ほんとの気持ち
- 1 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:18
- あやみき小説です。
もしかしたら、他のカップルも登場するかもしれません。
どうぞよろしくお願いします。
- 2 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:19
- 春だなあ…
大学の中庭にもピンクの花びらが舞い散っている。
緑のじゅうたん、彩り鮮やかな花たち、
そして、初々しい新入生たち。
去年の自分もこうだったんだなあ。
それにしても、春。
ベンチや芝生でいちゃつくカップル。
ココは学校だってーの。
ホントにムカツク。
『勉強しに来てるんだろっ』なんては言える立場でもないけど、
まあ、節度を持って欲しいよね。
せめて、手を握るまでとかさあ…
あー、美貴にもそういう意味の『春』がやってくるのかなあ。
でも、実は、あんまりそういうのは興味なかったりする。
何かめんどくさいっていうか、
彼氏がいるとさあ、自分の時間がなくなるような気がして…
「ああっ!ごめん、今日の約束キャンセルさせて!」
「ええっ!マジ!?」
隣りで歩いていた梨華ちゃんが突然叫ぶと、
携帯の画面を見せてきた。
差出人は『ダーリン』…『ダーリン』って何だよ!
『今日、梨華ちゃん、4限ない日だったよね?
こっちも4限が休講になったから、会えないかな』
ったくー。
梨華ちゃんの彼氏は、別の大学の人で、
いろいろ忙しくてなかなか会えないらしい。
幼馴染で昔は家が近かったけど、
高校生のときに、向こうが引っ越しをして、
家も埼玉の外れと横浜の外れでちょっと遠いから、
なかなか会えないようで。
でも、だからって、先に約束してた美貴との予定を
ドタキャンセルするなんて。
もう、コレだから彼氏持ちの友達はイヤだし、
自分も彼氏なんていらないかな、なんて思っちゃう。
「じゃ、明日の昼、A定、ゴチになります」
「わかった!プリンソフトのせもつける!」
「絶対だよ」
「うん、もち」
- 3 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:20
- そんなワケで、4限もバイトもない今日はヒマになってしまって、
あーあ、家に早く帰って昼寝でもするか。
あ、マンガでも買って帰ろう。
近所の本屋に寄って、週刊誌のマンガを買って、家に向かう。
10階建てのマンションの8階。
母親と2人暮し。
離婚してしまっているから父親はいないし、
お姉ちゃんは早くに結婚して家を出ていった。
お兄ちゃんは高校卒業と同時に、
住み込みで板前として働いているため家にはいない。
昔からウチはこの敷地の一部に住んでたんだけど、
マンション建てるからって、立ち退きの条件として
お金とマンションの一室を与えられた。
このマンションができたのが、つい1ヶ月前の3月のこと。
元々のボロ小屋から考えたら、こっちのマンションの方が
何十倍もいい。
マンションに入ると、入口のすぐ横に制服を着た女の子が
しゃがみこんでいた。
私もつい2年前までは、制服とか着てたんだよなあ。
ちょっと懐かしい気持ちになったりして。
それにしても、こんなとこで何してんのかな?
待ち合わせかなんかかな?
ポストから郵便物を取り出していると、
さっきの子がこっちに近づいてきた。
「あのー、ココに住んでる人ですよねー?」
なんだ、この子?
「そうだけど?」
「よかったー!あの、アタシ、今日、ママいないのに、
鍵忘れちゃってー。中に入れなくて困ってたんです」
うれしそうに微笑む彼女をよくよく見ると、
結構かわいい子だった。
すごく男好きしそうなタイプ。
この子、きっとモテるだろうな。
- 4 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:20
- 入口のオートロックを開け、一緒にエレベーターに乗る。
「何階なの?」
「あ、10階です!」
10と8のボタンを押す。
「あ、でもさ、鍵なくて、家に入れるの?
鍵どっかに置いてるとか?」
彼女はエッという顔をして、こっちを見る。
「…そうだった…どうせ家には入れないんだった…」
ガックリと肩を落とす彼女を見てたら、
何だかかわいそうになってしまった。
「じゃ、ウチに来る?今、ウチも親いないし」
彼女は目をクリクリとさせて、美貴のことを見つめてきた。
キレイな目してんなあ…
「…いいんですか?」
「うん、どうせヒマだし」
彼女は満面の笑顔を浮かべた。
しかし、この子、見てるとあきないかも。
表情がクルクル変わって面白い。
- 5 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:20
- 家の鍵を開けて中に入り、美貴の部屋に入ってもらう。
リビングでもいいんだけど、やっぱ自分の部屋の方が落ち着くから。
紅茶とクッキーとかチョコを用意して部屋にいくと、
彼女は机の上の教科書の背表紙をじっと見ていた。
そんな難しい本ってワケじゃないけど、
高校のときには見ないタイトルの本とかだもんなあ。
「あ、コレ、適当に食べてね」
テーブルの上に紅茶とお菓子を置く。
「あ、ありがとうございます…あのーご挨拶遅れました、
アタシ、松浦亜弥っていいます。高校3年生になったばかりです」
亜弥ちゃんはペコリと頭を下げて、ニコニコと微笑んだ。
あはは、かわいいねー。
親戚の中にこういう子がいたら、いい子いい子してあげるだろうな。
「藤本美貴です。大学2年生になったばかりです」
美貴も真似をして、ペコリと頭を下げる。
「ミキちゃん?じゃ、みきたんだ」
「は?何ソレ?」
「アタシの幼稚園のお友達でミキって名前の子がいてー、
みきたんって呼んでたから」
何だよ、ソレ。
美貴は幼稚園児じゃないってーの。
でも『みきたん、みきたん』って、
ニコニコしながら言われると、こっちは文句なんて言えなくて…
- 6 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:21
- しばらくお互いのことを話し合った。
学校のこと、友達のこと、家族のこと…
亜弥ちゃんは、このマンションに引っ越すまでは隣町に住んでいた。
両親と妹の4人家族。
妹は中3で受験生のため、毎日のように塾通いをしているらしい。
「亜弥ちゃんも受験生でしょ?大学行くの?就職?」
「うーん、一応付属の大学に行くつもり。
相当成績が悪くなかったら行けるから」
「ふーん、亜弥ちゃん、成績優秀なんだ?」
「いやー、アタシ、バカだから。成績も下の方だし」
「えっ?じゃあ、付属の大学いけないかもしれないんじゃないの?」
「にゃははは、そーかも」
…この子はノーテンキというか、
将来のこととか考えたりしたことないんだろうな。
まあ、美貴も大したことは言えないけど。
しかも、明日、英語の小テストがあるらしい。
まったく大丈夫なのかねえ…
「じゃ、勉強しなきゃダメじゃん。
別にココでしてていいから。美貴はマンガでも読んでるから」
「えー?みきたんとお話してたい」
プーッと頬を膨らます亜弥ちゃん。
ったくー、カワイイ顔でそんなことしても、全然迫力ないよ。
「ダーメ。勉強しなさい。教科書とかあるんでしょ?」
「…わかんないとこあったら、みきたん、教えてくれる?」
「わかったよ、美貴がわかる範囲なら教えてあげるから」
「じゃ、やる!!あ、英語の辞書貸して?」
「はいはい」
英和辞書を渡すと、亜弥ちゃんは鞄から教科書を取り出して、
ニコニコしながらテーブルの上に広げた。
なんていうか…ホント、この子は純粋というか、面白いなあ…
本当は亜弥ちゃんを観察してる方が面白そうだったけど、
ジロジロ見てたらやりにくいだろうし、
ベッドの上で横になって、さっき買ったマンガを読み始めた。
- 7 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:21
- 30分くらいたって、
「みーきーたーん」
まるで語尾にハートがついてるんじゃないかと思えるほど、
甘ったるい声で亜弥ちゃんから呼ばれた。
「ん?わかんないの?」
無意識に思いっきり優しい声を出してしまってたかも。
亜弥ちゃんはコクンと頷いた。
英文の長文を読んで、それについて設問に答える問題だったんだけど、それを見て少し安心した。
すごい難しい問題だったらどうしようかと思ったんだけど、
美貴でも全然わかるようなものだったから。
亜弥ちゃんは3問目でつまずいてたんだけど、
答えを見ると1問目も間違えていた。
「亜弥ちゃん、ここね、複数形にしないとダメだよ…」
亜弥ちゃんの隣りに並んで座って、テキストを見ながら
丁寧に解説してあげた。
「…ということなの。わかった?」
テキストから目を離し、亜弥ちゃんの顔を見たら、
亜弥ちゃんはボンヤリと美貴の顔を見てた。
で、美貴と目が合うと慌てて目を逸らした。
「亜弥ちゃーん、ちゃんと美貴の説明聞いてた?」
「えっ?あ、あの、もう1回お願いします」
「もー、しょうがないなあ」
まったくー、この子は本当におバカさんかもしれない。
- 8 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:22
- なんとか、美貴の説明で理解してもらえたところで、
亜弥ちゃんの携帯が鳴った。
どうやらお母さんが帰ってきたみたい。
電話を切ると、さみしそうに美貴のことを見つめてきた。
「…みきたん、また勉強教えてくれる?」
「えー?カテキョでもないのにー?」
「じゃ、じゃ、アタシのお小遣いから払うから…
あんまり出せないけど…」
そんな、高校生からお金巻き上げられるかってーの。
「わかった、わかった。お金はいらないよ。
わかんないことあったら教えてあげるから、いつでもおいで」
「…ほんとに?」
「ほんと、ほんと」
亜弥ちゃんの頭を撫でてあげると、
顔を真っ赤にして照れたようにうつむいた。
あはは、かわいいねえ。
美貴は末っ子だから、いつも妹か弟が欲しいって思ってた。
亜弥ちゃんみたいにかわいい妹、めちゃくちゃ欲しいなあ。
それからというもの、亜弥ちゃんは、週に2、3回は
ウチにやってくるようになった。
毎日メールがきて、その日の予定を聞かれる。
美貴がバイトがなくて何の予定もないとき、
亜弥ちゃんは必ずやってくる。
そのせいか、ウチのお母さんともすっかり仲良くなって。
亜弥ちゃんのお母さんもウチに挨拶に来たりして、
母親同士まで友達になってた。
ちなみに、亜弥ちゃんは超スキンシップが好きな子。
今はもう慣れたけど、美貴は基本的にそういうことをしないから
最初は驚いた。
だって、2回目にウチにやってきたときに玄関のドアを開けたら
いきなり抱きつかれた。
「みきたーん、会いたかったよーっ」
って。
「つーか、2日前に会ったばっかりじゃん」
「でも、会いたかったんだもん。毎日でも会いたいもん」
全く、彼氏彼女じゃないんだから。
でも、まあ、これだけ懐いてくれるのは正直悪い気はしない。
- 9 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:22
- 1週間くらいたったときだったかな、
いつものように隣りに座って、亜弥ちゃんの質問に答えてあげてた。
亜弥ちゃんは本当に全くわからないところだったらしく、
美貴の解説でキチンと理解ができてすごく喜んでくれた。
「みきたーん、ありがとー」
横から抱きつかれて、ほっぺにキスされた。
な、なんだよ、突然…
「…もう!びっくりさせないでよー」
「あー、みきたん、照れてる?」
「照れてなんかない」
「うそだー、じゃ、もう1回する?」
「うわっ、ちょ、ちょっと…」
美貴が避ける前に、ほっぺにチュッとされてしまった。
しかも、ホントに『チュッ』って音させて。
「にゃはははー、みきたん、かわいいっ!」
勢いよく正面から抱きつかれた。
「はいはい、もうわかったから。次やるよっ!」
それからというもの、亜弥ちゃんの疑問に答えてあげる度に、
ほっぺに亜弥ちゃんがキスをしてくるようになった。
- 10 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:22
- 練習問題をやる宿題が出たときは、答え合わせをしてあげた。
間違ってるところはもちろん正しい答えを教えてあげて、
ま、またその度にほっぺにキスされてたんだけど。
で、答えが合ってるところはちゃんと誉めてあげた。
「ねーねー、たまにはみきたんからもチューしてよー。
だいたいさー、正解したら、ご褒美くれなきゃいけないの、
みきたんだよ」
「いや、別に、ご褒美あげる必要もないし」
「だってー、してほしいんだもん」
ほっぺを膨らまして、恨みがましく美貴を見てくる。
まったく、この子は本当に高校生なんだろうか。
どうみても、小学校低学年レベルだよ。
「はいはい、よくできましたー」
しょうがないので、亜弥ちゃんのほっぺにキスをしてあげた。
自分からしてくれって言ったくせに、
亜弥ちゃんはビクッとして、真っ赤になってうつむいた。
「…なんだよ、何照れてんの?」
「…だってー、本当にしてくれるって思わなかったんだもん…」
亜弥ちゃんの顔を覗き込むと、恥ずかしそうに顔をそらす。
また覗き込むと、今度は背中を向けて。
まったく、そんなに恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに。
でも、そんな亜弥ちゃんがあまりにかわいいから、
背中からギュッと抱きしめてあげた。
「亜弥ちゃん、かわいー」
亜弥ちゃんは、体を固くしたまま身動きしなかった。
自分からは抱きつくくせに、
やっぱり美貴からはしたことなかったから、
また照れてるんだろうな。
抱きしめた腕がちょうど胸の辺りにあったんだけど、
亜弥ちゃんの心臓は異常なほどドキドキしてた。
なんでそこまで恥ずかしがるかなあ?
「ほら、続きやるよ」
亜弥ちゃんの体から腕を離して、頭をポンポンと叩いた。
- 11 名前:サチ 投稿日:2004/01/27(火) 13:23
- 今日はココまでです。
- 12 名前:つみ 投稿日:2004/01/27(火) 16:43
- いいっすね!
あやみきが今欲しかった・・・
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 16:34
- あやや可愛すぎ!
- 14 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:32
- ある日、美貴は銭湯に行こうと家を出た。
前の家のときに、一度お風呂が壊れて、
歩いて10分くらいのところにある銭湯にはじめて行った。
そこはお風呂も何種類かあってサウナもあって、すごく楽しかった。
それ以来、たまーにそこの銭湯に行くようにしていた。
マンションを出たところで、制服姿の亜弥ちゃんが歩いてくるのが見えた。
今日は友達とカラオケに行くとか言ってたから、その帰りみたい。
「亜弥ちゃ−ん」
「あー、みきたんっ!」
駆け寄ってきて。思いっきり抱きつかれた。
「ん?こんな時間からどこ行くの?」
「うん、向こうの通りの方にある銭湯」
「銭湯?」
亜弥ちゃんは、目を丸くして美貴のことを見た。
その銭湯がお気に入りだから、たまに行ってるって話しをした。
「じゃ、じゃ、アタシも行くっ!」
「へ?」
「ママに話しして、すぐ来るから、ちょっと待ってて!」
亜弥ちゃんは急いでマンションの中に向かっていった。
あはっ、ホント、妹みたいだなあ。
亜弥ちゃんは長女だから、美貴とは逆で、
きっとお姉ちゃんが欲しいと思ってるんだろうな。
待つこと10分ほど。
2人して、銭湯に向かった。
亜弥ちゃんは、腕を組んできて、
「みきたんとお出かけするのはじめてだね」
「あー、そーだね」
確かに、いつも美貴の部屋で勉強してるだけだから、
外に出るなんてことなかったもんな。
「ひどーい、みきたん、どーでもいいような声出したー」
「え?どーでもいい声なんて出してないよ」
「出してたー」
「出してません」
亜弥ちゃんがプンと横を向いたと思ったら、
「…じゃ、また今度お出かけしてくれる?」
ホントかわいいなあ…
こんなかわいい妹なら、どこでも連れて行っちゃうよ。
亜弥ちゃんの髪をグシャグシャに撫でた。
「もーっ!みきたんっ!」
「あはははっ」
- 15 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:33
- 銭湯に到着すると、
亜弥ちゃんはとくに恥ずかしがるでもなく、
ぽんぽん服を脱ぎ始めた。
とくにタオルをあてるでもなく、堂々と体重計にのったりしてる。
うーん、亜弥ちゃん、痩せてるし、それなりにあるところはある。
つーか、若いね、健康的だね、全然いやらしさがないもん。
「うーん、みきたん、スタイルいいね」
美貴の全身をじーっと眺めてから亜弥ちゃんがつぶやいた。
「コラ、人の裸、ジロジロ見ないのー」
「だって、キレイなんだもーん。減るもんじゃないし、いいじゃん」
「じゃ、美貴も亜弥ちゃんのことじっくり見るよ」
「きゃー、みきたん、ヘンターイ」
亜弥ちゃんが、体を隠すようにして小走りに行ってしまう。
…何だかなあ、ホント子供だなあ…
時間が中途半端だったのか、周りはおばあちゃんやおばさんが数人。
あんまり混んでもいないので、2人でのんびりと湯船につかったりしてた。
- 16 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:33
- 「みきたん、あとで背中流してあげるね」
「えー?いいよ、自分でやるから」
「いいのっ!いつもお世話になってるお礼にやってあげるから、ね?」
こんな風に言われると、なぜか断れなくなってしまう。
でも、確かに人に背中を流してもらうのは気持ちいい…
「みきたーん、髪の毛も洗ってあげるぅ」
「えっ?いいよ、子供じゃないんだから」
「やーりーたーい」
「いいって」
「だめー」
結局、亜弥ちゃんには逆らえずに、ゴシゴシ。
「お客さーん、かゆいところありませんかー?」
「…美容院かよっ」
「にゃははは〜」
しかも、『アトム!』とか『はなわ!』とかいって、
泡のついた美貴の髪でいろいろ遊んでるし。
「もー、亜弥ちゃんにもやるよっ!」
「えっ?みきたん、アタシのも洗ってくれるの?」
…って、結局、亜弥ちゃんの髪の毛を洗ってあげるハメに。
悔しいから、『七三』とか『オールバック』にはしてやったけど。
結局、2時間以上も銭湯で遊んでた。
小さい頃、温泉に行って、
お姉ちゃんとすごくはしゃいだことを思い出した。
ある程度、大きくなったら、
お風呂でこんな大騒ぎすることなんて、まずないもんね。
亜弥ちゃんも小さい頃のこととか思い出したのかな。
いや、むしろ、亜弥ちゃん、今でも、
妹と一緒にお風呂入って騒ぎまくってるような気もする…
- 17 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:34
- ある日、サークルの子とゴハンに行ったけど、
ゴハンだけだったから、わりと早く家に帰ってこれた。
で、お風呂上りのところに、
亜弥ちゃんから電話がかかってきた。
「みきたーん、今、どこ?」
「もう、家だよ」
「ホント?あのねー、友達からシュークリームもらったんだけど、
みきたんも食べない?これから、そっち持ってくから」
パジャマの上に、カーディガンを羽織った亜弥ちゃんがやってきた。
いつものように、玄関を開けた途端に抱きついてくる。
「みーきたん、久しぶりっ」
確かに、ここのとこバイト以外にも飲み会が続いてて、
前に亜弥ちゃんに会ってから5日くらいたってたから、
今までのペースからすると久しぶりなのかなって気もする。
そのままだっこするみたいな姿勢のままで、美貴の部屋に入る。
「あー、みきたん、いいニオイだね」
湯船に桃の香りの入浴剤を入れてたから、そのニオイがするみたい。
亜弥ちゃんの髪の毛も甘い女の子っぽいニオイがした。
「亜弥ちゃんもいいニオイするねえ」
「みきたん、すけべー」
「いや、亜弥ちゃんが先に言ったんじゃん」
「にゃははは〜」
- 18 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:34
- 美貴に抱きついたまま至近距離でじっと見つめてくる亜弥ちゃん。
「ん?どうした?」
「…みきたん、歯磨きもしたばっかり?」
近くでしゃべってるから、歯磨き粉のニオイもするのかな?
「うん、そう」
「ふーん。アタシも磨いてきたばっかりだよ」
確かに、亜弥ちゃんの口からもミントの香りがした。
またじっと見てきたと思ったら、
顔がもっと近づいてきて、
亜弥ちゃんはちょっと唇を尖らせた。
それが美貴の唇に当たる…
…つまりキスされた…
突然だったから、美貴がキョトンとしていると、
亜弥ちゃんは微笑みながらも真っ赤になって、
うつむいたまま美貴の腕をペシペシ叩いてきた。
「もー、みきたんのばーか」
「……は?亜弥ちゃんからしてきたんじゃん!」
「だってー、したかったんだもん」
「何ソレ?亜弥ちゃん、欲求不満なんじゃないの?」
亜弥ちゃんは、ほっぺをプーッと膨らませて、
美貴のことをにらんできた。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「あー、やっぱ、欲求不満だから、
そんな風にすぐイライラするんだー」
からかうように、亜弥ちゃんの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
すると亜弥ちゃんの顔はだんだん緩んできて、笑顔になっていった。
- 19 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:35
- 美貴がベッドに腰掛けると、亜弥ちゃんも隣りに座り、
ぴったりと寄り添ってきた。
「亜弥ちゃん、今日、友達と遊んでたんでしょ」
今朝のメールでそんなようなことを言ってた。
亜弥ちゃんは自分の予定を全部教えてくれるから、
美貴も把握している。
「うん、そうだよ。あ、はい、コレ。おばさんにもあげてね」
亜弥ちゃんの手から紙袋を受け取る。
「ありがと。明日の朝、食べるよ」
とりあえず、テーブルの上に置く。
「今日会ってた友達って男の子?もしかして彼氏?」
「ちがーうよ。彼氏なんていないもん。
男の子だけど、ただのクラスメートだし、
2人っきりじゃなかったし」
亜弥ちゃんが、唇をとがらせて、
美貴のことをにらんでくる。
亜弥ちゃん、本気でにらんでるつもりなのかな?
全然こわくないし、むしろそんな顔されたら、
相手は微笑んじゃうと思うけど。
「でも、亜弥ちゃん、モテるでしょー。
何で彼氏作んないの?」
「余計なお世話ですぅ」
「あー、もしかして片思い中とか?」
「…別にいいじゃん」
すねたようにソッポを向く。
ホントわかりやすい子だなあ。
「ふーん、なるほどねえ。ね、ね、どんな人?
コクったの?フラれちゃったとか?」
「…コクってなんかないもん」
「なんでー?亜弥ちゃんならまずOKでしょ」
「…もー、アタシのことはいいの!みきたんこそ、彼氏は?」
亜弥ちゃんは、体をこっちに向けると、美貴をじっと見据えてきた。
- 20 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:35
- 「今は別に彼氏いらないかなあ。
彼氏いるとさ、いろいろ縛られるでしょ。
やりたいこともいろいろあるし、
遊んでくれる友達がいれば充分かな」
亜弥ちゃんはすごく笑顔になって、美貴に抱きついてきた。
友達だけじゃなくて、こんなかわいい妹もいるもん。
彼氏はやっぱりいなくていいよ。
「…ね、その友達に、アタシも含まれてる?」
「えー、どうしようかなあ?
亜弥ちゃん、友達として認められるかなあ…」
ニヤニヤしながら亜弥ちゃんを見たら、
勢いよく飛びつかれて、ベッドの上に押し倒された。
「うわっ!」
「もー、イジワル言うヤツは、こうしてやる〜」
腰、背中、首を中心に亜弥ちゃんがくすぐってきた。
「やめてよ〜美貴、くすぐったいの、マジで苦手なんだからー」
「にゃはは〜いいこと聞いた!」
くすぐりまくる亜弥ちゃんに、
ベッドの上でのたうちまわってる美貴。
「…も、もう、マジ、カンベンして〜」
「じゃ、アタシのこと『スキ』って言ってくれたら、やめてあげる」
「な、なに、ソレ?全然関係ないじゃん…うわあ!」
亜弥ちゃんはもっと激しくくすぐりだした。
「わ、わかったよ!亜弥ちゃん、好き、好きだからっ!…」
「ホントに?一番好き?」
「…う、うわあ!…一番好き!大好きっ!」
亜弥ちゃんの手がやっと止まった。
「…はぁ…はぁ…も、もう、亜弥ちゃん…」
「アタシもみきたんのこと大好きっ!」
今度は上から覆いかぶってきて、
ほっぺとかおでこ、しまいには唇にもキスされまくった。
美貴は、くすぐられ疲れて、拒否する体力も気力もなくって、
好きにされ放題だった。
まるで犬がしっぽをふって、じゃれついてるみたいで、
すっごくかわいかったから、しばらくやらせておいてもいいかななんて。
でも、このままじゃ、止めるまで延々やってそうな気もしてきて、
さすがに美貴の疲れも落ち着いてきたから、
タイミングをみて、今度は美貴が亜弥ちゃんの上になった。
- 21 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:36
- 突然だったから、亜弥ちゃん、驚いて固まってる。
「もうっ!今まで散々やりやがったなあ!」
今度は美貴が亜弥ちゃんの体をくすぐる。
「うわっ、ダメ!ホントに!」
「お返しだもーん」
「きゃっ、うわっ!うわははは…」
涙を流しながら笑って、イヤがってる亜弥ちゃん。
ホントかわいい。
このままウチに置いておきたいくらい。
一家に一人、松浦亜弥。
うん、欲しいねえ。
「ホントダメ!アタシも、言うこと、聞くからー、やめ…」
「えー、じゃあ何お願いしよっかなあ」
「な、なんでも、しますっ…うはっ…」
何がいいかなあ…
亜弥ちゃん、楽しいから一緒にいてくれるだけでいいんだけど…
あ、そうだ!
「じゃ、今日、泊まっていきなよ。美貴と一緒に寝よ」
美貴は手を止めてあげたのに、亜弥ちゃんは何も言わず固まってるだけだった。
「なんだよう、なんでもするって言ったじゃん!」
美貴がまた手を動かすと、
「きゃっ!…する!…お泊まりするっ!絶対する!」
美貴が手を止めて、亜弥ちゃんの髪を撫でた。
「よーし、いい返事だ」
「…な、何でもするって言っちゃったし…」
亜弥ちゃんは小さな声でつぶやいた。
「ありがと。何かさ、誰かが隣りにいてくれると、
すごく安心するっていうか、気持ちよく寝れるからさあ」
「…誰かと一緒に寝たりするんだ…」
亜弥ちゃんの声が少しトーンダウンしてる。
うーん、ホントはイヤなのかな?
「友達来たら、だいたい同じ布団かすぐ隣りで寝るよ。
あ、でも、このマンションになってからまだ
誰もお泊りしてくれてないや」
亜弥ちゃんが、キョトンとしたあと、ニコッと微笑んだ。
「じゃ、アタシが初めてなんだ〜にゃはは、うれしいな。
うん、ママにお願いしてみるね」
- 22 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:36
- ポケットに入ってた携帯を取り出して電話を始める。
亜弥ちゃんのママはOKしてくれたみたいで、電話を切ると、
「わーい!」って早速ベッドに横になった。
美貴ももう寝るだけだったから、亜弥ちゃんの隣りに横になる。
亜弥ちゃんがこっちに体を向け、
少し顔を赤らめて、上目遣いで美貴を見てきた。
…なんか、一瞬ドキッとしちゃったじゃん。
亜弥ちゃんに彼氏ができたら、きっといつもこんな風に、
相手の男のことを見つめるんだろうな。
うーん、お姉ちゃんとしてはスゴク心配なんだけど…
亜弥ちゃんのことをそのまま、抱き寄せた。
なぜか一瞬ビクッとしたけど、そのまま美貴に抱きついてきた。
かわいいなあ…
……しかも、亜弥ちゃんが側にいてくれるのが、
すごく落ち着くっていうか、心地よい。
…すっごい睡魔が襲ってくる…
「…亜弥ちゃん、おやすみ…」
「…へっ?みきたん、もう寝ちゃうの?」
「…ん…ダメ、もう眠くって…」
「…じゃ、おやすみのチュー」
唇に一瞬の柔らかい感触だけは覚えてたけど、
その後、ぐっすり眠ってしまったみたい。
- 23 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:36
- 次の朝起きたら、亜弥ちゃんはゴキゲンななめ。
しかもクマなんかできちゃってる。
「もしかして、全然眠れなかった?」
コクンと頷く亜弥ちゃん。
「…ごめん、ホントは泊まるのとかイヤだった?
もう泊まってとか言わないから。ホント、ごめん」
「ち、違うよっ!そういうんじゃなくって…
みきたんさえよければ、また泊まりに来たいし…」
「ああ、美貴は亜弥ちゃんなら大歓迎だよ。
隣りにいてくれると何か安心するし」
「…ホント?」
「うん」
やっといつもの笑顔になってくれた亜弥ちゃんのことを抱きしめて、
頭を撫でてあげた。
- 24 名前:サチ 投稿日:2004/01/30(金) 14:40
- 今日はこれまでです。
>>12さん
ありがとうございます。
私はカップリングであやみきが一番好きです、
ミキティファンです。
>>13さん
ありがとうございます。
あややも大好きです(笑)
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 15:24
- テンポが良くて読みやすいですね。面白いです。
- 26 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:21
- ある日、美貴がバイトがある日だってのに、
亜弥ちゃんが『会いたい』って言ってきた。
バイトが終わって、家に着くのは11時頃だ。
亜弥ちゃんはそれでもいいらしい。
この前はシュークリームあげるだったし、
いつもは『わかんないところ教えて』って、理由があるのに、
ただ『会いたい』なんて言ってきたのは
亜弥ちゃんと出会ってからの2ヶ月で、初めてのことだ。
何だろう?
何か学校でイヤなことでもあったかな?
お母さんに話しをしておいて、
美貴の部屋で待っててもらうことにした。
例えマンションの中とはいえ遅い時間だから、
出歩くのはちょっと心配だもんね。
バイトが終わってダッシュで帰って、
部屋に入ると亜弥ちゃんがベッドにちょこんと座ってた。
「どうした?何かあった?」
美貴が鞄を放り投げて、亜弥ちゃんに近づいた。
まるで怒ってるかのような表情で亜弥ちゃんは立ち上がった。
「今日、何の日か知ってる?」
「え?今日?…」
ふと、机に置いてある卓上カレンダーを見る。
今日は6月25日だ
ん?なぜか、ハートマークが書かれている。
何だ、アレ?…
…あ!!…あー、ヤバイ…
今日は亜弥ちゃんの誕生日だった…
- 27 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:21
- 「…誕生日、おめでとう…」
「遅いっ!何で今更、しかもアタシが言ってから気づくの?」
そんなこと言ったってさあ、出会ってすぐくらいに聞いた
誕生日のことなんてすっかり忘れちゃってたよ。
「この前会ったときに言ってくれたらよかったのに…」
「だって、そんなのプレゼントちょうだいって言ってるみたいじゃない」
「別にしてくれていいのに」
「そんなの、イヤだもん」
美貴のことをじっと睨みつけている亜弥ちゃん。
「忘れちゃってて、ごめん。本当に悪かった。
今度会うときまでに、ちゃんとプレゼント用意しておくから」
「ちがーうの、そういうことじゃなくって…」
「じゃあ、美貴はどうしたらいいの?」
亜弥ちゃんを見つめる美貴は、
たぶん、すごく困った表情をしてたと思う。
亜弥ちゃんの怒ってた顔も、何だか少し困った顔になっていった。
- 28 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:22
- 「…じゃ、今、プレゼント、ちょうだい」
「え?亜弥ちゃんにあげられるようなの何もないんだけど…」
亜弥ちゃんは、まっすぐ美貴のことを見ると、
ギュッと抱きついて、キスをしてきた。
………
何度も何度も角度を変えて唇を強く重ねてくる。
ときたま、美貴の上唇、下唇をちょっと吸ったり…
…明らかにいつもしてるじゃれあいみたいなキスじゃない。
まるでむさぼるかのように、しばらくの間そんなキスが続いた。
美貴はただただボー然とするだけで、何もできなかった。
止めることも、亜弥ちゃんの腰に腕を回すことすらも。
やっと、亜弥ちゃんの唇が離れた。
でも、亜弥ちゃんは美貴のことを見ることもしないで、
うつむいたまま何も言わずに部屋を出ていってしまった。
ドアが閉まった瞬間、美貴はその場にしゃがみこんだ。
いや、しゃがんだんじゃなくて、腰に力が入らなくなってた。
そう、いわゆる腰くだけ状態…
…亜弥ちゃんのキス…
アレは家族とか友達にするようなものじゃなく、
恋人に対してするようなものだ。
亜弥ちゃんは、美貴のことをそういう意味で好きでいてくれてるんだろうか…
…それにしても、すごくドキドキした。
はっきりいって、すごく気持ちよかった。
もっと長い時間されてたら、美貴の方がヘンな気持ちになって、
それ以上のこと、例えば舌を入れるとかをしてしまったかもしれない。
- 29 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:22
- …なんなんだよ、この気持ち。
美貴は普通に男友達もたくさんいるし、
今まで彼氏は作ったことないけど、コクられたことだって何度かある。
ついこないだだって、同じサークルの先輩からコクられた。
もちろん断ったけど。
それにしても、自然と頭に浮かんでくるのは、亜弥ちゃんの笑顔、
怒った顔、すねた顔、照れた顔…
「ああっ!!もーっ!!」
はあ、ヤバイじゃんか…
美貴の方が、亜弥ちゃんに惚れてしまったかもしれない。
なんで、なんで、よりによって、オンナノコに…
ちょっとだけ大人のキスをしただけなのに…
亜弥ちゃんのことを、頭から追い払おうとしても全然ムリで。
今日会ってすぐの亜弥ちゃんの怒った顔を思い出す。
…誕生日忘れてたこと、本当に悪かったな。
もっとちゃんと謝っておこう…
亜弥ちゃんに電話しようと思ったけど、
今度はさっきのキスのあとのうつむいた思いつめたような顔を思い出した。
…今、電話しても出てくれないんじゃないかな…
それに、今の美貴にヘーキな声で亜弥ちゃんとしゃべれる自信がない。
顔を思い出しただけで、こんなドキドキしてんのに…
結局、その日は電話もメールもできなかった。
- 30 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:23
- 次の日、いつもは朝やってくる亜弥ちゃんのメールが、
学校が終わる時間になっても来なかった。
はぁぁ、ヤバイよ。
美貴だって、次にどんな顔して会ったらいいのか、
どんな話していいんだか全然わかんない。
とりあえず、今日はバイトがある。
バイトに行く前に、亜弥ちゃんへの誕生日プレゼントを買っておこう。
結局その日は1度も亜弥ちゃんからの連絡はなかった。
出会ってからこんなの初めてかもしれない。
- 31 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:23
- 次の日、美貴は学校が2限からだったので、
朝、亜弥ちゃんの家に寄った。
もう亜弥ちゃんは学校に行ってる時間だ。
亜弥ちゃんのママは専業主婦だから、家にいるはず。
顔も合わせづらいから、プレゼントはあずけておこう。
亜弥ちゃんの家に行くと、ママは大喜びで、
「上がってお茶でも飲んでって」
「いや、そろそろ学校に行かなきゃならないんで。
コレ、亜弥ちゃんに渡しておいてもらえますか?」
小さな紙袋を渡した。
「あら、ありがとう。
ね、そういえば、亜弥とケンカでもした?」
「え?」
「ほら、おととい、美貴ちゃんのとこから帰ってきたら、
あの子泣いてて、部屋から出てこなくって。
昨日も今朝も全然元気がなくってね」
そっか…泣かせちゃったのか…
「あの子、『みきたんがね…』っていっつもうれしそうに話してるのよ。
あ、そうそう、勉強するようになったのも、美貴ちゃんのおかげよ」
「…へ?そ、そうなんですか?」
「今まで、家で勉強なんかしたことなかったのに、
『みきたんに誉めてもらうんだー』ってせっせと教科書広げてねえ…」
「…はあ…」
誉めてあげるとき、チューしてあげるからなのかな…
「おかげで、成績もだいぶ上がってきたのよ。
ホント、美貴ちゃんには感謝しなくちゃね」
「いえ、そんなこと…」
「まだまだ子供で、どうしようもない子だけど、
これからも仲良くしてやってね」
「は、はい、こちらこそ」
そーだな、やっぱり、ママにプレゼントあずけるなんて、
ズルしちゃダメだったよな。
今日はバイトもないし、授業終わったらすぐに帰って、
家に行って直接顔見て謝ろう。
亜弥ちゃん、本当にゴメン。
- 32 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:23
- 「…ミキティ…」
授業が終わって、急ぎ足で廊下を歩いてるときに、
背後から弱々しい声がして、振り向くと、
どんよりした梨華ちゃんがいた。
今日は梨華ちゃんと同じ授業もなかったし、
午後からだったみたいでお昼も一緒じゃなかったから、
会うのははじめてなんだけど、何だ、この重ーいカンジの雰囲気は…
「…梨華ちゃん?どうかした?」
本当に「えーん」って言って、
美貴に抱きついて泣いてくる梨華ちゃん。
こんなことされても、やっぱり全然ドキドキはしない…
こんなときなのに、自分の亜弥ちゃんへの思いを
再認識しちゃったりもした。
- 33 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:24
- 結局、梨華ちゃんに付き合って、パスタ屋さん&カラオケに
行くことになって、さんざん彼氏のグチを聞かされた。
何でも、昨日のデート中に、別の女の人(大学の先輩)から、
電話がかかってきて。
その電話に出ることじたいも気に食わないけど、
切る直前に「はいはい、愛してますよ」って言ったらしい。
それで、梨華ちゃんはご立腹。
確かに、梨華ちゃんが怒るのもわかる。
何で彼女の前で他の女の人に向かってそんなこと言うかなあ。
でも、逆に考えれば、やましいことがないから、
彼女の前でも、そんなことできるんだってとれるんだけど。
もちろん、美貴が梨華ちゃんと一緒にいる間にも、
彼氏から何度も電話もかかってきたし、メールも届いてた。
最初の電話に
「今、ミキティと渋谷で遊んでる最中だから、
もうかけてこないで!」
って出たっきり、それ以降のは鳴らしっぱなし。
だったら、電源落としたらいいのに、って思うけど、
向こうがどれだけ連絡してくるかも気になるんだろうね。
しかし、何で、人の痴話ゲンカの話し聞かされてんだろ?
今日は美貴だって、自分の話しを誰かに聞いてもらいたいくらいなのに…
ま、『オンナノコに恋しちゃいました』なんて話し、
聞かせられる人もいないんだけどさ…
- 34 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:25
- カラオケで、美貴がトイレに行って、
部屋に戻ると、梨華ちゃんはソファに横になって寝てた。
ココの店は飲み放題だし、梨華ちゃん、今日はかなり飲んでた。
梨華ちゃん、酔っ払って寝るとなかなか起きないんだよねえ…
サークルの飲み会で、何度か見てる光景。
どうしよ、ほって帰るワケいかないし…
途方にくれているところに、梨華ちゃんの携帯が鳴った。
画面には『ダーリン』と出てる。
もう、こいつのせいなんだから!
美貴は携帯のボタンを押す。
「もしもし?梨華ちゃんの彼氏ですよね?」
『え?は、はい、そうです』
優しそうな、何だか女の子みたいな声の人だ。
「梨華ちゃんの友達の藤本ですけどー、
今、カラオケにいるんですけど、梨華ちゃん寝ちゃったんですよ。
迎えに来てもらえません?」
店の場所と部屋番号を教える。
さっきの梨華ちゃんの電話で、彼は渋谷に来ていたらしい。
だから、10分後くらいには行くと言ってくれた。
優しいしいい人そうじゃん。
わざわざ電話してきたり、会いに来てくれたりして。
言い訳かもしれないけどさ、話ししようとしてんだから、
梨華ちゃん、聞くだけでも聞いてあげたらいいのに。
ま、梨華ちゃん、相当意地っ張りだからなあ。
- 35 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:26
- 約10分後。
部屋のドアが開いて、背の高い金髪の女の子が入ってきた。
目がパッチリして色が白くてキレイだなあ…
…ん?
店員さん?いや、制服じゃないし…
「あ、藤本さんですよね?吉澤です。
梨華ちゃんが迷惑かけて、本当にすみません…」
…え???
吉澤さんは、梨華ちゃんの隣りに座ると、
「梨華ちゃん、梨華ちゃん、起きて」
って梨華ちゃんの体を揺すりながら、声をかけてた。
もちろん梨華ちゃんは起きやしない。
それよりも美貴の頭の中は、疑問符だらけなワケで。
「もー、梨華ちゃん、こうなると全然起きないからなあ…」
「あ、あのっ!…ヘンなこと聞いてもいいですか?」
「え?はい」
吉澤さんが、美貴の方を見る。
…えっと…どう見ても女の子だ…
確かに着ている服とか、雰囲気は男の子っぽいけど、
顔立ちは女の子だし、胸もちゃんとあるし…
「女の人ですよね?」
吉澤さんは、困ったように微笑んで、頭をポリポリ掻きはじめた。
「あー、梨華ちゃん、そこまで話してなかったか…
うん、たまに男に間違われるけど、一応女です」
- 36 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:26
- 美貴があ然としていると、
吉澤さんは、梨華ちゃんとの関係を話し始めた。
家が近所でほとんど生まれたときから一緒で、
中学までは学校もずっと一緒だった。
高校に入るとき、はじめて別の学校に行くことになって、
さらに、吉澤さんが引っ越すことになったから、2人は離れ離れに。
それをきっかけに、お互いの気持ちを伝え合って、
現在の関係に至る…ってとこだった。
「オンナ同士とか、軽蔑しますか?」
「い、いや、そんなことはないけど…」
自分の亜弥ちゃんに対する気持ちを考えたら、
軽蔑じゃなくて共感だ。
そもそも、梨華ちゃんの話していたことを思い出すと、
決して『彼氏』とは言ってなかった気がする。
『付き合ってる人がいる』『よっちゃんっていうんだけど』って…
自分の中で、男と決めつけてたけど、
よくよく考えたら、女でも当てはまる話しだった。
「じゃ、梨華ちゃんとも、今まで通り友達でいて下さいね」
「あ、うん、それは、もちろん」
吉澤さんは、話しをしている間中、
ずっと梨華ちゃんの髪をやさしく撫でてあげていた。
- 37 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:27
- 「梨華ちゃん、大学でどんなカンジですか?
男の人からモテるでしょ?」
「あー、うん…サークルでは一番人気あるかも…」
確かに、梨華ちゃんはすごくモテる。
女の先輩が妬んで、イジワルするくらい。
吉澤さんは大きなため息をついた。
「そうだよなあ…あたしがどれだけ心配で不安に思ってるか、
梨華ちゃんは全然わかってないくせにさあ」
そういえば、2人のケンカの原因になった、
女の先輩への『愛してますよ』って発言、納得できた気がする。
吉澤さんは、女の子にモテそうなタイプだ。
だから、周りからもきっとそんな扱いで
『よっちゃん、愛してる〜』とか言われるんじゃないかな。
で『はいはい、愛してますよ』ってくらいは、
社交辞令的に言ってしまうんじゃないだろうか。
ま、梨華ちゃんにとっては、許せない発言かもしれないけど。
「あの、もいっこ聞いてもいい?」
「あ、うん、どうぞ」
「今まで、男の人と付き合ったことってある?」
これは、今の美貴自身の状況からの興味本位の質問。
吉澤さんははにかむように笑って、梨華ちゃんをチラッと見てから、
美貴を見てきた。
「いや、ない。っていうか、今まで梨華ちゃん以外の人、
好きになったことないから。
男とか女とか関係なくて、梨華ちゃんが好きなんだよね」
だから同性愛とも少し違うんだろうね、なんて。
確かにそうなのかもしれない。
「20年くらい一緒にいるけど、他のいろんな人と出会っても、
梨華ちゃんしか考えられないんだよね。
たぶん、これから先も、梨華ちゃん以外は好きにならないと思う。
…なーんて、未来のことはわかんないけど」
- 38 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:27
- そういえば、梨華ちゃんも初恋の人だって言ってた。
梨華ちゃんも、この人以外好きになったことないんだろうな。
「あ、今の話しは梨華ちゃんにはヒミツにしておいてね。
恥ずかしいし、調子のるから、コイツ」
「うん、わかった」
梨華ちゃんのことを見つめる吉澤さんの目は、
愛情に満ち溢れてるカンジがした。
そのあと、少しだけ話しをして、
あとは吉澤さんに任せて、先に帰ることにした。
あー、梨華ちゃん、愛されてるねえ、うらやましいよ。
いつもの話しからすると、梨華ちゃんも相当惚れてるけどね。
何か2人を見てたら、男とか女とかってやっぱり関係ないのかな
なんて思えてきた。
でも、それって、お互いがたまたまそういう気持ちだったからだ。
2人は性別なんて関係なく、ただお互いがお互いだけを求めてる。
2人が出会ったのも結ばれたのも本当に運命なんだろう。
亜弥ちゃんと美貴の関係とは、全然違う気もする。
あっ!!
時計を見ると、もう10時を過ぎてた。
こんな遅くなっちゃったら会いに行けないよ…
そういや、やっぱ、今日も亜弥ちゃんからメール来てないな…
プレゼント受け取ったら、お礼のメールくらいくれると思ったのに。
嫌われちゃったかなあ…
この前のキスは、お別れの意味のキスだったのかな…
空に浮かぶ満月が美貴のことを笑ってるような気がして、
大きくため息をついた。
- 39 名前:サチ 投稿日:2004/02/02(月) 14:29
- 今日はここまでです。
いしよしのお話は番外編でやろうと思ってます。
>>25さん
ありがとうございます。がんばりますので、
これからもよろしくお願いします。
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 16:36
- あやみきのドキドキが直接伝わって来るような感じ。素敵です。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 16:41
- 気になる展開ですね〜
続き楽しみにしてます。
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/03(火) 19:22
- 鈍い…鈍すぎる、みきたん最高!!
キャワイイあやや最高!!
みきたんどうでるか!?
奇麗に要点まとまってて、凄いいいです。
頑張って下さい!!!
- 43 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/04(水) 18:07
- あ〜もどかしい!
二人ともお互いの事が何よりも大事で誰よりも愛しいんだろ?
だったら、だったらさあ・・・
作者さん続きをできるだけ迅速に、かつ慎重にお願い致します。
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/05(木) 19:47
- 続きがきになるー!!!
- 45 名前:まるろくE 投稿日:2004/02/06(金) 22:05
- ああ〜続き気になります!!
もう、どうしよう。 今勉強しても勉強にならないじゃないですか!?!
頑張ってください!
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/07(土) 01:18
- 7回以上読み直しました。
ヤバイ…眠れない…
さ、もいっかい読み直そw
- 47 名前:こう 投稿日:2004/02/08(日) 19:52
- 続き、お、お、お願いします!!!!
- 48 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:51
- ガックリしながら、自分の部屋に入って驚いた。
…亜弥ちゃんがいたから。
どうやらお母さんが部屋で待つように言ってくれたらしい。
今日は遅くなるみたいだけど、わざわざ来てくれたんならって。
亜弥ちゃんはベッドに座ってて、美貴に気付くとにらんできた。
「みきたん、遅いっ!」
「え?ああ、ごめん」
今度はニコッと微笑んで美貴を見つめてきた。
でも、いつもとは何となく違う少しぎこちないカンジ。
そのまま亜弥ちゃんの隣りに座ると、
左手首につけたシルバーのブレスレットが目に入った。
「…あ、つけてくれたんだ、ありがと」
実は、このブレスは美貴とオソロ。
美貴もお気に入りで、してるのを亜弥ちゃんが見て、
『かわいい、欲しい』ってよく言ってた。
だからプレゼントを考えたら、コレが真っ先に浮かんできた。
亜弥ちゃんが、大切そうにそのブレスを触る。
「…こっちこそ、ありがと」
「待たせちゃって、ごめんね。
お礼ならメールでも電話でもよかったのに」
「…だって、みきたんの顔見てお礼言いたかったから」
…まったく、かわいいこと言ってくれるよ。
美貴なんて、顔見るのがこわくて、
ママにプレゼントあずけちゃう意気地なしなのに。
- 49 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:51
- 沈黙になって、なんとなく亜弥ちゃんの横顔を見る。
亜弥ちゃんはうつむいたまま足をブラブラさせてる。
…かわいいなあ…
でも、今日の亜弥ちゃんはかわいいだけじゃなくって、
何かちょっと色気があるっていうか、
女っぽいカンジがする…何でなんだろ?
つい、つややかな唇に目がいってしまう。
リップ塗ったばっかりのかな…
…唇もかわいい…食べちゃいたいくらい…
ん?
…うわわわ、ヤバイ、ヤバイって。
何考えてんだよ…
亜弥ちゃんは、小さく深呼吸をすると、
顔を上げて、美貴の顔を見てニッコリ微笑んだ。
トクン。
心臓が大きく音を立てたのがわかった。
ダメだ…
美貴、亜弥ちゃんに完全に惚れてるかも…
- 50 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:53
- 「おとといはごめんね…あのー、なんていうか…」
「い、いや、謝るのは美貴だよ。
誕生日忘れるなんて、友達としてサイテーだよね」
亜弥ちゃんの目がすっと細まった。
「…そーだよ。ひどいよ、ホントはアタシのこと、
友達と思ってくれてないでしょ」
やっと、いつもの亜弥ちゃんっぽいカンジになってきて、
少し安心したりもする。
「…友達っていうか、妹みたいには思ってるよ」
今度は、亜弥ちゃん、少し頬を膨らませた。
そして、またうつむいて足をブラブーラ。
「…妹かあ…
でも、それって、友達より上って思ってもいいのかな?」
「…うん、ある意味そうかもね」
亜弥ちゃんがニコッとしてくれた。
でもやっぱりなんとなくぎこちない。
「…誕生日忘れてたことは許すし、妹でいいから、
これからも今まで通り、アタシと遊んでくれる?」
「んー、どうかなあ…」
「…えっ?」
亜弥ちゃんがまるで『ガーン』って音がするんじゃないかって、表情をした。
うん、これでこそ亜弥ちゃん。
クルクル変わる表情、かわいくてダイスキだよ。
「だって、亜弥ちゃん、勉強しなくちゃ大学行けないかもしれないんでしょ?
だから、いつも遊んでなんてあげられないよ。
一緒に勉強ならしてあげるけど」
亜弥ちゃんは、目を大きく開いて、美貴の言葉を聞いていた。
そして、何度か復唱してやっと言ったことが理解できたらしく、
満面の笑みになった。
- 51 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:53
- 「みきたん、やっぱりダイスキ!」
勢いよく抱きついてきたから、ベッドに押し倒されて。
でも、今日は亜弥ちゃん、美貴に抱きついたまま、じっとしている。
美貴の鼓動がどんどん激しくなっていく。
うー…これじゃ、亜弥ちゃんにバレちゃうじゃんか…
…もう、バレてもいいや。
このままでいれるのがうれしいから。
美貴は亜弥ちゃんの髪を優しく撫でた。
亜弥ちゃんがうれしそうに、くすぐったそうに笑ったのがわかった。
もうかわいくってガマンできなくって、思わずほっぺにキスをした。
亜弥ちゃんは、顔を赤くしながらも、
美貴のほっぺにチュッって返してくれた。
あー、もう…
何か胸の中が満ち溢れて、いっぱいになって、
苦しいんだけど、気持ちいい…
たぶんこのカンジを「シアワセ」っていうんだろうな…
- 52 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:54
- 次の日、学校で、梨華ちゃんに会うと、超ゴキゲンだった。
昨日、あのあとよっちゃんさんと仲直りできたらしく、感謝してくれた。
ま、こっちも仲直りできたから、美貴も機嫌はよかったりする。
「ね、よっちゃん、かっこよかったでしょ?」
「え?あ、うん。優しいし、いい人そうじゃん」
「そーでしょ、そーでしょ♪」
「…女の子だとは思わなかったけど…」
「あ、言ってなかったっけ?」
どうやら、梨華ちゃんは意識して『女の子』だってことを
言ってなかったワケじゃないらしい…
昨日、よっちゃんさんも言ってた通り、
男とか女とかそういうの考えることなくスキになってたからって。
でも、梨華ちゃんに最初から聞いてたら、少しひいたかもしれない。
今は、自分の気持ちがオンナノコに向いてるから、理解できるけど。
「よっちゃんが、ミキティによろしくって。
迷惑かけたんだから謝っておけって、怒られちゃった」
「そーだね、すごい迷惑だったよ」
「ひどーい!…でも、ホントありがと。
ミキティのおかげで、よっちゃんに会えたし、仲直りできたし」
「はいはい、もうノロケ話はいいから」
ホント、梨華ちゃんたちは幸せなんだろうなあ、
ある意味悔しいくらいに。
でも、美貴だって一応シアワセだ。ちょっと苦しいけど。
人を好きになる、恋をするってことが、
こんなに気分がいいものだなんて思わなかった。
亜弥ちゃんのことを思うだけで、自然と顔が緩んじゃって
すごく楽しい気持ちになれる。
もちろん、本人が隣りにいてくれるときなんかは、
ずっとニヤニヤしてるんじゃないかって思うくらいに。
- 53 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:54
- 仲直りしてからというもの、その前と同じくらいのペースで、
亜弥ちゃんはうちに来てくれたし、
今まで通りのカンジに戻った。
でもちょっとだけ残念なことがある。
やっぱり、誕生日のキスがあって以来、
亜弥ちゃんは唇にはキスをしてくれなくなった。
もちろん、ほっぺとかにはしてくれるし、
美貴からもするんだけど、唇にはない。
美貴の方からしちゃおうかなって思うことも、
しょっちゅうなんだけど、
もし嫌がられたら…って思うとほっぺでガマンしてしまう。
はあ…美貴って、周りからすごく強いように思われてるけど、
ホントはすごく弱虫で子供だ。
とくに恋愛に関しては今まで経験がない分、余計弱気になってると思う。
亜弥ちゃんは、美貴にお姉ちゃん的なものを求めてるんだろうけど、
本当は美貴はそれに応えられるようなタイプじゃない。
亜弥ちゃんを失望させたくなくて、
いつも亜弥ちゃんの前で強がりを言ってる。
大人ぶってる、かっこつけちゃってると思う。
でも、こうしてないと亜弥ちゃんが離れていってしまいそうでこわいから。
- 54 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:55
- その日は夜までバイトがあったけど、亜弥ちゃんが家にやってきた。
亜弥ちゃんの方は、今日が終業式で、明日から夏休みって日だった。
美貴の方が一足先に夏休みになってたし。
「じゃーん!見てみて!」
ベッドに並んで座ってる亜弥ちゃんと美貴。
亜弥ちゃんの手には、通知表が2つ。
「まず、こっち見て」
そのうちの1つを渡された。
表紙を見ると、『2年4組 松浦亜弥』
どうやら、2年のときのものらしい。
開いてみると、1、2、3学期、どの学科も、
4と3がほとんど。たまに5も2あるけど。
「へー、亜弥ちゃん、結構優秀じゃん………えっ?」
びっくりしたのは、音楽、体育が8と9だったこと。
「…これって、もしかして…10段階?」
「そーだよ、アタシ、ホント、勉強キライだからさあ…」
体育も音楽も学科がダメだから、10とれなかったんだよね、って。
美貴も高校時代、そんなに大した成績じゃなかったけど、
ここまでひどくはなかった。
「…亜弥ちゃん、コレはやばいっしょ」
「まーまー、コレは過去のことです。次はこっち見て」
もう1冊の方を渡された。
真新しい『3年2組 松浦亜弥』と書かれたもの。
おそるおそる開いてみた。
「…あれっ?」
驚いたことに、一番悪くて5で、ほとんど5、6、7。
体育は10だし、美貴が一番教えてあげてた英語は8になってる。
「…すごい、すごいじゃん、亜弥ちゃん!」
「にゃはは〜だって、がんばったもん」
「これなら、大学行けるんじゃないの?」
「うんっ!先生もこの成績なら大丈夫だって言ってた」
「よかった、よかった」
胸をはって、えばっているかのような亜弥ちゃんの頭を撫でて、
抱き寄せた。
「…えらいね、よくやったね」
耳元で囁いてあげたら、亜弥ちゃんはくすぐったそうに笑った。
- 55 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:55
- 「あ!で、みきたんとの約束!
どうしようかなって考えたんだけどー」
「へ?約束?」
亜弥ちゃんが、美貴から体を離すと、上目遣いににらんできた。
「…もしかして、覚えてないの?」
はっきり言って何の話かさっぱりわからない。
美貴は何を約束しちゃったんだろう?
「…ごめん…」
亜弥ちゃんは、プーッと頬を膨らました。
「もー、みきたん、何でそんなにすぐ忘れるの!」
「忘れるっていうか、覚えてないだけだよ」
苦し紛れの言い訳だけど。
「いいもん。アタシが覚えてるから、
ちゃんと約束果たしてもらいますぅ」
ほっぺをちょっとだけひっぱられた。
いたたた…でもちょっとうれしい…やばい、美貴ってMかな。
「…で、美貴と何の約束したの?」
「1学期の成績が上がったら、
夏休みにどこでも好きなとこ連れていってあげるって」
えっ?
美貴、そんなこと…
…たぶん、誕生日の話と同じで会ってすぐくらいのことに違いない。
勉強を面倒臭がる亜弥ちゃんに、
そんな言葉をかけて、少しでもヤル気になってもらおうとしたんじゃないかな…
でも、今になってみれば、ラッキーな約束をしてたんだなあ。
ホントは亜弥ちゃんとどっか遊びに行きたいって思ってたけど、
やっぱり勉強はした方がいいんだろうし、
同級生とかと遊んだ方が楽しいんじゃないかなって、
どうも誘えなかったから。
そういや、一緒に外出かけたのって、銭湯に行ったときだけだ。
「やっぱ、遊園地かなー。
ジェットコースターとかすっごく乗りたい!」
「…あ、美貴、ジェットコースターとか苦手…」
亜弥ちゃんがキョトンとする。
だって、ホントにダメなんだもん、絶叫マシン系。
とくに垂直に落ちるようなヤツはありえない。
何であんなのが楽しいんだろう?
「みきたん、ダメなの〜?」
「美貴、乗らないで待ってるから、亜弥ちゃん一人で行って来なよ」
「そんなの、つまんなーい!みきたんが一緒じゃなきゃイヤだもん。
じゃ、じゃあね…夏だから、海!!どう?」
ということで、亜弥ちゃんとの初デートは、海に行くことになった。
- 56 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 00:59
- 行きの電車でも、亜弥ちゃんは超はしゃいでで。
美貴だって、すっごく楽しみで、実は昨日、
まるで遠足前日みたいに、なかなか眠れなかった。
そのせいか、電車の中ですごく睡魔が襲ってきて、
寝ようとしたら、亜弥ちゃんにペシペシひっぱたかれた。
「こらー!寝るなー!!」
「…ちょっとくらいいいじゃん」
「だめー。今日はアタシのお祝いなんだから、
みきたんが盛り上げてくれないと」
「はあ!?…お願い、ちょっとでいいから、10分、5分…」
美貴はそのまま、隣りの亜弥ちゃんの肩に頭をのせた。
亜弥ちゃんはピクッってしたけど、
そのまま静かにしてくれてた。
でも、キッカリ10分後に起こされて、
延々学校、友達、家族のこととかいろんな話を聞かされてたワケだけど。
美貴が盛り上げなくても、自分で盛り上がってんじゃん。
ま、いつもと変わらない亜弥ちゃんで、うれしかったりする。
- 57 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:00
- しっかし、亜弥ちゃんの水着姿はかわいいっ!
一緒に銭湯入ったくらいだから、裸は見たけど、
あんときはそういう目で見てなかったし、
残念ながらあんまり覚えてないんだよね…
それにしても、ビキニ、超似合ってる。
美貴もビキニを着てるんだけど、やっぱり亜弥ちゃんにはかなわない。
この子はお人形さんみたいで、何着てもかわいいんだもん。
「はいっ、背中やってね」
美貴に日焼け止めクリームを当然のように渡してくる亜弥ちゃん。
ちょっと緊張したけど、意識しないように、すばやく塗ってあげた。
ビキニのヒモをずらしたときに亜弥ちゃんがビクッってなったから、
美貴の方までビクッってしちゃったけど。
もちろん、何も言わなくても、亜弥ちゃんも美貴の背中に塗ってくれた。
亜弥ちゃんは、すごく丁寧にキチンと塗ってくれてるから、
美貴の方がヘンに意識してしまった。
「…何か、亜弥ちゃんの塗り方、いやらしいよ」
「あー、そういうこと言うんだー。外すよ?」
亜弥ちゃんの手がビキニのブラのホックの部分をつかんだ。
「やめてよー!ホントにいやらしいじゃん」
慌てて、亜弥ちゃんの方に向き直る。
「にゃはは〜冗談に決まってるじゃん。みきたん、かわいー!」
笑顔で、美貴に抱きついてくる亜弥ちゃん。
アンタの方が、ずっとずっとかわいいってーの。
- 58 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:03
- それにしても、亜弥ちゃんと一緒のせいかナンパの数もハンパなかった。
砂浜でいると、10分おきくらいに声をかけられた。
美貴はただ無視してようと全然相手を見ないようにしてたのに、
亜弥ちゃんは、相手にニッコリ微笑んで、
「ごめんね〜アタシたち付き合ってるから」
って言って、美貴の腕とった。
…何を言い出すんだ、この子は!
美貴は驚いて、何も言えなかったけど、
その言葉に男たちは、あっさりひいてくれた。
「へー、こんなウソでも効果あるんだねえ」
うまいナンパのかわし方に感心して、
亜弥ちゃんを見ると、ムスッとして、
まだ空気の入ってない浮き輪を投げつけられた。
「もーっ、みきたんのバカ!ソレ、膨らましてよねっ!」
「え?何で美貴が…」
何でバカって言われるのかも、浮き輪投げつけられるのかもわかんない。
ま、空気入れるくらいなら、いくらでもやってあげるけど。
しかも、その浮き輪は、亜弥ちゃんがハワイに行ったときに買ったもので異常に大きい。
浮き輪の穴に2人入れそうなくらい。
しばらく膨らましてたんだけど、いい加減疲れてきた。
「亜弥ちゃーん、これくらいでいいでしょー?」
「だめー!もっとパンパンにしてくれなきゃ」
「えー、もう、美貴できないよー。亜弥ちゃん、やってよー」
浮き輪を亜弥ちゃんに渡した。
『みきたんがやるんでしょっ!』って怒られるかと思ったのに、
亜弥ちゃんは、浮き輪をじっと見てから、ゆっくり膨らまし始めた。
何だよ、ヤル気あるんじゃん。
最初から、自分でやってくれてもいいのにぃ。
- 59 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:04
- 膨らんだ浮き輪に入って亜弥ちゃんは、バシャバシャ泳いでいく。
美貴は浮き輪とか持って来なかったから、
亜弥ちゃんの浮き輪をつかんでくっついてってて、
気付いたらかなり沖の方まで来ていた。
周りに人も全然いない。
「うわっ!ココ、足、全然つかないよ〜」
浮き輪から手を離して足を伸ばしてびっくりした。
「ん〜?じゃ、みきたんも一緒に入る?」
亜弥ちゃんが、スッと浮き輪を上げて、
美貴に抱きついてきた。
浮き輪はやっぱり2人入っても平気だった。
…ただ、美貴の方が平気じゃない。
かなり体が密着してる…しかも、ビキニだからほとんど裸だし…
亜弥ちゃんの手が美貴の背中を撫でる度に、
ヘンな気分でくすぐったくなる。
…あー、もう!!
マジでヘンな気分になっちゃうじゃんか…
気を紛らわすために、亜弥ちゃんを驚かそうと、
浮き輪を沈めてみた。
「うわっ!ちょ、ちょっと、やめてよ〜」
「あははは」
マジで焦って、美貴に余計にしがみついてくる亜弥ちゃん。
なんだよ、逆効果じゃん…
それにしても、亜弥ちゃん、まぶしいよ。
美貴にとっては、夏の太陽なんかより、
ずっとずっと亜弥ちゃんがまぶしい。
きゃーきゃー言いながらも、楽しそうに笑ってる亜弥ちゃん。
今まで、美貴の周りにこんな子はいなかった。
こんなに魅力的な子は。
ほとんど無意識に、亜弥ちゃんの唇に美貴の唇を寄せていた。
でも、ほんの一瞬だけ。
いつものじゃれあいのキスと一緒。
それなのに、亜弥ちゃんはピタッと動きを止めて、しばらく固まってた。
美貴だって照れ臭くって、なんか言葉が出てこなかった。
- 60 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:04
- そしたら、いきなり亜弥ちゃんが下に潜って、浮き輪を出ると、
バシャバシャ泳いで、10メートルくらい離れたこところで止まって、
美貴のことを見つめてきた。
「みきたーん!!だーいすきっ!!」
すっごい大きな声で叫んだもんだから、
結構離れたところにいたカップルが不思議そうに、こっちの方を見てる。
亜弥ちゃんは、まるで魚のようにその辺で意味もなくぐるぐる回って泳いでた。
「ちょ、ちょっと…」
普通に恥ずかしくなったから、美貴も慌てて亜弥ちゃんに近づいた。
亜弥ちゃんはニコニコとして、また一緒に浮き輪に入ると、
ギュッと抱きついてきた。
そして、美貴の顔をじっと見ると、今度は亜弥ちゃんの方から、
チュッっと一瞬美貴の下唇を吸った。
くぅぅ…かわいい…
もー、どうしてくれようかこの子を…
でも、やっぱり美貴はどうも恥ずかしくって、
「…しょっぱい」
なんてつぶやいてしまった。
亜弥ちゃんはほっぺを膨らまして、
「もー、みきたんは、どーしてそーゆーことばっかり言うの?」
「…だって、ホントのことだもん」
つい憎まれ口を叩くけど、
ただ単に照れてるだけなんだよ、亜弥ちゃん。
好きすぎてどうしようもなくって、
何でもないフリしてるだけなんだよ。
そんな怒んないでよ。
でも、亜弥ちゃんの怒った顔も好きなんだけどね。
- 61 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:04
- その後、夏休み中は、亜弥ちゃんとあんまり会えなかった。
毎年お盆は、お母さんが仕事が休みだから、
お母さんの実家がある北海道に行っている。
もちろん今年も行ってきた。
亜弥ちゃんへのお土産は、白い恋人と鮭トバと、
まりもがいっぱいついたおサイフ。
何かかわいかったから、コレは美貴もお揃いで買ったんだけどね。
亜弥ちゃんの方も、パパが夏休みを少しずらして取って、
毎年家族で旅行に行ってるらしい。
だいたいハワイらしく、今年もハワイ。
そんなワケで、亜弥ちゃんと全く会えない日が2週間以上…
亜弥ちゃんが帰ってきた日、美貴はバイトだった。
で、帰ってきて部屋のドアを開けた途端に、
勢いよく亜弥ちゃんに飛びつかれた。
「うわっ!」
「みきたーんっ!会いたかったあ」
ギュッって抱きついて、ほっぺに何度もチュッチュッしてくる。
あー!もー!
かわいすぎだっての!
美貴だって、めちゃくちゃ会いたかったって。
いっつも亜弥ちゃんのことばっか考えてたんだから。
亜弥ちゃんの髪を撫でてあげたら、
亜弥ちゃんも美貴の髪を撫でてきた。
「…みきたん、今日、泊まっていい?」
「え?あ、ああ、いいよ」
「わーい!」
そのまま、ベッドに押し倒されるように、なだれこんだ。
「うわわ…」
「みきたんと一緒♪みきたんと一緒♪」
その日は、朝が来るまで、ベッドの中で抱き合ったままで、
ずっと話をしてた。
美貴の北海道話、亜弥ちゃんのハワイ話。
別に、話の内容なんて本当はどうでもいい。
亜弥ちゃんが側にいてくれればそれだけでいい。
- 62 名前:サチ 投稿日:2004/02/10(火) 01:05
- 今日はここまでです。
少し間をあけてしまって、すみませんでした。
たくさんのレス本当にありがとうございます。
とても励みになります。
>>40さん
みきたんと亜弥ちゃんがドキドキしてるときに、
読んでる人にもドキドキしてもらえてうれしいです。
>>41さん
ありがとうございます。
もっと楽しんでもらえるようにがんばります。
>>42さん
みきたんは何気に自分のこととなると鈍いんじゃないかなと思いまして(笑)
あややはホントにかわいいですよねえ(笑)
お誉めの言葉、ありがとうございます。
>>43さん
確かに2人とも…
できるだけ迅速に慎重にしたいと思ってはおりますが、
ご期待に添えなかったら、申し訳ありません。
>>44さん
気にしていただいてありがとうございます(笑)
>>45さん
すみませんです、勉強ははかどりましたか?
ありがとうございます、がんばります。
>>46さん
ありがとうございます。
7回…あ、8回ですかね?
眠れましたか?(笑)
>>47さん
遅くなりまして、すみませんでした。
今回からage進行でいかせてもらいます。
まだまだ下手ですが、これからもどうぞよろしくお願いします
- 63 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 23:06
- かわいいなぁ。癒されるなぁ。
- 64 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 23:36
- この小説は今の自分の動力源です。
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 23:54
- やばい…秀逸です。
塩水をミルクセーキに変える勢いの
甘い二人に期待大
- 66 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:32
- 亜弥ちゃんと今まで通り仲良く過ごして、
ホント今まで通りだから、ソレ以上にも以下にもなってないんだけど、
10月も終わりになろうとしていた。
で、亜弥ちゃんの高校の学園祭があるからって、
美貴も誘われて、なぜか亜弥ちゃんのパパママ妹の琴ちゃんと4人で行くことになった。
琴ちゃんは、亜弥ちゃんとよく似てるし、もちろんかわいい。
でも、美貴はもちろん、亜弥ちゃん派。
亜弥ちゃんのクラスは『コスプレ喫茶』をやるらしい。
何だか怪しげだけど、ただ単に店員がコスプレしてて、
お客も希望があれば、用意してる衣装類に着替えられるっていうもの。
学園内をぐるっと回ってから、亜弥ちゃんのクラスに行く。
すごく人気があるらしく、他のところではないほど行列ができてて、
しかも行列以外にも男子生徒何人かが、教室のドアの隙間からのぞきこんでる。
「うわー、超かわいくねえ?」
「やばい、かわいすぎ」
「あ、こっち見た!」
「あ、あやちゃーん!」
その男子生徒たちが、教室の中に向かって手を振っている。
それに反応してもらえたのか、彼らははしゃいでる。
…今、『あやちゃん』って言ったよね?
もしかして、美貴の『亜弥ちゃん』のこと?
- 67 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:33
- 教室のドアの前にいるクラスの子に声をかけ、
中に優先的にいれてもらう。
亜弥ちゃんに事前に行く時間を言っておいたから、
席は予約してあった。
「あー、待ってたよー!」
浴衣姿の亜弥ちゃんが笑顔で手を振って近づいてきた。
…すっごい、かわいいんだけど…
「どう?似合う?」
美貴たちの前でくるりと回って、
亜弥ちゃんパパもママも大喜びでデジカメを撮ってる。
もちろん、美貴も心の中では大喜び。
照れ臭いから、「うん、似合うよ」って一言言っただけで、
素っ気無いフリしながらも、携帯で撮影はしてみたりして。
んー、待ち受け画面にしてもいいくらいかも…
教室の端の方の席に座って、お茶を飲む。
ちなみにさっきの男子連中のお目当ては、
やっぱり亜弥ちゃんらしく、ドアに張り付いてずっとこっちを見てる。
なんかムカツクなあ…
コスプレというだけあって、
動物の着ぐるみもあれば、浴衣もあり、職業ものの制服もあり、
ここの制服―男子は学ラン、女子はセーラー服―もある。
ちなみに亜弥ちゃん以外には、ナース姿、スーツ姿の女の子、
水着姿の男子とかがいた。
- 68 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:33
- 「あ、琴もみきたんも何か着てみない?ウチの制服とかどう?」
亜弥ちゃんが、教室の隅のハンガーに下がってる衣装を指差して言った。
「あ、着てみたい!」
琴ちゃんがうれしそうに言った。
「美貴はいいよ、今更制服なんて」
「えー、みきたん着てよー」
「恥ずかしいって、もう大学生なんだから」
「じゃ、じゃあ、学ラン着てみて!
ほら、大学生の男の人で、学ラン着てる人いるじゃん」
「は?美貴、女なんだけど…」
結局、亜弥ちゃんに押し切られて、
なぜか教室の隅のカーテンで仕切られた場所で、
学ランを着ちゃってる美貴。
うん、琴ちゃんのセーラー服はよく似合ってるよ。
着替え終わって2人で、カーテンを開けて外に出る。
琴ちゃんは、亜弥ちゃんと双子みたーい、かわいーって、
周りのみんなも大はしゃぎ。
美貴の方は、亜弥ちゃんが黙ったままじっと見てるだけ。
「ちょっと、何か言ってよ!恥ずかしいんだから」
「…みきたん、かっこいい…」
「は?」
「ううん、かわいい!かっこかわいい!!」
亜弥ちゃんにギュッと抱きつかれた。
「あ、あはは…」
琴ちゃんに頼んでデジカメ&携帯で、
美貴とのツーショット写真を撮らせる亜弥ちゃん。
あとで、ソレ、送ってもらおう…
亜弥ちゃんのクラスメートにも、
「あー、こういう男子、いるかも!
っていうかいて欲しいけど、いないタイプ?」
ってよくわかんないこと言われた。
ま、美貴も男の子っぽいとかたまに言われるからなあ。
自分ではオヤジが入ってることは自覚してんだけど。
- 69 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:34
- このコスプレ喫茶は大人気だから、1組につき30分までの時間制限があって、
美貴たちも30分で出なくちゃいけなかった。
出てすぐに、近くのトイレに行った。
洗面台の前で、ココの学校の制服の子が3人、鏡に向かいながら話をしてた。
「ねー、松浦先輩、見た?」
「見た見た!超かわいかったよねー、浴衣!」
「昨日の特攻服もかわいかったけどねー」
…亜弥ちゃん、男女問わず学校のアイドルなんだね。
うれしいような、なんだか複雑なカンジ…
歩いていると廊下に、箱が置いてあって、
その前に何枚か写真が貼った紙がある。
ミス・ミスターコンテストの投票用らしい。
事前に学内の投票で男子・女子ともに上位10人に絞り、
そこから学祭に来た一般の人にも選んでもらい、
最終的なグランプリを決めるとか。
もしかして亜弥ちゃんも出てるかなと思ったら、
亜弥ちゃんの写真はなかった。
何か残念でもあり、安心でもあったりして。
隣りにいた琴ちゃんが、その紙に貼られた写真をじっくり見ている。
「んー、お姉ちゃんが今年も出れてたらグランプリとれそうなのに」
「えっ?」
去年、亜弥ちゃんはグランプリ―つまり学園のミスに選ばれた。
で、一度グランプリに選ばれた人は選考対象から外されるらしい。
あははは…
やっぱり亜弥ちゃん、みんなの人気者なんじゃんか…
そりゃ、あれだけかわいくていい子だったら、
みんなから好かれて当然だよね…
- 70 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:34
- 家に帰って、ゴハンを食べて、お風呂に入って、
ベッドに寝っころがりながら、テレビを見てた。
友達からメールが届いて、携帯をいじってて、
ふと今日撮った亜弥ちゃんの浴衣姿を見る。
超かわいい。まるでアイドル歌手だ。
前に一緒に撮った画像も見てて、かわいいと思うのはもちろんだけど、
何だか切なくなってきた。
ちっくしょー、亜弥ちゃん、何でそんなにモテるんだよ。
大きくため息をついたところに、携帯が鳴った。
亜弥ちゃんだ。
学園祭も無事終わり、打ち上げも済んで、今家についたらしい。
「あとでみきたんとこ、行っていい?」
「え?あ、うん」
- 71 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:35
- 亜弥ちゃんはウチにやってきて、
いつものように会うなり抱きついてくる。
「みきたーん、今日は来てくれてありがとね」
ほっぺにチュッってしてくる。
「ね、ね、アタシの浴衣姿、かわいかったでしょ?」
「あ、うん」
亜弥ちゃんはニコニコしながら、美貴の顔をのぞいてくる。
ああ、いつもかわいいですよ、亜弥ちゃんは。
「ドキドキした?ムラムラした?」
「…は?何ソレ?」
「しなかったの?」
…はい、実はちょっとしたかも…
「…何で美貴がするワケ?
あ、ほら、何か男子がいっぱい亜弥ちゃん見に来てたじゃん。
ああいう子たちはムラムラしただろうけど」
「…そんなの、どうでもいいもん」
「あ、亜弥ちゃん、女の子からも人気あるんだね。
『松浦先輩かわいー!』って言ってたよ。
それに去年はミスコンでグランプリだったんでしょ?」
「…ま、一応ね」
「亜弥ちゃんは、モテモテなんだから、
きっといろんな人がドキドキとかムラムラしてんじゃないの?
別に美貴がする必要もないしー」
亜弥ちゃんは不思議そうに、美貴の顔を覗き込んできた。
- 72 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:35
- 「…ね、もしかして、みきたん、ヤキモチやいてる?」
「…は?」
「アタシがモテモテだから、ジェラシー感じちゃった?」
「…んなワケなんじゃんか」
亜弥ちゃんから顔をそらしたけど、美貴の顔は赤くなってると思う。
…図星なんだもん、ストレートすぎるじゃん。
自分の好きな人が他の人から好きだとか言われたら、
誰だってジェラシー感じるでしょ。
「にゃははは〜みきたん、かわいい。
そっか、そっか、みきたんも、アタシのこと好きだもんね。
そりゃ、面白くないよね」
「だーかーら、そんなことないって!」
いくらそう言っても真っ赤な顔では説得力がないみたい。
亜弥ちゃんは、ニコニコしながら美貴の顔を見てる。
「大丈夫だよ、アタシはみきたんだけだから」
………なんで、そういうこと言うかなあ…
美貴の心臓はその一言だけで、壊れそうなほど激しく動き出した。
どういう意味なんだよ?
そういう意味って思っていいの?
…もう、よくわかんないよ。
でも、そんなこと聞けやしないじゃん。
もし美貴のカン違いだったら、これから会いづらいし。
- 73 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:36
- 11月の最初には美貴の大学の学園祭があった。
ウチのサークルはタコ焼きをやる。
何でも、昔、経費でタコ焼き機を買ってしまったため、
それから毎年タコ焼きをやらざるを得なくなったとか。
準備も買出しだけで楽だし、
そのタコ焼き機を買ったときに関西出身の人がいて、
レシピも代々引き継がれてて、結構おいしいと評判なのだ。
実際は焼くだけでなく、主に店の前で呼び込みとか、
歩いて宣伝とかもさせられてたし、配達したりもあった。
ちょうど店の前で梨華ちゃんと一緒に呼び込みをしてるときに、
学校帰りで制服の亜弥ちゃんが友達と一緒に来てくれた。
「あー!亜弥ちゃん!」
美貴が亜弥ちゃんのそばに寄ると、サークルの男の人も何人かこっちを見た。
「なになに?藤本の妹?」
「ううん、同じマンションの子」
「へー、ちょっと紹介してよー。
女子高生とオトモダチになりたい」
「ばっかじゃないのー」
なんてやりとりをしてたら、
梨華ちゃんがタコ焼きを2つもってきてくれた。
「はい、コレ、サービス。
かわいい子には特別だからって」
そのとき、タコ焼きを焼いてた4年の男の先輩が笑顔で、
亜弥ちゃんに手を振ってた。
「まったくー、先輩、美貴がつまみ食いしただけで怒ったくせにー」
「あったりまえだろー。お前は働け!
ほらちゃんと呼び込みしろよー。
藤本と石川が呼び込みすると売り上げ上がるんだから」
「ちょっとくらいいいじゃーん。
ほら、せっかく知り合い来たんだし、
藤本、休憩しまーす」
「あ、コラッ!」
- 74 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:36
- 美貴は亜弥ちゃんの腕をとって、学食の方に向かった
空いてる席に座り、ジュースを3人分買ってくる。
「ハイ、コレは美貴からのおごり」
「…ありがとう」
「あ、タコ焼き、あったかいうちに食べなよ。
結構おいしいんだよー」
「…うん」
何か亜弥ちゃんは元気がなかったけど、
タコ焼きをふうふうしながら食べると、笑顔になった。
「うん、おいしい!」
「でしょ、でしょ?」
「はい、みきたんにもあげる」
亜弥ちゃんは、楊枝に差したタコ焼きを美貴の口元に持ってきた。
パクッと食べると、亜弥ちゃんの友達が「…あ」って声をあげた。
美貴が不思議そうにその子を見ると、
首を横に振ってうつむいた。
そのあと、大学の話やサークルの話をしてたら、
美貴の携帯が鳴った。
先輩からの呼び出し電話。
梨華ちゃんのところに、キレイなボーイッシュな女の子がやってきて、
そのまま梨華ちゃんは消えてしまったのだとか。
ははーん、よっちゃんさんだな。
しょうがないなあ。
亜弥ちゃんたちとそこで別れて、タコ焼き屋に戻った。
- 75 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:37
- その次の日で、ウチの学園祭は終わり、
夜はオールで打ち上げ。
1軒目の途中。美貴が1人でトイレに行ったら、
トイレの前で4年生の男の先輩が待っていた。
亜弥ちゃんにタコ焼きをごちそうしてくれた先輩だ。
「ちょっと話あるんだけどいいか?」
そのまま、店の外に出た。
まだ2人ともそんなにお酒も入ってないから、
酔っ払ってもいない。
普通に少し話してて、先輩は今度卒業だから、
今年で学祭は最後なんだよなあってしみじみ語ってた。
いつもはチャラけてるカンジなのに、すごくヘンなカンジだった。
「…藤本のこと、好きなんだ。
卒業してからも、2人で会いたい」
こんな風に呼び出された時点で、
なんとなく予感はしてたんだけど、やっぱりコクられた。
「…すみません…好きな人がいるんです」
もちろん、美貴の頭に浮かんでるのは、
同じマンションに住む2つ年下の女子高生。
「そっかあ、そうだよなあ、
藤本みたいなヤツに彼氏がいない方がおかしいもんなあ」
なんて、先輩は笑いながら言ってくれたけど、
少し無理してるのがわかった。
今までは別にコクられた人に断りを入れるのは、
全然どうってことなかった。
でも、何だかすごくすごく切なくなってきた。
…もし、美貴が亜弥ちゃんにコクって断られたら…?
そう思うと、先輩を自分に重ねてしまい、
悲しくさえなってくる。
- 76 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:37
- その日オール明けで、梨華ちゃんはウチに寄った。
よっちゃんさんとデートなんだけど、
自分の家に帰ると時間的に余裕がないから、
美貴の家でシャワーを浴びて、ちょっとだけ眠らせてってことだった。
ベッドに並んで入ると、梨華ちゃんは真面目な顔をして聞いてきた。
「…ね、ミキティの好きな人って誰?」
「は!?」
「ごめん、昨日、話聞いちゃって…」
打ち上げの1軒目は地下で電波が悪くて、
梨華ちゃんは店の外で電話をしてたらしい。
もちろん、相手はよっちゃんさん。
そしたら、美貴と先輩が出てきて、梨華ちゃんに気付かずに、
店から少し離れたところで話をしてたと。
電話が終わったので、美貴たちの方にこっそり近づいていって
驚かせようとしたら、ちょうど告白してるところで、梨華ちゃんがびっくり。
で、美貴の発言も聞いてしまったと。
「い、いや、梨華ちゃんの知らない人だしー」
あ、学祭に来たから知ってるか…
「じゃ、どんな人?高校んときの人とか?」
…まいったなあ…
適当にごまかしたら、『私のことはいろいろ話してるのに!』
とか怒り出しそうだし。
そんなのウソだって言っても、梨華ちゃんは何気に鋭いから、
見抜かれそうだしなあ…
「いや、違うんだけど…」
「じゃ、どこで知り合ったの?年上?年下?」
あー、もうっ!
女の子と付き合ってる梨華ちゃんならわかってくれるだろう。
このフツーじゃありえない恋心を。
美貴は観念して、梨華ちゃんに全て打ち明けた。
- 77 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:38
- 「ふーん、あの子、かわいいもんねー。
…で、ミキティは今のままでいいの?」
「そりゃ、できれば、その、梨華ちゃんとよっちゃんさんみたいに
恋人としてお付き合いしたいけど」
「いいじゃん、その気持ち、正直にコクったら」
「無理だよっ!断られたら、会うこともできないじゃん」
「そーかな?話聞いてる限りでは、
亜弥ちゃんだっけ?絶対ミキティに気があると思うけど」
「でもさあ…どういう意味での好意かわかんないんだよ。
お姉ちゃんとか先輩みたいな意味かもしれないし」
梨華ちゃんはちょっと考えて、
「ね、今月末にね、よっちゃんと旅行に行くんだ。
で、泊まるとこが、貸し別荘なんだけど、
部屋もいくつかあるところなのね。
もしよかったら、亜弥ちゃんも誘って4人で行かない?」
「えっ!?」
もちろん、寝る部屋は別にするし、
よっちゃんさんが車で連れて行ってくれるからって。
「でもせっかくの2人っきりの旅行なのに」
「いーのいーの。私たちは今までも2人で旅行してるし。
何か仲人みたいで面白いもん。
よっちゃんもそう思ってくれるよ。
この旅行で2人の距離をもっと縮めてあげるから」
「でもさあ…」
「あ、それに4人の方が宿泊費も安く済むしね」
梨華ちゃんがそう言ってくれて安心はしたけど、
緊張もしてきた。
- 78 名前:サチ 投稿日:2004/02/18(水) 00:42
- 今日はここまでです。
更新遅くなってすみません。
>>63さん
ありがとうございます。
かわいいミキティとあややが好きなんです(笑)
>>64さん
ありがとうございます。
こういう感想こそ、私の動力源ですよ(笑)
>>65さん
ありがとうございます。
ミルクセーキの甘々目指します(笑)
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 11:56
- 気になる展開だ…。
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 17:17
- うわー!!すごい展開に!!
ミキティ頑張れ!!
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 21:02
- うぉーーーーきたきたきたきたきた!
なんてムフフな展開
次回が待ち切れましぇーん
- 82 名前:ひらの 投稿日:2004/02/18(水) 21:16
- はじめまして!
いしよしが好物なのですが、あやみきも良いですね〜
次回の更新楽しみに待ってます。
- 83 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:41
- そして、旅行当日。
よっちゃんさんが、ウチのマンションの前まで迎えに来てくれる
ということになってる。
来てくれる予定の時間の10分前に、亜弥ちゃんが美貴のところに
やってきた。
「みきたん、おはよー」
ギュッと抱きついてくる亜弥ちゃん。
「うん、おはよ」
今日も明日も亜弥ちゃんと一緒にいられる。
それだけでもうれしいのに、
今以上の関係になんてなれるんだろうか?
梨華ちゃんからは、少なくともこの旅行中は、
いつもより積極的になりなよって言われた。
積極的ってさぁ…どうすりゃいいんだよ…
梨華ちゃんから電話がかかってきて、マンションの前に行くと、
黒い4WDが止まっていた。
梨華ちゃんが、助手席から降りてくる。
「ミキティ〜おはよー!」
「おはよー」
よっちゃんさんも降りてきて、手を上げる。
亜弥ちゃんが2人に向かって、ペコリと頭を下げる。
「松浦亜弥です。よろしくお願いします」
「はい、石川梨華です。あと、あっちはよっちゃん、吉澤ひとみ。
よろしくね」
よっちゃんさんはニコッと笑うと、美貴と亜弥ちゃんの荷物を、
車の後ろに積んでくれた。
- 84 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:41
- 美貴と亜弥ちゃんがもちろん、後ろの席に座ったんだけど、
前の2人は本当にラブラブで、何だかむずがゆくなってくる。
「ガム食べる?」
「うん」
「はい、あーん」
よっちゃんさんの口にガムを入れる梨華ちゃん。
よっちゃんさんが面白いことを言う度に、
梨華ちゃんはよっちゃんさんの腕や腿の辺りを触る。
しかも何か触り方がいやらしい。
さすがにそんな状態だから、亜弥ちゃんも察しがついたようで、
小声で美貴に聞いてきた。
「…石川さんと吉澤さんって…そのー…どういう関係?」
その声が梨華ちゃんに聞こえてたようで、
「あれ?ミキティ、私たちのこと何て説明したの?」
「いや、『幼馴染』って…」
そう、梨華ちゃんは美貴の大学の友達、
その幼馴染のよっちゃんさんとしか説明できなかった。
もし、2人の関係を説明して、
亜弥ちゃんがイヤな顔とかしたら、
それだけで、美貴の失恋は決定的になる。
そもそも、そういう関係の2人と一緒に旅行行こうなんて、
何だかダブルデートに誘ってるみたいじゃんか。
いや、実際はそのつもりなんだけど。
- 85 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:41
- 「もー、しょーがないなあ。
私とよっちゃんはね、恋人同士なの。
確かに幼馴染だけど、恋人になってからは4年半くらい」
梨華ちゃんは、この前、よっちゃんさんが美貴にしてくれたように、
小さい頃からの2人の関係を話しはじめた。
亜弥ちゃんは、目を大きく開いて梨華ちゃんの言葉を聞いてた。
「…すごーい!素敵です…初恋の人がずっと好きだなんて…
しかもお互いにそうなんて、ホントすごい!」
亜弥ちゃんの驚きポイントは女同士ってとこじゃなかった。
うっとりとして、梨華ちゃんとよっちゃんさんを見てる。
「ね、みきたんの初恋っていつ?」
「へ?…小3のときかなあ…あんまり覚えてないけど…」
確か小3のときに、同じクラスの男の子を
なんとなくかっこいいなあなんて思ってた。
それ以降もかっこいいとか思う人は何人かいたけど、
付き合ったこともなければ、
バレンタインに本気のチョコをあげたこともないし、
『好き』まではいってないんじゃないかな。
そう考えると、はっきりこの人のこと好きだって言い切れるのは、
亜弥ちゃんが初めてなのかも。
ふぅ…19歳にして初恋かよ、しかも女の子に。
- 86 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:42
- 「あ、亜弥ちゃんはどうなの?初恋はいつ?」
「んー、幼稚園のときに、同じクラスの子と結婚しようとか
言ってたことあるみたい」
梨華ちゃんとよっちゃんさんが笑い出した。
「でも、アタシは全然覚えてないしー。
初恋なんだかよくわかんない。
うーん、そう考えると、初恋はみきたんかな?」
美貴は思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
梨華ちゃんが笑いながら、ティッシュを渡してくれて、
慌てて口元や周りを拭いた。
「…な、なに、ソレ?」
「だってー、みきたんのことすごく好きだもん」
前の席では、梨華ちゃんとよっちゃんさんが大笑い。
梨華ちゃんは、美貴の亜弥ちゃんに対する気持ちを、
よっちゃんさんに説明してあるらしい。
「うふふふ、じゃ、ミキティ、亜弥ちゃんの気持ちに応えてあげないと」
梨華ちゃんがうれしそうに、こっちの方を見た。
「応えるって…」
亜弥ちゃんが抱きついてきて、ほっぺにキスをしてきた。
「うわっ、コラッ!」
「いーじゃん、いつもやってるんだしぃ」
「へー、いつもチューとかしてんだ?ミキティやるなあ」
よっちゃんさんまでニヤニヤしながら、バックミラー越しにこっちを見てる。
亜弥ちゃんは、美貴の腕にしっかりとしがみついて、
肩に頭を乗せてきて。
はあ…まったく、この子は何を言い出すんだよ…
ホンキなんだか冗談なんだか全然わかんない。
汗が噴き出してきて、慌ててトレーナーの袖で拭いた。
- 87 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:42
- それから、車で観光地っぽいとこを回って、
泊まるところの近くにテニスコートがあったので、4人でテニスをした。
梨華ちゃんも亜弥ちゃんも中学時代テニス部だったらしく、
2人はとくにうまい。
ま、一応、美貴もテニスサークルだし、それなりにはできる。
よっちゃんさんはテニス初心者って言ってるわりには、
やっぱり元々の運動神経がいいのか、うまかった。
ダブルスでやったときには、接戦で、亜弥ちゃんと美貴のチームが勝てた。
負けず嫌いの梨華ちゃんは「もう1回!」なんて、
きっと勝てるまでやる気だ。
でも、コートのレンタル時間があったから、
こっちの勝利ってことで収まったんだけど。
「じゃ、夜はウノで勝負ね!負けないからっ」
って、梨華ちゃんも本当に子供みたいだ。
「はいはい、どーせ負けるんだから、あんまりムキになるなって」
よっちゃんさんは、梨華ちゃんの頭をポンポン。
「そんなことないもん!今の試合だってさあ、
あのボール、絶対インしてたと思うもん!」
「はいはい、行くよ」
結局、夜のウノ大会でも、梨華ちゃんの1人負け。
実は、亜弥ちゃんも美貴も負けず嫌いだから負けるワケにはいかないもん。
よっちゃんさんは面白がって、梨華ちゃんのことを個人攻撃でいじめる。
梨華ちゃんはムキになって、よっちゃんさんに仕返ししようとするけど、
結局自分に跳ね返ってきたりして。
2人はいつもこんなカンジなんだろうな。
子供みたいな梨華ちゃんと、落ち着いてるよっちゃんさん。
でも、梨華ちゃんは実はすごく芯の強い子、
よっちゃんさんは逆にもろいのかもしれない。
そんな風に全く逆のところが、うまくかみ合って、
お互いのバランスをうまくとってるんだろう。
- 88 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:42
- こういうときだから、お酒も…ってなるんだけど、
実は唯一の成年のよっちゃんさんはお酒が弱いらしい。
梨華ちゃんは飲むと寝ちゃうし、
美貴もほとんど飲まないから、
お酒はチューハイ1缶ずつくらい。
亜弥ちゃんは、何気に強いらしい。
確かに顔が少し赤くなって、テンションがちょっと上がっただけだった。
うん、そんな亜弥ちゃんもかわいい。
夜も遅くなったので、それぞれの部屋で寝ることに。
ちなみに、この別荘は、1階にリビング、キッチン、
お風呂とかと、大きなテラスがある。
朝ゴハンはテラスで食べようなんて話してた。
緑に囲まれてて、気持ちいいよね。
リビングのところは吹き抜けになってて、
階段を上り、2階には部屋が2つ。
「じゃ、おやすみ〜明日は8時起床ね」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
それぞれの部屋に入った。
一応、部屋には布団が2つ並べて敷いてある。
亜弥ちゃんは「1つでいいじゃん」って言ってきたけど、
何となく気が引けて、2つ敷いてしまった。
でも、結局、布団に入れば、亜弥ちゃんは美貴の横に
ピッタリと寄り添ってきた。
最初は今日の面白かった出来事を2人で話しながら笑ってた。
「石川さんと吉澤さんって、すごく素敵なカップルだね」
「ん、そうだね」
「いいなあ、アタシもあんなカップルになりたい」
そう言って、亜弥ちゃんは美貴のことをチラッと上目遣いで見てきた。
……それってさ、そういうこと?
美貴と付き合いたいってことなの?
そう思っちゃっていいの?
…違うとか言わないでよ?
「…亜弥ちゃん、あのさ…」
- 89 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:43
- 「…あん…あ、あん…」
突然、隣りの部屋から、悩ましげな声が聞こえてきた。
びっくりして思わず壁を見る。
いや、どう考えても、今の声は梨華ちゃんだし。
「…あん…よっちゃん…もっと…」
全部まる聞こえなんですが…
この壁、全然防音じゃないんだ…
…なんなんだよー、でもやめろとか言えないし…
ちょっとヘンな気持ちになってきちゃうじゃんか…
ふと、隣りの亜弥ちゃんを見ると、真っ赤になりながらも、
壁の方を見てた。
うわっ、亜弥ちゃんに、こんなの聞かせらんないよ!
「亜弥ちゃん、聞いちゃダメ!」
美貴は慌てて亜弥ちゃんの耳を塞いだ。
亜弥ちゃんは仰向けになってたから、
自然と美貴が覆いかぶさる姿勢になっちゃって。
……う…
亜弥ちゃんの目は潤んでいて、何だかすごく色っぽかった。
また無意識に唇に目がいってしまう。
その間も梨華ちゃんのあえぎ声は響き渡ってる。
…ダメだ…もうガマンできそうもない!
美貴は亜弥ちゃんにキスをした。
最初は触れ合うだけのだったけど、
今日はソレだけじゃ満足できそうもない。
美貴が舌を入れると、亜弥ちゃんは一瞬ビクッとしたけど、
ちゃんと応えてくれた。
…やばい、脳みそがとろけそう…
もう、どうなってもいいかも…
しばらく、キスを続けてた。
でも、今日の美貴はかなり大胆かも。
キスをしながら、亜弥ちゃんのパジャマのボタンを外し始めてた。
- 90 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:43
- 「…ま、待って!」
亜弥ちゃんが、美貴の手をつかんだ。
…やっぱり、亜弥ちゃんはそんな気じゃないの?
でも、キスには応えてくれたのに。
「…アタシ、みきたんにとって妹なんでしょ?
妹にこんなことするの?」
「…え?…」
…確か、前にそんな話をしたっけ…
「…みきたんの気持ち、わかんないよ。
そういうこと何にも言ってくれないのに、
突然こんなことしてくるし…
…ねえ、みきたんの気持ち、教えてよ」
…もう、この子は自分に自信があるくせに、
何でこういうことに気付かないんだろう。
美貴の行動なんて、全部亜弥ちゃんが好きだからに決まってるじゃん。
「…前に『かわいい』って言ったことあるよね?」
「1回だけね」
ぐっ…回数覚えてんのかよ。
「…『好きだ』って言ったこともある」
「アレは、アタシがくすぐって無理矢理言わせたんじゃん」
…そうだった。
他には………確かに言ったことないかも、それらしい言葉は。
でも態度にめちゃめちゃ出てんじゃんか。
…わかったよ、ちゃんと言ってあげたらいいんでしょ。
今日の美貴はちょっと違うから、言っちゃうよ。
- 91 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:44
- 「…亜弥ちゃんがかわいくってかわいくってしょうがないよ。
好きだよ、ホンキで好きにきまってんじゃんか。
妹なんかじゃない、恋愛対象として好きだよ。
好きで好きでどうしようもないくらい。
亜弥ちゃんに抱きつかれるだけで、ドキドキする。
ほっぺにキスだけじゃ満足できない、
ちゃんとしたキスもしたいし、それ以上のこともしたい。
他の人となんか絶対して欲しくない、美貴とだけして欲しい。
…コレが美貴のほんとの気持ち。
…こんなんでいい?」
大きく開いた亜弥ちゃんの目から涙がこぼれた。
「…何?もしかしてうれし泣き?」
「…もう、みきたんのばかぁ…」
亜弥ちゃんが美貴にギュッと抱きつくと、キスをしてきた…
お互いの体のあらゆるところを触ってキスをした。
2人とも初めてだから、何をどうしていいのかよくわかんない。
ただ、気持ちいいと思うところをとくに触り合った。
とにかく、亜弥ちゃんの裸で抱き合ってるだけで、充分気持ちよかった。
- 92 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:44
- 「…ね、亜弥ちゃんは、美貴のことどう思ってるの?」
「は?今まで散々言ってるじゃん!
ってゆーか、アタシの気持ちわかってなくて、こういうことするワケ?」
「だって、亜弥ちゃんってどこまで本気かわかんないんだもん」
「みきたんが好きだって気持ちは全部本気ですぅ。
優しいとこも厳しいとこも、かっこいいとこもかわいいとこも、
しっかりしてるとこも甘えん坊なとこも、みきたんの全部がダイスキ!」
もー、かわいいんだから。
亜弥ちゃんの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「これからみきたんも、アタシみたいにちゃんと言葉で言ってよねー」
「…そんなの、恥ずかしいじゃん」
「えー?さっき、あんなにいろいろ言ったくせにー?
『好きで好きでしょうがない』とか『美貴とだけして欲しい』とか…」
「わー!わー!やめろって!」
亜弥ちゃん、録音とかしてないだろうな?
あんな恥ずかしい言葉、もう絶対言えない。
「…うれしかったよ…みきたんがそこまで思っててくれるなんて」
亜弥ちゃんが美貴の髪を撫でてくる。
…うん、気持ちいい。
何かやっと緊張の糸がほぐれたみたい。
体力も精神力も使って、今日は疲れたな。
ふああ…眠っちゃいそうかも…
- 93 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:44
- 結局、美貴はそのまま眠ってしまったらしく、
目が覚めたのは目覚ましが鳴ったときだった。
…隣りに亜弥ちゃんがいて顔を赤らめて、
『おはよう』って言ってくれる…なんてのを期待してたのに、
隣りはからっぽだった。
それにしても、自分が素っ裸であるのに気付いて、
昨日のことを思い出す。
…くぅ…亜弥ちゃんとしちゃったんだよね…
そういう関係になれたんだよね?
はあ、超シアワセじゃん!
とりあえず服を着て、部屋を出ると、
ちょうど梨華ちゃんも部屋から出てきた。
「あ、おはよ」
「おはよ」
梨華ちゃんがニヤッとした。
「昨日、うまくいったみたいじゃん」
「へ?」
あ、あー…梨華ちゃんの声が聞こえてきたってことは、
向こうにもこっちの声が聞こえてたってことか…
うわー、超恥ずかしい…
すると、下のテラスの方から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
梨華ちゃんは、険しい顔つきになって階段を下りていく。
美貴もそれに続いた。
テラスのテーブルには、朝食用のサンドイッチが並べられてて、
よっちゃんさんと、亜弥ちゃんがイスに座ってお茶を飲んでた。
笑い合いながら、亜弥ちゃんの頭を小突くよっちゃんさん。
…何だよ、何でいい雰囲気なワケ?
- 94 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:44
- もちろん、梨華ちゃんがすぐにテラスに出ていく。
「ちょっと!よっちゃん!」
「ああ、梨華ちゃん、おはよー」
よっちゃんさんはとろけそうな笑顔を梨華ちゃんに向けた。
「まったく、かわいい子がいると、すぐそんないい顔するんだから」
「え?何言ってんの?」
亜弥ちゃんが、振り向いて美貴の方を見た。
「あーっ!みきたんっ!!」
亜弥ちゃんがテラスから中に入ってきて、
勢いよく抱きつかれた。
思わずよろけて、床に倒れこんでしまう。
「みきたん、おはよーのチュー」
亜弥ちゃんが、唇にチュッとしてくる。
「おはよーの『愛してる』」
亜弥ちゃんは、美貴の耳元に手を当てた。
「みきたん、愛してる」
…かわいすぎるんだよ…
「みきたんからも『愛してる』やって」
「へ?何で?」
「やってよー」
…ったく、今日だけだよ。特別だよ。
亜弥ちゃんの耳元に口を持っていった。
「亜弥ちゃん、愛してるよ」
亜弥ちゃんは美貴のことをギュッと抱きしめると、手をつかんで立ち上がった。
- 95 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:45
- 「ね、部屋に戻ろう」
「え?ゴハンじゃないの?」
「さっきね、吉澤さんにいろいろ教えてもらったの。
だからね、試したいの」
「教えてもらったって、何を?」
「決まってるじゃん、気持ちいいエッチのやり方」
「はあ!?」
美貴の手をつかんで階段を上っていく亜弥ちゃん。
その背中がなんだかたくましく見えてしまった。
美貴の方が年上なのに、お姉さんなのに。
でもそんなこと気にしなくてもいいみたい。
亜弥ちゃんは、美貴の全てが好きだって言ってくれた。
もちろん、美貴も亜弥ちゃんの全てが好き。
あ、積極的すぎるところは、ちょっと困ることもあるかな。
でも、やっぱり亜弥ちゃんのそんなとこもダイスキだよ…
―完―
- 96 名前:サチ 投稿日:2004/02/23(月) 23:52
- 「ほんとの気持ち」終了です。
あやみきって何だか微笑ましいですよね〜
いしよしだとまずよしが男役で、いしが女役ってイメージが強いんだけど、
あやみきって表向きはみきたんが男役っぽいけど、
2人でいるときは違うんじゃないかなってイメージありますね(笑)
>>79さん
こんな展開でよろしかったでしょうか?(笑)
>>80さん
ありがとうございます。
みきたんも亜弥ちゃんもがんばりました。
よっちゃんも(笑)
>>81さん
ありがとうございます。
ムフフなカンジで満足していただけたでしょうか?
>>82さん
ありがとうございます。
私もいしよしも好きですよ〜
途中で、予告したのですが、
次回からは番外編として、いしよし編をお送りしようと思ってます。
引き続きよろしくお願いします。
- 97 名前:なち 投稿日:2004/02/24(火) 13:28
- 面白かった〜♪いしよしもめっちゃ楽しみやわ〜
これからも応援します♪
- 98 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 13:35
- おもしろかったです。
作者さんのあやみきもっと読みたい!!
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 15:30
- サチさんのあやみきサイコーでした☆
このお話のあやや視点も読んでみたいな〜とか言ってみたりw
- 100 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:21
- 幼い頃は、コレが恋だっていうのに気付いてなかった。
ただ、毎日一緒にいるのが当たり前だった。
そして、彼女のことをいじめる男の子から守ってあげてた。
今思うと、その男の子たちもあたしも、
梨華ちゃんの側にいたい理由は一緒だったんだろうな。
小学校5年の梨華ちゃんの誕生日。
梨華ちゃんの家で友達何人かでパーティーをしてたら、
学年で一番人気のあったサッカー少年がやってきて、
梨華ちゃんにプレゼントと手紙を渡していった。
その場にいた子たちで、勝手に手紙を回し読みして。
もちろん中身はラブレター。
まったく小学生の分際で『付き合う』ってナニするんだよ。
みんなが「付き合っちゃえばー?」「すごーい、美男美女カップル」
とか言ってる中、あたしは超不機嫌になった。
眉を八の字にしてあたしのことを見てた梨華ちゃんと目が合った。
「…よっちゃんは、あの人のことどう思う?」
「…あたしはキライ。なんかかっこつけてるしー」
梨華ちゃんがニコッと微笑んだ。
「うん、私も、あの人のこと、スキじゃないよ」
このとき、すごく自分が安心して、
なおかつ、別に何とも思ってなかったあの男の子のことを
本当にキライになったのが、何でだかわかってなかった。
- 101 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:21
- 中学に入って、あたしはバレー部、梨華ちゃんはテニス部に入り、
一緒にいる時間がすごく減った。
家が近いから朝は一緒に登校してたし、
帰りもお互い部活がないときは一緒に帰ってはいたけど。
たまに見かける梨華ちゃんのスコート姿はかわいかった。
そう、梨華ちゃんは中学生になって、
何かちょっと女っぽくなった。
だから梨華ちゃんはすごくモテていた。
同級生からも先輩からも。
それでも全然付き合うこととかしなくて。
何でだか聞きたかったけど、なぜだか聞けなかった。
でもたまたま、校舎裏で目撃してしまった梨華ちゃんへの
告白シーン。
陸上部の部長…背も高いし、かっこよくて、人気もある先輩だ。
さすがに、梨華ちゃんもオチるのかな…なんて、
壁に隠れてドキドキしながら聞いてた。
『ごめんなさい…私、好きな人がいるんです』
…梨華ちゃんの好きな人って誰なんだ?
あたしは気になって気になってしょうがなかったけど、
本人になかなか聞けなかった。
- 102 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:21
- 中2のときのバレンタイン。
その日は、部活の朝練があって、朝は別だったけど、
帰りは梨華ちゃんと2人で帰った。
「はい、コレ、トリュフ。昨日お姉ちゃんと一緒に作ったんだよ」
「おっ、ありがと」
そう、梨華ちゃんは昔から、たぶん幼稚園の頃からだ、
毎年バレンタインに、あたしにチョコをくれてる。
あたしもちゃんとホワイトデーにお返しはしてるんだけど。
「吉澤センパーイ!」
後ろから声をかけられて、振り向くと、女の子が駆け寄ってきた。
『センパイ』って言ってるくらいだから1年生なんだろう。
彼女は目鼻立ちもハッキリしてて小顔で、色の白いかわいい子。
あ、思い出した…ウチの学校でミスコンとかやったら、
絶対彼女だろうって、周りの男子が話してた子だ。
たしかに、今すぐにでも芸能人になれそうなカンジだ。
でも、あたしは彼女と面識はない。
あ、1回だけ握手してくれって言われたことあったっけ。
「あ、あの、コレ…」
彼女がおずおずとリボンのついた箱をあたしの前に出してきた。
「…受け取って下さい」
「あ、ありがと」
あたしが受け取ると、彼女は満面の笑みで頭を下げ、
ピューっと走っていってしまった。
「…キレイな子だね」
梨華ちゃんが冷たい声で言った。
「うん、そうだね」
- 103 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:22
- あたしは、受け取ったプレゼントを入れようとカバンのチャックを開けた。
カバンの中には他にもいくつかのチョコレート。
なぜか共学なのに、女の子からモテるあたし。
もちろん、男の子からもコクられたこともあるけど、
どっちにしても、付き合いたいなんて思える人はいなかった。
梨華ちゃんが、あたしのカバンの中をのぞいた。
「…よっちゃん、今年はチョコ何個なの?」
「うーん、5個くらいかなあ」
「…ふーん…モテるねえ」
「梨華ちゃんの方がモテてるじゃん。
ね、何で誰とも付き合わないの?」
梨華ちゃんがハッと息を呑んだ。
「…いいでしょ、何でも」
「…ね…好きな人がいるってホント?」
今度は梨華ちゃん、目を丸くした。
「だ、誰から聞いたの!?」
「い、いや、ウワサで」
さすがに『立ち聞きで』とは言えない。
「あたし、何にも聞いてないよー。
ひどいなあ、あたしってそんなに信用できない?」
「…そんなんじゃない…」
梨華ちゃんは、スタスタと早歩きで行ってしまう。
「ちょ、ちょっと待ってよー」
- 104 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:22
- 何とか追いついて、梨華ちゃんの腕をつかんで、顔を見ると、
目には涙が溢れていた。
「…どうしたの?」
「…何でもないっ…」
ちょうど人気のない通りだったし、梨華ちゃんのことを抱きしめる。
そう、梨華ちゃんはちっちゃいころから泣き虫で、
こうやってなぐさめるのもあたしの役目だった。
髪を撫でると、梨華ちゃんはあたしにしがみつくようにして、
声を上げて泣いた。
少し落ち着いたときに、あたしは梨華ちゃんの目尻のあたりにキスをして、
涙をぬぐってあげる。
これも、昔からやってあげてることだ。
「…ごめんね?」
「…何で、よっちゃんが謝るのよ」
「だって、あたしと2人でいるときに泣きはじめたってことは、
あたしに原因があるのかなって」
「…もう、何でよっちゃんは理由もわかんないのに、すぐ謝るの?」
「…ごめん」
「ほら、また謝る」
「ごめ…だって、悪いと思ったから」
「そうやって、みんなに優しいから、イヤなのよ」
「…あたしのこと、イヤなの?」
梨華ちゃんがハッとなって、あたしの顔を見た。
「違う、そういうんじゃなくて…」
梨華ちゃんがオロオロしてる。
うーん、よくわかんないけど、
あたしの行動の何かが気に入らなかったに違いない。
でも、あたしのことを嫌いになるほどでもなかったってことだよね。
梨華ちゃんが、眉を八の字にして、心配そうにあたしを見てる。
あたしがニッコリとして、頭を撫でたらやっと安心できたのか、
微笑んでくれた。
- 105 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:23
- そして、そのまま梨華ちゃんはウチに遊びに来てくれた。
部屋でゴロゴロしたり、雑誌見たりどうでもいい話したり、
たまには勉強もするけど。
2人でいる放課後は、いつもどちらかの部屋で、
そんな風に過ごしてた。
「あ、梨華ちゃん、チョコ食べる?」
「…えっ?」
あたしは梨華ちゃんにもらったチョコだけは、
別のところに置いて、他の人からもらったチョコを、
梨華ちゃんの前に出した。
「いらなかったら、弟にあげちゃうから」
梨華ちゃんの目線は自分がくれたチョコにいってる。
「あ、アレはあたしが一人で食べるからダメだよ」
そう、あたしは梨華ちゃんからもらったチョコは、
なぜかいつも一人で食べ切っていた。
他の人にあげたくないって思ってた。
梨華ちゃんはキョトンとした後、うれしそうに微笑んだ。
「…よっちゃんこそ、こんなにモテるのに、
何で誰とも付き合わないの?」
正直、あたしに言い寄ってくる男、ま、女も、
に全く興味が持てなかった。
『好きな人もいないなら、とりあえず付き合うだけ付き合ったら?』
なんて言ってくる友達もいるけど、
あたしはそんなのごめんだった。
「んー…もしさ、誰かと付き合ったらさ、休みの日とか放課後とか、
もしかしたら朝も一緒にいることになるでしょ」
「…うん、そうだね」
「そしたら、梨華ちゃんと一緒にいられる時間減っちゃうじゃん。
梨華ちゃんと遊んでる方が楽しいもん、たぶん」
うん、あたしは純粋にそう思ってた。
他の誰よりも梨華ちゃんと一緒にいたいと。
- 106 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:23
- 梨華ちゃんが泣きそうな顔になる。
「…うわっ!あたし、また何かヘンなこと言った?」
梨華ちゃんを抱き寄せて、髪を撫でる。
梨華ちゃんは首を横に振ったけど、
あたしにギュッと抱きついたままだった。
「あ、そーだ。バレー部の子がマンガ貸してくれたんだー。
一緒に読も」
理由がわからなくて泣かれるこんなときは、話題転換するのが一番いい。
梨華ちゃんが、口をヘの字にしながらも頷く。
「結構イヤらしいヤツなんだよー」
「…ふーん」
中高生向けくらいのわりにはエッチなシーンとか多い週刊マンガ。
今、バレー部の間で流行ってて、よくみんなでまわし読みしてる。
梨華ちゃんと並んでベッドに腰掛けて、
ページをめくりはじめた。
今回は巻頭が読み切りで、高校生の女の子同士の恋愛ものだった。
もちろん、激しいキスシーンやベッドシーンもあるワケで。
- 107 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:24
- …うわっ、すっごい…
あたしは梨華ちゃんの様子を横目で盗み見ると、
顔を赤らめながら、潤んだ目でページを見つめていた。
梨華ちゃんが一瞬唇をペロリと舐めた。
…うっ…
それが、なぜかすごくイヤらしく見えて、
無意識に、マンガの登場人物を、梨華ちゃんと自分に置き換えてしまった。
触れ合う肩が妙にアツク感じてしまう。
…梨華ちゃんをベッドに押し倒して、
マンガと同じことをしたいなんて思ってしまった。
何、考えてんだ、あたし…
頭を軽く振って、相手を梨華ちゃんじゃない人で想像しはじめた。
さっき、チョコをくれたかわいい後輩…全然したいと思えない。
バレー部で仲良くしてる女の子とかとも、オエッって思ってしまう。
はたまた、ちょっとかっこいい男子や、芸能人なんかも想像してみたけど、
全然興奮しない。
やっぱり梨華ちゃんがいい…梨華ちゃんじゃないとイヤだ。
梨華ちゃんが隣りにいることは考えないようにして、
結局頭の中では梨華ちゃんと自分にしていた。
- 108 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:25
- その話を読み終えると、梨華ちゃんが小さくつぶやいた。
「…こういうことすると、そんなに気持ちいいのかな…」
また、梨華ちゃんの唇に目がいってしまう。
うわーっ、すごいしたいかも…
「…じゃ、試してみよっか?」
梨華ちゃんは目を丸くして、あたしを見た。
しばらくあたしを見つめた後に、うつむいて小さくコクンと頷いた。
ま、マジでOKなんだ…
そりゃ、触れるだけのキスなら小さい頃から何度もしてる。
ある程度大きくなった今は、さすがにほとんどしてないけど。
あたしは、梨華ちゃんの肩に手を置いた。
そして、ゆっくり唇を重ねる。
何度も角度を変えてキスした後、開いた口の隙間からそっと舌を入れた。
梨華ちゃんの舌を探して、絡みつかせる。
「…んっ…んん…」
梨華ちゃんが小さく声を出すと、あたしの背中に腕を回してきて、
ギュッと抱きついてきた。
もうそれからは頭が真っ白になって、自分でもよく覚えてない。
何度も何度も舌を絡ませあっていたと思う。
気付いたら、梨華ちゃんのことをベッドに押し倒してもいた。
- 109 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:25
- 本当はキス以上のことをしても、梨華ちゃんは怒らなかったかもしれない。
でも、あたしにはまだそんな勇気がなくて、唇を離した後、
梨華ちゃんを優しく抱きしめて、髪を撫でた。
2人とも肩で息をしている状態だった。
「…すげー気持ちよかった…」
「…うん…」
それからというもの、どちらかの部屋に行くときは、
必ず気持ちいいキスをした。
すればするほど、どんどん気持ちよくなっていった。
あるとき、ふと頭に浮かんできた。
こんなことを、梨華ちゃんと他の人がするのは許せない。
絶対、あたし以外の人とさせたくないって。
このとき初めて、ああ、あたしは梨華ちゃんが本気で好きなんだ、
というか、ずっとずっと好きだったんだって気付いた。
それでも、何となくキス以上のことはできなかった。
自分の気持ちを伝えることも、梨華ちゃんの気持ちを聞くことも、
怖くてできなかった。
ただせめて今の関係をずっと続けていければいいと思っていた。
- 110 名前:サチ 投稿日:2004/02/26(木) 09:32
- いしよし編スタートです。
>>97さん
ありがとうございます。
がんばりますので、よろしくお願いします。
>>98さん
ありがとうございます。
そうですね、短編とかでもあやみきを
また書いていきたいとは思ってます。
まだ何も案は浮かんでないんですけど(笑)
>>99さん
ありがとうございます。
あやや視点も書きたいなあとは思ってますんで、
そのときはまたよろしくお願いします(笑)
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/26(木) 11:05
- いしよし編待ってました!
本編の二人とは雰囲気がちょっと違って、甘酸っぱいかんじがいいですね。
あやみき同様楽しみに待ってます。頑張ってください。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 04:01
- いしよし編いい感じのスタートですねぇ・・・
なんか思春期特有の空気というか
読んでてドキドキしますw
次の更新も期待。
- 113 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:03
- そして、受験シーズンになった。
あたしはバレーを続けたかったし、
高校バレーによく出場している名門校を受けることにした。
場所は埼玉で、ここから通うと2時間以上はかかるけど。
ちなみに梨華ちゃんの第一志望は、地元の公立高校。
すべり止めで受ける学校もそれぞれ違うから、
あたしたちが同じ学校に通うことはない
朝一緒に登校することも、廊下ですれ違うことも、
部活を見学することもなくなる。
すごくさみしいと思ったけど、
ずっとずっと同じ環境でいられるワケがないんだ。
大人になるってこういうことなのかなあ…
受験を直前に控えたある日、梨華ちゃんはあたしの部屋に来てくれていた。
気持ちいいキスをしたあとで、
「よしっ、勉強がんばろうっ!」
なんて、あたしが言うと、梨華ちゃんも微笑んで
「私もがんばる」
って言ってくれた。
でも、高校に行ったら、やっぱり今ほどは会えなくなるんだろうな。
チューする回数も減っちゃうってことだよね…
「ね、ね、もしさあ、第一志望に合格したらさ…」
「ん、何?」
「…もっと、気持ちいいことさせて欲しいなあって」
梨華ちゃんは目を丸くして真っ赤な顔で、あたしのことを見てきた。
「…いいよ」
「…おしっ!絶対合格するっ!」
あたしがガッツポーズをとるのを、梨華ちゃんはニコニコと見てた。
ところが、あたしの知らない間に進んでいる話があったのだ。
- 114 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:03
- ウチはここ横浜でマンションで暮らしている。
一軒家を買うぞ!なんてお父さんがよく話してたけど、
どうせ実現しないだろうなって思ってたし。
実は父親の勤め先が、この春から今の横浜から、
東京しかも埼玉寄りのところになることが決まった。
あたしの弟もちょうど、中学に上がるときだし、
あたしの学校も埼玉なら、いっそのこと埼玉に住もうと。
休みの日とかに、こっそりと物件を見て回ってたらしく、
あたしと弟は家が決まってから知らされたのだ。
確かに、全然問題ない話だ。
あたしが他にも受ける高校を考えても、
どの学校も今の家よりも近くて通いやすくなる。
友達だって、新しい友達になるわけだし。
ただ、あたしにはひとつだけ、ひとつだけだけど、
一番重要な問題があった。
…もちろん、梨華ちゃんのこと。
あたしが引っ越すって言ったら、さみしがってくれるかな。
もしかしたら、全然ヘーキな顔されちゃうかな。
- 115 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:04
- 結局、梨華ちゃんに引っ越すことを言えたのは、
お互いに第一志望の合格が決まって、
あたしの部屋のベッドですっごくすっごく気持ちいいことをした後だった。
コトが終わってからも、裸のままで抱きあってるあたしたち。
もう、高校なんてどうでもいいから、ずっとずっとこうしていたい
なんて思ってた。
「…高校はじまったら、よっちゃん、学校遠いから、
今より会えなくなっちゃうんだろうね…」
梨華ちゃんが、あたしの背中を指でなぞりながら、つぶやく。
「…梨華ちゃん、ごめん、実はさ…」
引っ越しすることを話した。
4月からは2人の間に、電車を乗り継いで2時間半の距離があることを。
「…どうして、どうして、言ってくれなかったの?」
「ごめん…でも、話したって変わることじゃないし…」
梨華ちゃんが、泣きはじめた。
「イヤ、よっちゃんと離れたくない…」
あたしにギュッと抱きついてくる梨華ちゃん。
「週末は必ず会いにくるよ」
梨華ちゃんの髪を撫でる。
「よっちゃんのウソツキ…」
「え?あたし、隠してはいたけどウソなんて…」
「ずっと私の側にいてくれるって、
ずっと守るって、言ってくれたじゃない!」
「え…」
ああ、幼稚園のときにそんなこと言ったっけ…
いじめっこに泣かされてる梨華ちゃんをそうやって慰めたっけ…
- 116 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:04
- 「…あと、結婚するって約束してくれたじゃない!」
「へっ!?」
それも幼稚園のときの話だ。
『梨華ちゃん好き』『よっちゃん好き』って言い合ってて、
『じゃ好き同士なら、結婚しないと』
って。
テレビでやってるのでも見て覚えてたんだろうか、
近所の教会に忍び込んで、祭壇の前で、チュッってキスした。
そこにたまたま神父さんがやってきて、
小さなカップルに、『大人になったらまた来なさい』って言ってくれた。
「私、ずっとずっと、よっちゃんが好きだった…
それが友達としての好きじゃないことだって、わかってた…
女同士なんておかしいんだって、悩んでたこともあった…
でも、でも、よっちゃん以外考えられなかった…
よっちゃんは、私のこと、友達としか思ってないだろうけど…」
梨華ちゃんは、ワンワン泣きながらも、
自分の気持ちをあたしにぶつけてきた。
「…梨華ちゃん!出かけるよ!」
「…え?」
あたしたちは、その場に脱ぎ散らかしてあった服を急いで着た。
- 117 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:04
- そして、あたしは梨華ちゃんの手をひいて、
思い出の場所である教会にやってきた。
「ココって…」
「そう、梨華ちゃん、覚えてるよね」
扉を開けて中に入る。
中は少し新しくなってキレイになっているけど、
昔とほとんど変わってなく、人は誰もいない。
あたしたちは手を繋いだまま、祭壇の前まで進んだ。
そこで、あたしは梨華ちゃんの方に体を向け見つめた。
「石川梨華!」
「えっ?は、はい」
「あなたは、吉澤ひとみを唯一のパートナーとして、
一生一緒にいることを誓いますか?」
んと、だいたいこんなような言葉でよかったんだよな…
梨華ちゃんは、あたしの目を潤んだ目で見つめると、
小さくつぶやいた。
「…誓います」
あたしはニッコリして、梨華ちゃんの頭を撫でた。
「梨華ちゃんも、あたしに何か誓わせてよ」
「…うん」
- 118 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:05
- 梨華ちゃんは、ちょっと考えてから、
パッとひらめいたように、
「吉澤ひとみ」
「はいっ!」
「あなたは、他のどんなキレイな女の人にも目を向けず、
どんなかっこいい男の人とも付き合わず、
一生石川梨華だけを愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います!」
「あと、今まで他の人からもらったラブレターとか、
ラブメールとか、プレゼントとか全部捨てること」
「…は、はい」
ひえーっ、ちょっとコワイかも…
「…あと、あと、家が遠くなっても、ちゃんと毎週末には、
会うことを誓いますか?」
「…はい!もちろん、誓います」
梨華ちゃんは、うぇーんって言って泣き出して、
あたしに抱きついてきた。
寂しい思いさせちゃってごめんね。
その分、週末にはいっぱいいっぱい楽しませるから。
- 119 名前:サチ 投稿日:2004/03/02(火) 10:08
- 今日はここまでです。
>>111さん
ありがとうございます。
甘酸っぱいって何かいいですね、うれしいです。
>>112さん
ありがとうございます。
ドキドキしていただけてうれしいです!
- 120 名前:雪ぐま 投稿日:2004/03/02(火) 13:22
- 初めまして。辛抱たまらず出てまいりました。
もんのすご〜くドキドキしましたよ!
そして>>118の梨華ちゃんがたまらなく愛おしいですw
いつも楽しみに読ませていただいています。応援しております。
- 121 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 03:45
- 更新乙です。
ほんわかいしよしイイですね〜
石川さんも吉澤さんも可愛くてなごみます。
- 122 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:14
- そんなこんなで、一応ちゃんとしたお付き合いをはじめてから、
もう4年以上が経つ。
せっかくバレーをしたくて入った高校も、2年になったすぐに膝を痛めて、
続けられなくなった。
名門校だけに、競争が厳しかった。
そのことを何度も梨華ちゃんに会う度に愚痴をこぼしてた。
梨華ちゃんはイヤな顔せずに、いつも黙って話しを聞いてくれた。
「…ごめん、いつもこんな話してて」
「ううん、私の方こそ、ごめんね。
私、バレーやってるワケじゃないし、膝痛めたりしたこともないから、
よっちゃんの本当の気持ちわかってあげられなくて」
その言葉は無責任に『がんばって』とか言われるよりも、
ずっと心に響いた。
バレーなんてできなくてもいい。
梨華ちゃんと一緒にいれる時間が長い方がいいじゃないか。
そう、実は名門校だけにバレー部の練習はほぼ毎日で、
土日も練習があるときもあった。
だから、梨華ちゃんとは1年のときはあんまり会えなかったのだ。
部活がなければ、その分梨華ちゃんに会えるし。
その方が、あたしにとってもうれしいんだから。
だから2年のときは、週末はどちらかの家に必ず泊まってたし、
平日だって、梨華ちゃんの部活がないときには、
会いに行くこともあった。
さすがに3年になったときはお互い受験だったから、
休みの日にしか会わなかったんだけど。
- 123 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:15
- そして、大学に入って、サークルとかバイトとか始めてみた。
バイトは梨華ちゃんとのデート費用のために始めた。
片道2時間半の電車賃だけでもバカにならない。
それでどこかへ行こうなんてなったら、結構なお金がかかってしまうし。
バイト先のある男の先輩が相当な車好きで、
いつも暇なときには車雑誌を読んでいた。
あたしもちょっと興味あったから、
それを借りて読んでたりもしたんだけど。
その先輩は東京に住んでて、彼女は茨城で、デートはいつも車。
車ならどこでも好きなところに行けるし、
時間も気にしないで遊べると。
その話を聞いて、コレだ!と思った。
あたしもお金を貯めて、まず免許を取って、車を買おう。
もちろん、梨華ちゃんとのデートのため。
でも、梨華ちゃんには内緒にしておいて、
驚かせてやろうなんて思ってた。
バイトがメインになっちゃって、逆になかなか梨華ちゃんに
会えなくなっちゃったけど、それもこれからのため。
今はお金があんまりないから、ほとんどお互いの家だし、
遠いからいつも帰りの電車の時間も気になっちゃってる。
でも車を買ったら、いつでも好きなときに、
夜中だって朝早くたって会いに行ける。
それに、どんなとこだって行ける。
免許は通いの合宿で取って、結構短い期間で安く取れた。
これは、親にお金を借りるつもりだったのに、
逆に親がお金を出してくれた。大学合格祝いだからと。
あとは、クルマ。
どうせなら、かっけー車で、海も山もどこでも行けるようなのがいい。
やっぱり4WDだなあ。色は黒!
梨華ちゃんに選ばせたら、ピンクとかのかわいらしい車になってしまう。
絶対自分で選ぼう。
とくに夏休みとかはいくつもバイト掛け持ちもしたし、
今までも無駄遣いしないで貯金もしてたから、
2年の6月には、欲しいと思った車が買えるお金になった。
お父さんと車を見に行って、サービスもしてもらえたから、
オプションとかもつけられたし。
7月の頭には納車できるらしい。
よし、これで、今年の夏休みは梨華ちゃんとデートしまくれる!
ま、デート代、ガソリン代くらいは稼がなきゃならないんだけど。
- 124 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:17
- 6月の終わりの平日に、梨華ちゃんと会った。
今日は車のパンフレットも持ってきてて、車の話もするつもり。
梨華ちゃん、驚くだろうなあ、でも喜んでくれるはず。
ゴハンを食べるお店を探しながら歩いてるとき、
あたしの携帯に電話がかかってきた。
サークルの女の先輩。
何か暇だったらしく、電話をしてきたとか。
あたしは暇じゃないんだけど…と思いながら、あんまり邪険にもできずに、
適当に話をしていた。
で、切り際に『よっちゃん、愛してるぅ。よっちゃんも私のこと愛してる?』
って聞くもんだから、『はいはい、愛してますよ』って答えた。
やっと電話を切ることができて安心してたのに、
隣りにいたかわいい彼女は超ご立腹。
「何よ、今の電話?」
「え?同じ大学のサークルの女の先輩」
プリプリしながら、早足で歩き出す梨華ちゃん。
「ちょ、ちょっと待ってよー」
「もう信じらんない。何よ、『愛してますよ』って」
「え?そんなの冗談に決まってるじゃん」
「あーそう。よっちゃんは、冗談でそういうこと言っちゃうんだ。
ふーん、よくわかりました」
- 125 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:18
- もっと、急ぎ足で歩き出す梨華ちゃん。
「ちょっと、どうしたのさ?」
あたしは慌てて、梨華ちゃんの腕をつかむ。
梨華ちゃんの目には涙がたまってた。
「な、なんで、泣くのさ」
「…もう、よっちゃんのことわかんないよ」
「…え?」
「大学入ってから、バイトバイトって、全然会ってくれないし、
バイトと私とどっちが大切なの?」
「そ、そんなの梨華ちゃんに決まってるじゃん」
「じゃ、もっと私のこと考えてよ!
よっちゃん、誰に対しても優しいんだもん。
もっともっと私にだけ優しくしてよ!」
梨華ちゃんが、あたしに抱きついてくると、
背中をバシバシ叩いた。
あたしは何て言っていいのか、わかんなくて黙ってた。
「だいたい、よっちゃんが私のこと、どれだけ好きなのか全然わかんない。
本当に私のこと好きなのかもわかんない」
「…好きだよ」
「…でも、そういうのも冗談で言えちゃうんでしょ」
「さっきのは、そういうんじゃなくって…あ、梨華ちゃん!」
梨華ちゃんは、あたしから離れると走って行ってしまった。
すぐに追いかけたけど、人込みで、
しかも運悪くちょうど信号が変わってしまった。
- 126 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:18
- 携帯に電話をかけるけど、出てくれやしない。
メールをしても返事はもちろんない。
しょうがない、たぶん、街中を探しても無理だ。
とりあえず、梨華ちゃんの家に行こう。
さずがに家の前で待ってるのは、気が引けたので、
最寄の駅の改札で待った。
あたしの家に向かう終電に間に合う時間まで待ったけど、
結局その日は会えなかった。
どうしたらいいんだよう…
『うまく言えないけど、梨華ちゃんのことが一番大切なのは確かだから』
『明日バイト休むから、会って欲しい』
っていうメールも送った。
- 127 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:18
- 次の日、学校が終わってから、速攻電車に乗って、
梨華ちゃんの学校の方に向かった。
途中、乗り換えのときに電話をしたら、出てくれた。
それだけでうれしかったんだけど、
こっちが何も言わないうちに
『今、ミキティと渋谷で遊んでる最中だから、
もうかけてこないで!』って言われて切られた。
ガックシだよ…
ミキティは、大学の梨華ちゃんの友達。
写真を見せてもらったことあるけど、
キレイな上に、ちょっと男の子っぽい雰囲気のある子だった。
もしかして、梨華ちゃんの相談にのってあげてるうちに、
そういう関係に…なんてことにならないよな…
気になってしょうがなくて、その後も何度も電話もメールもしたけど、
全然反応なし。
会えるかどうかわかんないのに、渋谷まで来ちゃったし。
さっき電話してから、30分たってる。
もしかしたら、そろそろ出てくれないかな…
なんて期待しながら電話をしたら、出てくれた。
でも、電話の声は甲高い変な声じゃなくて、
クールなドスのきいた声だった。
『もしもし?梨華ちゃんの彼氏ですよね?』
「え?は、はい、そうです」
ちょっと、ビビッてしまった。
『梨華ちゃんの友達の藤本ですけどー、
今、カラオケにいるんですけど、梨華ちゃん、寝ちゃったんですよ。
迎えに来てもらえません?』
あー、コレがミキティか。
梨華ちゃんから、すごい自分を持ってて信念を曲げないっていうか、
納得できないことはできるまで聞いてくるし、
ツッコミもすごいから、『ツッコミキティ』とも言われてるんだよって聞いてた。
ミキティと二言三言しかしゃべってないのに、
梨華ちゃんの言葉が納得できてしまった。
- 128 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:19
- ミキティに聞いたカラオケ屋は前に梨華ちゃんとも
行ったことがあるとこで知ってたからすぐに向かった。
10分後にはカラオケの部屋に着いた。
ドアを開けると、ショートカットのキリッとした顔立ちの女の子がいた。
あ、ミキティだ。
写真の印象そのまま。
そして、向かいのソファーには、丸まって横になっているピンクの物体。
「あ、藤本さんですよね?吉澤です。
梨華ちゃんが迷惑かけて、本当にすみません…」
もし、ドアを開けたときに、
ミキティの膝で梨華ちゃんが寝てたりしたら、
あたしもムッとしてたかもしれない。
でも、電話のミキティの声は本当に迷惑だと思ってそうだったし。
実際、恋人同士のケンカに巻き込まれるなんて、ホント迷惑だよな。
あたしは梨華ちゃんの隣りの空いてるスペースに座って、
「梨華ちゃん、梨華ちゃん、起きて」
って梨華ちゃんの体を揺すりながら、声をかけた。
梨華ちゃんの眉毛がピクッって動いた。
ん?
梨華ちゃん、起きたんじゃないの?
でも、あたしがいるし、起きるタイミングなくして、寝たフリしてるな。
…よし、ノッてやろうじゃんか…
- 129 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:19
- 「もー、梨華ちゃん、こうなると全然起きないからなあ…」
「あ、あのっ!…ヘンなこと聞いてもいいですか?」
「え?はい」
ミキティがあたしのことをじっと見てる。
しかも不思議そうに。
「女の人ですよね?」
…え?その質問って、あ、そっか…
「あー、梨華ちゃん、そこまで話してなかったか…
うん、たまに男に間違われるけど、一応女です」
梨華ちゃん、ミキティと仲良いっていっても、
付き合ってる人は女だってことは言ってなかったのか。
ま、あたしも、高校、大学の友達にはそこまで話してないから、
同じことだけど。
ミキティにあたしたちの関係をざっくり話した。
「オンナ同士とか、軽蔑しますか?」
「い、いや、そんなことはないけど…」
梨華ちゃんが話していたミキティ像からすると、
もし、軽蔑なりおかしいと思ってたら、つっこんできそうだ。
でもそんな気配はない。
かなり驚いてはいるみたいだけど。
「じゃ、梨華ちゃんとも、今まで通り友達でいて下さいね」
「あ、うん、それは、もちろん」
よかった。
これで、ミキティに友達でいたくないとか思われたら、
ただでさえ、友達の少ない梨華ちゃんに怒られるところだった。
- 130 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:19
- 「梨華ちゃん、大学でどんなカンジですか?
男の人からモテるでしょ?」
「あー、うん…サークルでは一番人気あるかも…」
…ちっくしょー、やっぱりそうなのかよ。
そりゃ、自分の彼女がモテた方がうれしいけどさあ。
「そうだよなあ…あたしがどれだけ心配で不安に思ってるか、
梨華ちゃんは全然わかってないくせにさあ」
あたしは今、女子大だし、周りは女の人ばっかりだ。
サークルとかバイトで男の人もいるけど、全然どーでもいい。
梨華ちゃんは、どちらかというと、
あたしの周りの女の人の方が気になってるみたいだけど、
梨華ちゃん以外に興味なんかない。
それより、あたしは梨華ちゃんの周りの男が心配だ。
いくらがんばったところで、所詮、あたしは女だ。
梨華ちゃんと同じ性別なんだ。
結局は男の方にいってしまうんじゃないかって、
いつも不安に思ってる。
「あの、もいっこ聞いてもいい?」
ミキティが、すごく興味津々という顔つきであたしを見てた。
「あ、うん、どうぞ」
「今まで、男の人と付き合ったことってある?」
単なる興味本位の質問だろうか。
でも、からかうみたいなカンジはなくって、
真剣に聞いているような気がしたので、あたしもちゃんと答えようって思った。
- 131 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:26
- 「いや、ない。っていうか、今まで梨華ちゃん以外の人、
好きになったことないから。
男とか女とか関係なくて、梨華ちゃんが好きなんだよね…
…だから同性愛とも少し違うんだろうね」
同性愛者だったら、同性の誰にでも恋をする可能性があるんだと思う。
でも、あたしは梨華ちゃんだけだ。
「20年くらい一緒にいるけど、他のいろんな人と出会っても、
梨華ちゃんしか考えられないんだよね。
たぶん、これから先も、梨華ちゃん以外は好きにならないと思う。
…なーんて、未来のことはわかんないけど」
本当は梨華ちゃん以外の人を好きにならない自信はある。
でも、やっぱり照れ臭いから、最後の言葉はご愛嬌ってことで。
「あ、今の話しは梨華ちゃんにはヒミツにしておいてね。
恥ずかしいし、調子のるから、コイツ」
「うん、わかった」
なんだか、ミキティの目はすごくキラキラ輝いているように見えた。
そのあともミキティからいくつか質問された。
「女同士で周りから何か言われたことないか?」
「外で2人で会うときはどうやって歩いてるのか?」
「初めてキスしたときはどう感じたか?」
「初めてのエッチはどういう風に?」
とか、まるでこっちが相談受けてるみたいに。
もしかして、ミキティも女の子に恋しちゃってるとかなのかな?
…まさか、梨華ちゃんってことはないよね!?
い、いや、それはないだろう…
もしそうなら、こんなおいしい状況で恋人を呼び出すワケがない。
記者会見のような連続質問に答えた後で、
ミキティは納得してくれたらしく帰っていった。
- 132 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:27
- さてさて、このお姫様をどうするかね。
「梨華ちゃん、起きてるんでしょ?
寝たフリしてもバレてるんだからね」
梨華ちゃんは、のっそりと起き上がったけど、
ソファーに座ってうつむいたまま。
「話し、全部聞いてたんでしょ?
あたしの気持ち、わかってくれた?」
「…私、調子になんかのらないもん」
全く、そんなところをつっこんでくるか。
「…やっぱり、よっちゃん、ウソツキだよ」
「え?何で?どこが?」
「『未来のことはわかんない』なんて、あのとき、教会で誓ったのに。
一生、私だけを愛し続けるって」
あー、もう、かわいいヤツめ。
そんなの当たり前じゃん。
一生、梨華ちゃんだけだよ。
あたしは梨華ちゃんを抱き寄せた。
「…梨華ちゃんだって、一生一緒にいてくれるって誓ってくれたじゃん。
だからさ、一緒にいられるときは側にいてよ」
梨華ちゃんは、あたしの腰に腕を回すと、ギュッっと抱きついてきた。
あたしは、梨華ちゃんの髪を撫でた。
「…よっちゃんこそ、もう少し私と一緒にいる時間作ってよ。
もっともっとよっちゃんと会いたいんだから」
「わかったよ。これからはもっと会えるよ。
うん、毎日でも会えるかも」
「え?」
梨華ちゃんは、キョトンとして、あたしの顔を見た。
- 133 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:27
- 車のパンフレットを取り出す。
「コレ、買ったんだ」
「…え?車?」
「うん、梨華ちゃんにいつでも会いにいけるようにね。
終電の時間も気にしなくていいし、
どこでも行きたい場所に行けるし」
「…免許は?」
「免許は去年取ったよ。バイトがんばってたのも、車買うためだよ」
ボロボロ泣き出す梨華ちゃん。
「…あー、ごめん、秘密にしてて」
梨華ちゃんの涙をぬぐってやる。
「…どうして、話してくれなかったの?」
「ごめん、梨華ちゃんのこと、驚かせたくって」
「話してくれたら、もっとガマンしたのに。
私だって、お金くらい出したのに」
「いいよ、コレはあたしがしたくてやったことなんだから。
それに、今まで会えなかった分はこれから埋め合わせるから。
それで許してくれる?ダメ?」
梨華ちゃんは泣きながらも微笑んでくれた。
「…ホントに毎日来てくれるの?」
「うん、梨華ちゃんが望むなら」
「週末は遠いところに連れてってって言うよ」
「もちろん、お安い御用です」
「車の中に、キテイちゃん置いていい?」
「それは……やめて」
「いいじゃん、私とのための車なんでしょ」
「だけどさあ…」
よかった、あたしのお姫様の機嫌も直ったみたい。
車はね、中が広いことも買うときの条件の一つだったんだよ。
それは、もちろん、車の中でも……ね、
せっかく2人っきりになれる空間だもん。
えへへ…これからもっともっと仲良くしようね。
―完―
- 134 名前:サチ 投稿日:2004/03/09(火) 10:38
- いしよし編終了です。
>>120さん
あの雪ぐまさんですよね?
レスありがとうございます。
雪ぐまさんもがんばって下さい、楽しみにしてます。
>>121さん
ありがとうございます。
ほんわかとかなごみとか、うれしいです。
今後は、ちょっと間をおいて、あやや視点で書く予定です。
まだ全然書いてないので、いつになるかわからないのですが・・・
とりあえず、ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/09(火) 14:39
- あやや視点超楽しみです!!
興奮を抑えつつお待ちしております。
- 136 名前:レオナ 投稿日:2004/03/10(水) 20:04
- いしよし編完結おめでとうございます。
あやや視点も楽しみにしてます。
Myペースにがんばってください。
- 137 名前:名無しマスク 投稿日:2004/03/28(日) 16:39
- この小説自分的にかなりヒットで気に入ってます。
いつ頃に更新されるかもう予定の方は立ちましたか?
松浦さん視点はどういう風になるのか楽しみに待っています。
- 138 名前:おっちゃん 投稿日:2004/04/01(木) 09:56
- いしよし素晴らしいです!もちろん、あやみきも。
自分はいしよししか読まないんですが、ココはあやみきも楽しく
読ませていたたきました。
また、気が向いたらいしよし頑張ってください。
- 139 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/01(木) 09:58
- ↑ごめんなさい
- 140 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:20
- なんて、キレイな人なんだろう…
それが第一印象。
うわっ、こわい人かも…第二印象はそうだった。
でもって、第三印象はすごく優しい人。
アタシが思ったこの印象はどれもアタリであり、
ハズレの部分もあったかもしれない。
3年生になってすぐのとき、
ママが夕方出かけてていないから、鍵を持って行きなさいって
言われてたのに、朝寝坊してバタバタしてたせいで、
すっかり忘れちゃってて。
しかも、マンションに帰ってくるまでそのことじたい忘れてたし。
妹の琴は塾だから帰りも遅いし。
あーあ、どうしたらいいんだよう。
オートロックだから、鍵がなくても入れるのは
マンションの入り口のところまでだし。
アタシは不貞腐れて、入り口のすぐのところに座り込んだ。
そしたら、すぐにキレイな脚の女の人が入ってきた。
ジーンズだけど、細くてスタイルいいってカンジ。
背は高くないのに、バランスがすごくいい。
顔は……うわーっ、キレー…顔もちっちゃい。
アタシは自分が一番だと思ってるから、
あんまり人のことキレイとかカワイイって認めたくないんだけど、
彼女のことは認めざるを得なかった。
あ、ポスト見てるってことは、ココの住人の人なんだ。
ちょうどよかった!
マンションの中にも入れるし、彼女ともお話できるし。
- 141 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:20
- 「あのー、ココに住んでる人ですよねー?」
彼女がギロッというカンジでこっちを見た。
うわっ…ちょっとコワイ人なのかも…
「そうだけど?」
「よかったー!あの、アタシ、今日、ママいないのに、
鍵忘れちゃってー。中に入れなくて困ってたんです」
彼女はアタシの顔をジロジロと見ると、
何も言わず、入口のオートロックを開けた。
エレベーターに一緒に乗ると、
「何階なの?」
「あ、10階です!」
10と8のボタンを押した。
コワそうだけど、優しいとこもあるんだな。
そっか、8階に住んでるんだ。
このマンションだから、1人暮らしじゃないよね。
家族と住んでるんだよね、きっと。
「あ、でもさ、鍵なくて、家に入れるの?
鍵どっかに置いてるとか?」
ただ疑問に思ったから聞いてみたってカンジに、素っ気なく言われた。
…あ、でも、確かにそうじゃん…
「…そうだった…どうせ家には入れないんだった…」
あー、アタシってバカだ。
そんなことにも気付かないなんて。
この人にもバカだって思われちゃったよ、きっと…
「じゃ、ウチに来る?今、ウチも親いないし」
ビックリした。
彼女の声のトーンも少し優しくなってたし、
目もさっきみたいなコワさがなくなってたから。
「…いいんですか?」
「うん、どうせヒマだし」
この人、本当はすごくいい人なんじゃないのかな…
- 142 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:20
- でも、もしかしたら、いわゆるヤンキーさんなのかもって思った。
ほら、そういう人って、本当は優しかったりするし。
だから、彼女の部屋に、キティちゃんのぬいぐるみとか、
他にもカワイイ小物とかがあってビックリした。
机の上には、教科書がキチンと並んでた。
あー、大学生さんなんだ。
しかも経済なんとかとかそういう題名のものが並んでて、
それもちょっと意外かも。
彼女が、お茶とお菓子を持ってきてくれた。
「あ、コレ、適当に食べてね」
「あ、ありがとうございます…あのーご挨拶遅れました、
アタシ、松浦亜弥っていいます。高校3年生になったばかりです」
アタシが頭を下げたら、彼女はニコニコとしてくれた。
あ、よかった、やっぱりコワイ人ではなさそう。
「藤本美貴です。大学2年生になったばかりです」
彼女も頭を下げてくれた。何かカワイイかも。
「ミキちゃん?じゃ、みきたんだ」
「は?何ソレ?」
「アタシの幼稚園のお友達でミキって名前の子がいてー、
みきたんって呼んでたから」
みきたんはちょっと困った顔をしてたけど、
怒ったりはしなかったから、
そのまま『みきたん』って呼ぶことにした。
- 143 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:21
- みきたんは、見た目と違って子供みたいなとこもある。
アタシの言ったちょっとした言葉がツボにはまったりして、
笑いが止まんなくなるし。しかも涙まで流しちゃって。
でも、ちゃんとお姉さんの一面もあって、
明日、英語の小テストがある話をしたら、
勉強しろって言われちゃった。
ホントはしたくなかったけど、しなきゃいけないのは確かだし、
みきたんが教えてくれるんならいいかなって、やってみることにした。
…がんばってみたけど、やっぱりわかんない…
みきたんは、ベッドに寝転がってマンガを読んでた。
ずるいなあ、アタシだって、マンガ読みたい。
「みーきーたーん」
「ん?わかんないの?」
みきたんは、起き上がるとアタシの隣りに来てくれて、
教科書の問題に目を通しはじめた。
…みきたん、やっぱりすごくキレイ…
目もキレイだし、まつ毛もクリンとしてて。
鼻は高くてカッコイイ。
唇は何だか色っぽいかも。
あごのラインはスッとしてるし、
首も長いし…
「…ということなの。わかった?」
…え?
突然、みきたんのキレイな目がこっちを見たので、ビックリした。
しかも、みきたんの顔に見惚れてただけで、全然話し聞いてなかったよ…
「亜弥ちゃーん、ちゃんと美貴の説明聞いてた?」
「えっ?あ、あの、もう1回お願いします」
「もー、しょうがないなあ」
みきたんはわかりやすく、丁寧に教えてくれた。
それで理解できたので、すっごく頭がよくなった気になれた。
- 144 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:21
- その日、家に帰っても、みきたんのことばっかり考えてた。
アタシの発言1つ1つに突っ込んできたりするイジワルなとこもあるけど、
何かそれも子供みたいでカワイかったし。
お姉さんみたいに頭撫でてくれたときは、何かうれしかったなあ。
これからも勉強教えてくれるって言ってくれたし、
勉強がんばっちゃおうかなあ?
勉強して、わからないとこいっぱい探して、
みきたんにいっぱい教えてもらおう。
- 145 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:22
- 次の日の英語の小テスト。
いつもは、半分埋められればいい方なのに、ほとんどできた。
自分でもびっくり。
解答用紙を集めるのに、前に回したら、
前の席のこんちゃん―紺野あさ美ちゃんが驚いてた。
「亜弥ちゃん!?答えが全部埋まってる!」
「アタシだってやればできるんですぅ」
「どうしちゃったの?熱でもある?」
こんちゃんが心配そうに、あたしのおでこを触った。
「ちょっと、失礼じゃなーい?」
まだ不思議そうにアタシのことを見てるこんちゃん。
その次の休み時間にみきたんにメールした。
『テストいつもより全然できたよー!
みきたんのおかげだよ、ありがとー!
でも、わかんなかったとこまた教えてくれる?』
少しして、メールが来た。
『よかったよー。
教えたのにできなったら美貴の立場もないし(笑)
今日はサークルがあるけど、
明日なら何の予定もないから大丈夫だよ』
『うん、じゃ、明日!またみきたんち行くね!』
『はいはい、待ってるよ』
…待っててくれるんだあ、みきたん。
顔を見たくなって、昨日撮らせてもらったみきたんの画像を見る。
ピースをしてる笑顔のみきたん、超カワイイ!
あー、早く明日にならないかなあ…
みきたんにすっごく会いたい。
- 146 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:22
- その次の日、学校から帰ってすぐにお気に入りのトレーナーと
デニムの短パンに着替えて、
勉強しながら、みきたんからの連絡を待ってた。
勉強しないとわからないところもわかんないし、
わかんないとこたくさんあれば、
それだけみきたんとたくさん一緒にいれるし。
1時間くらいして、みきたんからのメールが届いた。
『家着いたよ。いつでも来ていいよ』
『うん、すぐ行く!』
アタシは走っていって、エレベーターが来てなかったから、
階段で8階まで降りて、インターフォンを鳴らした。
すぐに玄関のドアが開くと、みきたんが立ってた。
わー、みきたんだあ…
アタシは思いっきりみきたんに抱きついた。
「みきたーん、会いたかったよーっ」
ホントに会いたかった、すっごくすっごく。
「つーか、2日前に会ったばっかりじゃん」
ってつっこんできながらも、優しく背中を叩いてくれた。
「でも、会いたかったんだもん。毎日でも会いたいもん」
みきたんが笑って頭を撫でてくれた。
- 147 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:22
- みきたんは本当に優しい。
でもイジワルなことも言う。
年上なだけあってしっかりしてるとこもあるけど、
実はすっごく子供っぽかったり。
結構サバサバしてるくせに、甘えん坊なとこもあったり。
こんなにキレイなくせに、
ヘーキで大きな音立てて鼻かんだり、おっきいくしゃみするし。
…でも、でも…そんなみきたん、すっごくいい…
隣でアタシにわかりやすいように説明してくれている
みきたんの顔を盗み見た。
ホント、キレーだよなあ…
……はあ……
みきたんが隣にいてくれるだけでうれしいし、
ずっとずっと一緒にいたい。
こんな風に誰かのこと思ったの、はじめて。
…たぶん、コレって『恋』ってヤツじゃないのかな?
…どーしよ…アタシ、みきたんのこと、すっごく好き。
LikeじゃなくってLoveだよ、マジで。
「ねーねー、みきたんの誕生日っていつ?」
「何?突然?2月26日だよ」
「アタシはね、6月25日」
机の上に卓上カレンダーがあったから、
6月25日にハートマークを書いておいた。
「あはは、何でハートなの?」
「いいじゃん。ちゃんと覚えててよ」
「はいはい」
ホントにみきたんとハートの日が過ごせればいいなあ。
- 148 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:23
- その次の次にみきたんの家に行ったとき。
ホントに全然わかんなかった英語の問題、
みきたんの丁寧な教え方で、ちゃんとわかった。
「みきたーん、ありがとー」
って、みきたんに抱きついて、ほっぺにチューしちゃった。
にゃはは、しちゃった、しちゃった。
「…もう!びっくりさせないでよー」
みきたんの顔を見たら、赤くなってた。
「あー、みきたん、照れてる?」
「照れてなんかない」
だって、顔真っ赤だよ。
「うそだー、じゃ、もう1回する?」
「うわっ、ちょ、ちょっと…」
みきたんが避けようとしたけど、ダメだもん。
もう一回、ほっぺにチュッとした。
みきたん、こういうこと友達ともしないのかなあ?
みきたんの顔は赤いままで。
「にゃはははー、みきたん、かわいいっ!」
思いっきりみきたんに抱きついた。
もー、かわいいみきたんもダイスキ。
「はいはい、もうわかったから。次やるよっ!」
赤い顔のままで、アタシの頭を軽く叩いた。
「ねーねー、みきたん、アタシの成績上がったら、
何かお祝いしてよー」
「お祝い?何か欲しいものでもあるの?」
「ううん。どっか遊びに連れてってー」
「あはは、わかったわかった。じゃ、1学期の成績が上がったら、
夏休みに好きなとこどこでも連れて行ってあげる」
「ホント!?」
「うん、ホントホント」
よーし、アタシ、本気でがんばっちゃうよ!
- 149 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:23
- それからはー、お礼の意味を込めて、
わかんないとこを教えてもらう度に、みきたんのほっぺにチューした。
ホントは何でもないときにもしたいけど、
ちょっとチュッとしただけで、あんなに驚いて照れちゃうみきたんだもん、
何か理由がないと「やめてよ」とか言われそうだし。
そんなこと言われたら、アタシだって何気に落ち込んじゃうし…
ある日、英語の宿題で練習問題をやるのが出たんだけど、
自信がないとこもあったので、みきたんに答え合わせしてもらった。
で、間違ってたとこはみきたんが正解を教えてくれたので、
ほっぺにチューした。
でも、結構答えが当たってる問題も多かった。
正解してると、
「うん、正解。えらいえらい」
って頭を撫でてくれた。
それだけでもうれしいけど、ホントはさあ…
「ねーねー、たまにはみきたんからもチューしてよー。
だいたいさー、正解したら、ご褒美くれなきゃいけないの、
みきたんだよ」
「いや、別に、ご褒美あげる必要もないし」
「だってー、してほしいんだもん」
そうだよ、いつもチューするのはアタシから。
そりゃ、みきたんは全然そういう意味だって思ってないだろうしさ。
みきたんには、その気がないことくらい、
アタシにだってわかるけどさあ…
- 150 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:23
- 「はいはい、よくできましたー」
…え?
…うわー、みきたん、ホントにチュッってしてくれたよお!
どーしよー、超恥ずかしい…
「…なんだよ、何照れてんの?」
「…だってー、本当にしてくれるって思わなかったんだもん…」
みきたんが楽しそうに笑って、アタシの顔を覗きこんできた。
顔をそらしたら、また覗き込まれた。
…うー、お願いだから、今はあんまり見ないでよ…
たぶん、アタシの顔、真っ赤なんだもん。
背中を向けたら、今度は後ろからギュッと抱きしめられた。
…み、みきたん…
「亜弥ちゃん、かわいー」
そんなことわかってるけど、
みきたんがそう言ってくれたのは初めて。
…それに、他の誰に言われるよりうれしくって、
すっごくドキドキした。
「ほら、続きやるよ」
みきたんは腕を離すと、アタシの頭をポンポンと叩いた。
もー、みきたんのばか…
アタシの気持ちなんか全然気付いてないくせに、
ヘーキでこういうことするんだから。
- 151 名前:サチ 投稿日:2004/04/06(火) 10:24
- あやや視点スタートです。
週1、2回を目指して、更新していこうと思ってます。
>>135さん
お待たせしました、これからもよろしくお願いします。
>>136さん
ありがとうございます、マイペースにやらせてもらいます。
>>137さん
ヒットしていただけてうれしいです。
これからもがんばりますので、よろしくお願いします。
>>138さん
ありがとうございます。
いしよしもあやみきの次に好きなCPなんですが、
いしよし小説じたい数が多いし、名作が多いので、
書くのはプレッシャー感じます(笑)
- 152 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/06(火) 11:29
- あやみき、あやや視点、ありがとうございます!!!
あやみき大好き〜ですw
もう、嬉しすぎて三回ぐらい読みました(笑
続き待ってます。頑張ってください。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/06(火) 15:00
- あやや視点キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
更新を読み終えるのがもったいなくて
同じ所を何回も読み返し楽しませていただきました。
次回更新が待ち遠しい。マイペースで頑張って下さい!
- 154 名前:名無しマスク 投稿日:2004/04/06(火) 20:15
- やったやったぁーー!!
藤本さん視点だけでもすんごいはまったんで、松浦さん視点もこれからが
すっごく楽しみです。
っていうか、松浦さんは一目惚れしてたんですね。
なんか彼女らしい気がします。
次回更新もめっちゃ楽しみに待ってます!!
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/07(水) 19:38
- ↑嬉しいのは凄く同感だけれど、ネタバレ注意報だと思うよ…読者どうし、お互いフェアにいこう。 って事で作者さん、あやや視点続き楽しみに待ってます。
- 156 名前:名無しマスク 投稿日:2004/04/09(金) 16:02
- あぁ、確かにそうかもしれませんね^^;
その時はそんなこと何も考えずに打ってたんで。。。
注意報どうもです。作者さんすみませんm(_ _)m
ちゃんとフェアにいきますんで。
次回楽しみに待ってます。
- 157 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:40
- ある日、クラスの子何人かとカラオケに行って、
家に帰るとき、マンションの近くで、
「亜弥ちゃーん」
って、みきたんが手を振ってくれてた。
「あー、みきたんっ!」
アタシは走っていってみきたんに飛びついた。
聞くと、みきたんはたまにこの近くの銭湯に行ってて、
今日もこれから行くところらしい。
ちょっとー、せっかくのこんなチャンス、逃せないでしょ!
みきたんとお出かけ、しかもお風呂だよ。
ママにお願いして、みきたんと一緒に銭湯に行くことにした。
アタシに勉強を教えてくれてるみきたんは、
ママからは絶大なる信頼を得てるワケで、
みきたんが一緒なら、今まで許してくれなかったようなことでも、
まずOKしてくれるはず。
- 158 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:40
- 銭湯に着いたのはいいけど、やっぱりちょっと恥ずかしい。
だけど、そんな風に思ってるなんて思われたくないから、
何でもないフリで、すばやく服を脱いで、
体重計に乗ったりしてみた。
振り返ったら、みきたんも服を脱ぎ終わってた。
…うわー、やっぱ、裸になってもキレー…
「うーん、みきたん、スタイルいいね」
つい、みきたんの全身をじっくり眺めてしまった。
「コラ、人の裸、ジロジロ見ないのー」
「だって、キレイなんだもーん。減るもんじゃないし、いいじゃん」
本当にキレイだもん、アタシみたいな子供体系じゃないし、
オトナの女ってカンジ。
「じゃ、美貴も亜弥ちゃんのことじっくり見るよ」
「きゃー、みきたん、ヘンターイ」
もー、みきたんに見られるのは恥ずかしいってば。
こっちは見たいんだけど…
銭湯の中の人も少なくて、みきたんとのんびりできた。
みきたんの背中を流してあげたし。
背中もやっぱりキレイで、何だかドキドキしちゃった。
あと、髪の毛も洗ってあげちゃった。
みきたんの髪はサラサラで気持ちよくって。
しかも、みきたんもアタシの髪を洗ってくれたのが、
すっごくうれしかった。
みきたん、アタシがお願い事すると、どんなことでも、
ちょっと困った顔するくせに、結局やってくれる。
そんな優しいみきたん、ダイスキ。
- 159 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:40
- ある日、いつものようにみきたんにわかんないとこを教えてもらって、
そのあとの続きの問題を解いてた。
その間、みきたんは、ベッドで雑誌を読んでた。
終わったので、答えをみてもらおうと、
「みーきーたんっ」
ってみきたんを見たら、寝ちゃってた。
そーっと近づいて、みきたんの顔を覗きこむ。
…うわっ、みきたん、半目だよ!
コワイけど、やっぱりキレイだよなあ。
「みきたん」
近くで呼んだけど、反応なし。
かなり熟睡しちゃってるのかな。
…にゃは、イタズラしちゃおうかなあ…
顔に落書きとかじゃ、家だからそんなに面白くないしなあ。
何がいいかな…
…あ…チューしちゃおうかな…しかも唇に…
まだほっぺにしかしたことないし、
さすがに唇にするのは、普段じゃちょっと勇気がいるもん。
友達同士でもほっぺにはしても、まだ唇のキスじたいしたことがない。
ファーストキスはやっぱりみきたんがいいな…
そっとみきたんの唇に自分の唇を寄せた。
…きゃっ!
ほんの一瞬だけだったけど、すっごくドキドキしちゃった。
…よ、よくわかんなかったから、もう1回、いいよね?
今度は、もう少し長めにしてみた。
みきたんの唇、柔らかい…
- 160 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:41
- 「…ん…」
うわっ!起きた?
ど、どうしよ?
でも、みきたんは首を動かしただけで、起きたわけじゃなかった。
安心して、みきたんの体を揺する。
「みきたん、みきたん」
「…んっ?…あ、ごめん、寝ちゃってた」
みきたんが慌てて起き上がる。
「みきたんさあ……寝顔かわいかったよ」
「もー、恥ずかしいなあ」
目をゴシゴシこするみきたん、子供みたいでかわいい。
「でも、寝るとき半目なんだね、それはこわかった」
「やばっ、今も半目だった?
あははは、人からよく言われるんだよねー。
でも直しようがないからしょうがないじゃん」
…人から言われるって、どんな人なんだろう?
もしかして、彼氏とかなのかな…
そりゃ、みきたん、大学生だし、こんなキレイだし、
彼氏の1人や2人いてもおかしくないよね。
…はあ…
アタシの勉強に付き合ってくれる日もあるけど、
他の日はサークルとかバイトしてるみたいだし、
その中に彼氏がいるのかもしれない。
たまに友達とゴハン行くとか言ってるけど、
本当は彼氏なのかもしれないし…
- 161 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:41
- その後、みきたんと予定がなかなか合わなかったから、
もう5日も会えてない…
かなりのみきたん不足…
アタシはその日は、クラスの子たちと何人かで、
ゲーセンとかカラオケに行ってきた。
その中にいたある男の子が、
帰り際にアタシにシュークリームをくれた。
周りの様子からすると、彼はアタシのことが好きらしい。
でも、悪いけど、アタシにはその気は全くないんで。
家に帰って、シュークリームを食べて、お風呂に入って歯を磨いた。
まだ10時前だけど、何だか今日はヘンにイライラしてるから、
早く寝ちゃおうと思った。
だって、みきたんがまた「今日は友達とゴハン」って言ってた。
ホントに友達なのかな?
やっぱり彼氏なんじゃないかなあ…
そんなことを考えて、モヤモヤしてる自分がすごくイヤだった。
みきたんに直接確かめたい。
今すぐにでもみきたんに会いたい。
今日これからでも会いに行くのに、何かいい理由ないかな。
みきたん、まだ帰ってないかもしれないし、
さすがに遅い時間から勉強じゃ、イヤかもしれないし。
今日じゃなくちゃならない理由…
- 162 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:41
- …あ、シュークリーム!
確か、中には5個入ってた。
さっき、ママと琴と3人で食べたから、あと2つあるはず。
パパにはガマンしてもらって、
みきたんとみきたんのママにあげよう!
みきたんに電話したら、もう家にいるみたい。
やった!すぐにみきたんに会えるじゃん!
パジャマの上にカーディガンを羽織っただけで、家を出た。
みきたんの家のドアが開くと、優しいみきたんの笑顔。
会いたかった、会いたかった!
みきたんに思いっきり抱きついた。
「みーきたん、久しぶりっ」
「あはは、そうだね」
アタシはみきたんから離れたくなくて、
抱きついたまま、みきたんの部屋に入った。
「あー、みきたん、いいニオイだね」
みきたん、ジャージだったし、お風呂上りだったみたいで、
体からピーチみたいないいニオイがした。
「亜弥ちゃんもいいニオイするねえ」
みきたんは、アタシの髪に顔をうずめてきた。
あー、もー、シアワセ…
- 163 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:42
- その後も、みきたんから体を離すことができなかった。
…みきたん、スキ…
アタシは顔を上げて、みきたんの顔をじっと見つめた。
「ん?どうした?」
「…みきたん、歯磨きもしたばっかり?」
みきたん、歯磨き粉のニオイもした。
「うん、そう」
あ…今、もしかしてチャンスじゃない?
「ふーん。アタシも磨いてきたばっかりだよ」
アタシはみきたんに顔を近づけて、唇を尖らせて、
みきたんの唇に重ねた。
みきたんの顔を見ると、何が起きたかわかんないみたいにキョトンとしてた。
…きゃー!…みきたんにキスしちゃった…
あー、もー、超恥ずかしーじゃんか!!
みきたんの腕をペシペシ叩いた。
「もー、みきたんのばーか」
「……は?亜弥ちゃんからしてきたんじゃん!」
「だってー、したかったんだもん」
ホントにしたかった。
この前コッソリしちゃってから、そんなことばっかり考えてた。
「何ソレ?亜弥ちゃん、欲求不満なんじゃないの?」
もー、みきたんは鈍感すぎ!
キスしたいのなんて、スキだからに決まってるでしょーが!
「そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「あー、やっぱ、欲求不満だから、
そんな風にすぐイライラするんだー」
みきたんは笑いながら、アタシの髪をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
むぅ、ニブチンみきたんめ。
…でも、よかった、怒ってるワケでもないし、
気持ち悪がってるワケでもないってことだよね。
- 164 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:42
- みきたんがベッドに座ったから、アタシもその隣りに座った。
「亜弥ちゃん、今日、友達と遊んでたんでしょ」
「うん、そうだよ。あ、はい、コレ。おばさんにもあげてね」
シュークリームの入ってる紙袋をみきたんに渡す。
「ありがと。明日の朝、食べるよ」
みきたんは、それをテーブルの上に置くと、
ニヤッと笑ってアタシを見てきた。
「今日会ってた友達って男の子?もしかして彼氏?」
その質問は、アタシがするはずだったのに…
「ちがーうよ。彼氏なんていないもん。
男の子だけど、ただのクラスメートだし、
2人っきりじゃなかったし」
もー、みきたんのばかっ。
「でも、亜弥ちゃん、モテるでしょー。
何で彼氏作んないの?」
「余計なお世話ですぅ」
今まではたまたまタイプの人からコクられなかったから、
付き合うってことをしてこなかっただけだし。
「あー、もしかして片思い中とか?」
はい、そーです。
その質問をしてきてるアナタに片思いしてますよ。
「…別にいいじゃん」
またみきたんがニヤッとした。
「ふーん、なるほどねえ。ね、ね、どんな人?
コクったの?フラれちゃったとか?」
「…コクってなんかないもん」
「なんでー?亜弥ちゃんならまずOKでしょ」
ホントに?ホントにOKなの?
アタシのスキなのはみきたん、アナタなんだよ。
彼氏いるんじゃないの?
- 165 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:43
- 「…もー、アタシのことはいいの!みきたんこそ、彼氏は?」
みきたんは自分が聞かれるとは思ってなかったらしく、
キョトンとした。
「今は別に彼氏いらないかなあ。
彼氏いるとさ、いろいろ縛られるでしょ。
やりたいこともいろいろあるし、
遊んでくれる友達がいれば充分かな」
…つまり、彼氏いない、フリーってことだよね?
しかも、遊んでくれる友達がいればいいなんて!
あー、もう、アタシなら、みきたんといくらでも遊ぶよ?
「もういい」って言われるくらい遊んであげるんだから。
アタシは、みきたんに抱きついた。
近くでみきたんの顔を見たら、ニコッと微笑んでくれた。
あー、みきたんってば…あ、でも…
「…ね、その友達に、アタシも含まれてる?」
一応確認ね、コレ、大切だし。
「えー、どうしようかなあ?
亜弥ちゃん、友達として認められるかなあ…」
…え?そ、そんなあ…
ヒドイよぉ、じゃ、アタシ、みきたんのナニ?
みきたんの顔を見たら、いつものイジワル言うときのニヤけた顔だった。
…あー!またからかわれただけじゃん!!
もー!みきたん、信じらない!!
アタシはみきたんに飛びついて、ベッドに押し倒した。
- 166 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:43
- 「うわっ!」
「もー、イジワル言うヤツは、こうしてやる〜」
みきたんの全身くすぐってやる〜!
「やめてよ〜美貴、くすぐったいの、マジで苦手なんだからー」
「にゃはは〜いいこと聞いた!」
もー、悶えてるみきたん、かわいすぎっ!
今度またイジワル言ったときは、絶対くすぐってやるんだから。
「…も、もう、マジ、カンベンして〜」
「じゃ、アタシのこと『スキ』って言ってくれたら、やめてあげる」
「な、なに、ソレ?全然関係ないじゃん…うわあ!」
関係、大アリですぅ。
だって、アタシがみきたんのことスキなんだもん。
「わ、わかったよ!亜弥ちゃん、好き、好きだからっ!…」
「ホントに?一番好き?」
「…う、うわあ!…一番好き!大好きっ!」
にゃはは〜みきたん、アタシのことスキって言ってくれたぁ。
ま、言わせたんだけどね。
「…はぁ…はぁ…も、もう、亜弥ちゃん…」
「アタシもみきたんのこと大好きっ!」
もー、ダイスキだよっ!
今日はガマンしないからねっ。
みきたんが疲れてハァハァしてるのをいいことに、
チューしまくった。
まずほっぺでしょー、あとおでこ、
それと、唇…だってせっかく今日できたんだしぃ。
えへへ、何回も何回もしちゃった。
みきたん、抵抗もしないから、アタシが満足するまでやってやるー!
- 167 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:43
- ………あれ?
気付いたら、みきたんが上にいて、
アタシの両肩をしっかり掴んでいた。
「もうっ!今まで散々やりやがったなあ!」
…うわっ!今度はみきたんからくすぐられた!
そ、そんなこと、みきたんからされちゃったら…
「うわっ、ダメ!ホントに!」
「お返しだもーん」
「きゃっ、うわっ!うわははは…」
実はアタシもくすぐったいの、超苦手。
しかも、みきたんにされてるっていうのが、余計にくすぐったい。
みきたんの手がアタシの首とか腰とか背中とかを動いていく…
ダ、ダメ…これ以上されちゃったら、アタシ、変な気持ちになっちゃいそう…
「ホントダメ!アタシも、言うこと、聞くからー、やめ…」
「えー、じゃあ何お願いしよっかなあ」
「な、なんでも、しますっ…うはっ…」
優しいみきたんだもん、無茶なこと言わないハズ…
今度何かお菓子買ってきてくらいじゃないのかな…
- 168 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:44
- 「じゃ、今日、泊まっていきなよ。美貴と一緒に寝よ」
……………え?
と、泊まる!?い、一緒に寝る!?みきたんと!?
「なんだよう、なんでもするって言ったじゃん!」
みきたんの手がまた動き出したおかげで、やっと我に返れた。
「きゃっ!…する!…お泊まりするっ!絶対する!」
する!っていうか、したい!
みきたんが、優しく頭を撫でてくれた。
「よーし、いい返事だ」
「…な、何でもするって言っちゃったし…」
『何でも』ってことは、その、つまり、いろんなコトってコトで…
やっぱり、一緒に寝るってことはー、そういうのもありってコトで…
ど、どうしよ…アタシ、今日、どんなパンツはいてたっけ?
えーと、えーと…あ、ダイジョウブだ、
ピンクでブラとオソロのヤツだ。
これなら、みきたんにも見せられる。
「ありがと。何かさ、誰かが隣りにいてくれると、
すごく安心するっていうか、気持ちよく寝れるからさあ」
「…誰かと一緒に寝たりするんだ…」
みきたん、今はいないって言っても、
過去に一緒に寝るような彼氏いてもおかしくないもんな…
「友達来たら、だいたい同じ布団かすぐ隣りで寝るよ。
あ、でも、このマンションになってからまだ
誰もお泊まりしてくれてないや」
友達?
よかったあ、彼氏じゃないんだあ。
しかも、このマンションになってからはないってことは、
アタシと知り合ってからは誰も呼んでないってことだよね?
何かホッとした。
- 169 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:44
- ママに電話してみきたん家に泊まりたいって言ったら、即OK。
さすがみきたん効果はすごいね。
アタシはすぐにベッドに横になった。
…ん、みきたんとずっと一緒にいれるのはうれしいけど、
結構緊張もしている。
アタシ、そっちの経験全然ないし…
みきたんは、どうなんだろ?
でも、みきたん、大学生の大人だし…
さっきの『友達』ももしかして、男だったりするのかな?
みきたん、慣れてたらどうしよ…
アタシ、初めてなのバレたら、バカにされちゃうかな…
そんなことを考えてたら、みきたんがアタシの隣りに入ってきた。
…うわー、どーしよ、どーしよ…
で、でも、少し余裕なフリしておかないと。
アタシはみきたんの方に体を向けて、微笑んでみきたんの顔を見た。
その後すぐに抱き寄せられた。
き、きた!
…で、でも、みきたんになら、アタシは全てをあげてもいい!
アタシは決心して、みきたんに抱きついた。
…みきたんのことスキだから、何してもいいよ…
でも、みきたんはそのまま動こうとしなかった。
「…亜弥ちゃん、おやすみ…」
…え?
「…へっ?みきたん、もう寝ちゃうの?」
「…ん…ダメ、もう眠くって…」
そんなぁ…
「…じゃ、おやすみのチュー」
アタシはみきたんにそっとキスをした。
でも、すぐにみきたんは、スースー言い出して。
- 170 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:44
- ……ナニ?何なの?
このアタシがここまで決心したっていうのに!?
学園じゃミスコングランプリのこのアタシが、
男女問わず超アイドルのアタシが、
貞操を捧げようって決めたのに!
もー、ホント、みきたんには調子を狂わされる。
アタシがこんなにラブラブ光線送ってるのに、全然気付きやしないし。
自分の方がよっぽど子供のくせに、アタシのこと子供扱いするし。
あー、もー、ムカツク!
みきたんのばかばかばか!
アタシの気持ち、こんなにおかしくさせておいて、
本人全く意識してないなんて、ヒドすぎる。
「…ん…」
…え?
みきたんが、アタシの体をぎゅっと力を入れて抱き寄せた。
「…みきたん?」
でも、やっぱり、気持ち良さそうな寝息が聞こえるだけ。
もー、ゼッタイ、アタシのこと抱き枕だと思ってる!
失礼なハナシだよ!
…でも…みきたんの抱き枕ならなりたいくらいかも…
みきたんは、何か夢でも見てるのか、
クスッと笑って、アタシの首の辺りにスリスリしてきた。
…みきたん、かわいい…
しかも、こんな状態じゃ、アタシ、ドキドキしっぱなしで、
とても眠れそうにないんですけど…
- 171 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:48
- その数日後の土曜日。
みきたんはバイトが昼だったから、
夜、晩御飯の後に、勉強を教えてもらった。
さすがにね、勉強中にするお礼のチューはほっぺでガマン。
終わったときに、
「今日もありがとー!」
って唇に思いっきりしたら、
みきたん、びっくりしながらも、微笑んで頭を撫でてくれた。
「ね、ね、みきたん、明日はサークル行事なんだよね?」
「うん、そう」
確かサークルの人たちとハイキングに行くっていってた。
「あさっては?またバイト?」
「うん、バイト入ってるよ」
「…そっかー」
実は、その『あさって』って、6月25日。
つまり、アタシの18歳の誕生日。
さすがにアタシのために空けておいてくれることはないよね…
っていうか、みきたん、ちゃんと覚えててくれてるかな?
その次の日の午後11時50分頃から、
アタシはソワソワしっぱなし。
みきたんからおめでとうメールがくるんじゃないかなって。
でも0時になってすぐに来たメールは
同じクラスのこの前シュークリームをくれた男の子。
なんだよー、もー、返事なんかしてやんない!
しかも次から次へとやってくるメールは全部友達からだった。
みきたん、今日はサークルの人たちと一緒だし、
まだ帰ってないかもしれない。
それか、お酒とか飲んで眠くなっちゃって、早く寝てるかもだよね…
- 172 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:48
- 次の日、誕生日当日。
学校でもいろんな子からプレゼントをもらったし、
おめでとうも言ってもらった。
…でも、でも、肝心な人から、全く連絡なし。
学校帰りにずっと携帯の履歴を眺めてた。
気付いたけど、みきたんからメールが来たことって一度もない。
いつもアタシが送ったメールに返事をくれるだけだ。
…実はメーワクだったりする?
い、いや、そんなことないハズ!
この前、『泊まって』って言ってくれたし。
アタシといるときのみきたん、楽しそうだし。
でもさあ…やっぱり連絡ない…
しょうがない。
アタシは、みきたんにメールした。
『今日何時くらいに家に帰ってくるの?』
みきたん、まだバイトははじまってなかったらしく、すぐに返事がきた。
『バイト終わるの10時だから11時くらいかな?
どうしたの?』
11時かあ…でもアタシの誕生日のうちには会える。
『11時でもいいから、会いたい』
『わかった。お母さんが帰ってくるのが、たぶん10時くらいだから、
遅くならないうちに美貴の部屋に来て待ってて。
お母さんには話ししておくから』
みきたんのママは会社に勤めてるんだけど、
お仕事忙しいから、いつも帰りが遅い。
- 173 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:49
- 家に帰って、家族で誕生日パーティーをしてもらった。
もちろん、それはそれで楽しかったしうれしかった。
そして、10時半くらいに、
『みきたんにも誕生日祝ってもらうから』
ってウソついて、みきたん家に向かった。
玄関で出迎えてくれたのはみきたんママ。
みきたんの部屋に通してくれて、紅茶を出してくれた。
「美貴、11時ちょっと前には着きそうって言ってたわよ」
ってニッコリしてくれて、そのまま自分の部屋に戻ってしまった。
みきたんママは家でも、お仕事の続きをすることもあって、
自分の部屋でパソコンに向かってることが多いみたい。
今日もどうやらそうみたい。
でも、みきたんはママと超仲良し。
ママがお休みでみきたんも予定がないときは、
だいたい一緒におでかけしたりしてるとか。
でも、普段は友達が家に来たときなんかは、
必要以上に部屋に来たりとかしないらしい。
実際、アタシがみきたんの部屋にいるときは、
帰ってきたときに
『ただいま〜亜弥ちゃん、いらっしゃい。ごゆっくり』
ってちょっと顔を出していくだけ。
もちろん、みきたんの方も、ママがお仕事してるときは、
部屋に入ったりはしないらしい。
この辺をちゃんと線引きしてるから、
余計に親子関係がうまくいってるのかもね。
- 174 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:49
- みきたんの部屋をぐるっと見回す。
さすがに、この部屋に1人っきりになるのなんて、
みきたんがトイレとか、何かお菓子とか用意してくれるのに、
キッチン行ってるとかほんの短い間だけ。
机の上のカレンダー。
ちゃんと6月25日にハートマークがついたまま。
ひどいよ、みきたん、完全に忘れちゃってるなんて。
わかってて無視してるならもっとひどいけど。
あー、もう!
アタシはベッドに横になった。
…ココで、みきたん、毎日寝てるんだよね…
ギュッと枕を抱きしめる。
あー、みきたん…早く帰ってきて。
枕の横に難しそうな題名の本が置いてあった。
学校で使ってるヤツなのかな?
パラパラとめくったら、中に写真が1枚挟まってた。
その写真には20人以上の男の人と女の人が写ってる。
ほとんどの人がオソロの黒いスタジャンを着てる。
きっとサークルの人たちなんだろうなあ。
みきたん、みきたん…あ、いたっ!
- 175 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:52
- …え?
みきたんの隣には、目の大きな色の白い女の人。
なんとなく、こんちゃんに似てるかも。
彼女はみきたんの腰に腕なんか回しちゃって、しっかり抱きついてる。
みきたんの手も、彼女の腰に置かれてるし。
さらにみきたんの逆隣には男の人がいて、みきたんの肩に腕を回してる。
ちょ、ちょっと、ズーズーしくない?
彼氏でも彼女でもないのに!
みんな、アタシのみきたんに触れないでよっ!
…はぁ…
みきたん、キレイだもん、かわいいもん。
このアタシがスキになるくらいだもん、もてるに決まってるじゃん。
きっと、この男の人も、この女の人もみきたんのこと好きなんだ。
大学とかさ、バイト先とかさ、アタシの知らないとこでさ、
みきたん、いろんなことされたりしたりしてるんだよね…
はぁ…みきたーん…
玄関の方から、みきたんの「ただいまー」って声が聞こえてきた。
アタシは慌てて本を閉じて、ベッドから起き上がって腰掛けた。
- 176 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:52
- すぐに、部屋のドアが思いっきり開いて、みきたんが入ってくる。
『ごめーん、誕生日だったよねー』
なんて言ってくれるのを、かすかに期待してた。
でも、彼女が鞄を放り投げて言った言葉は
「どうした?何かあった?」
だった。
…もー、やっぱり完全に忘れてる!
みきたんのばかっ!
「今日、何の日か知ってる?」
「え?今日?…」
みきたんの視線が机の上のカレンダーにいく。
それを見て、少し考えてから、ハッとするみきたん。
「…誕生日、おめでとう…」
「遅いっ!何で今更、しかもアタシが言ってから気付くの?」
ばかばかばかっ!
「この前会ったときに言ってくれたらよかったのに…」
「だって、そんなのプレゼントちょうだいって言ってるみたいじゃない」
「別にしてくれていいのに」
「そんなの、イヤだもん」
みきたんが覚えててくれなきゃイヤだったんだもん。
何で、忘れちゃうワケ?
- 177 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:53
- 「忘れちゃってて、ごめん。本当に悪かった。
今度会うときまでに、ちゃんとプレゼント用意しておくから」
「ちがーうの、そういうことじゃなくって…」
もー、みきたん、アタシがプレゼント欲しさに言ってると思ってんの?
「じゃあ、美貴はどうしたらいいの?」
…え?
アタシ、みきたんにどうして欲しいんだろう?
…ただ、アタシの誕生日を覚えててほしかった。
この大切な日にみきたんと一緒にいたかった。
ううん、今日だけじゃない、ずっと一緒にいたい。
大学の人とかバイトの人とか、他の人のことは見ないで。
アタシのことだけ見て欲しいの。
ねえ、みきたん、お願い…
- 178 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:53
- 「…じゃ、今、プレゼント、ちょうだい」
「え?亜弥ちゃんにあげられるようなの何もないんだけど…」
大丈夫。
何もなくても、もらえるものがあるから。
アタシはみきたんに抱きついて、唇を重ねた。
…みきたん、スキなの、ダイスキなの。
アタシ、みきたん以外に考えられない…
すっごいすっごいスキなの。
みきたんがいてくれれば、他に何もいらないくらい。
みきたんにもそう思って欲しい。
ねえ、みきたん…みきたん…
…!!
キスをしている途中で、ハッと我に返った。
…アタシ、今、すごいチューしちゃった気がする…
いつもの触れる程度のなんかじゃなくて、
思いっきり自分の気持ちを込めたエッチなチューをしたような…
…こんなキスされても、みきたん、困るだけだ…
実際、みきたんは固まったままで動かない。
…ごめん、みきたん…
アタシは唇を離すと、そのまま部屋を出た。
みきたんの顔はコワくて見れなかった。
イヤそうな、迷惑そうな表情をしてたに違いないから。
- 179 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:54
- …ゼッタイ、みきたんに嫌われた…
こんな遅い時間に家に押しかけて、
自分の誕生日覚えてないっていきなり怒り出して、
しまいにはいつもと違うキスまでして。
何て自分勝手なオンナなんだ、アタシって。
こんなアタシのこと、みきたんがスキになってくれるワケない。
家に帰って、カギを開けてくれたママが驚いてたみたいだけど、
涙でにじんで顔はよく見えなかったし、
今は1人になりたかった。
ママの言葉を無視して、アタシは自分の部屋にこもった。
そして、一晩中泣き続けた。
- 180 名前:サチ 投稿日:2004/04/13(火) 09:55
- 今日はここまでです。
>>152さん
こちらこそありがとうございます。
がんばらせてもらいます。
>>153さん
同じところを何回もってのは、何か恥ずかしいですね(W
もったいないとかそんな言葉がもったいないです。
マイペースですが、がんばります。
>>154さん
はまっていただいてありがとうございます。
これからも亜弥ちゃんっぽいカンジが出せればいいなあと思ってます。
>>155さん
お気遣いありがとうございます。
書いてる身としては何とも思わなかったのですが…
読んでいる方にそんな風に思っていただけるのがすごくうれしいです。
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/13(火) 18:39
- 更新乙です。
松浦さんのキャラ、リアルっぽくてすごくいいです!!
続き待ってます。サチさん、頑張ってください。
- 182 名前:名無しマスク 投稿日:2004/04/14(水) 18:04
- 素直にいろんな意味で超おもしろいです。
もっともっと先を読みたいという気持ちにさせられました。
それに松浦さんのいろんな考えや思いが自分的にツボですごい好きです。
次回も頑張ってください。
期待待ちしてます。
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/14(水) 19:57
- 同じ場面なのに視点が違うだけでまたおもしろいです。
それでいて飽きない文章、すごい尊敬します。
ゆっくりでいいんで頑張ってください。応援してます。
みきたん不足って言葉ハァ━━━━━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━━━━━ン!!
- 184 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:23
- 次の日、思いっきり目の腫れてるアタシは、
家族とも友達ともあんまり話しをしなかった。
いつもアタシがいっぱい話すのに、
今日は人の話しを聞いてるだけ。
いや、実際は話しの内容なんて全然頭に入ってない。
アタシの頭にあるのはみきたんのことだけ。
もしかしたら、もうみきたんに会えないのかな…
そんなのイヤ、絶対イヤ!
今までの関係で、全然構わないのに…
でも、昨日のキスのせいで、今までの関係に戻れなくなっちゃったに違いない。
もー、アタシのばかばかばかっ!
なんで、なんで、あんなキスしちゃったんだろ…
結局、アタシはみきたんの反応を見るのがこわくて、
その日は全くメールも電話もできなかった。
- 185 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:23
- その次の日も、アタシはずっとローテンション。
昼休みにいつも教室で何人かでお弁当を食べてるけど、
食べ終わってから、
こんちゃんに「ちょっといい?」って
人のいない特別教室に連れて行かれた。
こんちゃんは、アタシのことをじっと見てきて、
穏やかな口調で聞いてきた。
「ね、亜弥ちゃん、誕生日の日の夜、何かあったの?」
アタシは、答えに困ってしまった。
同じマンションの大学生のお姉さんに恋してて、
無理矢理キスしちゃったから、ふられちゃったかも…
なんて話したら、こんちゃん、どんな顔するんだろ?
「あ、あのね、別に言いたくないなら、言わなくてもいいから。
ただ、昨日も今日も、亜弥ちゃん、元気ないし…
そんな亜弥ちゃん、亜弥ちゃんじゃないみたいだし、
見てたくないなあって。
もし、私で力になれることならなれたらなあって思っただけで…
例えばね、例えばだよ?
その誕生日の夜に、何かすごい事件に巻き込まれたとか…
あ、あの、思い出したくもないこともあるだろうから、
その辺は無理に話してとは言ってないから…
ただ、もしかしたら、誰かに聞いてもらうだけで、
楽になるってこともあるかもしれなくて…」
…こんちゃん、アタシが止めない限り、延々話してそう…
しかも、ちょっと勘違い入ってるし。
思わずクスッと笑ってしまった。
- 186 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:24
- 「…?私、何か面白いこと言った?」
こんちゃんは目を丸くして、アタシの顔を見た。
アタシが笑いながら首を横に振ると、
「そうだよねえ、私、今、すごく真剣な話ししてるもんねえ」
こんちゃん、ちょっと口を尖らせたと思ったら、
すぐにハッとして笑顔になった。
「あ!笑った!亜弥ちゃん、笑ったじゃん。
久しぶりに見る亜弥ちゃんの笑顔だ!」
…こんちゃん、頭もいいし、運動神経もいいのに、
普段はホント、スローテンポなんだよなあ。
でも、もちろんすっごくいい友達。
すごく信頼もできる。
確かに、こんちゃんの言う通りだ、
話ししただけで、楽になれるかもしれない。
「こんちゃん、あのね、驚かないで聞いてくれる?」
「えっ!?も、もちろん!」
すでに驚いてるけど、大丈夫かな…
アタシはみきたんの話しをした。
同じマンションでたまたま部屋に遊びに行くことになって、
それから勉強を教えてもらっている2つ年上の女子大生に、
どうやら一目惚れしたらしいと。
誕生日の夜に、いつもと違うキスをしてしまったから、
みきたんは困ってるに違いないって話しをした。
- 187 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:24
- こんちゃんは、アタシが一通り話し終えたのに、
きょとんとしたままアタシの顔を見つめてるだけ。
ほら、やっぱり驚いてるんじゃん。
「…その、みきたんさん…あ、名字は何ていうの?」
最初の質問がソレかよ!
思わず、心の中でズッこけた。
「藤本」
「その、藤本さんに亜弥ちゃんは、ちゃんとコクったワケじゃないんだよね?」
「よく『スキ』って言ってるけど、
コクるってカンジではないから。
だって、女の人だし、コクるってことじたいで、
嫌われちゃうかもしれないし」
こんちゃんは、少し困った表情を浮かべた。
「でも、とりあえず、自分の気持ちは正直に話した方がいいんじゃないかなあ。
いや、告白しろってことじゃなくて、
『今まで通りにして欲しい』ってことを、
ちゃんと話ししてみた方がいいと思う」
「…話し聞いてもらえるかなあ?」
もう、アタシなんかとしゃべりたくないかもしれない…
- 188 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:24
- 「亜弥ちゃんの話し聞いてる限り、藤本さんって、
すごく優しいし、大人な人でしょ?
たぶん、そう簡単に亜弥ちゃんのこと嫌ったりしないよ」
「…そっか…そうだよねえ!」
そうだよ、そうじゃん!
みきたん、いっつもアタシのお願い事、
困った顔しながらも聞いてくれてたじゃん。
そんな人だもん、ちょっとエッチなキスしたくらいで
嫌ったりしないよねえ。
『相当欲求不満なんだね』とか、
トンチンカンなことを言ってくるかも。
ま、欲求不満には間違いないんだけど。
アタシのテンションが上がってきたときに、
ママからメールが届いた。
『朝、美貴ちゃんが来て、亜弥にプレゼント置いていったわよ』
…マ、マジで!?
やっぱ、みきたん、超優しい!
「もう、いつもの亜弥ちゃんに戻ったね、よかった」
目の前には、ニコニコとしてるこんちゃん。
- 189 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:25
- そーいえば、こんちゃん、
驚いてたとはいえ、普通にアドバイスしてくれたけど…
「ねー、こんちゃん?」
「ん?」
「やっぱり、女が女をスキになるのはおかしいのかな?」
こんちゃんはふっくらと微笑んで、首を横に振った。
「ううん、むしろ自然だと思う」
「自然?」
こんちゃんの目はどこか遠いところを見てた。
「恋って、頭で考えてできるもんじゃないよね?
例えば『この人は女だから、女の私がスキになっちゃいけない』とか、
いちいち考えて恋愛しないよね?
むしろ、女が男、男が女を好きになることが圧倒的に多いのが不思議なくらい」
なんか、こんちゃんの言うことは、
頭がいいだけあって、変に説得力があるかも。
こんちゃんがアタシの顔を見て、ニコッとした。
「今回、亜弥ちゃんのスキになった人は、
たまたま女性だったってことでしょ?
全然おかしくなんかないよ、自然な愛のカタチだと思う」
『自然な愛のカタチ』かあ…
うん、やっぱ、こんちゃんに話してよかった。
みきたんにプレゼントのお礼言わなきゃいけないし、
今日の夜はみきたんに絶対会いに行く!
で、アタシの気持ち、これからも今までの関係でいたいことを伝えるんだ。
- 190 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:25
- 学校が終わってから、家に猛ダッシュで帰った。
ママからみきたんのプレゼントの入った小さな紙袋を受け取る。
自分の部屋に入って、開けてビックリした。
このシルバーのブレスレット…
みきたんがしてるヤツと一緒のだ。
アタシが『ソレ、かわいい、ちょうだい!』って言ってたの、
覚えててくれたんだ。
誕生日は忘れてても、このことを覚えててくれたのがうれしかった。
アタシは、早速、みきたんと同じく左の手首につけてみた。
紙袋にはメッセージカードも入ってた。
『あやちゃんへ
ちょっと遅れちゃったけど、誕生日おめでとう。
忘れちゃってて本当にゴメンね。
もう覚えたから、来年からはちゃんと誕生日当日に
プレゼントあげるんで許して下さい。
あやちゃんにとってステキな1年でありますように みき』
…『来年からは』ってことは、これからも会ってくれるってことだよね?
…ずっとずっとアタシと友達でいてくれるんだ!
あーもー、優しいみきたん、スキ!!
みきたんは、確か今日はバイトもサークルもない日だったはず。
もしかしたら、早く帰ってきてるかもしれない。
突然行って驚かせたいから、
ゴハンを食べた後、みきたんの家に行って、インターフォンを鳴らした。
でも、反応なし。
しょうがない、またあとで来てみよう。
- 191 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:25
- 10時半頃にもう1回、みきたんの家に行ったら、
みきたんママは帰ってきてた。
「ついさっき美貴から連絡あって、
11時くらいになるって言ってたから、よかったら、部屋で待ってて。
せっかく来てもらったんだし」
みきたんママのお言葉に甘えて、
みきたんの部屋で待たせてもらうことにした。
みきたん、今日はこんな時間まで何してたんだろ?
友達とゴハンかな?
みきたん、友達いっぱいいるんだろうな。
彼氏がいなくてもいいくらい、遊んでくれる友達がいっぱい…
アタシなんか、そのたくさんの中の1人でしかないんだ。
…でも、それでもいい。
みきたんとこれからも一緒にいることができるんなら。
…はぁ、みきたんが帰ってきたら、何て言おう?
とりあえず、プレゼントのお礼を言わなくちゃ。
あと、おとといのキス…アレはなかったことにしてもらおう。
そして今まで通りの関係でいて欲しいってことを話そう。
とにかく、アタシの態度も今まで通りで。
変に意識すると緊張しちゃうし、
みきたんだって困っちゃうだろうから、フツーにフツーに。
あー、早くみきたん、帰ってこないかな…
- 192 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:26
- 玄関の方から、みきたんの「ただいまー」って声が聞こえたのは、
11時10分くらいだった。
遅いよ、みきたん!
みきたんママは今、お風呂入ってるくらいだし。
部屋のドアが開いて、
みきたん、ベッドに座ってるアタシに気付くと、キョトンとした。
『何でいるの?』って顔してる。
もー、ばかっ!
みきたんに会いたかったから来たんだからね!
「みきたん、遅いっ!」
「え?ああ、ごめん」
素直に謝るみきたん、かわいい。
あー、やっぱり、アタシ、この人大好き。
みきたんがアタシの隣りに座ると、
すぐに、左手首のブレスレットに気付いてくれて、
ニッコリしてくれた。
「…あ、つけてくれたんだ、ありがと」
「…こっちこそ、ありがと」
ありがとう、覚えててくれて。
ありがとう、オソロにしてくれて。
「待たせちゃって、ごめんね。
お礼ならメールでも電話でもよかったのに」
「…だって、みきたんの顔見てお礼言いたかったから」
ダイスキなみきたんに会いたかったから。
みきたんはニコニコとしてくれてた。
- 193 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:26
- でも、何か恥ずかしくてみきたんの顔をずっとは見てられなかった。
…とりあえず、プレゼントのお礼は言えた。
あと、もう一つ。
おとといのキスのこと、謝らなきゃ。
まずそのことを言わないと、みきたんと何話していいかわかんない。
早く言わなきゃ、早く…
な、何て、言ったらいいのかな?
『おとといはごめんね。アタシ、欲求不満みたーい。
もう、あんなことしないから忘れて』
こ、こんな軽いカンジでいけば、大丈夫だよね。
…よーし、言うぞ。
呼吸を整えて、みきたんの顔を見て微笑んだ。
「おとといはごめんね…あのー、なんていうか…」
「い、いや、謝るのは美貴だよ。
誕生日忘れるなんて、友達としてサイテーだよね」
…あ、何だ、よかった…
みきたん、全然フツーじゃん。
アタシもいつものペースでいこう、いつものカンジで。
- 194 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:27
- 「…そーだよ。ひどいよ、ホントはアタシのこと、
友達と思ってくれてないでしょ」
「…友達っていうか、妹みたいには思ってるよ」
『妹』って、すごく微妙。
友達から恋人に変わることはよくあっても、
妹が恋人に変わるのは結構難しい気がする。
…でも、いいじゃん。
アタシ、みきたんと今まで通りでいれればいいって思ったんじゃん。
「…妹かあ…
でも、それって、友達より上って思ってもいいのかな?」
「…うん、ある意味そうかもね」
友達よりは妹の方が自分には近い存在ってことだもんね。
そう考えよう、うん。
「…誕生日忘れてたことは許すし、妹でいいから、
これからも今まで通り、アタシと遊んでくれる?」
「んー、どうかなあ…」
「…えっ?」
ちょ、ちょっと待ってよ!
やっぱり、アタシのこと、キライになったってこと?
そんなあ…みきたーん…
「だって、亜弥ちゃん、勉強しなくちゃ大学行けないかもしれないんでしょ?
だから、いつも遊んでなんてあげられないよ。
一緒に勉強ならしてあげるけど」
へ?
いつも遊んでなんてあげられない、一緒に勉強ならしてあげる?
遊んではあげないけど、一緒に勉強ならする?
一緒に勉強?
…それって、つまり、今までと同じで、
アタシと会ってくれる、一緒にいてくれるってことだよね!?
- 195 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:27
- 「みきたん、やっぱりダイスキ!」
みきたんに思いっきり抱きついたから、
ベッドに押し倒しちゃった。
あー、もう、みきたん、スキスキスキ!
でも、またチューとかすると、
ヘンな気持ちになっちゃうから、今日はガマン。
みきたんとこうしてるだけでいい。
そしたら、みきたんの方から、アタシの髪を撫でてくれた。
うわぁ、すっごくうれしい。
また、みきたんからこんなことしてもらえるなんて思ってもみなかったから。
さらに、みきたんはアタシのほっぺにチュッってしてくれた。
きゃー!今日のみきたん、何だかいつもと違う。
こういうこと、あんまりみきたんからしてくれないのに。
誕生日忘れてたこと、そんなに反省してくれてるのかな?
もちろんうれしいに決まってる。
だから、アタシからもお返しのほっぺにチュー。
みきたんもニコッとしてくれて、
アタシの背中に腕を回してギュッっとしてくれた。
あー、みきたん…ずっとずっとこうしててほしい。
- 196 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:27
- それからも、今までと同じくらいのペースで、
みきたんの家で勉強を教えてもらってる。
でも、今までと変わったこともある。
にゃはは、実は勉強中で誉めてくれるときじゃなくっても、
みきたんからほっぺにチューしてくれるようになった。
もちろん、アタシからもするんだけど、
ここ最近はみきたんからも結構してくれる。
でも、さすがに唇には何となくできないままなんだけど…
- 197 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:28
- 夏休みに入ってすぐの日。
体調万全にしたかったから、昨日は超早めに寝て、
朝から超ゴキゲン。
だってー、今日はみきたんとのデート!
しかも海!
1学期の成績が上がったから、
前にした約束、夏休みにスキなとこに連れてってくれるっていうのを、
今日実行してもらう。
でも、みきたんはこの話し忘れちゃってた。
ひどいったらありゃしない。
アタシ、このためにがんばってたようなもんなのに。
うーん、どうせ忘れちゃってたなら、
『泊まりで旅行に連れてってくれる約束した』とか
言っちゃえばよかったかな?
- 198 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:28
- 実は、アタシは勉強はしてないけど、
学校にはちゃんと毎日行ってるし、遅刻もしない、授業態度もよい。
ま、授業の内容は聞いてないんだけどね、
ノートにいたずら書きしてるか、ボーッとしてるかで。
寝たりとかおしゃべりとかはしてないし。
で、3年になってからはしてないけど、
1、2年のときは生徒会をやってた。
あと、学校でたまに募集するボランティア活動、
老人ホームとか施設に行って、
そこの人のお手伝いやお話相手になってあげるんだけど、
そういうのには積極的に参加している。
だから、成績もちょっとばかし悪くても、
まず間違いなく大学には進学できるはず。
ま、私の場合、ギリギリラインだったのに、
今回成績が急上昇したもんだから、
逆に先生が「松浦、よその大学受けるつもり?」
ってあせってたくらい。
アタシの場合、ミスコングランプリっておまけもついてるし、
先生もココの大学には進んで欲しいらしいから。
みきたんとの約束も果せてもらえるし、
もう勉強しなくていいかなあ。
でも、みきたんの家に行く理由がなくなっちゃう。
勉強するのはイヤだけど、みきたんの部屋で2人っきりで、
ぴったりくっついていられるのがスキなんだもん。
だから、もうちょっと勉強がんばっちゃおうかなあ。
- 199 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:28
- うん、今日は快晴!
絶好の海水浴日和、デート日和、みきたん日和!
行きの電車で、アタシの肩にもたれて眠ってたみきたん、
すっごくかわいかった。
でも、相変わらず半目なんだけど。
海に着いて、水着に着替える。
アタシはこの日のために、ビキニを買ったんだから。
ビキニなんて、幼稚園のとき以来なのに。
うわっ、みきたんもビキニだぁ!
超きれー…
変ないやらしさはなくて、純粋にキレイ。
モデルさんみたいだなあ、みきたん。
みきたんに、お願いして背中に日焼け止めを塗ってもらう。
何かちょっとドキドキした。
とくに、ビキニのひもをずらして塗ってくれたときは、
思わず声を出しそうになっちゃった。
- 200 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:29
- で、当然、アタシもみきたんの背中に塗ってあげる。
みきたん、背中もホントきれいだよなあ…
「…何か、亜弥ちゃんの塗り方、いやらしいよ」
「あー、そういうこと言うんだー。外すよ?」
アタシは、みきたんのビキニのブラのホックの部分をつかんだ。
みきたん、マジでビクッとしちゃってんの。
「やめてよー!ホントにいやらしいじゃん」
みきたん、こわい顔でアタシのことをにらんできた。
「にゃはは〜冗談に決まってるじゃん。みきたん、かわいー!」
みきたんに思いっきり抱きついた。
こんな場所で、他にもたくさん人がいるとこで、
みきたんのそんな姿、見せるわけないじゃない。
部屋で2人っきりのときだったら、ホントにしちゃうかもしれないけど…
- 201 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:29
- 日焼け止めを塗り終わってすぐに、早速ナンパされた。
そりゃね、こんなかわいい子が2人もいたら、
アタシが男でも絶対声かけると思う。
でも、アタシは、自分のダイスキな人と一緒にいるんだから、
ジャマしないでよ。
アタシは声をかけてきたヤツにニッコリ微笑みかけた。
「ごめんね〜アタシたち付き合ってるから」
って言って、腕をみきたんの腕に絡ませた。
声をかけてきたヤツは、ギョッっとして、
まるで軽蔑するような目つきをして、
何も言わずにいなくなった。
何で、アンタたちみたいのにそんな目で見られなきゃなんないのよ。
でも、別にいいもんっ。
アタシは、みきたんとの時間をジャマされたくないだけだから。
「へー、こんなウソでも効果あるんだねえ」
…『ウソ』って、何さ?
確かに、みきたんからしたら、
アタシは妹かもしれないけど、アタシからしたら違うんだから!
ムッとして、空気の入ってない浮き輪を投げつけた。
「もーっ、みきたんのバカ!ソレ、膨らましてよねっ!」
「え?何で美貴が…」
みきたん、納得いってない顔してるけど、
ちゃんと膨らましはじめてくれた。
そう、みきたんはアタシのお願いは何でも聞いてくれちゃうんだもん。
やさしーな、みきたん。
- 202 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:29
- みきたんが、浮き輪を膨らましてる間も、何人にもナンパされた。
あー、ウザい!
アタシたちは完全無視することにした。
ほとんどの人は、無視されてるってわかったら、
いなくなってくれるんだけど。
でも中にはあきらめないしつこいヤツもいて、
「ねーねー、ほら、一緒に泳ぎに行こうよ」
って、アタシの腕をつかんできた。
「ちょっと、やめてくんない?」
って、みきたんが、アタシのことを抱き寄せると、
相手の男をすごいこわい目でにらんだ。
こ、こえー…
その目はかなり迫力があったので、
男もビビッていなくなってくれた。
アタシもかなりビビッたけど…
…でも、でも、みきたん、カッコいい…
だって、アタシのこと、守ってくれたんだよ!
カッコよすぎ!惚れ直しちゃったじゃん!
「みきたん…かっこよかったよぉ!」
って、みきたんのほっぺに軽くチュッってしたら、
「こ、こらっ!」
って怒られた。
でも、全然こわくない。むしろ、顔赤くしちゃって、かわいー。
- 203 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:29
- ハワイで買った浮き輪は大きいからなかなか膨らまなくて、
みきたん、疲れてきたみたい。
「亜弥ちゃーん、これくらいでいいでしょー?」
「だめー!もっとパンパンにしてくれなきゃ」
「えー、もう、美貴できないよー。亜弥ちゃん、やってよー」
みきたん、アタシに浮き輪を渡してきた。
…コレ、膨らますってことは、いわゆる間接キスだよね。
そりゃ、ホントのキスもしてるけど、
ここんとこしてないし、何かちょっとドキドキする…
浮き輪がパンパンになるまで、じっくりゆっくり膨らました。
- 204 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:30
- アタシが浮き輪に入って泳いでいくと、
みきたんもアタシの浮き輪をつかんでくっついてきてくれた。
気付いたらかなり沖の方まで来てて、周りに人も全然いない。
うーん、みきたんと、2人っきりだあ!
「うわっ!ココ、足、全然つかないよ〜」
みきたんが、浮き輪から手を離して、足を下につけようとして、
はしゃいでる。
そんな無邪気なみきたん、かわいいっ。
「ん〜?じゃ、みきたんも一緒に入る?」
アタシは浮き輪を上げると、みきたんの頭に通して、
みきたんにギュッと抱きついた。
この浮き輪、大きいから2人入っても大丈夫。
前に琴とも2人で入ったことあったから、わかってたもん。
…でも、すっごくドキドキするかも。
人がいないところで、水着で抱き合うのって…
みきたん…
アタシが幸せな気分にひたってたら、
みきたん、突然浮き輪を沈めはじめた。
- 205 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:30
- 「うわっ!ちょ、ちょっと、やめてよ〜」
「あははは」
足つかないっていってたよね?
アタシは必死になって、みきたんにしがみついた。
にゃはは、コレでもいいかも。
イジワルみきたんも、アタシがキャーキャー言ってるのを、
楽しそうに笑って見てるし、
アタシはみきたんとピッタリできるからうれしい。
突然、みきたんが動きを止めた。
どうしたのかなと思って、みきたんの顔をのぞきこんだら、
チュッってされた…
…みきたんから、唇にチューしてくれたのは初めてだし、
しかも、あの誕生日のキスから、唇にはしてなかったのに。
みきたんからしてくれるなんて…
………
うわーっ!!
アタシは浮き輪を抜けると、水の中に潜って泳いだ。
10メートルくらいだけど。
そして、みきたんのことを見た。
みきたん、ちょっと照れたように微笑んでた。
- 206 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:30
- 「みきたーん!!だーいすきっ!!」
にゃはは、思いっきり大きな声で叫んじゃった。
みきたん、スキスキダイスキ!
アタシはその辺をぐるぐる泳ぎまくった。
浮き輪なくても、足がつかなくてもノープロブレム!
だって、アタシにはみきたんがいるもん!
ほら、みきたんが近くに来てくれた。
アタシは、また一緒に浮き輪に入って、みきたんにギュッと抱きついた。
…みきたん!すきっ!
アタシからもみきたんにチュー。
みきたん、何だか困ったように微笑んで、
「…しょっぱい」
ってつぶやいた。
「もー、みきたんは、どーしてそーゆーことばっかり言うの?」
せっかく、すごく幸せな気分になってたのに、
ムード壊しちゃうんだから。
「…だって、ホントのことだもん」
- 207 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:31
- もー、ばかっ。
「みきたんなんか知らないっ」
アタシは、みきたんから離れて、浮き輪を1人で使うと、
バシャバシャ泳ぎ始めた。
「あ、ちょ、ちょっと、待ってよー」
慌てて追いかけてくるみきたん。
もうちょっと女心わかってよ。
みきたんだって、女の子なんだから。
うん…でもね、でもいいんだ。
少なくとも、アタシ、みきたんから好かれてるってことだよね?
妹って立場かもしれないけどさ、
キライな人にはチューしないもんね?
それがわかっただけでもうれしいから。
- 208 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:31
- その後、夏休み中はあんまり、みきたんと会えなかった。
お盆の時期にはみきたんはママの実家のある北海道へ。
でも、毎日毎日メールしてた。
たまに、電話もくれたし。
続けて、アタシは家族でハワイ旅行。
時期がずれてたもんだから、みきたんと2週間も会えなかった。
しかもハワイだもん、そうしょっちゅう電話とかもできなかったし。
帰国してすぐにみきたんに電話した。
その日はバイトだっていうから、部屋で待たせてもらうことにした。
だって、少しでも早くみきたんに会いたかったから。
みきたんの部屋に行ったら、テーブルの上に紙袋があって、
メモが貼ってあった。
『あやちゃんへ
北海道のお土産です。
おサイフは、みきとオソロだよ』
中を見たら、白い恋人と、鮭のおつまみみたいなの、
あと、まりものいっぱいついたおサイフ。
にゃはは、かーわいー。
また、みきたんとオソロのモノが増えてうれしーな。
玄関の方で「ただいま〜」って声が聞こえた。
みきたんっ!!
部屋のドアが開いた途端に、みきたんに飛びついた。
- 209 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:31
- 「うわっ!」
「みきたーんっ!会いたかったあ」
会いたかった、会いたかった!!
みきたんのほっぺにこれでもかってくらいチューを何回もした。
みきたんはニコニコしながら、アタシの髪を撫でてくれた。
みきたんだ、みきたんだよ!
本物だぁ!
アタシもみきたんの髪を撫でたら、
みきたん、くすぐったそうに笑ってくれた。
久しぶりなんだもん、今日はみきたんと離れたくない。
「…みきたん、今日、泊まっていい?」
「え?あ、ああ、いいよ」
「わーい!」
みきたんに抱きついたまま、ベッドにダイブ。
「うわわ…」
「みきたんと一緒♪みきたんと一緒♪」
にゃはは〜実はもうママにはみきたん家に泊まるって話してある。
- 210 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:32
- 「ちょ、ちょっと、美貴、お風呂、入ってくるからさ。
亜弥ちゃんは?お風呂入ってきたの?」
「もう入ってきちゃったー。
あ、もしかして、一緒に入ってくれるの?
だったら、もう1回入るっ!」
みきたんの腕をひっぱって、起き上がった。
「い、いや、いいよ。
美貴、1人でサッと入ってくるから」
「えー?」
「すぐだから、すぐ出てくるから、ちょっとだけ待ってて」
確かに、みきたんは20分くらいで出てきた。
アタシがお風呂入ると、
最低でも1時間はかかるもんなあ。
- 211 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:32
- みきたんは、ベッドに横になってたアタシの隣りに入ってきた。
「もー、みきたん、髪の毛、乾かしたらー?冷たいよー」
「えー、めんどくさい。いいじゃん」
そう言って、髪の毛をアタシの顔にスリスリ。
「冷たいってばー!」
「あはははー」
もー、イジワルみきたん、ムカつくぅ。
アタシが、みきたんの首をこしょこしょとやったら、
「うわぁ!ご、ごめん、もうしないっ!」
「してもいいけどー、髪の毛乾かそうよー」
みきたんを起き上がらせて、ドライヤーをかけてあげた。
みきたんは、気持ち良さそうに目をつぶって、
アタシに手ぐしをされてる。
「なーんか、ワンちゃんのシャンプーやってあげたあとみたい」
「えー?美貴が亜弥ちゃんのペットってこと?」
「そーだよ。みきたん、アタシの言うこと、何でも聞くじゃん」
「ちがーうよー、聞いてあげてるんだよ、
わがままな亜弥ちゃんのお願いを」
みきたんが、アタシの髪を撫でてくれる。
えへへ、気持ちいいよ、みきたん。
アタシもみきたんみたいに、目をつぶって、
みきたんの手が動くのを感じていた。
その日は、一晩中、みきたんとお話した。
お互いの旅行の話し。
…でも、話しの内容なんて、何でもよかった。
みきたんがずっと隣りにいてくれればそれだけでいいんだもん。
- 212 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:32
- 2学期になっても、引き続きみきたんに勉強を教えてもらってた。
でも、アタシもちょっとは賢くなったし、
成績も今のままで充分すぎるくらいだから、
前よりは勉強時間を短縮。
その分、みきたんとお話タイムを増やしたりなんかしちゃって。
でも、みきたんは別に怒ったりしないどころか、
「それって明日までじゃなくてもいいんだよね?」
とか言って、早めにみきたんの方から切り上げたりしてくる。
みきたんとお話するときは、抱きついたり、ぴったり寄り添ったり。
みきたんがあぐらかいてるときは、脚のところにアタシが座ると、
後ろからギュッって抱きしめてくれるから、うれしい。
勉強してるとき以外は、常にくっついてるカンジになったかも。
すっごくシアワセ、感じちゃう。
- 213 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:33
- ある日、練習問題を黙々と解いてたんだけど、
ふと顔を上げたときに、何となく、
ベッドに寝っころがってマンガを読んでるみきたんを見た。
そしたら、みきたんはアタシのことを見てた。
しかも、アタシと目が合うと、慌てた様子でマンガを読み直しちゃって。
アレ?マンガ本、上下逆さまなんですけど。
アタシが問題解き始めてから、10分以上経ってる。
その間、みきたん、アタシのことずっと見てたってこと?
「みきたん、アタシのこと見てた?」
「ち、違うよ、今、たまたま、そっち見ただけだよ」
「うっそだぁ、マンガ、上下逆さまだよ」
「えっ!?」
みきたんが、改めてマンガを見て、逆さまなのに気付いて、
顔を真っ赤にする。
「ち、違うよ、あんまり、面白くなかったから」
「ふーん、面白くないと逆さでも読めるんだ」
「も、もう!できたの?練習問題は?」
みきたん、マンガを置いて起き上がって、アタシの隣りに座った。
- 214 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:33
- にゃはは、かわいーなぁ。
…実はもう気付いちゃってるんだ。
みきたん、アタシのこと、スキでしょ?
最近のみきたんの態度、どう考えても、
アタシのこと、スキだとしか思えないもん。
すっごく、わかりやすい。
自分から、チューしてくるようになったし、
メールも電話もみきたんからもくれるようにもなった。
それに何よりも目が前と違う。
うれしそうな幸せそうなトロンとした目でアタシのこと見てる。
言葉で言わなくても、絶対『かわいいなぁ』って思ってくれてるハズ。
えへへ、コレって愛の力だよねえ。
でも、今『アタシのことスキでしょ?』なんて聞いても、
絶対否定するだけだもん。
だから、アタシの心の中に留めといてあげる。
みきたんが、ちゃんと自分からアタシへ気持ち伝えてくれるまで、
待ってるから、ずっと。
- 215 名前:サチ 投稿日:2004/04/20(火) 10:34
- 今日はここまでです。
>>181さん
リアルっぽいってうれしいです!
あややになりきります(W
ありがとうございます。がんばります。
>>182さん
いつもありがとうございます!うれしいです。
『いろんな意味』ですか…どんな意味なんでしょう?(W
>>183さん
尊敬とか、そんな大したもんじゃないです…(照
でも、すっごくうれしいです。
これからも『あやみき不足』にならないようにがんばります(W
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/20(火) 11:08
- そういうことかぁ…w
- 217 名前:名無しマスク 投稿日:2004/04/21(水) 20:25
- 言葉では表しにくいですが、いろんな意味でおもしろいんです。
ホント自分でもどういう意味だよ!!ってツッコミたくなるくらいです^^;
とにかく、自分でも理解不能になってしまうくらいこの小説にはまってるということですw
次回もその次も期待して待っています!!
- 218 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/30(金) 23:24
- あやや視点いいですね〜。
藤本さんに対する彼女の気持ちが本編よりもビンビン伝わってきます。
また書き下ろし部分も読んでてゾクゾクするくらい萌えさせられました。
十分以上って…w
次回更新も楽しみです。これからも素敵な二人を見せてください!
- 219 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:38
- 10月の終わりにウチの高校の学園祭がある。
みきたんも誘ったら、
「んー、行きたいけどさあ、
高校の学園祭じゃ付き合ってくれる友達もいないし、
1人で行くのもなんだしなあ」
えー、みきたんに絶対来て欲しー!
「じゃ、じゃあ、ウチのパパママ、妹ちゃんと来てよ」
みきたんは驚いた顔をしてたけど、
結局アタシの言うことを聞いてくれた。
もちろん、パパママ、琴も喜んでくれた。
パパと琴はみきたんに会うのは、そのときが初めてだったんだけど、
後で聞いたら、「美貴ちゃん、かわいいねえ」って。
そうでしょ、そうでしょ?
アタシのみきたん、かわいいでしょ?
- 220 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:38
- 学園祭で、ウチのクラスの出し物は『コスプレ喫茶』。
ま、店員がコスプレしてる喫茶店ってなだけなんだけど。
客も希望者はコスプレできるってオマケもあり。
でも、なぜかコレが結構大ウケ。
たぶん、全校の中で一番人気だったみたい。
昨日は、ちょっと面白そうだったから、特攻服なんて着てみた。
でも、今日はみきたんが来るし、かわいく浴衣でキメる!
担任の先生が着付けをしてくれた。
うん、何着てもアタシってかわいい!
「うわー、亜弥ちゃん、かわいいねえ」
スーツ姿のこんちゃんがニコニコして見てた。
イメージは学校の先生らしい。
「こんちゃんも似合ってるよー。
何か、教育実習で来た先生みたい」
「ホント!?ありがとう」
しかし、お店は超大忙し。
外にも行列とか、どうやらアタシ目当ての見物客とかもいるみたい。
そろそろ、みきたんが来るのに…あ、パパママ琴もだけど。
「亜弥ちゃん、何かソワソワしてない?
あ、家族が来るんだっけ?」
こんちゃんも、さっき、パパママ妹さんがやってきてた。
「うん…あと、アタシの大好きな人も来るの」
こんちゃんにコッソリ耳打ちした。
「ホント!?すごい楽しみ!」
こんちゃんの目がキラキラと輝きはじめた。
こんちゃんにも、みきたんの魅力わかってもらえると思うよ。
- 221 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:42
- 少しして、みきたんとウチの家族が入ってきた。
うわーっ、今日のみきたんもかわいいっ!
パーカーにデニムの短パン。
何か男の子みたいで超かわいい!
「あー、待ってたよー!」
アタシの浴衣姿に見惚れてるみんな。
とくに、みきたん、ポーッとしすぎだよ!
口開いたままで、顔ちょっと赤くなっちゃってるし。
『すっごいかわいい』とか思っちゃってるでしょ?ね?ね?
パパとママはデジカメで撮影しまくり。
みきたんも携帯で写真撮ってくれてた。
にゃはは、みきたんにならめっちゃかわいく撮ってもらえそう。
せっかく、みきたん&松浦ファミリーに来ていただいたので、
席も教室の端のいいところをご用意いたしました!
でも、クラスの男子も、みきたんのことが気になる様子。
「ね、ね、あの人、松浦のお姉さん?」
「ううん、同じマンションに住んでるの」
「へー、すっげー、キレーだよね」
「うん、キレイでしょ」
みきたんに目をつけたのは、ちょっとムカついたけど、
素直に喜んでおいてあげる。
だって、アタシのみきたんを誉めてくれてるんだから。
- 222 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:43
- あ、せっかくのコスプレ喫茶だからさあ、
みきたんの制服とか見てみたいんだよねえ…
「あ、琴もみきたんも何か着てみない?ウチの制服とかどう?」
「あ、着てみたい!」
すぐに、食いついてきた琴。
よしよしいい子だねえ。
「美貴はいいよ、今更制服なんて」
えー、みきたんのが見たいのにぃ…
「えー、みきたん着てよー」
「恥ずかしいって、もう大学生なんだから」
大学生だってー、別にいいじゃん!…あ、そうだ!!
「じゃ、じゃあ、学ラン着てみて!
ほら、大学生の男の人で、学ラン着てる人いるじゃん」
「は?美貴、女なんだけど…」
そんなみきたんの言葉は無視。
絶対、みきたん、学ラン似合う!
すっごく楽しみなんだけど…
ソワソワして待ってたら、
まずセーラー服の琴が出てきた。
アタシと似てるだけあって、ウチのクラスの子たちも
かわいい、かわいいって大喜び。
- 223 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:43
- でも、アタシの視線は琴の後ろにいたみきたんに釘付け。
…うわぁ…みきたーん…
「ちょっと、何か言ってよ!恥ずかしいんだから」
みきたんが、アタシをにらんできた。
だって、だってさあ…
「…みきたん、かっこいい…」
「は?」
「ううん、かわいい!かっこかわいい!!」
みきたん、かわいすぎ!かっこよすぎ!
こんな同級生いたら、アタシ、猛アタックしちゃう!
もー!!すきー!
アタシは思いっきりみきたんに抱きついた。
で、琴に頼んでツーショット写真も撮ってもらった。
にゃはは、コレ、絶対待ち受け画面にするんだー!
気付いたらこんちゃんが側に来てて、
ニコニコとみきたんのことを見てた。
アタシが『どう?』ってカンジでこんちゃんのことを見たら、
「あー、こういう男子、いるかも!
っていうかいて欲しいけど、いないタイプ?」
って。
みきたんは、ソレを聞いて首をかしげながらも微笑んでくれた。
- 224 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:43
- みきたんたちがいなくなってから、
アタシとこんちゃんは一緒に休憩に入った。
「藤本さん、すっごくキレイでびっくりしちゃった」
「でっしょー?」
「それに、亜弥ちゃんのこと、きっと好きなんだろうなあって」
「え!?何で?」
他の人から見てもそう思えるほどなの?
「だって、亜弥ちゃんのこと、ホントうれしそうに見てたし。
あ、あとね、ほら、亜弥ちゃんのこと見学に来てた人たちが、
廊下のドアのところから見てたじゃない」
「あー、うん、見てたね」
「その人たちのこと、すっごいコワイ目でにらみつけてたし」
「…へ?そうだったの?」
そんなことがあったんだ…ソレってやっぱり『じぇらすぃー』ってヤツでしょ?
にゃはは、みきたん、かわいいじゃん。
- 225 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:43
- そして、家に帰って家族にお礼を言って、
着替えてからみきたんのところに向かった。
玄関に向かえにきてくれたみきたんに飛びついて、
そのまま部屋になだれこむ。
「みきたーん、今日は来てくれてありがとね」
って、ほっぺにチューした。
みきたん、照れたように微笑んで、アタシの髪をグシャグシャって撫でた。
にゃはは、たぶんね、この髪をグシャグシャするときって、
アタシのこと『ホントかわいいなあ』って思ってくれてるとき。
この前、なんとなく気付いちゃった。
- 226 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:44
- 「ね、ね、アタシの浴衣姿、かわいかったでしょ?」
「あ、うん」
素っ気ないけど、声は優しい。
「ドキドキした?ムラムラした?」
「…は?何ソレ?」
「しなかったの?」
みきたん、絶対してたもん。
アタシが抱きついたとき、心臓がすごくドキドキいってたもん。
「…何で美貴がするワケ?
あ、ほら、何か男子がいっぱい亜弥ちゃん見に来てたじゃん。
ああいう子たちはムラムラしただろうけど」
「…そんなの、どうでもいいもん」
みきたん、何言ってるんだろ?
「あ、亜弥ちゃん、女の子からも人気あるんだね。
『松浦先輩かわいー!』って言ってたよ。
それに去年はミスコンでグランプリだったんでしょ?」
「…ま、一応ね」
ま、私は学園のアイドルだからねえ。
「亜弥ちゃんは、モテモテなんだから、
きっといろんな人がドキドキとかムラムラしてんじゃないの?
別に美貴がする必要もないしー」
みきたん、さっきから、アタシの方を全然見ない。
挙動不審っぽいくらい不自然。
そういや、こんちゃんが、
見学に来てた男子のこと、みきたんがにらみつけてたって言ってたなあ…
…ん?それを言い出してるってことは…
もしかして、もしかして…
- 227 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:44
- 「…ね、もしかして、みきたん、ヤキモチやいてる?」
「…は?」
「アタシがモテモテだから、ジェラシー感じちゃった?」
「…んなワケなんじゃんか」
その言葉とは裏腹に、顔は真っ赤っ赤になってる。
やっぱり、やっぱりジェラシーなんじゃん!
「にゃははは〜みきたん、かわいい。
そっか、そっか、みきたんも、アタシのこと好きだもんね。
そりゃ、面白くないよね」
「だーかーら、そんなことないって!」
自分でもわかってたけど、
今日、こんちゃんから言われて余計に自信がついた。
だからさ、みきたんも素直になろうよ。
「大丈夫だよ、アタシはみきたんだけだから」
アタシのほんとの気持ち。
ホントにみきたんだけ。
他の人なんて考えられない。
みきたんにもそう思ってて欲しい。
それを言葉で言って欲しい。
…でもまだ無理なのかな…
みきたんは、何だか苦しそうに微笑んでるだけだった。
- 228 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:44
- 11月の最初には、みきたんの大学の学園祭にいくことになった。
やっぱり、みきたんのことも知ってるこんちゃんを誘った。
こんちゃんは、成績がいいだけあって、
ウチの付属の大学じゃなくて、外部の大学を受ける。
だから、受験勉強忙しいかな、大丈夫かなあと思いながらも、
みきたんの大学名を言ったら、
「ぜ、絶対行くっ!」
ってすごく乗り気で。
こんちゃんの知り合いも行ってる大学らしい。
ま、こんちゃんが一緒に行ってくれるなら、よかった。
そして、土曜日なのに、学校に行かなきゃいけない日だったから、
その帰りにこんちゃんと2人でみきたんの大学に行った。
ウチの高校は付属っていっても、
大学は別のちょっと遠いところにあるから、
初めて感じるこのキャンパスっていう雰囲気に何だか圧倒される。
ちょっと緊張しながら、キョロキョロ。
しかし、こんちゃんはアタシ以上に異常な程落ち着きがなかった。
おいしそうな食べ物屋さん、いっぱい出てるもんなあ。
食いしん坊こんちゃん、何食べようか考えてるんだろうな。
- 229 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:45
- みきたんはサークルでタコ焼き屋をやってるらしい。
出店場所は教えてもらってるけど、
いろんなところを見て回ってから、向かった。
学校帰りに行くとは言ったけど、時間とか伝えなかったし、
突然行って驚かせようかななんて。
あ、少し先のところに、タコ焼き屋発見!
みきたん、みきたん…あ、お店の前を通る人を呼び込みしてる。
声をかけられた男の人2人組は、ニヤニヤしながら、
タコ焼きを買っていた。
「あ、藤本さんじゃん」
こんちゃんが気付いた。
「…うん」
さっき、タコ焼きを買ってた男の人2人が、アタシの横を通る。
「あのタコ焼き屋の呼び込みしてた子、超かわいいよなあ」
「いいよなあ、あそこのサークル、オレも入ろうかな…」
むぅ…そりゃ、みきたんはかわいいですよーだ。
みきたん、今度はタコ焼き屋の男の人に、頭撫でられてる。
もー!そんなこと、アタシ以外の人にさせないでよ!
みきたんのばかぁ…
にらみつけながら、近づいていったら、
みきたん、やっと気付いた。
- 230 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:48
- 「あー!亜弥ちゃん!」
みきたんが側に来てくれた。
…うぅ…みきたん、やっぱり、かわいい…
みきたんが笑顔を向けてくれただけで、
アタシの怒りはちょっとおさまってしまった。
アタシの方を興味津々なカンジで見てる男の人がみきたんに話しかけた。
「なになに?藤本の妹?」
「ううん、同じマンションの子」
「へー、ちょっと紹介してよー。
女子高生とオトモダチになりたい」
「ばっかじゃないのー」
…ホント、ばっかじゃない!
アタシのみきたんに馴れ馴れしくしすぎっ!
そしたら、女の人がタコ焼きを2パック持ってきてくれた。
あ、こんちゃんの目が輝いてる…
「はい、コレ、サービス。
かわいい子には特別だからって」
そう言って、彼女がタコ焼きを焼いている男の人を見た。
アタシもその人の方を見たら、笑顔で手を振ってた。
つい、条件反射で、アタシも笑顔を作って頭を下げた。
「まったくー、先輩、美貴がつまみ食いしただけで怒ったくせにー」
「あったりまえだろー。お前は働け!
ほらちゃんと呼び込みしろよー。
藤本と石川が呼び込みすると売り上げ上がるんだから」
「ちょっとくらいいいじゃーん。
ほら、せっかく知り合い来たんだし、
藤本、休憩しまーす」
「あ、コラッ!」
その親密なカンジのやりとりにかなりムッときたけど、
みきたんがアタシの腕をつかんで歩き出してくれたのが、
うれしかったから許してあげる…
- 231 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:48
- みきたんに連れて来られた先は学生食堂。
空いてる席を見つけて、こんちゃんとアタシを座らせた。
みきたんはテーブルの上にタコ焼きを置いて
「ジュース買ってくるね。ちょっと待ってて」
って行こうとした。
「あーっ!みきねえ!!」
声のした方を見ると、女の人が3人、みきたんに向かってきた。
そのうちの1人の色白の人が、みきたんの背中から抱きつく。
な、何すんのよ!?アタシのみきたんに!
…ん?この人、どっかで見たことあるかも…
…あ!みきたんの部屋にあった写真!
みきたんの隣りにいて抱きついてた人だ!
さっき『みきねえ』って叫んだネコっぽい顔した人が、みきたんの右腕を、
もう1人のおとなしそうなストレートの黒髪の人がみきたんの左腕をしっかりつかんでた。
「みきねえ、サボリだあ!」
ネコ顔の人が、みきたんのほっぺをつつく。
「違うよ、休憩!れいなたちこそサボリじゃん」
「絵里たちはぁ、配達してきたんですよ。サボリじゃありません」
おとなしそうな人が、首をかしげてみきたんの顔を見る。
「じゃ、仕事中なら、とっとと戻る!」
「えー?藤本さんもすぐに戻ってきてくれますか?」
色白の人が、背中からみきたんの顔をのぞきこむ。
「はいはい、なるべく早く戻るから。
シゲさんもちゃんと働くんだよ」
「んー、待ってますよ」
名残惜しそうに、みきたんから離れ、手を振っていく3人。
みきたんも笑顔で、手を振ってる。
- 232 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:49
- …何よ、アレ?
『みきねえ』って何?
みきたんはみきたんだもん。
だいたいさ、自分の好きな子の目の前で、
他の人にああいうことさせる?
みきたん、ちょっとくらい拒否してよ!
…っていうか、いつもああいうことされてるってことだよね…
さっきみたいに、男の人に頭撫でられたりするのも、
たぶん後輩であろう女の子たちに抱きつかれるのも…
「…亜弥ちゃん?大丈夫?」
こんちゃんが心配そうにアタシの顔を覗きこんでた。
「え?」
「何かコワイ顔になってたから」
「そ、そうだった?」
「好きな人が目の前で知らない人と仲良くしてるの見るの、
ツライだろうけど…そんな顔してたら、藤本さんに悪いよ」
「…うん」
確かに、こんちゃんの言う通りだよね…
- 233 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:49
- みきたんが戻ってきて、紙コップを3つテーブルの上に置いた。
「ハイ、コレは美貴からのおごり」
「…ありがとう」
ソレを言うのが精一杯で、笑顔にはなれなかった。
「あ、タコ焼き、あったかいうちに食べなよ。
結構おいしいんだよー」
「…うん」
…みきたんのばか…
アタシのこと好きなんでしょ?
どうして、どうしてさあ…
…もしかして、もしかして、心変わりしちゃったとか…?
みきたん、アタシの様子がヘンなことに気付いたのか、
不思議そうにアタシのことを見てた。
隣りでは、こんちゃんが、8等分したちっちゃいタコ焼きを
口に入れると、すごい笑顔になって、足をバタつかせてた。
- 234 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:49
- みきたんに心配かけるのも悪いし、
こんちゃんを見たら、アタシも食べたくなったから、
ふうふうして口に入れた。
うーん、タコは大きいし、中がトロッとしてて、表面はカリッと…
「うん、おいしい!」
「でしょ、でしょ?」
みきたんがうれしそうに笑ってくれた。
…うーん、みきたんの笑顔、スキだなあ…
「はい、みきたんにもあげる」
アタシは楊枝に差したタコ焼きをふうふうして、
みきたんの口に持っていった。
みきたんがソレを食べてくれたら、
こんちゃんが「…あ」ってつぶやいた。
みきたんがキョトンとして、こんちゃんを見ると、
こんちゃんは顔を赤らめて、首を横に振ってうつむいた。
にゃはは、こんちゃんが照れることないじゃん。
アタシたちってば、普通に見たらラブラブだよね?ね?
- 235 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:50
- その後、サークルの話とか大学の話を聞いた。
でも、サークルの人たちとの仲良しぶりを聞かされるほど、
アタシの機嫌は悪くなる一方。
だから、ほとんどこんちゃんがいろいろみきたんに質問してた。
実は、こんちゃん、ココの大学も受けるかもしれないなんて言ってた。
アタシもみきたんと同じ学校に行くために、
がんばろうかとも思ったけど、今からじゃどう考えても厳しい…
話をしてたら、みきたんの携帯が鳴った。
どうやら、サークルの人からの催促の電話みたい。
「ごめんね、美貴、そろそろ戻るわ。
ゆっくり一緒にいてあげられなくて、悪かったね」
「いえ、とんでもないです。
こちらこそ、いろいろお話聞かせていただいてありがとうございました」
こんちゃんがペコリと頭を下げたら、
みきたん、ニコッとして、こんちゃんの頭を撫でた…
…な、何なの?
初対面、あ、ウチの文化祭では会ってるけど、
みきたん、誰にでもこんなことするの?
もー、ばかぁ!
みきたんが、アタシの方を見ると微笑んで、
スッと両手でアタシのほっぺを包み込んだ。
…はぅ…
たぶん、コワイ顔になってただろう、アタシの顔は、
あっという間にゆるんでいったと思う。
「今日はわざわざ来てくれてありがとうね」
みきたんはそう言うと、手を振っていってしまった。
- 236 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:50
- こんちゃんが、ボンヤリとみきたんの行った方を眺めてる。
「藤本さん、かわいいだけじゃなくて、かっこいいねえ…」
「ア、アタシのみきたん、好きになっちゃダメだからね!」
こんちゃんが、アタシを見て微笑んだ。
「大丈夫。それはないから」
…なんか、バッサリ否定されるのも、ある意味さみしい。
ま、惚れられて、ライバル視されるのは困るからいいけど。
もう1周校内を回って、帰ろうと校門の方に向かった。
…でも、やっぱりこんちゃんはキョロキョロ落ち着きがない。
まだ食べ足りないのかな…
- 237 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:51
- すると、突然、こんちゃんが立ち止まった。
驚いてこんちゃんを見ると、こんちゃんは前の方を見たまま、固まっていた。
視線の先には、肩くらいまでの茶色い髪の毛の、キレイな女の人。
なんていうかすごいオーラを感じる。
彼女はこちらの方、というかこんちゃんを見ると、
ずんずん近寄ってきて、アタシたちの目の前で止まった。
「あれー?やっぱ、コンコンじゃん、久しぶりだねー。
どうしたの?遊びにきたの?」
「は、は、はい!ご、ごぶさたしてますっ!」
その人は、目を細めて、こんちゃんのことを見た。
こんちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「今、高3だよね?何か大人っぽくなったね〜」
「ご、ご、後藤さんも、前よりももっとずっとキレイになってます!」
「あはは、ありがと」
その後藤さんは、こんちゃんの頭をポンポンと撫でた。
こんちゃんはビクッとして、思わず顔を上げた。
後藤さんの顔をボンヤリと眺めてるこんちゃん。
「コンコンもすっごくかわいくなったよ」
こんちゃんは、これ以上顔が赤くなることなんてないんじゃないかって
思えるくらいに顔を真っ赤にした。
後藤さんの携帯が鳴った。
メールが届いたようで、画面を見ると、
後藤さんは、こんちゃんの頭をもう一度撫でた。
「じゃ、行くね。またね」
「は、はい!ま、また!」
後藤さんはこんちゃんだけでなくアタシにも、
ニコッと微笑んで行ってしまった。
- 238 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:51
- こんちゃんは、後藤さんの背中が見えなくなるまで、
ボーッと眺めていた。
「こんちゃん?」
こんちゃん、全然気付いてない。
「こんちゃんってば」
アタシが肩を揺すって、やっと我に返った。
「あ、ああ…」
「…こんちゃん、あの人のこと好きなんだ?」
見てたらすぐにわかるよ。
こんな動揺してるこんちゃん、見たの初めてだもん。
こんちゃん、コクンと頷いた。
こんちゃんの中学時代の先輩でありご近所さん。
同じフットサル部にいて、彼女はみんなの憧れだったとか。
家が近所といっても、そうそう会えるワケでもなく、
会うのは本当に久しぶりだったみたい。
- 239 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:51
- なるほどねえ…こんちゃんがアタシが女の人のこと好きだって言っても、
そりゃ驚かないよねえ。
こんちゃんなんか、中1のときからだから、
もう5年以上も片思いなんだとか。
「何で自分の気持ち伝えないの?」
「そんなっ!そういうんじゃなくて…
遠くから見てるだけでいいんだもん…
告白なんかしちゃったら、それで嫌われちゃうかもしれないし」
…やっぱ、悩みどころは同じなんだね。
こんちゃんの場合は、5年以上もそうなら、
今更何かしようっていう気にもなれないのかもしれない。
でも、アタシは、やっぱりガマンできない…
だって、みきたんもたぶん、アタシと同じ気持ちなはずなんだもん。
でも、みきたんも、アタシが最初そう思ったような、
こんちゃんがそう思い続けてるような気持ちでいるのかもしれない。
もしかしたら、そんな感情は抑えるために、
ちょっといいなと思う男の人に告白なんかされちゃったら、
その人と付き合っちゃったりしちゃうかもしれない。
…ヤバイ、ヤバイじゃん!
アタシ、のんびりと構えてられないかも。
もっと積極的にアタックしていかないと、
ニブチンみきたんは、アタシの気持ちなんて全然気付かないんだろうし。
- 240 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:52
- その日の夜、みきたんにメールして帰りは何時くらいになるか聞いたら、
『サークルの人たちと飲み会だからわかんないけど遅くなるよ。
明日は最終日だから、オールで飲みだし』なんてメールが返ってきた。
むぅ…サークル、サークルって!
馴れ馴れしい男の人たちや、
べったりくっついいてくるかわいい後輩の女の子もいるワケで。
モテモテみきたんだもん、他にもたくさんたくさんそういう人がいるんでしょ?
…もー、みきたんのばかぁ…
自分の好きな人にこんなにさみしい思いさせるなんて。
こんなときにみきたんに会えないなんてツラ過ぎるよぉ。
- 241 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:52
- かなり凹んでた週末も何とか終わって、
月曜日、アタシが学校に行こうと、朝、マンションを出たら、
少し前の方をみきたんが歩いてた。
みきたんっ!
走って飛びつこうとしたけど、みきたんの隣りにいる女の人が、
みきたんに腕を絡ませた。
…どういうこと?
あ、あの人、タコ焼き屋にいた人じゃん。
カワイイだけに、ムカつく。
っていうか、駅の方に向かってるってことは、
きっとみきたんの家に泊まったってことだよね?
…みきたん、アタシ以外の人、泊めちゃったの?
…ん?だいたい、昨日、オールだって言ってたじゃん。
オールしないで、あの人を家に泊めたってこと?
- 242 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:52
- その日、アタシは学校でかなり不機嫌だったと思う。
みきたん、今日は振替休日でお休みのはずだから、昼休みに
『今日は何してるの?』ってメール送ったのに、返事なかったし。
…もしかして、また誰かと会ってたりするの?
もう、みきたん、そんな風に誰に対してもイイ顔しちゃダメだよ。
相手も気があると思っちゃうじゃない。
帰り道、こんちゃんが心配して、
「藤本さんとケンカでもしたの?」って。
「ケンカどころか、会ってもない」
「それで、ご機嫌ナナメなんだ」
こんちゃんが、クスッと笑った。
ああ、そうですよ。
みきたんに会えないときは、不安なんだもん。
アタシ以外の誰かがみきたんの隣りにいると思うだけで、
すっごいすっごい悔しいんだもん。
そしたら、アタシの携帯が鳴った。
あ!みきたんからのメールだっ!
『さすがにオール明けはキツイね、今起きたよ。
今日の予定はもうちょっと寝ようかなってカンジ(笑)』
…みきたん、ホントにオールしてたの?
あの女の人を家に泊めて、オールで何かしてたってことじゃないよね?
みきたん、どうなのよ!?
『みきたん、会いたいよ』
メールを送った。
『じゃ、寝ないで待ってるね』
そんなこと言われちゃったら、ソッコー帰るしかないでしょ!
- 243 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:53
- アタシは、マンションに着いて、自分の家よりも先に、
みきたんのところに行った。
玄関で出迎えてくれたみきたんは、
寝癖で後ろ髪がちょっとはねたままでかわいかった。
で、もちろん、思いっきり抱きつく。
もう、みきたん、アタシのこと、ほおっておかないでよ…
そのままの状態で、みきたんの部屋に入っても、
アタシは何にもしゃべらなかった。
「亜弥ちゃん、どうしたの?」
みきたんが、優しい口調でアタシの顔を覗きこんでくる。
…みきたん、かわいい…
でも、みきたんはきっと誰に対してもこんな風に優しくて、
かわいい顔を見せるんだよね…
「…みきたん、昨日、ホントにオールだったの?」
「え?そうだよ。1軒目2軒目が居酒屋で、その後、カラオケ」
みきたんは全然ウソついてるカンジではないんだけど…
「ふーん、今朝、みきたん、見かけたよ。
女の人と一緒だったじゃん」
「え?そうなの?声かけてくれたらよかったのに。
一緒にいたのは、同じサークルの子だよ。
今日は朝からディズニーランドでデートなんだって。
朝、ウチでシャワー浴びて、ちょっとだけ寝てった」
「…ホントに?」
「うん、ウチからの方が近いからって。サウナじゃないってーのね」
…そっかー、そうだよね。
もし、そういう意味でのお泊まりだったら、
せっかくのお休みの日に、あんな朝早く帰ることもないしねえ。
- 244 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:53
- 安心してニコッとすると、みきたん、頭を撫でてくれた。
「お、やっと、笑ったな。
亜弥ちゃん、ウチの学校来たときから、元気ないから心配だったんだよ」
「…だってー、みきたん、モテるんだもん」
「は?何ソレ?どういうこと?」
「…そういうこと!」
アタシが、みきたんにギュウギュウ抱きつくと、
みきたんも不思議そうにしながらもギューっと返してくれた。
にゃははは…シアワセ…
「あ、亜弥ちゃんさあ、今月末の土日って空いてる?」
「え!?みきたん、デートしてくれんの?
それなら何かあってもキャンセルする!」
「あははは、デートっていうかー、
友達、あ、今朝ウチに来てた子ね…」
何でも、そのみきたんの友達と、
その幼馴染が車で旅行に行くんだけど、
泊まるところが貸し別荘で広くてたくさんの人が泊まれるから、
暇だったらおいでと誘われたらしい。
…そんなの行くに決まってるじゃない!
もし、アタシが行かなければ、その2人と一緒なワケでしょ?
そんなの不安だもん。
それに、みきたんと2日間ずっと一緒にいれるワケだし…
よーし、この旅行で、絶対みきたんとカップルになってやるっ!
- 245 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:54
- そして旅行当日。
アタシはちょっとだけ緊張。
一応、初めてお話する人たちと一緒だし、
それよりも、みきたんとずっと一緒にいれる…
がんばって、みきたんにアタシの魅力もっと知ってもらわないと!
みきたんがアタシのことスキって言いたくなるくらいに。
みきたんのサークルの友達、石川さんは、
優しくて見た目通り、性格もかわいらしいカンジ。
そして、その幼馴染の吉澤さんは、何か男の人みたいでかっこいい。
運転席と助手席に座ってる2人を見てると、
何かお似合いのカップルってカンジがするなあ。
吉澤さんが面白いことを言うと、笑って吉澤さんの腕とか脚とか、
体に触れる石川さん。
普通に恋人同士がイチャついてるようにしか見えなかった。
…もしかして、この2人って本当にそういう関係なんじゃないのかな?
「…石川さんと吉澤さんって…そのー…どういう関係?」
こっそりみきたんに聞いたつもりが、石川さんにも聞こえてたみたい。
「あれ?ミキティ、私たちのこと何て説明したの?」
「いや、『幼馴染』って…」
「もー、しょーがないなあ。
私とよっちゃんはね、恋人同士なの。
確かに幼馴染だけど、恋人になってからは4年半くらい」
…へっ?
実際に女同士で付き合ってる人って、アタシの周りには実はいない。
しかもこんな堂々とカミングアウトしちゃうなんて…
- 246 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:54
- 2人はご近所さんで、生まれたときからのお付き合い。
中学までは学校も同じで、高校に入るときに、
吉澤さんが引越しをすることになって、
それをきっかけに今の関係になったらしい。
2人とも、初めて好きになった相手がお互いで、
ずっとずっとお互いを思い続けていた。
だから他に好きになった人がいないのだとか。
石川さんがそんなふうに2人の関係を話すのを、
吉澤さんは恥ずかしそうに頷いて聞いてた。
ところどころツッコミを入れたりはしてたけど。
何かいいなあ、この2人…
「…すごーい!素敵です…初恋の人がずっと好きだなんて…
しかもお互いにそうなんて、ホントすごい!」
ホントにうらやましい。
アタシもみきたんと、この人たちみたいな関係になりたいなあ。
- 247 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:54
- 「ね、みきたんの初恋っていつ?」
「へ?…小3のときかなあ…あんまり覚えてないけど…」
…そ、そうだよね。
みきたんは、普通に男の人を好きになったこともあるよね?
何気にちょっとショックかも…
「あ、亜弥ちゃんはどうなの?初恋はいつ?」
「んー、幼稚園のときに、同じクラスの子と結婚しようとか
言ってたことあるみたい」
そんな話しをママから聞いたことがある。
でも、アタシにはその子を好きだった記憶が全くない。
その子と中学まで一緒だったけど、
小学校に入ってからは全然仲良くもしてなかったし、
たぶん深い意味もわかんないで、
『ケッコンする』とか言ってただけじゃないのかなあ。
「でも、アタシは全然覚えてないしー。
初恋なんだかよくわかんない。
うーん、そう考えると、初恋はみきたんかな?」
みきたんが飲んでいたお茶を吹き出した。
助手席の石川さんが笑いながら、
ダッシュボードの上にあったティッシュボックスを、
みきたんに差し出す。
みきたん、慌てて、周りや口を拭き始めた。
「…な、なに、ソレ?」
「だってー、みきたんのことすごく好きだもん」
ホントだよ。
こんなストレートに言ってるのに、みきたんはよくわかってないみたい。
顔を赤くしながら、目を見開いてるだけ。
- 248 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:55
- 「うふふふ、じゃ、ミキティ、亜弥ちゃんの気持ちに応えてあげないと」
石川さんが、楽しそうに笑いながら、
アタシとみきたんを交互に見つめた。
「応えるって…」
もー、みきたんも、アタシみたいに気持ちを言ってくれるだけでいいのに。
アタシはみきたんに抱きついて、ほっぺにチュッってした。
「うわっ、コラッ!」
みきたんが、コツンとアタシの頭を叩いた。
「いーじゃん、いつもやってるんだしぃ」
そーだよ、人前でやってもいいじゃん。
そんな恥ずかしがることないじゃん、お互いスキ同士なんだし。
「へー、いつもチューとかしてんだ?ミキティやるなあ」
吉澤さんはニヤニヤしながら、そんなことをつぶやいた。
にゃはは、いつもチューとかベッタリとかしてるもん。
アタシはみきたんの腕に腕を絡ませて、肩に頭を乗せた。
ねえ、みきたん。
アタシたちも、人に『付き合ってます』っていえるような関係になろうよ。
みきたんも、なりたいよね?ね?
みきたんはもう怒らなかったけど、黙り込んで難しい顔をしてた。
- 249 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:55
- その後はいろんなところに車で行って、テニスもして楽しかった。
ダブルスで石川さんと吉澤さんに勝てたのも、
アタシとみきたんの愛のチカラだよね?ね?
夜は、ウノもしたし、お酒も飲んだ。
でも、あんまりみんな強くないみたいで、缶チューハイ1本づつ。
みきたん、酔っ払うとどうなるんだろう?
もともとお酒は好きじゃないみたいで、
普段からほとんど飲まないらしい。
何か酔わせてみたい気もするけど、
気分悪くなったり、寝ちゃったりしたら、
今日の夜は何にもないまま終わっちゃいそうだし。
あ、もしかして、石川さんと吉澤さんは夜に備えて、
お酒を控えてるんじゃないのー?
うわー、エッチ!
アタシは何気に、飲んでもヘーキなんだよね。
よーし、テンション上げるために、ちょっと飲んじゃおうかな。
アタシは、自分の飲んでた缶を空けると、
みきたんのに手を出した。
「みきたん、飲んでいい?」
「亜弥ちゃん、大丈夫なの?」
「うん、全然ヘーキだよ」
ホント平気なんだけど、少しだけ酔ったフリで、
みきたんにベッタリくっつく。
「ほらー、酔っ払ってるじゃん」
「酔っ払ってなんかないもーん」
みきたんは、クスッと笑って、アタシの頭をグシャグシャ撫でた。
さすがにね、他の人の前だと、みきたん、恥ずかしがるだろうけど、
酔っ払いなら、許してくれるよね?
- 250 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:55
- ジャンケンで、お風呂の順番を決めたら、
石川さん、吉澤さん、みきたん、アタシってなった。
吉澤さんが出てきてから、
みきたんに「ねー、一緒に入ろう」って言ったら、
「な、何言ってんの!」って、真っ赤な顔で言われた。
いーじゃん、一緒に銭湯行ったことあるじゃん。
そんなみきたんを、石川さんと吉澤さんが笑いながら見てた。
「なーんだ、ウチも梨華ちゃんと一緒に入りたかったな」
「ねえ?私もよっちゃんと入ればよかったぁ」
「美貴は1人で入るからね!1人で!」
みきたんは、タオルとかを持って慌ててお風呂に行ってしまった。
「まったくー、ミキティ、照れ屋さんなんだからあ」
石川さんが、まだクスクス笑ってる。
- 251 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:56
- 「あ、明日はさあ、帰りにさ、みんなで温泉寄っていこうよ。
ココから、30分くらいのところにあるらしいから」
「ホントですか!?」
「うん。あ、でも、ミキティだけじゃなくて、
あたしたちとも一緒だけど」
吉澤さんがニヤニヤしてたら、
石川さんに思いっきり耳を引っ張られてた。
「いてててて…な、何すんだよ!」
「よっちゃんのスケベ!どうせ、ミキティと亜弥ちゃんの裸が見たくて、
みんなで温泉とか言ってるんでしょ!」
「は?何言ってんの?んなワケないじゃん」
「じゃ、さっきは何で私と一緒にお風呂入ろうとしてくれなかったの?」
「だ、だって、ミキティも亜弥ちゃんもいるのにさ、
そんな、2人でお風呂とか入れないじゃん。
時間だってどれだけかかるかわかんないし…」
…何なの、この2人?
ケンカが始まるのかと思ったら、単なるイチャつきだし…
つーか、アタシがいること忘れてない?
あー、もう、こんな2人はほおっておいて、
部屋でお風呂の用意でもしてよっと。
- 252 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:56
- 2階には2部屋あって、1つは石川さんと吉澤さん、
そして、もう1つがアタシとみきたんの部屋…
そりゃね、みきたん家に何回も泊まってるけど、
場所が違うっていうだけで、全然気持ちも変わってくる。
さっき、布団敷いたときに、1つでいいって言ったのにさ、
どうせ一緒の布団で寝るわけだし。
でも、みきたん、もう1つ敷いてた。
むぅ…せめて、この布団の間にある隙間は埋めちゃえ。
アタシは2つの布団をピッタリくっつけた。
アタシがお風呂から出たあとは、4人で少しお話したあとに、
それぞれの部屋に。
「じゃ、おやすみ〜明日は8時起床ね」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
- 253 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:56
- アタシが先に布団に入ったら、
みきたん、もう1つの布団に入っていった。
もちろん、アタシはそんなのは許さないから、
すぐに、みきたんの布団に入ってピッタリくっついた。
みきたんは、一瞬困ったように微笑んだけど、
すぐに頭を撫でてくれた。
そして、くっついたまま、今日の出来事なんかを笑って話してた。
「石川さんと吉澤さんって、すごく素敵なカップルだね」
「ん、そうだね」
「いいなあ、アタシもあんなカップルになりたい」
…もちろん、みきたんと、だよ。
アタシがみきたんのことをじっと見つめると、
みきたんもアタシの顔を見てた。
しばらく見詰め合ったあと、
突然みきたんがアタシの肩をグッとつかんできた。
「…亜弥ちゃん、あのさ…」
- 254 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:56
- 「…あん…あ、あん…」
な、何?
隣りの部屋からだよね?
「…あん…よっちゃん…もっと…」
…石川さん!?
ちょ、ちょっと、こういうの初めて…
ライブだよ!すぐ隣りで、そういうことしてるってことでしょ?
…すっごーい…
エッチしてるときって、ホントにこういう声出すんだ…
「亜弥ちゃん、聞いちゃダメ!」
みきたんが覆いかぶさってきてアタシの両耳を塞いだ。
…みきたん、顔真っ赤…かわいいし、色っぽい。
…アタシもね、隣りでしてるようなコト、みきたんとしたいな…
…ね、みきたん、してよ…
- 255 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:57
- その気持ちが伝わったのか、
みきたんのノドがゴクリと鳴った直後に、アタシはキスされた。
最初はいつもと同じ優しいキスだった。
でも、すぐになんだか激しくなりはじめて…
…え!?…
アタシが少し口を開けたら、その隙間から、
みきたんの舌が入ってきた。
…うわっ、なにコレ?…
すっごい、えっちぃ…
でも、でも気持ちいい…
同じように、アタシも舌をみきたんの舌に絡めた。
……すっごい、すっごい、気持ちいい…
もうワケわかんない…頭クラクラする…
…アタシが、誕生日にみきたんにしたキスなんて、
全然大したことなかったみたい…
…キスがここまでエッチで気持ちいいなんて思わなかった。
- 256 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:57
- 意識が飛びそうになってたときに、
気付いたら、みきたんの手がアタシのパジャマのボタンを外してた。
…もう、このままどうなってもいいかも…
ん?…で、でも、ダメ!
やっぱり、みきたんの口からちゃんとした言葉が聞きたい!
「…ま、待って!」
何とか力を出して、みきたんの手をつかんだ。
みきたんは、すごく悲しそうな表情になる。
違うの、拒否したワケじゃなくって…
「…アタシ、みきたんにとって妹なんでしょ?
妹にこんなことするの?」
「…え?…」
そう、みきたんは、アタシのことを『妹』としか言ってくれたことがない。
「…みきたんの気持ち、わかんないよ。
そういうこと何にも言ってくれないのに、
突然こんなことしてくるし…
…ねえ、みきたんの気持ち、教えてよ」
みきたんの口からちゃんとした言葉で聞きたい。
- 257 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:57
- 「…前に『かわいい』って言ったことあるよね?」
「1回だけね」
みきたんの方から、初めてアタシのほっぺにチューしてくれたときね。
覚えてるよ、もちろん。
すっごくうれしかったもん。
「…『好きだ』って言ったこともある」
「アレは、アタシがくすぐって無理矢理言わせたんじゃん」
だって、ウソでも聞きたかったんだもん。
『スキ』って言ってくれたのって、あのときだけなのが、何だか悔しい。
みきたんはフゥーと大きく息をつくと、
アタシに覆いかぶさったままで、じっと目を見てきた。
「…亜弥ちゃんがかわいくってかわいくってしょうがないよ。
好きだよ、ホンキで好きにきまってんじゃんか。
妹なんかじゃない、恋愛対象として好きだよ。
好きで好きでどうしようもないくらい。
亜弥ちゃんに抱きつかれるだけで、ドキドキする。
ほっぺにキスだけじゃ満足できない、
ちゃんとしたキスもしたいし、それ以上のこともしたい。
他の人となんか絶対して欲しくない、美貴とだけして欲しい。
…コレが美貴のほんとの気持ち。
…こんなんでいい?」
………み、みきたん………
「…何?もしかしてうれし泣き?」
みきたんが、顔を真っ赤にしたまま、アタシの目の辺りをぬぐってくれた。
…だって、だって、みきたんが、そこまでたくさん、
ハッキリと言ってくれるなんて思いもしなかったんだもん。
うれしいに決まってるじゃない!
「…もう、みきたんのばかぁ…」
アタシは、みきたんに抱きついて、チューをした…
- 258 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:58
- お互いパジャマも下着も脱いで、抱き合ったのはいいんだけど、
みきたんは何もしないで、じっとしてるだけ。
確かに、裸で抱き合うだけでも気持ちいいんだけど…
あまりに何もしてこないから、寝ちゃったのかなって思って、
みきたんの顔を覗き込んだら、ちゃんと起きてた。
っていうか、すごく戸惑ってるようなカンジがした。
「…みきたん、もしかして初めてなの?」
恥ずかしそうにコクンと頷くみきたん。
「…亜弥ちゃんとこんな風になれるなんて思ってなかったから…
梨華ちゃんにいろいろ聞いておけばよかった…」
申し訳なさそうにつぶやいたみきたんは、すごくかわいかったから、
頭を撫でてあげた。
「何かうれしいな…アタシだって、初めてだし…
お互い、いろいろ試してみたら、いいんじゃないかな…」
みきたんは、うれしそうにニッコリ微笑んで、
また、アタシにキスをしてきた。
- 259 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:58
- それから、みきたんはいろんなところにキスをしてくれて、触ってくれて。
アタシもそれを真似してみたり…
何かフワフワしてて、夢の中にいるみたいで、
今まで感じたことのない気持ちよさ。
最高に気持ちよくなったあとでも、
ずっとみきたんと裸のままで抱き合ってた。
ホントはね、何にもしなくても、
こうしてみきたんとくっついていられるだけですっごくシアワセなんだ…
「…ね、亜弥ちゃんは、美貴のことどう思ってるの?」
「…は?今まで散々言ってるじゃん!
ってゆーか、アタシの気持ちわかってなくて、こういうことするワケ?」
マジで、みきたん、ドンカンすぎっ!
「だって、亜弥ちゃんってどこまで本気かわかんないんだもん」
「みきたんが好きだって気持ちは全部本気ですぅ。
優しいとこも厳しいとこも、かっこいいとこもかわいいとこも、
しっかりしてるとこも甘えん坊なとこも、みきたんの全部がダイスキ!」
ホント全部ダイスキ!
だって、みきたんだもん。
みきたん以外考えられないんだもん。
- 260 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:58
- 「これからみきたんも、アタシみたいにちゃんと言葉で言ってよねー」
「…そんなの、恥ずかしいじゃん」
「えー?さっき、あんなにいろいろ言ったくせにー?
『好きで好きでしょうがない』とか『美貴とだけして欲しい』とか…」
「わー!わー!やめろって!」
アタシの心の中の保存版。
保護かけてあるから、さっきのみきたんの言葉は絶対忘れない。
「…うれしかったよ…みきたんがそこまで思っててくれるなんて」
アタシが、みきたんの髪を撫でたら、
みきたんは気持ち良さそうに目をつぶった。
そして小さなアクビをすると、すぐに眠ってしまった。
みきたん、今日は疲れたよね?
普通に遊びでも疲れたけど、
アタシに大告白してくれたし、エッチもしちゃったし…
だから、今日は起こさないでおいてあげる。
半目だって許してあげるから。
- 261 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:58
- アタシもさすがに疲れてたのか、気付いたら眠ってた。
窓のカーテンの隙間から入ってきた日差しで目が覚めた。
…そして、隣りにはみきたんがいる。
…ヤバイくらいシアワセかも…
裸にままのアタシたちは、さすがに少し寒かったのか、
本当にピッタリくっついていた。
くっついてた部分はすごくあったかかったけど、
背中とかはちょっと冷たくなってた。
みきたん、あっためてあげる…
アタシはみきたんの背中に回って、ギュッっと背中から抱きついた。
でもみきたんは気持ち良さそうに眠ったまま。
ふと時計を見ると、7時過ぎだった。
起床8時とかいってたっけ…
あ、そうだ!
早く起きて朝ゴハンの準備しちゃおうかな?
みきたん、きっと誉めてくれるしー、
アタシのこと、もっともっとスキになっちゃうね。
にゃはは、『お嫁さんにしたい』とか思ってくれちゃうだろうな。
- 262 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:59
- 服に着替えて、キッチンへ向かったら、
すでに吉澤さんが作業中だった。
「お、亜弥ちゃん、おはよー。早いね」
「おはようございます。アタシにも何かやらせて下さい」
「ありがと。じゃ、そのボールに入ってるヤツ、パンにぬってくれる?」
みんなで簡単にできるようにと、サンドイッチの材料を買っておいた。
タマゴとかツナとかハムチーズとか、
具の方はもうほとんど吉澤さんが作り終わってた。
アタシは、それをパンにぬって、切る係り。
「みんなで作ろうって言ってたのに、やらせちゃってすみません」
「いやいや。だってさあ、梨華ちゃんにやらせるワケいかないからさあ」
かっこいいなあ、自分の好きな人に楽させてやりたいってことなのかな…
「だってさあ、梨華ちゃん、異常なほど料理下手なんだよ」
…違った。
「まあ、亜弥ちゃんもこうして手伝ってくれるワケだし。
全然OK牧場ですよ」
吉澤さんは照れたように微笑んでた。
さっきの『料理が下手』は照れ隠しなんだなって思った。
石川さんに喜んで欲しいから、率先してやってるんだろうなって。
やっぱりかっこいいな、吉澤さん。
- 263 名前:サチ 投稿日:2004/05/05(水) 23:59
- 他にもサラダを作ったりして、
朝食の準備が終わったのは7時50分頃。
テラスのテーブルに運んで、
あとは、みきたんと石川さんが起きてくるのを待つだけ。
「はい、コレでも飲んでよー」
吉澤さんは、紅茶の入ったカップを2つ持ってきて、
テラスのイスに座った。
「ありがとうございます」
吉澤さんの隣りのイスに座って、お茶をすすった。
「で、ミキティとのエッチはどうだった?」
「!!…うっ、ごほっ…」
な、何で?
アタシは思わずお茶を吹き出しかけて、ヘンなところにつまらせた。
「いやいや、昨日の夜、盛り上がってたみたいだから」
吉澤さんはそーとーニヤニヤした顔でアタシのことを見た。
よく言いますよ、盛り上がってたのはそっちも同じでしょ!
「吉澤さんと石川さんほどじゃないですけどね」
「あらら、やっぱりバレてた?
つーか、梨華ちゃんがさあ、2人に聞こえるようにって、
いつもより大きな声出すもんだからさあ、あたしもついはりきっちゃってさ」
「…へ?」
- 264 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:03
- 何でも、石川さんはみきたんからアタシのことを相談されてたらしい。
それで、今回の旅行中にもっと仲良くなろうねって、
そんな演出までしてくれたみたい。
「えへへへ、亜弥ちゃん、初めてだったの?」
…吉澤さん、ただのエロオヤジなんですけど。
「初めてですよ。みきたんもそうだし」
「ええっ!?ミキティ、あんな顔して、経験ナシだったんだ…」
あんな顔って、どういう顔よ!
そりゃね、アタシもみきたんは経験あるんじゃないかなとは思ってたけど。
「初めてだったら、痛かったでしょ?大丈夫?」
「みきたん、優しくしてくれたんで」
「へー、梨華ちゃん初めてんときさあ、
あたしも優しくしてたのにさー、入るときは痛かったみたいで、
かなり辛そうだったんだけど。
ま、あたしも最初はちょっと痛かったかな」
「入る?何がですか?」
「へ?あたしたちは道具とか使うのイヤだから、指だけだけど?」
「どこに指が入るんですか?」
- 265 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:03
- 吉澤さんが『エッ?』って顔をして固まった。
「昨日の夜、ミキティ、何したの?」
「え?そのー、キスして、あ、あの結構激しいヤツですよ?
それから、体のいろんなとこ触ったり…」
「で、亜弥ちゃんのオンナノコの部分にも触っただけ?」
「そ、そうですよ?」
だって、みきたんにちょっと触られただけで…
うわー!昨日のこと思い出して、ヘンな気持ちになってきた…
吉澤さんのバカ!
「ま、初めてだから、ミキティも遠慮したのかもね…
じゃ、今度は亜弥ちゃんから指入れてみなよ」
「え?そ、その部分にですか?」
「そう、初めは痛いだけかもしれないけど、
どんどんよくなっていくから。
しかもね、奥の方にね、ツボみたいなところがあって、
そこを刺激するとマジで他では味わえない気持ちよさがあるから」
アタシ、昨日のだけでも、今まで感じたことないほど、
充分気持ちよかったのに、それ以上なんてあるの?
- 266 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:04
- 「あ、触っただけってことは、舐めてもいないの?」
「し、してないです!キタナイじゃないですか!」
吉澤さんは、より一層ニヤニヤしてた。
「ホント、亜弥ちゃんはウブなんだからあ…
あのね、好きな人のだったら、キタナイなんて思わないでしょ?
ミキティのがキタナイと思う?」
アタシは首を横に振った。
そりゃ、みきたんのは思わないけど、自分のは…
「激しいキスしたなら、舌も使ったワケでしょ?」
アタシはコクンと頷いた。
「気持ちよかったでしょ?普通にキスするよりも」
もう1回、首を縦に振った。
「それと同じこと。ただ触れるより、舌を使った方が、
何倍も何十倍も気持ちいい。
体のどの部分に対してもさ、ほら、耳とかでも。
自分も気持ちよくなりたいけど、相手にも気持ちよくなって欲しいでしょ?」
確かに、アタシもみきたんを気持ちよくしてあげたいと思うし、
昨日、アタシが一番気持ちよかったあと、
みきたんも何だかうれしそうな顔をしてた。
- 267 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:04
- 「あ、そういや、指を入れられるより、
舐められる方がスキって人も多いみたいよ」
「…石川さんはどっちなんですか?」
「梨華ちゃんも、舐める方だろうなあ。
『舐めて』ってよく言ってくるし…」
そんな言葉を、石川さんが吉澤さんの耳元で囁いてるのを想像してしまう。
きっと、吉澤さんにはたまんないんだろうなあ。
アタシは、ちょっとキショイと思っちゃったけど。
「石川さんって、なんか色っぽいですよね」
「色っぽいっつーか、エロいでしょ?
もう、体つきからしていやらしいというか…」
「でも、そんなとこもいいんですよね?」
「まあね」
思わず笑ってしまった。
こういうことを、平気でサラッと言ってくれる吉澤さん、
かっこいい。
でも、石川さん本人には言ってないのかもなあ。
みきたんと一緒で何気に照れ屋さんっぽいもん。
「すっげー、そそられるんだよね。
でもさ、他の人も梨華ちゃんのことそんな風に思って
見てるんじゃないかなって思うとさ…」
「ああ、アタシは全然思いませんよ。
みきたんも思ってないと思うし」
「何だよ、人のこと、ヘンタイみたいに!」
吉澤さんが笑って、アタシの頭を小突いた。
そっかあ…付き合い長くても、
他の人から見たらこんなにラブラブでも、
不安に思うところはあるもんなんだね…
- 268 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:08
- 「ちょっと!よっちゃん!」
石川さんが勢いよく、テラスにやってきた。
ウワサをすれば…
「ああ、梨華ちゃん、おはよー」
吉澤さんは、相変わらずニヤニヤしたままの顔を石川さんに向けた。
石川さんの着てるシャツは、ピッタリとしてて、
大きな胸のラインもはっきり見えてる。
たぶん、吉澤さん、『そそられてる』状態だと思う。
「まったく、かわいい子がいると、すぐそんないい顔するんだから」
「え?何言ってんの?」
あー、またイチャつきはじめるんじゃないの?
アタシもみきたん、起こしてこようかな。
部屋の中を見ると、みきたんがコワイ顔をして立っていた。
「あーっ!みきたんっ!!」
アタシは思わずみきたんに飛びついたから、
よろけて床のじゅうたんに押し倒すみたいになっちゃった。
でも、みきたんもすごく笑顔になってて、
さっきのコワイ顔じゃなくなってたから、一安心。
- 269 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:08
- 「みきたん、おはよーのチュー」
チュッ。
にゃはは、やっぱり恋人どうしは、おはようのチューするよね?
「おはよーの『愛してる』…みきたん、愛してる」
アタシはみきたんの耳元で囁いた。
新婚さんだったら、『あなた今日も愛してるわ、チュッ』なんて、
いってきますのときにやったりするもんねえ。
「みきたんからも『愛してる』やって」
「へ?何で?」
「やってよー」
新婚さんのダンナさんの方も、『ああ愛してるよ』って言ってくれるもん。
みきたんは鼻で小さく笑うと、アタシの耳元に口を寄せてきた。
「亜弥ちゃん、愛してるよ」
…うわー!みきたん、言ってくれた!
さすが、初夜のあとは違うね!
アタシはみきたんに思いっきり抱きつくと、
みきたんの手をつかんで立ち上がった。
- 270 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:08
- 「ね、部屋に戻ろう」
「え?ゴハンじゃないの?」
「さっきね、吉澤さんにいろいろ教えてもらったの。
だからね、試したいの」
「教えてもらったって、何を?」
「決まってるじゃん、気持ちいいエッチのやり方」
「はあ!?」
さっき、吉澤さんに教えてもらったこと、
まず、舐めるでしょ。
もう、みきたんのいろーんなところ、舐めてあげる。
あと、指も入れてみなきゃ。
気持ちよくなるツボを探してみないと。
…昨日ね、みきたんがちょっと苦しそうにしながら、
気持ちよがってた顔が忘れられない。
あんな顔、他の人に見せたことないよね?
他にもね、みきたんのいろんな顔が見たい。
アタシにだけ見せてくれる表情を。
部屋に入って、みきたんに思いっきり抱きついた。
「みきたん、ダイスキっ!
もう、アタシだけのモノだからね!」
絶対絶対離れないからね。
みきたんだって、アタシから一生離れられなくなるくらい、
メロメロにしてあげるから…
―完―
- 271 名前:サチ 投稿日:2004/05/06(木) 00:19
- 完結しました
>>216さん
そういうことでした…?
>>217さん
ありがとうございます。
はまるとか言っていただけるのは、うれしい限りです
>>218さん
ありがとうございます。
萌えていただけるなんて、本当にうれしいです。
ミキティはどことなくクールで、亜弥ちゃんはかわいさ重視で書いてみました。
しばらく更新していなかったので、最後に大量更新しました。
他の方のを読むにつれ、
自分の作品って面白くないなあと感じてしまいました…
もっと勉強して、多少なりとも自信がついたら、
また何かしら書きたいと思います。
今まで読んで下さった方、どうもありがとうございました!
- 272 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/06(木) 16:25
- 大量更新、びっくりしたけどお疲れさまでした!おもしろかったよ!!
マジでまた書いてね!!待ってるよ!
- 273 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/06(木) 21:16
- おつつつつ!!すごいおもしろかったです。
よっすぃとあややの会話が生々しくって思わずニヤニヤしちゃいましたw
なんか読んでてすごい嬉しくなる小説でした、次回作とかあったらぜひ読みたいです。
みき帝の学ラン姿・・・見たい(*´Д`*)
- 274 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/06(木) 22:24
- 毎日更新チェックするくらい楽しみにしてたんで、
終わっちゃうのは寂しいですね。
すっごいおもしろかったんで、次回作も楽しみにしてます。
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2004/05/06(木) 22:43
- 完結お疲れ様です。
私、サチさんの小説が大好きです。本当に面白かったので自信持っててくださいね。
次回作楽しみしてますよ。
いつまでも待ってます。頑張ってください。
- 276 名前:名無しマスク 投稿日:2004/05/07(金) 00:16
- あなた様の作品が面白くないなんて
マ ジ あ り え な い ! !
ほんと萌え死ぬほど面白かったですよ。
毎度のことながら、はまりましたw
確かに他の方のみきあや作品も素晴らしく高レベルなものばかりですが、あなた様の作品も
その方達と普通に並ぶほど最高です。
読者は嘘をつきません!!
是非またあなた様のみきあや小説を読める日が来ることを祈ってます。
みきあやバンザイ!!
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/07(金) 00:21
- 完結お疲れ様です。
何気にずっと楽しみにしてました。
こう視点を変えるだけで雰囲気が変わったりして、
すごく良かったです。それにこの作品大好きです。
もう最後のよっすぃ〜と亜弥ちゃんの早朝エロトークなんて、
想像できすぎて笑いが止まりませんでした。
また次回作も楽しみにしていますね
- 278 名前:名無し読者 投稿日:2004/05/07(金) 00:33
- 完結お疲れ様です。
自分も正直ここ最近のあやみき小説の中で一番ハマってました。
更新を最低1日1回はチェックしてました。
この小説が面白くない!?
ありえれいにゃです。すんごいおもしろかったです!!
また亜弥ちゃんが可愛い。可愛い亜弥ちゃんに可愛いと言われる藤本さんも可愛い。
あやみき最高、あやみき最強、あやみき最萌!
新作も期待してます。ありがとうございました。
- 279 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/07(金) 03:25
- この2人大好きでした!!
また気が向けば番外なんか書いていただけるとすごく嬉しいです。
マジ面白いですよ〜
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/07(金) 19:34
- すっごく面白かったですよー!
みきあや小説の中で一番萌えましたよ!マジで!!
そして・・・出来れば続編〜希望です。
本当にメッチャ面白かったです。
これからも、頑張ってくださーい!!
- 281 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/05/07(金) 23:38
- 作者さま
はじめまして。
今日、はじめて知って、面白くて一気に読んでしまいました。
完結、お疲れ様までした。次回作も期待して待ってます!
PS:娘。小説の保存もさせていただいているのですが、もしよろしければ保存させてください。
よろしくお願いします。できればですので…。
当方のHPは[http://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/index.html ]です
- 282 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/31(月) 22:39
- ちょこっと出てきた後紺も気になるw
- 283 名前:サチ 投稿日:2004/06/14(月) 11:48
- 皆さん、たくさんのご感想ありがとうございました。
とりあえず、お礼だけでも…
>>272さん
ありがとうございます。
自分で書いてて面白くないと思い始めたら、
もう早くこの小説を終わりにしたくて、大量に更新しました。
驚かせてしまってスミマセン…
>>273さん
ありがとうございます。
よっちゃんとあややの会話は、バカっぽくかわいらしくと思って書いてみました(W
ミキティの学ラン、見たいですよね…
ミキティの制服姿はセーラー服よりブレザーが好きですね(W
>>274さん
ありがとうございます。
そんな風に言っていただけるなんてすごくうれしいです。
>>275さん
ありがとうございます。
あたたかいお言葉、本当にうれしいです。
>>276さん
ありがとうございます。
そこまでのものではないですけど、うれしい限りです。
あやみきバンザイ!ですね(W
>>277さん
ありがとうございます。
大好きといっていただけるなんて、非常に照れます(W
エロトークで喜んでいただけてうれしいです。
>>278さん
ありがとうございます。
かわいいと言っていただけるのはほんとうれしいですよ。
何はともあれあやみきは最高です!
>>279さん
ありがとうございます。
本当にうれしい限りです。
- 284 名前:サチ 投稿日:2004/06/14(月) 11:48
- >>280さん
ありがとうございます!
一番なんて、申し訳ないです…
>>281さん
ありがとうございます。
そんな人様の個人的なHPに載せていただけるようなものではないですが…
でも、わざわざ言っていただいてありがとうございます。
勝手に掲載されてる方がほとんどだとお聞きしたので。
>>282さん
たぶんこんちゃんの片思いのまま終わるんでしょうねえ…
本当にこんなたくさんの感想をいただけるなんて思ってもみませんでした。
調子にのって、新作を書きたいなあなんて思ってます。
もちろん、あやみきメインで。今回みたいに他のCPも出てくるかもしれませんが。
でもまだ全然書き始めていないので更新はいつになるとか予告はできないんですが…
ただスレをムダにしないように、ココで書く予定でおります。
ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
- 285 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/06/15(火) 21:57
- 作者さま
ありがとうございます。保存させていただきました。
背景色や文字色などご希望がありましたら、教えてください。
新作も是非保存さててください。よろしくお願いいたします。
- 286 名前:名無しマスク 投稿日:2004/06/16(水) 19:13
- おぉぉっ!!
どんどん調子に乗っちゃってくださいなw
この小説にこんなにもたくさんレスがついたのは、それだけこの小説に魅力があるからですよ。
どうか、これからも自信をもって書いてくださいね。
新作の方、みきあやメインと言う文字を見て心が躍りましたww
マイペースに頑張ってください。
引き続き期待しておりますm(_ _)m
- 287 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/19(土) 23:12
- 作者さん降臨&新作クル━从‘ 。‘从━从‘ 。)━川 ‘)━从从从━(V 从━(vV从━川VvV从━!!!!
程良く首を長くしてお待ちしておりますw
- 288 名前:サチ 投稿日:2004/06/29(火) 13:24
- 新作いきます。
トイトルは「かけがえのないもの」です。
- 289 名前:〜プロローグ〜 投稿日:2004/06/29(火) 13:24
- 「ふぁ〜」
私立ハロモニ高等学校の屋上、階下から繋がる階段の入り口の上で、
美貴は大きく伸びをして横になった。
ココは美貴の指定席。
梅雨の中休みか、空は晴れ渡り、
夕方の今は日差しもさほど強くなく、気持ちいい。
2年生のときまでやっていたバレー部もやめてしまい、
天気の良い放課後は何となくココで過ごしていることが多い。
さすがに昼休みには沢山の生徒たちがいるが、
放課後には滅多に人は来ないし、普通に屋上にやってきた人からは
目につかない位置でもあるし、穴場的な場所である。
美貴がウトウトとしかけたときに、
乱暴に入口のドアが開けられた。
「オマエさあ、ちょっとカワイイからってイイ気になんなよ!」
美貴が顔をしかめて、そちらの方を見ると、4人の生徒がいる。
いや、4人というより3対1。
おそらく1の方の子が3人の後輩なのだろう。
その子が突き飛ばされて、コンクリートに尻餅をつく。
「何でアンタ、石川先輩とかから気に入られてんのよ!
裏でコビ売ったりしてんじゃないの?」
「いえ、アタシはそんなことしてません!」
彼女はそう言うと、3人の方をキッと睨んだ。
なかなか気の強そうな子だなと美貴は思った。
先輩らしき1人が、その子のお腹の辺りを蹴る。
彼女が苦しそうに顔をゆがめた。
余計なことに首をつっこむのがあまり好きでない美貴も、
さすがにこればっかりは放っておくわけにはいかなかった。
- 290 名前:〜プロローグ〜 投稿日:2004/06/29(火) 13:24
-
「ちょっと、アンタたち、うるさいんだけど」
4人が一斉に美貴の方を見る。
「…げ、ヤバイ!藤本先輩じゃん」
蹴りを入れた子がつぶやく。
美貴はハシゴを数段降りると、ジャンプして降り立った。
「何してんの?イジメ?」
ゆっくりと彼女たちに近づく。
「いえ、何でもありませんっ!」
3人の子たちは慌てて走って屋上から出ていった。
美貴はあきれたように鼻で笑った。
「何、アレ?」
尻餅をついたままの彼女は、キョトンと美貴のことを見ていた。
美貴はクスッと笑った。
「ピンク」
彼女は不思議そうな顔をした。
「パンツ、丸見えなんだけど」
彼女がハッとなり慌ててスカートを押さえて、脚を閉じる。
美貴は彼女に近づくと、両腕を掴んで立たせてやり、
蹴られたお腹をさすってやった。
「いろいろあるだろうけど、がんばんなよ」
今度は頭を撫でてやり、ニッコリ微笑んで、
美貴は屋上から出ていった。
残された彼女はしばらく、屋上のドアをぼんやりと眺めていた。
「…藤本、先輩…」
これが、彼女―亜弥―と美貴の初めての出会いであった。
- 291 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:25
- 「ねー、どうする?相手は?」
「ん〜、亜弥ちゃんに選んでもらえばいいんじゃない?」
のんびりとした口調で答えた絵里が、
眉間にしわを寄せてるれいなの顔を見て、ニコッと微笑む。
「それじゃ、この企画の意味ないじゃん!」
「だってー、いろいろ調べるの面倒だしー。
全然いいと思うんだけどなあ」
れいなと絵里は、この高校の映像部の1年生。
只今、放課後の教室で2人っきりで、
文化祭のことについて話し合っているところである。
おととしまでは、映像部の1年生は短い映画を作っていたのだが、
去年の1年生がテレビ番組『恋するハニカミ』の
この学校バージョン『恋するハロモニ』をやってみたら、
これがものすごい好評であった。
実際、それまでの映画は全然評判がよくなく、
客足も大したことがなかったのが、去年は満員御礼となり、
これから毎年、1年生の登竜門として、
『恋するハロモニ』をやらせようということになったのだ。
まずは、そのカップルの人選からはじめなければならない。
まったく接点のない2人を選んだ方が、初々しさが出てよい。
なるべくなら、学年が違う方が見に来てくれる人の幅も広がる。
もちろん、皆が見たいと思えるような、
学校でも人気のある人を選ばなければならない。
去年は、当時1年だった吉澤ひとみと、
2年だった石川梨華が選ばれた。
ひとみの方は1年生にして、
学校の中で知らない人はまずいないというほどの人気ぶりだった。
梨華は知る人ぞ知る美少女であったが、
梨華自身がそういうことに全く疎く、
ひとみのことも全然知らないという情報を得た映像部員が、
この2人をキャスティングして大成功をおさめた。
ちなみに2人はこのことをキッカケに本当にお付き合いをはじめてたくらい。
だから、今年の映像部への期待も高く、
誰が選ばれるのかと、皆から注目されている。
- 292 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:25
-
れいなと絵里がキャスティングした1人は、
2人と同じクラスの松浦亜弥。
亜弥はそのかわいらしいルックスでも評判だが、
テニス部で、その腕もなかなかのもの。
1年生からも先輩からも人気がある。
(一部、その人気を妬んだりする人もいたりもするが…)
何より同じクラスで頼みやすかったというのがあった。
亜弥は「面白そうだね。いいよー」と2つ返事でOKしてくれた。
で、亜弥の相手役を選ぶのに、困っているところだった。
いろいろ情報網を広げてはいるものの、
どうもふさわしい人が見当たらない。
まず、亜弥と面識がないこと。
こういう企画をちゃんとやってくれそうな人。
自分が選ばれたことを秘密にしておいてくれる口の固い人。
もちろん、文化祭当日まで、全くのシークレット。
この条件に合う人がどうしてもいない。
「れいなは、やっぱ藤本先輩が1番いいと思うんだよね」
いわゆる学校の人気者たちを撮影したデジカメの美貴の写真を
見ながら、れいながつぶやいた。
「えー?藤本先輩じゃ、無理だって。
絶対引き受けてくれないと思うし、交渉しにいくのコワイ…」
「そっかなあ?藤本先輩、実はいい人だと思うんだけどなあ。
確か、矢口先輩が同じクラスだったから、
交渉するの手伝ってもらおうよ。それなら、絵里もいいでしょ?」
「…うん、わかった」
絵里は不安げながらも頷いた。
- 293 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:26
-
教室のドアがガラッと開いて、さゆみが入ってきた。
「あれー?れいなと絵里まだいたんだ?」
さゆみが、ギュッとれいなに抱きつき、
その後、絵里にも抱きつく。
「あー、もしかして、文化祭の打ち合わせ?」
「ま、そんなとこ」
れいなが素っ気無く言う。
「この前見せてくれた吉澤先輩と石川先輩のビデオのヤツ
やるんでしょ?2人ともステキだったよねー、宝塚みたいで。
あ、もしかして、まだキャスティング決まってないの?」
「うーん、ヒ・ミ・ツ」
絵里が抱きついているさゆみのほっぺをつつきながら答える。
「ね、ね、あたしと高橋先輩ってどう?
もー、最高だと思うんだけどー。
お客さんも、いーっぱい入るよ、絶対」
「いや、それじゃ、この企画の意味ないから」
れいながあきれたようにつぶやく。
「ダメだよー、さゆは高橋先輩と知り合いだしー。
知り合いっていうか、さゆが一方的なだけだけど」
「えー、でも、でもね、最近はね、会うと、
チュッってしてくれるようになったしー」
「いや、たぶん、さゆが無理矢理してるんやろ」
れいなは、さゆみと絵里が抱きついたままなのを見て、
なぜだかイライラしていた。
「とにかく、さゆは選ばんから。
もう、暑いんだから、いい加減離れたら?」
「えー、絵里と離れたくないー」
「絵里も別に暑くないよ」
顔を寄せ合って、ニッコリ微笑み合う2人を見ているのが、
れいなはイヤだと思った。
- 294 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:26
-
「…ちょっと、矢口先輩に電話してくる」
教室を出て、廊下の壁に寄りかかり、
そのままズルズルと床に座り込むれいな。
「…何で、何で、こんなにムカムカするんやろ…」
絵里もさゆみも大好きな友達だ。
でも、どうしてか2人がベタベタしているのを見ていると、
なぜかすごく不快な気持ちになっていた。
さゆみは誰に対しても、とくにかわいい子に対しては、
先輩であろうが構わずにスキンシップをはかる。
れいなは、それは別に何とも思わない。
むしろ微笑ましいとさえ、感じていた。
ただ、絵里にされるのだけはイヤだと思っていた。
絵里が、自分以外の人と親しげに話してたりするだけで、
心の中が乱されていった。
れいなは、そんな自分の気持ちが何なのか、
全くわかっていなかった。
- 295 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:26
-
「えー?ふじもん?おいら、そんなに仲良くないんだよねー」
結局、その翌日、れいなと絵里は昼休みに、
映像部の先輩である真里を呼び出して、直接お願いをした。
「そこを何とか!
れいなたちが藤本先輩んとこいったら不自然だし、
たぶん、話も聞いてもらえないだろうし」
「うーん…ま、でもいい人、目つけたじゃん。
松浦とはまず接点ないだろうしね。
もし、あの子が出てくれたら、すごいことだよ」
「ですよね?ですよね?」
「でも、おいら、OKもらえる自信ないなあ…」
「い、いや、呼び出してもらえるだけでいいんです!
あとは、れいなと絵里でがんばって交渉しますから!」
れいなが力説するのを、絵里は驚いて見ていた。
真里は満足そうに頷いて微笑んだ。
「よし、そこまで言うなら、おいらも一肌脱いでやるよ!
ダメモトだけど、がんばれよ!」
「はいっ!ね、絵里、がんばろうね!」
「え?あ、うん…がんばろ…」
絵里は不安だったが、真里の手前もあってニコッと微笑んだ。
- 296 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:27
-
そして、その日の放課後。
映像部の部室で、れいなと絵里が待っていると、
真里が美貴を連れてやってきた。
「あのね、この子たち、ウチの部の1年生で田中と亀井。
どうしても、ふじもんと話しがしたいって言うんで」
真里がぎこちなくれいなたちの方を見てウインクをする。
「何?何の用?」
美貴が冷ややかに言ったので、絵里はビクッとして目を伏せた。
それに気付いたれいなが、絵里の手を握り、立ちあがった。
「あの、お願いがあるんです!
文化祭で映像部がやる『恋するハロモニ』に出て欲しいんです!」
「は?何ソレ?」
「えっとね、去年、梨華ちゃんとよっすぃーがやったヤツ。
覚えてない?」
慌てて、真里がフォローする。
「あー!アレね。面白かったよ」
美貴がニコッとしたので、れいなも真里も安心した。
「え?アレに美貴が出んの?
ヤダよ、知らない子とデートしなきゃいけないんでしょ?
面白い子だったらいいけどさあ、
おとなしい子だったら、美貴、何しゃべっていいかわかんないし」
「い、いや、あの…」
「だいたいさあ、1日中カメラで撮られてるんでしょ?
しかも休みの日とかでしょ?面倒くさいよ、ムリムリ」
美貴が、部室を出ていこうとしたその背中に絵里が叫んだ。
「あ、あの!」
美貴は、鬱陶しそうに振り向く。
「デート代はこちらで持ちますんで、映画でも遊園地でも、
お好きなところに行ってもらって構わないんです!
タダで休みの日が過ごせるなんて、ラッキーじゃないですか?」
絵里が弱々しい声ながらも、必死に叫ぶ。
「そ、そう!しかも、名前は言えないんですけど、
今回のデートの相手、藤本先輩にも絶対気に入ってもらえます!
超かわいいし!だから、だから、お願いします!」
れいなも付け加えると、2人揃って120度の角度で頭を下げる。
- 297 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/06/29(火) 13:27
-
美貴がそんな2人を見て、鼻で笑った。
「ふーん、タダで好きなとこ行けるんだ?」
絵里とれいなは頭を上げて、思いっきり頷く。
「しかも、超かわいい子と一緒で?」
2人はもっと激しく頷く。
「じゃ、いいよ」
何を言われたかすぐには理解できずに、
れいなと絵里は顔を見合わせた。
「今の時期じゃ遊園地は暑そうだから、映画でいいよ。
その方が安く済むでしょ」
れいなと絵里は徐々に超笑顔になっていった。
「「ありがとうございますっ!」」
- 298 名前:サチ 投稿日:2004/06/29(火) 13:28
-
こんなカンジでスタートしました。
今回は高校生どうしの設定です。
例のテレビ番組を見てて、ハロプロ内でやってほしいって
変な妄想しはじめたのがきっかけで書き始めました(笑)
もちろんあやみきメインですが、
書いてるうちに田亀も結構…(笑)
>>285さん
いえ、とんでもございません。
管理人業務頑張って下さい。
>>286さん
ありがとうございます。
まだまだ自信はありませんが、
マイペースでがんばりますので、引き続きよろしくお願いします。
>>287さん
ありがとうございます。
がんばります。
次の更新はできれば1週間以内を目指します。
もうちょっとかかっちゃうかもですが…
- 299 名前:サチ 投稿日:2004/06/29(火) 13:30
- いきなり、誤字してますね…
失礼いたしました。
>>288
トイトル→タイトル
- 300 名前:桜娘 投稿日:2004/06/29(火) 14:51
- おもしろ〜い♪
続き楽しみにシテマ〜ス♪
- 301 名前:仕事中 投稿日:2004/06/29(火) 16:42
- おもしろいっすねぇ〜。この先がかなり期待です。
無理せずにサチさんのペースでがんばってください。
楽しみにお待ちしています。
- 302 名前:名無しですよ? 投稿日:2004/06/29(火) 18:50
- やった〜!!!
あやみき&田亀大好きなんです。超ー嬉しい!
サチさん、今回も本当面白そうです。更新頑張ってください。
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/30(水) 03:49
- 管理人様の発想に脱帽です。これからも頑張って下さいね。
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/30(水) 22:26
- 新作キタ━从‘ 。 ‘从━!!。
ドキドキしながら続き待ってます!
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/01(木) 12:29
- 設定だけですでに萌え死にそうです。
更新更お待ちしています。
- 306 名前:おって 投稿日:2004/07/01(木) 21:29
- 発想凄すぎます。
見てたら触発されました、自分も新作考えます。
- 307 名前:↑ 投稿日:2004/07/01(木) 21:29
- すみません、名無しのほうが良かったっぽいですかね。
- 308 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 23:00
- 素晴らしい!目の付け所が違うな
想像しただけで萌え萌え
- 309 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:09
-
『恋するハロモニ』の収録日。
夏休みだけあって、本当に気持ちのいい晴天である。
れいなと絵里は美貴の希望を基本として、
デートコースをいろいろ検討し、最終的に決定したコースを、
今回のエスコート役である美貴と3人で
打ち合わせも兼ねて、事前に回っていた。
もちろん、亜弥とも別に打ち合わせをしたが、
当日のことは、集合場所と時間しか伝えていない。
あくまでどっきり企画的で、リードするのは美貴なので、
亜弥にはあえて何も知らせないでおく。
打ち合わせは、今回の趣旨を理解してもらうためのものであった。
収録中は、2人だけでデートしてるつもりで。
れいなと絵里がそれぞれ使うのも家庭用ビデオカメラだし、
何かあるときにだけ合図を送るので、
いないものだと思って、最初の集合前のコメント以外は、
カメラを意識しないで行動してほしいということを、
亜弥、そして美貴も納得してくれた。
- 310 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:09
- 待ち合わせ場所は渋谷モヤイ像前。
まずは美貴が向かっている。
とりあえず美貴にはれいながついて撮影をしている。
絵里が『やっぱり藤本先輩、コワイ…』と言ったので
自然とれいなが美貴担当ということになっていた。
「今日は暑いですねえ。でもデート日和ってカンジですね!
それにしても、どんな子が来るんだろう…」
美貴がカメラ目線で優しくしゃべる。
れいなは内心すごく喜んでいた。
実は美貴がちゃんとやってくれないんじゃないかと、
少し不安に思っていた。
打ち合わせのときも結構面倒臭そうにやっていたし。
だからこんなにノッてやってくれるなんて、
自分の人を見る目は確かだったなあと、
つい笑顔になってしまうくらいだった。
一方、亜弥も待ち合わせ場所に向かって歩いていた。
「うーん、『夏』ってカンジ!気持ちいい!
プールとか行ってもいいくらいかもー。
あー、今日はどんな場所に連れて行ってもらえるのかなあ…」
亜弥は空を見上げた後、絵里が向けているカメラに話しかける。
亜弥のアイドルみたいな素振りに満足しつつも、
昔モデルとかでもやっていたのかなあと絵里はぼんやり考えていた。
- 311 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:10
-
美貴がモヤイ像の前でそわそわしながら、待っている。
れいなが美貴にカメラを向けているので、
自然とその人物がデートの相手なのだということはわかった。
美貴の背後から、そっと亜弥が近づいていく。
2人の距離が2メートルくらいになったときに、
美貴が気配を感じて振り返った。
「あ…」
亜弥は驚いて固まってしまった。
- 312 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:10
-
亜弥は屋上で助けてもらった後、美貴のことを探した。
放課後、屋上の入口の上も何度かのぞいたが、美貴はいなかった。
暑くなってきたので、美貴は屋上に行ってなかっただけなのだが。
2年の先輩が『先輩』と言っていたのだから、3年生であろう。
3年生ということと、苗字しかわからず、
どう調べていいかわからなかった。
下校のときに校門で待ち伏せをして、
見かけたことはあったけれど、
美貴は友達と一緒であったし、話しかけるのにはためらわれた。
せめてお礼くらいは言いたい。
でも、自分のことを覚えていないかもしれないし…
そう思っているうちに夏休みになって、
その機会を逃してしまっていた。
そして、その美貴が、今、自分の目の前にいる。
つまり、美貴と今日1日デートするということだ。
亜弥は頭の中が一瞬パニック状態になっていた。
れいなと絵里が亜弥の方を指さしたので、
美貴は亜弥を見ると、ニコッと微笑む。
「あ、はじめまして、3年C組の藤本美貴です」
亜弥は内心ガックリとした。
『はじめまして』なんて、
やっぱり自分のことなんて覚えてなかったんだと。
「…こんにちは、1年A組の松浦亜弥です」
- 313 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:10
-
ニコニコしたまま亜弥を見つめている美貴。
亜弥の方はショックと緊張で笑顔になれなかった。
美貴は照れ臭そうに鼻をかいていた。
「…うーん、何かこういうの照れるよねえ…」
れいなと絵里が手を繋ぎ、その手を高く上げて、
美貴の方に見せる。
「あ、そっか、とりあえず…」
美貴は亜弥に近づくと手を伸ばし、手を繋いだ。
そう、この企画のルールとして
『デート中は手を握ること』というのがある。
なので、美貴はそれに従っただけなのだが、
亜弥はドキッとしてしまった。
美貴は、そのまま歩き出す。
「とりあえず映画見に行きたいんだけどー、
何か見たい映画とかある?」
「あ、え、えっと…」
「まー、突然言われても困るよねえ。
じゃ、お茶でもしながら、何見るか決めようか」
美貴は亜弥を引っ張って、近くのスターバックスに入っていった。
注文したものが出てくるのを待っているときに、
絵里がそっと亜弥に近づき声をかける。
「亜弥ちゃん、緊張してない?リラックス、リラックス」
「うん、少し…でも、大丈夫だから」
「じゃ、がんばってね」
すぐに絵里は亜弥から離れて、カメラを構える。
そんなやりとりを見ていた美貴が言う。
「ね、やっぱり、美貴ってコワイ?」
「え?そんなことないです!」
亜弥が慌てて否定する。
「そう?…ホントにコワくない?
よく普通に見てるだけなのに、睨んでるとか言われるし…」
悲しそうな顔になる美貴を見て、
亜弥はかわいい人だなあと思っていた。
そんなことを気にしてるところも、
自分のことを名前で呼ぶところも。
自然と亜弥は笑顔になっていた。
- 314 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:11
-
空いている席に座る美貴と亜弥。
すぐ近くで絵里とれいながカメラを向けている。
「一応さ、今日はデートだし、タメ口でいいからね。
あ、あと、何て呼べばいいのかな?『亜弥ちゃん』でいい?」
「は、はいっ!」
自分の名前を呼んでくれただけで、亜弥はうれしく思った。
「だからー、敬語じゃなくていいって。
美貴のことは亜弥ちゃんが呼びたいように呼んでくれたらいいよ」
美貴はそう言いながら、
鞄からトーキョーウォーカーを取り出して、
パラパラとめくりはじめた。
映画ページを見るつもりだったのだろうが、
特集ページが焼肉特集で、
おいしそうな焼肉の写真のところで止まった。
「うわーっ、うまそー。
美貴ね、焼肉大好きなんだよね。すげー、食べたい」
亜弥もそのページを見て、あっという表情をする。
「…みきたん」
「…へ?」
「『みきたん』って呼んでもいいですか?」
「え?ま、まあいいけど。
亜弥ちゃんがそれでいいなら。
…あ、もしかして、『タン』見たから思いついたの?」
「まあ、そんなところです」
亜弥がニコッと微笑む。
「ひどーい、そんな理由なの?
ま、いっか、焼肉好きだし」
美貴が亜弥の頭をポンポンと撫でる。
亜弥が顔を赤らめてうつむくと、美貴はニッコリ微笑んだ。
美貴は亜弥を見て、第一印象から確かにすごくかわいいと思った。
なんとなく見覚えがある気がしたが、
学校の中ですれ違ったりしてる程度だろうと思っていた。
しかも自分に『みきたん』なんてかわいいあだ名をつけてくれたのが、
何だかうれしかった。
きっと面白い子なんじゃないかと、
今日のこれからが楽しみになっていた。
- 315 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:13
-
悩んだ挙句、見に行くことになったのは泣けると評判の恋愛映画。
美貴は実はそれほど興味はなかったが、今日はデートってことだし、
話題の作品だし、見る価値はあるかということで決まった。
ポップコーンとジュースを買って席につく。
すぐ前の席にれいなと絵里も座り、カメラを構える。
さすがに映画の最中は、2人は手は繋がずにスクリーンを見ていた。
亜弥がポップコーンを食べる手も止め、
映画に集中しはじめたときに、
美貴の頭が亜弥の肩にのっかってきた。
美貴は眠ってしまっていた。
実は昨日の夜、あまり眠れなかったのである。
『超かわいい子』っていっても、
すげームカつくヤツとかだったらどうしよう。
カメラ回ってるとこで、説教しちゃうかもしれない。
だいたい、そんなヤツと1日一緒にいたくない。
せっかく、美貴とれいなと絵里が考えたデートコースに
ケチなんかつけられた日には、殴り倒すかもしれない。
美貴は、打ち合わせや下見で顔を合わせて、
れいなと絵里に好感を持つようになった。
2人の素直で一生懸命なところが、かわいらしいと思った。
2人のためにもこの企画は成功させてあげたい。
だから、そんなムカつくヤツは許せない!
と、勝手に、今日の相手がイヤなヤツだと想定して
イライラしてたのである。
そんなこともなく、亜弥は本当にかわいくていい子そうだ。
その安心感と、元々興味がなかった映画だったせいか、
一気に睡魔が襲ってきてしまったのだった。
- 316 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:13
-
亜弥は驚いて身を固くしたが、少しして落ち着いてきて、
美貴のほっぺをつついたりしてみた。
それでも美貴は起きる気配がない。
亜弥はあきらめて、美貴の頭をそっと撫でて、
そのまま眠らせることにした。
亜弥は、しだいにちゃんと映画の方に集中していった。
丁度見せ場のシーンの手前で、やっと美貴が目を覚ます。
何事もなかったかのように、スクリーンを見ている。
亜弥は映画の内容で涙を流しながらも、
そんな美貴の様子がおかしくて、クスッと笑った。
れいなが微笑ましい気持ちになって、
同意を求めようと、絵里の方を見たら、
カメラは三脚で固定してあり、
絵里はスクリーンの方を見て、大泣きしていた。
ったく、今日何しにきてるか忘れてるんじゃないの?と
あきれながらも、
絵里は泣き顔もかわいいなあと、れいなは思っていた。
- 317 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:14
-
「うーん、よかったねえ」
映画館を出て手を繋いで歩きながら、美貴がつぶやく。
「…みきたん、ほとんど寝てたじゃん」
亜弥は、一応全編見ているから、感動もして、
まだ涙目のまま、鼻をグズグズとさせている。
「えー?でも、見たシーンはすごくよかった」
「もー、みきたん、テキトーなんだからー」
「そんなことないってー」
美貴はさっき歩いていてもらったティッシュを開け、
亜弥の涙を拭いてやる。
亜弥は、またドキッとしてしまう。
「よーし、じゃ、買い物でも行きますか」
美貴が亜弥の頭を撫でると、スピードを早めて歩き出した。
109とかセンター街とかブラブラと歩く。
2人は途中、プリクラを撮った。
そして、お揃いのTシャツも買った。
亜弥が「かわいい」と言ったものに、
美貴も「うん、かわいいね」と言ったら、
「じゃ、オソロにしようよ」ってことになったのだ。
美貴はあまり人とお揃いとかにするのが好きではなかったが、
かわいい亜弥がそういうならいいかなと思って、
素直に従ったのだった。
そう、買い物をしている最中で、
亜弥が明るくて面白くて、結構さばけたところもあって、
自分と似ているところがあると美貴は気付かされていた。
もともと人見知りはしない方だけれども、
会って話しをするのは今日が初めてなのに、
ずっと前から一緒にいたような、そんな安心感を抱いていた。
亜弥の方は、美貴と初めて会ったときは、カッコよかったし、
見た目もキレイでこわそうなのに、
実際はかわいくて、子供みたいなところもあったりして、
そのギャップに、余計に心奪われていっていた。
- 318 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:14
-
2人は時間とともにに意気投合していって、
亜弥が美貴の腕にしがみつくようにして
声をあげて笑いながら歩いていた。
ちょうど、アイスクリーム屋の前を通りかかったときに、
絵里が亜弥に合図を送った。
「あ、そうだ!これをやんなくちゃ」
立ち止まって、鞄の中から封筒を取り出す亜弥。
封筒の中身は2人の距離をもっと縮めるために、
映像部からの指令を2人にやってもらう『ハロモニプラン』である。
「あ、もしかして『ハロモニプラン』?
えー、美貴、こんな人込で変なことしたくないよー」
「にゃははー。開けるよー。じゃーん!……えっ?」
目の前にある店を見て、亜弥の顔が赤くなっていく。
「何ナニ?」
美貴がのぞきこむと、亜弥がプランを読み上げる。
「…『ソフトクリームを1つ買って2人で一緒に食べて下さい』」
「え?別に全然OKじゃん。丁度、何か食べたいと思ってたし」
美貴は亜弥の手を引っ張り、店の中に入っていく。
- 319 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:15
-
ソフトクリームを持って出てきた2人は、
脇道の人通りの少ないところに行き、まず、美貴が食べはじめる。
「ほら、亜弥ちゃんも食べないと。溶けちゃうし」
「…うん」
亜弥は目線を下にやったまま食べはじめる。
亜弥はすごくドキドキしていた。
美貴の顔がこんなに近くにあって、
ソフトを舐めているのが何だかいやらしい気分にさせられていた。
「おいしいね」
美貴がそう言ったので、つい視線を上げると、
至近距離で美貴と目が合ってしまう。
亜弥は恥ずかしくなって、また目を逸らした。
美貴はそんな亜弥がかわいくて仕方なかった。
明らかに自分とこういうことをするのに照れている様子だ。
美貴はそっとソフトクリームを2人の間から避けた。
不思議そうな顔をして美貴のことを見る亜弥。
…そして、美貴は亜弥にキスをした。
「…亜弥ちゃんの唇、冷たいね。
あはは、ソフトクリームのせいか」
亜弥はしばらく固まっていた。
何をされたか理解するのに時間がかかっていた。
美貴は何事もなかったかのように、また食べはじめた。
やっと亜弥が我に返る。
「な!なななななんで…」
「だってー、亜弥ちゃん、かわいいんだもん」
美貴はニヤニヤしながら、亜弥のほっぺをつついた。
亜弥は今日数時間過ごしただけで、
美貴のことを本当に好きになっていた。
だけど、今日、初めてのデートなワケで、
まともに話したのは初めてなワケで、
こっちをずっと見てるれいなと絵里がいるワケで。
しかもそれがカメラにおさめられて、
学校中の人が見るかもしれないワケで。
そして、何よりも、ファーストキスなワケで…。
亜弥は、もう逃げ出したい気持ちになり、涙が出てきた。
- 320 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:15
-
「…へ?あ、亜弥ちゃん?」
ボロボロ泣き出す亜弥に、美貴は困ってしまった。
「ご、ごめん…」
キスをしたことに驚いて、しばらく固まってしまっていた
れいなと絵里も我に返って、
れいなは美貴の手からソフトクリームを受け取る。
美貴は、亜弥の涙をティッシュで拭いてあげて、
必死になって背中をさすってあげていた。
「ごめんね…美貴が悪かった…あー、もー、どうしよー…
美貴なんかにキスされたくなかったよね」
オロオロとして、亜弥の顔を覗き込む美貴。
亜弥は美貴に抱きつくと、首を横に振った。
「…違うの…ビックリしたの…」
美貴は亜弥の背中と頭を優しく撫でる。
「…ホントに?ビックリしただけ?」
亜弥はコクンと頷く。
「美貴のこと、嫌いじゃないよね?」
亜弥はゆっくりと深く頷いた。
『大好き』って言ってしまいそうだったのを、
亜弥はグッと飲み込んでいた。
今の状況で言ったって、
ただの言い訳みたいに聞こえてしまうだろうから。
「…よかった…あ、じゃ、亜弥ちゃんが笑顔になれそうなとこ、
連れていってあげる!」
美貴は亜弥のことをギュッと抱きしめると、
手を取って歩き出した。
- 321 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:15
-
美貴が向かった先は、ペットショップ。
かわいい子犬や子猫が沢山いて、
放し飼いにもされている犬もいる。
事前に相手は動物好きだという情報は聞かされていたので、
コースの中にココもいれていた。
泣いていたはずの亜弥も大喜びで、
美貴も、そしてれいなも絵里も一安心であった。
れいながカメラを回しながらも、
足元にやってきた犬を撫でようと、手を伸ばしたら噛まれた。
「イテッ!」
思わず声を上げてしまった。
美貴も亜弥もそれに気付いて、
れいなの慌てぶりを笑いながらも心配していた。
「れいな、大丈夫?」
絵里も思わずカメラのことを忘れて、れいなの手を擦った。
「大丈夫、大丈夫、軽く噛まれただけだし」
絵里は心配そうに、
れいなの少し赤くなっている指先にチュッとキスをした。
「早く治りますように」
れいなは顔を真っ赤にして手を引っ込め、絵里を睨んだ。
「…な、なにすっと?」
「んー?おまじない」
絵里はニコニコとれいなのことを見ていた。
「そ、そんなこと、せんでもいいし」
れいなは赤い顔のまま、そっぽを向いた。
「なーんか、2人仲いいよねー。
そっちを撮影してあげようか?」
美貴が笑いながら、絵里のカメラを奪うと、
れいなと絵里に向けた。
絵里は調子にのって、れいなの肩に頭をのせている。
れいなは驚いて、カメラのレンズを手で隠した。
「だ、だめですって!
れいなたちは裏方なんですからっ」
- 322 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/06(火) 18:16
-
何とか、れいなも気持ちを持ち直して、
次の場所へ移動することになった。
渋谷から少し離れて三軒茶屋で、お好み焼きの夕食。
安くておいしいと評判の店。
亜弥も美貴も大満足であった。
「あ〜ん」なんて、食べさせ合いっこもしていて、
もうすっかり恋人気分で、楽しく夕食の時間を過ごした。
- 323 名前:サチ 投稿日:2004/07/06(火) 18:16
-
今日はここまでです。
デートはあともう少しで終わります。
>>300さん
早速ありがとうございます。
>>301さん
ありがとうございます。マイペースでやらせてもらいます(笑)
>>302さん
ありがとうございます。
最近、あやみきの次に田亀が好きなんですよ(笑)
>>303さん
ありがとうございます。がんばります!
>>304さん
ありがとうございます。でもあんまり期待されすぎると、プレッシャーが…(笑)
>>305さん
ありがとうございます。
設定、ベタなんですけど、ベタ好きなんです(笑)
>>306さん
ありがとうございます。
執筆がんばって下さいね。
>>308さん
ありがとうございます。
目をつけるというか、常にハロプロのことを考えてるから、
こうなるんでしょうね…(苦笑)
そういえば『恋するハニカミ』について補足してませんでしたね(汗)
見たことない方、知らない方、申し訳ありませんでした。
詳しくはTBSのHPを見て下さい。
って結局ココでは説明しませんが(笑)
次の更新も1週間くらいを目安にがんばります。
- 324 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/06(火) 20:19
- ぬぁ!もっさんの行動がカワイイ………
- 325 名前:オレンヂ 投稿日:2004/07/06(火) 20:33
- 更新お疲れ様です。
やられました・・・設定がステキすぎます!
恋するハニカミを好きで見てるので
これを読んだらハロモニのメンバーでやってみてほしくなってしまいましたw
どっちの2人もいい感じですねー。
次の更新もマターリとお待ちしています。
- 326 名前:名無しですよ? 投稿日:2004/07/06(火) 23:04
- サ チ さ ん 最 高 ! !
そして、あやみき最強w 二人とも可愛すぎ!
田亀もぼのぼのでいい感じです。
更新頑張ってください。
- 327 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:16
-
「…あのね、最後に行きたい場所があるんだ」
もうすっかり、外も暗くなっていた。
今回のプランの最終目的地・キャロットタワーの展望台に
美貴は亜弥を連れて向かった。
エレベーターを降りてすぐに、
「亜弥ちゃん、ココから目つぶって」
「え?」
「いいからいいから」
「うん、わかった」
美貴は目を閉じた亜弥の肩を抱いて、そのまま前へと進んでいく。
そして、窓の前までやって来る。
「はい、もう目開けていいよ」
亜弥がおそるおそる目を開けると、
目の前には、星を散りばめたような、
鮮やかな東京の夜景が広がっていた。
「…うわぁ…超キレイ…」
「でしょ?亜弥ちゃんと一緒に見たかったんだ」
一応、予定通りのコースではあるが、
美貴は今日1日一緒にいて、
本当に亜弥と一緒にこの景色を見たいと思うようになっていた。
最初のうちはあの建物は何だとか、
昼間には富士山が見えるらしいとか、少しはしゃいでいたが、
本当にもうすぐお別れしなければならないんだと感じてきて、
亜弥は、美貴の腕をとって、肩に頭を乗せた。
美貴も亜弥の頭に自分の頭を乗せるようにして、
しばらく黙って夜景を眺めていた。
- 328 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:17
-
れいなが、そっと美貴に合図をする。
「あ、美貴の方の『ハロモニプラン』もあるんだった」
美貴が封筒を出すと、その中の紙を見る。
「…えっと、『今日1日一緒にいて仲良くなれたと思いますが、
相手の1番好きだと思えるところを、
背中から抱きついた状態でお互いに耳元で囁いて下さい』
…だって」
「…えーっ…」
亜弥が照れたように微笑む。
「そんなこと、突然言われてもねえ…
ちょっと考える時間、ちょうだい」
「みきたん、考えないと、アタシの好きなとこわかんないの?」
亜弥が頬を膨らまして、美貴を睨むように見る。
「えー?亜弥ちゃん、すぐ言えるの?」
「言えるよ、トーゼンじゃない」
亜弥が胸を張って答えた。
「じゃあ、亜弥ちゃんから言ってよ」
「うん、いいよ」
亜弥が美貴に背中から抱きつく。
そして美貴の耳元にフッと息を吹きかける。
くすぐったがる美貴のことを亜弥は笑っていた。
「あー、もー!余計なことしなくていいから!」
「にゃはははー!」
亜弥は、間近で美貴の横顔をじっと見つめていると、
ずっとこうしていたい、離れたくないと思った。
「…うーんとね、アタシがみきたんの好きなところはぁ…全部!」
「…はあ!?何それ?考えるの面倒だったんでしょ?」
美貴が怪訝な顔をして亜弥を見ると、亜弥はまた頬を膨らます。
「そんなことないもん。
今日1日一緒にいて、みきたんのこと沢山知ることができたし、
みきたんの全部が好きだなって思ったから」
美貴は驚いた。
…コレって、普通にコクられてるってことじゃないの?
よくこんなにサラッと堂々と言えるもんだなと感心しつつも、
その言葉は素直にうれしいと思った。
少し照れながら、今度は美貴の方から亜弥の背中に抱きついた。
- 329 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:18
-
「うーん…じゃあ、美貴も亜弥ちゃんの好きなとこ、全部でいいや」
「何よ『全部でいいや』って!
みきたんこそ、アタシの真似なんかしないで、ちゃんと考えてよ」
亜弥は腕を後ろに回し、美貴のわき腹に軽くパンチした。
何で、やることやることかわいくみえるんだろう?
きっと、同じことを美貴が誰かにしたら怖がられるのに。
美貴は、ぼんやりとそんなことを考えていた。
「…じゃ、考えた。いくよ」
美貴が腕に力を入れて、亜弥のことをギュッと抱きしめる。
「亜弥ちゃんの1番好きなところは…美貴のことが好きなとこ」
亜弥は、眉間にシワを寄せて難しい表情になった。
「…は?何それ?みきたん、ちょっと自信過剰じゃない?」
「何でよー?亜弥ちゃんから美貴の全部が好きだって
言ってくれたんじゃん」
美貴が亜弥の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
「そうだけどぉ…アタシ自身のことで言って欲しかった」
「例えば?」
「…『かわいいとこ』とか?」
「うん、亜弥ちゃんのかわいいとこ好きだよ」
「それじゃあ、アタシが言わせたみたいじゃん」
亜弥が足をバタつかせて、地団駄を踏む。
「だって、亜弥ちゃんが喜ぶこと言ってあげたいんだもん」
「もうちょっと何か考えてよぉ。
じゃあさ、今日一緒にいて、アタシのこと、どう思った?」
美貴は少し考えた後で、亜弥の横顔を見ながら答えた。
「んー、初めて会うのにずっと一緒にいたみたいな感じがする。
何か考え方とかが似てるのかなあ、一緒にいて落ち着く」
亜弥はその言葉を聞いて、満面の笑みになり、振り返り、
美貴の方に体を向けて、頭を撫でた。
「にゃははは、合格!」
「何?合格って」
美貴はあきれたようにしながらも、微笑む。
- 330 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:18
-
「あ、でもマイナスポイント」
亜弥が手をグーにして、軽く美貴の頬をパンチする。
「えー?どこが?」
「アタシ、みきたんと会うの今日が初めてじゃないもん」
「へ?いつ?どこで会ったの?」
美貴は本当に驚いて、目を丸くして亜弥を見る。
「ヒントその1、6月20日の放課後」
「え?6月20日?そんなのわかんないよ。
美貴、今日が何日かもわかってないもん」
美貴が逆ギレみたいな声を出す。
「ヒントその2、屋上」
「…屋上?」
「もー、まだわかんないの?
ヒントその3、アタシは尻餅をついてました」
それを聞いて、美貴はパァッと明るい表情になった。
「ああ!ピンク!!」
「何よ、その思い出し方!?みきたんのすけべー」
亜弥がプイと横を向くと、美貴が慌てて亜弥の肩を掴む。
「だ、だって、あんとき、亜弥ちゃんとしゃべってないよね?
名前だって知らないしさあ」
美貴の困った表情がかわいくて、亜弥は笑顔になった。
「ま、いいや。一応は覚えててくれたんだもん。
でもさー、あのときのみきたん、すっごくかっこよかったよ」
亜弥が美貴の隣りに行き、腕を絡ませる。
「そ、そう?…ん?『あのとき』って今の美貴はダメなの?」
「んー、あのときほどじゃないけど、
今日のみきたんもかっこよかったよ」
「…ありがと」
美貴は、照れたように微笑んだ。
「でも、今日のみきたんはかっこいいっていうよりかわいかったかな」
「…亜弥ちゃんもかわいかったよ」
- 331 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:18
-
亜弥はうれしそうに微笑むと、
鞄から今日撮ったプリクラを取り出した。
「コレ、アタシの宝物」
「プリクラくらい、いくらでも撮れるじゃん」
「え?みきたん、また一緒に遊んでくれるの!?」
美貴は亜弥の幸せそうな表情を見て、うれしくなった。
「…亜弥ちゃんが、遊びたいっていうなら遊んであげてもいいよ」
「ホントに!?明日も明後日も明々後日もその次の日も、
ずっとずっと、みきたんと遊びたい!」
「へ?…毎日は無理だから」
「じゃ、じゃ、暇な日教えて!
あ、その前にメアド聞いておかないと!」
「あー、そうだね」
美貴は携帯を取り出すと、亜弥に画面を見せた。
それを登録すると、すぐに送信ボタンを押す。
「お、届いた。ありがと」
美貴がボタンを押す。
携帯アドレスを交換したということが、
本当に今日はもうお別れしなくちゃならないんだと、
さらに思い知らされて、亜弥はすごく切なくなってきた。
そして、腕を組んでいる美貴の横顔をじっと見る。
美貴は、亜弥のアドレスを登録するために、携帯をいじっていた。
「…みきたん」
「ん?」
美貴が亜弥の方に顔を向けると、
亜弥から美貴にキスをした。
美貴は突然のことで、驚いて顔を赤くした。
「…な、何だよー…美貴からしたら泣いたくせに」
「だからー、あのときはビックリしただけだって言ったじゃん」
「…ホントに、美貴とするのがイヤなワケじゃなかったの?」
「だからー、みきたんの全部が好きだって言ったじゃん。
イヤだったら、自分からしないしー」
「…そっか…よかった」
美貴は亜弥の頭を撫でると、そのまま自分の肩に寄せた。
そして、亜弥の髪に優しくキスを落とした。
- 332 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:19
-
「はあぁぁ…」
ハロモニ高等学校、映像部部室の隣りにある編集室。
『恋するハロモニ』の収録日の翌日、
れいなと絵里は、その編集作業のために、
夏休み中だが学校にやってきていた。
文化祭は10月だが、
2、3年生が撮影している映画の撮影が終わるのが、8月末。
それ以降は、そちらの作品で編集室を使うので、
それまでに全てを終わらせていなければならないのだ。
「れいな、どうしたの?ため息なんかついて」
絵里は、昨日撮影したテープを順番に並べて、
まず1本目をデッキに入れて、巻き戻しを始めた。
「だってさあ、藤本先輩と亜弥ちゃん、
超イイ雰囲気じゃなかった?」
れいなも自分の撮ったテープの順番を確認しながら、
もう1回、大きなため息をついた。
「うん、そうだね。
去年の石川先輩と吉澤先輩みたいに、付き合っちゃいそうだよね」
「っていうかー、昨日の状態で、もう恋人同士の関係でしょ?」
「あははー、そうかも。
あー、亜弥ちゃんにヤキモチやいてるんだー。
れいな、藤本先輩のことイイって言ってたもんね」
「ち、違うよ!れいなはー…」
「ん?」
「…い、いや、何でもない」
れいなは顔を赤くして、大袈裟と思える程、首を横に振った。
「…れいな、ヘンだよ?」
れいなは、ヤキモチではなくうらやましかったのだ。
美貴と亜弥が自然に恋人のようにデートしていることが。
しかも、自分がデートをしたい相手は美貴ではない。
絵里とそういうことがしたいんだと、れいなは思った。
それって、つまり、自分が絵里のことを
そういう意味で好きなんじゃないか…と気付いてしまい、
昨日の夜は全然眠れなかった。
しかも、今日は狭い編集室で、ずっと2人っきりでいることになる。
それを考えると、またため息をついてしまいそうになり、
れいなは慌てて飲み込んだ。
- 333 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:19
-
まずは、テープにちゃんと撮れているかの確認も合わせての
内容チェックのために、撮影したものを一通り見る。
12時に集合して、解散したのが8時過ぎ。
2つのカメラ分のテープがあるから、
見るだけでも単純に16時間かかってしまう。
ノートを用意して、タイムレコーダー部分を確認して、
何分何秒部分にどんな内容が入っているかを書き起こす。
後で、編集するときに探すのが楽なように。
使いたいところ、使わなくていいところなどもチェックしながら。
映画館の中でのシーンになる。
「絵里さあ、こんとき、映画の方、見とった?」
「だってー、この映画、見たかったんだもん」
「絵里、超泣いとったが」
「あはっ、バレてたかあ」
絵里がかわいくペロッと舌を出すのを見ると、
れいなは怒る気にもなれなかった。
ソフトクリームを食べる美貴と亜弥。
美貴が亜弥にキスをする場面。
いいなあと、れいなが思っていると、
絵里も小さくため息をついた。
「あー、絵里もキスしたいなあ…」
「なっ!…さささ、さゆにでもしてもらったらいいと?」
本当はそんなのは絶対イヤだったが、
自分としよう、なんてれいなから言えるワケもなく、
そんな強がりを言ってしまっていた。
「…えー?れいなとしたいなあ」
「へっ!?」
れいなが驚いて見ると、絵里はニコニコとれいなを見ていた。
れいなは恥ずかしくなり、すぐにモニターに目を戻す。
「…か、からかわんと…」
「からかってなんかないよ。ね、キスしよ」
絵里が、イスをれいなのすぐ側まで寄せて、
れいなの両肩を掴むと、顔を近づけてきた。
「わ、わ、わ…ちょ、ちょっ…」
れいなは突然過ぎて、思わず身を逸らしてしまった。
「…絵里のこと、嫌い?」
「い、いや、そういうワケじゃなくて…」
「じゃ、いいじゃない」
そう言うと、目をつぶって顔を近づけてくる絵里。
- 334 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:20
-
れいなは混乱しながらも、
絵里とキスをしたい気持ちが強くなってきた。
ええい、と気合を入れて、
れいなの方から、絵里にキスをした。
キスというよりも、ほんの一瞬かすめた程度に。
絵里が不思議そうに目を開ける。
「…あれ?今、したの?」
「した!…ほら、もう離れて」
れいなは、異常に早くなっている鼓動に気付かれたくなく、
絵里を離すと、またモニターを見始めた。
「全然わかんなかったよー。ねー、もう1回して?ねー」
目をつぶって、顎を上げて、唇を軽く尖らす絵里がかわいくて、
れいなは一瞬、絵里の方に顔を近づけかけた。
「!!…だ、だめだって!ほら、早くコレ、チェックしないと」
れいなは、モニターを指差した。
絵里は不満そうにれいなの顔を見る。
「ねえ、ちょっとだけー」
「だめ!また今度!」
「今度っていつ?」
「…わからん!」
流れている画像かられいなと絵里の声が聞こえてくる。
ペットショップでのシーン。
れいなが犬に噛まれて慌てていた絵里のカメラは、
全然関係のない方向、床とかを撮影してしまっている。
『なーんか、2人仲いいよねー。
そっちを撮影してあげようか?』
美貴の声が聞こえて、すぐにカメラがれいなと絵里に向けられる。
にこやかにカメラを見つめて、れいなの肩に頭を乗せる絵里。
れいなは顔が真っ赤である。
絵里はモニターを見ながら、楽しそうに笑った。
「あははー、れいな、超かわいー!」
「…絵里、バカにしとる?」
「そんなことないよー、れいな、かわいいよ」
「…絵里の方がずっとかわいいって」
れいなの小さなつぶやきも絵里は聞き逃さなかった。
「え?今、絵里のこと、かわいいって言った?」
「えっ!?…あ…」
れいなが動揺して、また顔を赤らめる。
「かわいいなら、キスしてよー」
「あー!もう!その話しはいいから!」
れいなは赤面しながらも、あえて絵里の方を見ずに、
モニターの方を凝視していた。
- 335 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/13(火) 15:28
-
絵里は、さゆみから頬にキスをされることはたまにあるけど、
唇にはされないようにしてきた。
それは、やっぱり自分が1番好きな人と最初にしたいから。
そして、絵里がキスしたいと思うのはれいなだけだった。
最初、クラスで顔を合わせたときは、
ちょっと不良っぽい人なのかな、
たぶん仲良くはならないだろうなと思っていた。
それが、たまたま、映像部の見学で一緒になり、
話しをしてみたら、見た目のイメージと全然違っていた。
中学までは福岡にいたため、たまに出てくる方言がかわいかった。
そして、実はすごく真面目で、真っ直ぐで、
自分をしっかり持ってるかっこいい子だと思った。
自分にないものを持ってて、同級生ながらも、
尊敬の念で、絵里はれいなのことを見ていた。
映像部で一緒になり、とくに今回この『恋するハロモニ』を
2人で一緒にやったことによって、
れいながすごく頼り甲斐があって、優しくて、
自分の隣りにずっといて欲しい人だと絵里は感じていた。
美貴と亜弥の影響もあるのかもしれない。
2人みたく、自分たちもなりたいと。
さっき、れいなに『美貴のことが好きなんじゃないか』みたいな
話をしたのも、実はちょっと試してみたかったのだ。
結局、れいなの本心はわからなかったが、
向こうからキスをしてくれたということは、
自分のことを少しは好きでいてくれているんだと思って安心はした。
夏休み中しばらくは、編集作業で毎日のように会えるだろうし、
文化祭が終わったら、お疲れ様会ってことで、
2人でどこかに行こうって誘ってみよう。
れいなが言った『今度』のチャンスはいくらでもある。
絵里はモニターを見るのも忘れて、れいなのことを見つめていた。
- 336 名前:サチ 投稿日:2004/07/13(火) 15:29
-
今日はここまでです。
あやみきメインのつもりで書きはじめたのに、
何か田亀の方が多いような…すみませんです(汗)
>>324さん
ミキティは普段はかわいいですよね〜
素の顔は確かにこわいけど(笑)
>>325さん
私も同じ気持ちで、これを書き始めたんで(笑)
ハロモニででもやってほしいものですねえ…
>>326さん
ありがとうございます!
ほのぼの、マターリでがんばります。
デートコースのおさらいしておきます(笑)
・渋谷駅モヤイ像で待ち合わせ
・マークシティーのスタバ
・映画館(「世界の中心で愛を叫ぶ」のイメージで)
・109やセンター街で買い物、プリクラ
・ハーゲンダッツ(もちろんソフトクリームもあります)
・ナカヌキヤ(5階はペットショップコーナー)
・お好み焼き屋(三軒茶屋)
・キャロットタワーの展望台
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/13(火) 18:06
- 更新してある!!良い感じだぁ……
- 338 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/13(火) 22:55
- すっげぇー!!
どっちもいい感じじゃないですか〜!!!
これからもラブラブラブラブしてください
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/20(火) 05:59
- おぉ!いい感じですねぇ。
あやみきも田亀も好きなんで全然よいです!
もう、チャイコーです!!!
これからも頑張って下さい。
- 340 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:20
-
「…何とか、形にはなったね」
「うん、何とかね…」
1週間かかって、とりあえずの完成版ができた。
不要な部分を除き、れいなと絵里が撮ったそれぞれのうちの
いい画像を選び、繋ぎ合わせた、時間にして1時間強のもの。
だが、デートVTRは30分弱におさめなければならない。
出来あがったVTRを見て、そのときどういう気持ちだったかの、
美貴と亜弥のコメントをこれから収録して、
それを繋いでのトータル約30分。
文化祭の2日間では、2、3年生が作るおよそ1時間半の映画と、
『恋するハロモニ』の2本立てを1日2回づつ上映する。
「このV、また半分くらいにしなきゃいけないのかあ…」
れいながガックリ肩を落とした。
「もったいないよねえ、コレ、全部、皆に見て欲しいくらい」
絵里も、机に顔をぺったりとつけて横になるような格好になった。
- 341 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:20
-
「おう!お疲れ〜!おつかれいな、なんちって〜」
編集室のドアが開くと、真里が入ってきた。
「…矢口先輩、つまんないです」
れいなが、ニコリともせずに顔をあげた。
「そう?面白いと思ったんだけどなあ」
真里は、たまたまこの近くで映画の撮影中で、
空き時間ができたので、こちらの様子を見にきてくれたのだ。
出来上がっているラフのものを、真里にチェックしてもらい、
どこをカットしたらいいのか相談をしてみた。
見終わった真里は、腕組みをしてしばらく考えていた。
「…とりあえず、キスシーンはカット」
「えっ!?アレをカットしちゃうんですか?」
れいなが驚いて、大声を出す。
「あのシーンはすごくいいんだけど、
見てる方としては、恋人じゃない2人の微妙な関係、
くっつくのかな、どうなの、くっついちゃえよっていう
もどかしいカンジを見たいわけよ。
キスしちゃったら、もううまくいっちゃってるってことじゃない。
ちょっと気持ちが萎えちゃうかな。
アレがほっぺとかなら、まだよかったんだけど」
「なるほど…」
絵里が感心して、大きく頷く。
他にも、場面説明のシーンはいらないからテロップで処理、
ペットショップも、キスシーンをなくすのであれば、
亜弥が泣き顔が不自然だからカット。
キャロットタワーでの亜弥が美貴のことを知っていた話も、
2人にしか通じない内容になってるし、
入れるなら、亜弥のコメントで入れればいいということになった。
- 342 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:21
-
真里のアドバイスを踏まえて、
デート部分のVTRの編集及びテロップ入れは3日で終了した。
そして美貴と亜弥にこのVを見てもらってのコメント撮りを行う。
お互いが近くにいると話しづらいこともあるだろうから、
時間をずらして来てくれるようにお願いしたのに、
2人で揃って手を繋いで映像部の部室にやってきた。
れいなと絵里が戸惑っていると、
「ごめん、ごめん、亜弥ちゃんが一緒に行くってきかなくて。
亜弥ちゃんが撮ってる間は、美貴は別のところに行ってるから」
「藤本先輩、亜弥ちゃんも…非常に申し訳ないんですけど…」
今回の企画が事前にバレてしまう可能性があるので、
文化祭が終わるまでは、とくに学校付近では、
2人っきりでいるようなことはなるべく控えて欲しいと、
れいなはお願いをした。
「そっか、そうだよね。ごめん、ごめん。
じゃ、亜弥ちゃん、やっぱり、学校から一緒に帰るのは、
文化祭終わるまで無理だね」
「ええー!?じゃあ、じゃあ、学校から離れたところで、
待ち合わせして帰ろうよ」
「うーん、どうせ駅まで行くんだし、
たぶん誰かに見られちゃうから、意味ないじゃん。
ほら、ウチの駅とかで待ち合わせして、
家とか家の近くで遊んだらいいんじゃない?」
「そっかー!みきたん、頭イイ!」
亜弥に頭を撫でられて、うれしそうにしている美貴を見て、
この2人って、いわゆる『バカップル』なんじゃないだろうか?
と、れいなと絵里は思っていた。
- 343 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:21
-
そして、コメント収録じたいは2時間ほどで終わり、
その日とその次の日に編集は何とか終わった。
そして、真里をはじめ、映像部の先輩たちに、
内容をチェックしてもらったところ、
ほとんど直しもなく、出来上がった内容はこうなった。
待ち合わせ場所に行くまでの、美貴、亜弥のそれぞれのひとり言。
2人のご対面。
亜弥のコメント
「本当にびっくりしました。
この1ヶ月くらい前に、藤本先輩に会ってたんですよ。
会ってたっていうか、ちょっとしたことがあって、
助けてもらったんです。
すごくかっこよかったんですよ。
でも、ちゃんとした名前とかクラスとかもわかんないから、
密かに探してたりして…
だから、こんなところで会えるなんて夢みたいでした。
でも、向こうは全然覚えてなかったんですけどね」
スターバックスで、雑誌を見て、お互いの呼び名を決めている。
美貴のコメント
「『みきたん』ってなんだよ、ってちょっと思いましたけどね。
ま、亜弥ちゃんみたいなカワイイ子が言うんだったらいいかなって」
映画を見ながら熟睡してる美貴。
それを見て微笑んでいる亜弥。
亜弥のコメント
「みきたん、本当に熟睡してたんですよ。
スースー寝息までたててて。
最初、気になってしょうがなかったんですけど。
しかもね、1番いいシーンの前にちゃんと起きるところが、
みきたん、スゴイなって思っちゃいました」
まだ少しぎこちないカンジでプリクラを撮っている美貴と亜弥。
お揃いのTシャツをうれしそうに買っている。
ハニカミプランで、ソフトクリームを一緒に食べる2人。
美貴のコメント
「このときのね、亜弥ちゃん、超かわいかったんですよ、
顔真っ赤にしちゃって。
なーんていうのかな、ほら、犬とかカワイイと、
ギューってして、チューとかしたくなるでしょ。
亜弥ちゃんにもそうしたいなって思っちゃったくらい」
- 344 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:22
-
夕食でお好み焼きを食べる2人。
そして、キャロットタワー展望台へ。
ハニカミプランも終え、2人寄り添っている。
亜弥のコメント
「あー、もうお別れしなくちゃならないんだなって思ったら、
すっごくさみしくて。
みきたんとずっとずっと一緒にいたいなって。
それにしてもね、この企画がなかったら、
みきたんとデートなんてできなかったと思うし。
ホント、『恋するハロモニ』には感謝してます」
美貴のコメント
「最初はね、しゃべったこともない子と1日一緒にいるのなんて
気遣うっていうか、楽しくないだろうなって、
全然期待してなかったんですよ。
でも、亜弥ちゃんはすごくいい子で、ホント楽しかったですね。
あー、この撮影が終わって、駅で亜弥ちゃんとバイバイしたんですけど、
そのとき、亜弥ちゃん、すっごい泣いちゃって大変だったんです。
結局、美貴が家の近くの駅まで送って、
次の日も遊ぶ約束したら、何とか落ち着いてくれたんですけど。
うん、亜弥ちゃんとは、これからもずっと仲良くしていくつもりです」
今回のデートの名シーンのフラッシュ。
ぎこちない様子での挨拶。
スタバで亜弥の頭を撫でる美貴。
映画館で美貴の頭を撫でる亜弥。
お揃いのTシャツをあてて並んで鏡をのぞく。
2人で同じポーズを決めて、プリクラを撮る。
ソフトクリームを一緒に食べる。
お好み焼きを食べさせ合う。
亜弥の背中から抱きついた美貴、2人で顔を寄せあって微笑む。
お互いに寄り添って、夜景を眺める………finマーク
- 345 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:22
-
文化祭では、予想通りの大評判。
2、3年生の作った映画も面白いらしいと前評判から高かった。
内容は笑いあり涙ありのヒューマンコメディ。
顧問の先生からもすすめられ、コンクールに出すことが決まっているくらいだ。
もちろん、『恋するハロモニ』の方も大好評で、
上映中も客席からは、ため息やら、なぜかすすり泣きまで
聞こえてくるくらいだった。
初日から映像部のブースである視聴覚室は満員で
客が入りきらなかったほどであったため、
2日目は予定を変更して、2回上映を、
急遽3回上映にすることになった。
そして、2日目の3回目上映開始前。
最後ということだけあって、リピーターもいるのか、
外で音声だけでも聞きたいという客もいて、
本当に沢山の人が視聴覚室、そしてその周りに集まっていた。
「すごい人だね…」
「うん…うちらの作品を見に来てくれてるんだよ」
テープをセットしながら、大勢の客に圧倒され、
絵里とれいなはつぶやいていた。
そんな中、真里が美貴に電話をしていた。
「ふじもん?今どこにいんの?」
『え?1年A組。もうすぐ次の回が始まるんだけど』
そう、美貴は、亜弥が主演ということもあり、
亜弥がクラスでやっている劇を全公演見ていた。
「いやー、ふじもんと松浦のおかげで、映像部も大盛り上がりよ。
ありがとね」
『ううん、美貴はただ1日遊ばせてもらっただけだし』
「うちの部ね、次の上映で最終回なんだけど、お願いがあって…」
- 346 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:22
-
最終回の上映が終わると、会場はわれんばかりの拍手に包まれた。
そんな中、真里が客の前に姿を現す。
真里にとって最後の文化祭ということもあり、
感極まっていて、少し涙目ながらも、客に頭を何度も下げていた。
「皆さん、どうもありがとうございます。
映像部の部長、3年C組矢口真里です。
こんな沢山の方に集まっていただけて、本当に光栄です」
真里は、今回の作品で、特にがんばってくれた部員として、
映画の方では脚本・監督を担当した2年の紺野あさ美を、
そして『恋するハロモニ』を担当したれいなと絵里も紹介してくれた。
観客からの大きな拍手と声援に、れいなも絵里も、
今までの苦労を忘れるほど、うれしく、目頭が熱くなった。
真里は、今年の映像部は1年生が2人しかいないのもあって、
「今回作品を見ていただいて、少しでも興味を持った方はぜひ映像部に!
入部は随時受け付けてますよ」
と、観客に向かって、しっかり勧誘までしていた。
- 347 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:23
-
「それと、それと!
最終回ということで、特別ゲストを呼んでます!」
真里がテンションをさらに上げて大声で叫ぶ。
「誰?誰?」と客席の中で声が聞こえてくる。
れいなと絵里、あさ美も聞かされていなかったので、
不思議そうな顔をしている。
「今回の『恋するハロモニ』に出演してくれた、
藤本美貴ちゃんと松浦亜弥ちゃんです!」
視聴覚室のドアが開き、2人が姿を現す。
思わず、客席からは「キャー!」といった歓声まで出るくらい。
美貴の腕にしっかりつかまった亜弥をエスコートするようにして、
真里の隣りに並ぶ。
「どーも、どーも、今回は出演、ありがとうございました」
「いえいえ」「こちらこそありがとうございました」
真里が頭を下げると、美貴も亜弥も頭を下げる。
「今回、出演の依頼が来たときってどう思いました?」
「あー、美貴はー、最初、面倒くさいって断ったんですよ。
でも、田中ちゃんと亀井ちゃんの熱意に押されたっていうか」
美貴が、れいなと絵里を見て微笑む。
れいなと絵里は申し訳なさそうな顔をする。
「アタシは、2人と同じクラスなんですけどー、
面白そうだからいいよって即OKしました」
亜弥が笑顔で答える。
「あははは!まるで正反対ですね。
ま、この文化祭で上映するまで、
完全に秘密にしておいていただいたわけですが、
昨日初めて上映されて、周りの反応とかありました?」
真里の問いにまず亜弥が答える。
「あー、うちのクラスで、アタシ、劇をやってたんですけど、
お客さんが昨日の後半からすごく増えてきたんですよ。
何でかなあと思ったら、『恋するハロモニ』を見た人たちが、
来てくれたみたいで」
実際、亜弥のクラスの集客は、同様に演劇をしている他のクラスの
3倍くらいはあった。
「美貴は、クラスの子とかが『みきたん』って
呼んでくるようになりました。
亜弥ちゃん以外から言われるとちょっとムカつきます」
美貴は苦笑いしながら言うと、
客席からひやかすような歓声があがった。
- 348 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:23
-
「あと、何か撮影中の裏話とかありますか?」
「何だろ?田中ちゃんが犬に噛まれたこととか?」
美貴がニヤニヤしながられいなを見た。
「そ、そんことは関係なか!れいなんことはいいですから!」
自分に話しが来ると思ってなかったし、
絵里に指先にキスされたことまで思い出して、
れいなは顔を真っ赤にして思わず大声を出した。
そんなれいなの姿がかわいくて滑稽で、
美貴も亜弥もそして絵里も声をあげて笑った。
「あー、そういえばー、アタシ、この日3回泣きました」
亜弥が顔をしかめて言うと、あさ美が驚く。
「え?この撮影中にですか?」
「1回は、映像でも流れたと思うんですけど、
映画を見て感動しちゃって。
それと、撮影終わった後に、みきたんと離れるのが、
さみしくてさみしくて号泣しちゃいました。
あと、もう1回は…VTRでもカットされてるから、
内容は言わない方がいいかな?」
れいなが少し難しい顔をして頷く。
「うん、みきたんに泣かされたんです、デート中に。
理由は皆さんのご想像にお任せします」
「何か、その言い方だと、美貴が悪者みたいじゃない?」
「だって、アレはみきたんが悪いもん」
「いやー、ま、まあ、否定はできないけど…」
亜弥と美貴が顔を寄せ合って微笑み合う。
「うーん、何かノロケみたいになってきましたね。
ま、松浦さんが泣いた理由を知りたい方は、
ぜひ映像部に入部して下さい、あははは。
今回の未公開シーンをお見せすることもできちゃいますよ!」
真里が笑顔で、観客に手を上げる。
そして、締めの挨拶をする真里。
これで、今年の文化祭での映像部の活動は完全に終了した。
- 349 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:23
-
客がいなくなった視聴覚室で、真里はぼんやりと、
後輩たちが後片付けをするのを眺めていた。
高校最後の文化祭として、すごく満足いくものではあったけど、
その反面、すごく名残惜しい気持ちもこみ上げていた。
「やぐっつぁん」
美貴が真里に声をかける。
「おぅ、まだいたんだ。松浦は?」
「ん、クラスの方の片付けがあるからって戻った」
「そっか、今日は突然悪かったね、ありがと。
おかげで余計に盛り上がったよ」
「いやいや。で、いつ行く?やっぱ土日がいいかな」
「うっ…」
真里は、今日、客の前に来てもらう交渉をしたときに、
少し渋った美貴に『焼肉おごるから!』という約束をしていた。
「あ、藤本先輩!今日はありがとうございました」
れいながやってきて頭を下げる。
「あっ、そうだ、田中ちゃんたちも一緒に行こうよ。
やぐっつぁんが焼肉おごってくれるって」
「マジっすか!?れいな、肉大好きなんすよ!」
「い、いや…」
「『恋するハロモニ』の打ち上げってことでさ、
もちろん亜弥ちゃんも亀井ちゃんも一緒でいいんでしょ?」
美貴が笑顔で真里に言う。
「え…4人分…おいらのも入れて5人分…む、むり…
あ、そ、そうだ!ウチの近所の焼肉屋でいい?
おいしいんだ、そこの店」
「うん、全然OK!やぐっつぁん、サンキュー!」
「ニク!ニク!ニク!」
あの店なら、値段も安いし、顔馴染なので、
サービスしてくれるし、最悪ツケもきくだろう。
まあ、自分が部長で最後の文化祭として、
大成功となった代償としては安いもんだ。
しかし、こいつら異常に食いそうだなと不安にも思う真里であった。
- 350 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:24
-
そして、文化祭じたいも全て終わり、
映像部は部室で打ち上げを行っていた。
今回の集客数が映像部はじまって以来の数字であったこと、
その作品の内容も質がかなり高かったこと、
部員たちも、顧問の先生も大喜びで、
打ち上げも異常な盛り上がりであった。
途中でれいなが
「トイレ行ってくる」
と言ったので、
「あー、絵里も行く」
と2人で部室を出ていった。
トイレを出て、
「ね、ちょっと、屋上で休まない?」
と絵里がれいなに言った。
「ん、いいよ」
絵里はニコニコとして、れいなの手を取って、屋上に向かった。
もう日も暮れはじめて、屋上は少し肌寒いくらいであった。
れいながペタンと体育座りのようにしてしゃがみこむ。
絵里も、れいなと逆側を向いて同じ姿勢をとり、
れいなの背中に寄りかかった。
「れいな、本当にお疲れ様」
「うん、お疲れ様。でも楽しかったと」
「お客さんもいっぱい入ったしね」
絵里が満員の教室を思い出しながら、空を見上げて微笑む。
「うん、みんなが拍手してくれたときは、超うれしかったし」
「れいながいてくれたからだよ。れいなが一緒じゃなきゃ、
絵里はここまでできなかったと思う」
「そんなことなか、絵里はできるって。
れいなの方こそ、絵里のおかげでがんばれたんやと思う」
れいなは自然に出てしまった言葉に少し照れ臭くなり、
足を伸ばして、両掌をコンクリートにつけ、
絵里の背中に思いっきり寄りかかった。
- 351 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:24
-
絵里は、右手を伸ばして、れいなの左手を握った。
しばらく沈黙が続く。
打ち上げを終えて帰るところであろう生徒のはしゃぐ声や、
鳥のさえずりなどが、自然と耳に入ってくる。
「…れいな、スキ」
「…へっ!?」
れいなは慌てて身を起こして、絵里の方を向こうとした。
「ダメ!こっち見ないで!
れいなに顔見られてたら、うまく言えなくなっちゃいそうだから」
れいなは、何を言われるのか期待と不安で頭の中が混乱していたが、
とりあえず元の姿勢に戻り、絵里の背中に寄りかかった。
「…れいなのたまに出る博多弁が好き。
れいなの恥ずかしそうに笑う顔が好き。
れいなの真面目なところが好き。
れいなのしっかりしてるとこが好き。
れいなの面白いところが好き。
れいなの優しいところが好き。
れいなのかっこいいところが好き。
れいなの…れいなと一緒にいる時間が好き。
これからも、れいなとずっとずっと一緒にいたい」
れいなは、熱いものがこみ上げてきて目が潤んで、何も言えなかった。
「れいなからしたら、友達でいいから。
これからも、ずっと一緒にいてくれるだけで。
だって、れいなが好きなのは藤本先輩なんだもんね」
- 352 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:24
-
れいなは目元をぬぐうと、困ったようにつぶやいた。
「…藤本先輩のことは先輩としては好きやけど…
…れいなは、絵里が…」
「え?」
絵里が体をれいなの方に向けようとしたら、
「ダメ、こっち見たら。うまく言えんくなる」
れいながそう言うと、絵里も元の姿勢に戻った。
「最初はかわいらしいおとなしそうな子やなって思っとった。
でもだんだん仲良くなるにつれて、ヘンな子やなあって」
「…ひどーい」
「ほっとけないっていうか、支えてあげなきゃって思うんだけど、
ときたますごく大人やったりして、すごいなって思うときもある。
何て言うんやろか…すごく気になる存在になっとった」
絵里が笑っているのを、れいなは背中で感じていた。
「デートしたいのも、藤本先輩じゃなか。
…絵里と…絵里と、しとう…つまり、その…あの…だから…」
『絵里が好きだ』という言葉がなかなか出てこない自分に
イライラして、れいなは頭を掻きはじめた。
絵里が首を少し後ろに向けて、そんなれいなの様子を盗み見ると、
クスッと笑った。
「じゃ、明日、デートしよ」
「…へ?」
「明日、学校休みでしょ。朝からデートしよ」
絵里はれいなの手を握っていた手に力をこめると、立ち上がった。
突然引っ張られたれいなは驚く。
「うぉっ?」
「れいなも立って」
れいなも立ち上がって、絵里と向き合う姿勢になる。
絵里はニッコリと微笑んで、れいなに抱きついた。
れいなは手を絵里の腰に回していいものか迷ってしまい、
手を中途半端に上げたままであった。
- 353 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:24
-
「あー、もー、れいな、大好き!」
こういう場合は、自分も好きだと言った方がいいんだろうなと
思いながらも、れいなはやっぱりその言葉が言えない。
絵里がふと体を少し離して、れいなの顔を見ると、唇を重ねた。
この前のかすめるようなものではなく、
ちゃんとキスといえるように強く。
れいなは驚いて、思わず息を止めてしまっていた。
唇が離れると、絵里はまたれいなにギュッっと抱きつく。
れいなの方も、おそるおそる絵里の背中に腕を回すと、
一瞬だけためらったものの、しっかりと抱きしめた。
「…れいなも絵里のこと、す……」
『好きやけん』そう言いかけた瞬間、
入口のドアが思いっきり開けられた。
れいなと絵里は慌てて体を離す。
やってきたのは亜弥だった。
「あれー、どうしたの?こんなトコにいて」
「い、いや、打ち上げの休憩」
れいなが答えると、亜弥はにっこり微笑んだ。
「そーなんだ。クラスの方の打ち上げは今終わったとこ。
あー、映像部さん、お疲れ様でした」
「ううん、こちらこそ、いろいろありがと」
絵里も亜弥に頭を下げる。
- 354 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:25
-
「もー、亜弥ちゃん、遅いよ」
声がした方、屋上の入口の上には、美貴がいて、
うつ伏せで寝っころがりながら、こちらの方を見ていた。
「みきたん、お待たせー。ごめんね」
まさか、人がいると思っていなかったれいなと絵里は目を丸くした。
「ふ、藤本先輩!?いつからそこにいたんっすか?」
れいなの声も、思わず裏返る。
「いつからってー、田中ちゃんたちが来る前からだよー」
美貴が、はしごを降りながら言う。
「え!?じゃ、全部…」
「うん。ま、美貴のココロの中にとどめておくから」
「なになに?何があったの?みきたん、教えてよー」
亜弥が美貴に腕を絡める。
「いや、美貴からは言えない。
田中ちゃんと亀井ちゃんに聞いて」
「えー?じゃ、今度、教えてね」
亜弥は不満そうにしながらも、れいなと絵里を見て手を振ると、
美貴と腕を組んで屋上を出ていった。
れいなと絵里は、美貴に見られていたんだと思うと、
どうも気恥ずかしくなってしまっていた。
「…戻ろうか」
「…うん、そうだね」
れいなは告白が中途半端になってしまった代わりのつもりで、
自分から手を伸ばし、絵里の手を握った。
それに応えるように、絵里はしっかりとれいなの手を握り返した。
「あ、れいな、明日は本当にデートだからね」
「わかっとるって。絵里が行きたいとこ、行こ」
2人は笑い合いながら、屋上をあとにした。
- 355 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:25
-
放課後、美貴はいつものように屋上で、本を読んでいた。
ちなみに高校3年とはいえ、付属の大学に進むので、
中の上くらいの成績である美貴は受験勉強とは無縁であった。
ウトウトとしかけたときに、屋上のドアが開いて、
「みきたーん、いる?」
「…ああ、亜弥ちゃん。どうしたの?部活は?」
「今日はね、ミーティングだけだったから、早く終わったんだ」
そう言いながら、亜弥がはしごを上ってくると、
美貴に思いっきり抱きついて、キスをした。
文化祭が終わって、公認の仲になってからというもの、
亜弥は美貴と学校の中で偶然出くわしたときにも、
抱きついてほっぺにチューをする。
さすがに唇にするのは2人っきりのときでガマンしているが。
「みきたん、今週の土曜日、うちに泊まりにきてね」
「え?突然、何で?」
「だってね、法事でパパもママも妹も田舎に行くからね、
うちには誰もいなくなるから」
「亜弥ちゃんは行かなくていいの?」
「うん、部活の試合があるってウソついた」
「…ウソついたんだ」
「にゃはは、だからぁ、みきたんとずっと2人っきりだよ。
1日中イチャイチャできるよ」
亜弥はうれしそうに微笑みながら、
美貴にギュッっと抱きついて、もう1度キスをした。
- 356 名前:かけがえのないもの 投稿日:2004/07/20(火) 14:26
-
美貴はそんな亜弥を見て、ちょっと引いていた。
「…亜弥ちゃん、積極的になったよね…」
「え?何で?こんなアタシ、イヤ?」
「そうじゃないけど、前と変わったなあって」
美貴は、『恋するハロモニ』の撮影中にキスをしたら
泣き出した亜弥のことを思い出していた。
「何?前のアタシの方がいいっていうの?
じゃあ、もういい。泊まりに来なくていい」
亜弥は頬を膨らますと、美貴から体を離した。
美貴は慌てて亜弥の手を掴む。
「だから、そういう意味じゃなくってさあ…」
「じゃあ、みきたん、アタシのこと好き?」
美貴は苦笑いをした。
ちょっとケンカっぽくなると、必ず亜弥が聞いてくる質問。
「うん、好きだよ、大好き」
もちろん、コレ以外の答えを用意することはできない。
「誰よりも?世界で1番?」
これもいつもの質問。
「うん、宇宙で1番、亜弥ちゃんが好き」
機嫌の悪さも直って、亜弥が笑顔で美貴に抱きつくのもいつものこと。
変わったのは自分の方だよ、年下の女の子の尻に敷かれるなんて、
と思いつつ、美貴はそれでもやっぱりこの子が好きなんだなと、
腕の中の彼女をギュッと抱きしめた。
fin
- 357 名前:サチ 投稿日:2004/07/20(火) 14:26
- 終了しました。
結局、あやみき&田亀の映像部の青春モノっぽくなってしまったような…(苦笑)
>>337さん
ありがとうございます。
いい雰囲気をなるべく心がけます(笑)
>>338さん
ありがとうございます。
最後までラブラブさせてもらいました(笑)
>>339さん
ありがとうございます。
私もあやみきも田亀も大好きです。
「チャイコー」ってかわいいですね(笑)
最後まで読んでいただいた方、
本当にどうもありがとうございました。
しかし、やっぱりまだまだだなと反省中…
すみません、もっと勉強してがんばります…
- 358 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/20(火) 18:47
- いかったです……恋するハロモニ最高でした!!
次のお話大期待です!!
- 359 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/20(火) 20:37
- 更新ありがとうございました!すっっっごくよかったです!!
あやみき&田亀、萌えすぎてヤバイですよ(汗
特に亀ちゃんのキャラ、本当にかわいいですw。
新作楽しみしてます。
- 360 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/21(水) 01:14
- オツカレっした〜
とってもいい話だ!!
絵里&れいなの方も期待してます
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/23(金) 01:33
- 完結お疲れ様です。最高です!
なんていい企画なんだ、恋するハロモニ!
恋するハロモニの第1弾がどんなだったかちょっと気になったり・・・
どんなだったかのぞきみてみたいな〜
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/23(金) 11:28
- 更新お疲れ様です。
いや〜ほのぼのします。
きっとどっちもけっこうなバカップルになるんだろうな・・・
ほんとサイコーでした。
あっでもいしよしverもなんか気になったりするw
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 09:23
- お疲れ様でした。
いしよしの方も気になっています。
- 364 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/19(木) 12:15
- 「あー、もー、焼肉5人分っていくらかかるんだよ…ブツブツ」
文化祭の代休明けの日の放課後、真里は映像部の部室で私物を整理していた。
モノとしては大したものはないけれど、
高校時代の思い出のつまった真里にとってはかけがえのないものたちだ。
「矢口先輩、何ブツブツ言ってるんですか?」
矢口の後を継いで新映像部部長になったあさ美も部室にやってきて、
真里に声をかける。
「おぅ、紺野。いやー、ついふじもんに大口たたいちゃってさ」
文化祭のゲストに来てもらう代わりに焼肉をおごると言ってしまったこと、
しかも美貴1人ではなく、亜弥とれいなと絵里にまで
ごちそうすることになってしまったことを話した。
「しかも、あいつらすげー食いそうじゃない?
松浦と亀井はまだしも、ふじもんと田中って遠慮とかしなさそうだもん」
「そうかもしれませんね」
あさ美がふっくらと笑う。
「文化祭で忙しかったからさ、バイトもしてなくて、
お金ないのにさぁ…」
「あ、もしよろしければ、私の家でバーベキューにしませんか?」
真里があまりにも辛そうなので、あさ美がそんな提案をした。
- 365 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/19(木) 12:15
- 「え?いいの!?マジで!?」
「私の方こそ、藤本先輩や松浦さんとは関わりがないので、
お邪魔じゃなければ。何だか楽しそうですし。
大したおもてなしはできないかもしれませんが」
「そんなことないよ!だって紺野の家でしょ?」
実は、あさ美はいわゆるお金持ちのお嬢様であり、
お屋敷といったような、広い家に住んでいる。
撮影にも使ったこともあり、真里も何度かお邪魔しているのだ。
「皆さんに喜んでもらえるかはわかりませんが。
矢口先輩の部長お疲れ様会も兼ねさせてもらいますので」
「うぅ…紺野…お前、ホントにいいヤツだなあ…」
真里が目を潤ませながら、あさ美の頭を撫でる。
「あ、そうだ。石川先輩と吉澤さんも呼んでもいいですか?」
「え?オイラは全然構わないよ。
みんな『恋するハロモニ』繋がりだし、いいと思うよ」
「あのお2人、またウチに遊びに来たいっておっしゃってて。
人数が多い方が楽しいですし、ちょうどいい機会かと思いまして」
「あー、そっか。2人にとっては思い出の場所だもんね」
「ええ、そうなんです」
『恋するハロモニ』は、そもそもあさ美が提案した企画であった。
第1回目の昨年の梨華とひとみのデートは、メインは八景島シーパラダイス。
そして、夜に場所を移動して、あさ美の家の離れの縁側で撮影を行った。
2人にとっては、愛を確認しあった場所でもあるのだ。
「んー、すっげー楽しみになってきた!
さっきまであんなにイヤだったのに」
「私もすごく楽しみです」
「よーし、その代わりっちゃーなんだけど、
オイラが目一杯盛り上げてやるから」
「はい、よろしくお願いします」
真里はサイフの心配もなくなったし、
かわいい後輩の気遣いに心から感謝した。
- 366 名前:サチ 投稿日:2004/08/19(木) 12:16
- とりあえず、冒頭だけ更新しました。
3組以外にもカップルが出てくる予定ですが、
1日のお話なので、そんなに長くはならないと思います。
>>358さん
ありがとうございます!
期待に副えるモノかわかりませんが、がんばりまっす!
>>359さん
ありがとうございます。
亀ちゃん、大好きなんですよねー。
メンバーの中で普通に一番女の子キャラのような気がするんです。
>>360さん
ありがとうございます。
今回、田亀ももちろん出てきますので(笑)
>>361さん
ありがとうございます。
ホント、「恋するハロモニ」企画、ハロモニででもやって欲しいです。
後藤田中の二人ゴトがそんなカンジなんでしょうか(笑)
せめて手とか繋いでほしいです。
>>362さん
ありがとうございます。
ほのぼのはうれしいですね。
たぶん、かなりのバカップルです、いしよしも(笑)
>>363さん
ありがとうございます。
一応今回はいしよし出てきますんで(笑)
- 367 名前:七氏 投稿日:2004/08/20(金) 14:35
- 更新キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
楽しみに待ってます。
- 368 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:32
-
そして、そのバーベキューパーティー当日。
最寄駅に集合した真里、美貴、亜弥、れいな、絵里、
梨華、ひとみは真里の先導の元、あさ美の家まで向かった。
家の前で出迎えてくれたあさ美についていく。
荘厳な門構え、庭園というのがふさわしい庭、
そして昔ながらの広い日本家屋といった風景に、
美貴、亜弥、れいな、絵里は愕然とした。
「…すごいね」
「教科書とかに出てきそう…」
「紺野先輩ってホントにお嬢様なんだ…」
「失礼のないようにしないと…」
すっかり圧倒されている4人に比べて、
梨華とひとみははしゃぎっぱなし。
「やーん、懐かしいっ。
ココに来たのってもう1年以上前だね」
「そうだねー。梨華ちゃんさあ、この家入るときにさあ、
まず門のとこでつまづいてたよね」
「しょうがないじゃん、あんな門、お寺とかでしか通ったことないもん」
「でも、そのコケ方がホントにダサッってカンジでさあ」
「何よぉ、コケるときにかっこつけるなんてできるわけないじゃない」
「そうだけどさあ…」
梨華とひとみがイチャついてるのを、後ろから美貴と亜弥が見ていた。
「石川先輩って、あんな風にすねたりとか甘えたりするんだ…」
「んー、ちょっとキショイけどね」
「すごくしっかりしてて真面目で頼り甲斐のある先輩って思ってたから」
亜弥はテニス部で一緒で、部長の梨華のことはそういう印象で見ていた。
「クラスとかじゃ、わりといじられキャラだったよー。
それより、よっすぃーのデレデレがイヤなんだけど」
美貴は1年のときに梨華と同じクラスで、
ひとみとは1年間バレー部で一緒であった。
ひとみは入学当初からかっこいい、王子様的な存在であり、
こんな風に鼻の下を伸ばしているのを見たら、
よっすぃーファンは幻滅しちゃうんじゃないかと、美貴は思った。
- 369 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:33
- 家の玄関に入ると、着物を着たお手伝いの2人が出迎えてくれた。
「ようこそ、いらしゃいませ」
そのうちの1人、安倍なつみが笑顔で頭を下げると、皆もそれに答えた。
「荷物はこちらに置いておいて下さい。
離れの方に運んでおきますので」
もう1人、柴田あゆみも笑顔で、皆の方を見る。
今日は土曜日ということもあり、バーベキューパーティーの後、
そのまま皆お泊りすることになっている。
「ありがとう、なつみさん、あゆみお姉ちゃん」
あさ美も頭を下げる。
「とりあえず、お上がりになって少し休んで下さいませ」
なつみの案内で、全員客間の方に向かう。
畳の部屋で、皆正座をしたりして、少しぎこちない。
なつみがペコリと頭を下げて、部屋を一旦出ていく。
ふぅー、という声とともに、美貴が足を崩すと、
他のみんなも少しくつろぎはじめる。
「ね、あんな若いお手伝いさん、前からいたっけ?」
真里があさ美に聞く。
「いえ、なつみさんは2ヶ月前くらいから来ていただいて…」
- 370 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:33
-
あさ美の父親が、北海道に出張したときに
泊まった老舗旅館の仲居さんだったなつみを気に入ってしまい、
自分の家のお手伝いにと頼みこんだ。
父親も娘が微妙な年頃なので、色々な面での相談等もできるような、
若いお手伝いさんが欲しいと思っていたのだ。
あさ美もその働きぶりだけでなく、
かわいらしくて若いのにお母さんみたいな雰囲気があるからか、
働きはじめてすぐになつみのことを慕うようになっていた。
あゆみの方は、この近所に住む大学生。
昔から、姉のいなかったあさ美が「お姉ちゃん」と慕っていたため、
時間があるときには、アルバイトとしてあさ美の家庭教師や、
お手伝いの仕事もしてもらったりしている。
なつみが紅茶を運んできたところに、あさ美の母親がやってくる。
皆も正座をし直して、きちんと挨拶をする。
「本当にあさ美の友達はいい子ばっかりねえ。
年寄りがいると楽しめないでしょうから、
私は引っ込んでますから、何かあったら、
あさ美か手伝いのものに言ってね。
それじゃあごゆっくり」
出されたお茶を飲んで、緊張も少しほぐれてきたところに、
あゆみが入ってきた。
「準備が整いましたので、庭の方にどうぞ」
- 371 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:34
-
そして、バーベキューパーティーがはじまる。
まずは。なつみが鉄板で焼き物をはじめる。
「あ、オイラやりますんで!」
真里がなつみの側に行き声をかける。
「いえ、お客様はゆっくりくつろいでいて下さい」
「いやー、今回はオイラが紺野に迷惑かけちゃったし、
幹事みたいなもんだから、何かやらせて下さい、お願いします」
真里がなつみに頭を下げると、なつみはニッコリと微笑んだ。
「じゃ、そちらの野菜を鉄板に乗せて下さい」
「ラジャー!」
あゆみが皆に飲み物を配ると、
徐々に皆も鉄板の周りに寄ってきた。
「そろそろ、こちらのお肉の方、大丈夫ですよ」
「マジ!?いただきっ!」
すぐに美貴が手を出す。
「あっ!れいなもっ」
れいなも箸を出し、みんなも徐々に食べ始めた。
真里は焼き物をしながらなつみと話しをしていた。
真里がだんだんフレンドリーになってきたため、
なつみも普通に楽しそうに笑い声を上げていた。
「みきたーん、ちょっと食べ過ぎだよお」
「いいじゃん、沢山あるんだし。
亜弥ちゃんもいっぱい食べなよ。ほれ」
美貴に肉を差し出され、むしゃむしゃと食べる亜弥。
亜弥が野菜を取り、美貴の口元に持っていく。
仕方なさそうに食べる美貴。
「ちゃんと野菜も食べなきゃダメだよぉ」
「いいじゃん、それなりに食べてるし」
「…もー、みきたん、肉が絡むと人が変わるんだもーん」
肉が焼けるとすぐに手を出す美貴に、亜弥も呆れ顔。
- 372 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:34
-
「んー、おいしいね」
「マジ、バリうまいんやけど」
絵里とれいなも、ずっと箸が動いていた。
「はい、れいな、あーん」
絵里が肉をれいなに差し出す。
「い、いいって、自分で食べれるけん」
「いいじゃん、食べてよう」
れいなは困った顔をしたが、周りを見渡すと、
皆自分たちのことに夢中でこちらを見ている気配はない。
れいなはそっとパクッと食べた。
「えへへー、絵里にも食べさせてー」
「そ、そんなん自分で…」
絵里が大きな口を開けて待っている。
しょうがないので、鉄板から肉を取り、
ふうふうしてあげて、それを絵里の口に放り込んだ。
「んー、おいし。れいな、やさしいね」
「別に…言われたからやってあげただけやし」
照れて、素っ気無い言葉になってしまうれいな。
「だって、ちゃんとヤケドしないように冷ましてくれたし」
「う…まあ、たまたまやけん」
ニコニコと絵里に見られてるのが恥ずかしくて、
肉をすごい勢いで食べはじめる。
「藤本先輩、肉取りすぎ!れいなん分も残して下さい!」
7時過ぎにはバーベキューパーティーもお開きに。
「んー、食べ過ぎた…もう動けない…」
苦しそうな表情の美貴が亜弥の背中におぶさっていく。
「もー、だから食べ過ぎちゃダメだって言ったじゃん」
「だってー、目の前に肉があるんだもん…」
「しょーがないなあ、みきたんはぁ」
亜弥もあきらめて、美貴のことを背負って歩き出す。
苦しいくせにうれしそうな顔をする美貴。
「うわぁ、藤本先輩、甘えんぼだぁ」
「美貴ちゃん、ときたま子供っぽいとこあるけど、
あんなになるとはねえ…」
「結構厳しくて、ビシビシ言ってくる藤本先輩のイメージしかないんだけど。
すげー意外」
ひとみと梨華が目を丸くして、その光景を見ていた。
- 373 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:35
-
離れに移動すると、縁側に桃と梨を切ったものと、
花火が用意されていた。
「秋にやる花火もいいねー」
はしゃいで花火を始める絵里とれいな。
花火を持って梨華を追いかけるひとみ。
亜弥にベッタリ寄り添いながら、2人で1つの花火をする美貴。
庭の端の方でなつみを誘って一緒にせんこう花火をしている真里。
そんな皆の様子を縁側に座って桃を食べながら、
あさ美とあゆみが見ていた。
「何か皆いいカンジだねえ」
「うん。でも亀井ちゃんと田中ちゃんがそういう関係だっていうのは、
今日知った。何となくそうかなとは思ってたけど」
「なつみさんもすごく楽しそう。
あんなに楽しそうな顔初めて見たかも」
「矢口先輩も楽しそうです。お付き合いしちゃえばいいのに」
「あさ美ちゃんはいい人いないの?」
「へ!?わ、私?」
目を丸くして驚いてるあさ美に、あゆみが微笑む。
「その様子じゃいるんだぁ。どんな子?同じ学校の子?」
「ち、違います!そ、そんな人、学校になんていません!」
あさ美のあまりの慌てぶりに、あゆみがクスクスと笑う。
「ふーん。じゃ、そういう人できたら、
お姉ちゃんにちゃんと紹介するんだぞ」
あゆみがあさ美の頭を撫でるが、
あさ美は不満そうに唇を尖らしたままうつむく。
- 374 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:35
-
本人は姉のつもりでいるけれど、
あさ美にとっては、小さい頃からあゆみは憧れの人であった。
いつも冷静で、優しくて、大人で、
きちんと自分のことを見てくれて。
あゆみが高校生のときに、彼氏ができて、
その話しを聞いたときに、あさ美は今までに感じたことのない衝撃を受けた。
彼氏との話しを聞くのが苦痛に思えた。
そして、その彼氏と別れたことを聞いたときに、
言葉では慰めていたけれど、心の底では大喜びをしていた。
そのとき、あさ美はあゆみに恋をしていることに気付いたのだ。
「…そんな人、作るつもりないから…」
あさ美が不機嫌そうなのを見て、あゆみも苦笑いをする。
「じゃ、わかった。あさ美ちゃんに、いい人ができるまでは
私がその代役で側にいてあげるから」
「…え?」
あさ美がキョトンとして、あゆみの顔を見る。
「かわいい妹に寂しい思いさせられないからね」
あゆみが、あさ美の背中に腕を回し、
ポンポンというように優しく抱きしめる。
あさ美は顔を赤らめながらも、うれしそうにあゆみの肩に顔をうずめる。
「…代役なんかじゃないです」
「ん?何か言った?」
「い、いえ!何でもありません」
そう、このままの関係でいい。
ずっと側にいてくれるなら、姉と妹でも…
あさ美は熱い思いを心の中に閉じ込めた。
- 375 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:36
-
離れは2階建てで、1階と2階にそれぞれ1部屋づつのもの。
お風呂や洗面所などももちろんある。
お風呂の準備ができたことをあゆみが知らせると、
「みきたーん、一緒に入ろうねー」
「んー、まだ少し苦しいからもう少し後でね。
ちょっと休ませて」
美貴と亜弥は2階に行き、少し休むことにした。
もう布団も敷いてくれている。
ちなみに、2部屋のため、部屋割りは、
2階に美貴、亜弥、梨華、ひとみ。
1階に真里、れいな、絵里、ということになった。
美貴と亜弥、そして梨華とひとみは、
泊まりとなると、そういうことを始めてしまうかもしれない。
真里だけが1人だし、さすがにれいなと絵里はそういう状況でも、
人前では遠慮してくれると思ったあさ美がそう決めたのだ。
あさ美は、あゆみが泊まってくれると言ってくれたので
自分の部屋で寝ることにした。
「オイラ、1人だし、とっとと入ってくるから、一番でいい?」
真里はそう言うと、お風呂場に向かっていった。
「じゃ、ウチら次入ってもいい?」
ひとみが絵里に聞くと、
「はい、いいですよ。絵里たちは亜弥ちゃんたちの前でいいです」
絵里が笑顔で答えると、れいなが目を丸くした。
「ちょ、ちょ、2人づつ入るん?」
「だってー、人いっぱいいるし、そうした方が早いでしょ」
「そうやけどぉ…」
れいなと絵里は付き合いはじめて間もないし、
まだキス以上のことをしたことがない。
だから、裸を見ることはもちろん初めて。
体育の授業での水着姿や、更衣室での下着姿は見たことあるけど、
他のクラスの子たちもいるし、そんなにじっくり見るものでもないし。
れいなは、少し緊張してきていた。
- 376 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:36
-
真里がお風呂から出ると、すぐに、
「ちょっと、なっちの部屋に行ってくる」
と離れを出て行ってしまった。
いつの間にかすっかり仲良くなった真里となつみ。
今は紺野家で住み込みで働いているのは、なつみだけ。
母屋の端の方に、手伝いさん用の部屋があり、そこで生活している。
先程、あさ美からなつみの部屋の場所を聞いたし、
『なつみさんのいいお友達になって下さい』とあさ美からも言われ、
こっそりと遊びに行くことにした。
部屋の前に立ち、ドアをノックする真里。
「はーい」
なつみののんびりした声が聞こえてきて、
すぐに部屋のドアが開く。
「…え?…ど、どうしたんですか?」
この部屋に普通にやってくるのなんて、
あさ美しかいないと思っていたなつみはかなり驚いていた。
「よっ!」
右手を上げて笑顔で答える真里。
なつみもお風呂上りだったらしく、
パジャマ姿で、まだ髪も濡れたままで、タオルを肩にかけていた。
「へー、普通にオイラの部屋より広いんだけど」
10畳くらいの広さで押し入れなどの収納があるし
モノもあまりないので、部屋はすごく広く見える。
入口から中を覗き込んで、真里がつぶやく。
「あのさー、入ってもよい?」
なつみが驚いて固まって突っ立ったままだったので、
真里も中に入れないでいた。
「あ、ああ、どうぞ」
なつみが中へ促すと、小さなテーブルがあり、
その前に置いてある座布団に座るようにすすめた。
- 377 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:36
-
「仕事終わったら、部屋でのんびりするってカンジ?
外に遊びに行ったりしないの?」
「まだこっちに来たばっかりですし、
全然地理とかもわかりませんから」
なつみが部屋にある小さな冷蔵庫を開けながら答えた。
「ウーロン茶でよろしいですか?」
「んー、お酒ある?」
「え?矢口さん、高校生ですよね?」
「いいじゃん、いいじゃん、固いこと言わない。どれどれ」
真里が冷蔵庫の中を見ると、缶チューハイが数本入っている。
「お、コレもらっていい?」
「え?ええ、どうぞ」
「なっちも一緒に飲もうよ」
「は、はあ…」
真里となつみは並んで座り、乾杯をした。
「ぷはぁ!うまい!」
真里の満足そうな顔を見て、なつみも微笑んだ。
「矢口さん、おいしそうに飲みますね」
「うん、うまいもん。
つーかさ、その『矢口さん』とか敬語やめない?」
「でも、お嬢様のお友達ですから」
「でも、なっちの友達でもあるでしょ?」
なつみが目を丸くする。
「ダメ?なっちの友達にしてくれない?」
「い、いえ、そんな…こちらこそよろしくお願いします」
「よし!じゃ、今から敬語禁止ね。
呼び方も『ヤグチ』でいいからね」
「は、はい。あ、うん」
真里がニコニコと、なつみの頭を撫でると、なつみも笑顔になった。
- 378 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/24(火) 13:37
-
真里はなつみを見て、普通にかわいい人だなあと思った。
お手伝いさんだけあって気も利くし、優しいし。
でも、同時にその笑顔の中にあるどこか孤独的なモノを感じもした。
それで、この孤独を救ってあげたい、この子の心からの笑顔が見たい、
という気持ちが強くなり、何が何でも仲良くなってみたいと思った。
お酒が入ったせいもあるのか、なつみもどんどん自分のことを話すようになってきた。
北海道から1人上京してきて、紺野家の皆はとてもよくしてくれている。
あさ美やあさ美の母も、よく外に買い物や遊びに連れて行ってくれるし、
北海道の田舎とは違って何もかも刺激的だと。
ただやっぱり、家族とも離れているし、
友達と呼べる人がいないし、出会うきっかけもないのが、
すごくさみしいと。
「じゃ、オイラが紹介してやるよ。
オイラ、こう見えて友達多いんだよ。いろんな人いるし。
紺野に怒られない程度の友達、紹介するよ」
「…ありがとう」
「今度の休みはいつ?」
「あ、あさって、かな」
「じゃ、朝から遊ぼう!
ディズニーランドとか行っちゃう?」
「で、でも、学校あるんじゃ?」
「いいの、いいの、なっちのためならサボるよ」
なつみはうれしさのあまり、目に涙を浮かべた。
「泣くことないじゃーん、もう」
真里がなつみの頭を小突く。
「だって、うれしくって…」
「あー、もー、なっち、かわいいなあ!」
真里がなつみをギュッと抱きしめて、
ほっぺにチュッとキスをする。
「…ふぇ?」
なつみがキョトンとして、真里を見る。
「あははは!『ふぇ?』ってナニ?」
真里が大笑いすると、なつみもそれにつられて笑い出した。
その後もずっと、真里となつみは語り合って、笑い合った。
すっかり友達と呼ぶ以上の関係になれた。
- 379 名前:サチ 投稿日:2004/08/24(火) 13:39
- 今日はここまでです。
あと1、2回で終了します、たぶん(笑)
>>367さん
ありがとうございます。
すぐに反応していただけるとうれしいものですね
- 380 名前:ケロポン 投稿日:2004/08/24(火) 14:19
- 更新乙です。
矢口さんいい感じですね。亀井さんと田中さんも期待してます。
あと1、2回で終わっちゃうのはちょっぴり残念です。
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/24(火) 16:22
- えぇぇぇぇぇ!!
もっと見たいよー
- 382 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/27(金) 01:52
- なちまり!!
あやみきの次に好きなCPなので嬉しいっす!
- 383 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:53
- 梨華とひとみがお風呂から出て、
れいなと絵里の入る順になる。
れいなはとにかく恥ずかしくて、すばやく服を脱ぎ、
「先、入ってるけんね」
と、絵里のことも見ずに浴室に入っていく。
離れであるからか、お風呂のサイズは普通の家庭と同じくらい。
れいなが軽くシャワーを浴びていると、すぐに絵里が入ってくる。
れいなは慌てて浴槽に入っていく。
「それにしても、紺野先輩んちってすごいよねえ」
「そ、そうやね」
れいなは絵里に背中を向けて、あえてそっちを見ないようにしていた。
「お手伝いさんもいるなんてー」
「う、うん」
絵里は髪を洗いながら、今日あったこととか感じたことを、
ずっとしゃべっていた。
れいなはほとんど相槌を打つくらいしかできなかったのだが。
「ん、よいしょっと」
髪にタオルを巻いた絵里が、浴槽に入ってくる。
れいなが急いで出ると、髪を洗い、体を洗いはじめた。
- 384 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:53
-
「れいなって、なんか女の子ってカンジのスタイルだよねー。
小さくて華奢ってカンジ」
れいなが思わず絵里の方を見ると、
浴槽の淵に顎を乗せてニコニコとれいなを見ていた。
「…そ、そんなジロジロ見んといて」
「いーじゃん、減るもんじゃないしー。
絵里の体も見ていいよ。自信ないけど」
絵里が立ち上がったので、れいなは慌てて顔を逸らす。
「い、いいって!座ってて!」
「んー、れいなの背中、流してあげるぅ」
「そんなことせんでええからっ!」
れいなの言葉を無視して、絵里はれいなの背中を洗い始めた。
れいなは、絵里の手が動くのを、ドキドキしながら感じていた。
「ねー、絵里のもやってー」
「な、なんで、そんなこと…」
「いいじゃん、お願い!」
絵里がれいなの背中に抱きつく。
「…っ!!」
もちろん、裸のままであるから、絵里の胸が直接れいなの背中に触れている。
れいなはワケがわからなくなって、絵里の言う通りに従って、
背中を流してあげた。
「えへへー、じゃ、最後に一緒にお湯つかったら、出ようね」
絵里がれいなの手をとって、立ち上がらせて、
正面かられいなの全身を見てニッコリ微笑んだ。
そうなるとれいなの方も、無意識に絵里の体を見てしまうワケで、
一瞬クラッとしたのを感じた。
絵里はれいなの手を引いて、浴槽に一緒に入ると向き合うようにして座る。
絵里がれいなのことをじっと見つめると、
肩をつかみ、突然キスをしてきた。
唇を離した絵里がれいなの顔を見て驚く。
「れいなっ!大丈夫!?」
大丈夫なワケない、とれいなは思っていたが、
何で絵里がそんなに驚くのか疑問にも感じていると、
ポタリと、お湯の中に赤いものが落ちてきた。
「…え?」
れいなは鼻血を出していた。
- 385 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:54
-
一方、梨華とひとみは縁側で並んでぼんやりと庭を眺めていた。
「ウチら付き合い始めてもう1年以上経つんだね」
「何かあっという間のような気もするけど、
ひとみちゃんとはずーっと一緒にいたような気もする」
「そうだね。またココに来れてうれしいよ」
昨年の『恋するハロモニ』の最後のシーンはまさにこの場所であった。
「…ね、あのときみたいに、膝枕してもらっていい?」
ひとみが少し照れたように梨華の顔を覗きこむと、
梨華は微笑んで、脚の上をポンポンと叩いた。
「うん、いいよ」
ひとみが横になって、梨華の脚の上に頭を乗せる。
「あのとき、梨華ちゃん、何て言ってくれたんだっけ?」
「えー、忘れちゃったよぉ…」
最後のハロモニプランは、
『膝枕をしてあげて、頭を撫でてあげながら、
相手のどういうところが好きか言ってあげて下さい』
という内容のものだった。
本当は梨華もひとみもちゃんと覚えていた。
『子供みたいなのに、優しくて、包容力があるところ』
梨華はそんな風に答えていた。
「じゃ、今のウチの好きなところ、教えてよ」
「えー?」
梨華はそう言いながらも、ひとみの髪を撫ではじめた。
ひとみが柔らかい笑顔を梨華に向ける。
梨華はひとみの全てが好きだった。
性格はもちろん、顔も大好き。とくにこの大きな優しい目。
「んー、顔かな?」
「…ふーん…それだけ?他には?」
「そんな、改めて言うの恥ずかしいよぉ。
じゃ、ひとみちゃんは?私のどこが好き?」
梨華が、小首をかしげてひとみの顔を見ると、
ひとみはニヤッと笑った。
「んー、体かな?」
「何よ、ソレ!ひとみちゃんのエッチ」
「あははは」
- 386 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:54
-
梨華とひとみが甘い雰囲気でいると、
「すみません!ティッシュありませんか!?」
と、絵里の叫ぶ声がした。
絵里は体にバスタオルを巻いただけで、
同じくバスタオルを巻いて鼻をつまんでいるれいなを支えてくると、
敷いてある布団に寝かせた。
梨華がひとみをそっと下ろすと立ち上がり、
部屋のテーブルの下に置いてあったティッシュを箱ごと、絵里に渡す。
「あ、ありがとうございます」
絵里はティッシュを取ると、れいなの鼻に詰めた。
「ごめん…ありがとう」
「鼻血?大丈夫?」
梨華が心配そうに、れいなの顔を見る。
「はい。れいな、のぼせちゃったみたいで」
絵里が泣きそうな顔でれいなの顔を見ている。
「のぼせたからじゃないんじゃないのー?
ホレ、頭冷やしときな」
ひとみがニヤニヤしながら、濡れタオルを持ってくる。
「す、すんません…」
れいなは言い返すこともできずに、申し訳なさそうにしていた。
かかんでれいなの額にタオルを乗せている絵里の胸元に、
ひとみが何となく視線をやってしまう。
「ちょっと、ひとみちゃん!どこ見てんの!」
梨華が怒ると、ひとみは慌てて目を逸らす。
- 387 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:54
-
「え?どこ見てたんですか?」
全然気付いてなかった絵里が不思議そうにひとみを見る。
「亀井ちゃんの胸」
梨華が頬を膨らませながら言うと、れいなが飛び起きる。
「な、な、何してんですか!吉澤先輩!」
れいながひとみに飛びつく。
「まー、まー、目の前でかわいい子がバスタオル巻いてるだけの姿でいて、
見るなっていう方が無理だよ。
田中だって、亀井の裸、見たから鼻血出たんでしょ」
「…うっ…そ、そんなストレートに言わんくても…」
れいながひとみから手を離して、ガックリとする。
「そうなの?絵里の裸見たから、鼻血出たの?」
「いいいいいや、そうじゃなくて!
いや、そうじゃないワケでもないんやけど…」
なぜかうれしそうに聞いてくる絵里に、れいなは戸惑ってしまう。
そんな中、梨華がムッとしたまま立ち上がる。
「え?梨華ちゃん、どうしたの?」
ひとみが不思議そうに梨華を見上げる。
「…ひとみちゃんのスケベ」
そう言うと、梨華は2階に向かっていく。
「え?え?ちょっと待ってよ、梨華ちゃん」
慌てて、梨華を追うひとみであった。
- 388 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/08/28(土) 21:55
-
苦しがる美貴を亜弥がおぶるようにして、
2階の部屋にいき、美貴はそのまま布団に横たわっていた。
「うぅー、まだ苦しいんだけど…」
「大丈夫?」
亜弥が美貴のお腹をさする。
「美貴のお腹すげー出てない?」
「うん、確かにすごいね、みきたんのお腹」
そのままお腹をさすり続けていたら、
美貴は目をつぶって気持ち良さそうにしていた。
亜弥はちょっとイタズラ心で、その手をもう少し上、
胸の辺りまで持ってくる。
「うわっ!な、何だよー、亜弥ちゃん、イヤらしいなあ」
「にゃはは〜」
でも、亜弥はその手を止めなかった。
「…ん…あ、亜弥ちゃん…ダメだってぇ…」
「いーじゃん。キモチいいでしょ?」
「で、でも、誰か来るかもしれないし…」
「気にしない、気にしない」
そう言うと、亜弥は手は休めずに、美貴にキスをした。
最初は触れるだけのものが、だんだん激しくなり、舌も絡ませ合う。
亜弥が、美貴の上に覆い被さると、
「…あぅ!マジ苦しいんだって!」
美貴が慌てて亜弥をどける。
「そんな体重かけられたら、吐いちゃうよー」
「ごめーん…」
素直に謝る亜弥がかわいくて、美貴は微笑んで、
亜弥の頭を撫でた。
「もうちょっと落ち着いたら、ね?続きしてもいいから」
「ホント!?」
「でも、布団の中でコッソリだからね」
「うん、わかった!」
亜弥は美貴の隣りに横になり、
お腹をさすり続けているうちに、2人とも眠ってしまっていた。
- 389 名前:サチ 投稿日:2004/08/28(土) 21:58
- 今日はここまでです。
ちょっとだけですが。
>>380さん
ありがとうございます。
今回はちゃんと田亀も出してみました(笑)
>>381さん
ありがとうございます。
が、たぶん次回で終わります、スミマセン…
>>382さん
ありがとうございます。
なちまりはフツーに親友ってカンジで私も好きです。
二人ゴト、楽しみです。
- 390 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 05:07
- こっそりこっそり・・・♪
- 391 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/30(月) 19:38
- ラストのあやみきでやられました。
二人可愛すぎます。
- 392 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 23:37
- 新作が始まっていたこと、今気づきました。
なんて素敵な話なんだ!
あやみきいしよしれなえりなちまりついでにしばこん!!!!!!!!!
最高すぎます(;´Д`)
こっちが鼻血出そうですw
ものすごく応援してます、がんばってください。
- 393 名前:かけがえのない 投稿日:2004/09/08(水) 14:28
-
慌しく階段を上がってくる2つの足音がすると、
すぐに2階の部屋の戸が開いた。
「ちょ、ちょっと、梨華ちゃん!」
梨華は頭から布団をかぶって横になった。
「ねー、ごめんってば。そういうんじゃなくてさあ」
その梨華の布団をゆすって、必死に謝っているひとみ。
そのバタバタで、目を覚ましてしまう美貴と亜弥。
「…ん?何?どうしたの?」
「あー、ごめん、うるさくして…梨華ちゃん、悪かったってー」
この様子からして、2人がケンカ中だというのはバレバレである。
「…ね、美貴たちジャマみたいだから出てよっか?」
「うん、そーだね」
美貴と亜弥はそっと部屋を出ていく。
結局そのあと、ひとみは1時間以上も謝り続け、
梨華の方も引くに引けなくなってしまい、ずっと黙っていた。
「あー、もう!!ウチが本気でエッチな気分になるのは、
梨華ちゃんだけだっつーの!!」
ひとみは無理矢理布団を取り、梨華に覆い被さった。
「ひとみちゃん!?ちょ、ちょっと…」
「言葉でわかってもらえないんなら、行動で示す!」
そのまま、ひとみは梨華に激しく口付けた…
- 394 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:28
-
美貴と亜弥が1階に下りると、れいなと絵里はまだバスタオル姿であった。
れいなは念のためまだ布団に横になっている。
「あ、お風呂あがったことなの?」
亜弥が聞くと、
「うん、もう入っていいよ。
あ、着替え、脱衣所だから持ってきちゃうね」
絵里が答えて、浴室の方に向かう。
「田中ちゃん、どしたの?…もしかして鼻血?」
横になってるれいなの鼻の詰め物に気付いた亜弥が聞く。
「…うん…もう大丈夫だけど」
「あはは!もしかして、亀井ちゃんとお風呂入ったから、
コーフンして鼻血出したの?」
美貴が楽しそうに笑っている。
「…もう、いいですよ…その通りですから」
絵里もいないことだし、れいなもあきらめて認める。
確かにその通りだ。
自分だって女だし、同じ体のつくりをしてるのに、
なぜか絵里の裸を見たら、すごくドキドキした、クラクラした。
たぶん、他の人の裸を見てもココまでなることはないだろう。
「え!?やっぱり、ホントなの?
れいな、絵里にコーフンしたんだ!」
パジャマや下着を抱えてやってきた絵里がうれしそうに、
れいなに近づいていく。
「へっ!?いいいいいや、その…」
「じゃ、じゃあ、今ココで絵里がバスタオル取ったら、
また鼻血出ちゃうかもしれないの?」
絵里が自分の体に巻いているバスタオルに手をかける。
「どぉわーっ!!いいいいいいから!
見せなくていいから、早く着替えて!」
れいなは目をつぶって布団をかぶった。
その様子を微笑んで見ていた美貴と亜弥。
「じゃ、うちらはお風呂に入りますか」
「うん!」
- 395 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:28
-
美貴と亜弥はお互いの家に泊まるときも、
一緒にお風呂に入っているので、いつもように、
お互いの髪や体を洗い合いっこして、
湯船につかるときも抱き合って入っていた。
「ねー、みきたんも田中ちゃんみたいに、
最初にアタシの裸見たときすごくコーフンした?」
「んー、どーだったかなあ?」
「ひどーい。じゃ、今は?今はコーフンしてる?」
「んー?さぁ?」
「もー!アタシは、みきたんと一緒にいるだけで、
いっつもドキドキしてんのに!ほらっ!」
亜弥は美貴の手を取って、自分の心臓のあたりに持ってくる。
「お…ホントだ…すごく早いね」
「みきたんは?みきたんはアタシじゃドキドキしないの?」
美貴は困ったように微笑む。
「…もー、しないワケないでしょ。
今だって、何かしちゃいそうだから、
余計なこと考えないようにガマンしてんの」
亜弥は一瞬目を丸くするが、すぐに満面の笑みになる。
「ガマンすることないじゃん。2人っきりなんだしぃ」
亜弥は美貴にガッシリと抱きつく。
「だって、いつ誰が来るかわかんないし、
お風呂場だし、声響くしさあ…」
「わかった、声をガマンするから!」
亜弥が奪うように美貴に口付ける。
美貴もさすがに観念して、亜弥に応える。
お互い必死に声だけはガマンして、
心と体の方は堪えることから解放させた。
- 396 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:29
-
パジャマを着たれいなと絵里は、
縁側に並んで座って庭と空を眺めていた。
「ホント、この家ってすごかね。旅館みたい」
「うん、すごい田舎にいるみたいだよね」
「…れいなぁ」
「ん?」
「…んー」
絵里がれいなの方に顔を向け、
目をつぶって顎を上げてくる。
コレって…キスしてくれってことやろか?…
実は、今までれいなからキスしたのは、
一番最初の『恋するハロモニ』編集中の、
したかしていないかわからないくらいのキスしかなかった。
れいなはお風呂場の方を見る。
まだ美貴と亜弥は出てこないだろうし、
2階から梨華とひとみが来る気配もない。
これならジャマが入る心配もない。
絵里は何をしてもかわいいけれど、
このちょっと唇を尖らした絵里の顔が、
れいなはとくにかわいいと思っていた。
もう少しこのままこの顔を見ていたい。
「…れいなぁ…はやくぅ…」
「うっ…」
そんな言葉を言われたら、すぐにしないワケにはいかない。
れいなは絵里の唇に自分のを重ねた。
壊れ物を扱うかのように、フワッと包み込むように。
唇を離すと、れいなは絵里を見つめながら髪をそっと撫でた。
恥ずかしそうに絵里は上目使いでれいなを見る。
「…んー、れいなはチューも優しいね」
「…そうなん?よくわからんけど…」
「えへへー、優しいれいな、大好きっ!」
絵里がれいなにギュッと抱きつく。
- 397 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:29
-
「ねー、絵里もれいなに優しくしてあげたいな」
「ん?絵里は十分優しか」
絵里は実際もそうだけど、見た目からしても優しい。
だから同じクラスの子からも先輩からも、すごく好かれている。
れいなも人懐っこい性格ではあるのだが、
見た目がそう見えないらしく、人から来られることはない。
絵里はその点、見るからに懐かれやすいのだ。
それがまたれいながヤキモキする原因でもあるのだが。
「さっきさぁ、石川先輩が吉澤先輩に膝枕してあげてた」
「へー、去年の『恋するハロモニ』と一緒やけん」
「絵里もれいなにしてあげる」
「…へ?」
「はい!」
絵里は正座をして少し足を崩すと、れいなを見て微笑んだ。
「…『はい』って言われても…」
誰もいなくても何となく恥ずかしい。
膝枕なんて自分が子供みたいだし。
ひとみは梨華より年下だからいいけれど、
れいなは絵里に頼られるような存在でいたいのに。
こんな甘えてるみたいな行動をするのはどうもためらわれた。
「…イヤ?絵里の膝じゃ寝心地悪そう?」
「いいいいいや、そんなことは絶対ないけど!」
「じゃあ、どうぞ」
まだ戸惑っていると、絵里がれいなを抱き寄せて、
そのまま頭を脚の上に乗せてしまう。
ここまでされて、拒否するなんてできなくて、
れいなはされるがままになっていた。
絵里は、れいなの顔を微笑んで見つめながら、
髪を優しく撫でていた。
子供扱いされるのはイヤだけど、
大人ぶっている絵里を見るのは好きだった。
何だか得意そうで、それでいて全てを包み込んでくれるようで。
- 398 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:30
-
美貴と亜弥はたっぷり2時間くらいお風呂に入っていた。
さすがに、2人が出てきたときには、
れいなと絵里も布団に横になっていた。
「すごい長風呂なんですねー」
絵里がとくに何の意味も込めずにつぶやいた。
「うっ…ま、2人だし、最後だし、ゆっくり入らせてもらった」
美貴が慌てて答える。
「そうそう、2人だし、ね?」
亜弥がうれしそうに美貴の腕を取る。
「そ、そうそう。あ、あれ?布団、こっちは3人分かあ」
美貴がごまかすように話しを逸らす。
元々1階は真里、れいな、絵里の予定だったので布団は3つしかない。
「いいじゃん、どうせ一緒に寝るんだしぃ」
亜弥がちょっと膨れる。
「でも、やぐっつぁんが戻ってきたら寝るとこないじゃん」
「2階で寝てもらえばいいじゃん」
「まー、そーだけどー、何か悪いかなって」
「じゃ、2階の様子見てくる」
「大丈夫?ヤバイ状況になってるかもよ?」
「みきたんも一緒に行こう?」
「美貴はいいよー。田中ちゃんと亀井ちゃん、行ってきて。
いろいろ勉強になると思うから」
「勉強ですか?」
絵里が不思議そうに聞く。
「そう、大人になっていく上で、必要なことが見れるかもよ」
「じゃ、行きます。れいなも行こ?」
「え?マジで?」
巻き込まれて、なぜかれいなと絵里も2階を偵察に行くことに。
- 399 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:31
-
階段を上って、2階の部屋の襖戸をそっと開ける。
開けるのは少しで済むように、亜弥、絵里、れいなと縦に並んだ。
目の前に飛び込んできたのは、
梨華とひとみが向き合って座っている光景。
といってもお互い裸であり、
ひとみの脚の上に梨華が脚を広げて座っている。
梨華は小さく喘ぎながら、腰を振っていた。
ひとみの左手は梨華の背中に、右手は梨華の中にあった。
亜弥、れいな、絵里は息を飲んでしばらく2人を見つめていた。
梨華の動きとひとみの右手と動きがしだいに早くなっていき、
梨華が少し大きめの声をあげると、脱力して後ろに倒れそうになる。
それを支えて、抱き寄せるひとみ。そして梨華に口付ける。
亜弥は、その場をそっと離れ、1階に下りていった。
美貴は真里用の布団に入って眠っていた。
「みきたーん」
亜弥が美貴の隣りに入っていく。
美貴はピクリともしない。
「みきたんってば」
亜弥が美貴の肩を揺さぶる。
「…ん?ナニ?」
「みきたん、したい」
「…さっき、お風呂場でしたじゃん」
「だってー、またしたくなっちゃったんだもん」
「…ごめん、美貴、眠いんだ。
亜弥ちゃん、してていいよ…」
「してていいって…」
美貴はまたスースーと寝息をたてはじめた。
「もー!みきたんっ!」
亜弥は美貴に口付け、舌を入れるが、美貴は全然反応してくれない。
とにかく今の自分の体の火照りをどうにかして欲しいのに。
しょうがない。
亜弥は、美貴の手を取って、自分の部分に触らせた。
それでも、美貴が動かしてくれる気配はないので、
自分で腰を動かしていくしかなかった。
- 400 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:31
-
一方、れいなと絵里は、梨華とひとみがもう1戦終えるまで見ていた。
2人ともそっちの経験はまだないので、
ある意味本当に勉強にはなったには違いない。
そっと戸を閉めると、れいなと絵里の視線が絡み合う。
2人とも熱っぽい目をしていた。
梨華とひとみの行為は勉強というよりは、
情熱を引き起こしてしまったかもしれない。
「…れいなぁ」
「…絵里」
れいなは絵里のことを強く抱きしめると、
廊下の壁に押しつけてキスをした。
さっきみたいな優しいものじゃない、
激しく舌を入れて絡ませ合った。
しばらくキスを続けていると、絵里がズルズルと床に座り込んだ。
れいなは驚いて、唇を離ししゃがみ込み、
絵里の顔を心配そうに見つめる。
「…絵里?どうしたん?」
「…力、入んなくなっちゃったの…」
目を潤ませながら、れいなのことを見つめる絵里。
れいなは、思わず絵里の色っぽさに見惚れてしまった。
「…れいなのせいだよぉ…」
「…ご、ごめん」
「…1人じゃ立てない」
「あ、うん。わかった」
れいなは、絵里の肩と膝の下に手を回し、持ち上げた。
「え?あ、お、重くない?」
「…くっ…でも、階段、下りる、だけやから…」
いわゆるお姫様だっこの状態で、
れいなは腕を震わせながら、何とか階段を下りきった。
絵里もそこまでしてくれるとは思っていなかったので、
うれしい気持ちと恥ずかしい気持ちもあった。
「…あのね」
「ん?」
「…優しいれいながスキだけどぉ、強いれいなもスキ」
「…ありがと」
2人で顔を赤らめながら、布団まで行くと、
れいなは隣りの布団をふと見る。
美貴が1人で大の字になって気持ち良さそうに寝てるだけだった。
「あれ?亜弥ちゃん、トイレかな?」
- 401 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:31
-
その頃、亜弥は庭にある池の前でぼんやりと鯉を眺めていた。
結局、美貴の手を使って自分を満足させたことが、
恥ずかしいやら情けないやらで、頭を冷やしたかった。
「でも、みきたんが悪いんだよぉ。
アタシがしたいって言ってるのにさあ…」
亜弥がしばらくそうしていると、
部屋と縁側の間の戸が開き、
縁側にれいなが1人やってきた。
「お、亜弥ちゃん、そんなとこにおったん?」
「んー、ちょっとね…田中ちゃんはどうしたの?眠れないの?」」
「…んー、確かに眠れない」
「亀井ちゃんは?」
「ああ、もう寝とる」
さっきの廊下でのキスがだいぶ堪えたのか、
絵里は布団に運ばれて、その後れいながトイレに行っている間に、
眠ってしまっていた。
しかも、れいなが絵里の横に入っていくと、
「れいなぁ」なんて寝言を言って抱きついてくる。
寝てるんだからヘンなことはできないし、
さっきのキスでれいなの方は逆に気持ちが高ぶっていて、眠れそうにない。
だから、ちょっと外の空気でも吸おうと思ったのだ。
れいなが座った隣りに亜弥も座る。
「…ねー、亜弥ちゃんも藤本先輩とあんな激しいエッチすんの?」
「んー、することはするけどー、
アタシもみきたんもわりと淡白だからねえ。
何かイチャイチャしてるだけでいいっていうか…」
「そっかー、れいなも本当は絵里と一緒にいれるだけでいいんやけどなあ。
あんなん見ちゃったら、おかしくなっちゃうよ…」
「そーだよねえ…」
2人揃って大きなため息をつく。
- 402 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:31
-
「ところでさ、田中ちゃんと亀井ちゃんは、
どうして付き合うことになったの?」
「え?ま、まあ、いろいろと」
「なになに?やっぱ、『恋するハロモニ』がきっかけ?
あの撮影してるときはまだ付き合ってなかったでしょ?」
「…うん、そうやけど…」
亜弥の質問攻めにれいなが答えざるをえない状況で、
結局れいなは絵里に対する気持ちをこと細かく白状させられてしまった。
「亜弥ちゃんは?藤本先輩のどこがよかったの?」
「んー、ホント、全部好きだけどねー。
やっぱ優しいとこかなあ。
最初会ったとき、マジでかっこよかったんだから!
アレは誰でも惚れちゃうと思う」
2人はそれぞれの愛しい人のどこがいいかを自慢し合うような
話しで盛り上がって楽しそうに笑い合っていた。
- 403 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:32
-
「なーんか、楽しそうだね。亜弥ちゃんと田中ちゃん」
振り返ると、いつの間にか戸が開いていて、
美貴が仁王立ちをしていた。
「あー、みきたん」
亜弥がうれしそうに美貴を見る。
「さっき亜弥ちゃんに悪いことしちゃったなあって。
隣りにいたはずの亜弥ちゃんがいなくて心配したのにさあ、
すごく楽しそうに笑ってるし」
美貴は不機嫌そうに、れいなのことを睨みつけている。
「うん、楽しいよ。だって、みきたんの話し…」
すると、寝ていたと思った絵里が突然起き上がり、
なぜか部屋の押し入れに入っていくと戸をぴしゃりと閉めた。
「え、絵里!?」
れいなが慌てて、絵里の後を追い、押し入れの中に入る。
絵里は押し入れの下の段で小さく体育座りをしていた。
れいなもその隣りに同じようにして座る。
絵里は押し入れの戸を閉めた。
「絵里…どうしたん?」
戸の隙間から微かに入ってくる光で、照らされた絵里の目には、
涙が浮かんでいた。
「…んっ…絵里のことなんていいから、
亜弥ちゃんと楽しくおしゃべりしてればいいじゃない」
「は?何言ってんの?」
「そりゃ、絵里より亜弥ちゃんの方が全然かわいいし、
話しだって面白いよ」
「…どうしたの?…あ…」
れいなは思い当たることがあった。
よくれいなが感じてること。
絵里が映像部の先輩から頭を撫でられたりしてるときに、
『どーせ、れいなは子供やし。あの先輩の方がキレイやし』
なんて思う。
よく絵里が仲良くしている他の人と自分を比べて落ち込んでいる。
そう、単なるジェラシーなのだ。
- 404 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:32
-
「…絵里」
グズグズ言ってる、絵里の目元をぬぐってやる。
「れいなにとっては、他の誰より絵里がかわいいから。
絵里が一番だから」
こんなこと普段なら絶対言えない。
でも、泣いている絵里を見てるのは辛いから。
今はちゃんと正直に自分の気持ちを伝えよう。
れいなは狭いけれど、何とか絵里の正面から包み込むように抱きしめてあげた。
「…れいなぁ…」
「絵里にとってはどうなん?一番はれいなでよかと?」
「…そんなの…決まってるじゃない…れいな以外に考えられないもん」
絵里もれいなの背中に腕を回して、しがみつくように抱きついた。
2人は何度も何度もキスをした。
キス以外のことを知らないんじゃないかと思えるくらいに。
- 405 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:32
-
「みきたん、どうしたの?」
美貴は亜弥のことを見ようともしないで、腕組みをしながら、
ムスッとしている。
亜弥が立ち上がって、美貴の手を握るが、美貴はそれを振り払う。
亜弥が驚いて、心配そうに美貴を見る。
「亜弥ちゃんさ、美貴といるときが一番楽しいって言ってたよね」
「…うん、言ったよ」
「そんなことないでしょ!
さっき、田中ちゃんとしゃべってるときだって、
すごく楽しそうだったし、
亀井ちゃんとも、やぐっつぁんともしゃべってても楽しそうに笑うじゃん。
美貴の見てないとこでだって、いっぱいいっぱい楽しい思いしてるんでしょ?」
「…確かに楽しいときは楽しいけど…」
「じゃ、美貴と一緒にいる必要なんかないじゃん」
美貴はプイと横を向いてしまう。
「…みきたん、アタシのこと、嫌いになったんだ…」
「…え?」
美貴が亜弥の方を見るが、
亜弥はガックリと落ち込んで、また縁側に庭の方を向いて座った。
「みきたんさ、すっごく優しいし、かっこいいし、かわいいし、もてるし。
そりゃ、アタシだって多少は自分に自信があるけど、
みきたんファンの子にもすっごくかわいい子とかキレイな人いるもん。
アタシ、子供だし、頭も良くないし。
もっと、みきたんにふさわしい人いるよね…」
「…あ、いや…あの…」
「ごめんね、アタシ、みきたんに釣り合うような子じゃなくて…」
亜弥がボロボロと泣き出した。
- 406 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:33
-
「ち、違うよ!そんなんじゃなくて!」
美貴は慌てて、亜弥の隣りに行き、背中を撫でる。
「…いいよ、無理しないで。
あんまり優しくされると余計辛いから…」
「だ、だから違うって!
美貴の方が、亜弥ちゃんに嫌われたんじゃないかと思ったの!
美貴、さっき、亜弥ちゃんに冷たくしちゃったしさ」
「…え?」
亜弥が顔を上げて美貴を見ると、美貴の方も泣きそうな顔になっていた。
「…もしかして、アタシが田中ちゃんと仲良くしてたのがイヤだったの?」
「う…まあ、そう」
「…つまり、それって……ヤキモチ?」
亜弥が目を輝かせて、美貴の顔を見る。
美貴は参ったというように、亜弥から目を逸らして庭の方を見る。
「…そーだよ!美貴以外の人といるときにあんなに楽しそうにしないでよ!」
亜弥は、その言葉を聞いて大笑いした。
「な、何で笑うの?」
「だって、だって、楽しそうにしてたのはー、
みきたんの話ししてたからだもん」
「へ?美貴の話し?」
「そーだよ、田中ちゃんは亀井ちゃんの話ししてたし。
好きな人の話ししてたら、楽しいに決まってるじゃない」
「…そうだったんだ…」
美貴が恥ずかしそうに頭をポリポリ掻くのを、
亜弥はうれしそうに眺めていた。
- 407 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:33
-
「でも、うれしいなあ、みきたんがアタシにヤキモチやいてくれるなんて」
「…そりゃ、やくよ」
「そうだよねえ、アタシだって、
みきたんが他の人と楽しそうに話してたら、すごくイヤだもん」
「…そう?」
「アタシ、めちゃくちゃ独占欲強いよ」
「…ま、何となくわかってた」
「それでもいい?」
「…うん、いいよ…亜弥ちゃんだもん」
「ねえ、みきたん?」
「ん?」
「仲直りのチュー」
亜弥は美貴に抱きついて、目をつぶって顔を近づけた。
美貴がそれに応えて、チュッとしてやる。
「にゃははは〜みきたん、ダイスキ!
みきたんは?アタシのこと好き?」
「うん、大好きだよ」
「誰よりも?世界で1番?」
「うん、宇宙で1番、亜弥ちゃんが好き」
亜弥は満足したように、美貴に抱きつく。
全く自分の方がよっぽど子供だ、
やっぱり自分は亜弥じゃないとダメなんだろうなと、
美貴は感じていた。
- 408 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:33
-
「…あ、あのね、さっきね…みきたん寝てるときにね…」
亜弥が、何だかモジモジと言いにくそうにしている。
「ん?何かあったの?」
「ほら、アタシがしたいって言ったら、
みきたん『してていいって』言ったじゃん」
「あ?ああ、言ったっけ?」
「言ったの!だからね、その…」
「…1人でしちゃったの?」
「違くて!…あ、1人は1人なんだけどぉ…」
「何?どうしたの?」
あまりに言いにくそうなので、美貴も微笑んで亜弥を見る。
「ごめん!みきたんの手、借りちゃった!」
「…へ?」
「だからね、その、みきたん、覚えてないだろうけど、
みきたんの指でさせてもらったの!」
…謝ることなんかないのに。
むしろ、そういうときに自分の手を使ってくれるなんて、
うれしいくらいだ。
亜弥が顔を真っ赤にしてるのがかわいそうになって、
美貴は亜弥をギュッと抱きしめた。
「美貴の方こそ、ごめんね。
亜弥ちゃんがそんなになってたのに、放っておいて」
「…うん、確かにすごくさみしかった」
「本当にごめん…よし、じゃ、そのお詫びに」
美貴が立ち上がって亜弥の手を引っ張る。
「え?どうしたの?」
「美貴がちゃんと指を使ってあげるから」
「え?え?」
そのまま、布団に雪崩れ込む美貴と亜弥。
布団の中でこっそりバレないようにしていたつもりだったが、
れいなと絵里は巻き添えをくらっていた。
2人の行為が終わるまで、結局押し入れから出られなかった。
- 409 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:34
-
亜弥のちょっと大きめの声が響いたあと、静かになった。
「…もう、いいのかな?」
「…ん、よさそうだね」
自分たちのキスで興奮したのもあり、
美貴と亜弥の聞こえてくる声でもドキドキして、
しかもこんな狭いところに2人で小さくなってくっついてるもんだから、
かなり汗をかいてしまっている。
本当は自分たちの方が落ち着いたら、すぐにでも出たいくらいだったのに。
わざと乱暴に戸を開けて、外に出るれいなと絵里。
美貴と亜弥は頭からすっぽり布団をかぶって、
不自然なくらいに動きを止めていた。
「ねえ、れいなぁ」
「ん?」
小声で会話をするれいなと絵里。
「汗かいちゃったから、シャワー浴びない?」
「あ、そうやね。絵里先入っていいよ」
「えー、一緒に入ろうよぉ」
「へ!?だ、だめだって」
「なんでー?さっき一緒に入ったじゃん」
「さっきは他の人も入るからと思って…」
「あー、また鼻血出しちゃうかもしれないから?」
絵里がニヤニヤとしてれいなに顔を寄せる。
「ち、違うって!その、なんつーか…ヘンな気分になっちゃいそうやし…」
「ん?絵里とエッチなことしたくなっちゃうってこと?」
「ぶっ…そんなはっきりと…ま、まあ、そういうことやけん!
だから、今は一緒には入れない」
「絵里はれいなとなら、そういうことしてもいいよ」
絵里はれいなのことを真っ直ぐ真剣に見つめていた。
れいなは、こんな絵里だからちゃんと大切にしたいんだと思っていた。
「…れいなたち、付き合いはじめたばっかりでしょ?
ゆっくり時間かけて1つ1つのこと大切にしていきたいんよ」
「………れいなぁ…」
絵里がギュッっとれいなに抱きつく。
やっぱりれいなは優しいなとつくづく思いながら。
「…それに、せっかくそういうことするんなら、
2人っきりのときにしたいけん。
今日なんか、誰に見られるかわからんし、落ち着かんやん」
「…そっか、そうだよね」
絵里がクスッと笑うと、れいなも微笑んでその頭を優しく撫でた。
- 410 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:34
-
「ふぁぁぁ…」
真里が大きな欠伸をしながら、離れに戻ってきた。
本当はなつみと語り明かしたいくらいだったが、
なつみは今日も朝から仕事である。
なつみに迷惑をかけるわけにはいかないから、
少しでも眠った方がいいだろうと、今は4時過ぎである。
1階では、まず、れいなと絵里が並んだ布団にそれぞれキチンと入っていた。
でも、お互い向かい合って、しっかりと手を握っている。
2人の顔はどことなく微笑みが浮かんでるようにも見える。
「いいなあ、青春だねえ…」
本来は真里のものである布団には、美貴と亜弥が寝ていた。
美貴の胸に亜弥が抱かれるようにして、
安心しきったように眠っている。
「うー、オイラ、寝るとこないじゃんかよお…」
真里も何となく足を運びづらいと思いながら、
一応2階の部屋を覗いてみる。
そこには裸のまま抱き合って眠っているひとみと梨華。
抱き合うというよりも絡み合ってという方が正しいかもしれない。
「ったく、こいつらには本能しかないのかよ。
少しくらいわきまえろってーの」
さすがにここでは寝たくはないので、
真里は布団を1組抱えて、1階に下りていった。
- 411 名前:かけがえのないもの〜後日談 投稿日:2004/09/08(水) 14:34
-
そして、あさ美の配慮もあり、起床は10時頃。
昼兼用の朝ゴハンを食べて、
その後は、試写室ともいえるような部屋で
大きなスクリーンで映画を2本見て、
夕食前には皆帰っていくことになった。
家の門の前で、あさ美、なつみ、あゆみがお見送りをする。
「本当にどうもありがとう。楽しかった」
真里をはじめ、皆お礼を言って手を振っていく。
梨華の腰に腕を回して歩いているひとみ。
美貴の腕に絡みついている亜弥。
手を繋いでいるれいなと絵里。
真里は誰にちょっかいを出そうか考えながら、チョロチョロと歩いていた。
「なつみさん」
「はい、何でしょうか、お嬢様」
「あの方たちを駅まで送ってもらえませんか?」
「はい?」
「何だかあぶれてしまっている方がいるので、
申し訳ありませんがお付き合いしていただけませんか?」
あさ美の視線は真里に注がれていた。
なつみはそれに気付き、満面の笑みになる。
「は、はい、わかりました!では行って参ります」
なつみは早歩きで、真里に追いつき、ポンと肩を叩く。
真里も笑顔になり、なつみの手を握る。
2人楽しそうに並んで歩いていく。
あさ美もあゆみも微笑みながら、皆の背中を見つめている。
「すごく微笑ましいねえ、みんな」
「…うん」
あさ美がコツンと、あゆみの肩に頭を乗せる。
「どした?」
「…ちょっとだけこうしてていい?」
「あはは、寂しくなっちゃったかあ?
かわいいなあ、あさ美ちゃんは」
あゆみがあさ美の髪を優しく撫でる。
あさ美は心の中で祈っていた。
『明日も明後日もずっとずっと皆が幸せでいられますように』
オレンジ色の夕日が、8つプラス2つの長い影を形作っていた。
まるで永遠に未来に続いているかのように。
Fin
- 412 名前:サチ 投稿日:2004/09/08(水) 14:35
- 終了しました。
>>393のタイトル間違えました…スミマセン
>>390さん
本人たちはこっそりだったようなんですが(笑)
>>391さん
ありがとうございます。
押しの強い亜弥ちゃんってイメージなので、こんなんで(笑)
>>392さん
どうもありがとうございます。
そこまで言っていただけなんて、ホント恐縮です…
鼻血、気をつけてくださいね(笑)
そもそも本編でいしよしを入れようか迷って結局入れなかったんですが、
リクエストもありましたし、やっぱりちょっとは書いてみようかと
思って
後日談というカタチにしてみました。
でも、自分としてはあやみき、田亀も入れたいし、
どうせなら他のCPも入れちゃうかと思って、
こんなカタチになりました(笑)
そんなんなんで、どれも中途半端でスミマセンでした…
拙い文章を最後まで読んでいただけた方、
本当に感謝です、ありがとうございました!
- 413 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/08(水) 17:56
- おもしろかったです!
あやみきを始めみんな幸せになれたようで。
欲を言えばもう少しなちまりの絡みが見たかったような。
ま、あやみきが甘ければ自分的には何でもいいんですがw
- 414 名前:名無し読者 投稿日:2004/09/08(水) 23:47
- 更新お疲れ様です。ありがとうございました。
どのCPもかわいかったですね。特にあやみきと田亀w
実は柴紺とかも気になったりして…(ぇ
いしよし編楽しみしてます。頑張ってください。
- 415 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 00:20
- 更新お疲れさまでした。
どのCPも甘くて幸せでいい感じです
個人的には柴紺のゆくえが気になったり…w
- 416 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 02:27
- とってもとってもいい話でした
お見事です!!
- 417 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 14:26
- 本当に本当に面白く読ませて頂きました。
すっかり作者さんのファンです。
また素敵なあやみきをお願いします。
楽しみにしています。
- 418 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/11(土) 03:24
- 更新お疲れ様です。
とっても面白かったです!
あやみきも田亀も大好きなんで、このお話の
続きが見たいなぁーなんてもう思っちゃてます。
まぁ、違うお話でも大歓迎なんですけどねぇ!!
これからも頑張って下さい。
- 419 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/14(日) 09:40
- あやみきチャイコ−
田亀チャイコ−
作者様ガンバッテください。更新待っています。
- 420 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/19(日) 02:57
- 今更ながら「ほんとの気持ち」最高です!
今年自分の中でhitしたあやみき小説の中で三本の指に入るといっても
過言ではないでしょう。偉そうだな俺。逝ってきます…
- 421 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/17(月) 22:51
- また再び作者さんのあやみきが見れる事を祈りつつhozen
- 422 名前:サチ 投稿日:2005/01/26(水) 14:46
- たくさんのレス本当にありがとうございます!
しばらくほっておいてすみませんでした。
とりあえず御礼だけでも…
>>413さん
なちまり、私も固い友情ってカンジで好きですね(笑
>>414さん、>>415さん
柴紺はOH-SO-ROでの姉妹的な関係が好きでした(笑
>>416さん
それほどでもないです…(照
>>417さん
ファンとかいっていただけるなんて恥ずかしい限りです…
>>418さん、>>419さん
田亀もあやみきも大好きです(笑
これからもがんばらせていただきます
>>420さん
そんなもったいないお言葉です…
でもすごくうれしいです。ありがとうございます。
>>421さん
お気遣いありがとうございます。がんばります。
また調子にのって次回作をなんとなく考えてたりします(笑)
あやみき、田亀(+いしよし?)の学園モノになりそうです。
まだ全然書けてないので、いつになるかわかりませんが、
必ずこちらに書きますので、どうぞよろしくです。
(もしかしたら、その前に短編とか書くかもしれません…)
- 423 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/28(金) 00:55
- ひゃっほ〜!!
作者さん、お久しぶりです。
新作執筆中とのこと、めちゃくちゃ楽しみです♪
短編でも、作者さんの作品が読めるならなんでも嬉しいです。
いつまでも待ってます、がんばってくださいね!!
- 424 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/01(火) 20:17
- またしても作者さん降臨&新作クル━从‘ 。‘从━从‘ 。)━川 ‘)━从从从━(V 从━(vV从━川VvV从━!!!!
信じるものは救われるんですね!
短編も本編も超期待してます!
- 425 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:35
- まったく、東京の人は冷たかね。
れいなは、中学にあがるときに博多から東京に出てきた。
引っ越してすぐのときに、家の近所のスーパーで、
お父ちゃんと2人でしゃべりながら買い物しとったら、
近くにいた同じくらいの年の子が笑っとった。
『あの人たち、何語話してんの?』って。
カッチーンときたけど、ガマンしとう。
博多弁で怒っても通じないんやったら意味ないし。
それから、東京の人となんかなるべくしゃべらんようにしとった。
しかも目つきは悪いし、髪の毛も茶色くしとったから、
学校通いはじめたら、まず先生には目つけられるし、
皆からもこわがられとった。
学校に、お父ちゃんとお母ちゃんが呼び出されて、
れいなが怒られてるのに、逆に2人が先生に怒りはじめて。
まあ、髪染めたのがお母ちゃんやけん、怒るのもしゃーないけど。
『髪が茶色くて誰に迷惑がかかるんや!』って。
2人とも若い頃はいわゆるヤンキーやったから、迫力あって、
先生の方がかなりびびっとった。
さすがに、せっかく受験して入った学校やし、退学にはなりたくなかったから、
れいなが自分で髪を黒くするって言って、やっとその場はおさまったし、
2年になった今でも普通に学校に通えとるんやけど。
そういや先輩からの呼び出しもしょっちゅうやった。
でも実はれいなは昔っからケンカが大得意。
お父ちゃんが『女でも自分の身は自分で守れ』って、
幼稚園の頃から合気道習っとった。
だから、女同士のケンカだったら絶対負けない自信はある。
男相手だって、相当スゴイやつじゃなきゃ勝てる。
東京来てからも、部活には入らんかったけど、合気道だけは習い続けとる。
そこではちょっと友達とかもできたりしたし。
そうそう、学校で友達といえる子はおらんけど、憧れの先輩はおる。
れいなは目つきが悪いせいか、ガン飛ばした時点で、
だいたい相手が怯んでくれるんやけど、その人は全く動じなかった。
- 426 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:35
-
下校時間のとき、キャッキャッってうるさい高等部の先輩たちがおったから、
れいながグッとそっちを睨みつけてやった。
そん中の1人がれいなの視線に気付いて、れいなんこと睨み返してきた。
でも、れいなはケンカ同様ガン飛ばしだって負けたことなか。
ココで負けてたまるかって、れいなも睨み続けてたけど、
相手も負けてなくって、ずっと睨んどる。
…つーか、むしろ、あの先輩、超コワイんすけど…
あの目で睨まれるのコワ…
と、ついれいなは目をそらしてしまった。
…う…屈辱だ。れいなとしたことが。
れいなはもう1回、その先輩の方を見ると、まだこっちを見とった。
ああ!こういうときは、潔く負けを認めてやるけんね。
れいなは、その先輩の目の前に行って頭を下げた。
「中等部1年B組の田中れいなっていいます。
先輩の名前、教えて下さい」
その先輩はさっきのこわい目を丸くさせて。
「え?美貴?高等部1年A組、藤本美貴だけど」
って、れいなのことを見ると、ニコッと微笑んだ。
……かーわいい…
さっきまで、あんなこわかったのに、こんなカワイイなんてズルかよ。
「先輩は部活とかやってるんですか?」
「ああ、フットサル部入ってるよ」
「じゃ、応援に行きます!先輩にどこまでもついていきます!」
「ははは、ありがと。田中ちゃん」
そう言って、藤本先輩は颯爽と去っていってしまった。
こんときから、れいなは藤本先輩についていこうって思った。
- 427 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:36
-
フットサルの部活じたいも時間があるときは高等部まで見学にいっとった。
人一倍大きな声で藤本先輩を応援した。
でも、フットサル部は人気みたいでそういうファンみたいな人がいっぱいおる。
藤本先輩のファンもたくさんおった。
そん中でも、同じクラスの新垣さんも、小さい頃から藤本先輩を知っているらしく、
はりきって応援しとった。
試合の応援で、気合を入れようと、れいなはお父ちゃんが学生の頃着とった
学生服―学ランで、下がすごく長くて、ボタンとかもいっぱいついてて、
襟の部分の高くなってるヤツ、を借りて着ることにした。
何か応援団っぽくってかっこいいし。
そしたら、新垣さんもれいなの真似をして、学生服を着てきた。
でも、お兄ちゃんに借りたとかで、いたってフツーの学ランなんやけど。
それも最初はむかついたけど、応援はちゃんと揃っとった方がかっこいいし、
藤本先輩も喜んでくれるやろうと思って、
新垣さんと協力してフットサルの応援団っぽいことをしていこうということになった。
でも新垣さんはもちろん、他のヤツらなんかに負けるか。
藤本先輩の一番の弟子はれいながなるけん。
そう思っとって、練習が終わってからとかも、先輩にいっぱい話しかけたし、
先輩も学校ん中でれいなに会うと、頭とか撫でてくれるようになったし。
- 428 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:37
-
そう、フットサル部は、皆あだ名があって、
藤本先輩は「ミキティ」。
でも、れいなにとっては、藤本先輩は姉貴みたいな存在。
だから、藤本先輩に直接お願いした。
「『みきねえ』って呼んでもいいっすか?」
「えー?なんかヤクザとかみたい。
ま、でも、田中ちゃんがそう呼びたいならいいよ」
「はいっ!れいなんことも『れいな』って呼んで下さいっ」
「ん、わかったよ。れいな」
「ありがとうございますっ!」
みきねえは、れいなの頭を撫でてくれた。
そうそう、みきねえと仲良くしてもらってからは、
文句つけてくるような先輩からの呼び出しはなくなった。
別にこわいとかはなかったけど、面倒くさかったから、
その辺もみきねえには感謝しとる。
そんなカンジで1年のときは同じクラスでしゃべるのは、
新垣さんくらいしかおらんかったし、それでよかって思っとった。
- 429 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:37
-
でも、2年になったとき、同じクラスにカワイイ2人組がいた。
亀井さんと道重さん、1年んときも同じクラスやったみたいで、
2人でいっつも一緒にいとって、くっついとって、
でも別にイヤな感じでなくって微笑ましいっつーか。
れいなもあの2人となら、ちょっと仲良くなってみたいなあなんて。
「おはよう」「バイバイ」くらいは普通に言えてるんやし、
フツーに話しかけたらええんやろうけど、
2人は仲良すぎて、何だか間に入るのも気がひけるけん。
たぶん、れいなはコワイ人だと思われとるやろうし、
どうも話しかけることはできないままやった。
ある休み時間、一応、次の授業の教科書をパラパラ見とった。
そしたら、前の方の席で、亀井さんと道重さんが楽しそうに笑っとる声が聞こえてきた。
…かわいかね。
道重さんはお人形さんみたいで本当にかわいい。
亀井さんはいっつもニコニコ笑顔で。
イヤなこととかないんかなあ。
しかも、声もかわいいし。
女の子ってカンジがするけん、れいなとは違って。
……!!
うわっ、ずっと亀井さんのこと見とったの気付かれたんか、
思いっきり目が合ってしまった。
慌てて目そらしたけど、絶対れいなが見てたことバレとる…
どーしよ…超ハズいけん…
…でも、キョトンとしとる顔もかわいかった…
- 430 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:37
-
あー、もー、どうしたらいいんやろか。
どうしたら、うまく話せるようになるんやろ…
帰りにボンヤリ校庭を歩いとったら、肩を叩かれた。
「れいな、何、ボーッとしてんの?」
みきねえがケラケラ笑っとった。
「…あー、どーも」
「?何か、いつものれいなっぽくないなあ。
悩みでもあんの?恋の悩みとか?」
「…そんなんじゃないっす。ちょっと考え事しとって」
「ふーん、そんならいいけど。
あ、明日、応援来てくれんの?」
明日、フットサル部は新入生の勧誘も兼ねて、
他校のチームを招待しての親善試合みたいのをやるらしい。
「あ、もちろん、行きますよ。
みきねえのためなら、がんばって応援しますから」
「ありがとー。れいなの応援がなかったら、
絶対さみしいからさあ」
「みきねえにそんなこと言ってもらえるなんて光栄っす」
「いやいや、じゃ、明日応援よろしく。美貴もがんばるから」
「はい!がんばって下さい」
みきねえはニコニコしながら手を振っていった。
- 431 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:38
-
そして、その試合のとき。
れいなはいつものように、学ランを着て、
頭に「必勝」のはちまき巻いて、白い手袋をつけた。
隣りでは、ガキさんが、選手の名前の書いたボードを用意しとる。
ボードを出して、その人の名前を呼んでもらって、
キレイに応援の声を合わせるため。
お父ちゃんに学ラン借りるとき、この応援方法を教えてもらった。
初めて応援の声がきれいに揃ったときは、ホントめっちゃ気持ちよかった。
さすがはお父ちゃんやと思った。
コートでは、もう選手の人たちがウォーミングアップをはじめとった。
新入生の勧誘っていっても、ほとんどが中等部からあがってくる人やし、
中等部にもフットサル部はあるから、
そうそう新しい人は入らないみたいやけど。
れいなも再来年は高等部やけど、その頃にはみきねえもおらんし、
フットサル部には入らんやろなあ。
応援もしとらんかもしれん。
うん、しかし、今日もみきねえはかっこよか。
それにしても、みきねえは何で恋人おらんのやろ?
あんなにかわいくてかっこいいのに。
- 432 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:38
-
「田中さんっ」
振り向くと、道重さんがニコニコしてれいなを見とった。
しかもその隣りにはいつも通り笑顔の亀井さんもおる。
「…あ、あー、フットサル見に来たの?」
…そんなの当たり前けん、ココにおるんやから。
自分のアホな質問に腹が立った。
「うんっ!フットサル部ってかわいい人多いでしょ。
だから、試合あるときはたまに見に来てるの」
道重さんはうれしそうにコートの方を眺めとった。
『かわいい人多い』って…ナニそれ?
「田中さん、いつも応援がんばってるよね」
亀井さんがニコニコ見てくる。
でも、何か照れくさくて、こっちが亀井さんのこと、ちゃんと見れん…
「…そんな大したことしとらんよ。
あ、『さん』づけされんの、どうもキショイわ。『れいな』でよかよ」
誉められるのは照れくさいから、そんなことを言ってみた。
そしたら、亀井さんはすっごい笑顔になって、
道重さんのことをチラッと見た。
道重さんもうれしそうに、亀井さん、そしてれいなんことを見てきた。
「じゃ、『れいな』って呼ぶね。私は『さゆ』でいいから」
「おー、わかったよ、さゆ」
うん、何かいいカンジ。
アダ名って友達への第1歩やけん。
- 433 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/16(水) 11:38
-
ふと、学ランの袖口を引っ張られるカンジがした。
驚いて見ると、亀井さんがソコをつまんでて。
「…れいな」
恥ずかしそうに上目使いにして、甘い声で名前を呼ばれた。
…う……ドキッっていうより、ゾクッってした。
そんな彼女から今度は目が離せなくなっとった。
「絵里は『絵里』でいいから」
せっかく絵里がそう言ってくれたのに、
れいなは、コクンと頷くことしかでけんかった。
そろそろ試合が始まるようで、
絵里とさゆは、空いてる席に向かった。
「れいな、応援がんばってね」
って絵里に言われたら、めっちゃがんばるしかないけん。
今日の応援はいつも以上にはりきった。
みきねえがゴール決めてくれて、ウチの学校が勝てたし。
帰りがけに、絵里とさゆが少し離れたところから手を振っとった。
だかられいなも振り返した。
「れいな、かっこよかった!」
さゆが言ってくれたから、れいなはピースをしてやった。
「って、絵里が言ってたよ!」
「!!…さゆっ!」
絵里が真っ赤な顔で、さゆの腕をペシッと叩いとった。
絵里は唇を尖らして、れいなのことをチラッとだけ見て、
楽しそうに笑ってるさゆのことを引っ張って行ってしまった。
…かわいか…笑顔の絵里もいいけど、あんな絵里もかわいか…
…ん?
れいなのこと、『かっこよかった』って言ってくれたんは、絵里やったと!?
…マジ?
よぉし!これからも、応援がんばるけんね!
また、かっこいいって思ってもらえるように。
- 434 名前:サチ 投稿日:2005/02/16(水) 11:38
- 今日はここまでです。
時間経過を考えて、とりあえず田亀編からスタートしました。
田亀編が終わってから、あやみき編にいきます。
どちらもそんなに長くはならないと思いますので、
引き続きよろしくお願いします。
>>423さん
ありがとうございます。
とりあえず、本編の方が書けてきたのであげてみました♪
煮詰まったら、短編でごまかすしれません(笑)
>>424さん
ありがとうございます。
そんな、お言葉、恐縮でございます…(照)
- 435 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/16(水) 13:04
- おふぉ〜!!新作キター!!!
れいなと絵里かわいいっス!すっごい楽しみに待ってます!!!
- 436 名前:名無し読者 投稿日:2005/02/16(水) 17:01
- やったぁー!新作だー!田中さん、めっちゃかわいいです!
あやみき編も楽しみです。頑張ってください。
- 437 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/16(水) 23:53
- うほっ新作
これからどうなるか楽しみです
- 438 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/19(土) 21:10
- 待ってた甲斐があった(T_T)
新作読めて超嬉しいです。
続き楽しみにしてますっ!!!!!
- 439 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:11
-
次の日、朝、教室に入って、席に着くと、さゆが近くにやってきた。
「おはよー、れいな」
「ああ、おはよ」
さゆは、いつも結構早くに来てる。
れいなは10分前くらいに来とるから、まあそんなに遅くはないけど、
絵里はいっつも遅刻ギリギリ。
しっかりしてそうに見えるのに、ホントはそうでもないみたいやけん。
「ね、れいなって、付き合ってる人いるの?」
「は!?」
確かに下の名前で呼び合うようにはなったけど、
いきなり、その質問って?
「どうなの?」
さゆは、興味津々といったように、笑顔のままれいなをじっと見とる。
「…おらんけど」
「ホント?じゃ、好きな人はいるの?」
…一瞬、絵里の顔が浮かんでしまった。
んなワケなか。
絵里のことはただかわいいって思っとるだけやし。
「あ、そっか、藤本先輩かあ」
「…別に、みきねえはそんなんじゃなか。
好きは好きやけど、憧れっつーか、尊敬みたいなもんやけん」
「ふーん。そうなんだぁ」
さゆは、その答えに満足したのか、ニコニコしたままやった。
- 440 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:11
-
「…さゆは、どうなん?付き合ってる人おる?」
ま、聞かれたから、こっちが聞いてもええやろ。
一応、興味あるし。
「んー、いないよ。今まで付き合ったこともないし」
「…へー」
ま、れいなも今まで誰とも付き合ったことなんかないけど。
「でもね、好きな人はいるよ!」
「そうなん?」
「ダンス部の高橋先輩って知ってる?」
「…知らん」
つーか、ウチの学校って、つまり女の子…
「えー、あんなかわいいのにー。
もう、すっごくかわいいんだよ。
あ、この前、こっそり携帯で撮ったんだー。
あとで、待ち受け見せてあげるね」
…盗撮して、待ち受け画面にしてるってどうなの?
「テニス部もかわいい人、多いから楽しいけどねー」
どうやら、さゆはテニス部に入ってるらしい。
しかし、フットサル部もかわいい人が多いから見に来てるって言っとったけど、
本命は違うし、かわいい人なら誰でもええんやなあ。
ホント、単なるミーハーな子やけんね。
「でも、絵里の入ってる陸上部はあんまりいないかな」
へー、絵里は陸上部なんや。
そういえば、自己紹介のとき、そんなこと言っとったっけ。
- 441 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:12
-
「…絵里は、付き合ってる人、おるん?」
さゆの目が一瞬キランと光った気がした。
「気になる?」
「へ?い、いや、さゆのこと聞いたから、一応、絵里のことも聞いておこうかと」
一応やけん、一応。
「ふーん…絵里も付き合ってる人、いないよ」
「あ、そ…」
…なんかちょっとホッとした。
「安心した?」
「は?べ、別にそんな意味で聞いたんじゃなか」
なんで、バレたんやろ…
「絵里は好きな人はいるけどねー。
1年のときからずっと好きみたい」
「…へー」
…そっか、好きな人はおるんか…
中学校2年やけん、好きな人くらいいるの当たり前や。
れいなに、たまたまおらんだけで。
チャイムが聞こえてきたと同時に、絵里が教室に入ってきた。
さゆが絵里に手を振る。
「絵里、おはよー。遅いよー」
「お、おはよー」
絵里は走ってきたのか、少し息が切れとって。
れいなも手を振って、
「おはよー」って言った。
絵里が、一瞬キョトンとしてから、笑顔になって
「おはよ」って言ってくれた。
うん、今日もかわいかね。
しかし、絵里が片思いしてる相手って、どんなヤツなんやろ。
絵里みたいなかわいい子やったら、フツー付き合うっちゃろ。
絵里もこっちに来ようとしたら、先生が入ってきたから、
皆自分の席に戻っていった。
絵里がすれ違うときにさゆに何かコソコソって話しとったけど、
さゆはニコニコってピースしただけやった。
…絵里、好きな人おるんかあ…
今日は朝からずっとこのことが頭ん中、グルグル回っとる。
休み時間に、絵里とさゆがれいなんとこ来て、
ちょっと話したりとかもしたけど、
何かこのことが気になって気になってボンヤリしてしまって、
絵里にカンジ悪いヤツと思われてしまったかもしれん。
- 442 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:12
-
昼休み、通用門の近くのベンチに腰掛けた。
1年のときから、とくにクラスの子とつるんだりとかせんかったから、
昼休みも1人やった。
で、学校の中、歩いとったら、たまたまこのベンチを見つけた。
昼休みには人通りもまずないところやし、
のんびり過ごすにはいいところやけん。
「ニャー」
「お、来たな」
れいなが、お昼ゴハンをココで食べるようになって、
すぐにこの黒猫がやってくるようになった。
最初自分のお弁当を少しわけてあげとったけど、
猫にはご飯とかはあんまりよくないんかなって、
キャットフードを買ってきてあげとった。
れいなが来ることを覚えてるのか、毎日必ずこの時間にやってくる。
雨の日、れいなは適当に空いてる教室探して食べとるけど、
コイツはどうしてるのか、不安になって来てみたこともあった。
そしたら、近くの木の下で、れいなんこと待っとってくれた。
だから、雨の日でもゴハンだけは必ずあげに来とる。
黒猫はベンチの上に乗ってきて、
れいなの脚に前足をちょこんとおいておねだりしてくる。
アゴの下を撫でてやって、ポケットからキャットフードを出してあげた。
ポリポリ音をたてておいしそうに夢中に食べとる。
その横で、れいなもお弁当を食べる。
食べ終わると、満足したように、そのままベンチの上で丸くなって寝とる。
れいながいなくなるまで、いつも側にいてくれとるけん。
そう、お昼休みは、いつもコイツと一緒だから、1人じゃなかね。
今日は天気もいいから気持ち良かね。
ふぁぁ…
お弁当を食べ終わって、猫のことを撫でながら、ウトウトしてしまってたみたいで…
- 443 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:12
-
「れいなの寝顔、かわいいね」
「…うん」
「チューしちゃおっかな」
「ダメだよぅ」
すぐ近くで声が聞こえてきて、ビックリして目を開けたら、
さゆと絵里がベンチの前にしゃがみこんで、
ニコニコしながられいなの顔を覗きこんどった。
「…な、なにしとーと?」
「んー、れいなにチューしようとしてた」
さゆが目をつぶって顔を近づけてきた。
「…わ、わ!な、なに!?」
慌てて体をそらしたら、さゆは笑っとった。
「ウソ。しないよ」
「…もー」
さゆも絵里もクスクス笑っとって。
…ん?何で…
「2人とも、どーしてこんなとこにおるん?」
「れいなとお昼食べようと思ったのに、
気付いたらいなくなってて。
絵里が、前にれいながココで食べてるの見たことあるっていうから」
…絵里にいつ見られとったんやろ?
なんか恥ずかしいけん、知らんとこで見られとるのって。
- 444 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:12
-
「ニャー」
絵里が、猫の耳の後ろを撫でたら、うれしそうに鳴いた。
絵里もうれしそうに笑っとった。
「かわいいねー。名前何ていうの?」
「…知らんよ」
「え?つけてないの?」
「…名前で呼んだりせんし」
絵里はビックリした顔をしたままで。
「えー、つけようよー。
じゃ、黒いから、クロちゃん」
「…さゆ、単純すぎるけん」
「んー、じゃ、シロちゃん」
「…白くないし」
絵里は笑っとったけど、れいなはあきれとった。
別に名前なんてなくても構わんのに。
「じゃあ、エリでいいんじゃない?」
さゆが笑いながら言ったら、絵里もびっくりしとった。
「な、何でエリなの?」
「んー、なんとなく」
さゆがなんかうれしそうにれいなと絵里を見とった。
「でも、コイツ、オスなんやけど」
れいなが言うと、さゆはおおげさに驚いた。
「ええっ!?そうなの?じゃあ、亀造」
「は?」
「うん、決まり。
亀造、これからもれいなにかわいがってもらいな」
…れいなの意見は全然聞いてくれんし。
さゆ命名亀造は、さゆと絵里に撫でられてゴロゴロいっとった。
しかし、亀造って…まあ、亀ってつくのはなんとなくうれしいけんね。
- 445 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:13
-
亀造を今まで以上にかわいがってあげようと思っとった次の日。
昼休みになった途端に、れいなの右腕はさゆに、左腕は絵里に、しっかりつかまれた。
「な、なに?」
「お昼一緒に食べるよー」
さゆののんびりとした口調で言われた。
「亀造にも会いたいし」
絵里も、ニコニコとれいなの顔を見てて。
2人に挟まれてひきずるように連れていかれるれいなの姿は、
さらわれた宇宙人みたいで、何だかかっこ悪かよ…
でも、それからというもの、
お昼は3人(プラス1匹)で食べるようになったし、
一緒に帰ったりするようにもなった。
さゆも絵里も、れいなのこと、全然こわがってなんかなくて、
むしろれいなの方がからかわれてることが多かったりするけん。
なんか悔しいような、でもうれしいような…
絵里もさゆも部活があるし、れいなもフットサル見学に行ったりするから、
3人じゃなくて、2人で帰ったりすることもある。
さゆとはバカ話しばっかりしとるし、
抱きつかれたりしても別に何とも思わないんやけど、
いまだに絵里と2人になるだけでどうも少し緊張してしまう。
- 446 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:13
-
その日は、さゆが
「ダンス部見に行ってくるから、2人で帰っていいよ」って。
下駄箱で靴に変えて、歩き出したら、絵里が腕を組んできたから、
一瞬ビクッとしてしまった。
今までもされとるし、変に意識しすぎなんよ…
絵里には好きな人おるんやし、普通に友達やけん。
「ねー、れいな」
「…ん?」
「本屋寄っていかない?」
「あ、あー、うん。いいよ」
今日はウチらが好きなマンガの発売日で。
だから、買いに行かなきゃなんて昼休みに話しとったから。
絵里は、うれしそうにニコニコと笑ってた。
本屋でマンガを買って、ちょっとマックでも寄っていこうってことになった。
で、歩いてたら、ポンと肩を叩かれた。
「よっ!」
「あ、柴田先輩」
柴田先輩はフットサル部の2年生で、みきねえとも仲がいい。
優しいし、気さくな人だから、れいなにも普通に話しかけてくれる。
もちろんフットサルもうまいし、れいなもちゃんと応援しとるけん。
ちなみに次期部長は柴田先輩らしいし。
「ナニ?デート中だった?」
柴田先輩は、れいなの腕にしがみついてるくらいの絵里のことをチラッと見た。
「ちちち違いますよ!同じクラスの亀井絵里」
絵里はペコリと頭を下げた。
でも笑顔はちょっとぎこちなかった。
柴田先輩はニッコリして頭を下げた。
- 447 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:13
-
「ま、ウチらはデートなんだけどね」
柴田先輩の視線の先を見ると、3年の大谷先輩がおった。
大谷先輩もフットサル部だから、れいなも知っとる。
大谷先輩は柴田先輩を見失ってたのか、キョロキョロしてて、
れいなたちに気付くと、手を振って近づいてきた。
「もー、どこ行ったのかと思ったよ。
田中ちゃん、元気?」
「はい、こんちは」
柴田先輩と大谷先輩は、これから映画を見に行くらしい。
ジャマするのもなんだし、すぐに2人とは別れてマックに向かった。
テーブル席に向かい合わせで座ったけど、
絵里は何か元気がなくて、いつもの笑顔やなかった。
「あの先輩たちって付き合ってるんだ?」
「あ、うん。オープンにしとるし、
フットサル部だから、2人とも有名人やし」
柴田先輩はかわいいし、大谷先輩はかっこいいし。
デートしてるとこは初めて見たけど、本当にお似合いのカップルだと思う。
「…他にも学校内で付き合ってる人っているのかなあ」
「さあ…れいなあんましそういうの詳しくないし。
あ、高等部のフットサル部ん中では他にはおらんと思うけど」
「ふーん…」
高等部のフットサル部は、しょっちゅう見に行ってるから、
見てればわかるのもあるし、周りで話してるのも聞こえてくるし。
- 448 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:13
-
「…れいな、モテるよね」
「は?れいなが?どこが?
皆から恐がられて嫌われてるけん。モテるワケなか」
「そんなことないよ。
バレンタインとかチョコもらったでしょ」
「もらったけどー、フットサル関係の人からばっかりやし」
そう、いつもれいなががんばって応援してるからなのか、
フットサル部の人たちや、フットサル部のファンの人たち何人からか、
チョコレートをもらった。
「…れいなは誰かにあげたの?」
「え?ああ、みきねえにはあげたよ。
みきねえもくれたから、ホワイトデーはチャラってことにしたんやけど」
「れいな、ホワイトデーにお返ししたんだ?」
「うん、一応。みんな普段から知っとる人たちやし」
「…へえ…」
絵里は、何だかちょっと唇を尖らせて不満そうにしていた。
あ、もしかして…
「絵里は、好きな人にチョコあげたの?」
「…え?」
「絵里、好きな人、おるんやろ?」
「…な、なんで!?…あ、さゆ?」
れいなが頷くと、絵里は顔を真っ赤にしたままガックリと肩を落としとった。
「もー、さゆのバカぁ…」
何でそんな落ち込むかな?
れいなには言いたくない相手とか?
もしかして、みきねえとか!?
- 449 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/02/24(木) 16:14
-
「…その人からは、お返しもらえんかった?」
絵里はコクンと頷いた。
「…だって、たぶん、絵里のことなんて知らなかったから」
「そっかぁ…今年はどうするん?またその人にあげるの?」
「うん…あげるよ」
絵里は、チラッとれいなを見たあと、どこか遠いところを見とった。
その人のこと、思い出しとるんやろな。
はぁ…
「…うまくいくといいね」
絵里はキョトンとした後、困ったように微笑んで頷いた。
うん、その人とうまくいったら、絵里はずっと笑顔でいられるんやろし。
それが、みきねえでも、れいなはもちろん祝福するよ。
- 450 名前:サチ 投稿日:2005/02/24(木) 16:19
- 今日はここまでです。
>>435さん
すぐにレスいただいてどうもありがとうございます。
かわいいれいな&えりを目指します(笑
>>436さん
ありがとうございます。
あやみき編はもう少しお待ち下さいね〜
>>437さん
ありがとうございます。
がんばりまっす!
>>438さん
ありがとうございます。
そこまで言ってもらえるのは、申し訳ないくらいです。
引き続きよろしくお願いします。
ちょっといろいろ忙しくて、次の更新までは時間があいてしまうかもしれません。
でもなるべく早くできるようがんばりますので、よろしくお願いします。
- 451 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/24(木) 21:39
- ・・・き、来てた。
更新来てたぁーーー!!!
やっぱ最高ですね。
すごく読みやすいから情景が浮かんできます。
続き、楽しみにしてます!!!
- 452 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/25(金) 11:30
- すごくいい感じ。
れなえりはもちろん、さゆもいいキャラしてますね。
次を楽しみにしてます。
- 453 名前:マコ 投稿日:2005/03/05(土) 12:56
- 6期めっけ。
初めまして いいですね キャラがこくて大好きです。
これから ちょくちょく見に着ます
次を楽しみにしています。
- 454 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:31
-
その数日後、絵里とさゆとれいなで帰るときに、
校門のところで、たまたま、みきねえに会った。
「みきねえ!」
「おー、れいな」
みきねえは、れいなを見て手を振ってくれた。
そのあと絵里とさゆが頭を下げると、ニコッとしてくれた。
「友達?」
そう、れいなが友達といるとこなんて、みきねえは初めて見たかもしれん。
そのへんのこと、ちょっと心配してくれてたこともあったし。
「はい、同じクラスの道重さゆみと亀井絵里です」
2人がもう一度頭を下げる。
「どーも、藤本美貴です」
みきねえもペコリと頭を下げた。
「あのー、藤本先輩、握手してもらっていいですか?」
さゆがニコニコとうれしそうに、みきねえんとこに近づいてった。
「え?あー、うん、いいよ」
「やったぁ」
握手してもらってるときも、近くでみきねえの顔を笑顔でじっと見てるさゆ。
ホント、さゆはかわいい人、好きやけんね。
みきねえもちょっと戸惑ってる。
ふと、絵里のことを見ると、
一応笑顔ではいるけど、何かぎこちない。
何でやろ?緊張してるとかなのかな。
みきねえが手を振っていってしまっても、絵里はじっとそっちの方を見とった。
やっぱり、やっぱり…絵里はみきねえが好きなんやろか。
- 455 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:32
-
夏休みに入ってすぐは、絵里は大会があるとかでほとんど毎日部活。
さゆの方も週に半分くらいは部活をやっとった。
れいなも家におっても暇やし、フットサル部があるときには、
たまに学校行って、みきねえのこと応援しにいっとった。
フットサルも夏休み明けてすぐから大会が始まるから、
練習にもかなり熱が入っとる。
「れーなー」
「おー、さゆ。テニス?」
フットサル部が終わって、帰ろうとしたときに校門の近くで、
さゆに声をかけられた。
「うん。れいなも帰るとこなの?」
「うん」
「じゃ、絵里、待ってようよ」
「あ、うん」
陸上の大会は、実は明日。
だから、絵里に直接がんばるように言ってあげようってことみたいで。
「れいなはさー、明日の応援行ってあげないの?」
「え?行ってもいいのかな?」
「当たり前じゃん。絵里、喜ぶよ」
さゆは部活があるから行けないらしい。
1人で行くのは何だけど、絵里のためならがんばるけんね。
「学ラン、着た方がよかね?」
「うふふ、絵里、すっごく喜んでくれるんじゃない?
れいなが自分のために着てくれるなんて」
「…そんな、たいしたもんやないけど…」
そんな話しをしとったら、陸上部の人たちが校門の方に歩いてきた。
- 456 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:32
-
「えーりー」
さゆが声をかけると、絵里はうれしそうに駆け寄ってきて、さゆに抱きついた。
で、その後、れいなにも抱きついてきた。
…ぐ…まただ…ヤバイ…
最近、絵里に抱きつかれると、すごくドキドキしてしまう。
今もすっごく心臓がバクバクしとる…
「れいなはフットサル見にきてたの?」
「…あ、うん」
耳元でしゃべられると、余計におかしくなってしまいそうで。
「あ、れいながね、明日、絵里の応援に行くって」
さゆが言うと、絵里はやっと体を離してくれて、
れいなの顔をのぞきこんできた。
「ホントに来てくれるの?」
「…うん、迷惑じゃなければ」
みるみる絵里はすっごい笑顔になって。
「がんばるから!絶対絶対1位とるから」
絵里は800メートル走に出ることになってるらしい。
「うん、れいなもがんばって応援するけん、絵里もがんばって」
絵里は笑顔で大きく頷いた。
- 457 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:32
-
次の日、大会が行われる結構大きな陸上競技場に着いて、
応援席に行くと、ガキさんが何人かの友達といた。
「あれー?田中ちゃん、陸上も応援きてるの?」
「いや、はじめてなんやけど」
ガキさんは、2年になって仲良くなった同じクラスの子が出るから、
クラスの子たちと応援に来たらしい。
「なーんだ。じゃあ、あたしも学ランもってくればよかったなあ」
れいなが学ランを着はじめたのを見て、ガキさんが残念がっとった。
今日は地区大会で、結構たくさんの選手も応援も来とる。
女子だけじゃなくって男子もおる。
れいなんこと、不思議そうに見ていくやつもおるけど、そんなん気にせん。
絵里が喜んでくれたら、それでいいけん。
絵里はもちろんウチの学校の人たちは、すでにウォーミングアップをしとった。
絵里がふと客席の方を見て、れいなに気付くと、手を振って近づいてきた。
「れいな、来てくれてありがと」
「いやいや、絵里、1等目指してがんばんしゃい」
「うん、がんばるね!ちゃんと見ててね」
うん、れいながついとるからね。
絵里は笑顔のまま戻っていった。
- 458 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:33
-
そして、絵里の出番が来た。
周りで話している様子だと、絵里と同じレースに出る他校の1人は、
将来オリンピックを目指せるとか言われている人らしい。
だから、絵里は2位がとれれば充分だろうって。
そっか…絵里、大変なライバルとあたってしまったんやね。
ま、絵里が精一杯がんばってくれれば、れいなはそれでよかよ。
レースがはじまって、絵里はぴったりとそのオリンピック候補をマークしとった。
れいなもみきねえのことを応援するとき以上に、大きな声を出して、
絵里の名前を叫び続けとった。
そしてゴール手前50メートルで、一瞬絵里はそいつのことを抜いた。
「えりー!!がんばれ!もう少し!!」
でも、相手ももちろんすぐに反応して、絵里のことを抜き返した。
…つまり、絵里は負けてしまった。
でも、コーチが「亀井!自己ベストだぞ!やったな」って誉めとった。
うん、絵里、がんばってたけんね。
今までで一番いい記録出したなんて。
あとでちゃんと誉めてあげるけん。
でも、絵里はすっごく悔しい顔をしたままで。
笑顔は全然見せなくて、むしろ泣きそうな顔をしとった。
絵里が控え室に戻るときに、ウチの学校の客席から拍手されとった。
さすがにそのときは笑顔で頭を下げてたけど、
れいなの顔を見ると、一気に泣きそうな顔に戻ってしまって。
「絵里、お疲れ!」
って声かけたのに、コクンって頷いただけで、れいなには笑顔を向けてくれんかった。
- 459 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:33
-
何となく心配になって、控え室の方に行くと、
絵里が廊下の端っこで、肩を震わせて泣いとった。
「…絵里」
絵里がハッとして、れいなのことを見た。
そしたら、ますます泣き出してしまって。
まるで、れいなが泣かしてしまったみたいに。
「絵里、すごいけん、自己ベストやったんやろ?」
「…でも、1位になれなかった」
「それは、相手が相手やし、しゃーないけん」
「…でも、でも、れいなと約束したのに!1位とるって!」
絵里はもっと泣いてしまって。
しょうがないから、れいなが抱きしめてやった。
ホントはドキドキするから、あんまりしたくないんやけど。
絵里はれいなの背中にしっかり腕を回して、ギューッってしがみついてくる。
「…せっかく、れいなが応援に来てくれたのに…
絵里のために学ランまで着てくれたのに」
…かわいいこと、言ってくれるけん。
れいなはポンポンと絵里の背中を叩いた。
「応援なんて、これから何回でも来るたい」
「…え?」
「絵里が1等になれるとこ見るのは、次の楽しみにとっておくけん。
絵里はもっと記録のばせるようにがんばればよかよ」
絵里は、れいなの顔を覗き込んできた。
れいながニコッとしてやると、絵里も泣き顔のまま笑った。
「…れいなぁ」
もっとギュウギュウ抱きついてきた。
「絵里!く、苦しいけん!離して!」
「イヤ」
「そ、そんなこと言わんと」
絵里はれいなが苦しがってるのを面白がって、
もっと腕に力を入れてきた。
マジで苦しいんやけど…でも、ちょっと気持ちイイかも…
- 460 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:33
-
帰ってからも何となく心配になって、夜、絵里にメールした。
『今日はお疲れ!絵里、すごくがんばってたけんね。
明日は部活も休みなんやろ?ゆっくり休んで、またがんばって』
そしたら、すぐに絵里から電話がかかってきた。
『れいな?』
「ん、絵里、どうしたん?」
『あのねー…れいな、明日何してるの?』
「…え?」
別に、れいなは何の予定もなかった。
明日はフットサル部も休みやし、家でゲームでもするかマンガでも読むか。
それを絵里に伝えたら、
『じゃ、れいなんち遊びに行ってもいい?』
って。
「あ?ああ、もちろん」
絵里が来てくれるんはうれしいんやけど、
何か何か緊張するけん。
絵里と一緒にさゆの家に遊びに行ったことはあったけど、
れいなの家に来てくれるのははじめてやし、
しかも絵里と2人っきりだし。
「…さゆも誘う?」
『さゆ、山口行くの明日からだよ』
「あ、そっか」
さゆは、お母さんの実家のある山口に夏休みは毎年遊びに行くらしい。
要するに、絵里が1人で来るってことなんやけんね…
…うう…どうしよ…何かもうドキドキしてきとる…
- 461 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:34
-
次の日、絵里のことを駅まで迎えに行った。
絵里が階段を下りてきたのが見えた。
うん、たまに見る私服の絵里もやっぱりかわいかね。
改札で手を振ったら、絵里は走って向かってきて、れいなに飛びついた。
「れいな♪おはよっ」
「お、おはよー」
絵里の笑顔を間近で見させられて、すでにドキッとさせられてる。
もー、最初からこんなんで、今日1日、れいな、大丈夫なんやろか…
駅から歩いて5分くらい。
絵里はしっかりれいなの腕をつかんでて。
…なんか、今日の絵里、いつもとちょっと違う。
…つーかいつも以上にかわいくて…
…あ、そっか。
「絵里、メイクしとるの?」
「…うん、してきた」
「…へー」
そりゃ、何もしてない絵里だって充分かわいいけど、
メイクなんてしちゃったら、かわいさもグッと増えるわけやし。
絵里は不満そうに唇を尖らせた。
「…それだけ?」
「え?」
「何か感想とかないの?」
「あ、いや…その…かわいいと思う」
れいなの声は相当小さくなっとったけど、ちゃんと返事してあげたけん。
絵里はすっごい笑顔になって、れいなの顔を覗き込んでくる。
もー、れいなの顔、赤くなっとるんやないの?
「…絵里、顔近いって」
「だって、かわいいなら、ちゃんと見てもらおうかと思って」
「そんなことせんでも、見えとるから」
「ホントに?」
「うん」
「じゃ、もう1回言って」
「え?」
「絵里のことどう思う?」
「え?え?ど、どうって?」
- 462 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:34
-
そ、そんなこと突然言われても…
いや、絵里はかわいかよ。
さゆもかわいいけど、れいな的には絵里の方が好みの顔やし。
…ん?『好み』ってどういうことやけん?
確かに絵里にこんなことされるだけで、ドキドキしとるし。
いつも、気付くと絵里のこと見てしまってるし…
それって、それって…
れいなは、絵里のこと…
「ねー、もう1回言ってよぉ」
「え!?もう1回?」
「かわいいって言ってくれたじゃーん」
…あ、そっか。
別にれいなの気持ちをコクれってことじゃなかったんやね。
絵里はほっぺをプクッと膨らまして。
それがまたかわいくて。
「…絵里…かわいかよ」
れいなが少し真面目な声で言ったら、
絵里はキョトンとしてから、顔を真っ赤にして。
「…もー、ナニ、かっこつけてんの」
「かっこつけてなんかなかよ。そう思ったから言っただけやし」
「…ありがと」
絵里はうつむいたままで、れいなも何か自分の言葉が恥ずかしかったし、
そのあと家につくまで黙ったままやった。
- 463 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:34
-
…しかし、やっぱりれいなは絵里のことが好きなんかもしれん。
れいなの部屋で、普通にゲームしたり、
一緒にマンガ読んだりしただけなんやけど、
何かすっごくうれしくて、楽しくて、
絵里が側にいるって思うだけですごく幸せ感じとる。
そりゃ、さゆと2人でいるときも楽しいけど、それとは何かが違う。
何かすごく満足してるっていうか、ずっとこのままいたいっていうか。
それってやっぱりトクベツってことのような気がする…
絵里がれいなの部屋にあったマンガで読んでないモノがあって、
ベッドに寄りかかって、それを読み始めた。
「…絵里」
「ん?」
「れいな、すごく眠くなってしまったから、寝てもよか?」
「うん、いいよ。絵里、コレ読んでるから」
れいなは実は、昨日あんまり眠れんかった。
部屋が汚かったワケやないけど、やっぱりお客さんが来るなら、
ちゃんと掃除しなきゃって思ったし、
それよりも絵里と2人っきりってことを考えると、緊張してしまって…
絵里の言葉に甘えて、ベッドに横になって、
たぶん10分くらいは本当に眠っとった。
目が覚めて、何となく絵里のことを見たら、真剣にマンガを読んどってて。
そんな絵里の横顔をコッソリと眺めとった。
…かわいかね。
他の人からしたら絵里よりかわいい子なんていっぱいいるのかもしれん。
でも、れいなにとっては絵里が一番かわいいと思えるワケで。
絵里の性格のかわいさとかも顔に出てるんやないんかなあ。
ボンヤリしとったら、絵里が本をパタンと閉じた。
あ、読み終わったんか。
でも、絵里のこと見てたのがバレるのが恥ずかしいから、
れいなはまた目を閉じて眠ってるフリをしようと思った。
- 464 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:34
-
「…れいな?」
…眠ってるんやから、そんな小さなかわいい声じゃ起きんよ。
絵里が動いてるのがわかった。
顔のすぐ近くで、また
「れいな?」
って言われた。
でも、今熟睡しとるけんね。
揺さぶったりとか大声出さなければ、起きんよ。
…その後、しばらく何もなくって。
でも、絵里が同じ位置、れいなの頭の方にいるのはわかっとった。
どうしよ…何か居心地わる…そろそろ起きておいた方が…
と思った瞬間、唇に柔らかい感触がした。
…ナニ?
目を開けると、すぐ側に絵里の顔があって…
…え?え??え???
この状態って…もしかして…
…れいな、絵里にキスされとるーっ!?
れいなが理解したときに絵里の頭が動いたから、
ヤバイと思って、またれいなは目を閉じた。
絵里が、れいなから離れたような気配がしたので、
薄目を開けて見ると、さっき、マンガを読んでた体勢で、
ベッドに寄りかかったまま、体育座りで丸まっとった。
れいなの方は全然見とらん…
- 465 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:34
-
…どうして?…絵里、キスなんか…
れいなの心臓は超バクバクしとった。
さゆがふざけて絵里にしてるのを見たこともあるし、
さゆはれいなにもキスしてこようとはする。
実際にされたことはないけど。
実は、れいなにとって今のキスはファーストキスだったりする…
その相手が絵里だっていうのはうれしいやけんど、
何で何でれいなが寝てるときにしたんやろか。
別に起きとるときにしてきたって、れいなは絵里ならいやがらんし。
だいたい、絵里、好きな人おるんちゃろ?
その人としたらよかね?
その人とできないから、れいなが代わりだったりする?
…やっぱり、絵里の好きな人って、みきねえのような気がしてきた。
きっと、れいなとみきねえがキスくらいしてると思ったんやろな。
絵里はみきねえとすることができないなら、
間接キスでもいいって思ったんやないかな。
さすがに、そんな理由だったら、れいなが起きてるときには、
ふざけてでもしづらいかもしれん。
…はぁ…みきねえかあ…れいな、絵里に協力してあげた方がいいんやろな…
れいなは、何か切なくなってきて、寝返りをうつフリで、
絵里の方に背を向けた。
絵里が起こしてくれんかったら、あと1分くらいで起きよう。
- 466 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:35
-
そのあとしばらく何もなかったので、
「んー」なんて声を出して、伸びとかして起きてみた。
ちょっとわざとらしいかな。
でも、絵里は慌てて、マンガを読み始めとった。
「ごめん、ごめん、熟睡してしまった」
「…んー、大丈夫。マンガ読んでたし」
絵里はれいなの方も見んと、そのままマンガを見とった。
れいなも起きあがって、絵里の隣りに座って、ベッドに寄りかかった。
絵里は、チラッとだけれいなのことを見て、
何だか恥ずかしそうにそのままマンガを読みつづけとった。
そりゃ、こっそりキスしてしまったら恥ずかしいやろ。
普通にしてくれたらよかね?
こっちだって、知らんフリしとかないかんし。
やっぱり、絵里にとって、れいなはみきねえの代わりでしかないんかな。
みきねえとは違って、れいなやったら、絵里のことよく知っとるよ。
甘えさせたるし、いつも側におってあげられるのに。
…なあ、絵里…れいなじゃいかんの?
そっと絵里に寄り添って、腰に腕を回した。
絵里はすっごく驚いた顔をしたけど、何も言わんと、
れいなの肩に頭を乗っけてきた。
ああ、このまま時間が止まったらいいのに。
結局、そのあと、お母ちゃんが部屋に夕飯どうするのか聞きにくるまで、
2人とも一言もしゃべらんと、そのままでおった。
- 467 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:35
-
絵里は結局れいなんちではゴハンは食べていかんかった。
絵里も明日から家族で旅行に行くらしい。
れいなも来週から福岡のばあちゃんちに行くし、
残りの夏休みはほとんど福岡で過ごすことになっとる。
まあ、つまり、たぶん、絵里とは夏休み中はもう会わんつーことで。
帰り際、駅まで絵里のこと送ったんやけど、
「次会うのは、2学期、学校でやね」
って言ったら、何かすごく悲しそうな顔されて。
「…れいな」
「ん?」
「毎日メールしてもいい?」
「うん、もちろん」
「たまに電話もしてもいい?」
「うん、いつでもよかよ」
絵里の頭を撫でると、すっごくうれしそうに笑ってくれた。
絵里も真似して、れいなの頭を撫でてくれて。
れいなも何かうれしくて、すっごい笑顔になっとったと思う。
- 468 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:35
-
次の日の夜、さゆから電話があった。
山口に来てるけど、暇だからと。
『その辺歩いてても、東京と違ってかわいい子、全然いないしー』
ったく、さゆはどこにおっても相変らずやけんね。
『でもね、明日は大学生のいとこのお姉ちゃんが来るの!
すっごくかわいいんだよー。早く来ないかなあ。
会ったら、まずチューしないと』
「チューって…」
さゆは、かわいい子なら身内でもいいんかい。
『そういえば、れいな、まだキスしたことないんだよね?』
そうだ。この前、さゆと2人で帰ったとき、そんな話ししとった。
絵里もその場にいてくれたら、
みきねえとしてないって、わかってくれたけん、
れいなにキスしてくることなんてなかったのに。
「ん、ないよ」
『じゃ、今度、会ったときにしてあげるから』
「いや、絶対せんといて」
『れいなが気抜いてるときにしちゃうもん』
つーか、昨日、それでされとるし…
- 469 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:36
-
『あ、そういえば、昨日、絵里、れいなんち遊びにいったんでしょー』
「うん、来とったよ」
『いーなー。今度、私も遊びに行かせてね』
「ん、もちろん」
『絵里とラブラブしてた?』
「は!?」
ラブラブってなんね!?
『んー、ほら、絵里って甘えんぼなとこあるでしょ。
2人っきりとかでいたら、余計そうなんじゃないかなーって』
「ま、まあ、そうかもしれんけど」
『甘えモードの絵里ってかわいいよねー』
昨日のことを思い出す。
確かにかわいかった…いや、いつもかわいいんやけど、
ちょっと照れたようにしてる顔とか、
口をへの字にしてすねてるときとか…かわいすぎ…
「…うん、かわいかね」
『あー!れいなが絵里のことかわいいって言った!』
「な、なん?そんな驚くことでもなか。
昨日やって、本人にも言ってあげたし」
『えーっ!?絵里のこと、口説いたの?』
「は?何で口説いたことになるん?
ただかわいいって言っただけやけん」
『ふーん、私にかわいいって言ってくれたことないよ』
「つーか、さゆはいつも自分で言っとるから、
そんときにうんうん言ってあげとるけんね」
『あっそー、れいなにとっては、私より絵里の方がかわいいんだ?』
…その通りやけど…
「…2人ともかわいいけん。どっちがっていう問題じゃなか。
れいなにとっては友達なんやし」
『友達かあ…れいなはさ、まだ好きな人できないの?』
「へっ!?えー、あー、おらんけど」
さすがに絵里が好きかもしれんなんてことは、さゆには言えん。
『じゃ、最近コクられたりした?』
「しとらん。つーか、れいな、中学入ってからコクられたことなんてなか」
『うっそー!?バレンタインのときとかは?』
「そんなんなかよ。フツーにチョコもらっただけやし」
『…ふーん』
なんか、さゆは納得いかんような声を出してたけど。
その後、くだらない話しをして、結局1時間くらいは、さゆと話しとった。
- 470 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:36
-
夏休み中が終わって2学期初日、学校に行くと、
珍しく絵里が早く来とって、さゆと話ししとった。
2人とも、れいなに気付くと笑顔で「おはよー」って言いながら、手を振ってきた。
絵里、少し焼けたみたいやけん。
そんな絵里もかわいいけど。
「おはよー、久しぶり。絵里、今日、早いけんね」
「れいなに少しでも早く会いたくて、早く来たんだってー」
「へ?」
「もー、さゆっ!」
絵里が唇を尖らせて、さゆのことを睨む。
「そっか、私に会いたかったんだよね。
絵里、メールでも電話でも寂しがってたもんね、いつも」
さゆが絵里のほっぺにキスをすると、絵里は困ったように微笑んで、
さゆのほっぺに返してあげてた。
いいなあ…れいなにもして欲しいけん…
「あー、れいなもして欲しいんでしょ?
もーいくらでもしてあげるから」
さゆが、れいなに抱きついてきて、ほっぺに唇を近づけてきた。
「うわっ、ちょ、ちょー!」
「あー、絵里もー」
絵里が抱きついてきて、れいなのほっぺにチュッってしてきた。
「…へ?」
また不意打ちやけん…
でも、絵里…れいなのほっぺはみきねえに奪われてもなかよ。
チューとかしても、ムダやし。
- 471 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/18(金) 23:37
-
「あー、絵里、れいなにチューした!」
「え?さゆもしたじゃん」
「私はしなかったよね?」
さゆが聞いてきたから、れいながコクンと頷いたら、
絵里はすっごくビックリして。
「うそ!?さゆしなかったの?」
「だってー、本当にしたら、怒られるもん。
れいなのファンの人にー」
さゆが意味ありげに笑っとるけど、れいなのファンなんておらんし…
それより、みきねえとはそういうことしとらんこと、
絵里にはっきり言っておいてあげんと。
しかし、どういう言い方したらいいんやろか?
いきなり、みきねえとはそういうことしてないって言い出すのもおかしいし。
もしかしたら、れいなはキスしたことないなんて聞いたら、
絵里は責任感じてしまうかもしれんな、ファーストキスやし。
「あ、そーだ。お土産!」
れいながどうしようか困ってたら、さゆがカバンから何か紙袋とか取り出してきて。
そのままお土産交換会になってしまい、
結局、れいなは絵里に、みきねえとのこと言えんかった。
- 472 名前:サチ 投稿日:2005/03/18(金) 23:42
- 今日はここまでです。
だいぶ遅くなって申し訳ありません。
>>451さん
ありがとうございます。
読みやすいとか情景が浮かぶっていっていただけるのは本当にうれしいです。
がんばりますっ!
>>452さん
ありがとうございます。
さゆは何気に2人の面倒をみてあげてるような気がして…
実際にもこんなカンジなのかなあと(笑)
>>453さん
ありがとうございます。
キャラはなるべく本人とかけ離れないように(自分の想像でしかないですけど)
書いてます。もともと皆濃いキャラですもんね(笑)
- 473 名前:ケロポン 投稿日:2005/03/25(金) 23:47
- 3人とも可愛らしいですね。
れいな、たぶん違うよ!いわんでいいと思うよ?更新楽しみに待ってます。
- 474 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:23
-
それからも、絵里ともさゆとも、友達として仲良くやっとった。
そう、友達として。
放課後、れいながフットサル部を見に行くと、
絵里も部活がないときは一緒に来るようになった。
さゆは普段のフットサルの部活の見学はあんまり来ない。
テニス部もダンス部もないときだけ来るってカンジで。
この前、紅白に分かれて練習試合しとって、
もちろん、れいなはみきねえがいる方のチームを応援するんやけど。
その試合が終わってから、絵里が、
「藤本先輩、ホント、かっこいいね…」
ってため息つきながら、つぶやいとった。
…はぁ。
れいなの方が、ため息つきたい気分たい。
みきねえは部活が終わると、見学に来てる人たちに声をかけてくれる。
もちろんれいなに声をかけてくれるし、
絵里にも話しかけるようになってきた。
絵里も最初のうちはぎこちなかったけど、
最近はすっかりみきねえにも懐いてきて、
「亀井ちゃん、ヘンだよ」なんてみきねえが笑いながら、言うようになったくらい。
…絵里、よかったね。
すっかり、みきねえにも絵里のこと覚えてもらえたし。
これも、れいなのおかげやけんね。
今度、絵里になんかお礼してもらおう。
お礼かあ、何がいいかなあ?
…ちゃんと、チューしてもらおうかな。
でも、れいながみきねえとしてないって言ったら、するのイヤがるやろうし。
その日も絵里と2人でフットサルの見学をした帰りやった。
「藤本先輩って、もっとこわい人なのかと思ったけど、
普段はすっごくかわいい人なんだね」
「ん、結構、子供みたいなとこあるけん」
「えへへ、絵里ももっと仲良くしてもらいたいなあ」
……みきねえのこと、一瞬憎いと思ってしまった自分にむかつく。
みきねえには何の責任もなか。
絵里が楽しそうにしとるんやから、それでいいやけん。
…でも、でも、ちょっとくらいは、れいなの気持ちにも気付いて欲しい…
- 475 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:23
-
そのときは、ただ並んで歩いとったんやけど、
れいなは手をのばして、絵里の手を握った。
絵里から腕をつかんでくることとかはあるけど、れいなからは初めてやけん。
一瞬驚かれたけど、れいなは気にせんと、そのまま歩いた。
さりげなく、恋人繋ぎにしてみたりしたんやけど、
絵里はとくに何も言わんと、それに従ってくれただけやった。
…めっちゃ、手に汗かいてきた。
アホか、ナニ、緊張しとるんやろ?
れいなが手を離そうとしたら、絵里がグッと手に力を入れてきた。
ビックリして、絵里の方を見ると、うつむいてて、
チラッと一瞬だけれいなの顔を見てきた。
「駅まで…駅まででいいから、こうしてて」
…絵里は、どうしてこういうこと言うかな…
れいなは絵里が単なる甘えんぼだってわかっとるし、
みきねえが好きだっていうことだって知っとる。
でも、他の人にこんなこと言ったら、勘違いされてしまうけん。
…絵里、絶対、他の人に甘えたらいかん。
れいなとさゆだけにしとき。
ホントはれいなだけにして欲しいけど。
結局駅についても手は離さずに、電車に乗って、
れいなが乗りかえる駅まで、ずっとそのまんまやった。
そのあとしばらく、絵里のぬくもりが手から消えんくて。
ふぅ…ずっと、こんな関係でいられるだけで幸せだと思っといたらいい。
絵里の笑顔が側で見られるんであれば。
- 476 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:23
-
陸上の秋の大会では、絵里が1位を獲れた。
例のオリンピック候補は別の種目に出ていたので、
今回は絵里と同じではなくて、絵里は余裕で1位だった。
自己ベストまでには及ばんかったけど、記録もよくて。
今回はさゆも来れて、2人でがんばって応援した。
その甲斐もあったのかなあって。
絵里は競技後、一旦控え室に戻ったあと、すぐに客席にやってきて、
まずさゆ、そしてれいなにも抱きついてきた。
「絵里、おめでと」
「ありがとう、れいなが応援してくれたから」
「そんなことなか。絵里、かっこよかった」
「れいなほどじゃないけど」
「れいなは、全然かっこよくなか。自分じゃ何もしとらんし」
「そんなことないよ!
れいなの声援、本当に励みになるもん。藤本先輩も言ってたけど」
…来たか。
絵里の口から聞くみきねえの名前には、大きく反応してしまう。
でも、絵里がうれしそうな口調なので、れいなもグッとガマンやけん。
「ねーねー、2人、抱きつきすぎじゃないのー?」
さゆのノンキな声が聞こえて、自分たちがずっと抱きついてたままなのに気付いた。
れいなは慌てて離れようとしたけど、絵里はそのままで。
「いーじゃん。さゆ、ヤキモチ?」
絵里は、さゆの方を挑戦的な目で見とった。
「そーだよ。ずるいよ、2人ばっかり」
さゆは、絵里とれいなを一緒に抱きしめた。
きゃあきゃあ言って騒いでるもんやから、他の人の視線が痛くて。
「も、もういいけん。続きはまた今度」
「何、続きってー。れいなやらしー」
さゆがうれしそうに、れいなんこと見てきた。
「…そういう意味じゃなか」
「れいなが今度何してくれるのか楽しみだねー、絵里」
「うんっ」
体は離してくれたものの、れいな、何したらいいんやろか…
- 477 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:24
-
その数日後、絵里とさゆは部活もない日で3人で帰ることになった。
まず絵里とさゆが手を繋いだり腕を組んだりしてて、
その後、絵里がれいなの腕をとったりするから、
絵里が真中で歩いてることが多い。
そんな状態で、校門を出ると、向かいの道のガードレールに、
制服を着た男の人が座っとった。
その人がこっちを見ると、慌てて立ちあがって近づいてきた。
「亀井さんっ!」
絵里はキョトンとして、その男の人を見る。
その人は、この近くの公立中学の陸上部の3年生で、名前も名乗った。
「とりあえず、これ受け取って下さい!」
封筒を出すと、絵里に押し付けるようにして、
そのまま去っていってしまった。
「ふーん、絶対、ラブレターだよねえ」
さゆが面白そうにつぶやく。
「絵里、どうするの?結構かっこいい人だったけど」
確かにさゆの言う通り、背も高くて、すらっとしてて、
顔もかっこよかった。俳優さんとかで似た人がいそうなくらい。
「でも、手紙読んでみないと何かわかんないから」
絵里はそう言って、れいなの腕にギュッとしがみついてきた。
- 478 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:25
-
さゆは手紙の内容がすごく気になったらしく、
結局、マックでその手紙を読むことになった。
あの人は、去年から陸上の大会で見かける絵里のことが気になってた。
この前の大会のときに話しをしてみたかったけど、
そんな機会もなく、こうやって手紙を渡しにきたということ。
手紙にはメアドと携帯番号ももちろん書いてあって、
友達からでいいから、付き合って下さいとのことやった。
「で、絵里、どうすんの?」
さゆは、絵里がどうするかどうしても知りたいみたいやけん。
まあ、れいなだってもちろん知りたい。
「…だって、絵里、好きな人がいるから…」
絵里はいつも以上に小さい声で、うつむいたままつぶやいた。
さゆはうれしそうに笑った。
「そうだよね。絵里だって、その人のこと、1年のときから、
ずっと好きなんだもんね」
絵里はうつむいたまま、コクンと頷いた。
そうやけど、みきねえは無理だよ、たぶん。
みきねえって、自分から好きにならないとダメだって言ってたし。
「…絵里、その人とうまくいきそうなん?」
れいながそう言ったら、絵里は顔を上げて目を丸くした。
「…うまくっていうか、自分のこと知ってもらえたし、
前よりはずっと仲良くなれたから、今のままでいれればいいかな…」
…みきねえ、ちゃんと絵里のこと名前も覚えてくれたしな。
絵里は、付き合うとかそんなことを望んでないのかもしれん。
何となくさゆを見たら、何だか面白そうに笑ってて。
「そーだね、絵里がその男の人と付き合うことになったら、
あんまり一緒にいれなくなっちゃうから、私もさみしいし。
断ってくれた方がうれしいなー。れいなはどう思う?」
「…そりゃ、れいなも絵里とおれんくなったら、さみしいし」
「…ホントに?」
絵里がれいなのことをじっと見つめてきた。
…な、なんで、そんな、目キラキラさせとるん?
れいなは何も言わんと、思わず何回も頷いてしまった。
- 479 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:25
-
結局、絵里はその日のうちに、電話をして、キチンとお断りしたらしい。
『好きな人がいますので』って。
いいんかなあ、ホントに。
あんなカッコイイ人、めったにおらんと思うけど。
でも、れいな的にも一安心。
だって、あんなよさそうな人をふっちゃうんやし、
みきねえとも付き合うことはないやろうから、
絵里に恋人ができることは当分はなさそうやけん。
これからも、一緒に帰ったり、遊んだりできる。
- 480 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:25
-
その数日後の放課後。
れいなはフットサルを見に行くって言ったけど、
絵里はさゆは部活もなく2人で帰っていった。
ホントはれいなも一緒に帰ろうかと思ったけど、
絵里の代わりにちゃんとみきねえのこと見とくから。
で、フットサルのコートにちょうど着いたときに、
ポッケに入れとった携帯が震えた。
画面には『さゆ』ってなっとる。
どうしたんかな?やっぱ一緒に帰ろうとかのお誘いかな?
「はい」
『れいなっ!!絵里が!絵里が…』
絵里とさゆが2人で帰ろうと下駄箱で靴を履き替えてたときに、
『亀井ってアンタだよね?』
って、いかにもこわそうな3年の先輩3人が絵里に声をかけて、
校舎の裏の方に連れていったらしい。
れいなは、途中さゆと合流して、猛ダッシュで、その場所に向かった。
すると、その先輩たちがしゃがみ込んでる絵里のことを蹴飛ばしとった。
「何しちょるっ!!」
れいなは、その先輩たちを1人ずつを片っ端から投げ飛ばして、
絵里の前に立ちふさがった。
さすがに、先輩たちもビビって、そのまま逃げていきよった。
絵里は地面に倒れたまま泣いとった。
「…絵里」
かかんで、絵里のことを起こして、ギュッと抱きしめた。
絵里はガタガタと震えてた。
「こわかった」「死ぬかと思った」とか言いながら、
れいなの胸で泣きじゃくっていた。
「…もう、大丈夫やけん。
れいなが、絵里のことちゃんと守るから」
絵里がヒックヒック言いながら、
「…ホン、トに?」
「うん、いつも絵里の側におるから」
すごく悔しかった。
もし、今日れいなも絵里とさゆと一緒に帰ってたら、
絵里はここまでこわい思いせんで済んだのに。
蹴られたりとかさせんかったのに。
やっぱり、絵里の側にいなきゃダメだ。
こんなか弱い子を、ほおっておいたらいかん。
れいなが、れいなの手で守ってやらな。
他の人になんて、任せられん。
- 481 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:26
-
しばらくしてから、絵里の震えも涙もおさまって、立ちあがることができた。
歩いていくと、少し離れたところでさゆがこっちを見とった。
さゆもなぜか泣いとって。
「絵里ー!ごめんね…何もできなくて」
って絵里に抱きついた。
「んーん。れいなのこと呼んでくれたじゃん。ありがと」
今度は絵里がさゆのことを慰めておって。
「れいなぁ、ホントにありがと」
改めて、絵里にお礼を言われると、何だか照れ臭い。
「れいなって、ホントに強いんだね」
さゆが感心したように言ってくれた。
「まあ、合気道やっとるから。でも力はそんなにないんよ」
「れいな、すっごくかっこよかった。
もし絵里じゃなくって私でも助けにきてくれた?」
さゆがなぜか目をうるませてれいなんこと、見てくる。
…さゆに、そういう意味で好かれるのはちょっとカンベンやけど…
「…当たり前たい。
大切な友達を傷つけるヤツは許さん」
「よかったー。じゃあ、私のことも守ってくれるんだね」
「うん」
「いつも私の側にいてくれる?」
「…へ?」
「さっき、絵里にそう言ってたじゃーん。
それは絵里だけにしか言わないの?」
…よく考えたら、何かコクってるみたいやけん、そんな言葉。
「そーだよ、絵里は特別だよね?」
絵里がニコニコしてれいなのことを見てくる。
「へ?あ、いや…どーかな?」
…確かに特別だけど、それをココで言えるワケないけん。
「えー?違うのー?」
「絵里、残念だねえ」
今度はシュンとした絵里の頭をさゆが撫でとって。
ホント、れいなはこの2人と一緒にいれるだけで楽しいんよ。
だから、2人ともちゃんと守るから。
でも、絵里の方がちょっとだけ特別たい、さゆ、ごめんね。
- 482 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:26
-
あとで聞いたところによると、
絵里に手紙を渡した彼は、ウチの学校にもファンがいるくらい、
すごく人気があるらしい。
まあ、あれだけかっこいいんじゃ、電車で一目ボレとかもされそうやし。
絵里が手紙を受け取ってるのを、他にも見てた人がいたみたいで、
それがファンの人に伝わって、絵里が呼び出しを受けたらしい。
ったく、アホらしい。
絵里は何1つ悪いことなんてしとらんっちゅーのに。
それからは心配で心配でしょうがなくなったから、
少なくとも学校内では、絶対絵里の隣りにおった。
れいなは今までも、自分自身が呼び出されても、
何人ものコワイ先輩たちを倒してきたし、
今ではバックに「藤本美貴様」がついとる。
実際、みきねえが睨みきかせたりしてるワケではないんやけど。
まあ、そのおかげか、それっきり絵里が変な呼び出しとか受けることはなくなって。
でも、れいなは絵里の側を離れなかった。
もちろん、普段はさゆも一緒におるけど。
- 483 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:26
-
さゆの誕生日のときもれいなの誕生日んときも、3人でゴハンを食べに行った。
絵里はれいなに誕生日プレゼントで黒いTシャツをくれた。
シンプルだけど、なんかかっこいい。
しかも絵里とお揃いらしい。
「合気道やるときとかに着てね」って。
いや、着るのもったいなか。
せっかく絵里とお揃いなのに。
そして、絵里の誕生日、12月23日は祝日やし、もう2学期も終わる。
しかも次の日はクリスマスイブ。
恋人がおらんウチらはもちろん一緒に過ごそうってことになってて。
2日連続で遊ぶことになっとった。
23日の昼、渋谷で待ち合わせをした。
夜は絵里は家でパーティーをしてくれるらしく、昼間だけの約束。
れいなが待ち合わせ場所に時間ちょうどくらいに着いた。
まだ誰も来とらん。
絵里はいつも遅刻するから、まだだとは思っとったけど、
さゆがまだ来とらんのは珍しい。
5分遅れて、絵里が到着した。
「ごめん、遅くなって。あれ?さゆ、まだなの?」
「うん、絵里が来たら電話してみようかと…」
って、話してたときに、絵里の電話が鳴った。
「あ、さゆだ…もしもし……え?……もー、何言ってるの……
うん、わかった……じゃ、明日ね」
絵里は、電話を切ると、れいなの方を見てきた。
「さゆ、今日来れないって」
「え?何で?風邪でもひいたん?」
「…よくわかんないけど、風邪ではないみたい…明日は大丈夫だからって」
「そうなん?」
絵里の誕生日に、絵里と2人っきりでいいんやろか…
- 484 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:27
-
2人でパスタを食べに行って、そこでプレゼント渡した。
アクセサリーとかがいいかなとも思ったんやけど、なんかやらしいかなって。
でも身につけるものがいいし、してるのがわかるようなものがいいかと思って。
アクセじゃ、学校にはしてこんかもしれんし。
だから、マフラーをあげることにした。
れいなも絵里も好きな黒で、ちょっと長めのマフラー。
編み方とかも結構かわいいから、絵里、気に入ってくれるかなって。
「わあ!かわいいよ、コレ。ありがとー」
絵里はニコニコしながら、店の中なのに自分の首にマフラーを巻きつけていた。
店を出て歩きはじめたら、絵里が不思議そうにれいなのことを見とった。
「あれ?れいな、今日、そういえばマフラーしてないよね?」
そう、今日はかなり寒いのに、家を出るのがギリギリになってしまって、
忘れてきてしまった。
「うん、忘れてきてしまって」
絵里はニコッとして巻いていたマフラーを取った。
もしかして、それをれいなに貸してくれようとしとる?
いや、それは絵里にあげたヤツやから…
と思ったら、絵里はマフラーをれいなの首と自分の首に一緒に巻きつけてきた。
…な、何するん?
しかも、絵里は腕を組んできてぴったり寄り添ってくるし。
「こうしてたら、あったかいよね」
…あったかいどころか、れいなの顔、火照ってる気する…
ちょっと横を向くと、すぐそこに絵里の顔があるワケで。
れいな、そっちの方、全然見ることできんし。
「このマフラー、ホントいいね。ありがと」
絵里はそう言うと、マフラーに隠れるようにして、
れいなのほっぺにチュッってしてきた。
ビックリしてつい絵里の顔見たら、
絵里はちょっと恥ずかしそうに上目使いで見てきて、ニコニコしとるし。
…絵里、あんまこういうこと平気にせんで欲しい。
むちゃくちゃ、苦しいんよ。
胸の中がギューッってしめつけられるみたいに。
…もう、れいなのこの気持ち、どうしたらよかね?
- 485 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:27
-
次の日、クリスマスイブはさゆの家でパーティーをすることになっとる。
3人でそれぞれプレゼントを買ってきて、プレゼント交換する。
さゆは、まず絵里に包みを渡した。
「昨日行けなくて、ホントごめんね。
これは、絵里への誕生日プレゼント」
「ありがとー。開けていい?」
「うん」
絵里がそれを開けると、中には手袋が入っていた。
さゆが選んだ色も黒だった。
「あー、手袋だぁ…アレ?これ何で3個あるの?」
絵里が不思議そうにそれを見てた。
「コレねー、面白いんだよ。
ほら、こっちを絵里がするでしょ…」
さゆは、1つを絵里の右手にはめ、もう1つを自分の左手にはめた。
でも残りの1つは指先の部分がない。
というか、どっちからも手が通せるようになってる。
リストバンド、いやサポーターが「く」の字になってるみたいな。
さゆはそれに手に通すと、もう一方の方に絵里の手を通して握った。
「すごいでしょ?カップルが手を繋ぐ用の手袋なの!」
「あー、ホントだあ!手握れる!」
「そのまま手握るのもいいけど、外側は寒いし、
手袋の上からじゃ、手握ってるカンジしないもんね。
でも、これなら、大丈夫でしょ?」
「うんっ!ありがとー」
…絵里、はしゃいでるけど、ソレ、誰と使うん?
みきねえとは、2人で並んで歩くような仲にはまだなっとらんし。
そのあと、3人でずっとくだらない話しとかしとって、ずっと笑っとった。
東京に来てから、こんな楽しい日は初めてかもしれん。
絵里、さゆ、ホントにありがとう。
東京の人でも、いい人はちゃんとおるんやなって、
2人のおかげでつくづく思っちょるんよ。
- 486 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:28
-
帰り、さゆが「駅まで送る?」って言ってくれたけど、
さゆの家は駅から10分もかからないし、道も簡単だから、
遠慮して、絵里とれいなの2人で歩くことにした。
さゆの家を出てすぐに、絵里はカバンの中をガサガサしだした。
「何?忘れもん?」
「んーん…あ、あった。れいなぁ、コレ、使おう?」
絵里が取り出したのは、さっきさゆがくれた手袋。
…つまり、手を繋ごうってことやけんね?
絵里は、右手のをれいなに渡してくれたから、それをはめて、
絵里が手袋を通して出してくれた右手を素直に握った。
そのまま歩き出すと、絵里はさりげなく恋人繋ぎにしてきた。
…う…ヤバイ…
また、どーしようもなく心臓がバクバクいっとる。
あー、もー…胸が痛い。
絵里の方をチラッと見ると、
微笑みながら、れいなと繋がれてる手の方を見ながら歩いていた。
何で、そんなうれしそうな顔しとるん?
れいなと手を握るのが、うれしい?
…そんなワケなか。
単なる甘えんぼなだけや。
勘違いしてしまうけん、あんまりそんな顔せんでよ。
でも、絵里は絡ませているれいなの指をそっとなぞったりしている。
すごくこちょばい…でも、気持ちいいっていうか…
何か、ヘンな気分になってくる。
…絵里は、何でこんなにかわいいんやろか。
ずっとこんな風にれいなの隣りにおってて欲しい。
- 487 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/03/30(水) 15:28
-
もう駅が目の前にあった。
…もう、この手、離さなきゃいけんくなる。
ふと、横を見ると、人通りの少ない道に、電話ボックスが立っとった。
「…絵里、ちょっと」
れいなは絵里の手を引っ張った。
「え?どうしたの?」
2人で電話ボックスに入ると、繋いでいた手を離し、
絵里のことを思いっきり抱きしめた。
「…ごめん、ちょっとだけ、こうさせといて」
絵里がコクンと頷いて、れいなの背中に手を回してくれた。
…はあ…
手だけやなくって、全身で感じる絵里のぬくもり。
すごく気持ちいい。
どうしたらいいん?離れられそうもなか。
ずっとずっとこうしてたい。
時間なんて忘れてしまいそうになったとき、
コンコンって音がした。
ビックリして絵里から離れて、そっちを見ると、
女の人がいて、テレフォンカードを見せてきた。
あ、ココ、電話ボックスやけん。
電話使いたいんやね。
れいなは絵里の手を握って、慌てて電話ボックスを出た。
…しかし、何であんなことしてしまったんやろ?
フツーに考えておかしいたい、いきなり抱きしめるなんて。
でも、そのあとも絵里は全然変わらずに、
手袋をはずしてるのに、しっかり手は握ったままで。
れいなの方が、意識しすぎてしまって、
結局そのあとはほとんどしゃべれんかった。
- 488 名前:サチ 投稿日:2005/03/30(水) 15:30
- 今日はここまでです。
そろそろ終わりに近いです…
>>473さん
ありがとうございます。
かわいいロッキーズが大好きなんです(笑)
- 489 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/03/30(水) 19:39
- れなえりハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!
もう、れいなの鈍ちん!と亀井さんっぽく言ってみたり。
甘い・・・こんな甘さ大好きです。次回更新も楽しみにしています。
- 490 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/30(水) 20:07
- やばいやばいやばい!
面白すぎるぅ!!!!!
早くお互いの気持ちに素直に・・・。
- 491 名前:マコ 投稿日:2005/03/31(木) 02:03
- やばいやばい 萌え 萌え 萌え〜〜〜(バッシャーン)(何)
最高に れなえり たーまらんしぇー(オイ)
続き楽しみにしてます。
さて れいなの気持ちは伝わるのかなぁ?
- 492 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:03
-
冬休みに入って、年末年始はお父ちゃんの仕事も休みやから、
また福岡で過ごすことになっちょった。
絵里とまたしばらく会えんかった。
でも、毎日メールして、電話もたまにかけて。
そして3学期が始まっても、
絵里とれいなの関係はとくに今までと変わることもなく、
さゆと3人で仲良くやっとった。
しかし、あともう少しで2年生も終わる、つまりクラス替え。
絵里とも、さゆとも離れてしまうのかもしれん。
でも、3年になっても今まで通り仲良くしていけると思う。
そりゃ、一緒にいられる時間は減ってしまうけど。
とにかく、絵里は友達だ。
友達としてなら、これからもずっと付き合っていけるんやから。
これ以上を望んだらいかん。
そして、2月に入り、その日はバレンタインデー。
本当は絵里にチョコでもあげたいところやけど、
そしたら、さゆにもあげんとヘンやし。
手作りとかするんやったら『たくさん作っちゃって』とか言えるけど、
そんなことはずかしくてできんし。
去年、みきねえにしかあげんかったし、
今年もそれでいいやって思っとった。
朝、門の辺りでたまたまみきねえに会ったから、チョコを渡した。
そしたら、みきねえもちゃんとくれて。
「もしかして、今年はみきねえのチョコ一番最初ですか?」
「うん、そーだよ。でも中身はみんな一緒だから」
「それでも、いいっす!
いつもありがとうございます」
「こっちこそ、いつもありがとうだよ。
じゃ、ホワイトデーはお互いナシね」
「はいっ」
みきねえにも本命ができることがあるのかな?
それが、絵里だったら……喜ばなきゃいけんくて……でもやっぱ無理。
はあ…
- 493 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:03
-
教室に入ったら、さゆがすぐ近くに来て、
「おはよー。ハイ、チョコレート」って、
かわいらしくラッピングされた包みをくれた。
「おぅ、ありがと。ごめん、れいな、用意してきてないけん、
ホワイトデーにお返しするから」
「うん。期待してるー」
ん?さゆがれいなにチョコくれたってことは、絵里もれいなにくれたりする?
ちょっと期待しちゃってよいのかな?
ま、明らかに義理というか友チョコやけど。
絵里はいつものように遅刻ギリギリで走ってきた。
席が近いさゆには絵里がチョコを渡して、
さゆも絵里に渡してるのがわかった。
よーし、さゆにあげるんやったら、れいなにも…
って思っとったけど、1時間目の休み時間に、
3人で話ししとっても、絵里は何もくれそうもない。
それどころか、
「田中さーん」ってクラスの子に呼ばれて、
何かと思ってそっちを見たら、
教室のドアのところに1年生らしき女の子が2人おった。
その子たちが、れいなのこと、呼んで欲しいって頼んだみたいやけん。
で、その子たちのとこに行った。
でも、2人ともれいなは知らない子やった。
どうやら中等部のフットサル部の子で、
高等部の見学にもよく来てるらしい。
「あ、あの、田中先輩、かっこいいなあって思ってて。
コレ受け取って下さい」
って1人の子が箱をくれた。
「フットサルの応援だけじゃなくていつも素敵です」
もう1人の子も小さい紙袋をくれた。
2人にお礼を言うと、うれしそうに帰っていった。
…ふーん、れいな、人気あるんや。
知らんかったったい。
まあ、あの子たちだけやとは思うけど。
- 494 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:04
-
席に戻ると、さゆはうれしそうに、絵里はちょっとムッとしてれいなを見とった。
「れいな、モテるじゃん」
さゆが勝手に袋をあけて、チョコを食べはじめた。
「もー、さゆ、それ、れいながもらったんやけど」
「いーじゃん、いーじゃん。
れいなは他にももらいそうだし、食べるの手伝ってあげる」
「は?そんなもらえるワケないし。
ま、あんまり食べて、鼻血とか出ても困るし。
あ、絵里も食べてよかよ」
「…いらない」
「まだ朝やけんねー、フツーはチョコとか入らんよね、誰かと違って」
「私は好きなものは別腹なんですぅ」
さゆがプクッと膨れながらも、結局ちょっとだけ残して、
ほとんど1人で食べてしまった。
まあ、それはいいけど、絵里があんまり元気ないように見える。
どうしたんやろか?
…また今年も去年の人にあげるって言っとたしなあ。
うまくチョコが作れんかったとかなんかなあ。
- 495 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:04
-
放課後、さゆは「高橋先輩にチョコ渡してくるから、先帰って」って、
絵里とれいなで帰ることになった。
さゆの言う通り、他の休み時間にも高等部のフットサル関係の人が何人か来て、
れいなにチョコを渡してくれた。
それだけじゃなくって、帰りに下駄箱とか門で待っていてくれた人もおって、
結構な数のチョコをもらってしまった。
ほとんどはフットサル部とかフットサル部のファンの人なんやけど。
「…れいな、やっぱりモテるじゃん」
隣りを歩いてる絵里が唇をとがらせて、れいなのことを睨むように見てきた。
「モテるってほどでもなかよ。
絵里だって、チョコもらっとったやん」
さっき下駄箱や門のところで、絵里もチョコをもらっとった。
陸上部の後輩とか先輩に。
そういや、絵里もさゆもとくに先輩から人気があるみたいで、
フットサル関係の人から、
『田中ちゃんさー、道重さんと亀井さんと仲いいんだよね?
今度紹介してよ』
とか言われたことも何回かあったくらい。
確かに2人が並んで歩いとるだけで、かわいくて目はひくと思うし。
- 496 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:04
-
「…れいなは、藤本先輩にチョコあげたの?」
絵里はうつむいたまま聞いてきた。
やっぱり、気になるんやろな…
「あー、朝、たまたま会ったから、渡したけん。
…絵里は?好きな人に渡せたん?」
絵里は一瞬驚いた顔をして、首をゆっくり横に振った。
「え?用意してきとるんやろ?
じゃ、門のところで待っといたら?付き合うよ。学校戻ろ」
絵里の手をとったのに、絵里はじっとしたまま動かん。
「…学校に戻らなくても大丈夫」
「…そう?」
何でやろか?駅で待ち伏せとかするんかな?
何だか、やっぱり今日は絵里は元気がなくって。
それに、これから、みきねえにチョコをあげるんやろし、
このまま帰った方がいいと思って、まっすぐ駅に向かった。
ホームにつくと電車が来るまで、あと5分近くあった。
絵里もさゆもれいなも同じ方向で、
3人のときはさゆとれいなが同じ駅で降りて、別々の電車に乗りかえる。
絵里は学校まで1本で来れるところに住んどるし。
電車を待ってると、絵里が、鞄から紙袋を出した。
「…はい」
「ん?」
「チョコレート、あげる」
「えっ!?あ、ああ、ありがと!」
さゆにもあげとったんやから、れいなにくれても当然なのに、
ナニ動揺しちょるんやろ…アホたい。
…ん?この赤い紙袋、どっかで見た気がするけど…
どっかの店の袋とかなんかな?
「ごめん、れいな、用意してきとらんけん。
ホワイトデーには必ずお返ししちゃるから」
「…うん」
やっぱ、絵里、元気ないかも…
- 497 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:04
-
その後、電車が来て乗るけど、やっぱり、絵里はいつもより静か。
「…絵里、何かイヤなこととかあったん?」
「え?」
「…その、好きな人んこと?」
絵里は、困ったような笑顔のままちょこっと首をかしげた。
「絵里、かわいいんやから、
そんな振り向いてくれん人やなくて、
別の人、好きになったらいいのに」
『例えば、れいなとかどう?』
…なんて、そこまでは言える勇気はなかった。
絵里はその複雑な笑顔のままやったし。
「…でも、その人のこと、すっごく好きだから。
無理なんだってわかってても、好きなんだもん」
絵里はうつむいたまま弱々しい声で言った。
…そっか、みきねえのこと、そこまで好きなんや。
「…れいなにできること、あったら遠慮せんと言って。
どこまでできるかわからんけど」
「…うん…」
絵里はずっとうつむいたままだった。
れいなの降りる駅に着いて、絵里に手を振って先に電車を降りた。
走る電車の窓から見える絵里は、本当に悲しげで不安そうで、
ドアが閉まる前にその顔を見てたら、
また飛び乗ってしまっていたかもしれん。
そのくらいはかなげな表情をしとった。
- 498 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:05
-
れいなは家に着いて、ゴハンを食べてから、
もらったチョコレートを改めて見てみた。
絵里のは最後のお楽しみ。
手紙とかカードをつけてくれてる人もおるから、それを読んだり。
高等部のフットサルの人は『いつも応援ありがとう。これからもよろしく』みたいな内容がほとんど。
後輩でチョコをくれた子も、れいなの応援してる姿を見たのがきっかけみたいで、
中には陸上部の子とかもいたりした。
『亀井先輩だけじゃなくて、今度は私も応援して下さい』なんて書かれても…
悪いけど、陸上みたいな個人競技だったら、絵里しか応援したくないけん。
結局チョコの数も20個近くあった。
れいなが普通に人気があることに、ホントにビックリたい。
しかも、手紙見ると義理だけじゃなくて本命もあるし…
さて、絵里の見ようっと。
絵里も手作りっぽかったし、楽しみやけんね。
絵里からもらった紙袋を開けると、
手作りのチョコクッキーが入っとった。
…ん?んん?
紙袋だけじゃなくて、コレも何か見たことある気がするけん…
袋の中に、一緒に小さな緑色のメッセージカードも入っとった。
このカードもどっかで…
『れいなへ
大好き(はあと)
Eri』
………!!!
コレって!コレって!もしかして……
れいなは机の引出しの奥の方を探ってみた。
……あった!
出てきたのは、今読んでたカードと同じ緑色のカード。
もちろん筆跡もおんなじで。
『田中さんへ
好きです(はあと)
Eri』
このカードは、去年のバレンタインのときに、
れいなの下駄箱に置かれてた赤い紙袋に入ってたもの。
そう、手作りのチョコクッキーと一緒に。
『Eri』っていうのが、れいなの知ってる人の中におらんかったから、
お返しもできんかったし、すっかり忘れとった。
- 499 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:05
-
…どういうこと?
1年のとき、れいなは、絵里のこと全く知らんかったし。
…でも、でも、これって、どう考えても、
1年のときからの絵里の好きな人って…
ワケがわからんくなって、とりあえずさゆに電話した。
『れいな?どうしたの?』
「…ちょー、聞きたいことあるんやけど」
『何?』
「ウソついたり、ごまかしたりせんでね?
合ってたら正直に合ってるって言って欲しいけん」
『うん、わかった』
れいなが真剣だったのをわかってくれたのか、
さゆもふざけたカンジじゃなかった。
「…絵里の、絵里の好きな人って…」
『うん?』
「…もしかして…れいな?」
受話器の向こうでフッって笑う声が聞こえた。
『もー、やっと気付いたよ。
ホント、れいなって鈍感すぎ』
「え?え?だって、1年のとき、れいな、絵里と知り合いやなかったし」
『絵里が一方的に知ってたの』
「や、やけん、そんな話ししてくれてなか」
『れいなが鈍すぎるの!
もー、とにかく今からウチに来てくれる?』
「え?何で?」
『今、ココに絵里がいるの。
ずっと泣いちゃってて、私じゃ手つけられないから』
- 500 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:05
-
すぐに家を飛び出して、走りながら、今までの絵里の行動を思い出してみる。
『れいなって呼んで』って言ってあげたときのうれしそうな顔。
れいなのことを『かっこいい』って言ってくれた。
さゆがネコに『エリ』とか『亀造』なんて名前をつけたんは、
れいながかわいがってるからやったんや。
れいなの家に遊びに来るだけなのに、メイクまでしてきてくれた。
陸上の応援に行ったときに、あんなに喜んでくれたり泣いたりしたのも、
れいなが応援したからやったったい。
れいなと手を繋いで歩いたのも、
マフラーも2人で1つ巻いてほっぺにキスしてきたのも、
…寝てるときにキスしてきたのも。
みきねえの代わりなんかやなくて、
ちゃんと、絵里はれいなのこと見てくれとったんやけん。
みきねえにはヤキモチ焼いとったってことか…
そうや、絵里は、人のことを代理とかにするような子やなか。
そんなこと、れいなだって、ようわかっとったのに。
さゆの家に着いて、部屋に入らせてもらう。
絵里がベッドと壁の隙間に入って、膝を抱えてグズグズ言っとった。
「私、30分くらい、リビングの方に行ってるから。
その間に話しつけてよ」
って、さゆが部屋を出て行ってくれた。
- 501 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:06
-
ドアが閉まってから、れいなは、絵里の目の前まで行ってしゃがみこんだ。
「…絵里」
絵里はまだ顔も上げてくれない。
「ごめん、全然気がつかんで。れいな、アホやし」
さっきポケットに入れてきた、絵里が今回と去年くれたカード2枚を出した。
「コレで思い出したけん。
ごめん、すっかり忘れとって」
絵里はキョトンとして、そのカードを見てた。
「…持ってて、くれたんだ」
絵里がやっとしゃべってくれたから、安心した。
「うん、何かこういうのもらうの初めてやったし、
普通にうれしかったけん。
クッキーもおいしかったし。
それなのに、何で忘れとったんやろーな。
やっぱ、アホやけんね」
絵里は首を横に振ってた。
「せめて、クラスとか苗字とか書いとってくれたら、
ちゃんとホワイトデーにもお返ししたのに」
「…だって、れいな、そういうこと、してくれる人だと、思わなかったから」
「なん?そんな冷たい人でも、絵里はよかったと?」
「そんなことない!れいなが本当は優しい人だって知ってたし」
「…え?」
- 502 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:07
-
そもそも、何で絵里がれいなのことを知ってたかっていうと、
入学式の次の日、混んでる電車の奥の方に乗ってしまって、
駅に着いても降りられそうになかった絵里の腕をとって、
電車から降ろしてくれたのがれいなだったらしい。
…うっすら覚えとる。
れいなのすぐ後ろに太ったおっさんが立っとって、
その後ろに、同じ制服を着た子がおった。
駅に着いて、その子が「すみません、降ります」とか言っとるのに、
そのおっさんは全然動こうともしてくれんくて。
だから、れいなは手を伸ばして、その子の腕を引っ張ってあげたんやった。
電車を降りて、れいなは絵里の顔もちゃんと見ないで、
そのままスタスタと行ってしまった。
まあ、そん頃は、東京の人となんかしゃべるかって思っとったときやったと。
でも、茶色い髪をしてるウチの生徒なんて、れいなくらいしかおらんかったから、
すぐに1年B組の田中れいなだってことはわかったみたいで。
- 503 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:07
-
それから、何となくれいなのことが気になりはじめて。
昼休みに猫にエサをあげてるのもたまたま見かけてた。
雨の日にあげてることも知ってた。
先輩数人に校舎裏に呼び出しされてるところも目撃したこともあって、
どうしよう、先生に言いにいくかどうかって迷ってたら、
れいなは全然平気な顔して、戻ってきたと。
そっと校舎裏に行ってみたら、逆に呼び出ししてた先輩たちが倒れてた。
すごい、田中さんって、ケンカも強いんだって、
れいなのことがますます気になってって。
もちろん、みきねえのファンで、高等部のフットサルの応援団的なことをしてるもの調査済みで、
れいなの応援を見るのが目的でフットサルの試合の見学にも結構来てたみたい。
れいなは全然知らんかったけど。
去年のバレンタインも本当は手渡ししたかったんだけど、
れいなが他のたくさんの人からチョコをもらってるのを見て、
何だか自信がなくなってしまい、
とりあえず受け取ってくれるだけでもって、下駄箱に入れておいたと。
2年になって、れいなと同じクラスになれて、本当にうれしかった。
どうしても仲良くなりたいって思って、
さゆもいろいろ協力してくれて。
たまに気を遣って、2人っきりにしたりしてくれてたみたい。
絵里の誕生日に、さゆが来なかったのもそのつもりだったとか。
でも、れいなは絵里の気持ちに全く気付いてないどころか、
絵里のことを友達としてしかみてくれてない発言をしてくる。
今日だって、『別の人を好きになったら?』なんて、
もしかしたら、本当は絵里の気持ちに気付いてて、
あきらめさせるためにそんなことを言ったんじゃないかって思ったと。
- 504 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:07
-
…絵里…
絵里はそんな風にれいなのこと、思っとってくれたんや。
「…ごめんね、こんな気持ち、迷惑だよね?
今まで通り、友達でいてくれるだけでいいから…」
まだ涙目で、れいなのことを見上げてくる絵里がいとおしい。
…まったく、鈍感なのは、れいなだけじゃなかよ。
れいなは、絵里のことをそっと抱きしめた。
「…絵里のアホ」
「…え?」
「…れいなだって、絵里と同じ気持ちたい」
「…同じ?」
「れいなも、そういう意味で、絵里のこと好いとうよ」
抱きしめてる腕にギュッと力をこめた。
絵里は、グズグズ言い出してまた泣きはじめた。
「あー、もう泣かんでいいから。
絵里が泣いとると、れいな、どうしていいかわからん」
「…ご、めん」
絵里が、必死で涙をこらえようとする顔がかわいくてかわいくて。
「ほら、こんな狭いとこにおらんと、ちゃんと座ろう?」
さすがにベッドと壁の隙間に座ったままじゃ、どうも窮屈やけん。
絵里の両腕をつかんで立ちあがろうとしたら、
絵里もちゃんと自分で立とうとしてて。
バランスを崩して、よろけてしまい、
2人揃ってベッドに倒れ込んでしまった。
「…あ、ごめ…」
…ん?
しかも、何だか、れいなが絵里を押し倒したような体勢になっとる…
絵里もキョトンとしてれいなの顔を見てて。
「…あ、いや、その、そんなつもりじゃなか…」
超恥ずかしか…
慌てて、絵里から体を離そうとしたら、
絵里がれいなの腕をギュッとつかんできた。
ビックリして絵里の顔を見たら、絵里はれいなをじっと見ると、抱きついてきた。
わ、わ、ど、どうしたらいいけん?
こういうときは…
- 505 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:16
-
れいながテンパっとると、絵里はれいなの顔をのぞきこんで、
首を少し曲げて、顔を寄せてきた。
そして、唇と唇がぶつかる。
それはほんの数秒のできごとで、
絵里はそのままれいなの肩に顔をうずめてきた。
それでもれいなの心臓は異常なほどはやくなっとって。
「れいな…大スキ…」
絵里がちょっと苦しそうにつぶやいたその言葉にたまらんくなって、
そのまま絵里のことをギュッと抱きしめた。
絵里もギュッてしてくれて。
れいなと一緒で絵里の心臓もすごくドキドキしとった。
ほんとに絵里もれいなのこと、好いてくれとるんやね。
れいなも、絵里のこと、好きすぎるくらいやけん。
「…2回目やけんね」
「…え?」
「絵里、れいなんち遊びに来たとき、
れいなが寝とると思ってしたと?」
「…え?……ええっ!?れいな、あのとき起きてたの?」
れいなが頷くと、絵里は悔しそうな顔をした。
「…もー、あれに気付いてて、
どうして、絵里の気持ちに気付かないの?」
「だって、みきねえの代わりかと思っとったから」
「え?藤本先輩?」
れいなが絵里が好きなのはみきねえだと勘違いしてた話しをした。
絵里はあきれたような顔をしとって。
「どう考えたら、そういう勘違いになるのかなあ?」
「…ごめん」
突然、絵里がクスクス笑い出した。
「もー、れいなのバカー」
「…うん、わかっちょるよ」
「でも、れいなのそんなとこもスキなんだけどぉ」
そんなハッキリ言われると、どうも照れるけん…
絵里はれいなの髪をぐしゃぐしゃ撫でとって。
- 506 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:16
-
「…ね、絵里のお願い聞いてくれる?」
「へ?あ、ああ、うん」
「…3回目は、れいなからして」
3回目ってことは、つまり、つまり…
そんな…でも、絵里のお願いやし。
…れいなだって、絵里としたいし。
顔をあげて、絵里のことを見つめたら、
絵里は目をつぶってくれた。
う、うう…絵里、かわいかよ…
…ホントにれいなからさせてもらうけんね…
ゆっくり顔を近づけていった。
れいなと絵里の唇が重なった…
その瞬間、部屋のドアが思いっきり開けられた。
急いで絵里から離れたら、ベッドから転がり落ちてしまった。
…いててて…
「30分経過しました!」
さゆがニヤニヤしながら入ってきて。
落ちたときに打ったお尻をさすりながら、さゆを睨みつけた。
「…せめて、ノックくらいしてくれんと」
「ごめーん、やっぱり真っ最中だった?」
「そ、そんなんじゃなか!」
…ホントに真っ最中やったけん…
気持ち良かったとかそんなのも感じられんかった…
絵里は立ちあがると、さゆに思いっきり抱きついた。
「さゆ、ありがとう」
「えへへへ、やっぱ、れいなは絵里のこと好きだったでしょ?」
絵里は、思いっきり頷いた。
さゆは、れいなが絵里のことを好きなことに気付いとったらしい。
普段から、絵里のことばっかり見てたり、
絵里に対しては特に優しかったからって。
…れいな、そんなに露骨に態度に出とったん?
でも、絵里は、全然自信がなかったみたいで、
さゆのそんな言葉も信じられないでいたとか。
確かに、さゆには感謝せんといけんね。
さゆがおらんかったら、こうやって、
絵里とれいなが自分たちの気持ちをちゃんと伝えることなんてできんかったし。
- 507 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:17
-
「ありがと、さゆ」
れいなも、さゆに抱きついて、ほっぺにチューしてやった。
いつも、さゆにキスされそうになっても逃げておったから、
さゆもビックリして。
「…もー、れいな、突然しないでよー」
「あはは、さゆやって、いつも突然しようとしてくるけん。
あれ?さゆ、ナニ、顔赤くなってんの?」
さゆは、人からされる方には慣れてないみたいで、
照れてるところがかわいかった。
笑いながらさゆを見てたら、背中に何か思いっきり当った。
「いてっ!」
見たら、枕が投げつけられてた。
「れいなのバカ!」
絵里がほっぺを思いっきり膨らまして、れいなのことを睨みつけとった。
「な、何で、バカ?
絵里だって、さゆにしちょるけん」
「絵里がするのと、れいながするのは違うの」
「なんで?」
「…だって、さゆが、れいなのこと好きになったら、困るもん…」
絵里が唇を尖らせてうつむいた。
「大丈夫だってー。私はれいなより絵里の方が好きだもん」
さゆが絵里に抱きつく。
絵里がニッコリすると、さゆは絵里のほっぺにキスをした。
それって、れいな的にも困るんやけど…
まあ、れいなより絵里との方が付き合い長いんやから、
好きの度合いが多いのはしゃーないとしても、
さゆと絵里だって、そういう関係に全くならんとは言い切れないわけやし。
「あ、れいながこわい顔して見てるー」
さゆが絵里に抱きついたままで、うれしそうにれいなんこと見てきた。
ここで、変に怒ったりしたら、単なる心の狭いヤツやけん。
グッとガマンたい。
絵里とさゆは親友なんやから。
そう、2年間、親友付き合いしとるワケやし、
さゆだって高橋先輩が本命なんやから、今更そういう関係になんかならんはず。
- 508 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:17
-
さゆがこっちを見ながら、絵里の唇にキスをした。
「あっ!」
さすがに、それは…
さっき、れいながしたばっかりなのに…
無意識に絵里のことを、さゆから引き離して、抱きしめとった。
さゆが大笑いして、こっちを見とった。
「れいな、結構ヤキモチ焼きなんだあ」
絵里がちょっとうれしそうに微笑んで。
「れいな、絵里は大丈夫だよ」
「え?」
「だって、ずっとれいなのことしか見てなかったから」
…そんなストレートに言われると、めちゃくちゃ照れるんやけど。
れいなだって、2年になってからやけど、絵里のことしか目に入らんかったし。
「あー、れいな、すっごく顔真っ赤だよ」
さゆがれいなのこと指差してきた。
もー、そんなこと言われると、余計に恥ずかしいんやけど。
絵里はれいなの顔をマジマジと見てから、
両手でれいなのほっぺを包み込んだ。
…そして、絵里にキスされた。
…4回目たい…
「わー!なんか、なんか、いやらしい」
さゆが、自分のほっぺを押えて、照れとった。
「そ、そんな、いやらしくなんかしとらん。
さっき、さゆが絵里にしたのと変わらんし」
「んーん。なんか気持ちがこもってるってゆーか、
その先がありそうで、いやらしいんだもん」
さゆは、照れてるくせになんかうれしそうにしとった。
…その先って………
………うわーっ!!
へ、へんなこと、想像してしまった…
絵里と、そんなこと、できるワケなか…
- 509 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:17
-
まあ、それからも絵里とはそれ以上のことをすることもなく、
3年生になってしまった。
結局、お互いの気持ちを伝え合ったあとでも、
絵里とれいなの関係が大きく変わることはなく、
前よりメールとか電話は増えたくらいやった。
「…はあ、神様って、たまにイジワルすると」
「れいな、元気出してよー」
窓際に立ってぼんやり校庭を見てるれいなの頭を、さゆが撫でてくれた。
「何で、絵里と同じクラスになれんかったんやろ…」
校庭には、次が体育の授業の、体操着姿の絵里がいた。
しかも、その隣りにはガキさんがおって、2人で楽しそうにしゃべって笑っとる。
よりによって、ガキさんと仲良くならんでも…
ガキさんがれいなのことを知っとるから、仲良くなったって絵里は言っとったけど。
「何?私と同じクラスじゃ不満?」
「そういうワケじゃなか。さゆとだけでも同じクラスになれてうれしかよ」
そう、確かに、さゆと同じクラスになれただけでも感謝しなくちゃいかん。
きっと、さゆ、絵里、どっちとも違うクラスやったら、
また、れいなは友達はおらんままやったろうし。
「ふーん、れいな、最近、素直じゃん」
さゆが、れいなのことをギュッと抱きしめてきた。
「あー、絵里が怒ってる」
「え!?」
校庭の方を見てみると、確かに絵里がこっちを見て、
ほっぺを膨らましとった。
「…さゆ、離れて」
別にやましいことはないけど、絵里を不機嫌にはさせたくなかよ。
れいながさゆから体を離そうとしたら、
さゆは、今度はれいなのほっぺにキスしてきた。
「…なにすっと?」
「あははー、絵里、マジギレかも」
見ると、絵里がこっちの方に走って近づいてきた。
うちらの教室は1階やけん、絵里もすぐ近くに来て。
- 510 名前:純愛ラプソディ 投稿日:2005/04/06(水) 21:18
-
「もー!れいなのバカ!」
「は?何で、れいながバカなん?」
「だって、さゆがしてくるの避けなかったもん」
「そんなこと言ったって、突然やったから」
「…でも、イヤだもん」
…まったく、れいなのお姫様はかわいすぎるけん。
そのとき、ちょうどチャイムが鳴って、皆、自分の席に戻っていった。
「絵里、今日、一緒に帰ろう」
「え?」
「ちゃんとチューしちゃるから」
絵里はみるみるうちに顔が真っ赤になってって。
「…もー!…れいなのバカ!」
絵里は赤い顔のまま、走って戻っていった。
…何言っても、絵里からしたら、れいなはバカやけんね。
「ねー、『ちゃんと』って、どんなチューするの?」
さゆが、うれしそうに笑っとった。
「それは言えん」
「うわー、やらしー」
うん、そろそろ、今まで以上の関係になっとかんと。
れいなやってちょっと不安になることあるけん。
さっきの様子からすると、絵里も同じ気持ちかもしれんし。
うん、そんな焦ることないっちゃ、ちょっとづつ、ちょっとづつで。
ちゃんと、絵里とれいなの関係、進ませていくけんね。
fin
- 511 名前:サチ 投稿日:2005/04/06(水) 21:23
- 終了しました…いつもながらこんなので申し訳ありません…
>>489さん
ありがとうございます!
れいな、鈍ちんですよねえ…亀ちゃんもでしたが(笑)
>>490さん
ありがとうございます!
ヤバかったですか(笑)
どうも完全には素直になりきれない二人なのかもしれません(笑)
>>491さん
ありがとうございます。
何の音でしょうか?大丈夫でしたか?(笑)
れいなの気持ちは無事伝わったようです(笑)
次はこのシリーズであやみきを書きたいと思ってます…
でも、更新はいつごろになるかまだ未定です。
こちらで書かせていただく予定ですので、
引き続きよろしくお願いいたします。
- 512 名前:ひろ〜し〜 投稿日:2005/04/07(木) 16:55
- いやぁ・・・。よかった。よかったよかった。
なんか温かい感じです。
あやみき編も首と鼻を長〜くして待ってます。
- 513 名前:マコ 投稿日:2005/04/08(金) 13:05
- 更新 そして 終了お疲れ様です。
よかったよかった。
ものすごくよかったです。
なんだかほのぼのしました。
え? ああ あれはですね ちょっと萌えすぎて 30m下の海に転落しました(何)
- 514 名前:名無し読者 投稿日:2005/04/09(土) 02:24
- あやみき楽しみ〜♪
- 515 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/09(土) 11:51
- お疲れさまでした。
でも容量無いから新しいスレ立てた方がいいですよ
- 516 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/20(水) 19:28
- 素晴らしかった。どの話も面白い!
次回の作品、楽しみにしてます
- 517 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/05(日) 21:47
- 待ってる
- 518 名前:駆け出し作者 投稿日:2005/07/03(日) 12:54
- とあるスレで紹介されているのを見て、とんできました。
「純愛ラプソディ」、読みながらニヤけてしまいました(w
次の作品を楽しみにしております。
- 519 名前:名無し読者 投稿日:2005/08/13(土) 02:22
- >>517と同じく自分も待ってます
- 520 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/14(日) 23:21
- 待ってます^^凄く大好きです、ここ。
- 521 名前:サチ 投稿日:2005/08/17(水) 21:17
- 作者です。まずは御礼を…
>>512さん
ありがとうございます。
あたたかいカンジはうれしいお言葉です。
あやみき編もよろしくです。
>>513さん
いつもありがとうございます。
ほのぼのもうれしいですね♪
はいあがってこれてよかったですね(笑)
>>514さん
ありがとうございます。
次スレもよろしくお願いします。
>>515さん
アドバイスまで、どうもありがとうございますm_ _m
>>516さん
ありがとうございます。
でも何だかはずかしいです(照)
>>517さん
お待たせしました♪
>>518さん
ありがとうございます。
どこのスレで紹介していただけたんでしょうか?
執筆がんばって下さいね。
>>519さん
お待たせしちゃってスミマセンでした…
>>520さん
ありがとうございます。
次もよろしくお願いします。
ということで、あやみき編をスタートしました。
同じ金板です。
タイトルは「恋の嵐」です。
こちらも引き続きよろしくお願いします。
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