矢辻専門短編集
- 1 名前:米 投稿日:2004/01/24(土) 20:59
- 初めまして。米と申します。
辻希美総受け、主にやぐちさんとのカップリングが中心なんですが
多分珍しいカップルなので、ちょっと変かもしれません。
それでも、いいならお付き合いください。
- 2 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 21:05
-
卒業。
話を聞いた。
卒業、するのだと。 ののは、ここから。
あいぼんと一緒に。
- 3 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 21:11
- 一緒にいられない。
誰と? みんなと。
・・・・矢口さんと。
これは 矢口さんを卒業しろって事なの?
ミニモニを矢口さんが卒業してからもう迷惑をかけられないって
今度はののがしっかりしないとって 思ってた
だけど
もう迷惑とかそういう問題じゃなくなるんだ。
- 4 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 21:16
- ののは、一人の部屋で、一人 ベットに座っていた。
一人が嫌いだった。
だから、楽しそうなモーニング娘。にはいった。
一人じゃなくなった。
みんな、一緒に笑ってくれて一緒にいてくれて
今度だって一人なんかじゃない あいぼんと一緒なんだから。
そう思って心を落ち着かせるしかなかった。
コンコン
誰かがはいってきた
- 5 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 21:30
- ののは、あわててベットから降りて、ドアを引いた。
矢口さんだった。
矢口さんはいつもの笑顔でいつもの声でいつもの口調で話すから
なんだか腹が立って ののは、矢口さんの言うことを無視した。
「卒業、だってね」
「・・・」
「まさか、おいらより先に君たち二人が先に行くなんてねー」
「・・・」
「みんな、びっくりしてるよ。なっちの卒業もまだ終わってないのにね。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
長い沈黙がおとずれた。珍しいなぁ。
無視なんかしたら いつもは怒るのに。
なんで こういう時にだけ怒らないのかな・・。
大きい声で怒ってくれた方がずっと楽 なのに
- 6 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 21:41
-
「・・・・・ねぇ 辻。 すんごい怒ったことあったじゃん?加護
ちゃんも一緒に。」
「・・・」
「ミニモニをはじめたばっかりの頃かなぁ。とにかく、あの頃は怒って
ばっかだったよねぇ。」
「・・・」
「本当もう辻ちゃんってばすごい暴れてて、すごいあほな発言とか連発して
本当すごいおこちゃまはいってきたなーって思っちゃったよ。」
さすがに少し頭にきて、何か言い返そうとしたけど、
矢口さんが ののの手を握った。
すごく痛い。矢口さんは、すごいののの手を強く握っている。
優しくなんかない なんかないのに
涙が出た。
- 7 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 22:00
- なんだか知らないけど涙が出てそれを見られたくなくて
ごしごしと思いっきり袖で涙をぬぐった。
「・・でもさ、そんなことなかったな。辻はさぁ、もちろん加護
ちゃんもだけどさ、 がんばったよね。
だから 卒業するんだよね。」
手の力がゆるんだ。
矢口さんは立ち上がって「じゃあ、おいらもそろそろねるっか!
」と、言った。
- 8 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 22:12
- 矢口さんは、ののに少し手をふって、出ていこうとした。
少し胸が痛むような気持ちになって・・とっさにののは、矢口さんの
裾をつかんだ。
ぎゅ
さっきの矢口さんの強い手みたいに、強く握った。
行かないで 欲しい。 そう言いたい言葉が、のどにつっかえて
言えない。
ただ、裾をにぎるだけ。強く、握るだけ。
- 9 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 22:20
- 「つ、辻?どしたの?」
矢口さんは動揺しているような声でいった。
「・・・。」
矢口さんの顔が、ふっとゆるむような感じになるのが、わかった。
「仕方ないなぁー、もう。こんな子が卒業するなんて、心配だなぁ。」
そう言って、矢口さんはののの裾をにぎる手をそっとほどいて、また手を握った。
「一緒にねるか!」
矢口さんはいつもと変わらない笑顔で言った。
ただ、一つちがうことは 泣いてたこと。
ののも、つられてまた泣き出してしまった。
- 10 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 22:23
- ベットの中で一緒にねる時も、ずっと手を握っていた。
時々、顔を見合わせて、ちょっと笑って、ちょっと泣いて、
そんな日々が卒業しても ずっと続いていけばいいなって
思ったののはバカだよね。
もらい泣き終わり
- 11 名前:もらい泣き 投稿日:2004/01/24(土) 22:25
- 最後がやっぱり変ですね・・。
やぐののです。やぐののかなーり好きなんですよね。
泣き虫同士、ちびっこ同士なふたり。
シリアスだったんで、今度はほんわかなのをやりたいです。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 22:43
- いいですね。少し長めのが読みたいです。矢口と辻のはあんまり無いんで新鮮でよかったです。ほんわか、期待してます
- 13 名前:名無し 投稿日:2004/01/25(日) 11:22
- 矢辻ィィですねっ!(・∀・)
辻がせつないです…
続き楽しみにしてます(^-^)
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 15:19
- 矢辻すごくいいです。
米さんの書かれる辻と矢口の言葉遣いがあまりにもリアルに近いので
実際にこういう会話をしているのでは…と妄想していまいました(w
自分は辻総攻めが結構好きなんですけど、受けにもハマりそうな予感がします。
続き期待してます。これからも頑張ってください。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 18:15
- 可愛い。次も頑張ってください
- 16 名前:米 投稿日:2004/01/26(月) 16:22
- ありがとうごさいます!!
12 名無飼育様
ありがとうごさいます。長い話も今度ぜひ挑戦してみたいです。
13 名無し様
ありがとうごさいます。矢辻ははまると、とまらなくなってしまうんですよね・・。
続き、期待に応えられるか、わかりませんが、頑張ります。
14 名無飼育様
ありがとうごさいます。辻総攻めもいいですね。私的には、だいだい辻ちゃんからする
こと(何かはご想像に任せます)が多いけど、実際はみんなねらっている・・とか。
頑張ります!
15 名無飼育様
ありがとうごさいます。私はまだまだですが、そういってもらえるとやる気が
でます。
なっち卒業してしまいましたね・・。私は行けなかったのですが、紺野さんは
高熱があって出なかったり、(残念)辻ちゃんは、途中で泣き崩れて退場だとか。
(加護ちゃんも?)なんというか・・やっぱりなっちはすごいなぁ。って新聞とか
めざましとか見て思いました・・。マロメロ最高。
長くなりましたが、次の話いきます。
- 17 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 16:40
- ぼーっと見ていた。
横顔を。整っている、綺麗な、横顔を。
特に意味もなく、ただ見ていた。
何か携帯をいじくっているらしい。また、悪口サイト見てるのかな。
懲りないね〜 っと小さい声で笑いながらわたしはいった。
「なに?辻ちゃん。そんなじろじろ見て、笑って気持ち悪い」
何か嫌なことでもかいてあったのか、眉をひそめて、すごく不機嫌そう。
「なんてかいてるの?」
ちょっと、のぞき込むとあわてて隠した。そして、少しわたしから
とおさげで、また見ている。
・・・けち。
- 18 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 16:46
- 矢口さんは、髪を耳にかけてまだ不機嫌な顔をする。
実は前わたしも少し探してみたことがある。矢口さんの事がたくさん書いてあった。
ひどい・・少し意味がわからないこと、とかが書いてあった。
・・それで、いっぱい泣いただろうな、矢口さん。
弱い人、だから。
- 19 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 16:52
- 「真里。」
「は?」
矢口さんがこっちをむいた。携帯片手で。
「いつまでも矢口さんのままじゃやだし。」
「いや、別にいいよ。真里なんて言われるの気持ち悪い。」
「なんでぇ?自分の名前でしょー」
「そういう問題じゃないの。誰に言われるかによって変わるの。」
それだけいって、また携帯をいじくりだしたやぐ・・いや、真里。
むっ・・・。
- 20 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 16:59
- わたしは、傍にあったティッシュ箱をや、、真里になげつけた。
「ったー!」真里・・・もう!矢口さんは携帯をおとした。
「ムカつく!さっきから携帯ばっかいじってー!!」
矢口さんは何かいいたそうにしながらも、口をぱくぱくしていた。
わたしは、思いっきり叫んだので息が荒れながらも、矢口さんをにらみつけた。
「・・・・・ののもかまってよ。」
- 21 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 17:14
- 矢口さんはちょっとあっけにとられたような顔になった。
自分の顔が赤くなるのを感じた。
「・・真っ赤だけど。」
「・・・・うぅ。」
矢口さんの口元がニヤニヤしているのが分かった。うう。やっぱりムカつく。
「・・可愛いこというね。」
矢口さんは、少し前にでてきた。
「辻」
ぽんぽんっと、膝をたたいている。
「おいで」
- 22 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 17:39
- わたしは、すごすごと矢口さんの膝にのった。
「あーもー。重いし、狭い。」
「自分がのれっていったんじゃんかぁ」
「・・や、だった? 」
「・・・・や、じゃない。」
顔がみるみる熱くなる。
矢口さんはふっとほほえんだ。
・・・あぁ。今の顔・・・好き、かも。
やっぱ、わたしは惚れてるのかな・・。悔しいなぁ。
「なんか、今日素直ー。いつも、そうだと可愛いのになぁ。」
じゃあ、いつもは可愛くないのかよ。
そう言い返したくて、でも言い返せない。
やっぱ悔しい。
- 23 名前:特等席 投稿日:2004/01/26(月) 17:53
- でも、わたしは矢口さんの顔をちらりと見た。笑っている。
「・・ね、元気になった?矢口さん。」
「はぁ?おいらはもともと元気だし。」
「見てたじゃん。ケータイで。」
矢口さんが、携帯をちらりと見たのを見逃さなかった。
「・・・あぁ。うん、慣れちゃったし。」
嘘ばっかり。慣れてるのなら、本当は探して見たりしないはずだよ。
そのたびに傷ついているくせに。
「・・分かってるからね。」
「え?」
「・・・ううん。」
でも、そんな弱い所も、わたしの前で見せてほしい。
‘矢口さん’ではなく‘真里’の姿で・・・。
特等席 終わり
- 24 名前:米 投稿日:2004/01/26(月) 17:55
- お、わりましたー。
ほのぼのめざしてたけど、どうだろう・・・。
次はやぐのの以外をかきたいと思います。
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/26(月) 21:13
- 更新お疲れ様です。早速読ませていただきました。
雰囲気がすごくほのぼのしてて好きです。
次回はやぐのの以外ということなんで、楽しみにしています。
これからも頑張ってください。
- 26 名前:名無し 投稿日:2004/01/26(月) 22:02
- 今回の辻は、なんか大人なかんじですね
こんな辻もイイかもしれないです(*-。-)
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/26(月) 22:12
- リクしてもいいですか?
なちののと、かおののお願いしたいんですけど…。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/26(月) 22:38
- やっぱ、なちののですよ!朝からの卒コン映像ラッシュ、辻の…(ToT)
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/27(火) 12:33
- >>27
>>28
タイトルは矢辻専門ってなってますけど
- 30 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:07
- すいません
長いことほっておいたんですけど・・新作です。
今度は長編です。
今度も矢辻が中心ですが、大勢の娘がでてきます。
アンリアルです。
もし、よかったら今度もお付き合いください・・・
- 31 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:09
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 32 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:15
-
「真里ちゃん。今日の夕ご飯は?」
「カレー。」
希美の足が、ぴたり、と止まった。真里は振り返る。
「カレー!?」
「そ、そうだけど・・いやだった?あんた、カレー確か好きな食べ物
トップ20には入るって前・・・」
「うん!あのね、今日カレーがすごく食べたい気分だったの!」
希美は。目を輝かせて言う。安心した。
「・・・そりゃ、よかった。」
それから、また二人で歩いた。
・・・夏の、匂いがした。
- 33 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:23
-
希美が通っている高校は、真里のおかげでぎりぎり入学できた。
部活熱心な高校だか、希美は帰宅部だった。
今、隣にいる田中れいなも。
体育の授業だった。
もう、セミも鳴き出して、日差しが眩しくて、希美とれいなは屋上で二人
でさぼっていたのだ。
「あっつーっっ」
れいなが、制服の第二ボタンほはずす。希美も、つられてはずした。
「こんな暑い中、何で走ったり、はねたり、しなきゃいけないわけ?
・・・ほら、紺野さんとか。」
希美は、小学生の頃からの幼なじみを屋上から見る。
よく、見えないけど先生にほめられて、すごく嬉しそうな顔をしている。
まぁ、陸上部だしねぇ。優等生だし。
同じ高校だとしても、なんでこう差がでちゃったんだが・・・。
もし、希美が紺野みたいな成績だったら、もっといい高校いってたかな。
- 34 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:26
-
「・・・れいなね、紺野さんあんま好きじゃない。」
希美にいうっていうより、自分に言い聞かせているみたいなつぶやきだな、
っていつも思う。
希美はふうん、とうなずいた。
別に「えっ、嘘!?」・・みたいな、大げさなリアクションしなくても、見ていたら分かる。
「のんと、仲良かったら一緒にいただけ。まぁ、一緒にもいないけどさ。」
「ふーん・・・。」
希美は、また曖昧なうなずき方を、した。
- 35 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:31
- 先生とかは、さがそうとかは思わないらしい。
まぁ、いつものことだしね。
入学してから、二回ぐらいしか体育は出ていない。
最初の方は注意されたが、もうこれが当たり前になってしまった。
れいなと、今屋上にいることが。
「・・・真里ちゃんに怒られるなぁ。」
苦笑。前、真里はいっていた。
高校生活は、大切にしなさいと。青春の1頁なんだから、と。
その時は大まじめに言った真里がおかしくて笑ったが・・
真里は、高校中退なんだ。
本当だったら、高3で、今もコンクールのために吹奏楽部で、トランペットでも
吹いているだろう。
でも、希美の、希美のせいで・・・。
「真里・・ちゃんって、あの、あの・・・ちっちゃい。」
ぶ、とふきだした。高一にちっちゃい、て言われてるよ、真里ちゃん。
- 36 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:34
-
れいなも、大きいとは言えない。少なくとも、このクラスで2番目に
小さい希美の後ろにいるから、十分小さいのだ。
でも、真里がもしこのクラスにいたら、絶対一番前で腰に手をおいている奴だ。
そんな真里を想像したらおかしくなる。
「なんでその人に怒られると?」
「んー・・・厳しい人だから、ね。」
れいなは、あまり真里との関係を聞かない。
あまり、こっちが聞いて困ることは、聞かないのだ。
とくに、家庭の事情などは。
一緒にいて、気が楽だった。
- 37 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:37
-
こうやって、屋上で風にあたっても、やっぱり暑いものは暑かった。
「・・・ねぇ、のん?」
「んー?」
「・・・アイスでも、食べにいこーぜっ」
れいなは、いつもの少年ぽい笑顔で、親指を突き出した。
希美も、親指を付きだして、れいなの親指にあてた。
「・・・おう。」
- 38 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:40
-
「もーうっ、のんつぁんとかまたいなくなって・・・。」
帰り道。
体育は6時間目だったので待っていたのだが、れいなはそのままアイスを
くわえて、帰った。
「STとか、何の意味があるかいまだに分からん。」
なんて、言っていた。
- 39 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:43
- 「ごめーん、紺ちん。だってさー、本当暑いんよ。」
あさ美は、全然迫力がない声で怒る。
「何いってんのー、夏はこれからなんだよ?これくらいで、ばててたら・・。」
あさ美は、真面目だと思う。
れいなほどとも言わないが、中学生の頃は、もっと・・なんか、違った気がする。
それが、ちょっと淋しいような、感じがする。
- 40 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:46
- あさ美が髪に止めている青いリボンが揺れる。
これは、中2の誕生日にあけだ。
それを、あさ美は毎日大事につけてきている。
希美は、もらった物は一ヶ月ほどは大事にする。だけど、新しい物を
買ったり、もらったりしたらそれに換えてしまう、と思う。
心が、奇麗。だと思う。あさ美は。
小さい頃から、今でも。
そういう所が好きで、希美のあこがれだ。
絶対言えないけど。
- 41 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:50
- びゅん、と風がくる。風がくるたびに、台風こないかなー、って思う
自分は、ひどく単純で子供だ。
「・・夏がやってくるねー」
あさ美が、言う。
「紺ちん、なんか詩人。」
希美も、言う。
詩人とはちがうなー、と思ったけど他に言葉も見つからなかった。
あさ美が、声をあげて笑う。
- 42 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:52
- 「・・・・アイス。」
あさ美が、思い出したように声をあげた。
「へ?」
「アイス、れいなと食べたんでしょ?何のアイス?」
「がりがりくん。」
さすがに、高級なあーいう箱にはいっているアイスを買うお金はなかった。
「えっ!がりがりくん・・・・。」
あさ美が、ちょっと残念そうに肩をおろす。
食べたかったんだな。
アイス大好き少女だからなぁ。
- 43 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:56
- 希美はすごく吹き出しそうになったが、こらえてあさ美の手をつかんだ。
「じゃ、今からいこうぜ?」
「えっ・・・でも、お金は・・・。」
「あー・・・でも、がりがりくん二個かうくらいお金なら、残ってる!」
そういって、希美ははしりだした。あさ美も、握られた手を握りかえして
走った。
「のんつぁん、ふとっぱらー!」
ばしっと、背中をたたかれた。あさ美は、空手三段。
「・・ぐっ・・・。」
- 44 名前:米 投稿日:2004/07/30(金) 13:56
- 終わりです。
前とかのも、全部あれなんですが・・・よければつきあってください。
それでは。
- 45 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:22
- 続きです。
- 46 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:24
-
日曜日、朝7時。
真里は、目をさます。
しばらく目をあけたまま、天井を見つめる。
はぁ、とひと息吐くと起きあがった。
大きくのびをする。
- 47 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:26
- 体が、おぼえちゃっているんだなぁ。
日曜日だろうがこの時間体に目がさめる。
最初は、目覚まし時計を3つぐらいないと、起きれなかった。
今は驚くくらいにぱちりと目が覚める。
真里は、隣で寝ている希美の寝顔を覗き込んだ。
当分、起きそうにない。
真里は、苦笑すると立ち上がってエプロンをつけた。
朝食の準備だ。
- 48 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:31
-
「よっ、と。」
フライパンの上に、奇麗な目玉焼きができる。
「おお、われながらいい出来。」
自画自賛しても、なんだか空しい気分だ。
だけど、しばらくしたら希美が嬉しそうに目玉焼きを見て、いつもすごく美味しそうに
平らげる。「おかわりは?」なんて。
まぁ、これは一人分だ。真里の分。
なにせ、希美はいつも九時頃にじゃないと起きてこない。
無理矢理起こすと、あの馬鹿力でひっぱたかれる。
そんなのは、ごめんだ。
- 49 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:33
- ・・・朝、7時だそ朝7時ぃ。
別に、もうちょっと遅く起きてもいいだろうし、遅くまでねたい。
だけど、どうしてもこの時間に起きてしまうのだ。
・・・年寄り、みたい。
自分で思って自分でうけた。
- 50 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:39
- 一人分の朝食を平らげ、さて希美が起きるまで何しようか・・
と考えていた時だった。
どたばた、と大きい音が聞こえてきた。希美がおきたんだろうか、と
思った矢先に、希美に後ろから抱きしめられていた。
「真里ちゃん!」
パジャマのままで、すごく強い力だった。苦しいほどでもあった。
だけど、希美の手はすごく震えてて泣き顔であった。
希美が、時々すごく早く起きてくる時がある。
その時は、いつも大抵泣き顔である。
- 51 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:46
- ぽりぽり、と頬をかいた。なんだか、母親にでもなっている気分だ。
ちょっと、自分らしくなくて照れくさくなる。
「どした、希美ぃー?怖い、夢でも見たか?」
希美が小さくうなずく。額には、汗が滲んでいた。
可愛くて、仕方がないと思う。そして、怖い夢見たときに自分を頼ってくれるなんて。
嬉しかった。
だけど、出てくる言葉は、いつもちょっと厳しい言葉。
「・・・ったく。もう、16才じゃないのか、お前はー。」
希美の手の力が弱まった。その隙に、希美の手をほどいた。
「大丈夫だから。」
希美は、まだ不安そうな顔だ。けれども、ゆっくり、うなずいた。
「・・じゃ、朝食つくったげるから、そこにすわっとき。」
希美はまだ泣き顔のまま、椅子に座った。
・・・そんな、生活にももう慣れてきた。
- 52 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:53
-
お皿に、目玉焼きをのせて。
希美に食べるように促した。
希美は、食べ物を見て少し元気が沸いたようだった。
表情がゆるんできている。
「・・で、どんな夢みたの?」
希美の目の前の席に座る。希美が顔をあげた。
希美の口の周りには、黄身がついている。真里は、ティッシュを渡した。
希美は、ティッシュを受け取り、口の周りをふく。
「・・忘れた。」
「忘れた?」
「うん・・・。でも、なんかすごく怖かった。もう、あんなの二度と嫌だ。」
きゅっ、と表情が引き締まる。
希美は、時々強く、でも辛そうな顔をする。
そんな顔は、泣き顔以上にみたくなかった。
- 53 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 14:56
-
真里の、携帯の着メロがなった。
「おっと、ごめん。」
真里は、ちょっと希美の視線から離れるようにして携帯をとった。
藤本美貴、とかいてあった。
- 54 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 15:00
-
「・・もしもし?」
『あ、もしもし?矢口さん?』
藤本美貴。真里が吹奏楽部だったときに、仲がよかった後輩であった。
真里は、あまり高校の時の友達には、あわない。
連絡をいれてる友達は、藤本をあわせて6人ほどだった。
- 55 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 15:12
- 「どーしたの?こんな時間に。」
『あっすいません。なんかしてました?』
ううん別に。という真里の柔らかい声が聞こえて美貴は安心した。
『よかった・・。あ、あの本題ですけどー』
「うん。」
「今日会えます?」
真里は、むむ、と考えた。
美貴と遊ぶのは別に苦痛じゃなかった。むしろ、楽しい。
話もあうし、カラオケなど行った時は大盛りあがりだった。
だけど・・・・真里は横目で希美を見た。
もう、目玉焼きを平らげていた。
そしていつものように、「おかわりは?」と言いたげな瞳で真里を見ていた。
ぷっ・・・。思わず笑った。はいはいあとでね、と口パクでいう。
『え?』
「ううん。ごめん。何でもない。」
『・・無理ですか?』
「うーん・・・・。・・・ごめん、藤本。ちょっと、心配ごととかあって・・」
心配ごと。
『・・そうですか。すいません、こんな朝はやくから。』
「ううん。おいらこそ、ごめん。」
いえ、と美貴は短く答えた。
- 56 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 15:14
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 57 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 15:18
- 希美は、いやだった。
こんな自分が。
怖い夢みたくらいで、小さい子供みたいに真里に甘える、自分が。
本当にそうだよ。16才なのにさ・・・。
真里の前では、なんだか分からないけど、幼くなってしまうと思う。
れいなやあさ美の前では、自分はわりとしっかりしていると思うのだ。
意見も、はっきり言うしこんな子供みたいに泣いたことだって無い。
だけど・・真里の前では。
今でも、真里が友達の誘いを断ってくれて心底安心してんだ。
こんな、自分がいやだった。
- 58 名前:米 投稿日:2004/07/31(土) 15:20
- 二回目終了です。
もっと書こうと思ったけど長いのでやめました。
それでは。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/31(土) 18:37
- おもしろ〜い。
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/01(日) 07:28
- あまえる辻が可愛くていいですね。
あんまりないカップリングだけど、この二人好きです。
矢口もラジオで「辻加護には特別な愛情がある」と言ってたくらいなんで。
- 61 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 17:46
- いよいよ今日ですね・・・。
続きです。
- 62 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 17:50
-
心配ごと、か。
美貴は携帯を閉じはぁ、と大きく溜息をついた。
だいだい想像はつく。
またどうせ‘希美’の心配だ。
先輩が、高校を辞めた理由。
あの時は、信じられなかったな・・・。
今も、信じられないけど。
美貴は、拳を強くにぎった。
- 63 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 17:55
-
「・・藤本さん」
「・・・あんた、いつまでいんの。」
ソファで寝ころんでいるさゆみにいう。さゆみは、美貴の幼なじみで後輩だ。
小さい頃、よく遊んでいた。今も、たまにこうやってさゆみは美貴の家にくる。
なにも、するわけではなく。
- 64 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:00
- さゆみは、答えない。ただ俯いている。
「・・・シゲさんさ、あのー絵とか・・美術館にかざられるんでしょ?
なんか、集会の時いわれてたじゃん。」
さゆみは美術部だ。それも、かなり上手い。美貴も見たことはあるが、かなりの
腕前だと思った。
色遣いとか、そういうのとか、全然分からない美貴でも、心がぞくぞくする絵だった。
さゆみは、まだ答えない。と、いうよりは答える言葉を探しているようにも見えた。
- 65 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:06
-
「・・ま、いいけど。」
美貴は、帽子をかぶる。前、真里と一緒に買い物に行った時に買った帽子だ。
「・・どこか、行くんですか?」
「うん。まあ。」
「でも、矢口さんには断れたんでしょう?」
美貴は、ちょっとさゆみをにらんだ。さゆみは、また俯く。
このコ、こんなに気ーよわかったけか?
前は、反対に睨んできたぐらいだった。本当に、前の話だけど。
「・・・矢口さんと行きたかった。でも、それじゃなかったら一人でいく。」
今は、ただ真里に会いたかった。でも、断られた。
今、だれかに会っても絶対楽しめない。
そう、思った。
- 66 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:09
- 「・・・じゃあ、ここにいてもいいですか?」
美貴は、ちょっと考える。誰もいないし、自分の家に人を残しておく
なんてことは、あまりいい気ではなかった。
「何も、しないです。」
さゆみが言った。
「んー・・・いいよ。本当になにも、しないでね。」
さゆみはうなずき、美貴が出て行くのを黙ってみていた。
- 67 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:09
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 68 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:12
-
さっきから、希美はずっと黙っている。
おかわりをしたはいいものの、その後はただ黙ってぼーと天井を見ていた。
眠たいのかと一瞬思ったが、そうでもないらしい。
真里はひと息つくと、希美の視界に入るように希美の前にかがみ込んだ。
希美は真里に視線をうつす。
「・・・ね。今日なんか用事ある?」
希美は首を横にふる。
「・・じゃ、さ。デートしよっか。」
- 69 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:18
-
デート、と言われて希美は色々遊園地や映画などを想像したが、いつもどおりの
買い物だった。
なぁんだ、とちょっと肩をおろした。
デートってさ、遊園地とかいってお化け屋敷とかでキャー!とかいってさー。
ジェットコースターとかを30回ぐらい乗ったり、コーヒーカップで酔ったり、
最後は観覧車でうっとり・・とかでしょ普通。
希美は真里を睨んだ。
- 70 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:24
- 「希美ぃー、今日の夕ご飯何がいい?」
結局またこれなのか。いつも、買い物の時には必ず真里はこの質問をする。
希美も希美で真剣に答えるのだが。
「えー、今日・・今日なー、んー・・・オムライス!」
真里は、だまった。何か考え込んでいる様子だ。
「駄目!オムライスは、時間かかるから。」
ばっさり許可された。
「えっ・・駄目って・・自分から聞いたんじゃん。」
「まぁ聞いたけど?一応参考ってことで。」
「な!じゃ、じゃあ何にするのさ。」
「・・・そうだなー。肉じゃか!なんてどう?」
希美はうなだれる。どうしてオムライスから肉じゃかになるのか。
- 71 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:32
- そんな会話をしながら、二人は色々買い物しにいった。
希美は最初は不満だったが、真里の笑顔を見ているうちにだんだん楽しくなってきた。
「・・・よし。ちょっと、休もうか。」
「やったー!」
希美がとびあがる。希美も真里も両手にいっぱいの荷物だった。
二人は、喫茶店に入った。日曜日だし、おいしいと評判の店なのだしで、人が一杯だった。
どこに座ろうかと、真里は周りを見渡した。
一人、淋しくすわっている女と目が合った。
「・・藤本。」
美貴だった。真里は、驚いて目を大きくする。
希美は、よく分からない、と言った表情で二人を見ていた。
- 72 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:41
-
・・・藤本、さん。
本なら書けるけど、藤は絶対漢字でかけない。
そんなことを思いながら、希美は真里と一緒に美貴の座っている
スペースの席にこしかれた。
なんで、一人なのに四人分の席に座っているんだろう。
希美は不思議に感じた。
「すいません。美貴、二人分とかそういう席、窮屈で。・・先輩、しってますよね?」
真里は、うん、ああ。とか曖昧な返事をした。
今、自分が思ったことを説明してくれた。
美貴と目があった。美貴は、きつい目だった。真里と話している時は目がほそめ、柔らかい顔
になる。だけど、希美を見つめる顔は・・。
「希美ちゃん?」
美貴は、笑顔になった。だけど、目が笑っていないことに、希美は気づいた。
「うん、そう。前、話した。」
真里ちゃん、のんのことこの人にはなしたんだ・・・。
美貴を見た。美貴は、にこり、と笑顔になった。
- 73 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:44
-
「ごめん、藤本。心配ごととかいってさ・・でかけてたりしてさ。」
「いいですよ別に。・・・もしかして、美貴お邪魔とかだったりします?」
希美と真里は顔を見合わせた。とたん、二人で首をふる。
「んなこと、全然ないから。うん。」
美貴は、ほほえむ。
「・・・よかった。」
- 74 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:48
-
真里と美貴は、音楽の話や、真里が高校時代の話をした。
ものすごく、盛り上がっている。
真里のあの、高くよくとおる笑い声がひびく。
だけど、人はいつまでも減ることがなかったので、たいして目立たなかった。
希美は、二人の話にはいれず、ただ食べることに夢中になっている・・フリを、した。
心は、真里に腹が立っていた。
なんですか?真里ちゃんは、のんとデートしているんじゃないんですか?
真里は、そんな希美に気づかない。美貴との話に、夢中になっている。
- 75 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:50
-
真里との久しぶりの話に、心は躍った。
真里は、何をいっても笑ってくれて、何をいっても盛り上がった。
こんな気持ちになるのは矢口さんだけなんだ。
ただ、ひとつ気になるのは。
真里は、横にいる希美のことをちら、とたまに横目でみる。
その後、すぐに美貴に顔をむけるけど。
- 76 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 18:56
-
「・・あ、さゆちゃん元気ー?」
また、希美の知らない名前だ。いいかげんにしてほしい。
ばん、と大きく音をたてて立ち上がった。
二人とも、こちらに目をむける。
「トイレ。」
おもいっきり二人をにらみ、そのままトイレに向かった。
「ちょっ・・おい、希美!!おいっ。」
希美はすたすたと行ってしまう。
「・・・あっ・・。」
真里は、何かに気づいたようだった。勿論、忘れていたわけでは決してない。
「・・・ごめん、藤本。あいつ、あんなんだから。」
美貴は答えなかった。
そりゃ、怒るだろう。こんな、希美の分からない話をして二人で盛り上がっていたら。
自分だったら、もう帰っているとおもう。
だけど、今自分が一人じめするくらい、それで怒ってしまう希美は、
ひどく贅沢だ。
だって、彼女はずっと、真里を一人じめにしている。
- 77 名前:米 投稿日:2004/08/01(日) 19:04
- 終わりです。
ちょっと、中途半端ですけど続きはあります。
・・ってか、自分まちがえすぎですね。
59 レスありがとうごさいます。「おもしろい」といってくれて
かなり嬉しいです。全然まだ修行とか足りない自分ですけど、ありがとうごさいます。
60 レスありがとうごさいます。
やぐののは、なんか本当に姉妹みたいで大好きなんです。
今日でのの亜依卒業で、本当矢口さんどんどん笑えなくなるんじゃないかと
心配なんですよね。そんな心配、無用だと思うけど・・・。
ありがとうごさいました。
大好きな藤道も書いてみました。。。
- 78 名前:悩みちゅぅ 投稿日:2004/08/15(日) 23:26
- ぁあ^-^やばいめちゃ好きハァーン(*´д`)
( ´`)〈なんでそんなにうまいのれすか-----日常が滑らかに表現されてる感じ..でてましたよ会話のやり取りとか超自然です(´д )ハァーン
相当辻さん好きハァーンですね..仲間やあ仲間由紀恵やぁ
ただ、つづきが気になります、早くぅ´д)
- 79 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:23
- 続きです。
- 80 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:28
-
希美は、さっきからずっとぶすっとした顔のまま、何も言わない。
真里は気まずいなぁとか、仕方ないかなぁとか思っても、やっぱり
何も言わない希美に腹がたっていた。
「おい、希美。」
希美は返事はしない。わかっていた。希美は怒っている時は、返事をしないのだ。
「・・そりゃー、おいらから誘ったのに、藤本との話に夢中になったのは
悪かったと思うよ。だけどさ、仕方ないじゃん。久しぶりだったんだし、うん。
・・・そんなすねなくても・・」
「っすねてない!」
希美が大声をだした。真里はぴくっと肩が震えた。
- 81 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:33
- 希美は、怒ることが少ない。いつも、笑っているか泣いているかの
どっちか、だったと思う。
だけど、怒ったら怖かった。
希美の声は大きくて大声をだすなんてことをしたらどすがきいてて、
とても迫力がある。
それに、身長は同じぐらいとはいえ、希美に殴られでもしたら、ひとたまりもない。
真里は思わず後ずさりをした。
「・・っなんでにげんの!?もう、いいよ!」
希美は泣き出しそうな顔になって、走っていった。
- 82 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:37
-
もう、いいよ。
希美は走りながら、あれ・・本当にこんなに怒ることでもないのかもしれない。
だけど、今、真里は一瞬おびえた表情になったのだ。
そんな顔はいやだ。怒ったら、負けずに怒り返してくれると思った。
それで、自分は納得するとおもう。
だけど・・あんな風におびえられたら、どうすればいいんだろう。
この感情を。
- 83 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:40
-
もう、いいよ。
そう言われた。何がもういいんだろう。
そんなに怒ることじゃないじゃん、やっぱすねてんじゃん・・。
でも、やっぱり今逃げたのは絶対ちがうと思う。
・・・怒ればよかった。
どなられようが、殴られようが、怒ればよかったんだ。
それで、希美は自分のことを嫌いになったりしない。
謝らないと。
- 84 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:44
-
希美が行く所、分からない。
でも、さがしてみるしかない。自分が悪いんだから・・。
そういえば希美は困ったり、泣きたかったりするとすぐにどこかに
逃げるんだよな。
どこか・・どこかに。
それでも、見つけられる。
いっつもおいらがすぐに見つける。
分かってるしね、あのばかが行く所なんて・・・
- 85 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:48
-
家には、変えれなくて希美は近くの公園に走った。
どうせ他に行く所もなかった。
希美はブランコに座った。
ブランコはゆらりゆらりと揺れていた。
夜の公園って怖いな。何か得体のしれないものがでてきそうで・・
ふと、そんなことを考えて考えた自分がいやだった。
のんって16才だよね?
そんなこと、中学生でもなかなか考えないだろう。
ガキ。
希美は笑った。ちょっと、自分でも情けない笑いになった。
- 86 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:53
-
涙がにじむ。
いやだってば、こんなんで泣くなんて・・・
ぼうっと人影が見えた。涙でにじんでよく分からない。
あれは・・・真里ちゃん?
よく目立つ髪の色だ。暗闇でも映える。
「はっ、意外と簡単にみつけられた・・。」
あっそっか、けんかしてたんだっけ・・。
希美はふと、そう思った。だから、今ないてんだってことも。
- 87 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 16:58
- 希美はそう思った瞬間、あわてた。
真里は希美の前をマークしていた。
「やっぱり泣いてた・・。この、泣き虫。」
「真里ちゃんに言われたくないね。『フランダースの犬』で泣いてた真里ちゃんになんか
言われたくないっ。」
「ばあか。あれは誰だって泣くっつーの。お前だって泣いてたじゃん。」
希美は黙って真里をにらみ付けた。
真里は溜息をついて、希美の横のブランコに座った。
- 88 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 17:05
-
気が付けば月が出ていた。月は、ちょっと怖い。
満月は好きだけど、この月は好きじゃない。
だから、目を背けた。
「・・ごめん。悪かった。」
きこえないフリをした。もう、大丈夫。
ここにきてくれた時点で、もう許してるし。
希美はブランコからぴょん、と下りた。
「はー、お腹すいたー。オムライスでも食べたいなー。」
真里もつられて下りた。
「だから、肉じゃがだっていってんじゃん。」
「いやです。オムがいい、オムが。」
「変な略しかたすんな。・・・たく、ほんとーにわがままなんだから。」
真里は歩きだした。希美も横にならんだ。
「いいよ、別に。」
わがままでも、ガキでも、泣き虫でも。
かまわない。
こうやって、真里ちゃんの隣にいられることができたら。
- 89 名前:米 投稿日:2004/08/21(土) 17:09
- レス。
78
そういってもらえると嬉しいですね〜。
辻さんは大好きですね。仲間由紀恵ダァー
続きは遅くなったけどかきました。
レスありがとうごさいます。
次はみちしげさんでます。
- 90 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:49
-
絵を描く時に考えているのは、あの人。
ずっと昔から、ひょっとしたら生まれる前からあこがれていたのかもしれない。
描いているものが建物だろうが風景だろうがいつも考えているのはあの人だ。
あの人を描く・・なんてことは、絶対できないんだろうけど。
- 91 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:52
-
自分より大事なものはなかった。
そりゃ家族も友達も大事だったけど、でもやっぱり自分が一番可愛い。
・・だけど、もしかしたら。
自分より大事かもしれない。
自分が死んでもあの人が美しく生きていたらそれでいいのかもしれないなんて
思ったりもした。
まぁたまに鏡を見て
「・・・可愛い・・・。どうして、こんなに可愛いのに、気づかないんだろう?」
なんてイライラしたりするけれど。
- 92 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:53
- 藤本さん。
- 93 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:55
-
「道重さん。最近、どんどん上手くなってきてるんじゃない?」
自分の描いているものを見て、先生が言う。
それは、多分あの人への気持ちが高まっているから。
あの人がますます奇麗になっているから。
それしか考えられない。
私は先生を見て、ほほえんだ。
- 94 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:58
-
夏休み中。
美術部はいつもより早くおわっていた。
他の部の子をまとうと思ったけど面倒くさくなって一人で帰ることにした。
美術部には、友達はいなかった。
もしかしたら、疎まれているかもしれない。
けど、どうでもいい。
- 95 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 20:59
-
暑いなぁ・・・。
太陽がぎらぎらと輝いている。運動部の子達は必ず真っ黒になってしまう。
まぁ、自分には全然関係ない話だけどさ。
そうやって、とことこと歩いていた。
- 96 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:03
-
高く、乾いた笑い声が聞こえてきた。
「みっ・・見て!あたり、あたり!」
「うそぉ?!」
見ると、私服の女の子二人がアイスを食べながらはしゃいでいた。
「・・・ねぇ、半分こにして、れいな。」
「どうやったら半分こにできるとよ。いえーい、やったぁ♪おばはん、アイス追加!
あたりでた!」
おばはんって。この子達知っている。
田中れいなと辻希美。なかなか有名な子達だった。
- 97 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:05
- 黙って通りすぎようと思ったら一人の子に腕をつかまれた。驚く。
「ん〜〜?・・・道重さゆみ?」
さゆみは大きく目を開く。
やっぱり、と思った。
- 98 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:12
-
希美は、あの時以来あの藤本美貴という人が気になっていた。
気になっていた、っていうのは別にかわいいからとかそういう理由じゃなくて
あの視線。あきらかに自分を嫌っている。
よく分からないまま、嫌われるのはいやだった。
「れいな〜〜〜・・藤本美貴っていう人、しってる?」
授業中、希美はれいなに聞いてみた。れいなはメールをしていた。
「ふじもとみきぃ?んー・・あーあーしってる。」
「嘘ぉ!?」
「ばか、大きい声だすな。ま、聞いてないと思うけど・・」
れいなはちらっと教師を見る。数学の教師だった。ほとんど自分の世界にはいってしまっている。
ぶつぶつと、つぶやくように授業をしている。
みんなは、それを聞き漏らさないように真剣に聞いている。
中には、なんだかばからくなって授業を放棄する子もいたが・・
その様子を見るのがれいなは好きだと言う。
- 99 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:16
-
「名前だけなら聞いたことあると。・・んーでも、他のことは・・。」
そっかぁ、とうなだれる。
「あっでもそういうことは紺ちんに聞けばいいじゃん。」
希美は言った。
「なんで?」
れいなの顔がゆがむ。あーそんな露骨にいやな顔しなくてもさぁ・・・
「だってさ、紺ちんそういう情報何故か詳しいじゃん?だから。」
れいなは返事せずに携帯画面に視線をもどす。
希美は溜息が出た。
- 100 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:20
-
「藤本さん?しってるけど?」
「ほんと?!紺ちんっ。」
「う、うん。だけどどうして・・。」
希美は言葉につまった。あさ美は首をかしげる。
「で、どんな人と?」
希美が答える前にれいなが口を出した。
助かった、と思ったもののれいなはまたあの顔になっている。
あの顔。なにか、くだらないものでも見るような目つき。
あさ美も多分気づいているんだろうな。
そこがまた、切なかった。
- 101 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:24
-
「二年生。吹奏楽部ね。楽器は・・・トランペット。」
真里ちゃんと一緒のパートだ。希美は思わず唇をかみしめた。
「なんか、男女ともに人気あるらしいけど・・・あっ、その人と幼なじみの子同じ学年でいるよ?」
「そうなの?へー・・知らなかった。・・・よくしっているよなぁ、紺ちん。」
あさ美は照れたように微笑む。
あさ美は昔から自分にものを教えることが好きだった。
屈辱はかんじなかった。
あさ美は独特の言い方をしていて、聞いているのが苦じゃなく、学校の先生より
教えるのが上手、だなんて思ったりもしたほどだ。
- 102 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:28
-
「陸上部にね、亀井ちゃんっていう子がいるんだけど・・
その子の友達らしいの。なんか美術部の。その子も有名なんだけど・・
道重さゆみ。」
「み?ちげ?なんか、やらしい名前。」
希美が言うと、れいながふきだした。あさ美はちょっと口をまげる。
「みちしげ。道に重いってかくの。」
変わった名前の子もいるんだなぁ・・・希美は単純に関心した。
- 103 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:29
-
その、道重さゆみが・・・この子だ。
意外に背が大きい。そして、白くて可愛い。
美術部なんて言うからもっと暗いイメージが・・・。
って、それは失礼?
- 104 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:32
- その子はまたとまどっている。希美が手を離す。
「ねぇ、キミ可愛いっていわれない?」
「のんさぁ、そんな質問いきなりすんなっての。困るとよ?」
れいながアイスをくわえてくる。
「はい。いわれます。」
きっぱりと言った。嘘を言ったつもりはない。
れいなは口をあんぐりあけた。こぼれそうになったアイスをあわてて、とる。
- 105 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:35
-
「全然困ってないし・・・はははっ。変な子だぁ・・ははっ。」
れいなが笑う。乾いてよく響く声だった。
「きにいったー。さゆみでいい?」
「いきなり呼び捨てにすんのかよっ。」
「うん、する。ねぇ、いい?れいなのことはれいなでいいからさー。」
なれなれしいんだろうけど、いやじゃなかった。
反対に、こんな風に簡単に話しかける人達は好き。
- 106 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:38
-
さゆみはうなずくいた。希美の方を見たら何か携帯で写真を撮っていたようだった。
「さゆちゃん、メルアド教えてくり。」
希美が目を細めて言う。さゆみは教える。
「さゆみってほんとに正直な子とね。」
れいながまた笑う。
- 107 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:44
-
「よし・・・よっし、送信!」
携帯が鳴った。急いであけてみる。
それは、希美の変顔だった。
「友達の印ね、変顔メール♪」
「はっ、またおくってんの・・あれさぁ、気分悪くなるからやめてくれる?」
「いやー、れいなの送ってきた奴も十分気持ち悪かった・・。」
「んな!変顔おくったことなんてない!」
「あれ、あれ変顔じゃなかったの?なんか、ウインクしてたけど・・」
希美がにやりと笑う。
「くそお、こいつに写メール送るんじゃなかった・・・。」
れいなは後悔した。
さゆみは黙っていた。その、写メールを見つめながら固まっているようにも見えた。
- 108 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:46
-
希美とれいながさゆみを覗き込む。
「・・・きもい。」
れいなが後ろにのけぞって、笑った。
希美はショックなのか、そのまま固まった。
- 109 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:49
-
「ははは、キモイだってよー。いーよ、さゆ。正直で。
そうだよね。あの顔はきもいよねぇっ・・・。」
れいながばんばんとさゆの肩をたたく。
「ごっ、ごめんなさい。でも、ちょっと、こういう顔は・・・」
さゆみはショックで固まった希美を見て謝った。
「・・・ん?いいよ、いいよ。あんなんキモイっていわれるために送ったようなもんだしね。
」
希美がひきつった笑いのまま言う。
れいなは、まだ笑っていた。
- 110 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 21:57
-
れいなが用があるといって先に帰った。
れいなはまだずっと笑っていてさゆみと希美に大きく手を振った。
勝ち誇ったような笑顔だった。
その後は、さゆみと希美で帰った。
「へー。さゆちゃん家って結構ちかいんだね。。」
「そうみたいですね。」
「ねー・・しげさんってよんでもいい?」
思わず足がとまった。希美を見る。
希美は何の邪気もない顔で見ていた。
シゲさん。それは、ずっと昔から美貴に呼ばれていた。
可愛いくなくていやだったけど、美貴だからまぁいいやなんて思っていた。
それに、自分も昔からずっと 藤本さん だったから。
「さっき、ちょっと考えてさ。最初聞いた時びっくりしたのね。
みちしげ・・ってね。だから、しげさんなんてどうかなぁ、って思ったりして・・
いやなら、いいんだけどね。」
「はい。やっぱり、ちょっと・・・」
そうだよねぇーいやだよねぇーなんて希美は笑った。
いやじゃない。だけど・・・
何かが、拒否したから。
- 111 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 22:00
-
あっと、希美は思い出したように声を出した。
「・・・藤本美貴って知ってる・・よ、ね?」
声が出なかった。知ってるもなにも・・ずっと、考えているひとだ。
さゆみは黙っていた。失礼とは思っても、どう反応すればいいのか、何を言えばいいのか分からない。
「・・関係ないか。」
えっとさゆみは声をあげた。
希美はにこっと優しくわらった。「・・・ね!」
- 112 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 22:04
- 何か、そう希美に言われるとそう笑えられると優しい気分になる。
「・・はい。」
微笑んでいた。
パシャっ。カメラのシャッターを撮る音がした。
「あー可愛い。・・・保存。」
「ちょっ、辻さん・・・。」
「だって可愛かったもん。」
希美がすねたように口をすぼめた。
この人、すごくおかしいかも。
さゆみは笑ってしまった。
こんな風に、大声で笑ったのって久しぶりだったかもしれない。
さゆみは、ポツリとそう思った。
- 113 名前:米 投稿日:2004/08/29(日) 22:04
-
おわります。
- 114 名前:七誌募集中? 投稿日:2004/09/05(日) 03:05
- 非常に新鮮でいい感じです!
楽しみに待ってますよ〜。
- 115 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:09
-
夕ぐれの教室。
忘れ物があるのでとりに帰った。
教室は鍵はかかっていなかったが、誰もいなかった。
だけど、窓は全開に開いていることにれいなは気づいた。
れいなは、窓に一番近い机にのっかると、風にあたった。
汗がひく。
- 116 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:13
-
「・・・れいな?」
振り向いた。すると、あさ美の姿があった。
陸上部の練習がおわったんだろうか、と思った。
あさ美のちかくに誰がいた。あさ美が何か言うのに気づいた。
その少女はこっくりとうなずくと「先いってるね」といった。
「うん。おねがいね、亀子。」
亀子・・・あぁ、あの子が亀井・・・。
あさ美が近づいてくる。
あさ美の顔は赤く、汗びっしょりであった。
そんなあさ美の顔から視線をはずし、背を向けた。
- 117 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:17
-
あさ美のことは嫌い・・・ではなかった。
嫌い、とまではいかない。
だけど、絶対好きじゃないんだ。
イライラする。触れたくない。
見たくない。
もう、何もかも。嫌いだ。
- 118 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:20
-
「はぁ。あついねぇ。でも、なんか気持ちいいよ。
手応えっていうか・・・・自分が足はやくなってきてる!てのが
分かってー・・・」
れいなは黙って風に当たっていた。目がうつろであった。
「・・・れいなは、どうしたの?」
あさ美が覗いてくる。
その顔が、その声が信じられないほど優しくて、いやになる。
れいながつぶやく。
あさ美が聞き返した。
- 119 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:22
-
「・・・やだってんじゃん。何でちかよるの。」
あさ美は何もいわなかった。
れいなはかまわず、つづけた。
「れいなが、ここでどーしてようが、紺野さんには関係ないことなんだから。
」
傷つけたいんだ、と思った。
あさ美が、何もいわなくてとても優しいから
傷つけたいんだ・・・れいなは。
「最低」
れいなは、つぶやいた。
- 120 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:28
-
沈黙があった。
あさ美の顔からは、悲しみもむかつきもなかったようだった。
「・・・やっぱ夏でも、涼しい所あるんだね。」
あさ美が、目を細めていった。とまどう。
れいなのぶらっとした手を、あさ美がひろう。
そして、にぎった。
「えっと・・・私。・・・喋ることは苦手だけど、人の話を聞くことは
得意なんだ。って言われたこともあるし・・・のんちゃんに。」
れいなの体がぴくり、と動いた。それでも手をほどかなかった。
それを見て、あさ美はホッとしたように顔をあげる。
「なんでも・・・いって。」
- 121 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:34
-
れいなが顔をあげる。あさ美は、微笑む。
れいなはあさ美の手をほどき、窓の方にちかよっていった。
「・・・紺野さんは、何をそんなにがんばってるの?」
れいなの髪がふわっとなびく。れいなは口に髪の毛がはいるのを気にせず、しゃべった。
「誤解せんでね。れいなは、あんまり頑張らないから。・・だから・・」
言葉がつまる。
- 122 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:39
-
「わかんないよ・・・理由は。だけどね。えっと私、がんばったらいいこと
おこるから。そのいいことのために、がんばってんのかなぁ・・・」
単純な理由だった。全然単純で、れいなの聞きたかった答えとは全然
ちがっていって、れいなは驚いた。
そして驚いた自分に驚く。
そんな・・・期待通りの答えが返ってくるなんてこと・・・・。
れいなが唇をきつくかんだ。
「・・・れいな・・・ごめん。でも、私も・・よく、わかんなくて・・」
れいなの顔が険しくなったのを気づいたのかあさ美が頭をさげる。
- 123 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:43
-
「どうしてすぐ謝るの?いっつも。・・・そんなに、悪いこといってないん・・・
れいなはね、すぐ謝る奴は駄目だと思う。別に紺野さんにかぎることじゃなく・・」
れいなが息を一つついた。
「学校ってくだらないよね、意味がわからないし・・
ただ単に嫌いだからかもしんないけど。・・・本当は高校なんかいきたくなかった。
・・・だけど、のんと一緒なら、くだらない所もすごく楽しい所になるんじゃないかって
思った。」
れいなの顔にはじめて笑みがこぼれたのがわかった。
- 124 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:49
- れいなが息をすう。
「・・・だけどさ、そんなうまいこといかないよね。
やっぱ・・・怒られたし。うちの親に・・・
もしかしたら、あたり前なのかもしれないけど。
・・・・れいなわりと頭はいい方なんだよね。」
れいながあさ美を見る。ちゃんと聞いているか、という合図だった。
あさ美はうなずく。それでも、れいなはあさ美に何もしゃべらせようとはしなかった。
「だからさ・・まだ、中学の時は結構勉強してたんだよ。
まぁ、知ってるかもしんないけどさ。授業とかはサボってたりしたけど。
遊ぶ日の方が多かったけど・・・んでも、やっぱ帰宅部だから。
勉強はしてたよ。そのおかけで高校にはいれたんだし・・・」
- 125 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:53
- でも、とれいなが続ける。
「なんか・・・なんっかこう・・・・・
高校に入ってから・・ぽつん、と切れちゃって。
もう、のんと遊べたらそれだけでいいかな、みたいな・・。
そしたら、家・・・・おいだされて。」
「それ・・・のんちゃんには・・・?」
あさ美は息をのむ。
「いってない。のんだけには、絶対いわない。
たいしたことじゃないんだよ。たびたび家でていったりしたことはあったし、
初めてじゃないし・・・。」
たいしたことじゃない、とれいなは繰り返した。
その姿が、妙に痛々しくて、あさ美は目をそらす。
- 126 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 14:57
-
れいなはしばらく何もいわなかった。
あさ美も何もいわなかった。言葉はでなかった。
自然すぎる沈黙だった。
黙っていることが、必然だと感じた。
「・・・でも、、これから。どこにいこうかなって。」
れいなが口を開いた。
「考えていたとこだった・・・・。」
- 127 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:02
-
れいなの背中がゆがんだ気がした。
その背中が振り返る。
「こんなこと、言うつもりじゃなかったけど・・・
・・・でも、何も言わず聞いてくれたことは、感謝する。
・・・・・ありがと。」
れいながぼそぼそといった。顔が赤く見える。
あさ美は首をふる。
「なんも・・・力になってない。本当に・・なんにも。
・・・・・れいな。れいなはいやかもしれない・・私の家に・・・こない?」
- 128 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:07
- れいなはゆっくりと首を横にうごかした。
あさ美はうなだれる。
何か、れいなのために力になれることはないか。
あさ美は考えた。でも、何も浮かばない。
馬鹿、私の馬鹿・・・どうして、こういう時にだけ頭が働かないんだろう。
どうでもいいことばっかり知っていて、肝心なことは・・・
れいなが行こうとする。その動作は、ゆっくりだった。
あさ美のなかの何かが揺れる。
「れいな!!」
自分でもびっくりするほどの大声だった。れいなが足を止めて振り向く。
その顔は、驚いた。
- 129 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:15
- 「な・・・泣いて、いいよ。」声が震える。
れいなの顔がゆがむ。怒鳴られると思った。
だけど、れいなは苦しいようにあげき、瞳からは涙がでてきた。
あさ美は、れいなの肩を抱いた。
れいなの肩はほそく、でもふるえていた。
「ちゃ・・・いやだぁ。・・・泣きたくなんかっ・・・ないのに・・・」
自分の何かがどっとあふれてきたように感じていた。
他人に、しかもあさ美に、自分の泣き顔を見られるのは死ぬほど苦痛で、いやだった。
だけど、「いやだ」ともがけばもがくほど激しくなってくる。
もう、止められなかった。
- 130 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:23
-
「・・・いっぱい、いわれた。」
「え?」
「・・・もう、「れいなはいらない」んだってさ・・・」
あさ美が唇をかんだ。はりつめた表情になった。
「・・・なんで、紺野さんがそんな顔するさ。」
「だって・・・子供を見捨てるのが・・一番親がしちゃいけないことだと
思うから・・・・きつく怒っても、最後はがんばろうっていうことが、大切だと思うから・・。」
れいなは、あさ美の手をふりほどいた。
「・・・そんな親ばっかいないってことは分かってるよ・・・。
でも・・・・・そうだと思うけど・・・。」
れいなの声は、だんだんちいさくなってくる。
なんだか、全然いつものれいならしくない。
でも、このれいなを知って、ものすごく嬉しいと思った。
- 131 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:25
-
「強く生きるよ。」
れいなは、いつもの力強い瞳でそういった。
「ったく・・・れな何いってんだろ、くっさ〜。」
れいなは軽い足どりで出て行った。
その顔はほのかに赤くなってたけど、でも笑っていた。
- 132 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:31
-
雨がふってきた。
目眩がする。足下がふらつく。
熱があるんだ、と一瞬おもった。顔が火がでるようにあつい。
もういやだ、と思った。
その瞬間、勢いよく地面に倒れた。
痛みがはしる。
・・・動けない。
雨が容赦なくふりかかってくる。
意識が朦朧とした。
雨が・・・やんだ・・・?
「あれ・・・こんな所で人が倒れてるっ。」
高い声が聞こえてきた。目をあけると、青と白のカサをもった見覚えのある
少女がいた。
髪は艶やかな黒髪で、目を猫みたいに細めてる。
だけど、意識がそこで消えた。
- 133 名前:米 投稿日:2004/09/07(火) 15:34
- れいなと紺の話でした。
114
ありがとうごさいます。続きを期待してくれる人がいるとかく気になります。
では。
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 22:33
- 期待してるのは他にもいます
ので、頑張ってください♪
- 135 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:12
- 夏休みなんてあっというまで。
自分が外にでると、制服の生徒がいる。
「あっ校章つけてない」なんて声が聞こえてきて、あー学校だ・・・
と鬱になる。
希美の気分は最悪だった。
なんだかイライラして、たまらない。背中がゾクゾクする。
真里とけんかした。
希美は最近ずっと出歩いていたのでもっと勉強しろと真里がいう。
それで、希美は「真里ちゃんは母親じゃない」とどなった。
そこから真里はかんしゃくをおこした。
真里の機嫌も最近よくなかった。
何か、バイトの店長が最悪にむかつくと電話で美貴にいっていた。
そんなの、知るもんか・・・。
だから、今日の朝もほとんど口をきかなかった。
- 136 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:15
-
れいなも変だ。
なんだか、いつもみたいに笑わない。
話を聞いていない時もあるし、笑っても、かなりかたくなだ。
ちっともおもしろくなさそうだ。
それに、れいなとあさ美の関係も悪化したみたいに思える。
れいなはほとんどあさ美を見なかった。
- 137 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:22
-
れいなは携帯もいじくらず、真面目に教師の話を聞いていた。
いや、聞いているんだろうか。
まったく、耳に入ってないようにも・・・見える。
「紺ちん、最近れいな変だよねー?」
希美が、れいなが机の角に足をあたって痛そうに顔をゆがめるのを遠目に見る。
あさ美の体がびくっと震えた。
「・・・もしかしたら、私のせいかも・・・」
あさ美の声が小さくなる。
「え?なんで?」
何か悩んだように首をかしげるとあさ美は口を開いた。
「夏休み中のことなんだけど、れいなと学校であって・・れいなその時すごく
元気なくて・・・だから、色々聞いて・・。」
え?と思った。夏休み中、れいなはものすごく有り余るほど元気だった。
- 138 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:30
- 「最後ね、れいな泣いちゃったの。」
「ちょ、ちょ、ちょっとまて。紺ちん、ストップ」
希美の手があがる。
そんなはずはない、れいなは絶対泣かない。
れいなの泣く姿なんて想像がつかない。
何があっても彼女はなかない。強く唇をかんで、文句をいって、それで・・・
「だってさ。そりゃれいなでも、泣いたことはあると思うよ。
でも・・・・いやだ、なんか。」
自分でもめちゃくちゃいってるとわかる。
けど、れいなは悲しくて泣いて欲しくない。れいながぼろぼろになるなんてとこ・・
絶対駄目だ。
- 139 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:40
- あさ美の目を見る。あさ美はひるまなかった。
「・・・たまってたんだよ、いっぱい。でも、駄目だったんだ・・。
れいなが泣く姿を見せるなんてこと、しかもそれを私に見せた、から。
今きっとれいなどうしようもない感情で、たまんなくなってるよ。
だから、私のせいだ・・・。」
首をかしげる。そうかなぁ、とひねる。
「れいな、それで怒ってた?」
あさ美が首をゆっくりと横にふる。
「なーんだ、じゃあ大丈夫だよ。照れ隠し、照れ隠し。
・・・紺ちん、れいなは大丈夫。まぁ、確かにどうしようもなくなってる
かもしれないけど・・・でも絶対紺ちんのせいじゃないよ。
・・・泣きたかったのかな。・・・れいな。
うん。泣きたかったんだ・・。だって。たまってたままだったら、最悪じゃん?」
「そういえばれいな「ありがと」っていってた・・・。」
あさ美がポツ、とつぶやいた。
れいなはふーん、と笑った。
「多分ね、意味あるよ。すごい理由。れいなが紺ちんの前で泣く理由。
れいなは絶対のんの前では泣かないだろうね・・。」
え、とあさ美は顔をあげる。
「れいな、紺ちんのこと好きなんじゃないー?」
希美がばしっとあさ美の肩をたたく。
あさ美の顔は赤かった。
- 140 名前:米 投稿日:2004/09/17(金) 16:46
- かなり短いですか、今回はここまでです。
134
レスありがとうです。
はい、頑張ります。次は、遅くなるかもしれないけど、
やっぱりあきらめずにやります。
それでは。
- 141 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:03
-
足がかたかたと震える。トランペットをもってる手が、汗で滲んだ。
あわてて、ハンカチで掌をふく。
手が震えて、ハンカチをおとしてしまった。
「もう・・矢口ー、緊張しすぎだよ。」
圭織が笑ってハンカチを真里の手にわたす。
ごめん、と言ってハンカチをもらう。
止まれ、止まれ・・・。
- 142 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:10
-
なんで緊張なんかするんだろ。
嫌だ、もっと気楽に・・・。
先輩達も、笑いながら大丈夫?と真里の背中を優しく叩く。
それにも、弱く苦笑いするしかなかった。
「・・圭織は、緊張しないの?」
「矢口ほどは、してない。」
そういって笑って、でもキュッと引き締まった顔になる。
「そりゃ一年生ははじめてだから・・・だけど、一人でやっている
わけじゃないんだから・・・なんてね。」
「はい、そろそろ準備して!」
顧問の先生がいった。とたんに心臓が早鐘をうつ。
止まれ、止まれ・・・。
「いくよっ!みんな、がんばってね!」
「はいっ!!」
止まれ、止まれ・・・。
トランペットに写る自分をみる。ものすごく情けない顔をしていた。
クスっと笑うその笑顔さえ、本当に情けない。
そうだ、一人じゃないんだもんな・・・。
顔を引き締める。逃げない。
ふるえが、とまった。
- 143 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:14
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
テレビをつけると、高校の吹奏楽部の大会がやっていた。
ついつい、あぐらをかいてテレビをみる。
この子達は、今どんなことを考えて演奏してるんだろうか。
トランペットを弾いている子がうつった。
何の迷いも、ないそんな感じだった。
演奏が終わる。拍手がおくる。
真里はテレビを消した。
- 144 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:19
-
あった。
真里は押し入れの奥から、トランペットが入っている箱をとりだした。
毎日、毎日綺麗に拭いたんだよなぁ
今は、埃をかぶっていて、音もあまりよくない。
でも、自分はこのトランペットが大好きで、誇りだった。
昔に、もどりたいなって思う時だってある。
それは駄目なのかなぁ・・・やっぱり。
- 145 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:23
-
希美と最近全然口をきいていなかった。
夏休みにはいってからというもの、希美はほとんど遊びにでかけていた。
最初のうちは、まぁ高校生なんだし、なんて思ったけど。
自分が汗をかいてそうじや買い物もしている時に、希美はなんで友達と遊んでいる?
それは、いくらなんでも不公正じゃないのか?
なんて。
それを友達に言おうと思ってもその友達にはなぜか言えなくなり、
バイトの店長のことをいった。
だけど、一番むかつくのは希美のこと。
- 146 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:30
- その怒りは夏休み最後の日におこった。
希美が、にこにこと無邪気に友達のれいなのことをはなす。
イライラしてきた。
「・・・希美、もう遊ぶのは駄目。ストップ。」
真里がいうと、希美はキョトンとした表情で見てくる。
「えー、何で?」
「何でじゃない。お前遊んでばっかでおいらの手伝いもしないで・・・
しかも、勉強してないじゃない。あんたさぁ、ほんとにやばいよ?
留年なんて、いやでしょ?だったら勉強しろ。」
ぴしゃりと早口でいってやった。
希美は一瞬間の抜けた表情になったが、すぐきっとにらみ付けた。
「はっ・・・勉強しろって、なにさ!いーじゃん夏休みなんだから!
そんな心配しなくても、ちゃんと勉強します!
・・・だいだい、真里ちゃんは希美の母親なわけ?」
「馬鹿いわないでよ。あんたの母親なんかになったら、倒れるわ。」
自分でも意地の悪い口調になったのが分かる。
希美はそれっきり、何もいわず、それっきり自分の部屋にはいった。
- 147 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:37
-
希美は一言も口をきかず、学校にむかった。
出て行こうとした背中に謝ろうかな なんて甘い思い
だけど、悪いのはあっちだ。絶対、希美が悪い。
大人げないなぁ、なんて思いつつも真里は皿洗いをしていた。
「あっ・・・!」
手がすべり、コップが勢いよく割れる。
いやな音がする。こういう音は、嫌いだった。
何故かたまに聞きたくなるんだけれど。
真里は、その割れた破片などを見ながら大きく溜息をつく。
だけど、なんだか・・・・
なんだか、イヤになり真里はそのままソファにたおれこんだ。
- 148 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:46
-
家に帰ると、明かりがついてなかった。
暗闇の中で、くつを脱ぐ。
「ただいま・・・。まーりちゃん?」
小さい声でいう。返事はない。
もしかして。
という悪い予感が、希美の胸の早鐘をうった。
もしかして、真里ちゃんでていった?
「真里ちゃん!!」
靴を乱暴にけり、真里をさがす。
自分の部屋にいない。どこかにいる、大丈夫。きっと・・・
リビングのドアをあけた。そこには、ソファーで眠っている真里がいた。
- 149 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:50
-
「真里・・ちゃん?」
すぅすぅと、寝息が聞こえる。
希美はへなへなとその場にたおれこんだ。
何だよぉ・・・。ほんと馬鹿みたい。
自分には、やっぱり・・・・・
真里ちゃんが必要なんだ。
そんな事を思ったらなんか急に恥ずかしくなり、希美は頭をかきむしった。
- 150 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 13:53
-
真里の額に手をのばす。熱い感覚。
希美は驚いて自分の額と確かめる。
たしかに違う。温度差が・・・。
真里の瞳が開く。
「の、ぞみ?」
真里の意識が朦朧とした。希美の顔がぼやける。
しかも、体がだるい。寝た後なのに、いやそれとも寝たからかな・・?
うん、きっとそうだ・・・と自分で納得して立ち上がろうとする。
だけど、強い力で制止された。
「駄目、寝てて。」
え、と見上げる。希美の顔があった。
- 151 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:02
- 希美は一瞬ちらりと真里の顔を見るとそのまま台所に行った。
真里はぽかん、とした。
さっきの顔、とても希美にはおもえなかった。
なんだ、アイツ・・・・・。
真里は希美に促され、パジャマに着替えて、ベットに入った。
希美は濡れたタオルももってきてくれた。
あの表情のまま。
何か言おうと思ったけど、何も言えず、真里は仕方なくベットにはいった。
体は疲労感でいっぱいで、寝たばかりなのに
すぐ何も考えられなくなった。
- 152 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:05
-
次に目をあけると、おいしそうな匂いが台所から。
これは・・・チャーハンかな。
希美がつくったんだろうか、・・・チャーハン作るぐらいの材料は
冷蔵庫にあるはず。
それでも希美が料理するなんて所は想像がつかなかった。
どうみても不器用そう。
なんて、それは失礼だな。
- 153 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:16
-
「いただきます。」
手をあわせる。希美がこくりとうなずく。
チャーハンは、美味しそうにできていた。
真里は口に運んだ。
「・・・・うん、うまい。」
「ほんと?よかったあ・・・。」
希美がホッと息をつく。そのしくざがまた、妙に大人っぽかった。
何故か、さみしい なんて思ったりして。
「うん、ふつーは風邪の時とかって雑炊なんだけど・・・チャーハンでも、いいよね?」
「ん、別になんでもいいよ。」
もう一度、口に運ぶ。本当に美味しくできている。
もっといろんなもの作らせたら、自分よりうまくなるかもしれない。
以外に器用なんだなぁ、とはじめてしった。
- 154 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:20
-
「ごめん。」
希美がいった。真里のスプーンをもつ手が、止まる。
「や・・・思った。のんってさ、全然手伝いとかってほんとしてない
なーって思って。」
だから、ごめん。と希美が頭を下げる。
「ほんと意外。」
「はっ?」
真里が笑うと、希美が聞き返す。
「希美から謝るなんて・・・。成長したじゃん。」
希美のでこにデコピンを三発。
「ななっ・・・いたい、いたいって。」
「仲直りの印だ。」
もちろん、それもあるけど。
さびしさと、嬉しさと。
うん。ちょっと複雑だよ。
- 155 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:29
- 希美は、おでこをおさえて、でも柔らかく笑った。
うん、その笑顔。その笑顔がみたいなぁ、やっぱり。
「早く元気になってねー。それまでは、のんがごはんつくったげる
からさ!」
ぽんっと、希美が自分の胸をたたく。
「あんたにできるかねー?」
「なっ大丈夫だっての。あ・・・それより・・・」
希美の手から、何かの破片が見える。
「ごめん・・・お皿わっちゃった・・・。」
希美の眉がまがる。真里の表情を伺っている。
「・・・ねぇ、もう一つ、コップわれてなかった?」
確かそのままの状態で。
真里は希美にささってないか心配になる。
「うん・・・割れてた。」
「あーあれ・・・おいらがわったんだ。だから、別にいいよ。
おあいこじゃん。」
そういって希美の頭をなでる。くすぐったそうに、希美の目が細くなる。
- 156 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:34
-
チャーハンのお代わりをして、「真里ちゃんくいすぎー」
なとど希美が笑った。
「このチャーハンは赤飯のかわりだよ。」
「赤飯?なんで・・・もしかして、真里ちゃん生理・・・?」
希美の頭を今度は強くはたいた。
希美がうめく。
「あんたさぁ、藤本に勉強教えてもらうー?」
「えっ!?」
希美の目が見開く。
「いや・・藤本かなり頭いいんだよね。だから・・・
うん!そうしよ!」
「えっ・・・?いや・・・?」
希美が何かぼそぼそいう。聞こえないふりをした。
大丈夫、希美なら。
なーんて。
このチャーハンは赤飯の代わりだ。
希美はもう、大人なんだ。
- 157 名前:米 投稿日:2004/09/19(日) 14:36
- 矢口さんの話でした。
それでは。
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/25(土) 09:35
- 二人の関係がすごくいいです。
お互いに必要とし合ってるみたいな感じがでてて、
なぜ一緒に暮らしてるのかとか、この先が楽しみです。
- 159 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:23
-
れいなは今、ものすごく困っていたり する。
つか、こんなことで焦っている自分がいやなんだけど。
瞳をあけると、白い天井が見える。
自分の家とは違う、匂いがする。
あきらかにれいなの家ではなかった。
「はっ!!」
勢いよく起きあがる。ふらついた。
誰かの部屋らしい。机と椅子がちょこんと置いてあって。
本棚には、ハートマークがいっぱいの漫画がおいてあった。
ど、どこここ・・・?
- 160 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:26
-
今、着ている服はあきらかに自分のものではない。
しかも濡れてたはず・・・
もしかして、おっさんに誘拐された、とか。
れいなはこの女の子らしい部屋を無視した。
そうだ、そうにきまってる。
今、このドアのむこうにはおっさんが・・・。
れいなは拳を握りしめた。
ドアを開く。
振り返る人物を見て、れいなはあっけにとられた。
おっさんではない。それだけはわかる。
- 161 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:29
-
「あ、田中さん。目ぇさましたんだぁー」
目の前の女の子はにこにこと笑う。
見たことある。確実に。
れいなは思い出そうと精一杯頭をひねって考えた。
「か・・・・め・・・?」
やっとのことで、そう言うと女の子はちょっと首をかしげた。
「はい、亀井ですけど」
- 162 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:38
- ふざけとう、と思った。
亀井サンは教えてくれた。
部活帰りに、人が倒れていた。そのこはひどくしんどそうだったので
かついできたそうだ。
それが。れいな。
絵里がれいなの前に紅茶を置いた。
れいなは「ありがと」といった。
紅茶を飲む。ハーブティー・・・・。
- 163 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:44
-
なんて、情けない。
そういえば、その前はあさ美に泣き顔を見られたんだ。
もう、思い出しただけで・・・。
あさ美の顔を思い出す。
優しい瞳、温かい手・・・・止まらない涙・・・・。
唇をおもいっきり噛む。
どんな顔して会えばいいわけ。
紅茶に写ったれいなの顔がゆらゆらと揺れる。
- 164 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 14:49
- れいなは顔を上げた。
「ありがとう、亀井さん。」
ぺこっと頭を下げる。絵里はかまわずにこにこと笑いつづけている。
「いいよぉ、全然。」
「あっ・・・あのさぁ、この服ってもしかして亀井さんの?」
「うん。だいじょーぶ。女同士なんだから。ちなみに、下はかえてないし。」
そんなことさえも、へらへらという。れいなは絵里の顔をまじまじと見た。
「じゃあ、上は見たんだ。」
絵里がこっくりとうなずく。
れいなはうなだれた。
まぁ、助けてくれたんだし・・・・
- 165 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:06
-
紅茶を飲み干した。飲んだことはなかったけど、案外イケると思った。
時計の針を見た。9時半・・・。
「亀井さん、どうもありがと。・・・ということで、帰るから」
絵里がポカンとれいなを見上げる。
れいなが帰る準備をする時もじろじろと見てきたのでれいなは気になって尋ねた。
「なに?」
「なにって・・・田中さん、帰るとことかって・・ないん、でしょ?」
なに、と思った。なんで亀井サンが。
「だって9時半だよ。誰も迎えにこないから・・・電話番号とかも
しらないし。一人暮らしとかしてるのかなぁって。」
「・・・・確かに、帰る所はない。でも別に平気だし。」
れいなはずかずかと絵里の部屋にはいって自分の鞄をとった。
絵里はのろのろとついてきた。
「制服・・・乾いてないよ?」
れいなの鞄をとる手が止まった。絵里を見る。
絵里は、ちょっと頬を赤らめてれいなの鞄をとった。
- 166 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:17
-
絵里は一人暮らしらしい。
「もうね、高校生だから社会の勉強とかで一人暮らししてみるのも
いいかなーって。」
何かのおとぎ話をはなすようにはなす。
「・・・親はなにもいわなかったの?」れいなはつい質問していた。
「うん。いいんじゃないかーって。」
一人暮らしをするのにそんなに簡単でいいのかと思う。
こんなやつもいるんだ・・・・・。
- 167 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:21
-
絵里が布団をしいているのを見る。
絵里の部屋は一人分の布団でいっぱいいっばいにも見えた。
それでも、なんとか布団をしいている絵里。
「制服、明日には乾くかね・・・」
ぼそっとつぶやいた。絵里には聞こえなかったようで、鼻歌なんかうたっている。
何か聞いた事ある歌だ。でも、なんだったっけ・・・
そうおもっているうちに、自分も鼻歌をうたっていた。
絵里が嬉しそうに顔をあげる。れいなはあわてて視線をはずし、鼻歌をやめた。
- 168 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:34
-
まだ十時前だ。しかも、さっき眠ったばっかりなのに眠れるわけがない。
しかも、めちゃくちゃ腹が減っている。
くそ、肉が欲しいけん・・・・。
暗闇の中で絵里がもぞもぞうごいた。
「田中さん・・・・起きている?」
「うん。」
絵里の顔が微かにみえる。笑っている。
「絵里さー、いつもこんな早い時間に寝ないし・・・」
じゃあ起きとばいいじゃんという言葉をおさえ、れいなは相づちをうつ。
れいなの腹がゴロゴロ・・と奇妙な音を出した。
れいなは顔が赤くなるのが分かったが、何でもないという顔をした。
「お腹へってるの?」
気づいてるか・・・やっぱり。
隠しても意味がないのでれいなはうなずいた。
- 169 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:37
- 絵里は考え込むように瞳をうろうろさせると、立ち上がった。
「ちょっと待っててね」
おっしゃ、肉!?
れいなは拳をつきだした。どうせ暗闇でわからない。
絵里は机のひきだしから何かとりだした。
はい、といってれいなにわたした。
れいなは手の中のものを見つめた。
「え?」
「チロルチョコ。」
絵里がにんまりと答える。そして、自分もチョコに手を出した。
チロル・・・・チョコかよっ!
- 170 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:47
- それでもれいなはチロルチョコを食べた。
何にも食べないよりはましだと思ったからであった。
口の中のチョコをそっと舌で溶かす。
甘い。
当たり前なんだけど。
れいなはこの甘さが実はあんまり好きではなかった。
嫌い、じゃないんだけど。
- 171 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 15:56
-
絵里の猫みたいな顔が目の前にある。
「・・・ねぇ、眠れないなら何かお話しよっか。」
れいなは何も返事しなかったけど、絵里は口を閉じなかった。
「んー・・・何はなそっかな・・・・何話したい?れいな。」
「なんでも。」
絵里はそれはなしだよぉなんて笑って答えた。
「・・・れいなの好きな物、なに?」
「にく。」
- 172 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 16:01
- 「ってかいつのまに呼び捨てになってんですか、亀井さん。」
「だって田中さん、亀井さんって・・・なんかしらじらしいし。
れいなも絵里でいいよ。」
「えり・・・絵里かぁ。ふーん。」
れいなが絵里ってよぶと、絵里ははしゃいだ。
何が、そんなに嬉しいんだとおもった。
ちょっと、ほんのちょっとだけ希美と似ている。
よくわかんないことで、笑って、楽しそうで・・・・
こっちもほんと楽しいよ、楽しくなったよって思った。
- 173 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 16:09
-
「ねぇ、もっとれいなのすきなもの教えて。」
絵里の顔をじっと見つめる。
今日の自分はなんだか、ひどく素直だ。
おもいっきり泣いた後だからだろうか。
「れいなの好きなものはー・・・・・・」
- 174 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 16:16
-
目覚まし時計がなっている。
まだ眠りたい、なんて気持ちを抑えながらひよこの形の目覚まし時計を止める。
大きくのびをする。
それで、隣のれいなも目覚めたようだった。
れいなは起きながらも、ぼーっと辺りを見つめていた。
「おはよう、れいな。」
れいなは瞳をごしごしとこすっていた。
制服は多分乾いている。
だけど、もう決めた。
「れいな、これからよろしくね?」
れいなの髪についている髪をそっと手でとる。
「うん。・・・・・え?」
にこりと絵里の笑う顔が見えた。
- 175 名前:米 投稿日:2004/09/26(日) 16:28
- 終わりです。
あーなんか妙にながったらしくなってきました。
田亀といっていいんでしょうか。
つーか、れいなの髪についている髪を・・・ってなんでしょう。(今きづいた)
ゴミです、すいません。
158 レスありがとうごさいます。
おぉ、嬉しいです。どうして二人が一緒に暮らしているかはだんだん・・分かるというか。
たいした理由じゃないんですけど・・・。
楽しみにしててください。
それでは。
- 176 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 01:54
- すごい((o≧口≦o))b!!ですね!
ののがすごくかわいい(〃▽〃)
やぐに甘えるところとか、嫉妬するところとか・・v
これからも頑張ってください!
- 177 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 00:32
- 田亀かなり良いです!これからの二人に期待!!
- 178 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 13:41
- お先にレス。
176 レスありがとうございます。
うちの辻を可愛いといってくれてありがとうごさいますー
現実の辻さんとはほど遠いですが(汗)頑張ります。
177 レスありがとうごさいます。
田亀は難しいけど、書いてみるとすごく楽しかったです。
あまり自信はなかったですが、良いといってもらえると嬉しいです。
- 179 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 13:48
-
希美は実は、ものすごく困っていたりする。
逃げられはしないんだけど。
テストの結果を見た真里の顔は。
笑っていた ・・・・ひきつっていたけど。
「もう、これで決まりね」
うなずくしかなかった。
- 180 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 13:57
-
さすがにショックであった。
あさ美は相変わらず学年トップだった。
それは分かるが、れいなの結果もいいのがくやしかった。
希美は自分のテスト用紙を見つめたまま、溜息がでた。
- 181 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:02
- これで決まり・・・というのは。
美貴が希美に勉強を教える、ということであった。
希美は「あっちだって勉強しなくちゃいけないんだし」とか
「それに部活もあって忙しいんでしょう」と真里に言ったが
真里はただ希美を睨んだ。
でも、希美は絶対美貴を断るとおもった。
だって・・自分を嫌ってる、から。
「希美。日曜日の二時からってことになったから。」
希美は振り返った。真里はにこっと白い歯をみせた。
- 182 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:14
-
困っている。本当に困っている。
「さゆ助けてェ・・・・」
知り合って間もないさゆみに助けを訴えた。さゆみはどうやら美貴と
知り合いらしい、ということを知ってか知らずか・・。
それでも今、あさ美にもれいなにも電話する気にはならなかった。
「大丈夫ですよ、多分。」
「だって見るからにのんのこときらってるんだよ?もう、どうしよぉ・・・」
希美がどんな顔しているか分かるような呻き声が聞こえた。
「藤本さん、そんな怖い人じゃないから・・・。最初は怖いかもしれないけど
慣れると絶対優しい人ですよ。」
それでも希美は色々思ったけどそれでもさゆみの声が綺麗でとても熱のこもった声だったから
何も言えなかった。
- 183 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:19
-
よし、こうなったら。
もうどっからでもかかってこい。
相手は一つだけ年上の女の人だ。しかも真里ちゃんと親しかった・・・。
それに、幼なじみが優しい人っていってんだ。
何をびくびくする必要がある?うん、ない。
希美は自分の頬をしっかりたたいて、うなずいた。
しっかりしろ。
- 184 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:22
-
「辻ちゃん、よろしくね。」
美貴の顔がちかくにある。その瞳を見ないように希美は頭をさげた。
「よっ、よろしくほねがいします!!」
- 185 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:30
- 希美は頭を深々とさげている。
美貴が笑って「もういいよ」と言うまでだった。
「それじゃ、藤本。おいらはバイトいくけど・・・うん。しっかり見てやってね。
ごしこじしばいていいから。」
希美は真里の顔をにらんだ。だか、真里は気づいてないようで部屋をでていった。
とたんに空気が凍ったような感じがした。
希美はなんだか泣きそうになったが、首を振って気合いをいれた。
「じゃ・・・はじめようか。」
今度は美貴の顔を見つめた。やっぱり、あの瞳で見つめられた。
「・・・・はい。」
- 186 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:38
- 「えっとー、とりあえず英語がめちゃくちゃ苦手だって聞いたから、英語からいくね。」
希美はうなずいた。それと同時に教科書とノートを開いた。
美貴が何かいっているのが分かる。だけど全然身に入らない。
右耳に入っても左耳から抜けていくような感覚。
英語かぁ・・・なんつーか意味わかんないんだよね。
宇宙人みたいな・・・別にのんは日本人なんだから英語なんてしゃべんなくていいよーな。
「うん、まぁ声に出して読んだ方がはやいよね。じゃあ一回よんでみて。」
「・・・・・え?」
希美は美貴の顔を見つめた。美貴はちょっと首をかしげたようなしくざをした。
希美はあわてて教科書をとった。
「えっと・・・えー・・・・」
希美は文字を目でたどった。口に出そうとするが、変な音がでるだけであった。
- 187 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:50
-
美貴が短く息を吐いたのが分かる。
希美の目の前の教科書が急に消えた。希美はおどろいて宙を煽った。
横を見ると、美貴が教科書やノートをかたづけはじめていた。
「えっ・・・?」
もしかして帰るつもり・・・・?
そんな、まだ10分もたってないのに・・・・真里ちゃんになんていわれるか・・・。
「ああああの・・・。のんはものすごい馬鹿だけど・・・でも・・・」
「まぁ一回目だからね。・・・矢口さんに怒られるかもしれないけど・・ちょっと、話そうか。」
希美は美貴を見つめた。話す?
ともかく、今美貴は帰らなくてしかももう勉強はしないんだというのが分かると
希美はうなずいていた。
- 188 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 14:54
-
ちと長いのでここでいったん切ります。
- 189 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:13
- 「ちょっと、話そうか」といったまま、美貴はずっと自分の手の平を見つめていた。
希美は気になったが、何か言うまで待っていた。
「美貴さ・・・久しぶりに矢口さんにあったんだけど」
そろそろ沈黙がつらくなって希美がもぞもぞと動いていた頃、やっと美貴が
口を開いた。
・・・・真里ちゃんのこと、か。この人、ほんとに・・・。
「前から痩せているようにかんじたんだけど、辻ちゃん無理させてない?」
美貴の話し方は穏やかだったが、妙にトゲがあるような言い方であった。
- 190 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:18
- 希美はじっと美貴を見つめた。
何故だか、もうあの瞳を見ることはあまり怖くなくなってきた。
むしろ、なんだかこの人も普通の高校生なんだとやっと思えるようになってきた。
希美があまりにも見つめるので美貴は居心地が悪そうに眉をまげて「何」と聞いた。
自分でも不機嫌な声になるのが分かった。
希美はあまり気にしてないようでにこりと笑った。
「それが、無理させちゃったんです。のんがあまり手伝わないから倒れちゃって。
でも最近はまた元気なんですよ。」
にこっと、歯を見せて笑う。
- 191 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:22
- その無邪気の顔をみて、チッと舌打ちしたくなる。
いいよな、と心の隅でおもってしまう。
こんなに生き生きと矢口さんのこと話せて。
馬鹿だ。きっと。でもやっぱりいやだ。
それを聞いてる、それを見ているだけの自分がいやだった。
- 192 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:29
- 美貴の顔が険しくなったのを見て希美が心配そうに覗きこんだ。
「あー・・・これから無理させないようにします・・・」
美貴はコクンと首を縦に動かしたけど別に認めたわけではなかった。
「あの高校生の頃の真里ちゃんってどうだったんですか?」
美貴は希美の顔をちらっと見る。
そうだ、その質問をさせたかったんだ。
希美の知らない自分だけの真里を知っている、と希美におもわせたかったんだ。
馬鹿みたい。
クスっと鼻で笑った。希美はちょっと眉をつりあげた。
- 193 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:39
- 「変な人だなぁって思った。最初は。・・・後は教えないよ。」
美貴がそういうと、希美は少し肩を落として腕をくんだ。
「へー・・・・でも、別にいっか。一生知ることはないんだし。」
希美は小さい声でいったけど美貴の耳にはしっかり届いた。
「え?」
「いや、あのこれからの真里ちゃんだけを分かれば・・のんは別にいいなって。」
ちょっととまどったように、でもきっぱりと希美はいった。
美貴はちょっと笑ったようなでも怒ったような顔をした。
ムカつく。
- 194 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:45
-
「辻ちゃんも、矢口さんのことがなかったら結構仲良くなれたりしたのにね。」
でも、仲良くできることは一生ない。
ごめん矢口さん。
美貴は荷物を全部強引にかばんにしまうと立ち上がった。
ちらりとも希美を見ずに部屋をでていった。
「・・・・ごめんなさい。」
残された希美は、そうつぶやいた。
- 195 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:49
-
「どうだった?一回目は。」
その夜、真里は疲れた表情ででも何か期待したような顔でいった。
「・・・勉強してない。話してた。」
怒られるかと思って真里を見たが、真里は苦笑いを浮かべていた。
「藤本らしいな。で、何話したの?」
「えっと・・・まぁ、色々。」
真里のことだとは何故かいいづらかった。
- 196 名前:米 投稿日:2004/10/11(月) 17:58
-
美貴は自分の部屋に戻った瞬間、ベットにくずれおちた。
何がこんなに許せないんだろうとどこかで思っているんだろう。
だけど、やっぱり・・・・
美貴は携帯を開いた。
あの人の番号。
『もしもし、どしたの藤本。』
明るい声。鬱陶しいって感じたこともあったけど、本当は一日に一回は
聞いていたい。
『あっ今日ありがとね。希美の奴が迷惑かけてたみたいで』
「矢口さん。」
『ん?』
「美貴・・・やっぱり、やめます。ごめんなさい。」
『え?』
「おやすみなさい。・・・また、電話します。」
ピッ。自分は真里の期待を裏切った、最低だ。
でもあんなの寂しくて虚しくて仕方ないよ。
美貴は携帯を握りしめた。
- 197 名前:名無し読者 投稿日:2004/10/21(木) 10:19
- ミキティせつないです。
でも辻ちゃんのセリフがかっこよかった。
- 198 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 17:52
-
家を出たとたん、ぶわぁっと風が吹いた。髪がゆらゆらとゆれる。
今年は、本当に台風がおおいとね・・・・。
れいなははぁっと深呼吸をした。ひんやりときもちいい空気が胸の中に入り込む。
「れいな、ちょっと待ってよー・・・」
絵里が制服のボタンをはずしただらしない格好のまま靴をつっかえて玄関からでてくる。
絵里にはそういう格好があまり似合わなかった。
- 199 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 17:55
- れいなはすたすたと行こうとする。絵里もひょこひょこついてくる。
もう、一週間にはなるかな・・・。
絵里はれいなを帰させようとはしなかった。
帰る、といって行こうとしても泣きそうな顔になって首を振るのだ。
どうやら、もう自分を家族か友達かペットかそんな風に思っているらしい。
れいなは舌打ちをする。
- 200 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:02
- その時、ふいに絵里がれいなの腕と自分の腕をからませた。
距離がなくなる。
ひんやりと冷たい素肌がぴと、とれいなの腕にからみつく。
「えっ・・・ちょ!!」
「れいなって、あったかいねぇ」
へらへらと笑いながらそんなことを言う。
れいなは離そうと必死にもがくが、絵里がぎゅうっと握るので到底無理だった。
あーもう。
「あっ紺ちゃんと辻さんだ!お〜い!」
自分の体温がサーっと下がっていくのがわかる。
- 201 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:04
- 絵里は気にせず走り出す。それをれいなはバカみたいについていくしかなかった。
「ちょっ・・・亀、亀井さん・・・」
お願いだから、あの二人だけには・・・。
二人は笑顔で振り返った。その笑顔が自分の所で止まる。
あさ美は目を大きく開いていた。希美は口をぱくぱくしていた。
絵里は気にせず笑っている。
- 202 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:12
- 「あっ・・・おはよう、亀子、れいな。」
あさ美はあんまり見ては失礼だと思い、精一杯の笑顔で話しかける。
希美は変わらずれいなだけを見ている。
あさ美はなんとか普段どおりに話そうと必死に笑顔だった。
気に障る。
気になるなら気になるって言えばいいのに。
「亀井さん」
絵里がこちらをむく。
「離して」
れいなが無表情でいった。絵里は肩を落とし、ゆっくりと自分の腕をはずした。
れいなは希美とあさ美には目もくれず、歩いていった。
- 203 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:17
-
れいなが歩いていった時、希美がやっと正気になったという風に声を出した。
「うん。れいなだ。」
そうやっと一言いうと、絵里を見た。あさ美も見る。
「亀子って・・・れいなと仲よかったんだ・・・。」
「うん・・・。だけど、怒らせちゃったな・・・。
でも、れいなって本当は優しいからこういうこと・・・っていうか、悪いことしてないよね?絵里」
絵里が希美とあさ美を交互に見た。二人とも顔を見合わせた。
「とりあえず・・・いこ。」
希美がいった。あさ美はうなずき、亀井は相変わらず肩を落としたままだった。
- 204 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:26
-
れいなは教室に入るとずんずんと大きな音を出しながら歩いた。
れいなの机のあたりに男子が騒いでいた。バカらしいことを大声で叫んでいる。
れいなは鞄をどんと大きな音を出して置いた。
男子か顔をしかめてこちらを見たが、れいなが睨むと男子はいそいそと去った。
その背中をにらみ、「バーカ」とつぶやいた。
- 205 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:32
-
希美とあさ美がはいってくるのがわかったがれいなは頬杖をつき見ない
ようにしていた。
希美が近寄ってきた。自分の椅子に座る。
ちらり、と見るといそいそと勉強の準備をしていた。あさ美もいる。
「・・・何しとん」
「勉強だよやばいんだよ。なんでれいなが成績いいわけぇー」
泣きそうな声を出した。あさ美が耳を髪にかけて教えている。
英語だ。
どちらとも、さっきのことを気にかけている様子もなかった。
れいなは後ろを向いた。
「・・・そこ、スペルまちがっとう」
希美が「ううっ」と悲痛な声をあげる。あさ美が苦笑した。
- 206 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:37
- あさ美が席についたあとも、希美はぶつぶつと単語を書き続けていた。
「ったく、なんでれいなは勉強してないのにのんより頭いいんだおー」
「知らんし、そんなん」
こ・こ・の問題じゃないん?とれいなは自分の頭を差す。
希美はれいなを噛みつきそうな顔を上げた。
- 207 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:46
- 5分前のチャイムが鳴った。
「あ・・・れいな、数学受けるの?」
れいなが椅子に座っている姿を見て、希美がいった。
「のんがそんなんだったら仕方ないよ。まぁ、寝とくけど。」
れいながニカっと白い歯をだす。その仕草が男っぽい。
「ねぇれいな、紺ちんとちゃんと喋っている?」
れいなは黙って首を横にふった。なんで喋る必要があるのと聞いた。
「・・・正直、よくわかんないな」
希美がポツ、とつぶやいた。れいながなにと聞く。
- 208 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:55
- 「ちゃんと」
希美は強く言った
「・・・話したことあるじゃんか。何も話していない時より全然関係
変わったはずだよ。んーまーそれでも、なんか照れくさいってのなら分かるけどね。」
希美はちょこっと笑い、それから少し気張った顔になった。
「れいなはわかんないよ。」
れいなの睫毛が上下する。きれいな表情だった。
「なんか・・・どうでもよさそうなんだよ。なんか。
紺ちんはここまできてんだよ。」
希美が自分の喉のほうを触った。
れいなはその希美がさした喉をゆっくりと見つめていた。
- 209 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 18:58
-
「・・・確かに、どうでもいいね。」
「えっ?」希美の眉があがる。
「のんのこと以外は。」
希美は意味がよくわからないようだった。目をきょろきょろさせて、最後はれいなを見た。
「・・・・ナニソレ」
れいなはぶすっとした顔のまま、前を向いた。
- 210 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 19:05
-
あさ美は、教室をゆっくりとした足どりで出た。
ふう、とひと息つくまもなく絵里の声が聞こえた。
「紺ちゃん、・・・陸部、昼休み職員室前だって。明日のことで」
「そうなんだ ありがと。」
「うん。・・・・あ、れいな怒ってなかった?」
絵里は心配そうに見つめていた。
「ううん。・・・ってかね、れいなと私ほとんど喋ってないんだ。」
あさ美が寂しそうに話した。
「でもね、私からちゃんと話しにいけばいいことだから。私、頑張るから・・」
あさ美が少し頬を赤らめていった。
絵里は赤くなったあさ美のことを不思議そうに見つめていた。
- 211 名前:米 投稿日:2004/10/21(木) 19:05
- おわりです。レスはあとで。
- 212 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/23(土) 00:00
- 今日はじめて全部読ませていただきましたが、おもしろいですね〜!
それぞれの展開が気になります。
個人的にはれいなファンなんでれなえりなのかれなこんなのか気になっちゃって
ますがw
とにかく、誰視点でも楽しめる話なので続き期待してます!
- 213 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 10:47
- 昼休み。
絵里とさゆみは中庭でお弁当を食べていた。二人は、きまってここで一緒にお弁当を食べる。
そばには大きな大樹があって夏には涼しい日陰になってくれるし、秋には綺麗に紅葉する。
冬には散って寂しくなるが、春にはピンクの桜になって戻ってくる。
それにここからは廊下でしゃべったり遊んだりする生徒を見れるので二人はその様子を笑顔で見ていたのだ。
「さゆんちのお弁当美味しそうだよね、いつも。いぃなぁ・・・」
絵里がうらやましそうにさゆの弁当を眺めた。
「そうでしょー。・・・あ、卵焼き、食べる?いいよ。いっぱいあるし。」
「えっいいの?!ありがとーさゆ。」
絵里が卵焼きをほおばる。幸せそうな顔で。
「ううん、口がとろける・・・。」
さゆがくすっと笑った。
- 214 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 10:59
- その時、絵里はちらりと廊下にいる人物を見た。さゆもつられてその視線の先を見た。
「「あっ辻さんー!!」」
同時に叫ぶ。顔を見合わせた。希美も気づく。ぱっと目が開かれる。
八重歯をチラっと見せる笑顔で手をふった。二人も同様手を振る。
そして希美は逆走した。
「あれっ・・・こっちにくるのかな?」
絵里がいう。さゆみも首をかしげた。
「さゆ、辻さんのことしってるんだー」
「うん、絵里も・・・」
「可愛いし、おかしいよね。あの人。」
絵里が柔らかく笑う。「うん。」さゆみも笑う。
さゆみは、ああいう風に優しく微笑む希美が好きだった。
おかしくて変だけど、「まあいいか」と許してしまいそうになる人だった。
その希美が、息を切らせて走ってきた。
- 215 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:06
-
「ふう・・・やっ!」
希美が手を上にあけで言った。絵里とさゆみも同じ事をした。
「わーこんな所あるんだー知らなかった・・。だいぶ、れいなと探索したんだけどなぁ」
「さゆが転んでここを見つけたんだよ、ね?」
「そう、そうなの。めちゃくちゃ怖かったー。」
3人とも顔を見合わせて笑い合う。
「あっそういえば亀ちゃん・・なんかせんせーが探してたけど、大丈夫?」
「えっ・・・あっ!先生に呼ばれてたんだ・・・あぁ・・・」
絵里が真っ青になる。あわてて弁当箱を片づける。
「絵里、大丈夫?」
真っ青になっている親友にさゆみが気遣う。
「うん、・・・じゃあ、さゆまた後で!辻さんも!」
その顔の色のまま絵里は行った。
- 216 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:13
-
希美のお腹がゴロゴロと奇妙な音を出した。さゆみが笑う。
「せんせーに呼びだされて・・・まだ食べてないんだよね・・・
はぁ、もう無理・・・。」
希美がへたりと倒れ込んだ。パフッと、音がした。
「あっじゃああげますよ。ちょっとしか、ないケド・・。」
さゆみがお弁当を差し出す。卵焼き二個とウインナーとおにぎりがまだ残っていた。
希美が起きあがる。顔がニヤけている。
「いいの・・?」
さゆみが頷くと希美はガッとお弁当を掴み、卵焼きをポンと手で食べた。
「うわ〜・・・うめぇ・・・」
- 217 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:17
-
「藤本さんは・・・どうでした?」
希美が幸せそうに食べる姿を見つめながらさゆみが尋ねた。
希美の手が止まる。肩を落とす。そのしょんぼりとした姿が餌をもらえない犬みたいだった。
「それがね・・・怒らせちゃって。いや、口調は穏やかだったんだけど・・。」
希美が長い溜息をつく。さゆみがその肩をたたく。
「大丈夫ですよ。次から頑張ればいいことなんだから。」
「うん、それがね・・・断られちゃって。」
さゆみは驚いた。いくらなんでも、それは。それなら、最初から断っているはずだ。
あの人は、言われた事は最後まできっちりとやりとおす人なのに。
しかも、矢口さんが頼んだ事なんだから・・・。
- 218 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:19
-
「なんか、悲しそうだった。」
希美がポツ、とつぶやいた。
「なんか最後、泣き出しそうではらはらしたもん。」
希美がさゆみを見る。そうですか、とさゆみも頷く。
今度あったら聞いてみようかな・・・。絶対、教えてくれないだろうけど。
- 219 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:28
- 希美はそれから黙々とお弁当を食べていた。
元気がなさそうだ。
「あの・・・辻さん、私の絵見ないですか?」
これはなかなか希美の興味をひいたようで、輝く目でこちらを見た。
「さゆちゃんの絵・・・う、うんっ!見たい、見たい。」
ガバっと立ち上がる。お弁当がこぼれそうになってあわてて座る。「あっもったいない・・」
「美術室2という所にあるんですけど・・。」
「うん!今すぐ、いこう!」
希美は落ち着きがなく、かたかたとふるえている。
「えっ・・・でももうすぐ五時間目始まるけど?」
「いいじゃんか!あ、れいなもよぶか!うん、いこ!」
希美は一人で走り出した。速い。しかもぴょんぴょん跳ねている。
さゆみはその後をのろのろ走りながら まぁ5時間目は体育だからいいか なんて思った。
ニヤっと笑った。
- 220 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:34
-
れいなはあまり気乗りしない様子だったが、さゆみの絵を見れると聞いたら
ちょっと興味が沸いたようで美術室が近づくとわくわくする顔を隠せないようだった。
美術室は、ペンキや木の匂いが悶々と漂っていた。白い布で隠れているもの絵がいくつもあった。
さゆみがスケッチブックを机の上においた。
れいなと希美がいすに腰掛ける。
「えっと・・・これが今度飾られるものなんですけど・・・」
さゆみがいそいそと布をはずす。絵があらわになった。
- 221 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:39
- 月が出ている夜に猫がポツンと屋根の上に座っている絵だった。
綺麗だ。そう思う。それに涙が出そうだった。
だけど、でも・・・・
れいながふわっと幽霊のようにたちあがった。
「・・・さゆ、すごい・・・・。れいな、こんな絵はじめてみた。
なんか・・・・触ってみても、いい?」
希美はプッと吹き出した。れいなが「触ってみても、いい?」なんて遠慮深い事をいうなんて。
だけど、れいなの顔は真剣だった。
「うん、いいよ。それに向こうにもあるから。」
さゆみがそう言うと、れいなはこくんとうなずき奥の部屋に行った。
その足が軽くふるえていた。
- 222 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:44
-
さゆみが開いている椅子、希美の隣の椅子に座った。
「どう?・・・辻さんは。」
「うん・・・・・」希美はなんて言えばいいのか分からなかった。
綺麗とか、すばらしいとか、そういう言葉だけしか思いつかない。
そんな言葉は、さゆみはいくつも聞いてきただろう。
それに、なんだか違う。それは、違う。
「ごめんね、さゆちゃん。のん、駄目だ。」
怒られるかと思ったけど、さゆみはちょっと驚いた表情を見せただけだった。
「うん・・・そうはっきりいってもらえる方がいいかな。・・・もしかしたら、
辻さんはこの絵を気に入らないかと思って。」
- 223 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:47
- 「なんか、わからないけどそんな気がしたの。辻さんは・・・
もっとわかりやすいっていうか、自分が直に感じたものしか感動しない、
みたいなそんな感じかなぁって思ったんだよね。」
自分が、直に感じたもの・・・・?
さゆみのいうことが、なんとなく希美にはよく分かった。
「・・・うん・・・れいなは、あー見えてわりと女の子で純粋だからね」
「辻さんだって、そうだよ。」
希美はさゆみを見る。微笑んでいた。
- 224 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:52
-
「・・・私の絵ってね、ある人のことを考えて描いている絵なんだ。
何を書いていても、ずっとその人がいるの。おかしいけど。」
希美は首を横にふった。
「おかしくないよ、だってよくあるじゃん。この風景は、あの人にぴったりだ、とか。
この曲、あの人のことだなぁとか。あるよ、いっぱい。
この絵も・・・その人がいるんだよね。」
希美は絵を指さした。
その人っていうのは、猫なのか、月なのか、夜なのか、屋根だったりするのか。
全部、その人なんだろう。この絵に、その人がいる。
多分、あの藤本さんなんだろうなぁ。希美はそう思った。
- 225 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 11:56
- 「こ・・・この絵がいい!さゆ、ちょっときてー」
れいなの悲鳴が聞こえる。なんとなく嬉しそうな悲鳴だ。
さゆみと希美はふわっと笑顔になる。さゆみが奥の部屋にいった。
希美はさゆみのスケッチブックを開く。
そこには、らくかぎが細々と描かれていた。一つ一つに丸っこい文字で何か書かれているが、よく分からない。
希美は、この絵が一番好きだと感じた。
こういう単純なものでいいんじゃないかな、さゆちゃん。
希美はスケッチブックを閉じた。
- 226 名前:米 投稿日:2004/10/25(月) 12:01
- レスです。
197 レスありがとうごさいます。
藤本さんは確かに可哀想だなぁと思うんですが、その壁を越えていけば・・・。
辻ちゃんは天然でしょうけどね。。。。
212 レスありがとうごさいます。
れいなファンからみるとイライラする展開かもしれないなー、と思います(汗)
田亀も田紺もどっちも応援してくれると嬉しいです。
ありがとうです。頑張ります。
- 227 名前:なちまりヲタ 投稿日:2004/11/03(水) 17:07
- 更新頼んます!!ナチマリモイイケド ヤグノノニモ モエルカモ
- 228 名前:なちまりヲタ 投稿日:2004/11/03(水) 17:13
- 更新頼んます!!ナチマリモイイケド ヤグノノニモ モエルカモ
- 229 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:01
- 更新です。
- 230 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:04
-
日曜日の夜。その夜はよく冷えていた。
希美が買い物から帰ってきた時、薄着だった希美は氷のように冷たくなっていた。
驚いた真里は、いそいで風呂にはいるよう希美を促したのだ。
- 231 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:13
-
あぁ、希美にタオル渡さなきゃ・・・。
そう思い、風呂場に向かう。
タオルを置こうとした時、かちゃりと風呂のドアが開く音がした。
とっさに顔を上げると、希美が裸のままそこに突っ立ていた。
いや・・・風呂からあがったんだから、当たり前なんだけど・・。
真里が瞬きしている間に希美がドアをかちゃりと閉めた。
「キャーもう真里ちゃんのエッチー」
希美の喜声が放つ。
「なっ、なにいってんの、ばーか。」
どうしておいらがあわてなきゃいけないんだ、もう。
- 232 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:16
-
そうだよ、だいだい女同士なんだし。
確認せずにドアを開けたあいつが悪い!うん、決定!
・・・・でも、と真里は考えた。
綺麗なカラダ、だった。整っているというか・・・
さすがにもう16才だ。ちゃんと・・・
っておいらのバカ!そんなこと考えるなんて!
真里は自分の頬をぱしぱしと二度叩いた。
- 233 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:27
- だけど真里はしばらくボーとしていて、希美が名前を呼んでも返事なしだった。
希美は自分のカラダを見たからそうなったなんて考えもせず、一晩寝ればなおるだろうなんて考えていた。
朝になっても、真里は希美と目すら合わせず、今日はバイトがある といって早々と出て行った。
「真里ちゃん・・・・?」
- 234 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:35
- 家から出たとき、はぁと大きく息をついていた。
「真里ちゃん」そう言う希美の声が聞こえたけど無視した。
なんでだろう、おかしい。おかしいよなぁ、絶対。
でも、あの時のあの希美の大人な姿がまだずっと頭ん中にめぐっている。
子供とは、もう思っていなかった。あの時チャーハンで祝ったように希美は、もうちゃんと大人なんだってことで。
分かってるはずなのに・・ううん・・・
分かってなかったのかなぁ、おいら。
「希美」のこと。
- 235 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:51
-
希美は8時を過ぎてもポツン、とそこにいた。
ぱくぱく、と味のないパンを食べている。
よくわかんないけど、さっきの真里の態度にひっかかっていた。
真里が希美の目を見ないなんてことははじめてだった。
喧嘩しても、鋭い目でこちらを見つめてくる。
まっすぐな、まっすぐな真里。
でも、さっきの真里は希美のことも見ず、逃げた。
でも・・・・あった。
真里が希美を見ようとしなかった頃が。
- 236 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:53
- 正直忘れようと思ったんだけど。
今の生活が忙しくて、もうそのことに蓋をしようと思ったんだ。
それに真里ちゃんと一緒にいて、もう家族・・・家族以上みたいに。
だけど。真里ちゃんと一緒にいて、忘れずにいられるなんてこと、なかったんだ。
- 237 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 14:58
-
小さい頃のきおく。
布団に入って、ずっと目をつぶっている希美。
眠れ、聞こえないように。
母と父が叫び、わめいている姿というのは嫌で、しんどい。
悲しくて、泣きたくて。でも泣いたってどうしようもないから。
布団の中でうずくまって明日のお弁当のことを考えた。
おいしいごはんを作ってくれる。それなのに、友達が「これ、コンビニ弁当だよ」
なんてことを言っておかあさんのごはんをバカにしたから。
髪をかきむしって、その時から強かった力で殴りまくって、先生にも怒られて、
その子と一生仲直りできなくて、その子のおかあさんにも怒られたけど。
おかあさんが悲しそうな顔をするのにくらべればそんなの。
なんでもないよ。
- 238 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:06
- おとうさんは一緒に風呂入ってくれる。
一人じゃ、風呂はいるのが本当にバカみたいに怖くて。
希美が何か話すと「うん、うん」って聞いてくれるし。
疲れてても、お母さんと何かあった後でも、必ず一緒に入ってくれる。
でも「3人ではいろうよ!」って言っても、二人とも目もあわせずに首を横に振るだけだった。
- 239 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:07
- あの頃の自分って、今の自分よりずっと大人なのかもしれない。
・・・・ううん、違う。
きっと涙がかれるほどに泣いて、おかあさんを悲しい顔をさせて、
おとうさんに一緒の風呂入って、とねだったことだってきっとある。
思い出したくないだけで、きっと。
- 240 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:13
-
ある日、やぶれた。ビリっと、音をたてて。
父と母は、別れた。本当は今すぐにでもやぶれそうで、ひっぱりあって、
そしてついに。
寝ているスキに誰も居なくなっていた。
家はとごに荒れていなかった。それどころか、綺麗に片づけてあった。
一人だった。一人で、希美はそこに突っ立っていた。
- 241 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:16
-
おかあさんとおとうさんはたった一つだけ、残してくれた。
紙切れ一つ。漢字ばっかでわかんなかった。
だけど、 おかあさんの友達のおばさんが希美の面倒を見てくれる、
そういうことらしい。
おかあさんの友達のおばさんはひどく困っていた。
その人には、子供が3人いたし。四つ年下の夫と、しずかにくらしていた。
それでも優しい顔だったので、ひどく安心した。
よくわかんないけど、ホッとした。
分かるかな、あの時あったかい布団から出たとき本当に一人だった。
この世でずーっと一人ぼっちで、もう一生誰も迎えにこないんだと思った。
本気で、胸がキュ、となった。
- 242 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:23
- その家は、本当に違う人の家ってかんじで。
匂いも違うし、トイレとおふろが一緒にあったり、それにここは三女の姉妹がいた。
長女の子は、希美のことをひどく嫌っていた。
いや、きらっているんだろうか。よくわかんない。
- 243 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:25
- 「お前、どーしてここにいるんだー?」
その子は13才で13才にしては小さな体だった。
口が悪く、同じ部屋なのに「はいるな」と言われたり、入ろうとすると
ものをなげてくるのだ。
他の子は最初は優しくしてくれたがお姉ちゃんの言うことの方がきっとずっと大切で、
しだいにあまり話かけてくれなくなった。
- 244 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:31
- 希美もしだいにイライラして、その子に何かいおうと思ったが
おばさんがいたのでやめた。
おばさんはきっと希美じゃなく、その子を怒るんだろうけど。それでもおばさんはすごく
その子をかわいがってて、子供たちを愛していたからだ。
学校は変わらなかったけど、希美はその家の中でもやっぱり一人だった。
- 245 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:36
-
・・・・そんな日が一年も続いた頃、かな。
ある日学校から帰るとあの子が泣いていておばさんにわめいていた。
「イヤだ・・・なんでよーあいつ一人でここにいればいいじゃない。」
「そういうわけにはいかないの。あの子はずっと一人だったし、今もそうじゃない。
何、あなたのあの子への態度は・・。」
おばさんは怒りながらも、でも悲しそうだった。
「だって・・・むかつくんだもん・・・おかしいよ・・・。」
あの子がひゃっくりをあげた。おばさんが怒る。ばしっと鈍い音がした。
「真里ちゃん、あなたはもう14才でしょう。大丈夫でしょう?あの子には母親が必要だから。」
おばさんが涙声になった。そんなに悲しいのならやめればいいのに。
頭の隅でチラっと考えた。
一年も、こんな疎外感を感じて暮らしているとどこか冷めてくる。
‘あの子’ってのんのことなんだろうか。
もう、どうでもいい気がした。二人が、遠くにいる。そう感じる。
- 246 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:42
- 「希美ちゃん、しばらく私と二人っきりで暮らさない?」
それだけだった。おばさんは笑顔で、そう言った。
どうやらおじさんと子供たちは離れてくらすらしい。
たぶん、希美のおとうさんとおかあさんが別れた理由と一緒・・・
いや、ちがうかもしれない。
でも、どっちにしろ聞く勇気はなかった。
だけど、その晩はじめてあの子とゆっくり話した。
月が出ているベランダで。
- 247 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:50
-
「ほんっと疫病神だよオマエはー」
最初の一言がそれだったので、またいじわるされるかと思った。
だけど、その顔には何の表情もなかった。
意外と綺麗な顔なんだ。
「まぁ、わたしはこの街がスキだから絶ッ対戻ってくる。あんたなんかに、邪魔させない。」
じゃましてないよ、と言いたかったけどなぐられそうだったのでやめた。
「あんま、お母さんに無理させないでよ。」
「え?」
「あんま、体強くないし・・・・。もう、けっこう歳だし。どんどんシワも増えちゃってるしね。」
その子がニカっと笑った。白い歯が見えた。
「・・・・させないよ。」
- 248 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:50
-
風にあたる。その子は何もいわなかった。
- 249 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 15:55
- 「・・それだけ?」
「え?」
その子の声は聞き取りづらかった。
「だからさ、何でそうかくすっていうか蓋をするっていうか。
自分の言いたいこと、思っていること・・・とか言わないの?
本当はいっぱいあるのに・・・。
だって、アンタ捨てられたんだよ。わかってんの?分かってて、平気な顔してるの?
何で、泣かないのよ!!」
その子は息もつかずに一気に言い終わった。顔が真っ赤だ。
今までで、言いたかったことってこれだったの?
「むかつく」のなかにコレがあったんだ。
- 250 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:00
-
「正直、あんたが来たとき「ハァ?」って感じだった。ちがう、最初は優しくしようと思った。
・・けど、あんたがまったく普通の顔してそこに座っていたから。」
そのこの瞳には涙がたまった。
あぁ、この子希美のために泣いてくれてるんだ。
その時、一人ぼっちじゃないとはじめて思った。
嬉しかった。
「・・・ありがとう。」
その子が目をそらす。何かつぶやく。
「絶ッ対許さない。絶ッ対、もどってくるから。覚悟しなさいよ・・。」
そのまま、すたすたともどっていった。
だけど、さよならは言えなかった。
また、ふとんにいる時に行ってしまった。
でも、いい。絶対あの子は帰ってくるんだ。
「絶ッ対・・・・」
- 251 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:02
-
おばさんが倒れた。無理はさせまい、と思った。
希美はできるだけのことをした。でも、おばさんは・・・。
のん、本当に疫病神かもしれない。
今度は、涙がかれるまで泣いた。
中学三年生になるかって時期のころだった。
もう自分き一人ぐらししようかと思った。
いつまでもガキじゃないんだから。
そんなことを考えていた時期だった。
あの子が帰ってきた
- 252 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:06
- 最初は誰か分からなかった。
髪の色が明るくなっていたし、化粧もなかなかしていたし、服装もちがう。
だけど、背だけは変わってない。
なんて声をかけていいのか分からず希美はウロチョロしていた。
「座りなよ、いいから。」
うん、あの子だ・・・。
- 253 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:11
-
おばさんのことは分かっていたらしい。あの頃からけっこう倒れそうだったんだから。
それでも聞いた時は涙が出なくなるほど泣いた、と聞いた。
しばらくショックで立ち直れなかった、と言った。
当たり前だ。人が死んで、しかも母親だ。
殺されてもおかしくない、と希美は思った。
でもその子はせめなかったので希美はなんでと聞いてみた。
「あんたをせめて、どうなるのよ・・・・。」
辛そうに、そういった。
- 254 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:16
- 「あのね・・うん、おいらはね、実は春にここに一人帰ってきて高校に通っていたんだ。」
「そうなんだ。」
その子はチラっと希美を見たが、何も言わなかった。
「みんなそれぞれあっちでくらしていたけど・・やっぱりおいらはこの街がずっと恋しかったの。
だから、きた。」
希美はボンヤリとその子を見た。そっか、言ったもんな、すごいな、本当に。
- 255 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:25
- 「あんた・・・おいらと暮らすから」
でも、そう言われた時は、言葉の意味がよく分からなかった。
間の抜けた顔をしていたのだろう。その子の顔きキュときつく引き締まった。
「当たり前じゃない。あんた、これからどうするつもりだったの?
お金は・・お父さんが毎月出してくれるっていったけど・・・でも・・ううん、大丈夫。なんとかする。」
‘なんとかする’そう言った。
でも、甘えていいんだろうか。だってのんはいつも、いつまでも迷惑かけて。おばさんまで。
もう、これ以上・・・。
「いっとくけど、・・あんたは疫病神なんかじゃない。あ・・確かにあんたが来て、
不幸なことが多かったけど。でもたしかにあのころの私は幼くなったから・・というか。
だけど、しかたない。あんたが来なくたって変わらなかったの。だから、せめないでね、自分を。」
その子は希美の目を見なかったが、それでもいいと思った。
やっぱり、この人優しいんだ、すごく。
「・・・うん。ありがとう、真里ちゃん。」言ってみた。
「・・真里‘ちゃん’!?せめてさんにしてよね、バカ。」
その子の頬がピンク色に染まり、その顔を見せないように髪をバサバサと撫でた。
笑った。無理して笑ってないよな、そう思った。
ここから、少しずつ希美は自由になっていたんだ。
- 256 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:28
-
そこから、希美と真里ちゃんとの二人ぼっちな暮らしがはじまった。
真里はしばらくして高校をやめた。それからバイトの量を増やし、めきめきと家事をしていた。
そう、それは今も尚。
- 257 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:28
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 258 名前:米 投稿日:2004/11/06(土) 16:33
- あー長い・・・。一気に書きました。
次はたぶん矢口の気持ち・・・みたいなのを書きたいな、と。
レスです。
227 レスありがとうごさいます。
なちまりですか。私は人の矢安小説を読むのが大好きです。
やぐののにも興味をもってもらえて嬉しいです。
いい加減、ラブなものも書きたいなあと思っています・・。
それでは。
- 259 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/06(土) 20:25
- やっぱりいいですやぐのの。
やっと二人の関係がわかってきましたねー。
次も楽しみにしてます。
- 260 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 22:30
-
昔から、ずっと大切なものがあるとそれを・・・それだけを、大切にしてしまう。
この街が好き。この匂いも、空気も、自分に一番似合うような感じだから。
この街以外は知らない。
- 261 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 22:35
- むこうの街も嫌じゃなかった。楽しかったし、優しかった。
だけど、でも・・・・、と続く言葉がでてくるから。
わたしはやっぱりこの街が好きなんだなぁって思って。
「勿体ない」
むこうの街を出たときも学校を辞めたときも、そういわれた。
だけどどんなにしんどくてもつらくても
・・・胸が痛くても・・・・・
それだけを、大切にしてしまう。
昔に、戻りたいって思うこともあるよ。
- 262 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 22:41
-
「ねぇカオリ・・・どうしたらいーかな・・・。」
真里は、高校時の友達だった圭織に電話で相談をした。
誰でもいいからいいたくなった。バイトはもっと先の時間だし・・。
「なに。久しぶりに電話かけてきたと思ったら・・・私もーすぐ授業ですけどー」
「ああっごめん!ごめん、きるわ・・。」
しゅんとなる真里に圭織はくすっと笑う。
「いいよ。さぼるから。」
「・・・不良・・・」
二人で笑い合う。この感覚は、なんか久しぶりだ。純粋に楽しい。
- 263 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 22:46
- 「圭織さぁ、女の子の体ってみたことある?」
思ってもいないような質問に圭織はしばらく黙っていたようだった。
「おーい、圭織さん?」
「・・・なにいってんの、やぐち。」
そういわれると思った。真里は短く息を吐いた。
「あるにきまってんじゃない。私妹いるし、それに友達とかだって泊まりにきたりすると・・」
真里はもう一度息を吐く。圭織はぴたりと言葉を止めた。
「・・もしかして、もっと違うコトで?」
「違う。」
- 264 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 22:55
- 違う。そういう圭織がいっている意味とは違うけど・・・
やっぱりこんなこと友達にいうのはまずかったかな・・・
「希美しってるでしょ、圭織も。」
「ああ・・・・。のんちゃんね。うん。しってるよ。可愛いよね、あー久しぶりにあいたいなぁ。」
圭織と希美は何回かあったことある。圭織は無邪気な希美のことをめちゃくちゃかわいがっていたような気がする。
「希美の裸みたんだけど・・・。なんていうか、すごい・・・・バカみたいだけど、ゾクっとした。」
圭織が息をのむ音が聞こえたが、真里はもう気にせず話した。
「一瞬のことだったんだけど・・・もしあのまま見てたりしたら、おいら変になってたかも。
それくらい・・・綺麗だった。」
- 265 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:00
- しばし沈黙があった。圭織の息の音が聞こえる。真里はそれをしばし聞いていた。
「・・・つまり、のんちゃんの体にキスとかしたくなっちゃったっていう意味?」
でも、その一言は意外としっかりしていた。
「うーん、・・・・そうなのかなぁ、・・・・そう。」
「はぁ?」
「うーん・・・」
「なにいってんの。相手は女の子で、しかも年下。しかものんちゃん。
確かに体のつくりはよさそうだったけど・・・胸は小さかったよねっ?ってそういう問題じゃない!」
圭織は一人であわててる。こっちの方が落ち着いてる。
「あー・・・ごめん。」
「何・・・あやまってるの。」
- 266 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:05
- 圭織とはそのままぽつぽつ、言葉を交わした。途中から違う話題になって、圭織はそのままそっちの方にいっちゃった。
でも・・でも、おいらはまだ考えていた。
のんちゃんの体にキスとかしたくなっちゃったっていう意味?
それって・・どうなんだろう。
- 267 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:09
- モヤモヤした気持ちでバイト先にいった。
すると、店前に希美が立っていた。
真里に気づいたようで、顔をパっと上げた。
「真里ちゃん!遅いよ!1時間ぐらい待った!」
希美は怒っていた。腰に手をあてて、ふんぞりかえっている希美はすごく偉そうだ。
つい「ごめん」などと謝ってしまう。
「まっいいけどね〜」
からり、とまた顔が晴れる。ころころとかわるなぁ、この子。真里は苦笑した。
- 268 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:14
- 真里はそろりと希美の目の前に立った。
「・・・学校は?」
「ごめんなさい、サボリです。」
希美はぺこっと頭を軽く下げた。そのいつもの調子に真里は溜息がでた。
希美はその真里の様子を見て、少し哀しそうに笑った。
「・・・ちょっと、昔思い出した。」
顔を上げる。目があって、希美は強く真里を見つめた。
- 269 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:20
- 「そしたらなんか真里ちゃんにあいたくなってさ。今日はバイト手伝います!」
びしっと希美が姿勢を正し、へらっと笑う。
よく分からないけど、なんだか真里はかなしくなった。
なんで? 自分に疑問を抱く。
「真里ちゃん?」
希美が心配そうに顔を覗き込んできた。瞳が揺れ、髪がさらりと流れる。
「ちょっとは役に立てばいいけどね。」
「えぇっ、たつって!」
「ま、がんばって。」
- 270 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:25
- 真里が歩き出すと、希美が真里の服の袖を掴んだ。
「待ってよ」
ふざけたように、希美は真里に覆い被さった。甘い匂いがする。飴か、なにかの。
そのとたん、また急にゾクっと何かが体中を走った。
「あっ・・・・」
「・・・真里ちゃん?」
希美が手を離した。すこし、心配そうにこちらを見た。
「・・・なーんもないよ。」
真里はぽん、と希美の額を手で押した。
・・・なんだろな、これ・・・。
- 271 名前:米 投稿日:2004/11/13(土) 23:29
- レスです。
259 レスありがとうごさいます。
やぐののいいといってくれて嬉しいです。
これからの二人に注目してください。
それでは。
- 272 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/14(日) 23:40
- ばっちり注目してますよ〜
無邪気な辻ちゃんと、とまどうヤグがいいですね。
- 273 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:17
- 期末テストも、もうすぐということで。
れいなと絵里は連休、勉強をしていた。
れいなは嫌がったが、絵里が「勉強教えて」とごぬるので仕方なく。
二人はこたつにはいっていた。絵里はなんだか嬉しそうにみかんをむいていた。
- 274 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:21
- 「食べすぎ。」
5個目のみかんに手をつける絵里を見ながら、不機嫌な顔してれいながいった。
「手とか肌とか黄色くなんよ?それにぜんっぜん勉強に手ぇーつけてないし」
「だって勉強よりみかんの方が好きなんだもーんっ。」
目を細めていう。いらつく奴だ、ほんとに。
なんていうか・・・・調子狂う。
自分のペースを一切くずさない。振り回されている、ってわかる。
そんな自分が堪らなく嫌で。
たまらない。
- 275 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:29
- 「亀井さん」
「なんっちゃ?」
「・・・・は?」
れいなは固まる。絵里は無邪気に笑っていた。
「だってーれいなってなんか語尾に「ちゃ」とか「と」とかつけるじゃんかー
」
「それは・・・博多生まれだし・・・」
れいながもごもごと口をとがらせた。そういえば、気をつけようとしてたのに自然と言葉がでてた。
「なんっか可愛いよねー」
れいなはぷいと顔を背ける。このままだと、本当にこの子のペースにはまっちゃうじゃん。
れいなは拳を握りしめた。
- 276 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:38
-
しばらく二人とも何も話さず、静かな空気が回りを漂っていた。
絵里がただみかんを食べる音が聞こえ、れいなはボーっと漫画を見ていた。
どちらも気まぐれで、沈黙にあわてている様子はなかった。
「・・・ねぇ、紺ちゃんとれいなってどーいう関係?」
れいながページをめくる手をつい止める。
「どーいう関係、って?」
「や、あのねーだって、のんちゃんとれいなは普通のなんか親友って感じだし、のんちゃんと紺ちゃんもだけど
れいなと紺ちゃんは・・・なんか、こう・・・違うよね」
「どういう意味?」
自分の声も顔もどこか怒っている感じがするのが分かっていた。
だけどなんだか腹から沸いてくる感情を押さえることができない。
- 277 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:47
- 絵里の顔はひきつりながらも、話す声はわりとしっかりしている。
「だって全然話してないみたいだし、でも紺ちゃんがれいなのこと話す時・・
すごく優しい顔してる。いつもだけど・・・・それってなんかね、絵里どこかで見たことあるーって
思ったら恋する人の表情だったの。」
絵里がまっずくれいなを見る。れいなはとまどっていて、絵里は笑っている。
れいなの方から視線をそらした。
がくりとうなだれると、漫画をまた読もうと思った。
なにも知らないフリをしないと 何かこわかったから。
「でも、確かにれいな可愛いし、かっこいいけど・・・女の子だから。
やっぱり紺ちゃんのことよくわかんない。絵里はさゆ好きだけど恋ってのは違うしなーって。」
頭が一瞬熱くなって、れいなは漫画を放りだし、絵里の手首を掴んだ。
「黙って」
絵里の目が大きく見開かれる。
- 278 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:57
- れいなは絵里の手を乱暴に離すと、窓を開けた。
「れいな、家でるからね。行くあてもなんもないけど、でもいつまでもこのままじゃ駄目だから。
それに亀井さんの傍にはいたくないから。」
絵里の顔が泣きそうにまた歪む。れいなは窓をしめた。
「ジュースでも買ってくる。」
そういってれいなは家を出た。
「・・・・・・。」
残された絵里は、握られた手首を掴んだ。
- 279 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 14:58
-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 280 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:10
- れいなは自転車に乗り、オレンジジュースとサンドイッチとみかん数個を買った。
さすがに、何もなしじゃ帰りにくい。
でも・・・あさ美のことはあまり考えたくない。
そんなことを考えていると、見覚えるのある後ろ姿が目に入った。
「さーゆっ!」
ポンっと背中をたたく。さゆは驚いた様子だったが、れいなにきずくとにこっと笑った。
「れいな!久しぶりだね。」
二人はそのまま立ち話をした。
- 281 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:23
- 「れいなさぁ・・・今、絵里の家にすんでるんだよね。」
「・・・・何でしってんの?」
れいなは思いっきり嫌な顔をした。
「だって、絵里は何でも私に話すから・・・・。でもさ、よかったら
一緒にいてあげてほしいんだ、あの子と。」
「・・・さゆ、悪いけど・・・」
「うん。こんなの私が頼むなんておかしいと思う。でも・・・私は一緒に
いられないから・・・・絵里、さびしいとおもうんだ、ほんとは。」
さゆの顔を見つめながらおかしいとれいなは思った。だって、自分が好きで一人暮らししてるのに。
自分は、帰りたくても帰れないのに。
「・・・だって、絵里は・・・・。」
- 282 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:32
-
気が付けば自転車をとばしていた。
胸が何かどうしようもなくうずいて仕方なかった。
謝らないと。何も知らないで、自分は・・・・。
みかんが一つ、袋から落ちた。
- 283 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:43
- 家の中は、しずかだった。
何も聞こえない。
こんな風に、いつもこの子は一人だったんだろうか。
れいなは一人、泣きながら眠っている絵里の姿を見た。
「だって絵里は、お父さんから捨てられたの。優しくていいお父さんだったんだけどね・・・。
それで、毎月お金だけは送ってくれるみたいだけどそれでも・・・・寂しいよね。
私が、傍にいたらよかったんだけどお母さんが駄目だって・・・。だいぶ前だよ。中1ぐらい。」
れいなの喉がごくっと鳴る。声も掠れた。
「お母さんは?」
さゆが首を振る。
その時、気づけば自転車をとばしていた。
- 284 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:45
- 寂しかったんだ・・・そうだったんだ。
それなのに、笑ってた。
れいなはそっと絵里に近づいて眠る彼女の髪を撫でた。
「・・・・絵里」
堪らなく、愛しかった。
- 285 名前:米 投稿日:2004/11/27(土) 15:48
- 更新終わりです。・・・どうでしょうか?(汗)
レス
272 レスありがとうごさいます。
とまどう矢口さんが私は書きたかった・・・。
なんかやっと書きたいものが書けたという感じでした。
- 286 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/28(日) 08:14
- れなえりキタ(゚∀゚)!!
絵里、そうだったのね…。・゚・(ノД`)・゚・。
それを知ったれいなにも変化が?
作者さま応援してます。
- 287 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 16:26
- クリスマス。
街はイルミネーションがきらきら光ってて、とってもきれいだった。
恋人たちは腕をくみ、手をつなぎ歩いていった。
「・・・ったくねぇ、何も女二人で街あるくなんてそんなさびしいことないよね」
まいが通りすげる恋人たちを睨みながらそういった。
まいはかなりラブラブだった彼氏とわかれたばかりだった。
自分はつきあってもらっている。美貴はそう感じた。
- 288 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 16:29
- こつん、と頭を軽くたたかれた。
「・・・いたい。なにすんの?まいちゃん。」
「あんたさぁ、いい加減彼氏とかつくればいいじゃない。色々いるよ?
美貴モテモテなのにさー。勿体ない、勿体ない。」
美貴は無視して歩く。まいは気にせず話す。
「理想高すぎじゃないの?」
美貴は息を吐く。それは、白くなってすぐ消えた。
- 289 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 16:34
-
店にはいると、「恋人がサンタクロース」がながれていた。
♪恋人がサンタクロース 背の高いサンタクロース
まいは軽く舌打ちして不機嫌な顔になった。
「あぁ、もういや。違う店、いこ。違う店っ」
「別にいいじゃん。どうせ他の店もカップルだらけだよ?」
美貴はコートを脱いで、座る。まいもぶつぶつ文句をいいながらも美貴の真正面に座った。
ほんとに、クリスマスっていうのに・・・。
何してるかな、矢口さん。
- 290 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 16:41
-
美貴はコーヒーを、まいもコーヒーとチーズケーキを頼んだ。
「やっぱりデートとかにおくれたのがわるかったのかなぁ・・・。
でも仕方ないよね。だいだい男はそういうの気にしちゃだめじゃん。ね?
広い心でみないと・・・」
まいの愚痴に相槌をうちながら窓の外を見てみた。
サンタの格好をした若者が、子供達に風船をくばっていた。
子供たちは嬉しそうに風船をもらっている。
・・・・あの女の子が風船をはなしたら、告白しようかな・・・・。
そんなことを考えた。
- 291 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:01
- ばかみたいと思いながらも、目をはなさずその女の子とサンタをみていた。
・・・女の子が風船をもらった。
そのこは大事そうに風船をもっていた。とてもはなしそうな様子ではなく・・。
美貴は目をそらした。
- 292 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:14
- 美貴はね、矢口さんが好き。
先輩としてとか、友達とかして、とかじゃない。
たぶん、これは恋なんだ。
昔、泣き虫な男の子を好きになったことがある。
その時みたいな、気持ち。
今までそれ以上の恋はしたことがなかった。だから恋の仕方とか忘れそうだったけど・・
この辛くてしんどくてでも心が躍る、ような。
覚えている、ちゃんと。
だから・・・・だから、に続く言葉がわからなくて。
矢口さんが好きだからどうしたいのか?
どうしたいんだろう、美貴は。
- 293 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:16
- 窓をもう一度みる。
赤い風船がふわふわと空にうかんでいた。
まさか、と思うと。女の子が途方に暮れたような顔で空を見つめていた。
風船をはなした・・・・・・・。
- 294 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:25
- 「・・・って、おーい聞いてる?」
はっとした。美貴はいつのまにか身を乗り出していた。
「ご・・・ごめん。あのさ、やっば美貴・・・・こくったほうがいいかな。」
一瞬間があった。自分でも何をいっているんだろう、と思ったけど・・
でも遅い。
「こくる?!誰に!!」
まいの顔は迫力があり、急に生きたような表情になった。
そんな美貴がこくるのって変?
美貴は思わず苦笑した。
「え?うんすきなひと。」
「いや、そういうことじゃなくて・・・つかあんた好きなひといたの意外。」
- 295 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:30
- 「いますよー。片思いだけどね。」
「片思い?へぇ・・・彼女いるの?」
「いないでしょ。・・・・あーでもペットはいるか。」
美貴は拳を軽く握りしめた。でも、ね。まさか恋愛感情があの二人に
できるわけないし・・・つかそんなのアリエナイ。
「じゃあこくればいいじゃん。」
まいはあっさりという。自分でも、そう答えるだろうなと思う。
彼氏もいないんだし、好きなんだからこくればいいじゃんってこと。
でもなかなかうまくはいかないだろう。
ほら・・・今でも。こくろうと思っただけでも足が震えている。
- 296 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:40
- 唇を噛む。泣きそうになって、必死にこらえた・・・。
「美貴」
顔をあげる。まいは優しい顔になった。
「当たって砕けろ、じゃないけどさ。頑張ってみなよ。
それに、あんまそういう顔の美貴ってみたくないし、あたし。」
頑張ってみなよ。その言葉が、強く美貴の胸にひびく。
美貴は頷いた。
「うん・・・。ありがとう。」
ぎゅっと手をにぎり、コートをとって店を飛び出す。
「・・・・って、あたし一人?」
まいは、周りのカップルをにらみ付けながらはぁと溜息をついた。
- 297 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:42
-
震えている手でメールをうつ。
「矢口さん。公園にきてください。美貴」
送信・・・した。
それから、ダッシュで公園に向かった。
- 298 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:51
-
「・・・藤本・・・!」
公園で待っていると真里がきた。
急いできたようで息が荒く、頬がピンク色だった。
白いコートを羽織っていて、とてもそれが似合っていた。
可愛いなぁ。
そんなことを思ってしまう。
もーう、恋だね。これは。
「こんにちは、すいません急に呼び出して。」
「ううん、いいよそれにしても・・・久しぶりだね、なんか。」
真里が近づいてくる。美貴は目を離さなかった。
- 299 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 17:59
-
「そうですね、なかなかあえなかったし・・・」
風がつめたい。街はあんなに綺麗でにぎやかだったのにこの公園は
とてもしずかで殺風景だった。
「だね。・・・でさぁ、どうしたの?」
真里は美貴の目の前に立った。けっこう身長差があった。
言おう、言わないと・・・・!
「好きです。」
あなたのことが。
- 300 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:10
-
好き・・・・?
真里はぼーっとその言葉の意味を考えた。
わかってる。そんな先輩とかともだちとか、そういう「好き」じゃないってことぐらい。
それでもしばらくその言葉の意味を考えていた。
「・・・ごめんなさい、こんなこといったってわかんないとおもいます。でも、好きです。
もう、わけわかんないくらいに。」
「うん。うん。わかった・・・・・けど・・・・」
真里はそっと目をつぶる。
藤本のことは大切で大事。だけど・・・・
希美の顔が浮かぶ。いや、何故だろう勝手に・・・。
・・何故?わかってる。全部。
好きだからだろう。希美のことが大事で大切で・・・
もう、わけわかんないくらい。
真里は目を開ける。
「藤本・・・・ごめん。おいらさ、馬鹿でしょ・・・好きなんだよね。
希美のこと。」
笑うようにおどけたようにでも少し哀しそうに真里は言った。
- 301 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:17
-
さゆみは、ウキウキした足どりで美貴の家に向かった。
もしかしたら家にいないかもだけど・・・それでもプレゼントもってきたし、
帰った後でもいいし・・・あぁ、ともかく会いたい。
クリスマスは、昔から好きだった。
つい最近までサンタさんも信じていたから。
鍵がかかっていなかった。さゆみは不思議に思いながらもドアを開ける。
家の中は真っ黒だった。目はあんまりよくないので、足下が見えなかった。
それでも、暗闇の中をうごめく気配は、かんじた。
「藤本さん・・・?」
- 302 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:27
- 手探りであかりを探す。すると、何かにあたった。
「きゃっ・・・ご、ごめんなさい・・・・ふ・・藤本さんですか?」
この匂い・・・美貴だ。
「どうしてこんなまっくらなんですか。クリスマスなのに・・」
あかりを探そうと立ち上がったら腕を強くつかまれた。
「美貴の心もまっくらだから」
ぐいっと強くおされて床に強くあたった。
「いた・・・」
「なんで・・・なんでよ!!なんであいつなの?美貴はずっと矢口さんのこと
想って・・・やってきたのに・・・なんで、・・・なんでよ!!」
自分でも頭が混乱してる。吐きそうだ。
涙まででてきている。胸の奥が、苦しい。
もう、苦しいよ。もう、いやだよ・・・・。
- 303 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:30
- 美貴は膝をつき、大声で泣いた。
言葉にならない叫びを。
さゆみは美貴を黙って見つめていた。
そして、自分まで哀しくなり涙がぽろぽろとあふれていた。
気が付けば美貴より大きい声で泣いていた。
美貴は叫ぶのをやめ、さゆみを見た。
- 304 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:32
-
・・・初恋が失恋に終わった時。
その時も、美貴はこんな風にないた。
家の中をぐちゃぐちゃにして、お母さん達を困らせた。
そんな時さゆみがきて、さゆみも同じように大声で泣いた。
普段、美貴もだがさゆみもめったなことで泣かなかった。
いつも、美貴のことだけ・・・・
- 305 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:34
-
さゆみは美貴を抱きしめた。泣きながら。
美貴もさゆみを抱きしめた。泣きながら。
二人で大声で泣いて、声が枯れるくらい・・・泣いた。
- 306 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:38
- 美貴はね、矢口さんが好き。
だから・・・だからね、守りたい。
- 307 名前:米 投稿日:2004/12/26(日) 18:41
- 本日はこれで終わりです。
里田さんのあつかいが・・・。
286
レスありがとうごさいます。
応援ありがとうです〜。れいな・・・かなり変化してるとおもいます。
余談ですか亀井さんの写真集いいですね。。
- 308 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:10
- どん!と大きい音がしたとおもったられいながいた。
「おぉ、れいなじゃん。あけましておめでとー。今年もよろ・・」
しく、と続けようとした言葉がふうじられ、れいなに腕をひっぱられた。
「ちょい面貸して」
れいなの顔は迫力があった。
- 309 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:18
-
希美は三階の廊下に連れてこられた。二階の廊下は騒がしかったから、
ここは人気も少なくしずかで物音が響く。トントン、と上履きの音が鳴った。
「れいな・・・今年も強引だね。」
れいなが振り返った。
「ごめん。でも・・あそこではいえないことだから」
希美はれいなの顔がえらく真剣なものなのに気づく。
「・・・・どうしたの?」
- 310 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:22
- ふう、とれいなか息をつき壁にもたれても表情は険しかった。
「あのさ」
「うん」
「これからいうこと絶対他の人に言わない&笑わないでね」
「うん・・・」
れいなはじっと希美の顔を見つめた。
「絶対、絶対だから。なーんか、のん軽いし心配だけど・・」
れいながそう言うと希美が傷ついたように背中が下がった。
「やぶんないよ。」
れいなはうん、と首をさげた。
「恋愛相談・・・なんだけど」
- 311 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:32
- しばらく間があった。
希美の顔がひにゃり、と崩れたような気がした。いや気のせいではない。
「・・・やっぱいい。バカ。」
「えっなんで?!うんうん、何?恋愛相談かぁーうん、うん。笑わないよ?」
顔が笑っているし、声も笑っているじゃないかとれいなはおもった。
れいなの顔がふてくされる。でも、こんなこと話せるのは希美しかいない。
これでも結構頼りになる・・・とおもうんだけどな。れいなは。
- 312 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:39
- 笑うつもりはなかった。当たり前だ。
でも、れいなが「恋」とか「愛」とかいう単語を言ったからついつい頬がゆるまった。
誰だろう?そういうことで頭ん中がいっぱいになった。
「誰?」
「は」
「すきなの」
れいなは黙った。頬がピンクになっている。希美はたまらず吹き出した。
「何わらってんの!バカのん!もう、ばか!わらうなっていってんだろがバカ!」
れいなの拳が跳んできた。すばやくよける。怒っていても、まだ頬はピンクだ。
「ちが・・ちがうよ。可愛いなっておもったから!」
れいなの頬がますます赤くなる。もうやめようと希美はおもい、笑うのをやめた。
「誰?イニシャルでいいから」
「・・・K、さん」
K?
- 313 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:49
- K?・・・っていったら・・かきくけこ・・・だよね。って当たり前か。
うーん、あ・・・もしかして・・
紺ちん?
「や・・・わかんないけどそれでもあいつになんか友情以上の感情をもってるのって
たしかで。うん、だからさ・・・」
そうか。紺ちんのこと好きなのか。よかったね、紺ちん。
「告白、しないの?」
「告白なんてできないよ・・・だってあいつ、笑うから」
れいなは寂しそうにでもまだ頬を赤らめて、言った。
「ぜったい笑う。本気にしない。ありえない、って。」
「・・笑わないよ」
「え?」
「紺ちんは笑うようなひとじゃないから。ちょっとまってて!連れてくるから・・」
希美はぱたぱたと走った。足音が廊下に響く。
止める間が、なかった。
「紺ちん?」
嫌な予感が、した。
- 314 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:54
-
「紺ちんっ」
読んでいた本から顔をあげると、希美がいた。急いでるように見えた。
その希美に笑顔でちかづく。
「どうしたの?」
「うん、うあ・・・えーーと・・・」
汗をかいていた。あさ美はハンカチを取り出すと希美のでこの汗を軽く拭いた。
「と、ともかくきてっ」
引っ張られる。ハンカチが床に落ちた。
- 315 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 16:57
- どうすることもできず、そこに立っていた。
ったく、あのバカは・・・・。
どうしてあういう勘違いをするんだろう。
もう!
廊下の壁を叩く。大きい音が廊下にひびく。
「れいなっ!」
希美の顔が見えた。あさ美が後ろに居た。あさ美はれいなと視線があうと、俯いた。
れいなもプイと視線を逸らす。
- 316 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:00
- 視線を背けたれいなに希美はあれ?となる。
それでもあー照れてるのかと解釈することにした。
「あのね、紺ちん。れいながなんか話すことがあるみたいだから聞いてあげて。」
はっ?とおもう。
「ちょ、のんなに勝手なこといっとん。」
「勝手なことじゃないよ。このままでいいわけないし、それに・・」
希美が片目をつぶる。何も言えなかった。希美は笑っていってしまった。
- 317 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:06
-
残されたのは二人だけだ。ただ沈黙だけがあるような気がした。
れいなはあさ美を見る。あさ美は何もいわず、下を向いていた。
困っているとおもった。
「あーもー・・のんのバカ・・・」
知らずのうちにつぶやいていて。
あさ美が顔をあげてくすっと笑った。
「ほんとにね。困っちゃうよね。でもあーいう所が結構あの子の魅力だったり、ね。」
そうだ。こういう誰にもできないような、困るようなことをするのが希美だ。
本気でいらついたり、嫌だったりすることもある。
でも、惹かれる。ついていきたくなる。どこか遠くを見るような視線で、じゃあその先に
ついて行こうかななんて誰に対しても思ったことがないような、そんな感情さえも浮かぶ。
うん、とれいなは頷いていた。
- 318 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:10
- れいながちょっと嬉しそうな笑顔になった。
あぁ、この子希美のことになるととてもいい表情をするんだ。
あさ美は思った。
とてもいい笑顔。無垢で、優しくてすごくきれい。
ちょっと嫉妬してしまうな・・・・。
なんでだろう。このひとはとても冷たくてそっけないのに。
それでもすごくきれい・・・・。
- 319 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:14
-
「れいな」
何、とれいながいった。あの笑顔のままだったからちょっと安心して。
「話したいことってなに?」
ちょっと期待した。なんでもよかった。れいなが私とはなしたいと思ってくれたから。
なんでもよかったんだ。
「あー・・・なんもないよ」
「え?」胸のあかりが、消えかかる。
「勝手にのんが勘違いしたの。本当はなんもない。ごめん」
軽く頭を下げる。嬉しくなかった。泣きそうになる。
あぁ、なんでもないんだ。
できるだけ笑顔で、言った。
「そっか・・・。ううん、いいの。なんでもないんだったら」
去ろうとした。早く、行きたい。トイレかどこかで思いっきり泣こう。
- 320 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:21
-
れいながもう一度ゴメンといった。
ううん、と首を振る。
行こうとする足が止まる。胸の辺りがモヤモヤする。
このままじゃいけない・・・・・
「れいな・・・」
勢いよく、れいなの肩を掴む。れいなの目は見開かれはなして、ともがこうとしていたけど
れいなの肩は細く、力もあさ美のが強くて引き離せない。
「や・・・なに・・」
唇をふさがれた。甘い感触がする。あさ美のような。
え、と思った。自分なにされてるんだろうと思った。
「・・・んぅ・・・」
れいなの甘い声がする。女の子とするなんてはじめてだった。
唇を離す。れいなの顔がすぐ近くにあった。何されてるのか理解できない、という感じで。
「ごめんなさいっ」
走った。れいなはその場所に突っ立っていた。
- 321 名前:米 投稿日:2005/01/15(土) 17:22
- 更新終わりです。
紺野さん・・手ぇ早い・・・・・・
- 322 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/16(日) 13:51
- 更新お疲れさまです!わーおな展開になってますね。。。
そっか〜どっちもKでしたねw
この三角関係がどう動くのか楽しみです。
- 323 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:09
- 恋。
- 324 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:20
-
れいなはそっとこたつに手を入れた。冷たくて真っ赤になった手を。
絵里もみかんの籠をもっとれいなの正面に座る。
「あ・・・れいな。またそんなことして・・・」
ぷっと絵里の頬が膨らむ。その表情が可愛いとれいなはおもった。
「は・・・なに。可愛くなんかないし・・・」
「え?なに?」
れいなは顔をふせる。なんだかあつい、とおもった。
絵里はじっとれいなの顔を見つめる。顔もあげらず、ただ手をあったかくするのに
必死、なフリをした。
気が付くと、絵里が隣にいた。
「ふぇ?」
まぬけな声が出た。絵里が吹き出す。
「れいなってば」
「・・・・」
絵里はだまり、れいなの手をとった。
- 325 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:24
- え・・・?
絵里の方をむくとにこっと柔らかく微笑んだ。綺麗な、笑顔だった。
「こたつもいいけど、人の手のぬくもりもいいよね。」
その笑顔のまま言った。
「・・・うん。」
気が付いたら頷いた。頷いた自分にあせる。絵里は嬉しそうな声をあげた。
「ね、やっぱ?」
「ち、ちがうし・・・。絵里の手、冷たい。」
ぱっとはずす。またこたつの中にいれる。こたつの中で手をゆっくり、とった。
- 326 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:37
-
あさ美を思い出す。
何をされたのか、まったく理解できなかった。しばらくそこに立っていて
やっと自分がキスされたんだとおもった。
嫌悪感はなかった。それよりも・・・なんでしたんだろう、ということが。
一番心の中にモヤモヤとあった。
自分の唇に指で触れてみる。あの、泣きそうな顔。
何で・・・。
「れいなっ.」
ふっと見上げると心配そうな絵里の顔がある。それだけで落ち着いて。
「あのさぁ、もうすぐバレンタインじゃん?」
「えぇ・・・あー・・・うん。ってまだ2月にもなってないし。」
「はぁ楽しみだなぁ。でも何で男の子がもらえるんだろう?ずるくない?
絵里だって鼻血出すほどチョコ食べたい・・・。」
にへ、と絵里の顔がますますゆるむ。その顔がおかしくてれいなは笑った。
「もうバカじゃない・・・・ほら。」
唇にふれた指を絵里に差し出す。無意識で自然にしてた行動だった。
絵里はれいなの指をつかんでにこ、と笑った。
この手が、好きだ。
好き、だ。
- 327 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:47
-
真里と希美は二人で皿洗いをしていた。真里は鼻歌を歌っていたが、希美
は考え事をしていた。
あさ美とれいなのこと。
あの日、あさ美の様子があれからおかしかった。教室に戻ってきた時のあさ美の
顔は本当に泣きそうな顔になっていて、だから希美は何も聞かなかった。
れいなが何かいったんだろうか・・・とおもったけど、れいなは教室には帰ってこなかった。
のんが悪い。と思う。ほっとけばよかったのに。だいだいKさんが紺ちんなんて
ことが決まったわけじゃないのに。勝手に決めて、お節介焼いて、傷つけた。最低だ。
- 328 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:54
-
「っくらぁ!」
泡が跳んできた。びっくりして希美は縮こまる。
「何してんだバカー。全然洗えてないじゃんっ。」
真里の声がきつくなる。
「・・・・うん。」つぶやくように言った。
「・・・・なに、希美」
「え?」
「元気ないじゃん」
横をみると真里が心配しそうな顔をした。ああ、こんな顔をさせては駄目だなと希美は咄嗟に思った。
「なんもないよ全然ヘーキ」
と、言うのに真里はまだ疑った表情で希美を見る。
「・・・なに?コイワズライ、とか?」
希美は笑った。真里は笑わなかった。
なんとなく、気まずい空気が流れた。
その時、チャイムが鳴った。
- 329 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 17:59
-
「藤本ですけどー」
そんな明るい声がきこえ、二人ともぎくりとした。
「・・・希美」
「なに」
「出て」
「えぇっ、ムリ!ムリそれだけは絶対ムリですごめんなさい!」
希美は自分の部屋にダッシュで戻る。真里は溜息をつきながらもとたとたと
ドアを開けにいった。
- 330 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 18:20
- 「こんにちは」
美貴が笑顔で頭を下げた。さゆみもいた。美貴より背が高いさゆみは美貴より
深々と頭をさげる。
・・・・あの晩のこと。たしかクリスマスだった。
美貴に告白された。好きと言われた。信じられなかったけど受け入れている自分がいた。
なんとなく分かっていたんだろうか。美貴の自分に対する視線を。
それで、おいらなんて答えた。・・・好きと言った。あの希美を。
あの部屋に隠れてる格好悪い希美を。
なんだかバカらしくなりながらも、真里も頭を下げた。
「あの、りんご」
「え?」
「りんごがあって、すごくおいしかったんで先輩んちに届けようとおもって」
先輩。美貴は言った。先輩、なんて美貴から言われるのは久しぶりだった・・ような気がした。
さゆみが包みを真里にわたす。
「・・・ああ、さゆちゃん。ひさしぶり」
「ひさしぶり、ですね。なかなか会う機会なかったし」
さゆみが柔らかな笑顔を見せる。前あった時と変わっていない。
「・・・りんご、ありがと」
- 331 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 18:26
- 「先輩」美貴が美貴らしい顔でいった。
「・・・ん?」
「先輩は先輩、ですよね。だから・・・やっぱり好きですから。」
美貴の瞳を思わず見つめてしまった。前はきついとも思っていた光が今はとても優しいと感じた。
「うん。ありがとう」
素直にそう言えた。美貴がふっと笑う。
「いいえ。・・・まぁすぐはムリかもしれないけど普通でいてください。妙に意識したり
とか気をつかったりとか。そういうの嫌だから。・・・先輩しそうなんで。」
「だって・・・意識しないでっ方が無茶だと思うけどなぁ。おいら。」
「そうでもないですよ・・・・ねぇ、希美ちゃん。」
真里の体が跳ねる。希美が困った表情で隅にいた。
「希美・・・!」
「辻さん・・・。」
希美はさゆみを見ると話しかけた。美貴も真里も見ないようにしていた。
希美・・・もしかして聞いてた?
- 332 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 18:42
-
ドアを閉めた。あがっていかないかと真里に誘われたけど二人は断った。
「矢口さんと辻さんが同じ家にすんでたなんて・・・世界は狭いですね。」
美貴も笑った。
「そーだね・・・聞いちゃってたかなぁ。」
聞いてもいいんだけどねと美貴は笑う。
真里にふられてから美貴はよく笑うと思った。ささいなことでよく笑う。
怒ることもあるし、・・・泣くことも。
何かがふっけれたんだろうか、と思う。
「藤本さん」
「ん?・・・・・あ」
美貴の鼻のあたりに冷たいものが触れた。雪だ。
ゆらゆら、しずかな雪だった。
「わー、今年は初雪だね。・・・つもるかな?」
美貴がはしゃぐ。さゆみはじっとその背中を見た。
前描いたことがある。雪がある風景。
・・・ねぇ藤本さん。私絵を描くときいっつもあなたのこと想って描いているんです。
すると、決まって綺麗にかけます。
でも、この雪よりも何よりも「藤本美貴」が描きたかったんです。
「ほらっ、シゲさんいくよ!」
手をひっぱられる。さゆみは頷いた。
- 333 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 18:46
-
希美はりんごはそのままかぶりついた。
「うん。うまい」
「もう何してんの。・・・ちゃんと切ってあげるから」
切ろうとおもったけど、真里は一瞬迷い、・・自分もそのままりんごにかぶりついた。
「本当だ。なかなかいけんじゃん。」
でしょうと希美が笑う。
「・・・希美」
「何?」
希美はりんごを食べるのに夢中だ。鈍い、とおもう。滅茶苦茶。
「ま、いっか。」
なにがというような目で希美は真里を見た。
- 334 名前:米 投稿日:2005/01/19(水) 18:48
- 更新終わりです。
レス
322
レスありがとうごさいます。
実は下の名前も一応おんなじあ行だったりしますよね。イニシャルは違うけど。
最近自分は田亀より田紺より田道にはまってたりして。。。
- 335 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 17:14
- その唇に触れた瞬間。
ここがどこなのか自分はなんなのか、・・・あなたは誰なのかわからなくなった。
「紺ちん」
希美の声がした。
泣いている顔を見られたくなくて、顔を伏せたまま返事をした。
「・・・紺ちん・・・」
ぼろぼろのランドセルにつけているキーホルダーが揺れる。
希美はそっとあさ美の横に座った。
泣きそうになりながらも、目をごしごしとこすりできるだけ笑顔のままはなす。
「のんちゃんどしたのっアイスでも食べにいこっかっ」
希美の顔がすっときつくなった。ひるむ。
希美は黙って立ち上がり、ランドセルをおき、後ろむきになったまま、いった。
「・・・目・・・赤いよ。」
そういったまま、走った。
- 336 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 17:28
-
希美は、ぼろぼろになりながら帰ってきた。
「のんちゃん!!」
あさ美は希美の近くによった。希美が無邪気に舌をぺろりと出す。
「いやぁ、あいつらいっきにくるんだもん。でも勿論勝ちっ楽勝!」
「・・・のんちゃん・・・ごめん、ごめんね・・」
また涙が出てくる。自分のために希美が傷ついた。ものすごく申し訳なくて、どうしようもないとおもった。
「・・・あやまらないで。」
顔をあげる。希美の顔は笑顔でもなく、怒ってもいなかった。
「ありがとう」
自分の声は、泣いていてひどく弱弱しい声だった。
「いいよっ!ねっ、アイスでも食べにいこっか!」
希美はいつもの笑顔で言った。その笑顔にもう言葉は出なくなりぎゅっと抱き寄せた。
「・・・のんちゃんだいじゅき・・・」
希美が鼻をすする声がきこえた。
- 337 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 17:40
-
希美といると、楽しかった。
希美は優しくて、元気で、あったかい。
ホットコーヒーみたいな、あったかさ。ほっとするような、あったかさ。
それでもたまに、哀しそうな寂しそうな顔をする。
家に帰る時。両親について聞かれた時。
気になってでも聞けなくて、自分の非力さを感じた。
届かない、遠くなっていく。あこがれそのものだったのに。
れいながきて、寂しかった。希美をとられたようですごく。
れいなと仲良くなりたかった。どうしても、仲良くならないといけないひとだから。
れいなと希美。二人はとても似ていると感じた。
だかられいなのあの笑顔やあの表情、悲しくなりながらも寂しくなりながらも、
知りたいと思った。
あの笑顔・・・私に対しても、してくれたなら。
いつしかそんなことを思っていた。だから、駄目なんだろう。
この気持ちをなんていうか、最初からずっとしっていた
- 338 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 17:46
- あの夏の日。
「紺野さんは、なんでがんばるの?」
そんなこと考えたこともなかった。
でも、はじめてれいなが自分に興味をもってはなしかけた。
ただ単純に嬉しいと感じて。でもきっと・・・れいなが思っていたような答え
とちがっていたんだろうな。
希美なら、きっと。もっと違うこといってただろう。そもそも、そんな質問しないだろうか。
あの激しい感情にぶつかって、もっともっともっと知りたいと感じた。
もっともっともっと、聞かせて。ちゃんと、目を見て。
- 339 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 17:52
- 気づいたらキスしてた。
どんな顔で・・・会えばいいんだろう・・・
その夜、泣いた。どうしてもうまくいかないから。
「・・・・れいな・・・」
今なにしてるんだろう。きっと、自分のこともっと嫌がるだろう。
もう二度とはなしてくれないかもしれない。このことで、希美とれいなの仲が壊れちゃったり
したら。
- 340 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:01
-
あさ美はその次の日、学校を休んだ。
希美はあさ美の空の席を見つめながら、はぁと溜息をついた。
れいなはぴくっと反応し、でもしばらくするとうなだれこちらも溜息をついた。
「・・・れいな」
「・・・ん?」
「ごめん、のん余計なことして。・・・って今更いっても遅いけど」
れいなはちらりと希美の暗い表情を覗く。
「・・・いいよ。でも、Kさんってのは紺野さんじゃないからね」
「・・・そっか。まぁ、でも今はいいよ。心配なのは紺ちんだし」
希美はもう一回溜息をつくと頬づえをつきながらあさ美のいない机をみた。
「・・・紺ちんはいい子だよ」
れいなの目がそっとほそくなる。
「・・・のんが一番しってるから。」
そういって、席を立った。
取り残されたれいなは、希美と同じようにあさ美の空の席を見つめた。
言わなきゃいけない、ことがある。
- 341 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:08
-
「あさ美、明日はちゃんと学校いくのよ」
母にそう言われながらも、あさ美は返事をしなかった。
なんで学校休んだりしたんだろう。もっと、行ききにくなるのに。
れいなの顔が浮かぶ。涙がまた落ちそうになる。
チャイムがなる。はいと返事して母がばたはだと出ていった。
「・・・あら、・・・はい。・・・あさ美ですか?・・・はい。」
母が帰ってくる。顔は困惑している表情だ。
「お友達みたいよ。」
お友達みたい?誰だろう。あさ美は頭がぼんやりしたままパジャマの姿で玄関へとあるく。
そこにいたのは、れいなだった。袋の包みをかかえている。
- 342 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:16
- 「・・・れ、れいな・・・」
顔がかぁと赤くなる。れいなの顔を見た瞬間昨日のことを思い出す。
それに自分の髪がぼさぼさで、あわててなおそうとする。
しかもパジャマ。あぁあぁ・・・。
「いいよ、そのままで。」
れいなが言う。あさ美はまだ顔を赤くしながらも手を止めた。
れいなの視線が泳ぐ。あさ美も下を見つめたままだった。
「・・・あのれい」「色々ごめん!」
へ?
れいなが頭を下げている。見たこともなかった。
「え、そんな謝るのは私・・・」
「違う。ごめん。れいな不器用で・・人に涙みせるの・・はじめてだったから
なんか・・・こう無性に恥ずかしくて。」
れいなは顔をさげたままあげない。でも、こっちからでも顔が赤いことが、分かった。
- 343 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:27
-
「しりたかった」
れいながポツリ、とつぶやいた。耳をすます。小さい声だった。
「・・・紺野さんのこと。誰よりも。・・・優等生で、でものんみたいなやつと
仲良くて、がんばりやで・・・そんな子の思いとか心境?っていうのとか・・・」
たどたどしくはなす。
「・・・紺野さんって、苦しそうな顔した後でも必ず笑うから・・・なんか、すごーとおもったりでも
・・・何に対してもそんな必死になったことないから・・不思議だった・・・」
れいながくっと息を飲み込みあさ美の瞳を見つめた。
その瞳は綺麗ですんでいた。
「・・・ごめん、いっぱい傷つけた。」
あさ美は首を振った。何度も。傷ついたなんてどうでもいい。
れいながちゃんと言ってくれた。
それに・・・自分のことを知りたいと言ってくれた。
ああ。うれしい。
- 344 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:33
-
れいながそっと胸の中にある袋をさしだした。
「近くでヤキイモやってて・・・のんがイモすきだっていうから」
袋を受け取る。あったかい。何よりも、あったかい。
「・・・ありがとう。」
いもを、掴む。
「あつっ!・・・あつあつあつぃ〜」
ふーと息をふく。それでもあつかった。
「はは、そんないきなりくうから」
れいなが笑った。目を細めてあのきれいで憧れた・・大好きな笑顔だった。
- 345 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:43
-
「・・・あのさ、昨日のこと」
れいなが言いにくそうに口に出した。びくっと体が思わず震える。
せっかく仲直りしたのに、でもやっぱりこのことに触れないわけにはいかない。
「別にれいな怒ってないけんね?・・・うん、気の迷いっていうこともあっただろうし。」
また体が震える。違う違うの。
「気の迷い・・・じゃないの。・・・私ね、好きなんだと思う。」
れいなの顔が戸惑ったように見えた。でも、次の瞬間笑顔になっていた。
「好きって?キスするのが?」
・・・れいな、分かってるんでしょ?
「キスじゃない、れいなのことがだよ。」
- 346 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:50
- お願い、拒否しないで。あなたに拒否されたら私。
「・・・そうなんだ」
「うん」
「・・・」
れいなが、そっと背中をむけた。
帰っちゃうのかと思った。おかしくないかも、とも思った。
「前ならさ、そんなの嘘だーとかいって否定して耳ふさいで聞こえないふりしてたんだろうけどさ」
こっからでは、れいなの顔がわからない。
「・・・今は、受け止めるよ。」
顔がほころぶ。受け止めるよ。れいなの言葉が胸に響く。
「れいな・・・・」
「でも」
れいながこちらをむく。きつい顔になった、でもいつもとどこか違う。
「ごめん」
「・・・・え?」
「好きなの、いるんだ」
- 347 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:55
- 好きなの、いるんだ。
また涙が出そうになる。でもくっとこらえた。
何だ、あさ美。
ちゃんとれいなは受けとめてくれた、笑わなかった、嫌がりもしなかった。
ちゃんと自分の言葉で、断っているから。
だから・・・それだけで十分じゃない。
「うん、そっか。全然平気だよ。別に付き合うとかそんなんじゃなかったんだから」
「・・・ううん、ほんとにごめんな」
「なんでれいながあやまるのーそうだよ別にいいんだよ」
「・・・でもなんか」
なんか。きっと罪悪感とかでいっぱいなんだろうか胸の中。
「れいな、謝らないで。」
「え?」
「むかつく。」
ちょっと笑いながら言ったのに、れいなは笑ってくれなくてうん、と一人頷いた。
- 348 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:58
- 「好きなのって誰?」
帰ろうとしたれいなにむかって、言う。
「・・・それくらい教えてくれても、いんじゃない?」
れいなは戸惑った表情で、でもまっすぐあさ美を見た。
もう視線をそらさない。
「・・・亀」
そういって、すぐ背中をむけドアを閉めた。
・・・亀?
誰だっけ、それは。
- 349 名前:米 投稿日:2005/01/29(土) 18:58
- 更新おわりですー。
- 350 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/03(木) 19:55
- 更新お疲れ様です。
いいですねぇ。面白いです!
これからも、楽しみにしてますので頑張って下さい!!
- 351 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 15:04
-
さゆみは、本を読みながら泣いていることに気づいた。
美貴はそんなさゆみに気づき、驚いた。
「わっ・・・なに。シゲさん泣いてるの?えぇ、本当にそれで泣く人とかっているんだ。」
美貴がそっとソファーに寝ころびながら本を指さした。「世界の中心で愛を叫ぶ」と書いてあった。
「・・・純愛ものには弱いんです。藤本さんは泣かなかったんですか?」
「うん。なんていうか、そんなもんでもないんじゃない?まぁ、流行りものだから読んでるだけだし」
そういって向きを変え、また雑誌をめくる。
さゆみは涙を拭いた。
- 352 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 15:14
- 「・・・藤本さん」
「ん?」
振り向きもしないまま、美貴は返事を返した。
「・・今日はもう帰ります」
「・・・ん。」
美貴の顔が一瞬曇った。それはきっと寂しいからだろう。
美貴の家に最近よく行くようになったのは、美貴が壊れそうな気がしたから。
恋を失った人は、いつもなんだか壊れそうだ。
ううん、とさゆみは一人で首を振る。
美貴が弱いからだ。
「藤本さん、明日放課後美術室に来てください。」
美貴の返事を待たず、さゆみはドアを閉めた。
- 353 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 15:27
-
お昼。お弁当を食べながら、絵里としゃべる。
「じゃあ、さゆもやっとセカチュー読んだの?」
「うん。」
「どうだった?泣いた?」
「泣いた泣いた。感動しちゃったよ〜」
だよねぇ、と絵里も笑う。でも、「そんなもんでもないんじゃない?」と言った美貴の顔がよぎる。
「あーいう人達が本当にいるから、今を大切にしなきゃなんだよね〜」
「・・・だね。」
「もーすぐバレンタインだね。本命は今年はいないけど・・あ、さゆにも勿論あげる!」
絵里はよくしゃべる。たぶん自惚れとかじゃなく自分といるからだろうなとおもう。
他の子と一緒にいる時はしゃべるはしゃべるが普通ににこにこしている時もある。
「さゆね」
「・・・なに?」
「絵里のそういうとこ、すき」
絵里は少しポカンとした顔をしたが、すぐにへにゃとした笑顔になり、嬉しそうにさゆみに近づいた。
「絵里もさゆのこと好きだよー!大好きー!」
二人で抱き合いながら、笑った。
- 354 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 15:42
-
放課後になって、美術室にいった。
美貴は先に居て、爪いじりをしていた。
夕暮れを差す位置にいて、美貴の体は赤く染まっていた。
そんな些細なことが、とてもさゆみの心を打った。
すごく、すごく、きれい。
「シゲさん?」
美貴の声が聞こえてはっと我に返る。
「何してんの。遅かったじゃん」
「・・・ごめんなさい。」
「別にいいけどね。で、どうして呼んだの?」
さゆみは目を伏せた。
「・・・見せたいものがあって」
- 355 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 15:55
- 色々なひとに自分の作品を見せた。
でも、ここまで相手の反応が気になるのははじめてだ。
藤本さん。
軽く名前をつぶやく。
「・・・きれい」
たった一言美貴はそうつぶやいた。
「・・・・あぁ」
美貴の瞳から涙がぼろぼろこぼれている。
自分でもよくわかってないようで、困った表情で自分の涙の雫をおさえた。
それはとても幼い表情だった。
「・・・・もう、しげさんのバカ」
「えっ?な、んでですか?」
「なかせやがって。」
キっと、軽く睨む。でもその瞳にはまだ涙が堪っていた。
さゆみは微笑み、よかったと胸の奥で感じた。
- 356 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 16:06
-
美貴がふいに椅子に座った。
「・・しげさん、美貴も描いてよ」
「、え?」
「どういうデザインでもいいからさ。描いて欲しいの。」
美貴の表情は穏やかだった。
美貴のことは、描きたいと思っていた。ずっと。
でも簡単に描いていいんだろうか。終わらないんだろうか。
「シゲさん。」
美貴が呼ぶ。さゆみは前を向いた。
「お願いします!」
さゆみが頭を下げる。
「・・・なんか試合するみたい。」
美貴が笑いながら自分も頭を下げる。
「試合ですよ。」
さゆみは笑いながら腕をまくった。
- 357 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 16:12
-
そっと、ゆっくり描いていく。
下書きからだいぶ時間がかかった。
手が震えてうまくかけない自分に苛立って何度も何度も描き直した。
美貴はどんなに時間かかっても表情は変わらず行こうともしなかった。
すごいな、とさゆみは関心した。
あんなにあきっぽい人が。そこまで自分に描いてほしかったのだろうか。
さゆみはよーし、と燃えてきた。
- 358 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 16:30
-
「描けたぁ・・・」
さゆみはふ、と筆を置く。すっかり日が暮れていた。
「藤本さんできました。」
美貴はうん、と優しげな表情を浮かべて絵を自分の手に取った。
「・・・美貴って、こんなきれい?ちょっと過大評価じゃない?」
「いいえ。すっごくきれいですよ。」
美貴がさゆみを見る。
「どんな綺麗な風景より、人物より綺麗です。・・でも、素っ気ないし、飽きっぽいし、
わがままだし、意地悪だし、・・・弱いし・・本当過大評価なんてしてません」
「ちょ、そこまで言う?」
「・・・全部含めて、素敵です。」
完璧にできた人より、弱い部分や不器用な部分があって、それでも頑張って生きるひと・
それが素敵だと思う。
- 359 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 16:44
- いつもの帰り道はほとんど誰もいなかった。
「すっかり暗い・・あぁ、ドラマ見逃したな、たぶん。まぁいいけど」
美貴は無表情で文句を言う。
「ドラマとかはじまってる時間ですか?」
「んー、わかんない。」
美貴はそっとさゆみの手をとった。
「シゲさんの手ってあったかいー」
「・・藤本さんの手はつめたいですね」
「あれー?なんでシゲさん顔あかいの?手ぇつないでるから?」
からかい口調で美貴が笑う。その顔はなかなか見れない顔だった。
「・・・わかりません。」
なにそれ、と美貴がまた笑う。
「ねー、セカチューの映画DVDかったんだけど、今度みない?」
「ほんとですか?わー、うれし・・・って嫌いじゃなかったんですか?」
「嫌いとはいってないでしょ。・・・まぁ、シゲさんの泣き顔が見たい、だけ」
そういって手をはずし、すたすたと早足で歩いていく。
本当意地悪だなぁと思う。
でも今までにないくらい幸福な気持ちだ。
ずっと見つめてきた視線から、ちゃんと同じ視線に立てたような気がする。
それから・・・距離も縮まった気がする。
「藤本さん!」
叫ぶ。美貴が振り返る。さゆみは美貴に思いっきり抱きついた。
- 360 名前:米 投稿日:2005/02/12(土) 16:49
- 350 レスありがとうごさいますー。
もうすぐ終わりだと思いますが、ここまで読んでくれたならとても嬉しいです!
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/13(日) 23:37
- それぞれの関係がいい感じですね。
特にれなえりの続き気になります!作者さん頑張ってください!
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/15(日) 18:04
- 待ってます!
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/11(木) 23:57
- 続きお待ちしています。
生存報告だけでもよろしくお願いします。
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