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雨天結構

1 名前:スチール 投稿日:2004/01/27(火) 21:19
初めまして、スチールと言います。
下手な小説ですが書かせて貰います。
基本sage進行でよろしくお願いします。
2 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:20
これは、普通の街で、私が過ごしたちょっとスリリングで不思議な日々の物語。
3 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:22
6月…
外では雨がざあざあと降っていて…。
今日はお気に入りの服と、それに買ったばかりのサンダルで決めてきたのに…。
もう…全くついてない。
天気のお姉さんのバカ!

「…であるからして、この場合A角と、B角は…」
つまらない、すごくつまらない、本当につまらない。
まあ、おもしろい塾があるのかって話だけど、このつまらなさは尋常ではない。
みんなは何でこうも一生懸命になれるのだろう?
いつもならば、ここでその理由を考察して、思想にでもふけるところだけど、
このじめじめした梅雨独特の空気の中、そんな事をする気も起きない。
こんな状況で私がとる行動は常に一つだ。

…寝よう。
4 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:23
「あさみちゃ~ん?どこいくの?」
このグニャグニャした感じの声の持ち主。
本当ならば親友と言ってもおかしくないぐらい仲良くしている人。
でも今、その人の声は、私のいらいらを増長させるだけのものでしかなかった。
「帰るんだよ、まこっちゃん」
「え~?でも、まだ後二教科ぐらい残ってるよ~?」
そんなこと分かってる。分からないはずはない。
簡単に言えばさぼりたいから逃げ出すだけだけど、この人に下手にそんなことを言ったら、
教室まで引きずり戻される気がする。間違いない。
「なんか、お母さんが急に熱だしちゃったみたいでね、早くかえって看病してあげなきゃいけないんだ」
だから、適当な嘘でごまかしてみる。
5 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:24
「ありゃ~、そりゃ大変だ。早く帰らないと」
「うん、そうなの、大変なの。だから帰らしてね」
私の気持ちを察して見逃してくれたのか、それとも、今の話を本気で信じたのか。
…後者だな。
どっちにしろ、捕まらずに無事に帰れそうだ。

これから濡れてしまうだろう真新しいサンダルを履き、自動ドアのボタンに触れたとき、後ろでバカでかい声が響いた。
「看病がんばってね~!!」

…どうやら、私の予想は見事に的中したようだった。
6 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:24
まだ三時だというのに、厚い雨雲のせいか、すでに外は薄暗い。
いつもなら「こんなに早く抜け出せたんだし、駅前に遊びに行こう!」とかになるはずだけど、
ここまで見事な土砂降りだと、そんな気も全く起きない。
「でも、せっかく抜け出せたんだし…」
だれに話すわけでもなくつぶやいてみる。それでも、いい考えは浮かんでこない。
塾に最後までいたら8時になるから、こんな早い時間に家に帰るわけにもいかず…。
今になって、塾の中でずっと寝てた方が良かったんじゃないかという、後悔の念がこみ上げてくる。
だからといって、嘘までついて出てきた手前、塾にまた戻る事なんて出来ない。あ~失敗した!
7 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:25
財布の中を覗いてみる。千円札が数枚と、レンタル屋の会員証。
その間に、小さな紙切れが挟まって入っていた。
その紙切れをつまんで引っ張りだしてみる。
「漫画喫茶『ジュマペールコミック』2時間無料券…」
今から8時まで、別にどこかに行くあてもない。
「ここで時間つぶそうっと…」
手に持った傘を開く。すると、そこだけに虹が生まれる。
この、鮮やかな半透明の虹色をした傘は、私のお気に入り。
傘越しに、空を見上げる。真っ暗な空が七色に染まる。

でも、雨雲は、まだまだ消えそうにない。
8 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:26


『雨天結構』第一話「雨天決行」

9 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:26
「ふえ~すんごい雨…」
灰色の空に、私の居場所はないような気がしたから。
「計画失敗っぽいかなあ、こりゃ?」
だから、この街に『遊び』に来たんだ。
「これからどうしよう?」
計画なんて、いつも最終目的しか決まってない。

「…なんとかなるでしょ!」

そのプラス思考が私のチャームポイント。
10 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:27
「ふぅ~」
体をおもいっきり伸ばし、深く深呼吸をする。
5時…か…。
後30分ほどで無料の時間も終わりそうだ。
どうしよう?もう、読みたいと思っていた漫画は全部読み尽くした。
後は何をしてよう?お腹が空いてきた。何か食べに行こうか?
そうするにしても、時間ぎりぎりまでここにいないともったいない。
…今、まこっちゃんはちゃんと授業を受けているんだろう。
…いや、まこっちゃんの事だ。寝てるかもしれない。

…寝てるな。
11 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:29
本が置いてあるところ。こことか、図書館とか。そういう場所は、
紙が湿気をすわないように、除湿機を強めにたいているらしい。
漫画喫茶では、その乾燥した空気が、ジュースの売り上げを上げるのにも役立っているとかいないとか。
どこから仕入れたかよく分からない、私の無駄知識。最近こういうの流行ってるみたいだから。

そう、例えば、ガラス越しに見える外の景色。
これ、外からだと鏡になってたから、マジックミラーなんだろう。
確か、外からこれがマジックミラーだって見破る方法があったと思う。
うろ覚えだけど、ライターとかの火を近づけると、ぶれて映るのが普通の鏡。
はっきりと映るのがマジックミラーだったかな?
12 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:32
そう、例えば外にいる人たち。当然だけど、私のことは見えていないんだろう。
雨が降る中、せかせかと歩く人もいれば、イヤにのんびり歩く人もいる。
格好だって様々だ。
スーツを決めたサラリーマン。雨の中でも厚底なんか履いてる若い女の人。
サイズがまだ合わないランドセルを背負った子供。虹色の傘をさした女の子。ギターを肩にかけた…。

ん…?虹色?どこかで見たような気が…!

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
もしかして!?いや、絶対!!

「ご利用ありがとうござい……あさみちゃん?」
カウンターの前を走り抜けた私を、バイトのお姉さんが不思議そうな顔で見ていたけど、
そんなの気にしちゃいられなかった。

「傘…ぬすまれたぁぁぁぁ!!!!」
外の傘立てには、見事、私の傘だけがなくなっていた……。
13 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:34
わかってる………。人生には様々な困難が付き物なんだ………。
でも…何で、よりによって私の傘……?
傘なんてたくさんあったじゃない……?私の何かより全然高そうな傘とか、
使い勝手が良さそうな傘もあったじゃない……?
それなのに……なんでさ!?

漫画喫茶の前、ただ私は立ちすくんでいた。
出費覚悟で傘を買うか?それとも、突っ走って帰るか?選択肢は二つ。
そして私が導き出す答えは一つ。
……何で、わざわざ傘を買わないといけないのさ!バカバカしい。
私、何か悪いことした!?
いや、してない。成績優秀、容姿端麗、無遅刻無欠席多早退の私が、悪いこと何かしたはずがない。
唯一悪かったことがあるとすれば……、運……。
14 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:35
「……は、ははっ…」
笑うしかなかった…。

「傘盗んだ人の……ばかぁぁぁぁ~!!!!」

私は猛ダッシュで、土砂降りの中を突っ走った………。
15 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:35
オガワマコトは悩んでいた。
「なんであんなところにあさ美ちゃんの傘があったんだろう?」

オガワマコトは親切である。
「あさ美ちゃん、家でお母さんの看病大変だろうから、届けてあげよう!」

オガワマコトは天然だった。
「塾、いつもより早く終わったって事も伝えないといけないし」

オガワマコトは気がつかない。
「そう言えば、さっきの漫画喫茶、あさ美ちゃんの『フェイバリットスポット』だ~」
16 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:36
「はあ…はあ…」
びしょびしょ…。あ、いや、変な妄想しちゃった人ごめんなさい。そういうびしょびしょじゃないです。
って、だれに話しかけてんだろ?私。

私は公園にいた。象の滑り台、私がまあ入れるぐらいのスペースがその下にある。
雨宿り、ああ、くだらない……。こんなところで立ち往生するんだったら傘でも買えば良かった。

雨は止まない。雨音は強くなる一方で、街からだいぶ離れたここでは、車が水をはじく音も聞こえない。
いま、私の世界にあるのは、雨音だけ。
空には厚い雲。それは太陽の光を完全に遮り時間の感覚を麻痺させる。
17 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:37
「ふわぁ~……」
生あくびが出る。眠い、塾でたっぷり寝たと思ったのに。
こんなんだったら昨日徹夜してアニメのDVDボックスなんて見るんじゃなかった…。
今更ながら後悔する。
まぶたが重くなる。だめだ、こんなところで寝ちゃ…。
仮にも私は花の女子高生だ。こんなところで寝たら、誰に何されるか分からない…。
あさ美が次に目覚めたとき、そこには16歳のおとめの純粋な体を翻弄する、
あまりに恥辱的な肉悦の物語が始まっていたのである…!!

………だめだ、真面目に笑えない。

ああ…でも……もう………。
そんな私の意志とは裏腹に、意識は遠のいていく………。
「こんなところで寝たら………」

そこで私の意識は途切れた。
18 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:39
─────ねえ、天国って信じる?
信じない。

─────どうして?
もし、天国なんてところがあるとしたら、死なんて怖くないはず。でも、人は死を恐れる。
それは天国なんてないことを本能で悟っているから。

─────頭がいい人の答えだね。
これでも一応クラストップですから。

─────人は死んだらどこに行くかなんてだれにも分からない。
─────人は死んでしまったら、それを表現する力を失うから。
なにが言いたいの?
19 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:39
─────君は退屈している。今の君自身に。
退屈?そうかな?

─────君はこれから、独りの少女と出会うことになる。
女の子?

─────不思議な出会い、まるで物語のような。
─────君は、その子によって大きく変わることになる。
よく分からない。

─────分からなくてもいいよ。やがて理解する。
理解………

─────あ、目覚めの時間のようだ。また会いましょう。
え?目覚めって…あなたは………。
20 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:41
変な夢を見た。内容はよく覚えていない。
「……真っ暗」
もう周りは闇に包まれていた。雨も大分小振りになり、時計台の電灯がチカチカと付いたり消えたりしている。
象の滑り台の下から這い出る。頬に当たる水しぶきが心地いい。そのくらいまで、雨は弱まっていた。
ざわざわという、風に吹かれた葉の擦れ合う音だけが響く。その公園は、幻想的な雰囲気に支配されていた。
眠ってる内、服に染み込んでいた雨も大分抜けたようだ。今はしっとりと湿っている服が気持ち良くまで感じる。

「早く帰らなきゃ」
そう思い、肩掛けのバックを手にとった瞬間だった。

「………?」
風の音じゃない。虫の声でもない。だからといって動物の鳴き声でもない。
何かが聞こえた。
………なんだろう?
21 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/01/27(火) 21:50
気が付けば、その音が聞こえた方向に足が向かっていた。
その音の発信源に近づいているのか、少しずつ、その音が鮮明になる。

………歌声?
人の声だ。それも女の人の。きれいな歌声。曲名は分からないけれど。
なんて曲だろう…?凄い好きな感じの歌…。

電灯と月の明かりだけを頼りにして歩く。
すると、いつの間にか、私の知らない場所まで来ていた。
「広場…?」
と、いうより、空き地。雑草が茂り、地面は全く舗装されていない、捨てられたような土地。
そこに『彼女』はいた。
22 名前:スチール 投稿日:2004/01/27(火) 21:52
今日はここまでって事で。
こんな駄文が続きますが、どうか見捨てないようにお願いします。
めざせ一週一更新!(何
23 名前:名無し劇薬 投稿日:2004/01/28(水) 03:43
何やら出会いのありそうな気配が・・・
楽しみにしてます。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 21:40
期待してますよ!
25 名前:スチール 投稿日:2004/02/05(木) 01:14
その少女は『彼女』という表現が似合う子だっただろうか?
いや、どちらかと言えば『その子』と表した方が、伝わるかもしれない。
つまり、その子は彼女という単語を使うには幼すぎるよう感じた。
26 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:18
まあ、そんな事、どっちでもいいんだけど。とりあえずそこには『その子』がいたわけで。
そんなに身長がない私よりも小さな体。
白いパーカーに青色っぽいスカート。無理に大人ぶっているようにしか見えないブーツ。
雨のせいで肌寒さを感じるこの時間、どう見ても寒そうなその格好。
肩まで下ろしたストレートの髪が少し大人っぽさを感じさせるけど、そな大人っぽさを消してしまうほど、
まだまだあどけない顔をした女の子。
中学生だろうか?少なくとも、私より年上には見えない。

雲の隙間から差し込む月光。街灯もないその空き地では、月の微かな光だけがその少女を照らす。
月明かりは少女の塗れた髪にも降り注ぎ、淡く輝く。その光は、唄と共に私の心を奪ってしまうほどきれいだった。
その子が歌う唄。なんて曲だろう……?優しい唄……。
メロディーラインもありきたり。それなりにはうまいけれど、すごくうまいとは言えないぐらいの歌唱力。どこにでもありそうな唄。
でも、ただ一つ、ありふれた唄と違っていたこと。
その唄には歌詞がなかった。『ラララ』だけで表現されるその唄は、ただ理由なんてなく、胸に響く。
27 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:18
私は木の陰でその唄を聴いていた。
邪魔しちゃいけない気がした。
なんで?………分かんない。ただ、この唄を遮っちゃいけない気がしたとしか言えない。
そう、理由なんてなかった。もしかしたら、私がずっと聴いていたかったのだけかもしれない。
題名も知らない、別にプロの歌手が歌っているわけでもない、何処にでもいそうな女の子が歌っていたその唄を。

ただ、幻想的な世界。どうやら私は違う世界に足を踏み入れてしまったようだ。
ここはさっきまで、私が眠っていた公園と違う、言ってみれば別世界だ。
その唄は私にそこまでの感覚を与えるものだった。

そう、その独りの少女が……。
28 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:19
─────パキッ!
「あ…!」
しまった……!木の枝……。
私の足下から発せられた乾いた音が静かな公演に響く。
歌声が止んだ…。やば…いかも……、気付かれたよね…?
私はもう隠れることをしなかった。何でだろう?もしかしたらこっちの存在に気が付いて欲しいとか、
思っていたのかもしれない。
その子がこっちに振り返る。

目があった。これはその子がこっちを向いて、顔がはっきり見えた時、気が付いたんだけど……。
「わぁ~……可愛い…」
すんごく可愛かった、私と同じぐらい…。いや……、えっと、私とは違うタイプだけど、
私が心から可愛いと思えるぐらい。
それは凄いことだ。私が他人を認める事なんてそうそう無い。最近だと、
まこっちゃんの天然ぶりを認めたぐらいで…。
とかって、そんなことどうでもいいんだ。その子が不思議そうな目でこっちを見つめている。
29 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:20
私の心臓は何故か高鳴りっぱなしで。
平常心平常心……。でも、そう思えば思うほどに心拍数は上がり続ける。
そう、別に臆することはないんだ。公園の中を散歩してたら唄か聞こえたから来てみたらあなたが居た。
うん、そう言えば別に問題ないんだ、たぶん。
私がそんなことを思っている間にも、その女の子は私の方をじっと見たまま。
何かさっきと目の感じが違ってる気がするんだけど…、そうどこか怖がっているような…、
もしくは汚いものを見ているかのような……。気のせいだよね。
なんか、変なことばっかり考えてる、確実に混乱してる。

まずは……声をかけないことには始まらない。
よし…勇気を振り絞って、普段振り絞ることもない勇気を極限まで振り絞って…

「えっと…あの……」
30 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:20
……よし、もう一度思い出してみよう。
私は確かにあのとき歌を聞いていた。あの女の子を見ていた。
そして、あの女の子は私の存在に気が付いたんだ。そして、振り向いたその子はとっても可愛くて。
うん、ここまでは確実に覚えてる。問題は多分この後だ、声をかけたんだよね、
確か、曖昧だけど、たぶんそうだ。

そこから先……ダメだ全然思い出せない……。それに………

「ここ、どこですか…?」

私は変な場所に寝ていた。
四方を真っ白な壁に囲まれた部屋。いや、部屋と呼べるかどうかも怪しい。
だって起きあがれば頭を天井にぶつける、手を広げようとしても完全に広げられない、
そんな狭い場所が部屋と言える?
うん、言えない、自問自答になってるけど私がそう聞かれたらそう答える、だからOK。
そう、部屋じゃない。この場所を最もよく表現できる言葉があるとすれば、棺桶。
31 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:21
……私、死んだ?
「嘘だっ!?」
ガンッ!
「いたあ!!」
鈍い音が狭い棺桶的な部屋の中に響く、と同時に頭に激痛が走る。
…バカだ。いくら驚いたからっていきなり起きあがるなんて…。
さっき自分で言ってたじゃん。「起きあがれば頭を天井にぶつける」って……。
あ、でも、痛みがあったって事は私は死んでないって事なのかな?夢とごっちゃになってる気もするけど。

取りあえず、ここ出たい、狭苦しい。何かよく分かんないけど身体もズキズキいってるし。
出口ないのかな?出口。動きづらい中、首だけをせわしなく動かす。
「あ……」
出口、かな?私の足の方、光が漏れているのが分かる。
全面壁に覆われてると思ってたけど、どうやらそこだけはカーテンのようになっているらしい。
毛虫のように体を這わせて、そこを目指す。

………私、何やってるんだろうなあ…。
32 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:21
「ここって、いわゆる……」
今私が出てきたようなスペースが並んでいる。つまりは、箱形のベッドみたいなのが並んでいる場所。
カプセルホテル以外に考えられなかった。
「えっと……なんでだろう…?」
場所が場所だけに、記憶がないことが更に私を悩ませる。
もしかして…あの後……破廉恥な事が……そう、誰かがこの私の身体を使って………やだ、そんなの絶対にやだ。

まあ、あり得ないだろうけど。
っていうか、本当に、私は何でこんな所に居るんだろう?
夢遊病なわけでもないし。とすると、誰かがここに運んできたんだよね、私を。誰だろ?


「ああ~!!!!起きた~!!!!」
「わあっ!!」
な、なに?
声のした方を振り返ると、そこには女の子が立っていた。確かこの子は………
33 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:22
「心配したんだよ~、死んじゃったんじゃないかって思ったんだよ~!」
そう、この子はあそこで歌ってたこだ。あの時、私が見たあの子だ。ってことは、この子が私をここまで?

……疑問に思ってても仕方ないな、目の前に本人が居るんだから聞いてみないと。
「あの~、えっと……」
「あ!おなか空いた!?待ってて!コンビニのお弁当買ってきたんだ!とってくる!」
「え?ちがくて、あ、ちょっと待って!」
………行ってしまった。何だあの子?名前も知らない。歳さえ知らない。それに……
「明らかに昨日とイメージ違う……」
「ふえ?」
34 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:24
「んでね、昨日のことだけど~」
今、何故か隣には昨日の女の子が座っていて、しかも仲良く昼ご飯を食べてるって状況。
あ、室内だったからさっきまでよく分かんなかったんだけど、時間はいつの間にか過ぎていて、
この子と会ったのはもう昨日になってしまっている。しかも太陽が既に真上に来ている時間だ。
お母さんにどうやって言い訳しよう……。

「ね?聞いてる?」
「え?あ、はい」
いや、聞いてませんでした。ごめんなさい。聞きます。
「昨日ね、初めてこの街に来たんだ。来たとき、もう夜でさ~、泊まる場所のアテもなかったんだよ」
……なんか、この子、なにげに凄い事言ってるような気がしたけど、流しておいた。事情があるんだろう。うん、私って気が付く女。
「ホントはねー、こっちに知り合いの家があったはず何だけどさ~、何か無かった。何でだろうね?引っ越したのかな?」
「へぇ……」
連絡もしないでこっちに来たって言うことだろうか?意外と行動派だな…とかって思った。
「それでね、別にすることもなかったから、公園に行ったんだ。そしたらさー、すんごくいい広場があるじゃん!?
風通しも良いし、星はきれいだし、木も茂ってるし!」
あの広場…空き地のこと、ずっと知らなかった。確か幼稚園の頃からあの公園で遊んでるのにな~。
目立たないところにあったからかな?それとも最近出来た空き地なんだろうか?
35 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:25
「あそこに居た意味は分かりました。じゃあ……何で歌ってたんですか?」
「敬語じゃなくていいよ~、照れるじゃんか~♪へへ」
あの~、照れる意味が分かんないんですけど……。まあ、いいか。確かに私も敬語じゃない方が話しやすい。
明らかに年下っぽいし……。

「ん~?何でだろうね?歌いたかったからかな?」
へぇ~…、納得………、出来るはずない。よし、わかった、この子は天然だ。決まり。
「んでね、私が気持ちよく歌ってたら、後ろからパキッて音がするじゃん?ビックリしてさ~」
そこでやっと私が出てくるんだ?うん、その後の状況が知りたいんだ、私は。
「ビックリしてずっと見てたら、何かあさ美ちゃんが一人芝居初めて~、正直『うわ……何この人』って思って」
「うわ…何この人…か……」
………ショックだ……。

「そんなこと思ってたら『何この人』が近づいてくるじゃん?ホントに怖くてさ~」
怖い?私が?
……いや、確かあの時は天使のようなスマイルで近づいていったと思うんだけど。
そう、今にも小鳥が肩に止まってもおかしくないほどのエンジェルスマイルで。それを、怖い……?
………ダブルショックだ……。
「だからね~、思わずね~」
36 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:26
「水月に一発たたき込んじゃった♪」


……………は?

「てへてへ♪」
いや、てへてへじゃないよあなた。
じゃあ、何?私の記憶がないのも、ヤケに身体が痛むのも全部それのせいって事ですか?

あの~、正拳突き入れちゃっていいですかね?お返しに。

「ごめんね~、まさか気絶するとは思わなかったんだよ~♪」
その言葉には申し訳なさが全く感じなかった。
37 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:26
「だからね、気絶しちゃったの見て、大変だーって思って」
そりゃ大変ですよ、こっちもいい迷惑ですよ。
「どっかに休ませられるところないかなーって」
休ませるより病院連れて行ってくださいよ、病院。
「あさ美ちゃんおんぶして街中駆け回って」
その間、私は街の人に好奇の視線で見られていたわけですか………恥ずかしい……。
「そんでここ見つけて」
最低でも安いホテルとかにして欲しかったなあ……。っていうか、ここまで私を運んできたって事は、かなり力あるんですね。
「ここに一泊ってわけだね」
……そうですか。

「でもよかった~、あさ美ちゃんの目が覚めて。一生覚めなかったらどうしようかって思ったよ~」
そしたら、あなたは少年院行きですから、取り憑いてあげますよ。
38 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:27
……ん?そう言えば……。
「なんで、私の名前知ってるんですか?」
確かに私は紺野あさ美だけど、あなたに名乗った覚えはない。だって、こっちはあなたの名前知らないし。
私が、そう聞いたとき、その子の表情が少し曇った気がした。

「え…?覚えてない?」
「………?何を…ですか?」
覚えてないことはたくさんある、あなたに出会った辺りから。もしかして、自己紹介とかしたっけ……?
「あ……、いや。いいんだいいんだ!覚えてないならそれで!うん!」
彼女は、ずいぶんと明るく言おうとしたようだけど、強がって言ってるのが丸わかりで。
私、何か悪い事言ったかな?
悪いことを言っていたとしても、それがなんなのか、私には全然分からなかった。

「あのさ…」
ちょっと深刻そうな語り口で、彼女が口を開く。
39 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:27
「遊び行こうよ!」


「え……?」
「今日日曜日でしょ?学校ないでしょ?遊びいこっ!この街案内して!」
彼女の言葉は唐突で意味が分からなかったけれど、何故か私を明るくさせて。

「ほら!ね?」
「う、うん」
私の右手を、彼女の左手が掴む。その手はちっちゃかったけど、すんごく力が入ってて、ビックリした。
まだ、雨はちょっとだけ降ってたけどそんなこと気にならなかった。

あ……そういえば……。

「あの、名前…」
「私?辻希美!ののって呼んで!いこっ!はやくっ!」

お天気雨は虹を作り出して、のんちゃんの笑顔は私をいつの間にか笑わせていて…。
40 名前:一話「雨天決行」 投稿日:2004/02/05(木) 01:28
    雲はすっきり吹き飛んで、おてんばの太陽が顔を出した。
    君が作った虹の橋は、まだきれいに光っているよ。
41 名前:スチール 投稿日:2004/02/05(木) 01:34
まず訂正から……
>>28 静かな公演に響く。→静かな公園に響く。
初歩的なミス_| ̄|○

>>23 名無し劇薬さん
ってことで、出会ったのはこの人ってワケで…
あなたの期待になるべく応えるような作品にしていきたいです(何

>>24 名無し飼育さん
感想ありがとうございます。
期待……裏切られたときむかつかない程度ならいくらでもお願いします(マテ

なお、川o・-・)のキャラが違いすぎると言った苦情は受け付けません。
作者も自覚しておりますので。
ん?じゃあ、なんで?このCPが好きだからですよ、何か問題(ry
42 名前:スチール 投稿日:2004/02/05(木) 01:35
sage進行とか言っておきながらいきなりageてます。
正直、書き込むたびこの作品の位置まで行くのめんど(ry
43 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 19:55
このCPって珍しいからついつい読んでしまいました!
続きが楽しみです!
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 20:25
簡潔な文章、どこかふわふわと不思議な空気。
なんかわくわくします。続きが楽しみ。
45 名前:スチール 投稿日:2004/02/13(金) 13:42
風邪ひいてしまいました…。風疹の可能性有りです…。
本当は昨日辺り更新の予定でしたが、ずっと寝たきりな為、多分来週まで更新できません。
本当にすみません。
次回更新、多めに出来ればいいなあ、と思ってますので、それでどうかお許しください。
来週まで風邪が長引かなきゃ良いけど…。
46 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:27
私には妹がいる。まあ、仲がいいって言えば、それなりに仲はいいけど、そう人に言うことでもないくらいの。
そして、その妹はここの家にいない。
あ、そういう事じゃない。ちゃんと生きてる。むしろ元気すぎるぐらいだと思う。
妹は今、北海道にいる。私の故郷、北海道。
今、私は東京で母親と二人暮らし。理由は、私がこっちの学校に通っているから。
北海道は嫌いじゃなかった、むしろ好きだった。でも私は東京の高校を選んだ。
単にいい学校に入りたいからってのもあったけど、もっと大きな理由があった。

「一人暮らし」ってものをしてみたかったんだ。
まあ、それはお母さんがついてきたって時点で、もうダメになってるんだけど。
それでも、自分だけの部屋が出来たし、妹とお父さんが居ない生活ってだけでも、かなり快適だった。
47 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:28
「ふ~ん、なるほど」
「そう、一人で勝手にいろんな事して、何にも縛られないで、自由に全部したかったから」
「すごいすごい、りっばりっぱ♪」
のんちゃんはそう言って、手をパチパチとたたいた。
「……何でこんな話したか分かるよね?」
「え?んとね~……」

まあ、帰ってくる言葉は分かってたけど。

「……全然♪」
「わかって。いや、むしろ分かりなさい」
「ほえ?」
「ほえ?じゃなくってさあ………」

私はひとつ、大きく深呼吸をして………。

「何でここにいるの!?」

私の部屋。小さなマンションの一室の更にその中の一部屋でしかないけども、私にとっては城のような場所。
何でここにのんちゃんがいるんだろう?
あ、のんちゃんってのは、この辻希美ちゃんのことで、ののって呼び名がちょっと呼びにくかったから、私が適当に改造してそう呼んでるんだけど……、ってか、今はそんなことどうでもいい。
48 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:29
「だってあさ美ちゃんのお母さんに泊まっていいって言われたんだもん」
「はぅ…………はぁ」

『あさ美ちゃんのお母さん』
その言葉が胸に突き刺さったような、もしくはのしかかったような…。
そこでお母さんの名前を出さないでよ…。
お母さんの名を出されると、私は全く反抗できなくなる。
だって、一応まだ養われてる身だし、それに、ここでの主導権は全て母が握ってるようなもんだから…
はあ、もどかしい。

「学校とかはどうなの?のんちゃん私と同じでしょ?」
これも今日分かったことだけど、のんちゃんは私と同い年、らしい。
でも、納得できない。こんな子が同い年であるものか!絶対サバ読んでるんだ。あ、えっと、この場合だと…逆サバ?
「のん、高校とか行ってないし」
「じゃあ、中学校は?」
「あははは、中学校はもう卒業したよ~、何言ってるの?」
くそ~、なかなかボロを出さない。
まあ、いい。その内正体を明らかにしてやる。それよりも今は……。
49 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:29
「とにかく!」
私はテーブルを乱暴に叩き立ち上がった。
その音にのんちゃんはかなりビックリしたようで耳をふさいでいたけど、私はそんなの構わずに、声のボリュームそのままで続けた。
「お母さんに泊まっていっていいって言われたんなら今日は泊まっていって良いけど、明日になったら家に帰りなよ!」
「あ~い♪わかった~」
絶対に分かってないであろうその返事に呆れながら、私はベッドへと潜り込んだ。
「あれ?もう寝ちゃうの?」
「のんちゃんと違って、私には明日学校ってものがあるの、分かる?分かるよね?」
「う~ん、なんとなく」
いや、そこははっきり分からなきゃいけないところだから。
「だから、夜更かしなんかしてられないんだよ、おやすみ!起こさないでよ!」
私は、のんちゃんの返答を待つことなく、頭に布団を被せた。
「ほいな、おやすみ~」
そんな声がした気がしたけど、私はすぐに眠りについていた。今日は、疲れた……。
50 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:30

――――『雨天結構』第二話「気分次第のお天気屋さん」――――

51 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:30
「どうして起こしてくれなかったのさあぁぁ!!」
「だって起こさないでって言ったじゃん。それにのん、学校始まる時間とか知らないし」
「知らなくたって『あ、そろそろかな?』とか……ああ!もう時間ない!」

時計の短針が刺すのは8のちょっと上。
そして、長針が刺すのは4ぴったし。
私の学校の授業が始まるのが八時の三十分。
まあ、つまりは、

「遅刻する~~~!!!!」

みたいな。
52 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:31
って、落ち着いて状況把握してる場合じゃない。今日遅刻しちゃったら、私の無遅刻の功績に傷がつく。ってか、砕け散る。
「あれ?制服、制服は!?」
「ほい、ここにあるよ?」
「のんちゃんでかした!」
と、よく分からない会話を交わしながら。
「一応、のんのトースト一枚あるけど、食べてく?」
「一応貰っておく!」
制服に着替えつつそのトーストを口にはさんで。
「わ~、あさ美ちゃん胸大きいね~、うらやましいや」
「な、何見てるのさぁ!」
髪のセットとかしてる暇もないから、クシだけポケットに突っ込んで。
「どうしたらそんなに大きくなるの?」
「知らない!それよりも、いやらしい!」
ごめんのんちゃん。正直どんなことにしろ褒められたの嬉しかったから、後でちゃんと話しよう。
「OK!」
見た目、あんまOKとは言えなかったかもしれないけど、そんなこと気にしてる余裕もなかった。
「いってらっしゃ~い♪」
のんちゃんは口にパンをくわえて走る私を、満面の笑みで送り出してくれた。その笑みは何?嘲笑?
ともかく……こりゃあ、久々に中距離ランナーの実力を発揮しないと……

「ってことで…、ダッシュ~!」
53 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:31
「……あさ美ちゃん、いっつも何かぶつぶつ言ってるけど、何なんだろう?」
あさ美ちゃんが出て行って5分ぐらいしてから、のんは一人で呟いた。
のんにはそれが分からない。その独り言が聞こえたとしても、それでも多分のんには分からない。
あさ美ちゃん頭いいから、きっとのんなんかじゃ理解できない事言ってるんだろうなあ、そう思う。
さて、あさ美ちゃんが帰ってくるまで暇だなあ…、何してよう?

「おなか空いたな……朝ご飯、あさ美ちゃんにあげちゃったからな……」

あさ美ちゃんのお母さんも居ない。仕事…らしい。
だから、朝ご飯は自分でトースト焼いたけど、それもあさ美ちゃんにあげちゃったし。
もう、食パン無いのかな?カップラーメンとか……、この際残り物でもいいや。
なんか、なんでもいいから……食べれるモノ………何にもない…………ガックシ。
おなかすいたよぉ……。

テーブルの上を探しても、戸棚の奥を探しても、冷蔵庫の中を探しても、何にも見つからなかった。
冷蔵庫の中に、生肉とか野菜とかはたくさんあったけど、おなかがすきすぎて料理する気にもなれない。
何か出来上がってるものとかないかな…?いろんなところをひっくり返して調べてみる。
するめ…、朝からこんなの無理。パスタ…、面倒くさいよ。ケーキの上に乗せるトッピングみたいなの…、ちょっとこれだけじゃ……。
はあ……こうなったら多少めんどくさくてもちょんとしたの自分で作ろうかな…?
どっちにしろ、なんかすぐに作れるものとか………。


ん……?何だこれ……?
54 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:32
ぜえ、ぜえ、ぜえ………。
「あ、あさ美ちゃん。おはよ~」
ああ…苦しい…、苦しすぎる……。走ったことでここまで苦しくなったのって、今まであっただろうか?
「ははは、今日はいつもよりきつめだね~?」
そんな私の身体状況と真逆を行くまこっちゃんの気が抜けた声。何かむかついて、殴ってやろうかとと思った。
「お、おはよ……まにあった……?」
でも、殴らない。感情を理性で抑えられるのが人間ってやつ。一応親友だしね…。
「大丈夫だよ~、ぎりぎり。後一分で開始~」
「はぁ~!助かった~!」
椅子に身を預ける。と、同時に、チャイムが鳴り、先生が教室へと入ってきた。
「お~、ホームルームやでぇ~、遅刻してる奴はおらんか~!お、紺野、その様子から見るにまたぎりぎりか?もっと早く来るよう心がけや~?」
「はい……。肝に銘じておきます…」
何でだろう…?何で私の周りにはこんなに無駄に明るい人ばっかなんだろう…?
私の性質?それとも、私はそういう星に産まれたとかってあれ?
55 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:32
「紺野…!こんの~!!返事しいや!」
「あ、は、はい!」
中澤先生の呼び声で現実世界へ戻される。
「また考え事か?頭が良いのは結構やが、そういう癖直しや。
 よし!ホームルーム終わり!あ、そや。今日1時間目会議入ったから自習な?サボるんやないで~」
あちらこちらから歓声が上がる。でも、私はそれにつられない。いつもならつられるはずなんだけど。
何だろう?何か忘れてる気がする。なんだこれ?胸の奥で何かが引っかかってる。
「どうしたの?あさ美ちゃん。嬉しくなさそうだね~、元気ない?」
後ろの席からまこっちゃんが私の方にあごを乗せて話しかけてくる。重いんですけど~。
「いや、何かね……」
「何かって?」
それが分からないから濁してるんだけど。
「何か…、忘れてるかもしれないって言うか…。イヤな予感って言うか」
「何それ?」
だから、それが分からないから濁してるんだってば。
「ま、いいか……」
ちょっと胸に何か引っかかるような感じだったけど、せっかくの自習時間、気にしないほうがいい。
それよりも、自習時間中やっておきたいことがある。

「ねえ、まこっちゃん。私、自習時間ちょっと抜け出すから」
「え?ああ、またあそこ?」
「そ、あそこ」

『あそこ』
この言葉でまこっちゃんは分かってくれる。私の好きな場所。
56 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:33

    * * *


「………ここ?」
で、あってるよね?この地図だと間違いないと思うんだけど。
「入っってっちゃっていいのかな?」
見たところ、警備員の人とかは居ない。
中に入ってから事情を話せばいいのかな?始まってるのかな?入っていって怒られないかな?
ここに立っていても浮かんでくるのは疑問ばっかり。
「怒られたら怒られたでいいか~」
とりあえず、これを持って行かないことにはね…。


    * * *
57 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:33
「ふう…」
空気が気持ちいい。昨日まで降り続いていた雨もすっかり上がって、初夏の暖かい風が私の髪を揺らす。
屋上。何のことはない、『あそこ』は屋上のこと。
本当は屋上は立ち入り禁止になっている。でも、私にとってそれは好都合だ。
立ち入り禁止になってるから、屋上へ繋がる扉は常時施錠になっている。だから、誰もここに人がいるなんて思わない。誰も探しに来ない。
え?じゃあ何で私は入れてるのかって?
………いいじゃないですか、そんなこと。

下の方でキャッチボールをしてる制服が見える。キャアキャアと甲高い歓声が聞こえる。
妙に乾いた空気。梅雨明けかな?もう六月も終盤だ。早ければ梅雨が明けてもおかしくない季節。
そんなことを考えながら寝転がり空を見上げた。
青い。真っ青だ。久々にこんな青い空を見た。
今日が晴れてて良かった。曇っていたら、ここに来る気にならなかっただろう。雨が降り続いてでもいたら、ここの事なんて思い出さなかっただろう。
久しぶりに中澤先生に感謝する。自習にしてくれてありがとう……。
58 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:34

    * * *


意外と簡単に許可がもらえた。ってか、これが普通なのかな?
向かう途中、清掃係のおじさんに可愛いって言われた。も~う、照れるなあ~♪
「わざわざごめんね~、あの子よく忘れるんだよ。勉強はよくできるんだけどね」
のんの隣を歩く女の人がそう言った。村田さんって言うらしい。若くて綺麗な人。
「へぇ~、頭良いんですか~」
「すごいよ~、全国模試100位以内なんて、そうそう取れるもんじゃないからね~」
のんにはそれがどれくらい凄いか分からなかったけど、何となく凄そうな感じだけはした。
「すごいですね~」
「すごいでしょ~」
何となく、会話のテンポが合う人。なんかいい感じの人だ。
「あ、ここだよ。ここにいるはずだから」
「わざわざありがとうございます~」
「いえいえ、帰りは一人でだいじょうぶ?」
「えっと、たぶん♪」


    * * *
59 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:35
どれくらい時間が経っただろう?流れる雲を見つめて、風に身をふかれて。
ここにいると時間を忘れる。本当に好きな場所だ。本当は好きになっちゃいけない場所かもしれないけど。
「そろそろ…」
帰りましょうか…。自習時間ももう終わる頃だろう。
立ち上がって目をつむり大きく背伸びをし、息を吐く。
そして再び目を開けたとき、見慣れない人影が目に映った。
「……誰だろう?」
制服だった。女の子。先生じゃなかった事への安堵感と、同じく自習時間であろう彼女がここにいることへの疑問が、同時にわいた。
こっちに背を向けていたからよく分からなかったけど、多分私と同じ学年。リボンの色が同じだ。
その人は、校庭を見つめていた。細かな目線の先は分からなかったけど、校庭を見ていたのは確かだった。

「よっと!」
寝転がっていた給水タンクの上から飛び降りる。
と、その音に気が付いたか、彼女が慌てた様子でこっちを振り向く。その顔には見覚えがあった。
「あれ……高橋さん?」
高橋愛さん。隣のクラスの子。話したことはなかったけど、顔は知っていた。そんなに目立つ子でもないけど。
「どうしたの?こんなとこで」
話そうと彼女に近づく。と、彼女は慌てたように、足下に置いてあった鞄を持ち上げた。
「ご、ごめんなさい!」
そういうと、彼女は屋上のドアの方へ走っていった。
「あ!?ちょっと!」
そう声をかけたときはもう遅く、彼女の姿は私の視界から消えていた。

……高橋さん、何でこんな所にいたんだろう?
その疑問だけが私の中に残った。
60 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:35
教室に帰るときも、思うのはそのことだけ。
何であんな所にいたんだろう。私と違って、真面目だけが取り柄のような人。さぼるはずはないと思うんだけど。
あ、言っておくけども、私もかなり真面目ですから。適度に。
そんなことを考えてる内、いつの間にか教室は目の前にあった。

「…あれこれ考えても仕方ないか」
さっきの出来事をそう処理して、ドアに手をかける。
……なんだろう?やけに教室の中が騒がしい。自習時間だから騒がしいのは当たり前なんだけど…なんか違う。
……なんだろう?何か忘れてるような気がする。さっきのことで頭がいっぱいだったから思い出さなかったけど。
……なんだろう?とってもイヤな予感がする。こういう時の私のイヤな予感って、大抵当たるんだ。
「……だから~」
教室の中から聞こえる声、すっごく聞き覚えのある声が混じってる気が……。いや、ここは私の教室だから聞き覚えない方おかしいと思うんだけど、そんなんじゃない。学校にはあってはいけない声……イレギュラーの声だ。

ガララッ!
ドアを思い切りよく開ける。それと同時に、晴れ晴れとしていた私の心に土砂降りの雨を降らすであろう暗雲が一瞬のうちに立ちこめた。

なんで……何でここに……?
61 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:35
「あ~、あさ美ちゃんおべんと~♪」


のんちゃんはそんな私の心も知らず、これ以上ないと言えるほどに明るい声で、私をノックアウトした。
62 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/03/11(木) 04:36
川o・-・)ノ<流しです
63 名前:スチール 投稿日:2004/03/11(木) 04:46
レスレス~。

>>43 名無し飼育さん
続き楽しみにしてくださってたのに、更新遅れて申し訳_| ̄|○
そうです、珍しいんです、そして私の一推しなんです。
このCPをメジャーにするため、日夜私は頑張ってる……と思います。

>>44 名無飼育さん
レスありがとうございます。
簡潔な文、不思議な空気ですか。どっちかって言うと不思議な文ですかね。
そして、そのぶっ飛びすぎた不思議さに、時に私は首を括りたくなるわけです。

>>45 スチール
アホかと、バカかと。
このレスした一週後には風邪直ってたんですな。
なのにここまで更新遅れたわけ。おとめ紺行って「ののたん萌え~」とか言って(ry
次の更新はなるべくはやめにする予定です。
でも、予定は未定、決定ではないと言うことで(死
64 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 01:02
現場系作者さんなんですね。
次も期待してます。
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 22:45
やあ更新されてたじゃないですか。
にぎやかだなあ。中学高校の頃を思い出します。
学校の屋上の開放感そのままで、愉快愉快。
さてどうなるんでしょうな。
66 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 03:58
「はいっ!先生、質問です!」
「……はい、どうぞ」
「この子は誰ですか?」
「そんなことも知らないで会話してたの……?しかも楽しげに」
「私は身分とか格式とかで人を判断しないんです!」
「……いやいや、まちがってるから。言ってることはとても立派だと思うけどまちがってるから。それに意味が分かんない」
「ほいっ!こっちも質問!」
「はい…のんさんなんですか?っていうか、手上げるときは『はい』ね」
「あさ美ちゃんは今までどこに行ってたの?」
「野暮用です、次」
「じゃあ、もう一個!」
「…なに?質問するときはまとめてね」
「のん、何でまだここにいるの?」

……………

「こっちが聞きたいよっ!!」
67 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 03:59
「はぁ……」
「あ~さみちゃん♪何ため息ついてるの?」
「何って……」
何でか知らないけど、のんつぁんは未だにここにいて。しかも、何故か既にクラスに溶け込んで…、いや、クラスの人気者になっていて。
私のお弁当を届けてくれたのはとても感謝する。でも、それを理由にここに居続けられたら……それは迷惑でしかない。

「ののちゃん?いい子だよ?すっごく♪」
「それは分かってるんだけど……疲れない?」
「疲れる?なにが?どうして?」
どうしてって。……ああ、そうだったね……。
「……何でもない。まこっちゃんに聞いたのが間違いだった……」
そうだ。まこっちゃんはのんちゃんと同種の人間だったんだ…。っていうか、すでにのんちゃんの事を「ののちゃん」とか呼んでるまこっちゃん、馴染むの早すぎ。
そしてその「ののちゃん」は……

「あさ美ちゃんもこっちで遊ぼうよ~。ほら、トランプトランプ♪」

…………はぁ……。
68 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:00
「っていうかさあ、そろそろこの時間終わりじゃない?」
そのまこっちゃんの言葉に顔を上げると時計の針は授業終了五分前を指していた。
「やば……、のんちゃんがここにいるとやばいよ、不法侵入ではないにしろ人の教室入ってきて遊んでるなんて状況…、だめじゃん!」
「ん~?」
「ん~?じゃないってば!」
本当はそんなにやばいとなんか思わなかったけど。だって、先生が来ても「お弁当を届けに来てくれた私の従姉妹です!今来ました!」とか言えばいくらでも誤魔化せる。
だけどやばいとか言ったのは言葉のあやってヤツで、まあ、簡単に言えばのんちゃんにさっさと帰って欲しかったから。
「ほらほら、早く帰った方いいって」
「え~?」
ちょっとテンション低めな感じでのんちゃんがごねる。ホントは私が言いたいんだよ、そういうの。
「見つかったらどうするの?」
「いいっていいって。お弁当届けに来たあさ美ちゃんの従姉妹です!今来ました!とでも言えば多分オールOKだよ」
鋭い!すんごく鋭い!
……甘く見すぎたかな?それとも心でも読みました?
こうなったら……
「いいから!」
「わわっ!?ちょっとぉ!?」
「あ、あさみちゃん?」
強行手段!
69 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:00
    * * *

「わぁっ!!」
「さっさと帰りなよ!夕ご飯はカレーが良いな!じゃ、よろしく!」
「ちょ、ちょっとぉ!あさ美ちゃ~ん!」
教室から追い出された。半ば無理矢理、いや、完全に無理矢理。
なんだよ~。折角お弁当届けてやったって言うのに。
お望み通り今日の夕ご飯カレーにしてあげるよ。カレーうどん。すっごい辛いヤツ!そんでのんのは普通の。

酷いな~。一緒に帰ろうと思ったのに。だから待ってようかなとか思ったのに。約束がおじゃんになっちゃうよ。
どうしよ。あさ美ちゃんの家戻っても誰もいないし……。校内でも……うろついてようかな。

    * * *
70 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:02
「ねぇねぇあさ美ちゃん?」
「ん?何?まこっちゃん。」
「ののちゃん追い出しちゃって良かったの?」
「追い出したって……人聞き悪いなあ」
まあ、実際そうなんだけどね。
「帰ってもらったの間違いだよ、部外者がずっとこの教室にいたらまずいでしょ」
それは事実。のんちゃんがずっとここにいて先生に見つかったりしたら私も絶対に同罪にされる。
それだけは避けなければならない、絶対に。
「う~ん……でもさあ」
「なに?」
「ののちゃんさあ、あさ美ちゃんと一緒に帰るってこの教室で待ってたんだよ」
「え…?」
「約束があるとか言ってた」
「約束…?」
そう言えば昨日………
71 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:02
「あのさあのさ、明日って何時に学校終わるの?」
「明日?明日は午前中だけで終わり、お弁当はあるけどね。どうして?」
「じゃあさじゃあさ!一緒に行きたいところがあるんだよ!いこっ!」
「行きたいところ?どこ?それにもよるけど」
「ひみつっ!」
「じゃあ、行かない」
「な、なんでさぁ!いこってなぁ!」
「どこに行くかも分からない話に付き合ってられるほど暇じゃないの」
「なにさ、さっきはテレビのチャンネル回して『何にも面白いのやってない!アニメも再放送しかやってない!ひま~!』とかって叫んでたくせに」
「うっ……!と、とにかく、行き先言わないんだったら行かないって。言ったら行くかも知れないけど」
「じゃあ、明日言う!明日言うから一緒に行こう!」
「だから行くところにもよるって…」
「決まり~!じゃあ、明日学校に迎えに行くから♪」
「学校に?場所も分からないのに?」
「場所……?さ、さあ、多分大丈夫!」
「バカな事言ってないで。私お風呂入ってくるよ」
「約束だよ!約束!」
「はいはい」
「あ、私も一緒にお風呂……」
「くるなっ!」
72 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:04
すっかり忘れてた…。
「で、でもさあ、まだ1時間目だよ?今から教室で待ってるのとか無理じゃん?」
「まあ、そうだけどね。じゃあ、ののちゃん帰っちゃったのかな?残念」
「残念?なんで?」
「え~?だってののちゃん凄い面白いじゃん?30分ぐらいしか話してないけど、ファンになっちゃったよ♪」
ファンって、あなた。
「まあ、楽しいってのは認めるけどね」
確かにのんちゃんの側にずっといたら退屈しないかも知れない、する暇なんて無いと思う。
天真爛漫というか破天荒というか、彼女には場の空気を一瞬にして明るくできる力がある。
私が教室を出たときにはそれなりに静かだった教室が、帰ってきたとき外にいても分かるくらい騒がしくなっていたのは、彼女の力だったのかも知れない。それが良いとも悪いとも言えないけど……。

ふと思う。のんちゃんって何者なんだろう?
初めて会ったときは(記憶が曖昧だけど)公園の裏の、地元に住む人でも知らないような空き地の中心で知らない歌を歌っていて、いつの間にか私の側にべったりで、これまたいつの間にか私も彼女のことを友達と認めてしまっている。
不思議な子。その素性が分からないからかも知れないけど凄く不思議な子。
知らないうちに人に迷惑をかけてしまいそうな性格してるけど、何でだろう?彼女にそれをされると迷惑どころか親切にも思えてくる。

楽しいんだ。のんちゃんといるととっても。
ただ学校に行って、ただ友達と遊んで、ただ家に帰って、ただ次の日を迎える。
そんな毎日の生活に退屈していた自分がどこかにいたのかも知れない。
友達と遊ぶのは楽しい。でも、それは何故か与えられた課題をこなしているようにしか思えなくなっていた私がどこかにいた。
これをしないと嫌われる。いつも心のどこかでそう思っていたのかも知れない。
73 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:04
のんちゃんに対してはどうだろう?
お弁当を持ってきてくれた人をちょっと冷たい態度で追い返した。他の友達だったら、絶対にそんなこと出来ない。
のんちゃんだから?のんちゃんが嫌いだから?それとも、のんちゃんを完全に信用しているから?
分からない。分からないけど何か違う。これが……本当の友達?
これはまこっちゃんと初めて会ったときに感じたモノと一緒だった。そう言えば二人はどこか似ている。
遠慮無く話せる友達、親友。私の中で、のんちゃんはもうそんなにも大きな存在になってしまったのだろうか?
分からない。分からないけど……。

本当に不思議な子……。
74 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:06
「追い返しやがってぇ!あさ美のバカぁ!なにさなにさ!折角お弁当届けてやったのに!こんなんなら届けない方が良かったよ!」
「まあまあ、そんなこと言わない。女の子がそんな荒っぽい言葉使ったらいけないよ?」
「でも……村田さん」
のんは保健室にいた。なんでだろ。どっか部外者でも安全に待ってられる場所を探してたら村田さんにあった。
「紺野さんがそんな事するなんて思わないなあ、そんな子じゃなかったと思うけど」
「でもしたんだもん。奇跡的に怪我の一つもなかったけどされたんだもん」
「あら、それはよかったね。怪我が無くて、ホント奇跡だね」
「やっぱそう思う?奇跡だよ!奇人の「き」に……良く分かんない「せき」って書いて奇跡だよ!………「せき」ってどう書くんだっけ」
「セキスイハイムの『せき』じゃない?」
「あれ?そうだっけ?何か良く分かんないけどそれでいいのかな」
やっぱ、この人とは気があうや~♪話もジャストフィットするよ。って、
「何か話題ずれてない?」
ジャストフィットしてないし。
「ん?そう?あ、そっか、奇跡っていい曲だよね~って話題だったっけ?」
「そうそう!あのグループって本当は13人なんだってね!昨日あさ美ちゃんに聞かされて初めて知ったよ~♪12人から13人に増えるってどっかの戦隊モノみたいでかっこいい!」
「黒い色の人って大抵かっこいいんだよね。それではじめの方は敵だったりするの」
「そうそう!それで最近はイエローがカレー好きって言う設定が薄れてきたっぽい……って、やっぱり話題ずれてきてないかな?」
「ん?そう?ああ、どうして色のシャッフルの時、青色7より黄色5が売れたのかっていう話題だっけ?」
「あ~、あれね~今聞くと青色の方良く聞こえるんだけどね~、のんの好みの問題かな~………なんか、もうかすってすらないよ」
ほんとにこの人と気があっていいのだろうか?何か不安になってきた。
75 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:07
「そんなわけ分かんない話題じゃなくてさ~、あさ美ちゃんが……村田さん?」
「……あの子またいる」
「あの子?」
村田さんが窓の外に向けて指を指す。その先は隣の校舎の屋上に向けられていた。
そしてそこには……。
「女の子?」
そこには一人の女の子が立っていた。

歳は……のんと同じくらい?っていうか当然か。ここは高校で、その子は制服を着てるんだから。
どう考えたって一個下か一個上、または同い年しかあり得ないんだから。
「何なんだろうね~?さっきもあそこにいたんだよ~。今は休み時間だからいいとしても、さっきは授業中だったし」
「ふ~ん……」
その子は笑っていた。ように見えた。いや、実際笑っていたのかもしれない。ここからじゃあ遠すぎて、その子の表情は全く読み取れなかったけどなぜだか笑っている気がした。
「村田さんあの子知ってるの?」
「さあねえ、私もこの春この学校に入ったばっかりだからねえ、まだ生徒の名前あんまり知らないんだよ」
「あ、そうなんだ」
村田さんの方に向けていた頭を、もう一度向かいの校舎屋上の女の子の方へと戻す。

あの女の子はどこを見てるんだろう?校庭?
休み時間だからか、校庭ではボールなどを手にした生徒が楽しそうに走り回っている。
それを見ている女の子は楽しそうに、そして、どこか寂しげな表情も覗かせながら……。
それを見たとき、何かのんの記憶に引っかかるモノがあった。
76 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:07
誰かに似ている。誰だっけか。
あさ美ちゃん?いや、違う。あさ美ちゃんがあんな顔するはずない。
まこと?それも違うと思う。まだ会ってちょっとしか話してないけど。
じゃあ、あい………いや、そんなんじゃなかった。もっと簡単なところ……。
あの子に似てるのは…、あの子が似てるのは……

………同じだ。


気が付くと、のんはソファーから腰を上げていた。

「ちょっと……あの子のところに行ってくる」
「…え?のぞみちゃんが?屋上に?」
「うん」
村田さんがちょっと驚いたような感じでこっちを見てくる。でもすぐに、
「そう、分かった。でも、あそこ本当は立ち入り禁止の所だから見つからないように注意するんだよ?部外者が立ち入り禁止の所にいたりしたら、どんな疑いかけられるか分かんないから」
「うん」
やっぱり村田さんとは気が合うみたいだ。私の気持ちを、理解してくれたみたい。
「それじゃあ、行ってきます♪」
「行ってらっしゃい♪」
村田さんが顔の横で手をひらひらと揺らす。
村田さんの見送りを背中に受け、保健室のドアを閉めた。
77 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:07
「ん?」
「どうしたの?あさ美ちゃん」
「いや……、なんか……」
いま、廊下をのんちゃんっぽい人が走っていったような……。
「なんか……何?」
「……ううん、なんでもない」
気のせいだよね?もう、学校にいるはずないもん。
それにあっち側屋上への入り口しかないし、屋上になんか行かないはずだしね。


……だよね?
78 名前:二話「気分次第のお天気屋さん」 投稿日:2004/04/26(月) 04:08
    気分次第のお天気屋さん、今日はどんな天気を運んでくるの?。
    君が笑ってくれるだけで、空は大いに晴れ渡るんだ。
79 名前:スチール 投稿日:2004/04/26(月) 04:10
∬∬´▽`)ノ<取りあえず流しておきMAX!
80 名前:スチール 投稿日:2004/04/26(月) 04:18
さて、レスの時間です。

>>64 名無し飼育様
現場系いうなごるぁ
そう言う事によって読者が離れていってしまうのは嫌なので言いません。
冗談です、ごめんなさい、許してください、すみませんでした_| ̄|○
まあ、そんな事は置いておいて。
今回の遅れた理由は現場じゃないです。ただ単にさぼって(ry

>>65 名無飼育様
そう言う風景を思い浮かばそうと頑張ったのですがいかがだったでしょうか?
この屋上は学校編(今勝手に付けた)の鍵としようとか思ってます。
まあ、また更新空いちゃったらどうしようもないんですけど。

時々は真面目にレスしますよ( ´,_ゝ`)

>>63 スチール
いい加減に氏(ry
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/27(火) 03:18
おお、新展開ですね。
82 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/04(金) 22:46
つづきがとっても見たいです。
作者さま、応援してます。
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 00:16
お待ちしております。
84 名前:スチール 投稿日:2004/08/16(月) 16:32
しばらく更新無くて申し訳ありません。
ログ整理が今日と言うことなので、保全です。
今月中に更新します。
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/21(土) 21:35
よかった
待ってます
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/26(日) 04:24
まってます
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/24(水) 00:10
待ちたいけど…
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/07(金) 23:07
お願いします

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