トマトの思い出

1 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/16(月) 23:52
マイナーなCPですが、よかったらお付き合いください。

柴ちゃん主人公です。よろしくお願いします。
2 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 00:14
「だってアイツ今まで社会人としか付き合ったことないっていうんだよ?!
 だからさーこっいが払うのが自然だと思ってるわけよ、
 イッツナチュラルなわけYO!」
「いや急に英語になられても。意味わかんないし。」

よっすぃ〜に呼び出され、いつものカフェに行ってみると、
またいつもの彼女の話だった。

「相談があるっていうから心配してきたのに。」
「いや立派な相談でしょ?!なんでそうドライかなー柴っちゃんは。」
「わかったわかった。お金かかって大変なのね。ここはおごってあげるから。
 今日も放課後デートなんでしょ?早く迎え行かないとまたご機嫌そこねちゃうよ?」
「まじで?!助かるよ〜アイツ飯食っても財布出すそぶりもないんだもん…。
 このままじゃよしこ破産だよ…
 闇金行きだよ…」
「そのわりによっすぃ〜太ったけどね。」
「だから!それもアヤツがさー、高い店しか行きたがんないからさー。
 油っこいもんばっか食わされてんの!」
「はいはい。ほら行くよ!私もバイトだし。」
「あ、そっか。ごめんね毎度つきあわせて。でも柴っちゃんの辛口聞いて元気出たYO!
 これで今日も乗り切れそうっす。」
「誰が辛口?!やっぱおごんのや〜めた。」
「うそだって!柴っちゃんは甘口だよ!スウィーツだよ!」
「だからなんで英語…」


こうして今日もよっすぃ〜を彼女のもとへと送り出す。
ほんとはヤだけど。
素直じゃない自分をノロイながら。
3 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 00:28

よっすぃ〜との出会いは高校のとき。
当時私が入っていた園芸部は三年の私こと柴田あゆみと、マラソンの女王、里田まいことまいちゃんと、
二年の目で殺すミキティこと藤本美貴のたった3人になり、4人が最低部員数のこの学校で、
まさにがけっぷちに立たされていた。

うちの学校では全員部活動をするのが決まりだったから、部がつぶれたりすれば3人路頭に迷ってしまう。
なんとかして新入部員をいれなきゃ!ということで

「野菜食べ放題!部活かけ持ち可!もうなんでも可!」

という文句で勧誘したところ、つられてフラフラと入ってきたのが一年のよっすぃ〜こと吉澤ひとみだった。

よっすぃ〜はバレー推薦で入学してきた有名な子だったから、最初はいいのかなーってすごく思ったけど、
バレー部もちゃんとやるということで許可をもらったらしかった。
4 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 00:33

もっともよっすぃ〜が入ってくれなかったら園芸部はつぶれてたから、
助かったんだけど。

それからすぐによっすぃ〜は私たちともとけこんで、
3年が過ぎた今でも4人の友情は続いてる。
5 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 00:37

この春私たち3人が通う大学によっすぃ〜も大逆転合格して、
また4人で学校生活が送れるなーなんて思っていたら、
よっすぃ〜に彼女ができたというおめでたい話題が。
わたしにとっては全くおめでたくない話題が舞い込んだのだった。

だって私はよっすぃ〜のコトが。ずっと。
6 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 00:43
よっすぃ〜の彼女は、私とまいちゃんが卒業した後うちの高校に入ってきた子らしくて、
名前は亜弥ちゃん。
ミキティの話によればすっごいかわいくて人気者らしい。

彼女ができたんじゃ私よっすぃ〜に告白もできないじゃん。
…どっちにしろそんな勇気、私にはないけど…。

こうして私にはちっとも春じゃない春がランマンと始まった。
7 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/17(火) 00:48
以上、第1話です。

いきなり間違えてしまいました…

>>2  こっいが払うのが
  →こっちが払うのが

です。

ご意見、ご指摘などありましたらよろしくお願いします。

8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 10:09
面白そうです。
登場人物の組み合わせも期待させますね。
今後も楽しみにしたいです。
頑張ってください。
9 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 16:41

亜弥ちゃんと付き合いだしたよっすぃ〜から恋愛相談を受けることしばしば。柴柴…。
電話やメールも含めればほぼ毎日。

「そんなに?!でも私がうまくいってんの?ってきいたときは
 よしこ別に普通だっていってたのになー。」
シャケとばを食べながら言うミキティ。

「まぁミキティはうちらと違って亜弥ちゃんとも知り合いなんだから。
 亜弥ちゃんのこと悪くは言いづらいんじゃない?」
まいちゃんが軽くフォローする。


大学の学食で講義の空き時間がかぶった二人と時間をつぶしてる。
もちろんシャケとばはメニューではない。絶対ない。

10 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 16:56

「えー?でも私もそんな特別親しいわけじゃないよ?亜弥ちゃんと。
 しゃべったことがあるって程度。」
「まぁよっすぃ〜あゆみんになついてるし。ほんとにまずい状況ならうちらにも
 相談するっしょ。気にしない気にしない。」
「ちぇっ。おもしろそうな話題なのにな〜まぜてほしいな〜。」

おもしろくないよ全然。いつも彼女の話きかされてこっちはへこみまくりだよ。
まったく。


私とまいちゃんは文学部の3年で、ミキティは経済学部の2年生。
よっすぃ〜はなぜだか教育学部に今年入学した。
てっきり体育大にでも行くもんかと思ってたけど。

まぁなにかと不思議なことする子だしね。
突然叫んだり…あれはほんとやめてほしいんだけど…お願いだから。


こうして今もみんなで同じ大学に仲良く通っているけれど、私の気持ちは
まいちゃんやミキティにも言っていない。
気をつかわせちゃうのやだし、3年も続いてるよっすぃ〜との友情という関係を
手放すのはもったいなさすぎる気がして。
11 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/17(火) 16:59


ほんとのほんとはただ勇気がないだけなのかもしれないけど。


だからこの気持ちは、私が私の中だけに押し込めておくんだ。
育ってしまわないように。
あふれてしまわないように細心の注意を払いながら。

12 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/17(火) 17:05

以上第2話です。少ないですが…

>>8 名無飼育さん さま
さっそくのレスありがとうございます。励みになります。
今後ともよろしくお願いします。
13 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/18(水) 16:28

今日もよっすぃ〜からグチという名のノロケをきかされる。

「つーかさー、アイツもてすぎなんだよね。特に年上に!だからさ〜
 甘えなれちゃってるんだよ〜その手にのっちゃいけないと思いつつもさ…
 うちバカだから…」
「ていうかなんでよっすぃ〜亜弥ちゃんのこと私にばっか相談すんの?
 まいちゃんやミキティにはしてないらしいじゃん。」

なんで私にばっかそんな残酷なことすんのよ…。

「だってさ…だって柴っちゃん…」
「なによ」
「…高校んとき平家先生とつきあってたっしょ?」

「?!!な、なんでそのこと…」
「柴っちゃんが高校卒業するときさ、ミキティが平家先生寂しくなるだろうな〜って
 言うから問い詰めたんだ。そしたら…」

あのバカ!ハゲ!目つき悪!!

「うちには打ち明けてくれなくてちょっとショックだったけど…平家先生園芸部顧問
 だったし…まぁしょうがないよねうち子供だったからさ…」
「別にそんな理由じゃないよ…」

つきあってたのは3年の夏くらいまでだったし、その後もうすでに
よっすぃ〜に惹かれてる自分がいたから…

14 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/18(水) 16:36

「だからさ!年上の人とつきあってた柴っちゃんなら亜弥の気持ちがわかるのかなって。
 やっぱ柴っちゃんもデートのときは平家先生がお金払ったりしてたんでしょ?」
「先生と学校の外で会ったことないよ…
 デートも放課後の教室とかばっかだったし…。」
「そ、そっか。ごめんヤなこときいて…。」
「あ、違うの、もう昔のことだし。その、気にしないで。ほんとに。」



なんか今日は変な空気でよっすぃ〜と別れちゃったな…。
それにしても平家先生のこと…よっすぃ〜知ってたなんて。
15 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/18(水) 16:49


平家先生はうちの高校の生物の先生で。
生物が苦手だった私はよく特別課外を受けていた。
おもしろくて優しくて、もともと生徒に人気のあった先生だから二人っきりになれるのが
うれしかった。


二人のときはいろんな話をしてくれて。勉強はほとんどしなかったな…おかげで生物
ちっともできるようにならなくて…ってそうじゃなくて。


だから私が先生を好きになるのに時間はかかんなかった。
もしかしたら先生もって思うこともあって、あの頃の若さあふれる私は
バレンタインデーに思いきって告白したんだ。
ぶきっちょな私をみかねてまいちゃんが作ってくれた手作りチョコをもって。


それから付き合うようになって。
でも付き合うっていってもバレたら大変だし、
(もっとも変なところで勘のいいミキティには気づかれたんだけど。)
早朝や放課後こっそり教室で会うくらいで。
16 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/18(水) 16:55

もしかしたら幼かった私は、そのドキドキ感や自分が特別に思われることが
心地よかっただけなのかもしれない。
先生はきっとそれに気づいてて…
だから3年の夏、受験もあるし。ってことで先生に別れを告げられたときも
それほどショックじゃなかった。

よっすぃ〜に彼女ができたことほどは。


無邪気だった自分はきっと残酷だった。
だから今のこの胸の痛みはきっとその代償。


17 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/18(水) 16:57

以上第3話です。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/19(木) 13:55
ん〜、切ないな〜。
これからが楽しみです。
また〜り待ってます。
19 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 16:22

こないだ以来、よっすぃ〜から相談メールがくることもなくて、
ちょっと気まずい感じが続いてる。


「柴田さん、今日バイト終わってからってなんか予定とかある?」
「え?いや別に特に…」
いつものようにコンビニでバイトしていると、バイト仲間の男の子に声をかけられる。

「じゃ、じゃあさ、メシでもどうかな?!ほらこないだシフト代わってもらったし。
 お礼になんかおごるよ!」
「でも私も代わってもらうことあるし。気にしないでください。」
「いやほんとにほんの気持ちだから。だめかな。」

…予定ないって言っちゃったし。あんまかたくなに拒否るのも変かな?

「じゃあそういうことなら…。」
「まじで?!じゃ何食べたいか考えといて!なんでもいいから!」
まぁご飯くらい。別にいいよね?


20 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 16:31

バイト先近くのパスタ屋さんで夕飯をごちそうになる。

「ほんとにおごってもらってすいません。ごちそうさまでした。」
「いや、こちらこそ楽しかったし。あ、柴田さん家どこだっけ?
 送ってくよ。」
「あ、でも歩いてすぐだから。」
「ほら夜道危ないし。実家だっけ?」
「家はそうなんですけど。父が転勤で母もついてってるから今は私と犬だけなんです。」
「じゃなおさら危ないじゃん。オレバスの時間まで暇だしさ。送らせてよ。」
「はぁ…」
これも断ると気まずくなっちゃうのかな…


結局送ってもらって15分くらい歩くとうちが見えてきた。

「うちそれです。じゃあほんとにごちそうさまでした。」
「すげー立派だね。あ、犬ミルクちゃんだっけ。会ってみたいな。
 見せてもらっていい?」
え、それって中に入れろってこと?

「や、もうきっと寝てるし…」
「柴っちゃん!!」
「へ?よっすぃ〜!」
21 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 16:40

なんでよっすぃ〜がいるの?

「あ、か、彼氏?じゃあオレはこれで…」
「あ、どうも…」
そんな走って逃げなくても。やっぱやましい気持ちがあったってこと?

「て、よっすぃ〜!何してんのこんなとこで!」
「誰、今の?」
「え…。い、いいからほら。早く入って。」


「お茶いれるから待ってて。」
中に入るとよっすぃ〜は慣れたもんでソファーに座り、ミルクと戯れる。
地元の大学に通う私たちはみな実家ぐらしで、事実一人暮しの私の家が
4人のたまり場になっていた。
だからミルクもよっすぃ〜にすっかりなついてる。

それにどことなく似てるんだよね…この二人(一人と一匹か)
色が白いとことか…動きがなんかこわいいとことか…

22 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 16:47

「柴っちゃん彼氏いないって言ってなかった?」
「さっきの人?別に彼氏じゃないよ。むしろ向こうはよっすぃ〜を彼氏だと
 勘違いしてたっぽいし。」
暗かったからきっと男の子に見えたのね。

「彼氏じゃないのに家に連れて来るんだ…」
「そんな連れてきたわけじゃ…送ってもらっただけだよ。」
「いやうちがいなかったらどうなってたことか…」
「どうもならないって。変なふうに言わないで。」
「ちょっと年上っぽかったし。柴っちゃん年上好きだからね。」
「いつの話してんのよ!…それに私別に年上フェチとかじゃないし。」
めちゃ年下のやんちゃ坊主に片思いしてるっつーの。


23 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 17:00

「まったく…もっと自分を大事にしなよ。そりゃ柴っちゃんは大人かもしれないけど、
 やっぱそういうことは好きな人とするもんでしょ。こうなんちゅーかなー、
 そういう純粋な気持ちを、純潔さをなくしちゃーいけないとよしこは思うわけよ。」

…なによそれ。私は純粋によっすぃ〜を。よっすぃ〜のことを想ってるもん。
私はともかくこの気持ちは純潔だもん。
それを否定するのは例えよっすぃ〜でも…よっすぃ〜だから許せなくて。

こぼれでる言葉を止められない。

「私が誰とどうしようと私の勝手でしょ?!
 なんでよっすぃ〜にそんなこと言われなきゃいけないのよ!
 恋人でもないのに!!」
「へ?や、恋人じゃなくても友達なんだからさ、し、心配するじゃん。」
「…そんなのうれしくない!もう何しに来たのよ!帰ってよ!!」
「えぇ?!いきなりマジ切れ?!わかったよ!帰るよ!おとといきやがれ!」
おとといきやがれって…来たのよっすぃ〜なんですけど。
24 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/19(木) 17:05

「もうバカよっすぃ〜!」
「バカって言ったほうがバカだも〜ん。やーい。じゃあね!」

バタンっ!


「バカよっすぃ〜…なんでほんとに帰っちゃうのよ…」


ほんとは家の前によっすぃ〜がいて。
会いに来てくれてうれしかった。
もっと二人でいたかったのに。


たとえ交わされるのがまた亜弥ちゃんの話だったとしても。

25 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/19(木) 17:14

以上第4話です。
また間違えてしまいました…

>>21  動きがなんかこわいいとことか
   →動きがなんかかわいいとことか  です。

>>18  名無飼育さん さま
レスありがとうございます。今回もせつなくなってしまいました…。
できれば本編の方は22日に完成させたいのですが、間に合うか分かりません…。
がんばります。これからもよろしくお願いします。
26 名前:18 投稿日:2004/02/20(金) 03:10
毎日のような更新乙です。
心地よい切なさが良いです。
好きな切なさですね。
27 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/20(金) 17:10


 よっすぃ〜が亜弥ちゃんと別れたことをきいたのはそのすぐ後だった。


よっすぃ〜を追い返した後、泣きつかれた私はいつのまにかベッドでミルクと
寝てたみたい。
♪恋人になろ〜よ〜
ケータイの音が鳴り響く。
「…もしもし?」
「あ、あゆみん?どうしたの今日。必修あんのに来ないなんてめずらしいじゃん。」
「え?まいちゃん?…ん、何時?今…」
「…寝てたの?もうお昼だよー。午後の講義どうすんの?」
「そんな気分じゃない…」
学校なんか行ったら、よっすぃ〜と会っちゃうかもしれないもん。
よっすぃ〜…

「…なんかあった?」
「う、まいちゃ…ぐすっ」
「え!そんないきなり泣かれても!わかったすぐ行くから。家から出るなよ!」
「うん…待ってる。」
『なに〜どこ行くの〜美貴も行く〜』
『うっさい!ややこしくなるからお前は来るな!』
電話の向こうでミキティとまいちゃんの格闘がきこえる。

なんか頭ん中ぐしゃぐしゃで。
なんであんなこと言っちゃったんだろうとか。
あんな時間に追い返して…よっすぃ〜大丈夫だったかなとか。
軽い女みたいに思われて…嫌われちゃってたらどうしようとか。
いろんな気持ちが混ざって涙で流れ出す。

なのによっすぃ〜を好きな気持ちはその涙で薄まることもなくて。
もうやだ。ほんとに。

28 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/20(金) 17:19

「うーす。お、ミルク元気か〜。」
「ぐすっ。いらっしゃいませ。」
「あぁもう汚いな〜鼻かみなよ、ほら。」
「うん。ぐすっ。」
「…で?」「へ?」
「だから何で泣いてんのって。」
「………」
「あゆみんが言わないならミルクにきいちゃおっかな〜」
「いや、ミルクしゃべんないし。」
「なに?口止めしてんの?」
「そうじゃなくてチワワは人の言葉はしゃべんないの!」
「結構元気じゃん。よかったよかった。それで?何があったわけ?」

「…昨日よっすぃ〜がうちに来て…」
「あぁ。よっすぃ〜がね。え、なんで泣くの?あゆみんうれしいはずでしょ?」
「そりゃうれしいけど…ってそれどういう意味?」
29 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/20(金) 17:25

「え?だって好きじゃんあゆみん、よっすぃ〜のこと。」
「うん大好き…て知ってたの?!」
「はっ?なにそのリアクション?え、隠してたの?」
「いちおう…」
「あ、わかった。知らないフリするから。さぁ続けて。」
「もう今更遅いよ…。」
「ははっ。ごめんごめん。でも気づくっしょ〜だってあゆみんミルクを見る目と
 よっすぃ〜を見る目、一緒なんだもん。」
「なにそれ…。」
「こうなんちゅーかなー愛しいって感じの目だよ。愛が満ちてるのよ。」
「ふーん。」

30 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/20(金) 17:35

「てかごめん。ほんとはあゆみんが泣いてる理由知ってるんだ。
 ケンカしたんでしょ?よっすぃ〜と。」
「どうして……」
「よっすぃ〜がさ。昨日私とミキティに電話してきてさ。
 どうしよあゆみん怒らせちゃったって泣くわけよ。」
「よっすぃ〜が…?」
「あいつ亜弥ちゃんのことうちらにはちっとも相談しなかったくせにねぇ。
 それほど大事に想ってるってことじゃん?あゆみんのこと。」
「そんなはずないよ…」
「なんでそんな自信ないの。よっすぃ〜があゆみん見る目もさ、
 ベーグル見る目とおんなじだと思うんだけどなー。」
「意味わかんない…。」
「こう、おいしそーみたいな…ごめん。」
「もうまいちゃん…。」
「よし。あゆみんにも笑顔が戻ったことだし帰ろうかな。バイトも行かなきゃだしね。」
「うん。わざわざごめんね。ありがとう。」
「はいはい。あ、それともう1個。」

31 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/20(金) 17:44

「ん?」
「よっすぃ〜亜弥ちゃんと別れたらしいよ。」
「え、どうして?!」
「さぁ。でももしかしたら昨日それを言いに来たのかもね。
 ま、あとは直接ききなさい。あゆみんだってさ、わかったんじゃない?
 今回のことでさ。自分がもう今のままじゃガマンできないの。
 素直になんなよ!グッドラック!!」


キムタクばりの決めゼリフをキメ、まいちゃんは帰っていった。

32 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/20(金) 17:50

以上第5話です。

>>18 さま
いつもレスありがとうございます。ほんとに励みになります。
これからもがんばりますので、よろしくお願いします。

33 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/22(日) 02:32
初めまして。
おお!面白い!
登場人物も新鮮でイイですね。
今後の展開が楽しみです。
34 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 15:51



なんなんだろう――この気持ちはなんて言うんだろう――


35 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 16:09

「あーあ。なんで美貴はよしこ担当なのよ。美貴も柴ちゃん励ましに行きたかったなー」
「そんなキツイ目つきで…イヤそうな顏しなくても」

大学近くのファーストフード。
「あゆみんのことはまかしといて。じゃ、あとミキティよろしく!」
まいちゃんがいなくなって1時間。
ミキティの鋭い視線とイヤミに耐え続ける。

「目つききつくて悪かったね。あぁ柴ちゃんかわいそうに。
 よしこにいじめられて。おーいおーい。」
「だ、だって。そんな彼氏でもない男とか家に連れてきたらさ。ダメじゃん。」
「ふーんダメなの?」
「ダメだよ!!絶対そんな…そんなん…イヤだ…」
「はい?」
「え、や、だからうちは友達としてさ。こう心配して…」
「ほう友達としてねぇ。」  「な、なに?」
「別に。てかよしこ亜弥ちゃんと別れたんだって?なんでまた。」
「…よくわかんないんだけど、亜弥がさ。もういいよって。
 自分の気持ちに正直になんなきゃって。」
「うわ、なんか亜弥ちゃんて…すげーいい子なんじゃ…。」
「あぁ、いい子だよ?金勘定さえもうちょい普通なら…。」
「うちのよしこがバカなばっかりに…申し訳ない…」
「おーいミキティ?」

36 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 16:20

「まったくこのバカは。てかよしこそもそもなんで亜弥ちゃんとつきあったりしたの。」
「な、なんでって…亜弥かわいいし。それに年下じゃん?うちより。
 だからなんか頼られるのがこういいっつーか大人な自分が出せるていうか…。
 背伸びしなくてもOKみたいな…楽だったんだ。」
「ふーんなんかめんどいんだね。」
「へ?」
「いや好きだったからってこたえりゃ―いい話じゃん?それをうだうだと。」
「それは…そうだけど。」
「ねぇ、好きだった?亜弥ちゃんのこと。」
「そ、そりゃーね。」
「どこが?」
「だから…かわいくて…年下で…。」
「あのさー。なんでそんな年下ってとこ強調すんの?」
「強調なんかしてないよ。」
「いやしてるね。意識しすぎ。すごいかっこ悪いよ、それ。
 まぁまだまだよしこは子供だったってことかな。」


37 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 16:32

「!!子供なんかじゃない!そりゃーみんなからしたらうちはいつまでも
 後輩かもしんないけど!でもうちだって亜弥とかからしたら」
「落ち着きなって。あのね年が下だからとかじゃないの。
 子供だっていうのは考え方のこと。年とか気にしすぎなんだよ、よしこは。」
「だって…ヤなんだ、子供だって思われるの。」
「なんで?」  「なんでだろ?」
「あのねぇ…まいっか。自分で考えな。なんで亜弥ちゃんとつきあうと楽だったか。
 子供だと思われんのがヤか。…なんで柴ちゃんにお説教しちゃったのか。
 すごい分かりやすい理由だと思うんだけど。
 じゃ、美貴帰るから。たっぷり悩みなよ〜おいたした罰にね。
 じゃあね〜。」

「んなの…わかんないよ…」



わかってるんだ、ほんとはずっと。
でも認めるのがこわくて。
だって自分はきっと彼女の特別にはなれないから。

38 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 16:42

浮かぶのはあの日の笑顔。
大人の人に抱きしめられて安心した顔をして。
あぁきっと。
彼女が求めるのはああいう人なんだ。
自分なんて。
こんな場面を見て――恥ずかしくて情けなくて――足がすくんでる子供な自分なんて。
相手にされるはずないから。

いっそ気づかないままでいよう。こんな気持ちには。
そうしたらきっとすぐに忘れてしまうから。
そう思っていたけれど。

勝手に妬いて勝手に怒って。
きっと彼女を傷つけた。身勝手な想いで。

なんだちっとも忘れらんないんじゃん。
この先だって。きっとずっと。
なら今。

あの質問に自分で答えをださなきゃいけないのかな。

――この気持ちはなんていうの?

それは、恋。恋煩いさ。





39 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/22(日) 16:47

以上、第6話です。次回最終話になります。

>>33 名無飼育さん さま
初めまして。レスありがとうございます。
次、本編最終話になりますが、よければおつきあいください。
よろしくお願いします。
40 名前:18 投稿日:2004/02/22(日) 17:35
イイ!スゴくイイ!
短編だからこその良さがすごいでてる気がします。
ラストしっかり見ますんで頑張ってください。
41 名前:名無し飼育 投稿日:2004/02/22(日) 19:44
ミキティ、亜弥ちゃんがすげーいい子だと思うなら、
よっすぃ〜の代わりに幸せにしてあげるとかは…w
42 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:11



素直になろう。
まいちゃんにも言われたし。
素直になろう。
どんな結果になっても。

これからもよっすぃ〜のそばにいたいから。だから。

43 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:15

きっかけとかはわかんない。あったかどうかも。
でもなんか笑顔が。
笑ってる顏見るたびにこっちまでうれしくなって。
そしてちょっぴりせつなくなって。


恋に恋してたあのころとは違う。
私はあなたに恋してる。
少し年下のあなた。

44 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:23

『話があるんだ。』
よっすぃ〜からこんな短いメールははじめてで。
それだけで私は少し落ち込んでしまう。
『私もある…かも』
『かもってなに(笑)会ってくれる?』
『うん』


「久しぶりに行ってみない?」
待ち合わせによっすぃ〜が提案したのは私たちの高校の花壇だった。
私にとっては特別な場所。よっすぃ〜にとってもそうだといいな。
…あのころからもう3年もたつんだ。
なつかしいな。あ、今でもなってるんだ。トマト。

45 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:36

トマト係は私だった。係とか決めたわけでもないんだけど。
まいちゃんはきゅうりとか育ててたな。平家先生は果物をたくさん。
ミキティはなぜかハムスターを育ててた。園芸となんの関係があんのよ…。
よっすぃ〜は…食べてただけじゃん。思い出すだけで顏がにやけちゃう。
やっぱり私、よっすぃ〜が好きなんだな。まいったまいった。

「柴っちゃん」
いつになく真剣に呼ぶから…ずっしり重い。私の名前。

「よっすぃ〜…そのこないだは」
「ごめん!そのひどいこと言って。」
「ううん。よっすぃ〜せっかく来てくれたのに。追い返しちゃってごめんね?」
「や、しかたないよ。柴っちゃんの話も聞かずに急にお説教しちゃって。
 ほんとうち何様なんだか…」
「ううん。…うれしくないなんてうそ。うれしかったよ心配してくれて。
 あ、そのもちろん友達としてだってわかってるから…あの」
「いや、違うんだ!それはその…」
「……?」
「だからあの!…あ、トマト。」
「ね!なつかしくない?!育ったやつみんなでよく食べたりしたよね!」


46 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:47

「あぁ…。うちほんとはさ、トマト嫌いなんだ…。」
「え?!だってよっすぃ〜いつも食べてたじゃない。」
「うん、自分でもなんでって不思議だったんだけど…
 たぶん柴っちゃんが作ったヤツだったから…」
「へへっ。やっぱし?上手にできてたでしょ?愛がこもってるからねー。」
「うちとしてはその愛を受け取らないわけにはいかないっていうか…」
「ん?なんか言った?」
「え?や…が、合宿とかも楽しかったよね!」
「あぁ、したね〜園芸部なのになんでって感じだったけど。」
「普通は許可下りないよね〜やっぱ顧問が平家先生だったからね〜。」
「………」  「はっ!ち、違くて!」
「…よっすぃ〜しつこい…」  「ご、ごめん…」
「そ、そんな謝られると…。」
「…ほんとはさ、知ってたんだ。柴っちゃんと平家先生のこと。
 ミキティから聞く前から。」
「そうなの?どうして?」
「見たから…教室で二人が抱き合ってるとこ。」
「うそ!」
め、めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど…

47 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 22:57

「その日からなんかややこしくなっちゃったけど。
 やっとわかったんだ、自分の気持ち。てかわかろうって決めたんだ。
 …亜弥と別れたこと知ってる?」
「うん…まいちゃんにきいた。」
「亜弥といるとさ、自分は子供じゃないって。もう大人なんだって思えたんだ。
 だから楽だった。自分の一番自信のない部分、見なくてすんだから。
 亜弥は、きっとうちが亜弥をちゃんと見てないの気づいて。
 フラれちゃったよ。正直になれって言われた。」
「そう……」
「柴っちゃんが知らない男の人と帰ってきたとき。
 心配したとか、そんなかっこいい理由じゃないんだ。悔しかったんだ。
 ただのヤキモチ。そんなことする権利、うちにはないのに。」
「そんなこと…」
「教育学部に入ったのも。柴っちゃんが先生とつきあってたから。
 先生になればもしかしたらって…」
「………」
「嫌いなトマトも。柴っちゃんが作ったから。だったらって…」
「よっすぃ〜…」


48 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:07

「…好きなんだ。柴っちゃんのこと。ずっと好きだったんだ。
 こんなこと言われても柴っちゃん困るだけだって思うけど。
 でも逃げたくないから。じゃなきゃ大人になんか、いつまでたってもなれないって。
 そう思うから。だから」
「ありえないよ」
「え?」
「そんなのありえない…」
「柴っちゃ…」
「よっすぃ〜が私を好きなんて。そんなわけないじゃん、そんなのありえないよぉ…」

もう立ってらんなくて。ずるずる座り込む。
どうしよう。なにがなんだかわかんない。
うれしいとかそういう気持ちより先に。
びっくりしちゃって。
そうただびっくりしちゃって。

「いや、好きだよ?ずっと前から。」
「前からって…つきあってたじゃない!亜弥ちゃんと。」
「だからさっき説明したとおり…てか聞いてた?!うちの話。」

49 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:15

「じゃよっすぃ〜は私のこと好きなのに亜弥ちゃんとつきあってたんだ…。」
「それは悪いことしたと思ってるって…てか柴っちゃんこそしつこいじゃん!
 わかったよ、変なこと言って悪かったよ…迷惑ならそういってくれていいよ…」
「ちがっ!迷惑じゃない!うれしい!」
「へ?」
「ちょ、ちょっと待って。なんか夢みたいで…」
「はぁ…あのお隣座らしてもらっていいっすか?」
「あ、どうぞ…」

こんどは二人並んで座り込む。あ、もう星が出てる。キレイだな…

「話を整理するとさ」
よっすぃ〜の声がさっきより近くて。ドキドキする。

「う、うれしいの?」
「え?」  「いやうちの気持ち…」

50 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:21

「うんうれし…」
「そぉ…ってなんで?!」
「だって私、好きなんだもん。よっすぃ〜のこと。」
「?!うそ!だってうち柴っちゃんより年下だし子供だし…」
「んー子供かどうかはわかんないけど。
 でもそのまんまのよっすぃ〜が好きだよ?」
「…そうなの?」
「うん」
「両想い?」
「みたい」
「そぉ…」

「…よっすぃ〜が亜弥ちゃんとつきあう前は。」
「え?」
「このまま伝えないままでいようと思ったの自分の気持ち。」

51 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:29

だって失いたくなかった。
よっすぃ〜のこと。

「でも、よっすぃ〜から相談されると、いっつも辛くて。気づいたの。
 もうガマンできないって。自分だけ見ててほしいって。
 ワガママみたい私。思ってたよりずっと。」

「そうだったんだ…あ、あのさ突然だけど抱きしめてもいい?」
「は、はい…」

まさか自分が。よっすぃ〜の腕の中にいる日がくるなんて。
特別で運命的な日って。なんでもない日のなかにあるもんなんだな…

「てかうちのほうだよ。あぁまさか平家先生と同じことできる日がくるなんて…」
「ほんっとしつこい。よっすぃ〜だって亜弥ちゃんとつきあってたくせに。」
「ぐ。でももうそういうことはないから。」




52 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:34

「絶対?」
「うん。絶対もう柴っちゃんが作ったトマト以外食べない。」
「意味わかんない。」
「むしろもう柴っちゃん以外食べない。」
「意味わかんない!!」
「へへ。…好きだよ」
「んっ…」

ほら。あんなに触れてみたかったクチビルも。
こんな突然に。前触れなんかないんだ。

「はぁっ…」
息が苦しくて。
気持ち的には離れたくないけど、そっと肩を押してよっすぃ〜を離す。
なのに

53 名前:トマトの思い出 投稿日:2004/02/22(日) 23:44

「ちょ、よっすぃ〜!!」
「ん」
勢いづいたよっすぃ〜は中々やめてくれなくて。
…今まで触れてなかったのがウソみたい…

「えへへ」
「…バカよっすぃ〜」
「まぁまぁ。さ、それじゃ柴っちゃん家でもっと愛を確かめようか!帰ろ?」
「………。」
「柴っちゃん?」
「立てないよ!バカよっすぃ〜!!」
「うそ、まじで?!」
「ほんとバカ…」
「みんなでバカバカって…てか柴っちゃんも結構子供だね。
 こんくらいで腰ぬかしてたらだめよ〜。大丈夫でちゅか〜」
「むかつく!!最低!バカ!」
「わわ。砂かけないでよ。」


気持ちをうちあけたらどうなっちゃうんだろうって思ってたけど。
想いが通じても、私たちはあんまりかわらないみたい。


繋がれた手以外は。

54 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/22(日) 23:50

以上 トマトの思い出 終了です。
初小説のため、読みづらい点もあったかと思いますが、
読んでくださったみなさんありがとうございました。

>>18 さま
いつもほんとにありがとうございます。無事完結できました。
気に入っていただけたらうれしいです。

>>41 さま
するどい…(笑)
続編もよろしかったらおつきあいください。

それでは次回は続編の短編です。

あやみきです。よろしくお願いします。
55 名前:18 投稿日:2004/02/23(月) 00:35
終わってしまった。もう一度青春したくなりましたよ。
楽しかったです。

短編のほうもまた読ませていただきます。
またよろしくお願いします。
56 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 16:49

想いを寄せていた人と。親友が結ばれた。

よかったじゃん。幸せになんなよ?
この想いの分も。

わかっていたことだから。
そんなに落ち込んじゃいないよ。
ほんとは少し落ち込んでるけど。

でもきっと立ち直る。
心から二人におめでとうって言える日が来る。


さようなら。
別にあの人と離れるわけじゃない。
これからもずっと友達だよ?

だからこのさよならは――この恋心へのさよなら




57 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 16:50



――――思い出はここから――――




58 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 16:54

先輩。ずっと好きだった。

最初から私を見てくれてないことは気づいていたけど。

でも。
そばにいられるなら。
そう思ったんだ。

だけどやっぱり。
限界だよ、もう。

恋人になったあなたに
まだ片思いしなくちゃいけないなんて。


だから解放してあげる。
あなたも。
この想いも。



59 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 17:05

「亜弥ちゃん、どの映画みたいの?僕は亜弥ちゃんが見たいのでいいよ!!」
「んーと亜弥はですねぇ、やっぱ恋愛ものかな〜」
「亜弥ちゃんらしいな〜 あ、じゃあチケット買ってくるね!待ってて!」

遊んでくれる相手ならいくらでもいるし。
さみしくなんかないよ。
たとえ先輩が隣にいてくれなくても。

「だから美貴は中学生だっていってんの!さっさとチケット売ってよ!
 映画始まっちゃうじゃん!!」
「だから学生証を…」
「もってきてないし!てかさっきの子たちにはそんなこと言わなかったじゃん!
 差別だ差別!!」

まさかあそこで騒いでるの…藤本先輩じゃ…。
しかも中学生だとかなんとか…
見なかったことにしたい。…けど


60 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 17:16

「じゃあ干支は?なに年ですか?」
「え、干支?……う、うるう年。うるう年だよ!!」
「あの、すいません、この人ちょっと頭おかしくて。ご迷惑おかけしました。」
「ちょっ、いきなり首つかまないでよ!…って亜弥ちゃん?」
「ほらいきますよ、ほんとにすみませんでした、失礼しまーす。」
「は、離せぇ!離せぇ!」


暴れる藤本先輩を引きずり。
近くのカフェにとりあえず避難する。

「たく。バカなことしないでくださいよ。
 後輩として、いや人として恥ずかしいじゃないですか。」
「いいじゃん見えるんだし。」
「そんな目つきの悪い中学生いませんよ。」
「だから目つきは関係ないでしょ?!…てかうちらそんな親しくもないのに。
 そんなこと言われるなんて心外。」
「こっちこそ映画館に年ごまかして入ろうとする人と、知り合いだと思われたなんて。
 心外ですよ。」
「あのねー中学生料金なめちゃいけないよ。
 大学生で入るより500円も安いんだよ!このコーヒー2杯分だよ。」
「へーそうなんですか。亜弥自分でお金出したことないからわかんないな」
「このっ…へぇ。今日も誰かと来てたんだ。」


61 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 17:28

「えぇ、そりゃーもちろん……って置いてきちゃったよ!どうしよう!」
「もう新しい男か…。」
「んもう!先輩のせいですよ!」
「よしこはよしこで苦労してたんだ…」
「…あ、そっか。先輩知ってるんですよね。…私と先輩のコト。
 ていうか先輩が二人いるとわかりづらいですよね。
 じゃあ藤本先輩のこと、なんて呼んだらいいですか?」

「や、なんで美貴が先輩から下ろされんの?!
 美貴のがよしこより先輩なんですけど!!」
「んーどうしよっかなー。あ、私小さい頃あやたんって呼ばれてたんですよ。
 かわいいでしょ?そこからとって『たん』ってどうですか?たん。」
「いや名前授けられても!子供かあんたの!!」

「先輩……元気ですか?」
「あぁ…柴ちゃん…っても知らないか。今の彼女と仲良くやってるよ。」
「そっか…あ、あたしももう彼氏できたし!んもーすっごいラブラブなんで!
 先輩に気にしなくていいって伝えてください!」
「映画館に置き去りにするくらいラブラブだもんね〜」


62 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 17:43

「………たんて意地悪ですね。」
「やっぱたんに決まったんだ…まいいや。
 亜弥ちゃんがさ、言ってくれたんでしょ?よしこに。正直になれって。ありがとね。」
「別に私…だってやだし。自分以外の誰か想ってる人なんて。
 ま、私もそんな本気だったわけじゃ」
「いや本気じゃなきゃさ、気づかないでしょ?相手の気持ちなんて。
 つーかさっきからなんなの、そのキャラ。もっと普通にしなよ。
 美貴が思うに、亜弥ちゃんもっといい子だと思うよ?それによしこのことも
 ほんとに好きだったはず。間違いない。」

「…たんって鋭いのかバカなのか よくわかんない。」
「とうとうタメ口かよ!もういいや…」
「白状しちゃうと…好きだったよ、先輩のこと。すごく。」
「うん。」
「ていうか恋愛映画なんか見るんだね?たん。しかも一人で。」
「話とぶなおい!!……まあね。乙女だし。」
「結構悲しい話だったと思うけど…失恋でもしたの?」

ぶほっ
「やだきたなーい。ふーんしたんだ。
 自分だけさ、 こっちの恋愛事情知ってるってずるいんじゃない?
 相手どんな人?私知ってる?」



63 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 17:55

「…知ってるといえば知ってる、かな。」
伝えることすらなかった想いだけど。
このまま誰にも知られずに消えていくのは―
さすがにかわいそうかなって。
そう、思ったから。


「…柴ちゃん。」
「え?」
「よしこの新しい彼女に……失恋した。」
「そう、なんだ。」
「……んな顏しないでよ。」
「だって………」

そんな悲しい顏しないで。
どうして君が。そんなに。



64 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:06

「ねぇ亜弥ちゃん。こんどまたあの映画さ、見にこない?」
ほんとは一人で見ようと思っていたけど。
隣に君がいるならいるで。
むしろいるほうが。

「…たんのおごりならね。」
「………始まった。」

ちょっとばかし真剣に言ったのに。
そんなふうにはぐらかされたから。

「必ずお金使わせるんだね。亜弥ちゃんは。」
「…愛を確かめるには、一番でしょ?これが。」
「そういうのやめたほうがいいよ。痛いこと言うけど、愛はお金じゃないでしょ?
 自分の価値、下げるだけだよ。もったいないよ、そんなの。」



65 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:07



ほしかった言葉を。


くれたのは意外な人だった。


66 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:13

「わぉ。意外な人に言われちゃった。」
「はっ?」
「ずっとね、叱られたいって思ってたの。あ、別にマゾとかじゃないよ。」


だって。怒ってくれるはずでしょ?ほんとに本気で想ってくれる人なら。
私モテるから。みんなに好きだって言われてるうちに
わかんなくなっちゃったの。
みんなのこと信じらんなくなっちゃった。


「ほんとは、先輩に、気づいてほしかった。」

好き、だった。ほんとに好きだったから。




67 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:19

泣きだした亜弥ちゃんを見て。

胸がギュッとなったけど。

美貴は泣かなかった。

亜弥ちゃんが。
美貴の分も、泣いてくれてる気がしたから。

この子が確かめようとしたのは。

お金を使うことじゃない、ほんとうの愛情








68 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:26

ねぇ。亜弥ちゃん。
どうかな私たち。

前に想ってた相手とはお互いかなり違うけど。

どうかな。

傷をなめあうことにはならないと思うよ。
だって私たち二人とも、自分の傷を自分で治す力、もってるはずだから。

ねぇ亜弥ちゃん。


心の中で問いかけると、彼女が顏をあげた。

「ね…たん。」
「ん?」
「幸せになるといいね。先輩と…『柴ちゃん』。」
「なるでしょ。美貴と亜弥ちゃんもね。」



69 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:30

へへっと泣きながら微笑む顔を見て。

冷めたコーヒーをいっきに流し込む。

そして

待っていようと思ったんだ。
彼女が泣き止むまで。
明日も、明後日も。

飲み干したコーヒーカップの底に。

二人の重なる未来が見えたような。
そんな気がしたから。



70 名前:思い出はここから 投稿日:2004/02/23(月) 18:37

「ね、たん…」
「うん?」

やっぱり見にこようよ。さっきの映画。ワリカンで。

「いいよ。でも美貴は中学生料金で…」
「やめてよ!もう顏覚えられてるよ!!」
「違う映画館行きゃーいいじゃん。あ、亜弥ちゃんが買ってくればいいんだよ。
 亜弥ちゃんなら中学生に見えるって!」
「ひ、ひどい!私、体だけならたんより大人だもん!!」
「はぁ!?な、なにいってんの?!」
「あーたん赤くなってるぅ。やだぁエッチぃ〜」
「自分で言ったんでしょ?!なんなのあんた?!」


思いでは今日、ここから始まる。 


71 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/23(月) 18:42

以上 あやみき短編 思い出はここから 終了です

>>18 さま
いつもありがとうございます。青春、感じていただけてうれしいです。
短編はこんな感じになりました。

次はまたまた続編で柴ちゃんとよっすぃ〜のその後なんかを少し…
よろしくお願いします。
72 名前:18 投稿日:2004/02/23(月) 19:38
あやみきも意外といけるもんですね。
食わず嫌いしてたので最初どうかな〜と思っていたんですが
視点がミキティだったからか読みやすかったです。
うまいですね。

食わず嫌いは良いものが見れなくなりますね。
73 名前:なち 投稿日:2004/02/25(水) 01:07
今日タイトルに惹かれて、初めて全部よまさせて頂きました。
よししばイィ(・∀・)!!
元々このCP好きだったんですけど、
更に好きになりましたね♪
切ないけど、甘い♪サイコー♪
これからも楽しみな作品です。
74 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/25(水) 18:09

ちょっと続編の方がまだまとまらないので…

先に新作の違うお話を書かせていただきたいと思います。
こちらもよししばです。

予告と違う更新になってしまい、申し訳ありません。
75 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/25(水) 18:13



         『よっちぃ』が


    あの『よっちぃ』が帰ってくるらしい



76 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/25(水) 18:21

「え?!帰ってくんのよっちぃ?!」
「よっちぃじゃなくて『よっすぃ〜』。もうあゆみん、いつまでも幼稚園生じゃ
 ないんだから〜」

まったく困ったちゃんでちゅねーなんてまいちゃんが。
人ん家のベッドでのんきにマンガなんて読みながら、言う。

ち、帰ってくんのか『よっちぃ』……


思い起こせば、あれはかれこれ15年ほど昔のこと。
同じ幼稚園の同じバス乗り場だった私たち。
私とまいちゃんは年長組で。ごっちんと『よっちぃ』は年少組だった。

この『よっちぃ』に。
なぜか私はいじめられていたのだった。



77 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/25(水) 18:31

たとえば誕生日。
「あーちゃん!おめでとぉぉ!!プレゼントだよ〜」
とよっちぃがくれた箱の中には大っ嫌いなカエルが入っていたし。

髪の毛をお母さんにキレイに編込みしてもらって、ウッキウキだった日は
「あぶない!あぶない!」
とわけのわからないことを叫ぶよっちぃに、頭をはたかれて、髪が
グッシャグシャになったし。

だもんで私のこどもの頃の口癖といえば
「よっちぃのばかぁ〜よっちぃなんてきらいらもぉ〜ん。うぇ〜ん。」
だったわけで。
これはハタチになった今でも、まいちゃんにマネされるので、すごく恥ずかしい。



その『よっちぃ』が。
この春帰ってくるらしい―――



78 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/25(水) 18:41

よっちぃは正しくはよっすぃ〜。
小さい頃は発音できなかったけど。

よっすぃ〜は私とまいちゃんが幼稚園を卒園するころ、お父さんの転勤で、遠くに
引っ越してしまった。
とはいっても、こっちにおばあちゃんの家があるよっすぃ〜は、ほぼ毎年、夏休みに
帰ってきていた。…みたい。

まいちゃんやごっちんは毎年よっすぃ〜と遊んでいたけれど、
私はやっぱり会いづらくて。
だってまたいじめられたらヤだし…

だから、何度まいちゃんとごっちんに誘われても、
私はよっすぃ〜に会いには行かなかった。

そうやって15年、過ぎてきたのに。
この春、再びお父さんの転勤で。
よっすぃ〜が帰ってくる。
今度は休みだけじゃなく、ずっとよっすぃ〜がいるんだ…

な、なにも起こらないといいな…なんか不安なんですけど…



79 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/25(水) 18:47

と、思ってはいたけれど。

よく考えてみれば今でも同じ幼稚園のお迎えバスにのるわけないし。当然だけど。
よっすぃ〜はごっちんと同じ高校に転入したらしいけど、
私とまいちゃんは大学生だし。

たまに駅とかで、ごっちんといるよっすぃ〜らしき人を見かけることはあったけど。
でも、それぐらいで。

なんだ、気にするほどのことでもなかったかな〜なんて思っていた。

それに私には彼氏がいて。
よっすぃ〜のことなんか、いちいち気にしてらんないもん。



80 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/25(水) 18:54

以上 第1話 終了です。
予告に反して続編をあげることができず、ほんとうにすみません。

>>18 さま
あやみき、苦手なCPにもかかわらず、読んで、感想までレスしていただき、
ありがとうございます。いつもレス、参考にさせていただいてます。

>>なち さま
はじめまして!レスありがとうございます。
今度もよししばですので、もしよろしければまたよろしくお願いします。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/25(水) 21:50
よししば新作ですね♪
作者さんの小説読んで、このCP大好きになりました。
続き楽しみにしてま〜す。
82 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 17:35

「ね、あゆみん早く用意しなよ〜夏祭り始まるよ?」
「ぐすっ。やだ!夏祭りなんか行かない!」
なんで私がフラれなきゃいけないのよ〜


あれから、ひょうしぬけしちゃうほどよっすぃ〜は
私の生活に、なんの変化ももたらさなくて。
ほんと帰ってきたこと忘れちゃうくらい。
おかげで穏やかに春が過ぎ、夏が来て、よーしいっぱい遊ぶぞーと思っていたら。

半年近く続いていた彼に。
楽しい楽しい夏休みの直前にフラれるなんて。

私ってなんてついてないんだろう。



83 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 17:45

「んもーいつまでもうじうじしてないでさ、せっかく夏祭りなんだから。
 出かけるよ!」
「……なに、まいちゃん浴衣なの?」
「もちろん!祭りには浴衣でしょう!えへ。新しいの買ったの〜いいでしょ〜」
「あぁ、似合う似合う…」
「暗いくら〜い。ほらあゆみんにも私のお古、貸してあげるから。
 さ、着替えた着替えた。」
「別に…浴衣なんてきても…誰に見せるわけじゃないし…」
「もぉ!うだうだ言わずに着替えなさい!新しい出会いがあるかもしれないでしょ!?」
「そんな都合よく…」
「それがあるんだなー」
「………はっ?」
「え、い、いやこっちの話。さあ行くわよ!祭りへゴー!」

妙にはりきるまいちゃんにせかされて、しぶしぶ浴衣に着替え、
夏祭りの開かれる近所の神社に向かう。
うわぁ、あっちー、あっちー
ねぇまいちゃん、早くかき氷でも食べようよ〜


84 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 17:57

「ちょっと待っててよ、あ、きたきた!ごっちーん、よっすぃ〜!!」
はっ?!ちょっとどういうこと?

「いやーんこんなトコで会うなんて、偶然〜」
「まいちゃん今きたきたって言わなかった?」
「んもうあゆみんったら。細かいことは気にしないの!」

「んあ〜柴ちゃん久しぶり〜」
「あ、ごっちん久しぶり〜……」
その隣で固まってる子は…よっすぃ〜、だよね?やっぱり…
てことはよっすぃ〜も知らされてなかったのね、私が来ること。

「………久しぶり」
「あ、は、はい。」

そ、そんな緊張しなくても…
別にとって食ったりしないよ…てかそっちじゃない!私をいじめてたの!

「さ、久しぶりにみんなそろったことだし、いこいこ!」



85 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 18:08
鳥居に続く長い階段の左右に、たくさんの出店が並んでる。
まいちゃんとごっちんは、人の気も知らずにきゃっきゃと上にのぼっていってしまって、
はしゃぐ二人の後を、よっすぃ〜と無言のままついていく。

あぁ気まずい…しかも歩きづらいし、浴衣。
ごっちんは浴衣じゃなくて、キャミにミニスカートのいつもっぽい服装。
よっすぃ〜は…黒いTシャツにゆるめのジーンズ。普通にかっこいいんですけど…。

ほんとにこの子が『よっちぃ』…なんだよね?
同じくらいだった背丈は、いつのまにか追い越されて。
なんていうかすごく、大人になった。
まっ白い肌や、大きな瞳はそのままだけど。
でもやっぱり、違う人と歩いてるみたい。


86 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 18:25

「ねー柴ちゃんよっすぃ〜!射的やろーよ射的〜」
射的を見つけたごっちんとまいちゃんが銃をふりまわして叫ぶ。
こわっ!
『うんいいよー』
わ、よっすぃ〜と声がかぶっちゃった。うぅ気まずいよ〜

「全然あたんなーい。」
「ごっちんもっと腕のばさないと」
「えーじゃあ柴ちゃんやってみ?」
やっぱこういうのは軽そうなヤツをねらって…あたった!なんだぁチョコかぁ。
「ねぇまいちゃんもやったら…あれ、二人は?」
振り返ると、いるのはよっすぃ〜だけ。

「あ、あの、なんかごっちんがトイレいくって、ま、まいちゃんもついてっちゃって…」
…かんべんしてよ〜なに考えてんのあの二人は!?

「あ、じゃあ追いかけようか」
「いや、あの、戻ってくるって言ってたんで、あんま動かないほうが、その、」
うわよっすぃ〜ガチガチだよ。
「そ、そうだね行き違いになってもね。」
私もどもっちゃった…


87 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 18:36

「あ、あの座りますか?」
「え、あ、はぁ…」

仕方なく近くの段差に腰掛ける。
はぁなんでこんなことに…
会話も見つからないし、することがなくって、ぼんやりむかいの親子を観察する。
…楽しそうでいいなぁ。それに比べてこっちは…
やっぱり…ここは一つ、私から話しかけたほうが…年上なんだし。
よ、よし!
「あの!」
「へ?!」

沈黙を先にやぶったのはよっすぃ〜だった。

「あの、すぐ、すぐ戻るんで。」
「え、ちょっ」
突然立ちあがると、よっすぃ〜はどこかにいってしまった。
なんじゃこりゃ?

…5分ほどたって、戻ってきたよっすぃの手にはタコ焼きが。
「ど、どうぞ。」
「え、あ、ありがとう…」
まさか私が見てた親子がタコ焼き食べてたから…私も食べたいんだと思ったのかな。
それちょっと恥ずかしいかも…

「お、お茶も。よかったら。」
ぷしゅっ
「ありがと…あ、いくらだった?」
「いえ、そんないいっす。」


88 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 18:45

「でも」
「ほんとに」
♪チャ〜チャラ〜チャ〜ラチャラ〜

「あ、ちょっとすいません、もしもし?」
よっすぃ〜…着メロ、ロッキーのテーマなの?
「え、うん…うん。わかった。じゃ20分後ぐらいに。」
もぐっ。おいしいタコ焼き…
「あの、ごっちんとまいちゃんが、花火買ったから川辺でやろうって。
 20分後に集合で。」
「あ、そうなんだ…」

あのふたり、トイレ行くって言ってなにしてんのよ!もぐもぐ!!
「え、えほっ」
タコ焼きがつまった…
「あ、そんなあわてなくても…大丈夫だと思うんで…」
「え、あ、うん。」

89 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 19:07

食べてから、いきましょう。もってくと、ごっちんに、とられちゃうから。へへっ。

そういってよっすぃ〜が笑うと、空気が柔らかくなった気がした。
はじめにあった居心地の悪さが。
少しずつ、少しずつだけど
薄れていくのを感じてた。


90 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/26(木) 19:09

結局今日はよっすぃ〜とばかり行動してる気がする。
川辺までの道は5分くらい。
なのにすごく長く感じる。
ううん、実際長くかかってる。


ねえよっすぃ〜。
なんでそんなことするの?
浴衣の私にあわせてゆっくり歩いたり。

さっきだって。
タコ焼きをもって息を切らして帰ってきたり。
お茶を渡すときかたいフタをあけてくれたり。


そんな優しさに気づかなければ。

あなたはずっと大嫌いな『よっちぃ』のままで





91 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/26(木) 19:11

以上、第2話です。

>>81 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!そういっていただけるとうれしいです。
またよろしくお願いします。
92 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/26(木) 22:33
吉柴…いいですね。久しぶりに自分の中できた感じが。
このCPの良さに今まで気付けなかったのが悔しい。
これからに期待してます。頑張って下さいね。
93 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:09

「お、きたきた。おーいこっちだよ〜」
川辺では、まいちゃんとごっちんが準備万端!!て感じで待っていた。

「遅いよ、あゆみん!」
「まいちゃん、人を置き去りにしといて…」
「う、うそだって!こわいなぁもう。ほらみんなそろったし始めるよ〜!」

ここは結構花火をする定番の場所なんだけど、まだ夏祭りが終わっていないせいか、
今のところ私たちしかいないみたい。

「まずはロケット花火で!行くよ〜」
「ちょっとまいちゃん川にむけてやってよ!こわいって!」

「ねぇよしこ〜これ火ぃつけて持って走って〜」
「どれどれ…ってこれ打ち上げ花火じゃん!ごっちんよしこを殺す気?!」
「でもこれバーンってなるから空飛べるかもよ?」
「飛べねぇよ!!」
ご、ごっちん…
ていうかやっぱり、よっすぃ〜ごっちんとかと話すときは普通なんだな。
私にはあんなに楽しそうにしないのに。
当たり前なんだろうけど。ちょっと複雑だな…なんとなく。



94 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:17

「じゃ、打ち上げ花火は一人ひとり向こうにしかけて火つけてきてね!
 まずはあゆみんから!」
「え、私からなの?」
「気をつけてね。なるべく遠くによろしく!」
え〜私からかぁ。
まいちゃんから着火マンをうけとって、川沿いにいき、川に向かって花火をしかけ、
火をつける。

バーンバンバンバンバーン
おぉ〜きれーい

「ねぇキレイだったねー…てみんなは?」
みんながさっきいた場所に戻ると、そこにはよっすぃ〜しかいない
……まさか



95 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:25

「あの、な、なんかまたごっちんが、ま、まいちゃんも」
おろおろするよっすぃ〜じゃ話にならない…
ケータイでまいちゃんに電話をかける。

「もしもし〜♪」
「ちょっとまいちゃん、今度はなに?」
「いや今度は私がトイレ行きたくなっちゃって〜
 ついでにうちらは部屋で飲むことにしたから!
 二人は残りの花火やってから帰ってきなね〜じゃあ!」

あいつら…しかもごっちんまだ未成年なんだから!飲んじゃダメでしょ!!

「あ、あのぉ〜」
あ、よっすぃ〜。忘れそうになっちゃった。いけない、いけない。
「うちらも、帰りますか?」
そっか、どうしよう…

花火、残ってるし。
びみょ〜な雰囲気だけど、でもなんか。
このまま帰っちゃうのはもったいないかも。夏、だし。



96 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:32

「花火まだあるし…全部やっちゃわない?」
「は、はい!」
すごくうれしそうによっすぃ〜が笑ったから。
なんかほっとして。そしてうれしかったんだ、私も。

誰もいない川辺で。
想像もつかない相手と、ふたり。
こうして花火をしてるなんて、
なんて不思議なんだろう。人生って。

パチパチパチパチ
「…終わっちゃったね」
「はい………」
最後のせんこう花火の火が消えて。
いつもこの瞬間って、すごく寂しく感じるけど。
なんか今日はすごく、すごく、すごく。





97 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:37

「…帰ろっか。」
「…はい。」

よっすぃ〜が今住んでいるお家は、私の家のもっと先だというので、
私の家経由で帰ることになった。

こうして通りを歩いているときも、よっすぃ〜はさりげなく車道を歩いてくれてる。
…優しい子なんだ。ほんとに。
あのころの『よっちい』からは想像できないけど。

「あ、こっちから行くと近道だよ。」
「あ、はい、前にごっちんにも教えてもらいました。」
「へー、そうなんだぁ。」


98 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:46

駐車場を通りぬけようと中に入ると、
さっきまで耳に響いていた、車の音がなくなって。

きこえるのは私の歩く、下駄の音だけ。

なんとなく、どうしていいかわからなくて、
車の車輪止めにのぼってみたり、して。


思えばこれがいけなかった。

この段差が―――
少し背の高い彼女と、私の目線を同じにして。

歩きなれない下駄が、私の足をもつれさせたから。

「わっ、?!」
「あぶなっ!!」
くずれそうになる私を、あわててよっすぃ〜が支えようとして。
自然に抱き合う形になってしまった。

そして。


99 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/02/27(金) 16:51

…どっちが先だったのかな?


初めてまっすぐのぞきこんだ、よっすぃ〜の瞳の中に。
赤い顏した自分がうつってることに気づいたのと。

重なっていた唇が。
いつのまにか離れていたことに気づいたのと。


どっちが先だったの?

ねぇ

教えてよ、『よっちぃ』。


100 名前:ツースリー 投稿日:2004/02/27(金) 16:57

以上、第3話です。

>>92 名無しさん さま
温かいレスありがとうございます。励みになります。
これからもよろしくお願いします。
101 名前:なち 投稿日:2004/03/03(水) 14:35
続き気になる〜(・∀・)イイ!!
102 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/04(木) 17:50
 
   新しいメールはありません
 
新着メールなし…か

あれから…あの夏祭りの日からもう1週間。
よっすぃ〜から連絡はない。
ケータイの番号もアドレスも、交換したわけじゃないから、
それは当然かもしれないけど…
でも、ごっちんにきくとか、方法がないわけじゃないし。

じゃあやっぱりよっすぃ〜は…


103 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/04(木) 18:04
あの夜。
キスした後、よっすぃ〜が言った言葉がずっと胸にささってズキズキと痛む。

「ごめんなさい、つい…」

つい。

その後は二人とも無言で。最初会ったときよりももっと重い空気の中をただ歩いて。
私の家に着くと、
「じゃあ…」
そういって、逃げるようによっすぃ〜は帰っていった。


ついって。ついうっかりってこと?
その場の空気に流されちゃっただけなの?
……私じゃなくてもよかったの?
他の子とでもしてた?


104 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/04(木) 18:09

自分のこと棚に上げて。
そんなふうに相手を責める自分はずるいと思うけど。


そもそも私は。なんであんなこと。
私もつい、なのかな。
じゃあこんなに胸がズキズキするのはどうして?

あのとき。たしかに雰囲気とか勢いとか、あったと思うけど。
でも。―――あんなにドキドキしたのは初めてだった―――



105 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/04(木) 18:20

私はそういうとき、いつも妙に冷静で。
初めてキスしたときも、
「あぁこんなもんか」
なんてしみじみ感じてたりして。

なのにあの日。よっすぃ〜とキスした日。
唇が触れた途端、頭の中真っ白になっちゃって。
何も考えらんなくて。
そんな状況がすっごく不安で、ぎゅってよっすぃ〜に抱きつくと
よっすぃ〜もぎゅって返してくれて。

奪われてるような守られてるような、不思議な感覚。
だけど離れたくないって思った。このままずっと…。



106 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/04(木) 18:28

あんなふうに思える相手、そうはいない、はず。きっと。

やっぱり私は誰でもよかったわけじゃないんだ、
よっすぃ〜だったから、なんだ。

どうしよう、こんな気持ちになっちゃって。
めちゃくちゃつらいよ。
よっすぃ〜のせいだよ?


こんないじわる…ひどいよ『よっちぃ』





107 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/04(木) 18:33

以上第4話です。

>>101 なち さま
レスありがとうございます!引き続きよろしくお願いします。
108 名前:なち 投稿日:2004/03/04(木) 22:20
切ないよ〜柴ちゃん(;_;)
よっちぃのキモチはどぉなの?
109 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 18:15



   結局いくつになってもふりまわされちゃうの


 大嫌いで大好きなあなたの  甘くて苦い、いじわるに



110 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 18:24

「あーゆみーん、いるー?
 うわ!!なにこの部屋?!負のオーラが漂ってるわ!縁起悪!」
「まいちゃん…ひとんちに勝手に入ってきて失礼な…」
「だってここ一週間、あゆみんちっとも顔見せないんだもぉーん。
 まいちゃんさみしー。」
「心こもってなくない?」
「気のせいだって。」
「いいよ、もう…」

ここ毎日ただひたすらケータイとにらめっこ。
かかってくるのを待ってるわけじゃない。
もうきっとかかってこないってことは分かってる。
だから、もしかしたら、なんて思ってないの。
ただほら、万が一って思ってるだけで…

…あきらめ悪いかな、私。


111 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 18:35

自分からかければいいのかもしれないけど、びみょ〜に時間たっちゃったし。
今更聞けなくない?
「なんでキスしたの」とか…
もしかしてよっすぃ〜、もうキスしたこととか忘れちゃったのかな?
まさかね。…いや、ありえるかも。『よっちぃ』なら…

「やっぱまだ好きなの?」
「まだ好きっていうか、むしろ好きになり始めてるっていうか…」
「は?何の話?」
「え、何の話?」

ていうかまいちゃん、もう知ってるの?
私がよっすぃ〜好きになちゃったかもってこと。なんで?エスパー?

「何って元彼のこと、まだ落ち込んでるから家にこもってんじゃないの?」
「元彼?…あぁそんなこともあったような…なかったような…」




112 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 18:42

「おいおい。こっちは心配して様子みにきたっていうのに〜
 じゃあまたなんでそんな暗い顏してんの?」

…すっかり忘れてた。ほんとに私、よっすぃ〜でいっぱいなんだ。
頭も。心ん中も。

「実は…こないだの夏祭りの日…よっすぃ〜とね…」
「あ、よっすぃ〜今いたよ、下に。」
は?!な、なんて?
「下?!どこの下?!」
「どこってあゆみん家の…上がればって言ったんだけどね、ってあゆみん?!」



113 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 18:54

よっすぃ〜がいる。
よっすぃ〜に会える。
よっすぃ〜に会いたい。

そう思ったらまいちゃんに、勝手にひとんちに上がればとか言っちゃうなよ
おい、なんてつっこむことも忘れて、階段を駆け下りてた。

慌てて外に出て家の周りを見渡す…いた!
少し離れた道の角で、うつむきながらぐるぐる回ってるよっすぃ〜がいた。

「よっすぃ〜!!」
はっとしたように顔をあげたよっすぃ〜と目があう。そして。
「ちょっっ!!なんで逃げんの?!」
ものすごい勢いでよっすぃ〜が走り去ってく。

なにそれ?!会いにきてくれたんじゃないの?!

「待って!よっすぃ〜!」


114 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 19:01

話したいことあるの。
聞きたいこともあるの。
逃げないでよ。
私も逃げないよ?

走ってよっすぃ〜を追いかける。

「待ってってば!!あ、っった!」
バッタン

つまずいて転んだ私に驚いて、よっすぃ〜が振り向く。

「…なんで逃げるのよぉ〜ばかぁ〜」

すりむいたひざの痛みと。
やっと立ち止まってくれて、ほっとした気持ちと。
ようやく会えたうれしさと。
泣き出してしまった私を、ボー然と立ちつくして眺めてる。



115 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 19:09

「…こっちきてよぉ。ばかぁ。」
慌ててよっすぃ〜が駆け寄ってくる。
こんなふうに素直に泣いて。
わがままいうのなんて久しぶり、かも。

やっぱりよっすぃ〜の前だと、泣き虫なこどもの私に戻っちゃうのかな。

心配そうなよっすぃ〜の目をみて、また涙が溢れてきて。
ぎゅってよっすぃ〜に抱きついて、小さな声で、
あのころの私のセリフを、もう一度言ってみる。

「よっすぃ〜のばか。よっすぃ〜なんか嫌いだもん。」

今はそれはウソだけど。
でもまた私にいじわるしたんだもん、少し困らせてもいいよね?



116 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 19:16

そしたら、宙を泳いでいたよっすぃ〜の腕に、そっとつつまれて。
何度も優しく髪をなでられる。

あぁやっぱり私。
この人のこと好きだ。
どうしよう。

胸が熱くなって、また涙が流れ出す。

しばらくそのまま抱き合って。
よっすぃ〜よっすぃ〜って私が言うと、
うん、ごめん。ごめんなさい。って何度もよっすぃ〜は答えてくれた。

ほんとはもっとそのままでいたかったけど。
よっすぃ〜がひざ消毒しなきゃって言うから。



117 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/05(金) 19:20

あの夜と同じように無言で私のうちに向かったけど。
そっとつないだ手が。
あのときの重い空気を消してしまっていた。

照れくさくて視線を足元に落とすと、
なんと私がはいていたのはお父さんのサンダルで。
そりゃー転ぶはずだわ…焦ってたから、つい。

こんなに恥ずかしい帰り道、初めてだよ。『よっちぃ』


118 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/05(金) 19:22
以上第5話です。

>>108 なち さま
レスありがとうございます!次回最終回ですがよろしくお願いします。
119 名前:なち 投稿日:2004/03/06(土) 08:43
もう二回も読み返してしまいました(^O^)
甘甘な二人を期待しつつ〜♪
120 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:14

「座って?」
「ど、どうも。おじゃまします…」

部屋に戻るとまいちゃんの姿はもうなくて、かわりにメモが1枚。
『帰るね〜その後のラブストーリーはまた後日、調査に来るから♪』

ラブストーリーって…。まだわかんないもん。『ラブ』になれるか。
さっきまでつながっていた手も。いつのまにか離れてしまっていて心細い。
…でもちゃんと伝えなきゃ。思ってること。
また会えなくなるのヤだから。

「あの」
「あのね」
またかぶった…なんか私達タイミング悪い。
ん、そういえば…

「ね、よっすぃ〜まいちゃんにも敬語なの?」
「え、いや、まいちゃんには違います。」
「じゃあ私にも敬語使わなくていいよ?」


121 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:22

「わかりました。あっと、わかった。」
「ふふっ。わざとらしー」
「えぇ?そんなぁ〜」
笑いあっているとふいに目が合う。
…言わなきゃ…

「こないだの、ことなんだけど…」
「あ、はい…うん。」
「よっすい〜がね、その、つい、流されてああいうことしちゃったんだ
 っていうのはわかってるの。あ、怒ってるわけじゃないよ。
 …でもね、なんていうか私は違うの、あのときすでに私よっすぃ〜のことをね」
「え、流されたとかじゃないよ?」
「ううん、そんな気にしないで、」
「や、ほんとに」
「だからいいって!」
「だから違うって!」



122 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:37

だんだん言い合いになっちゃって。
…なんなの?もういいって言ってるのになに?!
そういうふうに気を使われるの、余計つらいのに…

「…ごめんって、ついってよっすぃ〜言ったじゃない!キスした後!」
「だってついしちゃったんだもん!」
「ほら、つい、雰囲気に流されてしちゃったんでしょ。」
「?!ち、違うよ!つい、ガマンできなくてしちゃったんだって!」

………へ?

「な、なにそれ…」
「ず、ずっとドキドキして、あの日。夏祭りの間とか、何度もやばかったけど、
 いきなり、許可なくそんなことしたら卑怯だし…がんばってこらえてたのに。
 でもあんな近くで見つめられたら!ガマンできないよ…だから、つい。ごめんなさい…」

そ、そっちのつい、だったの?でも、だったらなんで…


123 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:45

「なんで謝ったりしたの?」
「だってあーちゃん、…柴田さん。うちのこと嫌いでしょ?昔から…」
「…あーちゃんでいいよ?」
「…だから、あーちゃん。ヤだったろうなって。うちに、キスなんてされて。」
「………」
「帰り道でも、ひ、一言もしゃべってくれないし。きっとすげー怒ってるんだって。
 だから、もっかいちゃんと謝らなきゃって、毎日家の前までは来てもさ、
 勇気が出なくて。中々会えなくて。」

「ちょ、毎日?!来てたの?」
「え、うん。あの夜から毎日。」
「な、なんで?メールとか電話とか。」

他にもあるじゃん、連絡とる方法。


124 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:52

「あ、最初番号ごっちんに聞こうとしたんだけど…ごっちんとまいちゃんがさ、
 やっぱ告白は直接行かなきゃダメだって。教えてくれなくて」

やっぱり裏にはヤツらがひそんでたか…なによ、まいちゃん全部知ってたんじゃない!
おかしいと思った。まったく、だいたいまいちゃんは昔から…

て、え?

「告白…?」
「うん。…好きだ。あーちゃんのこと。好きだったんだ、小さいころから。
 嫌われてるのはわかってたし、あんなことしたからさ、余計」

小さいころ…あ、だから『よっちぃ』は私のこといじめてたのかな?

「もう絶対あんなことしないし!せめて友達としてでも…」

あんなことしないし…え、もうキスしないってこと?!

125 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 01:58

「それは困る!!」
「えぇ?!やっぱ友達もダメ…ですか…」
「あ、そこじゃなくて。いや、友達でも困るんだけど…」

その、なんていうか…

「そっか…うんわかった。でも謝れてよかった!ほんとにごめん。
 う、うちの気持ちはさ、気にしないでいいから…あ、そういえばヒザ、
 すりむいたとこ、大丈夫?」
「……痛い」
「痛い…よね。手当てしなきゃ。きゅ、救急箱とかは…」
「ヒザじゃなくて…」

胸が、痛い。
痛かったのずっと。あの夜から。




126 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 02:05

「…よっすぃ〜謝るんだもん、キスした後。連絡もないし、
 …なかったことに、されちゃうのかなって。もう忘れちゃったのかなって思った。」
「い、いくらうちでも…忘れたりしないよ…」
「だって。…つらくて。すごいヘコんだ。」
「ご、ごめんなさい…」
「傷ついた、胸が。よっすぃ〜のせいで。」

だから、よっすぃ〜が。

「手当てして?治してよ。」

すりむいたヒザはきっと薬ですぐ治るけど。
胸の傷は治せないの。よっすぃ〜じゃなきゃ。



127 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 02:14

「て、手当てって…あの、どうしたら…」
「…同じこと、して。夏祭りの夜と。」

今度はつい、なんて。ごめんなんて言わないで。

「だ、だってあーちゃん…」
「…や?」
「ま、まさか!でも…していいの?うちが…」
「よっすぃ〜がいい。よっすぃ〜じゃなきゃやだ。好きなんだもん。
 よっすぃ〜が好きだから痛いんだもん。痛いよ、ばかぁ」

どうしてよっすぃ〜はそんなに意地悪なの?
いつもそうやって私のこと泣かせるんだ。
でも、本当にずるいのは、私。
だって私は。
泣いてる私に、よっすぃ〜がとびきり優しいことを知っている。
ずっと前から。そう、小さいころから。




128 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 02:19

「あーちゃん…好きだよ、ずっと好きだった。」
「よっすぃ〜…好き。」

昔から、ではないけど。

そう言うと、よっすぃ〜は苦笑いしながら優しく、キスしてくれた。
こないだよりずっと長くて。ずっとずっと甘いキス。

「…ん。治った?傷」
「…まだ」
ちゅっ。
「…治った?」
「まだ、もっと」
ちゅっ、ちゅっ
「どう?」
「全然ダメ…みたい。」


129 名前:大嫌い大嫌い大好き 投稿日:2004/03/10(水) 02:23

だってだって。
ぎゅって痛むんだもん。
キスするたびに。
好きな人とするキスは。
すごく甘くて――ほんのり苦い

「…よっすぃ〜、一生かかるかもよ?」
「…かしこまりました。喜んで。」


にこにこ笑うその顔は。子供のころのまんまね。


もういじめないでね?
『よっちぃ』


130 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/10(水) 02:26
以上、『大嫌い大嫌い大好き』終了です。

>>119 なち さま
いつもレスありがとうございます。ご期待に添えられてるといいんですが…

次は『大嫌い大嫌い大好き』をよっすぃ〜視点で。
よろしくお願いします。
131 名前:18 投稿日:2004/03/10(水) 19:23
更新乙です。
次回も楽しみにしてます。
132 名前:なち 投稿日:2004/03/10(水) 23:26
柴ちゃんもよっすぃ〜も大好き♪
完結オメ〜♪最後甘くて良かったです♪
もっと甘甘な2人も大歓迎です(笑)
次回も楽しみ待ってまーす♪
133 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 01:55

「よっちぃのばかぁ〜よっちぃなんかきらいらもぉん。うわぁ〜ん。」


…またやっちゃった。
なんとか喜んでほしくて。
笑わせてあげたくて、がんばるんだけど。
いつも君を泣かせてしまう。


大好きな。愛しい、君。




134 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:04

「あ、よしこ!あれ!あれ柴ちゃんだよ!!」
「え?!」

15年ぶりくらいに見たあーちゃんは、
もう黄色い帽子に青いスモック姿じゃなくて。
お化粧をちゃんとして、ちょっと高めのヒールなんかもはいていて。
もうすっかり大人の女の人だった。

「呼んでみよっか?おーい」
「え?い、いいよ!ほら、もう行っちゃったし…」

ごっちんと、転入した学校からの帰り道。
駅で思いがけない彼女の登場…遠くから見ただけだけど。
いや、向こうもこっちに気づいてたような気もするけど…そのまま行っちゃったよ。

やっぱり、あーちゃん。
うちのこと嫌いなんだ。



135 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:11

父さんの転勤で、子供のころこの街を引っ越してから。
ごっちんやまいちゃんとは、ちょくちょく遊んでたけど、
あーちゃんとは一度も会っていない。
…嫌われてるってつらい。
この春からせっかくまたこの街に戻ってきたけど…
どうせあーちゃんとは会えやしないんだ。

「へー駅にあゆみんいたんだ。」
「それがさーまいちゃん聞いてよ〜よしこ柴ちゃん見て真っ赤になっちゃってさ!
 話しかけらんないんだよぉ〜」
「ちょ、ごっちん!!」
「かぁ〜、ピュアだねぇ、一途だねぇよっすぃ〜は。」
「だ、だから違うって…」

この二人と会話してるとからかわれてばっかだよ…はぁ。



136 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:17

「うーん。なんとか協力してあげたいんだけど、ヤツ今彼氏いるからさー。
 ま、今はまだそのときじゃないわ。でも必ずチャンスがくるから!心して待て!」
「チャンスと言われましても…」
『ま、うちらにまかせとけって!』

も、好きにしてください…

二人の話なんてあてになんないし。
いつもの冗談だろうって流していたんだけど。
まいちゃんの言うチャンスは。
木漏れ日だった陽射しがすっかり強くなって、ギラギラ照り付け始めたころ、
突然に、やってきた。



137 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:27

「よしこー、ちょっ、そのかっこで行く気?!」
「え、だって夏祭りでしょ?だから甚平に着替えたんだけど」
「うそつけ!何が着替えたよ、よしこのめっちゃ普段着じゃん!」
「えへへー。でもいっしょ?」
「ダメ。やめてそんなかっこ。」
「なんでさー、超おしゃれじゃん。」
「よしこのためを思って言ってるの!ほら早く。あ、あとオヤジサンダルもやめてよ!」
「なんかごっちん気合入ってんねー、かっけー!よし、よしこおめかしするYO!」

なつかしい神社に向けて歩いていると、もうせっかちな盆踊りの太鼓の音が聞こえて。
街に祭りの火が灯りだす。

「…結局Tシャツとジーパンじゃん。」
「かっけーっしょ?」
「ま、いっか。あ、まいちゃーん」
「お、まいちゃんも来てるの…って、えぇ?!」


138 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:35

と、隣にいるの、…あーちゃんじゃん!?
…駅で再会(見かけただけとも言う)してから3ヶ月。
今日、また会えるなんて夢にも思わなかった。
あ、だからごっちん着替えろって言ったのか…
でも、と、突然なんて
う、うれしいけど…どうしたらいいんだろう…

「…久しぶり」
「は、はい。」

緊張しまくりのうちを見かねてか、あーちゃんが話しかけてくれた。
15年ぶりの会話なのに…うまく話せないよ。
てか顔、まともに見れない。
あーちゃんはうちが来ること、知ってたのかな?
いや、知ってたら来ないはずだよね。
うわー、やべー、どうしよぉ…


139 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 02:50

このびみょ〜な空気をよんでるんだかいないんだか、
まいちゃんがみんなをうながして、神社の中へと入っていく。

ごっちんもまいちゃんも先いかないでよ〜うちどうすればいいんだよぅ…

どんどん先に上っていてしまった二人の後を、あーちゃんと並んで歩く。
だ、大丈夫かな…
表情が気になって、ばれないようにその横顔をのぞいて――はっとした。






140 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/11(木) 03:02


…かわいい、な。
いや、もうキレイって言うのかな。
面影は残っているけれど、君はもうすっかり大人びてしまって。
おまけにその浴衣。
色っぽいなんて思う自分に、無意識にそんな目であーちゃんを見てる自分に気づいて。
なんだかムショーに恥ずかしくなる。
顔があつい。あつい、あつい。


幼いころの気持ちが呼び覚まされて。
少しずつ、その色を変えていくのをフイに感じた。。

あのころは君をただ守りたいと思ったけど、
今は…

こんな乱暴な気持ちも、同じ愛情と呼ぶんだろうか。




141 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/11(木) 03:12
以上、番外編「大好き大好き大好き」
第1話終了です。

>>131 18さま
レスありがとうございます!よっすぃ〜視点にしてみました。

>>132 なちさま
最後まで読んでいただいてありがとうございました。次もよっすぃ〜がんばると思うので
甘甘になるよう応援してやってくださいw
142 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/11(木) 07:31
あうっ…よっすぃー視点だと柴ちゃんの可愛さが伝わってきて…。
これからの展開を考えると、もうノックアウト寸前です(w
143 名前:18 投稿日:2004/03/11(木) 18:36
柴ちゃんにグッときました。
描写が綺麗で素晴らしいです。感動します。
次回も楽しみです。
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/12(金) 00:50
>>141
里田絡みも読んでみたいです。
唯一の同い年、各ユニットのエースコンビ。
145 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 17:15
「ねー柴ちゃんよっすぃ〜!射的やろーよ射的〜」

ごっちんの声は、なにかドロドロしたものの中にうもれそうなうちを救い出すように、
耳に飛び込んできた。

なんか今すごいこと考えてた。
…ひいちゃったよ、自分で自分に。

ごっちんが一個も当たらずに玉を切らしてしまい、次はあーちゃんが挑戦中。
その後姿を複雑な想いで見つめていると、突然左右の腕を
ごっちんとまいちゃんにつかまれる。



146 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 17:23

「な、なに?!」
「さ、よしこ、やってきたよチャンスが!」
「へ?!」
「あゆみん彼氏にフラれたらしいのよ〜だから今フリーなの。今フリーなの。」
「な、なんで2回言うの?」
「いけ、よしこ、告れ。」
「えぇ!?そ、そんな突然…」
「バカ!突然ってのがドキっとくんのよーしかも日も沈んだ夜の夏祭り!
 シチュエーション最高!!」
「いやーん、まいちゃん天才!」
「ありがと、ごっちん!」
「あ、あのぉ…」
「あ、まいちゃーん後藤トイレ〜」
「まぁ大変!じゃ、うちらははずすから。あ、絶対追いかけてきちゃだめだからね。
 ファイトひとみ〜♪」

うえぇぇぇ〜?!い、行かないでよぉ〜そ、そんな告白なんて…
てか会話すらできないのにぃ〜


147 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 17:42

「…あれ、二人は?」
あ、あーちゃん…

「あ、あの、なんかごっちんがトイレいくって、ま、まいちゃんもついてっちゃって…」
うわ、ど、どもりまくり…恥ずかしいよぉ…

追いかけようとするあーちゃんを、まいちゃんのお言いつけどおりひきとめて。
とりあえず座ってみたものの…どうしよう。
あーちゃんは相変わらずこっちを見てくれない。
少し寂しいけど、少し助かる。
だってもし正面から君を見てしまったら―――


さりげなく、あーちゃんの視線を追うと、たこ焼きを食べる女の子。
…買ってこようかな。あーちゃん好きかな。
この自分のむずがゆい気持ちを、なんとかごまかしたくて。


148 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 17:52

「あの、すぐ、すぐ戻るんで。」
「え、ちょっ」

なにか言いかけたようなあーちゃんを置いて。
さっき見かけたたこ焼きの出店まで走る。

おっちゃんにたこ焼きを二つ、注文して。
香ってきたソースのにおいでちょっと冷静さを取り戻す。

…突然いなくなって、不思議に思うよね。
全く、なにやってんだろ…今日のうちはホントにおかしい。
急いで戻ろう。待たせたらかわいそうだ。

たこ焼きとお茶を買って、また走って戻る。


149 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 18:00

「ど、どうぞ。」
「え、あ、ありがとう…」

驚いたようにたこ焼きをうちから受け取る 。驚くよね、そりゃ。
ほんと何もいわずにいなくなってごめんなさい…
食べだしたあーちゃんを見てちょっと安心。よかった、たこ焼き嫌いじゃないんだ。

あ、お茶も買ったんだった。
「お、お茶も。よかったら。」
「ありがと」
フタをあけて渡すと、一口、口に含む。


次の瞬間。
うちはまたおかしくなってしまった。

150 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 18:16

缶についた口紅をそっと指でふく。
きっと大人な彼女にとっては何気ないしぐさ。

それを見てドキドキするうちがおかしいだけなんだ。

お茶で少し湿った唇を。
やわらかそうだなんて。触れてみたいなんて思ううちがおかしいんだ。

「いくらだった?」
「いえそんな、いいっす。」

話しかけられて、現実に戻るとものすごい恥ずかしさが襲ってきた。
何考えてるんだよ、しっかりしろよ。

♪チャ〜チャラ〜チャ〜ラチャラ〜
お気に入りの着メロ。いけない、バイブにするの忘れてた。

まだお金を払おうとするあーちゃんにことわって、電話をとる。
ごっちんだ。

151 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 18:28

「もしもし、よしこー?がんばってるー?今まいちゃんとコンビニ行ったら
 花火見つけてさー。みんなでやろうよ。近くの川辺、わかる?」
「え、うん。」
「じゃーうちらもこれから行くから〜そうだな20分後ぐらい?OK?」
「うん、わかった。」

…そういえば告白しろって言われてたんだった。
無理だよ。

こっちは自分、抑えんので精一杯なんだから。

ごっちんから言われたことを伝えると、
なぜかあーちゃんはムキになったように、たこ焼きをほおばりだした。
そ、そんな急いでたべたら…
「え、えほっ」
…ほら!むせった。

ゆっくりで大丈夫だと言うと、あーちゃんはうなずいていた。
少し幼い、子供の部分を見たようで、ほっとして。
やっと普通に笑うことができた。
と、思ったけど。



152 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/12(金) 18:36

こっちを向いたあーちゃんの顔を、まともに見てしまって。
また心臓がありえない速さで動きだす。

…ダメだこりゃ。

川辺まで、なるべくゆっくり歩く。
浴衣の彼女が疲れないように、そう思ったのもほんとだけど。

もう少し、二人でいたいと思ったであろうことも、ほんとです。すいません。

気まずいし、なんだかおかしい自分が怖くて。
逃げ出したい気持ちもあるのに。
それでもそばにいたいと思うなんて。


夏の夜は、ホントに危険だ。




153 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/12(金) 18:43
以上、第2話です。

>>142 名無飼育さん さま
柴ちゃんのかわいさをわかっていただけてうれしいですw
またぜひよろしくお願いします。

>>143 18 さま
いつもありがとうございます!まだまだ未熟ですが、そういっていただけると
ほんとにうれしいです。またよろしくお願いします。

>>144 名無飼育さん さま
レスありがとうございます。いつになるかはわかりませんが、
いつか挑戦できればいいと思います。
154 名前:18 投稿日:2004/03/12(金) 20:08
大人の柴ちゃんと子供の柴ちゃんの
微妙な差にトキメキました。
前回もでしたが入り込みやすいです。
よしこの視点楽しいです。
155 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/13(土) 23:41

川辺に着くと、ごっちんとまいちゃんがもう準備をして待っていた。
まいちゃんと言い合いをするあーちゃんは、またさっきとは違う顔をしている気がして。
彼女の過ごした15年を。
誰か、ドラマにでもしてうちに教えてくれないかななんて、バカなことを考えてた。

からむごっちんをなんとかかわしていると、フイに背中に視線を感じた。
…ような気がしたんだけど…あれ?

「じゃ、打ち上げ花火は一人ひとり向こうにしかけて火つけてきてね!
 まずはあゆみんから!」

あーちゃんからかぁ。やっぱ打ち上げ花火はもりあがるよねぇ〜
って、あぁまた腕に重みがぁ…

「で、よしこ、どうなの?告れたの?」
「そ、そんないきなり、しかもあんな短時間に…言えないって。」
ぶっちゃけそれどころじゃなかったし…
「えぇーつまんなぁい…てことは長時間あれば言えるわけ?」
「へぇ?!い、いやそういうわけじゃ」
「ほほう。んふふ、ごっちんやっぱ私もトイレ行く〜じゃ、よっすぃ〜はあゆみん
 待っててね。今度こそしっかりやるのよ!!」
「がんばれよしこ!!」

156 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/13(土) 23:51

んえぇ〜?!また?!ちょ、ちょっと待ってよ〜ほんと今日のうちはまずいんだって〜

「…みんなは?」
は!あーちゃん!

しどろもどろ説明にならない説明をすると、あーちゃんはケータイを取り出しどこかに
電話しだした。

「ちょっとまいちゃん、今度はなに?」
あ、まいちゃんか…うわ、なんかあーちゃん怒ってる…?

電話をし終わったあーちゃんが不機嫌そうだったので、
帰ったほうがいいのかなって思った。
せっかく会えたのにって残念な気持ちはあるけど。
でもあーちゃん、うちと二人はヤだろうし。
そしたら。

「花火やっちゃわない?」
あーちゃんが。あーちゃんがそういってくれたんだ。
すごいうれしかったよ。それはもう少し一緒にいられるってことだもん。

157 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/13(土) 23:57

ごっちんとまいちゃんが残していった、なにやらおかしな種類ばっかりの花火を
あーちゃんとしながら。
必死に自分の中のブレーキを踏みつづけた。
暗闇の中で、花火と同じようにキラキラしてる人を。
傷つけたくなかったから。



158 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:12

パチパチパチパチ
「…終わっちゃったね」
「はい………」

最後のせんこう花火の火が消えて。
少しせつないけど、これで、自分の中にあるあの不思議な火も消えたんだと。
あのときのうちは安心してしまっていたんだ。

懐かしいあーちゃんの家を目指して。
騒がしい道路沿いの道を、二人、静かに歩く。
あーちゃんが言う近道は、ごっちんにも教えてもらっていたんだけど。
あえて通り過ぎて、家までの距離を、時間をかせごうとしていたなんて。
あーちゃんに知られたらまた嫌われちゃうね。
ごめんね。


159 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:21

駐車場に入ると、急に音がなくなって。
きっと気まずさを感じたんだろうな。
あーちゃんは車輪止めに上ったりして。
あーちゃんがいろんな顔を見せることに、少しずつ慣れはじめていたから、
そんなしぐさも素直にかわいいなって、思えるようになっていた。

でも、これは油断だったんだ。

「わっ、?!」
「あぶなっ!!」

つまづいてくずれそうになる彼女を慌てて支えようとして。

そして。



160 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:26



心を奪われるっていうのはほんとなんだ。

昔と変わらない、強くてまっすぐな瞳が。
一瞬、せつなげに、頼りなく揺れて、いて。

その顔はずるいよ、あーちゃん。
もうだめだ。

壊れたブレーキをいくら踏んだって。
止まれるわけなかったんだ。



161 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:33

その瞬間はまるで記憶が無い。
彼女が目を閉じるまで、待てたのかどうかもわからない。

ただ、抱きついてきた彼女を。
その何倍もの力で抱き返した。

―このまま。

突然ポケットのなかのケータイがブルって。
はっと、我に返る。

ぞっとした。
キスをした喜びより何より先に湧き上がってきた感情。
もし、あのままだったら。
うちは、彼女に何を?



162 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:43

背中に冷水をかけられたように。
真夏の暑さに抱かれているのに、寒気がした。

バイブにしたケータイを、ポケットに入れておいてよかった。
誰からだか、メールだか、電話だかわからないけど。
ケータイが鳴ってよかった。踏みとどまれてよかった。

「ごめんなさい、つい…」

それだけ言うのが精一杯だった。


163 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 00:50

何も言わず、うつむいたままのあーちゃんを家まで送って。

一人、事実と向き合う。
さっきのはなんだったんだろう。
夢、だったんじゃないかな?
だってうちがあーちゃんとキス、なんて。
そんなことあるわけない。

そっと指で唇に触れ、その表面を見ると―――
うすいピンクの口紅。おそらく、彼女の。

体を、興奮と激しい後悔が包む。


164 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/14(日) 01:09


大切に思っていたのに。
彼女も、この気持ちも。

なんで、なんで。

あんなふうにムチャクチャに手に入れようとしてしまったんだ。


初めて起こった自分の中の変化について行けなくて。

なのに、それでも彼女の唇の感触を思い出す度に熱くなる胸を。

とても抑えられなかった。


165 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/14(日) 01:17
以上、第3話です。

>>154 18 さま
視点を変えてうまく表せれるか不安だったので、そういっていただけると
うれしいです。いつもレス、ありがとうございます。
166 名前:18 投稿日:2004/03/14(日) 02:15
柴ちゃん視点と一緒に見てると
会話の間の感情が高校生らしいというか
ビッシバシ来てます。
感動ものです。
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/17(水) 02:25
分類板のあやみきから来たんですが…w
吉柴いいですね〜
あまりみないCPなのに余計に、ハマってしまいそうです。
続きに期待してますね。
168 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 16:46

衝撃的すぎる出来事で。
今でもポケットのケータイが鳴っているような…あ、ほんとに鳴ってる?

慌てて表示を見ると、『ごっちん』

「…もしもし」
「あ、よしこ〜花火もう終わったよね?どうした、言えた?まだ柴ちゃんと一緒?」
「いや…家に送ったトコ。」
「…一人なの?なんか元気ないけど大丈夫な感じ?」
「かなりダメな感じ…」
「え、今まいちゃんとごとーん家にいるんだけど、来る?来れる?」
「うん…」

ごっちんの部屋では、まいちゃんがほっぺたをさくら色にそめて、ベッドに倒れていた…

「どうしたのよしこ、フラれちゃった?」



169 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 17:14

「いや、告白…できなかったんだけど…その」
「ん?」
「キ、キス…しちゃって」
「なんだってぇぇ!!」
「うわ?!まいちゃん起きてたの?!」
「やるじゃーんよっすぃ〜!!へタレだと思ってたけど、やればできる子だったのね♪」
「だめなんだよ!だってうち…告白もせずに。あーちゃんの気持ちも考えないで…
 あーちゃんにしたら嫌いなヤツにキスなんかされて…」

最低だ、うち。でも今どんなに後悔しても、悔やんでも。
あのときに戻れば、きっとまたしてしまう。あの瞳を見たら、きっとまた。

「別に無理やりしたわけじゃないんでしょ?よっすぃ〜にそんなこと
 できるはずないんだし。それにあゆみんのガードのかたさは有名だしさー。
 イヤだったらさせないと思うけどな。」

そういってまいちゃんはまたベッドに沈んでいった。


170 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 17:42

「そうだよ、よしこ。そんなにキスしたこと悪く考えちゃダメだよ。」
「それだけじゃなくて…なんていうか。あーちゃんのことは、昔から好き、だったけど。
 でも今まではキスとか、そういうの求めるんじゃなくて。笑わせてあげたいみたいな。
 純粋な気持ちだったっていうか。なのに今日、うち変なことばっか考えてて。
 やらしいんだ、うち。最低なんだ。」
「いや、そういうことじゃないでしょ?だってよしこはもう幼稚園生じゃないんだし。
 そのころと同じ好き、なわけないじゃん。そのままな方がおかしいよ?」
「でも、…あーちゃんにそんなこと思うなんて。」

昔を、子供のころを知ってる子にそういう気持ちを抱いちゃうのは、なんかすごく罪悪感が。

「でも自分だけじゃなく、相手だってもう子供じゃないんだし。
 そういうのって変じゃないよ。ステキなことだよ。
 それに、よしこが柴ちゃんにそう思うの、ごとーはうれしいよ?」
「…どうして?」
「だってそれは、よしこが成長してるってことだもん。
 どんどん柴ちゃんのこと好きになってるてことだもん。」

ごっちん…

「成長とは!!」
「うわ?!まいちゃんまだ起きてたの?!」


171 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:03

「成長とは!ときにそれまでの自分を捨てないといけないの。
 でもだからってそれまでの自分をなくしてもいけないのよ。アンダスタン?」
「え、え?」
「んあーよしこ。この酔っ払いさんいいこと言ったと思う。ごとーもそう思うよ。」
「…なんかわかんないけど。でもこのままじゃダメだよね。なんとかしなきゃ…
 あ、そうだごっちんあーちゃんのケータイを……」
『だめ!告白は直接って決まってんの!!』
やや、だからまだ告白するとは…

「うん、まぁあとは焦らず、答えさがしてみたら?でも、よしこ自分を責めちゃ
 ダメだよ?」


ごっちんの部屋から外に出て一人になっても。
もう体は震えたりしなかった。ありがとう、二人とも。


172 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:14

「あーごっちんビールの残りとって?…ぷはぁ。よっすぃ〜、青春だねぇ。」
「あはっ。しかしまいちゃん、なかなかいいこと言うよね。酔っ払いなのに。」
「お、惚れたか?」
「えぇ〜違うよ〜」
「…なんだ。」
「惚れた、じゃなくて惚れなおした、だよ?」
「ぶっほぉっ!!」
「んあー!!ごとーのベッドがビールまみれに〜!!」


まだ納得できる答えがみつかったわけじゃないんだけど。
でも、とりあえず謝りたい、そう思って。
毎日あーちゃんの家に足を運ぶ。
今日こそ、今日こそって。
なのにその一歩が踏み出せない。
あぁ、いつまでうち、こうしてるんだろ。
今は夏だからいいけど冬になったら寒いだろうな〜
ほっかいろたくさん持ってこなきゃな〜

「ん?よっすぃ〜?」

173 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:25

きたるべき冬の対策を練っていると、フイに声をかけられる。
まいちゃん!!

「どうしたの?」
「どうしたのって…よっすぃ〜こそどうしたのよ?
 私は最近あゆみん顔出さないからさ、様子みにね。」
「そっか…あーちゃん家にこもってるみたいだもんね。もう一週間くらい。」
「え、そんなに家からでてないの?ていうかなんでそんなこと知ってんの?」
「あ…その、謝ろうと思って…ひ、昼間はずっとここにいて…でもあーちゃん出てこないから…」
「えぇ?す、ストーカーしてんの?!」
「ひ、ひどい!!だ、だって勇気が出なくてピンポン押せなくて…
 そしたらいつのまにか一週間…」
「よっすぃ〜…バカ?」
「たぶん…」


174 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:32

「まったく。純粋バカだね。ほら、一緒中入ろうよ。」
「え、や、勇気が…」
「あんたここまできといて…しかも一週間も…わかった。先に私が行って様子みてくるから。
 あゆみん、最近彼氏にフラれたばっかで、それで元気ないのかもしれないし。
 大丈夫そうだったら呼びにくるよ。OK?」
「うん、わかった…」

いつまでも、冬までこうしてるわけいかないし。
いい機会だ。ちゃんと謝ろう。
なんて言ったらいいかな…
ええ、先日はあのような大変失礼なことを…

「よっすぃ〜!!」
はっ!あーちゃん?!どうしてあーちゃんがくるの?!


175 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:39

慌てて逃げ出す。
うわ、なんで。逃げちゃダメじゃん。
と、止まんなきゃ。でも止まれない。

「待って!よっすぃ〜!」

や、やっぱあーちゃん怒ってるよ。
どうしよう、どうしよう。

「待ってってば!!あ、っった!」
あーちゃん?!!

振り向くとあーちゃんは転んで、ヒザをすりむいていた。
くそ、なんでこういうときに体が動かないんだよ。
あのときは。
キスしたときは、勝手に動いたくせに。


176 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:48

「…こっちきてよぉ。ばかぁ。」

あーちゃんにそう言われて。
近づいていいと許可をもらったように、ようやく体が動き出す。
しゃがんで顔をのぞくと、涙でぬれていて。
昔と同じ、彼女の言葉。

「よっすぃ〜のばか。よっすぃ〜なんか嫌いだもん。」

そして、思い出したんだ。
あのころの想い。
守ってあげたい、笑わせてあげたい。
そっと腕をまわすと、ぎゅっとしがみついてきて。



177 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/17(水) 18:55

まいちゃんの言っていた、なくしてはいけないものって。
この大切にしたいっていう気持ちなのかな。

じゃあ。
抱きしめた体の柔らかさに、その甘いにおいに。
ドキドキしてるうちは、成長したってこと?

なんか不思議だけど。

でも、抱きしめたいと思うことも、壊したいと思うことも。
どちらもあーちゃんが愛しいってことだって。

わかったような気がした。


そんな、夏の日。


178 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/17(水) 19:01
以上、第4話です。次回最終回です。

>>166 18 さま
よっすぃ〜の高校生らしい気持ちが伝わってうれしいです。
いつも18さまのレス、励まされています。ありごとうございます。

>>167 名無飼育さん  さま
そうですかwレスありがとうございます。吉柴、気に入っていただけてよかったです。
またぜひよろしくお願いします。
179 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/18(木) 00:14
はじめまして!!
DDで読み専門で最近ウロウロしているヒラッペと申します。
柴ちゃん推しでもありまして、かなり良いです。

一応最初からROMってはいたのですが・・・
次回最終話期待しています。
180 名前:18 投稿日:2004/03/18(木) 00:33
更新乙です。
今回はなぜか策士の二人に目が
いってしまう。
ごっちんとまいちゃんの視点の話は
ないですよね?(w
181 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 01:38

すりむいたヒザの手当てをしなきゃ。
ドキドキする胸をおさえつつ、あーちゃんの部屋にいれてもらう。
中はなんていうか、あーちゃんがいっぱい。
あーちゃんに包まれてるような気すらして…き、緊張する。

並んで座って。
話しだそうとすると、なにかふと気がついたのか、あーちゃんがうちに、聞く。

「ね、よっすぃ〜まいちゃんにも敬語なの?」
「え、いや、まいちゃんには違います。」

まいちゃんは年上とはとても思えないんで…

なら、私にも使わなくていいよって言われたから、慌てて敬語を止めようと
したんだけど、おかしかったかな?
わざとらしーって笑われちゃった。
少し空気がなごんだ瞬間、目があって。

くるっ…。

182 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 01:43

「こないだの、ことなんだけど…」
「あ、はい…うん。」

タメ口タメ口…

「よっすい〜がね、その、つい、流されてああいうことしちゃったんだ
 っていうのはわかってるの。あ、怒ってるわけじゃないよ。
 …でもね、なんていうか私は違うの、あのときすでに私よっすぃ〜のことをね」

うん、いや、ほんと申し訳ない…え?
「え、流されたとかじゃないよ?」
「ううん、そんな気にしないで、」
「や、ほんとに」
「だからいいって!」
「だから違うって!」

な、なんでそんな。
そんなんじゃうち、誰とでもよかったみたいじゃん?!
この誤解は絶対イヤで
必死に抗議する。

すると

183 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 01:50

「…ごめんって、ついってよっすぃ〜言ったじゃない!キスした後!」
うん、だってそれは
「だってついしちゃったんだもん!」
「ほら、つい、雰囲気に流されてしちゃったんでしょ。」
えぇ?!!
「?!ち、違うよ!つい、ガマンできなくてしちゃったんだって!」

あんまり君が。その…ステキ、だったんで。

「な、なにそれ…」
「ず、ずっとドキドキして、あの日。夏祭りの間とか、何度もやばかったけど、
 いきなり、許可なくそんなことしたら卑怯だし…がんばってこらえてたのに。
 でもあんな近くで見つめられたら!ガマンできないよ…だから、つい。ごめんなさい…」

は、恥ずかしい…でもほんとの気持ちだし。
隠すわけには…
でも恥ずかしい…


184 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:01

「なんで謝ったりしたの?」
あのとき?だって…
「だってあーちゃん、…柴田さん。うちのこと嫌いでしょ?昔から…」
「…あーちゃんでいいよ?」

言いなおそうとすると、昔のように呼んでいいって。
こんな状況でも、それはすごくうれしかった。

だから、そのお返しに、とはいかないけど。
怒らせたって思ったことや、毎日会いに来てたこと。
そして――告白したいってことを。
伝えたんだ。

ほんとうに今、その決意が固まってるのかって聞かれると。
…実はそれはちょっとびみょ〜なんだ。
でもこの想いが確かなことは、さっき抱きしめたときにわかったし。
それを、うちの素直な気持ちを伝えたいから。


185 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:09

「好きだ。あーちゃんのこと。好きだったんだ、小さいころから。
 嫌われてるのはわかってたし、あんなことしたからさ、余計」

嫌われちゃったと思うけど。
でもまた会えなくなるのなんてイヤで。
だから結果なんて出なくていい。
せめて、友達として。

そう言ったんだけど、でも困るって。言われちゃった。
うんそうだよね…あんなことするヤツなんて。友達にできないよね。
あーちゃんはきっと、なにかフォローしようと言葉を探してる。
それを見るのは余計つらくて。
気にしないでいいよ。気にしなくていいんだよ…
うちの気持ちなんか。


186 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:18

もうボロボロになって下を向くと、すりむいたヒザが見えて。
あ、消毒とかしなきゃ。痛かったでしょ?

「……痛い」
うん、今、手当てを…

ヒザに触ろうとすると、手をつかまれる。
「ヒザじゃなくて…」

胸が痛いって言われて。
あーちゃんすごいヘコんだんだって。
うちのせいで胸が傷ついたんだって。
それを聞いてうちもヘコんでいると。

手当てしてって言われたんだけど…
え、どうしたらいいの?


187 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:22

「…同じこと、して。夏祭りの夜と。」

えっ。
キス、していいの?
うちが、していいの?
混乱する頭でそう、聞くと。

「よっすぃ〜がいい。よっすぃ〜じゃなきゃやだ。好きなんだもん。
 よっすぃ〜が好きだから痛いんだもん。痛いよ、ばかぁ」

う、わぁ。うわぁどうしよう。
メチャクチャいとおしい。

せつないくらい、苦しいくらい。
君が好きだ。


188 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:28

「あーちゃん…好きだよ、ずっと好きだった。」
「よっすぃ〜…好き。」

昔から、ではないけど。

ははっ。…ちょっと悲しい。

何度もそっとその唇にふれる。
愛をこめて。
「…ん。治った?傷」
「…まだ」
ちゅっ。
「…治った?」
「まだ、もっと」
ちゅっ、ちゅっ
「どう?」
「全然ダメ…みたい。」

彼女の傷はなかなか手ごわいらしい、です。


189 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:30

すると、あーちゃんはちょっといたずらっぽく笑って。

「…よっすぃ〜、一生かかるかもよ?」
「…かしこまりました。喜んで。」

もう、泣かせたりしないよ、あーちゃん。


190 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:37

とはいってみたものの…

や、やばいこのままだとまたガマンできなくなりそう…

残念だけど、仕方ない。
柔らかくて、甘い唇にもうひとつキスをして。

「じゃ、じゃあ今日はまあこのへんで…」
抑えられなくなる前に、ね。

「え?…やだ。」
「や、やだってあーちゃん…」
「だって…やだ。」
そ、そんなこと言われても…

「よっすぃ〜…キス嫌いなの?」
「ふぇ?!ま、まさか…好きだよ。」
キスもだけど…あーちゃんが。


191 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:42

「じゃ、もっと。」
もっと、して、なんて。
そんなかわいいこと言わないで。
ほんとにガマンできなくなっちゃうよぉ〜

「我慢?だってもうしなくていいでしょ?」
「や、その、き、キスだけじゃないっていうか…もっと、その…」
「えっ……」

うつむいたあーちゃんの耳は真っ赤で。
うわ、ひかれちゃったかも。
うぅ〜恥ずかしい…


192 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:46

「ご、ごめんね、変なこと言っ」
「いい、よ?」

………え?

「…よっすぃ〜、したいなら。」

いや、そ、そりゃ〜したいんだけど、でも
「ま、またなんかヤなことして。あーちゃんに嫌われちゃうかも。」

どうも昔から。あーちゃんになんかしようとするといじわるになっちゃって。
泣かせちゃう傾向があるから…


193 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 02:51

「え、またいじわるする気なの…?」
「や、違う違う!ていうか今までだってそんなの思ったことないよ!!」
「ふふっ。冗談だよ。…嫌いになったりしないよ?泣いたりもしないから…たぶん。」
「で、でも…」

なにするかわかんないし、自分が。情けないけど。

「大丈夫だってば。」
「でも」
「…もう。」
わかった、と。

あーちゃんはそっとうちの耳元でささやく。

「…いじわる、して?」

…限界です。


194 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 03:00



まだ息のあらい彼女が心配で。思いきってたずねてみる。

「…だ、大丈夫?」
「……ん。」
「あ、あのさ、うちおかしくなかった?!ちゃ、ちゃんと気持ちよかった?」
「え?!…聞くかな普通、そういうの。」
「ご、ごめん!!」
「…よっすぃ〜って素でいじわるだよね。」

根っからいじめっ子なのねって。
そ、そんなことないでしょ?!


195 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 03:10

「え〜だってさぁ。プレゼント〜って箱にカエルいれたりしたじゃない。」
「あぁ、あれは。まいちゃんがプレゼントっていうのは自分が大切にしてるモノを
 あげるのが一番だっていうからさ。じゃあカエルかなってきいたら
 それなら間違いないって。きっと喜ぶよって。」
「…ちょっとまって、なんかヤな予感がする。…じゃあ私の頭はたいたりしたのは?」
「え、あぁ。ごっちんがね、あーちゃんの頭にハチがとまってるっていうからさ〜
 よく見たらハエだったんだけど。ごっちんてばおちょこちょいだよね。」

そういうと、あいつらか。結局あいつらかって、なにやらあーちゃんは
怒っちゃってるみたい。
どうしたんだろ?



196 名前:大好き大好き大好き 投稿日:2004/03/18(木) 03:18

「も、いいや…どっちにしろ私はよっすぃ〜に泣かされる運命なのね。」
「そ、そんな!…今までは泣かせちゃったけど。でも、もうそんな思い、させないから。
 大切にするから…だから…」
「ん…」
「も、もっかい、していい?」
「…ばか。」

そういって、恥ずかしそうにうちの首に腕をまわす。
あぁ、あーちゃん…

「…でもダメ。」
「えぇ?!」
「ていうか無理だよぉ。…もう力、入んないんだもん。」

だからまた、今度ね。
あ、でもキスはして?

そんな、あーちゃん…拷問だよ…
これからはうちが
いじめられそう、です。




197 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/18(木) 03:25
以上、大好き大好き大好き 終了です。

>>179 ヒラッペ さま
はじめまして!いつも読んでいただいていたそうで…ほんとにありがとうございます。
最終話こんな感じになりました。また読んでいただけたらうれしいです。

>>180 18 さま
そうです、二人は策士なんですwほんとに細かいところまで気にして読んでいただいて
うれしいです。二人の視点の話はないんですが、二人は不滅ですw
198 名前:18 投稿日:2004/03/18(木) 03:34
徹夜の息抜きに来てみたら
更新されてるし。
とりあえず、更新乙です。夜中までご苦労様です。
面白かったです。ありがとうございました。
199 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/19(金) 01:20
あ、昨日はsage忘れ大変申し訳ないです。
久しぶりにレスするもんでw

小説お疲れ様でした。
とは言うものの、続編に期待しちゃったりするんですけど、ダメでしょうか?
終り方がかなり続きそうな・・・

では、これからも執筆頑張って下さい。
200 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/23(火) 19:26
柴吉いいですよねぇ〜!!!
自分も実はひっそり書いてたりするんですが...
のせる勇気はありません。w
甘ぁ〜いの、期待しちゃってもいいですか??(ぇっ
待ってますょ、頑張ってください!!!
201 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:04


気持ちを伝えあって、確かめあった、あの夜から3ヶ月。

増え続けるのは君への想いと、君との新しい思い出と。

――君に対する、少しの不安 ――



202 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:06



――――  トマトの憂うつ  ――――  




203 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:12

「ね、よっすぃ〜外見て外!見えてきたよ〜!」

はははっ。
無邪気だなぁ〜ハニー♪

休みを利用してやってきたのはディズニーランド。
もともと柴っちゃんがディズニー好きなのは知ってたし。
定番だし、デートの。
だもんでやってまいりました。

青いスポーツカーで湾岸沿いをなめらかに…走りたいのは山々なんだけど。
なんせ無免許なもんで。
普通に電車でだけど…。

でも!
そんなことも気にならない。
だって二人はラブラブだから。


204 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:22

んもーそれはそれはラブラブで、毎日あんなことやこんなことして…ないんですよ。それが。
まぁびっくり。

つきあい始めて3ヶ月…いや、かわされはじめて3ヶ月、かも。


そう、あれは初めて柴っちゃん家に泊まりにいったとき。
お泊りだもん。期待するわけですよ。
しかも夜ご飯は柴っちゃんの手料理!!
うれすぃ〜

「あ!よっすぃ〜トマト残しちゃダメ!!」
「いや、これは残してるんじゃなくて、こうはじっこにね、かわいく並べて
 みただけなのね…ていうかこのパスタ自体がトマト味なんですけど!うっ!」

トマトと愛情たっぷりのご飯を全部たいらげて。
ソファーでミルクと寝転がる。


205 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:39

「ふぅ〜全部食べてよっすぃ〜ってえらいね、愛があるね。」
「なにミルクと会話してんの?」

かたずけを終えた柴っちゃんが戻ってきて、隣に座る。

「あ、柴っちゃん。ごめんね、食器うち洗うのに。」
「いいよ、よっすぃ〜お客さんなんだし。」
「ははっ。やだなぁもううちは身内みたいなもんじゃないか〜」
「お皿わっちゃいそうだし。」
「…そっちが本音?」
「え?そ、そうだ、よっすぃ〜ちゃんとトマト食べれたんだよね!よぉーし、
 よくできましたぁ。」

そういって柴っちゃんはうちの頭をなで…じゃなくてミルクの頭をなでる。

「ちょっと!うちこっち!」
「あ、間違っちゃった〜似てるんだもん。」


206 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:51

ごめん、ごめんと言いながら、今度はニコニコしてうちの頭をなではじめる。

「えらい?」
「うん、えらいえらい。」
「じゃ、ごほうびちょうだい…」
「え?…っん」

うちの頭をなでていた手を首にまわさせて。
柔らかい唇をふさぐ。
そっと舌をすべりこませると、
少しトマトの味がする彼女の舌をつかまえた。

「ふっ…んん」

時折もれる声と。
段々熱をもっていく体と。
我慢できなくなって、そっと彼女の服の中に手を入れ―
「ん!だめ!!」
え?!


207 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 17:55

「だ、だめ?!な、なんで?」
「あっ…ミ、ミルク。ミルク見てるから…」

や、見てないでしょ?!
ものすごい興味なさげじゃん?
ていうか犬じゃん?!!

…その後も何やら理由にならない理由でかわされて。
布団まで別々で。


結局初めてのお泊まりは、涙の一夜となった。


208 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 18:03

が、しかし。
もちろんそんな一回の失敗であきらめるうちではなく、
それからも勇敢に立ち向かったんだけど…
必ず答えは、NO。

なぜ?
うまくはいってるとおもうんだよ、それ以外は。
キスはもう数えられないくらいしてるし。
まあしてるのうちだけど…。
もちろん体目当てってわけじゃないよ?!

でも…なんかこう、理由もなくそこまで拒否られるとさ…
いろいろ想像しちゃうじゃん。
ヤなこととか。


もしかしたら、うちのことほんとは好きじゃないんじゃないかなとか。

もしかしたら、亜弥とのこと、まだ気にしてるんじゃないかなとか。

もしかしたら――
忘れられない、人が。
柴っちゃんの場合、忘れられない先生が。
いるんじゃないかなとか。


209 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/24(水) 18:17

好きになればなるほど不安なんだ。
確かめたいんだ、知りたいんだ、君の気持ち。

だから、思いついたのが今日のこの作戦。
不安な気持ちは自分でうちこわさなきゃ!
きっと帰るときまでには、もっともっと。ほんとうにラブラブになっている…はず!
えへへ…


「よっすぃ!!戻ってきて!!もう着くよ!?」

はっ!!着いたの?!よ、よぉ〜し!がんばっていきまっしょい!






210 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/24(水) 18:29
以上、トマトの思い出続編、「トマトの憂うつ」第1話です。

>>198 18 さま
最後まで読んでいただきありがとうございました。徹夜大丈夫でしたか?
またぜひよろしくお願いします。

>>199 ヒラッぺ さま
レスありがとうございます。えーっと一応「大好き大好き大好き」はあれで完結
なんですが、4人の関係はきっと末永く幸せに続いていくと思います。

>>200 名無飼育さん さま
温かいお言葉、ありがとうございます。続編の方、はじめさせていただきました。
またよろしくお願いします。
211 名前:18 投稿日:2004/03/24(水) 18:33
続編の方向が決まったようで
うれしいです。
また楽しみが増えました。
更新期待しています。
212 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/25(木) 00:36
お!続編お疲れ様です。待ってました。

これからもまったり更新待ってるんで、
ゆっくり書いて下さいw
でわ。
213 名前:メイ 投稿日:2004/03/25(木) 12:58
お疲れ様です!
柴吉(・∀・)イイ!すごく(・∀・)イイ!
ラブラブでいいですねぇ〜。
まぁ、少々よっちゃん可哀想・・・かな?(ぇ

次回の更新も待ってますね。
頑張ってください。
214 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:02

「ね、よっすぃ〜。やっぱり払うよぉ。」
「いいんだって。今日はそんなこと気にしないで!うち、今リッチマンなんだから!」


そう、実は臨時収入があったのですよ。
なんとこないだ亜弥から連絡があって…

「はい、これ今までのデート代。」
「え?い、いいよ、そんなお金なんか…」
「ううん。ちゃんと清算したいの。お金も気持ちも。後腐れなくね!
 これからも先輩にとって、かわいいかわいいかわいい後輩でいたいから。」
「か、かわいいってそんなに強調しなくても…」
「もらっとけばぁ〜?どうせよしこ金欠なんでしょ?」
「そうだけど…ってなんで亜弥にミキティがついてくんの?!」
「まぁ…それは、その…」
「だぁってたん、先輩と私が二人っきりで会うのヤなんだもんね〜」



215 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:14

「べ、別に!?てかついてこいって言ったの亜弥ちゃんでしょ?!」
「んふふ。素直じゃないたんも好き♪」
「あ、あの…二人はいったい…それにたんって誰?何?」
「あぁ…その、うちら今つきあってるっぽいんだよね。
 たんは…聞かないで…。」
「ポイってなに?ポイって!」
「…そうなんだ…ミキティがんばってね…」
「うん、ありがと…」

ご苦労…お察しします…

「ミキティこそお金大丈夫?」
「あぁ、それは全然。うちらデートは割り勘だし。」
「ひぃ?!わ、割り勘!?亜弥が?!」
「…先輩感じ悪〜い。私、目が覚めたの。たんのキスで♪」
「余計なことは言わんでいい!!」
「照れてるたんも好き…♪」

な、仲がよろしいようで…

しかし亜弥とミキティとはね…でもなんだかんだ言って幸せそうだし。
ほんとによかった。
いつかダブルデートとかもできるようになるかな?
なるといいなぁ。


216 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:23


と、いうわけで。
亜弥が返してくれたお金があるので、今日は余裕なのよ。

だからチケット代だって出しちゃうよ〜

「あ、すいません中人2枚。」
バチンッッ!
「いたっ!」
「すいません、大人2枚ください。」

いてて〜背中叩かれたぁ〜

「痛いよ柴っちゃん。」
「なに値切ってんの!誰が中人なのよ。」
「だってミキティが絶対大丈夫だってぇ〜」
「…子供扱いされたくないんじゃなかったの?」
「はっはっは。もうあの頃のうちとは違うのさ。」
「じゃ、よっすぃ〜年下なんだし。やっぱり私が払…」
「子供扱いしないでってば!!」
「どっちなのよ!!」

まったく。
柴っちゃんはうちのこのびみょ〜なハートがわかってな…今横切ったのって…

『ミッキー!!』


217 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:30

「待てぇー!!」
「ちょ、よっすぃ〜!速っ!」

激走して、タキシードを着たネズミをつかまえ、バッチリ写真撮影。
柴っちゃんも よっすぃ〜追いかけすぎ〜 とか言いながらすごくうれしそうだし。

…よし、順調だ。


「ね、お店見ていい?」

アトラクションを大体制覇して、夕方になったころ。
お土産を買いにお店に入る。

「まいちゃんには何がいいかなぁ〜」
「まいちゃんね〜お、このプーさんの耳とかいいんじゃん?」
「…普段使えないじゃない。よっすぃ〜ちゃんと考えてないでしょ。」
「考えてる考えてる。」
「もう…」


218 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:36


まいちゃんには悪いけど、うち今それどころじゃ…あ!

「柴っちゃん、うちあっち見てきていい?!すぐ戻るから!!」
「え、あ、よっすぃ〜!!」

ダァーッシュ!!

いいのみつけたぞぉ〜!
これ!…ティンカーベルのネックレス。
なんか記念に買おうと思ってたんだ、今日。
柴っちゃんに。
喜んでくれるかな…


「もう、よっすぃ〜遅いよぉ〜」

お会計して戻ると、柴っちゃんは外に出てベンチに座っていた。
うちも隣に座る。


219 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:47

「ごめんごめん。お、結局何買ったの?」
「んー?お菓子とか。みんなで食べれるし。よっすぃ〜は何買ったの?」

よくぞ聞いてくれました。

「…はい!」
「ふぇ?」
「…プレゼント。柴っちゃんに。」
「え?そ、そんな、いいよ。悪いよ。」
「いいから、もらって。…ってたいした高いもんでもないんだけどね。」
「そんな…ごめんね。」
「ううん、あ、あけてみて?」
「うん…あ、ティンカーベルだぁ。」
「…気に入った?」
「うん!ありがとう!…すっごいうれしい…」
「よかったぁ〜。」
「…毎日つける。ありがとうよっすぃ〜」

少し潤んだ瞳で照れ笑い。
…柴っちゃん…ちょ、ちょっとこれいい雰囲気なんじゃないの?!よし…

「柴っちゃん…」
「え?」
そっと唇に触れ…


220 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:51


…たと思ったら。
手じゃんこれ!

「なんで止めんの!」
「こ、こんな人前でできるわけないでしょ!まだ夕方だよ!子供だっているんだから!」

えーいいじゃんそんな。
ちびっこだって社会勉強になるよ。

「…なんだよぉ。ちぇ。」

すねて立ちあがろうとすると…服のすそをつかまれる。

「柴っちゃん?」
「…もっと暗くなってからがいい…」


か、かわいい…

…順調だ。



221 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 01:58


そして夜。
シンデレラ城の前でなにやらショーがあるというので、行ってみると…すげー人。

「正面は無理だね〜あっちがわ行く?」
「うん!」

ちょっと右側に移動すると、そのへんは人もまばらで、
木とかあるからびみょ〜に隠れられて…いいんじゃないこれ?!もう真っ暗だし!!

ショーとうちの心が盛り上がる中、いよいよクライマックスになり、花火があがる。

「キレー…」

よ、よし。

「柴っちゃん…」


222 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 02:03

「ん?…ん」

やったぁ!無事チュ―できました!

「もう…」
「大丈夫誰も見てないよ。」
「…バカ」
「うん」
「…もっかい」
「うん」

…あぁ、順調だぁ!


たっぷり一日遊んで、もう閉演の時間。

「あー楽しかった!帰りたくないねー。
 ね、よっすぃ〜。今度はディズニーシーに来ようね!」

「うんそうだね〜」


223 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 02:10


みなさんお帰りのようで。
同じ方向に向かって歩きだす。
でもうちらはそっちには行きません。お気をつけて〜

「あ、よっすぃ〜駅こっちだよ!」
「ん?あぁ。いいんだよこっちで〜。」
「…え?」
「だって帰りたくないんでしょ?柴っちゃん。」
「へ?でも終電出ちゃう。」
「出ちゃえ出ちゃえ。」
「は?ちょっとよっすぃ〜!どうするの?」
「どうするのって泊まるの。」
「…どこに?」
「ホテルに。」
「いきなり泊まれないでしょ?」
「予約してあるもん。」

やられた、はめられたって柴っちゃんの顔に書いてある。


224 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/26(金) 02:18


ふふん。
そう!つまり今日の作戦は!

ディズニーマジック、いやよっすぃ〜マジックで一気に親密になっちゃえ作戦だったのです!

あ、もちろんホテルはそういうホテルじゃなくて、ちゃんとしたホテルだよ?

なんせリッチマンだから。

「さぁ、いざ夢の国へ!」
「いや、夢の国なら今閉園したから…」

今日こそは逃がすもんか!

完ぺき順調!OK牧場!!



225 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/26(金) 02:24
以上、第2話です。

>>211 18 さま
いつもレスありがとうございます!続編はこんな話になりました。
またおつきあいいただければうれしいです。

>>212 ヒラッペ さま
温かいレスありがとうございます!続編の方はじめさせていただきました。
またぜひよろしくお願いします。

>>213 メイ さま
レスありがとうございます!かわいそうですね、よっすぃ〜w
これからもよろしくお願いします。
226 名前:18 投稿日:2004/03/26(金) 02:29
柴ちゃんの手の内で転がされている
よしこはおもしろいです。
あやみきも順調そうでなにより!
次回まで、また〜り待ってます。
227 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 02:31
さり気なく登場している二人にも萌え〜
そしていざ夢の国!!ですね。
あー今からどきどきしてきたw
228 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:06


ぶつぶつ文句を言いつづける柴っちゃんの背中を押して押して。

さ、到着しましたよ〜お部屋に♪

「あ、すごい!ディズニーランド見える!!」

中に入ると、窓から見える景色が気に入ったのか、
柴っちゃんのご機嫌も少し上昇。
よしよし
やっぱ近くのホテルとってよかったなぁ〜
亜弥、ご支援ありがとう!!



229 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:13

「閉園してもライトアップされてるんだね〜。」
「どれどれ〜」

外をのぞこうと、窓に張り付いている柴っちゃんに重なると、びくっ!と体が動く。

「…そんな警戒しないでよ。」
「…してないもん。」

いや、わかりやすすぎなんですけど…

「…してないの?ほんとに?」
「ほんと。」

ほぉ、じゃあ…
わざと強めに、後ろから抱きしめてみる。
と、ガチガチっと音がするんじゃないかってくらいに、柴っちゃんの体が固まる。

ほぉらね!はっはっは…
ってちょっとこれ結構笑えないんですけど。

傷つく…リアルに。



230 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:17

「柴っちゃん…こっち向いて?」
「やだ…」
「なんでさ」
「ヤなもんはヤ。」

…この頑固もんがぁ!
しかたない、こうなったら…

「…とぉりゃぁぁ〜!!」
「えぇ?!きゃあ!!」

力ずくで。
ベッドに押し倒す。
…ムードない?
でも、もう。限界。

「いったぁーい!!もう、よっす…んん!!」



231 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:26


今までしたことないくらい、乱暴にくちづけてるけど。
別に今日のうちが特別興奮してるってわけじゃないんだよ?
いつも同じくらいたかぶってて。

抑えてただけなんだ。
誤解しないで。

「んっ!んー!!」

角度をかえながら、何度も深いキスを続けていると、
柴っちゃんに胸をドンドンと叩かれる。

「…っは!はぁっ!」

しかたなく唇を解放すると、荒々しく息を吐き出す。

「…大丈夫?」
「…ん。はぁ…」



232 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:36


苦しそうなところ、申し訳ないんだけど…

「柴っちゃん…もっとしていい?」

キスも…もっと他のことも。
今日はミルクもいないし。

「…どうしても?」
「え?う、うんまぁ…」
「…わかった。ならいい。」


投げやりな言い方がそりゃあちょっとは気になったけど。
でもそんときは、今日の作戦を成功させることで頭がいっぱいで。

早く、本物の恋人同士になりたくて。
そのためには抱き合うことが一番だって、疑いもしなかった。
だから。
この部屋に入ってから、君と一度も目が合ってないなんてこと。
気づかなかったんだ。


233 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:43


ベッドに横たわっている柴っちゃんの体を包むように抱きしめると…

…やばい、うち震えてるかも。
武者震いってヤツ?

うえからそっと小さい耳に唇をよせる…

「んん!耳やっ!!」
「え?あ、ごめん…」

柴ちゃん、耳弱いのかな?
あんまり最初から刺激しないほうがいいのかも。じゃあ…

「あ!首だめっ!!」
「へ?!」

く、首も?それなら…
そっと手をおろして、胸に触ろうとすると…



234 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:53

「や、やだぁ!!」
「…あの、柴っちゃん。どこならいいのどこなら!!
 からかってんの?うちのこと!」

うちは真剣なのに!!
なんでそんなはぐらかすようなことばっかすんの!!

「ち、ちがっ。…っ、だって!
 そんな…そんなつもりじゃなかったんだもん…今日。こ、心の準備が。
 …急に、いきなりなんて…ひどいよ、よっすぃ〜…」

そう?ほんとに、そう?

「いきなり?そんなに急だった?」
「え…だって…」
「…うちはさ。サイン出してたつもりだったんだけど。…柴っちゃん抱きたいって。
 気づいてなかったわけじゃないっしょ?」
「…で、でも今夜なんて…ホテルとってあるなんて…思わなかったもん…」


235 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 00:58


…だって。
言ってたら君は来てくれた?
…ごめん、これは言い訳だけど。

そう、隠してたんだ。
そしたらもしかして勢いが。
勢いで君がうちを受け入れてくれるかもって思った。

そして。
そうなったとしたら。

消えると思ったんだ。
この不安が。
…間違ってたんだろうけど。
でもあとどんな方法があった?

うちがどんなに求めても。
君は拒む理由さえ教えてくれなかったでしょ?


236 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:04

「…も、いいよ。わかった。
 いきなり、こんなことしてごめん。…疲れたっしょ?今日はもう寝よっか。」
「よっすぃ〜…」

まともに顔、見れなくなって。
体をおこし、彼女から離れて、背を向け、横になる。
ちっとも眠れそうにはないけど。

一人よがりな自分と、この気持ち。
不安はいつしか、ちょっとした絶望っぽいものにかわっていた。

「よっすぃ〜…」

ごめん、今は何も答えてあげられないよ。

「よっすぃ〜…そっちむかないで…」

ごめんね、こんな情けない顔、見せたくないんだ。


237 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:14


静かになった空間に。
ポツ、ポツっと音がする。

雨か…今のうちにはぴったりだ…あれ、部屋の中に雨って降るっけ?

「…っく、う…よっすぃ〜…」
「し、柴っちゃん!?」
「んぅ…っうぅー…」

シーツに降っていたのは、彼女の涙の雨。

「な、泣かないで。」

慌てて近づき、抱きしめる。
『今は顔、見せたくない』とか言ってたけど。
…意地なんかはってらんない。
だって泣いてる。大好きな君が。


238 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:24

「よ…よっすぃ〜…怒って…ご、ごめんなさ…」
「怒ってないよ?怒ってない…」

怒ってるんじゃなくて。
怒って君に背をむけたんじゃないよ。

ばれたくないから。
君の気持ちを信じきれないこととか。
うちがこんなに弱い人間だってこと。

だから。

「ほ、ほんとは…わかってたの。よっすぃ〜…したいのかなって…。」
「うん…。」


239 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:31

「で、でも。このまま、しても大丈夫かなって。すごい、不安で。
 だけど、ずっと嫌がってて、よっすぃ〜に嫌われちゃったらって…それも不安で。
 …そしたらどんどんどうしていいかわかんなくなっちゃって…」
「そっか…」

柴っちゃんも。
真剣に考えてくれてたんだね。
なら、もういいよ。

「…したことないの。こういうこと。」

そっかそっか…わかったから、もう泣かないで…え?

「え?!し、したことないって?ないの?!な、なんで!?」
「な、なんでって言われても…」

いや、だ、だってさ…


240 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:37

「へ、平家先生とさ、しなかったの?」
「…学校でしか会ったことないって言ったでしょ?」
「が、学校だって。いくらでもあるじゃん!カギが締まる教室とかさ」
「…よっすぃ〜はしてたの?そういうとこで…」

し、しまった!!

「や、ち、違っ!」
「…ふーん。」

あらら、いつのまにか柴っちゃんのお顔は雨が止んで曇り空。
…むしろ今にも雷が落ちそう…

「う、うちのことはいいから!」
「ちっともよくない…」
「で、でも!なんで言ってくれなかったの?」
「え?」
「その…ないって。したこと。」


241 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 01:48

「だ、だって。どんなタイミングで言えばいいの?」
「え?んーそうだな。やっぱそういう雰囲気のときにさ、こう、
 『初めてなの…』とかかわいく…」
「い、言えないよ!だってそんな、さ、誘ってるみたいじゃん!」
「いや、誘ってくれて全然OKなんだけど…」
「………」
「ご、ごめ。」
「…ほんとは。ちゃんと言わなきゃって思ってたの。
 でもそういう…初めて、とか。よっすぃ〜どう思うのかなって。
 重い、とか思われるかもしれないって…」
「?!思うわけないじゃん!そんなの!」

絶対、絶対。絶対ないよ。

「…よっすぃ〜優しいから。きっとそう言ってくれるだろうって思ったけど。
 でも…体とか触られそうになると頭真っ白になって。
 なんか、なんかわかんないけど怖くなって。
 …信じられなくなるの、よっすぃ〜の気持ち。よっすぃ〜のこと好きなのに。
 …ひどいのは私なの。ごめんね、よっすぃ〜。ごめんね。」


242 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 02:04


また、彼女の目から涙の雨が。

あぁ、バカだなぁうち。
やっぱ全然ガキなんだ。
自分のことしか考えてなかった。

あの夜。
付き合い出すそのときに。
気持ちを伝えたから。
もう完ぺきに伝わったと思っていたんだ。

それに、うちにとってうちが君を好きだなんてことは、当たり前すぎて。
もう言う必要すらないと思っていた。

うちの気持ちにこたえてくれないのは君だと勝手に決めつけてたんだ。

ごめんね。
不安だったんだね、二人とも。

お互いの気持ち、信じきれなくて。

この3ヶ月。

243 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 02:12

「柴っちゃん…うちも、うちも信じきれてなかったんだ。柴っちゃんの気持ち。
 ずっと、拒まれて。理由がわかんなくてさ。…今思うとわかろうとしてなかったけど。
 …もしかしたら柴っちゃんはうちより、やっぱり平家先生の方が
 好きなんじゃないかって。…不安だった。」

それで、焦ってたんだ。
君を、なんとか手にいれなきゃって。

「…より、とか」
「え?」
「平家先生より、とか。誰かよりとか。
 そんなんじゃない。よっすぃ〜だけが好きだよ。よっすぃ〜が好きなの。
 自分には自信ないけど…自分の気持ちには自信あるんだよ?」

そういって笑う彼女の目から流れる涙を指でぬぐって。


244 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 02:26

「…好きだよ、柴っちゃん。好きじゃなきゃ、抱きたいなんて思わない。
 すぐ体とかうち触るけど…全部好きだからだよ?…勝手なこと言ってるけど。」
「ううん…うれし…」


そして抱きしめると。
やっとわかった。
あのとき震えてたのは、うちじゃなくて彼女だったんだ。
だって、ほら。
今もこんなに震えてる。

さっきまでは目も合わせられないくらい、おびえてたんだね。

気づかなくてごめんね。

でも、これからはうち、変わるから。

君が好き、って言ってくれたから。
自信が持てた。

ようやく大人になれたような。
そんな気がしたよ。


245 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/28(日) 02:34

「さてっと…じゃあ今日はもう寝よっか?」

そりゃーそういう気持ちがないわけじゃないんだけど。
でも、お互い不安だったこと。
打ち明けて、そしてわかりあえた。

それだけでも、今日の作戦は充分成功なのかも。

それに、今なら待てると思うんだ。
君が怖くないって、したいって思えるときまで。

「…よっすぃ〜もうしたくない?」
「そんなわけないじゃん。でも気長に待ちますよ?」

もうなんていうの?これが大人の余裕ってやつ?

「…じゃあ30分。…20分待って。」
「へ?」

あの…柴っちゃん?え、どこ行くの?

「…お風呂、入ってくる。」


…落ち着け、よしこ。


246 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/28(日) 02:40
以上第3話です。次回、完結です。

>>226 18 さま
いつもレスありがとうございます!よしこ転がされながらがんばっていますw
次回、完結予定ですが、また読んでいただけたらうれしいです。

>>227 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!夢の国にはまた次回…w
またどうぞよろしくお願いします。
247 名前:18 投稿日:2004/03/28(日) 02:49
最後の落ち着けは笑いました。
う〜ん。描写が出来立てカップルなんで彼女が
欲しくなります。

携帯からのカキコは勝手がわからん。
変になってたらすいません。
248 名前:メイ 投稿日:2004/03/28(日) 13:39
更新お疲れ様ですw

ハァ━━ ;´Д` ━━ン!!!!
この2人(・∀・)イイ!っすw
かわいいなぁwって思いました(ぇ
頑張れ!よしこ!落ち着け!よしこ!(笑

次回の更新も待ってます。
頑張ってくださいね。
249 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/29(月) 00:19
うぉ!鼻血が(違
次回完結ですかぁ・・・

って、ディズニーの近くのホテルって、あそこですよねぇw
ディズニー系列のホテルw
ってかソコってかなりのお値段するホテルだったような・・・w
よっすぃ〜さすがwとか妙な所に感心しちゃうヒラッペでした。
250 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:02


「…ほんとに大丈夫?」
「…わかんない、たぶん。」

たぶんって…

決心したように立ち上がって、きっちり20分後。
柴っちゃんは戻ってきた。
きた、けど…

…自分がどういうカッコしてるかわかってないんだろーな。
お風呂上がりでバスローブ姿で。
ほっぺたはピンク色に染まって、石けんの匂いがして…

さっきよりかんなり増してるんですけど…色気が。
これ以上うちを刺激しないほうが自分のためなのに。

「…まいったなぁ。また柴っちゃん泣かせちゃうよ…」
「な、なんでそんな怖くなるようなこと言うの?!」




251 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:08

「いや、ほんとのこと言ってもらったほうがいいっしょ?」
「ほ、ほんとのことなの?!」

…この人ほんとにうちのこと信じてるんだろうか…。

「大丈夫、死にはしないさ☆」
「…やっぱやだぁ〜」

こら!逃げるな!

起き上がろうとする柴っちゃんをおさえこんで、くちづける。
優しく、甘く。

「…ん、はぁ…」
「柴っちゃん…ほんとにヤならしないよ?どうする?」

好きな子が嫌がるようなこと、しないよ。
うち、もう大人ですから。

「ん…大丈夫。が、がんばる。」

…かわいいなぁ。

「じゃあ…」

うちもがんばる、ね。
君に負けないように。


252 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:18

「んぅ!んんー!」

…やっぱ弱いんだ、耳。
少し舐めただけで、飛び上がるように反応する。

彼女の神経が耳に集中している間に。
そっとバスローブの中に手を入れる。

「?!やぁっ!!」

ようやく気づいて、慌ててうちの手を抑えようとするけど。
…残念。間に合わない。

「あっ!あっ!」
「…やらかい…」
「っバカぁ!」

中はもうブラをつけていなかったので、直接胸に手が触れる。
ゆっくり、優しく揉みしだく。

「ぁっ!んんぅ、んー!」
「…すげーかわいい。」

手はそのままで、耳元でささやくとびくっと体がゆれる。


253 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:24

「…くぅっ!耳…もとでしゃべ…ないで!」
「だってかわいいんだもん…」

いやがるように首をふる。
落ち着かせるように、また優しくくちづける。
手はしつこく胸を触りながら…

「…ん、ん。」
「…ちゅっ。」

すきをみて、指で胸の中心を転がす。

「?!んー!ふぅんっ!」

今までで一番反応するので、声が聞きたくて。
キスをやめて、唇を首から段々と下に下ろしていく。

「あっ、ぁん!や、やぁだぁっ!」

胸の突起を口でくわえると、逃げようと暴れ出す。
それを抑えつけ、さらに舌をはわす。


254 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:31

「あぁん!っやぁ!ぁっ!」

快感っていうのは、だんだんと慣れていって、はじめて快感になっていくんであって。
たぶんまだ彼女にとっては強すぎる刺激でしかない。

「んっ、あっ!やっ、やだぁっ!よっ、よっすぃ!」

それでも体は反応していて。
彼女の言葉を無視して、胸を舌で刺激しながら、そっと手を下ろし、
下着の中に触れると―濡れているのがわかった。

「んん、ぅっ、よっすぃ…やぁ…」
「…泣かないで?ごめんね…」

恥ずかしいんだよね?
ごめんね。
今してることも、これからすることも、

ごめんね。



255 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:38

「?!やっ!よっすぃ!お願い!離して!やだぁ」

腰に腕をまわして固定して。
その濡れているそこに舌をはわす。

「はぁっ!…ぁ、んん…ぁん!」

体の中の熱を。
うまくごまかしたり、逃がしたり、まだできない彼女は。
きっとうちが与える刺激をすべて受け止めてしまう。

それって相当辛いよね?
相手に、うちに、されるがままになってしまうってことだから。

それでも、君を愛しいと思えば思うほど。
自分の動きを止められない。

「…んぅ、ふっ…うぅ…」
「…柴っちゃん…」


256 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 01:47


そこから唇を離し、抱きしめて、くちづける。

「…んっ。はぁ…」
「柴っちゃん…大丈夫?」

ほっぺたにつたっている涙の後を、指でふきながらたずねる。

「…なんか、めちゃめちゃ。頭も、体も。」
「ははっ。そっかそっか。…どう?続けても大丈夫そう?」

「…もっと大変?」
「へ?」
「これからすることって…まだもっと大変?」
「…うーん。そうだなぁ。もっともっと大変かな。」
「…よっすぃ〜…いじわる。」

とがらせた唇にもう一つキスをして。


257 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/29(月) 02:08

「うん。でもやっぱうそはつけない。…なるべく気をつけるけど、だけど
 きっと柴っちゃん痛い思いするだろうし。
 …でも。好きだよ。
 柴っちゃんのこと好きだから…それでもしたい。ごめんね、いじわるだね。」

辛い思いさせてでも。
君が欲しい。
こんなふうに思うの、君だけなんだ。

「…よっすぃ〜うれしい。でも違うの。痛い、とか、そういうのは…ちょっと怖いけど。
 でもね、不安なのはそうじゃなくって…あのね、すごいどきどきするの。
 よっすぃ〜に触られると。もっと大変なことしたら、もっとどきどきするでしょ?
 それでも平気かなぁ?大丈夫なのかなぁ。」

そんな、不安。かわいすぎだよ。

「…どきどきするの嫌い?」
「ううん。…好き、かも。」
「じゃ、大丈夫だよ。」

合図をするように、何度もキスをして。

「柴っちゃん…するよ?」
「うん…して?」

柴っちゃん。
大好きだよ。



258 名前:ツースリー 投稿日:2004/03/29(月) 02:16
以上第4話です。完結する予定だったんですが…もう一回続きます。
予告どおりに行かなくて、申し訳ありません。

>>247 18 さま
いつもありがとうございます!よしこ自問自答ですw
携帯からわざわざありがとうございました。ちゃんと表示されてます。

>>248 メイ さま
レスありがとうございます!よしこががんばりすぎて終われませんでしたw
またぜひよろしくお願いします。

>>249 ヒラッペ さま
レスありがとうございます!よしこがんばりました。完結できず、
もう一話続きますが、また読んでいただけたらうれしいです。
259 名前:18 投稿日:2004/03/29(月) 02:29
更新乙です。
楽しみが増えました。
妄想膨らましてるんで
焦らずこなしてください。
260 名前:メイ 投稿日:2004/03/29(月) 12:59
お疲れさまですw

ぐほっ・・・・・やられましたぁ(何
柴ちゃんかわええのぉw(誰
次回も楽しみだぁ!!!!!

次の更新もまってますw
頑張ってくださいね♪
261 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/30(火) 00:30
ウヒョー!!ですねw
柴田さん最高です。
そのウブさに萌えw

次回と言わずにず〜っと見続けさせてもらいますw
262 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/30(火) 01:26
うお!し、柴ちゃんかわいすぎ・・・鼻血が出そう・・・次回も期待してます。
263 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/03/31(水) 23:57


「あっ!いたい!いたいっ!」
「んっごめん…」

…中々入んないな。
まだ指、一本も入れてないんだけど…

いったん、気をそらさせようと、また胸に唇をよせる。

「っん!ふぁ…んぅ」
「…柴っちゃんの胸かわいい…」
「っ!やぁ!ばかぁ!」
「んー…でも柴っちゃんが一番かわいいなぁ。」
「?!も、やだぁ!」

くるっとうつぶせになって、背中を向けられてしまう。

「なにがヤなのさぁ。」
「…よっすぃ〜変なこというんだもん。」
「変なことなんか言ってないっしょ?柴っちゃんの胸かわいいなぁって…」
「それがヤなの!!」


264 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 00:10

「だってかわいいんだって。…柴っちゃんは全部かわいいよ。
 めちゃめちゃかわいい…」

ぐっとその体をひっくり返して抱きしめて。
もう今日何度目かな…
何度してもちっとも飽きない、かわいい口にキスをする。

「んんっ…ふっ…」

舌をからめながら気づかれないように手をのばし…
そっと指を入れる。

「?!んぐっ!んぅ!」
「…っつ!!」

痛みに驚いた彼女に。
カチっと舌を噛まれた。

「…てて。」
「ごめんね、よっすぃ〜…ごめんなさい…」
「いいって。大丈夫だよ。」
「…しとけば…」
「え?なに?」
「平家先生と…しとけばよかったね。」

…はっ?


265 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 00:23


「なに、言ってんの?」
「…っだって。そしたらよっすぃ〜ともっと簡単にできたのに…
 私どうしていいかわかんないし…こんなのよっすぃ〜つまんないでしょ?」
「…なにそれ。ほんきで言ってんの?」
「っ。…やなんだもん。よっすぃ〜に迷惑かけるのやなんだもん…
 怒んないで…ごめんなさい…」


また彼女は泣きだしてしまって。
…ほんとはめちゃめちゃ頭にきたけど。
間違ったこと言ってるって、たぶん本人が一番わかってると思うから。
君の本心じゃないはずだから。

それはどうしようもない、彼女の不安で。


266 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 00:34


「…なんでうちに迷惑かけたくないの?」
「っ…好きだから…よっすぃ…好きだから…」
「うちも好きだからしたいんだよ。」

涙の溢れる瞳にキスをして。

「迷惑だなんて思わないよ。…どっちかっていうと、うれしいし。
 むしろ、うちでいいのかなって思う。」
「そんなの!…よっすぃ〜がいいに決まってるよぉ…」
「…平家先生がよかったって言ったの誰だっけ?」
「…そんなふうに言ってないでしょお?…そんな意味じゃないもん…
 ごめんなさい…」
「…許さん」



267 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 00:42

「え?…あぁん!やっ!…あっ、あっ!」

もぐりこんで腰を抱え、またそこに舌をはわす。
蕾を甘噛みすると、体が跳ね上がる。

「…はぁっ!あぁん…」
「柴っちゃん…」

キスをしようと唇を近づけると、顔をそむけ、嫌がる。

「ダメっ…また舌、噛んじゃう…」
「いいって…噛んでもいいよ…」

何度も歯をわろうと舌で唇をなぞるけど…かたくなに口は閉ざされたまま。

しかたなく軽くついばむキスを続けて…そっと中に指を入れる。

「んぅ…うー…」
「…ちゅっ。ん…」

ごめんね…
心の中で謝りながら――指を一気に奥まで差し込む。


268 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 00:51

「んー!!んぅっ!…うぅ…」
「ごめんね…しばらく動かさないから…」
「…うぅー。ん、ん…」

好きだよって伝えるように、伝わるように。
何度も何度もキスを続ける…


…そのうち、そっと口が開かれたので、舌をすべりこませる。

「ふっ…んぅ…ん…」

痛みにだいぶ慣れたのか、もう舌を噛まれたりしなかった。

「柴っちゃん…どんな感じ?」
「…ふぇ?どん…なって…?」
「まだ痛い?」
「んん…わかんない…」
「そっか…」

そっと指をまげて、中を押し上げる。

「あぁん!…あっ!…はぁっん!」

痛みとは違う――甘い声。


269 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:05

「柴っちゃん…動かすね。」

もう一本指を増やして。
熱くて柔らかい中を味わう。

「ふぁ…はぁん!ん、んぅ…」
「…気持ちいい?」
「んぅ…んん、ぅぅ…」
「ね、気持ちいい?」

ぐっと、更に強く中を押し上げる。

「あぁん!…き、もち…」
「気持ちいいの?」
「…きもち、……きもちい…よぉ…」
「…よかった。」

汗ばんだ体を抱きしめながら、何度もその動作をつづけていると
…指を締め付ける力が強くなってきた。

「…んぅ…はぁ!…あぁん…」
「柴っちゃん…」

もう切羽つまっているような表情。
その顔をじっと見つめていると、視線に気づいて。赤くなり、顔をそらす。


270 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:14


「…見ないでよぉ…やだぁ…」
「見たいよ…柴っちゃんの顔、見たい。」

荒々しく。
柴っちゃんの中を掻き回す。

「…あぁ!よっすぃ…よっすぃ…」
「ん?…いきそう?」
「…んぅ、好き…よっすぃ…大好き…」
「…うちも。」

大好きだよ。 

今までで一番奥まで。
気持ちと指をつきあげる。

「…っあ!はぁ!……あぁん…」

うちの気持ちに答えてくれるように、強く締め付けて。
果てた柴っちゃんはぐったりと倒れこんだ。





271 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:20


「大丈夫…?」
「…はっ…はぁ…うん…」

荒い呼吸を続ける、その彼女の体の上に。うちも重なる。

「…よっすぃ〜?」
「ん…?」

なんかめちゃくちゃ愛おしくて、たまらない。
胸がつまるとは…まさにこれだ。

「…よっすぃ〜、大丈夫?疲れちゃった?」
「ううん、感動にひたってるの。」

そしていつものようにバカっ!て叩かれる…と思ったんだけど。
あれ…柴っちゃん?

「なんか…ね?」
「へっ…?」





272 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:32


「なんか。ずっと、なんでみんなこういうコトするんだろうって思ってたの。
 よっすぃ〜も…なんでそんなにしたがるのかなってちょっと思った…」
「あはは…すいません…」

今になれば恥ずかしい。下心丸出しみたいだったもんね。
突っ走ってた自分が憎い…。

「…でもね。してみたらわかった。
 すごい、全然違うの。するとね…好きになっちゃう…よっすぃ〜のこと。
 前から好きだったけど…もっともっとね、好きになっちゃうの…」

「柴っちゃん…」
「…よかった。よっすぃ〜とできて。すごいうれしい…ありがとう。」

自分で言うのはなんだけど…柴っちゃんのこんな…
こんな幸せそうな笑顔、見たことない。

こっちこそ、こっちこそありがとう。
うちも…。

「柴っちゃん、うちもね、前よりもっと好きになった…ていうかうち柴っちゃんのこと、
 あ、愛して……寝てんのかい!!」


273 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:39


柴っちゃんは微笑みながらすやすやと安らかに…ってまじで?!

そんな…そりゃー疲れたろうけどさ…もっとこう、余韻みたいなのないの?!

…いや、ほんときっとすごく緊張してたんだよね。
今日、こんなことになるなんて思ってなかったんだもんね。
ごめんね…でもうち今すごい幸せだよ。

「柴っちゃん…愛してるよ…」

夢の中の君に届きますように。

…ね、寝顔かわいいんですけど…襲っちゃいそう…うぅ…


次の日の朝はそれはそれはさわやかで。
あぁほんと夜明けだよ…いろんな意味で…

まだ眠っている柴っちゃんにそっと口づける。
記念すべき今日一回目。


274 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:45

「…んっ…?…」
「…あっ。柴っちゃん、起きた?」
「…んぅ。はよぅ…」
「いいね〜!おはようのちゅーで目覚めるさわやかな朝!」

さわやか3組〜♪…おや?何か問題でも?

「…おはようのちゅーは起きてからするんでしょ?」
「うち起きてたもん。」
「私は起きてなかったぁ!」
「わがままだなぁ柴っちゃんは。わかったわかった、ごめんごめん。」
「……から…」
「ん?」
「起きたから…おはようのちゅー、して?」

…これは現実?夢?幸せすぎて死にそう…


「今日どうする?」
「んぅ?なにが?」

275 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:52


ベッドの中でまだ二人ともごろごろしてる。

「ほら、柴っちゃんディズニーシーにも行きたいって言ってたじゃん?
 どうする?今日行く?」
「え、ううん。いいよ…」
「遠慮しなくていいんだよ。…まぁ予算的にはオーバーだけど。
 でもせっかくだし、よしこがんばる!」

たとえ月末自販機の底の小銭を拾っていようとも…
愛さえあれば!

「ううんお金じゃなくて…それもだけど、なんていうか…無理なの。」
「無理じゃないって〜がんばるよ、よしこは!」
「いや、むしろがんばられたせいでこんなことに…」
「ふぇ?どういうこと…」
「どういうことって…腰。痛くて動けないの!ていうか全身だるいの!!」


276 名前:トマトの憂うつ 投稿日:2004/04/01(木) 01:59

「えぇ?!うそまじで!…体力ないなぁ柴っちゃん。」
「よっすぃ〜がありすぎるだけでしょ?!このばか!ばか力!」
「意味わかんないし!これからはもっとしっかり体力つけてもらわないと!
 毎日するんだから。」
「?!ま、毎日なんてしません!もうしないもん!」
「ちょ?!はぁ…昨日はあんなにかわいかったのに…」
「は、恥ずかしいこと言わないでよ!バカ!バカよっすぃ〜!!」

「言ったなぁ〜!とりゃあー!」
「きゃあ!こっちこないで!…どこ触ってんのよ!どこ!」



というわけで。
うちらは作戦通り?ますますラブラブになったのでした!!



277 名前:ツースリー 投稿日:2004/04/01(木) 02:06
以上『トマトの憂うつ』終了です。

>>259 18 さま
いつもいつもありがとうございます!無事完結できました。
温かい言葉、ありがとうございました。

>>260 メイ さま
レスありがとうございます!柴っちゃん気に入っていただけてよかったですw
無事完結できました。

>>261 ヒラッペ さま
レスありがとうございます!喜んでいただけてうれしいですw
またぜひよろしくお願いします。

>>262 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!鼻血大丈夫ですかw
無事完結できました。
278 名前:18 投稿日:2004/04/01(木) 02:11
完結お疲れ様です。
279 名前:200 投稿日:2004/04/06(火) 17:07
完結お疲れ様でした♪
柴ちゃんがぁ...マジ可愛ぃ。
柴吉はやっぱりいいですよねぇ〜
次回も期待しちゃっていいですか??
280 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 01:27



    私はきっと。
 
本気で恋愛はできない人なんだよね。



281 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 01:35


今日も周りは。あの人がかっこいーとか恋人がどうのこうのとか。
恋愛話をくり返す。必死なほどに。

あぁもう胸がきゅんとするぅーとか、超ドキドキするぅーとか?

なんだかわかりずらい、おかしな言葉で、恋を表す。

まぁ、それがすべてウソだとは言わないけどね。
でも、ちょっと大げさすぎなんじゃない?


恋愛って結局。
相手を選ぶってことでしょ。

顔か、性格か。もしくは両方で。
いろんな人と比べて、気に入った人を手に入れる。

そんなに純粋なものだとは思わないけどな。


282 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 01:43


だいたいこういう話をすると、引かれるか、哀れまれるか。
ほんとの恋を知らないのねーってか?

じゃあみんなはどうなのよ。
ころころと恋人を変えて。
少し前まで好きだって言ってた人を、今はうざがったりしてさぁ。

どうなの?それがほんとの恋なわけ?


こんなこと、決して口に出したりしない。
心でどんなに思っていても。
言うとしても、まいちゃんとか、ほんとに信じれる友達にだけかな。

私が、こんなふうにグチをもらし始めると、いつもまいちゃんは
「んー恋心は自分で感じるほかないからねぇ〜ま、そのうちわかるよ、あゆみんにも。」
なんてお気楽に言うけれど。
そんな日は来ないよ、きっと。残念だけど。



283 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 01:50


私にだって、恋人がいたことはある。

好きだったのかと聞かれれば、ふつーに好きだったと思う。
ふつーに。

その人と手を繋ぐことや、キスをすること。
別にイヤじゃなかったもん。

ただ、たとえばデートをして。
終電ギリギリの駅のホームへ向かう途中、今夜は離れたくない!なんて思わなかった。
あぁ明日一限からだ〜とか、まじ乗り遅れたらどうすんの?お金ないんですけど!とか。
頭の中には恋する乙女とは程遠い、現実問題がうごめくばかりで。

…まいちゃんのため息が聞こえてきそう…。


284 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 02:01


私が思うに、恋愛にも人それぞれ向き、不向きがあって。

私は恋愛体質じゃないんだよね。

まぁ、ラブストーリーのドラマや、いつか王子様が迎えに来ちゃう系の
おとぎ話は割りと好きで。
感動するし、泣いたりもするんだけど。

それとは違う現実があるっていうこと、しっかり認識した上で涙を流してるの。昔から。


だから、頭の中が恋愛でいっぱいになるなんてことはないし、
この胸が誰かに。たった一人の人によって占領されちゃうなんてこと、
あるわけないの。私の場合。

そんな風に思っていたころの私は。
それはそれで幸せだったのかな。

甘くて苦い。あなたの味を知るまでは。



285 名前:ツースリー 投稿日:2004/04/12(月) 02:07
以上 『恋→愛』 第1話です。

>>278 18 さま
レスありがとうございます。また読んでいただけたら嬉しいです。

>>279 200 さま
レスありがとうございます。新作始めさせていただきました!
またよろしくお願いします。
286 名前:メイ 投稿日:2004/04/12(月) 18:56
新作キタ━(゚∀゚)━!!
更新お疲れ様です♪
今回も期待ですねw頑張ってください!
287 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 20:57


「ねーよっすぃ〜も一緒に歌おうよ〜」
カッカッカッ

「うーんうちもそうしたいのは山々、川川って感じなんだけど〜」
カッ!カッ!カッ!!

「じゃ、じゃあまた後でね〜よっすぃ〜!」
「う、うん!ごゆっくり〜!」

私のイライラに気づいたのか、よっすぃ〜にベタベタからみついていた女の子たちは、
逃げるように部屋へと入っていった。
あの人こわぁ〜い、なんて捨てゼリフつきで。

「し、柴っちゃん。ペン鳴らしすぎだよぉ〜」
「よっすぃ〜がへらへらしてるからでしょ!ちゃんと仕事してよ!まったく!」


だからヤなのよ!よっすぃ〜とシフト入るの!



288 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 21:03


私が通う大学から家までの、ちょうど中間点くらいのこの駅で、
カラオケ屋のバイトを始めてもう半年。

つまり、よっすぃ〜に出会ってもう半年がたつ。

よっすぃ〜はこの近くの専門学校生で、私と同様、このカラオケ屋で働いている。
年下で人懐っこい性格で、すぐに仲良くなったんだけど、
困ることが一つ。



…女ったらしなんです、この人。




289 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 21:12


まぁどちらかというと、言い寄ってくるのは周りの女の子のほうで。
優しくて調子のいいよっすぃ〜は、ついつい断れず…断る気もないのかしら…
へらへら、フラフラと流されてしまう。


てなわけでよっすぃ〜と同じシフトの日はもぉ〜大変。
よっすぃ〜に飲み物を部屋に運ばせたもんなら、女の子たちにつかまって、
そのまま2時間は帰ってこない。


おかげで私の仕事は増える一方……よっすぃ〜使用料とか取ろうかな。
ていうかよっすぃ〜の時給、私がもらうべきじゃない?

「おぉ〜す!あゆみん、よっすぃ〜!もうかりまっか〜」
「おぉ!まいちゃーん、いらっしゃーい!ぼちぼちでんな〜」



290 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/12(月) 21:20


まいちゃんは私と同じ大学の友達。
私がここでバイトを始めて以来、ちょくちょく友達を連れて歌いにやってくるので、
すっかりよっすぃ〜とも仲良くなった。

「ねぇ、よっすぃ〜も一曲一緒に歌お…」
「お客様!お部屋はあちらです!」

…最近じゃ、まいちゃんまでよっすぃ〜がお気に入り。
あぁ忙しい…

トゥルルル〜〜

「あ、電話鳴ってる〜」
「よっすぃ〜出なくていいから!はい!ご注文は?!」
『あのぉ〜よっすぃ〜は…』
「品切れです!!」

ガチャっ!

店長…時給上げてください。大幅に。



291 名前:ツースリー 投稿日:2004/04/12(月) 21:23
以上 第2話です。

>>286 メイ さま
レスありがとうございます。新作始めさせていただきました!
またぜひよろしくお願いします。
292 名前:メイ 投稿日:2004/04/14(水) 19:49
更新お疲れ様ですm(_ _)m

モテモテよっちゃんw
早くも期待作な予感でつ♪
まぁ、でもツースリーさん作品はすべて期待作なんですけどねぇ〜w
前回の作品も素晴らしかったしw

次回の更新待ってます!
いつまでも待ち続けますね♪
293 名前:なち 投稿日:2004/04/17(土) 19:09
わーい新作だー(・∀・)!!
今回の作品も楽しみにしてまーす♪
294 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/19(月) 02:29


  好きな人と過ごすというだけの、なんてことない日常。

その中で起こること全てを、ドラマティックな展開としてしまうみんな。

そんな世界を退屈に、冷めた気持ちで遠くからながめていた。


そんな私が。
ほんとは一番、恋に憧れていたのかもしれなかった。



295 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/19(月) 02:42


「昨日カラオケ楽しかった〜♪まぁあゆみんの厳しいチェックによって、
 よっすぃ〜とは遊べなかったけどぉ〜。」
「…あのねまいちゃん。店員誘わないでよ!バイト中なんだから!」
「えーだってよっすぃ〜に会いに行ったのにぃ。
 それに誘うとノリノリで歌ってくれるんだよ?Ohベイベーとか言って。」

…私だったらそんなバイト、くびにするわ。
いや、私もバイトだけど…

今日最後の講義を一緒にさぼり、学食でコーヒーを飲みながら、
昨日の営業妨害について注意していると、突然ゼミの男の子に声をかけられた。

「柴田さん!ちょっといい?」
「うん、なに?」
「来週のゼミさぁ〜オレたちまで発表まわってきそうじゃない?」
「あ!そうだった!…まだレポート書いてないや。」

なんせバイトが忙しくてね…二人分働いてますから。


296 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/19(月) 02:57


「まじ?オレもまだだからさ、一緒にやらない?その方が早くすむっしょ?」
「んーそうだね。うん、いいよ。」
「じゃ、今日暇?」
「え?…あー。いや…いいや。大丈夫だよ。」
「ならこの後オレまだ授業あるからさ。7時ぐらいに図書室でいい?」
「うん、わかった。」

じゃ、とにこやかに手を振り、その彼は去っていく。

「ちょっとあゆみん!今日もバイトじゃなかったの?」
「あーアヤカちゃんに代わってもらえるか聞いてみる。前にアヤカちゃんが風邪
 ひいたとき、私代わったことあるし。」
「えぇ!アヤカちゃんってよっすぃ〜狙ってる子じゃないの?!
 ダメダメそんなの!!」
「あのね…あ、もしもしアヤカちゃん?今日バイト代わってくれる?
 うん、うん確か今日よっすぃ〜もシフトだよ。ほんと?じゃよろしく〜」
「…なんて?」
「ワァオ!Okよ〜んって。」
「ちっ。ていうかあゆみんありえないよ!私ならあんなやさ男よりよっすぃ〜を取る!」
「そんな話だったっけ?!」



297 名前:恋→愛 投稿日:2004/04/19(月) 03:15


「それにあの男…あゆみんに手ぇ出そうとしてるんじゃないの?
 結構遊び人らしいよ?」
「そんなのよっすぃ〜も一緒じゃない。どっちかっていうとよっすぃ〜の方が…」
「よっすぃ〜はいいの、かっこいいから♪」
「なんじゃそりゃ!?…だってゼミの勉強しなきゃいけないしさ。今日だけだよ。」
「…ま、あゆみんなら言い寄られても大丈夫だよね。愛想ないし。」
「…昨日のカラオケまだ根にもってんの?」
「いえいえ、別っっに〜」
「あぁ!ちょ、人のコーヒー!勝手に砂糖足さないでよ…ってまさか塩?!
 きゃあぁ〜!!やめてぇー!!」


そう、だってこのころは。
なんとも思わなかった。
ゼミもあるし、勉強したほうがいいかな?なんて。

不思議だね。
会えなくても平気だったなんて。
いまはこんなに。
こんなによっすぃ〜に会いたいのに。




298 名前:ツースリー 投稿日:2004/04/19(月) 03:25
以上 第3話です。

>>292 メイ さま
ありがたいお言葉ありがとうございます。そんなふうに言っていただけて
ほんっとに嬉しいです。またぜひよろしくお願いします。
>>293 なち さま
レスありがとうございます!新作始めさせていただきました。
またぜひよろしくお願いします。
299 名前:メイ 投稿日:2004/04/19(月) 21:15
更新お疲れ様です!

よったんモテモテ?
いい感じです。
よったんはカッコいいからなんでもOK〜って感じ(笑
これからどうなっていくのかぁ?!
続きが気になります。待ってますので頑張ってくださいw
300 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 13:15
吉柴いいっすね。
続き楽しみにしてます。
301 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 03:18


「…あれ。閉まってる。」

待ち合わせの図書室がなぜか閉まっていて、その前にボーっと立ち尽くしていると、
例の男の子がやってくる。

「あ、柴田さん。今日図書室さぁ、中の整備で閉まってんだって。
 仕方ないから違う場所でもいい?」
「ふぅん。そうなんだ。」

ならしょうがない。じゃあまだ空いてる教室か、街の図書館とかかな…
「ってなんで居酒屋なの?」

その彼に連れてこられたところは、ゼミの勉強というよりむしろゼミコンで使う、
近くの居酒屋だった。

「いや、腹も減ったしさ〜食べながらやろうよ!あ、オレおごるから!」

…この人ほんとに勉強する気あんの?
「…私フツーにゼミの勉強しないとやばいんだけど。」
「するってするって。ちゃんとするから大丈夫!」



302 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 03:25


「…全然大丈夫じゃないじゃん」

数時間後。
まぁ予想通り勉強はちっともしなくて。
彼は一人でベラベラしゃべってガツガツ食べて、
グデングデンに酔っ払って眠ってしまった。

「ねぇ、私電車なくなるから帰りたいんだけど。」
「ん〜ん。ぅ〜」
…置いて帰ろっかな。
でも一応同じ大学の人だし…

なんとか叩き起こして会計をさせ、外に出るとまた倒れこむ。

「ちょ、大丈夫?」
「や、やばいかも…悪いんだけど手、かしてくれる?オレん家すぐそこだから…」
「えぇ?!そんな…」
「た、頼むよ〜」
「…はぁ。わかったから。」


303 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 03:35


ったくなんでこんなことに…
仕方なくこの酔っ払いを引きずって歩くこと15分。
ようやく目的地へと到着。

「はい、ここでしょ?じゃ、私帰るから。」
「え、上がってかないの?あ、そうだ勉強しようようちで!ね!」
「あのね…」
「そういえば柴田さんって彼氏いるの?オレ、前からいいなって…」
「あんのねぇ…」
「ちょっと!何してんのよ!!」

へ?!だ、誰?

「や、やべぇ…」
「こんな時間まで何してたのよ!それに誰その子!」
「え、わ、私?!」

どうやら彼女が帰りの遅い彼を心配して、部屋の前で待ってたみたい。
…彼女いるのに部屋に誘うなんて…どうしようもないヤツ。



304 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 03:43


その後私はただゼミが一緒なだけで、なぜかなりゆきで飲んでただけってことを
必死で説明し、ようやく解放されて一人駅に向かう。

…疲れた。
ギリギリに飛び乗った終電の中で、さっきのことを振り返る。
…あの子、何時から待ってたんだろう。

彼氏はたぶん、浮気しようとしてたのに(…私と)。
最後私がその場を去るとき、彼女は怒りながら、それでも優しく、
まだフラフラしている彼を支えて部屋の中に入っていった。

…理解できない。
何がいいの?
いや、その男の何がいいのって意味じゃなくて。
そんな、不安になったりつらい想いをしてまで恋がしたい?

私には理解できない、想像できない世界。




305 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 03:54


「次は○○〜」
なじみ深い駅の名前でハっと現実に戻る。
今聞こえたそこは私がバイトをしている、カラオケ屋のある駅だった。
…あ、そういえばバイト、休んじゃったんだっけ…悪いことしたな…

「終点〜○○〜」
え?!終点ってどういうこと?!

慌てて財布に入れてある時刻表を見る…
終電ってこの駅止まりなんだ。
どうしよう、帰れないじゃん…

とりあえずこのまま居座るわけにはいかないので、重い足取りで電車を降りる。

はぁ…ほんと今日最悪。
どうしよっかな…誰かの家に泊めてもらおうにも、このへん大学の友達は住んでないし…
あ、よっすぃ〜…。
よっすぃ〜って確かこの近くに住んでるって言ってなかった?
もうこの時間ならバイトも終わってるよね。

…かけてみよっかな、一応。


306 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 04:01


ケータイを取りだし、よっすぃ〜の番号を探して発信する。

プルルル〜
「あ、もしもし?」
「もしもし!こちら星の王子様、よっすぃ〜です☆」
ガチャッ

…さて、一晩いれそうなところだと…ファミレスかマンガ喫茶あたりかな…

プルルル〜!!
「…もしもし?」
「ちょっ、柴っちゃん?!かけてきといて切らないでよ!!」
「…私、地球にしか知り合いはいませんけど?」
「んもう、わかったよ。じゃあ地球の王子様でいいよ、
 柴っちゃんの王子様でいいよ。」
「…切るよ?」
「うそだって!!なかなか進まないから話!どうしたの?なんか用事?」
「あぁ…よっすぃ〜今ドコ?」



307 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 04:11


「今?家にいるよ?柴っちゃんは?」
「私さー…駅にいるんだよね。」
「駅?地元の?」
「ううん、うちらのバイト先の近くの駅。」
「は?こんな時間に?なんで?」
「いや、なんかもう電車なくなっちゃって…」
「まじで!ちょっと待ってて、すぐ迎え行くから!ベンツで行くから!」
「え、あ、よっすぃ〜…切られた。」

まだ泊めてとも何も言ってないのに…せっかちすぎ。でも…来てくれるんだ。
ん?ベンツって言った?
よっすぃ〜免許持ってたっけ?

とにかく改札を出て、駅で待っているとほんとにすぐ、
よっすぃ〜は来てくれた。

…真っ赤な自転車で。


308 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 04:18


「…これのどのへんがベンツなの?」
「ほらここ、ここ。よく見て?マーク書いたんだ!」
「…三矢サイダーにしか見えないけど?」
「まぁまぁそう言わず。さぁ乗って!行くぜベイビー!」
「ありがたいけどよっすぃ〜の後ろってかなり怖い…ちょっ!速いよ速い!」

私が後ろに乗った途端、猛スピードで走り出す。

「やめてよ!怖いってば!」
「大丈夫〜大丈夫〜」

スピードだけは確かにベンツ並かもしれないけど、安全性がかなり心配。

「転ばないでよ、転ばないでよ」
「わかってるって〜」


309 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/01(土) 04:26


真っ暗で、人も通らない街の中を。
全速力のちょっと危ない自転車でかけぬけている。
その心地いい緊張と、頬に、髪に受ける風が。
いろんなことがありすぎて、少し下がり気味だった今日の私を、
力強く持ち上げてくれてるような気がした。

暴走する自転車は怖いけど、よっすぃ〜が来てくれてよかったな。

「あーやばい!心臓はやくなってきたぁ!」
「あはは!うちもうちも〜そりゃー!」

調子にのってよっすぃ〜がどんどんペダルをこぐから。
そのスピードに、そのスリルにドキドキしてるんだと思ったの。


だって私は、恋のドキドキなんて。

まだ知らなかったから。



310 名前:ツースリー 投稿日:2004/05/01(土) 04:31
以上 第4話です。

>>299 メイ さま
いつもレスありがとうございます!よっすぃ〜モテモテです(w
がんばりますので、またぜひ読んでいただけたらうれしいです。

>>300 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!お待たせしてしまい、ほんとにすみません。
またぜひよろしくお願いします。
311 名前:メイ 投稿日:2004/05/01(土) 13:02
更新お疲れ様ですm(_ _)m

柴ちゃぁ〜ん。ドキドキしちゃってくださいなって感じw(何
王子様・・・wカッケーw
ベンツってのも面白かったっすw

マターリと待ってますんで頑張ってくださいね。
GWですねw(謎
312 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 16:57


「…思ってたよりキレイ…」
「いきなり失礼だなぁ。まぁどうぞ座ってプリーズ♪」

だっていつものよっすぃ〜のハチャメチャな言動からして、
絶対部屋汚いと思ってたのに。

意外とキレイ…人ってわっかんないな。

「柴っちゃんご飯は?」
「あー食べたよ、びみょ〜に。」
「じゃ、飲みますか?たまには。」

冷蔵庫の前に座っているよっすぃ〜が、お酒を私に見せる。

「よっすぃ〜まだ未成年でしょ?なんでお酒なんか入ってんの?」
「悪ぶってみたい年頃なの♪」


313 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:05


「かわい子ぶってもダメなもんは…」
「いいじゃんかー。あ、そうだ飲み比べしようよ。すげー弱そー柴っちゃん。」

…かっちーん。
確かにまいちゃんとかほど強くはないけど、年下に負けるわけないじゃない。

「いいよ?負けたらどうすんの?」
「うーん…言うこときくの、なんでも。」
「…わかった。じゃあよっすぃ〜バイトやめてって言ったらやめてくれるのね?」
「そ、そんな…柴っちゃんうちが嫌いなの?」
「冗談よ冗談。」
「顔が笑ってないよぉ…ぐす。じゃあ乾杯…ぐすっ。」
「はいはい乾杯。」



314 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:13


「…しぶといね、よっすぃ〜…」
「ふふん。柴っちゃんこそ。」

飲み続けて一時間…よっすぃ〜はまだまだ余裕みたい。
私は…実はそろそろやばい。
だってそういえばさっきも居酒屋で飲んでたんだもん。
最初から不利じゃん…しまった…

「柴っちゃんさぁ」
「ふぇ?」

つけていたテレビのボリュームをおとしながら、
余裕のよっちゃんよっすぃ〜が話かける。

「なんで今日さ…バイト休んだの?」
「バイト…あぁ。ごめんね突然。」
「ん、いやうちはいいんだけど…うちがいるから?もしかして…」
「え?」
「いや、昨日すごい怒ってたじゃん?うちが女の子と遊んでさぼってて…
 だからそれがイヤで休んだのかなって…」



315 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:17


「あ、違うよ?用事あったから…まぁさぼられるのはヤだけど。
 でもそんなの昨日始まったわけじゃないじゃない。慣れっこだよ、そんなの。」
「…フォローしてくれてるのか怒られてるのか…」
「んーどっちも。」

ふふ。意外と繊細だな、よっすぃ〜って。
気にしてはいたんだ、さぼり癖。

「用事って?」
「え?」
「用事って何?」
「あ、今日の私の?」
「うん。」

んーたいしたことではないし…あんま思い出したくもないんだけど。


316 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:23


だんだんとボーっとしてくる頭の中で、話すべきか、はぐらかすべきか考えて。

「ゼミのね、勉強しなくちゃいけなくて。」

その間をとることにした。

「だったら家帰ってするんじゃないの?なんであんな時間に駅にいたの?」

でもまだ酔ってないらしいよっすぃ〜はごまかせなくて。

「あ…人とね、一緒にしてたから。」

…結局勉強はしなかったんだけどね。

「ずっと勉強?…帰れなくなるまで?その人はどうしたの?」
「その人は家、近いから。帰ったよ。」



317 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:29


「…だったら柴っちゃんもその人ん家泊まれたじゃん。そしたらあんな時間に駅に
 いないんじゃないの?」

な、なんか妙にするどくない…?
よっすぃ〜ってお酒入るとおりこうになっちゃうの?

「あーわかった。」
「…なに?」
「男なんでしょ、その用事の相手。」
「…まぁ男といえば男だろうけど…」

ほぉらねって。
なんかよっすぃ〜、得意げでむかつく。

「別に私ウソはついてないからね?勉強しようと思っただけだもん。」
「へぇ?」
「それに…その人彼女もちだし。家で待ってたんだよ、彼女。」

そう言った途端に、よっすぃ〜の表情が強張る。



318 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:33


「…家?行ったの、家に。」
「行ったよ?だって酔っ払って一人じゃ帰れないって言うから。」
「…酔っ払って?」

あ!…しまった。

「ちがっ、勉強するはずだったんだよ、でも」
「うちにいいわけされても。…別にいいけどさ。それで元気なかったんだ。
 彼女見ちゃったから。」
「…どういう意味?」
「好きなんでしょ?その男が。」
「なんでそうなるの?」
「だからバイトさぼってデートして、家まで行ったのに、彼女がいてショックだったんだ。
 残念だったね。」



319 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:39


もうまともな判断ができなくなってた。
一日でこんなにお酒、飲んだことなかったし。

だから、言わないでよかったはずの、言わないでいるべきだったはずの

―――心の中をさらけだしてしまった。

「…好きじゃない。」
「またそんな強がって…」
「好きじゃない。その人も、ほかの誰も。私は誰も好きになんかなれないの。
 だから好きな人なんていない。」
「へ?い、言ってる意味がよく…」
「…わかんないの。人を好きになるってことが。ていうか興味ない。
 別に恋なんかしなくても生きてけるし。」
「………」



320 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:47


「…たしかにさっきちょっと元気なかったけど。それはその、彼女?
 かわいそうだなって思ったから。浮気ものの彼氏のためにさー、一生懸命で。
 一途な恋しちゃってさ、かわいそうに」
「かわいそうなのは柴っちゃんじゃないの?」
「…は?」
「その子はさ。恋の楽しさとか嬉しさとか。知ってるんだよ。
 だからつらい事も耐えられるんだ。それをそんな風にしか見れないなんて…
 かわいそうなのは柴っちゃんのほうだよ。」

なによ、それ…

「…自分はどうなのよ。よっすぃ〜なんて遊んでばっかりじゃない!
 えらそうに言わないでよ!」
「?!そ、そりゃー付き合った子はいっぱいいるけど、でも全部本気で、
 ちゃんと相手のこと好きだったもん!」



321 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 17:54


「気が多いだけじゃない!」
「ちがう!そういうんじゃない!…わかんないの?恋ってさ…」
「…だから興味ないんだって。」
「人を好きにならない人なんていないよ。知らないだけだよ、恋を。」


どうしてみんな。
そんなことばかり言うの?
ほんとに恋なんてあるの?
目には見えないのに…
それとも私だけ。
私にだけ見えていないの?


「…じゃあ教えてよ。」
「えぇ?!」
「よっすぃ〜は恋を知ってるんでしょ?みんな恋をするんでしょ?なら教えてよ!」
「…わかったよ、じゃあ教えたげるよ。…うちの気持ち。」



322 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 18:00


…え?
「んー?!や、やぁ!!」

突然強く抱きしめられて。
そのまま後ろに倒される。

「やだ!よっすぃ〜、やだ!」

お酒のせいで少し熱をもった私の体に、ひんやりとした手の感触がして。

よっすぃ〜の手が服の中に入ってきたことを知らせる。

「やめて!やだぁ…」

力の入らない手で、よっすぃ〜の体を離そうと押し返しても。

距離はひらかない。

遠ざかるはずのよっすぃ〜の顔がどんどん近づいて。

無理やりなのにひどく優しく、キスをされる。



323 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 18:13


「…ん、うぅ…うー」

唇が降れた途端、心がなぜかとても穏やかになって。

静かに涙が流れ出す。

「…ごめん。」

泣き出した私に気づいたよっすぃ〜は慌てた様子もなく、そっと体を離した。
まるで始めからここでやめるって決まってたみたいに。

「うっ、…う…うー」

涙が。
ただ涙が溢れてとまらない。

「…うち、ちょっと外出てくるから。」

頭をかいて、出て行こうとするよっすぃ〜の背中をみたら、すごくせつなくなって。

ほんとは行かないでって言いたかった。
でもそれは言っちゃいけないんだってわかったから。
自分の体をきつく抱きしめた。



324 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 18:20


涙が枯れたころにはもう朝になっていて。
ひどくだるい体をおこし、よっすぃ〜の家を後にする。

人もまばらな始発電車の中。
うまく働かない頭を使って、必死に考える。

押し倒されて、体を、ほんの少し触られたとき。
すごいショックで何も考えらんなくて。
ただ抵抗したのに。


よっすぃ〜にキスされた瞬間。
心の中がすっと静かになった。

…あれはあきらめとか、そんなんじゃない。

でも、じゃあ何?



325 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/04(火) 18:23


涙のわけは。
よっすぃ〜が怖かったからとか。
…されるのがヤだったからとか、それだけじゃなくて。


自分の知らない気持ちが自分の中にあることに。

気づいてしまったからかもしれない。



326 名前:ツースリー 投稿日:2004/05/04(火) 18:26
以上 第5話です。

>>311 メイ さま
いつもレスありがとうございます!よっすぃ〜の中ではベンツですw
GWそろそろ終わりですね…またよろしくお願いします。
327 名前:メイ 投稿日:2004/05/04(火) 19:38
更新お疲れ様です!

よっちゃん〜w
おぉぉ〜!って感じっすねぇ(何
このまま頑張って欲しいものですw
柴ちゃんも早く気付いてねぇ〜!

いえいえ。こちらこそいつもお世話になってますm(_ _)m
そうですか。よっちゃんの中ではベンツで(笑
ですねぇ。終わっちゃいますねぇ。残念。
自分は一応学生なもんで、木曜からまた勉強だ・・・
こちらこそよろしくです!
これからも頑張ってくださいね!
328 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/10(月) 21:20
ヤバい!!早く続き読みたいよぉ(ノД`)・゜・。
329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/12(水) 23:17
よっすぃー大胆ですなー。
これから二人はどうなるんだろー?
続き楽しみに待ってます。
330 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:01
たぶんあのキスが。

気づかせてしまった。

もうずいぶん育った、この気持ちを。


家に着くと、やっと現実に戻ってこれた気がした。
お母さんに学校を休むことを伝えて、部屋で布団にくるまり、ただゴロゴロしていた。
途中、掃除しに部屋に入ってきたお母さんにも、悩みを抱える娘には
とうてい見えなかった、はず。

悩み…違うな。

もし今悩んでる人がいるとすれば、それはよっすぃ〜で。
もし昨夜傷ついた人がいるなら、それもよっすぃ〜だったから。

そのことを思うと、少し胸が痛かった。

いつもの、昨日のよっすぃ〜じゃない、いつものよっすぃ〜の笑顔を思い出すと。
すごく胸が痛かった。

なんでよっすぃ〜があんなことをしたかとか、
それは重要なことなんだろうけど、
私にとってはきっとそうじゃなかった。

知りたいことはほかにあったから。
それが何か、今はわからないけど。




331 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:03


よっすぃ〜には会いづらい。
まだ何も、会って何を言うかとか、どんな態度で接するかとか。
決まってなんてなかったから。
でもバイト、昨日も今日も休むわけにはいかないし。

それに、答えは私ひとりじゃ見つからないんじゃないかと思った。

目的地へと軽快に走る電車は。
なんだか私を昨日の夜にタイムスリップさせてるようだった。

「おはよー」
「はよぅー」
バイトに入っていたのは私とよっすぃ〜と、それ以外に3人。
いつもは私とよっすぃ〜二人でカウンターにいるんだけど、
今日はよっすぃ〜、厨房にまわったみたい。

たぶん自分がバイトに来なきゃ私が気にすると思って。
でも隣にいたらやっぱり気まずくなるのも想像できて。

…気ぃつかい屋で優しくて。
だから女の子が寄ってくる。
今頃また何号室かでキャーキャー言われてるよっすぃ〜が目に浮かんで、
少し唇を噛んだ。



332 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:05


一日の時間は、私が何を考えようと私に何があろうと、
同じように進むから。

結構時間たったな。そろそろ休憩かな。
ちょうどそう思ったとき、名前を呼ばれた。

…よっすぃ〜に。

「…柴っちゃん、休憩入ってだって。」
「…うん…」
「じゃ、じゃあ…」

慌てて立ち去ろうとするよっすぃ〜の服をつまんでしまったのは、
無意識だし。
そんな驚かないでよ。
私だってびっくりだよ。

「…柴っちゃん?」
「……」

何も言えずに、でも手も離せずに下を向いていると。
覚悟を決めたのはよっすぃ〜だった。


333 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:06


「すいません!うちも休憩入っていいですか?」
「え?だって吉澤さんさっき休憩したじゃ…」
「ではいってきます!」

店長に無理やり断って、よっすぃ〜は休憩室に私の手を引いていった。

「…柴っちゃん…」
「……」
ここでたぶん私が。
気にしないでとか、平気だよって言ってあげるか。
いつものように、よっすぃ〜の変態!とか女ったらし!とか。

言ってあげれば。
それが一番いいのかも。

でも、今元に戻ってしまったら。
きっと前よりもっとつらい。

…前、より?
私はいつから、つらかったの?


334 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:09


「ごめんね、その…変なことして…」

…謝られるのだってつらい。
ごめんって言葉には。
忘れたい、忘れてほしい、なかったことにしたいって。
よっすぃ〜の気持ちが隠れてるような気がしたから。

「あんなこと…するつもりじゃ…」

なかったんだよね。でもね、そんなのわかってるんだよ。
聞きたいのはもっと。そんなことじゃないの。

「…よっすぃ〜は」
「え?」

昨日のキスが、昨日の行動が。
私とよっすぃ〜の関係が変わるためのものだったなら。
受け入れられる。

でも、それ以外の何かだったなら。



335 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:10


わかりかけてる。
気づき始めてる。
ううん、ほんとはきっと、ずっと。

「よっすぃ〜は…どうしたいの?」
「どうしたいって?」
「私にあやまって…それでどうしたいの?」
「…柴っちゃんが許してくれるなら。これからも友達でいたいよ。
 もう絶対あんなことしないって約束するし…」

たぶん。
望んでるこれからが違うってわかって。
それでわかったの。

自分の気持ち。
友達になんか戻りたくない。
友達なんかヤなの。
ずっと、前から。

私は。
ほんとはこの恋を失うのが怖くて。
恋を知らない、子供のフリをしてた。



336 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/14(金) 05:12


「…ごめん…帰る」
「え?」
「…帰る…」
「か、帰るって。まだバイト…」

さっきとは逆に。
よっすぃ〜が私の服をつかんだけど。
それをはらって逃げ出した。

せっかく気づいた、恋だったのに。
もうなくしてしまった。

なくす前の
昨日の夜でさえ、きっと今よりはずいぶんよかった。




337 名前:ツースリー 投稿日:2004/05/14(金) 05:20
以上 第6話です。

>>327 メイ さま
いつもありがとうございます!温かいお言葉で…きっとよっすぃ〜も
がんばると思いますwまたよろしくお願いします。

>>328 名無飼育さん  さま
ありがとうございます(ノД`)・゜・。またぜひよろしくお願いします。

>>329 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!ほんとに励みになります。
また読んでいただけたらうれしいです。
338 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/14(金) 11:20
更新キタ━━(・∀・)イイ!!━━♪
339 名前:メイ 投稿日:2004/05/17(月) 16:51
レス遅くなってすいませんっ!!
更新お疲れ様です♪

よっちゃん・・・柴ちゃん・・・頑張れw
(なんか毎回↑のような事言ってるような・・・)
まともな感想書けなくてごめんですm(_ _)m

次回の更新待ってますw
340 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/19(水) 13:45
楽しみに待ってます∋〜(^O^)
341 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:00


ケータイの電源をつけるのって久しぶりだ。

もうずいぶん切ってることなんてなかったから。


バイト先から飛び出したけど、その後段々速度を落としながら駅まで歩いていった。
追いつかれるためにそうしたのに、そもそも追いかけてきてはくれなかった。
でもそれは仕方ない。

だってこれはラブストーリーじゃないんだから。


部屋のベッドにたどり着くころ、ちょうどバイトが終わる時間になっていて。
突然に、しつこく電話が鳴り響く。
名前を見なくても、誰からかわかった。
用件が何かも。
だからケータイの電源を切って、布団をかぶる。
朝になれば何かが良くなるとは思えなかったけど。
でも、もう夜はヤだった。



342 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:01




「うわ…メールに留守電…すご。」

朝起きると、だいだいの予想通り、よっすぃ〜からはたくさんお問い合わせがきてた。
よっすぃ〜だらけで埋まるメールの中に、まいちゃんからのメールがある。

『居酒屋でかっこいい店員見つけたんだけど!!放課後ヒマ?!』
いつも通りのまいちゃんのメールは、普通で、ありふれたものなのに。
今の私のケータイの中では、それがなんだか不自然で。ひどく浮いていた。


「ちょ、今通った!見た?見た?かっこよくない?!」
「あ、見てなかった…」
「まじで?んもう相変わらず興味ないのね〜」

イヤな予感はしたけど、やっぱり的中で。
まいちゃんの言う居酒屋は、あの夜ゼミの男の子と来たあの場所で、
どうしてもよっすぃ〜を思い出させる。
どっちにしても、忘れることなんてできないんだけど。




343 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:04


「…言い返してこないの?」
「…え?」
「いや、なんかおとなしいなーって…元気ないじゃん。愛想は元々ないけど。」
「まいちゃん…」
「あ、ごめんごめん。ついほんとのこと。…なんかあった?」
「もういい…」
「ごめんって。あ、まさかあのゼミの男がらみ?ちょっと〜なによ〜」

…まぁ、ヤツが全く関係ないとは言えないけど。
でも

「そうじゃないよ…じゃなくて…違う人とちょっと…」
「え?」
「いや、…その男の子ね、彼女いたよ。まいちゃんが言うとおり、遊び人かも。」
「でっしょ〜?って、え、いるって聞いたの?彼に?」
「ううん、見た、彼女。酔っ払ってたからその彼、家まで送ってったんだけど。
 ドアの前で、彼女待ってた。」
「へぇ〜…それで元気ないの?てことは好きなの?その男のこと。」
「…よっすぃ〜にもおんなじこと言われた…」
「ほう。でなんでそこでよっすぃ〜がでてくんの?!話わかんねー!!
 …あ、すいませぇ〜ん!おビールくださぁい♪…やっぱあの店員イケメンだわ。」

話しながらもお目当ての店員を見逃すことなく、高い声を作るまいちゃんは
さすがだと思った。





344 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:05


「…あのね、もしまいちゃんが…例えばそのイケメン店員さんにキス、されて、
 されたとして、でも店員さんがごめんって。許してくれって言ったら
 どうする?許す?」
「え?なにそれ。んーキスしたってことはイケメンは私が好きなのよね。
 で、私もイケメンが好きだとすると…まぁ私の魅力にヤられて
順序を間違えたっていうんじゃー仕方ないかな、許す。」
「ううん…好きとか…じゃなくて。たぶん。」
「好きでもないのにキスされんの?やだ、そんなの。」
「なんで?イケメンなんだよ?」
「えーだって好きじゃなきゃ意味ないじゃん?それにごめんって何よ。
相手がどうでもいいヤツならただムカつく!って感じだけど。好きな人なら悲しいな。」
「そうなんだ…」
「あゆみんはどっちなの?」
「…え?」
「ムカついたの?悲しかったの?…されたんでしょ、キス。誰かさんに。」
「…わかんない。」
「おー強情。」




345 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:07


ビールを運んできたイケメン店員に笑顔を振りまきながら、まいちゃんは
あきれた声で言う。

…強情じゃないもん。ほんとにわかんないんだもん。

「元気ないのはそっちが原因?じゃあ悲しかったんじゃないの?」
「悲しいっていうか…キスとかされたことは…びっくりしたけど。
 でも、…許してって。友達に戻りたいって言われて。だからなんか…」
「ふぅ〜ん。…ん?キスとかってあんた後何されたのよ?!
 ていうか誰に?!教えろコラぁ〜!!」
「べ、別にそんな!!た、ただちょっと…大声出さないでよ!恥ずかしい!」
「…で、誰に?」
「急に小声になられても…その…よっすぃぃ…」
「ええ?!!マジで!!?」
「だから声デカい!!見られてるよ!!」
「そっか…あゆみんはよっすぃ〜が好きなのか…。」
「いやそうじゃなくて…まいちゃんだって好きって言ってたじゃない。」
「え?私の好きは違うでしょ〜なんていうか…あぁそう、この店員みたいに?
 かっこいい〜って騒ぐだけでさ、恋愛としてどうとかじゃないよ。」
「…好きにもいろいろあるんだね。」
「まぁ他のよっすぃ〜!って騒いでる子もさ、ただのファンって感じだと
 思うよ?よっすぃ〜のこと考えてうれしくなることはあってもさ、
 悲しくなることはないんじゃない?」
「…恋って楽しいんじゃないの?」
「楽しいよ?でもそれはうれしいことも悲しいことも含めて楽しいの。
 いいことばっかじゃつまんないでしょうが。…好きでしょ?
 恋してるんでしょ?よっすぃ〜に。」
「………」






346 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:08




…悲しい。
悲しかった。

よっすぃ〜が女の子たちに囲まれてるの見ると、いつもつらかった。

友達っていう近くて遠い場所にいたあなたが。

あの夜急に近づいてきて。
私はその先の未来を期待してしまった。
…考えないようにしてたのに。

なのにあなたはこんどはもっと遠いところに去っていこうとするから。

悲しいよ、よっすぃ〜。

「…泣くんならよっすぃ〜の胸で泣いて来い。わかってんでしょ?自分の気持ち。」
「やだ…会いたくない…」
「はいはい。会いたいならさっさと行く!」

会いたくないって言ってるのに。
まいちゃんは私の背中をドンっと押して、夜になった外に強くやさしくほおりだした。




347 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/23(日) 17:09




会いたくないよ。

会ったらもっと好きになっちゃう。

会いたいよ。

好きだから会いたい。


悩んでいるフリをするのは、私がまだ臆病だから。

でも行く先なんて決まってたんだ。
ほんとは。




348 名前:ツースリー 投稿日:2004/05/23(日) 17:17

以上第7話です。

>>338 名無飼育さん  さま
ありがとうございますw

>>339 メイ さま
ほんとにいつもありがとうございます!感想いつも参考にさせて
いただいてます。よっすぃ〜柴ちゃんと一緒に作者もがんばりたいと思いますw

>>340 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!また読んでいただけたらうれしいです。
349 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/25(火) 17:15
ここのお話読んで柴ちゃん好きになったー
楽しみにしてます
350 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/25(火) 22:03
柴ちゃん切ないねぇ。。
351 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:25




不思議だね。

あのころは
会えなくても平気だったなんて。
いまはこんなに。
こんなによっすぃ〜に会いたいのに。


でもそれは
ただ、平気なフリを、してただけ。




352 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:28


来ちゃったけど…どうしよう。
まいちゃんにうながされるまま、こんなところにやって来てしまった。

冷静じゃない私は、とにかくよっすぃ〜のいる場所にって思って。
よっすぃ〜のそばに行かなきゃって。
でも何もいきなり家に押しかけなくっても…。

来るにしても先に電話するとかメールで聞いてみるとか。
場所だってファミレスとか、話ができる所ならそれでよかったのに。

それまで私はわりと落ち着いてるとか、悪く言うと冷めてるとか。
そう言われてたし、思ってたから。

こんな予測できない自分は初めてだった。

例えば今、ピンポンを押そうとしているこの指。
その勇気はどこからわいてくるんだろう。

『ピンポーン』
『………』



353 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:30


強めに押した呼び出し音に、
よっすぃ〜から返事が返ってくることはなかった。

そこまでしてやっと気づく。
…よっすぃ〜今日もバイトだ。
ほんとに冷静じゃない、
抑えられない私。


ここに今よっすぃ〜がいないと分かっても、
いつかここによっすぃ〜が戻ってくると分かるから。
とても離れられなくて、その場に座り込む。

…あとどのくらいかな。
よっすぃ〜…どう思うかな…。


あぁ、わかった。

あのとき、まさか私が、同じように誰かを待つことなんてないと思ったけど。


あの日、あの彼女がどんな気持ちで彼を待っていたか。
どうして待っていたか。

答えはほんとうにシンプルで、たったひとつだったんだ。




354 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:32



どのくらいか時間が過ぎて。
だいたい、濃いオレンジ色だった空が真っ暗になってしまったけど。
それでもまだバイトが終わる時間にはほど遠い。

だけど、今この時間は、私にとって無駄じゃないんだと、確かに思えた。


フイにカバンの中の、すっかり忘れさられていたケータイが鳴って。
見るとよっすぃ〜からの着信だった。

「…もしもし?」
「もしもし?!柴っちゃん?よかった…ずっと出てくれないから…
 昨日も帰っちゃうし…。今休憩中でさ、かけちゃった。」
「うん…。」

355 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:33



もういっぱい限界だったから。
声なんて聞いてしまったらガマンできなくて。

「…ちゃんと話、したいんだ。このまま気まずくなっちゃうのは…なんていうか…」
「……会いたい…」
「え?うん、うちもできたら会って話したい…今柴っちゃんどこ?まだ学校?」
「ううん…家…」
「そっか…柴っちゃん家神奈川だっけ。だったら今日は無理だよね…あ、明日は?
 うちら二人ともシフト入ってたし…」
「違うの、家…よっすぃ〜の家の前に、いる…」
「…え?!」
「…会い、たい」
「…柴っちゃん…」
「…たいっ…よっすぃ…会いたいよぉ…たいよぉ…」
「…待ってて。」






356 名前:恋→愛 投稿日:2004/05/27(木) 04:36




わがままだと思った。
昨日は突然帰ったのに、今日は会いたいだなんて。


ずるいと思った。
泣いたりしたら、よっすぃ〜困らせちゃうのわかってるのに。

だけど、涙はもう止まらなかった。



そのあと、ベッドの上から見たよっすぃ〜の部屋は、

あの夜とは全然違う場所みたいだった。






357 名前:ツースリー 投稿日:2004/05/27(木) 04:43
以上第8話です。

>>349 名無飼育さん さま
柴推しとしてはうれしい限りですwありがとうございます。

>>350 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!またよろしくお願いします。
358 名前:もも 投稿日:2004/05/28(金) 22:27
わぁ〜よっすぃ&柴ちゃんもいいですね!

続きが気になります。更新楽しみにしてます。
359 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 00:45
某地方番組にて好きな男性のタイプを聞かれた柴ちゃんが「一緒にバカできる人」と答えているのを見て
真っ先に吉澤さんを浮かべてしまいました(w

このスレを読み始めてから頭の中がすっかり吉柴にやられてるようです(w

続き、楽しみにしてます!
360 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/12(土) 02:05
保全
361 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:20



しゃがみこんだまま、うつむいて、
よっすぃ〜の足音をただ待っていると。

たった5分で。
信じられないほど早く、あなたはやってきた。

「…よっすぃ〜…」

見上げて、目が合うと。
泣いてる私を見て、よっすぃ〜は、すっごく気まずそうな、驚いたような、
なんともいえないような、そんな顔をしたから。

だから慌てて下を向く。
すごい後悔。
やっぱり来なきゃよかった…

ギュッと目をつむったまま、よっすぃ〜からかけられる言葉を待つ。
でも私を包んだのは言葉じゃなくて。
優しくて温かい、よっすぃ〜の腕だった。




362 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:23

「…よ…すぃ…?」

なにが起きてるのか
わかんない、わかんないけど。
そっと、おんなじように、よっすぃ〜の背中に腕をまわす。
すると今度はきつくきつく。
息ができないぐらいの力で、抱き返された。

よっすぃ〜の体は熱くて、ドキドキしてたから。
きっと走ってきてくれたんだって、じんわりした。

そしてもう一度、よっすぃ〜、って呼ぶと、
よっすぃ〜は私を抱きしめたまま立ち上がらせて、鍵をあけ、
部屋に入ったけど。

玄関のドアに寄りかかったまま、
私を抱きしめたまま、
よっすぃ〜がなんにも言ってくれないから、どうしたらいいかわからなくて。

不安になって、少し首を起こしてその顔をのぞきこんだら。
キレイなキレイなよっすぃ〜の顔が、あの唇が、あまりにもそばにあって。



頭で考えるよりはやく、
私はよっすぃ〜にキスをしていた。





363 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:25


…勝手にこんなことして…なにやってんだろ、私。
でも、そういえばこないだキスしたのはよっすぃ〜だったじゃない。
ならこれでおあいこだよね?
だいたい人をこんなに悩ませてんだから、キスくらい許してよね?

そんなふうに。
自分からしたキスの言い訳を考えてるはずだったのに。
いつのまにか舌をとらえられていたのは私のほうだった。

「んぅ…んん……ぅ…」

びっくりして、唇を離そうとすると、もっともっと中をさぐられて。
よけいに深くなってしまう。
そんなのを繰り返しているうちに、とうとう足が役に立たなくなった。

靴をはいたまま廊下に倒れこむと、ようやくほんの少し、唇を離してくれた。

言いたいことは確かにあったはずなんだけど。
よっすぃ〜の目を見ると何も言えなくなる。

胸がギュって締め付けられて、なんにも言えなくなるの。






364 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:28


言葉が出てこない、そんな唇なら。
もう触れるしかない。

だから、この、言葉にならない想いが伝わるように
丁寧に、何度もよっすぃ〜にキスをした。

そのうち、あのときみたいに、またよっすぃ〜の手が入ってきたのがわかったけど、
今度はもう、拒む理由がなかった。

抵抗してないとはいえ、あまりにも簡単に服を脱がしていくよっすぃ〜の手が
憎たらしかった。


…慣れすぎ。
年下のくせに…バカ。

ほかの子にもおんなじようにしてたんだ。
いっぱいいっぱい、いろんな子にしてたんだ。
…そんなのわかってたけど。



365 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:30


悔しくって悲しいから、顔を背けて遠くを見てたら
髪とかほっぺたに、優しく何度もキスされて
そしたらやっぱり、ちゃんとしたキスがほしくなっちゃって。

結局、甘くてやわらかい、よっすぃ〜の舌をまた受け入れた。

なんだかすっきりしないけど。

こんなに優しく触ってもらえるなら、
それでもいいかも…なんて。

よくわかんない。



胸がいっぱいで。
しゃべれなくて好きって言えないけど。

こんなに素直に。
よっすぃ〜にされるままになっちゃうんだから

そこんとこわかってよね。





366 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/12(土) 04:31




何度か真っ白になるうちに、いつのまにかベッドにいて。


ほんとうに最後の瞬間、
そっと触れた唇が、音を立てずに
「あゆみ」
って動いたから。



あぁ、よっすぃ〜もしゃべれなかったんだってわかったの。






367 名前:ツースリー 投稿日:2004/06/12(土) 04:39
以上第9話です。次回最終話です。

>>358 もも さま
レスありがとうございます!そういっていただけるとうれしいです。
次回、最終話ですが、よろしくお願いします。

>>359 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!それはまさに吉澤さんですねw
はまっていただけたなんてうれしいです。またよろしくお願いします。

>>360 名無飼育さん  さま
保全ありがとうございます。お待たせしてすみません…。
368 名前:プリン 投稿日:2004/06/12(土) 19:47
更新お疲れ様ですw
お久しぶりですなぁ♪

柴ちゃんかわええよぉ(*´Д`)ポワワ
よっちゃんかっけぇよぉ(*´Д`)ポワワ
やっぱ柴吉(・∀・)イイ!ですねw
そしてなによりツースリー様の小説(・∀・)イイ!
これからも応援するんで、頑張ってくださいね。

次の更新楽しみに待ってますっ!
369 名前:もも 投稿日:2004/06/12(土) 22:04
更新お疲れさまです。mm(_ _)mm

。・゚・(ノД`)・゚・。次回で終わりですか・・・(素敵なお話見つけたのに・・

ほんと柴ちゃんが可愛いから、柴ファンになりそうです。w
(いしよし好きなのだが・・・
自分もツースリーさんの作品好きです。

まったりとお待ちしてます。(((o(^。^")o)))ワクワク
370 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 02:07
更新されているのを見た瞬間キタ━━━(゚∀゚)━━━!!と呟いてしまった自分ですw 最終話も期待してます
371 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 03:00

自分も思わずキタ━(゚∀゚)━!!!!とこぼしてしまったわけですが(w

次回、最終話ですか。
残念なような早く読みたいような・・・複雑です。

でもこの二人の恋の行方をしっかり見届けたいと思います!
372 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:36



ぼやけて見えていた天井が、だんだんと、その形を取り戻したころ。
荒かった息も少し落ち着いて。

力の入らない、けだるい体を横に向けると。
ちょっと離れて、ぐったり、うつぶせに倒れている背中。

……ボフっ!!

「いてぇっ!!」
「…もう、なんでよっすぃ〜が倒れんのよ!」

後頭部に枕を叩きつけると、大げさに痛がる。

「だぁって疲れたんだって!柴っちゃん歩けないし、抱えてベッドまでくんの
 結構大変だったんだから…」
「?!だ、誰のせいで歩けなくなったのよ!よっすぃ〜が…あんなことするから…」
「………」「………」
「ご、ごめん…」
「…ううん、こっちこそ…。」



373 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:38


急に、今のこの状況が分かって、二人同時に赤くなる。

「そ、それに走ってきたからさ!ちょっと疲れちゃって。運動不足かな!?」
「あぁ、そういえばよっすぃ〜の体、すごいあつかっ…」
「………」「………」
「…ごめん。」
「…や、そんな…」

こういうの、なんていうのかな…気恥ずかしさ?気まずさ?
好きな人との初めての後って、こんなに照れくさいもんなんだ。

だけど、それはほんとに幸せな瞬間。
だって、好きな人の全部をもらえた後なんだもん。

そして、今私はその瞬間にいて。いるのに。
なのに、もちろん幸せは感じてるのに。
それでも、まだ不安があるなんて。
ぜいたく。
…だけど。




374 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:39


「走って…きてくれたんだもんね。ごめんね、急に呼び出して。」
「ん?あぁ。でもうちもさ、会いたかったし。全然、いいよ。」
「…疲れさせちゃったのは私だって分かってるんだけど。
 …もうちょっと…こっちきてよ。」
「え?」

だってさ。
この距離が不安なんだもん。
枕を投げつけても頭に届くし。
もし手をのばしたら届くんだろうけど。

疲れて倒れこんじゃうのはしかたないと思うんだけど。
でも、わがままを聞いてほしい。

今はちょっとでも離れたくないなって、そう思うから。

「なんか…なんかさ、寂しいよ。」
「あ…ごめん。」

いたずらを怒られた子供のように、謝って。
そして、いたずらをする子供のように笑って、近づいたよっすぃ〜が一言。




375 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:42



「…とかいって柴っちゃんも疲れたっしょ?いっぱいしたし。」

…ほんっとバカ。

殴ろうと思って体を起こすと、すっと腕を入れて、頭を抱きかかえてくれた。
慣れた仕草がちょっとヤだったけど。

でもやっぱりうれしかった。


「…そういえばさ、あの勝負ってうちの勝ちだよね?」
「…勝負?なんの?」
「ほらしたじゃん、先に酔いつぶれたら、何でも言うこと聞くってヤツ。
 あれ勝ちっしょ?うちの。」
「はっ?ちょっとまって。だれが酔いつぶれたのよ。」
「え〜だって真っ赤だったよ柴っちゃん。もう勝負はついてたじゃん。」
「わかんないでしょ?そんなの。逆転したかもしれないよ?」
「いや、それでも絶対うちは勝った。負けられない戦いがそこにはある!」
「なに言ってんだか…」


てっきりまたヘラヘラ笑ってるんだと思って顔をのぞくと、
すっごく、真面目な表情で。
真剣に見つめられて、胸がぎゅっとなった。




376 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:44



「絶対さ…。勝ちたかったんだ。柴っちゃんにうちの言うこと聞いてもらいたくて。」
「…どんなこと聞けばいいの?」
「…好きになって。うちのこと。
あのときは、ほんとはつきあってって言おうと思ってた。でも柴っちゃん
誰も好きにならないんでしょ?だったら好きになって。
…好きになってよ、うちのこと。」
「…よっすぃ〜…」
「好きなんだ。…好きだったんだよずっと。始めは全然、そんなじゃなくて。
 むしろ周りの子はさ、よっすぃ〜よっすぃ〜ってかわいがってくれんのに、
 柴っちゃん冷たくてさ。怒ってばっかで。
 …でも、その怒った顔がさ、かわいいなって思った。
 で、怒った顔ばっか見てたら、今度は笑った顔が見たくなった。」

優しいよっすぃ〜の手がのびてきて、
エイって私のほっぺたをゆるくつかんで、持ち上げる。

「それに、ちょっと期待もしてたんだよ。
 …うちに女の子が絡んでくるとさ、すっごい怒ってたじゃん?
 それって、もしかして…なんて思ったりして。
 だからあの夜、柴っちゃんがバイト休んで、うちに来た夜、
 それとなく聞いたんだ。勇気出して。
休んだのうちのせい?って。ヤキモチ焼いて休んでくれたのって。
なのに、そしたら全然違う、男の子と飲んでたの〜っていうから…」
「ちょ!私そんなこと言ってないでしょ!話変わってるよ!!」
「…まぁそんな感じで。めっちゃ悔しくて。…うちおかしくなっちゃった。
 あんなことするなんて。ほんとごめん、反省してる。」
「…いいよ、もう。」




377 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:47




それは、結局こういう関係なったんだから、もう今さら、って意味じゃなくて。
もうそんなに苦しまないでって。悩まないでって。

「それにさ…ちょっと危ういと思った、柴っちゃん。」
「危うい?なに、それ?」
「…男の部屋行ったって言ったじゃん?うちはそのときの状況とか詳しくは
 知らないし、彼女が待ってたって言ってたから中までは入ってないんだろうけど。
 いや、柴っちゃんはもともとそんな気なかったんだろうけど。
 でも、相手はどうかわかんないしさ、…無理やり連れ込まれたりするかも
 しれないし。
 …好きな男ならまだわかるんだけど、柴っちゃんそいつのこと別に好きじゃない
 って言うし。
 なんかもっと…なんだろ、意識したほうがいいと思ったんだ。
 だから反面教師っていうか…薬になればっていうか。
 そういうのもちょっとあって。
 危険があるんだって、わかってほしくてさ。
 でもいくらなんでもあんなことするべきじゃなかった。
 柴っちゃん傷つけて…意味なかった。ほんとごめん。」




378 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:48



たぶん、あのとき、あんなことをされたのに、私が恐怖を抱かなかったのは――
根っこにあった、よっすぃ〜の優しさのせい。

びっくりして涙が出たけど、震えたりしなかったのは――

きっと、知らないうちに、それを感じてたから。

「…つってもほとんどはヤキモチだよ。嫉妬して、それを柴っちゃんに
 ぶつけっちゃったんだ。最悪、マジ。」
「いいよ、気にしないで。…初めてキスされたってわけじゃないんだし。」
「うわ…へこむこと言うね…そりゃそうだろうけど…」
「でも…」
「ん?」
「でも…自分からキスしたのは初めてだよ?さっき、初めてだった。
 したいって思ったことなかったの。今までは、ほかの誰とも。
 でも、よっすぃ〜は…う〜ん…」
「う、うちは…?」
「…やわらかそうだったし。唇。」
「あぁ…まぁね。結構みんなによく言われ…はっ!」
「…むかつくこと言うね。」
「やや、そ、そう?!」
「むっかつく…」
「いひゃい!いひゃい!」




379 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 00:54



ほっぺたをつまむと、唇と同じぐらいやわらかくて、ちょっと気持ちよかった。
もう二度と、それにさわれなくなったりしたらいやだから。

そろそろ、伝えなきゃ。


「…ほんっと、むっかつくの。ほかの子がよっすぃ〜にベタベタしてるの見ると。
 今まではバイトサボってるからむかつくんだと思ってた。
 …でも違うの。
 私以外の子とキスしたり、抱き合ったりしてほしくない。冗談でもヤだ。」
「…え?」
「…よっすぃ〜思ってたとおりだよ。好きなんだもん、そりゃ怒るよ。
 むかつくよ、悲しいよ。」
「うわ、ちょ…え?」
「わかんない。なんで好きなのか…いつから好きなのか…たぶんずっと前だけど。
 でも、それ気づかせてくれたのよっすぃ〜だよ?
 あの夜のあれは…よっすぃ〜がくれたチャンスだったんだよ。
 私が、恋を知るチャンス。ずっと隠してた、好きって気持ちに素直になるチャンス。」
「柴っちゃん…。」
「…だから…素直になりたい。」
「…うん。」
「よっすぃ〜が…好き。大好き。」

「…やばい。」




380 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:03




よっすぃ〜にぎゅってされて、肩越しに周りを見渡すと。

ほんとにここは、あの夜と同じよっすぃ〜の部屋?

今私がいるのは、さっきまでと同じ世界?

好きな人の腕の中にいると、なにもかも違って見える。違って感じる。

こんなにドキドキして、安心する場所。
もう、他にないね。


「…くすぐったいね。」
「ん?あぁ、髪とかあたって?」
「ううん、なんか…気持ち的に。気持ちが。」


おぉ、って。
なに関心してんの?




381 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:06



「いや、恋する乙女みたいなこと言うなーと思って。柴っちゃんなのに。」
「…恋する乙女だもん。」
「え、誰に誰に?誰に恋してんだっけ?」
「…知らない。忘れちゃった。」
「えぇ〜。言ってよぉ。さっきみたいによっすぃ〜好き好きって。」
「言ってないし、言わない。絶対言わない。」
「…ほう。よし、なら力ずくで言わせちゃる…」
「はっ?…や!ちょ、ちょっと待って、ほんとに待って、お願い!よっすぃ〜!」


…やっぱりほんとバカ。



おかげでもっとだるくなった体が次に目を覚ましたのは、
翌日の夕方のことだった。





382 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:07



「え?!ちょ、4時って…あぁ学校さぼっちゃったよぉ…て、バイトは?!
 よっすぃ〜!!起きて!!バイト!!遅刻する!!」

「んん?んー…柴っちゃん…へへ…」

「こらー!!寝るなぁ!!…もうほんとにクビになるよ、バイト!!」

初めての、朝なのに…いや、もう夕方だけど。
せっかくならこう、もっとロマンチックに二人で夜明けとか見たかったな。
なんで私たちってこんな色気ないんだろう…まったく。

…ていうかもしかしてそういうのってよっすぃ〜のせいなんじゃ…



ニヤニヤ笑って気持ち悪いよっすぃ〜を叩き起こして、
あわてて二人でバイト先まで走る。

あ、そういえばこないだ勝手に早退しちゃったんだっけ…
怒られちゃうかなぁ…参った。




383 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:09



「あぁ、大丈夫。うちがちゃんとナイスフォローしといたよ?」
「げ、それすごい不安。」
「失礼だなぁ〜柴っちゃんたら。」

バイト先に着くと、アヤカちゃんがいた。
今日はシフト一緒みたい。

「ハァ〜イ柴ちゃん、よっすぃ〜☆」
「あぁ、アヤカちゃん。おはよー。こないだごめんね、バイト代わってもらって。」
「ううん、いいの。私が風邪で休んだとき柴ちゃん代わってくれたじゃない。
それより大丈夫?柴ちゃんも風邪?次の日も具合悪くて早退したんでしょ?」

あぁ、ちゃんとよっすぃ〜うまくごまかしてくれたんだ。

『…ね?バッチリでしょ?』
『うん。よっすぃ〜にしてはなかなか…』
『なんじゃそりゃ!ま、いいや…じゃあ後でなんかごほうびちょうだい。』
『ごほうび?なに?どんなの?』
『そうだなぁ…今夜もう1泊お泊りとかは?』
『…顔がやらしいからイヤ…』
『そ、そんな!!うちめちゃめちゃさわやかさんなのに?!』



384 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:10


「ねー、二人ともどうしたの?」
「え?!あ、いや…そうそうちょっと風邪ひいちゃって。ゴホゴホッ。」
「Ohかわいそうにー。じゃあよっすぃ〜柴ちゃんにも看病してあげなきゃね!」

…え?

「看病?…柴ちゃん…にも?」
「うん、こないだ私もね〜いろいろしてもらったの♪よっすぃ〜に。
 ほら私ひとり暮らしじゃない?そしたらよっすぃ〜うちに来てくれて、
 料理してくれたり、こう、ハニー大丈夫?とか言って励ましてくれたり?
いたれりつくせりって感じで♪
 それにいいっていうのに着替えも手伝う手伝うって聞かないんだもぉん。
 ね、よっすぃ〜♪」
「ちょ、あ、アヤカその話はまた今度…」
「へ〜そうなんだぁ。じゃあ私もしてもらおうかなぁ〜」
「ふふ。そうしなよ〜あ、私店長に呼ばれてるんだ、じゃあまた後でね!!」
「え?!ま、待ってアヤカ!今行かないで!!」




385 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:11



昨日恋人になったばかりなのに…初日からこれだよ。
…人には部屋までついてくのは危険だだのなんだの言うくせに…
この女ったらし。


「ち、ちがうんだよ柴っちゃん!!うちはそんな…」
「よっすぃ〜やっぱり今夜もお泊りしよっかぁ。
…ごほうびあげなきゃいけないしね♪」
「ひぃ?!い、いやごほうびなんて、と、とんでもない!!」
「も〜遠慮はなしよ♪………夜までに言い訳考えといてよね。」
「は、はい…すいません…」

昨夜は初めて大好きな人と抱き合って。

今夜は初めて大好きな人とケンカをするみたい。




恋をするって忙しい。





386 名前:恋→愛 投稿日:2004/06/23(水) 01:13




それからは、よっすぃ〜も反省したのか、
他の女の子とイチャイチャすることはなくなって。

…その分私とイチャイチャしたがるようになったので、これまた大変。



…うれしいんだけどね。





fin

387 名前:ツースリー 投稿日:2004/06/23(水) 01:28
以上 恋→愛 終了です。

>>368 プリン さま
温かいお言葉ありがとうございます!ほんとに励みになります。
最後まで読んでいただけたらうれしいです。

>>369 もも さま
ありがとうございます。・゚・(ノД`)・゚・。
ぜひぜひ柴ファンにwラスト気にいっていただけたらうれしいです。

>>370 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!また更新遅くなってしまいすみません…
最終話はこんな感じになりました!

>>371 名無飼育さん  さま
ほんとにお待たせしてすみません…ようやく完結しました♪
最後も読んでいただけたらうれしいです。

新作も、また始めたいと思いますので、またよろしくお願いします。
388 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/23(水) 14:23
とうとう完結ですね。
作者さん、お疲れさまです。

柴ちゃん、この先もよっすぃのタラシっぷりに苦労するんだろうなぁ、なんて思いつつ。
なんだかんだで二人が幸せそうでよかったです。

作者さんの書く吉柴は二人とも可愛くて甘くて、大好きです。

新作も楽しみにしてます。頑張ってください。
389 名前:プリン 投稿日:2004/06/23(水) 17:15
更新&完結お疲れ様ですっ!!w
やっぱ甘々(*´Д`)ポワワ
よっちゃんはどうしてこういう人なんでしょうね(w
まぁ、モテモテですしね。

新作ですかっ!w
楽しみに待ってますね。マターリと。
では。次回の更新も頑張ってください。
390 名前:もも 投稿日:2004/06/24(木) 04:19
更新完結おめでとうございます。

いいっすね〜もてもてよっすぃ〜大好き!
優しいよっすぃ〜に甘える柴ちゃんが可愛いよん

作者さんの書く、よっすぃ&柴ちゃんの大ファンになりました
甘い二人!キタ━( ´∀`)σ!(・∀・)イイ!!

次回作も、楽しみにしています。がんがってください。
391 名前:もも 投稿日:2004/06/24(木) 04:21
 ↑
すいません、更新完結お疲れさまです。mm(_ _)mm
おバカで失礼しました。
392 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:19




「よっすぃ〜!!起きなよ!もう、いつまで寝てんの。ちょっとは勉強しなさい!」



今日もさわやかな朝の怒鳴り声…
小さいころから変わらない、いつもの風景。






393 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:23






−−−−−− Sweet Home −−−−−−





394 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:25



「うぅ〜…寝かしてよ…日曜じゃん…昨日朝まで勉強してたんだよぉ…」
「うそばっかり…どうせゲームしてたんでしょ?」
「げっ!なぜなにどうしてそう思うの?!Why?!」
「…プレステ電源入りっぱなし…」
「はっ!し、しまったぁぁ!!」



そこらにちらかってる、うちの部屋のゲームソフトや漫画の本を片付けながら。
ため息をもらしているのは、お隣り、柴田さん家のあゆみちゃん。

通称、柴っちゃん。
わりかし頭のいい大学に通う女子大生。





395 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:27



「よっすぃ〜…そんなんじゃ来年も受かんないよ…?」
「そ、そんなハッキリザックリ…。」



うちは吉澤さん家のひとみちゃん。

通称、よっすぃ〜とかよっちゃんとか?
柴っちゃんと同じ、わりかし頭のいいあの大学を受験して、
みごとに落ちてしまった浪人生。


…ま、もう一年くらいは覚悟してたさ…そう計算通り、計算通り…
 
って、うわ…もう1時かぁ…はぁ、やべぇ…




396 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:29


「…お腹すいたぁ…」
「もう…下降りて食べてきたら?」
「ん〜…部屋で食べる。」
「じゃ、おばさんにご飯もらってきてあげるから。顔洗って着替えてて?」
「…はいは〜い。」


こうしてうちの世話をしてくれる、ていうかしたがるところは
昔からちっとも変わらない。


柴田家と吉澤家のおつきあいは今からおよそ15年ほど前から。
我が家が新しく家を建てて、引っ越しをしたお隣に住んでいたのが柴田さん。

親同士はすぐ仲良くなったらしく、共働きで家を空けることの多かったうちの
両親に代わって、柴田さんご夫婦と、その娘さんのあゆみちゃんが、
よく4歳のひとみちゃん、つまりうちの面倒をみてくれた。

お互いに一人っ子だったあゆみちゃん――柴っちゃんとうちは、
ほんとうの姉妹のように、いっつも一緒に遊んでた。



ていうかくっついてくるんだもん、柴っちゃん。




397 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:31



例えばうちがちょっとひとりでどっか行こうとすると
「危ないからひとみちゃんは私から離れちゃだめ!!」
ってがっしり捕まえられて、

学年で2つお姉さんな柴っちゃんが先に小学校へ上がるときも
「…ひとみちゃんが心配だから行きたくない…」
と駄々をこねていた。

…そんなこと言われてもねって、うちも親たちもほんとに困ったもんだった。



というわけで柴っちゃんのうちに対する過保護ぶりはまぁすごいんだけど。
でもなんていうか慣れちゃったしね、もう。

こんな、まるで姉妹みたいなうちらの関係はず〜っと続いている。



あの半年間だけをのぞいては。







398 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:34



うちが当時柴っちゃんも通っていた女子高に無事合格して、
晴れて高校生になった3年前のある日のこと。

突然にこの関係をくずしたのはうちじゃない、柴っちゃんのほうだった。


「…よっすぃ〜が…好きなの。…つきあってほしいの…。」


いつも通りうちの部屋で二人、並んでお笑い番組なんかを見てたときだったから
その衝撃は凄まじかった。

はっ?!
え、な、なに言ってんの柴っちゃん。
いきなりすぎだよ、どうしたの急に?!

慌てて横を向いて、その姿を確かめて
――浮かんできた言葉をゴクっと飲み込んだ。

…彼女が震えていたから。




399 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:36



本気なんだってわかった。
どれだけ勇気がいったのか。
近すぎた距離にいたうちに、こんなことを言うのは。


幼いうちだったけど、その告白の重みは感じてしまって。

だから、つい。



「…わかった。いいよ、つきあおっか。」


正直、柴っちゃんをそういう対象で見たことなんかなかった。

でも、断るなんてできなくて。


かわいそうだって思ったんだ。
こんなにせつない、苦しそうな顔で
想いを告げた柴っちゃんが。





400 名前:sweet home 投稿日:2004/06/28(月) 02:41



「…ほんと?…」

「うん。OK牧場。」


そう言うと、ほんとうにうれしそうに笑って。

あぁ、やっぱり間違ってないって思った。

そうだよ、だって好きは好きだし。柴っちゃんのこと。
断って気まずくなるよりは、ずっといいじゃん。



それが二人の新しい関係の始まり

…の、はずだったのに。


結局、守ることができなかったのは
壊してしまったのは


やっぱりうちのほうだったんだ。






401 名前:ツースリー 投稿日:2004/06/28(月) 02:51
以上 sweet home 第1話です。

>>388 名無飼育さん  さま
ありがたいお言葉ありがとうございます。よっすぃ〜のたらしっぷり
結構好きなんですw新作始めましたので、またよろしくお願いします!

>>389 プリン さま
よっすぃ〜はうらやましいくらいのモテっぷりですw
いつもレスありがとうございます!新作もまたぜひよろしくお願いします。

>>390 もも さま
いつもありがとうございます!ファンだなんて…幸せですw
今度も吉柴で始めさせていただきました。またよろしくお願いします!
402 名前:プリン 投稿日:2004/06/28(月) 18:33
更新お疲れ様ですm(_ _)m
新作ですねぃ。
なんかすごく面白そうw
ってか、もうこの時点で面白いっすw
続き激しく気になります!頑張ってください!
403 名前:もも 投稿日:2004/06/29(火) 03:51
新作&更新お疲れさまです。

柴ちゃんがお姉さんで、よっすぃ〜が甘えん坊の弟?のようで
いいわぁ〜
面白い!!期待してます。
404 名前: 投稿日:2004/07/02(金) 20:27
あの、最近読み始めた(?)んですけど、もしかして「よっすぃー」も「柴っちゃん」
女の子ですか??
405 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 07:52
ここの作品を読んでから吉柴にはまりました。
今回の作品も楽しみにしてます。
406 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:01




高校生にもなると、周りの友達が恋の話をする回数がぐんっと増える。
そしたらやっぱり気になるわけよ、いろいろ。
お年頃だし。


手をつないだとか、キスをしたとか。あるいはもっと、もっと。
そういうの聞くたびに、あせる気持ちがなくはなかった。


よし、うちもがんばろう!って思って、
恋人になった柴っちゃんに、何度も迫ったけど。


彼女はいつもそれとなく、避けてばかりで。


結局、半年がたっても、キスさえさせてはくれなかった。


だんだん柴っちゃんへの――不信感?そんな難しいもんでもなかったとは思うけど。
なんかいろいろたまっていって。




407 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:03



恋人になりたいって言ったのはそっちじゃん。
うちのこと好きなんじゃないの?!


勝手に裏切られたような、だまされたような気持ちになってた。



だから―――



あんな、コトを。





408 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:05



部活のバレーは中学から続けてたこともあって、すぐレギュラーになれた。
そうすると結構モテだしてしまって。女子高だったし。


ちょっとした有名人になったうちを誘ってきた部活の先輩と
つい、寝てしまった。

ほんとに軽い気持ちだった。
ラッキーって感じ。

恋人に対する罪悪感なんて全くなくて。
むしろどうだ、みたか、みたいな。



――そっちがさせてくれないからだよ、って。
悪いのは相手だと信じて疑わなかった。




409 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:07



うちとその先輩の噂は狭い女子高にすぐ広まって。


柴っちゃんから『聞きたいことがあるの』ってメールがきたときは、
すぐにピンっときた。


そのとき、バレてやばい!なんて気持ちは全く起こらなくて。
わくわくしたんだ。

もしかして修羅場?カッケー!!なんて。
周りの友達より先に進める気がして。



そして


これで彼女の気持ちが確かめられるような気さえしてた…。




410 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:08



部屋に入ってきた柴っちゃんの表情は明らかにいつもと違った。
見慣れているはずのうちの部屋を
初めてきた場所みたいにキョロキョロ見渡してた。


「…聞きたいことってなに?」
「え…うん。」

固くなってる柴っちゃんの代わりに、自分から話をふった。

「よっすぃ〜…ほんとなの?」
「なにが?」
「…噂。」

よし、やっぱりきた。

「あぁ…うちと先輩が、やったってヤツ?」
「!!……うん。」
「や、ほんとだけど?」




411 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:10



「………え?」

事実がクロだったことより
こんな簡単に認めるうちに、驚いているようだった。

「な、なんで?どうしてそんなことするの?」
「どうしてって…別に。」


もっと怒るかと思ったけど。
彼女は声を荒げたりしなかった。


「なにか理由があるなら教えてほしいの。怒ったりしないから。ね?」


…それってなんか違くない?

怒ればいいじゃん。
浮気されたんだよ?

こんなときまでお姉さんぶって。
みょーに冷静で。




412 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:11



昔から、うちには涙も見せない彼女が腹立たしくて。


――泣かせたくなった。

「…なんかめんどいね。」
「え?」


「や、なんかさーそんなん言われても。やっぱうちらが恋人ってびみょーだね。」
「…よっすぃ〜?」
「…もうめんどくさいからさ、別れよっか。」


一瞬、ほんとに驚いた顔をしたけど。
やっぱり彼女は泣かなかった。




413 名前:sweet home 投稿日:2004/07/06(火) 00:13



「よっすぃ〜が…そうしたいなら。わかった。」

そういうとうつむいたまま、振り返りもせず、走りだしたりもせず、
静かに、歩いて部屋を出ていった。


「なんで泣かないんだよ…」


そしてうちは最後まで彼女の気持ちを見つけることができないまま、
大切な、二度と戻らない、なにかを失った。





414 名前:ツースリー 投稿日:2004/07/06(火) 00:25
以上 第2話です。

>>402 プリン さま
いつもありがとうございます!続きがこんな内容で…気に入っていただけるか
どうか心配です…。またぜひよろしくお願いします!

>>403 もも さま
まさにそんな雰囲気が出せたらなーと思っています〜。
ちょっとわがままよっすぃ〜ですがよろしくお願いしますw

>>404 葵 さま
え〜っとハロプロ小説ですのでw

>>405 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!そんなふうにいっていただけてうれしいです。
また今回の作品もよろしくお願いします!
415 名前: 投稿日:2004/07/08(木) 19:32
そうですか・・・(笑) まぁそういうことは考えないようにします^^; 
すっごく楽しいです!毎日?見てます!これからもガンバッテ下さい!!
416 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 20:32
>>415
レスはageないほうがいいかと思います。

あとm-seekではほとんどのCPが女性ですし、それで一つの作品なのに
「まぁそういうことは考えないようにします」
なんて言い方は作者さんに失礼だと思います。

作者さん失礼しました。がんばってください。
417 名前: 投稿日:2004/07/08(木) 21:14
すみません、私まだ中学生なんで全然そういう礼儀とか知らないんです。 ごめんなさい。 
418 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 22:41
>>417
案内板を見たら、ここの礼儀は分かりますよ
419 名前: 投稿日:2004/07/09(金) 21:11
ありがとうございます。
420 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/09(金) 23:52
>>419
だからあげるなや!!
421 名前:ochi 投稿日:2004/07/10(土) 01:09
更新お疲れさまです。

上がってたので落とします
422 名前:もも 投稿日:2004/07/10(土) 02:06
更新おつかれさま

。・゚・(ノД`)・゚・。柴ちゃん・・・・・どうなるの??
続きが気になります。
423 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:29




「もーよっすぃ〜!!なにボーっとしてんの?ほら、早くご飯食べて?
 そしたら勉強みてあげるから。」
「…あ、うん。」

いつのまにか下から戻ってきていた柴っちゃんに言われて、
大好きなベーグルサンドにかぶりつく。



あの後。
3年前、うちが別れを切り出した、あの日の後、
しばらく彼女の姿を見ることはなかった。





424 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:31



隣に住んでいるのに、すれ違うこともないなんて。

あきらかにさけられてるのが分かった。


でもそれが悲しいってわけじゃなくて。
むしろ彼女がうちを強く意識してるってことがうれしかったりした。


それに、しばらくしたら、絶対向こうからやってくるだろうと思ったんだ。
やりなおしたいって言ってくるだろうと。



だってこの恋を始めたのは、うちに恋をしているのは。


彼女のはずだったんだから。



だから、うちからは意地でも連絡をとったりしなかった。




425 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:34



ところがそのしばらく、っていうのは思いのほか長くて。
一ヶ月もなんもなくて、さすがにこっちも耐えらんなくなって。

早起きして用意を整え、外の様子をうかがってると、案の定、朝早く、
静かに家を出る彼女の姿を見つけた。


…それまでなら、うちを起こしてから、一緒に学校に行っていたのに。


慌てて下へ降り、偶然を装って家から出ると、ちょうど彼女が自転車の鍵を外している
ところだった。

ドアの開く音に気づいたのか、クルっと振り返って、うちと目が合うと、
一瞬目を見開いて、――そして、不自然なくらい自然に、声を出した。


「よっすぃ〜!!どうしたの?こんなに早く」


そこに気まずさなんて全くなくて。
いたのはほんとに今までの彼女…いや、半年前までの柴っちゃんだった。




426 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:35



「あ、もしかして日直?にしても早すぎない?」
「…柴っちゃんこそ。」

こんな早くに。なんのために?


「私?私は朝、補習あるから。3年生はね、受験対策で。知らなかったの?
 一ヶ月くらい前から始まってるのに。」


それはたぶんほんとうの理由で。
でもけしてそれだけがほんとうではないはずだった。


「よっすぃ〜まで早起きさせるのかわいそうだから、しばらく起こしにいきませんって
 おばさんに言っといたのになぁ。ま、いいや。じゃ行こうか?忘れ物ない?」
「え?…うん、ない、よ。」
「よし、じゃ行こ?ふふ、なんかこんな時間によっすぃ〜が起きてるってすご〜い」
「うるさいよ、もう。」





427 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:37





この半年間のことがまるで夢だったかのように、なんてことない、それまでの朝だった。



…でもあの時間は夢でも、嘘でもなかったのに。



こうしてまた姉妹のような関係が始まった。


少しだけ形をいびつに変えて。





428 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:39




「…ねーよっすぃ〜、どうしても建築科受けるの?」
「ふぇ?あぁ、もちろんだYO!」
「だけど…はっきりいって難しいよ?それによっすぃ〜数学苦手じゃない。
 理系はちょっと…思い切って文転したら?
 …私と同じ学部受けてみたら?そしたら授業、ちょっとはかぶるだろうし。
 レポート対策とか、いろいろ教えてあげられるよ?」
「えぇ〜ダメダメ。建築科じゃなきゃ。それに柴っちゃんと同じ学部にしたって
 柴っちゃんすぐ卒業だし。意味ないじゃん。」

それにどうせそんなに学年違ったら、ほとんど一緒にもいられないだろうし。
するとむすっと不機嫌な顔。


「…だれかさんが浪人しなかったら2年間くらい一緒だったのに。」
「ぐぅっ!そ、それを言うとは卑怯な…」


がんばったんだよ〜これでもさぁ。




429 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:40



「…ねぇなんで?」
「はい?」
「なんでそんなに建築科行きたいの?」
「…さぁ。なんででしょ?」
「むかつく…」


おぉ〜怖い怖い。

うちをにらむ彼女を無視して、ベーグルの最後の一口を流し込んだ。




あの朝の登校をきっかけに、彼女はそれまで通り、うちの部屋にしょっちゅう
やってくるようになったし、それまで以上に、うちとの距離を近づけたがってる
ようにも見えた。



でもそれはほんの見せ掛けだけで。





430 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:42



あれからこうしてほとんど毎日会って、毎日話しているけれど。

あの半年のことは。
うちと彼女が恋人だった期間のことには、どちらも一度も触れていない。



うちはなんだかこのままじゃ歯切れが悪くて、もっとちゃんと話し合いたいって
自分勝手ながら思ったりもするんだけど。



彼女がそれを許さない。




431 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:43



直接言葉に出したりはしないけれど
彼女の目が――唇が――心が。


あのころの話は絶対にするなと
そう、言っている。


うちを責めたりしないから、嫌がったりしないから。
ただそっとしておいてくれと。
傷口に触れないでほしいと。

そう言うんだ。





432 名前:sweet home 投稿日:2004/07/10(土) 03:46



両親や周りの人から見れば、
昔と、なんの変化もなく、仲良しに過ごしているように見えるだろうけど。


今の二人は
見たくない、触れたくない、恋人だったころの気持ちに鍵をかけて。


汚れのない、純粋な
子供だったころの優しい、大切な思い出の貯金を。


ちょっとづつ、切り崩しながら、なんとか毎日をやり過ごしてる。



そんな日々に。

意味があるのかは、わからないけど。






433 名前:ツースリー 投稿日:2004/07/10(土) 04:03
以上、第3話です。

>>415〜421
みなさんお気遣いほんとうにありがとうございます。
これからもがんばりますので、よろしくお願いします。

>>422 もも さま
いつもありがとうございます。まだまだ続きますので、
どうぞよろしくお願いします。
434 名前:もも 投稿日:2004/07/11(日) 03:21
更新おつかれさまです〜

・゚・(ノД`)・゚・。
健気な、柴ちゃんが可愛いよね、泣けてくるよね。
よっすぃ〜ヤンチャだねぇぇ!!

次回の更新楽しみにしてます〜まったりと♪(*/∇\*)
435 名前:プリン 投稿日:2004/07/14(水) 16:07
更新お疲れ様ですm(_ _)m

柴ちゃんどうしちゃったんだよう…。
ちょっと来てなかっただけでたくさん更新が(w
嬉しい限りです。
これからもマイペースに頑張ってくださいね。

では。次回も待ってます♪
436 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:13



「ひぃ〜よっちゃんさんが勉強してるよぉ〜」
「…ミキティうるさい、そしてむかつく。」

ノックもせずにうちの部屋に入ってくるのは、
お母さんと、このミキティぐらい。

柴っちゃんは一応入る前によっすぃ〜、と声をかけるから。

…そんなふうになったのは、いつからだったっけ。


「なぁ〜に受験生みたいなことしちゃってぇ〜」
「みたいなって?!ホンモノの受験生なんですけど?!!」
「あぁ、そういえば浪人してんだっけ?かわいそうに。」
「ひどい…自分だってこないだまで浪人生だったくせに…」
「ふふん。こないだまではね。」


そう、去年までは苦労を分かち合う受験生同士だったのに…。

…もう一年以上前になるのかな。
学年で一つ年上のミキティと知り合ったのは、駅前の予備校。



437 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:14



予備校ってところでは、みんながライバルってわけだから。
多少目つきが鋭くなるってのは、まぁ仕方ないと思う。

多少はね、多少は…
でも、いくらなんでも…


に、にらみすぎじゃん?あの人…


今となっては慣れちゃったから全然平気だけどさぁ〜…それでもときどき怖いとき
あるけど。

まぁそれにしても、初めのミキティはそれはそれは恐ろしかった。


座り方もすごかったし、
いつも鋭い視線で、そしてそれがキレイな顔立ちのせいで、余計冷たく感じられて。

…とてもじゃないけど近寄れねー
それになんか結構目が合うんだけど…

ま、まさか目ぇつけられてんのかな…うち…
こ、怖いよぉ…誰か助けて…



438 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:16



「ねぇ、ちょっと。」
「は、はい??!!なにか…」

き、きたー!!助けて〜だれか〜柴っちゃぁ〜ん!

「いや、なにビビってんの?あのさ、月曜の夜、数学受けてるよね?
 3回目のノートとってある?」
「へ?あ、と、とってありますけども…」
「あーよかった。貸してくんない?お礼するからさ。」
「お、お礼?!お礼参り!!?」
「…なに言ってんの、あんた…。」


だってほんとに怖かったんだもん。

お礼だよって殴られるかと思ったんだもん。


でも、結局後でその話をしたとき殴られたから、
あながちうちの予想ははずれてもなかったってことだ。



439 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:17



そのノートのお礼にベーグルをくれたミキティにびっくりして、
「よくうちがベーグル好きだってわかったね?」
って聞いたら
「だってそんな顔してるから。」
と大変失礼なことを言われました。



「大学はいいよ〜大学は。やっぱさぁ、浪人生活体験するとさぁ、
 なんていうの?開放感が違うね〜」
「へぇぇ!!よかったね!!!」
「だいたいそう簡単に受かるわけないじゃん?よっちゃん成績全然悪いんだから。」
「くそぉ〜くそぉ〜!!」


志望校が一緒だったこともあって、あれ以来うちらすっかり仲良くなっちゃって〜
…仲いいのか?これは…



440 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:19



「もうさ、いいかげん建築科は無理だって〜。美貴と同じ学部にしなよ。」
「またそういうこと言う…」
「え、なにまたって?」
「ん、ううん。いい〜の!ちっちゃいころからうち、決めてたんだから!」
「だいたいそんなん勉強してどうする気?建築デザイナーにでもなんの?
 よっちゃんにセンスがあるとはさ、美貴思えないんだけど…。」
「いや、そんなおおげさじゃなくて…ていうかうち、センスないの?!
 …まぁたださ…家、建てたいんだよ…自分の家。」
「は?家?」
「そう。家。」
「いやいやいやいや。でもそれ、なにも大学で建築学んでまでしなくても。
 普通にお金さえあれば家建てられるじゃん?」
「…そんなの子供のころはわかんなかったもん。とにかく自分で建てなきゃって…」
「…バカじゃん…」
「うるへー。」
「ていうかさーなんで家なんか…」

コンコンッ
「よっすぃ〜?いる?」

「あ、柴っちゃんだ。この話はまた今度。うん、いるよ〜。」



441 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:20



ガチャ
「あ、藤本さん、来てたんだ。いらっしゃーい。アイス食べる?」
「どうもー柴田先輩!おじゃましてます〜食べます食べます。」
「…ここうちの部屋…。」

ミキティはちょくちょく遊びに来る間、すっかり柴っちゃんとも顔見知りになって、
大学に合格してからはわざとらしく「柴田せんぱーい」なんて呼んでいる。

「よっすぃ〜は…じゃあその問題解いてからね。」
「えぇ?!アイスとけちゃうよぉ〜」
「とけないうちに解きなよ。」
「うるさいミキティ!つっこむな!」



そう、うちがきっとお家つくってあげるって。

あの日、あの場所で誓ったんだ。




442 名前:sweet home 投稿日:2004/07/26(月) 22:22



だからいくら勉強が大変でも、成績が上がらなくても。
ここで、あきらめるなんて、引き返すなんて。
そんなことはできないから。


急にごーっとメラメラ燃えてきて、
一生懸命シャーペンをカリカリやっていると、
「うわ、アイス食べたくて必死だよ〜」
とミキティからまたもいらないつっこみが入った。


でも、ほんとこのときは必死だったから。


この部屋で、
難しい問題を解いているのが。


実はうちだけじゃないってこと、全然気づいてなかった。





443 名前:ツースリー 投稿日:2004/07/26(月) 22:30
以上 第4話です。
更新遅くなってしまい、ほんとうにすみません。

>>434 もも 様
いつもありがとうございます!ほんと全くやんちゃなよっちゃんですw
次はなるべく早めに更新できるようがんばりますので、またよろしくお願いします。

>>435 プリン 様
いつもありがとうございます。レス励みになりますm(_ _)m
柴っちゃん…どうしちゃったんでしょうwまたよろしくお願いします。
444 名前:もも 投稿日:2004/07/27(火) 00:54
更新お疲れさまです。

よっすぃ〜お受験がんばれ!!ヽ(`Д´)ノフレーフレー
柴ちゃんの気持ちが気になりますね。

楽しみに待ってますから、作者さんのペースで更新してください
「二人ごと」で吉柴が見たい(きぼーん!!)
445 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:38




今思えば、あれは不思議な場所でも特別な場所でも何でもなくて。

おそらく、普通の空き家。
それもそうとう近所。

でも、あのころの二人にとって、柴っちゃんにとって。

そこに行くことは大きな冒険で。
そこは誰も入って来れない、うちらだけの秘密のお城だったから。


ごめんね、子供のうちじゃ守ることができなかった。

だからきっと、大きくなったら。

大きくなったら。



446 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:39



「…はぁ?」
『やばい!!レポートよっちゃん家に忘れたっぽい!!助けてぇ〜』

なんじゃいきなり…
ミキティから突然メールが届いたのはお昼過ぎ。

どうやら本日締め切りのレポートを、こないだ来たときにうちに忘れてったらしい。

そういやうちが勉強してたから、つまんな〜いとかいいながらなんか書いてたけど。
あれレポートだったんだ。
また下手な絵でも描いてんのかと思った。

『届けて!!急いで!!』
「…おい!!」
『どうせ暇でしょ?!』
『受験生に暇なんかないの!!』
『いいじゃん、あ、そうだ大学見学も兼ねてさ!学食でなんかおごるから!
お願い〜よっちゃ〜ん』


まったく。
…でもそういえば大学の中よく見たことなかったな。
受験で行っただけだし。
ここはひとつ、ごちそうになりに行きますか。




447 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:40



何ヶ月ぶりかに来た志望校は、学生であふれていて。
受験日とは全く違う、明るい雰囲気に包まれていた。

「いやぁ〜助かったよ。さぁ何でも食べて?きつねうどんでも、たぬきうどんでも、
 カレーうどんでも!」
「なんでうどん限定なの?!…じゃあカレー。」
「カレーうどん?」
「ただのカレー!!カレーライス!!!」
「ちぇ。」
「意味分からん…」

以前はミキティも受験生だったのに。
慣れた感じで注文するそぶりがすっかり大学生で。
あぁ〜いいな。
うちも早くここに来たいよ。

「ほんとよかった。今日出さなきゃ単位落とすとこだったんだよ〜。
 よっちゃんさんのおかげ♪」
「落としゃーよかったのに…」
「………。」
「いえ…すみません、にらまないで…」



448 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:41



「ところで美貴、次の講義で今日終わりなんだけどさ、よっちゃんもいっしょに
出てみる?」
「えぇ?いやーいいよ。怒られたりしたら怖いし。それがきっかけで来年も不合格
 になったりしたら…うぅ…」
「か、考えすぎだって…」
「うぅぅ…。まぁ、おとなしく帰るよ。あ、柴っちゃんにメールしてみようかな。
 今日大学あるはずだし。いっしょ帰れるかも。」
「あ、…そっか。うん、じゃありがとね。ごめんね。」
「ううん。こちらこそごちそうさま。」

じゃあってミキティと別れた後、柴っちゃんにメールを送る。

『柴っちゃん今学校?いつ帰る?』

ブルルルルブルルル

『学校だよー。今から帰るよ。ちゃんと勉強してる?見に行くからね?』

…信用ないなぁ。
あ、そっか、うちが家にいると思ってるんだ。
よし、待ち伏せして驚かしてやろう…ふふん。
びっくりするだろうな〜なんせ浪人生が大学にしのびこんでんだから。

…ぐすん。ら、来年こそ…



449 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:42



おそらく帰りにはみんなが通るであろう門の前で、柴っちゃんの姿を待つ。
来年、合格したら、こうやって待ち合わせして一緒に帰ったりするんだろうなーって。

うたがいもなく思っていた。
だって
…そんな。


「〜〜♪お、来た来た。柴っちゃ〜ん!おーい!」
「?!!よ、よっすぃ〜!どうしたのこんなとこで!!」
「ふふん。まぁなんていうの?うちも来年はここの学生になるんだし〜♪
 ちょっと予行練習みたいな?ま、そんなつったってないでさ、帰ろう帰ろう。」
「え?あ、…」
「…?あ、もしかして友達と約束とかあるの?待ち合わせ?」
「あ、ううん、ううんその…」
「あゆみちゃん、ごめんね遅くなって」


…誰?
なんでこの男の人が遅くなったって言うの?
あゆみちゃんって?
…肩に手なんか置くなよ。




450 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:44


「あれ、お友達?」
「あ、うん…ごめんなさい、私今日ちょっとこの子と…その」
「あぁ!!い、いいよそんな!ご、ごめんねうち突然。だ、大丈夫だから」
「で、でも…よっすぃ〜…」
「ほ、ほんと気にしないで!あの、すいませんでした。」
「…いい、のかな?ごめんね?後輩の子?」
「あ…そう、ですね。まぁ来年にはきっと…」
「え?」
「あぁ、いやなんでもないです。…ほんと、柴っちゃん気にしないで?
 ならうち…ミキティと、そうミキティと帰るからさ!」
「…藤本さん、と?」
「そう、うん!」
「そっか…そうだよね。うん…じゃまた後でね。」
「うん、じゃ。」


自分の素早い機転に。
自分が一番びっくりしてた。
テストん時だって。
こんなに頭働かないのに。

…まいったな。




451 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:45



震える体で手を振って。
引きつった笑顔でさよならをした。

やばいやばい。
早く行って、早く。

うちの願いを叶えるように、そのお二人さんはあっという間にいなくなった。
門のそばに停めてあった
青いスポーツカーに、慣れた様子で乗り込む、幼なじみの彼女の残像を残して。


…かっけ〜。
いいな、うちもあんな車ほしいよ。

背も高いし、顔も中々かっこよかった。
性格も優しそうだし
…女を見る目もあるみたい。




452 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:46



うわ、違いすぎじゃん。
有名大学の、さわやか男子学生と。
有名予備校の、しがない浪人生。

愛車に彼女を乗せ、走っていく彼氏と。
それをただ見送ることしかできない、うち。


情けなくて情けなくて。
せめて涙だけは流さないように我慢してたら、
かわりに鼻水がたれてきちゃって。

余計かっこわるいから、やっぱり素直に泣くことにした。




453 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:48




そう、全くもってこの瞬間まで。
うちは気づいてなかったんだ。


彼女にとってうちらの関係はもう終わったことで。
それを受け止めてなかったのは、信じたくなかったのは。
実は自分だったってこと。


いや、でも柴っちゃんはうちと帰ろうとしてくれたじゃない?
ううん、それは。
別にその男の人よりうちを選んだわけじゃなくて。
ただの同情なんだよ。幼なじみに対する、同情。




454 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:49




今になってやっと分かった。
自分が犯した罪の重さを。


軽い気持ちで
あのときした浮気は。

彼女を傷つけただけじゃない。

うちから、一番大切な人を
奪っていったんだ。


あのころの自分を責めながら、
ただじっと、湿っていく地面を、ぼやけた視界からのぞいてた。




455 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:50



自分では分からなかったけど、一時間以上そうしていたらしい。

講義を終えたミキティが、いつのまにかそばにいたんだから。


いつもなら、こんなうちを見つけたら、
「まだいたの?」とか「なに泣いてんの?!」とか。

つっこんでくるはずなのに。


今日の彼女は何も言わず、何も聞かず。
うちよりも小さい体を精一杯伸ばして、立ちつくすうちの頭を抱え込むように抱きしめて。


人通りもあるし、うちはいいけど、こんなとこ誰かに見られて、噂になったりしたら。

だからわざとはぐらかすように、
「…いやん。こんなところでミキティったら。」って。
離れるように促したけど。

それでも彼女は腕の力を緩めることなく
「…ばか。いいよ、いいから。」ってさ。




456 名前:sweet home 投稿日:2004/07/27(火) 20:52




やさしいなぁ〜ミキティ。


お言葉に甘えるように、小さな肩にぐりぐりと顔を埋めると、
「鼻水がつく」って首の後ろにチョップされて痛かった。



でもそれよりも痛むのは胸のほうで。
柴っちゃんもあの日、これに似た想いをしたんだろうか。



…ごめんね。






457 名前:ツースリー 投稿日:2004/07/27(火) 21:02
以上、第5話です。

>>444 もも さま
いつもほんとにレスありがとうございます!今日は時間があったので、
連日更新してみましたw
吉柴ごとなんか見れたらもうw最高です。。。
がんばりますので、またぜひよろしくお願いします♪
458 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/28(水) 00:38
初めてレスさせていただきます。
いつも更新を楽しみにさせていただいてます。
もう吉柴最高です。
これからも期待させていただきますが、
作者様のペースでマターリ頑張って下さい。
459 名前:プリン 投稿日:2004/07/28(水) 14:35
更新お疲れ様です♪

美貴ちゃん優すぃよぉ・゚・(ノД`)・゚・。
柴ちゃん・・・一体どうしたんだ・・・!!
激しく続きが気になりますね。
次回の更新も待ってますです!
460 名前:もも 投稿日:2004/07/29(木) 03:03
連日の更新お疲れさまです。

よっすぃ〜。・゚・(ノД`)・゚・。柴ちゃん。・゚・(ノД`)・゚・。
あああ気になるよぉぉぉぉぉ!!
自分も激しく更新きぼーんしてます。mm(_ _)mm
461 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:49



「ひとみ、お友達の家に泊まるんですって。や〜ねぇ突然。晩御飯作っちゃったのに。」
「そう…ですか。」


早く話がしたくて。
しなきゃいけなくて。


彼に送ってもらった後、自分の家ではなく、急いでよっすぃ〜の部屋へと向かった。

当然、彼女の姿はまだなかったけど。

おばさんに頼んで、帰りを待たせてもらった。
後ほかに、何をすべきかわからなかったから。


混乱しているのは、彼女も一緒。
私が落ち着かなきゃ。
それまでがずっと、そうだったように。





462 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:51



今まで、私が彼女に秘密にしていることなんて何もなかった。
…心の中のことは、別として。


傷つけてしまっただろう。
私が隠し事をしていたなんて。
傷ついてしまったんだろうか。
私に、恋人がいること。



いつか、ちゃんと幼なじみというだけの関係に戻らなきゃいけないと分かっていた。
いつまでも、彼女を縛っていてはいけないって。


だけど、それが今日だなんて。





463 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:52


よっすぃ〜が、大学を訪ねることなんてなかったのに。
私が通っていても。
でも、今は藤本さんがいるから。
そうだよね、来ていたとしても、おかしくない。


さっき、やっぱりよっすぃ〜の元に残るべきだったのかな。
そして、すぐに彼女が聞きたいことに、答えてあげてれば。


…私だって、そうしたかったけど。

藤本さんと帰ると言うのに、引き止めたりできない。



そんな勇気、もうあの頃に失くしてしまっていたから。





464 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:54



美貴は、卑怯なことは大嫌いだ。

同じ大学に通っていて、そんなに広くない敷地内を考えれば。

よっちゃんの幼なじみの彼女が、男の人と一緒にいるのを。
そしてそれが、ただの友人の雰囲気じゃないのを。

美貴は知らなくはなかった。

だけどそれをよっちゃんに伝えるのは、つげ口みたいで卑怯だと思ったから。
あえて何も言わずにいた。

よっちゃんが彼女の帰りを待つと言ったとき、イヤな予感はしたけれど。
それでもあえて何も言わなかった。



でもそれは間違っていたかもしれない。




465 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:56


門の前で泣いているよっちゃんを見つけたとき、ほんとうに後悔した。
おそらく、予感は的中してしまったんだろう。


ごめんね、これは美貴にも責任がある。


無理やりにでも、よっちゃんを引き止めておけばよかった。
ううん、その前に大学になんか来させるんじゃなかった。


…守ってあげたかったのに。




466 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 20:58


柴田先輩が、どうしてあんなことをしているのかわからない。
よっちゃんを、あるいはあの男の人を、意図的に振り回すような人ではないと。
ここ一年の付き合いだけど、確実に言い切れる。


でも、じゃあなんで?
こんなの、わざと自分を苦しめているようにしか思えない。


その証拠に。
彼女の目は、いつもさびしそうだったから。


だから、どんな理由があろうと、美貴は彼女を責めたりしないし、したくない。



ただひとつ。
…よっちゃんを傷つけたりしないで。




467 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 21:01


泣いてるよっちゃんを抱きしめてたら、愛しくてたまらなかったけど。
奪ってしまいたかったけど。


卑怯なことは嫌いだから。



―――好きだなんて。

美貴は、今は言わなかった。




468 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 21:02


ミキティに泊めてもらって助かった。
目ぇはれてたからね…ははっ、情けねぇ。
予備校の寮を出て、一人暮らしをしているミキティの部屋にいくのは引越しのとき以来
だったから少し心配だったけど。
荷物もすっかり片付いて、ちゃんと生活してる空気が出ていた。
相変わらず、肉ばっかりの冷蔵庫とかが特にね。

はぁ…さっき、ミキティの家を出るまでは平気だったけど…
自分ん家と、彼女の家が目に入った途端、緊張が走る。


…普通に、いつもどおりにしなきゃ。
3年前のあの日、彼女がうちにそうしたように。
…それが、昔に君が決めたルールっしょ?


「よっすぃ〜…おかえり。」
「えぇ?!!た、ただいま…」


でもだからって、部屋開けたらいきなり本人がいるってのはひどくない?




469 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 21:04


「ど、どうしたの?あ、待ってた?…もしかして。」
「ん…あ、勝手に部屋入ってごめんね?」
「いや、そんなのいいけど…」

どうする?
どう振舞うのが一番いい?
どうすれば今までどおりにいられる?

「よっすぃ〜…あのね、私…」
「やぁ〜び、びっくりしたよぅ。柴っちゃん、彼氏がいるなんて、そんな大事なこと
 教えてくれないんだもんなぁ〜。」
「え?あ、…ごめんね。あのね、よっすぃ〜…」
「まぁもういいけどさ!これからは隠し事はなしね?うちら幼なじみなんだし!!」
「え、うん、だからね、よっすぃ〜」
「あぁ〜ねむっ。うち寝るわ。柴っちゃんも学校でしょ?仕度しなくていいの?
 ほら急がないとね。じゃあおやすみ〜…」
「え、え?ちょ、よっすぃ〜?ね、お願い、話聞いて?」
「眠い眠い。」
「…藤本さん家泊まったんでしょ?寝てないの?」
「え〜寝たけど布団一個で狭いしミキティ寝相悪いし全然熟睡できなかったんだもーん。」
「…そう。わかった。」



470 名前:sweet home 投稿日:2004/07/30(金) 21:06


…ごめんね。
おそらく寝てないのは君のほうなのに。


全くとりあわないうちに怒ったかなぁと思ったけど。
彼女はうちの足元に丸まっている毛布をうちの体に優しくかけて。
立ち去ろうとしてから、思い直したようにもう一度うちのそばに戻ってきて。

何か言おうとして、やめて。
最後に背中にそっと手をのせて、「おやすみ」って言っていなくなった。



バタンっとドアの閉まる音が、やけに耳に響いて。

まるでもう、二度と開くことはないようで。


悲しくて寂しくって、行かないで、行かないでって何度も思った。






471 名前:ツースリー 投稿日:2004/07/30(金) 21:14
以上、第6話です。

>>458 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!いつも読んでくださっているそうで…ありがとうございます。
みなさんからのレスはほんとに励みになります。がんばりますのでよろしくお願いします!

>>459 プリン さま
いつもありがとうございます!柴ちゃん…どうしちゃったんでしょうw
少しずつわかっていくかと思いますので、またよろしくお願いします♪

>>460 もも さま
いつもありがとうございます!ほんと二人に申し訳ないです…・゚・(ノД`)・゚・。
次回は来週中に更新できればと思いますので、またよろしくお願いします♪
472 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 01:09
美貴たん・・・
473 名前:もも 投稿日:2004/08/01(日) 03:04
更新お疲れさまです。mm(_ _)mm

でもなんか。・゚・(ノД`)・゚・。悲しいよぉぉ
ラブラブな甘々が好きなの。・゚・(ノД`)・゚・。
474 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:48



ちょっとぼろい、あの古い空家を発見したのはうちだった。


お母さんたちが井戸端会議を始め出したら、二人でお散歩に出かけるっていうのが、
幼いうちと柴っちゃんの習慣。

柴っちゃんはいつもうちの小さい手をギューっとにぎって、お花を見つけるたびに、
「あれね、タンポポっていうんだよー」
って得意げに教えてくれた。
だからうちは小学生になるまで、タンポポには赤も白もあるんだと信じて育った。


いつも通り、うちが作った歌を歌ったり、アリさんの後をたどりながらお散歩していると、
庭が森みたいになってて、ちょっと不気味な、古くてでっかい、不思議なお家を見つけた。

やんちゃなお年頃のよっすぃ〜はもう、わくわくしてきちゃって。
うちが中に入ろうとすると、
「よっすぃ、だめだよぉ。怒られちゃうよぉ。」
って柴っちゃんが言うもんだから、なんか余計強気になって。
「大丈夫!!うちについてきて!」
なんて。



475 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:49



始めてうちが彼女の手を引いて、中に入っていったんだ。


かぎはかかってなくて、すいませーんって言っても返事はなくて。
いちおう全部のお部屋を探検したけど、やっぱり人はいなかった。

「うわぁ誰も住んでないんだねぇ、こんなに大きいお家なのにもったいないねぇ。」
「…じゃあ、うちらが住んじゃおっか。」

ちょっとプレイボーイ風にふざけていったつもりだったのに、彼女はくりくりのお目めをキラキラさせて、

「住む!よっすぃ〜といっしょに住む!」
ってつないだ手を痛いくらいにブンブン振り回した。


いや〜本気にされると困っちゃうんだけどな〜とか思ったけど、
あんまりうれしそうに笑うから。
ニィって笑った柴っちゃんが、すごくかわいかったから。
…ま、いっか。



476 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:51


それからうちらのお散歩は、いつもあの隠れ家に行くコースに代わった。
好きなおもちゃを毎日ちょっとずつ運んで、お菓子もこっそり持ち出して。
段々と二人だけの空間が出来上がってきたころ、お別れのときはやってきた。


「あれ〜お嬢ちゃんたち、こんなところで何やってるの。勝手に入っちゃダメだよ。
 ささ、ここは取り壊すことになったんだから、早く出なさい。」

黄色いヘルメットをかぶったおじさん達が突然やってきて、ガタンガタンと大きな音をたてながら、ふたりのお家をあっという間に壊してしまった。


うちは泣いたりしなかった。
おじさん達は結構優しくて、そんなにきつく怒られたりしなかったし。
まぁまたどっか秘密基地でも見つけよ〜ぐらいの気持ちで。

もう帰ろっかって隣を見たら、いつもはお姉さんなはずの彼女がわんわん泣いていて、
そりゃーもう死ぬほどビックリした。



477 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:52


「ど、ど、どうしたの?!!だ、大丈夫?」
「うー。うわぁーん。」

「ど、どっか、ぶったの?痛いの?」
「う、うー。お家…。」
「…お家?あぁ、でもここうちらのほんとのお家じゃないんだもん。持ち主がいたんだよ、 
 きっと。さ、ほんとのお家に帰ろう?」
「やぁだぁ〜。うー、うわぁー。」
「な、泣かないで?泣いちゃだめだよぉ。」
「ほ、ほんとのお家だもん。…よっすぃと住むんだもぉん…」
「…柴っちゃん…」



結局彼女はそこに座り込んだままちっとも泣き止んでくれなくて。
探しに来たお母さんたちに抱っこされて、ようやく二人とも家に帰ったんだ。




478 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:54



彼女が泣いている姿を見たのは、うちの記憶の中であの一回だけ。


いつもお姉さんぶってた彼女が見せた、あの涙が。
今もうちの心をギュってつかんでる。
君が昔、うちの手をつかんでたように、ギュって。


だからあのとき誓ったんだ。

その意味なんて、まだ気づかないまま。





479 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:55


「よっちゃんさ〜ん…さむ〜い…」
「あのね、ミキティ。30℃もあんのになんで寒いわけ?!」

背中にはりついているミキティを振り落とそうと何度も体をひねる度、
汗がだらだら流れてくる。

そりゃ寒がりのあんたはいいかもしんないけどね、暑いのよこっちは、とっても!!

しかし地球はどうなってんの?
まだ夏前だってのに、この気温。
ただでさえいろいろあって、勉強どころじゃないのに…
更にうちからやる気を奪う気か。



480 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:55


「よっちゃんの部屋、エアコン効きすぎ。」
「効いてない効いてない。少なくともうちには効いてない。」
「ね〜そういえば今度連休あんじゃん。どっか行かない?」
「いや、無理だから。お勉強しないと。」
「んなこといってさっきから全然進んでないじゃん。行こうよぉ〜受験終わったら遊ぼう 
 ねって約束したじゃ〜ん。」
「ミキティの受験は終わっててもね、うちの受験は終わってないの!」
「息抜きも必要だよ?それに…気分転換とか、さ。」
「……あぁ。」


結局、うちが泣いてた理由とか、ミキティは何にも聞かなかったんだけど。
おそらく、理解しているんだと思う。
もしかしたら、うちよりも。



481 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:56


「…まぁだらだらやっててもしょうがないし。パーっと遊んで、そんですっきりした方 
 がいっかな?!」
「そうだよー。さすがよっちゃん!よ、単純!」
「まぁね〜っておい!…んで?どこ行く?遊園地でも行く?」
「あ、美貴温泉行きたいんだ〜。」
「あぁ温泉…えぇ?この暑いのに?!…なんでだよぉ〜もっとせっかくなんだからさぁ〜
 こうウキウキするような、若者らしい場所にさぁ〜」
「…美貴とよっちゃんにそういう場所、あんま似合わなくない?」
「…ですよね。じゃー旅館とか探さなきゃね〜」
「あぁ、もう決めてあるんだ。予約もしてあるし。後はよっちゃんがお母さんに
 おこづかいを2ヶ月ぶんくらい前借りすればOK〜♪」
「わぁすご〜い…で、その後の2ヶ月、うちはどうやって暮らすの…?」


なんだか行く前から帰ってきた後が憂鬱なんだけど、でもこの部屋で過ごすより、
ぞのほうがずっといい気もしたんだ。



482 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 02:59



「よっすぃ〜、最近成績どうなの?ランク上がった?模試の結果っていつだっけ。」

ミキティが帰った後、入れ替わるようにやってきた柴っちゃんから、今日も厳しいチェックが入る。

あれ以来、うちらの会話のほとんどは勉強のこと。
前はこういうこと言われると、もっと窮屈に感じたけどね。
今はむしろホッとする。
お互いの傷口に、決して触れることがないから。


「ま、まぁボチボチだって〜。心配ないない。」
「…あやしい。まぁいいや。今度の休み、過去問やろっか。私ついててあげるから。」
「うん。あ、…今度の休み?」
「え?うん。なに?」



483 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 03:00


「あー…や、が、合宿!!そうだ予備校の合宿があるんだよね〜、泊まりこみで朝から晩まで勉強勉強。いやぁまいったなぁ。」
「ほんとに?…ならしょうがないけど。がんばってきてね。いってらっしゃい。」


別に正直に言ってしまってもよかったのかもしれない。
ただ、なんとなく。
今はミキティの名前を出しづらくて。


「し、柴っちゃんもさ。うちのこと気にせず遊んじゃいなよ。せっかくの連休だし。
 いっぱいデートできるじゃん。」



484 名前:sweet home 投稿日:2004/08/07(土) 03:01



しまった。
自分が動揺するあまり、軽はずみなことを。

おそるおそる彼女の顔を見ると、あいまいに微笑んでいた。




突き刺さるような胸の痛みは、気分転換をすれば消えるんだろうか。
今はこんなに辛くても、いつか君を忘れて、他の誰かを想えるんだろうか。


うちを忘れてしまった君に。
教えてほしい。






485 名前:ツースリー 投稿日:2004/08/07(土) 03:05
以上、第7話です。

>>472 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!ほんと美貴たん・゚・(ノД`)・゚・。

>>473 もも さま
いつもありがとうございます。ご期待に沿えずすいません…
486 名前:もも 投稿日:2004/08/09(月) 05:50
更新お疲れさまです。

すいませんmm(_ _)mm自分の願望を書いてしまい。

よっすぃ〜と柴ちゃんを、暖かく見守って行きます。
(二人には幸せになってほしいなぁ・・・・・)

作者さま、続きを楽しみに待ってます。
487 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 00:01
作者様が天才かと思う今日この頃ですw

続きも期待しております。
488 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 03:55



「やっぱり…ごめんなさい…」
「そっか…わかった。」


大切にしてくれたのに。
優しくしてくれたのに、苦しくなるぐらいに。

ほんとにごめんなさい。


じゃあ、と去って行く彼の姿を、私はきっと忘れない。
それが、償いになるはずもないけど。




489 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 03:56


好きだと言われたとき、ほんとは断ろうと思った。
…断るべきだった。

甘えてはいけなかったのに。
違う誰かを想っていても、それでもいいと言ってくれた彼の気持ちに。

絶対、重ねてはいけなかったのに。
それと、自分の、彼女への想いを。


でも、実らない恋のつらさを、私は知っていたから。
とても、そのままになんてしておけなくて。

好きになれればいいと思った。
もし私が彼を好きになれば、それで全てうまくいく。

彼もそれを待ってくれると言ったから。
…そんなところまで、彼と私の恋はよく似ていた。




490 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 03:58


それに、あるって信じたかった。
例え始めは違っていても、相手が想ってくれるうちに、お互いに同じ気持ちが生まれる。
そういうことだって、きっとあるんだって信じたかった。

私と、よっすぃ〜の間には、決してなかったから。


よっすぃ〜に見られたことが、いいチャンスだった。
これをきっかけに彼女への想いを振り切って、彼の気持ちに応えていけば。


そうなるはずだったのに、そうするべきだったのに。
…やっぱり。

私の心が変化することはなくて。


自分が彼の想いを受け止められないということは、
同時に、
よっすぃ〜も私の気持ちに、結局応えてくれることはないんだと。
証明してしまっているようで。

随分前に隠したはずの胸の傷がうずきだして。
チクチク痛かった。




491 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 03:59


「うお!!すげ〜かっけ〜!!」
「でしょでしょ?!」
「ほほっ。ありがとうございます。それじゃあどうぞごゆっくり。」

ミキティが勝手に予約を入れていた旅館は、造りがめちゃくちゃかっこよくて。
和風なのに新しい雰囲気っつーか、いやおしゃれだなぁ。

「すげーマジすげー。ミキティこんなとこよく知ってたねぇ。いやぁ参った。」
「知ってたっていうか、なんかね、インテリア系の雑誌読んでたら、ここ、
 すごい取り上げられててさ。よっちゃん家建てたいとか言ってたじゃん?だから勉強に
 なるかなって。」
「へ〜そうなんだ。てっきりうちは旅行会社のパンフレットでも見て決めたのかと…
 ていうかミキティ、インテリア雑誌なんて読むんだね。」
「え、うん、まぁ…あ、お風呂もすごいらしいよ!露天風呂いこうよ露天!」
「露天かっけ〜!!」


よぉし、ここはひとつ、今の複雑な気持ちをキレイに洗い流して…楽しむぞぉ〜!!



492 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:02


「あててぇっ…」
「ふざけてるからそんなんなるんだよ。いい年して、全く…」

ミキティが言う通りお風呂もめちゃステキで。
うれしくってジャンプしたら岩におしりをぶつけまして…
絶対青くなってるよぉ…とほほ。

「とりあえず売店いってシップないか聞いてみようよ。ほんとよっちゃん、世話がやける   
 んだから…」
「はい…すいません…。」

売店の中はやっぱりお土産ばっかりで、多少の常備薬、胃薬とかは置いてあっても、
シップとかサロンパスは売ってなくって。
途方に(うちだけが)くれていると、
最初に部屋に案内してくれた、おばさんの仲居さんが通りかかって声をかけてくれた。



493 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:03


「どうかなさいました?」
「あ、さっきの仲居さん…実はこのアホがお風呂でおしりを…」
「わぁ!!み、ミキティ!!いや、違うんです、そのこ、腰をちょっとぶつけちゃって…」
「まぁ、大変。私のでよかったらシップお分けしましょうか?」
「え、いいんですか?」
「ええ。私もね、腰が痛むもので。布団の上げ下ろしとか、結構こたえてましてねぇ。
 それじゃあお部屋のほうに、後で置いておきますね。」
「あぁ、すいません、ほんとに。よろしくお願いします。」

助かったぁ。よしこのかわいいおしりが守られたぁ。

「別にかわいくはないけど…ま、よかったね、よっちゃん。じゃ行こっか。」
「あ、待って。せめておわびになんか、売店の売上に貢献しようよ。
 …おぉ、このイカのストラップなんていいんじゃない?『暗闇で光る』!!」
「あぁ。まぁいいんじゃない?買えば?」
「えぇ?!うちが買うの?」
「は?!なんで美貴が買わなきゃなんないの?!」
「だってミキティするめとか好きじゃん?似合うよ、きっと。」



494 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:04


「………」
「いてて!お、おしりつねんないでよ!わかった、じゃあおそろいで買おうよ。
 それならミキティも恥ずかしくなくイカがつけられるっしょ?」
「どっちにしても恥ずかしいけど…まぁいいや。じゃあよっちゃんさんのおごりね。」
「えぇ〜…わかったよ。じゃあこれ二つくださーい。ミキティ、ちゃんとつけなよね。」
「…つけるよ。よっちゃんもね?」
「うん。OK牧場!」


夜ご飯もすっごいおいしくて、食べ過ぎてしまったら、運動運動、ってミキティはうちを
ひっぱって、室内をグルグル散歩させた。
でもそのおかげで、建物の中をいろいろ見ることができて、ほんとうに勉強になった。

気持ち的に、最近あんまり乗ってなかったんだけど。
でもやっぱり家建てたいなって、改めて思ったよ。
…もうその必要はないのかもしれないけど。
ありがとね、ミキティ。


「…なに、これ。」
「…ありゃりゃ。」

と、そんなさわやかな気持ちでお部屋に戻って、さぁ寝よっか〜とふすまを開けると、
お布団がひとつ、枕がふたつ…ってえぇ?!な、なんで?



495 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:05


「…もしかして…よっちゃん男だと思われたんじゃない?そんで、うちらのことカップル
 だと思って、こんな…」
「え?そ、そんなんありえんの?」
「予約のときは名前しか言わないし…たぶん布団ひいたのあの仲居さんだよね?
 さっき売店で会ったときとかさ、美貴よっちゃんの腕、つかんだりしてたから…
 たぶん。」
「OH〜びっくりくりくりくりまんじゅぅ〜」
「で、電話してお布団もう一個出してもらうよ!!」
「え、待って待ってミキティ!あの仲居さんさ、腰が痛むとか言ってたじゃん?
 うちシップももらったし…なんか悪いよ。いいじゃん、別にこれで。
 前ミキティん家泊まったときもさ、一緒に寝たじゃん。」
「そ、そうだけど…なんか…」

「なぁ〜にミキティったらぁ。照れるなよぉこの〜」
「べ、別に照れてないから!じゃあ寝ようよ、さっさと寝よう!」
「は〜い♪」



496 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:06


なんかめずらしく動揺してるミキティがおもしろくて、かまってやった。
別に気にすることないのにね〜よいしょっと…

「…ちょっと。こっち向かないでよ。」
「え?だっておしり痛いからまっすぐ寝らんないんだもん。」
「じゃ、あっち向いて寝なよ。」
「…冷たいなぁ。わかったよ。じゃ、おやすみ〜」
「おやすみ…」



誰かと一緒に眠るって結構いいよね。
うちは、実はそういうのってあんまりない。
幼なじみの彼女とは小さいころは一緒に寝たりもしたけど。
中学生ぐらいになってからは、一緒に寝ることはもちろんなかったし、
柴っちゃんが、うちの前で眠ることもなかった。



497 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:07


あのころは気にしてなかったけど。
それって意識されてたってことだったのかな。

そう考えると、なんかさみしいような、恥ずかしいような気持ちになった。


「ねぇ…」
「え、あ、なに?」

フイにミキティに呼ばれて、
もしかして柴っちゃんのことを考えてるのがばれたのかと思って、
そんなことあるわけないけど、ビックリしてしまった。



498 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:08


「なに、狭い?」
「…ううん、そうじゃなくて…やっぱそっち向かないで。」
「え?」

そ、そんなセリフ…ドキっとするじゃん。いくらうちとミキティでもさぁ。

「あ、ちが、だ、だってなんか背中向けて寝られるとさ、…む、ムカツクじゃん!」
「へぇ?!…はぁ。そう?」
「な、なんか美貴、あきられた奥さんみたいじゃない?!そんなんヤダし!」
「何じゃそりゃ…とかいってほんとは寂しいんじゃないの〜お〜美貴ちゃんヨチヨチ。」
「?!や、やっぱいい!!こっち向かなくていい!!永久に美貴のほう見ないで!」
「いいっていいって〜素直になりなよ〜さぁよっちゃんさんの胸に飛び込んでおいで。」
「うざい!もう、いい!…よっちゃんのバカ!」



499 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:09


あ。
今、自然に、笑えてることに気づいた。

うちは幸せだな。
失恋して、落ち込んでる自分を、こんなに救ってくれる人がいて。

…うちが柴っちゃんをふったとき。
彼女にもそういう存在があったんだろうか。

ふと、そんなことを思った。

もしかして一人で抱え込んで、ずっと傷ついたまま、何年もいたのなら。

そして、そんな彼女を癒してくれたのが、あの彼氏なら。



500 名前:sweet home 投稿日:2004/08/14(土) 04:11


うちはとても、ヤキモチなんか焼ける立場じゃない。

むしろその彼に、お礼を言わなけりゃいけない。
でも、そんなこと言えないから。


うちから、一番大切なひとを、奪ってくれてありがとうなんて。
絶対言えるはずないから。


だからせめて、幸せを願うよ。

君が、他の誰かと一緒に。
幸せに眠る夜を願うよ。


それはたぶん、

うちにとって最高の悲しみだけど。






501 名前:ツースリー 投稿日:2004/08/14(土) 04:16
以上、第8話です。

>>486 もも さま
いつもありがとうございます。いえ、そんなそんな気になさらないでください!
よっすぃ〜と柴ちゃん、ぜひとも見守ってあげてください♪

>>487 名無飼育さん  さま
レスありがとうございます!そんなとんでもないです…お恥ずかしいです…
続き更新しましたので、また読んでいただけたらうれしいです。
502 名前:もも 投稿日:2004/08/17(火) 23:03
更新お疲れさまです

よっすぃ〜と柴ちゃんには早く幸せになってほしい

ああ!!(0^〜^)柴に萌えさせてください
503 名前:雨男。 投稿日:2004/08/21(土) 04:39
更新お疲れ様です!
よししば最高ですね!めちゃくちゃハマりました!もう最高です!!!
二人のもどかしい気持ちがなんとも・・・ミキティも絡んでくるんでしょうかね?
とても楽しみにしていますのでマイペースで頑張ってください!
504 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:01



背中が語る。

なんて、中年のおっさんじゃないんだから。

でも、よっちゃんの背中を見てたら、やっぱり語ってるような気がして。

きっと柴田先輩のことを考えてる。
隣で寝てるはずなのに、どっか、遠くに、遠くに、行っちゃいそう、だったから。

耐えらんなくて、…こっち見て、なんて。
美貴らしくない、全くらしくない。


鈍感なよっちゃんのおかげで。
こんなことで、美貴とよっちゃんの関係が変わったりしなくてよかった。
…よかった。



505 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:02


予備校で会ったころ、よっちゃんは美貴がにらんでる!って思ってたらしいけど。
ほんとに失礼な話だよ。

…熱い視線を送ってたっていうのに。

初めて見たときから、キレイな子だなぁとは思ってた。
あと、ちょっと変な子だ、って。


へらへら笑ってるのに、どこかバリヤーみたいなのがあって。
近づきやすそうなのに、決してそばには近づけない。

だから余計近づきたくって。
よっちゃんのバリヤーの中に入ったら、どんな景色なんだろうなって。

親しくなればなるほど、お互いの似ているところを、似てないところを
見つければ見つけるほど、


好きになってくのがわかった。



506 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:03


初めて家に遊びに行った時、ちょっとよっちゃんのバリヤーのなかに入れた気がして
うれしかった。

お互いまだ受験生だったから、一応参考書を開いてはいたけど、
どっちかが勉強してるとどっちかがジャマして、ちっともはかどらなかったっけ。


そんなときにやってきた、彼女。
美貴はようやくよっちゃんの部屋に入れるようになったばかりなのに、
幼なじみだとよっちゃんが紹介した彼女は、
突然やってきても、まったく違和感なく、
よっちゃんの部屋の中に、よっちゃんの中に、溶け込んだ。


幼なじみ、な、だけじゃないじゃん。絶対。

あぁ、これはやばいな。
たぶん美貴の本能、みたいなものが。
そう教えてくれた。




507 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:07



「…藤本さん?」
「あ、…柴田せんぱい。」

テストが終わった後の、人の少ない大学内の図書館で、彼女に会った。
よっすぃ〜の…きっと今一番そばにいる、彼女に。

「どうしたの?なんか調べもの?」
「あ〜いや、別にそれほどのもんじゃあ。」

笑いながら、そっと閉じた本の表紙から、それが建築関係の内容なんだとわかった。
思わず視線をそらすと、おそらく彼女のものであるケータイに、変わったストラップが
ついているのを見つけて、話題を変える。

「すごい、変わったストラップじゃない?イカ?」
「え?あぁ〜これよっちゃんが買えっていったんですよ〜温泉で。美貴の趣味じゃない
 ですよ〜。」



508 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:08


「…温泉?温泉…行ったの?…いつ?」
「え?!あ…こないだの…連休に…」

おそらく藤本さんは私が知らないということを、知らなかったんだろう。
じゃなきゃ、口をすべらすはずがない。
彼女は、そんな卑怯な子じゃないから。
…私と違って。

ウソだったんだ。
予備校の合宿だなんて。
ほんとは…藤本さんと。


暗い表情をしてしまったんだろうか。
慌てたように、彼女が声を出した。

「あの!ちがうんです!美貴がさそって…その、旅館が、建物がすごい、有名で。
 よっちゃん、将来家建てるのに参考になるかなって…それだけで、ほんとに。」
「将来?…家、建てるの?よっすぃ〜。」



509 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:08


なにひとつ知らない。大切なことは。
私、よっすぃ〜の
ずっと、隣にいたはずだったのに。

「よっちゃん…そういう…の。言ってないん…ですか?」
「え?うん…」

前に、何度も聞いたけど。
どうして建築に興味があるのかって。
でも、ほんとのことは教えてくれなかった。
藤本さんには、言ってたんだね。

「あの、たぶん、よっちゃん言いづらかったんだと思います。…柴田先輩には。
 だからその…」
「あ、ごめんね。そんな気使わないで?ごめんね…」



510 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:11


藤本さんは、すごくいい子で。
正直で、真っ直ぐで。
きっと、よっすぃ〜を通して知り合ったんじゃなければ、もっと親しく、友達になれていたかもしれない。
今でも、充分親しくなったとは思うけど。

それでも、決して。
一年以上面識があるのに、よっすぃ〜が私たちを呼ぶように、お互いをあだ名で呼び合おうとしないところが。
私たちの関係を表していた。

ライバル、っていう響きに、意味はすごく似ているのかもしれないけど。
それとは決定的に違う。

…私に、戦う意思はないから。




511 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:13


現像された、ミキティと行った温泉の写真を、アルバムにそ〜っと入れる。
手あかがつかないようにね。そういうの結構神経質だから、うち。気になっちゃうのよ。

「よっすぃ〜?…入っていい?」
「あ、ちょ、ちょっとまって!!…どうぞ〜」

急いで写真をしまい、問題集を出して、わずかにある、解き終わって黒くなったページを開く。
いかにも勉強してました!ってアピールするように。

「おかえり、柴っちゃん。早かったね。」
「うん…そうかな。そうかも。」

なんじゃそりゃ〜って笑いながら、気配で彼女が後ろのクッションのあたりに座ったのを感じる。
よし、今日もがんばるぞ!
幼なじみとして接するように、無事にこの時間をやり過ごせるようにって、
小さく誓う。

それが結構、最近の日課。



512 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:13


「…はかどってる?勉強。」
「おぉ〜バッチリだよぉ〜見て?この問題集。ちゃんとやってるっしょ?」


起き上がって、机をのぞきこんだ彼女の顔が曇る。
…あれ?
ほめられると思ったのに…まさか前もこのページ見せたことあったっけ?やばっ

「あ〜こ、これこないだ勉強したとこだった!えっとね〜今日やったのはね、えっと…」
「ストラップ…代えたんだ。」
「え?!あ…なんだケータイ見てたの?うん、これびみょ〜でおもしろいっしょ?」
「…今日藤本さんと会ったよ。」
「…え?あぁ。まぁそりゃぁ二人同じ学校だもんね。」
「…このストラップつけてた。」



513 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:14


「うん、そうそうミキティと一緒に買ったんだ〜」
「…温泉で?」

…しまった。
バカだ、うち。

「予備校の合宿なんて。ウソだったんじゃん。なんでそんなウソつくの?」
「いや、…すいません。」
「…出かけるならそういえばいいでしょ?」
「はぁ…でも、だってさ、…勉強さぼることになっちゃうじゃん?なんか言いづらいって  
 いうか…」
「…別に怒ったりしないよ。息抜きも必要だろうし。ウソつかれるほうがやだよ。」

なんか。
久しぶりに、柴っちゃんがうちに感情を出すところを見たっていうか。
それが新鮮で、なつかしくて、言い訳も忘れて、ただじっと見つめてしまった。



514 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:15


「…なに?」
「え?い、いや…すみません。」

こわ。
でも少しうれしいなんて。変なの。

「それに…よっすぃ〜、家建てたい…って?」
「あ、いやそれはどうなるか…まぁ、うん。」
「なんでそういうの…教えてくれないの?」
「なんでって…あんま人に言うのはね…恥ずかしいし。」
「…藤本さんには言うのに。」

全く。
これじゃカップルのケンカだよ。
ありえないとわかっていても、それがなんかむずがゆくて、うれしくて。
つい悪乗りしてしまった。



515 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:16


「…もう〜柴っちゃん。ヤキモチじゃん、それ。ミキティとうちが出かけたのがヤだった 
 みたいだよ。」

バカじゃないの、なんて。
つっこまれるのを待ってたのに。


なんでそんな、顔すんの?

今の、その顔は。
切なそうに、悲しそうにゆがんだその顔は。
まるでうちが別れをつげた、あの日の君のようで。


たまらなくなって―――きつく抱き寄せてしまった―――


「…やめて!!」




516 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:18


うちを突き放したのは、あの日の君なのか。今の君なのか。
もうわからなくて。
離された腕を広げたまま、ボーっと、ただ小さく動く、彼女の唇を読む。


「…冗談でも、そういうことしないで…」


目を見て言われなかったのが、せめてもの救いかな。
いや、充分絶望的じゃん。

おそらく最初で最後の、心からの、彼女の拒絶。



517 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:19


わぁ。
ダメだもう。
ダメなんだ。

わかってたけどわかってたけど。
やばい、まじで。

「ご、ごめんごめん。つい、勢いで。ごめんね?いやぁうち調子にのって…申し訳ない。」
「…ううん。」


これはもう、彼女のためとかじゃなくて、自分を守るために。
おちゃらけるしか、ごまかすしかなかった。


いつのまにか彼女が去って行って一人になった部屋の中で。
一瞬だけ触れた、ぬくもりを思い出す。



518 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:20


柔らかい体。
少し、上がった体温のせいで、ふわっと香水のにおいがした。

…毎日一緒にいるとわかんないけど。
過ぎていった年月は、小さかった彼女を確実に大人にしていった。
抱きしめたとき、いまさらそれをすごく感じてしまって。


そうだよね、彼氏とかいるんだしね。
あんな大人の男の人にとって、恋愛をする対象になるぐらい。
彼女もまた、大人の女の人なんだ。


いつまでも子供なのはうちだけ。
欲しがる勇気もないくせに、誰にも渡したくなくて。



519 名前:sweet home 投稿日:2004/08/22(日) 15:21



…冗談なんかじゃないよ。
全然、本気だよ。
めちゃめちゃ本気で…

「…好きだよ…柴っちゃんが。」



その言葉があの日の君に届いたなら。
きっと今、この腕の中はからっぽじゃなかったのに。





520 名前:ツースリー 投稿日:2004/08/22(日) 15:30
以上、第9話です。

>>502 もも さま
いつもありがとうございます。ももさんのレスのよししばのよっすぃ〜だけ
顔文字だったのがすごくかわいかったですwがんばりますので、よろしくお願いします。

>>503 雨男。 さま
レスありがとうございます!ハマっていただけたなんてうれしいです。
温かいお言葉ありがとうございます。
がんばりますので、またぜひ読んでいただけたらうれしいです。
521 名前:もも 投稿日:2004/08/23(月) 04:54
更新お疲れさまです。

切なくて。・゚・(ノД`)・゚・。が出そうです。
(0^〜^)&川σ_σ||ちゃん

作者さん、いつも楽しみにしていますよ。
次回の更新をお待ちしてます。
522 名前:458 投稿日:2004/08/27(金) 21:42
更新お疲れさまです。
うーん、切なくてもどかしいです。
早く幸せになれよーと叫んでしまいます。

次回の更新も楽しみにしています。頑張って下さい。
523 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:52


「よっちゃん…ごめんね。」
「いいよ、そんな。ミキティが謝ることじゃないって。」

悪いのはうちだよ。
…ウソをついたうちが悪い。


状況を心配して、ミキティがやってきた。
彼女に申し訳なさそうな顔をさせたくないのに、うまく笑えなくて。
余計に心配をさせてしまうのが、歯がゆかった。

「でも…なんで?」
「え?」
「なんで…言わなかったの?先輩に。美貴と…温泉行くって。」



524 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:55


「なんで…。んーやっぱさ、受験勉強さぼってんのバレんのやだったからさー。
 …でも、こんなんなるんなら素直に言っておけばよかったね。バカだわ…うち。」
「…それだけ?」
「へ?」
「勉強さぼって…怒られるのヤだったから?ほんと…それだけ、なの?」
「………」

鋭くて勘の良い彼女は、ときどきすごいところに目をつける。
例えば、本人も気づいていない、心の裏側んとことか。

おかげでうちは、こうして自分の新しい気持ちを見つけていく。

「…いや。自分でも…なんて説明したらいいか分かんないんだけどさ。
 …柴っちゃんに、彼氏がいること、ミキティ知ってる、よね?」
「うん…。」
「うち、ずっと知らなかったんだ。毎日会って、話して…それでも全然。
 隠されてることも気づかなかった。だから…その…悔しい…違うな、さみしい、
みたいな。…だったらうちも、秘密にしておくことがあってもいいかなって…
いちいち、教えることないと思った、だって柴っちゃんだって、大切なこと、
教えてくれなかったんだから。
…って、駄々っ子か、うちは。やっぱバカだ…」



525 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:56


普通対抗するかぁ?そんなトコ。
我ながら情けない…
しかも恋人いるの隠されたから、温泉行くの内緒にするって…意味わかんねー。
子供の言動じゃん。


「…そっか。それが…答え、なのかな。」
「へ?なんの?」
「ん…。ねぇよっちゃんさん。」
「はい?」
「美貴…よっちゃんのこと好きだよ…大好きだよ。」
「え?!」
「…だから…ずっと友達でいようね?このまま…変わらずに、友達でいてね?」
「あ、あぁ。なんだ…もちもち!こちらこそ。」
「…よし!じゃあそういうことで。…遅いし、今日は帰るよ。また、ね。」
「ごめんね遅くまで引き止めて。送ってくよ。」
「ううん。一人で帰れるよ。ありがと。」
「え、でも…。わかった、気をつけてね?」
「はいは〜い。じゃね。」




526 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:57



暗い道は好きじゃないけど、でもそれよりもっと、よっちゃんの優しさに触れてしまう
ほうが怖かった。


柴田先輩の表情を見たときから、覚悟はしてた。
おそらく、はがれた仮面は、もう二度とくっつかないから。
きっと、彼女がよっちゃんにほんとの姿を見せるのはもうすぐ。
そしたら、美貴に勝ち目はない、はずだった。

でも、もしも。
ちょっとでもよっちゃんが、美貴との関係を意識してくれたんだったら。
それでもがんばってみようか、なんて。

前向きなようで後ろ向き。
勇気があるようで、すっごく臆病。


ほんとの美貴は、案外こんなものなのかもしれないな。




527 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:58


結局、よっちゃんが内緒にしたかったのは、美貴との旅行、だったからじゃなくて。
彼女の秘密に対抗するため。
先輩の彼氏の影に、おびえてたからなんだ。


…どうしようもない。
人の気持ちだけは。
なら、せめて。
よっちゃんを、美貴を傷つけない選択を。


大丈夫。
今はなんにも考えられないけど。


一晩眠れば、また日は昇る。
朝になったら、急いでカーテンを開けよう。




528 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:59


会わないようにしようとすりゃー、なんとかなるもんだわ。

3年前に戻ったみたい。
ただ、避けてるのが君じゃなくて、うちだってだけで。

会わせる顔、ないじゃん?
だから毎日、慌ただしい生活を送る。

朝早くに起きて、予備校の自習室へ。
閉館されるギリっギリまでねばった後、ゆ〜っくり歩いて家まで帰る。
それでも部屋に柴っちゃんが来たってときは、寝たふりしたり、ミキティに電話したり
して、なるべく話をしないように、する。

そうしていたら、そのうち部屋に来ることもなくなってしまった。
…いや、これで、いいんだ。


だってまともに会ったら、また抱きしめたくなってしまうから。



529 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 14:59


『お勉強もいいけど、今日は早く帰りなさいよ?』

最近すっかり受験生らしくなったうちの生活ぶりに、お母さんも感心してくれている
みたい。
前なら予備校から帰ってくるなって言ってたもん…。

じゃあ久しぶりに、早めに帰ろうかな。
もう、彼女が来ることも、そうない、はずだから。


「ただいま〜」
「…よっすぃ〜…お帰り…」

へ?!

「な、なんで柴っちゃん、うちにいるの?」
「え?…聞いてないの?おばさん達とうちの親、今朝旅行に出かけたんだよ?」
「今朝?!…い、家にいたはず…そっかうちが予備校行った後か…」
「最近よっすぃ〜がんばってるもんね…」
「い、いや、まぁ、その…」



530 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:00


「………」
「………」

「あ、それでね、ご飯、よっすぃ〜と食べなさいって言われて…なんか作ろうと思って
来たんだけど…」
「え、い、いや、いいよわざわざ。うちはなんか適当に…」
「で、でもお金も二人分もらっちゃったし…食べたくない?」
「へ?そ、そんなこと…ないけど。」
「…じゃ、食べよ?」
「…うん。」

だからお母さん早く帰れって言ったのか…なら出かけるって言ってくれればよかったのに。
そしたらミキティん家に泊まるとか、なんか対策を…

いや。
いつまでも、逃げてたらダメだよね。

ちゃんと、話しなきゃ。
うちが柴っちゃんのこと、どう思ってるのかを。
うちはどうしたいのかを、…どうしたいんだろう。


あれ?
…柴っちゃん…料理できたっけ?



531 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:01


「できたよ〜よっすぃ。」
「は、は〜い。」

「オムライス…かぁ。」
なるほど。これなら高校のとき、調理実習で作ったし、ね。

「なに?文句あるの?」
「え、いえいえ。いただきま〜す。」
「…おいしい?」
「うん、おいしいよ。」
「やった。これだけはね、おいしいって言われるんだ。」
「…誰に?」

…あちゃ。
やっちゃった。

家に入ってから。
彼女がいつも通りふるまおうとしてたのには気づいていたけど。

無理に明るく接しようとする彼女。
それに付き合おうかとも思ったんだけど。



532 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:02


やっぱり付き合いきれない。
今さら嫉妬を
隠すことなんて、できない。


とまどった彼女が何も答えないから、会話はそこで途切れてしまって。


さわやかな彼氏も食べたであろう、手作りのオムライスを見つめていたら。
…ふいに違和感を覚えた。なんだろう。




533 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:02

あぁ、旗が立っていないんだ。
幼いころに食べた、レストランのオムライスには、いつも旗が立っていた。

よくある、お子様ランチのオムライス。
あれを、最後に食べたのはいつだっけ。

おそらくみんな、覚えていないだろう。
最後のお子様ランチなんて。


大人になれば、食べれなくなる、いつかはなくなるものだと分かっていても。
ありがたく思ったりしなかった。
あたりまえに、また食べれると思って。


最後のときは、絶対あったはずなのに。
もう思い出せない。




534 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:03


同じように。
今、うちの前で目を伏せる彼女の本当の笑顔を。

最後に見た日がいつだったかも、うちは思い出せないんだ。


…もっと噛み締めて食べればよかったなぁ、お子様ランチのオムライス。

もったいなかったな。


彼女が作ったオムライスさえも、彼女に重ねてしまう。
もう、手遅れかなぁと、少し笑ってしまった。




535 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:04


「ごちそうさま…」
「ううん…。」


早く離れたくて、焦って片づけをして、彼女が帰るのを待ったけど。
彼女も何かを待っているようで。

ガマン比べになってしまった。


…こうしていると、耐え切れなくて。
今まで、柴っちゃんにしたこと、全部消してしまいたくなって。
逃げたくなって…弱い心がささやく。…逃げてしまおう。



536 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:04


「ごめん柴っちゃん…うち部屋戻って勉強するから…」
「あ…よっすぃ〜、ちょっと待って?話…したいの。」
「や、ごめん、今日はもう。」
「…でも、よっすぃ〜ちっとも家にいないし、ずっと、話せないじゃない。」
「別に…話すことないし。」
「…ほんとにそう思ってるの?」
「思ってるよ。」
「…うそ。」
「…なに?これ以上、どうしろっていうの?…悪かったね。こないだはあんなことして。
 抱きしめたりして悪かったよ。…もう、恋人でもないのにね。」
「よっすぃ〜…」
「…あぁ、でも。恋人のときもダメだったっけ。キスもしなかったもんね、うちら。」



こんなこと、言うはずじゃなかったのに。
今の自分をごまかすために、昔の自分たちの思い出を苦しめた。


もう、これ以上傷つくのも傷つけるのもイヤで。
階段を駆け上がろうとしたとき、空気が振動しているのを感じた。



537 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:06


「柴っちゃん…?」

まさか、そんなはず。
でも。

「柴っちゃん…泣いてんの?」

そんな姿、子供のころ以来、見せたことなかったのに。


「…よっすぃ〜は…」
「…え?」
「よっすぃ〜は…私のこと…好きじゃなかったじゃない…」
「…柴っちゃん…」
「だから…。…それでも、そばにいたくて…」
「………」
「も…どうしたらいいか…わかんなくて…ずっと…」



538 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:06


浮気がばれたとき。
泣かない彼女にイラだった。

悔しくって、泣かせてみたくって。
彼女は決して涙を見せようとしなかったから。
うちのために、泣く彼女が見たくって。


けど。
今、確かに泣いている。
柴っちゃんが、うちの前で。

そしてようやく思い出した。


壊れたガレキの前で、泣いている、小さい彼女を。
あのとき、もう泣かせないって誓ったんだっけ。




539 名前:sweet home 投稿日:2004/08/28(土) 15:07


どうして忘れていたんだろう。

小さいころの柴っちゃんも。
今の柴っちゃんも。

おんなじ人なんだ。
うちにとって、ただ一人の。


わかったことは。

大切な人が泣いているのに
抱きしめることができないのは

めちゃめちゃ苦しい。

それに。

もっと早くに、気づけばよかった。





540 名前:ツースリー 投稿日:2004/08/28(土) 15:12
以上、第10話です。
切るところが見つからなくて、長々と更新してしまいました…
次か、その次で完結予定です。はっきりしなくてすみません。

>>521 もも さま
おぉ、こんどは二人とも顔文字でかわいいですw残り、あと少しなんですが、
どうぞよろしくお願いします!

>>522 458 さま
レスありがとうございます!今回もまたちょっともどかしいかもしれません…
残りあと少しですので、どうぞよろしくお願いします!
541 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/28(土) 16:00
更新お疲れ様です。

いやぁ〜(・∀・)イイ!すごくいい!
よっすぃ〜もちっと素直になれよ!w
542 名前:雨男。 投稿日:2004/08/29(日) 03:28
更新お疲れ様です!いつも楽しく読ませて頂いてます。

いやもうみんな切ないですねぇ(涙)。
果たして二人は幸せになれるんでしょうか?
そしてよっすぃ〜は大学に合格できるんでしょうか?

とにかく展開が気になってます(笑)。
あとさり気に藤本さんのポジションが好きです(笑)。

では次回の更新も頑張ってください!
543 名前:もも 投稿日:2004/08/29(日) 06:26
更新お疲れさまです。

(0^〜^)愛してると言ってくれ

更新が待ちどうしいっす!!
544 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:44



言うはずじゃなかったの。あのときは、まだ。


…好きだなんて。




545 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:45


初めて会ったときのこと、
きっと覚えてないよね。
よっすぃ〜はまだ小さかったし。…私もだけど。

最初はね、なついてくれなかったんだよ?
こんにちは、って言っても、一緒に遊ぼうって言っても、返事もしてくれなくて。

段々悲しくなって、そのうち私が泣き出したら、よっすぃ〜が、頭をね、なでてくれたの。
よしよしって。
…泣かせたの自分のくせして。

でも…うれしかった。すっごく、うれしかった。


たぶん、そのときからかな。
…よっすぃ〜のちっちゃい手、あったかかった。



546 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:46


そのまま、無事に毎日は過ぎて行って、私たちは幼なじみのままで。
でも、よっすぃ〜が高校生になったころ、周りは確実に変わっていった。


私と、よっすぃ〜が変わったわけじゃなかったのに。


私と同じクラスの子が、よっすぃ〜をかっこいいって言ってるのを聞いた。
バレー部の子何人かが、よっすぃ〜を好きらしいって聞いた。

焦ってたの。
誰かにとられちゃうんじゃないかって。
私の、よっすぃ〜なのにって。


今はまだ、言うべきじゃないって思ってた。
でも、もうそんなこと言ってられない。
そんな状況だったの、私の心の中は。

だからあの日、想いをつげた。
好きだって、言ってしまった。
もうずっと昔から、当たり前のようにある、自分の気持ち。



547 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:47


優しいよっすぃ〜は、つきあってくれるって言ってくれて。
素直にうれしかった。でも、素直には喜べなかった。


つきあうっていっても、どうしていいかなんてわかんなくて。
二人とも。
しばらくは、ただ今まで通り、おだやかに過ごしてたけど。



そのうちよっすぃ〜は、…私に触りたがるようになった。
おそらくクラスの子や、部活の子。
よっすぃ〜より、ずっと大人びた子達に影響されて。


イヤなわけじゃなかった。
例えばよっすぃ〜と手をつないだり、キスをしたり。
そんなことになら、私の方が。
ずっと、よっぽど憧れていたんだから。



548 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:49


もし、よっすぃ〜が私を好きで。
それでそうしたいのなら、どんなことでも、迷わず受け止められた。


でも、だってわかっちゃうんだもん。
よっすぃ〜は私を好きじゃないって。
私じゃなくて、別のことに興味があるだけなんだって。

それはすごく辛かったけど。
だけど、こうしてつきあっていたら。
ちょっとづつ、きっと好きになってくれる。

いつかそんな日がきたら。
そのよっすぃ〜に、キスしてほしいと思った。



だけど、そんな関係は、結局うまくはいかなくて。



549 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:51


よっすぃ〜に浮気をしたと言われても、責める気にはならなかった。
その責任は、私にあると思ったから。

よっすぃ〜が、恋とか、愛とか、そういう面で、まだ大人になっていないの、
わかってたのに。
私が答えを求めてしまったから。

こんな結果になってしまったんだ、って。


別れようって言われたら、悲しかったけど。
いやだなんて、言えるわけなかった。


それから会わなくなって、一ヶ月くらい。
このまま、少しずつ、自然に離れていっちゃうのかな、それがいいのかなって
思ったりもしたけど。
よっすぃ〜がいない世界は想像できなくて、したくなくて。


だからあの日、元に戻ろうと思ったの。
甘くて切なかった、幼なじみの関係。
戻ったそこには、切なさしか残ってなかったけど。



550 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:52


それでもその後も、よっすぃ〜が他に誰かとつきあう様子なんかはなくて。
内心ほっとしてた。まだ、希望あるかもって思ってた。


でも、…藤本さんが。

よっすぃ〜、部屋に友達を連れてくるなんてこと、今までなかったのに。
人見知りするはずだったのに、よっすぃ〜の心はどこにもないはずだったのに。


今の私にはない、居心地の良さを。
よっすぃ〜が彼女に感じているんだってわかって。



もう、きっとダメだと思った。



551 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:53


そんなとき…わりと仲の良かった大学の男の子に、…好きだって言われて。
断ろうとしたけど、今の彼の姿が、昔の自分に重なって見えて。
私がよっすぃ〜を想ってたように、彼は私を想ってくれて。
応えてくれなかったよっすぃ〜の代わりに、私が、彼に応えるべきなのかもしれない、
遠い、あるはずもない未来を夢見るよりも、近くにある幸せを大事にするべきだって。


うまくいってたの。
彼と私は。

彼は優しかったし、大切にしてくれて。
きっと、このままならいつか好きになれるって思ってた。
でも、あの日…よっすぃ〜に見られたとき。
すごいショックで、混乱して。
迎えに来てくれた彼のことより、よっすぃ〜が心配だった。
やっぱり彼より、よっすぃ〜のそばにいたいって。
思ってしまった。


もう、自分の気持ちを、ごまかせなくなって。
結局最後は彼を傷つけただけで、終わってしまった。



552 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:54


…その後…また前より気まずくなっちゃったよね、私達。
なんでいっつもこうなっちゃうんだろう。


よっすぃ〜が、うそをついて、温泉に行った事は。
やっぱりヤだったけど、私も隠し事してたし。
それを怒ってたわけじゃないの。
もっとヤだったのは…藤本さんと行ったってことで。


それを指摘されて、固まっていたら、
…なんでかよっすぃ〜は私を抱きしめて。


残酷だと思った。
なんでよっすぃ〜は、いつも。



553 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:56


好きでもないのに、そんなことしないで。
それじゃ結局、三年前となんにも変わらないじゃない。

悔しくて苦しくて、気づいたら突き飛ばしてた。
はっとした。
変わってなかったのは、私だったのかもしれない。


よっすぃ〜の気持ち、確かめる勇気もなくて。
逃げてばっかり。



いろんなことありすぎたから。
もう、これ以上メチャメチャになることはないよね?
私達の関係。



554 名前:sweet home 投稿日:2004/09/04(土) 16:56


だから、
ちゃんと話そう?


教えてよ、よっすぃ〜。



なんで…あんなことしたの…





555 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/04(土) 17:04
以上、第11話です。
やはり一度区切って、次回最終話にさせていただきました。

>>541 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!!よっすぃ〜、素直になれるんでしょうか…
次回最終話ですが、また読んでいただけたらうれしいです!

>>542 雨男。 さま
レスありがとうございます!!ミキティ、気に入っていただけたみたいでうれしいかぎりです♪
次回、やっと最終話です。がんばりますので、ぜひまたよろしくお願いします!!

>>543 もも さま
いつもありがとうございます!ドラマのタイトルを思い出しました〜w
次回、最終話ですが、どうぞよろしくお願いします♪
556 名前:もも 投稿日:2004/09/05(日) 00:29
更新おつかれさま

次回最終話ですか。・゚・(ノД`)・゚・。
早くお互いの気持ちが通じるといいですね。

楽しみに待ってます。(0^〜^)川σ_σ||
557 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/10(金) 01:22
次回最終回ですか・・・

お互いを思う気持ちは変わってないのに、どうしてすれ違っちゃうかなぁ、ともどかしく思っていましたが。
よっすぃも柴ちゃんもコドモの頃とは違って自分の気持ちを自覚した今、あとは伝えるだけ。

二人が勇気を出してハッピーエンドに進んでくれることを願います。

そしてできればミキティにも幸あれ(w
558 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:33


話し終わった柴っちゃんは、力が抜けたみたいに、ソファーに座り込んだ。

「ごめんね…泣いたりして。」

ほんとは、泣いたり、したくなかったのに。

照れたように、ごまかすように笑う。
なんで…いつもそうなんだろう。

「なんで…謝るの。」
「え?」
「別に…泣けばいいじゃん。泣いていいじゃん、泣きたいときは。柴っちゃん…いっつも
 なんかうちの前だと、泣かないし。そういうの…ヤなんだけど…」
「え、…ごめんね?…ん、ごめん。」
「そういうのってさ、いっつも、すげぇ…きつい…きつかった。」

きっと、それは彼女の思いやりなんだと分かっているけど。
でも、それって逆にうちを不安にさせるんだよ。
いつも…あのときも。



559 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:37


「…浮気したのはさ。ほんとにごめん。悪かったって、思ってる。
 …思ってたよ、ずっと。
 でも…浮気は、柴っちゃんのこと好きじゃなかったからとか、そんなんじゃないんだ。
 最初は…確かにそういう、好きとか、うちよくわかんなかったけど。
 段々…わかってきてた。きてたんだ。
 けど、そのうち自分の気持ちより、柴っちゃんの気持ちのほうがわかんなくなって…」

「私の…気持ち?」

「手、繋ごうとしても、…キスしようとしても。柴っちゃん避けるばっかりで。
 …理由も教えてくれなかったし。
 なんか…つきあう前よりも、遠くなったような、気さえしてさ。
 つきあいたいって言ったの、柴っちゃんなのに。柴っちゃんは何がしたいんだろう、
 どうしたいんだろうって…ほんとに…うちのこと好きなのかなって。」



560 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:38


「……よっすぃ…」
「だからって浮気していい理由になんかなんないけどさ、…確かめたかったんだ。
 でも、柴っちゃん泣いたりしないし…お、怒っても…くれなくて。」
「……うん。」
「わ、別れようって…言ったのうちだし…だったけど、ほ、ほんとに別れるなんて…
 そんなつもりじゃ…なかったのに…」
「うん…ごめんね、泣かないで?よっすぃ〜…」

今さらカッコつけようなんて思ってないけどさ。
…かっこわるすぎでしょ?今のうち。
でも…素直になれなかった、逃げてばかりいた今までの自分より、
ずっと、いいんじゃないかな。

ほら、何年かぶりに、温かい彼女の手を感じてる。


「…ごめんね。いっぱい悩ませちゃった…ね。ずっと、泣かずにいたのは、ね
 …よっすぃ〜覚えてないかな?子供のころ、二人でよく行ったお家があったの。」
「…覚えてるよ。」

忘れるはずないよ。
その思い出が、
それだけが壊れたうちらを繋いでくれてるって信じてたんだから。



561 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:39


「ほんと?…すぐ、大人の人に見つかって、そこ取り壊されちゃったんだけどね。
 そのとき、私がお家なくなっちゃうのが悲しくて、わんわん泣いてたら、
 よっすぃ〜、私のこと一生懸命励ますの。泣いちゃだめ、泣いちゃだめだよって。
 変顔したりして…ふふっ。ほんと一生懸命。
 なんか…それ、忘れらんなくて。
 それから…泣きたくなるとね、そのよっすぃ〜が頭に浮かぶの。
 泣いちゃだめだってね、言ってくれたよっすぃ〜。
 だから泣かないでいられたんだよ?…さっきはさすがに我慢できなかったけど。」

「ま、まじで?そっか…へ、変顔とか…うち、ガキのころからしてたのか…」
「ふふ。そうだよ〜。やっぱり覚えてないんじゃない。」
「そ、そんな変顔なんて覚えてないけど…でもあの家は覚えてるよ。」

「うん…。小さいとき、ね?どんなによっすぃ〜と一緒にいても、お家は違うじゃない?
 それって当たり前なんだけど…いつも寂しかった。
 あぁ、同じお家に住みたいなって。そしたらずっと一緒にいられるのになって。
 いつも思ってた。
 だからあのお家見つけて…よっすぃ〜が一緒に住もうって言ってくれて。
 すっごいうれしかったんだよ。…うれしかった。」


そんなふうに思ってくれてたなんて。
ずっと、どこにあるかわからないと思っていた彼女の心は。
いつも、昔から、うちのそばに。
うちだけに、向けられていたんだ。



562 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:41


「じゃあこれからは…一緒にいよ?」
「え?」
「もう絶対…寂しくさせないから…」

そっとソファーの彼女の隣に座って、
うさぎみたいに赤くなった瞳をのぞきこんで。


「好きだよ…」


やっと言えた。
三年かかってしまったけど、
やっとつかまえられるんだ…


「って…な、なんでまたよけんの…?」
「え?ご、ごめん…つい…」

キスしようと顔を近づけたら、後ろにずずっとよけられてしまった。
なんで…



563 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:42


「…やっぱ…うちの気持ち、信じられない?」
「…ううん。…そんな」
「いや。いいよ。…ごめんね、そうだよね…説得力ないよね…」
「ち、違うの。…なんていうか…じ、自信ない…。」
「…自信?」
「ずっとよっすぃ〜には片思いしてるのが当然だったし。私のこと…よっすぃ〜が。
 …好きになってもらえたなんて…なんか」
「…好きだよ?ほんとうに…」
「うん…うれしいんだけど…実感、わかない…」
「そっか…」


仕方ないのかもしれない
それもこれも、今まで、素直じゃなかった自分のせいだし。


「じゃあさ…うちが家建てたらさ!…信じてくれる?」

それなら、信じてもらえるように、がんばるしかない。



564 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:43


「…家?」
「そう、…ふ、二人で住む家!!」
「え?!」
「ずっと…考えてたんだ。あの家が取り壊されたときから。
 …泣いてる、柴っちゃん見たときから。
 いつか、うちが家を建てようって。あんときは子供で…なにもできなかったから。
 大きくなったら、勉強して、自分で家建てるんだって…
 だから大学も、…建築学科目指してる」
「よっすぃ〜…」
「い、家建ったら!実感わくっしょ?!うちが、…柴っちゃん好きだって。
 そしたら、そんときは、うちと」
「よっすぃ〜…浪人生、よね?」
「え?!ま、まぁ…」
「来年…受かればいいけど…もしかしたらダメかもしれないし。その後大学卒業して、
 家が建てられるようになるまで…当分先じゃない。」
「そ、それは…そうだけど…」
「もう…そんなに…待てないよ…」
「…し、柴っちゃん」
「待てないよ…。ずっと、ずっともう何年も…なのにまたなんて…やだよぉ…そんなの」



565 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:44


泣き出した彼女を見て。
幼いころの、変顔してた自分に、勝ったんだと思うと、ちょっとうれしかったり…


「…だって…信じられないんでしょ?」
「でも…でも…」
「…わかった。」


信じさせてあげる。
うちが、こんなに君を好きなこと。

思えば、強引に奪うなんてしたことも考えたこともないけど。


抵抗されても、やめないよ。

触れた唇の柔らかさに涙が出そうになっても、やめないよ。

「んんぅ…ん……ん」


こんなに、おかしいくらい好きなんだって。
もしかしたら伝わったのかもしれない。

そっと彼女の腕が、背中にまわってきたから。



566 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:47


「…信じた?」
「…信じたよ、もぅ…」

苦しかったのか、ちょっとふくれてる彼女を…そっと押し倒す。

「え…ちょ…よっすぃ…待って…」
「待てないよ。…柴っちゃんだって待てないって言ったじゃん。」
「そうだけど…でも」
「…もう、柴っちゃんに拒む権利ないんだよ。うちは…こんなに柴っちゃんが好きなんだ 
 から…」
「………」
「…そうでしょ?」
「…そう、かも」

いや、でもそうかな…って悩んでいる彼女を無視して。
服を脱がせようと手を動かすけど。

緊張は想像をはるかにこえているみたいで。

慌てれば慌てるほど、うまく前に進めない。

そのうち、そんなうちに彼女が気づいたみたいで。


「…脱ごっか?」



567 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:48


「え!!そんな!い、いいよ…」
「でも…大変そうだし…」

だってそりゃーてんぱるよ!
…なんで柴っちゃんそんな落ち着いてんの?


なんか…やりきれなくなって。
起き上がって横を向く。

「ん…よっすぃ〜…?」
「なんか…冷静だね…柴っちゃん。」
「え?」
「いや、別にいいんだけどさ…さすが大人だよね。それに比べて…うちなんか…」

やっぱりからまわりしてしまう自分が情けなくて、恥ずかしくて。
泣きそうになっていると、背中にぬくもりと…激しい鼓動を感じた。



568 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:49


「すげー…ドキドキいってる。」
「当たり前でしょ…冷静なんかじゃないよ。落ち着いてなんかいられないよ。
 …わかってよぉ…」

こういう、一つ一つのサインを。
きっといつも見逃してきたんだ。
うちは。

「…ごめん…」
「ううん。…いい。」
「柴っちゃん…」
「あ、…ちょっと待って。」
「え、こ、今度は何?」
「だって…」

だ、だって?!何?

「やだ…ここ。」



569 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:50


あ、そっかここリビングだし…ね。

「…上、行こっか。」
「うん…」

「あ!!ふ、服はうちが脱がすから!勝手に脱がないでよ?」
「…脱がないよ!バカ…」

よ、よかった…
なんせ三年間もとっておいた楽しみなんだから!!
えへ…





570 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:51


「よっすぃ〜…起きて…も、朝だよ…」


小さいころから変わらないのは。
いつも、うちを起こすのは柴っちゃん。

ただ一つ変わったことは
その柴っちゃんが、今はうちの腕の中にいるってことで。


「だぁ〜…ねむ…」

その事実がうれしくて、
寝ぼけたふりをして、隣の彼女に覆い被さる。

「もぉ…よっすぃ…重い〜」
「むぅ…ハァ。あ〜もう朝か。勉強しなきゃな…昨日さぼっちゃったし。」

うちがこうしてる幸せにひたってる間にも他のライバル達は勉強を…
いや、悪いね〜受験生諸君。ふふん。



571 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:52


「よっすぃ〜…別に…無理することないんだよ?」
「へ?何?」
「大学…建築のこととか、そんなにこだわらなくても。私のために、無理しないで。」

柴っちゃん…でも無理、とかじゃないんだ。

「最初は柴っちゃんのために、って思ってたけど。今はうち自身の夢でもあるんだよ。
 うちもいつか…柴っちゃんと一緒に暮らしたいから。」
「よっすぃ〜…」
「…へへっ。幸せになろうよ〜♪」
「今でも」
「ん?」
「今でも…充分、幸せ…なんだけどな」
「…もっとだよ。もっと…」
「…ん。」


憧れ続けた唇は
何度キスしても飽きることがなくて。

もう…一生離れたくないよ。




572 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:54


「おぉ〜よっちゃん成績上がってんじゃぁ〜ん」
「まぁね〜」

やっぱ愛の力ってヤツ?!

遊びにきたミキティに、愛の力の成果を…いやいや、お勉強の成果を
誉めてもらっていると、柴っちゃんがやってきた。

「あ〜柴っちゃん、いいところに。今ね、ミキティに報告してたんだよ〜成績上がった
 ことと…うちらがつきあってるってこと♪」
「えぇ?…あ…」
「うん、聞いたよ〜…こんなバカなよっちゃんの面倒みれる人、なかなかいないもんね〜
 …よかったね、よっちゃんと…柴っちゃん。あぁ〜…美貴も早く恋人見つけよ」
「ありがとう…ありがとう美貴ちゃん…」



573 名前:sweet home 投稿日:2004/09/13(月) 01:55


ありがとう、ミキティ
うちら、幸せになります…

て、な、なんでそこの二人が熱く抱きあってんの?
うちはうちは?

「世の中にはね、よっちゃんがわかんないことがたぁくさんあるってことだよ。」
「そうそう。」
「ななんだよそれ!!二人してうちのことバカにして…」
「「悔しかったら大学合格してみれば〜」」

ち、ちくしょ〜!!

来年までには決めてやるからなぁ〜




〜fin〜
574 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/13(月) 02:05
以上、sweet home 完結です。

>>556 もも さま
無事終わることができました〜この話は、読んでいただいた方にもどかしい思いを
たくさんさせてしまったんではないかと…。・゚・(ノД`)・゚・。
読んでいただいてありがとうございました。また、次も始めたいと思いますので、
ぜひまたよろしくお願いします♪

>>557 名無飼育さん さま
温かいご感想ありがとうございます!ラスト、ご期待に沿えられているでしょうか…
ほんとに、レスをいただいて、励まされました。ありがとうございます。
また、次も始めたいと思いますので、またぜひよろしくお願いします!

新作もよししばでいきたいと思います。
575 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 04:15
完結お疲れさまです。

二人のすれ違いに毎回やきもきさせられていました。それがまた楽しみだったりしましたが(w
最後はすれ違ってた二人が素直になれてよかったなぁ、と。

新作も吉柴とのことで、楽しみにしています!
このスレを読み始めてから完璧吉柴中毒になってしまいました(w
576 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/13(月) 08:37
隠しついでに初めてレスします。
こちらのスレのおかげで吉柴に目覚めました。
いいお話をありがとうです。
これからもマターリ期待しております。
577 名前:もも 投稿日:2004/09/13(月) 12:54
完結お疲れさまです。

よかったぁ。・゚・(ノД`)・゚・。感涙です!!
正直とっても、はがゆかったですが・・・
終わりよければ全て(0^〜^)(よしw

(0^〜^)川σ_σ||の二人にゾッコンラブ(古っw

私も作者さまの作品でよししばにどっぶりとハマリました。エヘ
次回作も楽しみに待ってます〜
578 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/15(水) 16:10


「あ、ねぇねぇ、もうサークルとか決めた?!
 決まってなかったら…うち入らない?!」

「あゆみ〜ん。疲れたぁ〜」
「ちょっとまいちゃん!ちゃんと勧誘してよ!」

ただでさえ希望者少ないんだから…うちは。

入学式が終わったばかりの大学の広場。

よその部活動やサークルも、看板持ったりビラ配ったりで大忙し。
むむ…負けちゃ〜いられないんだから!

ん?あれ…なにあの人だかり…


「ねぇ、まいちゃん。なんであそこ人集まってんだろ?」
「へ?さぁ…有名な子でもいるんじゃない?高校時代、スポーツやってて、
なんかの大会で優勝したとか〜ほら、期待の新人!てヤツ?」
「…私ちょっと行ってくる!!」
「えぇ?!あ、あゆみ〜ん。そんな子誘ってどうすんのぉ〜…あぁ。」



579 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/15(水) 16:11


だってだって!!
きっと期待の新人ってことは運動神経とかいいんでしょ?いいのよね?
そういう子を求めてたんだってばぁ〜


「ど、どいてどいて!!…あなた…ゴルフ部入らない?!」
「え?!…」



―――ようこそ…弱くて予算もない…わがゴルフ部へ…!!―――




580 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/15(水) 16:12


「…ちょ!よっすぃ〜…ひっつかないでよ!!暑苦しい!変態!!」
「ひどいな〜…柴田先輩。誘ってきたのはそっちなのに…」
「さ、誘ったって部活の勧誘しただけでしょ!…みょ〜な言い方しないでよ!」

「ohよっすぃ〜、すっかりあゆみと仲良しなのね〜」
「えぇ、アヤカ。この通りラブラブアイウォンチュー…」
「…誰がラブラブだぁ〜!!」

こんなことなら…勧誘なんてするんじゃなかった…


確かにあの入学式の人だかりが物語っていたように、
よっすぃ〜は高校時代、バレーの大会で準優勝だかなんだかをした子らしくて、
他の部活やサークルからもたくさん勧誘がきている期待の星だった。
なのに…

「…なんでうちになんか入ったのよ…」
「え?なんか言いました?」
「別に…ってどこ触ってんのよどこ!!いいかげんにしろぉ〜!!」

バッッチィ〜〜ン!!



581 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/15(水) 16:14


「…おぉ…あゆみんすげぇ…」
「ここって…空手部でしたっけ…?」
「あぁ、あさみちゃん、いらっしゃい。ううん、一応ゴルフ部よ。あの二人をのぞいて…」

結局今年うちに入ってきたのは新入生のあさみちゃんと…変態よっすぃ〜。

これでわが大学のゴルフ部には私とまいちゃんと、帰国子女のアヤカと…

「さぁ練習始めるよ〜」
「あれ、飯田さん。卒業したんじゃなかったんですか〜」
「ひ、ひどい!!みんなわかってるくせに…」

成績が悪いわけじゃないのに、その独特の感性を教授に理解してもらえずに、
留年してしまった飯田さんと。


合計、6人が在籍しているんです…。




582 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/15(水) 16:24
以上、三回目の魔法、第1話です。

>>575 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!!吉柴中毒とは…何よりもうれしいお言葉ですw
新作はじめさせていただきましたので、ぜひまたよろしくお願いします!!

>>576 名無飼育さん さま
初レスありがとうございます♪こちらこそ読んでいただいてありがとうございます。
またまた吉柴ですが、どうぞよろしくお願いします!

>>577 もも さま
全てよし(0^〜^)wはまっていただいたなんて…。・゚・(ノД`)・゚・。
新作、まだ始めだけですが、またぜひよろしくお願いします♪
583 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/16(木) 01:19
おぉ、早速新作が始まってる!!
重度の吉柴中毒な自分には早い更新で有り難い限りです(w

今回はサークルが舞台なんですかね?こんなメンバーのサークルがあったらすぐに入ってしまいそうです(爆
次回更新も楽しみにしています〜。
584 名前:もも 投稿日:2004/09/16(木) 12:01
新作だぁ〜うれすぃ〜ウヒ

楽しそうなサークルですね。
私も入りたいです!!(入れろ!入れてmm(_ _)mm)

変態(0^〜^)炸裂でつか?こりゃぁ最高でっせぇ〜
更新が待ちどうしいっす!
585 名前:458 投稿日:2004/09/16(木) 22:47
更新お疲れさまです。

遅くなりましたが前作の完結、おめでとうございます。
そしていい作品をありがとうございました。
さらに新作、おめでとうございます。
そして新作を始めて下さってありがとうございます。
これからも応援させていただきます。頑張って下さい。
586 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 15:57


世の中は結構なゴルフブームで。

特に近頃は有名な若手プロゴルファー、愛ちゃんをきっかけに
女子ゴルフ界には大きな注目が集まっている…はずなんだけど。

まぁそういう本格的にゴルフをやるような子は、もっと体育会系の大学とか、
レッスンスクールなんかに入ってるんだろうし。

別に私だってプロを目指してるってわけじゃない…ゴルフは好きだけどね。


しかしそれにしても…うちの部のこの待遇の悪さ、なんとかなんないの?



587 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 15:58


私達の練習するスペースは、古くて広いだけがとりえの体育館倉庫の中。
ここにネットを張って、試合で使う硬いボールではなく、柔らかい、クッション製の
ボールを打って練習してる。

…だって強い打球なんか打って、ネット破けたりしたら危ないし…怖いし…

つまりテニスなんかでいう壁打ち?に近い。

うぅ…ちゃんとした練習場で練習したいよぅ…
いや、うちの大学にもあるにはあるんだけどね…練習場。
でもわけあって、私達はそこを使うことはできない。


よその場所、探してもいいんだけど借りたらお金かかるよなぁー
予算ないしなぁ…どうし…

「…柴田先輩、まだ残ってたんですか。」
「わっ!!び、びっくりしたぁ…の、残ってちゃ悪い?!」
「いえ、そんな…いやでもこんな遅くに、強盗でも出たら大変ですよ…危ない危ない。
よかったですね、入ってきたのがうちで。」
「…私からしたら強盗もよっすぃ〜も同じくらい危険なんだけど。」
「キャーひっでぇ〜!!」



588 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 15:59


いや、むしろ、お金狙いの強盗よりも、か、体狙いのよっすぃ〜が背後にいる
ことのほうが、恐ろしいのかも…


ってよっすぃ〜こそ、こんな時間にどうしたの?


「あぁ、うちはちょっとバイクのカギを忘れたもんで…先輩、いつもこんな遅くまで練習  
してるんですか?」
「え、うんまぁ…練習ってほどのことしてないけどね。」
「…先輩そんなに熱心なのに…なんでゴルフ部は練習場使えないんですか?ありますよね、
校庭の裏に。」
「あ…気づいちゃった?」
「えぇ。とっくに。」



589 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:01


「うーん…あそこは…サークルが使ってるから。うちのゴルフサークル。聞いたことない?
うちの大学にはゴルフ部とゴルフサークル、二つあるのよ。」
「らしいですね…でもどっちもゴルフするんだから一緒に使えばいいのに…」
「…もともとね、出て行ったのは、私達なのよ。ううん、そもそも最初はゴルフサークル
なんてなくて、部活だけだったんだけど…飯田さんと矢口さんが…まぁ話せば長くなる
から、今日は省くけど。向こうは人数も多くて、予算もたくさんあるし。
今じゃどっちが正式だったのかわかんなくなっちゃって…」
「そうなんだ…」

「よっすぃ〜も…サークルの方に行きたかったら、行ってもいいんだよ?」
「え?どうして?」
「だって…うちは、こんなだし。誘っておいてなんだけど…まともに練習、できないじゃない?」

「…楽しいですよ?ゴルフ部。それに…柴田先輩がいるのに、よそへ行くなんて。
そんなみすみす獲物を逃がすような真似…おっと、違った。
…まぁ先輩がサークル行くっていうなら考えますけど。なんで先輩はサークルに行かないんですか?あっちなら練習場も使えるのに。」
「私は…苦手だし。なんかサークルっぽい…遊びとかイベントとか。って今なんか変な
こと言わなかった?獲物がどうとか…」
「いいえいいえ!!さぁそろそろ帰りましょう!!」


あやしい…絶対この人、今なんか変なこと考えてた…



590 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:03


なんでか分からないけど、あの勧誘事件以来。
私はよっすぃ〜にひどく…なつかれた?みたいで。

まぁでもアヤカやまいちゃんにもベタベタしてるし。
飯田さんなんかには「ハニー♪」とか言ってるし。
あさみちゃんにはプロレス技かけたり…あれ?

…要するに誰でもいいってことね。
気にするほどのことでもないか。

「さ、先輩送ってきますよ♪」
「結構です!!」
「遠慮しないで〜♪…歩いて帰る気ですか?お家まで。」
「何言って…はっ!しまった!で、電車が出てる!!」
「ふふ…先輩が熱くゴルフ論語ってる間にとぉ〜っくに終電、出ちゃいましたよぉ〜♪」

ねぇ作戦…?作戦だったの?!!

「…じゃ行きますよぉ♪」
「そりゃどぉも…」



591 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:04


珍しくよっすぃ〜がまじめな話してきたからさ…
先輩としては、ちょっとうれしく思ったりもしたのにな…


ときどき、ふと、思う。

よっすぃ〜はいつも明るくて。
お調子者で、おちゃらけてばっかりで。

…でも、それって本当のよっすぃ〜なんだろうか。
よく、わかんないけど…なんか違う気がする…

わかんない、けど。


「…先輩?起きてます?危ないですよ?」
「え、あ、ごめん…あぁ次、右だから。」
「はい、分かってます。」

…なんだって?

「…ちょっと。なんでよっすぃ〜が家の道、知ってんのよ。えぇ!!?」
「ふぐぅ!!し、締め技は…うぅ…」



592 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:04


「はぁ〜なんとか無事に着いてよかった♪」
「…このストーカー!!」

急いでバイクを飛び降りる。

「そんな!!研究熱心って言ってくださいよぉ」
「変な研究するな!」

たく…やっぱり危険人物だ…こいつぁ。

「…せっかく送ってきたのに…うちの家からはず〜っとず〜っと遠回りなのに…」

…え?そ、そうだったんだ…



593 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:06


「…ご、ごめんね?わざわざありがとう…」
「じゃあお礼にコーヒーでもごちそうになりましょうかぁね♪」
「帰って、今すぐ。」
「ひどぉい!!」
「遠いんでしょ?!早く帰りなよ!」
「お礼もなしって…先輩ハタチにもなって…常識が…」
「お礼に…って部屋に上げれるわけないでしょ?!どっちが常識ないのよ!」
「…じゃーいいですよ?違うお礼でも…」
「え?……んぅ!!」


まだバイクに乗ったままだったよっすぃ〜に、突然頭を強く引き寄せられて。
噛みつかれるように…キスをされた。


「……いたたたたっ。」
「何してんのよ何を!!!」



594 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:07


帽子みたいなヘルメットをかぶっていたので、よっすぃ〜の頭を殴ることはできず。

仕方がないので、柔らかいほっぺたをひっぱたいた。


「だって…コーヒーはダメっていうから…」
「コーヒーより私の唇は安いっての?!えぇ?!こンの…っ」
「だぁ…!!ご、ごめんなさいごめんなさい…もうしません…とは言いません。」
「…はぁ?」
「だ、だって…ちょっと好きになったでしょ?先輩、今。…うちのこと。」
「なってません!!」
「あれ?おっかしいなぁ…普通王子様のキスで目が覚めるのに。」
「…何言ってんの?…誰が王子様だって?」
「そっか…一回じゃ足りなかったのかも。…よし、じゃあ三回目に!三回目のキスで
先輩はきっとうちが好きになりますよ!」
「…ばかばかしすぎて話しにならない…」
「いやぁ〜三回目なんて、先輩からキスしてきちゃうぐらいだと思いますよ?」
「…しないから。絶対。」
「まぁ気長に待ちましょうよ♪じゃあ失礼しま〜す。」
「あぁ!!に、逃げるなぁ〜ひきょうもの!!」



595 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:11


…なんなの?なんなのあの人!!


突然キスなんかして…三回目?好きになるだぁ…?



596 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:12


パニクル頭をとにかく冷やそうと急いで部屋に入り、座り込む。


玄関のドアを閉めた瞬間、なぜかバイクが動き出すような音がして。


慌てて台所の窓からのぞくと、…さっきとっくにいなくなったはずのよっすぃ〜のバイクが走って行った。



597 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:13


…やっぱりよっすぃ〜はわからない。
あんなことしといて、したくせに、
私が家にちゃんと入るの、見届けてくれたりして。



…変なヤツ。



598 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/17(金) 16:14


甘くて優しい、キスじゃなくて。

苦くて、痛いくらいのキスだったから。


余計にリアルで、その感触がちっとも消えていかない。





599 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/17(金) 16:24
以上、第2話です。

>>583 名無飼育さん さま
はい!スポ根、ではないんですが、一応舞台はゴルフ部ですw
中毒だなんてうれしいかぎりです!またぜひよろしくお願いします♪

>>584 もも さま
始めさせていただきました♪私事なんですが…ゴルフが好きでw
柴っちゃんも確かゴルフ部だった気がしたので。またよろしくお願いします!

>>585 458 さま
こちらこそ読んでいただいて、本当にありがとうございます!
温かい励ましのレスをいただいて…ほんとにうれしいです。
また今回も、ぜひよろしくお願いします!!
600 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/17(金) 16:25

…流します。
601 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/17(金) 16:25

…流します。





602 名前:458 投稿日:2004/09/19(日) 19:02
更新お疲れさまです。
連続でレス、失礼致します。
今回も期待に胸が膨らんでおります。すっごく楽しみです。
ずっと応援しておりますので無理のないペースで頑張って下さい。
603 名前:もも 投稿日:2004/09/19(日) 23:05
更新お疲れさま

(0^〜^)のバイクに乗りたいなぁ〜裏山!!

作者さんの小説はとても読みやすくて大好きです。
更新を楽しみにしています。
604 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:43


………ハァ。

「お、あゆみ〜ん。どうしたの、ため息?」
「あぁまいちゃん…まぁいろいろとね…」

結局、昨日はあんま眠れなかった。

…ただのいたずら?

それとも……

って、ど、どうでもいいんだって!…よっすぃ〜が…私にキスした理由なんて。

「あ、そうそう。昨日部活の後さ、よっすぃ〜に会えた?」
「…は?なに?…いや会ったには会ったけど…まいちゃんなんで知ってんの?」

先に帰ってたじゃん、まいちゃんもみんなも。

「いやぁ帰りがけによっすぃ〜があゆみんいないのに気づいてさ。だから教えてあげたの。
あゆみんはいっつも居残り練習してるよって。そしたらじゃあ自分も終わるまで待ってるって。戻ってったんだよ。倉庫に。」
「そうなの…?え、じゃあ…」

バイクのカギ…忘れたからって…



605 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:44


「愛されてるのね〜あゆみん♪」
「ないから。絶対ないから。」

…どうせ、なんか変なこと考えて…
それ目当てだったに決まってるんだから…

「二人とも早いね〜もう来てたんだ。」
「あ、飯田さんおはようございま〜す。」
「あぁ!!ちょ、飯田さん!よっすぃ〜に私の住所教えたんですか?!」

だって昨日家の道知ってたし!
部長の飯田さんに名簿でも見せてもらったんじゃ…

「え?住所?別に聞かれてないけど…あぁ、でも柴田のお家は知ってるんじゃない?
ほら、前にゴルフバック柴田ん家に届けたときさ、よっすぃ〜も車に乗ってたから。
手伝ってくれたんだぁ、荷物運ぶの。」
「えぇ!そ、そうだったんですか…」


そ、そんな…私昨日思いっきりストーカー扱いしちゃったんですけど…
さすがに申し訳ない…かも。



606 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:46


「おはようございま〜す。みなさんお待ちかねの吉澤でぇ〜す♪」
「「おぉ、よっすぃ〜♪おはよー」」
「待ってない…待ってないのに…」


顔を見たら昨日の…キス。思い出して。
むかついてくる…けど…

でもストーカーなんて言って…悪かったな。
親切にしてくれたのに…


「…よっすぃ〜…その昨日は…」
「あぁ柴田先輩。そんな、いいんですよ感謝の言葉なんて♪」
「いや、そうじゃなくて…ごめんね?その…」
「え、違うんですか?じゃあまた感謝のキス!?」
「…こぉの…昨日はよくも〜!!」
人がせっかく謝ろうとしてるのに…こいつは…
…むしろ謝るの、そっちなんじゃないの?!


「…昨日?柴田とよっすぃ〜、なんかあったの?」



607 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:46


「え?!べ、別に…」
「はい、実は昨日初めてのチュ―…ぐぅっ!!」

飯田さんから見えないようによっすぃ〜のみぞおちを撃つ…

「ちょっと…変なこと言わないでよね…」
「変なこと?」
「だ、だから昨日のその…キ…」
「キスしたこと?」
「だぁ!!い、言うなって言ってんでしょ?!」
「…えぇ〜…秘密にしたいんですか?」
「…知られたくないの、みんなに。」
「二人だけの秘密にしたいってことですかぁ♪」
「…まぁニュアンスはかなり違うけど、内容はそういうことだから。」
「……テレ屋さん…」
「…こンのっ…」


「ね〜。二人ともケンカはだめだからね〜。部員みんな仲良くね〜。」



608 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:47


…ちっ。
部長の飯田さんに言われちゃー仕方ない。
まぁ、今日はこんなところで…

「も〜飯田さん、仲良しですよぉ、うちら。いろんな意味で…」
「…カンベンできるかぁぁ〜〜!!」

「oh〜にぎやかね〜今日も♪」
「や、やっぱりここ、ゴルフ部じゃないんじゃ…」

あ、アヤカとあさみちゃん。
ううん、一応パターとか道具、武器にはしてないから。
まだかろうじてゴルフ部だよ。
安心して。

「ね〜今日みんなこの後ヒマ〜?」



609 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:48


「私は大丈夫ですけど。」
「私もぉ。」
「みんなヒマならさ〜飲みにいこうよぉ♪歓迎会もかねて。」
「「「わぁ〜い!!」」」


「…歓迎したくない人がいるんですけど…」
「えぇ!!柴田先輩…そんなこと言ったらあさみちゃんがかわいそうだよぅ…」
「え?わ、私?!」
「違うから!!あさみちゃんは大歓迎だからね?…あんただよあんた!!
よっすぃ〜に決まってんでしょ?!」
「……やっぱりテレ屋さん…♪」
「いいかげんに…」

「ほら行くよ〜」
「「「はぁ〜い」」」
「よっすぃ〜、逃げるなぁ!!」



610 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:49


さて、こんな私達がいつも使うのは、若者が集う、おしゃれな今風のお店…じゃなくて。

安くておいしい、おじさんたちご愛用の、居酒屋さん。

「ひゃっひゃ。飲め飲め〜!!」
「里田まい、いっきいきま〜す!!」

まいちゃんは近くにいたおじさんとすっかり息投合して…
ど、どっちがおじさんだかわかんないし!

「つまりですね、カッテージチーズの作り方と、モッツァレラチーズの作り方はぁ〜」
「ohあさみちゃん物知りね〜グッボ〜イ♪」

「よっすぃ〜…かおり酔ったみたい…」
「おっと、うちはかおりんに酔ってしまいそうだよ…」

…勝手にやってなさい!!

なんでうちはみんな酒癖悪いんだろう…
ってそういう私もちょっと飲み過ぎたかな。



611 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:50


正気を取り戻そうと、一人トイレにいって戻ってくると、
座っていた席にみんなの姿はもうなくて。

あれ、って見渡していると、外からよっすぃ〜の呼ぶ声がした。


「先輩!もう電車なくなっちゃうから。帰らないと。」
「え?!もうそんな時間…?」

時計を見ると、確かに日が変わろうとしていて。
…ぜんっぜん気づかなかった…

「あ、会計は一応済ませました。まぁ後でみんなから回収しますけどね♪」
「よっすぃ〜…酔ってたんじゃないの?」
「ははっ。まぁ酔ってますけど。量、わきまえてるんで。」

たくっ…しっかりしてる。


「じゃあまた明日〜明日また飲もうねぇ〜♪」
「犬ぞりの犬はフツーの犬とは違うんですよ、雪の中をこうガァ〜っと…」
「ひとみ〜あゆみ〜グッバァ〜イ♪」
「かお寂しい…ダーリ〜ン」



612 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:51


「あ、あっちのチーム大丈夫かな…」
「まぁ、たぶんアヤカさんがかろうじて正気かと…」

方向が違う3人と、近くの駅でわかれて。

「…じゃ、こっちも帰ろうか。」
「はい。すいません、今日は飲んじゃったからバイクで送れなくて」
「ううん、そんなの気にしないで。」

方向が同じよっすぃ〜と一緒に電車に乗りこむ…ん?
同じなの?方向…

「ちょっと!!昨日家遠回りだとか言ってなかった?!めちゃめちゃ方向同じ
じゃない!!」
「あぁ、ついうっかり。まぁ実際の距離は近くても、先輩と離れると思うと遠く感じますからね。」
「結局ウソついたんじゃない!!…こンのっ…」


殴ってやろうと振りかぶったら、思った以上に、体に酔いがまわってるみたいで。



613 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:53


「…平気?」
「へ、平気だもん!!離してよ!!」

フラっと倒れそうになった私は、すっぽりよっすぃ〜の腕の中に収まってしまった。

すごい、恥ずかしくて。

「あ、で、電車来る!!いこ!」

逃げるように言って、階段を駆け下りた。


ちょうどホームに入ってきた電車に飛び乗ると、仕事帰りのサラリーマンやなにやらで
中はギュウギュウ詰めの缶詰状態。

「…混んでるね。」
「えぇ。…よいしょっと。」


そう言うと、よっすぃ〜はスルっと身をひるがえして、
ドア側になった私の肩の上あたりに手をつき、自分を、周りの壁にするように立って。



614 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:54


「……そういうの…わかってやってるでしょ…」
「え?なにがですか?」


絶対わかってる…

こんな場所でそんな風に…守られたら。

女の子がどう思うか。



「…よっすぃ〜まで降りなくてよかったのに…」
「別に、ひと駅くらい。歩けますよ。」


それだけじゃない。
家までの帰り道、一人じゃないのが。
すっごく心強いってこととか。



615 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:55


「じゃ、おつかれさまでした。また明日。」
「え?!あ…うん。」


私の家に着くと、よっすぃ〜はあっさりそう言った。
ちょっとひょうしぬけ…って、べ、別に期待してたわけじゃないけど!!


「ん?どうし…あぁひょっとしてお別れのチュー、してほしいんですかぁ♪」
「し、してほしいわけないでしょ?!」
「う〜ん。うちもしたいとこなんですけどね…でも…」


かがみこんできて、そっと耳元で…ささやかれる。


「…二回目。酔った勢いだと思われたくないから…」


よ…っすぃ…
…どうしよう…



616 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:56


「なぁんちゃって♪お酒くさいチューなんてヤだもん。いくら先輩に求められても…」
「だからしてほしいなんて言ってないでしょ!!…さっさと帰れ!!」
「キャーこわぁ〜い!逃げろぉ〜」


…もぉっ!!むかつく!!
本気で塩でもまこうかと考えていると、くるっと振り返って…

「おぉっと!!言い忘れてた!」
「…なによ!」



617 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:57


「…おやすみ!」


…絶対、わかってるんだ。

そういう自分の笑顔がどれだけ魅力的かって。

いちいち…どれだけ人の心をとらえるかって。



わかってて…そんな事をするんだ。



618 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/21(火) 01:58


「…そういう人………キライっ!」


聞こえたんだか聞こえてないんだか。


よっすぃ〜は、そのまま手をひらひらと振りながら…帰っていった。





619 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/21(火) 02:05
以上、第3話です。

>>602 458 さま
いつもありがとうございます!!本当に励みになります。
ご期待に応えられるように、がんばりたいと思いますので、またぜひよろしくお願いします!

>>603 もも さま
(0^〜^)<火傷するぜぇ!
読みやすいなんて…ほんとにうれしいお言葉です♪これからもがんばりたいと思います!!
620 名前:576 投稿日:2004/09/21(火) 02:10
はぁぁ〜リアルタイムにドキドキしました。
よっすぃ〜カッケーよ!戸惑う柴ちゃんかわいいですw
次回も楽しみにしております!頑張ってください。
621 名前:雨男。 投稿日:2004/09/21(火) 03:26
うわぁーい!更新されてる♪お疲れ様です!

もう顔を赤らめてる柴ちゃんを思わず想像しちゃう・・・
作者様の書く柴ちゃんは可愛過ぎてずるいです(笑)

次回も頑張って下さい、応援しています!
622 名前:もも 投稿日:2004/09/22(水) 00:37
更新お疲れさまです。

ウヒィ〜火傷させてぇぇぇ!!(0^〜^)
続きが気になるよん!!
楽しみに待ってます!
623 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:42


事件は会議室…じゃなくて、ある放課後の、ゴルフ部の部室で起こった。


「お、あゆみ〜ん。昨日は泊めてもらってありがとね。朝早かったから助かったよ〜」
「ううん、いいよ。楽しかったし。」

「ああ゛ぁ〜!!ず、ずっり〜〜!!」

……は?

「え、よっすぃ〜どうしたの?」
「まいちゃん、シカトしたほうが…」
「里田先輩、泊まったんですか?!泊まったんですね?!柴田先輩ん家に!!」
「え?うん…まぁ。」
「そんな…そんな…」



624 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:43


一人のバカが…


「うちも柴田家に泊まりたい〜〜!!!!!!」


またバカなコトを言い出したのです…。




625 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:44


「…なんで?」
「泊まりたいもん!!」
「…あのね…」
「いいじゃんいいじゃん!!里田先輩だって泊まったんでしょ?!」
「まぁまいちゃんは…ちょくちょく泊まったりするけど…」
「じゃあいいじゃん!!」
「ダメ。てか、イヤ。」
「どうして!!?」


「あはは。よっすぃ〜も泊まらせてあげたら〜?こぉんなに熱望してるんだもん。
今時、一流ホテルにだってこんなに泊まりたがるお客さんいないよ〜」

「里田先輩…ナイスアシスト♪」
「…人ゴトだと思って。」


まいちゃん…楽しんでるでしょ…?



626 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:45


「だいたい!里田先輩はいいのにうちはダメって!!そんな話、いくら心の広いうちでも、納得できるわけないじゃないですか!」
「…まぁこの際、心の広さについては触れないけど。まいちゃんは安全だもん。
よっすぃ〜は…前科あるでしょ?!そんな危険な人…泊められるかぁ〜!!」
「うぅ!!」
「前科?よっすぃ〜犯罪したの?!」

…まぁ、まいちゃん。そこは気にしないで。

「…じゃあ…勝負してください!!」
「勝負?」
「…ゴルフで…勝負して。うちが勝ったら、今夜、泊めてください!!」
「…ばかばかしい…」
「……逃げるんだ…」

…あ?



627 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:46


「ちょっと…」
「逃げるんだ…先輩、勝つ自信ないから…プフッ」
「…そんなわけないでしょ?黙って聞いてりゃ…」
「じゃあ勝負してくださいよ。できないでしょ?やーい、びびってんだぁ〜やーい」
「…いいよ?そんなに言うなら…勝負してあげる。」
「やったぁぁ〜!!」


言っとくけど…私中学からゴルフ部だからね?
ついこないだ入ったばかりの甘ちゃんに…負けるわけないんだから!


「その代わり!私が勝ったら、二度と私に変なことしないって約束してよね!!いい?!」
「いやです!!」
「はぁ?!じゃあ勝負してやんない!」
「あ、…逃げるんだ。」
「なぁにぃ〜〜!!」

「…Hey、まいちゃん。…なんの騒ぎ?」
「外まで怒鳴り声聞こえてますよ…」



628 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:47


「あぁ、アヤカえーんどあさみちゃん。なんか二人がゴルフ対決するんだって〜
…確か…お泊まりをどっちの家にするかをかけて…」


…違うから、まいちゃん。
それ、やる前から私に希望ないじゃない。



629 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:48


さて…ゴルフ対決って言ってもさ。

「どうやって勝敗つけんの?ここじゃネットに打つだけだから距離も測れないし…」

うちの部室じゃ、どうにもこうにもやりようが…

「う〜ん…そうだ!ねぇあゆみん、ヘッドスピード対決にしたら?」
「…ヘッドスピード??」
「あ、よっすぃ〜まだやったことなかったよね?あのね、クラブの先に機械をおいて、
どれだけのスピードでスウィングしてるかを測るの。簡単に言えば、早くクラブを振った人の勝ちってこと。」
「おぉ♪それいいですね〜里田先輩♪」
「これなら経験者じゃないよっすぃ〜にもチャンスあるでしょ?…どう?あゆみん。」
「…いいよ、私は何でも。」


…何にしたって…負けるはずないんだから…ゴルフ歴5年だし…


「…柴田先輩。お泊まりイヤなら、初めから勝負なんかしなきゃ良いのに…」
「ohあさみちゃん〜あゆみはああ見えてかなりの負けず嫌いなのよ?
ほら、見て!背中に炎が!」
「うぅ!!も、燃えている!!」



630 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:49


「じゃあ…まずはどっちから?」
「どうぞ先輩から♪お手本見せてくださいよぉ」
「…ふふん。いいよ。」

こんな後輩に…私が…負けるかぁ〜〜!!!!
ヒュン!!

「うわ!すごっ…あ、あゆみん!!新記録だよ!はえ〜」

ちょっと本気になりすぎちゃったかしら…まぁ、私を本気にさせたよっすぃ〜が悪いってことね…

「…さ、次はよっすぃ〜だよ?ケガしないようにね?」
「はぁ〜い♪」


…ん?
なんで…ちょっと…余裕なの?



631 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:50


「それじゃみなさん…アレ、お願いします♪」
「「「OK〜〜♪」」」

…アレ…?

「せぇの!!」
「「「三井住友ぉ〜ビザカードォォ!!」」」

ひゅん!!

「やったぁ!おめでとうよっすぃ〜!!よっすぃ〜の勝利!!すごーい」
「ははっ。まぁ、愛の力ですよ。いや、エミリの力ですよ♪」


まさか…そ、そんなことで…
ありえない…ありえないから…

「じゃあ今夜はとうとうお泊まり!ですね!意気込みは?!」
「うーん…ここまでホント、苦労したんで…やっとか、って感じですね。」
「この喜びを誰に伝えたいですか?」
「…産んでくれた母に。」

キャーよっすぃ〜よっすぃ〜ステキ〜!!
…って。


みんななんか…もしかして。
よっすぃ〜の味方なの?!
ど、どうして?!



632 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:51


「いやぁ〜明日の記者会見、楽しみにしてます♪」
「あははっ。まぁみなさんの期待される…ところまで行くかわかりませんが♪がんばります!ね、あ・ゆ・み!」
「…どうして…どうしてみんな…」
「「「おめでとう〜」」」
「ありがとうっみなさん!」

「ぐすっ…ゴルフは…スピードが早けりゃいいってもんじゃないんだから…
ご、ゴルフ歴…5年なのに…ぐす。」



633 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:51


「おはよ〜あれぇ〜、どうしたのみんな。え?!な、なんで柴田泣いてんの?!」
「あ、飯田さ〜ん。喜びの涙ですよ、これは♪」
「え〜ゴルフで負けたのが悔しいんじゃないですか?」
「ohそうね〜あゆみ、負けず嫌いだから♪」

ねぇ…ここに誰かまともな考えの人はいないの…?


「…さ、そうと決まれば帰りましょうか、二人のお家へ♪」
「…私の家だってーの!!」


しまった、こんなはずじゃ…こんなはずじゃ〜!!



634 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/09/24(金) 00:52


「じゃあみなさんさようなら!」
「「「お幸せに〜」」」
「…よくわかんないけど、カオも。お幸せに〜」



ウキウキと歩くよっすぃ〜に手を引かれて…
まるで売られる子牛のよう。


こ、今夜…泊まりって…
どうなっちゃうの?!…私。





635 名前:ツースリー 投稿日:2004/09/24(金) 01:01
以上、第4話です。

>>620 576 さま
おぉ!リアルタイムとは偶然でございます♪
まだまだ柴ちゃんには戸惑ってもらいたいと思いますwまたよろしくお願いします!

>>621 雨男。 さま
ずるいだなんて…うれしいですw
応援していただき、ありがとうございます!がんばりますので、よろしくお願いします!

>>622 もも さま
(0^〜^)ニヤニヤ
今回はあやうくギャグ小説になりそうでしたwまた次回もよろしくお願いします♪
636 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 01:11
わぉ、リアルタイムで読んでしまいました。

作者さん更新お疲れさまです。

よっすぃと柴ちゃんのゴルフ対決、まさかあんな必殺技がでるとは・・・(w

さてさて急展開な予感?ですが、次回も楽しみに待ってます。
637 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 21:31
がんばれよっすぃ!どーなる柴ちゃん!!
次回期待してまーす
638 名前:458 投稿日:2004/09/26(日) 01:18
更新お疲れさまです。

私の頭の中をドナドナが流れております。
柴ちゃんもそんな感じではないでしょうか?
次回、凄く楽しみです。
639 名前:もも 投稿日:2004/09/26(日) 16:07
更新お疲れさま。

川σ_σ||。。。。。!!(0^〜^)/!!イェェェ

頑張れぇぇ!!いっちゃってください!
おたのしみ、おたのしみ。エヘ
640 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:48


「おじゃましまぁ〜す♪」
「…ジャマだと分かってんなら帰ってよね。」

結局よっすぃ〜の希望通り、家に連れてきてしまった…
本当のゴルフなら負けるはずないのに…くぅぅぅ〜!!!


「ほぉ〜ココが今日から二人の愛の巣ですかぁ。」
「違います!!」
「温かい家庭を作ろうね♪」
「言ってれば、勝手に。…ねぇ夕飯どうする?悪いけどなんもないよ、うち。
ピザでも取る?」
「えー手料理食べたかったのにぃ〜…まぁ、いっか。それはまた今度来たときで♪
いいですねぇ、ピザ。取りましょ」
「ううん、もう来なくていいからね。えぇっと、メニュー…あぁ、あった。何にする?」
「…えーっとそうだなぁ…いろいろのってるヤツがいいなぁ…
お、このシェフおすすめロイヤルデラックススペシャル!!はどうですか?」
「あーおいしそう。それにしよっか。じゃ電話しちゃうね…って
ちょっと勝手に引き出し見ないでよ!!泥棒か、あんたは!!」
「人聞きの悪い…ちょっとしたガサ入れですよ。」
「もっと悪いわ!!…追い出されたくなかったら、大人しくしててよね。」
「はぁい。よしこ、大人しくしてるよぉ、ママ♪」


641 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:49


家庭って…よっすぃ〜子供役なの?
…こんなでっかい子、産めないっての。

とか言いながらもよっすぃ〜がしつこく
『ママおなかすいたぁ〜』
って子供ぶるもんだから、こっちもつい
『いい子にしてなさい!』
とか、なりきっちゃって。これがまた結構楽しかったりして。
そうこうして遊んでいるうちに、インターホンがなった。


「あ、ピザ来たかな。はぁ〜い。」
「わぁい、ママご飯ご飯♪」
「もぉついてこないの!!今開けまーす。」

まったくよしこちゃんったら…と
ガチャ

「お待たせしました〜里田おすすめロイヤルデラックススペシャル!!
お持ちしましたぁー♪」


642 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:50


「ちょっと…なにしてんの、まいちゃん。」
「えーリアクション薄ーい。何ってピザ持ってきたんだよ。ご注文の。
はい、これ。あ、おまけにウーロン茶つけといたから。」
「ありがと…ってなんでまいちゃんが持ってくんのよ。」
「だって、私このピザ屋でバイトしてるもぉーん。あゆみんだって知ってるでしょ?」
「そりゃー知ってるけど…あんたのバイト先のピザ、隣り町でしょ!!
ここ、配達エリアじゃないでしょーが!!」
「えへ♪来ちゃった。だって気になるんだもぉん。おーい、よっすぃ〜」

「あれ、里田先輩♪なんでいるんですかぁ?」
「二人のことが心配でさぁ。バイトも全然はかどらなくてぇ。」
「そうだったのかぁ。でもご心配なく♪仲良くやってますよ。ねぇーママ♪」
「ちょっ!!」
「ま、ママ!!?」


し、しまった…つい悪乗りしてたのが…まいちゃんにバレるなんて…
し、視線が…痛い!!


643 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:51


「あゆみん…そんな趣味、あったんだ。」
「ちが!あるわけないでしょ?あのね、まいちゃんこれにはいろいろ事情が…」
「いいっていいって。照れるなよ!じゃ、おじゃましちゃ悪いから私はバイト戻るわ。
よっすぃ〜明日報告よろしくね!!
あ、ピザもしかしたらちょっと冷めてるかも。なんせ隣り町から持ってきたからさ。
そんときは二人の愛で暖めなおして、めしあがれ♪
じゃーねー」
「ま、まいちゃん待って!!話し聞いてよぉ…うぅ…」


もうダメだ…一生まいちゃんにネタにされる…忘年会でもやらされる…
…終わった…

「ママぁ〜早くぅ!ピザおいしいよぉ♪」
「ええぃうるさい!!…先に食べないでよ!!もう!」


里田おすすめ…じゃなくてシェフのおすすめピザを泣きながら食べた後、
部屋の中を探検だーとかいって、いろいろ探ろうとする
暴れん坊よっすぃ〜を押さえつけていると、
あっという間に時間がすぎてしまった。


644 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:52


「もう、こんな時間じゃん。よっすぃ〜先お風呂入っちゃって。ジャージ貸すから。」
「えぇママ一緒に入ろうよぉ〜よしこさみしー!!」
「…いいかげんやめようね、それ。さ、入った入った。」
「ちぇ。じゃー突然『お背中流しまーす』とかって入ってくるサプライズイベントは…」
「ありません。いいから行くの!!」
「…はぁーい。」

そ、そんな恨めしい目で見ないでよ。よしこちゃん。
ママ困っちゃう。

…ノリよすぎるのかな。私。


さて、その間に枕も一個出して…

はっ!!
しまった…よっすぃ〜…どこで寝るの?


や、やばい!!
全然っ考えてなかった!!
うちベッドしか…布団ないじゃん!!

まいちゃん来るときはいつも一緒にベッドで寝てるから、気にしてなかったし…


645 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:53


あぁ、どうしよぉ!!
さすがに…よっすぃ〜とひとつのベッドは…
前の…じ、事件もあるし…


仕方ない、私がソファーで寝るか…
ちょっと辛くても身の安全には代えられな…

「お先にすいませんでしたぁ〜♪」
「はやっ!!は、早かったねよっすぃ〜。」
「そうですか?…なんで枕抱きしめてんですか?どうせ抱きしめるなら枕よりうちを…」
「あ、あぁ!!なんでもないの。…あのね、よっすぃ〜ベッドで寝て?私ソファーで寝るから。」
「へ?ソファー?」
「うん。うちね、布団なくて…」
「あぁ。ならうちがソファーで寝ますよ。」
「それはダメ!よっすぃ〜お客さんなんだし…」
「いや、突然押しかけちゃったし。もともと招かれざる客ですから♪」
「それは…そうだけど…」
「否定して?!!…先輩もお風呂どーぞ。早く入らないとのぞいちゃいますよ。」
「な?!ぜ、絶対入ってこないでよ?!きたら殴るかんね!!」
「うちはやるときゃーやる人間ですよ…ほら急いで♪」


…その言葉使い方間違ってない?
先に殴っとこうかな…?


646 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:54


さて。
お風呂急いであがってきたけど…
ほんとに…いいのかな、よっすぃ〜ソファーで…

「あがったよー…よっすぃ〜、寝た?」
「…うぉ〜…あゆみぃ〜…ムニャムニャ。」

…寝てないわね。

部屋に戻ってくると、もうよっすぃ〜はソファーに横になっていて。
うちの、ソファーっていっても、一人暮らし用だから小さいし。
私でさえきついのに、ずっと背の高いよっすぃ〜じゃ。


足、かなり出てる…
やっぱ…

「…よっすぃ〜…こっちで一緒寝る?」
「へ?」

だってかわいそうだもん…さすがに。


「こっちも二人じゃ狭いと思うけど…ソファーよりは。」
「いいんですか?」
「いいよ、もう早く寝ようよ。」

一晩くらい…別に。
仕方ないし。


「じゃあお言葉に甘えて…おじゃまします」
「どうぞ…って、ちょ、ちょっと!!」


647 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:56


「なにか?」
「な、なにかって…なに覆いかぶさってんのよ!!人の上に!!」
「え?だって先輩が一緒に寝ようって…」
「そ、そんな意味なわけないでしょ?!」
「ありゃ。違うんですか。それは残念。」
「…人のコトからかわないでよ!!バカ!!」

もぉ…ふざけてばっかり!!
せっかく気ぃ使ってさ、こっちに呼んだっていうのに。
先輩からかっていいと思ってんの!全く!


「…も、どいてよ。早く。」

たく…バカよっすぃ〜。



「…からかって…ないんだけど」
「え?」


648 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 03:57


や………よっすぃ〜

「…先輩…」
「や、ちょ、…ま、待って…ま…」

待って、ほんとに。
…そんな、そんなつもりじゃ。

ぐっと押し返しても、よっすぃ〜はどいてくれなくて。
そのまま、静かに私に重なるように、倒れこんで、きた。

「…よっすぃ…」

返事はなくて。
ただ、何度も。
何度も私の頭をなでるだけ。



よっすぃ〜の動きは静かでとても優しいのに。

私の心臓だけが、すごくうるさく、暴れだして。

どうしよう、どうしよう。


649 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:00


こんな風に、優しく抱きしめられたりしたら、絶対にいけない。

このままじゃ…どうにかなっちゃう、私。



助けを求める相手はよっすぃ〜しかいないから。
よっすぃ〜が着ている、ちょっと小さい私のジャージを、ぎゅってつかんだら。
腕の力が少し強くなって。
そのまま…よっすぃ〜の唇が――私の首にそっと触れてきて。



「…っやぁ!!」


頭で考えるよりも早く。
私から出ていた、拒絶の言葉。


650 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:01


「…ごめん。」

どんな目で。
私はよっすぃ〜を見ていたんだろうか。


その目をそらして、ただ、ひどく申し訳なさそうに、後悔するように。
そして少し傷ついたような、そんなふうに。

よっすぃ〜は私に謝った。



ふっと軽くなった体。
よっすぃ〜は隣にそっと移ると、ポンっと私の頭を叩いて。


「…なにもしないから。大丈夫。」

だから安心して寝ていいよ。


651 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:02


…何か言えればいいのに。
いつもみたく、バカ!って、ごまかすのだって…できるはずなのに。


なのに何もしゃべれなくて。
何度も優しく髪をなでてくれるよっすぃ〜をただ、段々遠のいてく意識の中、
ずっと見つめていた。



652 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:03


フと目が覚めたのは、夜がいなくなるのと、朝が来るのと、
ちょうどその境目ぐらいの時間。
隣を見ると、いるはずのよっすぃ〜の姿はなくて。

慌てて、眠気の残る体を起こしてよっすぃ〜を探すと
…ソファーで眠っていた。



結局…気、つかわせちゃったな。
ごめんね。

寝ている顔をのぞきこむと、眉間にしわをよせて、なんだか難しそうな顔。

それがすごくおかしくて、そしてなんだか申し訳なくて。

複雑な気持ちのまま、よっすぃ〜の顔のそばのソファーにひじをつく。


ごめんね。
あんなふうに誰かをハッキリ拒絶したこと、きっと、今までなかった。

もしかして、よっすい〜モテモテだから、拒まれるの初めてだったりして。

…そうなら、それはそれでなんかむかつくな。


653 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:05


…あのとき、すごくドキドキしていたけど。
でももし、あのままよっすぃ〜に…求められても。

それにちゃんと応えられるところまで…
まだわたしの気持ちはないの。

ごめんね。


…だけど、そういうの、ほんとは全く期待してないわけでもなくて。
抱きしめられたら、やっぱり少し、うれしいし。
そのまま…そうなることも、心のどっかで、きっと。

…どうせ拒んでしまうのに。


…変なの。


こんな気持ち、なんて言っていいかわかんないけど…
とりあえず、ここにいてもいい?


今はまだ、せめてよっすぃ〜が目を覚ましたとき。
一番そばにいられたら。


654 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:06


「………先輩………先輩」
「…んぅ?」
「そろそろ…仕度しないと遅刻…」

遅刻…?
………あ!!

「あれ?!!えっと…」
「おはようございます〜」
「…おはよ。って、え?…私寝てたの?!」
「寝てましたよ。気づいたらソファーにのっかってきてて…」
「わぁ!!?」

だ、だぁ!!
ちょ…よっすぃ〜近っ!
これ…べ、ベッドで寝るより近かったんじゃ…

「先輩は…」
「へ?」

655 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:07


「襲われたくないのか…襲われたいのか。よくわかりません。」
「し、知らない!そんなの!!」


いじわるに、でもちょっと困ったように。

よっすぃ〜はよっすぃ〜らしく、そう言った。


だから私も私らしく、よっすぃ〜の背中をバチっと叩いた。



「よし、よっすぃ〜準備できた?じゃ、行こっか。」


656 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:08


「はい。あ、どうもありがとうございました。楽しかったです。」
「どういたしまして。ってそんなお礼言われるようなことじゃ…」
「いや、ほんと楽しかったですよ。やっぱ、一人暮らし、結構さみしいじゃないですか。
まだうち始めたばっかなんですけど。だからなんか楽しかった。」
「よっすぃ〜…別に、泊まりぐらい…また来ればいいじゃん。家近いんだし。」
「え?!いいんですか?」
「…いいよ、それぐらい。」


別に本気でよっすぃ〜が来るの…嫌がってるわけじゃないんだから。
…素直じゃないな、私。

「やったぁぁ!!じゃあ歯ブラシとか置いておこう!あ、今度パジャマも持ってきます♪
先輩のとうちのと〜おそろいのを二つ♪」
「そんなの持ってこなくていいから、来るときは布団、持ってきてね。
別々に寝れるように」
「ひでぇ!!重ぇ!!」

ふふん。
この調子この調子。
さて、じゃあ行こうかなっと…


657 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:09


「あ、先輩は出かける前に、もういっぺん鏡見てきたほうがいいですよ。」
「鏡?顔になんかついてる?」
「いや、顔はかわいいですよ、今日も。じゃなくて首。」

かわいいなんてそんなぁ……首?

首…ってまさか!!


ダダダッッ!!

「や、やられた…」


658 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/01(金) 04:10


こんなところに…あの一瞬で?!!


「しっかり隠さないと、みんなに見つかっちゃいますよぉ〜」
「…やっぱりからかってんじゃない!!最低っ!!」


もしまいちゃんやみんなにバレたら…どうすんのよぉ!!!

バカ!!バカバカよっすぃ〜!!!



こうして
なんとか無事に終わったお泊りだったけど。


よっすぃ〜は首と私の心の中に、
まるで部屋に自分の荷物を置いていくように、確実にその存在を残していった。




659 名前:ツースリー 投稿日:2004/10/01(金) 04:24
以上、第5話です。

>>636 名無飼育さん さま
リアルタイムとは!びっくりです、ありがとうございます!
あのCMは今は変わってしまいましたが…w
展開はこんな感じでしたが、また読んでいただけたらうれしいです♪

>>637 名無飼育さん さま
よっすぃ〜も応援を受けて喜んでいると思いますw
またぜひよろしくお願いします。

>>638 458 さま
書いてる最中、私の頭の中にもドナドナを歌った思い出が流れていましたw
いつもありがとうございます、またよろしくお願いします。

>>639 もも さま
おたのしみに答えられたかどうか…この先もよっすぃ〜を励ましてあげて下さいw
これからもどうぞよろしくお願いします♪
660 名前:576 投稿日:2004/10/01(金) 18:16
マ、マ、マ○って!ぐはっ!このプレイは反則でつ…
作者さんの柴吉にすっかりハマりまくりです。
これからも頑張ってください。期待してまつ。
661 名前:もも 投稿日:2004/10/03(日) 03:10
更新お疲れさまです。

(0^〜^)やりぃ!!
川σ_σ||がぁ〜ん・・・・・

よっすぃドンドン行ってみよう!応援するYO!
面白くなってきましたね!更新待ってます。
662 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:50


さぁて…今日も練習するぞぉ…

「おはよー…」

「キャー!よっすぃ〜なにその写真!待ち受け?ラブラブじゃぁん!!」
「ふふ…動画バージョンもあるんですよ♪」
「…なんでソファーで寝てるんですかね。」
「oh〜きっとベッドまで待ちきれなかったんじゃない?せっかちさんなんだからー
二人とも♪」


………え?

「ねぇ、なんの話…」
「あ、よっすぃ〜あゆみん来たよ!!ふふ…あゆみんったら嫌がってたくせに…
照れ屋さん。」
「え?ちょ、ちょっと何?」



663 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:52


「よっすぃ〜、動画も見せてください。」
「woh!!あさみちゃんったら…どれどれ」
「いいですよ♪ほぉら…」
「「「キャー♪!!!」」」

なに、よっすぃ〜の携帯がどうかしたの?…っておいっ!!!

「な、なによこの画像!!」
「何って…昨夜のですけど。」
「……勝手に何撮ってくれてんのよ!!!!」


恐ろしいことに…のぞいたよっすぃ〜の携帯の画面には…
昨日のよっすぃ〜と…そのよっすぃ〜に…くっついて寝てる私の写真。


「あゆみんしっかり抱きついてるくせに〜今さら照れなくてもぉ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「「「ねぇ♪」」」



664 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:53


だ、だってこれは…偶然っていうか…ソファー狭いからくっつかなきゃ落ちちゃうし…
い、いや、そうじゃなくて!!

「な、何にもないんだからね?!別に私たち、昨日何にも…」
「なかったん…でしたっけ?」
「え?」

そういうとよっすぃ〜は私の…首をそっと手でなでて

「何にも…なかったんだったっけなぁ〜?」
「そ、それは…」


そりゃー首には…アト、つけられたし…
危うく、そういうことになりそうだったけど…で、でも


「ま、まぁ確かに…な、何もなかったってことは…ないかもしれない…けど」
「「「キャー!!!認めた!!認めたわぁ!!!」」」
「えぇい!!うるさい、そこ!!」


…あんた達が考えてるようなことはなかったんだからね!!
し、信じてよぉ…



665 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:55


「柴田!!練習しに行くわよ!!」
「へ?飯田さん…どうしたんですかいきなり…どこに?」
「隣町のゴルフ練習場!かお、車出すから。急いで!」
「も、もしかして今年も…は、はい!!がんばります!」

「あれ、二人だけ?うちらは連れてってくれないんですか?」
「あぁ…そういえばそろそろアレの時期か…」
「oh!そうね〜それなら私たち、じゃましちゃいけないもんね。」

「「アレって?」」

「あぁ、あさみちゃんとよっすぃ〜は知らないもんね。よし、それではお教えしましょう。
このゴルフ部の秘密を…二人いなくなって暇だしね、ちょうど。」


二人とも聞いたことあるでしょ?
うちの大学にはゴルフ部とゴルフサークルがあるの。

まずは、なぜその二つが分かれたかってことから…



666 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:56


あの頃はまだ、飯田さんが3年生で…矢口さん、あ、サークルの部長さんね、
矢口さんが2年生で。

私とあゆみん、あとアヤカが入ったばかりの1年生。

その年の夏休みに、ゴルフ部恒例、うっきうきの夏合宿が行われたんだけど
…事件はそこで起こったの。

「ねぇねぇみんな!肝試ししようよ!!裏に結構怖そうな山あったじゃん?!」
「えーやだよぉ。かお怖いの嫌い。やるんだったら矢口お化け役やりなよね。
言いだしっぺなんだから。」
「ちぇ。いいよーじゃあ矢口お化けやる。どっかに静かにたたずんでるから♪
イシシ…腰抜かすなよぉ〜早く来てねー」


「矢口さんはりきってますねー」
「かおやりたくないけど…仕方ない…つきあってあげよっか。みんなで行けば怖くないしねー」

ってことで、夜中に起きてた私たちだけで、矢口さんの待つ山の中へと入っていったんだけど…



667 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:57


「えぇ!!アヤカって初チュー、そんな早いの?!!」
「oh〜ハワイじゃそのぐらい。遅いくらいよ♪」
「へぇ〜やっぱ外国は違うねぇ〜」

「わぁー!!…あれ?お、お化けだぞぉ…みんな、お化けだぞぉ…」

「そういうまいちゃんはどうなの?when?where?」
「え?!い、いやまぁ…あゆみんはどうなのよ?!」
「なんで私に振るのよ!まぁその…い、飯田さんは?」
「かおはね〜幼稚園のとき、飼ってたワンちゃんと…」
「「「犬とかよ!!」」」


違う話で結構盛り上がっちゃってね?気づいたら…

「あれ〜もう出口じゃん。矢口さん、どこにいたんだろう…っていつのまに後ろに?!」
「…ずっと、ずっと居たのに…お化けやってたのに…誰も気づいてくれなかった…」
「ご、ごめんなさい!つい、話に夢中で…」



668 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:58


…結局最後までみんな矢口さん素通りしちゃってさぁ〜

「しょうがないよ。矢口小さいから。こんな暗闇で、こんなちっこいの。
かお見つけられないもん。」
「!!な、なんだよそれ!!人がせっかくお化けやってるのに…」
「でもそれ、自分が言い出したんじゃん。」
「だ、だって…新入部員にお化けやらせたらかわいそうだし…
それにかおりがお化けなんてやったらさ、
ホンモノみたいになっちゃうじゃん。ていうかホンモノも逃げ出すじゃん。」
「ひ、ひどい!!かお、お化けじゃないもん!」
「そんなでっかい体で、ロングヘアーで、夜中につったってたらさ。ホンモノだって。
どう見ても。」
「む、むかつく!!このチビ!チビ矢口!!」
「い、言ったなぁ〜!!のっぽ!かおりののっぽぉぉぉ!!」

「チビ!」
「のっぽ!」
「チビ!」
「のっぽ!」


で、二人の言い争いはそのままちっとも終わんなくて…



669 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:58


だんだん部の中に…派閥?
まぁ政治でいうところの、派閥ができて、矢口派と飯田派と。

矢口さん派は結構イベント重視っていうか、ゴルフ以外でも、楽しく遊ぼう、みたいな。

…まぁつまり簡単に言えば、肝試し賛成派と反対派ってとこかな。

うちらはどっちでもよかったんだけど、やっぱあんとき素通りしちゃったからさー
…矢口さんを。…ちっちゃいんだもん、だって。

だからビミョーに居づらくて、飯田さんについて、出てきたってわけ。


「…要するに、子供のケンカってことですね?」
「ohあさみちゃん…鋭すぎるわ〜」
「ま、まぁ…そうだね。」



670 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 03:59


「…あれ、それと、二人がさっき出かけてったのと何の関係があるんですか?」
「あ、そうそう。それでね、毎年、ひとつしかない大学の練習場を奪い合って、
試合をするの。サークルと。2対2のペア対抗戦で。
 んで、いつもうちの代表は飯田さんとあゆみんなのよ。うまい順ね。
その試合がもうすぐなんだなぁ〜」

「…ふぅ〜ん。だから本格的に練習しに行ったんだ。でも、このゴルフ部にそんな事情が
あったなんて。知りませんでした。」
「う〜ん。まぁあさみちゃんが言うように、子供のケンカだし。別にうちらも
サークルの子と仲悪いわけじゃないしさー。試合も飯田さんと矢口さんのじゃれあい
みたいなもんだし。
でも去年はうちの部が一打差で負けてさ。今年は二人とも気合入っちゃてるかもね♪」
「そんなうまいんですか?あのお二人は。」
「もちろん!矢口さんもうまいんだけどね、飯田さんとあゆみんは中学校から先輩後輩
コンビでゴルフやってたから。息もぴったりだし。
うちらは特にどっち派ってことないけど、あゆみんはやっぱ飯田さんのこと、
師匠みたいに思って、したってるんじゃないかなぁ。」

「…そうなんだ。」



671 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/08(金) 04:00


「ほんと飯田さんもあれでもうちょーっと大人になってくれればねぇ。
そしたらまたサークルと一緒に、みんなで活動できるのに。」
「yes!かおりは意地っ張りよねぇ」


「へっくしゅん!!」
「あれ、飯田さん風邪ですか?」
「…ううん、これはきっと矢口がかおのこと噂してるんだわ。…今年は絶対勝つぞ!!
行くよ、柴田!!」
「は、はい!」

よっすぃ〜とのことがいろいろあって、すっかり忘れてたけど。
今年ももうそんな時期なんだ。


矢口さんたちとの試合まで、あと少し。



それまでは、ちょっと休戦させてね?

…よっすぃ〜。





672 名前:ツースリー 投稿日:2004/10/08(金) 04:10
以上、第6話です。

>>660 576 さま
プレイw はまってくださったなんてありがとうございます!
もっとはまっていただけるよう、がんばりますので、よろしくお願いします♪

>>661 もも さま
いつもありがとうございます!ホントどんどんいってもらいたいものですw
よっすぃ〜ともどもがんばりますので、よろしくお願いします♪
673 名前:458 投稿日:2004/10/10(日) 01:16
更新お疲れさまです。

お、ゴルフ部らしくなってきましたね。
次回の柴ちゃんの活躍に期待です。
それからよっすぃーさん。携帯の待ち受け、羨ましすぎるっす。

次回も頑張って下さい。
674 名前:tomaru 投稿日:2004/10/10(日) 01:49
可愛らしい題名に惹かれて読みました
すっごい面白いです
頑張って下さい
675 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:30


ゴッホッ…ゴホッ。
「ん…やっぱ飯田さん、風邪だったのかなぁ?…うつっちゃったかも。」

朝起きたら、体がだるくて。
せきも出るし、のども痛い。

…今日の時間割を確認すると…あぁ、出席とらない講義だし。
いっかな、休んでも。

試合も近いし、まずは体調整えないと。



ということで寝なおしたのが、確か8時過ぎのこと。



676 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:31


プルルップルルー

あ、携帯…なってる…
「…もしもし?」
「oh!あゆみ?あゆみよね?…なんか声が変だけど…風邪?」
「あぁ〜…うん、そうみたい…アヤカどうしたの?」
「あ、部室に来たらまだ誰もいなかったからね、あゆみどこいるかな〜と思って。
もしかしてお家?」
「うん寝てて…もうそんな時間?あ、そっかカギ私持ってるから…アヤカ入れないよね。
どうしよう…行こっか?」
「NO!いいのいいの!飯田さんもきっとカギ持ってるわ。すぐ来ると思うから。
あゆみこそ一人で大丈夫?」
「うん、平気。ごめんね。」
「ううん、じゃあゆっくり休んで。早く治してね〜グンナイ〜」
「…はーい、グンナイ。」


とは、いったものの…

な、なんか今朝よりひどくなってるような…なんで?
ちゃんと寝てたのに…
やっぱただ寝てるだけじゃダメなのかな…


とりあえず…薬…薬…



677 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:32


薬を探しに台所に向かおうと、立ちあがると…うわ、ふ、ふらふらする…
なんとか歩いて、引出しを探す。


…風邪薬…あった…に、2003年で期限切れてる!!
どうしよう〜やばいかなぁ。薬だし、なんか副作用とかあったらなぁ。
…胃薬ならあるんだけど。
飲んどく?一応。
気持ち、ね。気持ち。

よし、寝よ…

ドンドンッドドドン!!!
「な、なに?!」
「せんぱぁい!!生きてますか!!」

げ…よっすぃ〜…

「せんぱい!!せんぱぁぁぁい!!」
「わぁ!ド、ドアこわれるから!…もう!」



678 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:33


「…あぁ!よかったぁ、生きてて。」
「死なないよ、風邪ぐらいで。」
「うお!先輩声!ガラガラじゃないですか。大丈夫ですか?」
「うん…それより、どうしたの、いきなり来て。」
「いや、アヤカさんが先輩が風邪ひいて、枕元でうちの名を呼んでるっていうから…」


アヤカまで…まいちゃんじゃないんだから!

「ほんとに…どいつもこいつも…あ。」
「おっと。…ふらふらじゃないですか。先輩、薬は?」
「あぁ…胃薬ならちょこっと…」
「へ?」
「う、ううん。薬、なかったから。飲んでない。」
「ならよかったぁ一応持ってきて。ご飯は?食べました?」
「え?食べてないけど…でも食欲ないし。」
「ダメですよ。薬飲む前に何か食べないと。胃があれちゃうから。」
「あぁ、胃なら大丈夫だと思うけど。」
「へぇ?」
「あ、いやいや。じゃ、なんか食べよ…」
「先輩は座っててください!うち、おかゆでも作りますよ。」

えぇ?!



679 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:34


「よっすぃ〜って…料理できるの?」
「失礼な!これでも一人暮しなんですから。ていうかおかゆって米、水で炊くだけじゃ
ないですか。」
「まぁ、そうなんだけど…」
「いいからいいから。はい、座って。」

大丈夫かな…まかせて。ちょこっと不安なんだけど。
でももう、だるさが結構限界で。

とても自分で動く気にはならないし。
ここはひとつ、張り切って腕をまくるよっすぃ〜に、運命を託すことにした。


「…でも、いきなり風邪なんて。どうしたんですかね。お腹出して寝たりしました?」
「してません。うーん…もしかしたら飯田さんの、うつっちゃったかなぁ。
くしゃみしてたし。」
「飯田さんの…?」
「二人で車乗ったりしたし。でも違うかも、全然いいんだけどね。」
「車…助手席に?」
「え?まぁ。だって二人しかいないじゃない。」
「…ふ〜ん。よし、できましたぁ、おかゆ。早く食べちゃってください。うちの愛が
冷めないうちに♪」
「げ、むしろそれ冷ましてほしいんだけど…」



680 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:35


余計なものも入っているようだけど、せっかくよっすぃ〜が作ってくれたおかゆを、
ありがたくいただいてみる。

ずずっ。

「おいしいですか?」
「まぁ…普通に…おかゆの味。」
「薄っ。リアクション。それじゃーリポーターにはなれませんよ。」
「…おかゆ食べてリアクションなんてとれないっつーの!!ゲッホゲホ!」
「あぁ、すいません、変なこと言って。食べて、薬飲んで寝ればきっとすぐよくなります
から。はい、薬。」
「ありがと…げ」

粉?…粉薬?

「…やだこれ。」
「は?なにがですか?」
「…粉。嫌いなんだもん。苦いから…」



681 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:36


ちっちゃいころから、粉薬飲むと、おぇってなって…
ちょ、ちょっとよっすぃ〜!なによそのバカにしたような顔!!

「先輩…どこのお嬢さんですか。ほらさっさと飲んで。」
「や、やだ!絶対やだ!」
「…飲まなきゃ治んないでしょーが!子供じゃないんだから。ほら、ほら!」
「の、飲めないんだもん!絶対、絶対おぇってなるんだもん!」
「…鼻つまんで無理やり飲ませますよ?」
「うっ…わかったわよ!飲めばいいんでしょ?飲めば…」

な、何年振りだろう…やだな、苦いの…

「よっすぃ〜…オレンジジュースで飲んじゃ…ダメ?」
「先輩…いいかげんにしないと…」
「わ、わかった、わかったよ、もう!」


あぁ。ほんとにいやだ。
でも飲まなきゃよっすぃ〜許してくれないし…
…えぇぇい!!



682 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:38


「…おぇ……」
「よぉしよぉし!よく飲めました!そしたらお布団入って暖かくして寝ましょうね」
「…なによぉ…この間は人のことママとか言ってたくせに…急にお母さんぶって…」

ぶつぶつ文句を言いながら、よっすぃ〜に連れられるまま、ベッドに向かう。

今日はこないだと立場が逆転したみたいで。
子供役は、きっと私。


風邪のせいなのかな。
なんでかすごく、甘えたくなるのは。

「…はい。たぶん、薬飲んだからすぐ眠くなりますよ。」
「…今日、寝てばっか…つまんない…」
「風邪なんだから。しょうがないですよ。…にらまれても、そんな。」



683 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:39


布団をかけてくれてるよっすぃ〜を、むっとにらむと。

苦笑いを浮かべながら、頭をそっとなでてくれた。
………あの、お泊まりの夜みたいに。

「先輩寝るまで。こうしてる。」
「…子供じゃないから…いいよ。」
「うん、わかってるよ。うちが、したいから。なでてるだけ。」
「…疲れるよ。」
「疲れないように、早く寝て?」
「…寝たら。よっすぃ〜どうするの?帰る?」
「さぁ…どうしよう。…どうしてほしい?」


風邪のおかげなのかな。
こんなに素直に、甘えられるのは。



684 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:40


「………帰んないで…」
「…わかった。ここにいるぜぃ!…だから、安心して。寝てね。」



もし、私がこう言わなかったとしても。
よっすぃ〜は優しいから、きっとそばにいてくれた。


でもよっすぃ〜はいじわるだから、それを私に言わせたかったでしょ?


だから、今日、せっかく来てくれた。
それに、答えなきゃいけないと思ったの。


なんか…難しいや…眠くなってきた…



685 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:41


目を覚ますと、寝たときとおなじように、よっすぃ〜がそばにいたから。
もしかしてあんまり寝てないのかなぁとも思ったけど、

でも体がだいぶ楽になっていたから。
きっとたくさん寝たんだと思う。

「よっすぃ〜…」
「あ、起きました?先輩。具合、どうですか?」
「うん…なんか楽になったみたい…」
「よかったぁ。あ、体温計あります?一応、熱測ったほうが…」
「あ、引出しんとこ…」
「はいはい。…じゃ、念のため測ってみてください。」
「ん…あぁ、平熱…よりちょっと高いぐらい。もう大丈夫かな。」

まだ全快、ではないのかもしれないけど。
それでも一日でこんなによくなれば、ラッキーだよね。

病院も行かなくてすんだし。…苦い薬は飲まされたけど。
でも、これはやっぱりよっすぃ〜の看病のおかげだな。



686 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:42


「よっすぃ〜…ありがとね。わざわざ来てもらって。」
「そんなの、全然。いいですよ。」
「寝てる間もいてくれて…退屈だったでしょ?ごめんね。」
「いいえ、先輩の寝顔見てたら飽きませんよ♪」
「もう…はっ!まさかまた写真…」
「とってませんよ!さすがに、風邪ひいてんのに。」
「そっか。よかった。ありがとね、ほんとに。」
「ええ。…じゃあそろそろ…」
「あ、帰る?玄関まで送ってく…」
「いえ、そろそろ…お礼の方を♪」
「は?お礼…?」


そりゃー看病してくれたんだからお礼はしたいけど…
お礼…お礼…前にもそういえば…確か初めて送ってもらったときに…ま、まさか!!



687 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:43


「…冗談でしょ?」
「いえ、本気ですけど?」
「…私、病人。」
「だいぶよくなったじゃないですかぁ♪」
「そういう問題?!…そう、うつるし、風邪。」
「うつしていいですよ、うちに。人にうつすと、早く治るって言うじゃないですか。
試合近いんだし、その方がいいですよ。」
「いえいえ、そんな。わ、悪いよ〜よっすぃ〜にうつしたらぁ〜」
「…チュってするくらいならうつらないかもしれないし♪」


そ、そう言ってる間にベッドに上がってきてるし…
ホントに?!本気で?!



688 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:44


「ま、待って…わかった、また今度…」
「先輩、あきらめが肝心ですよ。」
「あ、今度泊まりに来たときにでも!」
「…とりあえず、病人の先輩になら、チューしかしませんけど。…元気なときのお泊まり
ならば、それですむか…」
「わ、わかったよ、もぉ!!チュって…するだけだからね?」
「…♪ ではでは…」

って、いいのかあゆみ?!ほんとにそれで?!


でも、看病してもらったし…よっすぃ〜がしたいなら、 …なら…

「先輩…顔上げて…こっち見てください…」
「み、見れない…」

恥ずかしすぎて…見れないよ。



689 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:45


「じゃあ…」

よっすぃ〜は両手のひらで私のほっぺたをつつんで。
そして少し上を向かされて…そのまま、そっと唇をふさがれた。


やわらかい…ふわふわしてる…

あぁ…またしちゃった…。
もう、なんか…ボーっとしてきた、頭ん中。


それでもまだたぶん私には。…どこか余裕があったの。
だって、前にもしたことあったから。


もう、そろそろ終わりかなって思って…ふっと力を抜いたとき。

滑り込むように、よっすぃ〜の舌が。
私の中に、入ってきた。



690 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:46


「んぅ?!……むっ…ん〜〜〜!!」

なんっ…なに?!なんで…


ちょっと考えれば、よっすぃ〜が、私に予想できない行動を起こすことなんて。
充分ありえる可能性だったのに。

やっぱりまだうまく働かない、今の私の頭の中は。
それを見落としてしまっていて。


「…ふっ…ん……はっ…んん!」


よっすぃ〜が角度を変えるときに、できる隙間から。
何度も、何度も自分の声が、自分のじゃないみたくこぼれて。



691 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:47


…あのときのキスとは違う。
あの、苦い粉薬とも違う。


甘くて甘くて。
この甘いのが、よっすぃ〜の味なんだと思うと、…心の中が震えて。
体がとても熱くなって。
きっとさっきの体温計は、もう意味がない。


…このまま。
なんにも考えなくなってしまえば、ただこのキスの、よっすぃ〜がくれるこのキスの。
気持ち良さだけに溺れてしまえば。

すっごく楽なんだろうな。
そうしたい、だけど。


それがどういう意味か、かろうじて分かる以上。
まだ溺れるわけにはいかないんだと、いけないんだと、思った。



692 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:49


「…はぁっ…はっ…」
「…先輩…」


唇が離れて。
よっすぃ〜がそうしてくれるよりも早く、よっすぃ〜の腕の中に逃げ込む。

だって顔を見られたくなかったし、見れなかったから。


「先輩…」
「ちゅって…するだけって…いったぁ…」
「…信じちゃダメだって。そんなの。」

ずるい。
私がもう、きっと何を言われても、あなたを信じてしまうことを。

知ってるくせに、そんな。



693 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:50


「…うつったかな、これで。」
「知らない…バカ…」
「…ね、先輩、覚えてる?」
「……え?」
「約束。…これで二回目だよ?」
「あ……」


そうだ、約束…
確か、三回したら。そしたら。

「これで、あと一回だぁ。やばい、超楽しみ。」
「…どうだろ、よくわかんないけど。」
「えぇ?!そんな、話しが違うYO!!」
「自分が勝手に言ってるんでしょ?!私はそんな約束してないもん!」
「ひ、ひどい〜…あんまりだぁ。先輩のうそつき〜」
「うそつきはどっちよ!…ちゅって…するだけって言ったのに!」
「いいじゃないですかぁ〜せっかく看病したんだから…」
「そんな理由で看病するな!!」



694 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/12(火) 01:51


ほんと。
うそつきだ、よっすぃ〜は。


三回目のキスで、私のこと好きにさせるっていったくせに。

…このままなら。



三回目まで、きっと待ちきれないよ。





695 名前:ツースリー 投稿日:2004/10/12(火) 01:57
以上、第7話です。

>>673 458 さま
せっかくゴルフ部らしくなってきたのにこんな更新で…柴ちゃんの活躍はまた次回w
ほんとうらやましいかぎりの待ち受けですwまたよろしくお願いします♪

>>674 tomaru さま
初レスありがとうございます!題名を気に入っていただけたなんてうれしいです。
これからもどうぞよろしくお願いします♪
696 名前:660 投稿日:2004/10/12(火) 02:03
思いがけずリアルタイムでした(二度目だったりw)
柴ちゃんかわいい〜w
694の最後の部分に軽くノックアウされました。
次回も楽しみにしております。
697 名前:458 投稿日:2004/10/12(火) 02:07
更新お疲れさまでした。
偶然リアルタイムでした。運がいいです。
よっすぃーさん、あなた待ち受けといい今回といい羨ましすぎです。

次回も楽しみに待っています。頑張って下さい。
698 名前:もも 投稿日:2004/10/12(火) 04:21
更新お疲れさまです。

嬉しい♪〜連続?更新だぁ。ウヒ(0^〜^)/
待ってましたぁ!!

よっすぃ〜おいしいぞぉ!!この!うらやますぃぢゃないか!!
自分も三回目まで、待てないぞ!

次回も楽しみに待ってます。
って言うか毎回楽しみなんですが(((o(^。^")o)))ワクワク
699 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:10



「ぐっ…ゲッホ…ゲホ!!」
「もう…だからあのとき、うつるよって言ったのに…」
「…へへっ。」


よっすぃ〜が看病してくれたおかげで、私の風邪はすぐによくなったんだけど…

案の定、その風邪をよっすぃ〜が引き継いで。
あれからもうずいぶんたつけど、それがちっともよくならない。
…ん?

「…ちょっとそこ!!何ニヤニヤしてんのよ!!」

背中にイヤ〜な視線を感じて、振り向きたくないけど、仕方なく振り向くと、
まいちゃんとアヤカとあさみちゃんが。
恐ろしい笑顔でこっちを見ている。

「えぇ〜だってぇ〜なんでよっすぃ〜に風邪うつっちゃったのかなぁと思ってぇ〜」
「だ、だからそれは!…よっすぃ〜、看病してくれたから…私を。」
「「「うつる〜?それくらいで、うつる〜???」」」
「う、うるさぁい!!」



700 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:12


「ほら、みんな。そろそろ始まるよ、試合。柴田、準備はいい?」
「あ、飯田さん…。はい!がんばります!!」


そう、今日はとうとう練習場をかけた、サークルとの試合の日。

そのために、本格的なゴルフ場に来ているわけで。
つまり山なので…朝はまだちょっと寒かったり。

「へっ…へぇくしょんっ!!」
「よっすぃ〜!大丈夫?そうだ私の上着、着てて?」
「大丈夫ですよ〜これくらい。」
「やっぱり今日は無理しないで、中に入ってて?結構歩くし、また風邪ひどくなっちゃったら…」
「平気です。それに…先輩の活躍みたいし♪がんばってくださいね。」
「…つらくなったら言うんだよ?ほんと無理しないで…だからそこ!ニヤニヤするなぁ!!」
「「「ふぅ〜あついあつい〜〜♪」」」


かなり不安だけど、よっすぃ〜のことは残りの三人にまかせて…飯田さんとともに、
スタートのティーの位置につく。

「よく逃げないで来たね、かおり。まぁ今年もどうせオイラの勝ちだけどっ!!」
「矢口さん靴下下がってますよ。あ、ひさしぶり、柴田さん♪」

「ふん!!ちっちゃいのがなんか言ってるけど、カオ聞こえな〜い」
「飯田さんベスト裏返し!あ、ミキティ。ひさしぶり、今日はよろしくね。」

むこうの代表も、去年と変わらず、部長の矢口さんと副部長ミキティコンビ。



701 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:13


私たちの試合は、それぞれのチームのボールをペアで交代に打ち、もちろん、
合計の打数の少ないほうが勝ちとなる。


勝者の賞品は、練習場が使える権利。
…がんばんなきゃ!!


「じゃあオイラから先に打たせてもらうよ…」
「ダメ!!かおりが先に打つの!!」
「オイラ!」
「かおり!」
バシっ!
「おぉ〜柴田さんナイッショット!相変わらずうまいじゃん♪」
「またぁ〜ミキティこそ。あ、その手袋かわい〜♪」

「えっと…ミキティもう試合始めてんの…?」
「…柴田がカオより先に打ったぁ〜」


「な、なんなんですかね、この試合…」
「ohあさみちゃん!それは言わない約束よ♪」
「じゃ、うちらも後ついてこっか。よっすぃ〜平気?」
「ごほっ…はい!OK牧場!!」



その後の勝負はなんだかんだいって、やっぱり接戦で。
矢口さんもミキティも、ほんとにうまい。
だけど私達だって、負けるわけにはいかないんだから!



702 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:14


いよいよ最終ラウンド。


スコアは…私たちが、一打。
負けている状況。


「焦ることないよ。最後に追いつけば、延長ラウンドあるし。大丈夫。」
「…はい。」

「よし、ミキティ!ここで決着をつけるぞ!」
「はぁーい。あ、勝ったら焼肉って約束、忘れないでくださいねっ!」

どちらのチームとも3打でグリーンにのせてきて。
次のパターは…私とミキティ。

先にボールが遠いほうにある、ミキティから…打つ。


「レバ刺ぁぁ〜し♪」
カランっ
「すげーミキティ!!入ったぁ!この距離を決めるたぁ、さすが毎日肉食ってるだけの
ことはあるなぁ。」
「えへへ。矢口さん、今日はカルビ、特上にしてくださいね♪」
「わ、わかってるよぉ…」



703 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:15


ミキティ…そんな…決めるなんて。
もう後がない――次、私が…外したら。
負けてしまう。


みんな一年間…倉庫の中で。
ろくな活動もできないまま、それでもやめずにがんばってきたのに。

…私にかかってるんだ。

どうしよう…緊張で
――手が震えて止まらない。


「柴田、落ち着いて…」
「…せんぱいっ!!がんばれぇっ!!…ゲホッ」

…よっすぃ〜…?

「がんばれっ!大丈夫、絶対入る!だって…先輩いつも残って練習してたんだから!
だから大丈夫っ!が、がんば…ゲホ」
「ちょ、よっすぃ〜大丈夫?!」



704 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:17


…バカよっすぃ〜
風邪ひどいのに…大声なんか出して。

あんまりあきれて…手の震え、止まっちゃったじゃない。


よしっ!
…コンッ

「「「は、入れぇぇ〜〜!!!」」」


お願い…入ってっ!

だけどそのみんなの想いをのせた白いボールが、私の視線から消えることはなかった。


「…勝負あったね。今年もオイラたちの勝ち、ってことで。」
「で、でもさ!別に練習場はみんな使いに来ていいからね!
ほら、これでもう矢口さんと飯田さんは引退だし。部とサークルがケンカする理由も
ないんだからさぁ!いつでもおいでよ」


…引退?
そうだ、二人とも4年生だから…じゃあこれが最後だったの?
飯田さんは私のせいで…最後の勝負に負けてしまったの?



705 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:17


信じられなくて、どうしていいかわからなくて。
飯田さんを見たら、飯田さんも私を見ていて。
…そしてにっこりと、微笑みを浮かべながら。

矢口さんのもとに歩き出した。

「…いい勝負だった。矢口、お疲れ様。ありがとね。」
「かおり…こっちこそ。楽しかったよ、今まで。ホントありがとっ!」

ケンカしてたのなんかウソだったんじゃないか。

そう、思えるくらい。

沸き起こる拍手の中。
二人は笑顔で、固く握手をかわした。


その姿に後悔とか、そんなものは感じなかったけれど。
それでも私は立ち直れなくて。



706 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:18


いつのまにかロッカールームにいたけど、着替えることもできない。
ただずっと、手にできたマメを見ていた。

なんだったんだろ。
なんのために、私は練習してきたんだろ。

もちろんゴルフが好きだからだけど。
でも、スポーツが勝負である以上、それだけでは意味なんてないのに。

「…柴田?」

溢れる涙をぬぐっていると…飯田さんが入ってきて。

隣に座って…私の手を握った。

「柴田…泣かないで?気にすることなんかないんだよ?あの位置は、ちょっとコース
読みづらいところだった。あそこにボールをのせた、かおりにも責任あるよ。」
「…そんなこと…それにもし最後の順番、飯田さんが打っていたら…追いついたかも、
もしかしたら勝てたかもしれないのに…」
「かおは…よかったなって思う。柴田が最後で。最後で…失敗してくれて。」

………え?



707 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:19


「今日ね、どうしようって思った。もし負けるとき…最後のショットがかおだったらって。
ひどい先輩だよね。
んー例えるなら甲子園の、9回裏ツーアウトで打席がまわってきたバッター。
みんな最後のバッターにはなりたくないじゃない。
もちろんもし、その人がアウトになって負けたとしても。それはその人のせいじゃないし、
誰もその人を責めたりしない。しちゃいけないの、スポーツマンならね。
でもかお…そういうのがいやで、ゴルフ始めたんだ。」

…ゴルフを…?どうして…?

「ゴルフは個人競技だから。他人のことは関係ない。人に気を使わなくていい。
勝ちも負けも。自分だけのものだってね。
だから楽だと思った。でもそれって、逃げてるだけだったんだよね。」

「飯田さん……」

「この試合はさぁ。正式なもんじゃないから、なんでかチーム戦でさ。
かお、最初はやだったの。せっかくのゴルフがだいなしじゃんって。
でも…楽しかった。柴田とゴルフするの。
喜んだり悲しんだりって…一人でするより、人とするほうがずっといいよ。
そのときから…わかった気がする、本当のスポーツの楽しさ。」

「本当の…楽しさ…」



708 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:19


「それにゴルフって、個人競技だけど一人ぼっちじゃないんだよね。
応援してくれたり、支えてくれる人、いっぱいいる。
…今日のよっすぃ〜の声、すごかったよね。
だから、かお、お礼が言いたいんだ。柴田に。ありがとう、ほんとうに。」
「そ、そんな…お礼なんて…私…」

「ううん。…もし、最後に自分が失敗してたら…やっぱり悔いが残ると思うんだ。
あーすればよかった。こーすればよかったってね。
でも…柴田が外したんだったら。
うちで一番練習してる柴田が外すんなら。
こりゃーかおでもダメだった。完璧負けたって。
かお、素直に受け止められる。
…だからもう、悔いはありません!!笑顔で引退できるよ。
ありがとう、柴田。こんなに楽しく過ごせたの、ほんと柴田やみんなのおかげ。
うちの部、倉庫だし部費はほとんどないし。
でもみんな明るくて楽しくていい子ばっか。いい部活だよね。」

「…はい…」
「もういつまでもそんな暗い顔するなぁ〜?元気出して、来年がんばれ!ね?」



709 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:21


じゃあ先、行くねって。

去っていく飯田さんはすっごく大人で、素敵な女性だった。

だけど私は。
この大切な先輩のために、なにかできたんだろうか。


「…せんぱい?入って平気?」

…よ…っすぃ〜?

「今…飯田さんに…行って来いって、言われて。」
「…そう。」

そして後輩のために…なにかできるんだろうか。

「あのさ…そこで、話。ちょっと聞いた。うちは…飯田さんの言う通りだと思うんだ。」
「…え?」



710 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:21


「責任感じること、ないよ。飯田さんが言ったこと、飯田さんの本当の気持ちだったはず
だし。逆に先輩が気にしちゃうほうがさ、イヤだと思うんだ、飯田さんも、みんなも。」

よっすぃ〜が言いたいことも、私を励まそうとしてることも。
もちろんわかったけれど。

でも、私よりも大人な考え方をよっすぃ〜がしているのは。
悔しくて恥ずかしくて…そしてちょっと寂しくて。

だからつい、つっかかってしまった。


「…飯田さんは!私を励ますために、わざとああ言ったの!それに…もし飯田さんが
ホントに気にしてなくても、やっぱりそんな簡単に忘れられるわけないじゃない!
よっすぃ〜なんか…わかんないくせに!私の気持ちも、飯田さんの気持ちも!」
「うん…ごめん。」


イヤな子だな、私。
こんなのただのやつあたりで。
優しさに甘えてるだけじゃない、よっすぃ〜の…飯田さんの。



711 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:22


うつむいてしまった私の手を、温かい体温がくるんでくれた。


「でもさ…うちもね、高校んとき部活でバレーやってて…最後、全国大会の決勝で
負けちゃったときさ。悔しかったし、悲しかったけど、ミスした仲間を責める気持ちには
なんなかったよ?カッコつけるわけじゃなくて。
…勝負をさ、勝って終われる人なんて、ほんの少ししかいないじゃん。
負けるんだよ、ほとんどの人は。でも負けた人がみんな後悔したまんまかって言ったらさ、
違くない?みんな負けを通して、成長するんだよ。
 飯田さんはたぶん…仲間の大切さを学んで、成長できたって、自分で納得したんだ。
だからその気持ちに、先輩は答えてあげなきゃいけないと思う。」
「うん…」
「いつまでも泣いてたらさぁ〜せっかく先輩を認めて、ありがとうって言ってくれた
飯田さんに失礼だよ。だから泣くな〜?」
「ん…」



712 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:23


目の前でニコニコ笑う、その顔はいつものよっすぃ〜なのに。
涙をぬぐってくれるその手の大きさは、私の知らないよっすぃ〜。


「いしし…ボロボロだぁ!ひどい顔♪」
「…うるさいよっ!!」


そんなの自分でもわかってるもん。
あぁ…見られたくないのにな、こんな顔。


タオルで顔を隠そうとすると、そっと手を押さえられて。
視線を上げると…ほら、また知らない目。


「…でもかわいいよ。」



713 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:24


そんなことを言うのなら、せめてふざけて言ってほしい。


ほんとにそう思ってくれるんなら、お願いだから言わないで。



どうしていいか、わからなくなってしまう。
赤くなる頬を、もうごまかせないと悟った。

ぎゅっと目をつむったら、唇に触れる感触があったけど。
それが私が望むものではないんだと、すぐわかった。
だってよっすぃ〜の唇は、もっとずっとやわらかいし。


目を開けると、よっすぃ〜の親指が、私とキスをしていた。

「…また風邪、うつったら大変だもんね。」

そう言って複雑そうに笑うのを、見たとき。
確信してしまった。



714 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:26


気づいたのではなく、思ったのでもなく。
確実に、そうわかった。


私、好きだ。
よっすぃ〜が、すごく、すごく。


知らないよっすぃ〜を、全部知りたい。
みんなには秘密で、私にだけ。そっと教えてくれたなら。


言えばよかったの?
このとき、この気持ちを、よっすぃ〜に。

でも想いはもう溢れてしまっていて。
言葉には、とてもならなかった。

「…さてと!みんな、外で待ってるから。そろそろいきましょっか!」
「……ん。」


もうよっすぃ〜の手に、ただ触れることなんてできなかったから。
手を引かれることはしないで、先に行く、よっすぃ〜の背中を追いかけた。



715 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:27


「…っあ!出てきたーよっすぃ〜…ちょ、あゆみん泣いてんの?!」

涙はもう流れていなかったと思うけど、きっと真っ赤な目は、まいちゃんにはそう見えた
みたいで。

「どどどどどうした?!あゆみん、どっか痛いの?言ってごらん?」
「まいちゃん…実は…よっすぃ〜に…いじめられたの…」
「「「えぇ?!!!!」」」

「へ?いや…うち?!そ、そんなバカな!!」
「ちょっとよっすぃ〜…こっちにおいで。」

「ohあゆみ〜かわいそうに。もう大丈夫よ、イッツOK〜♪」
「柴田大丈夫?かわいそ〜かおこわぁ〜い!」
「あの…よっすぃ〜が里田先輩に噛み付かれてますけど…いいんですか?」


ごめんね、よっすぃ〜。ありがとうまいちゃん。

…そりゃーいじめられてはいないけど。



716 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/18(月) 03:27


でも、やっぱりいじわるはされたと思うから。


してほしいときに、キスをくれないのは。
やっぱり、すごくひどいよ…よっすぃ〜。


三回目のキスを、あのときしてくれていたら。



私は――魔法にかかって、お姫さまになれたのに。






717 名前:ツースリー 投稿日:2004/10/18(月) 03:38
以上、第8話です。

>>696 660 さま
リアルタイム!なんと二度目ですか?!…これはもう…運命としかw
今回はやっと部活らしい更新になれたかと思います。またよろしくお願いします♪

>>697 458 さま
リアルタイム!!なんだか私もすごくうれしいですw感動です。
そろそろ後半になってきました…これからもよろしくお願いします!

>>698 もも さま
えぇ、ほんとによっすぃ〜はおいしいヤツですw(0^〜^)ニヤニヤ
ワクワクしてくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします♪ 
718 名前:696 投稿日:2004/10/18(月) 10:56
リアルタイムは逃しましたが朝から読んで会社でニヤニヤw
これも運命?!(バカ
よっすぃにク〜ラクラな柴ちゃんかわいすぎ!
次回もがんばって下さい。
719 名前:458 投稿日:2004/10/18(月) 17:01
更新お疲れさまです。
よっすぃーさんかっこよすぎですよ。
柴ちゃんもかわいいなあ。
作者様の書く2人に頬が緩みっぱなしです。
720 名前:もも 投稿日:2004/10/22(金) 03:32
更新おつかれさま。

(0^〜^)かっけーぞ!
もう魔法にかかったかな??

川σ_σ||ちゃん可愛い過ぎです、メロメロ♪(*/∇\*)キャ♪
721 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:45


「様子がおかしいって…あゆみんの?」
「そうなんです。確か…あの試合の後ぐらいから。里田先輩はそう思いませんか?」
「いや、別に?私には普通だと思うけど…例えばどんなふうに?」
「そぉですねぇ…こう、うちと目が合うとものすごい勢いでそらしたりとか…
うちが近づくと真っ赤になって逃げちゃったり…
その顔がこれまたかぁわいくてかわいくて!!!いやぁ〜たまらん!!
…あれ?何の話でしたっけ?」
「そうなんだぁ〜…っておいっ!!」
「あ、まぁそんな感じで。なんか避けられてるような気が…この間、生意気にお説教
しちゃったからかなぁ…嫌われたのかな、うち。」
「う〜ん…まぁ言われてみれば元気はないかなーって気はするけど。
でも飯田さん引退しちゃったし、そのせいじゃない?よっすぃ〜のせいじゃないと思うけ
ど。」
「…ですかね。」



722 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:46


「それより、よっすぃ〜…さ。掲示板、みたんだけど…あれ、マジ?」
「え?あぁ。うちもびっくりしたんですけど…受かったみたい、テスト。」
「すごぉ!いつの間に受けたの?…意外にいいんだ、頭。」
「意外の意味がわかりませんけど…?」

はぁ…。
何、話してるんだろ。


前は全然平気だったのに。
今は、よっすぃ〜が誰かと二人で話してるのを見ると。
…例えそれがまいちゃんでも。


ズキズキして、胸が痛い。
頭も。


隣に行きたいけど、行けない。
話したいけど、話せない。


私は…こんなだったっけ。



723 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:46


気づいたら、もう結構遅い時間。
足が、体が、心が。
ありえないくらい重いけど。
とりあえず家に帰らなきゃ。

倉庫のカギを閉めて、学校の門をくぐると。
バイクの音がしてて、…暴走族だったら逃げようと思ったけど。


よっすぃ〜だったから。
逃げられなかった。


「せんぱぁ〜い♪お疲れ様です!送りますよ〜」


私の態度がおかしいこと、きっともう気づいているのに。
普通にしようとしてくれてる、だから。


ここはおとなしく、後ろに乗せてもらうことにした。



724 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:47


前にも…こんなことがあったな。

あの頃は、バイクの走る音とか、振動とか。
よっすぃ〜の背中の体温を感じても。


こんなにせつなくなんて、ならなかったのに。


そんなに前のことじゃないのに、妙になつかしくて。
涙が出そうだった。


「とうちゃ〜く!」
「…ありがと。」

ほんとは…私が帰るの、待っててくれたこと。
送ってくれたこと、
私の変化に、気づかないふりをしてくれてること。


すごく感謝してるのに。


そっけなく、言うことしかできなくて。



725 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:48


「…じゃ、帰ります。明日も部活ありますよね。」

あぁ…帰っちゃう、よっすぃ〜。

「いやぁ〜そろそろ本格的に練習しよっかな、うちも。」

今日…ううん、あの試合の後から。
意識しだしたら、ずっと話せなくなっちゃって。

「たぶんうち、才能ある気がするんですよ〜♪一番になっちゃうかも。」

やだなぁ…
前の方が、気づかないほうがよかったのかな、自分の気持ち。

「…なんで、泣くの…?」



726 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:53


だって、だって。

もっと近づきたいのに、前より遠くなっちゃって。
あなたから逃げてるのは私だけど、でも寂しくて。

一度溢れ出した、卑怯な私の涙は、簡単に止まらなかった。


「…もう…どうすりゃーいいの、うちはぁ…」



あきれる風でもなく、怒ってるわけでもなく。
やさしく…困ったなぁって感じの声で。


ねぇよっすぃ〜。

私、あなたを好きになったら。
わがままになっちゃうの、不安になっちゃうの。



727 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:55


他の人に近づかないで、触んないで。

私のこと、好き?
どれくらい?私が想うよりも?


自分でもうっとうしい、こんな気持ち。
知られたら嫌われそうで。


だから、好きだから、好きだなんて、簡単に言えなくて。


でも、その気持ち抑えることもできなくて。

「…どぉすりゃー…いいの?…私…」
「あはは…マネした。」


泣くなぁ泣くなぁって子供でもあやすみたいに抱きしめられて。



728 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/10/25(月) 03:59


あぁ、ここはいいなぁ。
よっすぃ〜の近くは、腕の中はいいなぁ。

私の周りの
私を包む世界が。

全部よっすぃ〜でできてたらいいのに。


よっすぃ〜の中にくるまれて、安心しすぎてしまって。
そのせいで、よっすぃ〜の言葉、気持ち。
見落としてたんだね。


「…やっぱ…うちじゃ。ダメなのかなぁ…」



何も言わずに泣き続ける私を。



あのときよっすぃ〜はどう思ってたんだろう。





729 名前:ツースリー 投稿日:2004/10/25(月) 04:09
以上、第9話です。

>>718 696 さま
運命…ですねwう〜んせっかくク〜ラクラなのに…今回はこんな感じです…
また次回も、こりずに読んでいただけたらうれしいです♪

>>719 458 さま
私もみなさんからいただくレスを読むと頬が緩みっぱなしですw
また次回もがんばりたいと思いますので、よろしくお願いします!

>>720 もも さま
メロメロ…メロンですか?wありがとうございます♪
今回は短めな更新ですみません…またよろしくお願いします!
730 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/25(月) 18:49
よし!もう一押しだ!
よっちゃん!行けるぞ!w
731 名前:458 投稿日:2004/10/28(木) 16:40
更新お疲れさまです。

柴ちゃん・・・・・・・
ほんと、この気持ちだけは説明も論理も関係ないですよね。

次回更新、楽しみに待っております。
732 名前:もも 投稿日:2004/10/30(土) 06:35
更新おつかれさま。

よっすぃ〜のさり気ない優しさがスッゴクイイ!
川σ_σ||ちゃんも惚れるよね。。。

更新が待ちどうしいです。
733 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:07


…私とよっすぃ〜のそれまでの関係って。

つな引きしてたようなもんだったから。

ある日、ものすごい力で、よっすぃ〜が私をひっぱり出して。

私はそれに逆らうために、よっすぃ〜に連れてかれないように、
必死に足をじたばたして、暴れて、踏ん張っていたの。

ていうことは、もし、急によっすぃ〜が力を抜いたら、二人の間の綱は緩んでしまって。

私は転んじゃうんだよ?


だからよっすぃ〜は

絶対に、その手を離しちゃダメなんだよ。
ずっと引っ張っていてくれなきゃ、ダメなんだよ。


じゃなきゃ私は―――もう立っていられないんだから。




734 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:08


どうしてか、わからないんだけど。
あの夜以来、よっすぃ〜は私に近づかなくなった。

ううん、避けられてる、とかじゃなくて。

部活中とか、普通に話すし、
きっと、周りのみんなには、いつも通りに見えるはず。

そもそも、そのいつも通りが、もう私にはわからないんだけど。

とにかく、心が…遠くなったみたいな。
もっと言えば…触ってこない、みたいな。

つまり、手もつながれないし、抱きしめられたりもしないし…。

もともと、つきあってもないのに、そんなことしてたっていうのもどうかとは思うけど。
まぁ、この際、それは置いといて。

このよっすぃ〜の変化が、何を意味するのか。
考えるのも、怖すぎて。

ただそれまでの、よっすぃ〜の温かさとかを。
思い出して、忘れないように、過ごしてた。



735 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:08


「あゆみんさぁ〜最近どうしたの?」

突然、ワケわかんないこと言い出すのは、いつものことだけど、まいちゃんの場合。
でも、心当たりがないわけじゃないから、今回は。

「どう…ってなにが?」

電話越しの私の声が、いつも通り、冷静に聞こえたかどうかは、わからない。

「いやぁ〜…元気ないし。よっすぃ〜ともさぁ。なんか変じゃない?」
「…そう?普通じゃない?」


まいちゃんから見ると、やっぱり元気がなさそうなのは私で。
それまでと違う、変な態度をとっているのも私なんだ。


それはきっと正しいけど、でも少し悲しかった。



736 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:09


「そう?…ならいいんだけどさぁ〜。前にね、よっすぃ〜にも相談されたんだよねー。
あゆみん最近おかしくないかって。そんときはさぁ、飯田さん引退したばっかだったし。
そのせいで元気ないのかなって思ってたんだけど…」
「あぁ。うん、たしかに飯田さんいないのは寂しいけどね…」
「あ、やっぱり?でもほんと寂しいもんねーうち、もともと部員少ないのにさ。
この上よっすぃ〜までいなくなっちゃったらさぁ〜」
「……え?」

待って…ちょっとっ…
なに?

どういう、意味?

「…もしかして…知らないの?よっすぃ〜が…あゆみん、掲示板、見てない?」
「み、見てない、全然。なに?よっすぃ〜どうしたの?なんで?」

いなくなるって…うちの部から?なんで?どうして急に…

「うちの姉妹校、オーストラリアにあるじゃん?そんで、お互いの学生を交換留学
させようって話しが出てて…よっすぃ〜その試験受かったみたいでさ、いっちゃうんだよ、
夏休みになったら。」
「そんな…」



737 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:10


聞いてないのに、そんなこと。
じゃあいなくなっちゃうのって…部活からだけじゃないの?
もしかして…

私のそばから、ほんとにいなくなっちゃうの?

「で、でもさぁ〜意外に頭いいよねあの子!タダでオーストラリアだもん、うらやましい。
お土産いっぱい頼まなきゃねぇ〜…大丈夫?あゆみん…」
「ん…ごめっ…まいちゃん…今日は…もう…」
「あ、うん、わかったわかった。…だからさ、よっすぃ〜もうすぐいなく
なっちゃうんだしさ、もしケンカとかしてるんだったら、仲直りしてあげてほしいなって
思って…おせっかいでごめんね?じゃあおやすみ…」
「…わかった…おやすみ。」

…あぁ。
よっすぃ〜には、今まで、いろいろ驚かされてきたけど。
…今日、これが一番、驚かされました。

他のみんなって知ってるのかな。

よっすぃ〜から、もう言われたのかな。



738 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:11


…なによ。

なんで、私に、何も言わないのよ。
何も言わずに、行っちゃうつもりなの?

そんな風に…よく行けるよね、勝手に。


寂しさが膨らみすぎるのを抑えるために。
それを怒りに代えることにすると。

ほんとに、めちゃめちゃ腹がたってきて。


でも…考えてみたら。

私、別に彼女じゃないし。

そういえば…好きって言われたことあったっけ?
キスは2回、されたけど。

何度もきつく、抱きしめられたけど。

言われてないじゃん、ダメじゃん。


私が一人で舞い上がってただけなんだ。
なんだ、そっか。



739 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:11


もちろん、よっすぃ〜が、好きでもないのに、あんな風に。
キスとかするような人じゃないって、ほんとはちゃんと分かってるよ。


言葉じゃなくても、好きだって。
何度も、何度も聞こえたよ。


でも、そう思わなきゃ。
納得できないんだもん。
我慢できないんだもん。


なんで置いてくの?

どうして、何も言ってくれないの?

だから最近、私に触れないの?


嫌われるのが怖くて。
ほんとの私を見られるのが怖くて、好きって言えないなんてバカみたいな悩み。


だってもう、よっすぃ〜は私のそばからいなくなっちゃうのに。





740 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:12


次の日、朝練の前に、掲示板を見に行くと。

まいちゃんの言った通り、留学決定者の欄に、よっすぃ〜の名前があって。

それを見た瞬間、頭の中で、何かがキレた私は。
まるでアイドルのポスターを盗み取る、おっかけのように。

そのビラを勢い良くはがし、猛スピードで部室に向かっていた。


「……はぁっ…よっすぃ〜〜〜!!!」
「ほふぇ?はい?」
「どういうことよ、コレっ!!!」

朝ご飯を食べ損ねたのか、部室でパンをかじっていた、よっすぃ〜につかみかかる。

「oh〜あゆみったらまだ朝のあいさつもすんでないのにぃ。グッモーニン♪」
「げっ…柴田先輩…どうしちゃったんですか?」
「ふふん。アヤカにあさみちゃん。今日は朝からおもしろいもん見れるわよぉ〜♪」



741 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:13


「どれどれ…あぁ、留学の…え?!これ掲示板のはがしてきたんですか?!
うわ、お、恐ろしい…」
「そんなこと言ってる場合じゃないの!何よ留学って!するの?!」
「え?いや、まぁ…しますけど、そりゃあ。」
「…っ!な、なんでするのよぉ!」
「へ?!だ、だって…試験受かったんだし。」
「バカぁ〜!!受けるなぁ!試験なんて!」
「そ、そんな今さら受かってから言われても…」



段々、わかってきた。自分の性格。


よっすぃ〜に出会ってから。



742 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:15


私はもう…どうしようもないだだっ子で。

好きな人の前だと、わがままで、意地っぱりで。


でも、それを好きな人に…よっすぃ〜に見せたくなくて。
今まで、抑えてきたけど。


結局…無理じゃん、そんなの。


だからもう
しょうがない、全部、出してしまおう。

「…行くなぁ〜…よ、よっすぃ〜…行っちゃやだぁ〜…」
「え?!ちょ、ちょ、先輩…な、泣かなくても…」

おろおろしながら、親切にもさっき食べてたパンに入ってたと思われる、
小さいお手ふきで私の顔をふこうとする、よっすぃ〜の腕の中に、
ガツっと飛びこんだ。



743 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/04(木) 02:16


「…あだっ!!」
「…好きなのぉ…よっすぃ〜…好きだからっ…行っちゃやだぁ…う、うわーん!」


ボー然としてる、よっすぃ〜の腕が、いつしか、ゆっくり私にまきついて。


ひとまずホッとして、周りを見ると。
びっくりしてるアヤカと、
何が何だかわかんないって感じのあさみちゃんと、


なぜかガッツポーズをしてるまいちゃんの姿が。


朝っぱらからやけに印象的だった。






744 名前:ツースリー 投稿日:2004/11/04(木) 02:22
以上、第10話です。
次回、最終話になります。

>>730 名無飼育さん さま
もう一押…そしてあともう一話となってまいりましたw
また最後まで、どうぞよろしくお願いします♪

>>731 458 さま
そうなんですよね…恋する気持ちっていうヤツは…
次回、最後になりますが、どうぞよろしくお願いします♪

>>732 もも さま
もう、とうとうこの話も後一回となりました。
最後まで、この二人を見守ってあげていただけたらうれしいですw
よろしく、お願いしますm(__)m
745 名前:もも 投稿日:2004/11/06(土) 02:35
更新おつかれさま。

。・゚・(ノД`)・゚・。よっすぃ〜いがないでぇぇ〜
どうなるのぉぉ・・・・・・

二人の幸せを祈ってます。mm(_ _)mm
746 名前:プリン 投稿日:2004/11/06(土) 21:08
更新お疲れ様ですっ。
お久しぶりでやんす。

やっぱ吉柴(*´Д`)ポワワ
ホントによっちゃん行っちゃうのかなあ。オロオロ。
どーなるんだろ。気になりますね(w
747 名前:458 投稿日:2004/11/07(日) 23:15
更新お疲れさまです。

おおっ、柴ちゃんよく言った。
やっぱり素直が一番ですよね。

最終回、期待しております。
748 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:00


「さぁ……わけを、聞こうじゃない。」
「いやいや、聞きたいのは、うちのほうなんですけど…」


結局授業にも出ないまま

ていうか教室にも行かないまま、逆戻り。


…今日、私何しに学校行ったのかしら。



あの後、結局まいちゃん達が帰れ帰れって。
…帰ってイチャついてこい、ていうかイチャつくんなら帰れって。
言うから、さ。


とりあえず、私の部屋に、二人で場所を移しまして。



749 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:01


なによ…別に、私とよっすぃ〜。
イチャついてなんて、なかったじゃん。

それより、私が泣いてることについては、なんで誰も触れないの?なぐさめないの?!!

くそぉ…

「で?」
「え?」

「いや…まず、先輩が聞きたいことって、なんですか?」
「あぁ…うん。今日はもう、きっちり答えてもらうから!」
「…なんでそんな気合入ってんだか…はい、どうぞ?」

少し、息をのんだ。


だって、相変わらずよっすぃ〜の声は優しいけど。

でも、やっぱり前に比べると、どこか違和感を感じてしまうから。



750 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:02


「最近さ…なんか、違くない?よっすぃ〜…」
「え…違い、ますか?…どんなところが?」
「あ、いや、みんなに対してはね?普通っていうか…それ以外の生活においてもね、
なんら変わりはないと思うんだけど…。
私に、は、さ。
 …なんか、違うじゃん。違う気がする…」
「別に、…違くないじゃないですかぁ〜もう、先輩何言ってんですかぁ〜」
「違く、ない?」
「違くない、違くない。」
「………じゃあなんで、そんな離れて座ってるの?」


よっすぃ〜の、苦笑いが、固まった。


だって、この部屋の中。

そんな広いわけじゃないのにさ、こんな離れて座るなんて
…あまりにも不自然じゃん。

私たちがさ―――こんな離れて座るなんて
…あまりにも、不自然じゃん。



751 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:04


「こっち、来る?」
「え?あ…いや…」
「…じゃあ、そっち、行くね。」
「へ?!うぁ…」


何も言わせず、ソファーから立ち上がって、壁側に寄りかかるように座ってる、
よっすぃ〜の隣に移動する。


「ね…よっすぃ〜…こっち、見て?」
「…見れないっすね。」
「なんでよ…見てよ。」
「…いや、見れないっす…」


…意味、わかんない。

「なんで、見てくんないの?それだけじゃない、よっすぃ〜、この頃ずっとおかしかった。
…前は、もっと…手、つないできたりとかさ、抱きついたりとかさ!してきてたのに…
私たちもっと…そばにいたじゃない。なんで、急にそっけなくなんのよ!
…このっ…プレイボーイ!!!」
「えぇぇ?!!ぼ、ボーイじゃないし!プレイしてないし!!ノープレイですよ!?」
「いいの!細かいことは!!」
「ちっとも細かくないよぉ……ま、いいや。先輩が聞きたいことって、それなんですね。
…これでも、いろいろ。うちも考えて。
気づいたんす…そういうこと…しちゃいけないんだって。」
「…どういう…意味よぉ…」



752 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:05


すると、突然、くるっとよっすぃ〜は私に向かい合って。


「先輩…かわいいっすね。」
「…はぁっ?!なによいきなり!ふざけてんの?!!」
「いや、ちょ、待って!!ふざけてません!ほんとに、かわいいと思うんです!!」
「………」
「かわいいと、思うから…あんま、近くにいちゃいけないなって。
…好きに、なっちゃうんですよね。一緒にいたら。うち、先輩のこと。もっともっと。」
「……え。じゃ、じゃあ…それなら…」


なおさら…離れる理由、ないじゃない。


「それに…うちが前と違うっていうなら…先輩だって。
おかしかったじゃないですか、ちょうど…サークルとの試合が終わったころぐらいから。」
「そ、それは…だって…」


だって…気づいちゃったから。
よっすぃ〜のこと、好きなんだって。



753 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:06


「…うん、わかってます。飯田さんが、引退しちゃったからでしょ?」
「へぇっ?!」
「…うちも…先輩に振り向いてもらおうと、がんばったんですけど、いろいろ。
でも、そんときわかった。やっぱ先輩は…飯田さんが、好きなんだなって。」
「はぁっ?!なにそれ?!な、なんでそうなるの?!」


い、いや飯田さんの引退はそれはそれで、もちろん寂しいよ?
でもそれとこれとは話が違うじゃない!!?


「だって…中学ん頃からの仲なんでしょ?それに二人でゴルフ練習しに行ってたし…」
「だからそれは試合があったからでしょ!!」
「…二人きりで、車の助手席に乗って、ドライブして、ナイスショット…」
「いや!だ、だからぁ!!」
「…泣いてたじゃん、試合の後。負けて飯田さんに申し訳ないって気持ちプラス…
飯田さんと会えなくなるのが嫌だったんでしょ?」
「嫌っていうか…そりゃ寂しかったけど。でも別に会えないってわけじゃ…」
「あぁ、そっか。二人でまたドライブすればいいもんね…」
「あぁっ!!もう!いいかげんにして!!」



754 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:07


なによ、なんなの?!
…もしかして拗ねてるだけ?!よっすぃ〜!


「だいたい…なんで勝手に決めつけるのよ!私、飯田さんのこと…好きだなんて。
一度も言ってないじゃない!
 それに…ドライブっていうか…バイクになら、よっすぃ〜と二人でも乗ったでしょ?」
「それはまぁ…そうだけど…」

「…しかも私と、よっすぃ〜は。…ドライブしただけじゃないでしょ?
したじゃん…キスも。そりゃあ、かなりよっすぃ〜強引だったけど…
でも、私だって。誰とでもあんなことしたりしないよ?
…それとも、よっすぃ〜は。私が軽く、あんなことする子だと思ってるの?」
「お、思ってないって!だから…うちだってさ、考えたんだ…
もしかしたら、先輩。うちにちょっと揺れてるのかなって。
でもさ、だけど…こないだ、夜送ったとき。
…泣くし、先輩。
どうしたらいいか、わかんないって、泣いたじゃん。
それって、うちと飯田先輩への気持ち、どうしたらいいかわかんないってことでしょ?
…板ばさみになっちゃって。かわいそうだなって。
だから、うちが。身を引けば。
先輩…飯田さんのことだけ、考えられるでしょ?
だったら…それが一番…いいんじゃないかって。思って…」
「………」



755 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:09


「…ここまで言っちゃったから。言うけど。
 一目ぼれだよ?うち。
 あの日、先輩に部活に勧誘されたとき、…なんつーか電流ですよ。
 先輩、うちを見る目が、キラキラしててさ…そんときから、ずっと好きなんだ。
 飯田さんのこと、あったし。答え、カンペキに出されるのも怖くて。
 ずっとハッキリ言葉に出して言えなかった。
 …好きです、先輩。すんげー、好き。もう、ほんと、どうにかしちゃいたいくらい。」
「…よっ…すぃ〜…」


吐き出される、よっすぃ〜の気持ちと、そのせつなさが。
なんていうか…あぁ、いつもは明るい、おバカなよっすぃ〜なのに。
私のせいで、私のために、せつなくなったりするんだって、なってくれるんだって。
そう思ったら、それだけで。

私はずいぶん満たされてしまっていて。


…だから、よっすぃ〜のことも。
満たして、あげたい。



756 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:09


「へへ…もう、覚悟はできてるから!フっていいよ!思いきり!」
「…よっすぃ〜…」
「うっす!さぁ来い!!かかってこぉい!!」
「…好き…」
「やっぱダメかぁ…ってえぇぇぇぇ!!!」


驚いたのか、のけぞって離れようとするよっすぃ〜を、ガシっとしっかりつかまえる。


「よっすぃ〜…」
「へ?!!はい??!!」
「だから好き…」
「な、なんで?!」
「…なんでも。好き。」



757 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:10


抱きつくと、よっすい〜の心臓が、壊れるんじゃないかってくらいバクバクしてて。
かわいくって、愛しくって。
つい、笑っちゃった。


「なぜ笑う?!!はっ!まさかうちのことだますつもりなんじゃ…」
「そんなわけないでしょ?全く、せっかく、やっと両想いになれたのに…」
「いやいや!!だって、じゃあ…飯田さんはどうするの?!」
「どうするもなにも…もともと何もないし。私にとって飯田さんは、そりゃあ大切な人
だけど。でも…それは恋とは違うから。」
「違わないじゃん!試合の後さ、先輩様子おかしかったじゃん?あれは恋する飯田さんが
いなくなっちゃったからでしょ?!」
「違うってば。あれは…よっすぃ〜みたいなバカな後輩に、恋してるって気づいちゃった
から。どうしたらいいか、わかんなかったの。
あの夜、泣いたのだって。
…よっすぃ〜に気持ち伝えるの怖かったから。伝えて、わがままな自分とか見られて、
嫌われたらどうしようって思ったから。」
「まじで…?」
「まじで。」
「じゃ、じゃあ…先輩うちのこと…?」

「だから。好きだって言ってるでしょ。…好きだよ、よっすぃ〜…」
「………幸せすぎて…怖いんですけど…」



758 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:11


私だって…幸せだよ。
しかし…飯田さんとのコト、誤解されてたとは意外だった…


「そっかぁ〜先輩もうちのことが♪いやぁ今日はいい日だ最高だ♪
…あ、そういえば、うちも聞きたいことが!先輩、さっきなんで泣いてたんですか?」
「あ!!そうだ、ちょっと、よっすぃ〜!留学するってどういうことよ?!」
「え、どういうことって?だから、成績よかったんで、交換留学の代表に選ばれて…」
「そういうことじゃなくて!…ほんとに?ほんとに、よっすぃ〜オーストラリア
行っちゃうの…?」
「えぇ、そりゃまぁ…なんで?先輩オーストラリアが嫌いなんですか?」
「いや嫌いなわけじゃ…ていうか場所はいいのどこだって!…なんでよぉ…
…なんでよっすぃ〜いなくなっちゃうのよぉ…」
「わっわ!な、泣かないでくださいよ!いなくなるって、別に死ぬわけじゃないんだし…」
「そうだけどぉ〜…離れたくないよぉ…やだぁ…」


なんで、よっすぃ〜はそんなに余裕なの?
…普通、好きなら一緒にいたいでしょ?

そこらへん、結構ドライなのかな?よっすぃ〜…



759 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:12


「う〜ん…まぁ行くの夏休みだし…」
「もうすぐじゃんよぉ〜…あっという間だよぉ…」
「そう、あっという間ですよ。2週間ぐらい。」
「それは言い過ぎでしょぉ?まだ期末試験もあるし、夏休みまで一ヶ月はあるよ〜…」
「いや、夏休みまでがじゃなくて、留学が。たった2週間だし。すぐ帰ってきますよ。」
「は?」


…ちょっと待って。

なんて言った、今?


「…なに…どういうこと?2週間って…」
「え?だから、交換留学が。留学っていうかホームステイみたいなもんですよね。
まぁタダで行けるんだし、たった2週間でも、文句は言えないですけどね。」
「…2週間…2週間なの?」
「はい。掲示板の紙に書いてありませんでした?」


…あったのかも…ほとんどよく読まなかったから…それどころじゃなかったし…



760 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:13


「いやぁ〜里田先輩に、本場のコアラのマーチ買って来いって頼まれちゃって。
売ってますかねぇ、オーストラリアにもコアラのマーチ。」
「はかったな…まいちゃんめ…」


絶対知ってたくせに…よっすぃ〜の留学が2週間だってこと!
それをいかにも何年も帰ってこないような言い方して…
さてははじめから、私に行動を起こさせようと…
はっ!だからあのときガッツポーズだったんだ!…やられた…



まいちゃんへの文句をフツフツと煮えたぎらせていたけれど、
よっすぃ〜の腕が、私の体にギュッとまわされると。
そんなのもどっかにいってしまった。


「…夏休み。楽しみだな。留学もだけど…いっぱい遊びましょうね、先輩。」
「え?…うん。」

じゃあ…一緒にいられるんだ…よっすぃ〜と、これからも。



761 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:14


「…うん。ずっと一緒にいましょうね。」

よかったぁ…。
あぁ幸せ…でも…


「…寂しいな…」
「え?」
「……2週間でも。……会えないの。」
「…先輩。」


大げさじゃなくて。
ほんとに、そうなんだもん。
よっすぃ〜と抱き合っていると、ほんとに気持ちよくて、安心して。


ここから2週間も追い出されるなんて。
すごい、ヤだ。



762 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:15


「…すぐ…帰ってくるから…」
「…でもぉ…」
「大丈夫………好きだよ…」

笑いながら、そう言ったよっすぃ〜の顔が。
だんだん近づいてきて…あ、ちょっと待ったぁぁ!!

「でぇぇ!!な、なにするんですかぁ…痛いよ先輩…」
「だって…」


急に私に乗りかかられたよっすぃ〜は、背中を打ったみたいで、涙目になっているけど。
気にしない、気にしない。


それよりさ、思い出したんだ。
最初に、言ったじゃない、よっすぃ〜。


「3回目は…私からするんでしょ?…」
「え?!あ…いや…」
「…好き…よっすぃ〜…」



763 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:16


お調子者で、手が早くって。
出会ってから、私はずっと振り回されっぱなしだけど。


…ねぇ、よっすぃ〜。

あのとき、一目ぼれしたのは。
よっすぃ〜だけじゃなかったのかもしれないよ?


…3回目のキスで恋に落ちるなんて、ウソばっかり。


だってきっと、初めてあなたの目をみたあのときから


私はもう、魔法にかけられていたんだから。




764 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:17


「あの先輩…離れてください…」
「え?重い?」
「いや、そうじゃなくて…」


3回目が完了して、そのままひたっていると、よっすぃ〜からなにやら抗議の声。
なんで?
まぁ確かに今よっすぃ〜のこと押し倒して、その上に上ってる状態だから。

重いんなら悪いと思うし、どくけど。


「なんちゅーか…こういう体勢だと…ガマンがですね…できない…」


…あぁ。
なんだ、そんなことか。



765 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:17


「…いいよ、できなくて。」
「うぇぇ?!」


だってさ、さっきよっすぃ〜も言ってたけど。


「…私だって。どうにかしちゃいたいくらい、よっすぃ〜のことが好きなんだよ?」



その後…15回目くらいまでは、数えてたんだけど、キス。

あとはもう、全然。

わかんなくなっちゃった。





766 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:18


「よっすぃ〜このチョコちょこっと食べる?あーん♪」
「はっはっは。おもしろいなぁ先輩のダジャレは。あーん♪」


(…あぁ、暑い、熱い。どうしちゃったんですかね、あの二人。
あんなにくっついて…留学に備えて、コアラのモノマネですか?)
(う〜ん、うまくいくとは思ってたけど、あの二人。
 まさかここまでとは…ていうかあゆみんって、恋すると変わるタイプの女だったのね〜)



部室の中、周りの刺さる視線なんて気にしない。
…だってラブラブなんだもぉ〜ん♪



767 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:20


「…あ、ねぇ、先輩。オーストラリアのおみやげは何がいい?」
「え…いらないよぉ、そんなの。」
「またぁ〜遠慮しないで♪」
「ううん、遠慮じゃなくて。…だってね、おみやげ買うお金と時間があったらね、
電話してほしいの。声聞けるほうがうれしいんだもん…」
「…先輩…♪」


(…うちら的には、国際電話なんかしてるお金と時間があるなら、おみやげ買ってきて
ほしいですよね。)
(全くね。)


「わかった、毎日電話するね♪」
「…絶対だよぉ…?」
「うん、絶対♪」
「毎日…3回は電話してね?」
「さ、3回?!…わかった…あ、朝昼晩って、電話する…」
「えへへ。うれしい♪」

((えぇい…うざいっっっ!!!!))



768 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:21


「oh!まいちゃん、あさみちゃん!見て、この学内新聞!
矢口さん…単位取り消されて、今年卒業できないらしいわよ!!」
「「えぇぇ?!!な、なんで?!!」」

「えっとね…あまったサークルの運営費を、私物購入のため、使用していたことがバレて、
今年度の卒業を見送るとの措置がなされたため…だって。」
「し、私物購入って…ブランド物のバックとか?」
「ううん、え〜っと身長を伸ばすためのぶら下がり健康グッズに、あとカルシウムが
たくさんとれる、骨太ドリンクセット。それから…」
「あ、あぁ。もういいや…」

「それに、高級焼肉食べ放題券を購入…」
「いや、それ絶対ミキティだって!!さては罪をかぶせたな、ついでに…」
「じゃあ、矢口さんはもともと引退だったとして、サークルの活動とかって
どうなるんですかね?」
「それは普通にできるみたいよ♪あ…矢口さん、罰として引退せずに、
来年は自費でサークル運営させられるんだって!しかも副部長に降格。部長はミキティ♪」
「…これは絶対陰謀だ…ミキティ…恐るべし。」



769 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:21


なにやらまいちゃんたちが盛り上がってるみたいだけど、私とよっすぃ〜は気にしない。
…だってラブラブだしぃ♪


「みんなでなに騒いでんの?」
「「「い、飯田さん??!どうしたんですか!引退したはずじゃぁ…」」」
「…引退はいいんだい。」
「さむっ!」
「ひどい!…ううん、ほんとにひどいのは、まいじゃなくて、教授なの。
あのね、かおが出した卒論をね、受け取れないって。こんなんじゃ卒業は認められない
って返されたんだよ?!かおりかわいそうでしょ?…力作だったのに…」
「こ、今年もですか?また今年はどんな内容で…」
「あのね、地球温暖化の原因はすきやきの食べすぎにある!ってタイトルでね…」

「…そんな卒論、出される教授のほうがかわいそうですよ…」


あれ…飯田さん?
どうしたんだろう。引退したはずじゃぁ。
…まいっか。だってラブラブだし♪
よっすぃ〜♪



770 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:22


「あ。ってことは、来年も矢口さんと試合できるじゃないですか!」
「oh!グレート♪リベンジね♪」
「そっかぁよかったですね、飯田さん!」
「「「おめでとうございます♪」」」
「め、めでたくなぁ〜い!!くそぉ〜柴田!練習するよ!!こうなったら勝つまで
やるぞぉ〜〜!!」


「せ、先輩、飯田さんが…練習らしいですよ?」
「いいの、いいの。気にしないで♪聞こえない聞こえない♪」

…だって、ラブラブだし♪


「えぇい!!聞こえてるだろうがぁ〜!!いいかげん離れろ、暑苦しい!!」
「ムダですよ、飯田さん。ずっとあの調子ですもん。こうなったらあゆみんに
練習させるには…よっすぃ〜を人質にするしか…」

「ひぃ?!う、うち?!!!」



771 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:23


なぁんも聞こえない〜♪…ん?どうしたんだろう…よっすい〜のお顔がみるみる青く…
…まいっか、ラブラブだし♪

「せ、先輩!!逃げましょう!」
「え?どこへ?…まいっか、ラブラ…」
「早く!!」


「あ!!逃げたぞ!みんなよっすぃ〜をつかまえろぉ〜〜!!」
「「「おぉ!!!」」」

「えぇ?!ちょ?!なによ、よっすぃ〜をつかまえるって!
どういうこと?!よっすぃ〜は誰にも渡さないんだからぁ〜!!」



772 名前:三回目の魔法 投稿日:2004/11/14(日) 02:24



と、いうわけで、これからも。


このゴルフ部には、また留年の決まった、部長の飯田さんと。
裏の支配者、私の親友まいちゃんと、いつまでも英語の抜けないアヤカと、
辛口ぶりの成長が楽しみな?あさみちゃんと。


愛に生きることになった私柴田と、年下ダーリンよっすぃ〜の。



合計、6人が在籍することになりそうです♪






773 名前:ツースリー 投稿日:2004/11/14(日) 02:36
以上、三回目の魔法、完結です。

>>745 もも さま
こうなりました♪毎回毎回、レスをいただき、ありがとうございました!
本当にいつも励みにさせていただいております♪

>>746 プリン さま
お久しぶりです♪えーっと…こんな感じになりましたが、どうでしょうか…
気に入っていただけたらうれしいです♪

>>747 458 さま
ほんと素直な気持ちが大切ですね♪いつもレス、ありがたく読ませていただいてます!
最後、ご期待に沿えていたらうれしいです♪


また、新作を始めさせていただきたいと思いますが、容量がそろそろいっぱいかと
思いますので、次回は新スレを立てさせていただきたいと思います。

こりずにまたお付き合いいただければ幸いです。

新スレが立ちましたら、こちらにまたご連絡させていただきたいと思います。

…また吉柴の予定ですw

それでは、よろしくお願いします。
774 名前:もも 投稿日:2004/11/14(日) 12:10
更新&完結お疲れさまです。

よかった!。・゚・(ノД`)・゚・。二人を見守っていてよかった(*´Д`)
川σ_σ||ちゃん可愛すぎぃぃぃ!
(0^〜^)がひと目惚れしちゃうのわかるYo!

次回の作品も楽しみにしています。(0^〜^)川σ_σ||最高!
775 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/14(日) 17:50
いやいやいや〜甘甘甘すぎるっ!!
なんだこの柴ちゃんは〜!!(ニヤニヤ
素晴らしい魔法、ゴチでした。
かおやぐコンビは気の毒ですがこれからも
楽しそうなゴルフ部でなによりですw
新スレにもついていきますのでこれからも
頑張ってください。
776 名前:458 投稿日:2004/11/14(日) 21:12
更新、そして完結お疲れさまです。

今回の話もとってもよかったです。
吉柴フルコース、ご馳走様でした。
大満足でした。

また新スレでも新たな吉柴フルコースを楽しみにしています。
これからも頑張って下さい。
777 名前:ツースリー 投稿日:2004/11/26(金) 02:16
>>774 もも さま
柴ちゃんはかわいすぎですよねw最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!
次回もまたぜひぜひよろしくお願いします♪

>>775 名無飼育さん さま
このゴルフ部はちっとも卒業生がでませんw最後まで、ありがとうございました!
次スレで、またお会いできるのを楽しみにしています♪

>>776 458 さま
フルコース、読んでいただき、ホントにありがとうございました!
新スレでも頑張りたいと思いますので、またぜひよろしくお願いします♪


新スレ、『修学旅行の思い出』立てさせていただきました。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1101401653/

またぜひ、よろしくお願いします!

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