パズルなリズム
- 1 名前:Sa 投稿日:2004/01/19(月) 14:02
- いしかーさんがこの世に生を受けた
この、めでたき日にスレ上げさせて頂きますっ!!!
こちらには、ハジメテお邪魔致します
不束モノではございますが、お付き合いして下さる方が
いらっしゃれば幸いです
いしよしです
よろしくお願い致します
- 2 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:04
- 春、はる、ハル、Haru・・・
世の中、ソレ一色に染まってる
どーでもいーけど、街中どこか浮き足立ってない?
大型連休が明けたばっかだって言うのにさ〜
アタシと同じ年頃の女のコたちが着てるコートが
真冬よか明るいから?
それとも、その顔のほっぺたが日差しみたく明るくって
目なんか、キラキラしちゃってるから?
アタシもそーだった?
もし、大学に受かってたら・・・
よくわかんねぇー そもそもホントに行きたいのかも
・・・かと言って・・・ねぇ?
アタシはコレがやりたいんだっ
なぁ〜んて胸張っちゃうコトも見つからない
だから母さんの、大学くらい行っときなさい、と
いうセリフに頷くしかない
んで、こーして問題集などを物色しに本屋にいる訳だ
カガミなんか見なくたって、冴えない顔してるのが分かるよ
吉澤ひとみ・・・19歳・・・浪人一年生ってかぁ?
- 3 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:04
- 一通り問題集をパラパラめくって、アタシはため息
なんか、ヤル気というモノが湧いてこないっス
去年は受験のムードに、アタシも酔っていた
それなりに勉強もした・・・けど、落ちた
そんとき、憑き物が落ちたみたいに、なんかも一緒に落としたらしい
・・・なにかが足りないカンジ・・・ソレがなんなのかは分かんないケド
・・・また、また、ため息
・・・だせぇよアタシ、ダメ人間ですわ
こんな調子だから、予備校にという母親の好意(?)は
丁寧に辞退した
勉強する場所なんかじゃなくって、アタシのやる気の問題だって
そんくらい分かるから
・・・今日はいっか
問題集にココロ惹かれる訳ないアタシは絵本のコーナーに
足を向けた
- 4 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:05
- アタシの住んでる家は、この大都会から歩いても十分ちょい
何本も電車が乗り入れるこんな大きな駅に近いのに
私鉄で一コ目の駅前は、サビレきっててどこか昔風
生まれた時から変わらない、近所のおばちゃん達の顔と
小さな会社や工場なんかある
それでも最近は空き地が増えて、建設現場の後に
やたらピカピカのマンションが建ってたりするけど
町並みは多少変わっても、アタシを取り巻くモノは
なんも変わんない、そう思ってたんだ
・・・婆ちゃんがボケちゃうまでは
アタシがちっちゃい頃、うちは共稼ぎだったから
アタシは婆ちゃんっ子だった
婆ちゃんはいつも着物着てて、正座して座ってた
着古した、ザワザワしたようで、どこか婆ちゃんの
小さな体にすんなり合ってる柔らかさのある生地
その膝に頭を乗せたら、いつでもすぐ眠れた
- 5 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:05
- 葛湯が好きな婆ちゃん
いっつも、玄米茶ばっかり飲んでた婆ちゃん
そんな婆ちゃんがある日、足を滑らせて転んだ
腰を強く打ったし、歳も歳だからって数日入院した
・・・昔の人は骨が丈夫だってほんとね、よかったわ
そう言う母さんに付き添われて、帰ってきた婆ちゃんが
だんだんおかしくなったのは、打った腰なんかじゃなくって
頭だったんだ
いま思い出しても、あの数ヶ月はちょっとヒサンだった
ある夜、母さんがふと目覚めると、横に寝てたはずの
婆ちゃんがいなくなってた
家族中で探した
家の中はもちろん、真夜中の暗い道も
あの日のやたら大きくて色の濃い月を、今も覚えてる
あの時の、手に汗が浮かんだ不安な気持ちも
- 6 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:06
- 婆ちゃんは家から少し離れた国道を真ん中くらいまで渡ってた
母さんの搾り出すような悲鳴が夜空のムコウに響いた
金縛りに遭ってるみたいに動けないアタシ達、姉弟の間から
いつもからは考えられない素早さで、父さんは婆ちゃんを捕まえた
その日は幸運としかいいようがなく車通りはなかったけど
いつもは、夜中にたくさんのトラックが通るので有名な道だ
アタシ達家族は、ニコニコ笑う婆ちゃんを囲んで額の汗を拭った
それから母さんは、目に隈を作り疲れた顔をするようになり
日に日に溜息の回数が増えていった
失踪騒ぎがもう一度起こった時、父さんが家族に言った
「これ以上は無理だ、こちらがおかしくなってしまう
婆ちゃんには悪いと思うが・・・」
そして、婆ちゃんは老人ホームに入ったんだ
- 7 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:06
- うちは父さんしか車が運転出来なかったから
何かあった時の為にと、誕生日の早いアタシは去年の夏休みに
免許を取ることを許されて、お金も出してもらった
それから練習がてら、婆ちゃんのとこまで一人で何回も行ったっけ
婆ちゃんは、今と昔を行ったり来たりしてる
アタシは女なのに、死んだ祖父ちゃんに一番似てるらしく
時々間違われる
そんな時の婆ちゃんは、可愛らしかったけど
アタシの心中はちょっと・・・かなり、ビミョーだ
少女の頃にまで戻ってしまう時もあって、そんな時は
絵本を読んであげると、とても嬉しそうに笑った
だからアタシはこうして、時々絵本なんか買ったりするんだ
読んでみると意外と面白くって、実はアタシが読みたいだけなんじゃ
・・・って思わなくもないけどね
ホームの暮らしは家族が心配したほど、寂しいモノじゃないらしく
看護士さん達の優しい笑顔や、アタシが病室に行った時
他の婆ちゃんが遊びに来てるのを見てホッとしているんだ
- 8 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:06
- なんの用事もないのに、華やかな街をウロウロし過ぎたアタシは
小腹が減って辺りを見回した
ここら辺はもちろんなんでもあるけど、財布の中身がなー
ファーストフード止まりだなぁ〜
マックを目指して歩き始めて、大手デパートの前でアタシは
足を止める
暖かくなったから、平日の昼過ぎなんて半端な時間でも
オープンカフェの店はお客さんで席がうまってる
大きなダルメシアンを連れたサングラスのおねーさんなんか
思わず声をかけたくなるくらいキマってる
・・・いや、アタシ女ですケドね・・・ハハッ
見るとはなしに通り過ぎがてら、いくつかのテーブルに
目をやると、見つけてしまった・・・大好物をっ
なんて美味そうな玉子のベーグルサンドッ
- 9 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:07
- アタシは気づけば、また足を止めていた
その横を店から茶色に深緑の英字でなんかかいてある紙袋を
持った女子高生が出てきて、通り過ぎていく
テイクアウトも出来るんだ?
アタシは強く頷いて、店の中へと入った
まずはカウンターで会計をすませるらしい
アタシも、二、三人の後に並んだ
店内で食べる人達には、店員さんが席まで持ってきてくれるらしい
白い長袖Tシャツの上に、グレーの半そでTシャツを着て
ジーンズの上に黒い小さなエプロンをしたオンナノコが二人
くるくるテーブルの周りを動いてる
「ご注文は?」
カウンター越しにレジの人から聞かれてアタシは答えた
「えぇーと、ベーグルの玉子サンド一つ、テイクアウトで」
「はい、ベーグルの玉子サンド、お持ち帰りですね?」
ご一緒にお飲み物はいかがですかぁ〜なんてことは言わない訳ね
・・・ははっ
- 10 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:07
- 一応、頭上のメニューでドリンクの確認をすると
アイスティーで三百五十円だった
たぶん、リーズナブルなんだろーけど、親のスネかじる
浪人生には贅沢だよなぁ
缶ジュースなら百二十円だしさ
アタシは無駄使いはしない主義なのだ
ケチって時々言われるケド、それは心外だ
ケチとは違って締まり屋さんのしっかり者だと思ってるんだから
「お待たせしましたー」
アタシはお金を払うと、さっきの女子高生とお揃いの紙袋を
持って、その店を後にした
家に帰る途中に並木道になってる、わりと大きめの公園がある
途中の自販機でなんか仕入れれば立派な昼ご飯だ
そんで、暖かい陽だまりみたいなベンチを探そう
アタシのご機嫌はかなり上がった
- 11 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/19(月) 14:08
- アタシはベーグルに噛付きながら、その気配を意識してた
実は拳法を習ってたアタシは、人の気配に敏感だ
あの店を出てからしばらくして、不自然にアタシの後を
追ってくる足音に気がついていた
勘違いかと思ったけど、こうしてベンチに座ったら
少し手前の木の影から、チラチラとこっちを盗み見る
頭が見える
真っ赤に黒の大きなドットのバンダナを巻いた頭がまた見えた
・・・てんとう虫かよ?
アタシは最後の一口を口に入れると、指先を舐めて
ゆっくり立ち上がった
そして、わざとドスをきかせた低い声をだした
「・・・アタシになんか用?・・・隠れてるつもりならバレバレだよ
出てきなよ」
すると木の影から、ちっちゃいのが転がるみたいなイキオイで
出てきた
- 12 名前:Sa 投稿日:2004/01/19(月) 14:09
- 今日のトコロはヨシザワさんの一人舞台で
終わってしまいました・・・(汗)
こんな始まりで読んで下さる方がいらっしゃるのか
カナ〜リ先行き不安な作者ですが、マタ〜リとがんがって参ります(ペコリ)
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 14:29
- あのSaさんですか!新作も楽しませていただきました。
非常に面白そうです、これから執筆頑張ってください!!
- 14 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/19(月) 20:42
- じゃーん、又付いてきましたよ。
中華風をリクしようと思ってましたが、この世界もなかなか良さそうですね。
しばらくROMるかも知れませんが、よろしこです。
- 15 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/19(月) 20:45
- わーい、新作ですね。
また読ませていただきます。
なんだかわくわくします。次回も期待してます。
- 16 名前:54@前作 投稿日:2004/01/19(月) 22:01
- おぉ〜、新作だと思ったらSaさんではないですか!
メチャうれすぃ〜です。(某所よりの追っかけでございます)
う〜む、ググっと引き込まれる導入部ですね。
この先の展開を期待してます。
- 17 名前:152 投稿日:2004/01/20(火) 00:29
- うわ〜・・本当にSa様なんですか?そうなんですね!
嬉しい・・(今、某所から来たばっかりですよ・・)
楽しみにしてます。ついていきます♪
- 18 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:47
- ソレは、タカタカタカッとアタシの目の前までやってきた
てんとう虫みたいなバンダナから、キラキラのパツキンが
のぞいてる、厚底はいたコギャルチックな人だった
その人は小柄な体を踏ん反りかえるみたいに伸ばして
ビシッと人差し指でアタシを指した
「お前っ!ナマイキだぞー 矢口に向かってっ!!!」
・・・ハイ?
・・・ナンだろ?・・・春はオカシイのが出てく・・・
「なんだよ?文句でもあるのかっ?」
アタシはオソロシクなった
だから、とりあえず笑って誤魔化すコトにしてみた
昔、友ダチにコマシスマイルってありがたくない異名で呼ばれた
ちょっと情けない子犬のような笑顔
「あのですね? アタシは別に文句も用事もないんですよ」
「いぃじゃんっ!!!」
「ハァ?」
「え・が・お やっぱり、矢口の目にくるいはないっ!」
・・・ナンパ?
- 19 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:47
- ボーゼンと矢口さん(本人が言ってるんだからねぇ?)を
見下ろすアタシに矢口さんはウキャキャと笑った
「ナンパじゃないぞ?お前、オンナノコにもてるだろ?」
・・・エスパー?
・・・じゃなくて、この人いったい???
「矢口はねースカウトしにきたんだ」
「・・・すかうと?」
「おぅっ!矢口の店で働かない?」
矢口さんは、得意げに指で鼻をこすると説明を始めた
矢口さんは、さっきアタシがベーグルを買った店の
若き店長さんでやり手なんだそうだ
店員になりたがる子は多いけど、なかなか矢口さんの
御眼がねに適う子はいないらしい
で、さっき店に行ったアタシに目をつけた・・・と、そう
いうことらしい
- 20 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:47
- 「・・・なんでまた、アタシを?」
キツネに(どっちかっていうとタヌキ?)化かされたみたいに
釈然としない気持ちでアタシは聞いてみた
「顔だよっ 決まってるじゃんっ」
キッパリと言い切る矢口さんに、アタシは喜ぶべきか
ちょっと悩んだ
「使えるヤツかどうかなんて、働いてもらわなきゃ
わかりっこないじゃん?
矢口、エスパーじゃないんだからさぁー」
・・・ハハハ そりゃそーだ
「まず顔なんだよ? 矢口の店は・・・それはさ〜」
戦略なんだ、と矢口さんは教えてくれた
- 21 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:48
- 飲食店の立ち並ぶ大都会で、生き残るのは大変なコトらしい
そこで、矢口さんは考えたんだって
何か個性を・・・ってね
そんで、かわいカッコイー子を集めることにしたそうだ
矢口さんの店はフルオーダー制じゃないから、店員の数は
そんなにいらない、だからこだわるらしい
女子高生なんかは、気に入った店員がいると結構通ってくれるモノで
どことなくカッコよさげな雰囲気とかあるとミーハー的に
騒ぐ相手としては、もってこいなんだって
オンナノコ同士だから、真剣な恋愛絡みの揉め事も、そうは
おこらないし、夜は軽いお酒も出すから、かわいカッコイー
オンナノコが好きな男の人も立ち寄ってくれるらしい
矢口さんが店長になってから、店の売り上げは
右肩上がりなんだそうだ
- 22 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:48
- 「どうよ?」
「アタシ・・・浪人生なんですよ」
アタシが本気の情けない顔で笑うと、矢口さんは真面目な顔で頷いた
「毎日なんて言わない
週に三日来て欲しいとこだけど、二日でもいいよ?」
アタシのココロはかなり揺れた
もともとは体育会系の人間だ
黙って机に向かうことより、体を動かす方が好きだ
だらだら勉強し続けるよりメリハリが出ていいかもしれない
アタシの気持ちを読むように矢口さんはダメ押し的に言った
「店員になったら、従業員割引で店のモノ、オール半額で
食えるぞ?」
・・・アタシのココロは決まった
ベーグル半額は望むところだけど、それだけじゃなくって
毎日なんの生産せいもない、アタシが親からこづかいやら
お昼代を貰うことに、引け目を感じてたっていうのも大きかったから
- 23 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:49
- 「・・・お願いします 」
アタシが頭を深く下げると矢口さんは雄叫びをあげた
「よっしゃ〜!!!」
両手をグーにして、その手を自分の体に引き付けるように
引いている
・・・パワフルな人だ
なんだか、この春が少し楽しくなりそうな予感がして
アタシは思わず微笑んだ
「・・・いま、ちょっと時間ある?」
「ハイ」
「店の奴らに紹介しときたいから、チョイ付き合ってもらえる?」
歩き出した小柄な背中に付いていくと、矢口さんが振り返った
「ところでさ・・・アンタ、なんて名前?」
- 24 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:49
- 矢口さんの店(レーゾン・デートルと言うらしい、意味不明)に
戻ると、カウンターに手持ち無沙汰そうに立ってるオンナノコを
矢口さんは人差し指を曲げてチョイチョイと呼んだ
「店長、どこでサボってたんですかぁ〜?」
アタシを軽〜く値踏みするように見た後、カノジョは無邪気そうな
表情を矢口さんに向けた
・・・デキる
なんだかわかんないケド、アタシはそう思った
「矢口はサボってないってーミキティ、ごっつぁんは?」
・・・ミキティ?
・・・キティのイトコ?・・・なんつって、ハハッつまんねー
アタシはニヤニヤしてしまったらしく、ミキティにキッと
睨まれた・・・コワイんですけどぉ〜
「もう休憩時間終わってますねぇーミキ、呼んで来ます」
ミキティ(合ってるよね?)は腕時計をチラリと見て、カウンター
の奥に素早く消えた
- 25 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:50
- ミキティがいなくなると、矢口さんは得意げに笑った
「ミキティ、いいだろ?」
「・・・ハァ」
ミキティはキレイな顔してて、一見するとお嬢様っぽく見えなくも
無いんだけど、目の力がすごく強いオンナノコだとアタシは思った
そこはかとなく凛々しい感じがして、確かにオンナノコ受けは
いいかも知れない
・・・ちょっとヤンキーテイストだけど
・・・コレは黙っておこう
ミキティはすぐに、ズルズルともう一人、軟体動物みたいな
オンナノコを引きづるように連れてきた
「ごっつぁんっ お前、も少しシャキとしろよー」
矢口さんのあきれた声にごっつぁん(スゲーあだ名じゃない?)は
欠伸を噛み殺しながら答えた
「・・・ごと〜はねー オンとオフの激しい人なのぉ〜」
・・・ほんとにぃ???
- 26 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:50
- アタシが疑わしそうな目で、ごっつぁんを見てると、カノジョと
バッチリ目が合った
ごっつぁんはポヨ〜ンとした顔でふにゃ〜と笑った
「新入りさん?いちーちゃんの代わりかぁー
ごっつぁんコト、後藤真希ぃー よろ〜〜〜♪」
ごっつぁんはニカッと笑うとVサインしてみせた
・・・うん、ホニャホニャしててカワイイかも
ちょっと目が離れてるケド、そこはそれ、ご愛嬌って感じで
天真爛漫な表情にメイクがばっちりキマってるイマドキのオンナノコだ
「・・・あ、吉澤ひとみです よろしくお願いしまっスッ!」
アタシが下げた頭を上げると、ミキティがニヤリと笑った
「藤本美貴 ミキティでいいよ、こっちこそよろしくぅ!」
ミキティは右手の人差し指と中指を揃えて、敬礼するみたいに
スチャと振った
・・・ウンウン、確かに、かわいカッコイーかも
- 27 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:51
- 「なんて呼べばいー?」
ごっつぁんが間延びした声でアタシに聞くと
「あだ名とかは?」
ミキティは簡潔な合いの手
「え〜と、よっちゃんとかよしこ?」アタシは答えた
「じゃ、ミキはよっちゃん・・・ね」
「ごと〜は、よしこにする」
二人がバラバラなことを言うと矢口さんは考える顔をしてから
大きく頷いた
「矢口は決めたっ!キミは今日からヨッスィ〜だっ」
・・・はぁ、この際なんでもいいッス・・・けどぉ
「「「ヨッスィ〜♪」」」
キレイにハモル三重奏にアタシは、はぁ〜い、とモゴモゴ返事した
- 28 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:51
- 「ごっつぁ〜んっ」
「真希ちゃん!!!」
「ごっちぃん♪」
女子高生が競うように色んな呼び方でごっつぁんに声を
かけながら店内に入ってきた
ごっつぁんは、腕にかけていたゴムの髪留めで、つややかな
セミロングの髪を後ろで縛った
・・・そしたら・・・そしたらっ
・・・別人になってた
いままで、ポヤ〜ンとしてた目元が涼やかに輝き
一昔前の少女漫画から抜け出てきたみたいなプリンススマイルを
浮かべてオンナノコ達にこう言った
「やぁ、久しぶりだね?」
・・・やぁ?
- 29 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/20(火) 11:52
- あっけにとられるアタシの前で、オンナノコ達はごっつぁんの
腕を取り合ってキャキャと声を上げる
「やっぱ、ごっつぁんはイイ仕事するね〜
ありゃプロだわ・・・なっ?」
矢口さんは満足げにアタシに同意を求めるケド
アタシは不安になってきた
・・・ココってなにぃ???・・・
さっきまで期待で膨らんでたアタシのキモチは坂道を
転がってくボールみたいに、あっと言う間に見えなくなった
- 30 名前:Sa 投稿日:2004/01/20(火) 11:53
- 更新終了で、ゴザイマス
早速、レスして下さった皆様、本当にアリガトウゴザイマス(ペコリ)
13様>
ハイ、左様で(w
ご期待に添えるか自信ありませんが
出来る限りがんばりマス
ちゃみ様>
おぉっ
オモシロそうですが、中華風はムリです(w
前作はたくさんのオコトバありがとうでした
また、気が向いたらよろしゅうに
名無し読者79様>
ワ〜〜〜イ
またお会い出来てうれしゅうゴザイマス
作者もワクワク半分、ドキドキ半分(w
54@前作様>
お恥ずかしながら・・・(ポッ)
追っかけなんて、うれすぃ〜デス
展開は・・・ノロノロかも?(w
152様>
ハイ、おそらく・・・(w
お越し頂いてハッピ〜で、ゴザイマス
楽しんで頂けるとヨイのですが・・・
更新ですが、今週は金曜日までは毎日イタシマス
来週からは、週二回をメドにマタ〜リと参りたいと思ってオリマス
どうぞ、宜しくお願いイタシマス
- 31 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/20(火) 17:07
- 更新お疲れ様です。
なんだかいろいろな恋模様が描かれそうで本当楽しみです。
今週は毎日更新だそうで、待ってます!!
これからあの方とかあの方とか出てくるのかな…。
- 32 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:41
- 「ヨッスィ〜、裏、行って来てー」
矢口さんの言葉にアタシは短く、はいっと返事した
裏とは隠語で休憩のコト、ちなみにトイレは表だってさ
「今日は初日だから、矢口のオゴリ♪」
そう言って、店の紙袋を渡してくれる
「あ、すいませんっ ありがたいです!」
アタシがペコリと頭を下げると、矢口さんは笑って首を振りながら
カウンターの奥のドアを指した
「中、使う?」
「いえ天気イイし、屋上にでも行きます」
「わかった、45分だから遅れんなよ?」
「ハイ、行ってきます」
アタシはエプロンをサッと外すと、店の外に出た
- 33 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:42
- ・・・つ、疲れた
数ヶ月、家にこもる生活ばかり送っていたアタシの足は
もうガクガクだ
エスカレーターを探してキョロキョロしてると
チィーンと軽やかな音がしてエレベーターの扉が開いた
「上にまいります 上でございます
屋上までご利用階にお止めしてまいります」
従業員はエレベーターを使っちゃいけないって言われたケド
エプロンを取ったアタシはカジュアルなジーンズ姿のお客さん
にしか見えないはず
エスカレーターを探す気力も無いアタシは
今日だけ・・・自分にそう言い訳してエレベーターに足を向けた
- 34 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:42
- 「いらっしゃいませ、ご利用階をお知らせ下さい」
キレイなロングヘアーの、迫力ある背の高い美人のおねーさんに
そう言われて、アタシはちょっと声が上ずった
「お、屋上、お願いします」
「はい屋上ですね?かしこまりました」
おねーさんはRのボタンをポンと押すと、もう一度呼び込みみたいな
案内をして扉を閉めた
「毎度ご来店頂きまして、ありがとうございます
こちらは屋上までご利用階に、お止めしてまいります」
おねーさんの軽やかな案内の他に、背後から、グスグスと
鼻を啜る音が聞こえる
振り向くと、キレイな制服に身を包んだ、おねーさんと
対象的に、地味な売り場の紺色のジャンバースカートを
着たオンナノコが顔を俯かせてしゃくり上げていた
- 35 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:43
- ここのデパートは、二階三階が駅のロータリーと直結してるから
たくさんの人達が、われ先にと乗り込んでくる
ギュウギュウに詰め込まれたエレベーターで、おねーさんは
開いた扉の先の顔へと声を張り上げる
「申し訳ございません お次がすぐに参ります
お待ち下さいませ」
アタシはちょっと申し訳ない気持ちになった
それでも、まだ無理矢理乗ってくるおばさんに押されて
アタシはしゃくり上げるオンナノコの隣に立った
・・・店員が乗ってるって、どーよ?
・・・アタシも人のコトいえないけどさ
オンナノコの顔を見てやろうと、その子の方を見ると
胸のネームプレートに実習中という言葉が添えてあった
・・・アレ?この子って・・・
- 36 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:43
- 次々人が吐き出されたエレベーターは屋上につく頃
キレイなおねーさんと、泣いてるオンナノコとアタシだけに
なっていた
チィーンという音と共におねーさんは丁寧に頭を下げた
「大変お待たせいたしました 屋上でございます」
アタシが屋上へと出る時、キレイなおねーさんが
エレベーターの後ろの壁に張り付くみたいに立っている
オンナノコを呼ぶ声が聞こえた
「石川〜 あんたいつまで泣いてるの?」
・・・やっぱりあの子、エレベーターガールの見習いなんだ
アタシは、キレイなおねーさんと、グスグス泣いてるあの子を
なんだか、みにくいあひるの子みたいだな、と、ぼんやり思った
- 37 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:43
- アタシがエレベーターから近い場所で、ベンチを物色してると
おねーさんの声が聞く気はなくても聞こえてきた
「石川〜そんなんじゃ仕事にならないから、ちょっと降りてて
このシフトが終わるまでには涙止めなさいよ?
・・・わかった?」
「・・・ハ・・ィ・」
なんとなく振り返ってしまうと、おねーさんは何ごとも
なかったように、また高らかに言った
「下にまいります、下でございます」
そしてエレベーターの扉は閉められ、グズグズ泣いてる
オンナノコは広がる屋上に背中を向けるみたいに
金網のフェンスに向かって相変わらずしゃくり上げていた
- 38 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:44
-
アタシはなぜだか、その子から目を逸らすコトが出来なくて
泣いてる背中を見てた
そしたら、その子はジャンバースカートの右のポケットに
手を入れて何か探るように動かした
その手を抜くと、今度は左のポケットに手を入れて動かすと
左手を出しながら、また肩を小さく震わせた
・・・ハンカチ、探してる?
アタシはジーンズのお尻のポケットを探った
出てきたソレを見て、ガックシと両肩が下がる
・・・よりによってコレかよ?
使い古したヨレヨレの、ストーンウオッシュのデニムのハンカチ
縫い目なんか糸がほつれてる
・・・あまりにカッコ悪くない?
・・・だけど
- 39 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:44
- ・・・無いよりマシだよね
・・・たぶん
アタシは意を決して、ハンカチをギュと握り締めると
その子に近づいて行った
近くで見ると、その子の肩はすごく華奢で細かった
アタシの胸の奥で小さくトクンと音がする
「・・・あのぉー」
オズオズとかけたアタシの声に、その子は肩をビクッと
震わせて振り向いた
ぽろぽろぽろと見開いた両目から大粒の涙を零す顔を見た瞬間
アタシの胸は、トクトクトクと鳴り出した
・・・そう言えばアタシ
オンナのくせに昔っから、オンナノコの涙に弱かったっけ
- 40 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:45
- 「これ、よかったら使って」
「・・・は?」
驚いた顔・・・そりゃそーだろ
「ハイッ・・・」
アタシは出した手の引っ込みがつかないから、押し付けるみたいに
ハンカチをその子の目の前にさし出した
「・・・でも」
その子はあまりにも驚いて、零れる涙が止まってしまったらしい
それでも、瞳にまだ涙をたくさん溜めたまま、困ったように
眉毛を八の字みたいに下げた
「・・・このままだと、まるでアタシが泣かせてるみたいなんだけど」
「あ、ごめんなさいっ・・・でも・・・」
その子は俯いて、小さな声で言った
「・・・どうやって、お返しすれば・・・」
・・・そっか、そりゃそーだわな
- 41 名前:探しモノはなんですか? 投稿日:2004/01/21(水) 00:45
- 「アタシ、ここの一階のレーゾン・デートルって店で
バイトしてるから」
その子はアタシの顔を見上げて、コクンと小さく頷くと
ためらいがちに、ハンカチを受け取った
「じゃぁ、お言葉に甘えて・・・ありがとう」
そして、目を細めるとニッコリ笑った
それは、ちっちゃい猫が嬉しくって喉を鳴らすような笑顔だった
・・・かわいい
・・・なんだかよくわかんないケド
・・・ヤバいくらい・・・かわいいかも
アタシは急に顔が赤くなるのを感じて、顔を背けながら
ぶっきらぼうに言った
「すげー汚いから、捨ててくれてもいいよ」
アタシはそのまま、その子の顔を見ずに逃げるみたいに
エレベーターの反対側に走り出した
- 42 名前:Sa 投稿日:2004/01/21(水) 00:46
- 更新終了イタシマシタ
名無し読者79様>
お待ち頂けてるなんてうれすぃ〜デス
今回登場人物オースギですかねー(w
ホントに作者ダイジョウブなのかっ?・・・と自分自身に問いつめる事、小一時間)
- 43 名前:54@前作 投稿日:2004/01/21(水) 01:18
- 更新、お疲れ様です。
うぉっ、いよいよ来ましたね、運命の人(?)が・・
エレベーターガールのお姉さんも気になりますがw
吉のお店の店名はフランス語でしょうか?(と言っても意味分からないですけどw)
店長はじめ店員さんがみんな好きなメンバーで嬉しいです。
賑やかな感じでイイですね。
次回もまったりお待ちしてま〜す。
- 44 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/21(水) 20:51
- わーあの方が登場しましたね。
登場人物が本当多そうですが、頑張ってください。
応援してます。
明日もわくわくしながら待ってます。
- 45 名前:152 投稿日:2004/01/22(木) 00:25
- 更新お疲れ様です。
おもしろいです〜♪やっぱりSa様ですね・・
なんか、文章に引き込まれるんです。新作嬉しい・・涙
無理せず頑張って下さい。
- 46 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:06
- 今日もごっつぁんは完璧なプリンススマイルを撒き散らし
ミキティはカッコエエ姉御になっていた
アタシは仕事に慣れるコトに精一杯で、引きつった笑顔を
浮かべ、オタオタとドタバタ過ごした
お客さんがかなり引けて、それぞれが休憩を取ってる時
矢口さんがカウンターから出てきた
「どーだぁヨッスィ〜 少しは慣れたか?」
そう言うと、引きつったアタシの顔を見てカカカと豪快に笑った
「ヨッスィ〜はカラダで覚えるタイプだろ?」
「・・・まぁ、ハイ・・・そうかも」
「ちゃんと動けてんぞ、飲み込み早いよなーオマエ」
「ハァ・・・なら、いいんですケド」
- 47 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:07
- アタシは意外とウエイティングしたり、人任せってのがニガテだ
それよか、自分で動く方がいい
例えば、自分の髪型も思い立ったらパパッといじっちゃったり
する・・・するんだけど、コレがまた不評だったりするのだ
・・・トホホ
矢口さんは体はちっちゃいのに、アタシなんかより
いろんなコトがちゃんと見えてるカンジ・・・
それを、大人って言うのかな?
・・・あ、ちっちゃいのはカンケーないか?
アタシが矢口さんをじっと見てると、矢口さんはまたウキャキャと
愉快そうに笑った
「なんだよー 矢口に惚れんなよ?」
・・・いや、それはナイと思うんで・・・ハハッ
アタシは苦笑いを浮かべた
- 48 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:39
- 午後は、ごっつぁんやミキティが休憩から戻ってきても
客足が途絶えることが多くてヒマだった
三人でカウンター前にボンヤリ立ってるとごっつぁんが言った
「今日もあの子来るかな?」
ミキティがニヤリと笑う
「エレガなカノジョ?」
・・・エレガ?
「ごと〜、あの子 カワイイと思うよー」
「う〜ん、そだねぇ ちょっと薄幸そうっていうか
情けないよな表情してるケドね」
ミキティはそう言うと、自分の顔に手をやって
眉毛を八の字みたいに下げてみせた
・・・およ?・・・その子って・・・
「ちょっと、アゴしゃくれてねーか?」
矢口さんがカウンターの向こうから話に加わってくる
・・・そうだっけ?
・・・もし、あの子なら・・・アゴ・・・アゴねぇ〜???
アタシはクエスチョンマークを飛ばしまくってたみたいで
ごっつぁんがアタシの顔を見ながら話してくれた
- 49 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:40
- アタシが休んでる間に、三日連チャンで挙動不審な
オンナノコが店を覗いていたらしい
爪先立ちで、顔を上げ店内を嘗め回すように見てるから
待ち合わせかと思ったごっつぁんが、いらっしゃいませ、と
声をかけると、いいんです、とかなんとか言いながら
手をバタバタ振りながら逃げて行ったらしい
昨日は夜現れて、ミキティの常連のエレベーターガール
してるオンナノコが「あれは、同期の石川さん?」と
言ったから、その子が今年このデパートに入った
エレガだということがわかったけど、目的はいまだ
不明なんだよ、ということだった
・・・マチガイない・・・あの子は・・・石川さんって言うんだった
・・・それはたぶん・・・アタシに
「やっぱし、ミキのファンかな〜?」
・・・ハァ?
- 50 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:40
- アタシは思わず、何言ってんのコイツ?という顔をして
しまったらしく、ミキティは言い訳するみたいに言った
「ミキさ〜、劇団に入ってるんだ
だから、ひょっとしてそ〜かなって ヘヘ♪」
「んだね〜?亜弥ちゃんがファンになっちゃうくらいだかんね
ごとー、あんなカワイイ子見たコトなかったよ〜」
「矢口も松浦はレベル高いと思うぞ〜」
矢口さんまで大絶賛の松浦亜弥ちゃん?
今年このデパートに入ったエレガのカノジョは
そーとーカワイイ子みたい
けど・・・アタシに言わせれば、カナリかわいかったんだけどな
あのコも・・・石川さんも
ボンヤリと石川さんの泣き笑いみたいな顔を思い出すアタシに
何をカンチガイしてるんだか、矢口さんはウヒャヒャと笑った
「ヨッスィ〜、惚れんなよー」
・・・矢口さん、ソレばっか・・・ってか
顔も知らない相手だっつーのっ
それよか、アタシのコトなんだと思ってるんだぁーーー
- 51 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:40
- 「おぅ、ヨッスィ〜お疲れぃー!時間オーバーしてごめんなっ」
今日は夕方から、それまでのツケを払わされるイキオイで
お客さんが押し寄せたから、アタシは、まだ出来ますよ、と言ったんだ
で、もう時計の針は8時半を過ぎている
矢口さんの声に、アタシはエプロンを外しながら答えた
「ぜんぜん、オッケーっす」
その時、ごっつぁんがアタシに目配せした
その目線の先、店の入り口に立っていたのは・・・
予想通りの、石川さんだった
石川さんは、カウンターの前に立つアタシを見ると
パアッと顔を輝かせた
そして、アタシの目の前までタタッとかけより、胸元で
指先を組むと、上目遣いでアタシを見た
「・・・よかったぁ〜〜〜」
その乙女チックな仕草と、見上げてくる目線
耳の奥がくすぐったくなるような甘い高い声にアタシの口元から
へらへらとした笑いが漏れそうになった時
カウンターの奥から、小さく呟く声が聞こえた
「・・・キショ」
- 52 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:41
- アタシが思わず矢口さんを見ると、小さく口笛なんか吹きながら
食材の整理をしてる
・・・空耳?
アタシが怪訝な顔をすると、勘違いした石川さんが
まくしたてるように言った
「ゴメンナサイッ いきなり大きな声出して
覚えてないですか?・・・あたしのコト」
そう言うと、石川さんはたぶんよくするらしい眉毛を八の字にする
困った顔をした
アタシの頬はそんな石川さんを見ると、自然に緩んだ
「・・・なんか、ずっと来てくれてたみたいでごめんね?
アタシ、毎日入ってる訳じゃないんだ」
「そんな・・・そんなコトないですっ
あの時は助かりましたっほんとにありがとうっ」
石川さんは、首をブンブン横に振ったり、頭をペコペコ下げたり
とにかく忙しそうだった
そして、最後にはまたアタシを見上げるようにして
ニッコリと笑った
- 53 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:41
- 甘い香りが今にも漂ってきそうな、まるで体全部がお菓子で
出来てるみたいな石川さん
・・・オンナノコっぽくてカワイイ
アタシの目尻がどんどん下がっていく
と、なんだか・・・妙な視線を感じる
首をグルリと回すと、残りの三人がヘンな含み笑いをして
アタシと石川さんを見てた
目が合うと矢口さんはニヤニヤして言った
「ヨッスィ〜、時間あるならチャーしてってもらえば?
ってか、そこジャマッ!!!」
・・・たしかに
カウンター前占領はマヅイだろ?
アタシは石川さんを見た
「時間・・・平気?」
石川さんは嬉しそうにハイッと、また笑った
- 54 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:42
- 注文しようとすると、矢口さんは締まりのない笑い顔のまま
手首を振って見せた
「矢口がスペシャルなの入れてやっから座ってな」
アタシは曖昧に笑いながら、頭を軽く下げた
「・・・スイマセン」
「いいって、いいって」
そして、石川さんに聞こえないようにするみたいに
アタシの耳元で囁いた
「ヨッスィ〜のバイト代につけとくから・・・高っけぇぞ」
・・・そーくるか?
アタシがちょっとイヤな顔をすると矢口さんは
この上なく愉快そうにガハハと笑った
- 55 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/22(木) 11:42
- なるべく皆の視界に入らないように、一番奥の席に
アタシ達は座った
「良かったです 会うことが出来て・・・
あたし、勘違いしてたのかと思ってたの」
そう笑顔で言いながら、自分のバックをガサガサ探った
アレ?と言うように首を傾げて、バックの中を覗き込む
・・・おかしいなーと口の中で小さく言いながら
アタシを見た
「・・・ちょっと、いいですか?」
「はぁ・・・」
あっけにとられるアタシの前で、石川さんはお店やさんごっこでも
始めるみたいに、バックの中の物をテーブルの上に並べ始めた
・・・おいおい・・・
「・・・あったぁー!よかったぁ〜ありがとうございましたっハイッ!!!」
そう言って差し出されたモノはピンクのハート形のすごく小さな手提げの紙袋で
ハートの真ん中に、ご丁寧にピンクのちっちゃいリボンまでくっついていた
「・・・あ、あぁ・・・う、ん」
受け取りながら、アタシの頬はヒクヒクと引きつった
・・・アタシにコレ持って歩けってか?
- 56 名前:Sa 投稿日:2004/01/22(木) 11:44
- 更新終了致しました
54@前作様>
ホイッ!来ましたっ何があっても来ますよ〜(w
店名はナニ語か作者も知りませぬ(ヲイイッ)
丁度、コノハナシ考えてる時にタマタマ見つけたコトバでごろがいいなぁ、と
拝借しました…イミはいつか出てくるのか?こないのか?
…まだ、決めておりません(w
名無し読者79様>
呼ばれてなくても登場しますよ〜(w
ハイッ!!!スレ立てしたからには作者の力の限りがんがります
…たいした力じゃナイってトコがアレですが(w
更新の度、お読み頂けて光栄でございますぅ〜
152様>
ヒトシーンでもおもしろいと思って頂けるなら書いててよかったと
思えますです
その上、喜んで頂けるなら作者にとってコレ以上のヨロコビは
ございませんっ
- 57 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/22(木) 13:29
- よっすぃー。。。
梨華ちゃんあなたって人は…(笑 可愛いですね。
あの方の名前も出てきてちょっと楽しみだったり。。。
明日も楽しみに待ってます。
- 58 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:36
- 石川さんが店じまいをしてると、アタシの背後からミキティが気取って言った
「お待たせ致しました」
ミキティはテーブルに背の高いグラスに入ったオレンジジュースを
置きながら、石川さんにニコヤカな営業スマイルを向けた
「どうぞ、ごゆっくり」
石川さんは蚊のなくような頼りなさの声で・・・ありがとうございます、とか
返している
ミキティはこっちを向くと口元の笑いを噛み殺しながら、冷ややかな目線で
アタシの手元のハートの袋を見た
「なっに〜ソレ?プレゼント???」
「違うって・・・そんなんじゃナイよ」
「ふ〜〜〜ん」
ミキティは微妙なホホエミを浮かべると、行ってしまった
・・・ハハハ
・・・アタシのシュミだと思われたらどーしよ?
少し、動揺したアタシはグラスのオレンジジュースをグイッと煽った
「・・・ぶっ」
コレ・・・酒じゃん?!!!
- 59 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:37
- あせって目の前の石川さんを見れば、ゴクゴクとノドを鳴らして
スゴイ勢いで飲んでいる
そして、そのままイッキにグラスを空にすると、ガバッと身を乗り出してきた
「あっあのっ!!!」
「ハッハイッ?!!」
気圧される様にアタシが仰け反ると、石川さんは顔を赤くして
椅子に座りなおすと、俯いた
「・・・あ、あの・・・」
「・・・ハイ?」
「・・・あたし、石川梨華って言います」
「・・・吉澤ひとみです」
モジモジと照れる石川さんを見てると、こっちまで顔が赤くなってくる
・・・まるで、お見合いしてるみたいじゃない?
「あたし・・・この春にこっちに出てきたばかりで・・・」
「・・・はぁ」
「・・・それで」
「それで?」
「おっお友達になって下さいっ!!!」
石川さんは一度顔を上げてアタシを見ると、ペコリと頭を下げた
- 60 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:40
- ・・・なんつーか
学級委員タイプ?・・・それともミカケによらず、イガイと
熱血青春ヤローとか???
どっちにしてもあんま今まで、お近づきにならなかった
タイプのコらしい
アタシは、妙に照れくさくて頬をポリポリ掻いた
「イヤ〜〜〜」
「・・・嫌ですか?」
眉尻が下がってくる石川さんに、アタシは慌てて首を振った
「違う、違う そうじゃなくて・・・
もう友達かな?・・・なぁーんて」
我ながらクサクない?
ところが、目の前の石川さんにはウケがよかったらしく
見開いた目をウルッとさせて、その後パァッと笑顔を見せた
「嬉しいです・・・あたし、まだお話出来る人、あんまりいなくて」
「アタシで良かったら、いつでも話そうよ」
・・・なんでも言ってみるモンだ
アタシのコトバで石川さんの顔中に笑顔が広がっていく
ウンウン、いい笑顔だなぁ・・・アタシ結構好きだなー
気がつくと、アタシも自然に笑顔を浮かべてた
- 61 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:41
- それから二人でいろんなハナシをした
誕生日とか、好きな食べ物やスポーツ、よく見るテレビとか
そんなありふれた会話
この間の涙のワケを聞こうかな?って、一瞬思ったけど
今日は止めておいた
その間にも、店内からドンドンお客さんはいなくなってて
気がついたら、もうすぐ閉店という時間になっている
・・・そろそろ、帰るか?
アタシがカウンターの方をチラッと見ると、矢口さんが陽気な
笑顔を浮かべ、アタシ達のテーブルにやってきた
「あのさ、明日休館日じゃん? 矢口とごっつぁんとミキティで
飲みに行くんだけど、ヨッスィ〜達も来る?」
アタシは石川さんの顔を見た
驚いたようにパチパチと瞬きしてる
・・・友達が欲しいんだよね?・・・石川さんは
・・・なら
アタシは石川さんに笑いかけた後、矢口さんに言った
「お供しましょうっ!!!」
- 62 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:42
- どこの駅前にもありそうな、大手居酒屋チェーン店で、矢口さんは
高々と生ビールのジョッキを上げた
「んじゃ、急遽ヨッスィ〜の歓迎会ってことでっ あーんど
今日も一日、よく働いたー お疲れぃ!」
そして皆の顔をぐるりと見回して、それぞれの手の飲み物を
確認するみたいに頷くと、声のボリュームを上げた
「かんぱ〜いっ!」
「「かんぱーいっ!!」」
五つのガラスがぶつかり合う音が響いた時、アタシの背後から
声がした
「よっ」
「サヤカー おっせぇぞぉ〜」
「んぁ?いちーちゃんじゃんっ」
「どもっ」
矢口さんは目元を微笑ませ、ごっつぁんはふにゃんと笑い
ミキティは首を竦めるみたいに頭を下げた
いちーさやかさんと呼ばれるヒトは、アタシの顔を見ながら笑みを
零すみたいに笑った
「・・・ここ、いい?」
- 63 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:42
- アタシは慌てて、石川さんの方に体をずらしながら言った
「ハイッどーぞ・・・」
「サーンキュ」
いちーさんは、炭酸飲料のコマーシャルみたく爽やかに笑うと
アタシの横に座った
通りかかった店員に「生、中ジョッキで」と、いちーさんが短く言うと
その顔を、待ちかねた様に見てた矢口さんが口を開いた
「どうよ?新しい店」
「うーん、まあまあ? まだオープンしたばっかだしな」
「いちーちゃん、モテモテ?」
「ドーデショウ?」
ごっつぁんの冷やかすみたいな言い方にも、余裕の受け答え
細っこい体してるケド、意思の強そうな口元と、どこか一本すじが
通ってるみたいな眼差しが印象的な人だった
いちーさんは薄く笑ったまま、アタシの方へ顔を向けた
「新人さん、どう?調子は」
「あっハイ・・・よくしてもらってます・・・あっ
吉澤ひとみです よろしくお願いします」
- 64 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:44
- いちーさんは分かってると言うように頷くと、立てた親指で
自分を指差した
「市井紗耶香・・・よろしくしてあげたいとこだけど、あんま
そっちの店行くこと無いと思うんだワ・・・んで、横のコは?」
石川さんは話を振られて、動揺するみたいに体を少し動かした
「・・・あ、あの、お店があるデパートで、エレベーター勤務してます
石川梨華です」
「そ、カワイイね」
いちーさんは挨拶するみたいにサラリと言って微笑んだ
あんまり自然な言い方だったから、石川さんは時間差で頬を染めていった
・・・なんか、スゲーェ
・・・ヤルなお主・・・みたいな?
「出たよっサヤカ〜 成長しねーなぁ」
「いちーちゃんのアイサツってワンパすぎぃー」
「ミキにも言ってくれましたよねぇ?」
三人が顔を見合わせて笑い出すと、いちーさんは顔をしかめた
「うるせーぞ、オマエら」
・・・なんか・・・ツカメナイヒトだ・・・いちーさん・・・
- 65 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:44
- それから、それぞれが最近の自分のコトを話出した
矢口さんといちーさんが社員であること
いちーさんが新しい店の店長になったこと
ミキティは劇団では食べていけないから、昼間はほとんど
毎日バイトに入っていること
ごっつぁんは、これからの自分の進む道を探す為に
フリーターしてるから、やっぱり毎日のように
バイトに入ってること、なんかがわかった
ごっつぁんはナニを探そうとしているんだろう?
ふと、アタシはそう思った
アタシは探そうなんて考えたコトなかった
大学に受かりさえすれば、自分の進む道はアタシの
目の前に自然に開かれると思ってたから
横の石川さんを見れば、ニコニコとみんなのハナシを聞いている
石川さんにもあるんだろーか?
・・・夢みたいなモノとか、目指してるモノなんかが
楽しげな微笑みを浮かべる横顔に、聞いてみようかと
アタシが口を開きかけた時、矢口さんが目の前の枝豆を口に
入れながら言った
「やっぱ、酒のつまみはコイバナだろ?」
- 66 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:45
- 「ヨッスィ〜、どーよ?」
矢口さんは向かいの席から、覗き込むみたいにアタシの顔を見た
いっいきなり、ナニ言い出すんだぁ?!このヒトはっ
アタシは動揺して、オタオタとみんなの顔を見た
だけど、そこにあるのはハナシの進展を期待しまくってる
10コの目が輝いてて・・・ジッとアタシの顔に熱い視線を注いでいた
・・・そーですか・・・
アタシはビールで軽く、唇とノドを潤した
「・・・全然、普通ですよ」
「ふつーってど〜ゆ〜のぉ?」
ごっちんが首を傾げると、ミキティが間髪いれず質問してくる
「いま、付き合ってるヒトいんの?」
「いない・・・ケド?」
で?というイミを匂わせて、アタシはミキティの顔を見ながら
ビールをノドに流しこむ
「じゃぁさ、ミキと付き合っちゃう?」
「ブッッッ!!!」
・・・やっべ、マジで吹いちゃった
- 67 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:46
- 「汚っねぇー!!!」
矢口さんがおしぼりで鼻の頭を拭きながら唇を尖らせると
横でごっつぁんがウヒャウヒャ笑う
「ひどくない? ミキ意外とマジで言ったのにー」
「意外とってミキティ アンタってナニ考えてんの?
・・・ってか、アタシ女なんですケド・・・」
「知ってるよ んなの見れば分かるって」
ミキティはクククッと可笑しそうに笑った
「だってさ、ミキいまフリーだし・・・恋をしてない女優なんて
スジャータの入ってないコーヒーよりイミがないよ」
・・・なんじゃそりゃぁ〜?!!
・・・イミわかんねーよ
あっけにとられるアタシにおかまいなしに、ミキティは
シレッとした顔で話を進める
「性別なんて、ミキにはカンケーないもん
恋ってさ、ココロが一番動くでしょ?大事なのはソコだけ
ミキにとってはキモチが動かなくなるコトが何よりコワイんだ
そういう時って、なんかカンが鈍っちゃってイイ芝居出来ないからね」
・・・あるイミ、突き抜けてる?
だからってお相手する気はナイけど
- 68 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/23(金) 15:46
- 「アタシは自分が好きになったヒトが、相手もアタシを好きになって
くれて自然に付き合えれば、それでいいや」
「ヨッスィ〜顔に似合わず真面目だねー」
・・・顔って、ごっつぁん・・・アタシってどんな顔よ?
アタシの恋愛観に、ミキティはつまらなそうな声を出した
「人生一度きりだよ?ドラマが欲しくない?」
・・・ドラマ・・・ねぇ〜?
あってもイイのかもしれない・・・だけど、アタシは・・・
それがそんなに重要だとも思えない
たとえば・・・パズル・・・とか?
そう、そう、パズルのピースを埋めてくみたいに地味でもいい
相手を想うキモチとか、ふとした表情、なにげない仕草、優しいコトバ
そんなのがピタッピタッと重なってくカンジ
・・・んで、このヒトじゃないとってちゃんと思えるヒト
アタシにとっては、それがホントの恋・・・なーんて
ちょっと、夢見すぎ?・・・ま、あえて口にはしないけどね
リソウとゲンジツはいつでも違うから
「意外とフカイかもね?」
アタシの胸中を見透かすみたいに、いちーさんが横でポツリと言った
- 69 名前:Sa 投稿日:2004/01/23(金) 15:47
- 更新終了致しました〜
名無し読者79さん>
ハハハ・・・おばちゃんがヤリソーなコトをさせてしまいました(w
あの方はナカナカお見えになりませんねぇ?
また来週、お会い出来たら光栄でっす♪
- 70 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/23(金) 16:41
- うわかなりいい感じになってきましたね。
メンバーもかなり仲良くなってきて…(^^)
私も来週お会いできたら幸せです。がんばってください!
- 71 名前:152 投稿日:2004/01/24(土) 02:13
- 更新お疲れ様です。
だんだん顔ぶれがそろってきましたね〜。Sa様の書かれる
ものは、題名も好きなんですよ・・。少しづつ解かれていくその意味を
考えながら読んでます。ゆっくりお待ちしてますぅ〜
- 72 名前:54@前作 投稿日:2004/01/24(土) 02:44
- 更新、お疲れ様です。
152さんも書いてらっしゃいますけど、ホントにタイトルがイイですねぇ(遅いっての)。
何気にカッコ良い感じです。
あと、ここの美貴ティのキャラがいいですねw
最近結構好きです。
次回ものんびりとお待ちしてます。
- 73 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:47
- ごっつぁんが、ねー?と言いながら小首を傾げる
「ちょっとずつ、ミンナが好きってダメかなー?」
「んん?」
いちーさんが、手元のジョッキから顔を上げて相槌を打つ
「・・・いーんじゃん、無理して決めるコトじゃないだろ?」
「んっ!じゃーひとりに決めなきゃイケナイ時は
ごとー、いちーちゃんにしてあげるねっ」
「・・・いい、パース」
「なんでよぉ〜〜〜」
「市井は恋愛は真面目なの、一途だから」
いちーさんが小さく笑うと、その顔を見ながら
ごっつぁんはシラケタ顔してチューハイを飲んだ
「いちーちゃんが言うと、なぁんかウソくさーい」
ミキティが矢口さんの顔を見ながら話かける
「店長は恋してますかぁ?」
- 74 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:48
- 「まりっぺは恋を失ったトコ、な?」
横から口を挟むいちーさんを矢口さんは軽く睨んだ
「うるせーよっ
矢口の恋はね、誰にも話す気になんかなんない
嬉しかったキモチも、悲しかったココロも、矢口の想いも
あのヒトとの思い出も全部、矢口のモンだから
教えてや〜らない」
そう言うと矢口さんは、いつもと違う大人な表情で
軽く笑った
・・・なんか
・・・なんか、スゲーーー熱くナイ???
・・・カッケー・・・矢口さんっっっ!!!
アタシはそんなふうに一人のヒトを想ったコトが
あるんだろうか?
失ってもまだ、胸に残るような熱いキモチを・・・
もちろん、何人かと付き合ったことはある
だけどそれは・・・なんとなくで、みんなカレシがいるからってのが
あって、ただ付き合うってコトに興味があったっていうのもある
気と趣味も合って、見た目もソコソコ、気まずくなるコトは嫌いだし
なんかさ、アタシって押されると弱いんだ・・・昔っから
- 75 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:48
- だけど・・・違和感も感じてた
まわりのトモダチが騒ぐ程、アタシにとってオトコがいるって
そんなに重要じゃなかったし、当たり前のようにオトコノコを相手に
恋をするってコトにも
ちょっとしたコトで、恋に落ちちゃったって頬なんか染める
オンナノコ達をどこかで笑ってた
随分お手軽だよねって
そりゃぁアタシにだって、誰かをいいなって思うコトは何回かあった
だけど、そのポイントは周りと少しヅレテるみたいだった
そのうえ、オトコノコだけじゃなくてオンナノコにも
トキメクことがあって・・・
それはアタシを、いつか目の前に現れる理想通りのオトコノコ代わりに
黄色い声で軽くスキって言える、オンナノコ達と、どこかが
ビミョーに違うってそんな気がしてた
そして、その周りとのギャップが大きくなればなるほど
アタシの口は重くなった
・・・ミンナカラウイチャウヨ
だから、アタシは本音なんて言わなかった
一山百円のジャガイモみたいにミンナと並んでカレシを作った
ソレはソレでそん時は楽しかったし、他にどんなコトすれば
ミンナと笑い合えるかなんてわかんなかったから
- 76 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:49
- ところで石川〜オマエどーなんだ?
かなりモテそ〜だし、何人と付き合った?」
矢口さんのオヤジちっくなからかいを滲ませた声に、アタシは
浮遊してた意識を取り戻して、横にいる石川さんの顔を見た
「・・・あたし、お付き合いってしたことないんですよぉ
あたしは・・・初恋の人と結婚して幸せな家庭を持つのが
夢なんですっっっ!」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「ソレ・・・ギャグ?めちゃサブだって」
静まり返ったテーブル越しにミキティがオソロシイモノを
見るような目で石川さんを見た
- 77 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:49
- 石川さんは胸元で指を組み、顔をキラキラ輝かせた
「いいえっ!!!一生一人の人と添い遂げるんですっ
ハタチには結婚して、二人の間にはカワイイ子供っ!
トモダチみたいな親子になるんですぅ
ステキだと思いませんかぁ?」
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・マジィ???
平成の世の中に・・・そんな昭和初期みたいな夢
持ってるオンナノコがまだ生き残ってたんだぁ〜〜〜?!!
あるイミ、ショーゲキ的な石川さんの発言にみんな雷に
うたれたように動きを止めていた
- 78 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:50
- 石川さんが眉尻を下げて、困ったみたいに笑う
「ヘンですか?」
「へんだよーってか、ありえない」
ごっつぁんが放心したみたいな顔でポツリと言った
「キショッ キショイぞ、石川〜〜〜」
矢口さんはショックから立ち直ったように言い捨てると
肩を震わせて笑い出した
「・・・信じらんナイ」
ミキティはそっけなく言った後、ブッッッと噴出した
いちーさんは何も言わず、体を小刻みに震わせている
アタシもなんだか笑いが込み上げてきた
お酒が入って、どっかネジの緩んでたアタシ達は笑い転げた
「・・・なんで笑うのっ〜〜〜?!!」
石川さんが納得いかないと言うように、甲高い声で文句を
言えば言うほど、なんかもうワケわかんないくらい
可笑しくって可笑しくって笑い続けた
- 79 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:51
- 日付が変わる頃、そろそろお開きしようとハナシがまとまった
石川さんはアタシと同じ私鉄の二つ先の駅らしい
それぞれが乗る電車への改札口でアタシと石川さんは
みんなと別れた
「ヨッスィ〜、送ってってやればぁ?
石川は嫁入り前の大事なカラダだかんなっ」
別れ際、石川さんをからかうコトに目覚めた矢口さんは
ウキャキャと笑った
「んもぉっ!矢口さんってイジワルッ!!!」
ぷぅ、と頬を膨らませる石川さんに矢口さんは、もう一度
キショッと言って笑いながら手を振った
ミキティやごっつぁん、それにいちーさんまで石川さんを
見てると笑いが込み上げてくるらしく、変にニヤついた
顔をしながら、またねーと、手を振った
- 80 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/26(月) 15:51
- みんなと別れて踵を返したら、頭がグラリとして
アタシの目の前が微かに揺れた
・・・やっべ
こころなしか、込み上げてくるモノもある気がする
「・・・ごめん」
アタシは石川さんの顔を見た
「いま電車乗ったら、ヤバイかも・・・
アタシ一駅だし、歩いても十分足らずだから
歩いて帰るよ」
石川さんは心配そうに目元を曇らせた
「顔色、悪いよ?・・・気持ち悪いの?」
「風にあたってればよくなると思う・・・たいしたコトないし」
「・・・ん、じゃぁーあたしも一駅分歩くっ!」
「えぇー?いいよ、ホントへーき、へーき」
「・・・まだ終電まで時間あるし、あたしもすぐに電車乗ったら
酔いそうだもん」
石川さんはニッコリとアタシに笑いかけると
先に歩き出した
そして、二、三歩進んで振り返りながら言った
「・・・道、こっちだよね?」
- 81 名前:Sa 投稿日:2004/01/26(月) 15:52
- 更新終了で、ゴザイマス
名無し読者79様>
酒+コイバナ=盛り上ガレバ仲良しみたいな・・・バレバレ〜(w
今週からペースダウンしてマタ〜リと参りますね(w
152様>
こんなにたくさん出しちゃって〜エエんかっ?みたいな(w
たいしたイミはナイかも知れませんが・・・ハハッ
54@前作様>
ゼンゼン遅くナイですよ〜 ミキティ、作者もケッコー好きです(w
ハイ、今回はの〜んびり参りたいと思っておりまする(w
- 82 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/26(月) 16:42
- 更新お疲れ様です。
なんか二人の距離が少し近づきそうな…。
次回まったりと待ってます。
- 83 名前:54@前作 投稿日:2004/01/28(水) 22:03
- 更新、お疲れ様です。
な〜んかイイですよねぇ、石川さんって何をしててもw
ここの吉澤さんは結構現実で行き詰ってたりして、現実での18歳に近かったり
するのかな・・なんて勝手に想像してます。
店長の恋のお相手もちょっと気になっていたりw
次回もまったりとお待ちしてます。
それから、某板の方は更新されてたんですね。拝見しました。
彼女視点は新鮮でうれしいです。(関係ない話でスイマセン)
- 84 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:23
- 歩き出して、しばらく経つと自分でも思ったより
お酒が回っていることに、アタシは焦った
それどころか、込み上げてくるカンジが耐えがたく
なってきた・・・ゼッタイゼツメイ
イヤ〜なカウントダウンが頭ん中で始まりそうだ
横で散歩を楽しんでるように、軽やかに歩く石川さんが
ゆっくりと見上げるようにアタシの顔を見た
「ね、吉澤さん・・・ちょっと酔い醒まして行こっか?」
石川さんは、アタシと矢口さんが初めて会った公園を
指差しながら、ふんわりと笑った
公園の入り口にある公衆便所を横目で確認すると
早口でアタシはまくしたてた
「ゴメンッ!悪いっ!!ちょっ、ちょっい待っててっ!!」
そしてそのまま個室にかけこむと、カギもかけずに
便器に吐き出した
- 85 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:23
- 「…うぅっ…グッグゥグエェェ〜〜〜」
アタシの目には涙が浮かぶ
・・・なんつーナサケナイ涙だろう???
切れかけた蛍光灯がアタシをバカにするみたいに
チカチカする
・・・どこまでもナサケナイ
「・・・ウゥゥゥエッ」
その時、ふっと背中に温かさを感じた
そっと優しく、アタシの背中の上を行ったりきたりしてる
手の平のカンショク
気遣うような声で石川さんが言った
「・・・我慢しちゃダメだよ?」
アタシは頷いた
その拍子にアタシの涙までが便器に落ちた
・・・カッコわるすぎだよ・・・アタシ
- 86 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:24
- 吐くだけ吐いたら、かなりスッキリしたみたい
アタシは蛇口をグワッと開けて、ジャーと盛大に流れ出す
水を手ですくって、バシャバシャ顔を洗った
水滴が零れ落ちる顔を俯かせたまま、ジーンズのお尻に
手をやってポケットを探る
・・・?
・・・あれぇ〜???
あ、店のエプロンのポケットに入れたまんま・・・
石川さんに返してもらったヤツも持ってくるのメンドーで
そのままエプロンとこに・・・
アタシがハッと顔を上げると、目の前にハンカチが差し出された
「この前と逆だねっ」
カガミ越しに石川さんがニコヤカに微笑む
アタシは、ハハハ・・・と情けなく笑うとそれを受け取った
- 87 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:24
- 「・・・ゴメンッ・・・てか、ありがと」
借りたハンカチで顔を拭きながら、アタシはそっけない声で言った
カッコわりーやら、ナサケナイやらで石川さんの顔が
まともに見られない
石川さんはそんなアタシを気にしないカンジでさりげなく言った
「なーんか、アルコール飲んだ後って、ノド乾かない?
何か飲もうよ?」
少し先にある自販機の前へと行くと、人差し指をアゴにあてて
迷うように小首を傾げた
「何にしよーかなぁ・・・やっぱコレかな?」
チャリーンチャリーン
小銭が投げ入れられる音と
ゴトンゴトン
飲み物が落ちてくる音が
人気のない公園にやたらと響いた
- 88 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:25
- 「ハイッ吉澤さんの分っあっちのベンチに座ろ?」
石川さんは両手の缶を振りながら、少し先を見て、またアタシを見た
軽く弾む声がアタシの耳の奥に残って響く
その時、それまで空をおおっていた雲が切れ、そのあい間から
クリーム色の満月が顔を出して美しい光を、石川さんの上へと投げた
浮かびあがるのは屈託のない笑顔
・・・キレイだなぁ
なんだか急に胸の奥が熱くなって、なぜだか泣きそうになる
夢の中にいるみたいにカラダがふわふわ軽くって
地に足がつかないカンジ
・・・アタシ酔ってるよ
アタシが石川さんのそばまで歩いて行くと
上空では、意外と風が強いらしくて流れ始めた厚い雲に
月はまた隠れていた
- 89 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:25
- 二人でベンチに腰掛けると、石川さんが片手の
スポーツドリンクをアタシにくれた
「ハイッあたしのおごりっ!」
「・・・えっ・・・あぁ、ありがとぉ」
なんだかアタシの頭はボォッとしてる
気がつくと、横でドリンクを飲み始めた石川さんの
濡れた唇をジッと見てた
アタシの視線に気づいた石川さんが、こっちを見て
眼差しで、ナニ?と聞いてくる
アタシは首を横に振ると、プルトップを引いて
ゴクゴクゴクっとノドを鳴らした
・・・なんかヘンなカンジ
ナニか考えようとすると、モヤモヤと頭がはっきりしないのに
その奥はシャッキリとやたら冷めてて・・・
アタシはそのままズルズルとカラダを滑らし
だらしなく両足を大きく前へ投げ出した
- 90 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:26
- 「・・・あたしってキショイかなー」
独り言みたいに小さく聞こえる声にアタシは石川さんを見た
その横顔はムリしてるみたいに笑ってる
「あたしね・・・両親の顔知らないの」
ヘビーなことを天気のハナシみたいにさらりと言って
石川さんは星ひとつない真っ暗な夜空を見上げる
「・・・育ててくれた両親はすごくいい人で、困ったことは
一度もなかったよ・・・いつでも優しかった
大切にしてもらえたって分かってるし、感謝もしてるんだ
・・・だけどね、あたしもいい子だったの
困らせないし、我がままも言わない・・・ずっとそうだった」
石川さんは俯いて、足元の小石をつま先で転がした
「いつだったかな?
友達の家に泊まりに行って、その子、お母さんと
ポンポン言い合いしてたのね・・・忘れちゃうくらいの
内容の話なんだけど、それがすごく自然でね
その子にお母さんと随分仲良しなんだねって言ったら
フツーだよって、ほんとになんでもなさそうに言うの」
- 91 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:26
- 「だけど・・・その普通っていうのが、あたしにはわからなくて
それがわからないあたしって、なんだか・・・
他の友達より、劣ってる気がしたの・・・バカみたいでしょ?
でもダメなの・・・劣等感みたくなっちゃって・・・
それで、いつからか自分の家庭が早く欲しいなって
思うようになってたの
自分に正直になれて、なんでも言えて、お互いに好きだって
思える人に会えたなら、ずっと一緒にいたいなって
そんなふうに思える人って、あたしは一人でいいと思うんだ」
石川さんは小さく息を吐くとクスクス笑い出した
「あたしも酔ってる〜
こんな話、いままでしたことないんだけどなぁー」
「・・・いいんだよ、きっと・・・アタシはそれでいいと思う
ホンキで好きになれるヒトになんて、そうそういるワケ
ないんだし・・・」
アタシも酔っている
だから、普段だったら言えないホンネを真面目に語ちゃったり
出来るんだ
石川さんの相手にそっと寄り添うそうな、気の遣い方は
カノジョの魅力になってるケド・・・
ソレを持つ意味を知ったアタシは複雑だった
- 92 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:27
- たぶん、傷ついちゃったカノジョを慰めてくれるヒトが
世界中に誰一人いないんだって、そんなふうに
思いつめちゃった時もあるんだろう
そんなカノジョは泣きそうにはなっても、自分のタメに
ナニかを悲しんで涙を流すコトは出来ないのかも知れない
・・・モットチカヅキタイ・・・カノジョニ
「ねぇーなんて呼ぼっか?石川さんってカタくね?」
カタチから入るなんてなんか違うのかも知れないケド
アタシには他に思い浮かばない
石川さんは、さっきの小さな打ち明け話なんかなかったように
明るい声を出した
「あたし、特別あだ名とかないんだー
そのまま名前で呼んで欲しいかなぁ?」
「・・・梨華・・・ちゃん?」
「うんっ!」
アタシはなんだか照れくさくって首の後ろをポリポリと掻いた
- 93 名前:エレガなカノジョ 投稿日:2004/01/29(木) 10:27
- 「吉澤さんは、ヨッスィ〜って呼ばれてるんだよね?」
「ん、店ではねー あと友達には、よしことかよっちゃんかなぁ?」
「名前で呼んでいいかなぁ?」
「・・・えぇっ?!」
ひ・・・ひとみちゃん・・・とか呼ばれちゃうのぉー?!!
アタシは妙に恥ずかしくなってきて、顔が自然に熱くなる
きっと、赤くなってる顔を見られたくなくて、アタシは
俯くとボソリと言った
「・・・いいよ」
「ひとみちゃんっ!」
梨華ちゃんの楽しげに弾む声音に、顔を上げるとアタシを
真っ直ぐに見て嬉しそうに笑ってる
・・・飾らない笑顔で、ホンキの笑顔で・・・
その笑った顔を見てるとなんだか、一歩近づけた気がして
嬉しくなってくる
アタシってホント単純だ
だけど・・・いつか・・・いつかそのうち
泣きたい時は、さっきみたいな無理した笑顔じゃなくて
涙を流してくれればいいのに・・・アタシの前で
そして、その涙をアタシが拭ってあげられたらいいな
- 94 名前:Sa 投稿日:2004/01/29(木) 10:28
- 更新終了です
名無し読者79様>
ハイッ!少〜しずつ、少〜しずつ近づいて行く
かと思われ(w
しばらくお待たせしてしまうかも知れませんが
また、いらして頂けたらハッピィ〜でっす♪
54@前作様>
ホイッ!作者もいしかーさんが何をしててもLoveなモノで(w
おしゃる通りに書けたらイイナと思っておりまする
ただ、今回は明るく行きたかったのですが、作者が書くと
ナゼか、悩み行き詰まってしまうんです(w
某版、誰にも気付いて頂けてないかと心配しておりました
ご感想ありがとうございます♪
大変申し訳ないのですが、私生活が立て込んで
おりまして、いま書けない状態になっております
二月の中旬には落ち着くかと思いますので
しばらく更新をお休みせせて頂きたいと考えております
勝手なお願いですが、その頃になりましたら、また
足を運んで頂けたら、幸いでございます
- 95 名前:名無し読者79 投稿日:2004/01/29(木) 17:48
- うわー名前…キャーです。
いつまでも待ってます。好きなカプがいっぱい出てますし…。
楽しみにしてますね。
- 96 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:31
- オトモダチ宣言をしたものの、アタシと梨華ちゃんは
なかなか顔を合わすことがなかった
同じ場所で働いてるんだから、いつでも会えると
タカをくくってたケド、意外とそんなコトはナイらしい
メアドとか聞いときゃよかった、なんてのも、二週間
過ぎたあたりで気がついた
・・・マヌケ?
アタシはカウンターの奥のカレンダーをチラッと横目で見る
・・・一ヶ月以上経ってるよぉ・・・元気かなぁ?
ここんトコは毎日のように細い糸みたいな雨が降ったり
止んだりを繰り返してる
店の空気までジトジトとなんだかウザッタイ
・・・ナメクジになりそぉ
ボヤボヤなアタシにカウンターから矢口さんの激が飛ぶ
「ピシッとしろぃっ!!!」
「へーい」
アタシが気のナイ返事をカウンター先に返した時
高く弾む声が聞こえた
「こんにちわぁ!」
・・・おぉっ!その声は
- 97 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:31
- 「いらっしゃーい♪」
アタシは満面の笑みで梨華ちゃんに言った
「来ちゃった♪」
梨華ちゃんは肩を小さく竦めながら、ニコッと笑うと
小さく舌を出した
・・・かっわ・・
「石川〜〜オメェ、いちいちキショイんだよっ」
アタシがデレッとしそうになってると、カウンターから
矢口さんが突き放すような言い方で言った
それでも、その顔を見ると満更でもなさそうに目は笑ってる
「なんでですかぁ〜?」
梨華ちゃんはカウンターの中の矢口さんを見て唇を尖らす
と、矢口さんは攻撃をよけるみたいにカラダを引いて
両手を前へと出した
「ヤメローッ!」
・・・な、なんか、二人がやたら楽しそうに見えるのはアタシだけぇ?
- 98 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:32
- 「おヒサ〜〜♪」
楽しげな声に振り返ると、営業用のプリンススマイルじゃなくて
ふにゃりんとした笑顔を浮かべたごっつぁんがいた
ミキティもテーブルから戻ってくると、少しイジワル気に笑った
「この間は楽しーおハナシだったねぇ?」
「うんっ楽しかったねっ」
ミキティはイヤミが通じなかったコトに一瞬脱力してから
気を取り直したように目を光らせた
「その服、制服かなんか?」
「私服だよ?」
「ふぅ〜ん ミキ初めて見たよ?そ〜ゆ〜の」
梨華ちゃんはフシギそうな顔をして、自分のペカペカ
光ってるピンクのワンピースを見た
「ヘンかなぁ〜?」
「っていうか、ドコで買い物してんのかな〜って」
「えっ?別にフツーのお店だよ、そこら辺で・・・」
話しかけられるコトが嬉しみたいにニコニコ言葉を返す梨華ちゃんに
すっかり毒気を抜かれたらしいミキティは情けなさそうに笑った
「ハハハ・・・そうなんだぁ」
- 99 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:32
- 梨華ちゃんがオーダーを済ませて、テーブルにつくと
ごっつぁんがミキティを見ながらヘラヘラと笑った
「カタナシじゃぁーん」
「ツッコミどこ満載すぎなんだよねー
おまけにイマイチつーじてナイっつ〜か・・・」
ミキティはもう一度、ダハハ・・・と力なく笑った
「ヘイお待ちっ」
矢口さんがカウンターの上に乗せたアイスフレーバーティを
お盆に載せて、アタシは梨華ちゃんのテーブルへと向かった
「おまたせー
梨華ちゃん、今日仕事休みなんだ?」
「うんっ、そ〜なの・・・浴衣をね、見に来たんだぁ」
「浴衣?」
「んっあのね、もうすぐお中元商戦が始まるでしょ?
でね、集客のために屋上で縁日をやるの
それのお手伝いに行くことになっちゃって・・・
・・・でも、意外と高いし・・・迷っちゃって」
- 100 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:33
- 梨華ちゃんは困ったように笑いながら、ストローで
アイスティをかき混ぜる
・・・そっか
こっちに出てきたっていうことは、梨華ちゃんはたぶん
一人暮らししてるってコトで・・・
「・・・あのさぁ、アタシのでよかったら貸すよ?」
「え?」
梨華ちゃんは戸惑うような表情でアタシを見た
「中学の時、作ってもらったヤツなんだけど
・・・それでよかったら」
「・・・いいの?」
「いいよー毎日着るモンじゃないし・・・」
アタシが笑うと、安心したように梨華ちゃんも笑顔になった
「・・・ハンカチも返してないし、今度一緒に持ってくるから」
「うん!ありがとうっ」
「じゃ、ゆっくりしてって」
アタシは梨華ちゃんが頷くのを見届けると、店に入ってきた
顔見知りのお客さんに大きな声で言った
「いらっしゃいませー」
- 101 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:33
- 数日後、アタシのバイト上がりの時間に梨華ちゃんが
店の入り口から、ひょっこり顔を覗かせた
この間店に来てくれた時、メアド交換をしたアタシ達は
梨華ちゃんの仕事が早番で終わる今日、約束してたんだ
アタシは店の時計をチラッと見て、声を出さずに
口を大きく動かして伝えた
ーちょっと、待っててー
梨華ちゃんは、ニッコリ笑ってOKサインを指先で作ると
頷いた
「や〜ら〜し〜」
耳元でいきなり囁かれて、アタシの体がビクッと震える
「ヨッスィ〜 動揺してるよー」
ごっつぁんがウハウハ笑う
・・・コヤツらの前で話そうなんて、ユメのまたユメだぁー
- 102 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:34
- 「お先っス!」
アタシは時計が上がり時間を指すと、脱兎のごとく控え室に消え
デカめの袋を持つとナニかを言わす隙を与えず店を出た
梨華ちゃんが目をまん丸にして、アタシの顔を見てるけど
いまはそんなコトを気にしちゃいられない
早く店から遠ざからなくてはっ!!!
「行こっ!」
「う、うん」
フラワーショップや、紅茶の量り売りの店を次々通りすぎ
アタシはやっと一息ついた
「ふうぅ〜」
「お疲れさまっ!」
アタシのため息をカンチガイした梨華ちゃんが
見上げるようにアタシを見て、可愛らしく笑う
・・・イヤサレルンダ・・・ソノエガオ
アタシは梨華ちゃんの顔をちょっとの間みつめた
・・・そして、笑った
「お茶して行こっか?」
なんだか、このまま帰るなんて気にならないし
もう少しその笑顔を見ていたかったから
- 103 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:35
- アタシの誘いに梨華ちゃんが頷いた
外を見ると、雨も上がっているようだ
そのまま外に出ようとすると、扉のトコでキョロキョロ当たりを
見回してたベビーカーと子供の手を引いた母親が寄ってきて
梨華ちゃんに大手都市銀行の場所を聞いた
「ハイッそちらは・・・少々お持ち下さいませ」
梨華ちゃんはナゼか、仕事用の口調になりながら
ベビーカーを持ちあげて、扉の前の数段の階段を下りた
そこで、ベビーカーを下ろすとニコヤカな笑顔を浮かべ
大通りをピシッと揃えた指先で示した
・・・仕事してるよー
アタシは笑いが込み上げそうになってくる
だけど、生真面目な梨華ちゃんのタイドを見てると
・・・見てると・・・
「この大通りを右手に真っ直ぐ進まれまして、二つ目の信号を
曲がって頂ますと並びに白いビルがございますので」
「ご親切にありがとうございます
ベビーカーまで運んで貰っちゃって・・・」
母親が嬉しそうにお礼を言うと、梨華ちゃんは更に笑顔を
顔中いっぱいに広げる
・・・なんだか・・・ジーンときてしまった
いつでも頑張ってるコだなぁ〜って
- 104 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/09(月) 13:35
- 小走りにアタシのもとに戻ってきた梨華ちゃんは
可笑しそうに笑った
「なんかねーエレベーター乗るようになってから
仕事以外でも、すごく道とか聞かれるんだよー
なぁ〜んか顔に出ちゃってるのかなぁ?」
「アタシに聞いてよーみたいな、ねぇ?」
「ヤだなぁ〜それぇ」
「ウソ、ウソ・・・だけどさ、スゴイよねー デパートの
外まで覚えてるんだ?」
梨華ちゃんは照れたように笑いながらコクリと頷いた
「うちはターミナルビルだから、エレベーター降りる
お客様によく聞かれるの
そのうち案内所にも立たないといけないし・・・
この間もね?地下の名店街のお店のテストがあって
本当はもっと早くに、ひとみちゃんのお店に
行きたかったんだけど・・・
それにね、今週から独り立ちしたのっ
だからね?もっともっと頑張るんだーあたしっ」
梨華ちゃんは上目遣いでアタシを見上げると、目をキラキラ
輝かせて、微笑んだ
たぶん、矢口さんはキショイとか、ミキティはめちゃサブとか
言うんだろーケドさ
アタシはこんな梨華ちゃんってカワイイって思うんだ
- 105 名前:Sa 投稿日:2004/02/09(月) 13:41
- 更新致しました
名無し読者79様>
このようなハナシを楽しみにお待ち頂いているとの御言葉
ありがとうございます(ペコリ)
マターリと時間がかかりそうですが、お付き合い頂ければ幸いで
ございまする〜
週二の更新をモクロンデおりましたが、どうやらムリそうなので
週一を目標にがんがって参りたいと思っておりまする
お読み頂ける方がいらっしゃれば幸せでございます(ペコリ)
- 106 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/09(月) 14:33
- お待ちしておりましたー
一生懸命な梨華ちゃんがかあいいですね。
これからも楽しみにしています。
- 107 名前:名無し読者79 投稿日:2004/02/09(月) 16:44
- 更新お疲れ様です。
梨華ちゃんは本当頑張り屋さんっぽくて(リアルでも)、可愛いです。
よっすぃーがどんどん惹かれていってるっぽくて、次が楽しみです。
- 108 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:03
- アタシは、たまには・・・と思いたって図書館で
勉強なんかしてみよーと家を出た
太陽は準備オッケーってカンジで輝いてて
浮かぶ雲も洗濯し終わったみたいに真っ白だ
アタシの髪の間を通る風も、湿気より熱を含んで
のっそりと動いてく
きっともう梅雨明けは目の前だ
浮かれキブンで歩き出したアタシはふと思いついて
デパートへ向かった
この間、梨華ちゃんは独り立ちしたって言ってた
今日のアタシは従業員ではナイ訳で・・・
上手く行けば制服姿が見れるってコトだ
アタシの足はスキップしそうに軽やかだし
おまけに鼻歌まで歌っちゃいそうだ
制服姿にココまでウキウキするなんて
オヤジみてーと自分にツッコミ入れてみたりして…ハハッ
- 109 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:04
- しかし世の中、自分の思い通りに運ぶハズなく
四台のエレベーターを全てチェックしても
制服梨華ちゃんには当たらなかった
・・・しっかし
エレベーターガールっていったい何時間乗ってんの?
ひょっとしたら意外と短いサイクルで交代すんのかも
今度、梨華ちゃんに聞いてみよっと
取り合えず、今日は屋上で三十分くらい時間を潰そうかな
なんてアタシは考えた
この間の込み具合を考えると、エレベーターに無理して
乗る気にもなれないし、エスカレーターで行くか?
アタシは背後の案内板を見た
このフロアだけじゃなくて、全体の案内図を見ると
別館てのもあるらしい
・・・ふぅぅん
連絡通路がある階があって、屋上もつながってんだ?
アタシは上りのエスカレーターの場所を確認すると
歩き出した
- 110 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:04
- 屋上に出るとアタシは、モノはタメシと別館の方へと回った
本館より古ぼけた感じのエレベーターの前に立つと
扉の上の階数表示がRの文字を赤く浮かび上がらせた
ポオォォォン
どことなくマヌケな音がして、扉が開くと中から
黒いモノが宙を舞って飛び出てきた
・・・ハァア???
アタシが口を半開きにして目で追うと、少し先に着地した
ソレは黒いハイヒールだった
「ひっひとみちゃぁんっ?!!」
「りっ梨華ちゃん?!!」
梨華ちゃんは顔を真っ赤にしながら、アワアワと言った
「ひっひとみちゃん、悪いんだけど靴取ってくれる?」
アタシが靴を指先で摘み上げ肩の高さまで
持ち上げて見せると、梨華ちゃんはワタワタと
アタシを手招きした
「乗って、乗ってっひとみちゃんっ!」
- 111 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:05
- アタシが梨華ちゃんのエレベーターに乗ると
隣のエレベーターからポォォォンと音がした
「お願いしまーす」と、隣から声がして
「かしこまりましたぁ〜」って答える梨華ちゃん
梨華ちゃんは慌てて、いくつか階数のポタンを押すと
急いで扉を閉めた
「・・・どーしたの?コレ」
アタシが靴を振ると梨華ちゃんは情けない声を出した
「か、返して〜〜」
「人聞きの悪い・・・アタシのせいなの?」
「ごめんっ違った!ありがとっ」
アタシが梨華ちゃんの足元に靴を置くと
沈み込むような振動と共に扉が開いた
「下に参ります 下でございます」
待ってるお客さんのいないフロアに呼びかけると
梨華ちゃんは扉を閉めた
- 112 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:05
- 誰も乗ってくる人のいないエレベーターの中で
往復に付き合うアタシに梨華ちゃんは話し出した
別館はほとんどお客さんがいなくて暇なコト
あんまり暇で眠くなった梨華ちゃんは
エレベーターの中で体操してたらしい
アタシは呆れて笑いながら梨華ちゃんの頭を軽く
小突いた
「ばぁ〜か、ナニやってんだよー」
梨華ちゃんは恥ずかしそうに、エヘヘと笑った
「ナ・イ・ショ」
グロスで濡れたように艶めく唇に人差し指をあてて
目深に被った黒の帽子から、覗く瞳を小さく煌めかすと
アタシの顔を覗きこみ囁いた
ドクンッ
アタシの心臓が急に大きな音をたてた
- 113 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:06
- 梨華ちゃんの顔に張り付いてる自分の目線を外す時
アタシの頭の中でベリッと音がした
「ンンッ…せ、制服い〜じゃんっ」
「ヘヘッありがと」
梨華ちゃんは黄色地の胸元に黒で稲妻が走ったみたいな
ラインが入ったツーピースの自分の制服を見て
満更でもなさそうに笑った
「・・・浴衣、ありがとうね」
「着てみた?」
「うん・・・そ」
梨華ちゃんの言葉の途中で扉が開いた
「下に参ります 下でございます
ご利用階をお知らせ下さいませ」
「一階」
「かしこまりました」
梨華ちゃんがプロの笑顔を浮かべてる
アタシは、今乗ってきたサラリーマン風のおじさんと
並んで後ろの壁に背中をつけると、ただのお客さんの顔をした
アタシの目は、いつの間にか背中を向ける梨華ちゃんの
華奢なカラダの優しく美しい曲線を目でたどっていた
- 114 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:07
- ・・・あ〜ぁ
アタシがオトコだったら、トモダチと話せるのに
あのラインがどーとか、このラインがこーとか・・・
アタシはオトコマエって言われるコトが多くって
別に悪い気はしなかったけど、だからと言って
オトコに生まれたかった、なんて思ったりもしなかった
・・・しなかったんだけど
最近アタシは、オトコに生まれたかった、なんて思ってる
だってさ、そうすればひょっとして梨華ちゃんみたいな
カワイイコをコイビトに出来るってコトでしょ?
もしコイビトになれたら、あのクチビルやこのカラダも
アタシのモノになるんだよねぇ?
・・・アタシのモノ?・・・アタシのモノ、か・・・アタシのモノ・・・
ポォォォン
「毎度ご来店頂きまして、ありがとうございます
一階お出口でございます」
「・・・ガンバレ」
アタシは頭を下げている梨華ちゃんに小さな声を
かけると、そのままエレベーターを降りて歩き出した
・・・アタシ・・・ナニ考えてるんだよぉ〜
梨華ちゃんの笑顔がもう一度見たかったけど・・・
口に出せないコト考えてた自分が恥ずかしくて振り返れなかった
- 115 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:07
- 今日はミキティがバイトを休んでた
めずらしいなーと思ったら、公演が近いらしい
ランチ時が終わると矢口さんに言われて、アタシは
休憩に入った
控え室を使おうかとも思ったけど、梅雨も明けて
いい天気だし、屋上に行くことにした
エスカレーターで上がってる途中でいきなり背中を
叩かれ、ギョとして振り返る
「よっ!ヨッスィ〜、休憩?」
「おわっミキティじゃんっ
・・・なんで、こんなトコにいんの?」
「今日から、屋上で縁日やるじゃん?
あやちゃんにどーしても来てって言われてさぁ〜
稽古の前に寄ったってワケ」
「ふぅ〜ん」
「なんだよぉ、その目っ!!!」
「べっつにぃ ヤッサシーなーと思ってさぁ」
「会ったことなかったよね?紹介するよ」
ミキティは目線を泳がすように上げてからアタシの
顔を見て、ちょっとだけ照れくさそうに笑った
- 116 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:08
-
アタシ達が屋上に出ると、ワイシャツの上に赤や青の
ハッピを着たおじさんと浴衣のオンナノコとお祭りで
お馴染みのいくつかの屋台と、親子連れでザワザワしていた
「・・・あやちゃん、ドコだろ?」
ミキティが少し背伸びをしながら、辺りを見回してる
横で、アタシもキョロキョロした
・・・そっか、今日からだったんだー
アタシの浴衣の柄は・・・
「ミキたーーーんっ!!!」
でっかい上によく通る声の方をアタシが見ると
色とりどりの綿飴の袋がトトトッと走ってきた
ミキティにぶつかるようにして止まると
カラフルなビニール袋の上から、小さな顔が出てきた
その顔はその子が持ってる袋に描かれたアニメキャラの
オンナノコより、もっとずっと瞳がキラキラ輝いてた
・・・スッゲー まんまアイドルになれそぉ
「・・・あやちゃん・・・どぉしたのコレ?」
いち、にぃ、さん、よん、ごぉ、ろく、しち・・・
ミキティの驚きの声に、横からアタシが声を出さずに
数えて見ると、抱えただけじゃなくて
指先にもゴムを通して持ってたらしくて七個もある
パンパンに膨らんだ綿飴の袋
- 117 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:08
- 午後の強い日差しを浴びて、アタシ達の周りだけ
甘ったるい匂いが溶け出してきそうだ
「ミキたんにミツギモノなのだぁーーー!!!」
「こ、こ、これ、ぜんぶぅ〜?!」
あやちゃんはミキティに綿飴を全部渡すと
首と肩を回して、絵本の天使みたいな笑顔で
コックリと子供みたいに大きく頷いた
ミキティの顔が青ざめてる
お得意の冷ややかな笑みを返すヨユウもなく
あやちゃんのペースにホンロウされてるのが
かなりオモシロイ
アタシが拳を口元に持っていってニヤケてるのを隠すと
あやちゃんがキョトンとした顔でミキティを見た
「このヒトだぁれぇ〜?」
「あ?ミキんとこに新しく入ったバイトくん
ヨッスィ〜って言うんだ
そだ、ヨッスィ〜一個持っていかない?」
アタシが袋の中からアンパンマンを見つけて
手を伸ばしかけると、あやちゃんの声が飛んだ
- 118 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/16(月) 20:09
- 「ダァメッ!!!
ミキたんにって言ったでしょぉ?
アッタシのマゴゴロだよぉ・・・他のヒトにあげるなんて
許さないぞぉ!ミキたんがぜーんぶっ食べるのダ
すっごぉく甘〜ぃよン♪」
あやちゃんはミキティに向ける笑顔を30%OFFしたくらいの
スマイルでアタシを見た
「ヨッスィ〜欲しかったら、後で買いにきてねン
ミキたんのお友達ならオマケしてあ・げ・る♪」
あやちゃんは最後にクチビルをハート型にすると
アタシにキスを投げた
そして、コレでサービスは終わりとばかりにミキティの
綿飴で塞がれた腕を掴むと全開の笑顔で言った
「ミキたぁん、お昼まだだよね〜?
アッタシ焼きソバおごってあげるっ」
ミキティはあやちゃんにズルズル引っ張られながら
振り返ってアタシにダハハと笑って見せた
・・・ミキティいつもとキャラ違くね?
けど、ま、なんつーか、ホホエマシク感じながら
アタシは二人がウキウキと焼きソバ屋に向かう
後姿を見送った
- 119 名前:Sa 投稿日:2004/02/16(月) 20:10
- 更新致しましたぁ
106様>
お待ち頂けて光栄でございマス
これからもお付き合い頂けたら更に光栄でっす♪
名無し読者79様>
こちらこそ〜♪
レスお疲れ様です!ホンット感謝感激でっす
次はこんなカンジになりましたぁ…ハハ
- 120 名前:54@前作 投稿日:2004/02/18(水) 17:16
- 更新、お疲れ様です。
ありゃ、ついに登場しましたね、アノ人が。
すごいパワーです、やっぱりw
もう、エレガな石川さんにヤラレました!
別館のエレベーターに1日延々と乗っていたい位ですw
(ふと、「王子様と雪の夜」を思い出しました・・)
Saさんの描く石川さんってすごく好きなんですよねぇ、ふう。
次回もまったりとお待ちしてます。
- 121 名前:名無し読者79 投稿日:2004/02/19(木) 21:14
- 好きなCPが…増えてる…(感激
キャーですね。いやーみんなすごいこんな感じっぽい…。
結構振り回されキャラですよねミキティーって(笑
次回も待ってます。
- 122 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:38
- アタシがウロウロと賑わう屋台の間を歩いていると
梨華ちゃんの声が耳に飛び込んできた
「惜しいっ!」
足を止めて、声のした方を見ると金魚すくいの屋台の
店先で梨華ちゃんは小さな男の子の頭を撫でていた
涙を零しそうな小さな顔の大きな目を、温もりがある
笑顔で見つめかえしている
「・・・もうちょっとだったもんね
次はきっとすくえるよ?頑張って、ね」
男の子は自信なさそうに梨華ちゃんの顔を見て
瞬きを繰り返した
その子のウエハースを刺した針金を持つ手が小さく震えてる
アタシの頭の中で、目の前の子供が小さかった頃のアタシと
重なって見えた
アタシは子供の後ろにしゃがみ込むと後ろから
子供の手に針金とおわんを強く握らせた
ビクッとする子供にアタシは声に力を込めて話かけた
「金魚だけを見るんだ 迷わないで一匹だけ
後一回だけ頑張れ、絶対うまく行くから」
男の子の小さな頭がコクンと頷いた
- 123 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:39
- 男の子がウエハースを水に浸すと、一匹の赤い小さな
金魚が近づいてきた
「いまだっ!」
男の子がサッとウエハースを動かすとおわんの中で
赤い金魚がぽちゃんと跳ねた
「やったなっ!」
アタシが男の子の頭をぐりぐり撫でると、その子は
人懐っこく笑った
「うんっありがとー」
「よかったねっ」
梨華ちゃんは男の子に優しく微笑んだ後、アタシを見て
嬉しそうに顔中笑顔にした
「まぁ、すくえたのね?すごいじゃないっ!」
母親らしい女のヒトが、もう一人小さな女の子の手を
引いて戻ってくると、男の子がビニール袋に金魚を入れて
もらってるのを見て目を細めた
- 124 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:40
- 男の子は母親に駆け寄ると自慢げな笑顔を
見せてアタシを指差した
「うんっ!あのお兄ちゃんが教えてくれたの」
膝に置いていた手をガクッと外すアタシに
梨華ちゃんが声を殺すように笑ってる
「すみません ありがとうございました」
「と、とんでもないッス」
アタシが顔の前で手をブンブン振ると母親は
軽く頭を下げた後、男の子の手を引いて帰っていった
「お兄ちゃん・・・だって」
「ハハハ・・・子供の言うことなんか気にしないぜっ」
クスクスと可笑しそうに笑う梨華ちゃんに、アタシは
わざと低くオトコっぽい声色を作って答えた
「石川〜 休憩いってー」
いま金魚をビニールに入れてたお姉さんが気だるげに
長い髪をかきあげ梨華ちゃんを見る
梨華ちゃんはハイッと返事するとアタシを見た
「ひとみちゃん、まだ時間ある?」
- 125 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:40
- 梨華ちゃんは、浴衣の合わせた襟元からチケットを
二枚取り出すとアタシを見た
「焼きソバでいい?」
「あー?ん ありがと」
ニッコリと梨華ちゃんスマイルを浮かべてアタシを
見た後、屋台のおじさんに二つ下さいって、大きな声で言っている
・・・アタシの浴衣、少しだけ大きいみたい
緩く上げた髪から覗く細っいうなじ・・・
・・・なーんかぁ・・・色っぺーくナイ?
しっかし、同じ浴衣なのに着るヒトで変わるモンだぁねぇ
アタシの浴衣はごくシンプルで、白の布地で裾に
濃紺から淡い水色の蝶が舞っている
ホント、それだけだ
帯だって黄色のグランデーションで柄さえ無い
アタシは中学の時から顔も大人びてたし
あんまりオンナノコちっくなのは勘弁って思ってたから
けど、梨華ちゃんが着るとアタシの浴衣は
オンナノコっぽさ?・・・じゃないか、女性らしさを
際だたせてるカンジ
梨華ちゃんは焼きソバを両手に持って、アタシに
振り返ると、あっと声を出した
- 126 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:41
- 「どしたの?」
「飲み物がぁ・・・お財布、持ってくるの忘れちゃった」
「あぁ、んなの、アタシあるし・・・」
アタシは、ジーンズのポケットを探った
小銭をそのまま入れるのってオトコみたいだから
よせって言われるけど、なかなか使えるのだ
今日はラッキーなコトに梨華ちゃんの分も買えるだけある
お茶を自販機で二つ買うと、アタシ達は別館の方まで歩き
空いてるベンチに腰を下ろした
アタシが焼きソバを食べ終わって、店から持って来てた
ベーグルに噛付いてると梨華ちゃんが言った
「・・・ひとみちゃんて、励まし方が上手いね」
「ん?・・・あぁアレはさ、アタシの体験談だからね」
割り箸を止めて、アタシの顔を見る梨華ちゃんに
アタシも口の中のモノを飲み込んだ
「・・・小学校の学芸会でさ、主役みたいのやるコトに
なっちゃって、ありえないくらいキンチョーしまくってて
婆ちゃんに泣きついたら言われたんだ
いっぱい、いっぱい緊張して、後は堂々とやれって
これが最後の一回だと思えば、たいがいのコトは
うまくやれるって、ね」
- 127 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:41
- 「でも、舞台上がったら震えちゃってさー
一番前に座ってた、婆ちゃんの顔だけ見てやったんだ
ずっとアタシ見て、ニコニコ笑ってる顔をね?
・・・気が付いたら、終わってた」
梨華ちゃんは目を細めて微笑むと、自分が着てる
浴衣を見た
「この浴衣も、お婆ちゃんの手作りだって
ひとみちゃん言ってたよね?
素敵なお婆ちゃんだよねー
あたしも一度お会いしてお礼が言いたいなぁ」
「・・・んーー」
アタシが口ごもると梨華ちゃんはハッとして
眉をひそめると早口に言った
「ご、ごめんね 図々しかったよね?
お礼言いたいなって思っただけなのっ」
「・・・それは嬉しいんだけど、お礼言ってもらっても
解んないかもしれないっつーか・・・」
「え?」
「・・・うちの婆ちゃん、ボケちゃってるから」
「・・・えぇっ」
- 128 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:42
- 梨華ちゃんは一度大きく目を見開いた後
眉を八の字にして顔を曇らせた
「・・・え、と、あのゴメンね」
俯いてすまなそうな声を出すから、アタシは小さく笑った
「なんで梨華ちゃんが謝るの?・・・アタシこそゴメン
聞いて楽しいハナシじゃないっしょ?」
「そんなコト言わないでっ」
梨華ちゃんがあんまり真面目な顔して強い口調で言うから
アタシはちょっと驚いてしまった
「あ、あのね?
あたし・・・ひとみちゃんとはもっと、仲良くなりたいの
ひとみちゃんとお話してると落ち着くんだ、あたし
ひとみちゃんの声聞いてると、なんか力が出てくるって言うか
だから、ひとみちゃんがあたしに話してもいいって
思ってくれることはなんでも聞きたいなって」
・・・シンケンナカオ・・・ツヨイマナザシ
梨華ちゃんは自分の気持ちを眼で伝えようと
するみたいにアタシを真っ直ぐ見つめてくる
だからアタシも思ってもなかったコトに誘ってしまった
- 129 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:42
- 「・・・梨華ちゃんさえ良かったら、付き合ってくれる?
最近婆ちゃんのとこ行ってなかったからね
賑やかなの好きなヒトだし、友達連れて行ったら
喜ぶと思うんだ」
「・・・いいの?」
瞳を輝かす梨華ちゃんにアタシは苦笑いを浮かべた
「行くトコ・・・老人ホームだよ?
ま、車出すからドライブがてらってコトで」
「あたしっお弁当作ろっか?」
お弁当???・・・そんなのってさ・・・コイビトみたいじゃん
それとも、梨華ちゃんは誰にでもそんななの?
ってか、フツーはそう考えないモンなの?
・・・よくわかんない
アタシが梨華ちゃんの顔をじっと見てると
またカンチガイしたらしく梨華ちゃんは一人で
納得してる
「そうだよねぇピクニックじゃないもんねー
お弁当ってヘンだよねっ」
「ヘン・・・てコトもないと思うケド」
- 130 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/24(火) 10:43
- 歯切れの悪いアタシに梨華ちゃんは不思議そうな
顔してる、そんなカワイイ顔されても困っちゃうよ
アタシだって、自分の胸ん中がモヤモヤしてるって
コトしかわかんないんだって
<時間だよぉ〜♪時間だよぉ〜♪>
アッ!!!
アタシはジーンズのポケットから携帯を取り出すと
時間を見た
「な、なにぃ?・・・いまの女の子の声???」
アタシは立ち上がると目を丸くしてる梨華ちゃんを
見下ろした
「休憩時間終わりのお知らせってヤツ
ワリィけどアタシ、もう行くわ
またメールするから」
少し、ムッとしながら頷く梨華ちゃんにアタシは
首を傾げながらベーグルの残りを口に押し込むと
お茶で流し込みながら、店へと走り出した
- 131 名前:Sa 投稿日:2004/02/24(火) 10:44
- 更新致しました。
54@前作様
アノ人は書こうとするとパワフルになるもの
なのですねぇ〜 …シミジミ
作者のいしかーさん、気に入って頂けたなら
うれすぃ〜デス(ワンパな気もしますが・汗)
名無し読者79様
こんなカンジっぽいと少しでも思って頂けたら
今回の作者にはサイコ〜の褒めコトバです
オトナな方から見れば、ナニをグチャグチャと悩める10代最後の
こんなカンジっぽい二人を書けたらなぁと思ってますので(w
- 132 名前:名無し読者79 投稿日:2004/02/24(火) 20:54
- いや〜現実の梨華ちゃんもすぐ顔にねー(笑
吉澤さん…それは…?こういう時期っていいですね。
次回楽しみに待ってます。
- 133 名前:前作の74です 投稿日:2004/02/25(水) 00:19
- 更新おつかれさまです。
あ〜この微妙なキョリ感がたまんないです。
続きが楽しみ!
- 134 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:04
- アタシの赤い車は真夏に向かう光線なんかに
負けないくらいピカピカ光ってる
もともと汚いのって落ち着かないし
洗車もマメな方だけど、昨日はワックスがけまで
してしまった
家まで迎えに行くつもりだったケド、梨華ちゃんは
道の説明がホントに苦手らしい
アタシも地理とか詳しいワケじゃないケド
自分で車を運転するようになると思ったより
道を覚えるのは苦労しなかった
地図見て迎えに行こうかとも思ったケド
梨華ちゃんが眉を八の字にする顔が浮かんだから
止めておいた
アタシは運転が好きだし、車に乗る人間にとっては
それくらいの遠回りは苦じゃないんだけどなー
重低音を響かせて待ち合わせした梨華ちゃん家の
最寄り駅に走る車の中で、アタシのキモチは
今日の空みたいに快晴だ
- 135 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:05
- 各駅しか止まらないこの駅は、反対側に昔からの
小さめの商店街があるくらいで、待ち合わせした
駅前のバスロータリーにも、バス待ちの人は
ほとんどいなかった
停留所の車寄せの少し前で車を止めると
バックミラーの濃い青色の中を真っ白な雲が流れてく
天気予報でも夏日になるって言ってたし、時計の針が
進むたびにガンガン暑くなってきそうだった
アタシが車から外に出ると、ちょうど梨華ちゃんが
こっちに向かって歩いてくるのが見えた
「ヨ〜ォ♪カァノジョォ、乗ってかない?」
足を止めて、怪しげに目を細める梨華ちゃんに
アタシはサングラスを少しずらして笑いかけた
「ひ、ひとみちゃぁん?・・・なんか、ちがぁ〜う」
・・・ハハ
夏に向けて、髪の色抜きすぎたか?
顔にかかる前髪がうざくて、オールバックみたく
したのがまずかった?
それとも・・・この上り龍のアロハがイケてないとか?
- 136 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:05
- 一方、梨華ちゃんは今日もピンクピンクしてる
Tシャツ素材のストンとしたワンピースは
風を含むとカラダのラインにフィットして
ムネで膨らみ、ウエストで捩れ、キレイなラインを
示して見せてる
ウエストから上だけがボーダーになってるケド
ピンクには変わりない
素足の先の華奢なミュールも白とピンクの色使いだし
梨華ちゃんもいつもとちょっと違う髪形をしてた
両耳の上からサイドの髪を取って、小さく上で結んでる
そのせいか、目元が涼しげに見えた
だけど、使ってる髪どめのゴムも耳たぶで揺れてる
小っちゃな飾りもやっぱりピンクで・・・
梨華ちゃんの一日のピンク使用量はアタシの一年分より
多い気がする
「車動かすから、チョイ待ってて」
アタシはサングラスを掛け直して、運転席に回りながら
声をかけた
ガードーレールが切れてるトコまで、バックさせて
助手席のドアを軽く開ける
「カモォ〜ン♪」
「お邪魔しまーす」
梨華ちゃんはツルツルのキレーな足を滑らすように
助手席に座った
- 137 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:06
- 道もわりと空いてて二時間かからないで目的地に着いた
玄関ホールには誰もいなくて、面会者の欄に名前を
書き込むと二階の婆ちゃんの部屋に向かった
掃除が行き届いて、ナニかが足りないみたいに殺風景な
廊下を梨華ちゃんは少し硬い表情で歩いてる
二階に上がると多目的室で、テレビを囲んで賑やかな
声が響いてる
婆ちゃんがいるかと覗いてみたけど、いなかった
部屋の壁には幼稚園みたいに婆ちゃん達の描いた絵が
飾ってあったりする
梨華ちゃんはその絵を見てちょっと微笑んだ
婆ちゃんの部屋の前に着いて、軽くドアをノックすると
返事がなくいからノブを回した
アタシは中に入るとベッドの上で小さく丸まる
婆ちゃんの顔を覗きこんだ
レースのカーテンが細く開けた窓からの風に揺れて
眠る婆ちゃんの顔に光と影を投げていた
アタシはドアの外にいる梨華ちゃんを手招きした
「寝ちゃってるみたい」
- 138 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:06
- 梨華ちゃんは静かに部屋に入ってくると
アタシの隣から婆ちゃんの顔をそっと覗きこんだ
「・・・なんか、可愛い」
アタシの顔を見て、微笑んでそう言った後
梨華ちゃんは、ハッとして自分の口を押さえた
「ごめんねっ えっと、可愛いとか失礼かな?」
アタシは軽く笑って首を振りながら言った
「・・・子供みたいだよね、なんかさ」
「ひとみちゃんって、お婆ちゃんに似てるのかな?」
「うぅ〜ん、どーだろ?
婆ちゃんはじいちゃんに似てるっていうケドね」
「おじいさん?」
「そ、婆ちゃんの最愛のオトコ」
アタシは壁に立てかけてあった補助椅子を引っ張ってきて
クスクス笑う梨華ちゃんの前に置いた
「座って」
「あ・・・ひとみちゃんこそ」
「アタシ、飲みモンでも買ってくるわ、何がいい?」
「え?えぇーと・・・ひとみちゃんと同じので」
「リョーカイッ」
- 139 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:07
- アタシがアイスティのミルクとレモンを両手に
部屋に戻ると婆ちゃんが梨華ちゃんの両手を
握りしめて、ニコニコと笑っていた
・・・ナ、ナニしてんだぁ?婆ちゃん
梨華ちゃんはアタシに気づくと、ちょっと
困ったみたいに笑ってみせた
「あんた、良かったねぇ・・・
こんな可愛いお嬢さん捕まえるなんてさ」
・・・つ、捕まえるぅぅぅーーー???
アタシは缶ジュースを落としそうになった
いくら、婆ちゃんがトンチンカンなコト言い出すって
言っても、オンナのアタシのカノジョを喜ぶとは思えない
たぶん、すぐ下の弟とカンチガイしてるんだ
「ち・・・違うって、婆ちゃんっ」
アタシはあせって婆ちゃんの手を梨華ちゃんから
外そうとした、そしたらぎゅっとその手に力を入れ
アタシの顔を軽く睨む
「何が違うもんかい お前は駄目だねぇ
恥ずかしいのは分かるけど、大事な人には
ちゃんとそう言うもんだよ」
- 140 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:07
- 婆ちゃんは梨華ちゃんの顔をしっかりと見つめ直した
「こんなお婆さんにわざわざ会いに来てくれるなんて
いいお嬢さんだねぇ
この子はしっかりして見えるけど、案外脆いとこが
あるんだよ 支えてやってもらえるかい?」
・・・な、なんてコト言い出すんだぁぁぁ〜〜〜
アタシは慌ててまた手を出した、婆ちゃんを止めようと
思って・・・けど、その手は途中で止まってしまった
・・・だってさ、婆ちゃんの目がうっすら涙ぐんでるのが
見えちゃったから
梨華ちゃんは婆ちゃんの顔をキチンと見つめ返して
強く頷くと、握られた両手を一度柔らかく外して
今度は梨華ちゃんから婆ちゃんの手を優しく包み込んだ
「・・・はい」
「よかったよ、安心した 長生きはするもんだ
あの子はあんたに優しくしてるかい?」
「はい、すごく優しいです」
「よかった・・・よかったよ」
ウンウン頷く婆ちゃんに梨華ちゃんは微笑んで
包み込む手に力を込めた
梨華ちゃんはお芝居が上手くって、柔らかく
優しく包み込むような微笑は、まるでヴィーナス
みたいだと、アタシは思った
- 141 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:08
- こんなつまらないとこ連れくるなんてあんたは野暮だ
とか、もっといいとこに連れてっておやり、とか
まるで追い払うみたいに婆ちゃんに言われて
アタシ達はホームを後にした
結局、ぬるくなった缶の紅茶を車で飲みながら
アタシは梨華ちゃんに謝った
「・・・ヘンな芝居、させちゃってゴメン
なんか婆ちゃん、弟とカンチガイしてたみたいでさ」
「うぅん・・・でも、あれね?お芝居じゃないから」
「ほへぇ?」
アタシのマヌケな声に梨華ちゃんは可笑しそうに笑った
「・・・なんかね、お婆ちゃんの言うこと聞いてたら
そうだなぁって思って・・・
大事な人は大事にしないとって
お婆ちゃんがひとみちゃんのこと大事に思ってるから
あたしにああ言う風に言ったんだって、わかるから・・・
恋人だから大事とか、友達だから大事とか、家族だから
とか、色々あるけど、基本は同じなんじゃないかなって
思ったんだ」
それは梨華ちゃんが、アタシを大事に思ってくれてるって
コトだよね?
嬉しくなったアタシは勢い込んで梨華ちゃんに言った
「アタシも大事にするからねっ梨華ちゃんっ!」
- 142 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:09
- 梨華ちゃんは大きく目を見開いた後、少し頬を染めた
「・・・ひとみちゃん、なんか恥ずかしいよぉ
友達って思ってても、そういうコトって
あんまり口にしないと思うよ?
そういうのって恋人に言うセリフだと思うの」
「そっか、そーだよねぇ・・・」
・・・恋人・・・う〜〜〜ん、恋人かぁ・・・
あっ! そーだっ
「ねぇねぇ梨華ちゃんっ」
「ん?」
「アタシがもしオトコだったら、カノジョに
なってくれる?」
「えぇっーーー?!」
梨華ちゃんはパチパチ瞬きした後、少し考える顔をした
「・・・そんなの、わかんないよぉ
だって、ひとみちゃんは女の子だもんっ
ひとみちゃんこそ、あたしが男の子だったら
彼女になってくれるの?」
「えぇぇーーー?!」
素っ頓狂な叫び声を上げるアタシを梨華ちゃんは
上目遣いで軽く睨んだ
- 143 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:09
- ・・・カワイイ、ドンナヒョウジョウモ・・・カワイイネ
こんなにオンナノコっぽくて、カワイイ梨華ちゃんが
オトコになるなんて絶対ヤダよ
「・・・考えられない」
「でしょう?」
梨華ちゃんは得意げな顔をするけど、アタシが言いたい
のは、そーゆーイミじゃないのになぁ〜
梨華ちゃんがどんなに大事だって思ってても
友達には見せない顔を見せてくれたり、友達には
預けられないモノも、きっと預けてくれるコイビトに
アタシがオトコだったらなれるのか聞きたかったのに
なんだろ?
カラダの真ん中っていうか、どっかが、スースーするような?
ムネがムカムカするような???
そうだっ!
昼飯もまだじゃんっ 腹すきすぎかも?
アタシはそろそろ車を出そうとシートベルトをした
「・・・でも、ありがとっ 嬉しいな・・・」
梨華ちゃんの小さな声が聞こえてアタシは隣を見た
- 144 名前:愛のシルシ 投稿日:2004/02/25(水) 20:10
- 「・・・さっき、あたしに言ってくれた言葉・・・
やっぱり、ひとみちゃんはお婆ちゃんに似てるね?
お婆ちゃんと同じモノが、ひとみちゃんの中にも
ちゃーんと、流れてる」
アタシが眉を寄せると、梨華ちゃんもシートベルトを
して、その上から自分の胸にそっと手をあてた
「ひとみちゃんのココにシルシがあるの
愛がいっぱいあるんだって」
そして梨華ちゃんは笑った・・・とてもキレイに
アタシは、やけに梨華ちゃんが眩しくて
なんか、ワケわかんないくらい眩しくて
・・・笑顔から目を逸らした
そして、サイドボードからサングラスを出してかけると
車のサイドブレーキを引いて、ハンドルに手を置いた
「そろそろ行こっか?
どっかでなんか食べよう・・・腹減ってキブン
悪くなってきた」
「えぇ〜大丈夫?」
アタシの顔を覗き込むみたいに顔を近づけてくる
梨華ちゃんから、ほのかにアタシとは違う香りがした
- 145 名前:Sa 投稿日:2004/02/25(水) 20:11
- 筆がノッテ短時間で書き上がったので
更新してシマイマシタ
気まぐれで申し訳ないです(汗)
これから更新については長期に渡って
出来ない時以外、明言は避けるコトに致します
自分で自分のクビを絞めかねないので(w
名無し読者79様
すぐに顔にねーっ…愛しいですなぁ〜
次回はお待ち頂く時間がなかったかと
思われ(w
前作の74です様
ぉおっ!!!お久しぶりデス
変わらず読んで頂けてるのかと思うと
喜びイッパイ胸イッパイでございます
- 146 名前:JUNIOR 投稿日:2004/02/26(木) 00:49
- Saさんの文章前作と一緒で面白いです!!
これからも頑張ってください!!
- 147 名前:152 投稿日:2004/02/27(金) 17:02
- ちょっとご無沙汰です。(ずっとレス出来ない環境で・・)
Sa様の文章表現本当に好きですよ〜♪
すごく楽しみです。ゆっくりお待ちしてますね!
(・・前作熟読しすぎて覚えそうです・・笑)
- 148 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:33
- 昼すぎにいちーさんから携帯に連絡が入った
驚くアタシに受話器の向こうから、笑いを滲ませた声がする
「・・・まりっぺ、熱出したんだってさ
夏風邪はなんとかがひくって、アレほんとだな?
今日さ、市井の店休みだからこっちにヘルプに
来てんだよ。で、後藤が通しだったんだけど
ちょっと、調子悪そうだから、吉澤、空いてたら
来てくんないかな?」
「わかりましたっ なるべく急いで行きます!」
「おぉっ 助かった!サーンキュ」
アタシは、ほったらかしといた寝癖を直して
着替えると携帯にメールを打ち始めた
(( 梨華ちゃんゴメン、今日急にバイト入るコトになった
時間遅くなってもいいなら、約束通り夕飯
一緒に食べよっ
仕事、終わったら店で待っててよ
けど、浴衣はほんといつでもいいから
無理だったら今日じゃなくていーよん ))
送信し終わった携帯をマナーモードにすると
ジーンズのポケットに押し込んで、スニーカーを
引っ掛けるように履くとアタシは家を出た
- 149 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:34
- アタシが息をはずませて店に入ると、ごっつぁんが
すまなさそうに笑った
「・・・ごめん、ヨッスィ〜」
「いいって、それよか大丈夫?」
「薬飲んだんだけど、なんか寒気してきて・・・」
「そっか、帰って寝た方がいいよ」
「うん・・・ホント助かった、ありがと」
ごっつぁんは、少し青白く見える顔色をしながら
控え室に入っていった
いちーさんがカウンターの奥からアタシとミキティの
顔を交互に見た
「吉澤、悪かったな?
いま客切れてるし、市井、裏でちょちょっと何か
食ってくるわ 藤本、ドリンクだけならいけるだろ?
フード入ったら呼んで」
アタシが、ハイと頷いてると、横でミキティは
いまいち自信なさそうにタハハ・・・と笑った
いちーさんが控え室に入ると、一組残ってたお客さんも
帰ってしまった
「「ありがとうございましたー」」
- 150 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:34
- アタシがテーブルを片付けて、カウンターに
戻るとミキティが言った
「ナプキンとかの補充しちゃおっか?」
「ん、だね? アタシ取ってくるわ」
タイムカードを押すのを忘れてたアタシは
控え室のドアの前に立ち、ノックしようと腕を上げた
その時、ごっつぁんの声が聞こえた
「・・・この間はありがと」
「・・・お前、いい加減にしとけよ?」
いちーさんのイライラしたような押し殺す声に
アタシは中に入りにくくなって、ドアの前で
上げた腕を下ろした
「・・・でも、ごとー最初に言ったんだよ?
ちょっと好きなだけだって・・・
そしたらアイツが、キミの分までオレが好きに
なるから、それでいいから付き合ってって
言うんだもん」
「後藤が気をもたせてたんじゃないの?
だからあの男も別れ話されても、あきらめきれないんだろ
お前は軽い気持ちだったかも知れないけど
ケガさせられるとこだったんだぞ?」
「・・・いちーちゃん、イジワルだよ・・・わかってるもん」
「わかってないだろ?・・・イライラするんだ、そーゆーの」
「・・・っ…ん・・・」
- 151 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:35
- 「泣くなよ、マジになれそうにない相手と
なんで付き合おうと思うかね?」
「・・・だって・・・」
「付き合えれば、期待すんのは当たり前だろ?
お前、言われたら誰とでも付き合う気かよ
流されてるだけじゃねーのか?
後藤さ、自分から誰かを好きになったっての
あんの?」
「・・・わか…んないんだも…ん、わかんない…の
いちーちゃん・・・が、教え…てよぉ」
「お前、バカ?
それか、市井のこと、バカにしてんの?
市井が女なら誰とでも付き合うとでも思ってんのか
お前さ、人の話しちゃんと聞いてんのかよ?
・・・後藤は市井に恋してねーだろ」
「バカに・・・なんか、してない・・・わか…んないから
いちーちゃんが…どんな…気持ちを、恋してるって
いう…のか・・・」
「・・・んなの自分で考えな
とにかく、今日はもう帰れよ・・・」
「・・・・・・・」
・・・盗み聞きしてしまった
声がしなくなったドアの先を思いながら
アタシは小さく息を吐くとドアをノックした
- 152 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:35
- 「失礼しまッス」
アタシがドアを開けると、ごっつぁんが俯いたまま
横を通り過ぎて行く
「・・・お先」
「あ、気をつけて」
ごっつぁんの背中を見送って、いちーさんの方を
見ると、椅子の上から顎を上げてキツイ眼差しで
アタシを見てた
「・・・吉澤、お前さぁ・・・」
「ハイ」
「・・・やっぱいいわ、で? 注文、入った?」
「いえ…タイムカード、押すの忘れてて」
「バーーーカ」
いちーさんはテーブルに向き直るとデニッシュに齧りついた
アタシはカードを押すと、ナプキンを持って
控え室を後にした
「おジャマしましたー」
- 153 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:36
- 今日は、午後のティータイムに結構人が入った
その反動みたいに、夕方お酒を出す時間が過ぎると
意外とお客さんはこなかった
「給料日前は、リーマンとか来ねーよな」
「ですね〜、夜は月末とか忙しいから」
カウンター越しのいちーさんの言葉にミキティが
軽く頷きながら答えるといちーさんがニヤッと笑った
「そーそー、まりっぺに聞いてるか?
今度の休館日の前の日、夜、貸切だぞ
んで、スーツ着て来いよ、ってか、男装ね、男装」
「ハァ???」
「なんのパーティですかぁ〜?!!」
アタシのマヌケな相槌とは違くて、目を輝かせた
ミキティは超ヤル気って感じだ
「藤本、知ってるかなぁ?
前このデパートでエレガやってた、石黒って子・・・
飯田とかとよく来てくれてたんだけど
辞めてからご無沙汰だしなぁ〜
ま、その子の結婚式の二次会でさ その名も
"ハッピーサマーウェディング"だってさ」
「・・・ひょっとして、鼻にピアスしてる人ですか?」
「おぅ、それっ
で、女の招待客が多いからホストクラブ
みたいな趣向がいいんだと
ダンナになる男は業界人らしいから、そ〜ゆ〜
ふざけたの大好きで、マジでやってくれってさ」
- 154 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:37
- 「うわっ!ミキめっちゃ楽しみ〜〜〜
お祭り騒ぎ大好きなんですよー♪」
「・・・・・」
アタシが固まっていると、いちーさんが笑った
「期待してっから藤本!吉澤っお前もだ
後藤は弟のガクランとスーツとで迷ってたぞ」
・・・スーツ・・・
・・・どーしよ・・・???
アタシが考えこんでると、いちーさんが、あぁと
声を出した
「お前ら、スーツなんて持ってないよな?」
「ミキは劇団の衣装とかありますよ〜」
「藤本ぉ、赤、青、黄とかド派手なのやめてくれよな?
市井らは主役じゃないんだから、地味目の
普通ので、頼むよ」
「フツーのですかぁ?…つまんないなぁ〜
でも、まっ劇団の誰かに借りれますから」
ミキティは鼻を鳴らした後、ニッコシと笑った
「吉澤は? あてあるか?」
「・・・ナイですね」
- 155 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:37
- 「わかった お前、市井よりデカいから誰かダチに
借りてやるよ」
「・・・ハァ、お願いシマス」
・・・ってか、いちーさんはフツーに持ってんのぉ?
それってヘンくね?・・・やっぱ、わかんねーヒトだわ
「んで、だ・・・おぉ、噂をすれば・・・だな
カオリン、最近来てないらしーじゃん
まりっぺ言ってたぞ〜」
いちーさんの声に振り向くと、カオリンと呼ばれた
背の高い迫力ある美人にはどこか見覚えが・・・
ありっ?後ろにいるの梨華ちゃんじゃんかぁ
と、あやちゃんまでいるよぉ
カオリンサンはいちーさんに軽く手を上げると
チィースと小声で言って、後ろにいる二人を
振り返った
「あんた達、カオリが奢ってあげる何にする?」
「ヤッター!! 飯田せんぱぁい♪
さっすが、まつぅらのアコガレのひとぉ〜
んんっ〜とぉピーチリキュール系のがいいなぁ〜」
あやちゃんがイイダさんの腕に抱きつくと
イイダさんはメンドくさそうにハイハイと言って
梨華ちゃんの顔を見た
- 156 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:38
- 「石川は?」
「えぇと、あ、あのぉ何でもいいです」
「ふ〜ん、ま、いーけどね
じゃサヤカ、ピーチリキュール使ったおススメの
三つね 後、海の話せっかくだけどカオリ無理」
いちーさんはキヨウに方眉を上げて軽く笑った
「ざーんねん
カオリン、わざわざそれ言いに来てくれたんだ?」
「ま・・・ね、それに、たまには顔見よっかな、てね」
イイダさんは長い髪を無造作にかきあげるとお金を払って
梨華ちゃんとあやちゃんを連れて席に着いた
いちーさんはカクテルを作りながらアタシとミキティに
話しを続けた
「さっきの続きだけど、パーティの後、海行かね?
市井の親戚がコテージやっててキャンセル出てさ
平日だし、メシもつかないから一万でいいって
頭数多い方が安くなるし、あの子らも誘ったら?
・・・ホイッ!お待ちぃ」
いちーさんが上げたグラスをお盆に載せて、アタシは
かなり見栄えのイイ、スリーショットのテーブルに
運んだ
- 157 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:38
- 「お待たせしました」
アタシはグラスをテーブルに置きながら、海行きの
コトを言おうかと考えた、けど、あやちゃんには
ミキティが言うだろうし、アタシも後で梨華ちゃんに
言えばいいや、と口にするのを止めた
「どうぞ、ごゆっくり」
アタシがテーブルから離れようとした時
イイダさんが言った
「キミ、夏祭り来てたよね?
ちょうどカオリが石川と交代しに行った時」
「・・・あっハイ」
「ここの子だったんだ パーティ出んの?」
「ハイ」
「そ、よろしくね」
「ハイ よろしくお願いします」
アタシが軽く頭を下げると、イイダさんはそっけなく
頷き、反対側に座る後輩たちに話し始めた
「あんた達入る前に辞めちゃったんだけど
カオリの同期がここでパーティやるから
よかったら来なよ うちの職場のヤツ多いし
面白い趣向もあるから・・・ね?」
ね、のトコでイイダさんに微笑みかけられて
アタシも曖昧な笑顔を返すとテーブルから離れた
- 158 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/02/27(金) 19:39
- 三十分ばかりするとイイダさんは一人で帰ってしまった
なにげなく、梨華ちゃん達のテーブルを見ると
あんまり会話が弾んでるカンジがしない
あやちゃんが退屈そうにでっかい手鏡を出して
自分チェックなんかしてる
・・・梨華ちゃん、大丈夫かなぁ〜?
さっき、イイダさんと話てる時もタイドが硬かったし
まだ馴染めてないのかな
それからまた三、四十分たった頃、いちーさんが言った
「もう二人でいけそうだから吉澤、上がんなよ
マジ今日、サンキュウな」
「ハイ、じゃ、お先に上がらせてもらいます」
梨華ちゃんが気になってたアタシはミキティに
んじゃって手を上げると、タイムカードを押して
梨華ちゃん達のテーブルに行った
「お待たせ、今日はなんかゴメン」
梨華ちゃんは、笑って首を横に振るとあやちゃんを見た
「じゃ、松浦さん お先に・・・また明日ね」
「うんっ バッイバァ〜イ!!!」
あやちゃんはピカピカ光る笑顔でアタシと梨華ちゃんに
手を振った
- 159 名前:Sa 投稿日:2004/02/27(金) 19:40
- 更新致しました。
JUNIOR様
おぉっ!!!お久しぶりですなぁ〜
面白いですか?…なら良かったです
自分じゃぁ、よくわかんないんで(w
152様
ちょこっと、お久です(w
レスは頂ければ励みになって、かなり嬉しぃですが
楽しみだとお読み頂けてるコトが嬉しゅうゴザイマスよぉ
えと、ですね
お願いがありまして…今回作者は毎日更新している
訳ではありませんので、レスはsageで頂けると非常に
嬉しいです
下げ方は、名前の横のE−mail欄に半角英数で
sageと入れて頂ければ下がります
もし、上手くいかなくて上がってしまったとしても
それはそれで結構ですので、試しにやってみて下さい(w
もし、なんらかのお考えがあってなら、非常に申し訳
ないんですが、ご理解とご協力をお願い致します(ペコリ)
- 160 名前:JUNIOR 投稿日:2004/02/29(日) 15:31
- お久しぶりです。
面白いですよ、Saさんの作品は。
これからも頑張ってください。
- 161 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:09
- 外に出て、歩きながらアタシは梨華ちゃんに聞いた
「夕飯、何食べよっか?」
「・・・えっと、なんでもいいよ
あっ・・・ごめんね、なんかいつもひとみちゃんまかせで
こういう時、パッと浮かばないんだ・・・あたし
・・・きっと、松浦さんなら色んなお店知ってるだろうなぁ
ひとみちゃん、つまんなくない?
・・・あたしなんかといても」
・・・ネガティブだなぁ〜梨華ちゃん
足が止まりそうになる梨華ちゃんの俯いた頭を
見ながら、アタシは足を止めて言った
「店なんかどこだっていいじゃん?
んなの決められなくたって全然かまわないよ
アタシはどっかの店に行きたいから梨華ちゃんと
いるんじゃなくて、梨華ちゃんといたいから店を
探してるんだし
ファミレスだっていいよ、あそこならたいがいのモン
メニューに乗ってるしさ」
「・・・ひとみちゃんって・・・ほんと、優しいね・・・」
・・・優しい?
・・・優しいのか?アタシ???
ただ、思ってるコトを口にしただけで、それが
梨華ちゃんの目にはそう見えるなら・・・それは
アタシが他のヒトより、梨華ちゃんを大事に思ってるからだよ
- 162 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:09
- 「・・・大事にするって言ったじゃん?」
アタシのカラカウような口調に、梨華ちゃんは俯いた
ままで言った
「ひとみちゃん・・・大好き」
・・・ドキッ
梨華ちゃんが小さな声でアタシをダイスキって言う
その俯いた頭と細い肩を見てたら、アタシのムネが
ウルサイくらい鳴り出して・・・
アタシもダイスキって言おうと思った
・・・思ったんだけど
・・・言えないんだ
なんだか・・・アタシが言うと
・・・イミが違っちゃう気がして・・・
- 163 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:10
- ・・・イミガ・・・チガウ?
・・・ダッテ、アタシモ・・・アタシモ
リカチャンガダイスキナノニ?
・・・ス・・・キ?
・・・ダイ・・・スキ?
・・・ソウ・・・デモ・・・ナンカ
・・・コノ、キモチ
・・・ドッカチガウ、ナンカチガウ
・・・アタシ、トキメイテルヨ?
・・・コンナニモ
・・・・・・・・・・・・・
・・・リカチャンニ
・・・・・・・・・・・・
- 164 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:11
- ・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・そっか・・・アタシ
・・・恋しちゃったのかも・・・知れない
・・・そーなのかな?・・・恋なのかなぁ?
・・・なんでかなーぁ
・・・って、そんなの・・・わかんないよ・・・
・・・タブン・・・ワカンナクテモシカタノナイコト
- 165 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:12
- 気づいてみればなんてカンタンでタンジュン
梨華ちゃんの表情のひとつひとつがやたらカワイく
目に映るのも
なにげなく言われたコトバがいつでもムネに残るのも
少しでも長く一緒にいたいって考えてたコトや
ココロだけじゃなくってカラダにさえ手を伸ばして
みたいって思ったことがあることも
・・・自然なコトだったんだ・・・きっと・・・
そして・・・たぶん、そのキモチは梨華ちゃんだけが
・・・特別なヒトだったから
・・・アタシにとっては
こんなにあっさりと、気づかない程いつの間にか
落ちる時は落ちてんだ・・・恋って呼ばれるモノに
・・・初めて知ったよ
アタシはなんだか笑い出しそうになった
笑っておかないと、今気づいた自分のスキって思いが
ムネに重くて・・・やけに、重くて
- 166 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:12
- 黙り込むアタシに梨華ちゃんは顔を上げると
寂しそうに笑った
「あたしってば、またキショイこと言っちゃった」
「・・・キショくなんかないんだけど・・・さ」
・・・だけど、アタシのスキは梨華ちゃんみたいに軽く
言ってあげれない・・・きっと・・・言えない
梨華ちゃんはアタシの顔を見ながら、少しだけ
不安げに笑った
「・・・なんでかなぁ?
ひとみちゃんには言えちゃうの
いつもだったら言わないのに・・・弱音みたいの」
アタシは梨華ちゃんに聞こえないように足元を見て
小さくため息をついた
「・・・あやちゃんはさ、確かにキラキラしてるってゆーか
いるだけで、人目引くタイプのコだよね?
そーゆーコ、スキなヒトっていっぱいいるかも知れない
・・・だけど、アタシは梨華ちゃんの方がいいんだ」
- 167 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:13
- 「なんで?とか聞かないでよ
そんなのって、人それぞれってゆーか
なんつーの?…好みのモンダイなワケだし・・・
・・・前、梨華ちゃんアタシに言ってくれたよね?
アタシと話してると落ち着くとか、声聞くと力が出るとか
アタシも同じだから・・・そう思ってるから
・・・他のヒトが梨華ちゃんをどう思うかなんてわかんないケド
アタシは知ってる、梨華ちゃんが思いやりのある
頑張りやで、笑顔がスゲーイイってコト
ソレを・・・忘れないで、ね?」
返事がないから足元から視線を上げて、梨華ちゃんを見ると
アタシのコトを見て、その瞳はウルウルしてる
そんな顔されるとアタシのムネん中になんかが沸き上がってきて
ソレが沸騰して、アタマん中までジンジン熱くなってきて
・・・ホント、困る
だから・・・ホントウは食べたいキブンじゃなくなって
たけど、アタシは明るく笑った
「腹減ったぁ〜ご飯食べに行こっ!」
- 168 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:14
- 梨華ちゃんに恋しちゃってる自分に気がついた夜
それから何日も同じような毎日を過ごして・・・
今日もバイトが終わって、家に帰って
テレビなんかつけて・・・
してるコトは今までと何も変わんないのに・・・
「アタシ、スキなヒト出来ちゃったー
スッゲェーイイ子なんだぁ・・・」
・・・イヤ、前はテレビに話しかけたりしなかったし
画面の向こうでは売り出し中のアイドルがアタシに
にっこりと笑いかける
・・・ダレかに話したい・・・でも・・・ダレにも言えない
ナニかをヒミツにするのって、難しいよりツライ
・・・ヒミツヲモツッテナンカコドクダ
- 169 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/01(月) 10:14
- よく恋をすると見えるモノ全てがバラ色になる
とか言うケド・・・たぶんソレは両思い限定だよ
アタシなんか、ドコにいてもダレといても
なぁ〜んかボンヤリしちゃってるし
ヘタに口開くと、梨華ちゃんのコトばっかり話しちゃいそうで
こんなにいつでも考えてたのかって自分に呆れた
だから・・・たぶん、少しだけ無口になった
それに・・・ムネの奥がずっとチリチリしてる
痛いワケじゃないケド、息するのが苦しいカンジ
ソレはアタシを落ち着かないキブンにさせる
時々意識して深呼吸したり、瞬きを繰り返したりして
無理にキブンを変えないとヤバイカンジ
「だーかーらぁ、梨華ちゃんのがカワイイって」
・・・アタシはテレビにまた話しかけていた
- 170 名前:Sa 投稿日:2004/03/01(月) 10:15
- 更新致しました
JUNIOR様
そうですか?…なら良かった(w
早速、試して下さったんですね
ありがとうございます♪
- 171 名前:なち 投稿日:2004/03/01(月) 17:17
- ヤバィ…マジ面白い!
話に引き込まれていきます♪
これからも頑張って下さい( ○^〜^)人(^▽^ )
- 172 名前:54@前作 投稿日:2004/03/01(月) 23:51
- 更新、お疲れ様です。
吉澤さん、ついに気づきましたか。
これでもう、石川さんからは離れられないことに・・w
独り言が多くなった吉澤さんがとても可愛いです。
次回もまったりとお待ちしております。
- 173 名前:コナン 投稿日:2004/03/04(木) 05:14
- 初めまして、某所でもROMってましたが。
いしよし大好きな、私はどっぷりとハマラセテ頂きました。
Saさんの作品大好きです。
これからも頑張ってください。更新楽しみです。
- 174 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:32
- アタシのキブンなんかお構いなしにパーティの日は
やってきた
コレが終わったら、みんなで海だ
海行きのコト話した時の梨華ちゃんの、スゲー嬉しそうな
顔がアタシのアタマに浮かんで消えた
またボンヤリしそうになるキモチを引き締めて
いつも通りに混み合うランチ時を慌ただしく過ごした
ティータイムの時間も過ぎて、お客さんが帰ると
店の看板の前に手描きのボードをかけた
本日貸切パーティの為、ナンタラカンタラって
書いてあるお決まりのヤツ
店内の清掃とか、パーティの準備とか、殆ど終わった頃
いちーさんがアタシを呼んだ
「ほれアレ、控え室にあるから着てみな?」
「あっ…ありがとうございマス」
アタシはアタマを軽く下げると控え室に入った
- 175 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:33
- 控え室では、すでにごっつぁんとミキティが
着替え終わってた
ごっつぁんもガクランは止めたらしく、濃い生成りと
言うか、薄いベージュみたいなスーツにブルーの
ワイシャツを着てる
髪もいつもより念入りにキチッと後ろで結んでた
ミキティはリクルートみたいな紺のスーツに
落ち着いたピンクのワイシャツを合わせて
髪型はいつも通りだけど、前髪とかサイドとか
ムースで少し落ち着かせて固めてた
二人がお先と出ていって、アタシも着替え終わると
いちーさんが入ってきた
「ぉおっ お前、ヤバイくらい似合うなー」
アタシは鏡に映る、淡いグレーのスーツと柔らかい
オムレツみたいな黄色いワイシャツを着た自分を見た
シャギーの入ったサイドの髪と、前髪はオールバックに
なるようにムースで撫で付ける
・・・なんか、たしかにいつもと違うカンジ
アタシがアタシでなくなる様なワクワクしたキブン
- 176 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:33
- 「きまってるじゃん?
・・・ま、市井ほどじゃねーけどなぁ」
ライターのカチッて短い音がすると細い煙が
アタシの方に流れてきた
「いちーさん、着替えないですか?」
「市井は裏方だからなー
お見せ出来なくて残念だけどな」
アタシが振り返るといつの間に着替えたのか
いちーさんはジーンズから黒いパンツと白の
ワイシャツ姿になっていた
口にタバコを咥えながら、少し煙そうに目を細めて
黒い丈の長いエプロンを腰で結んでた
・・・洋画に出てくるギャルソンみてー
「・・・充分キマってるじゃないですか」
「まぁーーーな」
いちーさんはそっけない口調とは裏腹に楽しげに
ニヤリと笑った
- 177 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:34
- いちーさんの顔を見てると、あの立ち聞きした日の
声がアタシの耳の奥にひっそりと甦った
・・・市井が女なら誰とでも付き合うと思ってるのか
・・・アレは・・・どーゆうイミだろう?
そのコトバ通り、恋愛する相手がオンナノコだけって
コトなんだろうか?
いちーさんは、ボンヤリとその顔を見てたアタシの顔に
吹きかけるみたいに大きく煙を吐き出した
「・・・なんだよ?」
「・・・イエ、別に」
灰皿でタバコを揉み消しながら、ボソリと呟くように
いちーさんは言った
「お前、一見開放的に見えるけど、意外と自分のこと
言わないだろ? あんまり溜め込まない方がいいぞ
・・・腹ん中に」
・・・ドキリ、とした
「ま、余計なお世話か・・・行こうぜ」
アタシはハイと返事して、いちーさんに続いて
ロッカーを後にした
- 178 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:34
- パーティ会場は賑やかだった
入り口んトコで、来てくれたヒト達のポラロイド
写真が撮られた
今日の主役の二人の引き伸ばされた写真の周りが
オチャラケテルようで、どっか温かいメッセージを
添えられた写真に次々と飾られていく
最初のうちは、ドリンクや料理のサービスで
あっちにこっちにと動き回ってたアタシだけど
ビンゴとか、クイズ、ゲームなんかをいくつか
済ませて、歓談の時間になると主役の二人じゃなくて
なぜかアタシがオンナノコに囲まれていた
甘いカクテルの匂いが店中に溢れてる
いつもよりライトの明かりを抑えた照明
普段着より、オシャレしてるオンナノコ達に
腕を引っ張られて、写真いいですか?なぁんて
言われちゃってるスーツ姿のアタシ
周りを見回すとごっつぁんとミキティも
同じようなモンだった
矢口さんのギャルソンスタイルが、どこか
ファーストフードの店長みたいで笑える
- 179 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:35
- 撮っても撮っても、また次のヒトがやってくる
今度は年上らしいカナリキレイメのヒトだった
結構酔ってるのか、潤んだ瞳でアタシの顔を
じっと見ると溜息を漏らすように言った
「・・・ステキね、あなた・・・かなり、好み」
「ハハ・・・どーも」
友達らしいヒトが、撮るよーとカメラを向けると
そのヒトはアタシの腕を自分の肩に回して
寄りかかってきた
・・・うわっ 積極的ーってか、アタシがオンナだって
わかってるんだよねぇ?
パシャってシャーターの音がすると、そのヒトは
するりとアタシの腕を外して、スーツのポケットに
ナニかをそっと忍ばせた
「・・・よかったら、今度会わない?・・・二人で」
意味深に微笑むと片手をヒラヒラ振って
カメラを持つ友達のトコに戻って行った
「・・・キミ、モテるんだ?」
カラカイを滲ませた、そっけない声に顔を向けると
イイダさんが目を細めて笑ってた
- 180 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:35
- 少し離れたコトからゆっくりとアタシに近づいてくる
黒味がかった深いワインレッドのドレスみたいな服の
広がった裾と長い髪の先が、ゆらゆらと揺れる
アタシの目の前までくると、アタマの上から爪先まで
視線を動かし、赤いクチビルを開いた
「カオリの犬にしてあげようか?」
「・・・イヌ、ですか?」
「そ、ペット・・・どぉ?」
「え、えぇ〜とぉ」
アタシがモゴモゴと口ごもると、ウ・ソ と
クチビルが動いた
そして、その口元が微笑みの形になった
「あ、来た来た・・・こっち、おいでよー」
少し声を大きくして手招きする先を見ると
梨華ちゃんとあやちゃんが立ってる
「飯田せんぱぁ〜いっ
超キレーじゃないですかぁ?!
ダメですよ?主役さんを食っちゃいます」
あやちゃんはイイダさんの前まで来ると
人差し指を顔の前で、ノンノンと振った
- 181 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:36
- 「そ?ありがと
松浦もさ、意外と似合うんじゃない?」
アタシのスーツ姿をアゴで示して見せるイイダさんに
あやちゃんは顔をぺかっと輝かせた
「ですよね〜? まつぅらもミキたん、あっココの
従業員のコからハナシ聞いて、やれるモンなら
やりたいって思いましたモン」
・・・似合いそうかも?
意外なカンジだけど、あやちゃんの最初甘えたように
聞こえるしゃべり方は実はリンと芯がある声だし
いまもキラキラ輝いてる眼差しはいつでも揺るぎなくって
時々、イタズラっぽく変える瞳の色は少年ぽさが見え隠れしてる
・・・そう・・・たぶん、自分の魅力をわかってる
自信に溢れてるオンナノコなんだと思う
「そぉだ〜〜ミキたん、紹介しますね?
こっちこっちぃ!」
あやちゃんはキョロキョロした後、イイダさんの
腕に自分の腕を絡ませて、サッサと歩き出した
ただ微笑んでみんなを見てた梨華ちゃんを振り返り
ながらイイダさんは言った
「石川ー ちゃんと楽しむんだよ」
梨華ちゃんは、ハイと頷いた後、改めてマジマジと
アタシを見た
- 182 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:36
- 「・・・ひとみちゃん・・・かっこいい」
「そっかな?」
「うんっすごぉーくかっこいい・・・かっこいいよ」
梨華ちゃんがぽわんとした表情で熱に浮かされたみたく
アタシにカッコイイ、カッコイイって言う
そのコトバがアタシのアタマん中で呪文みたいに響く
ソレはアタシに魔法をかける呪文
いつもと違う雰囲気で、お酒を飲んだワケじゃないケド
まるで酔っ払ってるカンジで、いつもとチガウアタシが
梨華ちゃんに笑いかけてる
気がついたら、アタシは梨華ちゃんの腰に腕を回してて
少し引き寄せると顔を覗き込んでいた
「・・・惚れ直した?」
梨華ちゃんは一瞬ビクッってカラダにチカラを
入れたけど、すぐに抜くとくすぐったそうに笑った
「ふふっ恋人みたい」
「えーっ コイビトじゃなかったの?…なんちて」
魔法にかかってるアタシには梨華ちゃんの笑顔が
とても嬉しそうに見えた
- 183 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:37
- アタシが梨華ちゃんの笑顔に目を細めて
ジッとその顔を見てると、ためらいがちな声がした
「・・・あのぉ、写真一緒に撮ってもらえませんか?」
「オッケーー♪」
さっきまでのドコかオドオドして、引きつった笑顔の
アタシとまるで別人
すごく自信ありげに笑ってる自分のカオが見えるようだった
梨華ちゃんの腰から腕を放すと、そのクチビルが
一瞬、拗ねるように窄み、アタシの顔を見てた目線が
すっと足元に落とされた
・・・ヤキモチ?・・・まさか、ね
アタシは首を傾げ、梨華ちゃんの耳元にそっと囁いた
「・・・本命は・・・わかってるでしょ?」
俯いたままの梨華ちゃんの頬がキレイなバラ色に染まってく
・・・なんだかやたらとキブンがよかった、羽が生えた
みたく軽くなってく
・・・自分が開放されてく、みたいに
・・・魔法だってわかってるのに
きっとコレは、ホンの一時の、マボロシみたいな時間だから
- 184 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:38
- パーティが終わって、普段着に着替えて後片付けを
しながら、手伝ってくれてる梨華ちゃんの横顔を
チラッと盗み見る
スーツを脱いで、会場の熱気が消えるとアタシは
イヤに冷静になっていた
さっきはナンかに憑かれてたとしか言いようがない
思い出すと恥ずかしくてカオから火が出そうだった
・・・梨華ちゃん、アタシのコトなんて思っただろ?
ちょっとだけ、コスプレするヒトのキモチが
わかった気がする
・・・いつものアタシじゃなかったケド
さっきのコッパズカシイアタシも・・・やっぱり
アタシなワケじゃん?・・・ややこしいケド
・・・だけど、今日しかアタシを見てないヒトは
アレがアタシだと思うワケでしょ?
自分で思ってるアタシとか、ヒトから見たアタシとか
実は案外イイカゲンなモノなのかも知れない
- 185 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:39
- 最近、梨華ちゃんといるコトが増えて
なんだか自分がワザとオトコっぽく、強い人間のように
振舞ってる気がしたりした
だけど、ソレはそーゆうアタシを見せたいというより
気付いたらそうなってた
フツーに、自然に・・・いつの間にか
改めてイシキしてみるとソレは、無言のアピール
だったのかも知れない
アタシは他のオンナノコと違う
だからもっと頼ってイイよ
・・・ちゃんと受け止めてあげるから
だから、アタシは梨華ちゃんのトクベツだよね…って
・・・よくわかんナイケド
今までだって、わざとオンナノコっぽくとか、自分を
弱く見せようとはあんまり思ってなかったケドさ
・・・だけど、オンナノコっぽくないって言われると・・・
どっかで、イケナイんじゃないかと思ってた
・・・だって、アタシはオンナじゃん?
けどさ・・・ダレに見せるタメに自分をそんな風に
飾る必要があるんだろう?
いまアタシが恋してるヒトは・・・梨華ちゃんで
その梨華ちゃんによく思われたいっていうのは
自然だよね?
・・・だけど、梨華ちゃん以外のヒトの目に
どー映ったって、それはそれでいいんじゃん?
- 186 名前:恋と呼んでもイイですか? 投稿日:2004/03/04(木) 19:39
- どんなふーに見えてたとしても…アタシはアタシだし
そこら辺のオンナノコとひょっとして違ってたり
したとしても、それが吉澤ひとみなんだ
だからと言って、アタシらしーとか、らしくナイとかって
コダワッチャウのも違う気がする
たった今日一日のコトでも今まで知らなかった自分がいた
きっと、まだまだいる、アタシの知らないアタシが…
そんなアタシがいっぱい出てくるのも恋って呼ばれる
モノについてくるコトなのかも知れない
アタシは知らずにいたキモチを知ってしまったから
・・・変わって行くしかないんだ
だったら・・・受け止めて行くしかないよね?
まだ知らないアタシと、ずっと、どっかアタマの
片隅でそんなふうに思っちゃイケナイって考えてた
・・・梨華ちゃんへのキモチも
だってさ・・・ソレがアタシなんだから
それにもうアタシは梨華ちゃんに出会っちゃったんだから
・・・恋しちゃったんだから
- 187 名前:Sa 投稿日:2004/03/04(木) 19:41
- 更新致しました。
なち様
ヤバィですか?(w
そのオコトバは作者にはヤッベ〜〜〜ってくらい
嬉すぃ〜です♪(0^〜^人^▽^ )<ハッピィ〜!
54@前作様
ニブイですよねぇ?・・・かーなーりぃー
ヒトリゴト・・・確かにっ!!! そっか!!!
そーかっっっそうなのかっ…メモっとこっと(w
コナン様
お初でございまっす
ロムッて頂いてたそうでありがとうございます♪
作者もモ~ソ~をアタマん中で映像化して書いており…(w
- 188 名前:コナン 投稿日:2004/03/04(木) 21:43
- 更新お疲れさま
よっすぃ〜の気持ちがすっごくわかるわぁぁぁ!!
とってもかっこいいっす!大好きっす!
いしよしのまったり度をもっと見たいっす!
- 189 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:53
- 店の戸締りして外に出ると、デパートの前の
道路にいちーさんが車を横付けしたトコだった
車の窓を開けるといちーさんが機嫌よさそうに
みんなに言った
「乗れ、乗れー!!!」
たまたまアタシが一番道路側にいたから
ワンボックスカーのドアをスライドさせた
「失礼しまーッス」
アタシは二列目のシートを倒しながら三列目に座った
続いて梨華ちゃんが乗ってきてアタシの横に座る
「・・・お邪魔します」
梨華ちゃんが小さな声で言うと、いちーさんは
振り返ってニカッと笑った
次に乗ろうとしたごっつぁんにいちーさんは
後ろのシートを親指で指しながら言った
「三列目せめーから、二列目が三人な?」
- 190 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:53
- 結局、ごっつぁん、ミキティ、あやちゃんが
二列目に座って、助手席は矢口さんになった
「えーーーっ、矢口が助手席かよぉ〜」
大声を出す矢口さんをいちーさんが横顔で睨む
「・・・なんだよ?市井の隣が不満かよ」
「えぇ?だってさー寝れないじゃぁん」
「寝ていいぞ?そのかし、まりっぺの酒は買わなーい」
「きったねぇ〜ベストコンデションで飲み明かそーと
思ってたのにさぁー」
ギャイギャイ文句を言う矢口さんを慣れたカンジで
適当に相手しながらいちーさんの車は滑るように走り出した
五十日でもない夜も半端な時間
高速の上をいちーさんの車はスイスイ走ってく
流れに乗って、ムダに揺れたりなんかしないで
いちーさんは車の運転がかなり上手かった
なんつーか迷いがナイんだ
ソレはここんトコ、いちーさんと話してみて
アタシが持った印象と似ていた
- 191 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:54
- 車の中はいまさっき終わったパーティの話しで
盛り上がっていた
何人くらいのコに写真撮ってと言われたとか
芸能人みたく握手してって言われたとか
自慢話みたく盛り上がるミキティとごっつぁんに
アタシはココロの中で祈った
・・・どーかハナシをふられませんよーに
ケド、そんな願いも空しく、二人は声を揃えて言った
「「やっぱ、一番はヨッスィ〜だぁね」」
オォォノォーーッ…
すっかり小心モノに戻ってるアタシは
横から梨華ちゃんにジトーーーと睨まれてる気がして
言い訳したくなった
「ま、ナンつーか、ノリ?
あーゆーのって軽〜いその場のノリだよね?」
ごっつぁんがどこから出したのかポッキーを
齧りながら言った
「ナニ言ってるんの?ヨッスィ〜
んなの当たり前じゃぁーん」
- 192 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:55
- ミキティが、ガバッと後ろを振り返ってアタシの
顔を見て、ニヤニヤ笑う
「ナンですかーぁ?ヨッスィ〜サンはひょっとして
マジで口説かれちゃいましたかーぁ???」
「口説かれちゃいました〜〜〜ぁ」
あやちゃんまで振り返って面白そうにエコーをかける
「ちぃ、違うってぇーーー」
アタシがあわくって否定するとアクマみたいな二人の
声がハモル
「「あぁーやぁーし〜〜〜ぃ」」
あちゃぁぁぁーーー
・・・墓穴の掘りまくり???
隣からの視線がチクチク刺さる気がして横を向く
勇気がアタシには出なかった
冷やかしのコトバをいくつかアタシに投げつけると
カラカウコトにあきたのか、後ろを向いてるのが
メンドーになったのか、アクマな二人は前を向いて
違う話をしだした
ごっつぁんは運転席の背もたれ越しに上半身を
乗り出すようにして前の席の二人と話してる
- 193 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:55
- アタシがいろんなイミで隣の気配に敏感に
なりながら、手を座席の上に置くとその指先に
かすかにナニかが触れた
ドキィィイーーーン
冗談じゃなくつま先からアタマの向こうに
ショーゲキが駆け抜けた気がした
バクバクバクと心臓が喘いでる
指先と指先がちょっと触れてるだけで?
・・・ありえねぇー
固まっちゃったアタシの左手の指先の下から
控えめに柔らかい体温が伝わってくる
ドッドッドッと意外に深く切っちゃったキズ跡から
血が滴ってくみたいに触れる指先が熱い
・・・アツイヲコシテイタイヨ
さっきあの腰に手ぇ回したじゃん???
そんでもヨユーで笑えたじゃん???
だけど、薄暗くちょっぴり狭めのシートの上で
ほんの少しだけ触れる指先はアタシに心臓発作を
起こさせようとするみたいにムネの動悸を楽には
してくれなかった
- 194 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:57
- カラダの全てが石化してたアタシだけど
アタマん中は目がまわちゃうくらいグワングワン
回転してた
アタシの手、汗ばんでナイ?
ミョーな震えとか伝わってナイ?
イヤじゃ…アレ???
ナンで梨華ちゃんはどけないワケ?
気ぃ使ってくれてんの?・・・なんのタメによ?
ひょっとして気づいてナイとか?
アタシはギギギと音がしそうにぎこちなく
首をまわして梨華ちゃんを見た
・・・寝てるしーーーっ
がっくりとカラダ中から力が抜ける
なんだよなんだよなんだよーーーぉ
バカみたいじゃんバカみたいじゃん…ホント、バカ
おかしーなぁ、絶っ対、視線カンジてたのに・・・
ただのウヌボレ?
だぁ〜よね・・・だってアタシら友達だもんね?
さっきみたく、コトバのアソビみたいなコト言ってみたトコで
友達は・・・友達じゃん?
アタシは梨華ちゃんの閉じられた瞼の先で小さく揺れる睫毛を
見ながら、指先にそっと触れてる爪を撫でた
- 195 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:58
- ガタンと車が揺れて、パチッと目が覚めた
・・・やっべ、アタシまで寝てたじゃん
「あ、起きた?」
アタマの上から声が聞こえて、アタシはガバッと
カラダを起こした
・・・ありっ???
あ、あのぉ〜〜〜アタシ、ひょとしてぇ
梨華ちゃんは、うぅーーーんと伸びをしながら
キョロキョロした
「着いたみたいだね?」
ミキティがカラダを浮かせて、あやちゃん越しに
スライドドアに手をかけながらアタシを見て
ニヤニヤ笑う
「ヨッスィ〜、まだ寝ぼけたカオしてるよ
・・・起きたくなかった? ん?」
「石川の膝枕は寝心地よかったかぁーーー」
助手席から矢口さんの笑いを滲ませた声が飛ぶ
・・・やっぱりぃーーーっ?!!!
・・・覚えてナイよ・・・ぜぇんぜぇえん
なんつーモッタイナイことを・・・アタシのバカァーッ
- 196 名前:BigWave 投稿日:2004/03/06(土) 09:59
- 車を降りる時に矢口さんに、いい御身分だよなぁって
からかわれたり、いつの間にか買出しされてた荷物を
下ろす時、ハイって、ごっつぁんに全部持たされたりした
梨華ちゃんがさりげなく手を伸ばして、ビニール袋の
一つを持ってくれようとする
アタシは慌てて手を引いた
「いっいいよ」
「そんなに持ってたら手が抜けちゃうよ?・・・かして」
「・・・ゴメン」
素直に袋を渡すアタシに梨華ちゃんは、ううんと
首を横に振った
・・・カッコつけたいトコだけど・・・マジ重かった
こいつら、どんだけ酒、買ってんだよっっっ
アタシはナンとも言えない気恥ずかしさに
咳払いをして、梨華ちゃんをチラッと見た
「・・・あと、さっきは・・・ありがと」
「ど〜いたしまして」
暗くて表情はよく見えなかったケド、梨華ちゃんの声は
笑ってるみたいにアタシの耳には甘く聞こえた
- 197 名前:Sa 投稿日:2004/03/06(土) 10:05
- 更新致しました
コナン様
(*/〜\*)<わかってくれちゃうなんてうれすぃ恥ズカシだYO〜!
まったりしてませんね(w
…すんませぇ〜ん(汗
- 198 名前:なち 投稿日:2004/03/06(土) 13:18
- ぃゃ〜ん♪ちょっとイィ雰囲気なんじゃナイのって〜♪
膝枕なんてして貰っちゃって〜♪
- 199 名前:コナン 投稿日:2004/03/06(土) 23:06
- 更新おつかれさま
膝枕?????きゃぁぁぁぁぁうだやましいっす。
よっすぃ〜せっかくの膝枕なのに覚えてないなんて・・・・・
もっとまったりしてください(エロも可)w
- 200 名前:名無し読者79 投稿日:2004/03/09(火) 18:20
- お久しぶりです。
ますます甘〜い雰囲気になってきましたね。
このメンバーも動きが…。次回も期待してます。
- 201 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:38
- コテージにつくと早速、宴会が始まった
ココのコテージは面白いコトに和室がメインで平屋だった
お世辞にもキレーとは言えない古い建物で
見た目、似たようなコテージがいくつか坂の途中
途中に建っている
けど、海まで近いからいいんだと、いちーさんが
缶ビールを手にしながら笑う
海までは抜け道みたいな怪しい道無き道を下れば
三分もかからないらしい
入るとすぐ、一応フローリングのリビングダイニングの
狭いのがあるけど、その横に十畳?十二畳???くらいの和室と
次の間まである和室にアタシ達は円陣を組むように
座り、思い思いにビールやチューハイに手を出し
コンビニのお惣菜や乾き物をつまみにした
結構みんなお腹が空いてたみたいで、あんまり
美味しいとは言えない目の前に並んでるモノを
黙々と食べてた
あっちこっちに空いた缶が出てくる頃
お惣菜に付いてた割り箸を矢口さんがベキッと折った
- 202 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:38
- 矢口さんは自分のバックを手繰り寄せると、そこから
ペンを出してフフフ〜ンとか機嫌良さげにハミング
しながら割った割り箸にナニやら書いている
「ジャーーーッン!!!」
矢口さんは七本の割り箸の先を片手で隠すように持って
高々とみんなの前に出して見せた
「王様ゲームしよーーーっぜ!」
・・・マッジ???
フツーならアタシも盛り上がるコトスキだけどさ〜ぁ
このメンツってなぁぁんか・・・楽しみよっか不安
横の梨華ちゃんを見ると顔にわくわくって書いてある
・・・スキなんだね?
「ちこぉ〜よれ、ホレホレッ」
矢口さんがみんなを手招きして、せ〜〜のって
掛け声と共にソレゾレが一本づつを手に取った
- 203 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:39
- 「やりっ!!!市井が王様じゃん
そーだな・・・1番と7番にキスでもしてもらおうか?」
市井さんがニンマリと笑って周りをぐるりと見回す
・・・マッジ???
一瞬、梨華ちゃんの顔がアタマに浮かんで
心臓がギュッって縮む
・・・見たいような見たくないよーな
いつの間にかキツク握ってた割り箸の先にかかれた
数字を恐る恐る見ると、その二つでは無かった
みんなが自分の数字を見てるとごっつぁんが
シラケタ声で言った
「・・・いちーちゃん、自分のシュミに走ってんじゃないのぉ?」
市井さんは大袈裟に肩を上げるとごっつぁんの顔を見た
「何が言いたい訳?・・・ただの余興だぜ、しらけるなぁー
それに市井はどこにしろとは言ってないっつーの」
隣同士に座ってるいちーさんとごっつぁんの視線が絡み合った
- 204 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:39
- 「やっぱしぃ、アッタシってラッキーガール?」
あやちゃんが、7と書かれた割り箸を左右に振りながら
ニッコシと笑った
一瞬緊張しそうになった空気が、スッと和んでいく
あやちゃんの横に座ってたミキティが、割り箸を
クルクル回しながら、あやちゃんのカオを見た
「お相手はミキでいい?」
「いいよ〜ン・・・けぇ〜どぉ アッタシのキスは
余興でお見せするほど安くはないのだ」
あやちゃんがニシシと笑うとミキティは首を傾げた
「んじゃ、どーすんの?」
「ミキたぁん アッタシと付き合お?んねっ」
あやちゃんは、ご飯食べに行こ?って言うのと
おんなじカンジで言って、ミキティのカオを
覗き込むと、いぃ〜じゃん、いぃ〜じゃんって
ミキティの腕を軽く揺すった
「・・・い・・・いけど」
めずらしくミキティが白く見えるほど
真面目なカオでボソリと答えた
・・・えぇんかっっっ???
・・・ってかコレも余興なのぉ?・・・わからん
- 205 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:40
- 「やりぃっ♪」
あやちゃんは右手で小さくガッツポーズをとると
ミキティの方を向いたまま瞼を閉じた
「ハイッ!ミキたんっやっちゃってー」
ミキティはちょっとだけ困ったみたいに笑うと
あやちゃんの鼻の頭でチュッと音をさせた
あやちゃんが目を閉じたまま、ん?ん?って
尖らせたクチビルを近づける
ミキティはそのオデコを軽く叩いた
「おっしまい」
「えーーーっ?!つまんなぁーいっ
ミキたんはぁ、もうアッタシのクチビルに
キスしていーのにぃ・・・ね〜ぇ?」
どぉ思う?と言うようにあやちゃんはみんなのカオを
見回した
「マツウラには、ほっんとかなわねーなぁ
ま、幸せになってくれよ?」
矢口さんが苦笑いを浮かべると、あやちゃんは
ミキティの腕に自分の腕を絡ませた
「もっちろぉんっ バッチシですよー」
- 206 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:40
- 「仕切り直すかぁー」
市井さんがみんなの手から割り箸を集めて、ささっと
言いながら差し出した
自分の手に残った割り箸の先を見ながら、おぉっと
声を上げるといちーさんはソレをみんなに見せた
「また市井、王様だとよ、今度は・・・そーだなぁ」
市井さんは目の前に置かれた食べ物の中から
ポッキーを取り出した
「今度は両端から、これでも食べたもらおーか
スタンダードだろ?」
・・・なんか、エロい
フツーにキスするよか、そんなカンジしないかぁ?
「いちーちゃんっ」
ごっつぁんがジィーって横目で睨むといちーさんは
目を丸くした
「ムキになんなよー 洒落だろ?
酒の席だぜ、普通しねーかぁ?・・・ま
不評ならこれで終わりにするわ
んーじゃ、4番と6番!」
- 207 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:41
- アタシが息を呑むより、隣の梨華ちゃんから
ゴクッと大きな音がした
「だーれだっ?!」
すでに酔ってるのか矢口さんがやたら陽気な声を出す
アタシが軽く右手を上げて見せると隣の梨華ちゃんから
フッと力が抜ける気配がした
そして小さな声が聞こえた
「・・・あたし、です」
えええぇぇぇーーーーっっっ!!!
マジで?マジで?マジでぇぇぇー?!!
・・・心臓がバクバクしてきた
いちーさんは手に持ったポッキーを咥えながら
ニヤリと笑うとアタシに箱を投げて寄越した
アタシの伸ばした手の先を箱が掠めて落ちる
・・・やっべ、ドウヨウしてんのがバレちゃうじゃんっっっ
そりゃ、いちーさんの言う通り、他のダレかとだったら
シャレに出来る気がする
こう言っちゃあナンだけど、ブサイクなオトコとするよか
このメンツなら嬉しいくらいだ
そりゃぁさ、そんなトコ梨華ちゃんには見られたくないケド
- 208 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:41
- アタシはイイ?って聞くとポッキーの片側を咥えて
梨華ちゃんの方に身を乗り出した
梨華ちゃんが膝の上に置いた手にギュッって力を
入れるのが見えた
そしてそのまま反対側をスゲーイキオイでパクッって
口に入れるとバッっと目を閉じた
・・・うっわぁぁぁーーーっっつ
ちょっとぉぉお、目ぇ閉じないでぇぇぇ
想像するじゃんかぁぁぁーーー!!!
「ぶぶっ!!おもしれー顔っ」
わざわざ矢口さんが腹ばいになってアタシ達のカオを
覗き込む
梨華ちゃんはバチッと目を開けて、えっ!と大きな
声を出した
その拍子に梨華ちゃんのクチビルから
ポロッとポッキーが落ちた
「ダッメじゃぁ〜ん
ま、石川も間違ってこんなんがファーストキスに
なったら、笑えねーよなぁ」
ギャハハハハと大声で笑う矢口さんを梨華ちゃんは
真っ赤なカオしてポカポカ叩いた
- 209 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:42
- 「ファーストキスゥ???
ね〜ね〜ミキたぁん 石川さんってぇ」
あやちゃんがミキティのカオを好奇心いっぱいの
表情で覗きこむ
梨華ちゃんは真っ赤なカオのままガチッと固まった
その時、いちーさんがさりげなく大きな声を出した
「お前ら失格だぞ 罰ゲームだ、買出しして来いよ?
坂下りて、すぐんとこコンビニあったろ
酒足りなくなりそうだし、な」
片手で口元を隠して、もう片方の腕をカラダの横に
ダラリと落として、どっか遠くを見てるみたいなカオ
してる梨華ちゃんにアタシは声をかけた
「買出しだってさぁー行こっ梨華ちゃん」
「・・・・・・」
「梨華ちゃんっ?!」
「あっ・・・う、うんっ」
まだ赤みの残る頬を押さえながら立ち上がると
梨華ちゃんはアタシにギコチナク笑って見せた
- 210 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:42
- さすがのアタシも道無き道を下りようとは思わない
車でさっき上がってきた道でさえ、街灯はあんまなくて
足元の白っぽい砂が、月明かりを反射して
ちょっとだけ発光してるみたく光って見えた
・・・あ〜〜〜海の匂いだ
潮風はほどんどないケド、それでもザザンって音がする
大きく息を吸い込もうとムネを反らした時
アタシの腕を梨華ちゃんが掴んだ
ドクンッ
「なっな、なにぃっ?!!!」
「・・・え? あ、サンダルに砂入っちゃった」
梨華ちゃんは驚いたカオしてアタシを見た後
サンダルを手に持って払って履きなおすと腕を放した
「暗いからビックリしちゃった? ごめんね」
「あ、あぁ・・・う、ん」
・・・アタシ、意識しすぎだっつーの
オンナノコ同士なんだから、ナンもなくても腕くらい
組むだろ?
高校の時だってよくあるコトだったじゃん?
・・・ま、アタシからはしたコトないケドさ
「・・・さっきのマジかなぁ?」
「さっきの?」
「あやちゃん・・・」
「・・・あ、ん〜?」
- 211 名前:BigWave 投稿日:2004/03/11(木) 20:43
- ・・・アタシ、ナニ聞いてんの?
なんか、つい口にしちゃったケド
梨華ちゃんは人差し指をアゴにあてて、目を宙に彷徨わせる
「・・・松浦さんて、どっか冗談だか本気だかわからないとこ
あるけど、そういうことでは冗談言わない気がするな」
「・・・そーゆうコト?」
「ん、人の気持ち試すようなやり方はしないんじゃない
かと思うの」
「ぁあ、うん ナンか、わかる気ぃする」
「・・・それに、ほんとに好きだったらいいんじゃないかなぁ?
「いいって?」
「・・・女の子同士でも」
どこか自信無さそうに、迷うような声の梨華ちゃん
・・・ホントにそう思ってる?
自分に置き換えても、そう言える?
アタシは足を止めて梨華ちゃんのカオを見た
梨華ちゃんもジッとアタシのカオを見返してくる
・・・聞きたいケド、聞きたくない
アタシは開きかけた口を閉じて前を向くと歩き出した
梨華ちゃんもアタシがどー思うかは聞いてはこなかった
- 212 名前:Sa 投稿日:2004/03/11(木) 20:44
- 更新致しました
なち様
膝枕・・・ポッ!今更ですが(w
この二人だと絵になるなぁ〜( ○^〜^)人(^▽^ )
コナン様
覚えてないんっすよぉ〜フビンだなーぁ
他がまったりしちゃったような…(w
名無し読者79様
ヒサブリでっす♪
コレって甘くなってるんでしょーかぁ???(w
チョイいちーさんが書きにくい今日この頃でゴザイマス(汗
- 213 名前:なち 投稿日:2004/03/11(木) 23:12
- 待ーーってましたー♪♪
何か親密しそーな、しなそーな…(笑)
梨華ちゃんかわぃぃ♪動揺しまくりのよっすぃ〜も
かーわぃぃ♪♪次回も楽しみ待ってまーす( ○^〜^)人(^▽^ )
- 214 名前:名無し読者79 投稿日:2004/03/12(金) 16:41
- 甘いですよ〜(^^)雰囲気がね。なんかこういう関係もいいですね。
次回どうなるか楽しみに待ってます。
- 215 名前:コナン 投稿日:2004/03/14(日) 02:53
- 更新お疲れさま〜
よっすぃ〜が意識しちゃって可愛いわぁ!
これから甘々かしら!!
気になるぅぅ!!
- 216 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:51
- 「…無い…無い・・・無いよぉ〜〜〜」
っんだよっ!!! ナイナイってうるせーつぅの
あ〜〜〜アタマがおっもいぃぃぃ
「あ、ああぁぁぁ〜〜っ!!!」
甲高い絶叫にアタシは飛び起きた
見ると、梨華ちゃんが自分のカバンにカオを
突っ込むようにしてる
「な、なにぃ?…どしたの?」
「あ、ひとみちゃぁん・・・おはよ」
半分泣きそうになりながら、まずは朝の挨拶をする
梨華ちゃんにアタシは笑った
「何が可笑しいのよぉっ!!!」
今度は怒ってるよぉ〜 おもしれー
梨華ちゃんってホント、すぐカオに出る
スゲーぶすぅっとしたカオになってきたから
アタシは笑いをどーにか収めた
「んんっ はよっ で、どーしたのさぁ?」
「・・・あのね?・・・水着忘れちゃったみたい」
アタシはポカンとした後、また笑ってしまった
- 217 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:52
- 矢口さんと、いちーさんはそこらに転がってまだ寝てる
残りの三人はもう海へ行ったらしい
ダイニングの椅子に座って、アタシは梨華ちゃんと
コンビニの菓子パンで朝ごはん中
「・・・あ〜あぁ」
パンを一口齧るごとにため息をつく梨華ちゃん
「しょーがナイじゃぁん?
…梨華ちゃん、意外とザッパーだかんなぁ」
「・・・ひとみちゃん、ひとごとだと思ってぇ」
「ヒトゴトだしぃー」
アタシがギャルっぽく言うと、キッと睨まれた
・・・おぉーこわっ
小心なアタシはこんくらいで止めとくコトにした
それに、アタシはちょっと浮かれてる
水着姿が見たくナイって言えばウソになるケド
アタシさえ海に入らなければ、ずっと二人で過ごせるワケだし
「・・・アタシも入んナイから」
「え?」
「う・みっ」
「・・・そんなのって・・・いいよぉ」
「いーのっ アタシ、ヘタに日焼けすると後ヒサンだし」
何か言いたげに上目遣いでアタシを見るカオを
無視してパンを口に運んだ
- 218 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:52
- せっかく来たんだから海見に行こうよ、と
梨華ちゃんはホルスタータイプの背中が開いた
キャミに着替えた
髪をポニーテールに結ぶと、アタシに日焼け止めを
渡しながら後ろを向いた
「背中、ぬって?」
肩越しに振り返って照れくさそうに笑ってみせる
・・・ちょっと反則じゃナイ?
・・・カオが赤くなりそーだ・・・アタシ
・・・薄い肩先から続くスベラカな背中
天使の羽が生えてきちゃいそうなナダラカな隆起
・・・フレタクナイ、フレルノガコワイ
断れるワケもないのにアタシはイヤそうな声を出した
「ぇえーーーっ」
「何よぉっ必要ないって言いたいのっ?
これでも気をつけてるんですぅっ!」
仕方ないから少し乱暴にササッと、梨華ちゃんの背中に
日焼け止めをぬりたくった
やっぱり、しっとりとした肌理の細かいそのカンショクは
手のひらからなかなか消えそうにナイと思いながら
「ハイよっ!」
「ありがと〜」
そして、アタシ達はブラブラと坂道を降りて砂浜へと出た
- 219 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:53
- サンサンサンと降り注ぐ太陽のしたで波打ち際を
歩くアタシと梨華ちゃん
平日なのに、カップルにグループ、ファミリーとか
結構、人がいる
そっか、もう夏休みだモンね
カラフルなパラソルと海に浮かぶ浮き輪
見渡しても、ごっつぁん達は見当たらない
ふいにバシャッと音がして、アタシのモモの辺りに
水がかかる
「やったなぁっ?!」
「キャァーッッッ!!!」
アタシも逃げる梨華ちゃんを追いかけて続けざまに
バシャバシャとお返しした
梨華ちゃんはスゲー悔しがりでムキになって
やり返してくる
かなり意地になって、ムチャクチャにムダな水飛沫を
飛ばしてくるケド、命中率がイイとは言えないし
- 220 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:54
- 「ひとみちゃんずるーいっ!あたしばっかりぃっ!!!」
ゼイゼイ言ってる梨華ちゃんをアタシは鼻先で笑った
「なんだよー手加減してやってんのにぃ」
「くっくやしいぃぃぃ〜〜〜」
「もう、あきらめなって」
アタシの忠告を無視して、ヤケになったように
全身でバチャバチャやってる梨華ちゃんは
どっちかっつーと、自分にかかってる
と、その動きがピタッと止まる
「ひ、ひとみちゃぁーん」
「んー?」
「あ、足つっちゃたぁ〜〜〜」
泣きそうなカオしてる梨華ちゃんにアタシは
爆笑した
ほんっと手がかかるよ、アタシの好きなヒトは
ま、そんなトコも・・・・んだけど、ね
- 221 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:54
- しばらく砂浜で休んでると、梨華ちゃんがまた動きだした
波打ち際でしゃがみ込む背中にアタシは声をかけた
「ナニしてんのぉー?」
「こっち、こっちぃ!」
満面の笑みで手招きする梨華ちゃんにアタシはカオを
しかめてみせた
「・・・足つっちゃったみたい」
「んっもぉ〜〜〜」
梨華ちゃんは口ん中でブツブツ文句を言いながら
アタシのトコに戻ってくると、自慢げに手の平を広げた
その上で淡く甘いピンク色した貝殻が転がる
・・・ココまで乙女チックってどーよ?
ドコまでも期待を裏切らないヒトだなー
アタシがニヤニヤすると、ぷぅと頬を膨らまして
何よぉ、と小さく叩いてくる
・・・梨華ちゃんって意外と手が出るタイプっぽいし・・・
「痛てっ、こぉら止めなって」
何回か黙って叩かれてあげてたケド、さっきの恨みか
調子に乗ってドンドン力が強くなってくる手をとっさに掴んだ
「捕まえたっ!」
- 222 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:55
- 思わず掴んじゃってから気がついた
ちっちゃな手・・・柔らかい手
・・・ハナシタクナイ
アタシは握る手に自然と力を入れてる自分を遠くカンジタ
戸惑うように梨華ちゃんのマナザシが揺れる
波の音がザザンと響いて、周りの喧騒が遠くなっていく
・・・アタシの耳はこのヒトの声以外聞きたくナイと
耳を塞ぐ
眩い視界が頼りなく揺れて霞んでいく
・・・アタシの目はこのヒト以外映したくナイと
目を閉じたがる
「捕まっちゃったぁ〜」
梨華ちゃんが陽気な笑顔でアタシと繋がってる手を
振って見せる
・・・チガウヨ?ツカマッチャッタノハ、アタシ
繋がれてた手がするりと外されると、つかの間
遠ざかってた真夏の極彩色の世界が
溢れる喧騒を連れて、目の前に戻ってきた
- 223 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:55
- 梨華ちゃんが、何か飲み物買ってくるねっというコトバに
どっか上の空で頷いた
時間が経つごとに遠くで高くなる波をボンヤリと
眺めていると、いちーさんの声が背中越しに
アタマの上からふってきた
「よ〜ぉ、シケタつらしてんなぁ」
白のタンクトップにカーキのバミューダーパンツを
履いて、濃い色のサングラスをしたカオの口元をニヤリと
させると、いちーさんはアタシの横に腰を下ろした
「・・・泳がないんですか?」
「ん?疲れっからなー帰りの運転もあるし
酒も残ってるし、どっかで昼寝でもすっかなってさ」
「そうですか・・・」
いちーさんはアタシに泳がないのか?とは聞かなかった
海の沖のずっと先に目を凝らしてる
「・・・お前さ、石川が好きなの?」
トートツに落とされた小さな呟きにアタシはナゼだか
驚かなかった
「・・・わからないんです」
・・・ウソだ
・・・ホントはわかりすぎてる、忘れさせて欲しいくらいに
おまけに・・・自分だけがわかってるんじゃナンか足んないって
思い始めてるくせに
- 224 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:56
- ココで口に出してしまえばいいコトなのかも知れない
・・・そう思うのに、言い出す勇気が持てないアタシ
かと言って、そんな気はナイと自分のキモチを
隠し通す強さもナイらしいアタシ
「・・・そっかぁ、わかんねーのか」
「・・・ハイ」
「お前さ、前、話し聞いてたろ?市井と後藤の。
文句言う気は無いぜ、あんま、隠す気ねえしなぁー
宣伝して歩く気もねーけど」
いちーさんは遠くを見ながら小さく笑った
「すんません」
「だからいいって、そのことは・・・
なんとなくさ、お前見てると石川のこと好きなんかなって
思っちゃった訳よ んで、ま、なんつーか・・・・・・」
いちーさんはメンドクサソウに頭を掻いた
「・・・・・やっぱいーわ
余計なこと聞いて悪かった・・・まぁた後藤に自分の
趣味うんぬんって言われっちまうなぁーー」
「・・・いちーさんはあんまり得意じゃないんですね」
「なにが?」
「たぶん、優しいコトバとか言うの・・・けど
ありがとうございます」
いちーさんは、アタシのカオを見てニヤリと笑った
- 225 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:56
- 「たださ・・・もったいねーなぁと思ってさ」
「もったいナイ?」
「ぁあ、誰か好きなヤツ出来て、けど、性別とかそうゆんで
悩んで折角芽の出た想いを摘んじまうのが、さ
たいしたこと無いなんて言う気は全く無いけど…
それよりも大事な事はぜってーあるって思うんだ」
「・・・ハイ」
「なんとなくいいな、とか気になるなぁってーのは
よくある話で、でもさ、そんで終わっちゃう事って案外多くね?
種は蒔かれてても芽が出ねーつーか、想いが育つには
なんか足んないっつーか、理屈じゃないよな?」
アタシのアタマにふと昨夜のパーティで、服のポケットに
携帯の番号を書いた紙を入れたヒトが浮かんだ
けど、丸一日もたってないのにそのヒトのカオは
すでにぼんやりとしか思い出せなかった
「・・・それに、条件に合うとか一人は寂しいからとかって
頭ん中で無理に恋してるって思い込むんじゃなくってさ
心が勝手に走り出して止まんないっつー想いは
そうあるもんじゃねぇって市井は思ってるんだ」
いちーさんは、さぁてと、と言いながら立ち上がってアタシを見た
そのカオの濃いサングラスには困ったカオのアタシが映ってるだけで
いちーさんの表情は分からなかった
「しゃべり過ぎたな?忘れてくれよ」
そう言って背中を向けるとそのまま振り返らずに
コテージに向かう道へと行ってしまった
- 226 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:57
- 控え室で恋するってコトがわからないって泣いてたごっつぁん
無くした恋をムネに秘めたままの矢口さん
ジョーダンみたいな軽いノリで付き合いだすって決めた
あやちゃんとミキティ
たぶん・・・オンナノコにしか恋しない、いちーさん
そして、梨華ちゃんに恋しちゃったアタシ
いろんなヒトといろんな想い
いちーさんは、きっとアタシの今の想いを大事にしろって
言ってくれてるんだと思う
・・・ソレはわかる、わかるし、昨夜はそうしたいって思ったりした
だけど、梨華ちゃんの・・・想いは?
・・・望んでる相手がアタシじゃないってコトだけは確かだ
梨華ちゃんはずっと夢みてたから、誰かとずっと一緒にいるコトを
・・・それはたぶん、結婚そのものより家族を持つってコトだと思う
地球が逆回転したって、アタシには叶えてあげられない夢
大事なヒトが抱え続けた夢にとって邪魔にしかならないアタシの想い
・・・ダッタラナクシテシマイタイ、ムネノナカカラ
- 227 名前:BigWave 投稿日:2004/03/15(月) 11:57
- 波にモテアソバレルように寄せては返すアタシのキモチ
ナニモカモノミコンデシマオウ、ミヲマカセナガレテシマエ
イマスグヒキモドセ、モトイタバショニカエレバイイ
「ひっとみちゃぁーーーんっ」
遠くから近づくように投げられた声は、耳の底まで届いて
少し甘く響いてくる
その先には大きく手を振りながら、眩しい笑顔の梨華ちゃんが
アタシのトコへと戻ってくるのが見えた
軽く笑って手を振り返して、その姿から何気なく目を逸らす
目の前には広がる海、真っ白な太陽が悲しいほど眩しい
・・・目が痛くて涙が出そうだよ
さっきよりもまた高くなった波に、のみ込まれそうで軽く眩暈がした
- 228 名前:Sa 投稿日:2004/03/15(月) 11:58
- 更新致しました
なち様
待ってていただけましたかぁ?うれすぃ〜な〜ぁ
揺れマクリの吉澤サンで、ゴザイマス(w
名無し読者79様
そう伝わっていたならうれすぃーデス
なかなかビミョウなキョリの二人なので(w
コナン様
そうですなぁ〜ハタからみたらカワユイかも♪
本人オオマジなんですケドね〜ぇ?(w
- 229 名前:名無し読者79 投稿日:2004/03/15(月) 16:51
- おぉ、前回とは違う空気になってきましたね。
なんか本当この二人、そして仲間の人たちには幸せになってもらいたいです。
次回も待ってます。
- 230 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:12
- 都会の季節は街行くヒトの服の色で変わる
通用口の前で大通りを行く枯葉色のシャツ着たヒトを見て
ため息なんかつく
アタシって案外詩人?
・・・ちげーな、ビョーキだからだ
今月の梨華ちゃんのシフトもしっかり頭に入ってる
早番で終わる日に時間狙って、まちぶせみたいなコトして…
・・・コレじゃぁ一歩間違ったらストーカーじゃん?
・・・だけど
スキナンダスキナンダ・・・ドウシテモドウシテモ
・・・ダイスキナンダ
・・・言わないケド、きっと・・・困らせちゃうから
口に出したりしないケド
オロカなコトしてるってわかってる、だけど・・・
ダイスキナンダダイスキナンダ、ドウシヨウモナクドウシヨウモナク
・・・って、あーーーぁグルグル
- 231 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:13
- 通用口から高く響く笑い声がする
アタシはさも偶然ってカオをした
「あれぇっ?!ひとみちゃん、どうしたのぉ?」
梨華ちゃんが目をまん丸にしてアタシを見る
「ヤァー図書館行ってたんだケド、煮詰まっちゃってさーぁ
キブン変えんのにお茶でもしよーかと思ってたら
梨華ちゃん、出てくんの見えてさ」
会うのにイイワケが必要なアタシと梨華ちゃんの距離は縮まってナイ
・・・美味しいケーキ、見つけたから
・・・ちょっと時間空いちゃって
・・・雑誌に出てた店、行ってみない?
ただカオが見たいから、ただ会いたくて、とは言えないカンケイ
だけど今日のは、ちょっと考えれば不自然なイイワケ
大通りからはココまでなんて見えやしない
なのに、気づこうとしないドンカンな梨華ちゃん
- 232 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:13
- 「・・・彼氏がお迎えかぁ〜よかったなぁー石川
裕ちゃん、ふられちゃったわぁ」
隣にいるエレガにしては年いっちゃってる
茶髪に薄いグレーのアイコン入れたちょっとこわそーな
ヒトが梨華ちゃんに笑いかける
「チーフッ!まぁたそんなことばっかり言ってぇ
それに、ひとみちゃんは女の子でしょっ?!」
「アホやなぁ石川は、そんなん裕ちゃんかて見ればわかるわ」
呆れたような口調とは裏腹に、チーフと呼ばれたヒトは
今にも梨華ちゃんの頭に手を乗せて撫でるんじゃないかって
くらい目を細めてる
・・・アタシを見てよ?
ねぇアタシ、ココにいる
- 233 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:14
- 最近、梨華ちゃんは益々、キレーになったと思う
自信がついたのか、アタシの前だけじゃなくて笑顔も増えたし
職場のヒト達の名前もたくさん出る、アタシの知らない名前ばかりが
喜んであげなくっちゃイケナイ・・・わかってる
・・・わかってるんだけど
・・・こっち見てよ?
自分がこんなにココロの狭い困ったちゃんだなんて
知らなかった
アタシはクチビルを軽く噛んだ
「なんや睨まれてる気ぃするわぁ」
「もぉ〜チーフッ、ほんとにいい加減にして下さいねっ
石川だって怒っちゃいますよ?」
梨華ちゃんはアタシの方を見ない
だから気づかない、アタシ睨んでるかも知れないじゃん?
「ほな、明日な」
そのヒトは梨華ちゃんの肩をポンポンと軽く叩いた後、撫でた
どーしょうもナイ、イヤなキブンに口ん中に苦いモノが広がってく
・・・触ってんじゃねーよっ
視線を逸らしながら、ココロん中で毒づく
そのヒトは、何気なさそうに今度は俯いたアタシの横を
颯爽と通り過ぎて行った
- 234 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:14
- 「なんか、ごめんね?
チーフっていっつも冗談ばっかりなの」
アタシと肩を並べて小首を傾げて可愛らしく笑うカオ
「なんであやまんの?」
「・・・え?だって」
・・・やっべー口調がキツクなってる
「彼氏ってコト?別にいーけど・・・ジョーダンなんだしさぁ
いちーち、マジになるコトないってー」
アタシは笑う、だって笑うしかナイじゃん?
ホッとしたように笑顔を返す梨華ちゃんにアタシは言った
「お茶付き合ってよー」
「ん!・・・あたしケーキも食べちゃおうっと」
両手を合わせて口元に持って行くと上目遣いでアタシを見て
その目を微笑ませる
・・・そんなカオ、アタシ以外にしないで
誰だって梨華ちゃんのコト好きになっちゃう気がする
・・・たぶんアタシ、狂ってる、恋に狂ってる
- 235 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:15
- 夜は小さな秋の気配がする
梨華ちゃんと結局夕飯まで食べた後、なんとなくまっすぐに
家に帰る気がしなくて遠回りしながら歩いてると
膜のような小雨が降り出した
ひとつの季節の終わりを告げるように優しく静かに降る雨に顔を上げた
・・・梨華ちゃん濡れちゃったかな?
この腕に抱きしめるコトなんかナイ・・・そのカラダ
知ってるのは一回だけ握ったコトのある手の温もりだけ
・・・フッテクル、フッテクル
アタシメガケテ、トマルコトナク
この雨のように、音もなく密やかに降り続いて溜まって行く想い
・・・ココロの中に溢れて
・・・もう溺れてしまいそう
ふいに息が詰まって、目の奥が熱くなる
・・・ノドの奥が痛かった
・・・ムネが潰れそうな気がした
- 236 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:15
- このところ家にいても勉強が全然進まない
だから今日も図書館にでも行こうと家を出た
なのに、アタシの足は、自然にデパートの方へと向いて行く
もっとバイト増やそうかなー
こういうの、ゲンジツトウヒって言うんだろーか?
・・・でもさ、そうすれば偶然に梨華ちゃんに会えるかも、だし
アイタイアイタイ、ヒトメミルダケ・・・ソレダケデイイカラ
ふと見れば、店の前の横断歩道を梨華ちゃんが
どっかの婆ちゃんの手を引いて歩いていた
腰の曲がった小さな体に、自分も屈むようにして
目線を合わせて微笑んでいる
渡りきると、今日は真っ白な手袋をした手で
いつかみたくピシッて前を指して・・・
ニコニコ微笑む梨華ちゃんに、婆ちゃんは道を進むと
振り返って頭を下げていた
梨華ちゃんも丁寧に頭を下げて顔を上げた
どこまでも優しそうな、光り輝く笑顔を浮かべて
- 237 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:19
- 梨華ちゃんが振り返ると、アタシは電柱の影に隠れた
・・・イマノアタシ
キット・・・ミットモナイカオシテル
青の信号が点滅を速めて色が変わる
横断歩道の向こう側で、梨華ちゃんは胸をピンと張って
明るい表情をして、しっかりと立っていた
アタシは踵を返して信号に背中を向けて歩き出す
・・・ミラレタクナイ、コンナカオ
まるで、逃げるみたいに足を速めるアタシの頭の中で
梨華ちゃんの眩しい笑顔がフラッシュして
・・・苦しかった
夕方、梨華ちゃんからメールがきた
夕飯の誘いをアタシは断った
携帯の電源をオフにして放り投げる
ベッドにカラダを投げ出して、目を閉じる
昼間の笑顔の残像がアタシのカラダの奥底をギュッと絞り続けた
なんだかもう、ココロとカラダの苦しさと痛さの区別がつかなく
なりそうだった
- 238 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:19
- 次の日はバイトだった
はっきり言って行きたくなかったし、ひでーカオ
してるだろーと自分で思ってた
「・・・ヨッスィ〜、お前それ笑顔のつもり?」
アタシが口元だけ引き上げて見せると矢口さんは
上を向いて大袈裟にため息をついた
「今日、中入れよ 矢口の手伝い」
アタシはカウンターの中に入ると、言われるまま
矢口さんがオーダーをさばいていくのの手伝いをした
午後のお茶の時間になると、グズグズ泣いてるちっちゃい
女の子が母親に手を引かれて店に入ってきた
カウンターに飾られてるケーキを見た時、一瞬だけ泣くのを
止めて、母親にイチゴの乗ったケーキを指差して見せた
オーダーを上げる時、ヒマだし特別なっと矢口さんは
ケーキの横に生クリームとラズベリーのソースでウサギの絵を
描いた
ミキティがソレをテーブルに運ぶとカウンターまで
その子の上げる嬉しそうな声が響いた
- 239 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:20
- 子供がニコニコとフォークを口に運ぶのを見ながら
さっきは疲れたカオしてた母親までが柔らかい微笑みを
口元に浮かべてた
「・・・なんか、いいッスね」
「だろぉ?」
矢口さんも優しい目をしてテーブルを見てる
「矢口さ、笑顔が好きなんだ
美味いモン食って、怒るヤツっていねーだろ?
つまらなそうな顔したOLのねーちゃんが矢口の作った
ランチ食って、口元が緩んだり、疲れたリーマンが
矢口のお勧めのカクテル飲んで、目元が和んだりってさ
笑顔でいんのがムズカシクなっちまったよーなヤツらの
そーゆう顔をさ、見てんのが好きなんだよな」
いい・・・と思う、なんかスゴク
アタシもヒトが楽しいキモチや幸せなキモチになれる
いつか、そんな仕事が出来たらいいな
「・・・ヨッスィ〜さ、なんか悩んでるのかもしんねーけど
とにかく笑ってろ、な?
笑うかど?にはなんとやらっていうじゃん?
矢口はヨッスィ〜の笑顔、すごく好きなんだ」
矢口さんは珍しく真面目な口調で言って、目元だけで笑った
いつだったか、同じよーなコト言われたコトがあったよーな?
- 240 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:20
- あれはいつだっただろう?
小学生?中学生?とにかくアタシはケンカしたか
上手くいかないコトがあって、落ち込むか怒るかしてた
・・・そしたら婆ちゃんが言ったんだ
「ひとみ、世の中で一番大事な事ってなんだと思うかい?」
あの時、アタシはなんて答えたんだろう?
婆ちゃんはニコニコ笑ってた気がする、そして言った
どんな時でも笑顔でいる事だ、と
簡単なコトだから実は一番難しいんだって、だから覚えておきなさい、と
それさえ出来ていれば大丈夫、今は上手く行かなく見えるコトも
いつかはきっと・・・
・・・確か、そんなカンジだったかな
そんで、やっぱアタシ忘れちゃってたわ、婆ちゃん・・・
その後、なんだっけ?・・・ぁあ、そっか
笑顔でいるコトがどうしても難しい時には一番好きなヒトの
・・・笑顔を想い出すんだ
そしたらきっとまた笑顔になれる、そういうチカラがあるモノなんだ
- 241 名前:SIGNAL 投稿日:2004/03/25(木) 19:21
- ・・・アタシ
最近、どんどん輝いてく梨華ちゃんに置いてきぼりくってる気がしちゃって
追いつきたかったんだ・・・焦ってた
募ってくばっかのこの想いも、全然はかどらない勉強にも
オンナノコ同士だからこそ、スキナヒトと対等でいたくって
アタシだけが全然ダメなヤツな気がして
けど、それは梨華ちゃんのせいじゃなくってアタシの問題で
・・・カッコわりーよなぁ、アタシ・・・ずっと逃げてた
いまなら、ちょっとだけわかる気がする・・・あの時言われた笑顔のイミ
笑顔でいれるコト、ソレはたぶんキモチの方向
ちゃんと考えて行こう
将来のコトとか…梨華ちゃんのコトも
戸惑うコトばかりだけど、いーかげんに片付けたり
テキトーに流されるのは止めて
・・・もっとこう、自分のアタマとココロで
決めて行けばいいコトなんだ・・・時間がかかったとしても
・・・たぶん、いまアタシにはソレが必要で
だから、立ち止まってる・・・ソレを、ムダにしないタメに
赤のシグナルはいつかきっと青へと変わって行くモノだから
青のシグナルが点ったらムネを張って、迷わずに渡って行けたらイイ
いまはとにかく笑顔でいよう、梨華ちゃんの笑顔を守れる、そんな
チカラがいつかもてるようになるタメにも
- 242 名前:Sa 投稿日:2004/03/25(木) 19:22
- 更新致しました
名無し読者79様
いつもお待ち頂けてありがとうゴザイマス♪
書いてる場面場面では、そんなキブンになっておるんですが
全体のナガレに統一感がねーんじゃ?と思ってみたり、とか(w
- 243 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:09
- 店の外のテーブルを拭いてると、ヒコーキ雲が見えた
高くなった空に梨華ちゃんの笑顔が浮かんで見える気がした
・・・ねぇ、ひとみちゃん
飛行機雲ずっと見てるとなんだか願い事が叶う気がしない?
あの時、自分のコトバに可笑しそうにクスクス笑ってた
梨華ちゃんの高い笑い声
ここんとこ暗かったアタシは何回か梨華ちゃんの
誘いを断っていた
ま、それだけが理由ってワケでもナイんだけど
これからだって、どーなるかわからナイ
まして、梨華ちゃんとのコトはどーしたらいいなんて
答えが出たワケでもナイ
だけど・・・会いたい
そして、笑顔が見たい
- 244 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:10
- とにかく逃げてたのは情けねーよなぁー
今日あたりメールでもしてみよーか?
・・・こっちも落着いたし、他の店もまだまだ見てみたいし
前行った茶店のケーキを頬張る梨華ちゃんの
笑顔がアタマに浮かんだ
梨華ちゃんなら、ケーキ食べ歩きとか喜んでくれそうだし
・・・やっぱりとにかく、あの笑顔がみたい
今なら、あの笑顔から目を逸らさないで向き合える
気がする
まるでよく眠れた次の日みたく、アタマがクリアーな
カンジ
状況はナニひとつ変わったワケじゃないのに、アタシの
キモチは、かなり変わっていた
- 245 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:10
- 「おぉっ時間じゃんっヨッスィ〜、お疲れぃ」
矢口さんに言われてアタシも時計を見て頷くとジャムを煮てる
鍋の火加減を調節した
「ん〜ん、いいかほりー♪」
カウンター越しにごっつぁんが鼻をクンクン鳴らす
「ヨッスィ〜はさ、ホールより、そっちのが活き活き
してる感じ?」
ごっつぁんのコトバを聞きながら、アタシは矢口さんの
カオを見た
「・・・矢口さん、出来ればアタシ・・・こっちをメインで
やらせてもらうワケにはいきませんか?
もちろん、ホールが忙しい時はそっち行きますし」
矢口さんはジィーーーとアタシのカオを見て
そうだな、と呟いた
「いますぐって訳にはいかないけど、考えとくよ
ヨッスィ〜さ、センスあると思うし手際もいい
スコーン人気だし、な?」
「ありがとうございますっ じゃ、お先にぃー」
- 246 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:11
- アタシは控え室でタイムカードを押しながら
矢口さんが・・・新しいメニューがなぁとアタマを抱えてたコトを
思い出しながら笑った
・・・ずっと思ってたんだ
軽いモンでケーキほど甘くなくって、もうちょっと
お腹の足しになるようなのがあればなって
で、言ってみたら試してくれて
もひとつ、フルーツ類のムダが気になってたし
ほんのちょっと傷みかけても、そのままでは使えない
甘さは増してるんだし、ましてや腐ってるワケでもない
ソレを捨てるのってナンかもったいない
だから、あんま甘くない手作りジャムを作って
ソレをスコーンに添えるっていうの
注文してくれるお客さんが美味しそうに食べてくれてんの
見ると、こっちまでナンか満たされてくカンジしてさ
このまま続けてみたいって思い始めてた
で、ここんトコ矢口さんに協力して一緒に作ってみたり
他の店食べに行ったりして、どんどんそのキモチは
強くなって行ったんだよねー
- 247 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:11
- 色んな店行って思ったコトがある
どの店でもケーキってあるイミ、幸せの象徴みたいな
口に運ぶヒト達を笑顔に出来るチカラがあるんじゃないかって
もひとつ気づいたコトがある
アタシ自身はケーキって目の色変える程好きってワケでもナイけど
ケーキを前にして目を輝かすカオ見てるのが好きだってコト
なんとなく梨華ちゃんの笑顔とダブッちゃうトコが
我ながらナンだなーと思わなくもナイけど
でも、作ってみたい、と思った
笑顔のモトになれるような優しく、柔らかいモノ
そのタメになら勉強したいってココロから思った
親にはまだ言ってナイんだけど、も少しココでやってみて
キモチが変わらなかったら言おうと思ってる
・・・受験はしない・・・調理関係を勉強したいから
そして出来るなら、パテェシエになりたいって
- 248 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:12
- ジーンズのポケットで携帯が震えた
開くと、梨華ちゃんからのメールだった
休憩の時アタシが送ったメール、ソレの返信がきた
スクロールして画面を見る
<< ごめんね?
今日は約束があって無理なの
ひとみちゃん、ずっと忙しそうだったから
久しぶりだし会いたかったんだけど
相談、というか聞いて欲しいこともあって
近いうちに会えると嬉しいな >>
・・・相談?
ナンかあったのかな?
アタシは首を傾げながら控え室を出た
- 249 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:13
- 店に出ると、でっかい花束を抱えたあやちゃんが
矢口さんと話してた
「・・・どーしたの?ソレ
あやちゃん、誕生日かナンか?」
目を見開くアタシにあやちゃんはニシシと笑って
小さく首を横に振った
「んなわけないでしょーぉ
アッタシのバースディなら、こんなトコいないもぉん」
矢口さんが横目で睨むのも気にしないで
あやちゃんは言った
「例の雑誌、アレ見たコがくれたの・・・けどさ〜ぁ
ゲーノージンじゃぁないんだから、知らないコに
こんな高そーな花束もらっちゃったら、嬉しーより
引いちゃうでしょぉ、フツー
罪のナイお花をゴミ箱行きには出来ないし、ねー?
だからぁお店に飾ってもらおーと思ったんだぁ〜 」
・・・例の雑誌?ナンじゃそりゃぁ???
「だな・・・確かにちっとこえーよなぁ
あんなの出ちまったら、マツウラなんか大変だろ、大丈夫かぁ?
ま、これは、くれるっつーならありがたく貰っとくけどー」
矢口さんが花束を受け取るとあやちゃんは笑った
「すっきり、すっきりぃーっ」
そして、?を飛ばしてるアタシのカオをマジマジと見た
- 250 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:13
- 「ありゃりゃーぁ
ヨッスィ〜サァン?ひょっとして聞いーてないのぉ」
「・・・ナニを?ダレに???」
口に出してから、さっきの梨華ちゃんからのメールの
文字がアタマに浮かんだ
・・・ひょっとして、カンケーあり?
あやちゃんはピカーンとナニかが閃いたカオをして
一人でウンウンと頷いている
「ヨッスィ〜サン、最近石川さんのお相手してあげて
なかったでしょぉ???」
・・・ハァ?・・・まぁ確かに会ってなかったケド
ナンか、随分イミシンな言い回しだなぁ
アタシが要領を得ないカオで、ん、とか、まぁねとか
言うとあやちゃんは腕組みをしてジトッとアタシを見た
「よけーなコト言うのって、アッタシの美学に反するんだけどぉ
・・・たまにはいっかーぁ
んね?もう上がりなんでしょぉ お茶に誘ってあげる♪」
- 251 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:14
- 誘ってもらったとゆーより、連行させるみたく
茶店に向かい合ったアタシとあやちゃん
「・・・なんでわかんないんだろぉ?」
ピーチフレーバーのアイスティをストローで吸いながら
あやちゃんはアタシのカオを見上げた
「・・・ハァッ?!」
カメみたいに首を前に出すアタシをあやちゃんは
ニャハハハハと指差して笑った
ひとしきり笑った後、ふぅと息を吐いて、アイスティを
ストローでかき混ぜながらあやちゃんはポツリと言った
「自然な二人なのにね?」
わからーんっ!!!
あやちゃんの言うコトは突飛すぎてアタシには
・・・ホント、なんつーか意味不明?
「・・・やっぱ気づいてないんだぁー
自分達の空気って案外本人達は感じないのかな〜ぁ?
二人でいることが自然なヒト達って」
「ソレって、さ
ひょっとして、アタシと梨華ちゃんのコト言ってんの?」
やっと、どーにかハナシが見えてアタシは口に出してみた
- 252 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:14
- 「ん?そーぉだよ」
グラスの氷をカチカチとストローでつついてるあやちゃんの
俯いた小さなアタマを見ながら、聞いてみたいと思ってた
コトをアタシは口にした
「・・・あやちゃん、さ ミキティとはマジなワケ?」
あやちゃんはカオを上げるとケロリと言った
「マジもマジ、大マジィーッ!!!けど、まだ半分片思いかな?」
「・・・え?」
「ほら、ミキたんはぁお芝居に恋しちゃってるからぁー
アッタシは二番目ぇ?」
「・・・いいの?一番じゃなくても」
「いくはないよ?・・・でも、お芝居ってミキたんにとってはただ夢って
より・・・ミキたんの全てかなってわかってんだよねぇー
だから、ね、それに焦がれてるミキたんの眼が・・・怖いくらい真剣で
火傷しそうにアツくって、なのにどこか悲しい眼がミキたんの魅力なのだぁ
だいたいさ、アッタシと並んで霞むよーなヤツなら
始めっから相手じゃないもぉん」
「・・・自信あんだーあやちゃん」
「自信?」
あやちゃんは斜め上に視線を上げて、またアタシのカオを見た
- 253 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:14
- 「アッタシはぁーいつでも好きな自分でいたいだけ
もしそぉ見えんなら、アッタシは自分が大好きだから、かなぁ
自分がさ?好きになれない自分なんてカッコ悪すぎてヒトにお勧め
出来ないよぉ
だから、いつでも自分大好きで、ミキたんにスキスキって迫りまくれる
アッタシでいるの・・・そしたら、ミキたんもカンチガイしちゃうかもねぇ?
・・・アッタシが一番だなぁって」
「格好いーね、あやちゃんって」
あやちゃんはニシシと白い歯を覗かせて、肩を竦めて笑った
と、そのカオがユーツそうに曇る
「だっからぁアッタシにはわかんないんだよねーぇ
好きだったらぶつかっちゃぇば、いーと思うよ?
うじうじ考えてるのって時間のムダってゆーか
ハナシをややこしくする感じな訳だし
好きなんだか違うんだかわかんなくて、相手に自分の
気持ちが伝わってるのか、はっきりしない
んね?ややこしーでしょぉ・・・ホント、アッタシには
そーゆうのって理解不能な訳ですよぉ」
なんだかなぁーアタシのコト言われてる気がするよ
あやちゃんはさ、表現の仕方が奔放つーか
囚われてなくって自由なコで・・・アタシとは違うって思う
どっちが正しいとか間違ってるとかじゃなくて
テンポが違うんだと思うんだけどな
- 254 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:15
- 「ん〜〜〜ちぃがうっ、よけーなコトばっかハナシてるよぉー」
あやちゃんは眉毛を寄せて唸った後、立ち上がった
そして、テーブルに片手をつくとアタシのカオを見た
「そ、そ、言いたかったのはねーぇ
石川さんに急接近のオトコがいるよーぉ?
あのコ、恋愛レベル超低めちゃんって感じだから
時間のモンダイかもねぇ?
大手雑誌編集者、有名大卒のわりぃとイケメンくんだよぉ?
んじゃっ!情報料ってことで、よろしくぅ」
あやちゃんはテーブルの上の伝票を、コンコンと指先で叩いて
ニッコシと笑うとヒラヒラと手を振りながら店から出て行った
・・・オトコ・・・で、時間のモンダイ?・・・それは・・・つまり
ボンヤリと窓越しに小さくなってくあやちゃんの背中を見送った
・・・梨華ちゃんにカレシが出来そうってコト?
- 255 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/28(日) 21:15
- あやちゃんの後姿が見えなくなった後、景色がまるでイミを持って
なかった窓の外の風景がいきなり大きく迫ってきてアタシは
思わず声を漏らしていた
「・・・梨華ちゃん」
・・・だってナニも聞いてナイ、まだナニも
・・・幾度となく考えたコトはあった光景、だけど
アタシの誘いを断った梨華ちゃんは、いま窓の外にいた
見知らぬオトコと肩を並べて歩いて通り過ぎて行く
実感として伝わってくるモノなんかナイ、なのに
それはもう逃れようのナイ現実なんだとアタシはただ
窓の外を睨んで座ってるだけで精一杯だった
- 256 名前:Sa 投稿日:2004/03/28(日) 21:17
- 更新致しました
・・・もう、三月も終わりですね(w
- 257 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 22:30
- うわぁ・・・
よっちゃん勇気だして
- 258 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:02
- 梨華ちゃんの仕事がお休みの今日、アタシ達は茶店の
テーブルに向き合い、この間雑誌取材が着たってハナシを
聞いていた
「・・・で、なんでか知らないんだけど、少年漫画の巻頭カラー
グラビラページにエレガの特集があってね?
・・・載っちゃったの」
名前も生年月日もスリーサイズもウソを乗せたらしいけど
その雑誌を片手にやってきて、名前違うんじゃんっ?と
ネームプレートを指差しながらからかってくヤツとか
いるらしい
週間の雑誌だから次の号が出て、いまはもうそんな風に来る
ヒトもいなくなったよ、と梨華ちゃんはまだ少し困ったカオを
しながら笑った
・・・他に聞きたいコトがある
あの日、あやちゃんとお茶してた店の中から
確かにこの目で見た光景
ナニも見えなくて、ナニも聞こえなくてイイと思いながら
椅子に座ってるしか出来なかったアタシ
- 259 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:03
- ・・・だけど、それじゃいままでとナニも変わらナイから
ソレが梨華ちゃんの望み続けたシアワセってモンにつながってくなら
ソレこそが梨華ちゃんの笑顔を守って広げられるなら・・・
・・・そんなら、アタシは・・・アタシは
ムネを締め付けられるような緊張感
アタシは梨華ちゃんと向かい合い、この店に入ってから
何回目になるのか大きくノドを鳴らした
曖昧に笑ってしまいたいような、それでもやっぱ笑えないキブン
アタシの口元はなんだかよくわかんない笑みに似たモノを
浮かべていると思う
「・・・んで、相談だっけ、何よ?」
「・・・あっ え、と」
- 260 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:03
- 急に声のトーンを落として落ち着かなく彷徨わされる視線
その先にあるモノを確かめたいみたいにアタシは視線の流れる
先をずっと追っていた
心臓が口から飛び出しそうになっていく
「・・・王子サマでも現れちゃった?」
フツーのカオして口を開いたら、声が震えてしまっていた
アタシはアタマを軽く振って前髪で表情を隠した
俯いて、カオをテーブルの上のグラスのストローに近づける
「・・・王子様?・・・それは、あたしが・・・」
いつだったか聞いたコトあるような、自信無さそうな
迷うような梨華ちゃんの声が途切れて、小さな吐息が聞えた
「・・・そう、なのかな?」
「ソレはさ、わりぃケド、アタシにはわかんないから」
「・・・ん・・・そうだよね、ごめんね?」
梨華ちゃんの視線を感じたケド、アタシはカオを上げる
コトはしなかった
- 261 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:03
- その後ハナシも弾まなくて、夜から別の約束があるって言ってた
梨華ちゃんと店の外に出ると、アタシは片手を上げた
「・・・んじゃ」
梨華ちゃんはタブン、この後そのオトコと会うんだろう
聞いたりしなかったケド、こんなにソワソワと落ち着かない
梨華ちゃんを見るのは初めてだった
ふっとこのまま、アタシ達はただの友達よりもっと遠いトコへ
行ってしまうんじゃナイかと思った
返事が返ってこないから、俯きがちだった視線を上げて
梨華ちゃんの眼を見つめた
・・・なんでだろ?不安げに揺れてる気がした
これからスキなオトコに会いに行くんじゃナイの?
アタシは自分の眼差しが強くなるのを止められない
・・・なんだよ?ナニが言いたいの?
- 262 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:04
- 梨華ちゃんは酸欠の金魚みたいに、いつもよか目を
見開いて、口をパクパクさせた
けどなんにも言わないで、なんだか悲しそうに瞬きして
寂しそうにクチビルを笑うみたく上げて、じゃぁねって一言
言うとクルりとカラダの向きを変えて走って行ってしまった
「・・・なんだよっ」
アタシは俯くと足元のアスファルトを強く蹴った
・・・あんなカオさせたいんじゃナイ
アタシは家への道をトボトボ歩きながら、梨華ちゃんの
全然シアワセそうじゃナイ、さっきの表情を思い出していた
・・・いつも笑ってて欲しいんだ、シアワセそうに・・・さ
梨華ちゃんが望んでたハズのシアワセな家庭ってヤツが
その手に入るかもしれないなら・・・それならって
・・・だから、アタシは・・・
- 263 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:04
- 家への途中の公園で、ふと足を止める
・・・いつだっけ?
初めて、梨華ちゃんって名前で呼んだっけ
すっかり夕闇に包まれている先から子供達が歓声を
あげながら、走り出てきた
「暗くなっちゃったぜぇ、母ちゃんに怒られる」
「ずりぃよ!お前ばっかヒーローで、オレ悪役じゃんっ」
「今度なっ今度っ!!!」
通り過ぎてく子供がそんなハナシをしてて、思わずホホが緩んだ
・・・イマドキのコも、やっぱやるんだなー
アタシはオトコ兄弟だったから、よくやったっけ
・・・ソレもヒーローの役ばっか
弟達にずりーよって言われながら
そのまま公園に足を向けて、いくつかある誰もいないベンチに座った
- 264 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:05
- いつだったかな?
ちょうど、休憩で見たいモノがあって別館に行ったんだ
あのマヌケな音がして、まっさかねって思いながら
エレベーターの方を見たら、梨華ちゃんが乗ってて
笑いかけたら、少し青く見える無表情なカオで口だけを動かした
・・・助けて・・・ひとみちゃんって
そのまま、エレベーターに乗ったら誰も乗ってない中
梨華ちゃんの背中にくっつくみたいに一人のオトコが立っていた
アタシが咳払いすると、そいつは梨華ちゃんから離れて・・・
それでも二往復の間くらい降りようとしなかった
アタシはそいつが降りた後も梨華ちゃんを一人にするコトなんて出来なかった
だから、交代時間までずっと、乗ってたんだ
エレベーターはあるイミ密室って気づいたから
梨華ちゃんになんかあったらって思ったら、急に怖くなっちゃって
・・・休憩オーバーして矢口さんに怒られたケド
・・・ヒーローニナリタカッタンダ、アタシ
- 265 名前:ヒーローになりたい 投稿日:2004/03/29(月) 12:05
- 他のヒトは誰も知らなくていい
・・・梨華ちゃんだけのヒーローに
格好よくなくても、特別なコトなんてひとつも出来なくても
それでもいいんだ
ただ、梨華ちゃんが困った時だけ、そっとアタシの名前を
呼んでくれるような、たったひとりだけのヒーローに
だけど、悪者なんて出て来ない だから、戦うヒツヨウもない
・・・ヒーローなんていらないんだよ
ヒーローに変身出来ないままの、ただのオンナノコの
アタシに出来るコトは・・・見守るコトしかナイじゃんねぇ?
大事なヒトがシアワセになれるように、そっと願ってるしかナイんだよ
気づかれなくても、そうやってあの笑顔を守って行くしか、それしか
出来ないって
・・・考えて、考えて出した、アタシと梨華ちゃんの付き合い方なんだ
やっと見つけた、ただ一人の大事なヒト
だから笑ってて欲しい・・・シアワセになって欲しいって
ココロから想ってる
いまのアタシのたったひとつの守りたいモノだから
- 266 名前:Sa 投稿日:2004/03/29(月) 12:10
- 更新致しました
257様
レスありがとうございます♪
(0=〜=)<応援サーンキュッ!!!
意外に思われるかも知れませんが、次回が最終話でございます
三月中に上げれたらいいなぁーと密かに野望中(w
- 267 名前:JUNIOR 投稿日:2004/03/29(月) 14:59
- よっすぃ〜切ないね。
勇気を持ってがんばれ。
えぇ〜〜〜。次回最終回なんですか!?
絶対絶対×∞見ます。
とにかくSaさんもよっすぃ〜もがんばれ。
- 268 名前:わく 投稿日:2004/03/29(月) 18:52
- ああ〜・・・切ない・・・
よっちゃん!!幸せになって!!
- 269 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:23
- ・・・ずっとどっかで、ナニかをダレかを探してるような気がしてた
探せば、探すほど、なんでか見つからないパズルのピース
みたいなモノ
ありふれてるんだけど、同じモノは一つもナイんだ
ソレじゃナイと絶対ダメで、もうソレって始めっから決まってて
コレって婆ちゃんの影響かもなぁ・・・いっつも聞かされてたから
「あたしゃ、幸せ者だよ」って
じいちゃんが死んじゃう時、婆ちゃんに言ったって言うコトバ
いいコトもわるいコトも、いろいろあったけど、お前に会えたから
いい人生だったって、最後に笑って死ねるから、ありがとうって
だから婆ちゃんは、そんなふうに言ってもらえるヒトに出会えて
一緒に生きてこられたから生まれてきて良かったって
婆ちゃんの笑顔が一瞬見えて、掠れた声が聞える気がした
- 270 名前:only 投稿日:2004/03/31(水) 11:24
- 「生きてくって事は楽しい時ばっかりじゃないさ
苦しい時や、辛い事の方が多いのかも知れないねぇ
だからこそ、共に歩める人が必要なのさ・・・そりゃあねぇ
大事な宝物で、いつでも心の中で光って美しいんだよ
・・・ひとみもいつか見つかるさ、そんな相手がね」
・・・婆ちゃん、アタシ見つけたよ
だけど、さ どっかで間違っちゃったみたいでさ
一緒に生きてくコトはムリみたいなんだよね
強い風がザザーと吹いてアタシの髪をなびかせて行く
目に入りそうな前髪を掻き揚げて、辺りを見回すと
すでに真っ暗だった
・・・アタシ、どれくらいボンヤリしてたんだろ?
- 271 名前:only 投稿日:2004/03/31(水) 11:24
- 深く溜息をついて空を見上げれば、風の強い夜
驚くほど星が見えた
勢いをつけて立ち上がり、出入り口の方へ歩き始めたら
公園の入り口の大木の下に二つのシルエットが見えた
・・・やれやれ、カップルかよ
目線を落として少しずつカップルに近づいた時、高い声が聞こえた
「いやだっやめてっ!」
瞬間的に心臓がギュッと縮み上がった
・・・梨華ちゃん?
大木の下は薄暗くてよく見えない
なんだか、二つの影は揉み合ってるみたいに見えた
アタマの中で大変だ、と声がする
カラダ中の血がアタマに上って、慌てて出した足が縺れる
ちっとも前へ走れてない気がした
- 272 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:25
- イヤがってカオを背ける梨華ちゃんの、細い肩に手を乗せ
カオを近づけようとしてるオトコの肩を掴むと、アタシは
思い切り引っ張った
オトコは引っ張られるまま、肩に置いてた手が外れ
後ろに二三歩よろめいた
梨華ちゃんが驚いたカオでアタシを見てる
ナニか言ってんのは聞こえてきたけど、そのイミがよく伝わって
こなかった、アタシのアタマはすべての思考がぶっとんで
ただ真っ暗な嵐だけが吹き荒れている
梨華ちゃんを背中に庇うように二人の間に割って入ると
歪んだオトコの口元がナニか言っている
アタシは一度軽く目を閉じると、大きく息を吐いた
拳法は止めて随分経つのに、カラダが自然と構えの形をとる
さっきまでの荒れ狂ってたアタマの中の爆風は静まり
夜の海みたいな小さな騒めきだけが残ってる
ゆっくりと閉じた瞼を開けると、アタシはオトコのカオを
正面から静かに見据えた
「・・・このまま、帰ってくんないかな?」
- 273 名前:only 投稿日:2004/03/31(水) 11:26
- 「なんなんだよ?お前はっ!梨華っこっちに来いよ」
アタシの後ろで梨華ちゃんが首を激しく振る気配がする
「いいからっ」
アタシはオトコが伸ばしてきた腕を掴むと、軽く捻った
「ねぇ、聞こえなかったの? 帰って欲しいんだけど・・・」
アタシは捻り上げてたオトコの腕を放すと、意地悪く笑った
「言い忘れてたケドアタシは・・・強いよ?」
オトコはカオをかっと赤くして、嫌悪と苛立ち、少しの恐怖
そんなもんを次々カオに浮かべて、最後は淡々とした感情の
ない表情を浮かべた
「いいさ、俺も本気って訳じゃない ちょっとめずらしいタイプ
だったってだけの事だ、ただの遊びだったんだからな」
オトコは気障に肩を上げ下げして、そのまま公園を出て行った
その後ろ姿が消えると、いままで動くのを忘れてるくらい
静かだったアタシの心臓が急に激しく打ち出した
- 274 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:27
- 「・・・あたし、バカだ・・・」
背中越しにか細い呟きがして、振り返るとズルズルその場に
座り込みそうになってる梨華ちゃん
アタシはその腕を引っ張り上げながら言った
「・・・とりあえず、さ 向こう座ろうよ」
ベンチに並んで座ると梨華ちゃんはカラダをぶるっと震わせて
両腕で自分の肩を強く抱きながら、ココロの底から怯えた声を出した
「・・・わかってるつもりだったの
付き合おうって言われて、付き合うってことは
そういうことされることがあるものだって
頭ではわかってるつもりだったのに・・・全然違ってた
・・・ちょっと肩に触られただけで・・・もう気持ち悪くって・・・」
梨華ちゃんはカラダを折るように前屈みになって、ナニかを吐き出す
代わりみたいに、絞り出すような涙を流した
「・・・あ・たしね?・・・わかった・・・の
あたしは・・・他の人が、持っ・・・てて、あ・・・たしには
なかったから・・・普通・・・の、家庭さえ、持てれば
幸せ・・・に、なれる・・・って思ってた・・・だけど、違うの
好きな、人・・・とじゃない普通とか・・・家庭になんて、意味なんてないよぉ
他の・・・人と一緒であること、なんて、ち・・・っとも必要なくって
ほ・・・んとに、幸せ・・・なこと・・・は、好・・・きな人と一・・・緒に
いられる・・・ってこと・・・か・・・たちなんて関係、ないの」
- 275 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:27
- 途切れ途切れにアタシの耳に届く切ないよう声音
アタシは堪らず、梨華ちゃんの俯いたアタマに手を伸ばして
そっと撫でた
「・・・大丈夫だよ、梨華ちゃんなら
きっとすぐ、スキな人出来るから」
梨華ちゃんはアタシの手を振り払うみたいにいきなりバッと
アタマを上げると、アタシを見た
その眼の中で、強い怒りみたいなモノがメラメラと燃えている
「出来ないっっっ出来る訳ないじゃないっ!
ひとみちゃんが側にいたら、他に好きな人なんて
絶対出来ないっ!!!」
「・・・え?」
梨華ちゃんはハッとしたように口を閉じると反対側を向いた
「・・・ねぇ?」
アタシは覗き込むようにカラダを乗り出した
梨華ちゃんは今度はカラダごと向こう側を向く
アタシは梨華ちゃんのカラダの向こう側のベンチの背に
片手をついてそのカオを覗き込んだ
「・・・梨華ちゃん」
カオを近づけて、囁くように名前を呼ぶと一瞬潤んだ目で
上目遣いにアタシを睨んで、そのまま真後ろってくらいまで
アタシからカオを背けた
- 276 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:28
- アタシは腰を浮かして、もう片方の手もベンチの背につけて
ベンチと腕の中に梨華ちゃんを閉じ込めた
「ね?・・・梨華ちゃん・・・」
アタシがカオを近づけると梨華ちゃんがまたカオを
反対側に背ける
まるで追いかけっこしてるみたいだ
今度は下へと、どんどん俯いてく梨華ちゃんのカオを追いかけて
アタシは、ますますカオを近づけ覗き込む
「梨華ちゃん・・・カオ、見せて?」
ベンチの前でしゃがみ込みながら、見上げるようにソノ顔を追いつめて
確かめようとソノ目を見たら、小さな声が・・・バカ、ドンカン、イクジナシ
イジワル、サイテーと、次々アタシを責めだした
・・・気づけば、アタシは・・・
目の前でワルグチを言い続けるクチビルを自分のクチビルで塞いでた
カサカサカサ、と遠くで風が木の葉を揺らす
乾いたカンショクにアタシは一度強くクチビルを押し当てると
ゆっくり瞼を開きながら、静かにクチビルをはなした
- 277 名前:only 投稿日:2004/03/31(水) 11:29
- 「・・・ごめん」
「・・・なんで謝るのよぉー」
「・・・バカでドンカンでイクジナシだから」
「・・・そうだよ、意地悪で・・・おまけにサイテーなんだからぁー」
鼻にかかった甘えた声を聞きながら、アタシはそのまま両腕を
ベンチの背から放して梨華ちゃんを抱きしめた
転がりそうに前のめりになって、それでもジッと動かず
アタシの腕の中にいる梨華ちゃんにアタシは言った
「・・・アタシじゃ梨華ちゃんがずっと夢みてたシアワセは
あげられないって思ってたんだ」
「あたしがいつ、そんな物、ひとみちゃんに欲しいって言った?
・・・あたしはっ・・・あたしは・・・ひとみちゃんがそばにいてくれれば
幸せって思えるのっ」
梨華ちゃんもゴソゴソ腕を動かしてアタシのアタマを強く
抱き返してくれた
「・・・あたし、さっき言ったでしょう?・・・わかったって
幸せって探して見つけたり、人から貰うものじゃないんだよ
心でね?感じるものなの・・・だから、あたしは
ひとみちゃんが側にいてくれないと幸せになれないの」
「・・・ごめん」
「だからぁー 謝んないで、ね?」
「・・・うん・・・でもアタシさぁ、やっぱ・・・ごめん」
「もぉうっ・・・あたしね?」
- 278 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:29
- 梨華ちゃんのクスクスと可愛らしく笑う吐息がアタシの
耳元をクスグル
「・・・さっき心の中でずっと呼んでた、ひとみちゃんのこと
助けてって・・・だってあたし、あの時はっきりわかったの
ひとみちゃん以外の人になんか触れられたくないって
だからいまは、実はもう幸せなんだよ?・・・あたし」
アタシは静かに腕を離して、その場で膝立ちになりながら
いつもとは逆に少し高い位置にある梨華ちゃんのカオを見た
秋が深まった夜空に瞬く涼しげな星が落ちてきたみたいに
梨華ちゃんの目がキラキラ煌いて見えた
その目に見つめられるとなんだか照れ臭くって、また言えなく
なりそうだから、アタシは両手で梨華ちゃんの頬を包むと
引き寄せて両方の瞼にくちづけした
「・・・好きだよ」
- 279 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:30
- 閉じられた梨華ちゃんの瞼が小刻みに震えて、ゆっくりと
開かれた瞼を縁取る睫が濡れている
ほんのりと明るい月に照らされて輝く二つの瞳はあんまりにも
キレイに見えて、このまま魅入られてトリコになりそうだった
アタシはカオを斜めにして、ゆっくりとソノ眼に近づけて行くと
瞳を飾り流れる雫を舌先ですくい取り、クチビルにさっきより
ほんの少しだけ長いキスをした
・・・カチリ、とアタマのずっと奥で音がする
やっぱり梨華ちゃんが持ってたんだね?
アタシがいつからか探してた行方不明だったピース
ほんとは、ずっと前から目の前にいて
教えてくれてたのかも知れないのに・・・
アタシはちゃんと見ようとさえしてなかった
探すピースさえ間違ってたんだ
- 280 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:30
- アタシが勝手に想像してた梨華ちゃんのシアワセっていう
パズルの完成形
けど、それは違ってた
いつのまにか思い込んで実際と違うモノにしちゃってて
そんなコトにも気づかないで、一人で作り続けてた
アタシは目を開けて、いま目の前にいる大事なヒトを見た
・・・アタシはナニを見てたのかな?
そっと、手を伸ばして柔らかく髪を撫でると梨華ちゃんも
ゆっくり瞼を開けて、アタシと目が合うと少し照れくさそうに微笑んだ
アタシが考えてた梨華ちゃんのシアワセってカタチのパズル
梨華ちゃんが考えてた、梨華ちゃんのシアワセのカタチのパズル
ホントは同じモノだったのに、アタシ達は確かめ合うコトをしないで
お互いに反対側から一人で進めてた
たった一言、聞き合えればソレで良かったのにね?
- 281 名前:only one 投稿日:2004/03/31(水) 11:31
- アタシは立ち上がると、梨華ちゃんの前に手を差し出した
「・・・行こう
これからは・・・側にいるから」
「・・・ひとみちゃん」
梨華ちゃんはアタシの手をギュッと掴むと立ち上がった
そして、腕を絡めるとアタシのカオを見上げて、この上なく
シアワセそうな笑顔になった
「・・・ずっと、だよ?」
「ん、迷子になんないよーにね?」
これからは、二人で探しに行こう
・・・アタシ達二人にしか作れない、一つだけのカタチを
一人じゃ見つけられないコトも二人なら、きっと探して行ける
この繋いだ手を離さないで、大事なモノを見失わないように
そして作り上げて行こうよ
二人がシアワセだってカンジられるカタチを・・・
・・・これからは、二人のリズムで
・・・そう、パズルのリズムで
END
- 282 名前:Sa 投稿日:2004/03/31(水) 11:36
- じれったく、なかなか進展しないハナシに
お付き合い頂いてありがとうございました
JUNIOR様
いつもながらの嬉しい御言葉と、最後までの
お付き合いありがとうございました♪
わく様
レスありがとうございました♪
(0^〜^0)<モットモットハッピィ〜になれるよ〜にガンバルYo
まだスレがかなり残っておりマスので、またそのうち
駄文でウメヨウかと思っております(w
お付き合い頂くコトが出来れば嬉しいのですが(w
お詫び
only oneのハズがトコロドコロonlyになってしまいました(汗
申し訳ありませんっっっ
- 283 名前:奈々氏 投稿日:2004/03/31(水) 17:09
- 色々ヤキモキさせられたけど、
この作品に出会えて幸せでした。
ありがとうございました。
- 284 名前:わく 投稿日:2004/03/31(水) 21:41
- いい!!よっちゃん幸せになってよかった!
2人のパズル、2人だけのパズル作っていってYO!!!!
- 285 名前:JUNIOR 投稿日:2004/03/31(水) 22:37
- 完結お疲れ様です。
いつもながらのわかりやすい文章でした。
回を重ねるごとに、文章が伝わりやすくなっていて
とても良かったです。
Saさんの作品はやっぱり大好きです。
自作の期待させていただきますね。
- 286 名前:Sa 投稿日:2004/04/03(土) 16:51
- 始めにご挨拶をば(w
奈々氏様
ヤキモキさせてしまったのに読んで頂けて感謝です
こちらこそ、ありがとうございましたっ!!!
わく様
ガンガン作っちゃいますよぉ〜〜〜♪
またカンチガイしてあらぬ方向に行かないコトを祈るのみデス(w
JUNIOR様
お気に召して頂けたなら良かったです
今回はドラマチックなんてカケラもないフツーのハナシだったんモンで(w
パズルなリズムのいしかーさん視点の短いハナシをひとつ
上げさせて頂きます
一回限りのハナシですが、よろしくお願いいたします
- 287 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:51
- ・・・ずっと、片想いだと思ってたの
- 288 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:52
- ひとみちゃんと手を繋いで夜道を歩きながら
街灯の下を通るたび、浮き上がるみたいに見える
白くて整った横顔を、あたしは盗み見た
・・・なんだか、やっぱり夢みたいだよ
ひとみちゃんは無口で、二人でただ歩いてると
ふわふわと足が地面に着いてないみたい
ほっぺをつねってみたり、唇に残る初めての感触を
なぞってみたりしたかった
自信の無かったあたしに笑顔が好きって言って
くれてたひとみちゃん
だから、あたしはお家でひとりで鏡に向かって笑顔の
練習したりしてたんだよ?
- 289 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:52
- ひとみちゃんが一生懸命なところがいいねって
笑ってくれると、もっとその笑顔がみたくて頑張れた
その笑顔見てると、ほんとに力が湧いてきて・・・
今まで出来なかったことも出来る気がしたの
ひとみちゃんがそばにいてくれるとお日様が集めてくれた
陽だまりに包まれてるみたいに気持ちが落ち着いて
・・・あたし、いつでも笑顔になれた
いつから好きになっちゃったとか、もう・・・忘れちゃったよ
だって別に何か特別なことがあったり、雷にうたれちゃった
みたいな衝撃が走ったりなんかしなかったもん
ただ、そばにいてくれることをいつからか当たり前みたいに
思ってて、何も言わなくてもあたしをわかってくれてる気が
して、それが続くような気がしてたの
あたしとひとみちゃんの間に流れる優しい時間
・・・それの意味はまだわからなくて
・・・意識して考えてみたりすることもなかったから
- 290 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:53
- いつだったか、ひとみちゃんがお休みの日にお店に行って
矢口さんとお話した
あたしがひとみちゃんってなんだかんだ言って、あたしの
言うこと聞いてくれるのって言ったら、あたしの笑顔が
すごぉーく嬉しそうだって言われて・・・
矢口さんはふっとすごく優しく柔らかく微笑んで
好きなヤツが自分の言うこと聞いてくれると嬉しいよなって
あたしはその時は、まだ全然ピンとこなくって
あたしとひとみちゃんがとっても仲良しってことかな?って
思ってた
・・・あのパーティの後
市井さんの車の中で、美貴ちゃんや真希ちゃんがひとみちゃんを
からかう言葉を、聞いてられなかった
だから目を閉じて眠ってるふりをしたの
その時、偶然ひとみちゃんの指先があたしの指先に触れて
やたらドキドキした
- 291 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:53
- あたしは今、しっかりとひとみちゃんと繋がれてる自分の手を
不思議な思いでみつめた
あの夜、コテージで市井さんが言い出したゲーム
すごくドキドキしたっけ
でもねあの時、矢口さんに言われるまで気づかなかったの
ただすっごくドキドキしてて、あのゲームがそのまま
あたしのファーストキスになってしまうかも知れないなんて
なのにそれに気づいても、あたし全然嫌だと思わなかった
・・・ほんとに・・・嫌だなんて思えなかったの
ひとみちゃんとキスするってことが・・・
あの買出しへの道で、だからあたしは言ったのかも知れない
今まで気づかずにいられた・・・自分の気持ちが
透けて見えてきてしまったから
・・・女の子同士でもいいんじゃないかって
だけど、ひとみちゃんはなんだか難しい顔をして何も答えて
くれなかった
だから、ひとみちゃんは嫌なのかなって思って、もうそれ以上
何も言えなくなっちゃった
- 292 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:54
- ・・・だから、びっくりした・・・今日のこと
あたしは思わず足を止めてひとみちゃんと繋がれてる手を
引っ張った
ひとみちゃんはゆっくり足を止めてあたしを振り返った
「・・・ん?なに?」
さっきのは夢じゃないよね?
ほんとにあったことだよね?
強い風の中なのに、やけにはっきり聞えた
初めて聞いた熱で掠れたようなひとみちゃんの声
・・・好きだよ
またあたしの耳の奥に木霊して、瞼が震える
いままで知らなかった気持ちに胸が塞がれて、泣きたくなんか
ないのに、なぜだか止まらなかった涙
- 293 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:54
- 唇は柔らかいのに、とても強い力があることを知った
その中に隠されてる舌先は、とても熱いんだと言うことも知った
あたしは声を出せないで、じっとその顔を見てる
そしたら、ひとみちゃんは少し困ったみたいに笑った
「なんだよぉーアタシのカオになんかついてる?」
「・・・目と鼻と口と・・・」
「バァ〜カ」
ひとみちゃんはカオをクシャってして優しく笑った
そして、ふっと真面目なカオになった
「・・・そんな眼、しないでよ・・・こんなとこで、さぁ
キスでもして欲しい?」
「ちっ・・・ちがっ」
- 294 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:55
- 考えてることがばれちゃってる気がして、顔がボッと赤くなる
のがわかった
「ジョーダンッ」
「なっなによぉ〜〜〜」
ひとみちゃんが意地悪く目を煌かすから、あたしはなんだかよけい
ドキドキしてきて、それを誤魔化すタメにひとみちゃんを
ポカポカ叩いた
ひとみちゃんはあたしの出した拳をかわすように、あたしの手首を
一つずつ捕まえてグッと力を入れて引っ張った
そして、よろよろと引っ張られて前に出たあたしに顔を近づけた
「・・・しないよ?今日はもうしない・・・もったいないから」
知らずにあたしの身体に入っていた力がふっと抜けると
ひとみちゃんは、あたしの手首を掴む指先に力を入れて
小さいのにとても強く響く声で聞いた
- 295 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:55
- 「・・・どうして欲しい?アタシに」
「・・・え?」
「なんでもしてあげるよ、アタシに出来ることなら」
「・・・・・」
「だから・・・そんな不安そうなカオしないでよ」
「・・・ひとみちゃん、あのね・・・」
「・・・ん?」
「・・・側にいてね?・・・あたしの側に・・・ずぅっと・・・」
「お安い御用・・・」
ひとみちゃんはあたしの手首から手を離すと、優しく頬を
撫でてくれた
そして何もなかったみたいに普通の顔をして、またあたしの
片手を引くように歩き出した
・・・このところ、ずっとひとみちゃんに避けられてる
気がしてた・・・そんなことを思い出した
- 296 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:55
- 会ってても目を合わせてくれないし、笑顔を見せてくれる
ことも少なくなって行って
ひとみちゃんは塞ぎ込むような、何かを考えてる顔が
多くなって、最近は会ってさえくれなくって・・・
なんで自分が嫌われちゃったのかわからなくて
ただ、ただ、不安だった
思い当たることは一つだけで、あたしの気持ちがひとみちゃんに
バレちゃったってこと
あたしは苦しくって、どうしていいかわかんなくなっちゃって
そんな時、声をかけてきたあの人と付き合ってしまおうかとも
思った
そしたら、ひとみちゃんとまた友達に戻れるかもしれない
この気持ちが変わったら、また戻ってきてくれるかもしれないって
- 297 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:56
- んなに一人の人と大事に付き合ってくことを夢見てた
あたしが、もう何もかもどうでもいいような気がしてた
ひとみちゃんじゃないなら誰といたって一緒
諦めてしまうことの方が、この気持ちを持ち続けるより
ずっと楽な気がした
だけどあたしは、やっぱりいつでもひとみちゃんを
想わずにはいられなくて・・・
バカなことをしてしまったけど、はっきりとわかったの
なのにひとみちゃんが、訳わからないことばっかり言うから
・・・さっきの・・・あれは
あたしが告白してしまったってこと・・・だよね?
だけど、それでわかったの
まったく的はずれだったけど、いつでもひとみちゃんは
あたしのことを考えてくれてたこと
自分のことは後まわしにして、とにかくあたしの幸せだけを
想っていてくれたこと
- 298 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:57
- ・・・でも、だからなんだね?
ひとみちゃんとの時間が、こんなにもあたしに優しいのは
あたしはひとみちゃんといることで、今までわかってなかった
たくさんのことが少しはわかった気がするよ
人は本当は誰でもみんなひとりなんだよね?
例え、温かい家族に囲まれていたとしても・・・
だから、みんな誰かを好きにならずにはいられないんだね
ひょっとしたら、勘違いかもしれなくて、ただの独りよがりの
思い込みかも知れなくて・・・
・・・それでも、だからこそ・・・欲しいんだよね?
それが、どんなに短い時間だったとしても、やっぱり誰かと
心を通わせたい・・・想いたい、想われたい
誰かを想って過ごすのは、それはきっと優しい時間
どうか、あたしとの時間が、ひとみちゃんにとっても
優しい時間でありますように・・・
- 299 名前:優しい時間 投稿日:2004/04/03(土) 16:57
- 考えてみれば、謝ってばかりのひとみちゃんに、あたしこそありがとう
すら言えてないね?
「あっ!」
急にひとみちゃんが立ち止まって、あたしはつんのめりそうに
なった
「ど、どうしたのぉ?」
「・・・家、ついちゃった」
ボォーと目の前の家を見てるひとみちゃんにあたしは噴出した
「ちぇー・・・なんかボンヤリしてた・・・」
ひとみちゃんはアタマをポリポリかきながら、照れくさそうに
笑った
「車出す、送ってくから待ってて」
ガレージに向かうひとみちゃんの後ろ姿を見ながら
あたしは思った
笑顔が似合って優しくて、ふざけてて、結構抜けてて、照れ屋で
すっごく鈍感で、正義感が強そうで・・・意外に慎重で
あたしにとっては、きっと世界一魅力的な人
・・・色んな顔を持ってるひとみちゃん
ねぇ?これから、どんなあなたと逢えるんだろう・・・
今日からよろしくねっ!・・・あたし、の・・・恋人
END
- 300 名前:Sa 投稿日:2004/04/03(土) 17:00
- 更新しました
お詫び
297の一行目(あ)が抜けてしまいましたっ
申し訳ありませんっっっ!!!
- 301 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/04(日) 00:12
- のぅわっ!!石川さん視点イイ!!
甘甘で読んでいて笑みが浮かんできてしまいます。
Saさん彼方の文章はドラマチックだーーー!!(特に今回の石川さん視点)
甘甘のいしよし最高です。これからも頑張ってください。
- 302 名前:Sa 投稿日:2004/04/05(月) 18:44
- JUNIOR様
ドラマチックだなんてとんでもございませんっっっ(汗)
小躍りしちゃうくらい嬉しいでっす!
「優しい時間」で終わるハズが、ナゼだかまた続きを書いてしまいました(w
全三回です、書き上がっているので今日から三日連続で上げます
お付き合いして下さる方がいらっしゃればうれすぃ〜です
よろしくお願い致します
- 303 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:45
- ・・・あたしがあなたと出逢ったのは、きっと運命
それは甘い・・・とびきり甘い運命
・・・初めて過ごす夜
・・・二人きりの夜
あなたがためらいがちに、あたしへと伸ばした指先は
微かに震えていた
それでもあなたは、あたしを見て力強く微笑んだ
・・・そう、これは運命だから
・・・もう、逆らうことも・・・
・・・止めることも出来ない、と
- 304 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:46
- ピーンポーン
ドアのチャイムが鳴って、あたしは読んでいた文庫本を
閉じると、テーブルの下に置いた
玄関に向かいながら、横目で鏡をチラリと見て
前髪をササッと直すと玄関のドアを開ける
自分の顔中に自然と笑顔が広がっていくのがわかる
「いらっしゃぁ〜い」
「よぉ!」
ひとみちゃんは片手を上げると、ちょっと顎を前へ出した
「入って、入ってー」
あたしが狭い玄関で体を脇に寄せると、おジャマって
小声で言って、あたしの脇をすり抜けた
ひとみちゃんの髪から、今日も甘い焼き菓子の匂いがした
- 305 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:46
- 「お茶入れるね?座ってて」
「サッンキュー」
ガス台にケトルを置きながらあたしは振り返った
奥の洋間のピンクのカーペットの上で胡坐をかきながら
ひとみちゃんは、リモコンを手にしてテレビをつけている
そして、小さなガラステーブルの上には白い箱が乗っていた
・・・やっぱり・・・ね
あたしはガス栓を捻りながら小さく溜息をつくと
ティーカップの他にケーキ皿とフォークも用意した
- 306 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:47
- 熱い紅茶とお皿とフォーク、いつの間にかあたしと
ひとみちゃんの間でお約束になってる三点セット
それをトレーに乗せて、あたしはガラスのテーブルに次々置いた
「ぉおっ!気がきくね〜さっすが梨華ちゃんっ」
ひとみちゃんはご機嫌で、お皿を手元に引き寄せると
白い箱から、今日はパイを取り出して乗せている
「今日はね〜?ミックスベリーのタルトパイッ!!!」
嫌になっちゃうくらい大きな目を輝かせて、紫がかった
ピンクのタルトパイにフォークを添えるとあたしの前に
置いた
「・・・いただきます」
あたしがフォークを口元に持っていくと、それを目で追って
愛しそうに目を細める
- 307 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:47
- ・・・ここで勘違いしてはいけないの
ひとみちゃんの目線の先はいつでもフォークの先なんだから
「ど?ねぇねぇっどお?」
これでもかってくらい、さらに目を輝かせて体を乗り出す
ように聞いてくるひとみちゃん
そんなあなたは子供みたいで、とっても可愛い
・・・可愛いんだけど・・・
「・・・美味しいよ」
「・・・そんだけぇ?他にさ、もっと感想とかないの?」
「ちょっと、酸味が強いかも」
「・・・そっか」
ひとみちゃんは自分もタルトパイを口に入れて
ウンウンと頷いた
- 308 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:48
- ・・・あたし、とりつかれてるのかしら?
ケーキを食べ終わったら、今度はテレビにケーキが映ってた
テレビにかじりつきだした、ひとみちゃんの横顔を見ながら
ついそんな風に思ってしまう
なにもよりによって、今日、この時間に行列の出来る
街のケーキ屋さん、なんて特集しなくてもいいと思うのよ?
無駄だと思いつつ真剣な顔のひとみちゃんに声をかけてみる
「ね?ひとみちゃん」
「・・・ん?」
「今日はお買い物に行こうって言ってたよね?」
「・・・あ〜〜〜」
「陽が暮れるの早いから寒くなっちゃうよ?」
「・・・・・」
・・・聞こえてないしっ
アタシは窓から入る陽の光が頼りなく薄れて行くのを
見つめて過ごすしかなさそうだった
- 309 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:48
- 二時間のスペシャル番組が終わると、ひとみちゃんは
そわそわしだした
この後、なんて言われるかなんてわかりすぎるほどよくわかってる
「・・・梨華ちゃん、あのさぁー」
あたしの機嫌をとるように、ひとみちゃんが猫なで声を出す
その顔を見て、あたしは小さく頷いた
「ごめん!ほんっとごめんっ!!!
・・・今なら、今すぐなら作れそうな気ぃすんだっ!」
真っ白なほっぺたをほんのりと赤く染めてる、そんなあなたを
あたしが引き止められる訳なんかない
「・・・がんばって」
サッサと玄関で靴を履いてたひとみちゃんが振り返って笑う
「サーンキュッ!!!」
きっと今日あたしに見せてくれた一番の笑顔
「んじゃっ!」
ドアがバタンと閉まると、あたしは溜息をついた
- 310 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:49
- 今日もあたしの部屋は甘い匂い
読みかけの文庫本を取り出して、ページを捲る
・・・甘いセリフ、甘い仕草、甘い恋人たち
運命だなんて甘すぎる言葉、信じてるわけじゃない
だけど・・・それにしたって
あたし達ほんとに付き合ってるって言えるの?
いつも甘い匂いに包まれてるひとみちゃんとあたし
だけど二人でいても、甘いなんて呼べないよ
あの秋が深まっていく夜の薄闇の中
あの日あたしに起こったことは今じゃもう信じられないくらい
ひとみちゃんは確かに、あたしの側にいてくれてるけど・・・
あれから三ヶ月経って、クリスマスもあたしの誕生日も
過ぎてしまった
恋人って、もっと甘いものじゃないの?
あたしって・・・ただの試食係とか?
自分の考えに落ち込んで、あたしはまた溜息をついた
- 311 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:49
- 「梨華っちぃ行くぞぃっ!」
メイクを直し終わったあやちゃんが、あたしの側にきて
ロッカーの鏡越しに笑う
「はぁ〜い」
あたしがリップを手早く塗り直すとあやちゃんは目を細めた
「んっ〜カワユイねぇ?濡・れ・た・クチビルッ」
あやちゃんはあたしの肩に腕を回して顔を覗き込むと
チュゥと唇を鳴らした
「あやちゃんってばっ」
あたしが可笑しそうに笑うと、あやちゃんはニコニコ
しながら腕を離した
「こりゃ〜ヨッスィ〜サンも、たまんないじゃろ?」
あたしはちょっぴり情けない気分で、曖昧に微笑んだ
- 312 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:50
- 今日はあたしもあやちゃんも、ひとみちゃんも美貴ちゃんも
早番で、四人で新しくオープンしたお店にケーキを食べに
行く約束になってる
ひとみちゃんは色んな人の意見が聞きたいみたいで
次々お店を調べては、時間が合うと四人で出かけて行く
ことも多かった
最初、ちょっと怖そうだと思ってた美貴ちゃんと、いつでも
華やかで、あたしとは住む世界が違うみたいに思ってた
あやちゃんだけど、開けっぴろげで付き合いやすくて
意外と面倒見がいいこともわかった
ひとみちゃんとの仲は全然進展してないけど、あやちゃんと
美貴ちゃんとのお友達関係はグングン進展してってる感じ
四人でいるのは学生時代の仲良しグループみたいで楽しい
・・・それはそれで、ほんとに楽しいんだけど・・・
ひとみちゃん達との待ち合わせの時間まで暇つぶしに
デパートをブラブラしながら、賑やかに次々洋服を冷やかす
あやちゃんを見ながら、微笑むあたしの心の中は弾んでる
とは言えなかった
- 313 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:50
- 「そろそろ行くかぁい?」
あやちゃんに言われて、あたしはハッとして頷いた
「ここんとこ、梨華っちぃ元気なくなぁい?」
意外に鋭いあやちゃんは、小首を傾げてあたしを見た
「そ、そんなことないよぉー」
顔の前で片手をブンブン振りながら、これ以上突っ込まれ
ないように急ぎ足で歩く
「ほんとにぃ〜?」
「ほんと、ほんと」
「ふぅ〜〜〜ん」
誤魔化したつもりだったけど、隠し切れない動揺は
あたしの足をもつれさせた
「・・・キャッ」
デパートから外に出る階段で、あたしは思い切り派手に
転んでしまっていた
- 314 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:50
- 「いったーいぃ・・・」
「ありゃりゃ〜」
ブーツから出てる膝から血が流れてる
あたしの膝を覗きこむように、横にあやちゃんがしゃがみ込む
カバンをゴソゴソやるとティシュを取り出し、そっと傷口を
おさえてくれる
「何してんの?君たちは?」
笑いを滲ませた声に顔を上げると美貴ちゃんがニヤニヤ笑ってた
「梨華っちが〜」
あやちゃんがあたしの膝を見て、美貴ちゃんの顔を見上げる
「どれどれ」
美貴ちゃんもしゃがみ込むとカバンをゴソゴソしてカットバンを
取り出すとあたしの膝に貼ってくれた
- 315 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:51
- 「さっすがぁーアッタシのミキたんは使える女っ」
美貴ちゃんは満更でもなさそうに笑って、少し先でカゴを
持ってる女の子を指差した
「いまそこで貰ったんだ、やっぱさぁ貰えるもんは
貰っとかないと」
美貴ちゃんがやけに真顔で言うから、なんとなく可笑しくなって
三人で顔を見合わせてちょっと笑った
「どしたの?んなトコ座り込んで」
今度は頭の上から、ひとみちゃんの声がした
「・・・転んじゃって、美貴ちゃんがこれ貼ってくれたの」
あたしが見上げるようにひとみちゃんの顔を見ると
ひとみちゃんはゲラゲラ笑い出した
「大袈裟だなぁ〜 んなの唾でもつけときゃ治るって
行こ、行こっ」
- 316 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/05(月) 18:51
- サッサと歩き出すひとみちゃんに、美貴ちゃんが立ち上がって
肩を並べる
あやちゃんがあたしの腕を引っ張って立たせてくれると
腕を組んできた
「アッタシ達も行くよぉン」
「あ、ありがと・・・」
「いんや」
いつものあやちゃんスマイルに笑い返して、あたしも
歩き出す
大股で前を歩いてくひとみちゃんの背中を見てると
だんだんムカムカしてきた
・・・なっなによぉー大笑いすることないでしょ?
・・・ちょっとくらい気にしてくれたっていいんじゃないのぉ?
・・・そもそもねぇ誰のせいなのよ?
こういうの釣った魚に餌はやらないって言うのかしら・・・
・・・でも、それよりも
ひとみちゃんはあたしをほんとに釣ったと思ってるのかしら?
あたしは自分が一人で勘違いしてる気がして、あやちゃんの
腕がなければ、そのまままた座り込みたくなるような
脱力感を感じていた
- 317 名前:Sa 投稿日:2004/04/05(月) 18:53
- 本日分終了でございます
それでは、また明日更新致します
- 318 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/05(月) 21:45
- 新作いい!!面白いです。
Saさんまた頑張ってください!!
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/06(火) 11:08
- お、続編が♪
Saさんの小説すきです。
がんばって下さい。
- 320 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:05
- 「正直に言いたまえ、梨華っち
キミはなんか悩んでるっ!」
あたしはテーブル越しに人指し指で、ビシッとあたしを指す
あやちゃんの細い指先を見た
「んー・・・」
今日あやちゃんは美貴ちゃんと約束してて
それまで暇だからってこの店になかば無理矢理
連れてこられたの
さっきまでお仕事の愚痴とか、テレビの話とかしてたんだけど
あやちゃんはほんとはこのことが話したかったみたい
・・・言っちゃおうかな?
あたし一人でウジウジ考えてるとどんどん暗く
なっちゃって、たぶんあやちゃん心配してくれてる
みたいだし・・・
「・・・あの・・・ね?」
あたしが決意を決めてあやちゃんの顔を見た時
後ろから底抜けに明るい声がした
「お待ちぃ〜♪」
- 321 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:05
- ・・・もう、いい
あやちゃんだけに言ったって、どうせ美貴ちゃんには
筒抜けだろうし
二人にジィッと見つめられて、あたしは重く感じる
自分の口を開いた
「・・・あたしって魅力ない・・・のかな?」
「「ハァ?」」
二人にキレイにハモッて聞き返されて、なんだか顔が
赤くなる
「・・・その・・・あのね、なんていうか・・・
そういう気分になりにくいのかな?・・・あたしとって」
「あっ!あぁ〜〜〜そゆこと?」
美貴ちゃんは大きく一つ頷くとニヤニヤ笑った
「そんなことないんじゃないのぉ?
どっちかっていうと、ちょっと手ぇ出してみたい
タイプっていうかぁー」
スッとあやちゃんの指が伸びて美貴ちゃんのほっぺたを
自分の方に思い切り引っ張った
- 322 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:06
- 「いっいだいっでぇー あ、あやぢゃぁ〜んっ」
「そういうこと言うのわぁーこの口っ?!」
「ご、ごめんなざぁーいぃぃっ」
あやちゃんは指を離して、美貴ちゃんの方を見ると
ニッコリと眩いくらいに微笑んで見せた
「気をつけてねン?ミキたん」
「ハイ・・・」
あやちゃんは美貴ちゃんの頬を、痛くない、痛くないと撫でると
あたしの方を見た
「梨華っちはアッタシとミキたんの次にカワユイと
思うけどぉ?・・・それに、色っぽさってことなら
ミキたんよか上かもねン」
「・・・そう・・・見える?」
横からジトーと送られてくる視線をきれいに無視して
あやちゃんは、ウンと頷いた
あたしに色っぽさがあるかなんて、自分ではいまいち
わかんないんだけど、とりあえず見た目の問題ではないみたい
あたしは小さく息を吐いた
- 323 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:06
- 「ご無沙汰で、寂しくなっちゃったーとか?」
美貴ちゃんにからかうように言われて、耳まで熱くなってきた
あたしは俯くと首を振った
「・・・ないから」
「ない?」
「そーいうのって・・・ないから」
「「えぇぇーーーっ」」
二人に大声でハモられて、あたしはこの場から消えてしまいたい
と思った
「・・・一度・・・も?」
恐る恐ると言う感じで聞いてくるあやちゃんの声に
あたしは俯いたまま、もう一度小さく頷いた
「そうなんだ?・・・そっかーぁ・・・」
美貴ちゃんの何かを考えるような声にあたしは顔を上げた
「ミキらは男って訳じゃないから、生理的欲求で我慢出来ない
とかってないわけじゃん?
だからこう・・・気持ちが深まると、自然にそうしたくなるって
言うかぁー・・・でもさーぁ・・・」
- 324 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:07
- ・・・それって
ひとみちゃんの気持ちが足りないってことぉ?
魅力が足りないよりもっと悪い気がする・・・
どんよりとしてくるあたしを見て、美貴ちゃんは慌てて言った
「ちっ違うよ?違うって!続きがあるのっ人の話は最後まで聞くっ
ミキが思うにそういうのって、人によって色々ってこと
気持ちなくても軽く出来るヤツもいるし、気持ちが大きくても
しないヤツもいるってー
そーゆう考え方みたいのは・・・相手が男とか女とかで変わんない
気がするんだ」
「・・・ただの友達だと思われてたりして・・・」
ずっと胸に引っかかってる
小さな棘みたいな言葉をあたしは口にした
「・・・それはないよ
ただの友達のこと、あんな眼で見るヤツ
ミキは女優だよ?そういうのってよくわかるんだから」
美貴ちゃんはあたしが今まで見たこともないような
柔らかい笑みを浮かべた
- 325 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:08
- 「・・・なんつうか、そういう関係を持つことがそんなに
必要ってわけでもないんじゃない?」
美貴ちゃんの言うことはきっと正しい・・・けど
だけど、あたしは不安になっちゃうの
少し遠く感じるひとみちゃんとの距離が・・・
いままで黙ってたあやちゃんがあたしを見た
「梨華っちがそうしたいんなら言っちゃえば?」
「・・・言う・・・の?」
「んっ思ってること・・・ヨッスィ〜サンって、たぶん
梨華っちが思ってるより、もっと、ずっと臆病なんだと思う
それに、あんましわかってなさそうっていうかぁー
そういうことも意外と奥手そうっていうかぁー」
あやちゃんの言うこと・・・なんとなくだけどわかる
言えるもんなら言っちゃっていいことなのかも知れない
だけど、だからって・・・やっぱり、無理だよぉ
あたしには言えないよー
黙り込むあたしを見てあやちゃんやれやれと肩を竦めた
「しょうがありませんね〜ぇ、まつぅらサンが一肌脱ぎますかぁ〜」
- 326 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:08
- あやちゃんの行動はびっくりするほど早かった
次の日、ロッカーで着替え終わったあたしの腕を引っ張ると
耳元でこう言った
「来週の休館日、前日梨華っち休みだよね?
開けといてねン二日間、箱根に行こぉー」
「は・・・箱根ぇ?」
「うん、アッタシの親戚が旅館やってるのだ
アッタシもチーフに言って、休み変わってもらったしぃ
ヨッスィ〜サンはミキたんがどうにかしてくれるって♪」
「・・・大丈夫、かな?」
「大丈夫っ大丈夫っっ!
題して、雪景色の中(予定)旅館で温め合っちゃお〜
大作戦っ!!!」
・・・大作戦???
・・・おまけに、温め合っちゃおう〜って・・・
あたしは相談する相手を間違えちゃったような、複雑な気持ちで
あやちゃんを見た
あやちゃんが自信たっぷりに頷くのを見て、ますます不安
になったけど、とりあえず小さく頷き返した
- 327 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:09
- あっという間にその日はやってきた
真冬独特の透明な空気の中で、柔らかい陽射しが煌いている
ロマンスカーに乗り込む前に、あやちゃんが残念そうに
空を見上げてた
「あ〜〜ぁ・・・雪ナシ」
ロマンスカーがどんどんスピードを上げて行く
景色が頭の後ろにぐんぐん飛んで行った
四人で向かい合って座って、進行方向と逆に座ってしまった
あたしは、昨夜ほとんど寝れてなかったのもあって、だんだん
気分が悪くなってきた
膝をちょんちょんとつつかれて、前を見ると、目の前に座る
ひとみちゃんが自分とあたしを指差して、換わろうと
言うように、指先を回転して見せた
「・・・ありがと」
「ヨッスィ〜ってそゆとこ、よく気がつくのにねーぇ?」
「・・・なに、なんか言いたそうじゃん?ミキティ」
「べっつにぃ〜」
あやちゃんと美貴ちゃんは顔を見合わせるとニヤニヤ笑った
- 328 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:09
- ロマンスカーを降りると駅前に送迎バスが待っていた
十分足らずで旅館に着くと、あやちゃんがフロントで鍵を
二つもらって戻って来る
「ハイッ梨華っち達は柊の間、アッタシとミキたんは楓の間
隣り同士だって」
「二部屋取ってたの?」
意外そうな顔をするひとみちゃんに、あやちゃんは当たり前だと
言うようにニッコリして、美貴ちゃんと腕を絡めた
「シーズンオフで部屋余ってるしぃ、ジャマされたくないもぉん」
「あっそ、まっお好きなどーぞ」
ひとみちゃんは少し皮肉っぽく笑って、ねぇー?と言いながら
あたしを見た
なんか・・・ドキドキしてきた・・・
- 329 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:10
- 「ところでさぁー」
ひとみちゃんは荷物を持ち直して、あやちゃんから受け取った
鍵をくるくる回した
「これから、どーんの?露天風呂あるんだよねぇ」
「二人で行ってきたらー?」
美貴ちゃんがそう言いながらあたしの顔を見た
「行く?」
・・・行く?って
こともなげにサラリと言ってのけるひとみちゃんに
あたしはドキドキが口から飛び出しそうになった
「・・・あたし・・・まだいい、部屋でちょっと休みたいし・・・」
「そ?じゃアタシ、荷物置いたら行ってこよっと」
部屋へと向かって廊下を歩きながら、あたしはあやちゃんと
美貴ちゃんに軽ーく睨まれてしまった
- 330 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:10
- ひとみちゃんが、じゃーねって言いながら部屋を出て行って
少しすると、あやちゃんと美貴ちゃんが入ってきた
座椅子に座ってお茶を入れてたあたしは二人に聞いた
「飲む?」
「飲む?じゃないよー梨華ちゃんっ
こんなとこまで来てなんでお茶飲んでるのっ」
美貴ちゃんの目が吊り上がって見える
やっぱり美貴ちゃんって、ちょっと・・・こわいよぉ
「ダメじゃんっ梨華っちぃ」
あたしが自分用に入れてたお茶に口をつけながら、あやちゃんまで
あたしを見て、メッと怖い顔をした
- 331 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/06(火) 15:11
- 「・・・だって、いきなりだよ?
こんな明るい中で・・・あたしには無理だもんっ」
あたしが口を尖らせると美貴ちゃんは気が抜けたように
あ〜ぁ、と言った
「・・・その身体を見せ惜しみして、どーすんだって話だよ?
したら、ヨッスィ〜も転ぶとミキは見てたのにー」
・・・転ぶ・・・って・・・
「・・・やっぱり、酒?」
美貴ちゃんがあやちゃんを見るとあやちゃんはコクリと頷いた
「あんまりぃ美しーとは言えないけど、もぉそれっかないかなぁー」
・・・なんだか
あたしの気持ちとか関係なく話が進んで行っちゃってる気がする
ここにいることが、そもそもなんだか間違っちゃってる気がして
あたしは今すぐにでもお酒を飲んで、酔っ払っちゃいたいような
気がしてきていた
- 332 名前:Sa 投稿日:2004/04/06(火) 15:11
- 更新致しました
JUNIOR様
レスありがとうございます♪
なんだか支えて頂いてるなーと思う春の午後(w
319様
レス嬉しいです♪
スキと言って頂けると励みになります、ガンバロっと(w
- 333 名前:コナン 投稿日:2004/04/06(火) 15:56
- 完結&更新お疲れさまです。
私もSaさんの作品大好きです!
梨華ちゃん視点いいっすね〜
オクテのよっちゃん??なのかな?
よっすぃ〜がぁぁぁぁぁぁ〜(HEY3かっけーかった)
まったり待ってます。頑張ってください。
- 334 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/07(水) 10:11
- 更新お疲れ様です。
よっすぃ〜がオクテかぁ。
面白いことになりそうですね。
完結目指して頑張ってください。(放置は絶対しないでという意味で)
- 335 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:45
- なかなかに豪華なお夕飯が終わって、お膳が片付けられると
あたし達の部屋の冷蔵庫から、美貴ちゃんは次々お酒を
出してきた
ひとみちゃんはゆったりと自分のペースで飲んでて
酔っ払うような気配はなかった
あやちゃんはかなりお酒が強いらしくって、ハイペースなわりに
まったくどこも変わらない
あたしは飲む気分になんてやっぱりなれなくて、ちょっとずつ
缶を口にあてていた
美貴ちゃんだけが、どんどん様子が変わって行って
とうとうひとみちゃんに絡みだした
「ヨッスィ〜さーぁ ダメだねっ!全っ然ダ〜メッ」
「はぁ? もう酔ってんの?」
ひとみちゃんは美貴ちゃんの顔を呆れたように見た
「ヨッスィ〜がさーぁ 案外口ベタって知ってるよぉーだ
ならさぁ〜態度で示しなよってこ〜と」
「・・・なんの話?」
- 336 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:46
- ど、ど〜しようっ
雲行きが怪しくなってきたーーー
「梨華ちゃんがかわいそーじゃんかーぁ
自分のせぇーかって気にしてるってのぉー
ヨッスィ〜はさーぁ、このまんまでいぃーと思ってんのか
しれないけどぉー
梨華ちゃんはねぇ?ヨッスィ〜にさぁ抱か・・・」
ひとみちゃんの目が驚いたように見開かれる
ぎゃぁぁぁ〜〜〜みっ美貴ちゃんっっっ
止めてーーーっ!!!
あやちゃんが横から素早く美貴ちゃんの口を手で塞いだ
「んもうっミキたんったらぁ酔っ払っちゃったみたい
アッタシ達、部屋戻るからー」
あやちゃんはまだ何か言いたそうな目でしつこく
ひとみちゃんを見てる美貴ちゃんを半分引きずるように
部屋を出て行った
スゥーと襖が閉められると、いきなりシンとした部屋の中に
ひとみちゃんの声が響いた
「・・・そんなこと・・・考えてたんだ?」
- 337 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:46
- 二人を目で追ってたあたしがひとみちゃんに背中を向けたまま
カチンと固まってると、からかうような声がした
「そんならそうと、言ってくれないとー」
言える訳ないでしょぉーーーっ!!!
振り返ってひとみちゃんの顔を睨みつけると、その目は
意地悪く笑ってた
「アタシって、全然ダメだからー
なんだっけ?・・・ほら、バカでドンカンでイクジナシだし、ねーぇ?」
ひとみちゃんはアタシを見ながら、さらにニヤニヤする
「・・・ほんっとに意地悪・・・ひとみちゃんって」
「そうそうサイテーでしょ?」
「もういいっ!」
あたしが立ち上がろうとすると、グッと腕を引っ張られて
そのままなだれ込むように背中から抱きしめられた
「・・・梨華ちゃんだって、全然わかってないじゃんか
アタシの気持ち・・・だからイジワルしたくなるんだよ?」
フゥーとひとみちゃんは大きく息を吐いた
- 338 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:47
- 「・・・梨華ちゃんさ、運命ってなんだと思う?」
・・・運命?
背中越しにひとみちゃんの声が小さな振動になって
あたしに伝わってくる
「運命なんて言い方・・・大袈裟に聞える?
だけどさ、最近アタシ思ってたんだよね
ソレって始めっからダレかが用意してるモンなんかじゃなくって
自分で見つけて努力して、大事なモン運んでく道のコトかなって
そんで、ソレを一緒に運んで行ける人って梨華ちゃんしか
いないって思ってさぁー
アタシにとってはね・・・運命の相手ってコトなんだ
・・・だから、さ 急ぐ必要なんかないって思ってたんだよ?」
・・・そんな風に想ってくれてたなんて・・・
背中から回されたひとみちゃんの腕にグッと力が入る
「なーんてのはカッコつけすぎで、ホンネを言うと自信なかった」
・・・自信?
「・・・アタシだってさぁ、恋愛経験豊富ってほどじゃナイし
ましてや、梨華ちゃんは初めてな訳じゃん?
だから・・・嫌な思いだけはさせたくなかったんだ
どうやって進んで行ったらいいのか、よくわかんなくって」
- 339 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:47
- 「・・・ひょっとして、自分が魅力ナイからとでも思ってた?
んなコト、あるわけナイでしょ?
梨華ちゃん・・・アタシよりバカだよね」
・・・ひとみちゃんは
あたしが思っていたのより、もっとずっと不器用でかなり
真面目な人みたい
ひとみちゃんはクルリとあたしの身体の向きを変えて
あの日と同じに熱で掠れたような声で聞いた
「・・・ほんとに、いいの?」
「・・・そんなこと・・・聞かないで」
あたしが答えた声は笑っちゃうくらい震えてしまっている
「知らないぞぉー?もうね〜梨華ちゃんが
やだって言っても止めないからねーっ」
ひとみちゃんはふざけた口調で言いながら、優しく笑った
そして片腕であたしの背中を支えるようにゆっくりと
倒して行った
- 340 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:48
- 横になったあたしは真上にあるひとみちゃんの顔を見てるのが
どうしていいかわからないくらい恥ずかしくって、たぶん
耳まで真っ赤になってる顔を両手で隠した
「・・・そんなに恥ずかしがんないでよ
こっちまで照れちゃうじゃんっ」
ひとみちゃんはあたしの背中から腕を抜くと顔を隠す
あたしの両手を掴んで、畳に押し付けた
そしてだんだん近づいてくる、大好きなその顔を見てると
どうしようもないほど胸が痛んで、苦しいほど熱くなっていく
・・・どうしてかな?・・・ただ、泣きたくなるの
だから、あたしはギュッと目を閉じた
あなたの唇があたしの唇を塞ぐ
- 341 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:48
- あの日してくれた、ためらいがちにそれでもわずかに強まって
いった唇とは、まるで違うもの
この合わされた小さな場所から総てを奪い去ろうとする嵐のように
あたしをその中に取り囲んで壊してしまおうとするみたいに
それは激しく、荒々しく、あたしを攻め続ける
怖い・・・と思った・・・初めて知るあなたのこと
瞼の裏がチカチカして、空気が足りないみたいにあたしは喘ぐ
抵抗するように、あたしが入れた腕の力をあなたは抑えつけた
・・・あたしの何かが崩れてしまいそう・・・
- 342 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:49
-
「・・・やっ」
わずかに開いたあたしの唇を、あなたの唇が大きく開かせて
甘い媚薬を流し込む
喉の奥を伝い、あたしの身体の奥に流れこんでくる誘惑
・・・甘・・・い・・・
・・・なんて、甘い・・・の
頭の芯がグルリと回る
・・・もう、なにがなんだかわから・・・
- 343 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:49
-
ガタガタッ
いきなり大きな音がして、ドキリッと心臓が冷たい水を
かけられたみたいに縮み上がって、あたしはバッと目を開けた
あたしに覆いかぶさるみたいにしてたひとみちゃんは
ゆっくりと身体を持ち上げると襖の先を睨んだ
あたしが眉を顰めてひとみちゃんを見上げると、人差し指を
自分の唇にあてて小さく、シッと言うと静かに立ち上がった
あたしも急いで起き上がると、ひとみちゃんを目で追った
気配を消すように襖の前まで行くと、ひとみちゃんは勢いよく襖を引いた
その先にはつんのめるように覗き込む、あやちゃんと美貴ちゃんが
・・・いた
- 344 名前:甘い運命 投稿日:2004/04/07(水) 10:50
- 「・・・何、してんの?」
ひとみちゃんが聞いたこともない低い声を出した
「・・・えっとぉ〜親心っていうのかなぁ〜つい、心配でぇ」
「へーぇ?そう・・・ミキティに生んでもらった覚えないよ」
「ヨッスィ〜サン、そんな怖い顔しちゃイヤーン」
「イヤンじゃねーよっ」
ひとみちゃんが怒鳴ると、だいたいヨッスィ〜がさぁーって
美貴ちゃんが言い返してる
三人のヒートアップして行く言い争う声を聞きながら
あたしは、小さく溜息をついた
・・・ひとみちゃんがくれた、運命って甘い言葉
運命なんて言葉、信じてなかったけど、信じられないことは
いつでも起こるって、今のあたしにならわかる
だけど・・・どうやら、その運命は甘いばっかりじゃないみたい
END
- 345 名前:Sa 投稿日:2004/04/07(水) 10:50
- 更新致しました
コナン様
ワァ〜イッ!!! 大、まで付いちゃって嬉しいなっと
オクテ問題・・・どっちだったのでしょう?(w
JUNIOR様
オクテ問題再発!イメージじゃナイんですね〜タブン(w
ハイッ!おかげ様で完結致しました〜〜〜!
次回はこのハナシからやっと離れて、短編を
上げようと思っております
よろしければ、お付き合いして下さいませ(ペコリ)
- 346 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/08(木) 00:51
- 完結お疲れ様です。
藤本さんと松浦さんは覗きですか・・・・・。
よっすぃ〜が藤本さんたちに生んだもらってたら恐いですよ。
だって0〜1歳の時の子供じゃん。どうやって産むんだYO。
Saさんには何処までもついていきます。
短編頑張ってください。
- 347 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:55
- 「・・・あ、あったぁ〜コレ・・・」
金曜日の夜
駅前のビデオ屋で、あたしが手を伸ばした先の
ビデオを横からスッと、誰かが取った
・・・ムッ!ムムムゥ〜〜〜
あたしは眉間に縦皺を寄せて、その手の先を見た
・・・あれぇ?
「え、と・・・吉澤・・・サン?」
あたしより、少し背の高い彼女
あたしの住むアパートの部屋の隣りのそのまた隣りの部屋に
住んでる、同じ年くらいの女の子
- 348 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:56
- 色あせたブラックジーンズにグレーのパーカー
レインボーカラーのニットキャップを目深に被った彼女は
ツッーと視線をあたしに向けた
「・・・誰、だっけ?」
あたしの眉間の皺が深くなる
引っ越したとき、タオル持って行ったじゃんっっっ
・・・ありがとねって笑ってくれたじゃないのよぉ
ちょっといい感じの子だなぁ、仲良くなりたいなぁって
思ってたのに・・・
一ヶ月も経ってないんですけどぉ?
そりゃね、あたしは一目見たら忘れられないような
絶世の美女じゃありませんけどっ?!
吉澤サンは怪訝な顔してボソッと言った
「ひとりごと?・・・キモーイ」
キィィィーーーッ!!!
- 349 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:56
- 失礼な人っっっ
覚えてるならまだしも(それでも、よくは無いわよ?)
顔も知らない相手にそんなこと言えちゃうなんて
信じられないっ
あたしはプイッと横を向いた
「もういいですっ!」
アレ?・・・けど、あたし口に出してたのかしら?
ちょっと危ない子みたい・・・気をつけなきゃ
「コレ、見たいんじゃないの?・・・石川サン」
背後から抑えるような聞き取りにくいアルトの声がして
あたしはガバッと振り返った
「コ、レ」
吉澤サンはニヤニヤ笑いながら、手に持ってるビデオを
軽く振ってみせた
覚えてるんじゃなーーーっい!!!
ヤ、な感じーぃ
ひょっとして、からかわれてるの?・・・あたしって?
- 350 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:57
- 「ゴメン、ゴメン・・・マジわかんなかった、最初
いま思い出したよ
そのせつはご丁寧にピンクの花柄のタオル、ありがとねー」
「・・・いえ」
なぁーんか、バカにされて聞えるのは気のせいかしら?
「・・・感じ変わるね? OLさん?」
「・・・うん」
「明日は休みかぁー」
「・・・まぁ」
「なんかぁ警戒されてない、あたし?」
「・・・そんなこと・・・ない、ですけど」
「ふぅーん・・・じゃ、コレ一緒に見ようか?」
「へっ?!」
「今晩あたしと・・・どう?」
ど・・・どう?ってそんな軽く・・・
だいたい話したのだって、引越しの挨拶といまで二回目
くらいなのに
「・・・近所付き合いしといた方がいんでない?
それにコレ新作だから一泊二日しか出来ないし
いつでもレンタル中だよ?・・・見たくない?」
「・・・見たい・・・けど」
「じゃ、決まりっ」
サッサとカウンターに行っちゃう吉澤サンを目で追いながら
あたしは小さく溜息をついた
- 351 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:57
- ・・・ヘンなことになっちゃった・・・気がする
帰り道のコンビニでポテチやポッキー、ポップコーンに
なぜか缶チューハイやビールまで、次々カゴに投げ入れる
吉澤サンを横目でみながら、あたしは後悔し始めていた
・・・おかしな人だったらどーしよ?
っていうか、充分すでにおかしくない?
レジが終わって、あたしのとこに戻ると吉澤サンは
あたしの肩に手を回してポンポンと軽く叩いた
「んじゃ、帰ろっか?」
「・・・う・・・ん」
無邪気にニッコリと笑いかけられると、なんだか自分が
考えすぎてるだけな気がして力が抜けた
・・・気を使ってくれてるのかな?
たまたま近所に住む子が同じビデオ見たがってるのが
わかって、声をかけてくれただけ
・・・優しい、いい子なのかも知れない
- 352 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:58
- あたしが歩きながら、吉澤サンを見上げると、彼女は
大きな目をおどけたようにさらに見開いた
「・・・なに?」
「うぅん・・・同じ年くらいかなって思って・・・」
「・・・年とか気になるの?」
「そぅいぅんじゃ・・・ないけど」
街灯が切れかかってチカチカしてる
フラッシュがたかれるみたいに切り取られて浮かび上がる
吉澤サンの横顔を、格好のいい顔だなって思いながら坂道を
上がった
家までは坂道が結構キツイ
ちょっと息がきれてきた
「結構・・・キレイだよね」
吉澤サンは上を向いてたから、あたしも空を見上げた
けど真っ暗で、月も星も出ていない
「・・・石川サンって、さ」
小さな声だったけど、暗い住宅街にはあたし達しかいなくて
吉澤サンの声は大きく響いた
・・・なんでだろ?・・・ドキドキしちゃう
・・・坂道のせい・・・きっとそう・・・坂道がきついせいだよね?
- 353 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:58
- 「スタイルもいいし、ね?
・・・結構タイプかなー・・・なんちて」
「吉澤サンもキレーだよ?」
「そ?」
見た目がタイプ・・・なんて、口説き文句みたい
だけど・・・なんか・・・ヘタな告白されるよりも・・・って
なにをときめいてるのよぉ〜あたしはっ?!
よく知りもしない、ただ近所に住んでるってだけの
・・・それも女の子に
月も星も出ていない、眠ってる街を並んで歩く
微妙な会話を楽しんでるみたいな吉澤サン
・・・とってもミョーな感じ
なんだか何かが起こって欲しいような
欲しくないような・・・そんなことを考え始めてる、あたし
なんだかよくわからない、だけどやっぱり微妙な感じ
- 354 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:59
- 吉澤サンはあたしに、どうする?とか聞かないで
自分の部屋の前に行くと、ジーンズのポケットから
カギを出した
玄関でカチッと電気を点けるとあたしを振り返る
「どーぞっ」
「・・・うん、じゃぁお邪魔しまーす」
吉澤サンちはうちと印象が違った
同じ間取りなのにすっきりしてて余計な物がない
引っ越してきた時期が違うからか、壁紙や床の色も違うし
入ってすぐ右のドアを開けると、狭いDKにカウンター型の
背の高いテーブルと椅子が二つ
コンビニの袋を無造作にそのテーブルの上に置くと
吉澤サンはビールやチューハイを冷蔵庫に入れながら
あたしを見た
「なに飲む?・・・ビールでいい?」
「うん・・・このテーブル可愛いねぇ」
あたしが真ん中にタイルの貼られたテーブルを軽く撫でると
吉澤サンは顔をクシュってして楽しげに笑った
- 355 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 09:59
- 「リサイクルショップで見つけて、あたしが貼ったんだ
わりと好きなんだよね、そーゆう事すんの」
「器用なんだ?」
「・・・どうかな?そっち座りなよ」
あたしは言われるままに奥の部屋の二人がけソファの前に
座った
吉澤サンは・・・やっぱ映画って言えばこっち?ってポップコーンの
袋を破ってテーブルの上に広げた
缶ビールを一つあたしに渡してくれると、テレビのスイッチ
を入れてデッキにテープを押し込んだ
吉澤サンもソファには座らないであたしの横にソファを
背もたれにするみたいに座って画面を見る
「・・・あっ、そっか」
吉澤サンが急に振り返って、覆いかぶさるみたいにあたしの
方に体を乗り出してくるから、あたしはカチーンと音が
しそうに固まった
「コレ、コレ」
吉澤サンはあたしの横にあったリモコンを取るともとの場所に
戻って座った
- 356 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 10:00
- ・・・び、びっくりした〜〜〜
リモコン取って、とか言ってよぉー・・・もぉっ
吉澤サンはあたしの顔を見てニヤニヤした
「なんかされると思っちゃった?・・・なんちて」
「思いませんっ!!!」
「あ、そっ?」
吉澤サンは何くわぬ顔で、テレビの画面をビデオに合わせて
巻き戻ししてる
「あたしさーわりと予告って好きなんだよねぇ」
予告が始まると吉澤サンはビールを一口飲んで缶をテーブルに置くと
その手をそのまま、あたしの手の上に乗せた
・・・えっ?!
ギョッとするあたしをお構いなしに、吉澤サンは
平然とした横顔であたしの手を掴んでギュッと握った
- 357 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 10:00
- ・・・ええぇぇぇーーーっ?!!!
「あのさー石川サンって付き合ってるヤツいるの?」
「ホヘェ?・・・いっいぃ・・・ない・・・」
「・・・ふぅ〜ん」
吉澤サンはテレビ画面を見たまま、軽く相槌を打った
動揺しまくって、ヘンな返事をしてるあたしの方を
見もしないで
「・・・じゃ 付き合っちゃおっか?」
テレビ画面を見たまま、吉澤サンはさらりと言った
- 358 名前:隣りの隣りの吉澤サン 投稿日:2004/04/08(木) 10:01
- ・・・か、からかわれてるっ
・・・きっとそう、そうに違いないっ
あたしは吉澤サンの唇が・・・なんちてって動くんじゃないかって
ジィーと見てしまっている
なのに本編が始まる時、吉澤サンはこう言った
「・・・この映画、終わるまでに考えておいて」
映画が始まる・・・あんなに楽しみにしてた映画
・・・ずっとずっと、見たかったのに
テレビの画面をぼんやり見ながら、この映画はもう一度見なくちゃ
きっとちっともわからないだろうなってあたしは思ってた
END
- 359 名前:Sa 投稿日:2004/04/08(木) 10:01
- 更新致しました
JUNIOR様
心強いオコトバありがとうございます!
チット、ミエミエ展開でお恥ずかしい・・・(w
- 360 名前:わく 投稿日:2004/04/08(木) 13:23
- 萌えました。やっぱジゴロなよっすぃ〜に、あたふたしちゃうチャーミーさんが好きw
次回作も楽しみにしてますww
- 361 名前:コナン 投稿日:2004/04/08(木) 14:08
- 更新おつかれさま〜バンザイ〜
ちょっと!!これいい!最高っす!
こういうお話好き大好きですよ!!!
よっすぃ〜がかっけぇぇぇ!!(萌えました)
あああぁぁぁりかちゃんになりたいっす!
短編といわずに、続編希望ですmm(_ _)mm
- 362 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/08(木) 17:08
- おぉ!!よっすぃ〜カッケー
梨華ちゃんテレまくりでかわいい!!
短編にしておくのはちともったいない気が・・・・・。
(O^〜^)/<続編激しく希望します。
- 363 名前:54@前作 投稿日:2004/04/08(木) 18:32
- おひさしぶりのレスです。
ご無沙汰してる間に完結おめでとうございます。(遅!)
Saさんワールド、たっぷりと楽しませていただきました。
そして短編、メチャ好きです。
相変わらずうまいなぁと思いつつ読んで、また読み返しましたよ、てへへ。
本当に脱帽でございます。
これは自分も別視点で続編希望ですw
- 364 名前:Sa 投稿日:2004/04/09(金) 11:48
- えー
最初にお詫びを
これから上げるハナシは「隣りの〜」とは違います
ご要望を沢山頂いて、お答えしたい気持ちはあるのですが
もうこのハナシを書いてる最中ですんで、頭の中がぁ〜(w
それでも、お付き合い頂けたら嬉しいです
わく様
萌えた、と言って頂けるのは、そりゃぁもう嬉しいです♪
今回またトーン変わるんで…ちと心配(w
コナン様
いしかーさんになりたいですか?ソレは光栄ですなぁ
続編考えてみますね?ガッカリされそうですが…ハハッ
JUNIOR様
この吉澤サン人気あるなぁ…ちと、ビックリです
短編で止めときゃ良かったってのがコワイですね(w
54@前作様
お久ですね、また来て頂けてうれすぃ〜デス
「隣りの〜」は場面が浮かんで作ったハナシなので設定とか
考えてないんですよ 別視点…期待しないで下さい(汗)
- 365 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:49
- 再会は偶然だった
- 366 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:49
- 年が明けて、真新しいカレンダーの日付が半分を過ぎる頃
ターミナルビルが並ぶ歩道からは、ビルの谷間に吹く灰色の
空っ風がsaleの旗をあちこちで揺らすのが見えた
「あっあのー!
ちょっと待って下さいっ!よ、吉澤さんっ」
吉澤さん?
…って、アタシ?
ゆっくり振り返ると、大声でアタシを呼んでたらしい
女の子は俯いて膝に手を置いて肩で息をしていた
「…アタシ?」
眉を寄せながら、肩で息してる女の子に声をかける
その子は顔だけ上げるとアタシの顔を見て柔らかく微笑んだ
「やっぱり吉澤さんだった・・・」
黒髪が肩にかかって、女の子の口から出る白い息と一緒に
揺れている
懐かしそうな、それでいてどこか寂しそうな印象的な笑顔だった
- 367 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:50
- 女の子は息を整えると、アタシの側まで歩いてきて
ニットキャップを渡してくれた
「あっ…コレ?」
「うん、さっきお店のテーブルの上に忘れてたみたいだったから」
よく見ればその女の子はアタシが今まで休憩してた
ファーストフード形式のコーヒーショップの制服を着ていた
「悪い、サンキュ」
「ううん じゃ、ね」
彼女は踵を返すと走って着た道をコーヒーショップの方へ
ゆっくりと戻って行った
アタシはなんとなくその後ろ姿を目で追った
…何かが、胸に引っかかっていた
- 368 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:50
- アタシは自分の働くショップで、棚から飛出たジーンズを
揃えたり、ぐちゃぐちゃにかき回された平置きのトレーナーを
たたみ直したりしながら、さっきの女の子の顔を思い出していた
…誰だろう?
…綺麗な、子だった
…あんな知り合いいないよなぁ?
だけど、何かがやっぱり胸に引っかかっていた
店が九時に終わって軽く掃除して、売り上げを計算してる
店長に声をかけた
「お疲れースッ お先に失礼しまっす」
「おぉっお疲れー」
通用口を出るとビュッと北風が吹いた
アタシは首を竦めながら、自転車置き場へ回った
自分ちのチャリを引っ張り出すと跨って、両手を一回
擦り合わせる
ペダルに掛けた方足にグッと力を入れると、冷えた外気が動いた
- 369 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:51
- 駅前のローターリーをグングン進んでいると、流れる景色の中に
昼間見たばかりのあの女の子の顔が見えた
バス停の長い列の後ろの方に並んでる
アタシは一度通り越したけど、なんでか気がついたらブレーキを
かけていた
方向変換して歩道に上がるとチャリを押しながら、バス待ちの
長い列を逆に進んだ
「いま帰り?」
アタシが背中越しにかけた声に、彼女は驚いた顔して振り返った
「吉澤さんっ!?」
「バス使ってんだ? 家、近いの?」
「えぇっと・・・西朝日」
「マジッ?地元じゃんっ!!何丁目?」
「…二丁目」
「わーぉ近いね?アタシ三丁目っ!」
なんだか嬉しくなって矢継ぎ早に質問するアタシに、彼女は
戸惑うように眉尻を下げた
- 370 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:51
- ・・・浮かれすぎ?
・・・ってか、誰よ?ってのが先か・・・
アタシは彼女の顔をマジマジと見てみた
彼女はアタシと目が合うと、顎を引いて俯いた
しなやかな黒髪がサラサラと彼女の表情を隠す
・・・やっぱ、わかんねー
でもなんか、名前は?なんてタイミング逃しちゃって
今更、聞き辛いし・・・
「・・・ねぇ?」
アタシが話かけると彼女は上目遣いでアタシを見上げて
小さく首を傾げた
「来ないね?・・・バス」
ロータリーを回って次々くるバスはなんでかこの停留場の前
には止まらなかった
「このバス、岡下の踏み切り通るからいつも遅れるの」
「なーるほど・・・」
- 371 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:51
- 岡下の踏み切りは開かずの踏み切りで有名だ
アタシは彼女の名前に興味があって・・・と言うより
彼女を見てると、何かが胸に引っかかる
その正体が知りたくて、もっと彼女といたいと思った
ホントのアタシの愛用のチャリはマウンテンバイクでシティ向けだ
タイヤも細く、滑るように走った
けど、バカな弟が自分のチャリを盗まれて、朝が遅いアタシの
チャリに勝手に乗って行ってしまったのだ
それで今日のアタシは格好わりーママチャリだったんだけど
今日に限って言えばそれはラッキーなことかも知れなかった
どんどん長くなる列に彼女が表情を不安そうに曇らせた時
アタシは荷台を軽く叩いた
「送ってく、乗ってきなよ・・・ちっと寒いかも知んないけど」
「・・・でも」
「二丁目も三丁目もたいして変わんないじゃん?
・・・あんた、軽そうだし」
- 372 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:52
- あんたなんて彼女を呼ぶのに似合わない気がした
そうかと言って君なんて呼ぶのはアタシのキャラじゃないし
目の前の彼女は、また視線を落として緩く握った拳を口元に
寄せて、迷うように唇を軽く叩いてる
すんなりとした華奢な身体のライン
白のショートジャケットの下の細い腰
何かを憂うような眼差し
意外と頑固そうに結ばれた口元
その顔に影を落とす、艶やかな黒髪
改めて、美しい子だと思った
「ほんとに・・・いいの?」
ボソリとした声で聞かれてアタシは慌てて頷いた
チャリに跨ると荷台に彼女が座ったのを確認して
アタシは思い切りペダルを踏んだ
「アタシはとばすよ?しっかりつかまってて」
歩道から降りる時、ガタンとチャリが揺れた
その時、彼女が小さく「きゃっ」と上げた高い声はなんだか
やたらと懐かしく耳に響いた
- 373 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:52
- グングン流れて行くいつもと変わらない景色
ビュゥビュゥと風を切る音が耳に冷たい
だけど、背中に感じる彼女の気配は温かかった
・・・ほんとに軽いや
カーブもスピードを落とさないで曲がったら、彼女が
アタシの腰に腕を回して、ギュッとしがみついてきた
「早ーーーいっ!」
意外な程、無邪気な声を聞いてアタシの頬は何故だか緩んだ
「ひとみちゃんって、変わんないね?」
さっきまでの他人行儀なトーンを抑えた声じゃなく
甘さを含んだ高い声に名前を呼ばれて、アタシは急ブレーキを
かけると、後ろを振り返りその顔を見つめた
- 374 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/09(金) 11:53
- ・・・なんで気がつかなかった?
・・・それにしたって、変わりすぎてる
中学時代の彼女の面影を探るようにアタシは彼女の名を呼んだ
「・・・梨華ちゃん?」
「思い出してくれたんだ?」
梨華ちゃんが可笑しそうに細めた眼差しに、会わずにいた
歳月の長さが静かに流れて消えて行った
後、二ヶ月もすれば、また春が巡ってくる
桜の季節が過ぎる頃、アタシは二十一歳になる
- 375 名前:Sa 投稿日:2004/04/09(金) 11:55
- 本日分、更新終了です
- 376 名前:わく 投稿日:2004/04/09(金) 17:57
- んんっ!!ドキドキします!!
2人にはどんな過去が。。。
激しく期待してますw
- 377 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/09(金) 23:06
- 更新お疲れ様です!!
2人の再会のシーンがなんかイイ!!
でも過去にはなにが・・・・・。
また、楽しく読ませていただきます。
頑張ってください。
- 378 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:22
- 「バカだバカだと思ってたけど、ほんとのバカだねぇ
吉子はさぁ〜」
「うるせーよっ」
アタシが働くショップの本店は、うちの店の駅から五つ先にある
そこで働くごっちんとはバイトあがりで社員になったって事や
年が一緒っていうのもあって、すぐに打ち解けた
最初に言葉を交わしたのは夏のセールの時、アタシが本店に
ヘルプで行って、その後の飲み会に参加した時だった
「それって、例の・・・あの子だったんでしょ?
なんで、わかんないのかなぁ〜
そんなに激変してたんだぁ?」
「激変ってか、別人?
ぶっちゃけ、整形したのかと思った」
「ふぅ〜ん」
- 379 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:23
- 梨華ちゃんと再会した日
信じられないもんを見る様な顔、アタシしてたんだと思う
梨華ちゃんは可笑しそうに笑った後、少し困った顔をした
「・・・そんなに変わったかなぁ〜あたし?」
「・・・うん・・・かなり」
今の姿から想像出来ないけど、梨華ちゃんは中学生の時
かなり冴えない女の子だった
冴えないというより・・・不細工だった、のが正しいか?
高校を卒業した後の会社勤めで、食が細くなり、その上胃を
やられた梨華ちゃんはかなり痩せてしまったらしい
奥二重だったどこか重たげな瞳は、今では流美なアーモンドの
形を描き、何かを憂う様な眼差しへと変わっていた
だけど送って行って、この梨華ちゃんがあの梨華ちゃんだと
言うことはほんとらしいとアタシは納得した
- 380 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:23
- 家の中に上がった事はないけど、あの頃もよく自転車できた家
中学二年だったあの頃
携帯なんて持ってなくて、電話で長話より直接会いに来た道
なぜか家には上がらなくて、チャリを飛ばしてこの家の前
までくると、アタシは窓に向かって口笛を吹いた
約束めいたことなんてしなくて良かった
いつでもアタシが口笛を吹くと、二階の窓が開いて
梨華ちゃんが笑顔を見せた
当時からジーンズばっかり履いて、ショートカットだった
アタシに、時々梨華ちゃんは言った
- 381 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:23
- 「ひとみちゃんすっごく可愛いんだから、もっと女の子らしい
格好とかも似合うと思うよ?」
「なんで?似合わないコレ?」
「違うよ〜そういう格好も似合ってるけど・・・」
「けど?・・・なに?」
「・・・男の子みたいなんだもんっ」
そういう会話をする時、決まって梨華ちゃんは、ほっぺたを
赤くして、少し怒ったような口調になった
あの頃、自分の外見にコンプレックスの塊みたいになってた
梨華ちゃんは、体重を気にしてアタシがいいって言っても
アタシの自転車の後ろには一回も乗らなかった
だから、梨華ちゃんが家から出てくると近くの川原まで
自転車を押してアタシは歩いた
梅雨の時期、水かさが上がった川の上を色んなものが流れて
行くのを土手に座って二人で見てた
真夏には虫に刺された足をかきながら、アイスキャンデーをくわえた
ポトポト落ちる水色の染みに、どこからか蟻が群がった
いつか花火をしようとアタシは言った気がする
- 382 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:24
- 「で、ときめいちゃった?」
ごっちんがボンヤリしてたアタシの顔を覗き込む
「バァーカ!昔の事じゃん・・・」
アタシはごっちんの額を軽く小突いた
「引きずってるくせにぃー
言うまでもない事だけど、ごとーに遠慮はいらないからねぇ
ごとーたちってそういうんじゃないじゃん?」
「・・・わかってるよ」
ごっちんと飲んでたあの夜、失恋したばかりのアタシは
かなり無茶な飲み方をしていた
アタシを知ってるヤツがいないってことが、何故だか自分が
どう思われようといいような気がしてきて、失恋話をした
そして初めて会ったごっちんに問われるまま答えた
アタシは女に振られた、と
何故ならアタシは、女にしか興味が湧かないらしいから
- 383 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:24
- そのまま潰れたアタシは目が覚めた時
隣りにごっちんがまだ座って、飲んでるのを見て驚いた
そしてごっちんは更に驚くことを言った
・・・自分と寝てみるか、と
アタシはごっちんの真意がわからなかった
興味本位で女と寝てみたいだけ?
だけど・・・それもいい、とアタシは思った
アルコールから醒めた後、告白した女の顔が浮かぶのが嫌だった
汚いものでも見るような、どこか脅えてたあの眼の色
愛だの恋だの面倒なだけの感情はもういらない
だからアタシは・・・寝ようか、と答えた
- 384 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:25
- ごっちんは最初にアタシに言った
寝る時は自分の事を苗字で呼んで欲しい、と
変なこと言い出す子だと思ったけど、忘れることの出来ない
誰かにそう呼ばれていたのかも知れない、とアタシは思った
そして・・・寝た
だけど、どんなに追いつめても、達する刹那でさえ一言の言葉も
口にはしなかった
- 385 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/10(土) 16:25
- そしてアタシ達は、あの日から月に一回か二回こうして
二人で飲んでる
会えば、南国を旅してるみたいに頭を空っぽにして笑うだけの
バカ話をよくした
たまに笑うのに疲れたりしたけど、ごっちんとの付き合いは
気楽で楽しかった
気分が合えば抱き合った・・・何かのついでみたいに
「ねぇ〜今日はどうしよっかぁ?」
ごっちんが窓の外を見ながら、アタシに聞いた
「・・・そう、だな・・・」
アタシも暗い窓を見た
窓の外にはビルの隙間から、人工的な赤い光が星のいるはずの
場所に瞬いていた
- 386 名前:Sa 投稿日:2004/04/10(土) 16:26
- 更新致しました
わく様
ドキドキ素敵な響き〜(w
ありがとうございます♪
ご期待も嬉しいですが、ホドホドでお願い致します(w
JUNIOR様
なんかイイって言って頂けるのも大好物なんで(w
ありがとうございます♪
楽しんで頂けたら嬉しいです
- 387 名前:54@前作 投稿日:2004/04/10(土) 17:19
- 更新、お疲れ様です。
う〜ん、今回もイイっすねぇ。365で一気にヤラレましたw
過去のいしよしの描写が何気に微笑ましいですね。
あと今回登場しましたが、自分はSaさんの描くこの人がすごく好きなんです。
次回も楽しみです。
- 388 名前:コナン 投稿日:2004/04/10(土) 18:12
- 更新お疲れさまです。
毎回良いお話を書かれてるから、良い意味で困ります。(萌えって事で
書く作品それぞれ素敵ですよね。
saさんの作品は癒し系ですよね・・・・・まったりします。
本当に大好きです(愛してると逝っても(・∀・)イイ!!(作品ネ!w
隣の隣の吉澤サン続編考えてくださるのですか!?
超〜〜うれしいです!!かっけー吉澤サンお願いしたいです。
では、まったりとお待ちしています。
- 389 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:46
- あの日からアタシは帰り道で、いつもバス停を見た
ちょうど一週間後、梨華ちゃんの姿を見つけた
梨華ちゃんもアタシと目が合うと、片手を肩の辺りに上げて
小さく振ると微笑んだ
アタシはチャリのスピードを落として、バス停から
抜けるようにと手振りで伝えた
少し先の車寄せにガードレールが切れてる歩道に片足を付いて
振り返ると、梨華ちゃんがこっちに歩いてくるのが見えた
「・・・乗りなよ」
足を止めた気配に、顔も見ずにアタシは言った
- 390 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:47
- 梨華ちゃんの手がアタシの肩の上に一瞬だけ、触れる
後ろのタイヤが僅かに沈むと、その手はアタシの腰へと回り
硬いジーンズの布の上から控えめに、温もりを伝えた
アタシが思い切りペダルを踏むと背中から声がした
「ねっ
どちらまで?って聞いてくれないの?」
「どっか行きたいの?」
「ぇえっとねー この世の果てまでっ」
「・・・なんだそりゃ?」
「アハハッ」
梨華ちゃんの高い笑い声を、風がとばして行く
- 391 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:47
- 中学二年のクラス替えで梨華ちゃんと同じクラスになった
クジで決めた席順で隣り同士だった
アタシは当時、バレー部でバレーが上手くなることしか
頭になかった
一年からレギュラーだったアタシは練習も人一倍していた
授業中はよく寝てた
教科書も忘れた
朝練が終わった後、着替えるのが面倒で一日ジャージで
過ごして、教師に叱られた
梨華ちゃんはそんなアタシを見て、口元をほころばせた
笑みとは呼べない程、そっと控えめに
そして何時からか、どこまでもさり気なく、気がつかないほど
何気なく、適当なアタシがこの席になってから、色んな事に
不自由を感じることは少なくなって行った
給食なんてなくてもアタシはお昼に困ったりしなかった
バレー部の後輩、顔も知らない後輩、他のクラスの子
おまけに先輩、日替わりで渡される弁当箱
時には二つや三つも食べた
- 392 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:48
- 「ひとみちゃん、今日何個め?」
放課後、最後の弁当を片付けるアタシに梨華ちゃんは聞いた
「・・・三個目」
「・・・すごいねぇ」
「まだ食えるよ、梨華ちゃんも作ってくれる?」
「それ以上食べたら、ひとみちゃんお腹壊しちゃうじゃない」
「・・・かもね、けどまた減るし・・・」
結局、梨華ちゃんから弁当を貰うことは一度もなかった
梨華ちゃんはいつでも、自分がしたいことではなくて
アタシがして欲しい事を、知っていた気がする
あの頃、アタシをひとみちゃんって呼ぶ子は梨華ちゃんしか
いなかった、と思う
たぶん他の子はみんな、アタシを女だって忘れてるふりを
したかったんだろう
共学だったけど、クラスの誰よりアタシはモテた
バレンタインに誕生日にクリスマス
紙袋が必要な程、だけどアタシは気づいてた
アタシに寄せられる好意は幻想
小説の登場人物に寄せる淡い想いのように、リアルさは無い
- 393 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:48
- だけど、梨華ちゃんのアタシを見る目だけは、違う温度が
あるような気がしていた
校庭で部活をしてると、教室の窓に立っている人影
振り返ると、目が合った様に感じた
梨華ちゃんは人見知りが激しくて、あまり話さなかった
友達と言えるのは、たぶんアタシしかいなかったと思う
二人きりでいると、梨華ちゃんはよく笑った
教室では俯いてボソボソ聞える声が、実は高くて可愛らしい
ことをアタシだけは知っていた
レトロに交換日記が流行って、寂しそうな梨華ちゃんの
横顔に、アタシはらしくないことを言った
「アタシとする?」
誰に頼まれてもそんな面倒なこと、する気はなかった
なのにアタシは、自分の口がそう言ったのを不思議な
思いで聞いていた
- 394 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:49
- 梨華ちゃんの日記はいつでもアタシを微笑ませた
空に浮かぶ雲は綿飴で出来てると信じてた子供の頃の話
足元の水溜りに浮かんだちっちゃな虹が、ちゃんと
七色だった事
昨夜見たという、ピーターパンもどきのアタシと二人で
空を飛ぶ夢
アタシが寝てしまった後の授業の内容が延々と書いてある
こともあった
アタシはいつも一行しか書かなかった
部活が疲れた
教師にムカつくこと言われた
夕飯が嫌いなもんだった
だけどアタシは楽しかった
梨華ちゃんの書く日記を読むことは、そのまま梨華ちゃんの
心に触れることの様な気がした
たぶんアタシは気づいてたはずだ
その心の在り様は、いつでも優しく温かいことを
- 395 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:49
- アタシはいつでも仲間に囲まれていたけど
自分から会いたいと思うのは梨華ちゃんだけだった
そんな時は自転車を飛ばした
川原に行って、土手に並んで座る
ふいに、自分はちっぽけだと感じる時があった
誰もほんとのアタシを見ていない気がした
だけどほんとのアタシなんて、どこにいるのか
自分でさえよくわからなかった
訳もわからず、イライラして怒鳴りたくなる自分を
持て余した日もある
橙色の光りに顔を照らされると、急に泣きたくなる時もあった
そんな時、梨華ちゃんは何も言わなかった
アタシはその横で、立てた膝に顔をうずめていた
何も特別なことなんてなかったけれど、全てが特別な気がした
なにもかもが欲しくて、なにもかもを無くしてもかまわなかった
梨華ちゃんはアタシに何も求めてこなかった
格好よく振舞うことや、冗談を言って笑わせることさえも
ただ、アタシの横に座ってた
アタシが帰ろうって言うまで、何時間でも…
- 396 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:49
- ある日、映画に行く約束をした
たまたま側にいた二人のクラスメートが自分達も
行きたいと言った
断る理由なんてなかった
だからアタシは、いいよ、と答えた
当日、梨華ちゃんは来なかった
家に電話しても誰も出なかった
アタシは気になったけど、他の子達に腕を引っ張られ
映画館に入った
急に具合が悪くなったのかと思って、会いに行くことはしなかった
夕方、家に帰ってもう一度電話したアタシに梨華ちゃんは電話口で
こう言った
「・・・ひとみちゃんが他の子と仲良くしてるとこ
見たくなかったの」
「だったら、初めっからそう言いなよっ!
いきなりすっぽかすなんてサイテーだっ!!!」
- 397 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:50
- アタシは、受話器ごしに初めて梨華ちゃんを怒鳴った
梨華ちゃんは嗚咽を漏らしながら、ごめんなさい、と
小さく何度も謝った
そのことがあってから梨華ちゃんはアタシと少し
距離をとるようになった気がする
日記が返ってこなくなって、アタシも梨華ちゃんちの前で
口笛を吹くことはしなくなった
・・・そっちが悪いんだ、勝手にしろ
アタシは心の中で言い捨てた
それでもアタシは、心の何処かで、きっと梨華ちゃんは
アタシの側に戻ってくる、そう信じていた
- 398 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:50
- なんであんなことになってしまったのかわからない
だけど、廊下でアタシの両腕に自分の腕を絡める
クラスメイトは梨華ちゃんに言った
「石川さんて、よっちゃんのこと好きなんじゃない?」
「やぁ〜だっ! 女同士だよ?気持ち悪〜〜〜いっ!」
女同士だよ・・・気持ち悪い・・・
その言葉はアタシの中で奇妙に重く響いた
そして、アタシは気づくとこう言っていた
「んなこと、あるわけないじゃん・・・ただの友達だよ」
「よっちゃんはそう思ってても、石川さんは違うかもよ?」
「ってゆーかぁ〜どうせならもっと可愛い子がいいよね〜
相手が石川さんじゃぁ、よっちゃんがかわいそ〜」
けたたましく笑う声にアタシは怒鳴った
「いい加減にしろよっ!」
- 399 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:51
- そして組まれた腕を解きながら梨華ちゃんに言った
「気にすることないから」
だけど梨華ちゃんは俯いたまま、肩を震わせるだけで
何も言わなかった
その日からアタシは梨華ちゃんに避けられた
放課後、教室の窓を見てもそこに人影が立つことは
二度となかった
教室で何度か話かけてもみた
顔を上げようともしなかった、アタシを見ようとはしなかった
結局、そう言うことだと思った
梨華ちゃんも他のヤツらと一緒、簡単にアタシから離れてく
裏切られた気がした
- 400 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:51
- 実はそれほど、執着なんてしてなかったんだ?
それとも、梨華ちゃんの思う通りのアタシじゃなかったから?
・・・ねぇ、どんなアタシならよかった?
俯いたままの頭に投げつけたい言葉を飲み込んだ
アタシはなんだか全てが面倒になって、ただ部活に
のめり込んで行った
そして三年になり、クラスが変わると梨華ちゃんの姿を
見かけることはほとんどなくなって行った
- 401 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:52
- 当時、アタシには密かに気になっている人がいた
それは男子バレー部の先輩で、エースアタッカーだった
彼のアタックは相手チームのブロックを軽々と超え
そのサーブは、レシーブしようと伸ばされた腕を強く
弾いて、ボールはコートの外へと消えて行った
だけど、梨華ちゃんが側にいなくなってから
アタシはその先輩を見ても前のようにドキドキしなくなった
先輩が卒業して行く時も、ただあのプレーがもう見れない
そのことだけが残念だった
そしてアタシは気がついた
アタシが先輩に寄せていた想いはただの憧れなのだと
たぶん、アタシ自身が先輩の様になりたかったのだと
- 402 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:52
- 中学を卒業した後もアタシは梨華ちゃんのことを
引きずっていた
そして・・・やっと、わかった
アタシはこんなにも梨華ちゃんが好きだったんだ、と
この想いは決して友達なんかじゃない、という事も
そして、ずっと後悔し続けていた
優しくすることが何故だか出来なかったこと
本当に伝えたい言葉は胸の奥でザラつくだけで、形にならず
いつでも口にすることが出来なかったこと
子供だったんだ、と思う
人を傷つけてしまったかも知れないことに、胸の痛みを
覚えるのは、いつでもずっと後になってからで
- 403 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:52
- どこの高校に進んだのかもわからなかった
アタシは探そうとはしなかった
けれどもし、梨華ちゃんがその内面と同じくらい、外見も
美しい子だったら・・・
アタシはどうしただろうか?
それでも今と同じだっただろうか?
そんなことを考えてしまう自分がたまらなく嫌だった
・・・忘れたと思ってた
あの苦い想い出は、もう吹っ切れた過去の事だと
だけど今になって、梨華ちゃんはアタシの前に現れた
思わず目を奪われるほど、美しくなって・・・
- 404 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/12(月) 10:53
- 梨華ちゃんの家の前で思い切りブレーキをかける
華奢な体がつんのめるようにアタシの背中にあたる
梨華ちゃんはまたアタシの肩に軽く手を乗せ
チャリから降りた
そしてアタシを見て微笑んだ
「また、乗せてくれる?」
「いいよ・・・そしたら、行こうか?・・・この世の果てまで」
「・・・行けるかな?」
「たぶん・・・ね」
一際、艶やかな微笑が暗闇に開いた
アタシは、じゃと短く言ってペダルにかけたままの足に
力を入れた
梨華ちゃんの見る、この世の果てにはどんな景色が
広がっているのだろう?
そこからなら、昔の二人は違って見えるのだろうか?
そして、ここではない何処かへと進んで行けたのだろうか?
スピードを上げて走り続けるアタシの耳には、ただ風の
ゴウゴウと鳴る音だけが聞こえた
- 405 名前:Sa 投稿日:2004/04/12(月) 10:53
- 更新致しました
吉澤さんっ!お誕生日おっめでと〜〜〜ぉ♪
貴女がハッピィ〜なバースデーとハッピィ〜な一年を過ごせますように
(^▽^)^〜^0)<一緒にネッ!!!
54@前作様
気に入って頂けたならうれすぃ〜デス♪
作者の書く、あの方はなんだか脆そうになってしまいます(汗)
てか、最近作者は自分の書くハナシは設定変えてもワンパな気がして
おります(w←笑いゴトじゃねーよっみたいな…
コナン様
そうでしょーか?そう思っていただけるなら、書いてて
良かったなぁ〜と思えますデス
作者こそ、頂いたレスに日々癒されております♪
カッケー吉澤サン・・・書けるかなぁーーー?(w
- 406 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 11:47
- 昼間から号泣。
Saさんの書くよっちぃ大好きです。
- 407 名前:コナン 投稿日:2004/04/12(月) 12:29
- 更新おつかれさま
いつのまにか、さわやかな風が通り過ぎる感じが(・∀・)イイ!!
ハートがジーンとします・・はぁ〜
よっすぃ〜お誕生日おめ!
かっけーよっすぃ〜おめ!
- 408 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 19:43
- Saさんずっと読ませてもらってますが今回も最高です!
泣きました。今後も期待しております。
そしてよっすぃ19歳おめ!
- 409 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/12(月) 23:36
- 更新お疲れ様です。
泣きました。今もまだ泣いてます。
Saさん貴方の分を読んでると、
忘れかけていた大切なものがよみがえってきます。
これからも頑張ってください!!
よっすぃ〜、19歳おめ!
いしよしは不滅なり。
- 410 名前:54@前作 投稿日:2004/04/13(火) 19:05
- 更新、お疲れ様でした。
ヤバイです。何か胸が痛いです、すごく。泣きました・・
「ダディドゥデドダディ」が頭の中に流れてます、今何故か。
あぁ〜、ボキャ貧なのでうまく表現出来ないのがもどかしいですが、とにかくSaさんの作品は自分の心をかき乱すほどに魅力的なのです。
決してワンパなんてことはないですよ。
またこれからも楽しみにさせていただきます。
- 411 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:01
- 冷たい寂しい雨音が道路を叩いて濡らして行く
湿った冬の空気がジャンバーの隙間から忍び込んでくる
冬の雨は嫌いだ
世界中が真冬、そんな気分になるから
ずっと続いて・・・たぶん、この世の果てまで
アタシは自転車置き場に向けてた足を、店の控え室に変えた
「どうした?忘れ物?」
仕入れ表を作ってた店長が顔を上げた
「傘、あったかなぁと思って」
「めずらしいなぁ〜お前どんな時でもチャリじゃなかった?」
「・・・風邪気味なんで」
「大丈夫かよ?休まないでくれよー
奥に何本かあるから、持ってっていいぞ」
「すんません、お借りします」
- 412 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:01
- 駅前から続く、アーケードの屋根の下をバスロータリーに
目線を送りながら歩いた
四番目の停留所には、夜になって降り出した雨のせいだろう
いつもよりさらに多くの人達が並んでいる
・・・いた
アタシは梨華ちゃんに向かって足を速めた
「今日すごいねー、人が・・・」
アタシが背中越しにかけた声に驚いたように振り返る顔
二月のカレンダーが一月に逆戻りする気がした
「ひとみちゃんっ!どうしたのぉ」
親しげに笑う顔、高く僅かに弾む声
もう二度と、吉澤さんなんて呼ばれたくない
白い息を吐く唇を見ながら、アタシはそう思った
- 413 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:02
- 「このまま待ってても、次の乗れないんじゃない?」
アタシの言葉に梨華ちゃんはずっと前まで続く長い列を見た
「ん〜でも・・・」
「歩かない?・・・三十分か、二十五分くらいでしょ
そのが早いよ・・・濡れるけど、ね」
「でもね?あたし・・・今日、傘持ってきてないの」
「・・・送ってく」
「えっ?」
「・・・濡れるのイヤ?」
「そんなことない・・・けど」
「じゃ、行こ」
困惑したように眉を寄せる顔に、アタシはもう一度言った
「行くよ!」
- 414 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:02
- 「ひとみちゃんって、こんなに強引な人だった?」
アタシに追いついた梨華ちゃんが、子供が悪戯を企てる様な
眼をして顔を覗きこんでくる
「迷惑?」
短く聞くと、首を横に振って楽しげに笑った
「全然っ!ただ意外だっただけ 面白いなぁーと思って
あたしの知ってるひとみちゃんじゃないみたい」
「・・・変わったんだよ」
「えっなぁに?」
バスが飛沫をあげて、すぐ横の車道を走っていく
アタシはそれを目で追った後、傘を開いた
「なんでもない」
「気になるなぁ〜」
アタシは曖昧に笑って、梨華ちゃんの上に傘を差しかけて
アーケードの屋根を抜けた
- 415 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:03
- 「結構寒いね〜」
駅前の喧騒を離れて住宅街を抜けながら、梨華ちゃんは
ピンクの毛糸で編まれた手袋の上から白い息を吹きかけた
「あ、そうだっ!コレ貸してあげる」
梨華ちゃんは手袋を外すと、アタシに差し出した
「手、濡れちゃってる・・・冷たいでしょう?」
「いい」
「よくないよ、じゃぁあたしが傘持つ」
「それもいい」
「やだ、どっちかにして?」
梨華ちゃんが足を止めて、急に真顔になる
雨音が傘を叩いていた
滴り落ちる水滴が、薄い膜を張り巡らせる
・・・なんだか
ここがこの世の果てみたいだね
全てから隔離された場所・・・水音だけが響く処
- 416 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:05
- アタシは梨華ちゃんの手から手袋を片方だけ受け取った
それをはめると傘を持ち直す
「もう片方は・・・」
アタシはそう言いながら、梨華ちゃんの片手に手を伸ばし
そっと握った
そしてそのまま握った手の指先に力を入れて、自分の
ジャンバーのポケットに入れた
「この方が温かいよ・・・ずっと」
・・・梨華ちゃんが側にいると
それだけで、なぜだかいつでも温かいんだ
- 417 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/13(火) 21:06
- ふと一ヶ月前の今日は何をしていたんだろう、と思った
・・・何も浮かばなかった・・・誰の顔も浮かばなかった
濃淡なく平べったい毎日
入れかえたとしても、自分でさえ気がつかないような日々
アタシは・・・自分の為だけに生きている
たった今、初めて気がついた様に思うのはなぜだろう?
そんな当たり前だと思っていたことが、何故だか辛く
アタシは感じた
- 418 名前:Sa 投稿日:2004/04/13(火) 21:07
- 更新致しました
406様
涙して頂けるとは・・・
そのお言葉に作者の胸が熱くなります
コナン様
ジーンですか?嬉しいなぁ〜
今回、風ってコトバ使いすぎの作者です(w
408様
ずっとお読み頂いてるそうで嬉しいです
どこまで書けるかわかりませんが、頑張って参りますね
JUNIOR様
そこまで言って頂いて、作者は果報者ですね
いしよしは不滅なりっ!
54@前作様
貴方様がボギャ貧なんてとんでもない(w
グッとくるレスを頂き、お返しするコトバが浮かびません
- 419 名前:コナン 投稿日:2004/04/14(水) 01:09
- 更新おつかれさまです。
クールな吉がかっけーっす!
これからの二人を見守っていきたいです。
Saさんの作品は読みやすくて大好きです。
ほんとやさしい気持ちになる?みたいなそんな気分です。
これからもずーーとお付き合いしたいです。
- 420 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:06
- 梨華ちゃんを後ろに乗せて、今日もチャリを走らせる
・・・今日は風が無いな
アタシが起こす風だけが次々生まれて、急かされる様に流れて行く
「梨華ちゃん、寄り道しない?」
「いいけど、どこ行くの?」
すっかりハンドルをきることに慣れた、二丁目への曲がり角を
曲がらずに、三丁目へと真っ直ぐ進んだ
自分の家の前でブレーキをかけると、チャリから降りながら
アタシは言った
「ちょっと待ってて」
しんと静まり返った住宅街の中で、吉澤のプレートがどこか
余所余所しく鈍く光って見えた
安っぽい門をギィと鳴らして 階段を上がり、ドアを開けた
真っ直ぐ自分の部屋に向かうと、クローゼットを開けて
棚の上へと手を伸ばした
- 421 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:07
- 「お待たせ、コレ」
アタシが手に持ってる物を軽く上げて見せると、チャリの横に
立っていた梨華ちゃんは目を見開いた
「花火?!」
「川原に行こうよ」
・・・もう、覚えていない?
・・・あれは約束なんかじゃないから
遠い昔に言ってみた言葉、それだけのこと
だけど、あの頃のアタシにとってあれはなんだったんだろう
でも今は、目の前にいる梨華ちゃんの瞳が微笑んで見えるから
それだけでいい気がして、アタシは軽く笑うとチャリに跨った
「乗って」
「うん!」
- 422 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:07
- 昔、二人でいた頃
今よりは、も少し背が低かったアタシと、やっぱりアタシより
もっと背の低かった梨華ちゃんが並んで歩いた道
今は二人、ほの暗い薄闇のトンネルを抜ける、ひとつの
風になった気がする
あの頃よりアタシは、少しは大人になれたのかな?
梨華ちゃんの目には、どう見えているのかな?
・・・今のアタシが
チャリのスピードをぐんと上げた時
梨華ちゃんの頭が、アタシの背中にコツンとあたった
- 423 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:08
- 二人で川原にしゃがみ込むと、アタシはセットされていた
小さなもと火にライターで火をつけた
ゆらゆらと頼りなく揺れる灯火
アタシの手元を覗き込む、梨華ちゃんの頬が橙色に染まって
瞳が美しく波打った
キャンディのようにカラフルな紙で巻かれた花火を渡すと
梨華ちゃんの瞳は子供の様に煌いた
音を上げ、飛び散る眩い色彩の花に、歓声を上げる小さく開かれた口許
梨華ちゃんの手先にある花火から、尾を引くような光が落ちる刹那
強く瞬く
闇に溶けてしまいそうな、ひっそりとした横顔が鮮明に浮かび上がった
アタシは急に胸の鼓動が激しくなって、胸元をぎゅっと掴んだ
握ったままの手のひらは熱く痺れていた
- 424 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:08
- 「・・・なんか、寂しいな・・・」
柄にもない言葉が、ふいに口から漏れて、アタシは慌てて続けた
「もっとこう、ババーンと派手なのやりてー」
「真冬の、こんな時間に?通報されちゃうんじゃない?」
梨華ちゃんは可笑しそうに小さく笑うと、線香花火の束に
手を伸ばした
「・・・あたしは、これが一番好きだよ」
「へぇー 随分シブイじゃん」
梨華ちゃんは、大事そうに束の中から紙縒りの様な一本を
抜き出すと、火を点けた
「・・・だって」
言いかけた言葉を止めて、ジジジと弾ける小さな花を
じっと見てる
ぽとり、と燃える花芯が落ちた
- 425 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:09
- 意外そうに僅かに目を見開いていたアタシの顔を見て、
梨華ちゃんはふわりと優しく笑った
「散り方が・・・一番派手じゃない?」
梨華ちゃんは、そのままの表情で、土手の下に続く桜並木に
視線を移した
「桜も好きなの」
「散り方が派手だから?」
「うん・・・潔いでしょう?
咲いてる時間が短い方が、いつまでも綺麗なままの桜が
心の中で咲いてる気がするの・・・ずっとね、いつまでも」
かっと頬が火照るのを感じた
- 426 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:09
- 桜の下でこんな風に微笑まれたら、アタシは自分が
どうなってしまうかわからない
アタシは俯いて、息を整えると顔を上げた
桜が咲いたら見に来よう・・・二人で
そう言うつもりで、梨華ちゃんの顔を見た・・・だけど
遠い記憶の先にあった微笑
抱える想いが壊れてしまわないように、そっと包み込む様な
秘めやかに微笑む顔
「・・・綺麗になったね」
微笑みを綺麗に映す、その顔にアタシはそう言っていた
- 427 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:10
- 「・・・どうしたの? ひとみちゃんがそんなこと言うなんて
信じられない」
梨華ちゃんは零れ落ちそうなほど、目を見開いてアタシを見た
「・・・さぁ?」
アタシは俯いて足元を見ながら、ジーンズのポケットに
親指を引っ掛けると、両肩を僅かに上げた
梨華ちゃんの眼差しが絡まってくる様に感じて、どうにも
落ち着かなかった
アタシはライターと一緒に、Gジャンの胸ポケットに
入れてあった、煙草を取り出すと一本抜き出し火を点けた
「・・・吸うんだ?」
「ま、ね・・・意外?」
闇に向かって吐き出した煙が、辺りをゆっくりと漂い
広がって行った
- 428 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/14(水) 12:10
- 「・・・なんか・・・変わったね、ひとみちゃん」
「そりゃぁ変わるさ
ずっと変わらずにいることなんて、出来ないよ・・・・誰だって」
季節は巡り、春がくるたびアタシは一つ大人になった
中学生で子供だったアタシと、二十歳を超えて大人だと
言われるアタシ
重ねた年以外に、何が違うのかほんとはよくわからない
だけど、やっぱり何かは変わってしまった
それが良い事か、悪い事かなんて、もっとよくわからない
それでもたぶん、それは必要なことなんだろう
「そう、だよね
・・・ずっと同じではいられないんだよね」
ふいに、梨華ちゃんの声がポツリと暗い足元に落ちる様に響いた
- 429 名前:Sa 投稿日:2004/04/14(水) 12:11
- 更新致しました
コナン様
シャイだからぶっきらぼうになっちゃう吉澤さんを書きたいんですが
作者が書くと、ナゼ〜かクールになっちゃうんですよぉ〜(w
飴玉を口に入れた後、しばらく甘さが残る様に、お読み頂いた後
チョットの間でもナニかが残るのならば、こんなに幸せなコトはありません♪
- 430 名前:コナン 投稿日:2004/04/14(水) 15:44
- 更新おつかれさまです。
吉澤さんには、不器用でいてほしいかも!
そして石川さんをやさしく包んでほしいよん!
やっぱり!いしよし!最高っす!純愛!(至福の時だぁぁ
- 431 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/14(水) 21:34
- 更新お疲れ様です。
Saさんの描くよっすぃ〜大好きだ〜!!
クールなよっすぃ〜になってしまっても
シャイになる時は解りやすくてイイ!!
これからも頑張ってくださ〜イ!
- 432 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:48
- 三月も半ばを過ぎると、チャリの回りを流れていく
風が変わった
「ねーひとみちゃん、寄り道してくれる?」
「どこ?」
ペダルにかけた足の力を抜いて、首を後ろに回しながら聞いた
「そこっ!」
通り過ぎようとするコンビニを指さされて、アタシは
急ブレーキをかけた
「なに?買い物?」
「ひとみちゃんに自転車代払わないと、遅番の時は
いつも送ってくれるじゃない?」
「なんだよー 改まっちゃって」
「だって・・・もう二ヶ月になるもの」
いいって、と言うアタシの手を引っ張るようにして、
梨華ちゃんは、やたら明るいコンビニの自動ドアを通り抜けた
- 433 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:49
- 楽しそうにニコニコして、アタシの顔を見る
夜道に慣れたアタシの目に、コンビニのチカチカした明かりを
背にした梨華ちゃんは、少し眩しくて目の奥がジンとする
「なにがいい?なんでも奢ってあげる」
「コンビニかよー」
「いいじゃないのぉ〜 文句ある?」
アタシの気のない返事に、梨華ちゃんはぷぅと頬を膨らました
「んじゃ、これ」
レジの横に並んでた、ホットの飲み物用の小さな棚から
缶コーヒーを掴んで出した
「それだけぇ?」
つまらなそうな表情に、アタシは顎を上げて口許だけで笑うと
レジカウンターにポンと缶コーヒーを置いて大声を出した
「すっいませーんっ」
カウンターの奥から店員が、いらっしゃいませーと言いながら
出てくると、梨華ちゃんは慌ててホットの棚から、自分の分を
取り出してレジに置いていた
- 434 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:49
- 「ごちっ」
コンビニの前に止めてあったチャリに跨りながら
アタシがプルトップをひこうとする手を梨華ちゃんは止めた
「たまには・・・
どこかで、ちょっとお話しない?」
「いいけどさーどこでよ?」
「う〜ん、うぅ〜〜ん、と」
アタシはウンウン唸る梨華ちゃんの顔を見ながら、缶を
チャリのカゴに落とした
「ま、いーや 乗って」
結局、アタシにも思い当たる場所は一つしかない
だから川原に向かって、チャリを走らせた
- 435 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:49
- 土手の下の桜並木の木々は、ここ何週間で寒々と広げてた
枝に蕾をつけていた
暖かい日が続けば、何日か後には花が開きだすだろう
それを横目で見ながら土手に上がって、缶を置くと
その横に腰を下ろした
ビュッと川から風が吹き上げる
春先の水辺の夜は、意外なほど風が強く、ジーンズの布越しに
アスファルトのシンと固い冷たさが伝わってくる
アタシは両膝を開いて場所を開け、遅れて上がってきた
梨華ちゃんを振り返った
「ここに座んなよ」
「えぇーーっ?!」
- 436 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:50
- アタシが広げた膝の間を指すと、梨華ちゃんはパチパチと
瞬きを繰り返した
「いいから」
ボサッと突っ立ってる梨華ちゃんの腕を引っ張って座らせると
アタシは背中を伸ばして、両手を立てた膝の上に乗せた
「少しは温かくない?」
アタシが背中越しにかけた声に、梨華ちゃんは缶を両手で
包むようにして持つと俯いて、こくんと頷いた
「・・・ひとみちゃん」
「ん?」
「・・・温かいよ・・・すっごく」
アタシは背中を僅かに丸めて、膝の上に置いてた手を
梨華ちゃんの体の前へ回して、緩く組んだ
そして、目の前の細い肩に顎を乗せた
「ね、見て・・・しょっぼい夜景」
- 437 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:50
- 梨華ちゃんは顔を上げると、くすくす笑った
「ほんとだ」
「ほんとにしょべーよ」
「でも・・・」
「でも?」
「あっちから見たら、こっちはきっと真っ暗だよね?」
「ぁあ〜〜 んだね」
対岸は、そう大きくもないオフィスビルが並んでる
頑張って働いてるサラリーマン達が、ビルの所々の部屋に
明かりを灯していた
こちら側は住宅街で、一軒家が多いから、向こう側から見たら
暗い水の底に沈んでいるように見えるだろう
- 438 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:51
- 「あのね・・・」
「ん?」
「あたし・・・就職先が決まったの」
心臓が一回、どくん、と強く鳴った
「普通の事務職なんだぁ 土日休みで、通勤は一時間くらいかな?」
「・・・そっか・・・おめでと」
「・・・だから、バイトもう辞めるの
明日からは早番のシフトばかりだから、もう、ひとみちゃんの
自転車の後ろには乗せてもらえないなぁーって」
・・・また・・・見失ってしまう
・・・伸ばしかけた手をすり抜けてしまう
ふいに川に投げられる小石になった気がした
- 439 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:51
- いきなり、自分以外の強い力に決められてしまう行き先
放り投げられて、沈んでく・・・ずっと、ずっと下まで
ここからは見えない水底へと
そこにはきっと何もない
目の前は濁った水で何も見えずに、誰かの声も届かなくて、
漂っていたら、今あるはずの何かが無に還ってしまう処
アタシの背骨がぶるっと震えた
怒り?悲しみ?・・・わからない
ただ、喉の奥が震えてる
溺れかけた様に息が苦しくなってきて、胸が痛かった
- 440 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/15(木) 11:51
- その後、アタシはどう返事をしたのかまるで覚えていない
チャリを走らせて、梨華ちゃんを家まで送って行った
別れ際、アタシはたぶんいつも通りに、じゃあ、とか
言ったはずだ
最後に梨華ちゃんはなんて言ったっけ?
さよなら?またね?楽しかったよ?ありがとう?
・・・思い出せなかった
アタシはチャリで風をきりながら、無重力の中を疾走してる様な
頼りなく不安定な気持ちを鎮めることだけで精一杯だったから
ひとりになると、チャリを止めて携帯を取り出した
アドレスから、後藤真希を選んでコールする
「後藤?
・・・寝ようか、今晩」
ガチャッと繋がった瞬間
受話器に向かって出したアタシの声は、水底から響くように寒々と
震えていた
- 441 名前:Sa 投稿日:2004/04/15(木) 11:52
- 更新致しました
コナン様
一見、堂々と颯爽としてて、実は不器用でシャイ
そんな吉澤さんが書きたいなーぁ・・・精進っすね(w
いしよしサイコ〜!!!( ^▽^)人(^〜^0)
JUNIOR様
作者の書く吉澤さんがダイスキなんてぇ〜嬉しいっす!
呼んで下さる方に、伝わりやすくて、魅力的
そんなゼータクないしよしを書けたら、思い残すコトはナイんですがね(w
明日で最終話でございます
よろしければ、お付き合い下さいませ
- 442 名前:54@前作 投稿日:2004/04/15(木) 12:38
- 更新、お疲れ様です。
う〜む、ものすごくせつない・・
吉は不器用で、自分で自分の気持ちを持て余してしまうのかな。
Saさんのいしよしは等身大で自然な感じですよね。すごく情景が浮かんで来ます。
石の気持ちはどうなのかも気になっております。
次回も楽しみにお待ちしてます。
- 443 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/15(木) 23:23
- 更新お疲れ様です。
よっすぃ〜かなり不器用だなぁ。
思わず応援してしまうんです。↓のように。
ここで何かをしなさい。
がんばれ。ココが踏ん張りどころだ。
Saさんのいしよしは充分魅力的です。
読んでいるうちにSaさんの世界に引きこまれてしまいます。
- 444 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:35
- アタシは駅前まで戻ると、駐輪場にチャリを止めた
電車に揺られて、五つ目の駅で違う電車に乗り換える
言われた駅で降りて改札口を抜けると、どこか荒んだ感じの
商店街はシャッターがすべて下りていた
色あせてしまった、もとは原色だったらしい看板を
見上げているとごっちんの声がした
「早かったねぇ〜」
デニムのワンピースの上から、春物のニットパーカーをはおった
ごっちんがアタシの前に立った
「どうかした?」
ごっちんが小首を傾げると、クセのない髪がサラサラと流れた
「べっつにー やりたくなっただけ」
「・・・ふぅーん」
口許に卑下た笑いをわざと浮かべると、ごっちんは斜め下から
見上げるようにアタシを見て、薄く笑った
「そーゆーことにしときますかぁ〜 お金もってる?」
「ま、なんとか」
「んじゃ、付いて来て」
- 445 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:35
- 線路に沿って、黙って歩いた
大きな国道とぶつかると、先に高速の降り口が見える
バカバカしいほど、ギラギラした電光に飾り立てられた
建物の前でごっちんは足を止めた
「ここ安いよ 超悪趣味だけどさぁ〜」
アタシは一つ頷くと、細い入り口に進んだ
空いてる部屋のパネルを適当に押すと、フロントの仕切りの下の
隙間から鍵を受け取った
薄汚れた赤い絨毯の上を歩いていると、なぜだか笑いが
込み上げてくる
部屋に入った瞬間、後ろを振り返りごっちんの体を
ドアに押し付けて、荒々しく口づけた
二人分の重みに押されて、ドアが閉まる瞬間
悲鳴のような耳障りなノイズがして寒気がした
- 446 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:36
- ベッドのスプリングを揺らして、苦しげに寄せられる眉に
ふっと、梨華ちゃんの顔が重なる
アタシは目を閉じて、頭を振った
けれど、梨華ちゃんの幻影はアタシを誘い続けた
両手を高く伸ばして、アタシの首に絡めると引き寄せる
・・・ねぇ・・・お願い
・・・もっと・・・もっとぉ・・・
望まれるまま、アタシはアタシの全てを捧げる
激しく火花が飛び散る様な息づかいが飛び火して、どろりと
アタシの脳が蕩け出す
探る舌先は火傷を負った様に熱く、爛れたみたいに痛かった
・・・ひ・・・とみちゃぁぁんっっ
恍惚とした叫び声がアタシの頭の奥で尾を引きながら
静かに消えた
- 447 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:36
- 裸のままベッドに仰向けになり、天井をみながらごっちんは言った
「今日の吉子すごかったねぇ〜 ま、初めっから巧かったけどさぁ」
アタシは低く笑い声をたてた
「・・・そんでアタシは、なんて答えればいいわけ?
褒めてくれてサンキューとか?」
「・・・今まで、何回も吉子と寝たけど、抱かれたのは
今日が初めてだったと思う・・・」
アタシはごっちんの顔を見た
天井に向けられた眼はガラス玉の様に空ろに見える
「ごとー、もう吉子とは寝ないよ
誰かの代わりがヤダなんて、ケチくさいこと言う気ないけど
勘違いすんのはイヤなんだぁ」
ごっちんは投げ出していた足で勢いをつけると、起き上がった
「んだから、そゆことで
ごとーシャワー浴びてくるね〜」
- 448 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:37
- アタシは何も言えずに、浴室に消えるごっちんの形のいい
背中から腰への曲線を、ぼんやり見ていた
アタシとごっちんはいつもお互いを見ていなかった
と言うより目を逸らし合っていた
一度だけ、ごっちんはアタシの目を真っ直ぐに見て聞いて
きたことがある
「なんで吉子は女と寝るの?」
「なんでかねぇー」
ほんとにわからなかった、理由なんてもんがもしあるなら
アタシが聞きたいくらいだったから
中学を卒業した後、梨華ちゃんへのジリジリと焦げる様な想いが
自分の中に燻ってると思い知った時
アタシの中で何かが変わってしまったことだけは確かだった
だからアタシは話した
一人くらい誰かに話してみてもいいと思ったから
- 449 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:37
- アタシが話し終わるとごっちんは笑った
「ごとーも頭悪いけど、吉子も頭悪いよね〜」
あの時のごっちんの笑顔はどんなだっただろう?
輪郭が霞んではっきりと思い出せなかった
アタシとごっちんはほんとは最初からわかってたはずだ
アタシ達は憐情を愛情だと勘違いしてしまうくらいに
寂しがってて、それでも精一杯強がって見せていたことを
乾いてて、寒くて、誰かと触れ合わずにいられなかったことや
それでも、裸の自分を曝け出せるほど強くなんかないことも
人は一人では生きて行けない・・・なんて
テレビドラマでも、小説や漫画でさえ使い古されてる言葉
だけど、ありきたりすぎることの中に、きっとほんとのことがある
大事なことは、いつでもありふれてて単純で、だから忘れてしまうんだ
- 450 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:38
- 次の朝早くに、まだ鏡の様に澄んでいる空の下に出ると
どこか硬質な朝の光が、ちぎった紙を撒き散らすように降りてきた
アタシが眩しくて、顔をしかめているとごっちんは言った
「あのさー
一回くらい上手く行かないことがあったからって
それで諦めちゃうのは・・・臆病すぎて格好悪いよ」
ごっちんは、アタシから目を逸らしたまま、先にどんどん
歩いて行く
アタシが追いつくと、振り返り笑った
「道、線路の横真っ直ぐだからわかるよね?
ごとー こっち曲がるからっ んじゃね〜」
ごっちんが後姿で手を振りながら、遠ざかって行く
「また飲もうぜーっ!」
アタシがかけた大きな声に、ごっちんは背中を向けたまま
両腕を上げて大きく丸を作って見せた
- 451 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:38
- その日も普段通り仕事が終わって、いつも通りチャリに跨って
走り出す
見慣れた駅前の風景が、ぐんぐんスピードを上げて、目の前を
流れて行く
もう、バス停を見ることはしなかった
・・・臆病すぎて
今朝、聞いたばかりのごっちんの声が耳の奥でゆらりと波立つ
「言ってくれるよね・・・他人事だと思ってさー」
思わず口に出して言ってしまって、苦笑が浮かんだ
- 452 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:38
- ・・・恋は甘い暴力みたいだ
気まぐれにアタシの上に落とされて、魅入られて囚われて
振り回されて、心はいつの間にか甘く溶かされていく
けれどもし、貴女がいないと駄目なんだ、アタシがそう言ったなら
そんなつもりじゃなかったと、逃げて行くかも知れないのに
アタシはどろどろに溶けたまま、きっともう元には戻れない
・・・それが怖くないはずがない
梨華ちゃんに、蔑むような畏怖の瞳で見つめ返されたら
アタシはその後、どうなってしまうだろう?
かと言って、梨華ちゃんが側にいなくなってしまうなら
アタシはこれから、どうしたらいいのだろう?
アタシの胸の中には焦がれて熱くたぎる想いと、しんと
静まり返った何かが、せめぎあっている
アタシは思った
大人になるということは、ある意味、シンプルになれるという
ことなのかも知れないと
ただ単純に一つのことを選び取れる強さと、その結果を受け入れ
られる覚悟を持てること
案外、そんなもんなのかも知れない、と
- 453 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:39
- あれから何日経ったんだっけ?
梨華ちゃんと最後に会った日から・・・
三日?・・・一週間?・・・半月?
アタシの中には何も無かった
体に力がちっとも入らなくて、時々自分が何をしてるのかが
わからなくなりそうだった
目にはいる全てのものは、モノクロでもセピアでもなく透明だった
ペダルにかけてた足が外れて、バランスを崩して足をつくと
ふいに淡い桃色が視界の端に引っかかる
見上げると・・・桜が咲いていた
薄闇の中で、アタシに微笑みかける様にさわさわと花が揺れた
唐突に、梨華ちゃんの笑顔が目の前に浮かぶ
そよそよと風が吹いて、見上げるアタシの頬に、花びらが
はらりと落ちた
- 454 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:39
- ・・・ひとみちゃん
耳の奥底から、少し甘えを含んだ声がする
桜の花が笑ってる・・・それは薄く膜が張っていて・・・
アタシは頬を滑り落ちる涙を拭った
手の甲に張り付く、薄桃色の花びらをアタシは見つめた
咲き誇る花が全て散ったら、アタシはこの木を忘れてしまう
可憐な薄桃色の小さな花が、連なると大きな羽を広げている様に
見えたことも、すぐに忘れてしまう
何時しか時が流れれば、梨華ちゃんのことも忘れてしまうだろう
花開く様な笑顔も、甘く耳をくすぐる声も、アタシの胸に今ある
想いさえも
大事な人が、どれほど大事かってことも、きっと忘れてしまう
何よりも大切なことのはずなのに、それすら忘れてしまうだろう
- 455 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:40
- どれほど強く思っていたことでも、気がつかないふりをしてると
そのまま通り過ぎてしまいそうになる
一度目はほんとに気づかなくて、二度目に気づかないふりを
続けたら、三度目はほんとに気がつかなくなってしまうかも知れない
誰かとちゃんと向き合って、相手のことだけ考えられるほど
まだ大人になりきれてないけど
自分を否定されることが何よりも怖くて、自分が傷つかない
ことばかりを考えてしまうほど、子供のままだけど
汚れることを知らず、忘れられて行くことだけを待つ思い出なんて
もういらない
昔のアタシを忘れずにいてくれることよりも、今のアタシの側に
いて欲しい
アタシは・・・間に合うだろうか?
今度はちゃんと間に合うだろうか?
- 456 名前:アタシの恋 投稿日:2004/04/16(金) 11:40
- 次の休みに、梨華ちゃんの家にチャリで行こう
川原の下の桜並木を梨華ちゃんを乗せたまま、どこまでも走りたい
桜の花は待っていてくれるだろうか?
・・・全ての花を落とすことを
その下で伝えよう、アタシの恋を
・・・ずっと昔に
伝え忘れたままの言葉と一緒に
END
- 457 名前:Sa 投稿日:2004/04/16(金) 11:41
- 更新終了致しました〜♪
お付き合い頂いてありがとうございます(ペコリ)
54@前作様
作者が二人の心の流れのリアルさみたいなのを考えると
弱さみたいなモノを、ついつい書いてしまってるですよーナゼか(w
設定変えても。そういうイミでワンパだなーって思ってしまいマス
JUNIOR様
タブンいしかーサンから見たら、不器用に見えてナイと思いマス
妄想小説の中でさえ、人のホントの想いは伝わりにくく
難しいなぁーと、って、書いてんの自分っすね(w
- 458 名前:extra 投稿日:2004/04/16(金) 21:43
- 完結ご苦労さまです。
ずっとROMしておりました。
作者さんの書く、いしよしにかなり引き込まれてしまいました。
今のいしよしの作品の中では、かなりツボです!
これからも頑張ってください。
- 459 名前:コナン 投稿日:2004/04/17(土) 00:49
- 更新完結お疲れさまです。mm(_ _)mm
吉澤さんの甘く切ない恋心?はぁぁぁ・・・
頑張れ!と応援したくなります。
心の奥底に染み込みました。(じぃぃぃん)
これからも素敵な「いしよし」をお願いします。
- 460 名前:Sa 投稿日:2004/04/17(土) 11:19
- 「アタシの恋」の番外編とも言えない様な本当に短い
吉澤さんの独白です
心情なのでわかりにくい書き方になって
しましましたが、お読み頂けたら幸いです
- 461 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:20
-
今日も彼女を抱いた
- 462 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:20
-
アタシが誘う指先に、翻弄されるように漏れる吐息
彼女が紡ぐ吐息は音楽
世界でいちばん愛しい音色
彼女の内を流れる激流の様な血液の調べ
- 463 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:24
- あやす様に優しく始めて
アタシの意のままに移り変わる彼女の姿態
唇を寄せると、震えてアタシへと開かれる
拒む術を知らない蕾
- 464 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:25
- 縋り付いていた彼女の腕が落ちた
喘ぐように息する唇
もう一度、塞いでしまおうか?
醒めきらない熱を宿す瞳を見て思う
- 465 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:25
- けれど、アタシは手を伸ばす
濡れて額に張り付く彼女の前髪に
そして、そっとわけて唇を落とした
彼女の瞳は今日も微笑む
- 466 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:26
- 彼女の身体を抱くのはアタシ
なのに、どうしてかな?
彼女を抱いた後は、いつでもアタシが
その内に抱かれてた気がする
- 467 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:27
- 桜が咲いていた
自転車を走らせて梨華ちゃんの家に行った
桜を見ようとアタシは言った
真冬の線香花火をしたね?
ぼとリと落ちた燃える花芯
あの川原へ行こう
- 468 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:27
- 桜の花びらが梨華ちゃんの髪に落ちた
風に誘われて、また花びらが揺れる
全てが散ってしまう前に・・・
どうか間に合って・・・
アタシは告白した
- 469 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:27
- 梨華ちゃんは微笑んだ
桜の花のように密やかに
・・・ずっと想ってると叶うってほんとね?
・・・ひとみちゃん、あたしね・・・
梨華ちゃんの唇が愛を告げる
花びらがまた、はらはらと落ちる音がした
- 470 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:28
- アタシは嬉しくて、梨華ちゃんの両手を取ると
その唇に唇を寄せた
微かに触れるだけで・・・心が震えた
中学生の頃に戻ったみたいな初めてのくちづけ
- 471 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:28
- 愛するって事だけが尊いのだと、どこかでそう思ってた
けれど、愛されてると知った時、初めてわかる事もある
愛される事が得意な彼女は、愛する事を誰よりも知っていた
- 472 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:29
- 一つの愛では足りないとアタシが望めば、彼女は十の愛を
与えてくれる
十の愛じゃわからないとアタシが言えば、彼女は百の愛を
伝えてくれた
愛されてると知った時、目の前にいる彼女と自分自身を
信じる事の意味を知った
- 473 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:29
- 彼女と別れた後
いつも思い出す、その笑顔
アタシは思う
どうしたらあんなに優しい顔になれるんだろう?と
- 474 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:30
- 会えない夜に、携帯が鳴った
・・・月がキレイだから、メールしたよ
・・・同じ月を一緒に見ようよ
アタシはもう、ひとりにはならない
- 475 名前:愛されるという事 投稿日:2004/04/17(土) 11:30
- アタシは頭が良くないけれど
難しいことは何もない
彼女の瞳はおしゃべりだから
いつでも、忘れずにいる事が出来る
呼吸するように自然に繰り返される
愛される事は愛する事
END
- 476 名前:Sa 投稿日:2004/04/17(土) 11:31
- 更新致しました
extre様
ウワッ!!!驚きましたっお読み頂けてるとはーっ 嬉しゅうございます
作者も読ませて頂いております
extre様は本当に多才で、次々作品を生み出されてて感服しております
古いハナシですが、日曜洋画劇場のセンス、忘れるコトが出来ません(w
コナン様
たくさんのレスをありがとうございまっす♪
次回は「隣り〜」を上げたいと思っておりますですよ
ただ、気に入って頂けるかはカナ〜リアヤシ〜ィっす(w
あ、書いたんだぁ?くらいのお気持で覗きに来て下さいませ
- 477 名前:54@前作 投稿日:2004/04/17(土) 16:03
- 更新、お疲れ様です。
「愛されるという事」、イイですねぇ。
Saさんの描く世界は心象風景がとても美しいと思っていますが、
特に吉は普段が不器用な分、心情で伝わって来るものがあります。
そして聖母のような石がイイですw
次回も楽しみにしています。
- 478 名前:わく 投稿日:2004/04/17(土) 23:07
- 梨華ちゃんの愛、よっすぃ〜の愛、心に染みました。
次回作も期待していますw
ステキな作品をありがとうございました!!
- 479 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/17(土) 23:37
- 更新お疲れ様です。
なんだろ、感動しました。
というか、感動しすぎて言葉が思いつかない。
Saさんは期待を裏切らないイイ作品をお作りになられるんで
次回作も期待させていただきマス。
- 480 名前:コナン 投稿日:2004/04/18(日) 03:32
- 更新お疲れさま。
「愛されるという事」いいですね。
吉澤さんの心情がとてもよく伝わってきますよ。
お互いに愛し愛される事は何て素晴らしいのですか!
マジ鳥肌!1444感動です。
Saさん大変うれしい予告を頂きさらに!感動です。・゚・(ノД`)・゚・。
隣の〜書いてくださるのですね。ああうれしいよ〜ん
大丈夫です、まったりとお待ちしておりますから。mm(_ _)mm
- 481 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:52
-
〜続・隣りの隣りの吉澤サン〜
- 482 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:52
- 「あぁぁ〜〜〜やっぱりぃダメだぁーーーっ」
日曜日の夜
あたしは給湯器のスイッチに指を伸ばして、何度も何度も
押し直ししてる
一週間くらい前から、ちょっと調子悪いかな?とは
思っていた・・・思ってたけどぉ
「点かないよぉ・・・」
・・・ハァァァ〜〜〜
あたしは長ーい溜息をついた
最近、あたしは溜息をつくことが増えてしまった気がするよ
昔、お母さんに、溜息をつくと幸せが逃げるからやめなさいって
言われた気がするけど・・・
だけど、だけどぉーっ
あたしは奥の洋室に行って、ペタンと座り込むと
そこら辺に転がってたピンクのクッションを掴んで
バンバン叩いた
それもこれもみんな吉澤サンのせいなんだからっ
あたしの頭に、隣りの隣りの部屋に住む彼女の顔が浮かんだ
- 483 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:53
- あれは二週間くらい前の金曜日の夜
あんなに長くて、短い二時間をあたしはいままで
経験したことが無かったくらい・・・
緊張のあまり泣きたい様な、心細い気持ちで映画を見てた
エンディングの曲が流れると、巻き戻しして下さいっ、と思わず
大声を出しそうになっちゃった
だけど、無常にも映画は終わっちゃって、吉澤サンがあたしの
顔を見たから、ビクンッと肩が跳ね上がったりして・・・
でもね、吉澤サンは、何も言わず首を回しながら立ち上がると
キッチンに行って冷蔵庫を開けながら、こう言ったのよ?
「ねー何か飲む?
どしたのー?感動しすぎて口が聞けなくなっちゃった?」
そんな訳ないでしょぉーっ!
アクション映画じゃないのっ!!!
アタシは心の中で叫びまくってた
吉澤サンがヘンなこと言うから・・・なのにっ、なのにぃ
どこまでもふざけた人っ!!!
- 484 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:53
- だからあたしは、もう相手なんかしてられないって思って
すっくと立ち上がって帰ることにしたんだ
「お邪魔しましたっ!!!」
「あれぇ もー帰っちゃうの?・・・寂しいなー」
背中越しに聞こえる声はやっぱり笑いを含んでて、あたしは
靴を履くと振り返って、キッと睨んじゃった
吉澤サンは玄関の段差の上から、あたしを見下ろすと
スッと目を細めてね、こう言ったの
「・・・困ったことがあったらおいでよ」
あたしは何か言い返してやろうと、口を開きかけたけど
結局、何も言えなくなっちゃって唇をギュと窄めたんだ
だって、だってね?
吉澤サンの目があんまり優しげに笑ってるんだもの
だからアタシはなんだかビックリしちゃって、見上げながら
頷いてしまってて・・・
そしてそのまま、隣りの隣りの自分の部屋に帰ったの
- 485 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:54
- それから偶然、吉澤サンに会うことはなかったし・・・
あの日、彼女があたしに言った言葉はなんだったのかな?
冗談だって、からかわれただけって頭ではわかってるつもり
だったのに・・・なんでかなぁ〜?
・・・ふぅ
あたしはまた、溜息をついちゃってる
時計の針は十時半、いくらなんでもそろそろマズイよぉ〜
あたしは、ふぅとまた口から漏れそうになる溜息を飲み込んで
用意してあったバスタオルを掴むと、立ち上がって部屋を出た
二つ先の部屋のドアの前に立って、息を整えると、ブザーに
指を伸ばす
けど・・・押せないっ!押せないよ〜
・・・どーしよぉ・・・でも、明日は会社だし
いくら冬だからって、三日もお風呂に入ってないのはヤバいよね?
だけど、点かなくなったのは金曜の夜だし
昨日は土曜で、起きたのが遅かったから不動産屋さんは午後から
お休みになっちゃってるし、今日も連絡取れないままだし・・・
もう、どうすればいいのぉー?
- 486 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:54
- 「何してんのー?」
ドッキィーンッ
いきなり暗がりから声をかけられて、ぼんやりしてたあたしの
心臓が口から飛び出そうに跳ね上がった
あたしが怯えながら、オドオド振り返ると、今日も吉澤サンは
ニヤニヤ意地が悪そ〜に笑ってる
「迷子になっちゃった?」
なるわけないじゃないっっっ!
自分ちの前でーっ!!!
キッと睨みそうになったけど・・・いけない、いけない
今日はお願いごとがあるんだからっ
でも、いざ口にしようとすると、まだよく知らない彼女に
お願いしていいことなのか、わからなくなっちゃって
あたしは俯くとモジモジした
- 487 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:55
- 「あ、あのね・・・
いきなりだし、ヘンに思わないで欲しいんだけどぉ
もうあたし、自分ではどうにも出来ないっていうかぁ
・・・困ってて・・・」
「・・・困ってる?」
吉澤サンの声はくぐもってて、なんだか聞き取りにくかった
迷惑そう?困惑してる?・・・だけど
ここで引き下がる訳には行かないわっ!
明日は会社っ! 女は度胸よっ!!!
「あ、あのねっあたしをお風呂に入れて欲しいのっ
・・・吉澤サンちでっ!」
「・・・うちの、風呂に?・・・石川サンを?・・・
それ・・・って、さぁー・・・」
あたしは顔が、かぁっと熱くなったけど頑張って吉澤サンの
顔を見た・・・やっぱり戸惑った顔してる
・・・そうだよね?迷惑だよね?
急に言われたら、お部屋、散らかってるとかあるかも知れないし・・・
・・・どーしよう〜・・・三日目なのにぃ・・・
あたしは涙が出そうになって、また俯いた
- 488 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:55
- フゥ〜と吉澤サンが大きく息を吐く音が聞えた
・・・あきれられてる?
「・・・いいけど、意外と大胆なんだ?・・・石川サンって」
・・・大胆?
・・・そうかぁ、そうだよね
ご近所ってだけだもんね? 友達だなんてまだ言えないし
顔見知り程度で、こんな時間にいきなりお風呂を使いたいなんて
大胆すぎて、あきれちゃうよね?
でっでもぉ〜 三日はマズイと思うのよ?
ちょっとあきれられちゃってるかも知れないけど、いいけどって
言ってくれてるし、もう一度お願いしてみよう
吉澤サンの顔を見上げると、あたしは必死で言った
「・・・いきなり言われても困るよね?
ほんとは嫌だよね?・・・だけどあたし、ほんとに・・・」
吉澤サンはサラッと前髪をかきあげながら、何かを考えてるような
目つきで、あたしの顔を見ながら言った
- 489 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:56
- 「もういいよ、わかったから・・・嫌ってわけじゃないし
石川サンがそうしたいなら、あたしはかまわないよ」
あたしは嬉しくなって両手を顎の下で組むと、大きく頷いた
「ほんとっ?良かった〜
断られたらどうしようかと思っちゃったぁ」
「・・・案外さばけてるんだね? 見かけによらず
ってか、勇気あるよねー」
・・・さばけてる?
・・・勇気がある???
遠慮がないってことかしら?
勇気・・・そうねっ!あたしも頑張れば言えるじゃないのぉー
吉澤サンこそ、見かけによらず内気な人なのかしら?
自信満々って態度で、意地悪な顔して、あたしのこと
からかってヤな感じだと思ってたけど・・・
あたしは吉澤サンの意外な一面が見れて、さらにウキウキしてきた
「・・・嬉しいの?」
あたしったら、今度は顔に出てたのかしら?
まずいじゃないっ!
でも、やっぱり・・・ちょこっとうれしい、かな?
- 490 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/18(日) 21:57
- あたしはコクンと頷いた
「・・・ほっとしたの」
お風呂は確保出来たし、吉澤サンも思ってたほど
人が悪くなさそうだし・・・
「へぇ〜 可愛いこと言うね」
吉澤サンは右手の人差し指と、中指で、自分の上唇を軽く叩き
ながら、あたしを見てる
その色素の薄い、お人形みたいな茶色っぽい目の色が
一瞬だけ濃くなった気がする
ドキンッドッドッドッ・・・
やっやだぁ なんでドキドキするのぉ
静まってよーっ あたしの心臓
だけど、可愛いだなんて・・・
あたしは耳までカッカとしてきて俯いた
「おいで・・・上がんなよ」
そう言う吉澤サンの声は、この間よりもなんだか優しく
聞える気がしたの
- 491 名前:Sa 投稿日:2004/04/18(日) 21:57
- 更新致しました
54@前作様
作者の妄想世界に住む吉澤さんは、表面上
どんなに格好良くても、子供の様に欲張りなので
いしかーさんは大変なのです(w
わく様
こちらこそ、そのようなお言葉をかけて頂いて
ありがとうございます♪
ご期待を裏切らなきゃイイんですがぁ〜(汗
JUNIOR様
恐れ多い・・・
その様に思って頂けて、ただ、ただ嬉しゅうございます
作者なりの出来る限りで参りますぅ〜(汗
コナン様
そうなのですっ!!!愛って素晴らすぃ〜
見てるだけで、ココまで妄想をかきたてられる
いしよしは最高にビューティホォ〜〜〜♪なのですっ(w
- 492 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/18(日) 23:42
- 更新お疲れ様です!
キタぞキタぞ〜〜〜〜〜〜!
隣の隣の吉澤さんが。おもしろいです。
石川さんも意味を理解してるのかなぁ?
頑張ってください。
- 493 名前:54@前作 投稿日:2004/04/19(月) 01:04
- 更新、お疲れ様です。
おぉ、いきなりヤマ場が訪れたような・・天然確信犯(?)な石川さんが素敵です。
隣りじゃなく「隣りの隣り」ってのがさりげなくリアルですよねぇw
続きをまったりとお待ちしております。
- 494 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:48
- 吉澤サンは玄関でパチンと電気をつけた
「お邪魔します・・・」
「うん・・・ちょい待って」
腰を屈めて、ショートブーツのファスナーを外す背中を
見てたら、あたしは急に申し訳ない気持ちになってきた
吉澤サンはどこかから帰ってきたばっかりで、疲れてるかも
知れないのに・・・
おうちに帰ってきたばかりで、一人でゆっくりしたかったよね?
「なんか、ごめんね?
急に変なこと言い出して・・・でもね、こんなこと
他に言える人がいないし・・・もうね、我慢の限界だったの」
「・・・付き合ってるヤツいないんだもんね?
そんなに我慢してたんだ?」
付き合ってる人?
そうだよね〜 うん、うん
恋人の部屋ならお風呂くらい借りやすいよね?
そんなにって、あぁ 今日だけかと思ったのかな?
図々しい子って思われたくないな
少し恥ずかしいけど、ほんとのこと言って、困ってたこと
わかってもらう方がいいよね?
- 495 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:48
- 「うん・・・三日たつし」
「三日?!
そんで・・・我慢出来無くなるんだ?」
吉澤サンはドアに手をかけたまま振り返ると、なんだか
ありえないって言いたいみたいに、大きな目を見開いて
あたしを見た
あたしぃおかしいのぉ〜?!
普通は三日以上我慢する?冬だから?汗かかないし?
・・・しない気がする、けど
「・・・おかしいかな?」
あたしが恐る恐る聞くと、吉澤サンは口許を右手で覆って
目線を天井に向けた
「おかしくは・・・ない、んじゃない? 人それぞれだし
・・・好きなんだ?」
「うん、気持ちいいよねぇ〜」
吉澤サンはあたしの顔に視線を戻すと、なんだか固まってる
なっなんでーぇ?!
- 496 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:49
- 「まぁ、ね ・・・今まではどうしてたの?」
ドアを抜けて、ダイニングキッチンへ進みながら吉澤サンが
小声で言った
「今まで?家で普通に、だよ
特に冬はいいよね〜温まるしっ!」
あたしも後に続いて上がらせてもらいながら、そう答えた
目の前の吉澤サンの背中が、なんだか強張ってるみたいに見える
・・・やっぱり疲れてるのかな?
長居しないようにサッサと済ませて、パッパと帰るようにしよう
キッチンのシンクの先の洗面所に目を向けると、ブルーの
カーテンで仕切りがしてあった
あぁ〜三日ぶりっ!!!
「早速だけど、いいかな?」
あたしが張り切った声を出すと、シンクに寄りかかる様に
立ってた吉澤サンは、体を起こしてあたしの目の前に立った
- 497 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:49
- 「・・・せっかちだね」
俯いてそう言うと、アタシの着てるパジャマのボタンに手を
・・・って・・・
えええぇぇぇーーーっ!!!
「まっまっ待ってっ!」
あたしのパジャマのボタンを外そうとする手を止めると
吉澤サンは顔を上げて、不思議そうな顔をした
「脱がされるの嫌い?
・・・ぁあ、そっか・・・悪い」
ぬ、脱がされるの嫌いってーーーっ?!
嫌いも何も、あたし子供じゃないんだからっ
自分で出来るしーっ
あたしが目を白黒させてると、吉澤サンはわかったと言う様に頷いて
今度はその手をあたしの頬に伸ばしてきた
そして、するりと撫でると顎を軽く持ち上げる
・・・はい?
- 498 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:50
- 訳がわからず、あっけにとられてる間に、首を僅かに傾けて
伏目がちに吉澤サンの顔が近づいてきて・・・
「ちょっー ちょ、ちょっと待ったーーっ!」
あたしはとっさに持っていたタオルを、その顔にあてると
思い切り押し返した
顔を覆うタオルを邪魔そうに払って、吉澤サンは憮然とした顔をする
「どうしたいんだよ?」
「だっ、だからーっ 給湯器がぁ壊れちゃってぇ・・・」
「給湯器?!」
- 499 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:50
- くっくっくっと、吉澤サンはまだ笑ってる
なっなんなのよぉーーーっ
シンクの前にしゃがみ込んで、肩を震わて笑い続ける
吉澤サンの頭が微かに揺れてる
彼女の色を抜いた髪が蛍光灯の明かりを反射して真夏の
お日様みたいにキラキラ光ってる
ちょっとだけ、キレイって思っちゃったけど
そう言うことじゃなくてーっ
「な、なによっ なんで笑ってるのよぉ!」
あたしは眉を寄せると、イライラと声を荒げた
「・・・勘違い、して、た」
うっすら涙まで浮かべた顔を上げると、吉澤サンは
途切れ途切れに苦しそうに言った
- 500 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:51
- 「・・・勘違い?」
「そ、石川サンの話ってさぁー わかりにくいって
言われない?」
・・・ギクッ
確かに言われるわ
何、言ってるの?とか、何言いたいかわからない、とか・・・
「・・・あたし、遠まわしに誘われてるのかと思った」
・・・誘う?
・・・何を???
アタシはますます眉を寄せて、眉と眉がくっついちゃうんじゃ
ないかと思った
吉澤サンは、小さく、あーーーぁと言いながら、首を傾けた
「石川サンってさぁ〜 今は、じゃなくて、今まで
付き合ったヤツいないでしょ?」
・・・なっなんでソレをーーーっ
吉澤サンって超能力者?
他人の過去がわかるとか???
- 501 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:51
- ・・・そうなんだよねぇ
なんかぁイイ雰囲気って思ったり、何かが起こりそう
変わりそうって思ったことは、あったよ?
でも気がつくと、いつもそれだけで終わってて・・・
石川さんみたいな子って、好きだな
そんな風に言ってくれた人、何人かいたけど
あれは友達としてってことだったんだよね〜
きっとあたし、勘違いばっかりしてるんだと思うんだなぁ
だってね?みんなあたしとじゃなくって、他の子と
いつの間にか付き合ってるんだもん
ネガティブモード全開になったあたしは、がっくりと
肩を落とした
「・・・どうせ、あたしはモテないよ」
吉澤サンはあたしを見上げて、唇の端をちょっとだけ上げると
フッと息を吐くように笑った
- 502 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:51
- そして人差し指で、チョイチョイとあたしを呼ぶ
あたしがしゃがみ込んで目線を合わせると、吉澤サンは口を
大きく開けて、スーーーッと息を吸い込んだ
「バァーーーカッ」
ム、ムカァーッ
わざわざ顔近づけて、言うことっ?!
「ひとつ、言っとく
こんな時間にいきなりパジャマ姿で現れて、思いつめた顔して
おまけに潤ませた目で、上目遣いして見んなよ」
あたし目を潤ませた覚えなんかないもんっ
それは必死だったからでー
上目遣いって言われたって、吉澤サンがあたしより背が高いから
見上げちゃうのはしょうがないじゃないのっ
あたしはひとつ瞬きをすると、なんか納得出来なくて
ジィと吉澤サンの顔を見上げながら唇を尖らせた
- 503 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/20(火) 11:52
- 「・・・全然ダメ その目が駄目なんだよっ
こう言うのもなーしっ!」
アタシの尖らせた唇をいきなり摘むと、吉澤サンは怖い顔をした
「わかった? 返事は?」
・・・ひっひどぉ〜〜〜いっ
摘んだ指先にギュギュッと力を入れるから、あたしは唇が痛くて
コクコク頷いた
「よしっ」
吉澤サンは指を離すと、あたしの頭をポンポンと叩いて立ち上がる
「いつも何度くらい?」
そう言うと、給湯器のスイッチをポンと押した
- 504 名前:Sa 投稿日:2004/04/20(火) 11:53
- 更新致しました
JUNIOR様
おもしろいですか???←疑ってどうするよ?自分(w
今回いしかーさんは大ウツケ者ですんで・・・
ベタベタ展開はお好きでしょーか?(汗
54@前作様
ヤマ場(w・・・実はそうだったり?←ヲイッ!!!
いつもは書き込まない部分の妄想のみをクローズアップしてるんで
先行き不安だったりします・・・
- 505 名前:54@前作 投稿日:2004/04/20(火) 17:58
- 更新、お疲れ様です。
まるで禅問答のようなふたりの会話が素晴らし過ぎます。
てか、結構無謀な人ですよね、石はw
自覚のない突っ走り系のいしかーさんも好きですよ!
次回もむはっとお待ちしております。
- 506 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/21(水) 00:12
- 更新お疲れ様です。
えっ?面白いですよ。
ベタベタな展開・・・・。(^^♪大好きです。
そして笑える。石川さんの発言と吉澤さんの勘違い。
石川さんの暴走?を期待してます。
- 507 名前:コナン 投稿日:2004/04/21(水) 02:01
- 更新お疲れさま〜
きゃぁぁぁ待ってましたmm(_ _)mm
うれしいよん。・゚・(ノД`)・゚・。
梨華ちゃんがとってもツボに、ハマリwかあいい。
あれでは吉澤さん勘違いしちゃいますね。
とっても楽しい展開で面白い(・∀・)イイ!!
いしよし最高!
次回の更新を楽しみにお待ちしています。
- 508 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:33
- あたしは吉澤サンがお湯を入れてくれた湯船に入ると
うーん、と足を伸ばした
きっもちいぃぃ〜〜〜
ズルズルと肩まで浸かると、頭の中がとろんとしてくる
あーー幸せぇー
リラックスしたあたしは、ふと、さっき吉澤サンが言ってた
ことを考えてみた
誘ってる?・・・勘違い?・・・あたしがしたいならいい?
・・・え?
・・・・・・えぇっ?!
まっ、待ってぇ!冷静に、冷静にぃ・・・
・・・吉澤サンはあたしのパジャマのボタンを・・・
・・・その後、顔が近づいてきて・・・
えええぇぇーーーっ!!!
思わず心の叫びが口から出そうになって、あたしは口許まで
湯船に沈んだ
- 509 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:34
- ・・・そ、それは・・・つまり・・・
ダッダメだぁー
これ以上考えてたら、速攻でのぼせてしまいそう・・・
あたしはプルプルと首を振った
「ねぇー」
ギョッ!!!
「湯加減どー?」
な、なんてタイミングのいい、じゃなくって、悪いのぉ〜
あたしはゴボゴボと少しだけお湯をのんじゃって、ケホケホむせた
「ぅうっん、ん、だ、大丈夫っ!」
なんだか声が裏返っちゃったよぉ〜
「髪、洗ってあげよっか?」
へ?・・・髪?・・・なんで???
髪を洗う=お風呂場に入る=あたしはいま、はだ・・・
だ、だめだめだめっ!!!
「結構ですっ!!!」
あたしの大きな声がお風呂場でエコーを響かせる
- 510 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:34
- 「そ? あたし上手いよ、プロだから
せっかくタダでサービスしてあげよーかと思ったけど
ま、いいや んじゃ、ごゆっくり」
プロ?
ってことは・・・吉澤サンて・・・美容師さん???
ふうぅぅん
髪型派手だよねぇー そう言えば
・・・なーるほどねーぇ
あたしはちょっぴりもったいなかったかなぁ、なんて
思ってしまって、そういう問題じゃないか?と首を傾げた
吉澤サンって・・・ちょっと変わってる、と思う
だからだよね?・・・なんだか気になっちゃうのは
・・・だって、ヘンな人・・・なんだもん・・・
- 511 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:34
- あたしは湯船から出て、ボトルをチェックすると
シャンプーを泡立てた
ふわり、と優しく穏やかな香りが漂う
わぁ〜いい匂いぃ〜なんだか高そっ! お店のなのかな?
その香りが浴室全体に匂い立つと、ふっと、さっき吉澤サンに頬を
撫でられた感触を思い出した
吉澤サン・・・あたしと・・・嫌じゃないって・・・
ちぃ、違う違う違うーーーっ
考えなくっちゃいけないのは、そういうことじゃなくって
吉澤サンって・・・
- 512 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:35
- そういうことになんだか慣れてる感じだった
いきなり誘われちゃう、とか、よくあることなのかな?
それでもって、誘われたら簡単に出来ちゃうんだ?・・・誰とでも
・・・誰でもいいんだ
でも・・・だからこそ、あたしとも・・・
いいじゃないのっ!
ちょっと変わってるんだからっ
それに軽いのよ・・・最初っからそうだったじゃない?
キレイとか、タイプとか・・・上手いことばっかり言っちゃって
だから、そう 気にしない、気にしないの吉澤サンのことなんて
彼女は彼女、あたしはあたし・・・関係ないもんっ
ふぅーーーう
なぜだかまた、大きな溜息が口から出て、ぼんやりしてたあたしは
慌てて髪の毛を洗い出した
- 513 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:35
- あたしがピンクのバスタオルで頭をゴシゴシ拭きながら
出てくると、キッチンの換気扇の下で吉澤サンは煙草を
吹かしてた
「・・・あの、ありがとうお風呂・・・」
吉澤サンはこっちを見ると、煙草を揉み消した手を伸ばして
あたしの頭からバスタオルをヒラリと外した
・・・ゲゲッ
ご、誤解だってわかってくれてるんだよね?
さっきの続きとか言わないよね?
吉澤サンがタオルを広げて、一歩、二歩とあたしに近寄ってくる
あたしがギュッと目を閉じた瞬間
バスタオルがあたしの頭をふわりと包んだ
「ゴシゴシこすっちゃダメじゃん 髪痛むよ?
綺麗な髪してんだから・・・
こうさぁ、水分を拭うように軽く押し当てて・・・」
- 514 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:36
- あたしはギュッといれていた瞼の力を抜いた
だけど、目を開けることは出来そうになかった
・・・だって、すごく気持ちいいんだもん
うっとりしちゃう
あたしの頭の形と、髪の先をなぞっていくほどよい振動
優しく揺れる小さな波のようで、なんだか眠くなってきちゃう
・・・あー シャンプーして欲しかったかも
思わず唇が開きそうになっちゃって、慌てて力を入れた時
タオルが頭からバサリと外れた
「お終い、ドライヤーすぐかけな」
ちょこっとそれもしてくれないかな?、なんて思って顔を見上げたら
吉澤サンは唇の片側を上げて、ニヤリとしながら洗面所を指差した
「ご自分でどうぞ」
- 515 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:36
- あたしが頷いて、洗面所に戻ろうとすると後ろから声がとんでくる
「根元から先に乾かすんだよ 半乾きにしないでちゃんと乾かして」
そんな細かいこと言うなら、してくれればいいのに〜
あたしが振り返ると、金取るよ?って言われてしまった
・・・けぇーーちっ
- 516 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:37
- 言われた通り、しっかり髪を乾かしたあたしがキッチンに
戻ると、吉澤サンが何かをあたしに向かってポォンと投げた
「あげる」
条件反射でキャッチしたあたしが手の中にあるものを見ると
それは・・・鍵?
あれぇ?・・・この鍵って・・・
「あたしの心の鍵・・・なんちて」
ニヤニヤしてる顔を軽く睨むと、吉澤サンは組んでた腕を
解いて、首の後ろを触りながら少し顎を上げた
「・・・今日はまだ早いくらいで、あたし帰り遅いからさ
勝手に使っていいよ、風呂・・・使い方、わかるっしょ?」
「え?・・・でもぉ」
こんなに簡単に自分ちの鍵を・・・
おおらかっていうより、無用心だよ?
あたしは深刻な顔をして鍵と吉澤サンを見比べた
「夜に家の前に立たれて、ブツブツ言われてたら
ドロボーより怖えーよ」
ムッキィーーーッ!ム・カ・ツ・クゥ〜
- 517 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/21(水) 11:37
- 「それに、あたしさー よく鍵無くすんだよねー
石川サンが持っててくれたら、無くしても家、入れるじゃん?」
あっけらかんとそんな風に言うのを聞いてたら、あたしは
心配してあげるのがバカバカしくなってきた
「なんならー 待っててくれてもいいけど?
おかえりなさぁーい、待ってたわぁ〜〜〜とかって
それか、一緒に住んじゃう?」
「住みませんっ!!!」
「あっそ、ザーンネン」
もぉーっ!なんなのよ?この人はっ!!!
付き合っちゃう?の次はこれよ???
軽いにもほどがあるよ、ほんとにやんなっちゃうっ
・・・でも、なんでかなぁ?
吉澤サンが言うと嫌な感じがしないのは・・・
おまけにそのペースに慣れてきちゃってる気がするし
あたしは可笑しくなってきて、クスクスと笑い声をたてた
- 518 名前:Sa 投稿日:2004/04/21(水) 11:38
- 更新致しました
54@前作様
禅問答(w・・・上手いなぁ〜♪
思い込みのみで日々行動。トンデモナクわかってないと言う
今回は、ただただハタ迷惑ないしかーサンをお届けいたします
JUNIOR様
ホッ・・・(w
ベタベタはある意味安心出来ますよねっ?←誘導尋問系ダヨ〜コッワ〜イ!
プッと笑いそうになったYOを目指してガムバッております
コナン様
ゴメンナサイッ(^∧^) 今回吉澤サンはカッケーんですよぉ〜
少なくても、作者の頭の中では・・・(w しかーし、いしかーサンが
こんななんで、ペースを乱されまくっておるのです・・・タブン(汗
- 519 名前:extra 投稿日:2004/04/21(水) 13:12
- かなりおもしろいです!吉澤さんが美容師という設定は新鮮でいいですね!
これからも頑張ってください。
extraの駄作も読まれているという事にかなり感動いたしました!
しかも、日曜ロードショーはかなり恥ずかしい作品ですね(汗)
これからもお互いに頑張りましょう。では、長々とすいませんでした。
- 520 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/21(水) 22:52
- 更新お疲れ様です。
ぷっ。どころではなくケラケラ笑いそうになりますた。
吉澤=美容師・・か。イイかも・・・。石川=天然?可愛い・・・。
これからも頑張ってくらさ〜い。
- 521 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:33
- 月曜日の夜
あたしは吉澤サンちでお風呂を使わせてもらうと
彼女の帰りをわくわくと待っていた
いつもからかわれてばっかりじゃ、シャクだから
たまには驚かせてあげるわっ!
フッフッフ 見てなさいっ!!!
あたしは心の中で吉澤サンをビシッと指差した
ガチャリと鍵を回す音がしたから、あたしは玄関に飛び出て
行くと、これでもかってくらいの笑顔を作った
「お帰りなさぁーーーいっ! 待ってたわぁぁぁ〜」
- 522 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:34
- ふふんっ!
あたしをナメてもらちゃ困るわよっ!!!
きっと、すっごく驚いた顔した吉澤サンが・・・
って・・・あれ?
目をまん丸にしたのはあたしの方で、ドアの外にいたのは
顔も知らない女の子だった
「あのさー 上がっていい?」
「あっハイッ ど、どうぞっ!」
あら?自分んちでもないのに、あたしがこんなこと言って
いいのかしら?
でも、押し売りさんやドロボーさんは鍵なんて持ってない
だろうし・・・
・・・鍵?
- 523 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:34
- この子も鍵持ってるんだ? 吉澤サンちの・・・
ひょっとして・・・この人、吉澤サンの・・・
ちょっとツンとした、でもキレイな顔してる女の子
押しが強そうな感じで・・・
・・・スタイルも良さそう
吉澤サンって、かなりの面食い?
あたしが玄関にボサーと立ってると、その子は肩を竦めた
「ちょっとどいてくんないと、入れないんだけどー」
「あっゴメンナサイ」
あたしが体をどけると、その子は開けたままのドアを通って
キッチンへと入って行く
パタンと冷蔵庫を開けてる音がした
な、なんかぁ〜 来なれてる感じしない?
やっぱり・・・そうなの、かな?・・・吉澤サンの・・・
そう思ったら、なんでかな?
口の中に飲み残した苦い薬が張り付いてるみたい
喉が勝手に上下し出すから、あたしはなんとなく俯いた
- 524 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:35
- スーっと足元から風が入ってきて、ふわりと舞い上がる
顔を上げると、開けたドアを片肘を上げて押さえるようにして
新聞受けからDMを抜き取ってる吉澤サンがいた
「・・・あ」
「あ?」
「・・・お帰り・・・なさい」
「ただいま」
我ながら情けないけど、とっさに言葉はそれしか出てこなくて・・・
あたしは何がしたくてここにいるんだっけ?と思ってしまった
吉澤サンは全然驚いた顔なんかしてなくて、なんだか当たり前のこと
みたいな顔してるし・・・
「よっちゃーんっ!帰ったのぉー?」
・・・ドッキーンッ
開けっ放しのキッチンへ続くドアの先から声がする
「ごっごめんねっ!すぐ帰るから!」
何を謝ってるんだかわからない、とにかくあたしは、すごく慌てちゃって
玄関にあったサンダルをつっかけると、外に出ようとした
- 525 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:35
- 「ちょっと、待った」
吉澤サンは、つんのめる様に出たあたしの肩を掴んで、軽く押し
戻すと、通せんぼするみたいにその手を壁につけてあたしの顔を
覗き込んだ
「あたしのこと待ってたんでしょ?」
「べ・・・べつに」
「べつに?」
「べつにっ!そんなんじゃなくってっ
いまちょうど、帰ろうとしてたんだもんっ!!!」
「ふぅ〜ん・・・そうなんだ?」
吉澤サンの口から漏れる息が、あたしの鼻先にかかって
なんでか体中にガチガチと力が入る
鼓膜のもっとずっと奥がゾワゾワして、あたしは首を竦めると
吉澤サンの顔を見上げた
「どいてよ!帰るんだからっ」
「い・や・だ」
- 526 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:36
- なんだかあたしイライラしてる
でも、何にイライラしてるのかがちっともわからない
だけど我慢出来なくて、とにかくここにはいたくないのに・・・
あたしは唇をギュッと噛んだ
「なーに怖い顔してんのー?」
なんだか楽しんでるみたいに、ニヤニヤしてる吉澤サン
もう見慣れたはずのその顔を見てたら、見てたら・・・
ツツゥーと、いつの間にかあたしの頬に涙が流れてた
泣きたくない、泣きたくなんかない
あたしが涙を止めようとすればするほど、涙腺は壊れちゃった
みたいに、どんどん涙を作ってくみたい
- 527 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:36
- 「・・・ぅ・・・ぅぐっ・・・」
俯いて両手で顔を覆ってしゃくりあげてると、その両手が
どかされて、吉澤サンの手があたしの両頬に触れた
そのまま顔を上げさせられて、そっと親指で涙を拭ってくれている
「ほんとに・・・バカだよねー・・・あ〜ぁ、まいっちゃうな」
涙をながしてるせいで額が微熱を持ってるみたい
ゆらゆら涙で揺れてる視界の先で、吉澤サンはじぃっと
あたしの顔を見つめてる
・・・その目はなんて言うのかな?
・・・なんて言ったらいいんだろう?
・・・なんだか、とっても・・・
あたしもその顔を見つめ返してる
催眠術をかけられたみたいに、目を逸らすことも瞑ることも
なぜだか出来なくて・・・
吉澤サンの目が真っ直ぐにあたしを見つめたまま、どんどん
まじかに迫ってきて・・・
- 528 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:37
- 「なーに、泣かせてんのー」
呆れるような声が聞えて、あたしはパッと催眠術から醒めた
驚くほど目の前に、吉澤サンの顔があってあたしは慌てて
体を引いた
吉澤サンはあたしの両頬から静かに手を離すと、ツツゥーと
視線を部屋の中へ動かした
「おまえさぁ・・・今、わざとだろ?」
「えー 何がぁ? 美貴、わっかんなぁ〜い」
「あっそ、じゃいい・・・そのかし歩いて帰れよ?」
「げっ!そんな〜 何の為に仕事終わりの疲れた体で
ここまで来たと・・・」
「・・・知らね」
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイッ
よっちゃんのマジモードみたのヒサブリだったんでぇー
ついつい、イタズラ心がぁ〜」
- 529 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:37
- 美貴サンと言う名前らしいその子は、両手を擦り合わせて
吉澤サンにペコペコしてる
何がわざとなんだろ?
・・・マジモード・・・ヒサブリだから?
・・・さっぱりわからないんですけど・・・謎々?
あたしが二人の様子を黙って見てると、吉澤サンは手に持ってた
ビニール袋をあたしの前に差し出した
「コレ、冷蔵庫入れといて」
なっなんで、あたしがぁ〜〜〜
少しムッとして、吉澤サンの顔を見上げるとなんだか冷ややかに
実は怒ってる気がして、あたしは素直に袋を受け取ると、もう一度
吉澤サンの家に上がった
冷蔵庫にビニール袋から出した牛乳を入れて、玄関に戻ると
二人ともいなかった
ドアの外で、ボソボソ話声がする
- 530 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 11:38
- ・・・ヤな感じ〜〜〜 こそこそしちゃってぇ
自分ちなんだから、家の中で話せばいいじゃないのっ
だからあたし、帰るって言ったのに・・・
・・・だけど
美貴サンは吉澤サンの恋人っていうのとはなんだか違うみたい
ホッと口から小さく息が出て、あたしは頭がこんがらがりそう
になった
なっなんで、あたしがほっとしなきゃいけないのーっ
何かがおかしいっ!
吉澤サンにジィーと見つめられると、金縛りにあってる
みたいに動けなくなっちゃうし・・・
ほんとにおかしいっっっ!!!
「まーた ひとりでブツブツ言ってるよ」
ハッとして目の前を見ると、いつの間に戻ったのか吉澤サンが
スニーカーを脱いであたしの脇を通り過ぎくとこだった
- 531 名前:Sa 投稿日:2004/04/22(木) 11:38
- 更新致しました
extra様
新鮮ですか?嬉すぃなぁ〜
extra様の発想は個人的にかなりツボなんですよぉ〜
そうですね?お互いガンバリましょっ
JUNIOR様
それは良かった〜〜〜
笑いっといて下さいませぇ(w
美容師・・・チット似合ってるカモ?と思って頂けましたでしょーか?
- 532 名前:わく 投稿日:2004/04/22(木) 12:14
- ミキティなんなんでしょ?(笑)
それにしてもよっちゃんさんは女殺しですね〜w
- 533 名前:コナン 投稿日:2004/04/22(木) 13:06
- 更新お疲れ様です。
待ってましたぁ〜かっけぇ〜吉澤さん
美容師さんって(・∀・)イイ!!
梨華ちゃんのキャラは可愛キモい?(ツボかもw
楽しいです、面白いです。
更新を楽しみに待ってます。
- 534 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/22(木) 15:45
- やべー… こういうの大好物ー!
ここしばらくで一番の個人的ツボ作品です。作者さんがんがって〜***
- 535 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:09
- 「ね?ねぇねぇっ! お友達、もう帰っちゃったの?」
あたしは吉澤サンを追いかけて、キッチンに戻ると
冷蔵庫の前でしゃがみ込みながら、何かを探してる彼女の
背中に聞いてみた
「友達? あぁ、藤本ね 帰った
っかしいなー ビールまだあったはずなんだけど」
「さっき、藤本サン冷蔵庫開けてたみたいだよ?」
「えっマジ?」
吉澤サンが首を回して、カウンターテーブルとシンクの
上を見上げてる、あたしもその目線を追いかけた、と、そこに
ビールの空き缶が二つポンと置いてある
「あのヤロ〜・・・人の車で飲酒運転かよー 勘弁してよ」
「吉澤サンの車?」
「そっ 明日、うちの店定休日だからね
出かけんのに使うんだってさ だっせー軽だけどね」
「お店の人なんだ?車借りに来ただけなの?」
吉澤サンは冷蔵庫を閉めて、立ち上がるとあたしに
向き直った
「そうだよ 他に何か聞きたいことある?」
「・・・ない、よ」
- 536 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:10
- ほんとは色々、色々あった
藤本サンって、ほんとにただの友達なの?とか
だったらなんで彼女は鍵持ってたの?とか、もっと色んな人にも・・・
「そっ? じゃ、あたしから質問」
「な、なに?」
ボゥーとしそうになってたあたしは、サッと身構えた
「風呂もう入ったの?・・・後、コーヒーでいい?」
・・・なぁ〜んだぁ
あたしがコクンと頷くと、カウンターテーブルに向かい合う
椅子の一つを吉澤サンは指差した
「落ち着かないからさー 座ってて」
「あ、うん」
- 537 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:10
- 吉澤サンは、冷蔵庫の横にあるキャスター付きのレンジ台から
コーヒーメーカーを取り出すと、シンクの下の引き出しから
フィルターを出したり、トクトクトクと水を入れたり、シンクの
前のコンセントに電源をさしたりって、ずっと動いてる
吉澤サンは何も話さなくて、あたしも何もおしゃべりしなくて
彼女の動いてる肩とか腕とか、首を傾けた時サラリと揺れた
髪とかを、あたしは見てた・・・なんとなく見てた
吉澤サンはスッスッと大きなスライドで動いて、換気扇の横の
壁に背中をつけた
ガス台の横に置いてあった煙草を取ると、換気扇をつける
ブゥーンて換気扇が回り始める音と、吉澤サンがライターを
カチッって点ける音がして、彼女の回りを紫煙が漂う
少し顎を上げて、ボゥと換気扇を見上げて煙を吐き出す吉澤サンの
横顔を、あたしは見てた・・・ただ、見てた
コポコポコポと音がして、吉澤サンはコーヒーメーカーへと
視線を移す
煙草の火を消すと、カップを出しながら、あ、そうだ と
吉澤サンは言った
- 538 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:11
- 「もう一度言ってくれない?」
「へ?・・・何を?」
「お帰りなさぁーいっ ずっとずぅっと待ってたわぁ〜〜〜
あたしあなたがいなくて寂しかったのぉすっごくぅーってヤツ」
い、言ってないよぉっ!
あたし、そこまでは言ってなーーーっい!!!
あたしは吉澤サンが、カップにコーヒーを注いでる後姿に向かって
思い切り首を横に振った
「あたし、言ってないよぉ〜 そんなこと言ってないもんっ!
それにね、お帰りはちゃんと言ったでしょ?」
あたしが捲し立てるように早口で言うと、くっくっく、と
笑いながら吉澤サンが振り返った
「まぁ、じゃ そーいうことにしとくよ?
はい、コレ」
テーブルの上にポンと置かれた、大きくて真っ白なマグカップから
ほのかに苦味がありそうな、香ばしい香りが漂ってくる
吉澤サンはもう一つの椅子に座って、カップをそのまま唇に近づける
・・・ブラックで飲んじゃうんだ?
- 539 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:11
- 少し伏せられた目許から覗くキャラメルみたいな瞳の色
あたしより、ずっと薄めの唇、透き通るくらい白い肌
あんまりお化粧濃くなさそうだけど、すっごく整ってるよね?
前も思ったけど、吉澤サンはすごく格好いい顔してると思う
よく見るとひとつひとつのパーツは、かなり女の子っぽいんだけど
全体で見ると、線が強いっていうのかな?
わりと、ボーイッシュなんだよね
いまさらだけど、すっごくモテるタイプの人?
特に女の子に・・・
女子高だったら間違いなく、キャーキャー言われてそう
けど美容室なら、女性のお客さんがほとんどだろうし・・・
吉澤サンってほんとに恋人いないのかな?
どんな人がタイプなのかな?
恋人といる時ってどんな風になるのかな?
あたしは吉澤サンがカップに口を付けるのを見ながら
自分も同じようにした
初めてブラックで飲むコーヒーは想像してたよりも
ずっとまろやかだった
- 540 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:11
- 「そぅそぅ明日ね、給湯器の修理の人来てくれるんだって」
「ふーん、会社行ってんじゃないの?」
あたしが話しかけると、吉澤サンはカップから目を上げて
こっちを見た
「有給取ったから」
「そっか」
あたしはカップをテーブルに戻すと、ポケットを探って
チェーンを取り出す
一呼吸して吉澤サンの前にそれを置いた
「それで、あのこれね・・・」
ネックレスチェーンに繋がれた鍵を見て、吉澤サンは、ふっと
真顔になった
「・・・あげるって言ったじゃん
もういらねーなら、ゴミ箱にすてれば?・・・それにさ、何コレ?」
吉澤サンはネックレスチェーンに人差し指を引っ掛けると
ちょっと上げて見て、そのままスィッとチェーンを上へと投げた
鍵は一瞬高く上がって、あっという間にテーブルから外れて床まで落ちた
シャリンと安っぽい鎖の音がする
- 541 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:12
- 「ひっどーいぃ
吉澤サンがよく鍵なくすって言うから考えたのにっ」
「カンケーねーじゃん」
「関係あるのっ・・・あたしの部屋の鍵なんだからっ」
「はぁぁぁ?
石川サンちー? あたしんちじゃなくって?」
吉澤サンも驚くと声が裏返るんだ?
あたしはヘンなことに感心しながらコクリと頷いた
「今日ね?怖いことがあって、不安になっちゃったの」
「・・・怖いこと?」
「おうちに帰って、洗濯物取り込んでたら、あのー
えっと、ね・・・下着が・・・その・・・無くなってて」
「外に干してたの?」
吉澤サンはなんだかすごく怖い顔になってきて、あたしと言うより
あたしを突き抜けて、奥の洋室のもっとずっと先を睨んでる
「ここ、1階だけど高台でベランダの下が斜面になってるでしょう?
タオルで囲んで干してたし、今までこんなことなかったし・・・」
「・・・無用心だよ」
確かにそうだけどぉ
自分ちの鍵、ゴミ箱に捨てろって言う人には言われたくないよー
- 542 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/22(木) 17:12
-
「わかってる、これから気をつけるもんっ でもね?
あたしとか、あたしの部屋になんかあっても誰にも気づいて
もらえなかったらって急に考えちゃって・・・怖くなったの
鍵を持っててもらってるだけでも、あたし以外にこの部屋に
入れる人がいるって心強いかなって思って・・・だけど
無くされちゃうのは、ちょっと困るし・・・」
あたしはカップを口に運びながら、チロッと吉澤サンの顔を見た
吉澤サンは椅子から体を乗り出して、腕を伸ばすと、床に落ちてた
鍵を拾い上げて、あたしの顔を見るとニヤニヤした
「へぇー じゃ、あたしは二十四時間、三百六十五日
いっつでも好きな時に石川サンちに入っていいわけだ?」
ああぁぁぁ〜〜〜〜
もーーーーぉ
この人はまたこう言うヘンな言い方をするしっ!
ほんとに・・・どうにかして欲しいよ
あたしはコーヒーを飲むふりをして小さく溜息を付いた
- 543 名前:Sa 投稿日:2004/04/22(木) 17:14
- 本日二回目更新ナリ
一度、やってみたかったモノで(w
わく様
なっなんなんでしょーっ?(汗
女殺し・・・(w 今回の吉澤サンのテーマですね、ソレは・・・ハハッ
コナン様
(・∀・)イイ!!っすか? いがったぁぁぁ〜
作者も大昔の少女漫画ヒロインチックのいしかーサン、キライじゃないんで(w
534様
大好物〜っ♪ 嬉しいっす!!!
おかわりをお持ちしましたっ!(w あぁっ!吐かないでぇ〜
- 544 名前:54@前作 投稿日:2004/04/22(木) 17:22
- 更新、お疲れ様です。
ひとりで起承転結している石がイイですねぇ。
(いつの間にか吉の部屋にフツーに出入りしてるし、案外ちゃっかりさんキャラですね)
そして何かとホットなあの人も登場で、月曜日の夜は何かが起こる!?
次回もむはっとお待ちしております。
- 545 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/22(木) 23:41
- 2度の更新お疲れさまです。
きょうも笑わせていただきました。
吉澤さんのキャラ最高。美容師結構イイし・・。
これからもガンガレ!
- 546 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:26
- 吉澤サンはテーブルの上で、あたしのうちの鍵を親指と人差し指で
クルクル回してる
片手で頬杖をついて、鍵を見てる口許が、なんだか機嫌よさそうに
ふっと緩んだ
何が嬉しいのかしら?
実は鍵のコレクターとか???
でも、よく失くすって・・・
よくわからないなぁ、やっぱり変わってるよ、吉澤サンって
だけど、吉澤サンは困らないのかしら?
二十四時間、三百六十五日、いきなりあたしが入って来ても?
あたしはそう思って言ってみた
「あのね? あたしだってそうなんだからねぇ
好きな時に吉澤サンちに入れちゃうんだからっ!」
「入りたいの? なら、いつでもどうぞ」
「ほんとにぃ ピンポーンもしないかもよ?
いきなりガチャガチャって入って来たりしたら
吉澤サン・・・困るんじゃないの?」
「全然」
吉澤サンはまったくかまわないって感じで、それが何?
って顔してる
そしてまた、鍵を見て、それに付いてるチェーンを見て
あたしの顔を見た
- 547 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:36
- 「それよかどーよ?このチェーン・・・
センス悪りぃー コレをあたしに付けてろってか?」
「ずっと付けてろなんて言ってないじゃない
ただ、首から下げてれば無くしにくいかなって」
「さいですか」
吉澤サンは立ち上がると、腕を回して自分の肩をポリポリと掻いた
給湯器の温度を横目で確認すると、膨れっ面をしてるあたしに向き直る
「で、今晩どうすんの?
部屋帰んの怖いんだろ?泊まってく?」
・・・ドキッ
- 548 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:37
- はっきり言っちゃうと、初めはそのつもりで待ってたの
だってなんか、暗い窓の外から誰かに見られてる気がして・・・
胸がザワザワして落ち着かないんだもの
だけど・・・なんだろ?
あたしにも、それがなんでなのかはわからないんだけど
ここにいてもやっぱりあたしの胸はザワザワ騒ぐの
吉澤サンといると、それはそれで妙に落ち着かないのよね
あれ?ちょっと違うなー
あたしはここにくると、なんかホッとするんだよね
だから、鍵も預ける気になったんだし・・・
だけど・・・あれ、あれれ???
なんだろ?なんだろ?・・・うぅーん、うぅーん
なんだか、家に帰った方がいいような・・・
でも、帰りたくないような・・・
- 549 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:37
- 「何難しい顔してんの?・・・ひょっとして、気が付いた?」
「気が付く?何に?」
あたしが聞きかえすと、吉澤サンは、ハハ・・・と、なんだか
投げやりに笑いながら天井を見て、またあたしを見た
「あのさー あたし、石川サンのこと、これからドンちゃんって
呼んでい?」
「ドンちゃん?」
「そっ じゃ、ドンちゃん あたし風呂入ってくるから」
ドンちゃん? 何よ、それ???
なんだか完璧にバカにされてる気がする
ドンちゃん?ドンちゃんっ???
・・・気に入らないわっ だって、ちっとも可愛くなーーーいっ!
浴室に入ってく吉澤サンを見ながら、あたしは自分に
付けられた、あだ名のことで頭が一杯になっていた
- 550 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:38
- 吉澤サンがお風呂から出てくると、あたしはタタッと
側へ寄って行った
「ねぇねぇっ!ドンちゃんってなんでつけたの?
意味があるの?」
吉澤サンは一瞬目を見開いた後、ブブッと噴出した
「あのさぁ〜あたしが風呂入ってる間、ずっとソレ考えてたの?
ダメだわ・・・ってか、マジかなわねー ドンちゃんには」
あのねー、すっごく感じ悪いよ?
あたしは吉澤サンのトレーナーを引っ張ると顔を見上げた
「だってぇー 訳わかんないんだもんっ」
「・・・出たよ」
「出た???」
「なんでもね それよかドンちゃん、他に考えること
忘れてない? 今晩どーすんの?」
あぁぁーーーっ!!!
すっかりすっかりすっっっかり、忘れてたよ
・・・どうしよ?
- 551 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:38
- 吉澤サンはフッと鼻先で笑うと、自分の首にかけてたタオルを
あたしの頭の上にパサリとかけた
ちょっちょとー! 何すんのよっ
あたしがタオルを取ろうとした時
タオルの上から頭をギュッと抱え込まれた
ドキンッ
「・・・ここにいなよ・・・一緒に、寝よ」
えっ?!
頭にかかってた力がふわりと抜けた
「あ、タオル、洗濯機ん中入れといてー」
ね、ね、寝よ?寝よ寝よ寝よ・・・寝よ・・・
あたしが呆然としながら、タオルをズルズルと頭から外すと
吉澤サンはやっぱりニヤニヤして、あたしの顔を見てるし
- 552 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:38
- その上、吉澤サンと目が合うと、ボ、ボ、ボと顔が
熱くなってくるような?・・・な、なんでぇ〜
あたしはタオルをギュッと掴んで、吉澤サンの鼻先に
突きつけた
「じっ じ、自分でしなよっ」
「や・だ」
「ふんっ!」
あたしはバタバタと足音を立てて、洗面所に行った
そして、バスタオルを、えいっと洗濯機に投げ入れる
あ、ナイスシュートッ!!!
じゃなくって・・・どーしようぅぅぅ
吉澤サンから隠れるみたいに、あたしは体を縮こませた
頭の中は洗濯機みたいにクルクル回ってる
どうしよ、どうしよ、どーしよーーーっ
って、あれ? あれれ? ちょっと待って?
でもいま、夜・・・だよね?
夜に寝るのは当たり前だよね?
そっか、そっかぁ〜 一緒にって、眠ろうってことね〜
なんだ、なんだ、なーんだぁ〜 そーゆうことね、うんうん
- 553 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:39
- あたしったら、気の回しすぎだよー
だって、あたしと吉澤サンはそーいう間柄じゃない訳だしっ
・・・でもぉ
吉澤サンって変わってるから、普通の考え方じゃないかも・・・
そーいう間柄じゃなくっても、そーゆう意味だったりして?
ほら、なんたって、すっごぉーく軽い人だしぃ
合鍵なんて配りまくってて失くしちゃってるのかも知れないじゃない?
吉澤サンって・・・
「手が早そうってゆーかぁー誰でもよさそうってゆーかぁー」
そうそう、そうなのよっ!
うんうん頷いて、あたしはハッとして、バッと振り返った
よ、吉澤サンッ?!なっなんでそこに立ってるのーっ
それよりどうして、あたしの心の声がぁ?!
- 554 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/23(金) 14:39
- 「当たり?」
あたしは頷きそうになって、慌てて首を横にブンブン振った
「そ? なら、いんだけど
ミョーに期待されてるみたいだからさー
期待されてるなら答えないと、ね 悪いじゃない?」
「悪くないよっ じゃなくって、全然思ってなかったからっ
そんな風にはっ!」
「あーそー? じゃ、お互い誤解が解けたことだし、寝よーよ」
「う、うん・・・そうだねっ」
吉澤サンはクルリと体の向きを変えて、一歩足を出して
また振り返った
「あ、でも 興味あるなら、ちくっとだけ試してみる?」
「ないからっ!興味なんて全然っまったくっっっ!!!」
「ありゃま、言いきられちゃったよ ヨシザワサン、傷つくなぁー」
吉澤サンは組んでた腕を外すと、右手の親指と人差し指で顎を触りながら
あたしの爪先から、頭の上まで、ツッーと目線を動かした
その顔は傷ついちゃってるなんて言わないと思うんだけど・・・
あたしが吉澤サンの顔を改めて見上げると、彼女は超余裕って感じで
不敵な微笑みを浮かべてた
- 555 名前:Sa 投稿日:2004/04/23(金) 14:40
- 更新致しました
54@前作様
いしかーサンをコミカルにしようとすると、そーゆう
イメージしか湧かないんですよねぇ〜(貧困なんでw)
月曜日の夜・・・ハハッ
JUNIOR様
笑って頂けたなら、そりゃーもういがったです
魅力的な吉澤サンに挑戦してたハズなのですが
なんだかチガウよ〜な?とクビを傾げたりして(w
- 556 名前:54@前作 投稿日:2004/04/23(金) 21:47
- 更新、お疲れ様です。
何だか、またしてもプチ禅問答になっているような・・
(ここまで来ると落語の世界ですねw)
「ひとり無限ループ」状態の石がめでたくてイイ!
依然としてどこか謎めいてる吉もカッコいいですね。
某板の新作も拝見いたしました。こちらとあわせて次回も楽しみです。
- 557 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/23(金) 22:43
- 更新お疲れ様です。
笑いすぎて筋肉痛の腹筋が痛い。
吉澤さんカナリ魅力的ですよ。
石川さんがあんな調子なら吉澤さんが
超余裕なのは、なんとなく解ってしまう。
これからも楽しみにしてるんで頑張ってください。
- 558 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/24(土) 06:59
- 最高におもしろいですね。
毎日更新してくださるので仕事から帰ってくると、
真っ先にこの小説を読んで疲れを取っています。
応援しています。
- 559 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:36
- 吉澤サンが洗面所の奥の部屋のドアを開けると、四畳半の洋室は
ほとんどベッドが占領してた
・・・ゴクン
なんだか、緊張してるんですけど???
「セミダブルだから、一緒でいいっしょ?
うち、フトンとかねーし」
ね?と聞き返されて、ベッドに目が釘付けになってた
あたしはコクコク頷いた
吉澤サンはベッドの淵に腰掛けると、あたしを見上げて
首を傾げた
「どした? 顔・・・赤いよ」
「あ、暑くって・・・なんか・・・」
「ふ〜ん・・・ 変わってんね? あたしなんか寒みーくらいだよ」
吉澤サンは布団を捲り上げながらそう言った
そのまま片手で捲った布団を押さえて、横になると
もう片方の手で頬杖をつきながら、ボサーと立ってるあたしを見る
「・・・来なよ」
ドックーンッ!・・・ドクンドクンドクン・・・
・・・うっ!
- 560 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:37
- ななななんでぇ???
もんのすごおぉく、動悸が激しいんですけどぉ〜
あたしは左の胸を手で押さえると、ギィギィ音がしそうなぎこちなさで
ベッドに近寄り、飛び込み台からプールに飛び込む勢いでベッドに乗ると
陸上げされた魚の様に、強張った体で仰向けになった
なぜか、そこで吉澤サンはプッと噴出した
「マジ、おもしれー」
・・・?
面白い?いったい何が???
あたしが眉を寄せて、首だけ吉澤サンの方に向けると、彼女は口許をニヤニヤ
させたままスッと目を細めた
「・・・もちろん、覚悟は出来てるんだよね?」
か、か、覚悟ぉーーーっ
あたしは両目を思いっきり見開いた
「一応、気は使うつもりだけど?・・・ほら、なんつーの?
うちらにとって記念すべき初めての夜な訳だし?」
・・・あ、あわわわわ
あたしは口を開いたけど、ぶるぶる震えちゃって言葉が上手く出てこない
吉澤サンが横たえていた体をゆらりと起こすと、あたしはなぜだか
ギュッと目を閉じていた
- 561 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:37
- ふわり、とあたしの上に軽い布団がかかる
・・・?
恐る恐る目を開けて横を見ると、握りこぶしを口許に当てて、ニヤニヤと
天井を見てた吉澤サンは、チラリとあたしの方を見た
「・・・なに?
あたしはさー 風邪引かせたら悪りぃーって思って・・・
それに、自分の寝相とかいまいち自信ないし、石川サンのこと
ベッドから落としちゃうかも知んないしね?」
な、なな何よぉ〜〜〜覚悟って・・・そんなことだったの?
あたしの体中からへなへなと力が抜けた時、なんだかいつもより低く掠れた
ように聞える声がした
「いま・・・何、考えてた?」
- 562 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:40
- 何って・・・何って?
あたし、何考えてたの?・・・それはぁ、えぇと・・・
考えが追いつくより早く、あたしの顔は勝手にボボボと熱くなる
「何って・・・何って・・・それはっそれはね?・・・明日の天気のことよっ!」
「ぁあ?・・・そっ」
吉澤サンは溜息をつきながら、小さな声でボソリと呟いた
「・・・可愛くねー」
「なっなんですってぇーっ!」
「なんでもないって、ひとりごとだし・・・ほんじゃ、おやすみぃー」
吉澤サンはクルリとあたしに背中を向けた
何よ、何よっ!何なのよぉーーーっ!!!
ほんっとにぃ〜ヤな感じぃっっっ!
ちゃんと聞えてたんだからねーっ!
あぁぁぁあもぉぉぉぅううぅぅーっ
カッカ、カと、ものすっごくイライラするぅ〜
- 563 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:41
-
可愛くないって言われたぐらいのことが???
なんでぇこんなにぃ?
それも・・・あるけど、微妙に違う気が・・・
あたしを小馬鹿にして、からかうから?
そんなのって、いつものことじゃない・・・
そうじゃない、そんなことじゃない気がする
じゃあ、なんで?
あたしはいったい何にカッカしてるの?
それは・・・
そんなの、吉澤サンが・・・吉澤サンが・・・
あたしの気持ちを・・・
- 564 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:42
- 「あ、そうだ」
・・・ビクッ
「さっきのことだけど・・・
考え変わったら、いつでも起こしてよ
遠慮しなくていーから・・・んじゃ、おやすみ」
「お、おやすみ」
自分の考えに気をとられてたあたしは、普通にそう答えて
しまっていた
遠慮しなくていいって・・・そういう問題なの?
違うと思うけど・・・
吉澤サン・・・吉澤サンはあたしと、そういうこと・・・
したいと思ってるかしら?
もしもそうなら、その気持ちは・・・ただの気まぐれ?
たまたま一緒に寝てるから?・・・わからないよ
だけど、あたしは軽くそんなこと出来ないもんっ
誰でもいいなんて、絶対に思えないんだからっ
- 565 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:42
- あたしは唇を噛むと、自分に向けられてる吉澤サンの背中を見た
ふいに涙が零れそうになる
・・・なんでなの?
背中を向けられてるってだけで、たったそれだけのことじゃない?
いったい何が? どこが寂しいって言うのよ・・・
あたしはおかしいっ すっごくおかしいっっっ
ちょっと変わってる吉澤サンと一緒にいるうちに、あたしまで
変わってきちゃってる気がする
もう考えないっ! 考えないったら考えないのっ!!!
・・・吉澤サンのことなんてっ
あたしはまるでムキになってるみたいに、グルリと吉澤サンに背中を
向けると、ギュッと目を閉じた
- 566 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:43
-
あまり深く眠れてない気がする・・・
寝てるんだか、起きてるんだか自分でもよくわからない
そんな感じ
でも、眠い・・・眠れそう・・・
- 567 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/25(日) 14:44
-
「・・・たな
このままじゃ ・・・しそうだよ ・・・になんねー」
あ・・・
吉澤サンの声が聞える、すごく近くで・・・
目を開けようとしたけど、とにかくどうしようもなく眠かった
あたしは、暖かくって、優しい大きなモノにすっぽり包まれてて
それが、あんまり気持ちがよくって・・・
すっごく安心しちゃって・・・
だ、め、だぁ
あたしは抵抗するのを諦めて、ズルズルと落ちて行った
柔らかい眠りの中へと
- 568 名前:Sa 投稿日:2004/04/25(日) 14:44
- 更新致しました
54@前作様
ひとり無限・・・(w ホント上手いなー!!!
タブン、いしかーサンから見たら、作者の書く吉澤サンは
いつでも謎多きヒトだと思いますよ〜?
2スレ・・・ハハッ・・・無謀なコトしてますが、重ねてよろしくデス(ペコリ
JUNIOR様
そ、そこまで笑って頂けましたか?(汗
イヤ〜感激ッス! オマケに魅力まであると???
さらに、さらに感激でございますぅ
いしかーサン、は・・・カナリ困ったヒトですが・・・(w
558様
そうッスか?お褒め頂いて光栄ですっ!!!
更新は必ずとは言えないんで明言は避けておりますが
出来る限りサクサク行きたいと思ってるんで(w
この様なモンでお疲れが取れるなら、ガムバッちゃいますよぉん♪
- 569 名前:54@前作 投稿日:2004/04/25(日) 16:06
- 更新、お疲れ様です。
いやぁ〜吉でなくとも拷問に近いキツイ状況ですよ、これは。
石は存在自体が罪ですからw
果たしてモーニングコーヒーは如何に・・
次回も楽しみです。
- 570 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/25(日) 22:33
- 更新お疲れ様です。
吉澤さんがんばれ、この夜を耐えるんだ・・・・・。
と言いつつ、イキナリ襲っちゃえと思っちゃったり。
確かに石川さんは困ったお方です。
Saさん目指せスレ使いきり。
- 571 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:14
- 朝、目が覚めると、吉澤サンはいなかった
寝ぼけた目を擦って、おはよ〜って言いながらキッチンに行くと
テーブルの上にメモが乗ってた
「「
給湯器の修理終わったら、店に来てよ
桃花々丘駅前、北口 徒歩5分くらい
アカマツ通り、1コめの信号左、デカい百均の先
レンガ風マンションの1F
c.y.t.w.
」」
- 572 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:15
- あら?吉澤サンたら結構、字が上手じゃなーい
って、そんなことはどうでもよくって・・・
なんであたしの、貴重な有給の一日をあんな訳わかんない人の
為に、使わなきゃいけないのよぉ〜
昨夜だって、吉澤サンがふざけた人だから、あたしはなかなか
眠れなくなっちゃったんだからっ
・・・だけど
あたしはメモをチラッと見た
ちょこっと興味あるよ〜な・・・
あれ?でも今日、お店お休みって言ってなかったっけ?
あたしはメモを手に眉を寄せた
う〜ん、桃花々丘・・・電車で二つ目だよね?
行ってあげてもいいけど・・・
・・・修理屋さん、何時頃来るのかな?
って、いま何時なのーーーっ?!
あたしは慌てて、吉澤サンちを出ると、二つ先の自分の部屋に
バタバタと帰った
- 573 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:15
- ・・・修理屋さん・・・ひどいよぉ
時計の針はもう、五時半を過ぎようとしてる
自分の部屋に戻ったあたしは、留守電が点滅してるのを見て
メッセージを聞いた
午後伺いますからって言葉を聞いて、あたしはホッとした
だって、十一時を過ぎてたから
ところが、修理屋さんが着てくれたのは五時少し前くらいだったの
そしていま、修理が終わって認印を押したあたしは、時計を
見上げて溜息をついた
日がのびてきたとは言っても、今は冬
一分刻みで足元から薄闇が暗闇へと変わってく
冬の五時は夕方って言うと思うよ?
結局、一日なぁんにも出来なかったなー
あっ!吉澤サンッ!!!
・・・怒ってるかなぁ〜?・・・だけどぉ、約束した訳じゃないし・・・
もう帰って来てるかも?
あたしは隣りの隣りの彼女の部屋を覗きに行った
- 574 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:16
- 〜ピンポーン
・・・出ない・・・
あたしはポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んだ
ガチャリと鍵が外れる音がする
・・・まだ帰ってないんだ
・・・どうしよー ずっと待ってたら
考えてみればあたしは、吉澤サンの携帯の番号とかって
聞いてないよ?
メモを取り出して、もう一度見た
やっぱり電話番号なんて書いてないし・・・
・・・そんなことさえ知らないんだ?
あたしは妙にしみじみとしてしまった
あたしと吉澤サンはほんとに知り合ったばかりなんだよねぇ〜
引越しの挨拶を抜かしたら、ビデオを見た金曜日
お風呂を借りた一昨日の夜、泊めてもらった昨日の夜
・・・たった三日しか経ってないんだ?
それなのに、こうして合鍵で彼女が帰ってるか確認してる
・・・なんだか不思議な気がした
- 575 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:16
- あたしは自分で言うのもなんだけど、結構、警戒心が強くって
いつでも自分を出せるようになるまで、時間がかかってた
だから、ただ大人しいだけの何も言えない女の子って
思われることが多くって・・・
仲良くなってくると、リカ作はヌケ作とか、訳わかんないこと
言われるようになっていくんだけど・・・って、そういう話じゃなくって
とにかくっ!親しくなるのに、時間かかるんだよね・・・いつもは
吉澤サンはすごくふざけてて、かなり変わってるけど
傍にいるとあたし・・・そのままでいられるって言うか・・・
いっつも言うだけ言われて、からかわれてばっかりで
すっごく腹がたつのに・・・だけど、あたし・・・
そんな吉澤サンだったからこそ、あたしも変に壁を作っり、格好
つけたりする必要がなかったのかも知れない
それに、意地悪されても、軽い人って思っても・・・なんだろ?
吉澤サンから感じる何かは・・・変わらないままなんだよね
- 576 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:17
- なんて言うのかな?
ずっと昔から傍にいた人みたいに馴染んでる感じ?
ちょっと違うかなぁ〜
実は自分でもよくわかってなかったりするけど
・・・だけど
たぶん・・・これからもっともっと、色んな彼女を知ったとして
あたしきっと、嫌いにはなれない吉澤サンのこと・・・そんな気がする
こういうのって・・・ひょっとして、信頼してるって言うのかな?
あたしは吉澤サンの部屋の鍵を、もう一度かけ直すと
すっかり暗くなった道を、駅へと向かって走り出した
- 577 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:17
- 真っ白い壁でお洒落な平屋作りの、大きな百円均一の店を
通り過ぎると、何軒か先に濃いメタリックグレーの看板に
c.y.t.w.って小さな文字で書かれているのを見つけた
ガラス張りのお店の中は、間接照明だけがうっすらとついてる
近寄って行って覗き込むと、シーンと静まりかえってて
人がいる気配がしない
・・・行き違っちゃったかな
あたしが軽く握った手を唇にあてながら、振り返ろうとした時
「おいっ〜す」
ヒャァァァーッ!!!
背中からいきなり、耳元に低い声で囁くように言われて
飛び上がるくらい驚いたあたしは、とっさ体を後ろに引いて
バッと振り返った
- 578 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:17
- 「や、や、や、やめてよぉ〜
心臓に悪いじゃないのーーーっ!」
「お返しだよ・・・あたしも、心臓に悪かったから」
「へっ?」
吉澤サンは両手をジーンズのポケットに入れて、腰を僅かに
屈めるようにしながら俯いた
軽く曲げた片方の膝を揺らすと、踵がタンタンタンと
コンクリートを叩いた
「あんま遅いから・・・来ないかと思った それか、なんかあったのかな、とか」
・・・心配、してくれてたの?
あたしはジーンと胸が熱くなった
「ごめんね・・・」
吉澤サンは俯いたまま首を横に振る
彼女が顔を上げてくれないから、あたしは心を込めて
もう一度謝った
「ほんとに・・・ごめんなさい、その・・・お待たせしちゃって」
吉澤サンはやっぱり顔を上げてくれなくて、また首を横に振ってる
そ、そんなに気にしてくれてたなんて・・・どうしよ〜ぅ?
- 579 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/26(月) 21:18
- あたしは一歩、吉澤サンに近づきながら声をかけた
「あ、あのね、修理屋さんが来てくれるの遅くて・・・
言い訳するつもりはないんだけど、あたし、これでもね?
駅まで走ったし・・・」
そう言いながら、吉澤サンの肩に手を置いて、顔を覗き込むと
なんだかブルブルと唇が震えてる
・・・あれ?
吉澤サンの肩が小刻みに振るえだして、その振動があたしの手に
伝わってくる、くっくっくって・・・
くっくっく?・・・わ、笑ってるーーーっ!
ひっどぉーーーいっ!
騙したのねっ!!! あんな、あっんな神妙な顔しちゃってぇぇぇ
前言撤回!!!
あたし、吉澤サンのこと絶対、信頼なんかしてあげないっ
そしていますぐ、嫌いになってやるぅーーーっ!
- 580 名前:Sa 投稿日:2004/04/26(月) 21:19
- 更新致しました
54@前作様
そぉなんッスよぉ〜 あぁっ間近で見たいっいしかーサンッ!!!
ソレわ・・・遠いお空の果てに飛んで逝きました・・・(w
JUNIOR様
作者も思ったり(w・・・デモ書けない小心モノだから(w
実はコソ〜〜〜リと狙っております・・・あくまで狙いですが
次回、最終話でございます
明日か明後日に上げるつもりでおります←マダ書いておりませんが(汗
そしてその後、しばらくお休みを頂こうと思っております
ナニセ、まったくストックがナイナイなモノで・・・
そして作者の駄文をお読み下さっている心優しい皆様に
お聞きしたいのですが、コノ、隣り〜みたいなテイストの軽いハナシと
タイプで言ったら、アタシの恋の様なシリアス路線と、どちらが
お好みでせぅか?
両方書いてイキたい作者なので、順番のモンダイなのですが・・・
お答えを頂けたら、作者が非常に喜びマス←ソレだけかーっ!!!
- 581 名前:ひらの 投稿日:2004/04/26(月) 22:55
-
更新お疲れ様です。作者さまの作品は大好きです!
次回で最終回なのですか・・・_| ̄|○
とっても好きなタイプのお話だったので残念です。
出来れば続編などを是非お願いしたいです。
作者さまのシリアスな作品も好きです!
でも私の好みは、軽い感じのお話がいいです。
これからも楽しい作品お待ちしております。m(__)m
- 582 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/26(月) 23:13
- 更新お疲れ様です。
次回最終回ですか・・・・・。゜.゜(ノД`)゜.゜
すごく「イイ!」話なのでチト残念。
う〜ん。そっすね〜、Saさんの作品はシリアスになると
情景描写などが綺麗になって好きだし、軽い感じになると
面白くて好きなんだよなぁ〜。
結論的にはどっちも好みです。(役に立たなくてすいません
これからもガンガレ!
- 583 名前:54@前作 投稿日:2004/04/27(火) 00:00
- 更新、お疲れ様です。
無限ループしながらもようやく帰結しそうになってる石が可愛いです。
こういう人が恋人だったら毎日飽きないでしょうねw
最終話に期待しております。
自分も皆さんのおっしゃるようにどっちも好きなんですよねぇ・・
(某所のあの名作は未だに読み返したりしてます)
ただ、世のいしよし不足を思うと特に甘めが身体には嬉しいですがw
まずはSaさんがゆっくりご休養されて、そしてまた素敵なお話に
出会えれば、自分はもう言うことナシです。
- 584 名前:コナン 投稿日:2004/04/27(火) 00:39
- 更新お疲れさま。
石川さん可愛い!!吉澤さんカッコイイ!
次回最終回ですか??。・゚・(ノД`)・゚・。
私もこの作品大好きだから、もっと続いてほすぃよん!
Saさんの書く作品は全部大好きです!
隣の〜見たいなのも好きだし!甘々も大好きです!
いしよしであれば、全部オッケイです。
- 585 名前:ちゃみ@追かけっ子 投稿日:2004/04/27(火) 05:12
- Saさん、おひさです。
ずっとへばりついてますよ。
皆さんに激しく同意です。
Saさんが書かれる物でしたら、甘でも尻でも何でもOKです。
休養を取られて、再登場されるのをお待ちしています。
必ず帰って来てくださいね『約束』ですよ。
- 586 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/27(火) 11:32
- Saさん、本日も読ませていただきありがとうございますー。
このお話大好きです。
「軽い」といってもただのスラップスティックじゃなくて、
なんか心に含んでそうな吉のたたずまいとか、雰囲気があって。
ちょっと考えて思ったんですけど、娘。の中でも大人組になった石吉の
年相応?な話を、きちんと書いていただいてるから好きなんです。
大人の鑑賞に耐える作品っていうか^^;
いやマジめな話・・・。なかなか稀有な存在です。本当、ファンです。
ゆっくりで結構ですから、シリアスも、甘いのも、書きたいだけ
書いて頂けると、読者としては幸せです。交互にとか…??
- 587 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:50
- もぉ〜キレたっっっ
例え、ほんのちょこっとはそんな風に思ってくれてたとしても
もう我慢出来なーっい!
「あたし帰るっ!!!」
「やべ・・・待った 頼む、待って!」
あたしが吉澤サンを避けて、出した足の前に彼女はサッと
体を動かして、あたしの行く手を遮る
あたしは目の前に立つ吉澤サンを見上げて、睨み付けた
「もう!もーうっ!!! ほんとに嫌っ
いっつもそんな態度ばっかりじゃない?」
「悪いっ!悪かったって・・・」
「悪い?・・・何が悪いかほんとにわかってるの?」
「あたし、あたしだよ! その・・・なんつーか・・・」
「・・・なんつーかって、なんなのよっ!」
「だからっ ぁあ〜もうっ ごめん!」
吉澤サンが、掻き揚げようと前髪に指を通したまま
まるでヤケになってるみたいな口調でそう言った時
「うっわぁ〜 めーずらしーモン、見ぃちゃったーぁ」
急に藤本サンの声がした
- 588 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:50
- 吉澤サンは藤本サンの方を見ると、口の中で小さく呟いた
「・・・なんでいるんだよ」
藤本サンはヘラヘラと笑いながら、ポケットから車のキーを
親指と人差し指で摘むように出して振った
「コ・レ よっちゃんさ〜 今日、カット練習するって
言ってたから、気ぃ利かしたんだ」
「・・・それは、それは」
藤本サンはこっちに歩いてくると、吉澤サンの前じゃなくて
なぜかあたしの前で足を止めた
「いーこと教えてあげんね よっちゃんはね?
人に頭下げるのダイキライなんだ
美貴なんて、ずっと仕事一緒だけどお客さん以外の人に
謝ってるのみたの初めてだよ? スッゲーって感じ・・・」
・・・それは?・・・だから?
ほんとに反省してるってこと???
- 589 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:51
- あたしはなんて答えたらいいのかわからなくって、口から
息が抜けるような相槌を打った
「・・・はぁ」
「・・・そんだけ」
藤本サンはちょっと両肩を上げると、ニッコリしてくれるわけ
でもなくって、そのまま吉澤サンが出した手の平にチャリンと
キーを落とした
「んじゃ、美貴帰るわ よっちゃん車、また貸してねー」
吉澤サンが返事を返してあげないから、チラッとその顔を
見ると、なんだかムッとしてるみたい・・・
せっかく気を利かしてくれてるのに、失礼なんじゃないの?
・・・やっぱり、すっごーく変わってるよ、吉澤サン
だけど、藤本サンはまったく気にしてないみたいで
ひらひらと手を振って、颯爽と駅の方へ向かって歩いて行った
- 590 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:51
- 「・・・わかってもらえた?」
藤本サンの後姿を、なんとなく目で追ってたあたしの耳に
吉澤サンの溜息のような声が聞えた
いきなり藤本サンが現れたりするから、気がつくと
ムラムラと膨らんでた、あたしの怒りは風船が萎むみたいに
小さくなっていた
しょうがないなぁ・・・許してあげるとするかぁ〜
あたしは肩が触れ合うくらい、間近にある吉澤サンの顔を
見上げながらコクンと頷いた
「来て」
あたしが頷くと、吉澤サンは顎でお店をさして、サッサと先に歩き出す
来てって・・・?
あれ?そっか・・・あたし、なんでここに呼ばれたんだろ?
あたしが首を傾げていると、吉澤サンはお店の入り口の
大きなガラスのドアを背中で押さえながら、大きな声を出した
「早くしろよ〜」
い、いきなり命令系???
何様のつもりなのかしらっ?!
あたしの頭にカッカと、また血が上ってきそうになったけど
せっかくここまで来たんだし、と思い直してお店に向かった
- 591 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:52
- あたしがドアを抜けると、吉澤サンはお店の明かりを点けて
首を僅かに傾けた
「髪、切ってあげるよ」
「へっ?」
「・・・気になってたんだよねー」
吉澤サンはあたしの肩より少し長いくらいの毛先に指を
伸ばして、スッと通した
「毛先さぁ〜バラバラじゃん?
ソレそろえる程度・・・か、もし、任せてもらえるなら
トップは持ち上げて、サイドからシャギー入れたいんだけど」
な、なんでいきなりそう言うこと、言い出すかなぁ〜この人はっ?!
昨日の夜とかに聞いてくれればいいのにぃ〜
確かに、引越しとかでお金使っちゃってたから、ここ数ヶ月
美容室に来てなかったような・・・けどお金、いまないしぃ・・・
あたしが、うぅーん、と唸ると吉澤サンはスッと目を細めた
- 592 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:52
- 「・・・言っとくけど、あたしカット上手いよ?
一応ね、二ヶ月くらいは予約のお客さんでスケジュール
うまってるんだよねぇ」
「はい?」
「ウソだと思うなら予定表みせてあげよっか?」
「いっいいよ、そんなのぉ〜
ただ、いきなり言うから・・・お金もそんな持ってきてないし」
あたしが顔の前でパタパタ手を振ると、吉澤サンは見慣れた
ニヤニヤ笑いを浮かべた
「金なんて取るワケねーじゃん?
だから、休みの日に呼んだんだよ ってか、フツー
ピンと来ない?カットサロンだよ?ここ」
「・・・うっ! そっかぁ〜 言われてみれば・・・」
「石川サンてさ〜
余計なコトばっか考えてて、肝心なコトとかには全然
考えが回らないよね?・・・変わってるよ」
・・・ガァァァン
すっごぉく変わってると思ってた吉澤サンに変わり者扱い
されちゃったよぉ〜
あたしがショックを受けていると、吉澤サンの指が目の前で
パチンと鳴らされた
「ほーら、また違うトコ行こうとしてる・・・で、どーすんの?」
- 593 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:53
- うぅ〜ん、お給料日まで日があるし、助かると言えば
メチャメチャ助かっちゃうよね?
あたしは吉澤サンを見上げて、同じように首を傾げた
「ほんとに・・・いいの?」
「いいよ あたしも人形より練習になるし・・・
シャギー入れていい? コレから春だし、季節感出して
軽く見せた方がイイと思うけど?」
「・・・おまかせします」
「オッケ」
吉澤サンは、子供みたいにすっごく嬉しそうに顔をクシュッて
して笑った
トクン、トクトクトク・・・
あれ?あれれ???
や、やばいぃぃ・・・顔が、顔がなんかカッカしてきたーっ
あたしが両頬を押さえて俯いてると、吉澤サンはお店の奥へと
移動しながら声をかけてきた
「こっちおいで シャンプーもサービスするよ」
- 594 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:53
- あたしがササッと、小走りで近づくと・・・どうぞって
目の前の椅子を指差されたから、頷いて腰掛けた
「倒すよ」
吉澤サンの声と同時に、椅子がリクライニングされる
「首、辛くない?」
「だ、大丈夫」
覗き込むようにあたしの顔を見た、吉澤サンの髪がサラサラと
彼女の顔にかかる
その髪が、高い天井から吊るされたライトの光をバックにして
いつもよりもっとキラキラって輝いて見えた
・・・ドクンッ ドク、ドク、ドク
もーーーっ さっきからなんなのよぉ この動悸はっ
な、なんだか体中に自然と力が入っちゃうし〜〜〜
ジャーってシャワーを流しだす音がして、髪が温かいお湯に浸されてく
「熱くない?」
囁くような声で聞かれて、頭の裏側がゾクゾクッとする
あたしは動揺を隠して、うん、と口許だけ動かすと、ギュッと目を閉じた
吉澤サンの手が包み込むように、あたしの頭を濡らして行く
ふわり、と、あの香りがした
- 595 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:54
- あ、やっぱり吉澤サンちにあった、シャンプー・・・
ミントのように爽やかで、南国の果実のようにどこか甘い香り・・
あたしの強張っていた体の力が、だんだん抜けてくみたい
優しく円を描くようだった力加減が、ジグザグと力強く変わったりする
またそれが、緩く穏やかな波みたいに変わった時
あんまり気持ち良くって、唇から勝手に小さな吐息が洩れた
スーーーッ
ドキィィィン!ドクンッドクンッドクンッ
ふいに、あたしの唇にサァーーと撫でられた様な感触が走った
バッと目を開けると、吉澤サンはツッーと目を逸らしながら言った
「・・・わりぃ、泡とばした」
「あ、う、ううん」
「もうそろそろ流すから」
あたしは頷いてもう一度、目を閉じたけど、吉澤サンの指先が
髪を撫で続ける間、ドクンドクンて体中が心臓になっちゃった
みたいに揺れるから、なんだか泣きたいような気持ちになってきた
シャワーをキュッって閉める音がして、タオルがあてられると
額から耳へと、スッスッと強弱をつけた指先の力を感じる
目を閉じてる分、余計にその指先の動きがよくわかる気がした
最後に耳の中まで、そっと撫でるようにされて、あたしの
爪先がビクンと跳ねた
- 596 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:54
- 「起こすよ」
吉澤サンの声と一緒に椅子が戻って、あたしは目を開けた
あんまりギュッと瞑ってたせいで目の奥がチカチカしてる
吉澤サンの指先が丁寧に、あたしの髪の水分を拭ってくれてる
その間中、微熱が上がってく時みたいに体の熱がジワジワ
上がってくように感じた
「お疲れ、大丈夫?立てる?」
大丈夫?・・・立てる?
なんで???
そう思って立ち上がろうと足を付いたら、ふらっと足元が
揺れて、吉澤サンに肘をつかまれた
あたしはなんだか妙に体が重くって、足に力が上手く入らなかった
あれぇ?・・・おかしーなぁ
あたし、風邪気味だったっけ?
ジィーとあたしの顔を見てる視線に気付いて、あたしが吉澤サンの
顔を見ると、なんだかその目の奥が煌いて見えて、あたしは
よけいに落ち着かない気持ちになった
・・・夜だからかな?
お店のライトの加減とか???
あたしは心の中で首を傾げつつ、肘を引っ張られるように移動した
- 597 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:54
- 大きな鏡の前の椅子に座り直すと、鏡越しに見える
吉澤サンの目の色がとても真面目そうに変わって見えて
あたしはなんだか感心してしまった
・・・プロ、なんだなぁ〜
吉澤サンの指先が器用に動かす鋏がピカピカと銀色に光ってる
音もさせないし、どこがどう切られてるのかあたしには
まったくわからないくらい
・・・ほんとに、すごく上手いみたい
あたしが鏡越しに吉澤サンを見てると、バチッと目が合った
・・・ドキッ
わわっ! な、なんかお話とかした方がいいのかな?
「あ、あの・・・お仕事してる時ってお話しないの?」
吉澤サンは、フッと目元だけで笑うと、自分の指先に目線を戻した
「わりと、雑誌とか読んでる人が多いかな?
・・・話好きの人なら相手するけど、あたしからは話さないよ?
女の人はさ、聞いて欲しいタイプが多いじゃん」
いつもの吉澤サンとほんとに同じ人なの?
なんだか、すっごく大人の人みたいなんですけど???
お、落ち着かないよぉ〜〜〜
- 598 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:55
- 「じ、じゃあ、どういうお話聞いてるの?」
「石川サンくらいの年のお客さんだったら、恋愛カンケーが
多いかな?
石川サンはどういう人がタイプ?」
「あ、あたしぃ?」
えぇ〜とぉ・・・どんな人?
どんな人ぉ???・・・普通に優しくって、あたしのことちゃんと
考えてくれてて・・・出来れば、傍にずっといてくれて・・・
こう迷ったりした時、引っ張ってってくれるよな???
「まさか、いつか白馬に乗った王子様が迎えに来るとか
思ってないよね?」
くく、と笑いを滲ませた声で言われて、鏡に映るあたしの顔が
カァーと赤くなった
「そ、そんなの思ってないもんっ
けど、けど・・・やっぱり恋ってロマンチックなものでしょう?」
「ロマンチック?」
「洋画みたいなの、出会い・・・とか、やっぱりちょっと憧れちゃう
みたいなのはあるけど・・・」
「落としたハンカチ拾って、とか、からまれたとこ助けられるとか?」
「まぁ・・・でもないかな?・・・そんなのって」
- 599 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:55
- 吉澤サンは、あたしの後ろから今度は横に移動してサイドの髪を
持ち上げると、スッスッと鋏を滑らせて、パラパラと落とした
「いやあるでしょ?
二回目会った時だったけど、同じビデオを取ろうとして・・・
なんてどう? 王道中の王道って感じしない?」
「・・・へ?」
それって・・・あたしと吉澤サンのことなんじゃぁ?
まぁ、そう、かも知れないけど・・・
吉澤サン・・・何が言いたいのかしら?
よくあることだから、希望を持って頑張れとか?
まさか・・・まさかと思うけど・・・あたし達がそうだとか???
あたしは吉澤サンの真意がわからなくって、彼女を見た
今度は逆側に移動して鋏を動かす吉澤さんの真剣な横顔が
鏡に映ってる
あたしはちょっと躊躇いながら、口にした
「・・・吉澤サンはどういう人がタイプなの?」
・・・あたしみたいな子って・・・言ってくれる?
え?ええ???えぇぇーーーっ!!!
いま、いまっ あたしなんて思った?!
- 600 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:56
- 「あたし?・・・あたしは難しいこと考えらんないの
ってか、面倒だしさぁー
いちいちタイプとか考えてないよ
だから・・・好きになった子がタイプ、かな?」
「い、いるの?」
とっさに口から出てしまって速攻で後悔した
・・・知りたくない
聞きたいくせに、知りたくはないと思ってる
変だ・・・変だよ、あたし・・・
「・・・まぁね」
耳を塞ぎたいと思った いますぐに
なのに口からは、うらはらな言葉が勝手に出てくる
「そ、そうなんだ・・・どんな子?」
「ん?そうだなー 自分の思い込みだけで突っ走ってて
イヤになるくらい鈍感・・・手がかかるよね」
- 601 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:56
- あたしは急にジワッと視界が滲んできた
あたし・・・あたし・・・好き・・・なんだ
いつの間にか好きになってたんだ・・・吉澤サンのこと
彼女に好きな人がいるって知って、初めて気がつくなんて
間抜けすぎて涙が出ちゃう・・・
あたしは涙が零れないようにグッと目に力をいれると
唇の両脇を引っ張り上げようと意識した
「か、変わった趣味だね・・・」
どうにか答えられたけど、声が震えちゃってる
「自分でもどうかと思うよ・・・けど、いいんだ、面白いから
次、前髪、カットするから目、閉じてて」
吉澤サンが、あたしの顔を見る前にあたしは目を閉じた
彼女がカットし終わるまでに、涙を止めなくちゃ
・・・好きな人、の困った顔なんて見たくない・・・もん
- 602 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:57
- ブローが終わると、あたしは別人みたいに垢抜けた感じになってた
「あの、ありがとう」
「気に入った?」
「うんっ すっごくいい・・・またカットしてくれる?」
「いいよ」
自分の気持ちに気づいた瞬間に失恋しちゃって、その相手に
髪を切ってもらってたなんて、きっとあたしくらいだよね?
はぁ・・・
悲しいより、情けない・・・
失恋した実感が湧かないし・・・だって、好きって気がついた
ばっかりだったのに・・・
やっぱり、悲しいかも?
あたしが鼻をスンと鳴らしている間、吉澤サンは慣れた感じで
サッサと後片付けをしていた
「パーキングに車あるから、すぐそこ」
片付けが終わると、吉澤サンはそう言ってお店の照明を落とした
そして、入り口の鍵をかけた
- 603 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:57
- お店の角を曲がると、時間貸しのパーキングがあって
くすんだ濃い青色の車の横で吉澤サンは止まると、ポケットから
キーを出した
そして運転席に座ると、助手席のドアを軽く開けてくれた
「ま、どーぞ ダセー車でわりぃけど」
「ありがと・・・お邪魔します」
遮断機の前で、あたしがお金を出そうとしたら吉澤サンは
フロントガラスの上の日よけから何枚かのカードを取り出した
「いいよそんなの、ここ店が契約してるとこだから平気」
「なんか悪いみたい・・・」
「そんなことは気にしてもらわなくていんだけどー・・・」
吉澤サンはハンドルに手をかけながら、少し上体を乗り出して
左右を確認すると、ハンドルをきって、アクセルをググッと踏んだ
両手を軽くハンドルに乗せて、前方を見ながら吉澤さんが言った
「・・・あたしに感謝の気持ちがあるなら、他のコトで返してよ」
「他のこと?」
「そっ」
- 604 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:57
- あたしが吉澤サンの顔を見ると、スピードを落としていた車が
赤信号で止まった
吉澤サンは前を向いたまま、横目でチラッとあたしを見ると
あたしの膝の上にあった手の上に、自分の手を乗せた
・・・えっ?!
そしてギュと一度力を入れて握ると、またその手をハンドルに
戻して、口許だけでニヤリと笑った
「・・・さっきのアレ・・・あたしのタイプの子の話さぁー
告ったつもりだったんだけど?」
「・・・へ?」
「あたしんちの隣りの隣りに住んでる、髪のキレーな女の子に」
「・・・?!!!」
「・・・海か夕陽でも背負って、キミが好きだーっとか叫ばないと
わかんない?」
「・・・だって・・・そんな・・・だって・・・ええ?」
「だから、ドンちゃんだって言ってんだよ・・・ま、んなこと
どーでもいーや、それよか考えといてよ
この車が家につくまでに・・・さ」
- 605 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:58
- あたしはキツネに化かされたみたいに、ポカンと口を開けて
しまっている
信号が青に変わって、吉澤サンがアクセルを強く踏んだ
グンと車が加速して行く
・・・えっとぉ〜 告白されたの?あたし?
さっき、好きになった子がタイプだって言ってた吉澤サン
と、言うことは・・・あたしが彼女のタイプってこと???
なんだか酷い言われようだった気もするけど・・・
そんなことはきっと、どうでもいいこと
そう思えてくるから不思議
あたしの答えはね?
あたしは心の中で、吉澤サンに話しかけた
彼女の横顔は、やっぱり自信満々で、もう知ってるよって
言ってるみたい
それがなんだかくやしくて、あたしはワザと反対のことを
口にしてみようかな?とか考えてみる
- 606 名前:彼女のタイプ 投稿日:2004/04/27(火) 16:58
- 彼女は少しは驚いてくれるかしら?
それともやっぱり自信満々なまま、いつもと同じに
ニヤニヤして、可愛くないとか、素直じゃないとか
言うのかしら?
大通りから、もう眠ってる住宅街の坂道を上がると
車はあっという間に家の前についた
恋に気付いて、気付いた瞬間に失恋したと思ってたら
なぜか、恋人が出来ちゃったらしい夜
一足早く吹いた春の風が、体中を巡ったみたいに
あたしは胸をときめかせて、隣りにいる吉澤サンの顔を見た
彼女は車を止めた
サイドブレーキを引いて、そして、ゆっくりとあたしを見た
END
- 607 名前:Sa 投稿日:2004/04/27(火) 17:00
- 更新終了致しました
と、とにかく長かったーーーっ
ヨミを間違えましたね、作者(w・・・2〜3回分の更新量でした
明言したので、上げちゃいましたけど・・・ハハッ
そして、心優しい皆様、作者の声にお答え頂き、スッゲ感謝感激でっす!
ひらの様
ありがとうございますっ!!!
続編は・・・ムズイかなぁ? セッカクのおコトバなんですが
作者は理容カンケー友達いないんで、これ以上このハナシ
書いてると破綻して行く気がするんですよ〜すいませんっっっ
JUNIOR様
ありがとうございますっ!!!
とんでもございませんよぉ〜
両方好きと言って頂けるのはコレ以上ナイ喜びなので・・・
ココの残りで何作書けるかなぁ〜っと(w
54@前作様
ありがとうございますっ!!!
あきないッスよね〜 いしかーサンは・・・
見てるだけであきないってイミでは作者の中でダントツなのですよ
トキメクってイミでは吉澤サンがダントツなんですけど、ね(w
コナン様
ありがとうございますっ!!!
うぅ〜ん、吉澤サンの仕事風景をまったく絡めずハナシ書けるかなぁ〜?
そうすっと、美容師にしたイミがナイってコトで・・・
うぅ〜む、いつか短編くらい??? でもムリかもしれません・・・
- 608 名前:Sa 投稿日:2004/04/27(火) 17:00
- ちゃみ@追いかけっこ様
ありがとうございますっ!!!
おヒサっすねぇ〜 内心、飽きられたのかとビクビクしておりましたよぉ
作者のコトなんで、そんなに長い時間消えていることはムリです(w
また来て下さいね〜 約束ッス♪
586様
ありがとうございますっ!!!
多大な恐れ多いご評価を頂いて恐縮しまくりです
年齢の設定に関係なく、ある程度人物像を想定しないと
書いててノメレナイんですよぉ〜 作者自身が(w
ところで、次回更新ですが
二週間か長くても一ヶ月後くらいには、また更新致します
二週間より早く帰ってきちゃっても、笑って許してぇ〜♪
短編は別なのですが、連載モノはある程度ハナシが出来てナイと
上げられナイんですよ、不安で・・・
(ですんで、某版はカナ〜リ ムボー)
どちらかと言うと軽めがよろしいようなので、そちら方向に
致しますね?
軽めのハナシだと今回とキャラは被り、コレどっかで読んだよ〜な?
と言う、恐ろしい程、ベタベタ展開を覚悟なさっておいて
下さいませね♪
- 609 名前:ちゃみ@追かけっ子 投稿日:2004/04/27(火) 20:26
- ご馳走様でした。
飽きるなんてとんでも無い、何せ人見知りする方なのでROM気味ですが
ストーカーの如くへばり付いてますよ。
いつでも充電完了になりましたら、お出ましください。
えっ? 某板ってあそこですよね?
- 610 名前:JUNIOR 投稿日:2004/04/27(火) 23:54
- 完結お疲れ様でした。
「ご馳走さん」この一言に尽きますよ。
2週間よりも早く帰ってきた場合?
それはもちろん笑って許します。というか歓迎します。
覚悟?ベタベタ展開大好きですからそれはいりません。
それ以上すごくなりそうなら一応、覚悟しときます
Saさん、ウチの誕生日に完結ありがとう。
- 611 名前:54@前作 投稿日:2004/04/28(水) 00:20
- 完結、お疲れ様です。
いやぁ〜、天然小悪魔・ドンちゃんのニブさと暴走ぶりに大いに笑わせていただいた、良き日々でした。
いろんな意味でありえない存在ですよねw
タイトルが最後にキッチリ嵌りましたね。
そしてカリスマ美容師の吉カッケ〜!
ゆっくりお休みいただき、また素敵な物語に出会えることを楽しみにしております。
某板もまったり進めて下さいね。
- 612 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:38
- アタシ、吉澤ひとみ
つい最近、十代最後のバースデーを迎えたばっかしの
とびっきりイケてる女の子ぉ〜!!!・・・のハズ 一応、ね
アタシには恋人がいる、と、自分では思ってる
その子は、コレまた、とびっきりカワユ〜イ女の子っ!!!
名前は石川梨華ちゃん、今まさにアタシを振り返って
ニコニコッと笑った子だよー
ね? か〜い〜っしょ?
ウチらは幼稚園児から、お年寄りまで知る人のない(・・・たぶん
じゃないと、困る)無敵のアイドルグループの同期なのだ
- 613 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:39
- でさ?
ウチらってカァポォ〜だと思うわけ、ヨシザワとしたら・・・
ここだけの話、でもナイか?・・・ま、いーや
とにかくっ!梨華ちゃんはねーぇ?
よっすぃ〜〜〜だぁ〜いぃ好きぃ〜〜♪って言ってくれてるし
アタシは・・・ほらなんつーの?
結構シャイだったりするから、その場ではさぁ
キモッ!って顔、背けたり、しっしって片手を振って
追っ払っちゃったりするけど・・・
いつでも梨華ちゃんから目を離したりなんかしないし
ちゃーんとね、優しく大切にしてるんだ
そーゆうアタシの一途な気持ちが、梨華ちゃんには
いまひとつ、伝わってないよ〜な???
- 614 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:39
- アタシはお調子モンだし、場の空気に敏感ってコトもあって
期待されると、その期待を上回るコトをして見せなくてワって
コウね〜メラメラ燃えちゃうのヨォー
でぇ〜、ついついヤリすぎてぇ、梨華ちゃんに白い目で
睨まれたりするのさぁ
もちろん、笑ってくれるコトのが多いんだけど、他のメンバーを
特別扱いとかすると、すぅーと顔から笑顔が消えてね?
アレは怖いよ、ほんとに
梨華ちゃんてさぁ〜 人の気持ち?には結構、敏感なクセして
そこに恋愛が絡むと、イマイチわかってないっつーお子チャマな
トコがあって・・・
すっごく好き=いつでもベタベタくっついてるみたいな?
だけど、さ?
そーゆう単純な話じゃナイじゃん?
ウチらはさ、無人島に二人っきりでいるワケじゃないんだし・・・
- 615 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:39
- そのクセ、アタシも梨華ちゃんが好きだよって初めて言った時
ほんとっ?嬉しいっ♪・・・だけ・・・だったワケよ?
まるでロケ弁が豪華で、うわぁ!嬉しいっ♪ ってのと
あんま変わんない感じでサクサク納得してたし・・・
どーよ?ソレ、あまりにも軽いっしょ?
だからアタシは梨華ちゃんに・・・なかなか手が出せなくて・・・
いつものじゃれ合うキスじゃなくて、ググッとマジに迫った時は
かなり緊張したよぉ〜もう心臓バクバク
そんでも、梨華ちゃんがあの吸引力の強い瞳を潤ませて
・・・嬉しい、とか言うから、アタシはすっかり舞い上がったんだけど・・・
その後、コウきたからね?
あたし達・・・もうこれで固く結ばれたのねっ♪
・・・なんか、違くね?
梨華ちゃんが大好きな少女漫画じゃナイんだからさーって思ったけど
アタシも思いが通じ合ってるってコトで、かなり嬉しかったし
急ぐコトじゃねーじゃん?って思ってたから、それ以上のコト
しよーなんて思わなかったんだ
- 616 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:40
- ソレに関しては今でもそう思ってる、無理するコトじゃねーじゃん?って
けどさぁ〜 なーんかズレてんだよね〜 梨華ちゃんって・・・
前はアタシのコト好きだから、アタシを独占出来てればそれで満足♪
みたいな感じだったし・・・
それだけじゃナイだろって思ってたよ、ほんと・・・違う?
そんじゃ ただの一番仲良しだった頃と何も変わんないしさー
ところが最近は、古女房みたいな妙な貫禄出てきちゃって
アタシが狙ってからかっても、前ほどおどおどしてくれなく
なっちゃってるし・・・
あたしはお見通しよ、なんでも言ってなさい?・・・みたいな?
・・・つまんねぇ〜
そりゃね?そーいうのもいいさぁ〜 日本人だし?味わいあるし?
嫌いじゃないよ?・・・けど、順番ってモンがあるだろ?
ほんわか春の次は激しい夏なんだよっ いきなし秋でシミジミして
どーするよ?ってか、落ち着いた関係なんてぇまだ早えぇつーのっ
梨華ちゃんって、ホント・・・わかってんのかね?
アタシの気持ちの重さ・・・とか
アタシが好きだよって言った言葉の強さ、とか・・・
出会って四年・・・
ヨシザワも大人になったってトコ、恋人ごっこじゃナイんだよ?ってトコ
ココらでズババッと見せてあげよーじゃない?
- 617 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:40
- ウチらの出まで、長めの休憩時間が入った午後
ロケ弁を食べ終わって、いちごポッキーで軽く唇を叩きながら
雑誌を捲ってる梨華ちゃんを、アタシはさっきからチロチロ見てる
アタシの横には藤本がいて、こないだ亜弥ちゃんと行った店が
どーとかこーとか話てる
適当な相槌を打ちつつ、コイツどっか消えてくんねーかなって
思ってたら、藤本の携帯が鳴った
アレ?この着メロ・・・
藤本は携帯をスクロールさせると、画面を食い入るように
見つめて、ニカッと笑うとそそくさと立ち上がった
「美貴〜 自販んとこ行ってくんねー」
自販?・・・ぁあ、2スタの前のかぁ〜?
アタシは悪人面と呼ばれる笑い顔をワザと作って、手を振った
「亜弥ちゃんによろしくぅー!」
藤本は一瞬頬をヒクッとさせて、平然とした顔をした
「あ、ん〜 偶然会うかもね? ぐ・う・ぜ・ん」
そして一分一秒を競うランナーのような勢いで控え室を出て行った
- 618 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:41
- あれで隠してるつもりかねぇ?
アタシよりバカだ・・・あの女は
アタシは前髪を掻き揚げながら、梨華ちゃんを見ると立ち上がった
テーブルの前まで行くと、隣りの椅子をズズッと引っ張って
跨って座るとテーブルの上に頬を乗せた
「梨〜華〜ちゃぁ〜ん あーそーぼー」
「いーやよー」
「なんでよー? ひーちゃん寂しーってぇ」
「いまいいとこだもんっ」
梨華ちゃんの目は、ファッション誌に連載されてる小説の文字を
追ってるままで、アタシの方を見ようともしない
おいおい・・・アタシはその小説以下ですかっ?!
浮気するぞーーーっ・・・なんちて
アタシは顔を上げて、テーブルに乗ってた雑誌を取り上げると
背中に隠した
「なっ、なにすんのよぉ! 返してっ」
梨華ちゃんがアタシの前に出した手を、あたしは掴むと軽く
持ち上げて、薬指の付け根に唇を押し当てた
- 619 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:41
- 「ちょっ・・・よっすぃ〜」
梨華ちゃんは眉を八の字に下げると、辺りをサッと見回した
アタシは振り返ると雑誌を、さっき藤本と座ってた椅子の前の
テーブルめがけてポォンと投げた
そして梨華ちゃんに向き直ると、ニコリンと笑って見せた
「でーじょぶだってぇ〜 こんくらい」
そのまま今度は梨華ちゃんの手を引っ張ると、目の前で尖らせられてる
唇を自分の唇に引き寄せた
「調子に乗らないでっ!」
梨華ちゃんはいつもより更に高いキーの声で早口にそう言うと
アタシの顔を後ろにグイっと思いっきり押した
「痛てっ!」
ほほぉ〜そーくる?・・・ヨシザワ、マジになっちゃうよ〜ん?
自分の手をアタシの手から抜こうと頑張ってる梨華ちゃんの手を
アタシはさらに強く握り直した
アタシから逃げようなんて10億万年早いんですよ?お嬢サン♪
- 620 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:42
- そんでアタシは、チト痛む首の後ろをわざとらしく擦って見せる
「梨華ちゃん・・・痛い」
「だってぇー よっすぃ〜が悪いんじゃない」
ちょっとウルッとした目で上目遣いでそう言われると、つい
ごめんね?とか言いそうになったけど、ぐぐっと堪えた
梨華ちゃんってさぁ・・・そもそもいっつもこんな目なんだよ
あっぶね〜マジ危ねー・・・危うく落ちるトコだった
アタシは負けじと目に力を入れて、梨華ちゃんをジッと見た
「梨華ちゃん・・・イ・タ・イ 責任とってよ?」
「・・・責任?」
手を抜くことを諦めて、小首を可愛らしく傾けながら
梨華ちゃんもアタシをジッと見る
・・・うっ やべ・・・かーいーじゃん
そー言えば、最近梨華ちゃんは忙しくって、ウチらの休みの日が
合うコトもないしさぁ〜・・・二人で過ごせてなかったよね?
仕事場じゃぁ、一緒でも人が多すぎて二人になれるチャンスが
そもそもナイんだけど、さ
- 621 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:42
- アタシを見つめ返す、黒々としたキレーな目
ソコにはさ、昔はなかった勝気な面がチラチラとかくれんぼ
してるみたいに、見えたり隠れたりしてる
ウチらの住むゲーノー界ってトコは異次元みたいなんだ
時計の針の進み方が三倍速、みたいな?
気がつくとさ、いっつもナニかに急かされてて走ってんだ
んで、どっか歪で、透け透けの透明の箱ん中みたいだから
アタシも梨華ちゃんも、自分を見せる、っていうコトを
いつの間にか覚えちゃってたよね?
ソレはどっか、コドモではいれないとゆーコトと似てて・・・
コドモは、いつかはオトナになるじゃん?
けど、オトナになってしまうってコトは、 コドモには戻れないってコトで
通り道?がさぁ 一方通行なんだって、最近、気がついたんだ
ナンだか知らない間に、たっくさんのモン貰って・・・けど、タブン
フツーのヒトが大切にしてるナンかを、持ってちゃイケナイって
捨てたコトもあると思う
- 622 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:42
- アタシはあるイミ、そーゆーカラクリ?を逆手に取って、ナンか最近
自由になれた?・・・つーか吹っ切れた気がするんだ
けどそれは、ナンかを諦めたとかってのとはちがくて、自分自身で
責任を持つとか、覚悟を決められるとか、そんなコトバのイミが
わかるよーになってしまったとゆーコトなワケ
んで、もともと高め設定だったアタシのプライドの数値は、ぐんぐん
上がっちゃってんだなぁ〜 コレが・・・
アタシはね?
学校の勉強ってキョーミ無かったし、キョーミ持てないコトには
無気力だから、成績は悪かった
けど、頭が悪いってのとは違うと思ってんだよねぇ〜
アタシはジブンが欲しいモノと、いらないモノをちゃんとわかってる
必要なコトと必要でナイコトをジブンで決められる
・・・それで充分だショ?
- 623 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:43
- 梨華ちゃんはソコら辺が甘いんだなぁ〜
学校の勉強はアタシよか全然出来たケド、そう言うコトじゃなくってさーぁ
ただ、シンプルに自分に必要なモンをチョイス出来るか?ってゆーと
優しすぎるって思うんだ
アタシは他人に対して、あんま親切でもないしぃ?
必要以上に優しくもしないんだ
ポーズをとって、そう見せたりはするケド
他人とのテキトーな距離の取り方ってヤツをアタシは知ってるから
だから・・・いつでも梨華ちゃんのコトが心配で目が離せない
また無理しちゃってんじゃナイかな?とか
全部自分一人で背負い込もーってしてねーかな?とか気になってさ・・・
だってさぁ〜 アタシがホントに優しくしたいのは・・・
喜ばせて、笑顔が見たいのは・・・いつでも梨華ちゃんなんだから
- 624 名前:愛と責任のモンダイ ++前編++ 投稿日:2004/05/08(土) 18:43
- そんなワケで、ずっと見てきたんだ・・・梨華ちゃんのコト
最初の頃の自信がカケラくらいしかなくって、ソレを必死で
集めてた梨華ちゃんや
メンバーの輪に入る時、ちょっと声が上ずってた梨華ちゃんも
そして月日が経って・・・今の梨華ちゃん、を
ずっと大切にしてきたよ? アタシのやり方で・・・
別に不安とか感じてるわけじゃナイ、けど・・・
梨華ちゃんの身体ってモンに単純にキョーミがあった時期も
ぶっちゃけ、あった・・・けど、ソレじゃーあんましヤマシー気がしたし・・・
食いモンとかで気をそらしてみたり、とか?
んで、どーにかヤリ過ごした
けど・・・もうさぁ そーゆー時期は過ぎたんだ
だからこそ今、全部欲しいんだよ?・・・梨華ちゃん、わかってる?
けぇど、なーーーぁ
やっぱし躊躇してしまうアタシは格好わりぃ?
やっぱしぃー不安なのかーーーっ???
- 625 名前:Sa 投稿日:2004/05/08(土) 18:44
- 更新致しました
ヤパーリ、二週間経つ前に戻ってきてしまいました罠(w
ちゃみ@追いかけっ子様
イエイエ・・・お構いも出来ませんで(w
ヘバリ付いて頂けてましたか?ホッと一安心ですワ
某版にも来て頂いてアリガトーでした(ペコリ)
JUNIOR様
イエイエ・・・お構いも出来ませんで(w
お好みの味付けに仕上がっていたのならヨイのですが・・・
連載お覚悟!のマエに軽めに前後編モノ上げちゃいましたぁ〜
54@前作様
ドンちゃん・・・ありえねー方にはありえねーアダ名を
お付けしてしまいました(w
実は作者がタイトルフェチだってコトはバレバレだろーとナイショですっ!!!
後半は月曜日に上げるつもりでおりまするぅ〜
お口に合う様でしたら、是非是非、お越し下さいませ
- 626 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/08(土) 23:38
- Saさんおかえりなさ〜〜〜い!!
2週間より早く帰ってきましたね。
自分としてはうれしい限りです。
こういうのも好きっすよ。
月曜日ですね。23時くらいにのぞいときますんで。
がんばってくださいね〜。
- 627 名前:54@前作 投稿日:2004/05/09(日) 01:46
- おかえりなさいませ。お早いお帰りでうれすぃ〜ですw
そして新作おめでとうございます。
う〜む、何かいつもより饒舌な吉澤さんって感じで、新鮮です。
(何故か「エレカノ」の松浦さんを思い出しました!)
多分、この人に恋人を語らせたら熱く語りそうですよね。擬音語使いまくりでw
続きも楽しみです。
- 628 名前:ちゃみ 投稿日:2004/05/09(日) 05:52
- 祝!再登板です。
5日のふたりごとでよっちゃんが梨華ちゃんの事を
語ってましたが、本当の気持ちはきっとココの話の様な気がします。
いえ、きっとそうです、・・・そう信じたい。
後編が楽しみです。
- 629 名前:586 投稿日:2004/05/09(日) 17:09
- んがーーーッ。
ひっさびさに読むリアルモノにマジコーフン!
ありがとうごぜえますぅー。
取り乱すほど素敵。
- 630 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:32
- 楽屋でみつめ合うコトに煮詰まったアタシの頭は、酸素を欲しがってる
ピカンと閃いて、握りっぱなしの梨華ちゃんの手をブンブン振った
「そーだ 外、出よーよ?」
「え!?」
「天気いーし、後、二、三十分はよゆーでしょ?」
「んーーーそうだねぇ? たまにはいーかも」
「よし、決まりっ!」
「あ、待って!帽子被ってく」
「なんでよー?」
「日焼けしちゃうもんっ!」
「ハ、ハハハ・・・」
ココのスタジオの裏手は、なだらかな芝の丘がある
すっかり色の剥げた白いベンチとかも
芝生に並んで座ると、アタシは梨華ちゃんの帽子をヒョイっと取った
「あーーーっ 返して!!! 春はねー? 紫外線強いんだからっ!」
「やーだー カワイイ顔見せてよ?」
「もぉ〜 口が上手いんだからっ!!!」
アタシはゴロンと横になって、空を見上げた
雲ひとつなくって、気持ちいいほど青一色だ
- 631 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:33
- 「梨華ちゃん・・・しりとりしよーよ」
「しりとり? どうしたの急に?」
「いいからー いまハマッてんだ」
「ウソばっかり〜」
梨華ちゃんのクスクス笑う声を聞きながら、目を閉じると
芝生の青い匂いがした
クスクス小さく笑う声は、恥ずかしがりやの妖精みたいだ
ヨシザワってば、アーティストォ〜
鼻歌でも歌っちゃいそうにキブンがイイ♪
「行くよー 石川梨華」
「・・・カステラ」
「カステラを頬張る石川梨華」
「何それ?」
ほぉらね?
妖精がクスクス笑う声がする
ソレが風とワルツみたく、クルクルとアタシの回りでダンスしてる
ますますイイよ〜
「ん〜 カスタネット」
「カスタネットで遊ぶ石川梨華」
「もぉ〜〜 海岸」
「海岸を歩く石川梨華」
「ふざけないでよぉ!」
「アタシはいつでもまじめだってぇー」
- 632 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:33
- アタシの閉じた目の前で、梨華ちゃんがカステラを頬張ったり
カスタネットを叩いたり、波打ち際を歩いたりしてる
イイね、イイねーっ ナンか幸せだ
「いいわよっじゃぁねーーー階段から落ちた吉澤ひとみっ」
「ひでーーーっ」
アタシは目を開けて、梨華ちゃんを見るとゲラゲラ笑った
梨華ちゃんも得意そうな顔して笑ってる
「よーしっ ミミズを追いかける石川梨華」
「追いかけないもんっ じゃ、じゃー うぅーんと・・・
雷に打たれる吉澤ひとみっ」
「梨華ちゃん・・・ひどくナイ? アタシに恨みでも?」
「恨まれる覚えでも?」
「まったくありましぇーん」
「ほんとかな〜?」
「ホントホント! 次っ行ってみよー そだっミラクルに可愛い石川梨華」
アタシはそう言いながら、起き上がると梨華ちゃんの顔を
バッと、覗き込んだ
言われ慣れてるハズなのにさ〜ぁ
ほんのりと頬を上気させたりしてるから・・・
どーしたって、手を伸ばさずにいれるワケ、ナイじゃん?
- 633 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:34
- すっげーくだらないのかも知んナイけど・・・
いつでもさ?
こんなふーにアタシは梨華ちゃんのコトを考えてて
梨華ちゃんがアタシのコト考えてくれてて、ソレで頭が一杯に
なったらイイと思わない?
単純すぎだけど、アタシはすげー 今、シアワセ感じてるから
シアワセなんてモンは、結構お手軽だよね?
「続きは・・・?」
アタシは両手で梨華ちゃんの両方のほっぺたを優しく包んで
おでことおでこをくっつけた
梨華ちゃんは目を泳がせた後、俯いた
「降参する?」
「・・・ずるいよ、よっすぃ〜」
「ずるくナイじゃん 降参して?」
アタシはそう言いながら、梨華ちゃんの唇をアタシの唇で、そっと塞いだ
- 634 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:34
- アタシは両手を梨華ちゃんの頭に移動させて、指先を柔らかい
髪の間に潜り込ませた
顔の角度を変えて、何度もキスを繰り返す
「・・・んんっ」
コレ以上は、耐えられないってカンジで、梨華ちゃんが頭を振って
顔を背けると俯いた
いままでだったら、許してあげたけど・・・今日はダメ
もう、決めた
アタシは梨華ちゃんの細い顎を捕まえて、こっちを向かせると
親指にわずかな力を入れて、唇を開かせながら舌を入れた
「…っ…ぁ、あ…っ…んっ」
ぐぐっと両手を突っ張って、梨華ちゃんはアタシの肩を押した
唇が離れると、そのまま下を向いて途切れ途切れの声を出した
「やっ・・・だ、もぉ、こんな・・・とこ、でぇっ」
- 635 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:34
- アタシは両肩にある梨華ちゃんの手の、細い手首をそれぞれ掴むと
ゆっくりと言った
「今日、撮りが終わったら・・・梨華ちゃんトコ、行くから・・・」
「・・・え?」
梨華ちゃんは顔を上げると、怒ってるような、泣き出す一歩
手前のような、ちっちゃい子みたいな顔をして、アタシを見た
「・・・やだ」
「・・・なんでよ?」
「今日のよっすぃ〜・・・いつもと違うからっ!」
・・・バレたか
って、そりゃバレるわなぁ〜
アタシもヘタ打つよねーって、仕方ナイじゃんっ!!!
んな、うまく出来るかっつーの
大切なのは勢いってヤツだ!
「・・・あのさ、もう、ね・・・ホントーに愛してるんだ
わかる?梨華ちゃん・・・ただの好きとは違うんだよ?」
「・・・よっすぃ〜?」
- 636 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:35
- 「・・・ずっと・・・ずっと、さ・・・傍にいた、けど
ずっと、見守ってきたつもりだけど・・・もう、ソレだけじゃ
アタシ、嫌なんだよ
もう、四年も一緒にいるよね?・・・ソレはね、梨華ちゃん・・・
アタシもオトナになってるってコトなんだ
梨華ちゃんを・・・その、守って行きたいって思ってるんだ」
「・・・守る?」
「そう、なんつーか・・・守りたいんだよ
冷たい風が吹いても、大丈夫なように真冬のコートみたく、とか
安心していい夢が見れるように、柔らかい布団みたく、とか
なんか上手く言えてナイかも知んないけど・・・そーゆうカンジで
アタシさ・・・梨華ちゃんの傍にいるってコトに責任を持ちたいんだ
ソレはね?アタシが・・・梨華ちゃんを愛してるってコトなんだ」
アタシのコトバの途中から、見る見る間に大粒の涙を、ポロポロと
零して、グチャグチャの泣き顔になってく梨華ちゃんに、静かな声で
アタシは続ける
「だから梨華ちゃん、覚悟して?
梨華ちゃんにも責任があるんだ ちゃんと、アタシに愛させてよ?
梨華ちゃんの全部を、アタシに」
梨華ちゃんはアタシの首に抱きついてきて、鼻先を肩に埋めた
- 637 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:35
- 「・・・あたし・・・あ、たし・・・」
「・・・ナンも言わなくってイイよ・・・アタシに任せちゃってよー
石川梨華サンのコトは全部、ね?」
コクコクと小さく、そんで何度も梨華ちゃんが頷いてくれる
アタシはその頭をそっと撫でて、ポンポンと軽く叩いた
「あんま泣くとヤベーぞぉ・・・そろそろ戻ろっか?」
梨華ちゃんの腕が首から離れて、その間を風がすぅっと通り抜ける
・・・なんだかなぁ〜
チットだけ寂しい気がして、カンショー的なジブンに苦笑いしてしまう
そんなモン振り払って、アタシは梨華ちゃんの目の前に元気よく
手を差し出す
「ホイッ」
「・・・ん」
- 638 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:36
- 梨華ちゃんがアタシの手をギュッって握ってきて、少しはにかんだみたく笑う
その、笑った顔がね・・・たまんなく好きだ
昔、好きだと思った笑顔
けど、月日が経っても変わんないで見せてくれてる、その笑顔を・・・
梨華ちゃんを、今日もまた新しく好きだと思う
・・・想いは毎日増えていく・・・
・・・梨華ちゃん
愛のモンダイを答える相手に、アタシを選んでくれてありがとう
アタシがさ、教えてあげるよ?・・・その答えを、ね
- 639 名前:愛と責任のモンダイ ++後編++ 投稿日:2004/05/10(月) 11:36
- んな、らしくねーコト考えながら、梨華ちゃんの顔見てたら
ジブンの顔が赤くなってくのがわかった
だから、勢いをつけて梨華ちゃんの手を引っ張り上げる
そんで、二人で立ち上がる
そんで、二人で歩き出す
今までも、コレからも、こうして梨華ちゃんの手を引きながら
半歩前を歩くのはアタシだけの、トクベツな責任
ね?・・・梨華ちゃん
END
- 640 名前:Sa 投稿日:2004/05/10(月) 11:37
- 更新致しました
JUNIOR様
ホイッ!ただいま〜です♪←速ぇ〜(w
サクサク帰って来ちゃいましたが、喜んで頂けたならば
作者も、ルンルン気分でぇ〜す
54@前作様
ただいまモドリました♪←速スギ…(w
作者のノーナイリアル版吉澤サンはコトバをカンカクで選んで話すヒトなんで
吉澤サン視点にすっと、やたらとカタカナ使っちゃうんですよ〜
ちゃみ様
ヘイッ!ありがとやんす♪
作者もハタで目に見える事柄より、吉澤サンの愛は真っ直ぐでビックだと!
ソレを信じ、核にしてモ〜ソ〜してるのですっ!!!
586様
雄たけび、アリガトーーーッです(w ナンカァ〜嬉しいヨォ〜ン♪
リアル書くのは、実はニガテで・・・ゲーノー界、詳しくナイし・・・
取り乱して頂けたのなら、ガムバッたカイがあるってモンですっ!
お次は、バカバカしぃ〜学園モノで参りたいと思っております
展開はベタベタですが、いままで書いたコトなかったモンで・・・
ソレもアリかなぁ〜?と・・・(w
- 641 名前:ちゃみ 投稿日:2004/05/10(月) 20:16
- 脱稿、乙です。
エンドマークの後の物語は脳内であれやこれや想像して・・・・・。
次は学園もんでっか?
私的にはリアルいしよしも良いのですが
2001〜2002頃のいしよしがツボなので
脳内変換の準備をしておきます。
- 642 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/10(月) 21:03
- お疲れさんっす。
とても23時には開けなさそうなので今伺いました。
リアルに悶えてました。
PC見てニヤニヤしていて家族の
冷てぇ〜視線感じてたり・・・・・・・・。
次は学園物・・・・・・・・・・・。(ニヤリ
楽しみにしてますね。(・∀・)ニヤニヤ
- 643 名前:わく 投稿日:2004/05/11(火) 10:10
- 今の暖かい季節にぴったしの作品にみえます☆
男前な吉がたまりませんw
次回作もたのすみです!
- 644 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:49
-
*** 平々凡々***
石川梨華の極めてありふれた日常
- 645 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:50
- 五月・・・うららかな春の午後
わたくしはこの春に、岡村女子学園高等部の二学年に進級しましたの
そして、この手に持つのは上級生から頂いたお手紙
−石川梨華様−
なかなかに優美な文字運び・・・差出人のお名前は・・・
存じ上げない方だけれど、そんなことはいつものこと
そうそう・・・
お手紙に書かれた内容も予想通りのものでしたわ
わたくしとお付き合いなさりたい、とか・・・
お答えは決まっていますわ
だって、わたくしの胸の中には・・・密かな想い人がいるのですもの
この女学園は由緒ある格式高い学園
学園に通える事は、ある程度のお家柄と、頭の中身も・・・
それなりには、よろしい方ばかり
そして、特別な決まりごとがありますのよ・・・それはね?
- 646 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:50
- この学園の顔とも言える生徒会
それを運営する四人の生徒達は、代々受け継がれている通り名が
あって、こう呼ばれるしきたりになっていますの
生徒会長はスペードの君
副会長はハートの方
書記はクローバーさま
会計はダイヤさま
けれど、中にはあまり品のよろしくない方々もいて・・・その方達は
生徒会長をキング
副会長をクィーン
書記をレフトナイト
会計をライトナイト
などど、軽んじる様な言い方をするらしいですわ
・・・わたくしには、信じられませんけれども
- 647 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:50
- 「あらっ ハートの方だわ! いつ見てもお綺麗ね・・・」
中庭の小さな噴水の前を通りかかると、どなたかがわたくしを見て
溜息のような声・・・小首を傾げて振り返ると・・・
「お帰りになりますの? お気をつけて」
わたくしは声の主に、清らかな湧き水のよう、と言われる微笑みを
顔に浮かべ、上等のお砂糖のよう、と言われる甘い声でお答えしましたわ
「いいえ、残念ながらまだ帰れそうもありませんの・・・」
「えっ・・・あら?お手にあるのは・・・」
「なんでもありませんわ、お気になさらないで・・・御機嫌よう」
声の主は、御機嫌よう、と言葉を返しながら、わたくしの手元に
目線を張り付かせたまま・・・
わたくし・・・わざとお見せしようなんて思っていませんでしたわ
けれど、たまたま目に止まってしまったものは仕方ありませんわね
自慢してるみたいで嫌なんですけれども・・・
- 648 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:51
- 暫くの間、背中に感じていた好奇な視線も中庭を通り過ぎて、講堂の
前を曲がる頃には消えましたわ
講堂脇の階段の下・・・
お手紙に記された場所に着くと、わたくしを待つ人影
「・・・お待たせいたしました」
わたくしが、春花の可憐な妖精のよう、と言われる佇まいで
目の前に立つと、その方は耳まで赤くしましたの
「・・・い、いえっ・・・で、あ、あのっ・・・ハ、ハートの方っ」
どもられる程、緊張されるなんて可愛らしいこと
わたくしは、急かすことなどせずに優しく頷きましたの
- 649 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:51
- 「・・・おっお付き合いしてる人いないんですよね?」
「・・・はい」
「じ、自分はぁっ・・・ずっと、ずっと、す、好きでしたっ!」
「・・・えぇ・・・お手紙、拝見させて頂きましたわ・・・
ありがとうございます」
「・・・よ、よければ、自分と付き合ってもらえませんかっ?!」
「お気持ち、とても嬉しいのですが・・・わたくし、今はまだ
誰とも、お付き合いする気になれませんの・・・ごめんなさい」
「いっいやぁーっ こっちこそすいませんっ
無理なのわかってたけど・・・どうしても言いたかったもんで
・・・迷惑かけました」
「・・・迷惑だなんて・・・そんな悲しいこと、言わないで下さい、ね?」
「・・・ありがとう・・・」
「はい・・・お気持ちにお答え出来なくて・・・ほんとに、ごめんなさい」
「・・・いいんです、気にしないで下さい・・・それじゃっ」
その方は、精一杯の笑顔を最後にわたくしへ向けて、走って
校舎に向かいましたわ
わたくしの唇からは、気づけば、ふっと笑いが洩れていて・・・
- 650 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:52
- 「ふふ・・・気にする?・・・わたくし、が・・・うふふっ・・・馬鹿な方
鏡をご覧になったことあるのかしら?」
わたくしは手に持っていたお手紙をそのまま握り潰して、制服の
ポケットに入れましたの
「ピュ〜ゥ♪ いーモン、見ぃーーーちゃった」
えっ?!
ヤバッじゃなくって、マズいじゃなくって・・・ぇえっとーっ!
い、いけないわっ取り乱してはっ!落ち着くのよ?梨華っっっ
わたし、じゃなくって、わたくしはハートの方・・・
そうよ、ハートの方なんだから・・・大丈夫よ、落ち着けーっ 梨華!!!
なんとかなるわっ!・・・いいえ、して見せるっっっ・・・敵はどこっ?!
- 651 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/12(水) 12:52
- わたくしが辺りを素早く見回すと、頭上の講堂の二階への入り口へと続く
階段の上から、クックックと含み笑いが聞える
「・・・聞いちゃた、のが正しいのかな? どっちにしても・・・ク、クク
・・・やってくれるよね」
「ちょっとあなたっ!失礼よ? 降りて来て下さらない?」
「やだね・・・あたしの顔が見たいんなら、あんたが上ってきなよ
・・・クィーンさん?」
クィーンさん・・・
どうする?梨華・・・でも敵はわたくしがハートの方って気づいてる
このままじゃ・・・このままじゃ・・・
どう考えたってまずいじゃないのーっ!!!
わたくしは小さく深呼吸すると、階段に足をかけて上り始めた
- 652 名前:Sa 投稿日:2004/05/12(水) 12:53
- 更新致しました〜・・・ホント、ベタベタ・・・(w
目新しさがナイなぁ〜 一応作者が考えて作ってはいるのですが・・・
コノ二人くらい、痒ッ!な、ベタベタ展開が似合う方々もイナイと作者は
常々思っていたので、今回やっちゃいました・・・アハッ♪
あまりにもよくあるハナシでカブリすぎて、目に余るようでしたら
ご指摘下さいませ(ペコリ)
ちゃみ様
ノーナイで激しくイッちゃって下さいっ!!!(w
準備は完了されましたか?・・・シカ〜シこのハナシじゃな〜?(・・・汗
JUNIOR様
悶えるぅ?ホントっすか???ソレはうれすぃ〜♪
ナントナ〜ク、少女小説風をヤッてみたくなったモンで・・・今回挑戦!!!(w
わく様
ホット&ク〜ルに男前な吉澤サンを目指しております♪
作風、視点によって、ドチラがクローズアップされるのかは変わりますが(w
- 653 名前:54@前作 投稿日:2004/05/12(水) 15:09
- 遅れ馳せながら完結おめでとうございます。
石が好きでたまらない吉の心情がひしひしと伝わって来ました。
可愛くてカッコイイがよっちぃ良かったデス。
そしていよいよ新作始まりましたね!
高貴な中にも何気に「プチ腹黒」テイストな石が最高ですw
次回も楽しみです。
- 654 名前:ちゃみ 投稿日:2004/05/12(水) 20:43
- 激しく良さそうな予感ですな〜。
たかびーな梨華ちゃん大好きです。
- 655 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/12(水) 22:50
- 更新お疲れさんっす。
あの石川さんを見たら、あのお方と同じように
「ピュ〜ゥ♪ いーモン、見ぃーーーちゃった」
って感じになります。
これからも激しく期待しておりますんで
がんばってください。
- 656 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:19
-
階段の上を睨みながら踊り場を過ぎると、二階の入り口の扉に
背中をつけて、両足を投げ出すように座ってる人影が見える
・・・ド、ド、ド
マズいわ〜 ドキドキしてきた・・・
わたし・・・じゃなくってぇ・・・わたく・・・えぇーいっ面倒臭いっ!
わたし・・・アクシデントに弱いのよぉ・・・
右手を胸に当てながら、階段を上りきると、わたしは息を整えて
敵の前に立った
「・・・こんな所で何をなさっているのかしら?」
わたしは精一杯冷ややかな表情を作って言った
敵はわたしの方を見ようともしないでそっけなく返してくる
「・・・昼寝
けど、誰かさん達がうるさくってさー 目が覚めちゃった」
- 657 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:20
- そう言いながら敵は薄く笑って、顔を上げるとわたしを見た
・・・こ・・・こわっ
わたしとは正反対の色素のあまり濃くない髪は短めで、お揃いの色した
大きな目は感情を表さないで、淡々とわたしを映してる
なんか・・・やたらと迫力のある子だわ・・・こんな子いたかしら?
胸元でだらしなく、ほどかれてるタイの色は深緑・・・二年生ね?
わたしだって、全校生徒の顔なんて覚えてないけど・・・
この手のタイプなら話題になるだろうし
・・・知らない訳ないのに・・・こ、困ったわ・・・
そうなのよぉ〜わたし・・・初対面の人は苦手なのーーーっ!
いつもは傾向と対策を練ってから、相手に近づくことにしてるから
自分のペースで事を運んでこれたけど・・・
もっとも苦手そうな近づきたくないタイプと、いきなりバトルだなんて
ウガァーーーッ!・・・どーしよ?
- 658 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:20
- わたしは敵の迫力に気圧されてるなんて、微塵も顔には出さないで
侮蔑する口調で言った
「盗み聞きなんて、あまりよろしい趣味じゃないと思いますけど?」
「・・・二重人格よりマシじゃない?」
敵は余裕の表情で面白そうに返してくる
うっ・・・分が悪い・・・
わたしは奥歯をギリッと噛締めながら、それでも顔には穏やかな
微笑みを浮かべて見せた
「二重人格?・・・なんですの、それ?」
「へぇ〜 違うの?・・・じゃぁさー全校生徒を手玉に取って騙し?
そのが最悪じゃん?」
「・・・証拠がありまして?」
「バックレることにしたんだ?・・・それも悪かぁーないけど・・・」
敵はゆらりと立ち上がって、いきなりわたしの片手を掴むとグイッと
引っ張り、わたしは横向きにされた
そして、スカートのポケットに手を突っ込むとグチャグチャに
握り潰された手紙を取り出して、ヒラヒラと揺らして見せる
「・・・証拠ならここに」
- 659 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:21
- 「か、返してよっ!」
敵は、取り返そうとするわたしの手の動きを軽くかわすと、長い腕を
伸ばして手紙を高々と上げた
キィィィーーーッ!!!
もういいわ!気取るのはやめよっ・・・こんなヤツ一人にどう思われたって
構うもんですかっ!・・・どうせ誰も信じやしないわっ!!!
「いいわよっ別に!それがなんの証拠になるって言うのよっ!
たまたまあなたが拾って、ぐちゃぐちゃにしてしまったって
思われるだけよっ!!!」
「そーくる?・・・強情なお姫様だ」
敵は腕を下ろすと、その手の中で手紙をさらにギュッと握り潰した
そして、首を僅かに傾けて目を細めた
- 660 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:21
-
「お姫様・・・あんたを泣かせてみたいね・・・」
な、な、な、なんですってーーーーっ!
どっっっムーカーツークーゥー!!!
わたしは逆上せて、カッカとしてきた顔をつんと背けると
そのまま踵を返しながら高らかに言った
「バッカみたい・・・欲しいなら差し上げるわ、御機嫌ようっ」
「このまま、帰っちゃうの? 後悔しないかなぁ〜 ・・・例えば・・・」
背後から聞える、敵の底意地の悪さを秘めた声音に、わたしの首の
後ろがザワザワと騒ぐ
わたしは振る返ると、その顔を思い切り睨みつけた
目が合うと、敵は丸められた手紙を広げて・・・
びりびりっと半分に破いた
- 661 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:22
- 「・・・なっ」
「さっきのヤツ、バスケ部のレギュラーの人でしょ?
あんたは気に入らなかったみたいだけど、ファンの子は多いよね?
そいつの手紙をビリビリに破って、あんたが捨てたとこをあたしが
見たって言っても、ほんとに平気だと思う?・・・噂はたつ、必ずね・・・
それでもいいんだ?」
不敵な笑みを浮かべると、敵は二つになった手紙を自分の
ポケットに入れた
わたしはヘナヘナと座り込みそうになるのを、どうにか我慢してる
「相手が悪かったよね〜」
敵はヘラヘラ笑いながら近寄ってくると、すっと手を伸ばした
わたしが思わず身構えると、ポンと軽く肩に手を置いて、唇を
近づけ耳元で低く囁く
「・・・同情するよ」
そしてそのまま、何ごとも無かったようにわたしの横を通って
階段をゆっくりと下りて行った
- 662 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/13(木) 15:22
- 「・・・ちょ、ちょっと」
わたしが蚊の泣くような情けない声をかけても、足を止める所か
振り返ろうともしない
・・・ズルズルズル
わたしはその場に力尽きて座り込んでしまった
どーしよう?・・・どうしたらいいの???
わたしの絵に描いたような輝かしい学園生活が・・・
ずっとずっと、全校生徒に寄せられていた全貌の眼差しが・・・
あんなヤツ・・・たった一人のせいで・・・
春のうららかな午後の日差しの中
わたしの回りにだけ暗い影が落ちたように、今まで感じたことのない
敗北感で目の前が真っ暗になっていった
- 663 名前:Sa 投稿日:2004/05/13(木) 15:23
- 更新致しました
54@前作様
アリガトーございますアーンド始めちゃいましたYO☆
まだ少し悩みつつ、執筆中でございます(w
ちゃみ様
激しく・・・(汗 どーなのかなぁ〜〜〜?
予感は予感ハズレもこれまた・・・愉しめますかね(w
JUNIOR様
作者なら、その場面ホクソ笑みますね(w
ホント、前も言いましたけど自分じゃワカラナイんですよ、出来が・・・
- 664 名前:JUNIOR@読みまくり 投稿日:2004/05/13(木) 23:50
- 更新お疲れ様です。
いやぁ、あのお方は何かを必ずやってくれますね。
石川さん敗北ですか・・・・・・・。
ガンバレ!これしか声かけられないっす。
出来はイイ!ですよ。私の視点では。
- 665 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:18
-
*** 前途多難 ***
問題 プラス 問題 イコール 困難?!
- 666 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:18
-
「梨〜華ちゃん・・・お〜い? コラッ梨華っ!」
耳元で怒鳴られて、わたしはビクッとするとテーブルで頬杖を
ついていた手から顔を上げた
生徒会室にある白い楕円形のテーブルの上に、ゆるゆると午後の
柔らかい日差しがあたってる
その光の粒を反射させながら、軽くわたしを睨む顔
「・・・美貴ちゃ〜ん」
幼馴染の美貴ちゃんこと、通称ダイヤさまが横からわたしの方へと
乗り出してきた上体を支えている片腕にガシッとしがみ付いた
「なーにぃ・・・どしたぁ?なんかあった?」
わたしがプルプル首を横に振ると、頭の上で髪の毛が乱暴に
クチャクチャっと撫でられた
- 667 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:19
- ・・・美貴ちゃん
わたしの想い人・・・ちっちゃい頃からずっと一緒だった
パッと見、切れるような眼差しが印象的で怖がられるけど
ほんとはすごーく面倒見のいい、あたたかな人・・・
美しくて、気高くて、藤本のおじ様が名付けた通りの美貴ちゃん
美貴ちゃんは子供の時から、なんでもよく出来て、いつでも
勝気だった
わたしは臆病で、いつも後ろをついて歩いてたっけ・・・
幼稚舎からこの学園に通って、中等部に上がって間もない頃から
美貴ちゃんが高等部に入ったら、生徒会役員になるだろうって
みんな噂してた
高等部の生徒会役員は中等部にとっても憧れの的だったし・・・
だから、わたし頑張ったの
- 668 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:19
- 役員には代々受け継がれてるイメージってものがあって・・・
スペードの君が望まれるのは・・・
学業も、スポーツも総てに秀でて、万能
決断力、実行力、その上、カリスマ性までって、ほんとの王様
容姿は中性的な方々が多かったみたいだし・・・
前年の市井紗耶香さまも、まさにその通りの方だったわ
ハートの方は、簡単に言ってしまえば女神のイメージ
微笑みを絶やさず、全てを平等に慈しむ
スペードの君の、半歩後ろを歩いて、控えめに内助の功で補佐するの
容姿はかなり女性的な方々が多かったらしいわ
能力は全てに置いて、平均値の上くらいをキープ
ダイヤさまは、クールな切れ者のイメージ
参謀役で、学園内が上手く回るようにスペードの君の補佐をするの
能力も平均値より上で、万遍なくできるタイプ
容姿は出来る女、お姉さまタイプの方が多かったかしら?
クローバーさまは学園のムードメーカー
アイデア豊富だとか、アクシデントがあった時、立ち回りが早いとか
スペードの君が頼りに出来るような方
能力は一芸に秀でてるようなタイプで、容姿は個性的な魅力があるとか
独特の雰囲気がある方が多かったみたい?
- 669 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:20
- この中でわたしがなれそうなのって、ハートの方だと思ったの
無謀だと思いつつ、努力に努力を重ねたわ
いつでも微笑みを絶やさず、総ての方に優しく、を、心がけて
外見も気を使ったし、学業もスポーツも死ぬ気で頑張ったわ
そのかいあって、高等部に上がる前に紗耶香さまから打診があったの
あの日の天にも昇る喜びは・・・きっと一生忘れられない・・・
そして去年一年間・・・なんの努力もしてない素振りの裏で
血反吐を吐くくらい、努力を重ねてきたのにぃぃぃーーーっ
ほんの、ほんの一瞬の気の緩み・・・
本音を口に出してしまって・・・まして、あんなヤツに聞かれてしまうなんて・・・
わたしにこんな思いをさせるなんて、どうしてくれよう?
あんのぉ〜ムーカーツーク、アイツ!!!
- 670 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:20
- わたしは知らぬ間に、美貴ちゃんの腕を掴んでジリジリと力を入れて
いたみたい
「痛っ・・・痛いよ!いい加減にしなっ」
美貴ちゃんにつれなく腕を抜かれて、わたしが唇を尖らすと
ごっちんこと、クローバーさまが笑い声をたてた
「アハッ! 梨華ちゃんさぁ〜 いい顔しすぎなんだよぉ〜
まーたストレス溜め込んでるんじゃぁーん?
・・・この後三人で、カラオケでも行って発散すっか?」
「うん、うん! 行くっ行きたぁ〜い」
「ごっちん・・・甘すぎ・・・それにさぁ〜? 梨華ちゃんには
あんまし無理すっことないって、いっつも美貴、言ってるっしょ?
ここにいるみたいに、自然体でいなよ?」
「そそ、ごとーもね、情けな〜い甘えん坊の梨華ちゃんが、ハートの方ですっ
て、キバッてる梨華ちゃんよか好きだよぉ〜ん♪」
あぁもうっ!二人とも大好きっ!!!
でも、素のわたしでいるなんていまさら他の人の前では無理なことなの
だって、なんかもう、クセみたいになっちゃってて・・・
無理してないって言ったら、ちょびっとウソになっちゃうけどぉ〜
それよりもね?・・・快感なんだもぉ〜んっ!
- 671 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:20
- 「あーーーっ 話、逸れまくりじゃんかぁ〜!
梨華ちゃん、それにごっちんも、スペードの君の問題が
片付かない限り、カラオケなんて無理なんだからねっ」
「はぁ〜い・・・美貴ちゃん」
「・・・ごとー、メンドーなのってホント嫌いなんだよね〜
ったく、いちーちゃんもよけーな置き土産してくれちゃってさぁ・・・」
・・・そーなのよねぇ〜
生徒会役員の方々は代々、自分の後継者は打診して、決めてから
引継ぎして引退してたの
高等部に目ぼしい人材がいない時は、中等部の情報を仕入れて
入学と同時に決定されるとか・・・
ほぼエスカレーター式に中等部から高等部へ上がる、この学園では
情報網が飛び交っていて、人気と才覚のある生徒なら一年生が
会長でも誰も文句を言ったりしないの
そして、意義申し立てが起こらない限り、その生徒は役員を
卒業するまで続けてきた
中等部から編入してきたごっちんも、高等部に上がると同時に
クローバーさまになったし・・・
そして、ほんとうなら、紗耶香さまが決めた後任のスペードの君が
ここにいなくてはならないのに・・・いないのよねぇ〜これが・・・
- 672 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:21
- いつまでも後継者を決めない紗耶香さまの卒業が間近にせまった、ある日
わたし達がお聞きしたら、紗耶香さまはこともなげにこう言ったわ
「あのさー・・・いちー、ずっとおかしいと思ってたんだよね?
いちーは卒業してく訳で、一緒にいる訳じゃない
お前らがいいと思うヤツを選べよ、そんでいーじゃん?」
だけど、伝統ってものがってわたしと美貴ちゃんは反論したけど
紗耶香さまは、それがそもそもバカバカしい、校則で決まってる訳
でもなし、自分の会長としての責任は果たしたって言って、相手を
してくれなかったの
その時点ではごっちんはどーでもよさそうな顔してたけど・・・
いざ、誰かを選ぼうとしても、前会長が選んだって言う後ろ盾が
無いと、全校生徒が納得してくれるようなカリスマ性のある生徒
なんてなかなかいなくて・・・わたし達、困りきっているの
- 673 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:21
- だから五月の大型連休も終わった、次の週
こうしてわたし達は冴えない顔を突き合わせてる
「うぅ〜〜〜っ マジ、決めないとそろそろヤバいって!」
美貴ちゃんが唸ると、ごっちんは欠伸をしながら、シレッと答えた
「ふぁぁ・・・前代未聞だぁね、会長いないまま五月・・・」
美貴ちゃんの目の色が、ガガガと怒りをあらわにしてきて、わたしは
あせって、眉を八の字に寄せる
「ご、ごっちん・・・そんな他人事みたいな言い方しないでよぉ〜」
ごっちんはヘラヘラ笑いながら、テーブルに身を乗り出してきた
「・・・転入生、来ただろ?知らないかなぁ〜・・・先週」
「「転入生?」」
わたしと美貴ちゃんの声が重なる、そして顔を見合わせた
- 674 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/14(金) 14:22
- 「・・・んで?」
美貴ちゃんが早々と目を輝かせ始めて、ごっちんは満足げにニヤリ
とした
「もうさぁ、すでにファンクラブみたいの出来ちゃったらしいよ?
なんかぁ〜・・・タイを緩めたり、髪掻き上げたりするたんび
教室のあちこちから溜息が出るんだって・・・ごとーよか、スゴイと思ったね」
「・・・へぇ〜〜〜」
美貴ちゃんは感心した顔で大きく頷いた
ごっちんも面白いおもちゃでも見つけた子供みたいな顔になってる
だけど、わたしは・・・わたしは
なんだか・・・イヤ〜な予感と共に、急に寒気までしてきた
・・・ブルブルッ
わたしは、両腕を交差させて自分の肘を掴むと、ギュッと力を入れた
- 675 名前:Sa 投稿日:2004/05/14(金) 14:23
- 更新致しました
JUNIOR様
心優しいレスをありがとうございますっ
みきりかになったりしないよ〜に、あの方には早々に出て
来て頂かないと・・・(w
- 676 名前:ちゃみ 投稿日:2004/05/14(金) 16:47
- ?のエースはやはり・・・・
この4人がいるガッコって無いかな? 入学したい。
- 677 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/14(金) 23:36
- 更新お疲れ様です。
スペードって・・・・・・・(ニヤリ)
あのお方ですよね。
みきりかにならないようにがんばって下さい。
- 678 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:24
- − 翌日の放課後 −
「・・・や、止めとこーよぉ〜」
「梨華ちゃん邪魔っ!どれどれ・・・」
わたしが止める手を振り払って、美貴ちゃんは教室を覗き込む
「・・・ほら?あの子、うん、目立つね、いんじゃん?」
ごっちんがそう言いながら、顎で示した先に座ってたのは・・・
やっぱり・・・やっぱり・・・
アイツだぁぁぁ〜〜〜・・・あぁぁぁ・・・
わたしの両腕からダラリと力が抜け落ちた
- 679 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:25
- 暗ーい目になってくわたしとは対照的に、美貴ちゃんはランランと
顔全体を輝かせて、わたしを振り返る
「い〜じゃん、い〜じゃんっ!!!・・・あの見た目はおいしいねぇー
王子だよっ!!!
ちょっとリサーチしたけど、編入試験もなかなか良かったっぽいし
運動部のヤツらも、入部させたがってるって聞いたからスポーツも
イケそーじゃん?」
「でもぉ〜でも、ね?美貴ちゃん・・・転入してきたばっかりの子だよ?」
「関係ないよー あれはいけるっ! 梨華ちゃん、心配症だからねぇ?
大丈夫だよ?どーにかなるってぇ〜」
美貴ちゃんは、わたしの肩の上に心配ないと言うように手を乗せて
ポンポンと軽く叩くと、また教室を覗いて、食い入るようにアイツの
観察をし始めた
・・・ちぃっがーーーうぅぅ
アイツが会長になれる器か?なんて、どーでもいいのよぉ〜
心配なのは・・・心配なのは・・・
わたしの地位と名誉なんだからぁーーーっ
美貴ちゃんのバカァーーーッ!!!
- 680 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:25
- 美貴ちゃんって、いつでもテキパキしてて、割りと完璧主義な人なのね?
理数系はいつもトップクラスだしね
だけど、読解力が無いとゆーか・・・人の心の機微が全く読めないの
だからこそ、わたしのこの長〜い片想いも続いているんだけど・・・
でもね?そのおかげでいままで、裏でライバルを蹴散らしてこれた
っていうのもあるし・・・
わたしが心の中で、いつの間にか美貴ちゃん考察に励んでいると
横でごっちんがフッと表情を曇らせた
「・・・梨華ちゃん、ヤなの?・・・あの子と、なんかあった?」
・・・あの子?・・・あ、ヤだっ!大変!!!
ごっちんは美貴ちゃんとは正反対で、普段、ボケラァ〜と、やる気
無さそうなんだけど、すっごく鋭いとこがあるの
でも、面倒くさがりやさんて言うのかしら?集中力が続かないらしくて
ま、いっか?で流してくれるから、楽なんだけど
・・・そんなことより、いまは・・・隠れなきゃ!!!
- 681 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:26
- わたしは首をブンブン横に振って、美貴ちゃんの背中に隠れると
ブレザーの裾を捕みながら、アイツを盗み見た
「・・・そういうんじゃなくって・・・なんとなく苦手なタイプなの」
「ホントにそんだけ?・・・ならいーけどさぁ〜」
ごっちんは納得してないみたいな顔でわたしをジッと見た
・・・あわわ
その時、教室にいた生徒がわたし達のヒソヒソ話す声に気づいて
振り返ると、黄色い声を上げた
「キャーーーッ、ダイヤさまと、クローバーさまと、ハートの方まで
いらっしゃるっ!どうなさったんですかぁ〜!!!」
わたしは美貴ちゃんのブレザーの裾をパッと離して、シャンと胸を張ると
優雅に微笑んだ、そんなわたしを見てごっちんが溜息をついている
- 682 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:26
- 「吉澤さんって転入生の子、呼んでもらえる?」
美貴ちゃんが、少し鼻にかかった、それでもよく通る声でそう言うと
呼ばれるまでもなくアイツは振り返り、立ち上がって、ゆったりと
こっちに歩いてきた
「・・・何か?」
落ち着いたアルトの声でそう言うと、爽やかに笑って見せる
・・・な、なななんなのぉコイツーーーッ
なにその口調っ?なんなのその笑顔?!アンタが二重人格じゃないのっ!!!
「いいねぇ〜・・・ちょっと生徒会室来てくれない?」
「構いませんけど・・・怖いな」
堂々とそう言い返されて、美貴ちゃんはやんわりと目を細める
うわっ!一目で気に入っちゃってるよぉ〜
梨華・・・ピーンチッ!!!
- 683 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:27
- アイツは美貴ちゃんに向けてた視線をごっちんに移して、一層
軽快な笑顔を広げた
「・・・ども」
「どぉ〜も・・・ふぁぁ・・・っと、失礼」
ごっちんは無表情に挨拶を返した後、暢気に欠伸してるしぃ〜
そして当然、アイツの視線はわたしの前に来て・・・ピタリと止まった
「あれ・・・石川梨華さん?
失礼、ハートの方でしたね・・・本日もご機嫌麗しく・・・」
なに言っちゃってんのよ?!ご機嫌悪いわよっっっ
・・・アナタのおかげでねっ!!!
「やっぱ・・・知り合い?」
わたしがワナワナと震え出そうとする唇と戦ってる横で
ごっちんがノホホーンと間延びした声を出した
- 684 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:27
- 「先週・・・かな?お会いしたんですよ・・・ねぇ?」
「なんだよ〜梨華ちゃん?美貴に内緒にしちゃってさぁ〜
・・・何ぃ?意外と一目惚れでもしちゃったんじゃなーい?」
なななななんてことゆーーーのっ?!!!
美貴ちゃんのあんまりな発言に、わたしは目の前がチカチカしてきた
「ちっちが・・・」
「なら、光栄だな・・・」
そんなことある訳なーーーーいっ!!!
ジリジリ身悶えするわたしに気づかずに、美貴ちゃんはスキップでも
しそうに浮かれ始めた
「梨華ちゃんがタイプなんだ?・・・じゃぁさ〜生徒会長になって!」
「・・・は?」
「そしたらね?・・・梨華ちゃんは吉澤さんのものも同然♪」
・・・・・・・・・・・?!!!
ドドーンと隕石が頭の上に落下してきたようなショックを受けて
放心状態に陥ってるわたしを見て、アイツは面白そうに笑い声を
上げた
- 685 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:28
- 「あははっ!そうなんだ・・・梨華ちゃん?」
・・・り、梨華ちゃんですってぇ?!!!
馴れ馴れしいのよっっっ!
今にも噴火しそうなわたしの怒りを、まったく気づかないみたいで
美貴ちゃんがウィンクなんか投げてくる
「ね、ね?・・・梨華ちゃんっ 生徒会室に案内してあげてよー
そんで梨華ちゃんから、ちゃーんとお願いして!」
「・・・へ?」
そして美貴ちゃんは素早くわたしの耳に囁いた
「梨華ちゃんがタイプみたいじゃん?・・・頼むよ〜」
「そ、そんなぁ〜」
「さぁさぁ〜♪」
わたしは美貴ちゃんに背中をグイグイ押されながら、生活の為に
売られて行く子牛になった気分よぉ・・・あら?ちょっと待って
・・・考えてみるのよ?梨華・・・
- 686 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/15(土) 02:28
- ・・・これは意外にもチャンスかも知れないじゃない?
アイツと二人・・・かなり気が滅入るけど、生徒会室なら話を
誰かに聞かれる心配も無いし・・・
この前は突然の非常事態で戦闘態勢になっちゃったけど・・・
甘えて見せて、相手に言うことを聞いてもらうのはわたしの十八番
そうね・・・その手があったわ
わたしは振り返るとにこやかに、かつ愛らしく微笑んで美貴ちゃんの
手を取った
「わたくしに任せてっ!!!」
「・・・わたくし?・・・なんか変だよ、梨華ちゃん・・・けど、うん
まぁ・・・任せたっ!」
目を見開いてる美貴ちゃんに大きく頷いて見せると、その微笑みを
キープしたまま、アイツの横に並んだ
そして、小首を傾げると上目遣いでその顔を見つめる
「生徒会室にご案内いたしますわ・・・いらして下さる?」
- 687 名前:Sa 投稿日:2004/05/15(土) 02:29
- なんでこんな時間に更新してんだろ?
ま、いっか(w
ちゃみ様
?エースは登場予定ございません(汗・・・スマソ
けど、あの方のコトなら、ベタベタ〜〜ベタベタ〜〜←呪文(w
JUNIOR様
スペードって・・・(必殺ニヤリ返しーーーっ
ですね?ソレ目標に頑張りマッス!!!←ヤベッどんな目標なんだか・・・
- 688 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/15(土) 02:42
- 歯磨きして寝ようとしてたのに「Saさん、更新してそう」ってふと頭に浮かびましてぇ。
覗いてみたら、ほんとに679まで書込みがありました。心底びっくりしてます!
なんかますます目が離せない展開に顔がにやけてます。
- 689 名前:ちゃみ 投稿日:2004/05/15(土) 03:11
- ?の処は入力間違いですた、本当はスペードのマークが。
やはり、あの方で一安心。
どうだこうだ言いながらハマって行く梨華ちゃん、素敵です。
- 690 名前:54@前作 投稿日:2004/05/15(土) 14:13
- 更新、お疲れ様です。
いやぁ〜、溜息が出そうに麗しの4人ですよねぇ。映えるなぁ・・
ドナドナ状態の中でもしっかり策略を巡らす石が素敵です。
腹を探り合う(?)ふたりの行く末が楽しみです。
- 691 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/15(土) 15:09
- 更新お疲れ様です。
やっぱりあのお方でしたか(ニヤニヤ
石川さんはかなり二重人格だけど
吉澤さんはもっと(完
二人の行方が楽しみでしょうがないっす。
- 692 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:42
-
*** 悪戦苦闘 ***
困難 マイナス 努力 イコール 対決?!
- 693 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:43
- 生徒会室に入ってわたしがドアを閉めると、アイツはテーブルを
すぅーと指先で撫でて、振り返った
「・・・作戦、変えたんだ?」
「作戦?・・・なんのことかしら?・・・わたくしはただ、あなたに
お願いがありますの」
「ふぅ〜ん・・・何?生徒会長になって欲しいの?」
そんなこと、ある訳無いじゃないのっ
そのニヤついた顔を見てると、わたしの心拍数は上がりっぱなし
なんだから!
わたしは足を踏み鳴らしたい気分をどうにか逸らして微笑んだ
「・・・吉澤さん、で、よろしかったかしら?
転入したばかりで生徒会長だなんて・・・そんな無理なお願いを
する気なんて、わたくしはありませんの」
「そう?優しいんだ・・・けど、さぁ?」
「はい」
「・・・そんな回りくどい言い方しなくていいよ」
「はい?」
「要はさ、なって欲しくないんでしょ?・・・あたし、に」
- 694 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:43
- アイツは椅子を引いて腰掛けると、つまらなそうな顔して、両手を
頭の後ろで組むと、背中を伸ばしたりしてる
「・・・わたくし、そんなつもりでは・・・」
「まぁ、どっちでもいいじゃん?・・・じゃぁ、お願いってのは?」
「・・・それは」
「ん?」
アイツは今度は椅子の上に片膝を立てて、組んだ両手をその上に
置くとチラリとわたしを見た
「・・・この間のお手紙、返して頂けないかしら?」
わたしは俯くと目を閉じて、何か泣けそうな事を考えた
この間見た映画・・・あれがいいかしら?
すぅと吸い込んだ息をゆっくり吐きながら震えた声を出す
「・・・最近、わたくし・・・少しいい気になっていたようですわ
吉澤さんに教えて頂けて、良かったって思ってますの
わたくし、自分が恥ずかしいですわ・・・それに、それに・・・
わたくしのことより、あのお手紙を下さった方に申し訳なくて・・・」
そして顔を上げると、落ちる寸前の涙をキープした瞳を瞬かせる
ツツゥーと頬に一雫の水滴が滑り落ちた
- 695 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:44
- わたしは、すっかりその気になって手首で涙をそっと拭った
「・・・いやだわ・・・ごめんなさい」
「・・・上手いよなぁ〜」
「・・・え?」
アイツは組んだ両手を外すと、親指で眉尻を掻いた
「目薬?・・・それとも、ほんとの涙?」
「・・・そっ、そんな酷い言い方・・・あんまりですわ」
「酷い?・・・そうかなぁ〜・・・あたしには本気で言ってるようには
聞こえないけど?・・・だけどもし、本気で後悔して泣いてるって
言うなら・・・」
言葉の途中で、アイツは腰を浮かすと、わたしのウエストに手を
回して、グッと引き寄せながら、ドカッとまた椅子に座った
わたしがよろけて、アイツの伸ばした片足の上に乗ってしまうと
アイツは片手でわたしの髪を掻き揚げ、耳元で言葉の続きを囁いた
「・・・慰めてあげるよ?」
そして、その唇をわたしの首筋に押し当てる
- 696 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:44
- びくんっ!!!
「・・・ひゃっ」
「・・・感じちゃう?」
アイツはわたしの首筋の上で唇を動かすと、また押し当てて
今度は軽く吸い上げた
「やっ、やだぁ!止めてよぉっ」
わたしが両手でアイツの鎖骨の辺りを押すと、その手をギュッと
掴まれた
「ほんとに嫌なのかな〜?・・・ハートの方はさ、ずいぶんウソが
得意らしいからね」
アイツがからかうような目で、わたしの顔を覗き込む
わたしの目には、なぜだか涙が泡のように湧き上がってきた
「バカッ!!! ヤだっ ほんとにヤなのっ・・・あなたなんか・・・
あなたなんかっ・・・大っ嫌いなんだからぁっ!」
「アハハッ! ほんとに泣いてるよ・・・結構可愛いな・・・あんた」
- 697 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:45
- わたしがギュッと口を閉じて、鼻を鳴らしてしゃくり上げ出すと
アイツは掴んでた手を放して、その手の平でわたしの涙を軽く拭った
「くやしいの?・・・だけど、あたしに嘘つくのは止めなって
どうせ通用しないんだから」
「・・・ヤだっ・・・あなたの言うことなんて聞きたくないのっ
嫌いって言ったでしょっ!嫌い嫌い嫌いーーーっ!」
「プッ! 子供みてー」
アイツが肩を揺らして笑い出すと、その振動が足を伝わって
わたしの身体を小さく揺らす
・・・ヤだっ!わたしったら!!!
足の上に乗ってるなんて、誰かに見られたら大変じゃないのっっっ
わたしは、サッと立ち上がると、どうにか涙が止まってきた目で
まだ笑ってるアイツを睨みつけた
「・・・だいたいねっ あなたが急にこんなことするから悪いんでしょ?
謝ってよっ!」
「おや・・・急にじゃなければいいのかなー?」
- 698 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:46
- 「いっ・・・いいわけないでしょっ! やらしいわねっ!!!」
「やらしい?・・・心外だなぁ〜
・・・あんたさ、好きなヤツいないの?・・・触れ合いたいとか思ったこと
ないわけ?」
「・・・関係ないじゃないっあなたに!」
「関係あるかも知れないじゃん?」
「なんでよっ?!」
「・・・さぁ?」
アイツは外人みたいに大袈裟に両肩と両手を上げて見せた
・・・バッカみたい
ああぁぁぁ〜ヤだっ!・・・ムカツクッ!!!
いいようにあしらわれちゃって、全然わたしらしくないっ
- 699 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:46
- だって・・・だって、仕方ないじゃない?
・・・こんなことされたこと、ないんだもんっ
ほっぺやおでこになら、チュッってされたことあった気もするけど・・・
こんなにいきなり・・・あんなに強引に・・・それに、それにっ
首にするなんて・・・やっぱり、やっぱり、なんかやらしーよっ!
ああ〜〜〜頭がグチャグチャで調子が狂っちゃう
もう、何を考えたらいいのかがわからなくなってきちゃったじゃないのーーーっ
もうもう・・・ほんとにイヤ
わたしはどんどん煮詰まってきて、せっかく止まった涙が、また
零れそうになった
あいつは、唇を噛むわたしを見上げながら立ち上がった
「・・・また泣くの? なら、慰めてあげよっか?」
・・・ドキンッ
ヤだっなんで?!顔が勝手にボッと熱くなってきちゃうぅぅ〜
「な、泣かないわよっ!」
「それは残念・・・あんたの泣き顔、なかなかそそられるんだけど?」
そ、そ、そそられるぅぅぅ?
- 700 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/17(月) 15:47
- 熱くなってたわたしの顔から、今度はスゥーと熱が引いてく気がした
アイツはわたしのそんな顔をジッと見て、フッと笑った
「・・・そうそう忘れてた、あの手紙ね?
ちょっと返すのは無理だなぁ〜・・・もう、捨てたから」
「・・・捨てたぁ?!」
「あたし、いらないし・・・おたくもいらなかったみたいだし?
・・・ね?梨華ちゃん」
「・・・梨華ちゃんって呼ばないでっ!」
「なんでよ?梨華ちゃんでしょ?・・・あぁそっか、んじゃ梨華」
「もっと嫌っ!!!」
「わがままだなぁ〜 いい子にしてないと知らないよ?」
「何よっ!・・・何が言いたいのっ?!」
「さぁ?・・・用が済んだみたいだから、あたし帰るわ・・・そうだ
送ってあげよっか?」
「だれがあなたなんかにっ・・・結構よ!」
「そ?・・・じゃ、またね梨華」
「梨華って呼ばないでって言ってるでしょーーーっ!!!」
アイツはニヤニヤ笑いながら、ドアを開けると出て行った
その後姿が見えなくなると、わたしはテーブルに両手を付いて
バタリと倒れこむように椅子に座った
・・・もーーーダメッ限界・・・疲れたよぉ〜〜〜
わたしは両手をダラリと投げ出し、ズルズルとテーブルに突っ伏した
ほっぺたまでテーブルに押し付けると、口からは大きな溜息が出た
- 701 名前:Sa 投稿日:2004/05/17(月) 15:48
- 更新しました
688様
エスパー?・・・てか、んな能力いらないっすね(w
イヒヒ・・・とニヤケて頂ければ、そりゃーもー作者は満足ですっ!
ちゃみ様
アハハッ!間違いでしたか?頂いたレスを見て、エースもありだったなぁー
なぁんてミョーに納得してたんですが(w
54@前作様
そぅそぅ♪ドナドナドーナドーナって歌ってましたよぉ(w
この四人が集まってるガッコ・・・ウットリ・・・
JUNIOR様
いしかーサンもナンですが、ココの吉澤サンはもっとクセが・・・(w
目指せ少女小説&マンガ風味で参りまぁ〜す
- 702 名前:JUNIOR@くせもの 投稿日:2004/05/17(月) 23:01
- 更新お疲れ様です。
二人のやり取りに笑いました。
面白すぎです。あぁ〜、腹がいてぇ〜。(筋肉痛)
吉澤さんクセものっすね。
Saさん最高です。
- 703 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:22
-
*** 一進一退 ***
石川梨華の限りなく不本意な日常(改正版)
- 704 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:22
- − 次の日の昼休み −
生徒会室でお弁当を食べ終わると、待ちかねてたって感じで
美貴ちゃんが捲し立てる
「・・・で?昨日の感触どーだった?」
・・・か、感触ーーーぅ?!!!
わたしは最後の一口だった甘めの厚焼き玉子を口から出しそう
になった
「・・・ゲホッ、ゴ、ゴホンッ」
「なにあせってんの?・・・ダメっぽかった?さすがに、いきなり
会長は引き受けないかぁ〜〜〜」
え?・・・あ、あぁ、そのことね?・・・ヤだ、わたしったら〜
思わず、アイツの足の上に乗ってたことや、わたしの首筋を・・・
って・・・やめやめっ!
わたしは咳払いを一つすると、申し訳なさそうな顔をした
- 705 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:23
- 「ごめんね?美貴ちゃん・・・任せて、なんて言っちゃったけど
吉澤さん、あんまり乗り気じゃないみたいなの・・・」
「んー いいよ、梨華ちゃんだけに任せた美貴も悪かったし・・・
そっかぁ〜 どーすっかなぁーーー」
ふふっ
いい感じじゃなーーーいっ
これでアイツには、近づかないで済みそうだわ♪
わたしは晴れ晴れとした気分で、美貴ちゃんに微笑みかけた
「他の人、探そうよ?・・・ところで、ごっちんは?」
「そう言えばいないね?どっかで寝てんじゃないの?」
ごっちん、また寝過ごして午後の授業に遅れなきゃいいんだけど・・・
けど、昼寝はごっちんの趣味だもの、仕方ないわよね〜
なんであんなに寝るのが好きなのかしら???
屋上とか、講堂の階段の踊り場とか、あんな下がコンクリートで
硬いのに、よく寝れるわよね?
・・・昼寝・・・誰かさん達が・・・
- 706 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:23
- ふっと、アイツと初めて会った時のことが頭に浮かんだ
ヤだっ!なんで思い出したくもない顔がーーーっ?!
あの、わたしをジッと見て、ニヤニヤ笑う顔
・・・触れ合いたいとか思ったことないわけ?
昨日のアイツの言葉・・・
触れ合いたい?・・・触れ合いたい???
わたしはの好きな人は・・・美貴ちゃんよ?
だって、だってね?ずっと、ずぅーっと一番好きだったんだもの
- 707 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:24
- 小さい時から、ほんとうにいつも一緒だったの
美貴ちゃんがわたし傍からいなくなるなんて考えられないもの
物心がついた時から、パパやママよりも好きだったんだから・・・
だけど
・・・触れ合いたいって、どういう意味?
キスとか?・・・それ以上???・・・わたしと美貴ちゃんが?
・・・なんだか、ピンとこないわ
わたしは美貴ちゃんを独り占めしたいの
昔も今も、これからだって、あの輝く笑顔の一番近くにいたいの
それだけじゃ、おかしいのかな?
他の人達は、どんな風に考えてるものなの?・・・好きな人のことを・・・
アイツみたいに?・・・わたしみたいに?
わたしに何か言いたげに、アイツのブラウンの眼の色が揺れてた
って、何考えてるのよぉ〜梨華っ!・・・毒されてはいけないわっっっ
- 708 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:24
- もぉ〜〜〜 消えろーーーっ!!!
わたしが頭をブンブン横に振ってると、横で美貴ちゃんがポツリと
言った
「・・・けどさ、やっぱ美貴、あの子しかいないって思うんだ
梨華ちゃん!今からもう一度、頼みに行こうよっ
今度は美貴も一緒に言うからさっ!!!」
「・・・へっ?」
美貴ちゃんはスックと立ち上がると、全身からメラメラと闘志を
湧き上がらせている
わたしは、よーっくわかってる
一度、燃え上がった美貴ちゃんは、思い通りになるまでは絶対に
諦めたりしないって・・・
・・・そ、そんなぁ〜〜〜
「さっ!行くぞぉーーーっ」
美貴ちゃんは、わたしの腕をガシッと掴むと引きづるように
走り出した
- 709 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:25
- だ・け・ど
アイツは教室にいなくって・・・
やっぱり神様はいらっしゃるのね?そしてっ頑張る者の味方なの!
わたしの瞳は、お気に入りの漫画の主人公みたいにキラッキラッ
輝いているはず・・・またファンが増えちゃうじゃない?
梨華、困っちゃう〜〜〜
コホン!ここで問題なのは・・・
そう、放課後よね? 美貴ちゃんは絶対行く気よ、アイツんとこに・・・
だけど・・・美貴ちゃんって頭が固いと言うか、思い込むとそのやり方に
固執するところがあるから・・・
わたしが午後の授業中、頭を本業以外に使ってたのは言うまでも
ないこと
そして出した結論は意外に単純!
バックレるのよ・・・これっきゃないわっ
- 710 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/18(火) 14:25
- 美貴ちゃんはこう思い込んでるはず・・・
アイツがわたしを気に入ってると勘違い←わたしがいた方がいい
昨日、アイツを会長に出来なかったことをわたしが申し訳ないと
感じてると思ってるから、自分だけが動いたら、わたしが気に
するかも知れない←やっぱり、わたしがいた方がいい
ごっちんはあてにならないし、勧誘は一人よりは二人がいい
←結論、わたしがいた方がいい
間違いないわっ!
わたしがいなければ、取り合えず美貴ちゃんは行動を起こさない
だから逃げるのよっ美貴ちゃんから・・・
そしてその間に、誰か、美貴ちゃんやごっちんが納得するような
人材を探し出すのよっ!!!
梨華っあなたなら出来るわ!・・・だって、だってわたくしは・・・
ハートの方ですものっっっ
美貴ちゃん・・・あなたから逃げるなんて罪なわたしをどうか許して?
だって、しょうがないことなの・・・
わたしの輝ける学園生活を守る抜く為にっ!!!
- 711 名前:Sa 投稿日:2004/05/18(火) 14:26
- 更新しました
JUNIOR様
そんなに笑えました?ソレはうれすぃ〜ッス♪
一筋縄でいかないヒトが吉澤サンみたいなビジュアルだったら
そりゃ〜もう・・・(w
- 712 名前:54@前作 投稿日:2004/05/18(火) 16:41
- 更新、お疲れ様です。
策士の石川さん健在ですねぇ。でも敵もさるもの、一筋縄ではいかなさそう・・
ここの藤本さんは珍しく(?)まっすぐな感じで、実は結構好きですw
次回も楽しみです。
- 713 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/19(水) 00:43
- 更新乙です。
自分もそんなヒトいたらそりゃ〜(w
石川さんがんばってますね〜。
深読みはあまり体に良くないですよ。
がんばってくださいね。
- 714 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:36
- わたしはホームルームが終わると、急いで教室を後にした
美貴ちゃんが迎えにくる前に姿を隠さなきゃ!
そして、わき目もふらず、一心に前を見て校庭を横切る
「あれ?梨華ちゃん・・・いいところに!」
・・・ギクッ
なっなんでーーーっ?!
聞きなれた、いつもだったら聞いていたい、けど、今日に限っては
絶対に聞きたくない声に、わたしはバッと振り返った
斜め後方には、信じられないスリーショット・・・
- 715 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:37
- 「・・・なんでいるの?」
いつもは可愛い鈴の音とか言われる、わたしの高い声が不機嫌に
低く沈んだ
「なんでって・・・美貴のクラス、体育だったから・・・
それより、そんな急いでどーしたのさ?
・・・なんか顔色良くないみたいだけど、具合悪い?」
美貴ちゃんは顔を曇らせながら、わたしの方へ寄ってきた
当然、ごっちんとアイツも・・・
迂闊だった・・・
美貴ちゃんとごっちんの担任教師は体育教師で・・・
自分の体育が最後の授業だとそのまま校庭でHRを済ませちゃうから
って、二人がジャージで生徒会室に来ることがよくあったじゃない?
よりにもよって、その日が今日だなんて・・・
その上・・・なんでアイツまでいるのよぉ〜〜〜
「梨華ちゃんっ 聞いてよぉ〜
よっちゃんってさぁ〜 球技メチャうまっ! ごとー びっくりだよ!」
・・・もしもし?
よっちゃんって、なに???
ねぇなんなのよぉ?・・ごっちぃぃぃん・・・
- 716 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:37
- 「美貴も驚いたよ〜 最後、よっちゃんのシュート、連続で決まって
うちらのクラス負けちゃったもん! ね〜ごっちん?」
美貴ちゃんとごっちんは、青春だぜ、スポーツだぜって感じで
爽やかに笑い合っちゃってる
「梨華ちゃんもあたしと同じクラスだったら・・・喜んでくれたかな?
・・・あたしの逆転シュート」
「うんうん、梨華ちゃんて負けず嫌いだからさぁ〜
よっちゃぁ〜ん、ステキッ格好いいぃって抱きつくくらいするかもね〜」
「ちょとぉ・・・美貴ちゃんっ!」
「やっぱ、試合は燃えるなぁ〜 ごとー よっちゃんが隣りのクラスで
嬉しいよ♪ これから合同体育の日、楽しみだよぉん」
「言いすぎだって・・・ごっちんとミキティもスゲー上手いじゃん?」
「だしょ?だっから、今まで張り合いなくってさぁ〜
だよねー ごっちん?」
「んあ? 言っちゃ悪いけどねぇ・・・そゆこと」
ちょっとーーーっ!
なによ、なんなのよぉ〜 いつの間にそんな和やかムードに・・・
- 717 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:37
- あっと言う間に、あだ名なんかで呼び合っちゃって・・・
そう呼んでいいのは一部の特別な人達だけだったのにぃ〜
「よっちゃん・・・うちら、もう仲間じゃん?
だから、だからさぁ 会長になってよ?・・・美貴達を助けると
思ってさぁ〜」
・・・来た
ならないよね?・・・ならないでしょ?
昨日、興味なさそうだったじゃない???
わたしは祈るような気持ちでアイツを見た
アイツはわたしと目が合うとニヤリと笑う
・・・うっ・・・ヤ〜〜〜な予感・・・
「・・・面白そうだね?・・・ほんとにあたしでいいのかな?」
「いいよっ!いいに決まってるじゃん!!!」
美貴ちゃんは勢いよくそう言って、身体を小さく上下に揺すった
ごっちんはヘラヘラ笑いながら、アイツの肩に自分の肩を軽く
ぶつける
「・・・よっちゃん以外いないでしょ?」
- 718 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:38
- 「ははっ・・・でもさ?
梨華ちゃんはどう思ってんのかなぁ・・・いいの?あたしで」
アイツは目を細めて笑いながら、真っ直ぐにわたしを見た
・・・やられた
ダメだわ・・・この状況で反対なんか出来るわけないじゃない
・・・どうせ、わかって言ってるのよね・・・
そういうヤツなのよっ・・・コイツはっっっ
わたしは項垂れるように小さくコクンと頷いた
・・・負けた
負けてしまった・・・・くくくやしーーーいっ
震えだしそうな手をギュッと拳にして握り締めていると
白くて大きめのしなやかな手がサッと差し出された
「・・・よろしくね?梨華ちゃん」
「うわっ!よっちゃん いきなり梨華ちゃんだけ特別扱い?」
ごっちんが面白そうに、なんだかからかってるような声を出す
- 719 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:38
- 「・・・だってさ?
あたしがスペードの君、でいんだっけ?になったら
ハートの方の梨華ちゃんは、あたしのもんなんでしょ?
・・・大切にしないとね?」
「そーそー 奥さんみたいなもんなんだから〜
よっちゃんの思う通りにやればいいんだよ?
そしたら梨華ちゃんはさ、ちゃーんと付いてくるから、ね?」
・・・ね?って・・・
美貴ちゃんは超ご機嫌でニコニコしながら、わたしを見てる
会長がコイツに決まるのが、そんなに嬉しいこと?
コイツのどこがそんなにいいのよっっっ
すっごく腹黒いのよ?!・・・絶対、二重人格なんだからっ
- 720 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:39
- 「梨華ちゃん、なんか暗いなぁ〜 やっぱ、体調悪いの?」
とっても鈍い美貴ちゃんが、さすがに気にしてわたしの顔を
覗き込む
・・・いいわよ、いいわよっ 上等じゃないっっっ?!
なぁ〜んの問題もナイわっ!!!
コイツの傍にいてあげよーじゃないのっ!
今度はわたしが・・・わたしがこいつの弱点を掴んでやるんだからっ
そして、わたしの思い通りにするのっ!
そうよっ 尻に敷きまくってやるーーーっ!!!
- 721 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/19(水) 11:39
- わたしは頷いた時、下げてた頭をゆっくり上げると特別意識して
最上級に可憐な微笑みを浮かべると、ためらう素振りをしながら
差し出された手をそっと握った
「わたしでお役に立てるなら、どんな事でも言って下さいね?
・・・スペードの君」
「・・・どんな事でも?」
アイツが意味深に繰り返す言葉に、どくん、と心臓が大きく跳ねた
何をさせようっていうのよっ?
だけど・・・だけど、例えどんな無理難題でも受けてたってやるわ
・・・絶対に負けるもんですかっ!!!
わたしはメラメラと、目に闘志の炎を燃やしながら繰り返した
「えぇ、もちろん・・・これからは、どんな事でも言って下さいね?」
- 722 名前:Sa 投稿日:2004/05/19(水) 11:40
- 更新しました。
54@前作様
あんまし頼りにならない策士ですが・・・(w
そうですね〜ココでは藤本サンが一番マットウな人ですね・・・今んトコ
JUNIOR様
がんばってはいるんですが・・・可愛らしい(?・・・w)
いしかーサンのコトなんで・・・知恵熱出さないとイイんですけどね〜
- 723 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/19(水) 14:02
- 更新お疲れ様っす。
吉ってかなり策者ですね。
石にはがんばって欲しい。
「相手にとって不足なし」ですよ。
では、次回も・・・・・・(w
- 724 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:05
-
*** 暗中模索 ***
吉澤ひとみという人物
- 725 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:05
- この学園の短大は、高等部と同じ敷地内にあって、二つの校舎の間には
カフェテリアがあるのよ
いつもはわりと賑わっているんだけど、今日は人がいないみたい
わたしはアイスティーの食券を買うと、カウンターの奥に声をかけた
「すいませ〜ん」
「はい、はぁ〜いっ!」
白い七部袖のシャツを着た、髪の短めの女の子がオーバーじゃなくって
はちきれそうな笑顔を浮かべて、元気よく出てきた
うっわぁぁぁ〜〜〜 スッゴクかわいーっ!!!
・・・うちの短大の人?
でも・・・こんな先輩がいたなら、絶対大騒ぎよ?
わたしはニコッと笑うお姉さんの顔を食い入るように
見つめてしまった
そう言えば・・・美貴ちゃんが、カフェに新しく入ったバイトの
お姉さんが、どーのこーのって言ってたような・・・?
- 726 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:06
- 最近、わたしのレーダーは弱点探しの為に、アイツに向きっぱなし
だったから・・・
あの時、美貴ちゃんなんて言ってたんだっけ?
「えぇーっと?食券下さぁーい!」
「あっ・・・ごめんなさい」
ぼぉっと、お姉さんの顔を見続けてたわたしは、慌てて食券をカウンターに
乗せた
「はーい アイスティーねぇ?」
お姉さんはニコニコと笑ったまま、素早くアイスティーを作ると
カウンターに載せた
「ほいっ おまけ!」
お姉さんはオレンジの輪切りをグラスの淵から落とし入れて
またニコニコッと笑顔を広げる
「あ・・・ありがとうございます」
「ココのアイスティー、トロピカルフレーバーだからオレンジ入れて
潰すとー 香りがよくなるのだ〜 お試しあれっ!」
- 727 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:06
- わたしはペコンと頭を下げると、アイスティーを持って、窓際の
席に座った
カフェに来るのなんて久しぶり・・・
わたしは小さく溜息をつく
ちょっと前までは、生徒会室がわたしの一番お気に入りの場所だったから
そう、アイツが会長になるまでは・・・
二週間程前、アイツが会長を引き受けるって言った時
引っ付いてて、弱点を見つけてやろうって思ってた
だけど・・・だけど、アイツ・・・
弱点がナイのよぉぉぉ〜〜〜
あーーーぁ、わたし何やってるんだろ?
アイツはなんだか、なんでも一人でこなしちゃって、無理どころか
わたしになんにも言いつけたりしないし・・・
その割に美貴ちゃんや、ごっちんとは気が合うのか日増しに仲良く
なってく感じで・・・
つまんな・・・って、違うわよっ?!
アイツと仲良くなりたいんじゃなくって、除け者みたいにされてる
のが、シャクにさわるの
- 728 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:06
- あーーーぁ・・・
なんだか冴えない気分
わたしはアイスティーを一口飲むと窓の外を見た
あれっ?・・・アイツだっ!!!
アイツは辺りをチラチラと気にしながら、短大の校舎へと続く裏道に
入って行く
・・・なんだか怪しくない?
裏道は舗装されてなくて、雑草が生い茂ったりしてるのに・・・
あの道沿いにあるのって、用具室くらいだわ
だから、使う人はほとんどいなくて・・これは、なにやら秘密の香り?!
わたしはバッと立ち上がった
グラスをカウンターの返却口に置いて、カフェを出ると同時に走り出した
- 729 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:07
- わたしは裏道を足音を忍ばせながら、ズンズン進んで行った
バタバタ走って見つかるわけにはいかないけれど、気が焦って
つい早歩きになってしまう
だって・・・こんなチャンス・・・
逸る気持ちを抑えながら、普段あまり使われていない用具室の前を
通りかかった時、その角の先から押さえた声がした
「・・・こんな所にいたの?・・・探したよ」
や、やっぱりーーーっ!
誰かと待ち合わせしてたのねっ?!!!
わたしは壁に背中を付けると、身体中の神経を耳に集中した
バサッと伸びた雑草の上に腰を下ろす音がする
- 730 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:07
- ・・・ドキドキドキ
「・・・こっちにおいで?」
あわわわわ・・・なんだか、なんだか・・・
わたしはゴクンッと唾を飲み込んだ
「・・・逃げないで、ほら、おいでよ?ここに・・・」
わたしの頭の中に、いつかの生徒会室での光景が甦ってくる
また・・・またっあんなことするつもりなのねっ!
わたしだけにじゃなかったのっ?!!!
なんだか・・・なんだかっ無償に腹がたってきたっっっ
「・・・いい子だね?・・・好きだよ
アハハッ・・・くすぐったいって、どこで覚えたのさ、そんなキス・・・」
キキキキスゥゥゥ〜〜〜?
- 731 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/20(木) 10:08
- ムッカーーーーッ!
神聖なる学園でっ なにをイチャイチャしてるのよっ!!!
わたしは相手の顔を見てやろうと、ズリズリと横歩きした
その時、わたしが背中を付けていた用具室の引き戸がミシッと
音を立てた
やっ・・・やっばーーーいぃぃ
ガタタンッ!!!
引き戸が軋むように更に大きな音を立てた
「・・・誰?・・・誰かいるの?」
・・・ひ、ひぇぇぇ〜〜〜
立ち上がって、こっちに向かってくる足音にわたしは目をギュッと
閉じると身体を縮こませた
- 732 名前:Sa 投稿日:2004/05/20(木) 10:08
- 更新しました
雨ですねぇ〜
JUNIOR様
毎回のレス、ホント励みになりマスッ ありがとーゴザイマス!
そうですね〜 ガムバッテ欲しいです、色んなイミで…(w
- 733 名前:吉作 投稿日:2004/05/20(木) 13:41
- 初めまして♪
面白いですね(O^〜^)頑張って下さい☆
- 734 名前:コナン 投稿日:2004/05/20(木) 15:00
- 更新お疲れさまです。
Saさんお久しぶりですmm(_ _)mm
いいっすね〜石川さんが一人でキリキリしてるのもw
余裕の吉澤さんがかっけぇぇ〜す!
また楽しませてくださいね。
(台風が関東に来る?らしいっす??)
- 735 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/21(金) 01:11
- 更新お疲れさまっす。
夜分遅く親に隠れてみています。(苦笑)
石川さん暴走してますね(w
カッカしてると体に良くないですよ、クィーンさん。
では、お邪魔しました♪
- 736 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:12
- 「・・・なにしてんの?・・・こんなとこで?」
アイツの呆れたような声に、わたしは恐る恐る目を開けた
それはこっちのセリフよっ!
って言い返したいとこなんだけど・・・
わたしはオドオドとアイツを見上げた
・・・なんて答えればいいのぉぉぉ
まさか、後付けて盗み聞きしてましたぁ、なんて言えないし・・・
「・・・いま、ヒマ?」
・・・はい?
- 737 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:12
- なにぃ?・・・まさか、逢引きの相手をわたしに紹介でもしてくれる
つもりなのかしら???
・・・そりゃ、興味あるけどぉ〜
わたしが眉をよせつつ頷くと、アイツはチョイチョイって
人差し指で呼びながら、用具室の角を曲がる
・・・いいの?・・・ほんとにいいのぉ???
ヤだ・・・ドキドキしちゃうじゃないっ
わたしは小さく深呼吸すると、アイツの後について行った
- 738 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:12
- アイツはボウボウに伸びた雑草の上に座りながら、わたしを
振り返った
「・・・こっち来て」
・・・・・・???
あれ?あれぇーーーっ?!
誰もいないよぉ〜〜〜 なんでっ?!
コイツったら一人でしゃべってたのかしら???
わたしは辺りを見回しながらアイツの傍へ寄って行った
ンナァァァ〜
・・・へ?・・・猫???・・・どこっ?!
わたしが左右に素早く首を振ると、アイツがハハハッと笑い声を上げる
「だからこっちだって・・・」
- 739 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:13
- わたしがアイツの横まで行って座っている足元を見ると、アイツの
組んだ胡坐の上で、ほんとに、ほんとにちっちゃな子猫が丸くなっている
うっ!・・・うわぁ〜〜〜
「か・・・かわいいぃぃーーーっ」
わたしはアイツの横に座り込むと、子猫を覗きこんだ
「どうしたのっ?!」
「うーん・・・捨て猫?
こないだカフェで茶ぁしてたら偶然見つけてさぁー
も〜 一目惚れってヤツ?・・・可愛いだろ、コイツ・・・」
アイツが喉を撫でると、子猫はゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らした
そんな子猫を見て微笑むアイツの顔は・・・
なんだか・・・なんだか・・・すっごく優しそうで・・・
わたしの胸の奥で、ふいにコトンって小さな音がした
- 740 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:13
- 「・・・コイツさ?・・・あんたに似てない?」
・・・え?
アイツは・・・今まで見たこともない優しげな微笑みを浮かべたままで
わたしを見た
ドキンッ・・・ドキ・・・ドキ、ドキ・・・
ヤ、ヤだっ!!! どうしたっていうのよ?!
わたしは自分の顔がどんどん赤くなってくのを感じて焦った
なんで急にそんなこと言うの?
なんでそんなに優しく笑ったりするの?
なんでわたしはアイツの笑顔にドキドキしてるの?
なんで・・・なんでわたしの顔は、赤くなってくのーーーっ?!
- 741 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:14
- わたしはアイツに見られていることが、どうしようもなく恥ずかしく
思えてきて、プイッと横を向いた
「・・・どこがよっ?!」
「・・・知りたい?」
抑えた感じのいつもより低めのアイツの声が耳に響いて・・・
なんだか・・・すっごく耳に残って・・・
ドクンッ!!!・・・ドクドクドク・・・
もうダメッ!・・・なんだかわからないけど、この動悸・・・我慢出来ない
- 742 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 13:14
- わたしは、すっくと立ち上がるとアイツから目を逸らしたまま
言い捨てた
「いいっ!知りたくないっ!!!」
そしてそのまま、逃げるみたいに走り出した
・・・ハァハァハァ
走って走って、立ち止まると眩暈がした
たった今、走って来た道を振り返ったら、泣きたいような気持ちがした
そしてそれが・・・なぜだかわからないことが、心細くて、なんだか怖くって
わたしは本気で泣きたくなった
- 743 名前:Sa 投稿日:2004/05/21(金) 13:15
- 更新しました
吉作様
初めまして〜 お越し頂けてうれすぃ〜です♪
面白いと言って頂けると書いてて良かったなぁ〜と(w
コナン様
お久ですなぁ〜 お元気でしたか?
いいっすかね? コンナンで良かったらドゾ楽しんでやって下さいませ(w
JUNIOR様
アハハッ! カゲの努力の上、毎日お越し頂いてアリガトーです♪
うぅ〜ん?ナゼか暴走イメージの濃い方なんですよね・・・(w
- 744 名前:54@前作 投稿日:2004/05/21(金) 18:18
- 更新、お疲れ様です。
ドキドキしながら読ませていただいてます。
イイっすねぇ〜、It's Perfectな吉澤さんw
策士策に溺れた石川さんですが、やっぱりこうなりましたね。
だんだん女房役が板に付いて来るんでしょうか。
次回も楽しみです。
- 745 名前:Sa 投稿日:2004/05/21(金) 22:06
- 始めに…
スレの残りがかなり微妙なので、ラストまで上げさせて頂きます
本来なら二回更新にわけて、最終回のお知らせもしたかったのですが・・・
読みの浅い作者のこと、驚かれた方は、どうぞお許し下さいませ(ペコリ)
- 746 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:08
-
*** 心機一転 ***
・・・そして、石川梨華の新しい日常
- 747 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:10
- ・・・あれから一週間
わたしは落ち着かない日々を過ごしていた
なぜって?・・・それはわたしが聞きたいくらいよぉ〜
わたしは生徒会室で、美貴ちゃんとアイツが楽しそうに
話してるのをチロチロ盗み見てる
わたしが好きなのは美貴ちゃんよっ!
それなのに、わたしの目は・・・気づくと・・・気づくと
・・・アイツを追ってるの
・・・どーゆうこと?
アイツが笑い声を上げながら、頬杖を付いてた顔を上げた
バチッと目が合って、わたしはバッと目を逸らすと、意味もなく
鞄の整理なんかしてみる
なにやってんのよーーーっ! ・・・わたし・・・
- 748 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:12
-
「美貴さぁ〜ちょっと喉渇いたから、カフェ行ってくんねっ!」
そう言えば・・・
最近、美貴ちゃん・・・よくカフェに行くわよね?
「・・・あのバイトのおねーサン、亜弥ちゃんだっけ?
可愛いよねー ね〜ぇ?ミキティ」
アイツのからかう様な声に、わたしが鞄に向けていた顔を上げると
美貴ちゃんはなんだかしまりのない顔で、ダハハ・・・って笑ってる
「んじゃ、行ってくるねーーーっ」
美貴ちゃんが満面の笑みでスキップしそうに弾んだ足取りで出て行くと
アイツがニヤニヤしたまま、わたしを見た
「わかりやすいな〜 ミキティって・・・ねぇ?」
- 749 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:12
- ・・・???・・・
「あれは・・・惚れてるね・・・」
アイツはポツリと呟いた
・・・惚れてる?
誰が・・・誰に・・・???・・・?!!!・・・
「ぇええぇぇぇーーーっ!!!」
わたしが素っ頓狂な叫び声を上げると、アイツは耳を塞いだ
「・・・超音波みてー てかあんた、気付いてなかった、とか?」
わたしは呆然として、アイツを見た
うそぉ〜・・・うそうそうそ・・・すっごいショック・・・
・・・・・・・・・・・あれぇ
- 750 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:13
- あれ?・・・あれれ???
なんで?・・・なんで、なんで???
すっごくショックを受けてるのに・・・なんか悲しくないよ?わたし???
・・・可笑しいじゃないっ?!
自分の好きな人が、他の人が好きで悲しくならないなんて・・・
そんなのって、ありえないよっっっ
今まではどうだった?
・・・・・・・・・・・
・・・ダメだわ・・・だって、美貴ちゃんが誰かを好きになったとこなんて
見たことなかったもの
一方的に想いを寄せてる子はいたけど・・・わたしが影で邪魔したり
美貴ちゃんも相手にしてなかったみたいだし・・・
- 751 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:13
- 「ねー?・・・なんで百面相してんの?・・・そんなショックだったわけ?」
・・・そりゃ、ショックだよ
だけどそれは・・・
なぜだか、傷付いてないわたし自身がショックなの
・・・もうわたし・・・自分で自分がわからない
そう思ったら急に、喉の奥と目の奥がカァッと熱くなってきて・・・
気づくとわたしは・・・涙なんか零しちゃってる
「・・・好きだった、とか?」
アイツはアイツで珍しく、気づかうような、やたらと温かみのある
優しい声なんかで聞いてくるし・・・
わたしは頷いたらいいのか、それさえもわからなくなってきちゃって
余計に悲しくなってきた
- 752 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:14
- アイツは立ち上がると、わたしの椅子の向きをズズズと変えて
目の前にしゃがむとわたしを見上げた
「・・・あたしがいるじゃん?
てか・・・寂しいと思う時は、あたしを呼びつければいーっしょ?」
「・・・うっ・・・ヤだぁ〜〜〜・・・なんでぇ・・・そんな、優しいこと言うのぉ・・・」
「嫌なの?・・・じゃ、いーわない」
アイツはニヤリと笑うと、立ち上がって、わたしの頭をポンポンと
叩いた
・・・反則だよっ
・・・こんな時に優しいなんて・・・
ほんとに・・・ほんとにズルいんだからっっっ
・・・嫌いで・・・いれなくなっちゃったらどーしてくれるのよっ?!
いつの間にか、頭の上に置かれてた手が優しくわたしの頭を撫でていて・・・
もし、わたしがあの子猫だったら、きっと喉をならしてるんだろうな
なんて、ぼんやり思いながら、わたしは鼻をすすり上げた
- 753 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:14
-
− 次の日の放課後 −
- 754 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:15
- 生徒会室には、まだ美貴ちゃんしか来てなくて、わたしは思い切って
聞いてみることにした
・・・ゴクンッ
キャスターを見ながら、何かのファイルを探してるみたいな美貴ちゃんの
後ろにわたしは立った
「・・・あのね、美貴ちゃん・・・」
「・・・ん?」
振り返ろうとする美貴ちゃんに、わたしは慌てて言った
「そのままでいいのっ・・・探し物しながらで・・・あのね・・・」
「・・・うん、今年の運動部の予算案のファイル・・・ここだよね?」
「・・・だと、思うよ?・・・それで、ね、美貴ちゃん・・・美貴ちゃんは
あの・・・あの、カフェのお姉さんが好きなの?」
美貴ちゃんのファイル名を確認している指先が止まった
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・うん、そう・・・だね・・・好きなのかなって、思うよ」
「・・・そう」
・・・寂しい、と思った
- 755 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:15
- だけど・・・やっぱり、なぜだか悲しいとは思えない
それよりも・・・
もしも、もしも本気で美貴ちゃんが、あのお姉さんを
好きになったのなら・・・上手く行って欲しい、と思ってた
だって・・・だってやっぱり、ね?
美貴ちゃんにはキラキラの笑顔が似合うって思うから・・・
「・・・あった」
美貴ちゃんが指先でファイルを引っ張ると、それを取って振り返った
「・・・美貴が梨華ちゃんから離れてくみたいで寂し?」
「・・・ん・・・寂しいよ・・・だってわたし、美貴ちゃんが好きだもんっ」
「美貴も梨華ちゃんが好きだよ?・・・ちっちゃい時から、ずっと変わんないよ
大好きなまんまだから・・・」
- 756 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:16
- わたしは笑ったんだけど、戸惑ってるように思わず眉を寄せてしまう
「うん、ありがと・・・だけどね?・・・わたし
・・・わたしのこの美貴ちゃんへの気持ちはね?・・・恋だと思ってたの
ずっと、美貴ちゃんのこと独り占めしたいって思ってたし・・・」
「アハハッ・・・梨華ちゃん、それは勘違いだよ」
「勘違い?・・・どうして?!」
「・・・うぅ〜ん、美貴達、姉妹みたいなもんじゃん?・・・シスコン、ての?
わたしのお姉ちゃん、取られたくなーいっ・・・みたいな感じ?」
「・・・同じ年じゃない・・・」
「んじゃ、大切な妹に手ぇ出さないでよーーーでもOK!」
「・・・だからぁ〜 同じ年だってぇ」
美貴ちゃんはふざけた口調で、そう言ったけど・・・
その言葉を聞いてたら、わたしはふいに、熱いものが込み上げてきそうに
なって、瞬きを繰り返した
美貴ちゃんは、そんなわたしを見ながら、目を細めて優しく笑うと
ファイルをテーブルにポンとのせて、ふわりとわたしを抱きしめた
「・・・ね?梨華ちゃん・・・美貴にこうされてドキドキする?」
- 757 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:16
- わたしは美貴ちゃんの匂いに包まれると、なぜだか急に子供の時の
ことを思い出したりした
わたしがいじめっ子に泣かされると口ベタだった美貴ちゃんは
こうしてギュッてしてくれたよね?・・・わたし、それで安心出来たんだよね?
美貴ちゃんの体温は温かくて・・・わたしは一人じゃないって思えて・・・
今もそう・・・そんな感じ
「・・・なんか安心する・・・ママみたい・・・」
「いきなり・・・ママ、ですかっ?」
美貴ちゃんは情け無さそうに・・・ダハハと笑うと腕の力をちょっとだけ
強くした
「わかる?梨華ちゃん・・・美貴達の好きって、そういう好きなんだ
美貴はさ、今も、昔みたく梨華ちゃんを泣かせるヤツがいたら
助けてあげたいって思ってるよ・・・梨華ちゃんにはね?いつでも
笑ってて欲しいから・・・
だけど、亜弥ちゃん・・・あのカフェの子はね?
美貴が笑顔にしたいんだ・・・もし、笑顔にさせてあげることを
続けることが出来なかったとしても・・・それでもやっぱり・・・
美貴が傍にいたいんだ」
- 758 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:16
- 「・・・うん、わたしも美貴ちゃんには笑ってて欲しいよ・・・」
「ハハ・・・なんか照れちゃうよねー・・・こんなこと言い合うの
・・・だけど、それはさ? お互いに、こういうのがわかる時が来たって
だけのことなんじゃないかなって美貴は思うよ・・・それに
案外さ、梨華ちゃんの恋の相手もすぐ近くにいるかもしれないしね?」
その時、ドアがガチャリと開く音がした
わたしがビクッとして振り返ろうとすると、美貴ちゃんは腕に
ギュッと力を入れて、耳元で・・・バイバイ、梨華ちゃん、と囁いた
・・・バイバイ・・・って?
美貴ちゃんの腕から力が抜けて、自由になったわたしが振り返ると
そこにはアイツが立っていて・・・
なんだかムッとした顔して美貴ちゃんを睨んでた
美貴ちゃんはニヤッと笑うとドアの方へ歩いて行く
- 759 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:17
- 「・・・悪いねぇ〜 ま、美貴達、幼馴染だしぃ?特別だしぃ?」
美貴ちゃんはそう言って、アイツの肩をポンポンと叩くと
そのまま、出ていってしまった
アイツはなんだか怖い顔のままで、今度はわたしを見た
「・・・上手く行ったわけ?」
「・・・え?」
「だーかーらぁ・・・ミキティに告ってたんだろ?」
なんだろ・・・なんだか・・・怒ってる?
わたしがアイツの顔をジィッと見つめると、アイツの白いほっぺたに
うっすらと赤味がさしてきた
なんだろ・・・なんだか、今度は・・・照れてる、みたい???
- 760 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:18
- 「あぁぁぁーーーっ!もうっ!!!」
アイツは急にそう叫ぶと、ツカツカとわたしに近寄ってきて
ヤケクソになったみたいに、乱暴にわたしを抱きしめた
ドキンッドドドド・・・
そしたら・・・そしたらね?
さっきはあんなに静かだった、わたしの心臓が急に大騒ぎを始めたの
え、え、えと・・・み、美貴ちゃぁん
これが・・・これが、ドキドキしてるってことなのぉぉぉ〜?
・・・じゃぁ、わたし・・・わたしの恋の相手って?
− 好き、なの?−
わたしが自分の胸に問いかけたつもりの呟きに、なぜだかアイツが
ぶっきらぼうに答えを返してくる
「・・・鈍いんだっつーの」
・・・へ?
・・・あ、あのぉ〜〜〜
・・・それは・・・つまり・・・その・・・えぇ〜と・・・ハァ
- 761 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:18
- ・・・アイツが・・・わたしを???
・・・ってことなの?・・・うそぉ〜・・・うっそだぁ・・・ほんとにぃ?
でも、なんでだろ???
わたしは身じろぎしながら、アイツの赤味がさしてきてる目許を
覗きこんだ
「・・・なんで?」
「・・・知らねーよっ!・・・変なとこ、突っ込むなよ」
ハァ〜・・・そうかぁ〜・・・そういうもの・・・なんだ?
ピッタリくっついてるアイツの身体からは、わたしと同じように
ドッドッドッ・・・って、強く心臓が打つ音が伝わってくる気がする
恋って・・・恋って、なんてせっかちなんだろう?
理由を考えたりだとか・・・策を練ってる時間なんてないみたい・・・
たぶん、それは・・・心の音が決めるんだ
他の人といる時には、けっして鳴らない大きな音で教えてくれるから
・・・この人が、あなたの特別な人ですよ、って・・・
わたしは小さく息を吸い込んだ
- 762 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:19
- 「・・・美貴ちゃんに言われちゃった」
「・・・なんて?」
「わたしの美貴ちゃんへの気持ちは恋なんかじゃないって
・・・それで、わたしの恋の相手は・・・」
「・・・相手は?」
わたしに回してた腕を解くと、真っ直ぐにわたしを見るアイツは
やたらと真面目な顔をしていた
「・・・案外、すぐ近くにいるんじゃないかって・・・それでわたし・・・
考えてみたの・・・その相手って・・・」
わたしがアイツの目をジッと見つめると、その目が答えるように
熱っぽく煌いた
「・・・今まで気づかなかったけど」
「・・・うん」
アイツがゴクッと喉を鳴らした
こんなに真剣な顔してるのって初めて見たよ・・・なんだか、びっくり!
その時・・・
わたしの頭がピカーンッと閃いた
- 763 名前:問題ナイぜぇ! 投稿日:2004/05/21(金) 22:19
- 「それって・・・ごっちんのことかな?って・・・」
「・・・ハァ???」
アイツがあんまり間の抜けた顔をするから、わたしは我慢出来なく
なっちゃって・・・
「・・・ブッ・・・フ、フフフ・・・」
アイツは笑い出したわたしを睨みながら、咳払いを一つした
そして意地悪く微笑むと、スッと目を細めた
「ふぅ〜ん・・・やってくれるじゃん?」
そう言いながら、アイツはわたしの顎を捕まえて素早く唇にキスをした
・・・?!!!・・・
驚いて目を見開くわたしに向かって、アイツは何もなかったみたいに
平然とした顔して、こう言い放った
「・・・なにか、問題でも?」
そして無敵に微笑みながら、今度はゆっくりと・・・手を伸ばしてきた
END
- 764 名前:Sa 投稿日:2004/05/21(金) 22:22
- 更新終了致しました
54@前作様
ドキドキって素敵ですよねぇーーーっ!!!
作者は、いしかーサンと吉澤サンが絡んでいると、ワケもなく
ドキドキしますが・・・(w
楽しみにお待ち頂けるほど、ハナシが続かなくて申し訳ないですっ!
そして、最後に・・・
このスレッドでの作品を最後まで書上げることが出来て、心からホッとしております(w
これも一重に、このスレに来て頂いた方々、レスを下さった方々に支えて頂けたからだと
深く感謝しております
お気に召さない作品も多々あったかとは思いますが、最後までお付き合いして下さった
皆様に心から、お礼申し上げます
本当にありがとうございました(ペコリ)
Sa
- 765 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/21(金) 22:31
- 完結おつかれさまです。
いしよしはもちろん、石川さんと藤本さんの関係がステキでした。
お礼を言うのはこちらのほうです。
たくさん楽しませていただいたのでこのスレは永久保存版です。
えーこれからも楽しみにしてます。
- 766 名前:JUNIOR 投稿日:2004/05/22(土) 01:39
- 本日2度の更新&完結お疲れ様です。
またまた深夜にお邪魔します。
やっぱKINGは無敵っすよね。
そしてQEENは・・・・・・w。
気に召さない作品はありませんよ。
Saさんの作品は全て大好きっす。
では、また会える日まで(ペコリ)
- 767 名前:ちゃみ@これからも追っかけ 投稿日:2004/05/22(土) 05:19
- 完結、お疲れ様です。
いつ読ませて頂いても、saさんの作品は心が幸せに成ります。
気に召さない作品なんて有ろう筈が有りません。
これからも追っかけをやらせて頂きますので
その節は宜しくです。
- 768 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/22(土) 14:58
- 完結おつかれさまです!
初めてレスさせてもらいます。
このスレでSaさんの小説に出会ってハマって
以前の作品も読ませていただきました。
石川さんと吉澤さんはもちろん登場人物がみんな素敵だし
心象描写が素敵でどれも大好きな作品です。
またどこかでSaさんの小説が読めればうれしいです。
- 769 名前:Sa 投稿日:2004/05/25(火) 21:44
- レスを下さった皆様、本当にありがとうございます
頂いたレスが作者のパワーのモトなのです
変則的ですが、お礼のイミを込めて短編を上げさせて頂きます
これからも、どこかで作者を見かけたらお声をかけて下さいませ(ペコリ)
- 770 名前:ピンク☆パワー 投稿日:2004/05/25(火) 21:47
- 「・・・言ったんだなぁ〜」
アタシのシミジミとした口調に、受話器の向こうから
高い笑い声
「あははっ!言いましたともっ!!!」
帰宅時間を見計らって、彼女に電話した
もちろん・・・心配して・・・のハズだったんだけど
カラカラと陽気に笑う声を聞いてたら、実はアタシの方が声を
聞きたかったんだって、気がついた
いつからこんなに強くなったんだろう?
ねぇ?・・・アタシの可愛い人は
- 771 名前:ピンク☆パワー 投稿日:2004/05/25(火) 21:47
- 「もう・・・ほんとはね?昔ほどこだわってる訳じゃないんだ
だけど、この色はあたしにパワーをくれるからっ!
ずっと一緒に頑張ってきたんだもん」
自分のピンクの服を見て、そう笑ってたのって、いつ頃の話だっけ?
「かっこいい卒業にするからよろしくぅっ!」
受話器から聞える声は、日付も変わったって言うのに
なんてテンションが高いんだ・・・
だけど・・・そうだね?
アタシだって負けてらんない・・・クヨクヨしてる場合じゃねー
実は繊細なんですよ〜・・・なんて普段は全部シャレにしちゃって
ホントのアタシなんて、この受話器の向こうの彼女だけが
知っててくれたらいいことなんだから
- 772 名前:ピンク☆パワー 投稿日:2004/05/25(火) 21:48
- 急に声のトーンを落として、彼女が言った
「・・・一年なんて、きっと、あっと言う間だね?
だけど・・・だけど、娘じゃなくなったって、あたし達は
離れない・・・そうでしょう?」
一度だけ、彼女と距離を置こうかと思ったことがあった
彼女は娘の中心になろうとしてたし、アタシとのことが
彼女の支えじゃなくなって、足枷に変わる気がして・・・
アタシの想いがシャレになんないくらい重い気がして・・・
その時、何かを感じた彼女がアタシに言った言葉
「・・・あたしのことを嫌いになったならしょうがないけど
他の理由なら、離れないで・・・ずっと離れないで」
アタシは何も言えなくなって、彼女の髪をグシャグシャと撫でた
- 773 名前:ピンク☆パワー 投稿日:2004/05/25(火) 21:49
- ふぁぁぁ〜と、受話器の向こうこら欠伸が聞えた
「・・・寝よっか」
「う〜ん、それよりぃ・・・欠伸しちゃうあたしもあたしだけど」
「んー?」
「・・・たまにはなんか言いなさいよ?・・・あたしに言わせるばっか
じゃなくって!」
アハハ・・・答えてないの気づいてた?
バカだなーってアタシは思う・・・重すぎるから口に出せないんだよ?
アタシのあなたへの想いは・・・
だけど、たまには言ってみるか?・・・こんな夜くらいは
「・・・あなたが、アタシのパワーのモトだよ」
「はぁ?なーにぃ?ソレ!」
彼女の高い笑い声が、耳に心地よく響いた
これで、明日も頑張れそうだ、とアタシは思った
END
- 774 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/25(火) 23:23
- 更新乙です。
私もSaさんからパワーを頂いております。
そしてピンクな彼女のパワーは偉大だとつくづく感じています。
- 775 名前:54@前作 投稿日:2004/05/26(水) 11:31
- 遅れ馳せながら「問題ナイぜぇ!」完結、お疲れ様でした。
ここの大人な藤本さんのキャラがすごくイイ感じでナイスです。
黄金の85年組が眩しい限りですね。
そして結局、策士策を講じる間もなく陥落してしまいましたねw(いや、敵を絡め取ったとも言うか)
そして「ピンク☆パワー」、ほのぼの和みました。
「離れないで」発言はここに繋がって来るのかと納得です。
これからも素敵ないしよしワールドを楽しみにしています。
- 776 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 00:06
- ho
- 777 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 10:10
- ochi
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