輪廻転生
- 1 名前:風紀 投稿日:2004/01/10(土) 22:36
- 小説を書くのは初めてです。
一応、学生のため、テストなどで更新は不定期になってしまうと思いますが、
放置は絶対にしないつもりです。
誤字脱字、意味不明の文などがありましたら、どんどんご指摘ください。
感想など頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/10(土) 22:38
- 「えっとぉ…、田中れいなさん…で合ってますよね?」
―誰だ?コイツ…。
辺りを見回すとそこは真っ暗な世界だった。
目の前に立つ少女の周りの色に反発するかのような
真っ白い服だけが、くっきりと浮き出ている。
少女の年は自分と同じくらいだろうか。
でも、全然知らないヤツ。第一、私の名前を呼ぶ人間なんて
家だろうが学校だろうが一人もいないハズなのだ。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/10(土) 22:42
- 「…誰?アンタ。」
「ん〜、霊魂取締役って所でしょうか…?」
―はぁ?てか、その何とか役って何だし。
「質問と答えが合ってないよ。私が聞いてるのはアンタの名前。
つーかココどこ?」
すると少女は『あぁ、名前聞いてたの!』という顔をして
「私は亀井絵里。絵里って呼んで?私もれいなって呼ぶから…。
でね、ココは…『天国と地獄の間』って言うのが一番近い表現かな?」
―天国と地獄って…私、死んだの?何で…?
「れいなはまだ死んではいない。正確にはね。」
私は思わず絵里と名乗った少女を見た。絵里は少し申し訳なさそうに
「すみません。昔から人の心が読めるみたいで…。」
と言って俯いてしまった。
私的には聞きたいことが山ほどあるので
ここで黙り込まれて気まずくなるわけにはいかない。
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/10(土) 22:47
- 「…詳しく説明して。アンタのその何とかって言う役の話も含めて。」
それからかなり長い時間、絵里から説明を受けた。
簡単にまとめると…
ココはいわゆる判定所のような場所。
一般的にはココで地獄行きか天国行きが決まるそうだ。
ただ、特例というものが存在し、簡単に天国か地獄かを決められない場合があるという。
それは子供が死んだ場合だ。親より先にこちらへしまったことに対して
罰を与えるべきか、短いながらも自分の人生を全うしたのを称え、
天国へ送るべきか。この討論はもう何十年も昔から行われているけれど、
未だに結論が出そうな感じはないらしい。
そうした、どちら側へも行けずにいる子供達に与えられる仕事が
『霊魂取締役』。これは、下の世界(まぁ、人間の世界の事だ)
からやって来た魂が迷子にならないように見張る仕事らしい。
ついでに言うと、私はまだ「死んだ」ということにはなってなく、
簡単に言えば幽体離脱状態なんだそうだ。
そういう時は綺麗な三途の川が見えると思っていた私は、
この真っ暗な世界に少しばかり失望した。
- 5 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/10(土) 22:50
- 「ふーん。んで、つまりアンタが私を見張りに来たわけだ?」
「うん。本当ならね。」
―本当なら…?
絵里は意味ありげに少し微笑んで話を続けた。
本来、死んだ子供達の魂は、彼らの両親が死ぬまでこの世界で仕事を続け、
やがて来る両親と共に天国か地獄へ行くという。
しかし、何十年かに一度、判定所の管理官に選ばれた者達だけは
下の世界に帰り、もう一度、人生をやり直すことができるというのだ。
選ばれる基準というのは不明らしい。
- 6 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/10(土) 22:51
- 「それって、天国に行くよりラッキーじゃない?」
私は思った通りの事を口にした。
自分が死ぬ前に戻れるほどいい事はない。
「うん。まぁね。それで今年はその年で、私とれいなとあと五人くらいが選ばれたの。」
「はぁ?!私、今さっき来たばっかりなのに選ばれたワケ?」
「だから言ったじゃん、基準は分からないって。」
「…。どうやって下の世界に戻るの?」
絵里は首を横に振り、「知らない」と呟いた。
訪れる微妙な沈黙―
「ねぇ、君らも今年選ばれた子達?」
突然後ろから話しかけられ、私と絵里は思わずビクッとして振り返った。
- 7 名前:風紀 投稿日:2004/01/10(土) 22:56
- 本日はここまでです。
半端なところで行が変わっていて、読みにくい部分が
あるかと思いますが、ご了承ください。
一応、話の筋は出来ているので、今後も頑張って書いていきます!
ちなみにメンバーは大体出そうと思っていますが、
田中&亀井コンビが中心の話を予定しています。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 07:21
- む、なんか面白くなりそう・・・期待してますよ!
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 08:51
- この二人好きなんで嬉しいです!
頑張ってください☆
- 10 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/11(日) 20:51
- そこに立っていたのは、ちょっと少年みたいでカッコいい女の人と
少したれ目でストレートな茶髪の女の人だった。
ハッキリ言って、美男美女(両方女性だけどね。)
「あは。いちーちゃん、驚かしちゃダメじゃん。」
たれ目の人の言葉に少し困ったような顔をしながら、
「いちーちゃん」と呼ばれた人は
「いや…まさかこんなに驚くとは思わなかったから…ごめん。」
と言った。絵里が即座に
「あ、気にしないでください。えっと…市井さん、ですよね?」
「うん。市井紗耶香。君は…えっと…亀井か。」
―あれ?絵里の知り合い?
たれ目の人も同じ事を思ったのか、市井さんの腕を掴んで
「ねぇねぇ。この子、いちーちゃんの知り合い?」
「いや…ちょっと名前知ってただけ。後藤、自己紹介しな。」
- 11 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/11(日) 20:55
- 市井さんに促されてたれ目の人は後藤真希と名乗った。
一応、私も挨拶をしておく。
「田中れいな、ね。分かった。早速だけどさっきの答えは?」
―さっきの答えって…?
絵里のほうを見ると、絵里も「?」という顔をしている。
後藤さんが笑いながら
「『選ばれた子達なの?』の返事だよ。
市井ちゃんの出現にびっくりし過ぎて忘れちゃった?」
市井さんはちょっと怒ったように後藤さんのほうを見ると
「うるさいっ!」
と言ってパシッと後藤さんの頭を叩いた。
一瞬、絵里の顔が引きつったのが分かる。
―ヤベ、怒った?にしても、絵里はびびり過ぎ…。
でも、目は笑っていたので、どうやら本気ではなさそうだ。
絵里もそれを見て安心したのか
「はい。さっき、『君らも』って言ってましたけど、
市井さんたちも…?」
市井さんは「まぁ、そうらしい」という風に頷くと
「あと、もう二人来るみたい。」
―ふーん。つまり、私を含めて六人って事ね。
私がそう思った、その時
- 12 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/11(日) 20:59
- 「あの〜…。」
とかなり高い声…と言うよりアニメ声が聞こえた。
市井さんが振り向いたと同時に
『うわ、お前かよ。このネガティブ野郎…。』
と呟いた気がしたけど、
「あれ〜石川じゃん。どーしたんだよ?まさか、お前らも選ばれたの?」
と清々しく言ってたから、多分気のせいだったのだろう。
石川と呼ばれた人は背が高い金髪の女の人を連れていた。
こっちも市井さんたちに負け劣らずの美男美女(両方女性!)だった。
ただ、タイプはちょっと違うと見える。
「はい〜…。でも、どうしたら良いのか分からなくて。」
ちょっと耳障りなほどのアニメ声。でも、外見には合ってる気がするし
聞きようによっては可愛いと言える。
「ふーん、そっちの子は?」
市井さんは、さっきからずっと黙っているもう一人の人に目をやった。
石川さんは
「よっすぃ〜、自己紹介しなよ。」
よっすぃ〜と呼ばれた人は『よっすぃ〜って何だよ。』と呟いて
「吉澤…吉澤ひとみです。」
と、ちょっとぶっきらぼうに答えた。
私たちも一通り紹介を終えたところで、市井さんが
「えっと、今年選ばれたのはこの六人だけみたいなんだけど、この後どうするのか
知ってる人いるか?」
- 13 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/11(日) 21:04
- 皆、一斉に首を振る。市井さんは少しため息をついて
「私も知らない。さっき、後藤と取締中央管理室に行ったんだけど
中に入れてくれなかった。」
―なら、全員揃ったんだから皆で行ってみれば入れるかも。
私がその事を言うと、市井さんは「それしかないな」と言って、先に歩き始めた。
その後に私たちも続く。
「にしても、こんな真っ暗で右も左も分からないところで、よく
目的の建物がどこにあるのか分かりますね。」
感心したような石川さんの発言に市井さんは「は?」と言う顔をして
「何だよお前、もしかして知らなかったのか?ここでは『ここに行きたい!』
って思うと、その建物まで瞬間移動できるんだぞ?常識だろ…。」
「へぇ…知らなかった。覚えとこ。」
―『覚えとこ』って…。下の世界に帰れるのに覚えておく必要なんてないんじゃ…。
あ、絵里はこの事知ってたのかな?常識みたいだし、知ってそうだな。
そう思って絵里のほうを見ると、絵里は赤い顔をして俯いていた。
―あ。知らなかったんだ。まぁ、いいや。黙っておこう。
私はこの時、絵里の重要な能力について、すっかり忘れていた。
- 14 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/11(日) 21:17
- 「れいな…。さっきから何気に失礼な事ばっかり考えてない?」
―そーいや絵里って人の心読めるんだっけ。つーか勝手に読むな。
私の気持ちに、すぐにしゅんとする絵里。
「…ごめん…。」
「亀井ちゃん、さっきから何ぶつぶつ言ってるの?」
後藤さんの言葉に絵里はますます顔を赤くした。
―そっか、私の気持ちに声出して答えちゃったら、絵里は独り言
言ってる事になるんだ。てか、別に怒ってないから安心してよ。
絵里はこくっと頷いて「ホントにごめん」と口だけ動かして言った。
「あ、ここだ。管理室。」
市井さんがそう言いながらドアを開けて中に入る。
部屋の中は椅子が七脚あって、その一つに男の人が一人座っていた。
それと向き合うように残り六脚の椅子が一列に並んでいる。
「よう来たなぁ。まぁ、座れ。」
全員が座ったのを確認すると、大阪弁の男の人は
「俺の名前はつんくや。今から下の世界に行く説明をする。」
と前置きをして、長々と話を始めた―。
- 15 名前:風紀 投稿日:2004/01/11(日) 21:48
- 今回の更新はここまでです。
(できれば今日中に、もう一回くらい更新したいのですが…。)
プロローグのくせに、長々としてしまってすみません…。
次でプロローグは終わらせたいと思います!!
>>8 >>9
レス、ありがとうございます!期待してくださって、
ホントに感謝感激です。
この後、六人は下の世界に戻るわけなのですが、
世の中、平穏無事に物事が進むわけもなく…。判定書では判定所で、
なにやら揉め事が起こります。
では、次回更新まで!
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/11(日) 23:17
- CP系ではないのかな?
とにかく6期好きなんで嬉しいです。
設定もおもしろい。期待してます。
- 17 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/12(月) 02:48
- 更新お疲れ様デス。。。
何か面白そうっすネ!
市井ちゃん好きなんでイッパイ出して下さい!
楽しみにしてます!
- 18 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:00
- あまりにもつんくさんの話が長かったので、自分の中で要約した。最初の方は、絵里の話と同じだったから、勝手に省略してしまった。
下の世界に戻ると言っても、今まで居た世界とはちょっと違う。
分かりやすく説明すると、世の中には「運命の分かれ道」
と言うものが存在しているという。
例えば、ある人が自殺を考えたとする。そして、そのまま
自殺をしてしまえばその人はAという世界に進み、思いとどまれば
Bという世界に進むのだそうだ。
「何か、RPGみたいだな…。」
私の隣に座っていた吉澤さんがボソッと呟いた。
つんくさんはアハハと笑って
「おもろい事言うやっちゃなぁ。
まぁ、簡単に言えばそんなもんやけどな。」
- 19 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:05
- つまり、私達が今まで暮らしていた世界をAと置き換えると、
私達はAと言う世界では死んだけど、Bという世界では生きているという事らしい。
ついでに言うと、帰った時には私達のここでの記憶はなくっているみたいだ。
―だったら、ここで説明会開く必要ないじゃん。
そう言いかけたけど、ここは心の内にしまっておく事にしよう。
代わりにずっと気になっていた別の質問を…
「このメンバーが選ばれた基準って何なんですか?」
「お前は…田中やな。お前らが選ばれた理由はな…。」
つんくさんは少し言葉を切った。どうやったら簡単に説明できるのかを
必死で考えているようだ。
―聞くんじゃなかった…。
私は聞いた事を即座に後悔した。
思えば、ここで聞いたとしても下に帰ればここでの事は
全て忘れてるんだから、聞いたって無駄な話なのに…。
- 20 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:09
- しばらくして、つんくさんがボソッと言った。
「…さっきの例で言ったら、お前らがBっちゅう世界で出会う事に
なっとったから…かなぁ…。」
―な…。また難しい事を…。
絵里を見ると絵里もぽかんとしている。
後藤さんと石川さんと吉澤さんも同様のようだ。市井さんだけが
「ふーん。つまりウチラはこれから帰る世界で、
どういう形でかは分からないけど深い係わり合いを持つ事に
なってるんだ?でも、そんな人いっぱいいるんじゃないの?」
「市井。お前が一番物分かり良さそうやなぁ。
あのな、判定所で下の世界に帰すことが出来るのは、今から五ヶ月
以内に死んだ人間だけなんや。それに、帰すのは四人以上七人以下
って決まってるし、帰った奴らはその世界で三ヶ月以内に出会う
運命にないとあかんのや。」
―四人と七人って、何か半端な数字だなぁ…。
でも、何となく話は読めた。
- 21 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:17
- 「そんな条件満たす奴らなんか滅多におらんやろ。
そやからこの行事は何十年に一度あるかないかって言われている
奇跡的行事なわけや。」
…なるほどね。今の話で他の三人も納得した表情になった。
つんくさんは壁の時計をチラッと見ると
「そろそろ準備が出来たみたいや。ええか?そこのドアを開けると
中はエレベーターになっとる。そこに入ったら、20036Bって押すんや。
そうすれば次、気がついた時は下の世界Bや。分かったな?」
つんくさんが言い終わったと同時に壁にドアが現れた。
市井さんが先頭に立ってドアを開け、中に入る。
「大丈夫だよ、おいで。」
何となく怖くて入るのを渋っていた私と絵里に
石川さんが軽く手招きをしてくれた。中はそんなに広くない。
普通のマンションとかによくあるヤツと同じだ。
ただ、中は壁が全部真っ白だったけど。
白い壁にある黒いデジタル表示のボタンが何となく怖い。
白と黒では白の割合の方が遥に高いのに、黒に恐怖を感じているのは私だけか。
- 22 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:20
- 市井さんが
「20036Bだよな」
と言いながらゆっくりとボタンを押す。
数秒後にドアが閉まり始め、私と絵里は思わずぎゅっと手をつないだ。
後藤さんも市井さんにぴったりとくっついている。
石川さんは「大丈夫だよ」と言いながら私と絵里の頭をずっと撫でてくれる。
吉澤さんはそんな石川さんをじっと見つめていた。
やがて、ガコンという軽い衝撃と共にゆっくりとドアが開く。
パァッと光が差し込んで来たせいで、眩しくて他の五人の姿が良く見えない。
いつの間にか、絵里とも手を離してしまっていた。
- 23 名前:プロローグ 投稿日:2004/01/12(月) 15:22
- 「ねぇ、れいな?」
どこからか聞こえる絵里の声。何だか頭がぼーっとして来た。
「次に会う時にはさ…」
絵里の声がだんだんと遠ざって行く。
「れいなと、何でも話せる親友になってるといいな。」
「うん…。」
私の意識は光に吸い込まれるように、ここで途切れた―
- 24 名前:風紀 投稿日:2004/01/12(月) 15:39
- ようやくプロローグが終わりました☆
次から、一章をどんどん更新して行きます!
御礼のレスはその時にしたいと思います。
では、また数時間後に。
从 ´ ヮ`)☆ 作者さぁ、昨日も同じよーな事言ってなかった?
作者(・_・;)えっ…。覚えてたんだ。
从*・ 。.・从 絵里とれいなは出たのに、私は〜…?
作者(^_^)そのうち出るよv
- 25 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 16:44
- 「田中れいなです。よろしく。」
朝のHRの時に担任に紹介されて、私は適当に自己紹介をした。
―あー…めんどくせー。
はっきり言って自己紹介とかは嫌いだ。でも何より一番嫌いなのは
目の前に並ぶ好奇の目。
この学校は中高一貫の私立とはいえ、転校生とかは別に珍しくないと聞いていたけど
自分をじーっと見られるのはそんなに気持ちの良いものじゃない。
「じゃあ、田中さんの席はそこの空いてる所ね。」
担任が指差した場所は、教室の一番隅っこの窓際の席。
そこに行く途中も皆が振り返り自分を見る。
―何なんだよお前ら。私は動物園のサルじゃないっつーの。
心の中で毒づきながらカバンをドサッと下ろした。周りの子達が
「田中さん、よろしくね。」
などと言いながら勝手に自己紹介を始める。
「…よろしく。」
―HR中だろ?前向いてろよ…。
自分でもかなり投げやりな気持ちになっているのが分かった。
転校なんて出来ればしたくなかったのだ。
でもまぁ、あんな事しちゃったらしょうがないか。
- 26 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 16:46
- 実は私はつい一ヶ月前に退院したばっかりの身体なのだ。
別に病気をしていたわけではない。気が付いたらベッドの上で点滴に繋がれていた。
『自殺未遂』
それが原因らしいけれど、私には全く覚えがない。
でも、手首にある大きな切り傷をみせられれば
「あぁ、そうなんだ。」
と言わざるを得ない状態だった。にしても、ホントに記憶がない。
確かに、家での状態を考えれば消えたくもなると思うけど、自分が本当に
実行してしまったというのにはかなり驚いた。最後にある記憶は
義理の母に何回か殴られて「死ね」と言われた所だろうか。
けど、そんなのはしょっちゅうだったし、父親が再婚した時から
あの元ヤンとしか思えない新しい母親の事は気にも留めていなかったハズだ。
「死ね」といわれたのがショックでそんな行動に出たとはどうも考えられない。
- 27 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 16:50
- とにかく、そんな事が原因でわざわざ福岡から、親戚のいない東京に
引っ越して来たのだ。それにしても、何であの母親が私を中高一貫の女子校に
転校させたのかは分からない。
これは一生かかっても知る事の出来ない謎のような気がする。
気が付くと既にHRは終わり、一時間目の担当教師が早々と授業の準備を進めていた。
―あ…私、教科書まだ届いてないんだっけ…。
誰かに見せてもらおうかなと思い、隣の子に声をかけようとした時
私はある事に気が付いた。
―そう言えばさっき、この子だけ何も言ってこなかったなぁ…。
転校生には興味ないタイプ?まぁ、そっちの方が私的にはありがたいんだけどね。
よく見ればその子はずっと俯いたまま、じっと机の一点を見つめているようだ。
しかも、開いたノートには「死ね」「学校来んな」「消えろ」などの文字が
マジックで書かれている。前の学校でも毎年目にした言葉。
- 28 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 16:54
- ―あぁ…イジメか。マジ低レベル。
私は正直、関わりたくなかった。
こういう低レベルの事をする奴らは、何も知らない転校生がいじめられっコに
話しかけたのを見ると、次の休み時間には必ずと言って良いほど
「アイツと喋んない方が良いよ」
という決まり文句を言ってくる。
けど、教科書を見ない限り授業の進度が分からない。
前の学校では「不良」の名で通っていたけれど、転校初日から授業をサボる気には
どうもなれなかった。
- 29 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 17:11
- 「ねぇ…。教科書見せてくれない?」
「えっ…?」
驚いたように顔を上げた少女を見た時、私は一瞬、変な違和感にとらわれた。
―このコ…。前にどっかであった事あるような気が…?
でも、東京に知り合いはいない。福岡の友達が引っ越して行った場所も
「東京」という子はいなかったハズだ。
「私、まだ教科書届いてないんだ。だからさ…」
「あ…うん…でも…」
そう言いながら開かれた教科書にも、ノートと同じように
色々な悪口雑言が書かれていた。
「…。」
気まずそうに私の顔を見る少女。私は
「ありがと」
と言って机を近づける。
数分後、数人から同じような内容の手紙が回ってきた。
- 30 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 17:14
- 『亀井と話さない方が良いよ。
あとね、アイツ、ホントは学年一個上なんだってさ。』
『亀井さんに関わると、松浦さん達が怒るよ。
田中さんがターゲットになっちゃうよ?』
―だから何だって言うんだよ。イジメの原因はそれか?
「くだらねー…。」
私はそう呟いて、全部の手紙を丁度後ろにあったゴミ箱に投げ捨てた。
手紙を回してきた本人達は「信じられない」と言う顔をして私を見ている。
- 31 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 17:30
- 「ん〜?どーしたお前ら。前向けよ〜。」
呑気な教師の声で私を見ていた目は一斉に黒板に戻った。私はノートを少し破り
『なぁ…お前、松浦とか言う奴らにいじめられてんの?松浦ってどこ?』
と書いて、折らずに少女に渡した。紙を見た少女はかなり驚いた様子だったけど
すぐに「うん」と頷いて俯いた。
しばらくして、何かを書き込むと私の方に紙を返してきた。
『田中さんの列の前から二番目の席』
私は消しゴムを取るフリをしてそいつを見ようとした。
けれど、どう頑張っても見る事が出来ない。
『一つ上の学年ってホント?』
そう書いて少女に返そうとした時、私は自分のやってる事に疑問を持った。
―何で私、この子の事を気にしてんだろう。
この数年間、他人と関わる事を極力避けてきた私にとって
自分の行動は理解できなかった。
まるで、誰かに動かされているようなそんな感覚…。
- 32 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 17:40
- 「あの…」
少女の声ではっと我に返る。
「え?」
少女は私と目が合うと、ちょっと戸惑ったように俯いて
「ありがとう」
と小さな声で言った。私はとっさに
「いや、別に…お礼を言われるような事したわけじゃないんだけど…。」
私は続けて、絶対に本心で口にする事はないだろうと思っていた言葉を発した。
「これから…よろしく。」
少女は少し困ったような、それでいて嬉しそうな表情をして
「こちらこそ…よろしくね。」
―これが、私と絵里の出会いだった。
- 33 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/12(月) 17:47
- あー、やっと本編に入りました!
今回は田中&亀井編で書いてみましたが、いかがだったでしょうか?
次回は後藤&吉澤編で行きたいと思います。
なんせ早く六人が出会ってくれないと、話が進まないもので…w
>>16 名無し飼育様
そう言って頂けると嬉しいです!
六期は道重さんが中々出てこないのですが、まぁその内…w
>>17 ミッチー様
市井さんはこれからどんどん出てくるでしょう。
何気に彼女は重要な役なのですよ(多分…)
- 34 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/12(月) 20:59
- 更新お疲れ様デス。。。
そうですか!市井ちゃんは重要な役ですか!
それはよかった!
この話結構はまっちゃいましたぁ。
頑張ってくださいネ!
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 22:34
- うおお!この二人の今後がとても気になります…
田中さん、亀井を守ってあげてくれ〜!!
- 36 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 22:58
- 「だ・か・ら!今日バスケ部がコート使う事なんて聞いてないって!」
「こっちだって、バレー部がここ使うなんて聞いてないよ?」
言い争いをしているのはバスケ部キャプテンの後藤真希と
バレー部キャプテンの吉澤ひとみ。どちらも、生徒会公認の
「かっこいい&かわいい人アンケート」で一位二位を争う人気者だ。
その勢いはファンクラブが出来ていて、しかもそのクラブが正式に部活と
認められているほど。部費などもきちんと出ているらしいから驚きだ。
一体何に使うのか…。
けれど、当の本人達は一度も同じクラスになったことがないせいか
仲が良いわけでもないので、今回のように二人が喋っているというのは
ケンカとはいえかなりレアな現場なのである。
現に大勢の生徒たちが(部外者だ)
ケータイヤカメラを片手にキャーキャーと見物している。
- 37 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:01
- ―ウチ、何でこんなにムキになってるんだろう…。
っつーか、部外者には出て行ってもらいたいなぁ…。
話は十五分ほど前に遡る。
大会が近い事もあって、ウチはHRが終わると挨拶もそこそこに教室を飛び出した。
―今日は出場メンバーの強化練習しなきゃなぁ…。
そんな事を考えながら部室で体操着に着替え、いざ体育館に行ってみると
何人かの生徒が何やら言い争いをしてる様子。
―あれは…ウチの小川と…あっちは辻か?あのユニフォームは…バスケ部?
えっと…加護と紺野だっけ?
「今日はウチらがここ使うねん!真希さんがゆーとったんや!」
「だから聞いてないって言ってるのれす!ほら、まこっちゃんも何か言うのれす!」
「え…?」
どうやら、言い合いをしてるのは加護と辻だけで
小川と紺野はちょっと困り果てた様子。
- 38 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:05
- 「何してんだよ。お前ら校内で有名な仲良しコンビじゃなかったのか?」
ぼーっと見ていても始まらないので、とにかくウチは二人の間に割って入った。
辻がハッとしたように
「よっすぃ〜!聞いてよ。バスケ部が今日ここ使うんだって。」
―はい?
「え?バスケ部?だっていつも使ってないし、ウチは何も言われてないよ?」
思わず返した言葉に、辻は勝ち誇った顔をして
「ホラ。だから、あいぼん達は帰るのれす。」
「…真希さんが、顧問には了解取ったから、先にアップしててってゆーたんや…。」
―顧問って…ウチの??てか、真希って後藤真希か…。
ご本人は、まだ来てないワケね。
ウチは部活開始時間をとっくに過ぎてるのに姿を見せないバスケ部キャプテンに
かなり苛ついていた。
―あと五分待って来なかったら、強制的にバスケ部は追い出してやろう。
そう思ったその時
- 39 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:07
- 「亜依、あさ美、何してんの?」
入り口の方で声が聞こえた。振り返るとそこにはジャージ姿の後藤真希が。
「あっ、真希さん。実は…」
紺野が今までの会話を手短に説明する。後藤はウチの方を見て
「吉澤さん…だよね。今日はバスケ部が使って良いって
そっちの顧問から了解もらってるんだけど?バレー部がここ使うなんて
一言も言ってなかったし。」
「私は何も聞いてないよ。」
…こうしてようやく話は最初に戻る。
- 40 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:20
- いつの間にかバレー&バスケ部員が全員集まってきてウチと後藤を取り囲んでいる。
ギャラリーにはウチらの言い争いを聞きつけたのか生徒がずらっと並んでいた。
「とにかくさ〜、こっちは顧問に了解とってあるんだから
使って良いわけでしょ?」
後藤がうんざりしたように言った。
こっちだって、早く練習を始めたい。
「おいおい…久々に遊びに来てみれば、なにケンカしてんだ?」
お互い無言になって、一歩も引く様子はなかった時、その訪問者は現れた。
声のした方向を見ると
―カッコいい…。
そう、ほんとにカッコいい女の人が立っていた。
肩に下げているのは…ギターだろうか?
「姉ちゃん!」
加護が嬉しそうに叫ぶ。
- 41 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:24
- 後藤が「えっ?」という顔をして
「いちーちゃ…市井先輩?」
驚いたように訪問者と加護を見比べる後藤。加護は「えへ」と笑いながら
「真希さん、ウチの姉ちゃんや。
苗字がちゃうのは親が離婚した時に、引き取られたのが別々の親やったからやで。」
笑顔のまま説明をする加護。
―それって、笑って言える話なのかな…?
ウチにも姉ちゃんが一人いた。
何年か前に交通事故で死んじゃったけど、姉ちゃんの事を未だに
笑いながら他人に喋る事は出来ない。
- 42 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:30
- 「で、何でケンカしてんの?見たところは陣地争い?」
―スルドイ…。
加護が頷いて、今までの状況説明をした。
話し終わると市井さん(勝手にそう呼ぶ事にした)はかなり呆れた様子で
「…なぁ、コート半分ずつ使おうって事は出来ないのか?」
「「あ…」」
後藤とハモった。よく考えれば…
いや、それ以前に一番最初に気付くべきだったのだろう。
- 43 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/13(火) 23:36
- 「まったく…お前らキャプテンだろ?」
市井さんの言葉に二人揃って顔を赤くする。
「ごめん…。」
後藤が頭を下げた。ウチも慌てて
「こっちこそ…ホント、バカだったよ。ごめん。」
と頭を下げる。市井さんは笑顔になって
「よし、これで仲直りだな。」
ウチと後藤はどちらからともなく手を差し出し、硬く握手を交わした。
―ウチと後藤が「よっすぃ〜」「ごっちん」と呼び合える
仲になるのは、その事件の後からだった。
- 44 名前:風紀 投稿日:2004/01/13(火) 23:38
- 本日の更新終了です☆
お礼のレスは明日の更新時に…。
明日は石川&市井編の予定です。
お楽しみに♪
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/13(火) 23:40
- 更新早いのに内容がおもしろくて素晴らしいです!
れなえりの行方が気になります☆
- 46 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 22:58
- 「あ〜この辺も変わってないなぁ…。」
アタシはキョロキョロと辺りを見渡しながら久しぶりの道を歩いた。
「なんなぁ、一年ちょっとじゃあそんな変わるもんでもないで〜?」
さっきからずっと嬉しそうにアタシにくっついて歩いているのは妹の亜依。
母親の影響か、小さい頃から大阪弁を喋っていた亜依は、学校でからかわれても
「これはウチのチャームポイントやねん!」と言い張って
決して標準語に直そうとはしない。まぁ、そこが可愛いんだけどね。
「あはは、それもそうか。」
- 47 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:02
- あれから…仲直りした後藤と吉澤はすっかり打ち解けた様子で
休憩中も仲良く喋っていた。
アタシはというと、最初は遊びに来たついでにちょっと
亜依と後藤を見に来ただけのつもりだったけれどバレーもバスケも
見ていて中々面白かったので結局、部活終了まで練習を見学していたのだ。
「…にしても亜依、後藤っていつもあんな感じなの?」
アタシの頭に、部活中の後藤の姿が浮かんでくる。
後藤はどこか面倒くさそうにしていて、ほとんど練習をしていなかったのに
試合になるとまるで別人になったようだった。
「真希さん?うん。部活中は試合にしか出てないよ。けどな…」
亜依が少し顔を赤くしてアタシの方を見た。
「めっちゃカッコいいねん!真希さんって裏ですっごい努力してるねんで。
今日だって、部活終わった後、一人で自主練してたやろ?」
そう言えば、帰りがけに体育館の横を通った時、ボールをつく音が聞こえてた気がする。
あれって後藤だったんだ。ちょっと意外…。
- 48 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:03
- 「何かなぁ、『憧れの人がいるんだ』って言っとった。」
憧れの人…か。アイツにもそういう人がいるんだなぁ…。
「亜依にはいる?憧れの人って。」
亜依は当然!というように笑顔で頷いた。
まぁ、聞かなくても誰だかわかるけどね。
「…それより姉ちゃん。何で、姉ちゃんと真希さんが知り合いなん?」
あぁそれか。まぁ、亜依は知らなくても当然なんだろうけどね。
「んー、あのね…」
亜依の方を向いて後藤との事を説明しようとした、その時―
- 49 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:06
- 「あの〜…」
突然誰かに話しかけられた。
―ゾクッ
同時にアタシの体中に鳥肌が立った。
何故か?原因はハッキリしている。
アタシと亜依は足を止め「はい?」と振り返った。
「あの…朝比奈町二丁目ってどうやって行けばいいんですか?」
そう、これが鳥肌の源だ。
アニメの少女みたいなこの声に、アタシは何て言うか…
生理的嫌悪感みたいなものを感じた。
前にもどこかで聴いたことあって、それをかなり嫌悪していた記憶がある。
でも、どこでだかは思い出せない。
見ると亜依も「耳障りな声やな〜…」と言う顔をしている。
にしても可愛い。それを考えるとあの声も許せなくはない。
ちょっと色黒だけど。…じゃなくて。質問されているのだから
黙りこくっていては失礼だろう。
- 50 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:08
- 「え…朝比奈二丁目?亜依、ウチって何丁目だっけ?」
亜依は「はぁ?」という顔をして
「姉ちゃん、本気でボケてんのか?ウチは三丁目やで。
二丁目は道路挟んで反対側や。」
「…だそうですので、途中まで一緒に行きましょう。」
少女は「すみません」と頭を下げた。三人で並んで歩く。
しばらくして、突然亜依が「ヤベっ!」と叫んで立ち止まった。
つられてアタシと少女も立ち止まる。
「どうしたの?」
「ユニフォーム、部室に置きっぱなしにして来てもーた。」
亜依はアタシにカバンをドサッと預けると(投げんなよっ!しかも重っ。)
「姉ちゃん、先に帰っててな。ここまで来て迷子になる心配はないやろ?
ウチ、ちょっと学校戻るわ。」
と言ってアタシが返事をする前にはもう走り出してしまっていた。
- 51 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:10
- 「…可愛い妹さんですね。」
隣を見ると、少女がクスっと笑って羨ましそうに言った。
「まぁな。たまに生意気だけど…。先行こっか。」
何となく照れてしまって、アタシは先に歩き始める。
確かにここまで来れば迷う心配はない。
何て言ったってここからウチが見えている。ってことは二丁目って言うのは…。
「あ、ここからですよ。二丁目って。」
『朝比奈町三丁目』と書かれた電柱の反対側の電柱は
『朝比奈町二丁目』となっている。
「あ、ありがとうございます。あの…もう一つ聞いてもいいですか?」
「え?何?」
「吉澤さんのお宅ってこの辺ですか?」
吉澤?吉澤ってバレー部の?まさかなぁ…。
「お子さん、ひとみちゃんっていうんですけど…。ご存じないですか?」
ひとみ…ひとみ…吉澤ひとみ…あれ?
吉澤の下の名前もひとみだったような…。
- 52 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:23
- 「そーいえば、君、名前は?」
「え…えと…石川梨華です。」
石川さん…ね。え?石川?あれ…何だろう、この感じ…。
「姉ちゃん!」
後ろからタックルされてアタシは危なく前に倒れるところだった。
と同時に違和感もどっかへ行ってしまった。
「痛ってー…って亜依?!あんた、えらい速くない?」
そこにはユニフォームを抱えてニコニコしている亜依がいた。
「さっき、そこの交差点の所で真希さんと吉澤先輩に会ってん。
真希さん、ウチのユニフォーム持ってきてくれてたん。
そやから、それ受け取って方向が同じだっていう吉澤先輩と一緒に歩いてたら
姉ちゃん達が見えたんや。」
ふーん…。なるほどね。よし、ここは姉としてお礼しておくか。
- 53 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:24
- 「吉澤?ありがとね。こんなバカと一緒に帰ってきてもらっちゃって。」
「バカって何やねん!!」
吉澤は「いえ」と頭を下げてから
「ウチこそ、ごっちんと変な陣地争いして…。ご迷惑かけてすみません。」
なかなか礼儀正しい子だ。後藤じゃ、まずありえない。
「あれっ…?」
顔を上げた吉澤はアタシの隣の少女を見て
「梨華ちゃん…?」
「あ、やっぱりひとみちゃんだったんだ。よかった〜…。」
吉澤は何故、ここに彼女がいるのかと不思議そうな顔をしていた。
- 54 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/14(水) 23:28
- 何か中途半端ですが更新終了です☆
石川&市井編は他の人も混ざってるんで長いのです。
これが終わったら亀井&田中に戻したいと思いますけど、どーなることやら…。
お気づきの方もいるかもしれませんが、オリメンが一人も出てません。
でも、忘れているわけではないですよ!
これから出てくるんで気長に待っていてくださいw
- 55 名前:風紀 投稿日:2004/01/14(水) 23:37
- >>34 ミッチー様
市井さんの謎(?)は今回の話の中に
ちょっとヒントが出てたのですが、分かりましたでしょうか?
>>35
>>45 名無し飼育様
亀井さんと田中さん、このまま仲良しでいられると良いですね〜。
松浦さんがどう出るのか…。
明日は、石川&市井編の続きです。そう言えば、後藤さんと市井さんが
知り合いの理由って結局何だったのかな…(ってオイ!)
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 00:41
- オリメンまで出るとは…勢ぞろいですね!
6期ヲタなんで亀井&田中編楽しみにしてます☆
- 57 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/15(木) 01:13
- 更新お疲れ様デス。。。
いっきにたくさんのメンバーが出てきましたね〜。
市井ちゃんは何か覚えてる感じですね。
後藤と市井ちゃんが何故知り合いなのか気になります(笑)
- 58 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 16:52
- 「何だよ吉澤。石川さんと知り合いか?」
やはり、石川さんの探していたのは吉澤の家か…。
「あ、はい。梨華ちゃんはウチの新しい家庭教師なんですよ。」
ほ〜…。勉強熱心な。後藤にも見習わせたい…。
アイツ未だに授業サボって屋上で寝てんのかな。後で亜依に聞いてみよう。
「そっか。何か道に迷ってて、吉澤の家探してたみたいだからさ。
じゃあ、これで一件落着だな。」
石川さんがアタシの方を向いた。吉澤もそれに倣う。
「どうもすいませんでした。」
「先輩、ありがとうございました。」
- 59 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 16:55
- 吉澤と石川さんが仲良く並んで歩いて行くのを見送りながら
亜依がアタシの服を引っ張り
「なぁ、姉ちゃん。あの二人絶対に教師と生徒って間柄だけやないで〜。」
こういう所には妙に勘が鋭い亜依。
言われてみればそんな感じもしなくない。
「姉ちゃん、昔から鈍かったから気付かなかったんやろ?
全く、そんなんだから真希さんの気持ちにいつまで経っても気付かないで…。」
アタシは亜依の頭をポカッと殴り
「うるさいよっ!」
と言いながら、持たされていた亜依のカバンを投げ返した。
「何すんねん。危ないやん!」
「亜依だってさっき投げたでしょ?」
亜依が返事に詰まったのを見て私は先に歩き出した。
亜依は「姉ちゃん鬼や…。」「こんな姉ちゃん嫌いやで。」とか
ぶつぶつ言いながらもぴったりとくっついて歩いている。
- 60 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 17:10
- 家に着くと亜依は「制服着替えてくる。開けんとってな〜。」と言いながら
二階へ上がって行った。
アタシはリビングのソファに寝っ転がって、手近にあった雑誌を開く。
「紗耶香?ご飯できたから食べちゃって。」
父親の方に行ったアタシは母さんに「いつでもおいで」と言われている。
だから今日みたいにぶらっと遊びに来た時はこうやって夕食を食べて泊まっていく。
母さんは「紗耶香が来てくれると、亜依がすっごく嬉しそうな顔してるから
また来てやって。」と言っているけど、母さんだって嬉しそうだし
第一アタシ自身、ここに来るのがすごく楽しみになっていた。
けど、最近まで病院にいたりしていたので、遊びにきたのは一年ちょっとぶりだった。
一年見ない間に亜依は大きくなっていた。前回会った時は色々な人に
小学生に間違えられていたけど、もうそれもないだろう。
- 61 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 17:34
- 「いただきます。」
久々に食べる母さんの料理はすごくおいしかった。
亜依も降りてきて隣に座って食べ始める。
食欲は、前と変わっていないようだ。いや、増えているかも…。
そーいえばさっき、後藤の事聞こうとしてたんだっけ。
「なぁ、亜依?」
「あっ、そうや姉ちゃん。」
アタシの言葉を遮って亜依は
「ウチの学校な。今日、転校生が来たんやで。しかも、あれは元ヤンと見た。」
何となく転校生の話に興味が沸いたのでアタシは自分の質問を後にして
先に亜依の話を聞くことにした。
「ふーん。高校の方?」
「中学と両方。姉妹らしいねんけど、苗字違うんや。
でな、妹の方が…ウチのクラスの愛ちゃんの妹と同じクラス。
お姉さんの方は真希さんと同じクラスやって言うとった。」
へぇ…。にしても亜依、何気に詳しくないか?
「愛ちゃんの妹な、復学して一個下の学年入ったんやけど、クラスでいじめられてるらしいんや。
それで、いつも休み時間とかに愛ちゃん、妹心配して見に行ってたんやけど
今日は知らない子と一緒にいたって言ってたから、ちょっと探り入れたら
転校生だったってわけ。で、お姉さんが高校にいるって聞いたから
真希さんに聞いてみたら同じクラスだったんや。」
- 62 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 17:53
- ―愛ちゃんって…あぁ…あの子か。
アタシの中に福井弁で喋る少女の姿が浮かぶ。
歌が上手いと校内で有名なんだと、前に遊びに来た時にたまたまウチにいた愛ちゃんの事を
亜依に教えてもらった事がある。あの子に妹なんていたんだ。
「妹、絵里ちゃんっていうんやけどな。大人しくていい子やで。」
復学か。大変だろうなぁ…。
そこまで考えた時、アタシの頭の中で何かが引っかかった気がした。
石川さんに出会ったときと同じ感覚…。
でも、実はその前にも似たような感覚になった事、あったんだよね。
それは後藤に会った時。でも、その時は大して気にも止めなかった。
次が吉澤に会った時。その時、私の中には吉澤=無愛想というイメージがあった。
喋った事もないのに何でだろうなぁとは思っていたけど…。
―絵里…絵里…苗字は亀井だっけ?何だろう。
転校生の名前聞いたら何かわかるかな…。
まさかな、と思いつつも一応聞いてみる。
- 63 名前:1.記憶のない再会 投稿日:2004/01/15(木) 17:56
- 「亜依?その転校生の子の名前って何ていうの?」
「んー…お姉さんが確か…藤本美貴?で、妹が、田中…れいなだったかな?」
―藤本美貴…田中れいな…あっ!!
この瞬間、私の頭の中で今までの違和感が一気に解けた。
後藤真希、石川梨華、吉澤ひとみ、亀井絵里、田中れいな、そしてアタシ。
ウチラは全員一度出会ったことがある。
天国と地獄の間とかっていう所で…。
「姉ちゃん?どうしたんや。姉ちゃん?」
亜依がアタシを覗き込んでしきりに尋ねてくる。
けれど、アタシは衝撃のあまり何も答える事ができなかった。
―あそこでの記憶って、忘れたんじゃなかったの…?
- 64 名前:風紀 投稿日:2004/01/15(木) 18:06
- 更新終了です☆
ついでにこれで一章は終わりです!
>>56 名無し飼育様
次回から亀井&田中編に戻ります!
次は松浦さんも出そうかなぁと…。
ついでに藤本さんも登場させてみたり…。
>>57 ミッチー様
後藤さんと市井さんの出会ったエピソードは
だんだん明らかになっていきます!
市井さんの病院暮らしがキーワードだったりして…w
次回から二章に入るので、一週間くらい休憩しようと思います。
その間に二章も書き上げて、またバンバン更新するつもりなので
それまで気長にお待ちください☆
- 65 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/15(木) 22:14
- 更新お疲れ様デス。。。
もしかして、いちごまだったりするのかな?
だったら嬉しいな…
一週間位全然待ちますよ!
作者さんのペースで頑張って下さい。。。
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 23:08
- 変わった内容でいいですね〜!
次回の田中&亀井編楽しみにしています!
- 67 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 22:57
- 「今日の放課後、田中さん1人で屋上来てくれないかな?」
朝。学校に着いたと同時に誰かが話しかけて来た。
絵里以外のクラスメイトと殆ど口を利いていない私は
突然目の前に現れた人物が誰だか分からずに
「…誰?」
少女はいかにも作り物っぽい笑顔で
「私、新垣里沙。それで、さっきの話の返事は?」
「…誰が呼んだ?お前じゃないだろ?」
わざわざこんな事聞く必要なんてどこにもないと思った。
転校三日目。
絵里との関わり合いを親切にも警告してくれる手紙を全て無視して来た私。
そろそろボスが出てきてもおかしくないだろう。
ちなみに絵里は病院に行くとかで三時間目くらいから来るらしく今はいない。
- 68 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:00
- 「ん〜亜弥ちゃんが。」
―やっぱりな。
新垣はちょっとイライラした感じで
「だから、YESなのNOなの?ちなみにNOって答えた場合
亀井さんの身の安全は保障しないよ?」
―サスペンスの見すぎか?でも、松浦って何やりだすか全く分かんねーからな…
面倒な事は嫌だけれど、絵里に何かあるのはもっと嫌だった。
私は「NO」と答えたい気持ちを必死で抑えて
「…YES」
新垣はニヤッと笑い
「じゃぁ、そういう事で。HR終わったらすぐに来てね。」
と言い残すと自分の席に…違った。松浦の席に行き
数人で額を寄せ合って何かを相談し始めた。
(何か…くっだらねーなぁオイ…。)
- 69 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:02
- その後、私は屋上から絵里が来るのを待っていた。もちろん授業はサボり。
屋上からなら学校の周りまで見えるから絵里が歩いているのが分かるはずだった。
(私…なんでこんなに絵里の事気にしてるんだろう。)
絵里とであった日から(といってもまだ三日)ずっと感じるこの想い。
別にイジメが許せないとかとは全然違う。
自分でもよく分からないけれど絵里を見ていると自然と
『守ってあげたい』と思ってしまうのだ。
そんな事を考えていると、やがて校庭を横切る一つの影が見えて私は教室へと戻った。
- 70 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:03
- 本日最後の授業は数学。
正直一番出たくない教科だったんだけど絵里に無理矢理、教室へ連れてこられたのだ。
はっきり言って『〜の定理』とかには全く興味のない私は
空に浮かぶ雲をぼーっと見て四十五分間を過ごしていた。
キーンコーンカーンコーン
普段は耳障りでしょうがないこのチャイムも今日に限って神様の声のように感じる。
担任がやってきてHRを済ますと絵里が少し申し訳なさそうに
「あのね…今日の放課後、松浦さん達に呼ばれてるんだ…。だから…」
「…どこに呼び出されたの?」
絵里の言葉を最後まで聞かずに私は訪ねた。
「えっ…西館の裏…。」
私には何となくだけど、松浦達が考えている事が分かった。
きっと、絵里を呼び出して何かやってから私の所に人質として連れてくるんだろう。
私に対する用件は…「自分の言う事を聞けって」所かな…?
- 71 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:06
- 「ふーん。分かった。じゃあ、私は屋上でマッタリして待ってるよ。」
私はそう言って教室を出ると屋上に向かった。
『絵里に手出しはさせない』
それだけがその時の私の中に存在していた思いだった。
もちろん、屋上で待っているつもりは全くなかった。
『屋上から様子を見て危なくなったら助けに行く』
私はそういう作戦を立てた…
- 72 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:08
- 最初に口火を切ったのは松浦さんだった。
「君さぁ、最近田中さんと仲良くなったらって調子乗ってない?」
呼び出された時からこんなことだろうとは薄々気が付いていた。
「べ…別に…」
分かってはいたけど、いざ何か言われると怖くて言い返すことができない。
―れいな…助けて…。
私は屋上のフェンスを見つめてそうココロの中で叫んだ。
もちろん、返事があるわけがない。
「亀井さんのさぁ、そーゆー所、ムカつくんだよね。殴っちゃっていい?」
松浦さん達が一歩ずつ近づいてくる。
私は壁にぴったりと張り付いているので逃げる所がなかった。
―どうしよう…。
そう思った瞬間、一人が私の足を思いっきり蹴っ飛ばした。
「痛っ…。」
- 73 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:09
- あまりの痛さにしゃがんでしまった私をニヤニヤと
見つめながら松浦さんは
「やっちゃいな。ゲーム、スタート!」
その声と共に背中を蹴られ、前に倒れたと同時にお腹を蹴られた。
「…っ…。」
一瞬、ものすごく気持ちが悪くなったけど、何とか堪える事に成功した。
―れいな…。助けて…。
そう思った時だった。突然目の前を誰かが横切った。
それもかなりのスピードで…。
- 74 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:10
- 「てめーら、いい加減にしろよ?!」
という声と同時に三人が地面に倒れこんだ。
他の人は蹴るのを止め、倒れこんだ三人を凝視している。
「絵里…。大丈夫?」
声のした方に振り向くと、そこには息を切らしたれいなが立っていた。
―え…今、三人いっぺんに倒したのってれいな?
「松浦さん?アンタ、いい加減にしてくれない?」
今まで聞いたこともないようなれいなの低く冷めた声。
その声に私はちょっとした恐怖を覚えた。松浦さんはフッと笑い
「田中さんが亀井さんと関わるのを止めたら考えてあげてもいいわよ?」
- 75 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:12
- れいなは一瞬考え込んだようだったけど、
「んー、ムリ。だって私、絵里の事守るって決めたから。」
とサラッと言った。松浦さんはちょっと驚いたような顔をして
「面白い事を言う人ね。あややに逆らうって事がどういう事か分かってる?」
「分かんねーな。つーか、分かりたくもねー。」
そう即答するれいなを松浦さんは一瞥すると他の人たちに向かって
「帰るよ。」
と言って校舎へと入って行ってしまった。
れいなは校舎を見ながら「ふぅ…」とため息をついて
「絵里、ごめん。来るの遅れて…。」
と言いって私の側にしゃがみ込み、私の腕や足にできた痣を
そっと撫でながら、もう一度
「ごめん…。ごめんね…。」
と言って私をギュッと抱きしめてくれた。
- 76 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:16
- 「れ…いな…?」
私はいつもクールなれいなが何だか弱々しく感じて少し不安になった。
「どうしたの?」
れいなは何も言わずに首を横に振った。
しばらくして顔を上げたれいなは私と目が合うとまた俯いてしまった。
―れいな…今、泣いてた?何で…。
私の心配そうな視線に気が付いたのか、れいなは再び顔を上げてそのまま空を見上げた。
「…綺麗だね。」
その言葉につられて私も空を見る。
オレンジ色に染まった空には同じようにオレンジ色になった雲が
ゆっくりと同じ方向に流れている。
「…明日も晴れるかなぁ?」
どこか寂しそうなれいなに私は
「晴れるよ、きっと…。」
と言う事しか出来なかった―。
私は今日、れいなのココロの闇を一瞬だけ見た気がした。
れいなに何があったのかは分からないけれど
『この子は守る』
そう思った。
何故か?それは多分、私がれいなに笑って欲しかったから…
一度も見ていない笑顔を見てみたかったから
- 77 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:19
- ガチャッ
ようやく長い学校生活から開放されて家に着いた。
どうせ「ただいま」と言っても返事が返ってくる家庭じゃないから
そのままに階へ上がり自分の部屋に入る。いつも同じ行動。
これは福岡にいるときから変わらない習慣だった。
制服を着替え終わり、紅茶でも淹れようと階段を降りていた時
「ただいま。」
と玄関から声がして姉が帰ってきた。
…まぁ、姉と言っても義理の姉だけど。
- 78 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:21
- 「あれ、アンタ帰ってたんだ。」
「…」
義姉の名前は藤本美貴。父さんの再婚相手の連れ子だ。
昔の私は、新しい母親と姉の登場に凄く喜んでいたらしいけど
私にはその時の記憶がない。
ただ、再婚相手が自分の事を何かと嫌っていたという事を
子供ながらに感じていた事は覚えている。
嫌われている事をはっきりと自覚したのは父さんが死んでからだった。
中学に入ったばっかりだった私を再婚相手は今まで以上に邪魔者扱いして
不良化していく義姉に頭を悩ませていた。
そして再婚相手のイラつきは私の全身にできた無数の傷や痣となって現れる。
それは一年ちょっと経った今も変わらない。
- 79 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:25
- だからなのかもしれない。
今日のように、誰かが暴力をされている所を見ると
自分を忘れたように相手に殴りかかってしまうのは。
あの時…松浦達が帰った後、私は一気に力が抜けた。
絵里を守るとか言っておきながら傷を負わせてしまった事を凄く後悔した。
我を忘れた自分が怖かった。
- 80 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/01/18(日) 23:32
- 「何ボーっと立ってんの。邪魔なんだけど。」
そしてこの義姉。この一々突っかかったような言動しかしてこない
所が私の家での苛立ちの原因の一つ。
「そこ通りたいんだけど。アンタがどいてくれない?」
学校では無視するような発言もまともに返してしまう。
私の返事も相当癪に障る返事だと思っている。
義姉は私を睨みつけ
「あんたはホントに目障りだよね。」
と言い残すと二階へと上がって行った。
―私…、一回も「お姉ちゃん」って言った事ないんだっけ。
別に嫌ってるわけじゃないんだけどな…。
- 81 名前:風紀 投稿日:2004/01/18(日) 23:34
- 更新終了です!
レスのお礼はまた明日にします。
今日は何故か極度に眠いので…zzz。
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 21:52
- れいなの過去…
なんか泣けます
- 83 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/20(火) 02:15
- 更新お疲れ様デス。。。
田中&藤本が仲良くなる日は来るのかな…?
再婚相手ひどいっス!
何かしんみり…
- 84 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/01/20(火) 22:56
- どうも初めまして。
空板で小説を書いている「聖なる竜騎士」と言う者です。
面白そうなタイトルだったので読ませて頂きました。
面白いのはタイトルだけではなく、内容も何か読み手を魅了する物だと思います。
田中の過去も、なにかしんみりします。勿論亀井含む後藤や吉澤も。
(なんかこの話、離婚が暗い話多いですね。またそこが良いと思います。)
なにはともあれ、これからの更新楽しみにしています。
(長くなって申し訳ないです。)
- 85 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/02/02(月) 16:19
- 義妹が家を出ていった後、私はドアを見つめながら
「はぁ…。」
とため息をついた。
義妹と暮らし始めて数年。考えてみれば一度も「れいな」と呼んだ事が
無い気がする。いや、小さい頃にはあったかもしれないけど…。
少なくとも義妹が小学校の四年生くらいになった頃からは一度も呼ばれていない。
と言うより、それくらいからマトモに話をしていない。
- 86 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/02/02(月) 16:31
- 原因は、私にあると思っていた。
何となく「親」と言う存在がウザったくなって来ていた中学時代。
「不良」への道を進んでいた私に母親が頭を抱えていた事は分かっていた。
そして、そのイライラの矛先を義妹に向けていた事も――
義妹が中学へ入った頃、義妹の実父が死んだ。
それと同時に母親の行動はエスカレートして、たまに見る義妹の腕などに
傷が出来ていた事を知った時、私は何もしてあげられなかった。
『何を今さら…。あの子に嫌われてるかもしれないのに。』
って思うと何も言えなかった。
- 87 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/02/02(月) 16:38
- 義妹は中学に入ってしばらくすると、完璧に
「不良」のレッテルを貼られる存在になっていた。授業はサボるし、たまに
顔を見せたかと思えばすぐにケンカ。夜遊びetc…
私以上の不良ぶりだった。
けれど、一度、義妹のクラスメートから
「れいな、授業サボってる時はいつも屋上で空見てるんです。
一度だけ、その姿見た事あるんですけど、何ていうか…すごく
寂しそうだったんですよ。」
と言われた事があった。
- 88 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/02/02(月) 16:43
- それでも、私は義妹との付き合い方を変えることはしなかった。
『嫌われているかも』
この思いがどうしても私を一歩も動かせないでいた。
そして約二ヶ月前…
義妹は自分で自分の手首を切った―
- 89 名前:2.ココロの闇 投稿日:2004/02/02(月) 16:49
- 後悔しなかったわけがない。
私が早く義妹に話し掛けていれば
こんな事にはならなかったのかもしれない。
そもそも、私が不良の道に走らなければ…。
(あの子の意識が戻ったら最初に謝ろう。)
しかし、ずっと言おうと思っていた言葉…
「ごめんね」
たった四文字のその言葉を私は未だ言えずにいる。
- 90 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/02(月) 17:04
- 姉が帰って来て二階へ行ってしまった後、私は外へ出た。
特に意味はなかったけど、私は家の近くの川沿いの土手を歩いていた。
すでに外は真っ暗で、ちょっと肌寒い。おまけに雨まで降ってきている。
「帰ろうかな…」
でも、家に帰れば姉に会う可能性は高い。嫌いでもない、どちらかと言えば
素直に話をしたいはずの相手と望まぬケンカをしたくなかった。
(…?!)
その時、私の体に異変が起きた。
頭がガンガンと痛くなり、体がかーっと熱くなったかと思うと
「…っ…。」
私は一歩も歩けなくなり、その場に座り込んでしまった。
「やば…カゼ…?」
前々から少し風邪気味の感じはあったけど、突然酷くなるものなのだろうか?
(あ。雨に濡れたの、まずかったかな…。)
- 91 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/02(月) 17:13
- そんな事を思っている間に頭がぼーっとしてきて
何も考えられなくなってきた。
夜の雨の川沿い。ただでさえ人通りが少ないこの道を歩いている人は
誰もいなかった。
「お…ねえ…ちゃん…。」
いるはずのない人の名を呼んでしまう。あの人が来るわけないのに…。
その時だった
「れいなっ?!」
誰かが私の名前を呼んだ。
(…誰?)
「れいなっ!!大丈夫?れいなっ!!うわっ…すごい熱…。」
その人は既に動けなくなっていた私を抱きかかえて少し足早に
歩き始める。
「…!」
それが誰なのかを確認した時、私は気を失った―
- 92 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/03(火) 10:57
- (…?)
気が付くと、私の視界には見覚えのある天井が映った。
けど、壁に貼られたカレンダーやコルクボートから、ここが
自分の部屋ではない事は認識できた。
(どこだろ…ここ…。)
そう思って体を起こそうとした時
「あ…起きたんだ…。」
声のした方を見ると、ドアに寄りかかって座っている義姉の姿があった。
「え…あ…その…。」
口篭もってしまった私を見ながら義姉は確かに…確かに笑った。
初めて見たようで、どこか懐かしさのあるその笑顔。
- 93 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/03(火) 11:04
- 「びっくりしたよ。なかなか帰ってこないし、雨降ってきたから
心配になってきて見に行ったら、熱出して倒れてるんだもん…」
「あ…えと…」
「大変だったんだから。ここまで運ぶの。」
どこか緊張しているような義姉。
ちょっとした沈黙ができた。
「あのさ…」
「あ…あの…」
「「えっ…?」」
見事にハモってしまい、私達は気まずそうに目を合わせた。
- 94 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/03(火) 11:08
- 再び訪れた沈黙に、私は喋りづらくなって俯いた。
しばらくして―
「ごめんね…。」
義姉がそう呟いた気がした。
「えっ?」
義姉を見ると、義姉も私を見た。そして
「ごめんね。れいな…。」
今度はハッキリと…でも、ちょっと涙声で言った。
- 95 名前:3.大切な人 投稿日:2004/02/03(火) 11:30
- 「何で…何で謝るの?」
自然に口から出た言葉だった。義姉は
「私のせいで、母さんがれいなに色々酷い事してたから…。
私、れいなが手首切ったって聞いた時からすっごく後悔してた。
何で助けてあげなかったんだろうって…れいなは悪くないのにって…。
でも、もうれいなには嫌われてるって思ってたんだ。ホント、最低な義姉だよね…。」
「そんな事ないっ!」
思わず叫んでしまった私に義姉は少し驚いたようだった。
(お姉ちゃんは悪くない。むしろ私が謝らなきゃいけないんだ。)
―ずっと嫌われていると思ってた。だから、話し掛けたりしちゃいけないって
思ってた。でも、誤解してたんだね。まさか、お姉ちゃんが
同じ事思ってるなんてちっとも思わなかった。
「私…お姉ちゃんの事嫌いじゃないよ?だからさ…」
「これからも…よろしくね?お姉ちゃん。」
お姉ちゃんは
「ありがと。こっちこそ…よろしくね、れいな。」
と言うと私の前まで来て右手を差し出した。
私は、その手をギュッと握って
「大好き」
その夜、私とお姉ちゃんは1つのベッドで一緒に寝た。
最初、私は「カゼうつるよ」って言った。
ホントはすっごく嬉しかったんだけど、何となく照れくさかったんだ。
ずっと…ずっと一緒だよね?
お姉ちゃん…。
- 96 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/03(火) 12:07
- 「あ〜、やっと仲良くなってくれた…。」
「なっち、お疲れさん。」
ここは天国と地獄の間にある中央管理モニター室。
私、安倍なつみは数多くあるモニターの一つを見ながら
「ふぅ…」
とため息をついた。
そこには仲良さそうにくっ付いて眠っているNo.01の田中れいなと
その義姉である藤本美貴の姿が。
「頑張ったじゃん、なっち。」
その言葉と同時に差し出されたコーヒーを受け取りながら
「さんきゅー、圭織。なっちが何日間寝ずにこの瞬間を待ち望んだか…。」
「まぁ、下には六人いるのにこっちは五人だもんね。
なっちは…あと亀井の監視?」
「うん、そうだよ。」
まぁ、あっちは至って順調だからいいんだけどね。
- 97 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/03(火) 12:20
- 私と圭織、あと福ちゃん、圭ちゃん、矢口の五人は、ある日突然
裕ちゃんと彩っぺに呼ばれてここにやって来た。どうやら、またあの
「ゲーム」が始まったらしい。
それで、下の世界の六人を監視しろというのが上からの命令だった。
「ゲーム」
ここに昔からいる者なら誰でも知っているモノだ。
下の世界に戻った選ばれた者…言い換えれば「プレイヤー」は上の世界の監視の元
で普通に暮らす。そして、上の世界が一人一人に無理矢理与える「試練」を
全員がクリアーすればOKというわけだ。一人でもクリアーできなかった場合は
プレイヤーは全員地獄に強制送還という事になっている。
しかし、もちろんプレイヤー達にはそんな事は一言も教えられていない。
まぁ、下の世界に帰った時にはすべて忘れているのだから言われていない事は
あまり重要ではないのだが…。
- 98 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/03(火) 12:26
- それよりも…
どうして自分達五人が選ばれたのかという事が、今の私には
一番重要な事だった。上の人は「基準がある」と言っていたけれど
私達には何の共通点もない。同じなのは性別くらいだ。
それ以外考えられるのは過去に会ったという可能性だけど
それについては調べようがない。
「なっち〜?大丈夫?ぼーっとしちゃって…。」
圭織の声ではっと我に返る。
「あ、ごめん。大丈夫だよ〜!」
圭織はなおも心配そうな顔をしていたけど思い出したように
「あ、そういえば…そろそろ届くかな?試練の内容…。」
- 99 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/03(火) 12:35
- (また思い出したくない事を…)
私はこの監視をやるにあたって、何が一番嫌だったかと言うと
プレイヤー達の試練を書いたノートが届く事…これが一番嫌だった。
そもそも、こんなルールのゲームの監視をやる事自体、嫌だったけど
上からの命令に逆らえず、しぶしぶ引き受けたのだ。
(何が楽しくてあの子達の事、見張らなきゃいけない訳?)
自分が見張っている彼女達は、幸運にも下の世界に帰ることができた。
世界AとBの違いはあっても、今彼女達はこうして笑っている。
上の世界でこんなルールのゲームを楽しんでいる奴らがいると知らずに…。
それがどうしても許せなかった。
だから、私は勝手に決めていた。
「見張るのではなくて見守ろう」と。
- 100 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/03(火) 12:44
- けれど、いくらそう心に決めていても、現実はやってくる。
「なっち?これ、例のノート…。」
そう言いながらノートを渡してきたのは矢口。
数日前、ここに呼ばれて説明を受けた後、塞ぎ込んでしまった
私の気持ちを聞いてくれて
「その気持ち、分かるよ。おいらも見守りたい。」
と言ってくれた子だ。
「あーうん…。」
そう言いながら受け取ったノートを開く。
(え…?)
思わずモニターに目が行った。そこには何も知らずに眠る姉妹の姿。
(うそ…でしょ…?)
ノートの一番最初に書かれていたNO.01の試練
《義姉・藤本美貴の死》
- 101 名前:風紀 投稿日:2004/02/03(火) 12:58
- 久々に更新しました。
「明日」とか言っておきながら一体何日経ったんだか…
『お前の明日って何時なんだよ!』
と自分に突っ込みを入れる今日この頃…。
実は、両親から「PC禁止令」が発布されていたため
なかなか開く事ができませんでした。今も無断で使っています(笑
>>65・83 ミッチ―様
田中&藤本はやっと仲良くなる事ができました!!
しかし…一難去ってまた一難ですがね…。
>>82 名無し飼育様
田中の過去は…。自分で書いててちょっと辛かったです。
けれど次は「過去」より「今」の方が辛くなるかも…。
>>84 聖なる竜騎士様
初めまして
そうやっていただけると嬉しいです☆どうもありがとうございます。
あ…確かに…。離婚話多いですね(汗
その辺りは現代の家庭事情と同じように考えてください(?
(今の時代、離婚再婚って結構多いので…)
では、またいつになるか分かりませんが(←おいっ!
隙を見つけて更新したいと思います!
- 102 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/03(火) 18:15
- 更新お疲れ様です。
PC令とは、災難でしたね。
これからも、更新楽しみにしてますよ。
何か、読んでると設定が設定なだけに、ちょっとした温かみが、とても心に
染み入るような気がします。
自分も一応、大学受験生と言う立場なのですが、出来る限り読んで感想も書き
たいと思います。
- 103 名前:ミッチー 投稿日:2004/02/03(火) 18:59
- 更新お疲れ様デス。。。
ミキティ死んじゃヤダよー!
やっと仲良くなれたのに…
かなり衝撃でした。
親の隙をみてガンバッテ下さい!
- 104 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/15(日) 17:54
- (どうしよう…聞いてみた方がいいかな…。でも、コイツ何も覚えてなさそうだしな…。)
アタシは隣でジュースを飲んでいる後藤の顔を見ながら
そんな事をぼんやりと考えていた。
「ん?どうしたのいちーちゃん?」
(やっぱ止めとこう。)
「いや…何でもない。」
後藤は腑に落ちないといった顔をしていたけど、すぐに
「ま、いっか。」
と言って飲み終わった缶をゴミ箱に投げ捨てた。
ついでにここは近所の公園。
久々に帰って来たついでに散歩でもしようかと思って
ここを歩いていたところ、コンビニ帰りの後藤と出会ったというわけだ。
しばらくの沈黙の後、後藤は何か言いたげな雰囲気でアタシを見た。
「んー?どうした?」
何も言わず、思案気な表情に変わる後藤。
さっきとは正反対のシチュエーションだ。
(何だ?コイツが言い淀むなんて珍しいな…。)
- 105 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/15(日) 18:01
- やがて後藤は意を決したように
「間違いだったら言ってね?あのさ…後藤といちーちゃんって…
前に会ったよね?この世界じゃない場所で…。」
と言った。
「なっ?!」
(コイツ…?!)
「あと…よっすぃー…。それと…後藤のクラスの転校生の妹も。」
「吉澤の家庭教師の子もだ。」
後藤はびっくりしたようにアタシを見た。けれど、すぐにニコッと笑い
「良かった。覚えてたんだ。」
こっちこそマジで驚いた。まさか後藤が覚えてるとは思わなかったから…。
- 106 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/21(土) 01:44
- 短いながらも、更新お疲れ様です。
いきなり場面が変わって、今度は後藤・吉澤ですか。
でもなんで、向こうの世界の記憶が2人も残っているのでしょうか?
なにか、これからに繋がる謎の1つですか?
これからも、親の目を盗みつつ、更新頑張ってください。
- 107 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/22(日) 21:53
- それから…アタシと後藤はあっちの世界の事を色々話した。
多少、お互いの記憶に誤差はあったものの、内容はほとんど一致していた。
とりあえず、他の人には黙っておくということで話がつき、今は家に帰る途中。
「まぁ…誰もこんな話、信じねーよなぁ。」
そう呟いた時、何となく、数メートル先の信号に立っている二人組が目に入った。
姉妹か、先輩後輩か…それにしても仲のよさそうな二人だ。買い物帰りなのか
二人の持ったビニールから葱や牛蒡が飛び出している。
- 108 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/22(日) 22:04
- 「あれ…?」
歩行者用信号が青になり、二人が渡り始めた時、アタシは二人に向かって
走ってくるトラックの異変に気付いた。
(スピードが…落ちてない?!)
トラックは止まるどころかますますスピードを上げて走ってくる。
「危ないっ!」
そう叫んだ瞬間、二人組の片方がもう一方を突き飛ばした…気がした。
凄まじいブレーキの音と、何かがぶつかったような鈍い音。
アタシはその音に思わず目をつぶった―。
- 109 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/22(日) 22:14
- それから訪れた静寂に、アタシは恐る恐る目を開いた。
そこに広がった光景…トラックは急いでハンドルを切ったらしく
横断歩道と平行になって止まっていて、すぐ側に女の子が倒れていた。
そして、横断歩道から少し離れた所にもう1人の子が座り込んで呆然としていた。
「大丈夫かっ?!」
倒れている子に駆け寄って状態を見る。頭を打ったようで血が大量に出ていた。
ぐったりとして動かないその子をあまり動かさないようにして寝かし
119に電話をかける。
「…お姉ちゃん…。」
電話を終えたアタシは背後から聞こえた声に振り返った。
「えっ?!」
そこにいたのは、あっちの世界で会った内の一人、田中れいなだった―
- 110 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/22(日) 22:27
- ―真っ暗な世界。見えるのは目の前のドアだけ。
(ここ…どこだろう…?)
そう思いながらドアを開ける。そこには五人の女性がたくさんあるモニターの
一つに釘付けになっていた。
「あの〜…。」
声をかけても聞こえていないようで返事がない。
それに、私からは丁度五人の影でモニターが見えなかった。
「あの〜…?」
もう一度声をかけるが気付く様子は全くない。
(ひょっとして…見えていない?)
試しに五人の目の前に顔を出した。それでも態度は変わらなかった。
(やっぱりそうか…。にしても…一体何見てるんだろう?)
五人につられてモニターに目をやる。
- 111 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/02/22(日) 22:42
- (えっ…?)
そこに映っていたのは私と…
「お姉ちゃん?」
仲良く歩く私たち。信号を渡り始めた時
一台のトラックが猛スピードで近づいてきた。
危ないっ!と思った時には私の体は姉によって突き飛ばされ
横断歩道から少し離れたところに倒れこんだ。
同時に辺りに悲鳴のようなブレーキの音が響いた。
(…!)
しばらくして起き上がった私が見たものは、数分前…ほんの数分前まで
一緒に喋り、笑っていた姉のぐったりして血を流した姿だった…
- 112 名前:風紀 投稿日:2004/02/22(日) 22:51
- 更新終了です。
>>聖なる竜騎士様
あは。前回はホントに更新少なかったですね(笑
これからも禁止令が解除されるまでこんな感じです…(泣
そうですねぇ。全ての謎は最終的に一つになってみたり…
(するかなぁ…?)
>>ミッチー様
田中さん&藤本さんは…悲しいですね(泣
田中さん、この試練をちゃんと乗り越えられるでしょうか…?
ホント、頑張って欲しいです。田中さんの試練の鍵は亀井さんが
握ってたり…(?
- 113 名前:風紀 投稿日:2004/02/22(日) 22:56
- ※お知らせ※
実はPC禁止令は元々、作者の成績不振が原因なので(おいっ!
今回のテストを頑張り、解除を目指したいと思います!!
という訳で、次の更新は三月中旬頃になると思いますが
皆様、飽きずに待っていてください。お願いしますm(_ _)m
- 114 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/02/23(月) 15:57
- 風紀さん、お疲れ様です。
藤本姉さんが本当に死んでしまいました。
ああ〜、なんだか田中が無性に可哀想でたまりません。
せっかく仲良くなれたのに・・・・・・・・・・。
次回の更新が3月中旬って・・・・・・・・、かなり先の話ですね。
PC禁止令が早く解除されることを心待ちにしつつ、次回更新を楽しみに待っ
てます。
- 115 名前:ミッチー 投稿日:2004/02/23(月) 17:22
- 更新お疲れ様!
はぁ〜、なんかしんみりですネ。
何か悲しくなってきました…
田中、頑張って立ち直って欲しいですネ。
次も頑張って下さい。。。
- 116 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 15:53
- 白い天井
白い壁
何もかも白い世界―
…病院?
「ん…」
蛍光灯がまぶしくて視線を天井から外すと
「あっ…れいな…」
………絵里?
「…私…何で…」
ここにいるの、と言いかけて私はさっきの出来事を思い出した。
私、お姉ちゃんと歩いてて…それでトラックが突っ込んできて…
「お姉ちゃんはっ?!」
絵里の方を見ると、絵里は気まずそうな顔をして俯いた。
- 117 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 15:57
- 「絵里…?」
黙っている絵里を見て、ふと、嫌な予感が頭をよぎった。
「れいな…あのね…」
何かを決意したように口を開く絵里。
嫌だ。聞きたくない…
「お姉さんは…」
止めて…お願い…
「亡くなったの…。」
- 118 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 16:12
- −亀井視点−
あの後…私はれいなを一人にしておけず、結局病院に泊まってしまった。
私に連絡をくれたのは、私の姉の友達のお姉さん。
だから、最初に連絡が来た時は驚いた。
「絵里〜?電話だよ。」
姉に呼ばれて電話に出た私の耳に聞きなれない声が入ってきた。
『えっと…絵里ちゃん…かな?』
「そうですけど…?」
電話の相手は姉の友達の姉。紗耶香さんというらしい。
『あのな、えっと…田中れいなって子、知ってるだろ?』
何でここでれいなの名前が出てくるのだろう。
「あ…はい…。」
『その子とお姉さんなんだけどな…さっき、事故に遭って…それで…』
「事故?!」
思わず叫んだ私にそばで聞いていた姉が「えっ?」という顔をする。
『あ…いや、妹の方は怪我はなかったんだけど…。お姉さんの方がちょっとな…』
「え…?」
- 119 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 16:18
- それからしばらくして電話を切り、出かけようとする私に姉は
「大丈夫なの?」
私は「分かんない」とだけ答えて家を出た。
『お姉さん、亡くなったんだ…。』
市井さんの言葉が浮かぶ。
『妹の方な、怪我はないんだけど事故のショックで気ィ失っちゃったんだ。
それで、見ず知らずのアタシが側にいてもあれだろ?だから…。』
「分かりました。すぐ行きます。」
そう言って電話を切ろうとした私に市井さんは『あっ、そうだ』と言って
私にある役目を任した。
「れいなに、何て言ってお姉さんの事伝えればいいのさ…。」
勝手に呟き声が漏れる。そう、市井さんは私に
『お姉さんの事、伝えてやってくれないか』
そう言ったのだった…。
- 120 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 16:31
- 「絵里…」
ふと、れいなが自分を見ている事に気付いた。
「ん…?何?」
れいなは暫く、何か考えていたようだったけど
「何でもない…」
と言って視線を窓の外に移してしまった。
昨日からずっとこんな感じだ。
お姉さんが亡くなったことを告げた後、れいなは何も言わずに
ベッドにもぐり込んでしまった。
「れいな…」
私の呟き声が聞こえたかどうかは分からなかったけど、微かにれいなが
「ごめん…」
と言ったような気がして、私はそっと病室を出た。あの
「ごめん」
は私に言ったのか、それともお姉さんに言ったのか…
それは、れいなにしか分からない。
- 121 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/12(金) 16:36
- 私は病室を出た足で公衆電話に向かい、姉に今日は帰らないとだけ告げた。
再び、病室に行こうかと思った時、私はある事に気がついた。
(…れいなのお母さん…どうして来ないんだろう…)
市井さんによれば、お姉さんの方には行ったという話だった。
(何で?)
そんな気持ちを抱えたまま病室の前に着き、ドアを開けようとノブに
手をかけたとき、私は中かられいなのものじゃない、女の人の声が
ドアの向こうから聞こえてきている事に気が付いた―
- 122 名前:風紀 投稿日:2004/03/12(金) 16:44
- 更新終了です☆
>>聖なる竜騎士様
やっとテストが終了しました!結果はまだ出ていませんが
自分なりに頑張ったはずなので大丈夫(なハズ)です!!
>>ミッチー様
田中さん、どうなるんでしょうか…。
亀井さんには田中さん復活のために色々頑張ってもらうつもりです!
次回は田中さんの義母さんを出した後、ここ最近出番の少なかった吉澤さん&石川さん
に出てきてもらおうかなぁ…それとも、やっと道重さんに出てもらおうか…あぁ、藤本さんも
出したいかも…
どれになるかは作者の気まぐれで参ります☆ではまた。
- 123 名前:ミッチー 投稿日:2004/03/12(金) 18:14
- 更新お疲れ様!
この先どうなるのか、ドキドキですネ。
風紀さんのテストの結果がイイ事を願ってマス。。。
- 124 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/12(金) 22:50
- 更新お疲れ様です。
テストの結果が気になりますね。
藤本姉さんが死んでしまってしんみりした雰囲気と、良い所で終わってしまう
楽しみさ、わくわく感が見事にシンクロして「面白い」の1言に尽きます。
次の更新はいつ頃になるのでしょう?
また間が開くのでしょうか?
とにかく、次回を楽しみにしています。
- 125 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/16(火) 19:41
- …………誰?
どうやら女の人は何か叫ぶように話している事がわかった。
聞きたいと思う気持ちと立ち聞きはまずいと思う気持ちが交錯して
私はノブに手をかけたまま固まってしまった。
「あんたのせいで………よっ!!」
あんたって…れいなの事だよね?あ〜もうだめっ!!
私はとうとう堪え切れずにドアを薄く開くとその隙間から中を覗いた。
そこにいたのは見た事のない人。れいなは俯いてじっと目を瞑っていた。
- 126 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/16(火) 19:50
- 「アンタのせいで美貴は死んだのよ!この悪魔っ!!」
…………美貴ってお姉さんだよね?じゃあ、もしかしてこの人…
「ごめんなさい…。」
れいなのお母さん??
「もう、福岡であんな事してわざわざ引っ越してきたのに…。
今度は人殺し?いい加減にしなさいよね。」
あんな事ってなんだろう…ってか酷い…。
そんな事を考えていたらドアが思いっきり開いて、お母さんと目が合った。
「何?あなた。アイツの友達?」
冷たく突き放すような言い方に私は思わず視線をそらして
「はい。」
お母さんはれいなと私を交互に見ると「ふん」と鼻を鳴らして行ってしまった。
部屋の中に視線を戻すと、れいなはばつが悪そうに視線を漂わせている。
- 127 名前:4.失ったモノ 投稿日:2004/03/16(火) 20:00
- 「ごめん…聞くつもりはなかったんだけど…。」
私の言葉にれいなは「いいよ、別に。」と言ってふっと笑った。
その笑顔がとても寂しそうで、私は思わずれいなの側に行くとぎゅっと
彼女を抱きしめた。
「え…絵里?」
「気にしなくて良いんだよ?お姉さんの事…。れいなのせいじゃないんだよ?」
れいなは黙ったままだった。けど、しばらくして
「ありがと…」
と耳元で呟くと背中に手を回してきた。れいなの肩が微かに震えている。
「…」
私は何も言わずにれいなの頭を撫でた。
大丈夫。大丈夫だよ…。
そう、心の中で繰り返しながら―
- 128 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:09
- 「酷い…酷すぎるよ…」
さっきからそう呟いてばっかりのなっちの背中をオイラは
何ともいえない表情で見つめていた。オイラ達の後ろにあるテーブルに
座っているのは圭織と…藤本さん。
あの事故をモニターで見た数分後の事だった。
「あの〜…」
画面にくぎ付けになっていたオイラの背後で聞こえた声。圭織の
「え…何で…?」
と言う呟き声と同時に振り向いたオイラの視界には田中の姉であり、ついさっき
事故に遭った藤本美貴本人が立っていたのだ。
- 129 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:13
- 「何で…?」
圭織とまったく同じ質問をしてしまったオイラに、藤本さんは
「何か…気が付いたらここにいて…。ここ…どこなんですか?」
と、かなり困った様子。
…どこなんですかと聞かれても…。
「あっ、裕ちゃん!」
圭ちゃんの声がしてそっちに視線を向けると、かなり難しい顔をした
裕ちゃんがいた。手にはノートみたいのを持っている。
- 130 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:20
- 「裕ちゃん、一体どういうことなの?」
なっちの言葉に裕ちゃんは小さな声で
「監視官の…新しいメンバーや…。」
と言いながら、持っていたノートみたいなのを差し出した。
一番近くにいた明日香が不思議そうな顔をしてそれを受け取って開いた。
「えっ…?」
後から覗き込んだ圭ちゃんもハッとしたような表情になった。
なっちも圭織も次々と覗き込んでは俯いていく。
「…?」
オイラも気になって覗き込んだ。
…………!!!
そこに書かれていたのは、オイラ達5人+藤本さんと下の世界の6人の
過去の繋がりだったのだ…
- 131 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:26
- 『ひとみ〜!!早くしないと遅れるよ〜?』
『今日は帰り遅いから!』
『お前はホントに背、高いなぁ。姉ちゃんに少し分けろ〜!!』
いつも言葉に!がついていたような気がする。小さいけど明るくて
優しくてとっても元気な姉ちゃんだった。
でもまさか…あんな呆気なく死んじゃうなんて思わなかった―
- 132 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:33
- 数年前―
7時を過ぎても帰ってこない姉ちゃんを家族で心配していた時だった
RuRuRuRuRuRuRu・…
鳴り響く電話の音。
受話器を取った母さんは青ざめてその場に倒れこんでしまった。
電話の内容は
『娘さんが交通事故でお亡くなりになりました』
というものだった。
急いで父さんと病院に行った。霊安室に横たわる姉ちゃんはまるで
別人のように白い顔をしていた…
- 133 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:40
- 「ひとみちゃん。」
梨華ちゃんの声ではっと我に返る。
ここは町内の墓地。もうすぐ命日ということでフラっと来てしまったのだ。
『姉ちゃん…この間もね、ウチの学校の子が事故で亡くなったんだよ。
その子、転校してきたばっかりだったのに…。』
心の中でそういうとウチは隣にいる梨華ちゃんに「行こっか」と言って
立ち上がった。使っていた桶を返そうと歩いていた時、梨華ちゃんが
「あっ」と立ち止まった。
「ん?」
見ると数メートル先にごっちんと市井さんが歩いているのが見えた。
向こうもこっちに気付いたようで
「おーい」と手を振っている。
- 134 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/16(火) 20:49
- 「よっすぃ〜達もお墓参り?」
ごっちんの問いに「うん」と頷くと、市井さんは
「そっか。ウチらも同じだ。まぁ…もう帰るところだけど…。」
聞くと、ごっちんたちも桶を返しに行くと言うのでどうせなら
一緒に帰ろうということになった。
桶を返し、そう広くない墓地内を歩いていると市井さんが
「あれっ…あいつら…何してんだ?」
その視線の先には2人の女の子がいた。1人の子がお墓に背を向けて
座り込み、もう1人は何かを必死に話し掛けているようだ。
「あの子…ミキティの…。」
ごっちんの呟き声が聞こえる。
美貴って、この間亡くなったウチの学校の…?
ウチと梨華ちゃんは顔を見合わせると、2人の方に歩いて行く市井さんと
ごっちんの後を追った…。
- 135 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/17(水) 14:54
- 『ごめん、お姉ちゃん…ごめんね…。』
私は心の中でそう呟きながら今日も姉のお墓の前にいた。
絵里は何も言わずについて来る。たまに
「今日もウチ来る?」とか「そろそろ帰ろうか」と言ってくるけど
私は「うん」としか答える事ができなかった。
絵里もそれを分かっているみたいで、お墓に着くと無言で水を替えたり
お線香をあげたり…とお墓の掃除をしていた。
姉の死から2日後。
家に帰ると置手紙も何も無く、義母親の荷物だけがすべて無くなっていた。
ただ、不思議な事にお金だけは封筒に入れて引き出しに入っていた。
「…」
私はその封筒を見ながら、ぼーっとこれからのことを考えていた。
家には姉の…何というのだろうか、空気というか雰囲気みたいのが残っていたし、
自分の部屋にも姉の部屋にも、ドアの前に立ち尽くすだけで、入る事ができなかった。
- 136 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/17(水) 15:06
- 「あっ…」
絵里の小さくて短い叫び声に顔を上げると女の人が4人、
こっちに向かって歩いてきていた。その中の1人には見覚えがある。
姉の葬儀に来てくれた人で、お線香をあげた後、私の所に来て
『元気出してね』と言ってくれた。確か…後藤さんといった気がする。
「おっす。何してんの?」
後藤さんの隣にいた人が話し掛けてきた。絵里は「こんにちは」と
頭を下げると私の方をチラッと見た。その人は私を見て
「あの時の…って覚えてないかな…?」
私…この人と会ったことあるっけ?
「れいな、この人は市井さん。私のお姉ちゃんの友達のお姉さんなんだ。
あの…事故の時、連絡くれたのも市井さんなんだよ。」
私は何も言わずに足元に視線をずらした。
「すいません。れいな、この間からずっとこんな調子で…。」
絵里の言葉に市井さんは「そっか」と言うと私の隣に座った。
- 137 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/17(水) 15:19
- 「なぁ、えっと…田中、だっけ?思い出したくないかもしれないけど、
お姉さん、トラックがぶつかる寸前にお前の事突き飛ばしたんだろ?
何でか分かるか?」
思わず、市井さんの方に顔を向ける。
―何のために?
今まで一度も考えた事は無かった。
あの時はパニックになってて分からなかったけど私は姉に命を助けられたんだ…。
「お姉さん…れいなの事、守りたかったんだよ。」
市井さんの反対隣に座っていた絵里が言った。後藤さんが後を受けて
「ミキティ、あなたの事がすごく大切だったんだね…。
だから、きっと『生きて欲しい』って思ってあなたの事…。」
「そうだよ。だから、れいなはお姉さんの分まで生きないといけないんだよ。」
「お姉ちゃんの分まで…?」
絵里を見ると目を赤くした彼女は大きく頷いた。
そっか…そうだよね…。
- 138 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/17(水) 15:23
- 私は立ち上がり、お姉ちゃんのお墓の方を向いた。そして
「ごめんね…じゃなくてありがとうって言うべきだったんだね。
ありがと、お姉ちゃん。お姉ちゃんが助けてくれたこの命、絶対に
大切にするから…。ずっと…見ててくれるよね?」
古いドラマのセリフのようでちょっと恥ずかしかった。けど、これが
今の私に言える精一杯の言葉だった。
本当に…ありがとう…。
- 139 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/17(水) 15:44
- 「…れいな…」
私の隣でずっとモニターを見ていた藤本さんの頬を涙が伝っていた。
少し離れた所にいる矢口は背中を向けていて表情は見えないけど、彼女同様
泣いているみたいだ。
原因は裕ちゃんが持ってきたあのノート。
私達が監査に呼ばれた理由が一発で分かってしまった。
そのノートには
『No.01 田中れいな=藤本美貴(姉妹)
No.02 亀井絵里=安倍なつみ(病院の同室)
NO.03 後藤真希=飯田圭織(先輩後輩)
No.04 市井紗耶香=福田明日香(親友)
No.05 石川梨華=保田圭(先輩後輩)
No.06 吉澤ひとみ=矢口真里(姉妹)』
と書いてあったのだ。つまり、この場の6人は下の世界の6人と生前に
関わり合いがあった人間ばかりだったのだ。
でも…と私は思う。
藤本さんと矢口には記憶が戻ったみたいだけど、圭ちゃんや明日香、圭織は
きょとんとしている。私だってそうだ。
亀井絵里という名前に覚えは無い。私にある生前の記憶は
『安倍さん、安倍さんっ!!』
と叫ぶ2人の少女の声だけ。そのうちの片方が亀井さんだったのか…?
そう考えていた、その時だった―
- 140 名前:風紀 投稿日:2004/03/17(水) 15:55
- 更新しました!
>>ミッチー様
いつもありがとうございます!
テストは…あははっていうような結果になりました(笑
>>聖なる竜騎士様
いつもありがとうございます!
「面白い」と言っていただけて、とても嬉しいです☆
※お知らせ※
テストは、まぁ…数学で赤点とってしまいましたが、他の教科で補い
両親には何とか許してもらえました!!
PCの方はまだ、完全に「使って良い」とは言われませんでしたが
それなりに許可は出ました♪
これからは春休みなのでどんどん更新できたら良いなと思います☆ミ
今後とも、どうぞよろしくお願いします。では。
- 141 名前:ミッチー 投稿日:2004/03/18(木) 16:59
- 更新お疲れ様デス!
監視官のメンバーと、下界のメンバーの意外な繋がりにビックリっス。
次は何が起こるのか楽しみデス。
- 142 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/19(金) 20:13
- 風紀さん、お疲れ様です。
田中も可愛そうですが、周りの大切な仲間達がいてくれて本当に幸せだと想います。
監視官のメンバーと下界のメンバーとの繋がりが何とも、驚きの事実ですね。
数学赤点ですか?まあ、PCが完全とは言えなくとも、開放されたと聞いてこち
らも一安心です。
これからも続きの方頑張ってください。
待ってま〜〜す。
- 143 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 15:16
- バシッ。ブォン…
突然、目の前のモニターと天井の灯りが一斉に消えた。
監査室が真っ暗になってお互いの顔すら見えない。
「えっ?何?!」
「みんな…静かにせぇ。」
パニくる私たちの前に現れた人影。あれは…
「…つんくさん?」
圭ちゃんの言葉の後、矢口の
「つんくさん!これ、一体どういうことなんですかっ?!」
という半ば怒鳴っているような声が聞こえた。
つんくさんが手探りで壁に埋め込まれていたらしいスイッチを押す。
すると、再び天井の電気がついた。しかしモニターは消えたまま。
つんくさんの「座れ」の声で私たちは中央に設置された椅子に腰掛ける。
全員が座ったのを確認すると、つんくさんは顔をしかめながら
言いにくそうに私たち一人一人の顔を見つめてから
「監査の仕事は…これで終わりや…」
- 144 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 15:27
- 誰も何も言わない。ただ無言でつんくさんの顔を見つめている。
「それっ…どうしてですか?!」
最初に沈黙を破ったのは圭織。明日香と矢口も続く。
「…予定が狂った…。」
「予定??何ですか、それ…。」
圭ちゃんの疑問に対するつんくさんの答えは
「下の世界の6人のうち、2人、こっちでの事を覚えている奴がいるんや。
正確には『思い出した』んだが…。」
それじゃあ答えになっていない。こっちでの事を思い出したから何なのか
それがわからないと納得できない。
私がそういう意味のことを言うとつんくさんは
「とにかく…これは上からの命令なんや。もう、下の6人からは手を引いてくれ…。」
一刻も早くこの場を去りたいというつんくさんの気持ちが丸分かりだった。
それでも私たちは何も言えず、呆然とする事しかできなかった。
- 145 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 15:46
- ここで私たちが手を引いたら…
そしたら下の世界の子たちはどうなるの?
私たちはそんな思いで、つんくさんの出て行ったドアを見つめていた―
「お疲れ様です。」
ウチは監査室から出てきたばっかりのつんくさんに声をかけた。
「ホンマはウチが言わなアカンかった事なのに…。」
つんくさんは小声で「別にかまわん」と呟くと
「にしても…上の方々は一体何を考えとんのやろな?」
「分かりません。けど、下の子らとの関係を知った今、あの6人が
このまま引き下がるような事は絶対にせんと思いますよ?」
- 146 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 15:59
- ウチの言葉につんくさんは『そやなぁ』という風に苦笑いをすると
急に真面目な顔になり
「でもな、この世界で上に逆らったら即、地獄行きやで?」
「…そうですけど…。ウチから見てあの子たちは、自分の幸せよりも
下の6人の幸せを優先する気がするんです。
例え、まだ記憶が戻っていなくても…監査たちそれぞれにとって
下の子たちは、一番大切だった…何よりも守ってあげたかった存在
だったんですから…。」
ウチもつんくさんも知っていた。監査がいなくなった後
ウチらの上司たちが下の子たちをどうするつもりなのかという事を。
このゲームの「プレイヤー」というのは下の世界の6人だけではなく
その監査となった6人も含めた12人だという事を…。
- 147 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 16:07
- ――――沈黙がこの場を支配している。
つんくさんが出て行ってから数十分ほど経つけれど
誰一人として席を立とうとはしなかった。
私は手元にあったノートを開く。
6人の試練が書かれたノート。
もう、監査から降りるのであればこのノートも必要ない。
しかし…本当にそれでいいのだろうか?
そんな思いが心の中を支配していた。
最初のページには…No.01の試練はクリアーしたという意味なのか
大きく赤い丸が書かれている。
…何時こんなもの書き込んだんだろう…?
そんな事をぼんやり考えながら次のページを開いた。
- 148 名前:5.繋がり 投稿日:2004/03/24(水) 16:17
- そこにはNo.02…亀井絵里の試練が書かれている。
「…イジメ…?」
思わずそう呟いて、なっちの方に目を遣った。ぼーっとテーブルを
見つめていた彼女は私の視線に気が付いたのか不思議そうな顔をして
「ん?どうしたの?」
「あ…いや…」
一瞬、彼女にノートを見せるべきかどうか悩んだ。しかし、まだ何も
思い出していないであろう上に、試練が分かったところで
この状態では見守る事も何もできないではないかと思い直して
「ううん。何でもないよ。」
そう返した時、再びあの思いが浮かび上がってきた。
―私たち、このまま引き下がっちゃって、本当にいいのかな…?
- 149 名前:風紀 投稿日:2004/03/24(水) 16:21
- 更新終了です!!
いつものようにお礼を…と思ったのですが、これからちょっと出かけなければ
ならなくなったので、お礼はまた後日…。
ではまた明日!(できればいいが…(笑
- 150 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/24(水) 22:44
- 更新お疲れ様です。
なんと、監視員の6人もプレイヤーだったんですね、ってことは監視員の6人
も何らかの試練があるのでしょうか?
続いて亀井の試練ですか?田中の試練で充分過酷だったのに、これからもっと
厳しくなるのでしょうか?
今後の進展が非常に気になります。
- 151 名前:名無し飼育 投稿日:2004/04/18(日) 20:13
- 待ってますよ。
頑張ってくださいませ。
- 152 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/20(火) 17:46
- 『絵里!絵里っ!!』
――誰?
『絵里っ、何でこんな事したの!?』
――この声は…
『約束したじゃない!生きようって…一緒に退院しようって!』
――もしかして…
『絵里っ!死んじゃ嫌だよ〜!!!』
――さゆ…?
「絵里?絵里!」
- 153 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/20(火) 17:48
- はっと我に返ると、不思議そうな顔をしたれいなが
私の顔を覗き込んでいた。
「さゆ…」
「えっ?何言ってんの?」
どうして突然さゆの事を思い出したのだろう。
しかも、『こんな事』っていうのがどんな事なのか分からない。
けど、そんな事より『死んじゃ嫌だ』っていう言葉の方が気になった。
――私…死んだの?
- 154 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/20(火) 17:54
- そう思った時、ふと、お墓での会話が蘇ってきた。
どうせなら、皆で一緒に帰ろうという事になって
私とれいなが立ち上がった時だった。突然、後藤さんが市井さんに
「ねぇ、あの事、今ここで話しておいた方がいいんじゃない?」
市井さんは、一瞬きょとんとした後
「そうだな…今、ちょうど全員揃ってるし。」
と呟いてから、私たちの方を向き
「これは、ここで話す内容じゃないかもしれない。
けど…重要な事なんだ。」
そう前置きして話し始めた事は、私には全く覚えのない事で
ただひたすら驚く事しかできないような内容だった―――
- 155 名前:ミッチー 投稿日:2004/04/22(木) 23:46
- 更新お疲れ様です。
亀井さんの試練、どうなるのか…
気になります。
大変だと思いますが、頑張って下さい。
- 156 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/23(金) 12:33
- 更新お疲れ様です。
いよいよ亀井の試練の時ですか?
やっと道重も出てきたようですし、益々波乱の予感です。
早く次の展開が知りたいです。
更新がんばって下さい。
- 157 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/23(金) 19:33
- 「私、覚えてるかも…」
突然、誰に言うでもなく呟くれいな。
「え…?」
「お墓での話…あれがホントなら、私…」
れいなは少し言葉を切った後、私の方を向いて
「今まで言わなかったけど、私、絵里と始めて会った時から
懐かしい感じしてたんだよね。昔から知っているような気がしてた…。今まで
それは、前に絵里に似た雰囲気の人と会った事があったからだろうって
思ってたけど、ホントに会ってたんだ…」
どういうことだろう。あの場では、市井さんと後藤さん以外はキョトンとして
呆然と話を聞いていた。けど、まさかれいなも覚えているなんて…
- 158 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/23(金) 19:40
- 「…絵里は何も…?」
れいなの質問に、私は「うん」と首を縦に振る。
「ホント、全然覚えてないんだよ。自分が死んでたなんて…。
だって今、ちゃんと生きてるじゃん。
もう一つの世界って言われても分かんないよ…」
「私もね、死んだ時の記憶ってないんだ。でも、もしかしたら
これが原因かもっていうのはあるよ。」
私は思わずれいなを見た。
れいなはそんな私からそっと視線をそらし、じっと遠くを
見つめるようにしてから、溜息と一緒に吐き出すように
- 159 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/23(金) 19:45
- 「私、こっちに引っ越してくる前に自分で自分の手首切ってんだよね。」
と言うと、手首にある傷を見せた。
「気付かなかった?」
「うん…全然…」
聞きたい事はたくさんあったはずなのに、驚きが先に立ってしまい
私はぼーっと傷を眺めていた。
「…でも、これホントに自分で切ったのか分からないんだ。覚えてないんだよ。
家族の事が原因かって言われればそんな気もするし…。
けど私が天国に逝きかけたような出来事って言ったらこれくらいしか…」
- 160 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/23(金) 19:52
- そこまで言ってれいなは黙り込んでしまった。私も何も言えずに視線を
彷徨わせる。ちょっとした沈黙の後、先にれいなが口を開いた。
「…そろそろ帰るね?」
あまりにも唐突な言葉にちょっと驚いたけど、私は普通に
「あ、うん。大丈夫?」
れいなはしばらく私を見ていた。でも、すぐに優しく微笑んで頷いた。
久しぶりに見るれいなの笑顔。私は『もう大丈夫だね』と思いながら
「じゃあ、また。」
「うん。絵里、色々ありがとう。」
暗くなり始めた道を走り去って行くれいなの後姿を見送った後、私も家に戻った。
- 161 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/23(金) 20:01
- 郵便受けを覗くと、手紙が三通あった。姉と父に一通ずつ。
そして最後の一つは…
「・……。」
最近、三日に一通の割合で送られて来る私宛の手紙。
差出人は、去年のクラスメイトのコ。
女の子らしい可愛い封筒と、お揃いの便箋には、いつもたった一行
『ウザイ』
私はその封筒を着ていたパーカーのポケットに突っ込み、ドアの前で
深呼吸をするとなるべく明るい声で
「ただいま〜!」
―――この事だけは、なぜかれいなには相談したくなかったのだ…
というより、巻き込みたくなかったのだ…
- 162 名前:風紀 投稿日:2004/04/23(金) 20:07
- 更新しました!!
インターネットが不調で、更新できず…。
読んでくださっている皆様、大変申し訳ありませんでした。
>名無し飼育様
ありがとうございます!これからは少しずつ、一回の更新の量を
増やしていきたいです!!
>ミッチ―様
亀井さんの試練は始まったばかり…
一体どうなるのか?作者にも見当がつきません(笑
>聖なる竜騎士様
道重さん、やっと出ましたね〜。
もっと早く出すつもりだったのに…。ごめんね、道重さん。
- 163 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:08
- 「お帰り、絵里。」
玄関を開けてため息をついたと同時に、姉の声が聞こえてびっくりした。
「え、あ…うん。ただいま。」
なるべく平静を保ったまま返事をする。
「これ…」
そう言いながら2通の手紙を渡し、足早に階段を上って部屋に入った。
ドアをきちんと閉めた事を確認して、そっとポケットから封筒を取り出す。
『ウザイ』
たった三文字の言葉なのに、相手の私に対する気持ちが全て
入っているかようなちょっとした恐怖を感じた。
- 164 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:14
- 松浦さんたちの事は、れいなのお陰もあって、最近何もない状態
が続いている。というより、本人達もれいなのお姉さんが
亡くなった事を知っているから、今だけそっとしておこうという
考えで何もしてこないのかもしれない。
私はそんな事を考えながらクローゼットの一番奥の隅っこに
入ってる缶を取り出し蓋を開けた。
そこには同じ封筒がざっと50通ほど。
ほとんどが同じ文面で、時折『消えろ』『死んでください』と
いうような言葉が書いてあった。
- 165 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:20
- ――これだけは、誰にも言いたくない
そんな気持ちで、手に持っていた届いたばかりの封筒を
缶に投げ入れる。蓋を閉めようとしたけど手紙の量が
多いせいで、蓋が半分だけ開いた状態になってしまった。
――新しい缶、見つけてこなくちゃダメだね…
缶を元あった場所に戻し、クローゼットを閉める。
すると、それを見計らったかのように
「絵里、ごはんだよ。」
という姉の声が聞こえた。
- 166 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:26
- ご飯を食べた後、私は特に家族と会話のないまま再び
自分の部屋へと戻った。階段を上る時、後ろから何となく姉の
視線を感じたけど、大して気にも留めなかった。
まだ9時にもなっていなくて早いとは思ったけど私はパジャマに
着替えて布団に潜った。全然眠くなかったはずなのに、布団に
入った途端何故かものすごく安心したような感じがして
私はそのまま瞳を閉じた―――
- 167 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:34
- ――ここ、どこだろう?
どこかで見た事のあるような風景だった。
青い五人掛けくらいのソファに、白に近いピンク色の壁。
すぐ側を、パジャマ姿の小学生くらいの男の子たちが2人通った。
――病院?
一瞬、夢なのか現実なのか分からなくなって、私は近くにいた看護士さんに
「あのー…」
無視。看護士さんは、私がここにいないかのように通り過ぎていった。
2人目も、三人目も同じだった。
――みんな、私の事が見えてない…?
私からは色々な人が見えているのに、その人たちから私は見えていない。
やっぱり夢か。そう思った時だった。
- 168 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:40
- 「さゆ、待ってよ〜。」
「絵里遅い〜!」
「亀ちゃんはやっぱり亀ちゃんだなぁ…。」
背後から聞こえてきた会話に、私は思わず振り返り
そして呟いた。
「さゆと…私?それにあれって…安倍さん?」
3人は仲良くお喋りをしながらエレベーターに乗り込む。
私は慌ててそれを追いかけ、同じエレベーターに乗った。
エレベーターの中は、3人と私だけ。
――何で、こんな夢見てるんだ…?
相変わらず賑やかに話す三人を私はじっと見つめ、私は
複雑な気持ちになっていた…
- 169 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/04/24(土) 17:45
- 着いた場所は中庭だった。
中央にある小さな噴水の側にあるベンチに座る3人。
私はそこからさらに2つほど離れたベンチに腰掛けた。
真後ろにでも立って会話を聞くのは簡単だったけど、いくら
自分が入っている会話とはいえ盗み聞きはよくないだろうと
思ったからだ。それでもやっぱり会話の内容が気になった私は
なるべく全神経を耳に集め、目を瞑って下を向いた。
でもやはり、この距離では何と言っているのか分からない。
…結局、誘惑に負けた私は、3人の後ろに回りこんで静かに
話を聞く事にした。
- 170 名前:ミッチー 投稿日:2004/05/02(日) 20:27
- 更新お疲れ様デス。。。
続きがきになりますネ。
頑張って下さい。
- 171 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/07(金) 15:18
- 更新お疲れ様です。
な、なんと、亀井・道重・安倍の3人がこれから絡んでくるのでしょうか?
安倍さんは(俺がこの小説で読んで気きた限りでは、)上の人ですよね?
道重さんも初登場?ですしどんな役柄なのか楽しみです。
これが亀井さんの試練ってやつなのでしょうか?
とにかく続きが楽しみでなりません。
次回の更新楽しみに待ってます。
- 172 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:16
- 「えっ…?」
「今、何て?」
驚き顔のさゆと、もう1人の私。安倍さんはにこっと笑ってもう一度
「私、アメリカに手術しに行く。そう言ったんだよ。」
「…そうすれば安倍さんの病気、治るんですか?」
「うん。」
――あぁ、思い出した。
私はこの当時、まだ安倍さんの病気が何なのか知らなかった。
毎日一緒にいるのに、さゆの病気も知らない。お互い、病名を聞いたりしない事が
ここでの暗黙のルールとなっていたのだ。
- 173 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:24
- そこまで思い出すと、不思議な事に次から次へと記憶が沸いてきた。
この後に起こる、あの事も…
目の前の自分とさゆは無邪気に笑いながら
「よかったですね!」とか「どれくらいあっちにいるんですか?」
なんて事を聞いている。それに答える安倍さんも笑っていた。
この時、安倍さんは一体何を思っていたのだろう?
どんな気持ちで、私たちの言葉に答えていたのだろう?
それを考えると悲しくなった。
だって、安倍さんは…
もう、自分が治らない事を知っていて…
自分の命があと一ヵ月位で尽きる事を分かっていて…
私とさゆに嘘をついていたんだから…
- 174 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:33
- それから2週間後、安倍さんの病室には別の人が入った。
私とさゆは単純に安倍さんの言葉を信じて『アメリカに行ったんだ』
と思っていた。
あの日、安倍さんのお母さんと友達という人が現れるまでは…
「絵里ちゃんとさゆみちゃんね?」
突然、私たちの病室に現れた2人の人物に
私とさゆはただ「はぁ…」としか答えられなかった。
「私、安倍なつみの母親と…」
「友達です。」
そこでおかしいと気付くべきだったんだ。手術を控えた安倍さんが
単身でアメリカに渡るわけがない。
- 175 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:42
- 「なつみと仲良くしてくれてたんだってね?」
「あ…いえ…」
「どっちかって言えば、私たちが遊んでもらってたっていう方が…」
安倍さんのお母さんは、にこっと笑った。安倍さんに似ていて
すごく可愛い。けど、その笑顔もすぐに悲しそうな笑顔に変わった。
「…ありがとう。天国のなつみも喜んでるわ…。」
「え…?」
この時の私とさゆの表情。きょとんとしていて「何が?」って言う顔。
「…!…おばさん、もしかしてこの子たち…」
安倍さんの友達という人が、はっとしたようにお母さんを突っついて
ぼそっと言った。
- 176 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:47
- お母さんも「あ…」と呟くと私たちの方を気まずそうに見た。
「…安倍さん、亡くなったんですか…?」
私の声。さゆは、信じられないという顔をして2人を見ていた。
「まさか…なつみの事、知らなかったの…?」
2人で「はい」と言う風に首を振る。さゆが言った。
「…だって安倍さん…アメリカに手術しに行くって…そうすれば
治るからって言ってたんですよ…?」
お母さん達はお互い顔を見合わせると「実は…」と静かに話し始めた。
- 177 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 14:59
- 私とさゆはそこで初めて、安倍さんが治る確率の殆どない病気
だったって事と入院を始めた頃には、既に余命が短い事を知っていた
っていう事を聞いた。
「あの子は…どんなときも笑顔で、決して涙を見せない子でした。」
お母さんの言葉に、安倍さんの友達…飯田さんという人が続ける。
「なっちは私に『ごめんね』って言ったの。迷惑かけてごめんって。
ホントに…自分の事より他人のことを第一に考える子だった…」
「だから、きっと妹のように思っていたあなたたちにも
心配かけないように自分がいなくなって悲しまないようにって
思って嘘をついたのね…」
やがて面会時間の終わりを告げる音楽が流れ、お母さんと飯田さんは
「じゃあ、お大事にね」と言って帰っていった。
- 178 名前:6,記憶と過去 投稿日:2004/05/08(土) 15:06
- その後、さゆと約束したんだ。
『安倍さんが亡くなったのは悲しいけど、私たちは安倍さんの分まで
一生懸命生きよう』って。
でも私は…
「絵里?起きなさい!もう朝だよ?」
そこまで考えて目が覚めた。お姉ちゃんがドアを開けて部屋を
覗き込んでいる。私はうん、と曖昧に頷くと、お姉ちゃんが下へ
降りていった音を確認してから
「ん〜…」
っと背伸びをした。さっきまでの夢が蘇る。
私はあの約束を守れなかった。
私は…安倍さんのお母さんの話の中で、口には出さなかったけど
私と安倍さんが同じ病気だったって事を知って、それで…
それで、わざと点滴の針を抜いたんだ。
「それ、絶対に毎日やらないとダメだからね」
って言われていた命綱を、自分から切った…
- 179 名前:風紀 投稿日:2004/05/08(土) 15:06
- お礼はまた次回☆
- 180 名前:0512 投稿日:2004/05/12(水) 20:19
- 一気に読みました!
と?っても続きが気になります。
忙しいと思いますが、頑張って下さい!
- 181 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:17
- 最近、妹の様子がおかしい。
学校から帰ってくると、カバンを持っていない方の手で何かを隠すようにして
部屋へ戻っていく。最初はあまり気にしないようにしていたけれど毎日続くと
かなり気になる…というより、心配になってきた。
もともと大人しい性格の上に、長期入院が原因での留年。新しいクラスで
上手く行っていないことも知っていた。まぁここ暫くは、妹のクラスの転校生で
諸事情により、ついこの間までウチに泊まっていたれいなちゃんのお陰で
何事もないらいので、姉としてほっとしていたのだけど…
- 182 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:24
- 「ただいまぁ…」
「お帰り。」
――ほらまた…
やはり何かを隠している。
いつもは気付かないふりをしていたけど、試しに聞いてみる事にした。
「ねー絵里。それ、何?」
「え…あ、いや…」
明らかに困惑している絵里。その泣き出しそうな顔を見て私は咄嗟に
「あ、別に言わなくても良いんだけどね?ほらっ、早く着替えておいで。
もうすぐご飯できるからさ。」
絵里はうん、と頷いて階段を昇っていく。私の横を通る時、小さな声で言った
「ごめんね、お姉ちゃん」
この言葉が、何となく引っかかった―――
- 183 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:31
- 『…はい田中です。』
「あ、愛ですけど…れいなちゃん?」
『あぁ…絵里のお姉さん。こんばんは。』
夕飯を食べ終わった後、私はれいなちゃんの家に電話をした。
数時間前に絵里が言った
「ごめんね」
というのが、『教えなくてごめんなさい』ではなく
『迷惑かけてごめんなさい』に聞こえたから。…そう思ったのは
姉のカンというやつだったのかも知れない。
それなら、れいなちゃんなら何か知っているかも、と思ったのだ。
絵里にとって、多分初めてできた『中学の友達』である彼女なら
絵里から何かしらの相談を受けている可能性はある。
- 184 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:41
- 『あの、今日はどうしたんですか?』
「うん、絵里の事でちょっとね…」
私は、最近の絵里の様子と、自分の思っている事を話した。
れいなちゃんは何も言わずに私の話を聞いている。
「…ていう訳なの。れいなちゃん、何も知らない?」
『ハイ…絵里からは何も聞いてません。けど、気になりますね…。
分かりました。きっと、本人に聞いても教えてくれないと思います
から、学校でそれとなく見てますよ。あと、松浦たちにもそれとな
くカマかけてみますから。お姉さんも、また何か他に気付いた事が
あったら言ってください。』
…つくづく、頼りになる子だなぁと思う。彼女が転校してきた日
私はいつも通り、絵里のクラスに絵里の様子を見に行った。
最初はちょっと不良っぽいタイプの感じがして心配していた。でも
絵里事をいろいろ助けてくれたと聞いてほっとしていた。
お姉さんを亡くして、一時期不安定な状態だったけど
この様子だともう大丈夫のようだ。
- 185 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:47
- 電話を切って、2階へ上がる。私の部屋は絵里の部屋の隣だ。
しっかり閉められたドア。その奥からは何も聞こえない。
――絵里、何かあったらちゃんと言うんだよ?
そうドアに向かって呟いてみる。返事があるはずもないので、私は
そのまま自分の部屋に入った。
…私が絵里の元に届いていた手紙を見つけたのは、それから3日後。
絵里の部屋に、借りていたMDを返しに行った時、机の上に広げられた
ままだったそれを、たまたま見てしまったのだ――
- 186 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 15:54
- 「絵里、ちょっとおいで?」
学校から帰って、最初に言われた言葉。みると、お姉ちゃんが
階段の一番下の段に座っている。
「え…?」
「いいから。」
いつもと雰囲気の違うお姉ちゃんに連れられて私は
お姉ちゃんの部屋に行った。何だか嫌な予感がする。今日は学校でも
れいなが『最近、松浦たち大人しくなったね』と言って来た。
普段は話題にもしない事なのに…
私の手にはカバンの他に、また届いた例の手紙が握られている。
「ちょっと、ここ座りな。」
勧められたまま、別途の縁に腰掛ける。お姉ちゃんはそれを見ると
私の隣に座って一言
「…何で、手紙の事言わなかったの?」
- 187 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 16:01
- 「…何でその事…」
気付かれないようにしていた。手紙も全部隠したはずだった。
でも…昨日は…
「昨日、絵里の部屋にMD帰しに行った時に机にあるの見ちゃったの。」
昨日は、久々にさゆのところにお見舞いに行ってその後、また
あの夢の事考えながら寝ちゃったんだ。
朝起きた時もぼーっとしてて、しまい忘れてた…。
私は何も言えずに俯いた。別に、思い出したくなかったとか
そういうんじゃない。今まで必死に隠してたものがあっさり
見つかってしまった上に、勝手に人の部屋に入ったお姉ちゃんに対する
怒りが込み上げてきていたのだ。
- 188 名前:6.記憶と過去 投稿日:2004/05/15(土) 16:10
- お姉ちゃんは、私に話を促すような雰囲気で黙っている。
「…んで…」
「え?」
「…何で、人の部屋に勝手に入るわけ…?」
これが勝手な八つ当たりであることは十分承知だった。お姉ちゃんは
私の事をすごく心配してくれている。それも分かっていた。でも
口はどんどん、行き場のない思いを吐き出してしまっている。
「私が…人が一生懸命隠してたのに…何で隠してたかも分かってない
くせに…」
もう、何を言っているのか自分でも分からなくなってきた。
自分が1度死んでいる事、松浦さんたちのこと、手紙の事…
それぞれに対する複雑な感情が私の中で交錯して、ついに
「…お姉ちゃんに言っても何も変わんない…」
自分で、一番最低だと思っていた言葉まで言ってしまった。
「……っ」
その場にいる事が耐え切れなくなって、私は外へ飛び出した。
行く宛てはない。けれど、私は自分を取り巻くすべての事から
逃げ出すように走って行った―――
- 189 名前:風紀 投稿日:2004/05/15(土) 16:12
- 更新終了です☆
いやぁ…新学期になって、合宿だのテストだのとやっている内に
5月も中旬…
「連続更新」を目標としていたのに相変わらず更新少ないです。
ごめんなさい…m(..)m
- 190 名前:風紀 投稿日:2004/05/15(土) 16:19
- >ミッチー様
ありがとうございます!
これからも頑張ります☆
>聖なる竜騎士様
ありがとうございます!
そうです、安倍さんは上の方ですよ〜♪
道重さんには色々頑張ってもらう予定ですが…
さすがに、あれだけでは終わりません。
夢じゃなくて、現実でも喋っていただきます(笑
>0512様
初めてですね!ありがとうございます!
楽しみにしていただけて嬉しいです。
更新はどうなるか分かりませんが、今後もどうぞお付き合いください(笑
- 191 名前:風紀 投稿日:2004/05/15(土) 16:24
- <訂正>
184>でも絵里事をいろいろ助けてくれたと聞いてほっとしていた。
――→でも、絵里の事を色々と助けてくれたと聞いてほっとした。
です。すみませんでした…
- 192 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/19(水) 14:53
- 更新お疲れ様です。
亀井ちゃんが家を飛び出したですと〜?
これは何かが起こりそうな予感がします。
まさか、また誰かが死んでしまうとか?
ますます、目が離せませんね!
更新のほう、楽しみにしています。
- 193 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:08
- 「あれ…絵里?どうしたの?こんな時間に…」
「うん、ちょっとね…」
私はそう言うと目の前の少女に笑いかけた。
「…それよりさゆ。またご飯食べられなかったんだって?」
「あ〜…うん…まぁ。」
悪戯が見つかった子供のような表情で私を見つめるさゆ。あの夢の中では元気に
歩いたりしていたさゆだけど、今目の前にいるさゆは
数日前に新しく始めた薬の副作用が強く、殆ど何も食べられない状態だった。
- 194 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:15
- 「食べなきゃいけないのは分かってるんだよ…。でも…」
私は、分かってる、という風に頷くと、さゆの
「座れば?」
の言葉で近くにあった椅子に腰掛けた。
――今頃、お姉ちゃんどうしてるかなぁ…
ふとそんなことを考えてしまい、無言になった私を見ていたさゆは
「…で?何があったの?」
「え?…だから、さゆの顔見に。」
さゆは「うそつけ」と呟くと私の顔を覗き込み
「ん〜…お姉さんとケンカした?」
――何で分かるのかなぁ…?
「…あのね、私と絵里、一体どれだけ一緒に生活してたの。
絵里の考えてる事なんて、顔見れば分かっちゃうんだよ?」
- 195 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:21
- 「…さゆ、エスパーみたい。」
「ははっ。やっぱりそうなんだ。…で、何で?」
私はついさっきのお姉ちゃんとのやり取りを話した。さゆは
何も言わずに黙って聞いている。
「…という訳でね。私の勝手な八つ当たりだよ。でも、病気の事では
家族に、学校の事ではれいなに迷惑かけっぱなしなのに、この事が
バレたら、ますます迷惑かかっちゃう…」
そう言うと、さゆは「バカだね〜」と笑いながら
「八つ当たりとかは置いとくとしてさ。んー…何て言うのかな。
絵里って、ホントに色々な人から大切に思われてるよね?」
- 196 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:29
- ――そう…なのかな?
「だってさ、れいなちゃんだっけ?その子、転校してきてすぐに
いじめられてた絵里の事助けてくれたんだよね?転校生が
普通、そんな事しないでしょ?」
「でもそれは…単にれいながイジメとかそういうの嫌いなだけかも
しれないし…」
「……この間来てくれた時にさ、れいなちゃんのお姉さんが
事故で亡くなっちゃったっていう話してたでしょ?その時、絵里は
どうしてれいなちゃんと一緒にいたの?
れいなちゃんがただ可哀想に思えたから?」
- 197 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:37
- さゆに言われて考えてみる。
確かにそうだ。一体どうして私はあそこまでれいなと一緒にいたのか。
可哀想だったから?いや違う…
「私は…れいなに笑って欲しかった。確かに、同情みたいなものも
あったかもしれない。でも…私はれいなの笑顔が見たかった。
れいなの事が、大好きだから…。」
それを聞いたさゆは、ふぅっと溜息をつくと
「ね?絶対、れいなちゃんとお姉さんも同じような気持ちなんだよ。
分かる?2人とも、絵里の事大好きなんだ。だから、心配してくれ
ていたんじゃないの?」
――私…お姉ちゃんに悪い事しちゃったな。
- 198 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 18:43
- 「…さ、ここで問題です。」
「何?」
何を突然言い出すのかという顔でさゆを見ると、さゆはニコッとして
「絵里自身が、今すぐやらなければならない事があります。
それは一体何でしょうか?」
その問題を聞いた私は一瞬考え込んだ後、椅子から立ち上がって
「A、お姉ちゃんに謝る事。」
と言った。けれどさゆは
「ぶーっ」
っと言って、指で×印を作った。
――違うの?
「それも大切だけど…ヒントね。絵里、今何時だと思ってる?」
――えっ…?何時って、7時じゃないの?え…7時っ?!
- 199 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 19:05
- 時計を見たまま固まってしまった私を見てさゆが
「分かった?」
「…家に電話する事…。」
さゆは今度は「正解っ」とマルを作った。
「そ。だって、絵里が来たのは5時ちょっと過ぎだったから
家出たのは5時前でしょ?今、外真っ暗だし。
お姉さん、探してるんじゃないの?もしかしたら、れいなちゃん
にも連絡しちゃってるかもよ?大事になる前に連絡した方が…」
さゆがそう言った時、丁度、面会時間終了を告げる音楽が流れた。
「ほら、こっちも面会終わりだし?またゆっくり来てよ。」
それを聞いた私は「ありがとう」と言って部屋を後にした。
- 200 名前:7,絆 投稿日:2004/05/19(水) 19:09
- 私が出て行った後、さゆが独りぼっちになった部屋で
『ごめんね絵里。ホント言うと私ね“イジメ”がどんなのかよく
分からなかったんだ。だから絵里の気持ちも分からなかった。
初めてだよ。絵里の考えてる事が理解できなかったのって…』
と呟いていたなんて、考えもしなかったんだ…
私はあの子は、病院内にしか友達と呼べる人がいないっていう事を
私はすっかり忘れていた―――。
- 201 名前:風紀 投稿日:2004/05/19(水) 19:15
- 更新終了です!
>聖なる竜騎士様
亀井さんは、こういう事になりました☆
ははっ、今回は誰も死にません。あくまで「今回」は…(←え?
これは誰がどう動くのかが、その日の作者の気まぐれで進んでいるという
何とも適当な小説ですが(笑)これからもよろしくお願いします!!
ではまた次回☆
- 202 名前:ファイド 投稿日:2004/06/07(月) 15:22
- はじめまして。
ちょっと難しいかも、と思いましたが
読み出すとおもしろくて止まらなくな
りました!ぜひ続きも頑張って下さい。
- 203 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:32
-
「私も探すよ」
目の前の少女から発せられた言葉に、私は驚いて彼女をまじまじと見つめた―
- 204 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:37
- 『あ、れいなちゃん。私だけど。
…あのさ、絵里、そっち行ってないかな?』
そんな電話がかかってきたのは、夕方6時頃の事。
丁度、夕食の買い物に行こうかと思った時だった。
「絵里ですか?いえ、来てませんけど…?」
「そっか…どこいっちゃったんだろ…」
少し慌てたような愛さんの声。
「あの…どうしたんですか?」
「まぁ…ちょっと喧嘩…っていうか…そしたら絵里
外に飛び出して行ったっきり、帰って来ないんだ…。」
「…詳しいことはまた後で聞きます。
とにかく今は絵里、探しますから。見つけたら連絡入れます。」
そう言ってから電話を切る。
そして、鍵と携帯をポケットに突っ込むと、私は急いで外へ出た。
「…お掛けになった電話は現在電波の届かない…」
試しに絵里の携帯に電話をしても圏外。
- 205 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:38
- 「…何してんの。」
突然、背後からかけられた抑揚のない声。
振り向くと、学校帰りなのか、制服姿の松浦がいた。
一体何の用があって私に話し掛けてきたのか…。
「…何だ。松浦か。何って、見れば分かるだろ?歩いてんだよ。」
松浦を前にすると、自然に口調が挑発気味になる。
「…あそ…。」
「…なぁ、絵里、見なかった?」
何となく、聞いて損はないと思った。
普段は絶対無視して通り過ぎるだろうけど
今はそうも言ってられない。
- 206 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:40
- 「亀井…さん?見てない。何、いなくなったの?」
「まーそんなもん。」
私の言葉に松浦は何かを考えるように、黙り込んで俯いた。
――…?
「……私も探す…。」
「は?」
――今、何て言った?
「…私も探すよ。」
「え……」
「一人よりはいいでしょ。」
――どういう風の吹き回しだろう。
「携帯の番号教えて。亀井さん見つけたら連絡するから…。」
「あーうん。」
――調子狂うなぁ…。何なんだよ一体…。
「…じゃあ…」
そう言って背中を向ける松浦。
「あ、おい!」
- 207 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:46
- ―自分でも、何で声を掛けたのか分からなかった。
でも何だかほっとけなかったんだ。
「…何かあった?」
「…何で…」
「…お前が下手に出るのが変な感じして。妙に優しいからさ。」
そう言うと松浦はフッと笑って
「私の事、いつも極悪人みたいに言わないでよ。」
と言った。でも、やっぱりその笑顔が寂しそうで…
「…何かあったら言えよ?」
「……そっちこそ」
私はだんだん遠ざかって行く松浦の背中を見つめながら
「亜弥」と呟いてみた。
そういえば、学校の外で会うのは初めてかもしれないなと思う。
そんな事を考えてしまっていた自分が変な感じがした。
何だかこっちの調子まで狂ってしまったみたいだ。
「まったく…絵里の奴、どこ行ったんだよ。」
――これは、私の無意識の照れ隠しだったのかもしれない…
- 208 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:50
- ―自分でも分からないんだ。何であんな事言ったのか…。
『私も探す』…か。
「いいねー…」
何が良いのかもよく分からないけど、何となくそう呟いた。
『亀井絵里です。よろしくお願いします…』
彼女がウチのクラスに入って来たのは今年の4月の事。
復学した先輩がいるというのは知っていたけど
まさかウチのクラスに入るなんて思ってなかった。
亀井さんの前のクラスの人(…先輩だが)から、彼女が学校に
来ていた期間はいつもイジメられていたという話は聞いていた。
だからどうという訳ではない。ただ何となく彼女に
何かと突っかかったりしていたのが、いつしか「イジメ」という
カタチになって現れるようになっていった。
- 209 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 18:56
- そんな中で突然現れた、田中さんという存在。
転校初日の彼女の態度には、正直驚いたけど
何だかとても亀井さんが羨ましかった。
体を張って亀井さんを守る田中さんと、お姉さんを亡くしてから
しばらく学校に来なかった田中さんにずっと付いてあげていたらしい
亀井さん。二人の関係が羨ましかった。
私にも友達はいる。だけどもし、私が悩んだり
落ち込んだりした時に、そこまでしてくれるかと言ったら、恐らく
NOだろう。別に友達を悪く言うつもりはないのだが…
- 210 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:19
- そんな訳で、今も、必死で亀井さんを探していた田中さんを見たら
自然と言葉が出たんだ。
『私も探す』って…。
「さて…」
私は、彼女が行きそうな場所を一箇所だけ知っている。
たまたま通りかかったその場所に、彼女が花束を抱えて入っていくのを
一度だけ見た事があった。噂によれば、彼女の親友という子が
いるらしく、二人の仲の良さはそこでは有名だったとか…
- 211 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:25
- 田中さんの事だから、きっと亀井さんの携帯には電話をしただろう。
それでも、ああやって探しているところを見ると
亀井さんには繋がらなかったんだと思う。
何があったのかは知らないけど、学校での様子だけで考えれば
亀井さんは真っ先に田中さんの所に行くはずである。
それをしなかったという事と、携帯が繋がらないという事を含めて
考えれば、恐らくあそこだと思った。
――田中さんに、言った方がいいのかな…
確かに、私がそこに行って何ができるというわけではない。
むしろ、お互い避けてしまうのではないかという気がする。
- 212 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:34
- でも…
亀井さんはきっと、田中さんには言えない訳があって彼女の所に
行かなかったんだろう。なのに、そこへ田中さんが行ってしまっては
色々と面倒な事になるのではないか。
――どうしよう
私が人の事で頭を悩ませるなんて
今までの人生の中で、何回あっただろう。
とにかく、どちらかの行動を選ばなければならない。
いつ亀井さんがいなくなったのかは分からないけれど、あそこは
面会時間というものが決まっている。あそこを出た亀井さんが
家に帰るかどうかも分からない。だったら早くあそこの前ででも何でも
待ち伏せでもしていない事には、彼女は捕まえられないだろう。
- 213 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:42
- そんな事を考えていたら、ふと視界に見覚えのある人が入った。
「あ…」
亀井さんのお姉さん。向こうは私に気が付いていないようだ。
――お姉さんに頼めば…
それが一番いいだろう。そう思った私は
「あ…あのっ…」
「え…?」
驚いた表情で私を見つめるお姉さん。自分の妹をイジメている奴が
突然話し掛けてきたら、そりゃびっくりするだろう。
「あの…田中さんから聞いたんですけど…亀井さんの事で…」
そう切り出すと、お姉さんはますます驚いた顔になったけど
「あなた…まぁいいや…。で?絵里の事って…?」
- 214 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:44
- 私はそれまで自分が考えていた事を手短に話した。そして最後に
「私…亀井さんに色々酷い事してて…顔、合わせ辛いんで
私が亀井さんがそこにいるかもって言った事、亀井さんには
内緒にしてくれませんか?」
「…」
お姉さんは黙って何かを考えていたみたいだけど、ふっと笑顔になって
「分かった。絵里には黙っておくね。…ありがとう」
そう言うとお姉さんは、くるっと反対を向いて
走って行ってしまった。私はそれを見送りながら、
「これで良かったのかな…」
と呟いた―――
- 215 名前:7.絆 投稿日:2004/06/08(火) 19:54
- やっと更新できました。
まったくテストなんて…ブツブツ…
>>ファイド様
そう言っていただけると、とても嬉しいです!
最初の方は、作者自身読み返すと理解が難しかったり…(笑
これからも頑張るので、よろしくお願いします。
- 216 名前:風紀 投稿日:2004/06/08(火) 19:58
- さて、作者は今月の26日より、学校の行事で2週間
アメリカへと飛び立ってきます。
できれば飛び立つ前にもう1,2回更新したいと思うのですが
今から準備で忙しく、はたしてできるかどうか…
というわけで、最低の場合、次の更新は七月の中旬になってしまう
と思うのですが、どうぞ気長にお待ちください。
もし、七月になってしまった場合は
お土産代わりの大量更新という事で…
あ、>>125、題名のままでした。風紀、です
- 217 名前:ファイド 投稿日:2004/06/10(木) 18:30
- 更新お疲れさまです!
ますます続きが気になりますね。
わたしも約1週間後にテストです・・・。
- 218 名前:ミッチー 投稿日:2004/06/14(月) 19:08
- 更新お疲れ様デス。。。
松浦さん、ちょっとイイ人でしたネ。
続き気になります・・・。
風紀さん、頑張って下さい!
- 219 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/15(火) 13:35
- 更新お疲れさまです。
なんとここにきて懐かしい松浦の登場ですか。
しかも今回は何か亀井捜索のお手伝いなんかして、なにか彼女にあったのでしょうか?
本人も何か自分の行動に疑問を持っているようですし・・・・・・・・。
風紀さんはアメリカですか・・・・・・・・・・。
じゃあ1ヶ月近く待たなくてはいけませんね、大量更新のほう楽しみにしています。
では、お気をつけて。
- 220 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 14:26
- 「ねー、ひとみちゃん?」
「はい…?」
「勉強しなきゃね…」
確か数分前にも同じ言葉を聞いた気がするけど、正直、ウチとしては
勉強する気になんてなれなかった。多分、教える側である梨華ちゃんも
同じ気持ちなんだろう。数時間、同じページが開きっぱなしの参考書と
白紙のままのノートがその証拠だ。
姉ちゃんの墓参りに行って、ごっちんたちに会った後から、どうも
頭の整理が付かなくて、2人揃ってぼんやりしている。
「姉ちゃん…」
机に飾ってある、家族で撮った写真。実の姉妹のはずなのに、結構な
身長差のあるウチら。
- 221 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 14:34
- 「ウチもね、死んだんだって…」
そう呟いてからチラッと梨華ちゃんの方を見ると、どこか
遠い目をして窓の外を眺めていた。
結局、今日はいつもより1時間近く早く、勉強は終わりにした。
と言っても、何もしていないのだが…。
母さんには『いつもより勉強がはかどっちゃって』と言って
上手くごまかして、ウチは梨華ちゃんを駅まで送りに外へ出た。
「…」
「…」
いつもは学校や家の話題で盛り上がるこの道も
お互い何も言わずにひたすら歩いた。
- 222 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 14:46
- 梨華ちゃんは何も言ってこないから
今何を考えているのかは分からないけど
ウチとしては、別に死んでいると言う事に関しては
あまり深く考えたりはしていなかった。どちらかというと、
『何故、今生きているのか』といった思いの方が強い。
一度死んだはずのウチが、何でこ『もう一つの世界』みたいな
所でこうやって生活をしているのか。自分より、生きている方が
世の中に幸せを齎した人間がいるんではないか。
どうしても『自分が生きている理由』が納得できなかった。
ごっちんと市井さんは淡々と話してくれたけど、本人たちは
一体、どういう思いでこの話をしたんだろう。
まだ、中学生だというあの2人は、何を思ったんだろう。
- 223 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 15:21
- 「あ…」
そんな事をぼんやりと考えていたから
いつの間にか随分ウチの後方を歩いていた梨華ちゃんに
ちっとも気が付かなかった。
「ねー、ひとみちゃん?何で、私、生きてるのかな…?」
「え…」
まさに、自分が考えていた事。
「私なんかよりも、適当な人、いたんじゃないのかな…って。」
一体何と答えればいいのだろう。ウチ自身がそういう思いだから
今の梨華ちゃんの問いに対する答えはない。
- 224 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 15:32
- 確かに、『ウチらは条件を満たした』みたいな事を話していた
けれど、ホントにそうなのか。ホントに、日本の死人たちが
ウチら以外に条件を満たしたものがいなかったのか。何か裏に
あるんじゃないかって疑う気持ちがある。
だから、今一歩、納得できないんだ。
「あれ…先輩…?」
梨華ちゃんへの返事に困っていたウチの前に現れたのは
「…亀井?…何してんの。こんな時間に。」
腕に付いた時計の針は、とっくに7時を回っている。
「ちょっと色々あって…家に連絡付かなくて困ってるんです」
「ケータイ、持ってないの?」
「いえ…持ってるには持ってるんですけど…」
- 225 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 15:39
- お姉ちゃんのケータイ、全然繋がらないんですよ、と、亀井は
苦笑いしながら言った。
「親は?」
「働いてるんで。」
ついでに、田中のケータイにも電話したけど
出なかったと言う亀井。
「鍵持ってないんで、家の前で待ってようかなとも
思ったんですけど、その…私、お姉ちゃんとちょっと
言い争いみたいなのして、家飛び出してきちゃったんで
多分、町中探されてるかなって…」
- 226 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 16:36
- 「え、ダメじゃん。」
「そうよ。早く連絡しないと…」
いつの間にか話に入っていた梨華ちゃん。
「亀井のお姉さんって…加護のクラスメイトかな…」
「あ、そうです。でもなんで…?」
随分前に加護と辻から、中等部に復学した子がいて、その子の
お姉さんとは友達なんだという話を聞いた事があった。
すっかり忘れていたけど、それって亀井の事だったんだ…。
「とにかく、お姉さんの事、あんまり心配させたらいけないから
もう一回、電話してみれば?」
梨華ちゃんの意見に私も頷く。
しかし、亀井は少し言い辛そうな顔をしてから
「それが…ついさっき、電池切れちゃって…」
- 227 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 17:11
- 結局、ウチのケータイからお姉さんに電話をするということに
なったのだけど、亀井曰く
「やっぱり話し辛い」
らしく、もし、お姉さんが出たら、ウチから話をすることに
なった。
『はい。』
コール音1回で繋がる。
「あのー…亀井絵里の…お姉さんですか?」
『そうですけど…?』
「あのですねー…ウチ、吉澤ひとみっていうんですけど…
今、偶然亀井さんと会って…それで…」
- 228 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 17:21
- ウチはそこまで言うと、無理矢理、亀井にケータイを握らせた。
「え…。せ…先輩?!」
かなり動揺した顔でウチを見る亀井。ウチは、通話口を押さえて
「亀井。お前、どっちにしろ、お姉さんが迎えに来たら、何か
話さないといけなくなるんだよ。だったら、今のうちに
電話越しにでも、話しておいたほうが良いんじゃないか?」
梨華ちゃんの方を見ると、梨華ちゃんは亀井を見つめながら
「ひとみちゃんの言う通りだよ。私たちは、何があったのか
全然知らないけど、素直に話しした方が良いんじゃないの
かな?逃げちゃだめだよ。」
と、優しい口調で言った。
「…はい…」
気持ちが通じたのか、諦めたのかは分からないけど
亀井はケータイを持ち直すと
「お姉ちゃん?私、絵里。うん…今、家の近く…。うん…」
- 229 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 17:33
- 亀井はウチらから、少し離れた位置で話をしていたから
何を話しているのかはよく分からなかった。でも、最後に
「うん…。ごめんね…心配かけちゃって…」
と言っていたのが聞こえたから、無事に仲直りしたのだろう。
「先輩。ケータイ、ありがとうございました。」
やがて、電話を終えて戻ってきた亀井は、ケータイを差し出すと
ペコッと頭を下げた。
「いやいや。ちゃんと、話できたみたいだね。」
「はい。」
先輩達のお陰です。と言って笑った亀井は
「そういえば」と呟いてから
- 230 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 17:57
- 「あの…先輩たち、どこかに行く途中だったんじゃないですか…?」
あっ、と梨華ちゃんと顔を見合わせる。
時計を見ると既に8時半を過ぎていた。
どうしよう…。梨華ちゃんを送ってから帰ったら、9時過ぎちゃう…
姉ちゃんの事故以来、ウチの母さんは夜道を極端に怖がってしまい
ウチが部活の用事とかで帰りが遅くなると、いつも心配して
家の外で帰りを待っているようになってしまった。
「ひとみちゃん、私、もう大丈夫だから。」
そんなウチの母さんの事を知っている梨華ちゃんの心遣い。
それでもウチが迷っていると
「私より、絵里ちゃんの方が1人になると危ないでしょ?だから、一緒に
いてあげて。ねっ?」
- 231 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 18:10
- でも、やっぱり心配なので、大通りまで送っていく事にした。
「じゃあ、今度は水曜日にね。」
バイバイ、と手を振って人の波に流されていく梨華ちゃんを
亀井と2人で見送った後、亀井の家を聞くと、意外にも
近くだったので、途中まで一緒に帰る事にした。
「ふーん…じゃあ、田中って、亀井にとっては学校の友達
第一号だったんだ?まぁ、ある意味、田中にとっても
亀井は友達第一号だけどね。」
「はい…。れいなが初めてでした。『復学』って聞いても
『だから何?』っていう風に、普通に接してくれたのは…。
でも、お姉ちゃんの友達とか…辻さんや加護さん、小川さんや
紺野さんも、『絵里ちゃん』って可愛がってくれた…。」
- 232 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 18:52
- 帰り道、亀井は自分の事を色々と話してくれた。
「でも、やっぱり、殆どの人が『復学かよ〜』って目で見てくるんです。
それで…お姉ちゃんにもかなり迷惑かけちゃったし…」
そう言うと、亀井は一旦言葉を切った。そして、何か遠くを見るように…
そう、さっきの梨華ちゃんと同じような瞳になると
「…先輩は…信じますか…?」
何を、何て聞かなくても分かっていた。だから
「ウチは、何も覚えていないんだ。だから、何とも言えない。」
「そうですか…じゃあ、『何で自分なんだろう』っていう気持ちには
ならない…ですよね…」
「…」
- 233 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 19:01
- ウチは何も言えず、ただひたすら歩いた。亀井はしばらくして
「…最初に…最初にそう言ったのれいななんです。お姉さんが
亡くなって…お義母さんも出て行っちゃって…。
それで、この間…2人で歩いてたら突然…」
『お姉ちゃん死なせて、義母さんの大切なもの奪っちゃって…
そんなことする為に、私はここにいるのかな…だったら、
私って、1回死んでるんだし…悪魔だよね、きっと…』
「私、お墓での事以来、れいなはもう大丈夫だって思ってたんです。
でも、いきなりそんな事言われて…」
- 234 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/09(金) 19:10
- 田中の発言に驚いた亀井は、その時、理由を聞く事が
出来なかったという。
しかも、次の日からは前までのように明るい田中に
戻っていたらしい。
「もしかしたら、あの時の言葉は、れいなの本心なんじゃないか
って思いました。表面上、立ち直ったように見せていても
本当はすごく寂しくて辛いんじゃないかって…」
いくら、ふっきれたとは言え、田中はまだ中学生。家族のいない
寂しさというのは計り知れないものだろう。
しかも、大切な人を目の前で失った辛さは、そう簡単に消える
ものではない。そう考えると、亀井の言うとおり、今の田中は
『強がっているだけ』なのかもしれない。
- 235 名前:ファイド 投稿日:2004/07/09(金) 19:23
- 更新お疲れさまです!
アメリカは、いかがでしたか?
次回も楽しみにしています!
- 236 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/11(日) 21:37
- 「でも、れいなの話聞いてたら確かにそうだよなぁって思えてきちゃって…
あっ、れいなが悪魔とかの方じゃないですよ?何で私なんだろうって…」
ウチは黙って足元にある小石をポーンと蹴飛ばした。
カツンと乾いた音を立ててアスファルトの上に落ちたたそれは
夜の闇に紛れ、どこに行ったのか分からなくなってしまった。
梨華ちゃんと別れてから、随分歩いた気がする。多分、もうすぐウチと
亀井、それぞれの家への分かれ道だろう。
…ウチは、その話題を極力避けようとしている。
何故かは分からないけど、頭がその話題について拒否反応を示してるんだ。
そんなウチの気も知らずに亀井は続ける。
「でもですね、思ったんです。もし、れいながいなかったら、私今頃
どうしてたのかなぁって…。」
「え…?」
「…私、何て言うんですか…えっと、早い話が今年の初めからクラスの人と
上手く行ってなかったんですね。復学したせいで、みんなが一歩引いてい
って言うのもあるんだろうけど、私自身、1つ下のクラスに入ったのが
すごく不安で、積極的に自分から話しかける事が出来なかったんです。」
- 237 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/12(月) 21:17
- 「でも、れいなのお陰で…れいながいたから、学校に通ったり
できてるんじゃないかって思うんです。だから…」
…うん。亀井の言いたいことは何となく分かった。
「要するに、自分には田中が必要だった、と。」
まぁ、そんなところです。と言って何故か俯く亀井。
「…だけど…じゃあ、自分はどうなのかなって…。
私、れいなにもお姉ちゃんにも迷惑かけてばっかりだし…」
…何言ってんの。
「…亀井には、田中の存在理由を作るっていう
存在理由があるじゃん。田中がいるお陰で亀井がいるなら
亀井がいるお陰で田中がいる。そうじゃないのか?」
その言葉は、ウチが自分自身に言い聞かせた言葉でもあった。
『君がいるから私がいる』という考えがあるなら
『私がいるから君がいる』という考えも会って良いはず。
- 238 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/12(月) 21:25
- 今度、梨華ちゃんに会ったら、そう言ってみよう。
心のモヤモヤが、半分くらいなくなった気がした。
見ると、亀井もどこかすっきりしたような顔をしている。
「あ、私、こっちなんで」
亀井が指差したのは、ウチ進むほうとは反対の方。
いつのまにか分かれ道に来ていたようだ。
「じゃあ先輩。さようなら。」
そう言って、走って行く後ろ姿に
「学校でな!」
って声をかけた後、ウチはそっと
「ありがとな」
と言った。その声は、すでに夜の闇に紛れてしまった亀井には
おそらく届かなかっただろう。
自分の存在理由が分かる事が…
『誰かに必要とされてる』って思うことが
こんなに嬉しいことだったなんて、忘れてたよ――
- 239 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/12(月) 21:49
- 「絵里!!」
ようやく家が見えてきた頃、私の耳に聴きなれた声が聞こえた。
「…れいな?」
家の前に立っていたのは、お姉ちゃんとれいな。
…まさか、ずっと待っててくれてた…?
「あ…あの…」
何と言っていいか分からず、口篭る私の頭に、パシッ、パシッ
という2度の音と共に、軽い衝撃が走った。
「…バカ…」
見ると、ちょっと泣きそうな顔をしたお姉ちゃんと、ホッとした
表情を浮かべているれいなが私の頭を軽く叩いたようだった。
「…ごめんなさい…」
そんな2人を見ていたら、ふと、さゆの言葉を思い出した。
- 240 名前:8.素直な気持ち 投稿日:2004/07/12(月) 22:26
- 『2人とも、絵里の事大好きなんだ。』
「私も、2人の事、大好きだよ。」
思わず声に出してしまった言葉に、お姉ちゃんとれいなは変な顔をして
「絵里、今何か言った?」
「ううん。何でもないっ」
変な絵里。と言って首を傾げたれいなが可愛くて
思わず噴出してしまった。
「ははっ」
何で笑うのさ!と少し膨れっ面をしたれいなの顔は真っ赤。
私たちのやり取りを、お姉ちゃんは嬉しそうに見ている。
――辛い事や悲しい事があったって、こうやって大好きな人と笑い合えば
何でも解決できる気がする…
- 241 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/12(月) 22:56
- 何なの一体…
私は、目の前の信じられないような光景に目を疑った。
…何でお姉ちゃんと義母親がいるの?
見るからに険悪な雰囲気を漂わせた2人。その視線は
どうやら私に向けられているようだった。
「何か用?」
…何か用って…私何言ってんの?
「別に。あんたに用なんかない。正確には、あんたにも用はない。」
…お姉ちゃん、実の親に向かってあんたって…
何となく気がついた。
「美貴。あんた、学校はどうなってるの?…お前はさっさとどっか行け。」
…これ、お父さんが死んで、何日か経った後…
そう思うのと同時に、何故か無性に悲しくなった。
私、すでにこの頃からお姉ちゃんにも義母親にも
名前で呼ばれてなかったんだな…って。
「別に言われなくても勝手に部屋戻るし。」
…え、戻るの?別に良いけど…
- 242 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/12(月) 23:12
- 心と体がばらばらな私。市井さんたちの話から考えると恐らく
心→今の世界の私
体→前の世界の私
なんだろう。
意外と冷静にしている自分に、結構びっくりした。
あら、何か、前いた世界に戻っちゃってるよ!みたいな。
部屋に入ってドアを閉める。
微かに2人の言い争うような声が聞こえた。私の体はドアの方を
じっと見つめた後、ふーっと溜息をついてドアに背中を向けて
寄りかかった。
…変な感じ。
確かに体は前の世界の私だけど、心は今の世界の私だから
前の私が何を感じてこれらの行動をとっているのか、同じ自分
なのに、さっぱり分からなかった。
- 243 名前:風紀 投稿日:2004/07/12(月) 23:21
- ほいっ、更新終了!!
何か、昨日は「更新するぞぉ!!」って思ってたら
急に睡魔に襲われ…
『書きかけの1レスだけでも!』とか思ってたら、文字がガタガタ
になってしまいました…スミマセン。
>>ファイド 様
いつもありがとうございます☆
はい!とっても楽しかったですよぉ!
「うわぁ、英語だらけ」みたいなw
もし、元気だったら深夜にコソコソと更新しようかなぁ…
では皆さん(?)また明日!!
- 244 名前:風紀 投稿日:2004/07/12(月) 23:30
- あっ、レス返し途中じゃん!!
もう、作者バカじゃないの?!
申し訳ありませんでした↓↓
>>ミッチー様
いつもありがとうございます!
ふふ…松浦さんにはもう少し頑張ってもらいますよ〜!!
>>聖なる竜騎士様
いつもありがとうございます♪
はい〜、松浦さん懐かしいですね☆
実は作者も忘れてたり…(おいっ
大量更新しようとしたのですが、時差ぼけ並びに母親の
「トランクの中身片付けぇ!!」の声で少量に…
松浦さんを出してから気付いた事…
「あ〜、そういえばバレー部のあの人や、バスケ部のあの人は何処へ??」
…いつか出しますね(多分
- 245 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/12(月) 23:41
- 更新乙です。最近知って今日初レスです。自分はバカなのでうまく感想は書けないですが、吉澤さんの言葉に心打たれました。
- 246 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 10:44
- …これは…夢?
さっきまで、私はれいなと喋っていた。
死んだはずの私が、ここにいる。ただ、れいなの態度は
福岡にいる時のれいなと全く同じだった。
というより、私たちは今、福岡に住んでいる。そして私は…
『別に。あんたに用なんかない。』
…私、れいなに何言ってんの?
心では全くそんな事思っていないのに、勝手に言葉が口から出てしまう。
すごく不思議な感じだった。
「…私、死んでないの?」
全く分からない。頭がこんがらがって来るようだったので
私は考えるのをやめ、ジュースでも取りに行こうと台所へ向かった。
- 247 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 10:58
- 「…あ」
台所には先客がいた。
…れいな…
「何?じろじろ見んの止めてくんない?私、見せもんじゃないんだけど。」
さっきと同様、突っかかってくるようなれいなの言葉。
「別に、あんたの事見てるわけじゃないんだけど。ってか、そこどいて
くれない?邪魔。」
けど、れいなに返す私の言葉もやはり挑戦的。れいなは私の方をじろっと
睨むと、無言でそこをどいて台所を出て行ってしまった。
…なんだかなぁ…
おそらくれいなも飲み物を取りに来たのだろう。机の上に残されていた
コップとウーロン茶を見つめながら
(…いつまで続くのかな。こんなの…)
と心の中でそっと呟いた――
- 248 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 11:19
- どうしてこうなったのか分からない。気が付いたら
誰もいない部屋で、自分の手首にカッターを当てていた。
頭ではこれを実行したらどうなるかは分かっている。それでも
手は勝手に動き、刃が手首に押し付けられるのを感じた。
…何か…もう、どうでもいいかも…
一瞬、そんな考えが頭をよぎる。
もし、これが本当に前の世界ならば、この後私は天国と地獄の
狭間で絵里に会い、Bの世界へ行くのだろう。
そこまで考えた時、私はある事に気が付いた。
…私が死んだ理由って…これ?
- 249 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 11:33
- 殆どの記憶が戻った中で、唯一ハッキリしなかった、手首を
切った理由。
もしかしたら、今のこの現状が答えなのかもしれない。
今までは体と心がバラバラだったから、何とか意思を保つ事が
出来たのかもしれないけど、さっき思った
『もう、どうでもいいかも…』
これで初めて心と体が一体化して、実行したんじゃないか。
手首を切ったあの日は今。
つまり、私が手首を切った理由は、もう1人の私が
『どうでもいい』と感じたから…?
「…………」
頭がゴチャゴチャして来た私は手首に添えた刃に視線を向けた。
…このまま生きてたって、お姉ちゃんとも険悪なままだし
絵里にも先輩たちにも会えないんだ。
「もう1回死ねば、また、絵里に会えるかな…」
でも、絵里にも会えて、お姉ちゃんとも分かり合えたところで
お姉ちゃんは死んでしまう。
- 250 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 11:49
- そう考えると、どうしても手が動かなかった。
こう言っちゃ悪いが、お姉ちゃんと絵里、どっちを選んでいいか
分からなかったのだ。
…何か、もう1つきっかけがあれば…
そう思ったときだった。
ガチャッ
…え?
突然ドアが開き、そこに立っていたのはお姉ちゃん。
「ちょ…何やって…」
いつもの人をバカにしたような視線はどこへ行ったのか。
かなり驚いているらしく、その場に固まってしまっている。
かく言う私も、かなりパニックに陥っていた。
…やばいよね。
私は顔を上げる事が出来ず、自分の手首を見つめた。カッターを
持った手が小さく震えているのが分かる。
- 251 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/24(土) 11:56
- …もう、後戻りできないよね…。
その瞬間、私の中で何かがプツっと切れた。
ギュッと目をつぶり、思いっきり手を引く。
「ごめんっ!!」
そう叫んだ時、お姉ちゃんが
「れいなっ!」
…そう、叫んだ気がした――
- 252 名前:ファイド 投稿日:2004/07/26(月) 16:45
- 更新お疲れさまです。
れいな、どうなちゃうのでしょうか?
続き楽しみに待っています!
- 253 名前:風紀 投稿日:2004/07/26(月) 21:17
- ファイド様>>いつもありがとうございます☆
楽しみにしているという言葉が、少々夏バテ気味の
作者にとって一番の栄養です!!
- 254 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/26(月) 21:59
- 頭が痛い…
気が付くと、そこは誰もいない真っ暗な空間。
(…あぁ、戻ってきたんだ…。)
絵里と初めて出会ったこの場所に、私は今、立っている。
「よぉ田中。久しぶりやな」
背後から聞こえた声に振り向くと、あの日と同じ格好をしたつんくさんが
何とも言えないような表情で立っていた。
といっても、サングラスのお陰で実は表情は良く分からなかったのだが…。
「あ、お久しぶり…です。」
「お前、今ここがどこだか分かるか?」
「え…私と絵里が始めて会った所…ですよね?」
「そうやな。まぁ、ここはBの世界の狭間や。つまりここには亀井や
市井達はおらんのや。お前は、一度自分が死ぬ前のAの世界に戻った。
そしてそこで死んだ。んで、Bの世界の狭間に飛ばされてきたわけや。」
- 255 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/26(月) 22:07
- 「はぁ…」
正直、よく分からなかった。何故、Aの世界で死んだ自分が
今度はBの世界の狭間に飛ばされないといけないのか。
「お前がここに飛ばされた理由は簡単や。それは、お前に
見せたいものがあったから。そんだけや。」
「…じゃあ、私がAの世界に戻った理由は?」
そう聞いた時、つんくさんは「あぁ」と低く呟いてから一言
「それは…言えん。」
一瞬、はぁ?!と思って反論しようかと思ったけど、サングラス
越しに見えるつんくさんの目が、暗く沈んでいたようだったから
これ以上は問い詰めないほうが良いだろうと判断して
「…そうですか」
と言うだけに留めておいた。
「…で、私に見せたい物って何ですか?」
話題を変えようと思いながらそう言うと、つんくさんは
「付いてこい」
と言ってくるっと後ろを向くと、スタスタと歩き始めた。
「あっ、ちょっと待ってくださいよ!!」
私も慌てて後を追いかける。
するとつんくさんは突然ピタッと足を止めた。
- 256 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/26(月) 22:15
- 「ええか、田中。よく聞いとけよ?ここで目を瞑って
『監査室』と心ん中で唱えるんや。監査室やで?」
そう言うとつんくさんは、自分で言ったように目を瞑った。
…?
何をしているんだろう。そう思った時だった。
…!!
消えた。さっきまでここにいたつんくさんが跡形もなく消えた。
(え、何?どういう事?)
「落ち着け。」
パニックになりかけた私の耳に届いた消えたつんくさんの声。
「ええな?さっき言ったように目を瞑って『監査室』やで?
ほら、やってみぃ。」
「…」
言われた通りに目を閉じて心の中で『監査室』と呟く。
「…初めてにしては上出来やな」
つんくさんの関心たような声に、そっと目を開けると、そこは
さっきまでいた所とは全く違う、どこかの警備員室のような
所だった。多分ここが監査室なのだろう。
- 257 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/26(月) 22:33
- 「こっち来い」
つんくさんに手招きをされて、部屋の奥へと進む。
するとそこにはずらーっとモニターが並んでいた。でも、全ての
モニターの電源が落とされ、すごく気味が悪かった。
「まぁ、そこ座れ。」
私が椅子に腰掛けるのを確認すると、つんくさんは一番近くに
あった小型のモニターの電源をつけた。ブオンという音を立てて
光ったモニターに映し出された映像。
私はそれを見た途端、思わず息を呑んだ。
「…!!」
「これは…言わんでも分かるよな?何の映像か…」
黒い喪服に身を包んだ人たちと、わけの分からないお経を唱える
お坊さん。かつてのクラスメイトや先生達の姿も見える。
遺影には…当然というか何と言うか私の写真…。
画面の右下に『20036A』と表示されているのが目に入った。
「これは…お葬式、ですよね。私の本当の…」
本当の、というのは変な感じがしたけれど、これは間違いなくAの世界の
私の死後の映像。
- 258 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/07/26(月) 22:52
- みんな泣いていた。クラスメイトも先生達も…
その中で1人、義母親だけが冷めた目つきで私の遺影を見つめていた。
「…あれ…?」
お姉ちゃんがいない。親族達の中にも、学校の人たちの輪の中にも
お姉ちゃんの姿はなかった。
「あの…お姉ちゃん、どこにいるんですか?」
「藤本?あー…ここにはいないかな。」
「はぁ?」
やっぱり、Aの世界の私たちは仲が悪いままで、お姉ちゃんはお葬式の日も
どこかに遊びに行ってたんだ。
それで、義母親は葬儀に出席せざるを得ないから仕方なくあそこにいたと。
「田中…それはちゃうぞ?」
モニターのボタンをカチャカチャと弄っていたつんくさんは、「よし」
と呟いてから私の顔を見た。
「藤本な、お前が死んだ後、ショックで寝込んでたんやで?何度も何度も
ごめんね、ごめんねって謝りながら…」
「…」
「藤本、ずっと後悔してるんやろな。
何で妹に優しく接してあげられなかったのか。何で義母親の暴力から
守ってやらんかったんやろかって――。見たいか?今のアイツの様子…」
反射的にいやいやと、子供のように首を振った私。つんくさんはそんな私の
様子を見ると、再びパチッっとボタンを押し、電源を消した。
…なんでかよく分からないけれど、この時私の中にはAの世界で死んだ事に
対する後悔の思いが、もくもくと湧き上がってきていた―――
- 259 名前:風紀 投稿日:2004/07/26(月) 22:53
- 少ないですが、更新終了です!
- 260 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/27(火) 14:06
- 更新お疲れ様です。
そして、お久しぶりです。
何か今、すごい複雑な事になっていますね。
なんか、田中が再び世界の狭間に飛ばされちゃって。
自分のお葬式を見る気分てどんな感じなんでしょうか?
田中たちが蘇った本当の理由の裏には何かあるんでしょうか?
いや〜〜、気になって大学のテストにも身が入りません。
(いや、もともとやる気はありませんが・・・・・・・・・・)
更新の程、よろしくお願いします。
- 261 名前:ファイド 投稿日:2004/07/29(木) 15:35
- 更新お疲れさまです!
藤本さんつっぱってると思ったけど本当は、
ものすごく優しい人だったんですね。
次回も頑張って下さい!
- 262 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 19:48
- 最近、れいなが変だ。
話しかけても上の空、授業中だって先生の話を全く聞いていない。
「田中。」
今だって、テスト返却で名前が呼ばれているのに、れいなはぼーっと
空を見ている。
「田中。おい、田中っ!」
半分怒鳴り気味の先生。クラス皆の視線がれいなに集中する。
「れいなっ、呼ばれてるよ!」
「…えっ?あ、あぁ…」
私が肩を叩くと、ようやく気付いたらしい。
テストを受け取りながら「スミマセン」と頭を下げている。
先生も何か言っていたようだけど、多分、お姉さんの事もあるから
そう、強く注意する事はできないんだろう。
「…最近どうしたの?」
戻ってきたれいなに訪ねると、れいなは少し表情を曇らせて
「うん…ちょっと、ね…」
――何で、話してくれないんだろう…?
- 263 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 20:23
- 「れいなちゃんが?」
「うん、何話しても上の空。」
私がそう言うとお姉ちゃんは「うーん」と唸りながらベッドに腰掛けた。
「れいなちゃんって、こないだお姉さん亡くなったって子?」
「うん。」
今、ここ…お姉ちゃんの部屋には、加護さん、辻さん、紺野さん、小川さん
そしてお姉ちゃんと私の計6人の人がいる。大して広い部屋じゃないから
一応、この中で一番年下の私はドアの前で立って話をしている。
そうじゃないと、他の5人の座るスペースが確保できなかったのだ
「そういや、真希さんがお葬式行ったって…。なぁ、あさ美ちゃん?」
「はい。」
「でも、お姉さんの事は立ち直ったって言ってたよね?」
小川さんが、私の方を見ながら言った。
私が頷くと今度は辻さんが
「じゃあ、どうしたんだろう。絵里ちゃん、ホントに心当たりないの?」
- 264 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 20:33
- 「…はい…」
「様子がおかしくなったのっていつから?」
「え…っと…」
私がお姉ちゃんとケンカして、家を飛び出した日。
あの日の夜は何ともない、いつもと同じれいなだった。
でも次の日、急にぼーっとし始めて今に至る。
「ふーん…でも、愛ちゃんと絵里ちゃんの事が原因とは考えにくいよね。」
小川さんが呟くように言うと、紺野さんが
「そうですよね。上の空って事は、何か考えてるんですよね、きっと。」
「何か悩んでるって事か…絵里ちゃん、れいなちゃんに聞いてみた?」
「聞いたんですけど…何でもないって言われちゃって…」
私の言葉に5人とも黙り込んでしまった。
そんな先輩たちを見ながら、ふと思う。
本当は心当たりはあった。
でも、あんな話、この5人にしたところで信じてもらえるわけがない。
そう思ったから何も言わなかった。
- 265 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 20:43
- 「あの…すいません、クラスの話し合いの邪魔しちゃって…」
すっかり考え込んでいる先輩たちに声をかける。
元々、先輩たちは文化祭でやるクラスの出し物の話し合いをしに
ここへ来ていた。それを私が…簡単に言うと邪魔して
れいなの話になってしまったのだ。
「いや、気にしなくていいよ。ウチらもれいなちゃんの事
気になるしね。」
小川さんの意見に皆頷いてくれる。私は
「ありがとうございます。」
と頭を下げた後、もうこれ以上ここにいるのは
さすがに迷惑になってしまって悪いと思い
お姉ちゃんにれいなの家に行ってくると告げて部屋を出た。
- 266 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 20:46
- ピンポーン
「…はい。」
チャイムを鳴らして数秒。れいなの声がしたので
「れいな?私。」
「絵里?ちょっと待って…」
しばらくしてカチッと鍵の開く音がして
ガチャット開いたドアから、れいなが顔を出していた。
「どうしたの?」
「何となく。」
入りなよ。と、れいなに促されて中に入る。
そのままリビングに通され、ソファに腰掛けると、れいなは
「ジュースでいいよね?」
と言って台所へ行ってしまった。
「…」
ここに来るのは久しぶりだ。
- 267 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 20:51
- 部屋を見回すと、TVや机の上に写真が飾ってあるのが
目に止まった。でも、れいなのは…殆どない。
「あ…」
電話の上にあったコルクボードに、お姉さんと撮ったのであろう
プリクラが数枚貼られている。
「それね…」
ジュースを運んできたれいなは、私の隣に座りながら話を進める
「お姉ちゃんが事故に遭う前日に撮ったんだ。最初は剥がそうか
と思ってたんだけど、やっぱりそのまま…」
そう言って、れいなは自分の分のジュースが入ったコップに
口をつける。私は、唐突だと思いつつも本題に入ることにした。
「…ねぇ、れいな。」
「ん?」
「…最近、どうしたの?」
- 268 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 21:16
- れいなは「あぁ」と呟くと、テーブルににコップを置いた。
中の氷がカランと乾いた音を立てる。
れいなはしばらく視線を泳がせた後、私の方を向き
「絵里はさ、死んだ事、後悔した事ある?」
「え…?」
思いもよらなかったれいなの質問に、私は返す言葉がなく
ただれいなを見つめている事しかできなかった…
- 269 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 21:20
- <愛視点>
絵里がれいなちゃんの家に行くといって出て行った後も
しばらく考え込んでいた私たち。
ふと、あいぼんが何かを思い出したように声を出した。
「…そう言えば…」
皆の視線が一斉に集まる。
「ウチの姉ちゃんも最近変やったな…」
皆、「なんだ」という顔をする。けれどその中で麻琴だけが
「ひとみ先輩も、最近変かも…。ねぇ、のの?」
「言われて見れば、何かぼーっとしてるかも…」
それを聞いていたあさ美ちゃんまでもが
「あ、真希先輩もそうかもしれないです。れいなちゃんと同じ
で、話しかけても上の空…」
「…」
思わず5人で顔を見合わせる。
「偶然、だよね…だって、あいぼんのお姉さんとか、誰とも
顔見知りじゃ…」
そう明るく言った麻琴に、あさ美ちゃんが
- 270 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/08/13(金) 21:32
- 「ううん、あいぼんのお姉さん、真希先輩と仲いいですよ?」
あ…と俯く麻琴。
「それに、真希さんって、れいなちゃんのお姉さんの同級生や。
ひとみ先輩と真希さんも仲良いし…。」
4人の話を聞きながら、私はふと思った事を口にした。
「じゃあ、もしこれで絵里もなんか変になったら…」
「関係あり、だろうね。」
何なのだろう。
もしかしたら、5人は繋がっていないようで、実はどこか
重要なところで繋がっているのかもしれない。
「愛ちゃん、絵里ちゃんの様子、見とってや。」
「何か、文化祭どころじゃなくなってきましたね。」
「じゃあ、その5人に何か変化があったらまた話し合おう」
結局、何の話し合いもしないまま、皆それぞれ家に帰った。
並んで歩く4人の後ろ姿を見送りながら
――何だかこの5人重大な何かがある
そんな感じがした…
- 271 名前:風紀 投稿日:2004/08/13(金) 21:39
- 久しぶりの上、短いですが更新終了です。
>260 聖なる竜騎士様
ありがとうございます!お久しぶりです。
いや〜、ホント、自分のお葬式見るのって
どんな気持ちなんでしょうね…
裏は…あるんでしょうか?w
大学のテスト、大変でしょうが頑張ってくださいね☆
>261 ファイド
ありがとうございます!
はい、藤本さんはこういう人だったんです。
いや〜まったく予定外の行動で…(ナヌ?!
次の更新まで時期が開くかもしれないですけど
また、ふらりと見に来てくださいね!
- 272 名前:風紀 投稿日:2004/08/13(金) 21:43
- 〜お詫びと訂正〜
(お詫び)
ファイド様
大変申し訳ございません、「様」を抜かしてしまいました。
先ほど、この作者は、いつからこんなに偉くなったんだと
キツク叱っておきました。
(訂正)
――何だかこの5人重大な何かがある
を
――何だか、あの5人には重大な何かがある
です。すみませんでした。
- 273 名前:ミッチー 投稿日:2004/08/15(日) 04:45
- 更新お疲れさまデス。。。
久しぶりに読まさせていただきました。
これからどうなっていくのか、全く予想がつきません…。
続き、楽しみにしてマス。。。
- 274 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/16(月) 02:39
- お久しぶりです。更新お疲れ様です。
皆さん、何か思い悩んでいるようですね・・・・・・。
れいなちゃんだけでなく、吉澤さんや後藤さんもどうしたんですか?
自分が小説内に入って救ってあげたい・・・・・・・、嘘です。変な事言って申し訳ありません。
続き楽しみです。
- 275 名前:ファイド 投稿日:2004/08/16(月) 15:23
- 更新お疲れさまです!
周りのみなさんなかなか勘が鋭いですね。
続き楽しみに待っています。
頑張って下さい!
- 276 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 01:28
- 待ってます
- 277 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/10/05(火) 22:24
- 『死んだ事、後悔した事ある?』
先ほどのれいなの言葉が頭にリフレインする。
それと同時に浮かんでくるのは、あの、れいなの真剣な瞳。
「後悔…か…」
そういえば、ちっとも考えたが事なかった。
自分が一度死んだという事実を見つめるだけで必死になっていて
その死んだ事自体に関しては、考えた事がない。
――私がいない世界ってどんなんだろう…?
ふと、疑問に思った。別に見てみたいとかそいうわけではなくて
自分が死んだ事によって、周りにどんな影響を与えたのかが気になった。
お姉ちゃんはどうしてるか、とか。
さゆは元気になったんだろうか、とか。
そんな事が頭の中をぐるぐる回っている。
- 278 名前:風紀 投稿日:2004/10/05(火) 22:29
- 1レス更新でスミマセン。
レス返しはまた次回…。
- 279 名前:ミッチー 投稿日:2004/10/08(金) 01:58
- をー!!更新されてるぅ!
待ってましたヨ!
続き楽しみにしてるんで、頑張って下さいネ!!
- 280 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/10/16(土) 21:04
- 「吉澤!何ボーっとしてるんだ!」
「…スミマセン。」
5回目。ウチはコーチに背を向け、ふーっと溜息をついた。
どうも練習に身が入らない。
その原因はハッキリしているけれど、どうしようもないんだ。
『夢の内容が気になって…』
こんな事を言ってまともに取り合ってくれる人間なんているのだろうか。
でも本当なんだ。
夢、ゆめ、ユメ…やたらとリアルな夢。
でも、どんな風にリアルなのかと尋ねられたらきっと答えられない。
だってそれは…
- 281 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/10/16(土) 21:44
- 「おい後藤!お前キャプテンだろ?!シャキッとしろ!!」
突然隣のコートから聞こえてきた声に振り返ると、ごっちんが
バスケ部のコーチに「スミマセン」頭を下げていた。
「最近お前ボーっとしすぎだぞ。やる気あんのか?!」
「…」
――同じ事言われてるよ。
ウチはごっちんから視線を逸らすと、2人1組で練習をしている部員達を
見回した。その時だ。
「先輩、最近どうしたんでしょうね…?」
後ろから聞こえた声に、ウチの耳は敏感に反応した。
見ると、加護と紺野が、転がったボールを両手に抱えながらごっちんの事を
心配そうに見ていた。
- 282 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/10/16(土) 21:52
- 体育館にはバスケ部とバレー部が互いのボールが飛んで行かない
ように、コートの分かれ目にネットが張られているのだけど
加護と紺野はネット越しにいるウチに気付いていないようで
そのまま話を続けた。
「この間から変だったけどなぁ…」
「愛ちゃんに聞いたんですけど、あの後、絵里ちゃんの様子も
どこか元気がないような感じだったみたいです。」
「ウチのねーちゃんも何かどっかいつもと違うんや…」
そんな事を喋りながら2人揃って「うーん」と考え込んでいる。
- 283 名前:9.自分がいない世界 投稿日:2004/10/16(土) 22:05
- ――もしかして、ごっちんもあの夢を見ている?
何故か突然こんな事を思った。
ホント、何となくそうなんじゃないかと感じたのだ。
「おい!吉澤…」
「コーチ!」
ウチは、再び近寄ってきたコーチの言葉を遮り
「もう、今日はあがらせていただきます。」
「な…」
面食らうコーチに
「気合の入りきらないまま活動に参加して、後輩、ケガさせたら
いけませんし…家帰って反省してきます。」
と素早く告げると、ウチは部員に声をかける事なく体育館を
後にした。扉を開ける寸前、隣のコートからごっちんの
『今日はもう帰ります』
と言う声が聞こえた―――。
- 284 名前:風紀 投稿日:2004/10/16(土) 22:09
- 少ないですけど更新終了です。
>>ミッチー様
待っていただいてましたか!スミマセン…。
今、諸事情により親の怒りに触れ、なかなかPCを開く隙がなく…
また間が開くかもしれないですが、気長に待ってやってください。
- 285 名前:ミッチー 投稿日:2004/10/23(土) 02:03
- むむむっ!?続きが気になるねぇ。
気長にまってます☆
- 286 名前:ファイド 投稿日:2004/11/03(水) 14:15
- お久しぶりです。やっぱりこの「輪廻転生」は
何回読んでもハラハラします!
いつまででも待ちます!これからも頑張って下さい!
- 287 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 19:14
- ウチは部室に戻り、制服に着替えると昇降口前のトイレに隠れた。
理由はごっちんを待つため。というより、待ち伏せするため。
トイレに篭って10分くらい経っただろうか。そっと入り口から覗くと
丁度、ごっちんが階段から降りて来てウチに気付かないまま
靴を履き替えると、昇降口を出て行った。
「なに、ごっちんも早退?」
偶然を装ってごっちんの後ろから声をかける。振り返ったごっちんは
『何だ、よっすぃか』という顔をして
「まぁ…そんなところ。」
- 288 名前:10. 投稿日:2004/11/06(土) 19:19
- ってか待ち伏せ?と尋ねるごっちんにウチはバレてたのか、と思い
素直に頷いた。
「ごっちん、何で早退したの?」
ウチが聞くと、ごっちんは「それは…」と言ったまま口を噤んでしまった。
ウチが黙っていると、ごっちんはにこっと笑って
「そういえば、よっすぃも早退でしょ?何で?」
形勢逆転、逆に聞かれるとは思わなかった。
「んー…ちょっと気になっている事があって…」
するとごっちんは
「へー…気が合うね。こっちは変な夢見ちゃって。」
――夢、か。やっぱり同じ事考えてるんだろうな。
- 289 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 19:26
- 「それで、ちょっといちーちゃんの所行こうかなって…。」
「いちーちゃんって、市井先輩でしょ?
そういえば、あの人とごっちんってどんな関係があるの?」
結構前から気になっていた事だった。聞くと、ごっちんは先輩と加護の
関係を知らなかったみたいだし、古くからの知り合いというよりは、
一度どこかであった事があるだけの関係なのだろう。
一瞬、何故か不思議そうな顔をしたごっちんが納得顔になり
「あぁ、それね…」
と言いかけた、その時だった。
- 290 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 19:32
- 「あれ?ひとみちゃん?」
「梨華ちゃん?」
聞き覚えのある声のした方を見ると、数メートル先に梨華ちゃんがいた。
格好は何故だろう、いつもの家庭教師スタイル。
「どうしたの?今日、家庭教師ないよね?」
聞くと、梨華ちゃんは少し俯き加減になって
「ううん、今日は勉強教えに来たわけじゃないの。ちょっと気になる事が
あって…それでひとみちゃんに話、聞いてもらおうって思って…」
気になる事…
ウチは思わずごっちんと顔を見合わせる。
――まさか、梨華ちゃんも?
- 291 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 19:36
- ウチとごっちんが顔を見合わせたまま黙ってしまったのを
不審に思ったのか、梨華ちゃんが少し慌てたように
「…あ、もし2人でどこか行く途中だったとかだったら別にいいの。
ごめんね、なんか邪魔しちゃって…」
そういう事じゃない、とウチが口を開きかけた時だった
「気になる事の内容って、夢?」
ごっちんが梨華ちゃんの瞳を見つめながら聞いた。その発言に梨華ちゃんは
そうという驚いたようで
「え、なんでそれを…」
「やっぱりそうなんだ。ね、それ詳しく教えてくれる?」
呆然としている梨華ちゃんの腕を掴み、ごっちんは近くの公園へ彼女を
引っ張って行く。ウチも慌てて後に続いた。
- 292 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 21:11
- 「ゲンジツム?」
どこか外国人のイントネーションのような矢口さんの言葉。
「うん、現実夢。」
安倍さんが正しい発音をしてくれる。そして
「何、それ。」
飯田さんの、もっともな質問。しかし、尋ねられた安倍さんは困った顔
をして、助けを求めるように福田さんを見た。
「…私も、知らない…」
福田さんは申し訳なさそうに言って保田さんを見る。しかし彼女も
「さぁ…」
全員が何の事なのか分からない、現実夢というもの。
結局、6人分の「訳が分からない」という視線が、中澤さんと平家さんに
注がれた。
- 293 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 21:24
- ここは監査室の隣にある、休憩室のような所。
私たちはソファに腰掛け、ただぼんやりとして時間を過ごしていた。
そこへやって来た中澤さんと平家さんは、ぐったりとした私たちを見ると
すまなそうに頭を下げてから
「下の6人の事なんやけど…」
一瞬だけ、部屋の空気が変わった気がした。飯田さんが2人を急かすように
「何なの、6人の事って…?」
「全員が、現実夢を見た…というより、上が勝手に見せたんや。」
そこで、矢口さんのさっきの発言に戻る、という訳だ。
「現実夢っちゅーのは、簡単に言えばもう1つの現実世界や。」
- 294 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 21:38
- …ちっとも分からないんですけど…?
私の視線に気付いたのか、中澤さんが苦笑いをしながら
「って言っても分からんよなぁ…んー…何て言ったらいいんやろ。
あー…ようするに、それぞれの元の世界の続きを見てるって事や。」
「つまり、全員が自分の死んだ後の世界を夢で見ているって事?」
なっちは物分りが早いなぁ、という風に微笑む中澤さん。
私もやっと意味が分かった。
- 295 名前:10. 正しい事 投稿日:2004/11/06(土) 21:42
- 「藤本ならすぐ分かると思ったけどなぁ…。
この前、お前も見たやろ。現実夢。」
「え?」
いつの事だろう。私が「?」という顔をしていると中澤さんは
何かを平家さんに耳打ちされてから顔をしかめ
「何や、お前覚えてないのか…」
「はぁ…」
まったく…と溜息混じりに呟く中澤さん。
でもそれは私にではなく、誰か別の人に対する溜息のようだ。
「で、その現実夢がどうかしたの?」
飯田さんが聞くと、中澤さんはそうだったと言ってから
「あんたらも、見るぞ。」
- 296 名前:風紀 投稿日:2004/11/06(土) 21:46
- 久々の更新です♪
>ミッチー様
ありがとうございます。無事に親の怒りもなくなり、無事にPC解禁
となりました。年越す前に終わらせるのが目標だったのですが…
無理ですねw
>ファイド様
ありがとうございます。
書き込む事のできない学校のPCからコレを見ながら、早く更新したいな〜
と思っていました。更新スピード、今度こそ上げたいです☆
- 297 名前:ミッチー 投稿日:2004/11/07(日) 22:04
- 更新お疲れさまデス。。。
PC使えるようになってよかったですネ!
続きがすごく気になります。
頑張って下さい。。。
- 298 名前:風紀 投稿日:2004/12/30(木) 14:43
- こんにちは、作者です。
さて、この輪廻転生ですが、すでに2ヶ月近く放置してしまって
大変申し訳ございません。というのも、当初考えていたストーリーに
今後の話の展開上不都合な欠陥が発見され、書き直しに手間がかかって
しまっているのです。読んでくださっている数少ない読者様には申しわけ
ないのですが、更新まではまだ当分かかりそうです。
でも、最初に宣言したとおり、放置は絶対しないのでそれまで待っていて
ください。よろしくお願いします。
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/02(日) 23:03
- 了解
納得いくまで頑張ってね
気長に待ってるよ
- 300 名前:ミッチー 投稿日:2005/01/04(火) 04:29
- 分かりました。待ってます!
あせらず行こう☆
- 301 名前:風紀 投稿日:2005/02/23(水) 18:19
- こんばんは。風紀です。
さて、そろそろ2月も終りとなりますが、輪廻転生はもう暫くお待ちください。代わりにと言ってはなんなのですが、完結済みの短編をupしようかと思います。もし、読んでやるぜという心優しい方がいれば言ってください。数日でupします。
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/24(木) 00:49
- はい(^_^)/
読ませて下さい。お願いします。
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/25(金) 15:28
- 読みたいです。
- 304 名前:風紀 投稿日:2005/02/26(土) 22:32
- では、完結済みの…の前に作者がこのサイトを発見して
間もない頃の今までPCで眠っていた超短編を1つ…
- 305 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:34
-
合図
- 306 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:34
- 「よーい…」
審判がピストルを鳴らす・・・その前に走り出してしまった。
「……」
2回目のフライング。
私は溜息をつきながらスタートラインに戻る。
新人陸上大会。
私は八百メートルのリレーの選手の第一走者として
この場所に立っていた。
もともと陸上なんて興味はなかった。
でも、走るのは得意な方だったし、何より幼馴染で先輩
でもある絵里が、この部のマネージャーをしていたから
という理由で入部した。
――ヤバい、どうしよう・・・
自分でもかなり焦っているのが分かる。
私の後のメンバーはみんな、先輩たち。
今更順番を入れ替えてもらう事などできるわけがないのは
分かっている。
かと言ってフライングを恐れて出遅れるわけにもいかなかった。
- 307 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:35
- 先程まで行われていた百メートル競技での事が頭を過ぎり
思わず目を瞑る。
私はそこで規定数である3回のフライングをしてしまい、失格。
一度も走らずに終わっていた。
先輩たちには色々と慰められたけど、私はすっかり自信を
なくしていて、本気でこの場から逃げ出したいと考えていた。
――怖い…こんなんじゃ、走れない…
自分がこんなにプレッシャーに弱い人間だとは思わなかった。
深呼吸をする自分の膝が、ガクガクと震えている。
――ダメ…ホントに逃げ出したい…
それでも再びスタートの体勢をとった、その時だった。
「え…?」
- 308 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:36
- 絵里が、私のすぐ近くまでやって来て、大きく手を伸ばす。
その手には、私がよく使っている白いタオル。
「よーい…」
絵里がタオルを振り上げたのと、ピストルが鳴ったのは
同時だった…と思う。
私はピストルの音が全く聞こえず、ただタオルの動きだけを
見て走り出した。
「れいなっ!頑張れ!!」
後ろから聞こえた、絵里の声。
今、自分が何位なのかは分からない。
でも、無我夢中でひたすら走った。
「もう少しだよ!」
すぐ近くまで迫った先輩が叫ぶ。
私は必死で腕を伸ばし、バトンを差し出す。
そして、一瞬だけ先輩と私が一本のバトンで繋がり
私はそれを確認するとバトンから手を離した。
「よく頑張った!」
- 309 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:39
- そう言って先輩は走り出す。
あっという間に小さくなっていく先輩の背中を見ながら
私は急に力が抜けて、ヘナヘナとその場にしゃがみ込んで
しまった。すぐに絵里が駆け寄って来る。
「れいな、大丈夫?」
その声を聞いた時、私の中で緊張の糸がぷつっと切れたのか
じわっと目頭が熱くなって来た。
「よしよし、頑張ったね。」
絵里は私の頭を撫でながら、立てる?と私の腕を取る。
頷きながら立ち上がると、絵里は
「よし、おいで。」
と私をベンチまで引っ張って行った。
さっきまで腕を掴んでいた右手は、いつの間にか私の左手と
しっかり繋がっている。
伝わってくる絵里の手の温かさが、何だかほっとした。
「おかえりー」
「頑張ったねー」
ベンチに戻ると、先輩たちから声をかけられた。
- 310 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:40
- 「れいなのスタート、良かったよ〜」
そう言いながらペットボトルを差し出す絵里。
先輩がにやっと笑って
「突然ベンチ出て、何しに行くのかと思えばまったく…」
「気のきいた事しちゃって。」
絵里が顔を真っ赤にして先輩たちを見る。
そんな絵里を見ていたら、何だか私まで恥ずかしくなって
きてしまった。
「絵里。」
きゃあきゃあと絵里と私を冷やかす先輩たちの声を
気にしないようにしながら私は絵里に小声で呼びかける。
絵里は私を見た。
そして、恥ずかしそうに口をもごもごと動かして何かを呟く。
「ん…?」
- 311 名前:合図 投稿日:2005/02/26(土) 22:41
- 小さく、でもはっきりと聞こえたその言葉に、私の頬は
ますます熱くなってきた。
でもそれに負け劣らず、絵里は頬を染めて俯いている。
「…ありがとう。」
私は、そっと絵里の耳元に口を近づけてそう囁く。
くすぐったそうな絵里の笑顔に、自然に笑みがこぼれた。
『れいなだったから、だよ?』
- 312 名前:風紀 投稿日:2005/02/26(土) 22:42
- あぁ、駄作…精進します。
突っ込みたい事は色々あるかと思いますけど
そっとしておいてやってくださいww
- 313 名前:風紀 投稿日:2005/02/27(日) 22:01
- 何となくage
- 314 名前:ミッチー 投稿日:2005/02/28(月) 16:04
- 更新お疲れ様デス。。。
もう1つの方も、楽しみにしてます。
- 315 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:33
-
<絵里side>
- 316 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:34
- 妙な疲れを感じたまま、れいなの家から帰って
お姉ちゃんの言葉を聞き流しながらベッドに横になって
―――そこまでは、覚えている。
けれど…ここは、どこだろう。
いや、どこだろう?なんて、考えなくても分かっていた。
真っ白い世界に、わざと色彩を加えたような悲しい空間。
一般病棟とその病棟を区切る役目を果たす扉に貼られている
暗さを無理矢理に封じ込めたような、キャラクターのシール。
どれもこれも、見覚えのあるものばかり。
『きっとまた、過去に飛ばされたんだ』
そう思った。
- 317 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:35
- 「絵里、何してるの?早く戻らないと怒られちゃうよ?」
ほら、聞き覚えのあるその声。
今と違って、元気に歩き回っていた彼女の声。
そして、そのすぐ近くには私の姿―――――あれ?
さっきの声の主…さゆは、じっと私を見つめている。
周りを見渡しても『あの頃の自分』はいない。
「え、さゆ…見えるの?私のこと…」
思わずそう呟くと、さゆは首をかしげ「何言ってるの、絵里」
と可笑しそうに笑った。
訳が分からないまま、近くにあったピアノに映った
自分の姿を見て、私は思わず、声を上げそうになった。
だって…
『今の自分』が『あの頃の自分』になっていたのだから……
- 318 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:36
- 「絵里……本当に、ここ、好きだよね…」
さゆが、私にゆっくり近寄りながら言う。
ここ…と私は、首だけ動かして、周りを見渡した。
大分古いのであろう、所々、色の剥げたピアノ。
壁に寄せられた本棚に入っているのは、幼児用の絵本から
中学生が読めるようなものまで、多種多様。
遊び終わって、片付けなかったのだろうか。
いくつか転がったぬいぐるみや、創り途中の積み木の山。
さゆが、その中の一つを手に取り
手近にあったおもちゃ箱に放り込む。
「私たち、もう、ここで遊ぶような年齢でもないけどね」
- 319 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:36
- 『娯楽室』
そんな名前の付いたこの部屋で、小さい頃はよく遊んでいた。
正式な学校なのかは、今でも分からないのだけれど
私は小学校の低学年は、殆ど、院内学級という所にいた。
さゆや、他にも長期で入院している子たちが
何人もいて、それなりに楽しかったのを覚えている。
「まだ、あんまり出歩いたらいけないんだからさ。戻ろう?」
右手に感じるさゆの温もり。
院内学級に通うより、もっと昔。
まだ、自分の病気のことも知らず
病院という狭い世界が全てだと思っていた頃。
自由時間が終わって、お昼の時間になっても
私はここから離れなくて。
そんな私を、同室だったさゆが、よく迎えに来てくれた。
まるで今のように、二人で手を繋ぎながら、部屋に戻った。
- 320 名前:輪廻転生 投稿日:2005/08/07(日) 16:37
- 廊下を歩きながら、さゆは
「まさか、また戻ってくるなんてさ…」と
小さく呟いた後、私の視線に気付いて
「あ、ごめん……」と申し訳なさそうに俯いた。
『また、戻ってくるなんてさ…』
つまり、今はきっと、私が今までいた世界より一年ほど前。
この入院生活が終わった後、私は復学して、れいなに会う。
いやにハッキリしている自分の意識と過去の記憶。
『これは夢じゃない』
それは私の中で、どこか確信に近い思いだった―――
- 321 名前:風紀 投稿日:2005/08/07(日) 16:41
- こんにちは。
何とか帰って来れました作者です。
『お待ちください』と言って、駄作にもほどがある短編を書き逃げした後
しばらく行方を晦ませていた作者です。
読者の皆さま、お待たせして、大変申し訳ありませんでした。
また、止まったりすることもあるかもしれませんが
とりあえずは復活です。
少量ずつの更新となると思いますけれど
これからも、どうぞよろしくお願いします。
- 322 名前:ミッチー 投稿日:2005/08/08(月) 00:24
- うをー!更新されてる!!
続き読めて嬉しいです!
次回も楽しみに待ってます☆
- 323 名前:みちる 投稿日:2005/09/01(木) 23:04
- 更新お疲れ様です。
作者さまが書かれてる小説が本当に好きです!
次回の更新も楽しみにしています!
あと、もう一つのほうを近いうちに更新するつもりはありませんか?
忙しいのはわかりますが、
どちらかというと、もう一つのほうがもっともっと好きですので。
失礼の言い方ですみませんが、
そちらのはとても期待しています。
更新を期待して待っています。
がんばってください!
- 324 名前:じゅん 投稿日:2005/09/06(火) 12:45
- 更新待ってます。
- 325 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/16(金) 23:15
- 続きが楽しみです。作者さんガンバって下さい。
- 326 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/17(土) 01:59
- ↑
ageないで
期待した_| ̄|〇
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 00:12
- まだかな〜?
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 00:12
- まだかな〜?
- 329 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 00:13
- まだかな〜?
- 330 名前:サンボ 投稿日:2005/10/16(日) 08:20
- 更新楽しみに待ってます。
- 331 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/24(木) 01:27
- まだかな
- 332 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:25
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 333 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/22(日) 23:53
- お願いしますm(_ _)m続き書いて下さい。ものすごく続きが気になります。
- 334 名前:風紀 投稿日:2006/02/14(火) 17:29
- すみません。半放棄中の作者です。
一応、生きているということだけ連絡しておきます。
- 335 名前:白猫 投稿日:2006/07/23(日) 23:49
- 待っております!
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