堕天使と神様

1 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:50
天使だけどちょっと怖い田中さんが、
ちょっとぬけてるけど笑顔が可愛い道重さんと出会い
ちょっとむかつきながら、呆れながら、そしてとまどいながらも、
だんだん優しくなっていくお話。

・・・たぶん。
2 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:52

「れいなちゃん。ミキはもう、天使なんかじゃないんだよ・・・」


蘇る、あの人の声。
諦めと絶望が入り混じった声。
優しい、でも悲しい声。
あたしはきっと、そのときのことを忘れることはないだろう。
あたしはあの人のその言葉で、神に復讐を誓った。
3 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:53



          『堕天使と神様』

4 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:54
もっていくのはリュックサックひとつ。
そのなかにはタオル一枚に包まれた小型用ナイフが一本。
そして、あの人が愛した、少し色褪せた神様の写真(ほんとは持ちたくなんかないけれど)
首からはいつも、あの人がくれた十字架のペンダントがある。
神様なんてもう信じられないから、本当は十字架のペンダントなんて捨ててしまいたいけど、
あの人がくれたものだから。

「はい、れいなちゃんにあげる」

あの人があたしだけに向けた笑顔で、あたしにくれた最後のプレゼントだから。
この十字架のペンダントは肌身離さずいつも持ち歩いている。

さて、もういくかな。

そういって、あたしは家を出ようとした。
あの人と暮らした家を。
ドアノブに手をかけたとき、あたしはあることを思い出した。
5 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:56
あっ、やり忘れたことがあった。

あたしはドアノブから手を離して、家の中のある場所に向かった。

・・・そこは鏡の前。


目の前にはもうひとりのあたしがいる。
白い衣装と背中に生えている白い羽根とは対照的な色をした、上に結ってある真っ黒な髪の毛。
あたしは鏡の中の自分を見つめた後、目を閉じて、深呼吸をした。
きっともう、白い色につつまれた自分の姿を、見ることはないだろう。
あたしは再び目を開けて、鏡の中の自分をもう一度見つめた。
そうしながら、手を上に上げて、後ろに引いた。


───さよなら


そして、あたしはその手を思いっきり、鏡めがけて振り下ろした。
バリーンっという音がしたあと、ガラスがあたりに飛び散った。
それとともに、赤い液体も一緒に飛び散った。
どうやらその赤い液体は、あたしの手から出てきたものらしい。
手がなんだか熱い。
見ると、振り下ろした右手から、血が流れていた。
これくらい、なんともない。
いちいち包帯を巻くのも面倒なので、あたしはその傷を舐めた後、そのままドアノブに手をかけた。
・・・もう後ろは振り返らなかった。
6 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:56
ガチャ

家のドアを開けて、あたしはそっとつぶやいた。

「さよなら」

───さよなら、天使のあたし。

家を出た後、ぱたんと静かに閉まるドアの音がして、
今度こそ本当にさよならしたのだと思った。

涙は出なかった。
でも、淋しかった。

あたしはきっと、もうここへは戻ってこない。
もう戻れない。
ミキさんと暮らした、あの日々には。

後ろを振り返りそうになるのを堪えて、あたしは前へ、前へ歩き出した。
喪失感が漂う胸の中で激しく燃え続けている復讐心だけを頼りに───。
7 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:57

───あたしは神様を許さない



そう心に決めて、あたしは顔を上げた。
あ、あたし今、ちょっとかっこよくない?
そう思い、自分に少し酔っている時だった。
あたしは自分の進むべき道を見て、思わずずっこけてしまった。

はあ!?な、なにあれ・・・あり??

目の前には道で(とはいっても雲の上だけど)うつ伏せにのびている女の子がいた。
その女の子の倒れ方が奇妙で、指先からつま先まで綺麗にピンと伸びていて、
遠くから見てもやけに綺麗だった。
こんな綺麗な倒れ方をしている人、あたし初めてみた・・・

じゃなくて!!この子、寝てんの?それとも疲労とか?
8 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:58
ノリツッコミをしたあと、あたしはそーっとその女の子のほうへ近づいてみた。
よく見たらその女の子にも背中から羽根が生えていた。
あたしと同じ天使か。
・・・うわっ、なんだかやだな。
だって天使が皆、この子みたいに変態と思われたらやだもん・・・。

「って、わあっ!!」

あたしの心の声が聞こえたのか、女の子はいきなりむくりと起きて、突然立ち上がった。
び、びっくりしたあ・・・。
あたしが言葉を失っていると、女の子はあたしをじっと見つめて、その後こう言った。

「勝った、さゆのほうが可愛い」

9 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 22:59

・・・こいつ、ぶっ殺す。
思わずナイフの入っているリュックのチャックに手が伸びそうになったけど、あたしはぐっと堪えた。
ここでナイフを出したら、計画は全部パアになってしまう。

れいな、落ち着いて、落ち着いて。
こんなちょっとお間抜けさんな天使相手にキレるなんて、あなたらしくないじゃない。

あたしは自分にそう言い聞かせると、そのクソ生意気な天使を無視して、さっさと先へ進もうとした。

「待って、どこ行くの?」

その天使の声に、あたしはぎくっとした。
振り返ると、その天使は真っ直ぐな瞳で、あたしを見つめていた。
普段のあたしなら、「アンタには関係ないじゃん」とかうまく誤魔化せただろう。
でも、そのときは何故か、嘘をつくことができなかった。
あたしはため息をついた後、正直にこう答えた。

「神様を殺しにいくんだ」

あたしの言葉に、少女は目を丸くした。
そりゃあそうだろう。本気で言ってるんだから。
あたしは呆然と立ちすくむ天使に背を向けて、また歩き出そうとした。
そのとき、天使がまた何かほざいた。
10 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 23:00
「私も行く!!」

はあっ!?

今度はあたしが目を丸くする番だった。
また振り返ると、天使はさっきの驚いた顔と違って、今度は笑っていた。
他人の笑顔なんて久しぶりに見たから、あたしにはその笑顔が眩しくて仕方がなかった。
天使は呆然と立ちすくむあたしのほうに駆け寄ってきて、
白い頬をピンク色に染めながらこう言った。

「さゆみ!さゆみっていいます、よろしく」

天使・・・いや、さゆみはあたしに向かって手を差し出してきた。
気づいたときにはもう遅く、あたしはその手を握り返していた。

これがあたしとこいつとの出会い。

ああ、あとこいつの笑顔にちょっとドキッとしたのは秘密。
11 名前:作者 投稿日:2004/02/08(日) 23:01

           ───
12 名前:作者 投稿日:2004/02/09(月) 19:09
□ □ □ □ 

この先に、なにがあるかは知らない。

でも、きっとあたしは堕ちていく運命なのだろう。

それもいい。それでもいい。

あの人に会えるのなら、それでも───。


「れいなちゃん・・・」



あなたはあたしの全てでした。

□ □ □ □
13 名前:作者 投稿日:2004/02/09(月) 19:21

「待ってよ、れいな!」

「もう、遅いよ!!」

はあはあ息を切らしながら、さゆがあたしのほうへ駆け寄ってきた。
・・・あたし、なんでこんな足手まといなやつ、連れてきたんだろう?
過去をそっと振り返ってみたけど途中でやめた。
昔のことをどんなに想ったって、それはもう手遅れで、無駄なことでしかない。
それはあたしが一番よく知っていた。

「れいなちゃん、ミキは───」

ああ、今は思い出しちゃダメだ。

ふと蘇りそうになる記憶に、あたしは蓋をした。
14 名前:作者 投稿日:2004/02/09(月) 19:45

「れいな?」

はっとして我にかえると、いつの間にかさゆがあたしのすぐ目の前に立っていた。
心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。
昔から心配されたり、気を使われるのが苦手なあたしは、すぐに笑ってごまかした。

「あんた、歩くの遅い」

そう言って、さゆのおでこを中指で軽くはじくと、さゆはおでこをさすりながら、笑って
ごめんね、と小さくつぶやいた。
そのぽわ〜んとした間抜けオーラ全開の笑顔を見て、あたしはなんだか悩んだり、
何かを難しく考えたりするのが馬鹿らしくなって、思わず笑ってしまった。

「ぷっ・・」

「あ、笑った!・・・今私のこと馬鹿にしたでしょ?」


ギクッ・・・。

こいつ、なかなか鋭い・・・ぼーっとしてるくせに侮れんな。

拗ねてぷくっと頬を膨らませたさゆに、あたしは必死に作り笑顔でごまかした。

「え〜、そんなことないよお。」

「嘘。だってれいながそんな猫撫で声出すときって、嘘ついてる証拠だもん!」

さゆの言葉に、あたしは凍りついた。
げっ、・・・こいつもうあたしの行動を冷静に分析してやがる。
こ、こんなときどうすれば・・・・。


15 名前:作者 投稿日:2004/02/09(月) 20:06
もはや絶体絶命というときに、あたしはそれから逃れる方法を思いついた。

「てかさ、さゆはなんであたしについてきたの?」

「えっ?」

「いや、ずっと疑問に思ってて。だって、あんた神様きらいじゃないんでしょ?」

さゆはあたしの質問に、口をぽかーんとあけたまま、呆然としている。
よし、作戦は成功。無事黙らせることができた。
この質問のおかげで、あたしはさゆの恐ろしい尋問から逃れることができた。
・・・だけど。

「おーい、さゆ?」

「・・・・」

「??・・・どうした?」

「・・・・」

何故かさゆは俯いたまま、黙り込んでしまった。
あたしは心配になって、さゆの顔を覗き込んでみる。
よく見ると、さゆの唇が、ちいさく震えていた。

「───・・・は、わた」

「ん?なに??聞こえない・・・」

そう言って、あたしはさゆの唇に、耳を近づけた。
さっきの明るい声とは違って、さゆの声はとても小さくて消えてしまいそうだった。

「───は・・・わたしは」

「さゆ?」

さゆは蒼い顔をしたまま、ただその言葉を繰り返しつぶやくだけだった。
あたしはどうしたらいいのか、わからずに、ただ途方にくれるだけだった。
16 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:03
───※

────あやちゃん・・・好きだよ?

「・・・みきたん?」

どこか分からない、深い闇を彷徨っていると、あの人の声が聞こえた。
大好きな、大好きなあの人の声。
私の大好きな・・・。

「みきたん!!どこ?」

私は何かにすがりつくようにして、その名を呼んだ。
いくら名前を呼んでもあの人は姿を見せてくれなくて、それが余計に私の心を焦らせた。

「・・・みきたん」

なんだか急に心細くなって、最後に小さな声でその名を呼んだ。
そしたら、またあの人の声が聞こえてきた。

────・・・やっぱあやちゃんなんて、大嫌いだ

その言葉で、私の中の何かが、音を立てて崩れた。

17 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:04
「みきたんっ!!」

息を切らして、辺りを見渡して。
目に映ったのは見慣れた景色だった。
そこは白い部屋で、開かれた窓につけられた白いカーテンが風で揺れている。
窓の近くに置かれた、小さな丸いテーブルの上に置かれている花瓶に挿されたオレンジ色の花の花びらが、揺れている。
私は椅子に座りながら、ただ呆然としてそれを眺めていた。
しばらくして、ようやく、さっきのことが夢だと知る。
身体が熱くて、額には汗がにじんでいる。
窓からはいってくるひんやりとした風が、私の火照った身体を冷やしてくれた。
18 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:05

────あやちゃんなんて、大嫌いだ

・・・私はまだ囚われているのだろうか?
あのときのことに。あのときの、あの人の言葉に、あの人の声に、あの人の全てに。
認めることは簡単だろう。
そう、ただ認めればいい。
でも、私はそれができずにいた。
きっと、私は何かを間違えた。
それは心の中で自然と理解していたこと。でも・・・誤魔化せずにはいられなかったこと。


「かみさ、あっ・・・あやさん?」

後ろからか細い声がして、私は声のしたほうを振り返った。
そこには・・・

「えりちゃん・・・」

少しおどおどしながら、私のほうを見つめるえりちゃんが立っていた。
えりちゃんは小さい頃からいつも私のそばにいて、姉妹のように育った。
19 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:07
「おいで、えりちゃん」

そう言うと、えりちゃんはまだ少しおどおどしながらも、私のほうに近づいてきてくれた。
それでもまだ少し、距離はあって。
この距離が二人の心の距離を表わしているようで、私は少し淋しくなった。
昔はあんなに近くにいたのにね?
そっと、その小さな手に触れてみた。

「あっ・・・」

えりちゃんが頬を少し赤く染めて、小さな声を上げる。
私のほうをちらちら見ながらも、やっぱり恥ずかしそうに下を俯いている。
いつからだっけ?こんなによそよそしくなったのは。
いや、私は知っているはずだ。こんなに距離が開いたのが、いつからなのか。
でも私は目を向けたくなかった。
本当のことなどもう、知りたくなかった。
いや、本当のことなど、初めから見ていなかったのかもしれない。
だからこそ、私は現実に耐え切れなくて、こうして塞ぎこんだまま。

私はすがりつくように、えりちゃんの手を自分の頬に当てた。

「あ、あやさん・・・」

「あったかい・・・」

えりちゃんが動揺して、さっきよりも落ち着きがなくなっている。
さん付けで呼ぶようになったの、いつからだっけ?
ああ、そうか。あの日からだ。
あったかいな、えりちゃんの手。
あったかいな、あったかいな・・・。

────みきたん。
20 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:08
「私・・・やっぱ間違ってたのかなあ?」

「・・・えっ」

ずっと、胸に秘めてきたこと。
かっこ悪いことも知っている。
これ以上私は甘えてはいけないことも知っている。
でも、口にせずに入られなかった。
疑問形にしたのはきっと、まだ認める勇気がないから。
あたしはきっと弱い。
あの人がいないと、何にもできないで。
そして、やっぱり私はずるい。

・・・あの人を追い出したのは、私なのに・・・。
21 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:09
「あ・・・やさん」

えりちゃんがそっと、もう片方の手で、私の頭を撫でてくれた。

えりちゃん・・・。

まさかこんなこと、えりちゃんがしてくれるなんて思わなかった私は、ただ驚いていた。
えりちゃんの細い指が、私の髪を優しく撫でてくれる。

・・・気持ちいいなあ・・・。

───ずっと、このまま眠ってしまいたい。

ふと、そんな思いが心に生まれて、私はそれに従うように、えりちゃんの胸に顔を寄せた。

「う、あっ・・・」

えりちゃんの心臓の音が聞こえる。
その音がだんだんはやくなる。
トク、トク、トク、トク・・・。
波打つその音がなんだか心地よくて、私は目を閉じた。
えりちゃんはおろおろしながらも、私の頭を優しく抱いてくれた。
22 名前:作者 投稿日:2004/02/11(水) 00:10
「あのっ・・・」

「んっ?」

えりちゃんがそのままの体勢で、私に話しかける。
私は目を開いて、その言葉を待つ。
えりちゃんは少し気弱な、でも一生懸命、私に言ってくれた。

「・・・無理しないでください」

その言葉に、私は目を見開く。
えりちゃんは返事をしない私を心配してか、また落ち着きがなくなった。
私は少し泣きそうになりながら、今思いつく精一杯の言葉で返事を返した。

「・・・ありがとう」

えりちゃんはその後、私をもっと強く抱いてくれて、

「・・・はいっ」

と、笑って返事を返してくれた。

花瓶に挿された花の花びらが一枚、風に乗ってテーブルの上に落ちた。
23 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 17:02


───※


24 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 17:18

・・・みきさん。

あなたがいなくなってから、考えるのはあなたのことばかり。

あの日、あの戦争があって、あなたがここからいなくなってから半年の間ずっと、

考えるのはあなたのことばかり。

ねえ、もうすぐ会えるかなあ?

あなたがいれば、どこでもいい。

たとえそこが、光の射すこの場所からはるかに遠い、地獄であっても。

ああ、きっと・・・あたしは・・・。


───あなたがいれば、どこでもいい。
25 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 17:30
さゆは黙り込んだまま、何もしゃべろうとしない。
あたしは少し、後悔した。
ああ、きっと、聞いてはいけないことだったんだ。
「もういいよ、言わなくて」
そう言おうとして顔を上げたとき、あたしは驚いて、目を大きく見開いた。

「あ、あそこは・・・!!」

身体が熱い。心臓がドクン、ドクンと音をたてる。
喉がカラカラになった。

「れいなっ!?」

さゆの呼ぶ声がしたような気がしたけれど、あたしは立ち止まらなかった。
あたしは走った。
ここからだいたい二十メートル先の、真っ赤に染まった雲。
かつては白かったであろう、あの道へ。


───きっと、あそこだ!

あたしはただ、無我夢中で走っていた。
26 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 17:37

「こ、これって・・・」

目的地に着いたとき、あたしの身体は震えた。
喉がカラカラで、とても熱い。
走ってきたせいで、胸が苦しい。
真っ白い雲の中で、此処だけは何故か赤かった。
いや、あたしは知っているはずだ。
何故この場所だけ、真っ赤に染まっているのか。
この真っ赤な色は、一体何なのか。


ああ、この場所は・・・この色は・・・。


───れいなちゃん。



ふと蘇る、懐かしい声。
これはあなたの・・・・・。
27 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 17:48

「・・・れいなちゃん」

後ろから、さゆの怯えた声が、肩をたたいた。
あたしは震えながら、ゆっくり振り向いた。
そしたら、さゆは悲しそうに顔をゆがめた。
あたしはそんなに酷い顔をしているのだろうか?
ああ、わからない、わからない。
分からなくなるよ。

一体、あたしは何をすればいいのか。
あの人のために、何ができるのか。

「れいな・・・ここ」

「戦場だよ」

怯えながら、震えながらあたしに問いかけるさゆに、あたしは淡々と言葉を返した。
そんなあたしの態度にか、それともその答えにか、さゆは驚いた顔をした。

「・・・半年前、ここで・・・この戦争で」

あたしはそこでいったん、言葉を切った。
そうしないときっと、泣いてしまいそうだったから。


28 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 18:02

あたしは下にしゃがみこんで、赤に染まった雲をすくい上げる。
さゆは「あっ・・・」と声を漏らしたけど、止めようとはしなかった。
あたしの手は、どんどん真っ赤に染まっていった。

ああ、この色は・・・。

───真っ赤な血の色。

───きっとあの人のものも、どこかに混じっているはずだ。

あたしは真っ赤に染まってしまった自分の手を見つめながら、そっとつぶやいた。



「・・・あたしの大事な人、いなくなっちゃった」


辺りは不気味なほど、静かだった。


29 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 18:20

一緒に住んでいた頃、あの人がまだ『天使』だった頃。
あの人は毎日いつものように、元気よく「ただいま」と言い、
あの人の帰りを待ちわびていたあたしの頭を撫でて「好きだよ」と言ってくれた。
素直じゃないあたしは、本当は嬉しかったけど嬉しくないふりをして、ぷいと横を向いた。
あの人はいつものように笑っていた。
「素直じゃないなあ」と言って、あたしの頭をくしゃくしゃに撫でていた。

ミキさんが笑って、あたしは怒ったふりをして、
またミキさんが「素直じゃない」と笑って。

───そんな不器用だけど幸せな毎日がずっと、続いていくのだと思っていた。

   そう信じて、疑わなかった。




30 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 18:40

───ある日、戦争、戦争があったと聞いた。

あの人はいつものように「ただいま」と言った。
でも、いつものような大きな声ではなかった。
そんな小さな違いから、あたしの思い描いていた、ずっと続いていくと思っていた毎日は
形を変えて、ひび割れて・・・ついに壊れてしまった。

───あの人の口から、『戦争』という言葉を聞いた。

「ミキねえ、戦争したんだあ」

ただいまの後にあの人はそう漏らした。
「ただいま」の後に「好きだよ」と言ってくれると信じていたあたしは、
少し裏切られたような気持ちになった。
頭さえも撫でてくれなかった。

「ミキ、負けちゃった・・・」

あの人がぽつりとつぶやく。
きっと、どうせあの人の大好きな神様と「戦争ごっこ」だとかいう遊びをして、
「とどめだ、ぐさっ」「うっ、・・・や、やられた」なんてくだらない、
見てるこっちが呆れるようなやり取りをしていたのだろう。
あの二人ならやりかねない。
そんなあたしの甘い考えは、すぐに壊された。



31 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 18:51

「ミキ、さよならしにきたんだよ。れいなちゃんと」

さよなら?
何それ?意味わかんないよ。
どうせそのあと冗談だとか、笑って言うんでしょ?
知ってるよ、わかってるよ。
嘘だってバレバレだよ。

悲しそうにそう言うあの人の言葉が、信じられなかった。
もしかしたら、今でもまだ、信じていないのかもしれない。
あたしは知りたかった、ずっとずっと。
あの人とあたしの「いつもの」日常を壊すものは、一体何なのか。

あたしが何にも言えずにいると、あの人は急に苦しそうに顔を歪めた。

「うっ・・・」

「・・・ミキさん!?」

あの人の身体が床に突然、崩れ落ちる。
あたしは慌てて駆け寄ったけれど、あの人があたしを突き飛ばした。

「・・・ダメっ!!」

「うわっ!!」

あたしは床にしりもちをついた。
ワケが分からなかった。
顔をしかめてあの人のほうを見ると、あたしは息を呑んだ。
32 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 19:02

「ミキさっ・・・か、身体!」

あたしは震える声で、そう言うのが精一杯だった。
ミキさんの身体は、いつの間にか傷だらけになっていて、
いろんなところから血が溢れてでていた。

「あはは・・・、もう限界みたい。ずっと隠していたけど」

ミキさんは痛みに顔を引きつらせながらも、やっぱり笑っていた。
こんなときまで無理してわらわなくてもいいのにと、怒りたくもなったけど
やっぱりあたしは怖くて、見ているだけだった。
33 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 19:36

「あはは・・・もうミキ、なんにもないや」

ミキさんが自らを嘲笑うかのように、そう漏らした。
その言葉が、あたしの胸にむなしく響いた。

「ミキには、もうなんにもないや」

一体、何を失ったと言うのだろう?
ミキさんの失ったものは、一体なんだったのだろう?

そう考えている間に、ミキさんの身体はだんだん黒ずんできて、
真っ白な天使の綺麗な羽根は、ひしゃげて醜くなっていた。

「ひぃっ・・・!」

恐怖のあまり、あたしは声を漏らした。
そしたらミキさんは悲しそうにこうつぶやいた。

「れいなちゃん。ミキはもう、天使なんかじゃないんだよ・・・」

その言葉は今でもあたしの心を縛り付けている。
ミキさんの身体はもう天使じゃなくなっていて、肌の黒ずみが、ついに顔にまで及ぼうとしていた。

「ああ・・・ああっ」

あたしの大好きなミキさんが、どんどん変わっていく。遠くなっていく。
あたしはふと、理解した。
今のミキさんの身体は天使じゃなくて、・・・悪魔だと。
神様が言っていた。
悪魔の身体は真っ黒くて、羽根がひしゃげているのだと。
あたしはミキさんがどんどんミキさんじゃなくなるのが怖くて、
ミキさんに触れようと、ミキさんのほうに手を伸ばした。




34 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 19:46

「ダメだって!ミキ、気持ち悪いでしょ?触ったら、汚れるよ?」

ミキさんは本気で怒って、あたしの手を叩いた。

───触ったら、汚れるよ?

その言葉が悲しくて、あたしは泣きそうになった。

「いなくなっちゃヤだよぉ・・・。天使じゃなくていいから、あたしのそばにいてよ」

あたしの言葉にミキさんはただ「ごめんね、ごめんね」とつぶやいた。
目からは涙がこぼれていた。

「ミキ、神様に愛されたかったんだあ・・・」

ミキさんの言葉に、あたしは目を見開く。
ミキさんはその言葉を残して、あたしの前から姿を消した。
あたしは何度もその名前を呼んだけれど、ミキさんはもう戻っては来なかった。

こうして、あたしの幸せだった毎日は終わりを告げた。
35 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 20:15
あたしはこの半年の間、無理に自分に言い聞かせていた。
ミキさんは元気よく「ただいま」と言って戻ってきて、
あたしの頭を撫でて「好きだよ」と言ってくれるのだと。

半年、待った。
またいつものように、あの人が「ただいま」と言って、
あたしの頭を撫でた後「好きだよ」といってくれるような、そんな気がした。
そしたら今度こそ素直に「ありがとう」と言おうと心に決めていた。

明日こそ、明日こそは。

あたしは毎日あの人を待っていた。

今日は帰ってこなかった。
だけど、明日はきっと。
明日こそはきっと。

そうやって、半年たった。
現実を認めざる得なくなったあたしは、大声で泣いて、
泣き止んだあと、神様へ復讐を誓った。

戦争はミキさんが率いる軍と神様が率いる軍との間で行われたらしい。
あたしは何にも知らなかった。
あたしは何にも知らないまま、ただあの人の「ただいま」を待っていた。

今も、仲がよかったミキさんと神様の間に何があったのか、わからないまま、

ただあのひとの「ただいま」を待っている。
36 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 20:26

───ぎゅっ

「さゆ?」

昔のことを思い出していると、さゆがあたしに抱きついてきた。
あたしは慌てて突き飛ばす。
さゆは小さな声を上げて、しりもちをついた。
あたしはこの光景を、見たことがあった。

「今あたしに触ったら、汚れるよ?」

手は誰かの血によって汚れている。
あたしはさゆにはそんなものに触れて欲しくなかった。
争いで流した血なんて、さゆに触れさせたくなかった。
さゆはそれでも、あたしに抱きついてきた。
汚れてしまうのに。

「だめだって!」

あたしがまた突き放そうとすると、さゆはさっきより強くあたしに抱きついてきて
なかなか離れてくれなかった。

「血で汚れちゃうよ・・・」

あたしが情けない声でそう言うと、さゆは泣きそうな声でこう言った。

「いいよ、それでも・・・」

あたしがその言葉に驚いていると、さゆはあたしの血で汚れた手をぎゅっと握り締めた。
さゆの綺麗な白い手が、血で汚れていく。
でも今度は、あたしは突き飛ばすことができなかった。

37 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 20:33

───あったかい

握られた手からさゆの体温が伝わってきて、あたしはくすぐったいような気持ちになった。
さゆはあたしのおでこに自分のおでこをくっつけて、こう言ってくれた。

「汚れてもいいよ。れいなの手だから」

何故だかその言葉が嬉しくて、あたしは泣きそうになった。
さゆはそんなあたしの心を察したのか、

「つらいときは泣いてもいいよ」

と言って、あたしを抱きしめてくれた。
あたしはついに我慢できなくなって、さゆの胸で大声で泣いた。
さゆは優しく微笑んで、あたしの背中をさすってくれた。
38 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 20:40
───いいよ、それでも・・・
   汚れてもいいよ。

あの人もきっとこういう言葉をもとめていたのかな?


そう思ったら、自分もあのひとにそういってやればよかったと後悔した。

汚れてもいいと、言ってあげればよかった。


───汚れてもいいよ。れいなの手だから

そう言ったさゆの声が、しばらく耳から離れなかった。

   
39 名前:作者 投稿日:2004/02/12(木) 20:46


ノノ*^ー^)从‘ 。‘从从 ´ ヮ`)从*・ 。.・)
40 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:28
───※

───彼女の過去に何があったなんて知らない
   思えば彼女のことなんて、本当は何も知らないのかもしれない

   でも、それでも───

「あっ!それ、もーらい!」

「ああっ!あたしのお肉!!」

「ふん!油断するほうが悪い!!」

あたしの夕飯の焼肉を、先に自分のを食べ終えてしまったミキさんが横取りする。
ミキさんは得意そうな顔でこっちをみると、見せ付けるようにあたしのお肉を食べてしまった。

───ぱくっ

「・・・あたしのなのに、ひどいよ」

「いいじゃん、いいじゃん!減るもんじゃないし〜」

「お肉は減ります!」

あたしがそう言って少しむっとすると、ミキさんはへらへら笑って、

「いいじゃん、いいじゃん!次の夕飯が焼肉だったとき、ミキの焼肉一枚返すから。ねっ?」

───絶対嘘だ・・・!

わかってたけど知らないふりをして、あたしはお肉をとられた悔しさを押し込めながら、頷いた。
ミキさんの笑顔を見ると、ついなんでも許してしまう。
41 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:29

「よおしっ!じゃあ、約束ね!!」

そう言ったミキさんの顔はやっぱり笑っていて。
それは絶対ミキさんには果たせない約束だろうと思っても、それでもあたしは笑って、信じて頷いてしまった。
そしたらミキさんも嬉しそうに笑う。
ミキさんのその笑顔を見ると、それが果たせない約束でもいいと思った。

「ああ、お腹いっぱい。ミキ、もう寝るね?」

背伸びをして、そのままそこに寝転がるミキさんに、あたしは軽く注意する。

「食べた後すぐ寝るの、身体に悪いらしいですよ?」

「いいの、いいの。天使には関係ナッシング!」

ミキさんはそう言いながら、手をひらひらと振る。
ミキさんが顔を床に伏せていたせいで、あまりその表情は見えなかったけれど、きっと悲しい顔をしているんだろうと思った。
「天使」という言葉を口にするとき、ミキさんはいつも悲しい顔をする。
その顔をずっと見つめていると、いきなりミキさんがむくりと起き上がってきた。
顔を見つめていたのがバレたのかと思って、少しドキッとした。

「あーあ、人間の服ってやっぱり寝にくいや」

ミキさんはそう言って、上着を脱いだ。
紫のレースのキャミソールを着た身体。
その背中から、真っ白な羽根がとび出ている。

「ふああ。おやすみ、愛ちゃん」

あたしがずっとその背中を見つめていると、ミキさんは気づかずにそのまま横になって寝てしまった。
そっと、目を閉じてみる。

───出会ったのは、いつだっけ?

浮かんでくるのは、半年くらい前の、忘れもしないあのときのこと。

42 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:31
───※

「あーあ、またケンカしちゃった・・・」

恋人とつまらないことでケンカして、自己嫌悪に陥りながら、家への帰り道を歩いているとき。

───ドサッ

え?何??

上から突然、何かが落ちてくる音がした。
あたしは呆然と、その落ちてきたものを見つめていた。
「それ」が堕ちてきたときから、友達がいて、恋人がいて・・・というあたしの平凡な生活は、180度変わってしまった。

あたしはそのまま、何事もなかったかのように、通り過ぎようとした。
でも、ふと我にかえった。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

気づけばただ、叫んでいた。周りのことも気にせずに。
落ちてきた「それ」は、顔をしかめながらも、ゆっくり顔を上げてこちらを見た。
ショートカットの茶色い前髪の間から、きつい目がのぞく。

「ひぃっ・・・!」

に、睨まれた!!

そう思い、身体を硬直させていると、落ちてきた「それ」はきょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡して。
その後、大きく目を見開いて、またあたしの顔を見て、叫んだ。

「うそおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

肩をすくませて、思わず耳をふさいだ。
あたしはもう何がなんだかわからない。
こ、こういうときこそ、落ち着かなきゃ!!
落ち着け、落ち着いて、高橋愛。
ええと、そうだ!今日一日のことを振り返ってみよう!!
ええと、今日は朝六時に起床して、九時くらいに恋人の家に遊びに行って、それから食べ物の話をして・・・。
んで、何故かかぼちゃのことでケンカになって、そのままその家出て行って、・・・それから自分の家に帰ろうとして・・・。

そしたら、そしたら・・・上から変な羽根つけた人が落ちてきて・・・。
あ、ありえない、ありえない!!
きっと、これは夢だ!
神様がきっと、恋人とケンカしたから怒ってあたしに悪夢を見せているんだ。
きっとそう!絶対そう!!
つまりは恋人と仲直りしてこいってこと!
この夢から覚めるのなら、あたし、なんでもします!
43 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:32
あたしは恋人と仲直りしようと、落ちてきた「それ」を見ないようにして、背中を向けて走り出そうとした。
・・・そのとき。

「ねえ、ちょっと」

そのドスの聞いたような鼻にかかる声に、あたしは現実に戻されてしまった。
これが現実?おかしすぎるよ。
上から天使の羽根ついた人が落ちてくるなんて。
ああ、もしかしてドラマ撮影?
あたし、現場に勝手に入ってきたのかな?
なら、謝らなきゃ。ごめんなさい。
それじゃないなら、ただのコスプレ?
天使のコスプレって今、流行ってんの?
はっ!まさかあたしを暴走族・・・いや、コスプレ暴走族に加入させようというんじゃあ・・・。
嫌!断る!!
そんなの、絶対に嫌!!
変なコスプレしながらバイクであの道この道を駆け回るなんて、絶対に嫌!!
あたしがそんなことを考えながら、首をぶんぶんと横に振っていると・・・。

「ね、ねえってばぁ・・・」

また後ろから声をかけられる。
何故かその声はちょっと弱気だった。
44 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:35
───もう、逃げられない
あたしは覚悟を決めて、後ろを振り返った。
ボコボコに殴られる覚悟で。
そこには困り果てたように、眉間にしわをよせて頬を人差し指でポリポリかいている女の子の姿があった。

───あたしはもう逃げない
そう心でつぶやいたあと、あたしは言った。

「あ、あたし、コスプレの趣味なんてありませんから!!」

「はあっ!?」

「な、殴るのなら殴ってください、好きなだけ!あたしはコスプレ暴走族になんて、絶対に加入しませんから!!」

落ちてきた女の子は、驚いたような顔をして、こっちをみていた。
やばい、殴られる。
そう思って、ぎゅっと強く目をつぶったときだった。

「あはははははっ!!!」

突然、笑い声が聞こえて、あたしはゆっくり、目を開けた。
そこには鋭い目つきをした女の子じゃなくて、楽しそうに笑うかっこかわいい女の子がいた。
さっきあたしを睨んだ女の子とはとても同一人物とは思えないほど、可愛い顔をしていた。
あたしが口をあけたまま、呆然としていると、空から落ちてきた天使のような格好をした女の子は笑ったままこう言った。
45 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:37
「ご、ごめんね?笑っちゃって」

謝っているくせに、女の子は笑ったまま。
なんだか勝手にびびってたこっちが馬鹿みたいで、なんだかむっとした。

「わ、笑わないでくださいよ!こっちは人が上から落ちてきてびっくりして・・・」

頬を膨らませたまま、あたしがぷいっと横を向くと、女の子はやっぱりまだ笑ったまま、あたしにあやまった。

「ごめんって。だ、だってさ、コスプレ暴走族ってさ!!ミキ、目つき悪いから
 むこうの世界でもヤンキーって言われるけどコスプレ暴走族なんていわれたこと、なかったから」

女の子の目にはもう涙が浮かんでいる。
・・・そんなに笑わなくても。
そう思いながらも、あたしはちょっと気になって聞いてみた。

「『むこうの世界』って何ですか?」

「・・・天国だよ」

ぴたりと、女の子の笑いが止まる。

───天国だよ
そう言った目は、もう笑っていなくて、とても悲しそうな顔をしていた。
46 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:37

「ミキ、もうなーんにもないんだ。昔は天使だったけど・・・」

彼女に出会う前のあたしなら、きっと信じていなかったろう。
でも、彼女の悲しそうな瞳を見て、あたしは思わずその頬に触れて、こう言ってしまった。

「あたしと一緒に、暮らしてください!」

つい大声で言ってしまったあたしに、自分自身驚きながら。
きっと彼女はもっと、驚いてしまっただろう。
そう考えながら、彼女の顔を窺っていると、彼女はあたしの顔をしばらく見つめながら考えた後、

「うん、いいよ。・・・一緒に暮らそう」

と言って、笑って頷いてくれた。
それから、あたしとミキさんの二人暮しが始まった。
ミキさんとの暮らしは楽しいけれど、ミキさんの話にあたしは笑ったり、拗ねたりしながらも、決して消えることはなかった。
47 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 16:38

───もうなーんにもないんだ。

悲しそうにそう言ったミキさんの声、表情。喪失感の漂う瞳。

あたしはミキさんにそんな表情をさせるものが何なのか、わからないまま。
半年たったいまでも、わからないまま。

目の前には気持ちよさそうに眠る、ミキさんがいる。

「あーもうこんなにお肉食べられないよ・・・むにゃむにゃ」

「ぷっ・・・」

───何言ってんですか。

ミキさんの寝言に、おもわず笑ってしまった。
内容はきっとミキさんが大好きな焼肉をたらふく食べている夢なんだろう。



「・・・風邪ひきますよ?」

あたしはその寝顔を見つめながら、毛布をかけてあげた。

───あたしは彼女のこと、本当はこれっぽちも知らないのかもしれないけれど。
   
   ゆっくり、ゆっくりでいいんだ。
  
   もっともっと、一緒にいよう?

   それからもっと、笑ったり、怒ったり、泣いたりしよう?

   ねっ?・・・ミキさん。

あたしは少し微笑みを浮かべながら眠っているミキさんの髪を撫でた後、夕飯の片づけをして、ベッドで眠った。
48 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 19:57
□ □ □ □ □ □

───ミキたん。

あやちゃん・・・・。

───ねえ、ミキたんはどうして、人間を嫌うの?

違うよ!嫌いなんかじゃないんだ。ミキは、ただ・・・。

───・・・ミキたん。

□ □ □ □ □ □ 
49 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 20:03

嫌な夢を見て、目が覚める。
蘇るのは、悲しそうな大好きなあの人の顔。
ううん、大好きだった人。
もう過去のことだ。
あの人のことなんか、ミキは・・・ミキは知らない。
忘れよう、忘れてしまえ。

ミキは・・・ミキは・・・。
50 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 20:18
ふと、自分の身体にかけられた毛布に気づく。
愛ちゃんか。
あとで、ありがとうって言わなきゃ。
片付けられたテーブルに目を向けて、ぎょっとする。
うわーミキまたお片づけ忘れちゃったよー!
愛ちゃん、ごめん・・・。

何か飲み物を淹れるついでに、ふと愛ちゃんのベッドのほうに行ってみる。
すやすやと気持ちよさそうに眠る愛ちゃんを見て、思わず笑みが浮かんだ。

かあいいなあ・・・。

ストレートで綺麗な黒髪にそっと触れてみた。
さらさらでとても触り心地がいい。
あたしはそっと、目を閉じてみた。
浮かんできたのはやっぱり、あの人の顔。
51 名前:作者 投稿日:2004/02/14(土) 20:31

───似てるなあ・・・

出会ってから、ずっと思っていたこと。
道で偶然であったときから、ずっと思っていたこと。

「愛ちゃんは・・・やっぱりあやちゃんに似てるよ」


そうつぶやいたとき、ぴくっと愛ちゃんの身体が震えた気がして、あたしは慌てて手を引っ込めた。
起こしちゃった??
そう思ったとき、愛ちゃんは顔を少ししかめたけど、そのまままた静かな寝息をたてて寝てしまった。
あたしはそれをみて、ほっと胸を撫で下ろす。

「おやすみ、愛ちゃん」

あたしはもう一度その髪を撫でた後、飲み物を淹れに冷蔵庫へむかった。

52 名前:名無し飼育 投稿日:2004/02/18(水) 03:57
先が気になります。
みきてぃに関係があるんですかね…
53 名前:作者 投稿日:2004/02/18(水) 16:17

────あやちゃんって誰ですか?


朝起きたら、ミキさんはぼーっと何か考え事をしていたらしく、あたしの視線に気がつくと
笑って「おはよう」と言ってくれた。
あたしもいつものように眠い目を擦りながら「おはようございます」と笑った。

「今日はミキが朝ごはん作るから、顔洗っといでよ」

「じゃあ、お願いします」

ミキさんに精一杯の笑顔をつくって、あたしは洗面所にむかう。
水道の蛇口をひねって、その水で顔を洗っているとき、昨日のミキさんの声が聞こえた。

────「愛ちゃんは・・・やっぱりあやちゃんに似てるよ」

ミキさんはあたしが昨夜起きていたことに気づいていない。
でもあたしの耳に、確かにその言葉は届いた。
その言葉で今、動揺しているあたしがいる。

「愛ちゃん!!できたよ!!」

台所にいるミキさんの声で、あたしは我にかえった。

「い、今いきます!!」

急いでそう言うと、あたしはもう一度顔を洗った。

───やっぱり───似てるよ

その言葉を吹き飛ばすようにして。
54 名前:作者 投稿日:2004/02/18(水) 16:18
「ほら!ミキ、人間より料理うまくない?」

「うわあ、おいしそう!」

テーブルには麦茶がいれてあるコップふたつに、オムライスののった皿がふたつ。
ミキさんって料理うまいなあ。
そう思ってあたしがミキさんのほうをみると、ミキさんはでしょ、と得意そうな顔をしていた。

「はい、食べよ、食べよ!ミキ、お腹空いちゃって」

「あ、はい。じゃあ・・・」

ミキさんがはやく座って食べようと促す。
あたしはそれに頷いて、自分の席に座った。
そして、いつものように自分の両手を合わせて、ミキさんと目をあわせて、せーのでこう言う。

「「いただきます!!」」

スプーンですくって口に運んだオムライスは、とてもおいしくて、あたしは思わず笑顔になった。
そんなあたしの顔を見て、ミキさんが嬉しそうに笑う。
その時。
55 名前:作者 投稿日:2004/02/18(水) 16:18
────愛ちゃんは・・・やっぱりあやちゃんに似てるよ

昨夜のミキさんの言葉が頭をよぎって、何故か胸が痛くなった。

「愛ちゃん?どうしたの?・・・もしかしておいしくない??」

俯いたあたしの顔を心配そうに覗き込むミキさん。
あたしは慌てて首を横にふった。
それを証明するために、あたしはオムライスを食べる速度を速めた。

「なーんだ、よかったあ・・・。ミキのでお腹壊したのかと思った」

ミキさんは安心したようにそう言うと、また自分のオムライスをおいしそうに食べ始めた。
あたしは黙って、それを見ていた。

───ねえ、ミキさん・・・。

心の中で、そっと口には出せない言葉をつぶやきながら。

────あやちゃんって誰ですか?

オムライスを食べるときのスプーンと皿がぶつかる音が、あたしの胸に響いた。



56 名前:作者 投稿日:2004/02/18(水) 16:21
>>52様 気になってくれてありがとうございます。
    田中さん主役っぽくしようとしてたのに
    最近気になっている藤本さんが目立ってるっていう・・・。
    レスありがとうございました。
    励みになります。
57 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/19(木) 01:54
あやみきがありますように…
58 名前: 投稿日:2004/02/19(木) 15:41
うぅ、ミキティ〜、れいなぁ〜、あやや〜(涙)(T−T)一体どういうことでしょうか。
面白いです。
続き待ってます。頑張ってください。
59 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:28
────※

「みきたん、きっと私のこと嫌いになっちゃったんだよ・・・」

椅子に座って、細くて白い脚をぶらぶら揺らしながら、あやさんが言う。
不安げに伏せられた綺麗な瞳が、私の心をぎゅっと、締め付けた。

「だから戦争しちゃったんだよ、私と。
 初めから嫌いだったのかな?私のこと。」

「・・・そんなこと」

そんなわけ、あるはずない。
ミキさんはずっと、あやさんのことが好きだった。
誰よりも、誰よりも。
私は知っていた。
ミキさんが何故、仲良しだったあやさんに、戦争を仕掛けたのか。
それも、負けることを知っていて。
私はミキさんの気持ちが分かる気がした。

だから、今度は強く言ってみた。

「ミキさんは、あやさんのことが好きだったんです。今でもきっと、ずっと好きだと思います」

「じゃあ!なんで、私に戦争を仕掛けたの?本当に好きだったら、そんなことしないでしょ?」

俯いていたあやさんが顔を上げる。
その瞳はやっぱり不安げで、少し涙を浮かべていた。
私が何も言えずにいると、あやさんはまた俯いて、
「わかんないよ・・・・・」とつぶやいた。
60 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:28
「疑うなら、ミキさんの心を読んでみたらどうです?」

私の言葉に、あやさんが固まる。
あやさんには天使や人間の心を読む力があった。
その力をあやさんはミキさんには絶対使うことがなかった。
私はそれをずっと、疑問に思っていた。
あやさんは脚をぶらぶらさせるのを止めて、口元を緩めた。

「みきたんと約束したんだあ。『ミキの心、まだ読まないでね。恥ずかしいから』って。
 ・・・・・・やぶれないよ、みきたんとの約束」

あやさんはまるでその頃に戻ったように、優しそうに笑った。
私にはきっと、踏み込むことのできない領域なんだろうな。
そう思うと少し、淋しくなった。
ミキさんがあやさんになんでそんな約束をさせたのか、あやさんは全く気づいていないようだった。



61 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:29
「えりちゃんはさ、知ってるの?」

「・・・・えっ?」

「みきたんが、私に戦争を仕掛けた理由」

「・・・・はい」

私の言葉に、あやさんが目を大きく見開く。
きっとあやさんはその答えが知りたいだろうけど、教えるわけにはいかなかった。

「でも、それはまだ言えません。あやさんが自分で探さなきゃいけないと思うんです。
 ・・・・ミキさんの想いに答えられるのは、あやさんしかいないから・・・」

「・・・・私が・・・みきたんの・・・」

あやさんの途切れ途切れの言葉に、私は頷いた。

「私に、できるかなあ?みきたんとまた昔みたいに仲良くできるかなあ・・・?」

自信なさ気に、あやさんが言う。
何度でも、何度でも言います。
あやさんが、昔のように笑ってくれるのなら。
何度でも、私は頷いて、何度でも言います。

「あやさんなら、できますよ」

私がそう言うと、あやさんはそっと私の手に触れて、

「ありがとう」

そう言って、笑ってくれた。
62 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:32
        □ □ □ □ □ □ □ □ □ 
63 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:45

・・・・愛ちゃん、どうしたんだろ?

愛ちゃんは心なしか、元気がない。
ミキはちょっと気まずかったけど、何も言えずにただ黙々と
自分がつくったオムライスを食べていた。

そんなとき、家のチャイムが鳴った。

───ピンポーン

その音で、愛ちゃんがはっと我にかえる。

「誰だろうね?」

「うん、だれ───」

愛ちゃんがそう言いかけたときだった。

「愛ちゃん!?あたしだけどいるー??」

聞き覚えのあるのんびりとした声が聞こえた。
その声に、愛ちゃんは目を見開く。
64 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 17:55
「ま、麻琴!!?」

愛ちゃんの言葉で、ミキはやっとその声の主を知る。

「ああ、愛ちゃんの恋人?」

「うん、そう───ってかミキさん隠れて!!」

「えーっ、どうして?ミキも愛ちゃんの恋人見たいよ〜!」

「ま、まだ言ってないんです、麻琴に!」

「へっ?」

興奮して早口になっている愛ちゃんの言葉に、ミキは間抜けな声を出す。
愛ちゃんはもうすがるような目で、ミキの目を見つめた。

「まだ言ってないんです!ミキさんと一緒に住んでること!!」

「ええっ!なんで───」

そういいかけて、ミキはやめた。
たしかに見ず知らずの奴と、しかも空から落ちてきた天使と一緒に
住んでるなんて、言えるはずない。
ミキは慌てて、どこか隠れる場所を探した。

「愛ちゃ〜ん!いるなら開けてよお」

「ご、ごめん!今、あけるから!!」

ドアの向こうの恋人にそういいながら、愛ちゃんは口パクで

「押入れに隠れて!」と言った。
その言葉に、ミキは頷いて、急いで押入れの中に入った。
65 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 18:04

ドキドキ・・・・。

しんとした押入れの中で、ミキ自身の鼓動が響いた。
がちゃっという音とともに、愛ちゃんの恋人が愛ちゃんの家に入ってきた。
どうしても愛ちゃんの恋人が見たかったミキは、そっとばれない程度に押入れのドアを少し開けた。
かすかな隙間から、愛ちゃんの恋人の顔が見れた。

おっ・・・かっこいいじゃん。優しそうだし。

愛ちゃんの恋人は締まりのない口をしていたけれど、タレ目で優しそうな顔をしていた。

・・・ちょっと、ヘタレっぽいけど。
   まあ、ミキも人のこと、言えないしね。

そんなことを考えていると、ミキは自分の決定的なミスに気づいた。

「あれ?オムライスの皿、二つあるよ?・・・なんで?」

愛ちゃんの恋人の声に、ミキの身体は固まって、冷や汗をかいた。
押入れから見える愛ちゃんの身体も、ミキと同様に固まっている。
66 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 18:14
ミ、ミキの馬鹿!ばかたれ、ヘタレ!!
お皿片付け忘れてどうするんだよ!
や、やばい・・・ばれたらどうしよう・・・。

愛ちゃんは必死でごまかそうと口をパクパクさせている。
ミキは本当に申し訳ない気持ちになった。

愛ちゃん・・・ごめんなさい。気が利かない居候で。

しかし、そんな心配は、簡単に打ち砕かれた。

「ああ、愛ちゃんも成長期だもんね?
 だからオムライス二皿もいけるよね?」

部屋にのんびりとした間抜けな声が聞こえる。
ミキは唖然としていて、愛ちゃんもやっぱり呆然と立ち尽くしていた。
・・・愛ちゃんには悪いけど、ミキは思った。

ああ、こいつ、馬鹿だ。

愛ちゃんの恋人はへらへら笑っている。
はっと我にかえった愛ちゃんは、

「そ、そうなんだよ!もう最近食欲でてきちゃって〜!!」

と乾いた声で笑った。
てか普通ひとりでオムライス二皿分食べるのにスプーン二つ使うと思う?
それに一人暮らしでいっぺんにコップ二つ、使うと思う?

なんか、愛ちゃんの恋人、変だよ。
抜けてるっていうかさあ・・・・。
洞察力、もうちょっとフルに使いましょうよ。
67 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 19:13
ま、そのおかげでミキはばれずにすんだんだけど。

ミキは心の中でそうつぶやいているとき。


───みきたん・・・・


急にあやちゃんの声が耳に蘇ってきて、ミキは目を大きく見開いた。
押入れの外の向こうにいる愛ちゃんの顔が、記憶の中のあやちゃんの顔と重なった。


────みきたん・・・どうしてこんなことするの?
    ・・・私のこと、嫌いになった?


違う、違うよ・・・あやちゃん。

ちがう、ちがう。そうじゃなくて。

ミキは外をのぞくのをやめて、震える自分の身体を抱きしめた。

愛ちゃんの中にあやちゃんの影を見出そうとしている自分を、押し殺しながら。





68 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 19:15

○ミキが心の中でそうつぶやいているとき
×ミキは心の中でそうつぶやいているとき

ミスです、すみません。
69 名前:作者 投稿日:2004/02/20(金) 19:18
>>57 あやみきはたぶんうんざりするくらいあると思います。
   ・・・マイブームなんで。

>>58 期待にこたえられるよう、頑張りたいと思います。
   面白いって言ってくれてありがとう。

レスありがとうございました。
70 名前:作者 投稿日:2004/02/22(日) 16:21
「で、明日は二人で買い物行って・・・あさっては」

「ちょ、ちょっと!そんな勝手に・・・・」

「いいじゃん、いいじゃん!最近デートないし」

「う、うん・・・・」

「じゃあ決まりね!!」

勝手にあたしの予定を決め始める麻琴に、あたしはずっと疑問に思ってたことを聞いてみた。

「ってかさ、今日は何の用できたの?」

あたしの言葉に、麻琴は目を丸くした。

「・・・・・何か用がないと来ちゃいけないの?」

「そ、そんなわけじゃ・・・・」

いや、そんなわけじゃないけどさ。
別にいいよ、あたしも麻琴に会いたいし。
でもミキさんがいるからそんな頻繁にデートは・・・・・。
あたしがいろいろ考えていると、麻琴が急に立ち上がった。
71 名前:作者 投稿日:2004/02/22(日) 16:22
「あっ・・・・今日、友達と会う約束してたんだ!」

麻琴はそう言うと、慌てて玄関に向かう。

「愛ちゃん、ごめんね?急に家に来て。もう行くから・・・」

「ううん、会えて嬉しかったよ。友達、待たしちゃ悪いから、はやく行ってあげな」

「・・・・うんっ」

あたしの言葉に、俯いた麻琴が返事をする。
心なしか、いつもの元気がないような気がした。
あたしは玄関まで行って、麻琴を見送る。
麻琴は靴を半履きしたまま、小さく手を振って、そのまま家を出て行った。

ドアがバタンと閉まった音がすると、あたしはやっと安心して、安堵のため息をついた。

「ミキさーん!もう大丈夫ですよ!!」

あたしの言葉を合図に、押入れが開く。
そこからミキさんが羽根をぶつけないようにしながら、慎重に出てきた。

「ごめんなさい、朝食の邪魔して・・・」

あたしがそう言うと、ミキさんは笑った。

「いや、いいよ。愛ちゃんの恋人の顔見れたし」

いたずらっ子のように笑うミキさんの顔が少し曇っているのを、あたしは見逃さなかった。
・・・・なにがあったんだろ?
72 名前:作者 投稿日:2004/02/22(日) 16:23
「ミキさん、あのっ・・・」

「あのさぁ、愛ちゃん・・・」

あたしの言葉を遮って、ミキさんが言う。
いつもあたしの話を笑いながら最後まで聞いてくれるのに、遮るなんて珍しいなあ。
そう思いながら、あたしがミキさんの言葉を待ってると、ミキさんは苦笑いをした。

「・・・・やっぱいいや」

「・・・・・ミキさん?」

あたしは驚いて、ただミキさんを見つめていた。
ミキさんは俯いて、悲しい顔でこう言った。

「・・・・・愛ちゃんはあやちゃんじゃないもんね?」

その言葉に、あたしの胸はチクリと痛んだ。

「さあて、ご飯の後の散歩でもしてくるかな」

元気のない自分をごまかすかのように、いつもの笑顔をつくって、ミキさんが言う。
しばらくして、ドアが開く音がした。

「じゃあ、ミキ、行ってくるね?」

その声の後に、ドアの閉まる音がする。
あたしが声を掛ける暇もなく、ミキさんは出て行ってしまった。
あたしはただ立ち尽くしたまま。



────愛ちゃんはあやちゃんじゃないもんね?


ミキさんの言葉が、あたしの耳の中でまだ木霊していた。

73 名前:作者 投稿日:2004/02/26(木) 00:01
───※

全てが狂ったのは、あの日からだ。
顔見知りだったあの人の顔が見えなくなったのも、いつも笑顔が可愛かったあの子が笑わなくなったのも。
きっと、きっとあの日からだ。

「あーゆみ!なーにしてんの?」

こちらに背中を向けてしゃがみこんでいるあゆみに、あたしはいつものように、できるだけ明るく話し掛ける。
あゆみは身体をビクッと反応させた後、ゆっくりこちらを振り返った。

「なーんだ、マサオかぁ。びっくりしたあ・・・」

「なんだとはなんだよお!友達だろ〜!!」

ふざけながらあたしがそう言うと、あゆみはごめん、と笑った。
乾いた声と乾いた笑顔。背中の羽根が力をなくして垂れている。
もう見慣れたものだと思っていたけれど、それはいつみても痛々しいものだった。
それを誤魔化す様に、あたしはあゆみに話し掛ける。
74 名前:作者 投稿日:2004/02/26(木) 00:02
「なーにしてんの?」

あたしがそう尋ねると、あゆみは「ん?これ??」といいながら、手に握っていたものを見せてくれた。

「これ・・・・」

「うん、おにぎり」

あゆみが握っていたのは、雲を千切って丸めたおにぎりだった。
あたしが何も言えずにいると、あゆみは目を細めながら、懐かしそうに話し始めた。

「むらっちとよくちっちゃいとき、こうして遊んだんだあ・・・」

「・・・・・」

「私のつくったやつ、おいしい、おいしいって食べるふりまでしてくれて」

「・・・・・」

「うれしかったなあ・・・・・」

あゆみの笑顔が、どんどん悲しそうに曇っていく。
あたしには何にもできないのかなあ。
いつもそう思って必死に何か考えるけれど、何にも浮かんでこない。
それもそうだ。あゆみの心を開かせて笑顔にさせてくれるのは、あの人なのだから。
もういない、あの人。
もういない────
75 名前:作者 投稿日:2004/02/26(木) 00:02
「むらっち、おにぎりはちっちゃいのがいいかな?それともおっきいのがいいのかなあ?」

「あゆ・・・」

「うーん、やっぱおっきいのつくってあげようかな?むらっちは細いからもっと太らなきゃ」

「あの・・・」

「ん、なに?マサオもおにぎり欲しいの?待ってて、今むらっちの分つくってるから・・・」

「あゆみ!!」

一方的にしゃべり続けるあゆみの話を遮る。
思ったより大きな声が出て、自分でも驚いた。
あゆみも目を大きく見開いている。
もしかしたら、言ってはいけないことを言ったのかもしれない。
でも、あたしはそれを口にしないと不安だった。

「むらっちは、もう・・・」

「しってるよ、しってる・・・・・・」
76 名前:作者 投稿日:2004/02/26(木) 00:03
────しってるよ

冷たく淋しい響きをもったその言葉が、あたしの耳に響いた。
意外な言葉に、あたしは驚く。
あゆみは淋しそうに目を伏せたまま、白い小さな手はまだ、おにぎりをつくりつづけていた。

「むらっちはどっか遠いところへ行っちゃって、たぶんもう帰ってこない。
 むらっちの居場所は、神様しか知らない。でもさ・・・そういう考え、淋しすぎるよ」

「・・・・・淋しい?」

「うん。まだ・・・認めたくないよ。信じていたいよ。
 むらっちは帰ってくるんだって。私のところ、きっと笑って帰ってくるんだって」

唇を噛み締めたあゆみの身体が、震えている。

「遠いところにいても、私のこと想ってくれてるって、信じてるから。
 私が待ってるからって、急いで帰ってきてくれるって・・・・・信じて・・・」

「・・・ごめん」

「ううん、いいよ」

目を潤ませながら、あゆみは無理に笑顔をつくった。
そんな無理しなくていいよ。
そう言いたいはずなのに、声がうまくでない。
77 名前:作者 投稿日:2004/02/26(木) 00:04
「むらっちはさ、ちゃんと戻ってきて」

「うん・・・」

「そしたらさ、またみんなで・・・四人であそぼ?」

「うんっ・・・」

あたしはただ、頷くことしかできなかった。
あゆみは笑って、また新しく雲を千切って、おにぎりをつくりはじめた。

────信じてるから。

────またみんなで・・・四人であそぼ?

そんな日が来ること、あたしも信じてみようと思った。
冷たい風が、あたしの頬を撫でた。
再び背を向け始めたあゆみの背中を見つめながら、あたしはそっと、心の中でむらっちに話しかけた。

今、どこいるんだよ。
はやく、帰ってこいよ。
あゆみ、泣いてるよ。
・・・早く帰ってこいよ。

そっと、目を閉じてみる。
記憶の中のむらっちの声が、耳の中で木霊していた。


78 名前:藤本編 投稿日:2004/02/27(金) 19:46
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



────愛ちゃんはあやちゃんじゃないもんね?

ミキ、なんて言おうとした?

────あのさ、みきたんって呼んでみてよ。

愛ちゃんにそう言おうとしてたよね?



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
79 名前:藤本編 投稿日:2004/02/27(金) 19:47
慌てて愛ちゃんの家を飛び出した。
愛ちゃん、どう思ったかな?
不自然だったよね?どうみても・・・。
どんな顔して家に戻ればいいかな?
・・・・・もうわかんないや。

上を見上げると空は曇り空。
排気ガスと草花のにおいがまじったようなにおいが鼻をくすぐった。
雨はあまり好きじゃない。
・・・あやちゃんが泣いてる気がするから。

────私が泣いたり沈んだ気分でいると、絶対雨になるんだよね

耳をくすぐるような、甘く優しい声。
懐かしい、あやちゃんの声。

────みきたんは雨は嫌い?
    ・・・なら私、あまり泣かないように頑張るね?
    だから、私のこと、嫌いにならないで?
80 名前:藤本編 投稿日:2004/02/27(金) 19:48
ならないよ、嫌いになんか。
嫌いになんかなれないよ。
嫌いになんか・・・・・なれなかった。
無理して嫌いだと、自分に言い聞かせていた。
傷つくのが怖かった。
好きだと認めて、傷つくのが怖かった。
愛ちゃんについていって一緒に暮らし始めたのも、きっとあやちゃんと愛ちゃんを重ねてみてしまったからだ。

「あーカッコ悪ぅ・・・・」

自分の情けない声が耳に響く。

────いなくなっちゃヤだよぉ・・・。天使じゃなくていいから、あたしのそばにいてよ

ずっと一緒に暮らしていたれいなちゃんの声がふと蘇る。
今、どうしてるかな?元気かな?
身長伸びたかな?それともまだちっちゃいまま?
また頭撫でてあげたいな。
「ただいま」って言いたいな。
「好きだよ」って言ったら、また顔を赤くしながらそっぽ向いちゃうのかな?

・・・れいなちゃん、ごめん。
ミキ、いつも誰かを傷つけてばっかりだね。
ごめん、ごめん、ごめんね。
でもさ、───会いたいよ。


行き場のない想いが宙に舞い、ぽっかり穴の開いたような心にスッと沁みこんで行った。
それは雨が乾いた土にしっとりと滲みこんでいく様子と似ていた。

雨は悲しいにおいがするね。
土は生のにおいがするよ。

・・・・・あやちゃん。

────泣いているのは君ですか?

81 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/07(日) 22:00
個人的に好きな人達が意外にも出てきて、びっくりしながら読ませて頂きました。
相変わらず意味深な台詞回しが気になります!更新がんばってください!
82 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:15
───※

『───・・・・あゆみ』

む・・・らっち?

『───帰ってくるから、必ず』

本当に?・・・・絶対だよ?

『───うん。約束する』

・・・約束だよ?

『───好きだよ』

・・・うん、信じてるから。

『───・・・・・・よかった。』

待ってるから、待ってるからね?・・・ずっと。

83 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:15


・・・・・・待ってるから。

「あーあ、雨降っちゃったね?」

雲の上から下の世界を見下ろして、私はそっとつぶやく。

「雨に濡れてない?身体、冷えてない?・・・心配だなあ」

話しかけた相手は此処にはいないけれど、きっと届いていると信じていた。
むらっちのこと、考えると自然と顔が緩む。
私は目を閉じて、思い出していた。
あのときのこと。
戦争のこと。
そのときのことを思い出すと、いつも胸がズキズキして、すごく悲しい気持ちになる。
84 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:17


「・・・どうしてもいくの?」

あの日、戦争に行くむらっちの背中に、私は声をかけた。

「・・・・ごめん、これには・・・」

「分かってる。どうせ止めても行くんでしょ?」

「・・・・・・」

私の言葉に、むらっちは悲しそうな顔をして俯く。
ああ、むらっちの悲しい顔、見たくないよ。
胸がズキズキして、苦しいよ。
綺麗だけど・・・見たくないよ。

「そんな悲しい顔、しないでよ」

「・・・あゆみ」

「私、ちゃんと我慢できるよ。もう子供じゃないもん!
 大丈夫!むらっちが帰ってくるまで、ずっと待っていられるから」
85 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:21
ああ、こういう湿っぽい空気、だめなんだよね。
だから本当は淋しくて泣きたくなったけど、無理やり明るく笑顔でそう言った。
むらっちは振り返って、私を抱きしめてくれた。
突然抱きしめられてびっくりしていると、むらっちが耳元でなにか囁いてくれた。

「無理させて・・・ごめん」

その言葉を聞いて、胸が熱くなって涙がこぼれてきた。
せっかく我慢していたのに・・・むらっちはずるいよ。
ずるい、ずるいずるい!!
・・・ずるいよ。

「うっ・・・ヒック・・・ヒック」

顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き出した、子供のような私の頭を、むらっちはよしよしと、優しく撫でてくれた。
ごめんね、ごめんねを繰り返しながら。
本当はね、戦争になんか行ってほしくないんだ。
本当はね、ずっと私のそばにいて、離れないでいてほしいんだ。
ずっと一緒に手を繋いで、いつものように二人きりで話したり、マサオとひとみんに会いに行ったりしたい。
・・・でも、引き止めちゃいけないんだよね?
むらっちが決めたことだから。
いつまでも私のわがままでむらっちを困らせちゃいけないんだよね?
86 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:21
「むらっち・・・」

顔を上げた私の顔を、むらっちが心配そうに見つめる。
私、そんな酷い顔してるかな?
目とかすっごい真っ赤なのかな?

「・・・・あゆみ」

「好きだから・・・むらっちのこと。だから・・・待ってる」

「・・・・うん。ありがとう」

「えへへ・・・」

むらっちの笑顔を見ると、いつのまにか私も笑顔になっていた。
別れる前に、むらっちは私に言ってくれた。

「あゆみ・・・」

「ん?なあに?」

「帰ってくるから、必ず。絶対迎えに行くから・・・」

「うん・・・絶対だよ?」

「うん・・・・・約束する」

むらっちはそう言うと、小指を差し出してくれた。
私はしばらくきょとんとした後、ようやく気がついた。
87 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:22
「ああ!ゆびきりげんまん!!」

「あはは!気づくの遅いよ」

「う、うるさいなあ〜」

私は怒ったふりをして、顔を膨らませる。
むらっちは笑って、私の頭を軽く小突いた。
その後、ふたりでゆびきりをした。

「あゆみ・・・・・」

「なに?」

「・・・・好きだよ?」

「・・・・うん」

むらっちは真剣な顔で好きだと言ってくれた。
嬉しかったけど、余計離れたくなくなって不安にもなった。
むらっちはそんな私の心を読み取ったようで、そっと白くて長い指で、私の頬に触れてくれた。

「いつも泣かせてばかりでごめん・・・」

「そんなこと・・・!私、むらっちと会えてよかったよ」

「あゆみ・・・」

「そんな顔しないの!・・・私、信じてるから。むらっちが迎えに来るの、ずっと待ってるから」

「うん・・・」

「ねっ?」

その後、二人で顔を見合わせて笑いあった。
本当はちっとも楽しくなんかなくて、笑いたくもなかったんだけど。
でも、笑わなきゃいけない気がした。

───むらっち、私えらいでしょ?
   淋しくて、本当はむらっちのこと、引き止めたかったんだけど、我慢したんだよ?
   私、淋しいときでも、むらっちのためなら笑えるんだよ?
   ・・・すごいでしょ?
   だから、帰ってきたときは真っ先に私のところに来て、「えらい、えらい」って褒めてよ。
   綺麗なあったかい手で、「えらい、えらい」って、頭撫でてよ。
88 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:23
むらっちとは最後に「好き」と言い、そのまま別れた。
「さよなら」は言わなかった。
そのかわり、「またね」と言って、手を振った。
むらっち、きっと強い意志を持っていたんだね?
だから、あのとき一度も後ろを振り返らなかった。
私はずっと、その後姿を見つめていた。
むらっちの姿がもう見えなくなっても、ずっと見つめていた───。
89 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:23
帰ってきたら今以上にもっと、一緒にいよう?
そう約束してたのに・・・。
その約束は未だ、果たされぬまま。

「待ってるから・・・ね?」

また泣きそうになって、涙が零れてしまわないように、私は目を上に向ける。
どんなに高い場所にいても、決して届かない空が目に映った。

───別にさ、ミキちゃんのこと、恨んでるわけじゃないんだよ?
   私も分かるから。ミキちゃんの気持ちが。
   私も同じことするもん、もしミキちゃんだったら。

「むらっちもきっと、同じ気持ちだったんだよね?私と。だから、ミキちゃんのこと、ほっとけなかったんだよね?
 そうだよね?・・・・・わかるよ、むらっちの気持ちが」

───わかるよ?むらっちの気持ちも、ミキちゃんの気持ちも・・・わかるよ。痛いくらい。

「おにぎり・・・もういっぱいになっちゃったよ」

足元につくってあった、たくさんのおにぎりを見つめて、私はぽつりとそうつぶやく。
届いてるかな、この気持ち。届いて、いるかな?
90 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:25
「もうおにぎり、冷めちゃうよ。せっかくむらっちのためにいっぱいつくったのに・・・」

マサオも、もう帰っちゃったよ。今頃、ひとみんと一緒にいるのかな?
あーあ、むらっち、風邪ひいて帰ってこないかなあ?心配だよ。
もし、風邪ひいてても、安心して帰ってきていいよ?
ずっと、むらっちが治るまで隣で看病してあげるから。

だから・・・・・はやく───


「はやく、かえってきてよぉ・・・・」

私は我慢できなくて、顔を手で覆って、泣いてしまった。
届いているのかな?この情けない声も。泣き虫で我侭な私の気持ちも。
あの時、ひきとめておけばよかった。
「行かないで」って、我侭言って、止めればよかった。
そんな気持ちさえ、浮かんでくる。
情けない私の言葉は、嗚咽となって、次々と喉の奥から湧き上がってきた。

「ずっと、待ってんだからね・・・」



───後ろめたさなんて、感じなくてもいいんだよ?
   ずっと待ってるから。どんなむらっちでも、むらっちはむらっちだからさ。
   変わらないよ?ずっと好きなこと、変わってないよ。
   だから、もう怯えないで、怖がらないで。安心して戻ってきてもいいんだよ?
   大丈夫、私が守ってあげるから。ずっと、そばにいてあげるから。
   だから、もう戻ってきてもいいんだよ?
   
91 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:32


    川σ_σ||  
92 名前:柴田編 投稿日:2004/03/10(水) 11:33


    ( ‐Δ‐)<誰も読んでないと思うけど隠すよ〜
93 名前:作者 投稿日:2004/03/10(水) 11:44
>>81様 レスもらえると思ってなかったのでびっくりしました。
    >個人的に好きな人達が意外にも出てきて
    そうですか。よかったです。
    ゴロッキーズは年が近いので親近感が沸き、大好きです。(メロンさんも)
    >相変わらず意味深な台詞回しが気になります!更新がんばってください!
    いや、意味深に見せかけて実はとくに意味は(ry
    ・・・更新頑張ります!(ぇ
    レスありがとうございました。
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 14:13
>誰も読んでないと思うけど隠すよ〜
いや、読んでますよ。

面白いです。
柴田、切ないね。(T−T)私まで思わず涙が…
更新頑張ってください。
95 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/10(水) 15:00
自分も毎日チェックさせてもらっております。
神様亜弥ちゃん切な杉ます。
更新期待してます。
96 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:14

『ミキがアヤちゃんを裏切ったら、そのときは───いつでもミキを捨てていいからね?・・・アヤちゃん』

いつかみきたんが、私にそう言ったことがある。
何のことだかさっぱり分からなかった私は、ただ呆然とその横顔を見つめることしか、できなかった。
みきたんの横顔は悲しそうだったけど、とても綺麗だった。


・・・意味わかんないよ。

裏切るとか、捨てていいとか・・・全然意味わかんないよ。

ただ、好きだった。
ただ、好きで好きで仕方なかったんだよ?
それなのに・・・・意味わかんないよ。
好きだけじゃだめなの?
ねえ、答えてよ。

みきたん─────。
97 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:14
「ねえ、アヤちゃん」

「ん、なあに?みきたん」

「ミキのこと、好き?」

みきたんはときどき、不安げにそう尋ねることがあった。
私はどうしてそう不安になるのか、わからなかった。
私は本当に、みきたんが好きで好きでしょうがなかったし、それなりにみきたんが好きだってことは
言葉だけじゃなく、態度でも示してきたはずだ。
どうして、みきたんは今頃、そんなことを訊くんだろう?
そんな疑問が浮かんできたけど、なんとなく訊いてはいけない気がして、私は何事もなかったかのように
明るく返事を返した。

「うんっ!みきたんのこと、大好きだよ?」

そう言うと、みきたんは笑ってくれた。
「ありがとう」
そう言って、嬉しそうに笑ってくれた。
何度でも言うよ。みきたんが笑ってくれるなら。
「好き」だって、何度でも繰り返すよ?
私、みきたんの嬉しそうな顔見て、そう誓ったんだぁ。
98 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:15
でも、何日か過ぎると、みきたんは「好き」だと言っても、あまり笑ってくれなくなった。

「ミキのこと、一番好き?」

「ホントに?嘘じゃない?」

「ふうん、・・・・人間よりも?」

好きだと言っても、みきたんは冷たい目をして、そう返した。
みきたんが何でそんな不満げな顔をするのか、私にはさっぱりわからなかった。
もちろん、今でも。

「ミキたんも好きだし、人間も好きだよ?人間はぶきっちょだけどなんだか可愛いし、それに・・・」

「・・・それに?」

「前の神様の代から大切にされてるし」

「そう・・・」

「ミキたん?」

「なに?」

明らかに不機嫌な声に、私は驚いた。
恐る恐る、みきたんに尋ねる。
99 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:16
「・・・怒ってるの?」

「怒ってないよ」

「嘘だ、怒ってるよ!」

「怒ってないってば」

みきたんは怒ってない、と言ったけど、私にはどうしても怒ってるようにしか見えなかった。
怒ってないと言い張るみきたんの態度に、私は何故だかイライラしていた。
急にそっけなくなったみきたんの腕をとって、私はムキになって言い返した。

「嘘、嘘!!みきたんの嘘つき!!」

「だから・・・怒ってないって!!」

「きゃっ」

みきたんが声を大きく張り上げて、私の手を強く振り払った。
その勢いで、私は尻餅をついた。

「あっ、・・・ごめん」

その後、みきたんがすまなそうな顔をして、私に手を差し伸べる。
その顔がとても悲しそうだったから、私はさっきまで自分が怒っていたことも忘れて、謝った。

「ううん、私こそごめん」

「謝らないでよ。あやちゃんは悪くないじゃん。ミキね、最近おかしいんだ。
 ああ、頭痛くなってきた・・・今日はもうお家かえるね?」
100 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:16
みきたんは頭を押さえて、苦しそうな顔をしていた。
目は不安げに揺れていた。
そんなみきたんは初めて見たから、心配になって声をかけた。

「・・・大丈夫?」

「うん、平気だよ」

「ほんとに?」

「うん、ちょっと疲れただけだって。平気だよ。そんな顔、しないで」

みきたんは無理やり笑顔を浮かべていた。
その証拠に、顔が引きつっていて、ちっとも平気そうじゃなかった。
本当は「私の前で無理しないで」って言いたかったけれど、みきたんはきっと私に心配かけないように無理してるんだ。
そう思うと、気づかない振りして素直に頷いたほうがいいのかな、と思い、私は気づかないふりをして頷いた。
みきたんのそんな優しさを、無駄にしたくないと思った。

「・・・うんっ」

その後、みきたんは手を振って私に背を向けて、家に向かって歩き出した。

その背中が、いつもより小さく、弱弱しく見えたのはきっと、気のせいなんかじゃなかったと、今になって思う。
もし、あのとき逃げるように帰っていくみきたんを引き止めていれば、何かが変わったのかな?
ホント、そう思わずにはいられないんだよ・・・。
101 名前:松浦編 投稿日:2004/03/13(土) 01:18
その翌日から、みきたんはいつものようによく笑うようになった。
理由はよく分からないけど、私はみきたんが笑ってくれたのが嬉しくて、みきたんが真顔で止めるまではしゃぎまわった。

「もう、あやちゃん!そんな走ったら危ないって」

「いいの、いいの!」

「もうっ!ホントに怪我したりしたらどうすんの!?」

「そのときはみきたんに助けてもらうもん!」

「はぁ〜」

みきたんはため息をつきながらも、笑って私を追いかけてくれた。
呆れながらも、はしゃぎまわる私を追いかけてくれるみきたんの優しさに、胸がきゅんとなった。

───なにもかも、元通りになったと思ったんだよ?
   またいつものように笑ったり、はしゃいだり。
   みきたんとまた、一緒に歩いていけると、そう思ったんだよ。


◇───── あんなことが、おきるまでは・・・。
102 名前:作者 投稿日:2004/03/13(土) 01:29
>>94様 >面白いです
    最高の褒め言葉をありがとう。
    まだ読んでくれてる人いたんだとマジでびびりました。
    柴田さんは現実でも一途そうです。

>>95様 ま、毎日チェックですか。
    更新遅くてすみません。
    ほんと、申し訳ないです。
    関係ないですが、ここの作者は「風信子」を「ふうしんこ」と普通に読んで
    それが正解だと信じて疑わなかったらしいです。
    
103 名前:作者 投稿日:2004/03/13(土) 01:38
ここの作者はヘタレで単純なので、レスがあるとスレ違いかも・・・と怯えるけど喜びます。
意志弱い作者ですみません。


・・・許せ(ヲイ

レスには感謝してます。
口が悪いからそう見えないかもしれませんが。
親切な方、レスありがとうございました。
104 名前:作者&ポンちゃん 投稿日:2004/03/13(土) 01:40


川o・-・)<一応隠しときます。
105 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/13(土) 02:53
今回も切ないですね。
こういうの大好きなんですよ。
それにしてもはしゃぎまわる神様って…w
106 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:45

『ずっと、私のみきたんでいてね?・・・しらないひとについてっちゃ、だめだからね?』

────あやちゃんこそ、ミキ以外のひとについていっちゃだめだよ?・・・遠くに行かないでね。

『人間には従わなきゃ・・・ねっ?』

────うん・・・。

『迎えに来たよ、みきたん。一緒にあそぼ?』

────うん、ちょっと待ってて!

『みーきーたん!遊びましょ!』

────わかったよ、わかったから。ちょっ、待ってよ!!

『だ、だめだよ!みきた・・・んっ、あっ・・・』

────ごめん。・・・あやちゃんのこと、もうどうしようもないくらい好きなんだ。
107 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:47

◇───ごめんね、あやちゃん。ミキはあのときからもう、戻れないような気がしてたんだよ・・・。



コンクリートの道を見ながら、俯いて歩いていると、自分の歩いていた道に無色の水玉模様がついた。
身体をぬらす冷たい感触に、すぐに雨が降ったのだとわかった。

「へへへ、あやちゃんの泣き虫」

ぽつりと呟いて、すぐに顔を強張らせる。
そうだ、ミキはもう、そんな資格はないんだった。
ミキは神様に逆らったから、もう天使なんかじゃないから。
だからもう、あやちゃんのことを想ったり、考えたりしちゃいけないんだった。

でもね、ずっとあやちゃんの声が頭から離れないんだ。
もう、半年経ったのにね?
そもそも愛ちゃんと暮らしてるのだから、ミキにはあやちゃんを忘れる気なんてないのかもしれない。
こういうの、未練たらしいって言うのかな?
れいなちゃんならそう言ってミキのこと、叱るんだろうな。
ごめんね、れいなちゃん。
ミキ、れいなちゃんより年上なのに、ちっともお姉さんしてなかったよ。
ごめん・・・・。
あの家に、一人で住んでるのかな?
れいなちゃんはああ見えて淋しがりだからな。
誰かと一緒にいるといいな。
ごめんね、ひとりぼっちにして。ごめんね・・・。
108 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:49
雨がさっきより少し、激しくなってきた。

どうしよう・・・傘持ってきてないしなあ。

ミキは少し迷ったけど、もう帰ることにした。
愛ちゃんに少しはあやちゃんのこと、訊かれるかもしれないな。
そのときはどうごまかそうかな。

元来た道を戻りながら、ふと思ったことがあった。

────あやちゃんはどうして、ミキを地獄に落とさなかったんだろう?

「ミキさん!!」

ふと、名前を呼ばれて振り返る。
赤い傘をさして、こちらにむかってくる少女の姿を見て、ミキは目を見開いた。

「あ、愛ちゃん!?」

「はぁ、はぁっ」

愛ちゃんは来る途中、道路にできた水溜りに足を踏み込んでしまって、靴はびしょ濡れになっていた。
それでも気にすることなく、愛ちゃんはミキのほうに走ってくる。
そんな愛ちゃんの姿に、ミキの胸は震えて熱くなった。
濡れちゃうのに。濡れた靴、気持ち悪いだろうに。
ミキのところにたどりついた愛ちゃんは、肩で苦しそうに息をした。
ミキにはわからなかった。何で愛ちゃんがここにいるのか。なんでミキの居場所がわかったのか。
何一つわからなかった。

「愛ちゃん・・・どうして」

ミキが乾いた声でそう言うと、愛ちゃんは顔を上げて、ミキの目をじっと見つめてきた。
その瞬間、愛ちゃんの顔にあやちゃんの顔が重なって、ミキはドキっとして、声を失った。
愛ちゃんはそんなミキに気づかずに、子供のような無垢な笑顔をミキに向けていた。
109 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:50

「傘・・・濡れちゃうと思って」

そう言って、自分がさしていた赤い傘を、ミキにさしだした。

「なんとなく・・・ここにいるような気がして」

ミキが濡れなくなったかわりに、愛ちゃんが少しずつ、雨に濡れていく。
ただ、それだけのために?ミキが濡れないように、ただそれだけのために?
なんで、ミキのためにそこまでするんだろう。
ミキにはそんな優しくする価値なんてないのに。

どうして、ミキに───どうして────。

「ごめんなさい。ずっと一人暮らしだったから傘、まだこれひとつしかなくて───」

愛ちゃんの声が遠くで聞こえる。
かわりに雨の音が近くなった。

「どうして──」

「えっ・・・?」

「どうして、ミキのためにそこまでするの?」

ミキの問いに、愛ちゃんは目を見開く。
本当にわからないんだよ。ミキにはなにもないのに。
村田さんだってそうだった。ミキに協力してくれた。
『一緒に戦おう?』
そう言ってくれた。
恋人と離れなくちゃいけないのに、そう言って笑ってくれた。
110 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:51

「それはミキさんが好きだからですよ」

柔らかな、優しい声がミキの耳に木霊する。

「大事なひとですから・・・ミキさんは」

それは水に小さな波紋が広がる様子に、どこか似ていた。

「迎えに来ました、みきさんのこと」

「・・・・・」

「・・・みきさん?」

───迎えに来たよ、みきたん。

愛ちゃんが心配そうにミキの顔を覗き込んでくる。
雨に濡れている華奢なその身体を、ミキは力いっぱい抱きしめた。

「───あやちゃんっ」

赤い傘が宙に舞う。
雨が激しくなった。
愛ちゃんにその声は届いたのかな。
愛ちゃんの身体は心なしか震えていたような気がした。
愛ちゃんの赤い傘は、びしょ濡れの道路に小さく音を立てて落ちた。
傘のなくなった愛ちゃんとミキの身体を、雨は容赦なく濡らした。
ミキの頬に、冷たい雨とは違う、あたたかいものが流れた。
抱きしめた愛ちゃんの身体は、雨に濡れてるのに、あたたかかった───。

とてもとても・・・あたたかかった。
111 名前:藤本編 投稿日:2004/03/13(土) 14:53


雨が全部、流してしまえばいいのに。
ミキの汚い部分も、悪魔に虫食まれたこの身体も。
全部流してしまえばいいのに。
時々思い出すあやちゃんの声も。
全部忘れさせてくれたらいいのに。

あの日のことも、あやちゃんに絶えず向けられている、この感情も。

そしたらこうやって、愛ちゃんにあやちゃんを重ねて抱きしめることもないのに。

なんでミキのことなんか、好きなの?
わからないよ。どうして───どうして・・・・。
答えの見えない想いは、止まない雨の音のように、ミキの心に響いて、決して止むことはなかった。




◇───好きだなんて、言ってもらわなければよかった。
    
    そしたらこんな気持ちに気づくことなんて、なかったかもしれないのに────。
112 名前:作者 投稿日:2004/03/13(土) 14:56


川VvV从<隠すよ〜!!
113 名前:作者 投稿日:2004/03/13(土) 14:57



从‘ o‘从<あめあめふれふれみきたんが〜♪


114 名前:作者 投稿日:2004/03/13(土) 15:06
>>105様 神様のくせして全然落ち着きがありません。
    ちなみにいつも、頭の中は藤本さんでいっぱいです。
    でも藤本さんは鈍いので気づいてません。
    あやみきはいいですよね、あやみきは(ry

    
    ・・・狽ヘっ、ここ田中さん主役だった_| ̄|○
    全然目だってないので次こそは田中さん出したいと思います。
    レス親切にサンクスです。
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/13(土) 16:46
うぅ〜(T−T)

神よ、あやみきを幸せにしてください(涙)
116 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/13(土) 23:47
この二人はもう幸せにはなれないんですか?
切ないよ…。
117 名前:名無し飼育 投稿日:2004/03/22(月) 15:58
愛する人を地獄に落とすなんてできないですよね。。。(泣)
118 名前:紺野編 投稿日:2004/04/01(木) 15:51
◇───それは、ざあざあ降りの雨の日のことでした。

「・・・あのっ」

「はい?」

「なにしてるんですか?」

「んーっ?・・・さっきまではいろいろしてたけど、今はなにもしてないよ」

公園の真ん中で突っ立っていた私の前に、天使が降りて・・・、いや、堕ちてきました。
単調でつまらないと思っていた毎日を変えるには、それはとても大きすぎるくらいの力を持っていました。
呆然としている私を見ても大して驚かず、天使さんは痛そうにお尻をさすっていました。
砂場に落ちた所為で、白い衣装は砂だらけになって汚れていました。
淡い水色の傘を差していた私とは対照的に、その天使さんはかわいそうなほど濡れていました。
119 名前:紺野編 投稿日:2004/04/01(木) 15:52
「あのっ・・・どちらさまですか?」

もう遅いだろうけど、慌てて自分の傘にいれてあげる私に、彼女は困ったように笑ってこう言いました。

「う〜ん、元天使っていうところかな?」

元天使さんの笑顔は、とても綺麗でした。
目が痒いのか、元天使さんは俯いて、何度も目をこすっていました。
何度も、何度も。・・・こすっていました。
私もなんとなく、下を俯きました。
ずっと見ているのは、失礼だと思ったからです。
草のにおいと排気ガスのにおい、泥のにおいが混じって鼻をくすぐりました。
空から落ちてくる透明ないくつもの線が、靴の中に入ってきて足を冷たくしました。
顔を上げると、元天使さんは泣いていました。
120 名前:紺野編 投稿日:2004/04/01(木) 15:53

───※

「あー、雨降ってるんだ?」

「ええ」

「ふ〜ん」

すっと沁み込んで来るような村田さんの声で、私は我にかえる。
いつのまにか私の隣で、私と同じようにして村田さんが窓ガラスに手をつけて、外の様子を見つめていました。
そして、どこか懐かしそうに笑う。

「たしか、出会った日もこんな雨の日だったよね?」

「・・・はいっ」

ぽたぽたと、雨の粒が葉っぱに落ちる音がする。
盗み見た村田さんの瞳は、どこか悲しそうで、虚無感が漂っていました。

「ふぅ・・・・」

「思い出しますか?」

「ん?」

尋ねた私に、村田さんが何がと、いうようにこちらに顔を向ける。
なんとなく言いづらくなって、私は慌てて目を逸らし、窓の向こうに視線を戻す。
121 名前:紺野編 投稿日:2004/04/01(木) 15:55
「その・・・天国でのこととか」

沈黙の間も、雨はずっと音をたて続けていた。
言わなければよかったかなと、後悔し始めたとき、村田さんが口を開いた。

「うん、そうだね」

ぱらぱら。
雨の音がずいぶん遠くに聞こえる。

「今頃なにしてんのかなって・・・雨の日は特に思うよ」

「・・・そうですか」

予想通りの言葉に、何故か胸がチクリと痛んだ。
きっと、村田さんはあの人のこと、思い出してる。
122 名前:紺野編 投稿日:2004/04/01(木) 15:57

「会いたいですか?」

私の質問に、村田さんは数秒間をおいて答えた。

「・・・うん。いますぐ会いたいよ」

ひとつひとつの言葉が、優しい響きを持っていた。
村田さんがどれだけその人のことを思っているのか、言葉にしなくても伝わってくる。
何か言おうと思ったとき、村田さんが自らを嘲笑うかのように口を開いた。

「飛べたらだけどね」

ぱた、ぱた。
村田さんがそっと、短くなった背中の羽を揺らす。
それは痛々しいほど、ばっさり何かに斬られていた。

「あー雨の日は眠くなるや」

村田さんはそう言うと、壁にもたれて座り込み、そのまま寝てしまった。
私は何もいえないまま、ずっと外を眺めていた。
とうぶん止まないだろう雨の音や村田さんの寝息に耳を傾けながら。

ぱらぱら。ぽたぽた。
雨はなんだか淋しい音がする。
123 名前:作者 投稿日:2004/04/01(木) 16:24
更新少ないうえに田中さん書けなかったので、かなり気まずい・・・。
だから落とします。ごめんなさい。
書いてるうちにどんどん内容が変わっていっているような・・・。

>>105様 絶対幸せに・・・なるのかな?(ヲイ
    人によってハッピーエンドかは違いますからね。

>>106様 幸せになると・・・・思う、たぶん(自信なさげ
     ・・・・でもがんばる。

>>107様 うん、できないっすよね。
     ・・・レスってこんなんでいいのかな?(爆

レスありがとう。
あんま気が利いたこといえなくてごめんなさい。

 
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/04(火) 22:13
今日見つけました。
続きを・・・続きを下さい、作者様。

こっちも泣きそうです。。。(T-T)
125 名前:名無し読者 投稿日:2004/05/16(日) 03:04
しばらく作者様を見ておりません…
お元気ですか?
更新待ってます。
126 名前:絶詠 投稿日:2004/06/06(日) 13:35
今日初めて読みました。ホムペから飛んできたのですが…。
飼育には通ってるものの気づかずにいた自分が情けなく思います。
まだまだ謎だらけですね…。
とりあえず好きな人ばかりが出てるので…藤本さんメインっぽいのも嬉しいです!
更新またーりお待ちしております。
頑張って下さい!!
127 名前:名無し 投稿日:2004/07/23(金) 02:21
待ってま〜す。(^-^)/
128 名前:通常の名無しさんの三倍 投稿日:2004/08/04(水) 08:35
昨日の夜通しで読みました。
なんか、話にまとまりがないですね。
れいなの話をメインにし、その時々で必要なストーリーを
読者に見せる〜みたいな感じにした方がよかったのでは?

「かつて」属性の人物をメインにもってくるのは難しいですよ・・・
129 名前:作者 投稿日:2004/08/07(土) 19:02
>>128 そうすればよかったなあと思って、今どうしようか悩んでいます。
    でもなんとか更新する予定です。
    アドバイスありがとうございました。

    まとまりないけど、もう書いちゃったのでなんとかして完結させようと思ってます。
    読者のみなさま、待たせてしまってすみません。
130 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/20(月) 05:59
ずっと待ってますがもう更新はされないのでしょうか?
131 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/03(月) 17:36
されないみたいですね…
132 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/13(木) 00:10
けっこう好きだったのにな・・・
133 名前:名無しさん 投稿日:2005/01/27(木) 18:11
>>129を信じて待ち
134 名前:名無しさん 投稿日:2005/01/27(木) 18:12
上げてしまった

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