I can't help falling in love with you.
- 1 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:03
- 初めて書きます。
いしよしです。
- 2 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:04
- 〜1章〜
高校三年生、吉澤ひとみ。教室の窓際の一番後ろでボーっとしている。
教師がいろいろと黒板に書きながら、説明をしている。
(実用的じゃない…)
帰国子女であるひとみはノートに書き写す行為がばからしい。
「吉澤そんなに暇なら、何か例文言え!」
「I can't help falling in love with you.」
「お前はホントそればっかだなぁ。」
「実用的でいいと思いますけど?」
(でも使ったことなんてない。そんな人に出会えてない。)
今日は英語U、リーディング、ライティング、芸術、現代文、体育…英語の授業が3時間もある。
みんなにとっては予習に追われて嫌な一日、ひとみにとっては暇で仕方がない一日。唯一の救いは体育だった。
そんな一日も終わり帰ってゆくひとみ。
(あー、なんてつまんない一日だったんだろう。そだっ、CDでも借りに行こう。)
駅前にある小さなCD屋さん。雰囲気が好きだった。店長と話をして、オススメCDを借りて帰る。
気に入ったらお金を払う。でも、ひとみは常連のためタダ同然。ホントに「借り」に行ってるようなもの。
今日も一枚借りた。
(おしゃれな店長、おしゃれな机に椅子、おしゃれな小物、おしゃれなお客さん…落ち着く〜♪)
すっかり上機嫌なひとみはさっそくCDを聴きながら家へと帰る。
「きゃーーーっ、どいてーーーーーー!!」
猛スピードで坂を下りてくる一台の自転車と女の子。
しかしその声は大音量で音楽を聴く上機嫌なひとみの耳には届かない。
ガシャンッ、―――。
「えっ」
「いったーい」
- 3 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:05
- ---------------------------
(ふぁ〜、よく寝たなぁ…?……????)
辺りを見回すひとみ。見たことない所だった。
「Where am I? Who are you?」
「あっ、ヒアイズ。。。ディスイズマイルーム。」
ここが日本だということを思い出すひとみ。
「あっ、ごめん。つい。ここは日本だった。ここはどこ?あなたは誰なの?」
「あの、ここは私の部屋です。さっき、あなたにぶつかっちゃって。覚えてないですか?」
「確かに何かに当たった気がする。…そういえば、足が痛いや。」
「大丈夫ですか?わたしのブレーキが壊れてたみたいで止まらなくて。」
(ふと、机の上を見れば、私のお気に入りのカバンにタイヤの跡がくっきり…CD!!)
「あっ…」
壊れたCDプレイヤーを手に取り固まるひとみ。
「弁償します。中身も…」
(店長の一番のお気に入りCDって言ってたのに、やばいなぁ)
「どうしてくれるんです?これレンタルなんです。それに、もうCD売られてないかも。」
「えっ、そんな…」
「泣いて済む問題ではないのですよ、これは。」
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
- 4 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:05
- イライラしながら、振り向くひとみ。
(まったくよぉ。どうしてくれるんだよ、ホントに…。まったく…。)
「可愛い…」
「えっ?」
「いや、なんでもないです。いいですよ、弁償なんて。もう泣かないで。私はもう帰ります。」
改めて彼女を見たとき、可愛かった。
一瞬どきっとしたひとみは焦って彼女の部屋を飛び出てしまったのだった。
(あっ、プレイヤー置いてきちゃった。まぁ、いっか、可愛さに免じて許してあげよう。店長ごめん。)
- 5 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:55
- 〜2章〜
あれから一週間が経った。
あの坂の前を通るとあの子のことを思い出す。
たどたどしい英語で答えようとしていたあの子のことを。
そんな日の学校帰り、ひとみは彼女の家を探した。しかし、あのあと一人でちゃんと帰ったのに場所がわからない。
夜と昼の違い、行きと帰りの方向の違い、ついにひとみは迷ってしまったのだった。
「Where am I?」
力なく呟くひとみ。
「What are you doing? ...May I have your name, please?」
はっとして振り向く。
(この声は!)
「...Hi.」
「...May I have your name, please?」
「英語、上手いんだね。」
「勉強したの。」
「なんで急に?」
- 6 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:56
- 「こないだすごく困ったから。」
「そっか。私は吉澤ひとみ。そっちは?」
「石川梨華です。」
「リカかぁ。かわいい名前だね。どんな字?」
「梨に。。。中華人民共和国の華」
「えっ?」
「こーゆう字」
携帯電話を取り出して、自分の名前を打つ梨華。
「あぁ。なるほど。んじゃ、梨華。。ちゃん?」
「んじゃ、ヒトミちゃんだね。漢字?」
「ひらがなだよ。」
立ち話も何だと、近くにあった喫茶店へと入る二人。
- 7 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 15:57
- 「もうケガは大丈夫なの?」
「うん。跡も消えた。カバンがあって助かった。」
「あっ、カバン変えたの?」
「あぁ、うん。」
(だってタイヤの跡がくっきりついてて、いろんな人に「これ何?」って聞かれるんだもん。なんて言えない。)
「そうだ!」
ゴソゴソ、――。
「これ!」
「あっ」
店長お気に入りのCDだった。店長にこっぴどく叱られて、定額の倍で貸し借りになったのは記憶に新しい。
「探したの?」
「まぁねぇ。あとね、プレイヤーも買おうと思ったんだけど、どんなデザインがいいのか分かんなくて。
だからね、今度、一緒に買いに行かない?」
「いいの?」
「何が?」
「ううん、なんでもない。行こう行こう!」
「デートだね。」
「えっ?」
「お待たせしました、アイスティーとアイスコーヒーです。」
微妙なタイミングで店員が持ってきたものだから、流されてしまった。
(デートって言ったよね?言ったよね?やったー!!でも聞き違い?でも改めて聞きなおすのもなぁ。)
その後、迷子になってたことを笑われ、買い物の日の約束をしてバイバイした。
- 8 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 16:53
- 〜3章〜
今日は電気屋めぐり。待ち合わせの喫茶店。迷った場所は案外梨華の家の近くだったりした。
リーン、――。
ドアについてるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「いえ、待ち合わせを。」
「では、こちらにどうぞ。」
(30分前だもんなぁ。まだ来てないよね。)
「アイスコーヒーで。」
「かしこまりました。それではごゆっくり。」
(今日はおしゃれしてきたんだ。いつも制服だもんなぁ。)
リーン、――。
梨華は15分前に到着。しかし、ひとみは気づかずにコーヒーをストローで吸いながら遊んでいる。
(1cmずつ吸い上げてみよう。…難しいなぁ。)
「何してるの?」
(どきっ)
「えっ、いつから見てた?」
「今、来たとこ。」
「そっか。」
「ひとみちゃんて、楽しいね。」
「えっ。へへへ」
「あっ、私はミルクティーで。」
「かしこまりました。」
- 9 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 16:54
- 「今日は制服じゃないんだね。」
「えっ、嫌?てか、変?えっえっえっ???」
「やっぱり、ひとみちゃんて楽しいね。」
「やっぱり、変なの????」
「うぅん。可愛いよ、似合ってる。おしゃれさんなんだね。」
「いやいや。へへへ」
「あっ、ひとみじゃん!」
梨華の後ろから覗く女の子が一人。
「あっ、久しぶりだね。何やってんの、こんなとこで?」
ちょっとばかし、話をするひとみと女の子。
梨華はちょっとつまらなそうな顔をする。
それに気づいたのか気づいてないのか、ひとみは話を止める。
しかし、それに気づかない梨華。
「行こっか?」
「どこに?」
「うん?買いに行くんじゃないの?プレイヤー。」
「うん、行こう行こう!!」
(ヤキモチやいてたなんて言えないよ…)
- 10 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 16:54
- さてさて、ついに電気屋デートに出発です。
「これは?」
「なんか違う。」
「これは?」
「違う色ならなぁ。」
「これは?」
「ダメだね。」
そんな感じでなかなか気に入ったものは見つからず。。。
巡りに巡って10件目。
「・・・!!!」
「ねぇ、これは?」
「えっ、ダメダメ。もっといいの見つけた!」
「これがいいの?」
「うん!」
満面の笑みで答えるひとみ。
いままでのとあまり違いの分からない梨華。
(でもなんかひとみちゃんっぽいかも)
「んじゃ、買おうね。」
「やった♪やった♪ルンルンルーン♪梨華ちゃんサイコー。大好きだよ〜♪あぁ、嬉しい。」
(今のは、告白とは程遠い「大好き」だよね?グスン。でも喜んでるみたいだから良いか。)
「ねぇねぇ、梨華ちゃん。次はどこに行くの?」
「まだ、電気屋さん行くの!?」
「違うよぉ。次はいつ会えるの?」
「メールする。」
「分かったぁ〜♪」
音楽を聴くわけでもないのにイヤホーンを付けてルンルン気分のひとみの隣で財布の中身が寂しくなって落ち込む梨華。
(3万もするなんて。。。)
- 11 名前:haruri 投稿日:2004/01/29(木) 17:05
- 〜4章〜
(夏休みに入ったら、今日も明日も明後日も、いっぱいいっぱい梨華ちゃんに会える。)
「I can't help falling in love with you.」
「どうした急に?」
「いや、なんでもないです。」
授業中につい呟いてしまったひとみなのだった。
(次に会う時、告白しよう。)
一方、大学にいる梨華はというと…。
(どうしよー、私ひとみちゃんが大好きだよぉ。あの笑顔忘れられない。もう、どうしたもこうしたもないよぉ。
でも、ひとみちゃんの気持ち全然分からないし、そんな素振りも見せないし…う〜〜〜。)
まったく講義を聞いていないのであった。
まったくこの二人は…。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/29(木) 22:32
- おぉ〜いしよし新作キターーー!!
作者さん初めまして。
これからも頑張って書いてできるだけ完結してくださいっm(_ _)m
- 13 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 13:53
- >>名無飼育さん
はい、がんばります。
新人ですがよろしくお願いします。
- 14 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 15:00
- 〜第5章〜
今日は一週間ぶりのデートです。またいつものように喫茶店で待ち合わせ。。。
そして、今日はひとみの勝負の日。
リーン、――。
(ふぅ、今日も私が先かな?)
「いつもので。」
「はい。」
すっかり常連になってしまった、ひとみと梨華。ひとみはコーヒー、梨華は紅茶。
アイスとかホットとかミルクとか、いろいろ変える梨華に対して、ひとみは決まってアイスコーヒー。
(おしっ、今日こそ告白するんだ!がんばれ、自分!)
(まだかな?もう待ち合わせ過ぎたよ。)
リーン、――。
(来たっ!♪)
「待った?」
「ううん。」
「コーヒーで。」
「アイスですか?ホットですか?」
「ホットで。」
「はい。」
(あれ?今日は紅茶じゃないの?てか、なんかいつもより大人に見えるのは気のせい?)
「今日は紅茶飲まないの?コーヒーは嫌いなんじゃないっけ?」
「こないだ友達が飲んでたの試しに飲んだら美味しくてさ。」
「友達?」
「うん。そうだよ。なに?私だって友達くらいいるよ。」
ちょっぴり重い空気になってしまった二人。
「今日はなんか雰囲気が違う感じだね。」
「変?」
「ううん、大人っぽくて良いと思うよ。」
(私のためにやってくれたのかなぁ?へへへ。)
- 15 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 15:00
- 「そっか、よかった。今日、友達とご飯食べに行くの。」
(なんだ、私のためじゃないんだ…。でか、また友達?そりゃ、私も友達といろんなとこ行くけどさ。なんで、今日なの?)
「8時に待ち合わせなの。駅前に新しく出来たお店でね、すごく美味しいんだって。楽しみ♪」
「ふぅん。」
(なんかつまんないよ。告白はやめだ、やめ!)
「今日はどこいく?」
「どこ行きたい?」
「じゃぁねぇ…」
- 16 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 15:01
- 梨華の提案で駅近くの百貨店にショッピングに行くことになった二人。
試着したりなんだりで、とても楽しそうな梨華。
(さっきはちょっとつまんなかったけど、やっぱり梨華ちゃんは一番可愛いや。I can't help falling in love with you.だよ、梨華ちゃん♪)
「ねぇ、ひとみちゃん、どうかなぁ?」
「いいね、惚れちゃいそう。」
「ほんと?んじゃ、これ買うー。」
(あっ、言っちゃった。)
「うん?」
「へ?」
「へ?じゃないよ〜、ひとみちゃん。ひとみちゃんは何も買わないの?」
(聞き流されてるし…)
「なんか、気に入ったのないしさぁ〜」
(って聞いてないし!)
アクセサリーを見ながら店員と話している梨華だった。。。
「ふぁー、いっぱい買っちゃったね♪」
「そ、そだね。」
結局ひとみはなにも買わずに終わったのだった。しかし、ひとみの両手には袋がいっぱい。
(私は荷物持ち?)
「あーっ、もう7時半!」
「でも、駅前でしょ?すぐじゃん。十分、間に合うよ。」
「この荷物持ってかえらなきゃ。」
「あぁ。。。」
「ねぇ、ひとみちゃん?」
(嫌な予感…)
「お願い!これ、私んちに持って帰ってくれない?カギはポストに入れといてくれれば良いから。」
「わかったよ。」
「じゃあ、また今度ね!」
「うん。」
梨華と別れ、駅ビルのカフェでベーグルを食べて、とぼとぼと梨華の家へと向かうひとみ。
(私は梨華ちゃんの何なんだろう…)
(ま、可愛いからいいか♪)
- 17 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 15:01
- 「あっ?」
(なんで梨華ちゃん?????)
ひとみの目線の先には梨華。そして、男が一人。例のお店の中にいる。楽しそうに話してる。
(友達って男?????どういうこと?)
(男の友達がいたって良いけどさ。でも、あんなステキなとこで、食事だなんて…)
(梨華ちゃん彼氏いたんだ…。私になんでウソつくの?友達と食事って言ってたじゃん。)
ショックに打ちひしがれながらも、今回は迷うことなく梨華の家に到着。
カチャ、――。
(奥に行ったらあの男の写真とかあるかな?そしたら、確認できる。でも気が引ける。ここに置いておこう。)
「任務は果たしましたよ、姫。」
(そして、しばらく会いたくない。)
星の輝く夏の夜。まだ夏になりきれてなくて、ちょっぴり肌寒い。
この世に神がいるならば…。
ねぇ神様、この二人をどうなさるおつもりですか???
- 18 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 16:48
- 〜第6章〜
あれからあの二人どうやら一度も会ってないみたいです。
ただ違うのは二人の気持ち。
梨華のことを嫌いになろうとしてもなれないひとみ。
そして、何も思ってない梨華。
あれから二週間が経ったのに、メールも電話も最後は梨華だった。
梨華から最後に来たメールは
『ありがと』
絵文字もなくてシンプルで。4文字だけで…。そして、返事は送ってない。
世間の高校生は夏休みに入りました。
(ウソまでついて男に会っちゃって、なんなんだよ。)
(梨華ちゃんより可愛い子だっていっぱいいるさ。他の人好きになればいいや。)
勉強に打ち込むひとみ。
でも、いつのまにか、頭は梨華のことでいっぱいに。
(なんでメールこないの?)
(あれは私の勘違いだったのかもしれない。メール送ってみよう!)
(だめだ、何打てばいいんだろう。)
でもどうすれば良いのか分からない。
携帯片手に止まるひとみ。
そのとき画面に変化が。
(えっ、梨華ちゃん?梨華ちゃんなの?はやく届いてー!)
(きたー!!)
『幸せになれるよ』
友達だった。しかもチェンメ…。
(ガックシ…。てか、10人に送るべきですか?幸せになりたいのです。)
I can't help falling in love with you.
まさにそんな感じだった。
(あなたの笑顔がまた見たい。私だけに笑ってほしいんだよ。私はあなたにとってただの友達かもしれないけれど、私はあなたが大好きなんです。)
またもや、決意を固めたひとみ。今度こそ?
そんな時、メール着信のメロディーが。
- 19 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 16:49
- 『今から会える?』
(梨華ちゃんだー!!!会えるよ、会える!今すぐ会える!!)
いつもの喫茶店。いつもの席。
いつもと違うのは今日は梨華が先に来てること。
「ごめん待った?」
「ううん。急に呼び出してごめんね。話があって。」
(えっ?もう会えないとか?やっぱり、あの男は梨華ちゃんの…。)
「私ね、しばらくひとみちゃんに会えない。」
(ガーン)
「ちょっと旅行に行くの。」
「旅行?」
「うん、友達と。スウェーデンとか、いろいろ。避暑。ひとみちゃんにもお土産買ってくるからね。楽しみにしてて。」
「いつ出発?」
「明日。」
「明日?!」
「うん、だから、出発する前に、ひとみちゃんにね、言っときたいことがぁっ…」
おとなしく、していた、ひとみ。ついにやってしまいました。
「何?私には大好きなダーリンがいるから、ひとみちゃんに会う時間はもうないって?」
「何言っ…」
「この前友達と食事とか言って男と仲良く話してたじゃん。あいつと行くんだろ、どーせ。いいよ、お土産なんて。
避暑とか言ってさ、海外でいちゃついてくるだけじゃん。スウェーデンでもフィンランドでもノルウェーでも勝手に行けば?
こっちだって、もう、会いたくなんかないよ。」
「ひとみちゃ…」
「あーっ、ムカツク。もう帰る。」
と、ひとみは出て行ってしまいました。「ばかみたい…」と呟いて。
一人残された梨華。あんだけ、おっきな声でひとみに言われ、周りのお客は見て見ぬふり。
居心地が悪くてたまらない。
「帰ろ。」
(ばかみたいって何だったんだろう…)
喫茶店を後にする梨華、――。
この世に神がいるならば…。
ねぇ神様、この二人をホントにどうなさるおつもりですか???
- 20 名前:haruri 投稿日:2004/01/30(金) 17:18
- 〜第7章〜
ひとみは自分の部屋にいる。泣いている。
「もう終わりだ…終わりにした方が良いんだ…忘れよう…」
何回もそう言っては泣いていた。
行き先を失った愛が、ひとみの中で暴れる。
忘れちゃえばいい。そう、忘れちゃえばいいのだ。
でも、そんなのってなかなか出来ない。
好きになろうとして、なるんじゃない。自然に好きになる。
それと同じように、嫌いになろうとして、なれるもんじゃない。
ひとみはそのまま夢の中へ、――。
一方、梨華は…。
「違うのに。私、彼氏なんていない。好きなのは、…ひとみちゃんだもん。だから、出発する前に好きって言いたかっただけなのに…」
梨華もまた、泣いていた。
(海外旅行。ドタキャンは絶対出来ない。半年も前から、約束してたんだもん。)
(女の子同士でどっか遠くに行きたいね、って。約束だもん。)
(そのために、いっぱいバイトもしたし。一回事故ってサボったけど。)
(ひとみちゃんに電話しても繋がらないし…)
(友達と大好きなひとみちゃん…選べないよ…片方失うのも両方失うのも私には出来ない。)
と、梨華は泣きながらも携帯を手に取り、メールを打ち始める、――。
- 21 名前:12 投稿日:2004/01/30(金) 22:36
- 更新お疲れ様です。
2人の行き違いがいいですね〜
続き期待してます。
- 22 名前:名無し 投稿日:2004/01/31(土) 10:14
- おもしろい。
- 23 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 18:11
- >>21:12さん
期待に沿えるように頑張りますね!
>>22:名無しさん
最後まで、「おもしろい。」と思ってもらえるように、頑張ります!
- 24 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 18:12
- 〜第8章〜
ここはどこかといいますと、とある国際空港です。
例の彼女の姿は……
発見!!いました、いました。おっきなスーツケースとともに友達とおにぎり買ってます。
どうやら、飛行機の中で食べるみたいです。機内食は口に合わないと思ってるみたいですね。
結構おいしいのにねぇ。
で、例のメールの受信者は誰かと?
泣き寝入りした彼女です。そう、ひとみ。
今、どうしてるんでしょうか、――。
寝てます…ぐっすり寝てますよ。
うお?そろそろ起きるみたいです。起きました。
目を開けて、…腫れてるねぇ。
起き上がって、…止まってます。
また、梨華のこと考えてるんでしょうか?嫌いになれたのかな?
んで、立ち上がって、…止まってます。
今朝、といっても、もう昼ですが。スローですね。魂吸い取られたみたいです。
あ、顔を洗いに行ったみたいですよ。
タオルで水分吸い取って、と。そう、ごしごしやるのはよくないんだよね。でも、押さえすぎじゃない?
「…グスン」
あらら、また泣き出してしまいましたよ、このお嬢さん。
ガンッ、――。
あらららら、このお嬢さん、物に当たり始めました。
今蹴ったのはアルミ製のゴミ箱。見事にへこんでます。
「あー、もうっ!」
タオルがのいたその顔は、とてつもなく怒ってます。でも、何に?
”愛情が膨らみすぎて、膨らみすぎて、行き先を失ったととき、その感情は時には恨みに変わることがあるんだよ”
って誰かが言ってた。そして、また、彼女もその例の一つになろうとしてます。
ほら、はやく、メールに気づけ!愛する気持ちが恨みに変わる前に。早く!
しかし、むなしくも、携帯電話はカバンの奥底に眠ってます。
自分の部屋で暴れるひとみ。
そして、携帯電話が気になる梨華。
海外に行ったら、携帯電話は繋がらない。
梨華はひとみからの連絡を待っていた。
離陸まであと、1時間。
すれ違う、二人の気持ち。
神様って意地悪だよね、――。
もし、いるならだけどね…。
- 25 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:46
- 〜第9章〜
飛行機に乗り込んだ、梨華とその友達。離陸まであと、20分!!
「どうしたの梨華?携帯握り締めちゃって。」
「えっ、あ、うん。」
「何、彼とケンカでもしたの?って、彼氏いないんだった。こないだは、彼氏の浮気調査手伝ってくれてありがとね。」
「いいえー。」
「感謝してる。結局、浮気心なかったし。」
「まったくだよ。」
そう、あれは友達に頼まれてやったこと。
「最近冷たいんだよ。」
友達のその一言がホントにせっぱつまった感じに聞こえて、協力したのだった。
(やめときゃよかった。)
(正直に言っとけば良かった。)
後悔してる梨華。
終わったことは、どうしようもない、――。
- 26 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:47
- さて、暴れるひとみはどうしてるかというと?
吉澤ひとみ、高校三年生。無我夢中で掃除してます。自分の気持ちリセットしたいのかな?
すみからすみまで、キレイにしてやる。彼女の目にはそんな決意が感じられます。
っと、例のカバンに手が伸びました。
「…?」
ついにメールに気づいたようです。
「何をいまさら…消しちまえ。」
ちょっと、待ちなさい!消してはダメですよ!!
おっ、思いとどまったようです。
題名が気になったみたい。
『絶対読んで!』
やっぱり、ひとみの心の中に「好き」という気持ちが残っていたみたいです。
神様、あんた最高です!
もし、いるとしたら、ね…。
- 27 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:47
- 離陸まで、あと10分。
悪い子梨華ちゃん、こっそり電源つけてます。
『なんか、よくわかんないけど、ごめんね。』
(なにがよくわからんのだ?)
『でも私、彼氏なんていないからね。今回の旅行相手だって女の子だよ。画像つけとく。保育園からのお友達。』
(えっ?あっ、可愛いお友達。ってそんなことはいいんだ。んで?)
『でね、私ね、好きだよ。ひとみちゃんのこと。』
(マジぃ〜!?)
『さっきも、それが言いたくて。』
(そうだったんだ…。)
『初めて会ったとき「可愛い…」って言ってくれたとき、すごい嬉しかった。はしゃぐひとみちゃん可愛かった。いっつも優しくて、いっつも笑顔で、私、甘えてたのかもしれない。』
(そんなぁ…。)
『でもちょっと分かんなくて。』
(ん?雲行きが怪しくなってきた…。)
『ひとみちゃんの言う「大好き」とか「可愛い」とか「惚れちゃう」とかなんか自然すぎて、私のことなんとも思ってないのかなって。』
(そんなことない!)
『ずっと告白しようと思ってたの。でも怖かった。ふられるのも怖かったけど、ひとみちゃんを失いたくなかった。友達でもいい。側にいたかったの。』
(うん。)
『でも、決めたの。私はひとみちゃんが大好き。一番好き。ひとみちゃんの側にいたい。ひとみちゃんの笑顔一番近くで見てたい。』
(………。)
『私、ひとみちゃんの一番になりたい。』
(梨華ちゃーーーん!!!)
(あっ、まだ続きがある?)
『I can't falling in love with you. 大好きだよ、ひとみちゃん。』
(梨華ちゃんってば。英語使い慣れてないくせに。)
離陸まで、あと5分。間に合うか、ひとみ?!
- 28 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:47
- ”電子機器の電源をお切りください。飛行に影響します…”
アナウンスがむなしく響く、――。
落ち込む梨華。
(はぁ〜。…でも、気持ち伝えられて良かった。ひとみちゃんに会えてよかった。今でも好き。大好き。片想いでもいい。好きな気持ちは変わらないもん。)
電源を切ろうとしたその瞬間。
画面には
”メール受信中”
(ひとみちゃん!ひとみちゃんなの?)
”受信完了”
画面にはひとみがいた。梨華が撮った笑顔のひとみ。
(ひとみちゃんだ!)
『ずっと私の一番でいてほしい。』
(ひとみちゃ〜ん。)
泣き出す梨華。驚く友達。
「どしたの梨華ちゃん?飛行機怖いの?」
「うう〜。」
言葉にならない梨華。
っと、続きがあることに気づく。
『P.S. I can't help falling in love with you.の間違えだよね?』
やってしまいました、梨華姫。
英語間違えてます。
あなたとは恋は出来ないなんて言っちゃってます。
しかし、理解できてない様子。
そして、友達に電源を切られてしまいます。
このことに気づくのはあっちに着いてから。
大事なところで、まったくねぇ。
- 29 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:48
- すれ違ってた、二人の想い。
でも、離陸寸前、ぎりぎりで、結ばれました。
愛するゆえの行き違い。
この二人には、まだまだ、ついてまわりそうです。
神様、今度は、何をたくらみですか?
- 30 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:50
- 〜fin.〜
- 31 名前:haruri 投稿日:2004/01/31(土) 22:54
- 最後まで、読んでいただきありがとうございました。
とりあえず、終わりです。
しかし、まだまだ、書けそうな感じです。
今、頭の中で展開を考え中です。
楽しみにしておられる方がいらっしゃいましたら、その方へ。
「お楽しみに!!」
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 02:20
- こういうシンプルな短編、面白かったよ〜
最後の方ワクワク。落ちも良かったです!
もっと続き書いて〜
- 33 名前:haruri 投稿日:2004/02/01(日) 10:33
- >>32:名無飼育さん
お褒めいただき、嬉しい限りです。
って、ことで、第2部書くことにしました。
そいでは、スタートです。
- 34 名前:haruri 投稿日:2004/02/01(日) 10:34
- 〜第1章〜
8月下旬。まだまだ暑さが続いています。アスファルトの上裸足で歩いたら大変なことになりそう。
さてさて、帰国子女、吉澤ひとみはどう過ごしてるのでしょう?
あ、また寝てる?ベッドの上にいます。もう昼だってのに。
ちょっと、目を覚ましなさい。物語が進まないじゃないの。
「ハックシュっ。」
(梨華ちゃんが私のこと考えてたのかな?へへへ)
あら、起きてたみたい。
どうやら、ベッドの上で例のメール見て、にやにやしてたようです。
片や梨華ちゃんはというと…。
朝っぱらから、スーツケース相手に悩んでますねぇ。荷物が入りきらないみたいです。
ってことは、そろそろ帰国なのかな?
「あー、もうっ。入んないよ!」
「梨華ちゃん何してるの?」
梨華ちゃんのお友達、目を覚ましました。彼女はきちんと荷物の整理が済んでます。
「入んないの?」
「どうしよう…。」
「んじゃ、私のに入れれば良いよ。もちょっと余裕あったし。」
「ありがちょ。」
「あんたねぇ、「ありがちょ」って。「ちょ」って何よ。梨華ちゃん、泣いたかと思えばテンション急に高くなったり…変だよ。」
「てへっ。」
旅行中、梨華のテンションはこんな感じで、友達はあきれるばかりだった。
まったく、人って恋に落ちるとこんなにも変わるんだね…。幸せになると、特に。
ようやく一緒に走り出した、二人の恋心。
抜いたり抜かれたり、この先何が待ってるのかな?
- 35 名前:haruri 投稿日:2004/02/01(日) 10:34
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-
やってきました国際空港。日本です。
「ふぁー、ただいま、日本。ばんざい、ニッポン!」
あきれる、友達…。
梨華の服装は、夏だってのに長袖…。荷物、やっぱり、はいりきらなかったのね…。着込んでます。
でもね、空港でたら、絶対に暑いよ、そのカッコ。
(ひとみちゃんに電話しよう!)
携帯電話を取り出す梨華。しかし電源が着かない。バッテリーなくなったんだね。
そりゃ、圏外でなんどもあのメール読み返してたんじゃねぇ。
(ひとみちゃんの番号覚えてないし…お家に帰ってからしよっと。)
友達と別れて家へと急ぎ足で帰ってゆく梨華。とある駅で電車待ち。
と、ひとみも同じ駅に。やっぱ繋がってるね、この二人。って、ひとみちゃん一人じゃない?
可愛い女の子と仲良く話してる。
「えっ?」
(あれ、ひとみちゃんだよね?…だよね?)
「あっ。」
(梨華ちゃんだ!)
目が合った二人。しかしそれは、電車によって遮られてしまう。
しかも電車が去ったあと、梨華はもういなかった。
梨華の帰国早々、またもやすれ違い始めましたよ、この二人。
はぁ、神様っていじわるだよね…。
でも、今回は、はやいとこ解決しそうだ。
たぶんね。
- 36 名前:haruri 投稿日:2004/02/01(日) 14:22
- 〜第2章〜
半月ほど、ほったらかしてた梨華の部屋。
部屋を出たときと同じ、…そのはずなのに、なんか違う気がする。
そんな風に梨華は感じていた。
でも実際、泥棒が入ったわけでも、ひとみがこっそり侵入したわけでもない。
久しぶりのものって、なんだか違う風に感じるんだよね。
例えば、たった一日だけど、学校を休んだ、その翌日とかね。
「ひとみちゃん。私の一番だよね?」
洗濯機の前でしょんぼりとする梨華。携帯は充電中。電話かけれるのに、かけれない。
ネガティブ梨華ちゃんの登場です。
すぐ電話すれば良いのに。「ただいま。」って。
時間が経てば経つほど、きっかけってのは消えてゆく。
ぐぅ〜〜〜、――。
梨華のお腹からでした。
「何か食べに行こう。」
(すっごい美味しいもの食べに行こう!)
そして、その「すっごい美味しいもの」を食べに行った梨華。
お腹すいてるのに1時間も待ったりしてさ…。
それなのに。
(美味しくない。)
一人で食べるとき、何かの感情を消すために食べるとき、…そういうときってなんだか、どんなものも美味しくない。
料理ってのは、素材や味がどんなに良くたって、食べる人の気持ちに左右されるもの。
すっかり、うなだれて、家へと向かう。
泣きっ面に蜂。
嫌なことって続くものです。
ふと、見上げた梨華の目線の先には、さっきの可愛い女の子と、ひとみが…。
仲良く買い物しています。
しかも、それはジュエリーショップ。
二人で仲良くショーウインドウの中を眺めてる。
試しに付けてみたりもして。
(ひとみちゃん、私一番じゃないの?)
あらららら、何してるんですか?
姫を泣かせちゃダメじゃないの。
神様に怒られちゃうよ。
- 37 名前:名無し君 投稿日:2004/02/01(日) 22:17
- 面白いです!これからもがんばってください。
- 38 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:38
- >>37 :名無し君
はい。がんばります。
こういう風に、言って頂けると、励みになります。
誰かが読んでくれてるんだなって、思うと。
それでは、今日の更新です。
- 39 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:39
- 家に帰って、掃除をする。あのときの、ひとみのように。
「もうっ、何なんだよ!」
あの梨華ちゃんが…暴れ出しました。梨華姫なのに…。
せっかく掃除したのに、見事な散らかし様。
と、梨華は、また、泣き始める…。
そんなとき電話が。
「もしもし?」
「…」
「梨華ちゃんだよね?」
「…」
「おーい。聞こえてる〜?」
「聞こえてないよ。ひとみちゃんの声。私の声も届いてない。」
「???」
「…」
「どうしたの?何かあったの?」
「ばか…」
プチ、――。
梨華は一方的に電話を切った。
ピンポーン、――。
(誰?)
覗き穴から覗いてみる。
(真っ暗…。こんなことするのは、一番会いたくない人。)
ピンポーン、――。
「ひとみちゃんなんでしょ?帰って。しばらく会いたくないの。」
「あの、お届け物なんですけど…。」
(えっ?)
ガチャ、――。
そこにいたのは、宅急便のお兄さん。
「あ、すみません。」
「ハンコ下さい。」
「あ、ちょっと待っててください。」
「ここですねー。」
(はいはい、ちょいとお待ちを。って、何これ?)
そこに書かれていたのは…。
”ずっと一番でいることを約束します。”
見上げた梨華の目線の先には、愛しかった、大好きだった、ひとみの瞳がありました。
「ハンコは?」
「押さない。」
「どうしたの?私のこと嫌いになった?私なにかしちゃった?」
深くかぶっていた帽子を脱いで、髪を整えるひとみ。
「何かあったの?」
「たいへんなことがあったの。」
「ん?」
「鈍感!浮気者!会いたくない!」
ドアを閉めようとする梨華だが、ひとみには敵わないわけで…。
「何で!」
「何でも何も、分かってるくせに!」
「分かんないよ、梨華ちゃんのこと分かんない!こんなもん!!」
契約書とともに、小さな箱を投げつけて、ひとみは去っていきました。
- 40 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:40
- その場に崩れる、梨華。
と、手に当たったのは、小さな箱。
その中身は、といいますと、――。
「何これ?」
それは、ひとみが選んだ、梨華のための、梨華だけのための、指輪だった。
『I can't help falling in love with you.』
と小さな小さな字で彫ってある。
ああゆうお店に慣れてないからと言って、友達に付き合ってもらってたのです。
「ひとみちゃん!!」
(梨華ちゃんに何があったんだろう。あっちでいい男見つけたのかな…。)
地上に見えた、ひとみの後姿。
怒りがにじみ出てたけど、ちょっと寂しそうだった。
「待って!!」
梨華の声は、届かない、――。
走る梨華。ごめんの一言だけど、やっぱり、直接言いたい。
このままだと、ほんとに、ホントの声が届いてくれない。
(後ろから何かが追いかけてくる…。ストーカー!?)
構える、ひとみ。
「誰だ!!」
そこには、息を切らした、梨華。
「何?」
怒った声、――。
「忘れ物だよ。」
やっぱり、素直になれない、梨華。
「あぁ、ごめん。」
乱暴に言って、乱暴に受け取る。
「違う!」
「はっ?」
指輪の箱を渡さない。
「違うよ…違うの…。(忘れ物は私だよ。)」
「なに。」
やっぱり、その声は、まだまだ、乱暴で、――。
「なんですぐ泣くの?」
「ひとみちゃんが悪いんだよ。」
「なんで?」
「…」
「なんで!」
「ひとみちゃんが、こんなにも好きだから。だから、だから…。」
「それで?」
やっと、優しくなった、その声は、ちょっといじわるに聞こえる。
- 41 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:41
- 「好きなんだもん。」
「誰が?」
「もー、分かってるくせにぃ!」
「分かんないよ〜、だ。」
こんな大事な場面なのに、――。
「私、好きな人が、出来ちゃった。」
「えっ?」
心配そうに、見上げる梨華。
「すんげぇ泣き虫で、すんげぇわからずやで、すんげぇバカで、すんげぇ甘えんぼで、すんげぇヤキモチやきで、…でも、好きにならずにはいられないんだよ。」
「誰のこと言ってるの?」
「梨華のことだよ。」
さらっと、初めて、呼び捨てされた。好きな人に呼び捨てされるのって、何か特別な感じがして嬉しいものだ。
- 42 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:42
- 「私も好きな人が出来た。」
「どんな人?」
「すごくバカな人。」
「誰!?」
「ひとみちゃんのことだよー、だっ。」
「なんで、バカなんだよー。足し算だって、掛け算だって、早くできるし、九九だってスラスラ言えるもん。どこがバカなんだよー。」
あの、ひとみねぇさん、その例はちょっと…。
「ウソだよ。私のこと、いつも見守っててくれてる、すごい優しい人。でもね、…。」
「何?」
心配そうな、ひとみ。
「やっぱちょっとバカだ。」
「なんだよー。もうっ。」
「だって、私がこんなにも夢中になってるのに、ずっと気づいてなかったし。乙女の気持ちが分からないのよ。鈍感。」
「それなら、梨華も大バカだ。」
「はっ?」
「だって、私がこんなにも夢中になってるのに、ずっと気づいてなかったじゃん。」
- 43 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:42
- 沈黙、――。
「「似たもの同士だね。」」
((はっ!!))
「「えっ?」」
((!!))
「「もうっ、真似しないでよ。」」
ステレオです。同じこと言ってます。
「「双子みたい」」
「双子なんだよ、きっと。」
ひとみが言う。
「はぁ?」
驚く梨華。
「心のね。だから、考えることも一緒でさ。行き違いが生じるのは、…そうだ。同じ物って、反発しあうだろ。磁石みたいにさ。一緒だから、ケンカになるんだよ。」
どこか、満足げなひとみ。
「何極?」
「えっ?」
「んじゃ、サウスなSで。」
「じゃあ、私はN。」
「同じじゃないの?」
「だって、くっついてたいもん。双子でも、こっそり、双子じゃない方がいい。うん。二卵生ってことにしよう。」
「なんだ、それ?」
「同じが良いけど、違うのがいい。まったく、乙女の気持ちが分からないのよ。」
変な法則を立てて、なぜかいつのまにか、仲良しこよし、な二人。
- 44 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:42
- 「ねぇ、梨華ちゃん。」
「なあに?」
「手。」
こっそり、梨華から箱をとって、指輪を手に握っていた、ひとみ。
その指輪を、梨華の一番大切は指へと返す。
「I can't help falling in love with you. …ずっと言いたかったんだ。その相手、やっと見つけた。」
「I can't help falling in love with you. …今度は間違えないもん。」
「「大好き。」」
『I can't help falling in love with you.』
それは、心の双子のための、愛の呪文。無敵の呪文。仲直りの呪文。大切な大切な心のこもった呪文。
- 45 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:43
- 「ところで、奥さん。」
「あら、どうなさったの?」
「どうなさったも、こうなさったも、ありません。ハンコもらわないと、会社に帰れないんです。」
「会社は、どこにありますの?」
「…それはですねぇ。申し上げにくいです。」
「私と仲良くしてからでも、間に合うのかしら?」
「えっ?」
「今夜、お泊りできる?」
顔が赤くなる、ひとみ。
「梨華ちゃん!?」
「何を慌ててますの?宅急便屋のお兄さん?」
「だって、誰かが聞いてるかもしんない。恥ずかしいよ。それに、まだ、早いと思う。」
「何いってんの?」
「だって、お泊りで、仲良くするんでしょ?それって、それって。」
「ま、とりあえず、私の家行こうよ。」
- 46 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:43
- 落ち着かないひとみに対して、落ち着いた様子の梨華。
年上だからかな?
「入っていいよ。」
「う、うん。おじゃましま〜〜…す?」
「どうしたの?」
「空き巣?」
「どこが?」
「この部屋が。」
その犯人は、…梨華姫です。
「お掃除、よろしくね〜。」
「なんで、私がやるの?」
「だって〜、原因は、ものすっごいかっこいい王子様だもん。」
「じゃあ、姫。ご褒美は?」
「考えとくー。(もう考えてるけど。)」
「へいへい、じぃやに任せなさい。」
「王子様は?」
「出張中。」
- 47 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:44
- -------------------------
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---
「ねぇ、どこのあたりが仲良くしてるの?」
ひとみがせっせと整理をする横で、梨華は椅子に座って、アイスとシャンペンのお守り。
「それに未成年でしょ?」
「家から出なければいいのよ。」
「じゃあ、私も。」
「ダメ!高校生でしょ。」
「あんま変わらないじゃーん。それに今はじぃやだし。」
「ダメって言ったらダメなの。」
ほっぺを少し膨らませて、また、整理を始める、ひとみ。
その、背中を見て、微笑む、梨華。
- 48 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:44
- 「ねぇ、じぃや。」
「なんじゃ、姫。」
ひとみが振り向いた。
その瞬間に、何かが当たったことに気づく、ひとみ。
その何かとは、まぎれもなく、愛しい愛しい梨華ちゃんなわけで、しかも、当たってるのは、唇なわけで。
ましてや、その口からは、例のシャンペンが流れてくるわけで…。
梨華の第一声は。
「ご褒美だよ。」
「…どっちが?」
「んじゃ、もっかいご褒美。」
今度はさっきより、ちょっぴり大人のキスで。
「ひとみちゃん、犬みたい。」
「なにそれ?」
「ご褒美待ってる犬みたい。」
- 49 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:45
- こうしてまた一組のカップルが、バカップルとして歩みだしました。
”バカップル”それは、心の双子を見つけられない人の僻みにしか聞こえない。
少なくとも、このカップルには、聞こえてすらいない。
「どうか、お幸せに、――。」
二人を見守る契約書が、そんな風に言ってるような気がした。
- 50 名前:haruri 投稿日:2004/02/02(月) 16:48
- fin.〜第2部〜
なんだか、よく分からない展開になってしまいました。
期待に応えられたのかなぁ。
まだまだ、修行が必要ですな。
頑張りますんで、よろしくです。
- 51 名前:わく 投稿日:2004/02/02(月) 20:49
- なんかシンプル萌えです( ^▽^)/\(^〜^0)
甘甘な展開を期待してます!!
- 52 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 16:49
- 51 :わくさん
どうもです。
今後は二人の甘々な日々を書いていこうかなと思ってます。
たまに事件勃発すると思いますが…。
お楽しみに!(^0^)/
- 53 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 17:35
- 〜第3部〜
季節は秋。暑くも寒くもない、そんな10月です。
日向で犬は気持ちよさそうにしてます。
そして、あの二人も秋のように暮らしてます。
燃え上がるほど、ラブラブなわけでもなく、冷え切ってるわけでもない。
いいかえれば、何もなくて、行き詰まった感じ?
『ひとみ犬』はご主人様の膝枕で気持ちよさそうにしてます。
『ひとみ犬』をなででいる、梨華の表情も、なかなか。
でも、――。
なんか、ぱっとしない。
「ねぇ、ひとみちゃん?」
「ク〜ン?」
「犬ごっこはもういいから、話があるの。」
「どうしたの?また、旅行?」
「あのね…」
不安になって座るひとみ。
- 54 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 17:36
- 「なんか、私たち、付き合ってるんだよね?」
「そうだよ。」
「私一番だよね?」
「うん。一番。」
「二番とかいるの?」
「いる。」
「!」
「梨華姫。あと、三番は梨華様で、四番はふてくされる梨華ちゃんで、あとねあとね…。」
「(照)。」
「私には、梨華ちゃんだけだよ。ずっと、一緒だからね。」
「ホント?」
「何かあったの?」
「いや、なんか、進歩ないなぁって。」
「うっそだー!」
「ウソじゃないよ!」
「えー?だって、梨華ちゃん膝枕してくれるようになったし、どこなでたら気持ちよくて寝ちゃうとか分かってるでしょ?あとは、手料理も食べさせてくれたし(味は別として)。それに、それにね…。」
一生懸命な、ひとみ。
- 55 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 17:36
- 「いいかも。」
「?」
「なんか、一生懸命なとこ。」
「だって、一番だもん。私が原因で、梨華ちゃんが悲しくなったり、辛くなったり、叫びたくなったり、…そういうのやだもん。あっ、でもやきもちは嬉しい。」
「大好きだよ。本当に。」
「私も。で、なにか現状に不満でも?まさか、梨華ちゃん…!」
「違うよ!そんなこと思ったことない!違うからね。私、そんなこと考えないもん!」
「何言ってるの?”そんなこと”ってどんなこと?まさか、ピーでピーなことなのかな?」
「違うもん!」
必死で否定する梨華。
「可愛いなぁ、ホントに。」
ひとみは梨華を抱きしめる。
「子ども扱いはやだもん。」
ひとみから離れる梨華。
「ひとみちゃんって帰国子女って言ってたよね?」
「あぁ、うん。」
「どこにいたの?」
「う〜ん、いろいろだな。結構転々としてたかもしてない。」
「どこが好き?」
「わかんないや。どうして?」
「ひとみちゃんのことなら、何だって知りたいんだよ。好きなものも、嫌いなものも。」
「そうなんだぁ。」
ひとみはそういうとこ、無頓着な感じだった。
梨華が好き。
ただそれだけだった。
- 56 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 17:36
- 「ねぇねぇ。」
「ん?」
「外国の人って、バイバイのときとか、挨拶代わりに、ギューってしたり、チュッてしたりするじゃない?」
「まぁねぇ。日本人はしないかも。」
「何回した?」
「はぁ?覚えてないよ、そんなの。なんで?」
「私は、その倍、ひとみちゃんとギュってしたいの。」
顔が緩むひとみ。
「可愛いなぁ、ホントに。」
- 57 名前:ゆでたまご 投稿日:2004/02/05(木) 18:38
- はじめまして。
今回の甘甘の感じが好きです。萌えます〜
これからも頑張ってください〜!
- 58 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 20:58
- >>57:ゆでたまごさん
はじめまして。
『始まりはラブホで!?』のゆでたまごさんですよね?
頑張りますね(^-^)
=修正=
55のひとみの台詞。
”結構転々としてたかもしてない”
ではなくて、
”結構転々としてたかもしれない”
でした。
- 59 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 21:53
- もう一回抱きしめる。
今度は抵抗しない。
となると、やっぱり、いじわるしたくなっちゃうわけで…。
「あれれ?今度は抵抗しないのかな?だっこだっこ♪」
といって、抱っこしてしまった。膝に乗せて、向き合って。
「バカ…」
梨華のほうが一枚上手。離れることはなかった。そして、ひとみはキスに弱い…。
「ひとみちゃん。」
ひとみが見上げる。抱っこすると、梨華のほうが少し高い。
「何?」
梨華姫の必殺技。『急にキスをしてしまえ』
「ん!」
驚いて、顔を離すひとみ。
「あれれ〜?照れちゃってるのかな?わぁ、可愛いひとみちゃん。」
ちょっとふてくされるひとみ。
「子ども扱いはやだもん。」
「じゃあ、して。」
いつもキスは梨華からだった。ひとみからは一度もない。
- 60 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 21:53
- 「な、何を?」
「キスだよ。」
「英語で言えたらしてあげる。I'll give you what you want.」
「んーと、I would like Hitomi-chan's kiss.」
「相変わらずだ。」
「だめ?」
と不安そうにひとみの顔を見る。
「どうだろうね。でも…。梨華ちゃんのこと、好きだよ。」
「どーなのどーなの?」
英語が言えても言えなくても、ひとみの心は決まっていた。ただ、少し時間が欲しかっただけ。
「梨華ちゃん…」
She gave her an affectionate kiss.
- 61 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 21:54
- 二人はとても恥ずかしそうに、見詰め合った。
「Thank you so much. I've been wanting it for ages. I love you. 」
「ふふっ。無理しなくても良いんだよ?私、日本語分かるんだから。」
「ちょっと使いたかっただけだよ。それに…。」
「ん?」
「ずっと、外国にいたから、英語の方がしっくりくるかなって。」
「そっか、ありがと。でもね、私は、ありのままの梨華ちゃんでいてほしい。私のためにっての嬉しいけど、ちょっと違うんだよ。」
ひとみは言葉を選ぶ。
苦手な英語を一生懸命話してくれた彼女を傷つけたりしないように。
「梨華ちゃんはずっと日本で生活してきた。だから、やっぱり、一番、んーと、日本語で話したほうが感情とか入れやすいと思うんだ。だからね、英語に直すと、少しだけでもニュアンスが変わっちゃうかもしれない。私は、梨華ちゃんの全部を受け止めたいんだよ。だからね、日本語で、梨華ちゃんの言葉で気持ちとか伝えて欲しいと思ってるの。何て言ったら良いんだろう…んーと、んーと。」
「ひとみちゃんの気持ち伝わったよ。ありがとう。」
- 62 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 21:55
- 「私は梨華ちゃんが好き。ただそれだけだよ。」
ひとみはおっきな愛で梨華を包み込む。
秋のような恋はいいものかもしれない。
燃え上がるほど、ラブラブなわけでもなく、冷え切ってるわけでもない。
変化を追い求めることは、必要なものなのか?
ずっと続く、果てしなく続く、終わりの見えない、そんな愛も有りだと思う。
永遠の愛、二人はそれを、見つけた、――。
- 63 名前:名無し君 投稿日:2004/02/05(木) 22:41
- おもしろいです〜。
- 64 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 23:15
- >>63 :名無し君 さん
読んでいただき、ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。
第4部、書き始めました。
- 65 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 23:16
- 〜第4部〜
季節は冬、クリスマスも間近。
でも、雪はまだ降ってない気がする。
そんな時期のあるカップルのお話。
「ねぇ、ひとみちゃん。」
「ん?」
「クリスマスどうする?」
でた、梨華ちゃん直球勝負です。
わざと、帰り際に聞いた。
その週間からの雰囲気が、もし、悪くなったら嫌だったから。
そして、ひとみから返ってきた言葉は…。
「どっか行きたいとこあるの?」
「ひとみちゃんは?」
「クリスマスは家族と過ごす予定なんだよね。毎年。」
「そうなんだ。」
キリスト教徒であるひとみと、仏教徒?である梨華の感覚はやはり違う。
少しがっかりする梨華。
「不満?」
「うーん。」
「でも、梨華ちゃんと同じくらい、家族も大事なんだよ。」
そう言うと、頬にキスをして帰っていった、梨華の恋人、ひとみ。
- 66 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 23:16
- 「私も、家族になったら、一緒に過ごせるのかなぁ?」と梨華は呟く。
浴室って、声が響く。
梨華の切ない叫びは、梨華の耳にだけ聞こえる。
そして、ひとみからもらった、指輪を眺める。
ちょっとした、文化の違いを感じたとき、ちょっとした、ケンカをしちゃったとき、そういうときに、この指輪を見れば、何だって解決だった。
今回も、ちょっとしたことだ。
なのに、いくら見ても、いくら見ても、わだかまりは消えない。
- 67 名前:haruri 投稿日:2004/02/05(木) 23:19
- "その週間からの雰囲気が"
ではなく、
"その瞬間からの雰囲気が"
です(>_<)
- 68 名前:名無し君 投稿日:2004/02/06(金) 15:34
- がんばってください。
- 69 名前:ロマンチスト エゴイスト 投稿日:2004/02/07(土) 06:34
- 英語できるの?
- 70 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:30
- >>68 :名無し君 さん
応援ありがとうございます。頑張ります。
>>69 :ロマンチスト エゴイスト さん
恥ずかしながら、どちらかといえば苦手です。
なので、あまり、英語の台詞もありません。
間違いなどがありましても、見逃していただきたいです。
ついでをいいますと、海外の友人もいたりします。
コミュニケーションは出来ますけど、正式な文法だとかはあまり分からないのです(>_<)
- 71 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:31
- 家族より、友達より、大切な存在でいたい、と思うのは、ちっとも不思議なことじゃない。
比べるものの種類が違うけど、やっぱり、一番でいたいのが乙女心。
そこで、ケンカになるのもよくある話。
あの日から、会ってない。
あれが原因というわけではない。
2,3日会わないのは、よくあること。
メールも毎日するし、電話だってする。
でも、やっぱり、前のように、ひとみに素直に接することが出来ない梨華。
ひとみはそれを察していた。
おやすみの電話が掛かってきた。
「もしもし。」
「うん。」
「もう家に帰ってる?」
「うん。」
「そりゃ、安心だ。」
「ん?」
「だって、梨華は可愛いから、変な人に捕まらないか心配なんだもん。」
「捕まってるよ。」
「マジ!?今、家じゃないの?助けに行く!ドコ???」
「ふふっ…ひとみちゃんだよ。」
「なんだよー。私は変な人なの?」
「全然。言ってみたかっただけ。」
- 72 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:32
- おやすみの前の少しの沈黙。
「じゃあ、ひとみちゃん。おやすみ。今日も大好きだからね。」
「うん。おやすみ。今日も明日も明後日も大好きだよ。」
「うん。」
電話を切る前の少しの沈黙。
「じゃ…」
「待って!」
「えっ?」
- 73 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:33
- -------
----
-
「なあに?」
「あのね、梨華ちゃん。気にしてるの?クリスマスのこと。」
「…」
「やっぱり。」
「だって、クリスマスは一緒にいたかった。どこに行くとかじゃなくて、ただ一緒にいたかったの。」
「こないだ、クリスマスは家族と過ごす予定って言ったよね?」
「うん。分かってる。家族は大切だもん。」
「今年から変わったの。」
「ん?」
「クリスマスは大切な人と過ごすことにした。」
それは、つまり、――。
喜ぶ梨華。
「梨華ちゃんクリスマス空いてる?」
「うん。」
「お泊りできる?」
「う、うん。」
「私の家に泊まりにこない?」
「えっ?」
「だから、クリスマスは大切な人と過ごすって言ったでしょ?家族のみんなに、私の大切な人を紹介したいんだよ。うん。」
「本気で?」
「本気だよ。」
- 74 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:33
- --クリスマス当日。
ということで、梨華は吉澤家に泊まることになりました。
家に行くのも、家族の皆さんに会うのも、初めてのことでした。
ひとみは、梨華を迎えに行く。
そして、家に到着。
入る。
「???」
梨華の部屋は、服でいっぱいだった。
「梨華ちゃん!?何やってんの?」
「だって、どんな服が良いのかわかんないんだもん。」
「まったく。」
「あー、呆れたでしょ。今。もうっ、こっちは真剣なんだからね!」
「いつもの服で良いじゃん。何着ても、変わんないよ。」
「はぁ!?ケンカ売ってんの?」
少し、ケンカムード。
- 75 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:34
- 「違うよ。どんな服でも、梨華は梨華。可愛いんだよ。」
「バカ…。」
恥ずかしいと、「バカ」って言ってしまう。
梨華を抱き寄せる、ひとみ。
梨華のおでこにキスをする。
「可愛いやつめ…」
「ひとみちゃん?」
「何?」
「服、選んで。」
「へいへい、お姫様。」
- 76 名前:haruri 投稿日:2004/02/07(土) 15:34
- ということで、吉澤家へと向かう二人。
ひとみの隣で、梨華は緊張している。
「普通にしてれば良いのに。」
「できないよっ!」
微笑む、ひとみ。
ついに到着。
固まる梨華。
こんなで、大丈夫なのかな?
- 77 名前:ゆでたまご 投稿日:2004/02/07(土) 19:27
- 更新お疲れ様です!
『始まりは〜』のゆでたまごです。
うわ〜!なんかこっちまでドキドキです・・・
私も固まりながら次回更新をお待ちします。
- 78 名前:ららら 投稿日:2004/02/08(日) 16:58
- おもしろいっすね〜
一気に読んじゃったぁぁ
私もドキドキしてます!!!
更新がんばってください
楽しみにしてます。
- 79 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:27
- >>77 :ゆでたまご さん
第4部を更新いたしました。
いかがでしたでしょう?
展開を頭の中でいくつか考えてたんですけど、これを選びました。
この先は、今夜、夢の中で、考えてみます。
第5部をお楽しみに。
>>78 :ららら さん
はじめまして。
一気にって、始めから、ですよね?お疲れさまデス。
続きを楽しみにしてくださり、嬉しい限りでございます。
この先の展開は、作者自身も、謎ではありますが、頑張ろうと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、第4部の続きをお楽しみくださいませ。
近日、第5部も書く予定です。
今夜の夢次第でもありますが…(^^;
- 80 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:28
- 「このお家?」
「そうだよ。」
深呼吸をする、梨華。
「さて、入りましょうか、姫?」
梨華の手をとり、微笑むひとみ。
「いいよ、一人で歩ける。」
「ホントに?」
「もうっ、子ども扱いしないでよ!」
これは、ひとみが梨華の緊張をほぐすためにとった方法だった。
ひとみは、本当に、梨華が大好きなのです。
梨華は、それに気づくはずもなく、まだ、少し緊張している。
- 81 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:30
- リビングには、クリスマスツリーの近くでひとみの両親が二人でくつろいでいた。
「Daddy,Mom. 帰ったよ。」
「「お帰り。」」
かっこいい、――。
梨華はそう、思った。すごく、雰囲気があった。
パパはかっこよくて、ママはすごくきれいな人。
タキシードとか、ドレスとか、そんな特別なものを着ているわけじゃない。
でも、様になっていた。物の中に居るんじゃなくて、周りのものが二人のためにある、という感じ。
着せられているんじゃなくて、着ている。そんな感じ?
そして、ひとみの顔立ちの良さにも納得だ。
「「ひぃちゃん!」」
と、そこに登場したのは、ひとみの妹?弟?
二人いる。推定5歳。おそらく双子。
二人してひとみに飛びつく。
二人をあやす、ひとみの顔は、『いい顔』だった。
- 82 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:30
- 食事が始まった。ひとみが話を切りだす。
「ところで…。今日は紹介したい人がいます。」
ひとみが梨華を見る。
「あ、あの。石川梨華です。ひとみ、さん、とは、良いお付き合いをさせていただいてます。それで、あの、…」
しどろもどろな梨華。
「ははははっ。」
ひとみパパが笑う。
そして、みんな笑う。ひとみママも、双子ちゃんも、ひとみも。
ひとり、笑わないのは、梨華。
「あなたのこと、よく、知ってるわ。ひとみったら、最近、あなたのことしか話さないんだもの。」
えっ、と言う感じで、梨華はひとみを見る。
「梨華ちゃん。好きだよ。一番好きだ。梨華ちゃんは私の家族だよ。」
ひとみの家族の前で、そんなこと言われた日には、もう恥ずかしくて恥ずかしくて。
顔を真っ赤にさせる梨華。
そして、食事が始まった。
梨華は、吉澤家が気に入ったみたいだ。
そして、吉澤家の人々も、また、梨華を家族として迎えた。
- 83 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:31
- 食事も終わったその夜。
「ねぇ、梨華ちゃん。ゲストルームと私の部屋、どっちがいい?」
「どっちって…。」
「私は、梨華ちゃんと、一緒にクリスマスを過ごしたいんだけどな〜。ダメ?」
「い、いいよ。」
「マジで?」
「うん。」
喜ぶひとみ。
梨華はドキドキしていた。
ひとみとは、一緒に寝たことはある。本当に一緒に寝ただけだけれど。
でも、今夜はもしかして、そんなことに、なっちゃうのだろうか?
- 84 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:32
- ひとみのベッドには、二人の女の子がいる。ひとみと梨華だ。
梨華はひとみに抱かれている。
そう、またもや本当に抱かれているだけ。
「ねぇ、梨華ちゃん。」
梨華が眠りに入りそうになったころ、ひとみが話し掛けた。
「ん?なあに?」
「好きだよ。」
ひとみを見上げる、梨華。
「どうしたの?」
「好きだよ。本当に。ずっと、一緒にいようね。そんでね、今度は、私の一番じゃなくてね…。」
「なに?」
「私だけの、ペットになって。」
「なにそれ。」
「冗談だよ。」
「もうっ。」
- 85 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:32
- 梨華をギュッと抱きしめて、ひとみが言う。
「一番大切な家族になってくれる?」
頭の上で聞こえた声はちょっと震えてる。
「じゃあね…」
腕の力を緩めて、梨華の顔を見る。
「ひとみちゃんは、私の一番大切な家族になってくれるの?」
「うん。」
「大好きだよ、ひとみちゃんのこと。だから一番近くで、見てたい。」
「それって…?」
「私、ひとみちゃんの一番大切な人になりたいと思ってるよ。」
恥ずかしいから、ひとみに、しがみついて、言う。
- 86 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 00:33
- 「どこにも、行かないでね。」
やっぱり、頭の上で聞こえた声はちょっと震えてる。
ひとみがたまに見せる、弱いところ。
梨華はずっと気になっていた。
「ねぇ、ひとみちゃん。」
「なに?」
近くで、ひとみの瞳を見て、その理由を聞けなくなってしまった、梨華。
「ううん、なんでもない。」
二人は、キスをする。
そして、夢の中へ。
夢の中でも、さぞかし仲良くしていることでしょう。
こうして、クリスマスの夜は更けてゆきました、――。
- 87 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:46
- 〜第5部〜
クリスマスも、正月も、終わっても、やっぱり、まだまだ、寒い、そのくらいの時期のお話。
あの日の帰り際、ひとみママの言った言葉。
「あの子は弱いところもあるけど、あなたのことを本当に愛している。よろしくね。」
『ヨワイトコロ』、――。
デート中、ナンパでもしてこようものなら、本場の英語をしゃべりながら、相手に突っかかっていく。
気に入らないことがあると、物に当たる。人には手を出さない。
バカにされるのが嫌い。するのも嫌い。
「どーせ」が嫌い。あきらめたくない。負けず嫌い。
そんな、強くて、頑固な子なのに、
音楽を聴いてるとき。
梨華と甘い時間を過ごしているとき。
そんなときのやさしい顔。すごく満足そうな顔。
でも、
たまにすごく甘えんぼになる。
おっきな目をとても潤わせて。チワワみたいに。
そして、すごく、
弱くなる。
痩せ細った仔猫みたいに。
- 88 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:46
- ------------
-----
-
「今日も可愛いね。」
今日のひとみは、優しくて強いひとみ。
梨華は抱きつく。
「どうしたの?」
「私、ずっと、ずーっと、側にいるからね。」
ひとみの表情は、とても優しい。そして、優しく抱きしめる。
「ありがと。」
最近、こうやって、抱き合うことが多くなった二人。
ひとみと知り合って、半年くらい経って、ひとみの違う部分が、徐々に見え隠れするようになった。
ひとみの過去に何が?
梨華はそれがずっと気になっていた。
何度も何度も聞こうと思った。
でも、いざ、ひとみを前にすると、聞けない。
メールや電話で聞く手もある。
けれど、直接、聞いたほうが良い気がするから、それはしない。
- 89 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:46
- 「教えて。」
「えっ?」
「何かあったの?私と出会う前。ずっと前。ひとみちゃんに何かあったの?」
ひとみの優しい顔は、急に曇った。そして、俯く。
瞳は徐々に涙でいっぱいになる。
涙が落ちる。
「ごめん、変なこと聞いて。言いたくないならいいから。言えるようになったら、教えて。」
会話が途切れる。
でも、時計の針の音、車の音、電車の音、冷蔵庫の音。そして、ひとみの嗚咽。
いろんな音が聞こえる。
- 90 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:47
- 「話すよ。」
それから、ちょっと、経って、ひとみが話し始めた。
「昔。うん、10歳くらいのとき。好きな人がいたんだよ。」
「女の子?」
「うん。すごく、可愛い子でさ。」
また、途切れる。
「ホントに可愛い子だった。」
「付き合ってたの?」
「まさか。片想いだったよ。まだ、子供だ。」
「クラスメートか何か?」
「いや。公園で出会った子。その子、ベンチに座って、遊んでる子達のことよく見てた。」
「一緒に遊んだりは?」
またもや、途切れる。
- 91 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:47
- 「遊べなかったんだよ。その子。身体が弱くてね。」
「話とかもしたことないの?」
「それはあるよ。たくさんある。その子の笑顔が見たくて、いろんな話、たくさんした。今考えれば、結構一方的だったかも。」
(ひとみちゃんはやっぱり優しい子なんだ。)
「ある日ね、その子がしばらく来なくてさ。その代わり、その子のお父さんが来ててね。」
「まさか…。」
「あ、まだ、死んでないからね。」
「よかった。」
「んで、黙って、その例の子がいるところに連れて行ってくれたんだよ。うん。病院に。」
(ひとみちゃんに会いたかったんだね。)
「私の名前ずっと呼ぶんだってさ。その子はたくさんのチューブを身体につけて、生きてた。」
「うん。」
「それから、毎日のようにお見舞いに行ったよ。学校帰りとかね。別に、話とかするんじゃないんだよ。私の名前呼んだら手を握ってあげるって感じでさ。」
(優しいなぁ。)
「でさ、しばらく、通い続けてて、いつものように、手握ってたら、目、開けたんだよ。すごい、優しい目だった。で、かすれた声で言ったんだ。」
(うん。)
「大好き。ありがとうって。涙浮かべて言ったんだ。そんでさ、次の日行ったら…もう、居なかったよ。」
梨華は後半から、ただ頷くことしか出来なかった。
でも、それがひとみにとってはありがたかった。
- 92 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:48
- 「両想いにだったこと、分かって、なのにさ…。すぐにその子は、もう会えない遠いトコロに行っちゃったんだ。だから、そのあとから、好きになることが怖くなって。好きになったら、その相手が消えちゃうんじゃないかって。」
泣くひとみを、梨華が抱きしめる。
「私はずっと、ずっと、ずーっと、側に居る。ひとみちゃんから離れないよ。」
「ホントに?」
「ホントにホント。」
「たまに怖くなるんだよ。こんなに一緒に居れることが。ある日突然、梨華ちゃんが消えちゃうんじゃないかって、不安になる。」
ひとみが弱くなる原因は、これだった。
たまに思い出す、女の子。
そして、いつでも側に居てくれる、梨華。
こんなに幸せになっちゃっていいんだろうか?
この幸せが突然終わっちゃうんじゃないか。
それが怖かったのだ。
- 93 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:48
- ひとみが落ち着いて、しばらく経ったとき、梨華が話を始めた。
「でも、ちょっと妬いちゃうな。」
「えっ?」
「だって、私はひとみちゃんの初恋相手じゃなかったみたいだから。」
「えっ、でもさ、でもさ。キスの相手も初めてだしさ、デートも初めてだし、手料理作ってくれたのも、抱きついてくれたのも、あとね、あとね、んーと。梨華ちゃんが一番のものいっぱいあるんだよ。」
必死な、ひとみ。もう、いつもの優しいひとみに戻ってくれた。
でも、一つ、気になることが残っている。
「今でも、好き?その子のこと。」
「うん。好き。大好きだよ。嫌いになんて、なれないもん。」
「そう言ってくれてよかった。」
「何か、意外だね。拗ねるかと思った。」
「ふんだっ!」
梨華はその答えが嬉しかった。
その子を好きでいてくれる、そんな、ひとみが好きだから。
- 94 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:48
- 抱き合う二人。
「好きだよ。梨華ちゃんが好き。」
「私も。ひとみちゃんが大好き。」
梨華はひとみを知れて嬉しかった。
そして、ひとみは自分の過去を話して少し楽になっていた。
自分の中にずっとしまいこんでいたものを一番大切な人に話すことが出来て、楽になれた。
そして、その一番大切な人は、それを優しく受け止めてくれた。
- 95 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:48
- 強い人ほど、脆い。
強い人ほど、弱い部分が、本当に弱い。
そこを隠すために、強くなる。
そんな気がします。
そして、弱い人間ほど、意外なところで強かったりする。
そんな気もします。
どんなに強い人でも、何かの支えが必要な気がする。
人は一人じゃ生きてゆけない。
そんな、生物だと感じます。
この二人は、ホントに、支えあってる。
幸せになるでしょう。
きっと、ずっと、――。
- 96 名前:haruri 投稿日:2004/02/09(月) 22:53
- haruriより。
第5部いかがでした?
少し、暗めの話になっちまいましたかな?
でも、二人は相変わらず愛し合っているわけで。
温かく見守ってやってください。
そして、しばらく、このまま話が止まると思いますんで、よろしくお願いします。
エンドレスな二人の愛の話を思いつきましたら、また更新いたします。
では、また!
- 97 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:43
- バレンタインということで、書いてみました。
もう、過ぎてしまいましたが…。
ホントに、ただ甘いだけです。
- 98 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:43
- 〜第6部〜
今日は、バレンタインなのに、梨華ちゃんからメールの一つも来ない…。
街中そんなムードに溢れてたのになぁ。
クリスマスは一緒がいいって言ってたのに、バレンタインはどうでもいいのかなぁ…。
吉澤ひとみ、そろそろ高校卒業な、女の子。
乙女の気持ちが分からんのです。
それとも、梨華ちゃん貰うの期待してるのかな?
日本じゃ男から渡すのはあんまってか、ほとんどないみたいだけど。
って、私、女の子だった。
でも、私は梨華ちゃんの何なんだ?
とりあえず、彼女ではないよな。かといって彼氏というのにも抵抗を感じる。
…うん、一番だな。梨華ちゃんの一番だ。うん、そゆことにしとこう。
彼氏とか彼女とか友達とかじゃなくって、パートナーだな。うん。
そゆことなら、いっちょ、頑張りますか!
買い物♪買い物♪
- 99 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:44
- いろいろ考えた末、愛する梨華へのプレゼントを求め、出かけることにした、ひとみ。
百貨店の地下から見ていくことにした。
そして、最後に気に入ったものを下りながら、ゲットしていく作戦。
うげー、チョコばっかりで気持ち悪いよ〜。
地下はチョコレートと、それに群がる女の人とでごった返していた。
その中に、半笑いの、女の子が一人。
こんなとこで、梨華ちゃんにばったり、鉢合わせちゃったりしてね。
んで、勘違いして怒られちゃったりなんかもしてさ。
そしたら、甘い言葉を囁いて、なだめたりなんだりで…。
梨華ちゃんって日本一、いや世界一、いやいや宇宙一だな〜。
ほんと、困ったときの、不安そうな目とか、たまんない。
はぁ、今すぐ会いたい!!
彼女、マジメにプレゼント探そうとしてるんでしょうかねぇ…。
- 100 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:44
- あっ、これ美味しそう。
と、隣に可愛い女の子発見!同じチョコ見てたみたいです。
顔が見たい!
君、最愛の梨華ちゃんにプレゼント探しに来たんじゃないのかい!浮気者め!!
「「あっ。」」
なんと、その相手は、愛しい、梨華ちゃんなのでした。
ほんと、出来すぎた話にも程があるってもんで…。
- 101 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:44
- 「何してるの、こんなとこで。」
「ひとみちゃんこそ。」
「えっと、あの〜。日本の文化を肌で感じ取りに…?」
「あっそ。」
「もう、冷たいよ…。」
ひとみの腕をひっぱって端の方へと連れて行く。
ひとみは、勘違い。
「梨華ちゃん、そんな。へへへ。」
「何照れてるの?あんなとこで、立ち話してたら邪魔かなって思っただけだよ。」
(がっかり…。)
「で、こんなとこで、何してるの?」
「んとねぇー、買い物に来たんだよ。プレゼント。へへっ。」
「誰の?」
「ひみちゅー。」
梨華に会えて嬉しいひとみはデレデレしまくりです。
- 102 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:44
- 「何か変なもの食べた?」
「なんで?」
「だって、いつものひとみちゃんじゃないもん。」
「気のせいだよ。気のせい。」
ちょっと沈黙。
「運命だ。」
「?」
「梨華ちゃんに会いたいって思ってたら、ホントに会えちゃった。」
「…」
「梨華ちゃんは嬉しくない?」
「…」
「ねぇー。」
「嬉しいよー、だっ。ちょっと、からかっただけ。ひとみちゃんの困った顔おもしろすぎるんだもん。」
「お仕置きしなくちゃ。」
梨華を抱き寄せる。
- 103 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:45
- 「だめだよ。こんなところで…恥ずかしい。」
「お仕置きだもん。」
「…」
「嬉しいくせに。」
「だったら、お仕置きになんないよ?」
「いーの。」
しばし、二人の世界へと、旅立った二人なのでした。
そして、二人でお店めぐりを始める。
- 104 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:45
- 「可愛いね。」
「?」
「梨華ちゃんは今日も可愛いや。」
「…可愛いよ。」
「自画自賛ですか?」
「違うよ、ひとみちゃんのこと。」
「あんまり、言われたことないかも。」
「お得だね。かっこよくて、可愛くて。心配になっちゃう。」
「どうして?」
「そんなの、もてないわけがないじゃん。」
「そうでもないよ。告白とかあんまされないもん。」
「ウソ!?なんで???」
「学校じゃ、あんましゃべらないし。お得なのは、梨華ちゃんだよ。」
「どうして?」
「だって、かっこよくて、可愛い、吉澤ひとみを一人占めできるでしょ?」
恥ずかしくて、ひとみを叩く。
ホントに、仲良しな、カップルです。
- 105 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:45
- 「よしっ、決めた!」
「何を?」
「私のお家行こう!」
「何を急に。」
「ひとみちゃんのチョコレート手作りにする。」
「やった。」
手をつないで、梨華のアパートへと向かう。
相変わらずです。
- 106 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:48
- 「また、泥棒さんが来たの?」
「ばか。違うよ。」
ひとみは、ベッドにねっころがってコロコロしてます。
一人、犬ごっこ…。
暇だ!!
「手伝おうか?」
梨華を後ろから抱く。
ふぁ〜、梨華ちゃんってホント華奢だなぁ。
本気で抱きしめたら折れちゃいそう。
「いいの、一人で作る。じゃないと、意味ないもん。」
「意味?」
「いいから!」
「ヤダ。離れないよ。」
梨華が歩くと、ひとみも歩く。
ひっつき回ってます。
「歩きにくいよ。」
「いいじゃん。」
- 107 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:48
- 梨華ちゃん抱いてると安心するなぁ。
ん?なんか、うずうずする!!
どうしよう!
「作り方、その1。」
「?」
「後ろから抱く。」
「はぁ?」
「作り方、その2。「大好き」って耳元で言う。…大好きだよ、梨華ちゃん。」
「?」
「作り方、その3。抱っこする。…っしょ、と。」
「きゃっ。」
「作り方、その4。ベッドへ運ぶ。」
「???」
梨華をお姫様だっこで、ベッドへと連れて行く、ひとみ。
- 108 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:48
- 「作り方、その5。確認をとる。」
「何、作ってるの?」
「石川梨華さん!」
「なに、急に改まって。私、テンパリングの途中なんだけど。」
「なにそれ。」
「ツヤのあるチョコレートを作るための重要な作業なのっ!」
「…ツヤなんてなくてもいいから。」
「???」
「あの、石川梨華さん。」
「はい。」
「私、吉澤ひとみは、あなたのことが大好きなんです。」
「うん。」
「それで、えっと、あなたをもっと知りたい。」
「えっ?」
「いい?」
「…」
「だめ?」
「何のこと?」
「その、つまり、えっと、…へへへ。」
「大事なとこなのに…。」
「だって…恥ずかしいじゃないの。」
「何を今更…。」
「(照)。」
「吉澤ひとみさん。」
「は、はいっ!」
「私をもらってくれますか?」
「…もちろん!」
- 109 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:49
- 「作り方、その6。」
「もう、やめてよ、それ。雰囲気崩れちゃう。」
「そゆことなら…。」
梨華を押し倒す、ひとみ。
「いいんだよね?」
「うん。」
「英語だと"make love"って言うんだよ。」
「上手いこと考えたね。」
「私もそう思う。」
二人の記念すべき初めての日は、チョコレートの匂いが立ち込める部屋ででした。
- 110 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:49
- やっちゃった。ついに、梨華ちゃん襲っちゃった。
いやいや、やっぱり、こんなときも梨華ちゃんってイイ!!
寝顔もいつもより色っぽいし。
チューしちゃえ!
「ん…。」
「あ、起きちゃった?」
ちょっと恥ずかしくなって、ひとみにしがみつく。
「気持ちいいよね。」
「!?」
「あっ、勘違いしないでね。なんてか、肌と肌が触れ合ってる感じ。気持ちよくない?」
「?」
「何も着ないで、こうやって、抱き合ってるの、好きなの。」
「…」
「どうしたの黙っちゃって。」
「いや、こんな風にしたことあるんだって。」
「ないよ。」
「でも、今、好きだって。」
「うん、言った。そだなー、裸で毛布に包まってる感じとか。なんか、気持ちよくない?」
「したことないもん。ひとみちゃん、よくハダ…何も着ないで寝るの?」
「たまにね。下着だけでとか。」
「じゃあ、今度してみよっかな〜。」
「その時は、呼んでね。私が毛布になるから。」
「もうっ。」
「こゆこと、梨華ちゃんとしかする気になんないよ。」
「うん。」
- 111 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:49
- 「あのさ。」
「何?」
「あの〜、その〜、今まで、何回した?それ以上、梨華ちゃんを抱きたいの。」
いつか聞いたことあるような台詞。前は梨華からだった。
「数え切れないくらい…。」
「マジで…。」
「ショック?」
「うん。」
「ウソだよ。したことなんて、一回もないよ。」
「じゃあ、一番?」
「うん。」
梨華を抱きしめる。
- 112 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:50
- 「苦しいよ…。」
「ごめん。でもなんか、嬉しくてさ。私、梨華ちゃんの側にずっといるからね。」
「ホントに?」
「ホントにホント。最近、よく思うの。」
「何を?」
「私、ホントに梨華ちゃんが大好きなんだなーって。見るもの、すべて、梨華ちゃんに繋げちゃうし。服だったら、着てるとこ想像したり。あとは、梨華ちゃんが他の男といるとこ想像するだけで、たまんなくなる。」
「私も、ひとみちゃんのこと大好き。責任とってね。」
「?」
「こんなに好きにさせるなんて、犯罪だよ。」
「へへへー。」
「おじさんみたいよ。」
「なにをー!」
この夜、仲良しカップルのじゃれあう声が耐えることはありませんでした…。
でも、ご近所さんのこと、少しは考えようね。
- 113 名前:haruri 投稿日:2004/02/17(火) 15:53
- 第6部、終わり。
ホント、甘いだけです…。
- 114 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 11:57
- 甘甘いしよしサイコー
♪次の更新楽しみだー( ○^〜^)人(^▽^ )
- 115 名前:コナン 投稿日:2004/02/29(日) 16:40
- 素敵な、いしよし見ぃ〜つけた!
面白いぞぉぉぉぉぉ!!
更新楽しみだぁぁぁぁぁぁ〜お待ちかね〜してます。
まちかねたんほいざ〜
- 116 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:33
- >>114 :名無飼育さん
あま〜い、いしよしは永遠です。
>>115 :コナン さん
お待ちかねいたしました〜。
みなさま、これからも、よろしくです。
さて、久々の更新です。
どぞ。
- 117 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:34
- 第7部〜新生活〜
春一番も、春二番も過ぎた、そのくらいの時期の話。
風はそんなに冷たくなくて、日向は心地よい。
秋とはまた違った感じで、気分が良い。
あの二人は、梨華の家でじゃれています。
- 118 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:35
- ツンツン。
ひとみのほっぺを突く梨華。
「なぁに?」
「えへ〜。」
最近、梨華はひとみのほっぺを触るのが好き。
突いたり、むにむにひっぱったり。
されるがままの、ひとみなのでした。
むにむに。
「どした〜?」
「えへ〜。」
さっきからこの繰り返し。
- 119 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:36
- 「あのね。」
「ん?」
「ひとみちゃん4月から何するの?」
「知りたい?」
「うん。」
「おいで。」
梨華を手招きして、膝に座らせる。
「?」
「4月からは、梨華ちゃんをストーカーします。」
「は?」
「だからー。梨華ちゃんの側にずっといようと思ってるよ。」
「でも…。大学とか、短大とか、専門とか行かないの?あ、就職?」
「あぁ、そーゆーことね。店長の手伝いさせてもらうよ。」
「CD屋さん?」
「うん。」
「一人暮らしとかするの?」
「その予定なんだけど、まだ、場所が決まってなくてさ。」
「ふ〜ん。」
会話が止まった。
- 120 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:36
- ツンツン。
「どした?」
「あのね。」
「うん。」
「その〜。」
「ん〜?」
梨華を抱き直す。
「私のペットになる?」
「?」
ひとみは笑顔でハテナマーク。
「だからね、あのね、ここに住む?」
「本気で?」
「本気で。…イヤ?」
「イヤじゃないけど、体力が持つかなぁ。」
「?」
「だって、梨華ちゃん見てるとさ…我慢できないじゃん。」
ひとみの言ってることが分かって、とたんに顔を赤くする梨華。
「バカッ!」
梨華にペシペシ叩かれながらも、顔は緩みっぱなしのひとみ。
「冗談冗談〜。」
「もうっ。」
ひとみにしがみつく。
「じゃあ、ここに住もうかな〜?」
「ホント!?」
「でも。」
「でも?」
「ペットは嫌。なんかヒモみたいじゃん。」
- 121 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:36
- --------------
---
-
- 122 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:37
- 前のところじゃ二人で住むにはやっぱり狭いし、自分の部屋も欲しいってことで、一部屋多い所に住むことになったのです。
「そこ右だよ。」
「ん。」
「まっすぐ。」
「ん。」
「そこ左。」
「そろそろ?」
「うん。あっ、ここだよ。」
「ほ〜い。」
今日は知り合いの車を借りて、引越し。運転手は夏休みに免許取った、ひとみ。運転は久しぶり。
前のところじゃ二人で住むにはやっぱり狭いし、自分の部屋も欲しいってことで、一部屋多い所に住むことになったのです。
「おっ、届いてるじゃん。あたしも頼めばよかったな〜。」
そこには箱などがいくつかあった。
梨華の分は量も多いし冷蔵庫とか洗濯機とか物も物だからってことで、業者に頼んであった。
- 123 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:37
- 「梨華ちゃんは自分のことやっててね。」
「やだ、手伝う。」
「いいよ。重いのあったら、呼ぶからさ。」
「う〜ん、分かった。」
しぶしぶあきらめた梨華。
梨華はひとみの側にいたかった。
ひとみも梨華の側にいたかった。
いつも一緒が良いから。
でも、一緒に居ると、捗らないのは目に見えていて、ひとみはそう言ったのだった。
- 124 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:37
- あれから、一往復して、ひとみの荷物はすべて運び終えた。
車を返しに行っていたひとみが帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいま〜。終わ…ってないね?」
「まだ半分残ってる。」
「手伝うよ。」
「ありがと。」
「にしても、梨華ちゃんいっぱい持ってきたんだね。あの部屋にこれだけ物があったとは…。」
「片付けるの得意だから。」
「あたしがね。」
「もうっ。」
ひとみの肩を叩く梨華。
「イッテー。あっ、これはアルバムかな?」
「だーめっ!」
アルバムを取り返す梨華。
そんなことされると、さらに見たくなる。
梨華からアルバムを取り返し、見始める。
「可愛いじゃん。ほら、おいで〜。」
梨華を後ろから抱っこして、一緒に見始める。
- 125 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:38
- アルバムの中の梨華が成長するにつれ、だんだんひとみのテンションが下がる。
「悔しい。」
「へっ?」
「ここに写ってる人たちはあたしが知らない梨華ちゃんをきっと知ってるだろうから。」
「そんなことか。」
「そんなことか、って…。」
「だって、ひとみちゃんはここに写ってる人たちが知らない私を知ってるじゃない?」
「?」
振り返って、ひとみの耳元で言う。
「初めての相手はひとみちゃんだよ。」
その言葉に、ひとみの熱は一気に上がる。
冬が終わったばかりで、さらに白い肌は、顔も耳も首も赤くなる。
自分から言うときは平気なのに、人から言われたときは、すごく弱い。
「あっ、ひとみちゃん真っ赤になってるぅ〜。」
「なってないっ!」
「なってるっ!」
「なってないっ!」
「なってるっ!」
「もうしらない!」
- 126 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:38
- 引越し初日からケンカ勃発。
照れ屋なひとみ、財布とケイタイ片手に出て行ってしまいました…。
梨華は意味がわからなくて、まだ、片付けの終わってない部屋の真ん中で、思考能力ストップ。
ケンカするほど仲が良いとは言うけれど、
新しく始まったこの生活、
いったい、どうなることやら…。
- 127 名前:haruri 投稿日:2004/03/10(水) 11:40
- 今日はこれにて。
ちょこちょこ書いて、また更新します。
では。
- 128 名前:レオナ 投稿日:2004/03/10(水) 16:35
- 更新お疲れ様です。
次回の更新楽しみにしてます。
二人の幸せを期待しつつ・・・。
- 129 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:16
- >>128 :レオナ さん
二人はずっと幸せな予定。
さて、調子良いので、更新です。
どぞ。
- 130 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:16
- ---------------
------
-
- 131 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:17
- (あー、どうしたもんだ。勢い余って飛び出しちゃったけど。いやー、どうしたもんだ。)
行く先があるわけでもなく、とぼとぼと歩くこと30分。
(はぁ、どうしたもんだ…。)
で、行き着いた先は、小高い丘にあった小さな公園。
夕日が眩しい。
(あたし、梨華ちゃん大好きなんだろうな〜。すごいハマってる気がする。)
公園には誰も居ない。
あるのは、ブランコと滑り台と変なくるくる回るヤツ。
風が木々をほんの少し揺らす。
ひとみはハッとして振り返った。
ひとみの初恋?の女の子の怒った顔が一瞬見えた気がした。
目をこすって、パチクリして、また、見てみる。
いない、――。
- 132 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:17
- (気のせいか。)
またぼんやりと夕暮れの住宅街を見渡す。
(このどっかに梨華ちゃんがいるんだよな。あの辺だったかな?)
さっきより、心なしか冷たい風がひとみの髪を揺らす。
『ヨッスィー?』
(あの子の声だ!)
でも、やっぱり、どこにも居ない。
外国ではどこの国でもそう呼ばれていた。
(懐かしいな。)
- 133 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:17
- あの子と会うことも、話をすることも、出来るわけがない。
もう、この世には、居ないのだから、――。
(ん?)
何かに気づいた、ひとみ。
(今日、誕生日だ。。クッキー作ったのに、転げて粉々にしちゃったんだよね。でも、美味しいって天使みたいな笑顔で言ってくれたんだ。あの日は、白いワンピースで、ホントに天使みたいだった。)
そんな風に、あの子のことばかり考えてたら、すっかり日は沈んでいて、肌寒くなってきた。
ついでに、風に揺られる葉の音が、少々怖い。
(梨華ちゃん!)
急に怖くなった、ひとみは走って石の階段を下りる。
また、ハッとして振り返った。
そこには、笑顔のあの子が、やっぱり一瞬だけ、見えた気がした。
走れば、家まで10分、のはず…。
- 134 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:18
-
その頃、ひとみの恋人、梨華は、――。
二人の家で…。
?????
風船?!
酸欠になるんじゃないかって勢いで、風船を膨らましまくってます。
大暴れ梨華姫は、卒業したのかな?
(ひとみちゃんはもうすぐ汗だくで帰ってくる気がする。)
それまで部屋の真ん中で固まっていた梨華は、急に行動を開始し、少し季節外れだけど、ひとみお気に入りのワンピースを着て、髪をアップにして、香水を吹き付けて、風船を膨らまし始めたのだ。
- 135 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:18
-
愛の力は恐ろしいものだ。
玄関前に急遽設置された風船膨らましマシーンからは、次々と色とりどりの風船が。
あれから、10分経ったけれども、ひとみが帰ってくる様子はない。
見る見るうちに風船は増えていく。
(おっかしいな〜?こっちか?)
住宅街を走り回る18歳。迷ってるみたいです。
そして、30分後。
カンカンカン、――。
(帰ってきた!)
満面の笑みで立ち上がってドアを見る。
(?)
隣の部屋からドアが開いて閉まる音が聞こえてきた。
足音はひとみではなかった。
- 136 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:19
-
梨華はため息一つ。
その場に座り込む。
と、その瞬間、ドアが開いた。
「梨華ちゃん?何かあったの?」
予想通りの汗だくの彼女の登場に、梨華は立ち上がった。
風船も一緒に舞い上がる。
「わぁ、すっげー!どうしたのこの風船!こーゆーのどっかの遊園地にあった気がする!」
感動するひとみに、梨華が抱きつく。
「ふゎっ」
空気が抜けるような声が、ひとみの口から漏れる。
しがみつく梨華を、ひとみは抱きしめる。
「ごめんね。ごめん。」
- 137 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:21
- ひとみの腕の中で、梨華がもがく。
「?」
「ひとみちゃんの抱き方はちょっとキツイよぉ。」
「あぁ、ごめんごめん。」
「でも、嬉しい。」
しばらく見つめ合って、あま〜い空気が流れ出す。
ひとみが靴を脱いで中へと入る。
「ありゃりゃ。変化無しだね。」
「ひとみちゃんが悪いんだよ。」
「ごめん、って。」
- 138 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:22
-
「梨華ちゃん。」
「ん?」
「可愛いね。そのカッコ。抱きしめたくなる。」
「じゃ、抱きしめて。」
「うん。」
「それに、いい匂いがする。梨華ちゃんの匂いだ。」
梨華の首に顔をうずめる。
そして、触れるくらいのキスをする。
「くすぐったいよ〜。」
「へへ。」
- 139 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:22
- 再度、梨華を抱きしめる。
「離さないからね。」
「うん。」
「ずっと。」
「約束する?」
「しない。」
「どして?」
「だって、絶対に破らない自信があるから。」
「絶対の絶対?」
「絶対の絶対。」
「離れないからね。」
「うん。」
- 140 名前:haruri 投稿日:2004/03/11(木) 16:22
- 「「ックシュ」」
二人同時にくしゃみ。
「こんなカッコしてるからだよ。」
「そっちこそ、汗ちゃんと拭かないからだよ。」
「「お風呂はいろっか?」」
二人の夜はまだまだつづく、――。
- 141 名前:コナン 投稿日:2004/03/12(金) 14:44
- 待ってました!更新お疲れさまです。
甘ぁ〜い♪(*/∇\*)キャ♪いしよし大好き
もっと甘々でもいいかも!!
可愛い二人には、もうメロメロです。
- 142 名前:プリン 投稿日:2004/03/14(日) 18:35
- 甘々だぁ〜w
トロけそうです・・・
更新待ってますね!
頑張ってください!
>コナンさん
おぉ!投稿時間が見事『いしよし』だぁ!!
ついてますねぇ〜w
自分も今度狙ってみようかなぁ〜(ぇ
- 143 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:56
- 第8部〜お礼〜
ベッドの中には女の子が二人。
ぴったりひっついて、すやすやすや。
と、片方が目を覚ます。
目の前の女の子の寝顔見て、にやにやにや。
「かぁ〜い〜」
ほっぺたとか鼻の頭とか触ってみる。
「むにゃむにゃ」
「(起きちゃったかな?)」
「ひとみちゃん…」
「(起こしちゃったかなぁ?)」
「スースー」
「(寝言だ!寝言で呼ばれた!やったー、梨華ちゃんの夢にレギュラー出演決定だぁ!)」
「んっ」
「?」
「ダメだよぉ」
「??」
「恥ずかしい」
「???」
「だぁめぇ〜」
「!?」
- 144 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:56
- 「…」
「(あっ、寝言終わっちゃった。まさか、梨華ちゃんエッチな夢を!しかも、あたし襲っちゃってるのか!?)」
「(どうしよう…眠れないよ…)」
- 145 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:56
- ----翌朝
「(可愛い。てゆーか、綺麗。絶対に私より美人だよね。可愛い服着せてみたいな〜。)」
「スースー」
ひとみの寝顔ならいくら見てても見飽きない、といった感じでしばらく、ひとみを観察する梨華。
「(う〜ん、のど渇いたなぁ。水飲みたい…。)」
ひとみに軽くキスをして、ベッドから出て行く梨華。
冷蔵庫の中のミネラルウォーターでのどを潤す。
- 146 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:57
- ベッドでは、梨華を求めて彷徨う腕が…。
ガサゴソ。
「??」
ガサゴソガサゴソ。
「???」
目を開ける。
「(いない!)」
- 147 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:57
- キッチンに行くと、グラスを片手に、トローンとした目の梨華がいた。
目が合う。
「起きたんだ?おはよ。」
「だって、梨華ちゃんいないんだもん。」
ちょっと拗ねた顔をする。
「ずっと、一緒に居るって言ったくせに。(しかも私の夢に梨華ちゃんは出てこないし…。)」
やっぱりまだまだ拗ねた顔。
それがちょっと可愛くて、梨華はたまらない。
クスクス笑う。
「なんだよー。もうっ。」
- 148 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:57
- 「まだ眠たいの?」
「どうして?」
「眠たそうな顔してるから。」
意味深な笑みを浮かべるひとみ。
梨華の手から、水の入ったグラスをとって、耳にキスをする。
「?」
「責任とってもらわなきゃ。」
「え?」
「梨華ちゃん、どんな夢だったの?」
「えっ、どんなって…んーとね、あのね、そのね…ひとみちゃんが…エッチ……ビーの鉛筆ー!って騒ぐ夢!」
「なんで、騒ぐの?」
「なんでって…。し、知らないよ。」
しどろもどろの梨華。
「嘘つき梨華ちゃん。正直に言いなよ。知ってんだから。」
「何を?」
「寝言で喘いでたよ。」
嘘つきひとみ。だけど、まんまとひっかかった梨華。
- 149 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:58
- そのまま朝から?
かと思いきや、梨華から離れるひとみ。梨華は少し残念そう。
「朝からはちょっとね。いけないよね。よろしくないよね。うん。」
珍しく自分でブレーキかけました。
というのも、今日はホワイトデー。素敵な一日にしたいと、考えていたのだ。
朝から、そんなノリじゃ、計画丸つぶれだとでも思ったのでしょう。
- 150 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:58
- 「梨華ちゃん♪」
「ひとみちゃん♪」
「梨華ちゃん♪」
「ひとみちゃん♪」
「梨華ちゃん♪」
「ひとみちゃん♪」
「梨華ちゃん♪」
「ひとみちゃん♪」
「梨華ちゃん♪」
「ひとみちゃん♪」
…いつまでやるんだこの二人。
「りぃかぁちゃん♪」
「なあに、ひとみちゃん。今日はなんか変だよ?」
「変じゃないよ〜。どうしてそんなこと言うの?」
「だって…(いつもならあのまま襲うくせに、なんて言えない。)」
- 151 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:59
- 「梨華ちゃん。」
「?」
「クイズしない?」
「やっぱ変だよ〜。」
「しないの?」
「する。」
「今日は何の日だ〜?」
「んーと。」
「チチチチチチチチ……10秒前ぇー。」
「分かった!ピンポンピンポン!!」
「ハイ石川梨華さん。どぞ。」
「ひとみちゃんの変な日記念日だ!!当たりでしょ。」
肩を落とすひとみ。
自信満々の梨華。
- 152 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:59
- 「違うよ梨華ちゃん。今日は3月14日。ホワイトデー。バレンタインのお礼する日だよ?」
「あ、そっか!」
「もー。本気だったの〜?」
「うん!」
「…」
「てことで、今日はデートね!」
「どこいくの?」
「秘密だよ〜。着替えておいで。」
「分かったぁ♪」
- 153 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 22:59
- 「梨華ちゃんまだぁ〜?」
「もうちょっと〜!」
梨華の部屋に迎えに行く。
「まぁだぁ〜?」
「そうだ!」
「決まった?!」
「まだだよ。」
「んじゃ何が『そうだ!』だったの?」
梨華の真似をして人差し指をピンと立てながら尋ねる、ひとみ。
「選んで。」
「?」
「今日はひとみちゃんが服選んで。私が一番可愛い格好にして。ね?」
「絶対ヤダ!」
「なんでよー!」
「だって、可愛い格好させたら、変な男が寄ってきちゃいけないし。そもそも見せたくない。」
腕を組んで、そっぽを向く。
- 154 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 23:00
- 拒否を続けるひとみをなんとか言いくるめて、やっと服を選んでもらえるようになった。
「これと、これと…これとぉー。んで、あのブーツでしょ。ネックレスはこれで、帽子は…これ!…あっ、やっぱり髪いじろう。」
イジイジ…。
なぜだかセットするのが上手い、ひとみ。
美容院でも開く?
おっと完成したみたい。
「(かぁいい…。)」
「どうかなぁ?」
「完璧だよ〜。」
「さすが!よしよし。」
頭を撫でられるのが、今日は嬉しいみたい。
可愛い可愛い梨華を前に至福の笑みを浮かべる。
- 155 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 23:01
- 「んじゃ、行くよ〜♪」
仲良く手を繋いでデートに出発。
遠目からみたら、ホントのカップルに見えなくもないこの二人。
いや、ホントのカップルなんだけど、いわゆる、男と女のカップルって意味ね。
というよりも、そんじょそこらの”カップル”よりも幸せな日々を過ごしてるのかも。
さて、ひとみは梨華を連れて、いったいどこへいくのやら、――。
- 156 名前:haruri 投稿日:2004/03/15(月) 23:23
- お待たせしました。今日の更新でした。
>>141 :コナンさん
もっと甘々…目指します!!(>_<)
今回はいかがでしたかな?
>>142 :プリンさん
お待たせしましたぁ。
二人の幸せを見て、みなさんを幸せな気持ちにすることが出来れば、と思っています。
- 157 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 00:31
- かぁいい…。かぁいいのは君だよ、よっちぃ。
えーと、更新ありがとうございます。いつも楽しみにしてます。
- 158 名前:コナン 投稿日:2004/03/16(火) 03:27
- 更新お疲れさま
いい!甘々のいしよし最高っす。
幸せな二人がいるっていいなぁぁぁ(w
私も読んでるだけで、幸せになります。( ´ω` )ウヒ
- 159 名前:プリン 投稿日:2004/03/16(火) 16:26
- お疲れ様です!!!
甘々いいっすw
大好物なもので。
見てて十分幸せになりますよ。
もしや・・・もっと幸せにしてくれるとか?!
次の更新待ってますw
頑張ってくださいね。
- 160 名前:haruri 投稿日:2004/07/24(土) 22:52
- お久しぶりです。
えっと、前の続きは、2人は温泉へ行き、仲良くする、という結末の予定でしたが、
随分と経ってしまったので、ここで、まったく別の話を書こうかなと思います。
待っていてくださった方々すみませんでした。
新作をお楽しみに。
今回も、いしよしです。
2人は高校の同級生だったという設定です。
流れは、想像できるかも(爆)
- 161 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:53
- 「キスってどんな感じ?」
今からさかのぼること約9時間。
あたしがお昼ご飯を食べているときにメールがきた。
『今日久しぶりに実家に帰ってきたよ☆で、今日、なんか地元の花火
大会あるでしょ?もし、他に行く予定なかったら、一緒行かない?』
メールの相手は、あたしが高校のときずっと思い続けてきた相手。
スゲー可愛くて、ホントに見てるだけで幸せだった相手。
でも、私の気持ちを伝えることが出来ぬまま、卒業して、お互い別々
の大学へと進んだ。
高校時代、ずっと一緒にいたってわけじゃない。
なんか、近づけなかった。
- 162 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:54
- 私は弱虫だから。
メールアドレスを交換するきっかけを作ったのもあっちだ。
話のきっかけを作るのもあっちだ。
メールの始まりもあっちだ。
でも、好きな気持ちはあたしにしかない。
それは、女同士だから。
しかたないんだ。
嫌われるよりも、いまのままのちょっとした友達でいい。
暇なときの相手。
買い物の相手。
誰も相手にしてくれないときの相手。
梨華ちゃんと少しでも一緒に入れるなら十分だ。
私は弱虫だから、そう思って、自分の気持ちをしまいこんだ。
- 163 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:54
- で、そんな相手から、突然、このお言葉。。。
『キスってどんな感じ?』ですと???
「はい?」
「何回も言わせないでよ。」
「あ、ごめん。」
「・・・」
「お、怒った?」
「別に。」
怒ってんじゃん。。。
- 164 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:55
- あたしと梨華ちゃんの関係はこんな感じ。
いつもはそんなことないのに、梨華ちゃんを相手にすると、なんか嫌われ
たくなくて、弱気になる。気に入られようとしちゃうんだ。
でも、それはいっつも裏目に出る。
「花火綺麗だね。」
「ん。」
「ごめんね?」
「・・・」
あ、また謝っちゃったよ。。。
「ねえ。」
「うん。」
「なんで謝るの?謝るようなことじゃないじゃん。ひとみちゃんていつも
顔色うかがってばっか。つまんない。」
- 165 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:55
- 梨華ちゃんと花火大会。ウキウキ気分だったのにどんどんと沈んでく。
浴衣を着て髪もアップにして、どんな子よりもあたしを引き付ける彼女は
あたしに冷たい態度を取り続ける。
花火の音が響く。
彼女に振り回されるのは、今に始まったことじゃない。でも、彼女を嫌い
になることはない。
「ねぇ。」
「うん。」
「あたしのこと嫌い?」
- 166 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:56
- びっくりして顔をあげる。
「なんで!?」
「だって、あたし以外の子と、一緒に居るひとみちゃんって、その、なん
か、違うの。そう、楽しそう。自由な感じ。」
「そんなことないよ。梨華ちゃんと居るの楽しいよ!」
「うそぉ〜。」
「うそじゃないってば!」
必死なあたし。離れたくない!
- 167 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:56
- 「キスってどんな感じ?」
またか・・・。
「どうって?」
「だって、ひとみちゃん彼氏いたじゃない?したことあるんでしょ?」
「うん、まあね。」
「で?」
そうあたしには高校時代、彼氏が居た。
まぁ、いたことは確かだし、やることはやったっちゃーやったんだけど、
はっきりいって、好きじゃなかったんだよね。。
あたしにはいつも“レズ疑惑”がくっついてきて、最初はほっといたん
だけど、梨華ちゃんが妙にそおゆうとこを気にしてくるもんだから、男
と付き合い始めたようなもんなのだ。
「なんか、そんな、いいもんじゃないよ。」
「そうなんだぁ。がっかり。」
- 168 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:56
- 弱虫なあたしだけど、今日は花火につられて、ちょっと行動的になって
きた。
「したことないの?」
「うん。」
「ふ〜ん。」
「なに、いけない?」
「そんなことないよ。」
気がつけば、花火は終わっていた。
あたしたち2人は、やたら沈黙の時間が長い。
- 169 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 22:57
- 帰り道、あたしは梨華ちゃんを家まで連れて行くことになった。
結局その後も何があるわけでもなく終わった。
今日の収穫。
「つまんない。」
彼女の言葉が今でも鮮明に残ってる。
なんで、あんな、ひどい子が好きなのか。。。
いや、めっちゃ可愛くて、すごい優しい子なんだけどね。
たまに、氷になる。
- 170 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:32
-
あれから1週間後、またメールがきた。
『今日帰るよ。駅まで車で送って〜。』
なんだ、このメールは。
あたしは、彼女の執事か!?
でも、大好きな梨華ちゃんのため、あたしは車のキーを回す。
- 171 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:32
- 「おはよ。」
「うん。」
「駅まで?」
「違う。」
「違うの?」
「海いこ。」
「海!?」
「なんか、急に行きたくなった。」
「・・・」
「テトラポットがあるとこがいい。」
「はい。」
- 172 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:33
- 最初は振り回されてちょっとむかついた。
でも、波打ち際で海とおにごっこをしている梨華ちゃんを見て、
そんな気持ちも吹っ飛ぶ。
あたしは、テトラポットに座って、梨華ちゃんを見てる。
「ひとみちゃーん。」
「なにぃー?」
手招きする彼女。
めずらしくはしゃぐ彼女。
今日はやけになついてくる。
駆け寄っていくと、満面の笑顔。
幸せだ。
- 173 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:34
- 「梨華ちゃん。」
「なぁに?」
首をかしげてあたしを見てくる。
大変やばい。
「なんでもない。」
「もうっ。」
あ、怒らせちゃったかな?
「ごめんはダメだよ?」
「えっ?」
梨華ちゃんは首を振る。
- 174 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:34
- 「ねぇ。」
「ん?」
「あたしって魅力ないかな?」
「そんなことないよ。スゲー可愛いと思う。」
「ホント?」
「うん。」
あ、なんで、言っちゃったんだろ。
嫌われる・・・。
でも、もうどうにでもなれだー!
オヒサマも応援してる!
- 175 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:35
- 「キスってどんな感じ?」
「えっ?」
「教えてよ。」
「前言ったじゃん。たいしたことないってば。」
「じゃあ、教えて。」
「は?」
「たいしたことないんでしょ?じゃ、教えてよ。」
「意味わかんないよ。」
と、だんだん満ちてきている海が、あたしたちの足元へとやってきた。
びっくりして、足元を見る。
- 176 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:35
- 「行こ。」
梨華ちゃんに手を引っ張られて、テトラポットまで連れてかれる。
「上ろう!」
「は?」
「ねぇねぇ。」
「危ないってば。この間に落ちたら、絶対痛いって!」
「弱虫!!」
梨華ちゃんはあたしを置いて上ってゆく。
「危ないってー。」
「大丈夫大丈夫。」
「もー、知んないよー?」
「いいですよーだ。」
- 177 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:35
- あたしは、梨華ちゃんを見てらんなくて、背を向けて座った。
「見てー!!」
振り向くと、梨華ちゃんは上の方にいた。
「危ないから下りといでよー。」
「やだー!」
「下りてきなって。」
「怖いもーん。」
「はぁ?」
どうやら上りきったものの、下りるのが怖くなったらしい。
「ほら、ここにおいでー。足踏み外すなよー。」
あたしは、腕を広げて彼女を待つ。
- 178 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:36
- なんとか無事あたしのとこまでこれた彼女が、急にあたしにしがみついた。
そりゃ、予想はしてたけど、まさか、抱きついてくるとは・・・。
「ギュってして。」
少し戸惑いながらも梨華ちゃんを腕の中に収めた。
少し離れると、彼女の顔がすぐ近くに見える。
「怖かったかも。」
あたしは少し笑う。
「だから、やめとけっていったんだよ。」
- 179 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:36
- この状態って、友達同士でもありなのかな???
あたしはふとわれに戻って、冗談では済まされない現状に気づく。
「ねぇ。」
目の前の梨華ちゃんが妙に色っぽい。
その目にひきつけられて、言葉を発することが出来ない。
急にその目が近づいてきた。
と、思ったら、少し離れた。
- 180 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:37
- 「?」
「目。」
「めっ?」
怒られたのかと思った。
「目。閉じて。」
びっくりして、目を見開く。
「逆だよ。閉じるの。」
素直に目を閉じた。
自称一度もキスをしたことがないと言った、梨華ちゃんのキスはやっぱり
ぎこちないものだった。でも、いままでのとは、全然違う。
- 181 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:37
- 「たいしたことなかった?」
「梨華ちゃんは?」
「言わない。」
「なんで?」
「だって、・・・」
恥ずかしいから。波の音で聞こえなかったけど、そう言ってる気がした。
「ギュってなった。」
「?」
「なんかね、その、さ、」
「「ドキドキした。」」
- 182 名前:オヒサマギラギラ、アツスギル 投稿日:2004/07/24(土) 23:46
- そして、また、キスをする。
どちらからともなく、キスをする。
時折、クスクス笑いながら、キスをする。
「「大好き。」」
FIN.
- 183 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:04
- さっきから、梨華ちゃんはベランダに出てったきり、部屋の中に戻ってこない。
仕方がないから、迎えに行く。
近頃、杏のお酒にはまっていて、よくアイスティーで割って飲んでいる。
後ろからからだっこして、肩に顔を乗せた。
「また飲んでんの?」
「うん。」
梨華ちゃんの首にキスをした。
「クスクス・・・」
「ん〜?」
「くすぐったいよ。」
やっとこっちを向いてくれた。
でもグラスは離さない。
仕方ないから、あたしが一気に飲んで、台の上に置いた。
う、今日は濃いめだ・・・。
- 184 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:05
- 「なあに?」
「んーん。」
梨華ちゃんを抱き寄せる。
今度は身をまかせてくれた。
スゲーかわいい。
「ドキドキする?」
「うん。」
なんでだろう。梨華ちゃんとこういう関係になって、もう4年。
なのに、いまだに、こんな風に、くっついてるとドキドキしちゃうんだ。
それにくらべ、梨華ちゃんは、最初の頃に比べて、慣れてきたみたい。
ほんのちょこっとしか、この世に居る時間は違わないのに、なんだろう。
どうして、こう、余裕な感じなんだ。。。
なんか、くやしい。
キスをすると、梨華ちゃんもキスで答えてくれた。
- 185 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:05
-
なんで、好きな人とするキスってこんなにドキドキしちゃうっていうか、
胸がギューってしちゃうんだろう。
でも、あたしたちは、それ以上のこと、したことはない・・・。
その快楽を覚え、そのうち身体だけの関係になっちゃうのが怖かった。
どっちが言い出したわけじゃない。
いつのまにか、それは、私たちが上手くいくための、ルールになっていた。
- 186 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:05
- 「なにしてたの?」
「?」
「ベランダでなに考えてた?」
「知りたい?」
「うん。」
「なんで私はひとみちゃんのことがこんなにも好きなんだろうって」
「え〜?」
予想外の答えが返ってきて、ちょっと驚いた。
「好きだよ。すごく。」
「ありがと。」
キス。
- 187 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:06
- 「なにしてたの?」
「あたし?」
「うん。」
「梨華ちゃんはなんでこんなにも可愛いんだろうって」
「クス。」
「笑うなよー!」
また、キス。
「最近よく飲むね。」
「うん。」
「おいしい?」
「うん。」
まだ、未成年の私たち。
「私まだ大人じゃない?」
「え?」
「可愛いだけ?」
「?」
「綺麗。とか。いろっぽい。とか。ない?」
「どうしたの急に?」
「ねぇ、どう?」
あたしは黙って梨華ちゃんを抱きしめる。
- 188 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:06
- そして、首筋にキスをした。
耳にも、おでこにも、ほっぺにも、口にも、そして、いままでしたことのない、
鎖骨にも。
梨華ちゃんが少し震えた気がした。
「怖い?」
「ひとみちゃんは?」
「ムラムラする。」
「ばかっ!」
あたしのいけないとこだ。つい調子に乗って、空気を壊してしまう。
梨華ちゃんは怒って部屋に入っていった。
幸いカギは閉められなかったので、よかった。
過去に何回かベランダに閉じ込められたことがある。
- 189 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:07
- 梨華ちゃんはベッドで不貞寝。
後ろにくっついてみた。
嫌がらない。
「あたし心配なんだ。」
「・・・」
「最近の梨華ちゃんはちょっとずるいと思う。」
「は?」
梨華ちゃんがこっちにごろりと向きを変えた。
「だって、可愛すぎる。綺麗過ぎる。いろっぽすぎる。心配だよ。」
「なんで?」
「一人で歩かせたら、悪いのに捕まっちゃうんじゃないか心配でさ。」
梨華ちゃんがしがみついてきた。
「あたしだって心配だよ。」
「なんで?」
「だって、この前まで、あんなに男の子っぽかったひとみちゃんが、
最近、スラっとしてきて、綺麗で、いろっぽくて、、、ドキドキ
しちゃうんだもん。私なんかでいいの?」
「梨華ちゃんがいいの。他には興味ない。」
- 190 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:07
- 梨華ちゃんの目をジーっと見る。
「いいの?」
「聞かないで。」
キスをした。
「電気消して。」
さすがに真っ暗じゃ困る。薄暗い感じにした。
「怖い?」
「怖いよ。梨華ちゃんは?」
「怖い。」
梨華ちゃんを向かい合わせにだっこした。
キスをする。
- 191 名前:その日がきた!? 投稿日:2004/07/25(日) 10:08
- どうしたらいいんだろう。。。
実はやり方が全く分からない。
梨華ちゃんの胸に、顔をうずめてみる。
「赤ちゃんに戻った気分。」
梨華ちゃんが頭を撫でてくれた。
お互いの服を脱がす。
あっという間に、何も身につけてない状態になった。
梨華ちゃんは恥ずかしがって、布団にもぐってしまった。
だっこして、引き寄せる。顔だけ出てきた。
キスをする。
この先は、私たちだけの秘密。
FIN.
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/25(日) 22:07
- 更新お疲れ様です。
これからも、がんばってください。
なんか、初々しいいしよしって感じで良いで〜す。
- 193 名前:プリン 投稿日:2004/08/10(火) 08:28
- 更新お疲れ様です。
あぁぁ…更新に気付かなくて…レス遅くなってごめんでし。
うわぁー。やっぱいしよし好きだぁー。
特にここのいしよし甘々でいいですよねぇ(*´Д`)ポワワ
次回の更新待ってます!
マイペースに頑張ってください。
- 194 名前:haruri 投稿日:2004/08/16(月) 23:04
- >>192 :名無飼育さん
どうもありがとうございました。
初々しいですか。
あたしの心境も混ざってるのかもなぁ。なんてね。
>>193 :プリンさん
おまたせしました。
自分の作品のネタは、結構私生活だったりしますからね。
結構、鬱気味だとか、文にあらわれてるかもしれないです。
今回は少し暗めといえば暗めかもです。
甘甘、大好きなんですけど、今日はこんな気分でした。
- 195 名前:haruri 投稿日:2004/08/16(月) 23:05
- しまったあげてしまった。
やってしまった。
- 196 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:05
- 久しぶりに会えたのに。
やっと会えたのに。
折角会えたのに。
どうして。。。
「はぁ〜」
吉澤ひとみ18歳は布団で溜息をついている。
これで、何十回目か分からない。
夏は暑い。
夜になっても暑い。
夜明けは涼しいけれどもね。
ベッドに寝転がって、扇風機(弱)を浴びながら、
真っ暗の部屋で、彼女は溜息をつき続ける。
- 197 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:06
- 好きだってことはずっと分かってた。
廊下で初めて擦れ違った瞬間から。
恋に落ちた。自分でも怖いくらいに。
彼女と視線が合ったことは数回だけ。でも一瞬だけ。
話した事は1度もない。
いつだって、一方通行だった。
一度だけ、彼女の泣き顔を見たことがある。
彼女はすごく悔しそうに泣いていた。
あたしはそれをみて何も言うことは出来ずにいた。
「好きだよ」
の一言は短いけど、長い。
軽いようで、重たい。
勇気がいる。
しかしその勇気が必ずしもよい方向へと繋がることはない。
- 198 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:06
- 女の子同士。
私は偽善が嫌い。
けれど、自分を、自分のイメージを守ろうとしている
ような気がしてしまう。
そう思い出したのは、彼女を見た瞬間から。
彼女に、周りに、嫌われたくないがために。
いつだって近くでみていたい。
いろいろはなしもしてみたい。
そのきっかけに発した一言は
- 199 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:06
- 彼女には重すぎたようだ。
「好きだよ」
の一言の向こう側には何が待っているか。
最高?
最悪?
あたしの場合
”最悪”
だ。
久々に会えたのに。
折角話し掛けてくれたのに、
「あ、・・・吉澤さん?」
カウンターの向こうには、1年間ずっと見ていなかった
笑顔が。
待ち焦がれた
笑顔が。
- 200 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:07
- 次はいつ会えると思ってるの?
そう頭の中で、誰かが言った。
そしたら
「好きだよ」
と言っていた。
彼女の目をまっすぐ見て。
案の定、彼女はすっかり固まってしまって、異変に気づいた
別の店員が出てくる。
「ご注文は?」
あたしは、焦点の合わぬまま。
彼女から次の言葉が発せられる前に。
コーヒーショップを後にした。
- 201 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:07
- 夏のせいなんだ。
こんなに暑いから、頭がどうかしちゃったんだ。
もっと別の言葉だって選べたはずなのに。
それにあの言葉
次はいつ会えると思ってるの?
彼女はおそらくあそこでバイトをしているんだ。
だったら、いつかまた会えるはずだ。
毎日通ってればいつかまたきっと。
夏のせいなんだ。
どうかしてた。。。
- 202 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:09
- 眠れない。
どうしてあんなことを。
残っているのは後悔ばかり。
もう正面からみることはないのかもしれない。
ベランダに出て、外をみる。
星がやけに明るい。
今日は新月みたいだ。
あたしを慰めるように輝いているようにさえみえる。
外には車が走ってて、虫の声もする。
あぁ、今、起きてるのはあたしだけじゃないんだ。
- 203 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:09
- ふと隣のベランダを見れば、人が居るみたい。
お酒(おそらく)を持った手が見える。
たぶん女の人。綺麗な手。細い指。
あぁ、きっと、この人も、眠れないんだ。
少し落ち着いた、あたしは、部屋に入る。
と、隣のベランダで何かが割れた音がした。
少し心配になって。
「大丈夫ですか?」
聞いてみる。
「あ、はい。」
可愛い声。
だけど、寂しい声。
女の人だ。
「眠れないんですか?」
「はい。」
「同じですね。」
「ね。」
- 204 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:10
- 薄っぺらい壁越しに言葉を交わす。
「割れたのはグラスですか?」
「お酒飲んでたんです。」
「気をつけてくださいね。暗いですから。」
「ありがとうございます。」
「一緒に飲みませんか?」
「え?」
「あっ、いきなり、びっくりしますよね。すみません。」
「いえ、ぜひ、ご一緒させてください。」
彼女が部屋に入っていく音がして、
そして、
ベランダに出てきた音がする。
- 205 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:10
- 「どうぞ。」
星の明かりだけでは何色か分からない。
でも、甘い匂いがする。
「乾杯しましょう。」
顔が見えぬまま乾杯をする。
甘い香りの割には、下にピリピリくる。
「どうですか?」
「自分の今の気分みたいな味がします。理想と現実は違う。」
「ですね。」
「好きだよ」の後には、彼女の飛び切りの笑顔があることを
期待していたのに。。。
「こっちきませんか?」
「いいんですか?」
「どうぞ。」
「行ってみようかな。」
- 206 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:10
- 夏のせいだ。
やっぱりどうかしてる。
みたこともない隣の人の部屋に、知り合って、すぐおじゃま
しちゃうなんて。
この心に渦巻く気持ちをどうかしたかったのかもしれない。
もしかしたら、彼女を押し倒してしまおうなどとすら、
思っていたのかもしれない。
隣の部屋のドアをノックする。
- 207 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:11
- そこにいたのは、――。
視線が絡みあう。
初めてだ。
視線があう。
じゃない。
絡み合っている。
目を見開いて。
声がでない。
やっと出た言葉は。
「好きだよ。」
あたしの声じゃない。
- 208 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:11
- 紛れもなく、その言葉を発したのは、目の前の白のワンピースを
きた、ちょっぴりあたしより肌の焼けた女の子。
「先輩。」
「吉澤さん。」
ふと思う。
「どうしてあたしの名前を?」
「好きな人のことはちょっと頑張って知ろうとしちゃうものでしょ?」
あたしの胸ぐらをぐぅっとやられたみたいに、
すばらしい音楽を聴いたときみたいに、
いやそれいじょうに、
おかしい。
胸がドキドキを超えて、ぎゅーっとなる。
自分のすべての神経が、一点に集まったような感じ。
「好きだよ。」
「好きだよ。すごく。」
彼女に吸い寄せられるように、部屋へと入ってゆく。
そして、お互いに吸い寄せられるように、キスを交わす。
- 209 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:11
- ベッドに転がる。
キスをする。
服を脱ぎ捨てる。
好きだよと言う。
キスをする。
いろいろなところに。
彼女が色っぽく喘ぐ。
あたしを見る。
大変ヤバイ。
彼女がしがみつく。
キスをする。
好きだよという。
あたしの胸の中で、彼女の力が抜けてゆく。
- 210 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:12
-
- 211 名前:夏のせい、夏のおかげ 投稿日:2004/08/16(月) 23:12
- 肌布団を2人に巻きつけて、ベランダに出る。
「やっとだよ。」
「うん。」
「ずっと見てたんだから。」
「気づかなかったなぁ。」
彼女をずっと見ていて、彼女にはずっと見られていた。
なのに気づかなかったあたしはおばかさん。
でも、こんな風に、彼女を後ろから抱きしめていられるのは
夏のおかげ。
夏が暑いから、彼女にまた会えたのだから。
夏のせい。
だけど、
夏のおかげ。
END.
- 212 名前:プリン 投稿日:2004/08/17(火) 15:27
- 更新お疲れ様です!!!
待ってましたよ!!!w
うぅーw素晴らしいーw
最後はハッピーエンドで(*´Д`)ポワワ
次回の更新も待ってます。
頑張ってくださーい!!!
- 213 名前:haruri 投稿日:2004/08/30(月) 12:03
- >> 212:プリンさん
いつもレスありがとうございます。
読んでくれた人が居るんだって分かると、
なんか、嬉しく思います。
これからも、ぼちぼち頑張りますね。
- 214 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:08
- いつからだろう。
あなたの目をまっすぐ見れなくなったのは。
いつからだろう。
あなたがあたしをまっすぐ見てくれなくなったのは。
やっぱり、あの言葉はあなたに言うべきことではなかったのかな。
「好き。」
あなたと初めてプライベートで遊んだあの日、
思わず出てしまった言葉。
- 215 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:08
- 調子に乗って、
膨らましすぎたガムフーセンは
膨らみ続けるわけもなく、
あたしの心の中で
爆発しました。
そのガムフーセンは、
あたしの心の中に
しっかりとまとわりつく。
出来ることなら、
あなたを丸ごと忘れれば
と思うけど、
どうも上手くいかないみたい。
ガムフーセンは、
なかなかはがれてくれません。
- 216 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:08
- あなたの笑顔を見るたびに
あなたの声を聞くたびに
あなたからメールが来るたびに
あなたから電話がかかってくるたびに
あたしは嬉しくてたまらなくなってしまう。
もしかして、あたしのことを好きでいてくれてるの?
恋愛対象として、見ていてくれてるの?
そんな風に思ってしまうあたしは、
間違ってますか?
- 217 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:08
- わかってる。
女の子同士の恋なんて間違ってる。
わかってる。
あなたは普通の恋をしたがってる。
仕事柄、男の子と遊ぶのは控えた方がいい。
だからって、
あなたが、
あたしを望むことはきっとない。
- 218 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:09
- あなたは何度かあたしを好きだといってくれた。
でも、
それに注釈をつけるとすれば
「友達として。」
「仲間として。」
言うべきじゃなかったんだ。
「好き。(恋人になって欲しい。)」
だなんて。
それが
仲間として上手くやっていく上で
禁じられた言葉
だなんてこと
わかってた。
だけど、あなたへの想いが
膨らみすぎたあの瞬間
どうしてもこらえられなかったんだもの。
- 219 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:09
- あれから、
あなたもあたしも
お互いを避けるようになって、
触れないようになって、
2人の間の歯車は
かみ合わせが悪くなり、
次第に、
回らなくなりました。
けれど、
あたしの中で爆発した、
ガムフーセン、
言い換えれば、
あなたへの想いは
消えることがないのです。
心から取り除こうとしても、
違う想いに変えようとしても、
忘れようとしても、
それは無理だったのです。
- 220 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/30(月) 12:10
- 収録途中、
あなたがたまにする
あたしへの目配せ。
それが、
仕事上のものだってこと、
十分分かってる。
もしくは、
ダンスの振り付けだってことも。
だけど、
そんなちょこっとの仕草にさえ、
期待をしてしまうんだよ?
ねぇ、
わかってるの?
あたしの心の中の梨華ちゃんへの想いは、
希望の光は、
期待は、
大きくなったり、
小さくなったり。
- 221 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:32
- -------------
『あの新人マネージャーなに考えてんだ。』
部屋割りを聞いて、あたしはそう思った。
だって、
あたしたちの関係が
随分前とは変わっているのは
目に見えて分かっていて、
なのに、
どうして、
わざわざ、
一緒の部屋にするのです?
早く気づけはよかったけど、
ちょっと遅すぎた。
いまさら変更してとか言えるわけがない。
- 222 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:33
- 2人の間に流れる重い空気。
耐えることの出来ないあたしは、
壁の方を向いて、
寝ることにした。
当然のことながら、
すぐに眠れるはずもない。
梨華ちゃんが
荷物を整理している音がする。
外に出て行く音がする。
帰って来る音がする。
お風呂に入ってゆく音がする。
シャワーの音がする。
ドアの音がする。
ベッドへと向かっていく音がする。
ケータイをパカパカする音がする。
メールを打つ音がする。
照明の明るさを調節する音がする。
こっちへ向かって来る音がする。
ベッドに寝転がった。
?????
背後に人が居る。
いや、
梨華ちゃんが居る?
動けない。
- 223 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:33
- 「ねぇ。」
「ん?」
話し掛けられたからには無視できない。
「そのままでいて。」
「うん。」
背後の彼女が望むものは何?
そんな気もないくせに、
こんなことして、
あたしを無駄に喜ばせて、
ずるいと思わない?
「最近どう?」
「ん〜、まあまあ。かな。」
「そっ、か。」
「なに?どうした?」
梨華ちゃんの方を向く。
「久しぶりだね。」
「ん?」
「こやって向き合うの。」
「ん。」
- 224 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:33
- あたしって素直じゃない。
こんな風に話せてるの、
ホントはすごい嬉しくて、
飛び上がって、
踊りだしたいくらいなのに、
こんなにも好きで仕方のない人を前にすると、
何も出来なくて、
言葉数も少なくなって、
傍から見ると、
すごい不機嫌そうに見える。
ごめんね。
- 225 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:34
- 「私なの。」
「お?」
「私がマネージャーさんに頼んだの。
一緒の部屋にしてって。
ビックリしてた。」
「あ、そうなんだ。」
「私、よっちゃんに話があるの。」
「何よ、急に。」
「私ね、ずっとね、
よっちゃんの一番で居たいし、
よっちゃんに一番で居て欲しいの。」
「一番?」
「あいぼんも、ののも、卒業して、
私もそのうち卒業しちゃう。」
「うん。」
「いまのままじゃいやなの。
お互い変に意識してさ、
周りにもばればれなくらい、
ぎくしゃくしてて、
変な気使わせて。」
「うん。」
- 226 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:34
- 「それにね。
よっちゃんはきっと意識してないんだろうけど、
たまに見せる、優しさ、嬉しいよ。」
「そう?」
「うん。
よっちゃんが私のこと、
優しい目で見てたりとか、
ちょっと危ないシーンだったりすると、
心配そうな顔したり、
誰かと絡むシーンだったら、
ちょっと怒った顔してたりさ。
知らないでしょ?」
自分では、やっぱり、
そんなことしてる意識なんて全くない。
でも、
梨華ちゃんがそうやってあたしのこと、
見ててくれたのがすごい嬉しい。
- 227 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:35
- 「一緒に娘。に入ってきて、
やっぱり同期って私にとっては、
すごく大切で、
かけがえのないもので、
この先もずっと繋がってたい人たちなの。
ののとあいぼんはホントに子供みたいで、
弱いとこも強いとこもあるよね。」
「だな。」
あたしにとっても、
ののとあいぼんは特別だ。
ホントに、
あたしがパパで、梨華ちゃんがママみたいで。
愛しい子供たちだ。
「あいつら、立派に歩いてるね。」
「私が卒業したら、よっちゃん一人になっちゃう。」
「そんなこと気にしてんの?」
「よっちゃん不安じゃないの?
私は・・・・不安だよ。」
「びゆーでん?」
まだ、言い馴れない。。。
- 228 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:35
- 「だって、一人なんだもん。
私が二人をひっぱるんだよ?
私なんかに出来ると思う?
誰かに頼りたくても、
側には誰も居ない。
ののとかあいぼんみたいに、
ずっと一緒だった頼れる人は居ないんだよ?」
「何言ってんのさ。
一人なんかじゃないじゃない。
三人でやってくんでしょ?
支えあわないでどうするの。
自分ひとりで背負い込んでどうするの。
それに強くなったよ。すごく。」
そう、あたしなんかよりずっと。
今の、あなたには、あたしが居なくても大丈夫でしょ?
- 229 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:36
- 「違う違う!」
「何がよ。」
「よっちゃんは何も分かってないよ!」
梨華ちゃんがいま流すこの涙は、
まるで、娘。に入りたての頃に見た、
涙にそっくりでした。
期待と不安に押しつぶされて、
流した涙。
その涙を拭いてあげたのは、
あたし。
でも今は、
その涙を自分で拭けるようになったでしょ?
- 230 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:36
- 違うの?
信じてもいいの?
好きになってもいいの?
あなたは本当に私が必要なの?
ここで、甘やかしてもいいの?
今ここで、
あなたの涙をあたしが拭いてしまったら、
この先、
あたしはあなたの側にずっと居ないといけないような気がしてしまう。
わたしは別にかまわないけど。
あなたは今、
それを望んでいるの?
ねえ、信じていいの?
- 231 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:36
- あの割れてしまったガムフーセン。
それを集めることは困難で、
ずっと、苦しんできた。
やっとはがすことの出来たガムは
色々な手を加えられすぎて、
なかなか上手く膨らませない。
そんなあたしをみて、
誰かが、
新しいガムを、
与えてくれました。
それは、紛れもなく、
優しい笑顔の、
梨華ちゃんでした。
今度は、上手に膨らんでゆく。
- 232 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:37
- そのとき、
唇に触れたのは、
――。
「梨華ちゃん。」
「ひとみちゃん。」
信じていいんだね?
あなたの涙を拭う。
可愛いお顔が台無しだよ。
「ずっと側に居る。」
目の前の女の子は、
何かに開放されて、
安心したように、
そして嬉しそうに、
涙を流しました。
- 233 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:37
- 朝、目覚めると、
目の前には、
愛しい愛しい、
梨華ちゃんの寝顔。
寝顔を見ていたら、
どんどん、
嬉しくなって、
思わず、
抱きしめた。
女の子は目を覚ます。
- 234 名前:あなたとあたし 投稿日:2004/08/31(火) 00:37
- -----------
その日から、
数年前のように、
いっつもひっつきだした二人。
そして、
「梨華ちゃん。」「ひとみちゃん」
だなんて、呼び出したりして、
周りの人は、
驚くばかりでした。
今度は、
違う意味で、
周りに気を使わせそうです。。。
おわり。
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/12(日) 22:27
- 面白かったです。
いしよしいいですねー。
- 236 名前:haruri 投稿日:2004/09/28(火) 18:03
- >>235 名無飼育さん
ども。
これからも、ちょくちょく気が向くままに書きますので。
- 237 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:04
- 「今日暇?」
5番目くらいに来たあなたはまっすぐあたしのところに向かってきてそういった。
別に断られても良いけど、断られるわけがないといった感じの口調。
おはようの前にいきなり誘ってくるのもあなたらしい。
そもそも、誘ってるのかどうかすらも分からないこの聞き方。
でもこれがあなたがあたしを誘う方法。
今日終わってからどこどこに食べ行かない?とか、そんな具体的に聞いてこない。
今日は終わったら暇なのか。それだけを聞いてくる。
かなり短縮した形で。
- 238 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:05
- でも実はこんなのってすごい久しぶりだったりする。
この世界に入って、最初のころはひっついてたけど、今は、お互いに別々の空間をもつようになった。
もともと違うタイプだし、いつかはそうなるだろうとは思ってたけど、やっぱ、寂しく感じる。
ま、仲が悪いわけじゃないんだけどね。
「忙しいのですか?」
なかなか返事をしないあたしに痺れを切らして改まって聞いてくる。
ですます調になるのはイライラしてる証拠。
「あ、ごめんごめん。暇だよ。」
「そ。」
あたしが暇だということだけを、それだけを確認して、去ってゆく。
- 239 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:05
- 去ってゆく???
ちょっと、それだけ?
さすがに驚いた。
てゆうか、「おはよう」言ってくれないの???
- 240 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:06
-
◇ ◇ ◇
収録が終わって、美勇伝のことですこし打ち合わせをした後、
楽屋に帰ると例のあの人は楽屋でうつぶせになって寝ていた。
そんなに時間はたってないし、たぶんうとうとしてるだけ。
疲れてるんだね。
可愛いけど。
犬みたいで。
どんどん大人になって、綺麗になって、セクシーになってきてるってのに、そうゆうとこは変わらない。
でも、そこが好き。
- 241 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:06
- 昔のように多くはしゃべらなくなったあなた。
でも、こうやって、だまって待ってくれてるとすごく嬉しい。
飼い主の帰りを待つ犬みたいで。
昔みたいにほっぺにキスして起こしたらびっくりするかななんて思って、しようとしたけれど、やっぱりやめた。
私たちの関係は昔とは違うだろうから。
あたしはとりあえず荷物をまとめる。
- 242 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:07
- そうすると、物音に気づいて、あの人は起きる。
それはいつものこと。
「終わった?」
「うん。」
「起こしてくれればいいのに。」
「気持ちよさそうだったから。あと、、、」
「ん?」
「なんでもない。」
「んじゃいいや。」
- 243 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:07
- なんか寂しいから言う。
「可愛かったよ。犬みたくて。」
よっちゃんは「犬ねぇ」といって少し笑った。
二人きりになると、いつもより、ちょっとだけ、言葉数が増えるよっちゃん。
他の人とはどうなのかは知らないけれど、やっぱり、嬉しい。
それがあたしだけじゃなくても、嬉しい。
- 244 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:07
-
◇ ◇ ◇
テレビ局を出ると、少し寒かった。
そろそろ10月になろうかというそんな季節。
夕暮れは寒い。
よっちゃんの感想は「さみ」とのこと。
相変わらず短い言葉。
行き先も分からなくて、どうしようなんて、一瞬おもった、その瞬間、
「自分家ね。」
とよっちゃんは言う。つまり、あたしの家が今日の行き先らしい。
- 245 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:07
- もう行きたくない、とかいいながらも、あれから何度か来ているよっちゃん。
あたしの部屋のところどころに、よっちゃんが来た「跡」が残っている。
たとえば、なにやら、落書きした紙だとか。
よっちゃんの落書きって、落書きにしては少し高度な落書きで、少し芸術性を感じちゃう落書きで、
なにかの、包装紙の裏に書いてあったりするんだけど、捨てるに捨てれない。
それは、落書きだから、完成してるものは一つもないんだけど、捨てるに捨てれない。
ちょっと待って、さっきのテレパシー?
あたし、「どこに行くの?」なんて聞いてないのに。
うわー、同期テレパシー???
なんて、感動しているうちに、よっちゃんはタクシーを捕まえて、あたしをタクシーに押し込んでいる。
- 246 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:08
- ◇ ◇ ◇
「うわー、もう来たくねー。」
久々にあたしの部屋を訪れたよっちゃんは言う。
毎回のことだけど。
昔みたいに、ピンクピンクしてないんだけどなぁ。
今は、空よ空!
「偏ってんだよなぁ」
よっちゃんぱボソッと小さな声で一言漏らして、キッチンに行った。
何か飲み物を探し始めたらしい。
- 247 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:08
- どうやらよっちゃんには自分は客なんだという自覚、
自分の家じゃない家に来ているという自覚が
ないらしい。
まあ、それは、ある意味、あたしとしては、嬉しいことなんだけど。。。
手際よくお湯を沸かして、よっちゃんは自分と私の分のカップスープを作ってきた。
たぶん外が寒かったからだと思う。
よっちゃんのさりげないやさしさが温かい。
その言葉足らずなところが、欠点でもあるけれど、あたしは、そんなよっちゃんが好き。
- 248 名前:DOG 投稿日:2004/09/28(火) 18:09
-
つづく(予定)
- 249 名前:プリン 投稿日:2004/09/28(火) 20:11
- 更新お疲れ様でした♪
ん〜wなんかいい感じですねーw
是非続いてください(w
次回の更新も待ってまーすっ。
- 250 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/29(水) 00:20
- いしよし・ですね。嬉しい〜
更新待ってます。
- 251 名前:haruri 投稿日:2004/09/30(木) 11:41
- >>249 プリンさん
いつもありがとうございます。
>>250 名無飼育さん
いまから更新します。いかがでしたかね。
- 252 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:41
- あたし家に来たのはいいけど、その目的はよく分からない。
よっちゃんとあたしは相変わらずスープをすすってる。
でもすごい温かくって心地よい。
なんか、ぽかぽかしてきた。
「おいしいね」
「あたしが作ったから」
「お湯入れただけじゃん」って言いたかったけど、やめた。
だって、よっちゃんが作ってくれて、こうやって一緒に飲んでるから、
心まで温かいんだもん。
- 253 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:41
- 何食べたい?作ったげる。」
「ホントに?」
「ホントだよ。何がいい?」
「ん〜、ん〜、、、ん〜。」
決められないあたしに痺れを切らしてよっちゃんは台所に行ってしまった。
「オムライスにする。」
そういってよっちゃんはオムライスを作り始めた。
- 254 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:42
- 相変わらずテキトーで、何かの番組で言ってたみたいに、
「バーって切って、バーって炒めて、卵で包む」を実行していた。
玉ねぎと格闘する姿がなんか可愛い。
「手伝おうか?」って言ったら、「絶対ダメ」って断られた。
久しぶりに来たはずなのに、よっちゃんはどこに何があるかをよく理解している。
ご飯やトリが冷凍してあるのも知ってて、電子レンジの使い方もよく覚えてる。
よっちゃんに一回教えると、次のときはほとんど完璧に覚えてる。
ある意味で完ぺき主義なのかもしれない。
芝居にしても、歌にしても。
きっと裏ですごい努力とかしてるんだと思う。
- 255 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:42
- そうこう考えてるうちに、オムライスは出来上がった。
よっちゃんの作るオムライスはママの味がする。
レストランとかの凝ったやつじゃなくて、レシピのない毎回違う味。
「おいしい。」
「でしょ〜?」
よっちゃんは満足げ。
- 256 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:42
- 「最近忙しそうだからさ。」
「?」
オムライスがあと3分の1くらいになったとき、よっちゃんがまた急に話し出した。
「心配になっちゃって。」
よっちゃんがあたしを心配???
「痩せてくしさ〜。あたしも痩せたけど。ちゃんとやってんのかと思って。」
だから、お家にきたんだぁ!納得。
- 257 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:42
- そして、同時によっちゃんの優しさが痛いぐらい胸にしみた。
よっちゃんだって忙しいのに、あたしのことちゃんと気に掛けてくれてるなんて。
嬉しくて涙が出てくる。
よっちゃんはきっと目を見開いてビックリしてる気がする。
青汁飲んだときみたいに一瞬なってるような気がする。
そしたら、頭を撫でられた。
顔を上げたら、すごいやさしい顔で。
「よしよし。」
声に出して、子供をあやすみたいに言う。
でも、なんかすごい嬉しくて、しばらくよっちゃんの肩をかりた。
よっちゃんはやさしく抱きしめてくれて、あいかわらずなでなでしてくれる。
- 258 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:43
- ◇ ◇ ◇
目が覚めたら、ベッドの中だった。
どうやら、あのまま安心して眠っちゃったみたい。
リビングに行くと、薄暗い部屋の中でよっちゃんはソファに寝ていた。
毛布のありかまで、ホントによく知ってるんだから。
あたしは可笑しくて、つい「クスッ」て笑った。
テーブルには食べかけのあたしのオムライスがある。
きちんとラップされて。
ソファの横に行って、よっちゃんの寝顔をまじまじと見る。
よく眠ってる。
顔にかかってる髪の毛をはらってあげたら、まるでお昼寝中の犬みたいに、
ぐずぐず動いた。
- 259 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:43
- ホントはこのまま寝かさせてあげたかったけど、朝までソファで寝させるのも
可哀想だから、起こすことにした。
「よっちゃーん」
呼びながらゆさゆさすると、すぐ目を覚ました。
「ん?」
毛布から顔だけ出してるその姿がなんとも可愛い。
「あっちで寝たら?風邪ひくよ。」
「あっちって?」
「ベッド。」
「一緒に!?」
寝起きのよっちゃんがビックリしてる。
「う、うん。」
- 260 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:44
- ちょっとして「はぁ〜い」と満面の笑みで返事をした。飼い主にほめられた犬みたい。
「あ。あたしお風呂まだだった。ちょっと入ってくるから、先に行ってていいよ。」
「ん。」
よっちゃんはちゃっかりシャワーも浴びてたみたい。
そして、お泊りセットも準備して来てたみたい。
- 261 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:45
- ◇ ◇ ◇
ベッドに行くと案の定よっちゃんはぐっすり寝ていて、あたしはその隣に滑り込む。
すると、抱きしめられた。
寝てなかったみたい。
「寝れない。」
「どうして?」
さっき途中で起こしちゃったのがまずかったかな。
「聞くな。」
よっちゃんそんなキャラじゃないのに、どうやら、あたしと一緒に寝るってことに
緊張してるみたい。初めてじゃないのに。
- 262 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:45
- 「久しぶりだね。」
「ん。」
「こうやって寝るの。」
「かなりね。」
頭の後ろから声がする。
あたしは、よっちゃんの抱っこに弱いみたい。
意識が遠のいていく。
きっとそれは、よっちゃんがすごい近くの人だから。
一緒にこの世界に入ってきて、一緒に成長してきた仲だから。
あたしが辛いとき、悲しいときに、いつも寄り添ってくれてた人だから。
- 263 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:45
- 「好きだよ。」
すごい懐かしい響き。
現実か夢かわからないけど、よっちゃんの声が聞こえた。
だから
「好き」
あたしも言った。
- 264 名前:DOG 投稿日:2004/09/30(木) 11:45
-
おわり(?)
- 265 名前:プリン 投稿日:2004/09/30(木) 16:35
- 更新お疲れ様です!!
はぁーんwいいわーんw
やっぱいしよしですよ。いしよし。
すごく良かったです!
- 266 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/30(木) 16:48
- 更新お疲れ様です。
ここのいしよし、なんか雰囲気がいいですvv
DOGの続き激しくキボン!!
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/01(金) 19:06
- うわぁ。こういう雰囲気ってすごくイイ!
肩肘張ってないというかリラックスムードが心地よいです。
上の方同様続きが見たいなーとか言ってみたりw
- 268 名前:haruri 投稿日:2004/10/04(月) 22:04
- >>265:プリンさん
毎度どうも。
レスもらえると嬉しいです。
あ、読んでくれたんだなぁと。
>>266:名無飼育さん
お褒めいただき、恐縮であります(>_<)
まだまだ、ひよっこですが、日々ネタを考えてます。
頑張ります!
>>267:名無飼育さん
最近はモーニング娘。という設定で書くことが多くなりまして、
現実世界で、こんな風に二人が会話してたらいいなぁ、なんていう
私の希望も交えつつ書いてます。
そういえば、いしかーさん視点で書いたのは、このDOGが初めてな気がする。。
自分がよっちゃんタイプだから、前まではそっちの方が書きやすかったんだけどもねぇ。
なんてゆう、作者の独り言は置いといて、と。
DOG2書いてみたものの、なんとなく行き詰まり中です。
ここでよっちゃんならどうする?いしかーさんはどう思う?
二人が望むのは?いちゃいちゃさせすぎると、ちょっとなぁ
なんて感じで、書いては消し、書いては消し、の繰り替えし。。
でも、途中まででも、更新しとこうかなーと思います。
感想、要望など歓迎です。
- 269 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:06
- ◇ ◇ ◇
目が覚めたら目の前にはよっちゃんの寝顔。
いつのまにか、よっちゃんの方を向いてたみたい。
そして、あたしはよっちゃんの腕の中。
昨夜のことを思い出す。
そしたら、なんだか、すごい嬉しくて、たまんなかった。
だから、つい、よっちゃんよっちゃんって連呼しちゃうんだ。
時計を見ると、まだ7時。
- 270 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:07
- どうしよう。
起こしちゃったら帰っちゃうかな?
それとも、まだ一緒にいてくれるのかな?
一緒にいたい。
でも、起きてるよっちゃんも見たい。
あたし、どうしたらいい?
「どっちがいい?」
あたしの気も知らずに、ぐっすり寝入ってるよっちゃんに聞いてみる。
答えてくれるわけないけどさ。
よっちゃんの寝顔見てたら、眠くなってきた。
ホントに気持ちよさそうに寝るんだもん。
- 271 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:07
- ◇ ◇ ◇
「・・・・・わ、い・・わ、いし・・、いしかわ〜」
いしかわ?
あたし呼ばれてる?
誰かあたしを呼んでる?
誰?
「いしかわりか〜」
フルネームで呼ばれて目を開けると、よっちゃんだった。
「ふぅ、やっと起きた。もう。」
「?」
「ずっと呼んでるのに全く反応しないんだから。もう、ず〜っと起きないのかと思った。」
「へへへ。」
- 272 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:08
- 呆れた風に、よっちゃんは部屋から出て行った。
帰っちゃうの?
ヤダ。
「待って!」
おっきな声で呼んだら、ドアが開いた。
そこにはちょっとビックリした顔の愛しい人。
「なに?」
「・・・」
- 273 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:08
- あたしが何もしゃべらないからベッドのとこまで来て、座った。
「どうした〜?」
「・・・・・うの?」
「聞こえない。」
なんだか緊張しちゃって、小さな声しか出なかった。
よっちゃんが耳を近づけてくる。
「もっかい。」
「かえっちゃうの?」
よっちゃんが間近に居るともっと小さな声になる。
でも、聞き取れたみたい。
「居た方がいい?」
あたしが頷くと「ふ〜ん」といってまた部屋から出て行ってしまった。
- 274 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:08
- 時計を見たら10時だった。
リビングに行くとよっちゃんはソファに座って雑誌を読んでいた。
あたしが側に行くと本を閉じた。
「今日休み?」
「うん」
「何したい?」
「・・・」
あたしが何も言わないから、よっちゃんは困った顔をする。
そしたら腕をひっぱられて、抱っこされた。
- 275 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:09
- 「そのさ。」
「ん?」
「昨日のこと覚えてる?」
「うん。オムライス美味しかったー。」
「いや、そうでなくて。寝る前のこと。」
「ん?」
「覚えてないなこいつ」とも言いたそうな目で、よっちゃんは「もういい」って言った。
「なに〜?」
- 276 名前:DOG2 投稿日:2004/10/04(月) 22:09
- ◇ ◇ ◇
昨日のお礼にあたしは野菜スープを作った。
ベーコンと野菜と水とコンソメスープの素入れたら終わり。
なんて簡単な料理なんだろう。
固形コンソメスープの素バンザイだね。
ホントに簡単な料理なんだけど、出来上がったスープを見て、よっちゃんは「美味そう」って言ってくれた。
「さっき言ってたのって何?」
スープを食べながら、聞いてみた。
「忘れたならいいよ。あたしの胸の中にしまっておくよ。」
だなんて、よっちゃんは棒読みで答える。でもきっちり胸に手を当てるという演技つきで。
- 277 名前:haruri 投稿日:2004/10/04(月) 22:13
- つづく(絶対)
さて、どうしようか。
あたしの頭にヒラメキが到着するまでしばしお待ちください。
DOG2。成功に終わるか、失敗に終わるか。。。
- 278 名前:プリン 投稿日:2004/10/05(火) 21:18
- 更新お疲れ様です!
続編キターwヤターw
是非是非成功に終わってくださいよ(w
次回の更新もマターリ待ってます。
- 279 名前:haruri 投稿日:2004/10/11(月) 20:29
- >>278:プリンさん
期待に応えられたかどうか分かりませんが更新しました。
はっきりいいますと、自分ではイマイチです。
書いているうちに、悩みこんでしまいまして(^^;
すいません。。。
- 280 名前:haruri 投稿日:2004/10/11(月) 20:30
- ◇ ◇ ◇
今日はホントに久しぶりの1日丸々のお休み。
よっちゃんは一緒に居てくれるつもりなんだろうか?
さっきからはっきりと答えてくれない。
「ねぇ、よっちゃん。」
「ん?」
「なんで石川って呼ぶの?」
「んー、梨華ちゃんとか呼べない、から?なんか、恥ずかしいじゃないの。
じゃあ、なんでひとみちゃんって呼ばないの?」
「え。」
- 281 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:30
- たしかに、私たちは、昔、「ひとみちゃん」「梨華ちゃん」って呼び合ってた。
今、あの頃のように呼び合い始めたら、違和感がありすぎてたまらない。
「梨華ちゃん。」
よっちゃんは今にも噴出しそうな感じ。
「ギェー!恥ずい!マジで、恥ずいって!!」
一人でじたばたしてる。
なんだかすごく可愛いかも。
ひとしきり、一人で笑い転げたよっちゃんは、ソファに座って、まだ、ニヤニヤしてる。
今にも、噴出しそう。
あたしはあたしで、それなりに気分が悪い。
なんで、名前呼んで、爆笑されなきゃいけないわけ?まったく。
- 282 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:31
- 「そういえばさぁ。」
「なによ。」
「怒んなって。」
よっちゃんはヘラヘラ笑ってる。もう。
「最近、あたしの話よくしてるよねぇ〜。」
え?
あたしはちょっと考える。
ラジオのトーク、とか。
あたし、よっちゃんって連呼してるかも。
「なに、欲求不満?」
このお調子者め。
慣れてきたらすぐに変なことばっか言い出すんだから。
いつもは一匹狼してるくせにさ。
「あれだけ、連呼されるとねぇ。ちょっと、参っちゃうよねぇ。」
なんて、ヘラヘラしてる。
- 283 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:32
- 「でもさ。」
急に真剣な表情。
よっちゃんはいつもそう。
コロコロ顔も気分も変わる。
それがイイとこなのかワルイとこなのかはあえて考えないけど、
あたしはいつも振りまわれっぱなし。
「やっぱちょっと考えるっていうか。期待しちゃうっていうか。
あたしは特別なのかなーなんて自惚れちゃいそうになるってかさ。」
- 284 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:32
- よっちゃんの弱いトコ。
くすぐられるのが弱いとかいうんでなくって、
それとは別の話。
よっちゃんはたまに臆病になっちゃう。
あのいつもの態度からは考えられないほどに。
そのままつっぱしっちゃえばいいのに。
ブレーキをかけちゃう。
ちょっと待て自分。
自分はこれを望んでる?
自分はこれで満足?
自分の選択は正しい?
よっちゃんが立ち止まったときの心の声。
愛嬌たっぷりにフリフリしてた尻尾が急に垂れて、耳も元気がなくなる。
迷子の犬になっちゃう。
- 285 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:32
- 「昨日の夜のことホントに覚えてないの?」
「うん。ごめんね?」
「好きだよ。」
「え?」
「何度も言わせんな。」
シャイなよっちゃんは背中を向けてソファに寝転んでしまった。
だから、昨日の夜とは逆に、よっちゃんの背中にくっついてみた。
「好き。」
よっちゃんの耳が一瞬ピクって動いたように見えた。
- 286 名前:DOG2 投稿日:2004/10/11(月) 20:33
- ◇ ◇ ◇
数日後、ハロモニの収録があった。
あたしは、かなりの勢いで機嫌が悪かった。
楽屋と帰り道で、よっちゃんは「ごめんってばぁ〜」って謝ってきた。
子犬ダンスだなんて。
もう〜!!
しかも、ちゃっかり、ダメだしもしてくるし。
もう〜!!!
「だってあたしのこと、犬みたい、犬みたいっていつも言うからさぁ〜。」
って。。。
可愛くて、弱っちくて、でも、頼りになる犬だけど、絶対飼いたくない!!
おわり。
- 287 名前:haruri 投稿日:2004/10/11(月) 20:37
- ------
続いて新作の予告です
------
おばあちゃんのお見舞いに行った。
そしたら、廊下で王子様に会った。
色白の弱々しい王子様。
澄んだ瞳で、中庭を見下ろしていた。
もっと知りたい。
そう思った。
- 288 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/11(月) 22:04
- 更新お疲れ様です。
そして、完結お疲れ様です。
うわぁ〜、その予告かなりきになってます。
次回、こうしんも楽しみにしてます。
- 289 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/12(火) 01:03
- 作者さん的にはイマイチでも自分的には満足ですよ。
すごく自然な感じの二人がグッドです。
新作も楽しみにしております。頑張ってください。
- 290 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/12(火) 05:03
- 王子様いいですね〜
待ってます。
- 291 名前:プリン 投稿日:2004/10/12(火) 18:08
- 更新&完結お疲れ様でしたー!
DOGすごくよかったですよぉw
犬みたいなよっちゃん可愛かったっす(w
新作も楽しみですっ。頑張ってください。
王子様(*´Д`)ポワワ
- 292 名前:haruri 投稿日:2004/10/14(木) 21:44
- レスありがとうございます。
>>288 名無飼育さん
予告したもののまだまだ未完成だったり。。。
でも、期待に添えるようがんばります。
>>289 名無飼育さん
そう言っていただけると大変励みになります。
新作もいいものが書けるよう努力します。
>>290 名無飼育さん
新作の様子はどうでしたか?
一応言っときますが、「ホントに」王子様ってわけではないので、
よろしくお願いします。
感じがね、はい。
>>291 プリン
毎度どうも。
DOGはよっちゃんが犬っぽいので書いてみました。
なんか好評だったようで嬉しい限りです(*^_^*)
王子様は、よっちゃんですが、どんな王子様になるのか分かりません。
最初はこんな感じで。
では、新作の「トリコ」です。
漢字で書くと虜、擒です。
- 293 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:45
- ◇ ◇ ◇
おばあちゃんと話してるときも、
家へ帰ってる最中も、
家についてからも、
あの人のことが頭から離れない。
- 294 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:45
- 肌は透き通るように白くて、
もとからそうだったみたいな綺麗な金髪、
そして、綺麗な目。
でも、その瞳は少し、
怒ってるような、
憎しみを含んでるような、
そんな感じがした。
- 295 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:45
- 話し掛けようとした直前で、
あたしは言葉が出なくなって。
あの人はゆっくり歩いて去っていった。
- 296 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:46
- .
.
.
- 297 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:46
- 何度も何度もあの人の横顔を思い出す。
でも、回数を重ねるにつれて、
どんな横顔だったのかが分からなくなってくる。
あれだけの衝撃を受けたはずなのに、
思い出せない。
コピーを重ねすぎて、
形が崩れたそれは、
ホントの形が分からない。
- 298 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:46
- でも確かにあの人は王子様みたいに見えた。
威張ってる王子様じゃなくて、
行動を制限されてしまった、
自由を奪われてしまった、
かわいそうな王子様。
- 299 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:47
- .
.
.
- 300 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 21:47
- 明日も病院に行ってみよう。
そう思った。
- 301 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 22:23
- ◇ ◇ ◇
やっぱりそう簡単に上手いこと会えるものじゃなかった。
いままでの人生で一番気になる人。
だけど、名前も分からないし、
顔もはっきり思い出せない。
いままでの人生で一番はやく好きになってしまった。
もしかしたら、すごく危ない人かもしれない。
悪い人かもしれない。
だけど、すごく気になる。
もっと知りたいって思う。
側にいたい。
- 302 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 22:23
- ◇ ◇ ◇
翌日も。
その次の日も。
その次の次の日も。
あたしは病気でもないのに病院に通ってる。
あの人を一目でも見るために。
あたしの気持ちとは反対に
あたしの中でどんどん消えていくあの人の姿を塗り替えるために。
- 303 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 22:23
- ◇ ◇ ◇
ついにその日がきた。
始めてあった日からちょうど1週間が経っていた。
前に見た場所と全く同じ場所で、
やっぱり、前と同じような格好のあの人を見つけた。
病院の服を着て、
中庭を見下ろす、
悲しそうな、辛そうな目。
前と違うことと言えば、
隣に点滴がお供をしてることくらい。
- 304 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 22:23
- 今度は忘れないようにしっかりと目に焼き付ける。
超高画質で。
あたしの目があの人の手を捕らえたとき、
あたしは見てしまった。
あの人の、左手の薬指に光る、シンプルなリングを。
単なるおしゃれなのかもしれないけれど、
やっぱり・・・。
- 305 名前:トリコ 投稿日:2004/10/14(木) 22:24
- .
.
.
つづく
- 306 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/14(木) 23:37
- 新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
王子様キャラの吉いいですね〜
その王子様に一目惚れのチャミもかわゆいww
- 307 名前:プリン 投稿日:2004/10/15(金) 19:15
- 更新お疲れ様ですー!
きましたねーw
こういうの大好きっすw
王子様ってのもまた(・∀・)イイ!w
期待してますねー♪
- 308 名前:haruri 投稿日:2004/10/18(月) 20:57
- >>306 :名無飼育さん
いしかーさんは王子様よっちゃんにもう夢中です。
>>307 :プリンさん
新作「トリコ」は
王子様よっちゃんの今はまだ秘密の過去と現在と未来
そして、
王子様よっちゃんに少し振り回されつつも夢中ないしかーさん
を書いてゆく予定です。
今回の作品は長編になりそうな予感。
- 309 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:57
- ◇ ◇ ◇
あれから2日が経った。
なぜだか病院に行く気になれなくて、あれっきり行ってない。
なのに、気づいたらあの人のこと考えてしまう。
前の時は、思い出そうと思っても思い出せなかったあの顔も、
今は鮮明に思い出せる。
「何でだと思う?」
さっきから膝の上にのっかってるミルクティーみたいな色の
小さな猫に話し掛けてみる。
撫ででやると、気持ちよさそうに目を細める。
こないだペットショップで一目惚れしてつれて帰ってきたこの
子猫はあたしに懐いてくれてる。
たまに自分を舐めたりもする。
行動の全部がすべて可愛らしい。
- 310 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:57
-
また、行ってみようって思ったのと、
携帯と財布を手にとって出かける準備をし始めたのと、
どっちが先立ったのかは分からない。
でも、あの人にまた会いたいって思ったのは確か。
- 311 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:58
- .
.
.
病院に着くと、いつもの場所に行ってみる。
やっぱりいないか。。。
って帰ろうとしたその瞬間、
振り返ると、
あの人。
- 312 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:58
- そしたら、すごく嬉しくて、
やっぱり、会いたかったんだなって、
思った。
このまま、擦れ違って帰ったら後悔する気がする。
だから「こんにちは」
たったそれだけだけど、
ほんとにそれだけなんだけど、
言ってみた。
- 313 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:58
- あの人は少し微笑んだ。
いつものあの横顔とは全く違うその表情。
「こんにちは」
そうは言ってくれなかったけど、
あの微笑みは、
そう、
まるで、
王子様みたいだった。
- 314 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:59
-
この人は、きっと、もっと、
いろんな顔を持ってる気がする。
だから、
気づいたら、
白いほっぺにキスをして、
そしたら、
すごく恥ずかしくて、
家まで一気に走ってた。
- 315 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:59
- .
.
.
家に帰って、
子猫を膝に乗せて
「これでよかったと思う?」
聞いてみる。
子猫はやっぱり気持ちよさそうに目を細めるだけ。
明日も行ってみよう。
そう思った。
- 316 名前:トリコ 投稿日:2004/10/18(月) 20:59
- .
.
.
つづく
- 317 名前:プリン 投稿日:2004/10/19(火) 15:08
- 更新お疲れ様ですw
んもー。可愛いー!!
可愛すぎますですわよ。
長編ですかwヤターw
頑張ってくださいねぇヽ(*´▽`)/
- 318 名前:haruri 投稿日:2004/10/21(木) 23:05
- >>317 : プリンさん
なんか、煮詰まってますがちょい更新。
少なくて申し訳ないです・・・。
- 319 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:06
- ◆ ◆ ◆
さっきのは一体何だったんだろうか。
いきなりほっぺチューして走り去ってったあの女・・・。
知らない人だった。たぶん。
いや、実は知ってるのか?
こんにちはって言ってたしな。
中学とかの同級生かな?
だからってキスなんてしないか。
変なヤツ。
てか、入院して、しばらく経つけど、だーれも来やしない。
一人くらい来ても良くね〜?
- 320 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:07
- 「ご飯ですよ〜。」
看護婦はそう言ってメニューを読み始める。
また、おかゆか・・・。
あたしの身体のいったいどこがおかしいんだよ。
点滴の種類も何か変わったっぽいし。
- 321 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:07
-
あー、あいつ、いま頃何してんだろ。
.
.
.
えっ?
なんで、あいつのこと思い出してんの?
やっぱ知ってるヤツ?
- 322 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:07
- ◇ ◇ ◇
昨日のコト怒ってるかな。
いきなりだもんな〜。
あたしの気持ちを表しているかのように、中庭には雨が降り注いでいる。
「あ、・・・」
声のしたほうを向くと、あの人。
「あ、・・・」
- 323 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:08
- .
.
.
.
.
.
「あんただれだっけ?」
「あ、石川梨華って言います。」
「いや、そういうことじゃなくて、あたしの知り合いとか?」
「いえ。」
「ああそう。やっぱね。」
- 324 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:08
- .
.
.
.
.
.
「あの!彼女居ますか?」
「は?」
あたしってば、我慢できなかった。
具合はどうですか?とか、そんな風な会話から始めればいいのに。
でも、薬指が気になって仕方なかったんだもの。
- 325 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:09
- 「彼女はいないよ。ナンデ?」
「え、でも!・・・左手の薬指・・・。」
最後になるにつれてあたしの声は勢いを失ってゆく。
「あぁ、これ。・・・抜けなくてさ、へへ。」
抜けないだけだと、この人は言ってるけど、その目は少し悲しそう。
もっと知りたい。
って思った。
だけど、今、聞くべきじゃない。
って思った。
だから、ウソの笑顔を向けることしか出来なかった。
「じゃあ」とか何とか言って、お別れをした。
- 326 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:09
- そういえば、前のコト何も突っ込んでこなかったな。
そういえば、お部屋の場所聞けばよかった。
そういえば、名前も聞いてない。
なんでこうも、あの人を前にすると、はちゃめちゃな行動ばっかり
とってしまうんだろう。
そして、あたしの思い描いてた王子様像が少しずつだけど、
崩れてきてるような気がする。
でも、
もっと、
もっと、
知りたい。
- 327 名前:トリコ 投稿日:2004/10/21(木) 23:11
- .
.
.
つづく
※注意 ◆◆◆ 以下、吉澤視点
◇◇◇ 以下、石川視点
です。最初に言えって話ですが・・・(^^;
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/22(金) 00:01
- 続きがたのしみだぁ
- 329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/22(金) 00:25
- 梨華ちゃん積極的ですね〜
いいよ〜いいよ〜
- 330 名前:haruri 投稿日:2004/10/28(木) 00:30
- 読んでいただき感謝感謝。
>>328 :名無飼育さん
更新しました。良い文が書けなくて行き詰まり中ですが。。。
>>329 :名無飼育さん
いしかーさんはつっぱしりします。
- 331 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:31
- ◇ ◇ ◇
予定通り病院へと向かう。
着いたら、いつものあの場所に行く。
中庭を見下ろせるあの場所には、あの人がいるはずだから。
・
・
・
・
いた。
自分でも、はっきり分かる。
あの人に会えるとすごく嬉しい。
「こんにちは。」
呼びかけると、あの人は振り向く。
でも様子がおかしい。
「元気ない?」
いつもより、寂しそうで。
そして、少し潤んだ目。
- 332 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:31
- だから、聞いてみた。
そしたら、パッと表情が変わる。
ホントに。ビックリするくらいに。
寂しそうな目は、冷たい目に。
潤んでた瞳は鋭く。
でも、それは、
まるで、
何かを隠しているようで。
あたしの問いに「いや。」そう言って、答えた。
「あの。お名前は?」
「吉澤ひとみ。」
「え?」
「なんでよ。」
「女の子?」
「は?ほら、胸あるじゃないのよ。確認する?」
- 333 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:31
- あたしがずっと王子様、王子様って追っかけてた、その人は、
もしかしたら、
いや、
王子様じゃなくて、
お姫様の間違いだったみたい。
でも、鋭い瞳が優しい瞳に変わっていくのを見ると、
やっぱ、
王子様だ。って思った。
「なに?男だと思ってた?」
そう言って、あの人は笑う。
ちょっと悲しそうに。
「あたしの部屋来る?」
「いいの?」
「嫌だったら誘わないって。」
- 334 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:32
- ・
・
・
あの人、
いや、
彼女の部屋は、
とってもシンプルだった。
ベッドがあって、
窓があって、
台があって、
それには、
何も置いてなくて。
花もなくて、
紙袋とかもない。
目立つものといえば、
点滴くらい。
いったい、どんな生活をしているんだろう。
あたしの部屋とは比べ物にならないくらい、あっさりしすぎている。
「何もないでしょ。」
「うん。」
思わず本音を言ってしまう。
彼女は少し寂しそう。
「ちょっと待って!」
そう言って私は部屋を飛び出す。
「病院の中は走らないで下さい。」誰かに言われた。
でも、あたしは、走らなくちゃいけない気がした。
- 335 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:32
- ◇ ◇ ◇
あたしが病院を飛び出して、向かった場所は、
お花屋さん。
花を持って帰ると、
そこには、
腕に点滴の針を刺して、眠っているお姫様。
初めて見た彼女の寝顔。
病人みたい。
いや、
実際病人なのだけど。
そう、
思ったの。
- 336 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:32
- 目を覚ました彼女は言う。
「なにそれ?」
「シクラメンだよ〜。この部屋寂しいじゃない。だから。
お水ちゃんとあげてね?」
「まぁ、いいけど。」
「シクラメン好き?」
「あぁ、うん。」
ちょっぴり寂しそうな表情をする。
「嫌い?」聞くと「好きだよ」って言ってくれた。
彼女の左手の薬指。
そのことはまだ聞かずにおこう。
「また来るね。」そう言うと、「うん」と言ってくれる。
寂しい顔と悲しい顔と辛そうな顔と、そして、やさしい顔。
もっと、知りたい。
- 337 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:33
- ◆ ◆ ◆
突然飛び出して行ったあいつ。
待つのも馬鹿らしくて、眠りに着く。
帰ってきたあいつの手にはシクラメン。
その花がお見舞いに良いか悪いか、
そして、鉢物が良いか悪いか、
というのは別として。
どうして、シクラメン?
シクラメン。
嫌いだ。
過去を思い出すから。
- 338 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:33
- でも、あいつに好きかと聞かれたとき、言えなかった。
いきなり、話し掛けてきたかと思えば、キスをして走り去った、
分けわかんないあの女。
だけど、
あいつを悲しませたくなかった。
残念な顔は見たくなくて。
喜ぶ顔が見たい。
明日も来るかな。
・
・
・
・
なに言ってんだろう、自分。
- 339 名前:トリコ 投稿日:2004/10/28(木) 00:33
- .
.
.
つづく
- 340 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:34
- ◇ ◇ ◇
あれから毎日あの人を尋ねている。
あの人の部屋に行くと、寝てるか窓の外をながめてるか、
もしくは、点滴をお供に連れて病院内をフラフラ歩きに
出かけてるかのどれかだ。
あたしが毎日お見舞いに来るようになって、あの人の
部屋はなんだか騒がしくなってきた。
手ぶらで来ることは少ない。毎回何かもってくるものだから、
彼女の部屋は少しカラフルになってきた。
そして、あの人も少し変わった。
いや、変わってないのかもしれないけれど、前よりも笑うようになった。
ぎゃはぎゃは笑うんじゃなくて、あたしの顔を見て、時には覗き込んででも、
笑顔を見せてくれる。
自分から話を切り出したりもするようになった。
- 341 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:35
- でも、「あんた」って呼ぶのは変わらない。
でも、左手の薬指のシンプルなリングも変わらずそこにいる。
「こんにちは」
開けっ放しの個室のスライドドアの横から顔だけ出して言ってみる。
「ああ」
少し笑う。
喜んでくれてるのかな。
- 342 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:36
- そう。
いつも通り、いろいろ話して、そしてバイバイするはずだったの。
ケンカなんてする気全然なかったのに。
あの人が怒るとも思わなかった。
「初めて会ったとき、王子様だって思ったんだよ〜。」
そんな話をしたら、あの人の目の色がパッて変わった。
顔色も。
そして「王子様なんかじゃないし」って怒った。
そして「そういうこと言われたくない」って言われた。
- 343 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:36
- 初めて聞いた強い口調。
あたしは上手く対応できなくて。
そしたら看護婦さんが入ってきて。
点滴を変えたりだとか、
いろいろ仕事をしていく。
その間、あたしは何もいえなくて。
看護婦さんが出て行ったあとも、何もいえなくて。
そしたら、どんどん居心地が悪くなって。
「じゃ、帰るね」なんて言って、病院を後にしてしまった。
- 344 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:36
- 分かってる。
こんなことしたら、明日行きにくくなること。
分かってる。
それが重なると、どんどん離れていっちゃうこと。
分かってる。
でも、どうしたらいいのか分からなくて。
弱いあたしはその場から逃げてしまった。
あの人は懐いてくれた。
心を開いてくれているものだとばかり思ってた。
すべてを知った気になっていた。
実際はいわゆる「氷山の一角」だったらしい。
あたしは全く分かってなかったんだ。
- 345 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 21:37
- しかも、ひょっとしたら、あの人はあたしのことを
好いていてくれるのかも、とさえ思ってた。
その、一人の女として。
でも、あたしは全く分かってなかったんだ。
あたし、どうしたらいいんだろう。
- 346 名前:haruri 投稿日:2004/10/29(金) 21:39
- .
.
.
.
つづく
(次回、完結予定)
>>プリンさん
長編に出来ませんでした。
なんだか、調子が出ませんでした。
すいません(T_T)
- 347 名前:haruri 投稿日:2004/10/29(金) 22:21
- さっき更新したばっかしですが、また更新します。
今回は完結ではありませんので、ご注意を。
- 348 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:21
- ◆ ◆ ◆
あれから、あいつはずっと来てない。
毎日のようにやって来て、オチのない話をして帰っていく。
でも、
あいつの笑顔が好きだった。
辛いことなんて何もなくて、
学校でも上手いこと人間関係を築き上げて。
見るからに、女の子で。
世の中の汚れたトコロに触れたことなんてなくて。
そう、何も知らない女の子。
でも、あいつの笑顔見てると、自分が綺麗になってく気がして。
あたしの中に渦巻くドス黒い嫌な汚れが、
だんだん落とされていく気がして。
ずっと昔みたいに純粋になれるかもなんて思ったりして。
- 349 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:22
- ふと部屋を見渡せば、やけに賑やかな部屋になってしまっていることに気づく。
そして、あいつが一番最初に持ってきたシクラメン。
『薄いピンクの花って、好きな人の前で、ほっぺを染めた女の子みたい。
恥ずかしがり屋さんだね。あなたみたい。』
シクラメンを見ると思い出す。
昔のこと。
そう、昔の彼女のことを。
シクラメンはそいつの好きな花。
- 350 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:22
- 通ってた女子校で嫌になるくらい女の子達に囲まれて。
みんな軽々しく、あたしに向かって「好き」とか告白したりして。
正直、そんなの信じれなくて。
それに、バカじゃねぇの、とか思ったりして。
男のいない学校にいる間の暇つぶしのようにも思えて。
そんな中で唯一あたしを夢中にした彼女。
ほとんど一緒にいた。
- 351 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:22
-
- 352 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:22
-
でも、
そいつ、
いじめられて、
死んじゃった。。。
- 353 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:23
- あたし信じれなくて。
いじめにも気づいてなくて。
あたしを取り囲んでた女の子たち。
そこまで本気だと思ってなかった。
自分の考えの甘さに嫌気がさした。
同然あたしは周りにキツクあたって。
そしたら、今度はあたしが標的。
過去にチヤホヤされてたなんて思えないくらい。
- 354 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:23
- でも、負けるわけにはいかなかった。
彼女のためにも。
何されたって、涼しい顔してた。
指輪も絶対はずさなかった。
はずしたら、どんなに楽かと思ったけど、
彼女のことを忘れたら、どんなに楽かと思ったけど。
出来なかった。
彼女との関係を否定しているようで。
- 355 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:23
- シクラメンと王子様。
一番嫌なものと一番嫌いな言葉。
それを次々とあたしに当てつける、あいつ。
分かってる、
あいつは全然悪くないってコト。
だけど、気づいたら
キツイ言葉を投げつけてしまっていた。
- 356 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:23
- 「ゴメン」すぐ言えばよかったけど、言えなかったんだ。
あたしは、王子様でも、恥ずかしがり屋でもない。
周りを傷つけてばかりいる、サイテーな弱虫だ。
弱虫はなかなか死んでくれない。
どんな殺虫剤も効かない。
弱いくせに強い虫。
こいつがあたしの中から消えてしまえば良いのに。
- 357 名前:トリコ 投稿日:2004/10/29(金) 22:24
- .
.
.
つづく
(次回こそ完結予定)
- 358 名前:プリン 投稿日:2004/10/30(土) 16:38
- 更新お疲れ様ですっ!
すいませんだなんて。謝らないで下さいなw
勝手に1人で喜んでただけですから(w
次回の更新待ってます!完結かあ…楽しみだなぁ。
- 359 名前:haruri 投稿日:2004/10/30(土) 22:27
- >>プリンさん
そうでしたか。なら、一安心。
更新します。完結しますよ。
次はどんな話にしようか考え中です。
- 360 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:28
-
◇ ◇ ◇
あれから本当に一回もあの人に会いに行ってない。
もう、いまさら、って感じで。
どんな顔して会いに行けば良いのか分かんない。
おばあちゃんのトコロには何度か行った。
でも、あの人の部屋には近づいてない。
中庭を見下ろせるあの場所にも。
今夜は特別冷える。
もう12月。
世間はクリスマス色に染まりだした。
雪はまだまだ降りそうにない。
冬の夜空は星がよく見える。
ベランダに出て星を眺める。
夜空に輝く星を見てたら、あの人の顔が頭に浮かぶ。
- 361 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:29
- 辛そうな顔。
寂しそうな顔。
笑った顔。
楽しそうな顔。
満足そうな顔。
そして、
怒った顔。
次々に浮かんでは消えていく。
そしたら、無性にあの人の顔が見たくなって。
夜道を走って病院に向かってた。
夜の病院って不気味。
静かなのにいろんな音が聞こえる。
やっぱり見つかっちゃ、ヤバイ。
静かに静かにあの人の部屋へと向かう。
- 362 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:30
- きっとビックリするだろうな〜。
でも、心の中の不安は消えない。
久しぶりに来たあたしを、
しかも夜に来たあたしを、
受け入れてくれるかどうか。
すごく不安。
あの人の部屋に着いた。
ドアをそーっと開ける。
ベッドの上には大好きな人。
- 363 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:30
-
そのはずだったのに、
いない。
部屋の中にはシーツのかかってないベッド。
窓から射す月の光でぼんやりと青白く見える部屋。
- 364 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:31
-
さっきとは違う不安が頭をよぎる。
あの人は、病人だってこと。
まさか。。。
そしたら、涙が出てきて。
「大好き」も「ごめんなさい」も「ありがとう」も何も言えてない。
そして、ふと気づく。
窓際に置かれた指輪。
そう、あの人が外そうとしなかったあの指輪。
分かってた、外れないんじゃなくて、外せないんだってこと。
指輪を握り締めて、泣く。
もう、泣き声を抑えられない。
- 365 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:31
- 足音が聞こえる。
見つかった。。。
「こんな時間に、こんな所でなにやってんの?」
耳に届いてきたのは、大好きなあの人の声。
振り返ると、そこには、大好きなあの人。
おばけ?
涙で視界がはっきりしない。
「何してるのって聞いてるんだよ。」
幽霊になってしまったあの人が近づいてくる。
青白い顔。
- 366 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:32
- そしたら急に抱きしめられて。
あたし、あの人が望むなら、死んでもいい、なんて、思った。
「バカ、おせーんだよ。」
「あたしどうなるの?」
「は?」
そう言って、あの人は腕を解いて、分けわかんないって顔であたしを見てる。
「ごめんね。ずっと来なくて。こんなことになるなんて。」
あの人にしがみつく。
「ねぇ、何言ってんの?」
「だって、、、」
「あ、まさか、あんた、あたしが死んだとでも思ってるわけ?」
- 367 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:33
- 目の前のあの人は今にも噴出しそう。
え、死んじゃったんじゃないの?
「ホントバカなヤツ。」
「バカとか言わないでよ。」
あたしが拗ねた声を出すと、急に抱きしめられた。
「でも、スゲー好き。だよ。」
スキ?
すき?
好き?
好きーーー!?!?!?!?
今、好きって言った???
「ずっと待ってたんだ。あんたのこと。自分が思ってた以上にハマってたらしい。」
これって告白?
- 368 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:34
- あたしがそんなこと考えてたら、急にほっぺに何かがあたった。
それは、あの人の唇。
「なに、マヌケな顔してんだよ。」
「今の、なに?」
「いつかの、あんたを真似してみた。」
そう言って、あの人はいたずらっぽく笑うの。
だから、キスし返してやったの。
今度は口に。
- 369 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:35
- あの人、ビックリした顔して。
でも、すぐにまた、いつものいたずらっぽい表情に変わって。
「今のは?」
「キスだよ。」
「これが〜?」
そしたら、キスし返された。
それは、一度では終わらなくて。何度も何度も。
こんなの初めて。
キスがこんなに気持ち良いなんて知らなかった。
キスしてる間は、心臓は止まってるみたいで。
終わったら、急にドクドク動き出すの。
- 370 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:36
- あたし、たぶん真っ赤になってる。
でも、あの人も真っ赤になってる。
少し荒い息遣い。
ベッドに倒される。
マットレスだけのそれは少し寝心地が悪い。
「と、その前に。」
「なによ。」
「どうなの?そっちは。」
「え。そんなの聞かないでよ。どうせ、初めてよ。」
「このバカ。そうじゃなくて、あんたの気持ちを聞いてるの。」
あたしってば、パニックになって余計なことまで言ってしまった。
「ほら、赤くなってないで。どうなの?」
「好きに決まってるじゃない。この、バカ!」
「そっか。」
あの人の顔が、あたしの首元に埋まる。
そして、首や耳にキスをされる。
あたしの心臓は、ドキドキしっぱなし。
きっと、あの人にも聞こえてる。
- 371 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:36
- ◆ ◆ ◆
寒さで目が覚めた。
さすがに裸に毛布一枚はないか。
なのに、腕の中の、女の子は、あたしにしがみついてぐっすり眠ってる。
まったく、のんきなヤツ。
このままじゃ、風邪をひく。
それに、こんなとこ発見されたら、ヤバイ。てか、はずい。
こいつってば揺すっても全然起きる気配なし。
仕方ないから、先に自分だけ服を着る。
で、眠りこけてる、お嬢さんに服を着させてやる。
それでも、まったく起きる様子はない。
全部終わって、あたしは、こいつをおんぶする。
夜道を歩いて帰る。
服を着こんだ女の子が二人。
ふたりともゴアゴアしてて、おんぶしにくいったらありゃしねー。
でも、どうにかこうにか、自分のアパートの部屋に着く。
もう、ヘトヘトだ。
こいつをベッドにおろして、靴を脱がして、コートを脱がして、
自分もジャンバーを脱いで、掛け布団をかけて、ひっついて眠る。
最初は寒い。
でも、だんだん、二人の体温で、温かくなっていく。
心地よい
とは、このことか?
- 372 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:37
- ◇ ◇ ◇
目が覚めたら、知らないトコロにいた。
でも、寝の前には大好きな、あの人の顔。
そして、寝る前のことを思い出す。
恥ずかしくなって、しがみつく。
そしたら、大好きな、あの人は目を覚ます。
そして、キスをする。
あたしの王子様は、王子様なんかじゃないらしい。
でも、あたしをトリコにする。
いじわるだけど、大好きな人。
- 373 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:38
-
指輪のこと、昔のこと。
嫌なら、教えてくれなくてもいい。
その人のことを忘れようとしなくてもいい。
いま、この人の一番近くにいるのは、あたしだから。
あたしだけしか見させない。
独占欲が強い?
そうかも。
過去のトリコから、開放させてあげるのが、あたしの役目。
そして、いつか、あたしだけを見てくれるようになって欲しい。
- 374 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:38
- トリコ。
何かに捕らわれた人。
それっていい意味?悪い意味?
過去を引きずるのは、トリコの仕業。
その人しか見えない。夢中なの。それは嬉しいトリコ。
トリコ。
その意味のとらえ方は、人それぞれなのかもしれない。
- 375 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:39
-
なんてコトを、あたしは真剣に考えてるのに。
目の前のいたずらっ子は、昨日の晩のことを詳細に語ってる。
うわ〜、「初めて」もらっちゃった〜、とか言うの。
- 376 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:39
-
この人は多角体。
いろんな顔を持ってるの。
でも、たくさんたくさん面が増えたら。
いつか、あなたは球になる。
だから、あたしは、夢中になっていろんな面を探す。
あたしはあなたにトリコだから。
- 377 名前:トリコ 投稿日:2004/10/30(土) 22:39
- .
.
.
おわり
- 378 名前:haruri 投稿日:2004/10/30(土) 22:46
- あ、多角体じゃない、多面体か(^^;
- 379 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 01:34
- 連続更新&完結 お疲れ様です。
すごいよかったですww
haruri 様のいしよしワールド最高っす(>_<)
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 03:23
- 楽しかったです
わくわくしました
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 03:29
- 吉の過去を石の前では(あえて?)ぼやかしたのがウマイなと。
なんつったらいいのかよくわかりませんがウマイなと思いました。
- 382 名前:プリン 投稿日:2004/10/31(日) 19:20
- 更新&完結お疲れ様でしたw
もーとにかく素晴らしかったです。
やっぱいしよし最高ですねw
次回作も期待してまーす。頑張ってくださいっ!
- 383 名前:haruri 投稿日:2004/11/06(土) 20:18
- >>379 名無飼育さん
haruriのいしよしワールド。
褒めていただいて、かなり嬉しいです。
これからも頑張ります(^-^)
>>380 名無飼育さん
こっそり、挫折しかけていた「トリコ」。
なんとか完結できてよかったです。
「わくわくした」とか「楽しかった」とか
言っていただけると、素直に嬉しいです。
>>381 名無飼育さん
実はかなり、悩んだんですよ。言わそうか言わさまいか。
でも、結局いしかーさんにはあえて秘密にしたままで、という形にしました。
褒めていただきありがたいです。
>>382 :プリン さん
素晴らしい!?よかったぁ。すごく嬉しいです。
途中で投げ出さなくてよかった。。。
次作。テーマは決めました!
でも、内容はまっさら。
しばらく、一人で考えて、物語を考えようと思います。
気長に待ってて下さい。
暗く、深く、でも甘く。わくわく、ドキドキ、しんみり。
そんな作品を書けるようになりたいものです。
- 384 名前:まだ無題 投稿日:2004/11/06(土) 20:19
- ---------------------
愛すること。
愛されること。
どっちが楽だと思う?
---------------------
- 385 名前:まだ無題 投稿日:2004/11/06(土) 20:20
- ---------------------
愛すること。
愛されること。
どっちがツライと思う?
---------------------
- 386 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:17
- ● ● ●
湯船にずっとつかるのが嫌い。
眠りに入るまでの時間が嫌い。
踏み切りで待ってるときが嫌い。
つまらない授業を聞くのが嫌い。
電車に長く揺られるのが嫌い。
だって、そんな気ないのに、あの人を思い出すから。
前は好きだった、こんな時間。
だって、あの人のことを考えているだけで幸せを感じたから。
- 387 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:17
- 声。
仕草。
横顔。
それが浮かんでは消えていく。
ちょっと、妄想してみたりもして。
そんな時間が好きだった。
今は違う。
この恋が報われないことを知ってしまったから。
女の子同士。
分かってはいた。
でも、少し期待してた。
もしかしたら、自分のことをあの人が好きでいてくれるかもしれない、と。
この恋は報われるかもしれない、と。
現実を知ってしまった。
あの人にとって、あたしはこれっぽっちも恋愛対象じゃない。
- 388 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:18
- ------------
初めてあった日のこと、全然覚えてない。
あの人は、どんな服を着て、どんな髪型だったのか。
全く覚えてない。
でも夏休み明け、2回目に会ったときのことはよく覚えてる。
そして、一気にあの人を好きになった。
もっと知りたいって思った。
学園祭でのあたしらのグループの世話をしていてくれていた、
あの人は、1年でまだまだ高校生みたいなあたしらに色々と
教えてくれた。
- 389 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:18
- 綺麗にメイクをした、黒髪でメガネの、先輩。
背はあたしよりは低い。
少し特徴のある声。
名前も学年も分からない。
あたしは何も話し掛けることができなかった。
ただ横顔を見ているだけしか出来なかった。
目が合えばそらす。
自分が自分でなくなったみたいだった。
----------
- 390 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:19
- 何の進展のないまま学園祭は終わって、そして季節は冬になった。
ファーの着いたジャンバーが増え、手袋やマフラーをしている人を見ても、
違和感を感じなくなって、冬になったことを実感する。
大学は広い。
毎日のように顔をあわせていた、学園祭期間がウソのように、
先輩を見ない。
だから、久しぶりに会うことが出来たとき、つい言ってしまった。
エレベーターを待っているあの人に
「すいません」
と話し掛けて。
「はい?」
と答えたあの人に
「好きです」
と宣言した。
そしたら、ちょうどエレベーターの扉が開いて、
あの人は去っていった。
あたしに背中を向けて。
叶うことはないと分かってた。
すこし期待はしていたけど。
でも、エレベーターの鏡に映ったあの人の顔を見てはっきりとした。
- 391 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:19
- -------------
愛されるのは楽だと思う。
だって、愛されていればいいのだから。
愛するのは辛い。
だって、愛されなければ意味がないから。
- 392 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:19
- ○ ○ ○
湯船にずっとつかるのが嫌い。
眠りに入るまでの時間が嫌い。
踏み切りで待ってるときが嫌い。
つまらない授業を聞くのが嫌い。
電車に長く揺られるのが嫌い。
だって、そんな気ないのに、あの人を思い出すから。
昔は好きだった、こんな時間。
だって、まだ現れない恋人のことを考えているだけで
幸せを感じたから。
ちょっと、妄想してみたりもして。
そんな時間が好きだった。
今は違う。
- 393 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:20
- ------------
初めてあった日のこと、全然覚えてない。
あの人は、どんな服を着て、どんな髪型だったのか。
全く覚えてない。
その次も。その次も。そのまた次も。
でも、この間、そう、私に「好き」だといって来た日のことは
よく覚えてる。
エレベーターを待っていたら、あの人と目が合って、そしたら、
こっちに向かってきて。
たぶん”告白”をしてきた。
最初は冗談だと思った。
だから何も言わずにエレベーターに乗ったけど。。。
一人になると、あの人が私の頭を支配するの。
- 394 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:20
- おそらくノーメイクで、金髪で色白の、後輩。
背は私より高い。
すらりとしたシルエットで、クールな雰囲気。
でも、時間が経つにつれ、あれは冗談ではなく本気だったんだろうと強く感じる。
私を見るあの人の目は真剣で。
まっすぐだったこと、よく覚えてる。
大学は広い。
あれからずっと彼女を見ない。
でも、むしろ会いたくないかもしれない。
- 395 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:20
- 私の頭を支配する彼女だけど。
確かに少し気になるけど。
私は女の子。
やっぱり普通の恋がしたい。
それが素直な気持ち。
違うのかな。。。
今日もあの人が私を支配する。
あの人が放つ強い気持ちを感じる。
- 396 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:21
- -------------
愛するのは楽だと思う。
だって、一方的だっていいのだから。
愛されるのは辛い。
だって、強い気持ちに答えることが出来ないことだってあるから。。
- 397 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:21
- ● ○ ● ○ ● ○
愛するって何?
愛されるって何?
● ○ ● ○ ● ○
- 398 名前:love? 投稿日:2004/11/27(土) 17:24
-
つづく
- 399 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:54
- ○ ○ ○
「好きです」と言ったあの人の声。
今でも鮮明に頭に残ってる。
あれだけ、私のことをまっすぐ見て告白できるのなら、
エレベーターに乗る私を引きとめることも出来たはず。
でも、そうはしなかったあの人。
ドアが閉まる瞬間に鏡に映ったあの人。
俯く瞬間だった。
- 400 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:55
- 自分の記憶をたどる。
あの人にもっと前にあってる気がする。
あの人と私の接点を探す。
あの人はどうやって私のことを知ったのか。
私はあの人と会話を交わしたことがあるのか。
でも、どんなに考えても分からない。
人間って意識してないと、記憶に残らない。
毎日、あらゆる情報が身体を駆け巡る。
そのすべてを記憶に残すのは無理な話。
- 401 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:55
- 一人になると、こんな風になっちゃうから嫌なの。
「好き」って言われて嬉しくない女の子なんていない、らしい。
私はまさにそれに当てはまるわけで。
それがたとえよく知らない女の子でも、
やっぱり嬉しいって思う自分がいる。
- 402 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:55
- 一人になって考えるのはやっぱりあの人のこと。
いままではボヤボヤとした想像の中に描いてた、自分の理想。
いま思い浮かぶのはあの人のこと。
想像ではない、現実にいる人のこと。
気がついたら、あの人を思い出している。
- 403 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:55
- 強く相手を想うことが恋だとすれば、
これが恋なの?
その人のことが頭から離れないことが恋だとすれば、
これが恋なの?
恋愛経験ゼロの私には、どれが恋というものなのかわからない。
- 404 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 07:56
- そして、いつの日からか、
「また会いたい」
そう思い始めた。
もしかしたら、愛することは苦しいことなのかもしれない。
- 405 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 08:01
- ● ● ●
自分の中で、あの人への想いが薄れていくのを感じる。
「この恋はかなわない」
そう感じた時から、自分の中にある歯車の動きが変化した。
そして、どんどん心が軽くなってゆく。
愛することから開放されたあたし。
もう一人でいる時間も怖くない。
自分の中で、先輩が「過去」になり始めた。
- 406 名前:love? 投稿日:2004/11/28(日) 08:02
-
つづく。
- 407 名前:プリン 投稿日:2004/11/28(日) 12:32
- 更新お疲れ様です。
待ってましたぁヽ(*´▽`)/
なんかちょっと今回は新しい感じで、かなり期待できそーです…w
いつ結ばれるのかなw(爆
次回の更新も待ってます!頑張ってください!
- 408 名前:haruri 投稿日:2004/12/27(月) 09:47
- >>407:プリン さん
お久しぶりです。長いことほったらかしてすみません。
更新しました。しかも、まだくっついてないみたいな(^^;
- 409 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:50
- ○ ○ ○
あれから2ヶ月近く経った。
あの人のことを考えなかった日なんて一度もないことに気づく。
もうすぐクリスマス。
恋人たちのクリスマス。
そんなのだれが決めたの?
なんて思う人は、きっと何人もいるハズ。
でもきっと、みんな思ってる。
恋人たちのクリスマスに、仲間入りしたい。
クリスマスだけじゃない。
大好きな人と一緒に入れるのって、すごく幸せなことだもの。
- 410 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:50
- あの人は誰と過ごすんだろう。。。
そう、私はハマってしまった。
あの容姿、あの笑顔、あの仕草に。
あの日まっすぐに私を見てきた、綺麗な目。
それを再び見ることは、一度もなかった。
冬も本格的になってきて、あの人はどんな格好をするのだろう。
真っ白な肌は、さらに白くなって透き通ってるんじゃないのかな。
透明人間になって、私のこと見てたりして。
いや、さすがに、それはないよね。
- 411 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:51
- でも、強く思う。
あの人に会いたい、と。
会って、あの人をまっすぐ見たい、と。
- 412 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:51
- ● ● ●
クリスマスが近づいてきた。
街中、その雰囲気でいっぱいで、自分も飲み込まれそうになる。
いっそのこと、飲み込まれてしまえばいいんだ。
クリスマス限定カップルになれないこともないから。
自分でいうのもなんだけど、それなりにイイ女だと思う。
飢えた男の子を捕まえるのは簡単だ。
でも、そこまでは、踏み込めない。
自分の心の中で、あの先輩の存在が薄くなっていってるのは確か。
だからって、自分を売っちゃうような真似はしたくない。
そして、あの人に未練があるのも確か。
まだ、諦めたくない。
- 413 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:52
- 何度か学校の中で見かけたこともある。
ただし、すべて横顔。
そう、あの人に告白する前と同じ。
その横顔を見るたび、少し思う。
『あたしのこと忘れた?』
あたしはあの人に告白をしたわけだけど、あの人の記憶にこれっぽっちも
あたしのことが残ってないなら、それはすごく悲しい。
- 414 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:52
- 別に好きになってくれとは言わない。
急に告白してきた変なヤツ、としてでも、記憶に残して欲しい。
ふざけて告白したわけじゃないから。
ヤバイ。
また好きになってきたかもしれない。
名前も、性格も、何も知らないのに、
なんで、
こんなにも、あの人はあたしの心を捕まえて離さないんだろう。
- 415 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:53
-
なんてこと、考えながら体育やってたら、テニスボールが目の上に当たった。
硬球だ。マジで痛い。この黄色ヤロー!!
年の暮れに、あたしなんかの恋煩いのために、軽く腫れたあたしの右目。
はぁ、これじゃあ、クリスマスにそこら辺の男すらも捕まえれやしない。。。
ただでさえ寒いのに、氷水の入った袋を当てられた右目は、麻痺しちゃってる。
全くだよなぁ。。。
- 416 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:53
- ○ ○ ○
何があったんだろう。
エレベーターを降りたら、待ちに待ったあの人の姿。
次会えたときは、告白する予定だったんだけど、青く腫れた目を押さえてるのに
目がいって、呼び止めるタイミングを失ってしまった。
あの人は、私に気づかず?エレベーターにそそくさと乗ってしまった。
鏡で、腫れたところを痛そうに見てた。
立ち止まった私は友達に手を引かれて、そのまま帰路に着いた。
- 417 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:54
- あの人は痛そうだった。
でも、いいこともあった。
『吉澤』
あの人の苗字。
高校のジャージを使ってるらしいあの人。
黒いジャージの胸のあたりに、白い刺繍があった。
明日から冬休み。
でも、来年こそは、告白しよう。
私の誕生日が来る前に。
- 418 名前:love? 投稿日:2004/12/27(月) 09:55
-
つづく
- 419 名前:プリン 投稿日:2004/12/27(月) 13:46
- 更新お疲れ様です♪
くわー!!w
しっかし痛そう…w
早く結ばれるといいなあ。うんうん。
次回の更新も待ってますー。
マイペースに頑張ってください!応援してまーす。
- 420 名前:haruri 投稿日:2004/12/31(金) 21:42
- >>419 :プリン さん
いつもありがとうございます。
更新しました。
なかなかいい言葉が見つからなくて、
上手く愛の形を言い切れなかったのが悔しい。
でも、今回で最終回です。
- 421 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:43
- ○ ○ ○
朝起きたら、とんでもなく寒かった。
こんな日は、布団から出たくない。
でも、今日は友達と遊ぶ日。
っても、街をブラブラ歩くだけだけど。
だから、少し頑張って、コタツに移動する。
暖まってないコタツは、とんでもなく寒い。
目を瞑ったまま、今日は何を着ていくか考える。
コタツはちょっとずつ温まってくる。
だから、つい、また夢を見始める。
大好きなあの人を見たいから、目を開けたくないの。。。
- 422 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:43
- 「ダーーッ!!」
大慌てで支度をする。待ち合わせまで、あと10分!!
「やばい、やばい・・・」
エレベーターで、友達に「ごめん、遅れる」とメールを入れる。
チャリンコに乗って駅へと向かう。
改札を通って、ケータイを見ると着信が一件。
電話をかけると、
「・・・マジ?そっか、いいけど、大丈夫なの?行こうか?・・あ、そう。ん、じゃね。うん、いいよ。」
風邪を引いてしまったらしい。
遅れたあたしが言うのもなんだけど、ちょっと、慌てたあたしの時間を返して。。。
- 423 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:43
- でも、せっかくだから、目的地へ行くことにした。
改札通っちゃったし。
一人でも、買い物はできる。
1、2時間ブラブラして帰ろう。
電車が来た。
中途半端な時間の電車のくせに、案外混んでて座れなかった。
窓の外は、とても寒そう。
電車とおっかけっこしてる子供のほっぺはりんごのようにまっかっか。
案の定、追い抜かされて、立ち止まる子供の吐く息は、真っ白で。
- 424 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:44
- その時、電車がグラっと揺れた。
よくある事だけど、上手くかわすことが出来くて。
少しバランスを崩して、前の人にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい。」
「いいですよ。」
顔を上げる。
「あ。」「あ。」
それは、大好きなあの人。夢にまで見た、大好きなあの人。
- 425 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:44
- 「好き。」
「へ?」
大好きなあの人は、びっくりした顔して。
「まじっすか?」
「うん。」
時間が止まる。
周りの音が遠くに聞こえる。
視界に入ってるのは、あの人の目。
まっすぐこっちを見てる、目。
- 426 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:44
- 電車は目的地に着いた。
「降りる?」
「はい。」
「一人?」
「はい。そちらは?」
「一人だよ。」
「一緒にいていいっすか?」
「いいっすよ。」
あたしが、吉澤さんの真似をして言うと、笑った。
ドキッとした。
- 427 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:44
- 改札を出て、一度、止まる。
人の流れから少し外れた場所で。
「石川梨華です。」
「吉澤ひとみって言います。」
「たぶんあたしは、あなたに恋してる。好き。」
「一度は諦めたけど、やっぱ、会いたくて。好きです。」
なんだか、急に恥ずかしくなって、笑っちゃった。
そしたら、あの人もクスクス笑い出す。
- 428 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:45
- 一瞬だけ、体が自分のものじゃなくなった。
気づいたら、あの人の腕の中。
「付き合う?」
「うん。」
「よかった。」
腕の力を緩めた、あの人の顔を見ると、本当に優しい顔をしてた。
どうやったらそんな顔ができるのだろう。
- 429 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:45
- たった今、出来た、私の恋人。
愛することと愛されること。
どっちが楽とか辛いとか、いっぱい考えてた私だけど、
いまは、そんなのどうでもいいや、なんて思ってる。
だって、愛することも愛されることも幸せだから。
私の恋人は女の子。
最初は、好かれてること、すごく重かった。
私は女の子だから。
やっぱり、「普通」の恋をしたかったから。
でも、
今は、
すごく幸せ。
大好きな人が目の前にいるから。
こうやって、抱きしめてくれる。
手もつないでくれる。
そして、たぶん、キスもエッチもしてくれると思う。
- 430 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:45
- ---------------------
愛すること。
愛されること。
どっちが楽だと思う?
---------------------
---------------------
愛すること。
愛されること。
どっちがツライと思う?
---------------------
それらに、きっと答えはない。
でも一つだけ、あたしが思うのは。
愛することや愛されることが、出来るっていうのは、幸せなんだと思う。
それが、たとえ辛いものであっても。
- 431 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:45
- 「どこ行く?」
「あ、いいトコ知ってる。行く?」
「うん。」
私の恋人は女の子。
きっと、この先、少し大変で。少し傷つくこともある。
だけど、私はこの子に恋してる。絶対。
- 432 名前:love? 投稿日:2004/12/31(金) 21:45
-
おわり。
- 433 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:48
- ずっと、ずっと好きだった、あの笑顔。
でも、それがあたしに向けられることはもうない。
あの人は笑顔を見せる相手を新しく見つけてしまったから。
そして、あたしをそれを引き止めるほどの力は無くて。
そんな権利もない。
大好きなあの人に宛てた、最初で最後のラブレター。
恥ずかしいけど、ちょっと紹介します。
- 434 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:49
- --------------------------------------------------------------------
こんにちは。元気にしていますか?
この手紙が読まれているってことは、あたしが死んだってことだ。
医者に余命は伝えられてた。「あと1年だって。」母さんから聞いた。
親戚のおばさんや、見たこともないおじさんがお見舞いに来たりしたよ。
死ぬってわかってる人のお見舞いに行く気分ってどんなだろうね。
みんな、あたしの顔見て、悲しそうな顔するんだよ。こっちとしても、
どう反応したらいいのかわかんないよ。母さんは毎日のように来てる。
スゲー悲しそうな顔して。笑顔も悲しそうで。あたし、ホント親不孝者
だよ。産まれなければよかったのに。
- 435 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:49
- 友達は誰も来てないよ。誰にもいえなかった。迷ったよ、すごく。言う
べきかどうか。でも、行ったところで、みんな悲しそうな顔見せに来る
だけなんだ。それは、少し酷い言い方かもしれない。
でも、あたし、弱い人間だから。
あたしが勝手に死んでって、取り残された友達がどんな風に思うか、
はたまた、どんなに辛いことかと思ったりもしたけど。
あたしは弱いから。みんなの辛そうな顔見ることから逃げた。
そして何よりも、梨華ちゃんにだけは、絶対に言えなかった。
すごく、好きだから。ホント、好きすぎて。
結局あたしは、梨華ちゃんにぶつかることも無く、逃げてばかりの
弱虫なんだよ。
梨華ちゃんには絶対に言えない、ってのと同じくらい、言うべきだ。
と思った。すごく好きだから。もしかしたら、この想いが報われて、
死ぬまで一緒にいれるかもなんて思ったから。
でも、仮にそうなったとして、あたしの事を好きになってくれた、
梨華ちゃんを置いて、死んでゆくことはもっと辛かった。
梨華ちゃんの辛そうな顔は見たくなかったから。
あたしは、弱虫だから。逃げてばかりの最低な奴なんだよ。
- 436 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:49
- でもね、好きだよ。梨華ちゃんのこと。
なにがあっても。約束する。
びっくりしたでしょ。死んだ人間からこんな手紙もらって。
でも、この気持ち誰にも負けない。
生まれ変わったら、会いに行くよ。
吉澤より。
-------------------------------------------------------------------
- 437 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:49
- はぁ、あと1ヶ月か。
この手紙は、誰にも見られないようにしないとね。
でも、見つけてもらえないと困るなぁ。
どこにおいとこうかなぁ。
ん、なんか眠くなってきた。
- 438 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:50
- --------------------
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--
「ばかぁ!」
心地よく眠りについてたら、叩き起こされた。
誰だ、病人に、こんなひどいことするのは。
目を開けると、涙でぐちゃぐちゃの梨華ちゃんがいた。
なんで?
- 439 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:50
- 「何これ!?」
「ら、ラブレター?」
「違くて!なんで、こんな大事なこと早く言わないの!?」
「すみません。」
いつもは、大人しくて、優しい微笑みを振りまいているのが嘘のように、
梨華ちゃんは取り乱して、泣きじゃくって怒ってた。
「ごめん。」
「ごめんで済めば、警察はいらん!!」
「は、はあ。」
怖い・・・。
- 440 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:50
- 「あたしだって好きだもん!なのに、何も言わずに死んじゃうなんでずるいよ。
あたしにだって告白する権利あるもん。逃げてんじゃないわよ!」
ものすごい剣幕の梨華ちゃんにあたしはあたふたする。
「ここに書いてあることホント?」
「ど、どれ?」
「全部!」
「本当です。」
「じゃあ、言って。約束して。どんなことあってもあたしのこと好きなんでしょ?」
- 441 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:51
- そろそろ腹を割るときが来た。逃げてばかりではだめだ。というか、逃げれない。
だから、思い切って、わーわーわめき散らしてる、梨華ちゃんをベッドに座ったまま抱き寄せる。
「好きだよ。約束する。側にいて。ずっと笑顔見せて。あたしだけに。」
我ながら、カッコよく決まった。
なんて思ってたら、腕の中の梨華ちゃんは、また泣き出した。
「え、なに?なんなのさ?」
「嬉しいんだもん。ばか。」
小さな声で、梨華ちゃんはそうわめく。
- 442 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:51
- あたしの命は残りわずか。
身体はどんどん弱くなってく。
でも、強くなる。
梨華ちゃんのために。
もう、逃げない。
弱虫は卒業する。
大好きな恋人のために。
たくさんの愛を届けよう。
なにがあっても。
あたしは梨華ちゃんが好き。
1秒でも長く生きれるように。
頑張るよ。
- 443 名前:最初で最後のラブレター 投稿日:2004/12/31(金) 22:51
-
おわり。
- 444 名前:プリン 投稿日:2005/01/03(月) 20:50
- 更新お疲れ様ですw
ハァ━━━━━━ *´Д` ━━━━━━ン!!!!
んもー最高ですw
結ばれてよかったよぉー。ラブレターも最高(w
次回の更新も待ってまーすっ!
あっ、今年もよろしくですw
- 445 名前:haruri 投稿日:2005/01/04(火) 23:05
- >>444:プリン さん
どうもです。今年もよろしくお願いします。
このスレももうすぐ1年が経ちますね。
今日は、始めから全部読んで見ました。
結構、言葉足らずなシーンが多かったりで、少し反省。
でも、自分の書いた文に、少し、その、「こりゃいい話だ」
と思ったのも、また事実だったりする。
すみません。。ちなみに、自分はDOGが好き。
なんか恥ずかしいなぁ。つか、バカッすね。
では、新作短編です。どぞ。
- 446 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:06
-
あたしは冬が好き。
だって、
あの人に甘えるチャンスが、甘える口実が、たくさんあるから。
冬に似合う白い肌は、あたしが好きな物の中の一つ。
でも、冬になると、服に埋もれて見えなくなるのが、少し寂しい。
あたしが寒そうにしてると、何も言わずに手を握ってくれるあの人。
そして、少し照れてる横顔。
それは、昔も今も変わらない。
- 447 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:06
-
「ねぇ、よっちゃん。夏と冬どっちが好き?」
「ん〜?ちょいタンマ。」
ソファに座って、ゲームボーイで遊んでる、あの人に聞く。
この人は優しい人。そっけないけど。優しい心の持ち主。
「あー、だー!!」
どうやら、画面の中のキャラクターは命を落としたらしい。
そして、よっちゃんは電源を切る。
- 448 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:07
-
「何?」
「夏と冬はどっちが好き?って聞いたの。」
「夏かな。」
「え、どうして?」
「だって、梨華ちゃんの露出度が上がるから。
でも、それが他の男の目に触れるのはヤだなぁ・・・。」
はぁ〜。。。
付き合って初めって知った。嫌なくらいに。
そう、愛しのあの人はエッチな事に目がない。
でも、自称、「梨華ちゃんが初めての相手」らしい。
あまり信じてないけど。。。
- 449 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:07
- 「冬もいいよね。」
「どうして?」
「寒くなると温かいものを求めちゃうでしょ?」
「うん。紅茶とかスープとか、美味しいよね。」
「それもあるけどさ。」
「?」
「梨華ちゃんのうーんと側にいられる。
自分じゃない人の体温を感じるのが好き。
全身でね。
寒いから、夏より、くっついていられる。」
普段は本当に格好いい、あの人。
でも、今はただのエロオヤジ。
でもね、この顔が好きだったりもする。
- 450 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:07
- 「梨華ちゃんはどっちが好き?」
「冬かな。」
「あー、あたしと同じ意見で?へへ。」
「違うよ!」
あの人は、あたしの方へ向かってきて、
あたしを、ひょいっと抱き上げる。
- 451 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:08
-
いつだってそうなの。
あたしが少し怒ると、すぐ抱っこしにくる。
いつも、
負けない!
って思うの。
この作戦には。
でも、結局、負けちゃうのがオチ。
いつもは言葉足らずなくせに、
こういうときに限って、
うまいこといって、
あたしを丸め込むから。
今日だってきっとそう。
- 452 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:08
-
「ごめんね?」
「梨華ちゃーん?」
「よっちゃん寂しいな〜。」
「笑ってよ〜。」
「ねぇねぇ。」
「ほら、こっち向いて?」
幾度と無く繰り返された、このシーン。
いろんな手を使って、あたしの気を引こうとする。
今日は向いてあげない!
あたしも、変な意地を張って、そっぽを向いたまま。
- 453 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:08
-
「・・・」
ふと、あの人は、あたしに話し掛けるのをやめてしまった。
「好きだよ。」
なにさ、急に。
新手の作戦に出たの?
「冬。好きだよ。あたしも。」
あ、冬ね。あたしじゃなくて、冬のことね。
- 454 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:09
- 「あたしと裸で抱き合うのが好きなだけでしょ?どうせ。」
「んま、それもあるけどさ。
一番の理由はね。
・・・・・・梨華ちゃんと、ずっと手を繋いでいられるからだよ。
ついでに言うなら、梨華ちゃんがたくさん甘えてくれるから。
あたしがカッコつけれる、チャンスがたくさんあるもん。」
「よっちゃんは、いつだってカッコいいよ?」
あたしがそう言うと、あの人は下を向いてしまった。
- 455 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:09
-
「どうしよう?」
「?」
「梨華ちゃんの体温を感じたくなった。」
「はぁ?」
「だって、梨華ちゃん抱っこすると、我慢できないんだもん。」
久しぶりで、忘れてた。
あたしが拗ねて、
あたしをだっこして、
その後はいつも・・・
やられちゃうんだった。
でも、あたしは、
こんな人が大好きだから。
やっぱり、そのまま抱かれちゃうの。
- 456 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:09
-
「よっちゃん。」
「ん?なんだい?」
あたしの胸に顔をうずめる、あの人は上目使いで、あたしを見る。
「好き。」
「冬が?」
「よっちゃんが。」
「へへ。あたしも好きだよ。梨華ちゃんが。」
- 457 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:10
-
「夏と冬どっちが好きか?」の答えを聞く事は無かった。
それはいつもの事。
でも、ホントのところ、
本当に、どうでもいい話なんだと思う。
あの人が、夏が好きでも、冬が好きでも、
あたしは、あの人が好きで。
あの人は、あたしが好き。
結局、あたし達には、それしかないんだろうと思う。
でもそれは、
すごく幸せな事だと思う。
そんな風に思った、
冬の1コマ。
- 458 名前:冬の1コマ 投稿日:2005/01/04(火) 23:10
-
おわり
- 459 名前:プリン 投稿日:2005/01/05(水) 14:48
- 更新お疲れ様でしたw
ぬおー!甘々ですごくいいよぅ。溶けそうです。(ぇ
このお二人さんは年中幸せでございます♪
自分もDOG好きですねえ(w
トリコもいいですねえ(w
でもぜーんぶ好きですよっ!!
- 460 名前:あほ 投稿日:2005/01/05(水) 20:36
- はじめまして!
すげーいいです!甘いです!
ここの話は全部最高です。
これからも甘いいしよし楽しみにしています。
- 461 名前:haruri 投稿日:2005/01/06(木) 13:05
- >>459 ;プリン さん
ははは、確かに年中幸せそうですね。
作者の日常とは正反対だわ。。。
いつも、ありがとです。
>>460 :あほ さん
はじめましてこんにちは。
気に入ってくれているとはうれしい限りです。
これからも、いしよしをいちゃつかせますw
- 462 名前:それだけ。 投稿日:2005/01/06(木) 13:06
-
年も明けて、一層寒さが厳しくなった。
だから、あたしはコタツにもぐって、梨華ちゃんの事を考える。
- 463 名前:それだけ。 投稿日:2005/01/06(木) 13:06
-
梨華ちゃんはもうすぐ20歳になって、少ししたらあたしの側を巣立っていく。
「1月はいぬる、2月は逃げる、3月は去る。」なんてよく言うじゃない。
人気と比例するように、梨華ちゃんは前へ前へと行って、あたしは後ろへと追いやられた。
いつの日からか、横顔を見ることは少なくなって、後姿ばかり見るようになった。
たまに振り向いて、あたしに見せてくれるあの笑顔。好きだった。
でもさ、その後姿すらも、なかなか見れなくなっちゃうんだ。
そんなのって、すごく辛いよ。
テレビの中の梨華ちゃんしか見れなくなっちゃうなんてさ。
- 464 名前:それだけ。 投稿日:2005/01/06(木) 13:07
-
そんなこと、梨華ちゃんに言ったら可哀想かなと思ってさ、ずっと言わなかった。
でも、ついつい、酔いに任せて言っちゃった。
そしたら、梨華ちゃん、笑ってさ。
「一緒に暮らしてるのに何言ってるの?」
って。
ねぇ、酷いと思わない?
あたしが、こんなにも苦しんでるのに、笑っちゃうなんてさ。
酷いよね?
- 465 名前:それだけ。 投稿日:2005/01/06(木) 13:07
-
そりゃさ、一緒に暮らしてるけど、どんなときだって、ずっと側にいたいって
思うのが恋人の姿じゃない?
あたしは梨華ちゃんが好き。
それだけなんだ。
ダメ?
- 466 名前:それだけ。 投稿日:2005/01/06(木) 13:08
-
おわり。(短い話でごめんなさい。)
- 467 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:33
-
彼女とあたしの出逢い。
それは、ちょっと変な出逢い方。
でも、ある意味運命的。
秋風の吹く、そんなある日でした。
---------------------
---------
--
-
- 468 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:34
-
「なんで!」「どうして!」
二人の女の子の震えた声が喫茶店に響いて、一瞬静まり返った店内。
二人の女の子は涙を流す。
その泣き声は梅雨の時期の雨のようで、いつ止むのか分からない。
そして、悲しい、寂しい、空気であたりをいっぱいにする。
その原因を作った男の子は、その雰囲気に耐える事が出来ずに、
店を出て行った。
そしてまた、その原因を作ったもう一人は、その男の子とは違うようで。
その優しさゆえに、その場に居続けた。
その代わり、彼女が店を後にする。
- 469 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:35
-
未だに泣き続ける女の子。
そして、少し居心地悪そうに、そして、少し悪いことしたかななんて思いつつ
アイスコーヒーをストローで混ぜる女の子。
泣き続ける女の子の前には誰も居ない。
居心地悪そうにしてる女の子の前には誰も居ない。
でも、その向こうの向こうの席には、今この場を去った恋人とは違うけど、
その相手に似たような境遇の人が居る。
- 470 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:35
-
ストローの女の子は、フッた女の子を思い出してため息をつく。
(あぁ、なんで女ってああなんだろう・・・。泣かれると苦しい。やめてくれ。)
- 471 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:36
-
その時、涙の女の子とストローの女の子はほぼ同時に席を立った。
だから、自然に目が合う。
お互いに目をそらして、そして、また座る。
相手を見た二人は、また立つ。
そして、また座る。
また立つ。
- 472 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:37
-
あの、いつまでやるんですか。。。?
すると、なんと二人は笑った。
少し違うけど、少し似たような傷を負った二人。
目を合わせて、照れたようにクスクス笑う。
- 473 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:37
-
それが、二人の出逢い。
- 474 名前:秋風 投稿日:2005/01/07(金) 22:38
-
つづく。
- 475 名前:プリン 投稿日:2005/01/08(土) 13:41
- 更新お疲れ様です。
想像するとこっちまで笑えてくるんですけど(w
出逢いかあ…次はどーなるんだろうなあ。
次回の更新も待ってまーす!
- 476 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 01:03
- 面白そうだw作者さんのペースで頑張ってください。
- 477 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/15(土) 22:26
- 待ってます
( ^▽^)<おじさんじゃんよ〜
- 478 名前:haruri 投稿日:2005/01/16(日) 15:10
- >>475 : プリンさん
実際あったらたぶんものすごく奇妙でしょうな。
立ったり、座ったり。。。
更新お待たせしました。
>>476 :名無飼育さん
お待たせしました〜。
物語として、面白く書けるといいですが。。。
>>477 :名無飼育さん
お待たせしましたぁ。
- 479 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:11
- 秋の雨は、しとしとと降り続ける。
でも、それは、あっさりとしていて、湿っぽくない。
秋の空を見上げても、そのご機嫌はなかなか伺えない。
すごく機嫌よさそうだったのに、気づけば今にも泣きそうだったりする。
一度降りだせば、それはなかなか終わりが見えなくて。
バケツをひっくり返したようで、大きな雨粒が地面に叩きつけられる。
- 480 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:11
-
----------------------------------
-------------------
---
-
- 481 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:12
-
「雨降り出したっぽいよ〜。」
「マジで〜?」
「あたし、傘ないよぉ。」
「あたし、持ってるや。たしか、ロッカーに置きっぱ。」
「い〜な〜。」
「一緒帰る?」
「サンキュー、よっちゃん。」
「ん。」
- 482 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:12
-
この、準備がいい人なのか、単にもってかえるの面倒なズボラな人なのか、
よくわからない女の子は、この間、喫茶店で女の子を振った女の子。
名前は吉澤ひとみ。
同姓の女の子をもトリコにしてしまう、プレイボーイならぬプレイガール。
もちろん、手当たり次第に付き合うわけではない。
付き合い始めたときは、もちろんそれなりに相手を好きならしい。
でも、長続きしないってか、飽きっぽい。
「追いかけるほうが好き」な人間。
ストーカータイプ?
- 483 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:12
-
そして、さっき話してた友達を一人暮らしの部屋に送って、
なんだかんだ話して、今はその帰り。
秋の夕暮れは、早い。
あたりはもう薄暗くて、クルマのライトが少し眩しい。
まだ、雨は降り続けていて、地面に反射したライトもまた、眩しい。
- 484 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:13
-
(あー、こないだの子、可愛かったな〜。)
自称ストーカーのひとみは、どうやらこないだの喫茶店で出会った女の子に
惚れてしまったらしい。
だから、あれから、誰とも付き合ってない。
前の女の子が「未練あるんだよ、きっと」だなんて自惚れていても、
まったく気にしない。
友達に「なんか言わないと、調子乗るよ?」なんて言ってきても、
「事実じゃないし」とかいって取り合わない。
だって、それがひとみのスタイル。
- 485 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:13
-
アパートの部屋に上がる前に、一階の入り口のパン屋さんでベーグルを買う。
これがあるから、ここに決めたらしい。
駅が少し遠くても、大学が少し遠くても、ちょっと部屋が狭くても、気にしない。
「ベーグル2個くださいな。」
「はい。200円です。」
財布をごそごそいじる、ひとみ。
(あ、やべ。)
所持金199円、みたいな。。。
昼、コンビニだったもんなぁ。。。しかも、雑誌も買ったりして。。。
- 486 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:13
-
「どうかされました?」
「あ、っと、その、、、1円足りなくて。」
「いいですよ、サービスで。」
おねえさんがパンを差し出す。
「あ、っと、ちょっと待ってください、上に行ったらあるんで。」
と言って、エントランスに向かう、ひとみ。
「すぐ来ますから!」
エレベーターの中で、マジハズい、マジハズいをつぶやき続けるひとみ。
パン屋のおねえさんは、誰もいない店内で声を出さずに少し笑う。
- 487 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:13
-
そして、二人が少し感じたのは
((いまの人、どっかで見たことある?))
(まぁ、パン屋よく行くもんな〜。)
(ここに住んでるみたいだし、見たことくらいあるか。)
((ま、いっか。))
- 488 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:14
-
エレベーターから出てきたひとみは、レジに向かう。
「はい、200円。」
「ちょうどですね。どうぞ。」
「すんません、ホント。へへへ。」
ひとみが顔を上げた。
その視線の先には、――。
「あ。」
「はい?」
「いや、なんでも。お疲れ様でーす。」
そういって、ひとみはまたもや、エントランスへと向かった。
- 489 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:15
-
(いまの、こないだの女の子じゃんか!!あせったー。
ってことは、これから毎日会える?うわー、なんで早く気づかなかったんだろ。
自分バカだー。ま、いっか。へへ。)
ストーカーひとみ。
どうやら、元気の源を見つけたらしい。
これから、楽しくなりそうだね。
よかった、よかった。。。
でも、幸か不幸か、レジのおねえさんは気づいてない様子。
彼女は「1円玉の人」としてインプットしたらしい。
- 490 名前:秋風 投稿日:2005/01/16(日) 15:16
-
つづく。
- 491 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/16(日) 20:00
- 更新お疲れ様です。
あぁー良い方向に進むのか進まないのか…
いしよしって魅力的ですよね(w
- 492 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/16(日) 22:48
- なかなかに情けない情報でインプットされた吉がおもろい
- 493 名前:haruri 投稿日:2005/01/21(金) 21:44
- >>491 :名無飼育さん
どんな方向に進むのか、作者もわかってなかったり(笑
>>492 :名無飼育さん
そんな吉に衝撃の事実が!!
更新で〜す。
- 494 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:45
-
春と秋は似てるけどやっぱ違う。
冬から夏に変わる気分と夏から冬に変わる気分は違うから。
秋は、徐々に寒くなってくる。
とりわけ、夕方からの冷え込みは日に日にきつくなる。
冬眠しない人間の本能なのか、
寒くなったら、温かいものが恋しくなる。
- 495 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:45
-
たとえば、
スープとか。
たとえば、
毛布とか。
たとえば、
好きな人の体温とか。
- 496 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:46
- 「なぜだ?」
学校から帰った、ひとみは部屋で一人つぶやく。
あれから、毎日毎日朝も夜もベーグル買いに行ってるってのに、
あの子に出逢えないのはどうして!!
それが、ひとみの置かれた状況。
ベーグルは大好きだけど、
やっぱり、あの子の方がもっと大好きならしい。
- 497 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:46
-
ベーグルとゆでたまごを両手に持って考える。
「にゃんでだ・・・(むしゃむしゃ。)」
上手くしゃべれない。
だから、テレビを見ながら無言で食べ続ける。
「んっ!!!」
テレビの画面を見て、ベーグルを喉に詰めそうになる。
だから、麦茶で流す。
「・・・っはぁ。」
窒息死は逃れたらしい。
- 498 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:47
- で、何を見て驚いたのか、と。
テレビに映っているのは、あの女の子にそっくりな人。
双子?
いや、違うだろ。
ひとみはテレビに吸い込まれるように近づいていく。
「本物?」
テレビからは可愛い声が聞こえる。
明日から、また雨が降るとか何とか。
- 499 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:47
-
テレビの目の前で、画面に食いつくひとみ。
と、そのとき、映像は切り替わって、おじさんのアップになる。
そのおじさんはニュースを読み出す。
ひとみはおったまげて、テレビから離れる。
テーブルにぶつかり、その拍子で麦茶を入れていたグラスが倒れる。
- 500 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:47
-
「お天気お姉さんときましたか・・・・。遠い過ぎる。」
ひとみの一目ぼれ相手は、キャスターだった。
人気の歌手や芸能人とかとはちょっと違って、
機会があればどうにか話すことだって出来るだろうし、
あっちもそれなりの対応をしてくれるだろう。
でもだからってテレビ局にまで押しかける、ずうずうしさはひとみにはない。
- 501 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:52
-
ひとみの溜息とともに、空には雨雲が流れてきた。
こんどの雨もなかなか止みそうにない。
そして、倒れたグラスからこぼれた麦茶は、
テーブルに置きっぱなしの履歴書たちに吸い込まれていった。
ボールペンの文字がにじんでゆく。
- 502 名前:秋風 投稿日:2005/01/21(金) 21:52
-
つづく
- 503 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:33
-
冬も近くなってきて、秋風も吹かなくなったし、雨もあまり降らなくなった。
しかし、12月ってこんなに暖かかったっけか?
「この様子じゃ、ホワイトクリスマスは期待できそうにもないよね?」
あの日からひとみの日課となった、天気予報チェック。
別に天気が気になるわけじゃない。
ただ。
好きな人の顔が見ていたいだけ。
気づいたら、テレビに向かって話しかけて。
返事がかえってくるはずもないのにね。
でもやっぱり。
見てると幸せ。
----------------------------------------------------------------------
- 504 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:34
-
「おはようございまーす」
「おはよう。ベーグルね?」
「うん、1つ。プレーンのやつね。」
パン屋のおばさんはひとみの顔を覚えたらしい。
そりゃあ、毎日毎日やってきて、毎回毎回同じものを頼むんだから、あたりまえかな?
- 505 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:34
-
「ねぇ、おばちゃん」
「ん?」
「何ヶ月か前にテレビ局来た?」
「え、どうして?」
「いや、こないださ、ここにいた人がさあ、天気予報のお姉さんに似てるなぁって。」
「天気予報のおねぇさん?」
「え、違うの?」
「あー、梨華のこと?」
「梨華?」
ひとみは、天気予報のおねぇさんの名前を思い出す。
同じだ。
- 506 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:34
-
「ね、まさかテレビに映った?」
あの事件はテレビ的にはナイスだ。
地上波に乗っていろんな家のテレビに映ってたら、恥ずかしすぎる。
「まさか、1円の!!」
「なんで知ってんの!?やっぱ、テレビ映っちゃった?」
「いーや、梨華は娘よ、私の。たまに店番頼んでるのよ〜。」
「ムスメ?・・・娘ぇぇぇ!!」
「なんで、驚くの?」
- 507 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:34
-
なんでって似てないじゃない・・・・なんて言えないひとみだった。
石川さんはもっと、こう、きれいで、細くて、可愛くて。。。。。
「いやぁ、あんな年の子供がいるなんて思えないよ。」
「あら、そおぉ?もう、嬉しいこと言ってくれちゃって。」
「ははは。んじゃ、いってきまーす。」
「いってらっしゃーい。気をつけてね〜。」
パン屋のおばさんは上機嫌。
うまいこと言って逃げた、ひとみも上機嫌。
- 508 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:35
-
ストーカーひとみの作戦その1。
『おばちゃんともっともっと親密になって石川さんに近づこう』作戦
石川!
天気予報で「今日は晴天!みんな、元気にいってらっしゃい。グッチャー」
なんていってる場合じゃない!
あんたを狙ってる女の子がいる。
気をつけろ!!
- 509 名前:秋風 投稿日:2005/01/30(日) 10:35
-
つづく。
- 510 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:45
-
季節は冬真っ盛り。
冬の冷たい風が頬をかすめる度に針で突き刺されたような激痛が走る。
「う〜、寒いっ!」
ひとみが企てた『おばちゃんともっともっと親密になって石川さんに近づこう』作戦は
結局決行されるまま、もうすぐ結末を迎えてしまう。
でも当の本人たちはそのことを知る由もない。
パン屋のおばさんも、パンを焼いてるおじさんも。
- 511 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:46
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- 512 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:46
-
今日は特別寒い。
日本の上空になんとか団がきてるとかなんとか、石川さんが言っていた。
だから、今日は特別寒い。
服もいつもより一枚多く着てったはいいけれど、学内は暖房でポカポカで
逆に熱いだけだった。
うらむよ石川さん。
ひとみは上着を脱ぎながら心の中でつぶやく。
- 513 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:46
-
帰り道、外はやっぱりものすごく寒くて、しかも雪のおまけつきで。
さすが石川さん。
雪を顔面に受けながらチャリンコを飛ばす。
- 514 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:47
-
そしたら、こんな日に限って信号に何度もつかまってしまう。
身体の正面には雪が少し積もり始ていた。
顔面の雪は体温で溶けて。でも、寒さでグーンと冷やされて。
とにかく寒いんだ。
- 515 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:47
-
アパートにつく頃には寒さで神経が麻痺してしまっていた。
「おかえりなさい」
肩に積もった雪を払い落としながら、顔を上げるとそこにいたのは
ずっと待ち焦がれていた女の子だった。
「1円の子だよね?」「お天気お姉さんですよね?」
二人はお互いの疑問を同時に言葉に発した。
そしてお互いに認める。
- 516 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:47
-
「今日は寒くなるっていったじゃない。」
「雪が降るなんてさ。」
「はずれることだってあるよ。」
「あの。」
「何?まだお天気お姉さんに文句?」
「いや、そうでなくて。好きです。あなたのことが。」
「えっ。」
- 517 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:48
-
石川は思考能力ストップ。
動きもストップ。
どうやら、寒さで固まってしまったらしい。
というのは冗談だけど、
固まってしまった石川さんを、
ひとみは解凍することができるのだろうか?
それはなんだか、もっと先の話になりそうです。
でもきっと、次の秋風が吹く季節には二人は寄り添っていることでしょう。
- 518 名前:秋風 投稿日:2005/02/04(金) 23:48
-
おわり。
- 519 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:14
-
一歩前に進むのはホントはすんごい難しいことなんだよ。
特急の電車に飛びつくみたいなもんなんだよ。
やったことないから分からないけど、飛びついたらさ、
一緒にグォ〜〜って連れてかれちゃうと思うんだ。
だからさ、一歩前に出れたら、スイスイ進めちゃうんじゃないかなって。
- 520 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:14
-
でもさ、そんなの難しい。
- 521 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:14
-
もしもだよ。
好きになった人が女の子だったらどうしらたいい?
好きになってくれた人が女の子だったらどうしたらいい?
一歩前に出たら、その先には何もなくて、永遠に落ちていくだけかもでしょ?
- 522 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:15
-
あたしさ。
すごい好きな子がいて。
すげー夢中で。
でも、そん子すげー素っ気無いんだ。
だから、もっともっと一歩進むのにエネルギーが要るんだ。
でも、それでも前へって思ったんだ。
そん子の笑顔、ひとりじめしてたいから。
もしかしたら、ずーっとずーっとあの笑顔見られなくなっちゃうかもだけど、
これ以上離れるのは嫌だから。
- 523 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:15
-
きっと、そん子もいっぱいエネルギー要るんだろうなぁ。
だまされてる?
とか思っちゃうと思うんだ。
OKするのも、断るのも、きっと、きっと悩むんじゃないかな。
- 524 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:15
-
恋をするのはエネルギーが要る。
それって、違うと思う。
とかって思う人もいるかもだけど、そうだと思うんだ。
- 525 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:16
-
自分以外の人と関係を持つことはエネルギーが要ることだと思うから。
自分以外の人と自分はまったくの別人だから。
その目に映るものは、みんな違う。
でも、たとえば好きな人が見てる世界を、みんな見てみたいって思ってる。
自分の世界にない世界を見てみたいんだ。
- 526 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:16
-
私は知りたいんだ。
梨華ちゃんの見てる世界を。
そして、一緒の時間を過ごしたい。
一緒に居たいんだ。
だから、
今から、告白しに行くよ。
- 527 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:16
-
その先にあるのは、坂道を下るスケボーか、そこの見えない谷間か分からないけど。
そのエネルギーの源は梨華ちゃんなんだよ。
- 528 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:17
-
まったく何も考えないで生きてる人なんてきっといない。
人はたくさんたくさん悩むんだ。
でも、悩めば良い。
悩んで悩んで悩んで。
悩めばいいんだ。
- 529 名前:悩 投稿日:2005/02/05(土) 20:18
-
完。
- 530 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:41
- 私は二十歳になって、よっちゃんはもうすぐ二十歳。
いわゆる「大人」になった私たち。
でも、また。
いわゆる「普通」の世界で育ってこなかった私たちは、軽く世間にバカにされぎみ。
「一般常識」ってゆー問題とか大嫌い。
そんな問題、普通に学校いって勉強してる高校生でも解けないかもしれないじゃない。
ど忘れしちゃったり、うっかり問題読み違えちゃったりすることだって誰にでもあるでしょ?
なのに、私たちが解けないのを見て笑わないでよ。
ちょっと話ずれちゃったけど、最近思うの。
でもやっぱり悔しいから、ちょっと勉強してみようかな。うん。
- 531 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:42
-
そして、相変わらず卒業の続くモーニング娘。は、昔ほどの注目を浴びなくなった。
だから、私の卒業のときはどうなんだろうって少し不安。
芸能ニュースで1分もしないうちに読み上げられて次の話題にいっちゃうのかな・・・。
- 532 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:42
-
「ねぇ。」
二人きりになった楽屋で、よっちゃんは少し甘えた声で私を呼んだ。
「なに?」
だから、私も優しい声で返事するの。
不安な気持ちを隠して。
「何かあったの〜?」
精一杯元気な自分を演じてみたのによっちゃんには見破られちゃったみたい。
- 533 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:43
-
「どうして?」
「ん、分からん。お腹でも空いたかな?」
前言撤回。よっちゃんは見破ってなかった。
「よっちゃんこそお腹空いたの?」
「ふふ〜。ばれたか。」
- 534 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:43
-
私はよっちゃんの笑顔が好き。
よく分からないけど、すごく優しい気持ちに慣れるから。
それまで考えてたこと、一時だけだけど忘れることが出来るから。
「これあげる。」ってよっちゃんにチョコレートをあげたら、
「やっぱ冬はチョコだな〜」って。
- 535 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:43
-
「で、何があったのさ。」
まだ、よっちゃんの口の中のチョコレートは溶けきれていない。
まるで飴を舐めてるみたい。
- 536 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:44
-
「何もないよ。」
「うそだね。」
「うそじゃないもん。」
「いや、うそだ。」
「うそじゃない!」
「うそだよ!」
そんなやり取りを繰り返してたら、少し悲しい気持ちになって、涙が出てきた。
- 537 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:44
-
「ごめん、ついムキになって。」
私の涙を見て、よっちゃんの声がまた優しくなる。
よっちゃんは黙ったまま、私に寄ってきて頭をなでる。
よしよしって。
その手の動きがしばらくしたとき止まった。
- 538 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:44
-
見上げれば、そこにあったのは、上を向いて涙が流れるのを止めようとしてるよっちゃんの姿だった。
よっちゃんはあまり泣かない。
少なくとも人前では。
それが彼女なりの優しさでもあるから。
「自分が泣けば、目の前の人を心配させてしまう。だから泣かない。」っていつか言ってた。
- 539 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:45
-
よっちゃんは大きな暗い闇を心の中に持っている。
たまに、そこから抜け出せないでいるよっちゃんを何度か見たことがある。
でも、私がよっちゃんを呼びに行こうとしたら、いつも逃げられちゃうの。
「一人で抜け出せる」とでも言うように。
だけど、今回はどうやら様子が違う。
- 540 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:45
-
「ぁ・・ぇ・・てもぃぃ?」
いつもの声とは違う、か細い声で私に何かを言っている。
どうやら、何か許可を求めているみたい。
もう一度聞き直せば、よっちゃんは再度言ってはくれない気がして、
何故だかわからないけど、
私はよっちゃんの頭をなでていた。
そしたら、よっちゃんは何かが切れたみたいに泣き出した。
- 541 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:45
-
始めて見るその姿。
でも、私は「キレイ」って思ってしまった。
彼女の瞳から流れ出す、涙が何故だか美しく見えてしまった。
- 542 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:46
-
よっちゃんは泣き疲れたのか、
はたまた一泣きして安心したのか、
私の肩に頭を置いたまま寝てしまった。
ドラマなら、ちょっと「良いシーン」なのかもしれないけれど。
ここは楽屋。
よっちゃん、そろそろ帰らないと。
さすがに泊まれないよ?
だれか来るかもだよ?
- 543 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:46
-
でも、起こすのも少し可哀想で、「1時間くらいならいっかな」って、
よっちゃんの背中を優しくポン、ポン、って叩いてあげた。
よく赤ちゃんがされてるそれは、大人になっても心地が良い。
一定のリズムで優しく叩かれるだけなのに、安心してしまうのは何故だろう?
- 544 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:46
-
30分くらいするとよっちゃんがもごもご動いて目を覚ました。
そして、少し恥ずかしそうにする。
「今日うち来る?」
「いいの?」
「よっちゃんが嫌じゃないならね。」
「あ、ピンク?」
「もうっ!」
- 545 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:47
-
よっちゃんの少し腫れた瞳を見ると、
私は
強くなりたい
って思った。
筋肉ムキムキになりたいって言うんじゃなくて、
その、支えになりたいって思った。
自分が悩んでたこともドコかに飛んでって、
目の前の強くて弱い
友達でも家族でも恋人でもないけど、
私の大切な人を守りたいって思った。
- 546 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:47
-
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-
- 547 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:47
-
あとで気づいたことだけど、
よっちゃんはやっぱり私の異変に気づいていたんだと思う。
よっちゃんはあの時、私を笑わせてあげたかったんだと思う。
よっちゃんの笑顔には「ウラ」があるから。
- 548 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:48
-
人のことを中心に考えるよっちゃん。
でも、あの日よっちゃんは
「今日だけ甘えてもいい?」
って私の布団にもぐりこんできた。
- 549 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:48
-
きっと、たくさんの人の支えになりすぎたんだね。
よっちゃんの寝顔を見て、
そう私は思いました。
- 550 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:48
-
-
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- 551 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:48
-
朝起きると、私は見事に布団を独り占めしていて、
見上げれば、ベッドの布団から顔だけ出したよっちゃんがいました。
そして
「ぜってー石川のせいだ」
って鼻水をすすりながら恨めしそうな目で私を見下ろしていました。
- 552 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:49
-
「やっぱ甘えるんじゃなかった」
と、よっちゃんが小さな声で言っていたけれど、
聞こえなかったことにしておこう。。。
- 553 名前:今日だけ 投稿日:2005/02/09(水) 19:49
-
おわり。
- 554 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 22:19
- よっちゃんのちょっとわかりにくい優しさがいいですね。
実際の二人もこんな感じなのかなぁ。
- 555 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/13(日) 20:45
- BYE~
- 556 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/17(木) 05:54
- どの話もイイです♪♪
いしよし最高!!
これからも甘甘いしよし期待してもよろしいですか?
期待しますよ!
- 557 名前:haruri 投稿日:2005/03/04(金) 11:23
- >>554 :名無飼育さん
>>556 :名無飼育さん
読んでいただきありがとうございました。
新作を書き始めましたので、気が向きましたらどうぞ。
この物語がおそらく最後になると思います。
長くお付き合いいただきありがとうございました。
- 558 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:24
-
=======================================================
私、吉澤ひとみにはとても好きな女性がいました。
そんなある日、私は天高く舞い飛んだ。
そしてまもなく、私はこの世から去る事を余儀なくされた。
誰にもさよならを言えないまま。
=======================================================
- 559 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:25
-
-------------------
----------
--
-
「ヨシザワヒトミサン」
遠くで誰かが私を呼ぶ声がする。
機械的な音で。
でも、心のこもった柔らかな音で。
不思議な気持ちになった。
- 560 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:25
-
目を開けると、そこには・・・・
誰もいなかった。
あたり一面が真っ白で、私の心まで真っ白にリセットされそうな気にさえなった。
- 561 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:25
- ドコからかまた声が聞こえた。
「ヨシザワヒトミサン」
返事をするとそれは話を始めた。
今度はリアルな日本語で。
「あなたは死んだ。」
「あなたは死んだ。」
「あなたは死んだ。」
繰り返し言ってくるので、真似して言ってみた。
「私は死んだ。」
「そう、あなたは死んだ。」
「はい、私は死んだ。」
「それを忘れないで。」
「忘れません。」
- 562 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:26
-
「あなたにはいくつかの選択肢がある。」
「私にはいくつかの選択肢がある。」
「一つ。」
「一つ。」
「あなたのすべてをリセットして生まれ変わること。」
「私のすべてをリセットして生まれ変わること。」
「一つ。」
「一つ。」
「世間のあなたに関するすべての記憶をリセットして、あなたの持つ記憶はそのままに生まれ変わること。」
「世間の私に関するすべての記憶をリセットして、私の持つ記憶はそのままに生まれ変わること。」
「一つ。」
「一つ。」
「すべてをそのままに再び生き返ること。」
「すべてをそのままに再び生き返ること。」
- 563 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:26
-
「さあ、あなたはどれを選ぶ?」
・・・・どれを選ぶ?
私にはやり残したことがたくさんある。
たとえば、社会人としてそれなりに働くこととか。
たとえば、働いた後の冷たく冷やしたビールとか。
たとえば、すべてを忘れてはしゃぎまくることとか。
たとえば、・・・・・・・好きな人に好きだと言うこととか。
「すべてをそのままに再び生き返ること。」
それしか選びようがないじゃない。
そんなお得な話を断るほうが変だよ。
- 564 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:26
-
「オーケー。『すべてをそのままに再び生き返ること。』ですね?」
「はい。」
「では、それに関わる注意事項を伝えます。」
「はい。」
「一つ。」
「一つ。」
「あなたの蘇りの人生は、10人の人間に会った時点ですべてが終了する。」
「え、そんなのって・・・」
「あなたの蘇りの人生は、10人の人間に会った時点ですべてが終了する。」
「わ、私の蘇りの人生は、10人の人間に会った時点ですべてが終了する。」
- 565 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:27
-
「あなたは死んだ。」
「私は死んだ。」
「そう、あなたは死んだ。」
「はい、私は死んだ。」
「それを忘れないで。」
「忘れません。」
-
--
-------
------------------
- 566 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:27
-
目を開けると、私は自分の部屋にいた。
ベッドに横たわる人間は、紛れもなく私だった。
身体を起こして、自分の手や足や顔を確認する。
やっぱり、それは私自身だった。
部屋にあるものも、生きていたときとまったく変わっていない。
壁にかかる日めくりカレンダーも、箪笥の中身も、部屋の散らかり具合も、まったくそのままだった。
だから、私はホントは死んでないんじゃないかという気持ちにさえなる。
いや、本当に死んでないんじゃないか?
- 567 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:27
-
でも、あいつ「10人」って言ってたよな。
そんなのって、無理じゃないのか?
外に出たらすぐ終了じゃんか。
都会で便利な生活を送っていた自分を憎む。
でもやっぱ死んでないんじゃないのか?
私、生きてるんじゃないのか?
- 568 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:28
-
窓際に行って外を見てみる。
すると、真向かいにあるアパートの住民と目が合った。
合ってしまった。
「ヒトリ。」
カウントする音が聞こえて、私は慌てて窓から離れる。
あと9人・・・。
・・・会いたいよ、梨華ちゃん。
- 569 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/04(金) 11:28
-
つづく。
- 570 名前:プリン 投稿日:2005/03/04(金) 16:16
- 更新お疲れ様です!
うぎゃー。どーなるんだろ。会えるといいなあw
この物語で最後って・゚・(ノД`)・゚・。
- 571 名前:haruri 投稿日:2005/03/05(土) 10:52
- >>570 :プリンさん
毎度ありがとうございます。
最後の作品になりますが、あたたかく見守ってやってください。
- 572 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:53
-
怖くて玄関のドアを開けることはおろか、窓に近づくことさえ出来ない。
テレビも見ることが出来ないし、どうしたらいいんだろう。
考えている私は名案を思いついた。
梨華ちゃんに来てもらえばいいのだ、と。
梨華ちゃんとは親友とまでは行かなくても友達だ。
メールか電話をしてここに来てもらえばいいんだ。
- 573 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:54
-
思い立ったが吉日。
私は携帯電話を探す。
・・・・・・・・・・ない!!
どこにもない。
携帯電話は私の身体の一部みたいなものなのに。
ほ〜、そう簡単にはいかないってわけか。
ベッドに寝転んで、また考える。
- 574 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:54
-
手紙!
いや、書けることは書けるけど、ポストまで行けない。
電報!
無理だよな〜。てか、電報ってどうやって打つんだ?
無線!
私も梨華ちゃんも使い方知らないよな〜。
風船に手紙くくりつけるか!
ありえないよな・・・。
そうこう考えているうちに外は暗くなっていた。
- 575 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:54
-
やっぱ、直接行くしかないのかね〜。
私はまだまだ寒い春の夜を歩くため、ジャケットを羽織った。
少しでも、保護色になればと黒色のシンプルなものを選んで。
玄関まで歩いてゆき、コンバースのオールスターハイカットを履いてドアに耳を当てる。
のぞき穴からも外をのぞいてみる。
だれもいないよな?
ドアをそーっと開ける。
よし、だれもいないな?
- 576 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:55
-
カン、カン、カン、―――。
やべっ!誰か来る。
誰かが階段を歩く音にビビッた私はすぐ家の中に戻ろうとした。
・・・開かないし。
慌ててカギを探すがポケットに入れた記憶もなければ、案の定ポケットに入っているわけもない。
もう、住処もないってわけね。
- 577 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:55
-
私に会釈をしてドアの中へと消えてゆく隣の住民。
「フタリ。」
また、カウントする音がした。
あと、8人か・・・。
この調子で大丈夫なのか?
- 578 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/05(土) 10:55
-
つづく
- 579 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/05(土) 17:31
- 初めてレスします。
作者様の書かれるいしよしが大好きでずっと読ませていただいていたので、
最後の作品と聞いて、本当にショックです・・。
このお話もこの先の展開がとても気になります。
更新をお待ちしつつ、でも終わってしまうんだよなあと
複雑な気分です・・。
- 580 名前:haruri 投稿日:2005/03/09(水) 18:44
- >>579 :名無飼育さん
はじめまして、こんにちは。
大好きって言ってもらえると、単純に嬉しいです。
ありがとうございます。
ラストまでお付き合いいただけると嬉しいです。
- 581 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:45
-
私は、暗闇を求めて彷徨った。
今のところ、誰にも会わずにすんでいる。
変に歩き回って自爆することは避けたい。
だから私は、橋の下に隠れて、体育座りをする。
さて、ここからどうやって誰にも会うことなく梨華ちゃんの元にたどり着くか・・・。
梨華ちゃんのマンションまで歩いていけなくもないけど、かなりの時間がかかる。
そして、その途中で間違いなく誰かに会う事は避けられない。
ましてや、梨華ちゃんのマンションまでの道を正確に覚えているわけじゃない。
あまりにも危険すぎる。
- 582 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:45
-
バカなりにいろいろ考える私。
そして、ふと気がつく。
私、感覚がない?
夜も更けてきたって言うのにまったく寒さを感じないし、
目覚めて何も口にしていないのに空腹を感じない。
眠気も全く感じない。
やっぱり、私、死んじゃったんだね・・・。
- 583 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:45
-
自分は死んでるって自覚して生きている人になんて出会ったことがあるわけがない。
だから、その人の気持ちを考えたことなんてなかった。
でも、私はまさにその一員。
「あなたは死にます。」っていう医師の通告を受けた人が感じるであろう、死への恐怖心はない。
だって、私はもう死んでしまっているのだから。
そんな恐怖心よりも、何やってんだ?自分って感じの虚無感の方が大きい。
生きている間、私はいろいろなことから逃げていたように思う。
楽な方へ進むことは、人間をダメにするんだ。とか担任が言ってたっけ?
そんなかっこいい教科書みたいな台詞、バカにしてた。
だって、楽な道歩いたって、険しい道歩いたって、到着地点はいつも同じようなもんだったから。
そんなら楽な方でいいじゃん、ってのが私の方針だった。
- 584 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:46
-
だから、梨華ちゃんのことも、、、。
変に付きまとって自爆するよりは、そこそこのお友達続けて横顔見れていられればそれでいいんだ、って。
例え彼女が私を単なる知り合いだと思っていたっていい。二人の関係がこれ以上遠くなってしまうよりはいい、って。
私は、楽な道しか歩かなかった。
なーんて、自分の人生語ってどうすんだってんだよな〜。
教科書人間を嫌ってた筈なのに、私はまさに教科書人間になろうとしてる。
- 585 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:48
-
でも、知ってるかい?
人生、教科書みたいに上手くいかないもんなんだ。
だってそうでしょ?
そんなで上手く生きてゆけるなら、
地球に飯食えなくて困ってる人間がいるわけねーじゃん?
聖書片手に祈ってるわけねーじゃん?
後悔先に立たず、なんて言葉あるわけねーじゃん?
教科書人間が成功する確率は僅かだ。
人生に教科書はない、ってか?
- 586 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:48
-
とかなんとか、考え込んでる間に、真っ黒だった空が薄く色づき始めた。
おい、やばいんじゃね?自分。
橋の上を新聞屋らしきバイクが通る。
おい、ホントにやべんじゃね?自分。
でも、やっぱ、臆病者でバカな私。
体育座りをしたまんま、忙しい朝を迎えてしまった。
ここで、橋の下から顔を出そうもんなら即アウトだな・・・。
- 587 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 18:48
-
「あ〜れ、お嬢ちゃん。そ〜んなところで、な〜にやってんのよ?風邪ひくよ。」
「そうっすね、ははは。」
こんなところを散歩コースにすんなっての!!
向こうのほうでおじさんの犬はビニールゴミをかじっていた。
「サンニン。」
あと、7人か・・・。
梨華ちゃん私のテレパシー受け取ってー!!
- 588 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:08
-
- 589 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:08
-
あれから、私はずっと橋の下で縮こまっている。
実は「ヨニン。」とカウントされてたりする。
今回の相手はここら辺に住んでるっていう、男の子。
どうやらかくれんぼして、隠れる場所を探していたらしい。
しかも、可哀想なことになかなか見つからないからって仲間たちは解散しちゃうってパターン。
おかげ様で、時間つぶしのいい相手になったけどね。
そういえば、しばらく男の子と一緒だったけどなんてこたなかったなぁ。
帰り際、男の子が振り向いたときカウント増えなかったし。
一回会った相手はもう平気なんか。
- 590 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:09
-
ピコーン!
味方を増やせば梨華ちゃんに会えるんじゃね?
そうだよ、そうだよ。そんで、梨華ちゃん代わりに探してもらえばいいじゃん!!
うおー、私ってば超天才?
となったら、味方を探さねーとな。
隣人に頼むか?
夜になったら帰ってくるだろ。
さて、行くかな、っと。
- 591 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:09
-
- 592 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:09
-
あ、やべ、――。
って思ったのと。
「ジュウニン。」
ってカウントが聞こえたのと。
どっちが先だったか分からない。
- 593 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:09
-
橋の下から脱出して、地面に着地したとき、
そこには何人かの人がいて。
でも、私の目は確かに梨華ちゃんを見据えた。
梨華ちゃんは横顔だったけど、あれは梨華ちゃんだった。
隣には男がいて。
思い切って呼んでみた。
そしたら、何人かの人がこっちを向いて。
- 594 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:10
-
あ、終わりだ・・・。って思った。
- 595 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/09(水) 19:10
-
つづく
- 596 名前:プリン 投稿日:2005/03/10(木) 18:19
- 更新お疲れ様です。
…わお!ええええ!w
すんげー続き気になります。
最後まで応援するんで頑張ってくださいw
- 597 名前:580 投稿日:2005/03/10(木) 20:25
- カウント10・・・。
とても先が気になります。
更新を楽しみにお待ちしています。
- 598 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/15(火) 21:14
- 一気に読まさせて頂きました。作者様の最後の作品を見届けたいと思い、次回更新いつまでも待ってます。
- 599 名前:haruri 投稿日:2005/03/16(水) 21:22
- >>596 :プリン さん
>>597 :580 さん
>>598 :通りすがりの者さん
みなさん、お待たせしました。更新します。
そして、ありがとう。
- 600 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:23
-
気づいたら、また真っ白な世界に戻ってきていた、――。
「あんたバカでしょ?」
「あ゛!?」
いきなりバカとはなんだ!
梨華ちゃんに会えなくて傷心の私に向かって。。。
- 601 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:23
-
なんだか視界がぼんやりしてきた。
あ、もう、終わりなんだ私。
ヒトはこうやって、世の中にさよならをしてゆくのね・・・。
バイバイ私の愛しい人・・・。
- 602 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:23
-
あなたに会えてよかったよ。
私が出会った中で一番キュートなお姫様だった。
あなたに大好きは言えなかったけど、大好きだから。
私は生まれ変わっても、あなたに巡り会いたい。
というより、探し出してみせる。
私はまた赤ちゃんからスタートだけど、相手をしてね。
- 603 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:23
-
あぁ、梨華ちゃんのこと忘れたくないよ。
でも、忘れさせられちゃうんだよね?
でもでも、それの力に負けないくらい、私覚えとくから。
本能で覚えとくから。
きっとまた、一目惚れだね。
はぁ、今度はどんな「ワタシ」なのかな?、――。
- 604 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:23
-
「本気?」
「え?」
「本気?」
「どの辺りが?」
「本気?」
「だから、どこの部分が!」
「本気?」
「だーっ、もう!本気ですとも。忘れねーよ!」
- 605 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:24
-
「じゃあ、『世間のあなたに関するすべての記憶をリセットして、あなたの持つ記憶はそのままに生まれ変わること。』?」
「え?」
「あなたはあまりにも可哀想すぎる。だから、ト・ク・ベ・ツ。」
「はいはいはーい!『世間の私に関するすべての記憶をリセットして、私の持つ記憶はそのままに生まれ変わること。』です!」
「本当に?」
「本当です。今度こそ。」
「でも。」
なんだ、また約束事か?
「でも、何?」
「あなたはあまりにも涙を流しすぎた。」
「へ?」
- 606 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:24
-
ふと、自分の頬を触ってみれば、透明な液体。
あ、私泣いてたんだ、――。
前が見えなかったのはそのせいだったのか。
ふと、足元を見ると・・・真っ白じゃん。
でも、少ししゃがむと、私は、まるで・・・海の中。
両手でそれをすくってみる。
まさか、これ全部が私の涙?んなわけないよね?
「それは、ここに来た人たちの涙。」
「みんな、泣くんだね。」
- 607 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:24
-
沈黙、――。
「私には分からない。」
「え?」
「ここに来る人が流す『涙』が。それが意味するものが何なのか、が。」
「涙ってのはさ、・・・。」
この可哀想な、機械か神様だかわかんないやつに、涙を説明しようとした。
だけど、出来なかった・・・。
涙ってなんだ?
目から出てくる分泌物。
だけどそれは、悲しみだったり、怒りだったり、悔しさだったり、嬉しさだったり。
上手く説明できない・・・。
- 608 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:25
-
「でも、あなたの涙は、特別だった。」
「へ?」
「だから、『世間のあなたに関するすべての記憶をリセットして、あなたの持つ記憶はそのままに生まれ変わること。』」
「条件とかあるわけ?」
「別にないけど、しいて言うなら・・・」
「何さ。」
- 609 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:25
-
「たぶん、あなた、もう、涙出ない。」
タブン、アナタ、モウ、ナミダデナイ。
「了解。」
「いってらっしゃい。」
- 610 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:25
-
涙ぐらい、何てこたない。
言葉が出ないほうがもっと困る。
今度こそ、梨華ちゃんに会いに行くから。
吉澤、負けねぇから。
だから、今度こそ、思いを伝える。
それが、終わりだったとしても、会いに行くから。
ありがと、なぞの白い世界のヒト、――。
- 611 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/16(水) 21:28
-
つづく。
- 612 名前:580 投稿日:2005/03/18(金) 16:54
- 更新お疲れ様です。
はあっっ、、、そういう展開にきましたか・・。
ますます目が離せません、
更新をまったりお待ちしております。
- 613 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/24(木) 22:14
- 更新お疲れさまです。 あぁーある意味よかったー、なんか凄い事になる予感がしますね、次回まったりと更新待たせて頂きます。
- 614 名前:haruri 投稿日:2005/03/26(土) 10:25
- >>612:580さん
>>613:通りすがりの者さん
ありがとうございます。
更新スローペースで申し訳ないです。
- 615 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:25
-
『世間のあなたに関するすべての記憶をリセットして、あなたの持つ記憶はそのままに生まれ変わること。』
あの白い世界のヒトの声が耳に残る。
なんだか、お店で食べ物注文してるみてー。
ちゅか、生まれ変わるってことはやっぱ赤ちゃんからなのかね?
うおー、道のりなげー。。。
薄れゆく意識の中、私はいろいろな事を考える。
- 616 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:26
-
あの時みたいに目を開けると、そこには白色の天井があって、私はまたベッドに横たわっていることを知る。
横を向いても柵はなくて、天井から変なおもちゃがぶら下がってクルクルまわってるわけでもない。
手首もムチムチしていないし、身体も見覚えのある感じ。
だから、たぶん私は赤ちゃんからスタートってわけじゃない。
そして、鏡を見て、いままでの自分となんら変わりないことを確信する。
でも、周りはみんな変わってしまっているんだ。
- 617 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:26
-
私は死んでから初めて恐怖を感じた。
私、ここで生きていけるのだろうか・・・。
- 618 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:27
-
まぁ、部屋に閉じこもっているだけではどうにもならない。
ひとまず、外に出てみることにした。
洋服も靴もすべて私が持っていたものだった。
財布の中にはお金もあるし、銀行のカードだって入ってる。
無いのはやっぱり携帯電話だけ。
- 619 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:27
-
駅へと向かって歩いていると、何人かの人とすれ違った。
前みたいにカウントする音は聞こえなくて、少し嬉しい。
そして、穏やかな気持ちでいられる。
何にも脅えることはない。
- 620 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:28
-
電車に揺られていると、私はなぜだか急に寂しい気持ちになった。
こんなにもたくさんの人が周りにいるのに、私はひとりぼっちだ。
前まではプライベートで知り合いに話しかけられる事を嫌っていた私だけど、
今はそういう場面が無いことが分かりきっていて、少し寂しい。
きっと、今、周りにいる人たちにとってはいつもと変わらない日常。
それに入ってきたのは私。
分かったのは周りじゃなくて、私なのかもしれない・・・。
- 621 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:28
-
巨大なビルが聳え立ち、人々が溢れんばかりにいる場所に来てみても、
やっぱり私はひとりぼっち。
だれかと、待ち合わせをしてるわけでもない。
そのうち、自分が何をやってるのかわからなくなってきた。
こんなとき、私は悔し涙をよく流した。
でも、涙は出ない。
そっか、私、涙流せないんだった・・・。
- 622 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:28
-
とりあえず、ケータイでも買いに行くか。
この年で、持ってないなんてありえないもんな。
ショップに行って新規で携帯電話を購入した。
家に帰って、初期設定を一気に終わらせる。
夜になっても、案の定、空腹も眠気も感じなくて、
あぁ、やっぱ死んだんだな、と思う。
- 623 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:29
-
さて、問題はどうやって梨華ちゃんに近づくか。
-
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ダメだ、梨華ちゃんの事を考えると、あの時のことを思い出す。
- 624 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:29
-
梨華ちゃんは女の子だし、しかも、すげー可愛い女の子。
女の子の中の女の子って感じで。
ずっと苦手な種類の子だと思っていたのに、いつのまにか私は彼女に夢中になっていて。
見ているだけで良いって思ってたんだ。
遠くから、喜怒哀楽する彼女を見ているだけでいいって。
- 625 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:29
-
でも、あの時、私はものすごくショックだった。
男の子を連れていたって何も変なことじゃないのに、ショックだった。
だけど、やっぱ梨華ちゃんにもう一度会いたい。
私だけに笑って欲しいよ・・・。
- 626 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/03/26(土) 10:30
-
つづく。
- 627 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/26(土) 17:10
- 更新お疲れさまです。 うぁーキツいです(;-_-+ そんな世界では生きていけません!!(ェ よっすぃーの運命や如何に! 次回更新待ってます。
- 628 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/18(月) 06:15
- せつない・゚・(ノД`)・゚・。
次回も楽しみに待ってます
- 629 名前:ろむ 投稿日:2005/04/18(月) 22:47
- そう来たかっ!!ってな展開がすごく面白いです。
よっすぃをひたすら応援したくなってしまいました。
- 630 名前:haruri 投稿日:2005/04/20(水) 15:36
- >>627:通りすがりの者さん
>>628:名無飼育さん
>>629:ろむさん
ありがとうございます。
よっすぃ〜は幸せになることが出来るのか。
また、どの道が正しいのか。
幸せと別れの間で苦悩する姿は美しいと思う。
では、久々の更新でございます。
- 631 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:36
-
待ちに待ったその日は突然やってきた。
久しぶりに見た梨華ちゃんの隣にはあの男がいるわけでもなく、友達とおしゃべりしてたわけでもない。
それはまるで平成初期のドラマに出てくるようなベタなシチュエーションだった。
私は最近始めたバイトからの帰り。
夕方の混んだ電車の中で、向こうのほうに見えた梨華ちゃん。
嫌そうな顔をしていた。
私に気づいたのか、泣きそうな顔をする。
- 632 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:37
-
ふと梨華ちゃんの腰の辺りに目をやる。
ごつい手が梨華ちゃんに当たっている。いや、触っている!?
(こいつぁ〜、なんばしよっとね!!)
別に九州に住んでいたわけでもないのに、そんな言葉が頭に浮かんだ。
急いで梨華ちゃんに近づいて、中年サラリーマンらしき痴漢魔の腕をひねり上げる。
- 633 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:37
-
「あんた何してんだよっ!」
いっせいに視線が集まる。
「言いがかりだ!」
私の手を払いのけようとする男。
「次の駅で降りてもらおうか。」
青白いくせに目だけは血走っていたらしい私を見て身の危険を感じたのか、バカ男は観念した。
梨華ちゃんを痴漢したことに怒り狂っていた私だけど、私の服の裾を握る梨華ちゃんが可愛くて心の中は超タレ目。
やっと会えた。
しかも、カッケー登場。
この1ヶ月間の苦しみから一気に解放されて、私は踊り出したい気分だった。
- 634 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:38
-
「警察だけは勘弁してください。」
会社帰りのバカ男は駅員に懇願する。
「かぁちゃん怖えーんだよ。」
どうやらかかあ殿下らしい。
その様子を見て駅員も「許してやったら?」みたいな目で私を見る。
心なしか、被害者の梨華ちゃんも申し訳なさそうにしている。
でも、許すわけにはいかない。
- 635 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:38
-
男は警察に連れて行かれ、私と梨華ちゃんはホームに戻った。
「あの。」
小さな声が聞こえた。
それは、ずっと求めていた声。
「大丈夫ですか?」
私が聞くと、梨華ちゃんはプツンと糸が切れたように泣き出した。
なんだか、私が泣かせたみたいじゃないのよ。。。
でも、梨華ちゃんがものすごく愛しくて、気がついたら抱きしめていた。
かすかに香る香水の甘い匂いが私の鼻をくすぐる。
- 636 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:38
-
ホント、会いたかった、――。
- 637 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:40
- 落ち着いたらしい梨華ちゃんはおずおずと私から離れる。
急に寂しくなった腕が行き場をなくして、ブラブラ。
「えっと、その、ありがとうございました。」
照れ笑いを浮かべる彼女。ちょっと大人っぽくなったかな?
ウェーブのかかった髪が良く似合ってる。
「あぁいうのはほっとくと、つけあがるから我慢したらダメですよ?」
「はい。」
“一応”初めて会った私たち。
このあとどうする?なんて会話は無い。
私は相変わらず梨華ちゃんの横顔を盗み見ていて、
梨華ちゃんは困ったようにそわそわしている。
- 638 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:40
-
プルルルルルと音が鳴り、ホームに電車が到着する事を知らせる。
「じゃあ、これで。」
別れを切り出したのは彼女だった。
だけど、このまま引く下がるわけにも行かなくて。
「お家まで送りましょうか?まだ、怖いでしょ?」
だなんて、初対面のくせして無謀な提案をしてみた、私。
「でも。」
「迷惑かなぁ?」
明らかに困った顔をする梨華ちゃん。
なんか、ナンパする男みたいだな。
これじゃあ、あの痴漢男と同レベルだ。
「ああ、ごめん。困るよね。じゃあ気をつけて帰ってくださいね。」
- 639 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:40
-
電車に乗る梨華ちゃんを見送った。
扉の向こうで、いつまでも申し訳なさそうに頭を下げる彼女を見て、
私は嬉しさ半分、寂しさ半分だった。
梨華ちゃんが「私」を「私」だと分かる日は来ないんだと思うと、
自分がこの世に再び舞い戻ってきたことに、少し後悔する。
私は苦しむためにこの世に戻ってきたの?
- 640 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:42
-
いつものように、ベッドの中で考え事。
そのとき、
あの声が聞こえた。
「状況はどう?」
「見ての通りですけど。」
「ひとつ、あなたにいい忘れたことがあったんだけど、あなたは死んだの。」
「うん。よく知ってる。」
「だから、生きている人と愛し合うことは出来ない。もし、あなたを愛する人がでてきたら、おわり。」
それはつまり、どんなに頑張っても、梨華ちゃんと恋に落ちることがないという事を意味していた。
「分かった?」
「・・・はい。」
「じゃあ、健闘を祈るわ。」
「そりゃどうも。」
一難去ってはまた一難ってか、――。
- 641 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/20(水) 15:43
-
つづく。
- 642 名前:ひすい 投稿日:2005/04/26(火) 08:16
- ( ; ゚Д゚)ヒィィィ。よっちゃん・・・ファイッ(つДT)
更新、ゆったりお待ちしております。ワクワク
- 643 名前:haruri 投稿日:2005/04/30(土) 19:36
- >>642 :ひすい さん
はじめまして、ですかね?
そうでなかったら、誠に申し訳ないです。すみません!!
さて、更新しました。本当に「よっちゃんファイッ!」デス。
- 644 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:36
-
不意打ちだった。でも、前と同じ場所。
私は間抜けな顔して久しぶりに会えた梨華ちゃんを思い出しているトコだった。
「ここいいですか?」そういって私の横に座ったのはもちろん彼女。
痴漢されてるとこ助けられたからってひょいひょい懐いちゃう梨華ちゃんに少し注意しておきたいと
思いつつも、やっぱりすごく嬉しいから、自然と表情が緩む。
電車の中は声が聞き取りにくい。
でもそれを理由に少しだけ側に寄ることが出来るから嬉しい。
- 645 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:37
-
梨華ちゃんは
自分は大学生をしているということ。
自分はバイトをしているということ。
なんかを簡単に説明してくれた。
まぁ、初対面の子(?)相手にに話す内容にしてはいたってノーマルな話題。
そして私は
自分はバイトしかしてないいわゆるプーだということ。
カッコよく言えばフリーターだということ。
なんかを説明する。
私の名前を聞いた梨華ちゃんは
「いい名前だね」
とかなんとか、言ってくれた。
そんなとき家族の顔が浮かぶ。
でもその家族に私は含まれていない。
だって私はこの世に有るはずの無い命だから。
- 646 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:38
-
「いまからバイトですか?」って彼女が聞くから。
「うん。」と答える。
好きな人を前にすると、どうも言葉数の減ってしまう私。
だから、相手を誤解させてしまう。
なんだかとっつきにくいタイプだな、って。
梨華ちゃんともそんな感じだった。
あぁ、また同じことやってんじゃん。。。バカだな。。。
- 647 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:38
-
そしたら梨華ちゃんなんて言ったと思う?
「ケータイ教えて」だってさ。
もう、嬉しくて、意味も無く元気な声で返事しちゃった。
今度はバカっぽい。
梨華ちゃんの携帯電話は昔見た機種とは違ってた。
でもやっぱりピンク色を選んじゃうところは変わってない。
- 648 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:38
-
すぐ隣にいる彼女から送られてきた初めてのメール。
それには彼女のメールアドレスと電話番号と
「バイト頑張ってね」
の言葉。
待ちに待った彼女との再会。
これからどんどん距離を縮めていくんだろう。
嬉しい。
だけど、ちょっと怖い。
待ち望んだゴールラインが見えてきたというのに、私はスタートラインに戻りたい気分だった。
- 649 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:39
-
分かってる。
私は死んだ人間。
もう生きていない人間。
この世に「ありがとう」と「さようなら」をいうためだけのために蘇ったことも。
分かってる。
分かってるんだけど・・・。
- 650 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:39
-
遠くに見えはじめたゴールラインに近づく事を私は拒み始めている。
笑顔の梨華ちゃんを見ていると涙が出そうで・・・。
梨華ちゃんの近くにいることが怖い。
だから本当はもっともっと1秒でも近くにいたかったのに、少し早めに席から立った。
振り向くことも怖くて。
幸せなのに、怖い。
こんなのって変・・・。
- 651 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:39
-
-
---
-----
-------------
- 652 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:40
-
夜、私の携帯電話から機械的なメロディーが鳴る。
相手は梨華ちゃん。
それ以外に考えられない。
だって、梨華ちゃんしか知るはずが無いから。
メロディーが鳴ると一気にテンションが上がるのが自分でもよく分かる。
電話を開くと「なにをしてますか?」の文字。
- 653 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:40
-
梨華ちゃんが私に興味を持ってくれていることがものすごく嬉しいはずなのに、
そのはずなのに、
やっぱりちょっと寂しくて、ちょっと悔しい。
なぜだかは上手く説明できないけれど、こんなにも簡単に仲良しになりはじめたことが、
拍子抜けってか、なんていうか・・・ほんと上手く説明できないんだけど。
どうして、
本当にこの世に生きているときに、
こんな風に出来なかったんだろう。
こんな風にならなかったんだろう。
どうして・・・。
- 654 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:41
-
どこにぶつけたらいいのか分からない思いが私の中で暴れまわる。
そして、いつしか体験したことのあるような感情が芽生え始める。
私の心に真っ黒な渦々が出来始める。
私は再び、自らの手で暗闇への扉を開こうとしている。
あ、そういえば、この先には真っ白な世界が待っていたんだっけ?
扉の先は真っ暗だと思っていたのに、真っ白だったんだっけ。
ん、どうだったっけ?
もう少しで思い出せそうなのに。んーと。。。
- 655 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:41
-
その時、携帯電話が初めての音を鳴らす。
梨華ちゃんからの電話だ。
「もしもし」
「はい、どうした〜?」
「メール届いたかなって。」
「うん、返事打ってたトコ。」
「あ、そうだったんだ、ごめんね。」
「ううん、気にしないで。」
電話の向こうから聞こえてくる可愛くて、か細い声を聞いていると、
心がざわついて、私はまた涙がでそうになった。
、――? ちょっと、待って。
私、涙流せないんだよ?
だから、心が必要以上にざわつくだけなんだ・・・。
- 656 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:41
-
「ねぇ」
「ん?」
「何してた?」
「あぁ、明日の朝ごはん何にしようかな〜って。へへ〜、バカでしょ〜。」
嘘ついちゃった。
でも、私のゴールラインはどうやら着実に近づいてきているみたいだから。
だから、梨華ちゃんの前では元気でバカな自分を演じたくて。
元気の無い悩んで沈んでる自分なんて見せたくなかった。
電話の向こうから楽しそうに聞こえる声の主に、心の中で「ごめん」て言う。
- 657 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:42
-
私は梨華ちゃんにおやすみを言った後もざわつく心の対処法を考えた。
言いたかったけど、言えなかった「さようなら」のヒトコト。
いつ言えばいいの?
彼女の涙を見ないためにも、早めに言ったほうがいいの?
彼女の涙を見ながらでも、ぎりぎりまで言わないほうがいいの?
どうしたらいいの?
私、どうしたらいいの?
- 658 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/04/30(土) 19:42
-
つづく。
- 659 名前:プリン 投稿日:2005/05/01(日) 18:56
- 更新お疲れ様です。
よっちゃぁぁぁん・゚・(ノД`)・゚・。
どーなっちゃうんだよぅ。ドキドキ。
次回の更新も待ってます。
- 660 名前:ひすい 投稿日:2005/05/10(火) 06:57
- Σ( ̄□ ̄;)ええ。はじめましてですよ(コソコソ
ゆっくり頑張ってくださいね。ついていきますんでw
よっちゃん・・・あぁ。。。よっちゃん・・・。_| ̄|○
でも、梨華ちゃん・・・ほ(ry
でもそうなると、よっちゃんが(ry
んー・・・(つДT)
- 661 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/13(金) 23:03
- うぁっ( ̄□ ̄;)!! 見ていない間に話が着々と終止符一歩手前に! 更新お疲れさまですm(__)mよっすぃーの今後の行動に期待したいです。(というか、凄く気になってます。 次回更新待ってます。
- 662 名前:haruri 投稿日:2005/05/22(日) 22:37
- >>659 :プリン さん
>>660 :ひすい さん
>>661 :通りすがりの者 さん
お待たせいたしました。いつも更新が遅くなってしまい申し訳ないです。
最近、この物語が自分の状態とシンクロしている部分があるような気もします。
最後の作品。みなさんにさよならの挨拶です。いいもので締めくくりたいと思います。
よければ物語の終わりまでお付き合いください。
- 663 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:38
-
決まって夜の10時くらいに届くようになった彼女からのメール。
内容はその時どきだけど、やっぱり梨華ちゃんの文面はすごく女の子っぽくて可愛い。
今日も、いつもと同じようにメールが届いた。
メールが何通か行き交ってしばらくしたとき、
「ところで、今度の日曜日は暇ですか?」ってメールが来た。
暇だから「暇だよ」とメールを打てば、「そっか嬉しい(^▽^)v」とメールが届く。
そんな感じで決まった、初めての約束つきの遊び。
今度は偶然じゃない。11時になったら待ち合わせ場所で会えることが分かってる。
- 664 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:39
-
でもやっぱり私は、少し寂しくて怖かった。
彼女との別れが近づくようで、怖い。
気に入られるのは嬉しいけれど、怖い。
彼女の涙を見ることになりそうで、怖い。
- 665 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:39
-
作曲家が自分で曲に終止符を打つように、私も終止符を自ら打つべきですか?
小説家が自分でお話の終わりを決めるように、私も自らの話を終わらせるべきですか?
キャンパーが自分で火の始末をするように、私も自分の中で燃え盛る炎を消すべきですか?
デザイナーが作品の終わりを自分で決めるように、私も色を加えるのを止めるべきですか?
もう私は、すべてを終了させるべき?
彼女との素敵な日々に幸せなうちにさよならすべき?
- 666 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:39
-
「ここらでやめとけって、涙みたくねーだろ?」
「ギリギリまでためそうよ、どうなるかわかんないじゃん?」
二つの対極な考えが頭の中でケンかをしてる。
よく、天使と悪魔が・・・っていうけど、私の場合は、どっちも悪魔。
私の中に天使なんていない。いるわけがない。
もしいるとするなら、私の隣で目を潤ませて映画を見てる彼女。
彼女の笑顔一つで私は救われるから。
- 667 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:40
-
映画見て、ご飯食べて、服見て、プリクラ撮ったりしてさ。
気づいたらお日様は沈んで、外は薄暗くなっていた。
楽しい時間ってどうしてこんなにも早く終わってしまうんだろう。
でも、私たちはちょっぴり大人だから、まだまだ楽しい時間は続く。
またご飯食べて、夜景の綺麗な場所に行ったりしてさ。
その流れで、まあ、私の部屋に至るわけだ。
私が一人ぼっちのときに寂しくて買い集めてしまったフィギュアなんかを梨華ちゃんは興味深そうに一つひとつ見ている。
私はというと、ソファに座ってそんな梨華ちゃんを観察中。
だって、1秒でも長く横顔でもいいから彼女を目に焼き付けておきたいんだもの。
- 668 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:41
-
も・し・か・し・た・ら!私の自惚れなだけかもだけど、
はっきり言って、彼女が私を好きでいてくれているのがみえみえだ。
だって私を見る目があまりにも色っぽいから。
だから私は恥ずかしくて彼女と目をあわすことが出来ない。
すると、また「照れてる〜」とかってからかわれるんだけどさ。
でもでも。それが、嬉しかったりもするの。
もし、彼女に何の気持ちもないならば、梨華ちゃんはいじわるすぎる。
- 669 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:41
-
白い世界のあの人によれば、どうやら私は愛し合うことはできないらしい。
でも、恋することは出来ないなんて言われてない。
だからきっと、私はまだ消えないですんでる。
じゃあ、「愛する」と「恋する」の違いは?ってハナシ。
私はきっと、梨華ちゃんのこと愛してはいないよ。恋してる。
愛してはいないけど、愛しいの。
同じ漢字なんだけどね、、、うーん、ニホンゴムズカシイヨ。。。
- 670 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:42
-
そんなこと考えてたら、いつの間にか隣に座ったらしい梨華ちゃんにポコポコ叩かれた。
でもでも、やっぱりね、それが、嬉しかったりするの。
「ひとみちゃんってよくどこかに飛んでっちゃうよね。」
「そうかなぁ」
「絶対そうだよ。私といるのつまんない?」
「んなこたないよ。ないに決まってんじゃん。」
そんなベタな会話をする私たちだけど、
私、吉澤ひとみ、ただいま決心しました。
“いけるとこまでいきます。”
- 671 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:42
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その先に崖があって、後ろからは狼が追いかけてきてて、下にはワニが待っていたとしても、
どんなピンチが待っていたとしても、やっぱり、少しでも長くここにいたい。
さよならをするときに泣きじゃくる梨華ちゃんの前で、涙を流せなかったとしても、もう、
後悔なんてしたくないから。
ぶつからないで後悔するよりも、ぶつかって後悔します。
“決めたの。”
- 672 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:42
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動いてない時計にさ、電池入れたら、動き出すでしょ?
でもそれって、結局は止まっちゃうの。電池は消耗品だからね。
そしたら、みんなは電池を変えればいいじゃないって思うでしょ?
でも、ここには電池は一つしかないの。だから交換なんて出来ない。
そこでだ、たくさんの時計があるとする。どの時計を選ぶ?
・・・わたしはね、梨華ちゃんの大好きな時計を選ぶの。
だって、喜ぶ姿が見れるでしょ?
その時計が止まったとき、梨華ちゃんは泣いちゃうかもだけど、
そうかもだけど、
やっぱり、彼女以外をだなんて、考えられないから。
私は、今、電池を入れて、時計を動かした。
いつ止まるか分からない時計は、私にとっては最後を告げる静かな爆弾。
嫌だけど、怖いけど・・・電池、入れたの。
彼女を喜ばせるために。
そして、泣かせるために・・・。
- 673 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:43
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「ねぇ」
「うん?」
「好きだからね。」
「うん、私も好きだよ。」
まあ、なんとも、あっさりとした告白シーン。だなんて思うかもしれないけれど、私にはこれが
十分すぎるほどの言葉だった。
- 674 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:43
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両想いだってことが分かったってのに、なぜだか重苦しい雰囲気。
その原因は、どう考えても、私の顔。
だってさ、嬉しいんだけど、笑えないんだもん。
そんな、私の心境を読み取ったのかどうだかわかんないけど、梨華ちゃんは私の顔を覗き込んで
心配そうな顔を私に見せる。
そして、私の手をとってしっかり握ると、身を任せてきた。
梨華ちゃんの重みを身体に感じる。
これは夢じゃない。梨華ちゃんがすぐ側にいる。
私が細っこい彼女の手を握り返せば、笑顔の彼女が見えた。
- 675 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:43
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- 676 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:44
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朝起きると、梨華ちゃんは隣にいなかった。
まさか、夢?
急に不安なって、私はベッドからとびおりる。
テーブルの上に置手紙。
“あまりにも寝顔が気持ち良さそうだったから”
ってフレーズが目に入った。
あぁ、よかった、夢じゃなかったんだ。
私は安心して、その場にしゃがみこんだ。
時計はまだ動いてる。
よかった。
- 677 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/05/22(日) 22:44
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つづく。
- 678 名前:YUN 投稿日:2005/06/08(水) 17:34
- 初レスです☆
いつも読んでたのですが、
今回は勇気を出して書きました。
切ないけど楽しい作品なので、早く続きが読みたいです!
作者様、是非とも頑張ってください!!
- 679 名前:haruri 投稿日:2005/06/17(金) 19:58
- >>YUNさん
レスありがとうございます。
お楽しみのところ、長く待たせてしまって本当にごめんなさい。
そして、続きですが、今回が最終更新です。つまりは終わりです。
最後のお話、読んでやってください。
- 680 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 19:59
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ひとりぼっちって好きじゃない。
特に最近は。
このまま消えちゃったりしたらって思うとすごく怖くて。
私、いま、きっとすごく暗い顔してる気がする。
だってカウントダウンはもう始まっていて、いつゼロになってもおかしくない状態。
笑い方が思い出せない・・・。
- 681 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 19:59
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ふと玄関を見れば・・・
「梨華ちゃん、――?」
そこには、八の字眉毛全開の梨華ちゃんがいた。
あぁ、見られちゃった。
この上なく沈みきった私の表情。
- 682 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:00
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「どうしたの?何かあったの?教えてよ。」
梨華ちゃんはしゃがみこんでる私の側に来て顔を覗き込む。
「ねぇ、私たち恋人になったんだよ?」
うん、分かってる。よく分かってるんだよ。
いまこそ、腹をくくるときだって。
全部、話したほうがいいってこと、分かってる。
何も言わずに消えちゃうよりも、ずっといいってこと、分かってる。
涙を流させることになるかもだけど、ずっといいってこと、分かってる。
- 683 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:00
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でも、あなたの顔を見ていたら決意が緩みそうになる。
八の字眉毛のあなたに冗談をいって、笑顔にさせて、その笑顔を目に焼き付けたい。
涙のあなたにさよならをいうよりも、笑顔の二人のままで終わったほうがいいんじゃないかって。
梨華ちゃんが悪いんだ。
こんなにも私を夢中にさせちゃった梨華ちゃんが悪いんだよ。
- 684 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:00
-
「私のせいなの?」
え?
「私がいきなりこんな風にひとみちゃんに付きまとい出したから?迷惑だったの?」
違うよ、違う。
どうして?上手く声が出ない。
リモコンが壊れてなかなかチャンネルが変わらない。
梨華ちゃんは次々と言葉を重ねて、話を進めていってしまう。
- 685 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:01
-
まるで、夢を見ているみたい。
私は遠くから二人を見ている。
二人からどんどん離れていく。
呆然としている私。涙の一つも流せずに、遠くを見つめている。
梨華ちゃんは大粒の涙を流しながら、ヒトコトも言葉を発しない私を揺さぶる。
視界はスクランブル。
遠くから聞こえる梨華ちゃんの声。
意識が遠のいてゆく。
- 686 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:01
-
「帰るね。」
数秒前に聞いた言葉。
もちろん梨華ちゃんの声。
ダメ!!待ってよ!!!
どうやら、遅かったみたい。
- 687 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:01
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- 688 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:01
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遠くから声が聞こえる。
あ、私、終わっちゃったんだ。
白い世界にまた来ちゃった。
バカみたい。
ほんと、
バカみたい。
結局また何も出来てない。
私ってば、何も変わってないじゃん・・・。
認めたくないから目を開けない。
私のささやかな抵抗。
- 689 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:02
-
「ひとみちゃん。」
「はい。」
「どうしたの?」
「やっぱりダメだったよ。約束したのにね。せっかくチャンスくれたのに。ダメだったよ。
どうしていつもこうなんだろう。梨華ちゃんが大好きなのに。」
「私も大好きだよ、ひとみちゃんのこと。」
「へ?」
「『へ?』じゃないよ。はやく起きなよ〜。今日もバイトあるんでしょ?」
目を開けると、そこには紛れも無く梨華ちゃんの姿。
- 690 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:02
-
「え、どういうこと?」
「何言ってんの?もう、早く頭のエンジン動かしなよ〜。」
「あ、うん。」
梨華ちゃんは呆れたような顔して、目玉焼きを焼いているらしいフライパンの様子を見に行った。
私、ゆで卵のほうがいいんだけどな・・・。
まあ、いい。ノープロブレムだ。梨華ちゃんは側にいる。
- 691 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:02
-
「梨華ちゃん。」
「なぁに?どうしたの?黄身は生のほうが好きなの?」
「そうじゃなくて。」
「硬いのがいいの?」
「そうでもなくて。」
「半熟?」
「うん、そう・・・カナ。」
満足したらしい梨華ちゃんは火を止める。
いや!そうじゃなくって!!
- 692 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:03
-
後ろから抱きしめてみれば、
「もう〜、苦しいよ〜。」
だってさ。
でも、離したくない。
だから、もっと力をこめて抱きしめる。
「好き。」
梨華ちゃんは少し笑って「私も」って言う。
- 693 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:03
-
・・・言わなくちゃ。
夢の二の舞はゴメンだよ。
「ねぇ、聞いて。」
- 694 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:04
-
フライ返しを持ったままの腕の中の梨華ちゃん。
あと1秒。あと1秒だけ。
こんな他愛の無い風景だけど、もっと見させて。
あと1秒だけ、うん1秒だけ。
それが重なって、1分になって、3分になって、5分になって・・・・。
痺れを切らした梨華ちゃんはフライ返しを置いて、こっちを向く。
腕の中に納まった梨華ちゃん。
何の音もしない部屋の中。
だけど聞こえる吐息の音。時計の音。
- 695 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:04
-
「好きだよ。愛してる。」
- 696 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:04
-
-
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『言っちゃった』
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-
- 697 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:05
-
結局、当初の目的は果たせなかった。
「ありがとう」
「さよなら」
両方言えなかった。
でも、私は心の中で何度も何度も叫んだんだよ。
『愛してる』と聞いた梨華ちゃんの幸せそうな顔をした瞬間だって見逃さなかった。
その顔の梨華ちゃんに何度も何度も言ったんだ。
「ありがとう。さよなら。愛してる。」
- 698 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:05
-
スペシャルな言葉って、なかなか言えないものなのかもしれない。
気恥ずかしい。とか。
カッコよくない。とか。
そんなキャラじゃない。とか。
まあ、いろいろ理由はあるだろうけど。
だけどさ、そういうもので良いと思う。
特別な言葉を軽々しく言うものじゃないのかもしれない。
それに、強く思えば、言葉にしなくても伝わるんじゃないかって。
そう思うんだよ。
- 699 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:05
-
梨華ちゃん、また会おうね。
- 700 名前:君にさよならを・・・ 投稿日:2005/06/17(金) 20:05
-
END.
- 701 名前:haruri 投稿日:2005/06/17(金) 20:14
- 作者のharuriです。
物語を書くことは簡単ではなかったですが、とても楽しかったです。
読者の皆様からレスを頂く度に嬉しくて嬉しくて・・・。
最終話『君にさよならを・・・』ですが、このスレの締めくくりということで、
どのような結末にすべきなのか悩みました。皆様の期待に沿うことができたか
どうかは分かりませんが、私なりのハッピーエンドです。
いつかまた物語を書くことになりましたら、その時はよろしくお願いします。
それでは、みなさん、さようなら。ありがとうございました。
- 702 名前:YUN 投稿日:2005/06/17(金) 23:27
- さようなら。ってどういうことですかっ!?
もっと自分は作者様のお話が読みたいですよ!!
だから頑張ってください!←偉そうですね、スイマセン(>−<)
- 703 名前:ひすい 投稿日:2005/06/17(金) 23:48
- 脱稿お疲れ様でした。
色んなハッピーエンドの形があると思います
すごくジーンと・・・きている最中なので言葉では表せませんが
お疲れ様でした。ありがとうございました。
またお帰りになるのを、こっそり待っていたいと思います。
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