Dear my Princess

1 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/09(金) 14:50
また書かせていただきます。
どうなることか全然わかりませんが、お付き合い下さい。

今回はアンリアルで「笑わん姫。」をファンタジーチックにした感じになると思います。
主役は (●´ー`)<なっちだべさ!

それではよろしくお願いしま〜す!
2 名前:Prologue. 投稿日:2004/01/09(金) 14:53
コバルトブルーの海原に囲まれ、たくさんの自然と地下資源で潤っている
大陸、アップフロント。
その大陸の片隅に一つの王国があった。
王国の名はハロモニランド。広大な敷地は緑で覆われ、町は活気に
満ちあふれている。


ハロモニランドの中心都市、王都「ゼティマ」。
その城下町をぬけると、先の戦争で亡くなった夫でもある先代の王から、
女性ながらも王の座を受け継いだ女王の、豪華絢爛な城が見えてくる。


女王には娘がいた。この国の姫である。
ある日、まだ幼かった姫は一人の少女と出逢った。

そして月日は流れ……


3 名前:Prologue. 投稿日:2004/01/09(金) 14:54



Dear my Princess




4 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 14:55


第1話  奇蹟の光



5 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 14:59
〜安倍なつみ〜


「姫様〜! どこですか〜!?」

お城の中、赤い絨毯が敷き詰められた廊下を私は走っていく。
というのもちょっと目を離したすきに、姫様がいなくなってしまったのだ。
でも通りすぎる私を見る護衛の兵士たちは『いつものこと』と呆れ顔。
まったく……本当に私にとっても『日常』……。


城の外へ出て、馬小屋まで行って中を覗くと、案の定、姫様の愛馬の姿が
見えなかった。
「やれやれ……またあそこか……」
私も愛馬を小屋から出すと、鞍を敷いてまたがり、城の裏手に広がる森の中へ
馬を走らせた。
鮮やかな深緑と、隙間から差し込む太陽の光が目に眩しい。
6 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:01
林道を道なりに走っていく。
途中で道は左へと曲がっているが、私はそのまままっすぐ目の前に
広がっている草の壁に突っこんだ。
一見草が生い茂っているように見えるが、その場所だけ実は突っ切れる
くらいしか厚さがないのだ。
そしてその奥にはさらに小さな道が続いている。
小道を進んでいくと、その先には泉が湧き出て、ポッカリとした野原が
広がっている。
まるで森の一部を丸く切りとったかのようなその場所は、昔から私たちだけの
秘密基地だった。


私の馬はなにかを感じ取ったようで速度を上げた。
すぐに別の馬が見えてくる。真っ白な毛並みをした美しい馬。
姫様の愛馬が木につながれていた。私も馬から下りて、同じように手綱を
木に結びつける。
そして秘密基地へと入っていった。
7 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:02
「探しましたよ、姫様」
「ごめ〜ん、なっちぃ」
「なっちではありません。なつみ、もしくは執事とお呼び下さい!」

入ってすぐに見つけた、若草を思わせるような薄緑色のドレス。
木陰に座って森林浴を楽しんでいたのは、まさしく私が探していた人物、
ハロモニランドの王女、後藤真希様だった。
8 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:04
「いいじゃ〜ん、二人っきりの時くらい! それに『姫様』なんて呼ばないでよ!
昔はふつーに『ごっちん』って呼んでくれてたのにぃ!」
ドレスを軽くはたいて、私の方まで歩み寄ってくる。
「い、今はその……立場が違いますし……」
「じゃあ、王女の命令! 『ごっちん』って呼んで?」
「し、しかし……」
「王女の命令が聞けないんですかぁ、執事サン?」
「うぅっ……」
そう言われるとどうしようもない。
意識はしなくても私の口から溜め息が一つ零れた。

「わかりました……ごっちん……」
「あと敬語もやめて!」
「……わかったべさ……ごっちん……」
「あと訛るのもダメ!」
「えぇっ!? 訛るのもダメかい!?」
「アハハ〜! ウソウソ! 訛りはなっちのチャームポイントだもんねぇ!」
ケタケタと笑うごっちん。
その笑顔は見てるこっちも笑顔に変えてしまう魅力を持っている。
でもいつでもこの笑顔でいてくれたら、『あんな噂』など流れなかったんだろうけど……。
9 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:05
「それはそうとごっちん! また授業サボったでしょ!?」
「あはっ! バレました?」
「あったりまえでしょ! だからなっちが探しに来たんだべさ。もうっ!
先生怒って帰っちゃったよ!」
「ごめ〜ん、なっちぃ」
さっきまでの笑顔から反転、今度はウルウル瞳で私を見つめてくるごっちん。
この顔にも弱いんだよなぁ……。


「まったく……もうしないでよ!」
「それはどうでしょ〜!」
「ハァ……」
また口からため息が出た。
わかってる。もう何度も同じようなことがあった。そのたびに私がここまで
ごっちんを探しに来たっけ。

私は帽子を取ると、その場に座り込んだ。
10 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:06
「あり? なっち、どうしたの?」
「きゅーけい! せっかくここまで来たんだしね」
「じゃあごとーもきゅーけいする!」
「今までさんざん休憩してたくせに!」

私のとなりに腰を下ろしたごっちん。
私がそのまま草の上に寝転がると、ごっちんも同じようにしてとなりに
寝転がった。
身体全体に草の感触を感じながら、丸く見える蒼い空を眺めた。
11 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:08
「昔はよくこうやってなっちと一緒にすごしたよねぇ……」
「今だってしてるじゃん。授業サボって」
「だってここにいると絶対なっちが来てくれるんだもぉん!」
「ここはなっちとごっちんしか知らない秘密の場所だからね」


幼い頃を思い出す。
二人で森の中で遊んでいて、ごっちんが偶然見つけたこの場所。
確か森の中でおいかけっこしてたらつまずいてそのまま草むらに突っこんだ
んだよね。

完全に他の道から離れていて、入り口だってまったく目立たない。
私たちだけの秘密基地。それは大きくなった今でも変わらないこと。
そう……私たちを取り囲む環境が変わっても。
12 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:10

今から12年前に起こった「UF戦争」。
それぞれの国がそれぞれの欲望のためだけに他国に侵略し、その戦火は
アップフロント大陸全土に及んだ。

当然ながら各国に多数の死傷者が出た。
それは戦った兵士だけでなく、民間人も……。
その中には私の両親も含まれる。
両親を亡くした私は妹とも離ればなれになってしまい、たった一人で野に
放たれた。


結局その戦争は2年後、ハロモニランドの勝利で終結した。
でも勝ったとはいえハロモニランドの犠牲も軽いものではない。
自ら戦陣で勇敢に戦った先王は、受けた傷の悪化により戦争の終結を
見ることなく帰らぬ人になってしまった。
13 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:12
そして新たな王として即位したのが、王妃でもあった裕子様。
裕子女王様は戦争が終結すると各国の王を一堂に集めた。


『勝利国の女王として皆に命ずる。今後一切他国間での争いを禁じる。
私たちは同じ大陸に生きているもんどうしや。もうこれ以上無駄な血を
流すことは許さへん!』


その気になれば各国を自分の配下に置くこともできた裕子女王様の寛大な
処置と、即位したばかりとは思えないそのカリスマ性に、各国の王はこぞって
裕子女王様の前に跪いたという。
こうしてその後、その約束は固く守られ、アップフロント大陸は平和に保たれている。


そして、戦争孤児だった私を引き取ってくれたのが、裕子女王様に仕えていた、
この城で私の前の執事だった老人だった。
私にいろいろなことを教えてくれた。
私を実の孫のように可愛がってくれた。
でもその老人も3年前病気で他界してしまった。そしてそのあとを私が継いだ。

14 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:14
「なっち、もうちょっとそっち行っていい?」
「だめ!」
「そう言われても行くけどね!」

つつつ、っと私の方によってくるごっちん。
身体ごと私の方を向くと、腕を私の腕に絡めてきた。

「も〜、ダメって言ったっしょ?」
「いいじゃぁん!」
「まったく……」


私が城へ来て、最初にしたのはごっちんの相手だった。
まだ幼かったごっちんは城の中に同い年くらいの友達がいなかったのだ。
母である裕子女王様も、女王として即位したばっかりでなにかと忙しく、
相手をしてられなかったらしい。

だから私がごっちんの相手をした。
4歳離れてることも、まだまだ子供だった私たちには関係なかった。
私はすぐにごっちんに懐かれた。私もごっちんを好きになった。
本物の妹みたいだった。
一日のうちのほとんどの時間をごっちんとすごした。
15 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:16
「ごっちんは昔っからかわんないねぇ」
「なにそれ! 『せーちょーしない』って言いたいの?」
私の上にまたがり、ほっぺたをふくらませて抗議するごっちん。
指でごっちんの頬を押すと『プシュゥ』なんていって頬が縮んだ。

「ごとー成長したもん! 背だって胸だってなっちより大きくなったもん!
なっちのほうが成長してないじゃぁん!」
「あっ! ヒドイべさ! 『童顔』って言いたいの!?」
「いいじゃん、可愛いんだから」
「フォローになってない! このぉ!」
「キャ〜! なっちに襲われるぅ!」

私の上に乗っかってたごっちんを掴んでひっくり返す。
今度は逆に私がごっちんの上にまたがるけど、ごっちんはニコニコ笑顔のまま。
それどころか私の方に手が伸びてきて、私はごっちんに抱き寄せられた。
抵抗せずに、そのままごっちんの胸元に顔を埋める。
16 名前:第1話 投稿日:2004/01/09(金) 15:16
「なっちは成長したよ? 執事にだってなったし、ごっちんを守るために
強くもなったよ」
「うん、知ってるよ。いつもありがとうね、なっち」

そっと頭を撫でてくれる。
嬉しいけどこれじゃまるでごっちんがお姉ちゃんみたい……。
17 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/09(金) 15:23
今回はここまでです。
まだ全然ファンタジーじゃないですが、そのうちちゃんとなるはずです。

あとちゃんと金版の方も更新いたしますのでご心配なく。
それでは、まだまだ下手ですがよろしくお願いします。
18 名前:rina 投稿日:2004/01/09(金) 17:17
おぉ!!新作ですか☆☆
前回は、ごまみき&ごまこんでしたが、
今回は、なちごまですね?
続きまってます!!
19 名前:つみ 投稿日:2004/01/09(金) 17:38
新作ですか!?
しかも今回はなちごまテイストで・・・
これからもがんばってください!
20 名前:みるく 投稿日:2004/01/09(金) 17:43
ついに始まりましたね♪金板もあって大変だと思いますが頑張って下さいね!!
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/10(土) 11:12
はじめまして。
これからどうなるのか気になります。
マイペースに頑張ってください。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/13(火) 17:17
キノコ達は出ますか??
23 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:40
「……さて、そろそろ帰るよ、ごっちん!」
「えーっ、まだいいじゃん!」
「ダメっ! 次の先生が来ちゃうっしょ!」

いつもごっちんに甘い私だけど、今日はもうダメ!
私だって一応執事なんだから仕事はちゃんとこなさないとね。

「ほらっ、帰るよ!」
「はぁい……」

私が先に立って歩き出すと、ごっちんも渋々といった表情で起きあがって
私についてきた。
愛馬の手綱をつないでた木から外してまたがる。
ごっちんも同じように白馬の上にまたがってた。
24 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:41
「おっさきー、なっち!!」
「あっ、負けないぞぉ!」

でも馬に乗るとすぐに新しいおもちゃを手に入れたようにはしゃいでる
ごっちん。
さっさと馬を走らせて草の向こうに消えてしまった。私も続いて草のカーテンを
突っ切る。
あのごっちんのコロコロ変わる表情はとても好きだった。
いつもああだったらいいのに……。

「でも……新しいおもちゃってなっちのことなんだべか?」

自分で思っておいて、少し悩んだ。



25 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:44


森の中を鬼ごっこしながら城まで帰ると、なにやら城の様子が変だった。
場内に待機していた兵士たちがあわただしくその辺を走り回っている。
嫌な予感がした。
とりあえずは馬を馬小屋へ入れると、ちょうど目の前を走っていた兵士を
捕まえる。


「どうした? 何かあったのか!?」
「あっ、なつみ様! ちょうどいいところに! 今呼びに行こうとしてたところ
です!」
「そんなことはどうでもいい! 何かあったのか!?」
「実は、城下町の外れにドラゴンが現れまして!」
「ドラゴンっ!?」

ごっちんの表情が一転して曇った。私の顔もたぶん固まっている。
26 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:46
「……それで、現状は?」
「ハイッ! ドラゴンは1匹だけです。おそらくは群れからはぐれたものだと
思われます。町の中まで侵入し、住民にも被害が出ている模様です!」
「わかった! 王宮騎士に連絡! 1番隊は私とともにドラゴン討伐、2番隊は
住民の避難と負傷者の救護、3、4、5番隊は城の警備を強化! 各隊長に
伝令を! 私もすぐ行く!」
「了解しました!」

兵士はすぐに城の中へ入っていった。
私も走り出そうとしたが、服に小さな抵抗を感じてとまった。
ふり向くとごっちんが私の服を掴んでいた。
27 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:47
「なっち……」
「ごっちん」

表情はあいかわらず暗い。心配してくれているのがありありとわかる。
私は笑顔を作って、そっとごっちんの手を握った。

「大丈夫! ドラゴン1匹くらいすぐに退治してくるから」
「うん……」
「なっちを信じて!」
「気をつけてね、なっち……」

こういうときにいつもごっちんは私を心配してくれる。
それはしすぎと言っても過言ではないほど。
時々重くも感じるけど、それはとても大切に思われてるということ。
ごっちんがいるから私は頑張れる。ごっちんがいるから私は強くなれるんだ。


ごっちんの手を離して走り出す。
自分の部屋へ帰ると、マントを羽織り、ベルトに愛用の剣をさした。

『執事』から『王宮騎士団団長』へ。
28 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:49
部屋を飛び出して廊下を走る。
すると、途中で1番隊隊長の松浦亜弥と合流した。

「ご苦労様でぇす、安倍さん」
いつもと変わらない、少し間延びした口調と笑顔の松浦。

「松浦、1番隊は?」
「もう向かってますよ。麻琴が指揮してるはずです」
「で、あんたはこんなところでなにしてたの?」
「だってぇ、松浦今日は非番なんですよぉ、ホントは。だからこれから
お出かけしようと思ってたのにいきなり呼び戻されたんです……」
「あっ、そうだっけ、ゴメンね」

松浦は「改めてお休みもらいますよぉ」と言って前を向くと走るスピードを
上げた。
休日を台無しにしてしまったのは忍びないが、今は松浦の力が必要だ。
私一人でドラゴンを倒すのはちょっと辛い。そして松浦は騎士団の中でも
一、二をあらそうほどの剣の使い手なのだから。

私も前を走る松浦に続いて城の外へ飛び出した。



29 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:50


もう一度愛馬を走らせ、城下町のはずれまで急ぐと、そこには破壊された
家々と、暴れ狂っている1匹のドラゴンがいた。
1番隊が応戦しているが、なんとか進行を防いでいるのがやっとといった
ところか。

「麻琴、どんな感じ?」
「あっ、松浦さん!」

松浦はドラゴンへ向けて弓を引き絞っている1番隊副隊長の小川麻琴に
状況を聞いている。
麻琴は返事をしながら弦を放した。
矢がドラゴンへ向かって飛んでいくが、皮膚に当たった瞬間、矢は弾かれた。

「こんな感じです! 鱗が固すぎるんですよ! なんとかこれ以上中へ
入れないようにするのがやっとで……」
「わかった。じゃあ麻琴たちは後ろから援護して!」
「えっ!? 安倍さん!?」

私と松浦が一緒に剣を抜き連ねた。
慌てる麻琴を制して剣をかまえると、二人同時にドラゴンの巨体へと突進していく。
30 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:52
ドラゴンも私たちに気づいたようで、思い切り腕を振り上げた。
その腕が私たちへ向かって振り下ろされる。

それをギリギリで私たちはよける。松浦は右へ、私は左へ。
ドラゴンの腕が地面を砕く轟音が聞こえたとき、私は愛用の剣を振るって
ドラゴンの右足を斬りつけた。


  キィン!

「くっ!」
だが私の剣は固い鱗の前に無情にも弾かれた。
手がしびれて思うように剣が握れない。
その上私に気づいたドラゴンが顔をこちらへ向けた。
31 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:53
『ガァァアア!!』
ドラゴンの口から灼熱の炎が吐き出された。

「うわっ!」

炎は一瞬にして私を包み込む。
なんとか炎や冷気に耐性のある生地で作られているマントで身体を隠すが、
それでも吐き出され続ける炎はその火勢だけで私の体力を削り取っていく。
くっ……これはキツイ……
32 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:55
「こっちだよ!」

そんなとき、松浦の声が聞こえた。
ちょっと見ると、松浦はドラゴンの顔の近くまで跳躍していた。
松浦の手に持った剣が一閃する。
その瞬間、ドラゴンの吐く炎が弱まった。必至で炎の範囲から転がり出る。

ドラゴンのほうを見ると、ドラゴンの左目が真っ赤に染まっていた。
おそらく松浦が切り裂いたのだろう。


「大丈夫ですか!? 安倍さん!」
「うん……なんとか……」

その松浦は私のそばまで駆けよってきて、私を抱き起こしてくれてる。
一体この短時間でどれほどの動きをしたのか……
相変わらず恐ろしいヤツだ……。
33 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:56
『グル……グァアア!』

だがドラゴンはまだ倒れていなかった。
右目だけで私たちを睨むと、また腕を振り上げる。

しかし振り下ろされる前に、私たちの背後から飛んできた矢がドラゴンの
右目に命中した。
視覚を失ったドラゴンは、その場で咆吼しながら暴れ回る。
後ろをふり返ると、弓を構えた麻琴がガッツポーズをしていた。
34 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:57
「よしっ、終わりにするよ!」

再び剣を構えて立ち上がる。
地を蹴ってドラゴンの腕の上に跳躍し、そこから背中へとまた飛び移った。

「くらえっ!!」

剣を両手で逆手に持ち、鱗の隙間を縫って背中に突き立てた。
ドラゴンは絶叫してのたうち回り、振り落とされた私は待ちかまえていた
松浦に受けとめられた。


「いくよっ!」
「はい〜」

何も言わなくても松浦はわかっているらしい。
一緒に手を前につきだし、魔力を一点に集め始める。

集まったところで呪文の詠唱を始めると、詠唱が進むに従って、空を
真っ黒な雲が覆い始めた。
35 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:58
しばらくして詠唱が終わり、私たちの前には光り輝く魔法陣ができあがった。
二人で魔法陣に手をかざし、一緒に叫ぶ。


「「サンダー・ストーム!!」」


轟音が轟き、まばゆい閃光とともに幾重もの稲妻が空から降り注ぐ。
それはドラゴンの背中に突き立てられた剣を伝い、体内を駈け回る。


『ギャァアアアアッ!!』
しばらくするとドラゴンは断末魔の悲鳴をあげてその場に崩れ落ちた。
36 名前:第1話 投稿日:2004/01/14(水) 16:58
「ふぅ……終わった……」

倒れたドラゴンの背から剣を抜き、鞘に収める。
そして馬にまたがった。

「1番隊は引き続き2番隊と協力して負傷者の救護に当たってくれ。私は
女王様と姫様へ報告に行く」
「はい〜。ご苦労様です〜!」

松浦の間延びした返事を背中に聞き、私は城へ馬を走らせた。
今日はたくさん酷使してしまった。
こいつも休ませてあげないと……。
37 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/14(水) 17:05
今回はここまでです。こんな感じのファンタジーになります。
バトルシーンは書いたことないのでちょっと緊張……。

>>18 rina 様
初めてのレスありがとうございます!
はい、ようやく新作です! なちごまです!
とことん甘えたなごっちんを書けるように頑張ります!

>>19 つみ 様
ありがとうございます!
新作ですね! なちごまテイスト全開で頑張ります(ぉ


38 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/14(水) 17:09
>>20 みるく 様
ありがとうございます!
始まっちゃいました! 自分でもどうなることか……。
とにかく金版もこっちも頑張ります!

>>21 名無飼育さん 様
初めまして〜! ありがとうございます!
とりあえずかっこいいなっちもあれば、可愛いなっちも書いていきたいと思います。
マイペースにがんばりま〜す!

>>22 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
キノコ、最初どうにか出そうと思ってたのですが、キノコという形では出せませんでした……。
でも別の形では出てくる予定なのでお待ちください!
39 名前:つみ 投稿日:2004/01/14(水) 20:06
安倍さんカッケ〜!!
いろいろな人がでてきそうですね^^
新たなツートップでしたね!
40 名前:みっくす 投稿日:2004/01/15(木) 08:05
すごくおもしろいですね。
剣と魔法のファンタジーってすごく好きです。
次回以降も楽しみにしてます。
41 名前:tsukise 投稿日:2004/01/15(木) 18:26
遅ればせながら新作Upお疲れ様ですっ!
予告を見て楽しみにしていたんで、ファンタジーな展開に
早速引き込まれてます♪なっちにごっちん…イイ感じです…っ!
何気に、松浦さんカッコいいですね〜♪
これからも楽しみにしていますので、頑張ってくださいね♪
42 名前:うっぱ 投稿日:2004/01/19(月) 02:48

興味を惹かれて立ち寄ってみたら……正解でした。
月並みな言葉ですが、期待して待ってます。
43 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:46
「……と、いうわけで無事にドラゴンを退治してまいりました。負傷者はただいま
1番隊と2番隊が手分けして救護しています」
「そうか、ごくろうやったな」
王の間。私は裕子女王様とごっちん……姫様を前に今回の報告をした。

「ホラ、真希もなんか一言言ってやり!」
「あっ、ハイ!」

いきなり話を振られてビックリしているごっちん。
ごっちんはなぜかこの部屋に来ると表情がとたんに硬くなってしまう。
それでも一歩一歩階段を下りてくると、ひざまずいている私の前にそっと
しゃがみ込んだ。


「ありがとう、な……つみ……」
「もったいなきお言葉です」

そのまま立ち上がり、二人に向かって礼をすると、私は王の間をあとにした。
44 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:47
自分の部屋に帰った私はマントを脱ぎ、剣をしまう。
『王宮騎士団団長』から『執事』へと戻る私。まったく違う仕事を二つ、
最初はけっこう辛かったけど今はもう慣れた。


ちょっと服を見ると、ところどころ焼けこげている。
炎のブレスをまともにくらったからね……さすがにマントだけじゃ防ぎきれ
なかったか……。
替えの服を取り出そうとしたけど、それより先に私は応急処置をするために
救急道具を取り出した。
45 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:49
  コンッコンッ!

その時部屋の外からノックが聞こえた。
今取り出した救急道具をしまう。
そして扉を閉めたまま返事をした。

「はい」
「なっち、開けて!」

やっぱり……部屋の外から聞こえてきたのは予期していたのと同じ声だった。
ただ語気が強い。有無を言わせないような口調。


そっと扉を開ける。
そこには険しい顔をしたごっちんが立っていた。

「……どうしたの、ごっちん?」
平静を装って話しかけるけど、ごっちんはなにも答えずに私の腕を掴んだ。
「つっ……」
思わず私の口からうめき声が漏れる。
それを聞き漏らさず、ごっちんは私のボロボロになった袖を捲り上げた。
46 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:50
「……酷い火傷……」
「・・・・・・」

ごっちんは私をベッドの縁に座るように促し、そのあとごっちんもとなりに
腰掛けた。
そして焼き切れた私の服に手をかけ脱がし始める。
私ももうごまかしても無駄なので、素直にごっちんに従った。

私の服を脱がすと、現れた肌を見つめるごっちん。
私も少し自分の身体を眺める。ところどころが火傷になっていて、痛い。
さっきまでの厳しい表情から一転、今のごっちんは悲しそうな顔。
47 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:50
「なっち……お願いだから無理しないで。辛いときはごとーに言ってよ」
「ゴメン……でも……」
「ごとーがなっちにしてあげられることってこれくらいしかないんだから……」


そっとごっちんの手が火傷の部分の上にかざされた。
そのままごっちんが呪文を唱え始める。
すると呪文の詠唱にあわせて、傷の上にかざされた手が光を放ちはじめた。

光の粒子が飽和して、ごっちんの手から溢れ出す。
注がれた光は体の中に染みこんでいって、苦痛を取り除き、暖かな優しさを
残した。
48 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:52

「はい、おっけ!」
「ありがとう、ごっちん」

しばらくして、私の全身の火傷は跡すら残さず回復した。
ごっちんの使う魔法……王家の人間だけに与えられた奇跡の力、光魔法。
その魔法の一つがこの『キュア・ライト』。
他の魔法では絶対使えない……死んだ細胞を再生させて、傷を治す回復の力。


……ただその奇跡の魔法にも代償がある。


「うっ……」
「ごっちん!!」

私の方に倒れてきたごっちんを抱きとめる。
ごっちんは私の胸の中で苦しそうに呼吸をしていた。
49 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:53
光魔法は通常の魔法の何倍もの魔力と生命力を消耗するといわれている。
それどころか使いすぎれば命の危険もあるとも。
まるでそれは自分の命をわけてあげているよう……。


「ごっちん、ごっちんも無理しないで!」
「んっ……ごとーは大丈夫……ちょっと疲れただけだから……」

ごっちんは優しいからどんなときでも気丈に振る舞おうとする。
でも私の胸にもたれかかって荒く呼吸をしているところを見ると、強がって
いるのは明らかだ。
私はそのままごっちんを抱きしめた。
50 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:55
「ごっちん、ゴメンね? なっちドジだからいっつも怪我して帰ってきて……」
「違うよ、なっち。だってその怪我はごとーやこの国に暮らすみんなのために
負った怪我でしょ? みんなのために戦ってくれてできた怪我でしょ?
痛かったよね……辛かったよね……。だからごとーだって少しくらい辛いのも
平気だよ」

私にしがみつき、私の目を見つめて一言一句心を込めて言うごっちん。
その目はとても真剣で、でもどこかに優しさがある瞳。
私が大好きな瞳。


「……ありがとね、ごっちん」
「お礼を言うのはごとーだ……もん……」

ふいに私の体を掴んでた手が外れ、ごっちんの身体が私のふとももの上に
落ちた。
見てみるとごっちんは目を閉じて寝息をたてている。


ふぅ……どうやらごっちんが目覚めるまで仕事はできなそうだ。
ごっちんの頭と髪を優しく撫でながら、私も戦いで張りつめていた緊張を
ほぐすために一回大きく伸びをした。

51 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:55

一緒に一日中遊んでいた、幼かった頃から変わったこと。
それはお互いがお互いを助け合えるようになったこと。
そして変わらないこと。
お互いに相手のことがとても大切だということ……。

52 名前:第1話 投稿日:2004/01/20(火) 11:56
   
53 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/20(火) 12:01
今回はここまでです。
ようやく第1話終了……。

>>39 つみ 様
ありがとうございます!
かっこいいなっちも好評で嬉しいです。
新たなツートップというよりは、なんとなくSALTな3人組って感じで……。

>>40 みっくす 様
ありがとうございます!
私もファンタジーは大好きで、今回初挑戦してみました!
でも今回はファンタジーだけどやっぱりなちごま……。
54 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/20(火) 12:05
>>41 tsukise 様
ありがとうございます!
わかりづらい予告ちゃんと見つけてくださってたようで。
なっちやごっちんだけでなく、松浦さんもいろいろと活躍すると思うので、
お待ちください。

>>42 うっぱ 様
ありがとうございます!
正解なんて、ソンナソンナ……。
期待に応えられるよう頑張ります!
55 名前:つみ 投稿日:2004/01/20(火) 20:14
この関係がもどかすぃですね。
この2人があるラインを超える日を楽しみにしてます!
56 名前:みっくす 投稿日:2004/01/20(火) 22:03
更新おつかれさまです。
う〜〜ん、なんともいえない関係ですね。
今後の登場人物に期待しつつ、次回を楽しみにしてます。
57 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/23(金) 23:06
初めまして。
「笑わん姫」に反応して来てみたら、もろにツボでしたw
これからも楽しみにさせていただきます。。
58 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:29
〜安倍なつみ〜

今日は城での会議の日。大広間に集まって政治のことについて大いに
論ずる。
集まるのは女王様をはじめ、大臣やその他城内にいる重役たち。
私もこの場に王宮騎士団団長として参加している。

もっとも私が発言することはほとんどない。
論客というよりは警備としてこの部屋に招かれているのだろう。
だから常に意識を研ぎ澄ましてなければいけないのだけど。


そしてもう一人、滅多に口を開かない人。

そっと女王様のとなりを見る。
そこにはごっちんが多少うつむきぎみに座っていた。


私は一つ溜め息をついた。

59 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:29


第2話  笑わん姫



60 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:29
数時間たって、やっと会議は終わった。
とはいえ特に決まったことなどない。結局ただいろいろと話しただけ。
それはそうだ。今国内はいたって平和なのだから。話し合うべき内容がない。
新たに決まったことはといえば、以前のドラゴン襲来のことについて、
城下町周辺の警備を強化することになったくらいか……。
61 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:30
「おつかれ〜、なっち〜!」
城の廊下を歩いているとふいに後ろから呼びかけられた。この声は……
「女王様」
振り向いて一礼をする。そこに立っていたのはハロモニランドの女王、
裕子様だった。


「疲れるやろ、何時間もずっと神経張りつめっぱなしやと」
「いえ、大丈夫です。もう慣れましたので」
「でも今日はもう騎士団長としての仕事はいいから。執事の仕事もさっさと
切り上げてよく休みや」
「ありがとうございます」
62 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:31
「……それとな……真希のことなんやけど……」
「……はい」

しばらく黙って歩いていたけど、ふいに女王様が言いづらそうに口を開いた。

「またよくない噂が流れてるんやって?」
「……はい……」
「そうか……」

合わせたわけでもないのに二人して同時に溜め息をついた。

63 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:31

よくない噂。
いや、噂と言うよりは真実に近いのかもしれないけど……。

国民のあいだ、最近ではそれだけに収まらず城内の人間のあいだでも
秘かに囁かれているごっちんのあだ名。

  『笑わん姫』

ごっちんはさっきの会議のように、人前に出るととたんに笑わなくなってしまう。
笑うどころか最近では喋ることも珍しい。
貝のように口を閉じ、仮面をかぶったように表情を消してただそこにいるだけ。


なぜだろう……私の前では花のような笑顔を見せてくれるのに……。
公の場であの笑顔を見せてくれればこんなあだ名なんて一蹴できるというのに。

64 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:32
「なぁ、なっち……さっきの言葉と矛盾するかもしれんけど、時間があったら
できるだけ真希と一緒にいてやってくれへんか?」
「えっ? しかし……」
「あの子はなっちの前ではちゃんと笑えんねん。だから……さ、これ以上
真希の笑顔が凍りつかんようにしてやってほしいんよ」
「はぁ、私でよければなんでもしますが……」
「ゴメンなぁ、ホントは母親である私の役目なのに。国を治めるってのは
思った以上に大変で。女王としては合格かもしれんけど母親としては
失格やね……」
「そ、そんなこと!」

言いかけた言葉は女王様の手によって止められた。
思わず女王様の顔を見つめる。全てを理解しているような深いブルーの瞳。


「じゃあ、真希のことよろしく頼んだで!」

私の口から離した手をヒラヒラとふって女王様は歩いていってしまった。
私は背中に向かってもう一度一礼した。



65 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:33


  コンコンッ!
「はぁ〜い?」

扉をノックするとすぐさまごっちんの返事が返ってくる。

「私です」
「あっ! なっち!?」

ダダダっと室内から足音が響いてくる。
そして目の前の扉が開くと……

「なっち〜!!!」
「うわっ!?」

ごっちんがすごい勢いで飛びついてきた。
なんとか倒れはしなかったけど、後ろにのけぞる。
66 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:34
「どうしたの、なっち? 珍しいね、ごとーの部屋に来るなんて」
「えっ、えっと……」

確かにごっちんが私の部屋に押しかけてくることはあっても、私がごっちんの
部屋を訪ねるのは珍しいかも……。
一応女王様に言われてきたんだけど、なんとなくそう伝えるのははばかられた。


「……遊びに来た。今日の仕事はもう終わったから」
「ホントに!?」
「うん」

さっきまでとは一転、屈託のない笑顔を見せるごっちん。
本当にさっきとは別人みたいで、こんな笑顔を見せてくれたら『笑わん姫』
なんて呼ばれなかっただろう。
67 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:35
「入って、なっち!」
「うん、おじゃまします」

ごっちんに勧められて部屋の中へと入っていく。
部屋の中はふんわりとごっちんの匂いが漂っていた。


「お茶入れてもらってくるよ。何がいい?」
「あっ、なっちが行くよ」
「いいのー! ごとーがやる! なっちはお客さんなんだからゆっくり
くつろいでて!」
「う、うん……」

確かにそう言われてしまうとどうすることもできない。
木のテーブルについておとなしく待つことにした。


少しするとごっちんがカップを二つ持って部屋に戻ってきた。
カップからは湯気が立ち上っている。紅茶のいい匂いがここまで届いてくる。

「はい、ど〜ぞ!」
「ありがとう」

私の前に置かれたカップを口に運ぶ。温かく、ほんのり甘い液体が体内に
染みこんでいった。
さっきまでの疲れが少し取れた気がした。

68 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:36

「……ごっちん」
「んっ?」
「……どうして笑えないの?」
「えっ?」

しばらくしてから私は本題を切り出すことにした。
ごっちんも言った意味がわかったのだろう。ごっちんの顔が曇った。
曇らせたかったわけじゃないのに……。
69 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:37
「……ごめんなさい、なっち……」
急にしおらしくなってしまったごっちん。逆に私のほうが慌ててしまう。

「いや、別に怒ってるわけじゃなくて……ただなっちの前ではちゃんと笑って
くれるのにどうしてかなぁ、って思っただけで……」
「むー、だって……笑いたくもないときに器用に笑うなんてできないんだもん。
話の内容だってさっぱりわかんないし……」

そりゃそうだ……。あんな堅っ苦しい談議、私だってよく理解しきれてない
のだから4歳も下のごっちんはもっとわからないだろう。
でもそれでもやっぱり笑顔を要求されてしまうのが一国の姫としての宿命……。
それに応えられなければ不名誉なことを言われてしまう……。

一体どうしたらいいものか……。
70 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:43
「……なっち」
「えっ?」

思い悩んでるとごっちんに声をかけられた。
すごく心配そうな顔をしている。どうやら私はそうとう真剣に悩んでたみたい。


「ゴメンね、なっち。ごとー頑張るからさ。ちゃんと笑えるようになるから」
「うん……。でもさ、なっちにも手伝わせて。二人で一緒に少しずつでも
いいから進んでいこうよ」
「うん! なっちと一緒ならごとーできる気がする!」
「頑張ろうね!」


結局はいい解決法なんてなかったけど……
それでも私の前で見せてくれるごっちんの本当の笑顔を見るとそれでも
いっかって気持ちになる。
光に満ちあふれているごっちんの笑顔をみんなに見てもらいたいけど……
心の奥底では、もしかしたら私はこの笑顔を独り占めしたいとも思っているのかもしれない。

71 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:44

そのあとはとりとめもない話をして時間が過ぎていって。
ふと気づいたときには外は真っ暗になっていた。

「ありゃ、もうこんな時間だ」
「あっ、ホントだ」
「それじゃ、なっちはそろそろ戻るね。お休み、ごっちん」

そのまま部屋を出ようとしたけど、それは背中に感じた小さな抵抗で止まった。
振り向くとごっちんが私の服を掴んでいる。


「なっち……」
「どしたの? ごっちん」

もじもじしているごっちん。
なんとなく次に続く言葉はわかるけど……。
72 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:45
「一緒に寝よう?」

やっぱりね。
たまにあるんだ、ごっちんがとっても甘えたになるの。
小さい頃にはいっつも二人で寝てたから、それがまだ抜けきってないのかも
しれない。

でもまぁ、私も断る理由もないんだけどね。


「じゃあ、着替えてくるからごっちんも着替えといてね」
「うん!」

笑顔に戻ったごっちんを見ながら部屋をいったん出る。
自室に戻ると今着ている服を脱いで寝間着を着た。
そしてベッドの上にある枕だけを持って再び部屋から出る。
73 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:46
「あっれ〜、なっち、どうしたの?」

扉を閉めたところで後ろから声をかけられた。この声は……
「圭ちゃん」
そこにいたのは4番隊隊長で王宮騎士団副団長の圭ちゃんこと保田圭。
私のよき相談相手でもある。


「今夜の城の警備は4番隊だっけ?」
「いや、あんたが決めたんでしょ? それより枕なんか持って何やってんのよ?
姫様のところに夜這いでもしにいくの?」
「なっ! 違うべさっ! ただごっちんと一緒に寝るだけだべ!!」
「へ〜、ほ〜、ふ〜ん」

だめだ、圭ちゃんにつきあうといっつもからかわれる。
満面の笑みをたたえている圭ちゃんを無視してさっさとごっちんの部屋に
向かう。


「なっち〜、ほどほどにしときなよ〜!」
……明日の夜も警備にしてやるっ!!



74 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:47


  コンッコンッ!
「ごっち〜ん?」

一応ノックしてから扉を開ける。
ごっちんはちゃんと着替えてすでにベッドの中に潜り込んでいた。

「なっち、早く早く〜!」

ベッドをポフポフと叩いて催促するごっちん。
まったく……ホントに甘えたなんだから。


壁に付いているランプの灯を一つずつ消していく。
そのたびに闇が深くなり、最後の一つを消すと辺りは闇で覆われた。
窓から差し込む月光をたよりにベッドまで歩いていき、枕を置くとそっと
ベッドに潜り込む。
するとすぐにごっちんが抱きついてきた。
75 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:48
「甘えた〜!」
「甘えただもん!」
「あっ、開き直ったな」

そっとごっちんの頭を撫でるとくすぐったそうに身をよじる。

「……あんね、こうやってなっちに抱きつくの好き」
「へっ?」

思わず頭を撫でていた手が止まる。

「だってさ、立ってたり座ってたりするとどうしても『抱きつく』じゃなくて
『抱きしめる』って感じになっちゃうじゃん。だからこうやって一緒に寝てると
なっちに抱きつける!」

あぁ、そりゃそうだ。もうごっちんのほうが私より背が高くなっちゃったから。
76 名前:第2話 投稿日:2004/01/25(日) 19:49
「ごっちんは根っからの甘えたなんでちゅね〜」
「違うもん!……なっち限定だもん……」
「えっ?」
「なんでもない! オヤスミ!!」

ごっちんは再び私の胸に顔を埋めて目を閉じた。
私も「枕持ってくる必要なかったなぁ」なんて考えてたけど、いつの間にか
意識は睡魔に連れさらわれていた。


こうして今日の夜も平和に更けていった。
77 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/25(日) 19:57
とりあえず今日はここまでです。甘えた全開!
そしてなっち卒業おめでとうございます!
ハロモニ司会は続投らしいですが、「笑わん姫。」も続けてください!

>>55 つみ 様
いつもありがとうございます!
まだまだもどかしい関係です。
ラインを超えるのは……いつのことか(ぇ

>>56 みっくす 様
ありがとうございます!
はい、まだ曖昧な二人です。
とりあえず新キャラやすすが出ましたね。と言ってもからかっただけ……。

>>57 名も無き読者 様
初めまして! 嬉しい感想ありがとうございます!
でも書いててちょっと「笑わん姫。」の世界観を壊してる気もしないでもないですが……。
こんな感じでよければお付き合い下さい!
78 名前:つみ 投稿日:2004/01/25(日) 21:17
ぐはあっ!!
やられてしまった・・・いい・・
ごとーさんが言った一言が気になりますね〜!
甘いの大好きです!次回も待ってます!
79 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/26(月) 16:32
甘い、甘過ぎる…(いい意味でw)
こーゆーの大好きですww
今後の展開も気になります。
次回も楽しみにしてます。。。
80 名前:みっくす 投稿日:2004/01/27(火) 07:27
う〜〜ん、甘いですね。
でも、好きですこういうのも。
次回も楽しみにしてます。
81 名前:名無飼育さんqq 投稿日:2004/01/27(火) 09:38
いいですねぇ。
ごっちん姫どうなるんだ〜!?
82 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/27(火) 21:11
きのこたちはどんな風に
出てくるんだろう?
楽しみにしてます。
83 名前:tsukise 投稿日:2004/01/28(水) 20:40
更新お疲れ様ですっ。
甘々な展開に、ニンマリしてしまったり(笑
笑わん姫…これからのなっちの頑張りに大期待ですねっ
84 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:19
「姫様〜! 姫様〜!!」

翌日、私はまた城の廊下を走っていた。
またしても……またしてもごっちんがいなくなってしまった。
っていってももうだいたい場所はわかってるんだけどね……。

馬小屋をのぞくと案の定ごっちんの愛馬が消えていた。
なので今日もまた私は愛馬にまたがり森へ向かうハメに。
ゴメンね、いっつも酷使しちゃって……。
85 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:20
草のカーテンをくぐり抜け、木のトンネルの中を進むと、そこは私たちだけの
秘密基地。
やっぱり野原に入る少し手前に白馬が一頭、手綱を木に巻いて立っていた。
私も同じように馬から下りて、手綱を一本の木に巻き付ける。
そして一人で秘密基地へと入っていった。

「ごっちん!……あれっ?」

入ってすぐにごっちんを見つけた。
ごっちんは昨日と同じ木陰に座って、木にもたれかかっていた。
でも私が近づいてもまったく反応がない。
これはもしかして……

ごっちんのそばに座り顔を覗き込む。
目は固く閉じられており、口からは可愛らしい寝息が聞こえてきた。


「……はぁ……」

思わず溜め息が漏れた。
私が必死で探してたってのに本人はのんびりとお昼寝タイムですか……。
脱力して、同じ木にもたれかかる。
すると、私が来たことに気付いたのか、ごっちんの目がうっすらと開いた。
86 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:22
「ん〜……なっちぃ?」
「まったく、ごっちん……起きたべか……」
「ん〜……大丈夫……もっかい寝るから……」

何が大丈夫なんだかよくわからないけど、私が何か言う前にごっちんの
頭が私のふとももの上に倒れてきた。

「ちょ、ごっちん!?」
「ふぁ〜、おやすみなさぁい、なっち……」
「ごっ!……んもぅ……」

怒ろうと思ったけど、目の前で無防備に眠る寝顔を見てると怒る気もなく
なってしまう。
何気なくごっちんのほっぺたをつついてみると、ごっちんは「ん、ん〜……」
なんて呻きながら、顔の向きを少し変えた。
あっ、なんかちょっとおもしろいかも。
87 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:23
そのあとはほっぺたをつっついたり、髪の毛を優しく梳いてみたりと眠ってる
ごっちんをいじくってみて。
そしてそっと指でごっちんの唇に触れてみた。
するといきなりごっちんが目を、今度はパチッと開けた。


「……なっち今何した?」
「へっ!?」

あまりに真剣な顔で聞いてくるからとまどってしまう。
えっ? なにっ!? 嫌な思いさせちゃったかなぁ?

「えっと……ただごっちんの唇触っただけだけど……」
「ゆ、指で?」
「う、うん……」

するとごっちんは落胆したような、ホッとしたような複雑な表情になった。
でもその後で何かに気づいたようにハッとすると、急に赤くなって顔を背けた。
88 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:24
「……なっちのバカぁ……」
「へっ!?」
「んも〜! ごとーの純情をもてあそんだ罪は重いですぞー!!」
「えぇっ!? って、キャア!」

ごっちんはガバッと起き上がると、急に私のほうに体重をかけてきた。
一瞬のことだったので、私も抗いきれずにその場に倒れる。


「ちょ、ごっちん! って、あはははっ!!」

私の上に乗っかったごっちんは私の脇に手を入れてくすぐってきた。
わ、脇弱いんだよ〜!!
笑いながらジタバタ暴れるけどぜんぜん力が入らない。
89 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:24
「なっち、反省した〜?」
「した、した! だからやめて〜!! あははははっ!!!」
「んじゃあやめたげる」

ごっちんのくすぐり攻撃がピタッとやむ。
乱れた呼吸を整えてると、上に乗ってたごっちんの上半身がゆっくり私の
上に倒れてきた。
そのままそっと抱き寄せる。


「でも、ごっちん、ホントになっちなんかしたかい?」
「……鈍感……」
「えっ?」
「もういいですぅ!」
「教えなさ〜い!!」

そのまま体を入れ替えてごっちんを下に組み敷く。
そして今度は私がごっちんの上に乗ってごっちんの脇をくすぐった。


「あはははっ!! なっち、やめて〜!!」
「じゃあ教えてくれる?」
「教えないも〜ん!!」
「じゃ、やめないも〜ん!!」
90 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:25
それから私たちはそのままくすぐりあったり、追いかけっこをしたり、一緒に
木陰に寝転んだりと楽しいひと時をおくっていた。
二人とも子供に戻ったように、はしゃいで、遊んで。

そう……この風景に似合わない、一つの嘶きが聞こえるまで。

91 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:25
   
92 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:26
  『ギャア!!!』

不意に聞こえた異様な音で、遊んでいた私たちは動きが止まった。
耳を澄ますとさらに聞こえてくる、音……というか何かの鳴き声。
続いて『バサッ、バサッ!』という羽の羽ばたき音。いずれも私たちの上の
ほうから聞こえてくる。


鳥……?
そう思って空を見上げた。
しかし私の目が捉えたのは、鳥なんていう可愛らしいものではなかった。
93 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:27
まがまがしい羽と、額から生えた角。
灰色の体に、爛々と不気味に光っている真紅の目。
そして鋭く尖った爪と牙。
あれは……


「まさか……ガーゴイル!?」

一瞬のうちにごっちんをかばうように立ち上がった。
しかし……その時気付いた……。

剣がない……。
94 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:27
それもそのはずだ。
この森に……いや、この近辺に生息しているモンスターなんてたかがしれてる。
剣を使わなくたって十分倒せるレベルだ。

だから『執事』をしているときには極力剣を持ち歩かないようにしている。
こんなところにガーゴイル――しかもそれが3匹――なんて現れるはず
ないのに!

95 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:28
上空を旋回していたガーゴイルの1匹が、爪を立て、私に向かって急降下
してきた。
それをギリギリでかわす。ガーゴイルの爪が地面にめり込んだ。
そのままガーゴイルの体に拳を打ち込んだけど……

「っつっ……」

ダメージを受けたのは私の拳のほうだった。
ドラゴンの鱗ほどではないが、ガーゴイルの皮膚も相当硬い。
ドラゴンの鱗を鉄と表現するならば、ガーゴイルの皮膚は岩石といった
ところだろう。

そのうち上空の残り2匹も同じように急降下してきた。
バックステップしてなんとかかわす。
96 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:29
「なっち!」
「ごっちん! 動かないで!」

ガーゴイルたちは再び上空に舞い上がった。
威嚇するように私の頭上を旋回している。
剣もない……体術も効かない……ならばあとは魔法で戦うしかない。

火・水・風・雷・地……5つの属性の中から魔法を選ぶ。
空を飛んでいる敵だから「地」属性は効果がない。
逆に有効なのは……「雷」属性!
ただガーゴイルは素早いからただ雷を落とすだけじゃかわされてしまう……。
直接電撃を叩き込まないと……。
97 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:30
考えている間にガーゴイルの1匹が再び急降下して来た。
攻撃をかわしつつ呪文を詠唱する。

同じようにもう1匹が降下してくる。
今度はかわさない。真正面から向かい合う。

「ライトニング・パルサー!!」

私の手から放たれた電撃は、私に向かってきていたガーゴイルに的確に
命中した。
ガーゴイルがその場に堕ちる。
かけよってみると体は焼け焦げ、ピクピクと痙攣していた。
98 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:30
1匹倒して油断したのがいけなかった。
ハッと気づいて空を睨む。上空を旋回していた3匹目がいない。
あわてて振り返ろうとしたとき、背中に鋭い痛みが走った。

「ぐっ……」

思わずその場に崩れ落ちる。
2匹のガーゴイルはすでに眼前にまで迫っていた。
魔法を詠唱する時間もない。

殺られる……!
そう思ったとき……
99 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:31
「なっち、伏せてー!!」

遠くからごっちんの声が聞こえた。
その方向を振り返ると、ごっちんの手が光り輝いているのが見えた。


「オキサイド・リング!!」

ごっちんの手から溢れた光はリング状になって放たれ、岩石のように
硬かったガーゴイルの体を紙のように切り裂いて飛んでいった。



100 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:32


「大丈夫、なっち!?」
ごっちんが走り寄ってくる。

「うん……大丈夫……」
口からは強がりが出たけどそんなわけない。
背中はズキズキ痛いし、血が流れ出してるのもわかる。
強がったりしてもごっちんには絶対バレてるはず。


「ち、血が! 待って、動かないで!」

ごっちんはそう言って私の後ろに回り込むと、そっと手をかざす。
詠唱が聞こえ、少しすると傷口を優しい光が包み込んだ。
痛みがだんだん和らいでいく。優しさで包み込まれるように。
101 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:33
やがて苦痛が完全に取り除かれた。
私を包んでいた光が止む。
そのあとそっと手が首に回され、私の身体は別のぬくもりで包み込まれた。

「ごっちん?」
「なっちぃ……」

背中に感じたごっちんの身体は小刻みに震えていた。


「よかった……なっちが死んじゃうと思って……ごとー夢中で……」
「うん、わかってるよ。ありがとね、ごっちん」

向き直り、泣きじゃくるごっちんを優しく抱きしめる。
それでもごっちんは泣きやまず、私の服を掴むとそのまま顔を埋めた。

「なっちが死んじゃったら……ごとーどうしたらいいか……」
「ゴメンね……」
「許さない! 罰として今日はずっとなっちから離れないから!!」
「……いいよ、ずっと一緒にいよ」

仕事とかいっぱいあるけどこうでも言わないとごっちんは泣きやんでくれなそう。
そして私もこんなごっちんを尻目に仕事なんてできないし。
まだ泣きやまないごっちんを抱きしめて、私は空を仰いだ。

102 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:34

ただ、ずっと平和に流れていくと思っていた日々。
それはもしかしたら叶わないかもしれない……。
私はいい知れない不安に襲われていた。

103 名前:第2話 投稿日:2004/01/30(金) 14:34
   
104 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/30(金) 14:40
今日はここまでです。
ほのぼのしてたり緊迫してたり。

>>78 つみ 様
ありがとうございます!
とにかく甘く書いてみました。気に入っていただけて嬉しいです。
でもなっちは鈍感なので届くのはいつの日か……(w

>>79 名も無き読者 様
ありがとうございます。
甘いですねぇ〜。私も甘いの大好きです。
でもこのあとはもうちょっとファンタジーらしくなっていく予定。

>>80 みっくす 様
ありがとうございます!
前回甘々だけだったので、今回はちょっとバトルシーンも書きました。
やっぱりまだ難しいですねぇ……。
105 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/01/30(金) 14:46
>>81 名無飼育さんqq 様
ありがとうございます!
ごっちん姫もやるときゃやります!
でも甘えたなのは変わりません(w

>>82 名無し読者 様
ありがとうございます!
もうちょっとできのこ……というか主要なメンバーが出せると思います。
まぁ、上で書いたとおり「きのこ」では出せなかったんですけど……。

>>83 tsukise 様
ありがとうございます!
甘々です。甘過ぎです。書いてる私もニンマリ状態(笑
本当になっち頑張れ〜! ってかんじです!
106 名前:名も無き読者 投稿日:2004/01/30(金) 17:21
Oh! How fantastic!!(←誰
なんだか不吉な予感がしますが…(汗
次回も楽しみに待ちます。。。
107 名前:つみ 投稿日:2004/01/30(金) 17:38
甘く始まったかと思ったら・・・
純愛をもてあそぶ罪は重いですね(w
それにしても少し不可解な事件でしたね・・・
何か裏でもあるのかな?次回も待ってます。
108 名前:みっくす 投稿日:2004/01/30(金) 23:34
なんか展開があやしくなってきましたね。
さて、なにがおきているのでしょうかね。
次回楽しみにしてます。
109 名前:名も無き受験生 投稿日:2004/02/03(火) 01:31
いやぁドモドモ└(^o^ ) ( ^o^)┘ドモドモ
カイトさん!読みに来ちゃいました!
イイですねぇ..なちごま!今回もあまーいカンジで( ´ ▽ ` )
う−ん最後の一言が意味深ですねぇ....次回どうなってしまうのか!
あっちとこっちで大変かもしれないケド、ガンバッテください!
110 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/03(火) 10:04
初めの甘々から一転緊迫した雰囲気の終わり方で
続きが気になってしまいます!!
更新期待しております。

それにしても…なっち鈍感だよぅw
111 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:10
〜松浦亜弥〜

今日は以前急なドラゴン退治で潰れてしまったお休みの代休。
城下町を出て、のんびりとお散歩を楽しみつつ目的地へ向かっていく。
目指す場所は海沿いの、そして国境に近い町「ハチャマ」。
私のふるさとだ。


そしてそこには今、私の幼なじみが滞在している。
112 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:11


第3話  遙かなる旅路


113 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:12
程なくしてハチャマに着いた。
国境に近いということで交易が盛んで、活気にあふれている。
そんな市場を通り抜けて、私は町の宿屋までやってきた。


「すいませ〜ん!」
「はいっ! おぉ、亜弥ちゃんじゃないか! 元気にしてるかい?」
「は〜い、おかげさまで! ところでここにみきたんが泊まってると思うん
ですけどぉ」
「あぁ、美貴ちゃんね。二階の203号室だよ」
「ど〜も〜!」

顔なじみであるこの宿の女将さんは親切に部屋を教えてくれた。
私はさっさと階段を上がる。
なんせみきたんが久しぶりに帰ってきたのだ。どうしても気持ちが早まって
しまう。
114 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:13
  コンッコンッ!
「……ぁ〜ぃ」

203号室の扉をノックすると少しして鼻にかかったような声が聞こえてきた。
んっ!? 鼻にかかったような声?
もしかして……

「おぉ、亜弥ちゃんじゃん。久しぶり〜」
「みきたん……もしかして寝てた?」
「ん〜、もしかしなくても寝てた……やっぱりベッドは寝心地いいからさぁ……」
「はぁ……もうお昼だよ……」
「そうだね……ちょっと待ってて、着替えるから……」

そう言ってまだ寝ぼけ眼のみきたんはパタンと扉を閉めた。
まったく……情緒もムードもあったもんじゃない。
いつまで経ってもみきたんは変わらないなぁ。
115 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:13
「お待たせ、亜弥ちゃん」
しばらく待っているとまた扉が開いて、ちゃんと着替えてついでに身だしなみも
整えたみきたんが顔を出した。
促されるように部屋に入る。


「それにしてもけっこう久しぶりだねぇ、亜弥ちゃん。いつぶりだっけ?」
「ん〜、ちょっと覚えてない。今度はどのくらいこっちにいるの?」
「わかんない。気が向いたらまた出かけるよ。もう少しはここにいると思うけど」
「そっか」
116 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:15
みきたんは冒険家だ。
つってもそんなに格好良いもんじゃない。ただ目的もなく国々を転々としている
だけみたい(こんなこと言ったらみきたんは怒るだろうけど……)。

一番始めに旅立つ前に王宮騎士に誘ったけど断られた。
「縛られるのは好きじゃない」だって。
なれるくらいの剣の腕はあるのに(私よりは下だけど)、もったいないなぁ。

それになってくれたらずっと一緒にいられたのに……。
117 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:16
「で、みきたん今回はどこに行ってたの?」
「んっ、ちょっと北の方にね。すごいんだよ! 北の方じゃ「雪」ってのが
降るんだよ!!」
「ゆき?」
「えーと、なんて言うのかなぁ……空からわたが降ってくるような感じ
かなぁ……。白くて冷たくてキレイなんだよ!! 亜弥ちゃんにも一回
見せてあげたいなぁ!」
「へぇ、見てみたいなぁ」


でも、私はみきたんの旅の話を聞くのが好きだった。
そしてそれを嬉しそうに話すみきたんが好きだった。
だからみきたんが帰ってきてるときは必ず訪ねる。
みきたんもけっこう帰ってきてくれる。それは私に会いに来てくれてると
思ってもいいのだろうか?
118 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:17
「さってと、それじゃいい天気だから散歩にでも行こっか」
「えっ、散歩?」

隣に座っていたみきたんが急に立ち上がった。
戸惑っている私の前にそっと手が差し出される。

「行こうよ。久しぶりに海見てみたいし」

あっ……そういうことか……。
私は差し伸べられた手をそっと掴んだ。


「うん、行こう!」



119 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:18


町を出て少し歩くと、そこに広がる砂浜と海。
私とみきたんが初めて逢った場所。まぁ、「思い出の場所」ってヤツね。

120 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:19

子供の頃この辺を散歩していてみきたんを見つけた。
砂浜に座ってずっと海を見ていた。

数日後、またこの辺を通ったらまた見つけた。
同じように海をじっと見つめたままだった。よくできた彫刻かなんかじゃない
のかな? と思ったくらい。


いつ通っても必ずみきたんはいた。ずっと海を見つめたまま。

5回目にみきたんを見つけたとき、勇気を出して話しかけてみた。
初めてなのに話がはずんで、日が暮れるまで喋っていた。


それから私は海に通うようになった。

みきたんのことを好きになるのに時間はかからなかった。

121 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:20

砂浜に埋もれている流木の上に並んで腰掛ける。
みきたんは透き通るような眼差しで海を見つめ、そんなみきたんを私は
見つめる。
海を見つめているみきたんの瞳はいっつもキラキラしてた。
122 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:21
「亜弥ちゃん、海の向こうには何が広がってると思う?」
「えっ? 海の向こう?」

唐突に問いかけられて戸惑う。
みきたんの瞳は相変わらずキラキラ輝いていた。


「海の向こうにはね、全く別の大陸が広がってるんだって」
「別の大陸? 大陸ってアップフロントだけじゃないんだ?」
「そ。だからいつかミキも海を越えてみたいんだぁ!」
「あ……」
「だからさ、いろんなところを旅していろんなことを学んで……いつか絶対
行ってやるんだよね!」


みきたんが初めて語った「夢」。そして旅の「目的」。
そんな大きな目標があるなんて知らなかった。

夢を語るみきたんは今までで一番輝いていて……
惚れ直しちゃうよ……まったく……

123 名前:第3話 投稿日:2004/02/07(土) 01:21
その時一迅の風が吹き抜けた。海から吹く冷たい風。

「……ハックシュン!」
「あっ、亜弥ちゃん寒い?」
「ん……ちょっと寒いかも……。みきたんは寒くないの?」
「ん〜、ミキは今までもっと寒いところにいたからなぁ、慣れちゃったのかも」

そう言いながらみきたんは自分のマントを外し、私にかけてくれた。
ほのかな暖かさとみきたんの香りが漂ってくる。


「これで大丈夫?」
「ん〜、まだちょっと寒いかも」
「えー? しょうがないなぁ……」

そっとみきたんが体を寄せてくる。
そして次の瞬間にはマントよりももっと暖かい、みきたんの体に包まれた。


「これなら寒くないでしょ?」
「うん、あったかい……」
124 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/07(土) 01:28
今回はここまでです。
ちょっと脱線。

>>106 名も無き読者 様
Thank you very much!(ぉ
今回はちょっとサイドストーリーな感じで。
ごっちんが強いというよりは、「光魔法」が強いと解釈しといて下さい。

>>107 つみ 様
ありがとうございます!
はい、なっちは罪作りなお人です(笑
しかも無自覚! それでこそなっち!!
125 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/07(土) 01:33
>>108 みっくす 様
ありがとうございます!
ちょっと怪しかったですが、今回は挽回して(?)やや甘な感じで。
何が起きてるかはもうちょっと(かなり?)あとに。

>>109 名も無き受験生 様
ありがとうございます! こちらでは初めまして!
こっちはなちごまです。甘いです。今のところは(ぇ
期待に応えられるよう頑張ります!
あと高校合格おめでとうございます!!

>>110 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
見事に脱線しました(死
なっちは鈍感ですね。
鋭いなっちなんてなっちじゃない!(マテ
126 名前:つみ 投稿日:2004/02/07(土) 08:32
ほほう・・・これはまた・・・
戦士の休養っすね。なっちさんも鈍感だけど
意外とあの方も鈍感ですよね!
127 名前:みっくす 投稿日:2004/02/08(日) 06:22
更新おつかれです。
たぶんこのお話がどこかに繋がってルンだろうなぁ。
次回も楽しみにしてます。
128 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:44
そのまま少し海岸で話してから私たちはハチャマの宿に戻った。

「ねぇ、亜弥ちゃん、もう寒くないでしょ? マント返してよ」
「ダ〜メ! まだ寒いもん!」
「……ここ室内だよ?」
「でも寒いの!!」
「まったく……我が侭なんだから……」

みきたんは呆れてたけど、やっぱり返したくない。
もうちょっとだけ……みきたんのぬくもりに包まれていたかったから。

129 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:45

そのまま部屋でみきたんのおみやげ話の続きを聞いていると、なにやら
宿の外が騒がしくなってきた。
人々の叫ぶ声や、ドタドタとした足音が聞こえてくる。

「? なんだろ、やけに騒がしいね?」
「見に行ってみる?」
「行ってみようか」

一応剣を持って外に出た。
そのまま騒ぎの中心地である町の入り口へ向かう。
途中でこの町の憲兵隊が私たちを追い抜いて走っていく。
確信した。ただごとじゃない!
130 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:46
町の入り口へ着くと、そこにはたくさんの憲兵隊がいて空へ弓を引き絞っていた。
憲兵隊の部隊長と思われる人を捕まえる。

「どうした? 何があった?」
「あっ、騎士様でいらっしゃいますか?」
「一応そうだけど?」
「た、大変です! あれを!」

部隊長さんが空を指さす。
私とみきたんはつられて空を見上げた。
その時私たちの目に映ったのは……


「あれって……」
「ガーゴイル!?」

青い空に転々と浮かぶ5つの黒い影。
そこからはえる灰色の翼と、赤い目が特徴な空のモンスター、ガーゴイル。
でも、なんでこんなところにガーゴイルが!?
131 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:47
「放てっ!」

部隊長さんが憲兵隊に命令した。
いっせいに矢が放たれ、それはガーゴイルの群れに襲いかかる。
でも見た限り、たいしたダメージは与えられてない感じ。

「あれじゃだめだ! ガーゴイルの皮膚は石みたいに硬いんだ……」

みきたんが苦々しく呟く。
そのうち、5匹いたガーゴイルの2匹だけがこちらに向かって急降下してきた。


「うわっ、来たっ!!」
「ひるむな! 各自剣で……」

慌てふためく憲兵隊に命令を下す前に、部隊長さんは血まみれになって
倒れた。
ガーゴイルはまた空中に舞い上がって旋回している。
私は剣を抜いた。


「みきたん、協力して!」
「オッケー!」
132 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:49
ガーゴイルの1匹が爪を鳴らして滑空をはじめた。
狙われたのは憲兵隊の一人。恐怖に縛られたように動けないでいる。


私は走り出すと、そいつを突き飛ばした。
くり出される爪を剣で受けとめる。
そのまま剣を滑らせてガーゴイルの体を切りつけたけど剣がめり込んだだけで
斬れなかった。


ガーゴイルは再び空へ飛び上がった。
だけど安心してる余裕はなかった。
私の死角からもう1匹のガーゴイルがせまっていた。
133 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:50
「くっ!」

体の向きを変えて迎撃の体勢をとる。
ただ剣をかまえる前に、私の前にみきたんの背中が広がっていた。
みきたんは剣を引き、突っこんでくるガーゴイルと真っ向から向かい
合っている。


ガーゴイルのくり出した爪をかわした。少しだけかすったようでみきたんの
髪が千切れ飛んだ。
すぐにみきたんは腰の回転を利用して剣を突き出した。
剣は根本までガーゴイルの体に埋まり、反対側の翼の生え際からは蒼い
血に汚れた剣がつきだしていた。
134 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:51
「ありがと、みきたん」
「いいよ。それより残り1匹!」

残りの1匹はまだ空中で旋回している。1匹倒されたことにより怖じ気づいて
いるのだろうか?
ただ空中にいられると私たちも攻撃できない。


「みきたん、どうしよ」
「ん〜、しょうがない。ミキが叩き落とすから亜弥ちゃんやっつけて」

そう言い終わると同時にみきたんは両手を前につきだした。
魔力が手に集まってくる。それと同時に周囲の風もみきたんの手に吸い寄せ
られている感じがする。


魔力が集まると呪文の詠唱にはいる。
魔力の塊がだんだんと深緑に輝く魔法陣に変わっていく。
135 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:52
「行っくよー! スパイラル・サイクロン!!」

魔法陣が完成したことを確認して、みきたんは魔法陣を放った。
空を漂っているガーゴイルの下に、放たれた魔法陣が出現し、光り輝くと
巨大な竜巻を発生させた。

竜巻が空中のガーゴイルを飲み込む。
魔法陣が消え、竜巻がやむと、きりもみにされたガーゴイルは揚力を失い、
真っ逆さまに墜ちてきた。


「亜弥ちゃん、今だ!」
「うんっ!」

落ちてくるガーゴイルに向かって走り出す。
そして十分にスピードをのせた一閃で、ガーゴイルを今度こそ真っ二つに
斬り裂いた。



136 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:53


「ふぃ〜、終わった」

剣に付いた血をふき取って鞘に収める。
見たところどうやらそんなに被害も出なかったようだ。部隊長さんも怪我は
酷いけど命に別状はなさそう。

なので後始末は憲兵隊に任せることにした。
最初にいたあとの3匹は気になったけどもはや私たちではどうしようもない。
それにホントは私今日休みだし。
137 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:54
「一件落着だね!」
「そうだね」

みきたんも同じように剣を鞘に収めて、1回大きく伸びをした。


「さってと、それじゃあ行こうかな」
「えっ!?」

宿に帰りかけた私はとっさにみきたんのほうを振り返る。

「行くって……?」
「ん? 次の旅。今度は東の方に行ってみようかなぁ、って」
「もう行っちゃうの?」
「うん」


はぁ……いつもこう……
もう少し滞在してるって言っといてすぐに旅立っちゃったり……すぐに帰って
くるって言って何ヶ月も帰ってこなかったり……。

まるで吹き抜ける風のように……あるいは空に漂う雲のように……
何物にも縛られることない……あきれちゃうくらいの「自由」。
138 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:54
でもそんなところも好きだから。
全部ひっくるめてみきたんを好きになったから。
だから私はこう言って見送ることにしてるんだ。

今まで借りっぱなしだったみきたんのマントを手渡す。
みきたんは笑顔で受け取ってくれた。



「行ってらっしゃい、みきたん!」
139 名前:第3話 投稿日:2004/02/11(水) 12:55
   
140 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/11(水) 13:01
今回はここまでです。
なんか私があやみきを書くと、いつも微妙に切なくなるような……。
好きなんですけどねぇ……。なんで?

>>126 つみ 様
ありがとうございます!
休息……だったんですけどねぇ……。こんな展開に……。
はい、あの方も鈍感です。もしかしたらなっち以上に。

>>127 みっくす 様
ありがとうございます!
繋がってます。いろんなところに。
とりあえず今回の話は2話の後半とリンクしてます。
141 名前:つみ 投稿日:2004/02/11(水) 13:42
つええな・・・
あやみきはつええよ・・
休息から一転してでしたけれども無事でよかったです!
次回からのなちごまかな〜?楽しみにしてます!
142 名前:みっくす 投稿日:2004/02/12(木) 00:17
なるほど、そういう背景があたんですね。
それにしても、みきてぃも強いですね。
次回もたのしみにしてます。
143 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/02/12(木) 11:25
ど-も( ‘∇‘ )ノ”
カイトさん!名も無き受験生です!(元ですけど......)
いやぁ.....今回も出てくれましたねぇ...アヤミキコンビ(>_<)b
僕にとってはうれしいカギリデス(TдT)
うーん.....この切なげなAyayaイイですねぇ(オイオイ)
ガンバッテください(>_<)b
ちゅ〜( ̄3 ̄)ちゅ〜( ̄3 ̄)ちゅ〜( ̄3 ̄)(意味ナシ)
144 名前:tsukise 投稿日:2004/02/13(金) 20:49
更新お疲れ様ですっ!
あ…あやみき最強…と思ったのは私だけですか?(爆
なちごまも目が離せないですが、これからの二人の活躍にも
期待していますねっ
145 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:18
〜保田圭〜

城の中の自分の部屋で私は本を読んでいた。
紺野から借りてきたちょっと上級者向けの魔術書。やっぱりなかなか難しい。
一文一文ゆっくりと理解していく。

そんなふうにして有意義に午後の一時を過ごしていたっていうのに……
部屋の外からその一時をぶち壊す2つの足音が聞こえてきた……。
146 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:19


第4話  願いごと一つだけ



147 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:19
「「やっすださ〜ん! 遊びましょ〜!!」」

扉をバタァンと開けて、室内に入ってきた2人……いや、2匹。
私は本を閉じて頭を抱えた。

「部屋に入るときはノックくらいしなさいっていつもいってるでしょ!」
「「ゴメンなさぁい、おばちゃん!」」
「ったく……」
どうやら反省してないらしい。
148 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:21
部屋に入ってきたのは2番隊隊長の辻希美と副隊長の加護亜依。
この城の超有名な2人組だ。いい意味でも悪い意味でも……。

「遊びましょ〜! ってあんたたち2番隊は今日城の警備でしょ!?」
「他の人にまかせたのれす!」
「そうなのです!」
「あんたたちでやんなさい! 隊長と副隊長でしょ!!」

部屋の中を走り回る小動物2匹を取り押さえようとしてたとき、こいつらの
取り扱いでただでさえ大変なのに、それに追い打ちをかけるように、また
部屋の外から足音が聞こえてきた。


「保田さ〜ん! 暇ですか〜?」

私は再び頭を抱えた。
まったく……今度は大きな子供が来たもんだ……。
149 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:22
「……ちょうどいいわ、よっすぃー、そいつら持ち場に連れ戻して……」

またノックもなしに部屋の中に入ってきたのは、3番隊隊長の吉澤ひとみ。
コイツは……剣を持たせりゃ松浦と互角以上の腕なのに……普段は……
こんなんだから……


「え〜!? なんでれすか、保田さん! 保田さんも一緒に遊びましょうよ!」
「そや〜! おばちゃんも一緒ー!」
「そうですよ、保田さん! 少しは息抜きしないと!!」
「あーもー、うるさいわねぇ!!」

まったくこいつらは……一時期すっごく凹んでたっていうのに、もうこんなに
元気になりやがって……。


3人まとめて叩き出してやろうかと思った矢先、今度はきちんとしたノックの
音が聞こえてきた。
ていうか今日来客多すぎ……。誰よまったく……。
150 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:23
「はぁ〜い、どちら様〜? って、なっち……」
「圭ちゃん、ちょっといいかな?」

扉を開けたところにはなっちの姿があった。
どうしたんだろう、一体……。


「別にいいよ。うるさいのが3匹ほどいるけど」
「ん〜、丁度いいかも。あと松浦と紺野は?」
「松浦は今日休み。たしか「ハチャマ」に帰ってるはずよ。紺野は今地下室に
こもってるはず……」
「そっか……じゃあ関わらない方がいいね……」


なっちは私の前を通って部屋の中に入っていった。
その時私は見た。なっちの服の背中が破れているのを。
加護が「安倍さんも一緒に遊びましょ〜よ〜!」となっちに飛びついてた
けど、引っぺがす。
そして5人で輪を作って座った。


「なっち、なんかあったの?」
「うん、実はね……」



151 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:24


「ガーゴイル!?」
「うん」
「あの森に?」
「うん……」

なっちが語ったことは衝撃的なことだった。その証拠に散々さわいでた
辻たちも今は無口になって聞いている。
それはそうだ。今までこの大陸でガーゴイルが現れたことなんてなかった。
私だって本で見て知ってる程度。実際には見たことない。
152 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:24
「ガーゴイルってこの大陸のモンスターじゃないですよね?」
真剣な表情のよっすぃーが質問する。

「うん。なっちも聞いたことしかないけど、海の向こうには別の大陸があって
……ガーゴイルはその大陸に生息するモンスターだって……」
「それがなんてアップフロントに? ガーゴイルってそんな長距離飛べる
ようなモンスターじゃないよね?」
「うん。海を越えてくるなんてできないと思う」
「……ねぇ、なっち、ホントにガーゴイルだったの? 似てる魔物ならアップ
フロントにもいるし……」

153 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:25

「本当だと思いますよ」

部屋の入り口の方から声がした。
振り向くとそこにはいつからいたのか、松浦亜弥の姿があった。
松浦は「失礼しま〜す」なんて言って、私たちの輪の中に入ってきた。

「松浦もハチャマでガーゴイルと戦ったんですよぉ。3匹ほど逃がしちゃい
ましたけどぉ」
「えっ!?」

みんなの視線がいっせいに松浦に集中する。
でも松浦はそんなこと意にも介さないようにニコニコ笑顔。

「安倍さん。倒したガーゴイルって何匹でした?」
「……3匹だよ」
「そうですか、よかったぁ。じゃあとりあえずは全部倒せたんですねぇ」
154 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:26
「……ねぇ、亜弥ちゃん。それで本当にガーゴイルだったのれすか?」

今まで黙っていた辻が問いかける。

「間違いないですねぇ。普通に切りつけただけじゃ斬れませんでしたから」

松浦の剣の腕でも切れなかったってことは相当固いモンスターだ。
てことはやっぱりガーゴイルなのか……?
場に嫌な沈黙が流れた。
155 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:27
「とにかくさ、一応もうちょっと城の警備を強化しておこうよ」

今考えても何もかもが解決するわけじゃない。
それならとりあえずは今できる最善のことをしておいた方がいい。
なっちに提案するとなっちもにっこりと微笑みかえしてくれた。


「そうだね。圭ちゃんの言うとおりだべ」
「それじゃあ辻、加護! さっさと警備に戻る!」
「は、はいなのれす!」
「わ、わかりました!!」

辻と加護は急いで部屋から出て行った。とりあえずは話してた内容を
しっかりと理解できていたらしい。
156 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:27
「よっすぃーも一応ついてって。あいつらまたサボるかもしれないから」
「はぁい。じゃあまた今度遊びましょ〜! あっ、安倍さんも一緒に!」
「じゃあ松浦も失礼しま〜す。一応今日は非番なんで〜!」

松浦とよっすぃーも部屋を出て行き、ようやく場が落ち着いた。
ふぅっと一息つくと、なっちも同じタイミングで一息ついたようで、顔を合わせて
苦笑い。

「でもよかったべさ。あの3人も元気になってくれて」
「うん、ちょっと元気になりすぎだけどね……」
「あのときは3人ともすっごく凹んでたしね……」
「そうだね……」
157 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:28
その時またバァン! と部屋のドアが開いた。
まったく……今度は誰だ!?

「なっちー!!」
「ご、ごっちん!? うわっ!!」
「姫様!?」

廊下から一直線に部屋の中に入ってきたのは姫様で、そのままの勢いで
なっちに飛びつくもんだから、なっちはそのまま床に倒れてしまった。
構図としては姫様がなっちを押し倒しているような感じ。
ほほぅ、姫様もなかなか……ヤルじゃん。
158 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:29
「なっちー! 今日はずっと一緒だっていったじゃんかー!!」
「ご、ごめん、ごっちん。でもちょっと圭ちゃんに用事があったから……」
「あ〜、もう用事終わったからなっちお持ち帰りしちゃっていいですよ、姫様」
「ホントに!?」

そのとたんふにゃっとした笑顔になる姫様。
なっちと一緒だと普通に笑ってるんだよねぇ……。
姫様もなっちも自覚してるんだか……。


「それじゃね、圭ちゃん!」

起きあがったふたりは腕を組んで(というよりは姫様が強引に絡めてたんだけど)
部屋から出て行った。

途中でちょっとふたりの顔を盗み見る。
笑顔になった姫様に対して、なっちは感情がよく読みとれないような表情を
している。
さっきちょっと昔のことを思い出したからだろう。
159 名前:第4話 投稿日:2004/02/17(火) 15:29

……あのとき一番傷ついたのは……

なっち……あなた自身なんじゃないの……?

160 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/17(火) 15:35
今回はここまでです。
なんかいっぱい出てきましたねぇ〜。

>>141 つみ 様
ありがとうございます!
強いですねぇ、あやみき、いろんな意味で!
今回はちょこっとだけなちごまでした。
ごっちんもいろんな意味で強い……。

>>142 みっくす 様
ありがとうございます!
はい、ミキティも強いですけど、一応設定ではあややのほうが強いっていう設定です。
本人も言っているとおり。
161 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/17(火) 15:42
>>143 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
今回も出てきました、あやみき!
今回も切なくなりました、あやみき……(マテ
声援に応えられるかはわかりませんが頑張ります。
あと、一応こういうところではメール欄に丁寧にアドレス書かないほうがいいっすよ。

>>144 tsukise 様
ありがとうございます!
はい、あやみきは強いですねぇ〜。
なちごまも今回は少し書けてよかったです。
近々もうちょっと甘々ななちごまも……。
 
162 名前:つみ 投稿日:2004/02/17(火) 16:24
いろいろでてきましたね〜♪
それにしても最後の圭ちゃんの言葉が気になるぅ〜!
次回までまってます!
163 名前:tsukise 投稿日:2004/02/17(火) 18:32
更新お疲れ様です♪
にぎやか担当の二人+圭ちゃん、イイ感じですね〜♪
…にしても、私も同じく最後の一言が気になりまくりです…っ。
一体なにがあったんでしょう…?楽しみに次回をお待ちしていますね!
164 名前:みっくす 投稿日:2004/02/17(火) 22:19
いっぱいでてきましたね。
紺ちゃんは5番隊隊長?4番隊副隊長かな。
おいらも最後の一言がきになりますね。
あとの役職人物を予想しつつ、
次回も楽しみにしてます。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 16:57
うわぁ〜気になるとこで切れてる…
いったいみんなの身には何がのこったのでしょう・・・

みんな役職すごいっすね〜
特有の必殺技とか持ってたりするのでしょうか?
お子様コンビ(もう子供って年齢ではないですが…)は特に
戦いでの連携プレイに期待してしまいます
166 名前:名も無き読者 投稿日:2004/02/18(水) 23:43
なにやら事件のにおいが・…
「あのとき」ってのも気になりますし。。。
続き楽しみにしてますw
167 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/02/20(金) 00:42
マっ.........マジれすかぁ!?(辻ちゃん?)
↑(アドレスの件で....)
う〜ん、これからは気おつけマス!
そんな事ヨリ!辻・加護(一応点をうちました)でましたねぇ!よっすぃ-もデチャイマシタねぇ!
これからドンドンいろんな人が出てくるんでしょうか?たのしみですねぇ(≧∀≦)
そして、最後のあの圭ちゃんのひとこと!ヤバイ!気になる!
続き楽しみにしてます(>_<)b
PS・・・なちごまイイっすねぇ( ´ ▽ ` )ノ

168 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:52
〜藤本美貴〜

ハチャマを出て数時間が経った。
ハロモニランドを出て、その隣国、『ロマンス王国』に入ってけっこう歩いている。
そろそろお城が見えてくると思うんだけど……って、あっ、見えてきた!
野原の向こうにうっすらと見えだしたロマンス王国のお城を目指して、アタシは
歩き続けた。



169 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:53


城下町に着いたのはそれから約1時間後。
以前来たときとかわってない、活気にあふれている町並み。

アタシはそんな城下町を突っ切ってお城へ向かう。
特に用事があるってわけでもないけど、以前の旅で仲良くなった人がいる
から挨拶でもしていこうかな、と思って。
でも結局お城まで行く必要はなかった。


「あれっ? みっきー?」

背後から懐かしい声が聞こえた。
振り返ってみてみると、やっぱり。

「まいちゃん! 久しぶり!」
「あっ、やっぱりみっきーだ。久しぶりだねぇ。帰ってきたんだぁ」
「んー、帰ってきたっていうかまた出かけるところなんだけどね……」
170 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:54
以前の旅でロマンス王国によったさいにお世話になった人の一人、ロマンス
王国の騎士、里田まい。
お世話になったっていうか、一時期ロマンス王国で傭兵みたいなことをして
いたからそのときに仲良くなったっていうほうが正しいかも。
まいちゃんは自分の部隊に先に帰るように命じた。どうやら見回りの帰り
だったみたい。

「そーいやアヤカとか梨華ちゃんとか元気?」
「うん、元気だよ。あっ、もちろん私もね! みっきーも相変わらずだね。
今回はどこまで?」
「もうちょっと東のほうに行ってみようと思ってね」
「ふぅーん。……ところで、また思いつきで着の身着のまま出てきたんじゃ
ないでしょうね?」
「・・・・・・」

……ビンゴ……。
まいちゃんはしっかりとそれを読み取ったらしく、手で顔を覆ってため息を
ついた。
171 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:55
「やっぱりね……。あいかわらず計画性がないっていうか、後先考えない
っていうか……。それじゃ、また傭兵してく?」
「えっ、いいの?」

やっりぃ! やっぱ訪ねてよかったぁ!

「うん。……ていうかホントはちょっと今人手足りないんだよねぇ……」
「えっ、なんかあったの?」
「うん。実はちょっと前に大規模な改革があって王様が新しい人になった
んだ。だから新しい組織も作らないといけないし、そういったものにはもれなく
抵抗勢力がついてくるしで大変なの」
「へぇ〜、知らなかったぁ。ま、それじゃお言葉に甘えちゃおうかな」
「OK! それじゃ城に案内するね。アヤカや梨華ちゃんも喜ぶよ」
172 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:56
こうしてアタシは少しの間またロマンス王国の傭兵として働くことになった。
まいちゃんに案内されてついたお城は見た感じ以前とまったく変わってなかった
けど、王様が変わったこともあってか少し雰囲気が違う感じがした。
そして城門に差し掛かると……


「おっ! まいちゃん、見回りおつかれー!」
「あっ、矢口さん! どうしたんですか? 部隊引き連れて」
「んー、東部の町でレジスタンスが暴れてるんだって。だからかり出された
ってわけ」
「そうですか、気をつけてくださいね」
「おぅ、まかせとけー!」


なんかやけにちっちゃい金髪の女性とすれ違った。
まいちゃんと対等以上に話してるけど、確か前はいなかったはず。誰だろ?
173 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:57
「まいちゃん、今の誰?」

『矢口さん』が見えなくなった後、そっとまいちゃんに聞いてみると……

「あぁ、矢口真里さんね。みっきーが旅だって少ししてから仲間に加わった人。すっごく強いんだよ! 私たちの新しい団長さん」
「ふぅ〜ん」

何だろ、変な感じ。
確かに以前ここにはいなかったし、アタシも会ってなかったけど、どこか
他のところで会っているような気がする……。
う〜ん、でもそんなことないか……一度見たら忘れないような容姿だしね。



174 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:58


そのまま城の敷地内に入っていくと、そこでもう1人見知らぬ人を発見した。
城のテラスにたたずんで、どこか虚空を眺めている、黒髪の女性。
なぜか強烈な存在感を感じた。


「まいちゃん、あの人も新しい騎士?」
「んっ? あっ、あの人は違うわよ! 今城に滞在している人。まぁお客さんね」
「城に滞在してるなんて珍しいね。他の国の偉い人?」
「違う違う。きっとみっきーも知ってる人だよ、有名だから」
「ふ〜ん、誰?」
「イイダカオリ」

まいちゃんが得意げに言った。
175 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:59
「イイダカオリ」……
あれっ? どっかで聞いたような名前……。
……って、まさかっ!?

「ぇえっ!? イイイダカオリってあの飯田圭織!?」
「そ! その飯田圭織さんよ。世界中の魔法使いの中でもトップに君臨する
最強の魔法使い! その飯田さんが今城に滞在してくれてるのよ〜! 
なんでもロマンス王国を気に入ってくださったんだって! すごいでしょ!
私もちょっと魔法習ったりしてるんだ!」

すごいなんてもんじゃない。
飯田圭織っていえばちょっとでも魔法を使うものにとっては憧れというよりも
むしろ1つの伝説に近い。
ありとあらゆる魔法を使いこなし、さらにはオリジナルの魔法や、長い間
使われずに滅んでしまったと言われている太古の魔法までも使えるという、
世界最強……いや、歴史上でも最強かもしれないと言われている魔法使い。
アタシだって名前は聞いたことあるけど会ったことなんてあるわけない。
176 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 13:59
「ふぇ〜、あの人が伝説の……」

もう一度テラスを見上げてみたけどそこには誰の姿もなかった。

「あ、あれっ? まいちゃん、飯田さんは?」
「えっ? あれっ!? さっきまであそこにいたのに……」


「カオリはここだよ」

急に背後から聞こえた声にびっくりして2人で振り返る。
するとそこにはさっきまでテラスにいたのと同じ人が立っていた。
177 名前:第4話 投稿日:2004/02/22(日) 14:00
「あっ、飯田さん! えっと、見回りから帰ってきました!」
「別にカオリは騎士じゃないんだからそんなこと報告しなくてもいいよ。
それよりそっちの人は? 見かけない顔だけど」
「あぁ、こいつはみっきー……藤本美貴っていって、少しの間傭兵を勤める
ことになりまして」
「あっ、藤本美貴です。少しのあいだですがよろしくお願いします!」


間近で見る飯田さんは見かけは背が高く、黒髪の綺麗な、でもどこにでも
いそうな女性だった。
ただ飯田さんから感じるオーラというか雰囲気は一種異様な存在感があった。
抑えようとしていても抑えきれないような強さと自身。それが身体から溢れている。
そして何もかも見透かしているような黒い瞳は、見つめていると吸い込まれそうに
なるほど深い……。



「飯田圭織です。よろしくね、藤本サン」

178 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/22(日) 14:10
今回はここまでです。
なんかいっぱい(以下略
でもなちごまが出てきてない〜……。

>>162 つみ 様
ありがとうございます!
はい、いっぱい出てきました、前回も今回も。
残りのキャラはもうちょっとあとに。

>>163 tsukise 様
ありがとうございます!
はい、2人は完全に賑やか担当に……。
圭ちゃんも大変そうです。

>>164 みっくす 様
ありがとうございます!
紺ちゃんのちゃんとした登場はもうちょっとあとに。

川o・-・)ノ<真打ちは登場するタイミングを知ってるのです! 完璧です!!

だ、そうです(笑
179 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/22(日) 14:16
>>165 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
確かに役職はみんな隊長だったり副隊長だったり……。
でもあんまり下っ端でもスポットライト当たらないですしねぇ……。
必殺技は……作ってみようかなぁ?

>>166 名も無き読者 様
ありがとうございます!
ごっちん大胆です。でも無意識です。
なっちがんばれ! でもこっちも鈍感……。

>>167 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
いろいろ出てきました。そしてもうちょっと出てくると思います。
なちごま……今回は影も形も見えず(マテ
次回は書けると思います。


圭ちゃんの言葉はもうちょっとあとに。
もうちょっと?……いや、かなり?
と、とにかくあとに(汗
180 名前:つみ 投稿日:2004/02/22(日) 16:28
またキャラが増えましたね♪
しかもすんごい人まで・・・
ところどころにいろいろな伏線がありますね〜!
なんかすごいことになりそうな予感・・・(w
181 名前:NANASHI 投稿日:2004/02/22(日) 21:49
あれ?きのこの片割れほかの国に?
182 名前:みっくす 投稿日:2004/02/22(日) 23:15
またまたいっぱい登場ですね。
今回のお話にはなんかすごく裏がありそう。
またどこかにつながるのだろうなぁ。
次回も楽しみにしてます。
183 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/02/23(月) 16:14
へぇ−..........思わずびっくりしましたよ!(○△○)
ロマンスのメンバーがこんな形で登場するとは(特に矢口さん)
先が読めなくなってきましたねぇ〜?
楽しみです!ガンバッテください\(^O^)/
184 名前:みっくす 投稿日:2004/02/23(月) 23:39
>183 名も無き遊び人さん
レスはsageでしましょう。
更新とまちがえるので。
185 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:26
〜安倍なつみ〜

「ねぇ、なっちぃ……暇だよぉ〜……」
「なっちは今忙しいのです」
「遊びに行きたいよぉ〜……」
「ダメです。我慢して下さい」
「なによぉ! なっちのケチ!!」

昼下がりのハロモニランドのお城。その中の私の部屋。
机に向かって書類をまとめている私と、ベッドに座って駄々をこねている
ごっちん。
なんだかもうこの光景が日常茶飯事になってしまった……。
186 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:27
ガーゴイルの出現はさすがにあたしたちの生活にも多少の変化を与えた。
女王様の決定で城や城下町だけでなく、近くの町も警備を強化することに
なった。

そして当然、ごっちんが1人で出歩くことも禁止になったわけで。
1人にしておくと何をしでかすかわからないということで、今ごっちんは
軟禁状態になっている。

……私の部屋に……
187 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:28
「なっちぃ! 暇なんだよぉ! 遊び行こうよぉ!!」
「ぐえっ! く、苦しい! ごっちん離してぇ!!」

いきなり後ろから首に絡みついてきた手を剥がそうとするけどなかなか
離れない。

「ヤァダ! 遊びに行くって言ってくれるまで離さない!!」
「わかった! 仕事が終わったら連れてくから離してぇ!!」
「よっしゃ! 約束だよ!!」

パッと手が首から離れた。やっとまともに呼吸ができるようになってはぁはぁと
息を吸う。
ていうかごっちん力強すぎ……。三途の川が一瞬見えたよ……。


「じゃあなっち、早く仕事終わらせてねぇ〜!」

さっきとは一転、とっても上機嫌でごっちんはベッドの上にダイブした。
ちょっと見てみるとニコニコ笑顔でこっちを見ている。
まったく……あの笑顔にはかなわない。ていうか私はごっちんにかなわないな……。

早く遊びに連れてってあげたいけど……
ちょっと机の端を見る。そこには片づけなければいけない書類が山のように
積まれている。

……終わるかな?



188 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:29


「……終わった……」
のはもうすでに夕暮れ時。西の空が赤く染まっている。
ぐったりと机に突っ伏した。
ていうか書類多すぎ……もうちょっと他の人にまわしてくれてもいいじゃない……。


「まったく……ごっちんは寝ちゃってるし……」

ちょっとベッドのほうを振り返る。
そこにはダイブしたまま幸せそうに眠るごっちんの姿が。
どうしようか……。でも約束したし……。
それに私もちょっと外の空気を吸いたいかも。
189 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:29
「ごっちん? ごっちーん……」

ちょっと揺すって呼びかけるとごっちんはうっすらと目を開けた。

「んぁ……なっち……?」
「お待たせ、終わったよ」
「終わった? 何が?」

どうやらごっちんは完全に寝ぼけてるようで目をコシコシとこすっている。

「何がって仕事が。もう日が暮れちゃったけど、お散歩、行く?」
「散歩?…って…あっ! 行くっ!!」

やっと思い出したらしく、ごっちんはピョンとベッドから飛び降りた。
190 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:35
「行こう! すぐ行こう! なっちぃ!!」
「わっ、ちょっと待ってって!」

引っ張って急かすごっちんを制して、私は愛用の剣を取り出す。
あれから外出するときは剣を常に携帯することにした。
いざというときに十分に戦えないのでは守る人も守りきれないかもしれない。


「それじゃ、行こうか」
「うん」

そして二人で手をつないで部屋を出た。
そのまま城の廊下を歩いていくと……

「あれっ? なっち今から月夜のデート?」

最悪……。こういうときに限って城の警備が4番隊だった……。
城の出入り口の警備をしていた圭ちゃんに思いっきり見つかってしまった。
191 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:36
「で、デートじゃないべさ! ちょっと散歩に行くだけだべ!!」
「えっ? デートじゃないんですか、姫様?」
「デートだよぉ! ねぇ、なっち!」

圭ちゃんの言葉に合わせてごっちんが抱きついてきた。
圭ちゃんは後ろで「ヒュー、ヒュー!」なんて言ってる……。


「もうっ! 行くべさ、ごっちん!」

ごっちんの手を引っ張って外へと出て行く。

「キャー、なっちったら強引! 気をつけてねぇ、姫様!」
「わかったぁ! 行ってくるね、圭ちゃん!」
「わからなくていいから!」

ちょっと歩いてから自分の顔が赤くなっていることに気づく。
な、何でこんなに顔が熱いの? 心臓がドキドキ言ってるの?
私の顔は夜風にあたってもしばらく熱を持ったままだった。



192 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:41


結局今日はもう日も暮れてるし、夜の森は危ないと言うことで城の庭園内を
散歩することにした。
ごっちんと手をつないで月明かりに照らされている庭園を歩いていく。
やがて花壇の脇に作られたベンチに2人で腰を下ろした。


「んーっ、疲れた〜!」

座って思いっ切り伸びをする。
大量の書類書きで固まってしまった身体が緩んだ感じ。
193 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:43
「お疲れ様、なっち」
「うん、本当に疲れたよー。仕事多すぎ……」
「えっ、まだあるの?」
「とりあえず今日全部終わらせたべさ。当分はそこまで忙しくないはずだけど」
「本当!? じゃあ明日は一緒に秘密基地行こうよ!」
「ダ〜メ! 極力ごっちんを外出させないように言われてるんだから! 
危ないんだよ?」
「むぅ! 姫の命令ですぞ!」
「こっちは女王様の命令なの!」
「むぅ……」

口を尖らせてふくれっ面しているごっちんの頭を撫でる。
まったく……しょうがないなぁ……。
194 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:44
「ごっちん、明日はなっちが訓練終わるまでには起きてよ?」
「なんでよぉ……」
「出かけるんでしょ?」
「えっ? いいの!?」
「1人で出て行かれちゃ困るもん」
「やったー! ありがとー、なっちぃ!!」
「うわっ、ちょっと!」

抱きついてきたごっちんを剥がす。
でも剥がしても剥がしてもごっちんは私に抱きついてきて、結局最後には
私は諦めた。
そっとごっちんの頭を撫でるとくすぐったそうに笑うごっちん。
まぁ、いいか、あったかいし。ってそんなこと言うとごっちんに「ごとーは
暖房代わり!?」って怒られちゃいそう。
195 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:45

そのあと私はごっちんを抱きしめたまま、ごっちんは私に抱きついたままで
夜空を見上げていた。
今日の夜は晴れていて、三日月とそのまわりに散らばる星々が綺麗に
輝いている。

三日月か……ちょっとだけまた昔のことを思い出した。
そしてちょっとだけ……胸が痛んだ。



そのまましばらく眺めていると、1つの星が夜空に流れた。

196 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:46
「あっ! なっち、見た!? 流れ星だよ!」
「うん、ホントだね」
「早く願い事しなきゃ!」
「え〜、もう消えちゃったっしょ?」
「いいの! えーとね……」

私の腕の中でそっと手を合わせて目を瞑るごっちん。
なにをお願いしてるのかなぁ、と思っていると……


「……なっちとずっと一緒にいられますように」


「えっ?」
「エヘヘ」

ごっちんのほうを見てみるとごっちんは満面の笑顔。
それを見てあたしの顔は熱を帯びていく。
197 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:47
「……もう、ごっちん……そんなこと流れ星にお願いしなくてもいいっしょ?」
「なんでぇ!? だってごとーずっとなっちと一緒にいたいもん!」
「そんなこと……なっちにお願いしてくれればすぐに叶うっしょ?」
「えっ?」

こっちを向いたごっちんとバッチリ目が合い、思わずそらしてしまった。
うぅ、恥ずかしい……。
でもそれでもごっちんは微笑んでくれた。


「じゃあなっち……」
「んっ?」
「ずっと一緒にいてね」
「……うん、いるよ」



198 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:49


またそのまま星を見ていたけど、だんだん風も寒くなってきた。
風邪ひいちゃいけないし、そろそろ中に戻ろうかな。

「ごっちん、そろそろ戻ろうか?」
「うん」

ベンチから立ち上がって、ごっちんの方に手を伸ばす。
ごっちんは私の手を掴んで立ち上がろうとしたけど、なにを思ったのか
不意にまたベンチに腰掛けてしまった。

「ごっちん?」
「おんぶ!」
「は、はぁ?」
「だから、おんぶして〜!!」

私の手をぶんぶんっと引っぱって甘えてくるごっちん。
キラキラした目、それも上目遣いでお願いされちゃって、その威力はいつも
よりも強力……。
199 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:50
「な、なんでおんぶなんだべさ!?」
「えーっ!? だってよくしてくれてたじゃん!」
「そんなのかなり昔の話っしょ!? ごっちんもなっちもずーっと小さかった
ときでしょ!? それにその時はなっちのほうがごっちんより大きかったし……」
「いいじゃーん! 久しぶりにしてー! してー!! お願いー!!!」
「うぅっ……」

自分が一番わかってるじゃん。私が絶対ごっちんのお願いを断れないことくらい……。
そりゃ執事としてダメなことにはちゃんとダメって言わなくちゃいけないんだけど……。
こぉんなかわいいお願い……断れるわけないじゃん……。
200 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:51
「ハァ……」

一つ溜め息をつくと、かがんでごっちんに背を差し出す。
最初にそっと手が絡みつき、そして体重が背中にかかったので、そのまま
そっと持ち上げる。


「えへへ〜、ありがと、なっち!」
「今日だけだかんね!」

とか何とか言ってもまた頼まれたら絶対イヤって言えないな……、なんて
思いながら苦笑する。
そしてそのまま淡い月明かりの中をお城に向かって歩き出す。
う〜ん……さすがにちょっと重いかな……。ごっちんも大きくなったし……。


「なっちの背中って温か〜い!」

でも当の本人はそんなことを言いながら無遠慮に背中に体重をかけてくる
もんだから……
む、胸が……背中に当たって……
こんなところもしっかり大っきくなって……
どうしても意識してしまい、顔がカーッと熱くなる。
201 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:52
「……・でね、ってなっち、聞いてる?」
「べさっ!? う、うん、聞いてる聞いてる!」

ようやく我に帰り、慌てて返したけど、聞いてなかったのは誰が見ても
明らかで。

「……なっち……ごめん、やっぱり迷惑だった?」
「えっ? ううん、全然そんなことないよ!」
「じゃあごとー重い? もうちょっとダイエットした方がいいかな?」
「だ、大丈夫! ごっちんは健康的な方がいいよ!」
「それじゃあ……ムネ当たって気になるとか?」
「う、うん……って! 違っ! そうじゃなくて!!」

これまた慌てて訂正するけど……
どうやら私はごっちんの罠にはまってしまったようで……
202 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:54
「なっちのえっち〜!」

背中の方から楽しそうな声が聞こえてくる。
それに引き換え私は口ごもって顔を赤くするしかなかった。
そしてそれに輪をかけるように……

「あれっ、なっち、姫様テイクアウト〜?」

出入り口警備の圭ちゃんがちょっかいを出してくる。


「ち、違うべさっ! 真面目に警備してろっ!!」
「気をつけてね〜、姫様。なっちもなんだかんだ言ってオトシゴロですから!」
「うん、わかった〜!」
「〜〜〜っ!」

とりあえず手は使えないので後ろから蹴りを一発いれてさっさと部屋に戻る。


「ごとーのこと襲わないでね、なっち?」
「襲いませんっ!」
「ま、なっちがその気ならごとーはいいんだけど……」
「はぁっ!?」
「あはは、冗談、冗談!」

し、心臓に悪い……。
私はなぜかドキドキする胸を抱えて部屋に戻った。

203 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:55
そして部屋に入ると、ごっちんは着替えてすぐにベッドに潜り込んだ。
私も着替えて、ごっちんの手に招かれるままベッドへ潜り込むと、すぐに
ごっちんが抱きついてくる。
私も優しくごっちんを抱きしめて目を閉じた。


明日はごっちんと一緒に秘密基地に行くんだよね。ちょっと早く起きようかな?
晴れるといいな。晴れたら久しぶりに自分でお弁当でも作ってみようかな?
そんな幸せなことを思い描いていた。





明日始まる悲劇も知らないで……

204 名前:第4話 投稿日:2004/02/29(日) 12:56
   
205 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/29(日) 13:03
今回はここまでです。ようやく第4話終了です。
一応第4話までが序章という感じで、次から新しい展開になります。
とりあえず今回はなちごまで(w

>>180 つみ 様
ありがとうございます!
はい、たくさん出てきました。ここまでキャラが多いと書き分けが大変です……。
伏線いろいろ張ってるつもりですが、果たしてちゃんと伏線になっているのか……

>>181 NANASHI 様
ありがとうございます!
はい、そうですね〜。矢口もROMANSの一員ですからねぇ〜(笑
ではなく、ま、いろいろあるわけです。
206 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/02/29(日) 13:08
>>182&184 みっくす 様
ありがとうございます!
登場しました。でももうちょっとだけ出てきます。まだ増えるのか!?
とりあえず近々ポンちゃん(笑)が正式登場を。
……近々……かなぁ?(ぇ

>>183 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
一応このストーリーの初期設定を考えたころって「女塾」の終わりのほうだったんで。
使ってみちゃいました! けっこうあうかなぁ、と。
207 名前:名も無き読者 投稿日:2004/02/29(日) 16:00
な、なんスか!?この不吉な終わり方は。。。
あんまりひでぇコトにならんよう祈ります。無駄か?
でわ次も指をくわえて見守ってますw
208 名前:つみ 投稿日:2004/02/29(日) 18:31
同じくなんなんだこの終わり方は?!
このまま幸せになって欲しいけど・・・
これからいろんなことが起こるんでしょうね。見守ります。
209 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/02/29(日) 19:33
うっ!同じく同じく、なんじゃぁこりゃぁ!って終わり方ッスね(↑の方々スミマセン
すんげぇすんげぇすんげぇすんげぇ気になるぅ!!!
ほんわかしていた、あの2人にナニガ!(○△○)
アルンデショウカ?
それはさておき(オイオイ!)ガンバってください!
210 名前:みっくす 投稿日:2004/03/01(月) 02:03
同じく同じく同じくなんなんだこの終わり方は。
一体何がおきるんだぁ。
次回も楽しみにしてます。
211 名前:rina 投稿日:2004/03/01(月) 15:04
同じく同じく同じく同じく(ハァ;
なんなんだぁこの終わり方!?
ものっそい意味深な終わり方で続きがすごく待ち遠しい…
更新お待ちしてます!!
(次回の更新まで『同じく』って続くのかな…;;)
212 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:47
〜安倍なつみ〜

  ガンッガンッガンッ!!
「なっち! なっち!!」

扉を叩く音と、外から聞こえる叫び声で目が覚めた。
窓の外を見てみるとまだ薄暗い。
こんな朝早くに……なんだよぉ、一体……。

ベッドの上に起きあがると同時に扉が開けられる。
部屋の中に飛び込んできたのは圭ちゃん。
血相変えて……一体なにがあったの?
213 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:48
「なっち、大変! となりのロマンス王国が軍隊を編成してハロモニランド
方向に進軍してるって!!」
「えっ!?」
「まだロマンス王国内だからわかんないけどこのまま行くと確実にハロモニ
ランドの領域に侵攻してくる!」

尋常でない状況に頭が一瞬で覚醒した。
でも状況の整理が追いつかない。
だって……ロマンス王国とは和平を結んでいるはずなのに……。


その時また部屋がノックされた。
入ってきたのは一人の兵士。

「失礼します。なつみ様、女王様がお呼びです」
「……わかった、すぐ行く」

とりあえずは女王様から状況を詳しく聞かなければならない。
一刻も早く女王様のもとへと向かうためベッドを出る。
でも……
214 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:48
「なっち……」

ベッドの中から私を呼ぶ、弱々しい声でふり返った。
見るとごっちんがベッドの中で震えていた。


「姫……」
「ごっちん……」

またベッドの上に上がると、そっとごっちんを抱きしめる。
ごっちんのからだから伝わってくる震え。

「なっち……今のって……。まさかまた戦争が……」
「ごっちん……大丈夫だよ。なにがあってもごっちんのことはなっちが
絶対守るから」
「なっち……」
「ゴメン、ごっちん。今日の約束は守れない。でもいつか絶対守るから!」

ごっちんの体を離してベッドから降りる。
服を着替え、マントを羽織り、剣をさす。


「圭ちゃん……ごっちん頼んだ……」
「うん、まかせて」

入り口付近にいた圭ちゃんに後を任せ、私は部屋を出た。
215 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:49


第5話  戦場の三日月



216 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:49
「失礼します、なつみ、参りました」
「ご苦労様。ちょっと席外してくれるか?」
「ハッ! 失礼します」

女王様は私を呼びに来た兵士を退室させ、それと同時に私も立ち上がって
女王様のもとへ寄る。


「失礼ですが、女王様、一体どんな状況なのですか?」
「……目的は以前不明やけどもロマンス王国の軍隊がハロモニランドに
向かってきている。数はおよそ1千。使者も2度送ったんやけど……」
「……戻ってきてない……?」

女王様は苦い顔をして頷いた。
217 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:51
「女王様、一体なぜですか? ロマンス王国とは先の戦争の時に和平を
結んでいるはず。今までも友好的な関係を築いてきたというのになぜ
今さら……」
「……聞いた話によるとつい先日、ロマンス王国の王が変わったらしい。
新しい王の名は斉藤瞳。軍事主義で、今回の侵攻もその女王が一枚
絡んでると思うねん……」
「そんな……一体どうすれば……」
「まだ目的はわからんが、このまま放っておくわけにもいかん。国境近くの
平原に一団を配置し、侵攻してきたら迎え撃つ! 指揮は……なっち、
あんたがとれ」
「わ、私が……?」

隊長とはいえまだ私はこんな大規模な戦闘などしたことがない。
敵の数は1千。当然こちらもそれと同じくらいの軍隊を編成しなければならない。
私に……その指揮がとれるだろうか……?
218 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:52
「なっち、自分の力を信じるんや。あんたはみんなを守るために人一倍
努力を重ねてきたやろ? みんなもちゃんと分かってるハズや。あんたの
指揮ならみんなちゃんとついてきてくれる。みんなあんたを信頼してるんやから」
「……わかりました!」

不安がないといったら嘘になる。
上手くいくかなんてわからない。でも自分が信じるようにやれば、きっと……。
難しいことは考えない。ただこの国を守りたいという思いを込めて戦う。


「それでは、失礼します」
「あっ、なっち!」

立ち上がって退室しようとしたら女王様に呼び止められた。
立ち止まって振り向くと、そっと女王様が私の前まで歩いてきた。

「なっち、私もあんたのこと信じてるからな。もちろん、真希も」
「……はいっ!」

不安が少し取り除かれた気がした。



219 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:54

◇     ◇     ◇


自分の部屋へと戻る。
ごっちんはまだベッドの上に座り込んでいて、そばに圭ちゃんが付き添っていた。

「なっち、どうだって?」

圭ちゃんが私に問いかけてくる。
できればごっちんがいないところで話したかったんだけど、そんな悠長な
ことしている時間もない。

「このままハロモニランドに侵攻してくるようなら国境沿いで迎え撃つ。
1、2、3番隊に出撃準備をさせといて。準備が整い次第出撃する。あと
近郊の町の兵にも連絡。そのあいだの城の警備は4、5番隊で。圭ちゃん、
こっちは任せた」
「わかった、紺野にも伝えとくよ」

そう言うと圭ちゃんは一足先に部屋を出て行った。
残された私はまだベッドの上で震えているごっちんに歩み寄り、きつく
抱きしめる。
するとすぐにごっちんも抱きしめ返してきた。
220 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:55
「ごっちん……行って来るね」
「なっち、帰って来てくれるよね? ごとーいい子で待ってるから!」
「もちろん! 絶対ちゃんと帰ってくるからさ、そしたら一緒に秘密基地
行こうね!」
「うん、今度は絶対だからね!」

幾分明るくなったごっちんの顔を見て、またぎゅーっと抱きしめる。
しばらくして離すと、ぬくもりがなんとも名残惜しかったけど、今は自分の
使命を果たさなくてはならない。
剣をさしなおして扉を開けた。
戦場へ。大切なものを守るために。


「なっち!」

突如背後から聞こえた声に振り返った。
そして見たごっちんの顔は綺麗な笑顔だった。


「行ってらっしゃい!」
「……うん、行って来ます!」

221 名前:第5話 投稿日:2004/03/10(水) 14:56
城から出るとそこには準備を整えた1番隊、2番隊、3番隊の姿があった。
先頭には各隊の隊長、松浦、辻、そしてよっすぃーの姿。
私もキリッと表情を引き締める。
そして剣を抜いて、高らかにかざした。
鏡のような刀身が太陽の光を反射する。

「全軍、出撃!!」
222 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/10(水) 15:02
今回はここまでです。
はい、こうなりました。
これからはちょっと(ようやく?)ファンタジーっぽくなっていくと思います。

>>207 名も無き読者 様
ありがとうございます!
たぶんまだ大丈夫です。
えっ、「まだ」?

>>208 つみ 様
ありがとうございます!
いろいろと起こっていくはずです。
とりあえず今回のが第1ラウンドって感じですかねぇ?
223 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/10(水) 15:08
>>209 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
2人……っていうかもうちょっと大規模になってしまったんですけどね。
でもちゃんとあいだにほんわかも取り入れていきたいです。

>>210 みっくす 様
ありがとうございます!
はい、こんな感じになりました(汗
まぁよくある展開……ですかねぇ?

>>211 rina 様
ありがとうございます!
前回の更新で思いっきり引っぱったあげく、間があいて申し訳……。
次回はちょっとバトルシーンなんかも出てくると思います。
224 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/10(水) 15:09
一応隠し
225 名前:つみ 投稿日:2004/03/10(水) 17:38
なんだなんだ?!
まさかこんな展開になるとは・・・
いろいろと今から悲しい展開も待ち受けてる感じで・・・
なっちファイト!
226 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/03/10(水) 21:46
マジすかぁ!(○△○)
う〜ん、あの斉藤さんがこんな人だったとは・・・・(そっちかよ!)
先が気になるぅ(>_<)
戦争かぁ、かなり楽しみです(オイオイ)
がんばってください!
227 名前:みっくす 投稿日:2004/03/11(木) 00:05
まさかコンな展開になるとは。
みんなで冒険にでもでるのかなぁとおもってましたが。
あと、話の流れからいくと、紺ちゃんは5番隊隊長みたいですね。
228 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/11(木) 12:19
まだってなんスか、まだって…?(汗)
怖いけど、見守ります。
229 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:23
数十分後、私たちは国境近くの草原に陣を敷いた。
王宮騎士1、2、3番隊を中心に、ハチャマなどの近くの街から兵を集めて
その数およそ千五百。
兵士たちそれぞれの目にはもうはっきりと遙か彼方から押し寄せてくる敵の
軍団が見えているはず。


すでに敵の軍隊は国境沿いにあった関所を強行突破して、ハロモニランド
内へと侵入している。
そして向こうからもこっちの布陣は見えているはずなのにまったく勢い衰える
ことなく侵攻し続けている。
最後に送った使者も戻っては来ない。
もはや全面衝突は避けられない状況になった。
230 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:23
「弓隊、構えろ!」
「はいっ!」

1番隊副隊長の麻琴率いる弓隊に指令を飛ばす。
いつまでも見えない道を探し続けているわけにはいかない。
なんとかして戦いを避けたかったけれど、それはもうできなそう。

ならば今は現実を見なければ。
戦いが始まってしまった以上私は全力で戦う。
大切なものを守るために。
231 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:24
その時敵の軍隊から幾本もの光が放たれた。
そして聞こえる戦いの始まりを告げる風切り音。
陣の前や後ろに矢が生えた。

「安倍さん! まだですか?」

麻琴の焦ったような声が聞こえる。でも私は冷静に飛んできた矢の1本を
剣で薙ぎ払った。

「まだだ! どうせこの距離じゃ当たりはしない。もっと引きつけるんだ!」


敵の放つ矢は陣をそれ、横や後ろの地面に矢をはやすだけ。
時折狙いどおりに飛んでくる矢を弾きながら距離を計測する。
232 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:24
「今だ! 放てっ!!」
「はいっ!」

麻琴たち弓隊がいっせいに放った矢は的確に敵の軍隊の中へ吸い込まれて
いった。
小さな悲鳴が風にのってここまで届いてくる。
少しだけ決意が鈍ったが、すぐに自分を奮い立たせる。


「麻琴たちは続けてここから後方支援を! 残りの者は私に続け!!」

剣をかかげ、もう目前まで迫った敵へと向かって走り出す。
戦争の中へ。矢と白刃が乱れ飛ぶ戦場の中へ。
233 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:25
「お先に〜!」

走っている私の横を1番隊隊長の松浦が通りすぎていった。
剣を抜くと単身敵の中へと飛び込んでいく。
そしてすぐにその辺りに血しぶきが舞った。


松浦に続いて1番隊の兵士も敵の軍勢へと突撃していく。
その向こうではよっすぃーが自慢の剣をかまえ、飛び違えては敵を斬って
いく。
2番隊隊長の辻も愛用の武器である鉄製の槍を軽々と振り回し、その背中を
加護が魔法で守っている。息のピッタリ合ったコンビネーション。


私も剣をいったん強く握り直した。
恐怖と、そして少しばかりの罪悪感、それを覚悟に変えて。
でも死ぬ覚悟じゃない。戦う覚悟を……生きる覚悟を。
234 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:26
「はぁっ!!」

敵の中へと躍り込み、目の前にいた敵の両腕を切り裂く。
そのままの勢いで、頭上から振り下ろされた剣を受けとめ、がら空きの胴に
剣を突き刺す。
引き抜くと同時に背後から迫っていた敵の胴を斬って、一方で呪文の詠唱を
始める。
十分溜まると、そのまま魔力の塊を地面へと押しつけた。

「アクア・スプラッシュ!!」

私を中心に水柱が何本も上がり、周囲の敵を上空に舞いあげた。
水が止むと打ち上げられた兵は地面に叩きつけられ動かなくなった。
235 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:27
ホッと一息ついたのも束の間、また次の一団が向かってくる。
もはや戦場は乱戦状態。
かろうじて鎧の色で敵か味方か判別できるくらい。


「くっ、けっこう多いな……」

始まってからどれくらいたっただろうか?
もう数時間経過しているのだろうか? それともまだ10分程度なのだろうか?
すでに時間の感覚は麻痺して、そして何人斬ったかも定かではない。

ただ私のまわりには地面に伏して動かない兵士がたくさん。
敵も。……もちろん味方も。
236 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:27
そんなことを考える間も与えてくれず、敵の兵士が斬りつけてくる。
急なことだったので対応が少し遅れたが、なんとか右手で剣をかまえ直して
斬撃を受けとめ、空いている左手で兵士の腕を掴んだ。

「な、なにをっ!?」

予想外の反応にあわてる兵士にニコッと微笑みかける。
そして次の瞬間、手のひらから魔力を直接流し込んだ。


「エナジー・スパーク!!」
「ぐあぁぁぁぁああっ!!!」

しばらく痙攣したのち、掴んでいる腕から力が抜けた。
手を離すと兵士はその場に崩れ落ちた。
「ふぅ……」
やっと一息つこうと思ったその時……


「なかなかやるじゃん」

不意に背後から聞こえた声にあわててふり返り、剣を向ける。
そこには1人の女性。ただし鎧は着てないで、私よりもさらに軽装な格好。
そして……気配すら感じさせずに背後をとった彼女は確実に強い。
237 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:28
「……誰?」
「私は里田まい。これでもロマンス王国の部隊長だよ。そういうあんたは?」
「私はハロモニランド王宮騎士団長、安倍なつみ」
「へぇ、よくまぁ私の部下を斬ってくれたもんだね」
「それはお互い様ね」
「ハロモニランドの隊長か……じゃあ是非とも戦ってみたいもんだ」

握りしめた拳をすっと引いて構える里田。
彼女はどうやらその拳と、拳に装着された鋼のフィストが武器らしい。
おそらくスピード重視の格闘家。
私も剣を握って間合いをはかる。
238 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:29
「行くよっ!」

彼女の声が聞こえた瞬間、視界からその姿が消えた。
速いっ!!

「くっ!」

繰り出された拳を剣で受け止める。フィストと剣がぶつかって鋭い
金属音が響いた。
休むことなく繰り出される拳。速さだけでなく強さも兼ね備えていて、
一発一発が重い。

「ほらほら、どうしたの? 防御してるだけじゃ勝てないよ?」
「うるさいっ!」

攻撃が一瞬緩んだのを見逃さずに剣を横に薙ぐ。
でも剣は彼女にとどく前に鋭い音を立ててとまった。
彼女がフィストで剣をさばいたのだ。
そして次の瞬間には腹部に重い衝撃が走り、体が後方に吹っ飛ばされた。

「うわっ!!」

背中から地面に落ちる。
味方の兵士が駆け寄ってきて起こしてくれたがまだダメージが残っていた。
里田は微笑をたたえて立っている。
その顔を見据えて私はまた立ち上がる。
239 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:30
「まだ立ち上がるの? 寝てれば痛い思いしなくてすむのに」
「私は負けるわけにはいかない!」

ごっちんと約束したんだ。必ず帰ってくるって。


剣を構えてまた里田に向かっていこうとしたが、その前に2人の兵士が
立ちはだかった。

「安陪様、ここは我々にお任せを!」
「あっ、ダメっ!!」

私の静止も聞かず里田に向かっていく。


「まったく……雑魚が……」
小さな呟きが聞こえたと同時に、里田の右腕が炎上した。

「なっ!?」
兵士の動きが止まる。その動きを引き取ったかのように今度は里田が
兵士2人に向かって行った。


「ヒート・ナックル!!」

里田の拳が兵士の1人に当たった瞬間、炎がのりうつったように、今度は
兵士が炎に包まれた。
もう1人の兵士もすぐに拳をくらって火だるまになり、その場に倒れた。
240 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:31
「こんな雑魚じゃ何人いたって私は倒せないよ」
「くっ……」

私も改めて剣を構えなおす。それと同時に左手に魔力を集め始める。


「行くよっ!! 第2ラウンド!」

地を蹴る里田。私も剣を振りかざして里田へ向かっていく。
こいつは動かしたらダメだ。動かれたら捕らえきれない。
それなら……

「ファイアー・ボルト!」
「! うわっ!」

左手からいくつもの火球を乱射する。
火球は里田の周囲へと飛び、炸裂する。
こうしておけば逃げられない!
241 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:33
「くらえっ!」
「くっ! でも甘いね!!」

私が振り下ろした剣と、里田が振り上げた左拳がぶつかり、三度戦場に
金属音が響いた。


「またボディががら空きだよ!」

繰り出される渾身の右拳。その先にはすでに1回ダメージを受けている私の腹部。
でも当たる直前に私は左手で彼女の拳を受け止める。
残り火でチリチリと手が焼ける感覚がするけどこの手は離せない。

「し、しまった!」

里田が焦ったように手を引き離そうとするけど、その前に一気に残った
魔力を放出する。


「エナジー・スパーク!!!」
「うわぁあああっ!!」

魔力がなくなったと同時に手を離す。
私の手も火傷になってしまったが、彼女にも確実にダメージはある。
魔力の量が少なかったからこれでKOとはいかないだろうけど、これで
動きは鈍ったはず。
242 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:33
「くっ……」

案の定里田はふらつきながらも立ち上がった。
でもその顔からは笑みが消えて苦悶の表情。

「まだまだっ!」

そのまま拳を構えて向かってくるけど、さっきよりも確実にスピードは
落ちている。
目で動きを追える。
私も剣を持ち直して地を蹴った。


私が剣を降る前に里田の拳が動く。
でも繰り出された拳をなんとか身体を捻ってかわす。
少しだけ掠めたようで頬がチリッと痛んだけど、里田の拳は眼前を通り
すぎていった。

そのまま右手に持った剣を旋回させる。
手応えは……あり!
243 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:34
「ぐあっ!」

背後で里田が膝をつくのがわかった。
でも斬った瞬間にうまくかわしたようで致命傷にはいたってないはず。
まだ気は抜かずに後ろをふり向く。


「やるじゃん。さすがは隊長ってことか」

里田が胸の傷を抑えながら立ち上がった。

「あんたもね。でもその強さで部隊長か……」
「フフ……私より強い人だっていっぱいいるよ。……もしかしたらあんたの
知ってる人かもね?」
「えっ!?」
244 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:34
クイッと里田があごで自分の後方を示した。
思わずそっちに目をやった隙に里田が視界から消えた。
それでも私は逃げていく里田を追いかけることはできなかった。
私の目がとらえたもの。あれは……




戦場の遙か彼方。

たくさんの兵士の隙間から、一瞬三日月が瞬いた。


245 名前:第5話 投稿日:2004/03/19(金) 17:35
   
246 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/19(金) 17:40
今回はここまでです。
ファンタジー本格始動?
アクションシーン、こんなんでいいのかなぁ?

>>225 つみ 様
ありがとうございます!
はい、こんな感じになっちゃいました。
悲しい……っていうかちょっと痛めなストーリーになるかもしれません。
どっちにしろなっちファイト、です(マテ

>>226 名も無き遊び人  様
ありがとうございます!
斉藤さん、やっぱり女王といったらこの人しかいないでしょう!(激マテ
てのは半分くらい冗談で(半分かよ!)ROMANSの中で一番はまりそうだったので女王様にしてみました。
やっぱボスだしね!(笑
247 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/19(金) 17:44
>>227 みっくす 様
ありがとうございます!
冒険ですか。それはちょっと考えつかなかったです。私のファンタジーの認識が歪んでるようです(笑
紺ちゃんはお察しの通りです。でも出番はもうちょっと先。

>>228 名も無き読者 様
ありがとうございます!
「まだ」は「まだ」です!(笑
もう少し先かもしれないし、ずっと来ないかもしれないし。
すべては私のさじ加減1つ!(鬼
や、でもそこまで酷くはしないですよ! 一応少年マンガちっくなファンタジーを目指してるんで。
248 名前:つみ 投稿日:2004/03/19(金) 19:40
ついに始まりましたね!
魔法がいっぱいでてきましたね〜
やはり気になるのは最後の・・・
あの人かなやっぱり・・・
次回までまってます!
249 名前:みっくす 投稿日:2004/03/19(金) 21:01
はじまりましたね。
バトルシーンはドキドキハラハラでした。
最後のあの人はやっぱり・・・
次回も楽しみにしてます。
250 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 18:06
あー・またいいとこで・・・気になるよお(T_T)
251 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 23:37
強いなっちがみたい!!!
がんばってください
252 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:38
〜吉澤ひとみ〜

「あっ! 矢口さ〜ん!!」
「なんだよ、よっすぃ〜、今訓練中だろ? サボるなよぉ!」
「だぁってウチの訓練にならないんですも〜ん! 亜弥ちゃん今日非番だし」
「じゃあ魔法でも覚えろよ!」
「いや〜、ウチ魔法はどうも才能ないみたいで。大丈夫ですよ、剣だけで!」
「まぁそれだけ強けりゃね……」
253 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:39
「あっ! じゃあ特別にオイラが訓練つけてあげようか?」
「え〜、いやですよ」
「なんだよ! どうせ松浦よりは強くないけどさ……」
「違っ! そういう意味じゃなくて……だって矢口さんみたいな武器使ってる
人なんていないんですもん。訓練したって意味ないじゃないですか」
「あ〜、まぁそりゃそうか……」
「それにウチ矢口さんとだけは戦いたくないんですよ。だって一番好きな人と
戦うなんて嫌じゃないですかぁ〜!」
「うわっ! よ、よっすぃ〜、離れろー!!」
254 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:39
「でも矢口さん、どうしてそんな武器使ってるんですか?」
「そんなって言うなよ!」
「矢口さん剣もある程度使えるじゃないですか」
「……ある程度じゃダメなんだよ。オイラはもっと強くなりたいんだ」
「ふぅ〜ん……でもイメージ悪いっすよ、その武器。まるで死神みたいじゃ
ないですか」
「いいじゃん、死神! カッケーじゃんよ!」
「……それウチのセリフです……」
255 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:40


「元」ハロモニランド王宮騎士団2番隊隊長・矢口真里さん。
ある日突然騎士団を脱走し、失踪。
アタシの前からも姿を消し、その消息はまったくつかめなかった。



愛用の武器はその身長以上もある大鎌、『クレセント・ムーン』。



256 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:40


第6話  凍った瞳



257 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:41
戦場の中を駆け抜ける。
向かってくる敵を斬り捨てながら、一瞬光った三日月を目指して。

「待てーっ!」

先ほどまで戦っていたロマンス王国の石川梨華が追いかけてくる。でも
そんなのかまっていられない。
間違いない。あんな武器を使っているのは矢口さんしかいないはず。
でも……なぜこんなところに?
嫌な予感が……止まらない……。

たどり着いた先に矢口さんがいたほうがいいのか。それともさっき見たのは
幻だったほうがいいのか。
わからない……だけどこの目で確かめなければ。
258 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:42
「逃がさないわよ! アイス・ニードル!!」
「! うわっ!!」

突如背後から氷柱が何本も襲いかかってきた。
なんとかかわして後ろをふり向く。石川はさらに大きな氷を空中に作り出し
ていた。


「あんたにかまっている暇はないんだ!!」
「あ〜ら、あなたの都合なんて関係ないわ! くらえっ!!」

向かってくる巨大な氷塊。
「くっ……」
歯がみしながら剣をかまえる。
でも突如アタシの前に人影が立ちはだかり……
259 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:42
  パキィィィン!!

鋭い音とともに氷塊が粉々に砕かれた。
こんなことができるのは……

「ここは任せてくださぁ〜い!」
「亜弥ちゃん……」

亜弥ちゃんは顔だけこっちに向けてニコッと微笑んだ。
相変わらず何もかも見通しているような透き通った笑顔。


「……ゴメン、ありがと!」
「はぁ〜い!」

また向きを変えて走り出す。
亜弥ちゃんだったら安心して任せられる。今は……矢口さんを確認する
方が先だ!
260 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:43
向かってくる敵兵を斬りつつ、前へ前へと走る。
戦場の中の三日月を目指して。

だんだんはっきり確認できてくると同時に、もう一つ別のものも見えてくる。
鎌とぶつかり合っている槍。あれは……辻だ!

まずい……矢口さんが本気なら辻じゃ相手にならない……。
走るスピードを上げる。目の前にまた敵が立ちふさがった。


「邪魔だー!!」



261 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:45

◇     ◇     ◇


〜辻希美〜

  キィィイン!!

金属音が鳴り響く。
鎌と槍がぶつかり合う。
鎌の向こう側に見えるのは私のよく見知った顔。
ただいつも見ていた笑顔ではなく、冷たく鋭い目が私を見据えている。

「のの!」
「あいぼん、来ないで!!」

駆けよってきそうな勢いのあいぼんを制する。
あいぼんは魔法のほうが得意だ。でも矢口さんの前じゃおそらく通じない……。


槍を振り上げて鎌を捌く。
そのまま肩を狙って槍を突き出すけど、その場所にもう矢口さんはいなかった。
上空を見上げる。そこには跳躍した矢口さんと、振り上げられた大鎌。
また槍で受けとめる。再び拮抗状態に。
262 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:45
「な、なんでれすか、矢口さん!! どうしてロマンス王国なんかに!」
「・・・・・・」

矢口さんから答えはない。ただ冷たい目が私を睨んでいるだけ。

「矢口さん!!」
「……うるさいよ」

一瞬響いた冷たい声。
その瞬間に手の中から槍が消失し、私は後方に吹っ飛ばされた。

「うわっ!!」

しりもちをついたと同時に、槍が地面に突き刺さる。
あわてて取り戻そうと思ったけど、その前に矢口さんが立ちはだかった。
263 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:46
すぅーっと空に昇っていくクレセントムーン。
切っ先が太陽の光を反射した。

「や、矢口さん……」
「じゃあね……辻」

矢口さんの手が動き、大鎌が振り下ろされる。
思わず目を瞑った。でもそのとき……


「ののっ!!」
「!?」

目を開けると目の前にはあいぼんの背中が広がっていて……
次の瞬間、大鎌があいぼんの体を切り裂いて通りすぎていった。
264 名前:第6話 投稿日:2004/03/21(日) 23:47
「あいぼんっ!!」

倒れかかったあいぼんを抱きとめる。
肩口から腰にかけて真っ直ぐ斬られていて、血がゆるゆると溢れていた。

「あいぼん! あいぼん、しっかりしてぇ!!」

目を開けず、ぐったりしているあいぼん。
まだ息はあるけど……傷は深い……。


「まだ生きてるみたいだね……」
「矢口さん……」
「早く楽にしてあげるよ」
「あっ……」

向かってくる大鎌の切っ先。
思わずあいぼんをかばうように抱きしめる。

でも次の瞬間には、矢口さんの大鎌は「ガキィィィイイン!」という金属音を
たてて止まった。
そこに現れたのは……


「よっすぃー!!」
265 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/21(日) 23:52
今回はここまでです……。
いや、ホントはもうちょっと引っぱろうと思ってたんですけどね(何
自分が我慢できなくなって、最短記録で更新しちゃいました(爆
今回の新(?)キャラ、実は私自身がすっごい気に入ってます。
なのでさっさと登場させちゃいました。そのかわり上手く書けるかすっごいプレッシャーなんですけど……。
なにげに武器のチョイスもけっこう似合ってると思うんですけど……
どうでしょ?

>>248 つみ 様
ありがとうございます!
魔法、名前考えるのが一苦労です(爆
あの人はあってましたか?
266 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/21(日) 23:56
>>249 みっくす 様
ありがとうございます!
バトルシーン、ドキドキハラハラさせられたようで一安心です。
もうちょっとバトルが続きそうです。
ちょっとごっちん出番ないカモ(マテ

>>250 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
はい、いいところで切りました(確信犯
それ故に自分が待ちきれなくなったという……(自爆

>>251 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
一応強いなっちを書いてみたつもりですが……あれ、足りません?(^^;
でもそのうちもっと強くなっていくと思います。
なっちも私も精進精進。
267 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/21(日) 23:56
か〜く〜す〜よ〜♪
268 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/22(月) 00:09
更新乙彼です。
いいなぁ〜、バトルシーン上手くてぇ〜w
でもやっぱりヒドイコトになりつつあるような・・・。
次も楽しみにしてます。
269 名前:みっくす 投稿日:2004/03/22(月) 07:44
更新おつかれです。
ほんとバトルシーンは読み応えありますね。
三日月の正体はやっぱりあのひとでした。
次回も楽しみにしてます。
270 名前:つみ 投稿日:2004/03/22(月) 12:51
やはり・・・
どうしたんでしょうね〜いったい??
謎が深まりそうですね・・・
次回の対決も楽しみにしてます!
271 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/22(月) 21:23
更新お疲れ様です!
バトルシーンの描写!すごいです!前のめりになって読んでしまいました。
次回の邂逅シーンどんなふうになるのか、気になって仕方ありません・・・
そのうちさらに強くなるとのことですので、さらに強いなっちまってますよ!
まあ個人的な願望なんで気にしないください・・
とにかく、更新待ってますよー!!!!!!!!
272 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:21
〜吉澤ひとみ〜


地面に突き刺さった槍。

振り下ろされる大鎌。

辻の前に立ちはだかった加護。

飛び散る鮮血。

倒れる加護と抱きかかえる辻。

こだまする辻の悲鳴。

273 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:21
「くそっ!!」

目の前の敵兵を力任せに斬り飛ばす。
間に合わなかった……遅かった……。


「早く楽にしてあげるよ」

蛇が鎌首を持ち上げるかのように、すっと昇った三日月。
させない!!
剣を握りしめて走る。
間一髪のところで辻の前に体を入れ、剣で鎌を受けとめる。
274 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:22
「よっすぃー!!」

辻の感嘆の声が聞こえた。でも今はそれに答えてる余裕はない。
目の前にいる矢口さんの鋭い目がアタシを睨んでいる。見たこともない、
氷のように冷たい瞳。


「矢口さん……誰を斬ったかわかっているんですか!? あなたの部下の
加護ですよ!!」
「今は敵だろ? オイラはただ敵を斬っただけだよ」
「じゃあウチも敵ですね……。斬れるんですか、矢口さん!?」
「……斬れるさ」

振り上げられた鎌によってアタシは体勢を崩した。
そこに襲いかかってくる大鎌の刃と切っ先。
なんとか剣であわせて捌いていくが、さすがに剣一本で受けとめるのは
しんどい。
天性のバランス感覚で、自分の身長以上もある大鎌を自由自在に操る
矢口さんの攻撃が重くのしかかってくる。
でも、それなら……
275 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:23
大きく横に振られた鎌をしゃがみ込んでかわす。
私の頭の少し上を鎌が通りすぎていった。
アタシも間髪入れずに剣を振るう。
剣の先には……矢口さんの足。


「くっ……!」

この攻撃は予想してなかったのだろう。
後ろに下がって攻撃を受け流したが、完全に意識がそっちに集中している。
その隙に一瞬で間合いをつめ、矢口さんの懐に入り込む。
これならリーチが長く、そして重い大鎌では攻撃ができない。

そのまま、闘争本能のままに剣を振るが……
276 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:23
「うっ……」

矢口さんの首筋に剣が斬り込む手前でピタッと止まる。
斬れない……斬れるわけがない……。
大好きな矢口さんを斬るなんて……アタシには……できない……。


「……斬らないの、よっすぃー? チャンスだよ?」
「斬れるわけ……ないじゃないですか……」
「そっか……」

矢口さんの目が少し穏やかになった気がした。
277 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:25
でもそれで油断したのがいけなかった。
矢口さんの手がアタシの右腕を掴み、一瞬で背中側にまわされた。

「うわっ!」

急な痛みに思わず剣を放してしまう。
背中に矢口さんの体重がかかってきて、アタシはうつぶせに地面へと
倒れ込んだ。

それでも背中に乗っている矢口さんの体。
ジタバタともがいてみるけど、喉元に鎌の切っ先が突き付けられて、アタシの
動きは止まった。


「矢口さん……」
「戦場じゃ、殺らなきゃ殺られるだけだよ、よっすぃー……」
278 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:27
「よっすぃー!!」

地面に突っ伏しているアタシの耳に辻の声が届いた。
少しだけ顔を動かしてみると、辻が槍を手に向かってきている。
しかし、それと同時にアタシの上から呪文の詠唱が聞こえた。


「っ! 辻っ! 来ちゃダメ!!」
「遅いよ。ウィンド・スフィア!!」
「うわっ!!」

辻になにか球体状のものが当たって、吹っ飛ばされたのが見えた。
辻の体は地面に激突して、槍が手を離れて転がる。


「安心していいよ、まだ死んでないから。仲間の死に様を見なくてすむように
よっすぃーを一番最初に送ってあげるから」
「くっ……」

のどにピタッと冷たい感触が走る。


しかしそのとき、アタシが倒れている地面に突如巨大な魔法陣が描き出された。
アタシの下だけじゃない……倒れてる辻や加護の下にも……。
それはこの戦場を全て覆ってしまうような、紅く光る巨大な魔法陣。
279 名前:第6話 投稿日:2004/03/30(火) 21:28
「ちっ!!」

矢口さんが舌打ちとともにアタシの上から飛び退いた。
アタシもすぐに起きあがって剣をかまえるけど、そのときにはもう矢口さんとは
かなり距離があった。


「よっすぃーも命がおしけりゃ早くこの魔法陣から出ることだね。ウチの
新しい女王様は敵とか味方とかいちいち気にする人じゃあないからさ」
「えっ?」

それだけ苦々しく言い捨てると矢口さんはすぐに振り向いて走り出した。
でもその時……

「ヤグチっ!!」

突如響いた声に矢口さんの動きが止まる。アタシもその方向を見た。
そこには息を切らしている安倍さんの姿。


「なっち……」

しばらく矢口さんと安倍さんは見つめ合っていた。
2人とも微動だにせず……視線をそらさない。

でもしばらくすると、矢口さんはまた後ろを向いて走っていってしまった。
その小さい後ろ姿はたくさんの兵士に紛れてすぐ見えなくなった。


そしてその瞬間、足下の魔法陣が紅く輝き、そこから幾重もの炎が吹き出した。
280 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/30(火) 21:43
短いですけど今回はここまでです。
なんとなぁく、個人的によっすぃーは書きにくい……(汗

>>268 名も無き読者 様
ありがとうございます!
バトルシーンうまいですか? 嬉しいです!
ちょっとヒドイコトになりかけですが、矢口さんにもいろいろあるわけで……。

>>269 みっくす 様
ありがとうございます!
バトルシーンはこんなもんでいいのか、おっかなびっくり書いてました。
なのでいい反応をいただけると嬉しいです。
281 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/30(火) 21:48
>>270 つみ 様
ありがとうございます!
予想当たったようで! おめでとうです(ぇ
謎はもっと深いです。はい、真希之助風に(笑

>>271 名無飼育さん 様
嬉しい感想ありがとうございます!
バトルシーンうまく書けてよかったです。
なっち、あんま出てきてません(死
でもちゃんと強く成長していく……ハズ(ぇ
282 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/03/30(火) 21:48
隠し
283 名前:つみ 投稿日:2004/03/30(火) 22:06
やぐちさんも何かがあったんでしょうか・・・?
それにしても最後のやつはあの方が関わってる気がしてならない・・・
次回もまってます!
284 名前:みっくす 投稿日:2004/03/31(水) 04:34
ほんとに何があったんでしょうかね?
それしても、女王様おもいっきしやってくれますね。
次回も楽しみにしてます。
285 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/31(水) 10:59
更新お疲れサマでございます。
一体何が・・・?
書きにくいと言ってるわりにはしっかり書けてますよ?よっすぃ〜。(←何様?
次も楽しみにしてますw
286 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 15:56
〜紺野あさ美〜

―― ハロモニランド城・地下室 ――

「あさ美ちゃ〜ん!! ちょっと、ヤバイよぉ!」
「えっ?」

いつものように地下室で魔法の研究にいそしんでいると、一緒にいた愛ちゃんと
里沙ちゃんが慌てて駆けよってきた。


「どうしたの、いったい?」
「とにかくこれ見て!!」

愛ちゃんの持った水晶玉を覗き込む。
そこに映し出されたのは安倍さんたちの姿と、まわりを取り囲んでいる
幾筋もの炎。そして足下に輝く魔法陣。
287 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 15:56
「これは……フレイム・ウォール?」
「そうだよ! ヤバイよ、こんな高位魔法安倍さんたちだけじゃ対処できない!」
「助けに行こうよ、あさ美ちゃん!」

口々に言う愛ちゃんと里沙ちゃん。
た、助けに行こうって言うけど……

「で、でも私たち5番隊は城の警備だし……」
「そんなの保田さんいれば十分じゃん!」
「そうだよ! それに結界だってはってあるんでしょ?」
「う、うん……そうだけど……」

もう一度水晶を覗き込む。
炎の中でもがいている安倍さんたち。
288 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 15:57
「……わかった、行こう! ただし私たちだけでだよ? 他のみんなは
警備してるし」
「「うんっ!!」」

はぁ……一応私隊長なんだけどな……。
なんか愛ちゃんのほうが隊長っぽいよ……。
でもそんなことで凹んでもいられない。今は安倍さんたちを助けないと。


「じゃあ集まって、愛ちゃん、里沙ちゃん」

愛ちゃんと里沙ちゃんが私のまわりに集まってきた。
それを確認してから魔法の詠唱を始める。
詠唱が進むに連れて、徐々に私の足下にある影が魔法陣の形を形成していく。


「シャドウ・ホール!!」

魔法を発動させると、魔法陣から光と闇が交互に放たれ、私たちを包み込んだ。



289 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 15:58

◇     ◇     ◇


〜安倍なつみ〜

戦場の中で見つけた三日月をめがけて走り続ける。
間違いない……あれはヤグチだ……!
見間違えるはずもない……かつて何回も手合わせしたあの大鎌。
ヤグチ愛用の武器、『クレセント・ムーン』。

敵を斬りながら戦場の中を走っていると、急に地面が紅く輝いた。
浮かび上がってくる魔法陣。この魔法って……!
まさか……自分の味方も巻き込んで高位魔法を使ってくるなんて!!


「くっ……」

目の前にいる敵兵を斬った。するとそこで視界が開けた。
そして見たのは倒れている辻と加護、そして剣を構えているよっすぃーと……

「ヤグチっ!!」

小さい身体に不釣り合いの大鎌を持ったヤグチの後ろ姿だった。
290 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 15:59
「なっち……」

立ち止まってふり向いたヤグチと目が合う。
まるで見たものすべてを凍りつかせるような冷えた目。
昔のヤグチからは想像もできない。

結局その後一言も交わさないままヤグチは走り去ってしまった。


「あっ、待って!!」

ヤグチを追いかけて走り出そうとしたけど、その瞬間、「タイムリミット」と
でも言うように足元の魔法陣が一段と紅く輝き、そこから幾筋もの炎柱を
噴き出した。

「うわっ!!」

戦場のあちこちから悲鳴が聞こえる。
敵味方関係なく魔法を使うなんて……なんて卑劣な!!
291 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:00
「安倍さんっ!!」

背後から不意に聞こえたよっすぃーの声で現実に引き戻される。
そうだ……今はそんなことで憤ってる場合じゃない。何とか一刻も早くこの
魔法陣から脱出しないと……。

「よっすぃー、大丈夫?」
「はい、ウチは大丈夫ですけど、加護が……」

意識を取り戻して起き上がった辻と、対照的にまだ倒れたままの加護。
加護を抱きかかえているよっすぃー。
よっすぃーの元へ駆け寄り、加護の様態を見るけど、けっこう傷は深い……。
状況から考えて、おそらくこれをやったのは……。


「よっすぃーと辻は加護を連れて一足先に逃げて! 私はあとから行くから」
「でも、安倍さん!」
「2番隊と3番隊は私がなんとかするから! 早くっ!!」
「……わかりました!」

よっすぃーと辻が走っていくと、私は剣を握り締めて戦場へと戻っていく。
292 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:00
「全軍撤退!!」

まだ戦っている味方の兵にそう叫んで走っていると、途中で松浦と遭遇した。


「松浦! 無事だった!?」
「あぁ、安倍さん! 何とか無事ですけど、ちょっとこの魔法はキツイ
ですねぇ……」
「私と松浦で何とかできるかな……?」
「ちょぉっと厳しいと思いますけど……まぁやるだけやってみますか?」

2人で同時に同じ魔法を唱えだす。
ひとつに集まってくる魔力。でも……だめだ、足りない……。


「安倍さん、これじゃぜんぜん足りませんよ……」
「わかってる! もっと集中して!」
293 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:02
でもそのとき、上空にもう1つ大きな魔法陣が現れた。
足元の魔法陣と同じく、紅く輝く魔法陣。

その魔法陣がゆっくりと降りてくる。
そして地上の魔法陣とぴったり重なると、今までいたるところで噴き出して
いた炎は嘘のように止まり、魔法陣は跡形もなく消え去った。


「これって……」
「"オーバーライト"だ……」


"オーバーライト"
発動している魔法とまったく同等の魔法陣を重ねることによって魔法を
相殺させる高等技法。
同じ魔法を使えるだけの知識と、それを同じように発動させる高い魔力が
必要になる。

こんなことができるのは……
294 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:04
「間に合いましたね、安倍さん!」
「紺野! それに高橋と新垣も!!」

振り返ってみると、そこにいたのは5番隊隊長の紺野あさ美と、同じく5番隊の
高橋愛と新垣里沙。
5番隊は魔法を得意とするメンバーで構成されているが、特に紺野は
他の王宮騎士が、いや、自分が率いている5番隊の隊員すらも足元に
及ばないレベルでナンバー1を誇る魔法のエキスパートだ。


「安倍さん、亜弥ちゃん、無事ですか?」

高橋と新垣が駆けよってくる。そのあとを紺野も「やれやれ」という表情で
ついてくる。

「まったくぅ……助けにくるんならもっと早く来てよねぇ」

松浦が剣を納めながら紺野に向かって文句を言う。

「ほらぁ、あさ美ちゃん、だからあたしが言ったのにぃ」
「えぇっ!? だって私たち5番隊は城の警備だったし……」

高橋も松浦にあわせて紺野を責めると、とたんに紺野はおろおろし出した。


「いいよ。ありがとね、紺野。助かったよ。私たちだけじゃどうしようもなかったから」

紺野に歩み寄って頭を撫でると、今度は嬉しそうににっこり笑う。
可愛いなぁ……。とても王宮騎士最強の魔法使いには見えないよ。
しかし、そうのんきに和んでもいられなかった。
295 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:04
『ウォォォォオオオオッ!!』

突如聞こえた雄叫びと地響きにみんなで同じ方向を向く。
見るとロマンス王国の残りの兵がこちらに向かって突進してくる。


「なに、まだやる気ぃ?」

ぐったりとしている松浦がまた剣を抜く。
私ももう一度剣をかまえ直したけど、私たちの前に紺野が立ちはだかった。


「安倍さん、他の味方はもう撤退済んでますか?」
「うん、もうみんな撤退したよ」
「それならあとは私たちが片づけます」
「そうですよ、一気に決めちゃいますから」
「休んでて下さい!」

高橋と新垣も紺野に駆けよる。そして3人で呪文を詠唱し始めた。
296 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:05
「……里沙ちゃん!」
「おっけー!! プラウス・マジック!!」

最初に新垣が呪文を発動させた。金色の魔法陣があたり一面に広がる。
新垣が得意なのは主に補助系魔法。今使ったのは特に紺野たちと一緒の
ときによく使う、魔力増幅魔法。


「行くよ、愛ちゃん!」
「うん!」

新垣の魔法陣が完成したと同時に、今度は紺野と高橋が魔力を一点に
集める。
集まった魔力は新垣の魔法陣によってどんどん大きさを増していく。
297 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:05
「いっけー! 愛ちゃん、あさ美ちゃん!!」

新垣の声援とともに詠唱が止み、そして……


「「グランド・ウェーブ!!」」


放たれた魔力は大地に吸い込まれていき、巨大な魔法陣を描き出す。
そして次の瞬間には地面が破裂し、まるで水面のように波打った。


「うわっ!!」
「ぐわっ!」

敵の悲鳴が聞こえてくる。
隆起と沈降を繰り返す地面にまともに立っていることもできていない。
298 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:06
「くっ! た、退却!!」

そう声が響いたと同時に敵は敗走を始めた。
なおも地面は津波のように敵を追い立てる。
 

「もういいよ、紺野」
「はい。もういいよ、愛ちゃん」
「えー、つまらんなぁ」


地面は何事もなかったかのように静まり、そしてようやく戦いも終わった。

でも今回の戦いは序章にすぎない……。

いくつも散らばる人の死体や、焼け焦がれた草原を改めて見て、そう実感した。
299 名前:第6話 投稿日:2004/04/02(金) 16:06
   
300 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/02(金) 16:11
今回はここまでです。
駆け足更新でしたが、まぁ、第2章終了ってとこですかね?
そしてようやく登場しました! こんな感じのキャラとポジションです。
ずっと引っぱってましたが、このキャラも結構私のお気に入り。
どうも私はお気に入りのキャラはさっさと出したくてしょうがないらしい(笑
じゃあ引っぱらずに出せよ、ってはなしなんですけどね……。
301 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/02(金) 16:17
>>283 つみ 様
ありがとうございます!
矢口さんの過去はもうちょっと……いや、かなり後のほうになりそうです(ぇ

>>284 みっくす 様
ありがとうございます!
はい、おもいっきしやっちゃいました(笑
キャラというかまだぼやけた輪郭くらいしか出せてないんですけど、こっちもおいおい……。

>>285 名も無き読者 様
ありがとうございます!
よっすぃ〜書けてますか? よかったです。
なんか人気者すぎて逆に書きづらいんですよねぇ……。
302 名前:みっくす 投稿日:2004/04/02(金) 20:25
おお、やっと紺ちゃん出番だぁ。
すごいですね。
次回も楽しみにしてます。
303 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/02(金) 20:31
更新お疲れッス。
新たな登場人物たちのキャラとポジション・・・。
ん〜、ナイス。(^∀^)b
続きが益々楽しみです♪
304 名前:つみ 投稿日:2004/04/02(金) 20:59
こっちにもものすんごいにがいましたね・・・
これでやっとなっちさんは姫のもとへ・・・
305 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/07(水) 18:43
なっち弱すぎ、なんか特徴ないっていうか、他のキャラが立ってるだけに・・まあ個人的な感想なんで気にしないでください。こんなけと書いちゃいましたが、今一番楽しみにしてる小説です!頑張ってください
306 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/04/10(土) 23:37
お久しぶりです!!
なんだか色々複雑な状況に成ってきましたね(f^-^:)
バトルシーンヨカッタですよ!!見覚えのある魔法がポツポツと....(笑)
複雑と言えば、ヤグチさん!!大鎌にあってますねぇ(オイオイ)
次は、双剣士とかでてきちゃったり!?(こら!!)
う〜ん、続きが気になります!!がんばってください(>_<)b
307 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:50
〜吉澤ひとみ〜

春は出会いと別れの季節。
のの、あいぼんと一緒に王宮騎士に入隊し、初めてあの人と逢ったのも春。
そしてあの人がアタシの前から消えたのも春だった。


ハロモニランド城の西にそびえる小高い丘。
頂上まで登ると、そこには一本の木が立っている。
なんの木かはわからない。この辺では見かけない木。
でも春になると、ピンクの花が満開に咲き乱れる。


今日もアタシは丘を登る。
そろそろあの花が満開になっているころだろう。

そう、アタシの誕生日ころになると……
それをあの人のかわりに祝ってくれるかのように、あの花は満開となる。
308 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:50


Interlude 1  サクラの雨、いつか


309 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:51
「ふぁ……」

思わずあくびをして目をこする。
ポカポカと、だんだん暖かくなってきたこの陽気は実に眠気を誘う。
もう、もはや訓練どころではない。どっちにしろ、今日も亜弥ちゃんは非番
なので、アタシの訓練にはならないわけだし。
3番隊の隊員に自主訓練を言いつけると、アタシは草原に寝っ転がって
サボりモードに移る。


……いい天気……。

……眠い……。

寝ちゃおうかな、と思い、ふと顔を横に向けると、視線の先にアタシと同じ
ように訓練をサボって、寝っ転がってる隊長さんを発見。
側に鎌が突き刺さっている。

アタシは起きあがると、アタシの恋人である2番隊隊長の矢口さんの元へ
向かった。
310 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:52
寝てるのかな、と思ったけど、矢口さんはしっかりと目を開けていた。
でもその目は空の一点をさして動かない。
なにかを考えているような険しい表情。
最近矢口さんはこんな顔をしているときが多い。
アタシと一緒にいるときはいつも笑顔だけど、訓練中なんかにちょっと
盗み見ると、矢口さんはよくこんな表情をしている。


そっと寝っ転がっている矢口さんに近づく。
でも矢口さんに気づく様子はなく、ずっと空を睨んだまま。
アタシはそんな矢口さんに覆い被さる。
311 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:52
「矢口さ〜ん!!」
「うわっ!? よっすぃーっ!?」

矢口さんはホントに驚いたらしく、その場で跳ね上がった。

「なんだよ、よっすぃー! 心臓に悪ぃなぁ!!」
「あ〜! 恋人に向かってなんてことを!」
「サボってないで真面目に訓練しろ!」
「サボりは矢口さんもじゃないっすか! ダメですよぉ、訓練中に寝てちゃ」
「寝てねぇよ!!」
「じゃあなにしてたんですか?」

そう聞くと矢口さんは急に口ごもる。
視線を左右に散らし、少ししてから「ちょっと考え事してただけだよ」と言って、
肝心なところをはぐらかした。
312 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:53
「それよりさ、よっすぃー、なんか欲しいもんとかってない?」
「えっ?」

矢口さんは飛び起きると急にそんなことを訊いてきた。
アタシも起きあがり、ちょっと考え込む。
なんで急にそんなことを……って、あっ! そういうことか!


「ウチ矢口さんが欲しいですぅ〜!!」
「うわっ! 離せー!!」

矢口さんをギューッと抱きしめる。
矢口さんはジタバタと暴れていたけど、観念したのかフッと力が抜けた。
313 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:54
「みんな見てんだけど……」
「いいじゃないっすか、ウチらはもう公認の仲なんだし!」
「……ねぇ、マジでなんか欲しいもんない?」
「別にいいっすよ、なんでも。ウチは矢口さんさえいてくれればそれで満足
ですから」
「……そ……か……」

すっと矢口さんの手がアタシの背中に回る。
アタシも力を込めて、矢口さんの小さい体を抱きしめるけど……


「よっすぃー!!」
「矢口さーん!!」 
「「うわっ!?」」

突如2番隊のののとあいぼんが降ってきて、アタシと矢口さんは2人の
下敷きに……。

「よっすぃーだけ矢口さん独り占めなんてずるいのれす!」
「そや〜! 矢口さん、加護たちともらぶらぶしましょ〜!!」
「矢口さんはウチんだ! 渡さねぇぞ!!」
「加護、どけー!! 重いー!!」



314 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:55

◇     ◇     ◇


「矢口さ〜ん!! どこですか〜!?」

今日は矢口さんは非番。
なのでアタシは訓練サボって矢口さんとデートしようかなぁ、とでも思った
んだけど、部屋に行っても矢口さんはいない。
あれ〜? 一人でどっか行っちゃったのかなぁ?
315 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:55
「あっ! 保田さん、矢口さん知りませんか?」
「んっ?」

城を出ようとして、ちょうど警備をしていた保田さんを見つける。

「確かちょっと前に出て行ったよ」
「あっ、そうですか、ありがとうございます!」
「ていうかあんた、訓練は?」
「気にしないでください! それじゃ〜!!」

保田さんにお礼を言ってさっさと城を出る。
今日もいい天気。眠くなるようなポカポカ陽気。
矢口さん、どこ行ったのかなぁ?
316 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:56
城の敷地内を探し回る。
でも矢口さんは見つからない。
ちっちゃいからなぁ……見つけにくいんだよなぁ……。

見渡しのいい場所に行き、ぐるっと辺りを見回してみる。
やっぱいない……んっ?
遠くでなにかがチカッと光った気がした。

見上げる先には城の近くにそびえている小高い丘。
あんな丘、あったんだ。
注意して見ないと見落としてる景色ってけっこうあるもんだなぁ。

その丘の頂上の一角がうっすらとピンク色に染まっている。
そしてそのピンクの下で、チカチカッと光が明滅している。
あれってもしかして……矢口さんの『クレセント・ムーン』?
317 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:57
ゆっくりと丘を登っていく。
そして頂上に出ると、目に飛び込んできたのは圧倒的な自然の色たち。

遠くからうっすら見えていたあのピンクは花だった。
でも城のガーデンに植えられてるような小さな花ではなく、木の枝いっぱいに
咲いているピンク色の花。
花のピンクと、若草の緑、そして花をつけた木のこげ茶のコントラスト。


そしてその木に矢口さんがもたれて立っていた。
自然色の中に、金色と鈍色を添えている。
矢口さんはやっぱりなにかを考えているようで、難しい顔で虚空を見つめていた。
318 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:57
「……矢口さん」
「んっ!? あっ、よっすぃー……」

風が吹き、花が舞い散る。
アタシと矢口さんのあいだに薄紅色の雨が落ちた。
アタシも矢口さんの元により、同じように木にもたれかかる。

「こんなところあったんですね。ウチ全然知りませんでした」
「オイラも知ったのつい最近だよ。キレイだよなぁ、この花」

矢口さんがすっと手を出すと、その手のひらに花びらが一枚舞い降りた。
319 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:58
「ホントに綺麗な花ですねぇ〜。なんて花ですか?」
「ん〜、オイラもわからない。この辺じゃ見かけない木だからなぁ〜……」
「保田さんとかなら知ってるんじゃないですか?」
「ヤダよ、圭ちゃんに教えるなんて。教えたら絶対酒持って見に来るに
決まってる! オイラのお気に入りの場所汚されてたまるかっ!」
「ハハハ……」

酷い言われようだなぁ、保田さん……。


「よっすぃーもこの場所気に入った?」
「はい、すっげぇキレイですよね!」
「そっか、よかった!」

そのあとアタシと矢口さんは木の下に寝っ転がって、はらはらと舞い散る
花びらを見ていた。
美しくも儚い花びらの舞に、アタシはずっと心を奪われていた。
320 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 00:59
「……ねぇ、よっすぃー」
「はいっ?」

不意に矢口さんが声をかけてきた。さっきよりもトーンが若干落ちている。
矢口さんの方に顔だけをむける。


「よっすぃーはさ、今の王宮騎士団って居心地良い?」
「えっ? あぁ、まぁ居心地良いっていうか、好きですよ? でも、なんで
そんなこと聞くんですか?」
「……なんでもない……」

それっきり矢口さんは口を開かず、また上を向いて花を眺めていた。
アタシも同じように上を向く。

視界を覆う、ピンクのヴェール。
とってもキレイ……だけど……
なぜだろう……
なぜか舞い散る花びらを見ていると、キレイと感じる反面、もの悲しい
気持ちになった。



321 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:00

◇     ◇     ◇


平和なときは過ぎ、アタシの誕生日はすぐにやってきた。
矢口さんも特に変わった様子はなかった。
少なくともアタシの前では……。



「「よっすぃー! 誕生日おめでとー!!」」
「ありがとうございます! 姫様、安倍さん!」

もらった紙袋を開けると、そこには好物のベーグルがいっぱいつまっていた。

「なっちと一緒に作ったんだよ〜!!」
「味は保証するべさ!」
「ありがとうございます!」

一つ取り出して頬張る。
んっ! ホントにおいし〜!!
322 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:00
「あっ、ところで矢口さんどこにいるか知りません?」
「ん〜、今日はまだ見てないなぁ〜。ごっちんは見た?」
「ごとーも見てないなぁ」
「そうですか、ありがとうございます」

まだ部屋にいるのかな?
そう思って矢口さんの部屋に行き、軽くノックしてみるけど、中からは反応がない。
ためしに扉を開けてみるけど、そこに矢口さんの姿はなかった。


「あれ〜? どこ行ったんだろ?」

考え込んでいると、廊下の先からドタドタッと足音が聞こえてきた。
323 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:01
「「よっすぃー、誕生日おめでとー!」れす!!」
「お〜! ありがとー! のの、あいぼん!!」

走ってきたのはののとあいぼんで、手になにか白い物体を持っている。
えーと……もしかしてこれって……

「ケ、ケーキ?」
「そや! 加護とのので作ったんやで!」
「遠慮せずに食べるのれす!」

ののとあいぼんの手に乗っているケーキのような物体を見てアタシは
ちょっと引く。
身体が危険信号を発している!
こ、これはいろいろと危ない!
324 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:02
「そ、それはあとで食べるからさ、矢口さん見てない?」
「ん〜、加護は見てないで」
「ののも見てないのれす」
「そっか。ウチちょっと矢口さん探してるから。ケーキはあとでね!」
「あっ、待つのれす!!」
「ちゃんと食え〜!!」

ケーキ? を持って追いかけてくるののとあいぼんからなんとか逃げ出す。
ごめん、のの、あいぼん。プレゼントはちゃんと人間の食べられるものにして……。


なんとかののとあいぼんを撒いて、アタシはまた考える。
もしかして外かな?
そう思ってアタシは外へと向かう。
325 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:02
「おっ、よっすぃーじゃん」
「あっ、保田さん!」

外に出ようとすると、また警備をしていた保田さんを見つける。
大変だなぁ、保田さんも。アタシは今日も訓練サボりさ。

「ちょうどいいわ、よっすぃー。はい、誕生日プレゼント!」
「あっ、ありがとうございます!」

開けてみるとそれは本だった。初級者向けの魔術書。
ハハ……保田さんらしいな……。

「あんた魔法もちゃんと勉強しなさいよ?」
「はーい! ところで矢口さん知りません?」
「けっこう前に外に出て行ったよ」
「あっ、そうですか! ありがとうございます!」
326 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:03
そしてアタシは外へ飛び出す。
今日も今日とていい天気。
さて、矢口さんはどこにいるんだろう?

とりあえず訓練場へと行ってみるけど、矢口さんの姿はない。
隊員に捕まりそうになったので訓練場はさっさとあとにして、次に城のガーデン
に行ってみるけど、そこにも矢口さんの姿はない。
城の周りをくまなく探してみたけど、結局矢口さんは見つからなかった。
こうなると残るは……あの丘の上。

期待に胸を弾ませながら丘を登る。
あの木の下でプレゼントでも渡してくれるのかな? 矢口さんもなかなか
オシャレなことをしてくれる!
327 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:03
「矢口さ〜ん!!」

頂上に飛び出す。
でもそこに矢口さんの姿はなかった。
ただピンクの花びらがはらはら舞っているだけ。


「……矢口さん……?」

でもその時木になにか立てかけてあるのに気づいた。
近づいていって手に取る。

……剣?

柄を握り、鞘から抜き出す。
328 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:04
その剣は見たこともない剣だった。
長さは1mくらいで、緩やかな弧を描いている。
そして刃は片側にしかない。
この辺では見ないつくりの剣。
でも……キレイだ……。
特に飾りもなく、柄も鞘も木ごしらえのシンプルなつくりだけど、とても美しく
感じた。


もしかして、これ……矢口さんが……?
でもここに矢口さんはいない……。
当たりを見渡してみると……木の下に置かれたもう一つのものを見つけた。

手紙?
329 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:05


『  
  ハッピーバースディ、よっすぃー!
  この剣は"カタナ"って言って、
  遠い島国に伝わる伝統的な剣なんだってさ。
  骨董品屋で見つけたんだけど、
  なかなか手に入らないものなんだぞ!
  オイラの代わりに常に側においてやって!
  それじゃね、バイバイ!

                             ヤグチ    』


330 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:05
「……ハハハ……」

思わずその場に崩れ落ちた。
そしてすべて理解した。

なんでですか……矢口さん……
こんな「サヨナラ」じゃ、素直に悲しむこともできないじゃないですか……。
331 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:06
手紙を思わず握りしめる。
その握りしめた拳に、一雫、涙が零れた。

「矢口さぁん!!」

その叫びは決して届くことなく、あたりに響いた。

花が舞い散った。
ヒラリ……ヒラリ……。
零した涙の上に花びらが舞い降りた……。



332 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:07

◇     ◇     ◇


アタシは今日も丘を登る
腰には矢口さんにもらったカタナ、『花月』を差して。
頂上に着くと、あの日と同じピンクの花が迎えてくれる。


あれから2年……ようやく矢口さんを見つけた。
でも……それはアタシが知っている矢口さんじゃなかった。
笑顔は失われ、瞳は冷えた月のように鋭く冷たく光っている。


左手の親指で、カタナの鯉口を切る。
そして右手で柄を握り、目を瞑って精神を集中する。
333 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:07
矢口さんの鎌を受けたときのことを思い出す。
矢口さんはこんな未来を予期していたんだろうか?
このカタナで矢口さんと戦うことになると予測していたのだろうか?


目を開け、足を踏み出す。
そのまま抜刀し、一閃。

一瞬時が止まったかのように風が止み、そしてまた吹き始める。
花がはらはらと舞った。
カタナを鞘へと戻す。
334 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:08
おそらくまた戦うことになるだろう。
でも、もう大丈夫。
絶対にアタシが矢口さんの笑顔を取り戻してみせる!
そしてもう一度、ここに二人で来るんだ!


アタシの手で……

矢口さんからもらった、この剣で……


335 名前:Interlude 1 投稿日:2004/04/12(月) 01:08
   
336 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/12(月) 01:19
ぁぃ、今回はここまでです……。
今回は更新ペースがピッタリと合ったので、急遽書いたらこんな感じに……。
あっはっは、めでたいのにめでたくねぇよ!(泣

>>302 みっくす 様
ありがとうございます!
ようやく出ました! でも今回はちょっと入る前のお話なんで出てないですけど。
そのかわり次回は……大暴れの予感!?(ぇ

>>303 名も無き読者 様
ありがとうございます!
キャラとポジション、けっこう悩みました。誰を外すかで。
でも個人的に小川は魔法使いって感じじゃないな、と思い外しました(^^;

>>304 つみ 様
ありがとうございます!
ごっちん姫のもとへ……行けませんでした(爆
なちごま、もうちょっとお待ちを、です。
337 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/12(月) 01:29
>>305 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
はい、なっち弱いですね(笑 (●´ー`)
いや、それでも隊長なんで一応ちゃんと強いんですけどね。
個人的には最強無敵な主人公ってのもどうかと思うわけで。
それよりは弱くても傷ついても立ち上がって戦うってほうが主人公っぽいかなぁと思いました。
なっちはそんな感じで書きたいです。

>>306 名も無き遊び人 様
ありがとうございます! そしておひさしぶりです!
バトルシーンの嬉しい感想ありがとうございます!
魔法はいろんなところから取ってます(爆 ゲームやらマンガやら……。もちろんオリジナルもありますが。
とにかく名前である程度イメージできないといけないんで。最低でも属性くらいは。
双剣士……うっ!? 鋭いカモ……。
338 名前:つみ 投稿日:2004/04/12(月) 12:36
なんと言う・・・
そんな過去がありましたか・・
だったら2人が対峙したあの時の裏にはこれがあったんですね。
それにしてもやっぱりなぜなんだろう・・・?
次回も楽しみに待ってます!
339 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/04/12(月) 15:49
イイですねぇ(≧∀≦)この2人にしか分からない過去!!
よっすぃ〜カッコイイ(>_<)b暁の騎士ってかんじ!!(どっかで聞いたような)
めちゃめちゃ、楽しみにしてます!!がんばってください(>_<)b
340 名前:みっくす 投稿日:2004/04/12(月) 23:02
そういう過去があったんですね。
でも、なぜなんでしょうね。
次回も楽しみにしてます。
341 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/14(水) 18:39
更新お疲れサマです。
なるほど、こういった過去があったんですなぁ・・・。
情景を思い浮かべるとかなりキレイな画になったりw
続きもますます楽しみにしています。
342 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:03
〜安倍なつみ〜

「はぁ……」

階段を一段下りるたびに私は溜め息をつく。
それとともにだんだんと近づいてくるあの扉。


ハロモニランド城には『開かずの扉』がある。
というよりは誰も故意に開けようとしない『開けずの扉』と言った方がいいかも。

ハロモニランド城の地下室。そこは古い本や魔術書を保管する物置だった
のだが、今は王宮騎士5番隊の紺野、高橋、新垣が、それらの魔術書などを
使って、魔法の研究に励んでいる部屋となっている。

通称『紺野の実験室』。

そこに立ち入って無事帰ったものはいないとか……。
343 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:04
「はぁ……」

また無意識にため息が出てしまった。
まったく圭ちゃんめ! 理由は言わずにただ紺野を呼んできてくれって……。

「嫌だ〜! なっちまだ死にたくないべさ〜!!」

とか何とか言ってるあいだに扉の前についてしまった。
また溜め息をつき、覚悟を決めて扉をノックする。


「紺野〜! いる〜?」
「はい! どうぞお入りください!」

できれば謹んでご遠慮したいところなんだけど……。
しょうがないから扉を開けて、おそるおそる中に入る。
344 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:05
「あっ! 安倍さん! ちょうどいいところに来ました!!」
「そっか、じゃあまたあとで来るべさ!」

なるべく自然に立ち去ろうとしたけど、後ろを向いた瞬間、目の前の扉が
いきなり閉まった。
ノブに手をかけてみるけど、見事に開かない。

「大丈夫ですよ、安倍さ〜ん! 何も取って食おうとしてるわけじゃない
ですから!!」
「じゃ、じゃあなんだべさ!?」

紺野のニコニコ笑顔がとっても怖い。


「実は先ほど古い魔術書で大変興味深い魔法を見つけてしまいまして!
なのでここはぜひ安倍さん、実験台に……」

やっぱり〜っ!!
『紺野の実験室』に足を踏み入れると、もれなく魔法の実験台にされるという
のは城内もっぱらの噂だ。
被害者の証言が走馬燈のように頭をよぎる。
345 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:05

証言者1:Yさんの証言

「ウチなんて魔法でペンギンにされたんですよ!! しかも何でか
真っピンクの! おまけに魚はなかなか食べさせてくれないし、飢え死に
するところでした!!!」


証言者2:Oさんの証言

「私なんて北国に飛ばされたんですよ! 寒いし、変な人に間違えられるし、
ジャージ姿の女の人から求愛されるし散々でしたよ!!」


証言者3&4:TさんとKさんの証言

「ののとあいぼんは心と体を入れ替えられたのれす!」
「そうそう! でもやっぱりのののほうが太ってたよねぇ〜!」
「え〜! あいぼんだよっ!!」
「ののやー!!」


346 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:06
「いやー!! ここから出してー!!」

ガチャガチャと扉を叩くけど、やっぱり開かない。

「安倍さん、往生際が悪いですよー! 大丈夫です、死にはしません!」

パチンと指を鳴らす音が聞こえた。
するとどこからともなく高橋と新垣が現れ、私の両腕を押さえつける。


「えーっと、今回の魔法はですねぇ、魔術書によるとこれは『ホレ薬』ならぬ
『ホレ魔法』のようで、この魔法をかけられた者は異性だけでなく同性からも
モテモテに……」
「いやー! 詳しく聞きたくないー!!」
「大丈夫です! 私はあらかじめレジストの魔法をかけてありますから、
私には効果はありません!!」
「そういうもんだいじゃないべさー!!」
「いきますよ! ラブ・ポーション!!」
「いやー!!!」
347 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:06


Interlude 2  パニック・マジック



348 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:07
「あ、あれっ!?」

紺野の手から放たれたピンクの霧がやっと晴れたけど、特に身体に異状はない。

「あれ〜? おかしいですねぇ、失敗でしょうか?」

紺野も手を口許にあてて考え込んでいる。
失敗? よかった……助かった……。
349 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:07
「もういいでしょ、紺野!?」
「う〜ん、そうですねぇ、この魔法はもうちょっと改良が必要ですかね……」
「じゃあ、もういい加減に離してよ、高橋、新垣!」

高橋と新垣のほうを交互に見て……フリーズ。
高橋と新垣の目が……熱っぽく潤んで私のほうを見つめてるんですけど……。


「な? な!? なぁっ!?」
「「安倍さ〜ん!!」」
「ぐえっ!!」

左右から同時に抱きつかれる。
それどころか身体に頬をすり寄せてくる。
これってまさか……魔法の効果!?
350 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:08
「あっ、そういえば愛ちゃんと里沙ちゃんにはレジストの魔法をかけてません
でしたね。でも、てことはやっぱり成功したんですね! よかった〜!!」

紺野は見事にこの惨状を黙殺している。それどころか一人で悦に入っている。
私は二人に抱きつかれて身動きがとれない……けど……


「安倍さん! 向こうにベッドがあるんですよ! そこで一緒に……ムフフ!」
「あっ、里沙ちゃん! 抜け駆けはずるいで!!」

こ、これは……やばい!!!
私はなんとか二人を引き離すと、扉を突き破って『紺野の実験室』を飛び出した。



351 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:09

◇     ◇     ◇


「安倍さ〜ん! 逃げないでくださいよ〜!!」
「そうですよ〜! アタシと秘密の花園で愛の営みを!!」
「いやー!!」

ラブラブ光線をまき散らせて私を追っかけてくる高橋と新垣から私は必死に
逃げる。
ヤバイ! このままでは捕まる! 貞操のピンチだ!

廊下を走っていると、前に見知った人影を発見。
部屋からちょうど出てきた圭ちゃんだった。
352 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:09
「あぁ、なっち、紺野は?」
「圭ちゃん、ちょうどいいところに! 助けて〜!!」

出てきた圭ちゃんを部屋の中に押し込み、私も圭ちゃんの部屋に逃げ込む。
鍵をかけると、ドタドタドタッと二人が廊下を駆け抜けていく音が聞こえた。


「ハァ、ハァ、圭ちゃん、悪いんだけど紺野に用事があるんなら自分で行って!」
「ヤダよ、実験台にされるじゃん!」
「なっちはされたんだべさ!」
「まぁ、用事っていっても借りてた魔術書読み終わったから返そうと思った
だけだからいつでもいいんだけどね。のこのこ行っても実験台にされるだけ
だから来てもらおうと思ったんだけど」
「そ、それだけのためになっちを行かせたんだべか!?」
「うん!」

即答ですか。そうですか。プッ殺す、このアマ!!
腰に下げた剣を無意識に抜きかけたけど……
353 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:10
「安倍さ〜ん、どこに行ったんですか〜!?」
「逃げてもむだやで〜!!」
「やばっ!」

また部屋の外から聞こえてきた高橋と新垣の叫び声と足音。
ここもいずれバレそう……どうしよう……。
扉に耳をつけ、外の様子をうかがっていたけど……


「なっち……」

ゾワワワワッ!!
急に首に巻き付いてきた手と、耳元で聞こえた甘ったるい声に、思わず
鳥肌が立った。
ふり向いてみると圭ちゃんが熱っぽい目で私に抱きついている。
354 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:10
「なっち……私ねぇ……ずっとなっちのことが……」
「け、け、け、圭ちゃんっ!?」

ヤバイ、しっかりと魔法が効いてるっ!?
しかもこの状況はとってもマズイ。私は完全に圭ちゃんのテリトリーの中に
いるわけであって……。
ついでに……ごめん、圭ちゃん……とってもキモい!!


「う、うわー!!」

なんとか圭ちゃんも振り払って、圭ちゃんの部屋から飛び出したけど……

「あっ、安倍さん見つけたでー!!」
「安倍さ〜ん!!」

ちょうど高橋と新垣に見つかってしまった。
ついでに圭ちゃんも部屋から飛び出してくる。

「誰か助けて〜!!」

また私は廊下を全力疾走するハメになった。



355 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:11

◇     ◇     ◇


「松浦の次に可愛い安倍さ〜ん! 待ってください〜!!」
「うわ〜!!」

「安倍さん! ウチ矢口さんのことも好きですけど、安倍さんのことも!」
「キャー!!」

「安倍さん、まつのれす! のののものになるのれす!!」
「助けてー!!」

「あ、あの、安倍さん!」
「ごめん、小川、ジャマ!!」
356 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:12
逃げ回ってるうちになんか被害が拡大したみたいで、私はとにかく逃げる、逃げる!
今回の事件の張本人である紺野は、そんな様子を見て「魔法が効いても
ヘタレはやっぱりヘタレなんですねぇ〜」などと言ってメモを取っている。
そんなことしてないで助けんかいっ!!
廊下を走って逃げ続けるけど……

「なっち〜!!」
「「安倍さ〜ん!!」」
「げげっ!!」

撒いたと思っていた圭ちゃんと高橋、新垣も合流し、追っ手は増えるばかり。
こ、このままではいずれ捕まる!!
しょうがないから私は廊下を全力疾走し、自分の部屋に逃げ込む。
少し落ち着いて作戦を考えよう。

とりあえずまずは紺野をひっつかまえないと始まらない。
じゃあいろんなところにお芋を使ってトラップを……。
そんなことを考えていると……
357 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:12
「ん〜? なっちどうしたの?」
「あっ、ごっちん!?」

ベッドがモゾモゾと動いて、毛布の下からごっちんが顔を出した。
ていうかまだ寝てたの……?

「なっちどうしたの? 息切れてるし、なんかやけに外も騒がしいし……」
「あぁ、じ、実はちょっと紺野に……」
「あっ! 実験台にされたんだ? じゃあごとーがなんとかしてあげましょう!」

ごっちんはピョンとベッドから飛び降りた。
358 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:13
「えっ!? できるの?」
「光魔法にはね、魔法の効果を焼き尽くす魔法もあるんだって〜!」

そう言ってごっちんは呪文を唱え出す。
すると私の足下に白金色に輝く魔法陣が浮かび上がった。

「いっくよー! ディスペル・ライト!!」

魔法陣から光が溢れ出す。なんか気持ちのいい光……。
溢れた光が私を包み込んだ。
359 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:13
「はい、オッケー!」
「ほ、ホントに大丈夫なんだべか?」
「たぶん〜。ま、部屋の外に出てみればわかるんじゃない?」
「う、うん……」

おそるおそるドアを開けて外に出てみる。
そこにはさっきまで追いかけてきてたメンバーが勢揃いしてたけど……

「あっ、安倍さん、こんにちわ〜!」
「ていうかウチらなんでこんなところにいるの?」

よ、よかった……ちゃんと魔法が解けたみたい……。
集まったメンバーは頭を抱えながらも解散していく。
どうやら覚えてないみたい。本当によかった……。
360 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:14
「お〜、よかった〜! 成功したんだ〜!!」

ごっちんもその様子を見て嬉しそうに笑ったけど……
んっ? なんか今ちょっと引っ掛かるところが……


「ごっちん……その……『成功したんだ』って……?」
「んあっ!? あぁ、あの魔法さ、ちょっと前にお母さんに教えてもらったんだけど
使う機会なくてさ! で、ちょうど今日なっちが来たから使ってみたんだよね!」
「てことは……なっち『実験台』だべか!?」
「そういうこと〜!」


ニコッと微笑むごっちんに対して、私は脱力してその場に崩れた。

もう実験台はこりごり……。



361 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:15

◇     ◇     ◇


「あ〜あ、罰として三日間門番だってさ〜」
「でもさぁ、あさ美ちゃん、魔法は成功したんやろ? ならその魔法あたしに
おしえてや!」
「う〜ん、いいけどあんまり使えないと思うよ、あの魔法」
「え〜、なんで〜?」
「なんかね、あの魔法って自分が心から好きな人には効果がないんだって。
調べてってわかったことなんだけど」
「え〜!? てことはあの魔法使っても両想いにはなれないってこと!?」
「そういうこと」
「なんや〜! じゃあいら〜ん!!」
362 名前:Interlude 2 投稿日:2004/04/17(土) 13:15
   
363 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/17(土) 13:22
今回はここまでです。
全開とはうってかわってゆるーい感じで。
マッド・サイエンティストならぬマッド・ウィザードな紺野さん大暴走です!

>>338 つみ 様
ありがとうございます!
よしやぐ過去は、一応今回はよっすぃーの過去と言うことで。
矢口の過去はもうちょっとあとになります。
果たしてうまく書けるかどうか……。

>>339 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
よっすぃ〜カッコよかったですか? 嬉しいです! あいかわらず苦手なもんで……(汗
(0^〜^)<なんでぇ?
364 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/17(土) 13:25
>>340 みっくす 様
ありがとうございます!
一応よっすぃーの過去はこんな感じで。
何人かのキャラはこんな感じでちょっとした過去も書いていくかもしれません。

>>341 名も無き読者 様
ありがとうございます!
情景は季節的にこんなんかなぁと、世界観を全く無視してあぁしました……。
なので良い感想がもらえてホッとしました!
365 名前:つみ 投稿日:2004/04/17(土) 14:52
ほのぼのをありがとうです。
最近けっこう悲しいやつが多かったんで心が和みました!
次回も待ってます!
366 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/17(土) 17:51
乙です。
なにやらホッとするお話・・・、良かったですw
でも怖いッスね〜彼女。。。
次も楽しみにしてます。
367 名前:みっくす 投稿日:2004/04/17(土) 23:49
おつかれです。
いやー紺ちゃんいい感じっすね。
次回も楽しみにしてます。
368 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/04/20(火) 20:23
う〜ん、たまにはこーゆーのも(>_<)b
特に、心からスキな人には効かないって所がこれまた深い(*⌒ヮ⌒*)
次もがんばってぇ(>_<)b
P・S 暁=念願が実現した、そのとき。『成功の−には.....』
って意味だそーです(^・^)
369 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:40
〜安倍なつみ〜

「……なっち……なっち!」
「……んっ?」

目を開けるとそこにはごっちんが満面の笑みで、私の顔を覗き込んでいた。
あまりの顔の近さに思わず重なった目をそらしてしまう。


「ど、どうしたんだべ、ごっちん……?」
「どうしたって、今日こそ一緒に秘密基地行くんでしょ!?」
「えっ? あ、そっか!」

ちょっと外を見てみるともう太陽はかなりの高さまで昇ってて。
やっば〜、寝坊した……。私としたことがごっちんに起こしてもらうなんて……。
370 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:40


第7話  再会は突然に



371 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:41
あの戦いのあと、少しのあいだは事後処理で執事としても王宮騎士団団長と
しても超がつくほど多忙な日々……。
ごっちんの事もかまっていられなくて、ごっちんの機嫌は日に日にナナメに
なっていって……。
で、ようやく今日休みがもらえたと思ったら朝寝坊……。
でもごっちんが嬉しそうだからいっか。


「んふふ〜、なっちの寝顔、可愛かったよぉ?」

耳元でそんなことを囁かれると耳がカーッと熱くなる。

「も、もしかしてずーっと見てたんだべか!?」
「うんっ! だってなっちの寝顔なんて滅多に見れるもんじゃないからさぁ!」

前言撤回! 全然よくなかったです……。
うぅ、恥ずかしい……。さっさと起きてよ、私……。


「もうね、すっごい可愛い! なんか赤ちゃんがすやすや眠ってるみたいで」
「だ、誰の顔が赤ちゃんみたいな童顔だべっ!!」
「な、なっち、そこまで言ってない……」
372 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:42
ようやく私の上からごっちんがどいてくれたので、私も起きあがる。
う〜ん、と伸びをしてもう一度外を見る。とってもいいお天気。

「なっちなっち、今日はお仕事ないんでしょ?」
「ごめんねごっちん、今日もお仕事なの」
「えっ……」
「ごっちんのお守りっていうお仕事!」
「えっ?……あっ! コラ〜! ごとーのこと子供扱いしたな〜!!」
「キャ〜!」

一瞬だけ顔が曇ったけど、またすぐ笑顔になってごっちんは私に飛びついてくる。
せっかく起きあがったっていうのに私の体はまたベッドの上に逆戻り。
373 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:42
「一日中お仕事になっちゃうかもよ?」
「いいよ」
「一番ハードかもしれないよ?」
「いいよ。なっちだって楽しいもん」
「んふっ!」

胸元にすり寄ってくるごっちんの頭を優しく撫でる。
ゴロゴロと、まるで猫みたいなごっちん。


「よしっ! それじゃさっそく行こ〜!」

とか何とか思っていたら、急に立ち上がって私の手を引っ張る。

「ちょ、ちょっと待って! なっちにもいろいろと準備が……」

すぐにも走り出しそうなごっちんを引き止めて、私はようやくベッドから降りた。



374 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:43

◇     ◇     ◇


「……静かだねぇ……」
「そうだねぇ……」

ところ変わってここは森の中、私たちの秘密基地。
出かける準備を整えると、今日は森の中を散歩しながら秘密基地へと
やってきた。

草の上に二人並んで寝そべると、丸い空から差し込む暖かな陽の光が
私たちを包み込んでくれる。
久しぶりに時間の流れが緩やかに感じる。
375 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:44
しばらくそのまま日光浴を楽しんでいると、急にその日光がさえぎられた。
ごっちんが私の体をまたいで、こちらを見つめている。
ちょっと目が心配そうな目になっている。

「なっち……怪我とか大丈夫?」
「えっ? あぁ、大丈夫、大丈夫!」

思わずまだ包帯の巻かれている左手を隠すようにして答える。
といっても本当にもうたいしたことないんだけど……。
376 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:45
結局前回の戦いはハロモニランド側の勝利という形で終結した。
でもロマンス王国は一向に和平に応じる姿勢を見せていない。
ここ数日、不気味に沈黙を保ったまま。


「ごめんね。なっちの怪我治してあげられなくて……」
「いいよ。なっちは少し火傷しただけだから。加護とか、なっちよりもっと
重症だった人一生懸命治してくれたんだし。ごっちんの方が参っちゃうべさ」
「……ごとーはなっちを一番に治してあげたかったのに……」
「気持ちだけで十分だよ」
「でも……ごとーがなっちにしてあげられることってこれくらいしか……」
「そんなことないっ!」

ごっちんの悲しそうな顔に思わず叫んでしまった。
ビックリしているごっちんの肩を掴んで、そのまま体を起こす。
377 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:46
「なっちは……ごっちんがいるから戦えるんだよ? ごっちんのこと守りたい
から、怖くても、辛くても逃げずに戦えるんだ」
「なっち……」
「ごっちんはいっつもなっちに勇気をくれてるよ。なっちは信じてるんだ。
なにかを守るための力はどんなものより強いって! ごっちんがいてくれ
ないと……なっちは全然ダメだべ」
「……ありがと。嬉しいよ、なっち」


そっと両手でごっちんの体を抱き寄せる。
ごっちんはたいした抵抗も見せずにそのまま私のほうへ体を寄せ、顔は
私の胸元にうまった。
「んふふ〜」という笑い声なんだかうめき声なんだかわからない声と一緒に、
ぐりぐりと顔をすり寄せられると気持ちいい反面ちょっとくすぐったい。
378 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:46
「さってと、ごっちん、せっかく来たんだし遊ぼうよ!」
「うんっ!」

体を離すとごっちんは満面の笑顔に戻っていた。
先に立ち上がって手をごっちんの方に伸ばす。
ごっちんはドレスの裾をはたいて立ち上がった。

「今までさんざん待たされたんだから、今日は一日中付き合ってもらうからね〜、
なっち!!」
「望むところだ〜!!」

そのまま私たちは緑の草原の中に走り出していった。



379 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:47

◇     ◇     ◇


そのあとは秘密基地の中で走り回ったり、咲いていた花を摘んだり、一緒に
木陰で持ってきたお弁当を食べたりと、楽しい時間を過ごしていた。
ごっちんはずっと笑顔ではしゃぎまくってて。
でもどうやら少しはしゃぎすぎてしまったようで、今は私のひざまくらで
お昼寝中。
朝のお返しってわけじゃないけど、ごっちんの寝顔も見ちゃうよ?
そっと手で髪を梳いてみると、一瞬くすぐったそうに笑った。


「かぁわいぃ」

今度は優しく頭を撫でてみた。
やっぱりちょっとだけニコッと笑ってるみたいに見える。
380 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:47
  ガササササッ!

その時急に入り口の方から音がした。
草木の揺れる音。そっちに意識を集中しつつ、傍らに置いた剣に手を伸ばす。
でも音はすぐに聞こえなくなっていった。どうやら誰かが少しはなれた道を
通っただけみたい。
私もホッと一息ついて剣から手を離す。
381 名前:第7話 投稿日:2004/04/24(土) 11:48
ふぁ〜あ……。
それにしてもこんなにいいお天気だと私も眠くなってきちゃう……。
私もちょっとだけ寝ちゃっていいかな?

呪文を唱えて秘密基地を囲むように結界を張る。
戦いのあと紺野に教えてもらった一番初歩的な結界。
それでも並みのモンスターはこれで入ってこれないはず。一朝一夕にしては
上出来。


起きないようにそっとごっちんの頭を持ち上げ、膝を引き抜くと、私もごっちんと
並ぶようにして横になる。
おやすみ、ごっちん……。夢の中で逢おうね。
ポカポカな陽の光に包まれて、私の意識は遠のいていった。
382 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/24(土) 11:55
今回はここまでです。
最近あまり出番の無かったごっちんようやく書けました。
思いっきりなちごまです! ほのぼのです、今のところ(ぇ

>>365 つみ 様
ありがとうございます!
今回も一応本編でほのぼのです!
やっぱりなちごまはふにゃけたくらいのほのぼのが良いです!

>>366 名も無き読者 様
ありがとうございます!
ホッとしてもらえてよかったです。一応モテなちみたいな感じで。
紺野は……暴走すると怖いってことで!
383 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/24(土) 12:00
>>367 みっくす 様
ありがとうございます!
紺野はこんなキャラも持ち合わせてるってことで(笑
普段は高橋やガキさんに振り回されてるんだけど、たまに他の人を真っ先に振り回すと。

>>368 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
はい、たまにはあんなのも書きたくなります!
なっちはまだあんまり自覚がありません。
でも魔法が効かなかったと言うことは……?
384 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/24(土) 12:00
( ´ Д `)<隠すよ〜!
385 名前:つみ 投稿日:2004/04/24(土) 12:50
ほんわかなちごまありがとうです。
久しぶりに平和な感じでよかったです!
・・・寝ちゃって平気なのかな・・・?
祈りつつ次回まで待ってます!
386 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/25(日) 11:06
更新お疲れ様です。
ほんわか・・・w
何か一箇所気になるトコがある気がしないでもないですが。。。
続きも楽しみにしてます。
387 名前:みっくす 投稿日:2004/04/26(月) 06:47
久し振りなほのぼのとした感じで。
でも、この平和な感じはどれくらいもつんだろう?
次回も楽しみにしてます。
388 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/28(水) 16:41
更新前にちょこっと修正点をば。
前回の更新分の>>381で、5行目に

『戦いのあと紺野に教えてもらった一番初歩的な結界。』

ってあるんですが、ここの『紺野』を『圭ちゃん』に変えます。
つまりなっちは結界を圭ちゃんに教えてもらったってことで。


それでは、第7話・後編いきます!
389 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:42
「……んっ?」

しばらくして目を開けると、まず最初に飛び込んできたのは眩しい太陽の光。
思わずまた目を瞑って顔を傾けると、なんか頭の下に違和感がある。

……あれっ?

おかしく思ってまた目を開けると、次に飛び込んできたのは……

「おはよ〜、なっち!!」
「……ごっちん?!」

いつの間にやら立場逆転。私がごっちんにひざまくらされていた。

そっとごっちんが私の頭を撫でる。
それと同時に私は飛び起きた。
390 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:43
「ご、ごっちん!? いつからこんなふうに?」
「ん〜、ちょっと前から。なんかいっつもひざまくらしてもらってるからたまには
してあげよっかなぁ、って思って。なっちも気持ちよさそうに寝てたしねぇ!」

ごっちんの手がそっと私の顔を包んでくる。
ちょっと力が入ると、せっかく起きあがったというのに私の頭はまたごっちんの
ふとももの上に引き倒されてしまった。
顔がカーッと熱くなっていく。


ごっちんは身をかがめて私の顔をじっと覗き込んでくる。
ごっちんの瞳には引力じみた不思議な光が宿ってて、私は目をそらせ
なかった。
391 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:44
「ねぇ、なっち……ごとーのことどう想ってる?」
「えっ?」

急に囁かれた言葉に、思わず返答につまってしまう。
ごっちんの顔はあいかわらず微笑んでいたけど、深い瞳の奥は少し不安に
揺れてるような感じがした。


「どうって……ごっちんはお姫様だし、だからなっちはごっちんの事絶対に
守りたいって……」
「そうじゃなくて!……そうじゃなくて……」
「ごっちん……?」
「お姫様とか執事とか騎士団長とかそんなの関係なくて!…………ねぇ、
なっち……ごとーはなっちのこと……」
「……ごっちん?」
392 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:44
  ガサッ!!

その時また秘密基地の外から音が聞こえた。
でも今度は入り口とは逆の方向、森の奥から。
しかもその音は近づいてきている。そして感じる……殺気!

急いで起きあがって剣をとる。
ごっちんの前に立ちふさがり、迷うことなく鞘を払った。


「な、なっち!?」
「ごっちん……このまま動かないで……」

その時張ってあった結界がかき消された。
近づいてくる音の方に剣を向けて構える。

木々の隙間から飛び出してきたのは、両手に細身の剣を持った女剣士。
蒼いマントをはためかせ、顔には白い仮面を付けている。
393 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:45
  キィン!

突き出された剣を受けとめる。
けれどすぐさま別の剣が襲いかかってくる。
受けとめてた剣を弾くと同時に後退して距離をとる。

ロマンス王国の刺客だろうか?
まさか単身乗り込んでくるなんて……。
394 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:46
敵はすぐに動いた。
振り下ろされる剣。それを受けとめるともう片方の剣が間髪入れずに
襲いかかってくる。
今回もなんとかかわすけど、これじゃ防戦一方だ……。


「ふぅー……双剣…か……」

剣をかまえなおして今度は私から向かっていく。
でも振り下ろした剣は相手に届くことなく、受けとめられた。
そして定石通り、もう片方の剣が横に振られる。

ここだ!
今度は後退せず、逆に間合いを一気につめて、懐に潜り込む。
そしてがら空きのボディに膝蹴りをたたき込んだ。


「ぐっ!」

苦悶の吐息とともに、相手の体が吹っ飛ぶ。
振られた剣は私のすぐ前を通りすぎていった。
395 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:47
すぐさま追撃するためにまた向かっていく。
体勢を立て直す暇なんか与えない。
まだ地面にうずくまっている身体に向けて、剣を振り下ろした。……けど……

「えっ!?」

剣が捉えた瞬間に、目の前から身体が消えた。
あわてて辺りを見回すと、それと同時に私の身体に幾筋もの痛みが走る。

「うぐっ……」

深くないけど、身体のいたるところに小さな傷がついている。
今までは手を抜いてたってことか……。その気になればいつだって殺せると……?
振り返るとそこには口許に微笑をたたえて、二本の剣を持っている敵が立っていた。


身体を動かすと傷がちょっと痛むけど、しっかりと剣を構えなおす。
上等……。私だって本気で行くよ!
そっと左手に魔力を集めていく。
396 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:48
敵のほうが先に動いた。
さっきと同じように一瞬で目の前から消える。ものすごい速さ。
でも今回は意識を集中してたので、何とか気配で追える。
背後から繰り出された斬撃を、何とか振り向きざまに剣で受け止めた。
それと同時に魔法を解放する。


「ウィンド・スフィア!!」

放った風の塊は敵の右手から剣を消失させた。
そっちに気を取られている間に、剣をひねり、左手の剣も弾き飛ばす。

「くらえっ!」

剣を両手に持ちかえて、振り下ろす。もう身を守るものはない!

「くっ!」

でも直撃の瞬間、またしても身体が消えた。
どうやら後ろに跳躍して、直撃をかわしたみたい。
でも……
397 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:49
  ピシッ!
「っ!?」

鋭い音とともに、仮面に一本の線が入った。
あわてて仮面を抑えるけれど、抑えられたのは割れたうちの片方で、もう
片方が地面に落ちた。


「あっ!」

私が反応する前に、後ろにいたごっちんが先に反応した。
ふり返ってごっちんの顔を見る。
ごっちんの顔はニパッと輝いていた。
398 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:49
「もしかして……いちーちゃん!?」
「えっ!?」

また向き直ると、仮面の下の口が緩やかなカーブを描いた。
そして残った仮面も外される。


「久しぶり、後藤! 十……何年ぶりだっけな?」



399 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:51

◇     ◇     ◇


「いちーちゃ〜ん!!」

ごっちんが私の横をすり抜けていき、『いちー』さんに飛びつく。
『いちー』さんも穏やかな笑顔でごっちんを受けとめている。
私はその様子をボーっと見ていたけど……


「! ダメだよ、ごっちん! 危ないから!!」

気を引き締め、剣をかまえ直す。
でもごっちんは『いちー』さんに抱きついたまま、こっちを向いた。
その顔が輝いていて……いつもは嬉しいごっちんの笑顔なのに、今日は
なぜか胸がモヤモヤしてた。
400 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:52
「だいじょぶだよ、なっち! いちーちゃんはごとーの幼なじみなんだよ!」
「えっ? 幼なじみ……?」
「戦争中に離ればなれになっちゃったんだけどさ……いちーちゃん、今まで
どこで何してたんだよー!」
「ん〜、ちょっとねぇ、いろんなところを旅してたんだけど、ハロモニランドの
近くまで来たから久しぶりによってみたんだよ。しっかし後藤も変わんないねぇ!」
「なんだよ、いちーちゃんだって全然変わってないじゃないかぁー!!」

ごっちんと『いちー』さんのやりとりを見ていると、なぜか胸のモヤモヤは
膨らむばかり。

なんか……おもしろくない……。

とはいえどうやら危険はなさそうなので、カチンと剣を納める。
するとその音に気付いたのか、ごっちんと『いちー』さんが私の方を向いた。
401 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:52
「あっ、自己紹介が遅れたけど、アタシは市井紗耶香。よろしくね!」
「えっ? あっ、安倍なつみです。ハロモニランドの執事兼騎士団長」
「へぇ、騎士団長! どおりで、いい腕してるね!」
「そっちこそ」

すっと差し出された手を握る。
もう殺気は微塵にも感じられない。
ごっちんはそんな様子を嬉しそうに見ていたけど……
402 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:53
「あっ、そーだ、なっち! いったんお城にもどろっか?」
「えっ?」
「いちーちゃんにお城案内したいしさ。いちーちゃんも懐かしいでしょ?
よく子供の頃忍び込んでたしねぇ!」
「後藤が来いっていったんでしょ? 苦労したんだよ、ホントに!」
「……わかった。それじゃ帰ろうか?」

ココロはモヤモヤしたまま、アタシは秘密基地の入り口に向かって歩き出す。
ごっちんは市井さんと楽しそうに話しながら、後ろをついてきた。


なんだろう……なんでこんなにも気にかかるんだろう……・



403 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:54

◇     ◇     ◇


そのまま森の中を歩き、お城の裏手まで帰ってきた。
やっとの思いで森から抜け出すと……

「あれっ?」

そこに座り込んでる一つの後ろ姿。
あの後ろ姿とポニーテールに結んだ髪はもしかして……


「高橋? どうしたんだべさ?」

ビクッとしてふり向いた高橋の瞳からは大粒の涙がこぼれていて、
こっちのほうがビックリしてしまった。
404 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:54
「安倍さん……」

涙も拭おうとせず、立ち上がるとこっちに向かって駆けてくる。
そしてそのまま私の胸に飛び込んできた。


「た、高橋!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

普段は無邪気で天真爛漫な高橋が今じゃ見る影もない。
体を震わせ、涙を流しながら、何かに対して必死に謝っている。
高橋がとても小さく感じて思わずそのまま抱きしめた。



……一体なにがあったの?
405 名前:第7話 投稿日:2004/04/28(水) 16:55
   
406 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/28(水) 17:03
今回はここまでです!
いやもうとっても悩んだ場所であります。そりゃあもういろいろと(謎

>>385 つみ 様
ありがとうございます!
ほんわかなちごま……だったんですけどね(汗
どうやら寝ちゃっても平気だったようです!

>>386 名も無き読者 様
ありがとうございます!
ほんわかでした!(過去形!?
気になる場所は、たぶんそのうちつながっていくと思います。

>>387 みっくす 様
ありがとうございます!
平和な感じ、もちませんでしたねぇ……(マテ
もうちょっと書いておけばよかったかも……。
407 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/04/28(水) 17:04
(●´ー`)<隠すべさ!
408 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/28(水) 17:23
更新お疲れ様です。
過去形!?
てかこりゃまた突然登場しましたねこの方。。。
なっち、他に気に掛かるコト無いのかオイ・・・。
とかボヤきつつ、次回も楽しみにしてます。
409 名前:つみ 投稿日:2004/04/28(水) 19:30
更新お疲れです。
あの人でしたか・・・
なっちさんの事も気になりますがやはり最後に気になることを・・・
次回まで待ってまっす!
410 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/28(水) 21:19
おおう??これはもしかしてなっちと・・・が・・
このカップリングは新しいので期待してますよ!!!
411 名前:みっくす 投稿日:2004/04/29(木) 05:51
更新お疲れ様です。
あの人がいましたね。
いろいろこれから大変そう・・・
それにしてもなにがあったのかな。
412 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:24


第8話  あなたに教えられたこと



413 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:26
〜紺野あさ美〜

「愛ちゃん、まずいってば!」
「大丈夫だって、大丈夫!!」
「大丈夫じゃないって! 里沙ちゃんも!」
「ん〜、ちょっとだけなら平気でしょ」


お城の裏からこそこそと出て、すぐに森の中へと入る。
先頭を走っているのは愛ちゃん。そのあとを里沙ちゃんがピッタリと追い
かけていて、私も里沙ちゃんのあとを追う。
本当は今日、5番隊は国内の見回りだったはずなんだけど……
414 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:28
『ねぇ、国内見回るよりもいっそのことロマンス王国に潜入したほうがいい
んでない?』
『ぇえっ!? ダメだよ、危ないよ!!』
『でもこの前の戦いでだって敵はあたしたちの魔法に手も足も出なかった
じゃん! だいじょーぶだよ、だいじょーぶ! ちょっとくらい偵察に行った
って! そうすれば相手の様子だって一目瞭然じゃん!』
『う〜ん、でも確かにそうかもねぇ』
『り、里沙ちゃんまで!』
『『ねっ! 行こうよ、あさ美ちゃん!!』』


というわけで結局強引に二人に押し切られて、今(無断で)ロマンス王国まで
向かっている……。
もしばれちゃったら私の責任問題になるのかなぁ……?
ていうか私一応隊長なんだけど……。
415 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:29
「よし、もう少しで森を抜けるよ!」

愛ちゃんは森の中にはいってからも道を知っているので私たちを先導している。
里沙ちゃんもそのあとに続いて、私が里沙ちゃんの背中を見失わないように
追っている。

うぅ……やっぱり愛ちゃんのほうが隊長に向いてる気がするよぉ……。
行動力あるし、決断力もあるし……ブツブツ……。


すると急に前を走っていた里沙ちゃんが立ち止まった。

「わっ!」

普段からとろい私は急なことで反応しきれず里沙ちゃんの背中に突っ込んで
しまった。

「ご、ごめん里沙ちゃん。でもどうしたの、急に立ち止まって?」

里沙ちゃんの肩越しに前を見てみると、そこには……
416 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:30
「どこいくのれすか?」
「の、のんちゃん!?」

森の出口にいたのは2番隊隊長ののんちゃんだった。
愛用の武器である槍を持って愛ちゃんと向かい合っている。


「の、のんちゃん、何でここに……?」
「どこにいくのれすか?」
「え、えっとぉ……それは……」

のんちゃんに詰め寄られて愛ちゃんはしどろもどろになっている。
まさか自分たちの行動がバレてたなんて思ってもみなかっただろう。
私はてっきりのんちゃんが私たちの行動に気づいて止めに来たんだと
思ったけど…
417 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:32
「……ののもつれてってほしいのれす……」
「えっ!?」

急に弱々しく聞こえたのんちゃんのつぶやきに、思わず声を上げて驚いて
しまった。
さっきまで対峙していた愛ちゃんもビックリ顔になっている。(あっ、いつもか……)


「……ののはやっぱり信じられないのれす……。あれが矢口さんだなんて……。
だからもう一度この目で確かめたいのれす……」
「そっか……」

チクリと胸が痛む。
私は騎士団に入ったのが遅いから矢口さんと直接の面識はないし、今回の
戦いでも見てはいないけど……
元2番隊の隊長でのんちゃんや加護ちゃんのお姉さん的存在だったって
聞いてる。

でも今は敵国であるロマンス王国の騎士団長……。そして今回の戦いで
加護ちゃんを斬って重傷を負わせた張本人……。
加護ちゃんは姫様の魔法のおかげで一命を取り留めたけど、まだ意識が
戻らない。
418 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:33
「わかった! 一緒に行こう、のんちゃん!!」
「あ、ありがとう、愛ちゃん!」
「ね、いいよね、あさ美ちゃん?」
「ふぇ!?」

のんちゃんと手を握りあっていた愛ちゃんが急に話をこっちにふる。
いや、「いいよね?」って、いいわけがないんだけど……。
連れてく連れてかないの前に私たちものんちゃんも完全に勝手な行動
してるわけだし……。
419 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:35
「ねぇ、あさ美ちゃん! のんちゃんの気持ちもわかるでしょ?」
「わ、わかるけど、でも……」
「アタシからもお願い! それにのんちゃんがいればもっと心強いよ!
のんちゃん強いし!」
「り、里沙ちゃんまで……」
「お願い、紺ちゃん! 辻一人じゃダメなのれす。辻は魔法使えないし、
忍び込むとかって苦手だから……。でもどうしてももう一度矢口さんに
会いたいのれす!!」
「うぅ……」

三人同時に迫られてしまい、もともと押しに弱い私は頷くしかなかった。


「よっしゃー! じゃああさ美ちゃんの了解ももらったことだし、一気に行くよー!」
「「おー!!」」

再び愛ちゃんを先頭にして走り出す。
私も気は乗らないけど前を走る三人を追いかける。


うぅ……だから隊長は私なんだよ、愛ちゃ〜ん!!



420 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:36

◇     ◇     ◇


その後はそのまま順調に森を抜けた。
私ももう諦めがついた……。どうせ愛ちゃんには敵わないし……。
偵察して、あとは矢口さんに会うだけだし……なにも全面戦争しに行くわけ
じゃないんだから……。
そう自分に言い聞かせて……。


「よしっ! じゃああさ美ちゃん、よろしく!」
「はいはい……」
「えっ? なんれすか?」
「いいから待ってて! 楽しいよ〜!」

里沙ちゃん……楽しんでる場合じゃないんだけど……。
そう言い返せない自分にちょっと凹む。
421 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:36
「あさ美ちゃん、四人も一気に大丈夫?」

そう思ってるならやらせないでよ……。
それもやっぱり言い返せないんだけど……。

ほんとはロマンス王国のお城まではけっこうかかるんだけど、当然ながら
そんなに時間をかけてらんない。
かけたら当然ばれて私の責任問題になるから……やっぱり愛ちゃんの計画に
乗るしかなくって……。


「大丈夫。ちょっと待ってて……」

自己嫌悪に陥りながらも呪文を詠唱していく。
手の中に集まった魔力が周囲の大気と呼応して風を集めていく。
422 名前:第8話 投稿日:2004/05/08(土) 15:37
「エンゼル・フェザー」

集まった風の塊は、四つに分裂してあたしたちの背中にそれぞれ取り付く。

「な、なにこれっ!?」
「まぁまぁのんちゃん、落ち着いて」

次の瞬間、風の塊は風で作られた羽根に姿を変えた。


「やっほ〜! それじゃ行くよ〜!!」

さっそく羽根を羽ばたかせて空へと昇っていく愛ちゃんと里沙ちゃん。
遊びに行くわけじゃないんだけど……あの二人はわかってるのかなぁ?
私もおたおたしているのんちゃんの手を取って空へと飛び立つ。


「う、うわっ、浮いてる!?」
「のんちゃん、のんちゃんの意志で羽根は操作できるようになってるから
のんちゃんも飛べるよ?」
「わ、わかったから絶対手離さないで!!」
423 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/08(土) 15:46
今回はここまでです!
そして紺ちゃん、誕生日おめでとうです。(遅いですが)
えーと、一応7話と同じ時間帯で、別サイドのお話です。

>>408 名も無き読者 様
ありがとうございます!
ちょっと唐突でしたが、この人のお話はまたあとで。
なっちは……まぁ、なっちですから(笑

>>409 つみ 様
ありがとうございます!
今回から一応7話の別サイドになります。
あの人登場したんですけど、しばらくは出てこないかも……。
424 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/08(土) 15:49
>>410 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
カップリング要素は特に含めたつもりはなかったんですけど……。
う〜ん、善処します……。

>>411 みっくす 様
ありがとうございます!
あの人出しました。いろいろ葛藤がありましたが。
何があったかはこれから明らかにしていきます。
425 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/08(土) 15:51
川o・-・)ノ<隠します! 17才です!
426 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/08(土) 21:48
更新お疲れ様です。
おやコレはまた面白そうな展開に。。。w
凹んでる彼女が可愛いデス。
続きも楽しみです。
427 名前:つみ 投稿日:2004/05/08(土) 23:57
非常に気になる続きです・・・
7話とのからみから想像するとすこし心配ですね〜
いい結果を期待しつつ次回まで待ってます!
428 名前:みっくす 投稿日:2004/05/09(日) 08:59
更新おつかれです。
彼女らしさがでていて可愛いです。
続きがかなりきになりますね。
次回も楽しみにしてます。
429 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/12(水) 22:40
続き気になりますね・・・。
お気に入りに登録して見てます。
更新待ってます。
430 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:53
ロマンス王国のお城も、ハロモニランドのお城と同じように裏手に森が
広がっていた。
なので私たちはそこから侵入することにした。
空から森の中へと降り立つ。地面についた瞬間に羽根は消え去った。


「でも警備が手薄でよかったねぇ。全然敵に会わないし」
「そうだね。あっ、ほら、お城が見えた」

深緑の木々の切れ間からうっすらとお城が見えてくる。
もうそんなところまで迫っているというのに、私たちは不気味なほど順調に
進んでいた。
普通の状態だったらともかく、今は一応交戦中なのだ。いくらなんでも
不用心すぎるような……。

そう考えながら走っていると、急に辺りの空気が変わった。
魔力の異状を感じる……。これって……
431 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:53
「あっ! 愛ちゃん、ストップ!!」
「えっ!?……ふぎゃっ!!」

私の制止も間に合わず、愛ちゃんはどうやら鼻の頭をぶつけたみたいで
後ろに転んだ。

「な、なにこれぇっ!?」

鼻を押さえて痛がる愛ちゃんの横を通りすぎて手を伸ばす。
するとそこはなにもない空間なのに手に抵抗を感じた。


「えっ!? これって……」

愛ちゃんもおそるおそる手を伸ばして見えない壁に触れている。
これは……
432 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:54
「これって……結界?」
「うん……そうみたいだね」

里沙ちゃんも同じように手を伸ばして、結界をぺたぺたと触っている。


「結界って……てことは中に入れないってことれすか?」

のんちゃんが不安そうに眉をひそめているけど……

「大丈夫だよ! オーバーライトと同じ要領で消せるから。ねっ、あさ美ちゃん」
「うん。ただ結界ってのは術者のクセがかなり反映されるからちゃんと解析
しないとしょうがないけどね」
433 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:54
「アタシも手伝おうか、あさ美ちゃん? 難しいんでしょ、結界は」
「大丈夫だよ、里沙ちゃん。私に任せて!」

里沙ちゃんを制して前に出る。
結界ってのは術者のクセが顕著に表れるから、そのクセと同じように魔力を
組み立ててぶつけないとかき消せない。
弱い結界なら無理やりこじ開けることもできるんだけど、どうやらこれは
けっこう強力な結界だ。
それはパズルのようなもの。ちゃんとしたピースを見つけないとはまってくれない。
難易度はかなり高いけど……大丈夫なはず!
そっと手を伸ばしてもう一度結界に触れ、結界の解析を始めるけど……
434 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:55
……えっ!?
思わず手を離してしまった。
そこに張られた結界は、私の使う結界とまったく同等なもの……。
どういうこと? なんで私と同じ結界が……。


そこまで考えたとき一つの可能性にぶつかった。
まさか……。
冷や汗が一筋頬を伝った。

もう一度結界に触れて確かめてみる。
やっぱり……まったく同じだ……。
『私と同じ』じゃない! 『私が同じ』なんだ!!
思わず結界から飛び退いた。
435 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:56
「どうしたの? あさ美ちゃん……」

愛ちゃんたちが駆けよってくる。でも今は悠長に解説している暇はない。


「ダメっ! 今すぐここから離れるよ!!」
「えっ? な、なんで?」

三人とも驚いて困惑している。
でも……本当に今は話している暇もないんだ。


「早く! 気付かれる前に!!」
「な、なんでよぉ、せっかくここまで来たのに!」
「そうだよ、あさ美ちゃん。一体どうしたの?」
「ののは矢口さんに会うまでは帰らない〜!!」
「いいから!!」

三人を押して強引にこの場を去ろうとしたけど……
436 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:57
「あらら、こんなところになんの用?」

不意に背中から聞こえた声に体が固まった。
聞き覚えのある声。やっぱり……


「だ、だれっ!?」

三人とも戦闘態勢をとって身構える。でも私は振り向くことさえできずに
固まったままだった。


「ん〜、カオリは飯田圭織って言うんだよ。知ってる? これでもけっこう
有名なんだけどなぁ〜」
「い、飯田圭織、って……」
「だ、誰れすか?」
「……世界最強の魔法使いだよ……」
437 名前:第8話 投稿日:2004/05/14(金) 11:57
そう、飯田圭織。
世界中、いや、歴史上でも最強と謳われている伝説の魔法使い。
その名前は魔法を使うもののあいだで知らない人はいないだろう。
そして……





「あら? 久しぶりだね、紺野。元気にしてた?」

「……お久しぶりです……師匠」

438 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/14(金) 12:05
短いですが、今回はここまでです。
8話はちょっと長めになりそう……。
サクサク更新できるように頑張ります。

>>426 名も無き読者 様
ありがとうございます!
まだちょっとそんなに動きがありませんでしたが、一応土台はできた……ハズ。
凹んでる可愛い彼女とはまた別の彼女も見せられればなぁ、と思います。

>>427 つみ 様
ありがとうございます!
そしてもうちょっと引っぱります!(マテ
7話の終わりに結びつくにはけっこうかかるかも……。
439 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/14(金) 12:08
>>428 みっくす 様
ありがとうございます!
一応紺ちゃんは普段はあんな感じで。
暴走すると凄いことになりますが(笑

>>429 紺ちゃんファン 様
ありがとうございます!
そしてお気に入りなんて! 恐縮です。
続きは……もうちょっと続きます(マテ
440 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/14(金) 12:09
川'ー'川<隠すやよ〜!
441 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/14(金) 16:57
更新乙彼サマです。
こ、これは!?
う〜ん、次回どうなってしまうんでしょうか?
さらに楽しみですw
442 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/14(金) 20:11
作者様、更新ごくろうさまです。
飯田さんが紺野さんの師匠!?う〜ん・・・わかりませんねぇ・・・。
つづきへの期待大です!!
443 名前:みっくす 投稿日:2004/05/14(金) 20:52
更新おつかれさまです。
おお、意外な展開。
そんな繋がりがあったのですね。
次回も楽しみにしてます。
444 名前:名も無き遊び人 投稿日:2004/05/17(月) 21:33
お久しぶりです(*⌒ヮ⌒*)ゞ
前の話ですが、双剣士でてきましたねぇ(≧∀≦)
そして、かおりんがまさかココででてくるとは( ̄□ ̄;)
う〜ん...気になる!!
次回もがんばってぇ(>_<)b
445 名前:つみ 投稿日:2004/05/21(金) 14:30
意外な関係がまた・・・
いい方向に向かう事を予想しつつ次回まで待ってます!
446 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:12
「飯田さん! なんで殺したりしたんですか!?」
「ん〜?」
「相手はもう戦える状態じゃありませんでした! 負けだって認めてました!!
なのになぜ止めを刺す必要があったんですか!!」


"最強"の名を狙う挑戦者。
その挑戦者を完膚無きまでに打ちのめした飯田さんは、命乞いをする相手に
止めを刺した。
447 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:13
「ケガはやがて回復する。人の気持ちもすぐ変わる。一度敵と認めたら
殺さないと、次に殺されるのは自分だよ」
「ですが……」
「強さってのはどれだけ人を殺せるかってこと。力ってのは殺人術。どんな
綺麗事を並べても本質はそういうことだよ。それは魔法にも当てはまる」
「私は……そうは思いません! 私が強くなったのは……その力で大切な
人を守りたかったからです! もう二度と……大切な人を目の前で亡くしたく
ないから! 飯田さんは私を殺人兵器にするために魔法を教えてくれたん
ですか!? 人を殺させるために強くしてくれたんですか!?」
「……まぁ、結論を言えばそういうことだね」
「だったら……だったら私はそんな強さはいらない!!!」
448 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:13
そしてそのことで飯田さんと言い争いをしてケンカ別れ。
私は飯田さんのもとを飛び出した。


「紺野、いつかまた逢ったら、その時は見せてもらうよ。紺野が理想だけで
どれだけ強くなれたのか」
「……今までお世話になりました、師匠……」



449 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:16

◇     ◇     ◇


「ファイアー・ボルト!」
「うわっ!!」

指先から放たれる炎の塊。
なんとかよけ続けるけど、飯田さんは呪文の詠唱無しに連射してくる。

魔法のショートカット。
魔法の発動には大きくわけて三段階。
魔力を集める、詠唱による魔法構築、発動。
ショートカットは第一段階と第二段階を同時にやってしまうことで、発動までの
時間を短縮できる高等技法だ。
術者のレベルによってできる魔法とできない魔法があるし、絶対にショート
カットできない魔法もある。
どの場合でも威力はかなり落ちてしまうが、それでも飯田さんの魔法は……
私の魔法と同じくらいの威力を保っている……。
450 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:17
「まだまだ、次はこれだよ。アイス・ニードル!」
「くっ! アンチ・シールド!」

なんとか愛ちゃんたちの前に体をいれ、対魔法用のシールドを形成して、
放たれた氷柱を遮断する。

「飯田さん! どうしてですか!? どうしてロマンス王国に味方するんですかっ!?」
「ん〜、別に味方してるわけじゃないけどね。ただ、今カオリはロマンス王国に
居候させてもらってるからさ。ただ飯食べてるだけってのも悪いから少しは
働かないとね」

再び放たれる氷柱。今度もなんとか防御に成功する。

「それに言ったでしょ、別れたときに。紺野が理想だけでどれだけ強くなったか
見せてもらう、って。見せてよ紺野、カオリに、今の紺野の力を。あの時の
紺野の思いがどれほど愚かなことだったか思い知らせてあげる」

ゾクッと背筋に寒気が走った。
おそらく飯田さんの力に敏感に反応したんだと思う。
451 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:18
「フレア・ブラスト!」

今度はファイアーボルトの数倍はありそうな光球が放たれる。
シールドで防御するけど、一発一発がシールドを通して衝撃が伝わってくる。
里沙ちゃんもシールドを張り、愛ちゃんとのんちゃんを守っているけど、
あっちもかなり苦しそう。
なんとか持ちこたえていると、今度は足下に魔法陣が広がった。

「フレイム・ウォール!!」
「うわっ!」
「キャッ!!」

魔法陣から吹き出す炎柱。私の背後で愛ちゃんたちの悲鳴が響いた。
まさか魔法を二つ同時に使えるなんて……。
452 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:19
「くっ!」

シールドをといて魔法陣を組み立てる。
その間にも襲いかかってくる光球と炎柱が私にダメージを与える。
でも魔法の構築をやめるわけにはいかない。私はともかく、愛ちゃんたちは
もたない。


「オーバーライト=フレイム・ウォール!!」

魔法陣を重ねてかき消す。
なんとかうまくいって、足下の魔法陣は消えたけど、安心した瞬間に光球が
襲いかかってきて、私の体は後方に吹っ飛ばされた。
453 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:20
「うわっ!!」
「あさ美ちゃん!!」

愛ちゃんと里沙ちゃんとのんちゃんが駆けよってくる。
でもダメだ……このままじゃ……みんな死んじゃう……。
またシールドを張って襲いかかってくる光球をさえぎる。


「愛ちゃん、里沙ちゃん、のんちゃん!」
「なにっ!?」
「ここは私が食い止めるから……みんなは早く逃げて!」
「えっ……!?」

そうするしかない。ここにいてもみんな殺されるだけだ……。
私がどれくらい飯田さんを止められるかわからないけど、せめて逃げる
時間くらいは作る。
それに……
454 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:20
「アハハ、紺野はあいかわらず優しいんだね」

嵐のように乱れ飛んでいた光球がピタッとやんだ。
私もシールドを解除して息を整える。


「言っちゃえばいいじゃん、紺野。あんたたちは足手まといなんだ、ってね」
「えっ!?」
「・・・・・・」

飯田さんが淡々と残酷に述べる言葉。
……なにも言い返せなかった……。
飯田さんは私の後ろにいる愛ちゃんたちを指さしてさらに続ける。

「あんたたちがいなければ紺野はわざわざフレイムウォールをオーバーライト
する必要もなかったし、あんたたちを守るためにシールドを張り続ける必要も
なかった。避けて攻撃に転ずることもできたはずなのに、あんたたちを守る
ために防御に徹した。自分が傷ついてもね」
455 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:21
「……そうなの……あさ美ちゃん……?」

里沙ちゃんの弱々しい声が聞こえた。
でも私はふり返ることもできなかった。

「……早く逃げて。……ここは私に任せて……」


「……くっ!」
「あっ、里沙ちゃん!」

ようやくふり返ってみてみると、里沙ちゃんが愛ちゃんの手を掴んで走り
去っていくのが見えた。
ごめん……ごめんなさい……。
456 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:22
「のんちゃんも早く逃げて!」
「いやれす!」
「殺されちゃうよ! 早く逃げて!」
「殺されちゃうのは紺ちゃんのほうじゃん! あの人は紺ちゃんの師匠で
最強の魔法使いなんでしょ!? だったら紺ちゃん一人で敵うわけないじゃん!」

グッと槍を握りしめて飯田さんへと向かっていくのんちゃん。
なんとか止めようとしたけど、伸ばした手は空を切った。

「ののはこれでも2番隊隊長れす! それに矢口さんに会うまでは絶対諦めない!!」

放たれる炎の球を器用にかわして前に進んでいくのんちゃん。
だんだん飯田さんとの距離が縮まっていくけど、飯田さんはまだ余裕たっぷりの笑顔。
457 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:23
「くらえっ!」

のんちゃんは攻撃範囲に入ったところで槍を振るったけど、飯田さんは
体を引いて難なくかわした。
かわしているわずかのあいだでも飯田さんの手には魔力が集まっている。
すっと飯田さんが手をかざした。その先にはのんちゃんの無防備な体。


「ゴッド・ブレス!!」
「うわっ!!」

急に突風が吹いたかと思うと、のんちゃんの体は木の葉のように吹き飛ばされた。

「のんちゃん!!」

吹っ飛んでくるのんちゃんを受けとめる。
458 名前:第8話 投稿日:2004/05/21(金) 17:23
「大丈夫、のんちゃん!?」
「へ、平気! それより、あれ!」
「えっ?」

のんちゃんが指さす方向を向くと、そこには飯田さんの姿。
頬から一筋の血が流れている。
飯田さんもそれに気付いたようで血を手でぬぐい取った。


「ののだって一応隊長なんだから。足手まといにはならないよ」
「のんちゃん……」
「だから紺ちゃん、一緒に戦おう!」
「……わかった!」
459 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/21(金) 17:31
今回はここまでです。
ちょっとこれからは魔法中心のバトルになりそうです。上手く書けるかどうか……。

>>441 名も無き読者 様
ありがとうございます!
結局はこういう展開になりました!
一応ご希望に添えられたでしょうか?

>>442 紺ちゃんファン 様
ありがとうございます!
この師弟関係はけっこう最初っから決めてたものです。
なんとなくリアルでも雰囲気が似てるような感じだし?
460 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/21(金) 17:37
>>443 みっくす 様
ありがとうございます!
この繋がりにも一応ストーリーを考えてます。
ちょこっと書きましたけど、そのうちもうちょっと出てくるかと。

>>444 名も無き遊び人 様
ありがとうございます!
双剣士は言われたときビックリしました(笑
なんで分かったんだぁ!? と。

>>445 つみ 様
ありがとうございます!
意外な関係はこんな展開になりました(汗
どちらかといえば……悪い方向?
461 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/21(金) 17:40
( ´D`)<隠すのれす!
462 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/21(金) 18:25
更新乙彼サマです。
よっしゃぁ!バトルだぁ!!(喜
いやもーワクワクですw
続きも楽しみにしてます。
463 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/21(金) 21:20
おお〜!!カオリン強いなあ・・・。
紺ちゃんとカオリン・・・そんなことがあったとは!!
のんちゃん、えらいっすねぇ。
この先がますます気になりました!!
いつもどうり次回への期待大です。
作者さま、これからも頑張ってください!!
464 名前:つみ 投稿日:2004/05/21(金) 21:40
バトってますね〜♪
楽しみにしてます!
師匠を超えるんだ!こんこん!
465 名前:みっくす 投稿日:2004/05/21(金) 21:45
更新おつかれさまです。
魔法バトルいいかんじですね。
かなり興奮気味のおいらです。
紺ちゃんがんばれ。
次回も楽しみにしてます。
466 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:00
二人で飯田さんに対峙する。
のんちゃんは槍を構えて。私は魔力を手に集中して。

「のんちゃん! 少しの間時間を稼いで!!」
「おっけー!!」

のんちゃんが飛び出す。
それと同時に私も魔法の詠唱を始める。
飯田さん相手じゃ生半可な魔法は通じない。いや、もしかしたら私の使える
魔法のほとんどは効かないかもしれない。
私の魔法は飯田さんから学んだものだから。
だけど、それなら……
467 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:01
「はぁっ!!」

のんちゃんの気合に満ちた怒号が聞こえる。
のんちゃんの槍が旋回し、飯田さんへと向かっていく。
飯田さんものんちゃんの槍を器用に捌いているけど、もともと武術はそんなに
得意じゃない人だからだんだん余裕がなくなっていってる。


「あぁ、もう! うっとうしいわね!」

のんちゃんの槍をかわしたと同時に飯田さんの体が沈む。
そして地面に当てられた手から魔力が地中に流れ込んでくのがわかった。
468 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:02
「ガイア・クラッシュ!」
「! うわっ!!」

突如炸裂した地面。
その爆風に当てられて、のんちゃんの体が再び吹っ飛んできた。
あわてて駆け寄ろうとしたけど……

「紺ちゃんは魔法に集中して! のののことはいいから!!」

のんちゃんの言葉で制される
のんちゃんは槍を拾ってまた飯田さんに向かっていこうと立ち上がったけど
その時にはすでに飯田さんの前に蒼く輝く魔法陣ができあがっていた。
469 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:03
「ダーク・ブリザード!!」

魔法陣から放たれる氷の礫。
一つ一つの粒こそ小さいが、それらが無数に集まって、まるで一つの大きな
壁のように襲いかかってくる。
思わず目を瞑ってしまったけれど……どういうわけか体のそばを氷の粒が
通りすぎていくにもかかわらず、直撃することはない。
おそるおそる目を開けると……


「の、のんちゃん!?」
「くっ……紺ちゃん……魔法は……?」

私を守るように仁王立ちしているのんちゃん。
その体に容赦なく氷の粒が当たっていく。
470 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:05
「待って!……うん、完成した!!」
「行っけー、紺ちゃん!!」

形成した魔法陣を解放する。
仕掛けるところは……飯田さんの足下!


「クリスタル・アブソリュート!!」

飯田さんのと同じように蒼く輝く魔法陣が飯田さんの足下に現れる。

「なっ!? これはっ?」

飯田さんの顔に驚きの表情が広がる。
魔法陣がいっそう蒼く輝くと、周囲の大気が一気に凍り付いた。
大気は水に、水は氷に。
形成された氷が飯田さんの足を地面に磔にした。

私が編み出したオリジナル・スペル。
魔法戦の1対1にはあまり向かないが、今の私には……頼りになる仲間がいる!
471 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:05
「のんちゃん、今だー!!」

叫ぶと同時にのんちゃんが槍を手に取り走り出す。
真っ直ぐ、飯田さんのもとへ。


「くっ、フレア・ブラスト!!」

飯田さんの手からのんちゃんに向かって放たれる光球。

「アンチ・シールド!」

のんちゃんの前方にシールドを張り、光球を弾く。


「くらえっ!!」

突き出されるのんちゃんの槍。
それは一直線に飯田さんの胸を貫いた。
472 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:07
「ごふっ……」

飯田さんの口からこぼれ落ちる鮮血。
のんちゃんが槍を引き抜くと胸からも赤い血が滴り落ちる。


「のんちゃん、離れて!」

呪文を唱える。
飯田さんの足下にある魔法陣に魔力を送ると、魔法陣の色が蒼から朱へと
変わっていく。

もう一つのオーバーライト。
自分で構築した、発動中の魔法陣に魔力を送って、違う魔法へ強制変換
させる高等テクニック。


「オーバーライト=バーン・ノヴァ!!」

蒼く輝いていた魔法陣が完全に紅い色に変わる。
氷が一瞬で融解し、魔法陣がさらに紅く輝くと、次の瞬間には空高くに
真白い炎を吹き上げた。

「うわぁぁぁあっ!!」

炎を纏った飯田さんは少しもがいたあと、その場に倒れた。
吹き出していた炎が止む。でも飯田さんの体に燃え移った火の粉はまだ
燃え続けていた。
473 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:08
「やったね、紺ちゃん!!」

のんちゃんが勢いよく飛びついてくる。
高等魔法の連発で疲弊した私はのんちゃんの勢いを受けとめきれずに
その場に倒れた。
ていうかのんちゃん……もしかしてまた太った?


「やっぱり紺ちゃんは魔法の天才れすー!!」
「そんなことないよ、のんちゃん。のんちゃんの助けがあったから勝てたんだよ」
「そう? ならののも天才ね〜!!」
「……ていうかのんちゃん……そろそろどいて欲しいんだけど……。重い……」
「あー! 紺ちゃんには言われたくないー!!」


フルパワーで戦ったことの疲れも重なって、私たちは少しのあいだ寝っ転がった
ままでいた。
飯田さん……これで証明できましたよね?
守るための力は……何よりも強いって……。
474 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:08
  パチッパチッパチッ!!

急に背後から聞こえてきた拍手の音。
愛ちゃんたちかな? と思い体を起こすけど、拍手は頭のかなり上の方から
聞こえてくる。

視線をその方向に向けてみる。
目に入ったのは木の上に座っている二つの影……。
475 名前:第8話 投稿日:2004/05/26(水) 20:08
   
476 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/26(水) 20:14
今回はここまでです。
ようやく長かった8話が終わりました!
あいかわらず難しいよ、魔法……。

>>462 名も無き読者 様
ありがとうございます!
はい、バトルになりました!
喜んでもらえたようで幸いです!

>>463 紺ちゃんファン 様
ありがとうございます!
こんな感じで8話が終わりました。
紺ちゃんだけでなくのんちゃんも格好良く書きたかったのですが、いかがでしょう?
477 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/05/26(水) 20:16
>>464 つみ 様
ありがとうございます!
バトってますよ〜!
もう最近バトりすぎです。

>>465 みっくす 様
ありがとうございます!
魔法バトル難しいのですが、良い感想もらえて嬉しいです。
これからもいろいろな形のバトルを書きたいです。
478 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/26(水) 22:04
>>片霧 カイト様、更新どうもです。
ののも十分かっこよかったですよ!!
もちろん紺ちゃんもですが・・・。
飯田さんはどうなったんでしょう??
そして拍手をしていた人物とは!?
次回への期待大です!!頑張ってください!!
479 名前:つみ 投稿日:2004/05/26(水) 23:34
ほう・・?
なんかよくやった!って感じでしたけどこれは・・・
とりあえず次回まで待ってます!
480 名前:みっくす 投稿日:2004/05/27(木) 05:32
ん?
なんか危険な展開になってきましたね。
どうなちゃうんだ。
次回楽しみにしてます。
481 名前:名も無き読者 投稿日:2004/05/27(木) 18:51
更新お疲れ様です。
こ、この展開は!?
・・・と、若干大袈裟に驚いてみましたが、
実際気になります。。。
続きも楽しみにしてます。w
482 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/29(土) 14:32
更新お疲れ様ですっ!
そろそろごっちんを出して欲しいかなって。。。
楽しみにしてますっっ☆
483 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/30(日) 15:25
あげないでください・・・・期待しちゃった
主人公の登場心待ちにしてます!なっち!
484 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:07
〜紺野あさ美〜

「だ、誰……?」
「わかんない……」

私ものんちゃんも立ち上がって身構える。
敵か味方かわからないけど、ここにいるってことは敵の可能性が高い。
しかもそれぞれ剣と杖を手に持っている。
木の上の二人は拍手をやめるとそのまま木から飛び降りた。
485 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:07


第9話  絶対なる差



486 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:08
「あなたたちは誰? ロマンス王国の兵士?」
「いいえ。でもあなたたちの味方ではないですけど」

私が訪ねると、彼女たちの一人、赤色の服を身に纏い、闇色の剣を携えた
少女が微笑をたたえながら答えた。

「じゃあ誰なんれすか!? なんでここに!?」

のんちゃんは早くも槍を二人のほうに向けている。
私もすっと手をかざすが、二人はまだまだ余裕いっぱいといった表情。

「人に訊ねる前にまず自分が名乗るのが礼儀だと思いますけど。といっても
あなたのほうは知ってるんですけどね、紺野あさ美さん?」
「! な、なんで私の名前を!?」
「よく聞いてますから、あなたのことは。ある人からね」
「……まさか……」
487 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:08
思い浮かんだ一つの可能性。
ロマンス王国の兵士でもないのにロマンス王国内にいて、なおかつ私たちの
味方じゃない。
そしてこんなところにくる理由があるのは……。


「あたしは田中れいな。それでこっちは亀井絵里。今現在の飯田さんの弟子だよ!」
「で、弟子っ!?」
「やっぱり……」

あたしものんちゃんも臨戦体勢を整える。
この二人が飯田さんの弟子だというのなら……
激突は……必至。
488 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:09
「ということは、師匠の敵討ちってことれすか!?」
「えっ?」
「たとえ誰でも立ちはだかるヤツは容赦しない! ののは絶対に矢口さんに
会わなければいけないんれす!!」

のんちゃんの体から殺気が放たれる。
私も魔力を集めて魔法陣の構築にはいる。
だけど……


「……プッ! アハハハハッ!!」
「キャハハハッ!!」

急に田中が笑い出した。今まで一言も喋らなかった亀井も一緒になって
笑っている。
489 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:09
「な、何が可笑しいんれすかっ!!」
「可笑しいよ! だってさ、まだ気付いてないの?」
「えっ!?」
「れいなたちの師匠で、歴史上最強と言われている飯田さんがあんたたちに
簡単にやられるほど弱いって本気で思ってるの?」


それはまるで頭を殴られたような衝撃だった。
夢から醒めるような感覚。
強くなったって思ってた。守るための力は何よりも強いって証明できたと
思ってた。

でも思い返してみれば……不気味なほどあっけなさすぎる!!
490 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:11
あわせたわけでもないのにのんちゃんと同時にふり返った。
私たちの目にまだ燃えている炎の揺らめきが映る。
そしてその中で黒こげになっている、見知らぬ男の兵士の亡骸も一緒に。


「なっ!? これって!?」
「すべては紺野さんの力を見るために飯田さんがやったことだよ。偽者を
用意して、魔法で姿を変えて、そして媒体にして操ってたとよ。魔力は……
10分の1くらいかな。飯田さんは偽者が倒されたら自分で出るって言って
たけど……」
「あなたたちの相手は絵里とれーなで十分です!!」
491 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:12
気付いたときにはもう戦いの始まりが告げられていた。
亀井の持つ杖に魔力が集められていた。
杖の先の宝玉が深緑に輝く。
その瞬間、大気の流れが急激に乱れた。


「ゲイル・トルネード!!」
「「うわっ!!」」

杖の先から発せられた魔力は渦を巻き、風となって周囲の木々をなぎ倒し
ながら私たちを巻き込んで通りすぎていった。
私ものんちゃんもとっさのことに反応できず、渦に弾き飛ばされる。
そして起きあがったときには眼前に闇色の剣がせまっていた。
492 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:13
振り下ろされる剣をなんとかかわす。
とはいってもこの状況はかなりヤバイ。私は武器や体術での戦闘なんて
まるっきり素人だし……。

魔法使いは距離をとって戦うのがセオリー。
なんとか距離をとろうとするけど、田中はなかなか素早くて振りきれない。
繰り出される斬撃が私の体を掠めていく。


なんとかバックステップしてかわしていくけど、その時背中に何かぶつかった。
一瞬だけふり返って確認してみるとそこには大木。
しまった!
493 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:13
「死ねっ!!」

またしても振り下ろされる斬撃を、なんとかかわす。
するとラッキーにも剣が後ろの大木にめり込んだ。
田中が剣を抜いている隙に距離をとる。


「ちっ! 逃がすかっ!!」

田中もすぐに剣を抜いて追いかけてきたけど、そのころにはもう手には魔力が
集まっていた。

「ファイアー・ボルト!!」

詠唱をショートカットして火球を連射する。
ダメージを与えるのが目的じゃなく、足止めが目的。
その間にも私は後退し、どんどんと距離をとっていく。
494 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:14
少しして魔法を止める。
これだけあけば大丈夫。向こうの攻撃よりも先に発動できる。
呪文の詠唱を始め魔法陣を構成していく。
長期戦じゃ圧倒的に不利だ。一発で決める!!

田中は私に向かってきていたが、途中で急に止まった。


「フンッ! 距離をとれば勝てると思ったら甘いと!!」

一瞬田中の持っている剣が輝いた気がした。
そしてその瞬間、私の足下に魔法陣が広がった。
黒と紫に輝く魔法陣。これって……まさかっ!!


「ダーク・オーラ!!」
「! うわっ!!」

魔法陣から吹き上げた衝撃波が体を襲う。
焼かれるような痛み。削り取られていく体力。
この魔法は……。しかも詠唱なしで魔法陣を発動させたってことは……。
495 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:15
魔法が止むと私はその場に崩れ落ちた。
なんとか立ち上がろうとするけど、頬にピタッと冷たい感触が走り、動きが
止まる。
近くで見ると本当に禍々しく、背筋が凍りそうになるくらい寒気を放つ田中の剣。


「この程度? 飯田さんが認めたあなたはこの程度なの?」
「くっ……」

剣がゆっくりと捻られる。
刃が私の方に向き、頬がチリッと痛んだ。
つーっ、と血が頬から首筋へと滑り落ちていく。
496 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:16
「紺ちゃんっ!!」

急に聞こえた叫び声に私は顔を上げた。
田中も同時に反応すると、すぐに剣をかまえ直してふり返った。

そのすぐ後に聞こえた「キィン!」という金属音。
のんちゃんが突き出した槍の先、三つ又に分かれているその分れ目に器用に
剣をあわせ、のんちゃんの攻撃を田中が防御していた。


「のんちゃん!」
「危なかったれすね、紺ちゃん!」

田中とのんちゃんは武器を交差させたまま、押し合いを続ける。
でもこれはすでに勝負はついているようなもの。何たって相手がのんちゃんだ。
王宮騎士内一の力持ち。
田中もなんとかふんばっているけど、じりじりと槍の先が田中にせまって
いっている。
497 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:17
「なかなかやるね」
「くっ、あんただって……。てっきり雑魚だと思ってた」
「フンッ! しつれーれすね!」

急にのんちゃんが槍を引いた。
当然田中はすべての力を注いで槍を受けとめていたので、それが急に
消失すると、思いっきり前につんのめった。

そこをのんちゃんは引いた槍で足をはらう。
かわせるわけがなく、田中はそのままゴロゴロと転がった。


「くっ!」

起きあがった田中の鼻先に槍が突き付けられる。
さっきの私と同じ状況。

「勝負あり、れすね」
「……なんだ、強いんやん。誰よ、あんた?」
「辻希美。これでもハロモニランドの2番隊隊長れす。それよりももうこれで
引き上げてくれない?」
「それはできないね。だって……れいなたちはまだ負けてなか!!」
498 名前:第9話 投稿日:2004/06/03(木) 17:19
突如感じた魔力。
そのあとすぐに私の下に魔法陣が出現した。
黄色く輝く魔法陣。それはのんちゃんの足下まで広がっている。

「ライジング・サンダー!!」

魔法陣の表面から幾筋も立ち昇る雷刃。
なんとかのんちゃんに飛びついて魔法陣の中から飛び出たけど、足が
逃げ遅れ少しだけ電撃があたった。

「うあっ!!」
「紺ちゃん!!」

痺れる足を押さえつつ魔力の感じた方を睨む。
そこには亀井が息を切らして立っていた。


「ハァ、ハァ……もう、れーな速すぎ……」
「絵里がとろいんだってば! あと少し遅かったら危なかったんやけん!」
「あっ、ご、ごめん! 大丈夫だった!?」
「だ、大丈夫だって……。そこまで心配しなくてもよか……」
499 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/03(木) 17:26
今日はここまでです!(ちょっと中途半端ですが……)
やっと新キャラ登場! しかし……セリフが難しいなぁ……。


>>478 紺ちゃんファン 様
ののも格好良かったですか? よかったです、ありがとうございます!
一応こんな展開になりました。
ののと紺ちゃんのバトルもうちょっと続きます。

>>479 つみ 様
ありがとうございます!
よくやって……なかったですね(笑
今回はこんな感じ。一応次回まで続きます。
500 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/03(木) 17:33
>>480 みっくす 様
ありがとうございます!
こういう展開になりました。
まだちょっとバトルシーンが続きそうです。

>>481 名も無き読者 様
驚いてくれてありがとうございます!
結局はこういう展開になりました。

>>482 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
ごっちんは……ちょ、ちょっと休憩中?(マテ
もうちょっと待って下さい〜!

>>483 名無飼育さん 様
ありがとうございます!
なっちも……休憩中(更マテ
い、一応主人公なんですけどね……。
こっちももうちょっとお待ち下さい……。ちゃんとでてきますので。
501 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/03(木) 17:33
川o・-・)ノ<隠します!
502 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/03(木) 17:47
更新乙彼サマです。
お、この2人でしたかぁ〜w
剣と魔法のバトル、今回もナイスです。
続きも楽しみにしてます。
503 名前:つみ 投稿日:2004/06/03(木) 18:28
そういうことですか・・・
なにはともあれがんばってほしいですね〜。
次回も期待してます!
504 名前:みっくす 投稿日:2004/06/03(木) 20:36
更新おつかれさまです。
そういうことでしたか。
剣と魔法のバトルにすごく興奮している自分がいます。
それにしてもいいとこで終わるなぁ。
次回も楽しみにしてます。
505 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/03(木) 23:41
う〜ん・・・。謎の二つの影とはれーなちゃんと亀ちゃんでしたか!
意外だぁ。いっつもこういうのっていいところで終わるんですよねぇ・・。
だから夢中になるんです!!
作者さま、これからもがんばってください!!
応援してます。期待してます!(しつこいかな)
506 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/03(木) 23:44
>>505
ネタバレです。注意しましょう。
507 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/04(金) 20:54
>506 名無飼育さん
失礼しました・・・次から気をつけます。
508 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:04
「紺ちゃん、大丈夫!?」
「うん……なんとか……」

まだちょっと足に痺れは残るけど、それでも無理して立ち上がる。

「それよりのんちゃん、気をつけて。田中の持ってる剣は普通の剣じゃない!」
「えっ!?」
「おそらくあの剣は『魔剣・ダークブレイカー』。……伝説の武器の一つだよ……」
「ま、魔剣って?」
「魔法が封じ込められている剣。その剣を使えば魔法が使えない人間でも
詠唱なしで魔法を使うことができる。しかもあの剣に封じられてるのは……
遙か昔に途絶えたはずの闇魔法!」
「……なるほど、やっかいな相手れすね……」
509 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:04
のんちゃんと一緒に相手に向き直る。
向こうの二人も同じようにしていた。
2対2。条件はほぼ同じ。それならあとは己の力がすべてを決める。


「のんちゃん、また時間稼いでもらっていい?」
「OK! そのかわり強烈なのかましてね!」
「まかせといて」
「期待してるよ!」

のんちゃんの足が地を蹴って飛び出す。
それにあわせて向こうの田中も剣をかまえて走り出した。


「のんちゃん! 闇魔法には気をつけて!!」
「わかってるのれす!」

「絵里! 援護お願い!!」
「う、うんっ!」
510 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:05
「キィン!」という金属音が鳴り響く。
また剣と槍がぶつかった。
でも今回はすぐに田中のほうが剣をそらし、槍を受け流してのんちゃんに
斬りかかっていく。

……上手い……。
剣術はまだ荒削りだけど、それでも2番隊隊長であるのんちゃんに引けを
とっていない。
飯田さんは剣術なんか全くの素人だから、おそらくは独学で学んだのだろう。
だとしたらものすごいセンス……。


なんて感心している場合じゃなくてさっさと魔法をくみ上げなければいけない。
そう思って魔法に集中したけど、その瞬間、田中の剣が瞬いた。

「! のんちゃん、危ないっ!!」
「遅いよ。サタン・スラッシュ!!」
「うわっ!!」

剣の刃から漆黒の真空波が放たれる。
のんちゃんもなんとか槍で直撃は防いだけど、衝撃で吹っ飛んだ。
地面に落ちるのんちゃんの体。
落ちたところを中心にまた黄色い魔法陣が広がった。
511 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:06
「いけないっ!」

今まで集めた魔力とは別に、雷属性の魔力を一点に集める。
詠唱して魔法陣を作るとそれを亀井が作った魔法陣の上に重ねた。


「ライジング・サンダー!!」
「オーバーライト=ライジング・サンダー!!」

なんとか発動する直前で魔法陣をかき消す。

「お、オーバーライト……? まさかそんな高等技法まで……」
「チッ! なら先にあいつを!」

私のほうに向かってくる田中。
でも……
512 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:07
「そうはさせない!!」

のんちゃんが起きあがり、田中の進行を止める。
三度ぶつかる剣と槍。響く金属音。
慌てて田中が体を引いたけど、そこにのんちゃんの鋭い蹴りが入る。
今度は田中の体が吹っ飛んだ。

「れーなっ!」

そこに亀井がかけよるけど……


「できたっ! のんちゃん、下がって!!」

展開し終わった魔法陣が紅く輝く。
私が使える炎属性の最強魔法。
のんちゃんが飛び退くのが見えた。

「ドラゴニック・ファイアー!!」

呪文を高らかに宣言すると同時に魔法陣が輝き、そこから炎が吹き出す。
溢れた炎は竜の形を形成し、田中と亀井目指して翔ていく。
かわせない。防げない。これで終わりだ!

  ドオォォォン!!

炎の竜が二人を飲み込むと同時に響く爆音。
辺りが煙と砂塵で霞んだ。
513 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:07
「ふぅ……」
「やったね、紺ちゃん!!」

ようやくひと息つけた。肩の力を抜き、構えたままの手を下ろす。
さて、あとは愛ちゃんと里沙ちゃんを見つけないと。
さすがにこのあと忍び込むってことは……ないよね?


「ねぇ、のんちゃん……まさかこのあと忍び込むの?」
「……さすがに無理れすね……愛ちゃんたち探して帰ろっか?」
「うん、そうだね」

お互い微笑んで来た道を戻る。
そのつもりで踏み出した一歩が固まった。
514 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:08
  ドクンッ……

背中に感じる強烈な違和感と、吐き気を催すような圧迫感。そして体中を
駆けめぐる寒気。
何もしていないというのに汗が一筋流れた。


おそるおそる後ろをふり返ってみる。
漂う砂塵の中に人影が浮かんでいる。
バカな……殺さないように手加減したぶんを差し引いても、くらってまともに
立ってられる威力じゃない!


だんだん煙が晴れてくる。

そして見えてくる。煙の向こう、影が……三つ!
515 名前:第9話 投稿日:2004/06/06(日) 10:09
「す、すいません……飯田さん……」
「ん〜、いいよ。やっぱりまだちょっと二人には早かったみたいだね。紺野は
カオリが唯一認めた魔法使いだから」
「くっ……」
「先に城に帰って休んでて。カオリは挨拶してから帰るから。亀井、よろしくね」
「は、はいっ!……シャドウ・ホール!」

二つの影が消えた瞬間、煙が完全に晴れた。
それとともに強くなる威圧感。


「久しぶりだね、紺野。今度は本物のカオリだよ!」
「・・・・・・」

何も言えなかった。唇すら動かせなかった。
さっきの偽者とはまったく違う……。
これが伝説にもなっている正真正銘の……飯田圭織……。
516 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/06(日) 10:17
ちょこっと更新しました。
今回はここまでです。

>>502 名も無き読者 様
ありがとうございます!
剣と魔法のバトルの続きです!
もう一人は……実はまったく違う登場を考えてます。
案外このストーリーのキーパーソンだったり?

>>503 つみ 様
ありがとうございます!
そういうことですね〜!(笑
二人とも頑張ったのですが、まだ続く……。
517 名前:つみ 投稿日:2004/06/06(日) 10:20
本体が・・・
次回もバトルはあるのかな?
楽しみにしてます。
518 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/06(日) 10:21
>>504 みっくす 様
ありがとうございます!
誰かを興奮させられるようなバトルシーンが書けてよかったです。
今回もいいとこで終わってますが……(確信犯
でもファンタジーってだいたいそんなもん……(開き直り/笑

>>505 紺ちゃんファン 様
ありがとうございます!
れいなとえりりんは当初出す予定なかったんですけど、急遽こんな感じで出演が決まりました!
なのでちょっと意外だったかもしれませんね。
519 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/06(日) 12:50
更新乙彼サマです。
またまた気になる切り方を。。。
もう一人はキーパーソンですか、そちらも気にかかりますねw
続きも楽しみです。
520 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/06(日) 17:58
うお〜!!き、気になるぅ!!
作者さん、切り方、うまいっすね!!
ますます期待してしまいますよ!!
つーわけで・・・待っとりますよーーー!!!
521 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 19:45
更新乙です!
主人公はどうなってるんですか?そろそろですかね。更新待ってます。
522 名前:みっくす 投稿日:2004/06/06(日) 22:04
更新おつかれさまです。
やっぱり紺ちゃん強いわけで。
でもどうなちゃうのですかね。
次回も楽しみにしてます。
523 名前:名無しくん 投稿日:2004/06/08(火) 00:02
なっちは?どうなってるんですか?紺野はそろそろ食傷気味かも・・・
524 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/10(木) 01:59
>>523
物語なんだからさ・・・
525 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:30
強くなる殺気に体が震え出す。
手で押さえてもとまらない。そして唇も完全に乾ききっていた。
それは魔法に疎いのんちゃんですら同じ。手に持った槍が微かに震えている。

訓練で手合わせしたことはあったけど、こんなふうに敵対したことは一度もない。
穏やかな、にこやかな顔で信じられないくらいのプレッシャーを与えてきている。

私ものんちゃんも動けなかった。
私たちを縛り付けているのは、絶対的なる……恐怖。


「……う、うわぁぁぁー!!」

ハッと気付いたときには遅かった。
恐怖に耐えきれなくなったのんちゃんが槍を構えて飯田さんに突進していく。

「ダメッ!! のんちゃんっ!!」

飯田さんの唇がゆっくり弧を描いた。
526 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:32
  ドンッ!!

その音は少し遅れて耳に届いた。
何が起こったのかわからなかった。

わかったのは向かっていったはずののんちゃんが、今は仰向けになって
地面に倒れていることだけ。
のんちゃん愛用の槍がむなしくころころと転がっていた。

「あらら……手加減したんだけど、それでも一撃だったか……。もうちょっと
加減しとくんだった」

飯田さんが髪を掻き上げつつ、何とも興味なさげに呟いた。


「のんちゃん!!」

慌てて駆けよって抱き起こす。
なんとかまだ息はあるけど目は固く閉じられている。

「紺野、もうわかるでしょ? 夢や理想だけじゃ絶対に超えられない壁があるんだよ」

私たちの下に輝く魔法陣。
体の芯が『逃げろ!』と悲鳴をあげているのに、まったく動くことができなかった。
527 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:33
「今度は今生の別れになりそうだね。サヨナラ、紺野」

魔法陣がよりいっそう紅く輝いた。


「メギド・フレイム」

「ゴォッ!」という爆音とともに、熱波が私たちの体を覆い尽くす。
なんとかのんちゃんだけは助けようと体全体でのんちゃんを覆ったけど、
どうやらそれは無理みたい……。ごめんね……。
愛ちゃん……里沙ちゃん……早く逃げて……。


魔法陣から吹き出した炎が私の視界を真紅に染め上げていく。
でもそれもすぐに色を失った。



528 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:34

◇     ◇     ◇


〜高橋愛〜

「ハァ…ハァ……里沙ちゃん、待って! 待ってってば!!」
「・・・・・・」
「里沙ちゃんってば!!」

声をかけても里沙ちゃんは止まらない。
もうかなりの時間あたしの手を引っぱって前を走っていく。

「里沙ちゃん!!」

思い切って腕を引っぱるとようやく里沙ちゃんは止まってくれた。
二人して見つめ合い、乱れた息を整える。
里沙ちゃんはまた何も言わずにあたしの手を掴んだけど、今度はその手を
振り払った。
529 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:35
「何で!? 何で逃げるのよ! まだあさ美ちゃんものんちゃんも戦ってる
んだよ!?」
「……あさ美ちゃんが逃げろって言ったでしょ? だから……」
「里沙ちゃんはあんなこと言われて悔しくないのっ!? 足手まといなんて
言われて悔しく……」

そこまでまくし立てて気付いた。
里沙ちゃんの肩が小刻みに震えているのを。


「り、里沙ちゃん……?」

そっと里沙ちゃんの顔を覗き込んでみると……

「えっ!? 里沙ちゃんっ!?」
「うっ……くっ……」

里沙ちゃんの目には大粒の涙が溜まっていた。
どうしていいかわからずそのままおたおたしていると、里沙ちゃんがあたしの
胸に飛び込んできた。
530 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:36
「悔しいっ! 悔しいよぉ! あさ美ちゃんの友達なのに……仲間なのに……
肝心なときに足引っぱるだけでなにもできないなんてっ!!」
「里沙ちゃん……」
「のんちゃんは強いし……あさ美ちゃんが弱いところを埋められるのに……。
アタシたちは逃げて助けを呼びに行くことしかできない……」


あたしも涙が溢れてきた。
同じ気持ちだったんだ……。でも里沙ちゃんはもっとちゃんと考えてて、
最善の行動をとっていた……。

自分の無力さが悔しかった。
自分の愚かさが許せなかった。
里沙ちゃんを抱きしめ、あたしも泣いた。



531 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:37

◇     ◇     ◇


どれくらいそうしていただろう。
そっと里沙ちゃんが体を離した。

「……ごめん……。ありがと……」
「いいよ、お互い様。あたしも……ごめん。里沙ちゃんの気持ちも考えないで
あんなこと言っちゃって」
「それこそお互い様。アタシだって愛ちゃんの気持ちも考えないで……」

そっと里沙ちゃんの手を握った。

「さっさと行って助け呼んでこないと! 早くあさ美ちゃんたちを助けに
いかないと!!」
「……うんっ!」

里沙ちゃんと顔を合わせて笑顔をかわす。お互い涙の跡の残った不細工な
笑顔だったけど。


「それじゃ、ちょっと待ってて! 今シャドウホールを形成するから!!」

里沙ちゃんの詠唱が始まり、里沙ちゃんの影が魔法陣の形を描き出していく。
でもその瞬間、別の魔力を感じた。
迫ってくる魔力の塊と……殺気!!
532 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:38
「里沙ちゃんっ、危ないっ!!」

詠唱中の里沙ちゃんの身体に飛びつく。
二人して地面に倒れ込むと同時に、「ドンッ!!」という爆音と、熱風をともなった
衝撃が襲いかかってくる。
体を起こして後ろをふり返るけど……


「あらら、こんなトコにいたの? 案外遠くに逃げてなかったんだねぇ」
「あ……ぁ……」

体ががくがくと震え出す。
歯がガチガチと音を立てた。
そこには飯田圭織の姿があった。
533 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:39
「あ…あさ美ちゃんと……のんちゃんは……?」

里沙ちゃんが震える声で訊ねる。

「カオリがここに来たってことは……あとは言わなくてもわかるでしょ?」
「そんな……」
「大丈夫だよ。心配しなくてもすぐに逢わせてあげるから」

飯田圭織の手が光ると同時にいくつもの火球が乱射される。
なんとか避けつつ、里沙ちゃんと体を寄せ合う。


「くそっ、やるしかないか……」

里沙ちゃんが魔力を集め、詠唱を始める。
そして集まった魔力の塊をあたしの体に押しつけた。

「バリア・ドレス!!」

魔力の塊が弾け、あたしの身体が淡い光で覆われる。
不思議と温かい魔力の気流。これは……
534 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:40
「対魔法用のアーマー・スペルだよ。これで魔法の威力を軽減できる。相手は
最強の魔法使いだからね……」

里沙ちゃんはもう一つ魔力の塊を作り出すと、今度は自分の身体に押しつけた。
同じように里沙ちゃんの身体も淡い光で包まれる。


そして里沙ちゃんの手が後ろ髪に伸びた。
髪を結んでいたリボンを握ってほどく。
上げてた髪がバサッと落ちると同時に、魔法で縮小され、髪留めに模して
あった鎖は本来の形を取り戻していく。

ビュンッという風切り音、そしてバシィッと地面を叩く音がする。
5番隊には珍しく武器も扱える里沙ちゃん愛用の武器は、鋼鉄の鞭『チェーンリボン』。
535 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:41
「愛ちゃん、援護してね……」

目だけこっちを向く里沙ちゃん。
あたしの返事も待たずに飯田圭織に向かっていった。


風切り音が鳴るごとに鞭が飯田圭織に襲いかかる。
飯田圭織も鞭をかわしていくけど、体術はそんなにたいしたことない。
ただ、鞭が飯田圭織をとらえても、すぐにその場所にシールドが張られ、
ダメージを与えることはない。


「アクア・スプラッシュ!」
「うわっ!!」

突如巻き起こった水流に里沙ちゃんの体が吹っ飛ばされる。
それと同時に今度はあたしの足下に魔法陣が浮かび上がった。

「フレイム・ウォール」
「わっ!!」

間一髪のところで魔法陣の外へ転がり出る。
すぐに背後で閃光と轟音が交錯した。
そのまま里沙ちゃんに駆けよって体を抱き起こす。
536 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:42
「里沙ちゃん! 大丈夫!?」
「平気……とは言えないかな……。バリアドレス張ってても焼け石に水みたい
だね……。このままじゃ、受けにまわったままじゃすぐに殺される! 攻撃
しつつ隙を見て逃げるよ! それでいい!?」
「わかった!」

それを聞き終わる前に里沙ちゃんはまた飯田圭織に向かっていった。
あたしも魔力を集め出す。
さっき以上のスピードで里沙ちゃんの鞭が振られるけど、それでも飯田圭織
には届かない。
シールドを張って攻撃をかわしつつも、飯田圭織の口が呪文の詠唱を始めた。


「愛ちゃん!!」

里沙ちゃんの声とともに魔法を発動させる。

「コールド・バスター!!」
「くっ!」

魔法と物理攻撃を同じシールドでは防げない。
放たれた冷気のビームをかわすために飯田圭織が飛び上がったが、そこに
里沙ちゃんの鞭が振られる。
新たなシールドが張られて攻撃は止まったが、そのころにはあたしも次の
魔法を構築していた。
537 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:43
「ゲイル・トルネード!!」

今度は風の渦が飯田圭織に襲いかかる。同時に里沙ちゃんの鞭も。
魔法と武器による同時攻撃。今度こそとらえた!
でも、飯田圭織は不敵な笑みを浮かべて……

「えっ!?」

里沙ちゃんの驚愕の声が聞こえた。
里沙ちゃんの鞭の先にも、あたしの魔法の先にも、そこには誰もいなかった。



「フフ、簡単な幻術だよ」

急に聞こえた声にその方向を向く。
今まであたしたちが見ていた方向より少しずれた方向。
飯田圭織の手にはすでに魔力が集まっていた。
538 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:44
「フレア・ブラスト!」

真っ赤な光球があたしの方に向かってくる。
急なことだったのでまったく反応ができなかった。
かわすこともできない。相殺することもできない。
思わず目を瞑った。



「愛ちゃん!!」
「!?」

突如体に感じた衝撃で、あたしの体が後ろに倒れるのがわかる。
そして……

  ドンッ!!
「うあぁぁぁああっ!!!」

耳に入ってきたのは近くで響いた爆音と、里沙ちゃんの悲鳴。
539 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:45
「里沙ちゃん? 里沙ちゃんっ!!」

目を開けると、そこには里沙ちゃんの顔が苦痛に耐えるように歪んでいた。
そして里沙ちゃんの背中は無惨にも焼けこげている。

「里沙ちゃぁん!!」

また涙が溢れてきた。
あたしの体に抱きついたままの里沙ちゃんを抱きしめたけど、その時里沙ちゃんが
なにか詠唱をしていることがわかった。


「うっ……、ディープ・ミスト!!」

里沙ちゃんの手から霧が放出される。
その霧はすぐに森の中を覆い、飯田圭織の姿は見えなくなった。

「な、なにっ!?」

飯田圭織の慌てた声が聞こえたけど、その時にはあたしは里沙ちゃんに
手を引かれて走っていた。



540 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:47

◇     ◇     ◇


「里沙ちゃん、待って! 止まって!!」
「ハァ、ハァ……」
「里沙ちゃんってば!!」

あたしは里沙ちゃんに強引に引っぱられてるので、いやがおうにも里沙ちゃんの
背中が目に入ってしまう。
飯田圭織の魔法はバリアドレスを突き破り、里沙ちゃんの背中を直撃した。
その背中は見てられないほどの酷いダメージ。

……あたしを庇ったせいで……。

それなのに里沙ちゃんはあたしを引っぱって霧の中を走っていく。
あたしの顔はまた涙でぐしゃぐしゃになっていた。
541 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:48
「ぅあっ!!」

突如手から里沙ちゃんの感触が消失した。
それと同時に前を走っていた里沙ちゃんの体が地に倒れる。

「里沙ちゃん!!」

慌てて里沙ちゃんに駆けより、抱き起こす。
里沙ちゃんは苦しそうに深く呼吸をしていた。


「里沙ちゃん……ゴメン! あたしのこと庇ったせいで!!」

その時背後で爆発音が轟いた。
爆風で漂ってた霧が吹き飛ばされていく。

「あはは、鬼ごっこもかくれんぼももう終わりだよ〜」

飯田圭織の澄んだ声が風にのって響いてくる。
542 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:50
「里沙ちゃん……どうしよ……?」
「くっ……愛ちゃん……」

里沙ちゃんの力なく差し出された手を握りしめる。
すると里沙ちゃんはよろよろと起きあがり、今度はあたしの体の方にもたれてきた。


「えっ!? り、里沙ちゃん!?」
「・・・・・・」

そのままギューッと抱きしめられる。
こんな状況だってのに顔がカーッと熱くなった。



「……愛ちゃん、ずっと好きだった……」
「えっ……!?」
「ごめん、こんなときに。でも最後に言っておきたかったから……」

その時地面がパーッと光った。
思わず下を向くと、あたしの影が魔法陣を形成している。

「今のアタシの残ってる魔力じゃこれが限界なんだ……」

体を離し、力なく微笑んだ里沙ちゃんを見て、また涙が溢れた。
543 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:51
「里沙ちゃん! 里沙ちゃんも一緒に!!」
「ダメだよ……。アタシはここに残って、発動するまでの時間、飯田圭織を
食い止めないと……」
「いやっ! そんなのいやだっ!! 里沙ちゃん!!!」
「……シャドウ・ホール……」


必死に手を伸ばしても体が動かない。
その手も里沙ちゃんを掴むことはできなかった。
魔法陣から溢れた光と闇があたしの体を包み込んでいく。


そしてその隙間から見た。
飯田圭織が薄くなった霧の中から現れるのを。
544 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:52
里沙ちゃんが立ちはだかる。
火球が乱れ飛び、里沙ちゃんの身体を穿っていく。

「里沙ちゃんッツ!!」
「愛ちゃんは……生きて……」
「里沙ちゃん! 里沙ちゃーん!!」

一度だけあたしのほうを振り返った里沙ちゃんの顔は笑顔だった。

その笑顔が炎に包まれた瞬間、
あたしの体は影の魔法陣に吸い込まれていった。



545 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:53

◇     ◇     ◇


「んっ……?」

目を開けるとそこはハロモニランド城の裏だった。
一瞬夢でも見てたのかな? と思えるくらい、ほのぼのとした平和な午後。

でも……すぐに今までの感覚がリアルに戻ってくる。
辺りを見渡してみる。あさ美ちゃんも、のんちゃんも……里沙ちゃんもいない……。


「あぁっ……」

その場に崩れ落ちた。
枯れ果てたと思っていた涙が地面を濡らしていく。

「あたしのせいで! あたしのせいでっ!!」

爪がくい込むくらい拳を握りしめて、
何回も何回も地面を叩いた。

自分は強いと思ってた。
でもそれは違った。
いつも誰かに守られていた。いっつも誰かがあたしを守ってくれていた。
世界はもっともっと広くて……残酷だった……。

「あたしのせいでーっ!!!」
546 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:54
  ガサッ!

その時背後で物音がした。
反射的にその方向を向く。
そこにいたのは……

「あれっ? 高橋? どうしたんだべか?」
「安倍さん……」


あたしはもう自分の気持ちがわからなくて、
安倍さんに駆けよると、抱きついてそのまま泣いた。

「た、高橋!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

安倍さんは最初驚いたようだったけど、ただ泣いて謝るあたしを、何も聞かずに
そっと抱きしめてくれた。

でも今はその優しさが痛かった。
そう、責められるよりも、殴られるよりも、優しくされる方が痛かった……。
547 名前:第9話 投稿日:2004/06/11(金) 23:54
   
548 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/12(土) 00:04
今回はここまでです。
長かった8、9話もなんとか終わり、ようやく時間が交わりました。
次回からはまた新たに動き出します。

>>517 つみ 様
今回もバトル満載でした……。
そしてようやく本体に追いつけました。
ていうかようやく主人公が……。

>>519 名も無き読者 様
気になる切り方から……こうなりました。
キーパーソンは出てくるのかなりあとになりそうです……。
それまで期待していただければ幸いです。

>>520 紺ちゃんファン 様
毎回気になるように切って申し訳……。
でも切り方、一応は考えて書いてるので、嬉しいです!
549 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/12(土) 00:15
>>521 名無飼育さん 様
主人公、ようやくです。何回ぶりですかね?(苦笑
でも次回はもっとちゃんと出せるかと……。

>>522 みっくす 様
紺ちゃんはハロモニランドでもかなり強いです。
ただ紺ちゃんのバトルシーンはどうしても魔法がメインなんで書くの難しいんですけどね。
期待に応えられるようもっと頑張ります!

>>523 名無しくん 様
7話と8、9話は一応時間軸が同じなので、なっちほとんど出せませんでした。
もうちょっとすればちゃんと主人公らしくなってくれるはずです。

>>524 名無飼育さん 様
フォローありがとうございます。
そのへん難しいです、ファンタジー。
550 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/12(土) 00:18
えっ…マジですか?マジでなの?
自分的に結構アイタタタ…って感じで
途中までリアルタイムで見てました。

続き…ど〜なるんだろう・・・
気になります。無理なさらず頑張ってください。
551 名前:つみ 投稿日:2004/06/12(土) 01:19
こんなつながり方が・・・・
予想も出来ませんでしたね・・・
次回からの流れに期待してますっ!
552 名前:みっくす 投稿日:2004/06/12(土) 03:42
こういうつながりでしたか。
3人はどうなちゃうのですかね。
次回も楽しみにしてます。
553 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/12(土) 14:24
おおっ!!更新されてる!!
里沙ちゃ〜ん・・・(涙)
紺ちゃんとのんちゃんはどうなったんでしょう???
悲しみながら次の更新待ってます。
554 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/12(土) 22:08
あぁあ・・期待の人登場でうれしいけど・・
他の三人は・・どうなったんだろう・・うれしい展開だと
いいんだけど・・・そんなに甘くないかな?
こてんぱんにやっちゃってほしいですね・・あの人を
555 名前:tsukise 投稿日:2004/06/14(月) 21:04
更新お疲れ様ですっ!
いつもひっそりと拝見させていただいてます(白状
うぁーっ!新垣さんっ!!と、腹からかすれた声が出ました(ぇ
…そして確信、安倍さんは天使です(マテ
次回更新もがんばってくださいませっ(平伏
556 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/15(火) 17:19
ごっちんはいつ出てくるんでしょうか??
待ってます☆
557 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:36
〜安倍なつみ〜

「高橋ッ!! あんた、自分がなにしたかわかってるのっ!?」
「圭ちゃん……」

怒鳴る圭ちゃんをなんとかなだめる。
高橋は城の中に入ってからもあいかわらず泣いたまま。
うわごとのように「ごめんなさい」と呟いている。
558 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:37
「しかし、やっかいなことになりましたね……。まさかあの『飯田圭織』が
敵になるなんて……。悪夢ですね……」

松浦が苦々しく呟いた。それは私も同感……。
その場にいるよっすぃーも、ごっちんも市井さんも黙り込んでいる。
部屋の空気が重くなりかけてたとき、コンッコンッというノックの音が響いた。

「はい、どうぞ」
「失礼します。なつみ様、女王様がお呼びです」
「そうか、わかった……」
「あと、皆さんも一緒に来るようにと」

それだけ言って兵士は去った。
私たちは一言も発さずに部屋を出た。
559 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:37


第10話  ココロの欠片



560 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:39
「失礼します……」

私の部屋にいたみんなを引き連れて女王の間に入る。
女王様は険しい表情で私たちを迎え入れてくれた。
まだ高橋のことは女王様には報告してないけど……どうやら深いブルーの
瞳はなんでもお見通しみたい。


「女王様……あの、高橋が……」
「いい。全部知ってるわ」
「えっ……なぜ……」

女王様は無言で部屋の隅にある大鏡を指さした。
その鏡面に、血のように紅い文字が浮かび上がっている。

「鏡を使った通信呪文や。それによると明日の正午、紺野・辻・新垣を処刑
するて……。ご丁寧に処刑会場までちゃんと書いてあるで」
561 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:39
「……生きてるんだ!」

それを聞いて高橋はようやく笑ってくれた。
私も嬉しかった。高橋の話を聞いた限りじゃ、死んでてもおかしくない状況
だったから。
でも逆に圭ちゃんは険しい顔をした。


「……罠か……」
「えっ?」
「そうやな。わざわざ通信呪文まで使って知らせてきたことといい、ほぼ確実に
罠が仕掛けられてる……」
「そんな……」
562 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:41
「でもあたしは……あさ美ちゃんや里沙ちゃんを……!!」

そっとまくしたてる高橋を制して一歩前に出る。

「確かに罠かもしれません。でも、それでもまだ三人を助けられる可能性が
あるなら私は助けに行きたいです」

女王様はフッと笑って、続いて圭ちゃんに視線を移した。


「圭坊、あんたは?」
「……副団長として言わせてもらうと自分から罠に引っ掛かりに行くのは
賢いとは言えません。先の戦いでこちらの戦力も知られているでしょう。
それにあの飯田圭織もいる……。助けに行って逆に甚大な被害を生む
かもしれません……」
「圭ちゃん……」
「でも……私個人の思いとしてはなんとか三人を助けたいです」
「なら、決まりやな! 仲間思いなのはあんたたちのいいところやで!」
563 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:42
またニッと笑うと、女王様は立ち上がって私の前に歩み寄ってくる。

「と、いっても素直に罠にかかってやる理由もあらへん。それに生きてると
いっても三人とも酷いケガを負ってるやろうしな。だから奇襲をかけて三人を
助け出すんや」
「き、奇襲を!?」
「少数精鋭でロマンス王国の城に忍びこむんや。私の魔法ならロマンス王国の
城まで一気に飛ばせられる。なっち、メンバーはあんたが選び」
「はいっ!」
「それと、高橋!」
「は、はいっ……」

急に名前を呼ばれてビックリしている高橋の前に、女王様は歩み寄る。
高橋は怒られると思って縮み上がってるけど、女王様は優しく笑って、
高橋の涙をそっと拭った。
564 名前:第10話 投稿日:2004/06/16(水) 16:43
「いつまで泣いてんねん。泣く前にやることあるやろ?」
「えっ……?」
「倒れるまで、自分でできる最後までやりきったら、そのあと泣きや。紺野も、
辻も、新垣も、あんたのことを命懸けで守ったんや。あいつらが今誰に一番
助けて欲しいかわかるやろ?」
「……は、はいっ!」

高橋はごしごしと涙を拭うと、きりっと表情を引き締めた。
高橋もなんとか立ち直ったみたい。よかった。


「安倍さん、助けに行きましょう!!」
「うん!」


紺野、のの、新垣……待っててね……。
私たちが絶対助けてあげるから!
565 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/16(水) 16:52
今回はここまでです。ちょこっとですが更新です。
さて、こっから新展開です。

>>550 名無飼育さん 様
はい、ちょっと痛めな展開でしたが、そっからこうなりました。
今度はちゃんとなっちたちも活躍させたいです。

>>551 つみ 様
こんな感じで繋がりました。
これからも予想もできない展開にしていきたいです!(笑

>>552 みっくす 様
三人は今こんな感じです。
これからどうなるかはなっちたちの頑張りにかかってますねぇ!
応援レスに励まされつつ頑張ります!
566 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/16(水) 17:04
>>553 紺ちゃんファン 様
里沙ちゃん、うぅ〜、けっこう迷いましたが、痛くなっちゃいました……。
でも今度は愛ちゃんが頑張るばんです!

>>554 名無飼育さん 様
はい、なっち久々登場でした。主人公なのに……。
他の三人、すぐには嬉しい展開にはならなかったり(マテ
でもいい展開にできるよう頑張ります!

>>555 tsukise 様
ぐはっ、私もいっつも見てますよ〜!(リターン
ガキさん、いいですねぇ。
そしてなっちは天使です!(DEVILだったけど……
ありがとうございます!

>>556 名無飼育さん 様
ごっちんようやくちょこっと出てきましたねぇ。
今回はちゃんと活躍する予定です。
567 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/16(水) 17:05
(●´ー`)<隠すべさ! 久々だべさ!
568 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/16(水) 17:55
更新乙彼サマです。
おぉーぅ、、、こういう展開に。。。
なんというか、続きが楽しみw
皆の活躍祈って待ってます。
569 名前:つみ 投稿日:2004/06/16(水) 19:42
こんな展開になりましたか・・・
これは次回からの流れガ楽しみだ・・・
姫がどう絡むのかも楽しみです!
570 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/16(水) 20:41
作者さま、更新どうもです。
よ〜っし!!愛ちゃん!!がんばれ!!
作者さま、あなたもがんばれ!!
応援してます!!
571 名前:みっくす 投稿日:2004/06/16(水) 22:20
更新おつかれさまです。
こういう展開になりましたか。
女王様の作戦きたいしてます。
みんながんばれ。
572 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:29
〜紺野あさ美〜

「う、うんっ……?」
「紺ちゃん、気がついた!?」

目を開けるとそこにはのんちゃんの心配そうな顔があった。
横たわってた体を起こそうとして、手に違和感を感じる。
腕は包帯が巻かれていて、そして両方の手首には鋼鉄の腕輪がはめられていた。

その腕輪に紅く輝く小さな魔法陣が描かれている。
これって……まさか……。
魔力を集めようとして……上手くいかない。
やっぱりこれは、魔封じの印……。


ちょっと辺りを見回してみる。
心配そうな目で私を見ているのんちゃんと、ちょっと向こうにいる里沙ちゃん。
愛ちゃんはいないみたい。
そして私たちのいるこの空間は冷たい石の壁と鉄格子で囲まれている。
573 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:30
「……これって……私たちって……」
「捕まっちゃったみたいだね……。まぁ、生きてるだけマシってとこか……」
「里沙ちゃん……愛ちゃんは?」
「大丈夫、逃げたよ。アタシは捕まっちゃったけどね……」

里沙ちゃんが力なさげに笑う。
その腕にも魔法陣の描かれた腕輪がはめられていた。


「そっか……これからどうしようか……」
「どうしようかね……」

その時、カツンカツンと牢獄の外から足音が聞こえた。こっちに近づいてきている。
誰だ……?
しばらくすると男の兵士三人が、私たちのいる牢獄の中を覗き込んできた。
その顔に下卑た笑いが張り付いている
574 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:31
「へぇ、言うとおりなかなかイイ女じゃねぇか」
「なんだよ、まだガキじゃねぇか」
「このくらいの方がいいんだよ。どうせ女なら誰でもいいんだろ?」

ガチャッという音がして、鉄格子の一部が開いた。
そこから男たちが入ってくる。


「なんなのよ、あんたたちっ!!」
「へへっ、お前らどうせ死んじまうんだぜ。最期くらいイイ思いさせてやろうと
思ってね」
「なっ……」

その瞬間、男たちが襲いかかってくる。
もちろん私の方にも一人。
腕を掴まれてその場に押し倒された。
575 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:31
「いやっ! 離してっ!!」

必死にもがくけど、力の差は歴然としている。
私と里沙ちゃんはそのまま簡単に押さえ込まれてしまった。

「このっ、離せッ!!」
「うわっ!?」

でものんちゃんは違った。
持ち前の力で覆い被さってきた男を吹き飛ばす。
男の身体が鉄格子にぶつかり、「ガシャン!」と音を立てた。

「貴様っ……!」

逆上した男が腰の剣に手をかけた、その時……
576 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:32
「何をしている?」

牢屋の中に響いた凛とした声。
それと同時に男たちの動きが固まった。
その隙に男の下から這い出て、三人で身を寄せ合う。


「オイラは見張りをしてろって命令しただけで、こんなことしろとは命令して
ないけど?」
「こ、これはその……」

牢屋の入り口に立っていた小さい影。
漆黒の服を身に纏い、冷えた瞳が爛々と男たちを睨みつけている。
手にした大鎌が、それこそ夜空に浮かぶ三日月のように不気味に光っている。

「矢口さん……」

のんちゃんが呟いた。
この人が……元2番隊の……
577 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:33
  ヒュンッ!!

鋭い風切り音が響いた。
矢口さんが、まるで舞うように鎌をふるう。

その瞬間、真ん中に立っていた男の頭部が消失した。
中空に舞い上がった男の頭部は、どさっと地面に落ち、身体は糸を失った
マリオネットのようにその場に崩れ落ちた。


「「う、うわぁぁぁあああぁっ!!」」

残った男たちの悲鳴が反響する。

「簡単な命令も守れないような部下は要らないんだよ」

魔力が集中する。
しばらくしてダークブラウンに輝く魔法陣が地面に現れた。
地属性の……あの魔法は……
578 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:34
「う、うわっ! 矢口さん、許してっ!」
「命だけは!」
「……うるさい」

魔法陣が輝く。

「デス・イーター!」


魔法陣からいくつもの牙が出現する。
それと同時に魔法陣の中央部が真横に裂けた。
そう、それは地面に現れた、大きな……『口』。

「うわぁっ! 許してーっ!」
「た、助けて……」

『口』はすでに死体となった男の頭と身体を呑み込み、まだ食べたりないと
でも言うように、今度は残った男たちに襲いかかる。
牙が男たちの体に突き刺さり、体がどんどん『口』に食べられていく。
あまりの凄惨な光景に思わず目を背けた。
579 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:35
しばらくして男たちの断末魔の悲鳴が途絶えると、おそるおそる目を開ける。
そこには何もなかった。
ただ、目の前に矢口さんが立っていただけだった。

「矢口さん……」

またのんちゃんがうわごとのように呟く。
矢口さんはのんちゃんを一瞥すると、いったん牢屋の外に出て、両手に
トレイを持って帰ってきた。


「……食事。お腹空いてるでしょ?」

目の前に置かれたトレイにはパンとスープがのっていて。
確かにお腹は空いているんだけど……
あんなもの見せられたあとじゃ……食欲が湧かない……。
580 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:35
「食べといた方がいいと思うよ。最期の食事になるかもしれないんだから」
「えっ?」
「あんたたちの処刑は明日の正午に決まったから。執行人はオイラ。妙な
期待はしないことだね」


それだけ言って矢口さんは牢屋から出て行った。
カツッカツッと足音が遠ざかっていき、後ろ姿が小さくなっていく。


「矢口さんっ!!」

急にのんちゃんが立ち上がった。
そのまま走っていき、鉄格子を掴んで矢口さんの背中に叫ぶ。
581 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:36
「何?」
「……えっ?」

てっきりまた無視されるものだとばかり思ってたけど、矢口さんは以外にも
立ち止まって、のんちゃんの方を向いた。
のんちゃんもやっぱりそう思ってたらしく、意外そうな顔をして固まっている。


「何? 用がないなら行くよ」
「あっ、その……助けてくれて、ありがとうございました……」
「……別に助けたわけじゃないよ。ただ不要な部下を始末しただけさ……」
「さっきもそうだけど……飯田圭織に殺されかけたときも……」
「えっ?」

その時のんちゃんの口から出た言葉。
それはまったく予想だにしていなかった事実だった。



582 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:37

◇     ◇     ◇


〜辻希美〜

気がつくと辺りは炎と灼熱の地獄だった。
足下にある紅い魔法陣から吹き出す炎柱と熱波。
私を守るように包み込んでいる紺ちゃんの体。

「うわぁぁぁあああっ!」

それでも容赦ない炎が体力を奪い去る。


しばらくして魔法陣が消え、炎がやんだ。
なんとか生きてる……。ホントにそんな状態。
紺ちゃんも意識は失ってるみたいだけど、かろうじて息はしている。
でも、もちろんそんなことで喜んでいられる状況ではなくて……
583 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:37
「なんだ、まだ生きてたの? 今度は手加減しすぎちゃったかなぁ?」

視界に飯田圭織の姿が入ってくる。
その手が光ってるのがわかる。魔力ってやつが集められてるんだろう。
もはや抵抗どころか体を動かすことすらままならない。
結局……命が少し延びただけなの……?


「痛いでしょう? 熱いでしょう? すぐ楽にしてあげるから」

構えられた手が光る。
動かない体を無理矢理動かして、倒れている紺ちゃんを抱きしめる。
紺ちゃんだけでも助かって欲しい……。
そんな淡い望みを抱いて目を閉じた。
584 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:39
今度こそ死を覚悟した。
でも……どういうわけかいつまでたってもなんの衝撃もない。
おそるおそる目を開けてみると、そこにいたのは……

「や、矢口さん……?」

飯田圭織の喉元にクレセントムーンの切っ先を突き付けている矢口さんだった。



「どういうつもり? 返答しだいじゃいくらヤグチだってただじゃ済まないよぉ?」

喉元に鎌を突き付けられている状況だってのに、飯田圭織の顔には微笑が
浮かんでいて、余裕すら感じられる。
逆に鎌を突き付けてる矢口さんのほうが追いつめられてるような感じがした。


「……ここでこいつらをただ殺すよりも、捕まえたほうがいいと思うけど?」
585 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:40
矢口さんと飯田圭織はそのまま動かなかった。
しばらくして飯田圭織が「ふっ」と笑うと、構えを解いて腕を降ろした。


「カオリに鎌を突き付けられた勇気に免じて今はそういうことにしといてあげるよ」
「……ありがと」

すっと大鎌の切っ先を払うと、飯田圭織は森の奥へと歩いていく。


「ちょっと、どこ行くの!?」
「人質は多い方がいいでしょ? こっちにもう二人逃げてったから捕まえて
くるよ。大丈夫、殺しはしないからさぁ〜」
586 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:41
もしかして……愛ちゃんたち?
なんとかアイツを止めないと……。このままじゃ愛ちゃんたちが……

必死に体を動かそうとしたけど……どうしても動いてくれない……。
痛む手に力を入れて体を起こそうとしたけど、急にその体がふわっと浮いた。


「う、うわわっ!!」

続いて体を返されて、上を向けられる。
私を抱え上げたのはちょっと色黒の女の人で、「ちゃお〜!」なんて甲高い
声が聞こえる。


「あっ、石川っ! そいつはオイラが運ぶからそっちの娘お願い!」
「は〜い!」
「ごめん、背中に乗っけて。オイラ鎌持ってるから抱えられないや」
「わかりました〜!」
587 名前:第10話 投稿日:2004/06/20(日) 14:42
ポスッと矢口さんの背中に乗せられる。
そして矢口さんがそっと立ち上がった。


「辻、ちゃんと捕まらないと振り落とすよ?」
「は、はいっ……」

そっと前に腕をまわして、矢口さんの背中に体重をかける。
そういえば昔……まだ矢口さんがハロモニランドにいた頃に、一回無理矢理
おんぶしてもらったことあったなぁ……。
「重いんだよー!」とか言ってすぐ落とされたけど……。



矢口さんの背中はあの時と変わらずに、小さかったけど……
でもその温かさもまた変わっていなかった。
588 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/20(日) 14:51
今回はここまでです。
なにげにハロモニ見てて、「あぁ、こんな感じだなぁ」とか思ってみたり(笑
洋剣だったらなおよかったんだけど、日本刀もなかなか……。
まぁ、今回出てきてませんけど……(死

>>568 名も無き読者 様
愛ちゃんには頑張って欲しいですねぇ。それにはもちろん私も頑張らないと……
応援レスに応えられるよう頑張ります!

>>569 つみ 様
今回はこんな感じで。一応囚われの方から少し。
でもちゃんとごっちん姫も絡んでくるのでお楽しみに!
589 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/20(日) 14:57
>>570 紺ちゃんファン 様
いえいえこちらこそ、応援ありがとうございます。
愛ちゃん、頑張れ〜! そして私も……。

>>571 みっくす
今回はちょっと別のサイドからでした……。
女王様の作戦は書けませんでしたが、次回ではちゃんと動き出すハズ……。
590 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/20(日) 14:59
(〜^◇^)<隠すぞ!
591 名前:つみ 投稿日:2004/06/20(日) 15:05
やぐちさんの真意は一体何処にあるんでしょうか・・?

・・・いい方向に向かう事を期待してます!
592 名前:きーあん 投稿日:2004/06/20(日) 15:07
更新おつかれさまです。
はたして矢口さんの行動には裏があるのでしょうかね。
2つの展開がどう絡むのかとても楽しみです。
次回も期待してます。
593 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/20(日) 18:35
作者さま、更新おつですm(__)m
矢口さん・・・。わからな〜い・・・。
展開がとっても気になりますね。
みなさんがんば〜!!
594 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:50
〜紺野あさ美〜

「……あの時も言ったでしょ? 人質にしたほうが便利。それだけだよ」

それだけ言って矢口さんはまた向きを変えて歩き出した。
のんちゃんは鉄格子を掴んだまま、固まっている。

カツンカツンと矢口さんの足音が廊下に反響して聞こえたけど、それが
もう一度不意に止まった。
今度はのんちゃんが呼びかけたわけでもない。
矢口さんの体の向こう……誰かが立っている……。
595 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:51
「いくら客人とはいえ不用意に城の中を歩き回らないほうがいいよ。こんな
状況下なんだし、敵と間違えられて殺されても知らないよ?」
「ご心配なく。そこいらの兵士に殺されるほどヤワには鍛えられていませんから」

矢口さんと対峙している声。
この声には聞き覚えがあった。

「それより、飯田さんが紺野さんを呼んでます。紺野さん借りますよ」
「フンッ……」

矢口さんの横をすり抜けて私たちが幽閉されている牢屋に近づいてくる人物。
赤い服、そして手にはあいかわらず闇色の魔剣を握っている、田中れいな。
鉄格子をあけて牢屋の中に入ってきた。
596 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:52
「何よ、あんた! 紺ちゃんをどうする気!?」

いち早くのんちゃんが噛みつく。
そんなのんちゃんをなんとか制し、私は田中れいなと向かい合う。

「飯田さんがお呼びです。れいなと一緒に来て下さい」
「……わかった」

田中れいなの後に続いて牢屋を出る。

「あさ美ちゃん!」
「紺ちゃん!!」

牢屋の中の二人は私のことを心配そうに見てるけど、あたしは笑顔で
二人に返す。

「大丈夫! すぐに戻ってくるから」



597 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:52

◇     ◇     ◇


〜安倍なつみ〜

女王の間を退室し、いったん私の部屋まで戻ってくる。

「今から私と一緒に紺野たちを助けに行くチームは……」

部屋にいるみんなの顔を見渡す。
598 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:53
「圭ちゃん!」
「OK!」
「松浦!」
「は〜い!」
「あと、市井さんも……」
「"さやか"でいいよ」
「じゃあ、さやかも頼める?」
「任せて!」
「そして……高橋!」
「……はいっ!」
「よっすぃーはお城のほうお願い。この隙に攻めてくることも考えられるから」
「まかせてください!」
「よし、それじゃ女王様に報告しにいこう!」

そして私たちは自室を出て、再び女王の間へ向かった。

599 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:53
「失礼します、女王様。……って、女王様?」

女王の間にはいるとなぜか女王様は玉座に座って頭を抱えていた。


「じょ、女王様……?」
「あぁ、悪い……決まったか?」
「はい、決まりましたが……いかがなさったんですか?」
「いや、なんつーか……仲間思いなのはあんたたちだけやなかったなー、
ってな……」
「はっ……?」


その時背後の扉が開いた。
みんなしてふり返る。
入ってきたのはごっちんだったけど、服装がいつものドレスではなく、薄手の
ローブになっていて、さらに手にはクリスタルの杖を持っている。
ま、まさか……
600 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:55
「ま、まさかごっちん……」
「ごとーも行くっ! ごとーも紺野たち助けに行くっ!!」
「だ、ダメだよ! 危ないんだよっ!!」
「でも、相手が最強の魔法使いなら、ごとーの光魔法も絶対必要だよ!!」
「うっ……確かにそうだけど……じょ、女王様!?」
「私も必死に説得したけどきかへんねん。まったく……その頑固なところは
誰に似たんだか……」

ごっちんの目を見る。
その目はとても真剣で、合わせてもないのに女王様と同じタイミングで
溜め息をついた。


「なっち……真希のこと頼んだで」
「わかりました。必ず私が守りぬきます!」
「真希も。なっちのこと支えてやるんやで」
「はいっ!」
「よし! それじゃみんな集まり」

女王様は玉座から立ち上がると、こちらに歩いてきて、私たちは自然に
道をあける。
立ち止まると女王様は呪文の詠唱をはじめた。
601 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:56
「ロマンス王国城までは一気に飛ばす。けどどこに捕らえられているかまでは
わからへん。慎重に探すんやで?」
「はいっ!」
「あと今回はあくまで救出が目的やから。紺野たちを助けたら迷わず戻って
くること。紺野が魔法使える状態やったらいいけど、キツそうやったら、
真希、あんたがやるんや」
「はい」
「よし……行くで!」

周囲の光が魔法陣を描き出す。
白と金色に光る、光の魔法陣。

「シャイン・ゲート!!」

その魔法陣から、巨大な「門」が出現した。
602 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:56
「目標はロマンス王国城! ゲート・オープン!!」

すると巨大な門はスゥーッとその門を開いた。
その中は虹色に輝く光のシャワーが幾重にも重なっていた。


「なっち……頼んだで?」
「はいっ! 任せて下さい!」

ゲートの前に立ち、決意を固める。

「行くよ、みんな!!」

私たちは光のシャワーの中に飛び込んだ。
まばゆい光が私たちを包み込んでいった。
603 名前:第10話 投稿日:2004/06/26(土) 15:57
   
604 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/26(土) 16:10
今回はここまでです。
次回からはまた新しいバトルに!

>>591 つみ 様
矢口さんはホントに現状ではミステリアスなキャラに(笑
真意はそのキャラを壊さないように少しずつ出していきたいです。

>>592 きーあん 様
おぉ! いつもご紹介ありがとうございます!
いろいろ分かれた展開をうまく絡ませていきたいです。

>>593 紺ちゃんファン 様
矢口さんは……今のところはちょっとわからないですねぇ〜。
新たな展開に突入しますが、その中でも矢口さんはちゃんと出てくるので、
よければ追ってみて下さい。
605 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/06/26(土) 16:10
( ´ Д `)<隠すよ!
606 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/26(土) 22:07
作者さま、更新どうもです。
おお・・・っ。なんだか新しい(?)展開に・・・
紺ちゃん・・・大丈夫かなぁ?
応援してます。
607 名前:みっくす 投稿日:2004/06/26(土) 22:14
更新おつかれさまです。
なんか、次回はすごいことになりそうな予感。
次回楽しみにしてます。
608 名前:名も無き読者 投稿日:2004/06/30(水) 15:54
更新乙彼サマです。
いよいよ新展開ですか・・・。
ますます楽しみデスw
続きも期待してます。
609 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:19
〜保田圭〜

虹色のカーテンを抜けると、そこは薄暗い牢獄だった。
一つ一つの牢屋がそれぞれ隔離されていて、それが無数に点在している。
そして壁に設置されたろうそくの灯火が淡く揺らめいている。

「このどこかに捕らえられてるのか……。こりゃ探すのはちょっと骨だね……」
「でも探すしかないっしょ。二手に分かれて探そう!」
「わかった。じゃあ松浦と高橋は私と一緒にあっちを探すよ。なっちと姫様と
紗耶香は向こうを探して」
「わかった。気をつけてね、見つからないように」
「そっちこそ」
610 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:20
「あっ、安倍さん!」
「んっ? どした、高橋?」
「これ、持ってってください!」

高橋がマントの下から取り出したのは、綺麗な水晶玉だった。
それをなっちに手渡す。

「これであたしたちと通信できます。あさ美ちゃんたちを見つけられたら
お互い連絡しましょう」
「わかった」

なっちは水晶玉をしまうと、後ろを向いて闇の中へ駆けていった。
姫様と紗耶香もなっちの後に続く。

「さて、私たちも行くよ。さっさと見つけて助けないと!」
「はいっ!」
「は〜い!」

そして私たちもなっちたちが進んだ方と反対側の通路へ走り出す。
先の見えない闇の中へ。
611 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:20


第11話  いろんな想いが交差して



612 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:21
「……いませんね」
「そうだね……」
「無駄に広いですねぇ〜」

なっちたちと分かれたあと、私たちは細い通路を走りながら、牢屋の中を
一つ一つ探していったけど、そのどれもが空っぽだった。
本当に、松浦の言うとおり無駄に広すぎ……。
さらにはまるで迷路のように道が分かれている。


「保田さん、また分かれ道ですよ? どっちに行きます?」
「……曲がるともと来た方に戻っちゃうね。真っ直ぐ行くよ」
「わかりました!」

そのまま真っ直ぐ進む。
途中の牢屋を覗きながら走るけど、やっぱりそこも空っぽ。

「……また分かれ道ですね……」
「そうだね、次は曲がってみようか?」

また分かれ道にさしかかり、今度はそこを曲がったとき……
613 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:22
  カツンッ……。

不意に通路の先から聞こえてきた足音に三人して足が止まる。
それでもなお闇の中から「カツン、カツン」と足音が聞こえてくる。
なっちたちじゃないな……。敵に見つかったか……?

投擲用のナイフを取り出して構える。
松浦も剣を抜き、高橋も魔力を集め始めている。
足音からして一人みたい。それなら仲間を呼ばれる前に倒せれば……。


やがて闇の中からキラッと光る刀身が見えてくる。
そしておぼろげだけど相手の輪郭も。
でもこれだけ見えれば十分。ナイフをすっと振りかぶる。
仲間を呼ばれないように……。だったら最初に潰すのは……喉!
そのままナイフを放とうとしたけど……
614 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:23
「待ってくださいっ!!」

それを止めたのは松浦だった。
ナイフの先に松浦の背中が広がる。

「ちょ、どうしたのよ、一体!?」

松浦は聞こえてないみたいだった。
ただそこに立ちつくして、闇の中に浮かぶ剣を見つめている。

「……その剣……」


その時、ろうそくの揺らめきに照らされて、敵の姿が見えるようになった。
闇から浮かびだしたようにそこに現れた姿。


「……みきたん……」
「えっ?」
「あれっ? 亜弥ちゃんじゃん? なんだ、侵入者って亜弥ちゃんだったの?」



615 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:24

◇     ◇     ◇


〜松浦亜弥〜

闇に浮かぶ剣を見たとき、すぐにわかった。
だってあの剣は私の剣と同じものだったから。

初めて旅に出るときに私があげた剣。
おそろいのものが剣なんて色気もなにもないけど、それでもなにか、私と
同じものを持っていて欲しかった。
それでたとえ離れていても、私たちはつながっていると思いたかった。


だからすぐわかった。でも認めたくなかった。
みきたん……なんでこんなところにいるの……?
616 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:25
「……みきたん……」
「あれっ? 亜弥ちゃんじゃん? なんだ、侵入者って亜弥ちゃんだったの?」


今やしっかりと見えるようになった顔。
それは私が大好きな人の顔……。
聞き覚えのある声。
それはいつも優しく私の名前を呼んでくれた声……。


「……みきたん……なんでここに……」
「んっ? ちょっとミキは今ロマンス王国で傭兵やっててさ。ほら、前にも
同じように傭兵してたって言ったじゃん」
「あぁ、そういえばそうだったね……。でもこんな地下の牢獄でなにしてるの?」
「そうそう、どうやらこの城に侵入者が入ったみたいでさ。ホントはまいちゃんが
任務を頼まれたんだけど、まいちゃんケガ治ったばかりだから。だからミキが
代わってあげたんだよ」


すっとみきたんの剣の切っ先が私の方を向く。
それは私が必死に認めまいとしていた現実……。

「それじゃ、始めよっか? 亜弥ちゃん」
617 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:25
一瞬の間にみきたんの体が消える。
そして次の瞬間には目の前に剣先が迫っていた。
私の右手に握られているのと同じ剣……。

「やめて、みきたん!!」

なんとか体を反らしてかわすけど、すぐに剣は軌道をかえて襲ってくる。
今度は体の前に剣を出す。
静寂に包まれた牢獄に金属音が響いた。


「う…うっ……」

剣が交差したまま、ギリギリと押される。
背中に牢獄の壁の冷たい感触が伝わる。
鋭い剣先と、冷たい表情をしたみきたんの顔が迫ってくる……。
618 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:26
「松浦っ!!」

保田さんの声が響いた。
それと同時に微かに聞こえた風切り音。迫ってくる殺気。

いけないっ!
体を沈め、剣を手離す。みきたんの剣が後ろの壁にめり込んだ。
そのままみきたんの体に飛びつく。
体が傾き、すぐそばを保田さんの投げたナイフが飛んでいく。
私とみきたんはそのまま折り重なるように倒れた。


「松浦! なんで敵をかばうのよ!?」
「みきたんは……松浦の大切な人なんです!」
「えっ……?」
「行ってください! ここは松浦に任せて、早く紺ちゃんたちを助けてあげて
ください!!」
「……わかった! 行くよ、高橋!」
「は、はいっ!!」

みきたんの上に覆い被さったまま、保田さんと愛ちゃんが走っていくのを
見届ける。
619 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:27
  ドスッ!
「! うあぁぁぁあッツ!」

油断したのがいけなかった。
左腕に鋭い激痛。
見るとみきたんの手に持った剣が左肩を貫いている。


「うっ……くっ……!」

なんとか離れて、さっき離した剣を拾う。
左肩からは血が溢れ出し、指先まで滴り落ちてきている。
620 名前:第11話 投稿日:2004/07/01(木) 16:27
「本気なんだね……みきたん」
「当然。今のミキはこれが仕事だからね」

みきたんは剣をかまえなおした。
私も剣をかまえる。といっても使えるのはもう右手一本。
そして構えたのはいいものの、みきたんを斬れるわけがないことなんて、
私自身が一番知ってる。

今はもうなにがなんだかわからなくて、気持ちがバラバラで……
ちょっと落ち着いて気持ちの整理をしないと、心も体も戦える状態じゃない……。


保田さん、愛ちゃん、安倍さん、姫様、市井さん……
紺ちゃんたちを……頼みます……。
621 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/01(木) 16:32
今回はここまでです。
そして新展開に突入です!
まぁ最初からこんな展開なんですが……(ぉぃ

(●´ー`)<もしかしてなっちまたしばらく出てこないんじゃないんだべか?

……うぐぅ……。
いや、もうちょっとしたら……(ゴニョゴニョ
622 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 16:33
なっちぃ・・・
623 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/01(木) 16:40
>>606 紺ちゃんファン 様
はい、新しい展開に突入です!
田中ッチに連れてかれた紺ちゃんは次回登場予定です。
応援に応えられるように頑張りますね!

>>607 みっくす 様
すごいことに……なってますねぇ(マテ
11話はなんかいろいろなバトル三昧になりそうな予感……。
大変ですけどがんばりま〜す!

>>608 名も無き読者 様
はい、無事(?)新展開に突入しました。
キャラがけっこう多くてみんなちゃんと駆けるかどうかが不安だったりしますが、
がんばりま〜す!
624 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/01(木) 17:51
更新乙です。
っひゃ〜、まさか彼女が登場してしかもこんな展開になるとは・・・。
最後の一文が怖い。。。
続きも楽しみにしてます。
625 名前:みっくす 投稿日:2004/07/01(木) 20:02
いやーこんな展開になるとわねぇ。
最後の一文からすると、あややは・・・。
次回楽しみにまってます。
626 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/01(木) 22:49
この終わりかたは続きが気になりますね。
あやや・・・助かってほしいです。
がんばってください!
627 名前:つみ 投稿日:2004/07/02(金) 17:26
まさかこんな・・・
この二人が争わなければならないなんて・・・
ちょっと残酷っぽいっすね〜
いい結果を期待してます!
628 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 09:57
〜紺野あさ美〜

牢屋から一人連れ出された私はどこに行くのかもわからずに、前を行く
小さな背中を追って歩いている。
けっこう足が速くて(ていうか私がトロいだけかもしれないけど)、ちょっと
小走りになってるけど……。
でももうかなり歩いているのに、全然止まる気配がない。
いったいどこまで連れて行かれるんだろう、とちょっと不安になる。


「ぁ、あのっ……田中ちゃん!」

思い切って呼んでみると、彼女はしたたかに頭を壁にぶつけた。
629 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 09:58
「な、なんですか、"田中ちゃん"というのは!?」
「えっ? 田中れいなちゃんだよね? 違った?」
「そうじゃなくて! なんで"ちゃん"付けなんですかっ!?」
「だって……いきなり呼び捨てにするのも悪いと思って……」
「……もういいです……。それで、なんですか?」
「えっと、どこまで行くの? それに飯田さんが私になんの用?」
「……飯田さんが用があるんじゃありません。れいなが聞きたいことが
あったから呼んだんです」
「えっ?」

急にグイッと服の襟を掴まれると、そのまま壁に押しつけられる
田中ちゃんの怒りに満ちた目が私の目を覗き込んでいる。
630 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 09:59
「死ぬ前に答えてください。なぜあなたは飯田さんを裏切ったのですか?」
「た、田中ちゃん?」
「あなたは飯田さんに認められていた! 実力だって、才能だってあった!
それなのになんで!?」

私も田中ちゃんの目を覗き込む。
真っ直ぐで、とても真剣な瞳。
どれだけ飯田さんのことを信じていて、また尊敬しているのかが伝わってくる。
でも……だからこそ……


「飯田さんは……飯田圭織は田中ちゃんが思っているような人じゃない!」
「なんだと……?」
「飯田さんはおそらく自分以外の人をみんな道具としてしか見てない!
田中ちゃんだって、亀井ちゃんだって、きっと自分がいいように使える手駒としか……」

最後まで言い切る前に頬に衝撃。
続いて体が地面に倒れる。
なんとか立ち上がろうとするけど、その前に田中ちゃんに襟首を掴まれて、
強制的に掴み上げられた。
631 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:00
「飯田さんのことをなんにも知らないくせに、貴様が飯田さんを語るなっ!!」
「知ってるよ……少なくとも田中ちゃんよりは……。あの人は残酷で、狡猾で……」
「黙れっ! れいなと絵里は飯田さんに命を助けられたんだ! 飯田さんが
いなかったられいなも絵里もとっくに死んでた!! これ以上飯田さんを
愚弄するなら今すぐこの場で斬り殺してやるッツ!!」
「私も同じだよ……。同じように飯田さんに助けられたんだ。だからわかる。
結局飯田さんは田中ちゃんも亀井ちゃんも道具としてしか見ていない……。
私を道具としか見てなかったように……」
「黙れーっ!!」

突き飛ばされて少しよろめく。
そして田中ちゃんの剣が怒りにまかせて振り下ろされてくる。
せまりくる闇色の刀身。

今だっ!
両腕を交差させ、顔の前に上げる。
632 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:01
  ガキィィィインっ!!

牢獄に響き渡る金属音。
田中ちゃんの剣は、私の両腕にはめられている腕輪に当たって止まった。


腕輪に亀裂が入る。
ピシピシッと、一本……また一本……。
やがて腕輪は真っ二つになって地面に落ちた。

「し、しまった!」

田中ちゃんの目が驚愕に見開く。
でもその隙に私は一気に魔力を集める。
そして詠唱をショートカットし、即座に魔法を放つ。
633 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:01
「ゴッド・ブレス!」
「うわっ!!」

風の渦が田中ちゃんの体を吹き飛ばす。
距離は十分。そして田中ちゃんもまだ起きあがれていない。
また魔力を集める。今度のは魔法陣だからショートカットはできない。
まだ……もうちょっと……まだ立たないでよ……。


「くっ、最初からこれを狙ってたのかっ!?」

ようやく田中ちゃんが起きあがったけど、ちょっと遅かったね、魔法陣は完成した。
田中ちゃんが剣を振り上げて走ってくる。
そこへ向けて魔法陣をかざす。

「ライトニング・ボルテックス!!」

目の前に広がる魔法陣が黄色く光る。
そして田中ちゃんめがけて陣の表面から幾筋もの雷刃を吐き出す。
634 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:02
「うわっ! くあっ!!」

電撃が田中ちゃんの手に、足に当たるたびに大気が震え、直撃を受けた
部分が痙攣する。
それでも田中ちゃんは止まらない。真っ直ぐに私に向かってきている。
もはや執念……。ちょっとやそっとじゃ止まらないだろう。
仕方ない……。
乱発射される雷刃を止め、一つに集めていく。


「うわぁぁあっ!!」

田中ちゃんが眼前に迫った。
闇色の剣が振り上げられる。
でもその瞬間に集めた雷撃を解放する。
収束された雷撃は一筋の帯となり、田中ちゃんの身体を貫いた。
635 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:03
「ああぁああぁぁぁああっ!!」

雄叫びが悲鳴に変わる。
顔が苦痛に歪み、手足の先まで全身が痙攣を起こす。


雷撃が通り抜けると、一瞬田中ちゃんの身体が硬直した。
だが身体はすぐに傾き、前方に崩れる。

「あっ……」

思わず田中ちゃんの身体を抱きとめた。

「う……紺野…さ……」

田中ちゃんの全身の力が抜ける。
威力はちゃんと抑えたから死んではいないはず。どうやら気を失ったみたい。
636 名前:第11話 投稿日:2004/07/06(火) 10:04
「……ごめん……ね」

そっと田中ちゃんの身体を隅に寝かせると、ターンして今来た道を戻る。
記憶力には自信がある。捕らえられてた牢屋からけっこう離れちゃったけど、
ちゃんと戻れるはず。
足音を殺し、それでもできるだけ早足で、通路を走っていく。
のんちゃん、里沙ちゃん、待っててね。すぐに助けてあげるから。


最後の角を曲がり、あとは真っ直ぐ。
のんちゃんたちが捕らえられてる牢屋が見えてきたところで、足が止まる。
闇夜に浮かぶ三日月のように、暗闇の中で蝋燭の光を反射している鈍色の大鎌。


「まったく……どいつもこいつもオイラの仕事を増やしてくれちゃって……」
637 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/06(火) 10:15
短めですが今回はここまでです!
いやもう、なんとなく好きだわ、この二人(コラ
微妙な距離感と想いの相違が……うまく書ければなぁ、と。

>>622 名無し飼育さん 様
(主人公なはずの)なっちは次回でちゃんと登場させる予定です。
それまでお待ち下され〜。

>>624 名も無き読者 様
この二人の展開はけっこうさっさと決めてたり(苦笑
続きはもうちょっとあとになると思います。
期待に応えられるよう頑張ります!


638 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/06(火) 10:24
>>625 みっくす 様
ぁぃ、もうこんな展開になってしまいました……。
後引きそうな関係になってしまいましたね。
決着はもうちょっとあとになりそうです。

>>626 紺ちゃんファン 様
気にさせといて今回は全然違うところだったのですが(マテ
えぇもうちゃんとやります、はい……。
本当に今回はバトル三昧になりそうです。

>>627 つみ 様
確かにちょっと残酷ですねぇ……。
でもあやみきはいっつもラブラブな気がするんでたまにはこんなのも(ぉ
いや私もあやみき好きだよ! 好きだけどぉ……(マテ
639 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/06(火) 10:25
川o・-・)ノ<隠します!
640 名前:みっくす 投稿日:2004/07/06(火) 12:01
更新おつかれさまです。
なんか意外な展開になりましたね。
次回は魔法バトル全開になりそうな予感。
次回も楽しみにしてます。
641 名前:つみ 投稿日:2004/07/06(火) 14:52
おお・・!
この二人の対決が次回見られるのか・・・!
楽しみに待ってます!
642 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/06(火) 15:25
更新乙彼サマです。
なんだかココの純粋で真っ直ぐな彼女のキャラが大好きです。。。
この2人とあっちの2人の対決も気になりますが、やはり一番気になるのは主人公w
次回も楽しみにしてます。
643 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/06(火) 21:23
作者さま、更新ありがとうございます。
638>
大丈夫です!!(何が?)それにしても・・・
バトル三昧OK!
紺ちゃん!!がんばれ!!負けるなよぉ・・・!
644 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/07(水) 01:10
なっちは・・・・
645 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:10
〜安倍なつみ〜

圭ちゃんたちと分かれた私たちは闇の中を走り、途中の牢屋を一つ一つ覗いていく。
でもその中には、紺野たちはおろか誰の姿もない。
ただ……闇が濃く広がっているだけ。

「いないねぇ〜、いちーちゃん……」
「そうだね。まったく……誰も捕らえてないんだからこんなに大きく造らなくてもいいのに……」
「・・・・・・」

私は剣を握って先頭を走る。
そのあとをごっちんと市井さん……さやかが並んでついてくる。
646 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:11
「そういやさ、いちーちゃん! 旅してたって言ったけどどこ行ってたの?」
「ん〜、いろいろ。ホントにいろいろと回ったよ」
「へ〜、聞かせてよ、いろいろなはなし!」

後ろからはそんな話し声が聞こえてくる。
ちらっとふり向くとごっちんは満面の笑顔でさやかに話しかけていて……。

……いつもは私に向けられてる笑顔なのに……。

ごっちんが笑顔なのは嬉しいはずなのに……今はその笑顔が心を掻き乱す。
ごっちんの楽しそうな表情に、嬉しそうな声にイライラして……

「ごっちん! 今はもう敵陣にいるんだよ! もっとちゃんと気を引き締めてっ!!」

思わず声を荒げてしまった。


「あっ……ご、ごめん、なっち……」

ごっちんはすぐにしゅんとなって顔を曇らせてしまう。
私はやるせなくなって、また前に向き直るとそのまま走り出す。

どうして? せっかくごっちんが笑顔になってくれたのに……。
私はごっちんの笑顔を見るのが好きだったはずなのに……。
647 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:12
そのあと私たちは無言で走り続けた。
牢屋があれば中を覗いてみるけど、それも全部外れ。
しかも通路は迷路のように入り組んでいて、だんだん方向感覚が麻痺してくる。
そうして走っていると、また目の前に十字路が見えてきた。

「分かれ道だね……どうする、なっち?」

さやかが私のとなりに並んで訊いてくる。

「……真っ直ぐ行ってみよう」
「おっけー!」

もはや勘で進むしかない。
両脇の牢屋を覗き込みつつ、十字路に足を踏み入れると、その瞬間、足下に魔法陣が現れた。
648 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:13
「なっ? これはっ!?」
「やばいっ! ごっちん!!」

魔法陣が蒼く輝く。
私はごっちんの身体に飛びつき、なんとかごっちんと一緒に魔法陣の外へ転がり出る。
さやかも魔法陣から飛び退き、その瞬間、鋭い音とともに魔法陣から無数の氷柱が
突き出した。


「よくかわしましたね〜! さすがです!」

冷たい空気に乗って、氷の向こうから声が聞こえてくる。
凛とした声。というよりは、なんか無性に高音な声。


壁や天井に突き刺さった氷柱に亀裂が走っていく。
一本、また一本……。
ヒビが全体に行き渡ると、パキィンと鋭い音を立てて氷柱は砕け散った。
四散した氷が雪のように舞い、蝋燭の明かりをキラキラと乱反射させる。
そしてその中に佇む人影が一つ……。


「ちゃお〜! ロマンス王国騎士、石川梨華でっす!!」
649 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:15
「ふざけやがって」

さやかが双剣を抜いて前に出る。
私も剣を構える。
見つかってしまったのは誤算だが、この奇襲そのものが読まれていたわけではなさそう。
その証拠に、この付近には石川以外の気配がまるでない。
それならむしろこの展開は好都合。

「紺野たちはどこ!?」
「フフッ、私を倒せたら教えてあげますよ〜!」

魔力が一瞬で収束する。
それと同時に周囲の空気が凍てついていく。
石川の前に蒼い魔法陣ができあがった。


「アイシクル・エッジ!!」

魔法陣から発射された、ナイフのように研ぎ澄まされた氷の刃。

「きゃっ!」
「ごっちん!」

そのうちの一つがごっちんを掠めたようで、ごっちんが悲鳴をあげた。
守るように、ごっちんの前に立ちはだかる。
そして襲いくる氷の刃に剣をかざす。

  キィン!!

刹那、氷の刃はすべて切り裂かれ、地面に落ちて溶けていた。
650 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:16
「ふぅ……大丈夫だった、ごっちん?」
「うん、ありがとう、なっち!」

見るとさやかも同じように、氷をすべて切り落としていた。

「へぇ〜、なかなかやりますねぇ〜!」
「人質の居所、喋ってもらうよ」

さやかが駆け出す。そして私もさやかの後について同じように。
まずさやかが剣を一閃する。真横に降られた二本の剣をかわすように石川が
飛び上がった。
そこを私が追撃する。
上空じゃ避けられない。捕らえたっ!
でも……

「きゃ〜!」

  ガキィィンッ!

突如天井からつららが伸びて、私の剣を遮った。
上を見ると天井が一面氷で覆われている。
その上さらにそこから一瞬で伸びたつららが私に襲いかかってきた。
651 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:16
「くっ!」

くい込んだ剣を力任せに押して、つららを切断する。
地面に着地して飛び退くと同時につららが地面に突き刺さった。
かわせたと思ったけど、少し掠ったらしく、左肩から血が溢れた。

「なっち!」
「大丈夫、かすり傷!」

また氷に細かなヒビが入っていく。
そして鋭い音とともに氷が砕けたけど、今度は散りばめられた氷の向こうには
誰もいなかった。
石川が……消えた……!?

「しまった! どこに……?」
「こっちですよ〜!」

背後から聞こえた声に思わずふり返る。
さやかの後ろに石川の姿があった。
652 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:17
「なっ?!」
「おそいですよ〜!!」

さやかがふり返る前に、石川の手が伸びた。
そしてそのままさやかの首筋を撫でる。

そう……撫でただけ。
でもその瞬間、さやかはその場に倒れ込んだ。


「さやかっ?!」
「いちーちゃん!」

私もごっちんも慌ててさやかに駆けよる。
さやかの身体に触れて……反射的に手を離した。
なに、これは!? これが人間の体温……?
さやかの身体は氷のように冷たかった。
653 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:18
「さやかっ、大丈夫?!」
「うぅ……さ、寒い……」
「くっ!」

石川が触れたさやかの首筋には蒼白く光る小さな魔法陣が刻まれていた。
立ち上がって石川に向き直る。
石川は笑顔でこちらを見下ろしていた。

「……なにをした……?」
「フフッ、"フリージング・ルーン"って言うんですよ。一瞬にして体温を奪い去る氷呪魔法
です。まぁ、死なない程度にですが、それでも体はまったく動かせないでしょうね!」
「……やっかいな魔法も使えるみたいだね……」

もう一度しゃがみ込んでさやかの状態を確認する。
身体がガタガタ震えて、少しでも体温を逃さないよう、自分で自分を抱きしめている。
私はごっちんにそっと耳打ちする。


「ごっちん、ディスペルライトで魔法解けるかい?」
「あっ、うん! やってみる!」
「たのんだよ!」

そういってまた立ち上がり、剣をかまえる。
654 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:19
「あなたも同じように、体の中から凍らせてあげますよ!」

石川の右手に魔力と冷気が集まる。
触られたらアウトか……。なんとか距離をとって戦わないと……。


「じゃあ行きますよ! せいぜい触られないように気をつけて下さい!!」

石川が向かってくる。私も剣を握り直す。
間合いは剣のぶんだけ私のほうが有利だ。その間合いを維持して攻撃すれば……。

剣を横に薙ぐ。石川は飛び上がってかわした。
そのまま上空から、冷気を纏った右手が襲いかかってくる。
くっ……。
今度は私が体を引いてかわすと、石川が目の前に舞い降りた。
655 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:20
今だっ!
着地の一瞬の間をつき、剣を振り上げる。
だが、それよりも早く、石川の左手が迫っていた。
しまった……左手にも魔力を!?


「フリージング・ルーン!!」
「うわっ!!」

もう一度体を引く。
なんとか石川の左手は、私を捕えずに眼前を通りすぎていった。
が……

「おバカさんっ♪」

かわしたぶんだけ私は反応が遅れた。
その隙に石川は立ち上がって走り出す。
石川の向かう先には……ごっちんがいた……。
656 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:21
「しまった……ごっちん!!」
「えっ?」

ディスペルライト用に魔力を集めていたごっちんがようやく気づいた。
慌てて集めた魔力を別の魔法に組み立てている。

「オキサイド・リング!!」

放たれる光輪。でもそれでも石川は捕らえられなかった。
間に……合わない……。


「フリージング・ルーン!!」

蒼白い光が放たれ、空気が凍てつく。
その中で、ごっちんの胸元に蒼い魔法陣が刻まれたのが見えた。
そしてごっちんもさやかと同じように、その場に崩れ落ちた。
657 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:22
「さて、残るはあなた一人ですよ〜!」
「・・・・・・」

私の中の、なにかが、弾けた。


「えっ?」

次の瞬間には石川の驚愕した顔が眼前に迫っていた。
そのまま剣を振り上げる。
石川が慌てて飛び退いたが、私の剣はしっかりと石川の右腕を一閃傷つけていた。


「くっ……」
「それで右腕は使えない。二人にかけた魔法を解けば右腕だけで許してあげるよ?」
「……フフッ!」

苦痛に歪んでいた石川の顔が笑顔に変わった。
658 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:23
「やっぱり隊長を任されるだけはありますねぇ〜! その殺気、その威圧感、ちょっと前まで
とはまるで別人です!」

石川が立ち上がり、傷を押さえていた左手を突き出す。
真っ赤に染まった手のひらに、魔力が集中していく。
そして次の瞬間、その左手が凍り付いた。
氷はどんどん成長し、鋭く尖っていく。
やがて石川の左腕は氷の刃と化した。

「もっと私を楽しませて下さい。私を倒せば魔法は解けますよ!」
「なんだ、それなら話が早い」


剣を両手で握りしめて飛び上がる。
そして大上段から石川めがけて思いっきり振り下ろす。

「そんな氷でなにができる!!」

私の剣と石川の氷の剣が激突する。
一瞬抵抗を感じたが、もうちょっと力を加えると、あっけなく氷の剣は砕け散った。
659 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:24
「なっ!? こんな簡単にっ……?」

私はまだ攻撃の手を休めない。
振り下ろした剣をいったん引き、そして片手で握って突き出す。
剣の先端は氷で覆われた石川の左腕を貫いた。


「あぁっ!」

石川の顔が苦痛で歪む。
これで両手は使い物にならない。
剣を引き抜き、そのままの勢いで身体を回転させて回し蹴りを放つ。
的確に腹部にクリーンヒットし、石川の身体が吹っ飛んだ。


これで終わり……。
剣をいったん地面に突き刺し、両手に魔力を集める。
石川とは対称的な、熱く、紅い炎の魔力。
660 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:25
「うぅ……」

魔法陣を形成して解放する。
うずくまっている石川の下に紅い魔法陣が出現した。

「バーン・ノヴァ!!」

紅い魔法陣が真白い炎を突き上げる。

「うあぁぁぁああっ!!」

石川の悲鳴が響き渡る。
しばらくすると炎が消え、石川が転がり出てきた。


「ハァ…ハァ……危なかったです……。とっさに水壁を張らなければアウトでした……」

どうやらうまく切り抜けたらしい。
でも、それでもどうやら虫の息といった感じ。
剣を引き抜き、石川の前に突き付ける。
661 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:25
「死にたくなかったらごっちんとさやかにかけた魔法を解け。そして紺野たちの場所を教えろ」
「わ、わかってますよぉ! 私だって命は惜しいですから!」

石川が指だけを動かして、パチンと鳴らす。

「うっ……」
「んぁっ……」
「ごっちん! さやか!」

すると背後でごっちんとさやかが起きあがる気配がした。
思わず後ろをふり返る。
でもそれがいけなかった。


「エヘヘッ! 機会があればまた戦いましょーねー!!」
「なっ!?」

石川の甲高い声が遠ざかっていく。
石川の方を睨むと、すでに石川は遙か遠くに逃げていってしまっていた。
あいつー!!
662 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:26
「さやか! ごっちん! 追いかけるよ!! とっつかまえて紺野たちの居場所を聞き出してやる!!」
「おうっ!」
「おっけー!!」
「きゃー!!」

そのまま私たちは石川を追いかける。
足は怪我してないとはいえ、石川は手負いだ。
このまま追いかけていけばいずれは捕まえられるはず。

しかし十字路にさしかかったとき、またしても足下に蒼い魔法陣が浮かび上がった。


「なっ、またかっ!」

飛び退くと同時に氷柱が現れる。
氷柱は天井にまで達し、私たちの進路を完全に塞いでしまっている。
663 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:27
「くっ、こんな氷……」
「待って、なっち」

炎属性の魔力を集め始めたけど、それはさやかによって止められた。

「魔法を形成する時間も惜しい。ここはアタシに任せて」
「えっ、さやか……?」

さやかが双剣をかまえる。
空気が一瞬にして張りつめていくのがわかる。

「破ッ!!」

短い呼吸のあと、さやかが氷の壁に突っこんでいく。
そして双剣から繰り出される無数の突きが氷の壁を穿つ
硬そうな氷にピキピキッとヒビが入った。
664 名前:第11話 投稿日:2004/07/12(月) 12:29
「これで終わりだっ!!」

さやかが最後の一撃を加えると、氷の壁は砕け散った。
そして細雪のように舞い落ちる氷の破片の向こうに一つの影を見つける。


「フンッ! わざわざ待ってるとは、いい心がけ……?」

さやかの言葉が途中で途切れた。
さやかも気づいたのだろう。あの人影が石川ではないことに……。


「ようこそ、私の城へ」

凛とした声が地下牢に響く。
それと同時に人影がはっきりと見えてくる。
獅子を思わせるようなブロンドの髪と、切れ長の目。

「キサマは……斉藤瞳!!」

さやかが叫んで剣を構えた。

じゃあ……この人が……
ロマンス王国女王、斉藤瞳……。
665 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/12(月) 12:38
今回はここまでです。
ようやく主人公登場〜! 主人公らしく……なってるかな?
しかし最近切り方がワンパターンな気が……。もちっと考えます……。


>>640 みっくす 様
魔法バトル全開……とまではいきませんでしたが、バトルは全開でした。
期待に応えられるよう頑張ります〜!

>>641 つみ 様
すいません、今回は主人公の方でした……。
紺野VS矢口は次回更新予定です……。
666 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/12(月) 12:43
>>642 名も無き読者 様
はい、ようやく主人公出てきました。
3つにまで分岐しちゃってるんですが、そろそろちゃんと収束してきますので。

>>643 紺ちゃんファン 様
いえいえこちらこそ、ありがとうございます。
ほんとに宣言どおりのバトル三昧です。
紺ちゃんは次回に。

>>644 名無し飼育さん 様
なっち出せましたよ〜!
ようやく主人公らしく……?
667 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/12(月) 12:43
(●´ー`)<隠すべさ!
668 名前:つみ 投稿日:2004/07/12(月) 15:09
ついに本領発揮ですね・・・
またすんごい魔法ですね。
こんまりも気になりますが、最後に出てきたあの人もやっぱり・・・
次回も楽しみにしてます。
669 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/12(月) 15:48
更新お疲れ様デス。
流石は主人公!!
・・・ってな感じの戦い振り、エエ感じですw
さらにはこの方も。。。
次も楽しみにしてます。
670 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/12(月) 21:23
な、なんと!!ロマンス王国の女王はボス!!!つ・・・強そうだ・・・。
石川さん、なんか・・・妙にあっかるいな・・・。
次回更新が楽しみになりました!!
671 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/13(火) 02:21
<<670 どこかのスレでもネタバレ注意されてなかった?
せめて固有名詞は出してほしくないのだが。
せっかく作者さんが隠し流しをしてる意味ないじゃん。
672 名前:みっくす 投稿日:2004/07/13(火) 02:45
更新おつかれさまです。
本領発揮って感じで。
主人公やっぱり強いですね。
あっちの戦いも気になるけど、こっちもすごいことになりそう。
次回も楽しみにしてます。
673 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/13(火) 22:08
671>
あ・・・そういえば・・・。
すいませんでした。以後気をつけます。
作者さまもすいませんでした・・・。
674 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:27
〜紺野あさ美〜

「のんちゃんたちを返してもらいます。そこをどいてください」
「それはできないね。オイラも仕事だからさ」
「だったら……力ずくでもどいてもらいます」
「できるかな?」

ニヤッと笑う矢口さん。
私も魔力を集め始める。


「確かにあんたは強いよ。あのカオリの弟子で、おそらく魔法だけなら世界でもナンバー2。
でも……今はそれが生かせる状況かな?」
「えっ?」
「魔法使いは距離をとって戦うのがセオリーだろ? こんな狭い廊下じゃ身動きがとれないよ?」
「くっ……なら、この一発で決めてみせます!」

魔力が集まったので魔法陣を形成し始める。
炎系魔法『ドラゴニック・ファイアー』。
直撃すればまず一撃。しかも矢口さん自身が言ったようにこの狭い廊下じゃ避けられない。
でも矢口さんは身動き一つせず、表情一つかえないで立っている。
675 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:28
「悪いけどそれもできないよ。よく見てごらん、オイラたちの位置関係を」

すっと矢口さんの体が廊下の端による。
その瞬間、詠唱が止まる。
廊下の先の牢屋には……不安そうな顔ののんちゃんと里沙ちゃんがいた……。


「そのまま二人を巻き込む気? まず助からないでしょ、その魔法なら?」
「……くっ……」
「ついでにここは敵陣なんだよ? あんまり派手にやりすぎるとすぐに増援が来る」

歯がみしながら魔法陣を解く。
これじゃ大魔法は使えない……。


「さて……力ずくでできるもんならやってもらおうか!」
676 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:29
一瞬のうちに矢口さんの体が消える。
そして次の瞬間には婉曲した大鎌が眼前まで迫っていた。
なんとかシールドを張って斬撃を受けとめるけど、またすぐに視界から矢口さんがいなくなる。

後ろに回り込んだ!?
慌ててふり向くけど、その先はただ闇が続いているだけ。
また前を向こうとすると、一瞬だけ蝋燭の明かりが何かに遮られた気がした。
まさかっ、上っ!?


慌てて後方に飛び下がる。
矢口さんの大鎌が、私がもといた場所の地面を砕いた。


「さっきの理由にもう一個付け足しとくよ。オイラだって一応ロマンス王国の騎士団長を任されて
るんだ。あんましなめないでね?」
677 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:30
また矢口さんの姿が消え、すぐに大鎌が迫ってくる。
今度もシールドでガードするが、今度は連続で攻撃が加えられる。

一撃一撃が重い。シールドを通して衝撃が伝わってくる。
そしてシールドの表面には細かなヒビが入っていた。
ヤバイ……このままじゃシールドがもたない……。


「ほら、どうすんの!?」

矢口さんが鎌を振り上げる。
おそらく渾身の一撃でシールドを粉砕するつもりだろう。
でも大振りになった今がチャンスだ。
シールドを一瞬で消し、そのまま後ろへと飛ぶ。

鎌はなんとか私に当たらなかった。
そして大振りの一撃を出したあとにはどうしても一瞬隙ができ、次への動作が遅れる。
その一瞬で魔力を集め、ショートカットして魔法を放つ。
678 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:32
「ゴッド・ブレス!!」
「くっ!!」

なんとか圧縮された風の渦を大鎌でガードする矢口さん。
でもその風圧には耐えきれず、身体がジリジリと後退していく。
私も最初からこの魔法が決まるとは思っていない。距離さえとれれば十分。
一気に魔力を集め、次の魔法を構築する。


「アース・シャフト!!」

矢口さんの足下にダークブラウンの魔法陣が広がる。
そしてそこから無数の石の針が突き出した。

360度全方位から襲いかかる石の針。
これなら避けられない。完全に捕えた。
でも、矢口さんの口は優雅に弧を描いて……


「フンッ!!」

石の針に囲まれた中で、矢口さんは踊るように身体を一回転させた。
もちろん大鎌は握ったまま。
その大鎌が石でできた針を、まるで紙でも切り裂くように次々と切り飛ばしていく。
私はその様子を呆然と見ていた……。

「死神の大鎌、クレセントムーンの切れ味は最高さ。石だろうがなんだろうが、斬れない
ものはない!」
679 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:32
だっ、と矢口さんの足が地面を蹴る。
そしてクレセントムーンを振り上げながら一気に距離をつめてくる。
速いっ!
慌ててシールドを張るけど、今度は衝撃が襲ってこなかった。
振り抜かれた鎌の向こう……矢口さんの左手に魔力が集中してる!

「しまった!」

物理攻撃用のシールドじゃ魔法は防御できない!


「ライトニング・パルサー!!」
「ああぁぁぁあっ!!」

放たれた電流が体を蝕んでく。
そのまま立っていられなくて、その場に膝をついた。

「う…うぅ……」
「まったく、手間かけさせて……」

ゆっくり近づいてくる矢口さん。
でも私は電流の影響で思うように体が動かなかった。
矢口さんの手が私に向かって伸びてくる。
けど……
680 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:33
  カッ!!

突如矢口さんの足下にナイフが生えた。
矢口さんは反射的に後ろに飛び下がる。
見覚えのある……このナイフは……

「大丈夫、紺野っ!?」
「あさ美ちゃん! 助けに来たで!!」
「保田さん……愛ちゃん……」



保田さんがまた矢口さんに向かってナイフを放つ。
矢口さんは器用に鎌でナイフを払うけど、それを見越した上で投げられた第二撃目の
ナイフが矢口さんの腕を掠めた。

そしてそこに火球が放たれる。
おそらく愛ちゃんが放ったものだろう。
矢口さんはなんとか後ろに飛び退いてかわした。
681 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:34
「あいかわらずいい腕と読みだね、圭ちゃん……」
「あんたこそ……前より腕上げたんじゃない?」
「当然じゃん。昔のオイラと思わないでね?」
「そうだね。けど、この状況……あんたに勝ち目はないよ?」
「くっ……」
「辻と新垣、返してもらうよ?」

だんだんと痺れもとれてきたので、私も立ち上がって構える。
愛ちゃんはすでに魔力を集めている。保田さんも両手に持ったナイフを振りかぶっている。

矢口さんも少しのあいだ構えていたけど、やがて構えを解いて鎌を降ろした。


「……そだね。圭ちゃんを倒すのは手間がかかるし、手間をかけてたら魔法で狙い撃ちにされるし。
ここはオイラの負けだね……辻と新垣も持ってきな」

保田さんもすっと腕を降ろす。私も構えを解いた。
愛ちゃんはまだ魔力を集めたままだったけど、保田さんに制される。


矢口さんがそのままこっちに歩いてくる。
さすがにちょっとビクッとしたけど、そのまま三人で廊下の端による。その前を矢口さんは
悠々と通りすぎていった。
682 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:36
「矢口っ!」

闇に消えゆく背中を保田さんが呼び止めた。
矢口さんはふり向きはしなかったけど、その場に止まる。

「加護は……助かったよ……」
「……そっか、よかったじゃん……」

ふり向かないまま矢口さんは闇の中に消えていった。
私たちはしばしその後ろ姿を見つめていたけど、突然私の隣にいた愛ちゃんが
走り出した。

「あっ、愛ちゃん!?」

愛ちゃんは脇目もふらずに目の前の牢屋に駆けより、鍵を壊すと扉を開けて飛び込んだ。


「里沙ちゃん、のんちゃん! ごめん、ごめんね、あたしのせいで!!」
「いいれすよ。ののは結果的に矢口さんに会えたし、それにこうやってちゃんと助けに来て
くれたんだし」
「そうだよ、愛ちゃん。ありがと、助けに来てくれて」

二人に抱きついて泣いている愛ちゃん。
私と保田さんも牢屋に歩み寄る。

「あさ美ちゃんも……ごめん……。今度からはちゃんとあさ美ちゃんの言うこと聞きます……」
「あはは、そうしてくれるととってもありがたいけど……」
683 名前:第11話 投稿日:2004/07/17(土) 15:37
「ま、これでこっちは無事解決ってことで。高橋っ、なっちに通信して!」
「あっ、はいっ!」

愛ちゃんが水晶玉を取り出して通信を始める。
一方の保田さんはまたナイフを取り出して、踵を返した。


「あっ、保田さん、どこへ?」
「松浦連れてくる。揃ったらすぐに城に戻るよ。紺野、まだ魔法使える?」
「あっ、はい、シャドウホールくらいなら……」
「わかった、じゃあ準備しといて」

そういうなり保田さんは走り出した。
蝋燭の明かりでナイフがキラッと光る。
でもその光も、保田さんの後ろ姿も、すぐ闇の中に消えてしまった。
684 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/17(土) 15:44
今回はここまでです。
紺野VS矢口。でもってなんとか一段落って感じで。
今回はなんとなく頭脳戦(?)って感じを書きたかったんですけど……微妙……。


>>668 つみ 様
ようやく登場で大活躍でした。
主人公ですから……一応(ぇ
こんまりは一応今回で決着がつきました。なっちとあの人はもうちょっとしたら再登場の予定です。
685 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/17(土) 15:52
>>669 名も無き読者 様
主人公活躍させられてよかったです。
最近はなんか影薄くなってましたからねぇ……。

ノノ*^ー^)<呼びましたか〜?

や、呼んでない(笑

>>670 紺ちゃんファン 様
ボスもようやく正式登場でした。
いやいやあのインパクトには敵いません(笑
石川さんはなんとなくぽじてぃぶで。

>>672 みっくす 様
主人公本領発揮です。
やるときゃやりますよ〜!
いろんなところでバトルが繰り広げられてますが、そろそろ決着がつき始めるはずです。
686 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/17(土) 15:55
( `.∀´)<隠すわよ!
687 名前:つみ 投稿日:2004/07/17(土) 16:48
更新お疲れ様でした!

こっちはこうなりましたか・・・
やはり頼りになりますね!おばちゃんというか・・w
ナイフをだしての姿が怖い・・・
あっちのほうも楽しみにしてます!
688 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/17(土) 18:48
更新乙です。
頭脳戦、軍配は。。。w
それにしてもカッケーですな、彼女。
あっちこっちのバトル、楽しみにしとります。
689 名前:みっくす 投稿日:2004/07/18(日) 01:15
更新おつかれさまです。
こういう戦いもいいですね。
それにしても、矢口さんの真意はわからずですね。
あと、2組のバトルも楽しみにしてます。
690 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/19(月) 21:00
作者さま、更新どうもです。
やっぱここのバトルはいいですね。見ててドキドキしてます(笑)
次は一体!?
続きを楽しみにしてます。
691 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/20(火) 23:28
あやみきはどうなるんですか〜!
692 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:51
〜松浦亜弥〜

「うわっ!!」

剣撃に弾き飛ばされ、背中から冷たい壁に激突する。
手放してしまった剣を急いで掴み、体を支えて立ち上がる。
目の前には剣を構えたみきたんが立っている。

「もぅ、しつこいなぁ、亜弥ちゃん。さっさとやられちゃってよ。ミキも忙しいんだから」
「みきたん……」

だっ、とみきたんの足が地を蹴る。
高く響く金属音とともに、同じデザインの剣がクロスする。
でも私の剣はギリギリとみきたんの剣に押されてにじり寄ってくる。
693 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:53
もともとみきたんの剣はパワー重視の力の剣だ。
それに比べて私の剣はスピード重視の速さの剣。
たとえ左腕が十分な状態でも力比べでは敵わない。

それに、私が思っていたよりみきたんの力は数段上だった。
いつの間にこんなに力がアップしたんだろう? 最後に手合わせしたのはそんなに
前でもなかったはずなのに……。


「くぅ……」

なんとかみきたんの剣を捌き、みきたんから逃げる。
でもすぐにみきたんは追ってくる。
剣閃は的確に急所を狙ってきている。

ある時は剣で受け、ある時はかわす。
でもときおり避け損なった剣が私の身体を傷つける。
694 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:54
「みきたん……松浦のこと忘れちゃったの?」
「忘れるわけないじゃん。もう長いつきあいだもんね。でもそれとこれとは別。今は
敵同士でしょ?」
「松浦は……みきたんとは戦いたくないよ……」
「じゃあ……早くやられちゃってよ」

両手で握った剣が振り下ろされてくる。
なんとか剣で受けとめるけど、また衝撃で吹っ飛ばされた。
しりもちをついたところに魔法陣が広がる。
深緑に輝く魔法陣。
しまった……!


「スパイラル・サイクロン!!」
「あぁあっ!!」

魔法陣から風が溢れ出し、私の身体を包み込む。
細く細かい真空波が私の身体を切り刻んで昇っていく。
風の渦のなか、血しぶきと涙が舞い上がる。

風が止むと、私はその場に崩れ落ちた。
695 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:56
「う……うぅ……」

全身に細かい傷がたくさんできている。
痺れるような痛みが全身を蝕む。

顔にあたっていた蝋燭の光が何かに遮られた。
見慣れたブーツが目の前に現れる。

「みきたん……帰ろう? ハロモニランドに……一緒に帰ろうよ……?」

手を伸ばしてみきたんの足をつかむ。
でもその手は軽く払われた。


「バイバイ、亜弥ちゃん……」

剣が持ち上げられるのがわかる。
思わず涙でにじんだ視界を閉じる。
でも……いつまでたっても剣が振り下ろされる様子はない。

「……みきたん?」

目を開けてみきたんの顔を見上げる。
蝋燭の炎が逆光になり、表情は陰ってよく見えなかったけど……
心の中で葛藤してるような……そんな表情に見えた。


「松浦ッ!!」

そしてその時、牢獄に保田さんの声が響いた。



696 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:57

◇     ◇     ◇


〜保田圭〜

さっき通ってきた道を全力で逆走する。
入り組んだ、迷路のような牢獄だけど、なんとか迷わずに進んでいく。
あの時は松浦に任せたけど、松浦の様子を見る限り、苦戦してるに違いない。
いやむしろ……ちゃんと戦えてるかどうかさえわからない。
間に合って! お願いだから無事でいてよ!!

戻るにつれてだんだんと金属音が聞こえてくる。
おそらくは松浦だろう。なんとか間にあったみたい。
音も頼りにして牢獄の通路を走っていくと、ようやくあの曲がり角までたどり着いた。

背中を壁にあて、顔だけ出してそっと様子をうかがう。
やっぱり、松浦だ!
でも無事というわけではなさそう。地面に突っ伏している松浦には小さな傷が体中にある。
そして左腕は血で濡れていた。
697 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:58
相手の剣が持ち上げられた。
ヤバいっ!!

あわてて魔力を集め、それを手に持ったナイフに伝わらせていく。
でもその時松浦の言葉が思い出された。

―― みきたんは……松浦の大切な人なんです! ――

相手を傷つけないように松浦を助けなきゃいけないのか……まったく……。


「松浦ッ!!」

一気に飛び出す。
二人とも私に気付いたみたい。

そのまま地を蹴り、跳躍する。
最高点に達したところで、両手に持っている、魔力のこもったナイフを放つ。
698 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 14:59
「シャドウ・バインド!!」

同じ速度で飛んでいく八本のナイフ。
剣で弾けるのは二本が限界。松浦は地面に突っ伏しているから反応できない。
だとしたらあとは……かわすしかないよね?


「くっ!!」

案の定、彼女は後方に飛び退いて八本ともかわした。
彼女と松浦のあいだの地面にナイフが生える。
でもこれは狙い通りだ。
ナイフが地面に突き刺さった瞬間、彼女の動きがピタッと止まった。

シャドウバインドは私が編み出した魔法と武器の合成技。
地属性の魔力を込めたナイフで敵の影を地面に縫いつけ、動きを封じ込める。
699 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 15:00
「松浦、帰るよ! 立てる!?」
「は、はいっ! あの、紺野ちゃんたちは……」
「ちゃんと助けたよ! それより早く! あの魔法だっていつまで効くかわからないんだ!」
「……わかりました!」

松浦を立たせると、すぐにまた紺野が待ってる牢屋へと走り出す。
角を曲がる途中でちょっとふり返り、彼女を見る。
蝋燭の炎でできた彼女の影に突き刺さったナイフはまだ魔力を湛えている。
もうちょっと時間は稼げそう。


「……松浦、大丈夫?」
「ダイジョブですよ〜。左肩の傷以外はかすり傷で〜す!」

松浦はすでに普段の調子に戻っていた。
とりあえず、表面上は……。
たぶん心の中は何がなんだかわからなくて、きっと今にも壊れてしまいそうな、
危うい状態だろう……。それを必死に隠そうとしている……。


だって……顔が同じだよ、松浦……
矢口がいなくなったとき、必死で笑顔を作ってたなっちの顔と……
700 名前:第11話 投稿日:2004/07/22(木) 15:00
「保田さ〜ん! 松浦さ〜ん!!」

その時遠くから私たちを呼ぶ声が聞こえた。
声の主は紺野で、すでに魔法陣を作り終えている。
私たちもすぐに魔法陣の上に乗る。

「シャドウ・ホール!!」

影でできた魔法陣から光と闇が溢れ出す。
そしてすぐに私たちの体を覆い尽くした。
701 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/22(木) 15:08
今回はここまでです。
長かった11話もあと少しで終わります。
しっかし、なんか圭ちゃんがずいぶん目立ってるなぁ〜……。


>>687 つみ 様
おばちゃん(笑)はようやくバトルで活躍してきましたねぇ〜。
なんだかんだで副長なんでしっかりと強いですよ。
ナイフはなんとなく似合いそうだったので……。

>>688 名も無き読者 様
頭脳戦はどっちかっていうと矢口の勝ち?
かっこよく書けていたようで一安心です。
一連のバトルもそろそろ終わりなので、最後まで期待に応えられるよう頑張ります!
702 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/22(木) 15:16
>>689 みっくす 様
頭脳戦、けっこう好評でよかったです。
いろいろと難しいんですけどね……こういう戦術の勝負っていうのは……。
バトルは残すところあと一つ。がんばりま〜す!

>>690 紺ちゃんファン 様
最近はなんかバトルばっかりですが、いい感じなので嬉しいです。
今回はこんな感じです。これもけっこう特殊な戦い?
これからもドキドキさせられるようなバトルを書きたいです。

>>691 名無し飼育さん 様
あやみきはとりあえずこんな感じで。
まだ解決というわけにはいかないようですねぇ。


703 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/22(木) 15:17
从‘ 。‘从<隠します〜!
704 名前:つみ 投稿日:2004/07/22(木) 17:34
こちらもこうなりましたか・・・
それにしても少し保田さんは強すぎなんじゃ・・・w
次回はやはりあの戦いでしょうか?
楽しみにしてます!
705 名前:みっくす 投稿日:2004/07/22(木) 21:27
更新お疲れ様です。
さすが副団長って感じですね。
もう1つの戦いが1番難関そうですね。
みんな無事に脱出できるのかな?
706 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/23(金) 10:51
更新乙彼サマです。
強いッスね、彼女。。。w
帝の真意も気になりますし・・・。
でももう一つのバトルが厳しそうですからね。
次回も楽しみにしてます。
707 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/24(土) 01:40
ドキドキ・・・。うわぁ・・すげぇ・・・。
圭ちゃ〜ん!!もっと目立っても良いですよ〜!!
次のバトルはどんなんになるんでしょ〜?
708 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:51
〜安倍なつみ〜

さやかに続いて私も剣を抜き、ごっちんを庇うように、斉藤瞳と向かい合う。
さやかも同じことを考えたのか、私とごっちんの前に立って剣を斉藤瞳に向けて
対峙している。
でも斉藤瞳から放たれる、強烈な威圧感に身体がすくみ上がる。

「まさか……わざわざ女王様自ら出迎えてくれるとはね……」
「ハロモニランドのお姫様が自らいらしてくれたんでね、こちらとしてもそれなりの
おもてなしをしなくては」
「なんにしても都合がいいよ。ここでお前を倒せばすべて終わる!!」

さやかの足が地を蹴った。
森で戦ったときと同様、いや、それ以上の速さでさやかが消える。
そして次にさやかが現れたのは……斉藤瞳の背後だった。
709 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:51
「これで終わりだっ!!」

二刀の剣が同時に斉藤瞳に襲いかかる。
一刀は斉藤瞳の頭上から真下へ。
もう一刀は首筋へ。
でも斉藤瞳は変わらず微笑を浮かべたまま立ちつくしていて……

今度は斉藤瞳の姿が消えた。


「なっ!?」

完全に捕らえたと思っていたさやかの剣は空を切った。
さやかのように高速で動いたのではなく……完全に"消えた"。
斉藤瞳がいた場所にはただ影だけが残って……

……影?

……そうか! シャドウホール!!
710 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:52
「さやか! 相手は影に隠れてるよ! 気をつけて……」

言い終わる前に残った影が動いた。
スススッと、さやかの下を通ってさやかの後ろに……。

「さやか! 後ろだっ!!」
「なっ!?」

さやかがふり返ったのが見えた。ただし途中まで。そのあとは見えなかった。
なぜなら私の目の前に突如斉藤瞳が出現したから。
しまった……狙いは最初から私だったんだ……!


無我夢中で剣を振るう。
でも剣は斉藤瞳が片手で張ったシールドで簡単に止められた。
そしてもう片方の手が私の首を掴み上げた。
711 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:52
「ぐ、あぁっ!!」

斉藤瞳の手がゆっくりと上がっていく。
それに連れて私の身体も浮かび上がる。
くぅ……息が……!
手から剣がこぼれ落ちた。

頭がボーっとしてくる。
でも魔力が集まってくる感覚が、私を強制的に覚醒させた。
ヤバイ! これは……!


「エナジー・スパーク」
「うわぁぁぁああッツ!!」

  バリリリリッ!!

闇が閃き、大気が震える。
そして私の身体を激痛と痺れが包み込んだ。
放たれた雷撃は私の体中を蝕み、大気中にまで溢れ出た。
712 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:53
「なっち!!」
「なっちーっ!!」

ごっちんとさやかの悲鳴がかろうじて聞き取れたとき、首に伝わる手の感覚が
消失した。
そのままその場所に崩れ落ちる。
すぐ近くでヒュンッという風切り音が響き、斉藤瞳が離れたのがわかった。


「なっち、大丈夫かっ!?」
「なっち! しっかりしてぇ!!」
「う…ん……」

なんとか声を絞り出す。
しかしその時、一瞬地面が輝くと同時に、私たちの下に魔法陣が描き出された。
深緑に輝く魔法陣。

「なっ……ダメッ! ごっちん、離れてっ!!」
「あっ、なっち!!」

ごっちんの身体を突き飛ばし、なんとか魔法陣の外に出す。
その瞬間、身体に鋭い痛みが走った。
713 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:54
「スパイラル・サイクロン!」

魔法陣から溢れた幾筋もの真空の刃が、私とさやかの身体を切り刻んでいく。
体中に痛みが走り、血が溢れる。

「ああぁぁあぁぁっ!!」
「ぐあぁあっ!!」

それでもなんとか四方から襲ってくる真空派に耐えていると、足下の魔法陣の色が
変わっていくのに気づく。
深緑から……真紅へ。
オ、オーバーライト?……まさか……そんなことまで……。


「オーバーライト=ギガ・フレア!」

周りの空気が圧縮し、そして一気に膨張する。
大気を揺るがすほどの大爆発。

「「うわあぁぁっ!!」」

私とさやかの身体は木の葉のように舞い上がり、そして地面に叩きつけられた。
714 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:55
「う……うっ……」

なんとか意識はあるものの、体は少し動かすだけで激痛が走る。


「なっち! いちーちゃん!!」

ごっちんが駆けよってきて、側に座り込むのがわかる。
そして詠唱が聞こえてきたけど……

「ダメ……ごっちん、逃げて……」
「いやっ! なっちといちーちゃんを置いて逃げるなんて!!」

私たちの下に白金色の魔法陣が広がる。
でも……ダメだ、斉藤瞳がいる! ごっちんは完全に無防備だ!
痛む身体を無理やり動かし、斉藤瞳のほうを見たけど……

……えっ?
斉藤瞳は攻撃するでもなく、ただこっちを見ているだけだった。


「フェアリー・ヒーリング!」

魔法陣から光が溢れ、身体を包み込んでいく。
そして舞い上がった光の粒子がキラキラと降り注いでくる。
温かく、優しいヒカリ。
傷を癒し、体力を回復させていく。
715 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:56
「なっち、いちーちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫。ありがと、ごっちん」
「なんとかね……」

まだ身体は痛むけど、それでも立ち上がる。
力の差は歴然としてる。でもこのまま寝っ転がってるわけにはいかない。
戦わなくちゃ……ごっちんを守るために……。
さやかも立ち上がり、二人で斉藤瞳に剣を向ける。
でも斉藤瞳はそのまま微笑をたたえて立ちつくしていた。


「それが光魔法ね……フフフ……」

斉藤瞳は意味深な笑みを零すと、すっと右手をかかげた。
思わず身構えるが、斉藤瞳の足下にある影が魔法陣を描き出して動きが止まる。
716 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:58
「えっ?」
「フフッ、今回は見逃してあげるわ。人質を連れてさっさと帰りなさい。でもこれ以上を
望むなら私も容赦しないけど」
「な、なにっ?」
「興味深いものをみせてもらった、心ばかりの褒美よ」

魔法陣が光と闇を交互に生み出し、斉藤瞳の身体を包み込んでいく。
ここで決着をつけてしまいたい焦燥感と、見逃してもらえるという安心感が気持ちを
揺さぶる。


「ま、まてっ!!」

しかしさやかは動いた。
剣を握りなおし、なおも斉藤瞳に向かっていこうとする。
でも……

「ダメッ!! いちーちゃん、死んじゃうよ!!」

ごっちんがさやかの身体にしがみつき、引き留める。
こんな事態だというのに、なぜか心がモヤモヤとした。
717 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:58
「離せ! 離せ、後藤!!」
「だめっ! いちーちゃん!!」
「離せっ! アタシは……どうしてもアイツを……!!」

光と闇が斉藤瞳の笑顔を覆い隠す。
そして光と闇が晴れたときには、そこには誰もいなかった。
残った影の魔法陣もすぐに消え去る。

「あっ……」

振り上げられていたさやかの剣が力なく落ちる。
それと同時にごっちんも体を離す。
私たちはしばらくその場に立ちつくしていた。
すると突然、高橋にもらった水晶玉が光った。


『安倍さん? 安倍さんっ!?』
「あっ、高橋!?」

水晶玉を取り出して、覗き込む。
すると水晶玉の中に高橋の顔が映った。

『安倍さん! あさ美ちゃんたちは無事に助けました!!』
「ホントに!?」
『はいっ! 今保田さんが松浦さんを呼びに行ってます。揃いしだいあさ美ちゃんの
魔法でハロモニランドに戻ります!!』
「わかった! こっちもこっちで戻るから!! ハロモニランドで会おう!!」
『はいっ!!』

水晶玉に紺野たちの笑顔も映り、そして通信は途絶えた。
よかった、無事みたい!
718 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 15:59
「なっち、いちーちゃん、帰ろう?」

さやかと一緒にふり返る。
そこにはごっちんが笑顔で立っていた。

「そうだね。いいでしょ、さやか?」
「……うん。しょうがないね……」

ごっちんが呪文を唱え出す。
私もさやかと一緒にごっちんの元へと向かった。


「シャイン・ゲート!!」



719 名前:第11話 投稿日:2004/07/29(木) 16:00
   
720 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/29(木) 16:13
はい、今回はここまでです。
長かった11話もこれでようやく終了です。
全体としても半分は……すぎたかな?

>>704 つみ 様
圭ちゃんは副団長だけあってけっこう強いですよ。
ただナイフや魔法での遠距離戦は無敵に近いですが、
接近戦はそんなに得意ではないという感じなんで、強すぎというまではいかないかも。
総合的にはなっちと同じくらいです。
721 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/07/29(木) 16:18
>>705 みっくす 様
圭ちゃんようやく戦いでも活躍してきました!
今まではからかいキャラだったんで(笑
最後の戦いはこんな感じになりました。

>>706 名も無き読者 様
距離をとっての戦いや、頭を使った戦いでは強いですね、圭ちゃんは。
ミキティもまだちょっと続きます。
決着がつくのはまだまだ先。

>>707 紺ちゃんファン 様
圭ちゃんは今まで(バトルでは)目立ってなかったので、ようやく出せたという感じです。
これからもちゃんと活躍するはずです。
期待に応えられるよう頑張りますね。
722 名前:つみ 投稿日:2004/07/29(木) 17:10
更新お疲れ様でした。
こういうことになりましたか・・・
ボスの真意は一体何なんだろう?
それぞれまだ心残りがあるでしょうが、少しづつそれを解決していってほしいです!
次回も楽しみにしてます!
723 名前:みっくす 投稿日:2004/07/29(木) 21:44
更新おつかれさまです。
こういう展開でしたか。
女王の真意はなんなんですかね。
次回も楽しみにしてます。
724 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/29(木) 22:44
おっ・・・。なっちといちーちゃん、助かってよかった・・・。
みんなも無事みたいですね。
このまま何も起こらずハロモニランドに帰還してほしいですね。
725 名前:のっち 投稿日:2004/08/01(日) 23:42
どうもです初カキコです、いつも楽しく拝見させてもらってます。
726 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/03(火) 20:34
更新乙です。
ボス、、、(汗
彼女はもしかしてボスと何かあったのでしょうか・・・?
続きも楽しみにしてます。
727 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:45
〜矢口真里〜

愛用の大鎌を肩に担いで、地下牢を歩いていく。
もうしぶん程度に蝋燭が灯されているけど、それでも足下は薄暗い。

「ふぅ……」

溜め息を一つつくと、右腕がチリッと痛んだ。
圭ちゃんのナイフが掠ったところ。
ご丁寧にもナイフには放つ瞬間に雷の魔力が込められていたようで、まだちょっと
痺れがとれない。

圭ちゃんはオイラの予想以上に強くなっていた。
圭ちゃんだけじゃない。よっすぃーも、辻も……そしておそらくなっちも……。


「ふぅ……」

もう一度溜め息が零れた。
苦笑しつつ大鎌をギュッと握る。


ねぇ……オイラは強くなれたかな……?
教えてよ……『クレセントムーン』……。
728 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:46
「あららら、手酷くやられちゃったみたいだねぇ〜」

地上へと向かう階段のところまでやってくると、急に暗闇のなかから声が聞こえた。
反射的に大鎌を構えるけど、相手は微動だにしない。

「せっかくカオリが捕まえてきたのにさ〜!」

カツン、カツンと足音が牢獄内に反響する。
闇の中から現れた飯田圭織は、微笑をたたえてオイラを見下ろしている。


「三人のうち一人はあんたんとこのお弟子さんのせいなんだけどね。ちゃんと躾
しといてよ」
「あ〜、田中ね。もう、あとでちゃんと叱っとかないと」

カオリはクスクスと笑っていたけど、不意にその目がスーッと細められた。
729 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:47
「で・も、ヤグチなら簡単に捕まえることもできたんじゃない? ここはちょっと魔法使い
には戦いづらい場所だし。みすみす逃がすこともなかったんじゃな〜い?」
「……何か言いたいわけ?」

オイラもカオリを睨みつける。
でもカオリは「別に〜!」なんて言って、余裕の表情でオイラのほうを睨み返してくる。
そのまま少し睨み合っていたけど、その時、カツン、カツンともう一つの足音が近づいてきた。


「こんなところで仲間割れ?」
「じょ、女王様!?」
「あら〜、女王様〜」

現れたのは瞳女王様だった。
腕にぐったりしている田中れいなを抱えている。

「向こうに倒れてたわ。気絶しているだけみたいだから」
「あら、ありがと、女王サマ〜! 探す手間が省けた〜!」

カオリは女王様から田中を引き取ると、そのまま階段を上っていった。
女王様はカオリを見送ってから、すっとオイラの方に向き直った。
730 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:48
「さて……矢口」
「あっ、はいっ! 申し訳ありません! 人質には逃げられてしまい……」
「それはもういい。そのかわり、一つ頼めるか?」
「はいっ!?」
「アヤカに戦闘準備をさせておいて。整いしだい『ハロモニランド』に進軍を開始する」
「なっ!? アヤカに!?」
「じゃあ頼んだよ」


女王様はそれだけ言い残すと、階段を上っていってしまった。
とり残されたオイラはしばらくその場から動けなかった。

アヤカに……?
女王様は本気で『ハロモニランド』を滅ぼすつもりなのか……?



731 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:50

◇     ◇     ◇


アヤカは城からちょっと離れた森の中に小屋をつくって住んでいる。
もっとも森と言うよりは樹海と言ったほうがいいかもしれない。
そこの木々はみな異様に高く、昼間でも葉のあいだから光がうっすら差し込んで
いるだけで薄暗い。

何回か来ているが、それでもこの樹海に踏み込むには勇気がいる。
だが命令なので仕方がない。
鎌を握り、樹海の中へと入っていく。


道なりに歩いていくと、木で作られた小さなロッジを見つけた。
何ごともなくたどり着けたことに、ホッと胸をなで下ろす。
扉をノックすると、すぐに「ハ〜イ!」という陽気な声が返ってくる。
732 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:51
「ハイ? お〜、ヤグチさ〜ん!!」
「おっす、アヤカ。元気そうだね」
「元気ですよ〜! ワタシも、ワタシの友達も!!」
「そっか、そりゃよかった」

ロッジの中にあがらせてもらう。
木でできたテーブルに腰掛けると、すぐにアヤカがお茶を出してくれた。


「あいかわらず美味しいね、このお茶」
「いい葉っぱを使ってますから! それより、今日はなんの御用ですか〜?」
「あっ、それはね……」
「そろそろワタシの出番ですか?」

さすがにオイラが来た理由はわかっているらしい。
無言で頷くと、アヤカは「OK!」なんて叫んで立ち上がった。
733 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:52
「それではさっそくワタシの友達にも伝えて来ます〜!」
「あ、待って、アヤカ!」

小屋を駆け出そうとしたアヤカをなんとか引き留める。
アヤカはキョトンとした表情でオイラの方を向いた。

「あのさ、オイラも一緒に連れてってくんない?」
「あ〜、いいですよ〜! ヤグチさん一人運ぶくらいわけないですからね!」

アヤカは扉を開けて、樹海の中へと消えていった。
オイラはテーブルに戻り、お茶を飲み直す。


心残りは少しあるが、止めなければいけない……この戦争を……。
このままでは『ハロモニランド』も不毛の大地とされてしまう……。
734 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:55


第12話  禁呪魔法



735 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:55
〜保田圭〜

おかしい……。
最近いろいろとおかしなことばかり起こっている。
そんなことを考えながら、私は城の廊下を、ある部屋に向かって歩いていく。
そっと、ナイフを忍ばせながら。


「あっ、保田様!」

歩いていると、急に背後から呼び止められた。
後ろをふり返ってみると、一人の兵士が私のもとへと走ってきていた。
私が指揮する4番隊の、諜報部隊の中の一人。
今朝方ちょっとした調べものを頼んだヤツだ。そろそろ戻るころだと思っていたけど、
ちょうどよかった。
736 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:57
「どうだった?」
「それが……保田様の言っていた通りに……」
「……そっか……、わかった。ありがとうね。ご苦労様」
「はいっ! 失礼します!」

そう言って兵士は去っていった。
やっぱり……。
予想はしていたけど、それが現実と思い知らされると、さすがにキツイ……。

少し立ち止まって昔を思いだし、そしてまた歩き出した。


最近はなにかおかしい。
その中で一番おかしいのは……アイツだ!



737 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:58

◇     ◇     ◇


そこは私たち騎士に与えられる私室よりも、若干豪華な造りになっていた。
客人向けの部屋で、各国の使者たちがハロモニランド城に滞在しているあいだ、
一時的に使う部屋である。

その中の、一つの部屋の前で止まる。
軽くノックをすると、中から「はぁ〜い!」という返事が聞こえてきた。


「お〜、圭ちゃんじゃ〜ん! なに、どうしたの?」
「紗耶香、ちょっといい?」
「ん、どうぞ〜!!」

紗耶香は笑顔で私を招き入れてくれた。
あとに続いて私も室内へと入る。


「いや〜、ごめんねぇ。こっちから挨拶に行こうとは思ってたんだけどさぁ。昨日は
いきなりいろいろあったし、圭ちゃんの部屋どこだかわからなくて」
「いいよ。そんなに親しく話すつもりもないから」

紗耶香がこっちを向く。
それと同時に、袖の中に隠していたナイフを一瞬で取り出し、突き付ける。
738 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 21:59
「圭ちゃん?」
「なんの目的でハロモニランドに来た?」
「えっ? だからそれは旅の途中に……」
「ふざけんじゃないわよ!! 『ピッコロ王国』騎士団長・市井紗耶香っ!!」


紗耶香は一瞬無表情になったけど、すぐまた笑顔に戻った。

「久しぶりだねぇ、圭ちゃんも。えーと、6年ぶりくらいか、『ピッコロ王国』の『元』副団長さん!
あっ、今も『ハロモニランド』の副団長か」

目の前にいた紗耶香が一瞬で消える。
慌てて影を追い、ナイフを放ったが、その影も一瞬で消え去った。
そして紗耶香が次に目の前に現れたときには、しっかりと両手に剣を握っていた。
私もナイフを取り出す。
739 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 22:00
「ひっさしぶりだねぇ〜。圭ちゃんとこうやって手合わせするのも」
「悪いけど私は本気だからさ。今、私は『ハロモニランド』の騎士だから。敵はたとえ
誰だろうと容赦しない!」

左手に持ったナイフを放つ。
当然紗耶香は避けた。しかもちゃんと影まで計算して。
やっぱり読まれてるか。それはそうだ……。
私が『ピッコロ王国』を出ていくまで、ずっと一緒に戦っていたんだから。

間髪入れずに右手に持ったナイフを投げる。
でもそれも紗耶香は捕らえられなかった。
くっ……あいかわらずやっかいなスピードだね……。


部屋の壁を蹴り、紗耶香は私に向かって突進してくる。
広いとはいえ、無限ではないこの空間。
すぐに距離が縮まり、紗耶香の剣がせまってくる。
740 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 22:01
ナイフを取り出して剣を受けとめる。
二本目の剣が振り下ろされる前に、懐に潜り込み、握ったナイフを振り上げる。

「くっ!」

紗耶香が飛び退くが、ナイフが腕を掠めたようで、血が少し飛び散った。


「強くなったねぇ、圭ちゃん」
「強くなった? 違うよ……」

紗耶香の足が地を蹴る。
アタシも紗耶香に向かっていく。


  ドカッ!!

思いっきり振り上げた足が紗耶香の腹部にめり込む。

「ぐはぁっ!!」

後方に吹っ飛ぶ紗耶香の体を追いかける。
そして床に落ちた紗耶香の体をそのまま押さえつけた。
逆手に握ったナイフを振り上げ……
741 名前:第12話 投稿日:2004/08/06(金) 22:02
  ザクッ!!

振り下ろしたナイフは床に突き刺さった。


「私が強くなったんじゃなくて、紗耶香が弱くなってんでしょ!」
「圭ちゃん……」
「全部知ってるよ! 調べさせたんだよ!! 滅ぼされたんでしょ!?
『ピッコロ王国』は……『ロマンス王国』にっ!!」


昔一緒に戦っていた仲間たち……
街に暮らしていた人々……
仕えていた王様……

みんな思い浮かんでは消えていった……。
742 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/06(金) 22:08
今回はここまでです。
ちょっと新展開……ですかねぇ?
しかし最近……圭ちゃん活躍しすぎかも……?
とりあえず女塾のDVDを見てキャラを研究中。

>>722 つみ 様
はい、こんな感じで終わりました。
心残りもありますが、それはこれから少しずつ。

>>723 みっくす 様
最終的にはこんな感じで、仕切り直しという感じでしょうか。
ボスの真意もまだ謎のままですが、これもそのうち明らかになることでしょう。
743 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/06(金) 22:13
>>724 紺ちゃんファン 様
とりあえずはみんな無事に帰還です。
ただ早くも次の物語も動き出してたり……。

>>725 のっち 様
初めましてです。ありがとうございます!
期待に応えられるよう頑張ります!

>>726 名も無き読者 様
彼女とボスの関係は今回でちょっと明らかになりました。
いろいろと……絡み合ってきましたねぇ。
744 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/06(金) 22:13
( `.∀´)<隠すわよ!
745 名前:みっくす 投稿日:2004/08/06(金) 23:45
更新おつかれさまです。
矢口さんの真意はちょっとだけ・・・・
なんかまた1つ謎が増えたわけで。
沙耶香の目的は何かなぁ。
次回も楽しみにしてます。
746 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/07(土) 01:14
更新おつかれサマデス。
おおっ・・・!いっつもここは気になるとこで・・・。
楽しみですねぇ。
次回更新、待ってます。
747 名前:konkon 投稿日:2004/08/07(土) 01:26
初めまして。
一日で全部読みました!
めちゃくちゃおもしろいです!
今後も期待大です。
圭ちゃんかっけぇ〜
748 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:05
「『ロマンス王国』が『ハロモニランド』に攻め入った情報はすぐに届いてさ。ほら、
『ピッコロ王国』は『ロマンス王国』と隣じゃん。『ハロモニランド』も『ロマンス王国』
はさんで向こう側だし。だから情報が他の国より早くってね」

紗耶香の部屋のベッドに並んで座り、紗耶香の話を聞く。
私もまだ紗耶香を100%信用したわけじゃないけど、とりあえずナイフはしまった。
紗耶香ももう剣を鞘に収めている。


「『ピッコロ王国』も『ハロモニランド』とは親交が深かったから、一応軍隊を編成し、
『ハロモニランド』に協力しようと思ってたんだけどね……」
「・・・・・・」
「いざ出陣って時に……『ロマンス王国』の軍隊が……ううん、女王の斉藤瞳が
攻めて来た! 斉藤瞳の前に騎士団は編成していた軍隊もろともほぼ全滅……。
王国は一夜にして廃墟になった……」
「……嘘でしょ?」

滅びたとは聞いたけど、被害のほどは曖昧にしか聞いてないし、実際に見た
わけでもない。
紗耶香から聞いた被害状況は、私が思い描いていたのよりも遥かに最悪な
状況だった。
749 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:06
全滅……?
一夜にして……?
しかも斉藤瞳一人で……?
私がいたころのではあるが、『ピッコロ王国』の騎士団は『ハロモニランド』の騎士団と
比べても遜色ないくらいの強さだった。
それだけに紗耶香の言ったことはにわかには信じがたい。

「全滅っ!? 嘘でしょ!? 紗耶香、あんたの部隊は? 『キュービック=クロス』は
どうなったのよ!?」

思わず紗耶香の肩をつかんで詰め寄る。
でも紗耶香は沈んだ目をそらして、目を合わせようとはしなかった。

「……言ったでしょ、全滅したって……。残ったのはアタシ一人だけ……。いつも
一緒だった仲間も……優しかった王様も……みんな死んだ。ううん、殺されたっ!!」

堰を切ったように紗耶香の瞳から涙が溢れ出す。
あぁ、そうだ……一番つらいのは紗耶香に決まってる……。
おそらく、『ピッコロ王国』が滅ぼされてから今日まで、泣くことすらできなかったんだろう……。

紗耶香はそのまま私の胸に飛び込んできた。
服がじんわりと暖かく滲む。
750 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:07
「圭ちゃん、ごめんね……アタシ……ピッコロ王国守れなくて……」
「……バカやろ……」

紗耶香をぎゅーっと抱きしめる。
あぁ、昔もなんかこういうことがあった気がする。
そのときは立場は逆で、自分のせいで部隊を壊滅させてしまった私を、紗耶香が
こうやって慰めてくれた。
でも結局私は不甲斐ない自分が許せなくて、騎士団を辞めて『ピッコロ王国』を
出ていったんだった……。

あの時私が出て行かなかったら、どうなっていたんだろう、なんて……
嫌でも考えてしまう。
時間の流れに『もし』はないってわかっているのに……。

王様……みんな……もういないんだ……。

紗耶香を抱きしめたまま、私も紗耶香に見えないように一雫だけ涙を流した。



751 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:08

◇     ◇     ◇


「おちついた、紗耶香?」
「うん……ありがと、圭ちゃん」

しばらく泣いたあと、紗耶香は私の胸から離れた。
手でごしごしと涙を拭いている。

「で、紗耶香、また一緒に戦ってくれるんでしょ?」
「うん、目的は同じだからさ」
「ありがと。それとごめんね? 最初は『ロマンス王国』のスパイじゃないかって
疑っちゃって」
「いや、いいよ。圭ちゃんにはさっさと話しておけばよかったし」
「でもよかった、紗耶香だけでも生き残ってくれて」
「ま……ね……アタシはがんじょーだからさ!」

紗耶香はニコッと微笑んだ。
それにつられて私も笑ったけど、その瞬間……
752 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:09
「! うっ……うぐっ…かはっ!!」
「さ、紗耶香っ!?」

急に紗耶香が苦しみだした。
胸を押さえ、うずくまっている。


慌てて紗耶香の体を抱えるけど……
……魔力がおかしい……。
異常な魔力の流れを感じる。

「う…うぐっ……」
「紗耶香! 紗耶香っ!!」

こんな魔力の流れはありえない。
紗耶香はなにもしていないのに、紗耶香の体から魔力と生命力がどんどん
放出されている……。
753 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:10
「うっ……ハァ、ハァ……」

紗耶香の苦しみが止んだ瞬間、魔力の異常もなくなった。
そして私の頭にはある可能性が浮かんだ
でも……まさか……そんな……
必死に可能性を否定するけど、それしか思い浮かばない……。
かなり古い古文書でちょっと読んだだけだけど忘れない……古の呪法……。


「まさか……紗耶香……」
「大丈夫! なんでもないから!!」
「バカっ! そんなわけないだろ!!」

紗耶香の肩を掴み、ベッドの上に押し倒す。

「やっ! やめて、圭ちゃん!!」

紗耶香はジタバタ暴れてるけど、力が全然入っていない。
腕を押さえつけ、紗耶香の服を捲り上げる。
そして私は……絶句した……。
体がワナワナと震えた……。
754 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:10
「なんだよ……これ……」
「見ないで……圭ちゃん……」

紗耶香の体には漆黒の魔法陣が刻まれていた……。



755 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:12

◇     ◇     ◇


ハロモニランド城の廊下をひた走る。
歯を食いしばり、そして拳を握りしめて……。

そうしているあいだにも紗耶香が言ってた言葉が耳に蘇る。


『アタシは生き残ったんじゃない……生かされたんだよ。斉藤瞳によって……この
魔法陣とひきかえにね……』
『この魔法陣はアタシから魔力と生命力を吸い取っている。そして術者に送っている。
つまり斉藤瞳に魔力を吸収されてるんだ』
『アタシは斉藤瞳の"餌"ってわけさ!』


そのまま階段を駆け下りる。
すると目の前に扉がせまってくる。
許せない。こんなこと許されるわけがない!!
私は扉を思いきり蹴り開けた。
756 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:12
「紺野ッ!! いるっ!?」
「あっ、保田さん! ちょうどよかったです! 今しがたちょうど新しい魔法を
編み出したので、ぜひ実験台に……」
「んなこたいいからちょっと来いっ!!」

そのまま紺野を実験室から拉致する。
残された高橋と新垣がポカンとしてたけど気にしてられない。


「ちょ、保田さーん! なんですか、いきなり!? 私魔法の研究で忙しい……」
「そのうちまたなっちあたり実験台として送り込んであげるから今はちょっと
ついてきて!」
「う〜、絶対ですよ? それで、いったいなんですか?」
「見て欲しいものがあるんだよ!」

そのまま紺野を紗耶香の部屋に連れ込む。
紗耶香の体に刻まれた魔法陣を見ると、さすがの紺野も絶句した。
757 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:13
「こ、この魔法陣は……」
「わかる、紺野? 私は本で見たことくらいしかないんだけど……」
「これは……禁呪魔法です……」
「禁呪魔法?」

聞き慣れない単語に、思わず聞き返す。
紗耶香も真剣に聞いている。

「遙か昔に滅びた闇魔法で……しかもあまりの邪道さに魔法使いのあいだでも
暗黙の了解で禁じられていた呪法です……」
「それで……解法は?」
「呪も結界の一種なんで、オーバーライトと同じ要領でかき消すことはできる
んですけど……」
「……つまりは闇魔法を使えないと無理ってことか……」

くっ……考えろ、オーバーライトが無理ならどうすればいい?
闇魔法を使える人なんて、少なくともハロモニランドにはいない……。
紺野ですら使うことができないんだから……。

だとしたら……あとは……?
そこまで考えて、ふと思いついた。いや、思い出した。
そうだ……光!
758 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:15
「そうだ、紺野! 光魔法は!? 確か"ディスペルライト"っていう魔法の効果を
焼き尽くすやつがあったじゃん! あれを使えば!」

いいアイディアだと思ったけど、紺野は苦々しい顔をしてうつむいた。

「……なんでよ?」
「"ディスペルライト"はオーバーライトとは違うんです。オーバーライトが同等の魔法で
魔法を相殺する「技法」なら、"ディスペルライト"はより威力の高い魔力で魔法を
かき消す「魔法」なんです。例えれば小さな波を大きな波がかき消すように。普通の
魔法でしたらどちらも効果はたいして変わらないんですけど、呪のように直接人体に
影響を与える魔法に使うと……」

紺野の言いたいことがわかってしまった。そして、私のアイディアを試したときの結果も……。
こういうときはなまじ知識があることが嫌になる。
759 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:16
「……つまり紗耶香の呪に"ディスペルライト"をぶち当てると……」
「……はい……。おそらく今の市井さんでは"ディスペルライト"と呪の衝突による
威力に耐え切れません……。もう体力も魔力もかなり吸い取られてる状態です
から……。それにその呪はかなり強力なんです。それをかき消せるだけの
"ディスペルライト"を使わせれば……」

女王様や姫様の命も危険ってことか……。
無意識のうちに唇を噛みしめていた。
こんなに自分が無力だったなんて……。


「……じゃあ、やっぱり方法は……」
「そうです。あとは術者を殺して魔力を絶つしかありません……」
760 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:16
部屋の中に嫌な空気が漂い、静寂に包まれた。
だからだろう。
部屋の外から「カタッ!」という小さな物音が聞こえた……気がした。

「!?」

紗耶香と紺野には聞こえなかったみたい。
私の空耳かもしれないけど、あんまり人には聞かれたくない話をしてるので、
私は一応部屋の外を覗いてみた。

でもそこには誰もいなかった。
761 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:17
「どうしたんですか、保田さん?」
「いや、なんでもない、気のせいだったみたい。それよりありがとね、紺野……」
「はい。私ももう少しこの呪について調べてみます」
「お願いね」

険しい顔で立ち去ろうとする紺野。

「あっ、待って!!」

それを紗耶香が呼び止めた。
762 名前:第12話 投稿日:2004/08/14(土) 22:18
「紺野ちゃん、っていったっけ?」
「はい、そうですけど」
「このこと……後藤には言わないで!」
「……わかってます。だれにも言うつもりありませんよ」

紺野はペコッとお辞儀をして部屋から出て行った。
残された私と紗耶香はなにを話していいかわからなく、一度紗耶香のとなりに
腰を下ろした。
でもこのままでもしょうがないので、結局またベッドから立ち上がる。


「紗耶香、私も私なりに研究してみるからさ」
「うん……ありがと、圭ちゃん」
「水くさいな、私と紗耶香の中でしょ?」

私も紗耶香の部屋をあとにする。
でも部屋を出たあとでも紗耶香の悲しげな笑顔が目に焼き付いて離れなかった。
763 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/14(土) 22:26
今回はここまでです。
あ〜、なんかまた主人公とヒロインが出てないような……。
せっかくゼルマでなちごまあったのに……。
でも次はちゃんと出てくる……ハズ……。
764 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/14(土) 22:30
>>745 みっくす 様
矢口はあいかわらずまだ謎ですが、とりあえず紗耶香の目的ははっきりしました。
これからも順番に謎を明らかにさせていければなと思います。

>>746 紺ちゃんファン 様
はい、いっつも気になるところで切ってます(笑
でも今回は……ちょっときりいいですかね?

>>747 konkon 様
初めましてです。一気に読んでいただきありがとうございます。
圭ちゃんは最近活躍してますねぇ。
主人公もちゃんと活躍させねば……。
765 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/14(土) 22:31
川o・-・)ノ<隠します!
766 名前:みっくす 投稿日:2004/08/15(日) 00:38
う〜〜ん、なんか大変な展開になってきましたね。
みんな頑張れ!!
次回も楽しみにしてます。
767 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/15(日) 21:30
更新お疲れ様です。
うわひゃー、、、えれぇこっちゃ。。。
これからどうなるんでしょうか・・・?
続きも楽しみにしてます。
768 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/16(月) 00:35
作者さま、更新お疲れ様です。
いいですね〜!ってかものすごい展開になってきましたね。
いい感じです。
続きを楽しみにしてます。がんばってください!
769 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:07
〜安倍なつみ〜

「なっち、なっち〜!」
「……んっ?」

目を開けるとそこにはごっちんの特大アップの顔が。
なんか前にもこんなことなかったっけ? と思いながら目をこする。
ごっちんが少しズームアウトしたので、眩しい陽の光も目に差し込んできて、
思わずまた目を瞑った。

……んっ? 眩しい陽の光?
まさか、またっ!?

ガバッと起きあがると、それにあわせてごっちんも体を引く。
窓の外を見てみると、太陽はすでに天頂まで昇っていた。
770 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:08
「ま、また寝坊したべさ……」
「しょうがないよ。昨日は大変だったんだし……。それより、なっち、身体大丈夫?」
「うん、もう大丈夫だよ。ごっちんが回復してくれたから。ありがとね」
「にゃは! どういたしまして!!」

う〜ん、と伸びをすると、無防備になった私の体にごっちんが飛びついてきた。

「わわっ!」

私はまたベッドの上に逆戻り。
ベッドに倒れた私の胸元に、ごっちんはゴロゴロと甘えてくる。


「なっち〜! なっちぃ〜!!」
「もぅ……おっきなお子様だべさ」
「えへへ〜!!」

もう一度ベッドの上に起きあがる。
でも甘えたモード全開のごっちんは私の胸元から離れる様子はない。
しょうがないなぁ、と思いつつも、ついつい髪を梳いたり頭を撫でたりしてしまう。
771 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:09
「ごっちん、もういいかい?」
「ダ〜メ! もうちょっと!!」
「もう……今日はやけに甘えただねぇ?」
「え〜、そぉかなぁ?」
「そうだべさ」

でも、よかった。ごっちんもいつも通り元気みたい。
昨日は私やさやかだけでなく、松浦や新垣の回復もしたため、疲弊してごっちんの
ほうが倒れてしまったのだ。

「ごっちんこそ、身体大丈夫かい?」
「うん! よく寝たからもう平気!」
「そっか、よかった! じゃあそろそろ起きるからちょっと離れて。ついでに着替えるから
向こう向いてて」
「はいは〜い!」

ごっちんが離れてくれたので、私はようやくベッドから這い出る。
クローゼットから執事の服を取りだし、着替え始める。
772 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:09
「さ〜て……寝坊しちゃったぶん仕事しないと……」
「え〜?」

デスクについて書類を広げると、ごっちんが不満げな声を漏らして背中に
飛びついてきた。

「仕事なんていいじゃ〜ん! 遊ぼうよ、なっち〜!!」
「ダメだべ! なっちはお仕事で忙しいんだべ!」
「もう半日も寝ちゃったんだからさ〜! 今日一日くらい仕事しなくてもいいじゃん!」
「寝坊しちゃったからこそ急いでやんないといけないんだべ!」
「む〜!!」

今度はごっちんのふくれっ面が私の目の前に現れる。
あまりの顔の近さに思わず顔を退いてしまったけど、同じぶんだけごっちんが
近づけてくる。
773 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:11
「なっちが遊んでくれないと、ごとーまた一人で外に遊びに行っちゃうよ?
だからお願い〜!!」
「……ごっちん、それは"お願い"じゃなくて"脅迫"だべ……」

はぁ、と大きなため息をついて、広げた書類を閉じる。
まったく……ウチのお姫様はわがままで甘えただべさ……。
でもまぁ……そんなところも可愛いんだけどね。


「しょうがないなぁ、じゃあ何する、ごっちん?」
「えっ、いいの? えーっと、それじゃあねぇ……」
「考えてなかったのかい? それならなっち仕事するよ?」
「あっ、はーい、はーい! なっちー!!」

あわてたごっちんが挙手して答える。
さて、いったい何をする羽目になるのかと思っていると……
774 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:12
「なっちとお昼寝!!」
「……なっち今起きたばかりだべ……」

ごっちんの提案にガクッと肩を落とす。
でもごっちんは本気だったみたいで、ベッドに飛び乗ると私の腕を引っ張る。


「わわっ! 本気で?」
「もっちろん! 今日はポカポカしてて絶好のお昼寝日和だよ!!」
「なっちもうこれ以上寝れないべさ!」
「じゃあ添い寝してくれるだけでもいいから!」

ごっちんにベッドの上に引き倒される。
うぅ、服にしわついたらどうしてくれるんだべさ……。
でもごっちんはそんなことお構いなし。
775 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:12
「なっち、なっち! 腕枕して〜!!」
「え〜? 腕痺れるべさ……」
「むぅ! ごとーそんなに重くないよ! いいから〜!!」

私の意見も聞かずに、ごっちんは勝手に私の腕を伸ばして頭を乗っけてくる。
もうなに言っても聞かないのは知ってるから私はされるがまま。
でも私が反抗しないのをいいことに、ごっちんの要求はエスカレートしてくる。


「なっち、そのまま抱きしめて……」
「なっ!?」
「いっつもしてくれるじゃん!」

た、確かにいっつもしてるけど……。
でもなんかこう正面切って言われると、照れるっていうか……
776 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:13
おたおたと慌てていると、ごっちんが私の顔を覗き込んで「おっ、なっち照れてる〜?」
なんて言ってきた。
ちょっとむかついたのと、顔を覗き込まれたので恥ずかしかったのとで、思いっきり
ごっちんを抱きしめる。
「わぷ!」なんて言いつつもごっちんの顔は私の胸元に埋まった。
ごっちんのふんわりとした優しいにおいが私を包み込む。


「ホントに……今日はやけに甘えただねぇ、ごっちん?」
「エヘヘ……ふぁ〜あ……」

ごっちんは器用に照れながらあくびをすると、私の胸の中でそっと瞳を閉じた。

「おやすみ、なっち……」
「ん、おやすみ、ごっちん」
777 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:14
つっても私はまったく眠くなくて……。
そのままごっちんの頭を優しくなでていると、しばらくして健やかな寝息が
聞こえ始めた。
ほんとによく寝てよく遊ぶお姫様だべさ……。
苦笑しつつそっと体を離す。
起き…ないかな……?
でも私の心配をよそに、ごっちんは私がベッドから降りても眠ったままだった。


「ごめんね、なっちはお仕事しなくちゃいけないんだ。でもごっちんのそばには
ちゃんといるから」

もう一度くしゃっとごっちんの髪をなでて、私は足音を立てないようにデスクに戻る。
そして一度閉じた書類をまた開いた。
椅子に腰掛けて机に向かう。
778 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:14
「…………い……ちゃ……」
「えっ?」

不意にベッドの方から聞こえた声。
もしかして起こしちゃったかな、と思ってベッドに歩み寄るけど、ごっちんはまだ
しっかりと目を閉じていた。
なんだ、寝言かぁ……。
そう思った瞬間、またごっちんの口がわずかに動いた。


「……いちーちゃん……」
「えっ……?」

さやか……?
急に胸がズキッと痛んだ。
それはごっちんが寝言でさやかを呼んだことよりも、むしろ……
779 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:15
「ごっちん……泣いてるの……?」

しっかりと瞑られた瞳から、涙が一粒こぼれ落ちる。
涙はごっちんの頬を伝って、やがてシーツに染みこんでいった。

そっと、優しく涙の跡を手で拭ってやる。
そのあいだも胸は鋭く疼いたままだった。


この痛みは……なんなのだろう?

結局この日、仕事はほとんど手につかなかった。
780 名前:第12話 投稿日:2004/08/22(日) 16:15
   
781 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/22(日) 16:24
今日はここまでです。
12話終了です。
そして久しぶりになちごまな感じで。
ま、相変わらずなんですけどね。

>>766 みっくす 様
新しい展開に入りました。
12話はその序章って感じですね。
期待に応えられるよう頑張ります!

>>767 名も無き読者 様
大変なことになりました! ゼルマもある意味大変でした(笑
ちょっとキツイのが続いたので、今回はちょっとほのぼの?

>>768 紺ちゃんファン 様
いい感じですか? ありがとうございます!
けっこうキツめな展開だったのですが、そう言っていただけると助かります。
782 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/22(日) 16:25
(●´ー`)<隠すべさ!
783 名前:みっくす 投稿日:2004/08/23(月) 00:06
更新おつかれさまです。
あの音は、ごっちんだったのかな。
次回も楽しみにしています。
784 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/23(月) 19:16
作者さま、更新どうもです。
>>781
だぁいじょ〜ぶですよ〜!!
いつでも応援してます!
785 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/25(水) 16:25
更新お疲れサマです。
久々になちごま♪・・・と思ったら、
何か戸惑ってますね、なっちw
続きも楽しみにしてます。
786 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:49
〜紺野あさ美〜

「うあ〜!!」

思わず叫んで机に突っ伏す。
うぅ〜……ダメだぁ……どうしてもできない……。

市井さんにかけられた呪を研究しはじめて数日がたった。
でも……どうしても解呪法が見つからない……。
ていうか私……『呪』については飯田さんから教えてもらう前に出てっちゃった
からなぁ……。
787 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:50
『呪』というのは結界魔法の一種。
魔法陣から魔法を発動させるのでなく、魔法陣自体を魔法として扱う魔法を
総称して『結界魔法』と呼んでいる。

その結界魔法は三種類あり、『陣』、『呪』、『印』とわけられている。
描かれた魔法陣の範囲内に効果を及ぼすのが『陣』。例えば魔法陣内への
侵入を拒むなど。一般的に『結界』と言われると、この『陣』を差す。
そして魔法陣が描かれた『人』に効果を及ぼすのが『呪』。『物』に影響を及ぼす
のが『印』だ。


私が知ってる呪の知識はこの程度。そしてこんな物は初歩中の初歩。
もともと結界魔法はレベルが高いし、とりわけ『呪』は生身の人間に魔法陣を
描くぶん扱いがとても難しいので、使える者もなかなかいない。また教えるのも
ある程度基礎が固まってからになる。
788 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:50
「ハァ……」

机に突っ伏したまま溜め息をつく。
このまま魔術書と格闘してても成果は低そう……。
よしっ! こうなったら……
「習うより慣れろ」という言葉があるように、実際誰かに呪をかけてみた方が
いいかも……。


  トンットンッ!!

そんなことを考えていると、タイミングよく扉がノックされた。
おや、飛んで火にいるなんとやら。絶好のカモがやってきてくれたようです。
789 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:51
「はぁ〜い!!」

いつもよりもいくぶん高めな声で返事をして、扉を開ける。
するとそこにいたのはのんちゃんだった。


「あっ、のんちゃ〜ん! ちょうどいいところに!!」

「ちょっと呪かけさせて!」
とは続けられなかった。
のんちゃんがザッと私の前に跪いたからだ。

「えっ、の、のんちゃん?」
「紺ちゃん、お願いれす! ののに魔法教えてください!!」
「へっ?」
790 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:51


Interlude 3  奇跡の夜に逢いましょう



791 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:53
「コホン!」

一つ咳払いをして、眼鏡(ダテ)をかけ直す。

「それじゃあ始めるよ?」
「はいっ! お願いします、先生!」

私の前にはのんちゃんが座っている。
のんちゃんはこの前の戦いで飯田さんに歯が立たなかったのが相当悔しかった
らしい。
それだけだったら私も研究で忙しいからOKしなかったんだけど、
「もっと強くならないとあいぼんを守れないのれす!!」というのんちゃんの真剣な
表情に私も負けてしまった。

でも、のんちゃんの表情は真剣だったけど、どこか焦っているようにも見えて。
ただ闇雲にでも強くなろうとしているようにも見えなくもない。
それがちょっと不安だったから、まずは魔法そのものを教えるより、魔法の原理の
基本的なことを説明することにした。
792 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:55
「えーっと、まず最初に言っとくけど、魔法っていうのはある程度先天的な
才能も必要になるから、訓練すれば誰でも使えるようになるってわけじゃないんだ」
「先天的な才能って……どんなものなのれすか? ののにはあるのれすか?」
「んー、簡単に言えば生まれつき魔力を持ってるかってことなんだけど……」

背後の黒板にチョークで一個丸を書く。
そしてその丸を縦線で二つにわけ、その片方を塗りつぶす。


「魔法の素になる"魔力"は二つのものから成っているのね。私たちはそれを
"白魔力"と"黒魔力"って呼んで区別してる。白魔力ってのは「生命エネルギー」の
ことで、命の源とも言えるエネルギー。これは生きてる限り誰でも持ってるんだけど、
黒魔力は……う〜ん、これは実はまだ詳しいことはわかってないんだけど……
とにかくこの黒魔力は生まれつき持ってる人と持ってない人がいるし、その容量も
個人差があるんだよ」
「ふ〜ん、でもそれなら黒魔力を持ってなくても白魔力だけを使えば……」
「えーと、基本的にそれはできないんだ。白魔力と黒魔力がセットじゃないと"魔力"に
変換できない。その白魔力と黒魔力の割合が"属性"になってるからね。
白魔力が多い順に、雷、炎、風、水、地。割合がまったく同じだと無属性になる」
「てことは黒魔力を生まれつき持ってないと……」
「うん、魔法は使えないの」
793 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:56
そこでいったん一息ついて、また眼鏡をチャッとかけ直す。
するとのんちゃんが「はーい!」といって挙手した。

「んっ、なぁに?」
「それじゃあ姫様や女王様が使う光魔法や、あの田中って娘が使ってた闇魔法は
なんなのれすか?」
「あぁ、あれはね、特別なんだ」

魔力を表した丸とは別に、もう二つ丸を書く。
そしてそのうちの片方を塗りつぶした。

「さっき片方の魔力だけじゃ基本的には魔力にできないって言ったけど、ごく一部、
限られた人間だけはそれができるんだ。純度100%白魔力で作られるのが光魔法、
黒魔力で作られるのが闇魔法になる。だから光魔法は身体への負担が大きいんだね」
「そうなのれすか……」
「この光魔法と闇魔法については、実は一つの逸話があるんだけど……聞きたい?」
「聞きたいれす!」
「わかった、じゃあ教えてあげる」
794 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:57
また一つ咳払いをすると、その時扉の外からノックの音が響いた。
扉まで進み、そっと開くとそこには安倍さんがいた。

「あぁ安倍さん! どうしたんですか?」
「えーっと……ののいるかな? 圭ちゃんに聞いたらここにいるって言われて
来たんだけど……」
「えぇ、いますよ。どうぞ」

扉を完全に開いて、安倍さんを中に促す。
そのあいだ少し考える。
どうして保田さんはのんちゃんがここにいるとわかったんだろう?

少しして導き出した結論は……
保田さん、もしかして安倍さんをここに送り込むための嘘が真実になっちゃいました?
確か安倍さんを送り込んであげるって言ってましたしねぇ。
安倍さんは入ってきたものの、黒板の前に座っているのんちゃんと今の私の姿に
面食らっている様子。
795 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:58
「えーと……眼鏡なんかかけてなにしてるの、紺野?」
「ちょっとのんちゃんに魔法のお勉強を。今からちょっと光魔法と闇魔法について
話すんですけど、安倍さんも聞きますか?」
「あっ、なっちも聞きたい!」
「ではそこに座って下さい」

私が促すと安倍さんはのんちゃんのとなりの椅子に腰掛けた。
よかった。これで大事ないけに……ではなく、実験台を逃がさなくてすむ。


「あれっ? そういえば高橋と新垣は? いつもは一緒にいるのに」
「あぁ、愛ちゃんと里沙ちゃんはこの私の神聖な研究室でいちゃついてて邪魔だった
ので叩き出しました」
「ハハ……」

安倍さんが乾いた笑いを漏らすなか、私は改めて咳払いをする。
では話しましょう。光と闇の始まりを。
そしてそれにまつわる一つの恋物語を。

あれっ? でものんちゃんへの用事はいいんですか、安倍さん?



796 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 14:58


◇     ◇     ◇



797 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:00


遙か昔。そしてここより遠く離れた、ある砂漠の中にあった小国。
その国の名は「アカビア」。小国なれど「光の王国」と呼ばれて栄えていました。

国の中心には大きなお城がそびえていました。
そしてその城には一人のお姫様が住んでいました。大変お美しい、それこそ
『光』のようなお姫様です。
でも「住んでいた」と言うのはあわないかもしれません。「囚らえられていた」と
言ったほうが正しいかもしれません。
毎日毎日、結婚相手を捜すために、舞踏会や隣国の王子との見合いの日々。
城の外に出ることも許されず、姫はそんな生活に嫌気がさしていました。
798 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:01
ある日、ついに姫は城を抜け出してしまいます。

初めて見る外の景色はとても刺激的でした。
でも城から一度も出たことのなかった姫は当然右も左もわからず、街を見て
まわるうちにうっかりスラム街に足を踏み入れてしまいました。


そしてそこで二人の男に取り囲まれてしまった姫。
なんとか逃げだそうとしますが、腕をつかまれた瞬間、激痛とともに身体が
動かなくなりました。
全身が痺れるような感覚。
雷の魔法によって神経を麻痺させられてしまったのです。


暴漢たちに襲われてあわやというところ……
一つの運命が交わったのです。
799 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:01
「やめろっ!!」

暴漢の一人が吹っ飛びました。
続いてもう一人も吹っ飛ばされます。
それは一瞬の出来事でした。


「大丈夫かい?」
「あっ……はい……」

それは優しい笑顔が似合う青年でした。
そっと手を差し出され、ようやく痺れがとれてきた姫が手を取ると、グッと
起こしてくれました。
その手は大きくてたくましく、でも優しいぬくもりが宿っていました。


「このあたりは治安が悪いみたいだな。女の子が一人で来るようなところじゃない。早く引き返すことだ」
「あっ……」

それだけ言い残し、青年は去っていきました。
お礼を言うこともできず、姫はその場に立ちつくしていました。
手には彼のぬくもりがまだ消えずに残っていました。



800 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:02


◇     ◇     ◇

彼との出逢いはまたすぐ訪れました。
翌日のことです。姫の住まう城に、一組のキャラバン隊が挨拶に来たのです。
その中に彼の姿がありました。
姫はすぐに彼に気づきました。そして彼も。


「待って下さい!」

挨拶を終え、城から去ろうとするキャラバン隊を姫は呼び止めました。
そして彼の前へと進みます。

「この国の姫だったとは。昨日の無礼、お許し願いたい」
「とんでもありません。昨日は危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました!」
「光栄です、姫様」
801 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:03
その日からでした。姫がたびたび人目を盗んで城を抜け出すようになったのは。
抜け出しては彼に会いに行くようになったのです。

彼はキャラバン隊の一員、旅人です。
いつまでも一つの場所に留まってはいられないし、それに二人の身分は明らかに
違いました。
そのことを彼も、姫もわかっていました。
でも……

結ばれない運命と知りながら、二人は恋に落ちました……。



802 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:04


◇     ◇     ◇

二人で過ごす時間はとても幸せなものでした。
ですが、その幸せも長くは続きません。
とうとう彼の属するキャラバン隊が旅立つときが来てしまったのです。


「一緒に逃げよう」

彼は姫に言いました。
今まで一緒に旅してきた仲間たちを捨て、姫を選んだのです。
ですが姫はすぐには答えられませんでした。

それを見た彼は一言だけ言い残してその場を去っていきました。
「奇跡の夜に、街の入り口で待つ」と。
803 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:04
それからしばらくは逢えない時間が続きました。
姫は悩んでいました。
自分は……本当はどうしたいのか……?
そして彼の言い残した言葉……「奇跡の夜」とはなんのことだろう? と……。


しかしそれはすぐにわかりました。
ある風の強い夜。
風は砂漠の砂を舞上げ、空を覆いました。
そして月や星の光が減光され、月や幾千の星は赤く染まりました。
その赤い月や星から降り注ぐ光が、今度は砂漠を真紅に染め上げました。


城から見たことのない光景を見下ろす姫。
これが『奇跡の夜』……。
804 名前:Interlude 3 投稿日:2004/08/30(月) 15:05
姫の心にもう迷いはありませんでした。
赤いチャドルを身に纏い、城を抜け出して愛する人のもとへと走ります。


街の入り口に彼はいました。
二人でしっかりと手を繋ぎ、真紅の砂漠の中へと走り出します。
赤く染まった砂漠は、まるで二人のためのバージンロードのようでした。
805 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/30(月) 15:10
いったん切ります。
ようはこの世界の魔法解説みたいなものなので、まぁさらっと読んでください。
紺野のマッドぶりは相変わらず……(笑
806 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/30(月) 15:15
>>783 みっくす 様
音は誰だったのでしょうか? それとも圭ちゃんの聞き間違いだったのでしょうか?
それもそのうち(?)明らかになるはずです。
予想しつつお待ち下さいませ。

>>784 紺ちゃんファン 様
ちょっと最近脱線してますが、終わればまたキツメになるかも?(マテ
期待に応えられるよう頑張ります。

>>785 名も無き読者 様
なちごまでした! やっぱり定期的に書かないと本当にバトルだけになってしまうので。
しかしいつ進展するのやら(笑
807 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/08/30(月) 15:15
川o・-・)ノ<隠します!
808 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/30(月) 16:08
更新乙彼サマです。
おや、これはまた興味深いお話が。。。
ていうか逃げろ、お二人。w
マッドな彼女がナイスな雰囲気醸し出してますね。
続きも楽しみにしてます。
809 名前:みっくす 投稿日:2004/08/30(月) 23:14
更新おつかれさまです。
なかなか面白そうなお話ですね。
紺ちゃんも相変わらずな感じで。
次回も楽しみにしてます。
810 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/30(月) 23:47
作者さま、更新お疲れ様です。
紺ちゃん・・・・私は敵には回したくないです。絶対。
ロシアの殺しア恐ろしあ・・・(違
でわでわ、更新をキリンのように待ちたいと思います。
811 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:37
二人はそのまま砂漠のはずれにある小さな街まで逃げのびました。
どこから来たのかも、素性も明かせない二人でしたが、街の人々はそんな二人を
温かく迎え入れてくれました。


そして二人はその街で一緒の暮らし始めました。
望むものなど何もない。一緒にいられればそれでいい。
包みこむような優しさと、笑顔がそこには溢れていました。
それは幸せを絵に描いたような、ささやかだけど幸福な一時でした。
812 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:39
でもそんな幸せも長くは続きませんでした。
その日も二人が「アカビア」を出たときと同じように風の強い日でした。
街に「アカビア」の兵士が押し入ってきました。
姫が隠れている家を突き止め、そこを兵の大群で包囲しました。


抵抗しても勝ち目はない。それどころか姫まで危険にさらしてしまうかもしれない。
そう考えた彼はそのまま投降しました。
ただ一つ、姫の身の安全を条件に。
姫は最後まで泣き叫んでいました。
813 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:40

二人はそのまま「アカビア」に強制連行されました。
姫は前と同じくお城に、彼は無実の罪を着せられその地下牢に幽閉されました。

しばらくして彼の裁判が始まりました。
しかしそれは形式上のもの。彼には申し開きの機会も与えられませんでした。
姫もなんとか彼を助けようと、涙を流して嘆願しましたが、その涙のかいもなく、
彼を待っていたのは火刑台でした。

814 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:40

姫はなんとかして城から抜け出そうとしました。
彼に一目でも会うために。
ただし姫の身辺の警備も強化されています。

何日もかかって、姫はようやく城を抜け出せました。
くしくもその日は彼の処刑が執行される日でした。


姫は走りました。街の中心を目指して。
彼がどこにいるかなんて姫にはわかりません。ですが何かが姫を街の中心へと
導きました。


街の中心には人だかりができていました。
街の人がすべて集まってきたかのような、巨大な人だかりです。
815 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:42
「すいません、通してくださいっ!!」

なんとか声を張り上げて人混みをかき分けていきます。
でもなかなか前へとは進めません。
集まった人は、ある人は涙を湛え、またある人は憎悪にも似た表情でずっと
中心を睨みつけていました。

そんな人の中を姫は進んでいきます。
ですが姫がやっと人混みの中から顔を出したのは、ちょうど火刑台が炎に
包まれた瞬間でした。


「いやぁぁあっ!」

泣き叫び、火刑台へと駆け出そうとする姫を、その場にいた兵士が取り押さえます。
そしてもう一つ、その場に叫びが響きます。
それは身が焼かれる苦しみによる彼の悲鳴でした。
816 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:43
しばらく姫と彼の、二人の悲鳴が街の中心に響いていました。
でも……彼の悲鳴は程なくして途絶えました。
そしてそれにつられるように姫も声を失います。

それは一つの命が失われた瞬間。
姫にもわかったのです。わかってしまったのです。
愛する人が、愛しい人が物言わぬ一つの屍になってしまったことが。


「いや……いやぁぁぁあああっ!!」

よりいっそう大きい姫の絶叫が響きます。
その場にいるすべてのものが身動きせず、ただただ燃えていく一つの亡骸を
見送っていました。
817 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:44
しかしその時、奇跡が起こりました。


突然現れた、まばゆい真っ白な光。
それはすべてを焼き尽くす炎の出す光とは異なり、何とも温かい光でした。
しかもその光は……姫の身体から溢れています。
姫の強い想いが、光魔法を覚醒させたのです。


放たれた光は周囲を包み込みます。
炎をかき消し、火刑台を薙ぎ倒します。

溢れた光が彼の亡骸へと注がれます。
身体が光に包まれ、みるみるうちに傷が治っていきました。


そして一度固く閉じられたはずの彼の瞳が、
光を湛えて再び開きました。
818 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:46
体を起こした彼に姫は飛びつきました。
涙をこぼし、あらん限りの力で彼を抱きしめます。
しばらく呆然としていた彼もようやく姫の背中に手を回しました。

その時刑場を囲んでいた民衆の一角から拍手がこぼれました。
小さな拍手でしたがそれはだんだんと広がっていき、すぐに刑場は拍手と
歓声に包まれました。
兵士たちは自分の目がいまだ信じられずにポカンと立ちつくしていました。
その中央で彼と姫は抱き合っていました。


しかし、奇跡に酔いしれている民衆も、立ちつくしている兵士も、愛しい人をまた
我が手で抱きしめている彼も気づいていなかったのです。

一度失われた命が蘇った奇跡の瞬間、
同時に一つの命が失われたということに。

819 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:48
最初に気づいたのは彼でした。
腕の中にいる姫がまったく動かなくなっていることに違和感を覚えます。
呼びかけても、身体を揺すっても反応を返しません。


姫は息絶えていました。
目を固く閉じ、光を拒むように。

光魔法は生命エネルギーの結晶。
それは自分の命を削って分け与えているようなもの。
ましてや失われた命を蘇らせるとなれば、その代償はあまりにも大きかったのです。

820 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:49
歓声や拍手はだんだんと小さくなっていきます。
そして刑場は再び静寂に包まれました。
その中央で彼の絶叫だけが響いていました。


無念、憎悪、悲壮……。
そういった負の感情が溢れたとき……
もう一つの力が目覚めました。

光の対極、闇の力。
それは癒しの光とは反対の、究極の破壊の力。
悲しみを纏った闇が彼の身体から溢れ出しました。


そして『アカビア』は一瞬にして滅んだのです。



821 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:49


◇     ◇     ◇



822 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:51


「そのあと彼は闇魔法を操って、世界を滅ぼそうとします。そして世界規模の
大戦が勃発しました。長きにわたった戦いの末に、彼は闇魔法もろとも封印され、
闇魔法も滅びたといわれています。そして生き残った『アカビア』の子孫がこの地に
移り住んで、建国したのがこの『ハロモニランド』といわれています」

途中からはちょっと記憶が曖昧だったので、部屋の奥にあった古文書を引っ張り
出してきて、その古文書と私の記憶を照らし合わせつつ、安倍さんとのんちゃんに
聞かせた。
でもこの古文書もかなり曖昧なんですよね。
それに私も飯田さんから聞いた話だし、本当かどうか。
823 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:52
「そんなことが……あったんだねぇ……」
「ま、ホントかどうかはわかりませんけどね。でも光魔法が生命エネルギーの塊と
いうのは確かなので、使いすぎればたしかに命に関わることもあるでしょう。
安倍さん、姫様にあまり光魔法を使わせないようしっかり守ってあげてくださいね?」
「うん、わかってるべさ」

手にした古文書をパタンと閉じる。
古文書をもとのところに戻し、そこでようやく一息ついた。
あぁ、しゃべりっぱなしでのど乾いた。ついでにお腹も減ったなぁ。


「そういえば安倍さん、のんちゃんに何か用事があったんじゃないんですか?」
「えっ? あぁ! そうだ、忘れてた!!」

安倍さんはホントに今思いだしたように手を一回ポンと叩いた。
やっぱり忘れてたんですね……。いいんですか?
824 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:53
「のの! あいぼんの意識が戻ったよ!!」
「えっ!? ほんとれすか!?」
「わぁ、よかったですねぇ!」

思わず私も嬉しくなる。
あとで私もお見舞いに行こう!


「あっ、でもまだ医務室にいるからあんまりうるさくはしないでね?」
「わかってるのれす! あいぼ〜ん!!!」

あんまりわかっていなさそうなのんちゃんはそのまま一直線に地下室から
出て行ってしまった。
あ〜あ、逃げられてしまった……。
でもまぁいいか、実験台はもう一人いることですし。
くるっと安倍さんの方に向き直ると、安倍さんの身体が飛び跳ねた。
825 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:54
「さ、さ〜て、なっちも用事は済んだからこれで失礼するね?」

安倍さんもまた地下室の出口へと走っていく。
でも私が指を一つパチンと鳴らすと、あ〜ら不思議。扉はひとりでに閉まって
もう開きません♪


「こ、紺野……?」

閉じきった扉に背をあずけて冷や汗を流している安倍さんににじり寄る。
そして極上の笑顔で微笑みかける。

「大丈夫です、ちょっと呪をかけるだけですから。たぶんちゃんと解けるはずです!!」


そして地下室に安倍さんの悲鳴が響いた。
826 名前:Interlude 3 投稿日:2004/09/04(土) 21:54
   
827 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/09/04(土) 22:05
はい、Interlude 3はここまでです。
かなり苦労したところだったんですけれども、「苦労してこれかよ!?」という感じも(汗
ホントはもっとうまく書きたかったんですが、現時点ではこれが限界です……(泣
ま、シリアスを吹っ飛ばしてくれる紺ちゃんの暴れっぷりに感謝ってことで。
828 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/09/04(土) 22:09
>>808 名も無き読者 様
紺野的には「生贄」というのは抵抗があるようですが、「実験台」にするのは
良心の呵責とかは感じないようです(笑
マッドな紺野はオチに使いやすい(マテ

>>809 みっくす 様
紺野は相変わらずです。実験中はキャラ変わります(笑
挿話はこんな感じで。
最初から決めてたとはいえ、けっこうキツイ……。

>>810 紺ちゃんファン 様
私も紺ちゃんは敵にまわしたくないです(笑
ある意味最恐キャラ……。
829 名前:みっくす 投稿日:2004/09/04(土) 22:30
更新おつかれさまです。
リアルタイムで読ませていただきました。
なるほどって感じで。
次回楽しみにしてます。
830 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/09/05(日) 02:16
紺ちゃん怖・・・!
なっちもかわいそうに・・・・・。
魔法誕生?のお話は結構悲しい話でしたね。
最後のほうでうるっと・・・・・
>>828
なるほど・・・最恐キャラですか・・・。納得(ヲイ
紺ちゃんの「♪」ってやっぱ恐・・・・・・
次回更新まってます。
831 名前:konkon 投稿日:2004/09/05(日) 12:40
金版で書いているkonkonです。
いつ読んでもおもしろいですね。
紺ちゃんつえぇ!
捉えた獲物は逃がさない、
やっぱり紺ちゃんは天才の名が似合いますね♪
832 名前:名も無き読者 投稿日:2004/09/05(日) 13:35
更新お疲れ様です。
(((( ;゚Д゚)))) <流石。。。
お話の方は中々切なかったのに最後の彼女で・・・みたいなw
ていうかお話の通りとすると闇魔法って相当・・・。(汗
続きも楽しみにしてます。
833 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 12:51
更新待ってます
834 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/09/10(金) 15:52
まずはレス返しを。

>>829 みっくす 様
おぉ! リアルタイムありがとうございます。
最後はこんな感じになりました。
納得していただけたようでよかったです。

>>830 紺ちゃんファン 様
とにかく今回のお話は暗くなりそうだったので、紺野をできるだけマッドにしてみました(ぉぃ
うるっとしていただけたようで、本当にありがとうございます。

>>831 konkon 様
紺ちゃんは天才です! そしてかなりマッドです!(笑
普段と研究中は明らかにキャラが違います。
でもどっちも似合うからすごいです。
835 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/09/10(金) 15:54
>>832 名も無き読者 様
今回の話ではホントに紺ちゃんに助けられました。
逆になっちが全然助かってないのですが……。
とにかく研究中の紺野は危険です(笑

>>833 名無飼育さん 様
ちょっと最近忙しかったのですが、ようやく時間が空きましたので
更新したいと思います。
お待たせいたしました。
836 名前:片霧 カイト 投稿日:2004/09/10(金) 15:58
そろそろこのスレもサイズもレス数もたまってきたので、
お引っ越ししたいと思います。
もうちょっと余裕があるにはあるのですが、おそらく次の話は入りきらないと
判断したため、次のスレを立てさせていただきました。

Dear my Princess U
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wind/1094798822/

今度は風版です。
こちらもよろしくお願いします。

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