと笑いあう。
つきだけがそんな二人を見ていた。
結局、これはトオイキオクなのか、それともただのユメなのか、二人ともわからない。
ただ、たぶん、共有していた世界。
続きがあるのかは、わからないけど…。
fin …?
- 99 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/16(金) 03:35
-
新作一つ更新。
何気にいしかーさんって周りに王子様多いよなーと改めて思ったり。
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 21:25
- 甘いりかみき、えっちぃりかみき最高です。
次回作も楽しみにしてます。
- 101 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/19(月) 02:09
-
>>100 名無飼育さん
最高ですとのお言葉、ありがとうございます。
ひっそりじっくり書いていきますので、よろしくお願いします。
それでは、新作です。
タイトルにセンスがないのはどうぞ、目をつぶってくださいということで。
- 102 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:11
-
泣かないで…。
お願いだから…笑って……。
いつもわがままばかり言って困らせる愛しい人。
いっつもからかわれてばかりいたのにね。
眩しいほどに可憐で、そして無邪気な笑顔。
何もかも許せた。なんだって出来た…。
その笑顔が見られるのなら…。
『お願いだからっ! ねぇ…っ…!』
ごめんなさい。ごめんなさい…。
貴女のわがままを…もう聞いてあげられない……。
もう…その涙も拭えない…。
せめて…せめて最期まで……そう思って目を閉じた。
いつだって胸にある、貴女の笑顔。
そう。笑っていて?
…ねぇ……。
- 103 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:13
-
「…梨華ちゃん」
現実に引き戻された。そんな感じ。
肩をぴくっと震わせて目を覚ました私を、美貴ちゃんが心配そうに覗き込んでいた。
ずきっ…と胸が痛む。
目尻からするっと零れた雫。さりげなさを装って指先でぬぐったそれは涙。
「大丈夫? もうすぐ本番だよ」
「あ…うん」
ここは…楽屋。そっか。…もうすぐ収録だよね。残ってるのは私と美貴ちゃんだけ。
「ごめん。行こう」
曇ったままの顔に何でもなかったかのように微笑みかけ、慌てて立ち上がった。
まだ納得してないみたいだから、手を繋いで、わざとらしいくらいにぶんぶんと大きく振ってみた。
「さぁっ! きょうもはりきっていきまっしょーいっ!」
「何それ!?」
とか言いながらも、一緒になって手を振って歩く美貴ちゃんの笑顔が眩しかった。
- 104 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:13
-
あの夢を見ると、いつも決まって胸が苦しくなる。
切なくて、悲しくて……。
いつも激しい疲労感に襲われる。
そして、起きて泣いたことに気づく。
なぜ?
どうして…せつなくて、こんなに苦しいの?
- 105 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:14
-
ぽんと肩を叩かれて、はっと我に返る。
物思いに耽ってしまっていたみたいで、また美貴ちゃんは心配そうな顔していた。
「ホントお疲れみたいだね」
「んー…少しね」
「じゃあさ、これから美貴と焼肉デートしよ!」
そう言うなり、唖然としてる私と自分のカバンを持つと、私の手を引っ張って挨拶もそこそこに楽屋を後にする。
「やっぱ元気がないときは、おーにくー!でしょ」
って、『お肉すきすき』って歌う横顔は楽しげで、繋がれている手には少しだけ力が込められていた。
その後、誘われて美貴ちゃんのお家。
『決まってんじゃん。デートなんだから』
『デートってそういうもの?』って思いながら、けど、どこか救われたように思う私がいた。
- 106 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:15
-
突然訪れる貴女のわがまま。
城を抜け出し、馬を飛ばして訪れた湖。
闇色の水面に浮かぶ満月を眺めていた貴女に、すがりつくように抱きしめられた。
ずっとそばいるように。
絶対に死なないように。
ひどくわがままな、とてつもないお願い事。
暗くなる一方の戦況。
次々と死んでゆく仲間たち。
悲しみを押し殺し毅然と振舞う貴女。
努めて眩しいくらいの笑顔を振りまいて…。
抱きしめることがかなわないから、その小さな肩に手を置いた。
誓います。
ずっと…貴女の御側に……。
- 107 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:16
-
涙が流れていた。
幸いお風呂の中だったから必死になってお湯で顔を洗ったけど、止まらなかった。
頭の中がぐるぐる回って、わけがわからない。
涙のように次々と溢れては零れていく気持ち。
わからない。でも、わかった…。
着替えて戻ると、美貴ちゃんはすでにベッドの中に入っていて、布団を少し上げて、何も言わずに笑いかけてくれる。
電気を消すと、美貴ちゃんはくるりと背中を向けた。
真っ暗な闇を見つめながら、ふうっと息を整えてみる。
「あのさ、聞いてくれるかな?」
- 108 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:17
-
私はたぶんお姫様の側に仕える騎士。
長く仕えていたらしく、よくからかわれたり、わがままを言われたり…。
どうやら戦争中だったらしくて、何人もの仲間が死んでいく。
でもお姫様は悲しむ姿を誰にも見せなくて…。
ある日、夜中に抜け出して湖に行ったとき、私にこう言うの。
ずっとそばにいて。
絶対死なないで。
誓った。
誓ったけど、守れなかった。
お姫様の前で、私は死んでしまう…。
身分違いの恋。
叶わないまでも、側にいたかった…。
いとおしくてたまらない、その笑顔の側に…。
- 109 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:19
-
閉じたまぶたからすーっと零れる涙。
ふと、体に重みを感じて、指先が涙を掬い取るように頬を伝っていく。
「…美貴ちゃん…!?」
頬にぱたりと落ちた雫。目を開けると、美貴ちゃんが泣いていた。
ぎゅうっ…と、胸が締め付けられる。
涙で歪む視界の向こうで、映像が微かにだぶっていく。
目を閉じると唇にやわらかい暖かさ。微かに震えていて、切なさばかりが伝わってくるようなキス。
「笑って…」
そっと指の背で涙を拭うと、微かにだけど笑って、そして小さく頷いてくれた。
強く、強く胸に抱きしめる。
貴女の匂い。貴女のぬくもり。貴女の……
「…そばに……いさせて…。どこにも…いかない」
- 110 名前:わがままと願いと誓い 投稿日:2004/01/19(月) 02:21
-
返事の代わりに強く強く抱きしめられた。
『離さないから』
って美貴ちゃんが言うから、
『離れないから』
って答える。
『いいの? わがままだよ? きっと』
『いいよ。なれてるから。たぶん』
笑ってくれるなら、私は貴女のおもちゃでかまわない。たぶん、それは変わらない気持ち。
それがたとえどんなキオクだとしても、ユメだとしても、私たちしか知らない世界。
たぶん、きっと…。
この続きはきっと、これから出来ていくんだと思った。
END … ?
- 111 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/19(月) 02:34
- 100レス越え記念age。
石川さん誕生日おめでとうございますということで。
19才若いねぇ。10代も早いけど、20代もまた思ったより過ぎるのは早いかったりで…。
今という時間を楽しんで過ごしてくださいと思うわけで。
なんか変な文。
「たぶん…」を書いた直後、立場を入れ替えて見たくなりましたので。
お姫様なフジモトさんも書きやすいし…。
あれこれ設定とか浮かんでしまい、妄想がそれるそれる。
がんがって短くしてみましたがどうだろ。
楽しんでいただけたらと思いまする。
- 112 名前:@ 投稿日:2004/01/19(月) 14:44
- 100レスおめ
石川さん誕生日おめ
もう100ですか!うちとは更新量が違いますねw
これこそ夜王子と月の姫ですね
なんか引き込まれる素敵な世界です
次回作も楽しみにしてます。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/23(金) 01:45
- 更新ごとに毎回トロケてますよ(爆
作者さんの浮かんだ設定、妄想等もっともっと読みたいです。
次回も楽しみに待ってます。
- 114 名前:35 投稿日:2004/01/23(金) 23:18
- うぉお!久々に来たら一杯更新されている!(w
いやーどれもいいです♪
石川さんも猫になったらエロいでそうね…(w
また作者さんの作品楽しみにしております!w
- 115 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/24(土) 01:07
-
>>112 @様
ありがとうございます。ちょっとだけスランプちっくになってましたが。
妄想ストックがあっただけですので早いのはたまたまです。
じつはこれ、まさにいただいたレスが妄想の火付け役にw
引き込まれていただけるとは、まじうれしいっす!
>>113 名無し読者様
トロケテいただけてますか。それは何よりw
書いてる方も悶えながら書いてますが(爆
楽しんでいただけるよう、がんばりまするので今後ともよろしくです。
>>114 35様
ごぶさたでございます。
どれもいいなんて…そんなう・れ・し・い(はぁと)
ネコ化いしかーさんはエロいでしょ。そりゃもう。
そばにいたらねたぶん、某メンバー同様鼻血悩殺ものですw
- 116 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/24(土) 01:13
-
新作ですが、前作「わがままと…」の続編というか番外です。
いしよしになってるようです。
前作の番外なので根底にはりかみきなのですが。
りかみきで甘いのをお求めになってる方にはごめんなさいかも。
読んでいただける方には、少しでも楽しんでいただけたらと思います。
- 117 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:32
-
たぶん、二度と忘れない…。
悲しみって言うものは、何でこうも胸に焼きつくんだろう…。
動けなかった。
信じたくもなかった。
うそだろ?
さっきまで一緒だったのに…。
戦ってたのに…。
傷ついて輝きを失った鎧。
その隙間から流れ出る血。
姫が泣き喚きながら身体を揺さぶっている。
いつものように眉を下げて困っているその顔は青を通り越して白い。
安らかな、まるでそれは寝顔。
閉じたまぶたから涙が零れた。
手でそれを拭って、姫は傷ついた騎士に口付ける。
バカ! 泣かすんじゃねぇよ…!
置いてくんじゃねぇよ!!
- 118 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/24(土) 01:32
-
「よっちゃん?」
あいぼんに肩を叩かれて、我に返った。
「どったの? 本番始まるって」
「あぁ…うん。いこっか」
きょとんとしてるあいぼんに笑って見せて、よいしょと立ち上がった。
ドアノブに手をかけつつ、振り返って楽屋を見渡す。
ここんとこ疲れ気味の梨華ちゃんはまだ眠っていた。
少し離れたところで美貴ちゃんがそれを…、そう、見守っている…そんな感じ。
不安そうで、さびしそうで。隣にいる矢口さんの話、たぶん、あんまり聞いてないだろうなぁ。
「もうすぐ本番だってさぁ!」
ちょっとだけ助け舟。そしたらあいぼんも「本番だぞーっ」って。
わらわらと動き出す。
美貴ちゃんは梨華ちゃんを起こすからって、それを確認して楽屋を後にした。
- 119 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:33
-
この夢を見たときはいつもそうだ。
胸が締め付けられる。
息をするのが重苦しい…。
自分には何も出来ないのかと、突きつけられるようで…。
いつからか、悲しすぎて泣くことすら出来なくなっていた。
助けられたんじゃないのか?
悲しませないで済んだんじゃないのか?
この夢を見たときはいつもそう。
二人の姿が、まだ頭から離れない…。
- 120 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:34
-
収録はそつなく終わる。
いつもどおり。いつもどおり。
完璧な笑顔の後ろに疲れと心配を隠して…。
「じゃあ、お疲れ様でしたー!」
「お…お疲れ様でした」
戸惑う梨華ちゃんの手を引きながら、『お肉すきすき』を歌う空元気気味の美貴ちゃん。
ドアが閉まる間際にふと、梨華ちゃんが笑ったのが見えた。
楽しそうな歌声が遠ざかっていく。
ほっとした。
だけど、それでも、胸をじわりと締め付ける鈍い痛みは消えなかった。
- 121 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:34
-
城が燃えていた。
この国も終わるのかと思った。
『まだ王もお妃様も、そして姫もいらっしゃる。終わりじゃない』
凛とした横顔。そこに姫のおもちゃだったあいつはいない。
力強いその言葉に、それこそ我に返る。
まだ終わりじゃない。
すべてが消えたわけじゃない。
少しでも安全にここから離れられるように…って。
より強い者が御守りするのが筋だからって。
あいつは自分に王家の人々を託し、馬に飛び乗った。
変わらぬ決意に、硬く手を握り合う。
生きて会おう。
『必ず』
それが最後の言葉になった。
- 122 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:34
-
大きく身体が揺れて意識が戻る。
深夜に近い電車の中。
窓の向こうの景色が緩やかに流れて、駅に滑り込んでいく。
車内にもホームにもまばらに人の姿。
まだ頬に感覚の残る涙の跡。
袖で抑えるように拭って、帽子をさらに深くかぶった。
『姫が笑顔でいてくれるなら、自分はそれでいい』
照れもせずに、ただ、側にいたいと…。
そして、いつも夢の中のその人は儚げに笑う。
どこか諦めたように、なのに、どこか幸せそうに。
好きなんだなって、思った。
ただ、そんな笑顔が見てると辛くて、夢の中のウチはゴメンって言って抱きしめる。
大丈夫だからって繰り返して、背中を叩いて、精一杯笑って見せるんだ。
ぎゅっと爪が食い込むぐらい強く拳を握る。
電車が暗闇に向かってまた滑り出した。
- 123 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:35
-
隠れていた小屋から姫が飛び出した。
服を変えたところで、顔は知れている。生き残った配下のものに警護を申し付けると、すぐさま後を追いかけた。
思ったより早く姫は見つかった。
誰かが倒れているようで、姫がその前にひざまずいている。
横には見慣れた馬。
まさか…。
全身から力が抜けた。
うそだろ?
泣きじゃくる姫。
あいつは何か言いたげに口を少しだけ開き、時折指がびくりと動いた。
閉じたまぶたから零れる一滴の涙。
触れた唇の温かさに気づくことなく、あいつは愛した人のもとを去った…。
うああああああああっ!!!!!
空に向かって叫んでも、神様は何もしてくれなかった。
- 124 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:35
-
「……!!!!!!!」
飛び起きた。
心臓が痛いくらいドクドクいってて、のどが渇く。全身にものすごい汗をかいていた。
次から次から頬を伝って暗闇の中に消えていく涙。
自分も一緒だったらどうだったろう?
他にも仲間がいたんだから。
自分が行けばよかったんじゃないか?
だってウチの方が強かったんでしょ?
夢の中の人はお姫様のおもちゃだったけど、他の誰よりも、一番近くにあの人がいることを望んでいた。
夢の中のウチにはじゃれてきても、辛いとき、悲しいとき、それを一番近くでそれを見ていたのはあの人。
だって素直じゃないお姫様のわがままは、いつだって辛かったり悲しかったり、どうしようもなく落ち込んでる時なんだから…。
立場なんて関係ないんだ。本当は。
パタンと布団に倒れこんで目を閉じる。
みんなが笑っていてくれるなら、それが一番うれしい。
- 125 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:35
-
みんなが笑っている。
なんか懐かしい…。なんだかうれしい…。
そんな夢を見た。
昨日の重苦しさは消えて、疲労感だけは残っていたけど清々しい。
ケータイにメールが届いていた。
相手は梨華ちゃんで、たった一言。
『 わらってくれた 』
- 126 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:36
-
少しはれぼったいままの目を見て、梨華ちゃんが、
「ごめんね」
って言うから、
「何のこと」
って、とぼけたふりをした。そしたら、
「でも…ありがと」
って、ウチの手を取ってしっかりと握る。
握り返すと、じっとその手を見た後、大きく深呼吸してから顔を上げた。
やわらかく暖かい笑顔。そして芯の通った強い瞳。
「なんだよ。改まってさぁ」
「そうだね。でも……うん」
それとなくお互いの手が離れる。
でもそれは別れじゃない。
離れていった手がお姫様の手を取って、一つになる。
悲しいユメは終わったんだ。
みんなが笑っていられる世界になるなら、そんなキオクも何もいらないよ。
新しい世界ができていくんだから。
END
- 127 名前:微笑みは、きっと神様の贈り物 投稿日:2004/01/24(土) 01:47
-
名前欄一箇所ミスった(鬱
なんでしょう。場面ころころ変わってたり、読みにくいかなぁ。
タイトルもなんかセンスないし…相変わらず。
先にも書きましたが、いしよし友情編みたいな感じ。
わけわからんな感じですが…。
騎士ないしかーさんと、お姫様なフジモトさん、んで、それを見守る騎士のよしざーさん、その気持ちが少しでも伝わればと思いつつ。
この設定は個人的に好きだと知った冬の夜。
- 128 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/24(土) 02:09
-
言った矢先に名前欄が……
そっか。これって、もっと甘い書くようにとか、エロいの書くようにとかっててう、神様からのお達しなのかしら。(激しく意味不明)
うぉぉぉお!
れっつ精進ということで、のほほんと作品は楽しんでくださいませ。
- 129 名前:I 投稿日:2004/01/27(火) 17:16
- 今、りかみきめっちゃはまってるんで、作者様の作品楽しみにしてます。
これからも、作者様のペースで頑張って下さい。
- 130 名前:ろん 投稿日:2004/01/28(水) 11:40
- 色んな記憶が交錯して今に繋がっていく感じがとてもいいですね。
さすらいゴガールさんの書く、欲望に燃え上がるりかみきもツボです。
頑張って下さい!
- 131 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/28(水) 15:03
-
>>129 I様
ありがとうございます。
なかなか現実同様少ないですからね。りかみき。
仲は悪くないようですから、現実でももう少し見やすいところで絡んでもらえればと出ている番組を見てはいますが。
ライブだと思ったりよりあるんですけどねぇ。
妄想フル回転で、ご期待に沿えるようがんばります。
>>130 ろん様
不安もありましたが、展開的には作者も気に入ってますので、そう言って頂けると、励みになります。ありがとうございます。
欲望燃え上がってますかねぇw
というか、この二人の組み合わせだと、なんでかさわやかな流れでもそういう流れになりやすいような…。
現実であまりに見れない分、甘いというか欲望に燃える二人が見たいのかもしれませんなw
がんばるのでこれからもよろしくです。
- 132 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:22
-
心臓の音。
心地いいぬくもり。
息が詰まるくらいに強く抱きしめてくれる腕。
ふと目があって、なんだかくすぐったくって笑いあう。
一瞬の沈黙が訪れて、唇が重なる。
そしてまた、照れくさくて二人してくすくす笑いながら抱きしめあう。
離れないように。
離さないように。
じゃれあいながら取り戻すの。
止まっていた時間を。
満たされなかった気持ちを。
そして二人を振り回した想いとキオクに別れを告げる。
邪魔するものなんて、何もないから。
- 133 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:23
-
ただ疲れてるだけだと思ってた。
でも、起こしたときに見た梨華ちゃんの涙が教えてくれた。
たった一滴。
それだけで十分だった。
なんでもないって笑ってたけど、美貴にはわかった。
今朝見た夢が頭の中をぐるぐる回る。
同じ夢を見てたんでしょ?
残した側と残された側と…。
悲しみも切なさも、比べられない。
ひどく疲れた顔してるよ。
何かを振り切るように笑わないで。見てる方が辛いんだから。
見ないでいてあげるから…。
見ないでいてあげるから……そんな風に笑わないで。
- 134 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:23
-
ユメなのに、ユメのはずなのに。
どうしてこんなに喪失感が胸に残るの?
ただ悲しくて。
ただ切なくて。
油断すると涙が溢れてくるから、無理矢理にでも笑う。
きっと彼女は泣いてるだろうって思ったから。
- 135 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:23
-
一人にするのが心配で、強引に誘った。
戸惑う梨華ちゃんの笑顔が胸の片隅に追いやった世界と繋がって、繋いでいた手に思わず力が入った。
遠くを見るような目で交わす会話。
ふっと笑顔の中に見え隠れする痛み。
ユメと現在を行ったり来たりしている梨華ちゃん。
あたしはここ!
美貴はここにいるから!
連れ戻したい。
取り戻したい。
できることなら、力づくでも…。
- 136 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:24
-
わがままも、あの人だったから言えたこと。
頼りなさそうで、本当は誰よりも強くて、まっすぐで。
困った顔で笑いながら、でも心の中にある不安をきちんと感じ取って、真正面から受け止めてくれた。
ずっとそばにいて。
絶対に死なないで。
そんな理不尽な願いに、
『誓います』
って、何の迷いもなく答えてくれた。
でも、それは守られなかった。
切ないのはそのせい?
悲しいのは、なぜ?
- 137 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:25
-
お風呂から上がって部屋に来た梨華ちゃんの目が赤くなっていた。
でも、気づかないフリをして笑って見せた。
電気を消したけど、痛々しく感じるその表情が頭を離れなくて背中を向けた。
『あのさ、聞いてくれるかな?』
そして、語られる梨華ちゃんが見ていた世界。
繋がっていくのがわかった。
- 138 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:25
-
梨華ちゃんの目からすーっと零れた涙を指で掬い取った。
梨華ちゃんの頬に落ちる美貴の涙。
驚いて一度開いた目をまた閉じて涙をこらえる梨華ちゃんに、そっと口付けた。
奇跡が起きるのを願った。
ぬくもりだけが唇に残った最初で最後のキス。
あの人はもう、いなかった…。
微笑みかけてもくれないんだね。
涙だけが、ただただ零れて…。
悲しかったのはそのせい。
せつなかったのも、そのせい。
- 139 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:25
-
心臓の音。
心地いいぬくもり。
息が詰まるくらいに強く抱きしめてくれる腕。
言葉に上手くできないから、ありったけの力で抱きしめる。
穏やかに微笑む横顔。
緩やかに流れていく時間。
満たされていくココロ。
でも、それでも何か物足りない。
身体と身体を隔てるすべてがもどかしい。
そっと身体を起こす。
「…美貴ちゃん?」
不意に離れたぬくもりに不安げな梨華ちゃんの瞳をまっすぐに捉えて、深呼吸する。
「…抱いて…」
そして、視線を絡めたまま口付けた。
- 140 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:26
-
唇が離れたらそれが合図。
戸惑いながらボタンに手がかかって一つ一つ外されていく。
胸が露になると、ちょうど心臓の上に辺りキス。
「…っ!」
震えた。
言葉にできない、甘いうずき。
自分の上着も脱ぎ捨てると、美貴の身体からもパジャマを取り去り、そっと口付けて、そして、ぎゅっと抱きしめる。
直に伝わるぬくもり。鼓動。感触。
そっと頬を両手で包み込んで、見つめあう。
「…梨華…。もっと…感じて…」
美貴は、ここにいるから…。
肌を辿るまだ少し震える指先。
熱を帯びていく身体とココロ。
「…もっと……」
感じさせて。
ここにいるって…。
- 141 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:26
-
せつなさは優しさに。
悲しみは激しさに。
全身でココロごと受け取るあなたの愛。
「美貴…」
耳元で名前を囁かれるたびに不思議なくらい安心したから、押し流そうとするうねりの中で必死に名前を呼んだ。
「…りか」
って。
まどろむ美貴を抱いて優しく頭を撫でながら、ポツリと梨華ちゃんが言った。
「ただいま…」
「おかえり」
あなたはここにいる。
あたしもここにいる。
それだけ。
たったそれだけのことで、こんなにも満たされる。
二人を振り回した想いとキオクに別れを告げた。
邪魔するものなんて、何もないから。
悲しいユメは、もう見ない。
- 142 名前:口付けて、そして… 投稿日:2004/01/28(水) 15:27
-
END
- 143 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/28(水) 15:36
-
ということで新作なのですが、前作で『END』つけたのに、なぜか続編です。
「微笑み…」を書いた後、フジモトさんの気持ちがほとんど書かれてないのではと思い、迷った挙句、書いた次第です。
3部作になってしまいました。
「わがままと願いと誓い」
「そして、口付けて…」
「微笑みは、きっと神様の贈り物」
この順で読まれるのがよいかもです。「微笑み…」は純粋に番外のつもりで書いているので。
- 144 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/01/28(水) 15:37
-
なんとなくオチ隠し
本当になんとなく。
- 145 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:30
-
「おはよーございまーす」
一番乗りかと思って楽屋のドアを開けたら、雑誌を読んでいた梨華ちゃんがぱっと顔を上げた。
で、めっちゃかわいいチャーミースマイルで、
「美貴ちゃん、おはよう」
って。
あーなんか今日も楽しい一日が始まる予感!
だって、今のところ二人きりだし。
まだとーぶん、みんな来ないと思うから。
- 146 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:31
-
さっさと荷物を置いて梨華ちゃんの隣に座って雑誌を覗き込むと、この間受けた新曲のインタビューの記事だった。
新曲のプロモーション、梨華ちゃんと一緒じゃないってわかったときは正直残念だった。
っていうか、まこっちゃん、こんちゃん、どっちか替わってって思ったし。
でも、まぁ、それはたぶんヨシコも同じだし。それに。彼女と一緒にいるのも楽しいからね。
「ふーん。ちゃんと、ほかの人のも読むんだね。梨華ちゃんって」
「だってさ、気にならない?」
「んーどうかな?」
そしたら、梨華ちゃんはふふって、おねーさんみたいな顔で笑った。
「それにね。読んでて、改めて気づくこともあるからね」
「あー。それは何かわかるかも」
そしたら、『でしょ?』って、うれしそうに笑った。
- 147 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:31
-
たしかにね。梨華ちゃんが受けたインタビューとか番組とか、ばっちりチェックしてるもん。
「でもさ、梨華ちゃん、あんまり美貴の名前とか話とかしてくれないよね」
「そうかな? んー…そうだっけ…?」
「そうだよ。梨華ちゃん達が受けたのだと、まこっちゃんの話が多いじゃん」
「んー。まぁねぇ…。おもしろいからね。あの子。見てて飽きないし」
「話題には事欠かないのは確かだよねぇ…」
でもさぁ、辻ちゃんはともかくっていうか、しょーがないかなーとは思うけど、まこっちゃんとはちょっとじゃれすぎじゃない?
…っていうのが顔に出てたらしい。
「美貴ちゃん?」
梨華ちゃんが頭に『?』を乗っけて首をちょこんと傾げてる。
あーもー! 鈍感!!
「ねぇ、梨華ちゃん」
「ん? なに?」
「もうちょっとさー。かまってほしいなーって思ったりなんかして」
って、あれ? 何驚いた顔してんのよー!
- 148 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:32
-
すーっと手が伸びて、ぽんと美貴の頭の上に乗せるとくしゃくしゃと頭を撫でながら、驚きから満面の笑顔に変わっていく。
「かわいー! ふふっ。やきもちやいてくれてるの? もしかして?」
あ゛ーっ! どーしてそーゆーことを言うのかなぁ、もう! やだ! 顔が熱いよっ!
「きしょっ! そんなわけないでしょ! もう!」
「またまたぁ。ムキになっちゃって。あやしーなぁ」
待って。ちょっとこれって完全にコドモアツカイ? でも頭を撫でてもらって、うれしかったりもして…。
うーん。フクザツ…。
「でもさぁ、大体いっつも美貴からじゃん。ほかの子とはけっこうくっついたりしてるのにさぁ」
「でも、美貴ちゃんもだよね。それ。この前のハロモニはマコトでしょ。ののでしょ。それに、よっちゃんにもよくちょっかいだしてるじゃん」
「ぅ…」
だって、恥ずかしいんだもん。梨華ちゃんだと…。ヨシコとはなんていうか、同志というか。まぁ、かなーり気が合うから、楽だしが照れがないし。
- 149 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:33
-
こんな乙女ゴコロに気づかない彼女は、楽しそうに美貴を見て微笑んでる。
「でも、うれしいなぁ。美貴ちゃんにそう思われてたのって」
「…え?」
「それに、よっすぃ〜にかまってる女の子な美貴ちゃん、けっこうすきなんだよね。あたし」
え? え?
「どっ…どーゆーこと?」
そしたら、梨華ちゃんは頭を撫でるのをやめて、テーブルの上でぎゅっと拳を固めた美貴の手をほどいて、そっとを繋いできた。
「なんて言うのかなぁ。普段何気に男前でさばさばしてる美貴ちゃんが、よっすぃ〜の前ではなんかね、いじらしいっていうか。やっぱり女の子なんだなぁって」
「はぁ……っていうか、美貴、もともと女の子ですけど」
「そうなんだけどね。はじめはちょっと嫉妬したりもしたんだけどね、最近はなんかね、それが、うれしいって言うか、かわいいなぁって思うんだよね」
そういう梨華ちゃんの顔がちょっと赤かったりするのはなぜ?
- 150 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:34
-
「なんかよくわかんないよ」
「そぉ? でも、普段自分の前じゃ見れない表情が見れるって、うれしくない? ちょっと…悔しいけど、まぁ、かわいいからいいやって思うんだけどね」
えーとー…これって…??
なんか混乱してきた。
そんな美貴をニコニコと微笑んで見つめる梨華ちゃん。なんかちょっと…違う、すっごくくやしーぞ!
「悔しいってゆーんならさー、がんばればいいじゃん」
「そうなんだけどねぇ、って、いいの? がんばっても?」
「いいよ。っていうか、がんばれ。もっとかまってよ。ライブのときとか、モーチャンとか、ハロモニとかさぁ。歌番組は席順もあるから厳しいけど、その気になれば何とかなるでしょ」
「またずいぶんと具体的だねぇ。わかった。梨華、がんばる」
っていたずらっぽく笑う梨華ちゃん。もう、ちゃかさないでね。
「もちろん、それ以外でもね。絶対だからね! 美貴だって、梨華ちゃんの話してるんだから」
「あぁ、そういえばそうだね」
梨華ちゃんが雑誌に目をやる。
そこにはライブ開始前に緊張をほぐそうと手に人の字を書く梨華ちゃんの話。
- 151 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:36
-
記事のその部分を指でたどると、梨華ちゃんはまた美貴に顔を戻した。
「田中ちゃんじゃないけどね、あたしも美貴ちゃんの言葉に救われるんだよね。なんかね、ほっとするの」
「そうなの?」
「そうだよ。大丈夫だから、緊張したって一緒じゃん、楽しんじゃえ! って、そういう美貴ちゃんがすっごい楽しそうで、一緒に笑顔になれるんだよね。そしたら、なんかすっごくほっとしてるのに気づくの」
ぎゅっと繋いでいる梨華ちゃんの手に力がこもった気がした。
「あぁ、美貴ちゃんがいるから大丈夫。みんながいるから大丈夫。よし! がんばるぞーって」
ちょっと恥ずかしそうにふわっと笑ったその笑顔があまりにもかわいくて、心臓がドキドキする。
たいしたことない言葉なのに、そんな風に受け止めてくれてたんだ。うわー…うれしい!
「ありがと! 梨華ちゃん」
「え? どうしたの?」
「どうしてもっ! だって、うれしいんだもん!」
「ふふっ。なんか美貴ちゃん、女の子モードだね。そっか、やればできるのかな?」
「そうだよ。やればできるじゃん」
そしてら、照れくさそうに笑った。
- 152 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:37
-
ぴん!とひらめいた。
ぴたっと梨華ちゃんにくっついて、顔を近づけてそっと囁いてみる。
「じゃあさ、もっとすぐに緊張がふっとぶ方法、教えてあげようか?」
「え?」
や、そんなじっと見ちゃダメ。あー…ちょっと緊張してきたかも。
「ライブ前、緊張してきました。あーどうしよーと。で、大丈夫だよ、楽しんじゃおう! …って」
梨華ちゃんの頬に片手を添えると、ちゅって、すばやく唇をふさいだ。
ふふっと笑っては見せたけど、あーもードキドキ!
梨華ちゃんは一瞬ぽかんとしていたけど瞬きすると我に返ったのか、かーーーっと真っ赤になっていく。
真っ赤になった頬に両手を当ててうつむいた梨華ちゃんがぼそりと一言。
「美貴ちゃん、それ却下」
「えーーっ! なんでーーっ!」
そしたら、上目遣いにちらりと美貴の顔を見た。
うっ…ちょっと待って。もう……
「だって、余計ドキドキしちゃうじゃん…」
「は!?」
「真っ白になっちゃうよ……うれしくって…」
ハイ。ノックアウト。あーもう。美貴の負け。あなたかわいすぎ。
- 153 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:38
-
梨華ちゃんはすっと美貴のほっぺに手を添えると、すすっと顔を近づけた。
うわ! どーしよー! 心臓が痛いって、マジで!
「それにね、美貴ちゃんが緊張してた」
「へ!?」
ドキッ…!
「大丈夫。楽しんじゃおう。ね」
そして、梨華ちゃんの唇が美貴のに重なる。
さっきほんの一瞬だけ楽しんだ、やわらかくて暖かい感触。
あ…あれ?
…。1、2、3、4…。
長い…?
…5、6、7で離れた。
「ほらね。ドキドキするでしょ?」
あー…、まだ感触が残ってて頭が回んない。もっと感じてたぬくもりに溺れていたい感じ。
「でも、イヤじゃないよ。美貴は。ただ…」
「ただ?」
「ものたりない…かな」
- 154 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:39
-
結局、この素敵なアイディアはボツになった。
なんか照れくさくって、正直二人とも『テレビとかじゃ余計にかまったりできなくなるかもしれないね』って。それぐらい目が合うたびに身体が熱くなる。
「なんか、ドキドキしすぎてライブどころじゃなくなりそうかも。確かに」
「でも、キスは…してほしいかな」
はにかむ梨華ちゃん。
「そんなこと、言ってくれればいつだってするよ」
「ホントに?」
「ホントだって。すきだもん。梨華ちゃんのこと」
あっ! 言っちゃった!
すると、梨華ちゃんはくすぐったそうに笑って、そっと美貴の手をとった。
「ありがと…。すきだよ。あたしも」
そして、ほっぺにちゅっ。
それだけなのに、目の前がくらっ…って。
「美貴ちゃん?」
「ううん。大丈夫。嬉しいだけだから」
「ふふっ。へんなの」
って、今度は唇にちゅっ…って。
ぎゅって、思わず繋いでる手に力が入って、そしたら、梨華ちゃんもぎゅって握ってくれた。
なんとなく照れくさそうに笑いあう。
- 155 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:39
-
素敵な一日。予感的中!
ビバ早起き!
だってまだ二人きりの時間が楽しめるんだもん。
- 156 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:40
-
それからしばらくすれば、いつもどおりにぎやかな娘。の楽屋。
入ってきたヤグチさんに、
「なんかさぁ、梨華ちゃんとミキティからラブラブオーラ感じるんだけど、おいらの気のせい?」
って言われたけど、二人して顔を見合ってふふーんって。
そして意味深な笑いで返してあげた。
納得いかないみたいで、あっちこっちに意見を聞いて回ってる。
「気のせいじゃないのにね」
って隣にいる梨華ちゃんに言ったら、「ねぇ」って。
「ねぇ、これから梨華ちゃんのこと、独占してもいい?」
って聞いたら、
「じゃあ、美貴ちゃんこと独り占めしてもいいんだよね」
だって。
「もちろん!」
だからもっとかまってね。梨華ちゃん!
そしたら、美貴から目を逸らさずに小さくうなずく梨華ちゃん。
それを見たヤグチさんが「あーっ!!」って騒ぎ出す。
感じる素敵な日々の予感!
走り出した停車駅なしの二人の恋のブギウギトレイン、もう止まんないっしょ!
- 157 名前:素敵な予感 投稿日:2004/02/01(日) 20:40
-
おわり
- 158 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/01(日) 20:45
-
ということで、こうしんしゅーりょー。
某廃人たちの集うスレの影響か、どうしても石攻めな話になりやすいなぁ。
某観察スレでこの記事を見たときも何度も読み返してしまいましたさ。
ただ、絡みが見えないっていうのは、ある意味想像をすごくかきたてれるから、
それはそれでよいのかな。
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 01:17
- 読むとこっちまで幸せな気分に・・・w
石攻め良いですね。
- 160 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:52
-
なんとなくつけてるテレビを見ながら、美貴の髪を撫でる梨華ちゃんの膝枕でのんびりと過ごす夜。
もうすぐ始まる乙女コンの打ち合わせの後、そのまま梨華ちゃんちに来たわけで、当然お泊り。
みんなといると楽しいけど、梨華ちゃんを独占するのって難しいんだよね。
だってさ、いっつも辻ちゃんとべったりでしょ。で、気づくとまこっちゃんがじゃれたりしててさ。手を温めたり足に乗ったり。正直、うらやましい。
で、ふと気づくとれいながキラキラした目で梨華ちゃんと話してたりするんだけど、そんな彼女をしげさんががっちりマークしてたりする。うん。えらい。
でも、あれって思ったら、飯田さんとエロい雰囲気かもし出しつつ、楽しくおしゃべり。
果敢に入っていこうとすると、辻ちゃんがじゃれてきたり、まこっちゃんがタックルかましてきたり、休憩が終わっちゃったり…。
- 161 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:53
-
「美貴ちゃん?」
どうやらとおーいところに行ってたみたい。はっと戻ってきたら、目の前に梨華ちゃん。
「大丈夫?? なんか怒ってるみたいだったけど」
「えー…」
あー…手が止まってる。
「うん。怒ってる。もっと撫でてほしいなぁ」
「え? あ…あぁ……うん」
ちょっと驚いてるって言うか、おびえてるって言うか、微妙な表情でまた優しく髪を撫でくれる梨華ちゃん。
「なにー。文句あるー!」
「ないけど、だって…美貴ちゃん、なんか今日はすっごい甘えんぼだなぁって」
くすくすって。目を細めてちょっと困ったように笑う。
でも、うれしそうで楽しそうな優しい笑顔。
- 162 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:53
-
彼女が特定の人だけにしか見せない二つの笑顔。
うっとり乙女モードのキラキラした“よっすぃらぶバージョン”。
ほんわかお姉さんモードの愛に満ちた“ののおいでバージョン”。
男前といわれる美貴だけど、見た目まで男前ってほどじゃないし、
年下って言ってもまぁ1ヶ月程度だし同級生だし、子供っていう歳でもキャラでもない。
- 163 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:53
-
これは“ののおいでばーじょん”に近いかなぁ。
「美貴も甘えたいんだもん。梨華ちゃんに」
「そうなの?!」
「ええー! 何でそんなに驚くのよー!」
「だって美貴ちゃん、あたしには普段べたべたしてこないよね」
「だって、その前に梨華ちゃんには誰かしらくっついてるじゃん」
ほんとはさぁ、いちゃいちゃしたいよー。美貴だって。
「でもさぁ。なんっていうのかなぁ。恥ずかしいって言うか…」
「どうして?」
梨華ちゃんがぐっと顔を近づける。
わ! 胸! 胸が近いっ! 顔に触れそう…っていうか、触れてほしいかも……。
「大丈夫? 顔、赤いよ?」
あーもーーーーーーーーーっ! このド天然!!!!!
で、さらに顔がぐっと近づいて、美貴の顔は見事に梨華ちゃんの胸の中にレッツゴウ。
うれしいけど、うれしすぎて窒息しそう。なので、やむなく心を鬼にする。
「梨華ちゃん。顔が見えない…」
「あ、ゴメン……」
身体を起こした梨華ちゃんも赤くなってた。
- 164 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:54
-
真っ赤な顔してきょろきょろ視線が行ったり来たり。
でも撫でてくれる手は止まってなかった。その手を取ると、美貴の胸の上に置く。
「わかる?」
無言でこっくりとうなずく梨華ちゃん。
「すっごいドキドキしてるでしょ? だから…わかんないの。どうしていいか」
「え?」
心臓はドキドキドキドキドキドキ…。
梨華ちゃんの手のぬくもりをゆっくりと吸い込んで、全身に広げようと躍起になってる。
「みんなの前だと…よけいにね、なんか…」
意識しちゃうんだよね。だから、こう、ツッコミがつい厳しくなったりしたりして…。
「ほんとはもっともっと、かまってほしいし、いっぱい話がしたいよ」
「今よりも?」
「うん。今よりも」
軽ヤンモードにならないように願いながらまっすぐに見つめると、むうっと梨華ちゃんが首をかしげた。
- 165 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:54
-
「でも、よっすぃ〜によくべたべたしてたりしてるよね」
え…あれ? そーきますか。やっぱり。
「それに、最近もヤグチさんヤグチさんって、まりっぺらぶって感じだし」
「えーっ。そっ…そうかな?」
「うん。ラジオで。それに、デートしたんだよね」
「あー…」
なんかちょっと拗ねてる? 唇がびみょーにとがってるけど。
「もしかして、焼いてくれてる?」
「ちっ…違うよ。そうじゃないけど、ただなんか、わからないなぁって思ったから」
でもね顔が赤いまんまだよ。梨華ちゃん。
「わかんないって、何が?」
「だからぁ!」
むっ…って、にらむんだけど、その拗ねた顔がまたすっっっっっごくかわいい!
思わず笑みがこぼれた。よしよしと頭をなでてあげる。
「ヨシコとかヤグチさんとは一緒だと楽しいんだけど、ドキドキはしないんだよね」
梨華ちゃんが胸で重なっている手を見る。
重なった二人の手を包むように撫でていたそっと手も重ねた。
- 166 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:54
-
「梨華ちゃんだから、ドキドキする」
「…」
「それにみんなと一緒だと、梨華ちゃんのそばには誰かいるから…」
ぎゅっと胸の上にあった手を指を絡めて繋いだ。
ぎゅっと握り返してくれる梨華ちゃん。
『二人きりだったら、誰にも邪魔されないから。思う存分甘えたいの』とまでは、さすがに恥ずかしくて言えなかった。
でもまぁ、よーするに、美貴は梨華ちゃんに恋しちゃったり愛しちゃったりするわけなのである。
- 167 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:55
-
よっと身体を起こすと、手を繋いだまま向き合って見つめあう。
「梨華ちゃんは…どう思ってるの?」
「どう…って?」
「だから、イヤ? 美貴が甘えるの」
「イヤじゃないよ。イヤだったら、膝枕なんかしないって」
くすくすって笑った。
そうだよね。たしかに。
「じゃあ……」
『どう思ってるの?』って言おうとしたら、ふわっと唇にやわらかい感触。
ほんとに一瞬。えっと思ったら目の前が暗くなって、あれっと思ったら明るくなってた。
「これが答えじゃ…ダメ…かな?」
何が起きたかわからなかった。
梨華ちゃんはほっぺを真っ赤にして照れ笑い。
今……。
かすかに残るぬくもりを追って、唇をそっと人差し指でたどる。
ダメかなって………。
- 168 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:55
-
ようやくわかってきた。と、同時にうがーーーーっと身体が燃え上がってくる。
「ダメじゃない! ぜんっぜんダメじゃない!」
でも、ちょっと…いやいやかなーり不満。
「ダメじゃないけど、ちゃんと聞かせて。よくわかんなかった」
そしたら、あまりの美貴の勢いに身体を引いてた梨華ちゃんが、ふっと真顔になった。
繋いでる手をものすごく強く握ってくる。
「わかった…」
そして、大きく深呼吸。
ふっと繋いでいる手からも力が抜けた。
かちりと視線がぶつかる。
「すき…」
唇が重なる。
10まで数えてやめた。
感じる温かさが気持ちよかったから。
- 169 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:55
-
両手を広げて、
「おいで」
って。
お言葉に甘えてポスンと胸に飛び込んだ。
お姉さんモードの優しい笑顔だけど、やっぱり“ののおいでバージョン”とはちょっと違う。
なんかこう、ちょっとチャーミーさん入ってて、キラキラしてるかも。
けど、うっとりってわけじゃなくって、なんかまったりって感じ。
なんだこれ?
お姉さんモードでもないし、乙女モードでもないし。
なんだろう。まったりナチュラルモードって感じ?
「なぁに? 不思議そうな顔して」
「梨華ちゃん?」
「ん? なぁに?」
美貴は、特別な人になれるかな? 娘。っていう以外で。
「うん。かわいいね」
そしたら、恥ずかしそうに笑って「どうしたの?」って。
「別にどうもしないよ。そう思っただけ」
「へんなの」
- 170 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:56
-
うっとり乙女モードの笑顔をヨシコから奪うの、難しいかな?
ちょっとチャレンジしたい気分。
のほほんお姉さんモードは、あれってほんとに辻ちゃん限定だから、誰にも奪えないだろうし。
だったら、3つ目の新バージョン、作らせちゃえばいいか!
それって、いいかも!
まったりナチュラルモードの力の抜けた“ミキティぴったしバージョン”なんてね。
- 171 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 14:56
-
おわり
- 172 名前:作っちゃえ! 新バージョン 投稿日:2004/02/03(火) 15:02
- ということで、「かまって編」に続いて「いちゃいちゃしたい編」でした。
っていうか、前と話が似てるような似てないような…。
そこは技量不足ということで。
>>159 名無飼育さん 様
幸せな気分になっていただけましたか。
ありがとうございます。
石攻めよいですか。同志はっけん。ありがとうです。
何気にいしかーさん、攻めの話はすきなのですよ。
性格的にもありえそうだし。
もう少しきわどいのも書ければと思うんですがねぇw
- 173 名前:@ 投稿日:2004/02/05(木) 22:02
- 甘っ!!りかみきの甘いのなんて現実に有り得ないから
想像できなかったけど此処読んでたらなんか浮かんできた
というか妄想してしまった(爆
なんかりかみきの基準がここにはじめてできた気がしますね
- 174 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 14:53
-
寝巻き代わりのジャージの上着の裾をしっかりと掴むパジャマ姿の美貴ちゃん。
ちょっとかたーい表情。
そんな彼女を妙に愛しく感じて、手なんか繋いで見たりして。
事の発端は些細なこと。
地方開催の乙女コンが終わって、今日はホテルで一泊。明日帰京。
寝るのにまだ少し時間あるねってことで、なんとなくののの部屋に集まってなんとなくおしゃべり。
そこで、何でこんな季節にとーとつに始まった怪談話。
あたしはなんか眠くなってきたから、じゃあねって早々と退散。そしたら、『じゃ、美貴も』って。
子供チームののの、マコト、田中ちゃん、しげさんはまだ元気に盛り上がってる。
ちなみにカオたんはホテルに着いたら部屋にこもって即交信。
いいよね若いって。って思いながら部屋を出たら、美貴ちゃんがぴたってくっついてきた。
で、今に至る…と。
- 175 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 14:54
-
繋いでる手をきゅっと握ったら、ちょっと表情やわらかくなってきたかな。
なんか美貴ちゃん、今日も甘えたさんモード。
見せられないよね。他の6期の子とか、ののとかには。
だって、もったいないもん。
かわいくって。
なんて、思ってるあたし。
ののの部屋から1、2、3歩で美貴ちゃんの部屋。
立ち止まったら、
「梨華ちゃんの部屋に行ってもいい?」
だって。
断る理由……ないよね。別に。
「いいよ」
「じゃ、一緒に寝よう!」
ぱあっ…って、笑顔が咲いた。まさにそんな感じ。なんかすっごくうれしそう。
そんなに怖かったのかな? 喜んでくれてるんだから、別にいいんだけど、なんか不思議…。
とか思ってる間に、美貴ちゃんに引っ張られて部屋に到着。
- 176 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 14:55
-
美貴ちゃんはホラー映画は平気なのに、お化けはダメ。
正直言って、大して怖い話じゃなかったと思うんだよねぇ。でも、美貴ちゃんはそうでもなかったらしい。
部屋に美貴ちゃんを入れて明かりをつけて、そういえば今更ながらに気がついた。
一人部屋だから、ベッド一つしかないんだよね。文字通り一緒に寝る…ってことよねぇ。
「ベッド一つしかないね」
「シングルだもん。当たり前でしょ」
「いいの?」
「えー! もしかして…梨華ちゃんイヤだとか?」
『えー!』って、なんでそんなに残念そーなの?
「ううん。イヤじゃないけど、美貴ちゃんがイヤだったら悪いなぁ…って思ったから」
そしたら、美貴ちゃんはぶんぶんって音がするくらい激しく首を振って、がしって、肩を掴んできた。
「ぜんっっぜん、イヤじゃない! むしろ大歓迎!! イヤだったら聞かないって!」
うわ…必死…。
ふふ…。でも、ほんっとかーわいいーなぁ。今日の美貴ちゃん。
まぁ、いつもかわいいんだけどね。今日はさらに特別かわいい。
- 177 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:00
-
ちょっとニヤついてたみたい。
美貴ちゃんがむっと頬を膨らませた。
「なによぉ! わかった。部屋に戻る」
くるりと背中を向けて、どすどすとドアに向かおうとする意地っ張りな後姿に向かって声をかけた。
「美貴ちゃん」
ホントは引き止めてほしいんだよね。
「何?」
不機嫌そうな声。立ち止まったけどこっちを見ない。
「部屋に戻るのはいいけど、電気つけて寝るんでしょ?」
「…」
「ここのホテルって…有名らしいよ…」
ぴくっと肩が動いた。あーあー身体が強張ってる。ホント、わかりやすい。
「あーゆー話してると、集まってきやすいんだって」
なんか微笑ましくって、ちょっと意地悪しちゃいたくなる。いつものツッコミのお礼…なんてね。
「急に明かりがちかちかって…。えっ…って思ったら、ぱっと消えて真っ暗になって…」
あらあら…。まだ意地張ってこっちを見ない。
- 178 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:00
- ふふーん。そうですかぁ。
「耳元でうなり声が聞こえて……身体が動かない。目を開けると、そこに……」
「ちょっとぉ! やめてよ!」
耳をふさいでるから、そーっと近づいたあたしが真後ろにいることに気がつかない。
せーので、開いた両腕を美貴ちゃんの腰に巻きつけた。
「うわーーーっ!」
「きゃーーーっ!」
- 179 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:01
-
最初は向かいのお部屋のカオたん。で、その後に子供チーム4人組。
『ちょっと、どーしたの?』
って。とりあえず後ろから美貴ちゃんを抱きしめたまま、ドアも開けずに、
『大丈夫です』
『ごめんねー』
とかわしておく。
腕の中の美貴ちゃんはおもいっきり…いじけてた。
「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃったね」
「ひどいよ…。ほんっっとに怖かったんだから…」
腕に伝わってくるかすかな震えと激しい鼓動。本当にちょっとやりすぎちゃったかも、反省。
よしよしって頭をなでてあげる。
- 180 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:01
- 美貴ちゃんは強引に腕から抜け出ると、ぽんとベッドに座った。
「だっこ」
「は?」
思わず声に出た。
え、えーと……。
「だっこしてくれたら、今の忘れてあげる」
唇を尖らせて子供みたいなおねだり。断れる人がいるなら見てみたい。
「わかった。いいよ」
お安い御用でしょ。二人きりのときはいつものことだし。
明かりを小さくすると、ベッドに上がって後ろからぎゅっ!
髪から漂ってくるシャンプーの香りにちょっとうっとり。
あれー。なんか、あたし…ちょっとヘンかも。
- 181 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:02
-
少しずつ緊張が解けてきたのか、思い切り身体を預けてくる。
「今日の梨華ちゃん、なんかいじわる」
「そうかな? って、説得力ないよね」
「ないね。美貴、そんな厳しいツッコミした覚えないけどなぁ」
むーって、眉を寄せてアヒル口な美貴ちゃん。
「なんかさぁ、美貴のこといじめて楽しんでない?」
って、そーやって、拗ねてる顔が愛しく思えちゃって、よけいにからかってみたくなっちゃうんだよね。
なんだろう。ののの時とは違うんだけど、母性をくすぐられるというかなんというか…。
ふしぎ…。
伝わってくる体温。
頬をくすぐるさらさらの髪。
柔らかい身体の感触。
白い綺麗な肌。
何もつけてないのに感じる甘い美貴ちゃんの匂い。
なんか…ドキドキしてきた……。
『昨日は…』って、あたしのいじわるの理由を探す美貴ちゃんの話がところどころ素通りしていく。
- 182 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:02
-
もしかしたら…幽霊なんかより、あたしの方が美貴ちゃんにとって危ないかも。
だって、だって……ねぇ。
髪の毛越しに唇に触れた耳。
なんか……
「…おいしそう……」
気がついたら声にしてた。
そっと髪を耳にかけると、
「え!?」
って、美貴ちゃんが振り向くより早く、はむって耳たぶをくわえた。
あ…。やわらかい……。
「りかちゃ……!」
美貴ちゃんの身体が、くっ…って強張るのがわかったから引き寄せるように腕に力を込める。
感触を楽しむようにちょっとずつ場所を変えてみる。
やわらかくって、あたかかい、少し薄い小さな耳たぶ。
歯を立てて軽く甘く噛んだら、
「…んっ…!」
声が零れて、少しだけ我に返った。
- 183 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:02
-
「…ごめん」
「梨華ちゃん…?」
緊張した身体からふーっと力が抜けていくのがわかる。
もたれかかってる美貴ちゃんに体重をかけて、今度はあたしが白い首筋に鼻先をうずめてかぶさるように抱きついた。
「驚いた…よね…」
「うん…。まぁ…ね」
「…だよね」
「でも……」
「…でも?」
顔をうずめたまま視線だけを上げたら、恥ずかしそうに微笑んでた。
「美貴ちゃん?」
でも、美貴ちゃんはふふふって笑うだけで何も言わない。
ただじっと、言葉がつむぎだされるまで唇をじっと見つめるあたし。
ふっくらとした唇。
ちょっとぽてっとした感じで、小さくてやわらかそうで…。
誘ってる?
すうっと両端が上がった、形のいい微笑。
挑まれてるような錯覚すら感じる…。
ダメ…。
今日のあたし、本当におかしい…。
- 184 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:03
-
美貴ちゃん。
ねぇ、あなたは誰がすきなの?
亜弥ちゃん? ひとみちゃん? それとも真里ちゃん? のの? マコト? カオたん? それとも…?
名前を挙げていけばキリがなくなる。
二人きりだと甘えてくれるのは何故?
あたし、勘違いしていいの? それとも、それが正しいの?
いつもあなたの後ろに感じる影。
それがいつもあたしを惑わせる。
あたしだって、ホントはこうしてる時間がうれしい。うれしいけどわからない。
ねぇ、誰を見てるの?
あなたの胸の中にいるのは誰?
ホントは言葉にして伝えたい。
素直になれない。
違う。素直になっていいの?
- 185 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:03
-
吸い込まれそうになるのが怖くて、唇から目を離した。
移した視線が美貴ちゃんとぶつかる。
ドキッ…!
胸が鳴った。
微笑んでいるけど、まっすぐで純粋な綺麗な瞳。
艶かしく色づいたまなざしに、身体を焼かれていくような錯覚が眩暈を引き起こす。
まるで見透かされているみたいな感じ。
お願い…。思考まで焼き尽くさないで…。
- 186 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:03
-
美貴ちゃんが、ふっ…って、笑った。
そして、あたしの耳に唇を寄せて甘く甘く囁く。
「ねぇ、梨華ちゃん」
「ん?」
「…おいしかった?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「おいしかったって…?」
わざととぼけてみる。
「なによぉ。聞いてるのはこっち」
ベッドサイドの橙色の明かりでもわかる赤くなった頬。
恥ずかしいことをしてるのはたぶん…あたしなのにね。
自然と笑みが零れた。
「じゃあ、試してみたら?」
そしたら短く息を吸う音がして、身体に少し力が入ったのがわかった。
そーっと髪を耳にかける指先がくすぐったくて肩を竦めた。
ふわっと耳たぶにやわらかい感触。
一度だけついばむように唇だけで噛むと、淡い疼きだけを残してすーっとぬくもりは消えた。
- 187 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:04
-
「どう?」
「…うん…。…おいしかった…」
抱きしめている腕に感じる美貴ちゃんの心臓の音が一段と早くなっていく。
もたれかかるのをやめて、さっきみたいに抱っこして、
「ありがと」
って、すんなりとした首筋にお礼のキスをしたら、ふっ…って美貴ちゃんから溜息が零れた。
熱をもった肌と同じくらい熱い熱い吐息。
火がついたのが、わかった。
もう…いいや。
だって、ほら…。
見詰め合ったまま、二人とも離れられない。
- 188 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:04
-
美貴ちゃんの頬に手を添えて、視線を絡めたまま、そっと親指で唇をなぞる。
「でも、こっちも…おいしそうだよね」
そして、すっと外した視線を唇に流してから、もう一度目を合わせた。
「いい?」
返事の代わりに、妖しく色づいて潤んだ瞳が閉じたまぶたの奥に隠れた。
下唇をそっと唇ではさむ。
…あ……。
唇から直接伝わるやわらかさに、感触に、きゅんって…胸が弾んだ。
角度を変えて、弾力やぬくもりを味わう。
何度も。何度でも。
しっとりして、張りが合って、でもやわらかくて、ふんわりと温かい、美貴ちゃんの唇。
…あまい…。
はまりそう…。
さっき怖いって思った理由が少しだけわかった気がした。
止まらない。
きゅって、美貴ちゃんの手があたしのジャージを掴む。
その手を開いてるほうの手で包みながら、キスしてるんだ…って、今更ながらに気づいた。
- 189 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:04
-
思考も理性も何もかも溶けていく…。
そっか、はまっちゃったんだって、わかった。
認めてしまうと、もっとほしくなる。
誰にも渡したくなくなる。
それはたぶん、自然なキモチ。
- 190 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:05
-
キスの合間合間に零れ落ちる熱い吐息に、あたしのカラダも熱を帯びていく。
そっと上唇をついばむと、下唇にすーっと触れるか触れないかくらいの加減で舌でなぞった。
「はぁっ…!」
ぞくぞくした。
うっとりと目を閉じたまま、薄く開いた唇に舌を滑り込ませたら、ぴくって腕の中で小さく震えた。
「…んっ…」
探り当てて舌を絡ませる。
やわらかくて、熱い。
ふしぎな感触。
それは唇とはまた違ったおいしさ。
ゆっくりとじっくりと、その味と感触を楽しむ。
ぎゅっとジャージを掴む美貴ちゃんの手に力がこもる。
緊張するカラダを宥めるように優しく髪を撫でながら、深い口付けに溺れていく。
キスって…こんなに甘いもんなんだって、知った。
- 191 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:05
-
切なげなため息をこぼして、あたしの首筋に顔をうずめる美貴ちゃん。
息がくすぐったい。
「美貴ちゃん?」
「…ん?」
上目遣いに見上げたその目は完全に色づいていて、思わず息を呑む。絶対に普段の彼女からは想像できないような、オンナの人の目。
そんな目に射抜かれたあたし。
背中を優しく撫でながら、さりげなく美貴ちゃんのパジャマの胸元に手をかけた。
「ねぇ、食べていい?」
「ぇ……」
「耳たぶや唇だけじゃもの足りない。…ダメ?」
そしたら、ぎゅってあたしのことを抱きしめて、肩口に顔をうずめたまま小さくうなずいた。
「ありがと」
耳元で囁いて、ボタンを一つ一つゆっくりと外していく…。
「それじゃ…いただきます」
- 192 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:05
-
重なった身体から直に伝わる熱の心地よさ。
滑らかな白い肌は淡い桜に色づいていて、その肌理の細やかい肌に唇で触れるたびに震える身体。
私の手のサイズにちょうどいい胸の柔らかさと弾力。
紅く色づいた頂の小さな果実を舌で舐めたら、小さく身体をよじって吐息交じりの甘い声。
手が、舌が、唇が、求めてやまなくなる。
余すことなく味わいたい、かわいいあなた。
「あっ……ん! ……っ…。りかっ……!」
熱い吐息と一緒に零れた名前。
背中に回った手があたしの背中に爪を立てる。
その甘い痛みに酔いしれる。
溶かしているのはあたしなのに、あなたの中に溶けていく自分がいるのがわかった。
- 193 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:05
-
お化けに襲われるのと、果たしてどっちがよかったんだろう?
腕の中でぼんやりとまどろむ美貴ちゃんの頭を撫でながらふと、考えた。
たぶん、勢い……なんだけど、そしたらあたし、まるでひどい男みたいだし…。ちょっと違う。
だって、かわいいと思った。
それ以上ないくらいすきだと思った。
愛しいと思った。
なにより、あたし、こんなに美貴ちゃんのこと意識してたんだ…っていうのが本音だったり、驚きだったり。
人見知りするあたしと違って、人懐っこい美貴ちゃん。
不安だった。それはたぶん。今も…。
「梨華ちゃん?」
ふとんからちょっとだけ顔を出して、あたしを見上げる。
「なぁに?」
「んー…。あー…あのね」
「うん」
「…うれし…かった」
「ぇ…」
「こうなるとは…思ってなかったけど…」
不安がすーって消えていった。
- 194 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:06
-
それでもわがままなあたしは、きっと嫉妬したりすると思うんだけどね。
それより、ふと、ひっかかる。
「こうなる…ってどういうこと?」
「だって、まさかその…ねぇ。美貴がって思ってたから……梨華ちゃんに…ねぇ…」
あぁ…そういうことか。
恥ずかしいからなのか、むーっと唇を尖らせる。
思わずぎゅっと抱きしめた。
「あたしも思わなかったよ。まさか…ねぇ」
「ちょっと待って! 美貴はずーーっと思ってたのに?」
「そうなの?」
「そうだよ!」
もしかして最近よく甘えてきたりとかしてたのって、もしかしてもしかしてたりしたわけ?
だって美貴ちゃん、亜弥ちゃんとかよっすぃとかさぁ…。
「鈍感!」
「ひどっ! 遠まわしすぎるよ!」
そんなの、わかんないよ…。
そしたら、首筋に顔をうずめてぼそりと…。
「だってさぁ…怖いんだもん」
「美貴ちゃん……」
- 195 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:06
-
二人して、迷ってた。
お互いの傍にちらつく誰かの影に惑わされて…。
性格は正反対かもしれない。
でもあたしたちはたぶん、似たもの同士。
相手のことばっかり気にして気遣ってばかり。
- 196 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:07
-
「美貴ちゃん」
「なに?」
「おいしかったよ…すっごく…」
「じゃあ、今度は美貴が食べたいな。梨華ちゃん」
顔を上げてにっこりと笑っておねだり。
あんまりその顔がかわいいから、やぱりいじわるがしたくなる。
「どーしようかな? いいの? くせになっちゃうかもよ?」
「いいよ。梨華ちゃんはもう、美貴のとりこなんでしょ?」
返事の変わりにキスで答えた。
ホントきっかけは些細なこと。
何がきっかけかわからない。
美貴ちゃんを味わったあたし。
そんなこんなな始まりだけど、けっこう幸せ。
そして今、あたしを食べる美貴ちゃん。
明日の朝が早いってことなんてすっかり忘れていた。
二人そろって寝坊して、さんざんからかわれるというのは…これから数時間後のお話だったりする。
- 197 名前:special sweets 投稿日:2004/02/11(水) 15:07
-
おわり
- 198 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/11(水) 15:08
-
一週間ぶりの更新。
- 199 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/11(水) 15:15
- かなり間が開きましたなぁ。
ここんとこ疲れ気味。
現実ではかなりにありえないので、妄想が炸裂しました。
だって、いし攻めの話がみたかったんだもん。
>>173 @様
こんな物語で基準なぞ見出していただいてありがたいです。
妄想していただけたとはうれしい!
でも、今はどのCPよりも一番みてておもしろいので、妄想しがいがあります。
ほかのいしかーさん絡みもかければいいのですけど、私より上手な方が多いので、
まだ胸のうちにしまっといてますが。
- 200 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/11(水) 15:16
- ひさびさにageます。
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 21:05
- 相思相愛の梨華美貴、癒されます
ふたりとも好きなメンバーなので楽しく読ませていただいております
今後の展開もふくめまして、これからも応援しております
ご執筆、頑張ってください
- 202 名前:@ 投稿日:2004/02/12(木) 19:00
- ん〜結ばれてよかったです
石攻めいいですねぇ。なんか新鮮です。
見た目とは裏腹にってかんじでお姉さんチックな石川さん
素敵です。見た目どおりに藤本さん攻めも読んでみたかったり(ボソ
- 203 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:44
-
楽屋に戻ったらみんながテーブル囲んでお菓子を食べてた。
ふむふむ。
いたいた。
ターゲット・ロック・オン!
…で、梨華ちゃんに背中からぎゅって抱きついた。
「何食べてんのー?」
「んー?」
口にポテトチップをくわえたまま梨華ちゃんが振り向く。
「あっ。おいしそー。美貴にもちょーだい」
「いいよー」
ってくぐっもった声。
テーブルの真ん中ら辺にある袋に手を伸ばそうと振り向きかける前に、
パクッ!
梨華ちゃんの口からポテトチップと一緒に唇ももらった。
うん。おいしい。
いい感じの塩加減と、甘いあまーいキスの味。
なんて言うの、たぶんきっと幸せの味って感じ?
いつもなら、そのままキスを楽しんじゃったりするんだけど……。
- 204 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:45
-
「ええええええええええええっっっっっっっっっ!!!!!!!!」
- 205 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:45
-
突然甲高い大絶叫。
しかたなく顔を上げると、あれ……?
みんな固まってる…。
- 206 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:46
-
梨華ちゃんはというと、真っ赤になってうつむいていた。
くいっと袖を引っ張って、
「……美貴ちゃん…。…ここ…楽屋…」
ポツリとつぶやく。
「あ……そっか」
ついつい二人きりでいるのと同じキモチで動いちゃったみたい。
恥かしいっていうか照れるから、みんなの前では抑えてたんだけど…。
「でもさ、梨華ちゃんが……」
「あ…あたしのせいなの!?」
「だって、梨華ちゃんもいつもと同じようにしたじゃん」
「そっ…そうだけどっ。だからってっ!」
そしたら、ますます真っ赤になっちゃって、ちらちらと上目遣いでにらんでくる。
仕事じゃなかったら、絶対押し倒してる。うん。
「ほらほら。笑って笑って。梨華ちゃんが睨んだって怖くないから」
ほっぺをつつきながら、何気にいちゃいちゃモード。
えぇ、そりゃあもう。見せつけちゃってます。
「なんだかんだ言って、うれしいくせに」
梨華ちゃんは誰のものか、そろそろはっきりさせとかないと…なーんてね。
- 207 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:46
-
絶叫の主はというと…。
(〜゜◇゜) <ミ…ミミミミミミミミミミミキティ…!?
魂飛んでってるみたいで、飯田さんが目の前で手をひらひらやっても反応がない。
川 ゜皿 ゜)人゛☆ <ウガ−!
耳元で思い切り手を叩いたら、びくっとヤグチさんが遠い世界から戻ってきた。
「ちょっ…。二人とも…いつのまに…そんな仲良く????」
梨華ちゃんと二人で顔を見合わせる。
「いつだっけ?」
「いつだろう? うーん…でも…わりと最近…かなぁ」
でも、美貴はずーっと梨華ちゃんのこと、想ってたけどね。
ふふ…あ・た・し・も。けど、ずいぶんいじわるだったよね?
それはもう昔のことでしょ。言いっこなし!
「こらー! 目で会話すんなよぉ! くそーっっ! 藤本のばかーっ!」
「ええっっ!」
美貴が悪いのーっ!?
ダーって楽屋を飛びだしていく『。・゚・(ノ◇`〜)・゚・。』なヤグチさん。
- 208 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:46
-
そしたら、今度は後ろの方から『パン!』ってテーブルを叩く音がした。
「ひどいよ…。梨華ちゃん」
ちょーっとまって! なになになになになに!?
梨華ちゃんも『?』が頭に飛び交ってる。
(T〜T0) <うちら…家族じゃないのかよ…。
「「「「はぁ!?」」」」
キレーに美貴、梨華ちゃん、辻ちゃん、加護ちゃんの声がそろった。
@ノハ@ ∋oノハヽo∈
ヽ(‘д‘ヽ) ヽ(´D`ヽ) はつ
@ノハ@ ∋oノハヽo∈
(ノ‘д‘)ノ (ノ´D`)ノ みみ
@ノハ@ ∋oノハヽo∈
○ ‘д‘ ○ ○ ´D` ○ です
なにそれ。
まぁ…確かに4期の人たちって、そんな感じはするけれども…。
( ;^▽^) <え…けど…いや…かもしれないけど…あれは…
- 209 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:47
- コントでしょ……?
つーか…。
よしざーさん。
もしかして、思いっきりこーしこんどーさせてません?
- 210 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:47
-
しかし、ヨシコはぐーって握り締めた拳で、もう一度ドンとテーブルを叩いた。
「どぉゆーことなんだよっ! 惚れた女房が、ワシの他に男を作るなんてっ!」
いや、美貴…男じゃないし。
それに梨華ちゃんはヨシコの妻じゃなくて、美貴のものだし。
ああぁ…っ。みんなの視線が突き刺さる……。
これってコント? それとも何? 告ってんの?
「くそぉっ! どこのウマの骨かわからん奴とっ! あーーっ! ちきしょおっ!」
梨華ちゃん、辻ちゃん、加護ちゃんがそのどこのウマの骨もとい美貴を見る。
おねがいだから、そんな哀れんだ目で見ないで。
自分でも充分イタイのわかってるから…。
「うおぉぉぉっ! 梨華ちゃんのばっきゃろーっ!」
そして、一徹さんは楽屋を飛び出していった。
- 211 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:48
-
辻ちゃんと加護ちゃんはそんな後姿にため息をつくと、すっと立ち上がった。
そして、軽く梨華ちゃんとアイコンタクト。
「かーちゃんはとーちゃんのことがすきじゃないのかよ!」
「愛し合ってんじゃねーのかよ!」
「すきよ…。でも、でもね…」
「もーいいよ! かーちゃんのばっっきゃろーっ!」
「ばっっっ…きゃろーっ!」
で、とりあえず、一徹さんを追いかけてドアの方へとはけていく二人。
梨華ちゃんもはぁっ…と重いため息をつくと、美貴の腕から抜け出した。
そして、へたりと床に倒れこむ。
「あなた! ひとすじ、ふたすじ! …ごめんなさい…。
でも…でも私……あの人を愛してるの!」
そしてよよ…とくずれた。
お芝居だってわかってても、その台詞すっごいうれしい!
っていうかこれ、コントじゃないでしょ。すでに……。
- 212 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:48
-
とりあえず乗らないとまずいよね…。
そっと、愛しのトメコさんの肩を抱く。
イメージとしては文麿と悪麿を足して5で割って3をかけて、美貴風味にな感じ。
…って、どんなだよ。
とりあえずそーぞーして。かなり男前なイメージで。
それに、相手が自分の子供と同じ幼稚園の女の子じゃまずいでしょ。
「トメコさん…」
見つめあって包むように手を握る。
それはもう、優しい愛情と熱いキモチを込めてしっかりと。
お芝居そっちのけで視線を絡めあう。
「許されない恋。かぁさん、僕たちを捨ててしまうのですか?
駅前交番物語り…。つづく」
ドアの方から加護ちゃんの声。
で、1.2.3.4.5.6…
「はい! カットォ!」
「お疲れー!」
- 213 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:48
-
ぱちぱちと拍手が…。
「ちょっと感動しちゃったよ」
飯田さんの目が少しうるうるしてる。
愛ちゃんやまこっちゃんなんか素直に感動してるし。
それにしても、梨華ちゃん、アドリブ何気にうまいじゃん。
そのお膳立てをした二人は、もうお菓子にがっついてる。
「なかなかやったね」
「そーだね。おもしろかったねー」
おいおい。一徹さんは?
「だいじょーぶ。まーそのうち戻ってくるよ」
「とりあえず、せっかく振ってもらったんやし、続きやったげないと」
「だね。たぶん、なんだかんだと隠れて見てるだろうから」
和む3人の笑い声の向こうから、ダダダ…って、廊下を走る音が聞こえたような…。
ねっ。て、微笑む梨華ちゃん。
なんか…どっと疲れが…。
- 214 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:49
-
しっかし…そんな梨華ちゃんといちゃついてるのって、おかしーのかなぁ。
「それはね、鈍感だから」
「はぁ!?」
驚く美貴を見ることなくポテトチップに手を伸ばす飯田さん。
「二人はね、性格正反対だけどけっこう似てると思うの」
「はぁ…」
「まぁ、あたしは気付いてたけどね。はい、いしかわ。あ〜ん」
言われるままされるがままポテトチップを咥える梨華ちゃん。
「臆病になるキモチもわかるんだけどさ」
って、妖しく微笑みながら、ついと人差し指で梨華ちゃんのあごを持ち上げた。
そして、パクッてマウス・トゥ・マウスでポテトチップと唇を食す飯田さん。
離れ際にもう一度軽くフレンチキス。
「うん。おいしい」
そりゃあそうでしょ。
だって、梨華ちゃんだもん。
……え゛っっっっ!
- 215 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:49
-
「いっ…いいいいいい飯田さんっ!?」
あんまり自然な動きだったから気づかなかった!
っていうか、見とれてた!
ちょっ…ちょっと待って!!
「何するんですかー!」
「いーじゃん。ほら、減るもんじゃないんだから」
真っ赤になってる梨華ちゃんの頭をよしよしって撫でながら、またポテトチップに手を伸ばす。
「それにね、独り占めはよくないと思うの。ほら、フジモト、口、あーんって」
ついと口元に突き出されたポテトチップを咥える。
「ほら、みんなのものは私のもの。私のものはみんなものって言うでしょ。
あたしにとってみんなはね、あたしのものなの。カオの一部」
なんだそれ。…なんか違くないですか?
「いいの。あたしはリーダーだから」
ついって指であごを持ち上げて顔を上げさせられると、ふっと目の前が暗くなった。
ぱりっ!
飯田さんのどアップと唇にぬくもり。
そして、少し間をおいて、ちゅって……。
「うん。おいしい」
そりぁそうでしょ。
だって美貴だも……って……!
- 216 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:49
-
あまりにも自然すぎて怖い。
よしよしって満足そうに美貴の頭を撫でる飯田さん。
「カッ…カオたん!?」
「い…飯田さん!?」
「何驚いてんのよ。二人とも」
いや、たしかに娘。ってキスは日常茶飯事だけど、あんたは洒落にならないって!
まして美貴と梨華ちゃんが相手じゃ…。
ほら。みんな固まってる。
愛ちゃんなんかまたワンダーランドに飛んでってるし、まこっちゃん口開いているし。
「カオたん…。あたしたちのときもみんな固まってたのに、さすがにこれは引くと思うよ…」
「えーそうかなぁ」
「そーですよ。大体中学生の子だっているんですよ?」
「大丈夫っしょ。これくらい。今の子は進んでるから。それにこういう教育も大事だと思うの」
えーって、梨華ちゃんと二人で軽く非難の声を上げたら…。
川+ ゜皿 ゜) <ダッテ、カオモシタカッタンダモン!
- 217 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:50
-
ところがですよ。
「あーいいなぁ! かおりん! のんもー!」
「あー! あいぼんもー!」
「いいよぉ〜。はい、あーん」
これってマジである意味餌付けだよね。
すっかりご機嫌なリーダー。
梨華ちゃんと目が合って、二人して肩をすくめて苦笑い。
テーブルから離れて楽屋の隅のソファに二人で避難。
深々と身体を沈めると、梨華ちゃんがコテンと肩に頭を乗せてもたれかかってきた。
「なんか…疲れた」
「ね。ほんとに…」
抱き寄せた肩から伝わるぬくもりにようやくほっとした。
- 218 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:50
-
テーブルはキスポテチブーム状態。
「「もっとー!」」
おねだりする二人になんだかんだと満面の笑顔のリーダー。
絵里ちゃんがポテトチップをしげさんに咥えさせる。
『ねぇねぇ』って迫るしげさん。たじたじのれいな。楽しそうな絵里ちゃん。
「なんか田中ちゃん、かわいらしいね」
「うん。でも、梨華ちゃんのがかわいいよ」
そしたら、「もぅ…」って。
目で互いを牽制しあってる愛ちゃんとコンちゃん。
その間に挟まれておろおろしてるまこっちゃん。
それをワクワクして見てるガキさん。
「何なら両方食べちゃえばいいのに」
「美貴ちゃん!」
「だって他人事だもん。おもしろいじゃん」
「そうだけどさー。でも…」
って、引き下がらないから、ちゅって唇にすばやくキス。
「美貴だけを見ててくれれば、それでいいから」
そしたら、「うん…」ってはにかむ梨華ちゃん。
- 219 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:50
-
なんか二人で変なこと流行らせちゃったみたいだけど、まっいいか。
だってキスって、魔法みたいじゃない?
まして、すきな人となら。
「美貴ちゃん?」
「ねぇ。キスしていい?」
「え…あ…うん。…どうしたの?」
「どうもしないよ。聞きたかっただけ」
「へんなの」
一つ重ねるたびにまた一つ大きくなる愛しいキモチ。
梨華ちゃんが美貴にかけて、美貴が梨華ちゃんにかけた魔法。
やさしさと愛に満たされた甘くて怖い魔法。
たぶん、きっと、そんな感じ。
- 220 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:51
-
そういえば、楽屋を飛び出してった二人はまだ戻ってこないし。
なんでヤグチさんとヨシコが飛び出してったのかいまいちわかんないけど…。
まっ、いっか。
隣に梨華ちゃんいるから。
「なんか…今日も楽しいね」
「そうだねぇ」
まったりとソファで二人。
変な一日だけど、それもまたよしでしょ。
梨華ちゃんは美貴のものだって、わかったと思うから。
- 221 名前:ポテトチップとキスとコイ 投稿日:2004/02/16(月) 11:51
-
おわり
- 222 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/16(月) 12:13
- もっと短い話にするつもりが…。
書いてて楽しかったけど、ちょっと悪ふざけしてるかも。
VDにあわせたかったんだけどなぁ。
今までの作品をまとめた保管庫のようなものを作ってみました。
お暇な方はどうぞメール欄参照にて…。
>>201 名無し飼育様
ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。
相思相愛って、この二人だと現実ではなかなかみれないですから。
せめて物語の中だけでもと思ってます。
癒しのお手伝いができてうれしいですよ。
>>202 @様
いし攻めいいですよ。
見た目どおりのフジモトさん攻めですか?
ふふふふふふふふっ…。
こうご期待ということでw
- 223 名前:トーマ 投稿日:2004/02/16(月) 14:36
- 飯田さん、素敵過ぎ(w)・・・今まで中で、一番楽しく読ませていただきました。
ごちそうさま!
- 224 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:16
-
夕暮れの教室であなたと二人。
あたしは補習。
あなたは……。
「何やってんの?」
「日誌」
くるりと振り返って、ひらひらと日誌を見せる梨華ちゃん。
「今日日直だったんだっけ」
「そうだよ」
そのままイスに横向きに座って美貴の机に日誌を置くと、ちっとも進まないノートを覗き込む。
「できた?」
「できない」
「はやっ…」
「だあってさぁ…。わかんないんだもん」
机にぺたっと突っ伏して、むうーっとアヒル口+イジケタ目でにらんでみる。
頬杖をついて、視線の八つ当たりをやわらかい笑顔で受け止める梨華ちゃん。
「困ったねぇ」
「困ったねぇ」
ため息ついたって、センチメンタルなまんまだし。
ロマンティクも何もありゃしないって。
- 225 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:17
-
それは悪夢だった。
『簡単なテストな。まっ、クイズなみたいなもんやから』
配られたのは白地図の世界地図のプリント。
“次の?から?の単語に関連ある国名とその場所を地図に記入せよ。”
前の席の梨華ちゃんの背中をつついた。
『ねぇ、これってどっちが上?』
『せやなぁ。どっちが上やろなぁ』
頭の上から降ってきた声に顔を上げようとしたそのとき…。
ぽすっ!
頭に乗っかってる手が押さえつけるようにぐりぐりと髪の毛をかき回す。
『フジモト。今日あんただけ補習な。決定』
- 226 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:17
-
ホームルームが終わって早1時間と5分と42秒過ぎたくらい。
窓の外はいつの間にやら茜色。
梨華ちゃんは組んだ腕の上にあごを乗せて、ちょうど同じ高さにあるへたりこんだ美貴の顔を覗き込んだ。
「ちゃんとプリント見てれば…こんなことにはなんなかったよねぇ」
「言わないで…。しょーがないじゃん…」
地図見た瞬間、頭真っ白になったんだもん…。
「みんな唖然としてたよね。中澤せんせー、顔引きつってたもん」
「……いじわる…」
「誰が?」
「梨華ちゃん」
「ふーん。そんなこと言うんだー」
「言う。キショい梨華ちゃんのくせにナマイキ」
そしたら、身体を起こしてわざとらしくため息をついた。
「そっか。せっかく手伝ってあげようと思ったのになぁ」
「え゛っ!?」
なになになに? 思わず起き上がって身を乗り出しちゃったりする。
「でも、自分でやりなきゃ意味ないよね」
ぽんって、美貴の肩に手を置いてにっこりと微笑んだ。それはもう、眩しいくらいに…。
「なんだよ、ケチ」
「ケチだもーん」
そしてまた日誌を書き始めた。
- 227 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:17
-
真剣に日誌を書く梨華ちゃんの頬も夕焼けに染まってる。
「そんなに書くことあったっけ? 今日って」
「うん。あんまりない。あぁ…そうそう…」
ちらりと美貴を見ると日誌を抱きかかえた。
「藤本さん…放課後…補習……と」
「ちょっ! 何書いてんのよー!」
ガタガタッ!
奪い取ろうと身を乗り出したから机が悲鳴をあげた。
「きゃー! たすけてー」
梨華ちゃんが美貴に背中を向けて日誌を胸に抱きかかえる。
後ろから抱きつくと、思い切り腰をくすぐってやった。
「こら! よこせぇ!」
「やだぁ! くすぐったいっ! 美貴ちゃんっ…ふふっ…! やっ! はははっ」
べーって舌を出して、そんなかわいーことしたって容赦しないんだから!
「ほら! 早く! そうしないと襲っちゃうよ!」
「もう襲ってんじゃん!」
そう言って、がしっとくすぐってる美貴の腕を掴んだ。
そして、そのまま日誌と一緒に抱きかかえるから、なんか…抱きついてるみたい。
- 228 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:17
-
せっかくだからそのまま抱きしめた。
梨華ちゃんが『おや?』って顔で振り向く。
笑い過ぎっていう理由はともかく涙目の梨華ちゃんはとっても危険だと思う。
まして、上目遣いで……
「だって。梨華ちゃんが誘ってるんだもん」
「なにそれー」
「それに、ある意味もう襲ってるわけだし」
そしたら困ったように笑って、梨華ちゃんはごそごそと日誌を取り出して広げた。
目の前には他愛ない出来事を事務的に並べた今日一日が書き込まれてる。
「ほんとに書くと思った?」
「ほんっとに…もう」
がくーっと全身の力が抜けていく。
「ごめんね。なんかね、ちょっとからかってみたくなっちゃった」
『滅多にないしね、こーゆーこと』だって。
肩口に顔をうずめる美貴の頭をよしよしと撫でて、梨華ちゃんは申し訳なさそーに微笑んだ。
- 229 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:18
-
ふらふら〜とイスに座ると、またぺたーっと机とお友達に逆戻り。
そして頬杖をついて美貴に微笑む梨華ちゃん。
「だいだいさぁ〜何で梨華ちゃん残ってんの?」
「だって今日、日直だもん」
「でも大した事書いてないじゃん。何があったわけでもないしさぁ」
「そうだねぇ」
「そうでしょ」
「それとも、さぼらないように美貴のこと見張ってるとか?」
「どうして?」
「だってまじめだし。それに日直でしょ?」
「そうだけど、なんでそうなるの?」
「なんでって…梨華ちゃん、ナカザーせんせーに逆らえなさそうだし…」
「っていうか、中澤先生に刃向かえる人っていると思う?」
「いない」
「でしょ?」
じゃあ…って言いかけたら、
「さびしいじゃん」
って…。
「放課後の教室って、なんか静かで…なんか広くて…」
窓の外を見る夕日に照らされた横顔は、なんか綺麗…。
- 230 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:18
-
遠くに運動部の子達の声。
ボールを打つ金属バットの音がやけに響いて聞こえる。
見渡せばぽつんと二人きり。
がらんとした教室。
窓から差し込む夕焼け。
イスや机の脚を伸ばしてもひっそりと広がっていく影。
せつないせつない黒と朱色の空間。
会話が止まれば、そこにはちょっとした孤独。
そっと忍び寄って肩を抱いてくるさびしさ。
目が合って、梨華ちゃんがふっ…と微笑んだ。
大人びた綺麗な横顔に見惚れてたのに気がついて、なんとなく目を逸らした。
- 231 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:18
-
口から零れ落ちたのは、ようするに減らず口。
「なるほど。おせっかいってヤツね」
「なんでそう言うかなぁ。んー…まぁ、そうなんだけどね」
「って、少しは否定しなよ」
「でも、そのとーりだから」
軽く二人の間に笑いが生まれる。教室いっぱいに響くように。
ほっとした。すごくほっとした。
「自分で言っちゃダメだって。けど……うん…」
ありがと。言葉にはしないけど…。
わけもなくうなずいた。
「ほら、早くやっちゃおう。暗くなっちゃうから」
「あ…うん。そうだね」
「どうしてもわからなかったら手伝ってあげるから」
「ホントに?」
「ホント。だからがんばって」
「でもなぁ…。美貴的にはかなり難しいんだけど、これ」
?関東地方七県を答えよ。”
「うーん。でも比較的常識だと思うけど…これ」
「それは梨華ちゃんだからでしょ。美貴はもともと北海道だし」
「や…それは違うと思うから」
苦笑いの梨華ちゃん。
『でも、天気予報は見るでしょ?』って。まぁねぇ。そうだけど…。
- 232 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:18
-
あー。わっかんない。ってかやる気おきない。
そしたら、ポンって梨華ちゃんが手を叩いた。
「じゃあ、もし5分でできたら、ご褒美あげる」
「ごほーび?」
「うん。なんでもお願い聞いてあげる」
「なんでも?」
「うん。なんでも」
「よしっ! やったろうじゃん! 待っててよ。すぐに終わらせるから」
単純って思うかもしれないけど、単純だもん。
- 233 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:19
-
人間やる気があればなんとでもなるもんで…。
「うん。あってる。OKだね」
「よっしゃー! 時間は!?」
「えっとねぇ…3分半くらいかな」
「よーし! ごほーびGet! 何にしようかなぁ」
美貴のうきうきした顔を見て、ハの字眉毛で笑う梨華ちゃん。
「なによぉ。自分から言ったんじゃん」
「そうだけど…。そうだけどね」
「だーいじょうぶ。無茶なこと言わないから」
「そ〜ぉ?」
「な〜にぃ? 美貴のこと、信用できない?」
かるーく睨んでみると、
「そんなことないよぉ!」
って予想通りに慌ててくれる。
それがまた、かわいいんだよね。やっぱ梨華ちゃんはこうじゃないと。
「そう? それじゃあ、早速ご褒美もらっちゃおうかな」
「え?」
『何?』って唇が動く前に、さっと顔を近づけて唇を重ねた。
- 234 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:19
-
ゆっくり10まで数えて、そっと離れた。
「ありがと」
耳元で囁いたら、かーーーって夕日に照らされた顔がますます赤くなっていく。
「み…美貴ちゃん?!」
「なに?」
「なに…って…あのっ」
「うん? 物足りない?」
「うん。って…あっ、そうじゃなくって!」
今何気に『うん』って言ったよね。まぁ、とりあえずそれは置いといて。
「だから、梨華ちゃんの唇。それがご褒美。文句ある?」
「ないです…」
「じゃあ、問題ないでしょ」
こっくりとうなずいたけどまだ納得してないみたい。
眉間にしわが寄ってるし。うつむいて目もあわせてくれないし。
「ほらぁ。問題ないんでしょ? 笑って笑って」
眉間をぐりぐりと指で突くと、その指をそのままあごにやって顔を上げさせた。
で、もう一度キス。
物足りないのは美貴もおんなじ。
- 235 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:20
-
夕焼け空より赤くなった梨華ちゃんがはにかんで笑う。
そんな梨華ちゃんを見てなんか急に照れくさくなって、思わず笑ってしまう。
なんか笑いあって、そして見つめあって。
なんか不思議なテンションを感じる。
ドキドキドキって…。
また顔が近づいて……。
- 236 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:20
-
「ほーっ…。なんや、あんたら、あっついなぁ」
「「えっっっ!!」」
二人して同時にバッと声の方に顔を向ける。
なっ…なかざーせんせー……。
「なかなか終わらんし、いしかーも日誌もってこんから来てみれば…。いやぁ…なんかねぇ」
ドアにもたれかかってにやにやにやにやと、いやーな微笑み。
「あー。うちもちゅーしたいなぁ」
ゆっくりとドアからこっちに近づいてくる。
急いでカバンを引っつかんで席を立つと、慌てて日誌とノートを掴んでカバンを肩にかけた梨華ちゃんの手を握った。
「だったら、他の人としてくださいよ。センセ」
「そっ…そーですよ。ヤグチ先輩がいるじゃないですか」
日記と補習に使った美貴のノートを先生に押し付ける。
「それじゃ、先生さよならー!」
「さっ…さよならー」
梨華ちゃんを引っ張って、教室を飛び出した。
- 237 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:20
-
真っ赤な太陽がぽてぽて歩く二人の影を伸ばしてる。
なんとなく手を繋いだまま、ちょっと無言。
かーってカラスが鳴いて、ぐーっとおなかが鳴った。
「美貴ちゃん?」
くすくすって笑う梨華ちゃん。
ちょっとばつが悪いっていうか…。オトメゴコロを察しろ自分…。
「なんかさ、ほっとしたみたいで…」
「うん。まさかねぇ」
「ねぇ。ホントだよ。あーあ。もったいなかったなぁ」
何もなければできたよね。
「うん。でもさ…」
重なっていた手がすっと動いて、指を絡めてぎゅって握る。
「いつでも…できるよね」
伺うような上目遣い。
そうだね…って、さっきの分を取り返す。
冷たい風にさらされて、ちょっと冷たかった唇。
だけど熱いココロとカラダ。
ワケわかんないけど、なんかいい感じ。
- 238 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:20
-
また二人してカオを見合って笑う。
「ね、コンビニでなんか買ってこ。実はあたしもおなか空いてるんだ」
「うん。そうしよー!」
「よーしっ! がんばった美貴ちゃんに肉まんおごってあげる」
「めっずらしー! やば! 明日雪降るよ!」
「なによぉ!」
「はははっ! じょーだんだって。ほら、早く!」
『もうっ!』って怒って。
でもすぐに笑って。
わけもなく走ってコンビニへ。
明日もまた、こんな風に笑えたらいいな。
あんなふうにキスもして…。
- 239 名前:ごほーび、なぁに? 投稿日:2004/02/21(土) 03:21
-
おわり
- 240 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/21(土) 03:30
- りかみき不足。
まぁ、供給が少ないから仕方ないのですが…。
なんていうか、なんていうか…。
そういえば、フジモトさんが主導権握った感じでで終わる話書いたの、久しぶりかも。
>>223 トーマ様
おそまつさまですw
ありがとうございます。ほんとにこれは書いて楽しかったですよ。
ただ単にAA入れたかっただけというわけで決して…
こんな感じのもの、また書ければいいんですけどねぇ。
そしてここのリーダーは素敵です。ってか、ハンターですから。
何せ現実が妄想を超えるよーなことをされる方ですからw
- 241 名前:I 投稿日:2004/02/23(月) 16:24
- 作者様のりかみきマジ好きです。毎回更新楽しみにしてます!
梨華ちゃんのペースにかまってく美貴ちゃん可愛らしいです♪
- 242 名前:@ 投稿日:2004/02/25(水) 20:17
- アンリアルりかみき!!
はじめてじゃないですか?
他のとこでも読んだことない気が…
藤本さんいいですね。かわいいです。
次回作も楽しみにしてます。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/26(木) 01:21
- ポテトチップと〜は色々と笑わせてもらいながらも甘さに萌えました。
そして今作のアンリアル学園モノのりかみき
もうやばいくらい好みです、続編を読みたくてウズウズしてしまう程(爆
次回作も楽しみに待ってます。
- 244 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:57
-
まるで消え去るように、すーっと楽屋を出て行くから後を追いかけた。
早足で階段を上がっていく彼女を見失わないように、そして足音に気づかれないように…。
だけど離れないように、でも近くなりすぎないように…。
その微妙な距離が、なんか嫌だった。
いっそ声をかけようかって何度も思ったけど、その後姿になぜかためらった。
ドアが開く。
一つだけになった足音。
わずかに見えた空。
キィィッ…
軋んだ音。
それを掻き消すように、バタンと閉まった音が響き渡った。
- 245 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:58
-
息を潜めるようにそぉっとドアノブを掴んで、ゆっくりと音を立てないように回す。
青い垂直の線。
差し込む光。
キィッ…
ゆっくりと押したら、ドアが泣いた。
思わず息を止めた。
音を立ててしまったら…
今、気づかれてしまったらすべてが壊れてしまうような、そんな気がしたから。
慎重にドアを押して広げていく青い世界。
50pくらい広がったところですり抜けるようにそこへと踏み出した。
- 246 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:58
-
冬にしてはやわらかく、春っていうには冴え冴えとした2月の青い空。
まだ硬さの残る風が時折肌を射す屋上。
どうやら気づかれなかったようで、フェンスに体を預けて吹き上げる風に髪を遊ばせている。
ドアの前から動けないまま、うつろに彼方を眺める横顔に胸がきしんだ。
水に濡れて透き通った氷の青さに溶けていくような、急ぎ足のはかなさ。
「……梨華ちゃん…」
零れ出たつぶやきは、あっけなく風に流される。
その小さな背中が…いとおしく感じた。
- 247 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:58
-
あの子だったら……
『ほぉ〜らぁ〜。なーに落ち込んでんだよー』
陽射しのようなあったかい笑顔で、
まるですべてを包む込むように頼りない背中を抱きしめるんだろう。
そしてポツリポツリとキオクを振り返り、“現在”とほんの少しの未来を語って…。
同じ時を歩んできた二人だから多くの言葉なんて要らない。
- 248 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:58
-
彼女だったら……
『りぃ〜かぁ〜ちゃん』
とろけるような無防備な笑顔でぎゅうって抱きしめるんだろうな。
何を語るわけでもなく、聞くでもなく、陽射しの中でただ町を眺めて…。
ふいに零れる彼女のまっすぐな言葉にきっと泣いてしまう…。
かつてそれを背負っていた人のさり気ない言葉の重みと、優しさ。
- 249 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:59
-
きっと踏み出してしまえばいくらもない距離。
せいぜい25歩もあればたどり着くその背中。その隣。
でも、たかが…な距離が果てしなく遠い。
あの子のように、同じ時を歩いてきたわけじゃない。
彼女のように、その重さを知ってるわけじゃない。
- 250 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:59
-
なんだかふいに、涙がこぼれそうになった。
悔しいから顔を上げたら、飛行機雲が伸びていた。
青い青い雲ひとつない青の中に、真っ白い一筋の線。
『いけっ!』
って、そんな声が聞こえた気がした。
- 251 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:59
-
相変わらずな後姿。
追いかけてたのか追いついてたのかわからないけど…。
今…。
今という時間しか知らない。
でも、同じ時をわかちあってる。
時にあの子よりも多く、しかも隣で。
そして、同じものを…たとえ少しかもしれないけど、背負ってる。
自分たちのこれからを。
支えてくれるみんなを。
そう…みんなを。
- 252 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:59
-
一歩、一歩…。
近づくたびにわかるうつろな梨華ちゃんの表情。
疲れと戸惑い。
きっとそんなところ。
美貴だってまだ整理できてるわけじゃない。
足音に気づいた梨華ちゃんがゆっくりと振り向く。
「…美貴ちゃん…?」
驚くわけでもなく、だけど、少し困ったように笑った。
「どうしたの?」
「それは美貴が聞きたいよ」
「…うん…。そうだよね」
ふわっと笑って、けど疲れの色がありありと見えて痛々しい。
笑顔の一つでも返せればいいのに…。
それすらできずに、いじけたようにフェンスにもたれかかった意気地なし。
「急に消えないでよ…」
「…ごめん…」
「いいけどさ。別に…」
「…」
だけどそんな彼女も意気地なし。
涙の一つも見せられれば楽になれるのに。
そりゃあ…あの子や彼女に比べれば役不足かもしれないけど。
- 253 名前:2月の空 投稿日:2004/02/26(木) 23:59
-
じれったいぐらい不器用に二人。
冬でも春でもないどっちつかずの青い空の下で並んで街を見てる。
- 254 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
ふうってため息をこぼして、梨華ちゃんがフェンスに寄りかかった。
「美貴ちゃん」
「ん〜?」
「ねぇ、太陽がなくなったらどうなるだろうって、考えたことある?」
なんとなく、言いたいことがわかった。
「ない。梨華ちゃんは?」
そしたら、あいまいに笑って、空を見上げた。
美貴ももたれかかるのをやめて、同じように空を見上げる。
「ずーっと、考えてた。でもね…」
「でも?」
「わからなかった」
さびしげにせつなげに…そんな微笑。
「ただ…一つだけわかったのは、あたしは太陽には…なれないってこと」
痛々しいまでにやわらかい微笑み。
突き刺さるような胸の痛みがカラダを突き動かした。
- 255 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
たぶんそれが、美貴だから…できること。
- 256 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
強引に腕を引き寄せて強く強く強く抱きしめた。
華奢な身体が折れるんじやないかってくらいに、強く。
「美貴ちゃん…?」
「バカだよ…。梨華ちゃんは…」
太陽は太陽。
変わりになれるものなんてない。
でも、それはなんだって同じでしょ?
梨華ちゃんも…。
美貴も…。
そして、みんなも…。
「…うん…」
「…ねぇ。梨華ちゃん…」
少ししくらいは背負ってあげられるよ?
だから抱え込まないで。ね?
一緒に歩いていこう。
大事に大事に守りながら、少しずつ造って行こう。
ずっと、隣にいるから。
前でもなく、後ろでもなく、隣に…。
「だから…笑って?」
そしたら、こつんって…美貴の肩に額を押し付けた。
そして、ぽつり…。
「…ありがと…」
- 257 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
力なく落ちていた腕が背中に回されて、息苦しいくらいに抱きしめられる。
なだめるように背中を撫でながら、空を仰いだ。
飛行雲は消えていて、青い青い空が太陽の光を精一杯包んでた。
なんとなくだけど、そんな風に思えた。
たぶん、どっちつかつずなこの空の青さがあたしたち。
眩しすぎない、冷たすぎないこの空が…。
- 258 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
ふと肩が軽くなった。
そして、二人の間を風が駆け抜けて、少しだけ体が離れたことに気づく。
すっと頬に梨華ちゃんの指先が触れた。
「美貴ちゃん…」
濡れた指先。不思議といつのまに落ちたその一滴だけで溢れてくることはなかったし、
やけにキモチがすーっと落ち着いていた。
「なんでもないよ。ただね…」
空を見上げる。梨華ちゃんも顔を上げて空を仰ぐ。
「よく…似てるなぁって…思ったの」
しばらく黙って空を見上げていた梨華ちゃんは、
「…そうだね」
って、笑った。
やわらかく、だけど澄んだ表情で…。
- 259 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:00
-
手を繋いだ。
しっかりと…。
ゆっくりと広がるあたたかさ。
繋がる手を見つめていた梨華ちゃんの左手が、そっと美貴の肩に…。
まっすぐに美貴を見つめる瞳。
深呼吸するかのようにゆっくりと息を吐き出すと、すぅっと顔が近づいた。
動きにあわせるように、まぶたを閉じる二人。
重なった唇は優しかった。
- 260 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:01
-
驚きとか、ときめきとかで流されない、穏やかなキス。
なんとなく沈黙が訪れて、先にそれを破ったのは梨華ちゃん。
「ありがとね」
「いいって。何にもしてないじゃん」
「そんなことないよ。だって…こんな暗い話、今日じゃなくてもよかったんだから」
何を言われたのか、その意味がわからなかった。
「誕生日、おめでとう」
青空によく似合う、梨華ちゃんらしい清々しい笑顔。
「あぁ…」
気のぬけたような返事にくすくすって笑われた。
それが何か、ほっとして…。けど、どきっとして…。
- 261 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:01
-
「主役がいなくなっちゃったから、早く戻らないとね」
『行こう』って手を引かれる。
「大丈夫だよ。もうプレゼントはもらったし」
「でも、あたしまだ渡してないよ」
「いいよ。もうもらったから」
「でも…」
反論はキスで封じ込める。
「ね。これが、美貴には最高のプレゼント」
真っ赤になってうつむく梨華ちゃん。
ちょっと照れくさくなって、ごまかすようにその手を引いた。
「行こう! やっぱ梨華ちゃんが持ってきてくれたプレゼント、気になるし」
「うん!」
- 262 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:01
-
やわらかくて澄んだ青い青い空にくるりと背を向けた。
どっちにもならない空だけど、見上げればほら。
こんなに優しい。
こんなにすがすがしい。
背中合わせの二人。
だけど、いつも隣同士の二人。
雲一つない青い青い空。
きっと二人だから。
- 263 名前:2月の空 投稿日:2004/02/27(金) 00:01
-
おわり
- 264 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/02/27(金) 00:16
- あうっ…。間にあわなんだ(爆
せっかく、前日にジョンありがとうなことがあったのに…。
フジモトさん19歳おめでとうございます。
駆け抜けるように過ぎる10代の最後の年を楽しんでください。
なんかシリアスっぽいです。
つーか、文章力危ういのに…ねぇ。
>>241 I様
ありがとうございます。本当に励みになります。
フジモトさんはツッコミ屋ですが、天然ですからそこがかわいく書けたらと思ってます。
だから゜いしかーさんに遊ばれるのか。
>>242 @様
なんも考えずに書いたので、そういえばそうかもです。
前作の「王子様と…」に比べると、日常を書いてますし。
ミキテーかわいいっすか? ありがとです!
>>243 名無し読者様
ありがとうござます。
学園ものりかみき、ご期待に添えられるネタがうまれましたら、
短編で切り取った日常をそんなかんじで、また書いてみたいものです。
楽しかったですので。
- 265 名前:トーマ 投稿日:2004/02/27(金) 08:25
- 自分のスレで、断わりもなく、ココを紹介してしまいましたが・・・そのあとにレスがいただけてたんで、
お許しいただけたものと思ってます。
で、りかみきを紹介してみて・・・・えっ?・・純粋にそー呼べるのって・・ココだけ・・・愕然・・
自分的には、カナリありな組合わせと思うのですが・・・もしかしたら・・思いっきりマイナーCP?
てなことはないですよね・・・やっぱ似合いますもの・・・時代はりかみき・・・・のはずです(う?)・・
そして、それは・・さすらいのゴーガールさんの双肩にかかってます。
長文失礼しました。
もちろん今回も楽しく読ませていただきました・・ちょっとシリアスもまた乙なもので・・・
- 266 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:33
-
楽屋に戻る途中、突然腕を引っ張られた。
「りっ…梨華ちゃん!?」
「…」
けど、きーつく睨みつけるだけ。
何?! なんか怒らせるようなことした?
騎馬戦でマジギレした時より笑えない顔してるんだけど…。
ぎゅうって強く手首を捕まれたまま、ずんずんと先を行く梨華ちゃん。
転びそうになってもまるっきり無視。
あぁーーーーっ! なによーーーーっ!
ミキが何したって言うのさーーーっ!
- 267 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:34
-
何度呼びかけてもまっすぐ前を向いたまま。
どこに行くんだかわからないけど、けっこう人の少ないところにいるのは確か。
ここ廊下だけど…まぁ、いいよね。
なんか、わけわかんないもん。
どこにそんな力があるのか…えらい勢いでひっぱるから、
めいっぱい踏ん張って立ち止まると、ようやくこっちを向いた。
振り向いたその表情に、ちょっと動揺した。
無表情?
怒ってるのかと思ってたけど、ほんの一瞬泣いてるようにも見えたから。
「梨華ちゃん…?」
ふっと、手首を掴んでいた手からが力が抜けた。
そして、うつむくと大きく深呼吸。
- 268 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:34
-
顔を上げた梨華ちゃんの息を呑むほど真剣な瞳とぶつかった。
「美貴ちゃん。…すきって……なに?」
「ぇ……?」
「すきって…言ってくれたよね? そのすきって……どういう意味?」
言ってる意味がわからなかった。
『すき』は『すき』でしょ。
梨華ちゃんのことがすき。
友達とか仲間とか、そうじゃなくて、ただ梨華ちゃんのことがすき。
なんて言ったらいいんだろう…。
うまく言えないけど、愛しいとか、愛してるとか、そんな言葉じゃ足りない。
今だってたぶん100分の1も伝えられてないのに、どう言ったらいいの?
- 269 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:34
-
「どういうこと? 質問の意味がわかんない」
「何で?」
「なんでっ…て、だいだい何で急にそんなこと聞くわけ?」
そしたら、梨華ちゃんは大きくため息をついた。
「あたしって…なんなの? 美貴ちゃんにとって…あたしは何?」
つぶやくように零れた言葉。
「ヤな女だなって自分でも思うけど、わかんないよ…。美貴ちゃんのキモチ…」
「どうして!? なにがわかんないって言うの!? 美貴は梨華ちゃんがっ…」
「わかんないよっ!」
廊下に張り上げた声が響き渡る。
「わかんないよ…。存在が……大きすぎて………」
『あの子の…』
うつむいて消えるような小さな声だったけど、確かにそう言った。
- 270 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:35
-
嫉妬…。
梨華ちゃんが……?
- 271 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:35
-
「じゃあ、梨華ちゃんにとって、美貴はなんなの?」
梨華ちゃんが顔を上げた。
驚いてる。
そうだよね、きっと気づいてないでしょ?
「美貴だってわかんないよ。あの子って、梨華ちゃんの何?」
くっと息を呑む梨華ちゃん。
こわばった顔。
このまま追い詰めてみたら、わかるかな?
- 272 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:35
-
「親友? 同期? それとも…」
「違う!」
「何が違うの?」
我ながら、ちょっと意地悪だと思った。
梨華ちゃんの口からはっきりと聞きたい。
「教えてよ」
「…だから…あの子とは……そういう関係じゃ…ないから」
「そういう関係って?」
「だからっ…恋人じゃ…」
「ないってこと?」
こくりとうなずく。
とりあえず、それで納得してあげる。
「そうなんだ。でも、それは美貴も同じだよ」
わかってくれてるよね…って、まなざしで問いかける。
まっすぐ見つめてくれるけど、不安そうな顔。
でも、不安なのは一緒なんだよ。梨華ちゃん。
だって…。
- 273 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:35
-
「はっきりと言ってくれたこと…ないよね?」
「…えっ…!?」
はっと驚きに目を見開く梨華ちゃん。
気づいた?
「美貴は梨華ちゃんがすき。でも、梨華ちゃんは?」
いつもいつも言葉にするのは美貴の方。
「ねぇ、梨華ちゃんにとっての美貴ってなんなの!?
単なる仲間? それとも友達?」
止まらない。
止めたくない。
「わからないのはこっちだよ! ずっと聞きたかった!
ねぇっ!? 答えてよっ!」
キモチを伝えたとき、うなずいてくれたのは何だったの?
- 274 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:36
-
「自分ばっかり不安だったようなこと言わないで!」
掴みかかるぐらいの勢いで梨華ちゃんが声を荒げた。
「だってそうじゃない!」
「違う! あたしだって不安だった! 聞きたかった!
言葉にしたからって、それでいいってもんじゃないでしょ!」
「じゃあどうしてほしいのよ! どうすればいいのよっ!」
「美貴ちゃんこそどうしてほしいのよっ!」
廊下に二人の怒鳴り声が延々と響いていく。
美貴を睨むその怒った顔がすごくキレイだと、ふと思った。
二人とも肩で息をして、じっと見詰め合う。
「教えて。梨華ちゃんの気持ち」
- 275 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:36
-
ゆらりと梨華ちゃんが動いた。
怖いくらいに美貴のことを真剣に見つめたまま。
ドン!
肩を押さえつけて壁に背中を押し付けられて、
「…!!」
押し付けるように噛み付くような勢いで唇を塞がれた。
掴まれている肩に爪が食い込む。
息をするのも忘れた。
短いのか長いのかもわからない驚きに消されたキス。
唇が離れて、強く肩をつかまれたまままっすぐに見つめられる。
「あたしは、美貴ちゃんがすき」
- 276 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:36
-
頭が真っ白になった。
梨華ちゃんは表情を全く崩さないで、
「聞こえない?」
っていうと、すっ…と息をった。
「あたしはっ、藤本美貴がすきっ!」
ここまでされればさすがに我に返るってもんでしょ。
『どう? 聞こえたって』
って顔をしてるから、
『えーえぇ、とぉーってもよく聞こえましたよ』
といわんばかりにお返しする。
「美貴も、石川梨華がすきーっ!」
で、どうなったかというと、二人でじーっとにらみ合ったかと思うと…。
「「ふっ…。あははははははははっ!」」
ツボにはまったかのように笑い転げてた。
周りを見たらみんなが不思議そうな顔して二人を見てた。
6期の子とか辻ちゃんなんてちょっとおびえてるみたいだし。
それに気づいても二人して笑ってた。
なんか抱き合っちゃって、顔を見合って。
あーおなか痛い。
うわっ! 涙出てきた。
ひとしきり笑って、ようやく落ち着いたらヤグチさんがあきれてた。
- 277 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:36
-
梨華ちゃんが息を整えながらぽつりと言った。
「あたし…美貴ちゃんの言う“すき”と、
自分の感じてる“すき”が…違うんじゃないかって思ってた」
「うん…」
「でも、安心した。ねぇ、美貴ちゃん」
「ん?」
「あたしたち、始まってもなかったんだね」
ふわって笑ったその顔がかわいい。
やっぱ、それでこそ梨華ちゃん。
美貴のだいすきな…。
「そうだね。なんかていうか…ヘンな感じ」
「ね」
「そういえば、さっきの…さぁ、初めてだったんだよね」
そしたら、急に梨華ちゃんが真っ赤になった。
「うん。…そう…なんだよね」
『ごめんね』って。
雰囲気何もなかったよねって。
- 278 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:37
-
でも、そしたらやることは一つでしょ。
みつめあって、そっと2人の顔が近づく。
ふと、梨華ちゃんが美貴の肩をやんわりと押しとめた。
「みんな見てるよ?」
「いいじゃん」
そしてどちらからともなく、唇が重なる。
あたたかさとか優しさとか、いろんなものが伝わるからキスっていいな。
なんか、後ろのほうでざわざわした声が聞こえた。
- 279 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:37
-
初めてのケンカ。
初めてのキス。
始まったばかりの二人。
きっと前途多難なんだろうけど、それもまたおもしろいかも。
しっかりと梨華ちゃんの手を握った。
同じ気持ち。
同じ不安。
確かめ合えたから、怖いものなんてなくなった。
きゅって握り返す冷たい梨華ちゃんの手。
弾む鼓動。
弾ける気持ち。
これからだよね。
さぁ、行こう! 一緒に。
- 280 名前: 1/2 投稿日:2004/03/01(月) 21:59
-
〃ノ_,ハ,_ヽ
从V-V)、 <バカヤロー! まだ始まっちゃいねぇよ
/つノノハ
( ( T▽T) <ねぇ、あたしたち終わっちゃったのかな?
キコキコ し( O┬O
◎-ヽJ┴◎
まさにこんな感じ。
ハロモニ見た感想です。
っていうか、何でカットなんだよー!
それにしてもほんっとに、ただでさえいしかーさん出ないし、
某CPはがんがん出るし… ヽ(`Д´)ノウワァァン
くそっ…負けないぞっ
>>265 トーマ様
さりげないプレッシャー感じます。
私ももっとあると思ってたんですがね。
けっこうひきつけられる組み合わせですよね。
何せ娘を支える二人ですから。
うれしかったです。紹介していただいてありがとうございます。
実は書き込んでから気づいたんです。(苦笑)
今後ともよろしくお願いしますね。
- 281 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/03/04(木) 03:35
- 自分のレスみて、娘の後に「。」をつけるのを忘れたのに気づく春の夜。
倉庫である「妄想集」に新作の短編を掲載しました。
よろしかったら読んでやってください。
個人的なレスで申し訳ない。
近いうちにこちらにも、新作更新する予定です。
- 282 名前:I 投稿日:2004/03/04(木) 13:17
- 二人して嫉妬してたんですね。
喧嘩最中って嫌だけど、終わった後ってイイですネ!
二人もスッキリしたみたいだし♪
新作も楽しみにしてます(´∀`)
- 283 名前:トーマ 投稿日:2004/03/04(木) 14:00
- 石川さんの怒った顔は、藤本さんに負けない迫力がありますからね・・・
マジ喧嘩イイ!
すいません・・・「妄想集」って・・・どこで読めるんでしょうか・・無知で申し訳ない
- 284 名前:名無し読者M 投稿日:2004/03/04(木) 16:47
- お互いの相手への想いの強さが伝わってきますね。
>トーマ様
2個上の作者様のメール欄を参照してみてはいかがでしょう。
きっとすばらしい世界に辿り着きますよ!?
- 285 名前:名無し読者M 投稿日:2004/03/04(木) 16:47
- すみません・・・
- 286 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:11
-
午後の授業は憂鬱。
窓際の前から4番目の席は陽だまりに包まれて、夢の世界にあたしを誘おうとする。
文系なあたしには憂鬱な5時限目は数学。
なんとなく窓の外を眺めつつ、ケメちゃんがキリキリと黒板に書き出す数式をにつらつらとノートに書き写す。
あたしの後ろ、5番目に座る彼女は…っていうと…。
『ひま』
さっきから先生の目を盗んで、とんとん…と人の背中をシャーペンの頭でつついて手紙を渡す。
で、開けたらぐてーって崩れた字で『ひま』だって。
書くことなくなってきてるねぇ…。
- 287 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:12
-
普段は5時限目は高い確率で寝てる美貴ちゃん。
安倍先生の生物なんか完璧に寝てるしね。
けど、ケメちゃんもとい保田先生の数学と中沢先生の古文はそれができないから、手紙とかいたずらとかで眠気を払おうと懸命みたい。
まぁ、あたしはそのとぱっちりを食らっているわけだけど…。
授業が始まって25分。
手元にある何枚かのノートの切れ端。
『放課後デートしない?』
いいよって返した。
『じゃあ、どこいく?』
行きたいとこある?
『駅前にできたカフェ、ケーキおいしいらしいよ』
じゃ、そこにしよっか。
『そーだ、見たいピアスあるんだよね。そこもねー』
はいはい。
で、この後、まるでフェイントとばかりにケメちゃんが黒板に向かってた振り向いた。
- 288 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:13
-
『びびったー!』
ね。相変わらずタイミング読みづらいよ。ケメちゃん。
その後は、返事を返さなかったけど、お構いなしに手紙は回ってくる。
それもいつものこと。
『いい天気だねー』
『おなかすいた』
『はやくおわんないかなー』
段々漢字が減って、文字もよれよれ。
『たいくつ』
『ねむい』
そして、単語が回ってくる。
で、『ひま』に至る…と。
一応ノートはとってるみたいだけど、美貴ちゃん、自分でノート見て読めないって言ってたし。
なんていうのかな、線の羅列って感じ?
でも本人はあっけらかんとしたもので、試験前にあたしのノートをコピーしたりする。
今日みたいに手紙のペースが速いと、もはやノートなんてとってないんだろうなんてことは容易に想像できるわけで…。
まあ、楽しいから、いいんだけどね。
あたしも眠いのは一緒だから。
- 289 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:13
-
そして、とんとんってつつかれて新しい手紙を受け取る。
『あきた』
なーんか、その3文字にふと、いやーな予感がした。
- 290 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:14
-
あれ?
あたしの背中をつついていたシャーペンの動きが変わった。
つつーって動いて、離れたかなーと思ったら、またつつーって動く。
「で、ここは…」
先生の話をまじめに聞く……ふりをしつつ、背中に意識を集中。
た……い……く………。
はぁって思わずため息。
『たいくつ』ね。
また黒板に向かうケメちゃんを確認すると、後ろを向いた。
にかーって笑うミキちゃん。
ノートの端に、
『たいくつってかいた?』
『あたり』
すぐに下に3文字で帰ってきた。
あーあー。そんなうれしそうな顔しちゃってぇ。
- 291 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:15
-
それからというもの、前を向いたあたしの背中は美貴ちゃんの黒板代わり。
『ひま』『ねむい』とか、『カルビ』『タン』とか。
眠い上に空腹であるということもうかがえる。
とりあえず好きにさせておいたら、ふいにシャーペンの頭が横に滑ってわき腹に!
ひゃっ!
『さけとば』の『ば』の最後の払いのところ。
ぎりっぎり声は出なかったけど、思わずひじで腰をかばった。
先生が黒板の方に向いてるのを確認して、ぱって振り向いたら、美貴ちゃんがきょとんとしていた。
わざとじゃ…ないのよね。
そう信じて、また黒板に書かれた問題に取り掛かった。
- 292 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:15
-
でも、予感は的中しちゃうわけで……。
- 293 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:16
-
「さて、そろそろいいわね。じゃあ、そうね。できた人、いる?」
ケメちゃんが教室を見渡す。
そのとき、ふいに後ろから思い切りわき腹をつつかれた!
「はぁぃっ!?」
いやーーーっ! 声が裏返ったー!!!
「石川?」
すっとんきょうなあたしの声にケメちゃんが不思議そうな顔を向ける。
みんなの視線が集中してるのがよーーーーーくわかる…。
なんかざわざわしてるし…。
「何? できたの?」
「は…はい」
かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
顔があついっっっっっっ!
「そう。じゃあ、問1ね」
「はい…」
あーもー顔あげらんないよぉ!
とりあえず、ノートを確認すると、ふらふらと立ち上がった。
黒板に向かう前に振り向いたら、口を押さえてなみだ目で笑いをこらえる美貴ちゃん。
ああああーっ! もーーーっ!
黒板を指差すと、しっしって手を払う。
「っく…く……くくっ……」
笑い声が漏れてるよ…美貴ちゃん。
なによぉ…。そんなに笑わなくってもいいじゃん。
- 294 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:16
-
きーん…こーん…
チャイムが鳴って授業が終わった。
あーもう。疲れた…。
- 295 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:17
-
放課後。
約束したわけだから、美貴ちゃんとデート。
掃除当番のあたしを教室で待っててくれた美貴ちゃんと昇降口に向かって並んで歩く。
ずーっと授業終わってからも、やたらとご機嫌でテンション高い美貴ちゃん。
ずーっと授業が終わっても、恥ずかしいやら頭にくるやらで憂鬱なあたし。
「ほらー。せっかくデートするんだからさ、笑おうよ。ね」
手を繋いで大きくぶんぶん振り回す。
なんか、怒るっていうよりも、疲れたというかあきれたというか…。
そんなあたしを見て、美貴ちゃんが唇を尖らせる。
「なによぉ」
とりあえずにらんでおこうか。
「えーっ。美貴が悪いっていうの?」
「違うの?」
「違うでしょ。わき腹が感じやすい梨華ちゃんが悪いの」
「そんなのへ理屈だよ」
「いーの。なんでも。それにさ、梨華ちゃんがにらんでも怖くないから」
はいはい。そーですか。
まぁ、でも…いつまでも怒っててもダメだよね。美貴ちゃん曰くデートなんだし…。
- 296 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:17
-
なんか不思議。
手なんか繋いで、つまんないことでちょっとすねたりすかしたり。
悪くないよね。
かなりいい感じ。
でも、やっぱりなんかねずーっとからかわれっぱなしで、なんか癪なんだよね。
「ねえ、美貴ちゃん」
「なに?」
「お願い聞いてくれたら、さっきのいたずら忘れてあげる」
「何よ。やっぱり美貴が悪いわけ?」
「えー。だってそうじゃない。いたずらしてきたのそっちじゃん」
そしたら、ちょっと納得いかないって顔をしつつ、
「で、なに? お願いって」
「うん」
立ち止まると、美貴ちゃんが不思議そうに首を傾げた。
「キスして」
- 297 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:18
-
見詰め合ったまましばらくの無言。
固まった美貴ちゃん。
やっぱり引いたかな? でも、この間の放課後、してきたのはそっちだよね。美貴ちゃん。
「美貴ちゃん?」
「…いいの?」
「いいよ。なんなら…」
ついと距離を縮めて、唇を重ねた。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
これで、おんなじ…だね。
美貴ちゃんが我に返るまで、5秒くらいかかった。
目を見開いて、ぽかーんって口を開けて。
なんだかおかしかった。
- 298 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:20
-
「梨華ちゃん?!」
「ふふっ。まだあたしからごほうびあげてなかったもんね」
そしたら、急にむっとした顔をした。
「なによぉ。怖い顔しちゃってさー」
「だって…」
なんかもごもごと口ごもる。
らしくない、そんな恥らう美貴ちゃんがかわいい。
ふてくされて膨らんだ頬を撫でて、もう一度キス。
なんだろう。
一度や二度じゃ物足りない。
「ね、美貴ちゃん?」
ぎゅって繋いでる手に力をこめて、くいって、開いてる方の手でブレザーのすそを引っ張った。
美貴ちゃんがやれやれって顔して笑った。
今度は2人とも目を閉じて、今日3度目のキス。
そういえば、あの日と同じだね。
- 299 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:21
-
また並んで歩き出す。
かつんかつんって、廊下に響く二人の足音。
なんなんだろう。
不思議。
やっぱりなんかすごくいい感じ。
美貴ちゃんはどう思ってるかわからないけど、でも…。
デートって言葉に胸が躍ってるあたし。
こんな毎日が続けばいいなって、思っていた。
- 300 名前:いたずらとキスと午後の授業 投稿日:2004/03/07(日) 02:21
-
おわり
- 301 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/03/07(日) 02:35
- なんなんだっていうタイトルになってもた…。
なんていうか、「ごほーび」の続編です。
ワタクシも数学はダメで、得意教科のノートと比べると別人のようでした…。
>>282 T様
そうです。何せ不器用な二人ですから。
こじれてしまうのはともかく、時には本音も知れますから、痴話げんかも大事ですよね
>>283 トーマ様
普段起こらない印象があるいしかーさんですから、マジになったらたぶん1番…。
こういうのも、たまにはならいいんですよね。互いのためにも。
「妄想集」いわゆる倉庫ですが、名無し読者M様のレスをヒントにコピペですよ。
お待ちしておりますよー。
>>284 名無し読者M様
上げ下げは気になさらないでくださいませ。
お気遣いありがとうございます。
サイトでもありがとうございました。
想いが強いからこそです。いいコンビになると思いますよ。
金板にスレッドを立てました。
ここにある作品とは違って少し暗めな物語ですが、よろしかったらご覧ください。
- 302 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/03/07(日) 02:56
- 一箇所大きなミス発見。
誤 → まるでフェイントとばかりにケメちゃんが黒板に向かってた振り向いた。
正 → まるでフェイントとばかりに黒板に向かってたケメちゃんが振り向いた。
となります。じゃないとねびびる必要全くないので…。
続きレスで失礼しました。
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/08(月) 00:40
- まさか本当に続編を書いて下さるなんて!?感謝感激です!!
二人のキャラがぴったりだし可愛いくて、読んでて凄く楽しかったです。
金板やサイトのほうも拝見させて貰ってます。
更新毎回楽しみにしてます、掛持ち大変でしょうが頑張ってください。
- 304 名前:@ 投稿日:2004/03/11(木) 14:34
- 甘ぃですねぇ。。。
自分にとってりかみきの妄想の原点ですからここはw
テレビ的には殺伐としてるのかもしれませんが
現実はわからないじゃないですかぁなんて
開き直らせてくれる最高の場所です
- 305 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:51
-
楽屋に戻ったら、ソファに横になって梨華ちゃんが眠っていた。
まだ誰も戻ってきてない。
ほとんどのメンバーはまだ撮影残ってるけど、梨華ちゃんはもう終わってるはず…。
起こさないように、わずかに開いてるスペースに腰掛ける。
さて…どうしようかな。
1.キスをする。
2.キスをする。
3.キスをする。
まぁ、答えは決まってんだけどね。
- 306 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:52
-
*
マコトとジュースを買って楽屋に戻った。
ドアが閉まりきってなかったから、すぐに入んないでのぞいたらミキティが梨華ちゃんにキスしてた。
ノンの上からのぞいたマコトが変な声を出しかけたから、慌てて手で抑える。
ふがふが言ってたマコトもおとなしくなって、目は二人に釘付け。
っていうかさ、長いってそのキス…。
1.邪魔する。
2.とんでもない。おもしろいからこのまま。
3.後でノンもリカちゃんにキスする。
ミキティが嫉妬するくらいあっつーのしちゃおっと!
- 307 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:52
-
*
のんつぁんがにひひって笑ってる。あーたぶんロクなこと考えてないですね。
まぁいいや。ようやく手が離れたし…。あー苦しかった。死ぬかと思ったよー。
まだイシカワさんとフジモトさん、キスしてる。
っていうか、フジモトさんがキスしてるのか。
いいなぁ。あたしも愛ちゃんとあーやってできたらなぁ…。
1.たぶん。幸せ。
2.いや、かなり幸せ。
3.いやいやすごく幸せ。
でも、愛ちゃん、あれでけっこー鈍いんだよねー。
- 308 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:52
-
*
みんなより早く終わったので楽屋に戻ったら、マコトのんつぁんがドアから中をのぞいてる。
声をかけたら二人して小声で、「あさみちゃん、しーっ」って。
しゃがんでのんつぁんの下から中をのぞいて、うん。納得。
藤本さんが眠ってる石川さんにキス。
わー…。なんか…キレイ。
1.GWか夏コミの新刊のネタにする。
…って、違います。
そうじゃなくって、私もあんな優しいキスしたいなぁ。
1.でも鈍感だからなぁ。マコト。
2.でもやっぱりマコトがいいかなぁ。
3.でも、愛ちゃんもいいなぁ。
なんか浮気性ですねぇ。私…。
- 309 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:53
-
*
唇にあたたかい感触。
目を開けたら美貴ちゃんにキスされてた。
あたしの頬を手で包んで、やさしいキス。
そっと肩に手を置いたら唇が離れた。
もうちょっと、寝たふりしてた方がよかったかな?
1.抱き寄せる。
2.抱きしめる。
3.ぎゅっ…てする。
腕を背中に回して、「みきちゃん」って。
- 310 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:53
-
*
ぎゅって抱きしめられて、くるりと目の前が回った。
ぽすって狭いソファの背もたれ側に沈む美貴。
もぞもそと首筋に顔をうずめようとする寝ぼけ眼の梨華ちゃん。
「梨華ちゃん。落ちちゃうよ?」
「だったら、もっとぎゅって…して?」
1.ぎゅって抱きしめる。
2.もっともっとぎゅうって抱きしめる。
3.そして口付ける。
柔らかい唇。あったかい梨華ちゃんのカラダ…。
- 311 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:53
-
*
美貴ちゃんの目もとろーんって。
かわいい…。
ぎゅうってしてくれるみきちゃんの体温がキモチいい。
トン、トン…って心臓の音…。
だからあたしもぎゅっ…って…。
1.……
……。
…。
- 312 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:54
-
*
あらー。二人とも寝ちゃったみたい。
ぎゅーって抱き合ったまま動かない。
あーいいなぁ。あとでノンも抱っこしてもらおうっと。
とりあえず、『どうする?』ってマコトとコンちゃんにアイコンタクト。
そしたら、二人の返事は『どうしよう?』
1.楽屋に飛び込む。
2.やっぱりそっとしておく。
3.だってさ、なんかかわいいじゃん。
そっとドアを閉めた。
- 313 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:54
-
「のんつぁん?」
マコトが不思議そうに首を傾げる。
「いいの。ノンはオトナだから」
これぐらいじゃヤキモチやかないよ。それに邪魔するほどヤボじゃないもん。
「そうなの。ね。コンちゃん」
「ねー」
マコトはぽかーんって口開けて、頭にたくさん『?』をつけてる。
「はぁ。そーなの?」
つーかこれに気づかないって、マコト、あんた…。
「はーっ」
「えぇーっ? あたし見てため息つかないでよー!」
「声大きいって」
「…はい」
しゅんってなるマコト。
愛ちゃんがどんなにキラキラした目で見てるか、ぜったい気づいてないよね?
あーあ。愛ちゃんもコンちゃんも大変だね。こんなのにホレチャッテ。
「まぁ、あとのことはしらないけどね」
たぶん大騒ぎになんだろうけど。
「行こう」
楽屋からスタジオに引き返した。
とりあえず、いい夢を見たまえ。
おやすみなさい。
- 314 名前:そこで問題です 投稿日:2004/03/16(火) 01:54
-
おわり
- 315 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/03/16(火) 01:59
-
こっちの更新ご無沙汰状態になってますので、
本来はサイトのみで掲載していた作品をこっちにも掲載しました。
楽しんでいただければと…。
>>303 名無し読者様
喜んでいただいてうれしいですよ。
実はもう少し、続きがあるかもしれません。
ちょっと先になるかもしれまんが楽しみにしてください。
>>304 @様
ワタクシも甘くなるとは書き上げるまで思ってなかったですw
ここ、原点ですか(苦笑
もうがんがん開く直ってください。
ってか、自分もまさにその開き直りで書いてますので。
- 316 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/16(火) 14:43
- ……萌えまくりでございます
こんなシチュエーション、実際にあったらどうなんでしょうね?
とにかく、コレを読みながらひとりニヤニヤと不気味に笑っております
梨華美貴いいですよね
これからも応援しております、がんばって下さい
- 317 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:42
-
疲れ果てて眠る彼女の裸の肩をそっと指でなぞった。
窓から射す淡い月明かりに浮かび上がる白い肌。
そっと口付けたら、小さく震えた。
「…梨華ちゃん…」
見上げる不安げな瞳。
抱きしめることもしないで、シーツに包まって膝を抱えて見下ろすあたし。
そこにあるのは愛?
そこにあるのは何?
無理やりに抱くあたし。
それを受け入れるあなた。
何かを言いかけて、ためらうように細く息を吐き出すと、あたしから目を逸らす。
何が言いたいかはわかってる。
でも、言わない。
頬を包むよう指を滑らせると、そのまま髪をやさしくなでた。
- 318 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:43
-
「何?」
「…ねぇ…」
はっきりと言葉にするまで、あなたの望むことはしてあげない。
戸惑いと切なさと…。
あたしを求める甘えたまなざし。
「何? 美貴ちゃん」
今のあなたに自由なんてない。
すべてはあたしの気分次第。
「言ってくれたら、考えてあげる」
あなたのココロはあの子のところ。
きっとあなたはあたしにココロはくれない。
だからあたしもあなたにココロはあげない。
一方的なあたしの愛。
だからあなたのカラダに教えてあげるの。
離れられないように、激しく、やさしく。
その後は、あなたのココロがあたしを求めても、何もあげない。
あたしだけしか、見えなくなるまでは…。
- 319 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:43
-
きゅっと唇を噛むと、目を逸らした。
「……抱いて…」
油断すれば聞き逃しそうなほどのか細い声。
髪をなでる手をすーっと頬に滑らせると、顔を上げさせた。
「何? 聞こえない」
逃げようとする視線を捕まえながら、耳に唇を近づける。
覆いかぶさると開いている手でじらすように背中をなでた。
「どうしてほしいの?」
掠めた吐息にまた小さくカラダを震わせる。
はぁっ…とため息をこぼして、あたしと視線を絡める。
艶やかに色づいた目。
背中をなでる手に感じるほてり始めた肌。
「…抱いて…。おねがい…」
微かに震える唇に触れる程度のキス。
そのまま抱きしめると、おずおずとあたしの背中に腕が回る。
いつものあなたは、そこにはいない。
- 320 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:43
-
あたしの指からつむぎだされる快感に溺れていくあなた。
鼻にかかった甘い声。
絡み合う舌の動きが大胆になっていく。
あたしの頭を抱いて強く引き寄せて、深く強くむさぼる。
しばらくすきなようにさせた。
「んぅっ…!」
不意の反撃。
息を継ごうとするそのときを狙って、追いかける。
逃がさない。
泣いてあたしを求めるまで追い詰める。
カラダも、ココロも。
あなたはあたしのもの。
あたしは…あなたのもの。
それがわかるまでは、いつまでも…逃がさない。
- 321 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:44
-
腕の中の穏やかな寝息。
満ち足りた顔。
前髪をかきあげて、額に口づける。
「…梨華ちゃん?」
目を覚ましたあなたに微笑みかけて、背中を向けた。
ふいに離れたぬくもりを追いかけて、後ろからあたしを抱く腕。
ぎゅっときつく、強く…。
背中に感じた唇の感触。
あなたのココロはどこ?
そこにあたしへの愛はあるの?
ふいに涙が零れた。
「梨華ちゃん…」
まるで見透かしたように指先が雫を拭い去る。
その指先に口付けて目を閉じた。
「……すき…」
素直になれない月の夜。
- 322 名前: 月の夜 投稿日:2004/03/18(木) 17:44
-
END
- 323 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/03/18(木) 17:48
- こちらには久々の新作ですな。
っていうか、昼間っから何を書いてるんだよ、オレ…。
だって。いし攻め書きたかったんだもん(またかよ)
べたな感じでごめんなさいよぉ。
>>316 名無し読者様
萌えていただけましたか。
書いてるオイラもにやにやしてました。
はっきり言って自分でもヤバイな…と。
りかみきはよいですよ。
がんばらせていただきますので、今後ともよろしくです。
- 324 名前:@ 投稿日:2004/03/19(金) 11:30
- すげっ!!w
素直になれない月の夜。
この1行がすべてな感じがしますね
ちょぃ黒い石川さんにも訳がある 切ないですね
- 325 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:54
-
青い空。
笑顔の太陽。
あー…。
くらくらする…。
- 326 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:55
-
眠い目をこすって、ちっともお目覚めになれない頭を抱えて、ぽってこぽってこと歩く。
駅から学校までの距離の遠いこと遠いこと…。
やっぱさぼる…って決めちゃえば足取りだけはちょっとは軽くなるんだろうけど、やっぱさ、そーゆーわけなにはいかないでしょ。
電車の中で爆睡しかけたけど、がんばって学校に行く美貴はエライと思う。
…。
それがふつーとか言わない様に。
でもさ、やっぱ遅刻とかサボったりはよくないじゃん?
美貴はこー見えてまじめですから、きちんと登校するわけですよ。
- 327 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:56
-
ふわーっとあくびをかみ殺しながら、たらたら歩く美貴の横を、
朝からキャッキャッと楽しそうに声を弾ませながら追いぬいて行く同じ制服の女の子たち。
みんな朝からテンション高いねー。
いや、美貴が低すぎるとか、そーゆーわけじゃないから。
だいたいさぁ、梨華ちゃんいなかったらいかないって。
だからさ、こーしてがんばって歩いてるわけですよ。まだ寒いのに、こーやって。
なに? 暖かくなってきた?
それ、たぶん気のせいだから。
まだ寒いって。いや、でも、美貴…寒がりだしなぁ…。でもまだ寒いって。
梨華ちゃんは今年は暖かいから少し楽だったって言ってたっけ。彼女、ほら冷え性だから。
まぁ、今年の天気ってさぁ、なんかよくわかんなかったけどね。
- 328 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:56
-
ぽてぽて歩いてるもっのすごいスローな美貴の横を軽やかに何台かの自転車が追い抜いてく。
なんとなくそれを眺めてたら、後ろから軽やかなハスキーボイス。
「ふぅっじっもっとせぇ〜んぱぁ〜い!」
ちょっときしょくって背中がぞわぞわ〜。
なに? この甘えたような声。
だるくてご機嫌る麗しくないのに、なんだぁ!?
- 329 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:57
-
美貴の真横を駆け抜けて、ひらりと舞ったスカートが視界に入った。
キィッとブレーキの音。
少し前で止まった自転車の主は、あったまくるくらい満面の笑顔だった。
「おはよー! ミキティ」
なんだよ。声がたけーぞ…。
「おはよ」
ぶっきらぼうな美貴にお構いなしでにやにや笑ってるし。なんか異様なハイテンション…。
むーっと目の前のご機嫌なナマイキな後輩をにらみつける。
「やっだぁ! フジモト先輩ってば、にらんじゃって! ひーちゃん、こわーい!」
おいおいヨシザーさん。あんたそういうキャラじゃないでしょ?
きらきらカッコいい学園のアイドルが、なに? その笑顔。その声、そのトーク…。
目いっぱいあきれ返ってたら、別人のようにキショい後輩の頭の上から甘い声が降ってきた。
「美貴ちゃん。おはよう」
えっ…!?
「お…おはよ。梨華ちゃん」
よっちゃんの自転車のステップに立って、彼女の肩に手を置いて微笑む梨華ちゃん。
なるほど。ご機嫌な理由がわかった。
- 330 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:57
-
『
よっちゃんがチャリをとばす。
↓
梨華ちゃんがしがみつく。
↓
ぴったりくっつくカラダ。
↓
首にぎゅっと絡まる腕。
↓
背中に胸の感触
』
このやろう…!
- 331 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:58
-
「いやー。駅で梨華ちゃんに会ったから、じゃあ乗せてってあげるって…へへっ」
あーうー! 何勝ち誇った顔してんのよぉ!
どーせ待ち伏せてたんじゃないのぉ!?
梨華ちゃんを見ると、ちょっと困ったように眉毛を下げて笑ってる。
「じゃ! フジモト先輩、おっ先〜! ぐっちゃ〜」
よっちゃんが再び自転車を漕ぎ出す。
「ぐ…ぐっちゃ〜!」
よっちゃんについつられた梨華ちゃんにつられて、美貴もなんとなく『ぐっちゃ〜』って。
すーっと遠ざかってく自転車。
きゃあってにぎわう女の子たち。
「あっ!」
ちょっとまてっ!
- 332 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:58
-
「こらーーっ! ヨシザーヒトミィーっ!」
ダッシュで見せ付けるようにたらたらと走ってる二人にくらついた。
「あれー。ミキティ、朝から元気いいっすねぇ」
「うっさぃ!」
「ほっほう。じゃあ、しっかりつかまってて。梨華ちゃん」
「え…!?」
「それっ!」
自転車がぐんっと加速して、「きゃっ!」って梨華ちゃんがしがみつく。
かっちーーーーんっ!
「まてっ!」
で、結局学校までの残りの道のり。およそ1キロほどをダッシュするはめに…。
- 333 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:58
- あーーーっ!
わき腹…痛い…。
朝っぱらから…なんでこんな運動……しないと…。
ぜーぜーいっちゃって、呼吸が上手くできないし、心臓痛いし…。
学校の門を潜り抜けたら、誰かにぎゅっと抱きしめられた。
「お疲れ様」
顔を上げたら梨華ちゃんが申し訳なさそうに笑ってた。
「大丈夫?」
「うん」
たぶん条件反射的。だって、抱きしめられてるんだもん。だって笑ってくれてるんだもん。こんなに優しい顔で。
走った甲斐があったりなんかして。
抱きしめたまま汗で張り付いた前髪を払ってくれる指にちょっとうっとり。
「ごめんね」
「何で梨華ちゃんが謝るの?」
「だって、なんか…ねぇ」
そしたら、すっごく不機嫌な声が後ろからした。
「そうだよ。勝手に追っかけてきたのミキティなんだから」
さりげなーく美貴からリカちゃんを引き剥がす。
ぬうーっ。よしざーさーん。
「なにさぁ。そっちが急にスピード上げるからじゃん」
笑顔でにらみ合う美貴とよっちゃんの間でおろおろする梨華ちゃん。
- 334 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:59
-
「あー。おはよー」
「あ。ごっちん。おはよー」
「おはよ。梨華ちゃん。ははっ。あの二人、朝から仲いいねぇ」
「でしょう。もうさぁ…」
「まっ。いいんじゃない。いこ。チャイム鳴っちゃうし」
ごっちんが梨華ちゃんの腕に腕を絡めて歩き出す。
「昨日なっちとマドレーヌ焼いたんだ」
「ホントに?」
「うん。持ってきたからさ、お昼、みんなで食べよ」
女の子らしい会話と足音が遠ざかっていく。
…。
…あっ!
「ちょっと待って!」
「へ!? あっ! ごっちん!」
ばたばたとよっちゃんと我先にって感じで走り出す。
梨華ちゃんとごっちんは顔を見合わせてクスクス笑ってた。
- 335 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 02:59
-
2年生のごっちんとよっちゃんとは校舎が違うから昇降口でお別れ。
「梨華ちゃーん。また後でねー」
手を振るごっちん。その横でなにげーに美貴にガンとばしまくりのよっちゃん。
「うん。また後でね。ごっちん。ひとみちゃんも」
「うんっ! 後でね。梨華ちゃんっ」
おーおー。ひとみちゃんって呼ばれたとたんに満面の笑顔かよ。
べーって美貴には舌を出してくるから、べーって仕返し。ごっちんがそんな二人を見て大笑いしてるし。
「行こう。美貴ちゃん」
「あ、うん」
くるりと背中を向けて歩き出した。
- 336 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 03:00
-
かつんかつんと階段を並んで歩く。
美貴たちのクラスは5階建ての校舎の3階。
それだけの距離が今の美貴には十分にかったるい。まあ、そうじゃなくてもつらいわけだけど。
隣を歩く梨華ちゃんが、そんな美貴の腰を抱くように寄り添う。
「ごめんね。よっすぃが無茶なことするから」
「いいよ。まぁ。ムキになっちゃったけどさ。それに…」
抱きしめてもらってうれしかったよ。
「それに?」
「ううん。なんでもない」
にこっと不思議そうな顔してる梨華ちゃんに笑いかけた。
「ところでさ、いつも二人で登校してるの?」
「ううん。違うよ。駅でよっすぃが待ってたの」
「ふ〜ん」
やっぱりね。たしか、彼女の家、ウチラの中じゃ学校から一番近いし。
美貴は最寄の駅から二つ目。ごっちんは美貴と反対方向の駅から3つ目。ちなみに今、大学生のなっちさんとらぶらぶ半同棲中。
- 337 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 03:01
- 梨華ちゃんは美貴が乗る一つ前の駅。
「ねえ、梨華ちゃん。これからさぁ、朝一緒に行かない?」
そうすれば、今日みたいなことにはならないし。それに、みんなで一緒に行くのも楽しいじゃん。
「うん。いいよ。でも…」
「でも、なによ」
「起きれる?」
「起きる」
何気に美貴は元遅刻常習犯。
梨華ちゃんに『このままだと一緒に3年生になれないね』の一言で心入れ替えました。はい。
「そっか。じゃあ、後で待ち合わせとか決めよう?」
「うん!」
楽しみだなぁってやわらかく笑って、ぎゅって手を取って指を絡めて繋いでくるから、美貴もぎゅって握り返してなんとなく振ってみた。
なんかすっごくいい感じじゃない?
朝は長く感じる学校までの距離なんて、たぶんあっという間。
だってね、梨華ちゃんとこーして、一緒に歩くんだもん。
- 338 名前: 登校風景 投稿日:2004/04/08(木) 03:02
-
おわり
- 339 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/04/08(木) 03:10
-
こちらへの更新はとんとご無沙汰です。
サイト方もの更新が緩やかになっとりますけれども…。
学園もの3つ目ですね。
このスレを使い切る前に、あとたぶん3話ほど続くと思います。
その後はネコ化シリーズの番外編を…と。
メインのCPは別のもので…。
りかみきではないですが、脇ではしっかりいちゃつかせますが。
>>324 @様
自分でもすげって思いました。
まさにその最後の一行がすべてです。狙ったわけじゃないのですが。
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/10(土) 16:29
- 更新お疲れさまです、楽しみに待っておりました
最近、梨華美貴の絡みが多くなって自然と頬が緩んでしまいます
ところで、作者さんはどこか別のサイトでも連載されているのでしょうか?
よろしければ是非そちらも拝見したいのですが…
これからも応援しております
がんばって下さい
- 341 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/10(土) 22:13
- >340
筆者さんの過去レスを見るとわかりますよ
- 342 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:38
- 今日も退屈な授業。
4時限目はサイトーセンセーの生物。真昼間から白衣がエロいボスの授業。
センセーは嫌いじゃないんだけどね、授業はけっこうどーでもよかったり。
今日もこーして、ぼんやりと窓の向こうに広がる眩しい青空と白い雲を眺めたり、梨華ちゃんをからかったり。
ま、でも後15分で楽しいお昼休み。
ぽかぽかとあったかい陽射し。
今日は風もやわらかくって、なんだかキモチいい。
グランドでは2年生が体育。
やたらと張り切るよっちゃんと、のほほーんと恐ろしく自然体のごっちんがグランドを走ってる。
ふ〜ん…。
のんびりと青い空を泳ぐ白い雲。
そっか。よし。決まり!
- 343 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:38
-
ボスの目を盗んで、えぇっと……、これでOK。
そーっと切り取って、折って、ラブレター完成っと。
せっせと真面目にノートをとっている梨華ちゃんの背中をトンって突付いて、
そっとセンセーの目を盗んで後ろ手に回した梨華ちゃんの右手に手紙押し込んだ。
返事はすぐに返ってきて、
『OK!』
だって。
早くチャイム鳴んないかなぁ。
今日のランチは梨華ちゃんと一緒。
二人っきりでね、美貴のとっておきの場所にごしょーたい。
- 344 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:39
- チャイムが鳴ったら教室を飛びたした。
もちろん、お弁当持ってね。
梨華ちゃんはお手製。美貴はコンビニのパンだけど。
「美貴ちゃん!?」
「いいからっ。美貴についてきて」
梨華ちゃんの手を引っ張って目的の場所まで急ぐ。
渡り廊下を駆け抜けて、階段を駆け上がって…。
上がりきったところに現れた最後のドアを開けた。
「はい。とーちゃく」
「ここ?」
「そう。ここ」
普段あまり来ることのない別館の屋上。
ドアを閉めて鍵を掛ければ、はい、二人っきりの場所。
- 345 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:40
- 「ここって、北館や南館と違って屋上入れるのってあんまり知られてないんだよねぇ」
「へぇ…。こっちは向こうと違って開放されてないって思ってた」
「でしょ。しかも鍵はこっちから掛けられるしね。誰にも邪魔されないでのんびりできるんだよね」
「ふ〜ん…」
「さっ、お昼食べよ!」
「えっ、あ、うん」
ちょっと戸惑ってる梨華ちゃんの手を引っ張って、入り口から少し離れたところで腰を下ろした。
「たまにはいいでしょ? 二人っきりのランチっていうのも」
「うん…。でも…いいの?」
「いいって? 何が?」
「だって、亜弥ちゃん…」
美貴は同じ高等部の1年生になった亜弥ちゃんとお昼を食べることが多い。ってか、ほとんど。
そうでないときでも梨華ちゃんやごっちん、よっちゃんたちと一緒になって5人で食べたりもする。
- 346 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:40
- 「いいの。今日はなにが何でも二人っきりで、梨華ちゃんと食べたかったから」
「はぁ…」
なんか気の抜けた返事。
「イヤだった?」
そしたら、すぐにちょっと困ったように笑って首を横に振った。
「ううん。うれしいよ。ただ…亜弥ちゃんに悪いなぁって思ったから」
「そっか。今日ね、亜弥ちゃん、愛ちゃんたちと食べるって今朝メールもらってたから」
「そうなんだ。それならよかった」
「ごめんね。変な気を使わせちゃったね」
そしたら、また首を横に振って、今度はいつもみたいにふわって笑ってくれた。
- 347 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:41
-
赤地にチェックのバンダナに包まれた梨華ちゃんのお弁当は、なんか、らしくて女の子チック。
玉子焼きとかタコさんウィンナーとか定番もあればから揚げとか、簡単に和えたらしいサラダとか。ふりかけはタマゴかな。
「あ。おいしそう」
「そう?」
「自分で作ってるんだっけ?」
「そうだよ。まだあんまり自信ないけどね、がんばってる」
何かとお金もかかるしね、迷惑も掛けられないから…だって。
梨華ちゃんも美貴とおんなじで家の都合で一人暮らし。面倒だから時々ごっちんとか美貴とか泊まってったりしてる。
「いいなぁ」
「食べる?」
「うん!」
と、その時。
かかってきたのはモーニング娘。の「Mr.Moonright」のサビ。
これって確か…。
- 348 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:42
-
「あっ。よっすぃからだ」
梨華ちゃんがブレザーのポケットから携帯を取り出した。
「見せて?」
「うん」
向けられたディスプレイには、
『りかちゃ〜ん! どこー! (OT〜T)』
…って、以外にへたれなよっちゃん。
「ちょっと貸してっ」
返事を聞く前にぱっと携帯を梨華ちゃんの手から奪い取って、カチカチと文字を打っていく。
「ちょっ…ちょっと! 美貴ちゃん!?」
梨華ちゃんに背中を向けて抱え込むようにしてメールを打ち終えると、一気に送信。
くるりと梨華ちゃんの方に向き直ってディスプレイを見せた。
- 349 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:42
-
『な・い・し・ょ?
今日は美貴ちゃんと二人でらぶらぶランチなのー。
はっぴぃ〜 \(^▽^)/』
「みっ…美貴ちゃん!?」
「へへへっ。いいでしょ」
携帯の電源を切って呆れ顔の梨華ちゃんに返す。
「いいじゃん。たまには」
本当は『いつも』でもいいんだけどね。
「もぉ〜。だからって、美貴ちゃんが打たなくってもいいじゃん」
「いやいやいや。これぐらいしないとね。この間はしてやられたから」
そしたら美貴の携帯がぶるっと震えた。
取り出して確認すると、
『こらー! ミキティーっ! ぜえったいみつけてやるーっ! ヽ(`〜´O)ノ 』
だって。
「なになに?」
梨華ちゃんが覗き込んでくる。
「ふふっ。ばれちゃってるじゃん」
「いいの」
かちかちとメールを打つ。
『へへーんだ! 探せるもんなら探してみな! 从VoV)y-~~~ 』
「ふふっ。強気ですねぇ。フジモトさーん」
「あったりまえでしょー」
っと、そーしん。
携帯の電源を切って、もうこれで邪魔は入んない。
- 350 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:42
-
「ようやく食べられるね。梨華ちゃん」
「そうだねぇ」
しょうがないなぁって顔で笑う梨華ちゃん。
ぴたって寄り添うように隣にじにじと動いて座ると、二人で仲良く手を合わせた。
「「いただきまーす」」
ふふって、顔を見合って笑ったりなんかして。
「ね、玉子焼きちょーだい」
「うん。いいよ」
箸で食べやすいサイズに切った玉子焼きをそっと美貴の口元にもってくると、にっこりと微笑んだ。
「はい。あ〜ん」
「あーん」
ちょっと照れるけど、言うとおりに口を開けて…パクッ。
「どお?」
もぎゅもぎゅと食べる美貴を、ちょっと不安そうに首を傾げて顔を覗き込む梨華ちゃんが、すっっっごくかわいい!
「うん…」
口の中に広がるふんわりとしたほのかな甘さ。とっても美貴好み。
「梨華ちゃん、いい奥さんになれるよ」
「ほんとうっ!?」
「うん。けっこう上手じゃん。今すぐにだって美貴のお嫁さんになれるね」
「あれ? 美貴ちゃんがダーリンなの?」
「ダーリンなの」
「ふふっ。もっと食べる?」
「うん! もっとちょうだい」
- 351 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:43
-
あーなんか幸せ。
天気もいいしね。
- 352 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:43
-
そんなこんなで食べ終わって、ぽかぽか日向で和む。
梨華ちゃんも来た時の戸惑いはすっかり消えてて、そよぐ風とあったかい陽射しに目を細めてる。
なんかこのまったりした空気と満腹感が眠気を誘って…。
んーっと体を伸ばすと、女の子座りしてる梨華ちゃんの膝に頭を乗せた。
「美貴ちゃん?」
「ダメ? 膝枕」
「ううん。いいよ。ちょっとまって」
一度体を起こすと、膝枕しやすいように座りなおした梨華ちゃんがポンと自分の膝を叩いた。
「いいよ。おいで」
「うん」
コロンと横になる。
見上げるまっ青な空の中に少しだけ顔を赤らめた梨華ちゃん。
すーっと髪をなでてくれる手がさらに眠気を誘う。
「ふふっ。きもちいい?」
「…うん。寝ちゃいそう…」
「いい天気だもんねぇ」
「静かだし」
「うん…」
いつもなら、教室で、よっちゃんがいてごっちんがいて、亜弥ちゃんがいるときもあって…。にぎやかで笑いが絶えなくって…。
- 353 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:43
-
あったかい陽射し。
同じくらいあったかい梨華ちゃんの膝。
のんびりと流れる雲をなんとなく目で追ってたら、形のいい梨華ちゃんの唇に行き着いた。
「…」
「…」
ふいに目が合って、髪をなでる梨華ちゃんの手が止まった。
きゅって結ばれた唇。
少し薄いけど、柔らかくって甘い…梨華ちゃんの唇。
そう…キス…したんだよね。
梨華ちゃんの指がそっと美貴の唇をなぞる。
「…梨華ちゃん」
右手をすうっと梨華ちゃんの頬に滑らせて包み込むと体を起こした。
自然と顔が近づいて、自然と目を閉じて…。
重なる唇。
自然にキスをして、こぼれ落ちたため息。
- 354 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:44
-
一気に上がる体温。
ドキドキしてる。
あの時は…こんなじゃなかったのに…。
- 355 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:44
-
胸に頭を預けるように抱きしめて、そのまま押し倒した。
「美貴ちゃん?」
「うん…」
言葉が見つからなくって、腕に力を込めた。
梨華ちゃんの腕が背中に回って柔らかく包んでくれる。
「ドキドキ言ってる…」
「うん…」
どっちのかわかんないくらいドキドキ言ってる二人の心臓。
「梨華ちゃん…」
「ん?」
「すき…」
「うん」
柔らかく包んでいた腕に力がこもる。
「美貴ちゃん…」
「なに?」
「うん…」
カラダが少しだけ強張って、梨華ちゃんの胸がすうっと上がった。
「…すき…」
掠れた声。
ドキドキした。
頭がくらくらする…。
梨華ちゃんの心臓もさっきより早くなってる…。
- 356 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:45
-
めまいがする。
いろんなキモチが溢れてきちゃって、なんかわけわかんないよ。
美貴…ホンキなのかな…。
そして…梨華ちゃんも……?
- 357 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:45
-
梨華ちゃんの手がまた美貴の髪をなでる。
今度は梳くように、ゆっくりと。
その気持ちよさに目を閉じた。
「なんか…本当にらぶらぶランチになっちゃったね…」
「うん…」
「ねぇ、美貴ちゃん」
「うん?」
「このまま…授業サボっちゃおうか」
「うん…」
そして、そのまま夢の中。
なんだかすっごく…やさしいユメを見たような、そんな気がする。
で、結局目が覚めたら昼休みが終わる5分前だった。
とはいえ、どうやら30分近く転寝してたみたい。
- 358 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:45
-
「たまにはいいね」
教室に戻る道すがら、そういって梨華ちゃんは微笑んだ。
「でしょ? たまにじゃなくてもいいけどね」
「ふふっ。そうねぇ」
って、笑って、そっと絡めるように美貴と手を繋ぐ。
恥ずかしそうにちらりと視線だけを向けると、すぐにまっすぐ前を向いた。
「美貴ちゃん」
「ん?」
「ウソじゃないから…」
「…うん」
繋いだ手をぎゅって握り返した。
きんこんかんこん。
授業開始のチャイムが鳴る。
きんこんかんこん。
恋の開始の鐘は…もう鳴ってる?
- 359 名前: 膝枕とランチとチャイム 投稿日:2004/04/14(水) 00:45
-
おわり
- 360 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/04/14(水) 00:54
- フジモトさんの逆襲編(?)ですかな。
メール文字化けしちゃってますね。ないしょの後ろはハートです。いちおー。
なにが書きたかってって、このメールのやりとりだったり…。
>>340 名無し読者様
場所わかりましたでしょうか?
ここと金板を含めて基本的には倉庫ですから過去の作品がほとんどですが、
リクエストという形で新作もありますので…ね。
りかみきが多くてうれしいですよ。ワタクシも。そしてホッとしとります。
今日のおはスタもたいへんよろしゅうございました。
>>341 名無し読者様
ワタクシにかわって教えていただきありがとうございました。
番外編のメインCP、実は過去の作品読むと大体わかったりします。
りかみきの熱々ぶりも番外ですから、甘さ全開で書けたら…と。
ご期待に沿えるように妄想を尽くしますので、しばしお待ちくださいね。
- 361 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/15(木) 01:53
- あぁ、甘い・・・読んでてこっちまでドキドキしてしまう(爆
メールのやりとりだったりもコミカルで面白いです。
自分も最近は嬉しいこと多くてまさに浮かれモードですw
次回作も楽しみに待ってます。
- 362 名前:トーマ 投稿日:2004/04/15(木) 13:05
- 何か読んでてくすぐったくなるような・・甘さ・・
美味しいランチ・・・ご馳走様でした!
- 363 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:21
-
なぜ? どーして?
『あーん! この角度から見られるのがたまんなーい』
あの…あの中沢さんをして、そう言わしめた愛ちゃん。
でも、あの時は…気ぐるみだったよね…。
なのに…。
なのにぃ…。
頭の上にはちょこんと耳。
パジャマすそから飛び出てるくるっと丸まった短いシッポ。
むーって唇を噛んで恨めしそうに私を見る愛ちゃん。
ベッドの隅でちょこんと膝を抱えて、かわいいんだけど…。
あーーーっ! どーしたらいいんだよぉぅっ!
- 364 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:21
-
それはかれこれ30分前のこと。
寝てたわけですよ。二人で。
今日は愛ちゃんがうちにお泊りで、その、あの、家族はっていうと、おかーさんが向こうに帰ってるので、えぇ…そのぉー。二人っきりなわけです。
きゃーーーーっ! もう、らぶらぶなわけなんですょぉ。はいぃ。
って、いやね、そーじゃなくってね、で、目が覚めたら愛ちゃんがいなくってぇ、あれ?と思って探しに行ったら、私の顔を見たとたんお風呂場に閉じこもっちゃって…
『愛ちゃん! 愛ちゃん?!』
『や…。まこと…こないで』
『来ないでって、どーしたのぉ!?』
『いや、その…あぁーーーーーっ! お願いだからあっち行って!』
『やだよぉ! 余計心配になっちゃうじゃんよぉ! ねぇ、愛ちゃん!?』
『うぁぁぁぁぁぁーーっ! まことぉぉっ!』
で、叫んだっきり、きっちり5分の沈黙。
その間名前呼んだりとかしたんだけど、まるっきり無視。
もう、どーしたらいいのさぁ。
ペタンって座り込んだら、なんかかぼそい声で呼ばれた。
- 365 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:22
-
『まこと…』
『なぁに?』
『…笑わん?』
『なんで? 何で笑うのさぁ。愛ちゃんのこと、すきだもん』
『…』
お!? いい感じ? やさしくやさしく。
『たとえどんな愛ちゃんでも、私はだいすきだよ』
キーッ
ドアが開いて愛ちゃん登場。
『まことぉ』
おずおずと私の前にぺたんと座る愛ちゃんの頭には明るい茶色の三角耳。
おんなじよーな色の短いしっぽも、くてっと床に伏せってる。
え…えええええっ!?
『あっ…愛ちゃん!?』
『まことぉ…』
うにって口を曲げて、うるうると上目遣いで見上げられて…。
あぁ…。
『愛ちゃん…』
ダメだ…。我慢できない。
- 366 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:22
-
『…お手』
- 367 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:23
-
はぁ…。
思い出して、ため息。
それから愛ちゃんにむーーーっとにらみつけられて、今に至る…な、わけです。
でもでもでも、だって、愛ちゃんが…耳としっぽがついた愛ちゃんが、ちょこんって座ってうるうるした目で見上げてくるんだよぉ! 耳なんかしゅーんってなっててさぁ!
もう! すっごいかわいいんだぞぅ!
お手って…お手ってしたくなるじゃないですかぁ!
それが人間ってもんでしょう!
- 368 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:23
-
まだ背中をこっちに向けていじけてる愛ちゃん。
にじにじと近寄って、がばっと後ろから抱きしめた。
「がぁ! 離してっ!」
がぁ…って、あなた…。
「やだ。愛ちゃんが相手してくんないだもん」
「…やって…」
「だから…ね、ゴメンね。愛ちゃん」
ぎゅうって抱きしめて、ほっぺにちゅっ!
「……うん…」
ようやく顔を上げて私の方を見てくれる。
「…でも、もういややょ…」
「うん。もうしない。約束ね」
で、ここで唇にぃ〜って、その時……。
ピポピポピポピポピポピポピポピンッッッポ〜〜〜〜〜〜ン!
- 369 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:24
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びくっと愛ちゃんの体が震えて、おびえたように腕を掴んでくるから、大丈夫ってキスしてから、
「ゴメンね。ちょっと行ってくる」
「うん…」
じいーっとすがるように見つめる愛ちゃんを部屋に残して玄関へ。
- 370 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:24
-
たぶん、あの二人だ。
『あのぉ…もしもし? いしかーさん?』
『あぁ!? 誰?』
『はっ…はぃぃ!?』
なんだぁ!? この低い声。これってもしかしてっ…フジモトさん?
『あっ…あのー小川です…けどぉ…あの』
うわっ…すっごいこわっ…。
『なに? 今すっごいいいとこなんですけどぉ』
なんですか? いいとこって…とは、なぜか聞けなかった。
っていうか、何であなたがいしかーさんのケータイに出るんだよぉ!
そしたら、電話の向こうでごそごそとやり取りが消えて、
『ゴメンね。マコト? どーしたの? こんな時間に』
あー。甲高い声にほっとする。
『あ、あのですね………相談が……』
『相談? 何?』
『あのぉ…その……』
この二人なら、おんなじことにあったわけだから、大丈夫。
きっと大丈夫。
『愛ちゃんがその……犬になっちゃったみたいで…耳としっぽが…』
ぷちっ!
つーつー…。
けど、ねぇ…。ため息交じりで玄関を開けた。
- 371 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:24
-
入ってくるなり、寝室の愛ちゃんのところへレッツゴウないしかーさんとフジモトさん。
「うっわーーっ! 愛ちゃんかわいー!」
「あちゃぁ。ほんとに耳としっぽついちゃってるねぇ」
ちょっと動揺してる愛ちゃんだったけど、さっすがに先にネコ化してた二人を見て、少し安心もしてるみたい。
ましてフジモトさんの手馴れた扱い…。
いしかーさんはふふっと私に向かって微笑んだ。
「あれじゃ、したくなるの…わかるね」
「え!? どーいうことですかぁ?」
「お手ってやったんでしょ?」
「どーしてわかるんですかぁ!?」
「だって、人間なんだもん。犬扱いとかしてほしくないなぁって、思わない?」
「はぁ。たしかに…。そりゃそうですけど」
「でもねぇ…」
そう言って、いしかーさんは愛ちゃんに微笑みかけて、よしよしと頭を撫でる。
キモチよさそうに目を細める愛ちゃん。
「甘えたくもなるんだよねぇ」
フジモトさんはそう言うと、ねっ…て、いしかーさんに微笑みかけた。
ってか、あんたら楽屋ではいつもじゃないですか…。
- 372 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:25
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そんなじとっとした目をする私に、フジモトさんがニカッと笑った。
「まこっちゃん。おいでって言ってごらん」
「は? でもぉ」
犬扱いがイヤなんじゃないんだっけ?
「いいからいいから」
なんか自信満々なフジモトさん。愛ちゃんは…っていうと、じーっとなんか期待してるような目をしてる…?
「おいで。愛ちゃん」
ぴくっ!
しゅんとしてた耳が起き上がって、がばって愛ちゃんが飛びついてきた。
「わあっ!」
「まことぉ!」
支えきれずに真後ろに倒れて、愛ちゃん共々ベッドに転がった。
「はははっ。素直じゃないねぇ。愛ちゃんも」
「しょーがないよ。でも、ご主人様にはなんだかんだと忠実みたいだね」
ぎゅうって抱きしめる愛ちゃん。
すりすりって、あーっ。なんかすっごいうれしそうにしっぽがぶんぶんいってる!
「どっ…どういうことですかぁ!?」
「どういうことって、そういうことでしょ」
- 373 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:25
-
愛ちゃんがぴょこって顔を上げた。
「まこと」
「なぁに?」
「うん。みんなの前ではぁ、その…やめてね。その…恥ずかしいんよ…」
すうってほっぺが赤くなる。
へへへへっ照れたように笑って、むぎゅってまた胸に顔をうずめた。
「うん。わかった」
「あのー。美貴たちのこと忘れてません?」
フジモトさんの不機嫌な声と咳払い。
「「はっ…はいぃ!」」
がばっと二人して跳ね起きると、くすくすって笑ういしかーさんをフジモトさんに後ろから抱きしめて笑ってた。
おい…!
そんな私の視線もなんのそのなフジモトさん。
「しっぽとかついちゃうとさぁ、すっごく甘えたくなっちゃんだよね。なぜか」
「でも、ネコって勝手っていうか気ままじゃない?」
「「はぁ…」」
「でも犬ってまずご主人様だよね。特にしっかりしつけしてあると」
そういうと、いしかーさんは、ちょっとだけ振り向いてフジモトさんとアイコンタクト。
ってか、二人とも顔、近すぎです。
- 374 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:25
- 「だから、なんかどうしても受身に回っちゃう感じみたいだよ」
「あのー。いしかわさん。それって…どーゆぅ?」
愛ちゃんがちょこんって首を傾げる。
「うん。おねだりとか催促って言うのかな、それをしてもね、ご主人様の『よし』があるまではできないっていう感じ」
「ようするに、忠犬愛ちゃんってこと」
ねーって、フジモトさんといしかーさんの顔がまた近づく。
頼むから、家でやってくれ。家で…。
なんて言えないし…。
「はぁ…。言われてみれば…そんな気がする」
って言って、じーっと私を見る愛ちゃん。
フジモトさんは名残おしそーにいしかーさんから離れて自分の荷物を手にした。
「今日一日戻んないと思うけどさぁ、ちゃんと守ってやんなよ?」
「はぁ」
「もう帰るけど、たいへんなのはこれからなんだから」
「へ!? どーいうことですか?」
「だって、今日もお仕事あるんだよ?」
自分の荷物を手にしながら、いしかーさんがやれやれと笑った。
- 375 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:26
-
二人は仲良くタクシーでまた帰っていった。
時計を見れば午前2時。
愛ちゃんはなんとなくしっぽをパタンパタンって振りながら不安そうな顔でじーっと見つめてる。
『たいへんなんだからね。ちゃーんと守ってあげないと、タカハシ、みんなのおもちゃになっちゃうよ』
『そうそう。悩殺されちゃう子だっているかもしれないしね』
えぇえぇ。そりゃあ、鼻血出しましたよ。えぇ。
だって、だって…。
あんなの反則だよぉ! 私はへんじゃないもん!
それに、まだ愛ちゃん見て……。
しっぽのせいでパジャマのズボンをはいてないんだよね。
裾からすらっとした白い足。
三角座りして、両手はちょこんって前に。
じーっと首を傾げて見上げる愛ちゃん。
潤んだ瞳。うっすらと開いた唇…。
「まこと…」
鼻血が……。
- 376 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:26
-
きょろきょろ周りを見回すと、ぱっと立ち上がって部屋を出て行った愛ちゃん。
ふわりとすそが舞い上がって目に飛び込んでくる白い足。
自分で下着に穴を開けたのかストライプのショーツから飛び出したしっぽ。
あう…。
目の前がくらくらーっ。
気が付いたら愛ちゃんの膝の上で、鼻にはティッシュ。
「ご…ごめんね」
「ううん。………よかった…」
ぼそりと、一瞬聞き逃しそうになった。
「へへへっ…。あたしじゃ……だめなんかな…って、思ったから…」
「あ…」
ほんのりと頬を桜色に染めちゃって、照れくさそうに笑う愛ちゃん。
「なに言ってんのさぁ。私は、愛ちゃん一筋なの。とーぜんだってば」
「…その割には、節操ないんでなぃ?」
「ぐっ…」
……ごもっともです。
「ま、それでも嫌いにはなれんけど」
すーっと愛ちゃんの顔が近づく。
「ってか、すきになりすぎて困る」
「愛ちゃん…」
『いいよ。』って目で合図したら、ふわってキスが降ってきた。
- 377 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:26
-
そして、愛ちゃんは血の止まったティッシュを鼻から抜くと捨てた。
ぺろっ。
「へえっ!?」
鼻をなめられた。
「愛ちゃんっ! くすぐったいっ!」
「ダメ。じっとしてて」
がしって頬を両手で包まれる。
吸い付くように上唇なめたり、あごに舌を這わせたり…。
「きれいにしてあげる」
ていねいにていねいに唇や頬をなめられる。
「だ…だからって!? んっ!」
するっと舌が口の中に滑り込んできた。
そっ…そんなとこまで血なんか付いてないっばぁっ!!
がっちり顔を抑えられてるし乗っかられてるし動けない!
「んんーっ! んっ…。…ぅん……ん…」
はぅ…。愛ちゃん……うますぎ…。
ようやく開放されたと思ったら、熱いため息に自分でびっくり。
愛ちゃんが胸元をきゅっと掴んでじいっと私を見つめる。
「………いいよ…」
- 378 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:27
-
「で、食べられちゃったと」
呆れ顔のいしかーさんにこくりとうなずいて答える。
いしかーさんは膝の上に乗ってるフジモトさんと顔を見合った。
「しっかしさぁ。飼い犬に食べられるご主人様って、聞いたことないよね」
グサッ!
フジモトさんのきつーい一言。
とにかく、一番乗りでと思ったら先に来てたなんて…。
待ち構えていたように楽屋の隅に連れてかれて、そして今に至るわけなのです。二人とも怖いよぉ。ピーマコないちゃうぞぉ。
- 379 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:27
- 「美貴ちゃん。なんかその言い方だとおかしくない?」
「そぉかなぁ」
「なんかぁ、SMみたいですねぇ」
「「へぇっ!?」」
愛ちゃん…あんたが言っちゃダメだってば。ほら、二人とも固まってるし。
「あ…。すんません…」
「い…いいって。でもさぁ…」
いしかーさんの白い目。
「大丈夫なのかなぁ」
あぁ…頼りないと言いたいわけですね。
フジモトさんはぽんって愛ちゃん肩を叩いた。
「愛ちゃん。困ったら、いつでも美貴と梨華ちゃんに頼っていいからね」
「あぁ。ありがとーございます」
…愛ちゃん。しどい…。
- 380 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:27
-
わらわらとみんなが集まって…。
「へぇー。犬なんだぁ」
サル顔なのに…って言葉はあえて言わないで、かわいーって愛ちゃんの頭をなでるヤグチさん。
「柴犬ってやつだよね。これ」
飯田さんはそう言うと、ほら、おいでって両手を広げた。
愛ちゃんがちらりと私の方を見る。そしたら、飯田さんもこっちをみた。
川 ゜皿゜) <……。
「…いいよ。愛ちゃん」
「いーださんっ」
ぴょんって腕の中に素直に飛び込んだ愛ちゃんをぎゅうっと抱きしめて、頭とか首筋とかお腹とかなでて満足そうな飯田さん。キスとかしちゃってさぁ。愛ちゃんもなんかうっとりした顔してるよーな…。
「あーあ。しらないよぉ」って、いしかーさん。
「やっちゃった。あれじゃどっちがご主人様かわかんないね」と、フジモトさん。
だってだってぇ、コワイだもん!
だったら、あんたたちはガツンと言えるのかよぉ!!
- 381 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:28
-
そんなこんなでみんなにかわいがってもらってる愛ちゃん。
「あ…あの、お手とかはしないであげてください」
って先に勇気を出して言ってみたものの、十分おもちゃになってるわけでして…。
「愛ちゃん、愛ちゃん」
のんちゃんがゴムボールを見せる。
きらーんって愛ちゃんの目つきが変わった…。
「とってこーい!」
ぽんってポールを投げると、ガバッと立ち上がってボールに喰らいついていく愛ちゃん!
「ちょっ! のんちゃーん!」
「ゴメンゴメン。どーしてもねぇ。いいじゃん。愛ちゃんも楽しそうだし」
ふ…と気配を感じて隣を見ればボールを手にした愛ちゃん。
カゴさんがそのボールを受け取ると、
「愛ちゃん、ぐっぼーい! よくできましたー」
よしよしって頭をなでなで。
へへへへへって満足そうな愛ちゃん。
あ…あんたらオニだよ…。
ってか、愛ちゃん。満足しないで…。
- 382 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:28
-
あう…。疲れる…。これじゃ仕事になんないよぉ。
私の膝にちょこんって座った愛ちゃんを後ろから抱っこ。
「まこと?」
「うん。大丈夫。っていうか、お願いだからじっとしてて」
「あぁ…。わかっとるんやけどなぁ」
目の前をボールがちらちら〜。愛ちゃんの目もそっちをうろうろ。
「よしざーさん。勘弁してください」
「えー。でもさぁ。まんざらでもなさそうじゃん」
「っていうか、コドモみたいなことしないでくださいよぉ」
そしたら、よしざーさんの右腕をいしかーさんが、左腕をフジモトさんががしっと抱え込んだ。
「ほらほらよっすぃ。かわいー後輩が困ってるでしょ。あっちいこう?」
見事なまでの恐怖のチャーミースマイル。
「そうそう。美貴と梨華ちゃんが遊んであげるから」
その言い方によしざーさん共々戦慄を感じるのは気のせいでしょうか。
うん。きっと気のせいだ。
「あー! ちょっとぉ! 梨華ちゃん! ミキティ!?」
あー。ご愁傷様。
- 383 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:30
-
「よっすぃもさぁ。ヘンなところで大人気ないよなぁ。わからなくもないけど」
苦笑いのヤグチさん。
今度はあさみちゃんがシュークリームの入った箱を持ってきた。
「愛ちゃん。これ、どっちがカスタードかわかる?」
「これ?」
くんくんってにおいをかぐ愛ちゃん。いや、いくら耳としっぽがついたからって…。
「んー。右がカスタード。左はただのクリームやね」
「確認するね」
あさみちゃんが右側の方から一つを取って割った。
「あっ! ホントだ!」
「うわー。すげー!」
ヤグチさんにほめてもらってにひひひって照れ笑い。
あんたマスオさんじゃないんだから……。
「ありがとー。愛ちゃん。はい。これ」
あさみちゃんが一個を差し出す。取ろうとしたら、にっこりと笑った。
「まて」
ぴたりと愛ちゃんの動きが止まって、じーっとあさみちゃんを見つめる。
あさみちゃんはすっと開いてる左手を出した。
「お手」
はしっ。
「おかわり」
はしっ。
「よしっ!」
右手のシュークリームを取る愛ちゃん。
- 384 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:30
-
はっ! しまったぁ!
恐るべしあさみちゃん…。
「やるねぇ。コンノー」
飯田さん。感心しないでください。
「いいえ。簡単ですよぉ」
くぅーっ。うらぎものぉ…。
はぐはぐ食べる愛ちゃん。なんかまったく気づいてない?
あさみちゃんは私にも一個シュークリームを手渡すから、受け取ってじとっとした目でお返し。
「…ありがと」
「ほら。まこといじけちゃダメだよ」
誰のせーだと思ってんのさぁ…。
自分もかじりつきながら、愛ちゃんのほっぺに付いたクリームをぬぐってあげる。
「ま、ご主人様がこんなだからねぇ」
ぐさりと降りかかるヤグチさんの一言。
いいもん。いいもん。
っていじけてたら、愛ちゃんがぺロッて、ほっぺに付いたクリームと、目元をなめてくれた。
「まこと。あっしなら大丈夫やから。泣かんで…。ね」
「…ありがと」
「やっぱホントの御主人様が一番か」
「だね」
ヤグチさんと飯田さんがふふって、なんか照れたような顔して笑ってた。
- 385 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:31
-
あれからいしかーさんとフジモトさんと戻ってきたよしざーさんは、へろへろになってた。一体何があったのか…。二人は二人で何事もなかったよーな顔してたし…。
まぁ、でも、無事に仕事も終わったからそれでよーし!
で、今日も愛ちゃんはうちにお泊りだし。
結局、次の日の朝起きたら元に戻ってた。
え? どーやって戻ったかって?
うふふ。うふふふふふっ。
ないしょ。
いやー。愛ですよ。愛っ。
- 386 名前: 柴犬と私 〜ピーマコの受難〜 投稿日:2004/04/20(火) 02:31
-
おわり
- 387 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/04/20(火) 02:44
- ということで、あらかじめ予告しておりました番外です。
りかみき以外を書くのは初めてですな。不慣れですので話がめちゃくちゃ…。
おがたかすきな方が呼んで萌えていただける作品になってればうれしいです。
っていうか、ほっとするかも。あんましりかみきも甘さ炸裂してないし…鬱
>>361 名無し読者様
甘いですか? 怖いことに書いてる作者にそんな意識がまったくなく…。
ドキドキしていただけたなんてうれしいですよ!
次回作、構想はあるんですけど…。
>>362 トーマ様
いえいえこちらこそ。お粗末様でした。
甘いって言う自覚なく、楽しいお昼休みの一幕がかけてればと思ってただけなので。
- 388 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/04/20(火) 03:01
- おしらせというか、まだいささか余裕はありますが、
このスレッドでの作品の掲載をこれで終了します。
予告した学園ものあと2編といい、書ききってない作品は今後、
サイトに掲載か、ここにまた短編集をたてるかはちょっと考え中です。
現在金の「戦場には青い空」がありますし、そちらに少し専念することと、
自サイトの方もありますので…。
このスレッドははゆっくりと沈めて、倉庫に移動してもらおうと思います。
この場を借りてひとまず、読んでくださった皆さん。ありがとうごいました。
- 389 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/05/02(日) 02:18
-
なかなか下がらないので…。
やっぱ自ら沈みましょう。
それでは。
- 390 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:29
-
帰ろうと思ったら、美貴ちゃんに屋上に連れて行かれた。
フェンスにもたれかかまったまま、ちょっとの間無言が続いて、
「おめでとう」
って呟いた美貴ちゃんは笑ってなかった。
「って、言っていいのかなぁ?」
「わかんない」
それが素直なキモチ。
そしたら、美貴ちゃんはぴくりと眉を動かして、
「なにそれ」
だって。
だっても何もなんだけど…。
「実感…ないんだよね。まだ」
「…」
「だって、ののとあいぼんだってまだなのに。カオたんは半年先で、あたしは1年後なんだよ」
「…そうなんだよねぇ」
ぎしっ。
フェンスがきしんで、空を見上げる美貴ちゃんの横顔は、なんか拗ねてるような、さびしそうな…。
- 391 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:30
-
空はなんとなく曇ってて、だけどヘンにあったかくて、じめっとしてて。
なんかあたし達にはあんまりあってない感じ。
「ねぇ。美貴ちゃん」
「ん?」
「キスしていいかな?」
フェンスから離れて向き直ったら、美貴ちゃんにぐって肩を引き寄せられた。
重なった唇は、なんかいつもと違ってちょっとだけ切なかった。
「断んなくていいから。梨華ちゃんがしたい時には、いつでもあげる」
なんて、ちょっとそっぽ向いて言う美貴ちゃんがかわいい。
「じゃあ、遠慮なく連絡するね」
「うん。遠慮しないで」
ようやく笑った美貴ちゃん。
奪われちゃったから、今度はちゃんと、あたしから。
少しせつない味付けの、だけど甘いキス。
見つめあって笑ったら、雲の隙間から見えた空の青がきれいだった。
- 392 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:30
-
戸惑いも強くて、だけど進むしかなくて、だから受け入れて。
目の前にはまだいろんなことがまっていて、まだあたしはしばらく娘。なのは事実。
「美貴ちゃん」
「ん?」
「これからもよろしくね」
「うん」
「娘。にいる間も、いなくなってからも」
「うん」
「娘。のことも、よろしくね」
「うん」
なんとなく握手をして、そのまま指を絡めて繋いだ。
美貴ちゃんはぼんやりと空を眺めたまま、
「けどさぁ…ハロモニやハローのライブでは会えるんだよね」
ぽつりと呟いた。
中沢さんも、ごっちんも、時々だけど保田さんにも会える。あべさんは司会だし。
あたしはどうなるかわかんないけど…。
「頑固一家が続いたら、つぼみちゃんと一緒だね」
「あっ。そうか。頑固一家は続くでしょ。っていうか続け」
なんだかんだと、ののとあいぼんがいない娘。って想像できないよ。
- 393 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:30
-
並んで見上げる空。
「なんか…でも、やっぱりまだ実感わかないよ」
「うん」
1年先の未来。
想像するのは簡単だけど、なんだかぼんやりと浮かんでは消えて…。
「今、そこにあることをがんばるよ」
って笑いかけたら、美貴ちゃんに抱きしめられた。
バシバシと背中を叩かれて、
「いたっ! 痛いって!」
「そうだよ。まだ娘。なんだから!」
怒られて、でも、励まされた。そんな感じ。
「うん…」
抱き返して、顔を首筋にうずめた。
「そばにいるから」
耳元で囁いてくれた言葉はやさしかった。
- 394 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:31
-
いつだって突然で。
だけど、考えてみたらこんなことだったあるかもしれない。
ぽんと、美貴ちゃんが手を叩いた。
「ねぇ。もしかしたら美貴だってソロの仕事、またするかもしれないよね」
「あぁ…。そうだね。もともとソロと平行してってことだったし」
案外、悲観ばっかりしてもしょうがないのかも。
「そしたら、一緒に仕事できるかもしれないし、場合によっては来年の夏ごろには美貴も……」
「さぁ…。どうだろうねぇ」
人生なんて何があるかわかんないからおもしろい。
だけど、だからこそ、すっごい怖い。
でもね。
「なんてね」
って笑ってるこの人がいるなら、たぶん大丈夫。
- 395 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:31
-
娘。を卒業するからって、すぐに関係が切れるわけじゃないんだよね。
だって、関係が続くかどうかなんて、自分達次第なんだもん。
時間とかそんなことがあるとは言っても、たぶんだいたいは。
でも、この人となら大丈夫って、そんな気がする。
今よりはうんと減っちゃうけど、会えないわけじゃない。
「おなかすいたからさ、ゴハン食べ行かない?」
「おっ。いいですねぇ」
「心配させられたから、梨華ちゃんのおごりね」
「えーーっ」
「ほら。行こう」
持ち合わせあったっけ?
ちらりと掠めたささやかな心配事。
「会えない時間は今より増えるけど、大丈夫だよ」
不安そうなカオをちょっと勘違いした美貴ちゃん。
でも、そうだよね。
- 396 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:31
-
背中に飛びついた。
「そうだよね。いっぱいデートしよう」
「ねっ。映画とかも行きたいし」
次から次から溢れるデートプラン。
実感わかなすぎ?
怖いぐらいノーテンキかもしれないけど、そのときになんなきゃわかんないもん。
だから、今をがんばって、今を楽しもう。
今、こうやって、一緒に笑ってるこの人と…ね。
- 397 名前:今 投稿日:2004/05/25(火) 16:32
-
おわり
- 398 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/05/25(火) 16:34
-
当初書くまいと思ってましたが、
なんとなくキモチに区切りがつかないような気がしたので…。
そういうわけで緊急浮上してみました。
このスレは、これで本当に後は沈んで倉庫へと思っておりますので…。
- 399 名前:トーマ 投稿日:2004/05/27(木) 23:08
- 倉庫にですか・・・・・
この組み合わせは、少ないので、それは惜しいような・・・・
あちらに専念されると言うことなのでしょうが・・・
一年は長いのか短いのかわかりませんが、この二人には、同じ戦場に立っていて欲しかったので、
離れることを前提とした付き合いは、何かやっぱり違うような・・・
更新お疲れ様でした。柔らかい雰囲気が素敵でした。
- 400 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/05/28(金) 01:25
- なにげに400
>>399 トーマ様
惜しんでいただけてうれしいです。
まだはっきりとはいえませんが、連載という形をとる作品を書く場合には、
スレッドをたてると思います。短編はサイトになるかなぁ?という感じです
金板の方もよろしくお願いします。
うーん。
なんですかねぇ。
上手くは言えないけど、そうともかぎらないのかなぁ…と。
戦友はいつまでたっても戦友ですよ。
- 401 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/05/31(月) 11:49
- 落とします。
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 03:00
- >おがたかすきな方が呼んで萌えていただける作品になってればうれしいです。
遅ればせながら、おがたか発見して萌えさせていただきました(*´д`*)
かわいらしくて凄く良かったです。どうもありがとうございます。
「戦場には青い空」の方も見てますので頑張ってください。
- 403 名前:さすらいゴガール 投稿日:2004/07/09(金) 01:01
- >>402 名無飼育さん
ありがとうございます。
こんなところに沈んでいたのに、書き込みみてびっくりしました。
おがたか好きなかたにほめていただけて、すっごくうれしいです。
「戦場に…」も「おつかい」以後直接なものは書いてませんが、
細かくおがたかありますので、なんか暗い感じの物語ですが、
そのあたりで少し和んでいただければと思います。
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