愛するトメっち
- 1 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:28
-
思いがけず、お話の途中で引っ越しとあいなりました。
一番スレの数が少ないようでしたので、また雪版でお世話になりまする。
前スレ、こちらです↓。
『記憶より彼方で』『かわいいあの子』『ジェラシー』『愛するトメっち』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/snow/1070181553/
初めてご覧になっていただいた方、前スレ>>406からお読みくださいませ。
前スレからお世話になっている皆様、
これからもご愛顧のほど、よろしゅうお願い申し上げます。
それでは『愛するトメっち』、続きでございます。
- 2 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:29
-
さてさて、「今度」のチャンスがやってきた。
トメっちのお母さんは、この週末、商店街の温泉旅行。
つまり、あたしたちは今夜二人きり。
もう何百回も来たことがあるピンクまみれのトメっちの部屋。
そのベッドに腰かけて、あたしはかつてない緊張に肩が凝ってきた。
はー、いやー、なんか。なんだかねぇ。
いやいや、まだ明るい時間だから、焦っちゃいかん。
隣にちょこんとトメっちが寄り添ってくる。
なんだか照れくさくて、あたしはつい心にもないことを言ってしまう。
「オエー、ピンクばっかで吐き気するっ」
「なによお!別にいいでしょっ!」
ベシッ!
痛ってぇ、なんでトメっちって、こう手が早いの?
はたかれた肩をさすりながら軽ぅく睨む。
すかさず睨み返してくるかと思ったら、トメっちは赤くなってうつむいた。
あれ?
なんか調子くるうなあ。
なんだかあたしまで照れてきちゃう。
- 3 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:30
-
うーん、ホントにあの日の大胆な石川梨華はどこに行っちゃったんだろう?
トメっちって不思議な子だ。いろんな顔を隠し持ってる。
あたしがジッと見つめるから、トメっちは恥ずかしがって、まだ顔をあげない。
いや、待てよ?
もしかして、これって“いい雰囲気”ってやつなのかも。
よ、よし。ここはムードに乗って……
あたしは、トメっちの肩に手を置いて、そっとベッドに横たえた。
真上からゆっくりキスをする。
探るようにそっと舌を入れる。
かすかに動揺するトメっち。
もちろん、あたしもドキドキしてる。
えーと、なるべくさりげない感じで唇を首筋へ……。
「だ、だめっ!」
ぐき。
両手で顔を押し返された。いてー……。
「なんで?」
「……汗、かいてるし」
「そんなのいいよ」
「……明るいし」
「…………」
ううっ、今日は二人きりなんだし、いいかなと思ったんだけど……。
- 4 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:31
-
「だめ?」
「……だめっていうか……」
トメっちが言いよどむ。
だめっていうか?
「……恥ずかしいっていうか……」
うがっ! 何をいまさらこの女は!
あの時はあんなに!
あんなふーに、あたしを誘ったくせに!
ベッドにブン投げて、ずんずん迫ってきたくせに!
くっ、くっそおぉーーーーーぅ!
「あたしはトメっちとやりたい」
「!?!?!?!?!?!?!?」
そのものズバリなあたしの言葉に
トメっちは目を真ん丸に見開き、ガチンと硬直する。
- 5 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:32
-
「だめ?」
「…………」
火を吹かんばかりに赤くなりながらも、トメっちはギュッと目をつむった。
これってOKだよね? OKってことだよね? よ、よし……。
ピンポーーーーーーーーーーン♪
「石川さーん、お醤油持ってきましたぁ」
「あ、三河屋さんだ!ハーイ!」
くうっ。
もう三河屋なんかで買物しないんだからなあっ!
◇ ◇ ◇
- 6 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:33
-
ほんとうにやらなきゃいけないのか、わざとなのか、
お店でこまごまとした片づけものをした後、やっとトメっちは戻ってきた。
待ってましたとばかりに抱き寄せると、腕のなかでかわいらしく首をかしげる。
「お腹すかない?」
「んー、ちょっとね」
「じゃあ、お夕飯の準備しようっと!」
ひらっと逃げてしまった。
やっぱわざとか。わざとなのか、オイ。
トメっちがつくってくれたのは、ペスカトーレとかいうパスタだった。
ちゃぶ台で食べるのにご丁寧にギンガムチェックのランチョンマットが敷いてある。
なんかこういうの気恥ずかしいっていうか、かわいらしいっていうか。
「へー、トメっちって洋食もつくるんだ」
「なによ洋食って。イタリアンとか言いなよ〜」
トメっちがケラケラ笑う。
- 7 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:34
-
「おいしい?」
「うん、最高だよほ!」
「あ、ゆで卵もあるんだよー。食べる?」
「食べる、食べるー!」
「じゃあ、カラむいてあげる!(^▽^ *)」
「(* ^〜^)ウヒャ!」
やだ〜、なんか新婚さんみたいじゃ〜ん。
こういうのっていいよねぇ〜。たまんないよねぇ〜。でれでれ。
それに、なんだかすっごくおいしいよ。
思いっきり食べて、笑って、はしゃいで夜が更けていく。
神様、こんなあったかい時間が、
ずっとあたしたちに訪れますように。
- 8 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:34
-
夕食を終えた後の部屋は、ちょっと寂しく感じた。
やけに静かな空気がトメっちとあたしの間に横たわる。
「お、音楽かけよっか」
「う、うん」
「何がいい?」
「や、何でも」
シーーーーーン。
「お、お風呂入る?」
「トメっちの後でいいよ」
「だめ、よっすぃ〜はお客様なんだから」
「じゃあ遠慮なく。……てか、一緒に入る?」
「バカ!」
タオルとパジャマが飛んできた。
それから真新しい歯ブラシも。
これって、ここに置いといてくれるつもりなのかなあ。
なんか照れる。
なんだかすべてがぎこちないあたしたち。
ガキの頃から一緒にいるくせに、一歩進むのをずっと躊躇してきた。
女友達だから、それを望むのはおかしなことだと思ってた。
あたしを覆っていた硬くて厚いヨロイ。
脱いでしまったらひどく頼りないけど、
でも、生身のままで強くなりたい。
シャワーを浴びながら、そんなことを考えた。
- 9 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:36
-
ピンクのパジャマを着たトメっちが濡れた髪を乾かしてしまうと、
あたしたちはもうベッドに入るしかすることがない。
いつまでもぐずぐずしてるトメっちの手を引いて、あたしはベッドに連れていく。かっけー☆
とかいって内心かなりドキドキもの。
やっぱ、やめとこっかなあなんて思う。
でも。
やっぱりあたしは確かめたかった。
トメっちが本当にあたしの恋人になったことを、
この体で、全身で確かめたかったんだ。
それにしても。
二度目だっていうのに、トメっちはまるで別人みたいに緊張してる。
どうなっちゃってるんだろう一体。
あたしは不思議に思って訊いてみる。
「だって、あ、あの時は特別っていうか、非常事態っていうか……夢の中みたいな感じだったし」
パジャマの前を両手でしっかり押さえながら、そう答えるトメっち。
夢の中かぁ。確かに夢のような夜だった。
あまりにも胸が熱くて舞い上がってて、
でも、いきなり醒めちゃったらどうしようって怯えてた。
- 10 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/21(水) 22:36
-
「今は現実?」
「……うん」
「じゃあ、現実のトメっちを見せて」
あたしはトメっちの両手首をつかんでゆっくり広げると
パジャマのボタンに手をかけた。
- 11 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/21(水) 22:41
-
本日はここまでといたします。
明日はsage進行いたします。……賢明な皆様にはおわかりですね?
明日は18歳未満の方、エロ描写がお嫌いな方は
けっしてこのスレを覗いてはなりませぬ。
明日の更新分を読まなくても、
その次の更新はさしさわりなく読めるようにいたします。
ちなみに、明日の次の更新は、雪ぐま北海道に出張のため
来週の火曜日となりますのでご了承ください。
- 12 名前:前スレ500 投稿日:2004/01/21(水) 22:44
- お引越し、お疲れ様です。
明日はsageね。
了解っす!
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 22:46
- ぐぎゃあぁぁ!!
いいところで更新終了…。
明日が待ちどうしいです。
- 14 名前:名無し23。 投稿日:2004/01/21(水) 23:44
- 更新、乙でございます。そして新スレおめでとうございます!
追いかけて来ました、ピッタリとw
そろそろかなと思っていましたが、いよいよ2スレ目に入りましたか・・(遠い目)
「記憶より彼方で」の冒頭部分のようなせつなさも失わず、思いっきりいしよしテイスト
なところが大好きなのれす♪
そしてついに!ええか、ええのか、ええのんか〜!
むはむはしつつ、正座してお待ちしてますです。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 23:55
- 新スレ乙&おめ!
この機会にあらためて前スレをざっと読み返してみましたが
なんてゆーか、珠玉のスレですね……。
いずれも超スゴレベル。しかも作品ごとにさりげにテイストが変わってて、
雪ぐまさんの魅惑の四次元ポケットぶりを感じました。
さ〜て、明日に備えて寝るか!(爆)
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 00:59
- 新スレおめでとうございます!
そして次回は、ついに雪ぐま先生初の本格(要sage)エロですか!
力量のある方の描くエロは愛そのものだと思うから、
雪ぐま様のエロを読んでみたいとずっと思っていました。
願いが叶うのですね。
読者も悶絶させた後、颯爽と北海道へ旅立つ…。
かっけー。
- 17 名前:ファンA 投稿日:2004/01/22(木) 04:10
- 新スレおめでとうございます!
いよいよですか?
いよいよなんですね…。
石川さんが可愛すぎて、もう私がどうにかなっちゃいそうです。
>>16さん、ちょっとおもしろかったです。
北海道は寒いですし、風邪に気をつけてくださいね。
かっけー
- 18 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/22(木) 06:42
- 新スレ、おめです、付いて参りました。
そうですか、いよいよですね。
よっちゃん、我慢したかいが有るように祈ってます。
新車はオイルが回っていなくて、ギアが入りにくいので無理をしないようにね。w
- 19 名前:なち 投稿日:2004/01/22(木) 11:44
- 新レスおめでとうございます!
いよいよですか…♪
メッチャ楽しみだ(笑)
甘甘ないしよしバンザーイ( ○^〜^)人(^▽^ )
- 20 名前:わく 投稿日:2004/01/22(木) 12:01
- 僕23だし、読みます(笑)
更新楽しみです!!今日は夜勤明けなんで夜にはw
よっすぃ〜いけいけwww
- 21 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/22(木) 18:40
- え?ボタンに手をかけて…
何するんですかーよっすぃ?w
嘘です、すいません、純情ぶっただけですw
新スレオメ&更新お疲れさまです。
待ってました。雪ぐまさんのエロ描写も読みたかったんです。
それはもうw
(* ^〜^)<だって、ストーリー自体上手すぎなんだよ!
エロもカナーリ上(ry
と言う事でw、思う存分な、雪ぐまさんの才能の発揮を、陰ながら
見守ってます。
執筆がんがって下さい!!
- 22 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/22(木) 19:09
- 皆様、新スレ祝福、ありがとうございました。
12> 前スレ500様
すかさずついてきていただき、ありがとうございました。今後ともよろしくです。
13> 名無飼育さん様
ぐぎゃあぁぁ! ご期待に添えるとよいのですが・・・。
14> 名無し23。様
初期からのご声援、ありがとうございます。励まされておりますです。
「ええか、ええのか、ええのんか〜! 」って、オヤジやがな・・・w
15> 名無飼育さん様
ぼくドラえもん〜♪w お褒めいただき光栄です。読み返したらいろいろボロも出たのでは?w
今後も楽しんでいただけるようがんがりますです。
16> 名無飼育さん様
悶絶していただけるとよいのですが・・・北海道でひゅるり〜♪とススけていたりしてw
エロは愛そのもの。うーむ、含蓄のあるお言葉。感銘をうけました。
17> ファンA様
いよいよでございますよ〜。てか、よりによってこの作で本格エロ初挑戦っていいのか?!w
分厚いコートを着て、風邪をひかないように気をつけまする。
18> ちゃみ様
新車はオイルがって・・・ちゃみ様もそうとうなオヤジぶりですな〜w
うちのよっちぃにしっかり伝えておきまする。
- 23 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/22(木) 19:09
- 19> なち様
甘甘っていうか、エロエロになってきてますがいいんですかね?w
メッチャ楽しみですか。そうですかそうですか。おぬしもなかなか・・・・w
20> わく様
皆さんに励まされるうちのよっすぃ〜、17歳。もう子供ではなく、大人でもなく。
そしてこんなに楽しみにされているとも知らず・・・w ご期待に添えるとよいのですが。
21> 時限爆弾様
お約束のボケ、ありがとうございまするw いや〜、なにしろエロ初挑戦なので、
あの、ほんとに遊びででも書いたことなかったので、自信ないっすよ・・・。
ではっ! 雪ぐまの初挑戦。
本日の更新(sageモード)緊張しながら、まいります。
- 24 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/22(木) 19:12
-
※Attention!
18歳未満の方、エロ描写がお嫌いな方は
けっして本日更新分を読んではなりませぬ。
更新分を読まなくても、 明日の更新はさしさわりなく読めます。
- 25 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:13
-
褐色の肌に浮かび上がる美しい鎖骨と双丘があらわになって、
あたしの血は、ざわざわと沸騰し始めた。
唇を肌に寄せると、びくんと震える滑らかなカラダ。
「……恥ずかしいよぉ」
消え入りそうな声で訴えるその姿は、あまりにもオクテな17歳の少女。
もし、あの夜がなかったら、あたしたちはまだこんなふうにしてないだろう。
小鳥のような震えをなだめるように、あやすように、
あたしは彼女の肌に口づけ、息を吹きかけ、舐め、軽く歯を立てる。
瞼、頬、唇、耳、首筋、鎖骨、そして胸の先端。すべてが愛おしい。
あたたかくてほんのり甘い、その肌の香りに包まれながら、
あたしはあっという間に夢中になる。
「……あ、あっ…」
どんどん短くなる彼女の呼吸の隙間から、とうとう切ない声がこぼれ落ちた。
ガチガチに身を固めたまま、あたしの腕をぎゅっとつかんでくるかわいい恋人。
あたしは、まるで初めて彼女と体を重ねるような気持ちになってくる。
いや、きっと“トメっち”とこうするのは初めてなんだ。
熱く潤んだ瞳であたしを見た、あの大人びた“梨華”ではなく……
- 26 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:14
-
「力、抜いて」
「む、無理……」
あたしは体を起こして着ているものを全部脱ぎ捨てると、
彼女のものもちょっとばかし苦心しながらすべて剥ぎ取った。
そして、まるで落ち着かない様子で身を縮めるトメっちをとっつかまえて、
ぴったりと肌を合わせて、ぎゅうっと抱きしめる。
ただそれだけなのに心臓が雷に打たれたような衝撃が走った。
ああ、なんて気持ちいい……。
あたしは目を閉じて全身に広がってく幸福感に身を任せる。
美貴には悪いけど、全然違う。
恋い焦がれた人の肌って、こんなにも特別なものなんだ。
トメっちも切なげなため息を漏らしながら、背中に腕を回してきた。
ただ、じっと抱きしめ合う。何度も唇を重ね、足をからませる。
それだけで下半身に痺れるような感覚がおとずれる。
「すごい、気持ちいいね……」
「うん……どうしよう…心臓が壊れそう…」
腰から背中をゆっくりと撫でてあげる。
そっと、何度も、何度も繰り返していると、
甘い吐息を漏らしながら、くったりと身を預けてきた。
- 27 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:14
-
その体を抱きしめたまま指を伸ばして確かめると、
彼女の中心はすでに潤んでいた。
指先でそっと固い先端に触れる。
「あっ……」
ぴくっと反応する。
気持ちいい? そのままやさしく擦りあげると、
イヤイヤするみたいに首をふりながら、あられもなく高い声を上げ始めた。
あたしは興奮のあまり、すこしいじわるな気分になる。
もっと、狂ったように、感じてほしい。
「ああっ……や……な、んか…くる、よぉ……」
トメっちがクッと息を詰める。
腰がしなりかけた瞬間、あたしはパッと指を離す。
「あ、イヤッ……」
「なにが嫌なの?」
いきそびれた彼女の本音。
動揺する隙をついて、あたしは彼女の足の間に頭を潜りこませた。
- 28 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:15
-
「やだ! やめて!」
あわてて身をよじって逃げようとするトメっち。
あたしは両手でがっちりと腰をロックする。
「やだよぅ……」
「どして?」
「だって……汚いよぉ……」
「汚くないよ、ぜんぜん……きれいだよ」
実際、薄闇に浮かび上がる彼女のそれは花びらみたいに可憐だった。
たっぷりと濡れて息づき、やわらかな曲線を描きながらゆるく開いている。
それに、とてもいい匂いがする……。
あたしは喉が渇いたような衝動を覚えてがむしゃらに吸いついた。
「ふあぁぁぁぁっ!」
刺激が強すぎるのか、彼女の体がのけ反って固まった。
指がぎゅっとあたしの髪をつかむ。
あたしはかまわずにそのまま舌先を蕾に絡める。
とたんに、彼女が絹を引き裂くような高い声をあげた。
- 29 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:16
-
「やーーーっ……離して! 離してっ!」
すごい力で身をよじって逃げようとする。
あたしは渾身の力で腰をロックするはめになる。
「じっとしててよ」
「無理っ! 無理ぃ! ダメ、やめて!」
最も恥ずかしくて敏感なところを唇で愛される、
その羞恥とあまりの快楽に怯え、彼女は身を震わせながらわめく。
でも、あたしは許さない。
だって、アナタあたしのものでしょ? じゅるっ。
「やぁぁぁぁっ! やああっ! ああーーっ! あーーーー!」
あたしからなんとか逃れようと身をよじり、
両腕で自分自身を強く抱きしめながら腰をガクガクと震わせる。
苦しいのか気持ちいいのかよくわからない悲鳴。
だけど、正直なカラダからは透明な蜜がシーツに垂れ落ちそうなほど溢れきっている。
こんなになっちゃって……。
あたしの全身がカーーッと熱くなった。
頭がクラクラするほど熱い血が駆けめぐる。
大丈夫、もう少しで楽にしてあげるから。
ううん、もっと気持ちよくしてあげる。
- 30 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:17
-
あたしは舌を蠢かしながら、右手の中指をそっと潤みきった中心にあてがう。
そして、間髪入れずにぬるぬると沈み込ませた。
「あ、あ、あ……」
異物感を感じるのか、彼女の腰が緊張したように静止する。
すごい、柔らかくて、あたたかい……。
とうとう根元まで入れ切った時、怯えたようにコクンと喉を鳴らす音が聞こえた。
彼女のなかはまだひどく狭い。
ゆっくりと引き抜いて、再び挿し入れると、かすかに呻き声があがった。
まだ痛いのかな? こないだもこうしたけど……。
でも。今日のあたしは本当にいじわるだ。
再び、ゆっくりと指を抜く。
そして、あたしは彼女があまり苦しまないようにわずかに舌の動きを速くすると、
指を中指と人さし指の二本に増やして、彼女の中にグッともぐりこませた。
入口が固い。狭い道を自分の指が押し広げようとするのがわかる。
「いやっ、痛い! 痛いよぉっ!」
彼女がカン高い悲鳴をあげる。腰をずり上げて逃げようとする。
あたしは押さえ込んで逃がさない。
だって、アナタあたしのものでしょ?
- 31 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:17
-
あたしは指先だけを中に入れたまま、いったん動きを止める。
そして、体を起こして覆いかぶさるように彼女の顔をのぞきこみ、
我ながらいじわるな声で囁いた。
「ヨシコじゃイヤ?」
「…………」
見開かれるつぶらな瞳。
痛いのか、怖いのか、うっすらと涙で潤んでいる。
「ね、あたしじゃイヤなの?」
「……………………イヤじゃない、です」
ちょっぴり悔しそうな小さな声。
よろしい、よくできました。
あたしはにっこり笑ってみせる。
そして自分の体を挟ませるように彼女の細っこい足を割ると、
再びゆっくりと指を進ませ始めた。
彼女はぎゅっと目を閉じ、あたしの背に腕を回してしがみついてくる。
狭い……けど、ちゃんと濡れてるからじわじわと沈み込んでいく。
- 32 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:18
-
「………っ……あ…っ、好きって言って!」
「え?」
「お願い、好きって言って!」
苦しげに眉をしかめて訴える、その姿が、すごく愛しくて。
「好きだよ」
「……んっ…ほ、ほんと……?」
「ほんとだよ」
怯える彼女を安心させようと頬に唇を寄せる。
彼女は唇に欲しがった。
そっと重ねると、泣き笑いのようにかすかに強がった笑みをこぼす。
あたしは胸に突き刺さるみたいに熱く迫るものを感じて、ふいに涙ぐんだ。
狂おしいほど愛おしい。
心の底からトメっちが愛おしいって。
第二関節くらいまで指を沈めたところで、特に狭くて固いところを感じた。
彼女は苦しげな息を吐き続けてる。
あたしは思いきってグイと力を込めた。
ズッとすべてが入り込んだ瞬間、彼女の喉が弾かれたようにのけぞり、
声にならない空気を切り裂くような悲鳴があがった。
- 33 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:19
-
「……ほら、全部入った」
「……うっ……くぅっ……」
ギチギチだ……でも、じわっと熱い襞が指にまとわりついてくる……。
ああ、トメっちのなかってこんな感じなんだ。
あたしは、とうとう彼女の内側に触れたことにひどく興奮しながら、
でもどこか感慨深い気持ちで彼女の顔を覗き込んだ。
よっぽど痛いのか、眉をしかめたまま固く瞼を閉じ、ポロポロと涙をこぼしている。
「痛い?」
「……痛いよぉ」
「ごめんね」
「も……よっすぃ〜は……い、いつだって……そうやって…後から……っ」
ハアッ、ハアッとあえぐように短い息を吐きながら、涙目で睨んでくる。かわいい。
ごめんごめん、楽にしてあげなきゃね。
あたしは彼女の唇にちゅっとキスを降らせると、
体を離して、再び顔を彼女のそこに寄せようとした。
と、彼女がまた悲鳴をあげた。
「……う、動かさないで……」
荒い息の下から細く搾り出される震える声。
ほんの少し動かすだけでも、耐えられないというように呻き声をあげる。
- 34 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:21
-
あたしは指を動かさないようにそろそろと彼女の足元に体を寄せながら囁いた。
「まだ、痛い?」
無言でコクコクとうなずく。目尻から涙が流れ落ちる。
ゆっくり足を開かせると、彼女はまた引きつるように呻いた。
大丈夫かな。愛する人を苦しめてることに急に不安になる。
動きを止めてしまったあたしに気づいて、彼女が薄く目を開いた。
そして、不安げな私の視線に困ったように微笑む。
「ごめんね……」
「なんでトメっちが謝るの」
こんな時まで。
鼻の奥がツンとした。きっとあたしが下手くそなのに。
必要以上にあなたを苦しめてるのかもしれないのに。
- 35 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:22
-
「もう、やめとく?」
消え入りそうなあたしの声に、彼女は首を振った。
逡巡するように指を伸ばし、彼女のなかに入り込んでいるあたしの手にそっと触れる。
「あたし、よっすぃ〜のものに、なったんだよね」
「……そうだよ」
うれしい。
涙とともにあたしのココロにこぼれ落ちてきた言葉。
雪の結晶のように繊細で美しい彼女の魂がすべて、あたしのものになる。
「ね、もっと……」
もっとして。あなたの好きなように。
どんな時もあたしが不安なら彼女は笑う。
自分の痛みなどまるでかえりみることなく。
あたしは左手で彼女の手をとって、その甲にそっと唇をつけた。
小さな頃、あたしはあなたの騎士気取りだった。今は?
……今はもっと強く思う。あなたを守るためなら何でもすると。
- 36 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:23
-
「目、閉じて。楽に、してて」
「ウン……」
「大丈夫だから」
「ウン……」
折れそうに華奢な体に似合った小さな花びらにあたしの指がくい込んでいた。
その脇から鼓動のように染み出してくる透明な蜜。
すごい……あたしはその光景に感動する。
感動して、唇をつける。
「ああん……」
さっきまでただ苦しげだった彼女の声が、はっきり色のあるものに変わった。
自分でも驚いたのだろう。ハッとしたように手で唇をおさえた気配がした。
あたしは羽でそっと撫でるように女神にキスを続けた。
中からの圧迫と外からの刺激に、彼女が少しずつ溺れてゆくのがわかる。
きっと溶岩のようにどろりと襲いかかってる熱い快楽。
蕩けそうに甘い声に、うっとりと耳を傾ける。
あえぎ声がせっぱ詰まってくるのと、
ギチギチに閉じこめられていた指が緩んでくるのと、どっちが先だっただろう。
いつの間にか、彼女の体は動きを受け入れ始めた。
- 37 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:23
-
あたしは、指の腹で慎重に彼女の内側をこすってみる。
不思議な柔らかい壁……ちょっとざらざらしてる。
「あ、あ、だめ……」
震える静止の声に、あたしは思わず顔をあげた。
「苦しい?」
「へんな……感じがする……」
「気持ちいい?」
「わかん、ない……だめ、ヘン、おしっこ出ちゃうよぉ……」
そう言って切なげに首を振り、
身を揉むように自らの体を抱きしめる。
あれ? いきそう、なのかな……?
あたしは内側をリズミカルにやさしくこすりながら、
彼女のつるつるした蕾をくるくると舐めあげた。
自分の体が知ってる一番気持ちいいことを、一番気持ちいい強さで。
とたんに喉の奥から搾り出すような嬌声があがって、爪先がぴんと伸びた。
「だ、めっ、あ、あ、……あ、ああああああああああん!!!」
うわっ。も、もう?
細い腰を弓形に激しくしならせながら、
彼女はあっという間に弾けてしまった。
- 38 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:24
-
「……っ…はあ…はあっ…はあっ……」
胸の膨らみが大きく上下している。
あたしはゆっくりと指を引き抜き、しげしげと彼女を見つめた。
すげぇ、あんなに痛がってたのに、最初からちゃんとイけるなんて。
ふふっ、トメっちのカラダってけっこうHだな。
才能あるかも。
トメっちはまだ荒い息を吐きながら、ぼんやりと薄目を空に向けて横たわってる。
無防備に投げ出された細い手足。
まさか、彼女のこんな姿を見る日がくるとは思わなかった。
絶頂の後の、まるで糸の切れた人形みたいな。
ふうん、こんなふう、なんだ。
べっとりと濡れた指先を舐めると、かすかに血の味。
あたしはまた体が熱くなる。
もっとめちゃくちゃにしたいみたいな気持ちがむらむらとわきあがってくる。
てゆうか、けっこうSなのかも、あたしって……。
あたしは力の抜け切った彼女をエイッとひっくり返す。
羽のように軽い体はあっけないほど簡単にうつ伏せになって
ベッドの上でバウンドした。
- 39 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:25
-
「キャッ!」
驚いて我に返るトメっち。でも、もう遅い。
あたしは彼女の信じられないくらい細い腰をつかんで引っぱり上げた。
しなやかな猫のように、うつ伏せで腰だけを高くもちあげたいやらしい体勢。
「や、やだ何、恥ずかしいよ……」
トメっちが慌てた声をあげる。
まだ思うに任せないらしいカラダを戸惑うように硬直させる。
うん、そりゃあ恥ずかしいだろうねえ。
だって恥ずかしいカッコだもの。ふふふ。
あたしは、彼女が崩れ落ちないように左手で腰を下から支えたまま、指を中心にあてた。
これからされることに気がついた彼女が悲鳴をあげて暴れる。
「やだやだやだっ! こんなのいやあっ!」
「じっとしてて」
あたしは濡れきったそこに容赦なく指を突き立てる。
体勢のせいか、さっきよりも深くまで指が刺さり、奥にガツンと当たってギョッとした。
- 40 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:26
-
「……ひあああっ!」
そしてあたしはさっきよりもさらに一段カン高く鋭い彼女の声に驚いた。
指がシーツを強く握りしめ、膝がガクガクと震えている。
「……痛い、の?」
「あっ、あ、ひ、あっ……」
違う。この感じは……。
シーツに頬をこすりつけ、切なげに身を揉む。
あたしに貫かれたまま、逃げようともせずむしろ。
……そうか、ここが彼女の気持ちいいとこだ。
あたしは勢いづいて、反応のいい部分をぐいぐいとえぐってみる。
「キャアッ! ぁああああああっ! 」
……すっげえ。
ひっ迫した嬌声に、あたしのボルテージがまたたくまにハネ上がった。
髪を振り乱してあえぐ姿を見ているだけで、もうアドレナリン大放出状態!
あたしはもういたわることも忘れてメチャクチャに奥を突き上げ、
彼女の体をガクガクと揺らした。絶叫に近い叫び声。……すごい! すごいっ!
どんな顔をしてるのかと顔をのぞきこんで、あたしは三たび驚いた。
- 41 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:26
-
口元から赤い舌をのぞかせながら
快楽に溺れきった目を虚空にさまよわせる美しい少女……
……そこにいたのは、あの日あたしを誘惑した“梨華”だった。
「……梨華」
あたしは思わずそう呟く。
「梨華……気持ちいい?」
「……ああん、気持ちいいっ、気持ちいいよぉ、ひとみちゃあん!」
名前を呼ばれて興奮したのか、
恥ずかしげもなくそんなことをわめきながら髪をかきむしり、
細い腰をいやらしく揺らす。もっと、もっと……無意識のおねだり。
あたしは指を目一杯ののばし、力を込めて奥へ、もっと奥へと進む。
梨華の一番奥に触れたい。一番、奥に。
誰も触れたことのない場所に!
- 42 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:27
-
「ああああ背骨が溶けちゃう……溶けちゃうよぉっ……」
彼女の背中にぶるぶると痙攣が走った。
その尋常じゃない動きにドキンとする。
「ぁあああああああーーーーーーーーーーーーっ!」
ガクンガクンと身を揺らしながら彼女が前のめりに崩れ落ちる。
細く糸をひいて、ぬるりと指が抜けた。
あたしはその美しいスローモーションに呆然と見とれていた……。
◇ ◇ ◇
- 43 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:28
-
いつの間にまどろんでいたのだろう。
あれから気を失うように寝入ってしまったトメっちに寄り添って、
そっと髪を撫でていたはずなのに。
(……ん、くすぐったい……気持ちいい……)
あたしはその甘い感覚にうっすらと目を開ける。
薄闇のなかであたしのうえにトメっちが覆いかぶさり、
あたしの肌をぴちゃぴちゃ舐めてるのが見えた。
それはまるであたしの輪郭を、存在を、
確かにここにいるということを確認しているかのよう。
ねぇ、あたしのこと好き?
そんな言葉が愚問に思えるほどに、
うっとりと幸せそうな表情を浮かべている彼女。
あたしが目を醒ましたことに気づくと、「…いいよね?」と照れくさそうに微笑んだ。
- 44 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/22(木) 19:28
-
いいよ。あなたの好きにしていいよ。この命さえ。
彼女が与えてくれる快楽に身を任せるべく、再び瞳を閉じる。
まだほんの少し不器用なその舌は、
あたしを生まれてはじめて知る幸せの彼方へと連れていく。
狭いシングルベッドの上で肌をこすり合わせて確かめたのは
ほんとうは確かめようもない未来の儚い約束。
あたしは信じようと思う。
初めてほんとうに見つめあい、
奪いあい、交じりあった、この夜の熱い約束を。
これからも二人で同じ道を歩こう。
あたしたちはずっと同じ時を刻み続けるんだ……
- 45 名前:雪ぐま@赤面中 投稿日:2004/01/22(木) 19:31
-
本日はここまでといたします。
ヤッチャッタ! カイチャッタ!
脱兎のごとくさようなら。
次の更新は火曜日です。
- 46 名前:ファンA@感動中 投稿日:2004/01/22(木) 19:40
- リアルタイムでした。ありがとうございます。
すべてのシーンに、ドキドキしました。
特に>>29からが本当にリアルで、読んでいて胸がの奥が苦しくなりました。
2人が可愛くて、幸せそうでくすぐったくて…。
こんな気持ちで小説を読んだのは久しぶりです。
本当に、ありがとうございました。
いつもいつも、雪ぐまさんの小説がどれだけ好きなのかを伝えようとして挫折しちゃうんですよね…。汗
厚いコートが、雪ぐまさんを守ってくれますようにw笑
- 47 名前:わく・・・感涙中(/_;) 投稿日:2004/01/22(木) 20:32
- なんていっていいのか・・・・
エロシーンでこんなに泣けたのは、こんなに感動したのは初めてです・・・
17年のお互いの想いが初めて1つになった瞬間といっていいんでしょうか?
わくはそういうふうにとらえております☆
あ〜本当に感動しました!雪ぐまさんの小説に出会えて幸せだなぁと改めて実感しました。
本当にありがとうございますm(__)m
世の中「永遠」というものが絶対あるとは言い切れないかもしれませんが、
今のお互いの想いをずっとずっと未来につなげていってほしい☆☆
この2人ならそうなってくれるって信じてます( ^▽^)(^〜^0)
もうとにかくとにかく『最高!!』
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 20:37
- うおお、なんてこった。エロさえも感動だ。文学的だ……。
しかしながら激しく悶絶しました。>>30〜33とか、>>37とか、>>41~42とかもうアナタ!
なんていうかリアル感すごいし、セリフとかぞくぞくするし、
トメっちはエロかわいすぎるし、よっすぃ〜は男前だったりヘタレだったりでハラハラだし、はぁぁ……。
はぁぁ……。はぁぁ……。ああ、顔が元にもどらない……。
二人の素敵な夜にカンパイーーーーっす!!!!
雪ぐまさん、フォーエバー!!!!
- 49 名前:16 投稿日:2004/01/22(木) 20:56
- ほら、やっぱり。
雪ぐま様のエロは愛そのものだった。
ううん、もっと。
愛以上の、それを超えたもの…生きることそのものだった。
自分が「身体」を持った人間で良かったと、
久しぶりに思えました。
感謝。
- 50 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/22(木) 23:21
- てか……⊃。Д。)⊃タスケテ
はっ、卒倒してしまった。
ここはどこ?北海道?
マジ雪熊に会えるかなw
更新お疲れさまです。毎回私のつまらんボケを
汲んで下さり有難うございます。
今回エロ描写が初ということですが…
信じられないと思ってる人がここに一名います。ノハァーイw
だって、お初とおっしゃっりながら、
奇麗過ぎなんですもの、お言葉が(お蝶婦人風にw)
そりゃ、石川さんもドッキリして、向日葵の花を落とす訳ですw
(今日のウタバン)
と言う事で、雪ぐまさんの前蹄に裂かれました。
エロ描写なんて単に呼びたくない位、壮麗で官能的な文でした。
そんな雪ぐま氏に拍手です。パチパチパチ
素敵でした。二人の愛が十二分に伝わりました。
身悶えしながら、お帰りをお待ちしております。
- 51 名前:名無し23。 投稿日:2004/01/23(金) 02:13
- 更新、乙です。
くはぁ・・(呆然自失)
すげぇ、すげぇよ、雪ぐまさん!アナタって人はまったく!
こんな臨場感のある、愛に溢れるエロスは読んだことがないですよ。
感動以外の何ものでもありません。
このふたりの美しさはまるでギリシャ神話みたいですw
と、今回もマジレスw
次回もまったりとお待ちしてます。
- 52 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/23(金) 06:59
- 朝から読むんじゃ無かった、仕事に行く気がしません。
今日は一日中、頭の中に妄想が・・・・。
しかし梨華ちゃん、あなたって人は何と言う感度の良・・・・。
そうか、F1マシンだったのか。
- 53 名前:リムザ 投稿日:2004/01/23(金) 19:20
- スレ移動お疲れ様でした。お久しぶりです。
一気に読んで驚愕しました。
エロ神降臨。
何だかとてもリアル・・・コホン
互いの事を思いながら、
幸せな気持ちに満たされながら身を重ねてる2人を浮かべました。
非常に続きが気になります。
無事に出張から戻られるよう勝手に祈祷しときます。
- 54 名前:達吉 投稿日:2004/01/24(土) 13:59
- 引越し&更新お疲れ様でした。
勉強を邪魔しそうな展開なんかじゃないですよ〜w
オイラはこういう甘甘で、エロエロな話が主食なのでw
それ食べてパワーうPして勉強がはかどるんですよ^^
というか、こんな愛のあるエロが書けて本当すごいです!
『愛』が伝わってくる作品ですね!^^
- 55 名前:なち@感動中 投稿日:2004/01/24(土) 14:49
- お疲れ様でしたー♪
レス一番にしたかったのですが、
出来なかったので、あえて最後の方にさせて頂きます(笑)
甘甘で、エロくなり過ぎず、そしてただのエロじゃナイ!
ちゃんと中身のある、しかも二人の会話や気持ちに感動
出来る話で最高でした!!
よっすぃがSっポクてそこもドキドキしました!
ウチも雪ぐまさんに会いに北海道行こうかなぁ〜( ○^〜^)人(^▽^ )
- 56 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/27(火) 11:17
- まずは、なっちさんありがとう。
なっちさんの故郷・室蘭は静かでちょっぴりさびれた街でした。
雪は手のひらで受け取るとはかなく消えてしまうものだと思っていましたが
氷点下のなかで粉のように舞っていた雪は
着地してなお結晶の六角形をくっきりと保っており
その繊細できっぱりとした美しさに、なぜかじわりと涙が滲んだのでした。
46> ファンA様
うお、あれをリアルタイムで!(汗) ぎこちない二人のHに、さぞやハラハラされたことでしょうw
拙作を好きを言っていただけて恐れ多いですが励みになります。m(_ _)m
47> わく様
か、感動ですか? なんだかくすぐったいですなぁw。実質、二人の「初夜」ってことで
いまの二人は未来を信じてラブラブモードです。今後も応援してやってくださいませ。
48> 名無飼育さん様
激しく悶絶していただけて幸いにございますw。処女喪失シーンとか、
あなたエロいとこピンポイントですなw 最高っす。二人の契りにカンパイっす!!
49> 16様
お褒めいただき、ありがとうございます。エロとは生きること……う〜む、
またまた含蓄のあるお言葉。二人も大人になって、「身体」の深い意味を知ったと思われます。
- 57 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/27(火) 11:17
- 50> 時限爆弾様
ざくーっときましたか?w ほんと力技でしたがご評価いただけたなら幸いです。
向日葵落とすのは雪ぐまも見ておりましたよ。よっちぃが梨華ちゃんの頭をはたいたのがツボw。
51> 名無し23。様
いしよしでここまで妄想してしまう自分をキモがりつつのエロでございました。
にしてもギリシャ神話とくるとはさすがですなw よっちぃはやっぱアポロンか?!
52> ちゃみ様
もう石川さんはたぶんすんげえエンジン積んでますよw よっちぃもかなり天才的かとw
にしても、えらい朝から読まれてますなー。お仕事、大丈夫でしたか?
53> リムザ様
お久です♪ ご祈祷いただいたかいあって無事帰還いたしました。
いや〜、エロはやっぱ恥ずかしゅうございますw またよろしくお願いします。
54> 達吉様
愛のあるエロと言っていただき光栄でございます。いつか愛なきエロもと思うのですが
いしよしでは無理かもしれませぬなあw お勉強、頑張ってくださいませ。
55> なち様
Sよっちぃに、M梨華ちゃん。いしよしがやけに魅力的なのは、二人が醸し出す
SMっぽい風情のような気がいたします。あ、妄想ですよ、もちろんw
では本日の更新にまいります。
- 58 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/27(火) 11:18
-
「あーあ、ずるいなー」
コロッケをじゅわじゅわ揚げながら唐突にトメっちがため息をついたから、
脇でのんきに雑誌なんか読んでたあたしはハッと身構えた。
はじまるぞ。もう何度目かわからない、トメっちの愚痴。
「あたしはさー、よっすぃ〜にあげたのにさー」
「だから、あげるとかもらうとかそういうもんじゃないでしょ?」
「えー、あげるんだよ。百恵ちゃんもそう言ってるじゃん」
いつの時代の人だよ?
やれやれ。ため息をつく。
「私はよっすぃ〜が初めてなのに、よっすぃ〜が違うのはずるい!」んだって。
あーあ。こりゃ、一生言われるかもね。
- 59 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/27(火) 11:19
-
「ねえ、よっすぃ〜。私、一回は浮気してもいいよね?」
「はぁ?」
「だって、よっすぃ〜は2人だもんね。私はよっすぃ〜だけだから、あと1人いいよね?」
「はぁぁ〜?」
なんじゃそりゃ!
あたしは、後ろからガッとトメっちを羽交い締めにした。
菜箸がポロッと床に落ちる。「ちょっとぉ〜」と抗議の声。
「ダメに決まってんでしょ」
「えー、そんなのずるーい」
「そういうことじゃないでしょ」
「そんなのフェアじゃなーい」
とにかくダメったら、ダメ!
そう言うと、トメっちは「ふうん、ヤキモチ〜?」とニヤニヤした。
ちぇっ。
- 60 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/27(火) 11:19
-
「じゃあ、よっすぃ〜も絶対浮気したらダメだからね」
「はいはい」
「3年目の浮気とか許さないからね!」
だから、それいつの時代の人だよ?
あたしは口をとがらせて、
ついでにトメっちの耳にチュッと音を立ててキスを降らせる。
彼女は「ひゃぁ!」と身をすくめて逃げ出すと、
振り向きざまに「H!」とアッカンベーをした。
ははっ。キショキャラもここまでくると天然記念物。
あたしは、毎日おかしくてたまらない。
「今日のコロッケは揚がりすぎじゃないかな?」
いつものようにコロッケを買いにきた文麿が、首をかしげた。
「あ、ごめんなさ……」
「気のせい、気のせい。またよろしく頼むよ」
「んー、クリスピーな食感だ」
僕にはわかるとかなんとか言いながら、文麿が片手をあげて去っていく。
- 61 名前:愛するトメっち 投稿日:2004/01/27(火) 11:20
-
「あいつ、絶対トメっちのこと好きだったよね?」
「もー、そんなわけないじゃん」
「とかいって、トメっちもけっこう悪い気してなかったんじゃないの〜?」
「何いってるのよ。よっすぃ〜こそ美貴ちゃんのこと」
「あ〜、あいつ? 松浦とラブラブよ?」
だから心配しないでよと言うと、
トメっちは「別に心配なんかしてないもん」とツンとした。
あたしは笑って両手を大きく広げ、トメっちを抱き寄せた。
心から幸せそうに目を細めて、あたしの肩に頬を押しつける彼女。
ああ、毎日が幸せで幸せでたまらない。
三角巾にかっぽう着姿でお弁当をつくるあたしの恋人。
愛するトメっち。
やっと手に入れたたったひとつの宝物を、
あたしは今日も大切にしようと思った。
☆おしまい☆
- 62 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/27(火) 11:22
-
予告ナシでしたので驚かれたと思いますが、『愛するトメっち』完結です。
長い間じれったい恋におつきあいいただき、ありがとうございました。
ご感想等、お待ち申し上げております。
さて、終わったとは申しましても、明日からは、
あやみき外伝→文麿外伝→続・愛するトメっち(トメっち視点)と展開する予定です。
というわけで、まだまだ続きますw
今後ともおつきあいいただけると幸いです。
- 63 名前:雪ぐま@おまけの呟き 投稿日:2004/01/27(火) 11:24
- 先日仕事関係のカラオケで「3年目の浮気」を聞いたのでございます。
その歌詞が、妙にいしよし感があって、ひとりで笑ってしまった。
(0^〜^)<3年目の浮気くらい大目に見てよ
( `▽´)<開き直るその態度が気に入らないのよ!
- 64 名前:前すれ499 投稿日:2004/01/27(火) 14:56
- なち卒で、ののたんをはじめとするみんなの憔悴ぶりを知って
なんかもう痛い心持ちな中、
またもや雪ぐまさんに癒されちゃいました。。。どもです。
愛トメ、私のお気に入りのエピは海の家のくだりです。
リアルのエピと相まってガハハと笑った後にホロリしみじみとしました。
エンディングも二人の他愛ないやりとりですが、
なんかもーシワワセ甘〜って感じで
とてーもあったかい気持ちになりました。
(0^〜^人^▽^ )
新連載も楽しみにしてます!
あやみきのその後、気になります!
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 15:39
- 完結、おめでとう&お疲れさまでした〜。
笑いあり、切なさあり、最後はラブラブなハッピーエンド、お見事でした。
自分は舞踏会のシーンと怒濤の告白シーンが印象に残ってます。
よっすぃ〜と同じ気持ちになって笑ったり、ドキドキしたり、悲しくなったり
毎日楽しかったです。本当に忘れられない小説になると思います。
まだまだ続くということでホッとしてます。
月並みですが、これからも頑張ってください。
- 66 名前:なち 投稿日:2004/01/27(火) 15:57
- 完結おめでとうございます!
ぃや〜良かった!何度読み返しても
感動します!この作品、いやいや雪ぐまさんに
出会えて良かった!
あやみき編も実に楽しみです♪
毎日毎日癒やされてます( ○^〜^)人(^▽^ )
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 16:42
- 一瞬☆おしまい☆の文字に愕然としましたが…
そうか、そうか、そうなのか…!!
外伝、そして続編、大いに期待しております。
まずはあやみき!!
正座して待ってます。
- 68 名前:達吉 投稿日:2004/01/27(火) 17:09
- 完結おめでとうございます^^
あと、お疲れ様でした。
最後まで"愛"の溢れる作品でしたね!!!
『溢れちゃう...BE IN LOVE』ですなw(謎
つーかトメっちかわいすぎw
こんなコ近くにいたらヤヴァすぎですよねぇ!???
みんなよっちぃみたいになっちゃいますよw(笑)
外伝、続編も期待してます^^
頑張ってくださいね。
- 69 名前:ゆんせ 投稿日:2004/01/27(火) 19:30
- いやぁ〜、もう最高っした!
私はいっつも携帯から見てるんで、
駅とか外で雪ぐまさんの作品読んでる時に
一人ニヤニヤしてました
かなり周りから見たら…
今後もニヤニヤし続けさせてください
続編楽しみ!
- 70 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/27(火) 21:02
- お帰りなさい!!ご無事で何よりです(・∀・)b
そして完結お疲れ様でした。
あぁ終わりかぁ、面白かったなぁ…と一人染みてたら、
明日からあやみき編が始まる!!と喜んで居ります。
実はいしよしとあやみき大好きなんです!(王道?)
ぶっちゃけ記憶より〜から実はROMってたんですw
今更言うな、なんですけどw
この短期間で4作品…雪ぐまさんの作り手の才能
と努力に誠意を込めて
秀 逸 で し た
以後も、時間が許す限り、見守って行きたいです。
がんがって下さい!!
- 71 名前:ちゃみ 投稿日:2004/01/27(火) 21:06
- 完結、お疲れ様でした。(ちょっとマジレスしてみたりして)w
作者様のご不在の間、某処で結末について盛り上がっておりましたが
何はともあれハッピーエンドでこの上ない幸せを感じておりまする。
番外編、楽しみにしています。
(受けよしこなんかが有ると嬉しいな〜、と密かにリクしてみたりして)
- 72 名前:わく 投稿日:2004/01/28(水) 00:32
- 雪ぐまさんおつかれさまでした!!
かなりの名作☆
感動をありがとうございました!!!!
次回作、番外編、いろいろ楽しみにしています☆
- 73 名前:ぽろろん 投稿日:2004/01/28(水) 01:40
- よっすぃ〜の思いが伝わらない間は、Fayrayの「好きだなんて言えない」
を勝手にテーマソングにしてましたが、ラブラブになったらもう
すっかり「3年目の浮気」がテーマですw
お疲れ様でした☆
・・・あなたに惚れました。
- 74 名前:名無し23。 投稿日:2004/01/28(水) 02:10
- 完結、お疲れ様でした。
ついにかの名作も終焉を迎えましたか・・「愛するトメっち」でのいしよしはすごく可愛くて、
大好きです。背伸びしていない感じがしてイイですね。
そして何と!次なる作品は3段締めで来ますか!?
楽しみにしてますですよ。
P.S.「1.25.in横アリ」に行って来ました。(昼公演ですけど)
なっちはやっぱり凄かったです、いろんな意味で。本当に尊敬すべき人です。
アンコールの時、「楽しい吉澤一家」になっていて、
(0^〜^)が( ‘ д‘)を、( ^▽^)が( ´D`)を支えているような
感じでした。この4人を観た時、泣けました・・
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 06:57
- いつもたくさんのレスがついているので我慢してましたが
完結した今、どーしても言わせてください。
最 高 で し た。
何気ないセリフやシーンがキラキラしていて、かなりファンです。
文体なのかな、作者様のお人柄なのかな、とてもきれいなものを見せてもらってる気がします。
よっちぃの片思い時代の切なさや苦しさ、意地の張り方、嫉妬、
重くならずに甘酸っぱい気持ちを懐かしく思い出させてくれました。
今後も陰ながら応援しています。
作者様に心からの感謝をこめて。
- 76 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/28(水) 11:16
- 皆様、あたたかいお言葉をありがとうございました。
64> 前すれ499様
雪ぐまも「焼きそば屋さんの二人」は気に入っております(うたばんはわかってますなw)。
マジギレトメっちも書けたし、楽しゅうございました。
65> 名無し飼育さん様
舞踏会はやはり白百合伯爵夫人でしょうw ハロモニでマコの勇姿を見るたびに
拍手喝采の雪ぐまでございます。怒濤の告白は……スランプでしたなあw
66> なち様
毎回読んでいただいているだけでなく、読み返していただいているとは感激です。
やさしい読者様に出会えて雪ぐまも良かった! 今後ともよろしくお願いします。
67> 名無飼育さん様
やっぱ唐突でしたよねw うーむ、最終回の告知ってどうしたらいいのか迷ってしまいますな。
今後もぜひぜひお楽しみいただけますようがんがります。
68> 達吉様
トメっちみたいな女の子が近くにいたら……かなりキショイと思われw
でもなんたって美少女ですし、純情一直線ですからね。今後の活躍にもご期待ください。
69> ゆんせ様
ほほぅ、携帯でですか。雪ぐまはトライしたことないですが、移動時間などには最適ですねえ。
しかし、エロのあたりは一体…w 周囲の目にめげず、今後ともよろしくです。
- 77 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/28(水) 11:17
- 70> 時限爆弾様
いしよしとあやみきが大好きとは……リアルっぽさが重要ということでございましょうか?w
妄想の域は出ませんが、なにかと楽しませてくれる組み合わせですな。今後もよろ〜♪です。
71> ちゃみ様
結末について盛り上がっていた? おや嬉しい。いきなり終了ではもったいなかったですかね?w
受けよしこについては前向きに検討させていただきまするw
72> わく様
お褒めいただいてありがとうございます。
今後もお楽しみいただけるよう、がんがってまいります。
73> ぽろろん様
では、いしよしレベルに熱いおつきあいなど……w。「3年目の浮気」がテーマソングの
うちのいしよし。今後が案じられますがw、どうぞよろしくおつきあいください。
74> 名無し23。様
おおっ、「1.25.in横アリ」に?! 伝説の舞台をご覧になれたことを羨ましく思います。
なっちは本当にいい顔になりましたね。いつか拙作にも登場してもらおうと思っております。
75> 名無飼育さん様
初めまして。味わって読んでくださっているようで、作者冥利につきるところでございます。
こちらこそ読者様に心からの感謝をこめて。今後もレスをお待ちしております。
- 78 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/28(水) 11:18
-
では本日から、しばし「あやみき外伝」でございます。
初めてのあやみきですのでドキドキですが、
しばらくおつきあいいただければ幸いです。
よっちゃんさんがおののいた、ミキティの衝撃の告白のその後。
いつもおしゃべりな二人が交わした愛の告白は……
- 79 名前:愛するトメっち〜あやみき外伝〜 投稿日:2004/01/28(水) 11:19
-
『愛するトメっち〜あやみき外伝〜』
※できれば、前スレ>>825〜830の告白シーンをお読みいただいてから、お楽しみください。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/snow/1070181553/
- 80 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:20
-
冷たい渡り廊下の床にぺたんと座り込み、
さっきから亜弥ちゃんは、ずっと俯いたままだ。
いつも微笑みを貼り付けてる口元が、力なく薄く開いている。
くるくるとよく動く瞳が、赤い夕陽が映る床を眺めたまま、ぴたりと止まっている。
知ってる。
これがほんとの亜弥ちゃん。
いつだってなぜかすこしだけ孤独な亜弥ちゃん。
むきだしの彼女は、何かを考え込んでいるように動かない。
困っているのかもしれない。
当たり前か。
困らせて、ごめんね。
亜弥ちゃんのスカートが、まるで花のように床に丸く広がってる。
ちょっと寒そうにみえる小さな膝。
それから夕陽を反射する太ももに目をやってる自分に気づいて苦笑する。
こんなときまでキモすぎない、あたし?
- 81 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:20
-
あたしは少しだけ亜弥ちゃんのそばに寄って、壁ぞいに座り込んだ。
軽く見上げると、ちょうど正面に眩しい窓が見える。
どうかしてるくらい赤く染まってる空。
この空をきっとあたしは一生、忘れられないだろう。
生まれて初めて、自分から恋を口にしたこの瞬間のことを。
手を伸ばして、床に落ちたままの100円玉を拾う。
亜弥ちゃんは、まだ何もしゃべらない。
何か言うべきだろうか。
でも、何を?
- 82 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:21
-
中学の時、あたしにはカレシと呼べる人が何人かいた。
モテないほうじゃなくて、ううん、どっちかっていうとモテるほうなんだと思う。
次から次に告られるから、感じのいいコを選んでてきとうに遊んだ。
男の子はやさしかったし、どっちかっていうと女の子は嫌いと思ってた。
うるさいし、嫉妬とかしてヤなこというし。
だから、女子高に進学することになって最初は憂鬱だったんだ。
『ねえねえ、すごいかわいーね』
今でも覚えてる。
入学してすぐ、亜弥ちゃんが初めて話しかけてきてくれた言葉。
『休みの日とか何してる? 今度、一緒に遊びにいこーよ』
信じてなかった。
ぴかぴかしてる亜弥ちゃんは、すぐにたくさん友達ができてたし、
あたしはなんか怖がられてて、はやくもちょっと浮きかけてたし。
まあどうでもいいかとか思いつつ、聞かれるままにメアドを教えたんだ。
なのに亜弥ちゃんは、律義に約束を守った。
- 83 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:22
-
なんで気に入られたのかわかんない。
べたべたされてびっくりしたけど、嫌じゃなかった。
つられて笑ってみたら、友達がたくさんできた。
いつの間にかあたしと亜弥ちゃんはセットみたいになってて
毎日毎日、どーでもいい話で笑い転げてた。
カレシは全部消えた。
てゆうか切った。つまんないから。
学校が楽しい。亜弥ちゃんといるのが楽しい。
『みきたん』
甘く呼びかけられると、鼓動が速くなるのはいつから?
わからない。抱きつかれてうれしいはずなのに、あたしは怖くなってきた。
ゴムみたいにくにゃくにゃ動く形のいい唇に、目が吸い寄せられる。
『亜弥ちゃん、キスしたことある?』
『あるよ、いっぱい。パパとかー、ママとかー。みきたんともするじゃん』
『そういうんじゃなくてー、男の子と』
『えー? だってつきあったこととかないし』
ほんのり赤くなった亜弥ちゃん。
ありえない、こんなにかわいいのにカレシいないとか。
胸が潰れそうに痛くなる。
まだ現れてもいない亜弥ちゃんの“初めてのカレシ”に嫉妬して。
窒息してしまいそうになる。コレって何?
- 84 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:23
-
つまりそれは恋だと、気づくのに少し時間がかかった。
気づかせたのは、よっすぃー。
彼女は同情するような目であたしを見た。
それで気づいたんだ、よっすぃーもきっと困った恋をしてるんだって。
よっすぃーと寝ると、すこしだけ気が晴れた。
オトコよりはずっと亜弥ちゃんに似てるカラダ。
気持ちいいすべすべの白い肌。
亜弥ちゃんも、きっと。
だけど、気づいてしまえば想いはますます深くなり、
あたしをがんじがらめに閉じこめはじめる。
無邪気な亜弥ちゃんの笑顔や、かわいい独占欲を、恨めしくさえ思った。
これが恋だっていうなら、これまでのカレシなんてゼロ以下だ。
なんでよりによって女の子にこんな。
言えない、絶対に言えない。
絶対に言えない。
- 85 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:24
-
なのに、どうして言っちゃったんだか。
やっちゃったとしか言いようがない。
コインは裏だったのに。危険を知らせてくれていたのに。
呆然と座り込んだままの亜弥ちゃん。
俯いたままの亜弥ちゃん。
能天気な笑顔の裏で、誰よりも生真面目な彼女。
たぶん、どう言えばあたしを傷つけないか必死で考えてる。
それだけでも感謝すべきことだろう。
オトコに声をかけられても「ごめんね。興味ないんだ」だけなんだから。
あたしは、軽く息を吸った。
ごめん、亜弥ちゃん。間に合うといいけど。
- 86 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:25
-
「亜弥ちゃん」
静かに呼びかけると、亜弥ちゃんは弾かれたように顔を上げた。
夕陽を受けてオレンジに染まるその頬に、一瞬、眩しく目を細める。
あたしは泣かないように慎重に笑顔をつくった。
「嘘だよーん。びっくりした?」
「えええっ?!」
亜弥ちゃんの目がかなりの衝撃レベルで見開かれる。
と、そのまま、力が抜けたようにぷうっと後ろにひっくり返った。
ごん。
かたい床に後頭部を打つ鈍い音。
ちょっと大丈夫?
あたしはあわてて四つん這いになり、彼女の顔を覗き込む。
亜弥ちゃんは心の底から驚いたというふうに両手で目をおおった。
「ひどいよ、みきたん」
「ごめん、ごめん」
「よっすぃーと二人でからかったんだ?」
「や、からかったってゆーか、ちょっと思いつきで」
亜弥ちゃんは、はああ〜〜っと深い深い息をついた。
心底安堵したようなその息に、あたしは傷ついて目をそらす。
- 87 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:26
-
目頭がクッと熱くなる。
あえなく潤む視界。
赤い、赤い空。
ガラス越しに差し込んでくるオレンジ色の陽射し。
あたしと亜弥ちゃんが出会った古い校舎。
この色、この空気。忘れない、一生。
大切な亜弥ちゃん、怖いくらい好きだった。
たぶん、これからも。
だから、これまで通り、親友でいよう。
- 88 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:27
-
カルビ、牛タン、ハラミ、ミノ。
心の中でおいしいものを必死で並べて笑顔をつくる。
失恋、上等。もともとこんなの似合ってなかった。
こんなに思い詰めるなんて、あたしらしくなかった。
あたしは四つん這いのまま、
もう一度、世界一大好きな親友の顔を覗き込んだ。
「帰ろ、亜弥ちゃん。こんなとこ寝っころがってたら風邪……」
え?
次の瞬間、あたしは目を疑った。どうして?
確認するように、おそるおそる彼女に顔を近づける。
亜弥ちゃんは、泣いていた。
その目をおおった両手の隙間から、音もなく涙が流れていた。
嗚咽をこらえるようにかすかに震えながら、
胸元のリボンが上下している。
- 89 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:28
-
「亜弥、ちゃん?」
疑問形で呼びかけたあたしの声に、彼女がゆっくりと両手を開いた。
そして、何も言わずにあたしをじっと睨む。
いつもよりもさらに煌めく強い瞳で。
妙な姿勢のまま、あたしたちは、見つめ合った。
おしゃべりな唇よりも、もっと饒舌な亜弥ちゃんの瞳。
無言で、卑怯なあたしを責める。そして。
不思議なことだけど、この瞬間にあたしにははっきりわかった。
亜弥ちゃんも、ほんとうに、美貴が好きだと。
あたしの目から、こらえていた涙がこぼれ落ちた。
それを見て、亜弥ちゃんがかすかに目を開き、
そして泣きながらくしゃっと微笑んだ。
ほんとうに? 亜弥ちゃん、ほんとうにそう思っていいの?
オレンジに染まる彼女の頬に、あたしの涙がはたはたと落ちる。
亜弥ちゃん、あたしは……、美貴は……あなたのことをずっと。
- 90 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/28(水) 11:28
-
亜弥ちゃんが、あたしの頬に指を伸ばして、確かめるように涙にふれた。
そのまま首に腕をまわして、あたしの顔を引き寄せる。
求められるままにあたしは亜弥ちゃんに覆いかぶさり、キスをした。
かするだけじゃない、初めての、恋人みたいな静かなキスを。
恋焦がれた彼女の唇のやわらかさに身を震わせながらあたしは、
まるで彼女にひれ伏しているようだと思った。
- 91 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/28(水) 11:29
-
本日はここまでといたします。
- 92 名前:なち 投稿日:2004/01/28(水) 12:14
- 『失恋上等』…みきてぃカッケ→(・∀・)!!
てか途中ビビった〜Σ(゚□゚ )
二人して切なぃ想いをずっと抱えてたんだね。
あやみきに幸アレ!!
- 93 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 12:21
- …こんなとこで…_| ̄|○
あぁ…先が気になってバイトどこじゃないよ…
更新心から 待 っ て ま す。
- 94 名前:達吉 投稿日:2004/01/28(水) 17:15
- そーですかねぇ?w
トメっちのキショ具合、オイラは好きなんで、全然、大丈夫だと思われますw(笑)
ってか、あやみき外伝キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
あうう・・・w藤本さんカッケーですwカッケカワイイですw(謎
次回更新もドキドキ、ソワソワ、ハアハアしながら待ってます!^^
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 17:18
- ひれ伏し・・・ひれ伏し・・・うわああああ!
ど、どーしたらこんな美しい告白シーンを思いつくんですか!
映像化激しくキボン!ああもう、あやみきにスッ転んでしまいそうです。
>>87、私も女友達にこんなふうに思ったことあります。なんだかすごく切なかった。
自分は失恋しましたが、ミキティはうまくいってほしいな。
- 96 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 23:33
- 文章を書くのが苦手で、あまり感想を述べたことはないのですが、
あまりにも感動したので一言
780〜786の部分であまりの切なさにボロボロ泣いてしまいました。
そんなせつない思いが、やっとのことで通じ合った二人に更に涙しました。
よっすぃ〜も辛かったけど、梨華ちゃんも常に切なかったんだろうと
思い梨華ちゃん視点の話が読みたいと思っていたら続編があるとの
ことで大変嬉しいです!!
これからも頑張ってください、
応援しています。
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/28(水) 23:48
- 頭の中で映像が浮かびました。
まるでドラマのワンシーンを見ているような…。
二人の切ない想いが痛いくらいに伝わってきました。
こんなにも美しい表現のできる雪ぐまさんに乾杯。
- 98 名前:名無し23。 投稿日:2004/01/28(水) 23:54
- 更新、乙でございます。
おぉ〜、あやみき外伝だよ!これまたイイヨイイヨ〜!(古いよw)
せつなくて可愛いあやみきワールド、最高ですわい。
常々美貴ティはよっちぃと並んで男前娘。だと思っているのですが、
時折見せる大人っぽさにときめいたりしてる今日この頃です。
いしよしとあやみきとでWデートとかして欲しいなぁと思ったんですが、
石川さんは美貴ティにジェラシーを感じてるから難しいですねw
それでは次回も徒然なるままにお待ちしておりますです。
- 99 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/29(木) 01:05
- 更新、お疲れ様、でぇすっ(ウザ
おじゃまーーるしぇ、紺(ry
雪ぐまさんのよろ〜で、どうしても書きたくなりました
ごめんなさい。えーコホン。そうなんです、リアルを求めているのですw
雪ぐまさんのアンリアル作品だろうがリアル作品だろうが、
通じて全部、個々のキャラがリアルに描写されている所に、こう
ツボが圧迫されて…小ネタも多彩でもう…もう…ね。みたいなw
+奇麗な言葉で表現なされるし。私ダメですよもう。
…あぁっ、顎にニキビができてる!!ぎゃぁあああ!!
どうでもいいのですが、想い想われ振り振られニキビの位置(古っ、
ご存じですか?雪ぐまさんも、寝不足、ビタミン不足、いしよし不足に
ご注意下さいw
おやすみなさい、執筆ガンバです(死語
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/29(木) 10:27
- あやみきもいいっすねー。
古い校舎の渡り廊下っていうノスタルジックな設定が
こんなに似合うとは驚きです。
トメっちのお弁当屋っていうのもいい感じでした。
- 101 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/29(木) 12:50
- 初あやみきで不安でしたが、励ましのお言葉をいただきホッとしました。
92> なち様
やっぱミキティは軽ヤン入ってるかんじでw ちょいとダークで粋な仁義を感じるカッケー少女。
ぁゃゃは果てしないパワーを秘めた光の少女。しかし、二人とも恋には臆病でございます。
93> 名無し飼育さん様
申し訳ありませぬ〜w バイト、大丈夫でしたか? さて、更新いたしますよ〜〜。
94> 達吉様
うちのトメっちを愛していただき感謝ですw カッケカワイイ藤本さんの初恋純情ロードw、
うちのよっちぃに負けず劣らずヘタレなとこもありますが、どうぞご声援のほどを。
95> 名無飼育さん様
カッケー藤本さんをひれ伏させることができる唯一の人物、それはぁゃゃ。
というふうに雪ぐまには見えるわけですが、ヲタ視線入りまくりですかね?!w
96> 名無し飼育さん様
胸に染みるご感想、ありがとうございます。作者冥利に尽きます。
トメっち視点では、よっちぃはクールに見えてます。よっちぃ視点が信じられないくらいw
どうぞお楽しみに……てか、楽しんでいただけるようがんがりますね。
97> 名無し読者様
ありがとうございます。雪ぐまも「こんなドラマが見た〜い」って感じで書いておりまするw
妄想炸裂ですが、あやみきはこんな正統派切ない系学園ドラマが似合いそうです。
- 102 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/29(木) 12:51
- 98> 名無し23。様
いしよし&あやみきWデートは雪ぐまも「してほしい」と思っているのですよ。
ヤキモチ姫・トメっちが続編でどこまで成長してくれるか、う〜むw
99> 時限爆弾様
コンコン登場w あの子、最近きれいになりましたなあ〜。体つきがちょっとエロ……(ry
さて、雪ぐまは寝不足&いしよし不足。あやみきを書くためにあやみきばかり見てるせいかも。
100> 名無し飼育さん様
妄想爆発のシチュエーションにご賛同いただき恐縮ですw
美少女コンビは、やはりベタに古い校舎かとw トメっちにはコロッケ揚げさせたかったのですw
では本日の更新にまいります。
- 103 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:52
-
その日の帰り道は、あたしたちにしては怖いほど無口に。
ただ、指をからめてつないだ手を、どちらもぎゅっと握りしめて。
友達から恋人への見えない壁を、
言葉もなく、流れ落ちる雫と、見つめ合う瞳と、
涙味のキスだけでひらりと飛び越えたあたしたちは、
まだどこにも着地してないような不安定さで。
いつもより少しだけ遅い時間。
街灯の下を歩く亜弥ちゃんはもう泣いてはいなかったけど、
すごく泣いたあとがはっきりわかるピンク色の目の縁と濡れたまつげ。
まだちょっと鼻をすすりながら、
ちょっと俯きかげんに、黙ってあたしに歩調を合わせている。
なにかしゃべってよ。いつもみたいに。
あたしは不安になって、亜弥ちゃんの手を揺らした。
亜弥ちゃんがちょっと上目遣いの“かわいい顔”で、あたしを見る。
うわ、かわいすぎ。あたしは照れて、口の端で笑う。
- 104 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:52
-
と、突然、亜弥ちゃんがあたしの手を強く引いて、
暗いビルの隙間にあたしを引っ張り込んだ。
「えっ?」と思ってる間に、ビルとビルの間に押し込まれる。
ばさっと亜弥ちゃんの鞄が地面に投げだされた音がし、
双肩をつかまれて、ビル壁に背を押しつけられた。
亜弥ちゃん?
ほぼ同じ高さにある亜弥ちゃんの顔。
視界を遮るように飛び込んでくる見たこともない切ない瞳。
「……んっ…」
乱暴に唇を押しつけられて目を閉じた。
あたしの指は、その瞬間に革の鞄を迷いもなく手放す。
足元にどさりと落下する重い音を感じながら、
あたしは亜弥ちゃんの腰に腕をまわして強く引き寄せた。
- 105 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:53
-
密着するカラダ。
いつもと同じ。でも、全然違う。
だって、亜弥ちゃんに、唇を、塞がれてる。
カアッと頭に血が上ったあたしは、彼女をぎゅうっと抱きしめると
思わず舌で彼女の唇を強引にこじ開けてしまった。
固い歯の隙間に舌をねじ込むと、彼女は小さく呻き声をあげる。
自分からキスしてきたくせに、震えてあたしの肩をぎゅっとつかむ。
鼓動が激しすぎて痛い。こんなふうになったことない。
心臓が、壊れるかもしれない。
「……う…ぁ……」
苦しげな吐息。たぶん彼女は初めて知る、性的なキス。
頭が真っ白になっちゃってるあたしに狂ったように奥を探られて、
たぶん、ひどく苦しいはず。立ってられないほどゾクゾクしてるはず。
だけど彼女はあたしの舌を傷つけまいと必死で口を開き続ける。
ぎこちなく舌を絡ませ、一生懸命、応えようとする。
熱い……やわらかい……甘い……
亜弥ちゃん……亜弥ちゃん……
- 106 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:54
-
もっと深く。もっと。
息継ぎをするように唇を離して、すばやく逆側に首を傾けたその時。
「待って!」
亜弥ちゃんからストップがかかった。
あたしはハッとして彼女のカラダをパッと解放する。
亜弥ちゃんの手が肩からずるずると流れ落ち、
ゆるくあたしの腰のあたりにまわされた。
「ごめ……、ちょっと心臓が……」
肩に頬をのせるように、くったり寄りかかってくる。
あたしは両手を空に広げたまぬけな格好でピキンと硬直したまま、
横目でそっと亜弥ちゃんをうかがった。
耳に流れ込んでくる苦しげな息づかい。
湯気が出そうなほど紅潮した頬。
かたく閉じられた瞳。
かすかにひそめられた眉。
あああああああああ!
とたんに頭をかきむしりたくなる。
あたしったらもしかして超浮かれモード入り過ぎ?
てか、飛ばし過ぎだっつーの!!
- 107 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:55
-
「あの、ヤ、だったり?」
「ううん、違くて」
はぅ。亜弥ちゃんが小さく息をつく。
小犬みたいに鼻を鳴らして、ぼそりと訴える。
「まだ言ってもらってない」
何を? あたしはきょとんとする。
亜弥ちゃんが薄目をあけて、チラリと睨む。
ああ、もしかして「好き」とか「つきあおう」とかそういうこと?
なによ。あたしは照れくさくなって、突っ立ったままぼそぼそと呟いた。
「言ったじゃん」
「みきたん、嘘って言った」
「でも」
わかったでしょ? それこそが嘘だって。
美貴は言ったよ。亜弥ちゃんの恋人になりたいって。
むしろ何も言ってないのは。
「亜弥ちゃん」
「え?」
「亜弥ちゃんこそ、何も言ってくれてない」
そう言うと亜弥ちゃんは、ゆっくり身を起こした。
- 108 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:56
-
半分は闇に、半分は舗道から差し込む光に照らされたお人形みたいな顔。
あたしの目の奥を探るように見つめてくる吸い込まれそうに強い瞳。
何かを言いかけて薄く開いた唇が逡巡するように再びつぐまれ、
照れたような苦笑をともなって、ゆっくりと首がかしげられた。
「みきたん、ほんとにわかってなかったの?」
「何を?」
「だから、あたしがぁー……」
言いかけて、黙る。
いつもうるさいくらいわめいてた言葉。
こんな時には言ってくれないの?
彼女は、言葉の代わりに再びあたしの肩に頬をこすりつけた。
「みきたん」
「ん?」
「みきたぁん」
「どした?」
「みきたーん」
- 109 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:57
-
みきたん。みきたん。みきたん。
ねぇ、みきたん。みきたぁん。
まるでそれしか言葉を知らないみたいに甘くあたしの名を呼ぶ。
あたしはたまらない気持ちになってそっと彼女の背を抱くと、呟いた。
「亜弥ちゃん」
「みきたん」
「亜弥ちゃん」
「みきたん」
目を閉じて、あたしたちは互いの声をカラダに染み込ませる。
月の光を浴びるように、さやさやとした夜の空気に身をまかせたままで。
- 110 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:58
-
「あああああ、みきたんっ!」
亜弥ちゃんは一瞬、息もできないほどぎゅうううとあたしを抱きしめると、
パッとカラダを離してあたしの目をのぞきこんだ。
「今夜は帰りたくない」
ええっ? あたしは思わず吹き出す。
どこで覚えたの、そんなセリフ。
なんか、そうくるとは思わなかったな。
あたしは少し緊張がほぐれて、目を細めながら彼女に微笑みかけた。
「あたしはいいけど、亜弥ちゃんちは怒られんじゃない?」
そーだけど! でもでもぉ!
「離れたくなぁい!」
「美貴も離れたくないよ」
「ほんと?」
「ウン」
- 111 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:58
-
どちらからともなく首を傾けて、あたしたちはまた唇を寄せた。
今度は目を閉じて想いを伝え合う、やさしいキス。
じっと唇に彼女を感じたまま、あたしはふと気づく。
あ、なんだかすごくいい匂いがする。
それは彼女の香水とあたしの香水が
二人の熱でまざりあって立ちのぼる香りだった。
◇ ◇ ◇
- 112 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 12:59
-
駅につくと、あたしたちはアッ!とお互いの背中を指さし、
あわててパンパンと汚れを払いあった。
暗い道ではよくわからなかったけど、
煌々とした構内のあかりの下でやたら薄汚れた女子高生ふたり組。
あんな狭いとこ入り込んでたんだもん、そりゃそうか。
「あーあ、これクリーニングだよ」
「うはははー! みきたん、袖もきちゃない!」
「誰が連れ込んだのよ、誰が」
ニャヒヒヒヒと妙な声で笑う亜弥ちゃん。
ブレザーの袖と背中を土埃で白く染めて
同じように薄汚れまくってる鞄をぶんぶん振り回してはしゃぐ。
喉の奥まで見えちゃいそうな笑顔。
あたしもうれしくなって彼女に駆け寄り、腕をとった。
大声で笑いながらふたりで階段を駆け上がり、改札を走り抜ける。
もう、抜け出せない。ここから。
幸せな彼女のオーラのなかから。
亜弥ちゃん、あなたはいつの間にかあたしのなかに入り込んで
あたしをこんなふうに虜にしてしまって。
- 113 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 13:00
-
ホームであったかい午後ティーを分けあって飲んでいると、
隣町の男子高の制服を着た男の子が、真っ赤な顔で亜弥ちゃんに声をかけてきた。
手には封筒。たぶんラブレター。
亜弥ちゃんが戸惑ったように、彼を見上げる。
また?と、かすかに眉をひそめるあたし。
このシーン、何度見ても慣れない。
何度「ごめんね。興味ないんだ」を聞いても安心できない。
だけど、今日はうれしいことが起こった。
「ごめんね。恋人がいるから」
亜弥ちゃんはきっぱりそう言うと、
心臓がひっくり返りそうになったあたしの腕を引いて、
ホームにすべりこんできた電車に乗り込んだ。
ひとつだけ空いてた席にひょいとあたしを座らせて、ぽいと荷物を膝に置く。
あたしはたぶん真っ赤な顔で、亜弥ちゃんを見上げてた。
彼女はつり革に両手でぶら下がってギシギシ鳴らしながら、
いたずらっぽくあたしの顔を覗き込む。
「どう? 新しいお断りバージョン」
ぷしゅぅとドアが閉まる。
かわいそうな男の子は、手紙を片手にホームで呆然としたまま。
あたしはおもむろに口を開いた。
- 114 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/29(木) 13:01
-
「手紙くらい読んであげたらよかったのに」
「ひゅー! みきたん、余裕〜」
まあね。だってきっとこれが最後だから。
たぶん明日には、岡女の松浦亜弥に恋人ができたって噂が
近隣の高校にもれなく伝わるだろう。
まさかそれが藤本美貴だとは誰も思わないだろうけど。
恋人か。あたしが、亜弥ちゃんの恋人。
胸のちょっと上あたりがじーんと熱くなるのを感じながら
あたしは、わざとツンとすました顔をつくって言った。
「だって亜弥ちゃん、片思いってつらいんだよ」
「知ってるよ、そんなの」
亜弥ちゃんが、あたしのほっぺをむにっとつまんだ。
- 115 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/29(木) 13:02
-
本日はここまでといたします。
>>111、奇跡の香りってことでw
- 116 名前:なち 投稿日:2004/01/29(木) 14:18
- あやみき進展はゃーい(ノ^▽^)ノ♪
二人とも今まで我慢してた想いを、キスで伝え合ってるのか?
ぅーんζあやみきもイイ(・∀・)!!
- 117 名前:名無し読書 投稿日:2004/01/29(木) 16:26
- 前スレから一気に読ませていただきました。
久しぶりに、涙がにじみ出てくるような作品に出会えました。
ハァ━━━━(*´Д`)━━━━ン!!!!!の連続なんですが、どーにかしてくださいw
これからも応援しています。作者様愛してます。(ポ←キショ
- 118 名前:dada 投稿日:2004/01/29(木) 18:28
- あやみき編最高です!
松浦さんがどんな気持ちで片思いしてたのか気になります。
吉澤さんとのことは気付いてたのか?‥
次回の更新も楽しみにしてます。
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/29(木) 21:45
- ここのあやみきって、なんでこんなにもエロく感じるんだろう…。
そんなに思いっきり絡んでるってわけでもないのに。
…やはり雪ぐまさんマジックか。好きです、雪ぐまさん。
- 120 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/29(木) 23:02
- あやみきのエロも希望!!
- 121 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/30(金) 02:22
- なぁぁぁ!!!また、心臓が…w
更新お疲れ様です。
奇跡の香りが届いてきましたw
きっと、いや絶対甘い匂いがするんだろうなぁと、妄想がw
にゃむにゃむしたアヤヤの口、好きだな。
私もアヤミキの官能シーン、是非読みたいです!!
シヤワセないしよしと同じ様に、シヤワセになって欲しいな。
一意見です。
川o・-・)<執筆がんがってください
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 10:02
- 友達から恋人への見えない壁を飛び越えたばかりの二人の緊張が
すごくリアルに伝わってきて、胸が甘酸っぱい感じに切なくなりました。
夜風のなかでお互いの名前を囁きあうところとか、涙が出そうでした。
駅のシーンではあやみきならではの瑞々しい感じ(少女らしさっていうんでしょうか)が
すごく想像できて、自然と頬が緩んできました。
雪ぐまさんの描く世界は何気ないけどとってもきれい。
いい感じにさらっとしていて、読後感がすごくいいです。ファンです。
- 123 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/30(金) 13:21
- 116> なち様
親友から恋人ですから、あんがい越えるハードルが高かった二人なのでございました。
で、大切なことは言葉ではなく、甘いキスで伝えあうことになってしまうと妄想w
117> 名無し読書様
初めまして♪ 作者冥利に尽きるお言葉、ありがとうございまする。愛しています(ポ
妄想を書き散らかしてるわけですので、気に入っていただけたなら趣味はバッチリあいますね?w
今後ともハァ━━━━(*´Д`)━━━━ン!!!!!としていただけることを祈っておりまする。
118> dada様
初めまして♪ あやみきは、今後予定している「続・愛するトメっち」でもバリバリ登場いたします。
そこでぁゃゃの片思いぶりも明らかになっていくかと。どうぞご愛顧のほどを。
119> 名無し読者様
お褒めいただき(ですよね?)、ありがとうございます。
匂い立つような少女の色香が描けたらいいなあなどと無謀にも思っておりまする。
本人は無意識なのに端から見たらけっこう色気ある、みたいなw
120> 名無し飼育さん様
ご期待に添えず申し訳ないのですが、今回は本格エロは予定しておりませぬ。m(_ _)m
- 124 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/30(金) 13:22
- 121> 時限爆弾様
おおっ、奇跡の香り、感じていただけましたか?w
えー、自然な形での軽ぅい官能シーンは描くつもりです。アニバーサリー的なw
でも、本格エロはどうぞ今回はご容赦を。あんなの、奇跡のいしよしでしか書けませんw
122> 名無飼育様
こちらこそ素敵なお言葉をいただき大感激です。
少女同士ならではの恋に憧れというか妄想がありましてw
今回はその透明感、疾走感をなんとか出していきたいなあと四苦八苦中でございます。
では本日の更新にまいります。
- 125 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:23
-
「ぎゃああああっ!」
次の日の朝、教室のドアを開けて雄叫び一発。
あたしは黒板を指さして、空気の足りない金魚みたいに口をぱくぱくさせた。
だって、そこに書かれていたのは!!!!
・・・・・・・・・・
祝! あやみきご成婚!
〜そして伝説へ〜
・・・・・・・・・・
なっ、なななななななーーーーー!!!!!!!
「ミキティ、遅っそーい!」
「いよっ、やっとご両人揃ったねえ〜」
「ヒューヒュー!」
腰を抜かしかけてるあたしに、
やぐっつあんたちクラスメイトの声が雨あられと降ってきた。
なんなの! なんなのこれは!
ちょっとあれ書いたの、誰なのーーっ!!
- 126 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:24
-
「みっきた〜〜ん、会いたかった〜〜〜!!!」
だだだだだだ、べたっ。
小犬のごとく転がりながら駆け寄ってくるのは当然、亜弥ちゃん。
いつものようにブチュッと頬っぺたに一発かますと、
なんと唇に人さし指をあててキスのおねだり。
ちょっと、みんな見てるんだからやめてっ!
あたしは慌てて亜弥ちゃんを引き剥がすとわめいた。
「ちょっとこれ、どうなってるのっ?!」
「え〜? みきたんと恋人になったって言ったら、みんな喜んでくれて〜」
本人かい、しゃべったのは!
あたしはくらりとしながら、手近なイスにがっくり腰をおろす。
やぐっつあんが、苦笑しながらポンッと肩を叩いてきた。
「いっや〜、もう師匠から聞いてビビったのなんの」
「いや、あの、えっと……」
「あんたたち、これまでつき合ってなかったんだね〜」
「はあっ?!」
なんかビビるとこ違ってない?
- 127 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:25
-
あまりの展開に魂が抜けかけるあたしにかまうことなく
亜弥ちゃんのまわりでは騒々しくプチ記者会見ごっこが始まった。
「松浦さん、これまでもアヤしい関係が囁かれてきた二人ですが」
「フフッ、でもほんと〜にオトモダチだったんですよぉ〜」
「どちらから告白されたんですか?」
「一応みきたんからなんですけどぉ〜、でもこれまでけっこうあたしが頑張ってきたっていうかぁ〜」
「そうですよね〜。果敢にアタックされてましたよね〜」
「そうなんですよー。みきたんってほんと鈍感でぇ〜」
な、なんですと?!
あたしは目を剥く。あれが? あのふざけたのがアタックだって?
んなのわかるわけないじゃんっ。
「それで、ズバリお二人の関係はどのへんまで」
「えーとぉ、昨日の夕方にぃ、渡り廊下のとこでファーストキ……」
ぎゃあっ!
飛びついて口を抑える。
でも、時すでに遅し。
- 128 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:26
-
「ちょっとぉ! 渡り廊下でファーストキスだって!!」
「ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! 」
「世界遺産認定よぉ!」
……キミら、なんでそんなに身悶える?
冷や汗たらたらのあたしにかまうことなく、
亜弥ちゃんは口をふさいだあたしの手のひらにチュッチュッとキス。
たはっ……。
とにかくもう教室はお祭り騒ぎ。祝福のファンファーレ。
あんなに悩んでたこととか、
誰にも知られちゃいけないって思い詰めてたことは
いったい何だったんだろ?
パッと蓋を開けてみれば、こんなに幸せに恋が滑り出す。
とびっきり能天気な亜弥ちゃんの笑顔に乗って。
ふと目をあげると、騒ぎの輪からちょっと離れて
よっすぃ〜がにこにことあたしたちを見ていた。
あたしと目があうと、わざとらしくウインクしてビシッと親指を立てる。
あたしはにやつく口元をぎゅっとヘの字に曲げて、きゅっと顔をしかめてみせた。
もう困っちゃうよというように。
そう、幸せで幸せで、困っちゃうよ。
- 129 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:26
-
あたしの変顔に、よっすぃ〜がぶはっと爆笑しかけて「イテテ」と唇を押さえた。
ちょっと、どうよ、あのタラコ唇。
よっすぃ〜も幸せすぎて困ってるみたいね。
カオリンが占い師・アターレ飯田になりきってフラメンコ占いをおっぱじめる。
「オ・レ! わかりました! 二人の恋は運命です!」
「やーーん、やっぱりぃ?」
もう、にっこにこの亜弥ちゃんが全体重をかけて抱きついてきた。
たはっ。あたしは八の字眉毛で笑う。
この子にはほんとかなわないよ、あたし。
◇ ◇ ◇
- 130 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:27
-
「それでね、みきたん。初Hどうするかなんだけどぉ」
ぶほおっ!
しゃれたカフェで、あたしは飲みかけのカフェラテの泡を思いっきしぶっ飛ばした。
亜弥ちゃんが「きっちゃないな〜」と顔をしかめる。
なななな何をいきなり言い出すの、この子は!
恋人になって初めての週末のデート。
といってもこれまでと何か違うわけでもなく。
亜弥ちゃんはいつものようにお気に入りの店をまわりまくって
試着しまくって、買いまくって、あたしに荷物をもたせまくる。
まったくこのパワーには恐れ入るというかなんというか。
あたしはあんまり欲しいもんってないから、
買物しまくる亜弥ちゃんを見てるのはなかなか面白い。
すぐに「これ、オソロにしよ!」とか言い出すから
あたしのほうも出費がかさむんだけれど。
それで、やっと一休みさせてもらえたと思ったら
いきなり何ですか? 初Hの打ち合わせ?
てゆうか、そういうのってしないでしょ、フツー。
- 131 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:28
-
「だって、まつーら、初めてだし」
ああ、そう。
あたしの頬がポッと赤くなる。そいでから、ちょっとユルむ。
そっか、初めてか。亜弥ちゃん、初めてか……
「それなりのとこでって思うの、当ったり前でしょ?」
「はあ、そんなもん?」
「どうせみきたんは初めてじゃないと思うけど」
不愉快そうな声。
言い当てられてあたしは肩をすくめる。
初めて好きになったよ。それじゃ、だめ?
「え? 何か言った?」
「……なんでもない」
初めて恋をしたよ。
退屈でつまんなかった毎日に、たくさんの色と音がやってきた。
そう言ったじゃん、あの日。
心深く秘めた想いが、とうとうこぼれ落ちた日に。
- 132 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:29
-
ブツブツ言ってると、亜弥ちゃんがニカッと笑った。
「わかってるって」
「何が?」
「みきたん、あたしのこと好きで好きでたまんないんデショ?」
「!?!?!?!?!」
「にゃはは〜、照れるなあ」
「なによ、亜弥ちゃんだって」
あたしは真っ赤になって言い返す。
亜弥ちゃんだって、あたしのこと。
あの日、あんなに、泣いたくせに。
「そーだよ。ず〜っとほんと〜に好きだったんだもん」
「……うーー」
「自分より好きとか、すごくない?」
すごいね。かなり説得力あるね。
なんたって松浦亜弥が松浦亜弥より好きなんだもんね。
亜弥ちゃんは、さすがにちょっと照れたようにヘヘッと笑った。
- 133 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/30(金) 13:29
-
「好きなの。大好きなの」
「……ウン」
「だから、みきたんとHする」
ぶはあっ!
あたしはまたもカフェラテの泡を吹き飛ばす。
亜弥ちゃんはイスの背にもたれるように肘をついて片眉を上げ、
やけに自信満々の笑みを見せた。
「みきたん、きっともっとあたしを好きになるね」
「はあ?」
「わりと自信あるよ」
何がですか?
あたしはもう言い返す気力もなく、
ますます赤くなった頬を感じながらうつむいた。
- 134 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/30(金) 13:30
-
本日はここまでといたします。
- 135 名前:達吉 投稿日:2004/01/30(金) 14:47
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! ですねw本当にw
そんな事言われたら、あややにベタ惚れの、ミキティじゃなくても、カフェラテ吹くわなw(笑)
自信満々のまつーらさん、なんかおもろいですwそれに対する、藤本さんの反応もおもしろいですがw
前回&今回の更新、両方とも萌え〜でしたw
次回はどうなることやら・・・ww
- 136 名前:dada 投稿日:2004/01/30(金) 16:32
- あいさつが遅れてすいません。
はじめましてだったのに…(雪ぐまさんがわかってくれてうれしかったです。)
自分からしゃべっちゃう松浦さん最高です!
あやみきの初H、『続・愛するトメっち』のトメっち視点と松浦さんの気持ち楽しみにしてます。
- 137 名前:時限爆弾 投稿日:2004/01/30(金) 18:27
- ふんふん、で、初Hどうするかと…
(゚ρ゚)カフェオレダラーーーー
読んでる最中に口が事故りました。ミキティ程
ではないけれどw
更新乙でございます。今日もまたヤラレました。
まつーらさんが次は何を言い出すかと、楽しみで楽しみで。
ワクワクしながらあやみき編を読んでおります(・∀・)ワクワク
本格エロはないということで、正直、チョッピリ残念ですが
(良く考えたらまたしても人体発火の恐れがw)
話自体が素晴らしいので無問題であります!!
とかいいつつ軽めを楽しみにしてます(殴)
頑張って下さい!!!
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/31(土) 01:19
- ウーロン茶飲みつつ、口をモゴモゴさせつつ読ませてもらいました。
しかも授業中、講義を聞きながら。あやみきって素晴らしいなぁ。
いや…ほんと今日は勉強になった(何の)
- 139 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/31(土) 01:22
- >>138
あ、この時間にレスしたのは本日二回目の読書タイムだからです。
そしてあと二、三回は読もうと思います。色々勉強になるし(何の)
- 140 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 01:52
- 面白かった。この世界の松浦さんもやっぱり大物ですねぇ(笑)
- 141 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/31(土) 17:53
- 135> 達吉様
まつーらさんに振り回される美貴様、けっこうツボでございます。
最近はあまり見られなくなり残念ですが……。
136> dada様
うちのまつーらさん、怖いものナシですw そしてあんがい小心なうちの美貴様w
さらにあやみきヲタなクラスメイトたちw とんでもない女子高でございますな。
137> 時限爆弾様
まつーらさんは、書いてて楽しいですな。想像がドンドンふくらむというか。
とくにファンというわけではないのですが、彼女がトップアイドルなのは納得と思う今日この頃。
138> 名無し読者様
何度も読んでいただき、作者冥利に尽きまする。でも、勉強って????
いずれにしてもお役に立っているのならうれしいのですがw
140> 名無飼育さん様
確かに、まつーらさんは大物ですな。夢を叶える人の強い光が彼女を包んでいるように見えまする。
イメージとしては、運命の扉をブチ破る松浦さんの最高の相棒・藤本さんってとこでしょうか。
では本日の更新にまいります。
たいしたこたぁないのですが、一応sageにて。
- 142 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:54
-
髪を撫でられて、その心地よさにうっとり目を閉じた。
裸のままベッドボードにもたれかかって足を投げ出している亜弥ちゃんは、
やっぱり裸のまんまのあたしの頭を腿の上にのせて、
やさしく髪を梳いてくれる。
どんな顔してるんだろう。きっと、すごくやさしい顔。
長女の亜弥ちゃんは、時々、お姉さんっぽい。
末っ子の美貴は、時々、甘えん坊だ。
亜弥ちゃんが選んだシティホテルは、まだ新しくてシックな内装で
大きなダブルベッドと、ぴかぴかに磨きあげられた大きな窓があった。
窓の外には、小さな湖が見える。
あいにく外は雨。
グレーに煙る景色も悪くないと、亜弥ちゃんは満足そうに言った。
「閉じこめられてるみたい」
亜弥ちゃんの素足のむこうに窓を眺めながら、あたしは呟く。
足の爪まで、きれいに磨き上げられた亜弥ちゃん。
彼女のこだわりのシチュエーションに
あたしはちゃんと応えられただろうか?
- 143 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:55
-
「すごく、気持ちよかったよ」
チェックインするやいなや、シャワーも浴びないで求めあった。
亜弥ちゃんはそのことを反芻したのかくっくっと笑いながら
「いきなりでよくわかんなかったけどね」と、つけくわえた。
「わかんなかったんなら、気持ちよくなかったんじゃん」
「んーん。すっごい気持ちよかったよ」
みきたんの肌も、何もかも全部、
想像してたより、ずっと。
あたしはうれしくなって膝の上で上を向き、亜弥ちゃんの顔を見上げる。
亜弥ちゃんは、あたしを見てちょっと微笑むと、
再び暮れていく窓の外を眺めながら静かに話し始めた。
- 144 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:55
-
「初めてこういうことするのは、絶対好きな人って決めてたんだ」
「そう」
「みきたんと会ってからは、みきたんとがいいって思うようになった」
「ほんと? そんなこと思ってたの?」
「そうだよ。ずっとイメージしてた」
願いが叶うように。
あたしの望みどおりに運命が開くように。
亜弥ちゃんらしい。
あたしは笑って再び窓のほうを見た。
亜弥ちゃんと同じ方向を。彼女と同じ景色を見るために。
どうして亜弥ちゃんじゃなきゃだめなのか、
あたしはずっと考えてきたけど、それはつまり、
亜弥ちゃんに望まれた時から、あたしの運命は決まっていたということ。
- 145 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:56
-
「亜弥ちゃんは、女の子が好きなの?」
「さあ、知らない。みきたんが好きだよ」
「どうして、あたし?」
「かわいいから。どーしても欲しくなったから」
これだよ。
あたしは苦笑する。
怖いな、飽きたら捨てられそうじゃん、それ。
「ふふん。みきたんは、あたしの愛を甘くみてるね」
「そう?」
「自分より好きなんだよ?」
初めて自分より好きな人を見つけたんだよ?
だから、あたしのこと全部あげる。
もしみきたんが欲しければ、あたしの命も。
頬を撫でられながら囁かれて、心が震える。
じゃあ、あたしは何をあげようかな。
そうだなあ、あたしはあたしの運命を、
そう、運命を亜弥ちゃんにあげる。
- 146 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:57
-
「つまり、まな板のうえのナントカ」
「鯉でしょ」
「詳しいね、ことわざ」
「勉強してますから」
じゃあ、まな板のうえのみきたんはあたしのもの。
守ってあげる。それで大事に食べてあげるからね。だって。
おかしいな、それ美貴のセリフかと思ってたけど。
あたしは身を起こすと、亜弥ちゃんに口づけ、
やわらかくベッドに押し倒した。
亜弥ちゃんが恥ずかしそうに笑って、目を閉じる。
首筋に舌を這わせると、ちょっと緊張したように力の入るカラダ。
ほら、亜弥ちゃんは美貴のもの。
わかってる?
「わかってる、よ」
真っ白な肌をピンク色に染めながら、
亜弥ちゃんは覚えたばかりの快楽に身を委ねはじめる。
あんまりおとなしくしててくれないから、困っちゃうんだけど。
ほんと、お願い。じっとしてて。
あたしだって気が狂いそうなほどドキドキしてるんだから。
- 147 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:57
-
自信あるよと豪語しただけあって、
亜弥ちゃんのカラダは、おっぱいがぽよんと丸っこくて女らしいのに、
腕にもお腹にも背中にも腿にも、整った筋肉がうっすらついていてとてもきれい。
ううん、きれいなのはずっと知ってたけど、
その時、こんなにも美しくしなるカラダだったなんて。
こんなにも眩しく光る肌だなんて。
カラダの中に指を伸ばすと、
亜弥ちゃんはかすかに苦しげな呻き声をあげた。
「まだ、痛い?」
「ちょっと……でも気持ち、いい、よ」
薄目を開けて、彼女は強がるように笑う。
それから今日が初めてとは思えないほど器用に
あたしの動きにあわせて腰を揺らしてみせた。
まったくどこで覚えるんだろ。あたしはそんなこの人が好きでたまらない。
- 148 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:58
-
「あ……」
でも、今のあたしにはわかるよ、亜弥ちゃんのほんとうの声。
ほんとうに気持ちいいところに愛を込めてキスをすると
ほどなく彼女の呼吸はどんどん短くなってゆき、
最後はせっぱ詰まったように髪を振り乱しながら、
あたしのものになってゆく。
その瞬間、全身を震わせ、空に腕を上げてあたしの名を叫んだ亜弥ちゃん。
胸がしめつけられる。愛おしくて。幸福すぎて。
がっくりと力の抜けたカラダを、窒息しそうなほど抱きしめた。
「亜弥ちゃん、大好き」
「……みきたん、もう、どうしよう」
好きすぎて。
みきたんのこと、好きすぎて。
あたしの腕の中で聞こえるくぐもった声。
いつだって自信満々の彼女が時折みせる頼りない姿。
- 149 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:59
-
あの日、渡り廊下で呆然と座り込んでいた亜弥ちゃんを思い出す。
ごく最近、彼女はあの時の気持ちを話してくれた。
あまりにも突然にあたしから待ち望んでいた言葉を手に入れて
叫び出したいほどうれしい気持ちと、そこに混じるかすかな懸念に揺れた彼女。
からかってる? 罰ゲーム? まさか。
こんな大切なことで、みきたんがあたしを騙すわけない。
だけど、よっすぃ〜に言われたら、言うことを聞くかもしれない。
『あの時は、自信なかったね』
そう言って苦笑した悲しげな瞳。
よっすぃ〜とあたしの親密な気配に密かに怯えてた亜弥ちゃん。
二度と、あんな目をあたしは見たくない。
あんな顔、二度とさせない。
- 150 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 17:59
-
あたしはガラスの人形にふれるように彼女のカラダをそうっとベッドに横たえた。
いたわるように肩を撫でると、紅潮した頬のまま寄り添ってくる。
だけどやっぱりおとなしくしてたのはほんの少しの間。
あたしのかわいいカノジョは、息が整うときょろっと目を見開いて
ほぼ同じサイズのふたりのカラダをぴったりあわせようと躍起になりはじめた。
「足チュー」
「うん」
「膝チュー」
「うん」
「腹チュー」
「うん」
「おっぱいチュー」
「くすぐったい!」
笑って身をよじるあたしを、カラダを起こしておさえつける。
うわあ、元気。あたしは目を丸くする。
あんなになったのに、もう起きれるの?
- 151 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 18:00
-
「愛のチカラ」
そう言ってニカッと笑うと、
彼女は猛然とあたしの首筋にキスの雨を降らせはじめた。
くすぐったさと腰が抜けそうな心地よさのなかであたしはもう動けない。
亜弥ちゃんは、あたしのカラダに指と唇をすべらせ、
さっきあたしがしたことをとても上手に真似してみせた。
「もっと、うまくなるよ」
憎たらしい声。
あたしはシーツを噛んで、必死で甘い声をこらえる。
困る。今だって亜弥ちゃんにされてると思うだけで
どうにかなっちゃいそうなのに。
「みきたん、気持ちいい?」
「……ン」
「声、きかせて?」
あたしは歯をくいしばって、ぶんぶんと首を振る。
亜弥ちゃんにそんなの聞かれるなんて末代までのナントカ。じゃないけど、なんか。
だめだよ、恥ずかしい。絶対、ヤだ!
- 152 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 18:01
-
「むかつくー。本気だしちゃお」
ほ、本気って? ちょっと待って!
いきなり彼女の舌の動きがはやくなる。
両手で口をおさえるより前に、死にたくなるほど甘い声が喉から漏れた。
やっぱりあたし、この子にはかなわない。
止まらない。頭の中が真っ白になる……
「みきたん、大好き」
細い指でカラダをかき混ぜられながら囁きかけられて、
あたしはあっけなく背骨を軋ませ、亜弥ちゃんのものになった。
目の端から、透明な涙なんて、流しながら。
あたしの腰が落ちたのを確認すると、
亜弥ちゃんはゆっくりと指を引き抜き、
あたしと目をあわせて微笑むと、濡れた指先を得意げにちょろっと舐めた。
その仕草とピンク色の舌がすごくHで、
あたしは真っ赤になってシーツを鼻まで引っ張りあげる。
亜弥ちゃんはニヒヒと笑いかけてあたしが泣いてるのに気づくと
おやおやというような顔をし、顔を寄せて目尻の涙をぺろっと舐めてくれた。
ちょっとお、これじゃああたしのほうが初めてみたいじゃん!
- 153 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 18:02
-
なんだかなあ、もお。どうよ、あたし。
こんなに骨抜きにされちゃって大丈夫?
敗北感に倒れ伏すあたしの髪を、亜弥ちゃんの指がそっと梳く。
「みきたん、大事にするからね」
「だからそれは美貴のセリフだってば」
にゃははとうれしげに笑う亜弥ちゃん。
その腕の中でおとなしく目を閉じてあたしは、
生まれて初めて彼女が教えてくれた幸福という感情を
胸の中で何度も何度もリピートした。
- 154 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/01/31(土) 18:03
-
それからあたしたちは仲良く手をつないで、少しだけまどろんだ。
窓の外は、もう真っ暗。
ガラスにたえず張りつき流れる雨粒が、
フットライトのかすかな明かりに浮かび上がっていた。
「お腹すいたね」
「外、雨だね」
「ルームサービスとろう」
メニューを開いて、あーだこーだと検討する。
雨に降りこめられて、幸せな空間に閉じこめられたふたり。
ううん、好きで閉じこもってるんだね。
ご飯食べたら、泡風呂にして一緒に入ろう。
今日は徹夜でおしゃべりしよう。
チェックアウトぎりぎりまで、生まれたまんまの姿でいよう。
ふたりきりで。
ずっと、ふたりきりで。
- 155 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/31(土) 18:04
-
本日はここまでといたします。
- 156 名前:雪ぐま 投稿日:2004/01/31(土) 18:12
- あっ、書くの忘れてました。
あやみき外伝、明日、最終回でございます。
- 157 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 18:43
- 最高!以上
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 18:53
- ため息が出ました。素晴らしいです・・・
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 20:13
- きらきらとした光につつまれたふたりがあまりに美しくて
息ができなくなりました。
このままでは、酸素不足で脳が壊死してしまいます。
しかし、たとえ5分に1回倒れながらでも、
しつこく読み続ける所存です。
今後とも全国の「雪ぐま」ファンを失神させる勢いで
ひとつよろしくお願いします。
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/31(土) 23:43
- ちょっと…気が向いただけなんです…。
もしかしたら更新されてるかな、なんて思って…。
あぁ…レポートやる前に読むんじゃなかった…全く手につかない。
雪ぐまさんすごいよ雪ぐまさん。あなたに骨抜きにされてます。
しかももうちょっとでPJにあややが出る…。
今日はレポートしないことに決定みたいです。
- 161 名前:達吉 投稿日:2004/01/31(土) 23:46
- 軽エロだし、甘甘だし、最高だし!^^
雪ぐまさんの小説、本当、最高です!!!
実は、さっき胃痙攣で、倒れまして・・・^^;今さっき病院から帰ってきたばかりなのです^^;
病院から帰ってきて真っ先に、雪ぐまさんの小説読みました^^
いい薬になるのでw
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 14:15
- こんなため息の出るほどのあやみき…
あぁ…もう幸せ過ぎる。
とにもかくにも
最 高 で す 。
- 163 名前:時限爆弾 投稿日:2004/02/01(日) 17:25
- 更新お疲れ様でした。
松浦さん流石、と何回も思いました。
初めてというのに、彼女の天才的な
オーラがこれでもかという位放たれているのを文面か
ら感じ取りました!!それは潔い彼女のナルシズムが
あるからなのかと、考えちゃったりw
運 命 万 歳
次回であやみき編完結ですか…淋しい気持ちも
ありますが、見届けさせて下さい。
頑張って下さい!!!
- 164 名前:川VvV从 投稿日:川VvV从
- 川VvV从
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 21:40
- ↑何の感想も書かず、いきなりコレだけ貼り付けるのはどうかと思うぞ・・・。
自分はこのコピペ元のスレに出入りしてる者だけど、
同志の中にこういうことをする人がいるのは情けないし、
何より作者さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
同性愛うんぬんって表現を不快に感じた方もいると思う。
元スレ住民を代表してお詫びします。ごめんなさい。
- 166 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/01(日) 22:57
- 157> 名無飼育さん様
謝々!以上
158> 名無飼育さん様
ありがとうございます。あやみきは初めてでドキドキしていましたが
そう言っていただけてうれしゅうございました。
159> 名無飼育さん様
ありがとうございまするw 作者冥利に尽きるレス、たいへん励みになります。
てゆうか、あなた面白い方ですねw 今後ともご愛顧のほどお願い申し上げます。
160> 名無し読者様
レポート間に合いそうですか? 有り難いお言葉ですが、ちと心配w
PJ、雪ぐまも観ましたよ。あややの新曲、かなり好きです。
161> 達吉様
いたたたた……痛そうでございます。胃痙攣とはおだやかではありませんな。
どうぞゆっくりご養生を。暇つぶしにお読みいただければ幸いでございます。
162> 名無飼育さん様
ありがとうございます。有り難いお言葉、たいへん励みになりまする。
あやみき美少女コンビはとても魅力的。書いているほうも幸せな気持ちになります。
163> 時限爆弾様
松浦さんは流石ですよ。拙作を書くためにけっこうTV鑑賞しましたが、
観れば観るほどその思いを強めます。非常に稀なタイプの強いオーラを持った少女だと思いまする。
そして藤本さんは、見た目よりもずっと気のいい人だなあと感じている今日この頃。
- 167 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/01(日) 22:58
- 164> 名無飼育さん様
熱烈に話題にしていただき、いたみいります。
165> 名無飼育さん様
心のあたたかな方ですね。お心遣い、感謝いたします。
165様をはじめ、いつも励ましのレスをくださる方に支えられているので大丈夫です。
いたらぬ作者でございますが、今後ともどうそよろしくお願い申し上げます。
では本日の更新にまいります。
- 168 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 22:59
-
亜弥ちゃんの予言どおり、
あれから彼女のことをもっと好きになってしまったあたしは
今日も思うぞんぶん、振り回されてあげている。
“あげてる”んだからね。そこんとこ、間違えないように。
「たん、髪の毛やって」
「はいはい」
「たん、もっかいプリクラ撮ろー」
「はいはい」
「チューして」
「人がいないとこでね」
亜弥ちゃんがふくれる。
あたしは笑いが止まらない。
学校ではずっと一緒にいるし、
放課後も、休みの日も一緒にいることが多い。
お互いの家に泊まることもしょっちゅうで、まさに家族ぐるみ。
気になるのはアノ声がパパやママに聞こえないか(!)ってことくらいで
あたしたちのカンケイは順風満帆。
毎日がお天気。能天気。
- 169 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:00
-
いつでも笑ってるせいか、あたしはもう誰にも怖いなんて言われない。
せいぜいツッコミキティくらいかな。
これはね、いつだって自分が世界の中心みたいな亜弥ちゃんといると
誰でもこうなっちゃうような気がしてるんだけど。
「最近きれいになったんじゃない、ミキティ」
わざとらしく“ミキティ”なんて呼びながら、よっすぃ〜がそう言う。
「そう?」
「うん、赤マル人気急上昇、間違いなし」
やっぱ、恋するオンナはナントカってやつぅ?
そういってよっすぃ〜はにやにや笑う。
あたしはすかさずビシッとつっこんだ。
「よっちゃんは、ますます男前になったね」
「げ、そう?」
よっすぃ〜はガバッと開いてた膝をパッと閉じて座り直す。
そうそう。きちんとしてりゃ天才的美少女なんだからさ。
- 170 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:01
-
もてあました想いを慰めあってた時もあったね。
こんな幸せな毎日がくるとは夢にも思わなかった。
あたしたちは微妙なニュアンスで微笑みあう。
大人ぶってる、情けないガキだった日々。
あたしとよっすぃ〜がしゃべってるのを発見した亜弥ちゃんが
だだだだだだだーーーーっと駆けてきた。
「たんっ」
べたっ。じろ。
あたしに抱きついて、よっすぃ〜を睨む。
よっすぃ〜が苦笑した。
「ほんとに何でもないって、松浦」
「ほんとぉ? たんのこと狙ってない?」
「ないない。えーとね、あたし、カノジョいるし」
およ? 言っちゃっていいの、よっすぃ〜。
驚いて見ると、よっすぃ〜はオデコまで真っ赤になってコホンと咳払いをした。
亜弥ちゃんが目を丸くする。
- 171 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:01
-
「えー? カノジョ? そうなのぉ?」
「まあね」
「誰? うちの学校のコ?」
「いや、えーと……トメっちだよ、ほら、一緒に海に行った」
「あー、あのちょっと変わった子ぉ」
シーッ、亜弥ちゃん!
あたしはあわててバカ正直なお姫様の口をふさぐ。
よっすぃ〜が苦笑した。
「そうそう」
「あー、ああいうのがタイプぅ」
妙に納得したように亜弥ちゃんはフンフンうなずく。
それで、「じゃあ、たんには手を出さないね」だって。
ちょっと悪いよ亜弥ちゃん。
いくら彼女がキショキャラであたしがセンス抜群だからって〜。
「たん、色気ないもんね」
そういう意味かい!!!!!!
ガクッとしたあたしを見て、亜弥ちゃんとよっすぃ〜は大笑い。
ま、まあいいけどね。ふんだ。
- 172 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:02
-
「そっか。だから最近、かわいらしいお弁当もってきてるのかぁ」
亜弥ちゃんがなるほどね〜と冷やかした。
よっすぃ〜が「うぐ」と詰まる。
「学食の常連だったのに、いきなりピンクのお弁当箱ぉ。誰の差し入れだって、後輩の子たち騒いでたよぉ」
「お願い、誰にも言わないで!」
「なんでぇ? よっすぃ〜もラブラブ宣言すればいーじゃん」
あたしたちみたいにね?
そう言って亜弥ちゃんはあたしの腕に腕をからめる。
あたしは思わず照れ笑い。あ、ほっぺが蕩けそうかも。
よっすぃ〜は、見てるほうが恥ずかしいよみたいな顔をして
素っ気なく「考えとくよ」と肩をすくめた。
なによ、かっこつけちゃって。
あんただってトメっちにメロメロのくせにさ。
あたしはさっそくツッコミ開始。
- 173 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:03
-
「ね、お弁当のなかにケチャップでハートとか書いてあるの?」
「か、書いてねーよ」
「タコちゃんウインナーなの?」
「……うぅ」
「卵焼きは甘〜いの?」
「……ない」
「は?」
「ウインナーも卵焼きも入ってない! コンニャクと煮物だけだぁ!」
よっすぃ〜がいきなりガオー!と雄叫びをあげる。
「ダイエットさせられてんだよ〜ぅ!」
「あーー……」
あたしと亜弥ちゃんは、なんの打ち合わせもなく顔を見合わせ、
「帰ろっか」と、声を揃わせた。
「コラ! モマイラ話を聞け!」
「いや〜、そういえば痩せた〜♪」
「痩せた痩せた〜♪」
唄うように二人で声を揃え、ぴょんと逃げ出す。
「ちくしょー! オマエらを喰ってやる〜」とわめくよっすぃ〜の声。
キャー、ハラが減ってもそれだけはやめて。
あたしと亜弥ちゃんはきゃあきゃあ笑いあって
どちらからともなく手をつなぎ、スカートをひらめかせて階段を駆け降りた。
- 174 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:03
-
いつでもぺたぺたしてるあたしたちを、生徒諸君も街のみんなも振り返る。
「かわいいからだよ」と、あいかわらずポジティブな亜弥ちゃん。
そうだね、きっと。あたしは笑って頷く。
笑う門には福きたる。つまり、そういうこと。
さあ、皆さん、あやみき教に入りましょう。
帰りの電車のなかで、
亜弥ちゃんは今日もタコみたいに唇を突き出してくる。
まさにナントカのひとつ覚えってやつ。
「ねー、バイバイのちゅう」
「ヤです」
このやりとりはもう、あたしたちの毎日に組み込まれた儀式。
ビシッとつっこみつつ、それでもあたしは亜弥ちゃんのタコチュー口を
人さし指でツンとつついてから一駅先に電車を降りる。
それから電車が走り出してもバイバイとしつこく手を振る彼女の姿と
彼女を乗せた電車が豆粒ほども見えなくなるまでホームで見送って、
その人さし指を自分の唇にそっとのせる。
これはあたしだけの内緒の儀式。
いつまでも亜弥ちゃんと一緒にいられますように。
- 175 名前:あやみき外伝 投稿日:2004/02/01(日) 23:04
-
改札の手前で、「藤本さん」と呼びかけられて振り向いた。
待ち伏せてたのは、真っ赤な顔をした隣町の男子高の男の子。
手には封筒。たぶんラブレター。
あたしは戸惑ったように、彼を見上げる。
あれ? キミ、藤本美貴の最新情報、知らないの?
「ごめんね。恋人がいるから」
お相手は、岡女のNo.1アイドル、松浦亜弥。
もちろん、あたしも負けてないけどね。
あたしはひらりと手を振って、軽やかに改札を駆け抜けた。
☆おしまい☆
- 176 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/01(日) 23:07
-
『愛するトメっち〜あやみき外伝〜』完結でございます。
ありがとうございました。ご感想をぜひよろしくお願いします。
明日からは『愛するトメっち〜文麿外伝〜』でございます。
続けてお読みいただけると幸いです。
- 177 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 23:13
- 今日初めて雪ぐまさんの小説に出会って、いま、幸運なことにリアルタイムで
拝読しました。やさしい視線があふれていて感動しました。何度も読み返すと
思います。なんか言葉が足りなくてうまく
表現できませんが、御礼を言いたい気持ちです。ありがとうございました。
- 178 名前:ゆうぴ 投稿日:2004/02/01(日) 23:14
- 疲れ様です!もう最高です!
文麿外伝、楽しみです〜。
これからもお体に気をつけてください。
更新待ち続けます。
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/01(日) 23:15
- あやみき教に入らせてください!何でもしますから…!
ええと、あやみき外伝、よかったです。
毎回動悸・息切れをしながら読ませてもらいました。
これからも幸せな二人でいて欲しいですね。
文麿外伝も楽しみにしてます。
- 180 名前:わく 投稿日:2004/02/01(日) 23:17
- あやみき外伝、がっつり読んでました☆
こちらも最高!!
雪ぐまさんの世界にどっぷりんことつかっております(笑)
文麿外伝も期待大でお待ちしております!!
がんがってくださ〜い(´д`)<僕にはわかる
- 181 名前:ゆんせ 投稿日:2004/02/01(日) 23:18
-
あやみき外伝おつかれさまです!
雪ぐまさんの作品って、なんだろう、
うん、
心の中がポッて暖かくなる感じします
幸せです、こんな作品に出会えて!
まだまだ応援させてもらいます!
- 182 名前:ゆうぴ 投稿日:2004/02/01(日) 23:35
- 再度レスして、申し訳ありません。m(__)m
『お疲れ様です』です・・・。人様のスレなのに・・・。
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 23:59
- 同じ「初めて」なのに
おしゃれなシティーホテルを選ぶあややと
酔ってるとはいえ、
よっすぃ〜に『ここでは気の毒』と言わしめる程ベタなラブホを選んでしまったトメっち。
あまりに対照的で笑っちゃいました。
涼しげな文麿様がどんな風に感じてたのか気になります。
楽しみにしてま〜す。
- 184 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/02(月) 00:16
- しばらくお邪魔しない間に、こんなに進んでいたとは・・
完結おめでとうございます。
ちょっとちょっと奥さん、あやみき外伝メチャクチャいいですわよ〜!
すげぇ〜、すっかりハマっちまいましたぜぃ、雪ぐまの旦那w(ヲイ
今まで読んだあやみきの中で最高に萌え!です。あやみき教、入信希望してもいいですか?
(ネタが細かいところもイイな〜アターレ飯田大好きなんでw)
ますますこの先の文麿さんとトメっち視点が楽しみです。
遅れを取らぬよう、しっかり付いて行きますですよ。
- 185 名前:260@前 投稿日:2004/02/02(月) 01:28
- いしよしだけでなく、あやみきまでサイコウでした。
雪ぐまさんの文章とか、話のもっていきかたとか
すごいです!
どのCPでも楽しめてしまいます。
- 186 名前:時限爆弾 投稿日:2004/02/02(月) 02:08
- ミキタン从 ‘ 。‘)人(VvV从アヤチャン
あやみき編完結、おめでとうございます。そして、お疲れさまです。
たんたん言うあややに沢山会えないと思うと、淋しいです。
クールなツッコミキティに沢山会えないと思うと、淋しいです。
でも、何回でも読み返せて、読み返せば鮮明に情景が出てくる、
そんな雪ぐまさんの作品に愛情がフツフツと(照w
パワフルで、焦燥的で、甘々で、愉快なあやみき編でした。
正直に言うと、とても失礼承知ですが、文麿は私の中でアウトオブ
でした。が、冷静な第三者な彼は、一体何を思っていたのか…
今は文麿が気になり出し…w見事に雪ぐマジックが…w
楽しみにしております!!!
从‘ 。‘从<これからもがんばって!!!>川VvV从
- 187 名前:達吉 投稿日:2004/02/02(月) 14:52
- あやみき外伝完結お疲れ様です^^
あやみき好きのオイラとしては激しく萌え萌え〜wな小説でしたw
あやみき教入っていいですか?w(笑)
文麿外伝も楽しみにしてますよ!!!^^
P.S雪ぐまさんの小説という名の薬が効いたのか、胃痙攣は治りました^^
川o・-・)<完璧です!!
- 188 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/02(月) 21:19
- あたたかな皆様の声に励まされ、
今日も妄想小説を書き散らかす雪ぐまでございます。
スレの雰囲気をいろいろお気遣いくださった方(削除依頼とか)、ありがとうございます。
守られていることを強く感じ、感謝の極みでございます。
177> 名無飼育さん様
初めまして♪ とてもうれしいお言葉をかけていただき、雪ぐまも177様のお目にとまった幸運を
深く深く噛みしめております。今後とも気に入ったシーン等のご感想をお聞かせいただけると幸いです。
178> ゆうぴ様
お風邪はいかがですか? ゆうぴ様の作品では純情(?)いしよしとオヤジごっちんが
とってもかわいらしく魅力的です。うちの文麿様はスカしてますが、どうぞご贔屓に……。
またこっそりレスさせていただきますね〜♪
179> 名無しさん様
動悸・息切れもあやみき教に入ればたちまちに回復……むにゃむにゃ。
と、勧誘するぁゃゃ17歳などを思い浮かべると、たちまち幸せになれますw
てゆうか、そういう妄想を雪ぐまは楽しんでおりますw
180> わく様
お久です〜♪ ええきっと読んでくださっているだろうと思っておりました。
(´д`)<僕にはわかる。 今後ともさらにさらによろしくでございまする〜。
181> ゆんせ様
お久です〜♪ とってもうれしいお言葉、感謝感激です。ゆんせ様を始め、
皆様のお心遣いで幸せモードで書かせていただいております。謝々!
- 189 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/02(月) 21:20
- 183> 名無飼育さん様
そう、同じ「初めて」なのにw 雪ぐまにとっては、これがいしよしとあやみきのムードの違いですが
いかがでしょうか? トメっち視点では、この差がストーリーにからんでまいります。
184> 名無し23。様
お久です〜♪ アツクお褒めいただいて雪ぐま、舞い上がっております。
アターレ飯田に占ってもらいましたところ、この調子で文麿外伝も突っ走るが吉だそうです(ホント?)。
185> 260@前様
お久です〜♪ では、さっそく他CPもバンバン……と行けないところが、いしよしヲタw
はやくトメっち視点に行きた〜いと思いつつ、文麿外伝に突入です。
186> 時限爆弾様
すごい驚いたのですが、まさに「パワフルで、焦燥感があって、甘々で、愉快な」
あやみきを書きたいと思っていたのですよ。受け止めてくださって感激でございました。
187> 達吉様
川o・-・)<完璧です!! に、すごい驚いたのですが……。
文麿外伝をお読みいただくとその意味がわかります。胃痙攣、再発しませんようにお祈りしつつ。
では本日の更新にまいります。
- 190 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:21
-
さてさて、コロッケ大好き美少年、
綾小路文麿様の華麗なる私生活(?)が今、あきらかにw
お話は、よっすぃ〜&トメっちの度肝を抜いた
あのお誕生日の舞踏会の翌日から始まります。
- 191 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:21
-
『愛するトメっち〜文麿外伝〜』
- 192 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:22
-
特製レモネードを文麿様の机にコトリと置くと、
文麿様は書物からわざわざ顔をあげて、
春風のような笑顔で「ありがとう」とおっしゃってくださいました。
そして、レモネードを一口飲むと、
いつものように満足そうに深く頷かれます。
「やっぱり紺野が淹れてくれるレモネードは最高だね。僕にはわかる」
ちょっとばかりキザな方です。
話半分に聞かなくちゃと思うのですが、
それでも褒められると私の頬は赤くなってしまいます。
まったく、こんなふうに惑わされてばかりではシャクにさわります。
私はお返事のかわりに、からかうような声音でこう言ってみました。
「ところで、どちらのお嬢様が本命なんですか?」
文麿様が、おかしそうに目を細めました。
- 193 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:23
-
「何のこと?」
「石川様と吉澤様ですよ」
先日の誕生会に突然お呼びになった美しいお嬢様方。
石川様はお姫様のように可憐でたおやかな方。
吉澤様は驚くほど美形で、ちょっぴり(いや、かなり)ユニークな方。
どうやらご学友ではなさそうです。
ヘアメイクの方まで用意されて、並々ならぬお気遣いよう。
そんなことって、めずらしい。
文麿様はクスッと笑っただけで、なにもお答えになりませんでした。
自分から訊いておきながら私はなぜかホッとします。
知ってしまえば、また心が騒がしくなるだけです。
「紺野にからかわれるとは思わなかったなあ」
「むっ。紺野だってからかったりすることはあります」
「最近、どもらなくなったしね」
「むむっ」
からかわれても仕方ありません。
お勤めを始めた頃は、どもりまくり、かみまくりで
ご迷惑をかけていましたから。
- 194 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:24
-
申し遅れました。私の名前は紺野あさ美。
この4月から綾小路家で住み込みのメイドをしております。
北海道の片田舎で育ち、中学卒業後に都会へと奉公に出てまいりました。
文麿様に初めてお会いした時の衝撃は今でも忘れません。
涼しげな瞳でブルーの詰襟を品よく着こなし、
つややかな長い髪をさらりと後ろでまとめたその姿。
まるで少女マンガのなかから抜け出てきたみたい。
こんなに美しい男の方がこの世に存在していたなんて。
旧華族のお家柄のうえに、こんなに美少年だなんて
ちょっと話ができすぎじゃあないでしょうか。
きっと意地悪だったり、すっごく女好きだったりするんだわ。
そんな私の下衆のかんぐりは、ことごとく外れました。
文麿様はとても物静かで知的な方。
お出かけもあまりなさらず、驚くほど広いお屋敷のなかで、
ひとりで本を読んだり、ぼんやりと庭を眺めたりなさるのがお好きなようです。
- 195 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:24
-
文麿様が再び書物に目を落とされたので、
私は下がりかけて、ふと首をかしげました。
あら? 文麿様の口元に、揚げ物のカスのような茶色い粉が。
「あ、何かついてる?」
私の視線に気づいた文麿様はポケットから白いハンカチを取り出すと
照れくさそうに口元をぬぐいました。
「何を召し上がってらしたんですか?」
「……コロッケ」
コロッケ?
おやつにしては変わっています。
さては買い食いですね。夕食が入らなくなりますよ。
「だって、好きなんだもの」
「では、シェフにリクエストしておきましょう」
「ううん、ああいうカニクリームなんとかじゃなくてさ」
普通のが食べたいんだ。ですって。
ふうん。あんがい庶民的な食べ物がお好みなんですね。
私は、文麿様の意外な一面を発見したようでうれしくなりました。
◇ ◇ ◇
- 196 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:25
-
お勤めをはじめたばかりの頃、私はずっと悩んでいました。
自分の心なのに、どうして完璧にコントロールできないのでしょう。
ジロジロ見ては失礼だと思うのに、目が勝手に追ってしまう。
なんとか言葉を交わしたくて、後ろ姿をしつこく見つめてしまう。
そのくせ、話しかけられると妙にどもってしまうのです。
赤くなってしどろもどろになった挙げ句、黙り込んでしまうと
文麿様は決まって「そんなに緊張しなくていいよ」と、やさしく微笑んでくださいました。
「紺野、レモネードを淹れてくれる?」
ある日、文麿様は学校からお帰りになると、そうおっしゃいました。
心をこめてレモネードをつくり、お部屋にお運びすると
文麿様は、それを受け取りながらお気遣いの言葉をかけてくださいました。
「もう仕事には慣れたかい? 何か困っていることはない?」
あ、何か答えなくちゃ。えーと、えーと……えーと……
喉がつかえたように言葉が出てきません。
ほんとうに口下手で嫌になってしまいます。
- 197 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:26
-
赤くなってうつむいた私を気の毒に思ったのか
文麿様は、やさしい声音で話しかけてくださいました。
「まだ、緊張する?」
「あ、は、はい……」
「紺野は真面目なんだね 。もう1ヶ月になるのに」
文麿様はそう言うと、ひらりとソファに腰かけてレモネードを口にされました。
そして、ふと顔をあげると、思いがけない誉め言葉をくださったのです。
「紺野が淹れてくれるレモネードはおいしいね」
「え、あ……」
「つくり方にコツがあるの?」
やわらかく首をかしげて微笑む文麿様。
私はうれしさのあまり、ますますしどろもどろになりながらつくり方を説明します。
といってもハチミツの量の加減のことだけなのですが。
「あの、いろいろ、研究しまして、この量が、その、ベストかと……」
「研究?」
文麿様がおかしそうにクスッと笑いました。
あ、変だったでしょうか。私はますます真っ赤になります。
- 198 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:27
-
「なるほど。今度からレモネードは必ず紺野に頼むことにしよう」
「こ、光栄ですっ!」
この時、ぱあっと夢見心地になってはっきりわかったんです。
私は、文麿様に恋をしていると。
そして、とたんに暗雲が立ちこめたように心が暗く沈みました。
文麿様は、私にとっては雲の上の方。
好きになっても仕方がないのです。
その思いは、お勤めに慣れるにしたがってますます強くなっていきました。
綾小路家で垣間見るきらびやかな社交の世界。
文麿様を取り囲むのは、美しいドレスを身に纏った
由緒正しい家柄のお嬢様やマダムたち。
先日のお誕生会を思い出して、きゅっと唇を噛みます。
ドレスで着飾ったお嬢様たちのことを、まったくうらやましくないといったら、それは嘘。
私は頭を振って、思考をストップしました。
生まれの違いについて考えていったら、両親を恨むことになってしまう。
貧乏だったけど、兄弟もたくさんいて楽しい家でした。
私が北海道を離れて奉公に出ると決めた時、
父も母も別れを惜しんでわんわん泣いてくれたのです。
- 199 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:28
-
お父さん、お母さん、元気でしょうか……
じわっ。
郷愁に目が潤んできました。
慌てて目尻をぬぐい、顔を上げます。
広くて豪華な玄関ロビー。ここだけでも実家より大きいかもしれません。
だけど、なんとなくガランとした冷たい雰囲気がします。
なにしろ、今このだだっ広いお屋敷に暮らしているのは旦那様と文麿様だけ。
文麿様の弟君と奥様は、理由あって別邸で暮らしておられるのです。
その理由は、まあ、大人の事情というか……
そしてなぜか、住み込みのメイドも私だけです。
他のメイドはすべて通いで、執事もシェフも通い。
これは綾小路家クラスのお宅ではとても珍しいことです。
防犯上、物騒だと思うのですが、私が口を出すところではございません。
21時を過ぎると、ご用で呼ばれることはほとんどありません。
私は窮屈なメイド服を脱ぎ、部屋に備え付けのシャワーを浴びます。
使用人の部屋なので簡素ですが、モスグリーンの品の良い絨毯が敷かれた室内は、
二段ベッドが2つも押し込められていた実家の子供部屋に比べるとずっと……
はっ、いけないいけない。また卑屈になるところでした。
- 200 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:28
-
私はパジャマに着替えると、机に向かい、
両親に手紙を書きはじめました。
『お父さん、お母さん、お元気ですか? あさ美は、元気です。
でも、こちらは残暑が厳しくてまいっています。もう9月も終わるというのに……。
先日、お坊ちゃまの17歳のお誕生パーティーがありました。
とても盛大なパーティーだったので緊張しましたが、
大きな失敗もなく無事に務めることができました。
お坊ちゃまは、たくさんのきれいなお嬢様たちに囲まれていました。
とってもやさしくて、人望のある方なんですよ。
今日も私がつくったレモネードを褒めてくれました。
ところが、意外な好物をひとつ発見。
どうやらお坊ちゃまは学校の帰り道にコロッケを買い食いしているらしく……』
ここまで書いて、ふとペンを止めました。
文麿様の話ばっかりじゃないの。
これじゃあ変に思われるわ。
私は便せんをぴりっと破いて、くしゃくしゃと丸めました。
◇ ◇ ◇
- 201 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:29
-
私が文麿様の秘密を知ったのは、それからしばらく後のことでした。
さまざまな偶然が重なっていたとしか思えません。
私が文麿様のご帰宅に気づいていなかったこと。
洗濯物で両手がふさがっていて、ノックをせずにドアを開けたこと。
部屋におられる時は必ずドアに鍵をかけている文麿様が
この時に限って鍵をかけ忘れていたこと。
「えっ……」
どさっ。
ドアを開けた瞬間、私の手から、畳んだ洗濯物がすべり落ちました。
散乱した文麿様のお洋服は下着にいたるまですべて男物。
なのに、目の前で着替えている文麿様の身体は……
- 202 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/02(月) 21:30
-
文麿様は、私の声にハッとしたように振り返り、
あわてて両手で胸元を隠されました。
でも、ぶかぶかとトランクスを履いたその華奢な腰。
すんなりとなめらかに伸びた美しい足。
ええええっ?! 私は唖然としました。
「ふ、文麿様……?」
「……あーあ、バレちゃった」
そう言って困ったように肩をすくめるのは
絶世の美少年じゃなくて美少女。
「とりあえず、ドア閉めて」
文麿様はそう言うと、いつものような品のいい微笑を浮かべました。
- 203 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/02(月) 21:34
-
本日はここまでといたします。
なななんと文麿様は……w
今作のご案内は、メイド服を着させたら日本一(?)
いつまでたっても発声に自信が感じられないコンコンです。
川o・-・)< 憧れの後藤さん……
- 204 名前:伊央 投稿日:2004/02/02(月) 21:50
- どうもお初でゴザイマス。
雪ぐまさんのスバラシー小説にもう感激しすぎて、
我慢できなくなっちゃいました。
しかも今回は私の好きな2人組みが出てきて、
もう最高です。
続きに期待してますです。応援してますです〜。
- 205 名前:時限コンコン爆弾 投稿日:2004/02/02(月) 22:36
- 交信お疲れ様です!!
(´д`)<今日の閲覧代は小切手で(ry
嘘です、学生にそんな金はぬわぁぃです!!w
なんとっ!コンコンがそんな格好で!!w
紺ちゃん推薦の私としては非常に嬉しいです。
いしよし、あやみき、その上紺ちゃんですか…
まさか紺ちゃんまで出てくるとは…
どこまで雪ぐまさんは私のツボをプッシュ(ryw
川o・-・)<先生、執筆頑張って下さい!!
- 206 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/02(月) 22:40
- ひぎゃあ!!そういうことなんですか!
雪ぐまさんの考える事は自分の予想の右斜め上を行きますね。
素晴らしいです。紺野かわいいよ紺野。
- 207 名前:わく 投稿日:2004/02/02(月) 22:53
- どわっ!!!!文麿様ったらそんな秘密がw
度肝抜かれてしまいました(´ д`)<でも僕にはわかる
- 208 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/02(月) 23:03
- 更新、お疲れ様です。
ひえぇ〜!そ、そんな展開ですかぁ!?こりゃ参ったっす。
雪ぐまさん、アナタって人はまったく!天才だよ天才!
川o・-・)< 完璧です!
昨日の「ハロモニ。」でも、こんこんの(´д`)に対するまなざしが
熱かったですねぇw
ワタクシもレモネードが飲みとぅございますです。
次回も脳内むはむはしつつ、待たせていただきます。
- 209 名前:183 投稿日:2004/02/03(火) 02:03
- 二人のキャラの象徴だなぁなんて思った訳です。はいw
トメっち視点楽しみ〜
でも、その前に
文麿様ったら、なんちゅう重大な秘密を…。
- 210 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/03(火) 11:38
- とんでもないスタートを切った文麿外伝でございますw
204> 伊央様
初めまして♪ でも、どこかでHNをお見かけしたことがあります。
もしや後×紺小説などお書きになっておられますか? 今後ともどうぞよろしくです。
205> 時限コンコン爆弾様
HN、いいですね〜。かなりウケました。紺ちゃんAAにも励まされたことですし
がんがって執筆いたしますよ〜。にしても、趣味があうんですなw
206> 名無しさん様
右斜め、ってとこがいいですね。次は左斜め上を狙いたいところでございますw
紺野ちゃんは、ハマる人はとことんハマりそうな不思議な魅力を持った女の子ですなw
207> わく様
脅かしてすんませんw 文麿様はもともとかなりマンガっぽいキャラですので
いろんなことが試せて楽しゅうございます。
208> 名無し23。様
ハロモニにおける紺野ちゃんの「憧れの後藤さん」は、ネタとわかっててもドキッとしますなw
「Do it now!」プロモの並び画像もけっこう良かったり……。ああ妄想癖がとまりませぬw
209> 183様
そうですね、象徴的な出来事でございます。どうぞお楽しみに……。
文麿外伝はあやみきよりちょい長くなる予定ですが、こちらもどうぞよろしくです。
では本日の更新にまいります。
- 211 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:39
-
アニメでは見たことがあります。
女の子なのに男の子として育てられたリボンの騎士。
サファイア姫、でしたっけ。
「僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね」
文麿様は、いまひとつ感情が読めない声で話します。
「その運命を避けるには男の子として、つまり別人として育てるしかないということらしいんだよね」
「な、なるほど……」
まさか、現実世界でそんなふうに育てられてる女の子がいるなんて!
そして私の初恋の方が、よりによって、よりによって……
「バレちゃったからしょうがないけど、他言しないでね。両親に知られたら面倒なことになるから」
「は、はいっ」
あ、でも。
私はふと心配になりました。
私が知ってしまったことで、文麿様の運命は歪まないでしょうか。
青くなった私を見て、文麿様はおかしそうに私の頭をポンポン撫でました。
- 212 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:40
-
「紺野は真面目だなあ。占いだよ? ほんとに信じてるの?」
「で、でも……」
「ほんと困っちゃうよね、うちの両親にも」
男のフリなんて、いいかげん無理なんだよ。
文麿様の頬に、かすかに影が差しました。
なるほど、それはそうでしょう。
小学生ならともかく、高校生にもなって男性として生きるのは、
さまざまなご苦労があるに違いありません。
うつむいてしまった文麿様。
そんな顔をされると私まで悲しくなってきます。
私は必死で考えて、言葉を搾り出しました。
「あ、あの、紺野にできることがあったら、何でもおっしゃってくださいっ!」
ああ、こんな月並みなことしか言えない。
どんくさい自分が嫌になります。
- 213 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:41
-
でも、文麿様はうれしそうにパッと顔を上げて、
どこか甘えたようにこうおっしゃったのです。
「じゃあさぁ、話し相手になってよ」
「え?」
「僕さぁ、女だってバレると困るから全然リラックスしてしゃべれないんだよね。だから、仲いい友達とかいなくって」
そう言えば、文麿様の声がいつもより高い。
ああ、これがほんとうの声なのですね。
とても澄んだ美しい声です。
私は文麿様に頼られたことがうれしく、にっこり微笑みました。
「私では力不足かもしれませんが」
「そんなことないよ。紺野、超おもしろいし」
何がですか?
不可解な顔をした私を見て、文麿様は澄んだ音色のまま大笑いしました。
◇ ◇ ◇
- 214 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:42
-
その夜、私はなかなか寝つけませんでした。
なるほど。すべて納得がいきました。
文麿様があまりお出かけなさらないのも。
ちょっとぎこちないキザな話し方も。
住み込みの使用人を最小限しか置かないことも。
「はぁぁ〜……」
ぎゅっと枕を抱きしめます。
文麿様が女性だったとは。
どうせもとから実らぬ恋ですが、なんとなくショックです。
でも、ご家族以外では、私だけが文麿様の秘密を知ってると思うと
なんだかむずかゆくなるほど嬉しいような気がします。
親友とまではおこがましいですが、お友達くらいにはなれるかも……
すくなくとも、もうただの使用人ってわけではないですよね?
私はひとりほくそ笑んで、枕に鼻を押しつけました。
◇ ◇ ◇
- 215 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:43
-
それから私は、仕事を終えてから
毎晩のようにこっそりと文麿様のお部屋を訪ねるようになりました。
「文麿様、シェフが心配してましたよ。最近、お坊ちゃんの食が細いって」
「げ、ほんと?」
「買い食いばっかりされてるからですよ」
「うーー……だってコロッケおいしいんだもん」
「だから、シェフにリクエストしときますったら」
「カニクリームとかはヤなんだったら」
ふふっ、文麿様ったらふくれちゃって。
あれ以来、すっかり私に気を許してくださった様子。
いつもキメキメだったのに、くしゃくしゃと顔をしかめて笑ったり、
むーっと口を尖らせたり、ふわあっと大アクビをしたり。
それが、とっても無邪気な感じで可愛いんです。
うふふふふふふふふ。
- 216 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:43
-
「あーあっ、はやく18歳の誕生日がこないかなあ」
ベッドの上に仰向けに寝転がったまま、文麿様が呟きます。
18歳になれば、普通の女の子に戻れるのです。
「18歳になったら、何がしたいですか?」
「そーだなあ……」
頭の後ろで両手を組む文麿様。
薄いTシャツごしに思いがけず成熟した胸が透けて見えてドキッとしました。
男装のためのコルセット類をすべて外した文麿様のカラダは
驚くほど細身で、少女らしい曲線を描いています。
「恋人がほしいかなあ」
「え?」
「あはっ。んなこと、二回言わせないでよー」
恋人だよ、恋人。デートとかしてみたいのっ。
頬を染めて、口を尖らせながら繰り返す文麿様。
あ、なーるほど。恋人。
- 217 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:44
-
今だってよりどりみどりじゃないですか。
そう言いかけて、あわてて口をつぐみます。
そっか、女の人にモテモテでも仕方ないんですよね。
ちょうど入った紅茶をコポコポと注ぐと、
その音に気づいて文麿様はひょいっと身を起こし、
足をパタパタさせながら、こちらに手を伸ばしてきました。
「ミルク入れてねー」
そのふにゃっとやわらかな笑顔。
私は一瞬みとれてしまって、紅茶をドボドボこぼしそうになりました。
こんなに少女らしい可愛らしさに溢れた文麿様が
ずっと少年に見えていたなんて不思議です。
「大丈夫ですよ。文麿様はきっとすぐに恋人ができます」
「そー思う?」
「ええ、世間が放っておきません」
きっと家柄のいいご子息がわらわらと。
そして文麿様は王子様のような素敵な男性と恋に落ち、
白亜のチャペルでライスシャワーを浴びるんだわ。
光の速度でそこまで考えて、私の胸は悲しみにキリキリと絞れました。
文麿様にミルクティーを手渡しながら、
気づかれぬように小さくため息をつきます。
- 218 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:45
-
男と女の境界線は、もっとはっきりしたものかと思っていました。
なのに、憧れの文麿様が女性だと知ってなお、
こんなに心惹かれる私は一体何なのでしょう。
いいえ、むしろ私は以前のキザな文麿様よりも
今の自然体の、つまり少女の文麿様のほうが魅力的だと思っているような。
一体これはどうしたことでしょう。
……そのケがあったのかしら。_| ̄|○
人生、落とし穴だらけです。
私の初恋は、いさぎよいほど前途多難。
そう思いながらチラと目をあげると、
文麿様がじいっと私のほうを見ていたので、
鼻から紅茶を吹きそうなほど驚きました。
「な、なんでしょうか?」
「ねえ、紺野って好きな人とかいるの?」
「はあっ?」
突然、何てことを訊くんでしょう、この方は。
- 219 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/03(火) 11:46
-
口をぱくぱくさせる私を見て、文麿様はにやりと笑いました。
「あ、赤くなった。いるんだ」
「え、ええまあ……」
「男の子?」
「えっ? ええ、まぁ……」
って、なんでそんなこと聞くんですかっ?!
「ふうん、そっか」
文麿様は、なぜか神妙な顔で天井を見上げます。
「僕も18になったら男を好きになるのかなあ?」
「は?」
「ううん、なんでもない」
それっきり、文麿様は学校の話やコロッケ論に興じたのでした。
- 220 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/03(火) 11:46
-
本日はここまでといたします。
- 221 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
- 川o・-・)
- 222 名前:達吉 投稿日:2004/02/03(火) 14:37
- 更新お疲れ様です^^
雪ぐまさんが、川o・-・)<完璧です!!に驚いた理由がわかりましたw(笑)
コンコンの片思いな感じが可愛くていいですね^^
……そのケがあったのかしら。_| ̄|○
に軽くウケましたw(笑)
- 223 名前:ファンA 投稿日:2004/02/03(火) 14:50
- 更新お疲れ様です。
>>218の紺ちゃんのセリフに笑いましたっ!
ステキですー
紺野さん、大好きなんですw
愛する〜の時から注目してたんで…。うれしいです♪
ゆうぴさん>
はじめて。私もドキドキワクワクです。
でも、そこでネタを言っちゃうのは、他の読者さんの楽しみが半減しちゃうと思うんです…;
オブラートにつつむように、そぉっと…w
これからも雪ぐまさんを応援していきましょう!
- 224 名前:ゆうぴ 投稿日:2004/02/03(火) 16:36
- 雪ぐま様、皆様
大変申し訳ありませんでした。
- 225 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/03(火) 16:52
- こ、この展開はやっぱり…(ドキドキ
- 226 名前:伊央 投稿日:2004/02/03(火) 18:18
- 更新お疲れ様ですー♪
いやぁ、文麿様に百面相するコンコンは
微笑ましいですね〜。
あ、あと私は小説は書いてません。
他の所に感想はバン×2書いてますが(笑
続き期待〜!!
- 227 名前:わく 投稿日:2004/02/03(火) 18:33
- 神妙な顔・・・ニヤリw
こんこんファイ☆
あ〜!!!!コンコンファイ!!
( ´д`)<こんこんファイ
- 228 名前:時限マロマロ爆弾 投稿日:2004/02/03(火) 22:41
- 交信、おつかれさまです。
雪ぐまさんにウケて頂いたからといって、今度は
マロマロかよ…芸がないな自分…。
…ウザイのは承知で、ミドルネーム案が枯渇するまで
やっちゃっていいですか?w笑いの保養なら、幾つでも
やらせて頂きますっ。(頼まれてなry
趣味が合うとおっしゃって頂き嬉しい限りでございます!!
川o・-・)<光栄です・
今後の文磨の行動に期待しつつフェードアウト
がんがってください!!!
交信お疲れさまです。
- 229 名前:↑ 投稿日:2004/02/03(火) 22:44
- 最後の一行意味不明に…すいませんm(__)m
- 230 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/04(水) 11:20
- 222> 達吉様
コンコンのかわいさはどことなく垢抜けないところ。前途多難な片思いをさせたら日本一(?)。
現代のアイドルには稀なタイプですなw (小声で)ロリ系アニメキャラっぽいw
223> ファンA様
おっ、本編の時から紺ちゃん登場にお気づきいただけていたのですね。
ごっちん家のメイドといえばやっぱ紺野さんしかないかとズバッと決めたキャスティングでしたw
お気遣いをありがとうございます。ファンA様をはじめ、読者の皆様に守られていることを
ひしひしと感じる今日この頃。果報者の作者でございます。m(_ _)m
224> ゆうぴ様
迅速な削除依頼、ありがとうございました。実は雪ぐま、221で何をお書きになっていたのか
読んでいないのですよw そのくらい素早い誠意あるご対応でした。
謝罪もいただきましたし、今後ともおつきあいいただけると幸いにございまする。
225> 名無し飼育さん様
さあ、どうでしょう〜〜(ドキドキ
226> 伊央様
リアルコンコンも、動揺したり緊張したリが顔に出まくりでございますねw
しかも大仰ではなく地味ィな感じで出るところが持ち味w さて、クール文麿様にどう対抗するかw
227> わく様
なぜかマコっちゃんのハイハイダンス♪を思い出した雪ぐまw
∬∬´▽`)< ハイハイハイハイ! こんこんファイ!
228> 時限マロマロ爆弾様
ミドルネーム楽しみにしておりますですよw 今回もかなり笑いましたw
あやみきの場合、両想いだったのでさくさく話が進みましたが(展開ハエエ~~って感じで)
今回はちょっとモタつきますねぇ。やや長めとなるヨカンでございます。
では本日の更新にまいります。
- 231 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:22
-
『どちらのお嬢様が、本命なんですか?』
文麿様にそうお尋ねしたことがありました。
女性だと知ってからは、冗談にせよくだらないことを訊いたものだなあと思っていましたが
どうやらあの質問は、私にしては的を射たものだったようです。
秋も深まる夕暮れ。
突然やってきて、いきなり昏倒した吉澤さんと、
はた目にも気の毒なくらいオロオロした石川さんが
手配した救急車に乗って去っていってしまうと
文麿様は薔薇の花束を道に放り出し、いきなりお腹を抱えて笑い出しました。
「あはっ、アイツ、僕がほんとに男だって信じちゃって……」
ほんとに石川さんをとられるとか思ってんの。
あはっ。あははははは。あはははははははは。
私はハッとしました。
文麿様の目尻に光る涙。
その本当の意味に。
- 232 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:22
-
ああ、石川さん、だったんですね。
お誕生会で軽やかに踊っていたお二人の姿が思い出されました。
ひっそりと咲く一輪の花のように微笑む方。
彼女を、好きだったんですね。
思わず黙り込んでしまった私に気づいて、
文麿様はすっと笑いをひっこめました。
そして、ため息まじりに肩を落とすと、
「レモネードつくってくれる?」
と、小さく呟き、スタスタと家の中に入っていってしまわれました。
私は小さくうなずき、そして文麿様が道に放り出した薔薇の花束を拾い上げました。
たぶん文麿様が石川さんに贈ったのであろう、密やかなココロを。
- 233 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:24
-
レモネードをつくってお部屋に運ぶと、
文麿様はまだ制服姿のまま、窓から外をぼんやりと眺めていました。
手には、食べかけのコロッケが握られています。
「また、コロッケですか」
うまくできているかどうかわかりませんが
できる限りいつもの調子で声をかけます。
文麿様はフッと笑って、こうおっしゃいました。
「これね、石川さんちのコロッケ」
「え?」
「ほら、商店街の隅っこのお弁当屋さん。彼女、そこの子」
そういえば、さきほど見た石川さんは三角巾にかっぽう着姿でした。
ずいぶん本格的な格好でお料理をなさるお嬢さんだなと思ったのですが
まさか、あのオンボロなお弁当屋さん(失礼)のお子さんだったなんて。
私は驚いて、文麿様とコロッケを交互に見ます。
「どちらのお嬢様かと思っていましたが……」
「お弁当屋さんのお嬢様だよ。コロッケ作りの名人」
- 234 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:24
-
食べてみる?
そう言うと、文麿様はコロッケを私の口元に差し出しました。
うながされるままに一口食べてみて驚きます。
「おいしい!」
「でしょ?」
まるで自分が誉められたかのようにうれしそうな文麿様。
胸の奥がチリチリと痛みます。
そんな私の感情に気づくはずもなく、文麿様は言葉を続けました。
「最初はコロッケめあてで通ってたんだ」
「…………」
「いつの間にか、彼女と話すほうが楽しみになってた」
コロッケよりも、彼女のことが好きになった。
毎日、あの笑顔を見るのが楽しみだった。
彼女が誰を好きなのか、すぐにわかったけど、
だからもしかして僕でもいいかと、
ほんとうは女でも許してもらえるかと
たぶん、少し期待してたんだ……
- 235 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:25
-
いつもクールな文麿様の目から零れる一筋の涙。
私はしばしその煌めきに見とれ、それからひどく悲しくなりました。
旦那様も奥様も、文麿様を愛するがゆえに男として育てたのです。
そのことが、文麿様の心に深い影を落として彼女を泣かせる。
こんなに美しい方なのに切ない恋を内に秘め、
ただひとりで思い詰めて。
文麿様がふいに泣き笑いの顔になりました。
「紺野まで泣くことないのに」
えええっ?
ハッとして頬に手をやると、
私はみっともないほどぐちゃぐちゃに泣いていました。
あ、鼻水まで……
文麿様はポケットから白いハンカチを取り出して
そっと私の頬をおさえてくれました。
私は驚いて顎を引きます。だって、文麿様だって泣いているのに。
文麿様は静かに首を振ると、「僕はもう泣かないから」と呟きました。
- 236 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:26
-
「だって、泣くことはないんだ」
好きな人が幸せになったんだから、僕も笑ったらいいんだ。
あの鈍感のひねくれ者が、やっと素直になったことだし。
そう言うと、文麿様は窓の外の眩しい夕暮れに目をやり、かすかに目を細めました。
ああ、文麿様はなんて立派な方。
紺野はとてもそんなふうには思えません。
あなたに恋人ができたら、きっと嫉妬のあまり泣き叫んでしまう。
私がいつまでも泣きやまないので、
文麿様はちょっと困った顔をされました。
「い、いいんです。文麿様が泣かないから、だから……」
だから、紺野が代わりに泣くんです。
それは、いいわけじみた言葉。
なぜ涙が止まらないのか、本当は自分でもわからない。
文麿様の傷ついた心を思って?
それとも文麿様の想い人を知ってしまったから?
だとしたらなんて自分勝手で醜い私の心。
- 237 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:26
-
だけど、文麿様はかすかに微笑んでくださいました。
そして、机の上に置いたレモネードを手に取ると、静かに口に含まれました。
「紺野のレモネードはおいしいね。僕にはわかる」
夕陽を透かしてオレンジ色にきらきらと光る髪。
逆光の中でうつむいた文麿様の端正な横顔に、
もう一筋だけ涙が流れたのがわかりました。
◇ ◇ ◇
- 238 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:27
-
厨房に戻り、テーブルに置いておいた薔薇の花束を花瓶に生けて
自分の部屋へと持ち帰ります。
殺風景な部屋が、ぱっと華やかになる、その淋しさ。
それはまるで文麿様が演じた悲しい名脇役のように。
『キミ、何か勘違いしてないかい?』
『これは、ほんとにちょっとした感謝のしるしなんだけど』
『やだなあ、感謝のしるしだってば』
顔面蒼白の吉澤さんと、赤い薔薇よりもなお赤い頬をした石川さん。
ふたりをゆっくりと見比べて、やさしく微笑んだ文麿様。
『……あなたの恋人が気にするの?』
- 239 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/04(水) 11:28
-
花束には、小さなカードがついていました。
書かれている言葉はたった一言。
『Dear, Rika』
きっと何度も何度も練習されたに違いない万年筆の流麗な筆記体。
その何気ない一言に込められた切ない想いに
私はまた少しだけ泣いたのでした。
- 240 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/04(水) 11:30
-
本日はここまでといたします。
念のため注釈を。
本編での、よっちぃ怒濤の告白シーンの日のことでございます。
- 241 名前:伊央 投稿日:2004/02/04(水) 11:34
- リアルタイムキター!雪ぐまさーんっっ!(叫
文麿様切ねぇ…コンコンも切ねぇ…。
こっちも心の中でもらい泣きッス。
二人の今後はどーなるんでしょうか…?
次回更新まってます!!!
- 242 名前:ファンA 投稿日:2004/02/04(水) 12:31
- 更新お疲れ様でした。
じんわり切なくて、胸がいっぱいです。
やっぱりコンコンですよね…。
さりげないしぐさとか、表情とか、おじゃまるとか、ぼぉ〜っとしたとことかたまりません。
だから、出てきた瞬間ガッツポーズでしたよ(笑)
ここの紺ちゃんは本当に可愛くて…。雪ぐまさん最高です!
…なんて熱く語ってみたり。
こんごま、大好きなんです。これからもよろしくお願いします。
- 243 名前:260@前 投稿日:2004/02/04(水) 16:00
- せつない、、、せつないよ文麿。。
思わず泣きそうでした。
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 18:23
- 文麿様ってホントにいい奴だね。
私が幸せにしてあげたいw
- 245 名前:時限たんたん爆弾 投稿日:2004/02/04(水) 19:18
- 彼女を甘く呼ぶ声が、HNに降臨してきましたw
お許しが出たので、これから調子に乗って
ミドルっていかせて頂きますw
マローンと交信お疲れさまですw
文磨の儚い想いに、共感。
私の胸中、黒にタールまで浮かんできました。
文磨の晴れない心にこそ、鮮やかな薔薇が
咲けばいいな、なんて。
。・゚・(ノД`)・゚・。
今日はこの切なさを音に乗せてみます。
がんがってください。
- 246 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/04(水) 20:35
- 雪ぐまさん、おひさです。
あたしゃ純粋のいしよしオタですが、文麿外伝にゃ泣けました。
切ないですな〜、でも何時か幸せはやって来るぞ〜。
- 247 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/05(木) 01:24
- 更新、お疲れ様です。
文麿外伝、しっとりとせつなく胸に染みますねぇ・・(遠い目)
文麿さん、キミって人はまったく(涙)最初から分かっていたのですね。
リボンの騎士はよっちぃでなくごっちんもイイ!と思い直す今日この頃でございますw
そして文麿様を慕うこんこんもまたせつない・・
「モーニングタウン」のDVDをもう一度観たくなりますですよ。
次回も正座して瞑想しつつ、お待ちしております。
- 248 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/05(木) 13:17
- 241> 伊央様
リアルタイム恐縮です、伊央さーんっっ!(叫w
ポーカーフェイスの文麿様と不器用なコンコン、からませるのが非常にむずかしゅうございます。
どうぞ、のんびりと見守ってやってください。
242> ファンA様
“こんごま”って言うんですね。あまり小説を見かけないので、
好き勝手書いておりますが大丈夫でしょうか?
コンコンは妙にスタイルがいい、足がきれいと思っているエロ雪ぐまでございますw
243> 260@前様
さらりとしたポーカーフェイスの裏に、いろんな秘密があった文麿様でございました。
実らぬ恋はきっと彼(彼女か)を大人にしたことでしょう……
244> 名無し飼育さん様
おや、文麿様は果報者ですなw コンコンにも好かれてるし、モテるのにね〜、
本命は振り向いてくれないんですよね〜、なぜかw
245> 時限たんたん爆弾様
文麿様の心に薔薇が咲く日はいつでしょうねぇ。あやみきは「たんたん」言って咲きまくってますがw
淡い夢だから胸を離れない〜♪(激古っ!)ってな切ない事態になりそうな純情文麿くんです。
246> ちゃみ様
お久です〜♪ 雪ぐまも純粋いしよしヲタなのですが、他CPも書いてみると案外ハマ……(ry
てゆうか、書くために観察するのがいけない気がするw 他流試合も楽しんでいただけて光栄です。
247> 名無し23。様
あ、リボンの騎士のお許しが出たw ありがとうございまする〜。
まったく文麿様は男前です。でも、コンコンの初恋には気づかない鈍感ヤロー。
書いてて「で、これからどーするよ、オイ」って感じでございますw
では本日の更新にまいります。
- 249 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:19
-
リーン、リーン、リーン……
まだ早朝だというのに、けたたましく電話のベルがなりました。
こんな時間に一体誰でしょう。
私はパジャマのまま廊下に駆け出し、玄関ホールにある電話の受話器をとりました。
「はい、綾小路でございます」
『ぎゃははははーーー、スカしてるべーー!!!』
「はっ?」
私は耳を疑いました。この声は!
「すじ子姉ちゃんっ?!?!」
『あさ美〜、元気でやってっぺかー?』
電話をかけてきたのは、北海道にいる姉のすじ子姉ちゃんでした。
声を聞くのは久しぶりです。私ははしゃいで、電話に齧りつきました。
ところが……
「ええっ? 今、近くにいるの?! たら子姉ちゃんとかずの子も?!」
『アンタ年末帰ってこねえっていうから、こっちから遊びにきたっぺよー』
な、なんですって?
私は、一転してすうっと血の気がひいていくのを感じました。
- 250 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:19
-
「ふうん、まずはこちらにお招きしたら? 僕もご挨拶したいし」
「え、いいえ、あのっ……」
急に姉たちが遊びに来たので恐縮ですがお休みをと申し出た私に
文麿様は、ごく当然のようにそうおっしゃいました。
私はごくっと唾を飲みこみます。
文麿様は姉たちを知らないから、そんなことをおっしゃるのです。
「あの、姉たちは田舎育ちで……」
「ん?」
「その、いろいろと失礼があるかもしれず……」
「何いってるの。そんなの全然かまわないよ」
田舎育ちは紺野で慣れてるから大丈夫。
そんな憎たらしいことを言いながらにやりと微笑む文麿様。
くうっ。確かにそうですが、姉たちの場合、どもるとかトチるとかそういう問題ではなく。
「ほら、外は寒いんだからはやく迎えにいきなよ」
「は、はぃ……」
- 251 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:21
-
メイド服の上にコートを羽織って玄関を駆け出すと、
姉たちはちゃっかりと門の前にうんこ座り(キャッ!)して、
寒そうにプルプルと震えながら身を寄せ合っていました。
ジャージ一枚に泥だらけの大きなリュック。
寒いのも当たり前です。
「すじ子姉ちゃん、たら子姉ちゃん、かずの子!」
「あっ、あさ美〜。すっげえお屋敷だべなぁ〜」
文麿様にはあんなふうに言ってしまいましたが、
ニコニコと笑いながら手を振る姉たちの姿をみて、
私はじーんと目頭が熱くなりました。
こちらにお勤めして以来の、久しぶりの再会です。
手をとりあってキャッキャとはしゃいだ後、
文麿様のお言葉に甘えて、姉たちをお屋敷に招き入れました。
もちろん「くれぐれも粗相のないように」と、しつこいほど念を押して。
「うっわー、お城みたいだべー!」
「あさ美はすっげえとこで働いてんだなあ〜!」
キョロキョロしながらすじ子姉ちゃんとたら子姉ちゃんが大声を張り上げます。
ああ、粗相がないようにって言ったのに……。
はやくも不安が私の胸をかすめます。
- 252 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:22
-
「やあ、よくいらっしゃいました」
満面の笑みで登場した文麿様の目が、パチパチッと見開かれました。
あちゃー……。私は赤くなりました。
驚くなというほうが無理でしょう。
よりによって青・えんじ・緑の揃いのジャージ姿の姉たち。
同時に、姉たちも文麿様の絶世の美少年ぶりに驚いたようでした。
「ほわ〜、イケメンだべ……」
かずの子が吸い寄せられるようにすい〜っと文麿様に近寄ります。
「好きだ!」
「は? え?」
「ちょっと、かずの子!」
私はあわてて、文麿様にガバと抱きつこうとしたかずの子を引き剥がしました。
まったく、私だってそんなことしたことないのに……じゃなくて、
初対面の方にまったく礼儀知らずなんだからもう!
- 253 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:22
-
「あっ、そうだべ」
すじ子姉ちゃんが、背中のリュックをよいしょとおろして
ぐさりと刺さっていたネギの束を引き抜き、文麿様に差し出しました。
「これ、うちの畑でとれたネギだべ。おいし〜よ、食べて」
「あ、ありがとう」
泥がついたままのネギの登場に、文麿様は目をシロクロ。
あちゃー……。私は頭を抱えました。
◇ ◇ ◇
- 254 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:23
-
ガタンゴトン、ガタンゴトン……。
それなりに混んだ山手線のなかで一斉に注目を浴びまくり、
私はさきほどからちっとも顔をあげられません。
ジロジロ見られるのも当然です。
上質なキャメルのコートに身を包んだ文麿様の両腕にぶら下がっているのは
青と緑のジャージを着た山猿……じゃなくて、すじ子姉ちゃんとかずの子。
たら子姉ちゃんは「あたしは六郎さんに操を立ててっから」と、
わけのわからないことをブツブツ言いながら、
くねくねとつり革にぶら下がっています。
「これが噂の山手線だべかー」
「すじ子姉ちゃん、これ、東京んなかをぐるぐる回ってるんだべよ」
「そうそう。よく知ってるね」
文麿様に褒められて、かずの子は「るるぶ読んできたべ」と自慢げに胸を張りました。
まったくいい気なものです。
私は申し訳なく思って頭を下げました。
「すみません、文麿様にまでお付き合いいただいちゃって」
「水くさいなあ。東京案内なら任せてよ」
文麿様はそう言うと、ニコッと微笑みました。
- 255 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:23
-
「ほんとは車でご案内したいところだけど、運転手がクリスマス休暇を取っていてね」
あっ、そう言えば今日は12月24日。
クリスマスイブではないですか。
「なんだ紺野、忘れてたの?」
「はい……」
「これだからイブに予定のない人は困るべ」
「なによっ、がずの子だって予定なんてなかったでしょっ」
つまらない言いあいを始めた私たちを、文麿様が「まあまあ」となだめます。
新宿西口の都庁、原宿ラフォーレ、渋谷センター街、恵比寿ガーデンプレイス、
ミーハーにはしゃぎまくる姉たちに、ニコニコと見どころを説明してくださる文麿様。
「すみません……」
「ん? どうして? 僕もすっごい楽しいよ」
だって、電車賃もランチも3時のカフェもご馳走になってしまって。
しかも、どこに行っても姉たちがやたら注目を集めちゃうし……はぁあ。
- 256 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:24
-
「ところで、たら子さん」
「な、な、何でそんなこと聞くんですかぁ〜〜〜?」
「は? え?」
「ちょっとたら子姉ちゃんっ、まだ何も聞かれてないじゃないっ!」
やだ〜〜〜、文麿さんったらいきなりだから〜〜〜。
いったい何を考えてるのか、たら子姉ちゃんはくねくね。
文麿様は絶句。ああ、もう。誰か止めてぇ!!!
「で、なんだべ?」
「いや……、あの、皆さん朝早かったみたいだけど疲れてない?」
「夜行で寝てきたから平気だべ」
「夜行? 飛行機じゃなくて電車で来たんだ」
「うんにゃ。夜行バス乗り継いで、あとはヒッチハイクだべ」
「ヒッチハイク?!」
文麿様の目が、またもや真ん丸になります。
あちゃー……。
「美女三人で親指立てれば、どんな車だって止まるべー」
「んだんだ」
私はもう口を挟む気も起こりません。
文麿様を真ん中に思いっきり横に広がって歩く姉たちを見ながら
よろよろと後ろをついていくばかり。
- 257 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:25
-
イブの街は浮かれモードで、なんだか騒がしい。
街路樹にイルミネーションが灯り始める頃、
文麿様がとっておきの場所があるんだというように姉たちの顔を覗き込みました。
「そろそろ六本木ヒルズに行かない?」
えっ、すごく混んでるんじゃないかしら。
姉たちが迷子にでもなったらご迷惑をかけると案じてしまいましたが、
いざ六本木ヒルズにつくと、誰よりも先に歓声を上げたのは私でした。
「うわぁ……!」
すんなりと背の高い街路樹に、まるで雪の夜のような白とブルーのイルミネーション。
そして、見たこともないほど大きなツリーには真っ赤なリボンの電飾が輝いています。
夜の闇に浮かび上がる眩しいほどの光の洪水。
なんて、なんて素敵なんでしょう!
「うわぁ……うわぁ……!」
「気に入った?」
「はいっ!」
私は頬を染めて思いっきりうなずきました。
カップルだらけですっごく混んでいますが、そんなことも気にならないくらいきれい。
- 258 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/05(木) 13:26
-
「さて、お嬢さん方、ドレスを選びましょう」
「えっ?」
「ドレスは大げさかな。ワンピースでいいね」
キザにそう言って文麿様が私たちを引っ張ってきたのは
誰もが知っている高級ブランドショップ。
ど、ど、どーゆうこと?!
- 259 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/05(木) 13:27
-
本日はここまでといたします。
道産子キターーーーーーーー!w
王子様キターーーーーーーー!ww
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/05(木) 13:42
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
もう、なんか言葉が出ません…
とりあえず…
王子様キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
- 261 名前:伊央 投稿日:2004/02/05(木) 15:07
- キタキタキター!!
文麿様あなたは王子です!!
じ、次回には姫が出てくるのでしょうか?
楽しみだー!!
- 262 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/05(木) 21:42
- しっとりした展開から、いきなりこれですか!
あいかわらず素敵です、雪ぐまさん!
マジではまりまくってます。
とりあえず
道産子キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
- 263 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/05(木) 21:54
- 更新、乙でございます。
ぶははぁ〜、ついに、ついにこのキャラたちがキター!!!
まさかこんこん絡みで来るとは・・ヤラレましたわい、ふぅ。
(ちなみにワタクシはブルー担当の方、好きですw やっぱり本場ですw)
いやぁ〜、もうサファイア姫は文麿さんで決まりですわい。
よっちぃはトメっちを取ったから、譲ってあげて下さいw
クリスマスイヴ、こんこんの気持ちは届くのか・・
子犬のようなウルウルおめめのこんこんに幸あれと願っております。
- 264 名前:時限ジャージーズ爆弾 投稿日:2004/02/06(金) 02:11
- 好きだ!!w
北海道から
奴らが
キ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ターーーー!!!!
こんばんわ、交信おつかれさまです。
もはや道産子山手線ですな(意味不w
六本木ヒルズのあのイルミマジックが
コンコンにかかるといいなぁヽ(´ー`)ノ
願いつつおやすみなさいzzz
(´д`)<zzz…んぁ、執筆がんば…zzz
- 265 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/06(金) 12:33
- 260> 名無し飼育さん様
はげしく悶えていただき、ありがとうございまするw
文麿様の王子様ぶり、とくとご拝見くださいませ〜。
261> 伊央様
女の子はだれでもお姫様になれる、雪ぐまはそう思っておりますが
さてコンコンはいかに?! なんかどうもオドオドしがちなんですよねぇw さてさて。
262> 名無飼育さん様
お褒めいただき、恐縮でございます。あの道産子姉妹、大好きなんですよw
とくにかずの子が好きですね、雪ぐまは。猪突猛進な感じがイイ!
263> 名無し23。様
紺野さんの、あのいたいけな感じ。どうするアイフルのチワワくんにも負けておりませぬw
素っ頓狂な姉さんたちに翻弄されるコンコン。やけに苦労が似合うキャラクターですw
264> 時限ジャージーズ爆弾様
奴ら、脇役にしてはキャラ濃すぎなんですがw はやく北海道に帰さないと
物語をのっとられてしまいそうw でも雪ぐまも、ジャージーズが「好きだ!!」w
では本日の更新にまいります。
- 266 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:34
-
文麿様の姿を見て、店長さんらしき初老の男性がすっとんできます。
手慣れた様子で、彼に指示を出す文麿様。
姉たちはたちまちジャージを脱がされ、それぞれ今風のワンピースを着せられました。
鏡の中に映るすっかり変身した自分の姿を見て、姉たちは呆然。私も唖然。
「しゃれてるべ……」
「靴まで“こーでねーと”されてるべ……」
「都会の女って感じだべ……」
「ジャージもかわいかったんだけどね、ここのレストランってドレスコードがうるさいから」
文麿様はそう言うと、「ほら、紺野も好きなの選んで」と微笑みました。
とんでもない! ぶんぶんぶんと私は首をふります。
姉たちにそこまでしていただいて、私までご好意に甘えるわけにはまいりません。
私は安物ですけど一応ワンピースを着ていますし、なんとかOKかと。
あ、ちょっと足元はスニーカーですけど、でも。
「これとかどう?」
「いえっ、結構ですっ」
「着てみせてよ。ね?」
さらりと微笑んで、店長さんを目でうながす文麿様。
店長さんにやさしく背を押されながら更衣室に入ってしまう私。
うううううううう。文麿様はスマートすぎますっ。
- 267 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:36
-
「ほわ〜、文麿さんって王子様みたいだべ」
「少女マンガの世界だべ」
「こんな男の人がこの世にいるんだべなあ〜」
ホントは女の人ですけどねっ。
姉たちが、初期の私とまったく同じ反応をしてることを憂鬱に思いつつ、
私は文麿様が選んでくださった漆黒のベルベッドワンピースを身につけました。
そして、ノースリーブの肩に真っ白なパシュミナのストールを巻きつけ、
ふらふらしそうなほど踵の高い銀色の華奢なミュールにこわごわ爪先を入れます。
恐ろしいことに、これらには値札というものがついていません。
高級ブランドってみんなこうなのでしょうか。
それとも文麿様が気をつかって?
「いいね。似合うよ」
おどおどと更衣室から出てきた私に、
文麿様はすかさずそう言ってくださいました。
むっ、ちょっとタイミング良過ぎ。
こんな大人っぽい格好をさせてもらってるからでしょうか、私はちょっと大胆。
ちょっぴりふてくされて軽ぅく睨み、ツンと横を向くと、
文麿様は「ほんとだったら」とおかしそうに笑いました。
- 268 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:36
-
文麿様が案内してくださったのは、会員制だという最上階のレストラン。
店に入るなり、私たちは歓声をあげました。
床から天井まで壁一面に張り巡らされた大きなガラス窓に映っていたのは
街に色とりどりの宝石が降り注いだような煌めく夜景。
まるでロウソクの炎のようにオレンジに光る東京タワーが真正面に見えます。
「東京タワー、きれいだべー」
「クリスマスだから、いつもよりきれいなんだよ。街もね」
しっちゃかめっちゃかな姉たちのテーブルマナーに嫌な顔ひとつせず、
文麿様は姉たちの素っ頓狂な話を面白そうに聞き、軽やかに笑います。
21時を過ぎた頃、突然、店内の照明がスッと落ちました。
煌めく夜景に溶け込み、テーブルごと浮いているみたいな錯覚。
燕尾服を着たピアニストが、静かにクリスマスソングを奏ではじめます。
姉たちはもう夢見心地。もちろん私も。
こんな素敵なクリスマスイブ、初めてです。
「僕もこんなに楽しいクリスマスイブは初めてだよ」
そう言って文麿様は、ペリエの入ったグラスを軽く掲げました。
- 269 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:37
-
だけど。
少し前から、私にはわかっていました。
文麿様が夜景にふと目を落とす瞬間、誰のことを思っているか。
思いがけず賑やかになった夜に、
あなたの目がふいにガラス玉のように透明になるから。
文麿様、石川さんのどこが好きでしたか?
あの清廉な微笑み?
草笛の音のような澄みきった高い声?
小さな花が開くような女の子らしい話し方?
それとも、どこか扇情的に艶めく南国のお姫様のような肌?
私には石川さんに似たところはひとつもありません。
こんなにおしゃれをさせてもらっても、精一杯微笑んでも、
文麿様の目はやさしく細められながら私を通過する。
- 270 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:37
-
私を、見て。
ここにいる。
- 271 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:40
-
ふいに、生まれてこのかた感じたこともない熱い鼓動が身体の中を駆け巡り、
私は震えながら小さく深呼吸をしました。
何を考えているの、私。
文麿様は、雲の上の人……
「紺野? 寒いの?」
小さく震えた私に文麿様の心配そうな声。
違います、文麿様。紺野は、胸が熱い……。
「……夜景が、きれいすぎて」
負けたくないんです。
あなたが煌めく夜景のなかに見ている彼女に。
発作のように涌きあがる火傷しそうに熱い衝動。
姉たちがいなかったら、私は今この瞬間、傷ついたあなたを誘ったかもしれません。
一夜、限りの、恋に。
- 272 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:40
-
「紺野?」
「……何でもありません」
涙が出そうになりました。
痛む胸をおさえて、慌てて立ち上がります。
食事中にすみません、お手洗いへ。
そう呟いた表情に無理があるのか、文麿様も姉たちも心配そうに私を見ました。
ごめんなさい。どうして、私、うまく感情をコントロールできない……
- 273 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:41
-
レストランを出てフロアに駆け出し、息をつきました。
豪奢な最上階フロアに集う人々は、老いも若きも裕福そう。
はき慣れないミュールでよろよろと歩く私はきっとみっともなくて浮いています。
フロアを横切ることさえ気が引けて、レストラン脇の大きな窓に近づくと、
そこにうつるのは半泣きの自分。
思いっきりたれちゃってる目に、丸い鼻、丸いほっぺ。
自信なさげに震えるばかりの唇。
ひょろひょろとして、なんとなく頭が大きく見える……。
情けないその姿を見たくなくて、
ガラス窓にぺたりと手をついて夜景を覗き込みました。
煌めく夜景がじんわりと潤みます。
こらえていた涙が、ひとつ、ふたつ、頬を流れ。
神様、私はどうして私なんですか……?
- 274 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:42
-
「僕が泣きたい時に、いつも紺野が泣くね」
ふいに聞こえてきた声に、ヒッと身をすくめました。
ふ、文麿様っ! 私は振り返ることもできずに、ガチンと固まりました。
文麿様はすうっと私の隣に立つと、
窓にもたれかかるようにして私の顔を覗き込んでこられました。
思わず、パッと顔をそらしてしまいます。
みっともない泣き顔を見られたくなくて。
「なんで、泣くの?」
「……文麿様が淋しそうなお顔をされたからです」
それは本当で、嘘。
あなたが淋しいから泣くんじゃない。
あなたを淋しく感じさせる人が私じゃないことが悲しい。
偽善的で身勝手な、自分。
使用人のくせに、ご主人様を責めるようなことを言う。
- 275 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:43
-
文麿様は、クスッと笑いました。
「僕が何を考えてたか、バレちゃったみたいだね」
そう。
石川さんは、今頃なにをしてるだろう。
アイツはちゃんと素敵なクリスマスを石川さんにプレゼントしたかな。
……なんてね、余計なお世話だ。
文麿様は小さく肩をすくめると、ガラスに手をついて夜景を覗き込まれました。
磨き上げられたガラスに映る淋しげな文麿様の瞳。
黙っているとすこしふてくされたように見える艶やかな唇が
ゆっくり動いて、ガラスを白く曇らせます。
「この店ね、ずっと前から予約してたんだ」
ああ、つまり。
私は目を伏せます。
石川さんを、誘おうと。
ずっと、前から。
- 276 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:44
-
ごめんね、紺野たちを連れてきといて、こんなこというの失礼だね。
文麿様は、コツンとガラスに額をつきました。
「もう誘うつもりなかったんだけどね……予約、取り消せなかった」
どうしても消せない。
消せない想い。
私にはよくわかる、文麿様の苦しみ。
私はこれ以上泣いてしまわないように、きゅっと口を引き結びました。
石川さんは、馬鹿です。
文麿様に、こんなに愛されたのに。
眼下に広がるこの気の遠くなるような夜景を独り占めできたのに。
そして夜景よりもなお美しい文麿様のその瞳も。
もちろん、そんなことは言えませんでした。
そのかわり、私は文麿様の横顔を見つめます。
今、この瞬間、私のなかであなただけと過ごすクリスマスイブ。
あなたの心がここになくても。
- 277 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:44
-
そんなふうに思っている自分を感じて、私は知ります。
初めてお会いした頃よりもずっと、
もう狂ったように、あなたを好きになってしまっていること。
そう、身代わりでかまわない。
それとも、身代わりにもなれませんか?
目を伏せる。決して口に出せない想い。
気づいてほしい。
気づいてほしくない……
- 278 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:45
-
「さて、そろそろ戻らなくちゃね」
重く沈んだ空気を振り払うように、文麿様がそう言いました。
そうですね。私は力なくコクンと頷きます。
いかに素っ頓狂な姉たちとはいえ、
あまり長く席を外しては気にするでしょう。
手の甲で涙をぬぐった私に気づいて、
文麿様はいつかのようにポケットから白いハンカチを取り出し、
そっと頬をおさえてくださいました。
束の間、見つめあう。
その瞬間、私はなんとか微笑むことができました。
泣き顔よりも笑顔の私を、文麿様の瞳に浮かべたい。その一心で。
文麿様は、ちょっと首を傾けると、
フフッと不思議な笑みを漏らしました。
- 279 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:46
-
「ねぇ、僕はすこしびっくりしてるんだけど」
きれいだね、今日の紺野。
メイド服もかわいいけど、大人っぽい格好も似合うね。
なっ、なにをいきなり!
首に捲いたストールをきゅーっと引っ張りたくなるほど動揺しました。
か、か、か、かわいい?
き、き、き、きれい?
「思いがけず楽しい夜が過ごせたし、予約は取り消さなくて正解だったね」
さっきまでの切なげな瞳はどこへやら、
飄々とそんなことを言うと、文麿様はくるりと踵を返し、
スタスタとレストランへと戻っていかれました。
- 280 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/06(金) 12:47
-
私はすっかり涙も引っ込んでボーゼンと佇みました。
文麿様ったら、まったく女殺しだわ。
そんな調子のいいことをおっしゃると……
「……ホントに一夜の恋とか誘っちゃいますよ?」
「ん? なんか言った?」
口の中で呟いただけなのに、くるりと振り返る文麿様。
うわ、地獄耳っ?!
「いえっ、な、な、なんでもありませんっ!」
「何よ?」
「いえっ、あの、ほんとにっ」
うわーん、ごめんなさい神様助けて!
一度、言ってみたかっただけなんですぅ!
「変な紺野ぉ」
ううっ……。
誰か、変な私を止めてください。
- 281 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/06(金) 12:48
-
本日はここまでといたします。
- 282 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/06(金) 13:03
- コンコーーーーーン!!(号泣)
雪ぐまさん、あんたって人は……最高じゃないですか!!!
切なくて切なくて、きゅーーっときちゃいました。
オモロ切ない雪ぐまワールド、どっぷりきてます。
次回更新が待ち遠しい。毎日ありがとう!
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/06(金) 13:18
- はじめまして。
毎日、胸をときめかせて読んでおります。
今日は最高、胸が振るえ、涙ぐんでしまいました。
これからも、かんばって下さい。大好きです。
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/06(金) 13:52
- 先週のハロプロワイドでの紺野の「特別扱い」
…そんな裏付け?があるだけに(^^;)
余計クラクラしますです。
おもしろい!
- 285 名前:伊央 投稿日:2004/02/06(金) 18:39
- こんごまー!!いやっほぉい!!
雪ぐまさんすごいです!すばらしいですっ!!
文麿様…ちょっと切ないですが、それでも素晴らしい王子っぷりで。
褒められて照れてるコンコンが可愛いなぁv
- 286 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/06(金) 20:48
- 雪ぐまさん、あんたはひどい!
こんな素敵な番外編をプレゼントしてくれるなんて。
それぞれの愛の形が有って、人は成り立ってるんでしょうね。
しかし、文麿はちょっと格好良すぎません?
- 287 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/07(土) 00:42
- 更新、乙でございます。
ちょっとちょっと奥さ〜ん、イヤ〜だぁもう、文麿外伝が最高の出来栄えですわよ〜!
こんごまイ!メッチャイイ!いしよし→あやみき→こんごまはホップ・ステップ・
ジャンプで来てますよほ。
このまま行ったらトメっち視点ではもう・・(昇天)
この文麿外伝を読んでますとふと、あの「冬のソナタ」を思い出しますわいw
雪ぐまさんは情景が浮かんで来そうな位、すごく綺麗な文章ですよね。
さすがです。←とマジレスw
次回更新も( ^▽^)<胸が痛い!
になりつつ、お待ちしておりますですよ。
- 288 名前:達吉 投稿日:2004/02/07(土) 11:50
- 軽くひさしぶりのレスですw
受験があったので・・・^^;
結果は・・・
な、な、何でそんなこと聞くんですかぁ〜〜〜?
(笑)まだ結果は出てませんw(笑)
レスはできなかったんですが、その間も、ちゃんと毎日チェックしてましたよ^^
美人三姉妹とコンコン・・・・w姉妹の中でコンコンだけ似てねー!w(笑)
切ない片思い・・・本当に切ないですね。。。
思わずウルウルですw
これからも応援してます!
- 289 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/07(土) 11:51
- >>270
の2行に心を奪われました。
こんこんを幸せにしてあげたい。
- 290 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/07(土) 13:06
- 282> 名無し飼育さん様
オモロ切ないですかw なんかイイですね。うれしゅうございまする。
きゅーーっと、ドハーーッとお楽しみいただけば幸いです。
283> 名無し読者様
はじめまして♪ ご愛読いただき、ありがとうございます。
コンコンのあまりに切なく前途多難な片思い、ぜひ応援してやってくださいませ。
284> 名無飼育さん様
コンコンと憧れの後藤さんは、良くも悪くも対照的で、なんだか遠い感じですね。
最初、こんごまって「?」って違和感あったのですが、書いてみると意外とハマ……(ry
285> 伊央様
おお〜、盛り上がってくださって光栄でございまする♪ コンコンってなんか妙な子っぽいw
なんか妄想が広がるというか、書いてて面白いキャラです。ちなみに文麿様は完全に漫画w
286> ちゃみ様
呑気なうちのいしよしは、文麿様の苦しみも知らず、なにしてんでしょうかね?w
まだカッコつけてますけど、次第に“人間”文麿様が出でまいりますですよ。
287> 名無し23。様
イヤ〜だぁもう、奥様、オカマっぽくて最高ですわ!w 爆笑しましたわよ〜w
あてくし、まだ「冬のソナタ」は拝見してませんの。てか、ここんとこ妄想小説に忙しくって
モ娘。がらみ以外のTVを全然見られませんの。マジで時代に取り残されそうですわあ。ホホ。
- 291 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/07(土) 13:07
- 288> 達吉様
ヒサブリ受験生キターーー! しかも、たら子だしw 桜の花が咲くとよいですなあ。
こんごま初挑戦ですが、なんか勝手にどんどん切なくなるw どーなることやら、です。
289> 名無飼育さん様
幸せにしてやってくださいw おとなしそうに見えて、実は激しい情熱を内に秘めたコンコン。
リアルコンコンも、時々ハッとするほど熱いコメントを出したりしてて……なかなか魅力的です。
では本日の更新にまいります。
- 292 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:08
-
「皆さん、今日は、うちに泊まってくれるよね」
「いんやー、お気遣いなく」
「ホテルをとってあるの? そんなのキャンセルしたらいいよ」
「いいべ、悪いべー。そのへんにテント張って寝るべよ」
「お、お姉ちゃんっ!」
「ははっ。東京は物騒だから美女三人でキャンプをするのは危ないな」
結局、文麿様のご好意で、姉たちは綾小路家に3日間もお世話になりました。
ほんとに何から何まで……。
紺野はもう綾小路家に一生お仕えする所存です。
てゆうか、むしろお仕えしたい(ポッ)。
- 293 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:08
-
「紺野、……ちょっと立ち入ったこと聞いていい?」
「はい?」
姉たちが帰った夜、いつものようにお部屋に遊びに行くと
文麿様はしばし逡巡した後、いきなりそんなふうに質問をされてきました。
「どうして紺野だけ“あさ美”なの?」
「え?」
「すじ子、たら子、かずの子でしょ? なんで紺野はとびっ子とかじゃないの?」
とびっ子?!
「……そんな名前じゃなくてラッキーじゃないですか」
「そう? とびっ子ってかわいいじゃん」
かわいくないですっ!
紺野とびっ子って、そんなの困りますっ!
私は膨れながら、うちの姉妹の名前の理由をお話しました。
たいした話でもありませんが。
- 294 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:09
-
「文麿様とおんなじですよ、近所で評判の占い師さんがつけたんです。ラッキーネームとか言って」
「ほんとに? たら子とかって?」
「そうです。ホントにつけるうちの親もどうかと思いますが」
その名前で幸せになれるって言われたらつけちゃうものなんでしょうね。
親ってそんなものなのかも。
私の時は、からくも“○○子”シリーズをまぬがれ、
「朝の顔が美しくあるように」ってことで“あさ美”らしいのですが
じゃあ何で“あさ”だけ平仮名なのかと、
それに寝起きの顔はやっぱヤバいぞと小一時間……。
「なるほどね。まあ、うちの親もどうかしてるからね」
文麿様はひょいと肩をすくめ、
そしてどこかホッとしたように、ふにゃっと微笑まれました。
「でも、よかった。たいへんな理由じゃなくて」
「え?」
「紺野だけ……たとえば血がつながってないとかさ」
あはっ、よけーなお世話だけどね。
なんか紺野だけ似てないしさ、気になって。
そう聞いて私はうれしくなりました。
文麿様、紺野の家庭のジジョーを案じてくださったんですね。
- 295 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:11
-
「似てないってことないですよ……内緒ですけど、私も北海道にいた頃はかなり……」
「へえ?」
「私服はジャージでしたし……ほっぺも赤かったし……」
「うそ、写真見せて」
「だ、だめですっ!」
ちぇーっ、つまんなーい。
そんなかわいい声だされても、これだけはダメっ。
これでも都会に出てくる時は紺野なりに研究したんです。
髪を伸ばしたりとか、おしゃれをしたりとか。
まあ、もしかしたら相変わらず垢抜けないかもしれませんが。
「そういえばお姉さん達も、美人だよね」
「はあっ?!」
「そうじゃない? おしゃれしたら、かなりいけると思うな」
いや、姉たちことはどうでもいいですこの際。
お姉さん達も、美人?
お姉さん達も?
も?
キャーーーーーーーーーーーーッ!!!!
私は丸くなって床をゴロゴロ転げ回りたくなりました。
美人? 美人? 紺野も、美人? どのへんが? どのくらい?
実は、けっこうタイプとか?
- 296 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:12
-
思わずハァハァしてオラオラ問い詰めたくなった私ですが、
文麿様はさらりと話題を転換されてしまいました。
「僕も紺野んちに生まれたかったなー」
「ええ? 田舎ですよ?」
「いいじゃん別にそんなの」
「貧乏人の子だくさんって感じですし」
「んー、でも、なんかうらやましかったかな」
「………………」
「みんな仲良しだし、なんかポカポカしてて、ちゃんと家族っぽい……」
ああ。
文麿様の言いたいことがわかって、私はなんとも答えがたく黙り込みました。
お仕事がお忙しい旦那様は、クリスマス前からずっと海外出張に出られています。
大晦日にはお帰りになるとのことですが……
「仕事ね。どうだか」
また、女じゃないの?
文麿様は皮肉げに顔を歪めて肩をすくめました。
- 297 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:12
-
「そんなこと。旦那様もクリスマスに家を空けるのを気にされて立派なプレゼントを……」
「あんなのパパの自己満足だよ」
開封したきり、見向きもしない大型プロジェクター付きのゲーム機。
「一人で遊んでろって?」と、文麿様はフンと鼻を鳴らします。
一人じゃないじゃないですか。
私は胸の中でこっそり呟きます。
あなたのおそばにはいつも紺野がいます……なーーーーんて!!!(赤面)
ハァハァ、ちょっと私、かなり浮かれてるわ。
こないだから、き、きれいとか、び、美人とか、言われちゃってるからーっ!
いけないわ、このままでは幽体離脱してしまう。
ここはひとつ気持ちを落ち着けて。
私は首を傾げて、ほんわかと微笑みました。
「文麿様、紺野と遊びましょうよ」
「えー、紺野ってゲーム下手そう」
「むかっ、言いましたね?」
甘い。甘すぎですわ、文麿様。
初代ファミコンで鍛えた炎のコントローラーさばきをご覧にいれますわ!!
- 298 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:14
-
ピコーーン♪ ピコピコーーーン♪
「ふふふふふ、文麿様、まだまだ甘ちゃんですね」
「んあーー!く、悔しーーーっ!」
も、もう一回!
あらら、文麿様ったら、ほんとうに悔しそう。
壁一面に映し出されたゲーム画面を必死の形相で追う文麿様。
そのお姿さえもとても凛々しく……おっと、そうは行きませんよ、ほれっ!
「んあーーーー!!!!!」
またやられたっ!
足をばたばたさせて悔しがる文麿様。
クールなようであんがい負けず嫌いなんですね。ふふっ。
「このゲームがいけない、このゲームがっ。違うのにしよ」
「僭越ですが、どれも同じ結果かと」
「んあっ、何なのその妙な自信はー」
もう、悔しーなあ。
口を尖らせてブツブツ言う文麿様は、とてもかわいらしい。
大人びた方ですけれど、まだ17歳なんですものね。
- 299 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:15
-
こんな素顔を旦那様や奥様がご存知ないのは悲しいこと。
なるほど、お金があっても幸せになれるとは限らないのかもしれません。
マッチ箱みたいに狭い家で身を寄せ合って暮らしていた私たちの家族。
四姉妹でコントローラーを奪いあい、時には両親も一緒になって繰り返し遊んだゲーム。
望めば何だって手に入る文麿様が、
そんな小さな幸せを知らないなんて。
- 300 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:16
-
さんざんゲームに興じているうちに夜が更けてきました。
私は時計をチラリと見ます。いつの間にか0時過ぎ。
いけない、そろそろおいとましなくては。
コトン。
コントローラーを床に置いたその時、
文麿様が、そっと私の手をおさえました。
え………?
ハッとして顔を上げると、ガラス玉のように淋しげな瞳が、
かすかに潤みながら、私の姿だけを映していました。
「今日は泊まってけば?」
ドキン!
え? え? え? そそそそれはどういう……???
手をとられたままじっと見つめられて、鼓動が激しく暴れはじめます。
「紺野といると楽しいんだ」
「文麿様……」
- 301 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:17
-
思いがけない展開に、私は茹でダコもかくやというほど真っ赤になりました。
今にも弾けてしまいそうな心臓をおさえて唾を呑み込みます。
どうして急に、そんなことを?
淋しいから? それとも、ほんの気まぐれに?
……でも、一時の気まぐれでもかまわない、文麿様なら。
「ね、泊まってきなよ」
蜂蜜よりも甘い囁き声。
北海道のお父さんお母さん、ごめんなさい。
今夜、あさ美は大人の階段登っちゃうかもしれません。
「はい……」
真っ赤になってポツリと呟いたその言葉を聞いて、
文麿様は「やった!」とはしゃいだ声をあげ、
いきなり両手を広げて私をギュウッと抱きしめました。
キャアアアアア! 待って、心の準備がぁっ……!
- 302 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/07(土) 13:18
-
「よし! 今夜は僕が勝つまで勝負だっ!」
………………………あ、なんだ、そっか。
……………………………やっぱりね……。
………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。
ぅええええええい!
こうなったら絶対に負けませんからねーー!
川oT-T)< 文麿様、見てらっしゃいーーー!!!!
- 303 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/07(土) 13:19
-
本日はここまでといたします。
コンコン壊れかけw
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/07(土) 13:56
- 見てる読者も壊れかけw
- 305 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/07(土) 14:10
- そして私は壊れました・・・ (=_=)
コンコン頑張れ〜!
次回更新楽しみに待っておりますです。
- 306 名前:伊央 投稿日:2004/02/07(土) 15:22
- 更新お疲れさまです。
いやはや、ゲームでムキになる文麿様もよろしいですなぁv
で、コンコンはコンコンで浮かれモードとw
いつか大人の階段を上がる日は来るのでしょうかね〜?w
- 307 名前:達吉 投稿日:2004/02/07(土) 17:30
- コンコン、ハアハアしすぎですねw(笑)
そんなコンコンが可愛すぎて、見てるこっちがハアハアしちゃいますよw
イヤンッ!///大人の階段なんてw///
登れると良いですね・・・ww
頑張れ!コンコン!いつか登れる、その日までw
- 308 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/07(土) 20:44
- おかしくて、切なくて、何とも言えない、ちゃんこ鍋の様な世界、ごちそうさまでした。
とびっ子には参りました。
今から近所の寿司屋に行って軍艦巻きを食してきます。
- 309 名前:時限ンァ爆弾 投稿日:2004/02/07(土) 21:40
- (´д`)<んぁ、ネタが尽きてきそうな勢いである
交信おつかり様です。
テスト週間なので頻繁にレス
し難い状況であります隊長!!
でもロムっておりますですw
コンちゃんの壊れ具合が 楽しい!!!(・∀・)イイ
コンちゃんのマロと二人でのドキミキな夜wに乾杯です。
(‘д‘)<がんがってください
- 310 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/07(土) 22:01
- 更新、乙でございます。
ちょっとちょっと奥さ〜ん、いつの間にやらこんごまワールド真っ盛りですわよ〜!
このツーショット、すっかり溶け込んでます。こんこん最高♪
大人っぽさと幼さが共存する文麿さん、カッケ〜!
(‘д‘)<お、大人の階段やて!?ウチかて今日で16歳や!来年も海に来てヤキソバ食べて〜な!
次回もハアハアしながらお待ちしてますですよw
- 311 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/08(日) 14:29
- (‘д‘)< 誕生日やったんやで!
ああ、すみません、すみません。忘れてたわけじゃあないざます。
あいぼん、まだ16歳……まだまだ人生これからでございますな。
304> 名無飼育さん様
書いてる作者も壊れかけw
305> 名無飼育さん様
そして作者も壊れました・・・ (=_=)
壊れかけのうちのコンコン、今後とも見守ってやってください。
306> 伊央様
まずはコンコンが文麿様に恋愛対象として見てもらえるか、それがネックですな。
わりとかわいいな〜とは思っているようですが、文麿様もまだまだ子供なのですw
307> 達吉様
ハァハァするコンコン、床を転げ回りたくなるコンコン、幽体離脱しかけるコンコン、
やけにゲーマーなコンコン……こんな妄想をナチュラルに書かせてしまうコンコンw 素敵です。
308> ちゃみ様
どすこい! お寿司はおいしゅうございましたか?
今回は設定そのものがとっぴょうしもないし、どこに辿り着くやらw 楽しんでますわ〜w
309> 時限ンァ爆弾様
そう、雪ぐまは言わせてみたかった。文麿様に「んあー」と……w
ひとつ屋根の下にいるのにねぇ、この二人。ヨシトメ以上にじれったいですな……どうしましょ?w
310> 名無し23。様
奥さん、あてくしもすっかりこんごまに違和感がないんですのよ。妄想って困ったものですわねw
しっかし、ネタがないわこの二人w こうなったら好き勝手に爆走させていただきますわ〜〜www
では本日の更新にまいります。
- 312 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:31
-
……これは、夢?
勢いよくカーテンを開ける音がします。
朝の光が眩しく差し込んできて、うっすらと目を開けると
窓際でパジャマ姿の文麿様が、気持ちよさげに伸びをしている後ろ姿が見えました。
え、と、ここは?
まわらない頭で必死に考えます。
ああそうだ、昨日は明け方までゲームをして、それで……
……そっか、そのまま一緒のベッドで眠ったんだ。
何があったわけでもありません。
それでも枕に顔を埋めたまま、私は赤くなりました。
真っ白なシーツは文麿様の香り。
ふわふわの羽根布団には文麿様のぬくもりが……って、布団かぶってないんですけど私。
さ、寒い、かも。
「くしゅん!」
私のくしゃみにパッと振り返った文麿様のお顔が、
くしゃっと笑みにくずれました。
「あはっ、紺野って寝相悪いね。胸、丸出しだよ」
「!?!?!?!?!?!?」
- 313 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:31
-
ギョッとして胸元を見ると、
なんとパジャマが首のほうまでずりあがっているではないですか!
「キャアッ!」
し、しまった!
そうだ私、寝てるうちにパジャマとか浴衣とか脱げてきちゃうんだった!
幼なじみのマコっちゃんに、散々言われてたのに!!
慌ててバサッとパジャマを引き下ろした私に、文麿様がおかしそうに続けます。
「紺野って、わりと胸あるよねー」
「……ううう」
ぐわわわわわわわ。
大失態です。
見られた。
よりによって文麿様に胸を、胸を……。
「いいじゃん、女同士なんだし」
「……うう(泣きたい)」
「紺野、スタイルいいね」
「……そんなことないです(小顔に憧れています)」
- 314 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:32
-
文麿様はくすくす笑いながらベッドに腰かけました。
大きな目を涼やかに細める、その微笑み。
眩しい朝の光に輪郭がとけちゃいそう。
思わず見とれていると、文麿様はスッと腕を伸ばして、私の髪をさらりと撫でました。
えっ? 私は驚いて身をすくめます。
「おはよ」
「あ、はい」
「たまには僕が朝食をつくろうか?」
「え? いえっ! そんなわけには!」
「じゃあ、一緒につくろ」
手をひかれてベッドから出ます。
うわっ、なんだかこういうのって……恋人みたい?
身体中の血が沸騰しそうになりました。
- 315 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:33
-
年末で通いのシェフもお休み。
二人きりだからと、お行儀悪くパジャマのままで厨房に立つ私たち。
「実は料理、好きなんだよね」と、うれしそうにフライパンを振る文麿様。
「おいしい?」
「はい、とっても」
黄色いオムレツ。赤いケチャップ。
澄みきった冬の朝に、文麿様のやさしい笑顔。
完璧です。夢のようです。
そう、愚かな私はちょっと夢見てしまいます。
こんなふうに毎日、文麿様と二人で朝を過ごせたらいいな、なんて。
「んー、パジャマのまんまでご飯食べるのって楽しいなー」
そんな私の気持ちも知らず、
文麿様は無邪気にパタパタと足を揺らすだけ。
でも、いいんです。
こんな笑顔が見られるのは、きっと私だけの特権。
ほんとうはお行儀の悪いことが大好きな、私のご主人様。
- 316 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:34
-
「ケチャップとマヨネーズを混ぜると、もっとおいしいですよ」
「んあっ! ほんとだ」
「あ、パンにもバターを塗って海苔をのっけてみてください」
「んあーー! 衝撃の味っ!」
紺野の研究はあなどれないなあ、ですって。
こんなことで喜んでいただけるならお安いご用です。
「ねぇ、紺野んちの朝ってこんな感じ?」
「え?」
「パジャマでさ、おしゃべりしながら」
「そうですね。こんなに素敵な食卓ではありませんが……」
「ふうん」
じゃあさあ、今日はなんか、家族っぽいね?
そう言って、照れたようにトーストに齧り付いた文麿様。
私は、胸がきゅうんとなりました。
- 317 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:34
-
「そうですね、家族ですね」
「そう?」
「東京の家族だと思ってますよ、紺野は」
「そっか」
二人きりの穏やかな年末。
私はとても幸せな気分です。
文麿様も、少しは幸せを感じてくださっていますように……。
◇ ◇ ◇
- 318 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:35
-
深夜に突然、旦那様の部屋に呼び出された文麿様。
ほんの20分ほどで戻ってきた時には、
見たこともないほど固く引きつった表情をされていました。
「離婚するってさ」
ああ、やっぱり。
新年そうそう、綾小路家はなんだかピリピリとした雰囲気でした。
奥様も弟様も、元旦にちょっと顔を見せただけ。
旦那様のお帰りも日々遅く……。
「あー、なんか最近、ヤなことばっか」
失恋はするし、親は離婚するしさぁ。
イライラした様子でガウンを脱ぎ、ベッドにほうり投げます。
あまりのことに、私はなんともお答えすることができません。
きっと今はお一人になりたいんじゃないかな……?
私は保温ポットに淹れ直しておいたレモネードをマグカップに注ぐと
小さく頭を下げて文麿様の部屋を出ようとしました。
- 319 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:36
-
ところが。
「なに、話も聞いてくれないの?」
からむような言葉。
振り返ると、文麿様は顎を上げて、ふてくされたように私を睨んでいました。
ほんとに珍しい。それだけショックだったのでしょう。
「……紺野が聞いてもよければ聞きますが」
「聞いてよ。どうせ紺野しか話し相手いないんだからさ」
チクン。
棘が刺さったように胸が痛みました。
ドウセ、コンノシカ、イナインダカラサ……。
ドウセ……ドウセ……。
- 320 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:36
-
「……ごめん」
はあっと深く息をついて、文麿様はソファに腰かけ、頭を抱えました。
私はチクチクする胸をおさえながら、にっこり微笑みます。
大丈夫、わかっています。心が、とても乱れてること。
それに、どうせ紺野しかいないのも本当のことですもの。
「来て」
そう呼ばれて、おずおずと歩み寄りました。
腕をひかれて隣に座らされます。
いつもなら舞い上がってしまうところですが、今日は不安な気持ちです。
私には文麿様の悲しみを受け止めるだけの器がないから。
はあっ。
頭を垂れた文麿様が、また深いため息をつきました。
「僕の18歳のお披露目が終わってから離婚するってさ」
「…………」
「ばっかじゃないの。やめてよって感じ」
うつむいたままの文麿様の頬が皮肉に歪みます。
- 321 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:37
-
「ずっと楽しみにしてたのにさ……ほんと勝手だよ」
ああ、お気の毒な文麿様。
18歳になるのを、女の子に戻る日を、
心待ちにしていらしたのに。
「どうしてわざわざ……」
「さあね。一応、綾小路文麿のまま、お披露目をさせてあげようって親心じゃない?」
つまり、僕は女だからね。
不可解な顔をした私に、文麿様はそう続けました。
「弟が綾小路家に残って、僕の親権は母親に。そういう分配なんじゃない?」
そうは言われなかったけどさ、きっとそうだよ。
ははっ。僕が長男だと思ってゴマすってたヤツらは気の毒だね。
肩をすくめる文麿様。
分配なんて、ひどい言葉。
ご自分を土地かなにかのように。
それに、ゴマすってたヤツらだなんて。
- 322 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:38
-
文麿様って時々、露悪的だわ。
それだけ複雑な思いをされてきたのかもしれないけれど。
思わず表情を曇らせた私をどう思ったのか、
文麿様が面白そうに私の顔をのぞきこまれました。
「ショック?」
「………何が、ですか?」
「僕がいなくなったら、少しは淋しい?」
あっ。
ハタと気づきました。
もしかして、それって文麿様がこのお家からいなくなるってこと?
奥様のご実家に行ってしまわれるとか、そういうこと?
「そ、そんな……嫌です」
「嫌?」
「嫌ですよぉ」
オロオロ。
私は我ながら情けないくらいうろたえました。
そんな、そんな、文麿様のおそばにいられなくなるなんて。
- 323 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:38
-
「じゃ、ついてくるぅ?」
「ついてっていいんですかっ?!」
勢い込んで思わず文麿様の腕にすがりついた私。
自分で言い出したくせに、文麿様はかなり驚いたようでした。
「……ほんとに?」
「ほんとですよ。か、家族だって言ったじゃないですか」
いやあのほんとはもっとアレな理由なんですけど。
でもでも。
「いや、そうだけど。え、え〜〜〜?」
文麿様はどことなくうれしそうな、
でも困ったなぁみたいな顔をしてポリポリと頭を掻きました。
「ママのとこはフツーの家だからねえ」
「そ、そうなんですか?」
「うん、まあ慰謝料はガッポリ入るだろうけど」
メイドさんとか置けるほどかなあ。
自信なさげに小さくなる声。
そうですか……。私はしょんぼりします。
- 324 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/08(日) 14:39
-
「ごめんね、なんかテキトーなこと言っちゃって……」
「いえ……」
そんな虫のいい話、ないですよね。
よく考えたら、私だっていきなり綾小路家を辞めるわけにもいきませんし。
ブツブツとそんなことを呟いていると、ふわりと肩を抱かれました。
「ありがと、紺野」
「はい?」
「なんか、うれしかった。気が晴れた」
そういえば、最近いいこともあったね。
紺野と仲良くなれたもんね?
そうだよ、うん。僕には紺野がいる。
「こ、光栄です……」
僕には紺野がいる……?
カアッと赤くなった私の肩を抱いたまま、
文麿様はかすかに微笑んで、レモネードを口に運ばれました。
- 325 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/08(日) 14:39
-
本日はここまでといたします。
- 326 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/08(日) 17:17
- なんて焦れったい。そして甘酸っぱい。
ああもう。紺野かわいいよ紺野。
雪ぐまさんのお話には胸がキュンキュンしちゃいます。
- 327 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 18:54
- なんとか雇ってもらうわけにはいかないのか…
今後が気になりますねえ
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 19:13
- こんごま二人きりのおだやかな世界と、
文麿様が抱えてる“大人の世界”の明暗のコントラストが
なんだか切なくて……涙ポロリ。
けなげな紺ちゃん、文麿様の支えになってあげて!
- 329 名前:達吉 投稿日:2004/02/08(日) 22:05
- 今日、安倍と後藤のアルバムを購入してきた達吉ですw
こんごま・・・萌えましたww
こういうの大好きなんですよ^^
今後の展開が楽しみですw
コンコンの恋、実るといいなぁ〜^^w
- 330 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/08(日) 23:12
- 更新、乙でございます。
はうぅ〜、せつないっすねぇ、こんごま(泣)
この二人はそこはかとなく、密かに童話的と言いますか文学的な香りがいたしまするなぁ・・
今日の「ハロモニ。」でのこんこんの可愛いさ、未だに目に焼き付いてますですよw
こんこん、どこまで綺麗になるんだよこんこん!
有り余る富なんぞより大切なものがそばにあることに文麿さん、早く気が付いて
下さいな。(いや、気づいてるかな・・)
奥さ〜ん、次回も身悶えしながらお待ちしてますわw
- 331 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/09(月) 11:34
- 326> 名無しさん様
はじめまして、ですよね? これ書き始めてわかったのですがコンコンファンって濃いっていうかw
なんかもうたまらなくloveって感じですねえ。さらにキュンキュンしていただけるようがんがります。
327> 名無飼育さん様
あんがい無力な文麿様。まだ親がかりの身で、自分でももどかしく感じているようでございます。
( T▽T)<子供ってかなしいね。( T Д T)<んあー。パパとママは勝手だよっ。
328> 名無飼育さん様
そうなのです。朝の白い光のなかでの無邪気な微笑み、夜の闇のなかでのスレた哀しみ。
いつもクールな文麿様が抱えるホントの心に気づきはじめたコンコン。
どうぞ見守ってやってくださいまし。
329> 達吉様
実らぬ恋も、時に素敵なものですぞ……なーんて、こんなこと書くとご心配かけちゃいますな?w
文麿様の実らなかった初恋を払拭することができるかコンコン?! ……どうもおとなしいんだよな…w
330> 名無し23。様
マジレスすると、今回は語り部がコンコンというのが影響が大きいですな。>童話的、文学的。
どこか文学少女っぽい香りがするコンコン、作者としては遠慮なく詩的な表現や語彙を使えると。
よっすぃ〜視点ではこうは書けな……(ry。
まあ、CPによって醸し出す雰囲気ってずいぶん違ってくるものでございますね。
では本日の更新にまいります。
- 332 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:35
-
「あ、文麿さーーん!」
脳天に突き刺さるみたいなキィンと高い声が、
文麿様と私の背にいきなり降りかかってきました。
今後の件で奥様が暮らす別邸を訪ねた帰り道のことです。
振り返って、私の胸はドキンと脈打ちました。
そこに立っていたのはピンク色のダッフルコートを着た石川さんと
白いダウンジャケットに身を包んだ吉澤さんでした。
- 333 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:36
-
「やあ、こんなところで会うなんて奇遇だね」
文麿様が、さらりと前髪をかきあげました。
久しぶりに見る、超・美少年モードです。
やはり、石川さんの前だからでしょうか……
吉澤さんはなにやら大きな荷物が入ったビニール袋を両手に下げています。
「どこかにお出かけ?」
「ピクニックです!」
文麿様の問いに、ウキウキで答える石川さん。
ピクニックですって? この寒いのに?
「天気がいいから!」
まあ、確かに冬晴れの気持ちいい空ですけれど。
「てゆーか、春の新作の試食会だよ」
見てよコレ。これ全部お弁当なんだぜぇ〜。
吉澤さんは、どことなくげんなりした声。
まあ、頬っぺたは緩みまくってますが。
- 334 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:37
-
「春の新作? まだ1月なのに?」
「最近はどんどん先取りしないと、コンビニに負けちゃうんですっ」
両手を握りしめ、めらめらと闘志を燃やす石川さん。
うーん、清楚な感じに見えましたけど、けっこう変わったヒト?
石川さんは乙女ちっくに両手を胸の前に組むと、
かわいらしく首を傾げて私と文麿様の顔を交互に見ました。
うわ、キショ……え、いえ、なんでもありません。コホン。
「もしよかったら、ご一緒しませんかぁ?」
思いがけないお誘いに、私の胸が再びドキンと鳴りました。
どうするんだろう。そっと文麿様のお顔をうかがいます。
文麿様は鷹揚な感じに微笑むと、ゆっくりと首を振りました。
「やめとくよ。お邪魔だろうからね」
「そんなことないですよぉ」
「そーだよ。ちょっとマロちゃん食べるの手伝ってよ。あたし10個も食べれないよ」
マロちゃん?!
マロちゃんって、文麿様のこと?!
- 335 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:38
-
文麿様もそう呼ばれたのがおかしかったのか、くっくっと笑いながら
もう一度「遠慮しておくよ。キミ、一人で食べるんだね」と
どことなく皮肉げにおっしゃいました。
「げー、マジかよ。無理だって」
「なによ、10個くらい。根性なし」
「うわ、むかつくー! じゃあ、ジブン食べてみなよ」
ぎゃあぎゃあ言い合いながらも幸せそうに寄り添う二人の背を見送ります。
二人の姿が見えなくなると、文麿様は、ひょいと肩をすくめました。
「あいつ、初めて会った時、すげー顔で僕のこと睨んだんだよ」
「え?」
「石川さんと河原でピクニックしててさ、やっぱりお弁当食べてて」
僕がお弁当食べたら、すっごいヤな顔してさあ。
頭にきたから3個も食べてやったんだ。
そう言ってくすくすと文麿様は笑います。
「なのに、どーだろーねアレ。恋人になったら余裕かましちゃってさ」
あーあ、もう、やってらんないよ。
そう言ってサラリと歩き出した文麿様の心の中は、
いったいどんな色なのでしょうか。
- 336 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:39
-
後ろからトボトボとついて歩きながら私は、
うつむいて小さくため息をつきます。
文麿様、やっぱりまだ石川さんのことを……
そう思いながら、ふと顔を上げ、私は凍りつきました。
信号は思いっきり“赤”。
なのに、文麿様がふらふらと横断歩道を渡ろうとしているではありませんか!
あっと思う間もなく、プワーーーッ!と耳をつんざくようなクラクションが鳴り響きました。
「キャアッ、文麿様っ!!!」
私はとっさに文麿様の背に飛びついて、歩道へと引っ張りました。
恐ろしいほど大きなトラックが文麿様の鼻先をかすめて走り、
キキキーーーーーッと急ブレーキをかけて止まります。
重なりあって歩道にしりもちをついた私たち。
運転席から運転手さんが目を剥いて身を乗り出しました。
「だ、大丈夫か?」
「は、はい」
「バカ野郎っ! 気をつけろよ!」
「す、すみませんでした…」
- 337 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:39
-
後ろから文麿様を抱きかかえたまま平謝りの私。
なのに、トラックが走り去ってしまっても、文麿様は呆然としたまま。
そしてふいに、その目から、つうっと一筋の涙が流れたのです。
「文麿様……」
「あ、ごめ……びっくりして……」
ポロッ、ポロポロポロポロ……
あれ、なんだろ……
唐突に、堰をきったようにあふれ出す、透明な雫。
こらえてもこらえ切れないように、しゃくりあげる。
ポーカーフェイスを、くしゃくしゃにして。
ぎりぎりと歯をくいしばって。
「……っく……うっ……く……」
「文麿様……」
- 338 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:40
-
僕は、もう泣かないから。
あの日の言葉を思い出しました。
夕陽を眺めていた横顔。
泣かないことを誓っていた文麿様。
いつだってあなたはきっと無理をして。
恋を失っても、ご両親が離婚しても、
口をヘの字にきゅっと結んで、
心の底に、さまざまな感情を、すべてを封じ込めてしまう。
封じられた思いは、
きっと心の中に細く深い穴を開けたことでしょう。
そしてとうとう辿り着いてしまったやわらかな場所。
私は泣かないように唇を噛みしめると、
ぎゅっと文麿様を抱きしめました。
今日は私は泣かない。泣かないから、だから、文麿様。
- 339 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:41
-
道行く人たちが、私たちを好奇の目で見ていきます。
私は文麿様の姿を隠すように、ますます腕に力を込めました。
文麿様が喉からひゅうと息を漏らして、私に力なく寄りかかります。
「……ごめ…僕……なんで……」
なんでこんなに泣いてるんだろう。
石川さんのことは、もう吹っ切ったんだよ。ほんとだよ。
「無理、しないで」
お願い、今だけ聞いてほしい。
使用人ではなく、友達としての言葉。
あなたのことを見守っている家族としての言葉。
無理しないで。
泣いていいの。
あなたはいま、ちょっと疲れてる。
だから、思いきり泣いて泣いて、楽になろう。
その先に何が見えるか確かめてみよう。
もし、どうしても諦めきれなかったら
何度でも口説いて口説いて
いつか、あの人から奪ってしまえばいい。
- 340 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:42
-
「……案外、過激なこと、言うんだね」
文麿様は泣き顔のまま、フッと笑いました。
自分でも驚いています。だけど、そう思ったんです。
だって、文麿様は素敵だもの。
あなたのことをよく知れば、誰だってきっと。
石川さんだって、きっと。
冷たいアスファルトに、どのくらい座り込んでいたでしょう。
文麿様の涙はとめどなく溢れ、私はただじっと、
じっと文麿様を抱きしめていました。
ああ、どうして私は石川さんじゃないのかな。
今すぐに、あなたの望む姿に生まれ変わって微笑みを贈れるなら
千本の針を飲み込むような胸の痛みにも、きっと耐えてみせるのに。
- 341 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/09(月) 11:42
-
もう、私を見てほしいとは思いませんでした。
身代わりになりたいとも思いませんでした。
震える文麿様の吐息をかつてないほど近くで感じながら
私は淋しく、無力を感じていただけでした。
- 342 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/09(月) 11:43
-
本日はここまでといたします。
- 343 名前:達吉 投稿日:2004/02/09(月) 15:19
- 今日、第二希望の高校の合格発表があった達吉です。
うぉ〜〜〜〜〜〜!!!
コンコン、めちゃめちゃいい人じゃないっすか!!w
文麿様も、コンコンも苦しんでますねぇ〜・・・
二人とも頑張ってほしいです!
心の底から二人を応援したくなる話ですね^^
- 344 名前:時限ノノノノ爆弾 投稿日:2004/02/09(月) 16:28
- (´D`)<今日はののが降りてきたのれす
交信おつかれす
テストも論文もまだ仕上げてない私ですエヘ
でもちゃっかり拝読させて頂いてますw
コンコン切ないよ。マロも切ないよ。
私には、「包み込む」という言葉がピッタリな今回の話でした。
深いなぁ…。愛情があれば何かは動くものですよね、二人とも頑張れ!!!
(´D`)<お前ががんばれって話なのれry
体調にお気をつけ頑張って下さい。
- 345 名前:名無し@499 投稿日:2004/02/09(月) 19:26
- 雪ぐま さま、いつも更新乙です。
文麿様、リアルごっちんとなんかとても重なって見えます。
爽やかなイメージのせいで色々不自由してるんじゃないかと。。。
でもホントはだれでもそやって無理してるもので。
文麿外伝はそういう人のみちしるべのような気がします。
- 346 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/10(火) 00:16
- 更新、乙です。
うわぁ〜、泣けましたぁ、今回は特に・・
( T Д T)川oT-T)この二人がメチャクチャ純愛モードになって来たような・・
それにひきかえ、よしトメのノーテンキっぷりはどうなのよ!?ってなモンですわいw
マロは優し過ぎる位優しくて、イイヤツ過ぎる位イイヤツなんですよね。
マロ、トメっちをかっさらったよっちぃを殴っても、ワタクシが許しますぞ!
っと、いけねぇいけねぇ、すっかりこんごまにハートを奪われちまいましたw
次回もドキがムネムネしつつ、お待ちしてます。
- 347 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/10(火) 11:39
- 343> 達吉様
ギャッ、中学生?! あの一応申し上げておきますが、18禁シーンはお読みになってはいけませんよw
もどかしい二人の恋。恋もお勉強のように頑張ったぶんだけ報われればいいんですけれどなかなか……
胸躍る高校生活、恋に勉強に力一杯の青春をおくってくださいましね。
344> 時限ノノノノ爆弾様
包み込む、見守る……愛とはそういうものなのでしょうなあ。
でもやっぱり報われたいってのも本心ですよね。マロもコンコンも血を吐くような苦しみなのれす。
345> 名無し@499様
お久です♪ キャラがリアルと重なると言っていただけ、ホッとしております。
そう、だれもが皮膚一枚下の本心を誰にも明かさずに生きておりますね。
ひどく無理をすると顔に透けてくる。リアルごっちんが疲れて見えるのは心配ですね。
346> 名無し23。様
よしトメの幸せの裏に、こんごまの純愛。( T Д T)<失恋って悲しいね。
川oT-T)<片思いってむなしいね。でも、よしトメには何の罪もないってとこが
ますます二人を出口のない迷路に追い込むわけですな。そんな二人に新たな試練が……
では本日の更新にまいります。
- 348 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:40
-
あの日から、なんだか嫌な予感がしていたんです。
- 349 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:41
-
『僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね』
文麿様の鼻先をかすめた、あの恐ろしいほど大きなトラック。
はね飛ばされたら、きっとひとたまりもなかった。
思い出すだけで身震いがします。
まさか私が秘密を知ったことで、文麿様の運命が。
いいえ、まさか。
占いだもの、迷信だもの……
- 350 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:41
-
そんなある日。
日用品の買い物を終えてお屋敷に向かっていると、
ちょうど学校帰りの文麿様をお見かけしました。
ピシリと姿勢のいい後ろ姿に、思わず笑みがこぼれます。
でも時々、手を口元にもっていく仕草。なにか食べてる?
あっ、さてはまたコロッケを買い食いされましたね?
お屋敷の塀ぞいに、しばらくこっそりついて歩きました。
野良猫に気をとられ、ふと横をむく文麿様。
思ったとおり、もぐもぐと動いてる口元。
今度は電線に止まったスズメの行列を見上げます。
あ、やっぱり、もぐもぐしてる。
私はなんだかうれしくなります。
お行儀悪いなあ。かわいいなあ、なんて。
- 351 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:42
-
さて、そろそろ声をかけようかなと思ったその時です。
私は自分の目を疑いました。
ちょうど門のところに辿り着いた文麿様に
突如襲いかかる不審な男の影。
「きゃあああっ! 後ろっ!」
文麿様はハッと振り返ると、さっと身を翻し、
とっさに男の足をひっかけました。
男がドッと倒れ込みます。
私は全速力で駆け寄って、起き上がりかけた男のこめかみに
思いっきし空手チョップを繰り出しました。
「たあーーーーーーーーっ!!!」
べきっ。
………ばたっ。
声にならない悲鳴を上げ、泡を吹いて失神した不審者。
私は肩で息をしながら、地面に倒れ伏した男を怒りをこめて見やります。
脅そうとしたのでしょうか、よく見ると手にはナイフ。
強盗? 誘拐犯? どっちだって一緒だわ。
文麿様に危害を加えようとする者は、この紺野あさ美が許さない!
- 352 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:43
-
私のウルトラ秒殺ぶりに、
文麿様が「おお〜」と驚いた声をあげました。
「……すっごいね、紺野」
「お恥ずかしながら、空手茶帯です」
「へえ、意外。たのもしいな」
騒ぎに気づいた執事たちが何事かと駆け出してきました。
そうだ、警察に連絡しなきゃ。
私はお屋敷に駆け込み、震える指で電話のボタンを押します。
よかった、文麿様、無事で……
でも、もし運が悪かったら……
あのナイフが、まっすぐに文麿様に突き出されていたら……
『僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね』
脳裏にまた文麿様の言葉が蘇り、私は身を震わせました。
やっぱり私が秘密を知ったことで、
文麿様の運命が?
- 353 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:43
-
どうしよう。どうしたらいい?
ゾッとするような寒けが背骨を這い上がってきます。
恐ろしい死の宣告。立て続けに降りかかった危険。
たかが占いと、あなたは言うけれど。
ふいに、ポロポロと頬に涙がこぼれました。
私には万に一つの可能性でも耐えられない。
文麿様が、そんな……
「もしもし? もしもし? 落ち着いて状況の説明を……」
「は、はい……」
どうしたらいい?
どうしたら……
◇ ◇ ◇
- 354 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:44
-
「迷信だってば、そんなの」
18歳のお誕生日まで外に出ないでくださいと懇願する私に
文麿様は苦笑して手を振りました。
書庫で調べものをしたいらしい文麿様。
しつこく追いすがる私に、ちょっぴり困り顔。
「お願いです。あと半年ちょっとなんですから」
「やめてよ。学校はどうするのさ」
そんなの綾小路家のお力でなんとでもなると思うのですが
文麿様は「迷信」の一点張りで、まったくとりあってくれません。
それどころか、
「紺野まで、迷信で僕を縛ろうとするの?」
なんて悲しげな顔をされる始末。
そこまで言われては、これ以上お願いもできません。
きゅっと唇を噛んでうつむくと、文麿様は面白そうに首をかしげました。
「怒った?」
「怒ってるんじゃありませんっ! 心配なんですっ!」
「おおっ、紺野が怒った」
「怒ってませんったら!」
金切り声をあげる私に、おかしそうな笑い声を響かせる文麿様。
笑いごとじゃないっ!
- 355 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:45
-
「ほんとに笑いごとじゃないですったら」
「気にしすぎだよ」
「でも、今日みたいなことが」
「また、紺野がアチョーってしてくれたらいいじゃん」
「それはそうですけどっ! いつも私がいるわけでは……」
「僕だって護身術くらい身につけてるよ」
大丈夫。小っちゃい頃から、けっこう危ない目に会ってきてんの。
あんなの、慣れっこだよ。
ほんとか嘘かわかりませんが、
文麿様はそう言うと、再び本を探しはじめました。
でも、危険って、綾小路家の財産を狙ってくる不審者だけじゃない。
たとえば交通事故とか、いろいろあるでしょう?
私が途方に暮れて、ため息をついたその時のことです。
いきなりグラグラッ、ときました。
きゃっ、地震?!
思わず身をすくめた私。
平然としている文麿様。
でも、ちょうど文麿様のうしろにあった本棚が大きく揺れ……
- 356 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/10(火) 11:46
-
「危ない!」
とっさに文麿様の腕をグイッと引っぱります。
文麿様がよろっと一歩前へ踏み出しました。
どさどさどさどさどさーーっ。
間一髪で降ってきたのは、やたら重そうな百科事典全20巻。
文麿様の背をかすめて、落ちた……
私は震えながら、床に散らばった事典を指さします。
「……ほら」
「迷信」
文麿様はかすかに眉をあげて床をチラと眺めただけで
何事もなかったようにスタスタと書庫を出ていってしまわれました。
- 357 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/10(火) 11:46
-
本日はここまでといたします。
- 358 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/10(火) 12:31
- 雪ぐま様の世界の奥の深さに感動です。
文麿様の苦悩が、ヒシヒシと伝わってきてせつないです。
文麿さま、どうか自暴自棄にならないで、皆あなたを愛しています。
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 14:21
- 紺野かっこいいよ紺野。
惚れ直したよ。っていうか、こんごまハマってるよw
あー、どうなるんだろ。ハラハラドキドキで更新待ってます。
- 360 名前:達吉 投稿日:2004/02/10(火) 16:50
- 中学生ですねぇwそんなに驚かれるとは思いませんでしたがw(笑)
本当に迷信?・・・・
ここまで立て続けに、色々起こるとそりゃあ心配になりますよねぇ・・・
文麿様を心配しまくってるコンコンの気持ちが伝わってきます!
文麿様・・・18歳の誕生日までどうかご無事でいてください・・・(祈)
- 361 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/10(火) 20:47
- か!空手チョップ?
雪ぐまさん、ひょっとして同年代?
誕生日が楽しみです。
- 362 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/11(水) 12:59
- 更新、乙でやんす。
マロさんをお守りするこんこん、カッケ〜!!
(あの風貌で空手茶帯、しかも長距離走も得意なんですよねぇ・・)
どうやらこの二人の間には赤い糸のようなものが・・
「オ・レ!見えました!」とアターレ飯田も太鼓判を押してくれそうな予感w
誕生日までに無事過ごせますように・・南無・・
次回もまったりとお待ちしてますですよ。
- 363 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/11(水) 13:43
- 358> 名無し読者様
うれしいお言葉、ありがとうございます。雪ぐまも、うちの文麿様は果報者ですな。
こんなに励ましていただいて。そうですぞ文麿様、コンコンにも愛されているのに。
359> 名無飼育さん様
ハマっていただき恐縮ですw 紺ちゃんは知れば知るほど味が出てくる
スルメみたいな女の子ですな。外見と内面のギャップがいい。
360> 達吉様
そして運命が回り始める……なんちって。かっこよすぎでしたなw
たかが占いとはいっても何千年の歴史が裏にはあって、そう馬鹿にもできないものなのでした。
361> ちゃみ様
空手チョップって年齢が出るアイテムだったのかw
なんかこう手刀でビシッみたいなのをイメージして思わず書いてしまいますた……
362> 名無し23。様
うちのアターレ飯田は、素人占い師ですからねえw でも、文麿様を見た占い師は細木数子だからw
っていうのは嘘ですが。さてさてカッケーこんこん奮闘中。どうなることやら……。
では本日の更新にまいります。
- 364 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:46
-
もう毎日、生きた心地がしません。
とくに文麿様が学校にお出かけになってからお帰りまでの間、
掃除をしていても、洗濯をしていても、心配が頭から離れない。
『僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね』
ああ、頭がどうにかなってしまいそうです。
やたらミスが増えて、他のメイドさんに嫌な顔をされるし……ハァ。
「遅い、な」
夕方になると私は時計をチラチラ見て、そわそわ。
今日は、さっきから手のひらに汗を握りしめています。
時計の針は、そろそろ18時をまわるところ。
いつもは、とっくにお帰りになっている時刻……
- 365 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:47
-
リーーーン、リーーーン、リーーーン。
ドキッ!
突然鳴り始めた電話に、心臓が飛び出しそうになりました。
いやだ、誰? 何? まさか文麿様の身に何か……
私は手近にあった受話器に飛びつきました。
「はいっ、綾小路ですっ!」
『もしもし、紺野? 僕だけど』
「あ……、文麿様……」
ホッとしました。
でも、何でしょう?
外からお電話をかけてこられるなんて珍しい。
『今日はね、図書館で探し物をしてるんだ。もうちょっと遅くなるよ』
「……そうですか。わかりました」
電話のむこうでクスッと含み笑いを漏らされた声が聞こえました。
『黙って遅くなると、誰かさんが心配するからね』
「あ……」
カアッと頬が赤くなるのがわかりました。
私ったら、文麿様にこんなお気遣いをさせてしまって……
- 366 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:47
-
「……すみません」
『ん? なんで? じゃあ、切るよ』
後でね。
そう言って、文麿様の電話は切れました。
『後でね』
なんだか、やさしい声だった。
私は、しばらくポーッとして、電話の前に佇んでいました。
そう、後で、必ずお会いしましょう。
毎日、無事に帰ってきて。
紺野の、たった一つのお願いです……
- 367 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:48
-
「ただいま」
「お帰りなさいっ!」
弾丸のように玄関に飛び出した私に、文麿様が苦笑しました。
「犬とか飼うと、こんな感じかな?」
「は?」
犬、ですか?
「あれ? しっぽついてるよ、紺野」
ええっ?
思わず、自分のお尻に手をやります。
あはっ、と文麿様が笑いました。
あっ、からかいましたね?!
「も〜〜〜〜〜〜!!!!」
「心配しすぎなんだよ、紺野はぁ」
ぷにっと私の頬をつまんで、さっさとお部屋に入ってしまわれた文麿様。
私はボッと熱くなった頬をおさえたまま、イーッと歯をむきました。
- 368 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:49
-
まったく、人の気持ちも知らないで文麿様ったら……
私がこんなにテンパってるのに、いつもと変わらぬ飄々ぶり。
ほんとうにまったく占いなんて信じていないのでしょうか。
それとも運命を避ける気がないの?
あなたを都会的に見せるクールな眼差しが、
ときどきひどく投げやりに見えて不安になるのです……
◇ ◇ ◇
- 369 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:50
-
「……何、これ」
「水晶でおつくりしたアポロン像でございます」
「はあ〜〜?」
週末の平和な午後。
いきなり運び込まれた全長3メートルはあろうかという透明な彫刻を
文麿様は呆気にとられた顔で見上げました。
「旦那様が一目見てお気に召したそうで」
「……パパの悪趣味にはついていけないよ」
ベルサイユ宮殿の次は、ギリシャ神話か……
腕を組んでがっくりと頭を垂れる文麿様。
業者さんがアポロン像を大広間に設置して帰ってしまうと
文麿様は再びまじまじとそれを見上げ、ため息をつきました。
- 370 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:51
-
「ギリシャの宴とかやりそーな悪寒」
「文麿様、月桂樹の冠とか似合いそうですねえ」
「んあっ!」
また、コスプレ? 勘弁してよー。
そう言って文麿様は、ちょうど目の高さにある彫刻の腰あたりをポンと叩きました。
ぐらり。
台座の安定が悪かったらしく、大きく揺れるアポロン像。
「えっ……?」
驚いた文麿様が、像が倒れないようにとっさに両手で支えます。
私もハッとして駆け寄りました。
重いアポロン像はしばらくグラグラしていましたが、
やっとカタンと落ち着きました。
「あー、びっくりしたあ」
「なんだか危なっかしいですねえ」
「ちょっと業者さんに電話してくれる?」
「はい」
像から離れかけたその時です。
ふと、あの声が、ふたたび耳に蘇ってきました。
『僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね』
- 371 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:52
- 嫌な、予感。
パッと振り返った私は、ギョッと目を丸くしました。
なんといきなりアポロン像の首がもげて、文麿様めがけて落下したのです!!!
「文麿様っ!」
私はとっさに身を翻して、文麿様に体当たりをしました
ゴン。
ものすごい衝撃が後頭部に走りました。
思わず床に倒れ込むと、目の前に透明なアポロンの首がごろり。
あ、さては私にぶつかりましたね、あなた。
- 372 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:52
-
激しい眩暈を感じて、ふううっと目を閉じます。
なぜか北海道の大自然が目の前に広がりました。
畑仕事を終えて帰ってきたお父さんとお母さんの泥だらけの笑顔。
すじ子姉ちゃんたちの真っ赤な頬っぺた。
そして、まるで王子様みたいだった舞踏会の文麿様……
これが、いわゆる“走馬灯のように”ってやつかしら?
あれ、もしかして、死ぬの?
朦朧とした意識のなか、
肩を激しく揺すられたのを感じました。
「……紺野……紺野っ……」
あ、文麿様だ。
よかった。文麿様は無事。
深い安堵に包まれながら、意識が暗く暗く落ちていきました。
◇ ◇ ◇
- 373 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:53
-
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
- 374 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:54
-
ぱちっ。
目が覚めたら、そこには殺風景な天井が広がっていました。
固いベッド。薬品の匂い。ここは……病院?
そっか、私、生きてるのね。
まだうまくまわらない頭で、記憶の糸をたぐり寄せます。
ええと、アポロンの首が落っこちてきて……身体を揺すられ……あ、大丈夫。
文麿様も生きてる。
がばっ、と起き上がりました。
「……痛っ」
包帯でぐるぐる巻きにされた頭を抑えます。
でも、頭痛なんてかまってられません。
私はもう完璧に確信してしまいました。
『僕が生まれた時に高名な占い師が、この子は18歳まで生きられないと言ったらしくてね』
- 375 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:55
-
文麿様めがけて、まっしぐらに落ちてきたアポロンの首。
水晶の首が折れるなんて、そんなこと、ありえない。
なのに、目の前で本当に起こったのです。
そう、私といる時に必ず、文麿様に厄災がふりかかる。
それはきっと、私が文麿様の秘密を知っているから。
ベッドから飛び降ります。
帰ろう。
北海道に帰ろう。
ここにいちゃいけない。
離れなきゃ、文麿様から、離れなきゃ。
ベッド脇のロッカーを開けると、
意識を失った時に着ていたメイド服がかかっていました。
この格好で往来を歩くのは気が引けますが、
着せられていた浴衣のような院内着よりはましでしょう。
コート、ない。
靴も、ない。
いいや、もうこのままで。スリッパのままで。
- 376 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:56
-
メイド服のポケットを探ると、いつも持っている小銭入れ。
開けてみて唇を噛みます。よりによって、たいして入ってません。
考えます。とにかく羽田空港へ行こう。
そこで北海道のすじ子姉ちゃんたちに電話して、迎えに来てもらおう。
そっとドアを開け、廊下に誰もいないのを確認して駆け出しました。
- 377 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/11(水) 13:57
-
本日はここまでといたします。
- 378 名前:ライカ 投稿日:2004/02/11(水) 14:12
- 初のリアルタイム〜キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
あ、失礼しました。あまりの興奮に挨拶も忘れてしまいましたm(__)m
雪ぐまさん、初めまして!
「愛するトメっち」の途中から、ずっとロムらせていただいてたのですが、
初のリアルタイムに行き当たって、我慢がきかずレスしちゃいましたw
「記憶より彼方で」から全部読んで、もう私は雪ぐまさんの虜・・・_(._.)_
大好きでっす!!!(こ、告白?!w)
- 379 名前:達吉 投稿日:2004/02/11(水) 16:30
- ・・・コンコン・・・・゚・(ノД`)・゚・
というか、占いってすごいなぁ・・・占いだからってあなどれないですね。
でも文麿様、無事でよかったね。コンコン。
自分の体はってまで助けるなんてすごいよコンコン・・・w
これからコンコンはどうなっちゃうんだろう?・・・本当に北海道に帰っちゃうのかな?・・・・・・゚・(ノД`)・゚・
- 380 名前:わく 投稿日:2004/02/11(水) 18:16
- コンコン!!
頼む!!!!!!!!!!!!幸せになって!!!!
( ´Д`)←まろちゃん、なんとかして!!
- 381 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/12(木) 15:26
- 378> ライカ様
初めまして♪ うれしい告白、しかと受け止めさせていただきました〜w
とてもとても励みになります。HNはライカカメラからでしょうか。雪ぐまも大好きです。
また、感想のレス等、お待ちしておりまする。
379> 達吉様
コンコンの献身愛……っていうか捨て身の愛ですな、ほとんど。
何も逃げることはないんですけどねえ、テンパりがちなんですよ、うちのコンコン…
380> わく様
お久です♪ 「まろちゃん」大人気w
コンコンの純愛の行方、どうぞあたたかい目で見守ってやってください。
では本日の更新にまいります。
- 382 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:26
-
『ヒッチハイクしてきたべ!』
すじ子姉ちゃんのあの言葉は嘘だったのかしら。
親指立てたって、誰も止まってくれないじゃないの。
薄曇りの寒空のなか、メイド服にスリッパ姿で
頭に包帯まで巻いた私は幽霊に見えるのかも。
何度手をあげても、タクシーさえ止まってくれません。
まあ、タクシーに止まられても支払うお金はないのですが。
- 383 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:27
-
そろそろ日が暮れてしまいます。
私は途方に暮れました。
電話代ほとんどなくなっちゃうけど、電車でいこうかな……
そう諦めかけた時です。
一台の車がすうっと目の前に止まりました。
「どしたの? 乗っけてほしいの?」
車の窓から顔を出したのは、二人組の若い男の人。
薄笑いを浮かべた口元に、私はびくんと身をすくめました。
彼らはメイド服姿の私を、頭のてっぺんから爪先まで舐めるように見ます。
「そんなカッコで寒くない?」
「……あの」
「コスプレ? なんかワケあり?」
「…………」
「ま、いいや。乗んなよ」
「い、いいです。ごめんなさい」
私は後ずさりしました。
せっかく止まってくれたのですが……乗っちゃいけない。直感。
- 384 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:28
-
「なんで? ほら、乗んなよ」
「……い、やっ」
いきなり腕をつかまれて息を呑みます。
ものすごい力。怖い……!
私は必死でその手を振りほどくと、一目散に逃げ出しました。
「あっ、待てよ!」
エンジン音。
いやだ、追いかけてくる!
私はパニックを起こし、やみくもに走り続けました。
細い路地へ、ビルの隙間へ、車が入ってこられない道を狙って。
「おい、待てって!」
なのに車を捨ててまで追いかけてくる、どこか楽しげな男の人たちの声。
あまりに近い息づかいに振り返ると、らんらんと目を血走らせた猟犬のような顔。
私は悲鳴を上げました。
「だれか、助けて!」
「怪我してんだろぉ?」
「病院、連れてってやるよ」
「いやっ!」
ものすごい力で引き倒されて、無我夢中で足を蹴り上げました。
でも、その足はむなしく空を蹴り、
夕暮れの赤い空と、4本の腕が視界いっぱいに飛び込んできました。
- 385 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:29
-
「やめ……っ!」
唇を乱暴に手で押さえ込まれ、恐怖に目の前がまっくらになります。
絶対、いや! 絶対に、いやっ!
必死で、やみくもに暴れまくりました。
「痛えっ!」
振り回した拳が、どちらかの男の目に強くあたったようでした。
二人がひるんだ隙をついて、私は渾身の力で身を捻って起き上がり駆け出します。
誰もいない暗い路地から、今度は広い道に向かってがむしゃらに走る。
もっと明るい道、誰か、誰でもいい、人が通る道!
- 386 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:29
-
助けて、誰か……文麿様………
- 387 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:30
-
………………………………
…………………………
……………………
………………
- 388 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:31
-
気がついた時、私はお屋敷のすぐそばの
小さな公園の植え込みの影に倒れ込んでいました。
「あ……」
薄汚れたメイド服。足には無数の引っ掻き傷。
スリッパなんてとっくに履いてない泥だらけの爪先。
走り続けたせいで口の中に血の味がするほど心臓がバクバク言っています。
荒い息を吐きながら、ごくんと唾を呑み込みました。
大丈夫、もう追いかけられて、ない。
助かった……。
深く息をつきました。
でも、今度は割れるようなひどい頭痛です。
思わず両手で頭をおさえました。
どれほどの怪我なのか、そういえば知らない。
「文麿様……」
涙が、出ました。
離れなくちゃいけないってわかってるのに
私の足は文麿様を求めて、お屋敷に向かって駆けた。
- 389 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:31
-
「……うっ……く…」
捨てられて行き場をなくした猫みたいな気分です。
なんとか上半身を起こして膝を抱え込みました。
すっかり夜になってしまった空。
外灯のほのかな明かりが公園のベンチをうっすら照らしているのが見えました。
どのくらいそこに座り込んでいたでしょうか。
いつの間にか曇り空から霧のような雨が降り始め、私は身を震わせました。
「寒い……」
雨宿り、しなきゃ。
だけど、ズキズキと痛む頭。
まだ、止まらない涙。
静かに降りかかる細い小雨に、
ぴゅうぴゅうと吹きつける北風に、
ゆっくりと目を閉じる。
もう動けない。
なぜか、ひどく眠いのです。
このまま眠ってしまえば、いいのかな。
どうせお屋敷には、帰れない……
- 390 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:32
-
かかえた膝に頬をのせたまま、私はまどろみます。
幸せなことを考えながら眠ろう。
そう、文麿様の笑顔とか。
幸せな風景はなぜか
あたたかな黄色い光につつまれて
次から次へと脳裏に浮かび上がってきます。
私は自分が微笑んだのを感じました。
- 391 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:33
-
文麿様。
あなたの部屋でレモネードを飲みながら、
たわいもない話をたくさんしたこと。
あなたが顔をくしゃくしゃにして笑うのが、
ふてくされたように口を尖らせるのが、
紺野は、とても、好きでした。
東京に行くと決めた時、
両親も、兄弟も、学校の先生も反対しました。
優柔不断でひっこみ思案な私が決めた、大胆な選択。
ちっとも恐くなかった。迷わなかった。
自分でも不思議でした。
今はわかる。
どうしてあんなに飛び立ちたかったのか。
東京には、あなたがいたからなんですね。
- 392 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:34
-
あなたに会って、私の心は深くなりました。
きらきらした木漏れ日に目を細め、金木犀の香りに胸を震わせ、
そのたびに、美しいあなたを想った。
叶わぬ恋はいやおうなく心を切りつけ、
あふれ出す血を両手でおさえながら私は微笑むことを覚え。
あなたに幸せがあることを願っています。
どんな時も、あなたが幸せであることを祈っています。
あなただけに捧げる敬虔な気持ち。
そう、神様だってもう、私の魂を奪えない。
- 393 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:34
-
さよなら、あなた。
逃げて、逃げて、私はどこに辿り着くのでしょう。
抜け殻の私を、もしも愛する人がいても、私は愛せない。
ならば、このまま囚われの幸福を。
- 394 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:35
-
たったひとつ残念なことがあります。
それは、あなたの唇にふれることが叶わなかったこと。
勇気を出してお願いしてみればよかった。
一度だけ、私に甘いものをくださいと。
やさしいあなたはきっと、一度きりなら叶えてくれた。
でも、知らぬままでよかったのかもしれません。
その味を知ってしまえば、食いしん坊の私は、
もっともっとと意地汚く求めたかもしれませんから。
- 395 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/12(木) 15:35
-
文麿様。
お会いできて、幸せでした。
あなたの身代わりになれるなら。
さよなら、あなた。
どこまでだって輝ける人。
だから、私はあなたの歪んだ運命を抱いて
このまま消えてしまいましょう……
- 396 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/12(木) 15:36
-
本日はここまでといたします。
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 15:51
- うわ〜……リアルタイムで読んじゃいました。
なぜかフランダースの犬を思い出したんですけど……(歳がバレ……ry
反則レスになるといけないので下手なことは言えませんが
こんなにきれいな心をもった紺ちゃんに感動しつつ、
次の更新を心から楽しみにしています。
- 398 名前:達吉 投稿日:2004/02/12(木) 17:28
- 感動です!
そこまで本気で人を愛する事が出来る、純粋なコンコンの心に感動しました・・・゚・(ノД`)・゚・
本気でコンコンを応援したい!!!と思った、14の冬です・・・(笑)
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 17:48
- マジ?!゚・(ノД`)・゚・
>>392、ゾクッときた。
紺野が流す血の色が見えるような気がした。
応援してますとしか言えないが……゚・(ノД`)・゚・
- 400 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/12(木) 21:10
- 雪ぐまさん、貴方って人はほんとに〜。
何と言う番外へんを書くんですか。
本編が霞んじゃうじゃないですか。w
あたしゃ、いしよしオタですが、涙目のこんこん結構好きです
- 401 名前:名無し499 投稿日:2004/02/13(金) 00:19
- コンコン。。。
かたずをのんで見守っております。。。
- 402 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/13(金) 00:34
- 更新、乙です。
え?うぇっ?ちょっと、ちょっと待って下さいよ!
こう来るんですか!?
アポロンにはヤラレましたが、まさかこうなるとは・・
こんごまはどこまでも純愛でせつないですねぇ(泣)
くはぁ、まろさん、頼んます・・
次回もおめめウルウルでお待ちしてますですよ。
- 403 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/13(金) 12:38
- 397> 名無飼育さん様
フランダースの犬! 雪ぐまは再放送でみましたな……(歳がバレ……ry
あの有名なラストシーンのことでしょうか。だとしたら光栄でございます。
398> 達吉様
14の冬に本気のコンコン応援、ありがとうございまする。
あまりにも不器用な命がけの愛の行方、見守ってやってくださいませ。
399> 名無飼育さん様
うれしいお言葉、ありがとうございます。>>392は雪ぐまも密かに気に入っておりますw
今後ともよろしく応援のほどお願い申し上げます。
400> ちゃみさん様
本編、霞んでますか?w うーん、続編で頑張りまする(いしよしヲタとして)w
涙目のコンコンは、いろいろ想像が広がる女の子ですなあ。
401> 名無し499様
お久です♪ コンコンの純愛、引き続き見守ってやってください。
401> 名無し23。様
アポロンいいでしょ?w いつかおっしゃってた「ギリシャ神話」が妙に可笑しかったのでw
とか、呑気に笑えない展開になってしまいましたが、さてさて……
では本日の更新にまいります。
- 404 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:40
-
漂っていた世界は白。
メイド服を着た私は、泥に汚れた爪先を寒さに赤く染めて
どちらに向かえばよいのか迷っています。
道しるべのない道は、なんだか恐い。
たとえばここが天国ならば殺風景すぎる気がするし、
たとえばここが地獄ならば光が溢れすぎている気がします。
途方に暮れる、無の世界。
こんな場所でも、文麿様がいれば
私は安心するのでしょうけれど。
- 405 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:40
-
いけないわ、私はまだあの人に未練を。
そう思った時、遠くのほうから声が聞こえました。
ハッとして耳をすませます。
『……………………紺野』
ああ、大好きな文麿様の声。
私と違ってまっすぐな、よく伸びる声。
私は舞い上がって、キョロキョロしました。
どっち? どこ?
『………………紺野』
再び、声が聞こえました。
でも、どこからくるのかわからない。
泣きそうになります。
『…………紺野』
ああ、なんだか頭のなかで響いているような気もします。
つまり、幻聴だわ。
私は耳を押さえてしゃがみこみました。
- 406 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:41
-
『……紺野ぉ』
……もう、惑わせないで……。
- 407 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:42
-
「いた! 紺野っ!」
ぐっと抱きすくめられたような感覚に揺さぶられ、
ストンと意識が落下した気がしました。
………あ、れ?
鉛のように重いまぶたをうっすら開けると、
そこには私の顔をじっと覗き込んでいる文麿様の姿。
ああ、天使みたい。
光差すあなたという存在。
「……幻、覚?」
「違うよ、僕だよ」
探したよ、紺野。
心配したよ。どうして逃げたりするの。
「……だって、紺野がいると、文麿様が」
「バカ、迷信だっていってるのに」
あんなの迷信だよ。
もし本当だったって、紺野が気にすることないんだ。
だって、いつだって紺野が助けてくれたじゃない。
紺野がいなかったら、僕、とっくに死んでるよ。
- 408 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:43
-
文麿様が私のカラダをぎゅうっと抱きしめました。
「僕ね、やっぱり死にたくないよ、紺野」
死ぬ運命ならそれでもいいって思ってたけど
やっぱり嫌だよ。ちゃんと、生きてみたいんだ。
「紺野は、僕が死んでもいいの?」
「イヤ……」
「じゃあ、そばにいてよ。僕を、守って」
その言葉が鼓膜を震わせた時、
魂の奥から熱い涙があふれたのを感じました。
僕を、守って。
ああ、もしも、ほんとうに私があなたを守れるのなら、
この命を、死神に差し出したってかまわない。
だけど、自信がないのです、私は……私は……
- 409 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:44
-
「大丈夫。紺野は僕を守れるから」
僕を信じて。
だって僕は紺野を見つけたんだ。
だから信じて。紺野がいれば、僕は死なない。
凛とした声。
強く、強く、抱きしめられる。
あたたかな文麿様の腕の中。
夢みたい。夢かな。
……眠い。
もう、瞼が開きません。
意識がゆっくりと揺らめきながら落ちていく。
あれ。
唇、あたたかい。
なに? 瞬間の、息を塞がれる感覚。
- 410 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:45
-
やさしい眠りがやってきます。
遠のく意識の中で、もう一度、唇を塞がれたような気がして身を震わせました。
でも、それは私の願望が夢にあらわれた
幻だったかも、しれません……
◇ ◇ ◇
- 411 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:45
-
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
- 412 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:46
-
魚眼レンズみたい。
ふと目を醒ますと、白衣をきたお医者様と、心配そうな顔の文麿様が、
驚くほど至近距離で私の顔を覗き込んでいました。
うわあ、なんだか魚眼レンズみたい。
私は、パチパチとまばたきをしました。
起きたばかりで、なんだか遠近感がおかしい。
ゆっくり起き上がり、くらくらする頭を軽く振って目をこすります。
「紺野、無理しないで」
「文麿様……」
ああ、意識も視界もはっきりしてきました。
文麿様はまだ小雨に濡れたコート姿。
そんなに時間が経ってないんだわ。
きっとあれから救急車か何かに乗せられて、病院へと戻ってきたのでしょう。
- 413 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:47
-
ああ、頭が痛い……
「寒くありませんか?」
お医者様のやさしい声。
いいえ、むしろなんだか暑いのですが……。
ふと見ると、布団のなかには湯たんぽのようなものが
しこたま詰め込まれていました。
「しばらく我慢して身体をあたためてくださいね」
朝まで見つからなかったら凍死するところでしたよ。
なるほど、つまり私は臨死体験をしたわけですね。
そう言いかけて、あわてて口をおさえました。
ぶすっと不機嫌そうな顔の文麿様。
呑気なことを言ったら、きっとものすごく叱られるわ。
- 414 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:47
-
手当てを終えて、お医者様が出ていってしまうと
病室には文麿様と私の二人きり。
文麿様は、やれやれというように腰に手をあてました。
「馬鹿だなあ、紺野は。二週間も入院だってさ。おとなしくしてれば3日で帰れたのに」
「申し訳ありません……」
まったく馬鹿だ。
あー、馬鹿だ馬鹿だ。
馬鹿だったら馬鹿だ。
呆れたように、唄うように。
そんな声さえ美しいと思う馬鹿な私。
ええ、たぶん。いえ、きっと。
「……馬鹿なんだと、思います」
フッと文麿様は微笑みました。
まじまじと見られて、私は思わず目を伏せます。
じわっと目頭が熱くなりました。
馬鹿な私。あなたの運命が歪むのが恐くて
勝手に病院を抜け出して、恐い目にあって死にかけて、
結局、とても迷惑をかけて。
- 415 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:48
-
「申し訳ありません」
「何が?」
「……逃げて」
「そうだね」
感情が読めない文麿様の淡々とした声。
「ちょっと目を離したらさあ、もういなかったんだ」
「…………」
「どこにもいないんだ。呼んでも来ないんだ」
まいったね。
文麿様は、ちょっと首を傾けると、
フフッと不思議な笑みを漏らしました。
あ、その瞳、見たことがある。
あれは確か、クリスマスイブの夜。
煌めく夜景を前にして。
- 416 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:49
-
「ねぇ、紺野、勝手に逃げちゃいけない」
「はい……」
「僕が呼んだら、すぐに来なくちゃいけない」
「はい……」
いきなり始まったお説教をうなだれて聞きながら、
不埒にも私はあの日の文麿様の言葉を思い出していました。
あの日あなたは私を初めてかわいいと言ってくれた……
初めてきれいだと褒めてくれた……
「だから紺野には、僕の本当の名前を教えるよ」
は?
脈絡のない言葉に、私は顔を上げました。
文麿様の本当の名前?
そんなこと考えたこともありませんでした。
でも、言われてみれば当たり前のことです。
私は、ちょっと緊張して文麿様を見つめました。
- 417 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:50
-
文麿様は小さく深呼吸をすると、静かに声を放ちます。
「僕の本当の名前は、真希」
「まき?」
「真実の“真”に、希望の“希”だよ」
真希様。
そっと呟いてみます。
きっぱりとした清々しい音。真実の希望。
「素敵なお名前です」
「サンキュ」
真希様は、そう言ってニコッと微笑むと
なぜか恥ずかしそうに目をそらしながら言葉を続けました。
「あのね、世界のどっかにさあ」
本当の名前は、愛する人にしか教えないって民族がいるらしいね。
そう聞いて、私はきょとんとしました。
なぜ、いきなりそんなことを?
- 418 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:51
-
「はあ、そうなんですか」
「……それだけ?」
「え? えーと」
なにかマズかったのかしら。ど、どう答えれば?
焦っておどおどする私を見て、真希様はプーッと吹き出しました。
身体をくの字に折り曲げて、可笑しそうにくっくっと笑います。
「あはっ、紺野は鈍感だね」
「は?」
ますますわけがわからない。
困った顔をした私に、もっと困ったことが起こりました。
さんざん笑った文麿様は、ふといたずらっぽい目をすると
私の頬にすっと手のひらを添えて、じっと顔を覗きこんでこられたのです。
こ、これは!
ボン!と音がしそうなほど、血液が一気に顔面に集中したのがわかりました。
キスされる。まるで経験のない私にだって予測がつくほどの真希様の熱い視線。
- 419 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:51
-
かすかに目を伏せた真希様の端正なお顔がゆっくり近づいてきます。
いけないと思いながら、でも密かに夢見ていたこと。
それが今、唐突に現実となって眼前に迫ってくる。
ああ、瞳の中が覗けそう。
美しい、泉のよう。
そう心をかすめた瞬間、
ものすごい至近距離で真希様はピタッと動きを止め、
ちょっとおかしそうに囁きました。
「目、閉じてくれる?」
「あ、は、はいぃ!」
いけない! きっと超寄り目になってたわ!
別の意味で真っ赤になってぎゅっと目をつぶった瞬間、
あたたかくてやわらかなものが私の唇をしっとりと包み込みました。
あ……
さっきと同じ。
幻じゃ、なかったんだわ。
でも今は、覚醒してる頭にバチバチと火花が弾け飛ぶ。
背筋にじんと熱い痺れが走って、
行き場をなくした吐息が喉元で暴れまわる。
- 420 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:53
-
どうしよう、もう、許して。
膝に置いた手が、自然にぎゅっとなって震えるのがわかりました。
なのに、真希様の唇がゆっくりと離れていった時、
私はものすごく淋しい気持ちになったのです。
もっと。
もっとキスしてください。
触れるだけじゃなくて、もっと、もっと深く。
自分でも驚くようなこの気持ち。
やっぱり私って食いしん坊すぎるかも。
もちろん言葉には出しませんでしたが、真希様は気づいたようでした。
「紺野は何でもすぐに顔に出るね」
「え?」
「退院したら、また」
コートのポケットに無造作に手をつっこみ、
頬を赤く染めながら、照れくさそうにそう言ってくださった真希様。
- 421 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/13(金) 12:53
-
ああ、きっと私の片思いも、ずっとバレてたんだわ。
それでキ、キスしてくださったってことは……
ほ、ほんとに?
私はいまさらながらに心臓がバクバクしてきて
胸をおさえて布団に突っ伏しました。
「わっ、大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫です……あの、不慣れなものですから」
そんな私の言葉に、真希様はまた心底おかしそうに笑ったのでした。
- 422 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/13(金) 12:58
-
本日はここまでといたします。
コンチャン!! マロチャン!!
- 423 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 13:24
- ああもう!
悶え死ぬかと思った!!
さ い こ う で す 。
この二人いいですねー。本当にいいですねー。
- 424 名前:名無し読書。。。 投稿日:2004/02/13(金) 15:00
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!!
こんこぉーん!まろまろぉー!(?
良かったね、こんこん・・・お姉さん嬉しいよ。
雪ぐま様…雪ぐま様の本当のお名前は?愛する私にお教えくださ(殴
最高でした。次回更新も楽しみにしております。
- 425 名前:伊央 投稿日:2004/02/13(金) 18:33
- しばらく見ない間にキテター!!!
雪ぐまさんホントちゃいこーです!w
一気に読んでPCの前で机バン×2たたいてましたw
よかったねぇこんこん…そして、鈍感な君もかわいいよ(ぉ
で、照れるまろ様、じゃなかった。真希様もヨシv
次回も楽しみに待ちますよー!
- 426 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/13(金) 20:26
- 雪ぐまさん、貴方って人はホントに〜! (又かよ)(w
本編があれでしょ、番外編がこれでしょ?
続編はどんな事になるやら・・・・。(ちょっとだけプッシャー掛けてみる)
もう毎日が楽しみで、楽しみでたまりません。
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 23:05
- 某所の更新に乗らないから、休んでいるのかと思ったら…
でも、早くいしよしが読みたいです。雪ぐまさんの書くいしよしが最高です。
いつ頃、「続」が始まる予定ですか?
- 428 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/14(土) 00:53
- 更新、乙でございまする。
あらあらいやだよぉ〜、おまえさん、いつの間にやらこんごまがこんなことに
なってるわよ〜!
こんごまは純文学の世界に入っておりますですよ。
もうねぇ、国語の教科書に載せたいぐらいですわ、奥様w
(0^〜^0)<アポロン、カッケ〜!
やっぱりアポロンはあの時の!?
よっちぃはダビデ像も似合いそうですよねw(ビーナスムースも良かったけど)
色が白いから、美術品系が合いそうですw
次回もむはむは〜としながらお待ちしてますですよ。
- 429 名前:名無し。 投稿日:2004/02/14(土) 02:20
- 427さん、物語の途中でのリクはマナーに・・・
- 430 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 02:30
- 作者様、毎日の更新おつかれさまです。
すっかり、こんごまの魅力に目覚めました。
これからも応援しています。
読者様へ。
425さん、ネタバレ注意報…
426さん、おたわむれはほどほどに…
- 431 名前:ライカ 投稿日:2004/02/14(土) 05:03
- はぅあっっ!ちょっと忙しくて2日間見れなかっただけなのに、
こんごまに幸せが訪れてる!!!(¯Д¯‖)こんこん良かったねぇ(T_T)
PCの前で、息詰めて読み切っちゃいました!読み終わったとき息苦しかったですもん。
本気で悶え死にそうになりましたw
最近自分の方はかなり切ない恋をしてしまったので、ここの幸せオーラで癒されてますww
ところで雪ぐま様、告白受け止めましたね?これでもうスッポンのように離れませんよ〜w
HNはご推察の通りカメラからです。今は憧れですがいつか持ちたいですね(>_<)
- 432 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 06:17
- >429
>430
余程ひどいレスにはともかくも、レス返しをする方がうざいんですけど。
- 433 名前:名無し499 投稿日:2004/02/14(土) 09:38
- 417>> 真実の“真”に、希望の“希”
この部分噛みしめてしましました。
絶望しかけたふたりにも希望が生まれたのですね。。。
ふたりに笑顔がもどって良かったです(;;)
- 434 名前:わく 投稿日:2004/02/14(土) 13:34
- 最高☆
- 435 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 13:38
- ここのあやみき見てあやみきにハマリました。
こんごまもあやみきもいしよしも最高です(節操なしでスミマセン;)
外野の声は気にせずこれからも頑張って下さい!!
それにしても紺野可愛いなぁ〜
- 436 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/14(土) 15:02
- 皆様、拙作をご愛読いただき、ありがとうございます。
あたたかいレスに、日々励まされております雪ぐまでございます。
どうやら本日は少々、個々にお返事ができにくい状況でございます。
さまざまな考え方の人がいらっしゃるなあと思いつつ、
レスの際の注意点について、再度繰り返させていただきます。
「ネタバレ」「リクエスト」等、案内板(小説板自治スレ)をよくご覧になり、
なるべくマナー違反となりませぬよう、よろしくお願い申し上げます。
後に読む方のこと、そして書く立場のキモチをご想像いただければ
判断も、し難いものではないのではないでしょうか。
どうぞ“秘すれば花”の精神で、洒脱なレスをよろしくお願い申し上げます。
マナー違反のご指摘は、マターリと、やんわりとでお願いしますw
雪ぐまは、基本的にはその勇気に感謝しております。
他の読者様および本スレの環境を守るお気持ちゆえのことだと思いますので。
ただし、行き過ぎはなにかと殺伐としますので、こちらも洒脱に……w
とにもかくにも、雪ぐまはレス歓迎でございます。
なによりも励まされますし、書き続けるエネルギー源でございます。
サイトと違い、カウンターが回るわけではないので、
どんな方にどのくらい読まれているのかということは
レスから伺い知るしかないのです。
どのあたりが気に入ったかというのも、教えていただけるとうれしいこと。
その際は、ネタバレにならぬように「>>○○が好き」とレス番号で示すなど、
お手間おかけしますが、よろしく工夫のほどをお願いいたします。
- 437 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/14(土) 15:03
- ふう。
長文、申し訳ありませんでした。
それでは本日の更新、いってみましょう!
ほとんど命がけで文麿様に恋した紺ちゃん、
新たな恋に生きる喜びを見出し、さらなる秘密を明かした文麿様。
やっと気持ちが向き合った二人でございます。
- 438 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:05
-
夜中にふと目を醒ましました。
ふかふかの真希様のベッドのなかで、
懐かしい冬の香りを感じて。
この感じは、たぶん。
真希様を起こさないようにベットの上に膝立ちして、
すぐ壁際の窓のカーテンをそっと開きました。
ああ、やっぱり外は雪。初雪です。
- 439 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:06
-
私は礼拝堂にいるみたいに窓枠に肘をついて手を組みました。
生まれたままの私と真希様の、初めての夜。
チラチラと舞い散る雪は、きっと神様の祝福。
どこからか漏れてくる光に、キラキラと煌めく結晶。
しんしんと降り続くその様は、どんなに眺めていても飽きなくて。
「眠れないの?」
「キャアッ!」
後ろから唐突に声をかけられて、
私はものすごい勢いで胸を隠してぺたりと座り込みました。
うう……、い、いつから起きてらしたのでしょうか。
さっきまで眠っていたとは思えないほど美しい眼差しが私を見つめています。
「何を見てたの?」
「あの、雪が、降ってるんです」
「雪?」
真希様は驚いたようにそう言うと、
するりと布団から抜け出して窓の外を眺めました。
まるで隠そうともしない形のよい胸のふくらみに目を奪われて、
恥ずかしいほど鼓動がはやくなります。
- 440 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:06
-
「ほんとだぁ、すごーい」
真希様が珍しくはしゃいだ声をあげました。
ふふっ、まるで子供みたい。
「お風邪をひきますよ」
私は毛布をずるずると引っ張りあげて、真希様をくるもうとしました。
真希様はちょっと首を降ると、私の肩を抱き寄せ、
二人ともをくるむように、頭からすっぽりと毛布をかぶりました。
巻きつけるほどはあたたかくありませんが、なんだかとても安心します。
「かまくらみたいですね」
「かまくらのなかってこんな感じなの?」
「そうですね、こんなふうに閉じこもってる感じがしますね」
かまくらのなかから見る雪が、私は好きでした。
母がご飯だと呼びにくるまで、火鉢をかかえてじっと座り込んでいたりしました。
とりとめもない思い出話を、真希様はうれしそうに聞いてくださいます。
- 441 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:07
-
「いいなあー。僕もかまくらの中から雪、見てみたい」
「……見てるじゃないですか」
今、私と一緒に。
あなたの肩に頭をのせて、しんしんと降りしきる雪を見つめます。
幼い頃、ひとりきりで見る雪はほのかに発光してるみたいに薄青く、
じっと眺めていると、すこし淋しくなりました。
でも今は、熱い想いが胸の中にじわりとわき上がってきて、目の端からこぼれそうになる。
生まれて初めて、あなたと同じ雪を見ているから。
「今夜の雪は、永遠に降り続けます」
「ん? どういうこと?」
私は、ちょっと照れて真希様の肩に頬をこすりつけました。
「雪は、いつか溶けてしまいますが」
「うん」
「私の記憶には、その、一生ですね……雪が降る」
あはっ……と、いきなり真希様が笑いました。
む、笑わないでいただきたい。
私はじろっと真希様を睨みました。紺野は真剣なんです。
- 442 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:08
-
真希様はごめんごめんと呟くと、私の肩をさらにぎゅっと抱き寄せました。
「うーん、紺野は本当にかわいい」
「……馬鹿にしてますね?」
「記憶には一生雪が降る、か。なかなか詩人じゃん、紺野って」
また、惚れ直したかも。
そういって真希様はからかうように私の顔を覗き込みます。
「僕の記憶にも、一生雪が降る」
「……からかってますね?」
「僕にはわかる。紺野との記念すべき初めての夜……」
もう!
ボスッと枕を投げつけると、
真希様は可笑しそうに笑ってふわりと私を抱きしめました。
そして、どこか感慨深げに、ふと呟きました。
「男として生きてるから、女の子を好きになったのかな」
「さあ。でも、そうしたら私は何なのでしょう」
オトコノコだと信じて疑わずに文麿様を好きになり、
オンナノコだとわかっても気持ちは変わりませんでした。
それどころか、あなたの無邪気な笑顔を見るたびに、ますます想いは募って。
- 443 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:09
-
「たぶん、どちらでもよいことではないかと」
「そっか」
やわらかく肩を押されて、ゆっくりとシーツに横たわりました。
目を閉じて真希様の背に腕をまわす、その幸せ。
そして、夢のように熱いキス。
何も知らないのに、ちゃんと愛を交わせるのはなぜ?
「不思議だね」
僕も、何もしらないんだけど。
それは、なんだか幸福な罪悪感。
真っ白な雪原に、ひとつ足跡をつけてしまったような。
「紺野にもつけたんだから、いいよ」
あなたの唇がふれるたびに、その場所から甘い響きが全身に広がっていく。
まだ痛みを伴う行為さえ、陶然とココロを痺れさせる。
オトコノコとかオンナノコとかではなく、
大切なのはきっと、本当に愛する人と肌を重ねること。
怖いくらいの幸福のなかで、私に生まれてきてよかったと思います。
そしてこれからも精一杯生きていこうと。
- 444 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/14(土) 15:10
-
「紺野、好きだよ」
耳に流れ込んでくるやさしい囁き。
決して私の手には入らないと思っていた言葉。
雲の上から、ちっぽけな私を見つけてくれた文麿様。
だから私は心からの感謝を込めて、
とぎれとぎれの息をつないで、生まれて初めて使う言葉をあなたに捧げます。
「……愛して、いま、す」
身分違いの恋。
女の子同士の恋。
もしかしたら生涯を共に過ごすのは無理かもしれません。
そんなふうに最初から覚悟してしまうのは悲しいことだけれど、
でもこの美しい一瞬は、確かに私の中に降り積もる。
そう、決して忘れない。
確かにあなたと愛し合った
雪の舞い散るこの夜を。
- 445 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/14(土) 15:11
-
本日はここまでといたします。
明日、最終回でございまする。
- 446 名前:ファンA 投稿日:2004/02/14(土) 15:36
- 更新お疲れ様でした。
大量の更新、うれしかったですw
幸せと切なさが上手い加減にあって…。
本編とはまた違うテイスト(?)になってますよね。
大好きです。
雪ぐまさんの作品を見つけてから、人生の楽しみが前より増えました(爆)
次回、どのようになるのか楽しみにしています。
- 447 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/14(土) 17:01
- 美しい愛に触れる事ができました。感動しました。
雪ぐま様にめぐりあえて幸せです。
- 448 名前:ちゃみ 投稿日:2004/02/14(土) 21:02
- >430
あらら? 怒られちゃった。
そんなに空気変えちゃってますかね?
軽いレスしか出来ないんですよ。
てなところで、雪ぐまさん、明日も楽しみにしています。
- 449 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 21:19
- >>448
雪ぐま様も>>436でこうおっしゃってる事ですし…。
スレが殺伐としてきますんで、
そういうのは場所変えてやりましょう。
マタリマターリ( ● ´ ー ` ● )
- 450 名前:伊央 投稿日:2004/02/14(土) 21:22
- >430
ご指摘ありがとうございます。
雪ぐまさんにもご迷惑を…以後気をつけます。
そして、雪ぐまさんの小説に今回も惚れましたデスv
次回更新、楽しみに待ってます。
- 451 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 23:26
- 毎日更新お疲れ様です。
僕的に愛するトメッチの梨華視点が見たいです。
- 452 名前:名無し499 投稿日:2004/02/15(日) 01:00
- 記憶には一生雪が降る。
はぁ〜です
ふたりにふさわし初めての夜ですね。
二人に生まれる様々な疑問、喜び。。。
すべて愛しく思えました。
いまさらですが、あやみきの涙の告白
マジで 泣きました。
たまにしかレスしてないかもですが
更新たのしみにしています。
、
雪ぐま、マンセー1!
- 453 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/15(日) 12:15
- いや〜今日も最高でございました。
ここ数日でマナーの件でいろいろありますが
それも雪ぐまさんの小説が素晴らしく秀逸なので
一言書かずにはいられないんだと思います。
そこで思わずポロっとこぼしてしまってますが
これもみなさんの期待の表れですよ。
私もこれからも楽しみにしております。
毎日ということで大変かと思いますが頑張ってください!
- 454 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/15(日) 13:13
- 皆様、あたたかいご声援、そしてご期待(?)ありがとうございます。
どうやら本日も少々、個々にお返事ができにくい状況でございますね。
さまざまな考え方の人がいらっしゃるかと思いますが
どなたさまも穏便に、粋な心で、今後ともよろしくお願い申し上げます。
とくに、ネタバレに関しましては、お手間をおかけしますが
後に読まれる読者様にやさしいお気持ちをお忘れにならず、お書き込みくださいませ。
いただくレスを雪ぐまだけが読めればよいのですが
他の読者様のお目にも止まってしまうのはいたしかたのないことでございます。
(嫌なら読むなという理屈は、通用いたしません)
どこまでがネタバレか判断がつきにくい場合は、
>>436で示しました方法が適しているかと思われますので、
ご参考になさってください。
はぁ。
なにやら学校の先生のようにうるさく書いておりますが、
雪ぐまはレス歓迎でございまする。
どうぞ、今後ともよろしくおつきあいのほどをお願い申し上げます。
さて、それでは最終回にまいります。
- 455 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:14
-
桜が咲いて散り、太陽が高くなって、ふたたび日が短くなって。
春も夏も好きな季節ですが、私は毎日毎日心配で
真希様のお帰りがちょっとでも遅いと胸が潰れそうになりながら。
そんな日々も、今日でやっと終わりです。
はぁ、やっと「文麿様」と「真希様」の使い分けにも苦労しないですむんだわ。
なーんて、贅沢な悩みでしたね 。ポッ。
そう、今日は念願の
真希様の18歳のお誕生日です。
- 456 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/15(日) 13:15
-
「ふふふ〜ん。今年も王子様の格好しちゃおっかな〜?」
「もう、ひとみちゃん、恥ずかしいからやめて!」
ああ、そういえば去年は吉澤さん、
王子様コスプレでご婦人方を悩殺してましたね。
あの時の真希様、けっこう悔しそうだったな。ふふふ。
石川さんは、きっと今年も最高級に可憐ですね。
ちょっぴり妬けちゃいます。
でも、心配はしない。だって、真希様の愛を信じてるから。
なぁんてね。キャーーーーーーーーーーーー!!!!
- 457 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:16
-
さて、そろそろ真希様の着替えが終わる頃です。
頼まれた特製レモネードを持って、控室のドアをノックしました。
「失礼しま……」
ドアを開けた途端、息を呑みました。
振り返ったのは、深紅のドレスに身を包んだ真希様。
高めのアップにまとめた髪に、ティアラが光っています。
むきだしの肩の、輝くばかりに美しいライン。
煌めくパールを散らしたような目元と口元。
長い睫毛に縁取られた気品ある眼差し。
すごい。
ほんとにお姫様みたい……いいえ、もっと力強い感じ。
そう、『風とともに去りぬ』のスカーレットみたいだわ!
思わずポーッとなって見つめる私に
真希様は照れたようにくしゃりと微笑みました。
「似合う?」
「ええ、とっても!」
真希様はレモネードを受け取って一口飲むと、
カップについた口紅を気にして、きゅっと親指でこすりました。
そんなちょっぴりお行儀の悪い仕草も女らしく、私はドキドキしてしまいます。
なんだか真希様って、すごくセクシーかも……
- 458 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:16
-
「さて、今日で綾小路文麿はおしまい」
「なんだかちょっと淋しいですねえ」
「そう?」
「ええ、初恋の方ですから」
ふうん、初恋だったの。そうなの。
妬けちゃうな、ですって。
何をおっしゃってるんですか、本人のくせに。
真希様は唄うように続けます。
「だって、明日からは〜」
「明日からは?」
「後藤真希」
あら、後藤っておっしゃるんですか、奥様の旧姓。
「あれ、知らなかった?」
「存じませんでしたねえ」
後藤真希。
何気ないけど、いいお名前じゃないですか。
そう言うと、真希様は天井を向いて「んー」となにやら考え込みました。
そして、ひょいと私に顔を向けると、
何か言いかけて、また迷ったように口をつぐんでしまいます。
- 459 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:17
-
「何です?」
「いや……紺野、あたしのこと好き?」
ええ、もちろん。
そう答えかけて、首をかしげました。
どうして、そんなに不安げな瞳?
「……あたしのこと……あたしが、あたしでも……」
ああ、なるほど。
真希様の不安に気づいて、私は微笑みました。
「僕」じゃなくて「あたし」。
ほんとうの真希様。
名実ともに女の子の真希様。
「愛していますよ」
あなたが、男でも女でも。
文麿様でも真希様でも。
綾小路でも後藤でも。
「私は、あなただけを愛しています」
まっすぐに見つめる私の瞳に、
真希様はちょっと照れたように微笑みました。
- 460 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:18
-
「あはっ、紺野はきれいになったねー」
「え?」
「堂々としてきたっていうか」
いいことだよ、あたしの子猫ちゃん。
そう言って、からかい気味に私の鼻先を人さし指でつつく真希様。
私はその指先に、がう!と齧りつく真似をします。
「おっと、危ない」
飼い猫に手を噛まれるとこだった、ですって。
噛みませんよ、ほんとに噛むわけないじゃないですか。
私は軽く膨れて見せます。
私はあなたの忠実なメイドであり……忠実な……コイビトなんですからねっ!
「さあ、そろそろお披露目の時間ですよ」
「んあ。よし、いっちょ脅かしてくるかぁ〜」
真希様は肘まである白い手袋をくいくいっとはめると、
やおら私のほうに手を伸ばし、指先で私の顎をくっと持ち上げました。
- 461 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:19
-
……ちゅっ。
あっ……。
「あたし、後藤真希になってもここで暮らすから」
「えっ?」
家督を弟にゆずるのに、あたしが出したたったひとつの条件。
「だから紺野、ずっとあたしだけを見てて」
ニッと微笑んで茶目っけたっぷりに片目を閉じてみせた真希様。
金色の矢を放つような強い瞳。
ドレスの裾をひらめかせて大広間へと向かっていくその凛々しい背中を
指先で唇をおさえたまま、うっとりと眺めました。
ええ、もちろん。
紺野はずっと、あなただけを見つめています。
- 462 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:19
-
きらめくスポットライトを浴びて、大階段に登場した真希様。
そのお姿に、会場は地鳴りのようにどよめきました。
うそっ?
文麿様って。
ええっ? どうして?
嬌声とも感嘆ともつかぬ声のなかを、
深紅のドレスをまとったスカーレットのごとき真希様が、一歩一歩降りていきます。
いかがですか皆さん、こちらが当家のお嬢様です。
そう、誇らしい気持ち。その類い稀なる存在感。
こんなに眩しい光を放つ少女は世界に二人といませんよ?
うっかり真希様に見とれてしまった吉澤さんが
石川さんに向こうずねをけっ飛ばされているのが見えました。
あらあら、あいかわらず困ったお二人ですこと。
でも、お幸せそうでなによりです。
- 463 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:20
-
真希様は、あっという間に人の輪に囲まれて見えなくなりました。
さてと、お給仕、お給仕。
お客様に最高に素敵なお誕生会だったと思っていただかなくちゃ。
きらめくシャンデリア、繊細なグラス、
食べきれないほどの豪勢なお料理、流れてくる賑やかなワルツ。
毛足の長い絨毯に足をとられないように気をつけながら
私は早足でくるくる動き回ります。
きらびやかな社交の世界を、陰で支えるために。
- 464 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:20
-
「お嬢さん、踊りませんか」
え?
喧騒にかき消えそうな囁きに顔をあげると、
いつの間にかすぐ近くでシャンメリーを掲げてる真希様がいました。
そのすました顔に、私は可笑しくなります。
お嬢様いけませんわ。メイドにお手つきなんて、ベタ過ぎますわよ?
「ええ、二人きりの夜に」
静かな月夜に踊りましょう。
ステップを教えてくださいね?
真希様はクッと笑うと、「やっぱり紺野は詩人だなあ」ですって。
むっ、紺野は真剣ですよ。
じゃあ、月夜の晩に。
約束だよ。
真希様は、そう囁いてやさしく微笑むと、
再び、まぶしいスポットライトの中へと歩んでいかれました。
- 465 名前:文麿外伝 投稿日:2004/02/15(日) 13:21
-
華々しいステージに生きる真希様。雲の上の真希様。
愛し合う夜は二人だけの秘密。切ないほど内緒の恋です。
白亜のチャペルも、ライスシャワーもないけれど。
だけど、覚悟するのはとても簡単でした。
紺野は、あなたについていこうと思います。
どんな未来が訪れても。
☆おしまい☆
- 466 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/15(日) 13:28
-
『愛するトメっち〜文麿外伝〜』終了いたしました。
意外と長くなってしまいましたw ご感想等、お待ちいたしております。
明日からはトメっち視点……と、思ってましたがその前に
3回完結の短いお話をひとつ混ぜさせていただきとうございます。
いしよしでございまする。それではまた……。
- 467 名前:ゆんせ 投稿日:2004/02/15(日) 13:47
- あっ、お久しぶりです。
ゆんせですが、覚えてますか?
相変わらず静かに応援させてもらってます
てか、すごいですね!
コンコンの丁寧な口調のなかに、情熱的な感情が込めてあって…
私、恋したくなりました
短篇も楽しみ!
- 468 名前:達吉 投稿日:2004/02/15(日) 14:22
- 完結おめでとうございます&お疲れさまです!
文麿様が初めてコンコンにキスをした時は
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!www
という気分でしたww^^
キスだけなのに何故かドキドキでしたよww^^
コンコンの恋が実って本当によかった・・・
これからもお幸せに^^
次回作も楽しみにまってます。
- 469 名前:伊央 投稿日:2004/02/15(日) 14:30
- 簡潔お疲れ様でしたー!
やっぱ最高ですねぇ。いろんなCP好きですが、
こんごまははずせませんなぁv
二人とも、末長ーく幸せになるでしょうねv
次回作も楽しみですー!
- 470 名前:川o・-・) 投稿日:川o・-・)
- 川o・-・)
- 471 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/15(日) 18:36
- 更新お疲れ様です。
毎回の展開本当に参ってしまいます。
短編楽しみにしております。
↑名無し499様
以前から気になっていたのですが
スレ番まで書いて解説は避けた方が・・・
- 472 名前:260@前 投稿日:2004/02/15(日) 21:10
- 文麿外伝完結おめでとうございます
&すばらしい外伝ありがとうございました。
ロマンチックでよかった〜
私的には壊れコンコンが好きでした。
かわいかったっす。
- 473 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/16(月) 00:09
- 完結おめでとうございます&お疲れさまでした。
おどおど紺ちゃんの口から語られた純粋すぎるほどの初恋ストーリー、
クールな文麿様の切ない恋模様も手伝って、
「愛するってなんだろう」って考えさせられた作品でした。
ドキドキとか萌えももちろんあるんですが
なんていうのかな……心が澄んでいくような気がするお話でした。
またまた素敵な体験をありがとうございました。
>>470様
スレ番と感想だけを書いて、具体的な小説内容の記入は避けるとよいのだと思いますよ。
これからも一緒にこのスレを応援していきましょう!
- 474 名前:名無し499 投稿日:2004/02/16(月) 10:02
- ネタバレレスしていまいました。
雪ぐま様、読者の皆様に不快な思いをさせてしまい、
申し訳ありませんでした。
>>471様 ご指摘ありがとうございます
>>473様 アドバイスありがとうございます
後先になってしまいましたが、雪ぐま様、文麿外伝完結乙でした。
名場面満載で感動の連続でした。
次作も楽しみにしています。
- 475 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/16(月) 17:31
- 467> ゆんせ様
お久です♪ ええ、もちろん覚えておりますですよ。
秘めたる情熱家・紺ちゃんのようにドキドキで幸せな恋がゆんせさんに訪れますように……。
468> 達吉様
それまでが、かなりじれったい恋模様でしたからねえw
お受験の最中、アツイご応援をありがとうございました。
469> 伊央様
書いていて不思議とロマンティックに盛り上がっていくCPでございました(実感)。
しかし、こんごまってけっこうマイナー? CP分類版にはないですよねえ?(見つけてないだけ?)
471> 名無飼育さん様
雪ぐまの説明がわかりにくかったのかもしれませぬ。申し訳ないです。
今後ともどうぞ広いお心で、このスレを見守ってやってくださいませ。
472> 260@前様
お久です♪ 書いてると、不思議とコンコン が壊れていくんでございますよ〜(実感)。
トメっちとはまたちがったオトボケぶり、なかなか希有なキャラでございました。
473> 名無飼育さん様
作者冥利に尽きるうれしいお言葉、ありがとうございまする。さらに精進いたします。
また、お気遣いのあるフォローをありがとうございました。ジーンとしました。
474> 名無し499様
いつも励ましのレスをありがとうございます。迅速にご対応いただきましたし、
特別な気持ちでご愛読いただいていることも、わかっております。
ネタバレの基準に関しては、さまざまなお考えの読者様がいらっしゃいます。
お手間をかけますが、どうぞ念入りに一工夫なさって
またご感想のレスをいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
- 476 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/16(月) 17:32
-
では本日からは、3日連続・短篇いしよし劇場wのはじまりはじまり〜♪
時は遡り、クリスマスイブ。
そう、マロちゃんと紺ちゃんが切なく涙したあの夜、
思いを馳せられたいしよしコンビは、一体どんな聖夜を過ごしていたのでしょうか?!
気になりませんか? 作者は気になりましたw
というわけで……
- 477 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:34
-
愛するトメっち短篇劇場
『初めてのメリークリスマス』
- 478 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:34
-
「うぇーーくしゅっ! ……ずずっ」
うーーーー。
あたしはゾゾッとくる寒けにぷるっと震えると
口元をマフラーにつっこむように首をすくめた。
寒い。マジ寒い。
でも頬っぺたと頭は熱い。マジ熱い。
ガタンゴトンガタンゴトン……
横浜のみなとみらいへと向かう電車の中。
隣に座っているトメっちは、まだ少し不機嫌そうな顔してる。
今日は朝っぱらから喧嘩をしていた。
「絶対、出かけないからっ!」
「絶対に、出かけるっ!」
恋人になって初めてのクリスマスイブ。
なのに、大風邪ひいちゃったあたし。
熱は38度。だけど、あたしは絶対に出かけると言い張った。
だって、あたしなりに、いろいろと考えてたことがあったんだ。
◇ ◇ ◇
- 479 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:35
-
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
- 480 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:36
-
12月になると街はクリスマス一色になる。
デパートに大きなツリーが立ったり、街路樹に電飾がついたり。
あたしはそういうの嫌いじゃない。
だってウキウキするじゃない?
「たん、これ見てぇ」
学校帰りに寄ったマックで、松浦がいきなり鞄から雑誌を取り出した。
松浦の隣に座ってる美貴が、言われるがままに開かれたページを覗き込む。
「なになに〜?」なんて、うれしそーに目ぇ細めちゃって。
ほんとに美貴は、松浦の前ではとろけそうに甘い。
いつもは軽ヤン入ってるくせにさ。
「これ時計? ふーん、ブレスみたいじゃん。かわいーね」
「でしょ? これをオソロでクリスマスプレゼントってのはどーでしょー?」
ふうん、時計をオソロね。
それってけっこういい考え。
指輪とかだと、学校では外さなきゃいけないしね。
「見せて」
雑誌を見せてもらって驚いた。
なに、この時計、4万9800円もするじゃんっ!
あたしにとっては、いやフツーの高校生にとっても
約5万円って、かなりの大金なんじゃないの?
- 481 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:37
-
「すげー、金持ちぃ。こんなん小遣いで買えんの?」
ため息まじりに美貴を見た。
たしか松浦んちはけっこう金持ちって噂、聞いてるけど
美貴んちは、うちとそう変わんない感じじゃないの?
あたしの視線の意味がわかったのか、
美貴はくすっと笑って言った。
「最近、時々バイトしてんの」
「バイト?!」
「シーッ!」
美貴は周囲を気にして人さし指を立てた。
おっと。うちの学校は表向きバイト禁止だからヤバいよね。
「いいなー、たんのお家はバイトさせてくれてー」
「亜弥ちゃんちはいくらでもお小遣いくれるんだからいいでしょ?」
「いくらでもってことないよー」
松浦が足をぱたぱたさせて、かわいらしく膨れる。
- 482 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:37
-
「あたしも、たんと一緒にバイトしたーい!」
「シーッ!」
あわてて美貴が松浦の口をおさえた。
へえ、そうなんだ。美貴、バイトとかしてたのか。
松浦には悪いけど、あたしが一緒にバイトさせてもらおっかな。
「けっこう、おいしいバイトだよ」
美貴がニヤッと笑った。
◇ ◇ ◇
- 483 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:38
-
「こういう引っ掻きキズは、このパテで埋める。完全にへこんじゃってるキズはこれ」
ふんふん。
メモをとりながら、美貴の話を聞く。
うん、あんがい単純作業みたいだな。
おいしいバイトなんて言うから水商売かよ?と思ったんだけど、さにあらず。
美貴のバイトは、なんとガテン系だった。
新築マンションの内装工事で壁や床に残った小さなキズを修復するってやつで
職人さん達の仕事が終わった後に作業する、夜のバイト。
「水商売なんて、亜弥ちゃんのOK出るわけないじゃん」
親はともかく、だってさ。
どんな親だよ、それ。
まあ、とにかく良かった。
さすがにキャバクラとかだと、あたし無理だからさぁ。
「そ? その気んなりゃできんじゃないの?」
「勘弁してよー、オヤジに酌して金とかもらいたくねー」
「そんなんで金もらえんだから楽じゃんよ」
ははっ。松浦がいないとこれだよ。
まったく美貴って、さばけてんだか何なんだか。
- 484 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:38
-
さて、とっととやっちゃお。
美貴はそういうと、さっそく作業にとりかかった。
このバイトは出来高制。
だいたい2LDKの部屋で20個くらいキズがあって
それ全部直して5000円くらい。しかも即金でもらえる。
一人でやっても、二人でやってバイト代山わけしてもかまわない。
「慣れたらはやいよ」
そういう美貴は、だいたい3時間で20個直せるって。
てことは時給にしたら1600円くらいってことで、うん、まったく悪くない。
ところが簡単そうに見えたけど、
やりはじめたら、これがなかなかテクがいるんだ。
四苦八苦してるあたしに、美貴が笑ってコツを教えてくれる。
「このバイト、長いの?」
「いや、亜弥ちゃんとつきあってからかな」
やっぱ遊びに行く場所とか、ご飯食べるとことか、
ちょっと変わってくるじゃん? デートだとさぁ。
そんなもん?
あたしとトメっちは全然変わんないんだけど。
相変わらず、部屋でまったりしたり、河原でピクニックしたりなんだけど。
- 485 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:39
-
「亜弥ちゃんはいろいろこだわりがあるんだよ」
そういうと美貴は何かを思い出したみたいにニマ〜ッと頬を緩めた。
なんだよ、気持ち悪ぃな。でれでれしちゃってさあ。
「じゃあ、松浦に出してもらえばいいじゃん」
「ヤだよ、そんなの」
あんただって、そんなのヤでしょ?
馬鹿にすんなとばかりに軽ぅく睨む美貴。
まあね。同い年だし、ワリカンが基本だよね。
なるほどねぇ。
オソロのものとかしこたま買ってるみたいだし、
友達の頃よりお金かかって大変なんだろーな。
でも、美貴はすっごく幸せそうに、
鼻歌なんて唄いながらパテを傷に塗りたくってる。
その横顔、すごく、きれいになった。
「でさ、よっちゃんは何でいきなりバイトなの?」
え? そりゃあアナタ、
来たるべき初めてのクリスマスに備えてってヤツですよ。
美貴は、「ふーん、よっちゃんがねぇ」とニヤリ笑った。
なんだよ。あたし、こう見えてけっこうロマンチストだよ?
- 486 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:40
-
「それは知ってるけど、でも、わざわざバイトしてってゆーのがさ」
マンドクセーとか言いそうじゃん。と、美貴。
確かにね。でもさ、メンドーでも先立つものがないとやっぱさ。
「ふぅぅん」
「なんだよ」
「ま、17年間の想いがやっと実ったんだもんね」
「うるせ」
そーだよ。
トメっちとクリスマスなんて何回もやってるけど、今年はいつもとは違うんだ。
いつもみたいにテキトーに鶏食べて、イチゴの乗ったケーキ食べて
おもちゃみたいなプレゼントを交換するんじゃない、
特別な、そう、特別な夜にしたいんだ。
「で、何するの?」
「……ううううう」
それは、まだ決めてないけど。
プレゼントも何も決めてないけど。
- 487 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:40
-
「ねえ、プレゼント、何がいいと思う?」
「そんなの美貴に聞かないでよ」
「トメっちって、何がほしいんだろ?」
「だから、美貴にはトメっちの趣味だけはわかんないったら」
なんかオソロにしたら?
しつこいあたしに、美貴があきれたようにそう言う。
でもさ、うちらってセンスも似合うものも全然違うから
それってすごくむずかしいんだよね……
◇ ◇ ◇
- 488 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:41
-
「ねぇ、昨日の夜、どこに行ってたの?」
お弁当屋さんを閉めた後に、いつものように
あたしの部屋に遊びに来たトメっちは、開口一番そう言った。
「んー? ガッコの友達んちだよ」
「何しにぃ?」
「レポート書いてたんだよ。今度、一緒に研究発表するはめになってさあ」
だから、今月は時々、遅くなると思うよ。
そう言うと、トメっちはちょっと不服そうに「ふうん」と呟いた。
許せ、トメっち。
嘘もあなたを愛すればこそ。
こっそり頑張って、ババンと脅かしちゃうぜベイベー。
- 489 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:42
-
とはいえ、昨日、現場で予定表を見せてもらったら
クリスマスまでには、バイトのチャンスはあと3回しかなかった。
マンションラッシュっていっても、そうしょっちゅう建つもんじゃないらしい。
昨日は4時間働いて、二人で2部屋、修復できた。
高校生はあまり遅くまで働かせてくれないから、これが1回の限界。
もらった1万円を、気のいい美貴は半分こに分けてくれた。
美貴のほうがずっとたくさん修復してたんだけど、
「いいって。あたしも話し相手いたほうが楽しいし」なんて言ってくれて。
うっうっ、持つべきものは良き友だねえ。
「今月中に、よっちゃん2万しか稼げないじゃん。足りる?」
「ンー、その範囲でできること考えるよ。てか、美貴のほうが全然足りなくない?」「あたしは、これまでに稼いだ分があるもん」
あの5万の時計買ったらすっからかんだけどー。
そう言いながら、美貴はまた幸せそうに笑った。
イブは、松浦のうちでホームパーティするんだって。
家族ぐるみで騒ぐのも、賑やかでいいね。
でも、あたしは今年は、外でご飯食べたいかな。
うちらはいつも家にいるから、やっぱ特別感を求めるとなると……
でも、ちゃんとしたとこで食事するとそれなりに……
- 490 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:44
-
「……みちゃん……ひとみちゃんったら!」
「わっ!」
びっくりしたぁ。
ハッとして見ると、目の前にはゴゴゴと怒りの炎を燃やすトメっち。
ヤべー、すっかり自分の世界にはいってたよ。
それに「よっすぃ〜」じゃなくて「ひとみちゃん」。
恋人になってからなぜか昔に戻った呼び名に、あたしはまだ慣れない。
「もー、さっきから呼んでるのにっ!」
「ごめんごめん。何?」
「だから、その友達って誰?」
「……は?」
うわ、そんなの考えてないよ。
「……美貴ちゃんじゃないでしょうね」
ギクッ。
「違うよ。トメっちが知らない子だよ」
「ふうん。どんな理由でも絶対に美貴ちゃんちは行っちゃだめだからね!」
たはっ、信用ねーなー。
まあ、仕方ないけどさ。
うーん、しかし。
こりゃあ美貴と一緒にバイトとか言ったらブチ切れるかもな。
やっぱ黙ってよっと。くわばらくわばら。
- 491 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:45
-
「ところでさー、トメっちって今、なんかほしいもんある?」
「えー? なに、急に」
きょとんとするトメっち。
今日のトメっちは真っ白いモヘアのタートルネックセーターに
ピンク基調のタータンチェックの巻きスカート。
もちろんミニ。なかなかかわいい。
でもなんとなく素っ気ない感じなのは、アクセサリーをつけてないからかな。
そういえば腕時計も、いつもしていない。
「トメっちって、時計しないよね」
「水仕事だからねー」
「指輪とかしないのも水仕事だから?」
「えっ……?」
えーー、指輪はべつにーー、そういうことじゃないけどーー。
トメっちの頬がポッと赤くなった。
そこらへんにあったクッションをつかんで、
恥ずかしげにギュッと胸に抱き、鼻先を埋めるようにうつむく。
およ? およよよよよ?
ははーーん。
あたしもポッと赤くなった。
なーるほどね。なるほどなるほど。
さすがトメっち、女の子してるじゃ〜ん?
決まったな、これだ。
◇ ◇ ◇
- 492 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:46
-
ぐえっ。
松浦に見せてもらった雑誌を見て、あたしはのけぞった。
まともな指輪って、高っけぇ〜〜〜〜。
「ご予算は2万円ですかぁ。キビシーですねぇ、お客さん」
からかうような松浦の声。
バカ、2万もねーよ。あたしはぶんむくれる。
「当日は食事も招待する予定だ。できたら1万円以内におさえたいんだがねキミぃ」「うわ、キッビシーですねぇ、お客さぁん」
松浦が雑誌をぱらぱらめくる。
そして、ため息をひとつ。
「ブランドものは無理っぽいね〜」
「うぐっ……」
「石がついてるのもちょっと無理かな〜」
「うがっ……」
「シルバーのちょっといいやつを探すって感じじゃな〜い?」
シルバーかよぉ。
ファッションリングじゃん。
- 493 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:47
-
「よっすぃ〜、プラチナとか考えてたのぉ?」
ぐっ。悪いかよ?
やっぱ永遠の愛はプラチナだろぉ〜。
「ヒュー、ロマンチックぅ!」
松浦が大喜びで手を叩く。
そして隣で興味なさそーにねちねち鮭トバを喰ってた美貴に話しかける。
「ねえ、みきたん。あたしたちもプラチナリングにしよっか」
「うえっ?……いくらよ?」
「これとかどぉ? プチダイヤも入ってて、かわいー」
松浦が指した指輪は、なんと15万円。
美貴がギョッと目を剥く。
「いやややや、亜弥ちゃんそれはちょっと」
「わかってるよ、うっそぴょーん」
でも、いつかね?
松浦が首をかしげて美貴の顔を覗き込む。
いつか、あたしもちゃんと自分でお仕事したお金で買うからね。
プラチナで、しかもダイヤとか入ってるペアリング。
みきたんに、永遠の愛を誓って。
- 494 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/16(月) 17:47
-
「亜弥ちゃん……」
「みきたん……」
だーーーーーー!!!
そこ、教室で見つめ合わない!!!
はー。それにしてもプラチナリングってそんなに高いものだったんか。
ペアリングなんて夢のまた夢だあ。
まいったなあ。しょうがない、今回はシルバーで探すか……。
- 495 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/16(月) 17:48
-
本日はここまでといたします。
- 496 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/16(月) 21:13
- (*´Д`)ポワワ
もう何も言う事はございましぇん
明日の更新を待つのみです
ええのぉええのぉ
- 497 名前:ファンA 投稿日:2004/02/16(月) 23:19
- 紺ちゃんと文麿さまの恋、お疲れ様でした。
今度のお話も楽しみです。
この世界が大好きですw
毎日楽しみに読んでいるうちに、すっかり登場人物と友達になったような気分になってます。
早く先が読みたいという気持ちと、永遠に続いて欲しいという気持ちがジレンマになってます。
……なんて、意味不明なレスをしちゃってすいません。
冒頭の会話部分が気になってます。どうなっていくのか楽しみにしてますね。
- 498 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 02:10
- 久しぶりのトメッちも
相変わらずキショくて可愛いです♪
- 499 名前:達吉 投稿日:2004/02/17(火) 16:30
- シルバーでもええじゃないっすか*^^*よしざーさんw
愛があればOKなんです!!!w
でもペアリングとかはなんかいいですよね!^^
特別〜♪な感じでw^^
- 500 名前:めげない名無し499 投稿日:2004/02/17(火) 16:49
- な、なんか、初レス気分です。
485-486の、テンポが良くて裏表がない感じが、
主人公のふたりとはまた違った意味で、良いな〜と思っています。
この物語の中のこの二人の関係性が私的にはツボなんですよ。。。
ついつい読みながらにま〜〜っとなってしまいます。キショ>自分
- 501 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 17:06
- 会話の感じがすごくツボです!こーゆーふーに言いそう〜!
キャラの描き方に感動です。
毎日の更新ありがとうございます。
- 502 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 18:55
- >>490
そりゃあ意識するよね。
よっちぃの健闘を祈りまする。
- 503 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/17(火) 23:37
- 496> 名無飼育さん様
(*´Д`)ポワワとしていただけて光栄でございまする。
ええのぉええのぉ っていうのも、オヤジっぽく目を細めてるかんじでええのぉw
497> ファンA様
お久です♪ 雪ぐまもすっかり保護者気分といいますか、うちの子たちに
どんどん愛着がわいてきまして、終わらせたくないなあなんて思っているのですよw
498> 名無飼育さん様
キショくて可愛いw うーむ、さすが石川さ……じゃなかった、トメっちですな(汗)。
499> 達吉様
はい、愛があればモノなんて何だって大丈夫。でも、うちのよっちぃは、
いろいろこだわりがあるようですな。ところで、ネ○バレには細心の注意をね(愛の忠告)。
よしトメの恋と同じく、このスレ、ちょっと微妙な時期でございますわ……。
500> 名無し499様
お気遣い、ありがとうございます。川o・-・)<完璧です。
あの二人はまさに「少女同士」の恋。親友であり恋人……奥さんも通ですねw
501> 名無飼育さん様
うれしいお言葉、ありがとうございます。モヲタとして感涙しておりますw
そして雪ぐまの妄想は果てしなく続くのでありました……
502> 名無飼育さん様
もう意識しまくりでございますw 雪ぐまとしては、あんまりヤキモチが過ぎるのも
どうかと思うのですが、なにしろトメっちですから……
それでは本日の更新にまいります。
- 504 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:39
-
「うえーっくしゅ!」
「も〜。やっぱりダメだよ、ひとみちゃん」
ご飯食べたら、帰ろうね?
パンパシフィックホテルのカフェ。
トメっちは八の字眉毛で、んな冷たいことを言う。
平気だって。
ぜんぜんまだいけるって。
あたしはピザをくるくる巻いて、ガッツリほお張ってみせた。
さぞかしウマいんだろーな。でも、ちっとも味、しないや。
てゆーか、トローリチーズが、なんてゆーか、オエエエエ(泣)。
あーあ。
なのに肝心な日に風邪ひいちゃうなんて最悪。
あのバイト、暖房なんてないし、とくに最後の日はやたら寒かったんだ。
美貴に「とにかく厚着しろ」って耳タコで言われてたんだけど、
あいつは寒がりだからって甘く見てたかもしんない。
「絶対、出かけないからっ!」
「絶対に、出かけるっ!」
だって、あれから、いろいろ調べたんだ。
ホテルのレストランなんて高すぎて手も足も出ないけど、
カフェのディナータイムなら、そこそこでけっこういい雰囲気だってこと。
- 505 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:41
-
松浦に情報もらって予約したロビー脇のこのカフェは、
シックな照明のなか、パームツリーにイルミネーションが煌いてきれい。
最上階のレストランの眺望にはかなわないかもしれないけど
今のあたしが用意できる精一杯のシチュエーション。
ふてくされてる手をひいてここに連れてきた時、
トメっちは、すごく驚いた顔してた。
それから、ちょっと落ち着かなさそうにキョロキョロとまわりを見て、
不機嫌そうだった顔を、照れたみたいにほんわり緩めたんだ。
つまり、今んとこ大成功なんですよ。うん。
問題は、体調だな。
あと、やたら貧乏性のトメっち。
きれいな絵みたいに盛り付けられた皿が出てくるたび、
なにやら心配そうに眉をひそめる。
「ねえ、大丈夫? ここいくらするの?」
「たいしたことないって。今日はまかしといて」
「そんなのだめだよ」
「あー、もう。あたしが誘ったんだからいーのっ」
たまにはさ。ね?
あたしにもいいカッコさせてちょーだい。
大丈夫、内緒でバイトをしたんだ。
トメっちと特別なイブを過ごしたくて、さ。
- 506 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:41
-
そんなことを考えてムフッと微笑む。
うん、風邪だって、高熱だってへっちゃらだよ。へっちゃ………
「ちょ、ちょっとごめん」
あたしはやおら席を立つと、
カフェを飛び出てお手洗いに駆け込んだ。
うええええええええ。
便器に飛びついて顔をつっこみ、えづきまくる。
うぐっ、げほっ。はあはあ、あぶなかった。
あーあ、全部、吐いちゃった……
もったいねぇ……
洗面所の鏡にうつってるのは
色白を通り越して、もはや青くなってる自分。
ああ、もうなんでこんな日に限って。
歩きかけてくらっとよろめき、壁に手をついた。
ハリボテみたいなあたし。
頑丈そうに見えて、すぐひっくり返る。
情けないよね。
- 507 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:42
-
「大丈夫?」
「うん、へーき」
嘘ばっかり。
トメっちが睨んだ。
ほんとだって。吐いたらちょっとスッキリしたみたい。
もちろんそうは言わないけど、あたしはニコッと微笑んでみせる。
「よしっ、ケーキくうぞぉ〜」
「ねえ、ちょっと。すっごく顔色悪いよ」
「店が暗いからじゃん?」
運ばれてきたケーキは小さなブッシュ・ド・ノエル。
ほらっ、かわいいよトメっち。
クリスマスケーキだよ。
「うん……おいしそうだね……」
ほのかなロウソクのあかりに浮かび上がるのは、まるで浮かないトメっちの顔。
目の前で切り分けられるケーキにも、いつもみたいなはしゃいだ声はなし。
そんな顔しないでよ、クリスマスなんだからさあ。
あたしは平気だよ。ちょっと熱はあるかもしれないけど、
特別な夜を楽しめないほどじゃないんだよ。
ね? 今日は、イブなわけだよ。聖なる夜さ。
「わかってるよ」
トメっちはそう言うと、気をとり直したように微笑んで、
紅茶のカップにゆっくりと唇をつけた。
- 508 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:43
-
うっすらとマスカラを塗ったまつげはどことなく憂いを帯びて、
なんだか彼女をとても大人に見せる。
あたしは思わず、みとれてしまう。
おしゃれして、二人でちょっと気取ったディナー。
うん、悪くないじゃんうちら。
美しいお嬢さん方って感じじゃないの?
え、自分で言うなって? 気にしない、気にしなーい。
あたしはうれしくなって、ニコニコした。
「マジでさっきよりも気分いいよ」
「そう?」
「明日には治るって感じかな」
彼女を安心させるための嘘。
また吐いたりしないように、ちょっとずつケーキを食べながら。
トメっちはホッとしたように頬をゆるませ、
でも、「治りかけが肝心なんだから」と、ボソリと呟いた。
◇ ◇ ◇
- 509 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:44
-
「もういいでしょ? 帰ろ?」
「もうちょっと遊ぼうよ」
心配げなトメっちの腕をぐいぐいひっぱる。
カフェを出た後、シーバス乗場に向かってずんずん歩きはじめたあたしに
トメっちはすっごく嫌な顔をした。
「船に乗るの?」
「そ。山下公園のほうまで行ってみよ」
「海の上って、すごく冷えるんじゃない?」
「みなとみらいのライトアップが、すげーきれいに見えるんだってさー」
あたしの計画はこうだ。
シーバスに乗って山下公園まで行き、中華街のほうをぶらっと散歩する。
人出も多いし、きっと屋台とか野外ライブとかやってるだろう。
もしかしたらバクチクとか鳴るかもしんないしな。カッケー!
てきとうに遊んだら、またシーバスで戻ってきて……
トン。
「うわっ!」
誰かと肩をぶつけて、あたしはよろよろとよろめき、
膝カックン状態で、すとんとしりもちをついた。
ぶつかったカップルが「え?」と驚いた顔をする。
そんなに強くぶつかった?みたいな。
- 510 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:45
-
「すいません、大丈夫ですか?」
「あ〜、すんません、ボーッとしてて」
見知らぬカップルに手をひかれて、よいしょと立ち上がる。
うわ、やべえ、膝ががくがくするんだけど。
熱、あがってきたとか? やべえ、バレたかな……
こわごわ振り返ると、トメっちが腰に手をあてて、
あたしをギロリと睨みつけていた。
「シーバス乗るの嫌だ」
「え?」
「やっぱ調子悪いんじゃん!」
「んなことないよ……」
「もう嫌だ。帰る」
トメっちはくしゃりと半泣きの顔になると、
勝手に駅の方向へとくるりと踵を返してスタスタ歩きだした。
ばっ、これからなんだよっ!
あたしは慌ててトメっちのコートをひっつかむ。
「わかった。最後にあの観覧車のろう、観覧車だけ。ね?」
- 511 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:46
-
あたしが指さしたのは、みなとみらいの夜に
いつも花火みたいに浮かび上がってる、でっかいでっかい観覧車。
いつも見るだけで乗ったことないけど、
きっとてっぺんからは、横浜のきれいな夜景が見える。
それを初めてのクリスマスイブに一緒に見たくて。
トメっちに、きれいな夜景をプレゼントしたくて。
そう、これが今夜のメインイベント。
せめて、せめてこれだけは。
- 512 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:46
-
だけど甘かった。
そんなこと考えるカップルって蟻のようにいるみたい。
乗場には30分待ちという看板が冷たく立っていた。
くっそー、んなことじゃ負けねーぞ!
「今度じゃ、ダメなの?」
黙って列の最後尾に並んだあたしを、トメっちが八の字眉毛で見上げる。
吐く息が綿菓子のように白い。
トメっちも寒いんだろーな。
当たり前か。並ばせちゃってごめん。
「ちょっと待ってて」
あたしは不安げな顔のトメっちを列に並ばせたまま
自販機を探してふらふらと園内を彷徨った。
あったかいミルクティを2缶買って戻る。
「はい」
「……これ、買いに行ってたの?」
「ン、ポケットにいれとくとあったかいでしょ」
「バカ、もうおとなしくしててよ」
トメっちが怒ったような困ったような顔で、あたしの腕をつかんだ。
ぶらさがるんじゃなく、支えるように身を添わせる。
まわりのカップルたちが珍獣でも見るみたいにあたしたちを見た。
そうだね、さすがのあたしも男には見えない。
- 513 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:47
-
コート越しに、トメっちのあたたかなぬくもりが伝わってくる。
こんなふうに人目も気にせず、腕を組んでるなんて初めてだ。
恥ずかしいような、誇らしいような感じ。
ああ、なんだか雲の上を歩いているみたいにふわふわする。
「大丈夫?」
「……あ、うん」
ねえ、トメっちって、
この列に並んでるどの女の子よりきれいじゃん?
ううん、世界中の誰よりもきれいじゃん?
あたし、マジでそう思うよ。マジでそうおも……
くらり。
「はい、次の方ー」
どさり。
転がり込むようにゴンドラのシートに座った。
ああ、よかった、ちょうど順番がきて。
しゃがみこんじゃうとこだった。
- 514 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:48
-
ゴンドラの窓に寄りかかるように座る。
一瞬、目を閉じて、ごくりと唾をのみ込んだ。
ズキズキするほど喉が痛い。
向かいのシートに座ったトメっちが、額に手を伸ばしてくる。
あたしは、ゆるく首をふって拒否した。
「大丈夫だから」
「嘘ばっかり」
「まあまあ」
これ終わったら帰るから。
言うとおりにするから。
ほら見てよ、ゴンドラがどんどんあがってく。
地上の景色が、色とりどりの光の粒になる。
「どうよ、ほら夜景だよ!」
ゴンドラが揺れるほどはしゃいで窓の外を指さしたあたし。
「きれーだねー」
「…………」
「ねっ?」
「……うん」
なんの感激もなさそうな声に、あたしは不安になった。
あれ? 夜景とか、別に興味ない?
観覧車、苦手とか? あれ?
- 515 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:51
-
「………もしかして、うれしくない?」
トメっちは、あたしが指さす窓の外を見て、かすかに笑った。
そして、ぽつりと、こう言った。
すごくうれしいよ。うれしいけど。
「ひとみちゃんが心配で楽しめない」
トメっちの目から、ふいにひとすじの涙がこぼれおちた。
ごめんね、ひとみちゃんいろいろ考えてくれたのに。
こんなきれいな夜景を見せてくれたのに。
私、帰りたくて仕方ないの。
はやくひとみちゃんをお布団に寝かせたい。
うつむいてしまったトメっち。
観覧車の電飾が、涙の流れる頬を鮮やかに照らす。
それはとても美しくて悲しい光景。
熱のせいではない震えが背筋に走り、あたしは唇を噛んだ。
あなたを喜ばせたかったのに、
なのに、泣かせてしまうなんて。
- 516 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:52
-
ごめんね、トメっち。
あたしの目からもポトリと一粒の雫がこぼれおちた。
悔しい涙。子供っぽいあたし、間抜けなあたし。
いつだって勘違い。ひとりよがりで身勝手で。
気まずい空気を乗せたまま、ゴンドラはゆっくりと地上に向かう。
あたしたちの初めてのクリスマスイブが終わる。
あたしはポケットに忍ばせていた小さなプレゼントを、ぎゅっと握りしめた。
これ、てっぺんで渡そうと思ってたのに、
渡しそびれちゃったな……。
これを探してる時が、一番楽しかったかもしれない。
指輪だってバレないように、ビシッと決まるように、いろいろ考えた。
忘れられない夜を夢見て、はずむように街を歩き回った……
◇ ◇ ◇
- 517 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:53
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……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
- 518 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:53
-
部屋にくるなり、いきなり手をとったあたしに何を思ったのか、
トメっちはポッと頬を赤らめて、きゅっと目を閉じた。
あ、いや、キスしようとしたんじゃなくて〜〜。
……でも、ま、いいか。
ちゅっ。
ちゅっ。ちゅっ。
ちゅーっ。ちゅっ。ちゅっ。
わりとしつこくキスしながら、あたしはトメっちの指を探る。
んー、サイズ、何号くらいだろう?
あたしよりは全然細いな。
「はぁ、幸せ」
トメっちが頬を染めて肩に額をこすりつけてくる。
あたしはまだコネコネとトメっちの指を探り続けてる。
右と左だとサイズ違うのかな?
てゆうか、どの指にはめるのをあげる?
やっぱ左手の薬指?
いやー、それはちょっと重いっしょ。
それにその場所はいつかプラチナのリングを……なんてね。
そうだな。
やっぱ右手の薬指だな。
これぞ恋人ポジションって言うか、うん。
- 519 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:54
-
「ねえ、上の空じゃヤだ」
トメっちが、ちょっとふくれてあたしの肩を押した。
押されたあたしは、そのままストンとベッドに腰かける。
すかさず、その膝にまたがるみたいに乗ってくるトメっち。
あたしはその細い腰を抱いて、トメっちの胸にぱふっと顔を埋めた。
「上の空じゃないよ」
「嘘だ、なんか違うこと考えてた」
「考えてない、考えてない」
やわらかい胸に頬をおしつけて、あたしは幸せにひたる。
髪をやさしく撫でてくれる指。
もうすぐあたしが指輪で飾る指。
ご機嫌になったあたしは、ちょっと悪戯心を起こして
鼻先で、トメっちの胸の先っぽあたりをきゅっと押した。
トメっちが「やぁだ」と甘い声で笑って身をひねる。
- 520 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:55
-
「だめ?」
「だーめ」
「なんで? あたしの権利でしょ?」
「権利だけど、だめ」
Hな気持ちになっちゃうでしょ?
「なったらいいじゃん」
「だめ。下によっすぃ〜のママいるもん」
「だから、絶対あがってこないってば〜」
「だから、やなんだってば〜」
気になっちゃうから、人がいるときは絶対イヤ。
この件に関しては、妙に頑ななトメっち。
彼女の頑ななところは、もうひとつ。
どんなに遅くなっても家に帰る。生真面目な彼女。
ちょっぴり、つまらない。
- 521 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:56
-
「私だって、泊まっていきたいんだよ?」
口を尖らせるトメっち。
「でも、お母さん、心配するし」
「たまになら、いいじゃん」
「一回泊まっちゃうと、ずるずるしちゃいそうなんだもん」
急にお泊まりしまくったら、
お母さんに私たちのこと、疑われちゃうよ。
そしたら困るでしょ、ひとみちゃん?
んー、そうだね、ビミョーかな。
いつかは言わなきゃいけないのかもしれないけど
まだ今は、ちょっとばかしヘビー。
親に養ってもらってる身だし、ね。
- 522 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:56
-
「じゃあ、また明日ね」
「あ、明日はバイ……じゃないや、遅くなる日だから」
「そう……。じゃあ、明後日ね」
おやすみのキス。
あたしはさりげなく彼女の右の薬指をつかんだ。
ん、よし。覚えたぞ。
トメっちが帰ってから、自分の右の薬指をゴシゴシさわってみる。
……うわ、トメっちよりぜんぜん太い。
これじゃあ、参考になりゃしない。
大丈夫かな、おい。
ちゃんと指輪、買えるかな。
◇ ◇ ◇
- 523 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:57
-
教室に入るなり、いきなり松浦の指をコネコネさわりだしたあたしに
美貴がすっとんできて跳び蹴りをくらわした。
「いってえっ!!」
「なにやってんだ、ゴルァ!」
ちょっとミキティ、マジ恐いですよ、あなた。
いーじゃん別に。なによ、手ぇさわったくらいでー。
なのに美貴は、メンチ切りまくりであたしを睨む。
「さわんな」
「キャーー、みきたん、ヤキモチぃ?」
もう松浦はニッコニコ。
はいはい、すみませんでした。
まったく松浦のことになると人格変わるんだから。
あたしは肩をすくめて白状した。
「トメっちの指のサイズがわかんなくてさ」
「ああ、そういうこと」
美貴が一転してニヤーッと冷やかし顔になる。
ちぇっ、だから言うの嫌だったんだ。
- 524 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:58
-
ご機嫌な松浦が、右手の薬指をさわりながら教えてくれる。
「同じくらい? じゃあ9号だよ」
そっか。
うーん、松浦のほうがほんのちょっと細い気もするけど。
「大丈夫だよ。ちょっとくらい小さいぶんには、広げて大きくしてもらえるし」
「そうなの?」
「うん、たいていの店でやってくれるよ」
「ダメでも交換してくれるよ」
へえー、二人とも詳しいね?
「「女の子ですから」」
憎たらしいハーモニーが返ってきた。
ちぇっ。
◇ ◇ ◇
- 525 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/17(火) 23:58
-
渋谷の丸井を出たあたしの足どりは重かった。
だめだ。1万円じゃロクなのねーよ。
「どこ行くの?」と不審げなトメっちの目を感じつつ、
ひとり繰り出した土曜の街。
人ごみの中で、あたしはすっかり途方に暮れていた。
いや、あるにはあるんだ。
でも、それらはオモチャみたいで
あたしがイメージしてるような指輪じゃなかった。
デパートを見ても、109をうろついても、雑貨屋に入っても、
予算とイメージが折りあう気配はまるでない。
せっかく渋谷まで出てきたのにな。
電車賃を思って憂鬱になる。
たいした額じゃないけど、ただでさえ少ないクリスマス資金が目減りする。
「原宿のほうが、いいのあるかな」
あたしは夕暮れも迫ってきた街を歩き出した。
電車で行けばすぐだけど、無駄遣いしてる余裕はない。
- 526 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:00
-
のらくらと歩いてる途中で、
あたしはふと小さなショーウインドーに目を止めた。
そのまま目が吸い寄せられる。
あっ、これ、すっげーいいじゃん。
そうそう、こーゆーのがいいんだよ。
それは、ちょっと厚みのある銀色の台に
ピンク色の小さな石が木の葉みたいに3つ並んでる指輪。
こーゆー女の子らしいデザイン、トメっち好きだと思うんだ。
でもなー。高っかそうだな、これ。
さっきからずっとそうなのよ。
イイと思うと、目ん玉が飛び出るほど高いの。
やや諦め気味に、小さな値札を目を凝らして見る。
そしてあたしはエッと目を見開いた。
1万2000円。
うそ。
ちょい予算オーバーだけど、買えなくないじゃん。
あたしは店の看板を見上げた。
『Love ring 圭』
ラブリング・ケイ?
なんか、シッブイ名前だなー。
聞いたことないなー。なになに、指輪専門店?
- 527 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:00
-
「ピンクオパールよ」
「うわっ!」
いきなり声をかけられて、ひっくり返りそうになった。
ドアから顔をのぞかせてたのは、やたらキッツイ顔をしたお店のお姉さん。
「あんた、それイイと思ってるでしょ?」
「はぁ、まあ……」
「何号?」
「え? あ、9号……」
「ラッキーね。まだ残ってるわよ」
や、まだ買うって決めてないっすよ!
あわてて両手を振ると、お姉さんはつまらなさそうに口を尖らせた。
「買いなさいよ」
「そんないきなり買いなさいって言われても」
「あのね、オパールは感情を安定させ、その状態を維持するパワーを持っているの」
へえ。そりゃあ、いいかも。
トメっち、しょっちゅうマジギレしてっからなあ。
- 528 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:02
-
「すごいでしょ? それにね、いちおう1点モノなのよ」
「そうなんすか?」
「うちの商品は、全部アタシがデザインしてつくってんのよ」
へぇー。あたしはドアの隙間から店内を見回した。
小さな店だけど、そこに数えきれないほどの指輪がずらり。
お姉さん、すごいっすね。
「5年後には世界的なジュエラーになってるから、今買っとくとお得よっ」
……ほんとかよ。
あたしは呆れながらも、もう一度、その指輪を見つめた。
うん、やっぱかわいいな。
後に価値がでるかどうかはともかく、トメっちは気に入ってくれそう。
「1万2000円かぁー」
「何よ」
「予算、1万円なんっす」
「ゲ、2000円もマケろってぇ?」
あんたこれ、けっこう原価かかってんのよぉ?
お姉さんは嫌な顔。ははっ、そうだよね。
てか、お姉さんが一生懸命つくったんだもんね。
- 529 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:03
-
ま、いっか。
食事は小遣い足してなんとかなるでしょ。
あたしは笑ってポケットからゴソゴソと財布を出した。
お姉さんが猫娘のような目を満足げに細める。
「じゃあ、間をとって1000円まけてあげるわよ」
「マジっすか?」
「あんた、高校生でしょ?」
ドキ。
なんすか。高校生が指輪買っちゃダメすか?
「そうじゃないわよ。でも、自分のじゃないみたいだし」
「な、なんでわかるんですかー」
「あんた、どーみても9号じゃないから」
「うっ」
「うーん、青春ねぇ〜」
消費税とラッピング代もまけといてあげるわよ。
そういうとお姉さんは、口を開けたままパチンと悩殺ウインクをかました。
オエエ〜〜〜。
「……何よ」
「いえ、感謝してます」
また来なさいよっ。
お姉さんは最後までエラそうだった。
- 530 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:04
-
指輪を買った帰り道。
あのふわふわと舞い上がるような気持ち。
やっちゃった!
とうとう買っちゃった!
トメっちに、指輪。
きっとすごく喜んでくれる。
きっと喜んでくれる。
その確信が、ホットケーキにかけられたメープルシロップみたいに
あたしの胸にじいんと染みわたった。
そう、もう片思いじゃない。トメっちは、あたしが好き。
あたしは軽くスキップして、それからタタッと走り出した。
大空に手を広げて、幸せだと叫びたいような気持ち。
微笑みを頬に貼りつけたまま、原宿の人込みをすりぬけてぐんぐん走る。
ポケットに小さな愛の証。
- 531 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:06
-
トメっち、好きだよ!
世界中の誰より好きだよ!
そう、こんなに。
こんなに、愛してるんだ。
- 532 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:08
-
……あの時の鮮やかな思いが、
その勢いのまま空回りしてすっ飛んでいく。
渡しそびれた愛の証は、ポケットの中で行き場をなくしたように息を潜める。
トメっちの涙は、なかなか止まらなかった。
わんわん泣くんじゃなくて、横を向いて唇をぎゅっと噛みしめ、
必死で涙をこらえようとしてる姿が、あたしの胸をますます痛ませた。
無情にもゴンドラはあっけなく地上につき、
浮かれた夢からあたしたちを吐き出す。
ううん、浮かれてたのはあたしだけかな。
「うえっくしゅ!」
「……ずずっ」
うなだれたままの帰りの電車。
鏡のような向かいの窓に映ってるのは、
ポケットティッシュで鼻水と涙をごそごそ拭いてる冴えない二人。
笑っちゃうな、ほんと。
あたしが見た夢、これが現実。
- 533 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 00:11
-
ああ、割れるような頭痛。
きしむように痛む関節。
吐く息さえ、熱く感じる。
たぶん、すごい熱。
荒い息を吐き続けるあたしの手を
赤い目をしたトメっちが、心配そうに両手で包み込んだ。
流れ込んでくるあたたかな愛情。
そう、彼女は怒ってるわけじゃない。
ただうまく想いが噛み合わなかっただけ。
あたしたちの初めてのメリークリスマス。
もう一粒、涙がしたたり落ちた。
- 534 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/18(水) 00:11
-
本日はここまでといたします。
- 535 名前:もろ 投稿日:2004/02/18(水) 00:15
- 更新お疲れ様です。
はじめまして。ずっと読ませていただいてました。
今日は、はじめてのリアルタイムに感動して、出てきました。
ほんとに、雪ぐまさんの世界は大好きです。
これからも、読ませていただきます。
- 536 名前:旧371 投稿日:2004/02/18(水) 00:16
- 久しぶりのリアルタイム(涙
よっすぃーの気持ちが痛いほど伝わりました
\(0T〜T0)/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
涙の海で泳いできます・・・
- 537 名前:260@前 投稿日:2004/02/18(水) 00:57
- ああ、二人の想いがきれいすぎてかわいすぎて・・・
せつない。
自分もこんな恋してたいなぁ
とか思いつつ、>504のよっちゃんがちょっとおもしろかった
- 538 名前:達吉 投稿日:2004/02/18(水) 11:19
- ネタバレすいませんでした。
愛の忠告ありがとうございます。
以後、気をつけます。
石川さんカワイすぎです!完璧ホレました*^^* 川o・-・)<完璧です!!
よしざーさんもカッケーしなぁ〜^^
- 539 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/18(水) 14:15
- ご無沙汰してる間に、文麿外伝完結おめでとうございます!(遅)
ふたりの愛の終着駅に酔いしれましたですよ、グフグフw
余談ですが、こんごまの中にはさり気なく、世の中の愛のいろいろな形があったように感じました。
深かったです。と、たまにはマジレスでw
そしてついに!ちょっと奥様、いしよしが来たわよ〜!
トメっち視点の前になんつ〜豪華な短編を持って来るんですか、アナタって人は!
イイヨイイヨ〜!
ふたりの気持ち、両方とも分かりますよねぇ・・う〜ん。
そしてさり気なくあやみきが可愛いですw
次回もむはむは〜とお待ちしてますですよ。
- 540 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/18(水) 15:47
- ふたりが、お互いの気持ちを思いやってて素敵です。
よっすぃーが、指輪を買って梨華ちゃんを思ってる時、
ドラマの「プライド」の主題歌「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」が
頭の中に浮かんできました。よっすぃーがんばれ。
雪ぐま様の文章は本当に素敵です。
- 541 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/18(水) 22:21
- 535> もろ様
初めまして♪ ご愛読ありがとうございまする。ほとんどシリーズ化してきている今作、
今後ともお付き合いいただけると幸いです。また感想のレスをお待ちしております。
536> 旧371様
お久です♪ 泳ぐっていうより、溺れてますがな、よっちぃw
それかバタフライなのか?!(カッケー!) トメっちは立ち泳ぎとかしそうですw
537> 260@前様
お久です♪ よっちゃんトメちゃん、またまた空回りの巻。マロちゃんの心配ごもっともw
二人ともまだまだお子ちゃまのようですな。( `.∀´)<青春ってやつね!
538> 達吉様
ご理解、ありがとうございまする。生真面目で、融通がきかなくて、キショくて……
トメっちみたいな女の子は手がかかりそうw でも世界遺産並に希少価値かもしれないですな。
539> 名無し23。様
お久です♪ マジレス恐縮ですw 光の裏には必ず影があるものでございますね。
でも心が深くなったぶんだけこんごまは安心なんですが、よしトメはいやはや状態ですわw
540> 名無し読者様
素敵なレスをありがとうございまする。初めて恋人に指輪を買う、あの瞬間の感動は一度きり。
だから、よっちぃは失敗しても幸せだったと……思えるほどまだ大人じゃないなw
それでは本日の更新にまいります。
- 542 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:22
-
寝苦しくて、夜中にうっすらと目をさました。
ベッドサイドの明かりに、トメっちの寝顔が浮かびあがってる。
絨毯にぺたりと座りこんで、ベッドにもたれたまま眠ってるトメっちの姿。
まだ、そんなに遅くないのかな。
サイドテーブルの目覚まし時計をチラッと見る。
……深夜2時。
ああ、トメっち、帰らなかったんだ。
きっと心配して……
- 543 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:22
-
あれから家に帰って、あたしをベッドに寝かしつけると
トメっちはやっとホッとしたような微笑みをみせた。
熱は39度近くあって、あたしはその数字を見ただけでまた具合が悪くなった。
『きゅうぅぅぅ……』
『ほらね。無理するから』
薬を飲まされ、冷えピタシートをぺたりとオデコに貼られた。
髪を撫でられて、意識がゆっくりと遠のく。
吸い込まれるような眠気。
ぱちぱちと目をしばたかせたあたしの瞼を
やさしい指が、そっと押さえたのを覚えてる。
『おやすみ』
『やだ、まだ寝ないよ……』
だって寝ちゃったら、トメっちは帰ってしまう。
二人のイブが、知らないうちに終わってしまう。
そう思いながらも、あたしは泥のような眠りに引きずり込まれたんだ。
- 544 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:23
-
見慣れないトメっちの寝顔を、しみじみと見つめた。
まだあたしたちが友達だった頃、
この寝顔に卑怯なキスしてしまいそうになったことがある。
そのことを思い出して、あたしはかすかに自嘲的な笑い声を漏らした。
あたしのなかの天使と悪魔は、いつだって悪魔が勝利する。
あれほど拒んでいた外泊をさせてしまった罪悪感より
外泊してまでそばにいてくれてるっていう満足感が勝る。
悪かったな……でも、うれしい。
それがあたしの本音。
だけど、きっとトメっちは違う。
彼女は天使が勝利するんだ。
だから、何よりもあたしのことを一番に考える。
思い出よりも、約束よりも、目の前の喜びよりも、
そして自分よりも、あたしを守る方法をいつも考える。
今日、あたしのカラダに無理をさせたあたしに怒ったように。
それは愛し方の差なのか。
それとも愛する才能の差なのか。
もしかしたら、まだ、あたしは愛ってやつをわかっていなくて。
- 545 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:24
-
それにしても、すごい寝汗。
あまりに気持ち悪くてゴソゴソ身を起こすと、
天使は、すぐにハッと目をさました。
「気分はどう?」
「ん、寝汗が……」
「着替え出すから、熱はかってて」
ひょいと体温計をくわえさせられる。
トメっちは、あたしのオデコの熱冷まシートとぴゅっとむくと
すかさず新しいヤツをぺたりと貼りつけてきた。
うわー、ひやっこい!
「7度5分」
「よかった。薬、効いてるね」
トメっちは、勝手しったる感じでクローゼットから新しいパジャマを取り出し、
乾いたタオルであたしのカラダを簡単に拭いてから、せっせと着せてくれた。
献身的。そんな言葉がココロのなかにぽわんと浮かぶ。
そう、彼女はいつだって献身的で心配性。
無理してデートに連れ出しても、喜んでくれるはずなかった。
ちょっと考えたらわかるのに。
- 546 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:25
-
「あーあ」
「なあに?」
「ごめんね、トメっち」
うなだれたあたしの顔を、
トメっちは、フフッと笑って覗き込んだ。
「うれしかったよ」
予約とか、してくれたんでしょ?
すっごい考えてくれたんだなーって。
私、大事にされてるんだなーって、思ったよ。
「私こそ、ごめんね」
「なにが?」
「笑ったらよかったのに、泣いちゃって」
せっかくのひとみちゃんの気持ち、台なしにしちゃって
失敗したなあって、帰り道に反省したんだ。
ああ、天使も反省するのか。
ちょっと安心したあたしは、やっぱ悪魔かな。
- 547 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:26
-
「ほんと、ごめん」
「ごめんね」
あたしたちは、照れながら見つめあった。
噛みあわなかったお互いのキモチ。
だけど、キモチの奥深くにあるあたしなりの“愛”ってやつが
そして、トメっちなりの“愛”ってやつが
透明な湖の底に揺らめきながら見えるきれいな石みたいに、
ゆらゆらと頼りなく、だけどお互いの目に確かに見えたんだ。
- 548 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:26
-
「あのね、私、ひとみちゃんにプレゼントがあるんだよー」
明日渡そうかと思ってたんだけど、今、渡しちゃうね。
トメっちはそう言うと、バッグのなかから小さな箱をとり出した。
「え、これ?」
手渡された小さな箱を見て、あたしはギョッと目を見開いた。
この箱のサイズ、この包装紙!
これってあたしが買ったやつじゃないの?
あたしの動揺を見て、トメっちが照れくさそうに笑った。
「どしたの? クリスマスプレゼントだよ」
「ちょっ、トメっち、あたしのコートのポケット見てみてっ!」
「なによ、いきなり」
不思議そうな顔で壁にかかったコートを探ったトメっちが
マジで鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔をした。
「うそっ!」
- 549 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:28
-
同じ包み紙の小さな箱を手のひらに乗せて、
あたしたちはボーゼンと顔を見合わせた。
「渋谷から原宿に抜ける道の?」
「やたらエラそうな猫目のお姉さんの?」
すげえシンクロ。
開ける前からわかるプレゼント。
そんなことってある?
あの途方もなく大きな街で、
星の数ほどあるたっくさんの店の中で、
埋もれちゃいそうに息づいてた小さな専門店で。
- 550 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:29
-
「すごーい、私たち!」
「やばいよ、うちら!」
ひとしきり肩を叩きあったり笑ったりした後、
私たちはちょっとかしこまって、
台本でもあるみたいに同じいいわけをした。
「ほんとはペアにしたかったんだけど」
「私も、ほんとはペアにしたかったんだけど」
ちょっと予算がさ。
ちょっと予算がね。
年相応にビンボーなうちらが
ちょっと背伸びして頑張っちゃった半月のような贈り物。
ふたつあわせて、ちゃんと満月になる。
だいぶ歪んでるかもしれないけれど。
- 551 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:30
-
“せーの”で一緒に箱をあけた。
トメっちが「かわいい!」と歓声をあげる。
あたしも「かっけー!」と思わず声をあげた。
ちょっとゴツい感じのシルバーリング。
十字架みたいなラインが刻まれてる。
すげ。超いいじゃん!
「ひとみちゃん、そういうの好きかなーって思って」
「トメっち、そういうの好きかなーって思って」
うん、すっごく好き。
あたしも、超気に入ったよ。
よかった。
安堵の声までシンクロ。
あたしたちって、ほんとすごくない?
あたしは、少し考えてトメっちの右手をとった。
キザかなって思ったけど、いいよね?
- 552 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:30
-
すんなりした薬指に指輪をそうっとはめていく。
サイズ大丈夫かな? あれ、ちょっとひっかかるな。えいっえいっ。
トメっちが、「痛いよ」とクスクス笑った。
「あっれー、小さいかな」
「ううん、入るよ、ほら」
きゅっきゅっと回すようにしてトメっちは薬指の根元に指輪をおさめた。
「キツくない?」
「ちょっとキツめのほうが落とさなくていいよ」
もう、ずうっとしてるんだもんね。
お風呂でもはずさないもんね。
トメっちが薬指を明かりにかざして、花のように笑った。
そっか、あたしもうれしいな。
あなたの指にいつも存在できて。
- 553 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:31
-
トメっちも神妙な顔をしてあたしの右手をとる。
どの指にはめるつもりかな。
「薬指に決まってるでしょ」
トメっちの細い指が、薬指にそっと指輪を通していく。
あたしはなんだか敬虔な気持ちでそれを見てた。
左手でもないのに、トメっちの吐息にひそやかな誓いを感じて。
ぴたり。
こちらは、測ったようにしっくりと薬指におさまる。
えええっ? どうして?
「だって、測ったもーん」
「いつ?」
「ひとみちゃんがお昼寝してたときー。指に糸捲いて測ったの」
ああっ、その手があったか!
なんかなー、あたしってどーもツメが甘いな。
- 554 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:32
-
「ふふふ、私はこんなのもご用意してまーす!」
そう言ってトメっちが得意げに取り出したのは銀色の鎖。
「ひとみちゃん、学校に指輪してけないでしょお?」
あ、そっか。
長めのネックレスに通しといたら、こっそり身につけておけるから。
「私って、とことん気が利いてるぅ!」
「うーー……」
確かにね。負けたよ。
トメっちはますます威張ったように胸を張った。
「しかも、この鎖、磁気ネックレスなんだから!」
「はあっ?」
「肩凝りも直って一石二鳥!」
「だ、だせぇ!」
「ちょっと、なによ!」
あたしは笑って、トメっちを抱きしめた。
かわいくってちょっとおかしな、あたしの恋人。
- 555 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:33
-
「ね、ひとみちゃん」
トメっちはふいに顔をあげると、
すばやく短いキスをして、また肩に頬をおしつけた。
「……すげー早業」
「したかったんだもん」
「風邪、うつるよ?」
「うつして」
風邪がうつるようなキスして。
ぐわ。
心臓が口からぴょこんと飛び出そうになる。
もー、勘弁してよ。反則。
「……今度ね」
「なによぉ」
「ほんとにうつったら困るくせに」
「うーん、もう年末だし、いい! うつったらお店休むことにするっ」
そういうとトメっちは、ぐいっとあたしの肩を押してきた。
体重をかけられて、ベッドにひっくりかえるあたし。
- 556 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:33
-
「しよ?」
「えええっ?!」
「いや?」
「や、てゆうか熱が」
「お出かけしたくせに」
「てか、風呂はいってな……」
あたしの言葉を無視して、首筋にキスの雨をふらせるトメっち。
うわ、てか、ちょっとやられちゃうの?
ギャーーー、勘弁してぇ!!
「こんな時でないと、おとなしくしててくれないもんねー」
「は、はんそくーー!」
「うふっ、ひとみちゃん、かわいがってア・ゲ・ル」
「んぎゃーーーーー!」
嘘よ、うそ。
病人にそんなことするわけないじゃないの。
トメっちはおかしそうに笑ってコロンとあたしの脇に転がると、
ふたりの肩がすっぽり隠れるように布団を引き上げた。
- 557 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:34
-
「ほら、もう寝よ?」
「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ……」
「あはは。ほんとにビビってる」
「……もー、勘弁してよぉ」
狭いシングルベッドでぴったり寄り添う。
あたたかな手が、いたわるように身体を撫でてくれる。
その心地よさに、うっとり目を閉じた。
耳元でトメっちが囁く。
「うれしいな、お泊まり」
「おばさん心配してない?」
「今日は泊まるって言ってきたから大丈夫」
実はね、今日は最初から、泊まるつもりだったんだぁ。
ひとみちゃんの風邪、心配だったし、
恋人になって初めてのクリスマスイブだし、ね?
「やっぱり夜一緒に寝ると、特別って感じするね」
朝起きた時、ひとみちゃんが隣にいると思うと幸せー。
ああ、なんてささやかな特別。
かわいらしいトメっち。
- 558 名前:初めてのメリークリスマス 投稿日:2004/02/18(水) 22:35
-
「ごめんね、風邪ひいちゃって」
「いいよぉ、そんなの全然」
「なんか、おなか撫でてもらうのって気持ちいいね」
「子守歌も唄ってあげよっか?」
「……それはいい」
「なによぉ」
情けないような、幸せなような、特別な夜。
ビシッと決まらなかったけど、二人はやっぱり特別だと感じた夜。
そう、センスも考え方もまるっきり違うけどさ。
しょっちゅう喧嘩したり、泣いたりだけどさ。
でも、不思議なことに同じ店で指輪を選ぶ。
何かに導かれるように、同じ地図を持ってるみたいに
迷っても惹かれあって、同じ道に辿り着く。
たぶん、うちらはそんなカンケイなんだ。
☆おしまい☆
- 559 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/18(水) 22:39
-
『初めてのメリークリスマス』終了いたしました。
ぜひ、ご感想を……え?ちっとも短篇じゃなかったって?
うむむむ、書いてたら長くなりましたw
さて、次からはトメっち視点の『続・愛するトメっち』でございます。
しかし、実は本業がたいへん忙しく、準備が遅れておりまする。
申し訳ございませんが、ここらで一週間ほどお時間をくださいませ。
なにとぞご容赦のほどを……。
- 560 名前:名無しぽき 投稿日:2004/02/18(水) 22:47
- 初めてレスします!
「記憶より〜」から雪ぐまさんのお話を読むのが毎日の日課であるぽきです。
ごまこん好きには文麿外伝サイコー! でしたし
「初めてのメリークリスマス」は指輪のオチにビックリ。
雪ぐまワールドバンザイ!ですね。
1週間、とのことですが、いつまでも待ってますよ。
っていうかこんな質の高い作品を毎日書かれてる方がスゴいです。
これからもよろしくお願いします☆
- 561 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 22:58
- ああ〜。。。。萌え死にしそう。もう雪ぐま様ったらすごすぎ。
ごちそうさまですた。ご多忙とのこと、お身体大切になさってください。
追伸。ちなみに私は555が特に萌え〜でした。(照れ)
- 562 名前:わく 投稿日:2004/02/18(水) 23:45
- はあ〜・・・・
もうダメ・・・・(笑)
僕が飼育に出会って約1年半の中でのNO1作者さんは雪ぐまさんですw
トメっち&ひーちゃん、やっぱフォーエバーラブw
僕も555に萌え☆
- 563 名前:達吉 投稿日:2004/02/19(木) 00:38
- サイコーですた・・・w
あぁ・・・wトメっち・・・ww
よしざーさんに負けないくらい、トメっちにハマってしまったオイラですw(笑)
『続・愛するトメっち』も頑張ってくださいね^^
- 564 名前:260@前 投稿日:2004/02/19(木) 01:20
- 短編(番外編?)おつかれでした。
>>543のよっちゃんがかわいかったです。
雪ぐまさんのはよっちゃんがきちんと女の子で好きですわ。
- 565 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/19(木) 16:05
- 「初めてのメリークリスマス」完結、おめでとうございます。
いやはやぁ〜、キタキタ〜!と叫びましたよ、思わずw
うむうむ、これぞいしよしワールドでござりますなぁ・・(遠い目)
この雰囲気は本当にいしよしならではだと思います。
やっぱりオイシイところを攫って行くわねぇ、この人たちってばw
しかしながら、雪ぐまさんはどのCPを描いても、見事にそれぞれ最高にワタクシたちを萌えさせて下さる・・
完敗ですよ、完敗de乾杯!(ヲイ)
お忙しいと思いますので、ここいらでワタクシもわらじを脱がせていただき、マタ〜リと茶でもすすりながらコタツに入りつつ待たせていただくとしますw
- 566 名前:もろ 投稿日:2004/02/19(木) 22:29
- ごちそうさまでした(笑)。
雪ぐまさんのいしよしを見てると、ちょと昔の自分を思い出したりして
胸が「きゅ〜ん」ってなるんですよね。
ほんとに映像が浮かんでくるような文章で、大スキです。
よっちゃんが、強がりながらも女の子な所が愛しくなるんですよね〜。
ゆっくり休んでくださいね。
- 567 名前:ファンA 投稿日:2004/02/21(土) 14:46
- 完結、お疲れ様でした。
やっぱりこのキャラクターたちが大好きですw
2人の絆に、胸が温かくなりました。
本業、頑張ってくださいね。お待ちしています。
それにしても…。
基本的に毎日更新&時間が空くときは宣言。
これがすごく好きなんです。(爆)
雪ぐまさんの事を嫌いになれる人はそうそういないと思います。
レスの数もすごう多いですしね…。
いつもながら長くてすいません。とめっち視点で、どんなひとみちゃんが見れるのか楽しみです。
- 568 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/24(火) 13:15
- 皆様、お久しゅうございます。
560> 名無しぽき様
初めまして♪ 日々のご愛読ありがとうございまする。いしよし、あやみき、ごまこんと、
CPを変えても快く読んでいただけて感謝です。作者冥利につきますです。
561> 名無飼育さん様
555は、雪ぐまの萌え妄想爆発シーンでございますなw トメっちはキショキャラでありながら
誘い上手というか、天然フェロモンぷんぷんというか、さすが石川さんなのでございまするw
562> わく様
もったいないお言葉、ありがとうございまする。雪ぐまは飼育に大好きな作家さんが何人もいて
その方たちがいたからこそ、こうして書けています。作者様、読者様、ともに感謝しております。
563> 達吉様
おおっ、よしざーさんにライバル宣言でしょうか?!w トメっちとよしざーさん、
どっちがモテるのかな〜なんて考える今日この頃。もしかしてトメっちか?!
564> 260@前様
そうですね、ほんとはもっと女の子っぽくしたいくらいなのですが……
リアルよっちぃが、ここんとこかなりボーイッシュきてますからねぇw かわいいですけど。
565> 名無し23。様
運命のいしよし、奇跡のいしよしってやつですねw どうも性格があってるとは思えないんですが
その凸凹ぶりが萌えというかw不思議な組み合わせです。で、「わらじ」かよっ(←ツッコミキティ)。
- 569 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/24(火) 13:16
- 566> もろ様
お粗末さまでした(笑)。胸きゅんしていただき、光栄でございます。雪ぐまも、いしよしを
見ているときゅんきゅんいたしますな〜w 萌え妄想炸裂でございます。
567> ファンA様
いや〜、友達少ないですよ?w ここのところ少々忙しく、毎日更新とはいかないかも
しれませんが、なるべく状況をご説明しつつまいりたいと思います。どうぞよろしくご愛顧のほどを。
それでは続編のスタートでございます。
- 570 名前:続・愛するトメっち 投稿日:2004/02/24(火) 13:20
-
思いが通じあってから約1年半。18歳のふたり。
よっすぃ〜は大学一年生、トメっちは通信高校の4年生になりました(4年で卒業なのです)。
ちょっぴり大人になった二人の恋模様はいかに?!
『続・愛するトメっち 〜溺れて人魚〜』
- 571 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:21
-
じゅわじゅわじゅわじゅわじゅわじゅわ。
いつものようにキッチンでコロッケを揚げていると、
カウンターのほうから上ずった女の子の声が聞こえてきた。
「あのぅ、もしかして『CUTE☆GIRL』のyossyさんじゃありませんか?」
ピクッ。
耳がダンボになる。
ああもう、これだからひとみちゃんにお店手伝ってもらうの嫌なのよ。
「うん、そうだけど」
「うそっ、ほんとですかぁー!」
「マジで yossyさんっと?!」
「うわぁぁぁ……」
ちょっと何人いるのよ。
はしゃぐ女の子たちの声に、こめかみがピキピキッときた。
きっとひとみちゃん、ヘラヘラしちゃってるに違いないわ。
くーーっ、ぬわーにが“yossy”よ。
ケッ!って感じっ!
- 572 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:22
-
『CUTE☆GIRL』は、私たちくらいの歳の女の子に
わりと人気があるストリート系のファッション誌。
ひとみちゃんは半年前から、そこでモデルのバイトをしている。
下級生の子が、編集部に勝手に写真送っちゃったんだって。
私は揚げかけのコロッケを気にしつつ、そうっとカウンターを覗き見た。
近所の中学校の制服をきた女の子3人組が、ポーッと潤んだ憧れの眼差しで、
背の高いひとみちゃんをジイッと見つめている。
目が大きくておっとりした感じの子、
気が強そうな溌剌とした感じの子、
はにかんだような仕草が犯罪的な感じの子、
……くうっ、三者三様にかわいらしいじゃないのっ。
「ここでバイトしとるとですか?」
「たまにね」
「ふうーん…」
「へぇ〜…」
女の子たちが意外だという顔で、ジロジロとカウンターを眺め回した。
むっ。悪かったわねぇ、オンボロで。
- 573 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:24
-
「でっ、何買う? ここはコロッケがおいしいよ」
「あっ、じゃあそれを1個ずつ……」
「1個ずつかぁ〜〜〜」
「あっ、あっ、じゃあ2個買います!」
「おっ、うれしいねぇ〜」
「じゃあ、さゆは3個!」
「あたしは4個買うとよ!」
ひとみちゃん、煽らないでよ。
ホストクラブじゃないんだから。
「また来てね〜。よろしく〜」
「「「はいっ!」」」
ひとみちゃんが愛想よく笑ってひらひらと手を振ると
女の子たちはうれしそうに顔を紅潮させて、
何度も何度も振り返りながらキャッキャと帰っていった。
なによ。
私は口を尖らせる。
「ひとみちゃん笑いすぎ」
「営業スマイルじゃん」
振り向いて、ひょいと肩をすくめる。
その姿も、くやしいくらいかっこいい。
- 574 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:24
-
あーあ、「yossyさん」かぁ。なんだか芸能人みたい。
この春からエスカレーター式で上の女子大に進学したひとみちゃん。
大学でも騒がれちゃったりしてるのかな。
最初は雑誌にひとみちゃんが出てるのを見て
「すごーい!」なんてはしゃいでた。
でも、最近はちょっとフクザツ。
だって、どんどんひとみちゃんが写ってるページが増えてるんだもん。
そのぶん、ファンもきっと増えてるわけで。
「ここんとこ、すげえ儲かってんだよ」
「……でしょーね」
「いやー、もう普通のバイトはできないね」
すいませんね、ただ働きで。
「どうせうちは食事だけですよーだ」
「バカ、それが一番いいんだヨ」
トメっちと一緒にいられるしね、へへっ。
ひとみちゃんはそう言って、照れくさそうに笑った。
ホント?
私はそれだけで曇り空みたいな憂鬱が吹っ飛んで、天国にいるみたいな夢気分。
うふふ、やっぱりいっつも一緒がうれしい♪よね〜〜〜?
- 575 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:25
-
「ひとみちゃあん、好きっ」
「あたしもさ、ベイベー」
カウンターで、ひし!と抱きあう……わけにもいかなくて
でも、私たちはじっと見つめあう。
ああん、なんてきれいなハニーブラウンの瞳。
光に溶けちゃいそうな白いほっぺた。
ほんと、何万回見ても見とれちゃうわ……って、あれ?
私、何か忘れてな〜い?
あっ、コロッケ!
いっけない、また焦がしちゃうとこだった。
慌ててキッチンに駆け込む私の背を
おかしそうなひとみちゃんの笑い声が追いかけてきた。
◇ ◇ ◇
- 576 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:26
-
目が回るようなランチタイムの混雑が過ぎると、
私はふぅと息をついてキッチンの丸イスに腰かける。
それから、片手で肩をトントントン。
おばさんくさいなあって自分でも思うけど、
お弁当屋さんってけっこう疲れるの。
立ち仕事だし、時間との戦いだしね。
傍らにいたトメ子姉ちゃんが、
余ったコロッケをヒョイとつまみ食いしてきた。
「まだまだね」
「うるさいな」
手伝いに来てくれるのは助かるんだけど、これだもの。
まったくおせっかいで困っちゃうな。
うちの店はランチタイムが書き入れ時だから、
午前中の仕込みから午後2時頃までは、
お母さんとトメ子姉ちゃんと私の三人体制で切り盛りをしている。
午後からは、お母さんは腰の治療へ。
トメ子姉ちゃんは幼稚園のお迎えの時間ぎりぎりまで手伝ってくれる。
その先は、私ひとりで閉店までなんとかまわす。
ここ2年ほど、そんなサイクル。
- 577 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:26
-
トメ子姉ちゃんがいるうちに、ちょっと休憩しよーっと。
首のうしろに手をやってゴソゴソと三角巾を外していると、
トメ子姉ちゃんが、ふいにドキッとするようなことを言った。
「ねぇ、梨華ってもしかして彼氏いる?」
「うぇっ?!」
目の前の作業台にゴンと頭をぶつけそうなほど動揺する私。
なななななによ、いきなり。
思わず首すじを両手でさする。
Hなアトとかついてたのかしら……そ、そんなはずないわ、ここ何日かしてないし。
じゃなくてーーー!!!!
そんな私のワタワタぶりをどう思ったのか知らないけど、
トメ子姉ちゃんはやさしげに目を細めて、しげしげと私を見つめた。
「めっきり女っぽくなったわねぇ」
あの小っちゃくて真ん丸で真っ黒だった梨華がねぇ。
ああ、そういうこと。
って、ちょっと!
真ん丸で真っ黒はひどすぎるんじゃない?!
- 578 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:27
-
「で、どうなの? 彼氏いるの?」
「えーーー……いないよ」
彼氏は、いないよ。
こういう時、ちょっとフクザツだな。
でも、ほんとのこと言ったらお姉ちゃんショックかもしれないし。
なんてゆーか、保守的なタイプだもんね、お姉ちゃんって。
「なーんか怪しいな〜」
「ほんとだったら」
「その指輪、いっつもしてるじゃな〜い?」
「(ギクッ!)ファ、ファッションリングだよ。お守り?みたいな?」
オパールって、心が落ち着くんだって。
私はお母さんにも言ったことのあるいいわけを繰り返す。
そういえばあの時、お母さんったら「それはいいわね」って、やたら深く頷いたんだったわ。
あんなにあっさり信じてもらえるのもちょっとフクザツだったけど、
ニヤニヤとますます目を細められるのも困っちゃうわけで。
「ほんとぉ〜?」
「もー、お姉ちゃんしつこい!」
「ういーっす。おっはよ、トメっち」
ゴン。
私は今度こそほんとうに作業台に額をぶつけた。
な、なんてタイミングで来るの、ひとみちゃん!
- 579 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:27
-
「あらぁ、ひとみちゃん、今日は大学お休み?」
「いや、これから行くとこっすよ」
「えっ、大学ってそんなにカジュアルでいいの?」
トメ子姉ちゃんが驚くのも無理はない。
ひとみちゃんは薄汚れて破れかけた迷彩柄のパンツに、
“闘魂”とか書かれた長そでTシャツをだらっと着てるだけ。
これでモデルさんやってるっていうんだもん、笑っちゃう。
「ばっか、トメっち、このセンスがわかんねーの?」
「はいはい……」
それにしても。
私はチラッと時計を見た。
そろそろ午後2時だけど……
「ひとみちゃん、今起きたんでしょ?」
「えっ、なんでわかるの?」
「うしろ、寝グセ」
ぴょこんとハネた髪をあわてて指先で撫でつけるひとみちゃん。
あーあ、こんな時間まで寝てられるなんて学生さんっていいわねー。
- 580 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:28
-
「昨日、新歓コンパだったからさー。午前中の講義、サボっちゃった」
「4月からこれじゃあ、先が思いやられるねー」
「えへっ、今日だけだよ」
嘘ばっかり。
くすっと笑って軽ぅく睨んだ私を
照れくさそうな上目遣いで見つめ返してくるひとみちゃん。
きゃっ、かわいい! ポワワ〜ン……
……はっ、トメ子姉ちゃんがいるんだった!
慌ててそっぽを向くと、ひとみちゃんもコホンとひとつ咳払いをして、
「今日は夜、なんもないから、夕方手伝うよ」とボソボソ言った。
「いいよ、悪いし」
「いいって。じゃ、6時過ぎちゃうと思うけど」
軽やかに去っていったひとみちゃんの背を見送る。
心の中で“いってらっしゃい、あ・な・た”とか呟きながら。
きゃっ、新婚さんみたい。イイワイイワーー。
- 581 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:29
-
心ひそかにくねくねしてたら、
後ろからトメ子姉さんの思いがけない声が降ってきた。
「梨華、あんたも大学行ったら?」
「は?」
「あんたの高校……通信制って4年だっけ。今年、卒業できるんでしょ?」
ああ。
私はちょっと困ってしまって、答えを言い淀んだ。
わかってる。
トメ子姉ちゃんは、私が普通高校に通わなかったことを
いまだにすごく気にしてるんだ。
腰が痛いのをずっと我慢して、一人でお店を切り盛りしていたお母さん。
私が中3の夏に、とうとう入院することになっちゃって。
トメ子姉ちゃんは、わんぱく盛りの小さな双子を抱えていて、
そしたら私が店をやるしかないじゃない?
あの時、当たり前みたいにそう思った。
ひとみちゃんと同じ高校に行きたい気持ちもあったけど、
さりげなく聞いた彼女の志望校は、わりと名門の私立女子高で、
うちの経済状況では、どっちみち高い学費を払えるかどうか微妙なとこだったから。
ひとみちゃんと一緒じゃなかったら、どこでも同じ。
だったら学校は通信制にして、お店やったらいいじゃん。それだけ。
- 582 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:29
-
「ね、あんたわりと成績いいらしいじゃない?」
「う〜ん……」
「お母さんの腰もずいぶん調子がいいし、うちの子たちも来年は小学校だから、私ももっと手伝えるし」
「う〜ん……」
「お金だってなんとかなるわよ。一徹さんも出せるだけ出すって言ってるの。それに奨学金とか申請すれば……」
「ありがと」
ずっとしゃべり続けそうなトメ子姉ちゃんの言葉を笑顔でさえぎる。
気持ちだけ、いただいとく。
そう言うと、トメ子姉ちゃんは、ますます複雑そうな顔をした。
「だって、梨華だってやりたいこと、あるでしょ?」
「え?」
「お弁当屋さん継ぐことないのよ。やりたい仕事こととか、なりたいものとかあるでしょ? 好きにしていいのよ」
……そんなの考えたことなかった。
私は考え込む。やりたい仕事? なりたいもの?
え〜〜〜???
- 583 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/24(火) 13:30
-
「夢とか、あるでしょ?」
夢?
ひとみちゃんと結婚したい。とか?
ひとみちゃんとの新婚旅行はハワイ。とか?
結婚は無理にしても、一緒に暮らしてみたいな。とか?
……ひとみちゃんのことばっかじゃん。
ガーン。私ってば超つまんない女?
「ところで、ひとみちゃんもめっきり大人っぽくなったわねー」
「うえっ?!」
「さては恋人でもいるのね〜、誰かしら〜、うふふふふ〜」
私は心の中で思いっきりのけぞった。
トメ子姉ちゃん、もしかして全部わかってて言ってない?
ねぇ?
- 584 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/24(火) 13:31
-
本日はここまでといたします。
- 585 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/24(火) 14:19
- 続編始まりましたねぇ。お待ちしておりましたです。おかえりなさいませ。
またうまいタイトルで来ましたなぁ・・
トメっち視点で読むとよっちぃがやたらカッケ〜女の子に見えますなぁw
(確かにカッケ〜のだけれども)
うんうん、イイ感じですよぉ〜。小ネタもあって笑えましたw
また日々の楽しみが始まってうれすぃ〜ですわい。
次回もマタ〜リとお腹をポリポリしながらお待ちしてますですよ。
- 586 名前:達吉 投稿日:2004/02/24(火) 16:33
- 待ってましたぁ〜!!!^^
更新お疲れ様です!
前回のレスで、よしざーさんに、ライバル宣言したものの、こんな熱々じゃあ、奪えませんねぇ〜(笑)
その分、いしかーさんを幸せにしろよ!よしざーさん!^^
- 587 名前:名無しぽき 投稿日:2004/02/24(火) 21:14
- 続編キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
よっすぃ〜をみてヤキモキするトメっちの様子、目に浮かびます(笑)
そしてさりげなく6期メン登場ですね。
それでは雪ぐま様、トメっち編、楽しみにしております!
- 588 名前:時限ヨシトメキテター爆弾 投稿日:2004/02/24(火) 21:34
- あぁああああ!!!そんなこんなであんな展開に〜w
ご無沙汰しておりました。忙しさは通り越しました(ToT)
もう言いたい事がたんまりたまってますが、長文になり
そうなので、一言。
い つ も 秀 逸 で す
見守ってます。頑張って下さい!!
- 589 名前:588 投稿日:2004/02/24(火) 21:37
- あげてしまいました…
お目汚し申し訳ないです。
- 590 名前:ファンA 投稿日:2004/02/24(火) 23:03
- おかえりなさいませ。
ひとみちゃん、いつもと違った感じでちょっと新鮮です♪
まさかこんな将来が待っているとは…。
トメっちが可愛くて可愛くて、読みながら唇が笑ってましたw(怪)
これからも楽しみにしてますね。
- 591 名前:名無し499 投稿日:2004/02/25(水) 00:24
- 雪ぐまさま おかえりなさいです。
続編の始まりにちりばめられた数々に色々想像して
のっけから楽しいったらないれすよ〜(^^)
そして本領発揮?あのお方・・・トメっちじゃなくても心配ですワ
- 592 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/25(水) 09:27
- 愛するトメっちの二人のセリフを覚えちゃうくらい
毎日、熟読してお待ちしていました。
今回も梨華ちゃんとよっすぃーがすごくかわいくて、楽しいです。
よっすぃーの雑誌、私も保存用と見る用と2冊以上は絶対買います。
- 593 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/25(水) 17:02
- 心ひそかにくねくね
トメっちトメっち、ああ、トメっち。
お久しぶりのあなたのキショさが健在で嬉しい限りですw
実は雪ぐまさんもキシ(rかったりしてw
- 594 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/26(木) 09:16
- 皆様、あたたかいレスをありがとうございました。
いやはや、ばたばたしており、更新が思うに任せませぬ(汗。
585> 名無し23。様
恋人の欲目もありましょうが、トメっちにとってよっちぃは
“最高にハンサムな女の子”なようですわ。ホントは………なのにねw
586> 達吉様
幸せにする気は満々みたいですけどねえ。
クリスマスの時みたいに空回りするのが、うちのよっちぃの悪い癖w
587> 名無しぽき様
トメっちのヤキモチ妬きは健在です。
そしてさりげなく犯罪的とか思われてしまう亀井ちゃんでしたw
588> 時限ヨシトメキテター爆弾様
お久です♪ お忙しいなかご愛読いただき、感激でございます。
雪ぐまも書きたい妄想がたんまりたまっているのですが、なかなか時間がとれませぬわ……。
590> ファンA 様
トメっちにとってのひとみちゃんは「かっこよすぎ!」ですからw
でも、考えてることはお互いによくわからなさそう。どうやら性格が正反対なんですな。
- 595 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/26(木) 09:17
- 591> 名無し499様
ほんのちょっぴり大人になった二人ですが、あいかわらずドタバタしそうな予感。
今後とも楽しんでいただけると幸いです。
592> 名無し読者様
あー、トメっちも2冊買ってますねきっと。それとももらってるかな?
セリフを覚えるって、お芝居みたいですね。脚本とか書こうかなw
593> 名無飼育さん様
トメっちのキショさは無限大。雪ぐまのキショ度数は内緒ですw
それでは本日の更新にまいります。
- 596 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:18
-
「ひとみちゃんって、将来の夢とかある?」
夕方、お店を手伝いに来てくれたひとみちゃんに訊いてみる。
なにいきなりマジになってんのぉ?なんて答えが返ってくるかと思ったら
ひとみちゃんは読んでたマンガ雑誌からひょいと目を上げて
「あるよ」と、ごく当たり前みたいに答えた。
「え、何?」
「ナイショ」
ちょっとぉ! 教えてくれたっていいじゃんっ!
菜箸を握りしめてジタバタすると、ひとみちゃんはプッと吹き出す。
「そのうち教えるよ。今はまだちょっと恥ずかしーからさ」
「なによぉ……。あ、わかった。私と一緒に暮らしたいとかでしょ?」
なーんちって。どさくさに紛れて言っちゃった。キャッ!
なのに、ひとみちゃんは冷たく「はぁあ?」だって。
「そーゆうのは夢とか言わないでしょ」
ガビーーン!
あ、そ、そう。そうなんだ……。
途端にケションとした私を見て、ひとみちゃんはくすっと笑った。
- 597 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:18
-
「あのさ、それはもう予定に入ってるから」
「え?」
「だから夢とか言わないの」
思いがけない言葉に、心臓がトクンと鳴り始める。
そうなんだ。ひとみちゃんの予定に、入ってるんだ……
うれしい。どうしよう。そのへんを駈け回りたいほどうれしい。
「い、いつ?」
「大学卒業したら、かな。自分で食えるようになったら」
一緒に暮らそう。
親にも、文句いわせないから。
カラン、と菜箸が指から滑り落ちた。
ひとみちゃん、かっこいい。かっこよすぎ!
じわんと涙が滲む。すっごく、うれしい。
うれしいよぅ、ひとみちゃん……
照れくさそうに私を見つめるひとみちゃんの頬に徐々に赤みがさし、
ちょっぴり眩しそうに目が細められた。
指先をつかまえられて、そっと引かれる。
キス、するの?
鼓動が喉元にせりあがってくる。
だめだよ、こんな通りから見えるところで……
- 598 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:19
-
「平気だよ」
「だめだよ……」
「ちょっとだけ」
「だめ……」
「こんにちは〜〜〜!」
チッ、誰よ。いいとこだったのに。
そんな気持ちはお首にも出さず、私はくるりとカウンターに振り向いた。
「はい、いらっしゃいませぇ!……えっ?」
そこにいたのはちょっとうちの客層じゃなさそうな
やたらきれいでおしゃれなお姉さん二人組。
思わずきょとんとしていると、横からひとみちゃんがはしゃいだ声をあげた。
「お〜、アヤカさん、まいまい!」
「よっすぃ〜、元気ぃ? って昨日撮影で会ったばかりかぁ〜」
キャッキャと笑いあう3人。
なるほど。モデル仲間なのね、きっと。
あっ、ちょっとひとみちゃんにさわらないでよぉ!
- 599 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:20
-
「アヤカさん、ほんとに来たんだー」
「そりゃあ来るわよぉー。この子がトメちゃん?」
ちょびっと顎がしゃくれたほうのお姉さんが
思いのほか柔和に微笑みながら私を見た。
いきなり視線を向けられて戸惑う。
「初めまして。『CUTE☆GIRL』編集のアヤカです」
すごくナチュラルに手を差し出されて驚いた。
あわててかっぽう着の裾でゴシゴシ手を拭いて握手する。
へぇ、編集者さんなんだ。すごーい、かっこいーい、きれーい。
「モデルさんかと思いました」
「ふふっ、ありがと」
「モデルなのはあたしー。里田まいです。よろしくね」
もう一人のナイスバディなお姉さんがそう言ってニコッと笑う。
あー、そう言えば雑誌で見たことあるかも!
- 600 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:20
-
「わー、コロッケおいしそー。残念、今ダイエット中なんだよねぇ」
「ええっ! それ以上、どこを痩せるってゆーんですか?」
「維持するのが大変なのよ、これが」
一応、人様に見せる商売だしねぇ。
そう言ってアハハと豪快に笑う里田さん。
へぇー、見た目よりもさばさばした人なのかも。
てゆうか、ちょっとぉー。
ひとみちゃんもこのくらい考えてダイエットしたほうがいいんじゃないの?
そう思ってチラ見すると、ひとみちゃんは素知らぬ顔で口笛を吹いた。
◇ ◇ ◇
- 601 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:21
-
その夜、私は拗ねていた。
なんなの、こないだ3人でカラオケ行ったって。
聞いてないわよ、ずいぶん仲いいのね。
とくに、あのアヤカさんって人、
すっごいうれしそーにひとみちゃんと話してたし。
「あの二人、アヤしい」
「は?」
「ひとみちゃんのこと、好きと思う」
「はー? 何言ってんの。アヤカさんもまいまいもカレシいるよ?」
カレシいるとか関係ないよ。
だって、ひとみちゃんが目の前にいたら
どんな女の子だって、きっとひとみちゃんのこと好きになっちゃうもん。
カレシとかより、ひとみちゃんのほうがかっこいいに決まってる。
「あのね、買いかぶりすぎ」
ひとみちゃんはそう言いながら、まんざらでもない表情。
女の子にやたらモテるってこと、ちゃあんと知ってるんだこの人は。
ヤだなあ、もう。ほんっと、ヤだ。
- 602 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:22
-
私はダッコちゃん人形の形で、ひとみちゃんにしがみついた。
ひとみちゃんは、私のなのっ。
生まれた時からずうっと一緒にいたんだから。早いもん勝ちなんだから。
……早いもん勝ちってゆーのは我ながら情けない発想だけど。
「えー、あたしがトメっちのものぉ?」
「だ、だめ?!?!」
「そーだなあ、トメっちがあたしのものならわかるけどぉ」
へへっなんて照れながら、ひとみちゃんはキュッと私を抱き返してくれた。
うんうん。私ひとみちゃんのものになる!
てゆうか、ひとみちゃんのものだから大事にしてねっ! キャーー!!!
ああ、幸せ。
幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。
鼻先をぐりぐりとひとみちゃんの肩に押しつける。
シッポが生えてたら、きっとパタパタしまくっちゃってる。
- 603 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:23
-
「浮気したらダメだからね」
「しないっつーの」
「3年目の浮気とか……」
「あー、わかったっつーの」
うるさそうに手を振るひとみちゃん。
あれ、ウザい?ねえ、私ウザい? ウザい? ウザい? ウザい? ウザい?
「時々ね」
ガビーーーン!
瞬時にムンクの叫び状態になった私を見て、
ひとみちゃんはプッと吹き出した。
「ま、そこが、かわいいっつーかね」
なだめすかすような声に、カアッと赤くなる。
また、やっちゃった。空回っちゃった。しょぼん。
「ウザくなんないように気をつける……」
「そこが、かわいいんだったら」
ホント? 私は上目遣いでひとみちゃんをうかがう。
ひとみちゃんは目を細めると、よしよしと頭を撫でてくれた。
ホントかなあ? ウザいのがかわいいわけないじゃんねえ?
- 604 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/26(木) 09:23
-
あーあ。気をつけなくっちゃ。
ずっとひとみちゃんと一緒にいたいもん。
ひとみちゃんの恋人でいたいもん。
それで、いつか一緒に暮らすんだよね?
いい子にしてますから、どうか神様仏様、
ひとみちゃんが心変わりしませんように。
どうぞよろしくお願いします……ナムナム、アーメン。
- 605 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/26(木) 09:24
-
本日はここまでといたします。
- 606 名前:ナナシ 投稿日:2004/02/26(木) 12:36
- お久しぶりでございます
かなりパソコン離れしてて今日どどぉーとまとめて読ませて頂ました
そして思ったのは…雪ぐま様はホントにすごいっ素敵だっ
他の方が皆様、言ってらっしゃるけど、お話はもちろんご本人が
たくさんココロの引き出しを持った、オトナな方なのだと思いました
ウザイ長文失礼致しました、これからもがんがって下さいませ
- 607 名前:わく 投稿日:2004/02/26(木) 15:49
- ナムナムアーメンって・・・
トメっちかわいすぎ(萌)
これからどんどん萌えさせてください、天才作者様w
- 608 名前:時限ミキタンオメ爆弾 投稿日:2004/02/26(木) 18:17
- 更新お疲れ様です。
トメっちのキショさとウザさにもう、驚きですw
梨華ちゃんファンにしか分からないその可愛さの描写が
上手く書けてて、トメっち編の方が、より笑ってる
自分が居たりします。イイワイイワーw
そして雪ぐまさんの更新の早さにも驚きでございます。
凄いなあ。どうか無理をなさらずに。
その偉大な妄想を分けて下さることを
期待して、ついて行きま〜すw
執筆頑張って下さい。
- 609 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/26(木) 18:57
- 更新、乙でございます。
うがぁ〜、なんなのよなによ、トメっち可愛すぎるじゃないかよぅ〜!!
ちょっとちょっと、うっかりときめいちゃったわよ、奥様w
読んでるこちらまでクネクネしそうですよ、まったく・・
いしよしのふたりがすごくイイ感じですねぇ、うむ。
しかしながらこのふたり、なかなか侮れないお姉様たちですからねぇw
よっちぃの身が心配ですわい。
次回もむはむはしつつ、お待ちしてますですよ。
- 610 名前:コナン 投稿日:2004/02/27(金) 01:25
- ども初めまして、初レスです。
とめっち可愛い過ぎっす!
ガビーーーン(死語)炸裂!!最高っす!
更新楽しみにしています!!
- 611 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/28(土) 02:58
- いや〜、もう本業がどうにもこうにもですわ……。
そのうえ今日は怒濤の接待にて酔っぱらいと化しております。
しかし、PCの前に座ってる自分は、ほぼ病気かとw
606> ナナシ様
過分にお誉めいただき、恐縮しております。でも、友達少な…(ry
607> わく様
アラーの神にも祈りたいとこでしたが、唱える文句がわからなかったトメっちでした。
608> 時限ミキタンオメ様
トメっち編は、キショさ前面にまったりとw ご笑納くださいませ。
609> 名無し23。様
あの二人といい梨華ちゃんといい、よっちゃんは美人のお姉さんに弱いですなw
610> コナン様
初めまして♪ 今後ともトメっち&死語の世界wをお楽しみいただけると幸いです。
それでは本日の更新にまいります。
- 612 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:00
-
「私がモデル、ですか?」
「そう。ぜひお願いしたいと思ってるの」
アヤカさんはそう言うとにっこり微笑んで、静かにコーヒーをすすった。
どういうこと?
思わず隣に座っていたひとみちゃんに目を向けると、
ひとみちゃんは最初から全部わかってたふうに「やってみたら」と微笑んだ。
そ、そんな。モデルだなんて、私にそんなことできるわけないじゃないっ。
まさか、そんなとんでもない話を持ちかけられるなんて。
アヤカさんが連れてきてくれた代官山のカフェは
インテリアもお客さんもびっくりするくらいおしゃれで、
それだけで私はもう浮いちゃってる気がしてそわそわしてたのに。
「モ、モデルなんて無理……無理ですっ……」
「そんなこと言わないで、お願い。ねっ?」
アヤカさんは、かわいらしく両手を合わせた。
- 613 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:00
-
「でも、私、背低いし、それに……」
「ぜんぜん平気よ」
パリコレのモデルってわけじゃないんだもの、要はバランスの問題よ。
そう言って、アヤカさんはニコニコ話し続ける。
「新創刊の雑誌なの。私にとってはこれまでで一番大きな仕事」
大学生ターゲットに、きれい目のカジュアル路線を狙っててね、
なんていうのかな、モデルさんはいい意味で普通の子を起用したいの。
それで、よっすぃ〜に相談したら、何人か紹介してくれて。
「何人か?」
「松浦さんと藤本さん。お友達よね? 二人にはもうOKもらってるの」
松浦さんと……ふ、藤本さんですってぇ?!
私はぎょっとして、それからジロッとひとみちゃんを睨んだ。
ちょっと、どーゆーつもり?!
「コンセプト聞いたら、アイツらにぴったりだったからさ」
ひとみちゃんはたいして悪びれもせずに肩をすくめた。
ど、ど、どうしてくれようか、この無神経ぶり!
ぐわわわわわわわわわわ。
般若になりかけてる私に気づく様子もなく、
「よっすぃ〜のお友達って、みんなかわいくってびっくりよ」と
アヤカさんはかなり浮かれモード。
- 614 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:01
-
「トメちゃんは、笑顔がいいわよね〜」
「はぁ……」
「もう見た瞬間にピンときたわ。磨けば光るって!」
磨けば光るって……今はダメってことじゃん。
ネガティブになりながら、私はもう一度「はぁ……」と呟いた。
◇ ◇ ◇
- 615 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:02
-
駅からの帰り道をずんずん先に歩いていく私に
ひとみちゃんは後ろからのーんびりと声をかけてきた。
「んだよー、そんなに怒んないでよ」
「怒るわよっ!」
なによ、勝手にあんな話進めちゃって。
モデルとか、聞いてないわよ!
「トメっち、超美人だもん。生かさなきゃ、もったいないじゃん」
もっとたくさんのヒトに注目されていいっていうかさ。
そう思えるようになっただけでも
あたしってかなり成長したと思うんだよね、うん。
なんだかわけのわからないことを言うひとみちゃん。
美人、ね。ほんとかしら。調子いいな。
もちろん、そう言われてうれしくないわけないけど、さ。
「絶対いけるって。ね? 自信持って」
タタッと軽やかな足取りで私に追いついて、ふわりと肩を組んでくる。
ドキン。カンタンに音をたてはじめる情けない私の心臓。
首をかしげるように顔を覗き込まれて、
あっという間に、その美しい瞳に吸い寄せられてしまう。
- 616 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:02
-
スタイリストさんが選んだ流行の服着てさー、
プロのヘアメイクさんにメイクしてもらってさー、
プロのカメラマンさんに写真撮ってもらえるんだよ?
超楽しいよぉ〜と、ちょっと大げさな身振り手振りで
熱心に口説いてくるひとみちゃん。
そりゃあ私だって女の子だもん。
そういうのって憧れちゃうよ。でもさぁ。
「バイト料もかなりいいよぉ?」
「それはわかってるけど……」
そういうことじゃないんだったら。
もう、ひとみちゃんってウルトラ鈍感。
私が気にしてるのは……気にしてるのは……
うつむいて薄っぺらいスプリングコートの裾をイジイジし始めた私を見て
ひとみちゃんは小さくため息をついた。
「ミキティのこと?」
なんだ、わかってるんじゃん。
頬にシュッと赤みがさしたのが自分でもわかった。
- 617 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:03
-
裸の美貴ちゃんとベッドにいたひとみちゃん。
もう一年以上も前のことなのに、その映像は鮮明に脳裏に焼きついていて
全然消えてくれそうな気配はない。
わかってる。
ひとみちゃんはすごく一生懸命いろんなことを説明してくれて
何度も何度も謝ってくれた。
だから、もういいかげん忘れなくっちゃいけないんだ。
だいたい、まだ恋人になってなかった頃のことだし……
肩を抱かれたまま、小さくため息をついて目を伏せる。
私のことを、ずっと見つめていてくれたひとみちゃん。
知らなかった。全然相手にされてないと思ってた。
すぐに言ってくれたらよかったのに。
こんなに素敵なのに、たくさんの女の子に騒がれてたくせに
何が怖かったんだろう。何に自信がなかったんだろう。
『トメっちに嫌われるのが怖かった』
……わからないな。
私がひとみちゃんを嫌うわけないし。
てゆうか、他の女の子とそーゆことされるほうが嫌だし。
- 618 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:04
-
ぐるぐると思考のスパイラルにおちてゆく私。
ふいにグイと肩を引き寄せられると、唇を塞がれた。
「……!」
心臓が飛び出しそうになる。
瞬時に甘く溺れそうになった意識を、必死でたてなおす。
グッとひとみちゃんの肩を押し返して、軽く睨んだ。
「……人に見られるよ?」
「平気。ちゃんとまわり確認してっから」
夕暮れの街。私たちが生まれた小さな街。
見慣れた電信柱の影で、ひとみちゃんは私をもう一度しっかり抱きしめ、
息が止まっちゃいそうなキスをくれた。
腰が砕けそうになって、ひとみちゃんにすがりつく。
あなたがいないと立ってられない。
- 619 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:05
-
「勝手なことしてごめん。アヤカさんにはあたしから断っとくから」
「え?」
「どうしても気がすすまないんでしょ?」
髪を撫でてくれるやさしい指。
おでこにそっとふれるやわらかな唇。
見た目よりも怖がりだったひとみちゃん。
ふてくされた子供だったひとみちゃん。
でも今は、私をこんなに大事にしてくれるやさしい人。
「……いいよ」
私は腕の中で小さく呟いた。
「へ?」と拍子抜けしたみたいな声をあげるひとみちゃん。
「私が引き受けたら、ひとみちゃん、うれしい?」
「そりゃあね、紹介したわけだから」
「じゃあ、頑張る」
なんなの?
ひとみちゃんは、ちょっぴり呆れた声をあげた。
何よぅ、せっかく決心したげたんだよ?
美貴ちゃんに会うのとか、すっごい勇気いるんだから。
「……それはそのぉ、悪かったと、思ってる」
「もういいよ。それ百万回聞いたし」
- 620 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:06
-
ひらりとあなたの腕から抜け出して、手を引く。
はやく帰ろ。今日はね、お母さん帰ってくるの9時過ぎなの。
「あっ、誘われちゃった」
「何よぉ」
誘っちゃ悪い?
ひとみちゃんがあんまりニヤニヤするから
妙に恥ずかしくなってきてベシーッと肩を叩いてやった。
◇ ◇ ◇
- 621 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:06
-
ひとみちゃんは私を両腕のなかに閉じこめ、
あちこちにいっぱいキスをしてくれながら、何度も何度も私の名前を囁く。
それだけで私は情けないほど震えてしまう。
「……梨華……梨華……」
ああ……おかしくなっちゃう……
この時にだけ呼んでくれる私の名前。
耳の底から全身を駆け巡る特別な響き。
甘いアルトは魔法みたいに私を高いところへ連れていく。
怖いくらいあっけなく私はあなたにつかまって
心の奥を好きなように掻き回されてしまう。
- 622 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:07
-
「なんで泣くの?」
いじわるなあなたは、器用な指を一瞬も止めることなくそんなことを言う。
私はほとんど窒息しそうになりながら首を振るばかり。
うれしいの。あなたにこうされることが。
あなただけの私。私だけのあなた。
確かに信じられるこの瞬間の永遠。
だけど怖いの。すごく怖くて頼りない気持ち。
確かにひとみちゃんの腕のなかにいるから、
こんなに熱く愛されているから、
からめとられる自分が、
あらがえない自分が、
もうどこにもいけなくなって、
あなたなしでは息もできなくなって、
このままじゃ、きっと、おかしく、なってしま、う。
- 623 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:08
-
白い光が、かたく閉じた目の奥から私をこじ開け、
ゆっくりと脊髄を貫いていく。
ああ、もう……
もう何ひとつコントロールできない自分のカラダ。
連れってって。あなたの手で……壊して。
その瞬間、私の唇が紡ぎ出す言葉はひとつだけ。
なのに、ひとみちゃんの手のひらが私の唇を押さえつける。
出口をふさがれた言葉は喉の奥で泡のように弾け続ける。
アイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル……
- 624 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:08
-
私を襲う竜巻のようなひとみちゃんが離れていってしまうと
妙にガランとした意識のなかで、完全に満たされたような
ぽつんと放り出されたような、不思議な気持ちになる。いつも。
「あ……はあっ…はあっ……」
撃ち落とされた鳥みたい。
ベッドに沈んだまま気が遠くなってゆく。
荒い息を吐き続ける私に、ひとみちゃんの声が降ってくる。
「ちゃんとイッた?」
……そんなこと聞かないで。
細く目を開けて軽く睨むと、ひとみちゃんは私のそばに横たわったまま
どこか満足げにニヤリと笑いながら囁いた。
「その目が好きなんだ」
いじわるだ、この人。
そうだよ、ひとみちゃんって昔っからいじわるだった。
だからすっごく腹が立つんだけど、でも、やさしいところもあって。
いじめっ子から守ってくれたり、頭を撫でてくれたり、する。
- 625 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:09
-
「トメっち、好きだよ」
ああ、もう“トメっち”に戻っちゃった。
ちょっぴり残念に思いながらも、私はひとみちゃんがくれた大切な言葉を
心の中の“ひとみちゃんフォルダ”にしまいこむ。
「トメっちは?」
「え?……好きだよ?」
「ねぇ、なんでこーゆー時に限ってそういう言い方するわけ?」
へんなの、拗ねちゃってさと、ひとみちゃんが笑う。
私はツンと口を尖らせて、
ひとみちゃんのマシュマロみたいな胸のなかへもぐりこんだ。
ほんとのことなんて教えてあげない。
こんなにあなただけのものだと知られたくない。
- 626 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:10
-
ミルクみたいな甘い香りに包まれて、うっとりまどろむ。
このまま時が止まったらいいのにな。
いますぐ世界が終わっちゃえばいいのに。
そんなとんでもないことを思いながら、
私はひとみちゃんの鎖骨あたりにガブッと噛みついた。
「いでーーーーっ!!!!!」
なんだよ、いきなりっ!
ぷんすか怒り出すひとみちゃん。
私はきゃあきゃあ笑って彼女の首にしがみついた。
ねぇ、どんどん好きになるの。
友達だった頃よりずっとひとみちゃんが好きなの。
あれ以上、好きになんてなれないと思ってたのに
きりがなく深くなるの、こうされていると。
- 627 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/02/28(土) 03:11
-
美しい泡のなかで溺れて、ひらひらと海の底に沈んでく。
だから時々、恐いんだよ……
- 628 名前:雪ぐま 投稿日:2004/02/28(土) 03:17
-
本日はここまでといたします。
申し訳ありませぬが、次回更新は少々気長にお待ちを。
本業多忙にて不本意なのですが……
- 629 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 03:53
- 遅くに更新、ありがとうございます。
うー、時間帯も時間帯なんで今回もかなり萌えました(^_^;)
>>622ラストの句読点とかもうw
次回更新の件、了解っす。お忙しそうですが、お体に気をつけて。
- 630 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 04:31
- >>621
9時過ぎって…あぁぁもぉっ…!!
なんかこの2人独特の生活感みたいなものが感じられて…
最高に萌えました。
夫婦ですよね、まさに。
次回まで正座してマターリとお待ち申し上げております。
- 631 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/28(土) 08:58
- 甘い世界に萌えました。
・・梨華ちゃんかわいい・・。
- 632 名前:名無しぽき 投稿日:2004/02/28(土) 11:16
- 人魚が溺れてますねw
次回もマターリお待ちしております。
- 633 名前:達吉 投稿日:2004/02/28(土) 11:58
- 甘い話ですね〜^^
甘い食べ物は苦手ですが、甘〜いお話は大好きです!!!^^
萌え萌えですたww
- 634 名前:時限ウットリ爆弾 投稿日:2004/02/28(土) 20:11
- はぁ…相変わらず奇麗…(*´Д`)ウットリ
更新お疲れ様です!
っていうかほんとに酔っぱらっていらしたんですか!?
それなのにまともに更新される雪ぐまさん…。ステキv
恍惚の世界とは正にこの事だと思いました。
そしてまたも雪ぐまテクにメロメロ骨抜きw
休まれる時はちゃんと読者にお伝え下さる雪ぐまさん
のお心遣いが、とても嬉しいです。そして有難うございます。
どうかご自分のペースでお進み下さい!!勝手についていきますんでw
頑張ってください☆
- 635 名前:( ^▽^) 投稿日:( ^▽^)
- ( ^▽^)
- 636 名前:ファンA 投稿日:2004/02/29(日) 12:52
- トメっちが、ウザくてきしょくて可愛すぎですw
石川さんの魅力って、やっぱりそこにありますよね。
パソコンの前でうっとりしちゃってます。
このままじゃ変態さんです。
これからどうなるのか楽しみです♪
本業、頑張ってくださいね。いつまででもお待ちしてます
- 637 名前:名無し23。 投稿日:2004/02/29(日) 16:46
- 更新、乙です。
ん〜、トメっち、何だかすごく詩的な感じです。人魚ってホント「儚さ」がありますね。
今回の更新でふと、松田聖子の「小麦色のマーメイド」って曲を思い出しましたです。
(古っ!)
お忙しいと思いますので、どうぞ雪ぐまさんのペースで進めて下さいませ。
マタ〜リとお待ちしておりますです。
- 638 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/02(火) 12:10
- 629> 名無飼育さん様
深夜なのにチェックしてくださり、感謝です。Hなトメっち、ご堪能いただけたようでw
630> 名無飼育さん様
あいぼんお墨つきの「夫婦」ですから。でも、お姑の目を盗んでの夫婦生活でございますよw
631> 名無し読者様
トメっちをこんな気持ちにさせるなんて、よっちぃはなかなかのテクニシャンかとw
632> 名無しぽき様
いえいえ、こんなの序の口。まだまだ溺れますよ〜wなんて。
633> 達吉様
萌え萌えですかw 二人の甘甘モードを書いていると雪ぐまも萌え萌えです。
634> 時限ウットリ爆弾様
恍惚の世界! 光栄でございます。トメっち、大人の階段登っちゃいましたねぇw
636> ファンA様
ウザくてきしょいのが可愛いなんて、この世で石川さんくらいですねw さすがだと思います。
637> 名無し23。様
古っ!ってか、歌詞思い出せませんがな〜。今度カラオケで唄ってみることにします。
それでは本日の更新にまいります。
- 639 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:11
-
「……ひさぶりー」
「……こんにちは」
初めての撮影の日。
スタジオに向かう乗り換え駅で、私とひとみちゃんは、
美貴ちゃん、亜弥ちゃんと待ち合わせをした。
1年ぶり以上の美貴ちゃんとの再開。
やっぱりちょっとぎこちない。
美貴ちゃんは、どことなくバツが悪そうな笑顔。
私もなんとか笑い返してるって感じ。
シーンとなりそうななか、ちょっと慌てた感じでひとみちゃんが言葉をつないだ。
「ミキティ、松浦はどーしたの?」
「なんか仕度に時間がかかってるらしくて……あ、来た」
美貴ちゃんが振り返ったほうを見ると、
乗り換えの階段から転げるようにまっしぐらに駆け下りてくる女の子。
だだだだだだだだだだだだ……ジャーーンプ!
「みっきたーーん、おっはーー!」
めき。
たはっ。
美貴ちゃんの眉が泣き笑いみたいになった。
けっこう衝撃ありそうだわ、あれ。
腰とか大丈夫なのかしら。
- 640 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:12
-
美貴ちゃんの背中に飛びついたまま、
亜弥ちゃんはニコニコと私たちを見た。
「よっすぃ〜も、おはよー。トメちゃん、お久しぶりでっす」
ぴょんと背中から飛び降りて、ぴょこんと頭を下げる。
顔をあげてニコッとした時、光の粒々がパアッと弾け飛んだ。
わー、亜弥ちゃんってすっごいかわいいかも。
ううん、前からかわいかったけど、なんだかもっとかわいくなったかも。
「愛のチカラ」
へへっと笑って亜弥ちゃんは美貴ちゃんの腕に、きゅっと腕をからめる。
美貴ちゃんの頬が、へにゃっと緩んだ。
「みきたんにぃー、毎日かわいがってもらってましてぇー」
「ちょっと亜弥ちゃん、それなんかエロッ!」
私は思わず吹き出した。
桃色の幸せオーラが二人を包んでるみたい。
うん、これなら何も心配することないね。
うまくやれそう。大丈夫。
- 641 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:13
-
「そっちはぁー、ラブラブしないの?」
えっ?
亜弥ちゃんの冷やかしに私たちは真っ赤になった。
ひとみちゃんがボソッと呟く。
「うちらは見えないとこでしてんだよっ」
そうそう、そうよ。
見えないとこでイチャイチャしてるんだもん、私たちは。
ね〜〜っ?
◇ ◇ ◇
- 642 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:13
-
「んー、トメちゃん、もーちょっと笑顔もらえるかい?」
は、はぁ……。
それは、わかってるんだけど
でも、こんな大きなレンズの前でなんて笑えないよぉ〜。
それにライトがすっごく眩しいし……
ちょっと休憩するかい? リラックスしよっか?
ほんわか笑顔で、ちょっぴり訛ってるカメラマンのお姉さん。
あったかい声色だけど、私は泣きたくなった。
生まれて初めての撮影。
それは亜弥ちゃんも美貴ちゃんも同じはず。
なのになぜだか二人はすごくカメラ慣れしてて、
ポーズも笑顔も素人さんとは思えないくらい。
「頑張れ、トメちゃ〜ん」
「おやつが待ってるぞぉ〜」
あっという間にスチールを撮り終えた二人が
スタジオの隅からキャアキャア声援を送ってくれる。
それはうれしいんだけど……、やっぱ私には無理だよぉ。
- 643 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:14
-
「どうする? 休憩するかい?」
「いえ、大丈夫です」
ホントは、もう帰りたい。
でも、みんなに負けたくない、悔しいよ……
思わず涙がこぼれ落ちそうになった時、
それまで心配そうに、でも黙って私を見ていたひとみちゃんが声をかけてくれた。
「トメっち、あの笑顔だよ。ほら、お客さん来た時のさ」
そ、そうだわ。私だって接客業のはしくれ。
笑顔ができなくってどうするの!
私は自慢の顎をぐいっと持ち上げた。
梨華ファイ! 梨華ファイ! 梨華ファイ!
よぉ〜〜〜し!
「いらっしゃいませえっ!」
ニコッ!
うわっ。
カメラマンさんが息を呑んだ。
- 644 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:15
-
「いいねぇー。ごめん、もう一回。シャッター切り損ねちゃったべ」
ふふふ。大丈夫。
もうコツはつかんだわよっ。
「いらっしゃいませえっ!」
パシャッ。
イイねー、もう一枚!
「いらっしゃいませえっ!」
パシャッ。
イイねー、もういっちょ!
「いらっしゃいませえっ!」
パシャッ。
イイよー、最高っ。
でも、トメちゃん、ど〜してもその掛け声って必要なのかい?
「なまら笑っちゃって、手が震えそうだべさー」
クックックッとおかしそうに肩を揺らすカメラマンさん。
ひとみちゃんたちなんて、もう床に倒れ伏して笑い転げてる。
なによぉー、しょうがないでしょっ。
- 645 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:15
-
「じゃあ、次は違うのでいきます」
「違うの?」
「キームチィ〜〜〜」
ニコッ。パシャッ。
次の瞬間、スタジオ中が大爆笑に包まれた。
「うん、最高! いい絵が撮れたべ!」
カメラマンさんが指でマルをつくったのを見て、
私はようやくホッと胸を撫で下ろした。
◇ ◇ ◇
- 646 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:16
-
「食べて食べてー、もー好きなだけ食べてー」
超ご機嫌なアヤカさんが連れてきてくれたのは
スタジオの近くのいかにも高級そうな焼き肉屋さん。
うわ、おいし〜〜い、なにこれ蕩けちゃいそうじゃん。
美貴ちゃんなんて、さっきから口もきかずに食べまくってる。
「ポラでこの写りだもの。本チャンはもっとかわいく撮れてると思うわ」
うっふっふ、モデルはいいし、カメラマンも最高。バカ売れ間違いなしよぉ〜。
トランプみたいにたくさんのポラを並べて悦に入っているアヤカさん。
亜弥ちゃんは自分が写ってるのを一つひとつ念入りにチェックしてるけど
私はなんだか恥ずかしくって、よく見れない。
だって、別人みたいなんだもん。
でも、ちゃんと見なきゃね。
遊びじゃなくて、お金もらうんだもん。
表情とか、着こなしとか、いろいろ研究しなきゃいけないし。
「も〜、よっすぃ〜ったら見とれちゃって〜」
冷やかすようなアヤカさんの声に、ひとみちゃんがハッと顔をあげた。
え? なに? 誰? 忍者もびっくりのスピードで、ひとみちゃんが持ってたポラを覗き込む。
そこにいたのは……笑顔の私。キャッ!
当然よねぇ〜〜、じゃなかったら離婚よねぇ〜〜。
でも、うれしいっ!
- 647 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:17
-
「ほんとにベタボレなのねぇ」
「ちょっ、勘弁してくださいよアヤカさん」
「トメちゃん、かわいい?」
「えっ、まぁ……かわいいっすね……」
林檎みたいに真っ赤になったひとみちゃん。
私もつられて赤くなる。
アヤカさん、グッジョブ! なんちゃって〜〜〜。
でも、そっか。
アヤカさん、私たちが恋人同士だってこと知ってるんだ。
ふーん、慎重なひとみちゃんにしては意外。
それだけ信頼してるってこと?
「日本はまだまだ遅れてるけどね、海外じゃあもう珍しくないわよ」
結婚できる国だって、いくつもあるのよ?
日本もはやくそうなるといいわね。
そう言ってにっこり微笑むアヤカさん。
わ〜、アヤカさんっていい人ぉ。
自分はフツーにカレシがいるヒトなのに、
なかなかそんなふうに偏見なく言えないよねえ?
- 648 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/02(火) 12:18
-
「フツーとか、フツーじゃないとか、そんなふうに思っちゃだめよ」
自分を信じて生きるだけ、ね?
やわらかく微笑みながらそういうアヤカさんは大人っぽくて
それに知的な感じで、すっごく素敵。
私とひとみちゃんは、その言葉を噛みしめるようにうなずいた。
「アヤカさん、あたしとみきたんもラブラブなのっ」
「あ、亜弥ちゃんっ!」
べちゃっ。
亜弥ちゃんのいきなりの恋人宣言に動揺した美貴ちゃんの箸から、
レバ刺しがぺらんと滑り落ちた。
あ、きっちゃなーい。
「そうだと思った」
アヤカさんは口元に手をあてて軽やかに笑った。
- 649 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/02(火) 12:21
-
本日はここまでといたします。
引き続き、まったりとお待ちくださいませ。
- 650 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 16:09
- 雑誌はどこで買えますか?
今日のBGMは私のお気に入りの「恋人は心の応援団」です。ファイッ!
- 651 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 18:59
- いやーーーん、ニューキャラ出てるし。
雪ぐまさんの書く文章って情景が浮かびやすくて好きです。
笑ったり萌えたり大変です。更新されてるとうれすぃっす。
- 652 名前:時限ノックアウッ爆弾 投稿日:2004/03/03(水) 03:49
- そろそろミドルネームがうざいと自覚しつつ…
更新おつかれさまです。(合掌
っていうかまたもや…きた…きた……きたぁぁぁぁ!!!!!
*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
って感じなんですけどもう。またもダブルで私のツボをry
ただ今瀕死でございます。深夜にロフトの上から、誰かさんの如く
ジャーンプしそうになりました。危険極まりないですw
事件は会議室で起きちゃってるバカップルと
事件は現場で起きちゃってるバカップルに
ついていきたry長文失礼しました。
執筆頑張ってください。マターリ待ってます(´∀`)
- 653 名前:リムザ 投稿日:2004/03/06(土) 11:21
- お久しぶりです。
トメっちモデルデビューですか。
その雑誌が売ってたら買います。えぇ買いますとも。
自分を励ましてる石川さん可愛すぎです。
まったりと更新お待ちしてます。
- 654 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/07(日) 02:42
- ミキティ、“あやちゃんは友達以上恋人未満”爆弾投下。
あの放送は雪ぐまもたまたま見ていたのですが、
ミキティ発言の瞬間、飲んでたカフェラテがぶあーっと飛び散りましたw
650> 名無飼育さん様
たぶん全国の書店・コンビニなどでw 石川さんの「ファイッ!」は最高に励まされまする。
651> 名無飼育さん様
雪ぐまもレスをいただけるとうれすぃっす。ニューキャラともども今後ともよろしくです。
652> 時限ノックアウッ爆弾様
いずれも妄想よりも現実がすごそうな バカップルぶり。でも、少々いしよしは淋しい感じかな……
653> リムザ様
お久しぶりです♪ トメっちのキショさウザさがどんどん止まらなくなってきております。危険w
それでは本日の更新にまいります。
- 655 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:43
-
トイレのドアをぱたんと閉めてカチャリと鍵をかけると、
ひとみちゃんはニヤッと笑って、私の顔を覗き込んできた。
「やだなあって顔してる」
「だって……」
スタジオのトイレはお掃除が行き届いていて清潔な感じだけど、
やっぱりトイレはトイレでしょう?
こんなとこに連れ込むなんて、ひとみちゃん、どうかしてる。
今日の撮影は、昨日とは順番が逆。
ひとみちゃんと私が先で、その後に美貴ちゃん、亜弥ちゃんと続いてた。
美貴ちゃんのちょっぴり挑戦的な笑顔を、なんかかっこいーなあなんて見てたら
ふいにひとみちゃんに手招きされて、こんなところに連れてこられた。
最初は「何?」って不思議に思ったけど、すぐにわかった、あなたが何をするつもりか。
すこしいじわるげに細められた、ハニーブラウンの瞳。
- 656 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:44
-
「だってトメっち、すげーかわいいんだもん」
狭い個室の中で抱きしめられて、思わず吐息を噛み殺す。
個室は3つ並んでる。
人気のない階を探して入ったけど、でも、いつ誰が来るかわからないし。
なのに当たり前みたいに唇を寄せられて、心臓が破裂しそうになる。
腰を抱き寄せられたら、もう癖になってるみたい。
戸惑いながらも、反射的に瞼を閉じた。
なのに、なかなか唇は降ってこない。
焦れてうっすら目を開けると、
ひとみちゃんは、すっごい至近距離で私の目を覗き込んでいた。
「いつも、そんなふうにメイクしたら?」
「そんなふうって?」
「目元とか。すげー、いいよ」
そんなことを囁くあなたの目元のほうが、すごくいい。
ぱっちりとしたラインを縁どる睫毛が、くるんと天を向いてマスカラでくっきりと際立ってる。
控えめにパールを散らせた目尻のあたりがキラキラ光って
吸い込まれそうに大きな瞳をますます輝かせる。
ああ、信じられないくらいきれいな人、ひとみちゃんって。
- 657 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:44
-
私はもううっとりしちゃって、待ちきれなくなった。
トイレだってこともすっかり忘れて彼女の肩に手をかけ、唇を寄せる。
なのに、ひとみちゃんはクスッと笑って、ひょいと顎を引いた。
ヤだ、なんで逃げるのっ?!
「キスしたら変なふうに口紅ついちゃうかなって思ってさ」
「なによ、ここまで連れてきといて」
「そうなんだけど」
ひとみちゃんは口元に笑みを浮かべたまま、困った眉をして首をかしげた。
もう! 私は、ひとみちゃんの肩を押して、その腕から逃れようとした。
したいのに、できない。
だったら、こんな体勢はドキドキしすぎるもん。
ひとみちゃんは慌てたように腕に力を込めた。
「やぁだ。離して」
「なに? 怒ってんの?」
「怒ってるんじゃなくて……もぉ」
離してよ。ドキドキして困っちゃう。
じたばたと身を捩る私。
ひとみちゃんはニヤニヤ笑ったまま腕の力を緩めない。
もうっ。面白がらないでよね。
- 658 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:45
-
口を尖らせてひとみちゃんを見上げた私に
彼女は再び、すうっと唇を寄せてきた。
「舌、出して」
「へ?」
「したら口紅、つかないでしょ」
舌先のキス?
うわ、なんでそういうこと思いつくんだろ。
ひとみちゃんって、もしかしてすっごくHなんじゃないかな。
胸の高鳴りに知らん顔をしながら、私は「やだよ」と呟いてみる。
だって恥ずかしいし、超まぬけな顔にならない?
だけど、ひとみちゃんはあまのじゃくな私の言葉なんてなんのその。
鼻先がふれそうな距離で、いたずらっぽい目をしたまま、じっと私を待ってる。
しょうがないなぁ、この人は……
私は目を伏せると、舌先をほんのちょっとだけ唇から出した。
ほんとはものすごく、ドキドキしてる。
時間が、カチコチと音を立ててゆっくりと進んでる気がする。
- 659 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:46
-
ひとみちゃんが私に辿り着くまでが、やけに長く感じた。
ふいに、ぬるっとあたたかなものが舌先に触れ、私は思わずピュッと舌をひっこめる。
「なんで逃げんの」
ごめん。
私はひとみちゃんの腰骨のあたりをつかんで、首を伸ばして唇を寄せた。
鼓動が心地よく思考を麻痺させる。
こんな瞬間は、ほんとはちっとも嫌いじゃなくて。
さっきよりも大胆に舌先をのぞかせて、ひとみちゃんを待つ。
彼女の舌先は、
信じられないくらいやわらかくて、
あたたかく濡れている。
触れるだけで、くすぐったいのに、
まるで子猫がミルクを舐めるみたいにするから
頭の芯がビリビリしてくる。
- 660 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:46
-
ああ、甘いものって大好き。
スゥイートなケーキ、しょっちゅう口のなかに放り込んでる飴。
それから、あなた。
うっすらと甘い、マシュマロみたいな女の子。
私はどんな味がするのかな?
あなたが好きな味だといいけど。
ひとみちゃんが離れた時、
私の頭の中は、濃い霧ががかかったみたいにぼんやりとしてた。
ひとみちゃんは甘い息をひとつつくと、おもむろに私のシャツのボタンに手をかけた。
小さなボタンホールにちょっと焦れている指先を、私は黙って見つめる。
自分が南の島のやわらかい果物になって、ゆっくりと皮を剥かれてるみたいだと思った。
あらわになった胸元を見つめる、その瞳の色に満足する。
そう、おいしそうだと、思ってほしい。
「ブラ、外していい?」
すこし掠れたひとみちゃんの囁き声に、私は身を震わせた。
そんなこといちいち訊かないで、勝手にしたらいいじゃん。
かえって恥ずかしいよ……
- 661 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:47
-
「ね、いい?」
「……ウン」
開いたシャツからカラダの脇へと両腕を差し込まれてゾクッとした。
彼女のすらりと長い指が背中にまわって、すこし無遠慮な感じにブラのホックを探る。
ごくんと唾を呑み込んだその時。
キイッ……。
トイレの入口のドアが開いた音がした。
うわっ、誰か来た?!
私たちは個室のなかで、ピタリと凍りついた。
きゅっきゅっと近寄ってくるスニーカーっぽい足音。
私とひとみちゃんはかなり大胆な姿勢のまま、クッと息を潜め、目を見合わせて頷き合った。
大丈夫、じっとしてたら二人でひとつの個室に入ってるなんて気づかれない……
- 662 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:48
-
ところが、用を足しにきたのかと思ったその足音は、
なんの迷いもなく私たちが潜んでいる個室のドアをコンコンとノックした。
「よっすぃ〜?」
どひゃーーー!!! 誰っ?!?!?!
目をシロクロさせる私。
ひとみちゃんもかなりギョッとしたみたいだったけど、
声の主が誰か、すぐにわかったみたい
そして知らん顔はかえってマズイと思ったらしく、素知らぬ声で返事をした。
「あれー、まいまいも今日、撮影だったのー?」
「そーだよ。聞いてないの? よっすぃ〜とのからみなんだからはやく来てよー」
まいまい……里田まいちゃんだ。
私はもう冷や汗たらたらで、生きた心地もしない。
ぴくりとも動けない。
ひとみちゃんが再び声をあげた。
「わかったー。ちょっとしたら行くからー」
「待ってよっかぁ?」
「あー、先行ってて。ちょっと、ハラ痛くてー」
「ギャハハ、なんだ下痢かよー」
まいちゃんはカラカラとした笑い声をあげると
「じゃあ、はやく来いよ〜」と言い残して、
きゅっきゅと足音を響かせながら立ち去っていった。
- 663 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:48
-
キィッ……ぱたん。
静かにドアが閉まった音がして、ホ〜〜〜ッと胸をなで下ろす。
ああ、もう、びっくりしたぁ……
心臓、止まるかと思った……
私はぐったりと個室の壁に寄りかかり、ひとみちゃんの肩を小突いた。
「もおぉぉっ!」
「うおー、あっぶねー!」
ヒュー、やっぱこーゆーとこはマズいねーなんて呟きながら、
ひとみちゃんが、脇からするっと腕を抜く。
その瞬間、私は、またゾクッとして身をすくませた。
「……んっ…」
「お、Hな声」
「違うよ!」
真っ赤になって思わず抗議の声をあげた私の唇に
ひとみちゃんが“シーッ”というように人さし指をあてる。
- 664 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:49
-
「家に帰ったら、続きしよ?」
「だめだよ、今日はお母さん、いるもん」
「じゃあ、うちで」
「だめだよ、よっすぃ〜のママがいるじゃん」
「もーー」
トメっちは、頑固だなー。
そんなことをブツクサ言いながら、個室のドアをあけてキョロキョロと外をうかがうひとみちゃん。
頑固ってなによ、そんなの当たり前じゃないの?!
万が一でも親に聞かれたら、最悪じゃん。
そそくさとシャツの前をあわせながら、私もブツブツ言う。
なによ、こんなとこで始めて、中途半端になるに決まってんじゃん。
ほんと、ひとみちゃんは勝手だよ……
「じゃ、ラブホ行く?」
ラブホぉ?!
いきなりすんごい提案をされて、ギョッと目を剥いた。
そ、そんな……。
たちまち頬が熱くなったのがわかった。
ラブホなんて、あの初めての時以来、行ってない。
- 665 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:50
-
思わず目を伏せた私に、ひとみちゃんもさすがに照れたみたい。
「考えといて。じゃ、時間差でスタジオ戻ってきてね」
早口でゴニョゴニョ言うと、くるっと踵を返して先にトイレを出ていってしまった。
そっか、一緒に戻ったら怪しいもんね。
愛しい後ろ姿を見送り、ふうと息を吐いて個室の壁にもたれかかる。
そして両腕で、自分の体をきゅっと抱きしめた。
ラブホ、か。
行っちゃうんだろうな。
自分が、すっごくHなヒトみたいで憂鬱だけど、
あんなふうにされちゃったから、
私のカラダは、ひとみちゃんのこと欲しい欲しいって騒いでた。
腰骨がむずむずするみたいな、奇妙な感覚。
- 666 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:51
-
子供の頃、ラブホが何するとこか知らなくて、お母さんに
「どうして観光するとこもないのにホテルがあるの? 変じゃない?」って訊いたことがある。
あの時、お母さん、なんて答えてくれたんだっけな。
忘れちゃった。きっと、すっごい困っただろうな。
そんなことを思い出して、くすくすと笑う。
まさか自分が、その変なホテルを使うことになるなんて。
しかも、ひとみちゃんとなんてね。
小っちゃい頃からずっと一緒にいて、
いつしかひとみちゃんとのキスに憧れて、
でも、それ以上のことなんて考えたことなかった。
ううん、もしかしたら望んでたのかもしれないけど、
それは胸のずっとずっと奥底に。
引き金をひいたのは、美貴ちゃん。
あのシーンに撃ち抜かれて、ひとみちゃんに愛されたいココロが溢れ出した。
その流れはどんどん深くなって、私を慌てさせる。
どんどん貪欲になって、欲しがりになる。
知る前は、なくても平気だったのに。
ちょっと、困るな。
- 667 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:52
-
それから困ってるのは、自分でもどうかと思うくらいの独占欲。
ヤキモチ妬きなのはわかってたけど、ますますひどくなってる。
頃合いを見計らってスタジオに戻り、私は顔をしかめた。
カメラの前で、まいちゃんと肩を組むようにポーズを決めているひとみちゃん。
フラッシュが焚かれて、まいちゃんがポーズを変え、
ひとみちゃんの腰に腕をまわすみたいにぴったりと抱きつく。
とたんに、ひとみちゃんが弾けるような笑い声をあげて身を捩った。
「んぎゃー、くすぐってーよぉ!」
「いやーん、逃げないでー! ダーリン、愛してるわ〜」
「あたしも愛してるぜ、べいべー」
まるでコントな二人の軽口に、スタジオ中に微笑ましげな笑い声が広がる。
冗談だって、わかってる。
お仕事だって、わかってる。
だけど、こめかみがキィンと痛くなる。
- 668 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/07(日) 02:52
-
触れないで。
私のひとみちゃんなの。
誰も触らないで。
あんなキスをした後だから、余計にそう思う。
私もみんなと一緒になって声をあげて笑いながら、
さりげなくひとみちゃんから目をそらした。
- 669 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/07(日) 02:53
-
本日はここまでといたします。
- 670 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/07(日) 05:13
- わ。。。。。萌えますた。。。。。
657とかリアルっぽくて。きゃーーーーん。
- 671 名前:レオナ 投稿日:2004/03/07(日) 13:31
- 更新お疲れ様です。
おはつでございます。
なんかもう、すごいって感じです。
これからも、がんばってください!!
- 672 名前:達吉 投稿日:2004/03/07(日) 13:35
- ひさしぶりのレスです。
毎回読んでたのですが、レスする時間がなかったので・・・。
今回のすごいいいです!!!!
トメっちの心情が上手く描写されてて、トメっち萌えのオイラは萌え死にますたwww
- 673 名前:コナン 投稿日:2004/03/07(日) 17:45
- 更新おつかれさまです。
うわぁ!!舌先のキス・・・なんてエロイの!エッチィの!
マジ!読んでてドキドキしちゃった。
リアルに描写が浮かんじゃうよほ・・・・・
ラブホに行くよね!(きっぱり)楽しみだぁ♪(*/∇\*)キャ♪
- 674 名前:名無し23。 投稿日:2004/03/07(日) 18:00
- 更新、乙でございます。
今回のトメっち視点は、「恋」から「愛」に変わって行く過程に少し戸惑って
いるような、そういう不安みたいなものがよく表われてるように思います。
トメっちの溢れる想いがひしひしと伝わって参ります、ハイ。
それにしてもよっちぃは何だかエロ旦那ですわ。でもグッジョブw
次回もまったりとお待ちしてますですよ。
- 675 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/07(日) 20:30
- 更新お疲れ様です。
あー、トメっち開発されて行ってる・・・
>>658急場しのぎなんでしょうが、あれって逆にしのげない気がw
- 676 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/07(日) 21:32
- 更新ありがとうございます。
トメっちのドキドキが伝わってきて、
読者の身も心もトロトロにとろけてしまいそうです。
- 677 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/07(日) 23:10
- >>673
ネタバレ注意報・・・
更新スッゲー楽しみにしてました。
面白かったです。ありがとう
- 678 名前:コナン 投稿日:2004/03/08(月) 04:39
- 作者さま
ネタバレしてましたか?すいませんmm(_ _)mm
そうなってほしいなと思って書いたのですが。
すいませんでした。以後気をつけます。
- 679 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/08(月) 13:14
-
- 680 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 09:51
- あげ
- 681 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 22:54
- トメっち溺れてるなぁw
- 682 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 22:59
- >>678
んー、ずれてる
- 683 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/10(水) 23:25
- いしよしW受賞おめでとうございます。
やけに神妙な顔をしていた二人。ごちそうさまでしたw
670> 名無飼育さん様
「なによ!」と言わせたら日本一の石川さんでございますw
671> レオナ様
おはつでございます。レス&ねぎらいのお言葉をありがとうございます。今後ともよろしくです。
672> 達吉様
お誉めいただき恐縮です。いろいろ考えた挙げ句、結局キショくなるトメっちでしたw
673、678> コナン様
まずは、レスをありがとうございます。
さて、今回ネタバレと指摘されているのは、物語の先読みではなく、
更新分のもっとも萌えどころと思われる内容をバッチリ書いてる点かと思われます。
(つまり、“××のキス”とはっきり記したのがマズいんですね、たぶん)
このスレッド、時々、このネタバレ問題で騒ぎが勃発いたします。
ご面倒をおかけしますが、どうぞ、>>436、>>454をご一読くださり、
今後のレスのご参考としていただければ幸いに存じます。
- 684 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/10(水) 23:25
- 674> 名無し23。様
片想い、両想い、色は違えど悩みはつきぬものでございます。エロ旦那、どうにもこうにもw
675> 名無飼育さん様
まあ、勢いあまって口紅ついてますね、たぶんw バカップル本領発揮ですな。
676> 名無し読者様
光栄でございますw やりたい盛りのうちのヨシトメ、もう大変ですわ。
677> 名無飼育さん様
“スッゲー”とまで楽しみにしていただいて作者冥利につきまする。感謝しています。
680> 名無飼育さん様
なんでいきなり“age”かと思ったら、679で“ochi”が入ってたんですね。
ご配慮、ありがとうございます。いやはや……
681> 名無飼育さん様
溺れまくりで心配なくらいw 一応、お弁当屋さんは真面目にやってるようですが…
682> 名無飼育さん様
雪ぐまの説明はズレてませんか? 不十分な点があったら補足説明をどうぞよろしく。
それでは本日の更新にまいります。
- 685 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:26
-
ラブホのこと、考えといてって言ったくせに、
ひとみちゃんは私の返事も訊かない。
それどころか、「ご飯食べて帰ろー」っていう
亜弥ちゃんたちの誘いにホイホイと乗ってしまった。
べつにすっごい行きたいわけじゃないよ。
そうじゃないけどぉ……
でも、じわじわと火がくすぶっているようなカラダで、ご飯を食べたりするのは拷問。
ひとみちゃんは違うのかな? 全然、平気なのかな?
能天気に「まつーら亜弥どえ〜す♪」なんて物真似をして亜弥ちゃんを笑わせ、
美貴ちゃんに「似てねーよ」とかビシバシ突っ込まれてる。
私は、こっそりとため息をついた。
- 686 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:27
-
「あれ、トメちゃんって少食なほう?」
ちっとも箸が進まない私を心配して声をかけてくれたのは、まいちゃん。
慌ててふるふると首を振ると、彼女はニコッと微笑んだ。
あんがい人懐っこい笑顔。
「嫌いなもの入ってる?」
「あ、ううん」
「無理して食べることないよ。残ったら、あたしが食べてあげっから」
いっこ年上だからかな。
まいちゃんは、なんとなくお姉さんっぽく胸を反らしてそう言った。
やさしい声音に、この輪のなかにまだあんまり打ち解けてない私はホッとする。
さっきは変なヤキモチなんて妬いて悪かったかも。
「まいちゃん、ダイエット中じゃないの?」
「こんどは痩せ過ぎぃ。胸なくなっちゃう〜」
「あはは。じゃあ、ちょっと食べてもらおっかなあ」
「OK。トメちゃんは胸大きくてうらやましーなあ」
何言ってるの、まいちゃんだって。
そう言うと、まいちゃんはくしゃっと鼻のところに皺を寄せながら笑って
茶目っけたっぷりに「実はけっこう上げ底なの」なんて耳打ちしてきた。
きゃはっ。私は笑って身をすくませる。
敏感になってるから、すっごくくすぐったかったりして。
ひとみちゃんがチラッとこっちを見た気がした。
- 687 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:28
-
みんなと別れての帰り道。
私はもうすっかりラブホに行く気なんてなくしてた。
まいちゃんたちとおしゃべりをしているうちに、なんとなく日常モードに戻ったカラダ。
ひとみちゃんもそうなんだろう、誘ってくるような気配はない。
もう時間も遅いし、まあいっか。
葉桜の並木道。
月がとってもきれいだから、
隣を歩く恋人の手を握ろうかどうしようか迷う。
家からはまだ遠くて、ご近所の人に見つかっちゃうような心配はないけど、
わりと大きな明るい道だから、ちらほらと人通りがある。
気にしすぎかもしれないけど、女の子同士で手なんて繋いで歩いてたら
すごく変な目で見られちゃうかもしれない。
でも、とってもいい風が吹いてるし、お散歩気分で繋ぎたいな……
- 688 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:29
-
「さっき、まいまいと何しゃべってたの?」
「え?」
いきなり、なあに?
未成年のくせにお酒を飲んだひとみちゃんは、ほんのりピンク色の頬。
もしかして妬いてるの?って思ったけど、
ひょうひょうとした横顔からは何もつかめない。
「別に。食欲ないなら食べてあげよっかって」
「そのあとだよ」
「ああ、まいちゃんのブラが上げ底って話」
「なんだ、そりゃ」
プッと吹き出す。
「嘘ばっか。ありゃー、オールナマチチでしょ」
「ちょっとー、やらしー言い方やめなよ」
「生乳ってやらしーかぁ?」
やらしーよ。
っていうか、どこ見てんの、ひとみちゃん!
まさか触ったことあるとか言わないでしょうね?
めらめらと苛立ちが涌き上ってくる。
短気すぎると思うけど、腹が立っちゃうものは仕方ない。
- 689 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:29
-
むうっと口を尖らせた私を、ひとみちゃんはおかしそうに見た。
「ところで、ラブホ行く?」
「へっ?!」
「考えといてって言ったじゃん」
うわ、あの約束、生きてたの?
えーーー、なによ、いまさら。
私はツンと横を向いた。
「行かない」
「なんでぇー、行こーよ行こーよ」
「やだ、行かない」
「うっそぉ。よしこショックー」
やりたーい。我慢できなーい。
行こーよ、行こーよぉ。
ひとみちゃんは大げさにぷうっと頬を膨らませると、
大きな犬みたいに道端にしゃがみこんでキャンキャンわめいた。
ちょっ、もぉ、なんてこと言うの、このヨッパライはぁ!
- 690 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:30
-
「トメっちの真似ぇ」
「そ、そんなこと言ったことないもん!」
「あー、『あそこに連れてけっ!』だったっけ?」
もう!
ぶつ真似をすると、いたずらが大成功した子供みたいにニカニカ笑ってよける。
ちょっとかわいいけど、知らない!
ぷんすか歩き出したとたんに、ひらっと背中から抱きしめられた。
「人が見てるよ」
「いいじゃん、関係ないよ」
怒った声を出しながらも、我知らず口元が緩む。
こういうふうにしてほしくて、そんなふうに言って欲しくて、
私は時々こんなふうに怒ってみせるんだわ。
大好きなあなたの気を引いて、かまってもらいたい。もっと、もっと。
子供から大人になったひとみちゃんが、耳元で低く囁く。
「ね、マジで行こ?」
私は小さく息を吐いて目を閉じた。
そう、あなたに本気で誘われたら、断れるわけない。
- 691 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:31
-
そして手を引かれて竜宮城へ……だったらきれいなんだけどなあ。
それとも竜宮城も、こんなぎらぎらネオンかな。
かぶっていたキャップをますます目深にして、
力いっぱい低い声でフロントのおばちゃんとやりとりをするひとみちゃん。
私はフロントから顔をそむけるみたいにして、彼女の背に隠れる。
うわぁ、すっごい恥ずかしい。
前の時は、酔っててよくわかんなかったけど、
これから私たちHしますぅって、あのおばちゃんにバレバレなわけよね?
お部屋は、前の時ほど悪趣味じゃなかった。
だけど、部屋の真ん中にいきなりどーんとあるベッドに非日常を感じて立ちすくむ。
ちょっと乱暴に抱きすくめられて、
いつもと違ってお酒くさいひとみちゃんの息にドキドキした。
「シャワー……」
「いいよ」
戸惑いを吹き飛ばす勢いで、押し倒される。
ひとみちゃんのカラダの重みを感じると同時に、
その髪の香りが鼻先をくすぐって、たちまちバチン!とスイッチが入った。
頭の奥のほうがカアッと熱くなって目が潤む。
溶けた鉄に似た熱いうねりが、したたり落ちるのを感じる。
- 692 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:32
-
ひとみちゃん、
あなたが、
欲しかったよ……
荒々しく降ってくる唇にほとんど狂喜して応えながら、
私は無我夢中でひとみちゃんのシャツのボタンに手をかけた。
- 693 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/10(水) 23:33
-
………………………………………
………………………………………
………………………………………
………………………………………
………………………………………
- 694 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/10(水) 23:34
-
本日はここまでといたします。
- 695 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/11(木) 00:22
- うひょー!
雪ぐまさんの書くいしよしは
仕事で疲れた身体に癒し(と興奮)を与えてくれる
一服の滋養強壮剤のようです。
- 696 名前:レオナ 投稿日:2004/03/11(木) 20:17
- 更新お疲れ様です。
最高です!!!
こちらこそよろしくお願いいたします。
- 697 名前:名無しちゃみ 投稿日:2004/03/11(木) 21:07
- うわぁー。えらいとこで切れてますな。
今夜、寝れそうにありません。
- 698 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/11(木) 23:46
- よっすぃーのことが、好きすぎて、無我夢中になってしまう
梨華ちゃんって、本当にかわいいです。
梨華ちゃんに訪れた至福の時間。名無し読者も幸せです。
- 699 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 00:29
- 次の更新はいつですか?
- 700 名前:ゆうぴ 投稿日:2004/03/13(土) 18:50
- お久しぶりです。
いしよしがハッピーそうで嬉しいです。
お忙しいご様子ですが、お体に気をつけてくださいね。
まったり更新お持ちしてます。
- 701 名前:プリン 投稿日:2004/03/14(日) 13:56
- はじめまして!
ずっとROMっておりました!
雪ぐまさんのいしよし大好きです。
トメっちがすごく可愛くて(/▽\*)
体に気をつけてくださいましw
マターリと待っていますね。
頑張ってください。
- 702 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 23:21
- 今時従業員と顔を合わすような○○ホに行っちゃう2人がカワイイw
- 703 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 23:33
- 初レスです!
続きが楽しみで楽しみでw
応援してます!がんばってください
- 704 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/17(水) 14:37
- 皆さま、あたたかいレスをありがとうございます。
なかなか更新できず恐縮です。
695> 名無飼育さん様
(0^〜^)<ユンケルかYO! ……光栄でございますw 雪ぐまも楽しみつつ書いております。
696> レオナ様
ありがとうございます。まったり更新となってしまい恐縮ですが、これからもよろしくです。
697> 名無しちゃみ様
( ^▽^)(0^〜^)<夢に出るからちゃんと寝なYO! ……らしいです。
698> 名無し読者様
リアル梨華ちゃんが言ってくれそうもないので、うちのトメっちに言ってもらいます。
(#^▽^)<よっすぃ〜ってすごいんだYO!
699> 名無し飼育さん様
お約束したいのですが、守れないといけないので……。すみませんがマターリお待ちください。お約束できる時は、なるべくしていく所存でございます。
- 705 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/17(水) 14:37
- 700> ゆうぴ様
お久です〜♪ ゆうぴさんのほうの展開、萌え萌えでドキドキしていますよ〜w
701> プリン様
お初でございます。(#^▽^)<私ってかわいい? ←舞い上がりがちなトメっち。
702> 名無飼育さん様
たぶん安いとこに入ってるんだと思いますな。部屋も悪趣味だしw
703> 名無飼育さん様
お初でございます。ありがたいお言葉、とても励みになりまする。がんばります!
それでは、更新にまいります。
- 706 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:38
-
あいたたたた。
ランチのお客さんが途切れるやいなや、
片手で腰を押さえて作業台にもたれかかった私を見て
トメ子姉ちゃんが目を丸くした。
「どうしたの? 撮影ってそんなに大変だったの?」
「え? あー、うん、まあね」
そんなわけないじゃん。
ひとみちゃんったら激しいから……な〜んて考えて赤面。
ゆうべの余韻が気だるい甘さを残してる、とかなんとか唄うナツメロがなかったっけ?
それってつまりこういうことなのね。ポッ。
「……アンタ、何ニヤついてんの?」
「え? あ、 ううん、撮影楽しかったな〜なんて」
危ない、危ない。
トメ子姉ちゃんって、これで案外あなどれないかもしれないんだったわ。
気を抜くとすかさず緩んでしまう頬を、きゅううっと引き締める。
しっかりしなくちゃ。またコロッケ焦がしちゃうといけないし。
梨華ファイ! 梨華ファイ! 梨華ファイ!
- 707 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:39
-
そう思いながらも、トメ子姉ちゃんが帰って店にひとりになると
キッチンの丸イスに腰かけて、ぼんやりとゆうべの記憶をなぞりはじめてしまう私。
ひとみちゃんの白磁みたいにツヤツヤの肌や、
桜色のやわらかい唇や、ドキッとするほど長い指先、熱く潤んだ瞳。
息ができなくなるくらいギュッと抱きしめられたこと。
体中にキスされたこと、追いつめられたこと……
目を閉じて、思い出す。
四つん這いになった恥ずかしいカタチ。
嫌だ、と思う。でも、一番、気持ちよくて……
こらえても喉の奥から漏れてしまった声。
恥ずかしい。あんな声を聞かれて、あんなところを見られて。
枕を噛みながら呻いた私を、ひとみちゃんはどう思ったかな。
どうしてあんなことを、よりによって一番好きな人としたくてたまらないのか、
ほんとうに不思議だと思う。
本能といってしまえばそれまでだけど、
私たち、子供ができるわけでもないのに。
- 708 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:40
-
溺れてしまいそうな、快楽。
それはあまりに圧倒的で、時々、恐い。
世の中にこれよりイイコトなんて何もないんじゃないかと思えてくるから。
とろとろに甘い記憶をしつこくリピートしていると
なんだか身体が熱くなってきて、私ってやっぱりHなほうなのかなあと思う。
ひとみちゃんは「すげーエロい」なんて言うけど、自分ではよくわからない。
っていうか、エロいのはひとみちゃんのほうっていうか……
「すいませーん、注文いいですかー?」
「はい、いらっしゃいませ〜!」
お客さんの声が聞こえたのを合図に、甘い記憶のスクリーンをプチンと消した。
満面の笑みを浮かべて、小走りにカウンターへと駆け寄る。
たとえ腰が痛くても、恋にうつつを抜かしていても、仕事の手は抜きたくない。
だって、わざわざ買いにきてくれるお客様に失礼だもん。
それにうちみたいな小さな店、マズイとか感じ悪いとか評判が立ったらすぐ潰れちゃう。
「塩鮭幕の内弁当2つね」
「はいっ、少々お待ちください」
せっせとお弁当を詰めながら、そういえば、ひとみちゃんって
こういう気持ち、イマイチわかってくれてないんだよなあって、ふと思った。
ゆうべも、延長しよう泊まっていこうってゴネて大変だったし。
- 709 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:41
-
そりゃあ私だってこのまま朝まで眠りたいとか思ったけど、
気楽な学生さんと違って、次の日も朝から仕事がある身だからそうもいかないの。
お店を開ける前にも、仕込みとか発注とかいろいろやることあるのよね。
それに、いきなり外泊するとお母さんがすっごく心配するし。
別れ際にちょっと口を尖らせていたひとみちゃんの顔を思い出す。
淋しそうにされると胸がきゅっと絞られるみたいに切なくなる。
ごめんね。でも、わかってほしいな……。
「ありがとうございましたぁ。またよろしくお願いします」
深々と頭を下げてお客様を見送る。
心の中で5秒数えてサッと顔をあげた瞬間、
またもやピキピキッと腰に痛みが走って思わずよろめいた。
「あいたたたた……」
「大丈夫?」
はっ、いけない。次のお客さんだわっ。
慌てふためきつつ顔をあげると、そこにいたのは綾小路文麿さん……じゃなくて、
心配そうに首をかしげた真希ちゃんだった。
- 710 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:42
-
「どしたの、トメちゃん?」
「あ、あはは、もう歳かな?」
「やめてよ、同い年なんだから」
真希ちゃんは可笑しそうに笑うと、
いつものように「コロッケ2つ」と注文した。
ふう。お客さんが真希ちゃんでよかったわ。
ほかのお客さんよりも気心が知れてるから、
みっともない姿を見られてもそんなに恥ずかしくない。
お金持ちのお坊ちゃまだと思ってたら、お嬢様だった真希ちゃん。
まさか女の子だったなんてビックリしたけど、それはうれしい驚き。
キザな文麿さんも実はちょっと素敵だななんて思ってたけど、
真希ちゃんになってからのほうが、ずっと親しみやすくて話しやすい。
それに、大学に通うようになってうちの店が通学路から外れたのに
こうして時々足を運んでくれるのが、とてもうれしくて。
「よっすぃ〜と仲良くやってる?」
「うんっ。真希ちゃんとこは?」
「あはっ」
真希ちゃんは、涼しげな目を細めて恥ずかしげにくしゃっと微笑んだ。
うふふ、どうやらラブラブなのね?
- 711 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:43
-
お家の人には内緒だけれど、真希ちゃんの恋人は、
彼女の家のメイドさんをしてる女の子なんだって。
そのことをコッソリ教えてもらってからは、お得意様っていう以上に、
お友達っていうか仲間っていうか、そういう感覚がしてる。
「一緒のお家に住んでて、いいなぁ」
「でも、パパと弟にばれないか心配だよ。新しいママもいるしさ」
「やっぱりバレたら大変なの?」
「どうだろうねぇ。わかんないけど紺野がクビになっちゃったら困るし」
真希ちゃんはそう言うと、複雑そうに口をヘの字に歪めた。
そっかぁ、紺野さんがお嬢様をたぶらかしたみたいな話になっちゃうのかな?
ちゃんと話したことはないけど、紺野さんは控えめな感じのおとなしそうな子。
どっちかっていうと真希ちゃんがアプローチしたのかな?なんて思ってるんだけど
綾小路家の人にしてみたら、うちの大事なお嬢様に何をって感じなのかも。
私だってひとみちゃんとのことがお母さんたちにバレたら
ちょっと面倒かもしれないけど、そんなには大騒ぎにならないような気がする。
家柄がいいのも、あれこれ苦労が多いのかもしれないな。
もしかして真希ちゃんには親が決めた婚約者とかいたりして……なんてふと思ったけど、
さすがにそんな立ち入ったことは聞けなかった。
- 712 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:43
-
「近々パパが舞踏会やるって言ってるからさ、また二人で遊びに来てよ」
「うん、ぜひ」
ドレス着るの、けっこう好き。
そう言うと真希ちゃんは「じゃあ、新作を用意しとくね」と、優雅に微笑んだ。
ええっ?! 私は慌てて両手を顔の前でぶんぶんと振る。
「そ、そんなつもりじゃないの」
「わかってるよ」
いいの、今はあたしも着れるんだからドレスは何着あっても。
「まあ、トメちゃんほどは似合わないんだけどね」
「何言ってるの。もー、文麿さん出てるよっ?」
「あはっ。なかなかキザなこと言う癖が抜けないんだよねぇ〜」
真希ちゃんは、そう言って茶目っ気たっぷりに舌を出すと、
「じゃあ、また」と、ひらっと手を上げ、軽やかな足取りで立ち去っていった
- 713 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:44
-
真希ちゃんって、ほんと雰囲気いいわぁ。
姿勢のいい後ろ姿を見送りながら、思わず感心する。
育ちがいいっていうのかしら、穏やかでやさしい気配を身に纏っているよう。
彼女と話すと、私までまるでお嬢様になったみたいな気分になる。
それは彼女が文麿さんだった時からそう。
褒められてくすぐったいんだけど、なんとなくその気になってくの。
品が良くて、笑顔のきれいな特別な女の子になったみたいに……
うーん。
私ってけっこうノせられやすいのかもね。
- 714 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/17(水) 14:45
-
さて。
そろそろ追加のご飯を炊かなくっちゃ。
そう思ってキッチンに戻りかけた時、
電信柱の影からこちらをうかがってる人影があることに気づいた。
ん?
視線を向けると、サッと身を隠す。
怪しい。思わずジーッと凝視すると、その影はまたおずおずと顔を出した。
誰だろう、ストレートの黒髪がきれいな、内気そうな女の子。
彼女は私と目が合ったことに気づくと、動揺したように頬を染めて俯き、
くるりと踵を返してタタッと駆け去っていってしまった。
はにかんだようなその仕草を見て、ハッと気づく。
ああっ、あの子、この間ひとみちゃんに
「yossyさんですか?」とか話しかけてた中学生の一人じゃないの?!
ガーーーーン。
きっとひとみちゃんを見にきたんだわ。
ファンってやつかしら。
ううん、あんなとこから一人でジッとこっちを見てるなんて
もはやファンとかいう気持ちを超えちゃってるんじゃないの?!
私は彼女が去って行った方向を眺めたまま下唇を噛みしめ、
ぎゅっと握った握りこぶしをふるふると震わせた。
自分でも眉毛が情けなく八の字にさがっちゃってるのがわかる。
ああもうっ! これだから、ひとみちゃんにお店手伝ってもらうの嫌なのよっ!!!!
- 715 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/17(水) 14:46
-
本日はここまでといたします。
- 716 名前:レオナ 投稿日:2004/03/17(水) 16:20
- 更新お疲れ様です。
まったり更新でMyペースにがんばってください。
いつも、楽しみにしてるんで。
- 717 名前:わく 投稿日:2004/03/17(水) 20:20
- ほわわぁ〜って感じでw
「梨華ファイ!梨華ファイ!梨華ファイ!」ってとこ、かなりツボですw
- 718 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/17(水) 21:50
- >>706のナツメロに爆笑しますた。あのスクリーンみたいな衣装をサビで広げる人の
歌ですよね。
トメっち、おまいはいくつだよ、しかも2番かよと小一時間(ry
ひとり応援といい、キショくて可愛いトメっちがツボです。
続き楽しみにしてます。
お忙しそうですが、お体に気をつけて。
- 719 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/18(木) 20:35
- >>718
気になってたんだよね〜ありがとw
エロいトメっち好きです。
- 720 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/19(金) 18:49
- エロ甘な雰囲気、好きです!
想像がかきたてられます。ああー。
- 721 名前:名無し23。 投稿日:2004/03/20(土) 12:51
- 更新、乙でございます。
トメっち、ホントに可愛いですなぁ。
このふたりはギリシャ神話のエロスの世界満開でございますねw
まさに706レスにも・・イイヨイイヨ〜!
次回もまったりとお待ちしてます。
- 722 名前:プリン 投稿日:2004/03/20(土) 20:13
- 更新お疲れ様ですw
トメっちキャワッ!!!!!
まあ、エロエロな所もありますが(w
もう大好きっす(/▽\*)
もちろん雪ぐまさんも(/▽\*)
次回も頑張ってください!
応援してまぁ〜すw待ってまぁ〜すw
- 723 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/22(月) 22:17
- トメっちの日常の中の喜びと、ちょっと影を落とす苦悩が
せつなくて、ちょっぴりおかしい雪ぐまさんの
トメっちワールドが大好きです。
頑張って下さい。
- 724 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/25(木) 14:12
- よっちぃ写真集、大好評ですね。(0^〜^)<ざっとこんなもんよ!
716> レオナ様
ありがとうございます。頭の中では妄想渦巻いているのですが、書く時間が……。
( T▽T)<社会人って悲しいね!
717> わく様
リアルでも寒いことになってたらうれしいな〜と思いますw
( ^▽^)<梨華ファイ! なんでみんな笑うの〜?
718> ごまべーぐる様
( ^▽^)<女は海〜♪ ……はい、大正解ですw さすが、ごまべーぐる様。
妙にナツメロが似合うような気がするんですよね、いしよしってw
719> 名無飼育さん様
(0^〜^)<エロいよっちぃは? ……しかし最近、よっちぃは「乳首コリコリ」とか言いませんな。
- 725 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/25(木) 14:13
- 720> 名無飼育さん様
(#´▽`)´〜`0)←エロ甘な雰囲気。
ありがとうございます。リアルいしよしで想像をかきたてられております雪ぐまですw
721> 名無し23。様
(#´▽`)´〜`0)←エロスの世界満開中。
しかし、トメっちはちと溺れ気味ですよ。アポロンが気づけばいいんですが……
722> プリン様
ありがとうございまっす(/▽\*) エロエロなのは、ご勘弁をw
いしよしもすっかり大人になっちゃってねぇ(遠い目)
723> 名無し読者様
作者冥利に尽きるお言葉、ありがとうございます。ちょっとね、切ない展開になってきましたよ。
(0^〜^)<どこが? ←鈍感。
それでは、更新にまいります。
- 726 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:14
-
たぶん、ひとみちゃんはまた笑うと思う。
心配することないよ、トメっちだけが好きだよ。
私がヤキモチを妬くたびに何度も囁いてくれたやさしい言葉。
信じてる、けどさ。
あの子、けっこうかわいかったよね、なんて思っちゃうの。
どんなに好きなお菓子だって、そればっかりだと飽きちゃうじゃない?
そういうことが恋にも起こるんじゃないかって思っちゃうの。
こんな日に限って、ひとみちゃんはサークルの飲み会。
夕食を終えても居間でぼんやりとテレビを観ている私を
お母さんが不思議そうな顔で見た。
「今日は遊びに行かないの?」
「ひとみちゃん、飲み会だって」
「あらあら、可哀想に」
やだ、つきあってるのバレてるんじゃないでしょーね。
冷や汗をたらりと流しつつ、私は「可哀想ってなによ」と口を尖らせた。
- 727 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:15
-
「だってあんた、ひとみちゃんしか友達いないじゃないの」
「そ、そんなことないよ」
いや、そんなことあるかも。
だって、小学校でも中学校でも、ずうっと一番の友達がひとみちゃんだった。
そりゃあ、他にもまりっぺとかカオリンとかいるけど、
考えてみたら、もう1年以上会ってないし。
別の意味で、冷や汗がたらりと出た。
やばい。私って、やっぱ世界狭すぎ?
そうよ、私が家でこうしてボケーッとしてる間にも、
ひとみちゃんはサークルで新しい友達つくっちゃったりしてるのよ。
飲み会やったり、カラオケ行ったり、ボーリングやったりしまくってるのよ。
悔しい。私も遊びに行ってやる。
さっそく携帯を取り出して、アドレスをスクロール。
そしてまた私は、どんよりと憂鬱な気分になった。
ひとみちゃん、うち、トメ子姉ちゃんち、真希ちゃん、まりっぺ、カオリン。
これだけ? あとはぜーんぶ、仕入れ先とか役所関係の番号。
「……お風呂入ってくる」
数少ない友達も、夜の9時過ぎに「どっか行こーよ」なんてわめけるほど親しくない。
これが現実。私の世界の住人は、ひとみちゃんだけ。
- 728 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:16
-
「それでも、いいもん」
顎までどっぷり湯船につかって、ボソリとひとりごちる。
いいもん、ひとみちゃんがずっとそばにいてくれるから。
だって、約束したもんね。
薬指の指輪を明かりにかざして確かめた。
そして、ちょっとだけ顔をしかめる。
ずっとつけてるから、ずいぶん細かいキズが入っちゃったな。
首をカックンと前に折って、お湯の中でぶくぶくと泡を吹いた。
この指輪をもらってから1年とちょっと。
1年とちょっとで、こんなにキズが入ってしまう。
「ぷはー」
だめだめ、暗くなってるぞ。
私は、ふと思い立って、昨晩ひとみちゃんが私につけた痕を数え始めた。
ここでしょ、それからここ……あっ、あっぶなーい。
こんなとこ、シャツの襟が開いてたら見えちゃうじゃんっ。
- 729 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:17
-
赤いしるしは、うれしいしるし。
ひとみちゃんの唇が、たしかにそこに触れた証拠。
じんわりと幸福な気持ちが広がってきて、ざぶりと湯船からあがり、
手鏡をつかって肩先とか、腿の後ろの方とかも確かめてみた。
記憶のとおりにそれらは律義に残っていて、
それどころか強くつかまれた時の指の痕らしき小さな内出血まで発見しちゃったり。
「乱暴だなあ」
嫁入り前のカラダなのに。
責任とってもらっちゃうよっ? なんちゃって。
それから、私はわしゃわしゃと髪を洗いながら、
今度は自分がひとみちゃんにつけた痕について思いをめぐらせた。
鎖骨の下のところでしょ、胸のわき、それから内股のとこ……
耳のうしろにもつけようと思ったら、「それはダメ」って逃げられちゃって。
んー、ひとみちゃんの髪の長さなら、うまく隠れると思ったんだけど。
- 730 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:18
-
血管が透けちゃいそうなくらい真っ白な肌。
その肌にいっぱいキスすると、ピンク色に染まってくるのが好き。
ひとみちゃんがドキドキしてるのがわかる。
気持ちいいと思ってくれてるのが、よくわかる。
友達だった頃には決して見ることができなかった切なげな表情。
脳みそが溶けちゃいそうなくらいかわいい秘密の声。
「ひとみちゃん、会いたいな」
その呟きは、ざあざあと流れるシャワーの音にかき消されていく。
私は安心して、もう一度、願いを口にした。
「ひとみちゃ〜ん、会いたいよぉ〜」
「は? なんか言った?」
ギャッ! お母さんだっ!
いきなりな声に振り返ると、お風呂のドアの磨りガラスに人影が映っていた。
ど、ど、ど、どーして脱衣所にお母さんがいるのっ?!
お母さんはノックもせずに、いきなりドアをカチャッと開けた。
キャアッ! 私は慌てて湯船に飛び込んで、
ばっちりキスマークがついている胸元を両腕で隠す。
派手に水しぶきがかかったお母さんは、かなり嫌な顔をした。
「なによ、失礼な子ねー」
「しっ、失礼なのはお母さんでしょー。ノックくらいしてよぉっ」
「なに恥ずかしがってんのよ」
呆れたような声。
ううううーーーー、さすがに不自然だったかしら。
そうよね、銭湯とか温泉とか、いつも一緒に入ってるもんね。し、失敗したかも。
- 731 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:19
-
かえってカラダのあちこちを見られているような気がして、
私はちょっぴりヤケクソ気味に声をあげた。
「それでっ、何なのっ」
「ああ、そうだ。あんた、さっきから携帯鳴ってるわよ」
「へ?」
「2回続けて鳴ったのよ。誰か急用なんじゃないの?」
ひとみちゃんだ。
てゆうか、ひとみちゃん以外、ありえない。
すぐにでもザブッとあがりたいところだけど、そうもいかず。
とりあえず、わかったというように頷くと、お母さんはドアを閉めかけて、
なぜかふと、もう一度私を見て、小さく首をかしげた。
「あんた、いくつになったんだっけ?」
「え? 19……」
「そう」
パタンとドアが閉まる。
ちょっと、なに今の。 そうって、それだけ?
なんなの、なんなの? なんの確認?
いやーーーーっ……!!!!!!!!!
- 732 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:20
-
よろよろとお風呂からあがり、台所に置いてあった携帯を確認すると、
ディスプレーには思ったとおり、ひとみちゃんの名前が残っていた。
自分の部屋に駆け込み、ぴったりとドアを閉めてからかけ直す。
何コールかあって電話に出たひとみちゃんは、眠たそうな声だった。
「寝てたの?」
『ん、ちょっと酔ってー』
「大丈夫?」
『ん』
「楽しかった?」
『まあまあ』
まだ目が覚めないのかぶっきらぼうなお返事だけど、
家に帰ってすぐに電話をくれたんだなあと思うとうれしい。
私は、「ひとみちゃぁん、大変だよぉー」と甘えた声を出した。
「もう、お母さんにバレたかもしんない」
『はあっ?!』
ボソボソと事の顛末を話すと、ひとみちゃんは電話の向こうで大笑いした。
ちょっとー、笑い事じゃないんですけど?
『なんだー、うちらのことバレたかと思ったじゃん。キスマークかよ。びっくりした』
「キスマークかよって、何よ」
『蚊に刺されたとか言っとけば?』
蚊に刺されても、あんなふうになりませんっ!
てゆうか、そういういいかげんな説明が通用するの、ひとみちゃんちだけだから。
- 733 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:21
-
あー、気づかれてないといいけどなー。
うちのお母さんは、気づいても言わないような気がする。
でも、当たり前だけど、相手は誰?ってすごく気にするし、心配すると思う。
それで私の狭い交際範囲で絞り込まれたら、
あっという間にひとみちゃんだってバレちゃうよ。
『そうかなー。昨日とか撮影だったんだし、誰と会ったかなんてわかんないじゃん』
「そうだけど」
『たとえばイケメンのカメラマンとかー。あっ、なんかムカついてきちゃった』
「バカ」
ヤキモチめいたひとみちゃんの軽口に、私は思わず笑った。
それから、この人、妙に考えがまわるのよねと、ちょっと呆れる。
これだから嘘がうまいんだわ、きっと。
「ちょっと、今日、浮気とかしなかったでしょうね」
『なにそれ、信用ねーなー』
「ないよ、そんなの」
ひとみちゃんは軽やかに笑う。私も笑う。
うそうそ、信用してるよ。
でも、今日あなたのファンの女の子が来てたことは、教えてあげない。
あれ。これって、信用してないってことかしら?
- 734 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:22
-
ううん、違う。違うと思う。
私はさ、なんか自信がないんだ。
色は黒いしさ、鼻は低いしさ、顎はちょっと出てるしさ、
アニメ声だし、キショくて、ウザくて、
それで世界もなんかやたら狭いみたいじゃん……?
チラと時計を見た。
10時……、もう10時、まだ10時……
「あ、そびに行ってもいい?」
どうしてか言葉が、喉にひっかかってしまった。
ひとみちゃんは、『んんー?』と考え込むような声を出す。
『今日は、もう眠いかも』
「そっか」
だよね。昨日も遅かったもんね。
『明日の朝、ガッコ行く前に、店に顔出すよ』
やさしい声が、どうしてか息苦しいような気持ちになった。
気づかわれているようで、切ない気持ちになった。
- 735 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:22
-
「いいよー、ちょっとでも寝たいでしょ?」
『そりゃ、そーだけど』
「夜、行くし」
『そ?』
あくびまじりの“おやすみ”が聞こえて、プチンと携帯が切れた。
とたんに私は後悔しはじめる。
あーあ、せっかく朝、会いに来てくれるって言ってくれたのに。
この性格、なんとかならないかなあ。
あまのじゃく? 意地っ張り?
もてあます、自分のココロ。
- 736 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:23
-
まだ眠る気にはならなくて居間を覗くと、お母さんがちゃぶ台の前に座って
ポテトチップなんてつまみながら、ニュースを見ていた。
その背中がやけに小さく見えて、ドキンとする。
そういえばお母さんは、夜いつも一人だね。私が出かけちゃうから。
だけど、何も文句を言わないね。
お母さんは私に気づくと、いつもと変わらない笑顔を見せた。
平気かな? キスマーク見つかってなかったのかな。
「電話、大丈夫だったの?」
「あ、うん。なんか、撮影で会った人から」
なんとなくひとみちゃんからだと言えずに、余計な嘘をついた。
「あんたがモデルねぇー。まあ、好きにすればいいけど」
「カメラマンさんに、美人だって言われたよ」
「お母さんの若い頃の方がきれいよ」
「はいはい」
「ほんとよぉ、今はちょっとお腹出ちゃったけど」
「寝る前にポテチなんて食べるからでしょ」
お父さんとは、どんな恋をしたの?
私が生まれて、すぐに事故で死んでしまったお父さん。
その時のお母さんの絶望を思うと、ひどく胸が痛む。
ひとみちゃんと恋人になって、時間が経てば経つほど
お母さんが心の奥底に秘めた悲しみの色がわかるような気がする。
生活がたいへんでも、再婚せずに頑張った気持ちも。
- 737 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:24
-
一途なとこ、似てるのかな。親子だもんね。
しみじみしていると、ふいにお母さんが私の心を読んだようなことを言った。
「あのね、お父さんと会ったのは、二十歳の時なのよ」
「え?」
「トメ子が一徹さんと会ったのも二十歳でしょ?」
「そうだっけ」
「そうなのよ。きっとあんたも二十歳で会う人と結婚するわよ〜」
私は絶句した。
さっき、歳を聞いたのはそういうこと……
お父さんと恋に落ちた年齢に、特別な意味を持たせたがるお母さん。
その気持ち、わかるけど。
私はあいまいに笑った。
あのね、お母さん。私、結婚しないよ?
好きな人がいるの。お母さんもよく知ってる人。
その人とは結婚できないから、私、しないの。ごめんね。
心の中の呟きは、唇じゃなくて、涙腺から溢れ出しそうになる。
今日はおかしな日。なんだか胸が苦しいの。
- 738 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:25
-
しばらくたわいもない話をしてから、
笑顔でおやすみを言って、部屋に戻った。
「ひとみちゃん、おやすみ」
いつも一緒に寝ているピンクのプーさんにキスをする。
もう一回。なんとなく私は、少し唇を開けて、ちょっと舌を出してみた。
短く起毛した布地が、ざりっと舌先にあたる。
しかたない。プーさんはぬいぐるみだから。
ひとみちゃんじゃないから。
我慢していた涙が、頬に、ぽろんと流れた。
「ばかだなー、1日くらい」
プーさんを抱きしめる。
お母さんなんて、永遠にお父さんと会えないんだぞ。
だけど、私は寂しくて。
今日はとても会いたかったの。
あなたのファンの子が、お店をじっと見てたんだ。
お友達があんまりいないことに気づいたんだ。
指輪にね、いっぱいキズがついてたんだ。
あなたにまた意地を張っちゃったんだ。
お母さんがね、二十歳で会う人と結婚するって言うの。
- 739 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/03/25(木) 14:26
-
止まらない涙が、プーさんに染み込んでいく。
ひとみちゃん、愛してる。愛してます。
私たち、ずっと一緒にいられるよね?
今すぐに駆け出していきたい、あなたのところへ。
こんなに近くにいるのに、叶わないことが、悲しかった。
いつも一緒にいるのに、口に出せない恋が、不安だった。
- 740 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/25(木) 14:26
-
本日はここまでといたします。
- 741 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/25(木) 15:07
- 乙です。
>739の最後の一行に泣きそうになりました。
私もね、そんな恋をs(長文のため以下略)
- 742 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/25(木) 18:36
- 更新、お待ちしておりました。
更新されてて、やったー!と思って読み始めて
読み終わるとなんかすごく切ない気持ちに浸ってて‥‥うまく言えないですケド。
雪ぐまさんの書く小説が大好きです。
お忙しいと思いますが、マイペースでどうか書き続けてください。
- 743 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/25(木) 20:42
- トメちゃん切ないねぇ・・・
なんかじんとしちゃいました
- 744 名前:プリン 投稿日:2004/03/25(木) 21:57
- お疲れさまです!
待ってましたぁ!!!
トメっち切ないよぉ・・゚・(ノД`)・゚・。
でも、なんだかちょっと可愛いw(ぇ
では。次回の更新楽しみにしていますね。
頑張ってください!!!!!
待ってますからぁ〜♪
- 745 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/27(土) 09:39
- 一途って感じが心にしみまつ。こういう描写がちゃんとあるとこに
雪ぐまさんのでっかい愛を感じます。
- 746 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/27(土) 12:41
- お母さんの言葉は、「戒め」なんでしょうか、「愛」なんでしょうか?
切ない恋に身を焦がしている娘に、色々な道を示している?
梨華ちゃんを見守る大きな愛情を感じます。続きが楽しみです。
- 747 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/02(金) 19:42
- 恋愛っていいなぁーなんて気持ちになります。梨華ちゃん、せつないーー。
こんなにいろいろな気持ちを味あわせてくださって、雪ぐまさんありがとおお〜。
- 748 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/02(金) 22:45
- こんなに想える人に出会いたい…
なんて思ってしまった。でもせつないね。
- 749 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/06(火) 14:45
- 負担をかけない言い方で「更新待ってます」って伝えたいけど、
どう言えばいいのかわからなくてオロオロしている一読者です。
読み返してみて、雪ぐまさんの比喩(なになにみたいっていう表現)ってすごくいいなぁと思いました。
読むたびに味わいが増します。
- 750 名前:リムザ 投稿日:2004/04/07(水) 00:05
- お母さんの気持ちとトメっちの気持ちの交錯、
そしてyossyになったひとみちゃんとトメっちの気持ちの交錯。
・・・上手く描写するなぁと感嘆してます。
何気ない態度が相手を不安にさせてしまうことってありますよね。
続きを楽しみにしています。
- 751 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/07(水) 17:31
- 皆さま、あたたかいレスをありがとうございます。
どうにも多忙が解消されず、更新が滞りがちで申し訳なく思っています。
741> 名無飼育さん様
長文略な恋模様、その後いかがですか? さまざまに試練がありましょうが、
ぜひ乗り越えて愛をまっとうしてくださいませ。うちのトメっちも頑張っております。
742> 名無飼育さん様
お待ちいただきて恐縮です。励みになるお言葉、ありがとうございます。
( ^▽^)<これからもマターリおつきあいください。
743> 名無飼育さん様
( T▽T)(^〜^ 0)<泣くなよ〜
とか言ってあげてほしいですな。ほんとにうちの吉はもう……。
744> プリン様
(0^〜^)<ネガなとこがまたかわいいんだよ。
うちの吉もそんなふうに思っていそうですよ。
745> 名無飼育さん様
一途なのは石川家の血筋でございます。頑固トメ子さんも横暴な一徹に仕える日々。
( ^▽^)<一途! ←しかし、こういうことを自分で言うのはどうなのか?w
- 752 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/07(水) 17:32
- 746> 名無し読者様
娘の恋に気づいているんだか、いないんだか。謎のキャラ、トメママでございます。
しかし親の何気ないひとことって、けっこうグサッてくるんですよね……(T▽T)
747> 名無飼育さん 様
こちらこそ、あたたかいレスをありがとうございますうう〜。
(#´▽`)´〜`0)<恋愛っていいよ。 ←説得力ありすぎ。
748> 名無飼育さん 様
意外と身近にいるかもしれませんよ? うちのヨシトメみたいに。
でも、ここまで切ないモードに突っ込んでくのはトメっちならでは?(T▽T)<キショくないもん!
749> 名無飼育さん 様
お気遣いありがとうございます。大切に読んでくださって感激です。
定期更新がままならない状態ですが、細々と続けていく所存です。今後ともよろしくです。
750> リムザ 様
お久です♪ お褒めいただいて恐縮です。リムザ様のところのいしよしも、
お互いの想いのすれ違いが切ないですね。楽しみにしています。
それでは、更新にまいります。
- 753 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:33
-
へぇー、亜弥ちゃんと美貴ちゃんはシティホテルで初Hだったの。
すっごーーい!
「ルームナンバーも覚えてるもんねっ?」
「もー、いいじゃん亜弥ちゃん、恥ずかしーよぉ……」
「なんでぇ? 恥ずかしくないよぉ。すっごい素敵な思い出じゃんっ」
ぷうっと膨れる亜弥ちゃん。
そういうことじゃなくってぇ、と赤くなる美貴ちゃん。
今日は屋外での撮影。
新人モデルの私たちはカット数が少なかったから、
午後の陽射しが差し込む喫茶店で、ひとみちゃんとまいちゃんの撮影が終わるのを待っていた。
そして、えーと、女三人寄れば姦しいだっけ?
話はいつの間にやら、ちょっぴりHな方向へ。
- 754 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:34
- そっかー、シティホテルかぁ。
なんかかっこいいよねえ。
アニバーサリーって感じだよねえ。
……うらやましいかも。
「トメちゃんは?」
「へ?」
「だからぁ〜、よっすぃ〜と!」
まさか“まだ、なんにもしてなぁ〜い”とか言わないよね?
亜弥ちゃんがチラリと私を睨めつける。
やだ、なんで言おうとしたことがわかったのかしら。
私はコホンと咳払いをすると、小さく呟いた。
「えーー……内緒ぉ」
「なんでぇ? 照れることないじゃあん」
や、照れてるんじゃなくて。
うわーーん、言えないよぉ、場末のラブホだったなんて!!!
しかも、泥酔してて実はあんまり覚えてないし。
- 755 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:35
-
あーあ、私、なんであんなことしちゃったんだろ。
……あ、思い出しちゃった。
そうだ、ひとみちゃんと美貴ちゃんのこと知って。
あの時の、いきなり切りつけられたような衝撃を思い出して、
血が抜けちゃうみたいにスウッと背筋が寒くなった。
恋愛なんて興味なさそうな顔してたひとみちゃん。
私、ずっと見てたのに。
ひとみちゃんにはまだ恋人いない、
キスもしたことないって確信してたのに。
そして大人になったらいつか私となんて、勝手に見てた夢。
そりゃあ、あの頃はそんな夢が叶うなんて思ってはなかった。
どことなくボーイッシュなひとみちゃんだったけど、
でも、いつかカレシができる日とかきちゃうんだろうなって
頭のどこかで、ちゃんと覚悟してた。
だけど、カノジョなんてあり?
女の子が好きなの? なのに私じゃだめなの?
ねぇ、ずっと、こんなに傍にいるのに。
『べつに恋人ってわけじゃないし……、たいしたことじゃないし』
まるで知らない人みたいに聞こえた冷たい声。
ショックだった。
ひとみちゃんが好きな人なら、つらくても応援しようって決心したのに、
なのに、遊びなの? そんなことができる人なの?
あんなに毎日一緒にいたのに、私の目をすり抜けて、
ひとみちゃんはカンタンに手の届かないところに行ってしまった……。
- 756 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:36
-
「トメちゃん?」
「……あ、ごめん」
いけない。
思わず、ネガティブモードに入っちゃった。
美貴ちゃんが心配そうに首を傾げる。
「疲れた? 先帰る? あたしアヤカさんに言ってきたげようか?」
「あ、ううん違うの。……えっと、私ひとみちゃんとシティホテルとか泊まったことないなあって思って」
「あ、なーんだ。そんなの美貴たちだって1回しかないよねぇ?」
見た目よりも気さくでやさしい美貴ちゃん。
亜弥ちゃんを見つめる愛おしげな瞳。
もう何も心配することない、何も。
だけど、あの時、燃えさかる炎のように私を焼いた熱い嫉妬が、
まだ胸の奥底にくすぶってて消えない。
魅力的な美貴ちゃん。ハッとするほど凛々しい、その佇まい。
誰もが振り返るオーラを持った亜弥ちゃんに愛された女の子。
ひとみちゃんは、美貴ちゃんと、どんなふうに……。
- 757 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:37
-
「ねぇ、ほんとに大丈夫?」
「え?……あ、ごめん」
今度は亜弥ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかなぁ」
「え?」
「ごめんね、なんか思いっきしラブラブ自慢しちゃったぁ」
トメちゃんには、Hのこととか話しても引かれないかな〜とか思ってぇ。
かわいらしく舌を出す亜弥ちゃんに、私は慌てて手を振った。
「ううん、引いてるんじゃないよ。いいよ、もっと自慢して!」
「ふえ?」
「もうバンバン自慢してっ!」
それで、私の不安をかき消してよ。
もう二度とあんなことはないと。
急にテーブルに身をのりだした私を見て、
亜弥ちゃんと美貴ちゃんは不思議そうに顔を見合わせた。
ちょっとぉ、ほら、聞くっていってるじゃない。ラブラブしてよぉ。
「おっしゃ、ばっちこーい!」
「……ねぇ、そういうセリフって、よっすぃ〜の影響?」
「……五本指ソックスとかもヤバイよ」
え? 五本指ソックスは冷え性にいいんだよ。
美貴ちゃんも使ってみたら?
- 758 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:38
-
「なんか、トメちゃんって明るいんだか暗いんだか、よくわかんないなー」
亜弥ちゃんが腕を組んで首をひねった。
美貴ちゃんもウンウンと頷く。
え、そお?
「一緒に海行った時は、テンション高いなーって思ったんだけど」
「美貴もどっちかっていうとキショ……じゃなくて、明るいタイプかなと思ってたんだけど」
「く、暗いかな?」
「うーん。かと思うと『ばっちこーい!』だし」
「ばっちこーい?」
いきなり降ってきた不思議そうな声に振り返ると、
いつの間にか私の席の後ろにまいちゃんがいて、首をかしげていた。
どうやら撮影は全部終わったみたい。
喫茶店の入口のドアが鳴って、ひとみちゃんも店内に入ってきた。
「おまたせー」
「おー、待ってたよ、まいちゃん、よっちゃん」
「苦しゅうない、座れ、座れ」
四人掛けのテーブルだったから、イスをひとつもらって
まいちゃんがお誕生日席に、そしてひとみちゃんは私の隣へ。
まいちゃんもひとみちゃんもどっちがどっちに座るとか譲り合ったりせずに、
当たり前みたいにその席を選んだのが、なんだかうれしかった。
そうだよ、ひとみちゃんは私の隣。
そう決まってるんだから。
- 759 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:39
-
「お疲れさま」
「おー」
のどが渇いていたのか、ひとみちゃんはこれまた当たり前みたいに
私のアイスミルクティーを引き寄せて、ごくごくと飲んだ。
きゃっ、私のものは、あなたのもの?
なんかうれしいっ!……って変かしら?
「すいません、トメちゃん、顔がやらしいんですけど」
か、顔がやらしい?
いきなりなんてことゆーの美貴ちゃんっ!
思わず頬をおさえた私に、みんなは大爆笑。
くうっ、大人になってもやっぱり私ってイジラれキャラなのね……。
「よっすぃ〜とトメちゃんって、なんか夫婦っぽいよね」
「うん。もう子供ふたりくらいいそうだよね」
やだ、夫婦だなんて〜〜。
亜弥ちゃんと美貴ちゃんって、けっこうからかってくるタイプなのね。
私だけじゃなくて、ひとみちゃんまで思いっきり赤くなってる。
「なんだ、それ」なんて、照れくさそうに呟きながら。
でも全然、悪い気はしないんだ。
寄り添って歩いてたって、誰にも気づかれない私たちの恋。
こんなふうに誰かにからかわれるのって新鮮。
たぶん、亜弥ちゃんと美貴ちゃんもそう思ってる。
だから、まだよく知らない私にHな話を振ってきたりするんだ。
時には思いきりノロケてみたくて。
- 760 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:39
-
「ねえ、ひとみちゃん。ふたりのシティーホテルの話、知ってる?」
「ああ、初めてのって話ね。ったく、よくやるよねー」
「なによ、いいでしょ? そういうよっすぃ〜たちはどこなのさ」
「うちら? ラブホだよ」
「ええーーー?!」
「ちょ、ちょっとひとみちゃんっ!」
「あれ、内緒だった?」
私の肩に腕をかけて、にやにや笑うひとみちゃん。
もう、内緒に決まってるでしょ! カッコ悪いじゃん!
「トメっちが誘ったくせに」
「えっ、そうなの?」
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉ!!!」
もうこの話はおしまい!
そう叫んでひとみちゃんの口を両手でおさえた私を見て、みんなが大笑いした。
ちょっとぉー、もぉ、また笑われちゃったじゃん!
ひとみちゃんのバカッ! デリカシーないんだから、もう!
「なんか不思議な感じー。あたしだけ恋人がカレシだ」
ひとしきり笑った後、まいちゃんがふと呟いた。
そう言えばそうだね。
残る4人は顔を見合わせる。
こういうシチュエーションって、すごくめずらしいかも。
カノジョがいる女の子のほうが、数が多いなんて。
- 761 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:40
-
「男の子とつきあうって、どんな感じ?」
亜弥ちゃんが興味津々って顔で、まいちゃんに訊く。
そして私は見逃さなかった。その瞬間、美貴ちゃんがかすかに嫌な顔をしたことを。
あー、ヤキモチやいてるんだ?
さっきからツッコまれっぱなしだったから一瞬やり返そうかと思ったけど、
ちょっとばかり微妙な問題かなと思ってやめておく。
「どんな感じって」
まいちゃんが困ったように笑った。
「あたしのほうが訊きたいよ、女の子とつきあうってどんな感じ?って」
あたしたちは再び、顔を見合わせた。
どんな感じ? 少なくとも私には説明できない。
だって、ひとみちゃん以外、知らないし。
ちょうどその時、ひとみちゃんたちがオーダーしたアイスティーが運ばれてきて、
テーブルは一瞬、しんと沈黙に包まれた。
微妙に気まずい空気に、まいちゃんが慌ててフォローする。
「あの、ヘンとかそういうことじゃなくってさー」
あたし、カレシと全然続かないからさ。
みんな2年とか続いてるんでしょ?
うらやましいなーって思って。
そんなにいいのかなーっていうか。
- 762 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:41
-
まいちゃんの言葉に、ホッと場が緩む。
いつもは気にしないけど、時々、当たり前じゃないと感じる私たちの恋模様。
周囲の人のなにげない言葉に、胸の奥がフッと曇る。
たとえば、お母さんが口にする“結婚”とか、ね。
「続くっていうか、もともと友達だからー」
「うん、気が合うから好きっていうかー」
「でもさ、友達からどーしたら恋人に転がるのか、それがよくわかんないんだけど」
まいちゃんはなかなか鋭い。
私たちはそれぞれに頬を赤らめる。
えっとね、それはね、まいちゃん。
キスしてみたいと思ってしまった。
独占したいと願ってしまった。
彼女の美しい横顔に見とれ、やさしい声に胸を震わせ、
いつの間にか彼女のいない毎日なんて考えられなくなって。
「まいちゃんも、きれいだなって思う女の子、いるでしょ?」
「そりゃあ、いるけど」
「キスしてみたいとか思わない?」
キスぅ?
まいちゃんは、むずかしい数学の問題でも解くような顔をした。
恋は男の子とするもの。
たぶん、まいちゃんの頭のなかにそうインプットされてる。
私も何歳かまではそう思っていたんだよね。
いつから消えちゃったのかなあ、その情報。
- 763 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:42
-
「女の子にキスしたいとか思ってもいいのかな?」
「いいんです!」
まいちゃんの疑問に、なにやら張りきって答える亜弥ちゃん。
「とっまらない、愛はも〜止めちゃいけなーい♪」
「でもさー、きれいだと思う女の子って、よっすぃ〜なんだけど」
ガタン、と私は立ち上がった。
「それはダメーーーッ!!!」
「ぎゃははは! 冗談だよ、冗談っ!」
トメちゃんって、超からかいがいあるよねー。
そう言って笑い転げるまいちゃんの肩をビシビシ叩く。
冗談でもダメッ! 心臓が壊れちゃう!
「ごめん、ごめんって」
「もー! もぉぉぉぉ!!」
「あはは。いや、きれいだって思うだけなら、みんなのこときれいだって思うよ?」
でも、キスとかって思わないな。
まいちゃんは順繰りに私たちの顔を見て、首をかしげる。
そっか。私も亜弥ちゃんや美貴ちゃんがきれいだからって
積極的にキスしてみたいとは思わないかも。
- 764 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:42
-
「好きって複雑だね」
「うん」
「まいちゃんは、今のカレシのどこが好き?」
「そーだなぁ……」
「あのねー、まつーらはねー、みきたんのどこが好きかってゆーとねー」
「ちょっと亜弥ちゃん、まいちゃんの話、聞きなよ」
やおら恋について語り合いはじめた私たちを尻目に、
ひとみちゃんはいかにも興味ねーって顔をして、窓の外を眺めた。
ロマンチストだとか言うくせに、あんまりこういう話にのってこないよね。
照れくさいのかなあ。すこし物足りない。
私のどこが好きかとか、知りたいのに。
だけど小さな不満は、あなたの横顔に音もなくかき消されてしまう。
気持ちのいい日差しに溶けてしまいそうなひとみちゃん。
茶色っぽい瞳が、ますます薄く透けてみえるね。
すっごく、すっごく、きれいだよ。
かっこよくて、かわいくて、ほんとは大きな声で世界中に自慢しちゃいたい恋人。
ストローをくわえた唇のやわらかさを、私はもう知ってるの……
「……見とれちゃってるよ、オイ」
「え?」
呆れたような美貴ちゃんの呟きに、あわててみんなのほうを振り返る。
そこに待ってたのは、冷やかしまくりのニヤニヤ笑い。
- 765 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:43
-
「ごちそうさま」
「あー、アツイアツイ」
「お邪魔虫は帰ろっか」
「そだね」
あ、ちょっと待ってよぉーーー!
立ち上がりかけた美貴ちゃんたちの服の裾をわしっとつかむ。
美貴ちゃんは振り返ってニヤッと笑うと、思いがけないことを言った。
「トメちゃん、ケータイ番号教えて。メアドも」
「え?」
「もう友達、でしょ?」
美貴ちゃんは、なんとなく含みのある視線で私を見つめ、
甘えるように、そしてちょっとばかり不安げに、軽く首をかしげた。
あ……、そうか。
私は、すこし反省する。
きっと無意識のうちに美貴ちゃんにつくってた壁。
それを何とかのり越えたいと思ってくれてる彼女。
美貴ちゃんだってきっと気まずいのに、手を伸ばしてくれている。
うん。美貴ちゃんっていい人だ。
いつまでも過去に嫉妬してちゃ、いけないね。
私は美貴ちゃんの目をまっすぐに見つめ返して、微笑んだ。
「うれしいな。私、友達いなくて」
「ははっ、何それ?」
「あっ、まつーらにも教えて?」
「あたしにもー」
- 766 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/07(水) 17:44
-
寂しかったケータイのメモリに、いきなり3つも増えた番号。
彼女達は飲み物代をテーブルに置いてほんとに帰っちゃったけど、
だけど次の撮影で、必ずまた会えるね。
電話してもいいし、メールも出していいんだよね?
「モデルの仕事、やってみてよかったでしょ」
何度も携帯をスクロールしてみる私を見て、
ひとみちゃんが満足げにそう言った。
もしかして心配してくれてたのかな、世界の狭い私のこと。
「ミキティもさー、いいやつでしょ?」
「そうだね」
「でっしょー? 仲良くなれると思ったんだよねー」
なにやら得意満面のひとみちゃん。
何よ、それ。思わず苦笑する。
ねえ、どうして私と美貴ちゃんがずっと会えなかったか、わかってる?
「あのねえ、ひとみちゃん」
もとはといえば、ひとみちゃんがいい加減なのがいけないんだからね?
そうビシッと釘を刺すと、
ひとみちゃんはバツが悪そうに肩をすくめて鼻の頭を掻いた。
- 767 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/07(水) 17:45
-
本日はここまでといたします。
- 768 名前:名無しぽき 投稿日:2004/04/07(水) 18:02
- リアルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
お久しぶりです。
友情と愛情ってホントステキだなぁ、としみじみ思ってしまいました。
- 769 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/07(水) 23:10
- あーよかったーーー、あの人とあの人の関係がちょろっと心配だったからー。
そういうとこへの目配りとか繊細で感動です。青春群像ドラマなところも好きです。
更新、うれしいにゃ。
- 770 名前:ゆんせ 投稿日:2004/04/08(木) 23:41
- お久しぶりです!
ちょっと留学してたもので、ずっと読めませんでした。
久々に読んで、相変わらず雪ぐまさんの文章はいいなって
おもいました!
最近、忙しいようなので体に気をつけて執筆がんばってください!!
- 771 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/09(金) 13:08
- 新曲のよっちゃん、最高ですな。(^〜^ 0)<だろ?
ボーイッシュ梨華ちゃんも新鮮。(^▽^ )<男前といえばオールバックよね!
768> 名無しぽき様
お久です♪ あやや&ミキティも久々の登場でした。
もうすぐごっちん&紺野も登場いたしますよ〜。なんか友情物語っぽくなってきたな……
769> 名無飼育さん様
レス、うれしいにゃ。眼光鋭いあの人ですが、
なかなか気配り上手さんではないかと思っております。
(^▽^)<もう平気!……たぶん。
770> ゆんせ様
お久です♪ 留学ですか。ハイソな香りでございますな〜。
お褒めいただきありがとうございます。またよろしくお願いしますね。
それでは、更新にまいります。
- 772 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:09
-
「うっそ。これ、梨華おばちゃん?」
「おばちゃんじゃないでしょ、梨華お姉ちゃんでしょっ」
「うっわー、おばちゃん、別の人みたいや〜」
あいかわらず口が悪いひとすじとふたすじ。
雑誌に載った私の写真に真剣に驚いたみたいで、
目を真ん丸にして、口をあんぐり開けて、
ついでに鼻水も垂らしながら、開いたページと私とを何度も何度も見比べてる。
「アイコラってやつやで、絶対」
「フォトショップで加工修正してるのれす」
「ちょっとあんたたち、幼稚園児のくせに生意気なのよ!」
まったく、おませなんだから。
でも、そう言われちゃうのも仕方ないわ。
自分でもびっくりしてる、まるでアイドルみたいな自分に。
そのくらい素敵なフォトジェニックぶり。
名前はね、“Rica☆”にしたの!
ひとみちゃんは“トメっち”にしろってしつこかったんだけど、
そんなの絶対、変に決まってるじゃん?
「ホシ、いらねー」とか「kaじゃなくて、caって何だよ」とかブツクサ言ってたけど
“yossy”に言われたくないよねえ?
- 773 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:10
-
「へぇ〜、あの小さくて真っ黒で真ん丸だった梨華がねぇ〜」
トメ子姉ちゃんっ、真っ黒で真ん丸の過去はもう忘れて!
「あんたって美人だったのね〜」
「そんなぁ。カメラマンさんの腕がいいのよ〜、安部なつみさんって人なんだけど」
「あら、知ってるわ。個展やると若い子がたっくさん来る人でしょ?」
「そうそう」
「そんな人に撮ってもらえるなんて、すごいわね〜」
「ふん、くだらん!」
姉妹で盛り上がってたら、一徹さんがいきなり口を挟んできた。
ひとり苦虫を噛みつぶしたような顔。
ミーハーにはしゃぐ私たちが気に入らないみたい。
ぎょろりとした目で睨まれて、トメ子姉さんと私は首をすくめた。
「男は五分刈り! 女は三つ編み!」
「はい」
「モデルなんて虚業は、い・ま・す・ぐ辞めなさい」
それは無理。
私は小さく舌を出す。
もう1年間の専属契約、しちゃったもの。
一徹さんのゲンコツが飛ぶ前に逃げ出さなくっちゃ。
- 774 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:10
-
「そろそろ帰りまーす」
「こら、まだ話が途中……」
すたこらさっさと玄関から逃げ出す。
ドアを閉めた後ろで、ドンガラガッシャーンとちゃぶ台がひっくり返った音が聞こえた。
ごめんね、トメ子姉ちゃん、ひとすじ、ふたすじ。
今度、なにかご馳走するからね。
そう、焼き肉だってお寿司だって、何だっていいよ。
今の私は、ちょっとだけお金持ち。
写真うつりと同じくらい驚いたのが、銀行口座に振り込まれた金額。
それはうちの店のひと月の売り上げよりも多かった。
『専属契約料も一緒に入ってるからだよ。最初だけだよ』
『そっか。だよねぇ』
『ロクでもないもん買うなよ。ちゃんと貯金しときな』
ロクでもないものって何よ。
ひとみちゃんの言葉を思い出して、ひとりムクれる。
ほんっと失礼。でも、貯金しろだなんて案外しっかりしてるわ。
- 775 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:11
-
街路樹からガラスのカケラみたいに零れてくる木漏れ日が、
もうすぐ夏が始まるよと私に教えてくれる。
ああ、なんていい天気!
私は軽く深呼吸をして、街に向かって小走りに駆け出した。
ねぇ、ちょっとくらい使ってもいいよね?
なにか記念に買いたいの。
新しいことが始まった季節に、あなたとお揃いのものを。
ねっ、ひとみちゃん?
◇ ◇ ◇
- 776 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:12
-
「で、これをあたしに着ろと?」
ひとみちゃんは苦笑しながら私を見て、困ったように首をかしげた。
何よぉ、その顔。
私のプレゼント、気に入らない?
「ムダ遣いすんなって言ったのに」
「ムダ遣いじゃないもん」
なんでそういう言い方するの?
うれしくないの? 迷惑だった?
きゅっと口を結んでうつむいたら、
ひとみちゃんはクハハ……と変な声で笑った。
「いや、うれしいけどさ」
「じゃあ、もっと素直に喜んでよ」
「フクザツだなあ」
襟元のフリルをつまむ。
私のプレゼントは、お揃いのパジャマ。
すっごく肌触りが良くって透けそうに薄い、真っ白なコットンのワンピース型。
かわいいと思うよ。ひとみちゃんに似合うと思う。
お姫様みたいになるよ、きっと。
- 777 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:13
-
「うぇー、お姫様ぁ?」
ひとみちゃんは嫌な顔。
へんなの。男の子っぽ過ぎるよ、最近のひとみちゃんって。
「そっかなー?」
「そうだよ」
「嫌?」
「嫌ってわけじゃないけどー」
無理させてないか、気になっちゃう。
私のために男の子っぽく振る舞ってるのかなあ、なんて。
だったら、そんな必要ないんだけど。
「別に、そんなつもりじゃないよ」
「そう? ならいいけど」
「地なんじゃん? こーゆーのが楽」
ジャージ姿で、ガバッとあぐらをかいてるひとみちゃん。
お行儀悪いなぁ。乗っかっちゃうぞ。えいっ。
「重いよ」
そう言いながらも、あぐらの上にちょんと座った私を
後ろからやさしく抱きしめてくれる。
ひとまわり大きなカラダにもたれかかって、私はうっとりと目を細めた。
こうやってくるまれるの、大好き。
ひとみちゃんって、くまのプーさんみたいだね。
- 778 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:13
-
………むにゅ、むにゅっ。
- 779 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:15
-
へ?
いきなりのありえない感覚にこわごわうつむくと、
ひとみちゃんの手が私の両胸をしっかりと。
ちょ、ちょっとどこさわってんのよーーーーっ!!!
悲鳴をあげて膝の上から飛び降りた私に、ひとみちゃんはにやにや。
「別にいいじゃ〜ん、減るもんじゃなし」だって!
「な、何よいきなりっ!」
「ちょっとさわりたかったんだも〜ん」
「びっくりするでしょぉぉぉ!!」
「いーじゃん、もう何万回も揉んでんだし」
「もっ……」
「へへへ、乳首コリコリさせろ〜」
こ、このエロオヤジっ!!
思わず、そのへんに転がってたクッションをつかんで投げつける。
ひとみちゃんは、ヘラヘラしたまま軽々とそれをよけた。
「トメっちのおっぱいがいけないんだよ〜」
「はぁ?」
「さわって〜って言ってるんだも〜ん」
言ってないわよっ!
もう、そんなかわいい上目遣いしてもダメッ!
ああ、いったいいつからこの人はこんなエロエロになっちゃったのかしら。
もはやボーイッシュ超えてオヤジだよ、オヤジ。
そりゃあ昔からちょっとヘタレっぽいところはあったけど、
いつもクールでかっこよくってさ、でも純情で、
真里っぺの容赦ない下ネタに顔を赤らめたりしてたのに。
- 780 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:15
-
「時って流れるのね……」
「大人になったって言ってよ」
「うるさい、エロオヤジ!」
「ね〜、乳首コリコリ」
「ヤだ!」
ケチ〜〜〜。
ひとみちゃんは絨毯の上にごろんと寝転がると、クッションを抱えてジタバタした。
くうっ。私は唇を噛む。
くやしいけど、かわいいわ。
なんとなく、まだ友達だった頃のことを思い出す。
ひとみちゃんって、ふとした表情や仕草に甘えん坊な雰囲気があって、
たとえばお総菜をもぐもぐ食べてるほっぺたとか、
イスに座って無造作に足をユラユラさせるとことか、
ふわぁってアクビをした後にむにゅむにゅする唇とか、
そういうのに私はいちいち、キューッて心をつかまれちゃってたんだ。
これって、ひとみちゃん自身は気づいてないけど、
女ゴコロをくすぐる天然ジゴロの才能なんだと思うんだよね。
うーむ。せめて、気づかせないようにしなくっちゃ……。
- 781 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:16
-
よし、気を取り直して、本日の本題に入ろうっと。
そうよ、この提案のためにプレゼントはパジャマにしたんだから。
私はまだ床でグダグダしているひとみちゃんの鼻を、指先でチョンとつついた。
「ね、ひとみちゃん。このパジャマ持って、どっか旅行、行かない?」
「旅行?」
「一緒に行ったことないじゃん?」
「中学んとき、修学旅行で……」
「あれはみんなと一緒でしょ!」
もー、わかってないな。
二人で行こうって言ってるの!
「旅行ねぇ〜〜〜」
「ねぇ、行こうよ、行こうよ」
ったく、たまに金持つとこれだよー。
そんな憎たらしいことを言いながらも、
ひとみちゃんはにこにこ笑顔で約束してくれた。
じゃあ、試験が終わったらねって。
- 782 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:17
-
やったあ!
どこがいいかな。
ほんとは思いきってエーゲ海に抱かれちゃったりしてみたいけど、
旅行なんてろくにしたことないから、いきなり海外はハードル高いかな。
パスポートとか、持ってないし。
頭のなかで色とりどりのスロットがまわるみたい。
くるくる、くるくる、楽しい想像が
おもちゃ箱みたいな色彩にのって駆け巡る。
沖縄? 北海道? 屋久島も行ってみたいなぁ〜!
チャカチャカチャカチャカ……
「温泉」
いきなり、ひとみちゃんが起き上がって断言した。
「は?」
「熱海の温泉」
えーーーー? 私は顔をしかめる。
ちょっと近場すぎない、それ?
- 783 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/09(金) 13:18
-
「飛行機とか、やだもん」
「うそ、飛行機きらいなの?」
「あんなん飛ぶなんて、信じらんねー」
うっそぉ。
思わず目がテンになった私の顔を、
ニヤリと笑いながら覗き込んできたひとみちゃん。
「あたしって、すっごく女の子っぽいでしょ?」
「そ、そんなあ〜〜」
チーン、チーン、チーン。
頭のなかのスロットに、おそろいの浴衣姿の私たちがきれいに揃った。
ジャラジャラジャラジャラ。おめでとーございまーす。
賞品は、二泊三日の熱海温泉の旅でーす。
……はぁ、パジャマいらないじゃん。
- 784 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/09(金) 13:18
-
本日はここまでといたします。
- 785 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/09(金) 13:36
- 初リアルキt(ry
うわー、またまた展開が楽しみ。雪ぐまさんの視点(780とか)、すごいツボです。
- 786 名前:わく 投稿日:2004/04/09(金) 17:46
- ここんにちはっ!!!!
ジゴロなyossyにRica☆は萌え萌えですね。。。
エロオヤジ最高です・・・w
- 787 名前:時限爆弾 投稿日:2004/04/10(土) 00:55
- お久しぶりです、ご無沙汰しておりましたf^_^;
忙しい中更新、お疲れ様です。引っ越し&PC端末イカレでネット環境が今どーにもこーにもなんです(T^T)ぁぁ
でも今日は一気に読めて嬉しいです。 久しぶりに、雪ぐまさんの繊細な文章とユーモアに、癒されました。執筆頑張って下さい。
- 788 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2004/04/10(土) 22:44
- あ〜いいですねぇ、良すぎです!!
本当幸せになります。これからも雪熊さんのペースで頑張ってください。
楽しみにしております。
- 789 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/11(日) 14:23
-
785> 名無飼育様
ツボですか。やっぱりあなたも吉って天然ジゴロだと(ry
786> わく様
お久です♪ やっぱりわく様も吉ってエロオヤジだと(ry
787> 時限爆弾様
お久です♪ お引っ越し、お疲れさまでした。
今後とも、またドカーンとよろしくお願いいたしまする。
788> 名無し募集中。。。様
ありがとうございます。いしよしは、雪ぐまも書いてて幸せになります。
どうぞ、今後ともご愛顧のほどを。
それでは、更新にまいります。
- 790 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:24
-
「伊東に行くならハ・ト・ヤ♪ 電話はヨイフロ〜♪」
「え〜〜〜?」
「海底温泉カッケー!」
もういいよ、熱海でも伊東でもいいけどさ。
なんていうの? もうちょっとしっとりした風情のある旅館がよくない?
「むずかしーな、トメっちは」
「普通よっ!」
「はいはい、じゃあ任せるよ……おっ、あれ、取れそーじゃ〜んっ」
ひとみちゃんがウキョーと奇声をあげて駆け寄ったのは、
ゲーセンの前にあるUFOキャッチャー。
またあ? 私は呆れた声をあげた。
最近、駅前に出てくるたびに、ひとみちゃんはゲーセンに行きたがる。
人にはムダ遣いするなって言うくせに、ゲームはいいの?
なんて言っても、無駄みたいね。
ひとみちゃんは100円玉を台の上に並べて、もう夢中。
取りたがってるのは、名前もわからないアニメの人形。
どうせなら、プーさんとか狙ったらいいのに。
- 791 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:24
-
あーあ。
海底温泉カッケー!かぁ。
恋人になって初めてのクリスマスで、
あんなに一生懸命、私に夜景を見せようとしてくれたひとみちゃんは、
一体、どこに行っちゃったんだろう?
あのホテルのカフェ、素敵だったな。
「石川様、どうぞこちらへ」なんて、窓際の席にスーッて通されてさ。
支払い、大丈夫なのかなあなんてドキドキしちゃったけど、
でも、とっても嬉しかった。忘れられない思い出。
そういえば、去年のクリスマスイブは何したっけ?
ああ、そうだ。私がオーブンで鶏の丸焼きつくったんだ。
ん? そういえば、プレゼントはお揃いでキーホルダー買おうよって約束、
すっかり忘れちゃってるぞ………?
眉間に皺を寄せつつ、歩道でひとみちゃんが戻ってくるのを待ってたけど、
どうやら彼女は、狙いのものが取れるまで諦める気はないらしい。
あーあ、まったく。
ため息をついて腕を組んだその時、
ゲーセンには不似合いな二人が入口から出てきたのに気づいた。
- 792 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:25
-
「あれぇ、真希ちゃん、紺ちゃん」
どうしたの、こんなところで。
目を丸くした私に、真希ちゃんは「おっす!」とご機嫌に手をあげると、
楽しげに手に持ってたものを私にさし出した。
「プリクラ、撮ってみた」
うわ、3シートも撮ったの?
見るとそこには、やけにうれしそうな笑顔の真希ちゃんと、
どことなく緊張した顔で真希ちゃんに寄り添う紺ちゃんの2ショット。
「写真は苦手なんですが、真希様がどうしてもとおっしゃるものですから……」
紺ちゃんは、なぜか赤くなってブツブツ。
照れちゃって、なんだかかわいいな。
「ね、交換しようよ」
真希ちゃんが、ワクワクした顔で勢い込んで言う。
プリクラって交換するものなんでしょ?だって。
私は、思わず吹き出してしまった。
相変わらず、浮世離れしてるんだなあ。
- 793 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:26
-
「ね、交換」
「今、持ってないなー。あ、撮ればいいのか」
私は、まだUFOキャッチャーに夢中なひとみちゃんの袖を引っ張った。
んぎゃーーーっ!
ひとみちゃんが雄叫びをあげる。
「何すんだよ! ずれちゃったじゃんっ!」
「もー、いいじゃん。プリクラ撮ろ」
「プリクラぁ〜? あれ?」
真希ちゃんたちに気づいたひとみちゃんが、
不機嫌そうな顔を一転させてニコッと笑った。
あー、その笑顔、なんかムカつくぅ。
「ごっちーん、こんこーん♪」
なによ。文麿さんには素っ気なかったくせに、
真希ちゃんになったらやさしいのね。
ゲンキンだなあ。私は肩をすくめた。
ひとみちゃんって、どーも可愛い女の子に弱いような気がするんだよね。
「よっすぃ〜、プリクラ交換しよ」
「おー、いいねー。でもさあ、うちらってさあ〜」
ひとみちゃんが可笑しそうに私を見る。
あっ、アノコトは言っちゃだめだよっ。
私は、ひとみちゃんが余計なことを暴露する前に
プリクラのボックスのなかにグイグイ引っ張り込んだ。
- 794 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:26
-
「くくくくっ……」
「うるさいなー、笑うな」
さて。
私は心頭滅却して、機械と向き合った。
美白モードは……これか。
そう。私とひとみちゃんって、肌の色が全然違うから、
並んで撮るのがすっごくむずかしいの。
私にあわせて美白モード全開にすると、ひとみちゃんがオバQ化しちゃうし、
かといってひとみちゃんにあわせると、私がガングロギャルみたいに写っちゃう。
「別にテキトーでいいじゃん」
「だめっ。後に残るものなんだからっ」
ピポパポと調整に必死になる私を、いつもひとみちゃんはからかう。
ふんだ、ひとみちゃんには私の気持ちなんてわかんないわよーぅ!
「なんでそんなに気にするの?」
「うるさいな」
「かわいいのに」
「ちょっ、やめて」
褒めてくれるのはうれしいけど、赤くなったらますます黒く写るんだから。
- 795 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:27
-
「へえ?」
ひとみちゃんはニヤッと笑うと、やおら私の肩をぐいっと抱き寄せた。
ちょっ、何するのーー!!
オデコに唇を押しつけられて、反射的に目を閉じる。
パシャッ。
「あ……」
でき上がったプリクラは、門外不出のラブラブモード。
なのに、真っ赤になって慌てる私にかまわず、
ひとみちゃんはうれしそうにハサミを持って交換会をはじめる。
真希ちゃんは私たちのラブラブプリクラをしげしげと眺めて、
それからひょいと振り返って、おもむろに紺ちゃんに話しかけた。
「ねえ、紺野、もう一枚撮ろっか?」
「いえっ、あのっ」
紺ちゃんはすぐにその意味がわかったようで、
困ったように身をすくめて、曖昧に笑った。
撮りたいような恥ずかしいような。そんな感じ。
真希ちゃんは、そんな彼女がかわいくてしかたないというように目を細めると、
文麿さんだった頃を思わせるようなキザな横顔で、
さっさとプリクラボックスのなかに入っていく。
紺ちゃんが真っ赤になりながら、ちょこちょことその後を追いかけた。
- 796 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/11(日) 14:28
-
「なんか、やらしーな、あいつら」
ひとみちゃんはニヤニヤ。
私も思わず口元が緩んでしまう。
なんだか初々しいの、あの二人って。
でき上がったプリクラを、二人は見せてくれなかった。
ひとみちゃんが、なんとか見てやろうと真希ちゃんを追い掛けまわして、
真希ちゃんが笑って逃げ回る。
ひらひらとかすかに見えたそれは、
どうやらほんとのキスプリクラみたいだった。
- 797 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/11(日) 14:32
-
本日はここまでといたします。
☆おしらせ☆
ご愛読ありがとうございます。
少々、違ったテイストのお話を書いてみたくなり、
紫板に新スレを立ち上げました。
そちらもぜひ、お時間があるときにお読みいただけると幸いです。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/purple/1081660036/
同時に、『愛トメ』シリーズもまだまだ続きます。
よろしくおつきあいくださいませ。
- 798 名前:レオナ 投稿日:2004/04/13(火) 20:17
- 更新お疲れ様です。
紫板の、ほうも読んでます。
二つも大変だと思いますが、がんばってくださいね。
次回も、楽しみにしてます。
- 799 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/13(火) 23:32
- >>798 レオナ様
双方、お読みいただき恐縮でございます。我ながら無謀なことをはじめましたが、
どーしても辛抱たまらんって感じで……w しばし、マイペースで続けさせてもらいます。
よろしくお付き合いくださいませ。
さて、それでは更新にまいります。
- 800 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:33
-
真希ちゃんが教えてくれた旅館の名前を、さっそくメモする。
さすが旅慣れてる感じがするわ、真希ちゃんって。
「伊東じゃなくて、修禅寺温泉だけど」
「いいのいいの。ハトヤはひとみちゃんが勝手に歌ってるだけだから」
あれから4人でカフェに来ていた。
海底温泉への憧れをこなごなに打ち砕かれたひとみちゃんは、
ブーーッと膨れて、ぶつくさ言う。
「綾小路家おすすめの旅館なんて、うちらじゃ手が届かないんじゃないの?」
「そんなことないですよ。1泊2食で2万円くら……」
紺ちゃんはそう言いかけてハッと口を閉ざし、チラと真希ちゃんのほうを見た。
真希ちゃんが「話していいよ」というように鷹揚にうなずく。
「あの、先日、真希様と一緒に逗留しまして」
ポッと赤くなる紺ちゃん。
なるほどなるほど、二人で泊まったとこなのね。
そんなに照れることないじゃ〜ん。恋人同士なんだからいいのよ〜〜。
- 801 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:34
-
「それで、あの、そこは私でもお支払いができるお宿というか」
「えーー、そんなのマロちゃんに払ってもらえばいいのに。大金持ちなんだからさあー」
こら、失礼なこと言わないの!
私はあわててひとみちゃんを肘で小突く。
真希ちゃんは「もうマロちゃんじゃないもん」と、カラッと笑った。
「それに、もう大金持ちでもないよ〜。母親に親権が移っちゃったから」
それにしたって私たちよりはずっとお金持ちなんだろうな。
つまんない話だけど、やっぱ育ちの違いとかってあるのかなーって思っちゃう。
コーヒーを飲むだけでも明らかに違う真希ちゃんの優雅な仕草。
やわらかな目線も、どことなく威風堂々としてる。
「まあ、でも旅費はあたしが持つって言ったんだけど」
紺野って、けっこう頑固でさぁ。
肩をすくめた真希ちゃんの言葉に、紺ちゃんは曖昧に微笑む。
あ、なんか今わかっちゃったな、紺ちゃんの気持ち。
- 802 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:34
-
さっき紺ちゃんは、真希ちゃんの帰宅が遅くなることを綾小路家に電話していた。
そういう時の二人は恋人同士じゃなくて、やっぱりお嬢様とメイドさんって感じ。
いつも真希ちゃんの三歩後ろに下がってて、
あたしたちとの会話にさえもほとんど口を挟んでこない。
話す時も、真希ちゃんの顔を見てから遠慮がちに。
そりゃあ世の中にはいろんな関係ってあると思う。
トメ子姉ちゃんと一徹さんだって、あれですっごくラブラブなんだし。
だけど不思議なの。敬語で、どうやって愛を囁くのかしら?
『紺野、こっちおいで……』
『はい、真希様……』
……萌え。
じゃなくてーーー!!!!!(汗)
- 803 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:35
-
真希ちゃんの横顔を見つめる瞳は、どこか崇拝めいた静かな煌めき。
だけど、たまにはついていくばっかりじゃなくて、
連れてってもらうんじゃなくて、無理をしてでも対等に、
同じ場所に立ってみたいのかもしれない。
私たちみたいに、友達から恋人になったんじゃない二人。
「ね、真希ちゃんと紺ちゃんって、どっちから告白したの?」
「「は?」」
二人が揃って目を丸くする。
あれ? 唐突すぎた?
ひとみちゃんが足をバタバタさせて、ギャハハと笑い声をあげた。
「んだよトメっち、桂三枝みたいなこと訊くなよー」
「何よ、桂三枝って」
「新婚さんいらっしゃ〜い?みたいな?」
「いいでしょ、別に。気になったんだもん」
よく考えたら“YES・NO枕”って画期的なアイテムよね、
あれも子供の頃は何のことやらわからなくてお母さんに……ってことはどうでもよくてー。
ほら、こないだ美貴ちゃんたちと初Hのこととか、いろいろ話したから〜。
そういうことってなかなか話せないじゃん、うちら。ねっ?
- 804 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:36
-
「そう言えばそうだね」
そう言いながらも真希ちゃんは下を向いて、クックッと笑いをこらえている。
紺ちゃんは頬っぺたを真っ赤にして、テーブルに残ってたナチョスをばくばく食べた。
なによぉ、私そんなに変なこと訊いたかなぁ?
「だって、二人がどんなふーにラブラブなのか気になったんだもん……」
「ラブラブねぇ」
真希ちゃんはニッと笑って、
からかうように紺ちゃんの顔を覗き込んだ。
「超ラブラブ?」
「真希様」
たしなめるように軽ぅく睨む。
その笑いをこらえたような口元が、二人だけの秘密を匂わせて。
やだ、ちょっとぉ、こう見えてそーとーラブラブなんじゃない?
二人だけの時はもう全然ムード違ったりとかして。キャーー!
- 805 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/13(火) 23:37
-
「あはっ。まあ、それなり仲良くね」
「それなりってー?」
「んー、たまには温泉行ったりね。で、さっきの旅館の話なんだけどー」
あっ、話すり替えられちゃう予感。
けっこうシャイなのね、二人は。
亜弥ちゃんたちだったら、2時間は話しまくるよこの展開なら。
「駅から遠いけどすごく風情があるんだよ。もしよかったら、うちから予約しとこっか?」
「えっ? 悪いよ」
「気にしないで。お料理とか少しだけどサービスしてくれると思うんだ」
「マジー? じゃあ、お願い!」
真希ちゃんの言葉に無邪気に大喜びするひとみちゃん。
もう、お得なことに弱いんだから。
「ありがと。助かります」
頭を下げると、真希ちゃんは手を振って「やめてよ、サービスないかもしれないし」と、
いつものほにゃら〜んとした笑顔をみせた。
- 806 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/13(火) 23:38
-
本日はここまでといたします。
トメっち、興味しんしん。
- 807 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/14(水) 00:05
- トメっち、かあいいねぇ
温泉ワクワクしております。
- 808 名前:名無し23。 投稿日:2004/04/14(水) 00:20
- 更新、乙でございます。(紫の方も読ませていただいております)
またしてもところどころに小ネタ満載でイイですなぁ。
802-803でグフグフしちゃいましたですよ。
(自分も未だに海底温泉に行ってみたいんですけどねw)
この人たちが登場すると、一気に雰囲気がエレガントになりますねぇ。
いしよしと対照的でこれもまた楽しいです。
次回もまったりとお待ちしてます。
- 809 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/14(水) 06:23
- 修禅寺ではなく修善寺です。気になりましたすいません。
- 810 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/14(水) 06:23
- 修禅寺ではなく修善寺です。気になりましたすいません。
- 811 名前:時限爆弾 投稿日:2004/04/14(水) 18:39
- 紫雪共の執筆、お疲れ様です。さき程紫の方を読ませて頂いていたのですが、私はこのギャップに萌えW 雪ぐまさんは色んな色を持ってらっしゃるなあ。執筆頑張って下さい。
- 812 名前:名無しp. 投稿日:2004/04/15(木) 08:21
- よっすぃ〜も、トメっちも嬉しそう。
私もワクワクしてきます。
次回、楽しみにお待ちしていまーす。
- 813 名前:( T▽T ) 投稿日:( T▽T )
- ( T▽T )
- 814 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 00:40
- ( ゚Д゚)?
なんだかわからないけどスレ間違えたかと思った。
雪ぐま様、紫の方もこっちも更新お疲れ様です。
やっぱりさすが雪ぐま様めちゃくちゃ伝わってきます。
よっすぃとトメっちが実在するんじゃないかとまで錯覚起こし始めました…。
これからもがんばってください!
- 815 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/16(金) 17:53
- どうやらレスに誤爆があったようですね。
削除依頼を出してくださった方、ありがとうございました。
そして、この場を借りて。
管理人様、いつも迅速なご対応、また日々のサイト管理、ありがとうございます。
最近しみじみと思いますが、これだけのサイトを4年も維持運営してらっしゃるのは
なかなかどうして、ものすごいことかと……。ほんとうに頭が下がります。
807> 名無飼育さん様
(^▽^)<かあいい? ……どうも躁鬱が激しいうちのトメっちですが
今後とも何とぞあたたかい目でどうかひとつ。温泉でも飛ばしますw
808> 名無し23。様
海底温泉、なかなかシュールですよw お夕飯の時のショーとかも。
雪ぐまが行った時は美空ひばりそっくりさんショーでした。
恋人といくとアレかもしれませんが、友達同士だったらかなりおすすめw
809> 名無飼育さん様
ギャー!変換ミスです。申し訳ございません。ご指摘ありがとうございました。
811> 時限爆弾様
かわいいのも書きたい、切ないのも書きたいと心乱れておりまするw
いしよしがお似合いすぎるのがいけないんだーー!!w(#´▽`)´〜`0)
- 816 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/16(金) 17:54
- 812> 名無しp.様
まったくラブラブでございますよ。でも、時々キモチがすれ違い?
両想いにも、それなりに苦労はありそうです。
814> 名無飼育さん様
雪ぐまの脳内では、映画のように実写版で展開しておりますw
本当はそれをスクリーンに映してお見せしたいくらいw 毎度、拙い書きぶりで恐縮ですが、
今後ともよりお楽しみいただけるよう精進してまいります。
それでは、更新にまいります。
- 817 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:55
-
「あの、1泊2万円のお部屋でお願いしたと思うんですけど」
「ええ、ええ。それでかまいませんのよ〜」
うそぉ?
私とひとみちゃんは顔を見合わせた。
二十畳もありそうな広々としたお部屋は、専用庭に専用露天風呂までついた離れ。
こんな豪勢な部屋が1泊2食付2万円のわけないじゃんっ。
呆気にとられる私たちに、やけに眉毛がりりしい仲居さんはていねいに頭を下げ、
ではお茶菓子をもって参りますと、にこやかに去っていった。
はー、お茶菓子までくれるの。
これって、綾小路家効果なのかしら。
「ま、いーや。ラッキーじゃん」
「うん」
縁側に出て専用庭に出る窓を開けると、一気に自然の音が部屋に流れ込んできた。
あっ、あれがある、カコーンって鳴るヤツ。
なんだっけ? そうそう、シシオドシ。
私たちはしばし黙り込んで、すみずみまで手入れの行き届いた品のある庭を眺めた。
- 818 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:56
-
2泊3日の温泉旅行。
記念すべき初めての旅にしては近場過ぎるし、渋すぎるかなあって思ったけど、
着いてみたら、やっぱりすごくドキドキしてる。
こんなふうに落ち着いたところに二人きりなんて、これまでにないから。
私はそっとひとみちゃんの肩に寄り添い、指先をからめた。
「これって新婚旅行かなあ?」
「いや、違うでしょ」
だって、もう2年もつきあってんだよ?
なーんて、ひとみちゃんは素っ気ない。なによぉー。
そんなのつまらないと軽く肩をぶつけると、
ひとみちゃんは、ふとやさしい目になって私を見つめた。
「もう新婚じゃないけど」
「………………」
からめた指先を引き寄せられる。
ひとみちゃんの唇が、私の鼻先をかすめて唇に静かに降りてくる。
私は瞼を閉じて、そのやわらかい熱と乱れはじめる鼓動を感じた。
唇を重ねるだけの、ただ触れるだけのキスが、とても久しぶりだと思って、
胸の奥にこみあげてきた懐かしい切なさに、きゅっと眉を寄せる。
- 819 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:57
-
時が切り取られたように、未来でも過去でもなく、
今、ここに二人がいるってことを強く感じる。
私たちは唇と指先だけを触れあわせて、ひとつに繋がってるまるで輪のように。
聞こえるのは、風が揺らす木々のざわめき、そしてどこからか流れくる清らかな水の音。
カコン、とシシオドシが鳴って、ゆっくりとひとみちゃんは離れた。
「仲居さん、きちゃう」
「うん」
もう新婚じゃない私たちは、
なぜか照れくさくて目をそらしながら笑う。
遅すぎた新婚旅行のはじまり。
けっこう悪くないな、なんて。
- 820 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:57
-
窓を大きく開け放ったまま、私たちは部屋に戻った。
黒檀の重厚なテーブルを挟んで、座布団がふたつ。
「ひとみちゃん、上座に座ったら?」
「上座?」
「床の間があるほう」
目上の人が座るところ。
ご夫婦だと、旦那さんが上座らしいけど。
「あたし、旦那さん?」
「そういうわけじゃないけど」
「トメっちが座れば?」
「なんで?」
「いつも威張ってるから」
威張ってないじゃん!
てゆうか、ひとみちゃんのほうが威張ってるでしょ!
まったくもー。ジャンケンしよ、ジャンケン。
- 821 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:58
-
結局、二人ジャンケンぴょん大会で勝ったのはひとみちゃん。
上座に座って、しばらく居心地悪そうにそわそわしてたけど、
そのうち、わざとらしくふんぞり返ったりし始めた。
私も悪乗りして、お茶なんかすすめてみる。
「あなた、お茶でもいかが?」
「うむ。淹れてもらおうか」
やだ、なんかひとみちゃん、一徹さんみたいだわ。
笑いをこらえながらテーブルの上に伏せてあった白磁の湯飲みを2つ並べ、
びっくりするほど香りのいい緑茶をコポコポとそそぐ。
しずしずと湯飲みを差し出すと、
ひとみちゃんは中をのぞきこんで、カッと目を見開いた。
「茶柱が立ってないよ!」
「立たないよ、そんなの」
「ぬるい!」
「保温ポットに言ってよ」
あはは。
トメ子姉ちゃん、毎日こんなことやってるのかー。
ううん、もっとちゃんと言うこと聞いてるのかな? なんか笑っちゃうな。
まじめに夫婦ごっこに取り組まない私に、ひとみちゃんは不満顔。
「ちゃんとノッてきてよー」
「だって、なんて答えたらいいかわかんないんだもん」
「だから、あなたごめんなさい!とかー」
「ふんふん」
「いけない私をぶって!とかー」
「……どこで覚えてくるのよ、そんなこと」
- 822 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 17:59
-
呆れていると、小さなノックが聞こえて、すうっと襖が開いた。
「お茶菓子でございます」
眉毛ビームな仲居さんが運んできたのは、新緑の芽を思わせる淡い緑の生菓子。
うわぁ、ちゃんとした和菓子ってこんなにきれいなんだ。
感激してパッとひとみちゃんを見ると、明らかに「小せぇ…」という顔をしていた。
お茶菓子を並べ終えた仲居さんが、
畳に三つ指をついて深々と頭を下げる。
「申し遅れました。私、今回お世話をさせていただきます“お豆”でございます」
「ま、め?」
「はい。“お豆”とお呼びください」
……変な名前。
敬称つけたら“お豆さん”じゃないの。フ○ッコじゃあるまいし。
まあ、いいわ。気を取り直して、私も頭を下げる。
「こちらこそ、2泊3日よろしくお願いします」
さあ、今こそ学習が生かされる時よ!
私は用意周到に2000円ほど仕込んでおいたポチ袋を
ポッケから取り出して、そっと手渡した。
お豆さんはていねい過ぎるくらいのお辞儀をして受け取り、笑顔で下がっていく。
ほっ、うまくいったわ〜〜〜。
- 823 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/16(金) 18:00
-
足音が遠ざかるやいなや、ひとみちゃんが不思議そうな顔で身を乗り出してきた。
ふふっ、質問カモーーンナよっ!
「何、渡したの?」
「心付けよ」
ふふん。
私は得意げに胸をそらす。
ちゃあんと調べてきたんだから。
『こんな時どうする? 生活のマナーQ&A』とか立ち読みして。
「心付けって?」
「チップみたいなものだよ」
最近はあんまり気にしなくてもいいらしいけど、
綾小路さんちのご紹介だから、顔をつぶすといけないし、一応ね。
「へー、トメっちっていろいろ考えてんのね」
「おほほほほ」
「頼りになるね」
きゃっ、株が上がったかしら〜〜〜〜?
こんなに気がきく私、奥さんにしたいでしょ?
ねぇ、ねぇ。なんちって。
「いけない私をぶって!とか言ってくれないからヤだ」
がーーん!
それって、最重要事項なんだ?
- 824 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/16(金) 18:01
-
本日はここまでといたします。
- 825 名前:名無し23。 投稿日:2004/04/16(金) 18:40
- 更新、乙でございます。
いやぁ〜、温泉旅行って何かワクワクドキドキしますよねぇ。
海底温泉行きたくなりました。美空ひばりそっくりさんショー、激しく観たいですわいw
昔々は熱海が新婚旅行のメッカだった時代もある訳で・・
離れに泊まるいしよしが今脳内再生されておりますですよ。
仲居さんがあの人で来るとはヤラレましたw いや、でも似合いそう。
新婚旅行であ〜んなことやこ〜んなことをするトメっちたちに期待してますw
- 826 名前:813 投稿日:2004/04/17(土) 00:05
- 雪ぐま様
先日、誤爆した者ですが、
少々パニクってしまったためすぐに謝罪できず心苦しく思ってます。
素敵なスレをお騒がせして本当にどうもすみませんでした…。
スレ運営の方どうぞ、これからもがんばってください。
- 827 名前:時限爆弾 投稿日:2004/04/17(土) 00:07
- 更新、お疲れ様です。
あやみきも好きな私としては今回、こうあのマナー部がですね、ポッポポポポポと脳内に過ぎりましてW 二人の掛け合いが新婚というか…熟年夫(ry 正反対な存在同士故に、お似合いなのかな。執筆頑張って下さい。
- 828 名前:名無しp. 投稿日:2004/04/17(土) 09:34
- ご挨拶がおくれました。申し訳ございませんでした。
以前、名無し読者で書かせて頂いてた者です。
今回から、ピードットに変えてみました。よろしくお願いいたします。
温泉旅行最高です。黒髪トメっちの浴衣姿はなまめかしいんだろうな。
よっすぃーも凛々しいんだろうな。見てみたいです。
- 829 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/18(日) 00:26
- 新婚&旅館&浴衣って…妄想材料が揃い過ぎなわけですがw
よしトメも期待大ですが、浴衣のごまこんもちょっと期待しちゃいたい
今日このごろです
- 830 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/22(木) 23:41
- 825> 名無し23。様
仲居さんのあの人、最近ますますいい味出してて注目してます(飯田さんのダンスの次くらいに)。
さてさて、妄想の赴くままにあ〜んなことやこ〜んなこと、させちゃいますよ〜w
826> 813様
わざわざご丁寧にありがとうございます。てゆうか、誤爆された文面と、
今回の文面のテイストが全然違っててびっくりw これをご縁にどうぞこちらのスレもよろしくです。
827> 時限爆弾様
(#´▽`)´〜`0) ←いつまでも新婚気分で、の図。
最近、リアルいしよしは絡みが少なめ? あやみきがラブラブなだけに、
ちょっと気になるところでございます。頑張ってほしい……(何を?)。
828> 名無しp.様
さようでございましたか。今後ともどうぞよろしくです。
いしよしの浴衣姿(しかも温泉の名前入りみたいなベタなやつ)、ぜひ見てみたいものです。
829> 名無飼育さん様
浴衣のごまこんですか、それもいいですなあ〜(妄想中)。
「紺野、一緒に温泉入ろっか…」「はい、真希様…」……萌え!(って、こればっか)。
今回の話にからめるのはむずかしいのですが、いつか実現したいですね。
それでは、更新にまいります。
- 831 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:42
-
ひとみちゃんは、恐るべきスピードでお茶菓子をたいらげてしまうと、
膝をポンと叩いて「よし、温泉入ろ!」と言い出した。
まあまあ、ちょっと待ってよ。せわしないんだから〜。
時計を見ると、夕方4時ちょっと前。
うん、この時間なら、さっと温泉に入って、
夕食までに温泉街を散策できるかもしれないね。
私は楊枝でちまちまと和菓子を切りながら、「温泉行くなら浴衣に着替えなきゃね」と呟いた。
「もう大浴場行きたいの?」
ひとみちゃんが、きょとんとする。
あれ、一緒に大浴場に行くんじゃないの?
「とりあえず、そこでいいじゃん」
ひとみちゃんは、庭の片隅にある専用露天風呂を指さした。
「大浴場はさ、夜ゆっくり入ろうよ」
「そう? でも……」
「そこ、一緒に入ったらいいじゃん」
「う、うん……」
別に、一緒にお風呂に入ったことないわけじゃないよ。
お家ではさすがにないけど、銭湯とか時々行くし。
だから裸になること自体はもう恥ずかしくはないんだけど、
でも専用露天風呂は、お家の湯船を二回りほど大きくしたくらいの桧風呂で、
あれじゃあ一緒に入ったら、ぴったり密着しちゃうような気がするのよね。
- 832 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:43
-
「お先ー」
ひとみちゃんは、あんまり恥ずかしかったりとかしないのかな?
ぽいぽいと服を脱ぐと、真っ白なお尻を隠しもせずに
ひょこひょこと庭に出ていく。
しっかり垣根があるから外から覗かれる心配はないと思うけどさ。
なんていうか、無防備。
あんまり待たせちゃいけないよね。
私は慌てて残りの和菓子を口に詰め込み、そそくさと服を脱いだ。
ふと思い立って、ひとみちゃんが脱ぎ散らかした服もたたんでみる。
うーん、奥さんごっこ、悪くないわ。
ひとみちゃん限定だけどね。
白いタオルでしっかりと前を隠して湯船に近寄っていくと、
ひとみちゃんはマンガみたいにタオルを頭にのっけてお湯につかり、
遠くの空を眺めながら、ご機嫌に鼻歌を歌っていた。
「ほい」
ひとみちゃんが片側に身を寄せて、私が入る場所をつくってくれる。
湯船に足を入れかけて私は、ひとみちゃんの視線が気になった。
「あっち向いて」
「なんで?」
「入るとこ見られるの、恥ずかしい」
- 833 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:44
-
なんだよ、今さらー。
ひとみちゃんが可笑しそうに笑う。
今さらでもなんでも、恥ずかしいものは恥ずかしいのっ!
だって、こんなに距離が近いし、まだ全然明るいしさ。
熱いのを我慢して一気に肩までつかると、ひたひたのお湯がざぶんと盛大にこぼれた。
並んで入った湯船は、やっぱりちょっと狭めで肩が触れ合ってしまう。
照れ隠しに、私もひとみちゃんの真似をしてタオルを頭に乗っけてみた。
「へへーー」
なーんか楽しいねー?
ぱしゃぱしゃと金髪を濡らして、ひとみちゃんがはしゃぐ。
名前もわからない小さな野鳥が、垣根に止まって私たちを見てる。
小さな桧風呂のなかに、タオルを頭にのっけて肩を寄せあう女子ふたり。
なかなか間抜けでかわいい図じゃないかな?
桧の香りを心地よく感じながら、透明なお湯を指ですくう。
露天風呂に入ったのなんて何年ぶり?
状況に馴染んでくれば、恥ずかしさよりも開放的な気持ちが
すがすがしく私の胸を駈け抜ける。
「おんせんですねぇー」
「おんせんですよぉー」
のんびりするぞぉー!
声をあげて私たちは笑いあう。
- 834 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:44
-
思いっきり目を細めた無邪気な笑顔とはうらはらに、
うっすらと桃色に染まったひとみちゃんのなめらかな肌は、やけに艶めかしい。
私は、そっとその肩に唇を触れた。
「きれいだなあ、ひとみちゃん」
「なに、急にー」
「色、しろーい」
夕暮れ前のやわらかな光の中でその乳白色は、眩しすぎるくらい。
何にたとえたらいい? 美しすぎる肌。
「きれいなのは、トメっちだよ」
お湯の中でふわりと体をまわされて、後ろからぎゅっと抱っこされてしまう。
うわあ。ちょっと、ちょっと、すっごい密着感なんですけど!
うなじに唇をつけられて、声を漏らしてしまいそうになる。
あーん、のぼせちゃうよお〜〜。
「…………あぁ…」
体があったまってるからかな、それともこんなシチュエーションだから?
首筋を這い回る唇が、いつもよりもたくさんカラダを芯を吸い取って、
私をくったりさせてしまう。目の前に見える緑の木々が、ぼんやりと霞みはじめる。
ふいに強く吸われて、私はお湯の中で甘く身を捩った。
- 835 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:45
-
「……アト、つけちゃだめだよ…」
「………………………」
「……ねぇ、だめ、だったら……」
「……なんで?」
なんてセクシーなアルト。
私は目を閉じる。ほんとは全然だめじゃないの。うれしいの。
だけど、世界には私たち二人きりじゃないのよ?
半分のぼせちゃって、ぼんやりしてる頭。
胸元にまわされたひとみちゃんの腕をゆっくりと撫でながら、
歌うように、“だめ”の理由を囁く。
仲居さんに見つかっちゃったら、恥ずかしいでしょ?
それに、家に帰るまでに消えなかったら困るもん。
「いいよ」
「よく、ないよぉ」
大きく息をついて、私はひとみちゃんのやわらかいカラダに寄り掛かる。
気持ちいい。すっごく気持ちいい。あったかいお湯のなかで、やさしい腕にくるまれてる。
大好きな人の腕の中に、生まれたままの姿で抱きしめられてる。
いたずら好きなひとみちゃんの指がHなとこに伸びてきて、
私は「コラ!」と笑って、その指をつかまえた。
「……お湯、入っちゃうでしょ?」
「どこに?」
「もう!」
わかっててからかうんだから!
私は、エイ!と足に力を込めて、ひとみちゃんの腕の中から脱出した。
- 836 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:46
-
「あ、逃げられた」
「ほんとに、のぼせちゃうもん」
「ちぇ」
ざぶんと、お湯からあがる。
水滴が跳ね上がって、唇を濡らす。
あ、ここの温泉、ちょっとしょっぱい。
……そう思った瞬間、血がスッと下りた感じがして、くらっときた。
「あ……」
「うわ!」
ふらっとよろけた私の腰を、ひとみちゃんが後ろから両腕を伸ばして支えてくれた。
ありがと。振り返ってニコッと笑うと、ひとみちゃんもエヘヘと満面の笑顔。
「楽しいねっ、温泉」
「うん」
- 837 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/04/22(木) 23:47
-
おっしゃ!と、男前なかけ声で、ひとみちゃんも立ち上がる。
そして次の瞬間、彼女も額をおさえて、大きくフラついた。
「う、わっ……?!」
「キャッ!」
ふらふら〜、ざぶーーん!
とっさに差し出した手を思いっきり引っ張られて、
二人仲良く、再び湯船のなかへダイビング。
うわぁ〜、あたしたち、ほんとにのぼせちゃってるよぉ〜〜!!
いしよし、温泉で溺死とか、シャレにならないわ!!
だめだ、とても出かけられないよ、これじゃあ。
やっとの思いで露天風呂から這い出し、畳の上に大の字に転がって、
私とひとみちゃんはキュウゥ〜と目を閉じた。
- 838 名前:雪ぐま 投稿日:2004/04/22(木) 23:49
-
本日はここまでといたします。
作者の脳みそも、のぼせちゃっててすいませんw
- 839 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/23(金) 00:17
- イイヨ〜イイヨ〜
- 840 名前:わく 投稿日:2004/04/23(金) 00:32
- 温泉最高☆
いしよし、温泉で溺死ってwかなり笑いました!!
- 841 名前:名無し23。 投稿日:2004/04/23(金) 01:18
- 更新、乙でございます。
くはっ!こんな時間に「ひとりむはむは」してしまいましたぁ〜
自分の脳内再生にほぼ忠実な行動でございました、ハイ。
あぁ温泉って何て艶かしいんだろう・・
息を潜めて第2ラウンドをお待ちしておりますですよw
- 842 名前:時限爆弾 投稿日:2004/04/23(金) 02:36
- いやん更新、お疲れ様ですW
なんなんですかこのバカッ(ry タイトルの如くみーんな溺れてますな(ノ゚゚)ノ。゚ゴポゴポ絡みの少ない二人は、きっとこんな感じに裏で絡み過ぎてて(以下自粛) 私も素敵な温泉旅行の続きを楽しみにしてます。執筆中、溺れずW頑張って下さい。
- 843 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/25(日) 07:51
- はじめまして!今日読ませていただきました。すごく引かれる作品だったので前スレから見たかったのですが…リンクしたんですが板が見つかりません(泣)
誠に申し訳ないですが愛するトメっちを1から読みたいのでどなたか前スレタイトルを教えてくださいm(__)m
- 844 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 08:21
- http://mseek.xrea.jp/snow/1070181553.html
だね
- 845 名前:843 投稿日:2004/04/25(日) 13:47
- 844様、ありがとうございますm(__)m
- 846 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/04(火) 02:34
- ご無沙汰でございました。さいたまコン、行ってまいりました。
よっちぃは神々しいばかりに美しく、梨華ちゃんは指先まで光が張りつめているようでした。
二人はもう完全に、モ娘。を引っ張っていく立場なのですね。
その自覚が、二人共に漲っているステージでございました。
839> 名無飼育さん様
イイっすか?w これからも、ばんばんいきますよ〜w
840> わく様
実際に死なれては世界の損失なので困りますが、
そんな見出しのスポーツ新聞、ちょっとおもろいなと思いましてw
841> 名無し23。様
完全なオヤジエロ妄想、ほんと申し訳ないw さてさて、こやつら第何ラウンドまでいたすことやら。
いやあ、温泉旅行って、ほんと艶っぽいものですねw
842> 時限爆弾様
そうですね、裏ではからみまくっていると雪ぐまは信じてるわけですが……。
二人が大人になっちゃって、バカップルぶりがなかなか見られないのは寂しい限りです。
843> 名無しさん様
初めまして。リンクが切れてて、どうもすみません。
倉庫行きになってたんですね。自分でも気づいてませんでしたw
844> 名無飼育さん様
フォロー、ありがとうございます。感涙でございます。
844様をはじめ、皆様に助けられて、なんとか書き続けております。
それでは、本日の更新にまいります。
- 847 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:35
-
海の幸に山の幸。
舟盛りの真ん中には、どっかーんと伊勢エビ&アワビ。
山の中の温泉なのに、なんかすごくない?
「ビール一本、入りましたぁ!」
お豆さんの張りのある声が、渡り廊下に響き渡る。
あーあ、ひとみちゃんったら、
未成年のくせにお酒なんか飲んじゃって、知らないんだから。
「トメっちだって、前、むちゃくちゃ飲んでたじゃん」
「あ、あれは特別よ!」
「あたしに日本酒差し出してさー、『飲めっ!』ってたいへんだったんだよぉ?」
あーれーはー。
私はツンと口を尖らせた。
あの時はしょうがないと思う。
だって、ひとみちゃんが超ひどいんだもん。
内緒で美貴ちゃんとHなことしてるし、私の好きな絵本も『シンデレラ』とか言うしさぁ。
「はいはい、『人魚姫』でしたね」
「そうだよ。もう、ひーちゃんはひどいよ」
「うわ、ひーちゃんってキモ!」
「キモ!とか言わないでってば!」
- 848 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:36
-
ブツブツ言いながらも、ひとみちゃんにビールをついであげる。
浴衣の袖がお料理につきそうで、ちょっと左手で押さえたら、
なぜかひとみちゃんが頬を染めて、にやあっと笑った。
「トメっち、色っぽいね」
「な、なによ」
「ホント、怖いくらいきれいになったよね」
キャッ! なによぉ〜、急にぃ〜。
飲んでもいないのに、たちまち頬がポッポとしてくる。
ひとみちゃんったら、もう酔ってるのかな。
いつも口が悪い人だから、ストレートに褒められると照れちゃう。……うれしいけど。
「トメっちも飲みなよ」
「うん、じゃあ、ちょっと飲んじゃおうかな」
縁の薄いグラスに、コポコポとビールをついでもらう。
白い泡に口をつけて、ちょっと顔をしかめた。
うえー、苦い。とてもおいしいとは思えないけれど、
ひとみちゃんと差しつ差されつでお酒を飲んでるって状況が、
なんていうんだろう、胸がドキドキしちゃう非日常。
- 849 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:37
-
お酒って、不思議だな。
視界がうるうると潤んで、ババーンと気が大きくなってくる。
じゃんじゃん飲んじゃうぞー!って気分になってくる。
「危ない危ない」
「なによぉ?」
「またラブホ連れてけっ!とか言われちゃう」
「ちょ、ちょっと」
やめてよ、ひとみちゃん! お豆さんが変な顔してるじゃないの。
女の子二人で温泉旅行なんて珍しくもないだろうから、
まさか私たちがコイビト同士だなんて気づくわけないと思うけど、
でも、気をつけなきゃ、ねっ、ねっ?
目配せの意味がわかってるのかわかってないのか、
ひとみちゃんはひたすらご機嫌で茶碗蒸しをつついてる。
そして、お豆さんが次の料理を取りにいった隙に、すっと真面目な顔になった。
「うちら、いつまで隠しとけばいいのかな?」
「え?」
「ずっと、友達のふりかな?」
私は絶句した。
酔ってるけど、うっすらと目尻を赤くしたひとみちゃんの瞳は真剣で、
ううん、酔ってるからこそ、彼女は本音を話してる。
どうしたの、急に。私はうつむいて、口の中で呟いた。
- 850 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:37
-
「友達のふり、イヤ?」
「嫌じゃないけどね」
「けど?」
「……ちょっとね、面倒な時もある」
もういいじゃんバレたってって、思う時もある。
ひとみちゃんはそう言うと、ぐっとグラスをあおった。
真っ白な喉が、ごくごくと動くのを見つめながら、
私は何て答えたらいいだろうって考えていた。
初めて会った時から、ずっとひとみちゃんに恋をしていた。
なんの不思議もなく、なんてかわいいんだろうって心惹かれた。
私にとっては、この恋はとっても当たり前で自然なことなの。
だから、邪魔されたくない。常識とか、良識とか、普通とかなんとか、
そんな傲慢な視線で、邪魔されたくないのよ。
「……バレたほうが、面倒じゃないかな?」
「ま、そうかもね」
ひとみちゃんは軽く肩をすくめると、伊勢エビと格闘しはじめた。
彼女が気を悪くしてないかすごく気になったけど、
飄々としたその表情はもう、さらりとこの微妙な話題を流しているように見えた。
- 851 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:38
-
ひとみちゃんって、よくわからないな。
男の子みたいだったり、女の子みたいだったり、
真面目だったり、テキトーだったりするの。
私は、急にあんなこと言われると、けっこう引きずって考えちゃうんだけど。
ほら、だってちょっと悲しくなっちゃった。
食事が終わって大浴場に行き、露天できゃあきゃあとはしゃぎながら私は、
意識の底のほうで、ずっとさっきのひとみちゃんの言葉が気になってる。
『ずっと、友達のふりかな?』
ちょっぴり欠けたお月さまを見上げて、ため息をつく。
まるで、私たちみたいね。欠けてたって月はきれいだけど、きれいだけど……。
- 852 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:40
-
「すみません、横、通ります」
「あ、はい。どうぞ」
私たちがつかっている湯船に、若いお母さんが赤ちゃんを抱っこして入ってきた。
周囲の人に声をかけながら、足をすべらせないようにそろりそろりと慎重に歩いている。
まるで、壊れやすい宝物を抱えてるみたいに。
その宝物を見て、ひとみちゃんがうわーっと目を細めた。
「すげ。爪とか、超ちっちぇー」
見て、ほら。
すっごくいいものを見つけたみたいに指をさすひとみちゃん。
私はビミョーだなあって思う。かわいいよ? そりゃあ、赤ちゃんはかわいいよ。
曖昧に笑った私になんて気づかずに、ひとみちゃんは楽しそうに話す。
「うちらも子供つくるかぁー」
「……どーやってよ?」
「科学の力で〜」
冗談キツイわ、ほんと。
今日の流れは、私をとことんネガにしちゃいそう。
はぁ、流しとけばいいのよね、こういう話って。
ひとみちゃんだって、深い意味があって言ってるわけじゃないだろうし。
だけど、私は思わずつっこんでしまう。余計なことをと思いながら。
- 853 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:41
-
「ひとみちゃんって、子供好き?」
「んー、母親とか、なってみたいなーって気もするね」
そう。
私はぱちゃりとお湯をすくって顔を洗う。
私、いつか捨てられちゃうかな? 怖いな、できないことがあるって。
どんなに好条件だって、恋っていつか終わる可能性を秘めてるものだと思う。
だから、条件が欠けてることが怖い。
私じゃ叶えてあげられないことがあるのが怖い。
ひとみちゃんのこと、ほんとに好きだから。
きっと愛してるから。だから、私でいいの?って、真剣に怖くなる。
ぐっと唇を結んで涙をこらえた瞬間、
ひとみちゃんがふいに私の顎を指で持ち上げて、自分のほうを向かせた。
「トメっち、変なこと考えてるでしょ?」
「え?」
「バレバレなんだよ」
ひとみちゃんは、私の目をのぞき込み、
困ったヤツぅというように片頬をきゅっと持ち上げて笑った。
- 854 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:42
-
「あのさ、あたしはトメっちがいいんだから」
「……………………」
「別に、ガキなんざいらねーよ」
「………だ、だってお母さんになりたいって」
「なりたいよ。なってみたかった」
ひとみちゃんは、ちょっと首を傾げてほほ笑み、
切ないみたいな、愛しいみたいな、不思議な目をした。
「でも、何を諦めたってトメっちが欲しいんだよ」
わかる?
照れくさそうにそう言って、彼女はそっぽを向く。
やだ、なんて大サービスなの、ひとみちゃん。まだ、酔ってるの?
あまりにうれしすぎる私の気持ちは、ひとりで勝手に照れてそんなことを考えてる。
だけどカラダは正直で、私の目からは温泉よりもしょっぱい涙がぽろぽろと溢れ出した。
「んだよー、こんなんで泣くか?」
「う、うるさいなあ!」
泣くよぉ。
私、いろいろ考えちゃうほうなんだから。
ひとみちゃんはいつだってへらへらしちゃってるけどさ。
だけど、すごく決まってたね、今の。
やる時はやるって、ほんとだね。
- 855 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/04(火) 02:42
-
「さて、そろそろあがろ」
「……ん」
「部屋に帰って、子供でもつくろーぜ」
バカ!
私は笑って、ひとみちゃんの肩を小突いた。
もう悲しくなかった。もう何も悲しいことはなくて、
ああ、この人を好きになってよかったなって、
私、見る目あるじゃん?なんて、じわっとあったかい気持ちが胸に広がってく。
ひとみちゃんって、わからない。
真剣なんだか、いいかげんなんだか、
やさしいんだか、いじわるなんだか。
でも、すっごく大きな心で、おおらかな愛で、
私をいつも助けてくれる。支えてくれる。救いあげてくれる。
あなたがいるから頑張れるって、月よりも白い背中を見ながら息が苦しくなるほど思った。
欠けてるから、条件なんかじゃなくて、ほんとに愛されてるってわかると思った。
- 856 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/04(火) 02:53
-
本日は、ここまでといたします。
さいたまコンから察するに、二人はきっとこんな感じかとw
☆お知らせ☆
紫板のスレッドで、新作をスタートしました。
文麿外伝で、妙に書きやすくてハマった「こんごま」でございますw
どうぞ、こちらもぜひご覧になってみてください。
『癒しのメソッド』
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/purple/1081660036/の90〜
- 857 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/04(火) 11:24
- おー。
石吉オタのつもりが、どっちかっていうと希少な「こんごま」に、
こちらのせいでハマらさせて頂きましたから…うれしいです♪♪
「ハロプロワイド」でのこんこんの無条件尊敬具合とか、
なんか本気!っぽくてリアルでかわいいんですよねー。
これより、紫板にもここ同様、イソイソと通います…。^^
- 858 名前:オレンヂ 投稿日:2004/05/04(火) 12:34
- 更新お疲れ様です。
よっすぃ〜かっけー!
あまりのかっけーさに泣きそうになってしまいました。
自分もライブ行きましたが梨華ちゃんが近くに来たとき
あまりの美しさにびっくりしてしまいました。
こんごまもいしよしも楽しみにしてますね。
- 859 名前:わく 投稿日:2004/05/05(水) 00:24
- 更新おつかれさまです!!
よっちゃん・・・泣かせますねww
こんなおっきな愛で包まれてる石はほんと幸せモノですねw
こんごまの方も今から読ませていただきます!!
- 860 名前:よっすぃファン 投稿日:2004/05/05(水) 00:53
- 雪ぐまさんの小説を見つけて、昨日から雪ぐまさんの小説をずっと読ませていただきました!!
私はよっすぃファンでいしよしが大大大好きです^^
私は4年間ずっと片思いしてる人がいるんです。
同性だから叶わぬ恋なんでよっすぃとトメッちが羨ましいです笑
雪ぐまさんの小説は1番面白いし心が暖かくなります★
これからも頑張ってください♪更新楽しみにしてま〜〜す^^
- 861 名前:時限爆弾 投稿日:2004/05/05(水) 05:35
- 更新お疲れ様です。
お早うございます、さいたまコンの感想、有難うございます。
形変わるものは、それぞれが比較なんて事はせずに、個々の美しさを持つから、美しいんだな…と。まさに世界にたった一つの華ですね…深い。執筆頑張って下さい。
- 862 名前:名無しp. 投稿日:2004/05/07(金) 08:51
- トメっちのひたむきな愛と、それを包み込むよっすぃ〜の
大きな愛が感動です。雪ぐま様の小説を読むと、優しい気持ちになれます。
いつもありがとうございます。
- 863 名前:名無し23。 投稿日:2004/05/07(金) 10:22
- 更新、乙でございます。
うぅヤバイ・・不覚にも涙がジワっと滲んでしまいましたぜぃ、旦那!
読み人のツボを突きまくる雪ぐまさんが最高です!
SSA行かれたんですね。ホント、この二人は娘。の核的存在になりましたねぇ・・(遠い目)
あ、紫のこんごまも堪能させていただいております。
あちらもまたイイヨイイヨ〜!
次回もまったりとお待ちしてますですよ。
- 864 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/18(火) 14:28
- よっすぃ〜の二人ゴトとエッセイに、しばし考えさせられておりました。
857> 名無飼育さん様
紺ちゃんのごとーさんリスペクトはかわいらしいですよね。でも、それ意外、萌えネタなしw
というわけで、こんごまは組み合わせの妙でひたすら妄想を楽しみ、
いしよしは妄想のなかにもリアル感を交えて楽しんでいるような気がします雪ぐまは。
858> オレンヂ様
雪ぐまは梨華ちゃんには気合いを、よっすぃ〜には復活劇に近い眩さを感じました。
美しく成長し、モー娘。をリードしてゆく二人から、ますます目が離せません。
859> わく様
決める時はビシッと決める、それがよっちゃん……と、思うんですけれどねw
頑張りすぎる梨華ちゃんをどっしり支えてほしいという願望もこめて。
860> よっすぃファン様
同性だから叶わぬ恋……つらいですね。でも、同性としかできない素敵な恋もあると思いますよ。
片思いは自分を磨く期間。うちのトメっちとよっすぃ〜みたいに運命の恋人に出会う日までの辛抱です。
861> 時限爆弾様
よっすぃ〜発言からも、ほぼ対極の美しさを目指しているように思われますね、いしよしって。
白と黒、凹と凸ときて、牡丹と薔薇にいきつく……ちょっとわけがわかりませんが、最高ってことでw
- 865 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/18(火) 14:29
- 862> 名無しp.様
うれしいお言葉、ありがとうございます。恋は生き物ですから「ハッピー!」ばかりじゃありませんが、
リアルいしよしの絆を軸に、前向きな恋模様を書いていこうと思います。
863> 名無し23。様
ジワッときちまいましたかい、旦那w 長年連れ添った夫婦のような味を醸し出すいしよしですが、
いつまでも新婚気分で温泉などでいちゃついてほしいものでございます。
ぎゃあぎゃあ喧嘩しながら、ふざけながら、そして時にはマジモードでねw
それでは、更新にまいります。
- 866 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:30
-
アイタタタタタ……
朝を知らせる携帯のアラームに腕を伸ばして止めながら、思わず呻いた。
か、体中が痛い……起きれない……でも、起きなきゃ……
「ひ、ひとみちゃん、起きて……」
「……ん、もぉ、朝?」
ダメ、マジ起きれねー。
ひとみちゃんは哀れな声で呻き、再びばったりと布団に倒れ伏す。
だ、だめだよぉー、お豆さんが朝食の準備にきちゃう。
せめて、ユカタ……浴衣着なきゃ、ちょっと、このままじゃ……
ええ、私たち、全裸ですが何か?
- 867 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:31
-
「おっはよーございむぁーす! 入ってもよろしーですかぁ〜?」
朝っぱらから異様にビンビンくるお豆さんの声。
私たちは、ガバッと跳ね起きた。
「ちょ、ちょっと待ってっ!」
「1分、1分だけ私に時間をくださいっ!」
どーぞ、ごゆっくり〜。
襖一枚隔てただけの声の近さにビビリつつ、わたわたと浴衣を着込む。
あーもう、髪の毛バクハツしちゃってるよぉ〜!
私は取り急ぎ、きゅきゅっとオールバックにしてごまかす。
ひとみちゃんはちょっと撫でつけて諦めたみたいで、
ぴょこぴょこ跳ねたひよこみたいな金髪頭のまま、カラリと襖を開けた。
「おはようございます。昨夜はよくお休みになられましたか?」
「あ、はい」
「ええ、まあ」
私とひとみちゃんはあらぬほうを見ながら、素知らぬ素振り。
明け方まで、あーんなことやこーんなことしちゃったもんね〜って、ああっ!
チラと布団を振り返って、私は青くなる。
布団が一組しか使われてないじゃないのっ!
こ、これじゃあ、ひとつの布団で一緒に寝たのがバレバレだわっ!
私はせっせと朝食の支度をするお豆さんの目を盗みつつ、
後ろ足で、エイエイとキレイなまんまの布団を乱した。
- 868 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:32
-
「いっや〜、それにしても石川様も吉澤様も、朝からお美しいですねぇ!」
「は?」
「この古い離れが、しばし天上の華咲き乱れる空中庭園になったようと申しましょうか」
「え?」
「いしよしは神、と山々に叫びたいくらいです」
……なんなのかしら、お豆さんってちょっと変わってるわ。
私とひとみちゃんは返す言葉が見つからず、
寝癖だらけの髪をわしゃわしゃ掻きながらテーブルについた。
それにしても。
あーあ、もっとぴったりしてたかったな〜。
寝不足のせいで、朝からずらりと並んだ海の幸山の幸にも、ちょっぴり辟易。
高級旅館って、私たちみたいなラブラブカップルには不向きかもね。
「布団で、っていうのは新鮮だけど」
「シーッ! ひとみちゃん!」
確かにそうだったけど、ね。
ベッドみたいに落っこちる心配もなくて、天井が遠くて、手を伸ばすと指先が畳に触れて、
旅先なんだなあって、すっごくドキドキしちゃったりなんかして。キャッ!
旅情溢れるっていうのかしら、こういうの?
「真希ちゃんと紺ちゃんにも感想、聞いてみようっと」
「……やめな。また、笑われっから」
「じゃあ、亜弥ちゃんと美貴ちゃんに自慢しちゃおうっと!」
シティホテルの件では、さんざんノロケられちゃったもんね。
今度は、私がノロケる番だもん。ねーーっ?
- 869 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:33
-
「ご機嫌だね、トメっち」
「えへへ」
「そんなに気持ち良かった?」
「な、なんの話よ!」
違うでしょ!新鮮とか、そういう話でしょ!
ひとみちゃんは、「あー、さいですか」なんてニヤニヤ。
もう、この人って、私のことからかうのが生きがいなんじゃないかしら?
でも、ほんとに気持ち良かったな、なんて。
ひとみちゃんしか知らないから、ひとみちゃんが上手なのかどうかわからないけど、
最初の頃よりも絶対に上手になってる、とは思う。
だって、ちょっぴり強引で、でも繊細なその指は、
私を信じられないほど高いところに連れていく。
まるで安全ベルトをつけずにジェットコースターに乗ってるみたい。
ものすごいスピードで瞼の裏に明滅する快楽の光。
振り落とされないように必死で、ひとみちゃんの背中にすがりつく。
そしてとうとう弾き飛ばされる瞬間、私は朦朧としながら必死で自分の指を噛む。
もう声を我慢するのがクセになっていて。
だけど、昨日は……昨日は、腕を浴衣の紐で縛られていたから。
- 870 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:34
-
『ほら、イきなよ、ほら』
『……い、やっ……』
高まりは、いつか映画で見たバックドラフト現象に似てる。
部屋の中でくすぶる炎が空気をすべて食べ尽くして、
カチャッとドアが開いた瞬間、ドーーンと爆発して真っ赤な炎を上げる。
それと同じ。息ができなくなって、カラダのなかの空気がなくなって、どんどんなくなって、
カチッて何かが開いた瞬間、奥から白い炎がグワッとほとばしり出て理性を完璧に吹っ飛ばす。
ズバッと抜けるその瞬間までの、頭を掻きむしりたくなるような切迫した苦しみ。
それが大きければ大きいほど。
耐えれば、耐えるほど。
あ、だめ、このままじゃ絶対すごい声、出ちゃう……。
息もきれぎれに、血がにじみそうなほど唇を噛んで首を振るのに、
いじわるな金髪の悪魔は、許しを請う私のことを薄笑いで見つめるだけで。
- 871 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:35
-
「いやー、すごかった」
「ううっ……」
そうよね、本館まで聞こえたかもしれないわよね。
ハァ、一生言われるな、きっと。
もぐもぐと温泉タマゴを食べながら、私はバツが悪くなって口を尖らせた。
「昨日のは、ちょっとズルいよー」
だって、ひとみちゃんがすごくうれしいこと言ってくれた後だったしー、
旅先だし温泉だしお布団だしー、
それに、し、し、縛るとか、かなり反則と思う……。
「うーん。縛りが似合うよね、トメっちって」
「シーッ! そーゆーのどこで覚えてくるのよっ!」
まったく。
絶対、私に隠れてエロ本とか読んでるんだわ、この人。
でも、私も『オンナ泣かせのテクニック100』とか読んで勉強したほうがいいかも。
このままじゃ、あんまり悔しすぎる。
やられっぱなしすぎるわっ。
ええい、次こそ。
石川梨華、ライバルは永遠に吉澤ひとみ!
ゴゴゴと執念を燃やす私に気づかず、ひとみちゃんは超ごきげん。
- 872 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:36
-
「温泉タマゴ、お代わり〜」
ハイッ!と直立不動で返事をして、猛ダッシュで駆け去っていくお豆さん。
ちょっとアンタねー、お豆さんパシらせるのやめなさいよ。
あの人、なんだか必要以上に尽くしてくれちゃうんだから。
「いいじゃん。うちらのこと気に入ってんじゃないの?」
ふわあっとあくびをしてむにゃむにゃする口元。
かわいいけど、ずいぶん自信たっぷりなのね。
まあ、それも仕方ないかな。
痩せてすっきりしてきた耳から顎のラインの美しさ。
大学で入ったフットサルサークルで暴れ回ってるせいか、
ひとみちゃんは最近みるみるうちにカラダが絞れてきた。
もしかして、中学の時くらいの体重に戻ってるんじゃないかなあ?
幸せ太りでむくむくきてた時は、モデルなんだからもうちょっと痩せなさいよなんて思ってたけど、
いざ痩せちゃったらプニプニもかわいかったかなあ、なぁんて。
- 873 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:36
-
まあ、私はひとみちゃんなら何だっていいの、ほんとは。
そして相反する願望のなかで、ココロはやじろべえみたいに揺れ動く。
もちろん、スレンダーでかっこいいひとみちゃんは大好き。
神様の息がかかった類い稀なる容姿の才がほとばしる。
街行く人たちが一人残らずハッとして振り返るほどの光量で。
だけどそれは誇らしい気持ちと同じくらい、不安を連れてくるの。
こんなきれいな顔で、ひとみちゃんは惜しげもなく女の子たちに微笑む。
ツンとしてたら怖そうに見えるのに、YOチェケラッチョとかわけのわかんないこと言って大サービス。
かっこよくて面白いなんて、最強じゃないの。もう!
「もっと食べて、ひとみちゃん!」
「はぁ? もうハラ一杯だよ?」
「食べてっ!」
お豆さん、温泉タマゴ、1ダース追加ね!
ずらりと並んだタマゴをうりゃうりゃと押しつける私に、ひとみちゃんは困り顔。
さあ、食べて! 食べたら寝て! 寝ころんでっ!
- 874 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:37
-
「……太るだろぉ?」
「いいよ」
「トメっちはよくても」
ちょっと、他に誰の目を気にするっていうのよーーっ!
「全国のファンの皆さん」
「ぐっ」
そうね、そうよね、お仕事だもんね。
モデルさんが太ってちゃ、雑誌の売り上げも急落ってものよね。
いけないわ、ひとみちゃんのプロ意識に思いっ切り水をさすところだった。
「ばっかだなー、トメっち。ヤキモチ妬いてんの?」
「うっ、うるさいわねっ」
「変なの、世界一美人のくせにさ」
え?
あっという間に、私の頭のなかに花が咲く。
ヤだ、ひとみちゃん、今回も大サービスなの?
キャー、いつでもOK、エビバデカモーンナよっ!
胸の前で手を組んで首をかしげ、特上スマイル攻撃を繰り出した私に、
ひとみちゃんはビシッと指を立てて決めポーズ。
- 875 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/18(火) 14:38
-
「あたしが牡丹なら、トメっちは薔薇。OK?」
は? なんなの、そのたとえ。
思わず眉を寄せた私に、ひとみちゃんはきょとんと首をかしげた。
「あれ、トメっち、真世のほうがよかった?」
なぁんだ、ボタバラごっこがしたかったのか、ハァ……。
- 876 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/18(火) 14:38
-
本日はここまでといたします。
- 877 名前:めかり 投稿日:2004/05/18(火) 16:35
-
もっともっとガンバレ〜!!金髪の悪魔♪
- 878 名前:名無し23。 投稿日:2004/05/18(火) 17:18
- 更新、乙でございます。
またしても小ネタ満載で、おいしゅういただかせていただきましたw
いしよし温泉は最高でございますよ!
何か読んでてオナカ空いてきちゃいました・・
2泊3日ということはもう1泊ある訳ですね、旦那(ニヤリ)
後半もおもいっきり期待させていただきますです。
- 879 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/19(水) 09:58
- 更新乙です。
現実の二人は不思議でステキな関係を相変わらず見せ付けてくれていますが、
こちらの二人もとてもわくわくさせてくれます。
- 880 名前:よっすぃファン 投稿日:2004/05/19(水) 21:45
- はーーーーーーん!!!!更新されておりますがなあ!!!
おおぉぉぉぉ〜〜待ってました!!雪ぐまさん(>▽<。)
リアルよっすぃーもスレンダーになってきて、ますますゾッコンなんです〜〜♪
でもかっこよくなりすぎてトメっちを不安にしちゃだめだよ〜〜〜!(^^;)
- 881 名前:ななしくん 投稿日:2004/05/24(月) 01:35
- 雪ぐまさんいつも楽しみに読ませていただいております。石川卒業悲しいです。。
- 882 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/24(月) 05:58
- まさか…という思いと、やっぱり…という思いが交錯しております。
ちょっと考えさせられる動きが続いていて、いつかはと覚悟していて、
うん、卒業は悲しいことではないけれど、早すぎるような発表のタイミングに疑問を感じたり。
ハロモニ、超笑ったし最高〜なんて、まったりと日曜の夜を過ごしていたら、
ネットでリーク情報をキャッチして飲んでたコーヒーをブハッと吹き出し、
リアルでラジオの情報をとって、なんだか呆然と朝を迎えた雪ぐまでございます。
877> めかり様
どうやらよっちぃ、リアルでも頑張りどころのようですね。
878> 名無し23。様
うちのいしよし温泉は、妙に時間がゆっくりと進んでおります。
遅すぎた新婚旅行は、二人の絆をたしかに深めているようでございます。
879> 名無飼育さん様
はい、今後ともリアルもうちの二人も仲良しは変わらずってことで。
少々様子見や、展開の練り直しがありますが、息長く続けていこうと思います。
880> よっすぃファン様
リアルよっすぃ〜、めきめきとスレンダーになったのは、きっとすべてを知っていたからですね。
サブリーダーという重責、きっと彼女ならモノにできると思います。
- 883 名前:雪ぐま 投稿日:2004/05/24(月) 05:59
- 881> ななしくん様
時は流れる、形は変わるということですね。雪ぐまも正直、寂しいですけれど、
当の石川さんの不安やいかに……。彼女の新しい旅立ち、挑戦を共に応援していこうではありませんか。
まあ、しかし卒業までに1年もありますしね。
試練もありましょうが、きっと梨華ちゃんもよっすぃ〜も、
ますます磨きがかかって美しくなられることでしょう。
まずは、ひとすじふたすじ、そしてリーダー飯田さんをしっかりと見送りたいと思います。
それでは、更新にまいります。
- 884 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/24(月) 06:01
-
布団、まだ上げないでと言ったひとみちゃんに、
お豆さんは「は?」という顔で、一瞬、首をかしげた。
私は思わずユデダコみたいに真っ赤になった。
もう、何言ってるのよ、ひとみちゃん!
「いや、あのー、まだゴロゴロしたいんだよね、うん」
「ああ、さようですか。それでは……」
さすがプロだわ、お豆さん。
布団を片づけかけた手を止めてにっこり笑ったその顔は、妙に生き生きとしており。
朝食のすんだテーブルをきれいに片づけて、そそくさと下がっていったその姿。
「どうぞ、ごゆっくり」なんて、ハァ……
いい加減、気づいてるわねあの人、あたしたちのカンケイに。
- 885 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/24(月) 06:01
-
「あー、喰った喰った」
照れ隠しなのか、わざとらしくお腹をさすったひとみちゃん。
もうプーさんには見えないね。
かっこ良すぎてドキドキしちゃうな。
どうかと思うわ私、もう何年もひとみちゃんと一緒にいるのに。
「朝寝しようぜ」
そう言って笑う、その頬に朝の光がやわらかく跳ね返ってる。
寝癖が落ちてきた金色の髪が、キラキラと眩しくて私は目を細める。
神様に愛された、世界で一番きれいな女の子。
そのくせ、ちょっぴり危険なニュアンスのあるその瞳。
私じゃなくても、あなたにキスされてみたい女の子はたくさんいると思う。
「ひとみちゃん、私だけ?」
「なんなの、急に」
ヒョイと立ち上がったその浴衣の裾がちょっと短くて、
真っ白い踝に、またたく間に目が吸い寄せられてしまう。
ああ、どうしよう。私は困惑して、小さくため息をつく。
こんなに好きで、私、もしあなたがいなくなってしまったらどうしよう?
- 886 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/24(月) 06:02
-
「まーた変なこと考えてるダロ?」
「……ひとみちゃん、ずっと一緒?」
なんだよ。
ひとみちゃんは、屈託なく笑う。
昨日からなんか変だよ、トメっち。
そう言って、私の手を引いて立ち上がらせる。
引っ張られるままに立ち上がって私は、あなたの背に腕をまわした。
抱きしめる、あたたかい体温。確かにここにいる、私だけのひとみちゃん。
「どしたの?」
「ん……ごめん、なんか変みたいね、私」
なんだか、寂しいみたいね。
あなたはこの腕のなかにいるのに、私はあなたの腕の中にいるのに。
鼻先をマシュマロみたいに白い首筋に埋めて、あなたの匂いを胸に吸い込んだ。
『うちら、いつまで隠しとけばいいのかな?』
『ずっと、友達のふりかな?』
ふいに投げ掛けられた昨夜のあなたの言葉。
心揺さぶらたその不安は、あなたのやさしさで消えたはずなのに。
なのにまだ、こんなに不安定な気持ちなのはなぜ?
ああ、それはきっと、やっぱりあたしたちの恋が秘密だからね?
- 887 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/24(月) 06:03
-
結婚なんて、つまらない紙の上でだけの約束よ。
神父様の前で永遠の愛を誓ったって、脆く砕け散ってく愛もある。
信じられるのは今一瞬の、この腕の中の、体温だけ。
この時間、たしかにあなたと一緒にいた、愛を囁いた、その事実だけ。
それでいいと思うの、その積み重ねが二人の歴史になればいいと思う、だけど。
「……好きよ」
「なんだよ」
「なんだよって、何よ」
「……あたしも、好きだよ」
その言葉が耳に届いた瞬間、鼓膜で散って消えたその儚さに、私は涙をこぼした。
ねえ、壊れない愛が欲しいの。永遠を神様に誓いたいの。
気弱になってる? そうね、そうかもしれない。
だって、1年後さえ、私には見えないから。
- 888 名前:溺れて人魚 投稿日:2004/05/24(月) 06:04
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唐突に泣き出した私を、ひとみちゃんは慌てたように強く抱きしめた。
なんだよ……。耳元で聞こえる掠れたアルト。
寂しい、怖い、ひとみちゃん、どうしたらいい? ねぇ、どうしたらいい?
「なんも怖くねーよ」
「……こ、怖いよぉ……」
「泣くなよ、バカだなー」
んだよ、1年後も10年後も一緒だっつうの。
変なこと考えんじゃねーよ、バカ。
乱暴な言葉を吐くあなたの唇には、あたたかな舌が潜んでいて、
こぼれ落ちたあたしの透明な不安を、やさしく舐めとってくれる。
ず、と、そば、に、いて。
しゃくりあげるばっかりでほとんど言葉にならない呻きに、あなたはちゃんと頷いた。
「ほら、朝寝しよーぜ」
ずずっと鼻をすすった顔をのぞきこまれて、私は照れくさくて笑った。
ひとみちゃんに初めて腕まくらしてもらったのって、いつだったかな。
もう忘れちゃった。キスの回数も途中まで数えてたけど、もうわかんなくなっちゃった。
私にとって、もう当たり前のぬくもり。
なくなるかもって想像するだけで、涙がこぼれてしまうほど大切な。
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