ことミック・ワールド
- 1 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/12(月) 14:57
- 紅白も終わり、除夜の鐘が鳴り響く中、
亜弥と美貴の超多忙の年が暮れて、また
新しい年が始まった。
久しぶりに会った亜弥と美貴は、紅白の後、
眠らずに初詣に行く事にした。
もちろん、人気者の2人だから有名な神社は
避けて、亜弥の家の近所の小さな神社へ参った。
そこの神社にも、かなりの人出があったが、
二人共、ニット帽を深くかぶり、毛糸のマフラーを
鼻の当たりまで巻いていたので、誰も2人だとは
気付かれなかった。
亜弥と美貴は、お賽銭を投げてお祈りをする。
- 2 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 15:03
-
亜弥「ねえ、美貴ちゃん何をお祈りしたの?」
美貴「・・・今年も元気に歌えますようにって。」
亜弥「それだけ?」
美貴「後は・・・秘密。」
亜弥「え〜、教えてよ〜」
美貴「亜弥ちゃんこそ、何をお祈りしたの」
亜弥「それは・・・秘密。」
美貴「あー、ズルイ〜、教えてよ。」
亜弥「じゃあ、一緒に言おう。」
亜弥・美貴「これからも、私達2人が仲の良い
友達で居られますように!」
亜弥「わあー!同じだー!!」
2人は、飛び切りの笑顔で手を取り合った。
- 3 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 15:06
- 帰り道、2人は体をピッタリと寄せ合い、
お互いの手を握り合って歩いた・・・。
美貴「でも、変だよね2人共おみくじが
大凶≠セなんて・・・」
亜弥「だよね〜、やぐっつあんならともかく、
なんで、私達2人が大凶≠引かなきゃ
ならないのよ〜」
美貴「ちょっと、亜弥ちゃん、どういう意味よ。
でも、大凶なんてめったに出てこないのだから
矢口さんも言ってたけど、ある意味幸運だよ。」
亜弥「そうだよね〜。『雨降って、地固まる』
だね〜、あれ、ちょっと違うか〜」
二人共、知る由もなかったが、それがこれから
起こる事の前触れだったのかもしれない。
- 4 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 20:47
- 2人は、亜弥の家に帰るとコタツに入って、
のんびりと足を伸ばした。
時刻は深夜だが、美貴は娘。のメンバーと
一緒に元日の朝からテレビに出演するし、
もちろん、亜弥も仕事が待ち受けている。
亜弥「3日からは、ハロコンで一緒にお仕事が
出来るね。」
美貴「そうだね。」
亜弥「美貴ちゃん・・・」
亜弥は、姿勢を正して言った。
美貴「何よ、あらたまって。」
- 5 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 21:02
- 亜弥「新年、明けましておめでとう。
今年も宜しくお願いします。」
美貴は亜弥が差出した手を握りながら、
美貴「おめでとう。こちらこそ、宜しくね」
手を離すと美貴は亜弥のあらたまった顔が
おかしくて、思わず笑い出した。
亜弥も笑いながら、コタツの向かい合わせに
座っていたのを、立ち上がると美貴の隣に
移動すると、体をくっつけてくる。
- 6 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 21:26
- 美貴が、コタツに置かれたミカンに手を伸ばして
皮をむき始める。
亜弥「私も欲しいなァ」
美貴が皮をむいたミカンを差出すと、
亜弥「ダメ〜、白い筋も全部取ってェ〜」
美貴がキレイに筋を取ってミカンを差出すと、
亜弥は口を、あ〜んと開ける。
美貴は、その口の中にミカンを入れてやる。
亜弥「美味しい・・・」
美貴は笑って、そんな亜弥を見つめた。
- 7 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 21:44
- 亜弥「そうだ、去年の垢を流さないとね。
美貴ちゃん、お風呂、一緒に入ろ。」
美貴もうなづいて、一緒にお風呂に入る
ことになった。
2人は、もう何度も一緒にお風呂に入っている。
美貴が、浴室に見に行くと丁度いい湯加減だった。
亜弥「美貴ちゃん、先に入ってて。すぐ行くから」
美貴は服を脱いで1人で浴室に入った。
さすがに、寒さで体が震える。
美貴は洗面器でお湯を体にかけた。
その時、異変が起きた。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 22:47
- ぬおー いいとこで!続きがきになるよー
- 9 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 23:18
- どこか、遠くの方から、ゴォォォォ・・・という、
地鳴りのような音が聞こえて来て、ハッと美貴は
顔を上げた。
ゴオオオオオーッ!!、と、音が大きく鳴る。
突然、激しい揺れが襲ってきた。
浴室に居た美貴は、キャアッ!!と頭をかかえて、
うずくまる。
数秒ほど、ユサユサと浴室全体が揺れていたが、
やがておさまる。
恐る恐る、顔を上げた美貴は、外の脱衣所に
いるはずの亜弥に声をかけた。
美貴「亜弥ちゃん!、大丈夫!」
返事は、無かった。
- 10 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 23:40
- 突然の激しい地震に、気が動転していた美貴は
裸のまま、浴室を出て脱衣所を抜け、居間に続く
ドアを開けて、二、三歩ほど出ると、
美貴「亜弥ちゃんー!!!」
と、大きな声を上げた。
その声を聴いた、亜弥の母親が姿を現した。
美貴「アッ、お母さん!亜弥ちゃんは・・・」
母「・・・見かけ無いけど」
美貴「今、大きな地震が・・・」
母「地震?変ね、地震なんて、無かったけど」
- 11 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/12(月) 23:58
- 美貴「そんなバカな!今、大きな地震があって、
あんなに揺れてたじゃないですか!」
亜弥の母親は、美貴から眼をそらしながら言った。
母「美貴ちゃん・・・そんな格好でいると、風邪を
引くわよ・・・」
エッと、美貴は自分が、まっ裸なのに気がついた。
寒さと恥ずかしさで、美貴は体を震わせながら、
あわてて風呂場へ戻った。
美貴は首をひねった、あんなに浴室が揺れるほどの
地震なのに、どうして亜弥の母親は気がつかないのか。
それに、亜弥は何処へ行ってしまったのか・・・。
- 12 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 00:28
- 浴室のドアを開けた美貴は、思わずギョッと
なった。
亜弥が、湯船に浸かっていた・・・。
美貴「亜弥ちゃん、いつの間に・・・」
亜弥は、ちょっと意外そうな顔をした。
あや「あら、ミキ・・・来てたの」
美貴「・・・来てたの、じゃないわよ!私が
あんなに大声で呼んだのに、返事もしないで
ちゃっかり、お風呂に入ってるなんて・・・」
あや「ふ〜ん。メンゴ・・・」
- 13 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 21:29
-
亜弥は、突っ立っている美貴の腕を取ると、
あや「風邪を引くよ、早く入れば。こんなに
鳥肌になって・・・」
美貴は地震のせいで、裸でウロウロしたため、
体が芯から冷え切っていて、震えが止まらない。
亜弥の向かいに腰を降ろすと、ようやく、人心地が
つく。
バスタブはそんなに狭くはないが、2人が入ると
足が触れる。
亜弥が立ち上がったので、出るのかと思えば、
美貴に近づくと、当然のようにその膝に腰を
降ろした。
- 14 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 21:49
-
美貴「亜弥ちゃん・・・」
美貴は、ちょっとドギマギして手のやり場に困る。
亜弥はその美貴の両手を取ると、自分のお腹の
当たりにまわし、自分の手を重ねる。
そして、首をひねって美貴の顔を見るとニッコリと
笑った。
美貴は、亜弥に見つめられると、ちょっと恥ずかしく
なり、視線をそらした。
亜弥は、体を横向きにすると、美貴にすがるように、
体をピッタリとくっつけてくる。
美貴は、思わず亜弥の前にまわしていた手を
はずすと体をそらした。
亜弥の顔をまともに見られない。
- 15 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 22:00
-
亜弥は不満そうに唇をとがらかした。
あや「今日のミキは変、一緒にお風呂に入るのは
初めてじゃないのに・・・」
美貴「そうだけど・・・」
いつもは一緒にお風呂に入ると、にぎやかに
お喋りをしながら、ふざけてお湯を掛け合ったりして
楽しいものなのに、今夜の亜弥はいつもと違って
大胆なことをするので、美貴は戸惑った。
美貴「亜弥のほうこそ、変だよ・・・」
あや「そんなことないよ!」
- 16 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 22:20
-
亜弥は、また美貴の顔を覗き込む。
美貴が顔をそらすと、
あや「ほら、ちゃんとこっちを向いてよ!」
美貴が顔を向けると、亜弥は顔を近づけてくる。
とたんに、亜弥はグイと近づくと美貴の鼻を
いきなりペロリと舐めた。
美貴は驚いて、ワアーッ!!と、声を上げて
のけぞる。
亜弥は、一瞬あっけにとられていたが、すぐに
大声で笑い出した。
美貴は胸を抑えて笑い転げている亜弥に、
ムッとして、
美貴「なんで、笑うのよ!」
- 17 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 22:36
-
あや「だって、ミキの驚いた顔が可笑しいんだもの」
亜弥は、笑いすぎて苦しそうにお腹を抑えている。
美貴はそんな亜弥を見て、やはりこの亜弥はいつもの
亜弥だと思って少し安心した。
あや「あ〜、可笑しかった。もうあったまったでしょ、
出て、洗いっこしよう」
美貴「エーッ、洗いっこ!」
あや「なに、驚いてるの、いつもやるじゃない」
美貴「そりゃ、そうだけど・・・」
お互いの背中を流したりはするけど、それが
洗いっこと言えば言えないこともないかと
美貴は思った。
- 18 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 22:50
-
亜弥は、美貴の体にボディソープを塗りたくり
泡だらけにすると、スポンジでくまなく洗って
くれた。
時々、亜弥の手つきが気になったけど、
なんとか洗い終わり、亜弥にうながされて
亜弥の背中を流して上げる。
これなら、洗いっこも悪くないなと美貴は
思う。
終ると、また2人でバスタブに浸かる。
今度は、美貴の膝で体をあずけてくる
亜弥にも、多少は気にならなくなる。
- 19 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 23:31
-
風呂から上がったあやは、上機嫌で鼻歌を
口ずさんでいる。
美貴「亜弥ちゃん、その歌聴いた事ないけど、
新曲?」
あや「そうだよ、とっても良い曲だよ。」
美貴「そうだね・・・」
朝早いので、すぐに寝ることにする。
3時間ぐらいしか眠れないことになる。
亜弥のベッドに一緒に寝る事になる。
お泊りする時は、必ずしも一緒に寝る
わけではないけど、それは気には
ならなかった。
- 20 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/13(火) 23:49
-
髪を梳かし終えて、ベッドにやって来た
あやが、パジャマの上だけしか身につけて
ないことに気がつく。
それを美貴が言うと、
あや「この頃は、いつもこうだよ」
美貴はあまり考えずに自分を納得させる。
そのまま2人は仲良く枕を並べて眠りについた。
横向きに、うとうとしていた美貴は、あやが
美貴の背中にぴったりと抱きついているのに
気がつく。
あやは寝息を立てていて、無意識の行動
らしかった。
あやの片手は美貴の前にまわされていて
美貴の胸の当たりを抑えてくる。
美貴はそっと、その手をはずした。
その夜は、ほとんど眠れなかった・・・。
- 21 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 00:09
-
1月3日のハロプロ公演の初日、当日のリハで
ちょっとした問題が発生した。
あやの新曲のリハの最中に、あやの覚えていた
歌詞と振り付けの一部が、実際の歌詞と振りと
食い違うことに、つんくと夏先生は気がついた。
あやは、つんくと夏先生から教わったとおりだと
言い張って、2人を困惑させた。
2人は、会場の客席で話し合った。
つんく「実は夏先生・・・あの亜弥が覚えていた
歌詞は、俺が一度は考えたものなんや・・・」
夏「どういうことなの・・・」
- 22 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 00:31
-
つんく「詞を考えた時、どちらにするか迷ったん
やけど、結局今の歌詞にしたのだけど、捨てた方の
歌詞を、亜弥が歌ってるのを聴いて驚いたんや・・・」
夏「亜弥ちゃんには、その捨てた歌詞は・・・」
つんく「そっちは、ひと言も教えてない・・・」
夏「私も同じよ、どちらにするか迷ったあげく、
今の振付にしたの、それが亜弥ちゃんは
私が捨てた振付で踊っているの・・・しかも、
完璧によ。」
つんく「もちろん、その振付は亜弥には・・・」
夏先生は首を振った・・・。
- 23 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 00:45
-
つんく「去年までのリハでは、ちゃんと教えたはず
なんやけど・・・」
2人は舞台にいる、あやを眺めた。
結局、歌詞の方は今さら変えるわけにいかないので
今の歌詞を覚え直して貰うしかなかった。
振付は、夏先生の決断であやの覚えていたとおりの
もので行く事になった。
夏「だって、亜弥ちゃんの振付の方が良いもの。
変な言いかたね、実際は私が考えてたものなの
だけど・・・」
- 24 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 01:00
-
ハロプロコンサート初日が幕を開けた。
3曲目のモーニング娘。の唄が終った時、
2人の娘。メンバーの卒業が発表されて、
場内は騒然となって、波乱含みの幕開けと
なった。
やがて、松浦亜弥の出番が来た。
最初に新曲が歌われる。
つんくが危惧してた通り、あやはつんくが
捨てた歌詞を歌い、振付は覚えていたもの
だった。
袖でつんくは、あちゃーと頭をかかえた。
夏「やっぱり、あの振付の方が良いわ」
夏は、つんくを見た。
- 25 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 01:11
-
つんく「わかったよ・・・あの歌詞のほうが
良いことは認めるよ。しかし、なんでなんや、
どういうことなんやろ・・・」
夏「きっと、亜弥ちゃんは、もう1人の私とあなたに
教わったのよ。」
夏先生は、冗談めかして言った。
つんく「すると、あの亜弥は・・・」
夏「あの亜弥ちゃんも、もしかすると
もう1人の亜弥ちゃんかもしれないわよ」
つんく「そんなアホな・・・」
つんくは笑いながら言った。
- 26 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 16:34
-
時間は、少しさかのぼって元旦の深夜の謎の
地震の地点に戻ります。
亜弥「そうだ、去年の垢を流さないとね。
美貴ちゃん、お風呂、一緒に入ろ」
2人は一緒にお風呂に入ることになり、
美貴が先に浴室に行き、亜弥は少し遅れて
浴室の外の脱衣所で、服を脱いでいた。
ガラス戸の向こうに美貴の白い姿がぼんやり
映っていた。
亜弥が裸になった時、その異変が起こった。
- 27 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 16:56
-
どこか遠くの方から、ゴォォォォォ・・・・と
地鳴りのような音が聞こえて来た。
ゴオオオオオーッ!!、と、音が大きく鳴る。
そして、突然、激しい揺れが襲ってきた。
亜弥は、立って居られないほどの揺れに
悲鳴を上げて頭をかかえてうずくまった。
数秒ほどして、揺れはおさまった。
亜弥は恐る恐る頭を上げた。まだ恐怖で
心臓がドキドキしている。
美貴のことが心配で、すぐさま浴室のドアを
開けた。
そこには、誰もいなかった・・・。
- 28 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 17:18
-
亜弥「美貴ちゃん!?、何処に行ったの??」
見回したが、浴室に人が隠れる場所など無い。
亜弥はバスタブの中を覗きこんだ。
亜弥「もしかして、お湯の中に沈んでたりして、
そんなわけ無いか・・・。」
亜弥は、気が動転したまま、脱衣所を抜け、
ドアを開けて、2、3歩外へ出て、居間の方へ
向かって大声で叫んだ。
亜弥「美貴ちゃんー!!!」
その声を聴いて、亜弥の母親が姿を現した。
- 29 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 17:35
-
亜弥「アッ、ママ!美貴ちゃんは?」
ママ「・・・見かけ無いけど」
亜弥「今、大きな地震があったでしょ!!」
ママ「地震?、寝ぼけてるんじゃないの、
地震なんて無かったわよ。」
亜弥「ウソー!、寝ぼけてるのはそっちよ!
今、ユッサユッサ揺れるほどの地震が
あったじゃない!」
ママ「あんたね〜、そんなスッポンポンで
寒くないの・・・」
亜弥は、自分がまっ裸なのに気がついた。
亜弥「イヤ〜ン!」
- 30 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 17:56
-
ママ「なにがイャ〜ンよ、早くお風呂に入らないと
風邪を引くわよ」
亜弥は脱衣所に戻ると、首をひねった。ママは、
あんなに揺れるほどの地震に気がつかないなんて
どうかしてると思う。
それに美貴はいったい何処へ行ってしまったのか。
多分トイレでも行ったのだろうと思い、容器に入った
入浴剤を手に取った。
今、亜弥は入浴剤にハマッているのだ。
- 31 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 18:06
-
亜弥は、ガラス戸を開けて浴室に入った。
亜弥「ワォーッ!!!」
亜弥は驚いて、持っていた入浴剤を放り出した。
そこには、美貴がバスタブに浸かっていた・・・。
ミキ「あや、遅いじゃない・・・」
美貴は、何食わぬ顔で亜弥を見上げている。
- 32 名前:名無し作者(tuyoshi) 投稿日:2004/01/14(水) 20:20
- tuyoshiと申します。
この小説は、案内板の「ボツネタUPスレ 」の
企画として書きました。
あやみきのパラレルワールドをリクエストされたのを
受けて書き始めました。
なお、企画の一環として、複数の作者が同じテーマの
あやみきを書く予定なので、同じテーマのあやみきを
見かけましても、パクリではないので誤解なきよう、
お願いします。
- 33 名前:ss.com 投稿日:2004/01/14(水) 21:12
- はじめまして。案内板を見て、いつ始まるかと期待してました。
いい感じだと思います。期待してます。
頑張って下さい。
- 34 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/14(水) 23:52
- 亜弥「み、美貴たんッ、いつの間にお風呂に
入ってたの・・・」
ミキは、亜弥が放り出してお湯に浮いていた
入浴剤の蓋と取ってお湯に入れながら、
ミキ「なによ、落ち着きなさいよ。それより
早く入りなさい、風邪を引くわよ」
亜弥は体の震えに今さらながら気がついて、
お湯に入った。
芯から冷えきっていた体にお湯の暖かさが
しみ入るようだった。
- 35 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 00:23
- ミキは亜弥に近づいて来て、肩に手をまわした。
ミキ「可哀相・・・こんなに体が冷えちゃって。」
亜弥は、問いただそうとした言葉も忘れて
ミキの顔を見た。
ミキは亜弥の肩を抱いて引き寄せると、
亜弥のおでこに唇をあてた。
亜弥は一瞬うっとりとなったが、すぐに我に
かえった。
亜弥「ちょっと、美貴ちゃんたらなんか変・・・」
ミキ「何言ってるの、どこが変って言うの」
亜弥「だって、そんな顔でおでこにキスした
ことなんかないよ・・・」
- 36 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 00:49
- ミキ「そんな顔って、どんな顔よ」
亜弥「その・・・Gacktさんみたいな
ちょっとキザっぽい顔」
それを聞いてミキは可笑しそうに笑い出した
ので、亜弥は少し安心した。
亜弥「ねえ美貴ちゃん、あの目玉の運動会、
やって見せて」
すると、ミキは自分の眼の黒目が、片目だけ
移動して、次に、もう一方の黒目が移動すると
いう、特技を披露する。
亜弥は大喜びで手を叩いた。
- 37 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 01:13
- 2人は、バスタブから上がり体を洗った後、
亜弥がシャンプーで髪を洗おうとすると、
ミキが洗って上げると、亜弥の髪にシャンプーを
ふりかけると、ゴシゴシと洗い始める。
亜弥は初めてのことなので、最初戸惑ったが、
ミキの強い力で髪を洗われるのは、気持ち良い
ことに気がついた。
亜弥「アッ!シャンプーが眼に入ったよ〜」
ミキ「だったら、眼をつぶってると良いよ」
亜弥「ウン。」
- 38 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 01:22
- ミキがさらにゴシゴシと髪を洗ったので、
亜弥の顔が上向きかげんになった。
その時、亜弥の唇が何か柔らかいもので
ふさがれた。
亜弥は痛む眼をむりやり開けて見ると、
そこに、ミキの顔があった・・・。
亜弥「あー!美貴ちゃん、今キスしたでしょ!
キスしたでしょ!」
ミキ「なに、怒ってんの・・・キスしたのは
初めてじゃないくせに」
亜弥「そうだけど・・・」
- 39 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 01:39
- 今時、女の子同士キスするのは珍しくない。
矢口さんなんか、娘。のほとんどの女の子と
キスしてるみたいだし、
亜弥も美貴と何度かキスしたけれど、それは
ふざけ半分でのキスだったはずだと亜弥は
思った。
さっきのキスはなにかそれとは違うような気が
する。
だいいち、亜弥が眼をつぶってるすきに、
唇を盗むなんて・・・。
今夜の美貴は、ドキドキするほど魅力的だと
亜弥は思う。
- 40 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 12:42
- バスタオルを体に巻き、頭にもタオルを巻いて
亜弥が自分の部屋に入った時、
一瞬ある種の違和感を覚えた。
東京に出てきてから、住み慣れた自分の部屋
に違いないのに・・・。
ミキは亜弥の鏡台に座って、髪を梳かしている。
まるで、自分の部屋みたいに振舞っている。
亜弥を見ると、立ち上がって鏡台を譲る。
部屋には、亜弥のベッドの他にミキのために
亜弥のママが布団を敷いていた。
- 41 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 12:58
- 髪を梳かし終え、立ち上がった亜弥を見て、
ミキが近づいてくる、亜弥のパジャマを持って
いる。
亜弥の後ろにまわると、体のバスタオルを
はずした亜弥に着せ掛ける。
亜弥がパジャマを身につけると、鏡台に置いて
あった、リップクリームを取ってくると、
指で亜弥の唇につけてくれる・・・。
亜弥「美貴ちゃん・・・優しいんだ・・・」
ミキは、笑いながら、
ミキ「おいらは、いつだって優しいよ」
ミキは、ちょっと照れたように言う。
- 42 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 13:18
- 亜弥がベッドに入ると、ミキは自分に用意された
パジャマの上だけを身につける。
そして、布団を無視して亜弥のベッドに入ってくる。
もう、亜弥は何も言わなかった。
朝早いので、2,3時間ぐらいしか寝る時間が
ない。亜弥が眼をつぶった時、
ミキが、亜弥の頭の下に腕を入れてくる。
亜弥は、思わずパッと眼を開けてミキを見た。
ミキ「・・・だって、あやちゃん腕枕好きって・・・、
イヤなら、止めるけど」
亜弥は、首を振ってミキの腕に頭をあずけた。
亜弥は思った。
腕枕って、好きになりそう。
- 43 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/15(木) 13:33
- 亜弥は眠りにつく前、ミキのささやく声を
聞いたような気がした。
ミキ「今夜のあやちゃん、少し変な気がする、
でも、昔のあやちゃんみたいに、新鮮で
可愛いくて、好き・・・」
1月3日、ハロプロコンサート当日のリハーサルで
ちょっとした問題が発生した。
亜弥の新曲のリハで、亜弥の覚えていた歌詞と
振付の一部が、実際の歌詞と振付と食い違う
ことを、亜弥は知った・・・。
- 44 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 00:16
- 折りよく、その場につんくと夏先生がいた。
2人は亜弥の新曲を聴くと、顔を見合わせた。
そして、離れた客席に座って話し始めた。
亜弥は、それを舞台から眺めた。
今度の新曲はロックな感じで、軽快に歌えてた
のに、今さら変更になったらとても歌えない。
やがて、2人が戻って来て、歌詞は変える
しかないが、振付は亜弥の覚えていたもので
行くことになった。
亜弥は、レッスンの時はこの歌詞と振付だった
と、2人に言い張った。
- 45 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 00:27
- ハロプロコンサートの幕が開き、途中の娘。
メンバーの卒業発表で会場が騒然とする中
演目は進み、松浦亜弥の出番が来た。
最初に新曲で始まり、MCを挟んで後2曲を
歌い終わり、亜弥は袖に下がった。
つんくは、亜弥が歌詞を変えないで歌ったことに
ついては、何も言わなかった。
夏先生は、亜弥の姿を見送りながら言った。
夏「今日のあの子、なんだかいつもと違う
ような気がする・・・」
- 46 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 00:49
- つんく「オレには、いつもの松浦としか思えない
けど、どう違うと思うの?」
夏「どうって、中々説明出来ないのだけど・・・
そうね、しいて言えば何年か前の松浦亜弥と
いう感じがするの。歌や踊りは上手いのだけど」
ハロプロ全員の歌が終わり、すべて終了し、
会場を去るファンの一人がポツンと漏らした。
「今日の松浦は、なんかいつもと違うような
気がするんだ・・・」
- 47 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 01:05
- 仲間が答えた。
「俺は気づかなかったけど、どう違うと思う
のかい?」
「説明するのは難しいんだが、そうだな、
なんだか俺の知ってる松浦ではないような
気がするんだ・・・」
亜弥は、片づけられて誰もいない場内の
片隅にポツンと立っていた。
ふいに肩を叩かれて振り向くと、ミキがいた。
ミキ「どうしたの、なんだか元気がないよ」
- 48 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 01:21
- 亜弥は、ミキの胸に顔をつけた。
ミキはそんな亜弥を抱きしめた。
亜弥「なんだか、不安でしょうがないの、
まるで、一度も来たこともない場所に居る
ような気がして・・・」
ミキ「疲れてるんだよ、歌詞を間違えてた
事なんて気にしないほうが良いよ、みんな
あやちゃんのことをよく知ってるよ」
- 49 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 01:38
- 亜弥「わかっているの、みんなのことも
よく知ってるし、私のことも知ってくれてる
こともわかるのよ、でも、不安になるの」
ミキ「・・・不安って、どういうの?」
亜弥「なんだか、自分自身が全然別の
人間のような気がして、不安なの・・・
そんな事あるはずないのは、わかってる
つもりなんだけど・・・」
ミキ「心配ないよ、あやちゃんはあやちゃんに
間違いないのだから。私がついてるよ、何にが
あっても私が守ってあげる」
亜弥は、うなづいて安心したようにミキに
抱かれていた。
- 50 名前:tuyoshi 投稿日:2004/01/16(金) 02:11
- まだ途中ですが、ここまで話がわかりにくい
部分があるかと思うので、補足をして置きます。
この小説のテーマは、パラレルワールドです。
人物も、世の中も、歴史も、ほとんど同じ世界が
二つあるという設定です。
ここでは、亜弥と美貴、 あやとミキの主人公が
登場します。
Aの世界には、亜弥と美貴が住んでいる。
Bの世界には、あやとミキが住んでいる。
元旦の深夜、バスルームの周辺だけ、謎の
地震が起こり、亜弥とあやが別の世界に
飛ばされてしまう。
亜弥とあやは、入れ替わってしまうのです。
美貴とミキは、元の世界に残ったままです。
- 51 名前:tuyoshi 投稿日:2004/01/16(金) 16:44
- ↑では、書き忘れましたが、
区別するため、便宜上「あや」と「ミキ」と
表記していますが、実際の名前は、
A、B、の世界の4人とも、
「松浦亜弥」 「藤本美貴」という同じ名前です。
他のみんなは、あやとミキを「亜弥と美貴」として
とらえているのです。
- 52 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 17:13
- ここからは、表記を「亜弥と美貴」に統一します。
登場する亜弥と美貴が果たして、どちらの世界の
亜弥と美貴なのか、想像して見てください。
ハロプロコンサートは、大阪での公演が終わり、
名古屋での公演が始まった。
会場に備えられたケータリングに、美貴が1人だけ
で腰掛けていた。
そこへ、矢口真里が現れた。
矢口「美貴ちゃん〜!なにしてるの〜」
美貴「あ、矢口さん・・・お茶を飲んでいたの」
矢口「そっか。おいらも頂こうかな」
- 53 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 17:41
- 真里は美貴の隣に腰掛けた。
美貴「矢口さん・・・矢口さんは今、恋人が
いるんですか・・・」
矢口「えー!突然なにを言うのよ〜」
美貴「すみません、変なことを聞いて」
矢口「別にいいけどさ〜、おいらに今、
彼なんていないのを知ってるくせに〜」
美貴「女の子の恋人は・・・」
真里は美貴を見た。
矢口「・・・女の子の恋人なら、いっぱい居るよ」
- 54 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 18:58
- 美貴「え〜!ホントですか〜」
矢口「モーニング娘。のメンバー全員、おいらの
恋人さ〜。ギャハハ、言っちゃった!」
美貴「そうなんだ・・・」
矢口「やだ〜、美貴ちゃん本気にしないでよ〜
ま、恋人みたいなものだけどさ〜」
真里は美貴の顔を覗きこんだ。
矢口「じゃあ美貴ちゃん、おいらだけの恋人に
なってくれる・・・」
美貴は、ちょっと顔をそらして言った。
美貴「いいですよ・・・」
- 55 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 19:27
- 真里は美貴を肘で突っついた。
矢口「またまた、美貴ちゃんにはちゃんと
居るじゃない、あの子が・・・」
美貴「・・・誰ですか」
矢口「師匠、師匠よ。」
美貴「・・・・」
矢口「恋人同士なんでしょ!」
美貴「今は・・・わからないんです」
矢口「ふ〜ん」
美貴「矢口さん、恋人と親友の違いって
何だと思いますか・・・」
- 56 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 19:39
- その時、ドアを開けて誰かが入って来た。
2人は振り返って入口の方を見た。
亜弥だった。
亜弥と美貴は、一瞬見詰めあった。
真里は、その2人の顔を見比べていたが、
立ち上がると、
矢口「師匠ォ〜!!」
と、亜弥に駆け寄った。
亜弥も笑顔で、
亜弥「やぐっつぁん〜!」
と、迎える。
- 57 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 19:55
- 真里と亜弥は抱き合う。
矢口「師匠〜、チュウして〜」
と、得意のハ〜ト口で迫る。
真里はチラっと美貴を見た。
美貴は下を向いている・・・。
その時、ひとみと麻琴が仲良く手をつないで
入って来た。
吉澤「お〜、ラブラブじゃん〜」
それからは、続々とハロプロのメンバーが
ケータリングに入って来た。
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/16(金) 20:00
- 「」の前に名前があると読みずらいっす…
- 59 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 20:06
- 名古屋公演も無事に終了した。
美貴は人気の無い場内にポツンと立っていた。
矢口「美貴ちゃん〜!」
美貴は振り返って、笑顔を見せた。
美貴「矢口さん・・・」
矢口「ゴメンね、美貴ちゃん待たせちゃって」
2人は客席に腰を降ろした。
矢口「ケータリングで、最後に美貴ちゃんが
言った言葉が気になっていたんだ・・・」
- 60 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 20:24
- 矢口 「美貴ちゃんは、恋人と親友の違いは
何だろうって、言ってたよね」
美貴 「はい。」
矢口 「その事をおいら、ずっと考えてたんだ。
やっぱりおいらは思うんだ、恋人と親友の
違いは、心からの愛じゃないかと・・・」
美貴 「・・・・」
矢口 「おいらは、心から愛してる人がいるよ。
それは家族なんだ、父さん、母さん、妹、
心のそこから愛してると、自信を持って
言えるよ。美貴ちゃんも同じと思うけど」
美貴は、うなづいた。
- 61 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 20:46
- 矢口 「でも、家族と他人は違うと思うんだ。
モーニング娘。のメンバーは、みんな
大好きだよ。
でもね、本当に心からメンバーを
愛してるかと言えば、
おいらは自信はないんだ・・・」
美貴 「わかります・・・」
矢口 「だから、心から愛してると自信と持って
言える相手が現れたら、
恋人と言えるんじゃないかな。
そして、相手も自分を愛してると
わかったら、 もう2人は
恋人同士って言えると思うんだ。」
- 62 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 22:17
- そう言うと真里は頭をかいた。
矢口 「なんか、偉そうなこと言っちゃったな・・・」
美貴 「そんなことないです!とっても
嬉しいです!」
矢口 「好きなんでしょ、あの子が。
心のそこから・・・」
美貴 「はい!突然、現れたんです」
矢口 「ちょっと、美貴ちゃん、突然現れたって
言い方はおかしいんじゃないの、師匠の
ことなんでしょ」
- 63 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 22:40
- 美貴 「そうです!変な言いかただけど、やっぱり
突然現れたとしか思えないんです・・・。
今まで一緒に長く過ごしてきた人と、
何もかも同じとしか見えない、でもどこか、
違うんです」
矢口 「そっか〜、今までつき合っていて、ある日
突然その人の良いところに気がついたんだ」
美貴 「・・・そうかもしれません」
矢口 「残念だけど、師匠は美貴ちゃんに
譲ることにするよ。」
美貴 「矢口さん・・・」
- 64 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/16(金) 23:01
- 矢口 「これから、おいらも2人の事を精一杯
応援するから、頑張ってね」
美貴 「本当にありがとうございます。
矢口さんのその気持ちは、とっても
嬉しいです・・・」
美貴は、思わず声を潤ませた。
矢口 「美貴ちゃん・・・なんか、美貴ちゃんの
泣く姿って、初めて見た気がするな」
真里は優しく美貴の肩に手を置いた。
矢口 「亜弥ちゃんのこと、すごく愛してるんだ・・・」
- 65 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 02:45
- ハロプロ公演のラスト、横浜アリーナの公演を
控えて、リハーサルが行われていた時、
亜弥は、プロデューサーのつんくに声を
かけられた。
つんく 「松浦、後で俺の所へ来てくれないか」
亜弥 「はい・・・」
つんくの部屋に来た亜弥は緊張していた。
つんく 「実は松浦・・・」
亜弥は唇を噛みしめて構えた。
- 66 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 02:58
- つんく 「藤本の事なんだ。松浦も知ってると
思うけど、来月に藤本が新曲を久しぶり
に出すのだけど」
亜弥にとって、初耳のことだった。
つんく 「それで、急遽持ち上がった話なのだが、
今度の横アリでその新曲を発表しては
どうかという事になったのだけど、何しろ
予定外の事なので、藤本の新曲を
セットリストに組み入れるのが難しい」
意外な話に亜弥は黙って聴いていた。
- 67 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 03:13
- つんく 「そこで、松浦に頼みがあるんだ。
松浦の3曲のうち、1曲を藤本に
与えて貰いたいんだ」
亜弥 「・・・・」
つんく 「もちろん、これは松浦次第だ、
松浦が嫌だと言えば、この話は
無かった事にするつもりだ」
亜弥 「わかりました。私のことは大丈夫です。
ぜひ、私の分を美貴ちゃんに分けて
上げてください」
つんく 「そうか、助かったよ、ありがとう。
・・・安心してるみたいだな」
- 68 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 03:33
- 亜弥は、ようやく少し笑顔を見せた。
亜弥 「はい。あのことを言われるかと
思ったんです・・・」
つんくも笑った。
つんく 「そうか、このところメンバーの卒業が
続いてるからな。その点は大丈夫だから
安心していいよ。
しかし、うちの会長なら言い出しかねないが、
その時は、俺が説得するから心配しなくて
いい・・・」
亜弥 「はい、ありがとうございます」
つんく 「いや、礼を言うのは俺のほうだよ」
- 69 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 13:07
- 亜弥は部屋を出ようとした時、思いついて
振り返った。
「あの〜この事、美貴ちゃんに私から伝えても
かまわないですか・・・」
「ああ、藤本だけに伝えるのならかまわないよ。
今日にでも話してやってくれ。
他の者には、内緒にしといてくれないか」
つんくはそう言った。
「はい! わかりました」
亜弥は頭を下げると部屋を出た。
- 70 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 13:31
- 部屋を出ると、すぐに美貴が声をかけて来た。
「亜弥ちゃん、つんくさんに何て言われたの・・・」
美貴は少し心配そうだった。
亜弥は美貴の耳元で囁いた。
「これからは、美貴と一緒にやってくれって」
「エエーッ!!」
「ウソだよ〜ん、ウソ。」
亜弥は笑いながら言った。
「なんだよ〜、ウソかよ〜」
- 71 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 13:47
- 「でも、また亜弥ちゃんと一緒に歌いたいね」
美貴はしんみりと言った。
「そうだね。この前は真希ちゃんと一緒だったけど、
今度は2人だけでやりたいね・・・」
「ウン・・・」
「ねえ、美貴ちゃんこれから私の所にこない」
「行ってもいいけど、これから新曲のレッスンが
残ってるんだ。 終ってから行くよ」
「そうなんだ。じゃあ、先に帰って待ってるね。
帰ったら良い事教えてあげる」
「え〜、なに?」
「後で教えてあげる。じゃあ、新曲のレッスン、
頑張ってね〜」
- 72 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 14:14
- 亜弥はウキウキした気分だった。
今度の横アリで自分の後に美貴が新曲を
歌うことが嬉しかった。
自分の曲が削られても、美貴がソロを歌う
ことのほうが、嬉しい思いだった。
その時の事をあれこれ考える。
自分の後だから、当然曲の紹介は自分が
しようと思う。
いっそ、自分がバックで踊ろうかなと考えると
楽しくなる。
美貴ちゃん、私が伝えたら喜ぶだろうな。
でも、レッスンの時につんくさんが教えるかも
しれないと思う。
- 73 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 14:25
- ふと、亜弥は自分が美貴の新曲について
何も知らないことに気づく。
途中、本屋に寄って調べることにする。
亜弥はマスクをして顔を隠して本屋に
入った。
音楽雑誌を次々と立ち読みする。
やっと、美貴の新曲の記事を見つける。
曲名に、聞いたことのない言葉があった。
『パラレル・・・・』
パラレル? パラレルって何だろう・・・。
- 74 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 14:52
- その雑誌には、新曲の紹介と美貴の
プロフィールが載っていた。
藤本美貴 モーニング娘。
誕生日 1984年2月26日
出身 北海道
血液型 A型
亜弥はそれを見て、あることに気がつく。
不思議に思い、パラパラと雑誌をめくって
自分のプロフィールを捜した。
松浦亜弥 ハロー!プロジェクト
誕生日 1985年 6月25日
出身 兵庫県
血液型 B型
亜弥は愕然とした。
間違いだと思った・・・。
- 75 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 19:09
- 亜弥は自分の生まれた年のことが頭に
こびりついていて、自分がどうやって
家に帰ったのかさえわからなかった。
家に帰ってすぐにママの顔を見ると、
「ねえ、ママの生まれた年は? 今
いくつなの?」
「いきなり何を言い出すんだよ、親の
年もわからないのかい」
ママの言った年齢は、亜弥の記憶とある
年齢と同じだったので、少し安心する。
「じゃあ、私の生まれた年は・・・」
- 76 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 20:55
- ママはあきれたように亜弥を見つめた。
「自分の生まれた年も忘れたんかいな、
あんたな、何ねぶたいこと言うてんのけ」
ママの言葉が兵庫弁になって来た。
「そうやないけ、うちの生まれたん年を
聞いとうのんやけ!」
亜弥の言葉も兵庫弁になって行く。
「あんたもな、18にもなってごじゃごじゃ
ばっか言いよって〜」
「違うわ、うちはまだ17やんけ・・・」
「だぼかいな!ほんまに抜けとんのとちゃうか!」
『だぼ』→「あほ」
- 77 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 21:32
- 「だから、うちの生まれたん年は何年やの!」
ママは指を折りながら、
「昭和60年やったかいな、いや61年やったかいな」
「ほんま、どっちやの西暦で言うてなぁ」
「じゃーくさい、だっとれ〜、1985年、いや86年
やったかいな・・」
「どっちなのけ」
「もう、じゃーくさい〜、あんたは18に
決まっとうやんけ・・・」
- 78 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/17(土) 22:24
- 「ほんまに・・・」
「あんたも、なんぎやなぁ。もう、
歌手やめとき〜」
「またそれを言うとうの、かなんなぁ」
亜弥は落ち込んで自分の部屋に入った。
遠慮なく、ぽんぽん言ってくるママはいつもの
ママに違いないのだけど・・・。
まだ納得のいかない亜弥は、家にある
あらゆる史料で自分の生年を調べた。
慣れない手つきで、パソコンのインターネット
でも自分や美貴のプロフィールを調べたが、
結果は同じだった。
- 79 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 00:57
- 部屋の中で、ぼーと考え込んでいた亜弥は、
「亜弥ちゃん!」
その声に飛び上がって、振り返った。
美貴がドアを開けて入って来ていた。
美貴の顔を見ると、亜弥は思わずその胸に
すがりついていた。
美貴はそんな亜弥を優しく抱きしめた。
「お母さんに亜弥ちゃんは部屋に居るって
聞いたけど、いくら呼んでも返事がなかった
から・・・」
- 80 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 01:13
- 2人は部屋のコタツに体をくっつけて
入った。
亜弥は、まず美貴に伝えたい事を言う
ことにした。
「美貴ちゃん、今日つんくさんから何か
言われなかった?」
「何の事? 何も聞いてないよ」
それを聞いて、つんくの配慮が嬉しかった。
亜弥は今度の横アリのハロプロのコンサート
で、美貴の新曲が発表される事を伝えた。
美貴は眼を輝かした。
- 81 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 01:30
- 私の後に歌うことになるそうよ、良かったね。
私が曲の紹介をしてあげるね」
「そっか、すごく楽しみ。娘。コンでもソロを
歌ったけど、ハロコンで歌うのはまた別だもん。
ソロで歌ってた頃を思い出すなァ〜」
亜弥は美貴の喜ぶ顔が嬉しかった。
「でも、私の曲が入るということは曲目が
増えるの?」
「曲目は同じよ・・・」
「そう。でもなぜつんくさんは、亜弥ちゃんに
先にこの事を話したのかな」
- 82 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 01:42
- 美貴は、それに気がついた。
「もしかして、亜弥ちゃんの曲が減らされた
のじゃないの・・・」
「大丈夫、私は2曲歌えれば十分よ・・・」
「亜弥ちゃん・・・」
美貴は亜弥の肩を抱いた・・・。
2人はしばらくの間を体を寄せ合っていた。
別々の世界に迷い込んでいた2人の亜弥
が本来の世界に戻る時が迫っていた。
- 83 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 02:48
- 亜弥は、顔を上げて美貴を見た。
「美貴ちゃんの生まれた年いつか、教えて
欲しいの・・・」
やはり、美貴の口から聴きたいと亜弥は
思った。
「私?・・・1984年の2月26日だけど」
「・・・そう、では今年で、何歳?」
美貴は不思議そうな顔をした。
「この2月で二十歳になるけど・・・」
「そう・・・では私の年を知ってる?」
- 84 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 03:10
- 「亜弥ちゃんは、今18歳でしょ。確か
ラジオのレギュラーが生放送になるって
聞いたけど」
「私はまだ生はダメなの。今ここに居る私は、17歳
だから・・・」
「ウソー!何をバカなことを言うの・・・」
「バカじゃないわ、私には確信があるの。
私は17年間しか今まで生きてないわ・・・」
「・・・・」
「私の生まれた日は、1986年の6月
25日。間違いないわ・・・」
- 85 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 03:24
- 「どういう事なの・・・」
美貴は来るべき物が来たことを感じていた。
「この世界の、1985年 6月25日生まれの
松浦亜弥は、今ここに居る私とは別人なのよ」
「だって、おかしいよ、今ここに居る
亜弥ちゃんはどう見ても、私の知ってる
亜弥ちゃんとしか思えないよ・・・」
「本当に、そう思う・・・」
「だって、顔も声も、何もかも同じだよ」
「そうね、すべて同じに見えるわ。
でも違うわ、私は17歳だけど、
この世界のもう1人の私は18歳。」
- 86 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 03:46
- 「それと、もう一つ教えてあげるわ。
私の知っている藤本美貴の年は18歳。
1985年2月25年生まれなの」
「・・・・」
「今ここに居る藤本美貴とは、多分
別人のはずよ・・・」
「亜弥ちゃん・・・」
「やっと、わかったわ。何かわけの
わからない違和感をずっと感じてたの。
自分以外のみんなが、何もかも同じに
見えるけど、どこか違うの。
それは、私がこの世界の人間では
なかったの・・・。
よくわからないけど、ほとんど同じ
世界が二つ存在するのだと思うわ。」
- 87 名前:tuyoshite 投稿日:2004/01/18(日) 12:29
- ↑訂正
「私の知っている藤本美貴の年は18歳。
1985年2月25日生まれなの」
- 88 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 13:03
- 「でも、もし今ここに居る亜弥ちゃんが
もう1人の亜弥ちゃんだとしたら、いつ
入れ替わったの?
それに、もう1人の亜弥ちゃんは何処に
行ってしまったの・・・」
亜弥は美貴に説明した。
「元々ここに居た松浦亜弥は、私の
いた世界に居るはずよ。きっと、私と
同じ思いをしているはずよ。
いつ入れ替わったのかは、きっとあの
元旦の深夜のバスルームに違いないわ。
あのバスルームだけで起こった、謎の
地震のせいに間違いないわ」
- 89 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 13:39
- 「最初、美貴ちゃんの姿が見えなくなった
のを考えて、美貴ちゃんが別の世界へ
行ってしまったのかと思ったの。
でも、よく考えると別の世界へ行って
しまったのは、私だったの・・・。
そう考えたら、辻褄が合うの」
「とても信じられない話ね・・・」
亜弥は美貴の顔をみつめた。
「美貴ちゃんだって、私が今までの
私とは違うことに、うすうす気がついて
いたはずよ!」
- 90 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 17:48
- 美貴は立ち上がって腕を組んだ。
「亜弥ちゃん、冗談もいい加減にして!
亜弥ちゃんが2人居るとか、まったく
同じ世界は二つあるとか、誰が信じられる
と思うの!」
亜弥はあっ気にとられて美貴を見た。
「だって、本当だもん・・・」
「そんなバカな話、聞いたこともないわ!」
亜弥は美貴の剣幕に下を向いた。
「だって、現に生まれた年が違うわ」
「それは亜弥ちゃんの勘違いよ」
- 91 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 17:59
- 「勘違いじゃない〜、じゃあ私は今まで
18歳なのに、17歳と思い込んで
いたと言うの・・・」
「そうよ!」
「そんな話ありえない〜」
「亜弥ちゃんの話のほうが、ありえない!
だったら、証拠を見せなさいよ」
「・・・・」
「ほら、言えないでしょ。亜弥ちゃんも、
私も、この世の中でたった一人しか
いないのよ・・・」
- 92 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 18:13
- 亜弥はしばらく美貴を睨んでいたが、
「じゃあ美貴ちゃん、これまで出した
シングルの曲を言って!」
「私の曲?、ええ、言うわ。」
美貴は、これまで出したシングル曲、
5枚と、出す予定の新曲、計6曲の
曲名を次々と答えた。
「新曲の名前を私は知らなかった・・・」
「それは亜弥ちゃんがまだ知らなかった
だけ。それに今は知ってるでしょ」
「アッ、ちょっと待って、4曲目は?」
- 93 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 18:36
- 美貴の答えた曲は、亜弥の全然知らない
曲名だった。
「私の知ってる美貴ちゃんの4曲目は
別の曲よ。私、歌えるわ、完璧に」
亜弥は立ち上がって歌いだした。
「ねえ 結局はボーイフレンド
恋人になれませんか?〜♪」
振りも完璧に、歌いきる。
「これが、私の知っている美貴ちゃんの
4曲目のシングルよ。この曲、美貴ちゃんは
知らなかったでしょ」
美貴は首を振った。
「こちらの世界の藤本美貴は、知らない
はずの曲よ・・・」
- 94 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 19:14
- 亜弥は力なく首を振っている美貴の
肩に手をかけた。
「美貴ちゃんの気持ちは良くわかるわ。
信じたくないのね・・・、美貴ちゃんが
一番、気がついてたはずよ」
亜弥は、美貴の手を取ると立たせた。
亜弥は美貴を、バスルームへ連れて行く。
「ここが、問題のバスルームよ」
中に2人で入る。
- 95 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 19:27
- 亜弥は、脱衣所の中を見回しながら、
「あの元旦の深夜の出来事は、鮮明に
覚えてるわ。あの前触れのような不気味な
音と地震は忘れられないわ」
亜弥は、恐々当たりを見回してる美貴に言った。
「数日前に、夜中に目がさめてここに入ったの、
あの日と同じ、3時頃。その時またあの音が
聞こえて来た時は、驚いたわ。
ゴォォ〜、ってね。 でも、すぐ聞こえなく
なった」
- 96 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 19:39
- それから、毎日のように夜中にここに来て
みたの、おかげで寝不足よ。
あの音が段段大きくなるの。昨日なんか、
ゴオオオ〜!って、すごい音がしたわ」
「それって・・・」
「そう。昨日は地震がくるかと思ったけど、
こなかったわ。 だから今日当たり、地震が
来そうな気がするの。 きっと来る気がする。
その時、このバスルームに居れば・・・、
元の世界へ飛ばされて、絶対帰れるわ」
- 97 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/18(日) 19:54
- その時まで、2人は亜弥の部屋で待つ
ことになった。
2人は押し黙って、テレビの映画を見ていた。
頭の中で何かが渦を巻いていて、映画の
内容は、まったく目に入らなかった。
深夜0時過ぎ、亜弥が立ち上がった。
「こんな所に居るよりは、お風呂に入って
待ってるほうが良いわ。 美貴ちゃん、
行こう」
美貴もうなづいて、立ち上がる。
- 98 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 17:23
- ぬるくなったお湯を入れ直すと、二人は
バスタブに浸かった。
「紀香さんや、飯田さんがよく半身浴を
してるんだって。とっても美容に良いん
だって」
亜弥はそう言うと立ち上がり、バスタブ
のへりに腰掛けた。
「こうして、脚だけを長時間浸けてる
そうよ・・・」
美貴もそれにならって、へりに腰掛ける。
- 99 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 17:41
- 亜弥は美貴の肩に頭を持たせかける。
美貴がそっと亜弥の肩を抱いた。
「ねえ、あなたの知ってる亜弥ちゃんて
どんな人・・・」
亜弥がそう言うと、美貴は指で亜弥の
おでこを突っついた。
「こういう人・・・」
「違〜う、今あちらに居るこちらの
亜弥ちゃん・・・なんかややこしい」
- 100 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 18:00
- 「どんな人って言われても困るけど、
同じだよ。ここに居る亜弥と・・・」
「・・・同じなんだ、そうだよね、もう1人の
私なんだから」
「超人気のアイドルで、そして、自分が
大好きで、家では自分のCDばっかり
聴いてて、部屋の中に鏡がいっぱいあって
いつも自分を眺めてて、
一番大好きな匂いが、飼ってる犬の足の裏
の匂いって言う、少し、変わってる人・・・」
「・・・私の悪口は言わないで」
- 101 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 18:12
- 「悪口じゃないよ。それに、もう1人の
亜弥のことだよ」
「私も同じだもん。 でもどうして、もう1人の
私は年が一つ上なんだろう・・・」
「わかんないよ・・・」
「ねえ、美貴ちゃんのデビューはいつ?」
「2002年だけど、」
「私のデビューはいつになってるの」
「2001年だと思うけど、」
「そっか、私たちが付き合ってる
期間は同じなんだね・・・」
- 102 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 18:27
- 亜弥は美貴の顔を覗きこんだ。
「でも、こちらの2人は恋人同士なの
でしょ。きっとそうだよ・・・」
長く脚をお湯に浸けていると、段段体が
温まってきて、汗が出てきた2人の体が
ピンク色に染まってくる。
「亜弥ちゃんたちは・・・」
「私たちは、とっても仲の良い大親友だよ。
ただそれだけ・・・」
- 103 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 18:43
- 亜弥は続けた。
「私たちとは違うんだ。一緒にいてお互いを
見つめ合っていても気持ちが違う。
キスしても、ふざけ合ってるわけじゃない。
こうして、お風呂に一緒に入ってても、
私の体を見る目が違うんだわ」
「そんなこと無いよ・・・」
「そうなのよ! もう1人の亜弥は、私より
年上の大人なのよ。私のように、まだ
子供じゃないのよ!」
亜弥は、へりから降りると美貴の前に
立った。
- 104 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/19(月) 18:57
- 亜弥は腕を広げて見せた。
「私の体を見て! 私のすべてを見て!
あの人と何処が違うか言って!!」
「・・・・」
「私だって、もう子供じゃないつもりよ、
私の足を、胸を見てよ・・・、お尻だって、
自慢なんだから・・・」
亜弥は後ろを向いた。
「亜弥ちゃん・・・」
振り返ると、続ける。
「私に触って見て!その手で触れて見て!」
- 105 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:33
- 亜弥は、いきなり美貴の手を掴まえると、
その手を自分の乳房へ押し当てた。
「胸だって、自慢なんだから・・・、
どう、あの人と較べて見て・・・」
美貴は、あわてて自分の手を引っ込めた。
亜弥は、なおも美貴に、
「ねえったら、何とか言ってよ!」
美貴は立ち上がると言った。
「亜弥ちゃんの体、とても綺麗だよ・・・」
- 106 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:39
- 亜弥は、頬を染めて美貴の
胸に顔をうずめた。
少しして、体を離して美貴は言った。
「亜弥、行かないで・・・」
エッと、亜弥は顔を上げた。
「なんて言ったの・・・」
「行かないで。」
「・・・ダメ!私はこの世界の人間じゃないの!」
「どうして、ダメなの!このままこちらへ
残れば良いじゃない・・・」
- 107 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:41
- 亜弥は強く首を振った。
「私は帰らなくてはいけないわ。
あちらの亜弥さんだって、きっと
帰りたいはずよ・・・」
「こちらにだって、亜弥の家族が居て、
ハロプロの仲間がみんな居るじゃない!」
「私の本当の家族じゃないわ・・・」
「行かないで、亜弥と離れたくないの」
「どうしてそんな事を言うの、あなたには
亜弥という18歳の恋人がいるじゃないの」
- 108 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:46
- 「今は、ここに居る亜弥が好きなの・・・」
「そんな事を言えば、あちらの亜弥さんが
悲しむわ、浮気はダメ!
でも、これは浮気って言えるのかな・・・」
「浮気でも何でもいい!亜弥とはもう
離れたくないの!」
美貴は亜弥を抱きしめた。
その時、ゴォォォ〜という音がかすかに
聞こえて来た。
2人は、ビクッと体を震わせた。
「来たわ!」
美貴は亜弥の体を離さなかった。
「美貴!早くバスルームから出て!
出ないと、二人とも飛ばされる!」
ゴオオオオ〜ッと音が大きくなる。
美貴はいっそう強く亜弥を抱きしめた。
ゴオオオオオオー!!、と音が近づき、
一瞬、浴室のガラス戸が震えた。
亜弥が叫び声を上げた時、美貴は
その亜弥の唇を自分の唇で強く
ふさいだ。
- 109 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:50
- しばらくして、唇を離した二人は、
顔を上げて辺りを見回した。
結局、あの地震は来なかった。
ということは、まだ亜弥はこちらの
世界へ残ったままになる。
大きく息を吐き出した2人は、体が
冷えていることに気がつき、お湯に
体を沈めた。
亜弥は美貴に体をもたせかけた。
「明日ね・・・来るのは」
- 110 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:54
- 部屋に戻った亜弥はバスタオルを巻いた
まま、鏡台に向かって髪を梳かしていた。
部屋には、ベッドと美貴のための布団が
敷かれていた。
後ろに美貴が現れ、鏡台に映る。
「あちらの亜弥とここに居る亜弥の
違う所が一つあるよ・・・」
亜弥は鏡の中の美貴に答えた。
「どこが違うの・・・」
「ここの亜弥のほうが、オッパイが大きい」
- 111 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:56
- 亜弥はすぐさま振り返って言った。
「美貴のスケベ!」
美貴は亜弥の首に腕をまわした。
「お〜お、スケベで悪かったな〜」
亜弥も肘で美貴を突く。
でも、顔は笑っている。
その時、亜弥の巻いていたバスタオルが
ほどけて、胸があらわになってしまう。
美貴は思わず、まわしていた腕を離した。
- 112 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 00:59
- 美貴は、離れると布団にもぐり込む。
「もう、寝る!」
亜弥は立ち上がると、バスタオルを
はずすと、パジャマを上だけ身に着ける
下には何も着けない。
そして、自分のベッドを無視して、
美貴の布団に入った。
布団の中で、何かを言った。
美貴は寝返りを打って、亜弥に向き直った。
「何か言った・・・」
亜弥はもう一度言う。
「腕枕して・・・」
- 113 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 16:59
- ハロプロコンの最後を飾る横浜アリーナの
公演が迫って来て、直前のリハーサルが
行われていた。
例によって美貴が1人でケータリングに
居ると、さっそく真里が姿を現した。
「あら〜、美貴ちゃん〜」
「矢口さん・・・」
真里は美貴の隣に腰掛けた。
「あの子とはうまく行ってる?」
- 114 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 17:17
- 「はい、すごくうまく行ってます。
でも・・・」
「でも、って?」
「突然現れたのが、何処かへ行っちゃいそう
なんです・・・」
「ふ〜ん、なんとなくわかるよ。
謎の女の子なのよね〜、師匠は。
ある日突然、また別の師匠が現れて
来るような気がするんだな。」
ドアが開いて、その謎の女の子が
現れた。
- 115 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 17:23
- 一瞬、見つめ合う2人。
真里も、さっそく立ち上がり駆け寄る。
亜弥に近づくと、両手を広げて、
「師匠ォ〜! チュウして〜!」
亜弥も迎える。
「やぐっつぁん〜!」
真里は、チラッと美貴を見た。
美貴は笑って見ている。
- 116 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 17:51
- リハが終わり、亜弥は少し離れた所に
いる美貴を見た。
美貴も亜弥を見ているようだったが、
何も言わない。
そのまま亜弥は1人で家へ帰った。
帰ると、ママがあわてて出て来た。
「ちょっと亜弥ちゃん、親戚のお婆ちゃんが
急に亡くなったんやて」
「そうなの・・・」
- 117 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 18:14
- 「そうやから、私はすぐに姫路へ帰らないと
あかんのよ。亜弥ちゃん、1人で大丈夫?」
「うん、また美貴ちゃんを呼んで泊まって
もらうから・・・」
仕度を終えたママを玄関で見送る。
「ほんなら、行ってくるね」
わずか三週間ほどだったが、この
ママとの生活も終わりになる。
2人で話す時は、兵庫弁で遠慮なく
ぽんぽん言い合うところは、あちらの
ママとなんら変わりないのだが・・・。
- 118 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/20(火) 18:34
- 「ママ、さようなら・・・元気でね」
思わず、別れの言葉が出た。
目頭が熱くなってくる。
ママは振り返って、不思議そうな
顔で亜弥を見た。
「だぼやないの、あんたは。ほんの
1日2日のことやないの、まるで、
今生の別れみたなこと言うて・・・」
亜弥はあわてて目をこすると、
笑顔を作る。
「そうだね〜、行ってらっしゃい」
- 119 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 13:19
- 段段と夜が更けて行くのに、美貴は
姿を現さない。
独りだけの夜はあまりにも寂し過ぎる。
「どうして美貴は来てくれないの・・・」
ちょっとした風の音にもビクッと体が
震える。
このまま亜弥を独りで行かせるつもりなのか。
思わず、涙が込み上げてくる。
- 120 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 13:33
- その時、チャイムが鳴った。
玄関に飛んで行くと、鍵を開ける。
「美貴!」
亜弥は美貴の胸に飛び込むと、
声を上げて泣き出した・・・。
「亜弥ちゃん・・・ごめんなさい」
2人はいつまでも玄関で抱き合っていた。
- 121 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 13:48
- 2人は居間のソファーに体を寄せ合って
座っている。
美貴がポツンと言う。
「あちらの亜弥は帰ってくるのかな・・・」
「大丈夫。唯一こちらの世界とつながっている
バスルームのあの音を亜弥さんも聴いてる
はずよ。
私は確信してるわ。だって、もう1人の私の
ことだもの・・・」
「私もあちらの世界へ行ってみたいな」
- 122 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 14:00
- 亜弥は美貴の顔を見た。
「ダメよ。藤本美貴が2人出現したら、
混乱するわ。 それに、こちらの世界から
藤本美貴がいなくなったら、悲しむ人が
たくさんいるわ」
「そうだね。」
「もう1人の亜弥を独りにさせないで・・・」
美貴はうなづいた。
「今、あちらの世界でも、美貴と亜弥が
こうして体を寄せ合ってその時がくるのを、
待っているはずよ」
「・・・・」
- 123 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 14:20
- 時計の針が午前3時に近くなる。
亜弥は立ち上がった。
「行きましょう、バスルームへ・・・」
2人は手を取り合って、バスルームに
入った。
亜弥は脱衣所で、服をすべて脱いで、
生まれたままの姿になる。
「なぜ、裸になるの?」
- 124 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 14:29
- 亜弥は答えた。
「この世界へ来た時も生まれたままの
姿で来たの。
帰る時も、同じ姿で帰るべきだわ。
よけいな物を持ち込んではいけない
ような気がするの・・・」
美貴は、裸になって寒さで震えている
亜弥を強く抱きしめた。
亜弥も強く抱きつく。
- 125 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 14:37
- どこか遠くの方から、かすかに音が
聴こえてるくる・・・。
ゴォォォ・・・と。
美貴は体を離すと、亜弥を顔を見た。
「やっぱり、イヤだ!行かないで!」
亜弥は、激しく首を振った。
ゴォォォォォ〜、と音が近づいて来る。
「私は帰らないと、いけないの・・・」
- 126 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 14:52
- 「いつかきっと、また会えるわ。
いいえ、美貴の側には亜弥が居るわ。
もう1人の亜弥を大事にしてあげて、
私の分身の亜弥を・・・」
ゴオオオオ〜ッ!と、音が大きくなる。
「亜弥!、愛してるんだー!!」
涙が溢れ出してくる。
- 127 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 15:05
- ゴオオオオオーッ!という音の中で
美貴は泣きながら叫び声を上げた。
「愛してるんだー!!今、ここに居る
亜弥を!!」
亜弥も涙が溢れ出してくる。
「私も、美貴を愛してるー!!」
激しい轟音と共に、ガラス戸がガタガタと
震え出して来た。
- 128 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 15:19
- 亜弥は泣きながら、美貴を強く
押し戻し、バスルームの外に出すと、
ドアを閉め、ガチャッと鍵を掛けた。
「亜弥ちゃんー!! 行かないで!
行かないでよ・・・」
美貴は、ドアにすがって、泣き叫んだ。
不思議な事に、バスルームの外に居ると
音も聴こえず、地震の振動も感じない。
果たして、地震は来たのか、美貴には
わからなかった・・・。
- 129 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 15:27
- どれほどの時間がたったのか、
美貴が座り込んでいる前のドアが
中から、開いた。
中に入ると、生まれたままの姿の
亜弥が立っていた。
美貴はその亜弥を抱きしめた。
しばらくして、体を離すと亜弥の顔を見た。
「亜弥・・・帰ってきたの・・・」
- 130 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 15:37
- なぜか、亜弥は黙って美貴の顔を
見つめている。
亜弥の頬には涙が流れていた・・・。
ようやく、亜弥は口を開いた。
「ただいま・・・」
翌日、ハロプロ横浜アリーナ公演の
幕が開いた。
- 131 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 22:41
- 卒業する娘。のソロが終った後
場内には、しんみりとした空気が
漂っていた。
その後、楽しいゲームが始まった。
次の出番の亜弥は袖で待機していた。
美貴が近づいた。
「亜弥ちゃん・・・」
亜弥は振り返って美貴を見た。
「亜弥ちゃん、あのね・・・」
美貴は言いかけた言葉を飲み込んだ。
- 132 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 22:44
- 「もう、美貴ったら、さっきから何にを
言いたいの。変だよ・・・」
美貴はどうしても確かめたい事があった。
思い切って、亜弥に腕を伸ばす。
思わず、亜弥は体を後ろにそらした。
「美貴ちゃん!今、私の胸を触ろうとしてた
でしょ!なんのつもり!」
「だって、確かめたかったんだ、
胸の大きさを・・・」
- 133 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/21(水) 22:48
- 「美貴のスケベ!」
亜弥は、口をとんがらしてそっぽを向く。
美貴は頭をかいた。
亜弥の今の口調は、あの時と同じだと思う。
美貴はわからなくなっていた、ここにいる
亜弥がどちらの亜弥なのか。
あの時、バスルームで地震が起き、元の
亜弥が帰って来たのか。それとも・・・、
もしかしたら、
地震は起きてなくて、入れ替わったままの
亜弥なのではなのかという、疑いを捨て
切れないでいた。
- 134 名前:ことミック・ワールド 投稿日:2004/01/22(木) 01:06
- 亜弥の出番が来た。
大歓声の中、新曲を唄う。
続けてもう一曲を唄い終わる
終ると、亜弥はマイクを降ろして、
頭を下げた。
「これで、私の歌は終わりです」
エーッ!!、とファンの不満の声が上がる。
続けて、亜弥は言った。
「皆さ〜ん!、卒業は寂しいです。
でも、今日来てくれた人は幸運です!」
- 135 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/22(木) 01:19
- 「これから、藤本美貴が久しぶりに新曲を
発表します!」
オオーッ!!!、と大きな歓声が沸き起こる。
名前を呼ばれた美貴が舞台に登場して来た。
美貴は、真っ直ぐに亜弥に近づくと
その肩を掴まえて言った。
「どうしても聴きたいの、今の亜弥は
どちらの亜弥なの・・・」
亜弥はあわててマイクを遠ざけた。
「美貴、こんな所で何にを言うの」
- 136 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/22(木) 01:33
- 「どこでもいい!私はあなたが誰だか
知りたいの!」
美貴のマイクでその声が場内に聴こえる。
一瞬、場内が静まり返る。
亜弥は、場内に向かって言った。
「皆さ〜ん!どうやら、美貴ちゃんは
私が誰だか知らないようで〜す!
皆さんはご存知ですよね!!」
オオオーッ!!!と大歓声が上がる。
「私は、松浦亜弥で〜す!!」
- 137 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/22(木) 01:43
- ファンの爆笑と歓声が沸き起こる。
亜弥は美貴に向き直る。
「私は私なの、どこの誰でもない
松浦亜弥という人間なの・・・。
それでいいじゃない」
「・・・亜弥ちゃん」
「それに、今日美貴ちゃんの新曲の
歌詞を見たの、その歌詞の中に
答えがあるわ」
- 138 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/22(木) 02:04
- 「私の曲の歌詞の中に・・・」
「そう。さあ唄って美貴、答えが見つかるわ」
亜弥は場内に向き直る。
「皆さ〜ん!藤本美貴の新曲を聴いて
くださ〜い!」
大歓声の中、亜弥は曲名を叫んだ。
『パラレル・ラブストーリー』
完
- 139 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/22(木) 02:20
- 今まで、読んでくださった方、
ありがとうございます。
つたない作品になったかと思いますが
私なりに全力を出したつもりです。
もっと、じっくりと書きたかったのですが、
体調不良と、なんとか1月24日から始まる
ハロプロ横浜アリーナ公演までに完結
したかったのです。
レスを下さった方々の返事は後ほどに
させていただきます。 tuyoshi
横浜アリーナの公演に行かれる方、
予定外の藤本美貴の新曲が聴くことが
出来たら、 あなたは、
パラレルワールドの世界に迷い込んで
いるのかも知れません・・・。
- 140 名前:名無し作者 投稿日:2004/01/24(土) 02:10
- >8さん
ありがとうございます。
>33 ss_comさん
ありがとうございます。
とても励みになりました。
>58さん
ありがとうございます。
話の設定上、台本形式のセリフにしたのですが、
直したら、多少は読みやすくなったでしょうか。
- 141 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:41
- 春のツアーがたけなわで亜弥と美貴はそれぞれ
全国各地をまわっていた。
その合間に、ラジオ、TVの収録や生出演。
雑誌の撮影やインタビュー。等々と分刻みの多忙な
毎日を送る2人だった。
そんな折、わずかではあるが空き時間を得た二人は、
メールで連絡して亜弥の家で過ごすことになった。
その日の夕刻、玄関のチャイムが鳴って、
亜弥は待ちかねたように飛んでいく。
「美貴!」
美貴の顔を見て、思わず目を潤ませる亜弥。
2人は強く抱き合った。
「亜弥ちゃん、一ヶ月ぶりだね・・・」
文字通り、目の回るようなスケジュールのため、
2人はこの一ヶ月、まったく会えなかったのだ。
- 142 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:45
- 携帯で電話やメールを交わしていても、
会えないのは辛いものだった。
亜弥のママが言う。
「よう来たね〜美貴ちゃん。お腹へったやろ、
すぐ夕ご飯にするから」
ママの心づくしのご馳走がテーブルを飾り
賑やかで楽しい夕食になる。
美貴がママに言う。
「お母さん、小さい頃の亜弥ちゃんって、
どんなだったんですか?」
ママは箸を止めて、亜弥の顔を見ながら、
「まあ毎日、ゴンタばっかするんやでほんま
だぼな子やったよ〜」
- 143 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:47
- 「・・・ゴンタって、なんですか?」
「ゴンタって言うのは、やんちゃな子って意味
なんよ」
美貴は笑いながら、
「そうなんですか〜!それとだぼ≠チて
言うのは・・・」
亜弥が口を出す。
「もー!ママったら、止めてよ〜!
美貴もそんなこと、知らなくていいの!」
と、亜弥が腕を伸ばした拍子に、お汁のお椀に
当たってひっくり返してしまう。
「アッ!!」
「ほら!こういうのをだぼ≠ネ子って
言うんよ」
ママの言葉に美貴は大きな声で笑い出す。
- 144 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:50
- 亜弥はあわててフキンで拭きながら、笑い
ころげる美貴を口をとんがらして見ていたが、
内心、底抜けに笑う美貴の姿を見て、嬉しくて
たまらなかった。
食事が終って、ママの昔話も一段落つくと
亜弥は美貴の手を取って立ち上がった。
「美貴、お風呂入ろ!」
バスルームに入った美貴は恐々と辺りを見回した。
「もう大丈夫よ。あれ以来、あの音もしないし、
変な地震もないしね。 一度、お風呂入ってる時、
地震があってたまげたけど、ただの普通の地震
だったよ」
亜弥は言った。
- 145 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:53
- 忘れもしない半年ほど前のあの夜、異常な地震と
共に、2人の亜弥は異次元空間を飛ばされて、
入れ替わってしまったのだ・・・。
美貴は先に服を脱いでしまうと浴室に入った。
亜弥が入ると、シャワーを浴びている。
亜弥は美貴の後ろから、腕をまわしてしがみつく。
「ちょっと、亜弥、何なのよ〜」
「私もシャワー浴びる・・・」
「だから、私がすんでからにしてよ〜」
「イヤッ!、一緒に浴びるの!」
亜弥はいっそう強く、まわした手に力をこめる。
- 146 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:56
- 「美貴に会いたかったの・・・会いたくて
たまらなかった、ただそれだけを考えてたの」
美貴は前にまわされた亜弥の手に自分の手を
かさねた。
「亜弥、私も会いたかった・・・」
2人は向き直って、お互いを見つめ合うと、
シャワーのお湯でびしょ濡れになりながら
唇を合わせた。
ようやく唇を離すと、二人はバスタブに浸かる。
いつものように、亜弥は美貴の膝に腰を降ろし、
体をあずける。
- 147 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 00:59
- 美貴は後ろから亜弥の胸のあたりに腕をかける。
自然と亜弥の胸に手が触れる。
亜弥はその美貴の手に自分の手をかさねた。
お互いの肌と肌が密着して、深い安心感と
やすらぎが広がっていた。
「幸せ・・・ずっとこのままで居たい。」
亜弥がポツンと言った。
「そうだね・・・でも明日からまたツアーが待ってる」
亜弥は振り返って美貴の顔をのぞき込んだ。
「も〜、現実を思い出させないで。」
- 148 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 01:02
- 2人は、バスタブから出るとお互いの体に
ボディソープを塗りたくり洗い出す。
体に触れる手の動きに、思わず甘ったるい笑い声を
出してしまう2人。
それがすむと、美貴はシャンプーを亜弥の頭に
降りかけると力強くゴシゴシと洗い出す。
シャワーでシャンプーを洗い流してあげると、
亜弥は、眼を閉じたままアゴを上げ、さいそく
するように唇を突き出す。
その唇を、柔らかいものがふさいだ。
- 149 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 01:06
- 合わせた唇が離れると、亜弥は笑みをもらす。
「あの夜、こんな風にキスされた時、すごくドキドキ
しちゃった・・・」
美貴も笑って、
「あの時は、『キスしたでしょ!』って、怒ってたくせに」
「だって、いきなりキスされたから恥ずかしかったの。
本当は、ドッキドキだったの」
「今のは?」
「あの時ほど、ドキドキはしないかな」
「あの頃は、ウブだったのに・・・」
- 150 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/01/31(土) 01:09
- 「あー!美貴ったら、それどういう意味よ!」
亜弥が口をとがらし頬をふくらませると、
「亜弥の怒った顔が一番可愛いな・・・」
そう言うと、亜弥のオデコに唇をあてる。
亜弥は美貴の胸に顔をうずめた。
2人は、ようやくお風呂から上がることにして、
先に美貴が浴室から出た。
亜弥がバスタブに蓋をしようとした時、
突然、異変が起きた。
- 151 名前:名無し 投稿日:2004/01/31(土) 11:18
- ありがとう。
- 152 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/01(日) 22:31
- 耳をつんざく轟音と共に浴室全体が激しく
揺れ動いた。
亜弥は悲鳴を上げ、頭を抱え込んでうずくまる。
が、すぐに頭を上げて、揺れがおさまらない中を
立ち上がり、ガタガタ音を立てているガラス戸を
開ける。
脱衣所には、誰もいなかった。
バスルームから飛び出し、大声を出す。
「美貴!!何処へ行ったの!」
その声にママが出てくる。
- 153 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/01(日) 22:33
- 「ママ!美貴を見なかった!」
ママは、不思議そうに言った。
「美貴なんて人は来てないわよ・・・」
「今、大きな地震があったでしょ!」
「あんた、寝ぼけてるんじゃないの、
地震なんてなかったわよ。」
亜弥は茫然としてママを見た。
「それに、そんなスッポンポンでなにを
あわてているの・・・」
「・・・・」
- 154 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/01(日) 22:35
- 亜弥はバスルームに戻り、ドアを閉めた。
全身の血がさっと引くのがわかる。
体が震え出して来る.
初夏とはいえ、夜になると冷え込むせいだけでは
なかった。
また、半年前のようにあの異常な地震のせいで、
異次元空間を飛ばされてしまったに違いない。
また、美貴と離れ離れになってしまった。
亜弥はその場に座り込んだ。
その時、浴室から音がした。
人の気配がする。誰かが居るようだ。
亜弥は立ち上がってガラス戸を開けた。
そこにいたのは、亜弥が思っていた人物では
なかった。
そこには、もう1人の亜弥がいた・・・。
- 155 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/05(木) 11:39
- どうなるんだ…
- 156 名前:名無し作者 投稿日:2004/02/05(木) 13:04
- ここから、混乱を避けるため松浦亜弥視点で
行くことにします。
と言っても、松浦亜弥は二人出現しているので、
異次元空間を飛ばされて、未知の世界へ来てしまった
『松浦亜弥』のほうの視点で行きます。
- 157 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 13:10
- 私、松浦亜弥、重大なピンチに立たされています。
とり急ぎ説明すると、私、松浦はまたも異次元空間
を飛ばされて、未知の世界へ放り出されたの。
これが2度目。
どうやら、バスルームに未知の世界へ通じる
裂け目があるようなの。
だから、飛ばされる時の姿はいつも、スッポンポン!
何とかなんないのかしら〜。
今回も、愛しい愛しい美貴たんと久しぶりに会えたので
一緒にお風呂に入って、洗いっこしたり、体を触りっこしたり
いちゃいちゃとラブラブな時を過ごしていたら、
突然、スッポンポンのまんま、飛ばされたの〜!
そして、現れたのがなんと!もうひとりの松浦!
って言うか、向こうにすれば突然現れたのは、
私、松浦のほうなんだけどね。
- 158 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 13:14
- まったく、同じ顔! そして、
お互い、スッポンポンだから、まったく同じ体というのが
わかるわけ。
最初はふたりとも固まって、お互いを見つめ合ってた
わけ。
私もビックリしたけど、向こうの松浦のほうがよけい
ビックリしたと思うんだ。
「あなたは、誰なの!」
と、向こうが聴いて来たので、
「あなたこそ、誰なの!」
と、言ってやった。
顔と体は、まったく同じだけど、もしかしたら
名前は違うかもしれないもんね。
- 159 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 13:19
- 向こうは、途惑ってるみたいになので、
「ねえ、あなたの名前と生年月日を聴かせて」
と、聴いてみたの。
「私は、松浦亜弥。1986年6月25日。
血液型はB型。」
あやや〜〜!! まったく、同じでやんの!
私が、同じ名前と生年月日を言うと驚いてたわ。
あれ?、確か前に飛ばされた時は、向こうの
松浦亜弥は、私よりひとつ年上だったはずよ!
すると、この松浦亜弥は、前とは違う世界の
松浦亜弥ということになるのかしら。
- 160 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 20:03
- 「あなた、寒いんじゃない、入りなさいよ〜」
と、手を伸ばしてくる。
「もう、さっき入ってたの。美貴と・・・」
「美貴・・・?」
でも、少し寒くなってきたので、もう一度、
お湯に入ることにしたの。
亜弥の手につかまってバスタブに浸かる。
向かい合わせに座る。
ほんのさっきまで、美貴と幸せにお湯に浸かって
いたのに、なんの因果かもうひとりの自分と
一緒にお風呂に入ることになるなんて・・・。
- 161 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 20:05
- あちらの亜弥は、前髪をくくってオデコを出している、
とっても可愛い〜。まあ、あちらも亜弥なんだから、
当然なんだけど。
「どういうことなのか、聴かせてよ。あなたは
知ってるみたいね・・・」
私は、これまでの事をもうひとりの亜弥にすべて
話してあげた。
正月に起こった出来事から、今起こった事までを。
亜弥は、ふんふんとうなづきながら聴いている。
「すると、そちらの松浦は、このバスルームに出来た
異次元空間の裂け目から、こちらとまったく同じ世界、
同じ人間が住む、もうひとつの世界からやって来た
わけなのね。」
「そうよ、信じられないだろうけど・・・」
- 162 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/05(木) 20:07
- 「信じるわよ。現にあなた、もう1人の松浦がここに
居るじゃない。」
どうも、こちらの亜弥は順応しやすいのかも。
「でも、少し確かめてみたい事があるわ」
こちらの亜弥は、いきなり播州弁を喋りだす。
「おまはん せんどぶりに 会うたんやけ
わけものう ほたえるけ ごうわくや!」
私もそれに答えた。
「べっちょな〜い! うっとこのめんめは
なんせ おんとうやけ 待っとうで!」
それを聴いて、私達は顔を見合わせて
笑った。
「どうやら、あなたも私と同じ所の生まれの
ようね。これで本当に信じるわ」
- 163 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 00:41
- 暖まったので、上がることにして出ようとしたら、
「ねえ、ママにはどう言うの?」
どう言うって、いきなり亜弥がふたりになったのを
見たら、私ら以上に驚くのに決まってる。
「・・・もう少し、内緒にして置いたほうがいいと
思うけど、」
「そうよね、ママは信じてくれるかどうか、
わかんないしね」
脱衣所で、バスタオルを体に巻いたとき、
「亜弥ちゃん!まだ出ないの〜」
外からママの声がした。
- 164 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 00:44
- あわててドアを開けると、ばったりママと
鉢合わせする。
ママと入れ違いに出ようとして、ある事に気づいた!
もうひとりの亜弥が、まだ中に居る!
ママは、すっかり亜弥が出たものと思い、服を脱ぎ、
洗面器に自分用のシャンプーなどを入れて浴室へ
入って行く・・・。
私は、ドアを細く開けて盗み見た。
- 165 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 00:47
- 「あああ〜〜〜ぁれれれ〜〜〜????」
その声と共に、洗面器を放り出す、ガシャーンッ!という
音が響く!
続いて、ママが勢いよくバスルームのドアを押し開けて
飛び出して来た!
バタンッ!とドアを開けるとキョロキョロと辺りを
見まわしている。
私は、ちょうど開けられたドアの陰に隠れて
息を殺していた・・・。
再び、中に引っ込むと出て来た亜弥と口論している。
「あんたー!今、出て行ったはずよー!!
どうして、浴室に居るのよーーー!!!」
亜弥の落ち着いた声が聴こえる。
「ママ〜、きっと寝ぼけたのよ。しっかりしてよ〜」
亜弥が悠々と出て来て、バスルームのドアを閉めた。
私を見ると、ウインクをする。
私も急に可笑しくなって、必死で笑いをこらえる。
- 166 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 23:05
- 私達は、部屋に戻ったの。
正確に言うと、私にとっては戻った≠ニいう
言い方はおかしいかもしれない。
でも、部屋の家具の位置、テレビやステレオの位置、
ベッドの位置、すべて同じなのだから戻ったと言って
いいのかもしれないわ。
「そこらに座ってて、お茶を入れるわ」
この部屋の主である亜弥はそう言うと、バスタオルを
巻いたまま、部屋を出て行った。
私が鏡台に向かって、手や腕にクリームを塗って
いると、亜弥が紅茶を持って部屋に戻って来た。
- 167 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 23:21
- 亜弥は、紅茶をテーブルに置くと私の後ろに来た。
鏡に2人の姿が映る。
私は気がついて言った。
「あ、勝手にクリームとか使ってごめんなさい、
私がいつも使ってるのと同じだから・・・」
「そう。いいのよ」
亜弥は、私の肩に手を置いた。
鏡にまったく同じ顔がふたつ映っている。
なんか、嫌な感じがしたの。
いきなり、後ろの亜弥は私の首に強く腕
まわして来て、締めつけてくる。
- 168 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 23:40
- 一瞬、息がつまって声が出なくなってしまう。
後ろの亜弥の顔がけわしくなっている・・・。
「よくも、私に化けたわね・・・尻尾を出しなさいよ!
さあ、正体を現すのよ!」
首にかかった腕を振りほどいて、なんとか
声が出た。
「尻尾を出せって、私はタヌキじゃないのよ!」
「タヌキじゃないの・・・」
「バカなことを言わないで!本気でそんなこと
思ってるの!タヌキが化けるのは、おとぎ話の
中だけよ!」
- 169 名前:パラレル・ラブストーリー 投稿日:2004/02/06(金) 23:56
- 「じゃあ、なんなのよ。人間に化ける妖怪が
居るって聴いたことがあるわ」
私は、亜弥の前に顔を突き出した。
「この私が妖怪に見えるわけ!私は、タヌキでも
妖怪でもない、れっきとした人間よ〜!」
亜弥は、私の顔をまじまじと見て、
「まあ、妖怪には見えないわね。」
「あたり前よ!こんな可愛い顔の妖怪がいるわけ
ないじゃない!」
「それもそうね。いつも鏡で見る可愛い顔だけど」
- 170 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 15:08
- 「あ、背中になんか付いてるよ、後ろ向いて」
そう言われて、つい亜弥に後ろを向けたの、
すると、なんと亜弥のヤツ、私が巻いている
バスタオルの後ろの下を掴むと、いきなり
捲り上げたの!
「キャッ!」
私のかわいいお尻が丸出し!!
「なにすんのよ〜〜!!」
私が頬っぺたをふくらまして怒ると、
亜弥のヤツ、ケラケラと笑って、
「尻尾はついてないみたいね〜」
「あるわけないでしょ!!」
- 171 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 15:10
- こいつ、どう言う性格してるのよ!
「あなたね〜、いい$ォ格してるわね!」
「あら〜、ありがとう、どういたしまして。
それは、お互い様じゃないの」
そりゃひとから、私もいい性格してると言われない
こともないけど・・・、
この亜弥は、顔は同じだけど、ちょっと性格は
違うんじゃないの・・・。
亜弥は、衣類を入れるタンスの引き出しを開けると
下着を取り出した。
それを渡してくれる。
「はい、いつまでもノーパンでいると風邪を引くよ」
次に、パジャマを出してくる。
- 172 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 15:12
- 下着も、パジャマも見覚えのあるものだった。
その辺は同じなんだ。
パジャマを着ながら文句を言ってやる。
「だいたい、さっきは信じるって言ってたじゃない」
「でも、もしかしたらなにかが、私に化けて出たのかも
しれないと思ったのよ・・・」
「タヌキが播州弁を喋るわけがないじゃない!」
「わかんないわよ、播磨のお山のタヌキかも
しれないじゃないの」
「ホント、あなたはだぼ≠ネ子ね〜!
なんで、播磨のタヌキが東京にいるのよ!」
「そっか、それもそうね〜」
亜弥は、可笑しそうに笑う。
その笑顔は、テレビなどで見る自分の笑顔
そのままなのだけど・・・。
- 173 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 16:36
- もう遅いし、これからどうするかは明日考える
ことにして、寝る事にする。
「ねえ、一緒に寝よう」
「いいけど・・・」
そう答えたけど、嫌な予感がしたのだけど。
「ねえ、二人とも同じ亜弥って名前だし、混乱
するわ。こうしよう、これから呼ぶ時は、私が
亜弥。あなたは、松浦。ってことにしよう」
亜弥の言葉に、私も賛成する。
「そだね、そうしよう」
ふたりは、ベッドに腰掛けている。
- 174 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 16:39
- 亜弥が、じっと、私、松浦を見つめている。
なんと言うか、あやしい眼というか、色っぽい
感じなんだな・・・。
「ねえ、時々鏡を見て思っていたの・・・この自分に
キスしてみたいって・・・」
「は?」
「キスして、いい?」
一瞬、答えにつまっていると、亜弥の顔が
すぐ眼の前に迫っている・・・。
「松浦だって、そう思うでしょ・・・」
なにか言おうして、口を開いた時、その唇が
亜弥の唇でふさがれていた。
- 175 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 16:42
- 押されて、私はベッドにあお向けに倒れこむ。
亜弥は上になって、強く唇を吸ってくる・・・。
ようやく、亜弥は唇を離した。
私を見つめながら言う。
「ホント、可愛いわ。この仔ダヌキちゃん・・・」
「だから、タヌキじゃないってば!」
亜弥は可笑しそうに笑うと、私をまた
抱きしめて来る。
- 176 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/08(日) 16:45
- 灯かりを消して、亜弥はじきに寝ついたみたい
だけど、私は中々眠れなかった。
時々亜弥が、背を向けている私に抱きついてきたり
色んなところを触ってくる。
いきなり、私のパジャマのズボンの中に手を
突っこんできたので、驚いてその手をつかんで
亜弥の顔を見たが、亜弥はむにゃむにゃと
つぶやいて、寝返りを打つ。
タヌキ寝入りなのか、どうなのかわからない。
「どちらが、タヌキなんだか・・・」
- 177 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:00
- 翌朝、目がさめたら亜弥はもう起きていた。
昨夜は中々寝つかれなくて、まだ眠い・・・。
「おはよう〜!松浦〜」
亜弥はトレーナーに着替えて、顔も洗ってる
みたいだ・・・。
「早く、起きなさいよ〜、今日は雲ひとつない
ホントいい天気だよ〜!」
私は眠い眼をこすりながら、起き出して窓から
外を見た。
「まあ、奇跡の晴れ女と言われる松浦亜弥が
ふたりも揃ってるんだから、良い天気になるはずよ」
「アハハハハッー!それもそうだ〜!」
亜弥は、豪快に笑う。
- 178 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:04
- 「ねえ、昨夜亜弥が言ったことで、気になることが
あるのだけど・・・」
「なに?」
「あなた、美貴ちゃんを知らないみたいな口ぶり
だったけど、もちろん知ってるよね・・・」
「美貴って、誰なの?」
私は驚いて、亜弥の顔を見た。
「ウソーー!なんで美貴ちゃんを知らないの!
藤本美貴ちゃんよ、モーニング娘。の・・・」
「たしか、そんなひとモー娘。にはいないはずよ。
それにハロプロにも、そんな子はいないよ」
この世界には、美貴ちゃんが存在していない・・・、
どういうことなの・・・。
- 179 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:07
- 「今、モーニング娘。は何人なの?」
「えっとね、たしか、1月に1人卒業して、これから
夏にふたり卒業する予定だから・・・」
それは、同じみたい。
「今は、まだ14人よ・・・」
おかしいわ、美貴ちゃんがいないのなら、13人の
はずでなければならないのに・・・。
「亜弥ちゃん〜!朝ご飯出来たよ〜!」
ママの声がして、話は中断してしまう。
「じゃ、私は食べてくるわ。ここで待ってて、松浦の
ぶんは、後で持って来るから」
そう言うと、亜弥は部屋を出て行った。
- 180 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:10
- 亜弥が帰ってくる間、部屋にあった雑誌を
取ってモー娘。の記事を探したが、あいにく
見当たらない。
そうだと、思いついてCDラックにあるCDや、
DVDを見てみる。
モー娘。のCDがあれば、顔写真があるはずだ。
ところがそこにあるのは、見事に松浦亜弥の
CDとDVDだけだった・・・。
その辺は、同じなんだ。
亜弥が帰って来た。トーストに目玉焼き、サラダを
お盆に入れて持って来る。
「へへ、ママがよく食べるわね〜って、驚いてた」
- 181 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:12
- 私が食べるのを見ながら亜弥が、
「ねえ、今日のスケジュールは知ってる?」
「たしか、午前中に、雑誌の取材とグラビア撮影
が入ってて、午後はテレビの収録があって、
夜は、テレビの生放送があるわ」
「その通りよ。まあ、よくもこき使ってくれるわ。
まあ、明日からのツアーは東京だから、多少は
楽なんだけど」
「そうね」
すると亜弥は、私に向かって手を合わせた。
- 182 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:16
- 「ねえ〜、亜弥ちゃ〜ん、お願いがあるの〜」
亜弥は猫撫で声を出して言う。
「私は、松浦なんでしょ!」
「そ、そうね、ねえ松浦〜、一生のお願い!
今日だけ、あなたが代わりに行ってくれない」
「・・・・」
「ね、ねっ、どうせ、あちらの世界にいても
同じスケジュールなんだから、なんら変わりない
ことをするだけでしょ。ね〜、お願い・・・」
結局、私は亜弥の代わりに今日のスケジュールを
こなす事になった。
- 183 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:20
- 「それで、今日亜弥は何処に行くのよ・・・」
「フフフ、それは内緒」
私が睨みつけると、
「あのね、実はデートなの〜、ホントごめんね〜
ちょっと、朝、松浦がまだ寝てる時にメールで
約束したの・・・」
ってことは、最初から今日は私にすべて押しつけて、
自分は遊びに行くつもりだったんだ・・・。
ホント、この亜弥はいい$ォ格をしている。
でも、こちらの世界では、この松浦が新参者だから
しょうがないと言えば、言える。
- 184 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/09(月) 20:22
- なんとか、ママのすきをついて、私達は家を出た。
亜弥はタクシーを使うからと、何処かへ行ってしまう。
私は、マネージャーの車を待った。
じきに車は来たが、いつものマネージャーではなく、
別の人だった。
なんでも、風邪で高熱が出てどうしてもこられないと言う。
私にとって、いつものマネージャーにしろ、顔と名前は
同じでも、初対面に等しいのだから、同じことなのだが。
しかし、それがなんだか嫌な予感がしたのだけど、
不幸にもその予感は的中してしまう・・・。
- 185 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 15:56
- 車の中で揺られていると、つい眠くなってしまう、
なんとかこらえて、あれこれ考えているうちに
こちらの世界は、自分のいた世界とはどう違うのか
不安になってくる・・・。
『実は、デートなの〜』
亜弥の言葉を思い出す。こちらの亜弥にも恋人がいるんだ。
私だって、美貴っていう相手がいるというのに、
今は、離れ離れになってしまった・・・。
それに、どういうわけだか、
こちらの世界には、藤本美貴は存在しない。
- 186 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 15:59
- ふと思った、こちらの世界には松浦亜弥が2人
出現してしまったけど、
ことによると美貴も未知の世界へ飛ばされて、
そこには美貴がもうひとり居て、藤本美貴が
2人になっているかもしれない。
ふと、別れ際に亜弥が言った言葉が気になってくる。
亜弥は、午後のテレビの収録に司会者のひとりが
セクハラまがいのことをするかもしれないと言ったのだ。
その番組は、主に歌手がゲストのトーク主体の
歌番組だった。
- 187 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:05
- 司会は、男性二人に女性が1人。
男性ふたりの顔を思い浮かべた、あちらの
世界では、とても優しいふたりなのだけど・・・。
都内のスタジオに到着する。そこで雑誌の取材と
グラビア撮影の予定だった。
雑誌のインタビューが終ると、
スタジオでグラビア撮影が始まった。
- 188 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:08
-
ここからは、松浦亜弥は、ひとりの時が続くので
松浦の一人称から、3人称で行くことにします。
- 189 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:16
- そこで、問題が発生した。
水着撮影があるというのだ。
「そんなこと聞いてません!」
亜弥は強く言い張った。
カメラマンと亜弥のマネージャーは、顔を
見合わせた。
「たしか、了解は取ってあるはずなんだけど・・・」
カメラマンの言葉に、マネージャーもうなづいた。
結局、マネージャーの説得に亜弥は渋々応じた。
- 190 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:20
- たしかに、写真集では水着になるのは何度もある。
しかし、グラビア撮影では水着は初めてなのだ。
自分は、同じアイドルでも、グラビアアイドルではなく、
歌手のはずなのにと、亜弥は思う。
亜弥は、用意されたビキニの水着に着替えて、撮影は
順調に行われていた。
するとカメラマンが、
「亜弥ちゃん、そこで、ちょっとポロリと行こうか。」
「は〜?」
- 191 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:22
- 「ポロリだよ。」
「ポロリって何ですか?」
「胸をポロリだよ。片っぽだけでいいから」
「ええっーー!!!、そんなの出来ません!!」
亜弥は、完全に頭に来て撮影を中止してしまう。
マネージャーが飛んでくる。
亜弥は、マネージャーに向かって激しく抗議する。
「だいたい、いきなり水着になれって言ったと
思ったら胸をポロリだなんて、ひとをバカにするにも
ほどがあります!!」
- 192 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:25
- カメラマンは、不思議そうな顔をしている。
マネージャーは困ったような顔して、まるで
亜弥の方に非があるような口ぶりだ。
「胸をポロリだなんて、私は○ャネット・○ャクソンじゃ
ありません!!」
結局、亜弥はどうしても譲らず、撮影は後日という事に
なった。
次の仕事に向かう車の中でも亜弥は、プリプリと怒った
ままだった。
マネージャーは、何も言わず一冊の雑誌を渡した。
それは、亜弥もよく読んでいる女性ファッション雑誌だった。
- 193 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:29
- それをパラパラとめくると、亜弥は思わず目をむいた。
いきなり、女の子のヌードが目に飛び込んできた。
他のページも、やたらヌードの女の子が出てくる。
記事を読むと、新しいボディ・ローションのことが
書いてある。
そしてなぜか、ローションを体にぬっているモデルの
女の子が、オールヌードなのだ・・・。
他にも、ブーツの記事では、モデルはブーツ以外は、
スッポンポンのヌード。
カラフルな帽子を紹介する記事でも、女の子は
帽子以外は、オールヌード・・・。
- 194 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:32
- 思わず、亜弥は表紙を見直した。
間違いなく、亜弥も読んでいる女性情報誌だった。
あちらの世界では、この雑誌はせいぜい水着を着た
モデルが載るぐらいで、ヌードなんてありえない・・・。
もしやと、思ってページをめくると、夏の水着の特集が
載っていた。
最新水着は、トップレスだった・・・。
モデルの女の子の乳房のオンパレード。
それも、亜弥ぐらいの十代の女の子のモデルなのだ。
- 195 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:36
- 亜弥はあわてて雑誌を閉じた。
「この世界はどうなっているの!」
亜弥は雑誌を放りだした。
亜弥は、もう少し記事を読むべきだった。
次のページに、松浦亜弥の写真が載っていたのだ。
最新トップレスの水着を着た亜弥が堂々と胸を
あらわにして、ピースをしていたのだ・・・。
テレビ局に着いて控室に入った亜弥は、部屋に
置いてある雑誌を手に取って目を通した。
- 196 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/11(水) 16:40
- 女性誌はやはり、どれもやたらヌードが出てくる。
一冊だけ、まったく女性のヌードが出てこない雑誌があった。
男性誌らしく、男性のファッションが主体だった。
表紙を見てみると、『プレイボーイ』とある・・・。
亜弥は、わけがわからなかった。
やがて収録が始まった。
- 197 名前:名無し読書 投稿日:2004/02/12(木) 03:21
- 途中からよくわからなくなってしまいました・・・
スイマセン低脳で・・・_| ̄|○
でも今まで読んだことのないタイプのお話しなのでとても面白いです
次回更新までに自分の脳内整理して待ってます!
- 198 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 20:43
- 亜弥の右側には、セクシーで人気のある女性タレントが
座り、左側にはお笑いタレントの男性が座っている。
朝、亜弥が言っていたセクハラまがいの事をする
人というのは、左の彼としか思えない。
もうひとりの中年の男性は女性の向こうに座っているし
手が出せないはずだから。
亜弥がいた世界の彼は、口ではどう言おうと行動は
紳士的だけど、この世界の彼は何をするかわからない。
- 199 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 20:44
- 悪いことに、今度の新曲の衣装がミニスカートで、上は
肩がむき出しで無防備な衣装なのだ。
お笑いの彼は、その衣装に言及してくる。
「今度の新曲の衣装も派手やし、なんや振りも結構
きわどいんとちゃうの、その衣装で足を蹴り上げたり
するんやろ〜」
「はい、今度の曲はすごく夏をイメージして、すごく
乗りのいい曲で、皆さんも一緒に唄って振りも
楽しめる曲なんですよ〜」
- 200 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 20:46
- 亜弥は、適当に答えてはぐらかしながら、
体は左の女性の方へ傾けて、彼へは警戒を
怠らなかった。
もちろん、テレビでの亜弥の常として笑顔を
たやさなかった。
実は、亜弥は警戒する相手を間違えていることに、
まだ気がついていなかった・・・。
そのうち、亜弥は右隣の女性がやたら亜弥の体に
触ってくる事に気がつき始める。
- 201 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 20:49
- 彼女は、亜弥の腕に自分の腕をからませてきて
空いてる手で亜弥の肩や腰を触ってくる。
ついには、本番中にかかわらず体を密着させて来て
亜弥の耳に囁きかける。
「亜弥ちゃんの耳、可愛いわ・・・食べちゃいたい
くらいよ・・・」
さすがに亜弥は、これはおかしいと気がつく。
それでも、懸命に笑顔を作りながらもう二人の
男性に目で助けを求めるのだが、二人は、
知ってか、知らずか気にしてない。
- 202 名前:川VvV从 投稿日:川VvV从
- 川VvV从
- 203 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 21:00
- 亜弥の知っている隣の女性は、とても優しく
素敵なひとで、亜弥も好きなのだが・・・。
ついには、彼女はいきなり大胆な行動に出た。
亜弥の耳をパクリと咥えたかと思うと、片手で亜弥の
胸をむんずとつかむ!
「あややーーー!!!」
亜弥はたまらず、はじかれたように立ち上がって、
前にニ、三歩飛び出した!
- 204 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 21:02
- その亜弥をカメラが捉えている。
亜弥は、懸命に笑顔を保とうとするが、もう
半泣きの状態だ。
そんな亜弥を、司会の三人はポカンとして見ている。
あまつさえ、中年の男性は笑っている。
女性もお笑いの彼も、亜弥の反応に意外そうな
表情さえ見せている・・・。
- 205 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 21:03
- その後、なんとか収録を終えたが、亜弥は
何を喋ったか、まったく記憶にないほど混乱
したままだった。
なんとか、気を取り直して次の仕事へ向かうため、
控室から廊下に出たところ、例の女性が近づいて
来る。
亜弥は、一瞬固くなって身構えた。
彼女は、あの童顔だがとても素敵な笑顔を振りまいて
亜弥の手に、紙を握らしながら言う。
- 206 名前:セクシー・ワールド 投稿日:2004/02/12(木) 21:06
- 「亜弥ちゃん〜、今度ご飯食べいけへん。
前から何度も言うてるのに、いけずやわ〜、
ほんまに待ってるんよ。絶対メールしてよ〜」
亜弥は、何と言っていいのかわからず、ただ
頭を下げると、そそくさとその場を立ち去る。
紙を見ると、メルアドらしいものが書いてある
いかに経験の少ない亜弥でもわかる、彼女は
亜弥を口説いているつもりらしい・・・。
- 207 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:10
- 車で次の仕事へ向かいながら、亜弥は考えた。
これまでのことを思い返してみると、ようするに
この世界の女性は、とってもエッチなのだ・・・。
ぶっちゃけ、スケベなのだ!
そして、世間的にそれが認められてるみたい。
そう考えれば、すべて納得がいく。
明らかに、女の子向けの女性のヌードがやたら
出てくる、女性誌。
そして、さっきの彼女のように女の子に対しての
セクハラとも受け取れる行為を黙認している周囲。
- 208 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:12
- 亜弥は、美貴との事を思った。
亜弥のいた元の世界では、亜弥と美貴が恋人同士なのは、
言わば公然の秘密だけど、
ハロプロ内では黙認されていても、世間的には
認められるかどうかはわからない事だし、
亜弥も、公にはするつもりはない。
「松浦さん、さっきの事はあまり気にしないほうが
いいですよ」
マネージャーが運転しながら、声をかけてくる。
- 209 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:17
- 「なんか、落ち込んでるみたいだけど・・・」
「ありがとう。ちょっと驚いただけなの・・・」
「私は今日は代理で、松浦さんとはあまりご一緒
してないんですけど、テレビではいつも観てますが、
いつものように、適当にあしらっておけばいいと
思いますよ」
「そうね、中々そういう風にも出来ないんだけど・・・」
「松浦さんみたいに可愛いと、色んな女性から声を
かけられて、大変ですね〜」
- 210 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:22
- やっぱり、そうなんだ〜。この世界でも松浦は
モテモテで大変なんだ〜。
と、亜弥は納得する。
「そして、ついには女の子同士でも結婚出来るように
なりましたからね〜」
「ええっー!!それって、どういうわけなんですか!」
亜弥は、驚いて言う。
「あれ、知らないんですか、新聞やテレビで大きく
報道されたじゃないですか」
- 211 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:24
- 「・・・そ、そうだったわね、詳しくは知らないの」
「ある女性同士のカップルが訴えて、その結果、
裁判所が結婚を認めたそうですよ。
アメリカでも、同性愛者の結婚を認めるように
なったと聞きましたが、 いや〜、日本でも
認められるとは画期的な事ですね〜」
亜弥は有頂天になった! ということは、
この世界では亜弥と美貴は結婚出来るんだ!
- 212 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:26
- 美貴ちゃんと、堂々と結婚出来る・・・。
亜弥は、色々と妄想を始める。
プロポーズは、やっぱり美貴の方からして貰いたいな〜、
『亜弥、僕〜ぁ、死ぬまで君を離さないゾ〜』
あ、いけない、これはごっちんの唄のセリフだった。
で、美貴は私の家へ来てパパの前で、こう言うわけだ。
『お父さん!亜弥ちゃんを私に下さい!』 って。
- 213 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:28
- すると、元ヤンキーのパパは私をまだお嫁には
やりたくないもんだから、怖い顔をするんだろうな〜。
で、結婚式は教会でしたいな〜、
私は、泣いてるパパと腕を組んで、ヴァージン・ロードを
歩いていくんだ。
そして、神父様の前で、美貴と永遠の愛を誓うの。
私は、純白のウェディングドレスに身をつつむ。
我ながら、最高に綺麗だろうな〜。
で、美貴ちゃんも純白のウェディングドレス・・・、
- 214 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:31
- あれ?ふたりとも、ウェディングドレスだと、少し
おかしい気もするんだな〜、
やっぱ、ここは美貴ちゃんに男役になってもらって、
モーニング娘。だけに、モーニングをバリッと着て、
ウェディングドレス姿の私と並ぶと様になるだろうな〜。
でも、美貴ちゃんも女の子だから、ウェディングドレスを
着たいだろうな〜、
そうだ! 後でお色直しをすればいいんだ!
今度は私がモーニングを着て、美貴ちゃんが純白の
ウェディングドレス。 さぞ綺麗だろうな〜。
- 215 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:33
- で、新婚旅行は海外へ世界一周ってのもいいけど、
意外と、国内のどっかの温泉へ行くのもいいかもしんない。
で、ふたりで仲良く温泉に入るの〜。
もちろん、ラブラブのふたりは温泉でいちゃいちゃ、
あんなことや、こんなこともしちゃうの〜! キャッ!
そして、いよいよ夜になって、初夜を迎えるの〜!
あれ〜?初夜って、どんな事をするのかな・・・。
- 216 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:35
- 「松浦さん!聞いてます〜?」
マネージャーの声に、亜弥は我にかえった。
「あっ、ハイ、聞いてます!」
なんと、マネージャーはまた驚くようなことを
言い出した。
「松浦さんも知ってると思うけど、その結婚を
認められた、女性のカップルには子供が
生まれるそうですよ」
「あやや〜〜〜?!」
亜弥は、驚いて身を乗り出した。
- 217 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:38
- 「女の子同士で、なんで子供が生まれるの〜!
あっ、そっか、人工授精なのね・・・」
「まあ、人工授精と言えば、言えるんだけど
厳密に言えば、違うみたいですよ。
なんでも画期的な研究が完成したそうで、
相手の細胞のDNAを直接、相手の卵子と
結合させて受精させるそうですよ」
「は・・・?って、つまり・・・」
「これまでの人工授精は、別の男性の精子と
卵子と結合させるのですけど、この場合は
相手の女性のDNAを卵子に結合させるで、
正真正銘のふたりの子供が出来るんですよ」
- 218 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:40
- 「え〜!そうなんだ〜〜!!」
亜弥は、またも妄想モードに入る。
すると、私達が結婚すると、松浦は正真正銘の
美貴ちゃんの子供を産めるんだ〜。
亜弥は感動して、うっとりとなる。
私と美貴ちゃんの、子供・・・。きっと超可愛い
玉のような子供が生まれるだろうな・・・。
- 219 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:44
- もちろん、二人の子供は女の子に決まってるわ〜。
プリティーで、キュートな女の子に違いないわ・・・。
私が毎日育児して、美貴はお仕事に行くんだ。
朝、私が赤ちゃんを抱っこして、美貴をお見送り
するんだ〜。
は〜い〜、パパにバイバイするのよ〜。
あれ?パパってのは、変かしら・・・ママは、私の
ことだし、あれれ、なんて美貴を呼ぶのかな・・・。
「なんでも、お互いを受精させて、二人同時に
お腹が大きくなってるそうですよ。
松浦さん、聞いてますか・・・」
- 220 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:46
- 「そっか・・・、美貴ちゃんも、私、松浦の子供を
産めるんだ〜。じゃあ、ふたり同時に子供を
産んだら、生まれた子供は、腹違いの双子なんだ〜」
「ほ〜、腹違いの双子ですか〜、なるほど面白い
ですね〜」
「あら、聞こえちゃいました〜」
ふたりは、声を合わせて笑った。
「松浦さんも、好きな人がいるんですね〜」
- 221 名前:ウェディング・ワールド 投稿日:2004/02/13(金) 18:48
- 「はい。とても好きな・・・」
突然、亜弥は気がついた・・・。
この世界には、美貴はいないんだ・・・。
私だけが飛ばされて、美貴とは離れ離れになって
しまったのだ。
せめて、この世界にもうひとりの藤本美貴が
いれば、少しはなぐさめになるのに、
この世界には、藤本美貴は存在していない・・・。
- 222 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:21
- 運転していた男性のマネージャーは突然、亜弥が
異様な声を上げ出したので、驚いて振り返った。
そこには、亜弥が両手で目の上を抑えながら、
ウ〜ゥ、ウ〜ゥ、と、うなり声を出している・・・。
彼はハンドルを切ると、わき道に車を入れて止めた。
彼は、亜弥をまじまじと見つめた。
「松浦さん・・・どうされたのですか・・・」
亜弥は、ワ〜ォ、ワ〜〜ォ!と大きく声を上げる。
- 223 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:24
- どうやら、亜弥が泣いてることに気づく。
亜弥は泣き声を上げ始める。
「美貴〜〜!会いたい、会いたい、会いたい〜!
さみしいよ〜〜!美貴!美貴・・・会いたい・・・
美貴、何処にいるの・・・」
彼は、黙って亜弥を見つめている。
「会いたい、会いたいよ〜!会いたいよ〜〜!!
美貴、美貴〜!美貴〜〜!!美貴・・・・会いたぃ」
彼は、亜弥が少しおさまるまで見守っていた。
「会いたいのよ・・・会いたい、ただ会いたいだけなの、
会えるだけでいぃ・・・・それだけで、いぃ・・・」
- 224 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:27
- 彼は、ハンカチを取り出すと亜弥に渡した。
彼は、車を動かした。
陽が落ちて、あたりは暗くなって来た。
途中、海の中のライトアップされた橋を渡って行く。
やがて、車は止まった。
「ここって・・・」
「そうですよ。お台場です」
亜弥は驚いて言った。
「違います!行き先は、お台場にあるテレビ局では
ないです!六本木のテレビ局です!」
- 225 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:29
- 「わかってますよ・・・」
彼は笑って言った。
「わかってたら、どうしてこんな所に・・・」
彼は、窓の外を指差した。
「ほら、綺麗ですよ」
見ると、夜空に何色もの光に彩られた大観覧車が見えた。
亜弥は思わず見とれた。
しばらく、ふたりはお台場の夜景に見とれていた。
- 226 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:31
- 「クリスマスや正月になると巨大なメモリアルツリーが
点灯してもっと綺麗なんですけどね」
「そうなんだ。でも、行かないと・・・仕事が」
「大丈夫、まだ時間はあります、六本木は近くですよ。
それに、世の中には仕事よりも大事なものがありますよ」
亜弥は、マネージャーの顔を見つめた。
「・・・ありがとうございます。私のためにここへ
来てくれたんですね」
「さっきの様子のまま行っても、仕事にならないでしょう、
生放送のテレビですしね・・・」
- 227 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:33
- 亜弥は、礼を言って彼のハンカチを返した。
「松浦さんが、泣いているのを初めて見ました、
美貴さんっていう人は、今何処に・・・」
亜弥は、首を振った。
「美貴は、いないんです・・・何処にも」
「亡くなられたわけでは・・・」
「違います、ちゃんと生きています。理由は言えない
けど、今は会えない所にいます・・・」
「生きているなら、また必ず会えますよ。」
「・・・そうですね。きっとそうですね。きっと会える
はずですよね。絶対に」
亜弥は力強く言った。
- 228 名前:レインボー・ワールド 投稿日:2004/02/18(水) 00:35
- やがて、マネージャーは車を動かし、虹の橋を渡り
六本木へと向かった。
亜弥は、車を降りるとマネージャーに深く頭を下げた。
「さあ、行きなさい。待ってますよ・・・」
彼は、優しく言った。
亜弥は、巨大なタワービルの近くのテレビ局に
入って行った。
- 229 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:36
- 亜弥が、この生番組に遅れたくなかった理由の
ひとつは、これには珍しくモーニング娘。と一緒に
出演することだった。
亜弥は、モー娘。に会って確かめたいことがあった。
こちらの亜弥は、2004年6月現在、モー娘。は
14人だと言った。
美貴が、存在しないのなら、娘。は13人のはずなのに。
ということは、別の娘。がひとり加わっていることになる。
それが、誰なのか気になった。
亜弥は、思い切ってモー娘。の控室に行ってみる
ことにした。
- 230 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:38
- ドアをノックして、部屋に入った。
自分の控室と違ってとてもにぎやかだった。
亜弥の姿を見た娘。たちは歓迎の声を上げて
近寄ってくる。
亜弥は思わずひるんだ、ここは自分のいた世界
とは、違う。
娘。とはいえ、なにをされるかわかったもんじゃない。
娘。たちは、皆顔見知りの者ばかりだった。
亜弥は、笑顔で皆と応対しながら娘。の人数をかぞえた。
- 231 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:42
- 13人しかいない・・・。
亜弥はウソを言ったのだろうか・・・。
そうとも思えないので、娘。の誰かに聴いてみる
しかない。
娘。の顔を見まわした。
矢口さん・・・いけないいけない、彼女は危ない・・・、
矢口さんは、積極的だし、ラジオでもパンツの話とか、
結構エッチな話をしてるので、うかつに近寄ると
なにをされるか、わかったもんじゃない。
- 232 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:44
- 亜弥は、無難な娘。を見つけた。
紺野あさ美に近づく。
「紺野ちゃん、ちょっと聴きたいことがあるの・・・」
紺野は、パッと顔を輝かした。
そして、いきなり亜弥の首にすがりついてくる。
「松浦さ〜ん!大好きで〜す!!」
「あやや〜〜〜!!?」
亜弥は笑顔をひきつらせ、あわてて紺野から
離れる!
- 233 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:47
- 辻加護のふたりは、これもかなり危ない・・・。
となると、ハロプロの皆からも信頼されている、
リーダー、飯田圭織しかいない。
「飯田さ〜ん、聴きたいことが・・・」
飯田は、亜弥を見ると満面に笑顔を浮かべて、
いきなり、亜弥のお尻に腕をあてがうと、
お姫様抱っこで、抱き上げる!
「亜弥ちゃん〜、いつも可愛いね〜、これから
亜弥ちゃんの控え室で、良いことしない〜?」
「飯田さーん!!、降ろしてくださいーー!!」
亜弥は、足をバタバタさして抵抗する!
- 234 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:50
- 飯田が降ろすと、
亜弥は、もう半泣きになって娘。の控室から逃げ出す。
その時、矢口が立ち上がり、亜弥の後を追う。
飯田は首をかしげて言う。
「なんか、今日の亜弥ちゃん変じゃない・・・
いつもは、私の冗談にもつき合ってくれるのに」
「リーダー、やりすぎじゃないの」
と、吉澤。
「そうかなァ・・・」
- 235 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:52
- 亜弥は自分の控室に飛び込んで、座り込むと
気を落ち着かせるため、お茶でも飲もうと
湯のみを手に取り、ひと口含んだ時、
ドアがガチャッと開いて、矢口が姿を現した。
亜弥は思わず、ブフアッーー!!と、お茶を吹き出す。
矢口が、こちらに向かってきたので、
亜弥は湯のみを置くと、その場に大の字に寝ころがった。
- 236 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:54
- 「?・・・亜弥ちゃん、なにしてんの」
「矢口さん・・・私、観念しました。好きなように
してください・・・あんまり痛くしないで・・・」
「??、なにわけわかんない事、言ってるの」
矢口は、亜弥の手を引っ張って起こしてくれる。
「ごめんね〜、皆、ふざけてばっかりで。
さっき、なんか聴きたいことがあって私たちの
控室に来たのでしょ」
- 237 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:57
- 亜弥は、矢口の優しい眼を見て、
「矢口さん・・・」
思わず矢口の手を握った。
「皆、亜弥ちゃんみたいに可愛い子と
仲良くなりたいのよね〜」
「矢口さんは・・・」
「私? もちろん亜弥ちゃんは大好きだよ〜、
今度、デートしよう〜」
「・・・・」
「冗談よ〜、亜弥ちゃんには、ちゃんと恋人が
いるもんね〜」
- 238 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 20:59
- 「恋人って、誰なんですか!」
矢口は笑って、
「え〜、とぼけないでよ、亜希ちゃんのことだよ。
今日は、お休みで残念だね」
「亜希・・・、その人は、モーニング娘。のメンバーで
今日はお休みなんですか・・・」
「加藤亜希。あなたの良いひとよ。いつもラブラブで
憎らしいったらありゃしない〜。
なんでも、今日の朝電話で、急に熱が出て今日は
お休みするって言ってきたそうよ」
「・・・・」
- 239 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 21:02
- 「亜弥ちゃん、心配でしょ。連絡あった?」
「あ、そうでした!連絡ありました、もうだいぶ
良くなったそうです・・・」
「そう、良かった。娘。は14人も居るから、ひとり
ぐらい欠けても、他がフォロー出来るからね。
その点、亜弥ちゃんは大変ね、松浦亜弥は
ひとりだけだから・・・」
「はい・・・」
もちろん矢口は、松浦亜弥がふたり居ることは
知るはずもない・・・。
- 240 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 21:06
- 亜弥は、今日の朝のもうひとりの亜弥の言葉を
思い出した。
『実は、デートなの・・・』
加藤亜希は、仮病に違いない・・・。
亜弥の奴め・・・、松浦亜弥がもうひとり出現したので、
これ幸いと、亜希と示し合わせてふたりで仲良く
遊びに行ったに違いない・・・。
「矢口さん、その亜希ちゃんって、いつから
娘。に入ったんですか」
「亜希ちゃんは、6期メンとして入ったのよ。
・・・どうしてそんなこと聴くの? 当然、
亜弥ちゃんが知らないはずは・・・」
矢口は、不審そうな顔をする。
- 241 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 21:09
- 「あ、あの、ちょっと、ど忘れして」
亜弥は、あわててごまかす。
亜希は6期メンとして入った・・・。
まさか・・・美貴と同じ・・・。
亜弥は亜希の顔をぜひとも見たいと思う。
その時、ドアがノックされて、
「松浦さん、そろそろ時間ですよ。」
亜弥は、あわてて立ち上がる。
- 242 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/20(金) 21:12
- 「大変〜!まだお化粧もしていない!」
矢口も、
「いけない!、私もまだだ〜!」
亜弥と矢口は、バタバタと控室を出た。
「矢口さん、今日は『おいら』って言わないんですね」
「え〜?、おいら・・・。おいらか、いいね〜!
今度からは、それ使おう!」
「・・・・」
「そうだ、亜弥ちゃん聴きたい事があったんでしょ!」
「はい、もう聴きました・・・」
「?・・・そう。」
やがて、本番が始まった。
- 243 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:06
- 華やかにアーティスト達がオープニングに集う。
亜弥は緊張していた。
生放送のこの番組はいつも緊張するのだが、
まして、この世界では何が起こるかわからない。
亜弥は、モー娘。と並ぶ。
すると、亜弥の緊張した姿を見て、矢口真里が
さりげなく亜弥の隣に来てくれる。
亜弥は真里の顔を見て少し安心する。
サングラスをかけたMCがアーティスト達を紹介する
- 244 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:09
- 亜弥の後、モーニング娘。を紹介する。
「今度の新曲、どんな感じなの?」
真里が答える。
「題名のとおり、ミステリアスな大人の曲で、
おいらもすごく気に入ってます」
「あれ?矢口はいつから自分のことを、おいらって
言うようになったの」
「今日からで〜す。どうですか、似合ってます、
おいら・・・」
真里は、照れ笑いを浮かべる。
「矢口のような可愛い女の子が、おいらなんて
言うと、おじさんは、たまらんぞ〜」
真里は、亜弥の腕を取ると楽しそうに笑う。
- 245 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:13
- 亜弥の出番の前のトークで、MCのおじさんは
やはり、亜弥の衣装にふれてくる。
「今度の新曲の衣装は、題名に合わせたの?
おじさんは、眼のやり場に困っちゃうよ」
衣装は、色は白だが肩を思い切り出し、お腹は出さない
ものの、超ミニのスカートで、下着が見えるギリギリで
これまでに無く大胆なものだった。
「はい、ギラギラの夏をイメージした斬新な曲に
仕上がってます」
亜弥は、もしかしたら新曲がこの世界では違う
曲かもしれなという不安があったが、幸い、
同じ曲でほっとしていた。
- 246 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:18
- 生本番で、全然違う曲を紹介されたら、パニックに
なってた所だった。
「では松浦亜弥さんで、曲は、
『Summer Passion』 です〜!」
この曲は、振りも激しくて、終って戻る時には
亜弥は息づかいも荒く、額には汗が浮かんでいた。
後ろのひな壇に座ると、偶然なのか隣は真里だった。
真里は新曲を褒めてくれて、亜弥は嬉しかった。
やがて、モーニング娘。の出番が来た。
- 247 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:22
- 「今日は、残念なことに加藤亜希さんが体調を
こわされてお休みです。 曲は、
『Suspense〜夢幻』 です〜!」
ようやく、番組はすべて終った。
亜弥は真里に駆け寄ると、頭を下げた。
「矢口さん、ありがとうございます・・・」
番組の間中、真里はまるでかばうように、
亜弥の側にいてくれた。
「いや〜、なんだか、いつも自信たっぷりの
亜弥ちゃんを、今日に限って守ってあげたいと
いう気持ちになるんだなァ」
真里は、ちょっと不思議そうに言った。
「それに、おいら・・・亜弥ちゃん大好きだしね。
『おいら』って、気に入っちゃった。亜弥ちゃんの
おかげだよ〜」
- 248 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:24
- 亜弥は、スタジオにマネージャーの姿を見つけた。
身支度を終えると、亜弥は帰途につく。
「今日は、色々な事がありましたね・・・」
運転しながら、マネージャーが言った。
「本当に・・・」
亜弥のいた世界とは、似ているが微妙に違う、
この世界の一日を、曲がりなりにも無事に
終えられたのも、彼のおかげかもしれない。
- 249 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:27
- 途中の車の中で、突然、美貴への想いが噴出して、
ぼろぼろに泣き出した亜弥を、お台場の夜景を
見せてなぐさめてくれたのだ。
「今日は、本当にありがとうございます。
あの〜、まだお名前をうかがってなかったですね」
「私は、和田といいます・・・」
「は? 和田さん・・・」
どこかで、聴いた名前だった。
「まさか、あの和田さんじゃないですよね・・・」
彼は、笑いながら、
「たぶん、その和田だと思いますよ・・・」
- 250 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:30
- 「え〜!だって、和田さんはあの事務所の社長さん
なのに、どうして私のマネージャーの代わりを!」
「社長と言っても名前だけですよ。
実は、偶然私が居合わせた時、松浦さんの
マネージャーが急病で来られなくて、誰もいなくて
困っているのを見て、
私がピンチヒッターを名乗り出たんです。
幸い、うちのふたり共今日はオフですし、いつも
お世話になっていますしね、
それに、トップアイドルの松浦さんと、一度ご一緒
に仕事をしたかったんです。」
- 251 名前:ヒルズ・ワールド 投稿日:2004/02/21(土) 19:33
- 亜弥は、改めてお礼を言った。
彼には感謝の気持ちでいっぱいだった。
「マネージャーとして、当然の事をしたまでですよ。
お家は、こちらの方角でよかったですね」
「あ、はい・・・」
亜弥は、思い出した、
家の近くの喫茶店で、もうひとりの亜弥と
待ち合わせることになっていた。
途中で、降ろして貰う。
「じゃ、ここでいいですね。
今日は、松浦さんの別の一面を見たような気が
します。私にとっても、勉強になりましたよ。
お気をつけて・・・」
亜弥は、亜弥の待つ喫茶店へ向かった。
もうひとりの亜弥は、店の隅に座っていた。
- 252 名前:名無し作者 投稿日:2004/02/24(火) 19:37
- >>197 よくわからないという、レスがあったので、
パラレル・ワールドを存じない読者のために
少し、説明をします。
なぜ、もうひとりの松浦亜弥が出現したのか
疑問に思う読者もおられると思います。
パラレルワールドとは、SF小説の分野のひとつで、
平行宇宙、あるいは、平行世界と言われるものです。
巧く説明するのは難しいのですが、まったく同じ
世界が平行して存在するというのです。
仮説として、
あなたが、日曜日の朝、このまま寝てるか、
それとも、何処かへ出かけるか迷うとします。
そのまま、寝てる場合を Aとします。
何処かへ出かける場合を Bとします。
Aの場合は、一日寝ていて何も起こらない。
Bの場合は、外へ出かけて、何かが起こる。
Bでは、もしかしたら片想いの彼女に偶然出会って、
思い切ってデートを申し込んだら、OKで、
楽しい一日になるかもしれない。
月曜日、Aの場合は何も変わらない。
しかし、Bの場合は恋人が出来てハッピーな
一週間が始まる。
平行世界(パラレルワールド)とは、
Aの、何も変わらない世界とは別に、
Bの、恋人が出来て変わった自分が、平行世界に
存在するという事です。
この平行世界、平行宇宙という概念は、
量子物理学の多世界解釈とも言われていて、
まったくのデタラメでも無いようなのです。
AとBの世界は、決して交わること無く、平行に
存在して、時間が進んで行きます。
このAとBの世界の松浦亜弥が、時空の裂け目
から飛ばされて、前編では入れ替わってしまう。
後編では、Aの世界の亜弥がBの世界に飛ばされて
Bの世界では、亜弥がふたりになってしまうのです。
ということなのですが、
おわかりになりましたか?
作者も、実はよくわかってなかったりして・・・。
- 253 名前:名無し作者 投稿日:2004/02/26(木) 01:06
- ここからは、また2人の松浦亜弥の進行と
なりますので、
パラレル・ワールドに迷い込んだ方の「松浦亜弥」
の一人称にします。
これまで、レスをいただいた方、
ありがとうございます。
ご返事は、くぎりがついた所でさし上げます。
- 254 名前:Gパン履くのに慣れた 投稿日:2004/02/26(木) 01:09
- 私が近づくと、亜弥は軽く手を上げる。
亜弥は野球帽をかぶり、大きなサングラスを
かけていて、パーカーにジーンズのラフな格好だ。
服装は今朝と同じだけど、帽子とサングラスは
何処かで買ったらしい。
サングラスをかけているので表情はよくわからない
けど、なんだか沈んでいる感じ。
一日、亜希ちゃんとデートを楽しんでたはずなのに、
「どうだった、亜希ちゃんとのデート・・・」
- 255 名前:Gパン履くのに慣れた 投稿日:2004/02/26(木) 01:36
- 亜弥は、驚いて顔を上げる。
「どうして、知ってるの!」
「矢口さんに、聞いたの。松浦亜弥と加藤亜希は
恋人同士。そのふたりともズル休みを決め込んでいる
誰でも見当がつくわ」
「ズル休みはよけいよ、でもその通り。
亜希と久しぶりのデートは楽しかったわ。
ディズニーシーへ行ったの〜。その後は、
2人でショッピング。」
はぁ〜、ディズニーシーか・・・私だって美貴ちゃんと
行きたかった。
- 256 名前:Gパン履くのに慣れた 投稿日:2004/02/26(木) 01:38
- 「それがさ、帰りに亜希とケンカしちゃったの、
私が、アイスクリームはチョコが良いって言うのに
亜希のヤツ、バニラが良いって言うの・・・、
それで亜希が、この前はバニラを美味しいって
食べてたじゃない〜!って、ツッコんで来るからさ、
今日は、チョコを食べたい気分なの〜!って、
私が言ったら、ますますケンカになっちゃって」
「あきれた〜!そんなつまらない事でケンカに
なったの〜!」
- 257 名前:大人になるって・・・ 投稿日:2004/02/26(木) 01:43
- 「本当は、今日は亜希の所へ泊まるつもり
だったのに、ダメになっちゃった・・・」
「そんな〜!そうなったら私はどうすればいいの!」
「簡単よ、堂々と松浦亜弥って顔をして帰ればいいのよ。
って言うか、顔は松浦亜弥そのままだしね」
「そんな簡単なものじゃないわよ!亜弥は
亜希ちゃんの家へ、お泊りで良いだろうけど」
亜弥は、私の顔を見つめた。
「ねえ松浦、お泊りって、意味わかってるの・・・」
「え?私もよくお友達の家に、お泊りしたわよ」
「あのね、お子ちゃまがお泊りするのと、わけが
違うのよ・・・」
「え・・・?」
- 258 名前:大人になるって・・・ 投稿日:2004/02/26(木) 01:47
- ようやく、泊まることの意味に気がついた・・・。
松浦亜弥と加藤亜希は、恋人同士。
しかも、女の子同士で結婚も許されて、子供まで
産むことが出来る、この世界の恋人同士・・・。
「なに、顔を赤くしてるのよ・・・、ホント、松浦は
子供なんだから」
・・・へんだ! 私だってね、美貴とは恋人同士
なんだから。キスもするし、一緒にお風呂に入って
さわりっこもするし。
でも、それ以上の事は、まだだけど・・・。
- 259 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 01:49
- 「ねえ、それより良い方法を考えたの」
亜弥は、自分のかぶってた野球帽とサングラスを
私に渡す。
「その帽子とサングラスをかけてと、それと」
亜弥は、化粧道具を取り出すと、私の眉を
太く、描き出す。
「こうやれば、少しは別人に見えると思うよ。
また、こそこそお家に入るのは大変でしょ、
私のお友達という事にして、一緒にお家へ
帰ればいいわ。」
「でも、大丈夫かな・・・」
「平気平気。ママだって、松浦亜弥がふたり
いるって、思うわけないし、大丈夫〜。
私と良く似ている友達ってことにすれば良いよ」
- 260 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 01:58
- ふたりで、家へ帰る。
ママは、亜弥の話に疑いもせずに私を家へ
入れてくれた。
「あなたも、歌手なの?」
「え?はい、そうです・・・」
亜弥が言う。
「新人なの、だからまだ無名なの」
「そう。名前は?」
それに亜弥は思わず、私を見た。
いけない!名前をどうするか、考えてなかった・・・。
が、すぐに亜弥は、
「美貴ちゃんよ。美貴・・・藤本美貴って言うの」
私は、亜弥の言葉に思わず目を見張った・・・。
私が、藤本美貴・・・。
- 261 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:01
- 「そう、美貴ちゃんね。あれ・・・どこかで
聴いたような・・・」
ママは首をかしげた。
「ママ!そんなことはどうでもいいでしょ、
早くご飯にしてよ〜、お腹すいたよ〜!」
私も、お腹がすいた〜!今日は一日色々な
ことがあって、あまり食欲がなかったけど、
お家に帰って、安心したら急にお腹が
すいてきた。
やっぱりこの家は、私の家なんだ・・・。
- 262 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:03
- 3人で、食卓を囲む。
ママが色々と聞いてくる。
出身は? ・・・大阪です。
歳は? 17・・・いえ、18です。
CDとか、出したの?
さすがに、困る。亜弥の顔を見る。
「この子は、まだCDとか出てないのよ〜」
「そうなの・・・」
なるべく、喋らないようにしてご飯を食べる、
もちろん、帽子はとったが、サングラスはかけたまま。
- 263 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:06
- ふと、顔を上げると、ママがじっと見てることに気づく。
ママは、隣の亜弥と私を見比べている・・・。
隣の亜弥を見て、気づいた。
私と亜弥は、同じように箸を持ち、同じように
お茶碗をもって、同じようにご飯を食べている・・・。
そしてママは、
「美貴ちゃん、ご飯食べる時は、サングラスを
外したほうがいいんじゃない、眼が悪いわけでも
ないんでしょ・・・」
私は、観念してサングラスを外した。
- 264 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:08
- ママは、お?、という風に目を細めて私達を見ている。
「あなた達・・・まるで・・・」
「でしょ!でしょ〜!!」
あわてて、亜弥が口を出す。
「まるで、双子みたいに似てるでしょ〜!
世の中には、3人は自分とそっくりな人間が
いるって言うでしょ。
私も、初めて見た時、驚いちゃった〜!
だから、すぐに友達になれたの〜」
ママはそれに答えず、
「・・・美貴って名前、思い出したわ、
美貴ちゃん、あなたは、昨夜はこの家に
居たのじゃないの・・・」
亜弥と私は、顔を見合わせた。
- 265 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:11
- 私は、正直に言うことにした。
「はい。昨夜はこの家に居ました」
「やっぱりね、変だと思ったのよ。亜弥が
ふたり居るとしか思えなかったもの・・・」
「ママ、ごめんなさい!この子、美貴ちゃんね、
アパートを追い出されたの。
まだ、新人だからお給料だって、ほとんど
貰えないし、実家も余裕が無いみたいで、
仕送りも少なくて、それでお家賃払えなくて
住む所が無くなったの、だから昨夜はママに
内緒で家に入れたの・・・」
「そうなの、可哀相に・・・新人の頃は誰でも
そうなのよ〜。売れるまでは大変だってね〜、
うちの子は恵まれてるのよね〜」
ママは、涙ぐんで言う・・・。
この亜弥は、大ウソつきだ・・・。
- 266 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:15
- 「美貴ちゃん、好きなだけ家に居て良いのよ。
うちの子は、おかげ様で毎日忙しくて、ろくに
家に居ないから、私も話相手が出来て嬉しいわ」
「はい・・・」
「それにしても、良く似てるわね・・・」
「ねえ、ママ〜、双子を産んだ覚えは無いの〜」
「それは・・・あるわけ無いでしょ!!」
ママは呆れて言った。
私達は、食事を終えると早々に部屋に行く。
- 267 名前:違う子にでも なったようなメイクして 投稿日:2004/02/26(木) 02:17
- 亜弥は部屋に入ると、
「あ〜、食った食った〜」
と、お腹を叩いた。
「ちょっとぉ〜、やめてよ〜、アイドルの
やることなの〜お腹をポンポン叩くのは。
まるでタヌキみたい〜」
「タヌキは、あなたでしょ」
「だから〜タヌキじゃないってば〜!!」
頭にきた私は、クッションを投げつける。
亜弥は、ひょいとよける。
- 268 名前:心まで入らないで 投稿日:2004/02/26(木) 02:19
- 「それにしても、ママはころっと信じたわね〜
まあ、松浦亜弥がもうひとり出現したとは
誰も思わないもんね。
ねえ、美貴ちゃん・・・違った、松浦だった」
「ウン・・・」
「どうしたの、私が勝手に美貴って名前を
出したの、いけなかったかしら・・・」
「ううん、そんなことないけど」
「じゃあ、ママの前や外ではあなたは、
藤本美貴ってことにするよ。
二人だけの時は、松浦。たまに私の
代役をする時は、松浦亜弥。」
- 269 名前:心まで入らないで 投稿日:2004/02/26(木) 02:23
- この世界では、私は藤本美貴・・・、
複雑な気持ちになる。
この世界には美貴が存在しないと思ったら、
美貴は、私だったなんて・・・。
また、美貴への想いがつのって来る。
「どうしたの・・・元気ないけど」
「ううん、なんでもない」
「大丈夫、私がついているよ」
亜希という恋人が居る亜弥には、今の
私の気持ちはわかるはずがない・・・。
- 270 名前:ウキウキな夏希望 投稿日:2004/02/26(木) 02:26
- 亜弥は、雑誌を手に取り読み出す。
側に行って雑誌の表紙を見ると、女性誌だったので
嫌な予感がした。
「もうすぐ夏だな〜、亜希と海行きたいな〜
いつも忙しくて行けやしない。
去年、イベントでハワイに行ったぐらいかしら」
亜弥は雑誌を私に見せる。
「ほら、最新水着の私だよ〜、」
そこには水着の下だけ着けて、上は胸を
丸出しで、脳天気にピースをしている
松浦亜弥がいた・・・。
「あやや〜〜!?
なによ!これ〜〜!!」
「なにって、最新水着よ。トップレスの水着、今
流行ってるのよ。この前撮ったの」
- 271 名前:ウキウキな夏希望 投稿日:2004/02/26(木) 02:29
- 「信じられない〜!平気で胸を出すなんて・・・」
亜弥は、不思議そうな顔をする。
「松浦は、自分の乳房をどう思うの?毎日
お風呂に入った時、鏡で見てるでしょ。綺麗だって
思わないの」
「そりゃあ・・・思うけど、それとこれとは別よ」
胸を放り出して、平気で写真を撮らせるのだから、
今日のようにカメラマンが、『胸ポロリ』を要求する
わけだ。
「私と、松浦の胸なら、どこへ出しても恥ずかしく
ないって〜」
「だから〜そういう問題じゃないってば〜」
- 272 名前:ウキウキな夏希望 投稿日:2004/02/26(木) 02:32
- 亜弥と言うか、この世界の女の子は羞恥心が
無いのだろうか、明けっぴろげと言うか・・・。
「アッ、もうこんな時間よ、早くお風呂に入らないと」
もう深夜になっている。
亜弥は立ち上がると、私の手を取った。
「え?」
「なにしてるの、一緒に入ろ〜」
亜弥は、どんどん私の手を引いて、部屋を出ると
バスルームに向かう。
- 273 名前:誰にも秘密 投稿日:2004/02/26(木) 02:33
- 美貴と一緒にお風呂に入るのは楽しいけど、
この亜弥と入るのは、なんだかしり込みしてしまう。
だって、なにをするかわからないもの・・・。
ふたりが部屋を出たところで、ママとぶつかる。
「お風呂?早く入っちゃいなさいよ」
ママは行き過ぎたところで、振り返って、
「あっ、亜弥ちゃん〜!」
「はいっ〜?」
私と亜弥は、ふたり同時に返事して振り返った・・・。
- 274 名前:誰にも秘密 投稿日:2004/02/26(木) 02:36
- 「・・・?どうして、美貴ちゃんも返事するのよ」
と、ママは不思議そうな顔をする。
私は思わず、いけないっと顔をしかめた。
ママは疑わしそうな目で私を見ている。
あわてて、バスルームへ飛び込む。
「あ、亜弥ちゃん、明日は何時に起こそうか・・・」
「そ、そうね、8時頃かな・・・」
「さっきの美貴ちゃんの顔を見た?
亜弥ちゃんが、よく失敗した時に見せる顔と
同じ、どちらが亜弥ちゃんかと思った・・・」
- 275 名前:誰にも秘密 投稿日:2004/02/26(木) 02:37
- 亜弥もバスルームへ入って来る。
「ママ、感づいたかな」
「平気平気、とぼけてりゃいいの〜」
亜弥は手を伸ばして、私のブラウスのボタンを
外してくれる。
「ありがとう」
下着だけになった私に、後ろを向かせると、
ブラのホックを外しにかかる。
「・・・・」
さすがに、亜弥が後ろからショーツに手をかけて来た時、
「そこまで、しなくていいわよ!」
あわてて、体を引っ込める。
- 276 名前:彼女になりたいな 投稿日:2004/02/26(木) 02:40
- 「私、亜弥の後で入ろうかな・・・」
「なに言うのよ、もう遅いのだから一緒に入ったほうが
早いじゃないの〜」
「そうだけど・・・」
シャワーを浴びた後、ふたりでバスタブに浸かる。
亜弥に聴いてみたいことがある、
加藤亜希さんのことを・・・。
亜弥のほうが先に聴いて来た。
「美貴ちゃんって、亜弥ちゃんの何なの?」
「・・・親友よ」
「もしかして、恋人だったりして」
この亜弥は、カンがいい・・・。
- 277 名前:彼女になりたいな 投稿日:2004/02/26(木) 02:43
- 「どうやら図星のようね、ラブラブなんだ。
こうやって一緒にお風呂にも入るんだ」
亜弥はちょっと、いやらしい目つきで見る。
もっとも、それはテレビで私がふざけてる
時の、目つきなのだけど・・・。
「もう、寝たの?・・・」
「え?そりゃ、一緒のベッドで寝たことはあるけど」
亜弥はそれを聴いて、鼻で笑った。
「フン・・・松浦は、まだ子供だね。ママに添い寝
してもらえば」
- 278 名前:彼女になりたいな 投稿日:2004/02/26(木) 02:45
- 「なによ〜、だって、あっ!・・・」
ようやく気がついた、寝るという意味が・・・。
亜弥と亜希は、大人の関係なんだ。
「他のみんなはどうなの、恋人同士のカップル
はいるの?」
「いっぱいいるよ、 石川さんと柴田さん。
吉澤さんと小川さん。 ミカさんとアヤカさん。
とか、みんな恋人同士だよ」
「へぇ〜え!そうなんだ〜!」
私のいた世界で仲の良かったカップルはこちらでは
恋人同士なんだ・・・。
- 279 名前:彼女になりたいな 投稿日:2004/02/26(木) 02:50
- 「・・・矢口さんは誰か恋人とかいるの?」
「やぐっつぁんはねぇ、少し変わってるの」
「変わってるって?」
「男が好きなの・・・」
「・・・」
「男ユニットのボーカルとつき合ってるよ。
男なんかのどこが良いんだか〜、私には
わからないな〜」
わからんのは、あんたらこの世界の女の子
たちじゃないの。
でも、私の恋人も美貴ちゃんだから、素質は
あるわけだ。
- 280 名前:胸がキュルルン 投稿日:2004/02/26(木) 02:54
- 「亜希さんって、どんな子なの・・・」
「すごい、頑固なところがあるの。言い出したら
きかないの。でもサバサバしたところもあるから、
不思議だけどね。とにかく可愛い女の子。」
「そうなんだ」
なんだか、美貴に似てるような気がする。
ふたりとも同じような女の子を好きになるのかな。
「亜希さんとは、将来結婚するの?」
「・・・わかんない。先のことは考えられないわ」
- 281 名前:胸がキュルルン 投稿日:2004/02/26(木) 02:56
- 亜弥は腕を伸ばしてきて、私の頬に手をあてた。
「この、かわいい松浦となら結婚してもいいかな・・・」
「変なこと、言わないで」
まるっきり同じ人間の松浦亜弥同士で結婚なんて
出来るとは思えない。
「私達の間に、子供が出来たら超かわいい子が出来るよ」
ちょっと、想像もつかない・・・。
- 282 名前:胸がキュルルン 投稿日:2004/02/26(木) 03:00
- 後は、ふたりとも、ざっと体を洗うと出ることにする。
バスタオルで体を拭いていると、亜弥が私の手を引いて
大きな姿見の前に立つ。
「ほら、ふたりとも同じだよ。ねえ、胸触っていい?」
ダメと、言いかけた時には亜弥の手が私の乳房を
さわっていた・・・。
「ぃやん・・・」
亜弥はかまわず、優しい手つきだけど、確かめる
ように私の胸を揉んだ後、自分の胸にも手をやる。
「ほら、同じだよ。松浦も触って見れば」
私の手をつかまえると、自分の胸に持って行こうと
する。
「触らなくても、見ればわかるよ・・・」
あわてて、手を引っ込める。
- 283 名前:甘えてみた 投稿日:2004/02/26(木) 03:04
- 部屋に戻ると、私のためにママが布団を
敷いてくれている。
バスタオルを体に巻いたまま、鏡台の前に
腰掛けて髪を梳かしていたら、
亜弥が、後ろから首に腕をまわして来る・・・。
今度は首を締めるつもりはないらしい。
まるで甘えるように後ろから、しなだれかかってくる。
耳元に唇をつけてささやく。
「・・・私のベッドで寝ていいのよ」
立ち上がってパジャマを着ると、迷ったけど、
ベッドで寝ることにする。
入れ替わりに、亜弥が鏡台の前に座る。
- 284 名前:あなたが思うほど純な女じゃない 投稿日:2004/02/26(木) 03:06
- 鏡台の前で髪を梳かしていた亜弥は立ち上がると
体に巻いていたバスタオルを外し、生まれたままの
姿になる。
そのまま布団を無視して、ベッドにやって来て
シーツをまくると、
すっ裸のままベッドにもぐり込んで来る・・・。
私は驚いて、思わず体を起こして、
「どういうつもりなの・・・」
「今夜は亜希の所へ泊まるつもりだったから、
体が求めているの・・・気持ちは抑えようと
するのだけど、体が許してくれないの・・・」
亜弥は、私をモノにする気なんだ・・・。
- 285 名前:あなたが思うほど純な女じゃない 投稿日:2004/02/26(木) 03:08
- 「ね、もう遅いし、明日は早いのでしょ、
眠ったほうが・・・」
「愛し合った後は、気持良く眠れるわよ・・・」
「・・・・」
「何事も経験よ・・・教えて上げる・・・」
どんな経験なのよ・・・。
やめてっと言おうとした時には、強く抱きしめられて、
唇が亜弥の唇でふさがれていた・・・。
- 286 名前:私のなにか壊れました 投稿日:2004/02/26(木) 03:12
- 亜弥は、キスしながら私のパジャマをすばやく
手際よく脱がしてしまう・・・。
さらに、腰から下着も取り去られてしまう。
すっ裸に剥かれてしまうと、抵抗する気力も
失せてしまう・・・。
「お願い・・・優しくして・・・」
「怖がらなくてもいいのよ・・・わたしに
すべてまかして・・・」
私は目をぎゅっと閉じて、
亜弥のなすがままになるしかなかった・・・。
- 287 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/09(火) 22:35
- 私たちは、ベッドの中で抱き合っていた・・・。
汗で、額にべっとりと髪の毛が張りついていた。
その髪を、亜弥は優しく払ってくれる。
まだ、体の芯が残り火で熱い・・・。
亜弥は、体をずらして私の顔を覗き込む。
突然、私の瞳から涙が流れ落ちる。
「どうして、泣くの・・・なぜ・・・」
わからない・・・どうして涙が出てくるのか
わからない・・・。
「わたし、いけないことをしたの・・・」
私は小さく首を振った。
亜弥のせいではない。
拒もうと思えば、出来たはずなのだ・・・。
- 288 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/09(火) 22:37
- 「わたしも、初めての時は少し怖かったわ・・・
だから、出来るだけ優しくしたつもりよ・・・」
私は答えずに、亜弥の胸に顔をうずめた。
少しして、亜弥は私の手をつかまえた。
「この手をちょっと借りるわね。 いつもは、
ひとりでする時は自分の手を使うのだけど」
亜弥は、私の手を自分の下腹部に持って行く。
私の手を太腿ではさむと、光る目で私を見る。
- 289 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/09(火) 22:41
- やがて、亜弥は声を上げ始める。
私の手を太腿で強く締めつけながら、体を
のけぞらせる。
やがて亜弥は動かなくなり、肩で息をしながら、
時々余韻で体をひくつかせる・・・。
その後、亜弥は私の手をそろそろと自分の顔の
ほうへ持ってくる。
濡れた私の指先を口の中に入れる。
たんねんに舌で指を拭う。
その後、私達ふたりの松浦亜弥はお互いの
顔を見合わせながら、大きくため息をついた。
そして、ほほえみをもらすと、また強く抱き合い
ながら、そのまま深い眠りについた。
- 290 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:42
- 目が覚めたのだけど、まぶたがくっついたように
開かない時がよくある。
まぶたに朝の光が感じられる。
ときに、なにかの気配を感じる時がある。
すぐにわかった、 亜弥の視線を。
重いまぶたを開けると、目の前に亜弥の顔が
あった。
誰かに見つめられながら目を覚ますのは、
悪くない。 素敵なことだ。
亜弥は顔を寄せてくると、軽くチュッと唇にキスを
してくる。
ほほえみながら体を起こしたら、まだ自分が
生まれたままの姿だと気づく。
亜弥も同じ姿。
- 291 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:46
- 起き上がり、ベッドから降りると身支度を整える。
それからベッドのほうへ行って、亜弥の手を引っ張る。
「もう起きなさいよ〜、今日はコンサートの日よ」
亜弥は、手を引っ張られて起き上がる。
その勢いで私の肩に腕をまわすと、自分のおでこを
私のおでこに、ごちんとくっつけて来る。
私達は、上目使いに見つめ合う・・・。
「亜弥ちゃん〜!!起きたの〜!」
ドアの向こうのママの声に、
「は〜い!」
と、ふたり揃って返事をする。
- 292 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:48
- その後亜弥が、
「ねえ、松浦〜今度の新曲のここの所なんだけど」
亜弥は、メロディをとって歌いながら、振りを踊る。
「この辺が中々覚えられないのよ・・・」
私が歌いながら振りをつけて見せる。
「そうか〜、そうやるといいんだァ〜。
さすが、松浦は覚えが早いもんだ〜」
「私は誰かさんと違って、前日に遊びまわったり
してませんから〜」
「はいはい〜、恐れ入りました〜」
私達は顔を見合わせて笑った。
- 293 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:50
- 私達は、お揃いのジャージを着てキッチンに
顔を出す。
自然に手をつないでいた。
そんなふたりを、ママは何も言わなかったが
じっと見つめていた。
テーブルに揃って腰を降ろす。
顔を洗ったので、ふたりとも同じように前髪を
しばって、おでこを出している。
なんだか、もう隠す気にもならなくて、ふたりは
同じように箸とお茶碗を持って、ご飯を食べる。
「・・・美貴ちゃんも、今日は出かけるの?」
ママの言葉に、
「ハイ・・・そのつもりです」
「そう・・・でも、亜弥と一緒に出なくてもいいのでしょ」
「・・・ハイ」
- 294 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:53
- 亜弥は、あわただしく身支度をして出かける間際、
私の腕に手をかけながら、
「じゃあ、行って来るわ・・・今日のライブは公園通りの
ホールだけど、一日がかりだから夜も遅くなるわね、
家で待っててね・・・」
私達はお互いうなづきあって、別れた。
そんなふたりをママは黙って見つめている。
玄関から部屋に戻る途中、
「あら、髪の毛がほつれてるわよ・・・」
と、ママが私の首の後ろの髪を手でさわった。
ママは私の首の後ろを見てたようだった・・・。
キッチンのテーブルにママと向かい合って座る。
- 295 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:55
- しばらく、お互い神妙な気分で相手を見ていたが、
「あなたは、何者なの・・・」
ついに、ママが口火を切った。
「・・・・」
「さっき、あなたの首の後ろを見たわ・・・
うちの亜弥と同じ所にホクロがあったわ。
右の首の大きなホクロと、左にも小さなホクロが
あったわ。亜弥とまったく同じ所に・・・」
私は、覚悟を決めた・・・。
「あなたは、藤本美貴という名前ではない・・・」
私は息を吸い込むと、話し始めた。
- 296 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 19:59
- 「私は、松浦亜弥と言います。
1986年6月25日生まれ、出身は兵庫県。
血液型はB型。」
「・・・・」
「2000年8月にオーデションに合格して、
デビューは、2001年正月のハロプロコンサート
でソロを歌いました。それから・・・」
「もういいわ、よくわかったわ・・・あなたが
松浦亜弥だってことが」
「ハイ・・・」
「もし、仮に私が双子を産んだとしても、
こうなにかも同じになるはず無いわね・・・。
私ね、あの映画、バックトゥザフューチャー
が好きだったの〜」
「はい・・・」
「そんなことが起こるとは信じられないけど、
もしかしたら、あなたはタイムスリップして
来たとか・・・」
- 297 名前:愛の掛け橋 投稿日:2004/03/10(水) 20:04
- 「違うと思います。私が過去や未来から
タイムスリップして来たのなら、私になんらかの
記憶があるはずなんです。
でも、そんな記憶はありません」
「そう・・・」
「たぶん、私はまったく別の世界から来たのだと
思います。人や色々な物がまったく同じだけど、
この世界とは違う別な世界から・・・」
「・・・同じだけど、違う世界ねぇ・・・
とすると、あなたが居た世界でも、私と
同じ人間が居るということなの・・・」
「はい。まったく同じ顔のママがいます。」
「そうなの・・・私と同じ、もうひとりの
松浦亜弥の母親が居るというわけなのね。
もう、どうでもいいわ。
よくわからないけど、現実にここに松浦亜弥
がふたり存在しているのは、わかるわ・・・」
ママは、首をかしげながら自分を納得させようと
しているみたいだった。
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 00:15
- 「あなた達、ふたりの亜弥を見てて思うの
だけど、なんとなく雰囲気が違うような気が
するのだけど・・・」
「そうですか・・・私もそう思います。
同じ松浦亜弥でも微妙に違う気がします」
「そう。あなたのママ、つまりこちらでは
私のことなんだけど、私と違うのかしら。
なんか、ややこしいけど・・・」
「・・・ママは同じです。同じように優しくて
時々ケンカをするけど、すぐ仲良くなります。
素敵なママです」
「ありがとう。あら、私のことなのかしら?」
「はい、そうです。こちらの世界でもあった事
なのかわかりませんが、羽田空港の事を覚えて
いますか・・・」
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 00:19
- 「よく覚えてるわ・・・亜弥が上京して、しばらく
東京で1人暮らしをしていて、やっと私とパパが
会いに行き、羽田で私達を見た亜弥が
大泣きした時の事ね・・・」
「あの時、初めてパパとママの前で思いっきり泣きました
家族って、本当に大切なんだと・・・」
突然、涙が流れ出して来て止まらなくなる・・・。
ママは立ち上がると、私の側に来て肩を抱いた。
「あちらのママを思い出したのね・・・」
私は、ママの胸に顔をうずめた。
そして、顔を上げてママを見て、首を振った。
「・・・私のママは今ここに居ます」
ママはうなづくと、私を抱きしめてくれた。
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 00:22
- 午後からママと出かけることにする。
「あなたもこちらの亜弥と同じでショッピング
が好きなんでしょ」
「ハイ!」
「そう。今日は渋谷に行くことにするわ」
私は、昨日亜弥が着ていたラフなGパンと
パーカーを着て行くことにする。
野球帽を深くかぶる。大きなサングラスは
かえって目立ちそうなのでやめる。
「いつもは電車にするのだけど、今日はタクシーで
行くことにするわ」
タクシーをつかまえて、渋谷に向かう。
- 301 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:25
- 「うちの亜弥は、朝なんか言わなかった・・・」
「なにをですか?」
「その、今日のコンサートあなたに代わりに
行ってくれとか・・・」
私は思わず笑った。
「今日は、それは言われませんでした。」
「と言うことは、昨日は言われたの?」
「はい。昨日は一日中私がスケジュールを
こなしました・・・」
「まあ、そうだったの。もしかして大変だった
のじゃないの」
「はい、少し大変でした。私のいた世界とは
少し違うところがあって・・・」
少しどころでは無かったのだけど。
- 302 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:27
- 「そう・・・で、うちの亜弥は、あなたに
すべて押しつけて遊びに行ってたのね・・・」
「あっ、私も楽しかったこともあります。
亜弥も、たまに息ぬきがしたいと思うのは
当然です。私自身よくわかることです」
「そう。あなたは優しいのね、それにこちらの
亜弥と較べておとなしいみたいだし」
「そんなこと無いです!亜弥には優しくして
もらっています。」
それに、決して自分はおとなしいとは思わない。
「そう。あなた達すぐに仲良くなったみたいね、
それもそうね。自分大好きの亜弥だもね・・・」
- 303 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:30
- タクシーは、渋谷に到着した。
「あ、運転手さんNHKの前までお願い」
タクシーは、渋谷公園通りのNHKの前に
止まった。
今日、目の前のNHKホールで松浦亜弥の
ライブがある。
まさか、ママは・・・。
ママは、バックからチケットを取り出した。
「はい、これで亜弥のコンサートを観に行きなさい」
「ええ〜?!どう言うことなんですか!」
私はママの言葉に驚いて言った。
- 304 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:32
- 「実はね、亜弥には内緒でスタッフの方から
今日のチケットを頂いていたの。
でも、私が行くよりあなたが行った方がいい
ような気がするの」
「そんな・・・せっかくの機会なんだし、
ママのほうこそ、観に行って上げてください」
「いいえ、あなたが観に行くべきよ。
亜弥は、ライブの仕事が一番好きだって
言ってたわ、あなたもそうでしょ」
「はい・・・大好きです」
- 305 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:36
- 「一度、兵庫でのライブを観たわ。
あの子、大勢のファンの前で生きいきと
唄っていて、とても楽しそうだったわ。
あなた、自分のライブを生で観たことないでしょ、
あたり前の話ね、自分自身のライブを客席で観た人
なんているわけ無いものね。
こんな機会はもう無いわ。このライブを観ることは
あなたの将来のためになるかもしれないわ。
ぜひ、観るべきよ。さあ、もう始まる時間よ、
急ぎなさい・・・」
- 306 名前:あいたくて 投稿日:2004/03/12(金) 00:38
- 「でも・・・」
「早く行くのよ!私は渋谷の街でショッピングを
楽しんでるから大丈夫」
私はママにせかされて、ホールに向かった。
ドキドキしながら会場に入った、
生まれて初めて、生の松浦亜弥のコンサートを
客席で観ることになるのだから・・・。
席は、一番右端の通路側だったが、最前列だった。
- 307 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/16(火) 20:49
- 開演前のホールをまわって見る。
自分のいた世界でのコンサートと確実に
違うのは、女の子が圧倒的に多い・・・。
男性は、ちらほらとしか見当たらない。
この世界のコンサートはみんなこうなのだろうか、
なんだか、違和感を感じてしまう・・・。
すると、小さな男の子を見つけた。
なんだか嬉しくなって思わず声をかけたくなった。
その男の子の前にかがむと言う。
「ねえ、松浦亜弥ちゃんは好き?」
- 308 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/16(火) 20:51
- 「うん。好きだよ〜!」
男の子は元気よく言った。
すぐ、母親らしい女性が近づいたので、その場を
離れた。
男の子がママに言う。
「あのお姉ちゃん、亜弥ちゃんだよ〜」
離れて行く亜弥を指差している。
「なにをパカな事を言ってるの、もう開演なのに
こんなところに亜弥ちゃんが居るわけないでしょ!」
- 309 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/16(火) 20:52
- 松浦亜弥のCDやDVDを売っている。
ちょっと覗いて見て、思わずそのCDを手に取った。
『GOOD BYE 夏子』という名の、シングルが
あった・・・。
自分のいた世界では、夏男≠セった・・・。
「ナビが壊れた王子様」という曲があったけど、
たぶん、ここでは王女様≠ノなってるかも。
開演のアナウンスがあったので、場内に入る。
- 310 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/16(火) 20:54
- ふと見ると一階席の後方に、まるで隔離された
ように、男の子だけの集団がいた・・・。
それを見て思わず、手を振ってしまう。
男の子のみんな、頑張って〜!
その男の子のひとりが言った。
「あれ〜!今、手を振った女の子松浦じゃないのか!」
「ボケ〜!なんで、松浦が客席にいるんだよ!」
- 311 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/16(火) 20:59
-
最前列の右端の席につく。
隣は、高校生ぐらいの女の子だった。
自分には目もくれなかったが、野球帽を深く
かぶり直す。
場内が暗くなった。
女の子達の大歓声が上がり、いよいよ開演となる。
- 312 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:41
- ファンが総立ちになる中、スポットライトに
浮かび上がって亜弥が登場する。
『もったいぶらない DESTINY
たった10分足らずで
奇跡の恋となる〜』
いきなりのロックな感じの軽快な曲に場内の
ボルテージも一気に上がる。
亜弥の衣装のボルテージも急上昇!、
前に大きな切込みの入ったミニスカート。
『止まらない それは もうどこにも行かない
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE』
この曲は、足を高く蹴り上げる振りがある。
- 313 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:43
- 亜弥が、思い切り高く足を蹴上げる!
最前列の私の席から、スカートの中が見えた。
中に、短パンをはいていない・・・。
会場の女の子達の嬌声ともつかない叫びが
響きわたる。
『Thank You〜!』
2曲終って、最初のMC。
「東京のみなさ〜ん!やってまいりました!
松浦亜弥ゃ〜〜〜で〜す!!
コンサートツアー2004春、
〜私と私とあなた〜始まります〜!!」
女の子達も大歓声で答える。
- 314 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:47
- 「一階席のみなさ〜ん、こんにちは〜!
2階席のみんなも、こんにちは〜!
3階席のみんなも、こんにちは〜!
張り切って行きましょう〜〜!!」
次は、新曲だった。
今日の朝、亜弥は不安を口にしていた・・・。
出だしは、なんとか持ちこたえていた、
しかし、覚えられないと言っていた箇所に来ると、
- 315 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:52
- 突然、歌と振りがバラバラになり、
歌詞も飛んでしまう・・・。
「亜弥ちゃん〜!頑張って〜!!」
ファンも、乱れ始めた亜弥に懸命の声援を送る。
私は、いても立っても入られなくなり、
無我夢中で声を張り上げ、新曲を歌い、振りを
踊った。
亜弥、私を見て! 心の中で叫んでいた。
ついには、後ろを向いて泣きそうな顔で視線を
およがしていた亜弥は、ふらふらとこちらに
近づいて来る。
スピーカーが近くにあり、そのものすごい音で
私の声が亜弥に届いたとは思えない、しかし、
亜弥は私の姿に気がついた。
亜弥の表情が、パッと輝いた・・・。
- 316 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:54
- 私達はステージの上と下で、一瞬見つめ合った。
亜弥は自分を取り戻し、私と一緒に歌い、
踊った。
亜弥は、中央に戻るとこぶしを突き上げ、
足を大きく蹴り上げて、激しくリズムをきざみ、
歌い、踊った。
そして、無事に歌い切った。
ファンの拍手が鳴り止まなかった。
- 317 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:57
- 気がつくと、私の隣の女の子、後ろの女の子達が、
私に向かって拍手をしている。
なんだか急に恥ずかしくなり、座り込んでしまう。
それからは、亜弥は明らかに立ち位置を無視して、
私の近くにやって来て、私を見つめながら歌う。
『あなたの彼女だと言いたいの
付き合ってるって自慢がしたいの〜』
周囲の視線が私に集まってくる。
いぶかしげに私を見る隣の女の子に、
私は両手を振りながら、下を向いてしまう。
亜弥のバカ〜!私の正体がバレたらどうすんのよ!
- 318 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 18:59
- 合間のVTRになって、プールの場面になる。
まさか、トップレスの亜弥が出てくるのかと、
ひやひやしたが、
幸い、大胆ではあるが、ビキニの水着だったので
少し安心する。
しかし、あろうことか、最後に亜弥のシャワーシーンが
映し出される・・・、後ろ姿だけだったが。
女の子達の、何とも言えない歓声が上がる。
- 319 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:01
- MCになって、亜弥は近況を話し始める。
最後に、私の方をチラっと見ると、
「最近、私の家に・・・タヌキが来たの〜!」
ええ〜!?と、驚きの声を上げるファン。
「そのタヌキは、なんと夜中になると、
私に化けるのよ〜!」
タヌキって、私のことだ・・・。
「そのタヌキは、見分けがつかないほど、
私に化けて一緒のベッドに寝ていま〜す!!」
きゃあぁ〜〜〜!!と、ファンの悲鳴が上がる。
「・・・・」
「ウソウソ〜、それはヌイグルミのタヌキでした〜!」
ファンの大きな笑い声が上がる。
- 320 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:03
- 亜弥は、また歌いだした。
『いつまでも 子供のままでいたい
今すぐに 大人だと認めさせたい〜』
楽しそうに、ファンの声援を体いっぱいに
受けて歌う亜弥を観ていると、
無性に、私もステージに上がって歌いたくなる。
私も松浦亜弥として、ライブの仕事がしたい、
心からそう思う。
『私と私と私です〜』
今、ステージにいるのも、私。
それを観ているのも、私。
- 321 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:05
- 『家族の前で ボロボロ泣いている
あれも私〜 』
亜弥は、私の近くにやって来て
私を見つめながら歌う。
もうひとりの私・・・。
自然に私も一緒に歌いだしていた。
アンコールになり、最後の曲になる。
- 322 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:06
- 『本当に? うん・・・』
『はしゃいじゃってよいのかな?〜』
『うれしいよ・・・うれしいけど・・・
すきだよ・・・みんなのことが大すきだよ〜!』
すべて演目が終る。
「みんな〜!ありがとうぉ〜〜!!」
亜弥は、両手を大きく振ってファンの
大きな拍手に答えながら、
私の前にやって来る・・・。
私の前にかがみ込むと片手を差し出す。
- 323 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:08
- 「松浦・・・美貴ちゃん!早く私の手に
つかまって!!」
「?・・・」
わけがわからず、つい亜弥の手をつかまえたら、
亜弥は強く引いて、私を上に引っ張り上げようと
する・・・。
「みんなも手伝って〜!!」
まわりの女の子達が、私を下から押して
ついに、私はステージに押し上げられてしまう。
- 324 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:09
- それを見た、整理の男性の係員が駆け寄って来る。
しかし、何人かのファンの女の子達が、立ちふさがって
近づけないように邪魔をする。
亜弥は、上がって来た私の肩を抱いて、
「みなさ〜ん!この子は、私の親友の、
藤本美貴ちゃんで〜す!!」
「・・・・」
ここまでの私と亜弥とのやりとりを見てきた
ファン達が、納得したように拍手をする。
私は、何がなんだかわからない・・・。
亜弥のヤツ、私、もうひとりの松浦亜弥を
ステージの上にあげるなんて、
なんて無茶なことを・・・。
- 325 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:11
- あわてて帽子を深くかぶり直して、
亜弥に耳打ちする。
「どういうつもりよ・・・」
亜弥はそれには、答えず、
「みなさ〜ん!!この美貴ちゃんも
歌手なんです〜! 最後に美貴ちゃんに
一曲歌ってもらいます〜!」
帰りかけていたファンが、大歓声を上げる。
「なにをバカなことを言うの!」
「早く!フロアディレクターが来ないうちに
歌うのよ!」
「でも・・・」
突然、歌えって言われても・・・。
- 326 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:13
- 「あなたは今、藤本美貴なのよ、美貴ちゃんの
曲を歌えばいいのよ・・・」
亜弥の瞳が、いたずらっぽく輝いている。
私は、覚悟を決めて歌いだす。
『ロマンティック
恋の花咲く 浮かれモード
史上最大の 恋が始まりそう〜』
亜弥も側で一緒に歌い、踊りだす。
『夜の9時になったら
電話がほしいと〜』
ファンも手拍子で答えてくれる、
ステージの私を観ててくれている・・・。
歌いながら、涙が流れ出してくる・・・。
- 327 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:17
- 『恋の花咲く 浮かれモード
悟られないように 恋が始まりそう〜』
まるで、私の気持ちを見透かしたように、
ステージに上げて歌わしてくれた、亜弥。
そして、私に声援を送り、私の歌を聴いて
くれている、ファンのみんな。
私は、歌い終わると深く頭を下げた。
「早く降りて!スタッフが来たよ!」
亜弥の言葉に、私はあわてて下に飛び降りた。
- 328 名前:自分が愛した私 投稿日:2004/03/17(水) 19:19
- 通路を駆け出した私に、ファンのみんなが
道をあけてくれながら、私に向かって拍手を
送ってくれる。
私は、ホールを駆け抜けて、出口から外へ
飛び出した。
会場を振り返る。
嬉しかった。
もうひとりの、松浦亜弥を一緒のステージに
上げるという、乱暴なことをした亜弥・・・。
でも、感激で胸がいっぱいになる。
亜弥と一緒のステージは最高に楽しかった。
- 329 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:05
- 公園通りを歩いて行くと、ママの姿が見えた。
思わず走って行き、ママの胸に抱きついた。
「ママ・・・ありがとう」
「どうだった、良かったみたいね・・・」
「はい!最高のステージでした」
その後、私達はショッピングを楽しんだ。
ママはブティックに行くと、あれこれ品定めして、
かわいい感じの服を私の胸の前にあてて、
どお?と、聴いたので、
「ええ、すごく素敵です」
と答えた。
亜弥が着たらすごく似合いそうだった。
- 330 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:07
- 食事は、帰ってからにすることにして再び
タクシーで帰途に着く。
途中、タクシーの中で、
「このお洋服、亜弥が喜ぶと思います」
買い物が入った紙バックを膝に置いて言うと、
ママは優しく私を見ながら、
「それは、あなたのために買ったのよ・・・」
「え〜!そうなんですか、嬉しいです〜」
ママは笑顔で言った、
「さっき、私のことをママって呼んでくれたわね、
何気に嬉しかった・・・」
ママは私の肩を抱いてくれた。
私はママに寄り添いながら幸せをかみしめた。
この人は私のママなんだと実感した。
- 331 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:09
- 夜遅く、亜弥が帰って来た。
玄関に出迎えた私を、亜弥が抱きしめてくる。
私も同じ思いで亜弥を抱きしめた。
「あの時、歌詞が飛んだ時は頭の中が真っ白に
なって、どうにもならなかったの・・・、
松浦の姿が見えた時は、夢かと思った」
亜弥は、私のオデコに自分のオデコを
押し当てて私の瞳を見つめる・・・。
「ママのおかげよ・・・」
私は亜弥に事情を話した。
- 332 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:11
- 「そうだったの、ママに感謝しないとね〜
松浦の姿が見えた時、とても嬉しかった。
何か松浦の姿が浮かび上がったみたいに
見えたの・・・」
私達は手をつないでママのところへ戻った。
ママは目を細めながら、
「お帰りなさい。そうやっていると、まるで
双子の姉妹みたいね・・・」
ふたりで、ママの胸に顔をうずめる。
「さあ、お腹すいたでしょ、ご飯にしましょう」
- 333 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:13
- ご飯を食べながら、コンサートの様子をママに
話した。
「亜弥ったらね〜、立ち位置を無視して
一番端っこの私の席の前で、私を見つめながら
歌うのよ。あせっちゃった〜」
「へえ〜、そんなことがあったの〜」
「私の正体がバレやしないかと、ひやひやしたわ」
最後に、ふたりでステージに上がって歌ったことを
話す。
「あら〜、ふたりの松浦亜弥の共演ね〜、
観たかったわね〜」
亜弥に、どうして私をステージに上げたのか
聴いてみる。
「なんだか、無性に松浦と一緒に歌いたかったの。
それに、きっと松浦もステージで歌いたいと思ってる
ような気がしたの」
私はうなづいて、亜弥の手を握りしめた。
- 334 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:15
- 部屋に戻って、気になっていたことを亜弥に
聞いてみる。
「ねえ、私が美貴の曲を歌ってる時、亜弥も
一緒に歌いながら振りも踊ってたわね、
どうして、美貴の曲を知ってたの・・・」
「だって、あの曲は亜希、加藤亜希の曲だもの、
知ってるわよ」
「ええ!?どういうこと・・・」
「亜希は、前はソロだったの。あの曲は
ソロの時の曲よ」
加藤亜希は、前はソロだった・・・。
そして、モーニング娘。に加入した・・・。
- 335 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:18
- 亜弥は、立っていって一冊の写真集を持ってくる。
その写真集を私に見せてくれた。
それは、前に出した私と美貴の写真集だった。
テレビのお仕事で、色んなコスチュームを着た
時のものだった。
あの時は、美貴と一緒のお仕事で毎回楽しかったな〜
ページをめくると、チアリーダー、エンジェル、
女子高生の、亜弥と美貴が楽しそうに写っている。
思わず、ハッとなって亜弥を見る!
「どうして、この本がここにあるの!!」
「表紙を見てみれば・・・」
表紙には、チアリーダーの私と美貴が・・・、
- 336 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:20
- 『アヤとアキ』
「松浦亜弥・加藤亜希」写真集とある・・・。
「ウソよ!!美貴よ!これは、美貴ちゃんよ!!」
まぎれもなくそれは、藤本美貴だった・・・。
「ウソじゃないわ、それは間違いなく亜希なの」
藤本美貴は、この世界では加藤亜希・・・。
亜弥は亜希のDVDも見せてくれた。
それは、ハワイで撮ったもので、私も同じ
ような物をハワイで撮ったことがある。
私は、食い入るように画面を見つめた。
美貴そのものの顔をした、加藤亜希の姿を・・・。
- 337 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:23
- 「どうして、この世界では藤本美貴が、
加藤亜希って名前になるの・・・」
「そんなの、私に聞かれてもわかんないよ〜!
とにかく亜希は、松浦の世界の美貴だってことが
わかったわけだ・・・」
そのことが、何か意味があるのかどうか・・・、
もしかして、私がこの世界に来て、松浦亜弥が
ふたりになったことと、なにか関係があるのだろうか。
ふたつの平行した世界、同じように見えてどこか、
微妙に違う。
- 338 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:25
- 「じゃあ、明日にでも亜希に会いに行こうよ」
「うん!早く亜希さんに会って見たい・・・」
「亜希ちゃん、私達を見て驚くよ〜!まさか
松浦亜弥がふたりになってるって思わないもんね〜」
そう、松浦亜弥がふたり・・・。 あれ?
その事で何か忘れてる事があるような・・・。
「ねえ松浦、今思ったのだけど松浦がこの世界に
来て、こちらでは亜弥がふたりになったわけだけど、
松浦の元いた世界では、どうなってるのかな?」
「・・・・」
「ことによると、松浦亜弥が突然消えてしまって、
大騒ぎになってるかも・・・」
- 339 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:29
- そうなんだ〜! 私のいた世界では、松浦亜弥が
存在しなくなっているんだ・・・。
「でもね、考えたんだけど、松浦亜弥が消えて
しまった時点で、その世界では元々松浦亜弥が
存在しないって事になってたりして・・・」
そんなバカな・・・、私が消えた時点で、私の
存在が無くなってしまうなんて・・・、
そうなってたら、私の帰る世界が無くなってしまう。
強く頭を振ってその考えを振り払う。
今はそんな事は誰にもわからない。
きっと私には、私の居場所のある世界が待っている
はずだと思う。
愛しい美貴が待っている世界へ絶対に帰れるんだと、
希望を捨てないでいたい・・・。
- 340 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:32
- 亜弥は立ち上がって、私の手を取った。
「さあ、お風呂に入ろうよ」
私はうなづいて、亜弥の手を握って部屋を出る。
今は、この私の分身とも言える亜弥が頼りなのだ、
今日のコンサートで、なおいっそう私達ふたりの
松浦亜弥のきずなが深くなっていた。
ふたりでバスルームに入る。
- 341 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:34
- 「ねえ、このバスルームに別の世界から飛んで来た
のでしょ、ここに別世界への出入り口があるわけだ」
亜弥は、服を脱ぎながら言った。
私も、服を脱ぎながら、
「そう言うことになるわね・・・」
亜弥は、下着だけになった私の後ろにまわり、
ブラのホックをはずしてくれる。
「どうやって、この世界へ飛んで来たか、
覚えてないの?」
「それが、謎の地震があって怖くて目をつむった
瞬間に飛ばされるみたいで、よく覚えてないの」
亜弥は、私のショーツに手をかけて、
スルリと脱がしてしまう。
この亜弥は、脱がすのが上手い・・・。
- 342 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:37
- 亜弥は自分もショーツを脱いでしまう。
生まれたままの姿になった私達は、大きな
姿見の前に立った。
その鏡の中に、裸のふたりの亜弥が映っていた。
「ねえ、松浦、その別世界への出入り口って、
どこだと思う?必ずこのバスルームにあるはずよ」
わからない・・・。
「もしかしたら、この大きな鏡かもしれないよ」
「え?」
「時々、鏡を見ながら思うことがあるの、
鏡の中に、もうひとりの自分がいると・・・」
- 343 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:40
- 私は、鏡の中のふたりの亜弥を見つめた。
鏡の中のふたりの亜弥も見つめ返す・・・。
「ねえ、松浦も思うでしょ、鏡の中に別の
世界があるかもしれないって。きっと松浦は
この鏡の中から来たのかもしれないよ」
亜弥は、まだ鏡を見ている私をおいて、ガラス戸を
開けて浴室の中へ入って行った。
それが、もうひとりの亜弥との最後だった。
- 344 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:46
- 突然、異変は、やって来た。
急激に、バスルームに激しい揺れが襲って来た。
その時、鏡の中が真っ白になり、映っていた自分の姿が
消えてしまっていた。
激しい地震に揺られながら、私は鏡の中に吸い込まれて
行った。
- 345 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:49
- 激しかった揺れがおさまり、私はバスルームの中で
うずくまっていた。
はっと顔を上げてあたりを見まわした、
何も変わっていないように見える・・・。
その時、バスルームの外へのドアが開いた。
「亜弥ちゃん〜まだ居るの〜」
そこには、バスタオルを体に巻いた
美貴が立っていた。
- 346 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:51
- ついさっき、お風呂から上がったばかりの
美貴の姿だった。
思わず、美貴に抱きついた、
「美貴ちゃん!!本当に美貴ちゃんなの!
加藤亜希さんでは無くて・・・」
美貴は笑って、
「なによ〜、おかしなことを言わないでよ〜
かとうあき≠チて誰なの・・・」
美貴が戻ってきた・・・いや、私が戻ったのだ。
- 347 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:55
- ガラス戸を開けて、浴室に入ってみる。
「亜弥・・・」
そこには、誰もいなかった。
・・・もうひとりの亜弥の姿はなかった。
- 348 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 00:57
- バスタブには蓋がしてあり、私が別世界へ
飛ばされる直前のままだった。
私は、元の自分の世界へ戻って来た。
それも、時間をさかのぼり、別世界へ
飛ばされた、その時に戻って来た。
私は浴室のタイルに座り込んだ・・・。
亜弥・・・もうひとりの松浦亜弥に、なんの
別れも言わないまま、戻ってきてしまった。
- 349 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 01:00
- 自然に涙が流れ落ちてくる。
亜弥・・・もうひとりの私。
もう、私は以前の自分ではないことを感じた。
もうひとりの亜弥がそうさせたのだ。
- 350 名前:涙のわけは話したくない 投稿日:2004/03/26(金) 01:02
- 美貴が入ってきて、裸のままの私にバスタオルを
かけてくれた。
「亜弥ちゃん、どうしたの・・・」
私は何も言わず立ち上がり、美貴を抱きしめた。
終わり。
- 351 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/26(金) 01:06
- 一応、これでくぎりをつけました。
レスを頂いた方、
>>151さん
>>155さん
>>197さん
ありがとうございます。
また、気が向いたら続編を書くかもしれません。
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/26(金) 18:31
- 完結おめでとうございます。作者様おつかれさまでした。
亜弥と美貴の、普段は使わないであろう言動などにすごく不思議な感じを
覚えましたが、それが凄く魅力的で、引き込まれてしまう作品でした。
最後がなんか切ない・・・2人の亜弥、大好きでした。
続編も楽しみにしています。
- 353 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/27(土) 20:52
- >>352さん
ありがとうございます。
最後は、少し唐突に終らせてしまったかという、
感がありますが・・・。
このストーリーは、要望に答えて実験的に
挑戦して書いたので、私としても最初は
手探りで書いていました。
だから前編は不出来で、不満が残ったので、
後編を書いてみました。
後編は、あやみきというより、あやあや≠ニいう
感じになってしまったですね。
あやみきのキャラが書ききれなかったので、
自分の考えていた、亜弥と美貴で行きました。
続編は、また構想が出来たら書きたいです。
- 354 名前:名無し作者 投稿日:2004/06/21(月) 22:55
- 次の構想は、考えてはいるのですが、
今度は、あのエロい亜弥がこちらの世界へ
やって来て、騒動を巻き起こすというのを
考えてるけど、
中々、話がまとまらない・・・。
- 355 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/17(火) 22:28
- 作者様のペースで、ゆっくりお考えください。
作者様のプレッシャーになるといけないので、待ちはしません。
でも、時々覗きには来ますよ。
- 356 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:19
- 夜遅く帰ってきた亜弥は、くたくたに疲れていたが
バスルームに向かった、
ママは姫路に帰っていて、亜弥ひとりだけだった。
服を脱いでしまうと、亜弥は大きな姿見の前に立った、
会いたい・・・亜弥に会いたい、この鏡の向こうに
いるはずの、もうひとりの亜弥に会いたいと亜弥は
切に願った。
亜弥は今、重大な不安をかかえていて、
どうにもならない恐怖感に襲われていた。
亜弥は裸のまま、鏡の前に座り込んでしまう、
涙が流れ出してくる、
ゴオォ〜〜〜〜〜〜ォ!!!!!!
突然、轟音とともにバスルームが激しく揺れ出した!
亜弥は声にならない悲鳴を上げて、頭を抱え込んで
床にうずくまった。
- 357 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:22
- 揺れが収まり、亜弥は恐る恐る顔を上げた、
目の前に脚が見えた・・・。
「松浦、ようやくまた会えたね」
そこには、もうひとりの松浦亜弥がいた。
その亜弥も裸だった。
「・・・!?」
松浦はその亜弥に抱きついた。
ふたりはしばらく裸のまま抱き合っていた。
異次元空間をを越えてやって来た亜弥は、
体を離すと、こちらの世界の松浦の顔を
覗き込んだ。
「元気だった?突然いなくなって心配したよ、
元の世界へ帰ることが出来たんだね、
でもどうしたの、なぜ泣いているの・・・」
松浦は、必死に声をしぼり出そうとするが、
しゃがれた声がかすかに出るだけだ、
「どうしたの!ひどい声だよ!
まさか、声が出なくなったのじゃ・・・」
- 358 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:24
- 松浦は泣きながら、うなづくしか出来なかった。
「体が冷えてきたね、とりあえずお風呂に
入ろうよ」
亜弥は松浦の手を取ると浴室に入り、
お湯を出す間、黙って抱き合っていた。
ふたりはお湯に浸かると体を寄せ合った。
亜弥は松浦の涙を拭ってあげると、優しく
髪を撫でた。
その後ふたりは、早々に上がって部屋に戻った。
パジャマに着替えた松浦は、まだ裸で
立っている亜弥に下着とパジャマを差し出した。
亜弥はパジャマの上だけを受け取ると、
素肌にパジャマを着ける。
- 359 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:25
- ベッドに腰掛けると、しばらくお互いを見つめ合う。
松浦が口を開きかけると、
「あ、無理に声を出さないほうがいいよ」
亜弥は、手で制して立ち上がる、
テーブルに置いてあった、松浦のケータイを
持ってくると松浦に渡す。
すぐに松浦は理解して、さっそくケータイに文字を
打ち込む。
『ぅれP→愛Uτるょ→(^^♪
会ぃたかった→ょ→(T_T)』
- 360 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:28
- その文字を見た亜弥は首をひねった。
「なにこれ〜?よくわかんない〜、
なんとなくわからないこともないけど、
顔文字とか、よけいなものは打たないでよ〜」
『これ、女子高生の間で流行ってるの、
ギャル文字っていうの、知らないの?』
松浦は今度は普通に文字を打って、亜弥に見せる。
「知らない、聴いたことも無い」
『そう。後で教えてあげるね。
亜弥、来てくれてありがとう!とっても
嬉しい!!』
「私も会えて嬉しい、私も・・・、
愛してるよ〜」
松浦はちょっと顔を赤くして、亜弥を手で叩いた。
ふたりは顔を見合わせて笑った。
- 361 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:30
- 「それで、声が出なくなった原因はなんなの?
病院には行ったの?」
『どうしてなのか、わからないの、お医者さんも、
診たところはどこも悪くない、よくわからないと言うの』
「今、ツアー中だよね、いつから声が出なくなったの?」
『大阪から帰ってから出なくなったの、
公演中も、少し声がおかしかったのだけど』
「とにかく、困った事態ね」
亜弥は立ち上がると、腕を組んで歩き回る。
松浦は亜弥に聴きたいことがあり、側に行って
ケータイの文字を見せる。
『どうやって、亜弥はこちらの世界に来たの?』
- 362 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:32
- 亜弥はいたずらっぽい目で松浦を見つめた、
「知りたい?」
松浦はうなづいた。
亜弥はそれには答えないで、
「この前は、松浦が私の居る世界に来て、
色々な事が起こったわね、
初めて松浦を見た時、てっきりタヌキが私に
化けて出たのかと思っちゃった〜」
松浦は、うんうんとうなづいた。
亜弥はパジャマの上だけを身につけ、
下着はつけていない、
- 363 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:41
- 亜弥はその格好で、松浦の前でくるりと背中を
向けて、言った。
「松浦、私を見て」
『・・・?』
亜弥はいきなり後ろ手でパジャマを捲り上げて
スッポンポンのお尻を見せた・・・。
『・・・!?』
「どお〜?尻尾は付いて無いでしょ」
『・・・・』
あきれ果てて、松浦はベッドにどっと倒れこんだ。
相変わらずこの亜弥はいい性格≠している。
- 364 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:43
- 亜弥もベッドに横になって松浦の髪を撫でながら、
「可愛い仔ダヌキちゃん・・・」
松浦は、ケータイを手に取って文字を打って
亜弥に突きつける。
『だから〜、タヌキはあなただって!』
亜弥は大笑いしながら、松浦の顔を覗き込む、
「松浦・・・キスしていい?」
松浦は、目を閉じてちょっとあごを上げた。
ふたりの唇が合わさる。
- 365 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:45
- ようやく、唇を離すと亜弥は話始めた。
「あの浴室の姿見が松浦と私の世界を結ぶ
出入り口だということはわかってることだけど、
私はいつもあの鏡を見てると、それに映っている
のは、松浦のような気がするの。
それで、いつも鏡の向こうの松浦に話しかけてるわ。
もちろん、映っているのは私の姿だけど、でも
私には鏡の向こうにいるのは松浦のような気が
してしょうがないの。
それはママにも話したわ。ママもそんな気がすると
言ってたわ、ママも松浦に会いたがっていたわ」
- 366 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:47
- 松浦は、優しかったあちらの世界のママのことを
思い出した。
「それが、今夜よ、鏡を見ていると鏡の中の松浦の
顔がとっても悲しそうに見えたの、
不思議でしょう、私自身はなんにも悲しいことなんて
ないのにね。
それで、松浦に何かあったのだとピンときたの、
そして、鏡の前で祈ったの、松浦にどうしても
会いたいと。
そうやって必死に祈ってると、突然鏡の中が真っ白に
なったかと思うと、パッと松浦の姿が見えたの!
スッポンポンの松浦は悲しそうに泣いていたわ、
そして私は鏡の中に吸い込まれて行って、
気がつくと松浦の前に立っていたの。」
- 367 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:49
- 松浦は深くうなづくと、亜弥の胸に顔をうずめた。
やがて松浦は顔を上げてケータイに文字を打つ、
『ねえ、亜希さん、加藤亜希さんは元気?』
「亜希?加藤亜希って誰よ?」
『え〜!?なにを言ってるのよ!
亜希さん、あなたの恋人よ!
トボケないでよ!名前は亜希だけど、
こちら世界の美貴ちゃん、藤本美貴ちゃんの
ことよ』
「ちょっと待って、私の恋人は美貴だよ、
亜希じゃなくて、美貴、藤本美貴。」
『え〜!?それは変よ!
あなたの世界では、加藤亜希。こちらの世界では
藤本美貴のことだよ、私はちゃんと憶えているんだから!』
- 368 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:52
- 「本当よ、私の世界に居るのも、藤本美貴よ、
加藤亜希なんて、知らないわ」
『そんなバカな!私、松浦があちらの世界に
飛ばされた時、加藤亜希という名前で、顔や
プロフィールはこちらの藤本美貴という女の子が
居たのよ!
私は会えなかったけど・・・』
「ちょっと待って、だいぶ混乱してるわね、
落ち着いて整理して見るわ・・・、
松浦は、前回私の世界に飛ばされた時、
藤本美貴は存在しなくて、その代わり、
顔は美貴だけど、加藤亜希という名前の
女の子が居たと言うのね」
松浦はうなづいた。
- 369 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:54
- 「でも、私、亜弥の記憶では加藤亜希なんて
存在しなくて、藤本美貴が存在したという
記憶が確かにある」
松浦は、小さく首を振った。
亜弥は立ち上がり、部屋を歩き回って考えていた。
やがて亜弥は何かを思いついて、
「ねえ!松浦、今こちらの世界にいるハロプロメンバーの
名前を言ってみて!
まず、モーニング娘。から」
- 370 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:56
- 松浦は、ケータイに次々と娘。の名前を打ち込んでいく。
現在の12人の娘。はまったく同じ名前なのを、
亜弥は確かめた。
次に、ソロのメンバーの名前を打っていく、
『中澤裕子・保田圭・安倍なつみ・矢澤真子』
亜弥は見慣れない名前を発見して声を上げる。
「ちょっと待って!その、『矢澤真子』って誰なの!
新人なの?」
『新人じゃないわ、やざわまこ≠ソゃん、
確か、5年前にモーニング娘。に合格して、
2年前に卒業してソロになったのよ・・・』
- 371 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 19:59
- 「・・・最近出した曲名を言って」
『サヨナラのLOVE SONG。横浜蜃気楼。』
「真希さんじゃないの、その人は後藤真希さんよ!」
『・・・後藤真希さんって誰?』
「本当に知らないの?後藤真希という名を」
松浦はうなづいた。
亜弥はベッドにドスンと腰を降ろした。
そして、うなづきながら言う。
- 372 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:01
-
「なんとなく、わかってきたわ。
松浦が私の世界に飛ばされて、松浦亜弥という
まったく同じ人間が二人になった時、
藤本美貴は存在しなくなり、加藤亜希が出現していた。
私、亜弥が鏡の中のこちらの世界にやって来て、
松浦亜弥という同じ人間が二人になった時、
後藤真希は存在しなくなり、矢澤真子が出現した。
つまり、同じ世界に同じ人間が二人存在すると、
なにか、歪(ひずみ)のようなものが出来て、
当然在るべき人間がいなくなるのよ。というか、
名前だけは別の人間になってしまうみたい」
- 373 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:04
- 松浦は首をひねっていたが、
『そうなんだ、亜弥は頭良いんだぁ〜』
「まず間違いないと思う、その証拠に松浦が
元の世界に戻ると、加藤亜希の存在が
消えてしまい、藤本美貴が現れたのだから」
亜弥はベッドに腰掛けると、松浦の肩を抱いた。
「とにかく、同じ世界に同じ人間が二人存在すると、
なにかまずい事が起きるし、それに松浦の声が出ない
という問題もあるわ。
だから、一番良いのは松浦が私のいた世界にまた行けば
良いのよ!
松浦も知ってると思うけど、医学はあちらの方が進んでるのよ」
- 374 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:06
- 松浦は、前回飛ばされた時、あちらでは女の子同士が、
DNAを結びつけて女の子同士で妊娠して子供を作れると
いうことを思い出した。
「きっと松浦の声も直すことが出来ると思うよ、それに
こちらではママがいないけど、あちらではママがいるから
松浦の面倒を見てくれるよ、なんの心配もいらないわ」
『でも、どうやってあちらの世界に行くの?』
「それは簡単よ、私のやったように鏡の前で祈るのよ、
そうね、ママに会いたいと祈れば、きっとあちらの世界に
行けると思うよ」
松浦は、亜弥の自信たっぷりの言葉にその気になる。
- 375 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:09
- 『わかったわ、私、あちらの世界に行くわ。
でも、亜弥はどうするの?』
「決まってるじゃない、前回松浦が私の代わりに
スケジュールをこなしてくれた借りを返すわ、
ちゃんと松浦の代わりを務めるから、大船に
乗ったつもりでいれば良いわ」
『そう、ありがとう』
ふと、松浦はあることに気がついた、
この亜弥は、こちらの世界の女の子と違って、
きわめてエロいことに・・・。
- 376 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:11
- 『ねえ亜弥、言っておきたいことがあるの、
こちらの世界の女の子は、あなたのいた世界の
女の子とは違うの。
あなた達みたいに、平気で人前で胸を出したり、ヌードに
なったり、女の子同士で乳繰り合ったりしないの』
「そうなの〜私達は女の子同士で乳繰り合う・・・、
なにを言うの〜〜!!!
何処でそんな言葉をおぼえたのよ〜!」
『ごめんなさい、でも本当のことでしょ』
「ま、その通りだから反論出来ないわね、
それに私達も、乳繰り合う・・・って、そんな
言い方は無いわ、愛し合うって言いなさいよ。
私達も、松浦亜弥同士で愛し合って、
大人の関係になったわね・・・」
- 377 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:13
- それを聴いた松浦は耳まで真っ赤になった、
『・・・とにかく!約束して欲しいの、
こちらの世界の女の子に手を出さないと。
帰って来て、私の人格を疑われるような
事態になってるのは絶対に止めて!』
「はいはい、わかってるって〜、
あ、私の世界では、石川さんと柴田さんが
結婚したわよ」
『ええ〜!そうなんだ〜』
「それに、吉澤さんと小川さんは婚約したわ。
なんでも吉澤さんを、3人、アヤカさん、里田さん、
小川さんで、壮絶に奪い合ってついに小川さんが
ものにしたそうよ」
- 378 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:15
- 『そうか、吉澤さんと小川さんがね・・・
とにかく、この世界の女の子同士は、結婚したり、
婚約なんてしないの!』
「でも、松浦は美貴ちゃんとは恋人同士なんでしょ?」
『その・・・私達は特別なの!普通の女の子は
そんなことは無いの!
それと、これだけは約束して!絶対に美貴ちゃんに
手を出さないと約束して!』
「あら、亜弥と美貴は恋人同士なんでしょ、
愛し合って当然よ〜」
『ダメ!絶対にダメ!!』
- 379 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:17
- 「はいはい、わかったわ、約束するわ。
さあ、そろそろあちらの世界に行かないと、
ママがお待ちかねよ」
松浦は、素っ裸になってバスルームの姿見の
前に立った。
「さあ、二人で心から祈るのよ、あちらのママに会えます
ようにって。そうしたら鏡の中に吸い込まれて行って、
あちらの世界に行けるわ」
二人で心をこめて祈っていると、やがて、ゴォ〜〜と
音が鳴り始め、そのうちガタガタと揺れがやって来た。
- 380 名前:パラレル・キッス 投稿日:2004/09/14(火) 20:19
- 「じゃあ、私も飛ばされないように、外に出てるよ」
亜弥がバスルームの外に出ようとすると、
松浦は、ケータイを外に置いてあるので、亜弥の
腕をつかむと、その手の平に、『ミキ』と書いて、
手を強く振った。
「わかってるって、美貴ちゃんだけは$竭ホに手を
出さないって約束するわ」
亜弥は、外に出てドアを閉めた。
しばらくして、ドアを開けてバスルームの中に
入ってみると、松浦の姿は消えていた。
- 381 名前:tuyoshi 投稿日:2004/09/14(火) 20:32
-
今回はここまで。
ようやく、続編を始められました。
この後の展開はまだ考えて無い・・・。
まあ、長い目で見てやってください。
- 382 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/30(木) 23:19
- 更新待ってました!
「待ちません」とか言っておきながらw
どんどん複雑になって捩れて行ってる気がします。そこが楽しいです。
では、また待ちはしませんけど、時々覗きには来ますので。
- 383 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:40
- 亜弥は鏡の中を見た、松浦が映っていた、
亜弥は笑顔で手を振った、松浦は少し不安そうな顔で
手を振っている。
次の瞬間、鏡の中が真っ白になると松浦の姿は消え、
亜弥、自分の姿が映っていた。
松浦は無事亜弥のいた世界へ着いたらしい。
亜弥は部屋に戻ると、CDケースを探ってみる、
たしか後藤真希、こちらの世界では矢澤真子の
CDを1枚入れていたはずだった。
もちろん、亜弥の元居た世界での話だけど、その辺は
同じはずだと思う。
そのCDが出てきた。
ジャケットの写真は、まぎれもなく後藤真希であるが、
名前は、矢澤真子となっている。
その名前を見ていると、じわじわとかすれていくのが
わかる、眼をこすってよく見つめると、すっかりかすれて
名前が消えてしまう、
そして、だんだん字が浮かび上がってきて、
字が読めるようになる、 『後藤真希』と、読めた。
亜弥は、うなづくとCDをケースに仕舞う。
- 384 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:44
- クリームを顔や手足に塗り、髪を梳かしてしまうと
寝ることにする。
ベッドに入ると、灯りを消す前に部屋を見回す、
本来の自分の部屋と寸分違わない部屋なのだけど、
なにか、違和感がある。
でも、すぐに慣れるのがわかっている。
松浦と自分は同じ人間なのだから。
きっと指紋やDNAもすべて同じはずだ。
亜弥は灯りを消した。
明日からは、色々やらなければならない事がある。
翌朝、マネージャーの電話で起こされる。
- 385 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:49
- 今日のスケジュールは、「あまなっとう」こちらの世界では、
「後浦なつみ」のリハと、夜は生放送の番組がある。
ちなみに、以前亜弥と後藤真希に藤本美貴が組んだユニットは
亜弥の世界では、「松本真希」で、こちらでは
「ごまっとう」というらしい。
支度をしながら、これからのこの世界での事を想像すると、
わくわくする。松浦の話では、こちらの女の子達は“うぶ”
らしいから、ものにするのが非常に楽しみだ・・・。
特に自分の居た世界では、ものに出来なかった女の子達を
狙ってみたい。まず、向こうでは男が好きで変わり者だった、
矢口真里をものにしたい。
それと、後藤真希、安倍なつみのふたりもターゲットだ。
- 386 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:52
- 好都合なことに、そのふたりとは今ユニットを
組んで活動している。
一人ずつは面倒だから、ふたりまとめて面倒みたい。
真希はなんとかなるが、問題はなつみのほうだ。
向こうの世界のなつみは他の女の子とはあまりつき合わなくて、
自分の妹としか遊ばないところがあって、亜弥が声をかけても
見向きもしない。妹がデビューして忙しくなって、寂しいと
言っていた。
ふと、松浦との約束を思い出した。
なに、約束は、美貴だけには手を出さないという約束なんだから、
他の女の子に手を出す分には、かまうものかと亜弥は勝手な
解釈をする。
亜弥はユニットのリハーサルのため都内のスタジオに入った。
- 387 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:55
- スタジオには後藤真希の姿は無く、安倍なつみだけがポツンと
床に腰を降ろしていた。
亜弥が近づいても気づかないで、なにか考え事をしてるみたいだ、
それになんだか元気がないように見える。
「おはようございます!!」
亜弥が声をかけると、わあっ、びっくりしたぁ〜、と顔を上げた。
亜弥も側に腰を降ろすと、なつみにぴたっと体をくっつけて、
「どうしたんですかぁ、元気がないじゃないですか〜」
なつみは、目の前に亜弥が顔を近づけてきたので、少し
どぎまぎして視線をそらした、こんな亜弥は初めてなのだ。
- 388 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:57
- 「なにか悩みでもあるんじゃないですか〜」
「・・・なんでもないよ」
「私、今まで隠してきたけど、ある事をするとその人の
考えてることがたちどころにわかるんですよ、試して見ます?」
「ええ〜、なにをするの」
「キスをするとその人の考えてることがわかるんです〜」
「まさか〜ウソだよ〜」
「ウソじゃないですよ、何なら試してみればわかりますよ」
それならと、なつみは亜弥のほうに片方の頬をつき出した。
亜弥は笑って首を振った、
「そんなところにキスしてもわからないですよ〜」
- 389 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 18:59
- 亜弥はなつみの肩をつかむとその場に押し倒した。
「あ〜!亜弥ちゃんいきなりなにをするのだべさ〜!」
亜弥はかまわずなつみに覆いかぶさり、その唇にキスをする。
なつみは足をバタバタして抵抗するが、亜弥はなおもキスを
続ける。
ようやく亜弥は唇を離したが、
「安倍さん、なにも考えてないでしょ、なにか考えてください、
それを当てますから」
なつみは、なにか言おうとして口を開けたが、すぐその口を
亜弥が自分の唇でふさいだ。
- 390 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/02/19(土) 19:00
- なつみはなおも抵抗したが、亜弥はがっちりとなつみを
押さえ込んでキスを続けていくうちに、なつみはだんだんと
抵抗をやめて、しまいには亜弥の背中に手をまわしてくる・・・。
その時、ドアが開いて誰かが入ってきた、
亜弥は、キスを続けたまま上目づかいに見ると、
入ってきたのは、後藤真希だった。
真希はふたりがキスしてるのを見て、一瞬かたまっていたが、
すぐに、そっとドアを閉めて出ていった。
- 391 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:26
- ようやく亜弥が唇を離すと、なつみはしばらく放心状態だったが、
がばっと起き上がって、
「なにすんだ〜、亜弥ちゃん・・・」
亜弥は頭に浮かんできた物を言った、
「毛のちぢれた白い犬が見えるわ、この犬は安倍さんの所で
飼ってるメロンちゃんね、安倍さんメロンのことを考えていたのね」
なつみは驚いて目を丸くする、図星だったようだ。
「それに・・・・」
亜弥にはなつみの悩みが手に取るようにわかった。
亜弥はなつみの肩に手をそっと置いた、
- 392 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:28
- 「これから大変ですね・・・でもどんなことになっても私は
安倍さんの味方ですよ、安倍さんだけが悪いんじゃないわ、
どんなに辛くなっても、ハロプロのみんなやたくさんのファンが
ついてることを忘れないで」
「亜弥ちゃん・・・」
亜弥は自分の胸に頭をつけたなつみを抱きしめた。
やがて、ダンスレッスンの先生が入ってくると、すぐに真希も
そっと入ってきた。
さっそく、ユニットの新曲のダンスレッスンに取りかかる。
- 393 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:31
- ダンスの先生は3人に、
「じゃあ、昨日レッスンした通りにやってみて」
3人が振りを踊り始めると、
「あかんあかん!亜弥ちゃんどないしたん、まるで
あかんやないの!」
「はあ?教えてもらった通りにやってますけど」
「違うでしょ〜!まるであかんやないの〜もういっぺん
亜弥ちゃんだけ踊ってみて」
亜弥は首をひねりながら、リズムをとりながら踊りだした、
「だから〜!違うって言ってるでしょ!もしかしたら、
それはカップリングの曲とちゃうの〜」
- 394 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:34
- 「そんな〜今度の新曲の振りはたしか、『LOVE LIKE CRAZY』
って聴いてますけど・・・」
亜弥はなつみと真希の顔を見た、二人はあわてて手を振って
違うとことを示した。
「も〜!亜弥ちゃん〜しっかりしてよ〜それはカップリングの
曲やないの、振りの曲は『恋愛戦隊シツレンジャー』でしょ、
もう何回も3人でレッスンしてきたはずとちゃうの〜!」
亜弥はすぐ気がついた、まさか新曲がこちらの世界では
入れ替わってるとは思いもしなかったのだ。
そんなわけで、亜弥は振りを一から習うことになった。
- 395 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:36
- そんな亜弥を見て、ダンスの先生は首をひねりながら、
昨日はちゃんと踊っていたはずなのにと思った、
それにおかしなことに、教えてもいないカップリングの
曲の振りを踊っていたのは不思議なことだった。
やがてその日のレッスンは終わった。
帰り支度をしている亜弥になつみが声をかけてくる、
「亜弥ちゃんどうしたの、昨日はちゃんと踊っていたのに」
亜弥は笑って、
「えへへ、ちょっとかん違いしてたの〜この頃ボケてきたのかな〜」
なつみは、うなづいて帰ろうとした時、
- 396 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:38
- 亜弥は近寄ってなつみの手を取ると、
「安倍さん、頑張ってくださいね・・・」
なつみは、瞳をうるませてうなづいた。
なつみが出て行った後、振り返ると真希がいて、
ちょっと視線をそらした。
亜弥が見ていると、真希はそそくさと帰ろうとする、
「後藤さん、見てたんでしょ、キスしてるところを」
亜弥が後ろから声をかけると、真希は立ち止まった、
振り返った真希に亜弥は微笑みを浮かべながら近づいて、
「とりあえず、キスさせてくれたら理由を教えてあげるわ」
- 397 名前:キスは伝達 投稿日:2005/02/21(月) 22:40
- 真希は、不思議そうな顔をして、
「なにを言ってるのか、よくわかんないのだけど」
「私とキスしたら、安倍さんとキスした理由を教えてあげると
言うの。私とキスするのは嫌?」
「そこがわかんないなぁ、嫌とかそう言う問題じゃないと思うけど
どうして、おいらとキスするの?」
「ひとつは、後藤さんが好きだから。もうひとつは、後藤さんの
心が知りたいから・・・」
亜弥がすっと真希に近寄ると、真希は後ずさりする、
「亜弥ちゃん・・・今日、変だよ」
「とにかく、キスさせてくれたらどうして変になったか教えてあげる」
亜弥が真希をつかまえて、唇を寄せても真希は別に動じる気配は
なかった。
亜弥はキスをした。
- 398 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/13(水) 11:26
- 作者さ〜ん
更新待ってます
- 399 名前:作者 投稿日:2005/04/16(土) 13:09
- >>398 なるべくsageでお願いします。
主にリアルを書いている私としては、
このところの安倍、松浦、矢口のスキャンダルには
まいっています。
矢口の件は、向こうの世界では男好きの変わり者、
という設定だからなんとかなるのだけど、
松浦の場合は、どうよ。
両刀使いとでもするか。
- 400 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:20
- 「後藤さん、なんでもいいから頭の中でなにか
考えていて。それを当ててみせるから」
亜弥はそう言ってキスを続ける。
すると、真希の考えたものが亜弥の頭の中に
流れ込んでくる。
その浮かんできたものに驚いてあわてて唇を離す、
「なにこれ〜!気持ち悪い〜、大きなトカゲみたいの!」
真希は笑って、
「ペットのイグアナのあべちゃんだよ、でも亜弥ちゃん
すごい〜!当たったよ!」
「もぉ〜!変なものを考えないでよ〜」
「メンゴ〜。でもどうして亜弥ちゃんキスしただけで
わかるの?」
- 401 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:23
- 亜弥は、いたずらっぽい笑みを浮かべて、
「ゥフフフ、知りたい?」
「うん、知りたい」
「じゃあ、この事は誰にも内緒にするって約束して。
絶対に秘密だよ、ふたりだけの」
「約束するよ、ふたりだけの秘密にする」
亜弥はどう説明するか、少し考えた後に話した。
「つまり、キスすると体内物質「ドーパミン」がその人の
脳内に発生するの。濃厚なキスほどドーパミンがたくさん
発生するわけ。
そして、キスした刺激で体内に起こった静電気が、
ドーパミンと一緒に相手の唇を通して伝わるわけなの。
そして私のような特殊能力のある者だけにドーパミンの
静電気を通して相手の考えている事が伝わるってわけ」
- 402 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:25
- 真希は感心したように、
「なんかよくわかんないけど、そうなんだ。
亜弥ちゃんすご〜い!」
「でしょう。じゃあもう一度キスして見る?今度は
濃厚なヤツを」
「もういいよ!」
真希はあわてて手を振ると歩き出した。
「じゃあまたね、今夜は生番組で一緒だよ」
亜弥も手を振りながら言った。
- 403 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:28
- 夜になって、松浦たち『後浦なつみ』の3人は、
六本木のテレビ局の生の歌番組に出演した。
三人の衣装は、それぞれ赤黄緑の派手なもので、
下は短いパンツで生の太ももが剥き出しになっている。
でも亜弥は自分の世界の衣装では、
ぐぃと太ももに食い込んだ赤黄緑の超セクシーな
レオタードだったので、少々物足りない思いだった。
自分もそうだけど、なつみや真希がレオタードの
後ろがTバックの衣装で、お尻を振りながらのダンスを
この世界のみんなに見せられないのが残念だと思う
- 404 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:31
- 後ろの雛壇でサングラスのMCのトークや他の人の
唄を聴いている時、亜弥は誰かの視線を感じていて
さりげなく見回してみると、
どうもあちらの男の子3人のユニットのひとりらしい。
亜弥はCM中に、左隣の女の子、美佳の肘を突っついて
小声で聴いてみる。
彼女とは向こうの世界では時々話したことがある。
「ねえ、あの男の子が私にガンを飛ばしてくるのだけど、
なぜだか知らない?」
美佳は亜弥の示した男の子を見ると、
「あれは、A-indsの圭太君じゃない、
あなた彼と付き合ってるのじゃなかったの?」
「え〜!本当なの?」
「本当って、あなた本人がわかってるはずだけど、
彼と一緒の所の写真が週刊誌に載ってバレたじゃない」
「フ〜ン、そうなのか・・・」
- 405 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:34
- 亜弥は、松浦のヤツ美貴という恋人がいるのに
よりよって男と出来てるなんてとんでもないヤツだと
思ったが、こちら世界では女の子が男の子と恋愛
するのが普通なのだから、仕方がないのだけど。
亜弥は前にいる男性を見て、また美佳に言う、
「ねえ、あの人も前に私の事を好きだって
言ってた人だよね」
その男性、健は三十過ぎで顔の髭跡が濃く彫りの深い
顔立ちで、歌が上手くて人気がある歌手だった。
「そうだけど・・・」
亜弥はある考えが浮かび、思わずにんまりと笑う、
松浦の彼、圭太をからかってやるつもりだ。
- 406 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:36
- 後浦なつみの歌が終わった後、うまい事に
健と並んで最前でトークをすることになる。
亜弥は自分の好きな唄として健の唄を選んだ。
そして必要以上に健の脚に、自分の剥き出しの
真っ白い太ももをピッタリとくっつけると、
健の唄を思いっきり甘ったるい声で褒めまくる。
健も、体をくっつけてくる亜弥にどぎまぎしながらも
まんざらでもない様子だった。
さらに亜弥は、さりげなく自分の手を健の太ももに置く。
生番組にもかかわらず、亜弥の大胆な行為に
健は大照れで頭をかき、MCの中年の男は、
ちょっとうらやましそうな顔をする。
- 407 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:39
- 亜弥がちらっと圭太の方を見ると、険しい顔で
目をそむけているようだ。
亜弥は、腹の中で舌を出すとますます図に乗って、
健の手を取って、自分の剥き出しの太ももに触らせる
暴挙に出た。
それを見た圭太は思わず立ち上がりそうになる、
それを見たディレクターも、さすがに大あわてで画面を
切り替える。
生番組が終わり、亜弥ら3人が楽屋の引き上げようと
通路を歩いていると、
圭太が足音高く近寄ってくる、
- 408 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:42
- 「亜弥ちゃん!さっきのあれはどういうことなの!」
相当頭にきたようで、人目もはばからず亜弥に
詰め寄ってくる。
亜弥は腰に手をあてて言ってやる、
「ちょっとあんたをからかってやっただけよ、
松浦とにゃんにゃんしたぐらいでデカイ顔を
するんじゃないわよ!」
「はぁ〜〜?!」
その時、通りかかった美佳の側に行って亜弥は、
「私は松浦と違って男は嫌いなの、私が好きなのは
彼女なの〜」
- 409 名前:パラレル・キッス 投稿日:2005/04/17(日) 14:45
- そう言うと、いきなり美佳を抱きしめてブチュッ!と
ばかり唇を奪う。
いきなり亜弥にキスされた美佳もそのうち
亜弥の背中に腕をまわしてくる、
それを見た圭太は通路にペタンと腰を落して
茫然自失の態で目を丸くしている。
なつみと真希があわてて亜弥を美佳から引き離すと
楽屋に連れ込んだ。
亜弥のあまりの大胆不敵なさまに、一時テレビ局は
騒然となっていた。
- 410 名前:キスは探求 投稿日:2005/04/18(月) 22:05
- 亜弥ら後浦なつみの3人は着替えると、
テレビ局の楽屋を出ようとした。
なつみと真希は、亜弥を腫れ物にさわるように
扱い何も言わない。今日の亜弥は朝から
おかしいので、仕方ないと思っているようだ。
亜弥が楽屋を出ると、入り口に美佳が立っている、
美佳は亜弥を見ると笑顔で近寄り、何かを亜弥に
握らすと手を振って去って行った。
亜弥が手を広げて見ると、それは紙に書かれた
メルアドらしい。
美佳は見かけはお高くとまっているようだが、
どうも亜弥と同類らしい。
- 411 名前:キスは探求 投稿日:2005/04/18(月) 22:07
- テレビ局のロビーに出て出口へ向かおうとすると、
健が立っているのが見えた、
どうやら亜弥を待っているようだ。
圭太をからかう道具にされたのに、どうやら
亜弥が誘っていると思い込んでいるようだ。
健は亜弥を見ると、にこやかに近づいてくる、
亜弥は側に来た健に、
思い切り憎たらしく、あかんべ〜!と舌を出して
やると、健はあっけに取られて固まっている。
- 412 名前:キスは探求 投稿日:2005/04/18(月) 22:10
- 家に帰り、亜弥は上機嫌でシャワーを浴びるため
バスルームへ向かう。
亜弥にいきなりキスされて驚いた顔のなつみが
可愛らしい。
今のなつみの悩みは深いようなので、そっとして置く
ことにする。
迫ってきた亜弥に動じず、キスをさせてくれた真希も
好ましい。 向こうの世界の真希には中々接する
機会が無かったのだけど、
こちらの世界の真希は、これから楽しませてくれそうだ。
亜弥はシャワーを浴びて浴室を出ると、大きな姿見の
前に立った。
あちらの世界にいる松浦も、この両方の世界に通じる
鏡の前に立っている頃だ。
思ったとおり、鏡の中が一瞬白くなった後、
松浦の姿が映し出された。
- 413 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:12
- 鏡の向こうの松浦はなにやら喋っているようだった、
亜弥は鏡に手を当てた。
そうすると松浦の声が聴こえてきた。
「亜弥!聴こえる?声が出るようになったの!」
「聴こえるよ、松浦、直ったんだね!」
「そうなの、ママに言って相談したらいい先生が
いるか診てもらえって言われて、それでその先生に
診てもらったら直ったわけ」
「そうなの、どなたに診てもらったの?」
- 414 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:14
- 「それがお医者さんじゃないの、なんか変な
占い師みたいな女の先生なの」
「名前は?」
「細毛和子さん・・・」
「まあ、そうなの〜あの先生なら占いはよく当たるし
人生の悩みからどんな相談に乗ってくれるし
良かったわね、それで声が出なくなった原因は
どう言ってるの?」
「それがその先生の言うのには、
私は呪われてるって言うのよ・・・」
「ええ〜!呪われてる?!」
- 415 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:16
- 「なんでも私の近くにいる人が私を呪っていて、
その呪いで私の声が出なくなったって言うのよ」
「ふ〜ん、在りうるわね。それで松浦は心当たりはあるの?」
「あるわけ無いでしょ!私は人に呪われたり恨まれたり
するような事はしてないわよ!」
「でもね、私や松浦のように美人で可愛くて、そして
アイドルとしてみんなから羨ましがられる存在は、
人から妬まれたり嫉まれたりするのよ。
それで、誰が呪ってるのかわかったの?」
- 416 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:18
- 「それが先生にも名前まではわからないけど、
私の近くで一緒に歌っている人だと言うのよ」
「一緒に歌ってるって、私たちはソロなんだから」
「なんでも、一緒に制服で歌ってる人が見えるそうよ、
その中に呪ってる人がいるって言うのよ」
「制服で一緒に歌うと言えば、わかったわ!
今度のハロメン全員で一緒に歌う新曲のことよ!
この前、全員制服でPVを撮ったじゃない!」
「でも、ハロメン全員なら二十人以上いるんだから
誰だかわからないわ、それにハロメンはみんな良い人
ばかりだし、そんな人を呪うなんてあるはずないわ」
- 417 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:20
- 「そこはそれよ、人間何を考えているか、心の中を
覗いてみないとわからないもんよ。それで先生は
松浦が元の世界に戻ったらどうなるのか言ってたの」
「なんでも、呪うのを止めさせないとまた声が出なくなる
って言ってるの」
亜弥はうなづいた。
「わかったわ。私がその呪ってる人を見つけ出して
止めさせるわ。私にすべてまかせなさい!」
- 418 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:22
- 「亜弥、そう言ってくれるのは嬉しいけど
大丈夫なの、どうやって見つけ出すの?」
「私には、特殊能力があるのよ。それを駆使して
必ず見つけ出すわ」
「なによ、特殊能力って」
「それは松浦が戻ってきたら教えるわ。
だから安心して待ってればいいわ。
ところで、声が出るのなら向こうの世界で
私の代わりを務めてくれてるのね」
「そうなの、まあ、例によって色々あるけど、
これで2回目だから少しは慣れたわ。
亜弥、そちらのほうはどうなの?」
- 419 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:23
- 「あ、うん。大丈夫順調にスケジュールを
こなしてるわ」
「大丈夫でしょうね、まさか、戻ってきたら
私の人格を疑われるような事態になってない
でしょうね・・・」
亜弥は、ちょっと言葉に詰まって、
「あ、その、大丈夫だと思うよ。ただ戻ってきたら
少し周囲が変な目で見るかもしれないけど、
気にしないでいいのよ・・・」
「なんだって!!変な目って、どういうことよ!
あなた、まさか・・・」
松浦は、亜弥を睨みつける。
- 420 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:26
- 「大丈夫だって!心配ないから! って、
松浦こそ、私に大事なことを隠してたでしょ!」
と、松浦を睨み返す。
「ええ?隠すってなによ」
「あの事よ、色々とよ・・・」
松浦は、ちょっとどぎまぎして目をそらした、
「なんの事だか、わかんないけど」
「いいわ、そうやってトボけてれば。とにかく
お互い様だから。じゃあ、これで終わるね」
亜弥は、鏡から離れた。
- 421 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 17:28
- 松浦は、何か言いたそうだったが、すぐに
鏡の中が白くなって、その姿は消えた。
亜弥はベッドに入ると、
明日からは忙しくなると思った、
明日はハロプロメンバー全員で歌う、新曲の、
『ALL FOR ONE & ONE FOR ALL』のリハーサルがある。
そのリハで、メンバーとキスしまくって、その心の中を
探り出さなくてはいけないのだから。
- 422 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 18:28
- 亜弥は、ハロプロメンバーの自分以外の45人の
顔を思い浮かべた。
いくらなんでも全員とキスするわけにはいかない。
亜弥は除外するメンバーを選び出した。
まずキッズの子供たち15人を除外する。
そして、もうすでにキスをして心の中を見た、
安倍なつみと後藤真希も除外する。
- 423 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 18:31
- そして、ハロプロのリーダーの中澤裕子も
除外することにする。彼女は口は悪いが、
どう考えても松浦を呪ったりするとは考えられない。
同じ理由で、卒業を控えたモーニング娘。リーダーの
飯田圭織。そして保田圭、稲葉貴子、前田有紀を除外する。
後はWの二人、辻希美と加護亜依を除外する。
そして、新しいメンバーの美勇伝の、
三好絵梨香、岡田唯も除外する。
ののとあいぼんが人を呪うことなどありえないし、
美勇伝の二人は、まだ松浦と知り合ったばかりだから
これも除外していい。
- 424 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 18:34
- それと、モーニング娘。6期メンの3人、
亀井絵里、道重さゆみ、田中れいなも除外する。
この今が楽しくて仕方がない3人が人を呪うとは
思えない。
この3人とキスしたかったけど、仕方が無い。
これで除外したのは29人。残るは16人になる。
その顔ぶれは、モーニング娘。の、上から矢口真里。
矢口が疑わしいというよりも、ぜひ彼女とキスしたい
ところもある。
- 425 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 18:36
- そして、吉澤ひとみ、石川梨華。 5期メンの高橋愛、
紺野あさ美、小川麻琴、新垣里沙。
メロン記念日の4人、斉藤瞳、村田めぐみ、大谷雅恵、
柴田あゆみ。
カントリー娘。の、あさみ、里田まい、みうな。
後は、一人だけになったココナッツ娘。の、アヤカ。
これで、15人・・・。後ひとりは、藤本美貴。
亜弥は、美貴は除外するつもりだったが、
松浦が男と出来ていた事を考えると残すことにする。
- 426 名前:キスは真理 投稿日:2005/04/21(木) 18:39
- 亜弥は16人の中から、ある二人の人間を注目していた。
一番疑わしいと思われる、その人間はハロプロの
中では目立たない存在だが、これまでのその人の状況を
考えると、一番可能性があると考えていた。
後の一人も、よく考えてみれば、
一番疑わしいかもしれない。
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/24(火) 23:08
- 続きが気になる。。。
- 428 名前:真里にキッス 投稿日:2005/05/26(木) 20:48
- 亜弥がリハーサルの行われるスタジオに入ると
すでにキッズの子供達は全員揃っている。
なにしろハロメン総勢46名が一堂に会しての
リハだけに壮観なことになりそうだ。
キッズ以外のハロメンは、まだ十数名ほどが
姿を見せていた。
亜弥は、お目当ての真里の姿を探した、
真里は珍しく早く来ていた。
- 429 名前:真里にキッス 投稿日:2005/05/26(木) 20:50
- 圭織、圭らと笑顔で話している。
亜弥は、真里に関しては即決で行くことにする。
「やぐっつぁん〜!!」
そう叫びながら真里に向かって駆け出した。
振り返った真里は、亜弥を見ると顔を輝かせた。
亜弥は両手を広げて真里に駆け寄ると、
「やぐっつぁん〜!チューして〜!!」
真里も嬉しそうに両手を広げて迎える。
亜弥は真里に抱きつくとその場に押し倒して
唇を寄せる。
真里の瞳が一瞬戸惑いの色を見せたが、かまわず
押さえ込むと唇をかさねる。
- 430 名前:真里にキッス 投稿日:2005/05/26(木) 20:52
- 傍らの圭織と圭があっけにとられ、口をポカンと
あけて見ている。
キスをされた者は、脳内物質ドーパミンが発生し、
キスした刺激で起こる静電気の作用で、ドーパミンが
かさねた唇から相手に伝わり、脳内に考えている
ことが映像になって、亜弥に伝わるのだ。
亜弥の頭の中に、現在真里の脳内を支配している
事が唇を通して伝わって来た。
かなり長いディープキッスが続き、真里も足を
バタつかせ始めた時、ようやく亜弥は唇を離した。
- 431 名前:真里にキッス 投稿日:2005/05/26(木) 20:55
- 真里は大きく息ついている、
亜弥は真里の瞳をじっと見つめた、そして、
真里の耳元に口をつけ、囁いた。
「矢口さん、今とっても幸せなんだ・・・でも
松浦のようにならないように気をつけてね」
真里はすぐには何のことだかわからないようだったが、
亜弥が真里の手の平に、ある人の名前を指で書いて
みせると、
真里は、目を丸くして亜弥の顔を見つめた。
亜弥は、『しゅん』と書いたのだ。
亜弥は立ち上がり、真里から離れると次のターゲットを
探すことにする。
- 432 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:07
- 亜弥の目指すメンバーが姿を現した。
モーニング娘。5期メンバーの4人だ。
亜弥は一番可能性のある娘。に近づいた、
紺野あさ美に。
紺野は、娘。の中ではおとなしくて目立たない
存在と思われている、
いつもポワ〜ンとして、食べ物のことしか考えて
ないと思われているかもしれない。
しかし亜弥は、だからこそ紺野が一番怪しいと
考えていた。
- 433 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:10
- もちろん、紺野が人を呪うとはとても思えないのだが、
5期の4人の中では、彼女が可能性があると思っている。
紺野のようなおとなしそうな女の子こそ、心の奥深くに
闇の部分を秘めていたりするのだ。
「紺野ちゃ〜ん、お早う〜」
亜弥は笑顔で紺野に近づいて、その腕をつかまえた。
さりげなく腕を引いて他の3人とは離して、声をかける。
「ありがとう〜この前美味しいシュークリームがある
ケーキ屋さんを教えてくれて、ありがとうね〜」
「はぁ〜、松浦さんにそんな事言いました?」
「言ったじゃない〜とっても美味しかったよ〜
シューの中の甘い甘い〜クリームがとろけるようで
たまらなかったわ〜」
- 434 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:12
- 「は〜そんなに美味しかったですか・・・」
紺野は目を輝かして言う、
「そうよ〜まだこの唇に甘い感触が残ってるの〜
そうだ!紺ちゃんにも味合わせてあげる」
亜弥そう言うと、紺野の首に手を回してぐぃっと
引き寄せると、その唇に自分の唇をブチュッとかさねた。
「アアァッー!!」
見ていた高橋愛が驚いて声を上げる。
紺野はいきなりキスされて目を白黒させる、
亜弥はかまわず、紺野をその場に押し倒して
キスを続ける。
小川麻琴と新垣里沙は思わず抱き合い、固唾を呑んで
キスを続けるふたりを見ている。
他のハロメンも、遠くから注目している、
さすがに、キッズの子供たちは見ないふりをしている
- 435 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:13
- 紺野の唇を通して彼女の頭の中を支配している事が
亜弥の頭の中に流れ込んでくる。
ケーキ、菓子パン、チョコレート、お寿司に焼肉、
はては焼き芋などが、そこら中を飛びかっている。
その中に、年配の女性が見える。どうやら紺野の
母親らしい、
なぜか母親は泣いている・・・。
そして紺野の姿も見える、紺野も泣いている。
紺野が叫んでいる、
『お母さんなんて大嫌い!死んじゃえばいい!』
ようやく、亜弥は紺野から離れた。
- 436 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:15
- 「ハァ〜、見てるだけでお腹がいっぱいになってくる」
亜弥は、紺野の瞳を覗き込んだ、
「紺ちゃん、あなたの気持ちは良くわかるわ、
私だってそうだもの。 時々ママのことをうざいと
思う時があるもの」
あさ美は、はっと顔を上げて亜弥を見た、
「でもね、紺ちゃんのママも紺ちゃんが好きだからこそ
嫌な事を言ったんだと思うの、
それなのに、『死んじゃえばいい』なんて、言ったら
ママは本当に悲しんでいると思うな・・・紺ちゃんだって、
ママの事が本当は大好きなのに・・・」
そう言いながら、亜弥の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「松浦さん・・・」
あさ美の瞳からも涙が流れ落ちた。
- 437 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:17
- 亜弥はハンカチを取り出し、涙を拭くと立ち上がった。
残りの3人を見た、
愛、麻琴、里沙は、思わず逃げ腰になって身構えた。
元々、亜弥はこの娘。5期のメンバーは除外するつもり
だったので、紺野あさ美の心の中を見てしまえば、
後の3人は心の中をのぞく必要は無いと思う。
キス出来ないのは残念だが、こう警戒されてしまっては、
いたし方ない。
- 438 名前:紺野とキス 投稿日:2005/06/07(火) 19:19
- その場を離れて次のターゲットを探すことにする。
亜弥が近づくと、ハロメンたちはあわてて飛び下がる、
亜弥は首を振った、これじゃどうにもならない。
その時、
「ちょっと、松浦さん・・・」
亜弥はその声に、ビクッと体を震わせて振り返った、
ハロプロのドン、中澤裕子が、
腕を組んで亜弥を睨みつけている・・・。
- 439 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:48
- 亜弥はあわてて裕子に頭を下げた。
「松浦さん、さっきから見てたけど、
紺野さんはともかく、わたしの矢口に臆面も無く
キスするとは、いい度胸してるわね・・・」
「すみません・・・」
亜弥はぺこぺこ頭を下げる、
「わたしだって、矢口とキスしたくても中々出来ないのに、
平気でキスするとは、どういうことやの」
「その・・・あのですね、親睦を深めるために」
「親睦を深めるやて!?そのためにキスするなんて、
親睦を深め過ぎとちゃうの!」
「そ、そうですね」
- 440 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:49
- ほぼ全員が揃ったハロメンは、裕子と亜弥の
やり取りに聞き耳を立てる。
圭がなつみに、
「なっちも、亜弥ちゃんにキスされたんだって」
「そうなの、テレビ局の騒ぎもあったし、この頃
松浦さん、ちょっとおかしいわね・・・」
「どうやら、ハロメンとキスしまくってるみたいじゃない、
私も気をつけないと・・・」
なつみは、圭の顔を見て、
「圭ちゃんは、その心配はないから〜」
「おい〜!どういう意味よ!」
- 441 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:51
- 裕子は亜弥に、
「この頃、変な噂を聴いてるわよ、あちこちで、
親睦$[めて、問題になってるそうやないの、
あの真面目な松浦さんがどういうことなの!」
「は、はい!自分では気をつけてるつもりなのですが」
「矢口だけでなく、なっちやごっちんともキスしたようね、
まさか、わたしとも親睦を深めるつもりじゃないの!?」
亜弥はあわてて手を振った、
「とんでもないです!大統領にキスするなんて、
そんな恐れ多い!」
「大統領?!うちは、三十路とかお年寄りとか
色々言われてるけど、大統領って言われたの
初めてやわ!」
- 442 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:53
- 亜弥が、裕子をつい大統領と呼んだのは、
わけがあった。
中澤裕子は、亜弥の居た世界では、
文字通り大統領なのだ。
あちらの世界では女性上位なので、ついに
大統領を女性の中から選出することになり、
圧倒的支持を受けて、中澤裕子が選ばれたのだ。
しかし、政権を担当するのは首相で、大統領は
名前だけで、まあ、お飾りみたいなものなのだが。
それでも一国の大統領なので、亜弥も裕子の前では
頭が上がらないのだ。
こちらの世界の裕子も、名実ともにハロプロのリーダー
なので頭が上がらないのは同じなのだが。
- 443 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:55
- 「とにかく、メンバーと親睦を深めるのは結構ですけどぉ、
やり方を考えてもらわないと困るんやないのぉ〜」
「はい!気をつけます」
亜弥は大きく頭を下げると、その場を離れた。
ダンスレッスンの先生が現れて、リハーサルが開始
される。
- 444 名前:裕子がキス? 投稿日:2005/06/08(水) 12:57
- 今日は横やりが入って、調査は中断されたが、
矢口真里、娘。5期メンをすませて、
残りのハロメンは、11人となる。
これから、H・P・オールスターズはあちこちの
テレビ局を歌って回るので、チャンスはいくらでもある。
亜弥は、リハーサルが終わると、
CMの撮影、雑誌のグラビア撮影などが待ち受けている。
亜弥は体には自信があるので、カメラマンのどんな
要望にも答えるつもりでいた。
あちらの世界では、ポロリどころか、トップレスの撮影は
当たり前だった。
- 445 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:27
-
亜弥が帰り支度をしていると、藤本美貴が近づいて来た。
いつもは亜弥が姿を現すとすぐ近寄ってくる美貴が、今日は
来なかったのは、側に行けるような雰囲気ではなかった
せいなのだけど。
「あ〜!美貴ちゃん〜」
と、亜弥が抱きつこうとすると、
美貴は、亜弥の肩に手を当てて止めると、
- 446 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:29
- 「亜弥ちゃん、なにやってんの!見ててこちらが恥ずかしく
なっちゃったじゃないの!中澤さんにも怒られてたじゃない、
何を考えてるのよ!」
「なんでもないよ、それより美貴ちゃん〜チューしよう〜」
「『チューしよう〜』じゃない!!ちょっとこっちへ来て!」
美貴は亜弥を人のいない所へ連れ出した。
そこで美貴は亜弥の顔をじっと見つめた、
「あなた何者よ、私の知ってる亜弥ちゃんじゃ無いでしょ・・・」
- 447 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:31
- あら〜なに言ってるの、私は松浦亜弥で〜す。
どこが違うと言うのよ」
「そりゃあ、どっから見ても亜弥ちゃんにしか見えないけど、
口じゃ言えないけど、なんか変だよ」
「なんなら松浦だという証拠に、美貴ちゃんだけしか知らない
右のお乳にあるホクロを見せてあげようか」
と、亜弥は上のジャージのジッパーを降ろそうとする、
中は下着だけだ。
「やめなさい!」
美貴は、あわてて止める。
- 448 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:32
- 「とにかく、私は知ってるのよ。前に亜弥ちゃんから聴いて」
美貴は、亜弥の瞳の奥をじっと見つめた。
「亜弥ちゃんが違う世界に行って、もう一人の松浦亜弥に
出会ったことを聴いたわ。
いつから、入れ替わったのよ・・・」
さすがに、美貴がそこまで知っているとなると
隠しようが無い。
- 449 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:34
- 「わかったわ。入れ替わってもう一週間になるかしら、
さすが美貴ちゃんね、私の正体がすぐわかるなんて」
「やっぱりそうだったの、色々変な噂を聴いてるわ、
私でなくてもおかしいと思われてるよ、気をつけた
ほうがいいわよ」
亜弥は舌を出した、
「そうね、気をつけるわ。つい本心が出ちゃうのよ。
こちらの世界の美貴ちゃんとは、今日が初めてね、
変な感じだけど、初めまして」
と亜弥は手を差し出した。
美貴も首をひねりながらその手を握った。
「初めまして。でいいのかな、まったくそんな感じはしないのだけど。
・・・それで、私の知ってる亜弥ちゃんは何処にいるの?」
- 450 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:37
- 「今松浦は入れ替わりに、私のいた世界に行ってるわ」
「そうなの、でもなぜあなた、亜弥ちゃんはこちらの世界に
来たの?」
亜弥は美貴の顔を見た、まだ美貴には本当のことを話すのは
早いかもしれない、
あちらの世界の藤本美貴と亜弥は、すべてを知り合っている
文字通りの恋人同士なのだけど、
こちらの世界の美貴もあちらの美貴と同じで
とても素敵な感じだ、
心の中を見るためのキスだけで、終わらせるつもりはない。
松浦からは、美貴だけには手を出すなと、きつく
釘を刺されてるけど、
なに、かまうものかと思う。美貴に口止めしておけば
大丈夫だ。
- 451 名前:キスに浮かれモード 投稿日:2005/08/04(木) 12:39
- 「ねえ、今夜家に来る?今ママは姫路に帰ってていないの、
詳しいことはその時話してあげるわ」
亜弥が、意味ありげにそう言うと、
美貴は、じっと亜弥の顔を見て考えていたが、
どうやら覚悟を決めたらしく、
「・・・わかった、今夜行くよ」
亜弥は嬉しそうに美貴の手を握った。
亜弥はこの後CM撮影の仕事があるので、そちらへ
向かうことになる。
- 452 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:05
- 撮影は、紳士服のCMだった。
ちょっと、お堅い感じのディレクターが、撮影の
カット割りを見せて大体の撮影の進行を説明する。
最初は、メガネの亜弥がスーツ姿で現れ、
次のカットで、ピラピラの超ミニのいかにもっていう
格好に切り替わってポーズを取るという、
よくありがちなスタイルの撮影だった。
その通り撮影は進行したが、亜弥が気乗りしない
せいか、何度も撮りなおしを繰り返し、一向に
撮影は進まない、
またも、やる気の無いところを見せてNGを出した
亜弥に、段々現場も険悪な雰囲気になってくる。
- 453 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:07
- しまいには、亜弥がディレクターに注文をつけてくる。
「ねえ、監督さん、こんなインパクトの無いCMじゃあ
誰も注目してくれないと思うのだけど、誰がこんな
つまらないものを考えたのかしら」
ディレクターは、むっとして亜弥を見て、
「ほお〜どこがお気に入りませんでしたか。私が
考えたのですが」
この小娘が何を抜かすかと、亜弥を睨む。
「あら、そうでしたの〜。私だったらもっともっと、
インパクトのあるものを考えて差し上げるのにね〜」
亜弥はぬけぬけと言ってディレクターをこばかにする。
- 454 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:09
- ディレクターは頭にきて、亜弥のマネージャーに
文句をつけようと見回したが、生憎とマネージャーは
席を外していた。
「ねえ、私の考えたものを見せてもいいかしら、
採用するしないは別として、さっきのよりはましな
ものに間違いないと思うわ」
と、亜弥は提案する。
ディレクターは、スタッフに休憩すると言い渡すと、
椅子に腰掛けた。
「では、参考までに拝見することにしましょう」
亜弥は顔を輝かせて、着替えのために奥に引っ込んだ。
- 455 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:11
- やがて、亜弥が現れた。
亜弥の姿を見たスタッフは、ほお〜と声を上げた、
亜弥は、大きめの男性用のスーツの上着だけを
身に着けていた。
両手で上着の胸を押さえているが、首から胸の部分の
肌が見えている。
スーツの前のボタンは全部留めていたが、
その下から生のすんなりした脚が見えている、
足にはハイヒールだけを履いていた。
確かにその姿だけでも、かなりのインパクトが
ありそうだった。
- 456 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:12
- 「では、音楽お願いします〜」
亜弥が言うと、テレビでよく聴くCMソングが
流れてくる。
亜弥はスーツの上のボタンをひとつずつ
外していく、一番下のボタンだけは留めておく。
洋服の○○〜♪と、会社名が流れ、決めの
ポーズになり、
亜弥は、両手でスーツの胸の部分をパッと開いた。
亜弥の、小ぶりだけど形の良い乳房が現れた。
ディレクターをはじめ、その場のスタッフが
一瞬固まって、亜弥の乳房を見つめた。
- 457 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:14
- 亜弥は、飛び切りの笑顔で、どうだとばかり
ディレクターを見た。
その時、亜弥の女性のマネージャーが戻ってきて、
スーツの胸の部分を開いて、乳房を見せつけて
いる亜弥を見て卒倒しそうになる、
「亜弥ちゃんっ〜〜〜〜?!!!!」
と、金切り声を上げて亜弥に突進すると、
乳房を隠そうとスーツの前を閉めようとして、
亜弥と揉み合う。
- 458 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:16
- 亜弥はマネージャーと揉み合いながら、
ディレクターに、
「ね、ねぇ、どうでした〜?」
と聴いてくる。
ディレクターは口をあんぐりと開けているだけ
だったが、
側のスタッフが、
「う〜ん、これは強烈なインパクトだ!」
と、唸る。
- 459 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:18
- マネージャーは半狂乱になって叫ぶ!
「撮ってないでしょ!!誰も撮ってないでしょ!!
撮ってたらすぐに消しなさい〜〜!!!」
あわててカメラマンが、
「もちろん、撮ってません!」
亜弥は、マネージャーに引きずられながら、
「ダメだったかしら、胸がダメならお尻はどう?」
と、後ろを見せると、スーツの後ろを、
ピラッと、上げて見せる、
亜弥の可愛らしいお尻が丸見えになる。
スーツの下には何も身につけていなかった。
- 460 名前:性涼スーツ 投稿日:2005/08/11(木) 21:20
- 狂乱の末に、亜弥がマネージャーに引きずられて
行った後、
スタッフのひとりが、そっと別のスタッフに
コンパクトデジカメを見せた。
「おい、撮ってたのかよ・・・」
デジカメのモニターを再生して見ると、
見事写っている。
とっさに盗み撮りしたので、遠目になっているが、
亜弥の乳房がはっきり写っている。
「おい、まずいぞ、消去したらどうだ」
「いや、黙ってたら大丈夫さ、俺の宝物にするさ」
と、そのスタッフはデジカメをしまい込みながら
にんまりする。
- 461 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:41
- 亜弥と控え室に戻ったマネージャーは、
憤慨して涙さえ浮かべていた。
「本当に、AVを撮ってるんじゃないんだから
どういうつもりなのよ!
後で厳重に抗議してやる!」
亜弥はちょっと気まずそうに、
「あ、あれは私から言い出してやったの。
あんまりつまらない撮影だったから、こっちの
方がいいかな〜って思って」
- 462 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:43
- 「なんだって?!どういうことなの、
この頃亜弥ちゃん、どうしちゃったのよ!
次から次に問題を起こして・・・私の知ってる
真面目な亜弥ちゃんは何処に行ったのよ!」
腹の中で亜弥は、
こちらの世界の松浦亜弥は、今あちらの世界に
行ってるのだけど、
その松浦だって男とよろしくやってるし、真面目とは
言えないんじゃないかと思う。
「ごめんなさい・・・」
と、一応亜弥は頭を下げる。
- 463 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:45
- 「人前でキスをしまくるし、あげくは胸をさらすなんて
どうしてそんな、はしたない真似をするのよ、
恥かしくないの!」
「だって、私の胸は綺麗だし、何処に出しても
恥かしく無いと思ってるけど」
「だから、そういう問題じゃないでしょ!
他の人、特に男は女の剥き出しの胸や体は
性的な好奇心の目でしか見ないのよ!
トップアイドルの亜弥ちゃんがそんな好奇の目に
さらされるのは、許されないわ!」
- 464 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:46
- 男嫌いの亜弥は、男から好奇の目で見られるのは
嫌悪感を感じるが、
あちらの世界で出した写真集では、もちろんオールヌードの
ショットもあるのだが、
女の子達からすごく評判が良いし、一部の男性達からも
すごく綺麗だと好評を得ている。
「とにかくこれからは絶対に、はしたない真似は
止めてちょうだい!これ以上アイドルとしての名前が
傷つけられるのは許されないのよ」
- 465 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:48
- 「わかりました」
亜弥は、この世で一番美しいのは女性の体と思っている。
あちらの世界では常識なのだ。
その美しい体を見せるのは、なんら恥かしいことでは無いと
考えているのだけど、
所詮、こちらの世界とは価値観の違いは仕方の無いこと
なので、妥協しなくてはいけない。
- 466 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:49
- 結局、CM撮影は再開され、元のインパクトの無い
コンセプトによって撮影は無事終了した。
スタッフの一部には残念そうな者もいた。
亜弥の胸を盗み撮りしたスタッフは、デジカメを
大事にしまい込んだ。
家に持って帰ってプリントアウトするつもりだった。
実は、亜弥もデジカメを向けているスタッフのことを
確認していたのだが、別に気にもとめていなかった。
その後、その画像が流出して少々やっかいな事に
なるのだけど。
- 467 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:51
- その後、亜弥とマネージャーは天王洲スタジオに向かう。
数日後の収録の打ち合わせに寄ったのだ。
亜弥がスタジオ内を歩いていると、ある控え室の
ドアに、
『メロン記念日様』という張り紙があった。
どうやら、新曲のスタジオ撮影があるようだった。
亜弥はマネージャーに、斉藤さんにお礼がしたい事が
あるから5分ほど顔を出すと言う、
マネージャーは疑いもせず、打ち合わせがあるからと
行ってしまう。
- 468 名前:メロンの味 投稿日:2005/09/05(月) 16:54
- 部屋の中に入ると、メロンの4人は揃っていた。
亜弥は、しめしめとほくそえみ、この好機を逃さずに
4人の心の中を覗くつもりだ。
「こんにちわ〜!」
亜弥が満面の笑みで入ってくると、
今日の事もあるので、メロンの面々は一瞬引き気味
だったが、
さすが、リーダーの斉藤は笑顔で立ち上がって
亜弥を迎える。
「ひとみん〜!」
とばかり、亜弥が両手を広げて近寄ると、
斉藤も、笑顔で両手を広げて迎える、
どんと来いと、受けて立つ構えのようだ。
- 469 名前:メロンの味 投稿日:2005/10/04(火) 18:42
- 亜弥は勢いをつけて斉藤の首に抱きついた。
そのはずみで斉藤は椅子にどすんと腰を落とした。
亜弥は勢いにまかせて斉藤の膝の上に乗っかる。
他の3人は唖然として、斉藤の膝に乗っている亜弥を
見るしかない。
亜弥は目前の斉藤の瞳の奥を覗き込んだ。
斉藤は臆することなく亜弥の瞳を見返している。
それならばと、亜弥は遠慮なく斉藤の唇に自分の唇を
かさねてキスする。
「あぁぁぁぁぁ・・・・」
と誰かが声を出した。
- 470 名前:メロンの味 投稿日:2005/10/04(火) 18:44
- キスを続けると斉藤の脳内の思考が、キスした事によって
発生した静電気に運ばれて亜弥の頭の中に流れ込んで来る。
斉藤の脳内の思考は,色々な物が渦巻いていたが、
メロンのメンバー3人の姿も浮かび上がっていた、
その中である一人の姿だけが、大きくはっきりと見えている。
それは、村田めぐみだった。
そしてその姿といえば、裸だった。
村田はベッドの上でこちらに手を伸ばして媚を見せ、
瞳は異様に濡れている。
亜弥はキスを続けながら、横目で他の3人を見ると、
柴田、大谷は目を丸くして斉藤と亜弥を見ていたが、
村田だけは、目をそむけている。
なるほどと、亜弥は納得した。二人は出来ているようだ。
さっき斉藤にキスした時、声を上げたのは村田のようだった。
亜弥はようやく唇を離して斉藤を見た、
ここにも亜弥と同じ同類がいるようだ。
亜弥は斉藤の耳元で、
彼女を大切にしてね、と囁くと、その膝から降りた。
- 471 名前:メロンの味 投稿日:2005/10/04(火) 18:47
- 後は、
残りの3人があっけに取られてる隙に、次々にその唇を奪う。
柴田あゆみの脳内に一番に浮かび上がったのは、
石川梨華の姿だった。
またまた同類の出現である。まあ、女の子だけのハロプロ内での
付き合いが深まると、こうなるのは自然な事かもしれない。
- 472 名前:メロンの味 投稿日:2005/10/04(火) 18:48
- しかし、大谷雅恵の脳内を占めていたのは、
札束の山だった。
さすがに、夢は億万長者になりたいと言うだけのことはある。
早く大金持ちの男を見つけて、玉の輿に乗ることを祈るだけだ。
もちろん、村田めぐみの脳内を占めていたのは、
斉藤瞳だった。
亜弥は村田の耳元で、お幸せにね、と囁いて自分が斉藤とは
何も無いことを告げた。
- 473 名前:メロンの味 投稿日:2005/10/04(火) 18:50
- 亜弥は控室を出ると、手帳とペンを取り出して
メロン記念日と書いた上に線を引いて消した。
これで、残りのハロメンは7人になる。
モーニング娘。リーダーの吉澤ひとみ。
美勇伝リーダーの石川梨華。
カントリー娘。の、あさみ、里田まい、みうな。
ココナッツ娘。のアヤカ。
そして最後に、藤本美貴・・・。
- 474 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 11:51
- その日の夜、数々のスケジュールをこなして亜弥は
ようやく自宅に帰り着く。
亜弥は時計を見た、そろそろ美貴が来る時間だ。
うきうきした気分になる、
色々話したいことがいっぱいある、松浦のことや
こちらの美貴のことも、深く知りたい。
色々話してるうちに夜遅くなるだろう、
当然お泊りすることになる。
で、こちらの美貴のすべてを知り尽くす予定だ。
厳密に言えば、こちらの世界の藤本美貴とは
今日初めて会ったことになるのだけど、
なに、藤本美貴に違いはないのだから、臆することはない、
美貴のウィークポイントなど変わりはないはずだから、
落とす自信はある。
- 475 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 11:54
- 時間になっても美貴は中々やって来ない。
待ちくたびれた亜弥は、その前にシャワーを浴びることにする。
やがて亜弥がバスタオルを体に巻いただけの姿で
浴室から出た時、
ピンポ〜ンと玄関からチャイムの音がした。
「来たわ〜!」
いそいそと亜弥は玄関に向かう、
いいタイミングなので、美貴を驚かしてやるつもりだ。
「ハ〜イ、今開けるよ〜」
亜弥は鍵を外すと、
「どうぞ〜」
と言って、体のバスタオルをぱっと取ってしまうと、
スッポンポンのまま、仁王立ちで美貴を迎える体勢に入る。
- 476 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 11:56
- ガチャリとドアを開けて入ってきた人物は、
目の前に全裸の亜弥を見て、目を見開いてその場に固まる。
「あら〜!パパじゃない〜!」
そこには、亜弥の父親、正確に言うと松浦の父親が立っていた。
「なんで〜パパが来るのよ〜!」
父親はどぎまぎしながら、
「・・・今日来ることは一週間前に亜弥に電話で言った
はずだけど」
「なんだ〜そうなの、松浦のやつ肝心なことを言い忘れてる
のだから、それでパパは何の用で来たの?」
父親もさすがに目をそらしながら、
「とにかく、亜弥・・・なんか服を着てくれないか」
ようやく亜弥は自分がスッポンポンなのに気づいて、
- 477 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 11:59
- 「あら〜、そうだったわね」
と、あわてて足元のバスタオルを拾って体に巻く、
そして部屋の向かいながら振り返って、
「パパを驚かしちゃったかしら〜、でも娘の裸なんか
見慣れてるでしょう」
父親は亜弥の後から行きながら、
「そんなこと無いよ、一緒にお風呂に入ったのは亜弥が
小学生の時だから、もう10年も前だよ」
「そうなんだ〜じゃあ娘の裸を見るのは久しぶりなんだ〜」
父親は、そんなことは亜弥が一番よく知ってるはずなんだがと
首をかしげながら、
「そういうことになるなあ・・・」
そこで、亜弥はサービスのつもりなのか、わざと
バスタオルをするっと下に落としてしまう。
亜弥のぷりっとした丸出しの可愛いお尻を目の前にして、
父親はその場に棒立ちになる。
- 478 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 12:01
- 「亜弥!やめなさい!何を考えてるんだ」
亜弥は舌を出して、
「ごめんなさい〜喜ぶと思ったのよ〜」
「バカなことを言うもんじゃない!娘の裸を見て
喜ぶ父親がどこにいると言うんだ」
「そうだよね、でも本当は嬉しいくせに」
「そりゃあ、まあ・・・」
「でしょ、それでこそ私のパパよ〜」
亜弥はそう言うと服を着るため奥へ引っ込む。
父親は、亜弥はこんな娘だったかなとさかんに首を振りながら
居間のソファーに腰掛ける。
- 479 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 12:03
- やがてジャージに着替えた亜弥が、お盆に缶ビールとコップを
載せてやってくる。
「パパ、取りあえずビールを飲んでいて、お食事まだなんでしょ、
すぐ作るから」
と、ポンと缶ビールを開けてコップに注ぐ。
父親はコップを手に取りながら、
「なんだ、どうしてビールを置いてあるんだ?」
「もちろん、私が飲むためよ、仕事を終えて帰ってきて
飲む一杯のビールがこれがまた美味しいんだな〜」
「ええ〜!!」
と驚く父親に、
「ウソよ!ウソに決まってるでしょ、ママよママが飲むため
置いといたのよ」
「ホントに親を驚かすんじゃない、まったく」
父親はそう言いながら、ビールを旨そうに飲み干す。
- 480 名前:来訪 投稿日:2005/11/23(水) 12:05
- 「今日はママは姫路に帰ってるし、今夜はパパと親子
水入らずで過ごせるわね」
亜弥は時計を見た、どうやら美貴は今夜は来ないようだ。
父親がビールを口に入れた時、
「そうだ、久しぶりにパパと一緒にお風呂に入ろうか!」
ブワッーーッ!と父親は口の中のビールを噴出してしまう、
「亜弥ー!!バカな事を言うんじゃない!
もう年頃の娘と一緒にお風呂に入れるわけないだろ!」
「そんなこと言ってても、パパだって一緒に入りたいでしょ?」
「そりゃあ、まあ・・・・」
「でしょ、それでこそ亜弥のパパよ〜」
亜弥は嬉しそうに言うと立ち上がった。
- 481 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:26
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 482 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:03
- その時、ピンポ〜ンと玄関のチャイムが鳴ったので
行ってドアを開けると、美貴が立っていた。
確かに家へ来ないかと誘ったのだけど、一向に来る様子が
無かったので今夜は来ないものと思っていたのだが。
「遅くなってごめんなさい。もう夜遅いし、迷惑かしら・・・」
「そんなことないよ、さあ上がってよ」
すると奥から、
「亜弥、誰が来たのかい」
パパの声がした、
「あのね、予定外の事なのだけどパパが来てるのよ」
「そうなの、じゃあ私帰るよ、お邪魔だしね」
「大丈夫だって!パパだって美貴を知らないわけでは
ないし、美貴だってパパをよく知ってるでしょ」
パパが顔を出して、
「やあ、美貴ちゃんじゃないの、まあ上がんなさいよ」
美貴は迷っていたが、亜弥にせかされて、
「すみません、夜遅いですけどお邪魔します」
二人は、亜弥の部屋に入った。
- 483 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:05
- 「もう来ないかと思ってたのよ、よく来てくれたわ。
ちょっと待ってて紅茶か何かを持ってくるから」
亜弥がそう言うと、
「いいわよ、すぐ帰るから」
「何言ってんのよ、もう夜遅いじゃない泊まっていきなさいよ」
亜弥はそう言うと、ベッドに腰を降ろした。
美貴はそんな亜弥をじっと見つめて、
「なんかそうしてると、まるで自分の部屋みたいに
おさまってるわね・・・」
「当たり前じゃない。ここは私の部屋だもの」
美貴はつかつかと亜弥の側に行って隣に腰を降ろすと、
「違うわよ!ここは亜弥ちゃんの部屋だよ、あなたのじゃない!」
- 484 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:07
- 亜弥は笑うと、
「この部屋は私の部屋に決まってるじゃない」
「そうじゃない!ここは、私の知ってる亜弥ちゃんの部屋だよ」
「だから、私が亜弥よ、正真正銘の松浦亜弥じゃない」
美貴は強く首を振って、
「だから!あなたは亜弥ちゃんかも知れないけれど、
私の知ってる亜弥ちゃんじゃないでしょ!
あ〜、なんか頭が変になって来たわ、
あなたは別の世界から来た人間なのよ、
姿形は、どっから見ても亜弥ちゃんだけど、
中身は、私の知ってる亜弥ちゃんではない・・・」
- 485 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:09
- 「この部屋は私の住んでいた部屋とまったく同じなのよ。
家具もベッドも何もかもすべて同じ。だから最初の日だけは
少し違和感があったけど、すぐ慣れたわ。一週間たった今は
すっかり自分の部屋としてなじんでいるわ」
そう言って亜弥は腰を降ろしているベッドをぽんと叩いた。
「そうなの・・・あなたの住んでいる世界と、今いるこの世界は
何かも同じなのね、環境もそして住んでいる人たちも」
「もちろんよ」
「今この家にいる、亜弥ちゃんのお父さんも同じなのね、
そして、あなたが本当の自分の娘では無いことは
知らないんでしょ」
「そうよ、確かに厳密に言うと私のパパではない、
でも、あのパパの娘は亜弥。とすると私も亜弥に違いないから
私もあのパパの娘と言えないこともないわ」
「あ〜なんだか頭がこんがらがってくるわ・・・。
昼間あなたがこちらの世界に来て、私の知ってる亜弥ちゃんと
入れ替わった理由を話してくれると言ってたわね。
それに、今亜弥ちゃんはどうしてるの?」
- 486 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:11
- 「あなたの知ってる松浦亜弥は、急に声が出なくなったの」
「ええ〜?!声が出なくなったって!」
「そう。突然、まったく声が出なくなったの。
こちらのお医者さんも原因がわからないそうよ。
それで松浦は私に助けを求めたの、それで私が別の世界から
やって来て、松浦と入れ替わったの。
声の出ない歌手なんて、歌を忘れたカナリヤどころじゃないわ。
今松浦は私のいた世界に行って声の治療をしてるはずよ。
私のいる世界の方が医学は格段に進んでいるのよ」
- 487 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:13
- 「それであなたはこの世界にやって来たわけね」
「そうよ、美貴ちゃんも松浦から聞いてるように
以前松浦が私の代わりを務めてくれたお礼に
今度は私が声の出ない松浦の代役を務めているわけ」
「亜弥ちゃんは声が出るようになればすぐに
帰ってくるの?」
「もちろんよ。それまで私がスケジュールをこなすから
大船に乗ったつもりで安心してって言っておいたわ」
美貴はフンと鼻で笑うと、
「よく言うわね、この前の生放送のあの番組では
大騒ぎだったそうじゃない、一緒に出演した美佳さんから
聞いたわよ、彼女とは時々メールを交換してるの、
生本番中に隣の男性歌手に手を出したそうじゃないの」
- 488 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:15
- 「手を出したって、いくら私でも生本番中にHはしないよ」
「違うぅ!そんな意味じゃなくて、ちょっかいを出したって
意味よ!」
「ああ、あれね。あれは私に気があるおじさんをちょっと、
からかうつもりでに太ももを触らせて上げただけよ」
「その後、美佳さんにキスしたそうじゃないの、
その後、彼女から松浦さんのアドレスを教えてくれって
メールが来て往生したのよ」
「どうやら彼女を目覚めさせちゃったようね。
ま、彼女は私のタイプではないけどね」
「・・・その後、ハロプロメンバーにも、片っ端から
手を出すというか、キスしまくってるそうじゃないの、
いったいどういうつもりなのよ!」
- 489 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:16
- 「それは、何というか親睦を深めるためよ」
「どんな親睦なんだかわかりゃしない・・・あれから
亜弥ちゃんには近づくなという指令が飛んでるのよ」
「誰がそんな指令を出してるのよ〜」
「知らないわよ、たぶん中澤さんあたりじゃないの、
そうでなくても、リハの最中に手当たり次第にキス
しまくるような人には誰も近づかないわ」
「そうかしら、私にキスされて喜んでる人もいるはずよ」
「誰が無理やりキスされて喜ぶというのよ!
もお〜亜弥ちゃんはいつ帰ってくるのよ」
- 490 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:18
- 「松浦からの連絡によると、あちらの医者は声が
出なくなったのは、外部からの影響のせいだと言ってる
そうよ。それも松浦をよく知る人物が原因だそうよ」
「外部からの影響ってなによ」
「黒魔術って知ってる?相手に呪文をかけて攻撃する魔術よ」
「聞いたことあるわ、それがどうしたの」
「松浦は黒魔術をかけられて声が出なくなったというの」
美貴は呆れて笑い出した。
「バカバカしい!何百年前の話しなのよ、聞いて呆れるわ」
「まあ聞きなさいよ、黒魔術は現代でも行われているのよ、
アフリカのカメルーンとマリのサッカーの試合で、カメルーンの
コーチが相手チームに黒魔術の呪いをかけたとして逮捕された
のは、つい最近の事よ」
- 491 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:21
- 「とても信じられないけど、じゃあ仮に黒魔術が原因で声が
出なくなったという事があったとしても、誰が呪ってるのよ、
誰が何のために亜弥ちゃんを呪ってるというの!」
「それがわからないのよ。私がこの世界に来た理由は
松浦の代役ともうひとつは、松浦を呪っているという人を
捜すためなの。なんでもその呪いを止めさせない限りは
また声が出なくなるそうよ」
「だいたい、その亜弥ちゃんが黒魔術で呪われてるって
言う医者は何者よ、祈祷師か何かじゃないの。とても
信用できないわ」
「そのお医者さんは、黒魔術を研究してる権威でもあるの。
魔術や呪術をかけられた人を治してくれる医者なの。
でも黒魔術って言っても松浦の場合は、
妖術師や呪術師が大掛かりに呪いをかけて来るわけでもないの、
たとえば、、見かけは普通の女の子が、何万人かに一人の
特殊な能力を持っていて、心の中で別の人間、たとえば
松浦亜弥に対してちょっとした恨みを持っていただけど、
それが黒魔術と同じ作用をもたらす場合もあるの」
- 492 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:23
- 「今、普通の女の子って言ったわね、まさか亜弥ちゃんに
呪いをかけてるっていう人は・・・」
「具体的な名前はわからないけど、松浦をよく知っている
女の子だそうよ。とすると、人物は限られてくるわね」
「つまり、ハロプロのメンバーってことなの?」
「そういうことになるわね。
お医者さんによると、その加害者も呪いをかけてるという
意識は無いそうよ。心の奥深くの潜在意識が無意識のうちに
松浦に呪いを送ってしまっているそうよ」
「そんな事信じられないわ。同じハロプロの仲間の一人が
亜弥ちゃんを呪ってるなんて考えられないわ」
「本人もその意識は無いのだから、捜し出すのは難しいわね、
心の奥深くを覗かないことにはわからないわね」
- 493 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:25
- 「それでどうなの、見つけられそうなの」
「まあね。私には特殊能力が備わってるから、それを駆使して
今探ってる最中よ」
「特殊能力≠チてなによ?」
亜弥は笑って、
「それはまだ内緒よ。すべて解決したら教えてあげるわ」
「・・・で、その呪ってる人の見当はついてるの」
「一人、怪しそうな人ならいないこともないわ」
「誰なのよ・・・」
「それは、藤本美貴、あなたよ」
「はぁ〜〜?!!」
- 494 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:27
- 美貴は立ち上がって亜弥を睨みつけた。
「なんで私なのよ!この私が亜弥ちゃんを呪ってると
言うの!!
何を根拠にそんなふざけたことを言うのよ〜!?」
「あら、怒ったかしら」
「怒るわよ!なんでぇ私が亜弥ちゃんを呪わなくちゃ
いけないのよ!いい加減な事を言うと許さないわよ・・・」
美貴は唇を震わせて亜弥を睨みつける。
亜弥も立ち上がって、鏡台に置いてあった手鏡を取ると
その鏡を美貴に突きつけた。
「ほら、自分の顔をよく見てみれば。怒ると可愛くないよ」
- 495 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:28
- 美貴はやにわにその手鏡を強く手で払った、
手鏡は亜弥の手から飛んで下に落ちた。
亜弥は咎めるように美貴の顔を見た、
美貴はその視線をそらすと、
「ごめんなさい、でも亜弥ちゃんが悪いんだよ、
私が鏡を嫌いな事を知ってるくせに・・・」
美貴は気がついて、亜弥を見た、
亜弥はうなずいて、
「もちろん、知ってるよ。私のいる世界の美貴ちゃんも
そうだったのだから」
亜弥は手鏡を拾うと、覗き込んで顔を直した。
そして振り返って美貴を見て、
「一度聞こうと思ってたのだけど、美貴は鏡その物が嫌いなの?
それとも、鏡に映る自分自身が嫌いなのかしら」
- 496 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:30
- 「そんなこと、今は関係ないでしょ!私が聞きたいのは、
なぜあなたが私が亜弥ちゃんを呪ってると思ってるのかという
ことを聞きたいのよ!」
「それが関係あるのよ。鏡が嫌いな女の子がいる。
それはなぜなのか、それが私の考えている通りなら
その女の子、美貴が松浦を呪っていることになる。
でも違っていたら、美貴ではないということになる。
だから、私の質問に答えて」
美貴は困惑して首を振った、
「私だって、美貴が松浦を呪ってるなんて思いたくないわ、
だから、確かめたいのよ。だからさっきの質問に答えて、
あなたという女の子の心の奥をもっと知りたいの」
少しの間考えていた美貴は、顔を上げると言った。
「鏡の中の自分を見たくない・・・鏡の中の私は嫌い」
- 497 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:32
- 「やはり、鏡に映る自分が嫌いなのね。なぜなの?
こんなに可愛いのに、もっと自信を持ちなさいよ」
美貴は首を振って、
「自分でもよくわからないわ。
時々、鏡に映る自分がたまらなく嫌いになる時があるの。
自分が大好きで自分が一番可愛いと思ってる亜弥ちゃんには
理解出来ないでしょうけど」
そう言うと美貴は亜弥を見た、
「そんなことない、美貴の気持ちはわかるような気もするよ」
「でもあなたは自分を嫌いになった事は無いんでしょ」
「無いよ」
亜弥はきっぱりと言った。
- 498 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 19:35
- 「こんなこと誰にも言ったことなかったのに、亜弥ちゃんにも
言えなかったことなのに」
亜弥はうなずいて、
「でも、別の世界から来た、松浦亜弥であるこの私には
言えるのね。
私にすべて話して。もしあなたが松浦を呪ってるにしろ、
そうじゃないにしろ、あなたの力になるわ」
「私は絶対に亜弥ちゃんを呪ったりはしないわ、
だいいち、理由がまったく無いわ」
「呪ってる本人も、その自覚が無いのよ。心の奥深いところの、
潜在意識で呪いを送ってるのよ。
あなたは鏡が嫌い。でも亜弥は鏡が大好き。その辺は
性格が真逆なところもあると思うわ。
でも二人は親友同士。あなたは、亜弥を愛してると思う?」
「愛してるかどうか、わからないわ。でも理解しあってると思うわ。
確かに私は人と協調性が無いと思うわ、冷めた目で見てしまう、
亜弥ちゃんはそんな私を理解してくれてると思うし、私も同じ。
お互い信頼関係を保っているはずよ」
- 499 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:39
- 「あなたは、雪は嫌い?」
「ええ?なんのことを言ってるの・・・」
「あなたの生まれた所を言ってるの。冬になると何メートルも
雪が降るって言ってたことがあるわね、その口ぶりはあまり
雪が好きとは思えなかったわ」
「・・・雪はあまり好きじゃないわ」
「あなたは、そんな大雪の降る土地から逃れて都会に出て
行きたかった。それも遠くの東京に行きたいと思った」
「・・・・」
「そして、アイドルになり有名になりたくて、オーデションを受けた。
でも結果は落ちてしまったけれど、運良くソロ歌手としてデビュー
出来て順調に伸びていたのに、ある日突然モーニング娘。の一員に
組み入れられてその他大勢の一人でしかなくなり、そして
ソロ歌手として華やかに脚光を浴びている亜弥を羨み、
いつしか、心の奥底の潜在意識で亜弥を呪うようになってしまう。
と、言うのはどうかしら・・・」
- 500 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:40
- 「呆れて物も言えないわ。とんだお笑いぐさよ」
そして美貴は勝ち誇ったように、
「だいたいね、根本からして間違ってるわ。私はモーニング娘。に
に入りたくてオーデションを受けたのよ、その娘。に加入する事が
出来て、なんの不満があると言うの、
それに、みんなとも仲良くやってるし私にとって今の場所は
とっても満足してるわ」
亜弥はあえて反論しないで、うなずいた。
「そうなの。それにうるさそうな人はあらかた卒業していくしね」
「そういうことね、うるさい人は・・・」
美貴は気がついて亜弥を睨んだ、
- 501 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:42
- 「もうひとつあるのだけど、言ってもいいかしら」
「どうぞ」
「あなた達二人、松浦と美貴は人も羨むほど仲の良い
親友同士だけど、松浦はあなたを、
『食べちゃいたいぐらい大好き』って公言してるし、あなたも
肯定してる」
「そうね」
「しかし、松浦には恋人がいることが発覚した。
そこで、あなたはこの私がいるのに男を作っていちゃいちゃ
してるのは許せないと、可愛さあまって憎さ百倍ってわけで、
潜在意識で松浦を呪ってしまう」
美貴は呆れかえったように笑い出す、
「どっからそんな理屈を考え出すのよ、
前提からして間違ってるわ。
私と亜弥ちゃんはカップルじゃないのよ!
確かに私と亜弥ちゃんは親友よ、親友は困ってる時に
助け合うのが親友よ。
亜弥ちゃんに好きな男性が出来たら応援して上げるの
親友だと思うわ。 お互い誰を好きになろうと自由だし、
お互い束縛出来っこないわ。
でも私達は信頼し合っていい関係を築いてるわ、親友として」
- 502 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:43
- 亜弥は何度もうなずいて、
「それはよくわかるわ」
「そう。これでよくわかったでしょ。私が亜弥ちゃんを呪うなんて
ありえないことが」
美貴はそう言って、亜弥の隣に腰を降ろした。
「そうかもしれない。でも、それは表面的なことよ、
潜在意識では、あなたは松浦を呪ってるかもしれない」
美貴は思わず立ち上がって両手を広げて、
「だからぁ〜!!何度言えばわかるのよ!
私は亜弥ちゃんを呪ってないから〜〜!!」
- 503 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:45
- 美貴は亜弥をぐいっと睨みつけて、
「だいたい、別の世界から来たあなたが私の何を
わかると言うのよ!今日は初めて会ったのよ!
私達は・・・」
亜弥は首を振って、
「私は松浦亜弥に間違いない。そしてあなたも藤本美貴に
違いない。私は美貴の事なら何でも知ってるつもりよ」
「そうだけど、でも、あなたは私の知っている亜弥ちゃんじゃない、
これははっきりしてるわ。そして、私もあなたの知っている美貴では
ないわ」
亜弥はうなずいた。
「確かにそうね。でもね別々の世界に離れていても、
本質は同じなの。私と松浦は同じ人間なの。もちろん、
私の世界の美貴とあなたも同じ人間なのよ」
- 504 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:48
- 「そこがわからないわ、私は私なの、他に私とまったく
同じ人間が存在するなんて認められないわ」
「でも、存在するの。今ここにいる私がその証拠よ。
あなたも、私が別の世界から来たことは認めていた
じゃない、それが自分の事になると認めないなんて
おかしいわ」
美貴は首を振って、亜弥の側に腰を降ろした、
「亜弥ちゃんのように自分が大好きな人なら、
自分と同じ人間が何人現われようが大歓迎だろうけど、
私は自分がもう一人出現するなんて、考えただけで、
ゾッとするわ・・・」
「それはよくわかるわ。私だって、前に松浦がいきなり私の
前に出現した時は驚いたもの。
まあ、私達はすぐに慣れて意気投合したけどね。
とにかく、私は松浦を呪っている人間を探し出すためには
何だってやるわ。それがたとえ美貴だとしても、
容赦はしないつもりよ」
「あのね、もし仮によ、百歩も二百歩も譲って私が亜弥ちゃんを
呪ってるにしても、それで亜弥ちゃんの声が出なくなるなんてことが
ありえないわ!私は魔女じゃないんだから、黒魔術なんて
出来るはずが無いわ」
- 505 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:50
- 「それを言われると自信ないわね。あのね、あなたが憎いと思ってる
人が、モーニング娘。を急に脱退してしまうって事はないのかしら、
それがあれば、あなたの呪いが通じたということになるわ」
「そう言えば、そんな人が・・・いるわけないでしょっ!!
何をバカな事を言い出すのよ!
私はみんなとは仲良くやってるわ、そんな人いないわ」
「そう。それは残念ね」
「なにが残念なのよ!私、もう帰るわ!」
美貴は憤慨して立ち上がった。
「何言ってるの時計を見なさいよ、夜中の2時よ。
女の子が出歩く時間じゃないわ。泊まってきなさいよ」
「タクシーを呼ぶわ」
「いいじゃない、あなたは松浦とは同じ布団で眠ったり、
一緒にお風呂に入る仲なんでしょ」
- 506 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:52
- 「確かにそうよ。でも、それは私のよく知ってる亜弥ちゃんの
ことよ。あなたのことじゃない。あなたとは一緒にいたくない。
だいたい、あなたの世界にいる美貴とはどうなのよ、
その様子じゃ、とても親友とは言えないわ」
「あなたは、松浦を愛してるかどうかわからないって言ったわね、
私は違う。私は美貴を愛してると断言出来るわ。もちろん美貴も
私を愛してくれてる」
「だったら、その愛してる美貴と同じ人間である
この私を、どうして執拗に疑うのよ!」
亜弥は立ち上がると、加湿器を取り出して水が入ってるか
確かめてから電源を入れる。
「乾燥すると喉に悪いわ」
戻ってきて、美貴の側に腰を降ろして、
- 507 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:53
- 「どうして美貴を疑うのかという話だったわね」
「そうよ」
「今のあなたは、私の嫌いな時の美貴に似ているわ」
「へえ〜その嫌いな時の美貴ってのを聞かせてもらいたいわね」
「そうね。 高慢ちきですぐ人を蔑んで、
人の欠点ばからあげつらって突っ込むくせに、
自分の身は全然かまわずに、ぼさぼさの頭や
だらしない身なりで出て来て、
人目を気にせずニンニクたっぷりの焼肉を
食べて口臭をまきちらし、文句をつけた人を
威嚇してお仕置きして、絵も下手でおまけに
字も下手とくる」
美貴は目を剥いて、怒りでブルブル震えながら、
「なによ!いい加減にしなさいよ〜!!
よくもそれだけ人の悪口を並べられるわね!
そんな美貴は人を呪って当然と言いたいの!!」
- 508 名前:美貴 投稿日:2006/01/26(木) 20:55
- 「あら怒ったの、これは私の世界の美貴のことなのよ」
「あなたね〜!さっきあなたの世界の美貴も私も、
本質は同じって言ったじゃない!
これでも私も藤本美貴なのよ!」
「心当たりが無いのなら、怒ること無いじゃない」
「心当たりがあるから怒ってるのよ!
高慢ちきで字の下手な藤本美貴としては!」
「そうなの。でもね、私はその部分も含めた藤本美貴を
愛してるのよ。もちろん、美貴の好きな部分もいっぱい
あるわ。え〜と、それはすぐには浮かばないけど」
「って、どうしてすぐに浮かばないのよ〜!」
- 509 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:20
- 美貴は怒って立ち上がった。
「もう帰るわ!絶対に帰る!」
亜弥はあわてて美貴に近寄りその腕を取った、
そして頭を下げながら、
「ごめんなさい、美貴ちゃん。本当にごめんなさい、
悪かったわ。あなたの気持ちを考えなかった私が
いけなかったわ」
美貴は殊勝に頭を下げる亜弥を見て、
「そりゃあ、そこまで謝られたらね・・・」
亜弥は飛び切りの笑顔で飛び上がって喜ぶと、
「美貴ちゃん〜許してくれるのね、ありがとう〜」
美貴も笑うと、
「いつも亜弥ちゃんと何かあっても、その笑顔で
許しちゃうのね。やっぱりあなたも亜弥ちゃんなのね」
「当たり前じゃない、私は松浦亜弥なんだもの」
- 510 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:22
- 二人は亜弥の部屋で休む事になった。
「美貴ちゃん、ベッド使っていいよ。私は下で寝るから」
美貴は首を振ると、
「ここは亜弥ちゃんの部屋だよ。私が下で寝るわ」
すると亜弥は美貴の腕に自分の腕をからませて、
「じゃあ、ベッドで一緒に寝よう〜」
美貴は亜弥の顔を見て、
「あなたには負けたわ。そうするわ」
亜弥は美貴が着るパジャマを出してくると一緒に着替えて
いそいそとベッドに入る。
- 511 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:23
- ベッドに入っても亜弥は美貴に話しかける、
「ねえ美貴ちゃん、あなたはさっき松浦のことを
愛してるかどうかわからないって言ったわね」
美貴はうなずいた。
「でも、私に本当の気持ちを聞かせてほしいの。
愛し合うという事はとっても大事な事よ。
愛情は、何も男女の間だけの事じゃないと思うわ。
美貴ちゃんは、人間として、同じ仲間として、
そして、親友として松浦を愛してるはずよ」
美貴は寝返りを打って亜弥の方を見ると、
「そういう意味ならわかるわ。私、美貴は亜弥ちゃんを
愛してるわ」
「やはりそうなのね。心から愛してると言えるのね」
「心から言えるわ」
「きっと松浦も美貴ちゃんを心から愛してると思うわ。
よくわかったわ。お互い愛し合ってる二人になんの問題も
無い事が」
- 512 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:25
- やがて亜弥は部屋の明かりを消した。
少しして、暗い中で亜弥はまた美貴に、
「ねえ美貴ちゃん起きてる」
「起きてるけど、亜弥ちゃんもう寝なさいよ」
「ねえ美貴ちゃん、あのね、私の秘密をまだ美貴ちゃんに
話してなかったの」
「何よ、秘密って」
「じゃあ、キスしていい?そしたら話してあげる」
「・・・その秘密を話してくれたら、キスしてもいい」
「本当?じゃあ話すわ。私はね、ある特殊能力があるの」
「特殊能力って、何なの?」
- 513 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:27
- 「それはね、私は人にある事をすると、その人の考えてる事を
読み取れるの」
美貴は、亜弥がハロメンにキスしまくってる事を思い出した。
「まさか、キスしたらその人の考えを読み取れるとか」
「ピンポ〜ン。その通りよ」
「だから〜亜弥ちゃんを呪ってる人を探すために、
みんなとキスをしてたのね」
「そうなの〜。さあ、約束よ私とキスして」
「やだっ!」
「ええ〜!さっき話したらキスしていいって言ったじゃない」
「キスしたら人の心を読み取ってしまう人なんかと、
キスしたくない。絶対に、やだっ!」
「もお〜、美貴ちゃんの意地悪」
美貴は毛布を頭から被ると、
「もう寝る!亜弥ちゃんも早く寝るのよ」
- 514 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:28
- 翌日の夕方、亜弥は番組に出演するハロプロ・オールスターズ
の一員としてテレビ局に赴いた。
一人欠員になって、総勢45人のハロメンが集合していた。
出番の前にスタジオでリハーサルが行われていた。
亜弥は大勢のメンバーの中に今日の朝、亜弥の家から
帰って行った美貴の姿を認めてさっそく近づいた。
「美貴ちゃん〜」
亜弥は飛び切りの笑顔で、美貴の腕をつかまえた。
美貴は現われた亜弥に、
「亜弥ちゃん、ちょっと来て」
美貴は亜弥を片隅に引いていく、
- 515 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:30
- 「何なの美貴ちゃん」
「あのね、あの後考えたのだけど、ハロメンの中に
亜弥ちゃんを呪ってる人がいるというのは間違いだと
いう事がわかったの・・・」
「ええ〜!?それはどういうこと」
「それはね、あなたはどうして平気なの?
仮に松浦亜弥が呪われて声が出なくなったとしたら、
同じ松浦亜弥のあなたにはどうしてなにも起こらないの?
昨日もあなたはハロメンとずっと一緒にいたのに、
なぜあなたには何事も起こらないの?変じゃないの」
「そう言われればそうね・・・」
亜弥は首を捻った。
「でしょう。だからハロメンの一人が呪ってるというのは
間違いだという事なのよ」
- 516 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:32
- 亜弥は考えて、
「美貴ちゃんの言うこともわからないこともないわ。
もしかしたらその通りかもしれない、でもまだわからないわ。
呪いというのは必ずしも持続するものではないわ。
潜在意識の呪いはあるきっかけで強くなったり、逆に
抑えられる場合もあるわ」
「それはどういうこと?」
「人を呪うという事は、たとえ潜在意識で行ったとしても、
当人にも罪の意識として残り、抑制が働くのだと思うわ。
だから、今は呪いは抑えられて表面には出てこないのよ」
「ふうん、何だか難しい話ね。
それで、まだキスしてなくて心を読み取っていない
人は何人残っていて、それは誰なの?」
亜弥は手帳を取り出して、
「え〜とね、石川さん吉澤さん、それにカントリー娘。の
3人ね。後はココナッツ娘。のアヤカさんよ。
あっ、それに美貴ちゃんにもまだキスしてないのね〜」
- 517 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:38
- 美貴はふくれて、
「私は昨夜、問題ないって言ったじゃない!」
亜弥は舌を出して、
「そうだったわね、じゃあ美貴ちゃんはクリアして
残りはその6人よ」
美貴はその残りの6人の顔を思い浮かべて、
「あのね、私もハロプロに入って3年になるけど、
その6人の人達をよく知ってるけど、その人達が
亜弥ちゃんを呪うなんて、とても考えられないわ。
梨華ちゃんも寒い事は言うけど、とてもいい人よ。
よっちゃんもさっぱりしてて、人を呪うなんて絶対に
ありえないわ」
「そうね。私もそう思うわ」
- 518 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:40
- 「カントリーの3人とアヤカさんもみんないい人
ばっかりよ。だから、ハロメンの誰かが人を呪う
なんてことは間違いなのよ」
亜弥はうなずきながら、
「間違いなら、それはそれで良い事よ。
でも念のためにそれをはっきりさせるためにも、
残りのメンバーの心を読み取ってみるわ」
美貴は首をすくめて見せて、
「それじゃあ、これからその6人の唇を奪うわけなんだ」
- 519 名前:心の闇 投稿日:2006/04/22(土) 23:44
- 亜弥はほほえんで、
「そういうこと。ではさっそく行ってくるわね」
たとえ、どんなに良い人であろうとも、心の奥底にどんな
闇が潜んでいるかわからないと、亜弥は考えていた。
それに、最初に一番疑わしい人だと考えていた人間が
まだその6人の中に残っていた。
美貴の言った、同じ松浦亜弥なのに、この自分には何事も
起こらないのはなぜかと言うと、やはり、今はその人の理性が
潜在意識の呪いを抑えているのだと思っていた。
亜弥は自分の感受性が鋭いことを自覚していたから、
もし、誰かが自分に呪いを送って来たら必ず感知出来ると
思っていた。そして、その送り主をわかるはずだと。
まず亜弥は、石川梨華に近づいた。
- 520 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:43
- 亜弥は梨華の事を、時にはピエロのような役割を演じて周囲を
引かせていて、梨華自身もそれに甘んじているように見えるが、
内面は烈しいものを持っていると睨んでいた。
もちろん、その事と人を呪うかどうかは別物なのだが。
もし梨華が人を愛するようになれば、一途で烈しい愛情を
見せるような気がする。
その裏返しで、裏切られたりすればその憎悪も烈しいものが
あるように思える。
もちろん、松浦が梨華を裏切るような事をしたとは
思えないのだけど。
亜弥が梨華の前に姿を現すと、昨日の事もあって周囲の
メンバーは、そそくさとその場から離れてゆく。
梨華の表情もついに来たかという風に顔に出していた。
- 521 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:46
- 亜弥はそれなら話が早いとばかり、飛び切りの笑顔で、
「梨華ちゃん〜私、梨華ちゃんの事大好きよ」
と直球を投げる。
梨華は亜弥の真意を測りかねたように、
「そ、そうなの、それは嬉しいわ・・・」
「梨華ちゃんは私の事好き?」
嫌いとは言えないし、事実好きなので、
「そりゃ、好きかな・・・」
「そうなのぉ嬉しいわ!じゃあ、キスして〜」
「だからぁ、なんでそうなるのよ〜」
梨華が気がついた時には、亜弥の唇が梨華の唇に
ぴったりと張り付いていた。
- 522 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:48
- キスされた刺激で脳内物質が分泌された影響で発生した
静電気を通じて梨華の考えている事が、唇を通して
亜弥の頭の中に流れ込んでくるのだ。
そして亜弥の頭の中に梨華の考えている事が映像となって
映し出されるのだ。
梨華の頭の中は、やはり独特のものがあるようだ、
梨華自身の姿が浮かび上がって来る。
ハロメンの中で、自分が大好きな人間は亜弥を筆頭に、
梨華は3本の指に入るだろう。
その映し出された梨華は裸だった。それも全身血だらけ
だった。
亜弥は心の奥底にある梨華の内面を見たような気がした。
- 523 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:50
- そして、もう一人の人間が現われた、
それは柴田あゆみだった。
梨華の表情がぱっと輝いてあゆみと抱き合った。
いつのまにか全身の血は消えていた。
亜弥は唇を離して、
「梨華ちゃん、いつまでも仲良くしてね」
梨華はけげんそうな顔で、
「仲良くって、亜弥ちゃんと?」
亜弥はうなずきながら、
「私もそうだけど、柴ちゃんともね」
亜弥は梨華の側を離れると、次のターゲットを探す。
良い具合に、残りのメンバーの中の3人が一緒にいる。
吉澤ひとみ、里田まい、それにアヤカ。
- 524 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:51
- この3人は不思議な関係で結ばれている。
里田とアヤカは、それぞれ吉澤が大好きで、
まるで恋の三角関係のようにしのぎを削っている。
しかし、里田とアヤカは何でも言い合える親友として
信頼し合っている。
吉澤もそんな二人と深く結びつきながら、まるでドンファンの
ようにあしらっているようにも見える。
亜弥が笑顔でその3人に近づくと、
楽しそうに話してた3人は亜弥を見ると身構えた。
亜弥はかまわず3人の輪の中に入っていって、
「お3人はいつも仲が良くて羨ましいわ〜」
亜弥は吉澤に媚びるような笑みを送る。
そんな亜弥に里田とアヤカは警戒感を見せる。
- 525 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:53
- いきなり亜弥が吉澤にキスしたら、残りの二人は
嫉妬の炎が燃え上がるだろうと亜弥は想像した。
ハロメンの女の子達から絶大な人気がある吉澤だが、
亜弥も、もちろん好きなのだが、でも吉澤は亜弥の
ようなタイプの女の子は好みでは無いかもしれない。
吉澤は亜弥を見ても動じる気配はまったくなかった。
そこで亜弥は里田とアヤカに、
「ねえ、お二人は吉澤さんとはキスした事は無いの?」
吉澤は、こいつ何を言い出すんだという風な顔をする。
里田とアヤカは互いの顔を見合した。
たぶんどちらかが、吉澤と二人だけの空間を過ごしたら
キスする機会もあっただろうけど、
どちらかが吉澤と二人だけになるのを見ると、すかさず、
残りの者が割って入り、いつも3人でいるのだと思う。
- 526 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:54
- キスした事なかったら、良い方法があるの。
今すぐここで二人ともキス出来る方法よ」
里田とアヤカは疑わしそうな表情を見せた、
吉澤は床に腰を降ろしていたが、
亜弥はその吉澤にいきなり飛びつくと、
その唇に自分の唇を押し付けた。
「ぅああああ〜!!」
と、里田が驚いて声を上げる。
アヤカも目を見張って里田にしがみつく。
吉澤の心の中は、
亜弥は男の子とキスした事は無かったが、もしキスしたら
このような感じだろうと想像した。
吉澤は精神的には男の子に近いものがあるのかもしれない。
- 527 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:55
- 亜弥は吉澤から離れると、里田とアヤカを見て、
「今私は吉澤さんとキスしたわ。だから、これからあなた達と
キスしたら、あなた達は吉澤さんとキスした事になるってわけ。
間接キスね」
亜弥はまず茫然としてる里田に近寄り、がっちりつかまえて
その唇を奪う。
里田の精神構造は吉澤のように男性に近いものがあった、
吉澤の事はもちろん大好きなのだろうが、むしろ、アヤカの
方をものにしたいのかもしれない。
亜弥は里田を放すと、アヤカに向かう。
アヤカのいかにも女性らしく品のある感じは、亜弥も大好きで
ぜひキスしたいと思っていたのだ。
- 528 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:57
- アヤカはハロプロ内では恵まれていなかった。
ココナッツ娘。のメンバーは次々と脱退して行き、
最後のよりどころだったミカも、とうとうハロプロから出て行き、
ひとりだけのココナッツ娘。となってしまった。
楽曲も遠い昔に出されたきりで、放置状態になっている。
それでもハロプロに残っているのは吉澤と里田がいるからだ。
亜弥が唇を寄せると、アヤカは観念したように目を閉じた。
吉澤ともそうだが、里田とも間接キスすることになるわけだ。
アヤカの心の中には、予想したように吉澤と里田が映っていた。
亜弥は後ろを振り返り、体を寄せ合っている3人を見た、
これであの3人はいっそう結び付きを深めることだろう。
やがてリハは終わり、テレビの本番の収録が始まった。
- 529 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 13:58
- 不祥事が発覚して外されたなつみ以外の45人のハロメンは
女子高生風の制服に身を包み華やかに歌い出す。
ソロで歌う事が多い亜弥だが、たまには大勢の仲間と一緒に
歌うのも悪くないなと思う。
亜弥のパートの部分を飛び切りの笑顔で歌っている最中に
それは襲ってきた。
突然、全身に悪寒が走り、体は硬直したように動かなくなり、
そして、声がまったく出なくなった・・・。
亜弥はパニックを起こし、その場に棒立ちになった。
- 530 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 14:00
- その状態は、ほんの2、3秒の一瞬の出来事だったかも
しれないが、亜弥には長く感じられた。
すぐに、潮が引くように亜弥の体の硬直は解け、全身の
悪寒も引いていった。
声も出るようになった。
45人のメンバーの人込みにまぎれて、棒立ちの亜弥の姿は
そんなに目立たなかったようだ。
何とか残りの歌をこなして亜弥は下がっていった。
まだ恐怖で心臓がドキドキしていた。
- 531 名前:心の闇 投稿日:2006/04/30(日) 14:01
- 亜弥は以前黒魔術に興味があって、有名な呪術師に
黒魔術を掛けてもらって体験した事があった。
間違いなかった。
たった今、誰かが亜弥に黒魔術の呪いを送って来たのだ。
ほんの一瞬の間だったが、呪いだと亜弥は確信した。
残ったメンバーを思い起こした、
カントリー娘。の、あさみとみうな。
この二人の内の誰かが呪いを送ってきたのに違いない。
最初、一番疑わしいと思っていた人物も残っていた。
本番が終わると、亜弥は真っ直ぐその二人の元へ向かった。
- 532 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 13:46
- ちょうどあさみとみうなが二人一緒に居るのを見た亜弥は
足早に二人に近づいた、
険しい顔で近づいてくる亜弥に、二人は逃げるようにどこかへ
向かう、
亜弥が後を追って行くと二人は女子トイレに入っていく。
亜弥が入ってくるのを見て、みうなの顔には恐怖の表情が
浮かんでいる、
よほど亜弥が怖い顔をしているようだった。
あさみは顔をそむけている。
亜弥はつかつかとみうなに近づくと、思わずぎゅっと目を
閉じたみうなをつかまえると、いきなりキスをする。
みうなの心の中は亜弥に対しての戸惑いが見て取れたが
亜弥への敵意はまったく感じられなかった。
亜弥はみうなを開放して、出て行くように目配せすると
みうなは足早にトイレから出て行った。
亜弥は個室に誰も入ってないことを確かめてから、
まず鏡を覗き込む。
自分から見ても険しい表情を直し、一度ほほえんでから
あさみの方へ向き直った。
- 533 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 13:48
- カントリー娘。のリーダーあさみは、
創成期のカントリー娘。が空中分解して、りんね一人だけに
なった後に加入してきた。
その後里田まい、みうなが加入。りんねは脱退する中で
ずっとカントリー娘。の一員として頑張ってきた。
メジャーデビューしてからは、客員としてモーニング娘。の
石川梨華、藤本美貴、紺野あさ美らが参加してきて、それらの陰に
なりながらけなげに活動してきたのだ。時には他のソロの
ハロメンのバックダンサーを務める事もあった。
彼女の性格は勝気だった。
他のハロメン、モーニング娘。やソロのハロメンに対して、
特に毎年行われるスポーツフェスティバルの場などで、
異常なまでの対抗心を燃やしていた。
他のカントリー娘。のメンバーも同様で、
里田まいもリレーのアンカーで走った時、同じくアンカーの
松浦亜弥が並びかけてきた時、里田は脚を痛めていたにも
かかわらず絶対に亜弥に抜かせまいと異常な頑張りを見せ、
最後まで先頭を譲る事はなかった。
あさみも同様に、亜弥に対して対抗心を隠さなかった。
しかし、コンサートなどの仕事の場ではそれを表面には
現さなかったのだが。
- 534 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 13:52
- あさみは気後れすることなく亜弥を見ていた。
亜弥に対する戸惑いと共に反抗心も見て取れる。
亜弥は、もちろんあさみの事は多少の事は知っている
つもりだった。
彼女の真っ直ぐな気性と頑張り屋さんの所は好ましく
思っていた。
しかし、その勝気な性格の奥底には心の闇を抱えて
いる可能性があると考えていたので、
最初に彼女が一番疑わしいと想像していたのだ。
可能性が低いと除外したメンバー以外は、ほとんど
すべてのハロメンの心の奥底を、特殊能力を発揮して
キスする事ですべて読み取ってしまい、
残るのはあさみ一人だけになってしまっていた。
彼女が、自分自身では無意識のうちに呪いを送って、
結果的に黒魔術としての効果を生み出し、松浦の声を
出せなくしてしまったと、考えざるを得なかった。
- 535 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 13:55
- 「あさみさん・・・どうして私がそんなに憎いの、
あなたは本当はそんな女の子じゃないはずなのに、
私はとっても悲しいわ。
私に言いたい事があるなら話してくれればいいのに」
あさみは亜弥の言葉に戸惑い気味に、
「何を言ってるのか意味がわからない・・・」
「いくら潜在意識からだとしても、あなたが松浦を
憎んでいるから、松浦が声が出なくなって歌手として
大変な苦しみを負っているのよ」
亜弥はあさみを問い詰める、
あさみは何が何だかわからないと、
「なぜ私が亜弥ちゃんを憎んでると思うのか理解出来ない、
いったい私が何をしたと言うの・・・わけがわからない」
亜弥はそのあさみの言葉を聞いても油断無く身構えていた、
本人も自覚しない、心の奥底の潜在意識が呪いを送り、
それによって、松浦は何日も声が出なくなり、亜弥も一瞬
全身が硬直してパニックを起こすほどの強力な呪いなのだ。
心の中を読み取ろうとして下手にキスをしたら、
唇を通じて直接呪いを送りつけられてどんな目に合うか
わかったものではない。
- 536 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 13:58
- 「松浦はあさみさんの事を好きなのよ!
可愛くて元気良く、何にでも一生懸命なあなたが好きで、
一緒にお仕事してても楽しいと思ってるのよ。
そんな松浦の気持ちを考えて見て!
あさみさんはどうなの、松浦の事をどう思っているの?
正直な本当の気持ちを聞かせて欲しいの」
少し考えていたあさみは顔を上げると、
「亜弥ちゃんの事、うらやましいと思ったことがあるわ、
本当に可愛くて歌が上手くて、誰からも好かれて、
アイドルって亜弥ちゃんの事を言うのだと思ったわ。
私なんかは較べ物にならないくらいよ。
そんな亜弥ちゃんがうらやましかった・・・」
「・・・・」
「でも、それで亜弥ちゃんを憎むなんて事はありえない、
そりゃあ、亜弥ちゃんに負けたくないと思う気持ちは
あったわ。でもやっぱりかなわない。
私と亜弥ちゃんでは住む世界が違うのだと思うわ」
- 537 名前:心の闇 投稿日:2006/05/07(日) 14:00
- 「それで、あさみさんは松浦・・・私の事をどう思うの、
好きなの、嫌いなの?
少しでも嫌いと思う気持ちがあれば、心の奥底で
憎しみが蓄積されていくのだと思うの」
あさみは真っ直ぐに亜弥を見つめると、
「今は、亜弥ちゃんを尊敬しているわ。
何度も一緒にお仕事をして、亜弥ちゃんの仕事に対する
情熱や何事も真面目に取り組む姿は素晴らしいと思うし、
好きか嫌いかと言われれば、
私は松浦亜弥という人を好きよ。それが正直な気持ち」
亜弥はあさみに体を寄せてその手を取った。
亜弥を見つめるあさみの瞳には一点の曇りも無く、
清清しいと思えた。
亜弥はそっとあさみの唇に自分の唇を寄せてかさねた。
あさみの心の中は本当に綺麗だった。
生まれ故郷の北海道の牧場の緑があざやかに広がっていた。
そしてハロプロの仲間達が笑顔いっぱいに現われていた。
亜弥もその中の一人だった。
- 538 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/07(日) 14:04
- 亜弥は唇を離すと、
「あさみさん、本当にごめんなさい。
私はあなたを誤解していたわ。あなたの気持ちは良くわかったわ。
私もあさみさんの事を本当に好きよ」
亜弥の瞳から思わず涙がこぼれ落ちた。
あさみも涙を浮かべながら亜弥の手を取り、二人は抱き合った。
その時、トイレに里田まいと吉澤ひとみが勢い込んで
入ってきた。後ろにみうなもいた。
みうなが亜弥のただならぬ様子に、里田と吉澤に助けを
求めて連れて来たのだ。
3人は、抱き合って泣いている亜弥とあさみを見て、
顔を見合わせた。
- 539 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:42
- 総勢45人の大人数だけに、控室は何室かに分けられていた。
亜弥はモーニング娘。の控室に行ってみる、
美貴の姿を見つけると手招きして廊下に連れ出す。
「それでどうだったの?」
美貴の問いに亜弥は結果を話した。
「最後のあさみさんの心の中を読み取ったけど、
結果は白だったの。これでほとんど全部のメンバーの
心の中を読み取ったけど、結局、松浦を呪ってる人は
いないという事になるのかしら・・・」
美貴は大きくうなずいて、
「やはりそうなのよ。亜弥ちゃんを呪ってるメンバーなんて
何処にもいなかったのね。
亜弥ちゃんの声が出なくなったというのも、きっと単なる
病気だったのよ。たぶん疲れがたまっててそれは喉に
きたのだと思うわ」
- 540 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:44
- 亜弥は考えていた。するとさっきの歌ってる最中に襲ってきた
衝撃はなんだったのだろう・・・亜弥には呪いとしか思えない。
美貴はそんな亜弥を見て、
「どうしたの、何だか納得がいかないようね、
まだ何かあるの?」
「美貴ちゃん、さっき収録中に私がつっかえた所を見た?
ちょうど私が前田さんと前に出て来た時よ」
美貴は首をかしげながら、
「そういえば、亜弥ちゃんちょっと立ち止まったような感じで
ぎこちなかったわね。また歌詞が飛んだのかと思ったわ」
「あの時、ほんの一瞬だけど全身が硬直したようになって
声が出なくなったのよ。まさに誰かが呪いを送ってきたと
感じたわ・・・」
- 541 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:47
- 「まさかそんな事ないって〜何かの思い過ごしだよ、
だってメンバー全員は白だったのでしょ?」
「そうなんだけど・・・ねえ美貴ちゃんはあの時
私の後ろにいたはずだよね」
「たしかそうだったわ、亜弥ちゃんと前田さんが前にいて、
その後ろに5期メンの4人がいて、私はその後ろにいたわ」
亜弥は考え込んで、
「私の前には誰もいなかったから、後ろから呪いは送られて
来たと思うのよ。おかしいわね、メンバーの心の中は全部
見たはずなのに。あそうだ美貴ちゃんとはまだキスしてない
から心の中を見てないわね」
- 542 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:49
- それを聞いて美貴はむくれて、
「またそれを言う!まだ私を疑ってるの〜」
亜弥はあわてて手を振って、
「ごめんなさい〜冗談よ。美貴ちゃんでないことはわかってるわ」
「それならいいけど。それで今は亜弥ちゃんは何ともないのでしょ」
「うん、今は大丈夫よ」
「だったら、亜弥ちゃんの勘違いだと思うな。何かの拍子に
歌詞が飛んで、そのせいで緊張したせいでそうなったのよ」
「そうだといいのだけど、あの時歌ってる時に急に背中に
悪寒のようなものを感じて・・・」
その時だった、亜弥は突然背中にぞくっと冷たい物が走ったような
気がして、驚いてぱっと振り返った、
廊下には支度を終えて帰ろうと、大勢のハロメンが出てきていた。
- 543 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:50
- 「どうしたの、亜弥ちゃん」
「何でもないわ・・・」
亜弥は首を捻りながら美貴を見ると、
「美貴ちゃん、今夜私の家にこない?
誰も松浦を呪ってなかったとしたら私の役目は終わるし、
松浦も早く帰りたいようだったし、今夜にでも松浦と入れ替わる
つもりよ。美貴ちゃんとも最後だしもう少し話したい事もあるし」
美貴はうなずくと、
「そうなんだ、亜弥ちゃんが帰ってくるなら、ぜひ行くわ」
亜弥と美貴は帰り支度をするため控室に戻った。
- 544 名前:憎悪の狭間 投稿日:2006/05/15(月) 12:53
- 亜弥が忘れている事があった。
除外したメンバー以外は、美貴を除く全部のメンバーとキスして
心の中を読み取ったと思い込んでいたが、
実は、3人のメンバーをキスしないまま外してしまっていた。
それは、紺野あさ美以外の5期メンバーだった。
新垣里沙は、5期メンのひとりと一緒に帰ろうとしていた。
里沙は、さっき廊下で彼女が一瞬だけど怖い顔をしたのに
気がついていた。
その彼女は、廊下で亜弥と美貴が話しているのを見ていた、
最近彼女は亜弥を見ると、何かもやもやとしたものを感じていた。
それは、以前亜弥が彼女の話してるのを見て笑った時から
何かが始まったような気がする。
別に亜弥は彼女の事を馬鹿にしたつもりで笑ったわけでは
ないかもしれないのだけど、
彼女の心の奥で、亜弥に対するわだかまりが沸いてきていた。
それは嫉妬に近い物があった。
- 545 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:39
- 廊下で里沙は愛に聞いた、
「愛ちゃん、どうかしたの?今変な顔してたね・・・」
愛は思わず里沙の顔を見つめた、
愛のわずかに顔に出た心の内を見逃さなかった里沙に
驚きながら、
「何でもないよ。ちょっと考え事してたんや。
そうだ里沙ちゃん、今日家に来る?」
里沙は嬉しそうにうなずいた。
愛はちらっと控室に入る亜弥と美貴の方に視線をやった、
もう止めよう。と愛は思った、
亜弥の事をあれこれ考えるのは止めようと思った。
ずっと以前、愛が亜弥と話してる時に亜弥が蔑んだような
笑いを見せたような気がした。
もしかしたら愛の気のせいかもしれないけれど、
その時愛は、亜弥が愛の言葉の訛りを笑ったような気がした。
- 546 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:41
- その事がずっと愛の心の奥底の深い所でわだかまりとして
残っていた。
そして最近になって、愛は悩んでいた。
モーニング娘。になって5年目を迎え、将来の事に漠然とした
不安をかかえていた。
愛が加入して以来、たくさんのメンバーが卒業して行った。
愛もいつかは娘。を卒業して行く事になる。
果たして自分がソロとして自立出来るのか、不安だった。
そんな時、亜弥の事が浮かんできた。
デビューと同時にソロとして華やかな脚光を浴びて活動している
亜弥に嫉妬心めいた物が湧き上がってきた。
それと心の奥底のわだかまりがプラスして何か憎悪のような物が
湧き上がるのを押さえられなかった。
- 547 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:44
- 今はそのわけのわからない感情を出来るだけ抑えているのだけど、
しかし、今日は亜弥の歌っている後ろ姿を見て、またその感情が
湧き上がってきたのだ、すぐにその感情を抑えたのだけど。
もう止めようと愛は思った。
亜弥の事であれこれ煩う自分はどうかしてると思う。
もう自分の事だけを見つめて行きたい、
将来アメリカに渡り、ミュージカルの勉強を本格的にやりたいと
いう夢を持つようになっていた。
そう思うと何だか吹っ切れたような気がする。
愛は笑顔で里沙に言った、
「里沙ちゃん帰ろう。家で里沙ちゃんに話したい事もあるんよ」
里沙も元気な笑顔を取り戻した愛に、笑顔で大きくうなずいた。
- 548 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:46
- 自分の家に戻った亜弥は、美貴の来るのを待っていた。
自分の家。
厳密に言えばこの家は松浦の家で、違う世界からやってきた
亜弥の家ではないのかもしれない。
それでもこちら世界に来て約一週間、もうすっかり自分の家に
ようになじんでいた。
昨夜、仕事の用で姫路からやってきたパパも一晩泊まった
だけで今日の朝に帰って行き、ママもまだ姫路にいて、
亜弥一人だけだった。
やがて夕方過ぎに美貴はやって来た。
「美貴ちゃん、夕食は食べたの?」
「さっきすませてきたわ」
「そう。じゃあケーキぐらいなら食べられるわね。
お茶を入れるわ。紅茶で良かったかしら」
美貴は首を振った、
「ケーキもお茶も何もいらないわ」
亜弥はうなずくと、ソファーに腰掛けている美貴の側に腰を降ろす。
- 549 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:48
- 「今夜松浦と入れ替わって、そのまま私の世界に帰ると、
もう美貴ちゃんとも二度と会えないかもしれないわね」
亜弥がしんみりとした口調で言うと、
「そうなんだ、あなたとはぶつかった事もあったけど、
やはり亜弥ちゃんに違いないし、もう会えないとなると
寂しくなるわね。
でも、この世界の亜弥ちゃんも戻ってくるのね。
何だか変な感じだけど」
亜弥は美貴にぴったりと体を寄せながら、
「ひとつ心残りの事があるわ。美貴ちゃんとだけ
キスしないまま帰れないわ」
「だから、嫌って何度も言ったでしょ、キスしたら
心の中を読み取られるなんて絶対に嫌よ!」
「もう心の中を見るためにキスするのじゃないわ。
愛している美貴ちゃんと純粋にキスしたいだけ」
「愛しているのは、あなたの世界に居る藤本美貴でしょ」
- 550 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:51
- 亜弥は美貴の方にぐいと体を寄せ、顔を近づける、
美貴は思わず顔をそむけた。
「言ったでしょ、住む世界は違っても藤本美貴に変わりは
無いって。私の世界の美貴も今目の前にいるこちらの世界の
美貴も本質はまったく同じ人間なのよ。
美貴、私を見て。臆することは何も無いのよ」
美貴は向き直り亜弥の瞳を見つめた。
そこにいるのはいつもの亜弥に間違いないのだけど。
「私もそうよ。住む世界は違っても私も松浦も、同じ人間よ。
あなたの大親友で心から愛している松浦亜弥なのよ」
ただしエロい松浦亜弥だけど。と美貴は思った。
「それに、私とキスして結果的に美貴ちゃんの心の中
を読み取ったとしても、すぐに私は違う世界に帰るから、
何も心配いらないわ。もう二度とこの世界に来ないかも
しれないのよ」
- 551 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:54
- 亜弥は美貴の首に両手を回すと、唇を近づける。
もう美貴は逃げなかった。
覚悟を決めてそっと亜弥の背中に腕をまわす。
亜弥は美貴の首に回した腕を力を込めて引き寄せると、
熱く美貴の唇に自分の唇をかさねた。
さすがに舌を入れるのは控えたが、唇で唇をはさむように
強く押し付けて美貴を味わいつくす。
意外なのは美貴もそれに答えて唇を動かしたことだった、
その様子では松浦と何度もキスしているのかもしれない。
ようやく亜弥は名残惜しいが、唇を離した。
このまま、松浦が来ないうちに美貴と愛し合いたいと
思ったが、やはりそこまですると松浦を裏切る事に
なりかねない。
美貴にだけは、『手を出さない』と約束した手前がある。
キスして口を出したけど、一応Hはしなかったのだから、
手を出した事にはならないはずだと、
亜弥は自分勝手な解釈をした。
- 552 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 21:58
- 長く熱いキスに、美貴は唇が離れると大きく息をついた。
「美貴ちゃんも、もちろん松浦とキスした事があるようね」
亜弥はそう言って美貴の表情をうかがう。
「・・・一度だけよ、興味半分にキスしただけ」
あの様子では、一度や二度の経験から出るものでは
無いと亜弥は睨んだ、
すると、美貴は亜弥以外の人ともキスした事があるようだ、
美貴ちゃんも、もう子供では無いということなのだろう。
美貴の心の中は、やはり独特の世界を持っているようだった。
読み取れたのは日常的な事柄だけだったが、自我の強さが
現われている感じだなと亜弥は思った。
美貴はふと何かに気がついたように、
「あなた達二人の亜弥ちゃんは、本質的に同じだとすると、
私の知っている亜弥ちゃんも、キスすると人の心を読み取れる
能力を持っている事になるのかしら」
- 553 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 22:00
- 亜弥はなるほどと、うなずいた。
「良い所に気がついたわね。その可能性は大いにあるわ。
松浦本人はまだその自分の能力に気がついていないかも
しれないけどね。
これから松浦とキスする時は気をつけることね」
「・・・・」
「でも思うのだけど、これからの美貴ちゃんに必要なのは、
自分をさらけ出す事だと思うの。
キスしてすべて心の中をさらけ出す事が大事なような気が
するの。松浦にすべて読み取られてしまっても、何の懸念も
美貴ちゃんには無いはずよ」
美貴は黙っていたが、否定はしなかった。
これで美貴とキスしたので、除外したメンバー以外は全部の
ハロメンとキスした事になるなと亜弥は思ったが、
そこで、亜弥は忘れていた事を思い出した、
まだ3人ほど、キスしないまま外した事に気がついた。
紺野あさ美以外の5期メンの3人だった。
- 554 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 22:02
- 亜弥はしばらく考えていたが、
自分は考え違いをしていた事に思い当たった、
やはり、松浦を呪っている人間が存在していたのだと。
「美貴ちゃん、娘。メンバーの携帯の番号を知ってるよね」
「何人かの番号は知ってるけど、知らないメンバーもいるわ」
「5期メンの中では?」
「がきさん、新垣里沙ちゃんの番号なら知ってるわ」
「だったら、新垣さんに今すぐ電話して欲しいの。
メールじゃなくて、直接話したいの。残りの5期メンの番号は
新垣さんから聞けばいいわ。とても大事な話があるの」
美貴はうなずいて、さっそく携帯電話を取り出して新垣里沙に
連絡を取った。
里沙が出ると、亜弥は美貴に代わって里沙と話した。
少し話した後、里沙から小川麻琴の番号を聞き出して
電話を掛ける。
- 555 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 22:10
- 里沙と麻琴と話してみて、その二人では無いと感じた。
そして高橋愛の番号を麻琴から聞き出して掛ける。
愛が出て、亜弥が自分の名前を告げると、はっと愛が息を呑む
気配を感じられる、そして何とも言えない雰囲気が受話器を
通して伝わって来る。
間違いないと亜弥は直感した。
とうとう、探していた人物が現われたのだと感じた。
亜弥は、一度携帯電話を耳から遠ざけて深呼吸をした。
その様子を見ていた美貴が立ち上がった、
「・・・やっぱりケーキが食べたいから、お茶を入れてくるね」
そう言って美貴はキッチンの方へ姿を消した。
亜弥はさりげない美貴の配慮に感謝した、
美貴はこれからも愛とは長い付き合いになるのだから、
出来たら愛とは二人だけで話したかったのだ。
- 556 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 22:38
- その後、亜弥は愛と長い間話を続けた。
亜弥は、愛による憎悪を感じていると告げ、
愛の亜弥に対する正直な気持を聴いた。
最後に亜弥は、愛に言った。
「私はハロプロのメンバーを、私の大事な家族と同様に
心から愛してると自信を持って言えるわ。
私がデビューして以来、時にはお互いに支え合い、
時には落ち込んだ時には互いに励まし合って、
私と同じ道を共に歩んできたハロプロのメンバーは、
私にとってかけがえの無い大事な仲間なのよ。
その仲間の一人である高橋愛という人を私は愛しているわ」
愛は、誤解による亜弥への憎悪を認めた後、泣きながら
亜弥に詫びた。
亜弥も携帯電話を切ると、涙を拭った。
亜弥はそんな愛の気持を十分に理解出来た、
自分だって無意識に他人を恨んでるかもしれないのだ。
だから、愛が無意識の内に松浦に呪いを送った事と、
それによって松浦の声が出なくなった事を愛には話さなかった。
- 557 名前:仲間を知る 投稿日:2006/05/17(水) 22:46
- 見計らったように美貴が居間に戻ってきた。
亜弥は立ち上がると、美貴に近づいて抱きついた。
美貴も黙って亜弥を抱きしめた。
やがて亜弥は体を離すと美貴に言った。
「これで良くわかったわ。
ハロプロのメンバーには、人を呪う人間なんて存在しない
事が良くわかったわ。みんな、大事な大事な仲間なのよ」
美貴は何度も何度もうなずいていた。
亜弥は元気良く言った、
「さあ、そろそろ松浦を迎えてあげないとね。待ちくたびれてる頃よ」
- 558 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:30
- 亜弥は美貴の手を取って立ち上がった。
「さあ松浦を迎えるためにお風呂に入りましょう」
「ちょっと待って、何のためにお風呂に入るのよ?」
「この世界とあちらの世界の出入口は浴室にあるのよ、
以前松浦が私の世界から戻ってきた場所は何処だったか
美貴ちゃんも知っているでしょ」
「そう言えば、そうだったわね。亜弥ちゃんは、
私とお風呂に入っている最中にあちらの世界に飛ばされて、
その後お風呂場に戻ってきたと言ってたわ」
「そういうこと」
亜弥は美貴と脱衣所の大きな姿見の前に立った。
「この大きな鏡が二つの世界を結ぶ出入口なのよ」
鏡の中は何の変化も無くて、亜弥と美貴の姿が映っている。
- 559 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:32
- 「まだ松浦は来ないようね、それまで一緒にシャワーでも
浴びて待ってればいいわ」
「一緒にって・・・」
「美貴と松浦はよく一緒にお風呂に入る仲でしょ。
松浦と入って、この私とは入らないってのはないわよ」
亜弥はさっさと着ていたジャージを脱いでしまい、
下着も取り去り裸になると美貴を見た。
美貴は観念して自分も服を脱ぎ、下着もすべて脱いだ。
亜弥は美貴の体を見て、
「とっても綺麗ね。美貴の体はもう大人なのね」
と感心したように言うと、美貴はちょっと恥ずかしそうに
ガラス戸を開けて風呂場に入って行った。
亜弥が鏡の方を見ると、
鏡の中が白くなっていた、どうやらもうすぐ松浦が来るようだ。
その前に美貴と少しだけ、いちゃいちゃしたいと思う。
- 560 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:34
- 亜弥が風呂場に入ると、美貴はシャワーを浴びていた。
亜弥は後ろから美貴の腰に腕をまわして抱きつく。
美貴は驚いて、
「ちょっとぉ?!亜弥ちゃん・・・」
シャワーで濡れた美貴の背中に乳房を押し付ける。
固まっている美貴に、
「いいじゃない。美貴と松浦もこんな風にお風呂でじゃれたり
お互いの体を洗いっこしてるくせに」
「してないから〜!」
もちろん、自分の世界の亜弥と美貴のように性的行為では
ないにしろ、松浦と美貴にしても、年頃だけになにかしら体の
触れ合う行為を行っているに違いないと亜弥は思った。
亜弥はボディソープを手に取ると、
「美貴の体を洗ってあげるわ」
美貴は振り向くと、
「体ぐらい自分で洗えます〜!」
その時遠くで、ゴォォォォ・・・・と音が響きながら近づいてくる。
- 561 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:36
- 亜弥はどうやら松浦がやって来たと、残念そうに思いながら、
「美貴!腰を落として姿勢を低くして!
強い揺れがやってくるよ!」
すぐに、ゴォオオオオオ〜〜という轟音と共に辺りがぐらぐらと
揺れ始めた。
亜弥と美貴はしっかりと抱き合いながらその場に
座り込んだ。
ようやく揺れと音が収まると亜弥は立ち上がった。
「さあ、松浦のお出ましよ」
亜弥は、ガラス戸を開けた。
すると、裸の女の子が風呂場に入って来た。
パラレルワールドの世界から異次元空間を飛び越えて
やって来るのには、何も着けずに身ひとつでなくてはならない。
亜弥は両手を広げて、
「松浦、お帰りなさい」
松浦は、亜弥に抱きつこうとしてその後ろに美貴が
居ることに気がついた。
- 562 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:39
- 「美貴ちゃん!そこで何をしてるの・・・」
亜弥が答える、
「何って、松浦が来るまで美貴とシャワーを浴びていたの。
松浦と美貴もいつもやってる事じゃない」
松浦は亜弥を睨んで、
「あなたね〜まさか美貴ちゃんに手を出したんじゃ
ないでしょうね〜」
亜弥は平気な顔で、
「出してないって〜美貴に聞いて見ればいいじゃない」
二人の亜弥は同時に美貴を見つめた。
美貴も松浦が出現して二人になった亜弥を見つめた、
以前、亜弥ちゃんから聞いてある程度は二人の亜弥が
存在することを知ってはいたが、
現実に目の前に亜弥が二人いるのを見ると、信じられない
思いだった。
「亜弥ちゃん、お帰りなさい・・・」
とりあえずそう言うしかない。
まったく同じ顔。二人とも裸なので、まったく同じ体。
一人はさっきまでシャワーを浴びてたので濡れた髪の毛で
なんとか区別がつくのだけど。
- 563 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:41
- 松浦は美貴に近づくと、
「美貴ちゃん、会いたかったわ〜」
二人は抱き合った。
「亜弥ちゃん、そこのもう一人の亜弥さんとは何にも
無かったから。ただ・・・」
ただ一度キスしただけだと、言いかけた言葉を美貴は
あわてて飲み込んだ。
亜弥は抱き合っている松浦と美貴を見て、ある事を思い出した。
今、松浦が出現して、この世界に松浦亜弥というまったく
同じ人間が二人になったと言う事は、
今までの例から、この世界にひずみ≠ェ出来て、
ハロメンの一人の存在が消え、別の名前になっているはずだ。
亜弥は美貴に言った、
「美貴ちゃん、後藤真希さんって知ってる?」
美貴は首を捻りながら、
「後藤真希さん?そんな人知らないわ」
「松浦はどう?」
松浦も知らないと首を振った。
「じゃあ、矢澤真子という人は二人とも知ってる?」
松浦も美貴も知ってるとうなずいた。
「元娘。で今はソロをやってるわ」
美貴が言った。
- 564 名前:再会 投稿日:2006/05/19(金) 18:43
- 亜弥はうなずくと松浦に、
「この前、安倍さんに松浦と、真希・・・じゃない、矢澤さんで
ユニットを組んだわね、そのユニット名は?」
松浦は首をかしげながら、
「亜弥も知ってるくせに、『矢浦(やのうら)なつみ』に決まってるでしょ」
亜弥は笑いながら、美貴に、
「それじゃ、以前美貴と松浦に、その矢澤さんが組んだ
ユニットがあったわね、なんという名前だったかしら」
「もちろん、『あまなっとう』っていうユニットよ」
なるほどと亜弥は納得した。
亜弥は松浦に近づいてその肩に両手で触れた。
「松浦、もうお別れね。今回は松浦が声が出なくなったりして
色々あったのでゆっくりと会えなかったわね。色々と
話したい事もいっぱいあったのにね」
松浦もうなずいて亜弥の胸に顔をつけた。
- 565 名前:亜弥に戻る 投稿日:2006/05/19(金) 18:46
- それを見た美貴が、
「私、近所のコンビニに買物にでも行ってるから、
二人で話してればいいわ」
そう言うと浴室を出て行った。
亜弥は美貴の心遣いに感謝しながら松浦を抱きしめた後、
その唇に自分の唇を寄せていった。
松浦も目を閉じてキスを待っている。
もう少しで唇をかさねようとした時、亜弥は気がついた、
もしかすると、松浦も自分のようにキスすると相手の心の中を
読み取る能力を発揮しないとも限らない。
亜弥がこの世界にやって来て色々と騒動を巻き起こしたり、
松浦を呪った人物を探すために数々のハロメンとキスした事は
いずれ、松浦にもわかってしまう事だけど、今知られるのはまずい。
ここは、気持ちよく松浦と別れたい。
そういう事なので、残念だけど唇では無く、松浦の広いおでこに
チュッとキスした。
松浦はキスされたおでこに触れながら、少し不満そうだった。
- 566 名前:亜弥に戻る 投稿日:2006/05/19(金) 18:49
- 亜弥は上の棚に置いてある何枚かのバスタオルを床に敷きながら
「ねえ、こんなとこで悪いけど、少しでいいからあなたと
愛し合いたいわ。今度いつ会えるかわからないわ、
もしかしたら、もう二度と会えないかもしれないものね。
もう一度あなたという存在を確めるためにも、
もうひとりの自分自身でもある松浦と愛し合いたいの・・・」
松浦は黙ってうなずいた。
二人は抱き合ったまま、更衣室の床にかさなり合って
横になった。
結局、亜弥がこの世で一番愛しているのは、
松浦亜弥という自分自身なのだから、二人の亜弥が
愛し合うのは当然の事だった。
やがて、二人がお互い満足して余韻に浸っている時、
ピシッと鏡が金属的な音を立てたので、亜弥は体を起こした、
見ると、鏡にヒビが何筋も入っていて、それが広がって行くのが
わかった。
- 567 名前:亜弥に戻る 投稿日:2006/05/19(金) 18:51
- 「大変!出入口の鏡に何か異常が起きてるのよ!
早くしないと戻れなくなるかもしれないわ!」
亜弥は松浦の手を取ると、
「松浦、じゃあ行くわ。さようならは言わないわ。
私はいつもあなたの側にいるから」
亜弥は最後に相手の顔を引き寄せるとその唇にキスした。
そして自分も飛ばされないように浴室から出てドアを閉めた。
ゴォォォォォ〜という音と共に辺りがぐらぐらと揺れ始める。
揺れが収まって、亜弥がドアを開けて中に入ってみると、
なんと鏡が粉々に割れて飛び散っていた。
もう一人の亜弥の姿は無かった。どうやら無事に元の
自分の世界に帰ったのだと思う。
- 568 名前:亜弥に戻る 投稿日:2006/05/19(金) 18:54
- 亜弥は床に座り込んだ、涙がとめども無く流れ落ちた。
出入口の鏡が割れてしまった以上、もう二度ともう一人の
亜弥の居る世界に行けなくなった、
そして亜弥にも二度と会えないのだと思うと、たまらなく
悲しくなり涙が止まらなかった。
すると、何処からともなく亜弥の声が聞こえてきた、
「亜弥、泣かないで。私はいつもあなたの側にいるって
言ったでしょ。鏡を見るのよ。鏡は何処にでもあるのよ」
「亜弥〜!」
亜弥は起き上がると、浴室を飛び出して自分の部屋に
入ると、手近の手鏡をのぞき込んだ。
そこには、笑顔の亜弥の顔が映っていた。
亜弥は涙を拭うと、
「亜弥、あなたはいつもそこから私を見てくれてるのね」
亜弥はいつまでも鏡を見ていた。
- 569 名前:亜弥と美貴 投稿日:2006/05/19(金) 18:57
- やがて美貴が買物袋を下げて戻ってきた。
「亜弥ちゃん〜!何処にいるの〜!」
美貴は亜弥の部屋に入ると、化粧台の前に
座っている亜弥の姿を見つけた。
ジャージを着ていた。
「あ、美貴ちゃんお帰りなさい〜」
「もう一人の亜弥ちゃんは?」
「もう自分の世界に戻ったわ。出入口の鏡が割れてしまって
もう二度とこの世界に来る事は無いわ」
「そうなんだ・・・」
ふと美貴は亜弥の髪の毛が濡れている事に気がついて
思わずどきっとして、
- 570 名前:亜弥と美貴 投稿日:2006/05/19(金) 18:58
- 「亜弥ちゃん・・・髪の毛が濡れてるね」
亜弥は笑って、
「亜弥が行った後、少しシャワーを浴びたのよ」
美貴はまさかと思ったが、念のために言った、
「亜弥ちゃん、ここにいる亜弥ちゃんは本当の
亜弥ちゃんだよね・・・」
亜弥はおかしそうに笑うと、
「本当も嘘も無いわ。私は松浦亜弥に決まってるわ」
美貴はうなずいた。
そこに居るのは、松浦亜弥に違いないのだから。
完。
- 571 名前:亜弥と美貴 投稿日:2006/05/19(金) 19:18
- 何とか、この物語も完結しました。
実はこの物語はボツネタUPスレに、あやみきのパラレルワールドの
世界を書いてくれという要望につい乗ってしまい、引っ込みがつかない
事になり、書き続けることになってしまいました。
2004年1月から書き始め、その2年以上の間に自分の好みが
変わってしまい、あんなに好きだったあやみきからは遠ざかる事に
なってしまいました。
でも、推しメンで無くなったほうが書きやすかったりして。
今まで読み続けて頂いた読者の方々にお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
作者。
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