いろんな話をしようよ

1 名前:ジカ 投稿日:2004/02/15(日) 11:17
いろんな短編書いていきます。
何本か用意してあるのでそれから書きます。

で、リクエストも受け付けます。
それでは。
はじまりはじまり。
2 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 11:21
どこまでも続く青い空。
鳥は、忙しそうに飛びまわる。
花や樹木はキラキラと雨のしずくを光らせる。

昨日の嵐が嘘のようなおだやかな午後に丘を登る二つの影。
その影たちが楽しそうに笑い声をたてた。
3 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 11:30
「てへてへ。ほんとにびっくりれすよ。
 あなたがオオカミらったなんて。」

「加護もやで。まさか相手がヤギとは知らず
 ずっと話してたんやから。」

―この二匹、昨日の嵐の日に知り合ったらしい。

「辻、ずっとオオカミは怖い動物らと思ってました。
 そのオオカミと一緒にお昼ご飯を食べる約束をしたなんて。」

「加護やってそうやで。ご飯と一緒に
 お昼ご飯を食べるようなもんやし…。
 あ、ごめんな。」

オオカミはぺこりと頭を下げた。

「大丈夫れすよ。もし辻を食べるのなら、
 会った時に食べてたれしょう?」

ヤギは、オオカミを恐れず笑顔を振りまく。
4 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 11:37
「あ、よぅわかったなぁ。
 加護、友情を一番大切にしてるんや。」

自慢げにオオカミは話す。

「あれ?辻もれすよ。雷が怖いところといい、
 辻たちはそっくりさんれすね。」

二匹は楽しげに話しながらずんずんと丘を登った。
高く、そびえたった岩山のてっぺんで、
お弁当を食べようという計画だ。

「てへてへ…。」

ヤギは突然八重歯を見せて笑い出した。

「何やねん、急に笑い出して。
 笑いキノコでも食べたんか?」

「今日、初めて会ったときのことを思い出してたんれすよ。
 あなたに『ミニモニ。』って言われたときのこと。」
5 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 11:44
「あぁ。昨日は電話やったから、顔がわからへんって言うんで
 合言葉を決めたんやな。」
『やっぱ、加護は天才やな。』と言葉を続けようとしたが、
ヤギの声に遮られた。

「それれ、辻も『ミニモニ。』って答えて、木の陰から
 顔を出した。」

「お互い、目と目があってしもうて…。」

「その時の、オオカミさんの顔といったら…。」
『プリクラで変顔撮るときの顔みたいれしたよ。』と
言葉を続けようとしたが、オオカミの声に遮られた。

「加護たち、目がてんやったよなぁ。」

二人は声をそろえて笑い声を立てた。
6 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 11:52
ずんずんと岩山を登ると…。

「あ、ここ、気をつけてくらさいね。
 ちょっと足を踏み外すと、谷底にまっさかさまですよ。」

ヤギには、オオカミがおっちょこちょいの
雰囲気があったので注意しておく。

「大丈夫やで。加護、こんくらい全然へっちゃらやで。
 せーのっ!」

オオカミが得意げにジャンプをして
岩の割れ目を飛び越した、その時―

「ああっ!やってしもうた…。」

葉っぱで包んだオオカミの命の次に大事なお弁当が
するりと首から抜け落ちた。

オオカミのお弁当はくるくるとまわりながら谷底へ―
7 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:00
「あーあ。らから言ったんれすよ。」

「へへへ。失敗失敗。でも、加護は二、三日何も食べなくても
 へっちゃらやから。」

そういって、無理やり笑ったオオカミだが、
本当はものすごく大食いなのである。
一日でも食べないと、お腹がぐるぐる叫ぶ。

二匹はずんずんと岩山を登った。
太陽は、少し西に傾き、道はだんだん狭くなってきた。

「ここから、一匹ずつしか通れないから、
 辻が先に行くね。」

「うん。お先にどうぞ〜。」

元気よく返事したオオカミだったが、
少しお腹がすいていた。

『はぁ。今日一日お弁当なしかぁ。』と思い、ふと見上げると
目の前に大きなヤギのおしりがある。
しかも、岩を登るたびふりふりと動くのだ。
8 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:05
やわらかそうなしっぽが、
まるでオオカミを誘うように動いている。

『あ、うまそうやなぁ…。』

オオカミは無意識に生唾をごくりと飲んだ。
でもすぐに大きくぶるぶると首を振ると
『あぁ、加護、なんてやつや。
 たとえ一瞬でも、友達をうまそうだなんて…。』と
心の中で反省して、自分の頭をボコボコ叩いた。

それからオオカミはできるだけ下を向いて登ることにした。
9 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:10

「やっと着きましたねぇ。ここ、てっぺんれす。」

八重歯を出して笑うヤギをオオカミはまぶしそうに見上げた。

「やっぱり眺めがいいれすね。ほら、おとめ谷が
 よぉく見えますよ。」

おとめ谷とは、ヤギがたくさんいる場所として有名だ。

「ほんまやな。加護、よくあの辺に…。」
『ご飯を食べに行くんやで。』と言いかけて
あわてて口をふさいだ。

ご飯とはヤギのことだったのである。

10 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:17
「ねぇ、さっそくお弁当にしましょう。
 …あっ、ごめんなさい。落としちゃったんれすよね…。」

「そうなんや…。」

オオカミはなるべくヤギを見ないようにして答えた。

「あ、らったら、辻の干し草半分いかがれすか?
 やっぱり、お肉じゃなきゃらめれすか…。
 もしかして、さっき落としたお弁当って
 ヤギの肉らったりして…。」

「と、とんでもない!加護、ヤギの肉だけは大っ嫌いなんや。
 そんなの、決まってやんかぁ。」

そういったオオカミだったが、実はどんな肉より
ヤギの肉が大好物だった。
11 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:23
「さて、加護に構わず、どんどん食べて。
 加護はちょっと寝不足やから昼寝でもしとるわ。」

ごろんと横になったオオカミだったが、
お腹がすいて寝るどころじゃない。

「いやぁ、こんな景色を見ながら食べるお弁当って最高れすね。
 あれ?もう寝ちゃったのかな?」

食べることが何よりも好きだったヤギは、大満足である。

しかし、ヤギの言葉を背中で聞きながら
『ちぇっ、加護やって、お弁当があるといえばちゃーんと
 後ろに太り気味のがあるんや。
 でもそれが、友達なんやよなぁ…。とほほ…。』

オオカミはぎゅっと目をつぶった。
12 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:32
「あー食った、食ったぁ。もう食べきれないれすよ。
 れも、デザートがあれば別腹れすけろね。
 辻も、昼寝れもしますか。」

ヤギは大きくのびをして
オオカミのとなりでごろりとなった。

「食べた後はいっつも眠くなっちゃって…。
 むにゃむにゃ…。」

そんなことを言ってるうちにヤギは
気持ちよさそうな寝息をたてている。

オオカミはむくりと起き上がり、
すでに熟睡しているヤギを黒目がちな目でじーっと見つめた。

「こいつ、めっちゃ面白いやつなんや。
 食べてもうまそうやなぁ。
 でも、一緒にいると心があったかくなるんや…。
 あっ今、ちょっと動いた!
 ほんまにちょっとだけ、かじってみようかなぁ…。
 『あなたは友達やから、耳ひとつならいいれすよ。』って
 言ってくれる…わけないか。でも…。」

オオカミのお腹が大きくなった。
 
13 名前:ののあい 投稿日:2004/02/15(日) 12:32




オオカミはそっとヤギの耳に口を近づけた。




14 名前:ジカ 投稿日:2004/02/15(日) 12:34
とりあえずここまで。
また火曜あたりに更新したいと思ってます。

それにしても今日はハロモニがないから暇ですなぁ。
15 名前:ジカ 投稿日:2004/02/15(日) 12:42
それから、レス大歓迎です。
16 名前:つみ 投稿日:2004/02/15(日) 17:32
おもしろい!
新しい感覚?のような感じがしてとてもいいです!
あいぼん。やめるんだぁぁぁ!!
17 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/16(月) 19:36
いしごまが見てみたいです!!
作者さんが書いた、ごっちんと梨華ちゃんは
どんな感じになるのかが楽しみです!!

頑張って下さい!更新待ってます!!
18 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:04
「やっぱり痛いやろか…。血だって出るやろうし…。
 きっと加護を見る目が白くなるんやろうなぁ…。」

ふぅ、とオオカミがため息をつくと、

「てへてへ。やめてくらさいよぉ。
 くすぐったいじゃないれすか〜。」

ヤギが目を覚ました。

「辻、くすぐったがり屋なんれすよ。
 耳は辻の弱点れす。あーすっかり目が覚めちゃった。
 そろそろ帰りますか?」

ヤギはのびをして立ち上がる。
19 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:05
「え?あ、そうやなぁ。」

そう答えたオオカミの目を見てヤギは、はっとした。
オオカミの目が黒く光っている。

『やっぱりこいつ、辻のことを…。』

しかしヤギはプルプルと首を振った。

『あぁ、辻、なんてやつれしょうか。
 たとえ一瞬でも、友達を疑うなんて。』

心の中で反省して、自分の頭をボコボコ叩いた。

二匹が岩山を下り始めてまもなく空が急に暗くなり始めた。

「雨でもふるんやろうか。」

「きっとふってもすぐ止みますよ。」
20 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:07
――

「あれ?今、一瞬光ったで!」

「え゛!?」

ゴロゴロゴロ…


「わぁ!!」
「きゃあ!!」

二匹は同時に全力疾走。
大粒の雨もパラパラ二匹に襲い掛かる。

二匹はあわてて近くの洞窟に飛び込んだ。
「つ、辻、雷が一番苦手で…。」

「か、加護も同じや…。」

二匹の声はがたがたと震えている。

21 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:22
ゴロゴロゴロ…

「きゃっ。」
「うぁっ。」

雷の音が鳴り響くと二匹はぎゅっと抱き合った。
するとオオカミの頭の中は鼻から
伝わったヤギのおいしい匂いでいっぱい。

そこでぐぅ〜と腹が叫ぶ。

ゴロゴロゴロ…

「きゃっ。」
「うぁっ。」

二匹はぎゅっと抱き合った。
ぐぅ〜と腹が叫ぶ。

これを二匹は雷が遠くに行くまで繰り返した。
22 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:23
――
やがて雨雲はどこかへ行き、雲の切れ間からは
夕暮れの日差しがさし始めている。


洞窟の中は誰の居ないような静けさになった。

そのときだ。


23 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:24







「きゃあ〜〜〜〜〜!!」






ヤギのけたたましい悲鳴が洞窟の外まで響いた。



24 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:25


「うぇ、ううっ…。」

途切れ途切れにヤギの弱弱しい声。


そして、トコトコとオオカミだけの足音。




やがて洞窟の出口にオオカミがにょきっと姿を現した。

25 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:30
――

「だめやんかぁ。あんなとこで転んで。」

「てへてへ。こんなことまでしてもらって悪いれすね。
 辻、お昼、景色がよくていっぱい食べたから、重いかと…。」

オオカミに背負われながらヤギは照れくさそうに笑う。
ただでさえ、注意しなければならない岩山を、
オオカミはヤギの重さと空っぽの
お腹の声を無視して歩いていく。

「加護がいたからよかったけど、気ぃつけてな。」

「へい。辻、昔からそそっかしくて。
 れも、もう大丈夫れす。ありがとう。
 あ、もう分かれ道れすね。」
26 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:35
オオカミは何も言わずヤギをそっと下ろした。
二匹が岩山を降りた頃には、夕日は沈みかけていた。

「じゃあ、辻はこっちれすから。」

ヤギはおとめ谷を指差した。
そして、オオカミに手を振った。

オオカミは黙ってヤギを見送った。
ぐぅ〜と腹は今日一番の大きな声で叫ぶ。

帰りかけたオオカミは立ち止まり、ヤギのほうを向く。


ぐぅ〜。


「こんなの…やっぱ我慢でけへん…。」

ヤギをじっと見つめていたオオカミはいきなり猛ダッシュ。
あっという間にヤギに追いつくと、オオカミは大きな口を
がばっと開けて―

27 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:37
大きく深呼吸するとこう言った。

「なぁなぁ、加護、大事なことを思い出したんや。」

「え?何れすか?」

ヤギは驚いたような表情で振り返る。


「もう、じれったいなぁ…。だからぁ…。」

オオカミは下を向いて今にも消えそうな声で言った。

28 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:38







「こ、今度いつ会うん?」





29 名前:ののあい 投稿日:2004/02/17(火) 09:44



丘の上の二つののびた影が
一つにつながり、どこまでものびていた。




…end 
30 名前:ジカ 投稿日:2004/02/17(火) 09:56
なんとか終わりました。
実はこれ、元ネタありなんです。

>16・つみ様
新しい感覚ですか。
私は辻・加護の二人はこういう雰囲気が好きなんです。
好印象だったらしく、嬉しいです。
ありごとうございます。

>17・名無し読者様
いしごまですね。
わかりました!
今までいしごまは書いたことないので
期待通り書けるかどうかわかりませんが、
他の作者さんのを参考にして、頑張ります。
だからちょっと待っててくださいね。


31 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 15:21
かおのの(っていうのかな?)、書いて下さい
32 名前:つみ 投稿日:2004/02/17(火) 16:18
おもしろかったっす!
みきぼん書いてくださいっす!
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 18:19
面白い!
作者さんのペースで好きな話を書いて行って下さい
34 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:34
青々とした空。
その空に漂う白い雲。

そして、それらを遮るように大きな家が一つ建っている。
周りには『立ち入り禁止。』と言ってるように柵が立ち並ぶ。
周囲に大きなマンションがないため余計に大きな家は目立つ。

その家は周りを圧迫しているように見えるが、
周りから孤立しているようにも見える。

おや?
その大きな家の正面玄関の反対側の人通りの少ない道に一人の少女。
肩にかかるか、かからないかの長さのさらさらの髪。
少し、魚っぽい。

学校はどうしたのだろうか。
少女は制服を着ている。
35 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:35
少女はきょろきょろと周りを気にしている。
明らかに怪しい。

何を考えたかわからないが、少女は慣れたような手つきで
軽々と大きな家の柵を越えて家の敷地内に入る。

いわゆる、不法侵入というやつだ。

少女は家の者に気づかれないように注意しているのか、
庭に生えている手入れがほどこされた
木の後ろをこそこそと通っている。

少女は敷地内に入って50mほど歩いたところで立ち止まる。
少女の視線の先には、家に取り付けられた
大きな窓から部屋が見える。
36 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:36

「梨華ちゃん。」


どうやら、部屋の主のようだ。
よく見れば美少女だが、少し黒い。
今は冬なので、日焼けしたとは言いにくい。
きっと元からなんだろう。
少し黒い少女は、見る限り魚顔の少女と同じ位の年齢だ。

黒い少女―石川梨華は窓の隣に置かれた
誰が見ても高価と言うベッドに座っている。

梨華は自分が呼ばれたことに気づき、
声がしたほうへ顔を向ける。
正直なところ、外から自分を呼ぶのは
一人しかいないことを梨華自身知っていた。
だから、声を聞くだけでわかるのだ。
37 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:40

「ごっちん。」

梨華は『ごっちん。』と呼んだ少女に微笑みかけた。
ごっちん―後藤真希は最後の確認という意味で、
もう一度周りを見渡す。

やはり、誰もいない。

真希は静かに窓のほうへ近づく。

「そんなに気を使ってここまでくるなら、
 パパにごっちんのこと紹介してあげるよ?
 そうすれば、ごっちんだってちゃんと玄関から入れのに。」

梨華は毎度のことと呆れながらも真希に言う。

「いいの。だって、初めて会ったのだってここだし。
 ここまで来るの時いつもは
 味わえないスリルがあっていいよ。」

『あはっ』と気楽そうに笑う真希。

マイペースな真希と心配性の梨華は、
基本的に意見が食い違う。

しかし、それでもいいのだ。
本人達もそんなことは気にしていない。

二人の関係は不思議なものだった。

そもそも、出逢い方からして不思議だったのだ。
真希の親友の発言がなければ、二人は
一生関わりあうことはなかっただろう。
38 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:41
――
「やったぁ!ごっちんの負けね!じゃあ、罰ゲームはねぇ…。」


『あの近所にある超超超超豪華な家あるでしょ?
 豪邸ってやつ?あの家、どういうモンか知りたーいっ!』


『だからぁ、見学に行って来てよ、ごっちん。
 それで、感想聞かせて。』


真希は豪邸のことは興味がなかった。
だが、真希の親友―よっすぃーは
『どう?無理なら一週間掃除だよ?』と
勝ち誇った目で見るのが悔しくてたまらない。


そこで結局、真希はおそるおそる
石川家の豪邸に忍び込んだわけだ。
39 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:43
しかし、運の悪いことに見つかってしまったのだ。


「誰?」

「んぁ!?あ、えっと…。」

その時、真希は混乱状態に陥ってしまい、
自分が朝見てきた星座占いの結果を思い出していた。

確か…2位だった。

真希は考えた。
混乱した頭で。

なんで?
今日占い2位なのに。
ビリじゃないのに。
ついてないなぁ。


「泥棒…さん?」

真希が占いのことで怒っている中で勝手に話を進めるのは
真希を発見した当時の梨華。
40 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:45

「違うよ、それはない!
 いくら小学生のとき、文房具店でポケットに
 間違って匂いつきの消しゴム入れちゃって
 返しに行かなかったのはあたしだけど、
 さすがにこんなデカいとこで泥棒なんて…。あっ!」

真希は混乱状態で話してミスを犯してしまった。
それに気付いたのは話してからだった。

やってしまった。

ところが、部屋の中にいた梨華は
くすくすと小さな声で笑い出した。

「なんで笑ってるの?」

「だって、あなたが素直に小学生の頃のこと話すから…。
 私、そういうの実際に聞いたことなくて…。」

真希は、その時なぜか梨華を
もっと楽しい気分にさせたいと思い、
罰ゲームのことを梨華に話してしまった。

初め、梨華は驚いていたが話が進んでいくうちに
またくすくすと小さな笑い声を立てた。
41 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:48

「いいなぁ…。」

「んぁ?」

最後まで聞き終えた梨華の感想に真希は驚いた。
なんでだろう。
あたし、罰ゲームで嫌がらせされたんだよ?

真希は理由を聞こうとしたが、それより先に梨華が話し出した。

「実は私、同年代の子と喋ったの初めてなんだ。
 生まれつき体が弱くて、学校に行けなかったの。
 だから、パパが家庭教師を呼んでいつも先生とお勉強。
 お勉強をしてない時も、外で遊べないから
 読書とか、テレビをいつも見てるんだ。
 だから、真希ちゃんみたいなの羨ましいなぁって、
 すごい思って。」

えへへ、と照れたように笑う梨華。
きっと初めて打ち開けたのだろう。
42 名前:いしごま 投稿日:2004/02/20(金) 15:52
「そうなんだ。」

体も健康で家庭教師に教わったこともない真希に
梨華の気持ちを理解するのは到底無理な話だった。

「でもね、今、真希ちゃんと喋ってるでしょ?
 よくテレビとか本で同年代の子が仲良くしてるのを見てて、
 いいなぁって思ってたから、真希ちゃんがここにきてくれて
 私、すっごい嬉しいの。」

その時の梨華の嬉しそうな笑顔は、今でも真希の
小さな脳みそのどこかの引き出しにある。

なぜなら、真希はこんなに嬉しそうな人の笑顔は
見たことがなかったから。

43 名前:ジカ 投稿日:2004/02/20(金) 16:05
いしごま、途中まで書いてみました。
どうでしょう?
いしごまは初めてなもんで…。
よくありそうな設定ですんません(凹

>31・名無飼育さん様
わかりましたー。
かおののですね。
私はこのお二人さんのコンビ好きなんで
ちょっと早めに完成するかも。
もう骨組みは大体完成してますので。

>32・つみ様
みきぼんですね。
はい、わかりました。
あんまり個人的には見ないような…。
いや、大丈夫です。
話の構造練るのは好きなんで。
では、しばしお待ちを。


>33・名無飼育さん様
ありがとうございます。
とりあえず、マイペースにやっていきたいです。
このスレ使い切るまでがんばりたいですね。
読者の皆さんの感想等はすごい大きな励みになるので。
これからもよろしくお願いします。
44 名前:33 投稿日:2004/02/20(金) 18:56
今回もいい雰囲気。面白そう。

あの……マイペースで頑張ってくださいとか言っておいて何なんですけど……
もし、お時間があったら、なちみき、とか、みきよしとか書いてもらえますか……。
いや、何でもないです! 何でもないです!
45 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/20(金) 20:04
おぉ!!いしごま始まったんですね!
お嬢様な梨華ちゃんに、会いに来るごっちん。いいですね〜!
続き楽しみに待ってます。頑張って下さい!!
46 名前:たぬき 投稿日:2004/02/21(土) 08:36
かおみき、かおあやをお願いします。
たぶん、見かけたことはないと思うので。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/21(土) 10:12
ついにいしごまですね
頑張ってください
48 名前:いしごま 投稿日:2004/02/22(日) 14:12
梨華は興奮したように話を続ける。

「私、真希ちゃんに言うのもどうかと思うんだけど、
 友達一人もいないんだぁ。
 でも、もう慣れちゃった。えへへ。」

寂しそうに俯いて話す梨華。
そんな梨華は真希からはとても痛々しく見えて、
真希も梨華と目を合わせることはできなかった。


今、思えばどうしてこの時、梨華の顔を見ないで
俯いていたんだろうと真希は後悔している。

悔やんでも、悔やみきれないこの思い。



『あたし、梨華ちゃんの友達になってあげるよ。』


この一言が言えれば、梨華はまた嬉しそうな笑顔をしたのだろうか。


小さな脳みそしかない真希にはよくわからない。
49 名前:いしごま 投稿日:2004/02/22(日) 14:19
ただ、たった一言だけなのに。
どうものどにつまって出てこなかった。


なぜか、梨華を喜ばせよういう気持ちより、
恥ずかしい気持ちが前に出てしまったのだ。


なんでだろう。
学校で、友達に向かってどうでもいいことまで言い合えるのに。
なんで梨華には言えないんだろう。


だから真希は、小さな嘘をついた。

「あたし、罰ゲームでここにきたって言ったでしょ?
 実はまだ話の続きがあってね、ここに住んでる同い年ぐらいの子と
 仲良くなるっていうのが最終目的なんだ。」

真希にはこれぐらいしか言えなかった。
これでも梨華は喜んでくれるのだろうか?

真希は不安の渦に飲み込まれそうになった。


50 名前:いしごま 投稿日:2004/02/22(日) 14:28
「ほんとに?私、すっごい嬉しいよ!」

梨華はまた笑ってくれた。

「うん。ほんとだよ。
 だから、またここに遊びに来るね。」

真希も自然と笑顔になった。

そのあと梨華は、真希が帰るまで何度も何度も
『ほんと?』と繰り返した。

――
「じゃあ、あたしそろそろ帰らないと。」

「あ、ごめんね。真希ちゃん、ずっと外で喋って寒くなかった?」

「うん。平気。じゃあ、また来るね。」

「…うんっ。私、待ってるからね。」

その時の梨華は少し不安そうな顔。
しかし、期待の気持ちのほうが大きかった。

51 名前:いしごま 投稿日:2004/02/22(日) 14:34
それから、真希と梨華はずいぶんと二人の距離が縮まった。
真希が学校の話をし、梨華を笑わせる、というのがよくあるパターン。

ときどき、梨華は誰にもいえないような悩みや不安を少しずつだが
真希に打ち明けるようになった。

真希にはわからないようなお金持ちの悩みもあった。
真希にはわからない気持ちもたくさんあった。

ただ、梨華は誰かに聞いてもらえるのが嬉しかった。
しかし、梨華も最初の真希のように、
素直に嬉しいと言うのは恥ずかしかった。


52 名前:ジカ 投稿日:2004/02/22(日) 14:45
少量更新ですみません…。
書けるとこだけ書いてみました。

>44・33様
あ、いい感じですか?どうもです。
なんかよくある石川さんだと思うんですが…。
ちゃんと聞きましたよ〜。
なちみき、みきよしですね。
わかりました!

>45・名無し読者様
秘密の出会い方です。
なんかお嬢様=秘密の何か、みたいなのが
私の勝手なイメージです。
いや石川さんのイメージかな?

>46・たぬき様
かおみき、かおあやですね。
確かに見かけないかも。
いや、でも私の想像で。はい。
前にリクされた方もいるので
ちょっと待っててください。

>47・名無飼育さん様
はい。
始めちゃいました。
この次ぐらいには終わらせたいなぁ、と思ってます。
53 名前:33 投稿日:2004/02/22(日) 19:30
うん、続き楽しみ。ゆっくり頑張ってください
54 名前:スコール 投稿日:2004/02/23(月) 19:36
更新お疲れさまです!!
少しでも全然嬉しいんで、頑張って下さい!!
55 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 12:53


梨華が真希のことを『ごっちん』と呼び始めて、
数日後、梨華は自分の中にあった一番大きな闇をはきだした。

『あのね、ごっちん。私…―』


56 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:05
――
「ところでごっちん、今日はどうしたの?
 荷物多いけど、重くない?」

真希の服装はいつも梨華が目にする可愛らしい制服。
それとはつり合わないような大きなかばん。


明らかに学校に行くとは思えない。
今日の真希は最初から変だった。

過去にはこだわらない真希がなぜ初めて逢った時のことなど…。

「あは。やっぱわかる?
 あのね、あたし前からバイトしてたの。」

「うん。知ってる。」

真希がバイトしていたことなら梨華はもう少し前に聞いた。
理由を尋ねたら答えをはぐらかされたことを覚えている。

ただ、『お金が欲しい。』と言っていた。
57 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:13
「実はね、あたし一人暮らししたいんだ。」

真希は嬉しそうに話す。
どこか希望に満ち溢れた瞳だった。

「えっ!?」

しかし心配性の梨華にとっては大問題。

「それでね、まだ話の続きがあって…。」

何だろう。
心配性の梨華には嫌な考えしか浮かばない。
1 遠くへ行っちゃう
2 もう梨華には逢えない
3 実は一人暮らしというのは海外

三つともほとんど同じ答えなのだが梨華は全く気付かない。
そんなのやだ。
ごっちん、どこかへ行っちゃうの?


梨華、そんなの悲しすぎる…。


目薬で泣きまねすればごっちんはどこにも行かないかな。
っていうかもう私泣きそうなんですけどぉ…。
58 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:21
「梨華ちゃん、なにそんな泣きそうな顔になってんの?」

真希は梨華を見て笑いそうになっている。

「だって、ごっちん、今日それを言うために来たんでしょ?
 もうさよならなんだ…。私、ごっちんのこと忘れないからね。」

梨華はすでに半泣き状態。
こんな姿、誰にも見せたくない。

そう思った梨華は、はやく真希に帰って欲しかった。



「何言ってるの?梨華ちゃん、前あたしに言ったでしょ?
 『私、外の世界が見たい。』って。」

そういえば、言った気がする。
遠い昔のことが梨華の頭の中で再生される。

『あのね、ごっちん。私…外の世界が見たいの。
 ずっとここにいるんじゃつまんないもん。』



59 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:29
外の世界が見たいと真剣に思ったのは真希に出逢ってからだった。
真希が友達や学校のことを話すたび、梨華の夢は大きくふくらんだ。
悩み事はほかにも数えきれないほどあったが、
いつの日か、悩みよりも夢が大きくなった。

そして、夢が大きくふくらみすぎて、割れそうだったから
真希に打ち明けたのだ。


確かその時真希は、いつものようなそっけない態度で
『へぇ。そうなんだ。できるといいね。』と言ったはず。

「私、確かに言ったよ。でもそれとどういう関係?」

「鈍いなぁ、梨華ちゃん。
 あたしが梨華ちゃんの夢叶えてあげようと思ったのになー。」

真希は勇気を振る絞った。
こんなこと普段の真希は恥ずかしくていえないのだ。

「え?で、でもどうやって?」

梨華はさっきとは別の意味で半泣きである。
60 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:30




「あたしと一緒に、この家から抜け出そうよ。」




61 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:36
「あ。もちろん、梨華ちゃんがいいのなら、ね。
 強制はしないよ。」

あは、といつものように笑う真希は少し頬を赤くした。
そんな真希を梨華は愛おしいと思う。

「でも、いいの?」

梨華は嬉しくて仕方がない。
でもやはり、両親や今まで世話になった人たちの顔が浮かぶと
どうも真希と一緒には…と思う。

梨華の中で激しい葛藤が始まった。


どうしよう。


真希と一緒に未知なる世界へ飛び出したい。


しかしここでも心配性が顔を覗かせる。

62 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:42
「梨華ちゃん?」

今までたくさん読んできた本の中に答えはあるのだろうか。
前に呼んだお気に入りの本の主人公はこんなことを言っていた。
『これからのことなんか、誰もわからない。
 でも、一歩踏み出せば何かが見えるはずだよ。
 大切なものはちゃんと自分でわかってるはず。』

うん。
ちゃんとわかってるよ、私。
ただ、何かきっかけが欲しい。


「梨華ちゃん?」


真希は不思議そうな顔で梨華を見つめる。

「ごっちん、聞きたいことがあるの。」

「んぁ?」

63 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:49
「ねぇ、家は?」

「んぁ…。まだ。」

「…じゃあ、お金は?」

「んぁ…。バイトで稼ぐ。」

「えと、家具…。」

「んぁ…。そんなのまだないよ。
 お嬢様だねぇ。家具なんかなくても生きてけるよ。」


……。
不安すぎる。
梨華の不安要素がありまくり。

何しろ梨華は、箱入り娘で常識知らず。
お金がない時など全くなかった。


ねぇ、『ケメ子』さん。
これでも大丈夫かな?
私、生きていける?

『ケメ子』さんとは先ほどの本の主人公である。

いくら問いかけても『ケメ子』さんは反応なし。
64 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 13:56

はぁ…。
肝心なときに『ケメ子』さんは
私を励ましてくれないのね。


「梨華ちゃん?いやならいいよ?
 ただ、あたしは梨華ちゃんの夢に応えたかっただけだし…。」

梨華は考えた。
『ケメ子』さんは私に試練を与えてるの?



これから先のことなんて、本には書いてないって言いたいのね。



ごっちんはやさしいね。
私のこと、こんなにも思ってくれてるなんて思わなかった。


梨華の視界はだんだんぐちゃぐちゃになっていく。

ぽろぽろぽろぽろ。


知らないうちに梨華の瞳からは大粒の涙。

65 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 14:05

「り、梨華ちゃんっ!?」

真希は梨華が泣き出したことに焦ってしまう。

「そんなに、いやだった?」

真希がネガティブに考えるのはとても稀。
それほど真希も不安だったのだ。

「ちが、う…。違うの、ごっちん…。嬉しいの…。
 っく、あのね、私、すごいふあ…不安だったから…。」

梨華は思わず嬉し泣き。
そんな梨華を真希は愛おしいと思う。

結局、梨華も真希も不安だったのだ。
お互い様。

66 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 14:06



「ごっちん、私、外の世界に出ようと思うの。」



67 名前:いしごま 投稿日:2004/02/28(土) 14:08




先のことなんてわからないよね、『ケメ子』さん。



だって、この二人の未来は、
どの本を探してもわからないのだから―


68 名前:ジカ 投稿日:2004/02/28(土) 14:14
いしごま終わりです。

これは…すいません。
ちょっと失敗したかなぁ…。

>53・33様
何とか頑張りましたがこんなもんです。
やっぱだんだん上手くなりたいですね。

>54・スコール様
ちまちまとでも進めていきます。
『嬉しい』と言って頂けるとこちらもほんとに嬉しい気分になりますね。
ありがとうございます。

ではこの次は「かおのの」です。
69 名前:スコール 投稿日:2004/02/28(土) 14:55
いしごまお疲れさまでした!!
不安だけどごっちんについていく
梨華ちゃんに、愛を感じました!!
次のかおののも、楽しみにしてます。
70 名前:33 投稿日:2004/02/28(土) 17:01
お疲れ様です。
作者さんの話はどこか透明感があって好きです。
次回も楽しみです
71 名前:かおのの 投稿日:2004/03/02(火) 13:02



最近、辻の元気がない。
72 名前:かおのの 投稿日:2004/03/02(火) 13:03
そう思い始めたのは、大体一週間ぐらい前。
歌詞カードとか忘れても元気印とお弁当は必ず
持って来る辻だから、元気印を忘れるなんて珍しい。

今日だって誰かから借りたのか、自分の物かわからないけど
一人で孤立して本読んでる。

いつもは、加護や5期、6期と一緒に
お喋りに花を咲かせてるくせに。

おかしいなぁ。

やっぱここはリーダーとして、仲間として放っておけないよ。
73 名前:かおのの 投稿日:2004/03/02(火) 13:04
「みんなー、喜べ!お菓子買ってきたぞー!」

バタン、と大きな音をたてて楽屋のドアを開けるなっちと矢口。
みんなはぎゃあぎゃあ叫びながらお菓子へ直行。

お菓子は人気者だね。

あ、圭織も取り行かなきゃ。

んーでも今は辻のことで頭がいっぱい。
まぁ、いっか。

圭織、そんな子供じゃないし。

「のの、お菓子持って来てやったで?」

わざわざ辻の元へお菓子を届けに来た加護。
加護の腕の中には溢れ出しそうなほどのお菓子。

きっと『お菓子戦争』の中で取ってきたんだろうね。
74 名前:かおのの 投稿日:2004/03/02(火) 13:06
一人占めしたお菓子をわざわざ辻のところへ
持ってきてくれるなんて加護は友達思いだね。
娘。に入った頃は辻とお菓子でけんかしてたくせに。

感動しちゃうよ。


「あ、ありがとう。でもあいぼんが食べていいよ。」

あらららら…。
感動シーンも辻の一言でおしまい。

「えっ!?いいの?」

加護はすごく嬉しそう。
もう目がきらきらしてるし。
そりゃ、あの辻がお菓子を断るんだもんね。

「うん、いいよ。」

辻は加護のほうには目も向けず、本に夢中。
本に恋しちゃったみたいだね、辻。
75 名前:かおのの 投稿日:2004/03/02(火) 13:07
それにしても、辻が加護をほとんど相手にしないなんて。
こりゃ重症だわ。

そんなこと考えてていつこっちに来たかわからないけど
さっきまで辻に向けてた笑顔の加護が圭織の前に立ってた。

交信してたのかな?

「はい、どうぞぉ。」

まぁ、加護ったら。
圭織にまでおすそわけ。

これこそ感動しちゃうよ。
76 名前:ジカ 投稿日:2004/03/02(火) 13:13
更新しました。
>69・スコール様
少し不安だった梨華ちゃん、わかって頂けたようで…。
最終的に不安の気持ちを乗り越える梨華ちゃんが書きたかったんです。
かおののも気合を入れて頑張ります。

>70・33様
お褒めの言葉、ありがとうございます。
どうも黒いのを書くのは苦手で…。
実はいしごま、最後は二人で逃げちゃうってことで
黒くしたかったんですけど、無理でした…。
77 名前:33 投稿日:2004/03/02(火) 18:10
短いながら暖かい素敵
78 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:18
「ありがとう、加護。」

やっぱり目の前にお菓子を出されたら食べたくなっちゃった。

あ、でも頭の中は辻だらけだから!
そこんとこ、勘違いしないでほしいなぁ。

そーだ。
加護なら辻のこと何か知ってるかもしれない。

よし!
聞き込み開始!


「あのさぁ、最近、辻元気なくない?」


加護はあまり間をあけないで
「そうなんですよ。話してもノッて来てくれないし、
 機嫌悪いんだか何にも言ってくれないんです。
 飯田さんも気をつけたほうがいいですよ。」
と言った。
79 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:20
なんだ。
加護も結構辻のこと見てるんだね。
なんだかんだ言っても、心配そう。

重要参考人は50m走が遅い人とは思えない速さで
なっちの膝の上へ行ってしまった。

なっち、もうすぐ卒業だもんね。
加護は最近よくなっちの側にいることが多くなってる。

でも、辻も加護に負けないくらいなっち大好きなのに、
なんでなっちのまわりひっつきまわらないんだろう。

絶対、なっちの卒業が近くなったら、辻加護が二人で
なっちの取り合いすると思ったのに。


なんか、未来予測外れみたい。

80 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:20
こうなったら自分でやるか。
まずは辻の予習からね。

予習は観察!

ずっと見てると怪しまれる上に怖いと言われそうだから
チラ見ね、チラ見。

――
どのくらい観察を続けたかわからないけど
この作戦はだめね。

辻はずっと本を読んでる。
お菓子には目を向けない。

気付いてるはずなんだけどな、お菓子。

これじゃあ、いつまでたっても変わらないね。
81 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:21
しょうがない。
あまり情報はないけど行動開始!

「ねぇ、辻。」

あー!
緊張するよ!
初めて話すときみたい。

だって、辻の周りだけ雰囲気がみんなと違う。
なんか、黒いよ。

「何ですかぁ?」

でも、辻の目は怖くない。
ってか、普段から辻の目は怖くないし。
むしろ、普段は圭織の方が怖いぐらいだし。

「何の本読んでるの?」

まずは、普段する会話で雰囲気をつくろう。
まぁ、辻は普段本を読まないから本について質問しないけどね。
82 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:22
「んと…秘密、です。」

辻が読んでる本にはカバーがしてあって
みんなからは見えない。

つ、辻、まさかあんた…変な本読んでるんじゃ…。

あ、もしかして『秘密』っていう本なのかも!

うん。
そうしよう。
この話、終わりね。


「辻、最近元気ないぞ。何かあった?」

なるべくこういうときは優しくしなきゃね。
きっと、不安だから。

辻の頭をそっとなでてあげた。


83 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:22

「…みんな、すごいよね。」


ん?
辻はいつも元気印を持ってる人とは
思えないくらいの小さな声を発した。

すごいって、何が?


「だって、もうすぐなつみは卒業だよ?
 なつみはこの楽屋にもいなくなっちゃうんだよ。
 …もしかして、みんながすごいってのは違くて、
 逆にみんなばかなのかな?気付かないだけ?
 ばか女の辻でもわかるのに…。」


辻…。
辻はずっとうつむいたまま圭織と
目をあわせようとしない。

きっと圭織が怖いからじゃないからね。
だって辻、目がうるうるきてるもん。
84 名前:ジカ 投稿日:2004/03/08(月) 09:25
今日中にまた更新するので…。
85 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:51
「でね、こないだ、夜中に布団の中で考えたの。
 なつみの卒業は、辻が壊れちゃうくらい辛すぎるから。
 できるだけ、辻にとって辛くないようにしようって。」

辻…。

辻は、圭織が知らない間にずいぶん大人になったんだね。
背もちょっと伸びたけどそれ以上に辻は、おっきくなったね。

きっと、布団の中で泣きながら悩んだでしょ?
だって、辻はなっち大好きだもんね。

「それで、辻、気付いたんですよ。
 なつみの卒業が辛いのは、思い出がいっぱいあるからだって。
 だから、今からじゃ遅いかもしれないけど、
 一つでもいいからなつみとの思い出少なくしようと思って…。」
 
86 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:52
辻はすごい涙声。
なっちに聞こえないくらい小さな声。

「だから、辻は誰にも関わろうとしないの?」

辻は、こくん、と大きく頷いた。

ほんとに今からじゃ遅くない?

そう思ったけど、せっかく夜中に一人で考えた
辻の考えを踏みにじる事はできないから言うのはやめた。

そういえば、辻も卒業だっけ。
なんか不思議な感じ。

辻は、言わなかったけど、自分の卒業のことも
なっちの卒業と一緒に考えてたのかもしれない。

みんなの前では『楽しみ』とかいろいろ前向きなこと
言ってたけど、やっぱり娘。卒業だから、
寂しい気持ちもいっぱいあるだろうね。
87 名前:かおのの 投稿日:2004/03/08(月) 09:53
「…辻は、なっちのこと、好き?」

「うん。だぁい好き。辻の『好き』はなつみの
 お母さんがなつみを愛する気持ちよりも上。
 きっとね、辻のなつみへの愛はメンバー全員が
 集まっても勝てないよ。」

辻の目は真っ直ぐ。
きれいな心を持ってると思うよ。

絶対、お菓子よりもなっちのこと大好きだよね。
圭織、辻が友達想いなのは知ってるよ。

圭織、辻みたいなこと絶対恥ずかしくて言えないよ。
88 名前:ジカ 投稿日:2004/03/08(月) 09:56
今日はここでおしまい。
今週中に終わらせたいなぁ…。

>77・33様
少ししか更新してなかったのに
レス頂いちゃって…。
ありがとうございます。

やっぱ、期間はあくけど大量更新って方がいいのかな?
89 名前:33 投稿日:2004/03/09(火) 00:02
大好きです。こういう暖かい話。続き楽しみ
90 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:19
「じゃあ辻がどんなになっちとの思い出を減らしても
 卒業が辛くならないことはたぶん無理だよ。」

ごめんね、辻。
やっぱり圭織、辻が布団の中で考えてたこと、
ちょっと違うと思うんだ。

でも、圭織の考えだから。
辻とは、ちょっと違うのかもね。

「なんでですか?」

辻は食い掛かってきた。

「圭織、思うの。メンバーが卒業するのが
 嫌なのって、圭織が卒業する子のことが
 大好きだからだと思うのね。」

「…うん。」
91 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:20
辻は静かに圭織の意見を聞く。
気付いたら、辻は圭織に全体重を
かけてるんじゃないかってくらいの強い力で、
圭織に寄りかかってきた。
その時に本にしてあったカバーがちょっとずれて
辻が何の本を読んでるかわかった。

「だから、卒業する子が嫌いな人じゃない限り、
 圭織は寂しいよ。でも…困ったことに、
 今まで卒業したメンバー、みんな大好きなの。
 もちろん、今いるメンバーも。
 ほんとに好きで好きでどうしようもないくらい。」

「辻もです…。辻も、みんな大好き。」

今まで自分の気持ちを素直に言ったことってなかったから
ちょっと照れくさくなってきちゃった…。

「思い出は、きっと辻の寂しい気持ちを和らげてくれるよ。
 そりゃ、なっちや、辻・加護の卒業も含めて
 メンバーの卒業は圭織も辛いよ。
 心臓をハンマーで殴られたみたいに。
 思い出だっていい思い出ばっかじゃない。
 でも、辛いことをさぁ、一年後とかに思い出すと、
 全然辛くないときとかあるでしょ。」
92 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:21
辻は小さくうなずいた。
きっと辻にも経験あるんだろうね。
だって辻はもう16年間も生きてきてる。
あっと言う間だよね。

「それって『時間が解決してくれた。』って
 言う人もいるけど、圭織は辛い思い出を思い出したしたとき、
 辛くないって、自分が強くなったからだって思いたいの。
 辻がなっちの卒業を辛くないって思えるのが、
 いつになってもいいの。」

「十年後でも?」

辻は不安そう。
なんで辻はそんな不安そうな顔をするの?

大丈夫だって。
辻は、もう十分強くなったでしょ?

「うん、いいよ。
 十年後でも、五十年後でも。
 辻がよぼよぼのおばあちゃんになった時でもね。」
93 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:22
「うん。そっかぁ…。
 よく考えてみれば、今じゃ、おばちゃんの
 卒業、全然辛くなくなったよ。
 楽屋におばちゃんがこなくても、何にも感じないの。
 …でも、辻、そんな自分が悲しいよ。」

そうだね。
圭織も、辻と同じことを時々考える。
例えば一番最近卒業した圭ちゃん。

圭織も辻と一緒で今になると、圭ちゃんが
楽屋にいなかったりしても、なんにも違和感ない。

むしろ、『シャボン玉』とか『愛あらばIT’S ALL RIGHT』を
衣装着て歌ってる圭ちゃん、想像すると―

きゃーー!!


…ごめんね、圭ちゃん。


何かを手に入れれば、何かを失う。

それは、ひどいかもしれないけど当たり前のことだと思う。
94 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:23

「でも、今はそんな自分が悲しくても、
 そのうちまた乗り越えられるでしょ。
 圭織たち、モーニング娘。はみんな知ってるよ。
 もちろん、辻だって。」

もしかしたらもう辻は、自分の中で
自分なりの答えを見つけてるかもしれないね。

でも、まだ気付いてないだけなのかも。
もしそうだったら早く気付いてあげな。

圭織は、見守ることしかできないけど。

「うん。辻も知ってるよ。
 だって、今まで辻の大好きなメンバーを
 送り出してきたもん。」
95 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:24
ほらね。
辻はもう自分なりの答え、見つけたでしょ。

「そうだね。辻は、加入した時より絶対強くなったよ。
 圭織が保障する。」

もう、辻が強くなったってことに一億円賭けてもいいよ。
それぐらい自信あるよ。

「辻、なつみのとこ行ってくる。
 行かなきゃ、あいぼんに辻のなつみが取られちゃうよ!」

そう言って辻は『なつみー!』とみんなに聞こえる大きな声で
なっちの所へ飛んでった。

辻の目はすごい輝いてた。
そんな三人を遠くて見守る圭織。

ん?

圭織はいいの。
なっちとは、よくご飯とか食べ行くから。
その時にいっぱいなっちと話すの。


それにしても辻はほんとになっち大好きだよねぇ。
まさか『これ』読んでるとは…。

まぁ、それほど不安だったってことかな?

これには、なっちのいろいろな思いやら考えが
いっぱい書いてあるもんね。
96 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:25

「ちょっと、あいぼん!そこ、辻の特等席だよ!
 なんであいぼんが乗っかってんのさ!」

辻、いつもの勢いに戻った。

「あれ?ののやん。何やねん。文句あんのか!?
 いいやん!のの、さっきまで飯田さんと
 お喋りしとったくせして!
 大体、ここは加護の特等席や!」

しかも加護、あんたさっきまで辻のこと何気に
心配してたくせして、本人の前だと素直じゃないねぇ。
でもちょっとけんか相手ができたんで嬉しそう。

「ちょっと二人ともー。けんかは止めてよねー!
 なっちの膝の上くらいでー。」

そう言ってるなっちの顔、ほころんでますけどー。
ほんとはなっち、嬉しくて仕方ないんでしょ?
だって前に、圭織に言ってたもんね。
97 名前:かおのの 投稿日:2004/03/12(金) 09:36



結局、圭織のなっちの卒業が近くなったら、辻加護が二人で
なっちの取り合いするっていう未来予測、当たりみたいです。


…end



98 名前:ジカ 投稿日:2004/03/12(金) 09:52
かおののができあがりました。
ちなみに、のんちゃんが読んでたものは…。
なっちの…もうずいぶん前に発売されたモノです。

>89・33様
いつもレスありがとうございます。
やっぱりかおののは暖かいのが似合う気がします。
ほわほわした感じが。春っぽいです。

次は…みきぼんですね。
またちょっと待っててください。
99 名前:33 投稿日:2004/03/12(金) 19:26
うん、素敵。ほんと面白いです。
なっちのあれ、自分も買いました(w
100 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:13



コンコン。



101 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:14
そういう窓を叩く音。
いや、正直かなりビビった。

だって、美貴の部屋は二階だし。

まさかまさか…泥棒かなぁ?

そう思ってその人に従おうかと思ったけど、
キャラじゃないから止めた。

うん。やっぱ強気で行こう。

もし何かあったら、今手に持ってる携帯で
警察に連絡だ!

確か110番だっけ。
あれ?

119番?

わからないけど、取りあえずどこかに電話しよう。
102 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:14
まず、カーテンを開ける
次に、相手を確認
最後に、警察に連絡

この計画的な作戦に対して相手はどう出るかな?

さぁ、計画実行!

まず、カーテンを開ける。


えええええっ!?
103 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:15



―親指姫が親指ほどの大きさなら、
 美貴の目の前にいたのは中指姫だった。


104 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:15
いやいや、有り得ない、有り得ない。
変だって!

何か変なモノが宙に浮いてるよ!!

何、これ。

つっこみたい…。

美貴のつっこみ魂が大きく叫ぶ。

でも、怖くてつっこめない。


相手はボケなの?
美貴はつっこみだよ。

漫才やるの?

きっと儲かるよー。
だって美貴の相手は人じゃないもん。

超話題コンビ!


…いけないいけない。
頭の回転が間違っちゃったよ。
混乱してた。
105 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:16
「なぁなぁ、ここ、開けてぇな。」

喋った!!
しかも日本語!

こんな変な人まで日本語を話すとは、
日本もなかなか有名になったなぁ。

しかも、関西弁…。

これ、ギャグ?

超つっこみ所満載。


しょうがない。
殺されちゃ困るし開けようか…。

だって、さっきのは脅迫かもしれないし。

あぁ、日本は怖くなったなぁ。

106 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:16




―でも、本当に窓を開けた理由は…



107 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:17
ガラガラ。

仕方なく、窓を開ける。
それと同時に冷たい風が入ってくる。

…『中指姫』も一緒に。

「はぁ〜。日本はめっちゃ寒いなぁ。
 前は蒸し暑かったのに…。
 カゴの生まれたところはもっとあったかいでぇ。」

誰?
日本は寒いって。
そんなこと言われても今は冬。
まぁ、もうすぐ春になるけど。

108 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:17




―反対に美貴はいつまで経っても…




109 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:18
それにしても、カゴって『中指姫』の名前?


「あ、どうも。初めまして。
 私、カゴ アイって言います。」


つっこみたーい!!

なんで日本にいそうな名前なのさ!
さっき日本で生まれてないような口調で
『日本は寒い』って言っただろうが!!

大体、お前は何で浮いてるんだああぁあ!


あぁ。
この子、つっこまれたいのかな。
110 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:19
「藤本美貴、です。」

とりあえず、挨拶は大事だからね。

「うん。知っとるで。
 だって、いっぱい調べてきたんやから。」

調べたぁ!?
プライバシーの侵害だよ。

訴えてやる!!


プツ。


美貴の中で何かが切れた。


「あのねぇ、美貴、あなたのこと全然知らないんだけど!
 そもそも何であなたは浮いてるの?
 人じゃないよ!しかも勝手に人のこと調べ上げてさぁ。
 何のためにここに来たの!?
 用がないんだったらとっとと帰ってよ!」


言いたいこと、全部言っちゃった…。
言ってからすごく後悔した。
111 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:19



―だって、今まで…



112 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:20
カゴ アイはきょとんとしてる。

不覚ながら、ちょっと可愛いな、なんて思っちゃったよ。
ちょっとだけだよ、ちょっと。

「あ、まだ何も言ってなかったなぁ。
 ごめんごめん。」

そう言ってケタケタ笑う。
無垢な笑顔だった。

「カゴ、星の国から来てん。修行のために。
 もう16やし、一人前にならなきゃなぁって
 思って、修行に来たんや。
 それで、見つけたのがミキティやったってわけ。」

ミキティって…。
美貴のこと?

しかもつっこみたいところがまた増えた。
113 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:21
星の国?
修行?

16歳に見えないよ…。

はぁ…。


「あのねぇ、あなた、美貴のことバカにしてるの?
 美貴はもう、星の国とかそんなメルヘンな
 話信じる歳じゃないし。」

あくまで、冷静に。
いつもみんなが怖い、という
美貴の冷たい目で睨みつけてやった。

これで『中指姫』はビビって泣きながら
その『星の国』に帰るだろう。

まぁ、ほんとはどこに住んでるか知らないし。
高性能なロボットなのかも。

「ほんまやで!カゴ、一人前の星の精になるために
 ここに来てん!ほんまやもん!」
114 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:22
ほら。
もう泣き声だ。
まぁ、泣かなかっただけ、褒めてやろう。
今帰るならご褒美にアメ玉一個、あげてもいいよ。

星の精なんて…どこぞの幼稚園生が語ることだよ。

美貴をなめるなよ、このガキめ。

「だってな、だって、のんが一人前に
 なってしもうたんやもん…。
 今まで、ずっとカゴと同じやと思ってたのに、
 急にいなくなってしもて、帰ってきたと
 思うたら一人前になってるんやもん…。
 そんなの、許せへん。カゴ、のんのライバルやから
 カゴも一人前になるんや!」

のんって誰?
同じ高性能なロボ?

世の中はハイテクになったなぁ。
美貴、知らなかったよ。
115 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:23
「はいはい。わかったよ。カゴさん。
 もう今日は遅いから寝ましょうねぇ。」

今は夜11時。
美貴はまだ寝る気じゃないけど、この目の前のお子様は
もう寝る時間でしょ?

「カゴさん言うなっ!あいぼんやで!」

あいぼんって…。
この子のあだ名?

なぁんかわかる気がする。
ぼんぼんしてるもん。

「じゃあ、あいぼんお家に帰って寝ましょうねぇ。」

美貴はあいぼんと言うところを声を強めていった。
あいぼんは『あいぼん』と呼んだことが嬉しかったのか、
いじけてた顔が輝いた。

「いやや!家なんかに帰ったらまだ一人前になってへんのって
 のんにバカにされるもん!」

何を言ってるんだ、このロボは。
116 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:24
「大丈夫だよ。のんちゃんだってわかってくれるよ。」
高性能なロボなんだから。

っていうか、なんで美貴、この子とのん気に喋ってるんだろう。
普段は、怖いイメージで通ってるのに。

「カゴはぁ、ミキティの願いごと、叶えに来たんやぁ!
 だから、ミキティの願いごとを叶えるまで絶対帰らへん!!」

願いごと?
美貴、去年の七夕には何もやってないよ。

七夕に願いごと書いたのは幼稚園で終わったし。
何て書いたかって?


忘れたよ。そんなの。

「美貴の願いごと?そんなのを何で
 初対面のカゴさんに叶えてもらうわけ?
 世の中そんなに甘くないよ。」

願いごとなんて、いっぱいあるよ。
欲深い人間だもん。
117 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/25(木) 10:25
だけどさぁ…こんなロボに何を頼むって言うの?
『先月の携帯料金払って。』とか?
『頭が良くなりたい。』とか?

そんなのだったら有り余ってるよ。

「…初対面やないもん。」

はぁ?
また意味不明なんですけどー。

美貴は、カゴさん、いやあいぼんとは初対面だよ。
だって、こんなインパクトあるロボと会えば
普通に覚えてるしさぁ。

「えーっ。絶対初対面だよ。美貴達、いつ会ったのさ?」

こんなガキが美貴に覚えがないことを覚えてられるはずがない。
覚えてたらすごい記憶力だよ。

あ、でもロボだから…。

「カゴ達が初めて会ったのはカゴは3歳やった。」

ええええっ!?
有り得ない有り得ない。

さすが、高性能なロボ。
よく覚えてるなぁ。
118 名前:ジカ 投稿日:2004/03/25(木) 10:33
更新しました。
ちょっと遅くなってしまいました。
実は私、学生なんですよ。
んで、昨日から春休み〜♪
ってことでもしかしたら更新が速くなるかも…です。

>99・33様
なっちのあれは実は、私、立ち読みなんです(苦笑
でもメンバーのことがいろいろ書いてあって、
愛を感じましたww
119 名前:33 投稿日:2004/03/26(金) 03:56
あー素敵だな。優しいな。大好きです。
120 名前:点ズ甘め 投稿日:2004/03/26(金) 09:02
やぐぼんをお願いします
121 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 23:43
うわ、みきぼん超面白いです!!
つっこみたがるミキティがいい。
頑張ってください。
122 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:05

カゴ、3歳の時に初めて星の国から外に出てん。
親と一緒やったけど…。

でもな、親とはぐれてもうたんや。

『おかーん!おとーん!』

その頃は、ずっとおとんとおかんと一緒に
おったから、ほんま泣きそうになったで。

カゴが初めて味わった一人ぼっち。

今思えば、あんな気持ち、
絶対味わいたくないないわ。

まぁ、今は星の国に帰ればのんが
しつこいぐらいにずぅっと傍に
おるから、そんな心配あらへんけど。
123 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:05


『どぉしたの?』

カゴが泣く10秒前くらいに
上から声が降ってきた。

優しくって、あったかい声。

上を見たら、めっちゃデカい顔。
人間の女の子やった。

『カゴ、カゴな、おとんとおかんと
 はぐれてしもうたんや…。』

結局、頼る人もおらへんかったから、
今までのことを話してしもた。

『じゃあ、お父さんとお母さんが
 迎えにくるまで、美貴のお家に
 いるといいよ、妖精さん!』
124 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:06



これが、ミキティとの初めての出会い。



125 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:06
『ねぇねぇ、お母さん!見て見て!
 妖精さんだよっ。お父さんとお母さんと
 離れ離れになっちゃったんだってぇ。
 でね、二人が迎えに来るまで美貴の
 お家にいてもらうことになったんだよ。
 ねぇ、この妖精さん、可愛いでしょ?』

ミキティは家に帰って早速夕飯の
準備中のおかんに声をかけた。

ミキティのおかんはミキティの方を振り返った。

ミキティは、おかんに見えるようカゴを
小さな手のひらにのせた。

ハイスピードで上に手のひらをあげたから、
めっちゃ怖かった。
126 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:07
『美貴?何行ってるの?
 妖精さんなんていないじゃない。』

ミキティのおかんは不思議そうな顔。
ちゃんとカゴとミキティのおかん、
目ぇ合っとるのに。

3歳の時のカゴは、何も知らんかったけど、
今思えば何で見えんかったかはわかる。

いろいろ勉強したからな。

結局、おとんにもわかってもらえず、
ミキティの話は信じてもらえんかった。

ミキティ、ショック受けた顔してたで。
泣きそうやった。

『みきちゃん、あれ、何?』
127 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:07
カゴは、ミキティの家に飾ってある
変なものを指差した。

ずっと気になってたんや。

『あぁ。昨日はね、七夕だったの。
 だから、願いごと書いて、
 笹の葉っぱにつけたんだよ。』

『願いごと?
 あそこに書けば、願いが叶うん?』

それなら、この国はカゴたち、
星の精は必要ないなって、思った。

3歳の時のカゴでも、両親が
やっとる仕事ぐらいわかるからな。

『んーわかんない。サンタさんの方が
 絶対願いごとは叶うよ。』
128 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:08
なんやって!!
サンタさん!?

ミキティの国はそんなやつがおったのか…。
しかも、絶対願いごとは叶うんやって。

ひそかに、ライバル心を抱いたで。
炎がメラメラ燃えてた。

『美貴ね、短冊に<ようせいさんにあいたい。>って
 書いたんだよ。自分で。すごいでしょ?
 ひらがな、いっぱい勉強したんだぁ。
 でね、ほんとに妖精さんがくるんだもん!
 美貴の願い、叶ったよ。』

ほんまに!?
妖精さん、ってカゴのこと?

めっちゃ嬉しい!!

もしかして、カゴはミキティに逢うために
おかんたちと離れたのかもって思った。
129 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:08
夜。
カゴはミキティが用意してくれた
小さな布切れの中に入れてもらった。

蒸し暑かったから、それでも十分や。

ほんとはミキティと一緒に寝たかったんやけど、
ミキティ、寝相が悪いらしいねん。

『おやすみなさい、妖精さん。』
『おやすみ、みきちゃん。』


ミキティが用意してくれた布切れ、
めっちゃあったかくて、おかんの
腕の中にいるみたいやった。

だから、すぐに寝れた。
130 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:09


『アイ、アイ。起きて、アイ。』

ん?
誰か、聞き覚えのある優しい声。



『ん…。あ、おかんや!』

目の前には大好きなおかんの顔。
その後ろにはおとんも一緒やった。

おかんは力いっぱいカゴを
ぎゅうってしてくれてん。

布切れよりも、あったかかった。

『アイ、もうはぐれちゃだめじゃない。
 さぁ、もう帰るわよ。』

おかんはそっとカゴの頭をなでなでしてくれた。
それだけで、カゴはめっちゃ安心。
131 名前:みきぼん 投稿日:2004/03/29(月) 09:09
『うん。…あ、みきちゃん…。』

よくしてくれたミキティを
ほっとけへんかった。

だって、願いごと。

<ようせいさんにあいたい。>

あいたい、やから逢うだけでええの?

『アイ、大きくなったら、修行に行くでしょう?
 その時に、またこの子に逢いにくるのはどうかしら?』

大きくなったら…。
修行、つまり願いごとを叶えること。

みきちゃんの願いを。

『うん!カゴ、絶対サンタさんに負けへんでぇ!』

サンタさんに宣戦予告や!

『サンタさん?まぁ、頑張ってね、アイ。』

『おうっ!!』

132 名前:ジカ 投稿日:2004/03/29(月) 09:15
過去、書き上げました。

>119・33様
いやいや…。
ありがとうございます。
なんかストレートに言ってくれると照れますね…。

>120・点ズ甘め様
やぐぼんですね。
進むのが遅いので、もう少しかかると思いますが、
少々待っててくださいね。
私もやぐぼん好きなので。

>121・名無飼育さん様
やっぱりミキティはつっこみかと。
娘。はボケボケっぽいですよね。
つっこみは大変です。
133 名前:33 投稿日:2004/03/29(月) 22:09
いいなぁー。こういう話を書ける作者さんが羨ましいです。
134 名前:みきぼん  投稿日:2004/03/31(水) 09:36

やっぱりこいつは、高性能なロボットだ。
美貴はこんなやつと会った覚えはない。

「なぁなぁ、なんか願いごとあらへんの?」

願いごと?

だからそんなの有り余ってるってば。

「カゴ、一人前になるために、人間の願いごとを
 叶えなきゃあかんの。」

へぇー。

でも、この話、マジだよね?

さすがに高性能なロボを使った
悪徳商売じゃないでしょ?
135 名前:みきぼん  投稿日:2004/03/31(水) 09:36
このロボの話を信じたとしよう。

美貴の願いごとを叶えてロボは
夢にまで見た一人前になれる。

そして、美貴も自分の願いが
叶えられて大満足。

これは、『たなからぼたもち。』


じゃなかたった、『一石二鳥。』


最初のは聞かなかったことにして欲しい。


「じゃあさ、ロ…じゃなかったあいぼん。
 美貴の願い、叶えてくれる?」

危ない危ない。
ロボって言いそうになっちゃったよ。

あいぼんね、あいぼん。
136 名前:みきぼん  投稿日:2004/03/31(水) 09:37
「もちろん!
 このあいぼん様にまっかせなさい!」

ロボは自分の胸をとん、と叩いた。
『任せろ。』と言ってるつもりだろうか。

なんでこんなに自信満々なんだろう?

「じゃあ言うから聞き逃さないでよ。
 先月の携帯料金払ってよ、もちろん
 あいぼんの自腹ね。
 それからね、こないだ雑誌で見た服が欲しいんだけど。
 あ、あと、この部屋、汚いでしょ?片付けてよ。
 そうそう、毎月のお小遣い、あと少しでいいから
 値上げするようにしてよ。
 毎月、最後の方ピンチになるからさぁ。
 それと―」

「ちょっと待ったぁ!!」

ロボは手を前に突き出してストップのポーズ。
137 名前:みきぼん  投稿日:2004/03/31(水) 09:38
何さ何さ。
まだあるってば。
聞き逃したの?

まぁ、ちょっと早口だったかなって思ったから
もっかい言ってもあげてもいいよ。

だけどちゃんと聞いててよね。

「カゴ、願いごと叶えるのは、一つだけなの。
 それに…。」

ええっ!!
何それー。

一つってしょぼくない?
ケチだな。

誰?
このロボ作ったやつは。

「じゃあさお小遣い、値上げして♪」

この願いが叶えば部屋の片付け以外は
叶ったようなものだし。
138 名前:みきぼん  投稿日:2004/03/31(水) 09:39
「うーん…。」

何考え込んでんのさ。
早くやっちゃってね。

でも、どうやるんだろう?

話し合いに行くのかな?
それはオススメできないよ。

美貴、こないだおねだりしに行ったばっかだし。

「まぁ、やってみるか。」

え?
ロボ、超真剣な顔してるよ。
139 名前:ジカ 投稿日:2004/03/31(水) 09:42
ほんとはもうちょい更新したかったのですが…。
時間がないので。
ここまでで。

>133・33様
ありがとうございます。
ただ、私も他の作者さんで、
羨ましいなぁ、なんて思う人もいます。
みんな、そうなんでしょうね。
140 名前:33 投稿日:2004/03/31(水) 16:55
藤本さんいい感じ。続き楽しみ
141 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 10:45



「じゃんけんぴょん!じゃんけんぴょん!
 じゃんけんぴょん!」



142 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 10:59
え?
いやいや。

何さ『ぴょん』って!

じゃんけんですか?

あぁ…。
つっこんでいいのかな?

つっこんじゃうよ?
ねぇ、聞いてる?

聞いてないよね。

なんか言ってることはふざけてるわりに
超真剣な顔だし。

後でにしよう。

「……。」

あ、静まったよ。
143 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:00
良かった良かった。
あんな『ぴょん』とかでかい声でさけんでたら
美貴が変な人だと思われちゃうよ。

家族はロボの存在知らないんだから。

「ねぇ、どうしたの?
 値上がりした?」

こんなんで値上がりしなきゃ美貴、
ロボを掴んで外に投げ飛ばすよ。

だってあんたは、中指姫。
小さいんだから。

やろうとすれば美貴はロボを投げ飛ばせます。

あ、でもロボットだから重いのかな?

どうなんだろう?

「んー…。多分なぁ…。」

ロボは美貴から目をそらす。
目が泳いでるって言うのはこういうことを
言うのかって思った。
144 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:03



「ミキティ、お願いがあるんやけど…。」

え?
何だそれ。

願いごと叶えてくれるのは
そっちでしょ?

なんで美貴がロボのお願い聞く必要があるわけ?


って思ったよ。
心の底から。



でもね、言わないよ、言わない。

我慢、我慢。


だってほんとにお小遣いが
値上がりしてるかもしれないじゃん。

そしたらロボのお願いなんて朝飯前だよ。

もう夜だけどね。
朝ごはん食べちゃったけどね。
145 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:06
「何?お願いって。」


「あんなぁ、ミキティのおかんに確認してきて
 欲しいんや。」

なんだ。
それだけか。

「…いいよ。」

「ほんまっ!?
 ミキティ、おおきにぃ。」

そんなこと言いながらロボは
『早く確認してきて』って言わんばかりに
手をふってる。


生意気な。

146 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:08

「お母さん、お母さん。」

リビングに行くとお母さんは
皿洗い中だった。

「何?」

あぁ…。
なんか機嫌悪そうだ。


「あのさ、美貴って、毎月お小遣い―」

「何言ってるの!これ以上あげられないって
 言ってるでしょ!」

え?
まだ用件言ってないのに…。
『お小遣い』って単語出しただけなのに。

「『これ以上』って、いくら?」

これで、確認できるぞ。

147 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:10


「あ、ミキティどうやった?」

あー!
いらいらするな!!

何が『あ、ミキティどうやった?』だ!

ほんとにつまみあげて窓から放り出すよ?

「全然だめ。変わってない。」

人が機嫌悪い人に聞きだしたのに。
お小遣いは一円たりとも上がってない。

「やっぱあかんかったか…。」

『やっぱ』って…。
知ってたの!?
148 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:11
お小遣いは全く値上がりなし。
美貴のロボに対する評価は値下がりですよ。

「…ミキティ。」

「何さ?」

もう口も利きたくないよ。
急に窓叩いてさ、美貴にすごい怖い思いさせて、
美貴の部屋に馴れ馴れしく入ってきて、
美貴のこと勝手に調べ上げてさ。

プライバシーの侵害だよ、ほんとに。




「んと…ごめん…な。
 カゴ、ちゃんと言えばよかったんかもしれん。」


………。


そんな、謝られたって…。

そう、思ったよ。

149 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:12


だけどさ、だけど、ロボ…あいぼんがさ、
ほんとに申し訳なさそうな顔して謝るから…。
泣きそうな顔してるから…。



つい、許しそうになっちゃうよ。



ねぇ、どうしてくれる?


「あんなぁ、カゴ、人の願いごと叶える時、
 魔法使うねん。」


「…うん。」

あのさっきの変わったやつ?

あれ、魔法だったんだね…。
急にあんなことされたらひくよ、絶対。

「でもな、魔法使えるのには掟があってな。」


「…うん。」
150 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:13
掟?
魔法にもそんなのがあったんだね。
っていうか、魔法?

ロボのくせして。

「人の、きれいな願いごとやないと、
 カゴら、星の精の魔法って効き目がないんや。」


「…そうなんだ。」

じゃあ、美貴の願いごとはきれいじゃない、
汚い願いごと?

っていうか、人間の願いごとって、
みんな、汚い願いごとばっかでしょ。

「さっきのミキティのはあかんかったん、
 カゴ、なんとなくわかってた。
 だって、カゴ、前にミキティと逢った後な、
 誰にも負けへんぐらい、勉強したんや。
 どういう願いごとは叶えられへんのぐらい、わかってたん。」


「人の、欲望?」
151 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:14
ちょっと、難しい言葉使っちゃったよ、美貴。
なんとなく、美貴もわかった気がするよ。

まぁ人の欲望から生まれた願いごとが全部叶っちゃたら、
世界はぐちゃぐちゃになっちゃうし。



「カゴ、ミキティの喜ぶ顔、見たかった。
 せやから、やってみたんやけど…。」


はぁ…。
この子はどうしてそんな恥ずかしいこと
さらりと言っちゃうんだろうね。

ちょっと、俯いてるけど。
耳、赤いよ?

「あんなぁ、一人前になるには
 魔法使って人の願いごと叶えなあかんねん。」

へぇ。
そりゃ大変だ。
152 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:14
第一、きれいな願いごとを持った
人を探すのも困難だね。

「でも、お小遣いの話、カゴ的に悔しいから、
 ちょっとカゴからお願いしに行ってくるわ。」

そんなふざけたこと言って、ふわふわと
美貴の部屋を出て行った。

いや、だめだってば。
怪しすぎ!

これで美貴の名前出されたら美貴は…。

よし。
一緒に行くと厄介になりそう。
なら、隠れて見てよう。


ふわふわ。
ふわふわ。


絶対誰か見たら、捕まえるか、
逃げるかだろうな。

どっちにしろ、警察行きになりそう。

あ、リビングに入りました!!
153 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:16



よし。
ここならちょうどお母さんが見えるぞ。

美貴はナイスポジションを発見。
ここから二人を見守ることにする。



「なぁなぁ。」

つんつん、とお母さんの背中をつつく特攻隊長。
特攻隊長、なんて言葉、あんま意味わかんないのに
使っちゃったよ。

なんか、一人で突っ走ってそうな感じだから。

今、機嫌悪いんだから。
気をつけてね。

あれ?

お母さん、完全無視。

なんで?なんで?
154 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:19
「なぁなぁ!」

特攻隊長、声を少し大きくしてお母さんの目の前に。
ちょっとちょっと、いい加減やめなよ。
キレるよ、お母さん。
キレたら怖いんだから。

虫取り網とか持ってきて、捕まえちゃうよ。

えっ!?

お母さん、またもや無視。

有り得ない。

あんな目の前に特攻隊長がいるのに。
お母さん、誰かが目の前にいても気にしないのかな?
155 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:23
「なぁなぁ!」

特攻隊長、声を少し大きくしてお母さんの目の前に。
ちょっとちょっと、いい加減やめなよ。
キレるよ、お母さん。
キレたら怖いんだから。

虫取り網とか持ってきて、捕まえちゃうよ。

えっ!?

お母さん、またもや無視。

有り得ない。

あんな目の前に特攻隊長がいるのに。
お母さん、誰かが目の前にいても気にしないのかな?
156 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/02(金) 11:27
え?
普通、気にするでしょ?


あ、特攻隊長、今、美貴の方へ向かってきます!

何事もないような表情だ!

「あかん。だめやわ。あの人は。」

「え?何がだめなの?」

あ、声出しちゃった。
これじゃ、美貴はお母さんから見ると
美貴と変な生き物は知り合いってことになる!

「ね、あいぼん。美貴の部屋、戻ろう。」
157 名前:ジカ 投稿日:2004/04/02(金) 11:33
更新しました。
なんか重くて、超大変…。

>140・33様
ミキティは何気に好きなんですよ。
つい最近気になりだし始めて…。
基本的に娘。のみなさんは好きですね。
158 名前:33 投稿日:2004/04/02(金) 17:14
二人のやり取りがとても可愛いです
159 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:05
「あいぼんっ!」

ここは、美貴の部屋です。
あいぼんを連れて帰ってきたよ。

だって、うちのお母さんにあんな
目の前で話しかけるから。

「ん?何?」

当の本人はと言えば、
のんきそうに美貴のベットの上で
一人でくつろいでる。

まぁ、美貴もそのベット好きだし。

汚さなきゃ全然構わないんだよ。
汚さないでね、あいぼん。

「なんであんな近くまで行って
 話しかけてるの?危ないでしょ!」
160 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:10
美貴、今思ったんだけど、
なんでこんなにあいぼんのこと
心配してるんだろうね。

だってさ、美貴、前にも言ったけど
学校では『怖い』ってイメージがあって。

だから美貴も自分で、『あぁ、自分って怖い人なんだ』
って思ってて。

「カゴら、星の精を見ることのできる人って
 限られてるんや。」


はぁ?
限られてる?

それなら、美貴には見えて、お母さんには
見えなかったって言うのも納得できる。
161 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:12
でも、美貴はまだ目の前の中指姫が
本当に星の精とは思ってない。

もしかしたら、高性能なロボット…。

考えれば考えるほど、いろいろな可能性が
いっぱいでてきて。

本人に聞かなきゃわからない。

「限られてるって?」

あいぼんは、『はぁ』と深呼吸。
162 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:15





「心がきれいな人やないと、
 星の精は見えへん。」



163 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:17
え?

じゃあ、美貴は?

美貴は、心がきれいな人ってことになるじゃん。
さすがにそこまで美貴も馬鹿じゃない。


そうなると、お母さんは心がきれいじゃない、
汚いってことになるね。


「カゴ、そういうのも勉強した。
 だから、ミキティのおかんはもう…。」


『人は一度、心が黒くなったら、もう二度と
 白くはなれない。』


って、よく言うよね。
似たような言葉を何度かテレビとかで
見たり聞いたりしてる。
164 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:19
そりゃ、何年も生きてれば、
黒くなっちゃうでしょ。

小さいうちは、誰もが持ってる
真っ白いきれいな心。


みんな、年を重ねていくごとに自分が気付かないうちに
だんだん黒くなってゆく。



「じゃあ、美貴…きれいな心なの?」

信じらんない。
有り得ないでしょ。


「うん。そうやで。
 だって、カゴのこと見えとるし、
 今だってこうやって喋ってるやん。」
165 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:20
それって、いいことなのかな?
美貴、自分で心がきれいなんて思ってないし。

だって、自分でわかってるよ。
普段、自分が考えてること、
どれだけ黒いことかぐらい。

あいぼんは、美貴よりも何百倍も、何千倍も
きれいな心の持ち主だと思う。

少なくとも美貴があいぼんの頃の年齢の時は、
もっとひねくれ者だった。

っていうか、反抗期ってやつですよ。


「美貴…汚いよ、心。絶対そうだよ。
 たまたまあいぼんのことが見えるだけだよ。」
166 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/06(火) 10:20
頭がパニックに陥るって言うのはこういうことなんだね。
なんか、自分でもわからないうちに頭が
ぐるぐるまわって、だんだん熱くなって。

自分でも何言ってるかわからない。

このままだと、思ってること、全部あいぼんに
言いそうになっちゃう。

抑制が効かないよ。


こんなの、初めて。


わかんないよ。


167 名前:ジカ 投稿日:2004/04/06(火) 10:23
ちょっと更新です。

>158・33様
なんかちょっとあいぼんが幼すぎたかな、と後悔してます。
ミキティもなぁ…。
このあとわかると思うんですが
キャラがずれてきた気がします、ミキティ。
168 名前:33 投稿日:2004/04/07(水) 20:22
幼いというか可愛いというか、でも楽しみです。優しい気持ちになれる
169 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:35
「そんなに自分の心がきれいなのは嫌なん?」

ほらね。
今あいぼん、美貴よりももっときれいな
黒目がちな目で美貴を見つめてる。

「嫌っていうか…。信じらんない。」

美貴、今どうしてこんなにも
熱くなってるんだろうね。

普段は『冷静かつクール』な藤本美貴なのに。

こんな姿を美貴のクラスメートたちが
見たらなんて思うだろう。

「カゴ、前から思ってたんやけど
 ミキティ、ほんまに心きれいやと思うよ。」

はい?
この人…いや、星の精…は何を言ってるんだろうか。
しかもやけに真剣な顔で。
170 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:36
似合わないよ、その顔。


笑ってたほうが、似合うよ。


あぁ、恥ずかしい。
なんで美貴はこんなこと考えるようになったんだろう。

「カゴ、心のきれいなひとにしか見えへん。
 ミキティのほんまの願いごとは、
 まだカゴに言ってないんやない?
 心の奥にしまってあるんとちゃう?」

何それ。
美貴のほんとの願いごとってなにさ。

そんなの、お小遣いの値上がりだってば。
さっき言ったでしょ?

なんでそんなに知ったような口をきくの?



頭に血が上ってきたっぽい。


171 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:37


「あいぼんには美貴の気持ちなんてわかんないよ!
 美貴の願いごと、もう言ったじゃん!
 自分で叶えられないから?
 だからそうやって美貴の願いごとをさりげなく
 変えようとしてるんだ!
 どうせ、あいぼんだって、一人前になりたいだけなんだ!」




「…っ!」


あいぼん、ちょっと涙目になってる。
アメ玉二個あげるから。

もう帰ってよ。




そうじゃないと、美貴は―


172 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:37
「なんやねん!
 そうやで。カゴ、一人前にめっちゃなりたいで!
 でも、だからってミキティの願いごと
 変えようとしたわけちゃうもん!
 カゴ、ほんまに思ってたこと言っただけや!
 カゴがミキティの気持ちわからへんように
 ミキティやって、カゴの気持ち全然わかってくれへん!」



「何それ!
 そんなにウチら、気が合わないんなら
 あいぼんに願いごとなんか
 叶えてもらわなくても結構ですー。」


「そんなの、こっちからお断りや!
 もうええ!帰るってやる!!」


あいぼんは、ふわふわと入ってきた窓から、
どこかへすごい速さで飛んで行ってしまった。


あいぼんの代わりに冷たい風が
美貴の部屋中に入り込んできた。
173 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:38
なんだろうね、この空しい感じ。

心が抜き取られちゃったみたい。



さっきまで、騒がしかったからかな。



うん、そうだよ。

だってこの静けさはいつもと同じ。

何も変わらない。




ただ、一つ変わったのは





美貴の中で新しい感情が生まれただけ。
何もなくなってなんかない。


それなら、いいじゃん。

174 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:39
美貴が、あいぼんと一緒にいて、知ってしまったもの。





頭がパニックになること。
本気で怒ること。




誰かと一緒にいて、『楽しい』って思えること。






うん、そうだよね。



今、あいぼんがいなくなって
もう誰も美貴の話なんか聞いてないから言うけど、
別にあいぼんのこと嫌いじゃないよ。


むしろ…好き、だし。
175 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:39
本当に窓を開けた理由は、あいぼんが
可愛らしい笑顔で、『なぁなぁ、ここ、開けてぇな。』と
言ったからで。

だって、寒そうだったんだもん。
何とかしてあげなくちゃ、って思ったのね、最初。




美貴にはいつまで経っても
春は来なくて。



美貴は言いたいこと、全部言っちゃったこと、
すごく後悔したよ。


だって、今まで…それで近寄ってきてくれた子たちを
何人振り払ってきたか…。

きっと、数えきれないほどいたと思う。
176 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:40
でも、あいぼんは違ったね。
美貴が『怖い』って言われる顔で睨んでも
ずっと笑顔を絶やさないで。


美貴、ほんとは嬉しかったんだろうね。


ずっと、こういうのが欲しかったのかもしれない。



これが、あいぼんの言ってたことなのかな?

ねぇ、あいぼん。



答えてよ。



なんで、美貴がほんとの願いごと見つけた時に
側に居てくれないの?
177 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:40
あいぼんのばか。
あいぼんのアホ。


あいぼんなんか嫌いだ。
あいぼんなんかいなくなってしまえばいいのに。





こう考えれば、すぐに忘れられるよね。




今は、こんなにも…。




寂しいよ、あいぼん。


ねぇ、美貴、視界が歪んできてるよ。
178 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:41
こんなの、あいぼんに逢ってなかったら
絶対経験しないですんだのに。



なんであいぼん、美貴の家に来たのさ。


あいぼんのばか。
あいぼんのアホ。


あいぼんなんか嫌いだ。
あいぼんなんかいなくなってしまえばいいのに。



179 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:42





あいぼん、逢いたいよ。





180 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:42
―――
夢みたいな日は、ほんとにあっと言うまで。
だって、たったの数時間だよ。


あれから、もう一ヶ月。



なんで、忘れられないんだろうね。


美貴、自分のこと、少しだけどわかった気がする。

でも、最初の一歩が踏み出せない。



あいぼんのばか。
あいぼんのアホ。


あいぼんなんか嫌いだ。
あいぼんなんかいなくなってしまえばいいのに。
181 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:43
ずっと、考えてたよ。


だけど、結局、思うことは
一人の半人前の星の精のことばっか。


今、どうしてるかな?
のんちゃんにバカにされてないかな?


バカにされてたらのんちゃんを
美貴が睨みつけてやりたい気分。


泣かしちゃうよ。





もう、一人前になれた?






もう、美貴には逢いにきてくれないのかな?



182 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:44
独特な名前、『ミキティ』って。

呼んでくれないの?









ねぇ、寂しいよ。




美貴の心にはぽっかり穴があいてるよ。


なんとかしてよ。



なんとかできるのはたった一人だけだよ。
183 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:45
彼氏とか、学校のクラスメートとか
お母さんとかお父さんでもない。




お姫様みたいに、きらきら笑うんだよね。


だから、中指姫。



中指ぐらいの大きさだから、
ちっちゃなガキ共にいじめられてない?


相変わらずの関西弁でやっていけるかな。
だって、美貴が窓を開けちゃうぐらいの
きらきらした笑顔だもん。


嫌でもみんな近寄ってくるよ。
184 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:45

コンコン。

そういう窓を叩く音。
いや、正直かなり『来た!』って思ったよ。



「なぁなぁ、ここ、開けてぇな。」



あ!


窓の外にいたのは相変わらずの彼女。


疑いもせずに窓を開けた。



「…あいぼん。」
185 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:46
ほらね。

窓からの訪問者は絶対、
不思議な星の精だと確信してたよ。



「えへへへへ。
 おかんと小さい頃約束したし…。
 帰ってものんにバカにされるし…。
 大変やったんやで、カゴ。
 プライド、ズタズタになってん。
 だから…、その…ミキティがよければ、
 カゴ…えっと、あの、な…。」


かわいいなぁ。
ほんとに。


照れちゃってるよ。


美貴の心に、そっと優しく近づくんだもん。
186 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:47
そうすると自然に美貴からも
寄り添いたくなっちゃうんだな、これが。



「…いいよ、別に。
 美貴もね、願いごとわかったんだ。」


今度は美貴が恥ずかしい。



「ほんまに!?」

あいぼんの目はきらきらしてる。
うん。

その方が似合ってるよ。


「うん。」
187 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:47
「なぁ、何?何?」


あいぼんが美貴にぐっと近づいてきた。


ちょっとちょっと、近いよ。


あはは。

あいぼんの顔、どアップ。


でも、こんなこと考えてる場合じゃあないんだ。


ちゃんと、言わなきゃ。


「あいぼん。」


「なん?」

188 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:48
「魔法使わなきゃ、一人前になれないんでしょ?」


前、言ってたもんね。
美貴、そんなにばかじゃないし。

しかも、あいぼんが言ったことだよ。


「うん、そうやで。」

ほら、当たりだ。

でも、ちょっと悲しいな。
ショック。


「あいぼん、一人前になりたいんだよね?」

前、言ってたもんね。
あいぼんの、夢だもんね。

夢は、叶えたいでしょ。
189 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:49
「うん、もちろん!」


まるで、『美貴が叶えてくれるんだ』っていう
期待した顔で美貴をじっと見つめる。

「じゃあ、悪いけど、美貴、願いごと言えないよ。」


ごめんね。
力になれなくて。

でも、これが美貴にできる精一杯のこと。
だから、他の子を当たってあげて。


「なんで?なんでだめなん?
 ミキティの願いごと叶えるの、カゴの
 二つ目の夢やのに。」


そんな、嬉しいこと言わないで。
せっかくの決心が揺らぎそう。
今だって、不安定なんだから。
190 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:49
ねぇ、泣かないでよ。

今の美貴の気持ちはアメ玉じゃ収まらないよ。




「美貴の願いごとが叶うと、あいぼん、
 一人前になれないの。」 


「わけわからん。」


ほんとに、泣かないで。


察してよ。
あいぼんの鈍感。


「なぁ、ミキティの願いごと何なん?
 言うだけならええやん。」

もう…。
恥ずかしいんだってば。


顔、赤いかも。
191 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:50
やだやだ。


もう有り得ない。

言うからね。
言っちゃうよ?



「…ぃてほしぃ。」



聞こえたかな?

自分でも小さい声だと思ったから。


「なん?聞こえへんよ。」


はぁ…。

なんか、緊張するな。
今までこんなこと、心から言ったことなかったから。


似たような言葉は、学校の作文とかで
いっぱい言った気がするなぁ。


きっと、心からの言葉じゃなかったから堂々と言えたんだ。
192 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:51










「そばにいてほしい…。」












193 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:52
もう、やだ。

あいぼんといると頭がパニックになることが
すごい多い。


あいぼんにからかわれてるみたいで。






「ミキティ…。」





そうだよ。
この願いごとは美貴の心からの願いごと。


194 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:52
だけど、この願いごとは
あいぼんの魔法で叶えるものじゃなくて。



これじゃあ、あいぼんは一人前になれない。




ごめんね、わがまま言って。





195 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:53







「…ええよ。」







196 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:53


「え?」





「ええよ、別に。」




今、何て言った?


だって、そんな軽く言っちゃうと思わなかった。

197 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:57
「だって、あいぼん…。
 一人前になれないし。
 それに、故郷にだって…。」



美貴のそばにいてくれるってことは、
ここにいるってことで。



いい加減信じるよ。
星の精の話。





「ええよ。だって、ミキティのこと
 好きやし。一生半人前でええよ。」
198 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:58
信じらんない。







こんなことってあり?




こんなに嬉しいことって初めて―






「これからもよろしゅうな。
 ミキティ。」




いつものような笑顔で笑うあいぼん。


小さな手を美貴の前で差し出した。


199 名前:みきぼん 投稿日:2004/04/15(木) 19:58




これって、握手?




「うん。よろしくね。」







…end
200 名前:ジカ 投稿日:2004/04/15(木) 20:01
遅れてすいません。
いろいろあって…。

この話の詳しいことがあるのですが
それはまた後に。

>168・33様
これを読んで暖かい気持ちになれたら
いいですね。
ありがとうございます。
201 名前:つみ 投稿日:2004/04/15(木) 22:25
どうも!みきぼんをリクした者です!

心温まるお話をありがとうでした!
これが初みきぼんでした。
何かこの話にまだあるのですか・・・?
楽しみにしてます!
202 名前:33 投稿日:2004/04/17(土) 02:38
じんわりきたー。
少し泣いちゃいました。
203 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:05


――
地球から何千億km…いや、もっともっと遠くに
離れたところに青い星がある。



地球の四分の一ほどの星。
自己主張しているかのように輝いている。


ここは、そんな場所。



204 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:06
そんな星で、青い星に負けないくらい
きれいな青色をした空を見上げてる者がいる。


姿形はあまり地球に存在する『ヒト』と
なんら変わりはない。


ただ、少しほんの少しだけ、
耳が『ヒト』よりとんがっていた。

「はぁ…。」

彼女は、ため息をつく。

「今日来ちゃうのかなぁ…。ナツは。」


どうやら、話もできるらしい。
205 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:07
彼女の近くには『ミキ』と書かれた立て札があった。



「ミキたーん!一緒に遊ぼうよ〜!」


「…アヤちゃんだ。」

ミキはぴょこん、と跳ね起きた。

ミキがゴロゴロと空を見上げてた場所は
自分の家の屋根の上。

決して、豪華とは言えず、
台風がきたら、最初に飛ばされそうな
ボロボロの家。

質素という言葉が一番似合うだろう。

『おーい!』と言うようなポーズで
ミキに手を振るのはアヤ。
206 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:08
アヤも『ヒト』と似ているが
指が四本。
一歩間違えば凶器にもなりそうな
とがっている爪。

ミキは屋根からひらりとジャンプ。
着地だって、簡単簡単。

だって、屋根が低いところにあるんだもん。

「ミキたん、今日は魔者のみんな集まってるよ。
 ねぇ、ミキたんも一緒に遊ぼうよ?」



ミキも、アヤもみんな魔者。



でも、ナツは――





「うん、いいよ。遊ぼう!」


207 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:08
――
ミキがアヤと一緒に魔者たちが集まる場所に
向かった頃…。


「あれ〜?おっかしいなぁ。
 いつもは屋根んトコにいるはずなのに…。
 なぁんでいないんだろ?」

小柄な一人の女の子が『ミキ』と
書かれた立て札の所に姿を現した。


「ねぇミキー!
 ナッチ来たよー!」

『おーい!』と言うようなポーズは
さっきのアヤとそっくり。

「なぁんだ。いないのか。
 せぇっかくナッチが遊びに来たのに。


 もぅ…。帰っちゃうぞー!」
208 名前:なちみき 投稿日:2004/04/24(土) 11:09
どうやら、この者は
独り言が多いらしい。


「……。」


『帰っちゃう』なんて言ったって
ミキは来ない。

「なんだべさ!」

彼女は、興奮すると不思議な訛りになる。
それは可愛らしいが、
自分がどれだけ興奮しているかがすぐにわかってしまう。


「ねぇ、帰っちゃうよー!
 帰っちゃうからねー!」

そんな言葉を残して
彼女は帰っていった。


でも、少し足が重たかった。
209 名前:ジカ 投稿日:2004/04/24(土) 11:11
始まりましたー。
設定考えるのにずいぶんかかってしまった…。

普段何かしながら考えててもなかなか思い浮かばなくて。
真剣に何もしないで考えてるとふと思い浮かぶんです。


あ、それからみきぼんの話を少し。
175の所これは、最初から書きたいと思ってました。

だから、結構前にちょっと公開したんです。
106と108と111で。

気付いてくれたかなぁ?
さりげなく、他の所でも
その人の気持ちを表現してたりしてるんです。

例えば、みきぼんでは途中から
ミキティがあいぼんの呼び方が変わってたりします。
『ロボ』→『あいぼん』とか。

詳しい話っていうのはコレだけです。
あんま詳しくないか…。

気付いてた人もいると思いますが。
210 名前:ジカ 投稿日:2004/04/24(土) 11:12
>201・つみ様
リクした方から感想いただけるのは嬉しいですね。
私も書いたのは初みきぼんです。
みんな『初めてさん』でしたねww
詳しい話は先ほど話したことです。
気付いてました??

>202・33様
ほんとですか!!
みきぼん、最後ちょっと雑だったかなって
思ってました…↓
でも、あいぼんのあっさり感が伝わってくれれば、と
簡単に仕上げてみました。
211 名前:33 投稿日:2004/04/25(日) 01:07
わぁーなちみきだぁー嬉しい!
前の話も面白かったですよ! ちゃんと伏線もいかされていて。
この話もすんごい楽しみです!
212 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:05
――
「なんか今日のミキたん、元気ないぞ。
 どぉかした?何かあった?」

ぐいっと顔をミキに近づけるのは
ミキをここに誘ったアヤ。

二人は大の仲良し。

アヤだけは、ナツの存在を知っている。

「ナツのコト?」

アヤはいっつもそうだ。
ミキが考えてるコト、全部お見通し。

ミキは、アヤの考えてるコト、
全然お見通しじゃないのに。

ズルいよ、アヤちゃんだけ。

時々ミキは、アヤが相手の心を読める力を
持ってるんじゃないかって思ってしまう。
213 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:06
もし、そんな力が存在したならば…と
ミキはよく考えていた。

もし、相手の心を読めるなら、ミキは、
こんなに不安になるコト、ないのかな?

もし、ミキが相手の心を読める力を持ってたら、
ナツの心を読んだのに。

「……。」

ミキは何も言い返せなかった。
気まずくて、俯くミキ。


だって、ホントのコトだから。



「あ、ねぇ今ぜぇったいナツのコト
 考えてたでしょぉ?」


ほら、いつもこうやってアヤに当てられちゃう。
214 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:07
「ミキたん、わかりやすいもん。
 アタシの言ってるコト、当たってる時、
 いっつも下向いて、何にも言わないもんね!」

『スゴイでしょ?』と言ってる様な
自信満々のアヤの顔は嫌いじゃない。

むしろ、そんなアヤは可愛いらしいと思う。

だって、いっつも考えてるコト当てられても、
どうしても憎めない。

それが、アヤの魅力。


「ねぇ、アタシにも教えてよ。
 ミキたんってばぁ!」

ぐらぐらとアヤがミキを揺らすから、
ミキは地震が来たような錯覚さえ起こす。

「ちょ、アヤちゃん!」


すると急にアヤはピピピ、と
何かを感じ取ったらしい。
215 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:08
「なんかアタシにも言えなそうな問題の予感!
 いいよ、ミキたん、言わなくって。
 ミキたんにもいろいろあるもんねっ。」

アヤは相手の考えてるコトを当てるのはもうプロだ。

いつかそういうのが役立つコトをしてほしいと
ミキは心から願っていた。


「ねぇ、ミキたん、今日テンション低いよ!
 一回頭休めた方がよいんじゃないですかぁ?」

アヤは、優しい。
さりげなく、ミキや他のみんなにも気を遣ってくれて。

あったかいんだよね。


こういうところは少し、ナツに似てると
ミキは思った。



「ううん、平気。
 ここでみんなと遊ぶよ。」


「ホントにぃ?
 無理しなくていいってば!」


アヤはビックリ顔。
でも、ちょっとまだミキを気遣ってる様子。

「うん!
 ほら、早くみんなのトコ行こう!
 ミキ達、置いてかれちゃうよ!」

「あー!それはヤダよー!」

アヤは、仲間外れが大嫌い。
『だって、一人じゃ寂しいでしょ?』って
前に言ってた。


アヤちゃん、ありがとね。

216 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:12
――
「じゃあね、アヤちゃん。」

「またね、ミキたん。」

二人はご近所さん。

いつもの挨拶。

今度いつ会うかはわからないけど。


「あ、そうだ。ミキたんミキたん。」

ミキの腕をぐいっと引っ張り自分の方を向かせるアヤ。
アヤは時々、強引なところがある。


「なに?アヤちゃん。」

ホントは、腕がひりひりしたミキ。
だけど、ちょっと我慢。
217 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:13





「自分に正直にならなきゃダメだよ。」





218 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:14
「え?」



もう一度アヤに聞き返そうとした時
アヤはもう背中を向けて、トコトコと
自分の家に向かってた。


「ちょっと、アヤちゃん!」


アヤにも聞こえるようなでっかな声。


とことこ。


それでもアヤは背中を向けたまま。
歩き続ける。



アヤがこのままミキを置いて行ってしまうような
気がして、ミキは少し胸がチクリと痛んだ。



219 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:15
――
『ねぇ、コレ、君は落とした物だよ?
 ナッチ、拾ってきちゃった。』


ナツ?



『ナッチね…。


 あ!ナッチってのはアタシね。
 癖なの!もーどうしようもないんだぁ!』



ナツだ。



『えへへ。またここまで来ちゃった。
 ナッチん家からそんなに遠くないし。
 いい運動になるんだよ。


 あ、別に運動のために来てるんじゃないよ?
 ミキに会いに来たんだからね!』



ナツ、笑うとカマボコみたいね、目が。


220 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:16
『でね、矢口ったらヒドいんだよ。
 矢口ってのはナッチの友達なのね。
 すーぐナッチのコトばかにするの!
 ナッチのほうがお姉さんなのにだよ?
 
 …そんなコト言ったって矢口のコト大好きなんだけどね?』


ナツ、友達大好きだもんね。



『こないだカオリったらね…。
 あ、カオリはナッチの幼馴染ね。
 ナッチが真剣に話してるのに、
 どっかの星と交信してるの!
 で、時々わけわかんない言葉で話しかけてくるの!
 そしたら、「あ、別の言葉で話しちゃった。つい癖で。
 ごめんごめん。」だって!

 …そんなコト言ったってカオリのコト大好きなんだけどね?』


ナツ、友達いっぱいだね。



ナツ…。


ナツ…。


ナツ…。



221 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:16
――

ちゅんちゅん。


あれ?


もう朝だ。



「ナツ?」



ミキはきょろきょろ周りを見渡す。


「夢だよね。」


だって今日は月曜日。

そんなの、魔者のミキにとってどうでもいいけど
ナツは学校がある。


222 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:17


『ヒト』と呼ばれるナツ達は、
『魔者』と呼ばれるミキ達と少し違っていた。

ヒト達は、地球の『ヒト』と
ほとんど変わらない暮らしをしてた。



魔者達はヒトと同じくらいの知能がある。

だけど、姿形がさまざまだった。


ある者はでっかい。
ある者はちっちゃい。

ある者は土の中で暮らす。
ある者は空を飛ぶ。
ある者は海を泳ぎまわる。
ある者は大地を駆け巡る。
223 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:19
ある者はミキのようにヒトと
ほとんど変わらず大きな特徴がないのもいる。


ある者はアヤのように間違えれば
凶器になるものを備えてる者もいる。



そんな者たちをヒトは恐れた。


だからヒトたちは集まって、
魔者と呼ばれる者を疎外した。


ヒトは自分たちがこの星の王者だと言わんばかりに
好き勝手に星を荒らした。


魔者たちはやがて集まり、小さな村を作り、
そこで静かに暮らすようになった。
224 名前:なちみき 投稿日:2004/04/29(木) 11:19






この星の大きな歴史。



225 名前:ジカ 投稿日:2004/04/29(木) 11:22
ちょっと暗い最後になってしまって申し訳ない。

>211・33様
なんか遅くなってすいませんね、ほんとに。
今回の設定、実は結構気に入ってたりします。

あやみきっぽくなって申し訳ないです。
この次から本格的になちみきに入るんで…。

226 名前:33 投稿日:2004/05/01(土) 16:39
うむむ、今回はテーマが大きそうですな。
とっても楽しみ。
227 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:06
――

「…キ、ミキってばぁ!」

ん?
あれ?

ミキ、寝てた?

なんか、聞き覚えのある声がする。

心地いい子守唄みたいな声。


アヤちゃんにそれを言ったら
笑われたコトあるけど。

子守唄みたいと感じるのは
ミキだけみたい。
228 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:08
「ナツだ。」


この声はナツにきまってる。

だって、大好きな声だから
すぐにわかるんだ。


ヒトよりも耳はいいんだぞ、ミキ。



どうやら外でミキを呼んでるみたい。

もう学校終わりの時間なのかな?

学校、夕方頃なのに、終わるの。


ナツがミキを探してる。
229 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:09
今日はどんなお話してくれるのかな?


ミキは楽しみで楽しみでたまらない。

わくわくする。


ヒトってこんなコトしてるんだぁ、って
思えるのがミキは嬉しかった。



ナツとお喋りしてると、自分が
ヒトなんじゃないかって思えてきて。


ナツに会いたいな。


今、目の前のこのボロいドアを
開ければナツはいる。

230 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:10


「ナツー!」



大きな音を立てて、ドアを開けて…

それは壊れてしまうからできないけど
気分は勢いよくドアを開ける気分。


「おー、ミキ。部屋にいたかぁ。
 もしかして、寝てた?」


ナツは春らしい今ヒトたちの中で
流行っている洋服を着ている。

ナツが学校ある日に来るから、
もうてっきり夕方だと思ったのに。


まだ太陽は沈んでない。
231 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:11
「ナツ…、今日学校じゃないの?」


まだ眠い目をこするミキ。

でも、寝てられないんだ。
ナツがせっかく来たんだから。


「えへへー。今日は、午前中でおしまいなんだぁ!」

だからミキんトコ遊びに来ちゃった!


ナツの目はカマボコのような形になった。

ミキはこのカマボコを見るのが大好きだった。
だって、ナツがとても楽しそうだから。


いつもカマボコに惑わされるんだ。

今日こそ、言おう、言おうって思ってるのに。
一人で屋根の上にいたりする時、考えるんだ。


ナツのコト。
232 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:13
ミキは、ナツに幸せになってほしいんだ。


誰にも負けないくらいに。




ミキは、ナツが幸せになれるなら、何でもするのに。




だから、いっつも決心してるんだ。

ホントだよ?


ちゃんと心の中で自分と約束するの。

だけど…なかなか約束守れない。
だってナツが悪いんだ。


ナツのカマボコ見ると、
ミキは幸せで。


233 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:14
だけど、早めに約束守ってやらないと
自分が辛くなる。


ナツも、大変なコトになっちゃうよね。


そんなコトわかってるんだ。





今日、言おうって心に誓ったんだ。







「ねぇナツ。」



今日あったコトを細かく話してくれるナツを
ミキは止めた。



ホントは知りたかったよ。
今日、何をしたのか。

だけど、毎回それが続いて今に至ってる。




「ん?なんだい?」


首をかしげるナツの仕草は
自分より年上だとは思えない幼さで。

234 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:15





「もうやめようよ…友達。」





235 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:16





ねぇ、約束守ったよ。
ついに言ったよ。


なんかミキ、泣きそうだよ。



でも、見られたくなくって俯いた。


「……。」


ナツもきっと俯いてる。

なんにも言わないナツ。
236 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:17
こんなに二人が喋らないコトは初めて。
いっつもナツはずぅっと喋ってたのに。


ミキはそんなナツが大好きなのに。


気まずい雰囲気が漂ってる。




「…そっかそっか。うん。わかったよ。
 じゃあね、バイバイ。」



今のナツの声は子守唄じゃなくて。

教科書を棒読みするような感じ。



ナツはそれだけ言って、速歩きで帰っちゃった。

237 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:18
いつもは『またね。』って言ってくれるのに
今日はなかった。


そりゃそうだよね。

もう『またね。』じゃないんだから。


わかってるけど、なんか心に穴空いちゃったみたい。









ごめんね、ナツ。









238 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:19
――


ナツと最初に会ったのは偶然だった。



「げ、あいつ魔者だぜ。」

「マジだよ、耳とんがってるし。」

「おーい魔者さーん!」

「おい、止めろよ。
 魔者ってキレたら怖いらしいじゃん。」

「でもよ、あいつなんの凶器もねぇじゃんか。」

「マジだ。じゃあ全然怖かねぇな。」


ミキがたまたま散歩中の出来事。

高校生ぐらいの男のヒトが
ミキをからかってた。
239 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:20
一緒にアヤもいなくてひとりぼっち。

だから、ヒトが怖くて、怖くて
ミキは振り向きもしないで走って逃げたんだ。


「はぁ…はぁ…はぁ…。」


走りすぎたみたいで、気付いたら
いつもの風景のトコまで来てた。


「ねぇ、コレ、君の落とした物だよ?
 ナッチ、拾ってきちゃった。」


後ろでツンツン、とつつかれたと思って
振り向いていたのはナツだった。


240 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:22
「ヒ、ヒトォー!!」


ミキの心臓はバクバクいってた。

だってこんな近くでヒトを
見たのは初めてだったから。


「あ、ねぇ、ねぇってば!コレ。」

ナツの手のひらに乗っかっているのは
ミキの大事な指輪。


アヤからもらった生まれてはじめての
誕生日プレゼント。


「あ…。それ…」

241 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:22
返してって言いたかったけど
ヒトが怖くて言えなかった。


「はい。君が落としたんだってば。」

拾ってくれたんだ。



「…ありがと。」


「どういたしましてぇ。」

この時ナツは初めてカマボコの目になった。


242 名前:なちみき 投稿日:2004/05/10(月) 10:23


それから、だんだんナツに惹かれたミキ。

ナツはなぜだかわからないけど
ミキの家によく遊びにきた。


別に、理由はなんでもよかった。


ミキはナツといる時間がアヤと一緒にいるよりも
楽しく感じるのはすぐだった。

243 名前:ジカ 投稿日:2004/05/10(月) 10:32
あの…訂正があります。
219の『ねぇ、コレ、君は落とした物だよ?
    ナッチ、拾ってきちゃった。』
        ↓
   『ねぇ、コレ、君が落とした物だよ?
    ナッチ、拾ってきちゃった。』

直してください。
すいません。

>226・33様
大きくしすぎちゃいましたw
ホントは日常の一コマみたいの方が好きなんですが
思い浮かばなくて…


えっと、家のパソコン具合悪いみたいで、今インターネットできないんです。
なので別のトコから書き込んでます。
だから少し更新が遅くなると思います。
大変申し訳ないですがなるべくはやく家でインターネットつなぎ直せるように
頑張りますので。
よろしくお願いします。
244 名前:33 投稿日:2004/05/11(火) 18:02
人間って何? って思いました。
なにを持って人間と言うのか、そして人間という存在はそんな大そうなものなのか。
色々考えさせられました。

眠いのは、きっと春だからですよ。
245 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:45
――
「ミキたん!ミキたん!」

ん?
この声はアヤちゃんだ。
ミキの事情はお構いなしに、
ミキの家の前でけたたましくて
明るい声を出すのはアヤしかいない。


…ナツもだけど。




でももうナツはきっと
ココにはこない。




こないんだ。




もう、こんなコトするのはアヤだけ。




246 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:47
すぐにでなきゃ。
そう思ったミキ。

その前に自分の顔を鏡で確認。

あぁ、この耳がとんがってなかったら
ミキはヒトになれたのかな?


せめて、ヒトになれなくても
ヒトに見えたらいいのにな。

そうすれば、もしかしたら魔者でも
ヒトの住む所や遊び場に行けたかもしれないのにな。


あ。
目が赤くなってる。

いっぱい、泣いたからかな?



ナツとお別れした後、
一人ぼっちで泣いたから?



ナツ、怒っちゃったかな?
ナツ、もうミキのコト嫌いになっちゃったのかな?


いろいろ考えてたら、涙が出てきて
ずっと泣いてたミキ。


こんなんじゃ、アヤちゃんに何か言われちゃうよ。

もしかしたら、いつもみたく『遊ぼう』って誘いかな。


いないフリでもしちゃえ。

247 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:48
……。



「ミキたん!いないの!?
 ねぇ、大変大変!超スゴいんだってぇ!!
 寝てるんなら起きてよぉ!」



アヤちゃん、今日はいつも以上にしつこいな。
ネチネチしてる。

アヤちゃん、大袈裟だからな。
きっと大したコトでもないんじゃない?



「ねぇミキたぁん!
 急いで出てきて、早く早く!」


それにしても、今日はホントにどうしたんだろう?
ホントに今日は様子がおかしい。

248 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:49
ホントはミキだって知りたいさ。
今すぐ、アヤちゃんのトコに飛んでって
事の真相を聞いたのに。


だけど、今は目が真っ赤だし。

絶対心配されちゃう。



「ミキたん、いないの?…いるよね?
 だって、今日外で一回もミキたん見てないもん。
 みんなだって見てないって言ってるし。」


アヤちゃん、何でこーゆー時に限っていつもより
勘が鋭いんだろ?

調べ上げられてるって感じ。


「出たくないんだったら、そこで聞いてていいから言うよ?
 もしかしたらミキたんのコトだから知ってるかもしれないけど
 ナツたち、ヒトがみんなでなんかやってるよ?
 すごいいっぱいいるの。
 …何やってるかは、自分で確かめたほうがいいと思うよ。」

249 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:50
ナツが?


…あ、だめだよ。
もうナツとは何ともないただのヒトと魔者なんだから。


ナツだって、きっとミキとおんなじコト考えてる。



「じゃあ、先に見に行ってくるね。
 ミキたんも後で来るでしょ?」

アヤちゃんはそう言ってどこかへむかっていった。
音的に、走ってたみたい。

この真っ赤な目、寝てたって言えば大丈夫かな?

もういいや。

そーゆーコトにしとこ。



待ってて、ナツ。



……ううん。

待ってなくてもいいよ、ナツ。
超ハイスピードでナツのトコ行くから。

ナツは歩くの遅いもん。
あっという間に追いついてやるから。


250 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:51
――

ナツとはアヤちゃんたちとは少し違うんだ。
二人の関係みたいのが。


アヤちゃんとはご近所さんで。

会おうとすれば、夜寝る寸前でも会える仲。


遊び終わって帰る時だって、
『ばいばい』とか『またね』とか挨拶して別れたり
二人でばらばらに家に帰ったって
簡単に言えば、約束しなくても
また必ず会えるんだ。


でもナツとは。

ナツとの関係はすごく脆いモノで
壊れやすくできてるから、
何かあるときっとすぐ終わっちゃうと思う。


ミキは、それでもまた会いたいと思うのは
きっとナツのコトを愛してるからだと思ってる。


ナツは、どんな風に思ってるんだろう?


251 名前:なちみき 投稿日:2004/05/30(日) 17:58
更新遅い上、少量更新…↓
すいません。

メール欄にも少し書きましたが、
飯田さんと石川さんの卒業の話

ちょっと予想してて(誰かはわからんかった)実際聞いたときは
『うわ。当たっちゃった』って感じでした。

辻さんと加護さんの時は『マジで!?』って感じだったんですけども
だいぶ前の保田さんと後藤さんの時は泣きそうにまでなったのに

これが『慣れ』ってやつですかね
別に、ひいきとかじゃないんですよ
基本的に娘。は矢口さんを筆頭に好きなんです

『慣れ』って怖いですね
新鮮な気持ちを忘れちゃうっていうか…
252 名前:ジカ 投稿日:2004/05/30(日) 18:03
レス返します
>244・33様
人間って小さな存在なんだと思います
大きな自然の中ではひとたまりもないですし、私たち。
それでもこうやってたくさんのヒトが生きているのは
みなさんがそれぞれ支えあってるからじゃないかと、思いました

きっと春だからですね
しかし私の場合、冬でも眠いときが…

まさかそれは私の頭の中が春だからなのでしょうかね
まぁ、春は好きだからいいんですけどね
ぽかぽかしてて。
ヒトのココロもみんなぽかぽかしてればいいですなぁ
253 名前:33 投稿日:2004/06/05(土) 21:20
続き楽しみ。飯田さんと石川さんにも幸せになってもらいたいです。
254 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:27
――

「はぁ…はぁ…。」

疲れたよ、走りすぎかな?

いいダイエットになるかもね。


…それどころじゃないのはわかってる。


だけど、そーゆーコト考えてなきゃ頭の中がナツだらけに
なっちゃいそうで怖いんだ。

ナツがいなきゃ生きていけないみたくなって。

『それぐらい愛してるんじゃない。』ってゆー子も
いるかもしれないけどナツとミキはヒトと魔者。


いつ引き離されるかわからないんだ。
255 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:28





『ミキたち、出逢わなければよかったね。』



何度思ったことだろう。
何度泣いたことだろう。


いっぱい考えたけど、やっぱり
ナツと出逢ってヒトが好きになったんだ。




これってミキにとってすごい大きなコトだから。



大切にしたいんだ、ナツを。


だから、だからこそ―



256 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:29
なんか、たくさんのヒトの声がする。


アヤちゃんに詳しく聞いておけばよかったな。



ミキたちが住んでるところはヒトの住んでる住宅街より
少し高いところにある。


魔者とヒトの国境線みたいのは崖で区切られてる。
その崖の近くに行けばヒトの行動がお見通し。



たぶん、アヤちゃんも他の子たちもそこにいるのだろう。

257 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:30
――
わ。

スゴいや。

この崖にこんなたくさんの魔者が集まってるなんて。
まるで、ナツが写真で見せてくれた
『トウキョウディズニーランド』のパレードみたい。

パレードも見たコトないし、『トウキョウディズニーランド』だって
行ったコトないけれどナツが見せてくれた写真で覚えてる。


ヒトがよくやるお祭りみたい。


あ、あの後姿はアヤちゃん!?

他のみんなもいる!


「ちょっとすいませぇん!
 通してくださーい!」

お決まりの文句をいって魔者たちを掻き分ける。
だって、アヤちゃんたち前の方にいるんだもん。

ミキの声に気付いたみたい、アヤちゃん。


「あ、ミキたぁん!こっちこっち!」


おいでおいで、と手招きするアヤ。

258 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:31
「ねぇアヤちゃん、ナツ、どうかしたの!?」


もうなんかいろんな声が聞こえて
頭がパニックになっちゃって興奮してた。

アヤちゃんの肩をつかんでお人形みたいにガクガク揺らした。


「ちょっ、ミキたん、落ち着いて!
 それに名前出しちゃ…。」


「あ。」


ミキの頭はギネスブックに載ってしまうほど
パニックになってた。

血が逆流しても気付かないくらいに。


だからナツの名前もみんなの前で口に出してしまった。

ナツのコトはアヤとミキだけの秘密だったのに。

259 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:32
「ね、ナツってだぁれ?」

『ほらね。』とアイコンタクトしてくるアヤ。
聞いたのはなんでも単刀直入、好奇心旺盛のノン。


「え?あ、なんでもないよ。うちらの
 くだらない会話だから。ね、ミキたん?」

さすが、頭の回転の速いアヤ。
無理矢理ミキに同意を求める。


それでもまだミキの頭はパニック状態。

ミキはただ、激しく『うんうん。』と頷くことしかできなかった。


「それよりミキたん、ほら、あれ見てみ!」

アヤの指さす方向は崖の下。
ヒトの住む町。



260 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:33







「……。」





ミキは口から声がでなくてただ見つめることしかできなかった。











「ヒトと魔者はぁ、ぜぇったい仲良くなれる!!」





261 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:34
ミキの視界に入ってきたのは、数十人ほどの団体。


みんなそれぞれなにか書いてある看板や厚紙を持っている。

でもそれは、ヒトの言葉で書いてあってミキには全く読めない。


これなら、ナツからヒトの言葉を教えてもらえばよかったな。

ミキは自分の勉強嫌いを初めて後悔した。
ナツが一度教えてくれようとしたのに。

ミキは『勉強なんてやだよ。言葉は通じるんだからいいじゃん。』と
言って断ってしまった。


それでなぜかミキがナツに魔者の文字を教える羽目になったのを覚えている。


今となっては色あせてしまった思い出。



262 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:35


あれ?


『ヒトと魔者は仲良くなれる』



一つだけ、魔者の文字でかかれている厚紙を発見。


なんでなんで?


その厚紙を持ってるヒトは団体の一番前で堂々と歩いている。







ん!?




263 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:35





「…ナツ!!」




264 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:37



あの魔者文字、どっかで見た覚えがあると思ったら!
忘れるコトができないナツの字だ!



ナツだ!ナツだ!




久しぶりにナツの顔が見れてそれだけでも
飛び跳ねたくなるミキ。




でも、ナツは何をやってるの?




小さな疑問がミキの脳裏に浮かんだ。





「ナツね、ヒトと魔者が仲良くなれるって言ってるよ。
 さっきもね、共存していけるって言ってたの。」


ぽつりと、アヤがミキにしか聞こえないくらいの声で言った。



「ナツが?」



ミキの頭は真っ白で。
でもココロの中は嬉しさでいっぱい。


265 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:38


「ミキたん、ちょっと…」


アヤはミキの手をぎゅっと掴んで魔者が
あふれかえるトコから抜け出した。




「ね、アヤちゃん!」
やだよ、まだナツを見てたいよ。


そう思ったけどアヤは完全無視。

強引なんだから…。

266 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:39
――

「ミキたん!」

「アヤちゃんどうしたの?」


アヤはいつになく怒り顔。

ちょっと怖いよ…。
こんなアヤには逆らえない。


「ナツのトコ、行かないの?」

じっとミキの目をみつめてはなさないアヤ。
このまま獲って食われそう…。


「だって…ナツはヒト…」
「だからなんなの?」
『迷惑がかかるよ。』

ミキが話してるのもさえぎるアヤ。
ミキはアヤに昔の母親を思い出させた。


何も言えない弱い自分。

267 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:40



「ナツはミキたんのコト大好きだよ!?」


とうとうアヤは声を張り上げた。

ミキは怖くなってうつむいて
地面の石を見つめた。


「こないだ言ったよね?
 『自分に正直にならなきゃダメだよ。』って!
 ナツ、絶対ミキたんのコト迷惑には思ってないよ。
 もっと正直になってよミキたん。
 当たって砕けたっていいじゃん!」

アヤちゃん…。
268 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:42
こないだ言った意味はそーゆーコトだったんだね。

全然わからなかったけど、今、わかったよ。


「ね、アヤちゃん。」

一つ、強くてカッコよくてカワイイアヤちゃんに質問。


「なにぃ?」

あ、あんま怒ってない。
いつものアヤちゃんだ。


「なんでナツ、あんなコトしてるのかな?」



アヤちゃんは『うーん』と首をかしげて考える様子。
アヤちゃんなら、わかるかな?



269 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:44
「わかんないよ。
 だって、ナツが考えてるコトだもん。
 そんなのナツに聞いてくれば?」



そんなあっさり答えないでよぉ…。


「じゃあね。」


「あ、待って!」

ミキの言うコトも聞かないでスタスタ歩いて
行ってしまうアヤちゃん。

アヤちゃんはミキに、向かってひらひらと手を振りながら
元の場所へ戻ってしまった。


270 名前:なちみき 投稿日:2004/06/20(日) 16:50
あと少しでなちみき、終了予定です。
ちょっとこのお話は満足度が高いですね。
『ナツ』という呼び方がお気に入り♪

>253・33様
ありがとうございます。
飯田さんも石川さんも今後が個人的には
不安であり、楽しみでもあります。
娘。の方と一度喋ってみたいなぁ。
なんかファンとして、というか人として。
271 名前:ジカ 投稿日:2004/06/20(日) 16:51
あ、すいません…

名前の欄、なちみきのままだった…
272 名前:33 投稿日:2004/06/20(日) 19:25
楽しみ、楽しみ。ミキティーがどう動くかが問題ですね。
自分も夏より冬派です。でも春が一番好きです。
273 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/22(火) 22:59
とってもおもしろいです。続きが気になる〜。
リクエストしてもいいですか?
もしよければ、なちののでお願いします!!
274 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/19(月) 16:45
続き期待してます
275 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:23

今から、みんなのトコへ戻っちゃだめだよね…。

アヤの背中を見つめながらミキは考えた。
せっかくアヤちゃんがくれたチャンスなんだから。


ミキは弱虫だから、きっと一人じゃ何にもできないよ。


でも……



ナツが好きなの。

ナツに会いたいの。

ナツに会って前みたくお喋りしたいんだ。



初めてかもしれない。
一人で何かをやるってコト。


今まで怖くて、無意識のうちだけど
全てが怖くて何にもできなかった。
276 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:24
こんな自分、大嫌いだから。



ちょっと、ちょっとだけでいいから、


頑張ってみよう――






――

ふぅ…。


大きな深呼吸。


ここの坂を一気に駆け下りれば
ナツのトコへ行ける。


『周りの人をね、ただのじゃがいもだと思えば
 キンチョウしないんだってぇ。
 でもさぁ、じゃがいもになんか見えないよね。』

アヤちゃんが前に言ってたのを思い出す。
ミキもね、思ったよ。

じゃがいもになんて見えないもん。
277 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:25
こんなコト考えても意味ないんだ。

ただ、自分の中で時間稼ぎしてるだけ。
あぁまただ。

また、目の前にあるやらなきゃいけないコトから逃げてる。


ナツはあんなに大きな声出して、頑張ってるのに。
アヤちゃんは、勇気のないミキをここまで勇気付けてくれたのに。



最後は自分でやるしかないんだ。



ナツや、アヤちゃんがあんなにもミキに勇気付けてくれたんだ。

ミキ、きっと何かできるよね?
278 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:26
――



「ナツ!ナツー!!」




自分でもよくわからないほど大きな声で大好きな名前を呼んだ。




名前を呼びながら一気に坂を駆け下りて、
ヒトがだくさんいるトコへ走った。



魔者たちは、ミキのコトに気づいたみたい。
少しのヒトたちも。




アヤちゃん、見ててね。

ミキ、自分の気持ちに正直になるから。





279 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:27
「ヒトと魔者はぁ、仲良くなれ――」



ごめん、ナツ。
なんか主張してるトコだったみたい。

邪魔しちゃった。




「ミキ?ミキだぁー!!」



あ、ナツ気付いてくれた!

ナツはミキの方をまっすぐな目で見つめてる。


周りの人がしん、と静かになった。

よく見ると、ナツの後ろにはどこかで見覚えのある顔が。


280 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:28
えっと確か…ナツの友達だよね?

ナツから何度かプリクラで見せてもらった。

矢口ってヒトとカオリってヒト。


ナツ、友達とかと一緒にやってくれたんだ。



「えっと…。」


「ん?なんだい、ミキ。」


なんかすっごい気まずいんですけど!

みんな静かに見てるし。
ミキ、ちょっと恥ずかしいんだけど。

上からはアヤちゃんたち見てるし。


ナツはじっとミキの方を見てる。
281 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:30
「ナッチィ…。」


後ろで声をかけたのは背がちっちゃいヒト。
なんかこの雰囲気を察知したらしい。



「あのさ、二人で話があるんなら、誰もいないところで
 話してきなよ。ほら、この運動ならオイラたちに
 任せてさ。ねっ?」


周りのヒトたちも『うんうん。』と頷いてくれてる。

「ありがと。じゃあ、ちょっと行ってくるね。」

ナツはミキの腕を軽く掴んでヒトたちの中から出て行った。

魔者やヒトの好奇心旺盛のコは、こっそりついて
来るんじゃないかって不安だったけどそんなコトもないみたい。

ってゆうかそんな雰囲気じゃなかったし。
282 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:30
――

「どぉしたの?急にでてきて。
 ナッチビックリしたよー。」

えへへ、とかまぼこ型になる瞳。
全然怒ってないみたい。

よかった。


ここなら誰もいないし、ホントのコトが話せそう。



「ナツ、なんかやってたから…。
 つい気になって。」

ちょっと久しぶりで、ミキが『友達やめよう』なんて
言うから、いまさら話するのがなんか恥ずかしい。
283 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:31
「あ、あれね。なんかさぁ、前からヤだったんだ。
 ヒトと魔者の境界線、みたいのが。
 でさ、ミキと仲良くなって余計そう思っちゃって。
 ナッチの友達に、そーゆーの言ったら協力してくれたの。
 で、少しずつ増えてって、みんなで反対運動みたいの、
 やろうってなって。それで…。」


ナツも照れくさいのかな、ずっと下見てる。
でもナツ、そーゆーの考えてくれてたんだ。

なんか、嬉しいな。



自分でも、誰かの役にたったんだ。


あ、そうそう。
本題にうつらなきゃ。



「ナツ…ごめんね。」

284 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:32
はぁ…。
やっと言えたよ、アヤちゃん。

ミキ、ずっとこれが言いたかったんだ。



ごめんなさい。


ホント、ごめん。



ナツを裏切るようなまねした。



ナツはミキのコトどう思ってるかは知らない。

でもミキはナツのコト大好きなんだ。

大好きな友達を自分から裏切るなんて最低だよね。

285 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:34
「…ミキ?」
ナツと目がぴったり合った。



そしたらなんだか口がしゃべるのを止めてくれなくなった。



「ミキ、ナツのコト大好きなのっ。
 でもミキは、ナツと友達やめようって!
 自分からやっちゃったの…。」


「……うん。」


ミキ、泣いてる?

たぶん今、すっごい顔してるよ。


「でも信じて!
 ミキ、ナツのコト嫌いじゃないの!
 嫌いだから友達やめたんじゃないんだからね!」


「…うん。」
286 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:36
ナツは、ずっとミキの話を聞いてくれてる。
いつもと逆だね。


「ナツ、ミキといたらそのうちヒトにバレて、
 ナツが独りぼっちになっちゃうんじゃないかって
 思ってたの!」



「うん。」



裏切ったんじゃないんだよ、ホントだよ。
ミキは、ナツのコト大好きなの。
今さらだけど信じてほしい。



「ミキ、ナツに幸せになってほしいの。
 だから、ナツは魔者なんかと一緒に
 いちゃだめなんだよ、絶対。
 だから…。」



「うん、うん。
 わかったよ、すっごい気持ち伝わった。
 ありがとね、ミキ。」
287 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:37
ナツはそう言いながらミキを
ぎゅっと抱きしめてくれた。

ナツは天使の匂いがした。


そしたらなぜだかぽろぽろ我慢してたモノが
あふれ出してきた。


「あーもう泣かないの。」


ナツはぽんぽん、とミキの頭を優しくなでてくれた。

ナツ、いつもはミキより子供っぽいのに、
こーゆー時だけ年上ぶるんだね。
288 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:38
「もしナッチがヒトにミキと一緒にいるのが見つかったら、
 ナッチが独りぼっちになると思ったの?」


ナツはミキが泣き止んでからゆっくり質問してきた。

「…うん。そぉだよ。
 だってヒトは魔者を見下してるもん。
 ナツも、魔者扱いされちゃうよ。」

でもきっと魔者もナツを怖がって魔者の村でも
独りぼっちになっちゃうよ。

そしたらナツ、一生独りぼっちじゃん。

そんなの、見てらんないよ。


289 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:40
「わ。ミキ、ヒドいんだー。」


「ええっ!?」

何さ、急にぃ!
ナツは天然だからかしらないけど時々訳わかんない時がある。

今もそれだ。


「もしさぁ、ナッチがヒトに追い出されて
 魔者の村に行ったら、ミキも魔者のコと一緒に
 ナッチを独りぼっちにする気なのぉ?
 ミキ、ホントはナッチのコト嫌いなんじゃないかい?」

あ、この目はナツがからかってる時の目だ。
よくナツにいたずらうけるときこーゆー目してるもん。


「違うよ!そんなコトないよ!」


さっき言ったでしょお?
ミキはナツを独りぼっちにする気はないけどさぁ。

290 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:41
「だったら、それでいいじゃん。
 ミキが一緒だったらナッチ、独りぼっちじゃないもんねー。」

「あ、そっか。」

あーもうミキ、ばかじゃん。
そうだよね。

たとえみんながナツのコト無視してもミキは
絶対無視しないいよ。


「もしかしたら、法律みたいのが変わるかもしれないし。
 結構、ナッチたちの運動を協力してくれるヒトがいるんだ。」

『任してよ。』と自信満々のナツ。

ナツ、何気すごいね!

ポジティブに考えなきゃね!
291 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:43
「あーでもよかったぁ。ナッチね、
 ミキに嫌われちゃったんだと思ったんだぁ。」

ナツはほっと一息ついた。
そんなわけないのにね。

でもナツの笑顔が戻ってよかった。





「じゃあ、ミキたちずっと友達でいいの?」





「え?もちろん、当たり前でしょー!」







292 名前:なちみき 投稿日:2004/07/26(月) 12:44



この小さな星でヒトと魔者が
仲良く暮らすようになるのは
もう少し先のお話――








END…


293 名前:ジカ 投稿日:2004/07/26(月) 12:54
時間かかってすいませんでしたぁ…
でも完成してよかったです。

>272・33様
ミキティ、こうなりました(笑
春はいいですよね
でも花粉症の方には辛いでしょうが…

>273・名無飼育さん様
なちののですね!
わかりました
ちょっと間あくかもしれないですが、
待っててください。

>274・名無飼育様
ありがとうございます
頑張ります
294 名前:33 投稿日:2004/07/26(月) 22:03
ごめんね、ってその一言で実は救われますよね。
テレビ熊本の松井さん、良かったですね。
295 名前:みきよし 投稿日:2004/08/18(水) 12:13
―――

はぁ…はぁ…。

あたしは急いでいた。
まぁ、いつものコトなんだけど。

こんなコトするようになってから
気付けばもう一ヶ月。
運動不足の帰宅部のあたしにはいい運動になってると思う。
別に運動目的でやってるわけじゃないけど。


「おはようございマス。」

「んん?あ、なんだミキティか。」

走ってたら隣から聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら。
ってゆうかこんな時間にココで会う人なんて
ミキティぐらいしかいないけど。
296 名前:みきよし 投稿日:2004/08/18(水) 12:22
「おおー。頑張ってんねぇ。イイコト教えてあげるよ。
 今日は時間的に無理だよ。」

あたしが必死に走ってるのにミキティは隣でのんきに
歩き始めた。そのせいで二人の距離がぐんぐんのびていった。

「ちょっと!もぅ…。」

結局ミキティに流されてあたしも歩き始めた。
え?優しいでしょ。これがオトコってもん…
あ、違う違う。
これがオンナってもんよ!

うん。カッケー。完璧。
さすがあたし。

「でもよっすぃ、前はクソ真面目に遅刻しなかったのにね。」

ミキティが前を向きながら独り言のように言った。

「まぁね。あたしも成長したんだよ。」

「え?それって退化っていうんじゃない?」

ミキティのバラのトゲのような鋭いツッコミ。

ウヌ…。きれいな鼻にはトゲがある、か。

…あ、鼻じゃなくて花か。

あたし、ばかじゃないからね。
297 名前:みきよし 投稿日:2004/08/18(水) 12:22
――
「あ、学校。」

ミキティと二人で他愛のない話をしてたら
あたしたちの目的地が見えた。

普段、走って遅刻ギリギリの時は門に先生が立っていて
遅刻ギリギリの生徒に『おーい、お前ら遅いぞ。』とか
言ってるのに。

今日は誰もいない。

そりゃそうだよ。
あたしら、10分ぐらい遅刻してるもん。
さすがの先生も立ってないね。

「おぉ…。なんかあたしら、超早く
 学校来たみたいな感じしない?」

だってほら、生徒もいないし。

あたしらだけ。
298 名前:みきよし 投稿日:2004/08/18(水) 12:23
でもまた取り残されたような気持ちになった。
もちろんそんなコト、ミキティには言わないけど。

「ばかみたいなコト言ってないで行くよ。」

そう言いながらどんどん学校内に入っていくミキティ。

「うえーん、ミキティがヒドいよぉ…。」

「うっさい。」

はぁ…。ミキティにはあたしの
華麗なる演技は通用しないらしい。
お主、なかなかやるな。

各教室の中からそれぞれの担任の声が聞こえる。
きっと朝のHRだ。

ミキティはあたしに背を向けたまま
あたしに向かって手をヒラヒラふって
自分の教室の後ろのドアを開けていた。
299 名前:みきよし 投稿日:2004/08/18(水) 12:23
あたしらはクラスが違う。

ミキティのクラスから担任の
先生の不機嫌そうな声が聞こえた。

もちろん、それはミキティに向けられたモノ。
あたしもあーなるんだろうな。

そう思いながらドアを開けた。

その音と同時にみんながあたしの方を見た。
何人かが「あーよっすぃ!」と言ってくれて
場の空気を和やかになったからあたしは先生に
『お前、遅刻な。』と言われるだけで済んだ。
300 名前:ジカ 投稿日:2004/08/18(水) 12:27
ちょっと間開いちゃいましたね。
みきよしです。

学園物…かな?

>294・33様
ごめんねって大切なことですが
いざ言おうとすると照れくさいんですよね。
日本全国、個性的な方ばかりで面白かったです。
301 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 13:45
よしみき期待です……
302 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 17:38
いいですね。
この2人大好きです
続きも頑張ってください
303 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:41
――
あたしもミキも遅刻の指導係の先生たちの
中でも有名な遅刻ギリギリ常習犯だ。

多分、先生たちの間ではあたしらみたいな
ギリギリって一番タチが悪いと思う。
だって、正当な理由もなく遅刻するヤツは
ちょっとは内申書とかになんらかの影響が
出るだろうし、遅刻を5回以上すると
掃除をやらなきゃいけない。

それなのに遅刻ギリギリってヤツは、
遅刻してきたヤツと1、2分しか変わらないのに
なんの罰も受けないから。
304 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:42
だから遅刻の指導係の先生たちは遅刻ギリギリ常習犯の
あたしらが今日遅刻してきたってコトを知ったらひそかに
『ケケケ。』と笑うかもしれない。

あたしが遅刻したのはコレが3回目。
1回目は遅刻ギリギリ生活を始めたころ。
走ったのに間に合わなかった。

2回目は初めてミキに会った時。

で、3回目は今日。

ミキと初めて会った時もあたしは走ってた。
いつもより急いで。

だっていつも家を出る時間より3分遅かったから!
3分ぐらいって思うかもしれないけど、
遅刻ギリギリのあたしにとっては3分遅れというのは
大きな損失なの。

で、チーターもビビる速さで走ってた。
え?チャリ?
あたしの家から学校までって上り坂とか階段が多いの。
チャリなんて乗って行ったら余計大変になるだけ。

だから走ってる。
305 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:43
そんな時に声かけられたの、ミキに。
『ココからじゃ時間的に無理だよ。』って。
今日みたいに。
それを聞いたらどうでもよくなっちゃって
ミキと一緒にゆっくり歩いて学校に行った。

ミキとはその時に意気投合した。

遅刻常習犯ってのは、3年生に多い。
あたしやミキみたいな2年生は
少ししかいなかったから仲間意識みたいの感じて、
すぐ仲良くなった。
306 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:44
――
「じゃあねー!よっすぃ!
 明日は遅刻しないでくるんだぞー!」

「うん、バイバーイ!」

あたしはクラスメートに向かって手を振った。
あたしの友達はほとんどのコが部活に入ってる。

だから帰りは一人。

前はこんなコト、考えもしなかったのに。


「あ、よっすぃじゃん。」

下駄箱で靴に履き替えてたら後ろから呼ばれた。
後ろを見たらツンとした顔でミキティが立ってた。

ツンとした顔っていっても普段からそんな感じだけど。
そんな顔してるから親しくないコから『無愛想』とか
言われるんだよ…。
笑えばかわいいのにね。
307 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:45
「ミキティも今帰るトコだったりする?」

まぁ答えはわかってるけどね。
念のため念のため。

「そんなん、聞かなくてもわかってるくせに。」

あはは、言われちゃった。
どうやらミキティも一人みたい。
それならするコトは決まってるよね。

「今日は帰りもよっすぃと一緒かぁ…。」

ん!?
なにそのあからさまにイヤそうな顔は!

人の好き嫌いはいけないんだよ!
しかも本人の前で言うなんて!

…さすがだな。
308 名前:みきよし 投稿日:2004/08/19(木) 10:46

「何それー。いいじゃんかぁ一人で帰るよりー。」

泣き声で言ってやった。

あたしは一人よりみんなといるのが好きだなー。
世の中には一人のほうが好きって人もいるけどね。

なんかミキティって、一人とか好きそう。

「はいはい。じゃあ、帰ろっかねぇ。」

ミキティはそう言いながら靴を履き替えてた。
もう…ミキティ、素直じゃないんだからぁ♪
309 名前:ジカ 投稿日:2004/08/19(木) 10:47
更新です。
奇跡の二日連続更新。
自分でもビックリですよ。

>301・名無飼育さん様
よしみき、読んだこともないし
書いたこともない状態でした…。
期待に応えられるかどうかわかりませんが、
頑張ります。

>302・名無飼育さん様
先ほど言いましたが、
よしみき何もかもが初です。
書く前にいくつかよしみき読みました。
…よしみきなかなかよいですなぁ。
310 名前:33 投稿日:2004/08/19(木) 18:56
みきよしキター!
ありがとうございます! そして距離感が良い感じ! すごい楽しみです!
311 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/20(金) 20:58
いいっすねぇ…微妙な関係が良いwww
312 名前:ジカ 投稿日:2004/08/30(月) 08:46
――
「よっすぃはなんで遅刻ギリギリの時間に
 学校来るようになったの?」

「はぁ?」

ミキティはこんなヤツだけど、ちゃんと
話の順序とかわかってる人かと思ってた。

だけどそうじゃないのかな。
だって突然こんなこと言い出すんだもん。

「ねぇ、なんで?」

ミキティは好奇心いっぱいのキラキラした目と
目が合った。

なんかミキティってクールなイメージあるから
今のミキティ、新鮮に見える。

「えー?なんでだっけなぁ?」

あたしはとぼけて見せた。
だってぶっちゃけすごいくだらない理由だったから。
313 名前:ジカ 投稿日:2004/08/30(月) 08:47
「なんとなくってやつ?
 あ、でもそれわかるよ。
 ミキもね、だんだん遅くなったんだもん。
 入学した頃はもっと早く学校来てたし。」

ミキティはあたしの方を見て笑った。
何とか誤魔化せたみたい。
でもちょっとミキティの気持がわかるから
『そうだね。』って同調した。
なんかミキティと同じ風に感じたり、
思ったりするのってあんまりないような気がするから
こういうのってなんか嬉しい。

――
ミキティと分かれた後、メールの着信音。
誰かと思えばあたしが遅刻ギリギリ生活を
始めるきっかけとなった親友からだった。


『久しぶりだねぇ↑
 元気?バカは風邪引かないって
 いうから平気かな(O^−^O)
 ちょっと時間できたんだ♪
 今度いつ遊べる?』
314 名前:ジカ 投稿日:2004/08/30(月) 08:47
らしいな、って感じ。
懐かしいなぁ。
つい最近まで一番近くにいたのに。
もう手も届かないくらい遠くに行っちゃった。
大切なモノってなくしてから気付くもんなんだなって
心の底から思った。
あたしは『いつでもOK(●~▽~●)』と
短く返事をした。
元気にやってるかな?
ごっちんとあたしは親友だった。
あたしの一番の友達がごっちんで。
でも、ごっちんの一番は違った。

ごっちんはごっちんの一番の人―市井さんって
言ったかな?

市井さんと遠くに行っちゃった。
遠くって行っても休みの日は遊べるぐらいの距離だけど。
315 名前:みきよし 投稿日:2004/08/30(月) 08:48
あたしたちの距離はすごく遠い。
『ごめんね』そうごっちんは言って
学校を辞めていった。
理由を聞いたら『市井ちゃんの側にいたいの。』って
寂しそうな声で言われたんだ…。
そんな声で言われたらさあ。止めるわけにはいかないじゃん。
マイペースなごっちんらしくなくて。
あたしはなんだか取り残された気持ちになった。
帰宅部同士だったあたしたちはいつも放課後遊んでたのにね。
それもあっけなく終わっちゃった。
316 名前:ジカ 投稿日:2004/08/30(月) 08:56
少しだけ更新。
この間、書き込んだときに
『ミキティ』が『ミキ』にいくつかなってます。
すいません…。ミスです。
頭の中で自動変換してください。

>310・33様
こちらこそ、ありがとうございます。
多分これリクエストしていただけなければ
みきよしがこんなに魅力的なんて知りませんでしたから。

>311・名無飼育さん様
関係、気に入っていただけましたか?
ありがとうございます。
嬉しいですw

317 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 12:08
イイッス!!
318 名前:33 投稿日:2004/08/30(月) 22:35
おお、いい雰囲気です、楽しみ。
みきよしいいですよね!
319 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/14(日) 14:07
みきごまお願いします










320 名前:サキ& ◆xs7HO71Y 投稿日:2004/11/19(金) 17:10
亀吉お願いします〜!
321 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/03(金) 14:46
みきごまでミキティ攻めのお願いします
322 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/03(金) 16:29
よしみきをみる亀
323 名前:あるもの 投稿日:2004/12/09(木) 19:19
なちぼん、やぐぼん、みきぼん お願いします!!! このカップリングが 大すきです。みきぼん 読んで すごく 面白くて また 書いてほしいです
あと もうひとつ いいですか?? あとゆうぼん (裕ちゃんとあいぼん)のも お願いします!!!
324 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/18(土) 20:45
押し付けなリクエストはやめた方がいいんじゃないかな…
作者さん最近更新してらっしゃらないし、大変だと思うけど。
頑張ってくださいね。

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