サヨナラは夢の中へ

1 名前:とみこ 投稿日:2004/02/11(水) 11:53
吉澤中心の学園ものです。
金板と両立して更新していきます!
2 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:55

 「うん、いい天気。」

家のドアを開けると、ほどよくまぶしい太陽の光が差し込んできた。
朝は苦手なんだけど、最近の朝は大好き。だって、一年で一番好きな季節だからね。
もう4月か・・・。ようやく本格的に春らしくなってきたと思う。

春と言えばさ、厳し〜〜〜い冬を乗り越えて、なんとなく街の雰囲気から寂しさが消えてきて、
所々で花が咲いて、鳥の賛美歌を聴きながら登校する最高の季節。・・・なーんてね。
ま、とにかく暑くも寒くもない、大好きな季節。


 「よっすぃ〜〜〜!!!」
突然、目の前に現れた大きな瞳に驚いて、あたしは速攻ヘッドホンを外した。
 「ごっちんっ、びっくりさせないでよ!」
あたしは首から宙ぶらりになったヘッドホンを直しながら言った。
 「よっすぃー、たまには一緒に行こ?」
ごっちんはそう言ってあたしの歩幅に合わせて一緒に歩き始めた。

・・・どうも最近、ごっちんは機嫌がいい。
他愛無い会話をする時だって、今までは”んぁ〜”とか”ほぇ〜”とかしか言わなかったのに。
やっぱり、恋をすると女の子は変わるものなのだろうか。

 「何聞いてたのぉ?」
そう言ってごっちんはあたしのカバンの中からMDを探っていた。コラコラ、勝手に探るなよ・・・。
もちろんそこには”Mr.children”の文字が。
そう、あたしはミスチルの大ファンである。ほんっと、大好き。
 「へっへ〜ん。ミスチルだよ〜。やっぱいいよなぁ〜桜井さんカッコイイし。」
ふーん。ごとー、よくわかんない。とか興味なさげに言ってから、ごっちんは突然足を止めた。
 「あ、市井ちゃ〜ん!!!」
そして、目の前に見つけた愛しの市井先輩を見て、とっとと走り去って行ってしまった。
あたしは荒らされたカバンを整えながらゆっくり歩いていた。

まったく・・・ごっちん、なんて自己中心的なんだ!何がたまには一緒に行こ?だよ!

・・・ま、いっか。
あたしは再びヘッドホンを耳に戻してあげた。
3 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:56

あたしの名前は吉澤ひとみ。17歳だけど、もうすぐ18歳。今週から高校2年生になったばっかり。
メチャメチャ平凡な女子校生だと、自分は思ってる。
だってさ、だってさ、何にも楽しいことがないんだ。恋も、してないし。
ミスチルの歌はカッコイイ歌詞が多いけど、聞いてても自分に当てはまる歌詞はめったにないし。
例えば、”好きで好きでどうしようもない”とか。なんじゃそりゃ。そんなこと、言ってみたいよ。ホントに。

あ、それから、ごっちんは友達。入学してから、なんかこう気が合ったっていうか、
ずるずるとそのまま仲良くなって。あたしとは決して似ている部分なんて全然ない。
むしろ正反対である。でも大好きな友達。

そんでもって、今ごっちんは付き合っている人がいる。
相手は、3年D組の市井紗耶香先輩。さっきの人なんだけどね。
まぁ、軽い人だけど、なんだかんだごっちんのこと大事みたい?

それから言い忘れてたけど、あたしはそ〜と〜モテている。
自分で言うなよって思うかもしれないけど、これは本当のこと。
みんな廊下であたしと目が合えばキャーキャー言うし、肩がぶつかれば真っ赤になる。
ラブレターも3日に1通は必ず下駄箱に入ってるんだよね。

女子校だから、こういうの珍しくはないんだけど・・・・・・・
あたしは、学校内でも優れてモテる組に入っていた。

ちなみにごっちんの付き合っている市井さんもあたしと並ぶぐらいモテる。
そんな市井さんをゲットしたごっちんは、たまに先輩や後輩にねたまれることもあるらしいけど・・・
そんなやつらは市井さんが許さん!って感じらしいけどね。

なのにさ、あたしは好きな人すらいないんだ。確かにモテるよ?それは嬉しいけど・・・
告られてもその人が好きだとは思えないし。
いつか、自分から好きになれる人が現れるのを待っているという感じだ。

そう、あたしはつい”運命”とかいう、見えもしないものに頼って逃げている。
もし恋をしたとしても、途中でその人が好きじゃなくなったらどうする?
別れようなんて言える勇敢な人じゃない。だから、知らない子に告られても軽く付き合えないのかも。
4 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:56

 「ねぇ、恋するってどんな感じなの?」
つい、あたしらしくない質問をしてみた。全然キャラじゃない・・・。
早朝とは言えないけど、8時を過ぎた頃だった。

HRが始まるちょっと前で、クラス全体がなんだか騒がしい時間。
みんなそれぞれ仲の良い友達と雑誌を呼んだりおしゃべりしたいしてる中で、
あたしはそんな質問をごっちんに持ちかけた。

 「うーん、やっぱ幸せって感じかなぁ?市井ちゃん優しいし♪」
語尾にアハッと付け加えて、のろけ半分でごっちんは答えた。
確かに市井さんはあたしにもすごく優しい。誰にでも優しい。でも特にごっちんには優しい。
やっぱりそれは、恋人だから、なのかな?
 「友達じゃダメなの?何が違うのかな?」
真剣に質問を投げかけるあたしに、ごっちんはコホンッと咳をしたフリをした。
 「分かってないなぁ〜。よっすぃーは恋愛ベタだからな〜。」
聞きたまえ、と指をぴんっと立てて話をつづけてくれた。
あたしはプライドの許す限りごっちんの話に真剣に耳を傾けた。

 「つ・ま・り・・・愛があるかないかの話なんだよね。」
ごっちんはえっへん、と言わんばかりの態度でそう答えた。
あ、愛?アイ?”I”?
あたしには縁の無い言葉だ。頭の中の辞書がそうつぶやいている気がした。
 「愛ねぇ・・・あたし、よくわかんないよ!」
別におとぼけぶってるわけじゃないんだけど、本気で投げやりになっていた。
5 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:56

 「よっすぃーはマジメだからさ、もっと恋愛って軽く見てもいいと思うよ?」
小学生に算数を教えるような口調でごっちんは言った。
でも確かに、恋愛のレベルとしてはあたしは小学生・・・いや、それ以下かも。
だって、今まで好きな人すらできたことなくて・・・。ありえないのかな?そういうの。
 「だって・・・軽く考えるなんて無理だよ〜。」
あたしは机にうつぶせになってそう言った。机に向かってバカヤローと口パクしてみたりして。

 「でも、よっすぃーはいつか好きな人ができた時、その人をすごく大切にできると思うよ。」
ごっちんは最後にそう言ってへらっと笑った。ごっちんの言葉の意味が、よく掴めなかった。
喜んでいいのか?これは。

つまり、つまりさ?あたしは考え方が古いんだよね。古き良き時代の人?みたいな。
今の子はみんな、恋愛を軽く見てて、好きな人なんてすぐに出来て、
告るか告られるかで付き合って、好きじゃなくなったら別れて・・・ってノリみたいだけど、

あたしの考えとしては・・・
誰かひとりのステキな人と出会って、友達になって、だんだん”あれ?なんか好きになってる?”
・・・みたいなノリで片思いして、いつか、告白しなくちゃいけなくなって、告白して・・・
結果はその後ついてくるもので、相手が自分を思っていなければ長続きしないと思うけど・・・
とにかくっ、あたしは・・・・いつか運命がくると、思ってるんだ。
古い考えかもしれないけど、あたしは時代に流されたくない!
でもやっぱり、こういうのってイマドキじゃないのかな?
6 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:56

HRが始まって、みんな渋々と席に着いていった。
あたしとごっちんは席が隣で、しょっちゅう喋ってて怒られるんだけど・・・。
 「あ!吉澤、昨日休んだだろ?ゴミ捨て係になったから、よろしくなー。」
先生は軽くそう言い捨てた。
 「ちょっと待ってよ〜!ゴミ捨て係とかって超イヤじゃん!人気ないじゃん!」
あたしが立ち上がってそう言うと、教室はドッと笑いに包まれた。

みんな〜他人事じゃないよ〜。あーあ、こんなことになるなら昨日休むんじゃなかったよ。・・・って、言い訳だよね、ハイ。
 「しょうがないだろーがー。今日から早速ゴミ捨て頼んだぞ!」
渋々あたしが”ほーい”なんて適当な返事をして、またクラスはドッと笑いに包まれた。

人気者だね、なんてごっちんが隣で言うから、同じ班の子にそれが聞こえてまた笑っていた。
ちなみに先生は男なんだけど、【中村 明】(なかむら あきら)といって、あだ名は・・・
そのまま読んで【ちゅうそんみん】だ。中国人っぽくない?結構笑えるでしょ?
あたしが付けたあだ名で、なぜか一気にクラスに広まってしまった。でも先生も結構気に入ってるみたい?

HRが終わって、なんとなく教室はにぎやかだった。
なんだかんだ言っても、学校は嫌いじゃない。むしろ好きなくらいなんだけど、
これだ!っていう楽しみがないから、人生楽しいとは思わないんだよね。

あ!でも部活は大好き。中学からずっと続けてるバレー部なんだけど、本当に楽しい。
この高校のバレー部、そこそこ強いし、あたしは2年生で唯一のレギュラーなんだよ。ちょっとスゴい?
しかもセンターを任されてて、先輩たちにも期待されてるんだ。
練習は厳しいけど、メチャクチャ楽しい!先輩たちも優しいし、それに・・・
顧問は”ちゅうそんみん”だし!
7 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:56

 「あ、虹〜」
ごっちんがボソッと外を見てつぶやいた。授業は全く聞いてないみたい。
あたしも同じ方向に目をやると、そこにはキレイな虹の橋が架かっていた。
あたしが、おーキレイ。なんて言うと、よっすぃのキャラじゃないよってごっちんが返してきた。
 「なんだよー、自分から言ったくせにっ!」
ごっちんのほっぺをむぎゅーっとつねって怒った。
 「いらいよ〜・・・」
なんて弱っちい声出すから、つい、ごめんといってごっちんの頭をなでていた。

すると、パコッと言う音と、頭に痛みが走った。
 「いてぇ!」
思わず声をあげると、クラスはドッと笑いに包まれた。・・・今日何回目?あたし笑われてるの。
 「授業を聞け、授業を!」
あっちゃー・・・忘れてた。1限目の数学は、金髪・カラコン・白衣の三拍子、中澤裕子教諭だった・・・

っていうか今のはごっちんが悪いんです!!・・・って言いたかったけど、やめた。
だって、思ってるよりも・・・結構痛いんだよ。叩かれんの。ごっちんに泣いちゃいそうだから。
 「すみませんでしたー。」
ストンッと席に座ると、先生はツカツカと黒板の前に戻って、指し棒で白い文字を指した。
そしてあたしの方を見てニヤッと笑うのだった。それはそれは恐ろしい悪寒を感じました。
 「吉澤。この問題解け。」
やっぱり・・・。あたしはそう思いながらも渋々黒板の方へ歩いていった。
ごっちんが手を合わせて、口パクでごめんと言っていた。

・・・でも、実は吉澤ひとみ、頭も良いんです!!
あたしは黒板に書かれた方程式を、すらすらと解いていった。もちろん、クラスメイトは釘付け・・・。
中澤先生はニヤニヤしながらあたしの描いていく数字たちを見ていた。
 「はい、解けました。」
チョークを置いて、手をパンパンッと払って、先生の方を見て笑った。
先生もため息をついて、席ついて良し。と言った。教室は軽く拍手が起きていた。へへっ。
8 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:57

席に戻ると、ごっちんはゴメンを連発してきた。
気にしないで、とひと言。だって、なんか結構目立っちゃったし。拍手もらったし。
近くの子とかが、よっすぃー頭いいね。なんて誉めてくれるから、つい嬉しくなっちゃったり。

あと30分か・・・。早く授業終わらないかな?・・・あ!次体育だ♪
 「ハイ、ここテストに出るからメモっといた方がええよ〜。」
体育のことで頭がいっぱいになり、中澤先生の授業は右耳から左耳に抜けていった。
たしか今日はサッカーだった気がするけど、じゃぁ校庭かな?
昨日は雨が降ってたけど、今日は晴れてよかった!
もう、体育がなきゃ学校なんかやってられないっしょ!よーっし、今日はいい汗かいて、頭スッキリさせよう。

そんなことを思いながらフッと校庭に目をやると、どっかのクラスが体育をやっていた。

ん?どこのクラスだろ・・・あ、市井さんだ!じゃぁ、3年生か。
あ、サッカーやってる〜いいなぁ。楽しそう。っていうか、みんな暑そうだなぁ。

だんだん飽きてきて、黒板に視線を戻した・・・その時だった。
 「よっしゃ!こーい!」
校庭の方から大声が聞こえた。あたしは思わずもう一度校庭の方をバッと見た。
そこには、ゴールの前で両手を広げている金髪の女の子。
すんごい背小さいのに、ゴールキーパー??すごいな・・・
ゴールキーパー用のでっかい手袋が、さらに大きく見えた。
 「絶対止めてやっからなー!!」
・・・っていうか、すっごい大声。

あ、っていうかあの人、3年の廊下を通るといっつも騒いでて目立ってる人だ。
小さくて、金髪で、超元気で騒がしくって。そ〜と〜有名。
名前は・・・わかんないけど。結構市井さんとも仲良かった気がする。

あたしはそのあと、何度かチラチラ校庭を見ては、その人のはしゃぎっぷりに少し微笑んでしまった。
9 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:57

ようやく授業終了のチャイムが鳴って、あたしは思いっきり伸びをした。
 「よっしゃー!!体育ー!!」
一目散にジャージを持って更衣室へ走っていった。ごっちんが慌てて追いかけてきたけど。
そのまますっごい勢いで着替えて、校庭に出た。

うーん、空気が気持ちい。やっぱり勉強より運動だよ!
 「よっすぃー、早いよ〜」
ごっちんがのろのろと走ってこっちに向かってきた。
あたしはそんなごっちんを見て笑った。

まだ校庭には体育を終えたばかりの3年生が居た。
 「お、吉澤じゃん!」
ちょうど市井さんがあたしに気づいてこっちに向かって歩いてきた。
 「こんにちは。ごっちん、来ますよ。」
うしろで歩いているごっちんを指差すと、ごっちんも市井さんに気づいて走ってきた。
それはそれは、すごい勢いで。その元気はどっから出てくるんだ・・・・・。

 「いちーちゃんっ!!」
ガバッと市井さんに抱きついて、ふたりの世界に入ってしまった。
というか、ごっちんが一方的に超甘えてるだけだけど・・・・・・・

その時、向こうからあの金髪の先輩も歩いてきた。

 「紗耶香〜、ちゃんと片付けしろよー!」
金髪の先輩は、あたしの目の前で市井さんに話しかけていた。
やっぱり、さっき校庭で見た通り、すっげー背が低かった。
 「ごめんごめん、ヤグチ。」
市井さんは手を合わせてあやまっていた。
ふーん・・・ヤグチ先輩っていうんだ、この人。
 「ごっつぁん元気ー?紗耶香が体育の時間、ずっとごっつぁんに会いたいって言ってたよ〜!」
キャハハッと笑いながらヤグチさんはそう言った。
なんか、笑い方も、すっっっごい楽しそうに笑うんですね・・・。
 「やぐっつぁん、ホント?!も〜、市井ちゃんってば!ごとーも市井ちゃんのこと考えてたよ〜♪」
さらに2人の世界に入っていってしまった。・・・はぁ。
10 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/11(水) 11:57

その時、偶然ヤグチさんはチラッとあたしのほうを見た。
目が合ったことにビックリして、あたしは軽く頭をペコッと下げた。
ヤグチさんは代わりにニコッと笑って返してくれた。

なんか、人見知りとか絶対しなさそうな人だな。あたしは、すごい人見知りするタイプだけど。
それから、体操服に”矢口”って書いてあったけど、あぁいう字書くんだね。
ヤグチさん=矢口さん、か。
11 名前:とみこ 投稿日:2004/02/11(水) 12:26
更新終了です。一応登場人物の紹介です!

【吉澤ひとみ】高校2年生。
誠実で優しいマジメな性格。バレー部の2年生唯一のレギュラーで、頭も良くて誰にでも好かれる人気者。
周りからはいつもチヤホヤされていてモテモテなのに、実は本人は恋愛ベタで人見知りが激しい。
”運命”を信じていて、マンガのような恋愛が理想的らしい?

【後藤真希】高校2年生。
ひとみとは入学当時から仲の良い親友。
どこか気の抜けたオマヌケキャラなのに、容姿は誰もが目を引く美人。
市井がいれば全て良し。いつもそう思ってのんびり生きている。

【市井紗耶香】高校3年生。
ひとみと同じく、頭も良くてスポーツ万能。でも正反対なのは、軽くてチャラチャラしているところだ。
色んな女の子といつも喋っているけど、なんだかんだいって真希のことが大好き。

【矢口真里】高校3年生。
とびっきり小さい背に金髪というルックスは、かなり有名。
更にいつも笑っていて、学校のムードメーカである。
友達思いで、何に対しても一生懸命な性格。

12 名前:とみこ 投稿日:2004/02/11(水) 12:30
更新終了です!!
13 名前:MIRAI 投稿日:2004/02/11(水) 14:11
うぉ!とみこさんの新連載発見!!
でも・・・、よしごまじゃなくて
いちごま・よしやぐ?
金板と一緒に続き楽しみにしてます!
14 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 21:23
っしゃ
15 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:02
そうだ!今日は久しぶり天気がいいし、どこかに出かけよう。
そう思い立ったのは、授業が全部終わった放課後だった。
 「ごっちん、今日このあとどっか行かない?」
教室掃除をしていたごっちんに話しかけた。
数秒してから振り返ったごっちんは、ふぁ〜とあくびをした。
 「今日は市井ちゃんと遊ぶよ。」
え〜っと思ったけど2人を邪魔するわけにはいかないから、そっか。と言った。

 「オーッス、後藤いる?」
その時、ヒョコッと教室のドアから市井さんが覗いた。
2年の教室に市井さんが来る。すなわち、ファンが大勢集まる。
キャーキャーなんていう市井さんのファンの人たちが教室に集まってきた。
 「市井ちゃんっ♪」
ファンの前だとかそんなの全くおかまいなしに、ごっちんは市井さんに駆け寄っていた。
もちろん、ファンの子は、不機嫌そーな顔してるんだけどね・・・
 「後藤、苦しいって・・・って、吉澤もいるじゃん!元気?」
市井さんはバシバシッと背中をたたいてハッハッハとさわやかに笑って言った。
ちなみに結構背中痛いんですけど・・・
 「元気ッス・・・今日デート楽しんで下さいね。」
ニコッと笑って、さて帰ろうとしたとき、市井さんはあたしの腕を掴んだ。

 「なんで知ってんの?っつーか、吉澤も一緒に遊ばない?」
市井さんはニカッと笑ってピースしていた。
 「あ、それい〜ね〜。」
ごっちんもへらっと笑って同じくピースしていた。息ぴったりだね・・・
・・・じゃなくて!ふたりのデートにあたしが参加ですか?!
 「いやぁ〜お邪魔ですから・・・」
なんだよーとか市井さんたちは言ってたけど、あたしは教室を出てかばんを持ち直した。
さて、天気もいいし、のんびり帰るか。
そんな風に思っていたとき、目の前にあの人が現れた。
16 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:02

 「あれー?よっすぃーじゃん!」
なんと、その人は今朝の、えーっと・・・・・・そうだ!”矢口先輩”だった。
っていうか何で2年の廊下にいるんだ?しかも、”よっすぃー”って・・・
 「へ?あ、こ・・・こんにちは。え、あたしのこと、知ってるんですか?」
名前っていうか、”よっすぃー”っていう愛称まで知ってたことに驚いたのだ。
 「だってよっすぃー有名人じゃん!!みんな知ってるって!」
キャハハッと楽しそうに笑うと、市井さんと同じようにバシバシッと肩を叩いてきた。

 「ところで、えっと・・・や、矢口先輩・・・は、どうして2年の廊下にいらっしゃるんですか?」
恥ずかしいことに、ドモってさらに堅苦しい敬語になってしまった。
・・・情け無い。あたしはやっぱり人見知りだと改めて思った。

 「キャハハッ、言葉変だよ、よっすぃー!あ、あのね!紗耶香探してんだけど、知らない?」
なんだか矢口先輩になら変だとか言われてもあんまりショックじゃなかった。
笑い方がどうも憎めないって感じなんだろうな・・・。
 「あぁ、市井さんならこの教室にいますよ。」
教室を指差すと、ちょうど市井さんとごっちんがじゃれあいながら出てきた。
というか、一方的にごっちんがしがみついてる感じだけどね。

 「あ、紗耶香いた!!ペンケース忘れてたよ!」
矢口さんはシンプルなシルバーケースを市井さんに渡した。
なんだか、いかにも”市井さん”といった感じのペンケースに、思わず微笑んだ。
 「おー!矢口サンキュ!っつーか、お前ヒマ?」
ペンケースをカバンにしまいながら市井さんは尋ねた。
え、何、もしかして市井さん・・・矢口さんも誘うつもりじゃ・・・
17 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:03

 「え、ヒマだけど??ごっつぁんとのデートなら邪魔だから行かないよ〜?」
アハハッといつもより控えめな笑い方でそう言っていた。
その時、市井さんがガッと右腕であたしの首を固めてきた。
 「うぁっ!痛いっすよ、市井さん!!」
思わず、ギブ、ギブ、と首をしめている市井さんの右腕をペチペチたたいていた。
 「大丈夫、矢口!吉澤もいるからさ♪」
 「え?!ちょっと、市井さん?!」
市井さんは残った左手であたしのことを指差してニカッと笑った。
っていうかもうあたしが参加すること決定っスか・・・?

矢口さんは市井さんの言葉に、一瞬あたしを見た。
 「うーん、じゃぁ矢口も行こうかな!」
や、矢口さん・・・そんな軽く言わないでくださいよ・・・・
 「よっしゃ!決定!!」
市井さんがそう言うと、ごっちんも、わーいっと市井さんに抱きついていた。
あたしはそのスキを見て市井さんの腕から抜け出して首をさすった。
あのー、あたしの意見完全無視っすか・・・?

 「っつーか、どこ行く?後藤、どこ行きたい?」
市井さんはごっちんの頭をなでながら優しく聞いた。
なんだよ、あたしにはいつもバシバシ叩いてくるくせにぃ〜・・・
やっぱり彼女は特別ってか。そうですか。はいはい。わかりましたよ。
 「いちーちゃんち〜」
ごっちんはへらっと笑ってそう言った。えっ、市井さんの家?!
っていうか、あたし今日は天気がいいから出かけたかったのに・・・。
 「ダメ。母さんが吉澤来ると大はしゃぎだから!」
市井さんはそう言ってあたしの背中をべしっと叩いた。
そのたたきグセ、やめてください・・・・。うぅ・・。

 「キャハハ!何、紗耶香のお母さんよっすぃーファンなの?!」
矢口さんもいつものように楽しそうに笑いながら言った。
だって、市井さんち行くとおばさんがいつもおかしやらジュースやらくれたり、
さらには夕飯食ってけっていうし、泊まる?とか言われたこともあったり・・・
・・・いや、泊まってないけどね。
18 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:03

 「あっ!天気いいんだし、外行こうよ、外!!」
矢口さんは思い立ったようにひらめいて、ぴょんぴょん跳ねていた。
驚いたことに、あたしと同じ考えな矢口さん。
 「そうですよ、天気がいい時は外にでないと湿っぽいっスよ!」
あたしは矢口さん側について市井さんに言った。
横で矢口さんがへへっと笑ってから、そーだそーだー!ってまた拳を振り上げる。

 「何ちゃっかりお前ら団結しちゃってんだよっ!」
市井さんのキレるツッコミが妙に嬉しかった。そう、団結団結!
 「サイクリングしよぉ〜」
ごっちんはふにゃっと笑って言った。
サイクリングかぁ・・・いいかも!あたしがそう思ったとき、矢口さんもナイスだよごっつぁん!なんて言ってた。
やっぱり気が合うな、矢口さん。

 「でもチャリ通は吉澤とあたしだけだぞ?矢口は電車だろ?後藤は歩きだし。」
市井さんがそう言うと、みんな、うーんっと悩んだ。
その時、あたしはめずらしくいい案を思いついた!でも・・・言っていいのかな?
迷惑じゃないかな・・・うーん、いや、言おう!!
 「あのー、2人乗りしたらいいんじゃないっすか?」
珍しく意見を言うあたしに、市井さんもごっちんも、え?という顔でこっちを見た。
その時、1番に賛成してくれたのは・・・

 「いいねぇ!じゃぁ、矢口はよっすぃーの後ろ乗る〜!」
矢口さんだった。し、しかもあたしと矢口さんペア??
いや、でもごっちんと市井さんを離すわけにはいかないしね。必然的にあたしと矢口さん、か。
 「矢口が言うならしょうがねぇ!よっしゃ、吉澤、チャリ取ってくるぞ!」
了解!といってあたしは駐輪場まで市井さんに付いていった。
19 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:04

2人で駐輪場まで歩いてる途中、市井さんはなんだかご機嫌だった。
 「ダブルデートみたいだな。」
駐輪場についたとき、市井さんがからかい半分でそう言ってきた。
あたしも市井さんの冗談にハハッと笑った。
 「そうですね、”なんちゃってダブルデート”ですね。」
2人で笑いながらそんなことを話していた。

チャリンコのカギを開けながら、あたしは鼻歌を歌っていた。
まさにサイクリングとは、いい提案だ。ごっちんは急にあぁいうスゴイこと思いつくからすごいよ。
それに、知り合ったばっかりの矢口先輩とも仲良くなれそうだし・・・?
まぁ市井さんのダブルデートっていうのは冗談だけどね。
だって、市井さんたちみたいに付き合ってるんじゃないんだからさ!ね。

 「あ、後藤たち来たよ。」
チャリを準備していると、ちょうどあとから矢口先輩とごっちんが歩いてきた。
ごっちんはそんなに背高くないのに、矢口先輩が小さいからすごく高く見えた。
それにやっぱり矢口先輩の金髪は目立ってて、妙に面白かった。
 「よし、後藤、乗れぇ!」
カモーンッと冗談っぽく市井さんが言うと、ごっちんは嬉しそうに駆け寄った。
そしてごっちんは市井さんのチャリの荷台に乗ると、ぎゅぅ〜〜〜っと市井さんの腰を掴んでくっついていた。
ははん・・・ラブラブですねぇ。

 「重いけどゴメンネっ?!」
キャハハッと笑ってあやまる矢口先輩に、あたしも大丈夫っす!と、ノリノリで答えていた。
よいしょっ、と掛け声して荷台に座る矢口さん。
 「よいしょって、まだ若いのに何言ってるんですか〜!!」
あたしが矢口先輩にツッコむと、キャハハッとまた笑ってくれた。
20 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:05
 「先行くぞ〜〜」
市井さんたちのチャリンコが出発して、あたしもペダルに足を掛けた。
その時矢口先輩はさりげなくあたしの服のすそをキュッと握った。
その行動に思わず顔を見合わせてしまって、2人ともニコッと笑った。
 「よっしゃぁ〜!よっすぃー2号も行きますよ!!よいしょっ!」
あたしが思いっきりペダルを踏み込むと、それと同時に矢口先輩は思いっきり笑い出した。
 「キャハハハ!!よっすぃーも”よいしょっ”って言ってんじゃんかぁ!」
矢口先輩はお得意の大笑いでバシバシ背中を叩いて笑っていた。さっき矢口先輩をそのネタでからかったばっかりなのに。
あまりに体を前後に揺らして笑うから、自転車はフラフラしながら走り出した。
あたしも顔がニヤついたまま戻らなくって、
矢口先輩の大笑いはすごいパワーだなぁ、とか思いながらこいでいた。
21 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:05

あたしはチャリンコをスイスイこぎながら、風に転がる空気と並んで走った。
春風が妙に甘くて、すっげぇいい気分。
それでも先を走る市井さんたちの姿は、だんだん見えなくなっていく。
もう、2人の世界入りすぎでしょ・・・迷子になっても知らないんだから!

そんなことを思っていると、なんだか妙に矢口先輩が静かだと気づいた。
 「矢口先輩?」
声を掛けると、先輩はあたしの袖をつかんだままクスクスと笑っていた。
笑いを抑えて、でも顔はメッチャ笑顔で、すっごい楽しそうに静かに笑ってた。
 「くくっ、だってさぁ、さっきのよっすぃー、マジでおもしろいんだもん!”よいしょっ”って!」
思い出したのかまたクスクス笑い始める矢口先輩。
 「笑いすぎですよー!!」
あたしもなんだか恥ずかしくって冗談半分で怒ってみせた。
それでも矢口先輩、まだずーっとクスクス笑っててさ。ほんっと、こっちがおもしろいですよ。
 「だって、矢口に若いのに”よいしょ”はダメって言ったのに〜〜自分で言ってるんだもん!」
矛盾してるよ、よっすぃー!とまた楽しそうに背中を叩く。

なんだかもう、あたしも笑うしかなかったっていうか、矢口先輩と一緒に笑いたかった。
先輩が楽しそうに笑うから、あたしもつい、楽しくなっちゃう。

それにしても矢口先輩、めちゃくちゃ軽いなぁ・・・
背が小さいっていうのもあるけど。あたしの制服のすそを掴む腕も、細くて華奢だった。
 「本当に乗ってます?」
暖かい風が顔に当たるのを楽しみながら、あたしは笑ってそう言った。
だって、あまりにも矢口先輩が軽いから。
 「乗ってるよぉ!何、ひそかに今”矢口先輩が軽い”とかっていう意味こめた??」
嬉しそうに笑う彼女に、”だって軽いんですもん”と笑って言い返した。
 「あ、紗耶香たち向こうの公園で待ってるよ!!」
矢口先輩に言われて指差す方向を見ると、野原のある公園に2人は自転車を止めていた。
22 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/16(月) 23:05

 「飛ばしますよ!!」
へ?という矢口先輩を無視して思いっきりペダルをこいだ。
キャー!とか言いつつキャハハッって笑ってる矢口先輩がまた印象強かった。
 「落ちないで下さいね?!」
あたしは強制的に矢口先輩の腕をあたしの腰に回した。
だって、落ちてケガしたら責任取れませんからね!
 「おっ、よっすぃー大胆〜♪えへっ!」
からかいながらもぎゅ〜〜っとしがみついてくる。
さっきの市井先輩とごっちんを思い出して少し恥ずかしくなった。
23 名前:とみこ 投稿日:2004/02/16(月) 23:07
>MIRAIさん
はい!新連載たてました^^
>いちごま・よしやぐ?
んん?どうでしょぉ・・・wこれからどうなるのか!!
>金板と一緒に続き楽しみにしてます!
ありがとうございます!

>名無し飼育さん
っしゃ!w
24 名前:とみこ 投稿日:2004/02/16(月) 23:08
更新終了です。
25 名前:名無子 投稿日:2004/02/16(月) 23:28
こちらも応援してます。爽やかで楽しそうな滑りだしなのにタイトルがややせつないのが気になります。
26 名前:TAKU 投稿日:2004/02/18(水) 14:19
新連載、おめでとうございます!
ん〜なんだか今後の展開がすっごい気になりますね(笑)
応援してますので、最後まで頑張ってください!
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/19(木) 12:31
やぐよし、いいですねえ。大好きです。
いちごま、やぐよし、どっちもいい雰囲気で
かなり期待しちゃってます。
がんばってください。
あたしはホスト、ごっちん最高でした。
28 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:18
この大きい公園は、あたしも昔からよく親に連れてこられてた場所なんだよね。
奥にはアスレチックとかもあって、更に真ん中にはおおきな池もある。
入り口はアスファルトが花模様に敷き詰められていて、乙女チック。
その先を少し行くと、大きな大きな、でっか〜〜〜い草原が思いっきり広がっているのだ。

あたしたちは公園内に入り、その草原の向こうにチャリンコを進ませた。
 「矢口たちも早く来いよ〜!!」
数十メートル先で市井さんは大きく手を振っていた。
あたしは矢口先輩と顔を見合わせて笑ってしまった。
なんだかな〜、知り合って1日目でこんなに仲良くなるなんて思わなかった。

市井さんたちがいる草原にやっとたどり着いた。が・・・
 「へっくしょん!」
その時、突然矢口先輩は大きく体を揺らしてくしゃみをした。
もちろん、その勢いでチャリンコはバランスが一気に崩れ始めてしまって・・・
 「わっ・・・!」
29 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:18

ガシャーンッ・・・と大きな音を立てて、チャリンコ&矢口先輩とあたしは思いっきり草のうえに転がった。
 「おい!矢口、吉澤、大丈夫かよ!」
市井さんとごっちんが駆け寄ってきて心配してくれた。
でも幸い草の上でよかった。だって、あんまり衝撃も少ないし・・・・・・ん?あれ?
 「や、矢口先輩・・・?!」
チャリンコは吹っ飛んでたんだけど、矢口先輩は見事にあたしの体の上に乗っかって助かっていた。
目の前に矢口先輩の首筋があって、うなじが・・・とか少し思ってしまったけど首を振った。

 「ご、ごめぇ〜ん!!」
矢口先輩はガバッと起き上がってあたしの背中についた草をパンパンッとはたいてくれた。
慌てた様子であたしの背中やら髪やらはたくから、いてっとか口に出してしまったり・・・・
 「なんか仲良いな、お前ら。」
 「うんうん。」
市井さんとごっちんは、そんなウチらを見て腕を組んでニヤニヤしていた。
な、なんですか、その妙な笑顔は・・・・・・
 「あ、矢口先輩、もう平気ですよ。」
あたしはそう言ってチャリンコを起こして曲がったカゴを見つめてため息をついた。
30 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:19

 「何して遊ぶ〜?」
ごっちんはへろっとして笑いながら言った。
見た目はすっごい美人なのに、このゆるい性格がどーも玉にキズだ。
まぁ、これがごっちんのキャラなんだろうけどねぇ。
 「かくれんぼ!!」
矢口先輩はビシッと右手を上げて自信ありげにそう言った。
小学生みたいっすよ、とツッコむと、左手のひじで腰をつかれた。・・・痛いっすよぉ〜。
 「はーい!あたしも賛成!」
そう言ってわき腹を抑えながらあたしも手をあげた。そんなあたしを見てまた矢口さんはニコッと笑った。

 「なんかお前ら団結しすぎ!!まぁ・・・しょーがねぇ!かくれんぼするか!」
市井さんがごっちんに同意を求めると、ごっちんはなんでもいーよーとか言って市井さんの腕を掴んでいた。
ごっちんは本当に市井さんがいればなにもいらないんだね。
 「鬼は紗耶香ね〜!」
賛成ー!と、矢口先輩の意見にあたしもごっちんも同意した。
市井さんは”わーったよ。”とかいってひねくれてるけど・・・面白い・・・。
31 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:19

いーち、にー、さーん・・・っと市井さんの低い声が公園に響き渡り始めた。
さて、どこに隠れようかな〜こう見えてもかくれんぼは得意!!でも背が高いから隠れにくいんだけど・・・
 「よっすぃ、一緒にかくれよ?」
矢口先輩はテテテッとあたしのあとを着いてきた。
ごっちんは・・・って思ったけど、とっくに向こうの林の中に消えていってしまった。
 「じゃぁあたしに任せてください!」
あたしはそう言って矢口先輩の手をとって走り出した。
ごっちんの隠れた方向と逆に向かい、あたしは隠れる場所を探した。

おっ!ここ良さそう!そう思ってたどり着いたのは、木にかこまれたちょっとした場所だった。
市井さんまだ来ないかな?って、あまりにもあたしがキョロキョロしてるから、矢口先輩は”ブッ”とふきだした。
 「真剣すぎだよ〜!!よっすぃー!!」
キャハハッといつもに増して笑う矢口先輩の口元に、あたしは人差し指をさした。
 「しーっ。市井さんに見つかっちゃいますよ?」
ごめんっと笑って矢口先輩は息を潜めた。
32 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:19

草の匂いとかがなんとなく鼻にふわっと香ってくる。やっぱ春だなぁ〜〜なんちって。
 「あっ、紗耶香きたっ!」
矢口先輩が小声でそう言った。ちょっと先に目をやると、市井さんがキョロキョロしてうちらを探していた。 
まだごっちんも見つかってないんだね・・・。
市井さんが気づかずに近づいてくるから、あたしと矢口先輩はせまい場所でお互い近寄って身を潜めた。
目の前にある矢口先輩に顔に、あたしは目のやりどころに困っていた。
・・・う、どうしよう。

しばらくして市井さんはごっちんのいる方向に歩いていってしまった。
 「見つからなかったね!」
矢口さんがニコッと笑ってそう言った。はい、とあたしも笑う。あうんの呼吸ってやつ?・・・違うか。

 「ねぇ、よっすぃー。」
 「はい。」
矢口先輩は周りの草をちぎって遊びながら問いかけてきた。
指先についた土をわざとあたしの手にこすりつけて笑った。
 「うわっ、カンベンしてくださいよ!も〜・・・」
あたしも笑いながら横でちぎった猫じゃらしで先輩をくすぐって遊んだ。
で、さっきの名前を呼んだのはなんだったんだろう?
33 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:19

 「学校楽しい?よっすぃー。」
突然の質問に、あたしは最初に”え?”と言い返した。
 「楽しいですけど、特別打ち込めることはないですね。恋愛もしてないし・・・・」
苦笑いすると、”あたしも”矢口さんはクスッと笑った。
 「先生が、学校は遊ぶところじゃなくて勉強する所だって言ってた。」
あーあ、と付け足して矢口さんは困ったような顔をしていた。
多分、このキンパツのこととか言いたいんだろうけど・・・と矢口さんは言った。

イヤだったのかな?先生にそう言われたのが・・・・。
少し静かになったうちらの間に、草のさわさわとした音が響く。

 「うーん、あたしは違うと思いますよ。」
え?と矢口さんは顔をあげた。あたしの意外な言葉に驚いている。
どっちかっていうと、あたし自身こんなこと言うつもりはなかったんだけど・・・。
 「学校は友達や大切な人がいるところ。勉強はおまけです。」
あたしが笑ってブイサインすると、矢口先輩は最初口をあけてポカンっとしていた。
口開いてますよ?と注意すると、慌てておさえてたけど。
34 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/20(金) 20:19

 「なんか・・・意外とよっすぃー気が合うね?」
やっぱり学校は友達がいるところ、だよね。って、矢口先輩は笑った。
数秒ぶりに見た笑顔、やっぱり矢口先輩はその笑顔じゃないとね。

そう、友達や大切な人がいるところ。そして、体育や部活をするところ。
勉強は二の次なんだよね。あたしは、そう思う。
矢口先輩もそう思っていてくれたとは・・・なんだか嬉しかった。
 「そうじゃないとやってらんないっすよね。」
またふたりで目を合わせて笑った。

草の匂いと、土をいじる矢口先輩の細い腕が、なんともマッチしていた。
あぁ、あたしは本当にいい人に出会ったなぁ。
矢口さんは本当に本当にいい人だ。優しいし、おもしろいし、かわいいし。

あたしは、こんなお姉さんがいたらいいなぁって、すごく思っていた。
矢口先輩も、そう思ってくれてたら、いいのにな。
35 名前:とみこ 投稿日:2004/02/20(金) 20:26
>名無子さん
はい、爽やかですねw今回のテーマは爽やかですw
タイトルのせつなさはとくに今は決めてませんが^^;

>TAKUさん
>新連載、おめでとうございます!
ありがとうございます!!
よしやぐ、ほんわか友情が芽生えましたw頑張ります!

>名無し飼育さん
>やぐよし、いいですねえ。大好きです。
ありがとうございます^^でもまだまだとうぶん友達ですねw
いちごまもいいですよね^^
ホストも見てくれたんですね!嬉しいです!
こちらも頑張ります〜〜
36 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:53
 「それにしても市井さん、いつまで探してんですかね?」
さっきの見回りからすでに10分くらい経っていた。
ごっちんすら見つけてないとか?でもうちらだってそろそろ見つかったっていいころじゃ・・・

 「あ、よっすぃー見ーっけ。」
え?とあたしも矢口先輩も顔をあげた。
そこにはごっちんの顔があった。へらーっと笑ってブイサイン。
なんでごっちんが・・・??
 「なんだよ、矢口もいるじゃん!」
ごっちんの後ろからすぐに市井さんが顔を出した。
なーんだ、一緒に探してたって事か・・・。あたしたちは立ち上がった。
 「何一緒に隠れてんだよ〜。まったく。」
まぁ、探す手間が省けたからいいけど。と市井さんはつぶやいた。
 「仲良しだもんね〜!」
矢口先輩の言葉に、あたしはまた顔を見合わせて笑った。

あたしは、一緒に隠れるの結構楽しかったんだけど・・・?
矢口先輩はどうかな?・・・まぁ、いいや。
37 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:53

胸まである草を分けてあたしは隠れていた場所から出た。
 「うーっ・・・」
矢口先輩にとっては頭まである草はなかなか掻き分けられないみたいで、困難していた。
フッと笑ってあたしは手を差し伸べた。
握った手は、小さくって、でも柔らかかった。・・・ってエロおやじかっつーの、あたしは。
 「制服、よごれますよ?」
 「へへっ、ありがとね。よっすぃー♪いいなぁ、よっすぃーはデッカくて!」
矢口先輩のそのちっちゃい所がキャラだと思うんですけどね・・・・

 「ラブラブだな、お前ら・・・」
市井さんのあきれる姿も気にせず、あたしと矢口先輩は大きな広場までみんなで一気に走った。
負けねぇ!!とごっちんの手を引っ張って市井さんも思いっきり走ってきた。
もう、そういうところがガキンチョなんですよ、市井さんは。
 「はやいよ〜いちーちゃ〜〜ん。」
ほらほら、ごっちんが今にも泣き出しそうだよ・・・・。

そして草の上に1番に寝転がった市井さんに続き、ごっちん、矢口先輩、あたし、と寝転がっていった。
「川の字」+1本に並んだあたしたちは、空を見上げた。
まぶしいほどじゃないけど、いい感じにまだ太陽が出ていた。
少し向こうから紅く染まりかけている空を、みんなは見ていた。

 「のど渇いた〜〜〜」
突然、矢口先輩は勢いよく立ち上がり伸びをした。
矢口先輩って、突発的な行動が多くていつも見てて飽きないんだな。これが。
 「あたしファンタね。後藤はお茶でしょ?」
当たり前のように市井さんは自分とごっちんの分まで矢口先輩に注文し、ごっちんは大きくうなづいた。

矢口先輩ってムードメーカーなだけじゃなくって、すごい気の効く人なんだなぁ・・・
あたしはこんなまで完璧な人に出会ったことなかった。
 「オッケー!よっすぃーは?」
へ?と顔をあげると、注文だよ〜って矢口先輩は笑っていた。
 「あ、あたしも行きますよ!」
そう言って立ち上がった。矢口先輩は嬉しそうにありがとう、と言って、あたしの手を握った。
・・・へ?
38 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:54

 「紗耶香たちは大人しくイチャついてろよ〜??」
矢口先輩はそう言ってそのまま握った手を引っ張って走り出した。
・・・ちょこまかしてて、なにげ足はやいんですね、矢口先輩って。そんなことを思っていた。
あたしもビックリしてコケないように矢口先輩に付いていった。
矢口先輩のからかい半分の言葉に市井さんたちも笑ってて、
市井さんたちは2人で寝転がったまま手を振ってくれたけど・・・
やっぱりごっちんと市井さんの美男美女(?)カップルは、やっぱり絵になると思った。
 「お前らもな!」
だいぶ離れて小さくなった市井さんはそう叫んできたけど、まぁ、聞こえなかったってことで・・・。

 「バカだねぇ〜紗耶香も!」
自販機のところに付くと、矢口先輩はあたしと握っていた手を自然と離した。
わかってたけど、やっぱりただ冗談半分で繋いでただけだよね。
まぁ、いいけどさ。
 「あたし、オゴりますよ。」
財布から取り出した千円札が自販機にスーッと吸い込まれていくのを見ながら言った。
 「ホントにぃ〜??よっすぃー太っ腹〜!!」
キャハハッと笑いながら自販機を叩いてる矢口先輩。いや、壊れますよ、自販機。

 「オゴるのは矢口先輩のだけですけどね。」
ハハッと笑って言うと、矢口先輩は一瞬はきょとんとしていた。
お留守番係りの2人にはオゴるわけないじゃないっすか。とあたしは付け加えた。
 「だよねぇ?!じゃぁー、お言葉に甘えて・・・ブラックコーヒー!!」
ブラックってシブイっすよ!!とツッコむと、矢口先輩はキャハハハ!!っと腹を抱えて笑っていた。
 「ナイスツッコみ!っていうか矢口コーヒー飲めないし!!」
そう言って嬉しそうにすっごい笑いながらあたしの顔を見上げてくるから、つい何本でもオゴってあげたくなっちゃう。
39 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:54

 「りんごじゅーすね。」
そう言って矢口先輩は隣の自販機にもたれかかった。
あたしはみんなの分+自分のカルピスソーダを買ったあと、一緒に自販機にもたれた。

そして2人とも一口ジュースを飲むと、プハーッと声を合わせた。
 「わっ、ハモっちゃってるよー!!」
矢口先輩は嬉しそうにあたしの肩をべしべし叩いた。
”プハー”って声がそろっただけ、ただ、それだけなのに。矢口先輩はすごく楽しそうだった。
まぁ、もちろんあたしだって嬉しいけどね?
40 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:54

ジュースをかかえて広場の方に戻ると、市井さんたちは待ちくたびれたように座っていた。
 「おっせぇよ〜〜!!お前らぁ、イチャついてたんじゃねーの?」
ういういっと肘であたしをつっついてくるから、缶が落ちそうになってちょっと慌てた。
大丈夫?と優しく缶を持ってくれた矢口先輩。

みんなで草の上に座って、ジュースをごく、ごく、と飲んだ。
 「うまそぉ〜」
矢口先輩はあたしのカルピスソーダを見て、くれくれ、と手を差し出した。
あたしは缶を渡すと、必然的に先輩のりんごジュースも頂いた。

その様子を見ているごっちんと市井さん・・・なーんか言いたげ。
 「よっすぃー、扱いがごとーよりやぐっつぁんのほうがやさし〜」
ムスッとすねるごっちん。そっちかよ!って・・・市井さんはニヤニヤ笑ったまま。
 「本当に今日知り合ったばっかりかよ?ってぐらい仲良いな。」
市井さんはそう言ってあたしたちのマネをするようにごっちんのお茶をごくごくっと飲んだ。
なんだよ、あたしたちが羨ましかったとか??なんだかちょっと照れくさかった。
41 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:54
・・・・・・・・・・・・・
42 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:55

 「じゃぁあたし後藤を送っていくから。」
チャリンコのカギを開けながら市井さんはそう言った。
そしてごっちんも市井さんのチャリンコの荷台に乗って制服のスカートを直していた。
 「ばいばーい、よっすぃー、やぐっつぁん〜」
ごっちんの挨拶で、市井さんペアとは公園で解散した。
2人の仲良さげな後姿が、なんだか夕焼けとマッチしていた。

そして矢口先輩とあたしは2人っきりになって、ぐーっと伸びをした。
 「家まで送りますよ。」
あたしはチャリンコのカギをあけながら言った。
 「本当に?ありがと〜。でも、矢口の家、ふたつ先の駅なんだぁ・・・」
気持ちはありがとう、と矢口先輩は笑った。
うーん、確かにふたつ先の駅はさすがに。ムリヤリ送るっていうのもなんだし。彼氏じゃないんだから・・・
 「駅まで、送っていいですか?その・・・せめて駅までってことで。」
 「えっ、いいの?」
もちろん、っとあたしは自転車にまたがった。
すると矢口先輩は荷台に乗らずに、あたしの横に立った。
・・・ん?

 「あのさ、あのさ、駅まですぐだから、一緒に歩いていかない?」
・・・ほぇ?っとあたしは一瞬固まった。

ん?つ、つまり・・・いや、自意識過剰だったらいけないけど・・・
チャリンコで二人乗りしたらあっという間に駅に着いちゃうから、矢口先輩はもう少し長い間あたしと居たいってことかな?
もしそうなら・・・―――
 「いいッスね。そうしましょう。」
―――・・・あたしと、同じ気持ちだ。
43 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:55

夕焼けで紅く染まった歩道を、あたしと矢口先輩とチャリンコは歩いていた。
特別何か話したいわけじゃなかった。でも、のんびり、のんびり歩いた。
たわいない会話はぼそ、ぼそっとひと言ふた言あるくらい。

 「〜〜〜♪〜〜♪♪」
突然、矢口先輩は鼻歌を歌いだした。でたらめで単純な音をならべて。 
 「矢口先輩の作詞作曲ですか?」
冗談っぽく聞くと、いったん鼻歌を歌うのをやめた。そんであたしは少し後悔した。
 「作曲は矢口だけど、鼻歌なんだから歌詞ないっつーの!!」
キャハハッ!矢口先輩の笑い声は夕焼けの空に大きく響いた。なんだか気持ちいい。
夕焼けの大空が真っ赤ですっげーキレイ。しかも、矢口先輩のスペシャルソングと、すごい合ってる感じ。


そしてしばらくしてまた鼻歌が始まる。
・・・音を出すだけでなぜ楽しくなるんだろう?
このステキなうたはあたしを強くする。体の骨まで響いてる。
この優しいうたはなぜ哀しくなるんだろう?
空はだんだん茜色へと染まってく。子供の目をした矢口先輩があたしの横で笑っている。
このステキなうたはあたしを強くする。

何度もわかりたくて確かめる。
あたしのいる場所、確かめる。

この優しいうたはなぜ切なくなるんだろう?
あたしはしばらく、矢口先輩の鼻歌を聞き続けていた。
というか、終わらないで欲しかった。
44 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/02/22(日) 20:55

あっという間に時間っていうのは過ぎるもんだ。
鼻歌はまだ途中だったのに、あたしたちはいつの間にか駅の前に来ていた。
 「今日はホンット楽しかったよ!!」
イェーイっとブイサインをしながら矢口先輩は嬉しそうに笑った。
さっきの鼻歌の切なさはどっか行ってしまったように。
 「あたしもですよ〜。」
また今度遊びましょうね、って、言いたかった。でも言えなかった。

 「・・・じゃぁ、またね?」
矢口先輩はひらひらっと右手を高く上げて手を振った。
もちろん、あたしも大きく手を伸ばして、めーいっぱい手を振った。
 「さようならっ。」

そのまま向こうを向いて歩き出した先輩の後姿は何も語らないけど、
少し哀愁があるように思えたのは、あたしだけ?

少なくともあたしはもう少し一緒にいたいと思った。
今日出会ったばっかりの、知り合ったばっかりの女の子。
しかも先輩。年上。ぜんっぜん性格も正反対。

なのに、なのに、あたしはこの一日で矢口先輩をとっても尊敬できた。
本当にいい人だ。本気で、こんなお姉さんがいたらいいのにって、思い続けていた。
あたしはあんな年上の友達がいて、幸せものだなぁ。

また、会えるかな?
45 名前:とみこ 投稿日:2004/02/22(日) 20:56
更新終了です!!!
応援メッセ&リクエスト待ってます!!!
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 12:53
はやく〜
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 16:40
楽しみにしています。
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 12:55
更新おつかれっす!
これからが楽しみです。
がんばってください。
49 名前: 投稿日:2004/03/18(木) 21:38
この話、かなり好きです。
吉と矢口さんには、早いとこくっついてもらいたいもんですねw
50 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:33
しばらく、あたしはその場を離れられずに居た。
矢口先輩の鼻歌と楽しそうな笑い声が、まだ余韻を残してここに居るような気がした。
どうしてアノヒトは、あんなに楽しそうに笑えるのかな。
いいな、羨ましいな。

なのにあたしは・・・毎日がチョッと繰り返しで、やるせない!
友達には恵まれているし。それに、あたしを恋愛感情として好きになってくれる人もたくさんいた。
周りから見れば、あたしは羨ましい存在なのかもしれないよね。
でも、でも・・・矢口先輩を見ていてわかったんだ。
あたしは・・・――
51 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:33

 「あれっ?!よっすぃー!」
立ち止まるあたしの目の前にピョコッと現れたのは・・・・
あらま、梨華ちゃんじゃないですか。
 「お〜!梨華ちゃんじゃん!部活帰り?」
彼女の所属するテニス部はいつも結構こんな時間まで部活やってるらしい。
大変だな〜って思うけど、あたしだってバレー部はいつもこんな感じだけど・・・

 「うん、そうだよ。よっすぃーは何してたの〜?なんか制服汚れてるけど・・・」
そう言って梨華ちゃんはパンパンッとあたしの制服の裾をはたいてくれた。
さっき草の上にみんなで寝転がったからなぁ・・・。思い出すと、少しほほえましかった。
 「市井さんとごっちんと・・・あと、矢口先輩っていう人と遊んでたんだよ。」
しかも公園でかくれんぼ。ウケるでしょ?と、あたしは笑った。

 「矢口先輩って?陸上部の人だよね?金髪で背小さくていっつもハイテンションな人。」
え?!陸上部なんだ・・・知らなかったよ。うーん、確かにすばしっこいからそんな感じするかも?
 今日知り合ったばっかりなんだけど、思ったとおりの人だったよ。」
面白くって、みんなに気が効いて、ちょっぴりドジなところもあって・・・なんてあたしは嬉しそうに話していた。
 「ふぅ〜ん。なんか楽しそうな人だねぇ!」
でしょ?そうなんだよね、矢口先輩はすっごい楽しい人だよ。
しかも優しくって可愛くって、あんなお姉さん、ほしいな〜・・・って感じ・・・
52 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:33

梨華ちゃんの家は、学校から駅一個分ぐらいのところにあるんだけど、いつも歩いて来ているらしい。
春夏秋冬、毎日歩いて登校か・・・。どうりで黒・・・いや、なんでもないです。
 「ってか、うちの前の交差点まで乗ってく?」
あたしはチャリンコを指差して梨華ちゃんにそう言った。
 「いいの?」
 「もちろん♪」
あたしはそう言ってチャリンコの”後ろ”に乗った。

 「え?」
梨華ちゃんは不思議そうにあたしを見た。
 「はい、梨華ちゃんこいでね〜」
あたしは笑いながらレッツゴー!と叫んだ。
眉を八の字に曲げた梨華ちゃんは、渋々サドルに座ってチャリをこぎだした。
53 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:33

 「梨華ちゃん、遅いよ〜〜〜〜」
あたしは梨華ちゃんをひたすらからかい続けていた。
カラカラと少し音を立てながら、チャリンコは進む。
なんだかすごく、風が気持ちいいな。

しばらくしてあたしんちのマンションが見えてきたところで、自転車から飛び降りた。
 「よっと・・・!じゃぁ梨華ちゃん、気をつけて帰ってね。」
あたしはハンドルを梨華ちゃんから受け取り、梨華ちゃんもサドルから降りた。
 「今度はちゃんとよっすぃ〜がこいでよねっ!」
もぉ〜、っと梨華ちゃんは少し怒ったような顔だっけど・・・結局笑ってるじゃないですか。
そんでもって最後に”ありがとう”と言って去っていった。
あたしもヒラッと手を振る。
なんとなく、さっきの別れの光景が思い浮かんでしまったりして。
54 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:33

夕焼けの空に背中向けて自転車をこいでいた。
色んなことを考えていた。
今日の夕食なんだろー、とか。明日からまた部活か、とか。
それから・・・矢口先輩の事とかね。
陸上部だったのか・・・何の種目やってるんだろう?
アドレスぐらい聞けばよかったかなあ?うーん、まぁいっか。

数分でマンションに着くと、あたしは速攻自転車を置き、ワケもなく4階にある家までダッシュで走った。
うーん、つくづくあたしってスポーツマンだなぁ。なんて思ってみたりして。
偶然今日はオフだった部活も、明日からまた始まる。
厳し〜〜〜い練習で汗だくになって、あざだらけになるんだ。
そういうのって、カッケー!!!

家に帰ると夕飯が出来てたけど、あたしは部屋で着替えをする前に寝てしまった。
久しぶりに公園なんかで遊んだから疲れたのかな。

そしてあたしが深夜に起きてしまったのは、言うまでもない。
55 名前:とみこ 投稿日:2004/03/20(土) 18:34

新・登場人物


*石川梨華*
ひとみの友達。色々な部分でひとみをすごく尊敬し、慕っている。
テニス部の副部長で、とにかく一生懸命で謙虚な性格。
56 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:34

結局昨日は眠れなかった。なんでって?変な時間に起きちゃったからです・・・。
深夜2時とかに目が覚めて、寝ようとしても寝れない。あーどうしようどうしよう。みたいになったあげく、
テレビ見たり宿題やったりしてるうちに朝日が昇って、あら、もうこんな時間。という感じだ。

 「よっすぃー、眠そ〜。」
HRが始まっても机でボーッとしているあたしを見て、ごっちんが近寄ってきた。
 「近いよ・・・」
超至近距離で、そんな可愛い顔して覗き込まないでよ。ごっちんファンに恨まれるじゃんか。
ごっちんモテモテなんだから。・・・まぁ、きっと自分じゃ気づいてないと思うけど・・・。
 「ごめぇ〜ん、ごとー、よっすぃーのファンに恨まれるよねぇ。」
いや、その逆もあると思うんですけど・・・・・。
とにかく、このマイペースなごっちんだけど、容姿はすげぇすげぇ美人なんだよね、これが。
ぶっちゃけ学校で1番美人と言っても過言ではない。

ごっちんは”眠いの眠いのとんでけー!”とかいってあたしで遊び始めた。
コラコラ、クラスのみんなが見てるじゃない。
ごっちんファンがあたしを恨んでるのか?それとも、あたしのファンがごっちんを恨んでいるのか・・・
その時、こそこそっと、クラスメイトの声が聞こえた。
 「あのツーショット最高だよね〜・・・」
・・・あ、そういうことですか。誰も恨んでるわけじゃないんですね・・・。
なぜかあたしとごっちんの写真を撮る人もいれば、ただ観賞用として見ている人もいる。
なんて愉快なクラスなんだろうか。
57 名前:のどかな春の日常。 投稿日:2004/03/20(土) 18:34

たいてい”最高のツーショット”と言うと、あたしと市井さんが一緒に居る時、らしい。
これはあたしのファンクラブとやらの人から聞いたことがある。
うーん、確かに市井さんと一緒に居る時、人だかりができる上にカメラのフラッシュもまぶしい。
人気ってことは、嬉しいんだけどね。

 「ごっちん、先生に保健室行くって言っといて〜」
あたしはそう言ってゆっくり立ち上がった。
思い足取りで階段を降りていると、ちょうど保健室の先生とすれ違った。

そう、保健室の女王・・・【平家みちよ】先生だ。
なんてったってすげー美人。まぁ、中澤先生もキレイだけどね。
 「吉澤ぁ、何してんのや?」
 「あ、保健室行くところです。ちょっと寝不足で・・・」
あたしはえへへっと笑いながらわけを説明した。
先生はあきれた顔であたしの背中をポンッと叩いた。
 「先生はこれから出張で居られへんから、適当に寝たら授業戻りや。」
あたしは、はーい。って返事をしてあたしは保健室に向かった。

しめしめ、平家先生はいないのか。ふーん。
思う存分寝ちゃおーっと!!
58 名前:とみこ 投稿日:2004/03/20(土) 18:35
やぐっつぁん陸上部という設定になりました。



少ないですが更新しました。
これからは少しずつでも日を空けずに更新したいと思います!!
59 名前:とみこ 投稿日:2004/03/20(土) 18:37
>名無し飼育さん
>はやく〜
すみません、早くするようにします!

>名無飼育さん
>楽しみにしています。
ありがとうございます!これからどんどん更新します!

>名無し飼育さん
はい、これからが楽しいと思います!頑張ります!

>龍さん
>この話、かなり好きです。
ありがとうございます!!!吉と矢口はくっつくのかまだわかりませんが、
早め早めの更新で頑張ります!
60 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:56

ガラッと勢いよくドアを開けると、保健室独特の匂いが鼻をくすぐった。
あたしは速攻ベッドの方に向かい、カーテンを勢いよく・・・
オープン!!!!

シャッ
 「うわぁっ!!」

へ?”うわぁ”?
そう叫んだのは、ベッドの上に寝ていた人だった。
なんだ、先客がいたのかよ・・・
 「あれ・・・?」
その人は掛け布団から顔をヒョコッと出した。
って・・・・ん?
わわわわ!矢口先輩!!

 「矢口先輩・・・?!す、すみません!」
あたしは慌ててカーテンを閉めて、ソファーに座った。
まさか矢口先輩がベッドで寝てるなんて・・・びっくりしたぁ・・・
あぁ、先輩が寝てる時に襲ってしまう(?)なんて、あたしは最低だ!!!
本当に失礼しまし・・・・――――
61 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:56
 「なんだ、よっすぃーじゃぁん!」
矢口先輩はベッドから起き上がってあたしの方に歩いてきた。
自慢の金髪を少し整えながらアハハッと笑ってる。
 「あ、・・・まさか先輩が居るとは思ってもなくて・・・。す、すみませんでした・・・。」
恥ずかしさと失礼なことをしたって気持ちでいっぱいだったから、ひたすら謝る。
それでも矢口先輩はただ笑ってるだけなんだけど。

 「気にしなくていいのに〜〜」
キャハハッと大きな声で笑ってあたしの肩をバシッと叩いた。
そう言ってくれると少しは気が楽ですよ・・・。
62 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:56

それにしても矢口先輩もサボったりするんですね。なんて思ったりして。
っていうか、色々聞きたいことあるんだよね・・・
陸上部だってことも昨日梨華ちゃんから聞いたばっかりだし。
こんな2人っきりの機会なんてないから聞いちゃおーっと。

 「あのっ、矢口先輩って陸上部なんですよね?」
ソファーに座ってる先輩は、ぐーっ、と伸びをしながらこっちを向いた。
なんか見てて飽きないな・・・矢口先輩って。

 「そうだよ!短距離やってるよ!」
夏で引退しちゃうけどね。と付け加えて伸ばしていた手を下ろした。
短距離かぁ、確かにそんな感じするかも。砲丸投げとかだったりビックリだもん。
 「頑張って下さいね。」
その言葉を言ってから少し後悔した。なに自分から話切ってんだよっ!って。
あたしはアバウトな応援しかできなかったのに、それでも先輩は”ありがとう”と言って笑ってくれた。
63 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:56

 「よっすぃーはバレー部でしょ?2年で唯一のレギュラーってすごいよね!」
ほぇ?なんでそんなところまで知ってるんだろう。
もしかして、もしかして、先輩陰ながらあたしのこと・・・応援してくれてた?!
・・・と思いきや、矢口先輩はそのあと少し苦笑いになってこう言った。

 「まぁ、ぜんぶ紗耶香から聞いたんだけどね。」
・・・ガックリ。そうですよね。ハハッ。何期待してんだ、あたしは。
十分ファンはいるじゃないか。期待するでない。
ちなみに市井さんもバレー部。誰も及ばないほどの超パワフルで明確なアタッカーであり、キャプテン!
でもって、あたしは市井さんの手下(?)的存在なんだよね。まぁ、面白いからいいんだけどね。

矢口先輩のことだから、きっと部活も熱心なんだろうなぁ〜。
そんなことを思っていたとき、保健室のドアが勢いよく開いた。
64 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:56

 「ったく、矢口。やっぱりここに居たか。」
うわさをすれば・・・市井さんじゃないですか。
矢口先輩はあたしの後ろにササッと隠れて、ベーッと言って舌を出していた。

 「吉澤、そこのチビ振り払っちゃっていいよ〜。」
市井さんは呆れながらそう言う。
それでも矢口先輩はあたしの制服を掴んで、背中の後ろに隠れている。
ちっこくてなんだか面白い。

 「矢口が授業サボるから、あたしが使われるだろーが。」
市井さんはアホッ!といって矢口先輩をぺしっと叩いた。
なんだか年の離れた仲のいい姉妹みたい。

 「え〜、もう授業始まってんの?」
 「アホ!はやく教室もどんぞ、コラ。」
え〜と矢口先輩はあたしの裾を持って離さない。
かといって、あたしは振り払うなんてそんなことはできないんだけどね。
65 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:57

 「ちぇっ、ハイハイ、教室も戻りますヨ〜だ。」
矢口先輩はそう言って渋々市井さんに付いていった。
 「吉澤、迷惑かけたな。」
市井さんの背中はそう言う。
どこまでカッチョイイんですか、あなたは。
おちゃらけてて軽いけど、やっぱり市井さんはカッコイイ。

 「じゃーね、よっすぃー?」
別れ際に矢口先輩はひらっと手を振ってくれた。そう、昨日と同じように。
あたしは何も言えずにただペコッと会釈をするだけ。

ピシャンッとドアが閉まって、保健室にはあたしひとりになった。
不思議なことに、矢口先輩は別れ際になんとも言えない”余韻”を残すような人だ。
この静けさがなんだかイヤだった。

もっと話したい事、たくさんあったのにな。
つくづく、自分は情けないと思った。所詮あたしは意気地なしです。
ぶっちゃけ、市井さん来なきゃよかったのに。
なんて、本人の前じゃ言えないけど・・・・・・・。

あたしはベッドにダイブして、枕を抱えた。
ふわっといい香りがした。
矢口先輩の匂いかな?
・・・・ってエロオヤジかい、あたしは。
そのいい香りが心地よくて、あたしは結局放課後までずっと寝ていた。
66 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:57
・・・・・・・
67 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

眠気もまだ吹っ飛ばないあたし。
生徒の下校する時間になって目を覚ました。
 「・・・寝てたんだっけ。」
あたしは重い体を起こしてふと思う。
そうだ、今日からまた部活なんだっけ。

保健室のドアをゆっくり開けて廊下に出た、・・・その時。
突然大声があたしの目を覚ました。
 「あー!!!!!」
な、何?!・・・っと身を引くと、目の前に居たのは
・・・なんだ、愛ちゃんじゃないの。びっくりした。
 「ど、どうしたの?」
廊下を歩く生徒たちは今の大声にみんなこっちを見ていた。
そりゃ誰でもびっくりするっつー話だけどね。
 「今日は練習試合だそうです!もう対戦相手来てるんで、早く着替えてくださ〜い!!」
愛ちゃんはそれだけ言うとさっさと走り去ってしまった。

あ、ちなみに愛ちゃんはバレー部の1年生なんだけどね。

・・・って練習試合?!今から?!
やっべー!早く着替えなきゃ!
68 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

あたしは速攻ユニフォームに着替えて体育館に向かった。
 「遅れてすみませんでした!」
まだみんなウォーミングアップの段階で、ギリギリセーフって感じだった。
ふぅ・・・やっぱ寝すぎたな。不覚・・・。
69 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

 「マジであれからずっと寝てたの?!」
市井さんはストレッチをしながら笑ってそう言った。
”はい、そうなんです・・・”とあたしは落ち込みながら先輩の背中を押して手伝っている。
ストレッチで2人1組で組むときは、大抵市井さんと組んでるからね。

 「とりあえず気持ち入れ替えて頑張れよ!」
市井さんはそう言って渇を入れた後、部員全員に集合をかけた。
集合!!っていう声がなんともカッコイイ。
・・・でも、あたしのストレッチは手伝ってくれないんですね、トホホ・・・
70 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

相手チームは意外とガタイがデカくて驚いた。
うっひゃー・・・まともにアタック喰らったら愛ちゃんとか折れちゃいそうだよ。
向こうのチームは大きな掛け声とともに円陣を散った。

こっちも円陣を組み、市井さんが渇を入れるように言葉を飛ばす。
市井さん曰く、今日の練習試合の相手は結構手ごわいらしい。
あたしの役目は、アタックとブロックをメインに得点を重ねること。センターポジション。
・・・もちろん、チームを率いるのはキャプテン市井紗耶香先輩!!同じくセンターポジション。
 「とにかくトスはあたしと吉澤にあげて。確実に決めてやるから。」
だよな?吉澤。と、市井さんはそう言って、あたしの首根っこをガシッと掴む。
 「もっちろんです!!」
あたしも大声を張り上げる。そして円陣はファイオー!の合図で散った。

突然の練習試合に、体育館には多くの生徒が集まってきた。
二階のスタンドはもちろん、窓から中をみる生徒もたくさん。そして先生方も。
こりゃぁ期待に答えなきゃいけないっしょ!

試合開始の合図と共に、スローガンも勢いよくおろされる。
【燃えろ!プリンス★ひとみ】
誰が考えて作ったんだか、あたしはある意味そのスローガンにすごく励まされた。
そうさ、ん?プリンス・・?
まぁいいや!頑張ります!!
71 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

試合が始まり、一気に会場は満員になっていた。
もう一度言うけど、これはただの練習試合なんだけどね・・・。
その時、2階スタンドの恥にふと目をやると、そこにはあまりにも目立つ金髪がぽつり。
あ!矢口先輩!

あたしは思わず緊張が高まった。
・・・でも、試合は試合だ!!よーし、矢口先輩見ててくださいよ!?

 「吉澤!!」
セッターの上げるトスに向かって、あたしは助走を踏み込む。
強く強く地面を蹴り上げるバンッという大きな音が体育館に響き渡り、
あたしは高く、高くジャンプ!

そして孤高に位置する右手は、見事にボールの中心に大当たり。
あたしから放たれたボールは、目にも止まらぬ速さで相手コートを叩く。
相手チームは身動きもできてなかった。

わーっと会場は一気に熱狂的な声をあげて、スローガンも揺れる。
最高!!気持ちいい!
この調子で、ぶっ飛ばすぞ!!!
72 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

その後も1セットも落とさずにあたしたちは突き進んだ。
あたしがアタックを決めるたびに、カメラのフラッシュと歓声が飛び交う。恥ずかしいほどね・・・。
もちろん、市井さんが決めた時にもすっっっっっごいキャーキャー言われてるけど。
 「ラスト一点あたしに上げな。」
市井さんは右手を掲げ、チーム全体にそういった。
みんな少し笑いながら了解っと手でサインを送っていたので、あたしもニコッと笑う。

相手のサーブをカットし、トスが上がり、もちろん市井さんの頭上へ。
 「よっしゃぁ、来たぁ!!」
市井’sハンドは、クリーンヒット!
が、しかし!!なんか相手チームのゴツイ人が、市井さんのスペシャルアタックをレシーブした。
すげぇ!!よくあのアタックを・・・。
そして相手チームのアタッカーは高くジャンプし、ボールに向かって手を思いっきり高くあげた。
市井さんには悪いですけど・・・・・最後の一点、あたしが取っちゃいますよ!

ネット際であたしは思いっきりジャンプし、両手を高く伸ばす、伸ばす、伸ばす。
そして相手の放つボールはあたしの両手に思いっきりはじかれた。
ブロックポイントだ。
もちろん、それは最後に一点となり、相手のコートにストン、と落ちる。

その瞬間・・・会場はスッと静まり返った。
73 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:58

そしてそれは歓声に変わり、会場の熱を一気に上げた。
き、決めた!!やった!!
 「先輩すごいです!!!!」
ベンチでは愛ちゃん含む後輩たちが大拍手。へっへっへ、嬉しいっす。
 「くそー!吉澤はおいしいところばっかり持っていきやがってー!」
市井さんにシメられながらもあたしは相手チームと握手をしてベンチに戻った。

今日はなんかすげー、気合入った。なんでだろ?
やっぱり特別なお客さんが見に来てたから、かな?

なんちゃってね。
74 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:59
部室に戻って先輩たちにめちゃくちゃ頭をナデられたりチューされたり、そりゃぁもう大変大変。
 「いつもより調子よくない?」
市井さんはまだ悔しそうにそう言う。あたしもハハッと笑って返した。
 「今日は、”プリンセス”が来てましたから。」
へ?と市井さんは不思議そうな顔でキョトンとしている。ウケるっす・・・。

あたしは部室を出て外の空気をあびに中庭で涼んでいた。
 「あ、よっすぃー!」
その時向こうからやってきたのは・・・
ややや矢口先輩!!
しかもその手に持ってるのは・・・!
 「良かったらこれ、差し入れ!」
マジっすかぁー!!!!
矢口先輩はタオルとスポーツドリンクをあたしにくれた。
メッチャ嬉しいんですけど!

 「ありがとうございます!!マジ、嬉しいっす!」
あたしはその場でスポーツドリンクを一気に飲んだ。
その姿に先輩はキャハハッと笑っていた。へへっ、何よりうめぇっす!
75 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 20:59

中庭にはあたしたち以外誰もいなくて、なんだか少し照れくさかった。
 「あのー・・・先輩?」
 「んー?」
今日保健室で色々聞きたかったのに聞けなかった。
もっと矢口先輩のことを知って仲良くなりたいっていうのもあったけど、
恥ずかしさとか変なプライドに負けて、聞きたいのに聞けない、とかそういう自分がイヤだった。
あたしが意気地なしで情けないから、
話につまったとき、先輩は自分から話しかけてくれるんだ。

うらやましかった。先輩が。

どこかで、先輩を憧れてた。

お姉さんのような存在だった。

 「あの・・・これからも、あたしと仲良くしてくれますか?」
ただそれだけ。ただ、それを言っただけで自分が強くなれた気がした。
大きな意味はなかった。でも、たくさんの意味があった。

先輩はキョトン、としてこっちを見る。
そしてあたしに一歩近づいて、ニコッと笑った。
 「改まっちゃってどうしたの〜?当たり前でしょーが!!」
そう言ってあたしの背中をベシッと一叩き。
 「そう言ってくれてよかったです。」

その日は、そんな会話しか出来なかったけど、
聞きたかったこと、全部色々聞けなかったけど、
それでも良かった。
76 名前:人生の教科書 投稿日:2004/03/21(日) 21:00

改めて気づいたことがある。

それは・・・・
矢口先輩は、あたしにとっての、”目標”であるということ。
あたしにはないものを持ってる。
すなわち、人懐っこくて、人見知りせずに誰とでも仲良く出来て。
それでもって人の気持ちがすごく分かる。
それに、優しくて、面白くて、めちゃんこ可愛いし。

もっと矢口先輩のことが知りたい。
あの人は、あたしが・・・あたしが、自分を変えるカギを持ってる。
あの人と一緒に居れば、きっとあたし、変わる。

平凡な毎日とはサヨナラできるはずだよね。

練習試合の日以来、矢口先輩と話す機会はほとんどなかった。
なにしろメールアドレスも電話番号も知らない。
でも、それでもよかった。
廊下をすれ違えば手振ってくれるし!

本当に矢口先輩みたいなお姉さんが欲しいな、って心底そう思う。
明るくって見てて飽きないし。

そう、矢口先輩は、あたしの人生の教科書のようだった。
77 名前:とみこ 投稿日:2004/03/21(日) 21:01
★は気にしないでください・・・missりました。w

更新終了です。
78 名前:とみこ 投稿日:2004/03/22(月) 18:39
リク待ってます。
あと感想などなども・・・^^;
79 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/23(火) 23:06
初めましてです!
とみこさんの作品大好きっす。
ちなみにいちごま&よしやぐも大好きなんで、これからの展開に期待しつつ
更新待ってま〜す!!
80 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 11:12
春といっても気持ちのいい朝は最初だけ。
さすがに最近は眠い目をこすってチャリンコを飛ばしていた。
すれ違う同じ学校の人たちが手を振ってくるから、適当に返したりしながら。

 「あ!ひとみちゃん!」
突然、うしろから超ハイボイスに名前を呼ばれて、あたしはチャリを急停止した。
あらま、梨華ちゃんじゃないですか。
ぜーはー言いながら梨華ちゃんは鞄からなにやら小包を取り出した。
もしかしてずっとあたしのチャリ追いかけてた・・・?気づかなくてゴメン・・・

 「あのね、・・・これ、誕生日プレゼント。」
そう言って梨華ちゃんはあたしに小包を渡した。
ま、マジっすか?!っていうか今日誕生日だったっけ?!
・・・忘れてたよ、すっかり。

 「ありがとー!超嬉しいよ!開けていい?」
 「イヤ、恥ずかしいからあとで開けてほしいの!」
梨華ちゃんはそう言って顔の前で手をパタパタしていた。
じゃぁお楽しみってことで・・・・

 「ホントありがとね。じゃぁ、またあとで!」
あたしはそう言ってチャリをまたこぎだした。
なんだか、正門に行くにつれて嫌な予感がしてるのは、あたしだけ・・・?
81 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 11:14
駐輪場にチャリを置いていると、7.8人の女の子たちが駆け寄ってきた。
 「吉澤先輩!誕生日おめでとうございます!」
そう言ってもちろん人数分のプレゼントが差し出された。
どうやらみんな後輩みたいだ。
 「ありがとう。」
あたしはそう言ってニコッと笑う。それだけで後輩の女の子たちは満足そうに走って行ってしまった。

それにしてももう両手じゃ抱えきれないこのプレゼントの数・・・・
あたしは頑張ってそれを持ちながら正門に向かった。

 「「よっすぃー!誕生日おめでとう!!」」
2年生、つまり同じ学年の友達にどっさりプレゼントが渡された。
またひとつ年とったな!なんてみんなからかってくるから、面白い。

 「「吉澤先輩、これ受け取って下さい!」」
今度は後輩の群れにプレゼントをたっくさん受け取る。
ミーハーなのかよくわかんないけど、みんな顔を真っ赤にして逃げていく。いや、逃げなくても・・・・

 「おい、これありがたく受け取りな!」
そして最後に、ポイッと投げられたプレゼント。
このいい加減で恩着せがましい人はもちろん・・・・

 「ありがとうございます!市井さん!!」
去年はビックリ箱。
おととしはバレーボール(しかも市井さんのサイン入り)が渡された気がする。
さーて今年は何が入ってるやら・・・
82 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 11:14
おっとっと・・・
もらったプレゼントを落とさないようになんとか持ちながら、あたしは教室のドアを開けた。

その瞬間、パンパンッというクラッカーの音が耳に響く。

 「「「ハッピーバースデー!!!」」」
な、何?!
見ると、クラスのみんなが朝早くから教室に大集合。
そして教室はスゲェ装飾の数々・・・
みんな、マジでここまでしてくれたの?

黒板には色とりどりのチョークで・・・
【よっすぃー、18歳(またひとつ年くった)】
って・・・イヤミっすか?!確かにあたしが1番誕生日早いけどさぁ〜〜・・・・

 「はい、みんなからのプレゼント!」
ごっちんがロッカーから意外と小さな、小包を取り出した。
あたしはそれを受け取り、包装紙を取った。

クラスメイトのみんなはあたしを囲み、その様子をニコニコしながら見ている。
そして中の箱を開けると・・・・
 「な、なんだこれ?!」
83 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 11:14
あたしの反応に、みんな大爆笑。
ちょ、笑い事じゃないっすよー!!これって・・・一体・・・

プレゼントは、一冊の本だった。
しかも、編集社のところに、【吉澤を見守る会】と書いてある。
なんだそりゃ・・・・・・・・
そして中を見ると、あたしについてのアンケート結果や、吉澤の1日、よっすぃーのモテる理由ランキングなどなど・・・
さらにページをめくると、本の半分はあたしの写真集だった。
しかも下の方にちょこっと【協力:写真部一同】と書いてある。
写真部も協力すんなよっ!!

 「いいでしょー?これ、最高でしょ?!」
クラスの子は口々に笑いながらそう言う。あたしはただ本をひたすらめくる・・・
 「どう?よっすぃー、気に入った?」
みんながあたしの顔を覗き込む。
そしてあたしは全ページをサッと読むと、本を閉じてひと言。

 「お前ら、最高ッ!!!!」
あたしの言葉に、みんなそのまま大爆笑。
そしてみんなであたしの背中やら肩やら頭をべしべし叩いておおはしゃぎ。

その日のHRは先生すら手が付けられなかったのは、言うまでもない・・・。
84 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 11:14

ちなみに今年の市井さんからのプレゼントは、折りたたまれた紙袋4枚だった。
さすが市井さんって感じ。
あたしはその紙袋にみんなからもらったプレゼントを詰め込んだ。

・・・・

毎日がチョッとした繰り返しで許せないなんて言ってた自分がバカみたいに思えた。
ほら、あたしってすごく恵まれてるじゃん。
後輩、友達、先輩、みんなからこんなに愛されてるじゃん。
あたしの生き方は、これでいいんだよね?

すごく、幸せだよね?あたし。
85 名前:とみこ 投稿日:2004/03/24(水) 11:16
>名無し読者さん
初めまして!
レスありがとうございます!
私がよしごま以外を書くのが結構珍しいのですが・・・w
これからも早ペースで更新したいと思います!!!
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 15:00
よしやぐ上手くいきそうだけど、タイトル的に何かありそう…
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 16:45
いい!すごく!なんか顔がにやけっぱなしです!やぐよし!石川や高橋がどう絡んでくるのか楽しみです!更新まってます!
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 19:08
>86名無し飼育さん
どうしょうwwwでも、ハッピーエンドかな?あ、どうかな?w

>87名無し飼育さん
ほめていただき、ありがとうございます!!!!
石川・高橋はこれからいい役で出てきます!!
89 名前:とみこ 投稿日:2004/03/24(水) 19:08
↑まちがえました、とみこですw
90 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:08
今日、『昨日ゴミ捨て当番サボっただろ!』と中村明に怒られた・・・
ゴミ捨て当番になっちゃってから、実は一度もやったことはないんだよーだ。
しょーがないから、今日は行くか・・・・。

あたしは部活に行く前にジャージのまま渋々とゴミ捨て場に行った。
あーゴミくさい。やだやだ。ジャージでよかった。
焼却炉の前には金髪の制服の女の子が・・・
 「あーーーー!矢口先輩!!」
あたしは思わず叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。恥ずかしいほど・・・・・

 「び、ビックリしたぁ!あれ?よっすぃーゴミ捨て当番?」
矢口先輩はあたしの大声に少し驚きながらも笑ってそう言った。
 「はい!矢口先輩もですか?」
しばらく会話がなかったので久々に会えて嬉しい。

 「ううん、友達が風邪気味だから矢口がやってるのー。」
そういって焼却炉にゴミを流しいれる矢口先輩。
な、な、なんか・・・矢口先輩の思わぬ優しい部分を知って微笑ましかった。
最初の印象とは違って、また新しい矢口先輩を知った感じ。わーわー。ちょっと嬉しいかも。
 「先輩って、とっても友達思いなんですね。」
 「え〜?!そう?初めて言われた〜。困った時はお互い様でしょ?!」
矢口は助けられてばっかりだけどね。と付け加えて笑っていた。

どんなにホメられても謙虚で爽やかなところも先輩のいい所だなーなんて思ってみたりして。
91 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:08
 「あたしこれから部活なんだ!よっすぃーも?」
 「はい、そうですよ。」
うひゃ〜毎日大変だね〜と矢口先輩は驚いている。
こうやってわざわざ会話を作ってくれるのも、内気なあたしにとっては嬉しいことで。
 「じゃぁね、頑張ってね!ジャージ似合ってるよ。」
矢口先輩はそう言って、ひらひらっと手を振って・・・
あたしが手を振ろうと思った時には、もういなかった。

”矢口先輩も、陸上部がんばってください”ぐらい言えるはずなのに・・・・
あーあ、もうちょっと話せたらよかったのにな・・・。
学校で会うのなんて本当にごくまれだし、特に喋れる機会なんて本当にない。
なんかあたし、矢口先輩と話してる時はすごく楽しいんだ。
・・・
あたしは密かに、
毎日、矢口先輩のクラスのゴミ捨て当番が風邪気味だったらいいのにな、なんて思っていたりいなかったり・・・。
92 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:09
・・・・・・・・・・・・・・・・
93 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:09
 「へっとへとだぁ〜〜〜〜」
部活が終わってあたしはそれでもチャリンコを目いっぱいこいで家まで飛んでいった。
疲れてるときこそ、一気に体力を使えば、メシが上手いんだ!ホントあたしって、体育系?

家につくなり、ジャージのままベッドにダイブしラジオを付けた。
よく聞いてる番組で、【恋するウサギちゃん】とかいうタイトルだったような・・・・
ラジオからは軽快なDJの声が流れる。

 『ハーイ!今日もやってきました!世の中の女の子の悩みを解決する”恋するウサギちゃん”の時間だよ!
  今日もどしどしファックス待ってまーす!どんな悩みでもOKだよ!!番号は―――――』

悩みかぁ・・・・あたしって悩みあんのかな?
うーん、部活は超うまくいってるし、まぁアザが多いのは女の子として困ったことだけど・・・
恋愛も、・・・・してないし。
結局つまんない毎日?それが悩みか?!
あ、でも友達や先輩、後輩にはとっても恵まれてるんだけど・・・・
うーん、うーん・・・もう分かんないよ!!

・・・って!この悩んでること、全部書いて送っちゃえばいいんだ!!!!
あたしは速攻英語のノートを破いて思っていることを書き綴って、番組にファックスを送った。

94 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:09

採用されるかどうかもわからないけど、あたしは送ったファックスを見送ると、
ラジオの前に座り込んでずっと聞いていた。

 『はい、続いてのお便りです!東京都・悩めるバボちゃんさんからでーす!』
あ!あたしだ!!!
マジで採用されちゃったの?うわー・・・恥ずかしい!誰かこのラジオ聞いてたらどうしよう・・・

そしてラジオからはあたしがファックスにつづった言葉がどんどん話されていった。
95 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:09

ファックスの内容は、だいたいこんな感じだった。

 【東京都・悩めるバボちゃん
  こんにちは、いつもラジオ聞いてます。さっそく私の悩みを聞いてください。
  実は、・・・なんだか毎日がパッとしなくて悩んでるんです。
  部活はそれなりに楽しいし、友達や環境には恵まれてるのですが、なんだか1番の楽しみがありません。
  それに、恋もしたことがないんです!!おかしいでしょ?!
  
  でも、最近はある先輩に出会ってから、なんだか色々学ぶことがたくさんあるんです。
  その先輩はいつも明るくて、なんか見た目もすごい目立つんですけど、でも仲良くなっていくうちに色んなイイトコロがあって、
  たとえばすごく友達思いだったり、風邪気味の友達を労わってあげたりりするんです!!
  そんな先輩を見てて、すごいなーって思って・・・――――――】

DJの人はそこまで読むと、突然読むのをやめてしまった。
えー!なんで?まだ矢口先輩のいい所たくさん書いたのに〜!!
そう思っていると、番組のDJの人は、突然ボソッとこう言った。

 『うーん、きっと”悩めるバボちゃん”さんは、この先輩に恋をしてるんですね?』 

・・・・へ?
96 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:09

突然のコメントに、あたしはラジオをガシッと掴んだ。
な、何を言ってるんだ?この人は・・・・っていうか、あたしが矢口先輩に恋をしてる?!
それって、あたしが矢口先輩のことを、スキって・・・・こと?

 『悩めるバボちゃんさんにとって、大切な存在なんですね〜
  この先輩は。だからたくさん―――ブチッ・・・・』

あたしはラジオの電源を切った。
なんだか分かったふりして好き勝手言うDJの人がなんだかムカついたから。
あたしが矢口先輩を好き?

そんなわけ、ないでしょーが。
そんなわけ・・・・・・・。
97 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:10
・・・・・・・・・・・・・・・・
98 名前:イゴコチ。 投稿日:2004/03/24(水) 19:10

あたしはその日、なんだか眠れなかった。
もちろん頭の中を駆け巡るのは、謎ばっかり。
確かに矢口先輩は、すごくいい人で、優しくて、明るくて、友達思いで、なんでも一生懸命で・・・・・・・・
あたしは、矢口先輩のいいところをいっぱい知ってるし、これからもいっぱい知りたいと思う。

でも!だからって!なんで”好き”とかそういう発想になるわけ?!
あーあ、だから一般ピーポーは嫌なんだよ・・・・・。

もういいや!寝る!

zzzzzzz。。。。
99 名前:とみこ 投稿日:2004/03/24(水) 19:10
更新しゅうりょうでーす!今日はいっぱい頑張りましたw
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/24(水) 21:16
お疲れさまです!大量更新!またまたにやけっぱなしです!次回も楽しみにしてますよ!
101 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/26(金) 14:17
うおぉぉ〜〜!!DJの人ナイスって感じですね。
ほんわかした雰囲気がすごくいいです!次回も待ってます。ドキドキ(w
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 10:09
恋するウサギちゃんってあの名曲の…??♪
103 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:18

次の日、目を覚ましても、矢口先輩のことはそう簡単には忘れられなかった。

”きっと先輩の恋をしてるんですね”
・・・ラジオから流れるDJの人の言葉が頭から離れない。
恋するっていう感覚がわかんないあたしにとって、何がなんだか分からない。

心がメッチャ動揺しているのがわかる。

今日何かにすがりついてないと、まるで動き出す空に負けてしまいそう。
あたしの心に響き渡るあなたの足音に、あたしは・・・ずっとずっと酔いしれてたい。
そう思っていた。

ただ、それが”恋”かどうかは、あたしはまだ知る事はない。
104 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:18

昼休み、ごっちんと学食に一緒にお昼を食べに来たんだけど・・・
実は優柔不断なあたしはなかなかメニューが決まらなかったりする。
だから親が作ってくれるお弁当が楽なんだけど、今日は、お母さんがが寝坊して作れなくって・・・トホホ。

しょーがないから学食。あーあー、やだやだ。
 「ごっちん何食う〜?」
 「んー、カレー。」
ごっちんがそう言うと、すかさず、あたしもカレーに決定。
ついつい人に合わしちゃうんだ。何でも自分で決められないし。
やっぱりこんな優柔不断で内気なあたしについていける親友は、ごっちんだけかもしれない。

カレーを受け取って、あたしたちは空いてるテーブル席に座った。
今日の授業つまんなかったねー、とか、体育まであと2日もあるよ、とか。
そういう他愛のない話を繰り返して、笑って、時間は過ぎていく。

それでも、頭からは矢口先輩のことが離れない。
 「・・・って・・・、よっすぃ〜、聞いてる?!」
 「へ?!あ、ゴメンゴメン。」
びっくりしたぁ。あたし、ボーッしてた?

 「よっすぃ〜さぁ〜」
 「ん?」
ごっちんは改まったように話しかけてきた。
大抵こんな時は市井さんの話か、んぁ〜なんでもない〜で、終わるんだ。

 「最近、やぐっつぁんと仲良いよね。」
へ?
 「・・・え?あたし?」
ごっちんの思わぬ発言に、あたしはお箸で掴んだ福神漬けをお皿にポトン、と落とした。
うんと頷くごっちん。

 「そ・・・そんな、仲良いって程じゃないよ。」
ふーん。とごっちんは何事もなかったようにカレーを食べ始めた。
あたしも持参したペットボトルのお茶をごくり。
しばらく沈黙が流れる・・・・・・・・・・。
105 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:18

”最近、やぐっつぁんと仲良いよね”

どうしてだろう?そう見えるのかな・・・?
だったら、ちょっと嬉しいかも。・・・・・なんちゃって。
うぬぼれんな、吉澤ひとみ。

矢口先輩は誰にだってあぁゆう風にフレンドリーに話すんだよ、きっと。
あたしにだけじゃないんだよ。特別なんかじゃないんですよ。
ただ、あたしが先輩なんかと話すのが珍しいだけでしょ?

ただ矢口先輩といると色々学べるし、自分に無いものを持ってる。
何度も言うけど、それだけだよ。
きっと誰もが惹かれると思う。あんな心の広い人はそうそう居ないよ。

まぁ、矢口先輩の魅力は、性格だけじゃないけどね。

だって・・・・・ちっちゃくて可愛いし。
それに金髪も似合ってるし、目もパッチリしてて、声も可愛い。
なんてったって笑ったときのあの笑顔は・・・―――

 「可愛いよねぇ、やぐっつぁん。」
?!
 「ブッ・・・!!」
あたしは思わずお茶を噴き出してしまった。
 「アハッ!よっすぃ〜、焦りすぎだよぉ。」
アハッ!じゃ、ぬぁーい!!ごっちんが変な質問するからだよ。

テーブルのお茶を拭きながら、あたしは気づかずに必死に喋っていた。
いや、確かに可愛いけどさ・・・矢口先輩はとっても可愛いよ、はい。すっごくね。

 「彼氏いるのかな?やぐっつぁん。」
 「え?!」
また思わず速攻で反応してしまった。な・・・何やってんだあたしは。

 「なんかよっすぃ〜、反応速いね。」
ごっちんはニヤニヤしながらそう言う。
いや、別にそういうわけじゃ・・・。もう、かんべんしてくださいよ〜・・・・・・・。
106 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:19

「あ!市井ちゃんとやぐっつぁんだ!」
え?!矢口先輩?!

また速攻反応してバカみたいだけど、
本当に矢口先輩(と、市井さん)が向こうから歩いてきた。
わーわー!

 「あれ!ごっつぁんとよっすぃーじゃぁん!」
や、矢口先輩・・・。こんな所で会うなんて・・・
寝坊して弁当忘れた母ちゃん、ありがとう・・・。
 「こ、こんにちは。」
あたしはいつもよりも爽やかに挨拶をした。
ヤッホー!とかいって矢口先輩は返してくれたけど・・・
あれ?
あたし、いっつもどうやって矢口先輩と話してたっけ?

”ここの席空いてますよ、どうぞ。”・・・なんて、言う勇気はなかったりする。
 「ジャマするぜー!」
でも、何の問題もなく市井さんが豪快に着席。
 「オジャマしま〜す♪」
必然的に矢口先輩も向かい側に座った。

まっすぐ先輩のことを見れなかった。
ラジオのDJやごっちんの言葉が離れなくて、つい目をそらしてしまう。
うぅ・・・嫌われちゃうよ。
107 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:19

 「あ!よっすぃーさぁ、アドレス教えてよ!」
矢口先輩は突然手を差し出した。
 「・・・へ?」

アドレス?携帯の?
矢口先輩が、あたしのアドレスを聞いた?
な、なんじゃこりゃぁ?!
 「あ、こ・・・これです!」
あたしは自分の携帯にアドレスと番号を表示して、矢口先輩に渡した。 

 「・・・っと。よし!ありがと!あとでメールするね〜!」
そう言って携帯を返してくれた。あたしはハイ。と返事をするだけ。
矢口先輩からメールが来るのかぁ・・・。嬉しいな。
いつも、偶然会えば挨拶して、ちょこっときっかけがあればおしゃべりしたり、
その程度の付き合いだった。

今まで、どうして自分からアドレスとか聞かなかったんだろう。
もしかして矢口先輩は、あたしが聞いてこないから、気を遣ってくれたのかな?
他の友達にも、こうやって気軽にアドレスとか聞いちゃうんだろうな。

108 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:19

悔しいな・・・。

少しでもいいから、矢口先輩の、特別になりたい。
・・・いつからか、そんな気持ちばかりが積もるようになった。
109 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:20

昼休み、どうやってみんなと過ごしたのかはよく覚えていない。
市井さんと矢口先輩とあんまり喋った記憶もないけど・・・。

放課後、あたしは体育館でいつも通り部活をしていた。
 「吉澤〜、ボール空気入れといて!」
市井さんに言われ、あたしはハーイ、と返事をして体育館倉庫に向かった。

シューッと空気の入る音だけが響く中で、
あたしの頭の中には、朝から、いや・・・昨日の夜から矢口先輩のことが離れなかった。

・・・ん?昨日から?
・・・違う。

 ”あたし、矢口真里!よろしくね。”
 ”部活、頑張ってね!!”
 ”あ!よっすぃ〜、アドレス教えて〜!”

ずっと前だ。

ずっと前から、あたしの頭の中は、彼女の言葉ばかり。
それに笑顔や姿がすぐに浮かんでくる。

いつからだろう?こんなに矢口先輩に夢中になったのは。
毎日、会えるかどうかドキドキしていた。
110 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:20

事の始まりは、偶然市井さんとごっちんのデートに一緒に参加したことから始まった。
一緒に草原に寝転がったり、笑ったり。
ジュースを交換して飲んだりしましたよね。

自転車でコケた時は正直ドキッとした。
でも笑顔で”キャハハッ!”って笑う先輩を見て、安心したりしてたな。

夕焼けを背中に、一緒に歩いた時間も幸せだった。
あの鼻歌もとっても心地がよかった。
サヨナラする時は、すごく寂しかった気がする。

それから学校で会うたびに、先輩は手を振ってくれた。
風邪をひいた友達の代わりに、ゴミ捨て当番をやってた。
優しいんだな、って思ったのも覚えてる。

いつも、矢口先輩のいい所を見るたびに、ほほえましかった。
自分と正反対なのに、一緒にいるとき、すごく幸せだった。

いつも一緒にはしゃいでた。
あたしたちに、恋や愛なんて関係ないと思ってた。

111 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:20

初めて会った時から違うモノ感じていたんだ。
それは『憧れ』なんかじゃなかった。

あたしの目には、いつも彼女が映っていた。
それが 「恋」 と言うなら・・・あたしは認めない。
なぜなら・・・

゛恋をしてる″

ただそれだけじゃ済まされないことのような気がしていたから。
めぐりあえたんだ、ずっと探していた人に。

運命を信じていたあたしは、間違ってなんかなかった。
112 名前:Because 投稿日:2004/03/29(月) 11:21

ふつふつと湧きあがるこの気持ち。
君の手をギュッとにぎって、ただ歩きたいんだ。

・・・あたしの中で、少しずつ景色が変わっていくのが分かった。
113 名前:とみこ 投稿日:2004/03/29(月) 11:23
>名無し飼育さん
いやいや、大量更新じゃないっすよぉ〜^^;
今回も少なくて、すみません^^;
これからが波乱・・・?!なのかな?w

>名無し読者さん
いつかDJ出そうと思っていました。w
ほんわか、だんだん気持ちに気づいてきたよっすぃ〜ですw

>名無し飼育さん
>恋するウサギちゃんってあの名曲の…??♪
そうですねw今回は、番組名がそれってことで・・・w


更新終了です。
114 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/02(金) 20:56
更新おつかれっす。
「やぐっつぁんって彼氏いるのかな?」
っていうごっちんの発言が・・・・・
関係ないっすかね?w
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/02(金) 23:54
↑あげるなよ!頼むから。
116 名前:真奈 投稿日:2004/04/03(土) 11:26
お久しぶりです☆
私のこと覚えてますか??

さっき久しぶりに来てみたらなんと、とみこさんの作品がっ!!
早速全部読んじゃいました♪
続き楽しみにしてますね^^
117 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/19(月) 22:44
とみこさん!まってますね!!
このお話、大好きです。
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/29(木) 12:07
とみこさんの書くよしこっていっつも同じパターンですよね。
モテモテで人気者で頭よくて。。。
どーでもいーけど。
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 22:14
ゴールデンウィークに入ってお馬鹿ちゃんがまた沸いてきたな
120 名前: 投稿日:2004/05/04(火) 19:26
この話かなり好きなんで更新されるの、待ってます。
121 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/06(金) 00:42
どうも、はじめまして。
あたしはホストも読んでました。
すっごく面白いですよ!
私もとみこさんと同い年なんですがすごいと思って読んでます。
夏休みなので続きを期待して待ってます。

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