モテ高さんの日々
- 1 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 11:56
- 青板にて亀高を中心に書いておりましたハルヒと申します。
むこうでメインだった亀高が一区切りついたので、こちらに
お引越しさせてくださいませ。
タイトルどおりモテ高な短編・中編が主です。
一発目は紺高で。
- 2 名前:オフの日の路上駐車 投稿日:2004/02/18(水) 11:56
- 今日はオフの日。
紺ちゃんが一緒に買物に行こうって誘ってくれたので、
喜び勇んでやってきました商店街。…じゃなくて。
ファッションビル街っていうんか?そうそう、オサレな
お店が沢山あるあそこですよ。
「愛ちゃん次はあっちのほう行ってみようよ」
「あっち?…おぉ、何か隠れた名店がありそうな雰囲気」
ビルとビルの間にある狭い通りだ。
案外こういうところにちまこいけどえれぇセンスのいい
お店があったりするんやよね。
「ちょっとワクワクするね〜こういうとこ…あれ?」
先にその通りを覗き込んだ紺ちゃんが首をかしげた。
「なしたん?…あ〜」
一瞬で意味わかった。ズラーっと路上駐車しとった。
- 3 名前:オフの日の路上駐車 投稿日:2004/02/18(水) 11:57
- 「いけませんねえ」
「ほんに、迷惑ですねえ」
「実際切符切られたら平謝りするくせに」
「根性無いくせに路駐すんなよ、ってな」
それらが歩道に乗り上げてるせいで、ただでさえ狭い歩道が
二人並んでギリギリ通れるかっちゅうくらいの幅になっとる。
「まあ通れないことはないし、何か看板見えるし、とりあえず
行ってみる?」
「行ってみよ。ゴゥゴゥ!」
実際通ってみたらほんとに狭くて、紺ちゃんと肩がくっついてしまう。
「サイドミラー全部折りたたんだろか」
「ナイス名案だけど、やめといたほうがいいべさ」
うんちょっと言ってみたかっただけやざ。
だけどやっぱりサイドミラーの存在は数歩おきに私の進路を妨害する。
何台目かのそれを避けたその時に。
- 4 名前:オフの日の路上駐車 投稿日:2004/02/18(水) 11:57
- 紺ちゃんの先制攻撃!不意打ちほっぺにちゅー!
「っだぁあ?!」
「うわーおもしろーいそのリアクション」
「あたしが不意打ち弱いのしっとるやろが!」
「だからこそやってみたんですのよ。おーほほほ」
オフの日におじゃマルシェの笑い声を聞くとは思わんかった…
ちくしょう憶えてれ。
いつか絶対、絶対やり返したるからな。
- 5 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 11:59
- こんな感じでライトな文章が中心だと思います。
どぞよろしく〜
- 6 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 21:56
- 書きたくてウズウズしていたシゲ高、やっと書けた。では行きます。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/18(水) 21:56
- 青板の頃から読ませていただいています。
モテ高……、どんな話が飛び出すやら
今から期待しちゃいます。
頑張ってください。
- 8 名前:レフトハンド 投稿日:2004/02/18(水) 21:56
- 「行っちゃうんですか?」
低い声が背後から聞こえて、次いで左腕がビン、と張った。
「…しげみ、後ろからそれ、ちょっと恐いぞ」
「行っちゃうんですか?」
聞いてないな。
「行くって、だってこれから収録やで」
「さくらに行っちゃうんですか…?」
ああ、そういうことか……
「しげみ、これからお仕事なんよ?お・し・ご・と」
「おとめに来て下さい」
「我侭言わんと。遅れるで」
「じゃあ私がさくらに行きます」
「その衣装でか?えれぇ浮くで…」
「だって…」
- 9 名前:レフトハンド 投稿日:2004/02/18(水) 21:57
- う〜ん……
しげみめ、袖もって離さない気だな。
そう考えるとこの衣装ってちょっと厄介かもな。
「……ほやったら、しげみ」
「はい」
「これ、あたしだと思って持っとけ」
左手首が指定席だったブレスレットを外して差し出した。
これ数珠だと思っとったけど、藤本さんが違うって言うとったな。
まあお守り代わりには違いないんやけど。
「これ、お姉ちゃんの?」
「ほうやでぇ。毎日欠かさず付けとるやつ」
「くれるの?」
「いんや、貸してあげるだけ」
「なんだ」
「文句言うな。あたしの大事なお守りなんやぞ」
「お守り…」
「ご利益分けてあげるから、ちゃんと割り切って仕事しような?」
ちょっと押し付けがましいか、このセリフ…
- 10 名前:レフトハンド 投稿日:2004/02/18(水) 21:57
- 「うん、わかった」
お、効果あった。笑うてくれた。
よしよし、聞き分けのいい妹でお姉ちゃんは嬉しいぞ。
「手袋嵌めればわかんないよね」
「うん、大丈夫やろ」
っていうか速攻で付けてくれるんか。
こいつめ、かわいいのぉ。
なんてことを思いながらついイヒヒと笑ってもうた。
そしたらな、そしたら。
しげみもつられてイヒヒって笑ってもうて!
「真似すんなー!ほら行くで!」
「うん、私がんばる」
手ぇ繋いでちょっと早足でスタジオに向かった。
今日は新曲初披露の日。
- 11 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 21:59
- >>7
あはは、初めてかぶった(笑)こんばんわ。
ボケハルヒでーす。
たいしたもんは書けませんが愛だけに愛情込めて書きますんで
今後ともよろしくお願います。
- 12 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 22:17
- 自己レス…「お願います」ってなんだよ…
それとあと、紺高で一箇所一人称が間違ってますな。私のアホ。
あともう一個。亀高では亀井さんが「たかぁしさん」と呼びます。
なんでー?と思った方はお暇なときにでも青板覗いて見てくださいませ。
- 13 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 22:55
- 調子に乗って辻高。
- 14 名前:フェロモン 投稿日:2004/02/18(水) 22:56
- 「のの、最近発見したことがあるのれす」
「何ですの?」
「愛ちゃん最近かっこいい!!」
「ぅえ?!」
「こないだのミニモニ。アルバム収録の時に
そう確信したのれす!」
「またまた〜…」
「本当に!最近の愛ちゃんは…えっと、そう!」
「ヘロモン全開してる!」
ヘロモン。
………ヘロモン?
「あのぅ…それを言うならフェロモンじゃあ」
「だからそう言ってるのれす!」
「えっと…」
「もう色気ムンムンなのれす!ののも今年は
セクシー系で行くから愛ちゃんには負けないれすよ!」
「そ、そうですか……」
その前に発音をなおしたほうが、とは言えませんでした。
- 15 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/18(水) 22:57
- すいません。もうしません。
書籍とラジオを聴いてないとわかんないネタだ…
- 16 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/19(木) 20:18
- とってもくだらない短編二連発。
まずは亀高。
- 17 名前:さくら組控え室・亀高の場合 投稿日:2004/02/19(木) 20:18
- 皆さんお久し振りですまたは初めまして。
新垣里沙です。
こちらさくら組控え室です。
…あ、亀井ちゃんと愛ちゃんがまた何か言ってますね。
あんまりリポートしたくないんですが、どうもこれが
私の任務のようなのでお届けしたいと思います。
「シャンプーとかコンディショナーとか卑猥ですよね、たかぁしさん」
「亀井ちゃん……唐突過ぎて何て言ってええか思いつかん」
「そう思いませんか?」
「……思わないかもしれなくも無いかもしれない」
「そうでしょう、ねえ。いい匂いがするからみんな騙されてる。
…あ、そういえば何とかチーズも卑」
「待て、それ以上言うな」
- 18 名前:さくら組控え室・亀高の場合 投稿日:2004/02/19(木) 20:19
- 「どうして」
「何となく予想つくわ」
「流石えろな先輩ですね」
「違うわあほ!亀井ちゃんの思考パターンが掴めてきただけじゃ」
「それはそれは」
「あ、今ちょっと嬉しいと思ったやろ?」
「嬉しいですけど最後まで言いたかったな〜」
「…やめとけ。誰か聞いてたらどうすんじゃ」
聞いてますけど。
うーんでもちょっと私には意味わかりませんねぇ。
ああもう、もんのすごく馬鹿らしくなってきました。
リポート放棄してもいいですか?
します。もう。
っというわけで、スタジオにお返ししま〜す。
- 19 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/19(木) 20:19
- 次に紺高。ほいほーい。
- 20 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/19(木) 20:20
- 「あたしほんとは自分の名前あんま好きくないんや」
「愛、って?」
「うん。何つーかこうありふれてる感じがな〜…
…あさ美、って美しい朝って意味だっけ?」
「そうだよ」
「ええなあ〜」
「そうかなあ………あ、思い出した」
「何?」
「突然ですがここで、紺野あさ美の豆知識コーナーです」
愛という漢字は、英語のLOVEを日本語で表すために
生まれた比較的新しい漢字なんですよ〜。
「へぇ〜へぇ〜へぇ〜」
「なのでありふれているというのも成程そうだなあと思うわけです」
「新しければ使いたくなるわな、そりゃ」
- 21 名前:さくら組控え室・紺高の場合 投稿日:2004/02/19(木) 20:21
- 「そうですね、そこでこのワタクシとしましては、敢えて古きよき
日本語でこれを表現したいと思います」
「ほうほう」
「というわけで、お慕いしております、愛様」
「…愛って使っとるやんけ」
「固有名詞なので関係ないのです」
「ほうでっか……うむ、苦しゅうない、近うよれ」
「では遠慮なく」
カッコーン
「……里沙ちゃんが紙コップ落としたで」
「中身入ってたね」
「ひょっとして今の会話聞かれてたか」
「そうかも」
「謝ったほうがいいかもしれん」
「謝っときますか」
『里沙様、バカップルで申し訳ございません』
- 22 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/19(木) 20:24
- 人間暇だとロクなこと思いつきませんね。
あ、一応フォローしときますが私ガキさん大好きです…!
- 23 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 00:24
- 色んな意味でチャレンジしてみたいネタ。
加護高をやってみようかと思います。中編になります。
- 24 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 00:25
- ラジオ収録が終わって、さあ帰ろうか、ってその時に。
「愛ちゃん、ちょっと提案があるんだあ」
かーちゃんがまだちょっと風邪気味の鼻声で、だけど
甘い柔らかい声色は変わらずに、あたしに話し掛けてきた。
「提案?」
「うん」
「なんやの?」
うんとねえ、と言葉選びをしてるらしい数秒間。
「俺達一緒に住んでみないかぁ?」
俺達、ってラジオでも言うとったなあ…って、え、今、
何気にさらっとすごいことを言ったような。
「いっしょに、すむ?」
「そう。一ヶ月くらいの限定で」
「共同生活ってこと?」
つーかね、合宿に近い感じかなあ。
独り言っぽく言われた。
- 25 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 00:25
- 「急に、なんで」
「俺達さくら組でもミニモニ。でも一緒だし、何かこう、
繋がり強くしたいなって」
言ってることは理解できるんやけど。
唐突過ぎて思考が追いつかんで。
「ついでに敬語も完全に無くせたら一石二鳥」
「………それはまあ、そうやけど」
「面白そうだと思わん?」
「それもそう思うけど…かーちゃん…」
「あ、うちのこと嫌い?」
「いやいやいや」
むしろ好きです。
「何かうまくいきそうな気がするんだよね」
「…楽しそうな気はするけど」
「一ヶ月だけ借りられる部屋とか多分すぐ見つかるし。CMでよく観るアレ。
な?うち、おかんに掛け合ってみるから」
「ん〜と…ほやったらあたしも一応おかーさんに聞いてみる」
おおー、何かわくわくしてきたー。
かーちゃんとても楽しそうだ。
それを見てたら、あたしも何だか楽しみになってきた。
- 26 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 00:27
- わーとっても未知の領域に足を踏み入れた予感。
時間がかかるかもしれないけどがんばってみようと思います。
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 01:19
- わーむっちゃ面白そうです。
紺高もかなり楽しませていただきました。
- 28 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/20(金) 13:44
- お初です
青版の方の作品読ませていただきました。
雰囲気がいい感じで、とても好きです。
それでは、頑張ってください。
- 29 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 18:00
- >>27 名無飼育さま
どうもです。はっきり言ってかなりの手探り状態ですが(かーちゃん
ノーマークやって…でも18日のラジオがすごくよかった)自然な関係が
表現できれば、と思ってます。
>>28 ヤベッチさま
こちらこそお初です。青のときの雰囲気をぶち壊さない程度に
文章紡いでいけたらと思ってます。どうぞお付き合いくださいませ。
では、加護高の続きです。
- 30 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 18:00
-
ためしてみよう。
色んなこと、ためしてみよう。
何でって、それがうちら人間のすることだから。
ためして発見して喜び怒り哀しみ楽しみを共有しよう。
だけど過剰な干渉はやめような。
そんなんしたら、二人とも壊れる。
- 31 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 18:01
- かーちゃんは思い立ったら即行動を起こす人やった。
あたしはあたしでちょっと流されやすいとこあって見事に
流されてもうた。
そんなわけで今日からかーちゃんとの生活が始まる。
一ヶ月限定の生活が。
住む部屋は1DKのカーペット敷きの部屋や。
カーペットなら音を吸収するし歌の練習もできるって、
かーちゃんが言うとった。
ダンスの練習が出来たらもっといいなって、ほんとは一階に
ある部屋を探したんやけどあいにく見つからんかった。
今日からこのマンションの角部屋、207号室、お世話んなります。
「愛ちゃんちょっと来てみ、すごいわここ」
手招きされて浴室の扉の前に来て、かーちゃんが指差してるとこを見た。
「何ですのこれ……うぉ、浴室乾燥機?!」
「わざわざ外に洗濯物乾かさなくていいんだ」
「けど先に風呂入ったらまずいんと違うん?」
「それはそれで、かけておけば湿気で服の皺勝手に伸びてくれる」
なるほど、と大きく頷いた。
- 32 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 18:01
- 単身赴任とかの利用者向けに作られたこのマンションの部屋はほとんどの
家具が完備されとる。
……はっきり言って家よりも設備がええかもしれん。
「ところで愛ちゃん、さっきまた敬語使ったなぁ?」
「あ」
「減点1!」
「うわ、減点いくつで何させられんの」
「それは…その時のお楽しみ!」
いけずや。
「家事とかの分担表作ろうな」
「ほやね」
「色々話もしような」
「うん」
「ところでベッドは一つしかないな」
「うん…え?」
- 33 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 18:02
- ほんとやった。ロフトベッドが一つしかない。
…それもそうか、ここってそういう部屋なんや。
「あーでもうちら小さいから意外と平気かも。ちょっと寝てみよ」
「よっこらしょ」
さすがあたしらミニモニ。一つのベッドでもスペースは足りとった。
「枕いっこ足りないだけで全然よゆー。省エネー」
「ほやけどかーちゃんは平気なん?あたし寝相良くないで」
「おたがいさまかもよー」
「じゃあ夜中は格闘大会やな、毎晩」
「うん、勝敗表も必要かもな」
かーちゃんのセリフがあんまりにも可笑しくて腹を抱えて笑った。
- 34 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 18:05
- ここのマンションにはモデルがあったりなかったり。
けど首都圏のとはきっと設備が違うんだろうなあ……田舎者なので
浴室乾燥機に偉く感動したんですよ。というわけで出しました。
- 35 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/20(金) 19:22
- 格闘大会にウケました(笑)
これからどんなバトルを繰り広げてくれるのか楽しみです♪
更新、楽しみにお待ちしております。
- 36 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 21:03
- >>35 ヤベッチさま
ありがとです。天下一なんたらにしたほうがインパクト強かった
かなって後から思ったんですけどね(笑)
ほんじゃ加護高の続き。
- 37 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 21:04
- はーいそれでは各自持ち物チェックをしまーす。
かーちゃんが突然司会者になった。いや責任者か。担任の先生か。
まあとにかく仕切り屋さんになった。
「チェックって、もしかしてNGグッズとかあんの…?」
「ありまーす。当然減点1だかんね」
うぇええ、しかもそのNGグッズがなんなのかは教えてくれんのか。
あたしはビクビクしながらバッグの中身を取り出した。
「えっと、着替えと、洗面用具と、赤いタオルと…」
「うん、妥当妥当。赤いタオルは洗面用具として認めましょう」
「ありがとうご」
ハッ!あっぶね、また敬語使うとこだった。
「……辛うじてセーフな、今の」
「どうも…」
で、ことさらビクビクしながら持ち物を取り出していく。
- 38 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 21:05
- 「宝塚のDVDとぉ……あ!あとこれ!」
「む?」
「緑の蓋のポン酢や!!」
「……………」
………あれ。
ポン酢、かーちゃんの大好きなやつやろ?
ひょっとしてメーカー間違えたか?!
「愛ちゃん」
「は、はひっ!!」
「余計な気を遣うな!減点…」
「えぇー?!」
「って言いたいところだけど、うち、ポン酢一本しか持ってきて
なかったから助かった。おおきに」
そんなに使うんか。ポン酢。
ああでも減点食らわなくて良かった。ほんに良かったわ。
あたしの持ち物はポン酢以外減点対象は無いみたいやった。
そのポン酢も許してもろたけど。
- 39 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/20(金) 21:05
- 「よっしゃそれじゃ次はかーちゃんの番やで!もちNGグッズありや!」
と言いつつそのグッズは見てから決めるつもりやけど。
「おう受けてたってやるわ!ほな行くで〜」
着替え、洗面用具、うんうん。
CoccoさんのCD。ほうほう。
お母さんの写真。じ〜んときた。
あとは、お菓子、もずく、お菓子、もずく、お菓子。
「…これはちょっと多すぎと違うか。しかも、もずくって」
「貴重なエネルギー源」
「わざわざ持ってこなくてもそこらのスーパーで買えるがな」
「ストックストック。以上!減点なし、パーフェクツ!」
ああ勝手に終了されてしもた。
まあええか…
- 40 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/20(金) 21:08
- 加護高を書くにあたりハロプロ大百科を確認したのですが、
加護高、結構アンケートの答えが被ってて面白かった。
もしかして一緒に答えたんかな〜とか思ってしまった。勝手な妄想。
- 41 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/21(土) 16:22
- 時間がかかるかと思っていましたが、一気に書き上げてしまいました(笑)
加護高最後までどうぞ。
- 42 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:23
- かーちゃんとの生活は驚くほどあっという間に過ぎていく。
平日の昼は学校とかで潰れ、夜は分担した家事をこなして、
残りの時間は発声練習なんかを…最初はしとったんやけど。
お隣さんからうるさいって苦情きてもうて。
そう、あたしらは薄壁のことを考えてなかったのだ。
「あ〜しくった。うち、すっかりしくった!」
「あたしも全く気付かんかった…悪いことしたな」
「しょうがない。脳内発声練習で我慢しよう」
とどのつまりヘッドホンで音楽聴いて頭ん中で歌いましょう
ということや。
各々が好きな曲を聴いて脳内発声練習をする。
あたしはかーちゃんからCoccoさんのCDを借りて、お薦めの
「ポロメリア」を聴いた。
愛していた人が離れてしまい、その人に囚われたまま
走り出すことができない女の人の歌。
金網の向こう…か。
あたしもかーちゃんや他の先輩達に対して未だに垣根を感じとる。
少しずつでもいいから歩み寄っていけたらと思うとる。
…どのくらい時間かかんのかなあ。
- 43 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:23
- 「何にでも限りってもんがあるよな」
夜は、ベッドにねっころがって寝る体勢のまま小一時間ほど会話するのが
日課になっていた。
「限りある資源ってことすけ?」
「減点1〜」
「ぐぁ」
福井弁でも敬語はバレた。
…あたしもう何点くらっとるんやろ、減点。
「資源に限らず何にでも。ひょっとしたら無限って言われてる宇宙だって
どっかでぶっつり切れてるかもよ」
「なるほどぉ〜。面白いな」
「命だって限りあるんだから、生きてる限り色んなことためしてみたい」
「それはあたしもそう思う」
「愛ちゃんは今一番何がしてみたい?」
「背ぇ伸ばして宝塚受験したい」
「アハハ、うちも背〜伸ばしたいわ!」
「牛乳かな、やっぱ」
「牛乳かもね」
「明日買ってこよう」
「そうだな、カルシウム入りで頼む」
「合点承知」
こんな感じで宇宙から牛乳まで幅広く討論会をして、いつのまにか二人とも
眠ってしまう毎日やった。
- 44 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:24
- そんな順風満帆に思えた生活に一石が投じられたのは、二人で遊園地に
行こうと約束していた休日の朝やった。
あたしは寝坊をした。朝食当番やったのに。
「やっべえ!」
飛び起きてキッチンに行ったらかーちゃんが既に朝食の支度をしとった。
「おはようさん」
「め、目覚ましかけるの忘れとって…」
「いいよ、うちたまたま早くに目ぇ醒めたし」
だけど当番やったのはあたしやで、かーちゃん…
そんな甘やかさんといてほしい。
「ほれほれ、ちょうど今できたとこだから運んで運んで」
「あ、うん」
気持ちしょんぼりしながらテーブルに朝食を運んでモソモソ食べた。
「ジェットコースター♪楽しい楽しいジェットコースター♪」
かーちゃん作詞作曲の楽しげな曲にも乗り気になれん…
- 45 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:24
- くそー、高橋愛!何で寝坊なんか!!
歯ぁ食いしばりながら二人分のコーヒーを淹れてテーブルに
置く時も、あたしは相当ヤバイ顔をしていたらしい。
「なんだぁ、まだ寝坊したこと気にしてんのか?」
「……しとる」
「人生一度くらいは、いやもっともっとたくさんこんなこと
ありまくりだぜぇ」
「わかっとるけど、自分が許せんし、かーちゃんも甘やかさんといて」
「だから別に甘やかしてないってぇ。ほんとに早い時間に目が醒めたから」
「だったら何のための当番制やの」
「融通利かせろよぉ。なんでもかんでも規則で縛って、身動き取れなくなるぜ」
「……寝坊したのは事実や。だからごめん。ごめんなさい」
- 46 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:25
-
「…減点1、これで合計減点10。…ゲームオーバー」
………え?
「減点10になった高橋愛には、罰として」
- 47 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:25
-
「ののとうちの卒コンでは、絶対に泣かないこと」
……………無理や。
そんなん無理や。酷すぎる。
「わかったか?」
「………できるわけないやんか!」
思わず大声を出したあたしに対して、かーちゃんは大袈裟にため息をつく。
「これは罰なの、絶対守ってもらうから」
「意味わからん。哀しい時に泣くななんて!」
「愛ちゃん、うちらハロプロでちゃんと繋がってるんだから」
「でも娘。としては最後になるやろ?!」
「愛ちゃんもっと視野を広く持て。今生の別れじゃないって」
「………無理や。絶対無理」
だってほらもうその時のことを考えてボロボロ涙出てくる。
耐えられなくなって床見て泣き続けた。
- 48 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:26
-
「……少し頭冷やせ」
とめどなく流れる涙を見て呆れたのか、かーちゃんは部屋を出て行ってしもうた。
何やの。
どうしてあんなこと言うんや。
かーちゃん、ムカつく。
…ムカついたら勝手に涙止まってた。
ふざけんなよ。あのガキ。
「……携帯持って行ったよな」
あたしは自分の携帯を取ってきて、かーちゃんに電話をかけた。
- 49 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:26
- 一回目は留守電。速攻切った。
五分くらいしてから二回目。今度は繋がった。
『……頭冷えたか?』
「……………あたしかーちゃんのその声好きや」
『うちも愛ちゃんの声好きやで。かっこええなあ』
「………」
『でも泣き声は嫌い』
「勝手なこと言うな!あのなあ、ほやったら言わせて貰うけどな?!」
『うん、どうぞ』
「人のこと泣くなって言うたけどな、ほやったら自分はどうなんや。
そん時になったら絶対泣くやろが!」
『そうだろうね』
「ほやろ?!自分にできんこと人に強制すんな!このばかちんが!!」
『愛ちゃんやっと年上らしく言ってくれたね』
「えーえー言わせて貰いますとも。何か問題でも?!」
『ないです。うちは年下なので』
どんくらい怒りのマシンガントークをかましたか憶えてない。
憶えてるのは、電話しながらかーちゃんが部屋に戻ってきたところからや。
- 50 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:27
- 「すっごいでかい声。廊下からでも聞こえたぜぇ」
「………このクソガキ」
「だってこうでもしなきゃうちの気持ち伝わらんだろ?」
ああ伝わったよ、伝わったともさ。
ジェットコースター並に超高速で伝わったわ!
「もうええこんな話。それより支度して遊園地行くで!」
「おーもうこんな時間だったか」
「のんびり構えてないで早く支度する!」
「はいはいはーい」
「はい、は一回でええが!」
「は〜い、愛ちゃん先輩」
- 51 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:27
- ためしてみよう。
愛ちゃんが早くうちらとの距離縮められるように。
一緒に暮らしてみて。
だけどうちの意見に流されるのはやめような。
変に意地張るのもやめような。
そんなんしたら、うちも愛ちゃんに近づけん。
- 52 名前:ためしてみよう 投稿日:2004/02/21(土) 16:27
- 卒コンで泣くなって言ったけど、絶対無理なのうちにもわかっとる。
だから敢えて反論欲しくてこれ言った。
結果大成功だね。ぃやっほう!
うちの企み成功したから、もうこの部屋とお別れしても大丈夫だね。
一ヶ月も必要なかったなあ。ちょっと驚きだよ。
だけどいい思い出たくさんできた。
愛ちゃん、これからもよろしく。
それから、ありがとうな。
- 53 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/21(土) 16:32
- いじょ!
駆け足すぎましたかね……お楽しみいただけたなら幸いです。
- 54 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/21(土) 21:02
- なるほど、「ためしてみよう」とはこういうことだったんですね。
今回もかなり良かったです。
格闘大会の結果はどうなったのかな〜ということは、
心の中にしまってきます(笑)
次回作楽しみにしてます がんばってください♪
- 55 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/21(土) 22:26
- >>54 ヤベッチさま
ご感想ありがとうございます。はい、こういうことでした。安直。
格闘大会とかきっと冗談で言ってたんですよ!(笑)本気じゃ
なかったはずです。とかいいつつ翌朝になって足に痣とかありそうだ。
いつも明るい方向のネタみたいなんで(自覚なし)
今回は切ない系のネタを。
- 56 名前:『 』 投稿日:2004/02/21(土) 22:27
- その場の空気に耐えられなくなって外に飛び出したら、
雨が降っていました。
私は構わず走り続け、急に力尽き、どこだかわからない建物の
壁にごつん、と頭を打ち付け、そのまま身動きが取れなく
なってしまいます。
数分前。
何がきっかけになったのかは忘れてしまいましたが、私、
紺野あさ美は、同期の小川麻琴さんに告白しました。
明確な答えは戴けませんでした。
…当然だと思います。同性ですから。
沈黙が続きました。
とても長く感じました。
世界が止まってしまっているかのようでした。
止めたくはなかったので、自ら逃げ出したのです。
- 57 名前:『 』 投稿日:2004/02/21(土) 22:28
- 「……ぅ……っ」
雨音でかき消されるだろうと思っていても
泣き声を自分の耳で聞きたくはなかったので堪えていました。
ただでさえ醜い私です。
誰も認識したくないでしょう。
「紺ちゃん…!」
ああ、誰かに認識されてしまった。
「あ、いちゃ……」
そこにいたのは同じく同期の高橋愛さんでした。
またそんなずぶ濡れになって、一体どうしたというのでしょう。
……わかっています。私を探しに来てくれたんですね。
「戻ろう。マコトまだいるから」
「……無駄だよ。もう終わったんだよ」
だから早く貴方も戻ってください。このままだと風邪を引いて
しまいますから。貴方は歌手でしょう。
……そういえば私も昔そんな職業に就いていた気がしますけれど。
「ちゃんと答え聞いてないやんか」
「沈黙が全てを物語っていたよ」
「駄目や。ちゃんと話すれ」
強引に腕を引っ張られてしまいました。
それで一番見られたくない姿を露呈させられました。
もうどうにでもなれ。
- 58 名前:『 』 投稿日:2004/02/21(土) 22:28
- 「どんな結果になっても」
「………」
「あたしもマコトも態度変えたりせぇへんはずやざ」
断言できないところが貴方らしさのような気がします。
痛くない程度に腕を引っ張られたまま早足でスタジオに戻る道すがら、
私は私と同じようにずぶ濡れになった貴方に、私と同じ目に遭って
もらおうかと考えてしまいました。
貴方は私の一番醜い姿を見てしまったので。
ちょっとした、仕返しです。
引かれて伸ばしていた腕に力を込めて引き寄せました。
貴方は見事、私の胸にストライク。
辻さんには敵いませんが、腕力には自信があるんですよ。
- 59 名前:『 』 投稿日:2004/02/21(土) 22:29
- 「こ、紺ちゃん……?」
「びっくりした?」
「あったりまえやが。何すんの」
「だって戻りたくなかったんだもん、それに」
「まだ何かあんの」
「雨でずぶ濡れになった上に泣き顔を見られたから、かなり
屈辱的な気分になりました」
「…は?」
だから、仕返しです。
「このまま五分ここにいて、一緒に風邪を引いてもらいます」
- 60 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/21(土) 22:30
- うわぁああ、一レスしくった…!!
小紺と見せかけて紺高でした。だってここはモテ高スレですから。
タイトルはいいのが思い浮かばなかったんでこうしました。
こんなんも、まあ、ありかなって。
- 61 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/22(日) 00:40
- 始めの方を読んだ時に、
「今回、高橋さん出ないのかな〜」と思ったら、ちゃんと出てきてちょっと安心(笑)
う〜ん、切ない系もいいですね。
ふと思ったのですが、感想はマメに書かない方がいいですかね?
流れを止めているような気がしたもので(汗)
では、次回作をお待ちしております。
- 62 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/22(日) 05:20
- >>61 ヤベッチさま
どうもです。
私的には、とても励みになりますし、自己満足ではじめたこととは
言え「誰かに読まれているのだ」という意識はちょうどいい緊張感に
繋がりますので感想は大歓迎です。(その割にいつもなんらかのボケを
やらかしてるのは誰だ)
すぐには始まりませんが、次のネタは禁断の三角関係…の結構キツイ感じの
ものを書こうかな、と構想中。ヤン土ってネタの宝庫だなあ。
あいかわらずたかぁしさんがターゲットにされてますけどね(笑)
しばしお時間をくださいませ。
- 63 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/22(日) 16:09
- …私にドロドロの文章は無理だった。
そして時間がかかりそうだと思ったのにあっさり書き終えてしまった。
誰か助けてください。いい加減にしろって。
というわけで新作どぞ。
- 64 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:09
- さくらとおとめに分かれてから久しぶりに高橋と仕事をした。
ラジオの仕事。
事前に、私が貰うはずだったブレスレットを高橋と美貴ちゃんが
貰っていたとか、マネージャーさんに聞いて知っていて、
それについてはもうラジオ収録の中で決着をつけたのであまり
気にしていないのだけど。
もう一つ気になることが。どうしても。
彼女とユニットが一緒のうちに聞いておこうと思っていた。
それで。
「美貴ちゃん、ちょっといい?」
「え、何?」
「話があるんだけど」
「んーわかった。すいませーん、美貴と梨華ちゃん、ちょっと出てきます」
スタッフさんから了承を得て廊下に出る。
なるべく人気のないところ…ってどこがあるだろうか。
- 65 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:10
- 「あそこでいいかな?」
美貴ちゃんが指し示したのは廊下の突き当たり、窓がある。
手すりなんかもついてあったりした。
外見てる振りして小声で話せば大丈夫そうだ。
「うん、あそこにしよう」
私は多少緊張しているらしく抑揚のない返事をしたが、美貴ちゃんは
それに気付いてないようだった。
「で、話って?」
「……ブレスレット、ちゃんと付けてるの?」
前振りなしでこんなことを言ってしまった。
ああしまった。ちゃんと導入部ってものがあるでしょうに。石川。
「あぁあれね、やっぱりバレちゃったんだ。
…付けたいんだけど、愛ちゃんとお揃いっぽくなるとからかわれるからね」
「そうだね、美貴ちゃんは平気だろうけど高橋がパニクるだろうね」
「でしょ〜。そういうの弱いからね、愛ちゃん」
美貴ちゃんはニヤニヤしながら窓の外を眺めた。
なんだか、その横顔から優越感じみたものを感じてしまう。
- 66 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:10
- 「あとね、もう一個」
「うん?」
勇気出せ、石川。
「………心臓痛い、ってどういう意味?」
「もしかしてラジオ全部聴いたの?」
「聴いてないよ。マネージャーさんが」
「うわ、油断できないな」
「で、どういう意味なの?」
返事が恐くて窓の外の青空をじっと見詰めた。
「あれはねえ、愛ちゃんがうっかりすごいこと言いそうだったから、牽制かけた」
「それって例えば?」
「梨華ちゃん、ストレートに言いなよ。何が知りたいのさ」
「……………」
回りくどいのは嫌いなんだよね、美貴ちゃんの性格が良く出てる。
「……心臓痛い、は美貴ちゃんが高橋と何かあったから言ったってこと?」
私の精一杯のストレートはここまでだ。
これ以上の上手な聞き方が思い浮かばない。
- 67 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:11
- 「うん、そういうことだよ」
さっぱりはっきり言われてしまった。
見てた青空が夜空に変わってしまう錯覚が起きる。
「そう…なんだ」
「詳しく聞きたい?」
「……できるだけショック与えない程度にお願い」
青空が夜空に変わってる時点で既に相当のショックなんですけど。
「美貴と愛ちゃん、一晩一緒に過ごしました。これでどう?」
「………充分だよ………」
「あからさまにショック受けてるね」
「当たり前だよ」
「そうだよね。梨華ちゃんだって愛ちゃん好きなんだし。
何てったってチャミラブだし。横取りされたって思うよな」
でもね、美貴ちゃんは続けた。
「最後まではしてないよ」
- 68 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:11
- それで私が安心するとでも思っているんだろうか。
自慢にならないけど私は基本がネガティブだから、全然フォローに
聞こえやしない。
「やっぱり嫌や、って拒否られた」
「嫌って言ったの?高橋が?」
それはちょっと意外だ。てっきり失敗しただけだと思って。
「言ったよ。美貴はフラれました」
「フラれたとは違うんじゃないの?その先が恐くて拒否したとか」
「それもあるかもしれないけど、あれ以来、体触らせてくれなくなった」
「…美貴ちゃんそんなに高橋にベタベタしないじゃない」
「だからこそたまに触れようとした時に避けられると、ダメージ。ガックシ」
美貴ちゃんは大袈裟に項垂れた。
……ああ、高橋は本気で避けたんだな。
「…美貴ちゃん、元気出してね?」
ぷ、あはははは。
笑われてしまった。なんで。
- 69 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:11
- 「梨華ちゃんそこはだって、ライバル減ったんだから喜ぶところだべさ」
「ライバル、でも、美貴ちゃん落ち込んでるのは事実じゃない」
「美貴は大丈夫だよ。これくらいのことでヘコたれたりしない」
じゃあさっきのガックシは演技だったのか。騙されたよ。
「強いね、美貴ちゃん」
「まあね。それより梨華ちゃんはどうなのさ」
「私?」
「好きなんでしょ?」
「うん。でも、当分会えないし」
「電話でもなんでも、手段はあるじゃん」
「そうなんだけど…何だか邪魔になるような気がして」
「さくらでセンターになっちゃったしね。結構プレッシャーだろうね」
「そう。だから、今は」
だけどさ、言葉を遮られる。
「もしその間にさくらの誰かに取られちゃったらどうするの?」
「……恐いこと言わないでよ」
大いにありえる話だけに。
- 70 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:12
- 「あの人とかあいつとかそいつとか〜」
「だから言わないでってば!」
ごめんごめん、美貴ちゃんは両手を合わせて謝った。
「いやしっかし、モテモテだな、愛ちゃんは」
「モテ高だからね」
「何かほっとけないんだよね」
「見守りたい気にさせるんだよね」
「梨華ちゃんと美貴は対照的だね」
「好きは好きなんだけどね」
ふと気付いたら夜空が白みかけて青空を取り戻してきている。
「まあしばらくは仕事じゃ接触減ることだし、さくらの誰かに抜け駆け
されないことを祈るばかりだよ」
「そうだね、どうか神様お願いです」
「梨華ちゃん、お願いじゃ駄目。祈らないと」
「何か違いがあるの?」
願いは込めるもので、祈りは届くものだからだよ。
- 71 名前:願い祈り 投稿日:2004/02/22(日) 16:12
- 「っえっくしぃ!」
「愛ちゃん、風邪?」
諸悪の根源が何言うか。紺野あさ美。
あんな雨ん中十分近くいたら風邪引くやろ。
「…紺ちゃんは何で風邪引いとらんのよ」
「さあ」
「ちくしょう、何か悔しいなあ。あたしだけ損した気分や」
紺ちゃんフラれてもうたけど、マコトと相変わらず仲良いし。
「誰かが愛ちゃんのこと噂し」「っくし!」
「……噂話は二人で行われてるみたいだね」
いや違うやろ、絶対。
誰かに狙われてるみたいな寒気するし。
風邪や、風邪。
帰ったらホットレモン飲もう……
- 72 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/22(日) 16:17
- 微妙に過去の短編とリンク。そして三角どころか何角関係じゃ、これ。
お楽しみいただけたなら幸いです。
- 73 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/22(日) 20:23
- 藤本さん、あなたって人は・・・
まぁ、何事も?なかったみたいなのでよかったよかった(汗)
迷惑に思われてなくてちょっと安心しました。
ヤン土聴けて羨ましいです・・・
自分が住んでいるところは関東の田舎の方なので聴けません(号泣)
ただ、ハルヒさんの小説が読めるので満足です♪
- 74 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/23(月) 18:46
- >>73
関東の田舎の方ってどちらでしょう
自分は24日のホウソ、日光で聞きましたよ
スレ汚しスマソ
- 75 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/23(月) 19:40
- >>73 ヤベッチさま
何事もなかったら嫌やなんて言わな(略)…まあ置いといて。
私のは、小説ではないですよ。記号と文字をある一定の法則に従って
並べた「書き物」です。小説という意識は、ないです。
>>74 名無飼育さま
うちなんか北国ですよー…と横レスしてみる。ヤン土リアルタイムで
聴けません。
さて今回は紺高で。
- 76 名前:NO MUSIC,NO LIFE 投稿日:2004/02/23(月) 19:41
- 「お化粧してない顔を見られた〜♪
いらっしゃい、愛ちゃん」
「…藤本さんが聴いたら腹抱えて笑うか怒鳴り散らすで、紺ちゃん」
「多分床叩きながら大笑いしてくれるよ」
「っていうかノーメイクで何度も会ってるってな」
今日は愛ちゃんを我が家にご招待しました。
お誂え向きに、家族は不在、二人きりです。
…だからと言って大いなる期待は致しておりませんが。
とりあえず二人きりというのが嬉しくてたまらなく、ついつい
出迎える時に歌ってしまいました。
後で愛ちゃんにこのことを口止めしておかないと、藤本さんに何されるか
ちょっと予想がつきませんね。実は後悔しています。
「あのなあ、かーちゃんにCoccoさんのアルバム借りたから、持ってきたー」
「あ、聴く聴く」
早速プレイヤーにセットしてBGMにします。
テーブルを囲んで二人、座布団敷いた床に座りました。
- 77 名前:NO MUSIC,NO LIFE 投稿日:2004/02/23(月) 19:42
- 「あたしこれのな、7曲目が好きや」
「あ、じゃあそれ聴こう」
「…別にすぐに飛ばさなくてもええが」
「お客様の好み優先ですから」
というか好きな人が好きって言うものは手っ取り早く知りたいだけです。
7曲目は英語歌詞の曲でした。…英語は苦手です。
「大丈夫やで、歌詞カードに日本語訳載ってる」
まあ何て親切な。Coccoさんも愛ちゃんも。
…読んでみるとなかなか過激な単語も入っておりました。
「多感なお年頃のあたしには声に出せん単語も入っとるが…でも好きや」
「セックス?」
ブハッ!!
お約束どおり愛ちゃんは飲んでいたお茶を噴出しました。
噴出したのがうまいことテーブルの上でよかったです。
「あ〜あ〜」
「ご、ごめ…ってか紺ちゃんのせいやで!」
「私のせいじゃありませーん。純情すぎる愛ちゃんがいけないんでーす」
- 78 名前:NO MUSIC,NO LIFE 投稿日:2004/02/23(月) 19:42
- 布巾を出すのが面倒だったのでティッシュでキレイキレイしました。
はい終了。
「…紺ちゃん意外と平気なんやね」
「寧ろ愛ちゃんのほうが今だに抵抗あるってのがおかしいんだよ。慣れようよ」
「……そんな数こなしてないもんで」
「えーっと、キスはとりあえず4回」
「数えんな!」
みるみるうちに愛ちゃんの顔は真っ赤になっていきます。
ちょっと楽しくなってきました。
「惜しいとこまで行ったのが1回」
惜しいとこって何じゃ!と肩をどつかれました。
さてなんでしょうね。
「ノーミュージック、ノーラーイフ」
「棒読みで歌ってごまかすなや…って、な、何?」
- 79 名前:NO MUSIC,NO LIFE 投稿日:2004/02/23(月) 19:43
- テーブルに手をついて愛ちゃんの顔にずい、と迫ります。
えい。
「………ご、5回目、やざ」
「ノー他言無用〜♪」
「なんじゃそれ」
「さっきの藤本さんの歌真似、ノー他言無用で」
英語中1からやり直せ、と憎まれ口を叩かれました。
いやほんとにノー他言無用でお願いしますね?
愛ちゃん。
- 80 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/23(月) 19:46
- …Coccoさんごめんなさい。復活おめでとうございます。
紺野さんゴメンナサイ。あんなこと言わせてしまって。
- 81 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/23(月) 21:39
- すいません、小説ではなかったですね。
「あんなこと」でお茶を噴いちゃう高橋さん、かわいいです(笑)
>>74 名無し飼育さま
自分は栃木の鹿沼に住んでます…って事は、自分も聴けるのでしょうか?
もしそうだとしたら、今までの放送が〜…(号泣)
- 82 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/24(火) 14:55
- >>81 ヤベッチさま
まいどありがとうございます。というか…
私、大きな過ちを犯しましたね。本来小説を置くべき場所なのに
自分のは小説じゃないってほざいてますね。
お詫びして訂正します。
小説っぽいもの、を目指してがんばりますです。
これだけ言いたかった。
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 16:40
- >>81
ヤベッチ様
どうでしょうか。日光の方が田舎なので帰って余計な電波が
飛んでいないのかもしれません。
- 84 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/24(火) 19:17
- 趣向を変えて亀高。
- 85 名前:ビタミン 投稿日:2004/02/24(火) 19:18
- 私たちは水に溶けないビタミン。
いつまで経っても娘。に溶け込めないビタミン。
<ビタミンA>
欠乏すると夜盲症の可能性がある。
暗いところで目が慣れるのに時間がかかる。視力も低下する。
<ビタミンE>
欠乏症はないと考えられてきたが、脂肪吸収不全患者や
単独性ビタミン欠乏症患者においては運動失調、筋力低下、
感覚異常などの神経・筋症状がある。
- 86 名前:ビタミン 投稿日:2004/02/24(火) 19:18
- 亀井絵里にとっての高橋愛。暗室でも傍に居れば盲目的な思考に
埋没せずに自我を保てる。マイナス思考から連れ戻してくれる。
ビタミンA。
高橋愛にとっての亀井絵里。大勢のメンバーが居ても傍に居れば
自分が浮いているのではなく周りが浮いているのだという現実に
気付かせてくれる。感覚異常を正常化させてくれる。
ビタミンE。
娘。に溶けこめないビタミンふたり。
だけど溶けないからこそ発揮できる特別な効能。
いつかふたりが溶けずに生き残り、ふと気付いたら隣にお互いの
存在しかなくても。
補え合える部分があるから、大丈夫。
多分大丈夫。
- 87 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/24(火) 19:20
- 多分て、弱気だな(笑)
本作を書くにあたり以下のサイトを参考にさせていただきました。
日本ビタミン学会
ttp://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/
- 88 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/24(火) 19:23
- あ、やば!勝手にリンクしちまった…最後の一行はただの文字列って
ことに…!!(平謝り)
- 89 名前:ヤベッチ 投稿日:2004/02/24(火) 20:47
- お互いを補い合える存在・・・なんかいいですね〜。
文字列が気になりますが、そこはあまり触れないでおきます(笑)
余談ですが、自分は亀高が一番好きです♪
>>83 名無し飼育さま
なるほど、鹿沼は余計な電波が飛び交ってるのかもしれないですね(泣)
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/25(水) 11:13
- >>81ヤベッチ様
ループアンテナをお勧めします。
ミズホ通信
ttp://www.bekkoame.ne.jp/ha/mizuho-t/index.html
- 91 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/25(水) 13:05
- 初の、田高。行くでぇ。
- 92 名前:ハルヒ摩擦は身を削り暖を生む 投稿日:2004/02/25(水) 13:06
- 「うぉっ、さみぃ!」
高橋さんが思わず叫ぶほどに外は冷たい風が吹きすさんでいた。
そういえばこの人と二人だけで仕事帰りなんて、初めてだ。
「田中ちゃん手袋なしで寒くないんかあ?」
「寒いですけど、我慢できます」
「偉いな。でも寒いんやろ?予防するに越したことないで」
渡ろうとした信号が赤に変わってしまった。
「手袋って窮屈で苦手なんですよ」
「あー、うん、それわかる」
信号で足止めされて暇だったのか高橋さんが私のほうを覗き込んで、
んー、とか言いながら自分の手袋外して
「うわー、えれぇ冷たいで」
私の左手を両手で包み込んだ。
じんわりと温かくなってくるのを感じ、思わず右手も差し出してしまった。
右と左の温度差なくしたい。
「何や、こっちも…やっぱり女の子なんやから、我慢は将来的によくないで」
お母さんみたいなことを言いながら両手をさすってくれた。
- 93 名前:摩擦は身を削り暖を生む 投稿日:2004/02/25(水) 13:06
- 「高橋さん」
「心配すんな、この程度で垢なんか出んぞぉ」
「いやそうじゃなくて、ですね」
「ん?」
「………あったかいですね」
「おぅ!あっためるには人肌が一番」
「高橋さんが」
「へ?」
「高橋さんがあったかいです」
さゆがお姉ちゃんって慕うのもわかる気がしてきた。
「あたし平熱やで?」
きょとんとしてから大ボケかますのもあったかいです。
「あ、信号変わりましたよ」
「おっと、そんじゃ行くか」
両手を離して再び手袋を…片手だけに嵌めた。
「こっちだけでも両手寒いよりはマシやろ?」
差し出された手を素直に繋ぐ。右と左。
私は繋がれていない右手をコートのポケットに乱暴に突っ込んだ。
- 94 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/25(水) 13:08
- 一レス…タイトル…名前…こんなとこまで繋がってどうする!
いつまでたってもボケなのか私は。
関係ないけどこれで6期絡みコンプしてしまいましたね。
別にそれは意識してなかったんですけどとりあえずおめでとう自分。
- 95 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/26(木) 00:23
- やっぱりこの日を逃すわけには。藤高。
- 96 名前:おめでとうおやすみ 投稿日:2004/02/26(木) 00:24
- 「日付変わる瞬間までしっかり起きてるなんて、
なかなかどうして浮かれモード」
何てったって誕生日だからね。
そりゃあ感慨深いもんがあるってもんですわ。
ピピピピピ
携帯にメールが届いた。
『まだ起きとる?』
あれ以来チェーンメールじゃなくなったけど
やっぱり何となく返しにくい愛ちゃんからのメールだった。
用件を入れろ、用件を。
「起きてるよ、何か用?っと」
促さないと気付かないんだから。
『今電話してもええ?』
……まわりくどー。だったら即電話すればいいだけの話なのに。
あの子の人生遠慮がテーマなんだな。
いいよ、こっちからかけてやる。
- 97 名前:おめでとうおやすみ 投稿日:2004/02/26(木) 00:24
- 予想通りワンコール目ですぐに出てくれた。
「こーんばーんわー」
『何もそっちからかけてこなくても…こ、こんばんわ』
「だって回りくどいから」
『…すまんです』
「謝らなくて良いって。で、何?」
『あいや、藤本さん今日誕生日やろって』
「うん、一個トシ食った」
『ほいでな、プレゼント考えたんやけど、考えすぎて訳わからんく
なってもうて』
「愛ちゃんらしいね」
『ほやったらいっそモノより思い出と思って電話かけた』
「かけたのはアタシのほうだけどね」
『…こっちからかけようと思ったのに』
電話の向こうの膨れっ面が簡単に想像できちゃうなあ。可愛い奴め。
「あんまり気にしなーい。嬉しいよ」
『ほんじゃ、改めて。藤本さん、お誕生日おめでとうやざ』
「福井弁でおめでとうって何て言うの?」
『なんも、そのまんまやで』
「なんだつまんない」
『気持ち篭ってればええが!』
「ハハ、まあムキになんなよ。ありがとうね」
『道産子はありがとうって何て言うんや?』
「なんも、そのまんまさぁ」
『お互い様やね』
「気持ち篭ってればいいしょや!」
******************************************************
真似すんな道産子!と言いながら声は笑っていた。
アタシも一緒に笑う。
『じゃあ、言いたいこと言ったから切りますわ。夜中だし』
「変なとこ真面目だよねぇ」
『それに夜更かしはお肌に悪いで』
「そいつは大変だ。アタシも寝るとしよう」
『おやすみきてぃ』
「はいおやすみ」
『…滑った?』
「今の笑うとこだったんだ?」
『…もうええ。んじゃ、切るな』
携帯切ってから床叩いて大笑いしたのは言うまでもない。
- 98 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/26(木) 00:26
- マシューにやられて冷静さを欠いてました…投稿失敗〜でも
読めないことはないからそのままにしときます…くっ…
藤本さんおたおめ。
ポンちゃんも(ある意味)おめ(笑)
- 99 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/26(木) 22:21
- 亀高不良の香り。
- 100 名前:チャコールフィルター 投稿日:2004/02/26(木) 22:22
- 亀井家のトイレから戻ってきたら甘い匂いが部屋の中を支配しとった。
「か、亀、それ」
「いい匂いだよねえ」
「いやそれは確かにそうなんやけど、あたしの目に間違いがなければ
それは煙草だよな?」
「そうですよぉ」
ガラスの灰皿の上で煙を登らせている白くて細長いものの正体を
亀井ちゃんはあっさり認めた。
「吸ったんか…?」
「煙出すためだけにちょっとだけ」
「あ〜ぁ、不良の始まりや」
だってこの匂いが好きなんだもん、亀井ちゃんはむくれた。
- 101 名前:チャコールフィルター 投稿日:2004/02/26(木) 22:22
- 「今から寿命縮めるような真似して、どうすんの」
「この程度じゃ問題ないよ。っていうか怒らないんだね」
「確かに甘くていい匂いするからな」
「好き?」
「うん好きやわ」
だけど副流煙のほうが体に悪いんだよな。保健の授業で習った憶えある。
「それじゃ二十歳になったあかつきにはこれを吸うことにしよう」
「吸うのは決定なんか?」
「予定は未定」
「そういうことなら、あたしももし吸うならこれにしとこう」
「あーでも、吸うとダイエット効果あるって言うよね」
「言うよな」
「私としては今のたかぁしさんの感触が物足りなくなるのは惜しい」
「また人のこと布団扱いする!」
- 102 名前:チャコールフィルター 投稿日:2004/02/26(木) 22:23
- 「もうしてないよ。今のたかぁしさんの感触が好きなんだから」
「エロい後輩め」
「えろな先輩に教育されましたから」
「人聞きの悪いこと言うな」
…どっちかというとあたしの方が教育された方じゃ。
「私は私なりの愛し方を実行しただけですよ〜」
「だからどうしてそういうことをサラッと言えるかのぉ…」
相変わらずのおかしな会話をしている間に煙草の火はとっくに消えとった。
残り香の余韻から抜け出せたのはそれから一時間後のこと。
- 103 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/26(木) 22:24
- 間接的にエロい表現が好きですという話。
- 104 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/28(土) 12:51
- 川*'ー')<あのなあ…作者福井弁間違ってんのいまさら気付いたらしいで
川*'ー')<そこ!あら捜ししない!
川*'ー')<もう載せてもうたもんは修正きかんから、目ぇ瞑ってほしいやざ
川*'ー')<一応な、個人的に作った保管庫のほうは訂正したらしいで
ttp://www.phoenix-c.or.jp/~hi21/mm/○○.html
川*'ー')<○○んとこは愛あらのしげみの合いの手でな
何となく間違ってる気がしてたけどこんなに意味が違うとは思わなかった…
- 105 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/28(土) 12:52
- 顔文字まで間違ってる…!!泣いていいですか…?
駄目ですか?じゃあ首つってきます…
- 106 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/29(日) 11:42
- …気を取り直して亀高。たまにはあげで。
- 107 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:42
- ギリギリ限界のところまで腕を伸ばしてくれても
時差と重力に負けてその手が繋がられることはなかった。
亀井絵里、マンホールの穴に落ちました。
- 108 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:43
- 「亀井ちゃ……絵里、絵里ー!」
頭の上、遠くのほうでたかぁしさんが叫んでるのが聞こえる。
いくら暗くて狭くてキューってところが好きでも、これはあんまりだ。
「った〜………なんということでしょう」
ある意味、えりりんは奇跡。
…こんなマヌケな奇跡は要りません。
落下した衝撃のあと、座り込んだまま腰に手を当ててみたらやっぱり
少し痛みがある。
どうせ痛むなら別の理由が良かったな。ねえ、頭上の人。
それはそれで事務所のフォローが大変やろ、と突っ込まれそうだ。
「おーい」
一応無事ですよってことで頭上の人に呼びかけてみたのだけど、上を見たら
真昼の月みたいなものがぽっかり口を開けていて、そこにあの人は居なかった。
見捨てられた?
- 109 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:43
- 「そんなはずない」
うん、有り得ないよ。…有り得ないはずだ。だって。
たかぁしさんは。
「ありがとうございます!お借りします!」
またしても頭上で大きい声が聞こえて、真昼の月がふっといびつな三日月になった。
いびつな三日月が活発に動いてるのを見て、漸くそれが何を表しているのかを
理解した。
「亀井ちゃん、生きとるか?!」
「勝手に殺さないで下さい」
腰に縄みたいなものを巻きつけたたかぁしさんが梯子を降りてきてくれたんだ。
って言ってもマンホールの深さなんてそうたいしたものじゃなかったはず。
- 110 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:43
- 「…っとにもう、いきなり消えたからひっで驚いたで」
「私が一番驚いたよ」
「それもそうか。どっか痛いところは?」
「腰ちょっと打ちつけただけ。たいしたことない」
「…本当?梯子、自分で上れる?」
「多分だいじょうびー」
「……そういうカラ元気出されると余計に心配や」
確かに。
実は腰の痛みがさっきよりひどいものになっていた。
「無理すんな。上に人がおるから救急車呼んでもらおう」
「やだよ恥ずかしい」
「あほか!一時の恥で済むんなら御の字やぞ!
………亀井ちゃんまで紺ちゃんやマコトみたいにな、ったら………」
ぐず。
鼻をすする音が聞こえた。
ああ思い出させて泣いてしまったんだ……
- 111 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:44
- 「…ごめんなさい。救急車、お願いします」
「わかったんならそれでえぇ…」
たかぁしさんはぐずぐず言いながら腰に巻いていた命綱らしきものを
ピンピンピン、と三回引っ張った。
するとすぐに上から誰だかしらないけど大人の男の人の声がして、
今から救急車呼ぶから、と言ってくれた。
「腰を強く打ったみたいなんでそう伝えてください!
あたしは救急車来るまでここに居ますから!」
うわ…なんか凄くかっこいいよたかぁしさん。その声。
私は人生で初めて惚れ直すって経験をした。
さっきまで泣きべそかいてた人はどこに行ったんだろう。
- 112 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:44
- 「ねえたかぁしさん」
「ん?まだどっか痛い?」
「ううん。…さっき、ここから無事だよって声かけようとしたら
居なくなっててびっくりしたよ」
「あぁごめんなあ。咄嗟に近くのビルにかけこんでこれ貸してもらって、
さっきの人呼んで」
「縄を三回引っ張ったら救急車を呼ぶ合図、って打ち合わせてた?」
「ほうや」
「すごいなあ。よく短い時間でそこまでできるよね」
「必死やったから」
ますます惚れ直しちゃったじゃないか。
「あとね」
「ん」
「落ちたとき絵里って呼んでくれて嬉しかったよ」
「………必死やったから」
- 113 名前:新しい場所 投稿日:2004/02/29(日) 11:45
- 額にこつんと乾いた音。ふっといい香りがした。
ああこれはたかぁしさんが使ってるコンディショナーの匂いだね。
実はちょっと下水の匂いに嫌気がさしてたところだったんだ。
嬉しいな。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「でも実は狭くて暗い新しい場所を知って得した気分です」
「…いっぺん砂糖かけた豆腐の角に頭打ってしまえ」
心臓がいくつあっても足らん、と愚痴られた。
大丈夫、一人では行きませんから。
次があったら、ちゃんと差し出された手を取って道連れにします。
救急車はその約3分後に到着した。
- 114 名前:ハルヒ 投稿日:2004/02/29(日) 11:48
- たまにはたかぁしさんに華を持たせてあげたかったという話でした。
- 115 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/01(月) 16:58
- 亀高普及活動(衝動的)につきまたしてもあげてみます。
- 116 名前:ミラコー 投稿日:2004/03/01(月) 16:59
- さくらコンツアーではホテルの部屋割りが一人一部屋になった。
それでもさくらのメンバーは割とお互いの部屋を行き来して話し込んだり、
結局そのまま一つのベッドに二人で眠ってしまったりするらしい。
…ということを、さっき廊下ですれ違った紺野さんに聞きました。
これから加護さんが紺野さんの部屋に遊びに行くそうです。
「………で?」
「遊びに来ました。お邪魔します」
「…いらっしゃいませ、て、コラ」
相変わらずノリで返事するたかぁしさんに一礼して押しのけて部屋にお邪魔しました。
「来るのは構わんけど連絡せぇよ、全くもう」
「もう私たちにそんな遠まわしなことは必要ないはず…だって、だって…!」
「絵里………恐ろしい子!」
「ひどいなあ。可愛い子って言ってよ」
- 117 名前:ミラコー 投稿日:2004/03/01(月) 16:59
-
「 イ ヤ デ ス 」
素直じゃないですねえ。
そんな頬を紅潮させてるくせに。
「コレが目に入らぬか。風呂入ってただけや!勘違いすんな!」
そういえば肩にタオルがかかってる。今気付きました。えぇたった今。
「ということはいい感じに準備オッケーってことでファイナルアンサー?」
勝手に入って勝手にベッドに腰掛けた私の横を通りすぎて冷蔵庫から
スポーツドリンクを取り出し、たかぁしさんは、ゴクゴクとそれを飲み終えて
「…ふぅ、やっぱりそれが目的か」
とぼやく。
生乾きの髪の毛がその横顔を遮り、うざ、と呟きながらかきあげた。
そういう仕種がいちいちエロ臭い。風呂上りのせいか。
- 118 名前:ミラコー 投稿日:2004/03/01(月) 17:00
- 「これでも配慮したんですよ。明日は移動だけだから、って」
「ご親切にどうも…」
「ひょっとして具合悪い?」
「いんや」
「でも声が暗いよ?私、ここまでしといてなんだけど、無理矢理は嫌」
うん全く矛盾してるけど、本心です。
一拍置いてからたかぁしさんは私の隣にやって来て座る。
ぼすん、体がたかぁしさんの方に傾いた。
「………ちょっと真剣に考えてた」
「何をでしょう」
「声、耐えられるやろか」
- 119 名前:ミラコー 投稿日:2004/03/01(月) 17:00
- 「…たかぁしさぁ〜ん」
「わ、寄っかかるなや!倒れる倒れる!」
生真面目すぎる。健気すぎる。可愛すぎる。愛しすぎる。
この人ほんとに現代の高校生ですか?
福井県よありがとう。こんな純粋な人を育ててくれて。
だけど私は東京都民。変に狡賢いイマドキの中学生。
「ご心配なく。両隣の部屋には誰もおりません」
「え、ほうなん?」
「右隣の加護さんは紺野さんの部屋に遊びに行き、左隣は私の部屋です」
「…なんやぁ、取り越し苦労かよぉ」
「そうじゃなきゃ私も来る気なかった。ミラコーミラコー」
「女の子の気まぐれは予知できない…まさに」
かはは、と力なく笑って私たちはベッドに共倒れ。
さあ、ミラクルナイトの始まりです。
- 120 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/01(月) 17:03
- ………始まらないのかよ!終わりかよ!
すいませんすいません私にエロは無理ですほんとすいません。
- 121 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/01(月) 19:11
- ミラクルナイトは始まりませんがここらでちょいと一発企画でも
やってみようかと思います…!
【三月三日・ひな祭り限定作品CP投票】
・企画らしくいつもの高橋さん絡みに加え紺野さん絡みのCPもオケーです。
・この書き込み以降、2日23:59までに「このCPで一本書きやがれ」
というCPがございましたらキボンヌ書き込みをお願いします。
・念のため作者の作風傾向を確認していただきたいのですが、めんどくせー
って方のために一言申し上げますと「エロ苦手」です…
・投票数が一番多かったCPで短編(もしくは中編)を書かせていただきます。
・完成作品はなるべく3日中にアップするつもりですが、遅れる場合もあります。
ご了承ください。
・ありえないとは思いますが多重書き込みはご遠慮くださいませ。
さって、一票も来なかったらどーしよっと〜またいつもの自己満足
かな〜(自虐的)
それでは投票スタートぅ!どんぞ〜
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/01(月) 19:59
- ハルヒさんはじめましてでございます
今までの作品全部拝見しました。(*´Д`)ポワワワワでした
でリクですが、あいあい(加護高橋)キボンヌ
- 123 名前:いこーる 投稿日:2004/03/01(月) 21:17
- どのCPも大好きですけど、辻高をキボンヌ。
がんばってください。
- 124 名前:( *´д`) 投稿日:2004/03/01(月) 22:15
- どれもいいですが、吉高に1票で。
- 125 名前:名無し 投稿日:2004/03/02(火) 00:48
- 田高に1票お願いします。
- 126 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 01:29
- 自分も田高に1票お願いします。
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/02(火) 01:55
- いつも静かにROMらせてもらってます。
楽しそうな企画なので参加させて下さい。
紺高に一票でお願いします。
- 128 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 04:24
- 石高に一票お願いします
- 129 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/02(火) 09:14
- 投票途中経過〜
・加高 1
・辻高 1
・吉高 1
・田高 2
・紺高 1
・石高 1
…頑固一家が揃ってる。そんななか田中さん一歩リード。
んーやっぱり書いた頻度の低いCPが来ちゃうんですね〜
引き続き投票どんぞ〜
- 130 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/02(火) 13:27
- いつも楽しみにしております。
私も石高が読んでみたいですねえ。
ハルヒさんの苦手分野なんか、いいですよねえ(ニヤニヤ)
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 14:33
- 後高読んでみたいので後高に一票。
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 15:58
- はい、後高一票で〜す。
亀高好きだけど、ごめんね(汗
- 133 名前:らすかる 投稿日:2004/03/02(火) 16:13
- 後高が読みたいデス。
ハルヒ様、後高をお願いします(切実)
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 20:10
- 仲のいい加高に一票お願いします。
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 21:11
- やっぱり、ここは辻高でしょう!禁断の
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 21:13
- 辻高ーん
- 137 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/02(火) 21:47
- 投票途中経過〜いよいよ締め切り近し。
・加高 2
・辻高 3
・吉高 1
・田高 2
・紺高 1
・石高 2
・後高 3
うわぁお。増えましたなあ。ありがとうございます。
23:59まであと数時間です。駆け込みは不可ですのでお気をつけくださいませ。
- 138 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 22:42
- 吉高に1票。これしかないでしょ。
- 139 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 00:11
- …はいっ!投票終了です。
最終結果はこうなりましたね。
・加高 2
・辻高 3
・吉高 2
・田高 2
・紺高 1
・石高 2
・後高 3
辻高と後高が同数でした…ってうわ、一番はなしですか。
困ったな。予想通りで(笑)
はい、辻高と後高で実はネタ練ってました…えぇ両方やりますよー。
ただ両方同時アップは難しいです。
時間差が出ると思われますが企画ということで絶対実行いたします。
ご投票くださった方々、ありがとうございました。
高橋さん絡みでこんなに隠れ読者さんがいるとは思いませんでした(笑)
(単純に企画に乗ったという方もおられるんでしょうけど)
- 140 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 00:14
- なんとかかんとか辻高、後高で3〜4日までの間に作品あげられるよう
けっぱってみます。
…最後に、ポンちゃん絡み(紺高除く)がひとつもなくて少し寂しい
ようなほっとしたような…複雑な心境。
- 141 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 10:59
- 三月三日限定企画第一弾は辻高から。
- 142 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 10:59
- 頑固ふたすじ君が盗みを働きました。
あたし達に「内緒だぞ?」とこっそり見せてくれたそれは、
野球のボール。
『いーけないんだーいけないんだ!』
収録の合間で幼稚園児の衣装のままだったあたしとあさ美ちゃんは
すっかりシンクロして同じセリフを吐き出す。
「どうせお前らキャッチボールなんてやったことないだろ?!
たぁ〜のしぃ〜んだぜ〜 な、兄ちゃん!」
「ふたすじちょっと声抑えろ。バレたらどうする」
「え、ほんとに盗んじゃうの?」
あさ美ちゃんが代わりに声を潜めてひとすじ君ことかーちゃんに
尋ねた。
「借りるだけやで。な、みんなで今度のオフの日にキャッチボールしようぜ!」
…かーちゃん相変わらず唐突やね。
- 143 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 11:00
- 「あいぼん遅ーい!」
「…あたしもさっきあさ美ちゃんにメール出したけど返事来てない…」
キャッチボールと言えば河原の土手!とかーちゃんからメールが来たので、
某所の河原に来てみたらのんちゃんがお菓子を食べながら土手に座り込んで
先に待っていた。
「待ち合わせ何時って聞いてる?」
「2時って…合っとるよね?」
「うん、ののもあいぼんからのメールで2時って」
「……もう15分以上経っとる。二人とも何かあったんやろか…」
心配性スイッチが入ってしまい気が気じゃなくなってきた。
「あ!あいぼんからメール来た!」
のんちゃんがお菓子を放り投げそうな勢いでスタンダップ。
「のんちゃんお菓子……」
土手に辛うじてひっかかったポテチの袋を拾い上げた時に
あからさまにしゅんとしてのんちゃんシットダウン。
- 144 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 11:00
- 「あいぼん来れなくなったって…急用で」
「ほうなんか…急用ってなんやろね」
「さあ……あ〜あ、兄ちゃん言い出しっぺのくせによぉ」
ぶちぶち、土手に生えてた雑草をイジケながら毟っとる。
あたしも真似して二、三本毟ってみると、のんちゃんと目が合った。
「あいぼん後でおしおきだべ」
「アイアイサー」
あさ美ちゃんからメールが来たのはそのすぐ後だった。
「…昨日調子に乗って食べ過ぎたらお腹を壊してしまいました。ごめん、
今日はお外に出られそうもありません」
何てイメージ通りの過ちを犯してくれたんや、あさ美ちゃん…
「のんちゃん」
「…二人とも後でまとめておしおきだべ」
「イエッサー」
- 145 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 11:01
- けど二人居てよかったな!一人壁相手にキャッチボールしなくて済んだ!
のんちゃんはあっさり気分を切り替えてまたスタンダップ。
だから…お菓子ふっとばすなよぉ。
「よっし、やろうぜ愛ちゃん!」
ポテチを拾ってる間に今度はのんちゃん土手を斜め向こうに駆け下りて行った。
あたしは拾ったポテチを自分の鞄に突っ込んで土手を真っ直ぐ駆け下りる。
「古今東西!相手の好きなところ!………いつも一生懸命!」
「えー?!」
ふ、普通にキャッチボールやないんか…
戸惑いながらも投げられたボールはしっかりとキャッチ。
こ、困った…あたし人を褒めるの苦手なんやって…
「愛ちゃんののんこと嫌いなのー?!」
「違う違う違うぅっ!えーと、えーと、………かーちゃんとの名コンビぶり!」
動揺したのでちょっと左寄りになったボール、のんちゃんはしっかりキャッチ
してくれた。
- 146 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 11:01
- 「もっとちゃんとまっすぐ投げろー!………気遣い屋さん!」
「………誰ともすぐ仲良くなれる!」
「………集中力すごい!」
「………最近キレイになった!」
「………そっちこそ最近かっこいいぞ愛ちゃん!」
「えーと、えーっと!………太っ腹!」
「デブってことかよー?!」
「ほうやないってぇ!」
やばいネタが切れてきた。
次が来たらどうしよ…何て言えば…
………あれ?
今までのテンポ通りにボールが飛んでくると思ってたのに、のんちゃんは
じっとボールを見つめたまま投げ返してくる気配がなかった。
ひょっとして向こうもネタ切れなんやろか?
「のーんちゃ……」
「ずっと黙ってたけどー………愛ちゃん大好きだー!」
- 147 名前:返事の代わりに振りかぶれ 投稿日:2004/03/03(水) 11:02
-
ボールは
今までで一番高く上がり
太陽と重なって一瞬見失いそうになったけど
あたしの手の中にしっかりと収まった。
「……………」
「何も言わなくていいからー!」
「………のん」
「言葉の代わりに気持ち通じてたらボール投げ返してー!」
………見失うなよ?!
「受け取れこのやろー!!」
ピッチャー高橋、会心のストレートを辻投手に投げました。
- 148 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 11:03
- 辻高に投票してくださった方々、ありがとうございました。
…こ、こんなんでどーっすかね…(逃げ腰)
後高はまた後ほど。
- 149 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 17:17
- 企画第二弾、後高。期待はずれ必至。
- 150 名前:TAXI 投稿日:2004/03/03(水) 17:18
- 校門を抜けたらそこに後藤真希。
…はい?
「……ごっ」
「しーっ!」
間違いない。
グラサンかけて人差し指を口元に当てているこの人は
間違いなく後藤さんだ。
「な、何でこんなとこにいるんですか?」
「お迎えに上がったでござる」
「えぇ?」
文麿チックに妙なことを言う後藤さん。
「いやあ、気まぐれ起こしてアポなしで高橋んち行ったら
まだ学校ですよって。あはっ」
「おかーさんが?って、何でうちなんかに」
「だから気まぐれにだってぇ。特に理由ナシ。ダメ?」
「だ、駄目じゃないですないですよ!」
- 151 名前:TAXI 投稿日:2004/03/03(水) 17:18
- 精一杯首を横に振っているあたしを見て後藤さんは
「相変わらず面白いなあ、高橋は」
なんてニコニコしている。
「からかわんといてください。ひっで驚いたで」
「ゴメンゴメン。おっし、これから家までごとーがしっかり
姫を送り届けて差し上げましょう」
「姫って」
「何かそういう気分」
「とんでもない」
「ごとーの気分だから高橋はあんまり気にしないでいいよ」
そんなん無理やで…
並んで歩くのすら滅多に無いことやのに。
やばい、家までの道忘れそうや。
- 152 名前:TAXI 投稿日:2004/03/03(水) 17:19
- 「高橋さあ、最近」
「あいっ?!」
「あいって!」
「あいや、気にせんといてください…っ!」
「わかったそうする。高橋最近なんかふっきれた感じするね」
「ほ、ほうやろか…」
「何でか今はそう思えないけど」
それはきっと多分絶対後藤さんのせいやで……
「なんつーか、前ほどカタイ感じしなくなったよ。全体的に」
「あ〜…はい。いい加減気にしすぎるの自分でうんざりしたんで…
メンバーの呼び方もさん付け止めてみたり」
「ん、いいことだね!やっぱりごとーがお腹痛めて産んだだけのことはある!」
いつから後藤さんがあたしの親に。…あ、あれか!
「………チュンチュン?」
「そう、チュンチュン♪」
「あたしが卵の殻破く時も痛がってましたね、そういえば」
「思い出して痛んじゃったんだよ〜」
そんな馬鹿な。あたしはつい大笑いしてしまう。
- 153 名前:TAXI 投稿日:2004/03/03(水) 17:19
- 「高橋笑いすぎ」
「あ、は…ご、ごめん、なさ」
「まだ笑うか、こいつめ……………お、何か見覚えのある場所にきた」
「うち、あそこです」
「おおー、じゃあごとーの役目は無事終了だね」
「上がっていくんですよね?」
うわヤバ、部屋ん中服脱ぎっぱなしにしとったの忘れてた…
「いやー、送り届けたら帰るよ」
「え、でも」
「何かね、高橋笑ってんの見たら満足したからさ。だから今日は帰るよ」
「ほやったら逆ですよ。送ってもらったのにこのままさよならできん」
「いーって!ヘーイタクシー!」
あっという間に後藤さんは通りがかりのタクシーを止めて
乗り込んでしまった。
ええ、わけわからんー!後藤さんがわからんー!
- 154 名前:TAXI 投稿日:2004/03/03(水) 17:20
- 「そうだ高橋」
「あいっ?!」
「ごとーの子なら立派に巣立てよ!」
バタン。
ブロロロロ……
「………何やあの排気ガス。目に染みるやんか」
だから涙が出るのはあのタクシーのせいやで。
後藤さん、勘違いせんといてください。
……ほんとに勘違いせんといてくださいね?
- 155 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 17:29
- ごとーさんがわからん…!!
うぅうう難産でした。コント観てなきゃわからんとか学校が徒歩圏内にあるはず
ないとか駄目なとこばかりありまくりです。
いいんだ…企画は企画。終了したことに喜びを感じよう…!!
後高に投票してくださった方々、期待はずれすぎて申し訳ないです…
ご意見ご感想、もしよろしかたったらお寄せください…
あるかわからん次回企画への教訓にいたしますです。
- 156 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/03(水) 17:39
- 企画終わったし落しときます…
- 157 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/04(木) 18:26
- 今日からまた好きなように書いていきますですよ。
では田高中編はじまりです。
- 158 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/04(木) 18:27
- 最近すっかり春らしくなっていたので、楽屋に手袋を置き忘れていたことに
気付いたのは、外に出て指先がいつになく冷たく感じたからだった。
「何やかんや言うても夜はまだ冷えるんやなあ」
両手を擦りながら楽屋に戻ると明かりが付いていた。
特に疑問をもたずに遠慮なくドアを開けると。
「あ」
ドア開いた音に弾かれたようにして顔を上げた田中ちゃんと目が合った。
…田中ちゃんは田中ちゃんで間違いないんやけど、様子がいつもと違う。
彼女は目も特徴のある鼻も真っ赤にして泣いとったんや。
更に言うと、あたしから見て右側の壁に背中を預けて膝抱えて座り込んどった。
いつも、芯がしっかりして堂々としている田中ちゃんが驚くほど小さく見える。
何か………いじめられた子供みたいやと思ってしまった。
- 159 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/04(木) 18:27
- 「わ、忘れもん取りに来たんやって…」
まるであたしがいじめっ子みたいな気分になってもうて、口実というか
事実であることを口に出しておずおずと中に入る。
田中ちゃんは無言やった。
テーブルに見覚えのあるもんを発見してほっとしながらそこへ向かう。
蹲ってる田中ちゃんを背にして、テーブルに置き去りにされていた手袋を手に
取ろうとした。
ミトンのそれは二つ重ねて裏返しにして一つにまとめてあるから、ぱっと見は
ただの丸くて黒いカタマリのように見える。
カタマリを取ってとりあえずしまっとこうとショルダーバッグにその手を持って
いこうとしたら。
手が滑ってミトンボールは床へ落ちた。
……おいちょっと待て、誰かあたしの手袋にピアノ線仕込んだんか?!
なぜなら。
ボールは計算されたかのように田中ちゃんの真横に転がっていったからや。
うーん…困ったのぉ。
何か無視して手袋取ってそのまま出るわけにもいかんよな…
やって、田中ちゃん泣いとる。
悔しいか哀しいかで泣いとるんだからの。
- 160 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/04(木) 18:28
- よし。
心の中でパン、と手を打ち、体育座りで顔埋めてひっくひっく言っとる
田中ちゃんの右隣に腰を下ろした。
力無くだらりと床に置かれていた右手をそっと握ると。
驚くべき超スピードで田中ちゃんはあたしに抱きついてきた。
だ、ダンスレッスンで培った成果か……?
いやいや今はそんなん気にしとる場合と違うやろ。
「ひっ……く、ぇ……っ……たか、はしさ……」
「おー……高橋さんやでぇ」
田中ちゃんは責めるようにあたしの胸に顔をグリグリ押し付けて泣きじゃくる。
とりあえず、これは言っといたほうがええかもしれん。
「待っとるから……………泣いて済むなら、泣きやがれ」
- 161 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/04(木) 18:28
- 「絵里が」
泣いとる間頭撫でたり背中擦ったり、時間にしたら5分くらいかの。
田中ちゃんはポツリポツリ言葉吐き出せるようになった。
「さっき、また暗いとこ行って…帰らんのかって、呼びに」
「うん」
「そしたら、えらい怒って………」
「怒鳴られたりしたんか」
顔埋めたまんま田中ちゃんは頷いた。
「最初わけわかんなくて、ビックリして」
「ほんでだんだん腹立ってきて悔しくなって泣いたんね」
「……そう、です」
「なるほどなあ」
だいたい予想がついた。
亀井ちゃんは多分………限界近かったんやろう。
今日はスタッフさん若い人多かったもんな。
あの子は小さい頃、家にたった一人のとき若い男に泥棒に入られて、
恐くなって押入れにずっと隠れていたことがあるそうや。
それで、その泥棒と背格好が似ている男の人を一杯見ると未だに恐くなって
暗くて狭いところに逃げ出してしまう。トラウマや。
- 162 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/04(木) 18:29
- やけどその話は田中ちゃんにはするべきでないし、あたしだって
小さい頃に似たような境遇があって、だからこそうっかり気付いてしまったから
このことを知っとるって、それだけや。
本人じゃない限り口外するべきじゃない。
けど間接的に教えてあげることくらいはしとくべきやろうと思う。
また同じ目に遭わせとうないし。
気付くかな、田中ちゃん。
- 163 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/04(木) 18:29
- 今回はここまで〜
- 164 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/05(金) 21:49
- では田高続きでっす。
- 165 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/05(金) 21:50
- 「なあ田中ちゃん、例えば自分がトイレに入ってる時、隣から
仕切り乗り越えて覗いてきた奴がいたらどうする?」
「どうって…そりゃあ怒鳴ります」
「な、ほうやろ。…亀井ちゃんもきっとそんな心境だったんだと思うで」
あ、トイレってのは極端な例えだけどな!高橋さんは大袈裟に両手をぶんぶん振った。
「恥ずかしかったってことですか?」
「ん〜あたしは亀井ちゃん本人じゃないからはっきりしたことは言えんけど、
見られたくなかったんでないかな」
でも今までそぎゃんことなかったのに。
今日に限ってどうして。
「機嫌、悪かったんかな…」
「そうかもな」
そうか。
それじゃしゃあなかか。
いい加減泣きまくってスッキリしたし、正直ちょこっとどうでもよくなりよったと。
「あ………すいません、もう離れます!」
散々高橋さんの胸で泣き続けたことに気付いて、勢いよく体ば離す。
高橋さんは穏やかな笑顔だったと。
- 166 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/05(金) 21:50
- 「もう平気?」
「はい!ほんとすいません!」
「謝んなくてええが。顔洗っといで」
「……行ってきます!」
今更のように体温が急上昇。とにかくみっともなかところば見せてしもうたことが
恥ずかしくなって楽屋ば飛び出す。
全速力でトイレに駆け込み、洗面台の蛇口ば思いっきりひねって水出した。
周りに飛び散るのも構わんでバシャバシャとそん水ば掬っては顔へ、掬っては顔へ。
田中れいなは明るく元気が売りやけん……あんな情けないとこ晒して……
「うがー!さっさと元に戻れこの顔め!」
- 167 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/05(金) 21:51
- ミトンボールを拾い上げてテーブルに置いとったバッグに突っ込んだ。
ガチャ、とドア開く音がしたので見てみると、そこには亀井ちゃんがおった。
「………れーなに会った?」
成程少し暗い顔をしとる。
「いんや、あたし忘れもん取りに来ただけやで」
「嘘だ」
「何でやの」
「胸のとこグシャグシャになってる。れーな泣いたんでしょ」
「あー………ま、そのとおり」
「どうして泣いたか聞いた?」
「聞いとらん。あたしもいきなり泣きつかれたから混乱したで」
「………れーなもう帰った?」
「顔洗ってくるって」
「そっか。私、帰ります」
「おつかれさん。鞄、これ?」
「あ、ありがとうございます」
- 168 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/05(金) 21:52
- 亀井ちゃんの鞄を手渡すためにドアまで行く。
目が合った。
「たかぁしさん、れーなのことよろしくお願いします」
「おう任しとけ。ちゃんと送り届けてやるからの。亀井ちゃんも気をつけて」
「うん。……たかぁしさん嘘が下手だね」
「何のことかの〜」
「嘘をつくくらいなら喋らないほうがいいよ」
「アドバイスありがとう。ほれ、田中ちゃん戻ってくる前に帰ったほうがええぞ!」
「そうだね。ばいばい」
「ばいちゃ〜」
わざとふざけた挨拶をして亀井ちゃんを見送った。
笑顔で帰ってほしかったからの。
亀井ちゃんは歯を見せて笑うてくれた。
よし、合格!
- 169 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/05(金) 21:54
- 散々顔を洗ったら漸く火照った顔の熱が引いた。
「うわ、鏡とか水飛び跳ねまくっとる…」
拭いたほうがよかかな…と思いながらキョロキョロした時、鏡越しに
開け放たれたトイレの個室が目に入った。
『なあ田中ちゃん、例えば自分がトイレに入ってる時、隣から
仕切り乗り越えて覗いてきた奴がいたらどうする?』
そう高橋さんが言ってたことば思い出して、試しに個室に入ってみる。
ドア閉めて鍵かけた。
なんとなくホッとする密室の完成。
で、ここから隣ば覗くとしたら、仕切りが結構高いところにあるから…
便座の上に乗っからんと。
流石にそこまでする気にはなれんなあ。
「……こっから隣覗くのって、結構大変たい」
それ以前にそぎゃん悪趣味なことする奴はちょこっとアレな感じする…
- 170 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/05(金) 21:55
- 今回はここまで。
余談ですが、初めてウィルスに感染しました…ぐったり…
みなさんもお気をつけ下さい…
- 171 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/08(月) 19:19
- 田高最後までいきまする。
- 172 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/08(月) 19:21
- 「……悪趣味」
自分で口に出した言葉に寒気がした。
わかった。
れいなは絵里から見たら悪趣味なことばする奴やったたい。
同期やけんいつでん一緒に居なきゃって思い込んで、居なくなりよったらすぐ
探しに行って、文句言いながら連れ戻して。
それが絵里にとっては決してよかことではなくて…やけん今日、絵里は怒ったとよ。
お節介が過ぎたってことたい。
「絵里ごめん………こん壁、乗り越えたら駄目やったんだね」
- 173 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/08(月) 19:21
- 「おっかえり〜」
「高橋さんまだおったと?」
「何やと?!」
田中ちゃんが戻ってきたので、明るく出迎えたらこの仕打ちや。
あのまま帰られるわけないやろ、と田中ちゃんのデコを小突くと、
へへへ、と笑うた。何か嬉しそうや。
どうやら吹っ切れたらしい。
……………気付いて、くれたやろか。
時計を見たら時間も時間なので早々に帰り支度をして外に出た。
玄関開けたら横殴りの冷たい風がお出迎え。
「うおっ、やっぱ寒ぃ!」
「それこないだも聞いたなあ」
そういえば…あんまり憶えてないけど多分言ったんやろう。
春になりかけの夜風は確かに冷たくて寒いんやけど…ほんのちょっと
気持ちいいと思った。
- 174 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/08(月) 19:22
- 「さっき高橋さんが言ってた意味わかりました」
「さっき?」
「トイレの壁。…れいなはお節介が過ぎたってことですよね?」
「ああ…」
そうか、田中ちゃんはそう解釈したんか。
ほんとは誰のせいでもないんやけど……ええ子やね、田中ちゃん。
「気付いた時すんごい納得したたい」
「ほやろ!」
「でも下品たい」
「ほ、他にいい例えが思いつかんかったんやって!」
「やけん高橋さんはお下品な人ってイメージに」
「すんな!」
「………優しくて頼れるお下品な先輩に」
「下品はずせ!」
「けど尊敬してまーす」
「なら許してやろう」
なんてな。声を出して笑った。
- 175 名前:見えない壁が見えた 投稿日:2004/03/08(月) 19:23
- 「次会った時はちゃんと絵里に謝ります」
「うん、そやね。大丈夫、きっと許してくれるはずやで」
「駄目なら何度でも謝るたい」
「熱いなあ、田中ちゃん。…はー、しっかし冷えるのぉ」
「高橋さん、手袋は?」
「え?おぁ、忘れとった」
そういえばこの人と二人だけで仕事帰りなんて、……二回目だ。
一回目の時のことを不意に思い出して。
「じゃあまた手繋いでもいいですか?」
「ええよ、ほい」
差し出された手を素直に繋ぐ。右と左。
「ほやったら、これも分けよ。なあ、取って取って」
バッグをこっちに向けてきたので、ピンと来た。
中から黒くて丸いカタマリを取り出す。
片一方は高橋さんの左手。
片一方は自分の右手に。
家路につくまでそれは田中れいなの手袋になった。
- 176 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/08(月) 19:34
- さて、ネタ切れてきました(笑)
やってみたいCPはまだありますが話が思い浮かびません…誰かヒントプリーズ…
(するな馬鹿)
しばらく生みの苦しみを味わうべきなのかもです。
量産だけして空回りな現状から抜け出すためにもね…うん、押忍!
- 177 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/08(月) 23:14
- 更新乙デス。
ハルヒさんの書くたかぁしさんと亀井ちゃんは
独特の雰囲気があって好きっす!
「量産だけで空回り」やなんて思ってねぃですYO!
次回作マターリお待ちしてます〜。
- 178 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/09(火) 17:53
- >>177 名無飼育さま
うはあ…ありがとうございます。感涙です。本当に。
人間体調を崩すと何もかもメタメタになりますね…(風邪引いたり色々)
これはイケるかな、っていうネタ出ても続きが思いつかなくて自分に腹が
立ちます。普段は割と思いつくんですが。
はい、今しばらくお待ちいただけましたら幸いです。
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 11:36
- 娘。メンバー全員&後藤さん&松浦さん
からモテてる高橋さんとか見たい
- 180 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 18:39
- 意表をついて新高が見たい。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/11(木) 01:12
- はじめまして。青版から飛んできました。
ヒントプリーズですか?意外と同じ組み合わせが多い高新
も見てみたいですが、卒メンOKだったら、ヤス高どうですか?
師匠と弟子みたいな感じでモテる秘訣を伝授される、高さんで。
タイトルとはちょっと違うかもしんないけど、サイドストーリー
みたいなテイストでどうでしょう?
- 182 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/11(木) 05:06
- 一瞬自分の書き込みが誤解されているのかと疑ってしまいましたが
(リク募ってる風に思われちゃったのかと)
皆さんお助け書き込みありがとうございます〜
>>179 名無飼育さま
無理です(苦笑)私のメンバーに対する認識がゴロッキあたりに偏ってるので
全員動かす事なんてできませんですよ〜…と言いつつできたらすげーなあと思うです。
>>180 名無飼育さま
新高というか高新は最近注目株のようです。私も実はちょっと考えました。
高→新という構図で。
でも話が思いつきません…何かのきっかけで思いついたら挑戦してみようと思います。
>>181 名無し読者さま
高新興味ありますねえ。興味だけ先行してる状態ですが…
保高は、これもやっぱり高→保な構図になりそうで。モテ高とはちょっと違うかな。
私の書く高さんは大方受身なのでいつもワンパターンなんですよね…
やっぱり色々再考の余地ありでしょうか。
みなさんありがとうございます。
実は、現在少しずつ長めの話を書いているところです。亀高なんですが(やっぱり)
ほんと私にしては長いので、途中で息切れして他CPのものを途中で挟んでとか、
するかもです。これまでのご意見も参考にさせていただきたく思います。
公開するまでもうちょっと待ってくだせぇ。校正が大変です(笑)
ではまたお会いしましょう。
- 183 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/11(木) 19:20
- 今日から亀高の(私にしては)長めの話。
なお、今作をお読みになる前に青板にて連載させていただいた「おかしなふたり」
「一生好きでいられる自信があった」を一読されることをお薦めいたします。
- 184 名前: 投稿日:2004/03/11(木) 19:21
-
「離(り)」
- 185 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:22
- ここに一枚のチケットがある。
とある遊園地の、一日フリーパスチケット。
二週間前、たかぁしさんから貰った。
二人で行こうなって、つまりデート目的の。
そう思い返せば私達はそういう関係であるくせに
未だにそれらしいイベントをこなしたことがなかった。
こなすという言い方も少し妙な感じがするけれど、
やっぱりこう、デートとかって恋人同士の通過儀礼という
印象があるから。
それはたかぁしさんも同じだったようで、この遊園地の話が出た時も
「うちらそれらしいこと一度もしたことないやろ、だからどうかなって」
って言われた。
それじゃやっぱりデートらしく一つの飲み物二つのストローで
飲んでみたり、観覧車でちゅーとかしてみちゃったり、ええっと後は
何があるかな。
「そこまで義務化することないやろ。二人で楽しく過ごせればええが」
ただ一緒に居る場所が違うだけ。
でもそれだけでもかなり気分違うよな?
いつも以上に、一緒に色んなことやって楽しめればそれで大満足。そう思わん?
そうだね。
だったらなんでこの間、急にあんなこと言ったんですか?
- 186 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:23
-
「当分、亀井ちゃんと話するの止めるわ」
一方的に絶交宣言を切り出された。割と最近の話だ。
予兆らしきものはあった。あれ、いつもと違うなって。
私が他の人と話をした後にたかぁしさんに会うと、あの人は何故か神妙な
面持ちで私を迎えたんだ。
もともと無表情になることが多い印象があったのでその時は大して
気にしていなかった。
絶交宣言を切り出された時も、いつものように目を見たら何か少しでも
通じるものがあるかと思って、視線を合わせようとしたらそれを逸らされるし、
かといってそれを無理矢理覗き込もうとするほど積極的にはなれなくて。
結局
「…うん、わかった」
これしか言えなかった。
たまにある気まぐれの一つかもしれないかとカマをかけたっていうのもある。
ねえたかぁしさん、遊園地のこと聞きそびれちゃったけど、これはただの
紙切れになってしまうのかな?
当日限り有効のチケット、入園日は三日後の日付になっている。
- 187 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:23
- あたしは人との接し方が不器用でそのくせ上下関係を必要以上に気にする
ところがあって、だから年齢では年上であっても芸歴で上を行く先輩方に
対して必要以上に遠慮してぎこちない態度を取ってしまう。
「気にしなくていいんだぜぇ」
そうかーちゃんは言ってくれるけど、加入当初から続けてきたこのスタンスを
急に変えるのはなかなかどうして勇気が要るわけで。
自分で自分に苛立ちをおぼえずにはいられない。
加護さんのことをかーちゃんって呼べるようになったのもつい最近のことだ。
…でも、そのかーちゃんも娘。を卒業してしまう。
どんなに親しくなれても、いつかは別れの時が来るのは、娘。に居ても居なくても
人生当たり前のことなんやって、こないだ気付いた。
物騒な考えやと思うけど、身近な誰かが事故かなんかで突然死したりしたら。
………実際、近い出来事が過去にあったんやし。
あたしは絶対後悔する。何でもっと親しくしておかんかったんかって自分を責める。
責めて責めて、頭おかしくなって何かしでかす気がする。
- 188 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:24
- ほうや、今からでも遅くない。自分の殻を破らんといかん。
なるべく自力で。
人に相談するというのは、余計に自分の考えをグラつかせかねないし、何より
あたしごときの事で他の誰かが頭を悩ませるというのは申し訳ない。
だから、殻を破る方法思いつくまで、なるべく一人で居たかった。
ただでさえ普段から負のオーラ出まくってるっつーのに、メンバーにまでそれを
伝染させるわけにはいかんで。
………例えそれが亀井ちゃんでも。
いや違うな、んでのうてな、あの子にだけは知られたないんやて。
- 189 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:24
- 「亀井ちゃん」
「………はい?」
楽屋でボーっとしてたら新垣さんが声をかけてきた。
何だか眉毛が微妙に八の字っぽい。ような。
「変なこと聞くけど、何かあった?」
「何かって?」
漠然としすぎていて見当がつきません。
何か、なんて言われたら、昨夜目覚し時計をセットし忘れて寝坊しそうになったとか、
靴を左右間違えて履きそうになったとか、道を歩いていて何もないところで躓き
そうになったとか、楽屋間違えそうになったとか今日だけでもこれだけ色んな
ことがありました。
気にしてないつもりだったんですけどね、これって多分あの人のせいですよ。
「うーんと……最近愛ちゃんと話してるとこ見ないな、と思って」
声を潜めて数メートル先の椅子に座ってるたかぁしさんの背中を指差す新垣さん。
「そうですか?別に、毎回毎回話すようなことがあるわけじゃないから」
我ながらよくもまあ冷めた口調でこんなことが言える。
もしかしたら動揺の裏返しなのかもしれない。
そしてそれが新垣さんには気付かれたみたいだった。
- 190 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:25
- 「愛ちゃんってたまに一人になりたがることがあるんだよね」
「はあ」
「それでまた元通りに話せるようになった時にポロッと零すんだよ」
『悩み事出てくると心の中でブランコ乗ってるみたいにユラユラ揺れちゃって、
自分でそれ止めようと必死になってるから周りから距離置きたくなるんだって』
成程ね。
本当に不器用で、………優しい人だ。
「そういう時のために私達がいるのにね。心配かけたくないみたいで」
「…多分それが、たかぁしさんなりの優しさなんだと思います」
「うん、私、それに気付くのに随分時間がかかったよ」
でも亀井ちゃんはすぐに気付いたんだね。新垣さんは複雑な表情で笑った。
「新垣さんが言ってくれなかったら私も気付かないままでしたよ」
「んーほんとは私が直接手助けしてあげられたらと思うんだけど、これは
亀井ちゃんが適任かなと思ったのだ」
「塾長、流石です」
「うむ、期待してるぞ、亀井!」
塾長はポンと私の肩を叩いてその場を離れた。
今の会話で私とたかぁしさんの関係がどうやらバレバレだったらしいことに
気付いたけどそんなことはどうでもいい。
とにかく、あの人のブランコを止めてあげなくてはいけない。
妙な義務感が芽生えた。
- 191 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:28
- とりあえず。
加護さんはかーちゃんって呼んでって本人から言われたことだし、後は
敬語を少しずつ…減らすように…
問題は辻さんや……
あさ美ちゃんは何て呼んでたっけ。あー…「のんつぁん」?
無理や。
今までかーちゃんほど接点無いからなあ…ミニモニ。でも間にかーちゃん挟んで
って感じやったし……
いきなりあさ美ちゃんとおんなじ呼び方したら引かれるやろ…
あたしなら引くわ。
うわぁああぁあ〜………困った………
思わず頭抱えそうになったその時、携帯にメールが届いた。
『メールは構わないよね?すぐ後ろにいるけど』
…亀井ちゃんからやった。
思わず後ろを振り返ると、携帯片手に上目遣いでこっち見とる。
上目遣いの彼女はちょっと怖い。
いや実際ほんとに怖い。何かそんなオーラが見える。
……そら怒るよな。あんな突き放し方したら。
- 192 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:29
- 「送信代勿体無いやろ……こっち来てええよ」
あたしは亀井ちゃんを手招きして、亀井ちゃんが隣に来るまでに
バッグから一冊のノートとペンケースを取り出した。
最近物忘れがひどいから、書き物を用意するようにしとったんや。
まさかこんな形で役立つとは思わなんだ。
「そん代わり、これでな」
「うん」
ノートとペンを手渡すと亀井ちゃんはサラサラと何事か書いてすぐに
あたしに寄越した。
『何かはわからないけど、悩んでるんだよね?』
ご名答。
とだけ書いてすぐに突っ返す。
『私には言えないこと?』
まいったな、そう来るとは思うとったけど、今頭ん中グチャグチャなんやって。
返事を書くのに五分くらいかかった。
『言えないわけやないけど。ひっでくだらないことやで。
―――年の差と芸歴の差どっち取るか悩んどる』
- 193 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:30
- そっぽ向いてノートとペンを返す。ああ内心馬鹿にされとるやろなあ。
あたしとは対照的に返事はすぐに返ってきた。
『辻加護さんのことだったら、気持ちはわかるよ。
でも、藤本さんとは普通に話せてるよね?』
…それはあの人がもともと気さくでサバサバしすぎていて、なるべく敬語使わなくて
いいとか、最近はミキティって呼べとか向こうから積極的に言ってくれるからや。
『藤本さん、娘。としては6期で後輩になるよ』
「それはそうなんやけどなあ〜」
あたしは思わず声に出して反応してしまった。
「だったら辻加護さんとだって同じでいいじゃないですか」
「言いやすい人とそうじゃない人とおるやんかあ。
苦手とか苦手じゃないとかと別に」
「それは単に」
「わかっとる。あんまり接点無いからや。特に辻さん」
- 194 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:30
- そこまでわかってるなら答えはもう出てるも同然なのに。
………もしや例のアレで躊躇ってるのか。
「また自信なくて自分から話しかけたりできないって?」
「……………」
「図星なんだ。もう、じれったいなあ」
ほっとけ、ちくしょう。
口を尖らせてたかぁしさんは体ごと横を向いて私に背中を見せた。
「ほっとけません」
ここが楽屋じゃなかったらハグの一つでもかましてやりたいくらいに
ほっとけませんよ。
「……とにかくあたし一人の問題やし」
「そんな哀しいこと言わないで下さい。私だっていつか同じ壁に
ぶつかるかもしれないんだから」
それ以前に、こういう時にこそ頼ってくれないと、貴方はいつ私に
頼ってくれるんですか?
「ん〜……ま、それもそうか……こういう時に勇気出さんでどこで
出すんかっつーことか」
「結論出たね、良かった」
- 195 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:31
- 「おし、すぐには出来んけど絶対やったるで!押忍!」
言い終わって今度は180度回転してこっち向いてくれた。
やっとまっすぐ目を見てくれてほっとする。
自覚無かったけど私自身も相当不安だったようだ。知らないうちにたかぁしさんに
嫌われるようなことをしたのかって。
「何かあった時は言葉でも文字でもいいから外に吐き出したほうがいいよ」
「うんそれは痛いほどわかった。出すのにひっで疲れるけどそっちのが
いいんやな。胸ん中のドロドロ吐き出せた気がする。……ありがとさん」
そんな至近距離で拝むポーズは逆に謝ってるように取られちゃいますよ。
塾長が誤解しないといいけど。
「ああ、そういえばお久振りでした、たかぁしさん」
「こちらこそ。ご心配おかけしまして」
「全くです」
「お詫びに遊園地、ランチは奢らせていただきますで」
「おやつも付けて下さい」
「ラジャりました。喜んで奢らせてくださいませ」
あっという間にいつものふたりになれるあたり、私たちはやっぱりどこか
繋がっているのかもしれません。
- 196 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:34
- 三日後、都内某所某遊園地。
「あ、ゴロッキーズの人がおる」
「ゴーガールの人が居る」
現地集合で待ち合わせたあたしらの第一声はこれ。
今日の亀井ちゃんは髪の毛を二つ結びにしとって、あーこの髪型いつかの
ゴロッキーズで観たな、服が黄色じゃないやつん時…と思ってついそう言ったら、
間髪入れずにゴーガールって言い返された。
というわけであたしの今日の髪型はゴーガールのPVん時と同じ、サイドちょっと
垂らしてあとは後ろで一つに束ねてみました。
「ジェットコースターとかで髪の毛乱れるからなあ。楽なのがええと思て」
「うん私もそう思ってこれにした」
「その髪型してる亀井ちゃんもかわええのお」
「たかぁしさんもかわいいねえ、大好きだよ」
「………少しは照れろ」
「たかぁしさんは毎回照れすぎ。耳真っ赤」
うっさいぼけぇ!
腰のくびれあたりに八つ当たりパンチを食らわせてからゲートをくぐる。
- 197 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:35
- 「やっぱ最初は絶叫系!ジェットコースターやろ!」
「どれにするの?」
目に付いたもん片っ端から乗るに決まっとるやんか!
……と、ちょっと待てよ。
「今更やけど亀井ちゃん絶叫系って大丈夫なん?」
「平気だよ〜。おばけ屋敷以外は」
そうか良かった。
あたしもな、おばけ屋敷って苦手って言うか、好きくない。
あれって結局人間がやっとるんやから。
そんなんわかりきってるのにわざわざ怖がりに行くなんてアホくさいと思う。
「あ、あれジェットコースターだよ」
「でかした!よっしゃ行っくじょ〜!!」
「おーぅ!」
あたしらは普通の女の子に戻った気分でハイテンションになる。
天気もいいし、隣は亀井ちゃんやし、言うことなしのレジャー日和…のはずやった。
- 198 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:35
- たかぁしさんは本当にジェットコースターが大好きなんだなあ。
だって乗り込んだ時点ですでに笑ってるんだもん。
動き出したら大笑いするんだもん。
それで、笑ってるたかぁしさんが可笑しくて私もつられ笑いをしまくった。
箸が転がっても可笑しい年頃ですから、たかぁしさんが笑ったらもうそれだけで
可笑しいんですよ。抱腹絶倒なんですよ。
「そんなん言ったら亀井ちゃん笑ってるの見てあたしだって可笑しかったわ!」
やっぱりそう言われると思った。
喫茶コーナーで私はお好み焼きを頼んだ。約束どおりたかぁしさんの奢りで。
彼女はというと
「うんあたしこれにしよ」
と言ったきり注文するまでそれが何かを言わなかったので、
「お好み焼きとウーロン茶と、オムライス」
「あっ!こら亀!」
「お飲み物は〜?」
「………アイスコーヒーお願いします」
ちょっと優越感。
- 199 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:36
- 「ちくしょ〜、何で先言った〜」
「ついでだもーん。どうせ会計一緒だし」
「違うもん頼むっつう可能性は考えんのか」
「有り得ない」
だって『好物』でしょう?
お好み焼きを頬張ると笑いまくって消耗していたのを自覚した胃が
どんどんそれを要求してくる。
たかぁしさんもおんなじだったみたいで二人して無言で昼食を摂った。
「ふぁ〜、食った食ったぁ」
「ごちそうさまです、奢っていただいて」
「なんも、これでプラマイゼロになんなら安いもんやで」
あの時はこちらこそごめんな、逆に謝られてしまう。
私としては、あれのお陰でまたたかぁしさんのことを知ることができたから
マイナスだなんて思ってはいない。
そりゃ当時は面食らったけれど、もう済んだ話だ。
こうしてお昼も奢ってくれたしね。
「これからどうします?」
「んー、亀井ちゃんは何か乗りたいもんないんか?午前中ずっとあたしに
付き合ってばっかりやったろ」
「乗りたいものかあ……」
いざ聞かれると困っちゃうな。しばらく黙っていると、たかぁしさんが
園内地図を広げて見せてくれた。
- 200 名前:離(り) 投稿日:2004/03/11(木) 19:37
- 「この辺はまだ行ってないとこやね。それとこのあたりか」
「コーヒーカップとか、今食べたばっかりだからちょっとやばいよね」
「うん、そしたらメリーゴーランドとかもNGか」
「あ、これとか」
地図の記号を指差す。
「ミラーハウス?」
「駄目かなあ。これもある意味具合悪くなっちゃうかなあ」
何てったって一面鏡張りで、いくら芸能人だって言っても色んなとこから
自分の姿を映されるのを喜ぶのはさゆくらいのような気がする。
と思ったんだけど。
「いやでもこっから近いんやね。じゃあここ行って、それからその辺り
適当にまわってみるか」
「うん、そうしよ」
極めて現実的な理由で私達はミラーハウスを訪れる運びとなりました。
- 201 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/11(木) 19:39
- …長い話はどこで区切っていいのかわかりませんね。今回はここまで。
気付いたらレス200いってるし。
遊園地、行きたいな。
- 202 名前:177 投稿日:2004/03/12(金) 19:48
- 更新キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
すごいリアリストな2人がおもしろいですw
続きが楽しみだ〜♪
遊園地かー自分もここ数年行ってないなー。
まぁ絶叫系ムリな人なんで
行けないってのがほんまですけどw
- 203 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/13(土) 04:04
- 変な時間に寝て起きてしまった…こんな時間に更新。亀高続き。
- 204 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:05
- 「ぎゃー!おるおる一杯おるー!」
「そりゃ鏡だもん」
近いからって来てみたはええけどこれは苦痛や………
認めたくないみっともない姿の自分があちこちに………
「は、早く出よ…」
「落ち着いて。急いだら鏡にぶつかっちゃうかも」
先を急ごうとしたあたしの手を亀井ちゃんが掴んだ。
言われてみれば真正面に鏡。
「なんつー危険地帯…」
「でも全部偽りの姿ですよ。本物は一人」
「おお…なかなかかっこいいセリフやね」
「ってさっきから自分に言い聞かせてる。実は私もすごく嫌」
「ほやったら先に言ってくれれば」
「ううん、入ってみてすごく嫌になったんだ」
ミラーハウス恐るべし。
あたしらは手を繋いでこわごわと通路を進む。
当然見たくも無い自分の顔が問答無用で目に入ってもうて、
思わず足を止めた。
「げぇ、あたし顎割れてきとる…」
「そんなこと言われたら私なんかシャクレてる」
「亀井ちゃん安心せぇ。最強のシャクレはマコトや」
「…それは安心していいのかな。だってあれは芸でしょ」
「少なくともあたしは亀井ちゃんシャクレなんて思ったことないで」
「そうなんだ。じゃあいいや」
「気分切り替えんの早いなあ」
「たかぁしさんが言ってくれたからだよ」
- 205 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:05
- ほうなんか………
まあそれで気にならなくなるっつーんならいくらでも言うけど。
「あーやっと抜け出せたでぇ!」
「ゴール!」
あたしらは手を繋いだまま万歳をして思いっきり外の空気を吸い込む。
「辛かったね……」
「もう当分ミラーハウスはご遠慮願いたい気分や」
「うん」
「こんなんが遊園地にあるなんて信じられん」
「きっとさゆみたいな人のためにあるんだよ」
………それはちょっと納得。
「さて、っと」
気を取り直して周囲を見渡す。
が、ざっと見た感じこの辺に興味をそそるアトラクションは見当たらんかった。
「あ、観覧車」
下ばっかり見とって気付かんかったけど、成程ちょっと離れに遊園地の
定番、観覧車がデデーンとそびえ立っとるのが見えた。
「やっぱあれは乗るべきかのぉ」
「これがデートならね」
試すようなセリフとともに亀井ちゃんがあたしの方を伺う。
……言わせようとしてるのがミエミエや。
- 206 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:06
- 「のぉ、この手の繋ぎ方ってそれなりの意味あるよな」
わざと別の話題を振って答えを導き出そうとする自分もちょっと意地が悪いと思う。
そう、あれや。
お互いの指を交差させて手を繋いでるカップルは、もう『済み』って意味やって。
「素直じゃない」
「やって………言えん!」
「下ネタは言えるのにねえ。変な先輩」
「あーはいはい、で、乗るのか乗らんのか?!」
「当然乗るよ。初デートですから」
亀井ちゃんは心なしか張り切ってあたしの手を引っ張る。
耳が赤くなっとったのを見られなくて良かった。
- 207 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:07
- 黄色く塗装された観覧車の内部は意外と狭かった。
ああでも、最後に観覧車に乗ったのは随分前のことだから、中が狭いんじゃなくて
私が大きくなっただけかもしれない。
「上の方に行くまではつまらないんだよなあ、これって」
向かい合わせに座ったたかぁしさんはそう言って、中をキョロキョロする。
手すりに書かれてた落書きを発見してそれを興味深げに眺めたり、シートの破けた
部分をいじったり、見ていて飽きない。
………と思い込もうとした。
でも、ちょっと無理かもしれない。
頭の片隅の方で黒いものが現れて、それが徐々に大きくなっていく。
半紙に墨汁が染み込んでいくみたいな。
頭が重い………
「…亀井ちゃん?どうした?」
感じた頭の重さは実際私の顔を俯かせていた。
「ん……大丈夫」
「なわけあるか。どんどん頭下がっとるが」
「…なんかね、頭重いんだ」
「重い…?痛みは?」
「んん、重い」
- 208 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:07
- とうとう私は膝に顔を埋める形になってしまった。
直後にギシッと何かが軋む音がして、隣にたかぁしさんが座ったのがわかった。
「…なあ、もしかしてさっきの係員」
「わかってる、別人だって」
だけど今までで一番似てたんだ。一瞬で悪夢が甦るほどに。
「………絵里」
名前を呼ばれて、思わず顔を上げた。
「ほら、ちゃんと顔上げられるやんか」
してやったり顔のたかぁしさんと目が合う。
自分でもびっくりしたよ。
だってほらそれは多分、たかぁしさんが滅多に私のこと名前で呼んでくれないから。
なんていうのは、きっと屁理屈にしかならなくて。
「独りじゃないぜ、ここにいるぜぇ。我慢すんな」
無意識にあの時独りぼっちで耐えていた自分と今の自分がダブっていて。
だけどここにいるぜぇってちょっと寒いギャグかましてる人が隣にいて。
それがギャグじゃなくて真剣なのも実はわかっていて。
そんなあなたは私の先輩で、仲間で、一番大事な人。
目元に熱いものを感じて両手で顔を覆った。
- 209 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:08
- 「……も……また、泣か…され……」
プライドが邪魔して涙をたかぁしさんのせいにしようとする醜い私。
「悔しいか?」
「……………………しぃ」
「ん?」
「嬉しい」
「うれしい?」
「独りじゃ、ないって」
ぽん、ぽん。
優しく頭を撫でる感触の後、強くも無く弱くも無い力で抱き寄せられる。
ちょっと子供扱いしてるなって一瞬思ったけど、実際今の私は最悪の
過去にタイムスリップした子供のようなものだからと思い直した。
もしかしたらたかぁしさんは自分の妹を扱うような感覚だったり、するのかも。
それはかなり悔しい。
…って、私、馬鹿か。こんなに優しくされておいてまだ何かを望んでるのか。
顔を見たことも無いたかぁしさんの妹に対して嫉妬してるのか。
亀井絵里、欲深い生き物ですね。
- 210 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 04:09
- 「……あぁ、もう結構高いところまできたんやなあ」
「天辺まで行った?」
「まだ、もちょっと。……ほら、外の景色見とけ。勿体無いで」
「…やだ、こっちの方がいい」
自分から体を寄せてこっちから抱きしめる。
けどやっぱり泣いてるとこかっこ悪いから顔は上げられなかった。
「こんなに甘えんぼさんやったかなあ」
「自分でもそう思う。たかぁしさんが泣かせるから悪いんだよ」
「そんな強引な。それじゃあたし以外の誰かに泣かされたら今度は
そっちに甘えんの」
「はいそうですって言って欲しい?」
「却下」
「だよね」
「………ほんとに許さんからな」
「うん、できればこのトラウマ消えるまで。一生かかるかもしれないけど」
「あたし生きてるうちは、熱烈大歓迎やで」
たかぁしさんのこの一言に深い意味が込められていたことを知るまで、
私は素直に喜びに浸っていた。
せめてこの時彼女の目を見ていれば、何か勘付く事ができたかもしれなかったのに。
- 211 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/13(土) 04:18
- 今回はここまで。
>>202(177) 名無飼育さま
私が書くとほんとリアリストですね。まあ自分が思ったことあるっていうことを
絡めてるので無理ないですが(笑)
今後はもっとリアルでちょいと痛い感じの展開が待っておりますです。
ちなみに私はフリーフォールが大好きです。失神寸前まで行くとこが(笑)
- 212 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/13(土) 17:36
- 完結のメドがたったので今回からあげていきます亀高続き。
- 213 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 17:36
- 観覧車を降りた後は、今まで行ってなかった方向に歩き、そこで乗るものを
決めて適当に乗っていった。
海賊船、レールの上を漕いでくサイクリング、着ぐるみショーもやっとったので
冷やかし程度にそれも観た。
園内を一周する陳腐な汽車なんかにも乗った。いっちょ前に汽笛だけは
ひっでリアルで、亀井ちゃんとそのでっかい音にビクッとしてもうたり。
その後売店でソフトクリームを食べたんやけど、これは失敗やった。
寒くて堪らん。
思わず屋内遊園場とやらに逃げ込んであったかい飲み物飲んだりして、
あたしら馬鹿やなあって苦笑い。
飲みながらまわり見るとプリクラの機械置いてあったから一緒に撮って、
ちょこちょこゲーム機があったからクレーンゲームとかワニ叩きとかして、
ワニ叩きではズルしてハンマー持たないで二人して両手で叩きまくって
高得点をはじき出した。
一瞬喜んですぐに空しくなった。
腕相撲は二人してあっさり負けた。辻さんかあさ美ちゃんがいたらなあって
悔しがったりして。
ゲームやってるうちに体温が元に戻り逆に暑いくらいになったので、
じゃあまた外に出ようかって自動ドアを抜けたら、実は結構な時間が
過ぎていたようで一面夕焼け空がお出迎え。
- 214 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 17:37
- 「うわー、もう夕方やったんや」
「ほんとだ、あっという間だったね」
「どうする…ってか、ここって閉園時間早くなかったっけ」
「実はあと十五分で閉園です」
「うわいくらなんでも早過ぎ」
「チケット取ったのたかぁしさんでしょ」
「ほうなんやけど、実際こんな早いと思わんかったで」
「楽しかったからね」
「楽しかったからな」
余った時間でお土産でも買おうかと思ってたんだけど、亀井ちゃんが
呟いたので、まだ間に合うでって売店を指差した。
「たかぁしさんは?」
「………あたしは、いい。今日ここに来ること誰にも知らせてないから」
「そうなんだ。あーそういえば私も誰にも話してなかったっけ。じゃあいっかな」
「ええの?」
「ええよ、どうせ名前入ってるだけのお菓子とかしかないからね」
この子は…変なところ現実的というか。
まあでもあたしも同感やわ。
「じゃ、帰ろうか」
「うん」
目が合ったらお互い自然と手が出て、ほんとごく自然に、それは繋がれた。
退場ゲートは一人分のスペースしかなかったけど、その手が離されることはなかった。
- 215 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 17:38
- 今日は一日天気が良くて、夕焼け空も息を飲むほど綺麗な
オレンジ色を見せていた。
ゲートを出て最寄駅に辿り着くまでには歩いて十分くらいかかって、
途中大きな川にかかる橋を渡ることになる。
手を繋いでたかぁしさんと並んで歩いて。だけどちょっと進みが遅かった。
無理ないね、はしゃぎまわって結構疲れちゃったもん。
だからさっきから会話が無い。
やがて例の川が見えてきて、それはやっぱり空のオレンジを受けて
キラキラ輝いていた。
「空も川も綺麗だねー」
「うん」
「失敗したな、カメラ持ってくるとか買ってくるとかすればよかった」
「うん」
「たかぁしさんも持ってきてないんだよね?」
「うん」
「………何か変だよ?どうしたの」
「うん」
- 216 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 17:38
- うん、って。今の質問でそれはおかしいよ。
私は思わず立ち止まって、隣のたかぁしさんを伺った。
視線は伏せられてない。ただ一点を見詰めてる。
その先を辿ってみると、それは今から渡ろうとしている川の水面だった。
「見とれちゃってるの?ロマンティストだね〜」
「ほうやない」
そうじゃないんだって。
じゃあどうしたっていうんだろう。
目を見たらわかるだろうか。と思って文字通り注目してみるけど、
夕陽のせいでフィルタがかかって正しく読み取れない。
ここではないどこかを見てるように感じた。
「…ねえ、たか」
「ごめん、泣きそうや…」
「泣き、え?」
「マジやばい。どっか連れて、って…」
たかぁしさんがとうとう俯いて嗚咽を漏らし始めた。
私は勿論当惑して、だけど確かにどこかに連れて行ったほうがいいとは
思って、ちょっと強引に手を引いて河川敷へ向かった。
土手の階段を先導しながらゆっくり降りる。
河川敷にはベンチが設置されてあったのでそこへ連れて来て、
鞄からハンカチ取り出してさっきから泣きっ放しのたかぁしさんの涙を
拭った。
- 217 名前:離(り) 投稿日:2004/03/13(土) 17:39
- 「ここ、座って…座れる?」
「…う、ん」
訳がわからなかったけど、思えば私はこんな風に泣く彼女を初めて見たんだ。
仕事じゃない時にこんな風に………
「……………」
「……ごめ、…………っ………とな、あのな」
「無理して喋らなくていいよ」
「言わなくちゃ、わか……んない、やろ」
「そうだけど、まずは落ち着いて」
いんやもう平気やで。
音が出そうなくらいキッと水面を睨みつけて、たかぁしさんは泣き止んだ。
見事にピタッと涙も止まってる。その涙腺、スイッチでも付いてるんですか?
「あぁー…泣いたぁ。………いきなりほんと、びっくりしたやろ」
「したよ。もう………突然どうしたの?」
「ふぅ〜……どっから話したらええかの」
たかぁしさんは一度目を閉じて考えて、その目をゆっくりと開いた。
「あのな、結構……重い話なんやけど」
- 218 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/13(土) 17:41
- ここで止め。
メドはたったけどまだどのくらの長さになるか不明…
- 219 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/14(日) 19:36
- 書き終えてしまいまして。
だからもう一気に最後までいっちゃいます。長いです。許して。
- 220 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:36
- こないだな、亀井ちゃんうちに遊びに来た時、おかーさんが書置残して
いっとったやろ。
急用できたから出かけるってやつ。
あれな、福井からおかーさんの友達が上京してくるっていうから、
久しぶりに会おうってことんなって、それで行ったんやって。
九時までに帰ってくるって書いてあったけど九時過ぎてもなかなか帰って
こんかったから、ああ積もる話もあるんやろなって思って特に気にして
なかったんよ。
そんでうちに電話かかってきたんは十時…二十分くらいやったかな。
……おかーさんの友達、交通事故に遭ったって。
見送る時に信号無視した車に撥ねられたって。
それで今病院にいるから、今日は帰られるかどうかわからんって。
状態は極めて危険です、って医者が言うとったって。
そのおかーさんの友達のことはあたしもよく知っとった。
うちに遊びに来て、一緒に喋ったりしたし。
結婚してて旦那さんも居るんやけど、子供がなかなか出来ないんだって
泣きながら話してるの聞いたことある。
- 221 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:37
- 電話切ってからその人のこと色々思い出して不安で不安でしょうがなかった。
極めて危険、が何を表すのかも具体的にはわからんけど、あれやろ、心臓動いてるけど
全身管で繋がれて…植物人間?みたいに、とか、そんなんやろなって。
もしそうなったらあたしそれをマトモに受け入れることできるか自信ないし。
おかーさんのこと支えてあげなきゃとも思うし。
もうな、何がなにやら。予想できる悪いこと全部頭ん中行ったり来たり。
勿論眠れるわけなくて、誰かに電話しようかと思った頃にはもう大分遅い時間
なってて、メール打つほど冷静にもなきりれてなくて、どっちみちみんな寝とるし。
結局うつらうつらしたまま朝んなって、何か食べる気も起きんし、とにかく
おかーさんが帰ってくるか、電話かかってくんの待ってた。
「…どうなったの?助かったの?」
早朝までは息があったんやって。
八時過ぎに亡くなったって。
「………そう、だったんだ」
ところがこれで終わりやないんやで。
「えぇ?!」
あ、驚いとる驚いとる。
- 222 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:37
- 「…こ、今度は何」
うんちょっと覚悟して聞いといた方がいいかもしれんね。
ええっと、一、二、三………五日前か。
今度はその友達の旦那さんが自殺しよった。
「じさっ…!」
きっついよなあ?
自分ちで首吊ったらしい。
遺書とかは、残ってなかったんやって。
けどな、あたしもおかーさんも、何となく理由はわかった。
子供居らんかったから。
欲しくて欲しくて堪らんかったのに、とうとうその望み絶たれて
もうたからやと思う。
いきなり独りぼっちにさせられたから、追っかけたんや。
三途の河渡って向こう逝ってもうたんやよ。
- 223 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:38
- 「三途の河、これとダブってもて」
たかぁしさんは目の前のそれを指差した。
話聞いてる間にオレンジ色はだいぶ暗さを見せていて、水面も
さっきまでの輝きを失っている。
「来る時はちっとも気にならんかったのに、さっき見たら」
「……夕方だったからかもね。何か、切なくなるから」
「ほうや、きっとそれや!お前が犯人か!」
「お前って」
「太陽」
「太陽に吠えたね」
「吠えたるわ!泣かせやがってこんちくしょうめー!」
たかぁしさんはほんとに吠えました。
ご近所の皆さん、どうぞお許しを。
あまり知られていないモーニング娘。の六期メンバー、
亀井絵里の顔に免じて。
たかぁしさん、今まで相当辛かったはずなんです。
だってこんな話、なかなか他人に打ち明けられない。
打ち明けられっこないんだけど。
- 224 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:39
- 「…何でもっと早く言ってくれなかったかな、そんなオオゴト」
「言ってなんになるんかって思ったしなあ…だって亀井ちゃんにとっては
他人事やろ。困らせてまうだけやんか」
「そんなことない。たかぁしさん苦しんだの事実なんだから、話して楽に
なれるんだったら話して欲しかったよ」
「気持ち嬉しいけど…あたしなあ、ほんと悩みはじめると頭ん中でグラグラ
揺れてまうんやって。何かこう足降ろさん限りずっと止まんないブランコ
乗ってるみたいになって、考えが揺れっぱなしやから……頭ん中
整理できとらんと言葉にすることもできんやろ」
それは新垣さんに聞いたから知ってるよ。
だからこの間私はそれを止めたつもりだったんだけど、まだ揺れてたんだね。
悩んでたんだね。
あ、それじゃ………もしかして。
「ねえたかぁしさん、辻加護さんのことで悩んでたのってひょっとして、
今の話の延長なの?」
「え」
「いつか誰かにも同じことが起こるかもしれないって。
だから、後悔残したくないからもっと仲良くしたいって」
「………ごめん、その通りや」
「馬鹿、って言いたいとこだけど、何が起こるかわかんないのが人生だよね」
「そう言ってくれると助かるわ……これでも前向きに考えたつもりやで」
「うん、後ろ向きながら前歩いてる感じだけど、それでもいいと思う」
- 225 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:39
- 「うわぁそれ、言いえて妙」
苦笑いしながらたかぁしさんは天を仰いだ。
言いえて妙なのは当たり前。
私だって同じだもん。トラウマ抱えて生きている時点で。
「あ、今日の遊園地のことはこれと直接関係ないで!そこんとこ誤解せんといてな」
「うん、大丈夫」
「………あー、でも」
「駄目だよ」
何を言いたいのかすぐにわかってしまったので、先手を打ってみた。
「駄目かな、やっぱ」
「確かに私達の関係ってそのご夫婦に似ているけど、ダブらせちゃ駄目」
「頭ではわかっとるが。ただほんとそん時に冷静にいられるかどうか」
起こる可能性の否定できないことに関して不安になるのは誰にでもある。
考えたってどうしようもないって開き直りも、きっとたかぁしさんの頭の中で
何度も繰り返されてきたはずだ。
「たかぁしさん、手」
「ん?」
ハンカチ使った時から離れていた手をまた繋いだ。
- 226 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:40
- 「たかぁしさんは相手が勝手に離れるってことばっかり考えてる」
「………あ」
「私がこうやって自分から離したくないって思ってること、気付いてなかったでしょ」
「……ごめ、あたし……ほんと自己中で」
涙を堪えてるのか、痺れるくらい強く繋いでいた手を握り返された。
「それは自己中とは違うよ………もっと我侭になってください」
「わがまま」
「行き過ぎた我侭ならちゃんと否定するから。私には遠慮しないでほしい」
ほやったらな、……あのな、あたし。
「今日はもう、この手、離しとうない…」
「やっと頼ってくれたね」
- 227 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:40
- ごめんな。
おかーさん葬式とかで福井行ってもうてるから、部屋ん中ひっで汚いまんま
連れてきてもうて。
「言うほど荒れてないよ」
「ほやけどテーブルの上とか、食べ終わったカップラーメンそのまんま」
「今そんなこと気にしてる場合じゃないでしょう」
…ん、そうでした。
「夕飯外で食べてきたし、明日の朝の分も調達してきたし、もう」
「……………」
「思う存分甘えていいんだから」
〜〜〜っ……
「あ、甘え、って、どうやんの」
「どうって…したいようにすれば」
「そ、そんなんわからん〜!」
どうすりゃいいのさこのあたし。
そりゃあ安倍さんに甘えたりとかしたことあるけど、あれとは状況が全く全然
違うやんか!
- 228 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:41
- 「迷ってたってはじまんないでしょう。ほらDo it! Now」
「いやそんな両手広げられても〜…」
「こないならこっちから行くよ」
オロオロしてるうちにあたしは亀井ちゃんの腕の中に収まった。
う、こいつめ、また背ぇ伸びたんと違うか。
なんてことを勘繰ってしまう自分もどうかと思う。
っちゅーことはつまりそれだけの数密着してたってことの証明でもあって。
あたしは何日振りかの感触に安堵してる自分に赤面してしまうわけで。
そうそう、こうされっといっつも亀井ちゃんにあれ言われるんや。
「久しぶりに布団っぽい。懐かしい〜」
「日本語メチャクチャやんか。しかもまた言いやがって」
もう布団扱いしないって言ったくせに、この嘘吐きめ。
「だってもうほんと、久しぶりだったから」
「…まあな、今回だけやで」
ほんの数日とは言っても、一方的に縁切ろうとしたあたしが悪いんやし。
何てことを言うと怒られそうだったので心の内に秘めたまま背中に腕をまわす。
と。
- 229 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:42
- 「ぅひゃっ?!」
……耳朶を甘噛みされてもうた。
「油断大敵」
「こ、この〜…」
「やり返す?」
「歯止め利かなくなるわ!」
「それはそれでいいんじゃないですか?」
「その為に来てもらったんやない」
「かと言ってえっちの時にしか素直に甘えてく」「言うな」
自分で自分が歯痒いわ、ほんと。
あ〜…でもどうしよ。どうしたらええんやろ。
今ので全くその気無かったのにニュートラルになってもうたやんか。
あかん、あかんて。
淫乱娘。の烙印押されたないぞ。
- 230 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:42
- 「たかぁしさん葛藤してるね〜」
「な、なして」
「気付いてないの?今首ブンブン振ってた」
「げ、マジで?」
「マジデジマ」
「いーやー!!」
「もう観念して、シャワーでも浴びてきたら?」
「………なら離せ」
んーでももうちょっとこのままでいたいんだよなあ〜
何て嘯きながらちゃっかりあたしのヘアゴム外された。
あーそうかい。そういうことかい。
………二つ外すの結構時間かかるなあ。
「イタたたた」
「あたしだってちょっぴり痛いの我慢したっての」
「それにしてもちょっと強く引っ張りすぎじゃ」
「文句言うなら一人で入れ」
「すいませんもう言いません」
- 231 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:43
- たかぁしさんに仕返しされた。多分さっきの甘噛みの仕返し。
これとりあえず着替えな、と言われて手渡されたのは、レッスンの時着てた
見覚えのあるジャージと『新垣仮面』のTシャツでした。
まあ可愛いもんですけど。
……新垣さんか。
そういえばたかぁしさん独特の凹み癖を教えてくれたのは新垣さんだったな。
あの時何となく微妙な表情をしてたっけ……
もしかして、後で謝るべきなんだろうか。
後輩が横取りしてしまってごめんなさいって。
着替え終えて所在無く居間に佇んでいたら食べ終わってたカップラーメンの容器が
目に入ったので、時間潰しと思ってそれを処分してたら、ブローを終えた
たかぁしさんが戻ってくる。ジャージ着てて私と似たような格好してた。
さくらのツアーの時はブローなんてしてなかったよなあって思ってたら、
最近は風邪引かんようにちゃんと乾かすようにしたんや、だって。
私はいつも自然乾燥だから、先に戻ってきてたのだった。
- 232 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:43
- 「わ、そんなことせんでええのに」
「暇だったからいいですよ。ほっといたらそれこそすごいことになるかもだし」
「わざわざすまんです。ありがとなあ」
また両手合わせて謝ってるんだか感謝してるんだか。
でもその両手首に私がさっきまで使ってた黒のヘアゴムがついたままになってて、
何だかくすぐったい。
そういえば私の左手首にもたかぁしさんのつけたままだった。こっちも黒。
「たかぁしさん、これお返しします」
「あ、あたしもそのまんまにしとった。最近物忘れほんと激しすぎやなあ」
「別に忘れたままでも構わないけど、百均で買ったやつだし」
「あたしも別に。ヘアゴムなんて一杯あるしなあ」
『じゃあ貰っときますか』
「……初めてのプレゼントがお互いヘアゴムって」
「そんな貧乏な設定なんか、あたしら」
「でもほら、お互い身に付けてたものだからって意味で」
「それなら意味全然違うな!」
何となく乾いた笑いを漏らしつつも、ヘアゴムは充分価値のある一品として
お互いの手首に残ることになりました。
- 233 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:44
- 「なあ亀井ちゃん、家に連絡入れた?」
「あ、忘れてた」
「電話使ってええよ」
「うん、お借りします」
私は家に電話をかけて、『先輩の高橋さん』のお宅に一泊させてもらうと連絡を
入れた。
親は二つ返事でそれを聞き入れて、電話は三十秒程度で終了。
受話器を置いたら
「先輩の高橋さん、ね」
何か含みのある言い方でたかぁしさんが呟く。
「間違ってないよ」
「ないな」
「私達年齢も芸歴もしっかり年功序列にのっかってるし」
「うんだからこれからもずっとさん付けのまんまで、仕事の時はなるべく敬語、の
つもりなんやろ?」
「そうだね、高橋さんじゃなくてたかぁしさんなだけ」
「微妙に違うんや」
「気持ちは大分違うよ」
「わかっとるよ、ちゃんと」
- 234 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:45
- たかぁしさん本人の部屋は前に来た時とほとんど変化がなかった。
ベッドの上に脱いだままの服がほっといてあっただけ。
彼女はそれを一気にかき集めて、おりゃっ、とか言いながらクローゼットの
中に放り込んですぐに扉を閉めた。
ちょっと面白かった。
二人してベッドに並んで腰掛けて、何となくまた手を繋いでみたり、
何か意味も無くニヤニヤしてしまったのを見られてエロ娘。の
称号を与えられたので、それなりの行為をしてみたり。
外から見たら多分二つだった影が一つになって窓に映っていただろう。
それに気付いたかそうでないのか、電気消そう、ってたかぁしさんが。
ちぇ、折角全部はっきり見えると思ったのに。
「露骨に残念そうな顔すんなっての、マナーだと思え」
「マナー」
「外の人に不快な思いをさせないためのマナー。影でバレる」
やっぱり気付いてたんだ。
たかぁしさんがベッドサイトのライトをつけようとしたので、
私は部屋の照明を落とすために立ち上がってドアの傍にあるスイッチを
オフにした。
「手際いいなあ」
「二人居るんだから手分けしただけ。無駄なことはなるべくしたくないからね」
「……今からやろうとしてることは無駄じゃないって認識?」
「おろかものー!」
「わぁっ?!」
あまりにもくだらないことを聞きやがるのでベッドにダイブしてやりました。
- 235 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:45
- 「髪、まだ、濡れてる」
肌を撫でるように触れていった亀井ちゃんの髪の毛が冷たかった。
「そのうち乾くって……」
「んっ」
わ、脇腹あたりで喋んな……って、話し掛けたのあたしの方やった。
「もしかして冷たい?」
「冷たい。鳥肌立つわ」
それはきっと別の意味だよね、笑い噛み殺した返事が返ってくる。
口答えばっかりしやがって。
……………的を射たもんばっかり。
だんだん呼吸が乱れてくる。
目ぇ開けてんの勿体無くなってくる。
与えられる感覚に溺れたくて。
- 236 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:46
- けどな。
そんな自分醒めた目で見とる別の自分が居るんよ。
不毛やな、とかほざいて嘲笑しよる。
生み出すもん何も無い。どうせそう時間経たんうちに亀井ちゃんが
それに気付いて離れていくで。また独りになるんや。
…こんな時くらいひっこんどれよ、お前。
「行くよ」
「え?……っ!!」
真ん中貫かれるショックが頭の天辺まで来た。
立て続けにそれが蠢いて、漏れる吐息が全部鼻から抜けるような声になる。
もう一人の自分は見事に吹っ飛んだ。
「我慢、しないで」
「して、な、ぁ」
………そんな余裕無いの、わかってて言ってるな。
- 237 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:47
- 違うそうじゃない。
言葉を間違えた。『我慢するな』じゃなくて。
私がたかぁしさんにしてほしいのは。
「求めてください」
指先をゆっくり引き抜いて、私はまた同じことを言う。
「私のこと、ちゃんと求めてください」
引き抜いた時小さく声を漏らしたたかぁしさんは、私が二度目にそう言った
すぐ後にかたく閉じていた目を見開いた。
「絵、里?」
「私だって」
…私だって。
「たかぁしさんに離れられたら、逃げられたって思って、後を追う」
「逃げるなんて」
「だからちゃんと求めてください。いつもいつも照れくさいって逃げてないで。
私だって………今のまま、この関係続けてられる自信、ない」
「………のぉ、電気、消してええかな」
「こんな時に何言って」
「泣き顔見られとるの嫌なんやろ?」
- 238 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:47
- 言われて初めて気が付いた。私はまた泣いていた。
一日に二回も。たかぁしさんのせいで。憎たらしい。
こんなに心晒け出させて、ほんとに、嫌いになれない自分が憎たらしいよ。
「消しとくな」
「…ご親切にどうも」
「どういたしまして。これであたしもちゃんと言えるしな」
「ちゃんと目を見て言って欲しかったな」
「今じゃないいつかにちゃんと言い直すで、今回はこれで勘弁してください」
たかぁしさんのあの感触が全身を包んだ。
少ししっとりしてる。
どうしてだろう、わかんない。
ほんとはわかってるけど、わかんないことにしとくよ。
「絵里、あたしな、えぇっと、………―――――」
その声はだんだん小さくなっていったけど。
貴方の言葉はちゃんと耳に届きました。
- 239 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:48
-
「離(り)」
- 240 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:49
- 私があの二人を見守ろうと決めて結構経つ。
藤本さんの裏工作によってあっという間にラブラブになって、
それから先のことは仕事で話してる時以外のことは詳しく知らない。
大して知りたくも無かった。
だって私はモーニング娘。が好きなんであって、特定の誰かを
好きって訳ではないから、傍目に見て明らかに誰かと誰かが仲悪そうにしてたら
それの仲裁をしたいと思うだけで、ほんとそれだけのために周囲を見渡すことも
しばしばで。
今までそうしてきたんだけど。
いつからかあの二人だけ特に目に入るようになってしまっていた。
さくら組で一緒になって、人数も減ったし、それで周囲を見渡すことに余裕が
出来たからかなって思っていた。
だから愛ちゃんが独りで居るようになったことにもすぐに気付いたんだって。
こりゃ亀井ちゃんとなんかあったかな、ってすぐ結び付けて。
私が直接愛ちゃんに聞いても良かったんだけど、いや逆にほんとに亀井ちゃんと
何かあったんだとしたら私が聞くべきかなって思ったんだけど、だけどね。
- 241 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:50
- もし愛ちゃんの口から亀井ちゃんの名前出たら何か腹立たしいと思って。
ムカついたまま冷静に話聞くこともできやしないなと思い直して。
その点で行くと亀井ちゃんは『愛ちゃん』じゃなくて『高橋さん』…とはちょっと
微妙に違うな、『タカハシ』ってちゃんと発音してないんだけど、とにかく
『さん』付けで呼んでるから、まだマシかなと思って亀井ちゃんに聞いてみた。
最近話してるとこ見ないけど何かあったの?って。
「そうですか?別に、毎回毎回話すようなことがあるわけじゃないから」
こんな喋り方する亀井ちゃんは初めてだった。
何と言うか、キッパリ言い過ぎ。情が篭ってないような。
納得いかないって暗にアピールしているように受け取れたんだよね。
それでやっぱり何かあったような気がしたから、愛ちゃん特有の凹み癖を伝授した。
悩んでると極端に独りになりがたるんだって。
「…多分それが、たかぁしさんなりの優しさなんだと思います」
- 242 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:50
- 教えなきゃ良かった。
そうだよ私は忘れていた。愛ちゃんと亀井ちゃんは似てるとこがあったんだ。
ほっとけばよかったんだ。
この二人なら時間経てばまた元通りになれてた。
それで私は『自分の気持ちに鈍い自分』をもう少し続けられていたはずだった。
- 243 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:51
- 「おはよーございまーす、あ、里沙ちゃんや」
「おはようございます、新垣さん」
「……おはよう〜、愛ちゃん亀井ちゃん」
たまたま玄関で一緒になってたかぁしさんと楽屋入りしたら新垣さんが居た。
そうだ塾長に色々報告しとかないといけないんだっけ。
さてでもそれじゃ一体どうやって説明したらいいんだろうか。
荷物を置いて一息つこうとしたら、たかぁしさんの携帯が鳴った。
「はいよー、あさ美ちゃん?」
紺野さんからか。多分長引くな。よし、今しかないでしょう。
「塾長」
「うむ」
たかぁしさんが電話してる間に私と新垣さんは楽屋を出て、
自販機が設置されている休憩スペースの長椅子に座る。
「上手くいったみたいだね」
「はい、おかげさまで」
「難しい先輩ですいませんねえ。私もよくてこずったよ、昔は」
「………新垣さん、あの」
「ん、何?」
「感謝はするけど、謝りませんから」
「……何言ってるの?」
- 244 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:52
- 「手助けなんかする方が悪いんですよ」
「ちょっと待って、私バカ女スレスレだから言ってる意味が」
「たかぁしさんは渡しませんから」
「……やだなあ、私そんなつもり無いよ」
「そうですよね。何年も片思いだったんだから、今更そんな勇気無いですよね」
「……亀井ちゃん、恐いね」
そう言ってる新垣さんの方がドスの効いた恐い声を出している。
怯んじゃ駄目だ。
「ほんとは謝ろうかと思ってましたけど、そっちの方が新垣さんの逆鱗に
触れる気がしたので」
「そりゃ、既に他人のものになってるのに、その相手に謝られたら腹立つよ」
それに誰かのものを奪おうと思うほど私に執着心はないよ。
結局のところ、メンバーみんな仲良くしてるのが私の理想。
「理想が高いですね」
「そうでもないよ、つかず離れずも仲良しだって思えるようにしてれば」
- 245 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:52
- そんな風に語る新垣さんの将来が少し不安になった。
離れないで
とも
離さないで
とも
離さない
とも
離したくない
とも
新垣さんは要求しないんだ。誰にも。
したいと思った人が居たけど、私が奪ってしまった形になって。
できなくなってしまったんだ。自ら和を乱すことを恐れて。
「まっ!問題解決したみたいで良かった良かった。塾長は嬉しいぞ!」
膝を両手でパンと叩いて、塾長は勢いよく立ち上がった。
私も立ち上がって。
- 246 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:53
- 「塾長」
「どうした亀井」
「……『離れる』って漢字の『離』って、並ぶって意味もあるそうです」
まるでこの時のために用意された知識のようだけど。
たかぁしさんを渡す気はないけど、だからって新垣さんとたかぁしさんの距離が
遠ざかったわけじゃない。
「それからね、開くとか解くとかっていう意味もありますよ〜
離披って言って、杜甫の冬夜詩で使われてます。花が開くって意味なんですね〜」
突然学校の先生みたいな早口が聞こえてきて、驚いて塾長と揃って振り返ったら。
「あさ美ちゃん!」
「紺野さん!」
二人ともおはよう〜
紺野さんはいつもの癒し系のオーラ全開でぺこりとお辞儀をした。
- 247 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:53
- 「おはよ…ってびっくりしたぁ。愛ちゃんと電話してたんじゃ」
「うん。これねえ、新作のお菓子なんだけど、チーズ味とサラダ味どっちに
しようか迷っちゃって、愛ちゃんに相談したの〜」
わざわざ電話でそんなことを……
「紺野さん…両方買ってくれば良かったじゃないですか」
「愛ちゃんにもそう言われてね、だからちゃんと両方買って参りました!」
腰に手を当ててふんぞり返りながら言うセリフでしょうか、それは。
「ね、ね、早く食べたいから楽屋行こ!」
紺野さんは塾長と私、二人の肩をグッと押したので、私達三人は
大切な人の待っている楽屋へと。
かつて想いを寄せていた人の待っている楽屋へと。
…お菓子のアドバイスを貰った人の待っている楽屋へと。
気持ち駆け足で、並んで向って行った。
- 248 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:54
-
「離(り)」
離れてしまうこと。別離。
並び立つこと。離立。
花が開くこと。離披。
- 249 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:54
- 「たかぁしさん、離れるって漢字の『離』って言ったら、どんな単語思いつきます?」
「離れるの『離』?………えー」
「何かいい意味の単語出てきませんよね」
「うーん、確かに………いや、あるで!一個ある!」
「あるかなあ」
「『離陸』や!」
「………私置いてどこ行くつもりなのかな〜」
「え?え?」
「アメリカとか、行っちゃうのかな〜。全米デビューおめでとうございます」
「亀井ちゃん何言ってんの?」
「宇多田さんと同じ立場になれますよね〜。頑張って下さいねえ」
「あほか。聞かれたから答えただけやが」
「でも願望はあるんでしょう?」
「…無いとは言えんけど、行くとしたら歌のためやないで、多分」
「他になんかありましたっけ」
- 250 名前:離(り) 投稿日:2004/03/14(日) 19:55
-
『婚姻届堂々と出せるやんか。向こうなら』
…何年先の話やねん、とか、州によって認められてるとこと無いとこが
あるんですよ、とか、色々突っ込みはできたのだけど。
案の定たかぁしさんの耳どころか顔が真っ赤だったし、私も珍しく顔が熱く
なるのを感じたから。
うんそうだねって相槌打って、目を合わせないで手を繋いだ。
- 251 名前: 投稿日:2004/03/14(日) 19:56
-
「離(り)」終
- 252 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/14(日) 19:59
- とりあえず落としとけ〜
- 253 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/14(日) 20:01
- さげろー
- 254 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/14(日) 20:11
- よしもう大丈夫かな。
初めての(私にとっては)長編でした。
達成感というよりは脱力感で一杯です。
露骨にえっちいのが書けないのも痛感しました。
以前いただいたお助け書き込みも参考にさせてもらいましたが
あのあたりを書いてる最中はいつドンパチやられるか自分で
恐かったです。(あほか)
とにかく終わった。
お読みくださった方々、お疲れ様でした。
そしてありがとうございました。
当分長い話は書きたくないです(笑)
結局なんか、ポワワワって一言で片付けられてしまいそうなものに
なってしまいましたし。
やっぱり私は短編向きなんだなあ〜…
- 255 名前:厨房 投稿日:2004/03/14(日) 21:54
- 読ませていただきました。。
いやーすごいっす。今までの分一気に読みました。
次回作も期待して待ってます。
- 256 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/15(月) 01:01
- >>255 厨房さま
ありがとうございます。
更新ペースとその量に関しては我ながら「すごい」と思います(笑)
悪い意味で。
ほんとに馬鹿だと思います。自分。
次回作のことはなんとも言えませんが…今回の長編で色々試したことが
後になって糧になってくれたらなあ。(これでも色々試してるんです)
モテ高のスタイルを崩す気は当分無いので(笑)
気長にお待ちいただけたら幸いです。
- 257 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 01:10
- 新垣嬢がかっこよすぎて不憫で愛しくて泣きそうです。
素敵な作品を読ませていただいてありがとうございました。
塾長の明日に幸あれ。
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 10:50
- ガキサンイイヨ!
- 259 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/15(月) 22:12
- >>257 名無し飼育さま
ありがとうございます。私の淡白な文章で涙腺反応してくださるとは…!
ちょっと自信がつきました。けど、過剰な自信は怪我の元ですね。
>>258 名無飼育さま
アリガトニィ
…AA入れたらまた失敗しそうなので半角で許してあげてください。
- 260 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:33
- あたしみんなと歌ってる時の一体感が大好きなんです。
普段はみんなバラバラでも、いざって時、ビシッと決める時さえ
決められれば、それでええって、思っとる。
あたしモーニング娘。はそれができるグループやと思うんです。
ほやさけ、歌以外の時は無理に誰かと一緒に居ることもないやろって
勝手に思ってて。
そんで一歩引いて周り見てまうんです。
勿論、みんな仲良うしとるのは見てて嬉しいですよ。
あん中に入れたら楽しいやろなあって思います。
けど入るより見てる方が安心するっていうか………やっぱりあたし、
歌う時の娘。が一番やと思うんです。
一緒に歌って一体感感じられたらそれでもうひっで幸せで、
他になんも要らん。
これって充分、我侭ですよね?
石川さん。
- 261 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:34
- 「高橋はそれを我侭だと思うの?」
思います。思いますよ。
ほやけどこないだ、言われたんです。
もっと我侭になれって。
「誰に?」
…それは聞かんといてください。
石川さんの知っとる人、とだけ思っといてください。
「そっか、わかったよ。…あのね高橋」
はい。
「高橋が思ってる我侭と、その人の言ってる我侭は種類が違うと思うの」
違うんですか?
「違うと思うよ。高橋が言ってるのは自分の中でそう思ってるってだけの、
誰にも影響しない無欲なもので、その人が言ってるのは、誰かに対して
欲を出せってこと、じゃないのかな」
………ほうなんや。やっぱり。
- 262 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:34
- 「やっぱり?」
あ、すいません。
あの、その、そん時自分には遠慮しないでほしいって言われて、
何となくそうなんかなって思ってはおったんやけど、確信持てなくて。
「何だ、その人高橋のこと好きなんだね」
え?
「好きな人に我侭言ってもらえたら嬉しいな、私なら」
そんな、そんなん申し訳ないやろ。
我侭って、自分で出来んのに人に頼んだりすることやさけ。
自分で出来んのやったら自分でやるのが当たり前やざ。
「じゃあ、考え方を変えよう。高橋今好きな人いる?」
………近い存在居らんこともないです。
何ていうか、大事な………人、やろか。
「………高橋、その人に何か助けてって言われたら助けるよね?」
そりゃあ、自分に出来る事ならしてあげますで。
出来る範囲で精一杯。
「それそれ、それだよ。その人の気持ち」
- 263 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:35
- あいや、でも言われる内容によるな。
何でもかんでもってわけにはいかんで。
「匙加減も抜群だね。甘やかす気はないんだ」
そういえば相手も行き過ぎた我侭は否定するって言うとった。
「何だ、いい関係じゃない。50:50で。両想いで」
…石川さん、言われた相手とあたしが大事って思っとる人が一緒とは
言うてないですよ。
「言わなくてもわかるわよ〜」
………言うてないですて。
「ほらわかりやすい」
…もうええが、勝手にそう思っとってください。
否定も肯定もせんでおきます。
「高橋は嘘が下手だね」
(………どっかで聞いたセリフや)
「で、今日はそのことで電話してきたの?」
あ、それもそうなんやけど。
も一個気になることあって。
- 264 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:35
- 「うん何?」
おとめ組………何かバラけとる感じするんや。
何かあったんかなあって思て。
「ああ、こっちは元々ああいう感じの集まりなだけだよ。
何かあったわけじゃないよ」
ほうなんですか?
「そうそう。それこそ最初に高橋が言ったように、歌う時はしっかり
一体になってるから、心配ご無用!」
…ほやったらええんです。
分かれてもうてから、おとめコンとか見たことないから
なんか気になっとって。
マコトなんか「ほぇ?そうなのぉ?」としか返してくれんくて。
でも心配ご無用なんですよね?
「うん、全然大丈夫だから。…ほらもうこんな時間だよ。安心して
寝ていいよ」
あ、ほんまや。
じゃあ、単なるあたしの取り越し苦労だったってことで、今日のことは
忘れてもうて構わんで。ご迷惑おかけしました。
……………おやすみなさい。
- 265 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:36
- 高橋とは対照的に私は嘘が割と上手いみたいだ。
おとめは確かに今バラけてる。
飯田さんは安倍さんが卒業してから何だか抜け殻ぶりに拍車がかかってる。
ののは少しずつ自分の道を探そうとしてるみたいだけど、やっぱり同期の
私の傍が一番居心地いいみたいですぐに寄ってくる。
麻琴は最近ちょっと私に反抗的になってきた気がする。世話焼きすぎたかな。
田中は自立したがってるのか、すすんで馴れ合おうという気はサラサラ
ないように見える。
シゲさんは露骨にさくら組を羨ましがっている。亀ちゃんいるし、
何より高橋をリスペクトしてるから。
そして深刻なのは私と美貴ちゃんだ。
ただでさえ想い人が一緒だというのに、美貴ちゃんは態度にすぐ出るから
見て見ぬ振りも許されない。
実際押されているし、それにやり返すことが出来ない私が居る。
- 266 名前:我侭と名前 投稿日:2004/03/16(火) 00:36
- 「………高橋」
ネガにスイッチ入っちゃったよ。
でももう寝ちゃったよね。
安心して寝てって言ったの私だもんね。
高橋の大事な人って誰かな。
私じゃないことだけは確かだ。
メンバーの誰かなんだろうか。先輩?後輩?
その人は高橋のこと何て呼んでるんだろ。
何分か前に高橋と喋ってた携帯電話をまた手に取ってみる。
着信履歴には
『 あい 』
- 267 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/16(火) 00:37
- 参考文献
- 268 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/16(火) 00:38
- 「みんな大好き4」P.035
- 269 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/16(火) 00:39
- …の、右上の写真でした。
- 270 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:15
- かなりストレス溜まってます。
限界ギリギリです。
「なぁ亀井ちゃん、人生やっぱ時には妥協が必要やと思う」
「そうだね」
「それから現実は受け止めなきゃいかんとも思う」
「………これ現実にしちゃっていいんですか?」
おなかすいたよう。
そう言ってるように聞こえたから、二人して建物の隙間覗いてみた。
ありがちシチュエーション発生。
ボロボロのダンボールとその中に小さい体を寄り添ってる二匹の猫を発見した。
三毛猫と黒猫。
二匹ともブルブル震えとって一発でやばいとわかる。
- 271 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:16
- 「水とエサとどっちが先に必要やろか」
「とりあえず水かな」
「よし水ならあたしミネラルウォーター持っとる。
皿はお菓子の入ってたケース使えるな」
「じゃあ私コンビニ行って食べられそうなの買ってくる」
「缶詰キャットフードはプルタブ付いてるやつにするんやで」
「承知してます」
亀井ちゃんが駆け出した後に恐る恐る二匹おるうちの三毛猫の方を抱き上げて、
用意しとった水の入ったケースの傍に降ろしてみた。
三毛はブルブルしながらも鼻をひくつかせている。
甘い匂いがうまいこと誘ってくれてるらしいが、なかなかその場を動こうとしない。
「水よりエサやったやろか…とりあえず、黒もおいで」
同じように降ろしてやった黒は三毛の方を伺いながらもゆっくりと確実に
水の傍に近づき、とうとうその正体をつきとめてそれを舐めた。
それ見てた三毛がやっと動き出して黒の隣で水を飲む。
何や、三毛は臆病なだけやったんか。
とりあえず水飲んでくれたからエサも食べてくれるやろ。あたしはほっとして
思わずその場にぺたりと尻餅をついてもた。
- 272 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:16
- 「たかぁしさん、水飲んでくれた?」
「バッチリやでぇ」
肩で息をしながら亀井ちゃん戻ってきた。
右手に持っとるビニール袋、透けてる向こう側はキャットフードやなかった。
「そうやなあ。そっちの方が胃がびっくりせんでええかもな」
「一応ね、ブルーベリーが入ってるのにしてみた。プレーンよりはいいかなって」
亀井ちゃんは蓋をはがして、その蓋の上に中身をゆっくり落とす。
ラベンダー色したヨーグルトが思ったより勢いよくその上に落ちてくる。
「お、ととと」
「ストップストップ。てかスプーン貰わんかった?」
「あー、慌てて忘れてた。入ってた」
「ハハ、あん時鳴く元気あったんだからそんなすぐにポックリ逝ってもうたり
せんかったと思うで」
「だって心配で」
「うんあたしも」
「食べてくれるかなあ」
亀井ちゃんは言うが早いか指先でそのヨーグルトをちょいと掬って、水を先に
飲み終えた黒の鼻先に近づけてみる。
- 273 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:17
- 「お」
「おおっ」
黒はまた鼻をひくひくさせて、それからヨーグルトをぺろりと一舐めした。
「よっしゃ!三毛、次はお前やで」
あたしも亀井ちゃんの真似してヨーグルト付けた指先三毛の方に近づけてみる。
三毛はまた黒の方を伺ってからそれ舐めてくれた。
「あたし憶えてるのここまでなんやけど、その後何があったっけ」
「二匹とも蓋の上のヨーグルト食べてくれるようになって、安心したら
何か美味そうだよなあってたかぁしさんが」
「ああ、それで」
「そう私達もスプーン使って残りの全部分けて食べたんだよ」
丸めた背中尚更丸くして教えてくれた。
「やっと思い出したわあ、ありがとな、黒」
「どういたしまして、三毛」
ところで人間のあたしらはどこへ行ったんやろう?
- 274 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:18
- 「それでねそれでね高橋も亀井も人間としてはちゃんと存在しているの。
だけどやっぱり何だか様子がおかしいってあいぼんと紺野が気付いて仕事の後
二人の後を追っかけるんだけど途中で三毛と黒が人間の言葉で話してる」
「あ、話してるって言うか追っかけてる二人を見つけた三毛と黒がその二人止め
ようとしてニャーニャー鳴くんだけど、あいぼんには黒のニャーニャーが亀井の
声に聞こえて紺野には三毛のが高橋のに聞こえて」
「三毛と黒は人間の言葉ちゃんとわかってて。だって高橋と亀井だから」
「それであいぼんと紺野はあの性格だから最初は面白がるんだけどだんだん事の
重大さに気付いて、だけど気付いたのは一通り三毛と黒なでくりまわした後で、
紺野なんかこないだのクイールの時みたいに大丈夫かい?なんて声かけちゃって
高橋三毛の神経逆撫でてシャーッて威嚇されちゃってね?」
「あいぼんはオーバーオールのポケットに亀井黒を入れてみたりして、だけど
亀井狭いとこ好きだから気に入っちゃったらしくてあいぼんにしかわかんない
言葉でちゃいこーですとか言ってて。あいぼん大爆笑」
- 275 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:18
- 誰か。
誰か助けてください。
飯田さんが、飯田さんが!
突然さくらの楽屋に来たと思ったら上記の内容を約十分間ずっと喋りっぱなしなんです。
勿論喋ってる相手はあたしと亀井ちゃんで。
だって高橋三毛と亀井黒……亀井黒ってちょっと似合ってるな。あいや、んでのうて。
とにかく夢なんだかいつもの交信の内容なんだかわからんけど異常なのは確かや!
最初は、ねえねえちょっと聞いてほしいことがあるんだけど、って言われたから、
リーダーやし何ぞ重大なことかと思て神妙な面持ちで二人して聞いとったんやけど。
現実がどうの言うとったから尚更。
そしたら「おなかすいたよう」とか迫真の演技で床にへたりこんだからすぐ
おかしいって解った。
そんで隣の亀井ちゃんに目配せしたら向こうもおんなじこと思ったらしくて
目ぇが泳いでた。
やけど突っ込みできる雰囲気でなくてそのうちだんだん飯田さんの視線もどっか
遠いとこ行ってもうてああ何かあたし自身も洗脳されてきたな。
説明してるつもりが飯田さんチックな語りになってきとる。
- 276 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:19
- と、そんな説明しとる間に飯田さんの口からは「神のいたずら」だの
「紫色の神秘」だの、それだけで頭痛くなる言葉がポンポン出てきとった。
……か、亀、どうしたらええんやろ。
また隣伺ってみると完全にフリーズしとる。
ひょっとして聞こえない振りをしとるんやろか。
あたしは未だ態度を決めかねて相槌打つべきか聞いてる振りして別のこと
考えるべきかでグラグラ揺れとった。
その時。
「リーダーこんなとこに居たの!」
石川さんが肩いからせながら楽屋に飛び込んできた。
「ああ、黒髪の天使のご降臨や…」
「助かった…」
それまで無言だった亀井ちゃんが思わず呟くほどに石川さんの登場は眩しかった。
「だってだって三毛と黒が」
「訳わかんないこと言ってないで早くおとめの楽屋に戻って!
ごめんね二人とも!」
- 277 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:19
- チャーミーエンジェルはまだ何かぶつくさ言ってる飯田さんの襟首をひっつかんで
さくらの楽屋を後にした。
一気に脱力するあたしらふたり。
「………えらい目に遭うた」
「ある意味宗教家になれそうなくらいだったね…途中から聞いてなかったけど」
「あ、やっぱそうやったんや。何か表情固まってたから」
「オーバーオールがどうのって辺りから違うこと考えて気を逸らしてました」
「……何考えてたん」
「高橋三毛は絶対うちで飼ってる犬より可愛いだろうなあって」
「いや多分ひっで気まぐれでいきなり失踪とかすると思うで」
「亀井黒は?」
「冬はずっと炬燵ん中でそれ以外の季節は縁側で寝転んでそうやな」
- 278 名前:三毛黒物語 投稿日:2004/03/17(水) 19:20
- いいなあそれ、猫、いいなあ。
亀井ちゃんはさっきの飯田さんみたいに視線を遠くへ飛ばした。
おいおい戻ってこい!
「…やっぱストレス溜まってるのかな、夢見がちになってるってことは」
「あー、あるだろな……」
はあぁ〜
揃ってため息ついて視線を交わす。
「…まあとりあえず、猫んなってもよろしくな、黒」
「失踪する時は一声かけてくださいね、三毛」
それから三日間くらい、「三毛」と「黒」はふたりだけのあだ名になった。
- 279 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/17(水) 19:20
- いいらさんがんばれ。という亀高でした。
- 280 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/17(水) 22:03
- 今更ながら「ミケ」と「クロ」にするべきだったと後悔。(遅っ!)
- 281 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/18(木) 20:18
- ぼんやりと藤高。
- 282 名前:進水式 投稿日:2004/03/18(木) 20:19
- 美貴これでも頑張って堪えてたんだよ。
安倍さんの卒業コンサート。
だけど安倍さんに抱きついて泣きじゃくる愛ちゃんを
安部さんの肩越しに見た時は
安倍さんに対してじゃなく愛ちゃんに対してとてもとても
心を動かされたんだ。
愛ちゃんが自分の名前あんまり好きじゃないこと知ってたし。
哀しいの「哀」と被るから何か嫌やなあってぼやいてたじゃん。
それなのにさ、あの時さ、愛ちゃん。
「娘。を愛し続けてください」
って言ったじゃん。
もうね、グラッときて。
勿論それだけじゃなくて。
- 283 名前:進水式 投稿日:2004/03/18(木) 20:19
- みんなが憧れてたって言ってる中で
「勉強になるんですよ」とか
みんなが見守っててって言ってる中で
「応援し続けますから」とか
相変わらずコンプレックスだったみたいで
「訛りも直しますから」はちょっと笑いそうになったけど。
凄く良い事一杯言ってたよね。泣きながらでもしっかり声に出して。
それで。
安倍さんの肩越しに愛ちゃん見た時とうとう美貴は
こみ上げてくるものを何とか堪えようと思って
初めてアリーナの天井を見たよ。
涙の代わりに大きなため息が出た。
- 284 名前:進水式 投稿日:2004/03/18(木) 20:20
- 愛ちゃんがコメントを言い終えて残りのメンバーがやっぱり涙ボロボロ
零しながら安倍さんに話してるのを見ていた時
美貴は何だか
ああこれって船の進水式みたいだな、ってふと思って。
みんなが流してる涙を溜めて新しいモーニング娘。号っていう船を
浮かべんの。
船を動かすために必要な人ってどんな人だったっけ?
船長、舵取り、ああそれからえっと、位置とか把握する人、名前わかんないけど
いるよねそういう役割の人が。
新しい船の役割分担ってどうなるんだろうね。
美貴とりあえず誰も立候補しないなら船長やろうかな。
それで、美貴が船長に決まったら問答無用で舵取りは愛ちゃんにする。
腕は確かだからね。ちょっと遠慮がちなのがたまに傷だけど。
それで…位置とか見る人は、そうだな梨華ちゃんかな。
真面目だし、信頼できるし。美貴と違って先のことをちゃんと見てるし。
ほんとは舵取りと両方できたらって思うけどそこんとこは愛ちゃんに
負けるんだよね。
- 285 名前:進水式 投稿日:2004/03/18(木) 20:21
- それで船長になった美貴はこれからどこに行くかっていうのを
決めるんだけど、アタシこの通りなるようにしかならないって思う性格だからさ、
「とりあえず、今船が前向いてる方向に進む」って言って
「船長ちゃんと考えて!」って梨華ちゃんに怒られるんだよ。
それでもうすっごい険悪なムードになっちゃって。でも。
「ほやさけ港出んことには始まりませんで、まずエンジンかけましょう。
動けるようになるまでに進路決めたらええが」
って愛ちゃんが絶妙のタイミングで言ってくれる。
美貴と梨華ちゃんはそれでハッと我にかえってさ。
………なんて。
柄にもなくそんな妄想しちゃうくらい、あの時の愛ちゃんは
頼り甲斐ある人に見えたよ。
ものすごい泣いてたけど、思いの強さは感じたよ。
- 286 名前:進水式 投稿日:2004/03/18(木) 20:21
- 「藤本さん」
「お疲れ様、愛ちゃん。……終わったね」
「終わった…けど、あのな」
「うん何?」
「また泣くの、我慢しよったやろ」
「してないよ〜」
「嘘や、上向いて堪えてんの見た」
「……見てたんだ」
「っていうか目に入った」
「…あー、安部さんの後ろにいたからね」
「我慢なんかせんでも、する必要ないやんか」
「だって美貴が泣いたら溢れちゃって座礁しちゃうじゃん」
「ざしょう、て、何のこと?」
「そのうち解るよ」
- 287 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/18(木) 20:23
- 卒コンDVDネタ。
藤本さんが天井を仰いだのは、あの時だけでした。
- 288 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/18(木) 20:23
- 隠しがてら予告とかしてみようかな。
- 289 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/18(木) 20:25
- 多分次の話は、新高です。
うん多分ですけど、卒コンDVD万歳。
- 290 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/19(金) 05:57
- いつも更新楽しみにしてます〜。
三毛黒物語のリーダー最高ですね(笑)
- 291 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 16:59
- 予告どおり新高いきます。
- 292 名前:新・レフトハンド 投稿日:2004/03/19(金) 17:00
- 愛ちゃんの左手首に気付いたのは数日前のリハーサルの時だった。
本人はそれを数珠、って言ってた。
掃除の時に出てきたのを何気なく付けてみたら、それ以来はずすのが
恐くなってなるべく身に付けるようにしてるって。
なるべくってどの程度かなって何となく観察していたら、なるべくどころか
肌身離さずって言った方がいいくらい、数珠と言われたそれは存在感を
放っていて。
なんでもっと粒の小さいものにしとかなかったかな、もう。
バランス悪いよ。
気になる。
何が気になるって、ファンの人たちの邪推だ。
ほんとにずっと左手首にあるから、あれは誰かからのプレゼントで、
愛ちゃんに熱愛発覚?!とかさ。
メンバーの私が真っ先にそういう事を思いつくんだから。
………バランス悪いよ。
- 293 名前:新・レフトハンド 投稿日:2004/03/19(金) 17:01
- 「えっ、愛ちゃんそれ付けたままステージ出るの?!」
バックステージで愛ちゃんの傍にいた藤本さんが驚いてる。
無理もない。金をコンセプトにしたこの衣装にあの数珠、浮いてるもん。
「やって、透明やし大丈夫かなって」
「でもさそれ、パッと見て何か…似合わないよ?衣装と」
「ええの!このままで!」
ムキになった愛ちゃんに藤本さんは呆れたらしく、それ以上は何も
言わなかった。
やっぱりね、予想通りだ。
私は自分の荷物からこっそり持ち出しておいたものを、誰にも
見られていないのを確認してから左手首に通した。
細身のシンプルなブレスレット、実はこの時のために用意した。
よし、これで。
少なくとも愛ちゃん独り浮いた存在になることは阻止できるでしょう。
ファンの人の邪推も減るでしょう。
…私の不安も少しだけ軽くなるでしょう。
- 294 名前:新・レフトハンド 投稿日:2004/03/19(金) 17:01
- そう思うと、こんなに軽いブレスレットなのに、ものすごい重要な役割を
与えられたものに思えてくる。
そしてこれはその役割を充分に理解していて、任せとけ、安心しろ、
ちゃんと付いてるから、って励ましてくれているようだ。
何となく数珠をはずせないって言ってた愛ちゃんの気持ちがわかった気がして、
ふふ、と声に出さず笑ったその後ろで、
「あ、里沙ちゃんも何か付けとるやん!」
第一発見者はビックリ顔で私の左手首を指差す。
「うん、何か愛ちゃんのそれ見てたら私も付けようかなって思ってね」
「ほんまに?!うわ〜なんか安心した。藤本さんとか気味悪がったりしたから」
「アクセサリーじゃなくて数珠って言ったからじゃないの?」
「おぁ、ほうか。葬式でもないのにな。…でもこれ数珠やない?」
「さあ、わかんないけど」
「違うんかなあ。何か付けてたら護られてる気ぃして前向きになれんのよ」
- 295 名前:新・レフトハンド 投稿日:2004/03/19(金) 17:02
- 愛ちゃんは数珠を引っ張りながら独りごちて、それから手を離した時
バチッと音立てながら元に戻った拍子に「イテッ!」と小さく叫んだ。
…っておい、それゴムワイヤー製かよ!
「……護られてるかどうかはともかく、手首覆ってる感じはなんかホッとするね」
「ほやろ!のぉ!」
「のぉ!」
私からの共感を得て愛ちゃんはとても喜んでくれたようだ。
まいったな、そんなに喜んでるの見たら
…私もしばらくバランス悪いままで居たいって思っちゃうじゃないか。
- 296 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 17:08
- ガキさんの天秤がちょっと傾いちゃったという話。
ピース〜ウィアラの衣装です。
- 297 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 17:09
- >>290 名無飼育さま
ありがとうございます。三毛黒は実は…初めて長編でアンリアルに挑戦してみよう
かと思って考え始めたはいいものの、ありがちなオチしか思い浮かばなくて
結局ああなった代物で…リーダーごめんなさい…
- 298 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 17:10
- 三毛黒があるなら黒三毛もあるかもしれないね(無責任発言)
- 299 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 23:15
- よく思い返してみたら新高はメンバー自己紹介の時からあれでした。
…おいといて、怒りの亀高。
- 300 名前:最終公演前 投稿日:2004/03/19(金) 23:16
- 亀井絵里、怒ってます。
あんなことをされて、彼女が嬉しいはずがない。
そっとしておけば良かったものを。
頭に血が昇りそうだったので、私はすぐに
その場を離れた。
そしてたかぁしさんの姿を探した。
あの人ならきっと解ってくれると思ったから。
「お、亀井ちゃんもトイレか?」
たかぁしさんはトイレに行っていたらしくて
運良く私達は廊下で遭遇することが出来た。
- 301 名前:最終公演前 投稿日:2004/03/19(金) 23:16
- 「ナイスタイミング。ちょっとこっち来てください」
「…なしたん?」
多分私はすごい殺気立っていたんだと思う。
たかぁしさんはすぐ真面目な顔になって私の後を
ついてきた。
最終公演前でバタバタしているバックステージで
人の行き交うことのない場所を探すのはちょっと
苦労したけど、それを逆手にとって楽屋に戻ってみたら
案の定そこには誰もいなかった。
私はついさっきあったことを
いつもより低い声でたかぁしさんに話した。
「はあ?何それ、無神経すぎやんか!」
思ったとおりたかぁしさんは怒りを顕わにして
私は同意してくれたことにほっとしてそれに続く。
「そうですよね。私もすっごい頭に来て、耐えられなくて
すぐそこから離れたんです」
「それ正解やと思う。あたしもきっとその場に居ったら
そうしてたわ、いくら同期でも」
- 302 名前:最終公演前 投稿日:2004/03/19(金) 23:17
- 何の話かと言えば。
公演前に紺野さんと安倍さんがテレビ電話で会話していた時の話だ。
紺野さんは病欠で最終公演に出ることができなくて
それだけでも物凄く申し訳なく、後ろめたく思ってるはずなのに
よりによってこれからその公演が始まる直前に
誰の差し金か知らないけど、わざわざ安倍さんと連絡を取らせた。
「誰もあさ美ちゃんの立場になって考えてあげられんかったんか。
終わった後ならともかく、始まる直前になんて、あの子の罪悪感
煽ってるとしか思えん!」
たかぁしさんは私が言いたかったことをほとんど代弁してくれる。
同志が居るってなんて喜ばしいことなんだろう。
「廊下のカメラであたしも五期のみんなと励ましメッセージ送ったけど、
あれは全部終わった後に観られるもんやから、まだマシやと思うとったのに」
よりによってリアルタイムに直前なんて、たかぁしさんは眉間に皺を寄せて
大きな溜め息をつく。
「……紺野さん、これからの数時間が物凄く辛いと思う」
「ほうや。きっと泣いてまうと思うで。ほんとなら今頃自分はステージの上に
居って、この時間にはこれを歌ってて、ってな」
「かわいそう…」
「全くや……あ〜〜、ムカッ腹立つ!余計なことしやがって!」
たかぁしさんは本当に頭にきたみたいで、楽屋のテーブルを両手で
バン!と思い切り叩いた。
私も同じ事をしたかったけど、今はどちらかというと怒りより哀れみの方の
気持ちが強くてそれができなかった。
それに、たかぁしさんが代わりに怒ってくれたから。
- 303 名前:最終公演前 投稿日:2004/03/19(金) 23:18
- 「何とか…できないかな」
「とりあえず……全部終わったらあたしからメール出してみる。
病欠なのに電話して喋らせんの忍びない」
そうだそれもひっかかってたんだ。
歌うことが出来ないくらいなのに電話で喋らせたりして、
もうアホかと、馬鹿かと。
「たかぁしさん、メール送る時、私も文章一緒に考えさせて」
「うんわかった。二人からのメッセージちゅうことで送ろうな」
ひとまずの対策を練り終えた私達は、
「このまま出て行ったらムカついたまんまや。怒り発散してから出よう」
というたかぁしさんの提案によって、二人して
『バカヤロー!!』
と叫んで床を蹴ってから楽屋を出た。
- 304 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 23:19
- 卒コンDVDで唯一頭にきたシーンでした。
- 305 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 23:19
- 唯一救いだったのは
- 306 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/19(金) 23:20
- 亀井さんがすぐにその場を離れたことと、五期メンが居なかったことです…
- 307 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:10
- …見つかった。
居場所がバレて、あの目が更に細められたのが見えた。
布団に包まっていて見えないはずなのにあの目が見えた。
ゴツゴツした獣みたいな手が私の方に伸びる。
布団に包まっていて見えないはずなのに獣みたいな手が私の方に。
「いやぁっ!」
たまらず上げた叫び声も本当に上げたのか曖昧で。
吸い込んだ空気が肺に取り込まれるのに失敗して、咳き込んだ。
そうそれは夢の中の出来事だった。
「…けほっ、ぅ、ごほっ」
咳が出た勢いで私は上半身を起こし、思わず胸元の布地を右手で握り締める。
ひゅうぅ、喘息の時みたいな喉の音を聞く。
息が、息が
うまくできない。
- 308 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:10
- 「……絵里?」
そういえば。
女性は男性と比べて二つのことを同時にする能力に長けているんだって。
前に何かのTVで観た。
だから私が今、咳を治めるのに必死でも、左隣で寝てたはずのたかぁしさんの
声はしっかりと捉えた。
「どした?何か喉に…」
たかぁしさんそう言って一生懸命背中を擦ってくれて、力込めてる右手にも
手を添えてくれて。
体の前と後ろでじわりじわり染みてくる温かさに、漸く肺と喉は落ち着きを
取り戻した。
- 309 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:11
- 「落ち着いた?」
「…うん、だいじょ、ぶ……っ」
「今、水持ってくるから」
「待っ、あの、…たしの、かばん」
「うんわかった」
咳は治まったけど酸素が足りなくて上半身を起こせずにいる間に、
たかぁしさんがベッドを降りて私の鞄のファスナーを開ける音を聞いた。
「……ほら、お茶」
「ん」
有難うって言葉全部吐き出せない代わりに何とか顔を上げてすぐにそれを
下げた。お辞儀のつもりで。
「そんな気ぃ遣わんと、早う飲んどき」
暗くて意識が朦朧としててはっきり見えなかったけど、
この時たかぁしさんはとても優しい表情をしていたと思う。
- 310 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:12
- あの時の最悪の結末を
夢の中で見たんです。
やがて冷静になれた私は、
こんなことになってしまった原因を簡潔に言葉にした。
明確な表現をしてしまうと、
それがまた脳裏に甦って泣きそうになるのが容易く想像できたし、
何より、
たかぁしさんにははっきり言わなくても通じるから。
「ほうやったんか……」
暗闇に慣れてきた私の目は、
左隣に戻ってきたたかぁしさんが両膝抱えたのを捉える。
「折角助かったのに、助からなかった」
「でも目ぇ醒めたんやからやっぱ助かったんと違うん?」
「醒めるタイミング悪すぎ。咳き込んで死ぬかと思った」
「まだ死ぬなよ」
「まだ死にたくないよ」
そいつはええことや、たかぁしさんが身を起こして私の頭を撫でた。
- 311 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:12
- 「起こしちゃってごめん」
「ん?ええよ、起こしたんと違う。あたしが目ぇ醒ましただけやざ」
ああもう。
何でもかんでも自分のせいにして。
私だって馬鹿じゃないんだから。
だけどもし私があなたの立場なら、
まるっきりおんなじセリフを言ってしまいそうな気がします。
それだけ、それほど、それくらい。
愛しているんです。
「えー、それではぁ、只今からぁ」
「は?」
「あっしはー、亀井絵里専用の布団にへんしーん!とうっ!」
真横からタックルよろしく抱きつかれる。
それはまた随分と捻りまくった照れ隠しですね。
「いかがですかぁ」
「…喋る布団なんだ」
「そう、奇妙奇天烈摩訶不思議、子守唄も唄える万能布団やでぇ」
「子守唄なんて要らないもん。かえって眠れない」
っていうか耳元で喋らないで欲しい。
くすぐったいの通り越して別のもんがわいてくる。ヤバイ。
- 312 名前:グンナイベイビー 投稿日:2004/03/21(日) 22:13
- 「ほやったらあれや、お腹ぽんぽんって」
「あ、それ懐かしいなー」
「ようしそれじゃあいっちょやっときますか!」
たかぁしさんはその気合いとは裏腹にゆっくりと私をベッドに横たえる。
「それではおやすみなさいませ」
「おやすみ、たかぁしさん」
………リズム感に多少難アリと言われている彼女だけど
どうやらそれは歌に関してだけだったらしい。
- 313 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/21(日) 22:17
- とうとううちのたかぁしさんが亀井さんにとって布団であることを
認めてしまったという話(笑)
- 314 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/21(日) 22:18
- 連日のように更新してるのを友人に知られて呆れられました。
- 315 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/21(日) 22:19
- っていうか今更だけどお前等同棲してるのかよ!という話でもある(笑)
- 316 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/22(月) 20:45
- 更新乙です
昨日のハロモニは結構いいネタになったんでは と勝手に思ってたり
辻加護どっちを彼女にしたい?ってやつで愛ちゃんが最初あいぼん選んでなかったところとか
更新楽しみにしてるのでこれからも頑張ってください
- 317 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/22(月) 20:57
- >>316 名無飼育さま
レスありがとうございます。…っていうかうちは地方なんで風の噂と
ほんのちょっぴり高さんのコメントを拾った状態でヤキモキしてる
ところなんですよ!HPWでも紺高あったらしいし!
海の向こうがうらやましいな〜
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/23(火) 00:12
- >>317
あっ、そうなんですか?それは失礼しましたm(__)m
海の向こうって北海道ですか?そうだったらこの放送は来週の金曜かな??
5期3人(高紺小)のほんわかした空気で見ててなんかおもしろかったですよ
勝手ながら今回のやつが小説になる事を信じてます。とか言ってみたり(笑)
- 319 名前:ドレッシング 投稿日:2004/03/24(水) 11:20
- 「絵里も高橋さんのこと好きなの?尊敬してるの?」
最終公演前にさゆと最後の食事を摂ってたら、唐突にこんなことを言われた。
梅じそドレッシングをかけすぎたサラダに手をつけようとしていた時だった。
「え?」
「だって最近よく高橋さんと喋ってるのよく見かけるし」
ギク。
「コンサート始まってから、高橋さんが髪型変えたら絵里も
いつのまにか似たような髪形してるし」
ギクギク。
「さっき一人でどこか行ったと思ったら高橋さんと一緒に戻ってきたよね」
うわぁあああ!!
- 320 名前:ドレッシング 投稿日:2004/03/24(水) 11:21
- …そうだった、さゆはたかぁしさんフリークだった。
振りビデオですらたかぁしさんしか観てないようなさゆが、普段からたかぁしさん
ばかり観てるのは当たり前の話で。
そうしたら私が目に入るのも当たり前といえば当たり前。
前田さんとやらのクラッカーも鳴りまくります。誰だか知らないけど。
「あー…っとね、さゆほどじゃないけど凄い人だなぁとは思ってるよ。
さくらで一緒になってからそう思うようになった」
「だよね!高橋さんすごいよね!良かったあ、絵里もそう思ってたんだ!」
さゆは目をキラキラさせて両手組んで喜んでる。
最早彼女の中では神格化されてしまっているであろう『高橋さん』は
一体どんな姿をしてるんだろう。
……………何か、後光差してそうだね。
「尊敬してる人の凄いなあって思うところは真似して自分のものにしたくなるよね〜」
「…さゆはそう思うんだ」
「絵里違うの?じゃあなんで髪型似せたりしたの?」
しまった墓穴を掘った。
さゆに本当のことがバレたら…もしかしたら命が危ないかもしれない。
実はとっくに私とアレな感じでしかも下克上なんですよ、なんて。
髪型真似してるっていうのは別にそうじゃあなくて、繋がり強くなりすぎた故の
This is 運命なんですよ、なんて。
- 321 名前:ドレッシング 投稿日:2004/03/24(水) 11:22
- 「あ!この子らパイナップルなんてデザートにしとるで里沙ちゃん!」
「パイナップルだね〜」
「こんな食べたらダコダコんなるやん!」
掘った墓穴をどうやって埋めようか悩んでる私の後ろ、トレー持った新垣さんと
たかぁしさんが通りかかった。
「高橋さん!今ちょうど絵里と高橋さんの話してたんですよ!」
「ちょ、さゆ!」
やめてやめてお願いだから!隣に新垣さんがいるんだからー!
…とは、とてもじゃないけど口に出せませんでした。
「あたしの話?え、何?」
「絵里と高橋さん、コンサート始まってから髪型被ってる時が多いねって」
私の気持ちなんか1ミクロンも知らないで、さゆはニコニコしながらそう言った。
さあどう出ますか、たかぁしさん。
実はちょっとどんな反応するのか気になります。
「髪型被ってる…?ヅラ?」
「ヅラかよ!」
新垣さんがすかさず突っ込み入れた。
ああ私も同じこと言いそうになりました。
- 322 名前:ドレッシング 投稿日:2004/03/24(水) 11:22
- 「被ってるって言うか、こう似てる時が」
さゆは後頭部にグーを当ててポニーテール作ってる風な仕種をした。
理解するのに数秒かかったらしい。
「…ぁえ、お、おぅ」
露骨に挙動不審な返事しないでください。
今日は髪を下ろしてて隠れてるたかぁしさんの両耳の赤がほっぺたに移行するのも
時間の問題だ。
マズイ、マズイよ、何とかしないと…!
「辻加護さんのことがあったからね〜」
「え?」
新垣さんの言葉にさゆが耳を疑う。
当事者であるはずの私も素っ頓狂な声を出しそうになったけど、なんとか堪えることが出来、
たかぁしさんは顔の熱を冷ますのに必死みたいであらぬ方向を見ていて新垣さんの言葉を
聞き逃したみたいだった。
「ほら、あの時ちょうど卒業報告したでしょ」
「あぁ、しましたねぇ」
さゆと新垣さんだけの会話になっているのに少しほっとしながら無言で相槌を打つ。
確かにそうだった。
………そうだ新垣さん、その手がありました!
- 323 名前:ドレッシング 投稿日:2004/03/24(水) 11:23
- 「うんそれで、記念って言ったら変だけど、どっかお揃いにしてステージ出ようかって。
写真集出るしさ」
「そ、そう!そういうこと!それで髪型なの」
ついどもってしまったのにさゆは少し首を傾げたが、へぇ〜そうだったんだ、と
残りの夕食にまた手をつけ始めた。
新垣さんありがとうございます……!
「ほら愛ちゃん、時間ないからさっさと食べちゃうよ」
「……えっ?!あ、ほうや!はよせんと」
我に返ってこっち向いたたかぁしさんと目が合った。
…うん、また後でね。
「あんまり露骨に通じ合っちゃってるのもバランス悪いね」
新垣さんの小さな捨て台詞には同意する部分もあったんだけど。
ごめんなさい、私はこれが心地良いんです。
ドレッシング多目にかけすぎたサラダも
それなりに美味しかった。
- 324 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 11:33
- 卒コン写真集見てて二人の髪型に気付いた時はえらく驚いたという話。
私もパイナポー食べ過ぎると舌がダコダコになります。っていうか痛い。
…あ、「舌」って入れ忘れた。ちくしょ…!
>>318 名無飼育さま
そうなんです蝦夷地の人間なんですよ。
たま〜に運良くその週の放送を観ることができますけど(インターネッツさまさま)
基本的には遅れ…
でもさくらおとめシングルVとかで今充分幸せです(笑)
- 325 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 13:46
- 読み返したら色々アラが…最悪。
- 326 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 20:25
- 娘。小説でははじめての三人称。亀高。
- 327 名前:崩壊ハイテンション 投稿日:2004/03/24(水) 20:25
- 灰色に塗装された扉を開けると、向かって右側に大小さまざまな
撮影用の道具、発泡スチロールで製作されたセットなどがあり、
次いで右側を見ると全長およそ二メートル程の会議用テーブルが
十数台縦置きされているのが見て取れた。
テーブルは突き当たりと左端のコンクリート壁に最初の一台が立てかけられている
のを基準にして、二台目はその一台目の後ろに、三台目は二台目の後ろに…
といった状態で並んでいる。
複数存在するものに対しては大抵イレギュラーというものが紛れ込んでいるもので、
その中に数台、全長が二メートルに満たず幅も小さいものが存在していた。
テーブルの列はそのイレギュラーをきっかけに、それまでの密接した状態を
保てなくなって乱れており、
『斜めに立てかけられたその隙間、くぐってみたら空間があった』
亀井が通ったのはその隙間だった。
- 328 名前:崩壊ハイテンション 投稿日:2004/03/24(水) 20:26
- 隙間を通り抜けるとこれまたイレギュラーのお陰で出来上がったスペース。
…もとい、作業した人間がこの辺りから少々手を抜いたらしく、それまで
左側の壁にピッタリとくっついていたはずのテーブルが五十センチ程右に
ずれて立てかけてあったため、ある意味人為的なものがきっかけでもある空間が
できていた。
亀井と高橋はそこにいた。
二人とも膝立ちになって抱き合ったまま、もう結構な時間が経っている。
「のぉ、ええ加減離してくれんかな…休憩時間終わるで」
高橋は直前に亀井を泣かせてしまった手前申し訳なさそうに提案するが
「もうちょっと余韻に浸らせてくれたっていいじゃないですか」
亀井は亀井で初めて他人の唇を奪ったことに対して自分に驚く反面、
その柔らかかった感触の余韻に浸りきっていた。
「余韻て、あのなあ…あたし結構凹んでるんやで」
「いいんです。仕返しなんだから凹んでもらわないと」
そういう意味ではない。高橋は言いかけて止めた。
彼女が落ち込んでいるのは、自分自身に対してだった。
後輩にこんな目に遭わされて。
情けない。
そればかりか抵抗するのも忘れて。
…受け入れてしまった。
- 329 名前:崩壊ハイテンション 投稿日:2004/03/24(水) 20:26
- 「ったくもぉ…あと五分だけやからな」
亀井の背中に回していた左手を肩より上に持ってきて腕時計の時間を確認する。
今は仕事の合間の休憩時間なのだ。そう自分に言い聞かせた。
「きっちりしてるなあ」
「実はこの時計三分進んでるんだけどな」
それバラしたら意味ないんじゃ、亀井は思わずくつくつと笑いを漏らす。
あたし嘘付くの苦手なんやって、高橋は照れ隠しに亀井の胸元に額を押し付ける。
そんな穏やかな空気が流れる中で、高橋の耳がある音を捉えた。
『真上にテーブルがなくてよかった。頭打ったらきっとかなり痛い』
「亀井ちゃん、何か今斜め上の方で変な音せんかったか?」
「斜め上?」
高橋の言葉で亀井が『斜め上』と言われた方を見やると、出口に近い方に
立てかけられているテーブルの上に、更にまた横置きにされて積まれている
テーブルが目に入った。
- 330 名前:崩壊ハイテンション 投稿日:2004/03/24(水) 20:27
- 「あんなとこにまで置いてあったんだ」
亀井はぼんやりとそれを眺めて呟いたが
「亀井ちゃん危ない。早うここから出たほうがええって」
高橋は緊張を隠し切れない様子で強引に亀井から体を離し、
亀井の目を見て警告する。
「変な音ってもしかして」
「ほうや、何かあっちからギシッて」
言うが早いか高橋は彼女の二の腕を掴んで引きずり出すように
『隙間』から抜け出した。
引きずり出された亀井は高橋の慌てぶりに対して
「そんなすぐに離れようとしなくても」
大丈夫、と言いかけたが、その声は
テーブルがなだれ落ちる轟音にかき消された。
高橋が目を見開いている。
亀井はつい先程まで安住の地であったその場所を振り返った。
イレギュラーの後ろは、上に積み上げてあったテーブルの重みで
床を出口側の方に滑り、高さが一メートルもない状態で折り重なって、
その周囲は埃によって白く霞んでいる。
- 331 名前:崩壊ハイテンション 投稿日:2004/03/24(水) 20:27
- 「……ハ、ハハハ」
思わず笑い声を立てたのは亀井だった。
「…アハハ、ハ、ほやから言うたやろ、危ない、って」
つられ笑いを漏らした高橋の声は震えている。
「ほんと、ハ、すご、予知能力?」
「ギシッて、聞こえたって………っく、っ、アハ、ハハ」
「たかぁしさん、何、笑っ、て………っぷ、くくく」
とうとうふたりは互いの肩を叩き合って笑い出した。
全く本当に何が可笑しかったのか。
思春期特有のものから来た妙な感情からだったのか。
それとも。
亀井は高橋に救われたということに対しての
高橋は亀井を救うことができたということに対しての
歓喜の笑いだったのか。
- 332 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 20:29
- 青の頃からお付き合いいただいている方にはお分かり
いただけるかと思われますが、「おかしな」の後日談です。
- 333 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 20:30
- 前々から三人称にチャレンジしたかったんですがきっかけがつかめず…
結局古いネタを引っ張ってきてしまった…
- 334 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/24(水) 20:32
- んー、まだ一作目だからなんとも言えませんが一人称よりは
書きやすかったかなあ…
- 335 名前:かすみ 投稿日:2004/03/25(木) 14:04
- 書き込みをするのは初めてですが、青板の頃から
ずっと楽しく読ませていただいてます。
更新のペースも早いので、毎日花板をチェックするのが
とても楽しみで日課になっています。
やっぱハルヒさんが書く亀高っていいですねぇ
ハルヒさんの作品を読んでから亀高にはまっております☆
そしてさらに高橋さんが好きになってしまいました。
これからも作者さんのペースで頑張って下さい。
次回の更新も楽しみに待っています。
長文失礼いたしました。
- 336 名前:音の無い曲を作ろう、ふたりで 投稿日:2004/03/25(木) 16:37
- 緩やかに上がっていくんです。
会ってすぐにはじけるのではなくて。
そう例えば私達が歌っている歌のように
イントロがあって、Aメロがあって、サビに入っていく。
持っている空気が似ているので
まずイントロは静かに…と行きたいところですが、
どうもそのイントロからして少し癖があるらしいです。
「オィッス、亀」
「オィッス。長さん亡くなっちゃいましたね」
「切ないなあ」
「寂しいなあ」
…少しどころでは無かったかな。かなり癖があります。
「なんかなあ…特番とか観てたらほんと、どんどん切なくなってった」
「うん、大きい存在だったよねえ…」
「あたしらにとってのつんくさんみたいなもんやで」
「うわ、そうだよ。っていうかそんなこと言わないで下さいよ」
「やってそう思てもうたんや………泣きそう」
「もらい泣きしそう」
「やらん、あたしの涙はあたしのもんや。勝手に持ってくな」
Aメロでは、遠まわしに含みのあるやりとりが成されます。
サビに繋がるために。
- 337 名前:音の無い曲を作ろう、ふたりで 投稿日:2004/03/25(木) 16:38
- 「じゃあ、絵里たかぁしさんが泣いたらたかぁしさんのために泣きますから」
「絵里言うな。今仕事やないやん」
「………私たかぁしさんのために泣きますから」
「とか言って泣き止んだらまたあたしのせいで泣いたって責める気やろ」
とりあえず何でもかんでも否定から入るのはこの人の癖です。
わかってるんだけど
「憎まれ口叩いてるだけだよ。
ほんとにたかぁしさんを想っててもプライドってものがどうしても」
うまいことそれに乗せられてつい本心を言わされてしまう。
小賢しい人だと思うけれど
言いたいことを言えるというのはとても気分がいい。
「ほうやなあ、あたしも似たようなもんやさけ、お互い様か」
「未だにそっちからは滅多に手繋いでくれないしね。
自分からは嫌っていうプライド?」
「こないだそれとなくやったやん」
「もんの凄く微妙だったけどね」
- 338 名前:音の無い曲を作ろう、ふたりで 投稿日:2004/03/25(木) 16:38
- 最初のサビが終わり、Bメロの始まりは、回想から入る。
それはPV撮影の移動中に起こった。
出来あがったPVのメイキングで
瞬きしたら見逃してしまうような状況証拠。
さて、Bメロの最初の歌詞は「手が触れた」になるのか
「添えた」になるのか。
たかぁしさんは「添えた」が妥当かのぉ、って言っていた。
…そうですね、私、亀井絵里と致しましては。
- 339 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/25(木) 16:54
- 久しぶりに短めの話だったかもしれない。
>>335 かすみさま
はじめまして。書き込みありがとうございます。
色々な偶然が重なって飼育さんで書くことをはじめて、幸運なことに時間にも
恵まれ、ただただ己の欲望のままに吐き出してきたものをお褒めいただき恐縮です。
少しずつではありますが他の場所で亀高も増えてきて…私自身今後が楽しみ
でもあります。もっと他の方の亀高を読みたいなあっと。単純に。
当分熱が冷める気配はないのですが、プライベートがそれを阻害する可能性も
ありまして、書きたくても書けなくなる状況がくるかもしれません。
そん時ヤキモキしたくないのでなるべく思いついたら即書くようにしようと。
どうぞこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。
- 340 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/25(木) 23:24
- 長いレスをいただいてしまったので調子に乗ってしまった感が。
自分の文がウザい…
- 341 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/25(木) 23:26
- 長文をいただけるのは滅多にないことなので浮かれてしまいました。
置いといて、次回も亀高の予感。予感だけ。
- 342 名前:お願い名前を呼んで 投稿日:2004/03/26(金) 11:30
- 私達六期の存在って五期の次くらいに特殊だと思う。
何せ藤本さんが居るのだ。ソロという大役を先に果たしたという
意味では明らかに五期よりも「先輩」にあたる藤本さんが。
年齢だって。
だから私もさゆもれーなも同期というよりは「六期のリーダー」
という位置付けて彼女と接している。
って、さゆとれーなには聞いたことないけど、少なくとも私は
そういう認識で。
そのせいか私達は藤本さんが自分のことを「美貴」と言っているのに
無意識に影響を受けていて、全員自分のことは名前で言うようになった。
でもそれは仕事の時だけの話。
他のメンバーも薄々それに気付いていると思う。
ちなみにたかぁしさんは明らかにそれに気付いている。
だから仕事じゃない時にうっかり「絵里」って言ったらちょっと怒る。
- 343 名前:お願い名前を呼んで 投稿日:2004/03/26(金) 11:31
- さて五期はどうかと言うと。
加入当初中心的存在だった小川さんのフレンドリーさ、人柄の良さに
引っ張られてすっかり「仲良しこよし」が板についてしまったように見える。
後輩として、加入した当初はその「先輩らしくなさ」とか「威厳の無さ」に
実はちょっと失望した。
この人たちこんな調子で大丈夫かって。
でもそれは私の勘違いだった。
五期のいいところは「そういう風に見せることができる」ところだったんだ。
長いこと接していくにつれ、要所要所でやっぱり五期は「先輩」であることが
窺い知れるようになる。
それを露骨に見せないところが五期の先輩らしさ。
自分で見ていて、これはいいと思ったら、それを盗め。
壁にぶち当たったら臆することなく口に出せば、アドバイスできる。
そういう雰囲気はいつでも出しておくからね。
だけど皆さん、私やっぱりもうちょっと威厳があった方がいいと思うんです。
上と下の関係はもっとはっきりさせた方がいいと思うんです。
- 344 名前:お願い名前を呼んで 投稿日:2004/03/26(金) 11:31
- 「たかぁしさん、私思ったんですけど」
楽屋の片隅、賑やかなBGMを背にして私は口を開いた。
「五期の人たちは七期が入ってきてもその人たちのことを
ちゃん付けで呼ぶんですか?」
手帳に目を落としていた彼女が私の方を向いた。
「あ〜…どうやろね」
「もうちょっと先輩らしくした方が良いと思うなあ」
「多分次からは呼び捨てにすると思うで、あたしは」
他の子は知らんけど、たかぁしさんは周囲を見渡して同期の人たちの
姿を探した。
新垣さんはれーなと何か話してて、小川さん紺野さんは一緒に食べ物の
話で盛り上がっている。
ついでにさゆは藤本さんにちょっかいかけられていた。
「あたしたちにとって亀井ちゃんたち初めての後輩やったし、
色々接し方について話し合ったりはしとったよ。藤本さんも居ったから
結構悩んだなあ」
どうやら私はもう一つ勘違いをしていたようだ。
上下関係は下の人間が上に対してあれこれ悩むだけの関係ではなかったんだ。
勿論逆だってあったんだって、今更気付いた。
- 345 名前:お願い名前を呼んで 投稿日:2004/03/26(金) 11:31
- 「そっか、そうなんだ、呼び捨てにするんだ」
「そういう亀井ちゃんはどうなんよ」
「入ってくる人によります」
「人に聞いておいて自分はそれなんか!」
「じゃあ、八期が入るまではちゃん付けとかにしようかな、私も」
先の長い話やなあ、あたしそれまでに娘。に居れんのかな。
それ以前にモーニング娘。は存在してるんでしょうか。
「微妙やな」
「微妙だね」
ちょっと考えたくない話になりそうだったので。
「ああその前に、苗字じゃなくて名前で呼んでほしいな私」
「先輩に?」
「たかぁしさんに」
「………仕事で?」
「まずはプライベートで」
それこそ微妙やわ〜、はてさていつの話になるでしょうねえ。
そらとぼけてたかぁしさんはまた手帳に視線を戻したので、
私は思わずちぇ、と舌打ちしてしまった。
- 346 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/26(金) 11:32
- 七期が入ってきたら五期の呼び捨ては確実だと思うんです。
- 347 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/26(金) 11:34
- でもその前に「絵里ちゃん」「えりりん」「エリザベス」のどれかで
呼んでくれないかなあ。
- 348 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/26(金) 11:35
- 意表をついて「えりっぺ」でも嬉しいな(笑)
- 349 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/03/26(金) 19:45
- 語るスレで書いた通り、こちらも拝読させてもらいました
高亀に、はまってしまいそうです
高橋弁よく研究されてますね(一般的な福井弁とは違うので...私は福井県の近県なので)
新垣さんもステキです
- 350 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/26(金) 23:02
- >>349 飛べない鳥さま
どうもです。私のある種我侭な自己主張に貴重なお時間を割いていただき
恐縮です。ほんと恐縮です。勇気出した甲斐がありました!
「はまってしまいそう」から「はまった」と断言していただける作品を
生み出せたらと思うところですが、そこでムキになっちゃいけませんね。
いつもどおりを貫くよう心がけたいと思います。
高橋さんの喋り方は、最初の方こそ事前に下調べをしたものの今は
完全に私の創作ですので(笑)研究とかしてないんですよ〜
ガキさんが居なかったらこの話は存在してなかったな、と思うと
なんかこう胸に込み上げてくるものがありますね…塾長に感謝。
蛇足として。
青の方のスレ容量が大量に余ってますんで、亀高に興味以上ものを
持ってくださった方がいらっしゃったらぜひ使ってあげてください。
ここで許可とか要りませんので。
その方があのスレも私も喜びます(笑)
- 351 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 10:56
- ちょっとずつ一緒に居る時間増えてきて、あたしがあたしなりに
亀井ちゃんのことについて気付いたこと。
- 352 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 10:57
- 勿論本当のこととはズレがあるかもしれんし、本人に聞かれたら
あのアヒル口尖らしてムッとされるかもしれんけども。
でもって
それじゃあたかぁしさんはどうなんですか人のこと言う前に
まず我が身を振り返った上で言ってくれないと私絶対認め
ませんからねばーかばーか、とか憎まれ口叩かれそうな気も
するんやけど。
それなりに思うこととか色々出てきたから、あたしなりの言葉で
「亀井絵里」について一つ作文でも書こうかと思う。
- 353 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 10:57
- って言うてもほんまにこれから書き始めようとしてるから、
完成するまでにどんくらい時間かかるかまだわからん。
書き終わっても納得いかねってまた書き直しするかもしれん。
ほやさけ、何時間かしたらまた来てみてください。
具体的に時間指定できんけど、絶対書きますで。
ほんじゃ、また後で。
- 354 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/27(土) 11:04
- はい、また後で。
- 355 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 14:10
- どうも、お待たせしました。
ええっとそれじゃ、作文、発表しようと思います。
嘘や。
すまんです、書けませんでした。
…あ、これも嘘や。
書いたんやけど、書けんかったんです。
- 356 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 14:10
- ひっで一杯書き直しまくって、あれも違うこれも違うやっとったら、
何や、アホらしってか、空しくなって。
結局のところ
あたしがどうこう言ったって
いいとこ悪いとこ並べたってそれ全部ひっくるめての「亀井絵里」やんか。
ずっとそのまんまで居ってほしいとは思わんけども。
トラウマ早う消えたらええなって思てるし。
その為にあたしにできることあんならできるだけのことするし。
今んとこそれができんのあたし一人やし。
一瞬
トラウマ消えたらあの子あたしから離れてまうんやないかって
悪い予感よぎったけど。
そん時は
あの子が前にあたしに言ってくれたように
我侭になろうと思う。
- 357 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 14:11
- 離れんといて、って泣いて縋って
今はまだ想い強すぎて返って素直に言うことの出来ない言葉吐きまくる。
おんなじ言葉やけど、マコトに対してのでもなく安倍さんに対してでもない
次元違う「大好き」って言葉。
あとそれと、あれ。あの言葉。
あの、今その状況じゃないからこっぱずかしくて言えんけど、
………あ、アイーン、みたいな。
…察してください。
- 358 名前:高橋愛はこう思う 投稿日:2004/03/27(土) 14:11
- あーもう、ちゃんときちんとした文章にしようと思たのに
あたしかなりテンパッってんな。
情けねえす。
えとつまり、あたしにとってそんだけの気持ち持ってる相手やってことです。
亀井絵里さんは。
やっぱこういうのって
理屈やないんやなあ。
て
思いました。
- 359 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/27(土) 14:16
- 今回は何となく
- 360 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/27(土) 14:17
- 隠し
- 361 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/27(土) 14:18
- ときます。
- 362 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/27(土) 14:18
- 間違った落としておきます。
- 363 名前:かすみ 投稿日:2004/03/27(土) 17:12
- おぉ、たくさん更新されてるぅ!
高橋さんの語りっぽいの読んだら心が和みました。
いつかはテレビで高橋さんが『絵里』って言ってるの
見てみたいなぁなんて思っちゃいました。
私もさくらのPV買いました☆メイキング映像のダンスシーン
のとこらへんで亀井さんが高橋さんにダンスの質問?
をしてるっぽいとこで『おぉ!亀高だぁ!』と
舞い上がってしまった私でありまして(笑)。
次の更新も楽しみにお待ちしてます。
またまた長文失礼いたしました。
- 364 名前:ゼロ 投稿日:2004/03/28(日) 19:38
- 「ゼロ」は、実は数字の中で一番最後に出来たものです。
ご存知でしたか?
あ、アラビア数字の「0」のことです。
日本語では「零」ですね。
数字がインドに渡るまで、「ゼロ」は空白で表されていましたが、
それだと単位がわかりにくいというので出来たのが「0」という
数字なのです。
私はこの「ゼロ」という数字を作ってくれた方に感謝したい。
「紺野あさ美と高橋愛」の関係を表すのに
「ゼロ」という数字の表現がとてもぴったりだと思うからです。
私のとろくさいところを
愛ちゃんのせっかちなところが埋めてくれるし
私の赤点な歌唱力を
愛ちゃんの抜群の歌唱力が埋めてくれます。
勘の良い方はお気づきかもしれませんが
そう私は彼女に劣等感を持っています。
持っているのだけど
- 365 名前:ゼロ 投稿日:2004/03/28(日) 19:39
- 「あたし早口やからあさ美ちゃんののんびりした喋り方憧れるなあ」
とか
「あさ美ちゃんと私の声合わさったら丁度良いなあ」
とか
褒めてくれたんです。
劣等感っていうマイナスを埋めてくれて「ゼロ」にまで持って
きてくれたんです。
でもやっぱり私はそこから成長することができなくて
なかなかプラスに出来ませんでした。
その間に愛ちゃんはどんどん自分の中のプラスの部分を
どんどん伸ばしていって
後はもうご存知のとおりです。
私は「ゼロ」のまま置いていかれてしまいました。
今、私は辛うじて「ゼロ」を保つことが出来ていると
自分では思っていますが
あの頃の「ゼロ」を懐かしく思います。
だって今の状態だと私の方が彼女のプラスの部分を減らしてしまって
悪い意味での「ゼロ」を作ってしまう。
- 366 名前:ゼロ 投稿日:2004/03/28(日) 19:40
- この間、そういうことを愛ちゃん本人に言ったんですよ。
そしたら何て言ったと思いますか?
『ゼロってただの記号にそこまで気持ち込めるなんて、あさ美ちゃん
ロマンチストやなあ!乙女って感じやぁ!』
…色々な意味でふっきれてしまいました。
下手に慰めたりしてくれなかったということがとても嬉しくて。
そして私はこの時の愛ちゃんの一言で
新しい「ゼロ」を持つことが出来た気がするのです。
今度の「ゼロ」には
もう、マイナスはありませんよ。
- 367 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/28(日) 19:41
- 欠点を武器に。
- 368 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/28(日) 19:43
- 最近の紺野さんにはあまり劣等感を感じなくて嬉しいですね。
- 369 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/28(日) 19:48
- >>363 かすみさま
レスありがとうございます。
最近書き方を色々工夫してるとこでして、そこらへん汲み取っていただけた
ようで嬉しいです。
亀高の距離は確実に狭まってると思いますよ…!
さくらおとめPVは観ていて血圧が上がりました私。
今後もお付き合いいただけたら幸いです。
- 370 名前:いこーる 投稿日:2004/03/28(日) 23:17
- 更新お疲れ様です。
毎日欠かさず拝見しております。
今回の「ゼロ」はきました。
読んでから時間が経ってシンと沁みてきてます。
これからも頑張ってくださいませ。
- 371 名前:つよがり 投稿日:2004/03/29(月) 23:40
- 仕事とはいえ朝の生放送は相当きつかった。
特に今回は共演するメンバーん中でアタシが一番
『おねーさん』だったから、なおさら。
…と言いつつ、実はそれほど心配はしていなかった。
今回のアタシ以外のメンバーってみんな、根っこの方は
しっかりしてる奴らだから。
裏ではね。
表に出ちゃうと何故かテンパッちゃってマイウェイを
爆走するかその逆で全く前に出てこないかの両極端な
奴が約一名いるんだけどさ。
ほんと時々こいつの裏の顔をみんなに見せてやりたいと思う。
印象ガラッと変わるって。
生放送が終わってうちらは現場を離れようとしていた。
アタシ以外の三人は、ごくごく自然にアタシの前を
並んで歩いている。
真中の奴が一番ちっちゃいけど、あの中で一番おねーさんだ。
「お腹すいた〜」これは紺野。
「………ねむい、ほんとねむい」これは亀井。
「あさ美ちゃんも亀井ちゃんも、もうちょいの辛抱やで」そしてこれは高橋だ。
- 372 名前:つよがり 投稿日:2004/03/29(月) 23:41
- そう高橋だよ。この、二人励ましてるのが。
メディアでしか高橋のこと知らない人は想像できねーよな、こういう高橋。
でもある意味これが本当の高橋のうちの一部分なんだ。
こいつはねえ、ほんとに侮れないよ。
「吉澤さん、隣いいですか?」
さくらのツアー、バスでの移動中、二人がけの座席を一人で占領してた
アタシのところに高橋がやってきた。
「おぅ、どした高橋。紺野は?」
「あさ美ちゃん寝てもうた」
高橋そう言いながら合わせた両手を顔の横に持ってきて
『おねんね』のポーズを取った。
「そっかナルホド、いいよここ座んな」
「すいません。おじゃましま〜す」
明らかに遠慮がちな仕種で高橋は隣にちょこんと座った。
- 373 名前:つよがり 投稿日:2004/03/29(月) 23:41
- 「高橋は眠くないの」
「眠かったんやけど、あさ美ちゃんが先に寝たから、起こさんようにせんと
って思たら目ぇ冴えてもうて」
「うわ優しいなあ」
「いやいやあたしが神経質なだけやさけ」
実際あたしが寝てあさ美ちゃんによっかかったりしてもあの子マイペース
やし多分絶対起きたりせぇへんと思うんすけどあたしは気にしぃなもんで
どうしても。
「…ごめん高橋。全部聞き取るのと理解すんのとが同時進行できんかった」
「ああぁ、やってもうた。すんませんほんと早口で」
「や、時間はかかったけどちゃんと理解はできんのよ」
あんたは全然オッケー問題なし。
「だからそんなあからさまに声のトーン落とすなYO、マイハニー」
見てるこっちの方が哀しくなっちまうぜ。
アタシはいつもの『癖』で男役を演じて高橋を慰めた。
そしたら高橋はますます暗い顔になってしまった。
うお、こんな反応されたの初めてで戸惑う。
- 374 名前:つよがり 投稿日:2004/03/29(月) 23:41
- 「せっかく」
「あ?」
「せっかく吉澤さん無理せんようになってきたのに、あたしまた」
唇噛み締める高橋。…無理ってなんだ?
「アタシ無理なんてした憶え」
「自覚しとらんだけやと思います」
「………えぇ〜?」
混乱してきた。
「吉澤さんがおどけて男言葉使う時は『誰かのため』って決まってます」
…こいつはねえ、ほんと侮れないよ。
- 375 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/29(月) 23:43
- スイマセン今回はちょっと筆が進まなくて最後までいけませんでした。
- 376 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/29(月) 23:44
- 短い話なんですけどね。っていうかとうとうこのCPで書いてしまった…恐れ多い。
- 377 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/29(月) 23:49
- >>370 いこーるさま
どうもです。ああ、作者の意図していないところでそのようなレスを
いただいてこっちの方が心に沁みてしまいました(笑)
(単に「ゼロ」の由来を使った話が書きたかっただけなんて口が裂けても
言えない<しかし書くことはできる)
はい、これからもできる限りやっていこうと思います。
どうかお付き合いくださいますよう。
- 378 名前:かすみ 投稿日:2004/03/30(火) 18:47
- 更新おつかれさまです。
高橋さんの素直で優しい気持ちが素敵で憧れちゃいます。
『自分もこんな人になれたらなぁ』って思うし、
毎回ハルヒさんの作品を見ると頭にスッっと入ってくるので
いろんな事を考えさせられるし、とても勉強になります。
これからもハルヒさんについていかせて下さい。
- 379 名前:つよがり 投稿日:2004/03/30(火) 21:11
- その後のこと、アタシはあんまり憶えてない。
ひょっとしたら
図星突かれすぎて認めたくなくて笑って誤魔化したかもしれない。
あれでもほんとに思い出せねえや。
よっぽど驚いたんだろうな。気付かれてたことが。
んだけど気付いてくれててありがとって思ってもいるんだよな。
ってか、さくら組のメンバーは結構その匂い感じてんのかもしれない。
アタシがでしゃばらなくても、あいつら自然に仲が良いからさ。
アタシが離れて一人で居ても平気なのよ。
うん、みんなが、じゃなくて。
アタシが平気。
たまにガキさんが様子見に来るくらいで丁度良い。
だけど直接アタシんとこ来るガキさんよりも
遠巻きに眺めてたはずの高橋がアタシの『ああいう癖』を見抜いてた。
その上そういう癖を見せたらあたしのせいやって罪被って。
あんたって奴は。
- 380 名前:つよがり 投稿日:2004/03/30(火) 21:12
- 「へーい!Ai Takahaすぃ!」
並んで前歩いてた三人の背中に向かって
ジャパーニーズイングリッシュ丸出しで呼び止める。
高橋はそれ聞いて一瞬ギクッて体を強張らせて
歩いてる途中で右足踏み出したままブリキの人形みたいにギギギッて
振り返って
「ぱ、ぱーどん?」
パー丼。
どこぞの外食産業の新商品かと思った。
「あんた英語まで訛ってるよ」
「き、急に呼び止めるからや!」
亀井紺野の二人は眠気と食欲に囚われていてアタシが高橋呼び止めたのに
気付かないまま先を歩いていた。
「はっは、ソーリーソーリー。それよりさ高橋」
「あい?」
「あんた………ボクの、嫁に来ないかい?」
- 381 名前:つよがり 投稿日:2004/03/30(火) 21:12
- ここでどこぞのキショイ人なら
もうやめてよ〜よっちゃん何言ってるの!馬鹿!って真っ向から言われて
どこぞの小さい人なら
キャハハ!よっすぃ最高!腹いてーおいら病み上がりなのに!って馬鹿受け
されるとこなんだけど、こいつときたら。
「アハハ、考えときますね」
…だーめだ、勝てないわ。
けどアタシ意固地んなって、負け認めんの嫌だから。
「いつまでも待ってるよ、ベイビー」
つよがり。
- 382 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/30(火) 21:13
- 吉高…なんだろうか?
- 383 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/30(火) 21:14
- さくらの吉澤さんが無理してる風じゃなく見えたので作った話。
- 384 名前:ハルヒ 投稿日:2004/03/30(火) 21:25
- >>378 かすみさま
レスありがとうございます。ですがあまりにも褒めすぎですよ〜(笑)
なにやら体中がむず痒くなるような感覚です…私は幸せ者ですね。
まあ…ほっといても勝手に歩いていきますから(笑)ついてきてくださいとか、
私がどうこう言える立場ではないです。
でも願わくば、一緒に並んで歩きたいですね。
- 385 名前:ケーキ止めました 投稿日:2004/04/03(土) 19:35
- 「ケーキ、ケーキ♪」
「ケーェ、キ!………って、うわ、最悪」
前にいた愛ちゃんの声がいきなり不機嫌になったから
どうしたのかな〜って後ろから覗きこんだ。
「…マコト、これ何に見える」
「何って、こっりゃあどー見ても」
『モンブラン』
「…だよな」
「だね……」
ちくしょー、愛ちゃんは地団駄踏んで思いっきり悔しがって
スタッフのばかちんが〜!と叫んでる。
- 386 名前:ケーキ止めました 投稿日:2004/04/03(土) 19:35
- 「それともあれかぁ、わざとか?!わざとなんかぁ?!」
「ま、まあまあ………ほら他のお菓子もちゃんとあるからさ、
とりあえず座ろ」
背中押して席に座らせる。
「いーじーめーだ〜」
「も〜ネガティブだなあ………何ならあたしが食べてあげるよぉ、デッヘッヘ」
今日はピーマコじゃないもんね〜
「……小川さん?」
「ほぇ?」
愛ちゃんはじと〜っとした目でこっちを見た。
- 387 名前:ケーキ止めました 投稿日:2004/04/03(土) 19:36
- 「あっしぃ、黙っとこうと思ったんやけどー」
「何さ」
「昨日の夜、重くて別の意味で死にそうになったんやよね〜」
「う」
ザクッって音立てて愛ちゃんの言葉が胸に突き刺さりました…
「それでも食べますか?」
「…スミマセン、あさ美ちゃんにあげてください………」
「うむ、よろしい」
『どぉも〜
おじゃ、マ〜ルシェ★紺野で〜す!』
- 388 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/03(土) 19:37
- 地方人なのでこの回のHPWは昨晩観たんです、よ…
- 389 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/03(土) 19:38
- タイトルはもっさんの曲から。
- 390 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/03(土) 19:39
- 果たしてあれは本当にわざとだったんでしょうか、スタッフさん…
- 391 名前:冷ますんだっ。 投稿日:2004/04/08(木) 01:51
- 2004年のミュージカルのテーマは
環境問題。
特に、地球温暖化。
っちゅうことで、教科書引っ張り出してその辺のことを
改めて勉強しなおした。
結果、あたしの口から出た言葉と言えば。
「あ〜土が見てぇ!」
「たかぁしさんはいつも唐突すぎですよ。何ですかいきなり」
「亀子、愛ちゃんいつもこうだよ〜」
「知ってますけど今回のはいきなりすぎます」
亀井ちゃんのクールな口調とあさ美ちゃんののんびり口調が
マッチングする楽屋の片隅で、あたしは溜め息つきながら昨晩得たばかりの
知識を披露した。
- 392 名前:冷ますんだっ。 投稿日:2004/04/08(木) 01:51
- 「だってな?ジャパーニーズな首都のトキオは福井と比べて自然が
少なすぎんのよ。地面がアスファルトで覆われちまって土が少ないせいで
雨降ったらその水がうまいこと蒸発しなくて」
「ちょっと待って愛ちゃん、亀子がすんごい肩震わせて…笑ってる?」
「…って、じゃ、じゃぱにーず、な、て」
口元に手を当てて亀井ちゃんは本気で爆笑一歩手前だった。
「…わざと言うたんに決まっとるが。変なとこでツボに入るんやね」
「あ〜でもわたしも首都って単語知らないや、今度調べとくね愛ちゃん」
「だぁらわざとやって!…ったくもう、ほんでな?」
アスファルトの上に水溜りんなった雨が、天気いい時に一気に蒸発するから、
うまいこと気温が調節されんくて、それが地球温暖化に一役買ってるんやて。
「あぁうん、それで今は雨を吸収して土に通すアスファルトっていうのも
開発されてるんだよね」
「ほぇ〜、知りませんでした」
最新の知識ではあさ美ちゃんに勝てんのぉ…
あ、亀井ちゃん復活したか。
- 393 名前:冷ますんだっ。 投稿日:2004/04/08(木) 01:52
- 「シチーガールにはピンとこない話やろぉ。こん中で東京が地元なの
亀井ちゃんだけや」
「そんなことないですよ。えーと公園とか行けば」
「でも札幌も福井ほどじゃないけど自然は多かったなあ。東京はほんとに
茶色い地面を見ないよね」
土じゃなくて茶色い地面ってとこがなんとなくあさ美ちゃんっぽい。
「そう、ほやから土が見たいんやて!」
「あーそれでそこに繋がるんだ…」
亀井ちゃんは本気で感心し、あさ美ちゃんはうんうんと頷いて彼女の
肩に手を置いてポンポン叩いた。
…何じゃい、あたし、なぞなぞでも出題したか?
「確かに温暖化も関わってるけど、単純に土が見たいっていうのはわたしも
賛成だよ、愛ちゃん。きっとすごく懐かしい気持ちになるだろうね〜」
「……ほんっと、あさ美ちゃんが札幌の人でよかったわぁ〜」
「何ですか、東京馬鹿にしてますね?」
ちょっと行けば土くらいいくらでもありますよ〜っだ、ちょっとムキんなって
反論する亀井ちゃんはいつもより余計にアヒル口。
「そこまで言うんやったら、あたしら連れてって」
「あ、いーなー。行きたいなあ」
「連れてくのはいいけど何しに行くんですか?ほんとに見に行くだけ?」
- 394 名前:冷ますんだっ。 投稿日:2004/04/08(木) 01:52
- ふっふっふ、それについては一つアイデアがあるんや。
「ミネラルウォーター持ってってな、土にかける」
「ああー、愛ちゃんそれって」
「熱っちい地球を」
「ほうや、冷ますんや!」
じすいずぐっどあいでーあ!やろ!
「でもねえ、愛ちゃんそれ大事なとこ見落としてるよ」
「え、何…?」
内心やる気満々だったあたしにあさ美ちゃんがおっとりと突っ込み入れた。
「ミネラルウォーターだって製造する段階で煮沸消毒とかしてて熱を使って
るんだよ」
わたしたちがそれを買ったら需要が増えるわけで、そうしたら製造する量も
増えるわけでしょ。需要と供給の関係で。
だから結局のところそれやっても無意味なんだよ〜
「そーんな〜……」
言ってることが正論過ぎてあたしはガックリと肩を落としてしまう。
いやぁ…確かにな?そんなん考えとらんかったけど…何か…切な……
- 395 名前:冷ますんだっ。 投稿日:2004/04/08(木) 01:53
- 「紺野さんっ、たかぁしさんは隠れロマンチストなんだからそんなズバッと
現実突きつけたら可哀想じゃないですか」
こら亀、隠れロマンチストってなんやねん。
「気付いてなかったみたいだから言ってあげただけだよ〜」
「だからって無意味ってことは無いでしょう。要は水分がうまく蒸発して
くれればいいんだから水道水でも川の水でも」
「……亀子随分愛ちゃんの味方するね?」
「……別の方法言っただけです」
「だったら言うけど、水道水だってミネラルウォーターと一緒だよ。
それに東京の川の水なんて汚れがひどくて…土が可哀想だと思うけどね?」
…あれ?
何か、微妙に険悪な空気が生まれてるような…
「な、なあ、二人とも?」
「………案ずるより産むが易しって言葉知ってます?紺野さん」
「………知ってますけどそれが何か?」
「ひぇ〜……」
あさ美ちゃんと亀井ちゃんは完全に意見が対立してしまい。
数分後、あたしは……
二人の静か〜な熱を冷ますのに必死になっている自分に気付いた。
- 396 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/08(木) 01:57
- 紺→高←亀、なかんじ
- 397 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/08(木) 01:58
- 温厚な人ほど怒らせたらなんとやらと申します。
- 398 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/08(木) 01:59
- ほんとのところはどうなんでしょうね…
- 399 名前:声域 投稿日:2004/04/09(金) 21:31
- あなたは色々な声を持っていますよね。
冷静な時は低く沈んだ感じの、ちょっとハスキーな声で
テンション高い時は別人みたいに高い声で
混乱してる時はちょっと鼻にかかった高い声で
あともう一つ
私との限られた時間を過ごしている時は
とても綺麗なファルセットを聞く事が出来ます。
これに歌声を加えたらもっともっと幅が広がって
癖のある声しか出せない私はとても羨ましく思います。
私もっと
たかぁしさんと色んな話、したいんです。
それでその時にどんな声で話すのか聞きたいんです。
………ごめんなさい。
私実は、あの時のトラウマを知られたこと、
結構恨んでるのかもしれません。
悔やんでるのかもしれません。
他人に一番知られたくないことだったから。
あ、でも、嫌いとかそういうのではなくて。
私がたかぁしさんに知られたことの大きさに比べたら、
私はたかぁしさんのことをあまりにも知らなさ過ぎる。
と思って。
- 400 名前:声域 投稿日:2004/04/09(金) 21:31
-
だから………
一杯たくさんあなたの話を聞かせてください。
できるならば
誰にも話したことのない秘密の話を。
そうしたら
私、その時のあなたの声色と一緒に
話してくれたこと、一生胸に刻みます。
刻みますから。
どうかその時まで
誰にも話さないでおいてください。
私だけのものにしたいんです。
その声とそれに乗せたあなたの想いを。
- 401 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/09(金) 21:32
- あえて誰の言葉とは申しませんが。
- 402 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/09(金) 21:32
- そろそろ独占欲が出てきたみたいですね。
- 403 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/09(金) 21:33
- という話。
- 404 名前:十秒チャージ 投稿日:2004/04/10(土) 14:39
- 「はい田中ちゃん、ちょいとここにおちょきんしねま」
「……なん?」
今日の楽屋は畳敷きの和室で。
アタシは『リアルおちょきん』を高橋さんの口から聞いた。
意味は知ってたので特別動じなかったけど
せっかく二人きりになれたんやけんもっとこう…
そう奇跡的に大所帯のモーニング娘。が十四分の二になりよったんやけん。
その上
アタシこないだ高橋さんに告ったばっかりで。
『何かいつでん気になって。やけんもしかしたら好いとぉなったかも
しれんと思って…付き合ってくれますか?』
それはそれはもうビックリ顔されたと。
当たり前か。
で、肝心の返事はどうやったかって言うと。
- 405 名前:十秒チャージ 投稿日:2004/04/10(土) 14:40
- あの
会話する時は人の目ばじっと見る癖のあるあん人が
目ば逸らして言葉に出さんで
うん
って頷いたんやけん。
『ええっ、良かと?!』
それはそれはもうビックリ顔してしもうたと。
言われたとおり高橋さんの向かいに正座して、背筋ば伸ばす。
よくわからんけどどうも別れ話とかやなかみたいやけん。
「田中を彼に〜する前に〜やっておきたい〜ことがある〜♪」
「れいなは彼なんですか」
っていうかなんかえらく古臭い歌やなかと?それ。
「や、何となくや。突っ込まんといてください」
「…わかりました」
ってことは『する前に』っていうのも突っ込んじゃいかんですね。
で、なんなんでしょう?
- 406 名前:十秒チャージ 投稿日:2004/04/10(土) 14:40
- 「おりゃっ」
「っひゃ?!」
何の前触れもなく
おちょきんロケット高橋一号がアタシに抱きついてきた。
もういきなりなんなんだこん人!
でも背筋ば伸ばしとったお陰で、高橋さんもろともぶっ倒れんで済んだ。
「ナイスキャッチや!」
「突然何すんですか、ビックリしたと!」
「アッハ、あたしもひっでドキドキしとる〜」
「はぁっ?」
「やぁ、あたし田中ちゃんに抱きついたことあったかなあって思て」
あ、ああ〜…
納得した。したけど、もっと他に方法なかったのか…?
半分呆れつつもやっぱり嬉しいけん、背中に腕ば回した。
「おっ?」
「え?」
「おおっ、すげえ」
「何が、あっ」
心臓の鼓動が全く一緒に響いてる。
高橋さんのドキドキと自分のビックリのドキドキが。
重なってる。
- 407 名前:十秒チャージ 投稿日:2004/04/10(土) 14:41
- 「…にーぃ、さーん、しーぃ」
五、六、七、八……
「…ありゃ、ずれてもた…」
「十秒くらいかな」
「ほやなあ、あー何か得した気分」
勇気出した甲斐あった、高橋さんはしみじみとそう言って
ゆっくりアタシから離れようとする、それを
「駄目」
「おろっ?」
腕に力ば込めて防いだ。
折角キャッチしたんやけん。
「十秒じゃ足らん」
「…ぜーたくもん」
何言ってるんですか。
そっちこそ、さっきよりこっちに体預けてきてる。
やけど
これも突っ込まんでおきますね。
- 408 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/10(土) 14:43
- 彼女の一人称はアタシでいいのか…?
- 409 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/10(土) 14:44
- 色々混ざってますが堪忍してください
- 410 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/10(土) 14:44
- さげー
- 411 名前:秘めゴト・二人ゴト 投稿日:2004/04/11(日) 13:06
- 「あっ、愛ちゃんだ!」
「亀井ちゃんや!」
収録終わって楽屋までの道のりをてくてく歩いてたら
背後から例の二人の声が聞こえた。
二人はあたしらを駆け足で追い越して綺麗にターンを決め
「見て見てっ!せーの!」
『ダブルユー!!』
「お〜」
「さっきも見たけど、おお〜」
- 412 名前:秘めゴト・二人ゴト 投稿日:2004/04/11(日) 13:07
- 彼女達はこのうっすーいリアクションが逆に面白かったらしく
ケラケラ笑いながら
「ここのねっ、小指絡めてるとこがポイント!」
「そうそう!…でもま〜ののとうちって、絡めてるの」
『小指だけじゃないけどね〜』
とんでもねぇセリフをハモりやがった。
「…二人とも、今からでも遅くないからユニット名変えてもらえ」
「ダブルエッチとかに」
ナイス亀井ちゃん。
「え〜それじゃこのサインできないじゃーん」
「そうやでえ。やっぱダブルユーがええよな、のの!」
「なっ!行こ行こ!」
何だ結局自慢したかっただけか…
- 413 名前:秘めゴト・二人ゴト 投稿日:2004/04/11(日) 13:07
- 「…あ〜でも、できますよねえ」
「何、サイン?」
右隣にいた亀井ちゃんは右手の指を色々動かしてちょっとの間考えた後
「うんこう、人差し指立てて」
「立てて?」
あたしも左手使って真似てみる。
「親指握って」
「あ、ほんでこうか。中指真横にすんのね」
「そうそう。はい、せーの」
とか言われたので思わず横向いてその左手を亀井ちゃんの右手に
重ねた、その時
『ダブルえーっち!』
ダブルユー廊下の角から再登場。
- 414 名前:秘めゴト・二人ゴト 投稿日:2004/04/11(日) 13:08
- 「あっ!まだ居ったんか!」
「決め台詞取られた!」
「いや亀井ちゃん多分突っ込むとこそこと違うで!」
露骨に動揺しとるダブルエッチ(仮)にヒヒヒと笑いながらかぁちゃんは
「なぁーに、あっちの方が何気にえっちぃポーズしてますよ、辻さん?」
「そぉですねえ、胸ベッタリくっついてますよ、加護さーん」
「新ユニット誕生ですねえ」
「メンバーに報告しに行きましょう!」
「あっ、ちょっ、待って待って今のナシや!勘弁して!」
「そうですよまだ試作段階なんですから!」
「だからそこじゃないって亀!追いかけるぞ!」
「廊下は走っちゃ駄目ですよ」
「今はそんなん言っとる場合か、あほぉ!」
- 415 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/11(日) 13:10
- …タイトルと中身のギャップが…
- 416 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/11(日) 13:11
- それしか言えない…
- 417 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/11(日) 13:11
- さ、さげっ…
- 418 名前:傾向と対策 投稿日:2004/04/13(火) 13:08
- ソファに座ってぼんやりテレビを見てたら、ちょっと離れで
床に寝そべって雑誌を見てた愛ちゃんが言った。
「あたしなあ、髪ショートにしようと思て」
「えー、そうなんだ。美貴くらい?」
「や、長さはまだ考えてないんやけど」
上目遣いで手を横に振る。
「どれどれ、ちょっとおいで」
「ん?」
素直に四つんばいでこっちの方に来る愛ちゃんは犬か猫か。
んー、僅差で犬!犬のが好きだから。
「何やの?」
「えーっと、イメージイメージ」
アタシはそう言いながら右手をハサミに見立てて、彼女の襟足あたり
でそれをちょっきん、としてみた。
- 419 名前:傾向と対策 投稿日:2004/04/13(火) 13:09
- 「そこじゃまだ長いんと違う?」
「だねー、もっと短くてもイケると思う」
「とりあえずそん時に美容師さんと相談してみるわ」
「うんそうしなよ。ってか、どうしてショートにしようと思ったの?」
聞いて愛ちゃんの目を見たら彼女は数秒間固まってしまった。
だけどもう慣れたもので、こういう時は単純に言葉を選んでいるんだ。
わかってたので待ってあげてると、愛ちゃんは急に動き出して、
なんとソファに座ってるアタシの膝の上に背中向けて座ってきた。
「珍しいねー」
「…何かやってみたくなっただけや」
「そっかい。で、どうしてなの?」
人間ソファの藤本美貴には自動シートベルト機能がついてます。
まあそんな感じで落ちると危ないので愛ちゃんの腰に腕を回して
もう一回聞いてみた。
「やって、茶髪ショートヘアってイメージがあるやん」
「あー、そうだね。あるよね」
不思議なもので愛ちゃんの一言でパッと意味がわかる時がある。
- 420 名前:傾向と対策 投稿日:2004/04/13(火) 13:09
- 「ほやさけ、何かこう、心構えっつーか。そんなんで」
「そっかー……じゃあ美貴は逆に伸ばしてみようかなあ」
「え、なして」
「ショート二人いたら被っちゃうじゃん」
ぅあーしもた、それは考えとらんかったわ。あ〜…
愛ちゃんはうなじのあたりを擦り擦りしてる。
何照れてんのさ。
「別にいいよ〜。ちょうど飽きてきたとこだし」
「う〜でも、ほんまに切るかどうかわからんで?」
「うんだから別にいいさぁ。今までのイメージどおり安倍さんに
習って切るもよし、新しいモーニングってことでそのままでもよし」
愛ちゃんがこれからセンターになるのはほぼ決まりみたいだし。
まあ、先のことはわかんないけど…
とりあえずアタシは伸ばしてみようっと。
- 421 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/13(火) 13:12
- 「切ってみたい」と「伸ばしてみようっと」のタイミングが近かったので。
- 422 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/13(火) 13:13
- 自己解釈。
- 423 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/13(火) 13:13
- してみました。という話。
- 424 名前:無題 投稿日:2004/04/14(水) 13:41
- あー…
この景色、どっかで見たことあるような。
景色っつっても色がついとらんくて…白に近い感じかの。
足元見たらちゃんと自分の影がある。でも、太陽は出とらん。
なんじゃここ。
顔上げて遠くのほうを眺めたら一本線引いたみたいなもんが見えた。
ああ、これって。
「地平線みたい」
- 425 名前:無題 投稿日:2004/04/14(水) 13:42
- …にしてもほんまになんも無いとこやね。
下手に動かん方がええんと違うかなあ…でもなあ…
ボーッと突っ立っとってもしょうがないべ。
とりあえず今前向いてる方に行ってみよう。
「たかぁしさん」
聞き覚えのある声がして進みかけた体を思いっきり真後ろへ捻った。
「おぅっ、亀井ちゃん!」
可愛いアヒル口さらに可愛くしてる亀井ちゃんがそこに居った。
何や心細かったんで嬉しくなって彼女の方に近づこうとしたら、
「愛ちゃん」
また後ろの方で声が。
- 426 名前:無題 投稿日:2004/04/14(水) 13:42
- 「ミキティやー」
あれぇでもさっきまでそこに居らんかったよな?
変なの。
「愛ちゃん?」
またまた声が。今度は真横にあさ美ちゃん。
「愛ちゃーん」え、反対側にマコト?
「高橋」およ、隣に石川さん。
「あーいちゃん!」そのまた隣にのんつぁん。
「高橋さん」ほー田中ちゃんまで。てことは。
「高橋さーん」や、当たりや。しげみが出てきた。
「もー愛ちゃん、こっちこっち」この声は…里沙ちゃんやろ!ほれやっぱり!
「高橋あんたキョロキョロしすぎ」吉澤さん、やってみんな急に出てくるんですもん。
「あいちゃん大好きやで!」……いやぁ止めてや。かぁちゃん、照れる。
ふと気付いたらあたしはみんなに取り囲まれとった。
え、何?
何か…みんな笑顔やけど、写真撮った時みたいに固まって見える。
恐い………
- 427 名前:無題 投稿日:2004/04/14(水) 13:43
- 次の瞬間みんなが口を開いた。
『それで、結局あなたは誰を選ぶの?』
背筋凍りそうになるくらい無機質なユニゾンやった。
- 428 名前:無題 投稿日:2004/04/14(水) 13:44
- ガクン
「っ?!」
現実は移動中のバスの中で、浅い眠りに入っていたらしい。
窓の外の景色が流れていてそれを理解した。
自分の首が思いっきり前に倒れてガクン言うた拍子に目を醒ましたんや。
「っこ、コワ〜…」
夢ってわかった瞬間に思わず呟いてもうて、隣から突っ込まれる。
「恐い、って?」
………そこにいたのは。
- 429 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/14(水) 13:45
- ある意味モテ高。
- 430 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/14(水) 13:46
- 「隣」はお好みでどうぞ。
- 431 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/14(水) 13:48
- 過去の作品で現メンバーだけ出しました。ほんとは二人足りない…
- 432 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/14(水) 18:56
- 久しぶりにちょっと長い話。
- 433 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/14(水) 18:57
- 仲は良いし特に問題はない。一緒にいてとても楽しいし、
一緒に居られることが嬉しい。幸せだと思う。
なのに最近
何かが足りないと思いはじめて。
これがあなたの一部になっているんだと思ったら
手に入れて自分のものにしたくて堪らなくなりました。
- 434 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/14(水) 18:58
- 「あっれえ?」
撮影を終えて楽屋で着替えてたたかぁしさんが素っ頓狂な声をあげた。
思わず彼女の方を向くとなにやら自分の鞄の中をゴソゴソと漁っていて、
っかしいなー、ここに入れといたはずやのに、と呟いている。
「たかぁしさん、探し物?」
「あー亀井ちゃん、のぉあたしのブレスレット、赤いやつ、知らん?」
私の方は見ないでまだ鞄の中を捜索してる。
「着替えの時はずしてたあれですか?そこのサイドポケットに入れて
ませんでしたっけ?」
「そうなんよ。んで、三本あったはずやのに赤いのだけ無ぇの」
落としたりしたんじゃー、と言いながら私はしゃがんでテーブルの下を
覗き込んだけど、床は真っ白で綺麗なものだ。
「あったー?」
たかぁしさんもしゃがみこんできたが
「ワックスでテカテカしてるだけで赤いのは見当たらないですね」
「あら残念」
すぐ一緒に立ち上がった。
- 435 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/14(水) 18:59
- 「えーでも、絶対ここに入れたで」
「うん、私も見ました」
なあ?と相槌打って困り果ててるたかぁしさん。
「あれってすごく高いものなんですか?」
「値段は知らんけど、某超有名人から貰ったもんや!」
ただでさえ貰いもんなのにそれがよりによってあの人なんやもん、
次に会った時バレたらえらいこっちゃやで。
……確かに私はその人を知ってます。バレたらほんとにえらいこっちゃに
なりそうです。
「うー、あたしちょっと受付行って落としもんで届いてないか聞いてくる」
「あ、じゃあ私もう少しこのへん探しときます」
ごめんありがとぉ亀井ちゃん!たかぁしさんは両手合わせてペコペコ
しながら楽屋を出て行った。
だから謝るか感謝するかどっちかにしてくださいってば。
- 436 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/14(水) 19:00
- さて。
仮に落としたんだとしたら誰かがそれを蹴っ飛ばして遠いとこに行ってる
って可能性もあるよね。
周りを見渡すと数メートル先に石川さんと藤本さんがいたので、声をかけた。
「あのー、そっちの方に赤いブレスレット落ちてませんか?」
「え?何?」
「ブレスレット、赤いやつ。たかぁしさんの」
石川さんはちょっとだけ腰をかがめて床を眺め
「ないよー」
と甲高い返事をして
「無いってよー。こっちの角っこの方も無いわ」
藤本さんはわざわざ部屋の隅まで行って確認してくれた。
…やっぱりこの楽屋には無いみたいだ。
- 437 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/14(水) 19:00
- 「届いとらんかった……」
肩をがっくり落としてたかぁしさんが現場に戻ってくる。
切実な上目遣いを受け取ったけど、申し訳なく首を横に振るしかなかった。
「えー……どーこいったんやよぅ……」
ごめんなさい、今のちょっとだけ可愛いと思ってしまいました。
たかぁしさんが戻ってくるまでに、石川さんは用事があるから
って先に楽屋を出ていて、残っていたのは私と藤本さん。
「愛ちゃん盗難届とか出しておいた方がいいんじゃない?」
「一応出してきた。モノがモノだから」
「そうだね…バレたら大変なことになるよね。今度ラジオ出る時また美貴も
一緒だったらフォローしてあげられるんだけど」
「ミキティ〜!」
「愛ちゃん…!」
あらー、抱き合っちゃってますよ。
そんなに恐いんですか、その某超有名人さんとやら………
『うん、後が恐い』
…恋INGといい浪漫といい良い声してますよね、二人とも。
亀井絵里、ちょっと悔しいです。
- 438 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/14(水) 19:03
- とりあえずここまで。
- 439 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 13:38
- <カニバリズム>
人肉を食すこと。あるいは宗教儀礼としての習慣。
特定の社会においてはそれを食すことで自らに特別な効果や栄誉が
得られると信じられている場合もある。
- 440 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 13:39
- 「……………」
帰宅して部屋に篭り赤く少々歪んだ輪を成しているそれをずっと見ていた。
見続けているとそれがなんだったかわからなくなってくる。
今はまだわかる。これは彼女のブレスレットだ。
鞄のサイドポケットから少しだけはみ出ていて。それに気付いて。
本当は
ちゃんと中に入れてあげようと
思って
手を
伸ばしたはずだった。
「…だったらどうしてここにあるのさ」
そこらへんの記憶が見事にすっぽり抜け落ちてる。
何か理由があったから持ってきてしまったんじゃないの?
『ブレスレットだったもの』はそれに答えてくれない。
いつのまにかこれはもう
『高橋愛』の一部だったもの、という認識に変わっていた。
「唐辛子みたいな色。辛いものは嫌いじゃないよ」
それをつまみあげて目線のところまで持ってきて。
唐辛子みたいな、は今思えばこの後に続く行為のための言い訳
だったかもしれない。
- 441 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 13:39
- 口に含んだって
辛くも無ければ苦くもなく
ましてや甘さなんて感じるはずも無かった。
- 442 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 13:40
- 亀井ちゃんちょっと、私は深刻な表情をしたたかぁしさんに
手招きされた。
数日間彼女と他のメンバー数人、という感じで一緒に仕事をこなして、
今日はモーニング全員での収録があった日。
もっともその収録もついさっき終了したばかりだ。
メンバーそれぞれバラバラに楽屋へ戻り、たかぁしさんは紺野さんと
一緒で、間に数人挟んで私とさゆより前を歩いてたのを憶えてる。
誘われるまま彼女について行くと、非常階段の踊り場に辿り着いた。
「…戻ってきたで」
「え、ほんとですか?」
だけどたかぁしさんは渋い表情のまま。
「けどなあ、今度はもう一本の方が無くなっとった」
なるほどそれでそんな顔をしていたんですね。
彼女は大きな溜め息とともに階段を椅子代わりに座り込んで
「容疑者特定されてもた…」
と呟く。
私も隣に座った。
「特定って言っても十人以上」
「違うそこやない。メンバーの誰かってのがガッカリや」
- 443 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 13:40
- 「ああ…でもほら、単なるイタズラかもしれないですよ。
そんなに深刻にならなくても」
「亀井ちゃんそう軽く考えられる?二回目やで」
「…られませんね。数珠だったんですか?」
「や、数珠は無事やけど。ほれ」
と言いながらたかぁしさんは左腕の袖を捲くって見せてくれた。
今年に入ってから彼女の左手首には常にこれが存在していて、
無いと恐くなる、とまで言わしめたほどの重要なアイテム。
「やっぱ…これも狙われるんかな」
「可能性はありますよね…」
ああっもう、誰じゃこんちくしょー!
小さく叫んで頭を抱えるたかぁしさん。
頭抱える拍子に振り上げた腕が危うく私にぶつかりそうになり、
「おっと」
「あ、ごめ」
さっきと全然声色が違うのでつい笑ってしまった。
「何笑っとんじゃ、人の不幸がそんなに可笑しいかぁ!」
「違う違う違いますって」
だからそんな敏感に反応しないでくださいね〜
周りに誰も居なかったのでつい頭を撫でて慰めた。
ついでにほっぺたくっつけてみた。
「止めんかい、ぼけぇ」
その声は照れてる時の声ですよね。
- 444 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 13:43
- 起承転結の「起」ってとこでしょうか。
- 445 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:42
- その日から私は注意深く周囲を見るように心がけた。
当分モーニング全体の仕事が続くから、なかなかどうして
神経を消耗してしまうし、
「ねえ絵里、わたしの話聞いてる?」
なんてさゆに突っ込まれることもしばしばだったけど。
たかぁしさんは自己防衛手段として数珠はなるべく身につけるようにして、
外した時はサイドポケットではなく
「ほやったらこれ、ちょっとの間だけよろしく頼んます」
「うん、確かにお預かりしました」
こっそり私の鞄の中に入れるようにした。
それが功を奏したのか、数珠と赤いブレスレットは今のところ無事だけど、
盗まれた方のブレスレットが戻ってくることは無かった。
もしかしたら
犯人は
戸惑っているのかもしれない。
- 446 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:42
- もともと本当に最初はイタズラのつもりではじめたことが
思いがけずこんなことになって
返すタイミングを逃してしまったんじゃないだろうか。
だって本当に盗むつもりで起こした行動だとしたら、
二度目の犯行の時に最初に盗んだ赤いブレスレットを
戻す必要がどこにある?
少なからず罪悪感を感じているんじゃないだろうか?
私のこの考えを聞いたたかぁしさんは
「…どのみちもう手遅れや。ただ戻すだけやなくてまた盗んだ。
それだけでもう、あたしん中では立派な犯罪んなっとる」
この時の彼女の声は初めて聞く種類のものだった。
- 447 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:43
- 「あっ」
これからスタジオに向かう途中の廊下で、一緒に歩いてたさゆが、
口元に手を当てて小さな声を出した。
「どうしたの?」
「ヘアゴム今日はこれじゃなったの!」
言いながら回れ右して
さゆは楽屋に引き返そうとする。
「え、別にいいじゃん。それだって似合って」
「駄目!今日は絶対あれにするって決めてたんだから」
じゃないと今日のわたしはちょっとだけ可愛くない!
ある意味プロ根性とも取れるセリフを残してさゆは小走りに
楽屋へと。
「あんまり時間無いよ!急いで!」
「うん!」
- 448 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:44
- 小さくなっていく背中を見送って苦笑いしてから私はスタジオへ。
スタジオへ。
………行くな。
「まさかねえ」
否定の呟きより警鐘の方が大きくなっていく。
戻れ。戻りなさい。
ちょっと、うるさいよ。わかったわかった。戻ればいいんでしょ?
脳内会議の結果楽屋へ戻るという結論が出たので、やれやれと
思いながら踵を返して歩き出す。
- 449 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:44
- 「いくらさゆでも」
時間も時間だし少し早足で。
「そんな、盗みなんて」
小走りで。
「……嘘だよね?」
駆け足で。
「さゆっ!」
ドアを開けた。
- 450 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:45
- 「……さゆ、それは私の鞄だよ」
「えっ、あっ、ほんとだ。間違った」
「…道重さん、そういうのを世間では猿芝居って言うんだよ」
確かにそうだ。
わたし、思いっきり手に高橋さんの数珠を持ったまま。
「入り時間迫ってるから、それもとに戻して早く来なよ」
絵里はそう言い捨てて乱暴にドアを閉めて行ってしまった。
…そうだ、行かなきゃ。
ヘアゴムもちゃんと付け替えたし。
…仕事、しなきゃね。
- 451 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:45
- たかぁしさんに謝らせる前に、まず理由を知りたかった。
何となくはわかるけど、ちゃんとさゆの言葉で聞きたくて。
仕事の後、局内の喫茶店で話をすることにした。
「…ヘアゴムは、ほんとだよ」
動揺してるかと思ったらさゆは随分と冷静に口を開いてくれた。
うん、と頷いて先を促す。
「それで………前に取っちゃったやつ、返そう返そうと思ってて、
でも高橋さん、途中から絵里の鞄に入れるようにしたじゃない」
「さゆのせいだよ」
「うんわかってる」
「って、私の鞄に入れるようにしたことも知ってたんだ?」
「伊達に二人とも大好きじゃないもん」
一歩間違えたらさゆは立派なストーカーになれるね。
突っ込まないでおいた。
「ヘアゴム替えに行った時今しかないと思って、戻した」
「それで今度は数珠?」
あのね、それはね、さゆはちょっとだけ間を置いた。
「迷ったんだ。わたし前に、高橋さんから数珠借りたことがあって」
「借りた?」
「そうなの。さくらおとめになった時ちょっとだけ借してくれたの、高橋さんが」
ここは追求してもあんまり意味が無さそうだ。
- 452 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:46
- 「それで迷った。一回自分の物になったから、って…そしたら絵里に見つかって」
「さゆ、それじゃ一回目の時も二回目の時も借りたつもりで取ったってこと?」
「違うと思う。…最初は、サイドポケットからあの赤いのがはみ出てるの
に気づいて、ちゃんと中に入れてあげようと思って触ったんだもん」
さゆが注文したアイスティーの中の氷がカラン、と音を立てた。
私は自分が頼んだウーロン茶を多めに口に含んで飲み干す。
「ブレスレットちゃんと中にしまって、その時にふっと思った」
もし、これが無くなったら
高橋さんは怒るかな?
「……………なにそれ、全然意味わかんないんだけど」
「絵里はさあ」
さゆはアイスティーに付いてるストローを弄びながら
「高橋さんが本気で怒ったところ、見たことある?」
と問い掛けてきた。
聞かれて素直に過去の出来事を思い返してみる。
「人の為に怒ったところなら、見たことあるよ」
最終公演前に。
- 453 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:47
- 「そうでしょ?わたし、高橋さんが自分に何かされて本気で怒ったとこ、
まだ見たこと無いんだ」
「……ちょっと」
「一年間メンバーとして過ごしてきて、喜怒哀楽の怒だけ見たことないの」
「馬鹿じゃないの?!」
駄目だ。
自分勝手も甚だしい。
しっかりした子だと思ってたのに。こんな。
こんな。
「もう知らないよ!たかぁしさんにはさゆが犯人だったってこと
言っておくから、勝手に怒られて勝手に喜べばいい」
私はレシートを乱暴に取りあげて鞄持って店を出ようとした。
「絵里も見たいんじゃないの?」
「は?」
「…伊達に二人とも大好きじゃないもん」
わたしが高橋さんに本気で怒られたってことを知ったら
絵里はわたしに嫉妬しないでいられる?
- 454 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:47
- あーあ。
やっぱりわたし、高橋さんも絵里も大好きなんだー。
だから二人が
二人だけで幸せになろうとしてるのにも気付いちゃったんだー。
大好きな二人だから
邪魔したくなかったから
でもやっぱり寂しくなって
唐辛子なんて言って
自分騙して
ちょっとでも一部分欲しくなっちゃったんだよ。
口に含んだその後にものすごい吐き気がして
結局駄目だったけどね。
あ、ちゃんとブレスレット、洗いましたから。
- 455 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:48
-
……その日の夜、たかぁしさんに電話をかけた。
彼女は
犯人がさゆと知っても
動揺しなかった。
- 456 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:49
-
三人で、いつかの階段の踊り場へ来ている。
省電力で踊り場の照明は落とされていて、
昼間なのに薄暗い。
その薄暗さに拍車をかけているのは当然私達の気持ちだ。
「…ほんで、あたしのこと怒らせたかったって?」
「はい」
たかぁしさん、踊り場の床に胡座かいて座ってて、
私は階段の一番下の段に、さゆは三段上のとこに座っている。
「……………」
なるべく見守ろうと思った。
「バカタレが」
「ごめんなさい」
さゆ謝ってるけど。
たかぁしさんの怒気がだんだん上がっていくのは感じてると思う。
「……っとにもう」
失望したわ。
たかぁしさんは容赦ない。
- 457 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:50
- 「ごめ……っ」
さゆ涙声になった。
…でもさ
「泣いて済むことか。しげみがやったんは立派な窃盗やで」
「……そうだよ」
こればっかりはフォローできない、私が言うと、さゆはもう
言葉にならないらしく蹲ってひたすらすすり泣いた。
「亀井ちゃん」
たかぁしさんはいつのまにか立ち上がってて、私に目配せをする。
……うん、私さゆが泣き止むまでここにいるから。
任せてくださいね。
…だから、言っていいですよ。
彼女は困ったような申し訳無さそうな笑みを一瞬だけ見せてから
「あーあー……早くまたさくらとおとめに分かれんかなあ」
さゆにとっては一番効き目がありそうな一言を言い残してその場を去った。
- 458 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:50
- 「……なん、でぇ?!」
さゆは蹲ったまま
「何、なんで、怒鳴ってく、くれ…なかったの…ぉ」
「さゆ………怒鳴るばかりが怒りじゃないでしょ」
でも、だって
うんわかってる。悪いことしたと思ってるんだよね。
叱って欲しかったんだよね。
だけど
さゆはもう充分たかぁしさんの怒り感じて
哀しんだじゃん。
ほらこんなに涙で色んなとこぐしゃぐしゃになって
階段濡れてるよ?
さゆの願いは叶ったんだよ。
たかぁしさんが本気で怒る怒らないに関わらず
それを受けて自分がどうなるのか。
「さゆが知りたかったのはそういうことだったんだ、きっと」
それで奪ったのが
たかぁしさんにとっての『私』じゃなくて
たかぁしさんが身に付けてた『ブレスレット』だったんだよね。
- 459 名前:哀願成就 投稿日:2004/04/15(木) 16:51
-
哀しい願いは成就した。
大きな願いは成就しないとわかりきっていたから。
だけど願いは膨らむばかりだったから。
哀しいけれど
諦めたかったから、願いをすり替えて。
愛への願いは。
哀願、成就。
- 460 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 17:04
- お付き合いいただきありがとうございます。
相変わらず駆け足で申し訳。
道重さんにはもっと申し訳。
だけど結局高さん本気で怒れませんでしたね。
代わりに亀井さんがでかい声を出しました。
- 461 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 17:07
- 何をするにもしでかすにもきっかけって些細なものからくるよなあ
と思いながら書きました。
- 462 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 17:09
- よろしければ感想をお寄せくださいませ。
- 463 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 17:09
- 念のためもう一回さげ。
- 464 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 23:25
- 駄目だフォローせずにはいられない。というわけで後日談。
- 465 名前:愛願成就? 投稿日:2004/04/15(木) 23:26
- 「藤本さんっ」
楽屋でボーっと椅子に(よっちゃんさん曰く「恐くて近寄れない」
雰囲気で)座ってたら、シゲさんが何か張り切った様子で声をかけてきた。
「なーに、シゲさん?」
「あのっ、高橋さんがつけてる赤いブレスレット、どこに売ってるか
知りませんか?!」
おお、傍でそんな息巻いちゃって、ほんとにどうしたんだ。
「あーラジオの時貰ったやつのことかな?こないだ無くしたけど
戻ってきたっていう」
「そうですっ」
「……ごめん、知らないや」
「そうですか……」
しゅーん、犬耳ついてたら明らかに垂れ下がってるね。
「あ、でもね、似たようなやつならどこかで…渋谷かな?見たことあるよ」
「え、ど、どこですかそれ?!」
あ、犬耳元に戻った。ピーンって。
- 466 名前:愛願成就? 投稿日:2004/04/15(木) 23:26
- 「えーちょっと待って、すぐに思い出せないんだけど」
「待ちます!」
おあずけっ、ですか。…妙なプレッシャーだね。
「あーっと、えーと、行ったら思い出せるんだけどなあ」
「じゃあ連れてってください!」
「犬の方が連れてけって言うのかよ!」
「犬?」
「あ、ゴメンなんでもない」
ツッコミキティになっちまったい。
「そうだね、一緒に行った方が早いか」
「良いんですか?!」
「いーよ、オフの日空けておいてね」
「はいっ!」
「………亀井ちゃん、しげみに何言うたの」
「特別あんなに張り切るようなことは言ってないけど…」
亀井ちゃんは首を捻ってから、あ、あれかな?と呟いた。
- 467 名前:愛願成就? 投稿日:2004/04/15(木) 23:27
- 「何?」
「や、さくらおとめで離れても今年のシャッフルで
もしかしたら一緒になれるかもしれないよって」
「…それだけ?」
「それだけ」
「マジっすか」
「マジっすよ」
あかん。
爆笑三秒前。
さん、にぃ、いち
「アッハ、はははは!すげーマジで?!ひっで単じゅ、のうて、
前向きやなあ!!」
「ねー、誰かさんに見習ってほしい」
「うっさいわ!」
あーでも、えかった。ほんまにえかったぁ。
あたしあの後本気でどうしようか悩んだんやもん。
「悩みまくって星に祈ってもうた」
「………やっぱり隠れロマンチストじゃないですか」
やってなぁ?
結局あたし、しげみ好きやさけ。
- 468 名前:愛願成就? 投稿日:2004/04/15(木) 23:28
- 「元通りんなってほんま良かった」
「元通り…かな」
え?
元通りやろ?
「っていうかシゲさん、何で愛ちゃんにじゃなくて美貴に聞いたのさ」
「当分邪魔しないって決めたんです。わたしはおとめ組だから。
でもブレスレットは欲しいなって思って」
「…わかったようでわからないような」
「楽しみだな〜、あったらいいな〜」
「そーだねー。見つけた時のシゲさんの顔が目に浮かぶよ〜」
あ。ミキティがしげみの頭撫でとる。
確かに元通り…やない。かも。
ま、いっか。
しげみニコニコしとるし。
うん。
良いってことにしとこ。
- 469 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 23:29
- ちょっと浮気しちゃいました。
- 470 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 23:29
- 実は好きなんですこのCP。
- 471 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/15(木) 23:31
- これで本当にこの話は終わりです。はい。
- 472 名前:2+2=4−2=2 投稿日:2004/04/16(金) 16:58
-
あなたの理想を
聞いてもいいですか?
「バカは嫌いです」
「それは理想と違うやろ」
だって真っ先に思いついたのがこれだったんだもん、
亀井ちゃんは愚痴りながら楽屋のテーブルに「の」の字を書いた。
「理想ってのは、こういう人が好き、とかそういうのやんか」
「えー……えっとぉ」
「はいはい」
「何でもテキトーな人が嫌い」
「だから!」
「自分の意見押し付ける人が嫌い」
「のうて!」
「私のギャグを無視する人が嫌い」
「真面目に答えんかい!」
「つまりそうやって突っ込み入れてくれる人が好きです」
やられた。あたしやられっぱなしや。
- 473 名前:2+2=4−2=2 投稿日:2004/04/16(金) 16:58
- 「……よっくわかりました」
「でもたかぁしさんってどっちかっていうとボケ属性ですよねえ」
「違う!それは違う!」
精一杯首を横に振った。
「いやいや、ダウンタウンで言うところの坊主の人属性ですよ」
「ほやったら亀井ちゃんは爆笑問題で言うところのでかい方属性やろ!」
「ボケボケじゃないですか」
「ボケボケやんか」
バンバンバンバン!
ひゃははは、ひーウケる!腹痛いー!!
後ろを振り返ったらアメリカンなリアクションしまくりの
ミキティとシゲさんが居った。
「藤本さん、壁に穴開いちゃいますよ〜」
「シゲさ、だ、だってアイツら、ハ、後ろでき、聞いてたら、もー」
「盗み聞きとは失礼なミキティや!」
「ちげーよ!たまたま後ろに座ってたから聞こえたんだよ!」
腹抱えててもツッコミキティは流石や。
お、待てよ。
- 474 名前:2+2=4−2=2 投稿日:2004/04/16(金) 16:59
- 「…ツッコミだ」
「…ツッコミや」
「……な、何」
「どうやろか姉さん、ここはひとつあたしらと」
「トンビを」
「トンビじゃねえだろ!」
「コンビを」
「コンビでもねえだろ!トリオだろ!」
『スバラシイ!』
まんまとハメられたことに気付いたらしいミキティはシゲさんの
陰に隠れた。
「シゲさん助けて!美貴お笑い属性にされる!」
「あー四人組のお笑いって聞いたことないなぁ」
『四人組?!』
思いがけず恋INGトリオ再び。
- 475 名前:2+2=4−2=2 投稿日:2004/04/16(金) 16:59
- 「四人だったら何ていうんだろ。………ず、ずうとるび?」
『道重!間違ってるぞ!!』
どうやら最強のボケはシゲさんやったらしい。
「…何か急にアホらしなったわ」
「私も…」
前に向き直ったその背後で、シゲさんありがとうっ!と
聞こえた。
「ピコピコーン、藤本さんとさゆの新密度が2上がった!」
「あたしらのコンビネーションも上がった。貢献したな」
「貢献しましたね」
「うむ、世は満足じゃ」
「わらわも満足ですじゃ、じゃない、ですわ」
- 476 名前:2+2=4−2=2 投稿日:2004/04/16(金) 17:00
- 「藤本さん、肩ブルブル震えてますよ?」
「し、シゲさ……おねがい、あのボケ二人のおかしな会話止めて」
無理っぽいからあっち行きましょう。
あっ、そうか。シゲさん頭良い〜
「あっちも下克上っぽいですよ」
「も、って何じゃコラ」
「たかぁしさん知らないんですか?藻は海草の一種でぇ」
「いつまでボケる気や!」
うんやっぱりたかぁしさんのそういうとこ好き〜
何か言うとったけど今度は無視してやった。
- 477 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 17:01
- 初心に返ってみました。
- 478 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 17:01
- あの曲聴きながら思いついた話とは思えない…
- 479 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 17:02
- さげっ!
- 480 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 18:00
- テンポのよいボケとツッコミで笑いました。3人のボケに的確にツッコもうとしたら疲れるでしょうねw…ミキティーなら出来るはずです。
- 481 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:02
-
たかぁしさんが
豹変した。
「え、え」
「今日は素直に言うこと聞き?」
たかぁしさん家のたかぁしさんの部屋のたか…
とにかくベッドに腰掛けて二人でテレビ観てたら。
わあ、迫ってくる迫ってくる。
『Do it now!』な顔で迫ってくる。
真摯な表情ってこういうのをいうのかな…でも迫ってく…あ、
奪われました。
「…っ、ど、どうしたんですか急に。らしくないですよ」
「んなこたーない。あたし真剣や」
「真剣になんでしたっけ」
「たまには抱かせなさい」
青天の霹靂です。
こんなこと積極的に言う彼女は初めてです。
- 482 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:03
- なので
びっくりして固まってる間に押し倒されてました。
「…何フリーズしとんの」
ふふ、とか笑っちゃって。
私の髪の毛先を指先で弄んで
「綺麗やね」
とか言っちゃって。
何か変なもの食べましたっけ。
季節はずれの鍋焼きうどんがいけなかったのかな?
いやーだって、今日はうどん気分だったんですよ。
「絵里」
「はぃっ」
「…何て言って欲しい?」
「え?」
「こういう時、何て言って欲しい?」
「…言ってくれるんですか?」
あ、ちょっと待って。
たかぁしさん標準語になってるよ。
- 483 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:04
-
(駄目だあ………)
想像の限界です。
皆様すみません。今までのは
私の妄想でした。
夜中に目が醒めちゃったんです。
で、何か体があっついんです。
つまりそういうことで。
たかぁしさん隣で寝てます。
寝顔が凄く綺麗で見とれてたら
妄想してました。
(エロな後輩、どんぴしゃり)
でもいつもの彼女を知りすぎてるだけに
限界でした。
(…このやろー、たまにはカッコイイとこ見せろ)
心の中で毒吐いたら
たかぁしさんの眉間に皺が寄りまして
「…ん、ふぁ?」
間抜けな声出して起きてしまいました。
- 484 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:05
- 「オハヨーゴザイマース」
「…今何時ぃ」
「ウシミツドキデース」
あ、言い忘れてましたけど、
今日は彼女の親御さんが居られるので
あんなことやそんなことはできません。
できないから妄想しちゃったんです。ほんとです。
…いや、ほんとですよ?
居なかったらとっくに行動に起こしてます。
「なん、ずっと起きとったん?」
「ほんのちょっと前に目が醒めちゃったんですよ」
そぉかぁ、彼女はまだ本格的にまどろみから解放されて
いないご様子です。
「もしかしたら起こしちゃったかもしれない。ごめんなさい」
「ぃやあ、気にすんなよぉ」
「こちらこそ。気にしないで寝てくださいね?」
「……………むー」
顔を手でパタパタ扇いでる。
「暑い?」
「暑い………暑い………?」
まだ寝ぼけてますね。
- 485 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:06
- 「のぅてぇ、あっちぃ。体が」
「え?」
「なんやぁ、これ……扇いでもあっちぃで」
…答えをあげていいんでしょうか。
皆様、私どうしたらいいんでしょう。
「…窓開けよ。あ、寒かったら言うてな」
「うん」
五センチほど開けられた窓から夜風がすうっと入ってきます。
季節柄、冷たいくらいです。
だけど
「えー?あかん何コレ。あっちぃ」
ここまでくると
二年も長生きしてるくせに
どうして気付かないんですかねこの人は。
ああもどかしい。
「たかぁしさん」
「ぅん?」
「それ、もしかして発情してるんじゃないですか?」
「………ぁあー、なるほどぉ」
あら。あらあらあら。
あほぉ、とかぼけぇ、とか言われると思ったのに。
納得してしまいました。
- 486 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:06
- 「…ど、どうなんですか?」
「そうかもしれんー」
しかも肯定してます。
予測不可能な事態に陥ってしまいました。
ええ、どうなるんですか一体。
「んー…なあ絵里ぃ」
「はぃっ」
「すぐ眠れそう?」
「あ、や、目ぇ冴えちゃいました」
「ほんまに?」
いやだって私もまだあっちいですから。
とは言えなくてとりあえず首を縦に振りました。
「ほやったらぁ、いっちょ抱かれてみる?」
「はっ?!」
青天の霹靂が本物に。
「あーごめん、やっぱ嫌やんなぁ」
「っそ、そうじゃなくて、だって今日はオヤゴサンイルジャナイデスカ」
だからいくらなんでもそんな、ねえ?
まだ寝ぼけてるってんだったらはったおしますよ先輩。
- 487 名前:あなたが寝てる間に 投稿日:2004/04/16(金) 22:07
- 「おかーさん?あ、言うてなかったっけか?」
「何を」
「うちのおかーさん、都会は夜中もうるさい言うて」
耳栓して寝てんの。
……オチが読めた方、ご起立願います。
「…も〜…」
そりゃあ突っ伏したくもなりますよ。
「えー何、何でそんなリアクション」
「……や〜もう…半泣きなんですけど」
「そんな心配やったん?」
ほうやのうてぇ
「嬉し涙ですよーだ、ばーか」
- 488 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 22:08
- 窓閉めるの忘れないようにね。
- 489 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 22:11
- >>480 名無飼育さま
レスありがとうございます。
あの三人お笑いとして均等に相手したら藤本さん絶対禿(略)
…と思います(笑)でもやり遂げるでしょうね。そんな感じします。
- 490 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/16(金) 22:12
- さげ
- 491 名前:頬擦り 投稿日:2004/04/17(土) 18:15
- 時計の針は午後五時を過ぎた。
西日が思いっきり音楽室全体を支配している。
「ひ〜〜ま〜〜 じゃ〜」
「…先輩、それ楽しいですか?」
高橋先輩が音楽室の黒いカーテンにグルグル巻きになって
遊んでいるのに突っ込みを入れてみる。
「意外と楽しいでぇ。亀もやってみ」
「亀って呼ばないで下さいってば」
確かに私の苗字は亀井ですが。
それだけで呼ばれるとノロマって思われるの気にしてるん
ですって何度言えばわかるんですか、もう。
今この教室に居るのは、
1−C亀井絵里と3−A高橋愛さんの二人だけ。
ともに合唱部員だ。
「こんこん遅いなあ〜」
こんこんというのは同じ合唱部員の2−E紺野あさ美さんのこと。
紺野さんは今、担任の先生に呼び出されていて、高橋先輩と私は彼女を
待っているところなのだ。
- 492 名前:頬擦り 投稿日:2004/04/17(土) 18:16
- 「いちご大福が手薬煉引いて待っとるっちゅうに」
先輩は包まったカーテンの隙間から顔だけ出してぶーたれた。
実は今日
私と高橋先輩、紺野先輩はそれぞれ部活が中止になったのを知らずに
音楽室に顔を出し、ホワイトボードにでかでかと
『今日の部活は中止です』
と書かれていたのを発見してガックリ肩を落とした仲だ。
って言ってもそれぞれ初対面というわけではなく。
私は高橋先輩に合唱部に勧誘されたことがきっかけで知り合い。
紺野先輩はもともと合唱部に居たから当然高橋先輩とは
かなり仲が良いらしい。
確かに
肩をガックリさせながらも彼女達は学年が一個違うのに
タメ口で話してた。
「あーなんか悔しい!今日は新しい曲だって楽しみにしてたのに!」
「…愛ちゃん、ヤケ食いに行こうか。いつもの和菓子屋さん」
「おっ、いいねえ!あー、亀井ちゃんも一緒に行くか?!」
私はちょっと躊躇したが、甘いものの誘惑には勝てなかった。
それで音楽室を出ようとしたら、運悪くクラス委員で運悪く担任の先生が
通りかかったところにぶつかった紺野先輩が連行されてしまった
というわけだ。
- 493 名前:頬擦り 投稿日:2004/04/17(土) 18:17
- 「かーめーいー」
「何ですかぁ」
まだカーテンの中にいた先輩がおいでおいでしてる。
……正直ノリ気じゃなかったけど、先輩なので。
それに、西日がほんとに眩しかったので。
お付き合いいたしましょう。
「ヒッヒッヒ、捕まえたでぇ」
「捕まりましたでぇ」
入ってみるとこれがなかなか居心地がいい。
というか
先輩に後ろからぎゅーっとされつつこの狭い感じが
なんだかとても安心するのだ。
「そうだ先輩」
「ぉう?」
「うちのクラスに部活紹介に来た時、何で私のこと
指差して勧誘してきたんですか?」
一気にクラス中の注目浴びちゃって
もんのすごく恥ずかしかったんですよ?
- 494 名前:頬擦り 投稿日:2004/04/17(土) 18:17
- 「えーだって、あたしんことずぅっと見とったやろ」
「嘘だぁ」
「嘘やないってぇ。視線で殺されるかと思ったで」
そんな大袈裟な。
や、確かにあの時私は
先輩のもんのすごい訛りにびっくりして凝視してた。
…かもしれないですけど。
そんな、ずっと見てただなんて。
………身に憶えないです。
うん、ないですよ。
「ごめーんお待たせ!……って、何してるの」
紺野先輩が漸く戻ってきた。
「待ちくたびれて密会ごっこやー」
「…そうだったんだ」
「ごめんごめんほんとごめんね?でも文句なら山親父に言って」
- 495 名前:頬擦り 投稿日:2004/04/17(土) 18:18
- 山親父っていうのは紺野先輩の担任の先生のあだ名ですか?
さっき会ったばかりの先生のビジュアルを思い出そうとしてる
うちに高橋先輩はカーテンから抜け出してしまった。
「亀井ちゃん行くでぇ」
「あ、はい」
呼ばれてそこから離れようとしたその瞬間に。
ここは私だけの特別な場所にしよう。
ふとそんなことを思って。
ほんの一瞬だけカーテンの裏地に
頬擦り。
独特の古めかしい匂いが少しだけ懐かしかった。
- 496 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/17(土) 18:18
- 初アンリアル。
- 497 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/17(土) 18:19
- ちょうど高1〜3だったもので。
- 498 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/17(土) 18:20
- 一度はやったことあると思います…
- 499 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/17(土) 21:57
- 今日発見して全て読みました!
おもしろいです。亀高にハマりました
- 500 名前:だって青かったんだもん 投稿日:2004/04/18(日) 20:00
-
「なっちの名はドラ○もん。未来からきたネコ型ロボットだべさぁ!」
「………安倍さん、もうワンテイクあげますで」
お、オホン。
ほんじゃあもう一回行くね!
いやもうバレバレだからその顔隠してる青い団扇は
要らんですよ、安倍さん。
なっちトイレに行こうと思って廊下歩いてたらさぁ、突き当たりの
窓のとこに高橋がいたのよ。
あ、今日ねハロモニの収録だったんだけど。体力バトル。
- 501 名前:だって青かったんだもん 投稿日:2004/04/18(日) 20:00
- 高橋すんごい頑張ってたよねー。なっち感動しちゃってさあ。
あ〜あ〜そうじゃないって、それはいいんだって。
で、高橋疲れてるのかなあと思って声かけようと思って、
でもどうせなら何かさ、疲れ取ってあげたいしょ?
そんでトイレの後に楽屋で何かないかなーってこう色々見てたら
これが目に入ったからさあ。
だって青かったんだもん。
まあー見事に滑った滑った。滑っちまった。
なっちのヘマも寒かったけど高橋の表情がすんごい暗くってさ。
疲れのせいかなって思ったらどうもそんだけじゃないみたいなの。
「だーれかさんとだーれかさんが雰囲気悪ぅなっとった」
「だーれさんとだーれさんよ」
「………誰にも言わんといてくださいね?」
「………なっちもう告げ口する相手もいないもーん」
「あぁあああ、ご、ごめんなさいほんますんません」
「おかーさーん、高橋がいじめるよー」
ちなみに今日の通信機はバージョン10だべ。
「やぁもうほんと、すいませんですって」
「へっへー、いいよいいよ。ちょっとふざけただけだべさぁ」
「んっとに安倍さんは変わっとらん」
あーよかったぁ。高橋ちびっと笑ってくれたよ。
- 502 名前:だって青かったんだもん 投稿日:2004/04/18(日) 20:01
- 「で、だーれさんとだーれさん?」
「里ー沙ちゃんとかめーいちゃんや」
「ガキさんと亀ちゃん?」
ほうなんですよ。
今日はもうほんとヒヤヒヤしたで。
「えー、なっちそんな風に見えなかったけどなあ」
「傍で見てたらっつーか、近くに居ったら何かピリピリしたもん
感じたで。ビミョーな距離できてたり…それに」
「それに?」
「あたし実際、前にお互いがお互いの陰口言うてんの別々に聞いてもて」
「あっちゃあ」
それは決定的だべさ。
「あんなこと言う子らやないと思とったからショックでかくて、
返って他人のあたしの方が気になってもうたんです」
「なるほどねえ。でも別に喧嘩とかしたわけじゃないんだべ?」
あそれはないです、高橋はほんとに自分のこと言われてるみたいな
感じで答えたよ。早口で。
「だったら当分見守るしかないべ、となっちは思うさぁ」
「……ほうやろなあ。やっぱ」
「でも間に挟まれる形になっちゃってキッツイよね」
- 503 名前:だって青かったんだもん 投稿日:2004/04/18(日) 20:02
- 気持ちわかるべ。どんまいだー高橋。
なっちは窓の縁に肘ついて凭れかかってる高橋の背中をポンポン叩く。
「うー、せめて三人の時は真ん中に居らんとなあ……」
せめて?
なっちよくわかんないんだけど、とにかく中立の立場でいようと
してんのはわかったんだ。
「愛ちゃん、またなんかあったらなっちで良かったら話聞くからね」
「あぁー、……ありがとうございます、安倍さん」
愛ちゃんご丁寧にこっち向いてぺこりとお辞儀をしてくれたよ。
昔から挨拶とかしっかりしてて礼儀正しい子ではあったけどね。
でもさでもさぁ、こんな風にさ、誰かと誰かが仲悪いってゆって
落ち込んだりしてるの、何かすごいね。余裕が出来たっていうかさ。
成長したんだねぇ愛ちゃん。
なっちは嬉しいよ。
- 504 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/18(日) 20:02
- あの回の観過ぎで邪推しすぎです、ハルヒさん。
- 505 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/18(日) 20:04
- や、あの……邪推ですから……
- 506 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/18(日) 20:07
- >>499 名無飼育さま
レスありがとうございます。貴重なお時間を割いていただき恐縮です。
マイペースにこれからも亀高(たまに浮気しつつ)やっていこうと思ってますので
よろしければこれからもお付き合いくださいませー。
- 507 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 14:13
- ご利用は二名様からで、お一人様一時間千円からに
なっておりますぅ。
「あ、ほいじゃ二名でお願いします。えーととりあえず一時間で。
名前、高橋です。はい、はいどーもよろしくー」
受話器を置いて心なしか浮き足立ったあたしは、
途中の廊下でつい
「ほぅ!」
とか言いながら楽屋に戻った。
遡ること数日前。
「温泉に行きたい〜」
移動中のバスん中で彼女は唐突に呟いた。
「温泉ねえ」
「渋いですか?渋いですよねえ」
「ってか渋いって言われたいんやろ」
亀井ちゃんやっぱり、うん、って頷いた。
- 508 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 14:14
- 「でもなー、気持ちわかるけど難しいと思うで」
「そう言われるとますます行きたくなる〜」
その気持ちもよくわかる。あたしはしばし考えた。
「目的は何なんよ。ちゃんとした温泉宿に泊まって
湯につかりたいんか?」
「っていうか、足伸ばせるお風呂に入りたい」
「ああ、なーるほどぉ」
「だったら家族風呂で充分なんじゃない?」
背後からミキティが座席の上からひょっこり。
…また後ろにいたんか。
「家族風呂って、家族じゃないと駄目なんじゃないですか?」
「なあ、名前からして」
「そんなことないよ。人数居ればいーの。二人以上」
えーそうなんや、初めて知った。
「だからカップルとか普通に行ってるよ」
そりゃまた初耳や。
- 509 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 14:15
- 「カップルですか」
「ほー、カップルねえ」
「へー、カップルかあ」
「カポーやて、カポー」
「なるほどカポーだけにカッポーンて」
ウクッ、背後で何か堪える鈍い音だか声だかが聞こえて
「…い、行きたいんならさっさと二人で行けよ、
このボケカップル」
まだ居ったんかツッコミキティ。
「藤本さん、そろそろ危ないから座りましょー」
「だってあいつらがさあ。あのままほっといたら美貴
腸捻転になりそうだったからさあ」
笑いすぎて腸捻転になんてなるんか。
後ろにいるもう一人が誰だかはもう言わずもがなって感じに
なっとるな。
…ってな経緯があって、今度のオフの日に亀井ちゃんと
日帰り家族風呂計画が持ち上がり、さっきの電話に繋がる。
言うても二人だけやけど。
- 510 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 14:15
- あーでもなんか、足伸ばせるお風呂やて!
あたし銭湯とか温泉とか人一杯居るとこでお風呂て、
落ち着かんくて苦手なんやけど。
ほやさけ実は電話するまで気乗りせんかったんやけど。
詳しく聞いたら四人は余裕で入れる広さの浴槽やて!
しかも入んの亀井ちゃんとあたし二人だけや。
うっわ、楽しみやなあ!
- 511 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/19(月) 14:16
- 「お風呂」より「風呂」って言いそうなんですけど。
とりあえず続きます。
- 512 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 20:44
- 「どうせなら貸切風呂で一泊にしちゃいましょう」
…楽屋に戻ったら電話帳とにらめっこしてる亀井ちゃんとご対面した。
どっから持ってきたんやそれ、と突っ込もうとして止めた。
やってしげみが一緒んなってページ捲ってるんやもん。
多分犯人はコイツやろ。
「えーちょっと、ついさっき予約入れてきたばっかやで。
それに一泊なんてスケジュールが」
「多少無理すれば今度のオフに行けますよ。キャンセルしてきてください」
「くださーい」
部外者のはずのしげみが手を振る。
え、なん、しげみも一緒に行くことになったんか?
「わたしは行きませんよ〜。その日は藤本さんと渋谷です」
「うんそう。邪魔しないから安心しなよ」
は、この背中誰かと思ったらミキティやったんか。
そのミキティもどっから持ってきたんか知らんけど
『関東の温泉宿百選』とかいうそのまんまなタイトルの
冊子を睨んでた。
…もしかして電話帳、彼女の仕業か?
「や、家族風呂の提案したの美貴だからさあ、一応調べとこうと
思って。コンビニに売ってたし」
この人って実は世話焼きさんなんやよね。
そのミキティが、あ、ここは?と冊子の写真を指差した。
- 513 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 20:45
- 「ほら貸切風呂あるし、おまけに図書館みたいなとこもあるよ。
えりえり最近本好きでしょ」
「おぉ〜」
冊子を覗き込んだ亀井ちゃんの目がキラキラしとる。
あたしも見せてもらったら、なんとまあ純和風の温泉旅館で、
言う通り別館に本たくさん置いてあるとこがあった。
あたしも本好きやさけ、
『これはいい』
ついそう漏らしたら、亀井ちゃんとハモってた。
「うんよし決まりだね!シゲさんごめん、美貴のケータイ取って」
「あ、はい」
「え、何今電話すんの?っていやあたしらでやるって」
かまへんかまへん、ミキティはとっくに番号をプッシュしとる。
「はいそうです二名で貸切で。名前ですか?藤、じゃなかったえっと」
「高橋」
「亀井」
「どっちか一人でいいんだよ!……あ、すいません。高橋で」
あんたたち未成年だから愛ちゃんは二十歳のフリするんだよ。
ツッコミキティはこんなとこまで気遣って忠告してくれた。
- 514 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 20:45
-
その後色々調べてみたら
新宿駅からその旅館までの直行バスが出ていたので
「絵里ー、お土産よろしくねー」
「愛ちゃんはしゃぎすぎるなよー」
『いってらっしゃーい』
藤本道重ご両人に見送られながらあたしらは出発した。
「なんとまあまったりとしたコンビやね」
「何か絶対喧嘩とかしなさそう」
二人の姿がどんどん小さくなってくけど、まだ手を振っとった。
あー、もう肉眼じゃわからんな、二人ともありがとぉ。
「見えなくなっちゃった?」
「うん」
「よーし絵里いちゃいちゃしちゃうぞー」
うわ、手ぇ握ってきよったで、亀のやつ。
しかも
「……むにむにすんな、こそばゆい」
「やーだ よっ」
- 515 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 20:46
- バスも高速に入ると途端に景色がつまらんもんになってもて、
あたしは窓から顔を離した。
亀井ちゃんは、というかあたしら二人はこう、二人一緒に居て
無言になってもどっちも特にそれを気にせんくて、気が向いたら
喋るし、そうでない時は割と自分の好きなようにしてることが多い。
そんで窓の外見てる間に亀井ちゃんは何をしとったかっちゅうと、
ポータブルMDで音楽を聴いとった。
「あーしまった!」
「うん?」
「あたしそれ持って来んの忘れた……浮かれて用意してたからなあ」
数十分前にはしゃぎすぎんなよーと言ってくれたミキティに、
ごめんあたしとっくにはしゃぎすぎとったわ、と詫びる。
「それじゃこれ、聴きます?プッチベストふぉーですよ、ふぉー」
と言いながら彼女は片方の耳からイヤホンを外した。
「いんやそこまで………」
あ、目ぇ合った。
- 516 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 20:47
- 「……そっかそういういちゃつきもアリですね」
「……受け取りようによってはいちゃいちゃしてるように見えるか」
亀井ちゃんの手から、外した片方のイヤホンを受け取り、
自分の耳にそれをつける。
そしたらアヤカさんとマコトが
いつものように 会話止まる♪
って歌っとったから、つい
『ヘーンーなーじーかーんた い、ねー え♪』
吉澤さんとユニゾン。
三人で。
「ぶ、アッハハハ!」
「はは、ウケるー!」
<バスんなかで大笑いすんなよ!はしゃぐなって言っただろ!>
……ミキティほんますいません。
- 517 名前: 投稿日:2004/04/19(月) 20:49
-
『幸福な一時停止』
『さかなに出逢う』
再生。
- 518 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 20:50
- 絵里と高橋さんが乗り込んだバスを、見えなくなるまで
見送った。
いっぱいいっぱい、藤本さんと手を振って。
きゅうぅ〜
「あ」
その藤本さんがお腹を抑えて
「あは、腹鳴っちったよ。朝食べ損なっちゃったからさあ」
歯を見せて照れ笑い。
「先に何か軽く食べて行きますか?」
「うーん、ごめんそうしていい?シゲさん」
今日付き合わせたのはわたしの方ですから。勿論いいですよ。
わたしは飲み物だけにしておきますね。
「あ、本当?そんじゃファストフードでいいや。行こっか」
二人並んで店に向かった。
- 519 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 20:51
- 「や〜、あの二人楽しんで来れたらいいねえ」
「そうですねー」
一口サイズのパンケーキを頬張って、藤本さんは満足げに
微笑んだ。
わたしはアイスティーのストローを弄ぶ。
食べるペースに合わせた方がいいと思って。
あ、でもこれやってたら。
…嫌なことを思い出してしまった。
「…シゲさん?」
「はい?」
「どしたの、今、目が据わってたよ」
「やなこと思い出しただけです」
そっか、藤本さんは短い返事をしてからまた遅めの朝食に
取り掛かった。
………これが高橋さんだったらその先を聞いてくれて、
慰めてくれるのに。
もう絵里のものになっちゃったんだあ。
しかも今日は二人で、二人だけで…
- 520 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 20:52
- 「えりえりがどうしたって?」
「え?」
「いや、今絵里のものがどうとか」
「言ってました?」
「言ってました」
あぁやっちゃったよ。
トイレ行って手洗い忘れて水飲むくらい間抜けだよ。
「……えー、っと」
「言いたくないなら無理しなくてもいいよ?」
「や、そうじゃないんです」
寧ろあの二人に
『なのに、どこ行くんだよー!!』って叫びたいくらいです。
「叫びたいの?」
「えっ、………また言ってました?」
「言ってましたよー。シゲさん面白いね」
藤本さんはシッシッシってどこかのアニメに出てくるキャラ
みたいな笑い方をしてる。
二回目だから笑われても仕方ない。
…二回目だから
もうちゃんと白状すべきかも知れない。
- 521 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 20:52
- 「あのー、実はですね」
「うん?」
「わたし高橋さんが大好きなんです」
「知ってるよ。っていうか有名じゃん」
「絵里も大好きなんです」
「それもわざわざ言わなくてもみんな知って」
「だから気付いちゃったんです」
「…あー、ボケコンビがボケカップルになっちゃったこと?」
「はい」
アタシあの時うっかりボケカップルって言っちゃったからなあ
いえ違うんです。その前から気付いてました。
藤本さんは飲み物を一口飲んでから
「気付いちゃったんだ」
「気付いちゃったんです」
「ごめん!」
深々と頭を下げれられてしまった。
「……え、何で謝るんですか?」
「あの二人がああなったの、アタシのせいでもあるんだ」
……嘘ですよね?
- 522 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/19(月) 20:53
- 思いがけず長い話になりそうです。
- 523 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 23:51
- 藤本さんからの説明を要約するとこうなる。
占いが好きで高橋さんと絵里の相性が良いと知った彼女は、
新垣さんと協力して
試しに二人が二人きりになるように仕向けた。
そしたらああなった。
「いやどっちかっていうと蟹座で月が蠍のA型なシゲさんと
えりえりの相性のが良かったりするんだけど、ね?」
そもそも十二星座ってもっと奥が深くてみんな知ってるのは太陽
星座ってやつで実は月星座ってのもあれば水星金星地球抜かして
火木土天冥海って全部に星座が割り当てられてて云々。
「そんなの言い訳にしか聞こえない」
「……だよね」
胸の奥のほうでなんだかふつふつといってるのがわかった。
「でもさあ、確かにきっかけ与えたのアタシなんだけど……
あの『道』を選んだのは愛ちゃんとえりえり自身で」
ドン!
拳が勝手にテーブルを叩いてた。
「……サイテー」
唇が勝手に喋ってた。
- 524 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 23:52
- 「…うん、アタシサイテーだね。認めます、ごめんなさい」
「今更謝られても」
胸のふつふつは頭の方まで昇ってきている。
簡単に言えば。
許せない。
「……わたしはそのことを知らないで、勝手に二人に嫉妬して
少しでもこっち向いて欲しくて高橋さんのブレスレットまで盗んで」
「…あれ盗んだのシゲさんだったの?」
「終いにはあの赤いのがブレスレットじゃなくて高橋さんの一部だと
勘違いして」
「……シゲさん」
「ひょっとして飲み込んだら少しでも何か恩恵に預かれるかなんて」
「口に入れたの?」
「吐き出しましたよ」
馬鹿野郎、酸っぱいものがこみ上げてきた。
「……羊たちの、だったかな、カニバリズム」
「何の話ですか」
「映画で観たんだ。シゲさんがやったことって、カニバリズムって言うんだって」
蟹座のわたしがカニバリズムですか。
笑えないジョークだ。
「…ここ、出ましょう。外の空気吸いたい」
じゃないとこの淀んだものを淀んだ店内に吐き出してしまいそうだ。
諸悪の根源に向かって吐き出してしまいそうだ。
「わかった。片付けとくから先に出てて」
- 525 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/19(月) 23:53
- トレイを片付けている間、頭の中で
『大丈夫、大丈夫、何とかなるよ』
って言い聞かせてた。
シゲさんの怒りの矛先がアタシに向いてれば
あの二人には迷惑かけずに済む。
アタシはすでに
ガキん子まめ、こと、ガキさんっていう犠牲者を一人出しちゃってる。
あの子からのメールで
愛ちゃんに対する想いを知った時ほど
今は動じてないから。
大丈夫
大丈夫
…何とか、なるよ。
- 526 名前: 投稿日:2004/04/19(月) 23:55
-
『幸福な一時停止』
停止解除。
- 527 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 23:55
- そもそも私達が勝手にスケジュールをいじることなんて不可能で
旅館に一泊した翌朝は朝六時のバスに乗って戻らないとその日の
仕事に間に合わない。
それでも私は、私達は、この計画を遂行する道を選んだ。
これもやっぱり二人で旅行(温泉宿に一泊するだけだけど)っていう
『通過儀礼』の一つって認識なんだろうか。
…いや、違う。違うと思う。
私にとっては。
何か他にもう一つあるような気がするんだけど、それが何かは
まだピンとこないんだ。
「うお、すげ!自然が一杯窓から見える!」
「緑色が一杯だー!」
旅館にチェックインして通された和室に辿り着き、荷物を置いて。
とりあえず窓の外の景色を見て感激するのもお約束。
だけど本当に景色が綺麗で、たかぁしさんとしばらく窓辺に
佇んでいた。
「はへー、何かもうこんだけで来た甲斐あったー」
「まだ早いですよぉ」
「やってぇ、亀井ちゃんはそうでもないかもしれんけど、
あたしはこういうん見ると地元思い出すんやて」
ほうっ、たかぁしさん溜め息ついてしみじみ。
早速隠れロマンチストが現れました。
- 528 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 23:56
- 「じゃあしばらくそうしててください。私はお茶飲んで
私なりのしみじみに浸りますー」
「あっ、ひどっ」
「ちゃんと二杯淹れますってば」
「あら嬉しい」
「その反応、二十歳どころかおばちゃんですよ」
「おだまり!」
「その反応も」
「あーもう!雑音退散!」
ほんっと飽きない人ですね。
急須から湯飲みへ流れるお湯の
こぽこぽという小気味いい音に思わず頬が緩む。
ああ日本人で良かったです。
で、まず一杯分を淹れ終えて
「お茶入りましたよお、お父さん」
と言ってみたら
「おぉー、今行くぅ。座布団出しといてくれぇ」
ベタな『お父さん』的リアクションが返ってきた。
「もう何言ってるんですか、そんなのとっくに出して
ありますよ。私が忘れるはずないでしょう?」
「さすがは自慢の母さんや」
- 529 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/19(月) 23:57
- 惜しい。
いきなり福井訛りにならなかったら笑わずにまだ
続けられてたのに。
堪えきれなくなって先に笑ってしまいました。
「母さん何が可笑しいんや」
むっとしながら座卓へやってくるたかぁし父(仮)。
だっていきなり訛ったんだもん。
「あ、ほうか。…って、自分の分まだ淹れてへんの」
「あー忘れてたぁ」
笑いの余韻がまだ残っててちょっと震えてたけど
なんとか淹れることが出来ました。
お茶菓子には煎餅と最中が用意されてあって、
私は迷わず煎餅、たかぁしさんは最中を手に取った。
「こういう時は疲れてるから甘いもんに手がいかん?」
「好きな方に手が行きます」
「一貫してるな。母さんさすがやな」
「まだ母さん言ってるんですか」
え、もうあれ終わってたん?
「とっくのとーに終わってますよ、お父さん」
- 530 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/20(火) 00:02
- 続きます。
- 531 名前: 投稿日:2004/04/20(火) 15:53
-
『幸福な一時停止』
『さかなに出逢う』
再生。
- 532 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/20(火) 15:54
- シゲさんはアタシが店から出てきた途端にさっさと一人で歩き出した。
そうだよね、こんな奴と一緒に並んで歩きたくないよね。
その背中に向かってアタシは、声に出さない主張をした。
シゲさんアタシさあ
どうせこっち向かせるんだったら
やっぱり
怒ってる顔より喜んだり笑ってる顔が見たいよ。
シゲさんのそういう顔を見たいよ。
「……どこ、行くの?」
「知りません」
ああやっぱり怒りの矛先を探して歩いてるだけなんだ。
「渋谷は?」
「もうどうでもいいです」
しかも本来の目的もどうでもよくなっちゃってる。
アタシのせいだね。
これはもう、しばらくシゲさんに付いてって
落ち着くのを待ったほうがいい。
時間よ
なるべく早送りで進め。
- 533 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/20(火) 15:55
-
歩いた。ひたすら歩いたね。
どうでもいいって言ってた渋谷にまできちゃったよ。
それで
やっぱりブレスレット、探しちゃったよ。
色々歩いて探し回ったけど
アタシがこっちの店かもって言っても
無視して逆方向行って別の店行くシゲさん。
意地になってる。
何かちょっとかわいいな。
そんな感じで結局ブレスレットは見つからなかった。
東京は夜の七時。
「シゲさん、お腹空かないの?」
「空いてます」
ねえじゃあどっか入って何か食べようよ。
嫌です。混んでるし。
「それもそうか。じゃあさあコンビニかどっかで
食べるもの買って公園とかで食べよう?」
前を歩いてたシゲさんが久しぶりにこっち向いて
頷いてくれた。
- 534 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/20(火) 15:56
- あったかいコーヒーとお弁当を買って、
住宅街の中にあるお粗末な公園に辿り着いた。
アタシが昔よく地元の公園で遊んでた遊具が
解体されて土台だけになってて、何か切なくなった。
ベンチの上の砂をほろって、あ、ほろうって方言なのか。
払って、はい、いいよってシゲさんを座らせる。
歩き回って疲れきってたから
コンビニ弁当、すごくおいしかったね。
それにしても愛ちゃんも罪な奴だ。
一部分でも欲しいなんつって身に付けてたもの盗まれて、
相手はそれを愛ちゃん自身と思い込んで自分の体の
ひとつにならないかなんつって飲み込もうとしたんだよ?
本人にはバレてないみたいだけど、なんか、なんかさあ
妬いちゃうよね。
そこまで想われてみたいもんだ。
さてと、それじゃあ。
今からアタシは演技をします。
シゲさんがそれに気付いたら
勿論シゲさんの勝ち。
だけどアタシ、負ける気しないんだよねえ。
- 535 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/20(火) 15:57
- 「ねえ、シゲさんさあ美貴の方においでよ。
美貴ならおとめ組で一緒だし、一緒に居る時間が
一杯あるよ。寂しくないよ。
オフの日は今日みたいにこうやって街に出てさ、
買物とかして」
毎日電話して
会いたいって言うんならすぐに駆けつけるし
何かしてほしいことがあったら言ってよ
多分やり遂げてみせるし
欲しいって言うんなら
手に入りそうだったらなるべく頑張るから
「だけど愛ちゃんとえりえりの仲をどうこうして、
っていうのはナシね」
「……藤本さんには松浦さんがいるじゃないですか」
「亜弥ちゃん?亜弥ちゃんはね、自分の次に美貴のことが好きなんだよ」
「わたしだって自分のことが一番好きです」
「うんそこは一緒だと思うけど」
でも
圧倒的に亜弥ちゃんよりシゲさんの方が
同情心が強い。
その証拠にほら
今すごく迷ってるよね?
「……本音を言うとね、美貴も寂しいんだ」
朝起きた時、家に帰った時、まず真っ先に
テレビをつけるのは、その寂しさの顕われ。
「一人で寂しいんだ。
だから美貴の傍にいてよ、さゆ」
- 536 名前:さかなに出逢う 投稿日:2004/04/20(火) 15:57
- 手を伸ばして
この手を君が掴んだら
『アタシ』の勝ち
「……………」
ほらね
やっぱり
負ける気しなかったんだ。
蟹の癖に疑似餌にひっかかるなんて、
お人好しだなあ。
連れて行くよ。
先のことなんてわかんないけどさ、
今から
少しずつ幸せにしてあげるからね。
「……美貴、さんは」
「うん?」
「何座でしたっけ」
「二月二十六日生まれの魚座、A型です」
- 537 名前: 投稿日:2004/04/20(火) 16:00
-
『さかなに出逢う』
再生終了。
- 538 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/20(火) 16:02
- 片方は終了です。
- 539 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/20(火) 16:02
- ………
- 540 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/20(火) 16:02
- 私の浮気者め。
- 541 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/22(木) 14:43
- まだ一時停止中です。合間に短編をどうぞ。
- 542 名前:おでかけしましょ 投稿日:2004/04/22(木) 14:44
- 休みの日が連休でなんて夢みたいや。
もうずっと忙しかったからのお。
今んとこ
初日はマコトがうちに遊びに来るから、一緒に宝塚
漬け。DVDだのビデオだの観まくり。
残りは
途中で止まっとるゲームの続きやろうってことは決めとって。
でもいざ休みの日に目ぇ醒めてみたら
……どうも、大好きなはずの宝塚やのに
観る気起きんで。
かわりに
マコト早く来ないかのおってそればっか。
春やしなあ、
人恋しなっとるんかなあ。
あれぇでも、それって秋やないんか?どっちかってーと。
やあ、何かもうウズウズする。
カーテン開けたらものすご空青かった。
早よ来いやぁマコト。
落ち着かん。
とりあえず家ん中、玄関から自分の部屋まで早足で
往復すること三周目。
「あんた何しとんの」
歩いとんじゃ。見てわからんかいマイマダー。
…いや、聞いとんのそこやないってことはわかっとる。
- 543 名前:おでかけしましょ 投稿日:2004/04/22(木) 14:47
-
うーん?
やっぱ落ち着かん。
あたしは発作的に
携帯取り出してこっちに向かっとるはずの
マコトに電話をかけた。
「今どこに居るん?あーそこ?ほやったらあ」
迎えに行くから
近くのコンビニで立ち読みでもしとって。
玄関開けて
外の空気吸い込んだら
「あー、わかったぁ」
あらぁ、そうやったの。
あたしそうやったんや。
携帯しか持っとらんかったから
玄関からくるっとターン決めて自分の部屋に戻り、
バッグに携帯と財布突っ込んで
また外に出た。
「愛ちゃーん」
マコトはコンビニの外で待ってた。
「中で待っとってええのに」
「今日ポカポカしてて気持ちよかったから外に居たんだよぉ」
おぅ、こりゃ好都合。
- 544 名前:おでかけしましょ 投稿日:2004/04/22(木) 14:48
- 「マコト、予定変更や」
「はぇ?」
空見てみ。
雲ひとっつも無いで。
真っ青。
「雲見つけに行こう」
「えぇ、何ですかそれ。何ですかぁ?」
確かに無いけどさぁ、マコトは口ポカーンとしながら上見た。
ほっとくと多分ずっと上見とるやろな。
「ぶっちゃけ今日は宝塚気分やのうて」
「あぁ、そうだねえ、天気良いもんねえ。今日は遠足気分だね」
そーそーそれそれ。
この年んなって遠足言うの恥ずかしかっての。
「愛ちゃん変なとこガンコ」
「うっさい」
脇腹小突いたら、ひゃおぅ、とか変な声出しおった。
「つーわけで餌を買うでえ」
「エサ」
「どーせあたしお菓子買っても食べきれん。ほやから」
「いやちょっと、あたしゃ残飯係ですか。ネコまんまですか」
「要らんの?」
「ください」
ほれ、そんじゃ突っ立ってないで中入るべ。
- 545 名前:おでかけしましょ 投稿日:2004/04/22(木) 14:48
- 買ったもんを用意しとった買物袋に入れて、環境問題にちょろっと貢献。
でも店の自動ドアがガーッと開いたんを見て
あ、ちくしょう、電気代の方は節約できんかった。
「はーいそれじゃあ、先生の後にちゃんと付いて来るんだよー」
マコトがいつものように手を差し伸べてきたので、あたしもそれを
いつものように繋いだ。
「小川先生こそ着く前に途中でお菓子食べないでくださいねー」
「……ガンバルモン」
うん、頑張れ。
「うぇ、ちょっと待って愛ちゃん、雲出てるよ?」
「は?ああー、もうどうでもええわそんなん」
「そっか、遠足だもんね」
そうそう、理由なんてどうでもええ。
どっか行きたいって思た、そんだけで充分。
しかも隣がマコトで言うことなし。
なっ、ほやから
おでかけしましょ。
- 546 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/22(木) 14:51
- 気まぐれな彼女とその彼氏。
- 547 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/23(金) 23:29
- お父さん、ねえちょいとお父さん。
座布団半分に折って枕にして
「ごろーん」
とか言って何寝転がってるんですか。
掃除機借りてきてお尻吸っちゃいますよ?
たかぁしさん。
「お風呂は?」
「あー、あとでぇ〜」
「後でっていつ?」
「今日じゅう〜」
駄目だコリャ。
本来の目的よりここのまったり空気にやられちゃってる。
何かもうお腹一杯ですって顔してますよ、この人。
「…もう、じゃあ先に私一人だけで貸切風呂
満喫してきちゃいますからね」
「あ〜い、いてら〜」
「……イッテキマス」
ぱたこんぱたこん、旅館のスリッパが独特のリズムを刻む。
私達の部屋は三階だったので、まず一階まで階段で降りる。
エレベーターがあったけど何となく階段。
貸切風呂は旅館一階の、更に一番奥にあって、
道のりがひどく遠く感じる。
廊下が延々と続いてるような気がしてる。
何でかってまあ、亀になってるんです今。
隣にウサギが居ないから。
- 548 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/23(金) 23:30
- にぶちん高橋め。
にぶちんだから高橋って呼んじゃうぞたかぁしめ。
何で私があの時
あんたの隣で温泉に行きたいって言ったのかわかってんのか、ったく。
せっかく
二人で、二人きりで…
「もしもし亀井よ亀さんよ、立ち止まったら追い抜かすでぇ」
「……にぶちんウサギを待っててあげたんですよ」
「やぁごめん。
あんまりにも素晴らしくって他に無くってな満足感に浸ってもて」
「そりゃ〜いい部屋ですもんね〜最高の景色ですもんね〜」
「いじけんなよぉ。
絵里居らんくなって何か寂しなって追っかけてきたんやさけ」
「貸切風呂は無視ですか。目的それなのに」
「えー、目的?嘘やろ?」
………
「嘘じゃないもん、入りたかったんだもん」
「あたしとやろ?」
………
「そんなことないもん。一人でも」
「はいはい、屁理屈はもういいから」
追いついたし
もう廊下の壁に凭れて待っとらんでもええよ。
にぶちんウサギは時々鋭い。
- 549 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/23(金) 23:31
- 貸切風呂は
『中途半端に広い昭和の一般家庭のお風呂みたい』だった。
ちなみにそう言ったのはたかぁしさんです。
一面水色のタイル貼りでところどころ欠けていて、
年季入ってます!って主張してる。
でも
何だかすごく懐かしさを感じるから、嫌いじゃない。
ほら、私、渋いじゃないですか。
だから嫌いじゃないです。こういうの。
「泳げそうで泳げない広さもまた味やの〜」
湯船に浸かったたかぁしさんは、さっき寝転んだ時と同じ
表情をしている。
ご満悦のご様子でござベス。
あっと、私も人のことを言えないようです。
「他の貸切も同じ造りなんかなあ」
「多分違う。料金、ここが一番安かったから」
「へぇ、でもまあしゃーないよなあ。あたしらアイドルやけど
ぎゃらんてぃーはほとんど親に取られるもん」
「そうですよ、皆誤解してますよね。…私達がここに来るために
お小遣いをどれだけ工面したか」
「……いきなり現実的なこと言うな。忘れてたのに」
- 550 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/23(金) 23:31
- ぶくぶくぶく、たかぁしさんはわざとらしく顔半分湯船に浸かって
いじけてみせた。
のを、見たら
「ぅぶ、っぶはあっ?!」
「あ、つい沈めちゃった」
「つい、だぁ?!」
だって
頭にタオル巻いて顔の上半分だけ出てるのが
「ボタンみたいに見えたんですよぉ」
「何やとぉ?!同じ目に遭わせたる!!」
「やーでーす〜!」
迫り来る手を払いのけて浴槽を脱出しようとしたけど
中途半端に広いのが災いして
逃げ遅れた腰を思いっきりぶたれました。
「った〜」
「ハッハ、ざまーみれ!…あー、イテ」
なんだ
そっちの方が痛そうですね。
- 551 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/23(金) 23:32
- 今回はここまで。……お前等勝手に動きすぎだ……
- 552 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:02
- 部屋に戻ってみたら室内がちょっと薄暗くなっとった。
ああ、夕方かあ。
あたしが蛍光灯を付けとる間に亀井ちゃんはカーテンを閉めに行った。
亀井ちゃん相変わらず無駄がないのお。
体がほこほこしとる。
「はー、母さん寝転んでもええ?」
「また母さんて、っていうかたかぁしさん、私達浴衣に着替えるの
忘れてません?」
「…おお!」
ほうやほうや、何か違和感感じとったんやて。
嘘つけ気付かなかったんでしょって突っ込まれた。
今の無視しとこ。
床の間の脇にたたんで何着か積まれてた浴衣取って、袖を通す。
ぺりぺり言いながら手先が袖口を突き破って出てきて、
何かもうそれだけで嬉しなってまうな。
「帯」
「ほ?」
「帯、これ」
「あぁ、ありがとぉ」
差し出された帯を受け取ろうとすると
その手を引っ込められた。
- 553 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:03
- 「勿論私が結びますからね?」
「……こないだので味しめたん違うやろな」
ハロモニで思いっきり縛られたからなあたし。
「やだなあ、その通りですけど」
「あかん!絶対あかん!」
けどどうせ相手が持っとる帯は手に入りそうも無い、
咄嗟にそう思って
床の間にまだ余ってる帯を取りに行こうとして
「それこそあかんです」
帯でもなくあの時の縄でもなく
亀井ちゃんの両腕で腰を縛られてもうた。
「うわっ、何この腰細すぎ!ありえない!」
「ええから離さんかい!」
「だから素直に帯結ばせてくれれば」
「ずぇええったい良からぬ事考えとるやろ!」
「いやそれはもうたった今やっちゃいました」
「あ、そうですか…」
ちょっと肩透かし食らってもた。
何かもっとどエロいことされると思てたわ。
「まあとりあえず今は軽くジャブ程度で」
「絵里……恐ろしい子!」
……今更か。
- 554 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:04
- 浴衣に着替え終えて、本格的に温泉旅館の客になったあたしら。
時計を見たら夕食までまだ一時間もあった。
「あたしなんかな、ここ来てからやったら時間の流れ
遅く感じる」
「そうだね、私も」
「母さん寝転」
「もう勝手にしてください」
母さんネタは飽きられたらしい。
ようしほやったら、座卓避けてど真ん中で寝たろ。
「そっち持てー」
「一人でやってよ、もう」
と言いつつ付き合ってくれる亀井ちゃん。
ちゃいこーや。
座卓を部屋の隅っこに追いやって、
出来上がった広々とした畳の床。
- 555 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:04
- 「…これは」
「何やの」
寝たくなるのもわかる、って、あ!
「先に寝るな卑怯もん!」
「真ん中じゃないからいいじゃん」
「やーあたしが独り占めしようとしたのに!」
「二人で来てるのに独り占めって考えがあまーい」
「てことは」
『二人占め』
「…何にやけてるんですか」
「…おんなじセリフ返したるわ」
なるほど一人部屋やないし
二人で寝転ぶのが相応しいよな。
「あ、座布団枕、いる?」
「モチのロンです」
- 556 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:05
- 座布団枕作ってやって
「おもてをあげーい」
「ぅあーい」
ひょいっと持ち上がった頭と畳の隙間にそれを置いてやった。
「いーい按配だあ」
「職人やからな」
「いや、それは違います。座布団のおかげ」
だいたい座布団枕職人って何ですか。
馬鹿にすんな、会得すんのにどれだけ苦労したか。
嘘やけど。
あたしは彼女の左隣にごろんとなって
そうするとさっきとは違ってひとっ風呂浴びたせいか、
大の字になりたくなって
両手両足をだらしなく放り投げた。
そしたら
トン、と右手に何かが当たった。
ああこの位置なら
これはあれやな。
「ん〜…これは…小指か」
「小指と薬指」
で、これが左手全部ですよぉ
「あー右手が押しつぶされたー」
「失礼な。またむにむにしますよ?」
「えぇよぉ」
もうここには
二人しか居らんでな。
- 557 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:06
- 一方的に指を動かしてたら
たかぁしさんもやりかえしてきて
何ですかコレ、マッサージですか?
「湯上りだから汗ばんできちゃうよ」
「気になんねー」
なおもむにむに。
そのうち本当にじっとりした感覚が生まれてきて、
だけどこれはたかぁしさんのなのか私のなのか
区別すらできない。
する必要も無いけど。
今日は
二人占めだから。
「…また指がふやけてきよった」
「そりゃそうだよ」
「もうやめとくか」
「もうやめとこう」
手が
向こうから離されてしまう。
解放され汗ばんだ手が急に冷たくなって
それがまるで先に手を放したたかぁしさんの態度みたいな
…あ、やばい。
違う、違うって絵里、何錯覚起こしてるんだ。
- 558 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:07
- 「ごしごーし、ん、こんなもんか」
冷えて硬直してた左手にぬくい感触が戻ってきて、
私も我に返った。
ブラボーたかぁしさん。
あと数秒遅かったら
強引にその腕、引き寄せてしまうところでした。
それくらい孤独になりました。
なんということでしょう。
左手に温もりが戻ってきてどれくらい経ったんだろう。
特に何か話すわけでもなく
またむにむにするわけでもなく
幸いなことに部屋の時計はデジタルで、
カチコチ言う時間の経過を意識させるものもない。
時々誰かが廊下を歩くあのぱたこんぱたこん言う音だけが
聞こえるだけで、室内を支配してるまったりな空気と、
繋がってる意識だけがここにある。
- 559 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/24(土) 15:07
- ふと見たら蛍光灯の紐が微かに揺れているから
時間は完全に停止していないし、耳を澄ませば窓の外の
緑色した植物が風によってざざざ、と言っている。
私達いつまでこうしていられるんだろう。
や、夕飯が運ばれてくる時のノックの音で確実にここの
空気は一変するんだろうけど
そういうことじゃなくて
「絵里寝た?」
ほらこの大好きな声が、私だけに向けられるという
幸福な時間がいつまで保てるだろうって。
「起きてる」
「なあ、今何時くらい?こっからだと時計見えん」
「教えなーい」
「へ?なして」
「知りたくなーい」
「…ん、そっか。そやね」
実はあたしもそう思ぉてたよ
「ほやけどこんまま寝てもうたら晩御飯来た時ひっで
ぶっさいくな顔で応対すんなあと思てもて」
「あー、それはやだ」
仮にも私達はアイドルですからね。
- 560 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/24(土) 15:08
- 一区切り。
- 561 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/24(土) 20:12
- あーやっぱり今日という日は避けられませんでした。短編。
- 562 名前:ほんとの二人ゴト 投稿日:2004/04/24(土) 20:13
- マンションの
玄関開けたら高橋愛。
ほーらやっぱり待ってましたよ、この人。
『ごめん!マジごめん!』
って声には出してないんですが、
目を見たら物凄くそう言いたがってました。
私はとりあえずたかぁしさんの背中をポンポン叩いて
マンションを出ようと促します。
ここは高層マンションなのでエレベーターのところまで歩くと、
スタッフさんが居て
「おつかれさまです、なるべく別々に帰ってくださいね」
と言いました。
「わかりました。おつかれさまでしたー」
ごめんなさい、それは無理っぽいです。
今この人を一人で帰したら
ネガティブの旅に出て行ってしまいそうなので。
「…とりあえず私が先に出ますね」
たかぁしさんは声に出さずに頷いただけでした。
- 563 名前:ほんとの二人ゴト 投稿日:2004/04/24(土) 20:14
- 「んっとにごめん、ありがとうでもごめん!」
「どっちですか」
玄関先で落ち合ってタクシーに乗り込み、たかぁしさんを
送り届けている間、彼女はずっとペコペコ頭を下げていました。
それは彼女の自宅に着いてからも変わらずで、
いい加減ウンザリしてきます。
「もーほんと、無人カメラの前で一人なんて、おま、おまけに
あんな、初めて仕事で亀井ちゃんとぐっとこう、近づいて、
二人だけで」
ぐっと、のくだりで自分の掌を鼻につくくらいのところまで
翳すたかぁしさん。
そこまで近寄ってないですよ〜流石に。
「本のこととか、折角聞いてくれたのに、タイトル出したら宣伝に
なってまうんやないかって余計な気ぃ遣てもて言えんかったし」
「あ、そうだったんだ」
「宝塚も何か返事ん時妙な間空いたから、あーやっぱ聴きたないよな
思て強引に持って帰ってきて」
それは当たりです。
「やぁもうほんまに、あの距離はキツイて。近すぎやて」
「私は調子に乗って擦り寄ったりしたし?」
「ほ、ほうやほうや!このネコっかぶり!声色普段と変えすぎや!」
- 564 名前:ほんとの二人ゴト 投稿日:2004/04/24(土) 20:14
- そりゃお仕事なので多少の演出は……
もう御馴染みになったたかぁし家のテーブルに頬杖ついて、
向かい合ってネガティブたかぁしの愚痴を聞いてあげています。
うーん、私っていい人。
ってそりゃあ、相手がたかぁしさんだからなんですけどね。
愛LOVEですから。
「もう済んだ事なんだから割り切りましょうよ、ね?」
「あかん!」
「も〜、何がそんなにあかんのですか」
「あんな傍に寄ったら、あたしの風邪亀井ちゃんに感染るやんか!」
………それか。
- 565 名前:ほんとの二人ゴト 投稿日:2004/04/24(土) 20:15
- 「鼻はズーズー言うてるし発声も控えるくらいやったんや。
なのにもう…あんな至近距離で、ほんまにもう…」
いつかのハロモニで
れーなが照れまくった時のリアクションに似てるなあ。
「それこそもう手遅れですってば」
「…ほやからさっきからごめん言うてるやないの」
ああ、はい、はいはいはい。
「感染っても恨んだりしませんから、安心してください」
「……ほんまに?」
「ほんまに。私の抵抗力が弱かったってことだから」
「…ん、うん」
でも一応
うちで夕飯食べてって、風邪薬飲んで帰ってな?
「ごちそうさまです」
- 566 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/24(土) 20:19
- 脱線終了。
- 567 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/24(土) 20:19
- 風邪…じゃなくて花粉症だったらどうしよう。
- 568 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/24(土) 20:20
- とりあえず共演おめでとう、という話でした。
- 569 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/25(日) 12:48
- また無言になった。
ふむ。
別になぁんとも思わんなあ。
気まずくも無いし
つーか逆に落ち着くし
何かちいっとばかしいつもより重力がかかってる気はすんな。
動く気になれん。
……脱力感、ってか?
やぁ違う、それも違う。
疲れはさっきのお風呂で結構取れたし、最初にここ来た
時よりは体力回復しとるで。
「なぁ」
「はい?」
あたしさっきから
じぇんじぇん動く気ぃなれんくて
でも別に眠くも無いし疲れっつー疲れも感じとらんで
逆にほっとしとる、つーか安心しとる、つーか
やったら落ち着いてるんやけど
- 570 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/25(日) 12:49
- 「これなんなんやろね」
「……にぶちん」
「なぁにぃ?!」
「もう仕方ないなあ、じゃあヒントをあげましょう」
「…何」
「隣が私だからです」
「……うぬぼれー」
「いいえぇ、自信ありますよぉ」
「自信かじょー。ウヌボレー星から来たウヌボレー」
ペシッ
手ぇ叩かれた。
えーちょい待ち、ほんまにそれ?それなんか?
あたしが今感じてるのって
「しやわせですか?」
「今の二人は」
「しやわせなんですかー」
「そういうことです」
トントン、ノックの音が響いたのはそのすぐ後やった。
- 571 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/25(日) 12:50
-
座卓隅っこにやってたから、亀井ちゃんとそれもとの位置に戻して、
運ばれ並べ終えられた料理の一品一品にへー、とかほー、とか
漏らしながらそれを食べた。
食事終わってみたらやっぱしあたしの方がおかず残しとる。
「食わず嫌い?」
「…食ってなお嫌い」
やってほら見てみ、一応一口は食べとる。
「それじゃあ仕方ないね」
「でも一応謝っとこ。料理長すんません、ごちそうさまでした」
両手合わせて本気で言うたで。
「お食事下げに参りました。お布団どうされます〜?」
ベテランっぽいお運びさんがまたやってきて
お約束のセリフ久々に聞いた。
あー、まだ八時やんなあ。
どうするーって亀井ちゃんの方見たら、
彼女はポン、と手を叩いて
「あの、本が読める場所があるんですよね?」
って言うた。
ああ、あたしすっかり忘れてたわ、それ…
「確かにございますけれど、八時で閉館なんですよ」
お運びさんは眉毛使ってまで八時って表現しとる。
そこまでサービスせんでも。
「えーそうなんだ…」
「しょーがないやろなあ」
「本当に申し訳ございません。
でもお二人のような若い方々が当館の蔵書に興味をお持ちに
なっていらして下さったというのでしたら、それだけで
わたくしどもにとってはとても喜ばしいことでございますよ」
さっすが接客のプロは言うことが違うなあ。
あたしも見習わな…っていうか弟子入りしたくなった。惚れた。
- 572 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/25(日) 12:51
- 「あっ、それから」
亀井ちゃんまだ何かあったっけ?
「私達明日朝一番で出発するんですけど、朝食は間に合いませんよね」
おおぅ、それもすっかり忘れとった。
駄目な先輩やね、あたし…
「そうですね…でしたら宿泊費の方、わたくしから言っておきますよ。
多少お安くできると思います」
すげ。
あーもうあたしこのお方のファンになりそうや。
「良かったねぇ」
「ほんまに。ありがとうございますぅ」
「いえいえ、わたくしも久しぶりに若い娘さんとお話できて嬉しいわ。
正直枯れた方々を相手にするのも詰まらなくってねえ」
「ぶっ」
ほ、本音トークや!
あかんわもう完全にファンになってもうた。
な、なあ亀井ちゃん、聞いてみたない?
『あの、お名前なんと仰るんですか?』
- 573 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/25(日) 12:51
- こういうお運びさん、いますよね。
- 574 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/25(日) 12:55
- ちなみに実在する旅館をモデルにしてます。
- 575 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/25(日) 12:58
- もういっちょさげついでにハロモニ亀高新コーナーってマジですか?!
…マジみたいです。
- 576 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 22:02
- 公式にものってるしマジみたいですね
楽しみだ〜
- 577 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/26(月) 13:09
- そういえば、さゆと藤本さん元気かなあ。
「元気かなあって、今朝会うたばかりやん」
「そうなんだけど、もう何日も会ってないような気がして」
さっきのお運びさん私設ファンクラブをたかぁしさんと
結成しながら、今はそのお運びさんがお土産もう買われましたかって
聞いてくれたので二人でハッとして売店まで向かう道中です。
こっちは九時閉店で助かった。
広さとしては…六畳一間、って感じの小さな売店には、私達の
他に二人女性のお客さんが居た。
って言ってもそのうちの一人はレジのおばさんと何やら話し込んでいて、
もう一人の人は仕方なくそれを待ってるって雰囲気。
なるほどお運びさんの言うとおり、少々枯れた方々でした。
「んー、美貴ちゃん焼肉以外にお土産っぽいもんで何が好きなんやろ…」
「美貴ちゃん?」
今朝までミキティって呼んでなかったっけ?
「…大人の事情や、突っ込んだらあかん」
「あー…はぁい」
ここでは二十歳って設定でしたっけ。
すっかり忘れてました。
- 578 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/26(月) 13:09
- 「あ、しげみにはこれがええんやない?」
たかぁしさんが指差したのは、どこにでもありそうな(小声)
間にチョコクリームを挟んだクッキー。
違うのは旅館の名前がクッキーの表面に焼き付けてあるだけ。
「だねー。さゆチョコ好きだし」
「あ、よう見たらホワイトチョコバージョンもあるやん。
よっし、道産子美貴ちゃんにはこっちにしよ」
私達はそれぞれ色違いのパッケージを手に取る。
メンバー全員へのお土産として選んでないあたりお前等間違ってるぞって
言われそうだけど、あの二人なら勝手にメンバーに分けてくれる
だろうという予想の元の購入動機だからいいんです。
わざわざ見送りに来てくれたから、まず渡すならあの二人だな、
それじゃ好みも合わせとこうかな、くらいな。
だからこれ、一箱二十枚も入ってるんですよ。
たかぁしさんがレジに向かうその後ろについていってた時、
何となくふっと脇見したらカラフルなものが目に留まった。
あ、これは個人的にさゆへのお土産にしようっと。
しゃぼんだまー。
- 579 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/26(月) 13:10
- お土産も買ったし多分これでもう思い残すことは…無かったら
死ぬために来たみたいだっつーの。
部屋に戻ったら床が白で埋め尽くされていた。
「あー布団敷いてくれたんですね」
「……だ、ダイブしてぇ……母さ」
「駄目」
ねえお父さん実はそのネタすっごい気に入ってるんでしょう。
「ちぇ、やっぱ駄目か。これ鞄にしまっとこ」
悔しかったのか布団の上を堂々と踏みしめながら彼女は
窓の近くに置いてあった自分の鞄のところへ。
あーあ、足跡ついちゃったよ。
「たかぁしさん、
雪積もったら真っ先に足跡つけたくなるタイプでしょ」
「そーかもねぇーん。あ、メールきとる。
……美貴ちゃんからや」
藤本さん?
「ほぇえ?なんじゃそら」
「何て?」
「なんかな、明日寝不足になるかもしれないけど
お互い遅刻しないようにしようね、やって」
「お互い…?」
「…絵里ちょっと、自分の携帯見てみい」
……ははあ。
果たして私の携帯にはさゆからのメールが届いていた。
「似たような内容です」
「へぇ、あっちもお泊りですか」
「影響されちゃったかな」
「しげみが駄々こねたんかなあ」
「案外逆だったりして」
後日それが両方当たりだったことに気付くわけですが。
- 580 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/26(月) 13:11
- ああもう。
布団の誘惑は強力やな。
あたしここ来てから何時間寝転んだままなんじゃ。
でもまだ眠たないで。そりゃ九時になったばっかりやさけ。
…まだ九時なんやなあ。
まだ九時。
でも九時。
容赦なく九時。
「…何か今ムカついた」
「は?」
寝転んではいないものの布団の上でボーっとしとった亀井ちゃんが
こっち向く。
「時計見たらムカついた」
「何それ、変なの」
何とでも言え。
あたしは立ち上がって、隅っこに避けられてた座布団を持ってきて、
さらに床の間にあった未使用の帯を手に取って
内線電話の横に置いてあった
立方体の機械を
座布団二つ折りにした真中に挟んで帯で縛り付けてやった。
「手荒いことしますねえ」
「電源切ってないだけありがたいと思いやがれぇ」
「ま、切ったら後が面倒だからね」
…そうとも言う。
- 581 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/26(月) 13:15
- 一区切りです。
雑談になってしまうのであえてレスは控えますが>>576さま
書き込み有難うございました。
- 582 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/27(火) 21:15
- 一時停止中。紺高短編。
- 583 名前:愛のために、あなたのために 投稿日:2004/04/27(火) 21:16
- 「…なあ〜、あたしら今のまんまでいいんかなあ」
以前お茶を噴いたテーブルに、背中丸めて顎をベッタリ
くっつけて高橋愛さんは呟きました。
「今のまんま、って?」
「あたしあさ美ちゃんとラブラブなまんまでいいんかなあ?」
あ、ラブラブなんて。
滅多に言わない、っていうか初めて聞いた。けど。
疑問系なのは残念です。
「いいんじゃないの?」
何となく向かい側で愛ちゃんと同じ目線になりたくなったので
テーブルに顎をくっつけた。
「えー、でもよぉ、これって所謂ふどーとくってやつやろ?」
「不道徳?」
「うんそう。あたしら不道徳歴一年を迎えました」
「おめでたいじゃないですかぁ」
「…ごめんあさ美ちゃん、実はあたしこんなに続くとは思わんかって」
正直戸惑っとる。愛ちゃんは目を伏せました。
「まあねえ。れずびあーんですからねえ」
「…露骨に言わんといて。落ち込む」
何故に。
「あ、幸福すぎて恐いってやつ?」
「それもある。んで不道徳や」
- 584 名前:愛のために、あなたのために 投稿日:2004/04/27(火) 21:17
- あぁ〜もぉ〜
愛ちゃんはテーブルから顔を離して項垂れた。とき。
ゴン
「あイテ」
縁におでこぶつけました。
悩みすぎて注意力散漫気味のようです。
「あのね愛ちゃん、少なくとも不道徳なんて有り得ないから」
「なして」
「道徳なんて人間が勝手に作ったもんでしょ」
「でも守るべきもんやろ」
「それは、ヤバイことやらかしてもそれが誰かにとって
不快だったり迷惑だってわかんない馬鹿のために
仕方なく守れって言ってるんだよ」
「誰が言ってんの」
「それは知らないけど」
「あ、そう」
ぶつけたおでこ擦りながらまだ納得していない風です。
「愛ちゃんさっきさあ、こんなに続くとは思わなかったって
言ったよね」
「言うた」
「それじゃうちらが三日間だけの関係だったらそれは
愛ちゃんの言う不道徳のうちに入んないの?」
「………」
どうだ参ったか。
- 585 名前:愛のために、あなたのために 投稿日:2004/04/27(火) 21:17
- 「そこんとこは、こう、誰にも迷惑かけないんやったらええと思う」
勿論あさ美ちゃんとあたしも納得した上でそれが終わるんやったら。
……そういう融通は利くんだね。
「そこですよ高橋さん。誰も巻き込まなければ三日も一年も十年も
変わんないんですよ」
「んなこと言うても、続けば続くほど危険性増すやん」
なかなか折れない人ですね。
でも言いたいことの大体は見当つきました。
「愛ちゃん私は」
愛ちゃんがきちんと男の人好きになって
その人と付き合って
結婚することになっても
「割り切れるし、祝福することはできるから」
表面上は、だけどね。
あっでもその時は流石に大人になってるだろうから、割と平気かも。
「………あざみぢゃぁん〜」
「はいはい、泣かない泣かない」
「泣い、でぇなんが、っ、ねぇよぉっ」
- 586 名前:愛のために、あなたのために 投稿日:2004/04/27(火) 21:18
- あら、安倍さんの卒コンDVDの時とそっくりな声なんですけどね。
……ちょっとヤなこと思い出しちゃったな。チッ
だけど今の例えがもし逆だったとしたら
それはそれでこんなふうにまた泣かせてしまうかもしれない。
今日とおんなじ嬉し涙であってほしいなあ…
ほら女の嫉妬は恐いからねえ〜…愛ちゃんは特に恐そうだし。
多分私はそれ以上だけど。
抑えますよぉ〜抑えてみせますよぉ〜
それが私の中の守るべき道徳の一つです。
- 587 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/27(火) 21:18
- タイトルは奥田民生。
- 588 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/27(火) 21:19
- ぶっちゃけ「おかしなふたり」はユニコ(略)
- 589 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/27(火) 21:20
- 奥田さんとこんこんは星座と血液型が同じだ、そういえば…
- 590 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:42
- 布団の上にただいまハニー。
あ、何か今頭の中で美貴ちゃんがラムちゃんの声真似して
ダーリーンって聞こえたで。似とる〜
布団の上にほっぽりだしてた自分の携帯を
寝転んで横向いたままもう一度手に取って。
時計を拉致しても自分の携帯のアラームだけは設定しておいた。
要は、目に付くところに時間の流れを気付かせるもんを
置きたくなかったっつーことやさけ。
「おりゃっ」
設定し終わった携帯をそのままあたしの鞄へ向けて
放り投げた。
ストライクゾーンが大きかったからそれはちゃんとぼすん言うて
二メートルくらい向こうの鞄の上に落ちる。
ここにはここだけの時間の流れがあるんや。
二人占めの時間が。
ここでの二人は自称二十歳のあたしと中学の卒業旅行
がてらに訪れた(って今決めた)亀井絵里。
……ほぉや、今のあたし、二十歳なんやった。
- 591 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:50
- 「ほやほや、うん、ハタチやん」
「何のこと〜」
ちらっと振り返ってみると亀井ちゃんはいよいよ布団の上に寝転んどった。
うつぶせんなって顎の下に組んだ両腕。
それだけ確認してまた姿勢を戻した。布団カバーの網目の向こう側の
花柄とか見てみたりして。
「美貴ちゃんが二十歳のフリしろって言うとったん思い出した」
「うん、それで?」
それで。
二十歳って成人ってことだよな。
「世間的にはね〜」
ちゃんと自分で働いて自分を食わせていかなあかん歳ってことだよな。
「高卒でも他でも同じ立場の人は一杯居るけど、一般的には二十歳だね」
「自己責任も重くなって、ぶっちゃけ大人ってことやよね」
「ぶっちゃけそうですよ」
「その二十歳に今日と明日の朝だけなっとるんや、あたし」
「なーにが言いたいんですか」
何が
言いたい?
『今』のあたしは絵里に何が言いたい?
- 592 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:51
- 昼間の時と同じくたかぁしさんは私の左隣の、今は布団の上で、
携帯をいじっておりゃっとか言いながらそれ投げた時から
ずっと私に背中を向けたまま。
ちらっとこっち見たのはカウントしてやんない。
それで、二十歳がどうのとか結構マジメっぽい話してるのに
背中向けたまま。
襲うぞ。
こっち向けよ。
…向いてくださいよ。
「…うん、よぉし、あたし今日だけ二十歳やから、出血大サービスしたろ」
「はい?」
「いーかあ、ちゃあんと聞いておけよぉ。一回だけやさけ」
「…はあ」
襲うって心の中での脅しが効いたのか、ごろんって彼女はこっちに体を
向けてくれて、でも何かもう既にニヤニヤしてる。
…ロクなこと言わないだろうな、突っ込む心構えが必要ですね。
さあ、来い。
- 593 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:51
-
「愛しとるで」
- 594 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:52
-
- 595 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:52
-
- 596 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 12:53
-
- 597 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 20:11
-
「ヒャハハハハ!止まった、止まってもた!
あー可笑し、あー恥ずかし、とーとー言うてもたで、
も、ほんま照れくさ、あ、あかん、汗出てき、変な、うひゃあ〜!」
…当事者の方がものすごいリアクションで
声を出すタイミングを失った私。
だけど確実に
カーッと。
布団の上でゴロゴロのたうちまわってる彼女と、
一緒にゴロゴロしたくなるくらい
カーッと。
「な、なに言っ、いきなり、……っば、ばかぁ!」
ああ情けない。
母ちゃん涙が出てくらぁ。
ズズッ
「……ハ、って、……………かーさん泣くなら俺の胸で泣け」
ええもう
こればっかりはね。
- 598 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 20:11
- 高橋愛さん独特の価値観から言わせれば、
愛してる、なんて、子供のうちから軽々しく使ってはいけない、
というだった認識らしい。
ちゃんと自分で自分の面倒を見ることが出来て
(つまりは仕事をして収入があって)
それでいてなお大人としての自覚があって、気持ちに余裕があって、
好き、じゃ片付けられない想いを持ってる相手がいて初めて
あの一言を言うべきだ、と。
「好きと愛してるの違いはでっけぇもんなんやて、あたしにとっちゃ」
「自分の名前も名前だから、特別って意識は大きいと」
「ほうやー」
遠慮なく散々たかぁしさんの胸を借りて泣きまくって。
浴衣に染み込んじゃった水分が乾くまでここを離れてやるもんか。
「もう一回言ってよ」
「あかんて、しつこいなあ」
何でだよ。
明日の朝まで大人なんだから良いじゃん。
「あの一言であれだけ体力消耗すんのはもう当分勘弁や」
「慣れですよ、慣れ」
「慣れてたまるかぁ!」
…まあ。
私も、一番欲しかった言葉をやっともらえたので、
欲が出てもっともっとって思ってるのは認めます。
でもやっぱり
「一生のお願いですから、もう一回」
「や〜か〜ら〜。この状況じゃ無理っ!」
「……状況変わればいいんですね?」
ギク、ぴったり密着してるから体が硬直したのがすぐにわかった。
- 599 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 20:12
- 「ほんとえろい先輩」
「…まだ何も言うとらん」
「いやバレバレだから」
あ、そうだ。
「今日は五つも年上なんだから、勿論リードしてくれるんですよね?」
「ほぁっ?!」
……今のWhatって言いたかったんだろうか。
「二十歳と十五歳だし、明らかに差があるし、たかぁしさんが上なら
さっきのセリフも言いやすいですよねぇ」
今夜の絵里はちゃっかりものですよ?
「……わーった、降参」
体が硬直からぐったりに変わって
耳元で
ほれ少し離れとき?
という囁きを聞いた時は既にスイッチが入ってたみたいだった。
折角目を瞑って待っててあげたのに
何でまず口じゃなくて額にキスしますか、たかぁしさん。
そういうところ………大好きです。
愛LOVEですから。
- 600 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 20:12
-
件名:朝だよー
本文:おはよう。今日は10時から○○スタジオだよ。
えりえりとゆっくりのんびり骨休めできた?
今日からまた忙しくなるけど昨日のテンションのまま
仕事したら駄目だよー。じゃあまた後でね。
- 601 名前:幸福な一時停止 投稿日:2004/04/28(水) 20:13
- 「アラーム鳴った一分後に届いとったわ」
「さゆからはその五分後。『あんまり眠れなかった』って」
「あらぁ、珍しい」
「ですねえ」
「昨日のテンションなんて、向こう戻ったらふっとぶて、のぉ?」
「のぉ。もーむす舐めたらあかんぜよ!」
「他に出発されるお客さんは居られませんかー?」
「あ、外見てみあのお方や!手ぇ振っとるで、見送りにきてくれた!」
「きゃーお運びさーん!やだやだ行きたくないー!」
「堪えろ絵里!…あー!やべぇ!」
「え、え?」
「時計そのまんまにして出てきちまった!」
「うわっ」
「ど、どどっどどどうしよ、あのお方に見つかったら…!」
「それでは出発しまーす」
「あぁ〜」
「タイムリミット………ち、ちくしょ〜………
……絵里、あたしここに誓うで」
「……私も誓う」
『ぜってえ、またここに来る!』
- 602 名前: 投稿日:2004/04/28(水) 20:14
-
『幸福な一時停止』
再生終了。
- 603 名前: 投稿日:2004/04/28(水) 20:15
-
- 604 名前: 投稿日:2004/04/28(水) 20:15
-
- 605 名前:ハルヒ 投稿日:2004/04/28(水) 20:40
- スイッチオフ。ということで『幸福な一時停止』完結です。
時間をゆっくり進行させるのって難しいですね…
おまけに今回は間に他CPを紛れこませてみたりしたせいで構成に
無理矢理感が漂ってる…
「おかしな」から続いている亀高としては、今作をもって
完結…のつもりです。今のところは。
今後はまた短編中心に、を考えています。
いますけど、これから魔の日曜日が訪れることを考えると…(笑)
どうなるんでしょう。予測できません。
とにかく、お付き合いいただきありがとうございました。
- 606 名前:Ring 投稿日:2004/05/02(日) 00:03
- 赤や白や透明やピンクのそれを
仕事の度に自分達のその日の気分で選んで
身に付けてきた。
用意されている本数分をミニモニ。メンバーは
それぞれ分け合って全て自分達の両手首に
通してきた。
けれど
「…のんは今日は、いいや」
のんつぁんがそう呟く。
「………最後やから?」
今日で
ミニモニ。としてのテレビ出演は最後になる。
「うん、何かそんな感じ…」
これ手首に通しちゃったらさ、
仕事終わっても
はずしたくなくなっちゃうかもしんない。
「二の腕のコレはそう思わないんだけどね、こっちは別」
「……気持ちわかるで」
『衣装』としてのアクセサリーが置かれているテーブルの前で
のんつぁんとそのブレスレットたちをじっと見つめる。
「…ねえ愛ちゃんさあ、のんの分一本あげるから付けてよ、代わりに」
「あ、それじゃあ私のも付けて欲しいな」
隣にミカさんがやってきてあたしに微笑みかけた。
- 607 名前:Ring 投稿日:2004/05/02(日) 00:03
- 「え、でも、そんな一杯は流石にゴテゴテんなってみっともな」
「んじゃあ今付けてるやつ一瞬だけのんに貸して!気合入れるから!」
言うが早いかあたしの左手首を掴んでその気まんまんや。
「何色?」
「ピンク!ミカちゃんは赤ねっ」
「OK!」
半ば引っ張られるようにして外されたリングを、
のんつぁんミカさんが同時に自分の手首に通す。
「愛ちゃん十秒数えてね!」
「へ?ああ、いーち、にーぃ」
「むむむぅ〜……」
超近眼の人が時計の文字盤睨みつけてるみたいに
のんつぁんは何か念を込めてる。
「しーち、はーち、きゅーう」
最後の最後にミカさんは呟いた。
God bless you.
「あ〜、十秒たっちった…」
「…外したないならそんまま付けとったら?」
あたしとのんつぁんの間から
かぁちゃんがにゅっと顔を突き出す。
「愛ちゃん、のん甘やかしたらアカンで。ほらはずす!」
「あいぼん痛いイタイ!引っ張んないで!」
「ハイ、愛ちゃん」
「あ、ミカさんは潔い」
「しっかり想いを篭めておいたからね」
- 608 名前:Ring 投稿日:2004/05/02(日) 00:04
- 「もう、あいぼんはやんないの?愛ちゃんのもう一本余ってるよ」
「うち?うちはぁ」
これで終わりだなんて思てないし
「愛ちゃんずは不滅でっせ!」
かぁちゃんが肩に腕回してあたしを引き寄せる。
あたしは
泣きそうなのを必死に堪えた。
何も言えなかった。
ここで矢口さんだったら
何かもっと気の効いた一言を言えるだろうなと申し訳なくなる。
「え〜ズルイよ〜。それって名前で一生モンじゃん!
いいな〜いいな〜」
「ミニモニ。だって永久凍結だから、一生ものっていうのは同じだよ」
ミカさんはどうしてこんな時も笑顔で話せんのやろか。
…ほうか、リーダーやからや。
あたしミニモニ。にとって何やったんやろ。
いっぺんぶち壊したんは間違いない。
そんで
クラッシュ&ビルドになるはずができんかった。
やっぱあたしのせいやないの。
- 609 名前:Ring 投稿日:2004/05/02(日) 00:04
- 「………ミカさん………っ」
「愛ちゃん?」
涙声やったし肩は震えてたから、返事してくれた
ミカさんものんつぁんもかぁちゃんも
俯いたあたしを揃って覗き込んできた。
「やっ、ぱ……あたしのせぇやぁ……」
ごめんなさい
ごめんなさい…
「違うよっ!」
「ちゃうで」
「そうじゃないよ、愛ちゃん」
こやって三人から否定されんのも実は二回目。
「私は今年で二十歳になるから、新しい自分になろうと
思ってロスに行くって、決めたんだよ」
「のんもセクスィーになりたいからさぁ。オトナにさぁ。
いつまでもミニモニ。ってわけにはね」
「のん、ダブルユーのことは?」
「……それもあるから!」
「セクスィーも良いけどもっとしっかりしようぜ、のん…」
「…ハイ、スミマしぇん」
アハハ、前とまるっきりおんなじ会話しとる。
- 610 名前:Ring 投稿日:2004/05/02(日) 00:05
- 「って、それより愛ちゃんほらぁ、これ付けて。
のんバッチシ気合送っといたから!」
ああ、ミカさんからのも手に持ったままにしとった。
「私もちゃんと祈ったからね」
「ではうちがその二つを付けて差し上げましょう」
かぁちゃんが正面にやってきて
ミカさんのんつぁんに見守られながら
左手首に戻ってきたそれらは
温かくて
なんだか
じんわりと
伝わってくるもんがあった。
涙も止まった。
「……………ありがとぉ」
これでこれから何時間かは
涙を堪えられそうな気がする。
仕事終わったら、衣装さんにお願いしてみようか。
こんな価値あるもん
できれば一生手放しとぉないんです、って。
- 611 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/02(日) 00:05
- 某歌番組より。
- 612 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/02(日) 00:07
- 辻ミカのあれはやっぱり何か理由があった気がしてならない。
- 613 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/02(日) 00:07
- ありがとうミニモニ。というわけで今日だけあげです。
- 614 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/03(月) 01:04
- 日付変更につき落し。
- 615 名前:bou 投稿日:2004/05/05(水) 00:32
- はじめまして。
青板からROMってたんですが、やっぱりココの高橋さんはイイ♪
元々亀井さん好きなのですが、ハルヒさんの文を見てからは完全亀高ヲタです!
- 616 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/05(水) 20:17
- パラレルワールドな藤高。
- 617 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:18
- 例えばここんとこの隙間とか。
………居らん。
ほやったらあっちのベニヤ板の奥とか。壁んとこ。
………こんな五センチの隙間に居ったら逆に
驚くわ。
ならばこのズラーっと立てかけてある
長いテーブルの間?
「やー必死だね〜」
「…どこにも居らんやんか!騙したな!」
倉庫の手前に畳んで積まれてたパイプ椅子を二脚両手に持って、
奥で口を尖らせている愛ちゃんを手招く。
「だからあ、話があるからだって言ったしょ」
「ほやったら直接そう言えばええのになんでわざわざ」
ぶちぶち文句言いながらも手招きにはきちんと応じてくれる。
彼女がこっちに来る間に、椅子の置き場所を探したけど、
奥の方に行くにつれて撮影用の大道具が密集してて二脚置くには
ちょっと無理があった。
ふと左側を見るとの会議用テーブルが立てかけられてる
スペースの余った部分、五メートルくらいの空間があったので、
隣に縦置きされたテーブルの威圧感がちょっと気になったけど
ここに椅子を置くことにする。
………テーブル側に座らせたら危ないかもな。
壁側に座ってもらおう。
壁側を背にして一脚、その向かいにもう一脚を置いた。
「あーあ、亀子絶対ここに居るからって…信じたあたしがアホやった」
「でも信じてくれたんだねえ。何かそんだけで嬉しい」
「…でぇ、話って何やの、美貴ちゃん」
あ、ムッとしてる。
- 618 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:18
- いやー、それがさあ。
美貴ねーえりえりに嫉妬してるみたいで。
「ガキん子まめから愛ちゃんとえりえりが最近仲良さげ〜っての
聞いてさ、実際そうみたいだね。こうやって探しに来たし」
「………………」
「愛ちゃん話聞いてる?」
「……嫉妬ってなに」
あ、そっか。
早とちった、まずそっから話さないと駄目だよね。
アタシも結構緊張してるんだな〜。
滅多に無い緊張感だから自分で気付かなかった。
「前から愛ちゃんと居ると楽しいな〜と思ってたんだよ」
「………………」
うわー、じっと見られてる。
こういうの癖なんだって知ってるけどいざ真正面でそれをされると
凄い迫力だなあ。
仕事モードに入って開き直ったら軽く受け止められそうなんだけど、
これ仕事じゃなくて問答無用で本音言おうとしてるんだよね。自分から。
いや〜、今更恥ずかしくなってきたな……
無意識のうちに自分の首筋を撫でてしまう。
「っで、えっと、ほら愛ちゃんってあんまり美貴のこと恐がらずに
接してくれたりするし、たまに説教くさいけど話してみたらすごい
色んなこと考えてるし、真面目だし、突っ込み軽く流せるし」
「恐い言うても性格は恐くないで?それに美貴ちゃんそこんとこ気に
しとるの知っとるから」
う〜んそれでもやっぱり、他のメンバーは見た目で恐いとか思っちゃって
近寄り難いってさぁ
「ちなみに今も恐い?」
「ちい〜っとも」
ロボットみたいにゆっくり正確に首を横に振ってくれた。
- 619 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:19
- 「あっしなんかあ、逆にもう一年以上同じユニットのメンバーなのに
未だに恐い恐い言うとる人たちのがワカラン」
今度はその首を傾げて、本当に不思議がってる。
ああ、そうそう、それさ。
愛ちゃんのそういうところに何度も救われたんだ。
「…そりゃまあ、相性ってもんもあるしねえ…あ、それでね」
どっちかというと頼るより頼られることの方が多いアタシが、
救われるなあ、ほっとするなあって思える唯一の相手が愛ちゃんなんだ。
「っていう自覚がはっきりしたのが、えりえりに嫉妬したからなのさ」
「…何で嫉妬になんの」
「だって、えりえりも美貴みたいに救われた気分になったりしたら悔しいじゃん」
「え〜別になんもしとらんで…悔しい言うんはわかるけどなあ」
いや、アタシは愛ちゃんと喋ってる時のえりえりがあんなに
コロコロ表情変えてるところを初めて見たよ………
物凄く露骨だと思うんだけどな。
「とにかくねえ、美貴は愛ちゃんのことが好きなんだ。本気で。
……仲が良いだけじゃあ、満足できなくなっちゃったんだよ」
じっと見つめれられてた視線が逸らされたので、話しているうちに
アツくなって前のめりになっていた上半身を起こしてゆっくり深呼吸した。
とうとう言った、言っちゃったね。
あ〜緊張した…
割となんでもすぐに行動に移す方だし緊張もあんまりしないんだけど、
こればっかりは別だ。
- 620 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:20
- この告白するのに悩んで悩みまくって何日間も費やしたんだから、
返事を貰うのだっていくらでも待つつもりだよ。
多分振られるだろうけど、そっちの覚悟するための数日間だった。
「今すぐに答えなくてもいいか」
「あんな、美貴ちゃん」
即決されちゃったのか。
「今、美貴ちゃんの上の方で変な音した」
「はぁ?」
こんな時でも天然なんだね、愛ちゃん…
「上、何か軋んだ音した……ここ危ないで」
「………それほんと?」
愛ちゃんの表情にいつもと違う緊張したものが見えたので、
アタシは思わず真上を見上げた。
「ああ、これはヤバいかも…」
背後の会議用テーブルは二メートルくらいの高さがあるのに、
更にその上に何台かのテーブルが、列の上を沿うように積まれてた。
ただでさえ
立てかけられてるテーブルが途中からズレて
直角じゃなくて前のテーブルに折り重なるようにして
並べられてるのに、積み重ねたりするか、普通。
「な、ほやろ。とりあえずこっから離れるで」
彼女は急に仕切り屋さんになり、立ち上がってアタシの左腕を掴んで
立ち上がらせる。
- 621 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:20
-
ギシ…ッ
確かに聞こえた。
音のした方を振り向いて確認しようとする前に
「美貴ちゃんアカン!」
バイクのエンジンみたいなでかい音が響き
テーブルは目の前から姿を消して
左腕は強い力で引っ張られて
そのせいで前に出た足は
愛ちゃんが座ってた椅子を蹴っ飛ばし
……………何?
今の、何?
- 622 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:21
- 「…間一髪や」
耳元で声が聞こえて胸元でもその声が起こす肺の動きがわかった。
伏せていた顔を上げると目の前が一面同じ色で、
それが壁だと理解するのに少し時間がかかった。
目の前が壁なのに柔らかいもので『護られている』のが
何故なのかに気付くのには更に時間がかかった。
アタシは壁に背中からベッタリ貼りついた愛ちゃんに
抱きしめられた状態で硬直してた。
「…ねえ、何が、起こったの」
「テーブル…やっぱ崩れて来よったで。ドミノみたいに」
テーブルって単語でやっと全部理解できて、恐る恐る足元を見る。
三十センチくらい向こう側にテーブルの角が見えた。
思い切って後ろを振り返る。
愛ちゃんの言う通りドミノ倒したみたいになってるテーブル。
その手前の方にアタシが座ってた椅子が乗り上げてて
四つある脚の裏がこっちに向いていた。
更にその倒れた上は斜めに傾いて今にも滑り落ちそうな同じ種類のテーブル。
とっくに床に落っこちてるのが一台。
表面に埃を被っていてさっき見上げてたやつだとわかる。
「雪崩起こしてこんなとこまで滑ってきたんだ…」
愛ちゃんが壁際まで引っ張ってくれなかったら、
滑ってきたテーブルに足を掬われて後頭部とか強打していたかもしれない。
それどころか上に積んであったやつが上から降ってきてたかもしれない。
- 623 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/05(水) 20:22
- 「うおービビったあ〜…………」
抱きしめてられていた腕から全身から力が抜けていった。
そうだ愛ちゃんは崩れていく瞬間を目の前で見てたんだ。
座り込みそうになる愛ちゃんを今度はこっちから抱きしめて支える。
「……愛ちゃんありがとう」
「はは、今更心臓バクバクしだしたわぁ」
「ほんとにありがとう………!」
「なんも、二人とも無事でよかったなあ」
もう駄目だ。
振られる覚悟は出来てたのに。
今ので一瞬にして
覚悟なんてどこかへ吹っ飛んでしまった。
- 624 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/05(水) 20:35
- 続きます。…一箇所矛盾点があります。先に白状…申し訳…
>>615 bouさま
初めまして、レスありがとうございます。
私なんぞの文章で亀高を…恐縮です。
亀井さん推しとのことで
新作は亀高じゃないのですが彼女が出てこないとは限らないので
生暖かく見守ってあげてください(笑)
- 625 名前:bou 投稿日:2004/05/06(木) 00:36
- またまた見に来ちゃいました!
大丈夫です!藤本さん大好物です!(笑)
もちろん、あやみきから入ってますが、問題なしです!ココはモテモテ高橋さんです!!
隙間=亀井さん、
な高橋さんの思考に激萌えです!
- 626 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:24
- 「そんで今は返事待ちなわけだ」
「そー」
「返事貰ってないのにデレデレしてるように見えるのは気のせいか?」
「だぁってさあ」
あの後ね、
愛ちゃん一瞬で顔まっかっかにして。
「だけど腰抜かしちゃってて美貴が支えてないと駄目で、
そのくせ」
やぁちょっと、はな、離して、あそしたら動けんか、ってもあかん、
やっぱこんままじゃ、うわ、ちょお、どうしよどうしよ
み、美貴ちゃ〜ん………どうしよぉ………
「…みっちゃんさん高橋の物真似完璧だね。
その困った時の上目遣いとか」
「もうずっと頭ん中で反芻しっぱなしだったかんね」
エロいな、よっちゃんさんはぼそっと失礼なことを言った。
飲み物が切れたので局内の自販機まで買いに行ったら
楽屋に戻る途中のよっちゃんさんに会った。
彼女がなんとなくアタシについてきたので、特に気にせずに
自販機まで歩く道すがらで、
「みっちゃんさん今日やけに機嫌いいけど、何かあった?」
と尋ねられたのだ。
それで素直に答えたらエロいとか言われたわけだ。
- 627 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:24
- 「それにしてもさあ」
「えー何」
「こんな廊下で堂々とそんな話できちゃうあたり、
みっちゃんさん最強だな」
「……今誰か通った?」
「一応通ってないけど。どこに誰がいるかわかんねえよ?」
「うーわー…やっべえ」
思いっきり
ロマンティック浮かれモードだった…!
「まだノロケたいっつーんだったらちゃんと人気の無いとこ行こーぜ」
「さりげなく皮肉ありがとう。非常階段の踊り場にでも行こうか」
オーケーそしたら飲み物はミーの奢りで。
………よっちゃんさん単に興味あるだけだね。
「あの反応は脈ありと見たね!」
「そーだなー。
ほんとに嫌なら腰抜かしてても腕でぐいぐいやってくると思うけど、
それも無かったんだろ?」
つなぎ着たよっちゃんさんが階段の壁に凭れてそんな風に尋ねてくる。
アタシは階段に腰を降ろした。
「無いナイ。もーほんと、ただの照れ隠しって感じ。
そん時さあ思わず
付き合って
って言ったらおでこで胸んとこぐりぐりされたけど」
「うわ、典型的だろそれ………」
「だよね!そうだよね!」
ここの非常階段は廊下とドア一枚隔ててるから安心だ。
この階は三階で、上下の階も同じつくりだから、
誰かが来たらまずドアが開く音がする。
アタシ達(というか実際のところアタシ一人)はそれに気をつけてさえ
いればいいんだ。
- 628 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:25
- 「でさあ、みっちゃんさんはどこに行こうとしてんのよ」
「どこって?」
「ほんとに高橋に癒しとか救いを求めてるだけなわけ?」
「…だけ、ではないかなあ。勿論美貴からだって色々してあげたいし」
「心だけじゃなくて、体もどうこうしたいとかって思ってんの?」
そんなこと。
「…まだ気が早いんじゃないの」
「みっちゃんさん矛盾してるぜ。ついさっきまで絶対脈アリだって
はりきってたじゃん」
痛いとこ突いてくるな………
いや、確かに愛ちゃんなまら可愛い〜とは思うよ。
たまに吸い込まれそうな雰囲気出してて、触れたくなったこと
だってあるよ。
「その先を考えたことがないわけじゃないけどさ………
拒否られたら切ないしょ」
アタシこう見えてそういう拒絶とかに弱いんだよね。
それ見たくないから大抵拒絶される前にガンガン押して皆黙らせちゃうんだな。
それに、愛ちゃんはこういうアタシを知ってる。
だからもしそういうことになったとして
「逆に、嫌なのに我慢してされるがままになってる愛ちゃんなんて、
…見たくない」
これぞ
高橋ラブアゲイン。
今のアタシにあの曲のセリフ言わせたら今までで最高の出来だろう。
「………アイツなら有り得るね」
「そう、だから今の段階じゃそこんとこ
グレーゾーンにしとくしかないかなって」
- 629 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:25
- 「ちゃんと考えてんだ。ほんとに好きなんだな」
「疑ってたのかい」
「いやいや、メンバーとして好きなんだなあってのは前から思ってた」
「えー、なーんでですかー?」
「だあってみっちゃんさん、高橋と喋ってる時普段とちょっと声色違うぜ」
「そっかなあ」
「そーだよ、なんか、甘い」
「えぇ、自分じゃわっかんないよ」
そういうもんだよ、よっちゃんさんは壁に凭れたままズルズルと腰を降ろした。
階段に座ってるアタシを少し見上げるくらいの位置。
「まあ何かあったらミーに相談してくれよ。
真剣なのわかったから真剣に話聞くぜ」
ぶっちゃけ高橋からかう目的でそういうことしたんだったら
本気でキレようかと思ってたんだけど、そうじゃなかったからさ。
みっちゃんさんなら目的のためなら強引に行きそうだーとか
思ってて。
「でもただの取り越し苦労だったみたいで安心した」
「………よっちゃんさん」
「相思相愛がいい〜、もんな」
「うん」
- 630 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:26
- 嫌いやないで。好きや。
特に歌声かっこ良くて大好きや。羨まし思うで。
「だからってあんな…」
自分でも男っぽい言うとったけど、嗜好までそっちの方に…
いつのまに…
「それにどっちかっつーとあたしよりあさ美ちゃんの方がお似合いやろ…」
「さりげなく人を巻き込まないでよ」
いやいやもうマジな話。
ほれあさ美ちゃん道産子やし、ユニットも一緒やったから
あたしなんかより断然美貴ちゃんと気ぃ合うで。
「だからさりげなく私をくっつけようとしないでって」
「ほやのうて、似合う似合わないの話や」
あたしは自分のベッドの上に突っ伏した。
「っどぉ〜したらええんじゃー!!」
枕に顔を押し付けて青年の主張。
「にぶ〜く聞こえてくるもんだねえ」
「…あさ美ちゃんは食べながらでも上手に喋れるんやね」
「私は愛美貴こそお似合いだと思いますよお。………同じ田舎者同士」
「滝か……真ん中らへんと一緒にすんな!」
ほらそうやってさりげなく気を遣ってあげられるじゃないですか。
いやうっかり言いかけとるやないの。
- 631 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:26
- 「好きなら好きで付き合ってみたら?とりあえず」
「…あのなあさ美ちゃん、
あたしこれから毎週必ず美貴ちゃんと一緒に仕事すんの」
あぁ、ラジオのレギュラー決まったんだっけ?
あさ美ちゃんは三袋目のお菓子の封を切った。
「ほやで。付き合ってもし喧嘩とかして仕事に影響したらとか思うやんか」
「仕事とプライベートは別だって。藤本さんだって割り切れるでしょう」
……あたしにはその自信、あんま無い。
「…愛ちゃんさあ」
「なんや」
「そういう予想をしてる時点で、付き合おうと思ってるって気付かない?」
「…気付いとるわい」
そっかそれじゃあ
「返事の仕方に困ってる?」
「うん」
ふー、そうだねえ困るよね、あ、愛ちゃんお茶おかわり。
「へいへい」
ベッドを降りて空のコップを受け取って
素直に麦茶を注ぎに行った。
今日はそういう日やさけ。
- 632 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:26
- 皆さん、今日は何月何日だかご存知ですか?
五月七日です。
ワタクシ、紺野あさ美の誕生日でございます。
こんな記念すべき日に
何で他人の恋愛相談を受けてるんでしょう。
まあでも、愛ちゃんから
『今日は一日食べ物無礼講デー』
というプレゼントを頂戴したので、食べながらでいいなら
話を聞くくらいなんてことないかな、と思ってます。
ちなみにこの無礼講デーでは、私が食べるものは全部代金愛ちゃん持ちで、
食べ物に関係することなら愛ちゃんがだいたいやってくれます。
お茶もその一つです。
調子に乗って買物袋パンパンになるまでお菓子を買い込んで
来てしまいました。
お持ち帰りは勿論OKです!完璧です。
「あいよー、おかわりやで」
「ありがとお」
で、返事の仕方ですか。
- 633 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/07(金) 12:27
- 「ふつーに『こないだの返事、OKやよー』って言うのは?」
「そんな軽いんでええんかの…」
「じゃあ『先日は大変喜ばしいお誘いを頂戴いたしまして恐縮です。
三日三晩寝食も忘れ考えに考え抜いた結果」
「カタすぎる」
「……『あたしなんかでいいの?フジ男さん…!!』」
「アホかぁ!」
人が一生懸命考えてるのに。
「一生懸命ギャグにして終わらせようとしとるやろ」
「そんなことないよ。世の中色んな人がいるんだもん」
こんな身近に居るとは思わなかったけど、考えてみれば
オカマさんの多い業界だもんね。
逆もあって然り。
「うあーミキティめ、微妙に嬉しい形であたしのこと苦しめやがって」
……なんだ、遠まわしにノロケられてる?
「そーだ愛ちゃん、それ言ったら?」
「あぇ、どれ?」
「嬉しいって言ったら?」
「うれしい、嬉しいか………むー」
「それでうまくいけば喋らなくてもコクンって一回頷けば通じるかもよ」
なぁ〜るほどぉ!愛ちゃんは一オクターブ高い声を出した。
「えーそしたら、どこ、どこで返事すればええんやろ」
……まだ続くんですか。
- 634 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/07(金) 12:39
- 基本的にプライベートなもっさんなので北海道弁が時々入ります。
内面描写での一人称も「アタシ」にしてます。
>>625 bouさま
どうもです。
大丈夫ですか、一安心。
今回ちょっと彼女浮かれモードですけど…
大暴走だけは食い止めたいものです。
- 635 名前:bou 投稿日:2004/05/09(日) 20:02
- おぉ!更新されてる♪
なーんか、自然な感じでいいっすね♪
楽しみにしとりますんで頑張って下さい。
あ、藤本さんは基本が 美貴 っす。。。
前にラジオで、ガッコ(高校?)に入る時に自分の事名前で話すの恥ずかしいかな?って、私って言ってみたけど、ついつい出るんですよね〜と言っとりました。
ちょっとした豆知識でした^^;
- 636 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/11(火) 23:39
- 藤高続き、しばしお待ちください。
ネタが古くなる前に亀高短編。
- 637 名前:離・再 投稿日:2004/05/11(火) 23:40
- とある休日に、家に一人きり。
朝から何となく調子が悪かったのだが、昼を過ぎて
本格的に苛立ちはじめ、勢いに任せて掃除なぞしてみた
のだが落ち着かない。
三時を過ぎても掃除の疲労はともかくイライラは解消され
なかったので、はてさてどうしたものかとテーブルに爪で
コツコツと音を立てながら、声とも唸りともとれないどっち
つかずな音を喉から出す。
溜め息をつく。
ふうっ、と吐き出したそれでふと思いついたことがあった。
煙草でも吸ってみるか。
最低限だらしないと思われないような格好で
小銭を持って玄関から出て、
思いつきで出てきたはいいが 煙草の自販機がどこにあるかなぞ知らぬ。
思いつきで出てきたはいいが 家の中で吸うわけにはいかぬ。
当たり前だ。自分はまだ十八の誕生日を迎えていない。
- 638 名前:離・再 投稿日:2004/05/11(火) 23:41
- イライラしたまま二股に分かれている道に出て、右に曲がって、
いやこっちじゃないとすぐさま回れ右して左側の道を選んだ。
恐らくは昔ながらの酒屋であっただろう民家のシャッターの前に
ずらっと自販機が並べられている場所があったはずだ。
果たしてその予想は当たり、飲料の自販機の隣にそれはあった。
思いつきで出てきたはいいが 煙草にこんなに種類があったことなぞ知らぬ。
思いつきで出てきたはいいが そもそもライターを持っていない。
「あーちくしょう。失敗してもた」
外で吸おうと思っていたので
ライターのことが悔やまれる。
しかしながらよくよく羅列された箱を一つ一つ見てみると、
『新製品!今ならミニライターがついてくる』というステッカーが
目に入った。
「おぅ、会社も必死やね」
小娘の分際で何を抜かすか。でも助かった。ありがとぉ。
百円玉三枚を投入し、ボタンを押した。
多少緊張していたので、危うくつり銭の二十円を取り忘れるところだった。
- 639 名前:離・再 投稿日:2004/05/11(火) 23:41
- 分煙化が進んでいる今の世の中ではあるが、比較的広い公園には
ベンチ脇に灰皿が設置されている。
思いつきで出てきたはいいが
何故かその公園の場所だけは知っていた。
ミニライターとやらは本当に小さくて握ってしまうと手の中に
すっぽり隠れた。
えーと確か火を付けながら吸い込むんやったっけ。
試しにライターをかちりとしてみると
温い風によってあっさりと火は消えてしまった。
「あーそれでみんなライター手で覆って火ぃ付けとったんや」
プチトリビアな気分になった。
煙草はメンソールで
口に咥えただけでひんやりと冷たい感触がある。
火を付けた。
だけどコツがわからず
吸い込んだはいいが肺まで吸い込まずに口の中で煙を溜め込んで
しまったから、次の瞬間にはボワッと全ての煙を吐き出してしまった。
- 640 名前:離・再 投稿日:2004/05/11(火) 23:41
- 「ぅゲホッ」
それが鼻に入ったので咽る。
素人丸出しや。
遠くできゃいきゃい言ってる子供達が
これに気付いていないようでほっとした。
「なーにやってんですか」
「……亀には気付かれてもた」
っていうか何でこんなとこに居るの。
「呼んだのはそっちでしょ」
「…あたし呼んだっけ?」
も〜、亀井ちゃんはアヒル口んなって隣に腰掛けた。
「いつ呼んだっけ」
「…さっき煙草っていくらすんのってメール寄越してきたでしょ」
「呼んどらんやん」
「ええ〜、呼ばれた気がしたんですけど」
なんじゃそら。
- 641 名前:離・再 投稿日:2004/05/11(火) 23:42
- 「それより、初めて吸うならこないだ私が吸ってたのにしようって
言ってた癖に」
「いやあ、ライター無くて。これには付いとったから」
掌の中にあったもんを示した。
「マズかったでしょ」
「っつーか、どやって吸ったらええんかわからんくて」
んーそっかあ、じゃ、行きましょっか!
亀井ちゃんは煙草を持っていない方の腕を掴んであたしを立たせた。
「…どこ行くって?」
「たかぁしさん家」
「なして」
「今日、四十九日なんでしょう?」
ああ
苛立っていたのはそのせいか。
母親が『あの時』と同じように
黒い服で家を出たからだったのか。
煙草は線香の代わりだったのか。
「たかぁしさん」
「ん」
「明日までちゃんと一緒にいるからね」
「…ありがとぉ」
- 642 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/11(火) 23:43
-
- 643 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/11(火) 23:44
- …暗いなあ。どうした私。
- 644 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/11(火) 23:47
- >>635 bouさま
どうもです。今回ちょっと進みが遅いです。
もっさんの現実でのエピソードは知ってましたけど、今回の話では
そういう設定のつもりで読んでいただけたらと思います。
- 645 名前:淡水魚 投稿日:2004/05/14(金) 20:24
- 告白して以来初めて二人だけで仕事するんだなあ。
「へぇっ?!」
「あ、今の声に出てた?」
収録までの待ち時間、トイレに愛ちゃんと二人きりだったんで、
またアタシは油断してしまった。
もう本当に無意識で言ってた。呟いてたのか普通のボリュームだったのかも
自分でわかんない。
でかい声だった?って聞いたら愛ちゃんはふるふると首を横に振った。
「そっかとりあえず良かった。
…って、美貴マジでやっばいなあ、ほんとごめん」
「………別に、今他に誰も居らんから」
「…えーじゃあさあ、こないだの返事聞いちゃってもいい?」
「や、勘弁して…」
洗面所の左隣で手を洗いながら愛ちゃんは俯いてしまう。
そりゃそうだよね。
アタシなら
トイレで聞くんじゃねーよ!って突っ込み入れてるな。
うん相手が『藤本美貴』でも突っ込み入れてるな。容赦なく。
………ひたすら待つつもりで挑んだ告白も、あの事故のせいで妙に
気持ちが昂ぶっちゃって、今やアタシは毎日おあずけ食らってるわんこ状態だ。
渋滞に嵌っちゃったドライバー状態って言ってもいい。
早く答えが欲しいけど
愛ちゃんから言ってくれるその時を待たなきゃっていう
飼い主に従順なわんこの『まだかな?まだかな?』っていう期待と
待たされてる自分の
テーブル崩れて愛ちゃんに助けられたりしなきゃ
もっとじっくり腰を据えて待ち続けることができたのに、っていう
『自分のせいでこうなったんじゃないのに』っていうドライバーの苛立ちと。
ドキドキでイライラ。
- 646 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/14(金) 20:24
- 「………美貴ちゃん顔」
「あ、恐い?」
「客観的には……」
なんだそれ。
あ、鏡越しに見てたからか。
きゅっ
その愛ちゃんが蛇口を捻って水を止める。
「…のぉ」
「うん?」
「やっぱあたし、今日中に答え出す」
「えっ?!」
手を洗ったまま驚いてしまって
上半身がビクッとした拍子に
蛇口から流れっぱなしの水が
手元からバシャッと音を立ててはねた。
「ひゃ!」
「あ、ごめっ、かかった?!」
「あー顔にちびっと…ありゃ、ちべて」
「っぷ、手ぇ濡れたまま顔にあてるからだよ!」
相変わらずの天然ぶりに思わず吹き出してしまう。
本人は真面目なくせにシリアスになりきれないんだよね。
そういうところもとても愛おしいよ。
- 647 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/14(金) 20:25
- 吹き出したままの笑顔で鏡見てみなと指差して、漸く愛ちゃんは
自分が何をしたのか理解したみたいだった。
「あーほんまや。やってもた」
まあいいやほっときゃそのうち乾くやろ
…その独り言に、駄目だよ化粧落ちるじゃん!と突っ込もうとして
それを飲み込む。
濡れた手を顔にあてた時にできた水滴が
愛ちゃんの右頬を伝って顎のラインを流れ落ちていくところを
見てしまったからだ。
全くどこの昼メロだよ。
こんな安っぽい脚本書いたの誰だよ。
<美貴、ここで愛を抱き寄せる>
とか書いたの誰だよ。
………まだ駄目だって!
「あ、時間や、美貴ちゃん行くで」
「え、あ、ハイ」
愛ちゃんは本当に頬を伝うそれを気にせず、背後にあった
ドアへ向かう。
水滴と
方向を変えた勢いで靡いた髪の毛が
アタシの視界をかすめて消えた。
目の前で思いっきりエサをちらつかされているのに
なんだか恐くて迷ってたら、
食らいつく寸前になって釣り糸が引き上げられた。
そんな感じ。
アタシの中のわんことドライバーが呆然としていた。
釣られそうになった魚は水面で口をパクパクさせていた。
何だかんだ言って
一線超えるって思ってしまうと躊躇っちゃうんだな。
- 648 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/14(金) 20:25
-
こんなに気の抜けた状態で仕事をするのは初めてだった。
途切れることの無いマシンガントークに、あぁ〜、とか、へぇ、とか
あってもなくても良いような相槌を打つことしかできない。
そんな中愛ちゃんは相変わらずイジられ役で、そういう時だけは
すんなりと、というか、しっかりと、可笑しく感じるやり取りは
耳に届いて、番組の後半は笑いっぱなしだった。
「おかげさまで今日も笑いすぎて腹が痛いです」
「……お楽しみいただけたようで」
うん、すっごい楽しかった。
愛ちゃんほんっと面白いね〜って毎回言ってるんだけど、
未だに素直に受け取ってくれなくて
今日は
ほうけほうけ、あっしが馬鹿にされんのがそんなにおもろいか。
……馬鹿やないってぇ!
とか言って自分で自分に逆切れしている。
…も、もう止めて、腹痛い。
「全く失礼なミキティや」
「や、愛ちゃんそれ美貴のせいじゃ、ハ、ない、……って」
……あー、やっと落ち着いた。
「おー外もう真っ暗やぁ」
「……焼肉!」
「やだ」
「なーんでですかー」
「…………ムード無い」
ムード?
……ムード。
あ、ああ!
「えー、っと」
「………」
「宅配ピザでいいんだったら…うちに来るかい?」
「…行く」
- 649 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/14(金) 20:27
- 今回はここまで。
- 650 名前:bou 投稿日:2004/05/14(金) 20:28
- 更新乙です!
成程、設定だったんですね。それは申し訳m(_ _)m
それから、更新はとても楽しみにしてるんですが、作者さんのペースでゆっくりどうぞ♪
待つ価値十分です(^^)
- 651 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/14(金) 20:31
- またうっかりタイトルミスってる…
それと、淡水の続きの前に前回更新した離の方の続きがくるかもしれません。
まだはっきり言えませんが予めご了承ください。
- 652 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/14(金) 20:34
- >>650 bouさま
うお、見られてた(笑)ありがとうございます。
ええそろそろ私も本格的にペースダウンのようです…気長にお待ちください。
>>651のことも念頭に置いて頂けると嬉しいです。
- 653 名前:bou 投稿日:2004/05/14(金) 20:56
- …そっ、そっ、即レスってもイイっスか?w
急かしてないんで!急かしてないんで!m(_ _)m
ぅおおおーっ!ここで止めるかぁ?
と、いい意味で引っ張りまくられていますw
こう、どのカプでも、高橋さんを見守っている暖かい目線が大好きなんです!
…どちらのお話しも楽しみにしてます(^^)
- 654 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/19(水) 18:34
- 「うーん………」
うちに着いてピザ屋のチラシを渡してから、愛ちゃんはずっと
それとにらめっこをしてる。
床に座り込んで床に置いたチラシと。
アタシはお客様優先と言うことで、好きなもの選んでいいよ、
と言って渡したので、またおあずけを食らっている。
でも流石に十分は迷いすぎだろ。
「…ねえ愛ちゃん、何をそんなに迷ってんの?」
とうとう我慢できなくなって声をかけたら、彼女は
眉間に皺を寄せたままアタシの座っているソファの方を向いた。
「美貴ちゃんだから肉やろ、でもピザってこんなに肉メインの
メニューが多いとは思わんくて。
折角だしちゃんと野菜も入ってるのにしたいなあと思たら
サラミなんたらとかいうのも選択肢ん中入ってもて、ああーもう」
気遣い屋さんで優柔不断。どうやらちょこっと助け舟が要るみたいだ。
「今日は愛ちゃんがお客さんなんだから愛ちゃんの好きに決めていいんだよ。
野菜ならサイドメニューのサラダ頼めばいいしょ」
「えーでも、二人とも好きなもん食べたいやん」
…なかなか嬉しいことを言ってくれますな。
応用力がちょっと足りないけど。
- 655 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/19(水) 18:34
- 「じゃああれだ、半分半分で二種類のメニュー頼めるやつあるから、
それにしよ。ほらそこの上んとこに載ってる」
「…おお!」
そんな驚くことか…あ、じゃあこれはどうだ。
「しかも実は四等分にして四種類頼めるのもあったりするんだよ。
それの左側見てみな」
「おおぉ!!」
ぷっ
予想通りだ。素敵だ。
床に両手ついてチラシに拝んでるみたいな姿勢になって凝視してる。
写真に撮りたいくらいのリアクションだよ。
楽しいなあ、ほんと。
「っくく……ほら愛ちゃん、半分こ?それとも四等分にする?」
「半分こや!」
電話をかけて
アタシがいつも通りにLサイズを頼んだら
愛ちゃんは追い討ちをかけるように
「えーっ!?デカッ!」
と小さく叫んだ。
- 656 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/19(水) 18:35
-
「美貴いっつもLサイズだよー」
「無理無理、半分でもこんなでっかいのあっし絶対食べきれんー」
愛ちゃんが配達されたLサイズピザの一切れをフォークで突き刺して
自分の皿に持って行こうとしたので、びろーんと伸びたチーズを
アタシのフォークで切ってあげた。
「じゃあ明日の朝にでも残り食べれば」
あ、やべえ!
「あした…?」
「ああごめん今のナシ!さっ、食うべ食うべ!」
しかしながら、やっぱりさっきの一言はずっと愛ちゃんの
頭の中を支配していたようだった。
「……美貴ちゃん今日、もしかして」
「しないよ!」
うっ
突っ込み早すぎたか。
「あ、あったり前やざ!」
…当たり前なんだ。
そっか、アタシやっぱり振られるんだ。
……そう思ったらあっという間に
いつもはぺろりと平らげてしまうピザが食べきれない気がしてきた。
- 657 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/19(水) 18:40
- 短い…けど一応更新。
>>653 bouさま
即レスどうもですー。というかまたしても微妙なところで止めてすいません。
スレタイトルに沿った内容なのでいつも高橋さん贔屓なのは仕方ないのです。
完全な悪者にできないんですよねえ…
- 658 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/19(水) 22:00
- あ、最近立った他板の亀高スレは私が立てました…
そちらはシリアスメインで長編なので気持ちも切り替えようと思って
名無しにしてたんですが次回更新からは署名を入れようと思います。
一応現在19レス分ありますが全て私の書き込みです。
- 659 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/28(金) 08:32
- 沈黙。
食べてるから当たり前なんだけど、そういうのじゃない種類の沈黙。
………重たい。
空気も食べかけのLサイズハーフのピザもアタシの気持ちも。
愛ちゃんのたった一言でこんなになるんだ。
やっぱり好きなんだ。
男っぽいとか自覚してるし、大抵のことは動じない自信があったんだけどな。
あぁ、ピザ多いなあ……今日は食べきれない。
「…美貴ちゃん食欲ないんか……?」
冷めてきたピザのベーコンをフォークの先でつついてたら
そう尋ねられて、愛ちゃんの上目遣いとアタシの伏せた目線がぶつかった。
「んー、そうだねぇ」
食欲はあると思うけどね、なんだか。
口元まで運ぶのも億劫になっちゃったんだよ。
フォークがなんか重く感じるんだよ。
「あ、ほうか、その味飽きたんか?こっち食べる?」
食べるつもりで既に一口サイズにしてあったトマトスペシャル、
次の瞬間にはアタシの目の前に翳されていた。
そんなことをされたらやっぱ食べちゃうじゃん。
「トマトじゅわ〜って、するやろぉ」
愛ちゃん
まるで自分が食べたみたいにニコニコしてて。
ほんとだ、噛んだ瞬間にほんのり甘い水分が口の中に広がった。
大好きな焼肉の肉汁とは違う、まとわりつくようなそれじゃない
自然のみずみずしさ。
『作られた』ものじゃない甘味。
- 660 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/28(金) 08:33
- 「…おいしいね」
直前の重い気持ちが軽く感じられるほどに、
本当にその一切れはとてもおいしかったんだ。
「よ〜く噛みしめよ〜 野菜は大事だよ〜♪」
「大事だね。ほんと大事だ」
へへへっ
お互いに頬が緩む。
「やぁなんか、嬉しいなあ。何やろ、ほんま嬉しい」
「愛ちゃん嬉しいの見て美貴も嬉しい」
ほんとさっきまでの落ち込みはなんだったんだろって思うくらい。
「ほうや美貴ちゃん」
「うん?」
愛ちゃんは持ってたフォークを皿に置いて畏まった。
「嬉しかったんやよ」
あ、なんかこれって。
すごく大事なことを言われている気がする。
そう思ったら自然とアタシもフォークを置いていた。
「あたしあの時、……びっくりしたけど、てかし過ぎたし
テーブル危ないって思てそれどころやないからあん時」
「うん」
「あん時何も言えんかったけど、美貴ちゃんの気持ちひって嬉しかったで」
嬉しかった、か。
- 661 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/05/28(金) 08:33
- 「あいや、かった、でのうて、そんで終わりやのうて」
……いいの?
愛ちゃん、そこで否定するってことは。
アタシの中のわんこは期待してもいいんですか?
渋滞に嵌ったドライバーは、待ち続けたことを報われますか?
「今ほら、また嬉しいって思たやろ。んで美貴ちゃんも嬉しいって言うて
くれた。……もしかしたら、もっとずっと一緒にいたら、もっともっと
嬉しいって思えるやろか、て」
愛ちゃんはアタシから目を逸らして俯いてしまう。
だけど両肩が持ち上がってるから。
首、竦めちゃってるから。
照れてるだけにしか見えないから。
わんこが尻尾をちぎれんばかりに振り出す。
ドライバーは心の底から安堵の溜め息を漏らした。
この餌には
自分から食らいついてもいいんだよね?
「……付き合ってくれるの?」
そっと手を伸ばして頬に触れた。
瞬間ビクリとされて、
一拍置いて、触れた手に愛ちゃんの手が添えられて。
「うん」
- 662 名前:ハルヒ 投稿日:2004/05/28(金) 08:37
- 一応まだ続きます。
- 663 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/28(金) 21:58
-
やったね♪藤本さん
- 664 名前:bou 投稿日:2004/05/29(土) 21:25
- わっ♪進んでる♪
更新おつかれさまです。
何だか藤本さん、踊らされてますね〜。
惚れた弱みってヤツでしょうか?(笑
- 665 名前:ハルヒ 投稿日:2004/06/07(月) 07:16
- お待たせしてます。すみません。
私情により少々更新が滞りそうな気配になってきました。ので、今しばらく
お待ちいただけたら幸いです。いただいたレスも次回更新時になります。
↓レス行を有効利用しよう。エコモニおめでとう。
『忠犬さゆみんの憂鬱』
「しげみー、お散歩ー」
「………」
「…行かんの?」
「………」
「…具合悪いんか?言ってみ?」
「………」
「………お手」
「……わん」
「反応が鈍い…梅雨のせいやろか」
「………違います」
「こら痛い痛い、手ぇ強く握りすぎ。
ほやったら何でそんな無口なん」
「おねえちゃんって呼んでるのに」
「へぇえ?」
「呼んでるのにー」
「………あー」
「………」
「…さゆ、お散歩行こか」
「……わんっ!」
- 666 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/06/08(火) 22:20
- 完全に冷めてしまったピザに気付いた時には
アタシの中のモロモロの気持ちや衝動も少し熱を引き始めていて
だけど
思い立ったら即行動に移すこの藤本美貴ですから。
…熱が勝手に引いたってわけじゃないんだな、これが。
「…あほぉ、もっと色々大事にせぇ」
「スミマセン」
「するならするでちゃんと前もって断れぇ」
「ゴメンナサ……ひてて」
アタシの手の上に重ねられてた愛ちゃんの手が離れて。
ほっぺた抓られるなんて何年ぶりだろう。
…やっぱりいきなりキスとかするべきじゃなかった。
ああ、自分の中の男性ホルモンが憎い。
「…がっかりした?」
「………てかな、美貴ちゃんほんまムード無い」
「え?」
脂っこいもん食べてる時にそんなんするべきやないやろが。
…唇だからお互いまだ良かったもんの、全く。
- 667 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/06/08(火) 22:21
- 「ひたたた、愛ひゃん離ひて」
「離すかコノヤロ〜」
「痕、痕残るって!」
「………しゃーないのお、このヘタレは」
へたれ…
誰にもそんなこと言われたことないのに。
でも確かに明らかに今は愛ちゃんの方が優位な立場で、
何か新鮮だと思ってしまった。
「あたしがきっちり躾んとあかんな、もっと女の子らしなるように」
「しつけ………あ、どうぞよろしくお願いします」
「うむ」
…ヤバイ?アタシ今ちょっとヤバイ?
この子のペースに乗せられて、言われたことを素直に受け入れるのに
何だかとても喜びを感じちゃったアタシって
…ちょっとどころじゃなくヤバイかもしれない。
- 668 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/06/08(火) 22:22
- 海を知らない釣堀の淡水魚が今までとはちょっと違う餌に
食いついて釣り上げられて。
そしたら川に放流されて
何だかわからないけど川の水がとても綺麗で気持ちよくて
その川が海に向かっていることに気付かずに
流れに身をゆだねている。
アタシを釣り上げて川に放流した彼女はその様子を見て
「ああっ、そんまま行ってもうたらあかん!」
いやちょっと待てよ、放流したのあんたじゃん!
そう突っ込みたい気持ちもどうでも良くなるくらい
川の水は釣堀の濁ったそれとは刺激的で心地良く。
いっそこのまま海まで……
「あかんっての」
彼女はそんなアタシを網で掬い上げて
またもとの位置まで戻す。
ねえそれじゃあさあ、さっき行ったところの
もうちょっと深いところまでなら潜っても構わないしょ?
「…二回目はもうちょっと後のお楽しみや。
いっぺんにやろうとすんな」
「残念」
「あたしにも慣れる時間っつーのが必要やざ」
それに
そこばかりじゃなくてまだ行ったことないところとか
やったことないこととか
たくさんあるし。
焦らなくても
すぐ目を離したりしないから。
ちゃんとここに居るで。
- 669 名前:淡水魚と乙女の海水浴 投稿日:2004/06/08(火) 22:22
-
…よっちゃんさん。
愛ちゃんはとても駆け引きの上手な子だったよ。
なんか、相談とか必要ないみたい、今んとこ。
暴走しかけたらちゃんとブレーキかけてくれそうだもん。
…そうだなあ、もしアタシがよっちゃんさんに相談する時が
あるとしたら、それは
仕事と二人きりの時のギャップがすごくて
可笑しくて大変だよって。
愛ちゃんが傍に居る時急に笑い出したら
多分それのせいだから止めて、って。
全然相談じゃないようなことを言いそうな気がするな。
その時はどうぞ、相手がこの藤本美貴でも
遠慮なく
突っ込んでやってください。
- 670 名前:ハルヒ 投稿日:2004/06/08(火) 22:28
- 本格的に忙しくなる前になんとか「淡水魚」終了です。
お付き合いいただきありがとうございました。引っ張った割にオチが弱いですが…
>>663 名無飼育さま
川;VvV)<やっ…てないのだ!まだ!
>>664 bouさま
ええもう完全に惚れた弱みで最後まで行ってしまいました(笑)
へたれ藤本さんですいません。
今後は他スレの更新をメインに活動していく所存です。
こちらのスレは気まぐれ更新になるかと思われます。
たまーに覗きにきていただけると嬉しいです。
- 671 名前:bou 投稿日:2004/06/11(金) 20:50
-
あ…終わってる^^;
もう見に来られないかも知れませんが、
たくさんの楽しい短編をありがとうございました。
長編も実は読んでいますw
楽しみにしてますんで頑張って下さい。
- 672 名前:睡眠不足と杞憂 投稿日:2004/06/17(木) 16:44
- 「おっと」
「……………」
「しげみー?…寝とる?」
ミュージカルの稽古の合間、僅かな休憩時間。
椅子に座って持参した本を読んでいたら左肩に重石が。
それはいつのまにか隣に来ていつのまにか眠りこけてた
しげみの頭やった。
「ほんまによぉ寝る子やね」
「……………」
熟睡しているらしい。
肩を揺らさないように笑いを漏らす。
寝る子は何たらと言うけど
あたしがこの子位の時もそういえば結構よぉ寝とったような…
何か原因があった気がする。
「…あぁ」
思いついたその原因とこの子の年齢はうまいこと
ダブってた。
- 673 名前:睡眠不足と杞憂 投稿日:2004/06/17(木) 16:45
- 「やーあかん、ほんな下世話な想像」
ほやけどそん時が来たらこの子多分あたしに
報告するんと違うやろか。
妹って言うたし。
うーんでもなあ…もうとっくに…
もしかして何かの病気やったりせんか?
あーなんか気が気じゃのぉなってきてもた。
おねーちゃんは心配です。
「…ってか、今でも赤飯って炊くんやろか」
炊き方教わってないから
もしもん時は
おねーちゃん特製シフォンケーキでも作って
お祝いしてあげたろ。
…あ、あと五分。
「しげみー、そろそろ起きねま」
- 674 名前:ハルヒ 投稿日:2004/06/17(木) 16:48
- 年頃の姉っぽい杞憂かと…
>>671 bouさま
ご覧になっているかわかりませんが(苦笑)レスありがとうございます。
こんな感じでたまーに短いのを更新していきます。
長編はなかなかしんどいですね…
- 675 名前:bou 投稿日:2004/06/20(日) 01:30
- 見てます♪
ちょっと油断してました(w
ご自分のペースで書かれるのが一番かと(^^)
ハルヒさんはまだ更新速い方だと思います。あまり焦らないで、納得のいくものを書いて下さったら、一番嬉しいです♪
んで、わぁい〜シゲさんだぁ。
最近メキメキ成長しててカッコよくなってますよね♪
たかぁしさんのおとな子供してる優しさにメロメロっすぅぅぅ〜!
長文スマソm(_ _)m
- 676 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:41
-
「今日の 部 活、は…」
「また中止なんですか?」
おっ、亀井ちゃん残念賞!
部長こと高橋先輩が右手にペンを持ってホワイトボードに
体を向けたまま顔だけを私に向けて大きな声を出した。
中止の『止』に線が一本足りなくて『上』になったまま
「ほうやでえ、中止でーす」
教卓にペンのお尻でコツコツ音を鳴らす。
「何でまた」
「亀井ちゃん知らんの?」
「何がですか?」
主語が無いのでピンと来なかったけど、先輩はその主語を
言いにくそうにしていたので、入ってきた後ろのドアから
奥のホワイトボードまで歩く。
- 677 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:41
- あと二メートルくらいで隣に並ぶだろうというところで
「顧問の先生」
と聞こえた。
「顧問の?」
復唱しながら進んだらちょうど隣に辿り着く。
「ほんまに知らんの?噂やで」
「思い当たりませんけど……眩し」
先輩は窓からの逆光を受けていて輪郭しか捉えることができない。
喋りながら思わず手を翳してしまったので
「カーテン閉めるか」
輪郭のままの先輩がカーテンを閉めに行った。
あ、しまった。ここは後輩がやるべきところじゃないだろうか。
そう思った頃には既に、あの黒いカーテンが窓を覆っていた。
輪郭だけだった高橋先輩が
今度は
背後の黒いカーテンに紺のブレザーが溶け込んでいるせいで
輪郭を失っている。
一番最初にカーテンに包まった時も
そんな先輩が居たな。
あの時の独特の匂いを思い出した。
- 678 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:42
- 「うちの顧問がな、問題起こしたらしいで」
思い出に思考を持っていかれそうになっているところへ
彼女の声が届く。
問題、問題………?
「何かやばいことしたんですか?」
「…ちょっと、こっち」
体の輪郭が無くて顔と手だけが浮き出て見える。
その右手が手招きして私を呼んだ。
「相当やばそうですね」
「うんどーも、二年生の女子襲ったとか襲ってないとか…」
内緒話のつもりで声のトーンを落としているけど
低い声ほどよく聞こえるもので、特に静かな音楽室だから。
なかなか渋い声を出すんだな、高橋先輩って。
「それでみんな怖がって部活に顔出さなくてな。あさ美ちゃんも」
「紺野先輩もですか…」
「はぁ…あたし部長になった途端にこれやもんなあ…先行き不安ー」
…どうも高橋先輩って悶々としていると幼稚な行動に出るらしい。
カーテン掴んでその手を左右に振るもんだから
レールのシャーシャーっていう音と一緒に埃が…
埃、が…
「っくしゅ!」
「あ、ごめ……っくしぃ!」
- 679 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:42
- …ちょっと考えれば埃が舞うことくらいわかるじゃないですか。
「スイマセン…でも」
「何ですか」
「わざわざカーテンに包まるより窓から離れたほうが埃から
逃げられるんでないか?」
「野暮なことを聞ないでください」
「野暮なんかぁ?」
「野暮ですよ。今動いたら舞った埃も一緒に連れてくることに
なるんだから、落ち着くまでじっとしてるのが吉なんです」
なんちゃって。
「ほぉお、そぅなのぉ」
…まんまと騙されてる。素直だ…
「…なあ亀ぇ」
「はい」
密着状態の背後からまた亀と呼ばれた。
でも今の私はまたこの中に入ることができて
機嫌が良いので亀呼ばわりも見逃してあげましょう。
- 680 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:43
- 「ほんまに知らんかったんけ?」
「知りませんでしたね」
「結構学校中の噂になっとったんやけど」
「ほんとに学校中ってわけじゃないでしょう」
「もしかして亀、友達居」
「失礼な。少なくとも二人は居ます」
「二人かい」
「友達って認めたのは二人です、今のところ」
「すっごい上から物言ってるな、偉そうやー」
「その代わり自分が同じようにされても文句は言いませんよ」
「…選ばれたり捨てられたりすんのが?」
「捨てられるっていうか、離れられても。よっぽど私が
好きな相手じゃなかったら」
「なんつー冷めた女子高生なんや…」
項垂れたらしく背中に重力がかかる。
あ、何かこの重さがいい感じ。
「ふふふ」
「…何笑っとんの。キショ」
「何かこの前からここが好きになっちゃったんですよねえ」
音楽室?
呟きと一緒に先輩の茶髪が視界の片隅で揺れた。
- 681 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:43
- 「このカーテンの中」
「こん中?あぁ何か落ち着くよなあ」
「で、尚且つ先輩がのしかかってくるこの感じがいい感じで」
「…変な子や。変な子が居る…!」
わざとらしく身震いされた。
変なのは自覚してます。
「狭くてぎゅーって感じのところが好きなんです、昔から」
「ぎゅー、て、こうか?」
「!」
心臓が跳ね上がる。
先輩は特に躊躇う様子もなく両腕を私の腰の前で交差させていた。
「そ、そうです。でも、今日はちょっとそれされると暑いかも」
「おぉ、悪い悪い」
あっという間にゆるい拘束は解かれたけど
一度跳ね上がった心臓はいくらかの汗を出すまで
落ち着いてくれなかった。
暑いしそろそろ大丈夫だから出よう、説明くさい独り言を
呟きながら先にカーテンを抜け出す。
こっそりと胸元を撫で下ろす仕種が高橋先輩に気づかれませんように。
カーテンから数歩離れて振り向いた、その時私はまたそれを見た。
- 682 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:44
- カーテンと同化している彼女。
そうか。
……カーテンが高橋先輩なんだ。
あそこをお気に入りの場所にしたのに
音楽の授業でさゆやれーなとここに来ても
その時そこに包まる気にならなかったのは
それならさっきの心臓の跳ね上がりも説明がつく。
「…先輩はもし顧問が本当にどうにかなっちゃっても毎日
ここに来るんですか?」
「そりゃ、部長が来なかったらあかんやろ」
いつの間にかカーテンは開けられていて
今度は輪郭だけじゃなくて、でもまだちょっと眩しいけど、
彼女の顔が見えた。
「毎日来るで、放課後に」
あ、ちょっと笑ってる。
…せっかく落ち着いたと思った心臓がまた活発になりそうだった。
- 683 名前:頬擦りU 投稿日:2004/07/11(日) 18:44
- 先輩は再びホワイトボードに向かう。
ペンを持ってキャップをはずした。
「…それじゃあ、私も」
毎日放課後に
ここに来ます。
「うん、待っとるよ」
書きかけだった『上』に線が一本足された。
- 684 名前:ハルヒ 投稿日:2004/07/11(日) 18:53
- お久しぶりでした。
>>675 bouさま
レスありがとうございます。約一ヶ月ぶり…
重さんは私の中でイケメン(目元が)なのですが
それでいて妹属性なのが萌えなポイントで(笑)最近私の中で
道高はかなりの注目株なのでまた何か書くかもしれません。
見守っていただけたらと思います。
- 685 名前:bou 投稿日:2004/07/12(月) 22:35
- 亀井さん…。
気づいてなかったんかいーーーーっ!?(笑
作者さん。お久しぶりです(^^)
また素敵なエピソードをありがとうございます。
ここの亀井さんは、
ひねくれているようで、ある意味素直で、やっぱりヒネクレテ…(ry いる所が魅力なのかな〜?と^^;
なんか可愛いんですよっ。
- 686 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/24(土) 17:05
- 忠犬さゆみんサイコーです!!
もっと読みたいです〜。
- 687 名前:忠犬さゆみんとハーネス 投稿日:2004/07/29(木) 22:59
- 「あっ!あそこに全部ピンク色の店がある!」
指先までピンと伸ばして
言うとおり店内全部ピンク色のテナントを
指差したしげみは、返事を待たずに
組んでいた腕をグッと指差した方向に引っ張って
あたしを店まで連行した。
あたしはちょっと、その眩しい程の桃色ゾーンは
オノレの許容範囲からひって大ハズレ、って
わけでもないんやけど、『大』はずしてハズレにはかなり
近かったもんやから、ちょっとだけ足を出すのが遅れた。
「あーあっちの店、髪飾り見て来てもいいですかっ?」
いいですかと確認取りつつもとっくに目的の場所に
場所に早歩きだったりする。
ほやけどあたしたちはしっかり手を繋いだままで、
引っ張られて、ああやっぱこの子は犬っぽい。
野良やなくて、飼い主を連れまわす憎めない飼い犬。
「たかはしさーん、ほらこれっ!かわいいですよねっ」
店内で大声で呼ばれたりする。
…前に、二人で遊びに行った時加護さんって大声で呼んだら
バレちゃうから呼ばないでー、って言うてた
かぁちゃんの気持ちが少しわかった。
- 688 名前:忠犬さゆみんとハーネス 投稿日:2004/07/29(木) 23:01
- 姉の気持ちを露知らずの妹は、そこらにあったプラスチックの
ボールが通してある髪飾りをつまんで
「クラッカー♪かちかち、
だめだ一回しか当たんなかった」
すぐに飽きたらしくそれを放り投げてもた。
「こらこら、売りもんなんやからもっと大事に」
「あ、ごめんなさい」
「…それ気に入ったんか?」
「え?」
きょとんとしていたしげみの手には白いふわふわの髪飾り。
「あーこれ、うん、すごい気に入ったんだけど値札が付いて
なかったから店員さんに聞こうと思って持ってて…」
早口でまくし立ててる間にふと閃いた事があった。
「何かしげみっぽいな、それ」
「っぽいですか?」
うん、白くてふわふわ、道重さゆみ。
- 689 名前:忠犬さゆみんとハーネス 投稿日:2004/07/29(木) 23:02
- 「それ買うてくるよ」
「え?」
「何かほんとしげみっぽくて気に入ったから、
あたしが買うてくる。貸して」
買うてあげる、とは何だか恥ずかしくて言えんかった。
で、手を出したら
「おねーちゃんありがとうっ!」
…いや渡してもらうのは全身でのうて髪飾りだけでええんやって。
まあええか…
「じゃあお金出すから自分で買う?」
「一緒に買いましょう!」
またしても腕を引っ張られる。
やけど今度はあたしの足も素直に前へ出た。
「あれ?」
会計をしようとしたら
髪飾りはいつの間にか二つに増えとった。
「お裾分けですっ」
「…意味間違っとるよ、しげみ」
- 690 名前:ハルヒ 投稿日:2004/07/29(木) 23:06
- お粗末。
>>685 bouさま
お久しぶりです。レスありがとうございます。
うちの亀井さんは、ひねくれている、間違いない。
>>686 名無飼育さま
レスありがとうございます。リクエストに答えたつもりは無かったの
ですがちょうどネタを思いついたので更新しました。
「わん」は言ってませんが(笑)こんなんもありかと。
- 691 名前:bou 投稿日:2004/07/31(土) 03:42
-
キタキタ━━━━(゚∀゚)━━━!!!
更新お疲れ様です。
今回は、「………ニヤ〜ン♪」とジワジワ笑いがこみ上げてくるようなイイ後味でした。
大型忠犬に、納得萌ぇ〜です。
昨日まで「二人ごと」が亀+道→高+垣だったので、脳内でコチラとシンクロさせながらみてました(笑)
前回sage忘れてしまい、申し訳ありませんでしたm(_ _)m
- 692 名前:繋がってる? 投稿日:2004/08/26(木) 22:15
- 夏が来て
たかぁしさんとさゆの関係がしっかり認知されてしまった。
姉妹。
例の「妹です」発言からこっち、さゆはもうたかぁしさんにも
認められたということが嬉しかったらしくて思いっきり
気持ちがたかぁしさん寄りだ。
私と二人きりより
私とたかぁしさんと、たかぁしさんと一緒にいる新垣さんと
四人。
っていうパターンが多くなった気がする。
それも結構自然とそうなってる。
いやぁ、
私はみんな好きなので、と言ってももちろん優先順位はあるんだけど、
この四人で居る事に居心地の悪さは感じないのですが。
言っていいですか?
さゆとたかぁしさん、露骨に仲良すぎ。
- 693 名前:繋がってる? 投稿日:2004/08/26(木) 22:16
- 二人が会話してるのを横目に
いつも一緒にいるはずの私が知らないところで
何かあったんじゃないかと詮索したくなる五秒前。
という最近です。
だってもっとこっちを見てよ 寂しいよー…
「なんかちょっとなんかむっちゃ好きぃよ 悔しいなー♪」
「新垣さん煽らないでくださいよ」
「煽る?だって今歌ってたから続けただけだよ」
「…そうですか」
公認姉妹が二人だけでまったり会話してたから一人で
トイレに行って、楽屋に戻ってきたらまだまったり会話してた。
「何話してるんだろう」
「歌のアドバイス貰ってるみたいだよ、愛ちゃんに」
…姉妹だけでなく師弟だなんて欲張りだぞ、さゆ。
「亀井ちゃんも混ざったら?」
「何でですか」
「寂しいんでしょ」
「………」
塾長…そう言えばバレバレだったんでしたね。
- 694 名前:繋がってる? 投稿日:2004/08/26(木) 22:17
- 「でもなんか入り込めない雰囲気なんですけど」
「そうだね」
「混ざれませんよあれじゃ」
「亀井ちゃん地味に声が怒ってるよ」
怒ってません。拗ねてるだけです。
「だーいじょうぶだって!愛ちゃん気が小さいから二股なんか
できやしないって」
「そりゃわかりますけど、って、そうじゃなくて」
何気にさらっとひどいこと言ってるけど
そういえばたかぁしさんと新垣さんっていつも毒舌対決してたな。
それでいてまったく友情にヒビが入らないのはすごい。
「私じゃああいう空気は作れないから」
だってほら見てくださいよアレ、あの顔。
たかぁしさん微笑みですよ微笑み。
時々うんうんってちゃんと頷いてたり、
ここからじゃよく聞こえないけど
多分声色だって落ち着いてる時のハスキーなボイス
だったりするはずだ。
私と話してる時によくやる極端なリアクションは
いずこへ…?
- 695 名前:繋がってる? 投稿日:2004/08/26(木) 22:18
- 「よく見てるねぇ、独り占めしたいんだね」
「そうかもしれない」
「こう言っちゃなんだけど、いつかは姉離れが来るでしょ」
こう言っちゃなんだけど、早いとこそれが来ないかと思ってますよ。
「あ」
件の姉がこっち向きました。
その目が合った時、私の耳にはこう聞こえた。
『何かさっきから人のことじっと見とるやろ』
「………新垣さん」
「うん?」
「大丈夫みたいです、まだ」
何が?と特に関心のなさそうな返事が返ってきた。
「見たら聞こえるから大丈夫、です」
「はぁ?」
具体的に話しても理解してくれそうに無いですね。
私はとりあえず
あの中に入ってみようと思った。
- 696 名前:ハルヒ 投稿日:2004/08/26(木) 22:25
- 姉妹萌えの影響がこんなとこにまで。
>>691 bouさま
お久しぶりです。亀高久しぶりです…といいつつみっちげさんが…(笑)
最近新高にもやられてますしどうましょうと言った感じです。
CP妄想ばっか増えて肝心の中身が無いです。マイペースマイペース…
- 697 名前:bou 投稿日:2004/09/09(木) 21:12
- ゥワワワワッと!(>_<)
更新来てた!(汗
作者さん、萌え萌え交信乙ですた!
果てなく続く青春♪っスね(^o^)
二人ゴトの新高!たかぁしさん全壊!!で楽しゅうございました。
こちらの亀井さんは…相変わらず好み過ぎです。
くぅぅぅっ!かわいいゼ!!
- 698 名前:忠犬さゆみんかぎわける 投稿日:2004/09/14(火) 20:07
- 「おはよーございます!」
「おぅっ」
楽屋で挨拶、これはいつものこと。
ところが挨拶がてら椅子に座ってたあたしのそばに寄ってきた
しげみは、そのままの勢いであたしに抱きついてきた。
飲みかけのキャラメルフラペチーノを取り落としそうになる。
蓋がついてて零さずに済んだ。
「あ」
「どした?」
「高橋さん、今日紺野さんと一緒に来ました?」
「へ?うん…」
確かに今日はスタジオ来る途中あさ美ちゃんにばったり
会って途中から一緒にここに来とった。
「あの、お菓子のにおいが」
「お菓子…食べとらんよ?」
じゃなくて、としげみはブンブン首を振る。
- 699 名前:忠犬さゆみんかぎわける 投稿日:2004/09/14(火) 20:08
- 「紺野さんのお菓子のにおいがする香水のにおいが」
「においがにおい?」
「高橋さんからもおんなじにおいがしたから」
…おお!
「すげー!しげみすげー!鼻いいなあ」
しっかしあさ美ちゃんと並んで何分か歩いただけなのにのお。
「あ、絵里おはよ」
「おはよーさゆー」
未だ抱きつかれたままでいると亀井ちゃんが楽屋入りしたので
一緒に振り返る。
「早速おねえちゃんっ子してるんだねー」
亀井ちゃんはアヒル口を余計に釣り上げてこちらにやってきた。
「なぁなぁ亀子、あたしお菓子のにおいするって」
「甘くていいにおいするの」
しげみが彼女を手招いた。
そしてほらこのへん、とあたしの左肩あたりを指し示す。
- 700 名前:忠犬さゆみんかぎわける 投稿日:2004/09/14(火) 20:08
- どれどれ、と言いながら亀井ちゃんの顔がその辺に来たのだが
「えー全然そんなにおいしないよ?」
「しないの?ほら紺野さんがつけてる香水のにおい」
「…しないぞ?」
本気で否定しとる。
「いや確かに今日あさ美ちゃんと楽屋入りしたんやけど
ほんなきついにおいやなかったで、うつっとらんと思てな?」
「しますってばー」
「…さゆ、犬並みの嗅覚なんじゃない?」
犬。
…何だか妙に納得してもた。
「それかほらそのフラペチーノのにおいと勘違いしてるとか」
「ちがうよ絶対紺野さんの」
「えー私はわかんない」
「わかるー」
しげみは頑として香水のにおいだと言い張っている。
そんな様子を眺めながら、
そのうち遠くからでも、あたしのにおいをかぎ分けて
どこからか現れるのではないかと、そんな想像をしてしまい、
あたしは笑いを噛み殺した。
- 701 名前:ハルヒ 投稿日:2004/09/14(火) 20:12
- おたおめ更新、そしてジャスト700でオチ。
>>697 bouさま
毎度ありがとうございますです。今日更新できてよかった。
今回亀さん脇役ですが萌えられたかなー、無理っぽいですね(笑)
- 702 名前:トキ 投稿日:2004/09/15(水) 00:37
- 誕生日更新されてたのですね?
やっぱり昨日覗いておくべきだったかな
ハルヒさんの亀高ファンですけど、妹萌えの気持ちは僕も一緒ですよ。
- 703 名前:bou 投稿日:2004/09/17(金) 20:55
- たかはっしーさんのB.D.…15日だと思ってましたorz
それでも過ぎまくりですし(汗
作者さん。おたおめ更新乙です!!
素で道重さん凄すぎなんですが…嗅覚2000倍^^;
愛(恋?)のチカラは凄まじいですね♪
作者のおかげでハロモニでもついつい重さんに目が…みんな可愛いっw
- 704 名前:みみのさっかく 投稿日:2004/09/18(土) 19:17
- このごろやっと見慣れてきたと思っていたものが
ある日突然消えた。
「最近してないね」
「何が?」
「ブレスレット」
仰向けに並んで一つのベッドで寝転んでいて
たかぁしさんが腕だけで伸びをした時に目に入った
左腕、の手首。
そこに輪をなしたそれの姿を認めなくなったのは
本当にここ数日だと思う。
「あぁ〜」
「また無くしたんですか?」
うぅん?と否定される。
「最近不安を感じなくなってきたから眠ってもらっとるだけや」
「…へぇ、そんなに絵里の愛は頼りないものでございましたか」
「…受け取る側の問題やから、んな拗ねんなよ」
それより絵里言うな。としっかり突っ込みを入れられた。
「仕事の延長で癖になっちゃったんだもん」
「良くない癖やなあ」
「…で、今はもう平気なんですね?」
「うん、でも」
「?」
- 705 名前:みみのさっかく 投稿日:2004/09/18(土) 19:18
- 「二人きりでいてまた絵里って言ったら元に戻るかもな」
仕事の延長なんて思いたないで。まっこと遺憾であります。
「…善処します。がんばります。大反省中であります」
「うむ、よろしい」
たかぁしさんはそう言うと体をこっちに向けた。
「あーし仰向けで眠れんの」
「知ってます。ぇ」
!!
「…今何言いかけた?ぇ、え?」
「…ぃいぇ?なぁんにも?」
「あーあ、数秒前やで?数秒前に大反省とか」
「だからなぁんにも言ってないですって〜」
ねっ?猫なで声を出しながら左手首を掴む。
「ほーら不安なくなれー。今のは耳の錯覚〜」
「……あほぉ」
と言われつつそれを振り解く素振りは見せなかったので、
この日の夜はそのまま眠りに就いた。
- 706 名前:ハルヒ 投稿日:2004/09/18(土) 19:26
- 涼しくなると筆が進みますね。
>>702 トキさま
ありがとうございます。ファンとか言われると思わなかったなあ。嬉しいです。
今のところ最萌えが姉妹ですけどやっぱり亀高も大事。
>>703 bouさま
ありがとうございます。
シゲさんの高さんに対する態度は完全に愛情だと信じて疑わない
アホな作者の影響を受けちゃ駄目ですよ!(笑)
といいつつ、私も最近シゲさんを良く目で追ってしまう…
最早道高で同列の推し具合かもしれません。
- 707 名前:bou 投稿日:2004/09/20(月) 01:19
- 自分の頭ン中は亀高重…で沸いてて汗だくです!w
作者さん
基本組更新乙です!
この二人のやりとりはまるで熟年夫婦のようっw
素直でない割にお互いの愛しっぷりが溢れてて、、、萌え〜(;´Д`)です!
- 708 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:05
- ピン ポーン
チャイムの音を聞いてすぐさまドアを開けると、
案の定十分前に連絡をくれた彼女が玄関前に
立っていた。
「今日はリベンジです!」
挨拶もせず声高に宣言する。と同時に手にしていた
買物袋を目の前に掲げる。
「何やの突然」
「花花緑緑のリベンジするんですよ!」
絵里はまたリベンジと言って握りこぶしを作った。
どうやら今日はいつものようにまったりする気分では
無いらしい。
買物袋の中身は、あの『マンゴープリン』の材料だった。
しかし
- 709 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:05
- 「…亀井さん、亀井さん」
「なんですかぁ?」
うちのキッチンのことをまだよく知らない彼女は
ボウルを探しているらしいが、それ以前に…
「ほんまにこれでマンゴープリン作るんですかね?」
「作りますよ、今度は完璧に!」
グッと作った握り拳は世界最弱の称号を与えられそうだ。
「…えー、きっとそれは多分絶対無理やと思うんですね、あたしは」
「…また失敗するって言うの?」
「ほうやのうてぇ」
あたしは買物袋の口を思いっきり広げて見せた。
「一般的に、これはパパイヤというものです」
「……えぇ〜?!」
花花緑緑の悲劇、再び。
- 710 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:05
- 「うそ〜、ありえない〜」
「いやあ、現実ですわ」
「あぁ〜もぉ〜、絵里のばかばかばかー」
真実を知って床に大袈裟にくず折れた絵里は
あたしの予想だと多分三分くらいはこのままだ。
「あーあー、もったいねえ。またパパイヤプリン作るか?」
「……いじめてます?」
「あ、バレた?」
「くっそお〜…」
あ、声が渋くなった。本気で悔しがってるな。
あたしは袋の中からパパイヤを取り出して、絵里が立ち直るまで
それを両手に持って弄んでみたりする。
そうしていたら、懐かしい南国の香りが鼻腔をくすぐった。
あ、ほや。
「なぁなぁ亀よ、これもったいないからやっぱ食うべ」
「…どうやって」
「チャンプルー」
写真集の撮影でパパイヤチャンプルー食べたんよ。
- 711 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:06
- 「そもそもですねえ、絵、私はあ」
「甘いものが食べたかったんです」
「だからそれならどうせならせっかくだから愛ちゃんと
一緒に作ってイイ気分で食べられるものにしたくって」
「で作れるものって言ったらこないだのプリン」
「作れなかったやん」
「…作り方は憶えたもん」
レシピは完璧だったから今度こそって思ったのに
「それがどうしてこんな苦いものに」
絵里は口を尖らせながら既に皿の上に半分しか残っていない
高橋愛オリジナルパパイヤチャンプルーを箸の先で示した。
材料はパパイヤ一個、豚肉目分量で二人分、卵二個のシンプルなもの。
言ってる割に音にしたらガツガツ言いそうな勢いで
食べていた気がするんやけどね。
「パパイヤって結構苦いもんなんやな。なるほどゴーヤの
代わりになるわけやざ」
「おかげでご飯の甘さがいとおしいですよ」
「はいはいお代わりね」
- 712 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:07
- 多分遠まわしにそう言うことだろうと思って席を立つ。
何も言わずお茶碗を差し出したところを見ると当たりだったようだ。
さっき見た皿の上の残りを考えるともう一杯分は多かろうと
思って尋ねると、半分だけ、と返ってきたのでその通りにする。
「ああそれにしても迂闊だったなあ…」
「まだ言うてんの、ひょっとしてこれそんなマズイ?」
「おいしいですよ、おいしいですけど甘いのが良かった」
「なしてそこまでこだわるかねー」
お代わりを渡して自分もまた食事に取り掛かる。
二口ほど咀嚼した時に絵里は呟いた。
「……かぁちゃんにはケーキだったじゃないですか」
「へ?」
「かぁちゃんの誕生日はシフォンケーキ作ったんですよね」
「ああ、うん」
だから絵里も甘いのが良かったんですよでも同じのは嫌で
「…別に、あんなんで良かったらいつでも作るで?」
「えぇっ?!」
拗ねた声から急に叫ばれた。
ビックリしてつい凝視すると彼女は一瞬真顔になってその後すぐ
わざとらしく眉を八の字にして
「なぁんでそれをもっと早く言ってくれなかったかなあ〜」
なんて鼻にかけた声を出して項垂れる。
わけわからん。
- 713 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:07
- 「…?」
「誕生日とか記念日とかなんかそういうのが無いと作らないのかと
思ってた〜」
…よくよく話を聞いたところ
かぁちゃんの誕生日に二年連続でケーキ作ってるのを
知ってそう思ってた、と絵里は嘆いた。
「ほんなことねぇよぉ。作ってって言ったら作るで。
食べてくれんなら」
そもそもあんな大きなものを頻繁に作っても食べる機会が無いので
誕生日と言う日に作って勝手にプレゼントしていると言うだけなのだった。
「ほんとですか?」
「タカハシアイ嘘ツカナ〜イ。ケーキならな」
「…でもシフォンケーキ以外がいいんですけど」
「何がええの。甘いもんやろ?お菓子なら多分大丈夫…」
そう尋ねてみると箸の先を見つめて考えている様子を見せる。
待ってる間あたしは自分が他に作れそうなお菓子の名前を思い
浮かべてみたが、クッキーくらいしか出てこなかった。
絵里のことだから和菓子、なんてことも思い浮かんでしまい
職人さんに弟子入りする自分の姿なんぞも脳裏を掠めた。
有り得んって。
「あの」
「おぅ」
- 714 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:07
- 「…やっぱいいです」
「え?」
あれだけ考え込んでやっぱりいいってどういう風の
吹き…吹き溜まり?あれ、なんか間違っとる気が。
「いいです。甘いものには苦いもので対抗することにしました」
「はあ」
「これ、愛絵里トップシークレットメニューにします」
これ、とはパパイヤチャンプルーのことらしい。
「……なぁ絵里よお、ひょっとしてもしかしてまさか
かぁちゃんに嫉妬しとるなんてことは」
「当たり前」
うわ、超真顔。
「かぁちゃんだけじゃないですよ。ガキさんだってさゆだってね、
最近いっつも一緒にいるじゃないですか」
「あーまあ何かいつのまにかそうなったよな」
「もうねさゆあたりはあそこまで大っぴらにされると
これはもう秘密の一つも共有しとかないとヤバイかなと」
- 715 名前:リベンジ 投稿日:2004/10/03(日) 18:08
- 相手はどんどんヒートアップしてきている。
その証拠に普通に持ってた箸がいつのまにかグーの中に収まってた。
「そうそう最初に名前で呼んで下さいって言い出したれいなも
危険視してるんです。それでみんな愛ちゃんになっちゃって」
「みんなも何も美貴ちゃん以外の六期だけやろそれ」
「結論、六期はヤバイ!」
ドン、とうとう拳がテーブルを叩く。
「…熱いな、同じ六期の亀井さん」
…でも流石にちょっと引いてもたわ。
「だ・か・ら、これは私以外の人に食べさせちゃ駄目ですからね?」
「はいはい、ってかパパイヤチャンプルーなんてそう滅多に
作らんし食べんから安心しなさい」
そう言えばそうか、と漸く大人しくなった絵里は
自分が箸を握り締めていたことにやっと気付く。
慌てて持ち直そうとしてそれを取り落としたのを見て、
とっくに食事を終えていたあたしは思わず大笑いしながら、
これ使い、と自分の箸を差し出した。
- 716 名前:ハルヒ 投稿日:2004/10/03(日) 18:11
- 「マンゴープリン」がテーマのつもりがどうしてこうなりますか私。
>>707 bouさま
毎度ありがとうございます。最近モーニングの妹分に浮気気味ですが
基本の二人はいつもどおり書けるあたりまだまだ大丈夫(何が)
夏コン写真集なんかでこのごろ新高亀道の四人の関係が密になりつつ
あるように思えて色々楽しみになってまいりました…
- 717 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/04(月) 11:43
- 久しぶりの亀高。やっぱ良いですね
いつの間にか呼び方がたかぁしさんから愛ちゃんに変わって...
先週の大阪でのテレビ・ラジオジャックでも確認できましたよ
- 718 名前: 投稿日:2004/10/09(土) 22:05
- ( ・e・)< LOVE LOVE SHOW >(’ー’*川
- 719 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:05
- 教会の鐘が二人の祝福を祝う
本日は曇天なり。
「…そんな感じで、病める時も健やかなる時も〜…
ああなんかここから先は言ったら自分に不幸が
訪れるような気がするからはしょっちゃうね」
「それはいいんですけどどうしてアターレなんですか飯田さん」
「ほんな言うなら里沙ちゃんだってコントのマスターまんまやん」
言われてみれば燕尾服の自分はあれに良く似ている。
突っ込みを入れられた新垣は隣の高橋を見た。
純白のウェディングドレス、密かに着てみたいと思っていたのに
役割のことを考えたらどうしてもこういう形になってしまった。
「神聖な儀式の途中で無駄口叩くんじゃありません。
ていうかとっとと済ませちゃうよ」
『誓いますか?』
アターレ扮する飯田香織はよりによって前半部分のかなり
重要な台詞をすっ飛ばして一言だけ二人に尋ねた。
ごっつぁんが仕事じゃなければ神父は当然マキエルの役目だったのに、
同じイタイ系のキャラだからって何故自分が高橋と新垣の
結婚式を執り行わなければならないのだ、全く。
しかしながらそんなことを言ったら『リーダーだから』と
言われて終了してしまうだろう。
- 720 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:06
- 「誓いまーす」
「ハイハイ誓います」
そんな飯田のいい加減っぷりが新郎新婦にも伝染してしまって
二人はいたって軽い口調で誓いを立てた。
「はいそれじゃあアレやっちゃって。誓いのキス」
「ええーっ?!」
このまま適当な雰囲気で済みそうだった儀式が
高橋の素っ頓狂な叫びで一変する。
「何でかい声出してんだお前は!」
「だ、だだだって、里沙ちゃん」
「だってじゃないだろ…誓いの後はキスするの当たり前じゃん」
「ぅ、ほ、ほうなんやけどな。こんな人一杯居る前で…」
「だからそういうもんなんだって」
飯田は二人が言い合いを始めた途端に交信しだして
中空を見詰めている。
「わかったじゃあ五秒だけ目つぶってなって。すぐ終わるから」
あくまで形式なのでそれをこなすつもりの新垣と
急に人目を意識して過剰に照れまくった高橋が誓いのキスを交わす頃に
飯田の脳内では新垣と高橋の間に産まれた二人の兄妹が三歳と
一歳の誕生日を迎えていた。
- 721 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:07
- 教会の扉が開け放たれるとその向こう側は奥の景色が
霞むほどの大雨が降っていて、自称雨女の新垣は
「あぁ〜」
と項垂れた。
予め天気予報で降水確率60%という情報は得ていたが、
よりによって最後の最後、オープンカーで空き缶カラカラ
言わせて青空の下道路を走ると言う新垣にとってはかなり楽しみにしていた
イベントの一つがこれでおじゃんだ。
しかし一方同じ雨女であるはずの高橋は
「うっひゃ、ライスシャワーでのうでほんもんのシャワーやん!」
どうも先ほどの誓いのキス以降変にスイッチが入ってしまったらしく
スーパーポジティブシンキングになっている。
彼女達の背後で、教会内に居た六期猫達のうち二名ほどが
高橋の台詞で爆笑し、ほんとだぁ、という間延びした声で
道重が相槌を打っている。
- 722 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:07
- 「里沙ちゃん行くで!」
土砂降りの雨のせいでハイテンションに拍車がかかった
高橋は新垣の手を取り、そのまま教会を飛び出した。
あまりに突然の出来事でされるがままだった新垣は
傘も差さず大量のシャワーの中連れ出された時やっと
事の異常に気付き
「おいコラちょっと!濡れる濡れるって!!」
そうは言っても反応にかなり遅れたからやっぱりどこか諦めの
滲んだ抗議の声だった。
「あー、行っちゃった…せっかく綺麗なドレス着てるのに」
「若さは馬鹿さって奴だな」
白百合つぼみこと藤本は役柄になりきってドレスの心配だけして
頑固一徹吉澤はどこか微笑みながら呟く。
「こらあんたたちー!風邪引いちゃうでしょ
戻りなさーい!」
トメ子石川はただ一人その場で常識的な思考回路を
持ち合わせており、慌てて二人の後を追ったが
外に出ると自分も濡れてしまう上にタオルなど当然持っていない。
- 723 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:08
- 「ヒャー!気持ちええ〜たのしいー!!」
「うおっ?!」
ウォーターシャワーの中飛び出した高橋は庭園を抜けた
先にあるオープンカー(当然屋根が出されている)に
辿り着く前に新垣の手を掴んだままくるりと一回転し、
新郎は勢いで片足が浮いたまま体を持っていかれた。
そのまま高橋の胸元に飛び込む。
濡れなければ上質のウェディングドレスの生地が
モロに顔面に当たって冷たかったが、なかなか気持ちが良かった。
「おっまえ何しでかすんだよもー!」
「だってよぉ、ひって幸せなんやって!」
そんなことは百も承知だ、このチャランポラン新妻め。
「あーあーびしょ濡れで服が重たそうだよぉ」
「でも二人ともとても幸せそうですわね、オーホホホ!」
幼稚園児紺野は伯爵夫人小川の傘に入れてもらって外へ出ていた。
その横を、奇声を発しながら駆け抜ける人影が二つ。
- 724 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:09
- 「スライディーング!」
「兄ちゃんスゲー!」
二つの生き物、ひとすじ加護とふたすじ辻は新郎新婦の真似事をして
そのまま雨の中へ飛び出し、濡れた庭園の芝生の上を滑って遊び出した。
「ああもうあんたたちまで!」
トメ子は発狂寸前になって扉の前で叫ぶ。
その扉の影からひょっこりと、羨ましげに顔を覗かせたのは
安倍かわもち君。視線は頑固兄弟に向けられていた。
「かわもち君も遊びたいのかな?」
かわもちに気付いた婦警矢口はしゃがみ込んで声をかけた。
「遊びたいけどそれよりも、ぼくもああいう結婚式が
したいでちゅ。すっごい楽しそうでちゅ!」
「止めた方がいいんじゃないかな〜あの二人お手本にするの…」
- 725 名前:LOVE LOVE SHOW 投稿日:2004/10/09(土) 22:10
- 「愛ちゃんそろそろいい加減にしないと風邪引くって」
「へっぶしぃ!」
「ぅわキタネッ!ああっもう、帰るよ!」
今度は新垣が高橋の手を引いて
早足でオープンカーへと向かう。
「里沙ちゃーん、だいずぎぃー!」
「そんなん知ってるから!」
だんだんと小さくなっていく二人の背中を見て
残りのメンバーは一斉に
『ごちそうさま〜!』
と綺麗なユニゾンで新郎新婦を見送った。
二人に幸あれ。
- 726 名前:ハルヒ 投稿日:2004/10/09(土) 22:12
- SHOWですから。
>>717 名無飼育さま
レスありがとうございます。
じ、実は「愛ちゃん」発言をリアルで聞く前に書いてしまいました…
田舎はいやだー
- 727 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/31(日) 16:37
- 楽しい光景で良かった
この新郎新婦好きです
- 728 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:07
- 電車の窓に映る自分の前髪を上目遣いに見て彼女を思い出した。
あれは今年の春頃だったか、彼女は今年で十八歳になると言うので
色々とイメージを変えたいと、その一つとして今までよくしていた
ポニーテールをやめてみようかなあと呟いた。
その時その場に居たのは私と重さんで、私は内心はやる気持ちを
押し殺して努めて軽く、そうだねそうしたら?と相槌を
打ったのだが、重さんの方は抜け目なく、それじゃあ今度はわたしが
ポニーテールの人になりますと名乗り出て、それを聞いた彼女は
直前の私のように、そうだねそうしたら?と微笑んだ。
私は落胆した。
彼女のポニーテールは私が貰いたかったのに。
あの時の私は相当悔しかったんだろう。数日後、前髪を切った。
こんな風に他人事のようにそう言うのは、今は別にそのことを
気に病んでいないからだ、逆に、うまいことバランスよく彼女の
隣に居ることができるようになったので、あの時の自分に
感謝したいくらいだ。
- 729 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:08
- 「何か、右と左の人みたいになったなあ」
電車に乗る直前一緒に夕飯を食べに行った。注文を終えて
待っていた時正面に座っていた愛ちゃんがそんなことを言って、
すっかり定着した私の前髪を梳いた。
その指が隠れていた額に少し触れたせいで全神経がその部分に集中して
感覚は鋭くなり、毛穴が開いたような錯覚が起きたから前髪が少し
浮いたかもしれない。
要は、あの時少し欲情したんだと思う。なんてこった。
私は改めて窓に映る前髪を見た。左右反対になっている前髪の分け目。
ガキさんといえばおでこと眉毛とか言われていたのを忘れるくらい
印象も雰囲気も変わってしまっている。
「なんつーか、ちょっと前のあーしと里沙ちゃんだったら、二人並んだら
なんかやっぱり子供っぽい感じしとったけど」
表面に汗をかいた水の入ったグラスの雫を指ですくいながら
「二人とも髪形変えて、並んでたらなんか落ち着いた感じする」
愛ちゃんは感慨深げに呟く。
- 730 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:08
- 額が熱っぽい私はその濡れた指でまた触れてこのどうしようもない熱を
冷ましてくれないかと懇願したい気持ちで一杯だった。
「あぁ、そうだねえ」
でも平静を装って無表情で相槌だけは打つ。自制、成功。
「やっぱさ、一個年取ったのもあるんかなあ」
ナニおばちゃんみたいなこと言ってんだよ、とすかさず突っ込んだら
何も言わずに微笑み返してきて。
また前髪が浮いた気がした。
「…あっ、そう!」
指先を紙ナプキンで拭こうとした時唐突に思い出したらしい。
その指をナプキンにトン、と叩きつけて、愛ちゃんは私を見た。
「髪型で思い出した。里沙ちゃん写真集でポニーテールみたいのしとった!」
「あーうん、したした」
「かわいかったぁ」
「……そうですか、どーも」
ほんとはもっとずっと前からしてみたかったんだよ。
でも常に隣に居たし、髪型一緒ってのは辻加護ご両人のお団子が既に先にあったし。
外見だけでも被りキャラは同じユニットに二組も要らないだろ、
なんてバランス考えて敢えて避けてきた。
- 731 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:10
- …時は経ち、愛ちゃんは色んな意味でお姉さんに、大人にならなきゃと
言い出してポニーテールをやめ、重さんはそれを引き継いで、悔しかった私は
高校生になったからという大義名分を背負って前髪を切った。
丁度その頃私と愛ちゃんで二人一組の仕事が増えた。
事務所の意向か、当分この組み合わせが続く。
色んなタイミングが重なり、以前よりは責任も重くなりはしたが、隣は
愛ちゃんだったから相変わらず楽しい仕事の日々。最初は慣れなかった
前髪のセットも旋毛が左側にあることに気付いて分けてみたら丁度いい
按配になった。勿論右分けの愛ちゃんと並んでみて丁度いいって意味だ。
亀井ちゃんはあんまり関係ない。
前髪ばかり見ていた窓に映る私の向こう側に流れていく景色が見えた。
ありがちだけど
モーニング娘。の歴史も、私の人生も、愛ちゃんや他の
メンバーとの関係も、流れて行く。一秒も止まってはくれない。
同期だからと言う理由で一緒くたにされることの多い私達だけど、
実際のところ私は愛ちゃんに追いついていこうとしている状態だ。
心の中では必死になって対等になろうとしている。なるべくそれを
見せないようにしてきて、最近やっと対等かなと思えるようになった。
前髪作ったの、大きかったかな。
それでやっと自信がついて、三年以上一緒に過ごしてきた歴史も
後押しして、大っぴらに愛ちゃん好きって言えるようになった。
でも最近ちょっと言い過ぎてるかもしれない。
今まで言いたくても言えなかった反動かな。
さっきも。
- 732 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:10
- 「それじゃ、気ぃつけて帰るんやよ」
「おう、そっちもね」
夕飯を終えて愛ちゃんと手を繋ぎ駅までやって来た。
混雑してきた改札のあちこちから同じようなやり取りが聞こえそうな
別れの挨拶を交わして、…交わして、そうしたら、今日一日のことを
色々思い出して。
「遊園地、また行こう。愛ちゃんとどっか行くの楽しくて好きだから」
「うん、あーしも里沙ちゃんとは楽しくて好きや。また行こ」
感想のつもりで漏らした『好き』にふと気付いて、返って来た
『好き』にも特別なものを勝手に感じて、その『好き』は愛ちゃんの声のまま
頭の中をグルグルとまわる。まわる数だけ言葉にしたかった。
でもそんなおかしなことできやしない。
抑えなきゃ、抑えるんだ。愛ちゃんならきっとそうする。
「…ああっ、もう、離れたくないなあ!」
だけど
ついこんな言葉が出てしまった。
断腸の思いで離れてまた会った時意識して前髪浮いちゃうくらい血が昇った頃に
漸くその時最初の好きって言葉を吐き出せると言うんなら、
このままずっと一緒に居続けて気持ちが篭ってないって怒られるまで
好きって言い続けた方がよっぽどマシだ。
- 733 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:11
- 「…だー め、 デス」
けれど、愛ちゃんは私にNOを突きつける。
その顔はもう同期のそれではない。完全に立場が私より上の、
自制の利いた大人の表情、落ち着いた声で。
何か迷った時、悩んだ時、二つ年上の彼女はこういう表情と声で私を
安心させてくれたことを思い出した。
「…そーだよね」
おかげで少し冷静さを取り戻す。
これ以上駄々をこねて嫌われてしまうのは嫌だし。
しつこいのは嫌いだろう。愛ちゃんは。
と言いつつ多分私の方がしつこくすることに疲れてしまう。
柄じゃないんだ。こんな、欲望丸出しにする自分は。
「我侭言ってごめん」
「いんや、嬉しかったで」
嬉しかったならちょっとは同調してくれても……
いいや、返ってそれをされたら泥沼になってしまうから、これでいい。
愛ちゃんの選択は正しい。
「…そんじゃ、またね愛ちゃん」
「着いたらメール寄越せよー」
「そっちこそ電源切っとくなよー!」
アーイ、とひょうきんな声を出して手を振る愛ちゃんと別れた。
- 734 名前:追憶と前髪と電車の窓 投稿日:2004/11/06(土) 14:11
-
…色々思考が飛びすぎてる。
結局のところ、やっぱりあそこで別れてしまったことが哀しく寂しい。
『好き』という言葉をいくつか吐き出すことだけに抑えて、
頑張って一線超えるところまで行かないようにしている現状と、
思い出と、甘い感情と、さっきまで繋いでいた手と、その手が触れた
前髪と、うっすら汗をかいた額と…
このままだとまた前髪が浮いてしまう。それどころかぴょんと
跳ね上がってしまうんじゃないか。
私は窓に映る前髪の生え際、その少し上の部分を摘み上げて、
今にも真上を向きそうな気がしているそれの上に少し被せた。
今の私にできる自制はこれくらいしかなかった。
あとは、家に帰ってたくさん、泣こう。
- 735 名前:ハルヒ 投稿日:2004/11/06(土) 14:14
- 高新でした。
>>727 名無飼育さま
レス有難うございます。あの話は私もかなり楽しんで書けました。
今回の更新で新高だと楽しげで高新だとシリアスな方向に落ち着きそうです。
- 736 名前:三人抱擁 投稿日:2004/11/14(日) 17:07
- もうすぐ出番で衣装を替えなきゃいけなかった。
愛ちゃんは中途半端に着替えていて上着を着てなくて、
衣装さんを探してキョロキョロしてたので、ついさっき
あっちで見たよ、私取ってこようか?と気を利かせて
呼びに行くことにした。
それじゃ持ってくるね、と剥き出しの腕に
触れながら声をかけた時、愛ちゃんの視線の先には
あいぼんが居た。今日で卒業するあいぼんが居た。
二人は目が合った途端迷わずお互い歩み寄って、
私の目の前で抱き合った。
咄嗟に自分もその中に入る。覆い被さるように
真横からあいぼんと愛ちゃんを二人ごと抱擁した。
こういう時じゃないと、自分から愛ちゃんに抱きつける
機会なんてそうそう無い。あいぼんには皮肉を篭めて
ありがとうございますと言いたかった。
背中からまわした左手は愛ちゃんの二の腕に触れた。
さっきの感触より柔らかい。
- 737 名前:三人抱擁 投稿日:2004/11/14(日) 17:07
- 「ぅあー、やだやだ」
「愛ちゃんヤダヤダ言わないでよぉ〜」
「やだー」
「ヤダヤダ言うなお前はー、そういうこと言っても駄目だ」
駄々をこねるでっかい子供にあいぼんお母さんが
笑顔で言い聞かせて、私はお父さんっぽく偉そうに説教する
フリをした。三人抱き合ったままで。
「やーだー、やだやだやだヤダヤダ」
「ほらぁ見てー、カメラがこんなに一杯いるよ」
あいぼんはやだやだ連呼されて正直嬉しかったはずだ。
だから一回だけ注意してあとは何も言わず、ステージ裏の
こんなやりとりをオイシイと思ったらしい無粋なカメラマンへの
サービスをした。でもこういう時にカメラが云々って言うのは
結構無神経な部類に入るかもしれない。
空気読めよ、愛ちゃん泣きそうになってるだろ、と忠告したくなったが、
カメラと言われて自分達に向けられたレンズを探した哀しい自分が居る。
仕事と私情がごっちゃになったまま私は仕事を取り、
作り笑顔をカメラに向けた。
- 738 名前:ハルヒ 投稿日:2004/11/14(日) 17:08
- 今頃になって夏のドーンネタ、でした。
- 739 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 01:36
- ぐっときた
- 740 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:37
- 白と茶色の目立つ硝子ケースの向こうで数字ばかり目で
追っていたあたしは、自分の求めるそれを見つけケースから
顔を上げた。
胸の高さにあるケースの向こう側では白くて長い例の帽子を
被ったパティシエのおじさんが目を細めてこっちを見てる。
その笑顔がとても柔らかくて、自然あたしも笑顔を返す。
お決まりになりましたか、見た目の雰囲気を裏切らない優しい声で
おじさんが聞いたので、あたしは笑顔のまま
「この、いちご7号っていうのを下さい」
と言った。
お釣りの十円を財布に入れてケーキ屋を出る。ちょうどその時
里沙ちゃんからメールが届いた。もうみんなマコトの家に
揃っているらしい。
あたしはケーキのためにゆっくり行くから遅くなる、と
返信して、いつもより慎重な一歩を踏み出した。
- 741 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:38
- 「里沙ちゃんまこっちゃん、お誕生日おめでとう!」
「よっ、ご両人!」
「愛ちゃんそれだとうちら結婚しちゃうから!間違ってるから!」
「マコトぉ、わざとに決まっとるやんか」
「なんだとぉ〜」
「なんだぁ〜?」
「はいはい漫才はいいから。食べようぜ食べようぜー」
里沙ちゃんがバッサリと一言であたしらの会話をぶった斬り、
あさ美ちゃんはマイペースにわーい、と喜びながら小皿とフォークを
手に持った。あたしが咄嗟に、あさ美ちゃんそれ違うから!と
突っ込むと、ハッとしてそれを引っ込める。
里沙ちゃんはおーいあさ美ちゃーん!と手刀を作って
突っ込みリアクションをしていた。
今日の主役は里沙ちゃんとマコトや。
十月生まれ同士だし折角だから五期のみんなで一緒に祝おう、
そう提案したのはあたしだった。
色々な都合で実現したのは十一月に入った今日と言う日。
最初は祝う側のあたしとあさ美ちゃんでお金を出しあって
ケーキを買う、そういう話やったけど、みんなで食べるんだし
みんなで出しあおうと祝ってもらうはずのマコトが言って、
あたしもあさ美ちゃんもええよ遠慮すんなって言ったんやけど
どうしてか頑として首を縦に振らなかった。未だにその理由を
教えてもらってない。何でやろ。
- 742 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:38
- 里沙ちゃんもマコトと同意見で、こっちは単純にあたしらに気を
遣ってのことだと思う。
結局四人で千円ずつ出しあってワンホールのケーキを買うことになり、
あさ美ちゃんが真っ先にケーキに手をつけようとしたのも、
みんなで出しあったお金で買ったってことが頭にあって本当は
里沙ちゃんとマコトのためのケーキだってことを忘れてたんだと思う。
「いちごもらうよん♪」
里沙ちゃんが八等分にした生クリームケーキは一人一人にちゃんといちごが
一粒乗っかっていたけど、マコトは自分のに手をつける前にまず
あさ美ちゃんのいちごをつまんだ。あさ美ちゃんは、うんいいよどうぞ、
とニコニコしている。この子は果物が好きじゃないから返って
勝手にマコトが持っていったことに感謝しているように見えた。
「こーんなおいしいのに嫌いなんて勿体無いなあ」
「ぐじゅぐじゅしてるのが駄目なんだよぉ」
「それじゃぁ〜あさ美ちゃんの分の果物はこれから全部この小川麻琴が
処理して差し上げましょう」
どうぞどうぞ是非どうぞ、あさ美ちゃんはやっぱりニコニコしながら
ケーキの生クリームの部分だけ掬って食べ、それじゃ早速だけど
これお願いします。とスポンジの間に挟まっている生クリームに混ざって
いた細かいいちごをフォークで示した。えー早速かよ?!と驚いた
マコトの顔がとても可笑しくて笑ったら、里沙ちゃんも一緒になって
笑っていた。
- 743 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:39
- 「まこっちゃん、いちご食べてくれるのは嬉しいけどあんまり
食べたらワリカンにした意味なくなっちゃうんじゃない?」
あさ美ちゃんは未だに生クリームばかり掬って口に運びながら
マコトにそう言って、言われたマコトはむふふふとキショイ笑いしながら、
でもやっぱり一杯食べたいんだあと言った。
「何それ?」
あたしが聞くと、マコトの代わりにあさ美ちゃんが答える。
「全額奢りにされたらどのくらい食べたらいいのかわかんなくて
食べ過ぎちゃうから千円分だけ食べる、だっけ?」
「そうそう、そうでーす」
「マコト…多分もう手遅れや…」
一杯食べたいなんて台詞が出てる時点でマコトの思惑は
先が知れている。
あたしは大袈裟に項垂れ、マコトはそれを見てなんだよぉと口を
尖らせて居たけど否定はしてこなかった。否定してくれ…
- 744 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:40
- 「ぅんまいじゃん愛ちゃんコレ、どこで買ったの?」
隣でざっくり一切れ切って頬張った里沙ちゃんが尋ねてきた。
あたしも同じくらいのサイズを噛み締めて、ちょうど飲み込んだところだった。
「マコトん家の近所やけど、当たりやったな」
「近所って、あ、ケーキ屋あそこしかないか。いつも大きいとこで
買物のついでに買ってくるから食べたこと無かったんだよねえ」
マコトはとっくに一切れ目を食べ終えていた。
よく噛んでないんじゃないかと言いたくなったけど本当においしい
ケーキやったから言うより食べる方を優先する。
「ほんっとぅんまいな〜コレ、私も帰りに買ってこう」
里沙ちゃんは心底感動したらしくてあたしも同じことを思った。
ケーキの代表みたいないちご生クリームがこんなに美味しいのだから
きっと他のものも、という期待は膨らみ、早くも帰宅が楽しみに
なったりしている。
マコトに聞いたらわからないけど多分八時までなら
開いてるだろうということだった。
モンブラン?そんなん知らん。
- 745 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:40
- そうこうしているうちに本日のメインだったケーキは
あっという間に無くなり、みんなであさ美ちゃんが買ってきて
くれていたお菓子を食べた。
それぞれ今日の為に夕食を抜いていたからこれもかなりの
ハイスピードで食べられていく。
やっぱりというかあさ美ちゃんとマコトは食べながら
これ確か新製品だよねーそうだよ秋限定でマロン味と
レアチーズ味があって、あ、こっちがレアチーズ
なんだけどマコト食べてみる?わーい食べる食べるーと嬉々と
しながら食べる喋る食べる喋るを繰り返している。
感心するよりもうすでに二人だけの世界になっている気がして
あたしはなんだか気恥ずかしくなってきた。そのうちはいアーンしてー
とか言って雛に餌をあげる親鳥みたいな様子が見られるんじゃないかと
思った途端にその通りのことが今まさに目の前で起こってうひゃーやっちまった!
「………………」
見るに耐えなくて顔を逸らしたら、隣にいた里沙ちゃんは腕組みして
難しい顔をしてた。あたしの視線に気付いてこっちを見た時
ヤレヤレだね、という感じで肩を竦めたので同じリアクションを
返す。向こうとこっちで激しい温度差が生まれた瞬間だった。
- 746 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:40
-
- 747 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:41
- 「さっ、てと。八時近いから悪いけど私は帰るかな」
言うが早いか立ち上がった里沙ちゃんにマコトが非難の声を上げる。
「えーガキさんもう帰るの?帰るなよぅガキさぁーん」
「だってケーキ屋さんが閉まっちゃう」
里沙ちゃんが言ったのであたしもそのことを思い出し、ほやほや
あたしもケーキ買いたいから一緒に帰るでと続けた。
あさ美ちゃんは後日のお楽しみにしたいからまだいいやーと
のんびり口調で独り言を言っていて、寂しがってたのは
結局マコト一人だった。
「なーんだよ、何でみんなそんな乾いてるんだよぅ」
「別に普通だよね」
「うん、マコトはのんつぁんに甘えられまくってたからそう
思うだけで普通やで」
のんつぁんの名前を出した時それまでニコニコしてた
あさ美ちゃんの表情が少し曇ったのに気付く。
ヤバイ、NGワードやったかもしれん…!
「まぁまぁまこっちゃん、あさ美ちゃん居るんだし私達は
これから返って邪魔になると思うしさ。ほら愛ちゃん
邪魔者はとっとと退散しよう」
里沙ちゃんがフォローしながら背中を押したので、
あたしは内心胸を撫で下ろして
「ほ、ほやね!んじゃあお見送りはええから二人で楽しんでな!」
と言ってスタコラサッサとマコトの部屋を出た。
後に続いた里沙ちゃんがドアを閉める寸前に真っ赤になった
二人の顔が見えたのを良く憶えている。
- 748 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:41
-
- 749 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:42
- 「あっぶねかったぁ」
帰り道の途中で愛ちゃんが露骨な訛り口調ではあっと溜め息を吐いた。
「ほんとにさー、修羅場になるところだった」
「やー助かった〜ありがとなあ里沙ちゃん」
感謝されてどういたしましてと返したら安堵して気が抜けたのか
突然さむっ!と小さく叫んで愛ちゃんは歩きながら縮こまった。
十一月の夜だから冷え込むのは当たり前ではあったけれど
私は少し苛立っていたのであまり寒さのことを気にかけておらず、
愛ちゃんが言って初めてそれに気付き迂闊だったなと思いながらも
ほら、とコートのポケットから手を出して差し出す。
ほどなくしてその手は繋がれその瞬間から二人の足音はほぼ
重なる程度のテンポで住宅街の道路に響いた。
繋がれた手からはもうすっかり馴染んではいたものの冷たさを含んだ
感触がある。寒さのおかげで相手の指の節節までもが感知できたりする。
早くこの慣れない形が二人の体温で少しずつ融け合ってやがて一つに
ならないかと願う。
「…なあ里沙ちゃん」
「ん?」
「コンビニ寄りたいんやけど、行ってええかな」
「あー、いいよ」
- 750 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:42
- ケーキ屋に辿り着く前に通りがかった大通りにあったコンビニに
入ると、愛ちゃんは用事を済ませるからその辺で適当に
時間潰してて、と私から手を離した。
店内で暖房が効いてるはずなのに急に離された手はあっという間に
冷え、私は何だか寂しくなってまたコートのポケットにそれを
突っ込む。適当に、なんて言われて放置されてしまい全く予想外の
ことだったので意味わかんないと頭の中で呟きつつもとりあえず
雑誌のコーナーに佇んでみるけど特に読みたい雑誌は目に入って
こなかった。見ていたようで見ていなかっただけかもしれない。
仕方が無いので雑誌コーナーに沿って奥まで歩き、突き当たりの角を
曲がって、特に興味の無い文房具のコーナーを覗いてみたりする。
けれどそれで思い出したことがあって、赤い表紙のスパイラルノートを
一冊手に取った。…やっぱり明日五冊セットを別の店で買おう。
ノートを棚に戻して視線をレジへ向けた時愛ちゃんの背中が
目に入った。愛ちゃんは『お隣のレジへどうぞ』と印字された
プラカードが立ててあるカウンターの横で鞄をごそごそとやっている。
ノートを棚に戻すのに屈めていた腰をもう少し深くして下から
覗き込むと財布を手にして小銭入れに手を突っ込んでいた。
何してんだろ、と思いそのまま少し見守っていたら突っ込んでいた
手を引き抜いて素早くレジカウンターに向かって手を伸ばして
また引っ込めた。そして今度は素早くそのレジから離れた。
横に移動したので後ろで私が見ていたのには気付かなかったらしい。
誰も居ないレジカウンターのプラカードの横には愛ちゃんが
何をしたのかを推測できる小さな箱が置いてあった。
- 751 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:43
- 「あ、ここに居ったんか」
文房具のコーナーから離れずにいたら店内をぐるりと一回り
したらしい愛ちゃんが私を見つける。その手には商品も
買い物篭も持っていなかったけど多分さっきのが彼女の
言っていた用事だったんだろうと思い、用事済んだ?と聞いた。
「うん、ごめんな」
「いや別に謝ることじゃないから。出るよ」
店を出て冷気に触れると、今度は向こうから
手を繋いで来てくれて私は少し安心する。
再びこの手が融合することを願う。苛立ちは大分良くなっていた。
「愛ちゃん、募金した?」
気を良くした私はさっき見かけた出来事の推測を愛ちゃんに
投げかける。愛ちゃんは、あれー、見てたんかぁと少し
照れくさそうだった。
「後ろに居たから。用事ってそれだったの?」
「ごめんなくだらん用事で」
「いやだから謝ることじゃないって」
否定しなかったので募金していたのは確かだったみたいだけど、
なんでそんなことしたんだろう。
だいたいいつも一緒に居るけど、初めて見た。
- 752 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:43
- 「ケーキ買った時十円だけ余ってさ」
愛ちゃんはそれだけ言うと黙り込んだ。あとは言わなくても
わかるやろ、と言うことだろうか。悪いけどかなり言葉が
足りないよ愛ちゃん。でも少し考えたら答えは出た。
「十円じゃ四等分出来ないしねえ」
「うん」
黙ってもらっちゃっても良かったんじゃないの、十円だし。
何の気なしにそう言ったら愛ちゃんは口癖になってる
「でも」
という前置きをして、
「マコト見てたら募金したくなった」
と答えた。
またしても言葉が足りないといつもの私なら
少し困ってしまうところだったけどちょうど今まこっちゃんの
地元は大変なことになっているということはすぐに
思い出すことが出来てそうかそうだね、と納得した。
- 753 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:44
- 「愛ちゃん偉いじゃん」
マコト、の名前が出てまた再び少しばかりの苛立ちが
起こったけどそれを押し殺して愛ちゃんにそう言った。
いいやでも、愛ちゃんはまたでもという言葉を使うが、
でもの先が滅多に続かないことは今までの付き合いで
熟知していた。
「ケンソンするな、素直になれって」
私はそう言って立ち止まりずっとコートのポケットに
突っ込んだままだった繋がれていなかった方の手で
愛ちゃんの頭を撫でる。
撫でてるうちに愛おしさが押し寄せてきてそれを発散
させるために添えるようにしていたその手を少し曲げて
くしゃくしゃと愛ちゃんの髪の毛を乱す。
愛ちゃんはやーなにすんのーと甲高い声を出しているけど
じっとしていて、結局は嫌がってない。
それがわかるとますます嬉しくなる。
気の済むまでくしゃくしゃを続けた後、その手はそのままにして
乱れた髪を手櫛で梳いてあげると愛ちゃんは首を竦めて
こしょばゆいと呟いた。
何だかそれで癒された。
「やー何かすっかりどうでもよくなったよ」
「何が?」
「ちょっとね、イライラしてたからさ」
「ああ、さっき?」
- 754 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:44
- あれ、気付かないだろうと思っていたのに愛ちゃんは
すぐに問い返してきた。
「気付いてた?」
「何となく。腕組んでムッとしとったから」
なるほど確かにそんな態度を取っていたかもしれない。
「そーいえばね、してたかもね」
「里沙ちゃんはああやっていちゃつかれるのは嫌なん?」
「嫌っていうか、ほら何か周り見えてないなってわかるじゃん」
「あー、まあ…」
「一応さ私も二人の仲は知ってるけど、ハイリョ、配慮ですか、
そういうのも忘れて欲しくないなーと思った、わけですよ」
配慮って単語を出すのに何かのテレビで見たアナウンサーの
台詞を思い浮かべたせいか語尾が変に敬語になってしまった。
その間にすっかり元通りになった愛ちゃんの髪から手を離すと、
その手を愛ちゃんが取った。片方の手は繋がれたままだったから
それで両手を繋ぐ形になった。当然ながらお互い正面を
向いていてそういえばここは歩道の真中だったと思い出したけど
車のエンジン音も人の足音も聞こえない。
というのは周りを見ていないし両手が繋がったことで温い
体温が融合しあってわずかばかりそっちに気をとられかけている
せいかもしれなかった。
- 755 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:45
- 目の前には愛ちゃんの顔があって目を逸らす理由も無くできることなら
しばらくずっと見ていたかったし。
暗くても見ていたかったし。
「里沙ちゃん無視されんのが嫌なんや」
「え」
「だってそうやろ、あさ美ちゃんとマコトが二人だけで
なんか盛り上がってんの見てムカついたんなら」
…それにはグゥの音も出なかった。
「もー、我侭な子やねぇ」
愛ちゃんは急に私を子供扱いして年寄りくさい口調でそう言い、
今度は私が頭を撫でられた。
私はやっぱり一言も発することが出来ずされるがままになり、
ああこりゃ負けたな、と心の中で白旗を振った。
負けを認めた私はもうすっかり愛ちゃんに依存することに決めた。
まあそれも今夜だけの話だけれど。
「大丈夫、安心せえ。あーしは里沙ちゃん一筋やー」
会繰り続けられながら作った声じゃない大丈夫という台詞を
素直に受け入れる。そうか大丈夫か、大丈夫なんだね。
信じるよ。
- 756 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:45
-
- 757 名前:いちご7号 投稿日:2004/11/18(木) 23:46
- 横断歩道を渡ったら漸く愛ちゃんの言っていた
ケーキ屋さんが見えてきた。
時計を確認したら八時五分前、ギリギリ間に合ったことを
伝えると愛ちゃんは、だから大丈夫やって言ったやろ、
と返してきて、だけど心なしか少し早足になっていた。
変なところで焦りを隠す癖、それも私は知ってるけど、
気持ちは一緒だったので突っ込む気は全く起こらない。
しばらくしてそろそろ辿り着きそうだと言う時に、
店の置くからあの長い帽子を被ったおじさんが出てきて、
自動ドアを挟んで私達と鉢合わせした。
先にセンサーに触れたのは手を繋いでいた愛ちゃんと私の方で、
予想に反して早いタイミングでドアが開いたことに驚いた顔を
していたコックさん(後で愛ちゃんに聞いたらパティシエって
言うらしい)は、次の瞬間にはいらっしゃいませ、と
柔らかい笑顔で私達を迎え入れてくれた。
- 758 名前:ハルヒ 投稿日:2004/11/18(木) 23:51
- 改行多すぎた気がする。
>>739 名無飼育さま
レスありがとうございます…と言いつつ一行に凝縮された思いをイマイチ
汲み取れずどう返していいか未だに戸惑っている作者をお許しください。
いい意味でぐっと来てくれていたら幸いです。
- 759 名前:通りすがり 投稿日:2004/11/20(土) 00:01
- 新垣さんの軽い嫉妬が無自覚なところとか、可愛いですねえ。
高橋さんも程よく大人だし、いいなあこういう5期メンの日常って…
内容もショートケーキ並みに甘かったです。
今回も楽しく読まさせていただきました。
- 760 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:14
- 「あぁ、ここでご飯食べるのも今日で最後かぁ」
明日には日本に帰るんだ、同室の愛ちゃんは呟きながら
部屋に運ばれてきた食事の、分厚いステーキにナイフを入れた。
一度押し付けて手前に引くと大袈裟なくらいの肉汁が
ナイフを浸して、今が空腹だからそれは魅力的に
映るけれどそれほど食欲が無ければ少し気味が悪く思えただろう。
「そーだよ」
私は軽く相槌を打って自分は温野菜のスープに口をつけた。
コンソメベースの単純な味ではあったけれどクーラーの効き過ぎた
室内にあってこの温もりは安堵の溜め息をもたらす。
「やっぱり寂しい、なあ」
愛ちゃんはまだステーキを切っている。筋に沿って切っている
はずなのになかなか切り離せないみたいで、喋りながら肩に
力が入っていた。さて次は何を食べよう。
- 761 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:15
- テーブルをざっと見て一番先に目に付いたのは愛ちゃんが
今まさに格闘しているステーキだった。
とはいえここハワイに滞在してもうかなりの日数が経つので
正直ステーキは食べ飽きていて、それでも真っ先に目を奪われる
この食べ物の引力は相当なものだなあとボンヤリ思う。
ステーキの他には緑黄色野菜を中心に実にカラフルな食卓。
ここが異国であることを自覚させられるに足る大袈裟な原色たち。
こんなだから唯一地味な色だったステーキに目を奪われちゃったのかも
しれない。
「あーもう、切れん」
「だからって力入れすぎだろー。押すより引いて切るんだよ愛ちゃん」
「やっとるもん。でもなこの筋が引っ掛かって…」
梃子摺っている原因をわざわざ私に見せようとしたらしく
切り口を広げようとした時それは起きた。
ナイフに力を入れたままだったみたいでそれを横に
ずらした時に頑固だった筋があっさり切れて、ナイフが皿を
傷つけた。ガチャン、金属的な衝突音と共に皿が浮かび上がって、
肉汁が跳ねてノースリーブだった愛ちゃんの左腕にかかる。
彼女は言葉にならない短い悲鳴を上げた。
「ちょ、大丈夫?!火傷してない?」
「ノォ〜…」
「のぉ〜、って、何だ平気そうじゃん」
- 762 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:16
- 身を乗り出して手首を掴んで引き寄せてみると肉汁は愛ちゃんの
肌に濁った色を抜かれほぼ透明で、一センチくらい腕の曲線に沿って流れていた。
油分まみれのその液体は鈍い光沢を見せていて水飴のようで、
とても甘そうだ、こんなことが脳裏を過ぎってしまったのがいけなかった。
私は考えた。今愛ちゃんと二人きりだ。
と言っても最近ほとんどの時間を二人で過ごすことが多いので
特別珍しいことじゃない。でもここはハワイで、ホテルの一室で、
去年はこうじゃなかった。三人部屋だったっけ?
ハワイ、世界一有名なリゾートの島の上に居て、明日には
帰国しなきゃならない。もっともっと楽しみたかった。名残惜しい。
来年また同じようにはきっとならない。ああやっぱりもっと
色んなことを、色んな、…まだ間に合うだろうか?
二人だけで作る時間はまだ間に合うだろうか?
「里沙ちゃん話聞いてる?」
「え」
「あーひでー。紙ナプキン取ってって言ったがし」
「うぁ、ごめんよ」
手首を掴んだままだった私は、いつもなら突っ込みを入れるところだった
けれど本当に聞いていなかったので慌てて紙ナプキンを取…ろうと
したけれど、
「ねえ愛ちゃん、油なんだから水で洗った方がいいんじゃないの。
拭いたってちゃんと取れないよ」
と言った。
- 763 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:17
- 愛ちゃんは一瞬目を真ん丸くしてからオーゥなるほどね〜
などとエセ外国人気取りのリアクションをして、ずっと持っていた
右手のナイフを皿の上に置く。あ、行ってしまう、瞬時にそう思った。
実際彼女は立ち上がろうとしていた。
「…ん?」
私はまだ手首を掴んだまま。
また慌てた。
「おっと、ごめんよ!」
ありえないくらいわざとらしい笑顔と大声で手を離してしまったから、
変に勘のいい彼女にあっさり気付かれてしまう。
「変な子やねえ。何かあった?」
……これには正直に答えた方がいいんだろうか。
変に取り繕って追及されていよいよ答えにくくなったら
これからの私達の関係に影響してしまう気がした。
今離れられたら死ぬほど辛い。
世界一のリゾートの島が監獄島に早変わりしそうだよ。
「あるっちゃあるね」
「?」
愛ちゃんは首を傾げている。
「ここ来てから、っていうか来る前から結構そうだったけどさ、
定期的に触れないと駄目になったかもしんない」
「…あたしに?」
「うん」
さあ
先の読めないこの同期はこれにどういう反応をするだろう。
- 764 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:17
-
無言だった。
無言でこちらに歩み寄ってきて、
無言で椅子に座っている私の背後に回ってきて、
無言で肩にのしかかってきた。
愛ちゃんの両腕は私の胸の前にある。顔は左耳の真横にある。
「そろそろそういう時期なんかなあ」
「………」
「それともここが現実離れした場所だからかなあ」
「…意味わかんない」
本当にわかんない?愛ちゃんは試すように耳元で囁いていて、
皮肉なことに脳より体の方がその意味を理解したみたいだった。
なんだ、なんか、私サカリのついた動物みたいだ。
「今までよくぞ我慢した。ほめてつかわすー」
「馬鹿にしてるだろー」
「うぅん?ほんまに凄いと思てるで」
どうでもいいけど耳元のすぐ近くで喋らないでくれるかな。
くすぐったくて腰から下が痺れるんですけど。
- 765 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:18
- 実際思うように体が動かせそうに無くて私は目線だけ
愛ちゃんの左腕に向けた。油のはねた部分は少し揮発していて
ラメみたいにキラキラ光ってる。それを見てまたやっと理解した。
愛ちゃんがこっちに来た理由。
「ご飯冷めちゃうよ?」
「ここに来てまだそんな意地張る…」
うん、悪かったごめん。
左腕が少し浮いて顔の辺りまでやってきた。
血管が数本浮き出ていて血の通っている肉だと思うと
ものすごくリアルで魅力的だった。ステーキ食べ飽きたなんて言って
ごめんなさい。やっぱり肉って食欲をそそる存在だ。
だけど噛み付いちゃいけないんだな、そういうのはまだ先なんだと思う。
「あ、そういえば言うの忘れてたじゃん。ちょうど良いや」
「何を?」
- 766 名前:in Hawaii 投稿日:2004/11/23(火) 03:19
- 「いただきます、って」
「えぇ、あーしが食われるのか?!」
「いや、正直どっちでもいいですけど」
っていうか。
折角同じ性別なんだからさ、バランス良く行こうよ。
私がそう言ったら愛ちゃんは例の声であーい、と
返事して、額をこっちのこめかみあたりにグリグリと
押し付けてきた。何だそっちもさりげなく動物っぽいじゃん。
そう思ったら少し気が楽になった。
動物は動物同士仲良くやろうぜ、そういう意味で
こっちからも額をグリグリし返した。
お互いの喉から出す笑い声が室内に響いた。
- 767 名前:ハルヒ 投稿日:2004/11/23(火) 03:24
- >>759 通りすがりさま
ありがとうございます。後半が書きたかったために五期全員出したなんて
言えな(略)…いや小紺も好きです。好きですってば。
おかげさまでこのスレも容量残り僅かとなってまいりました。
一応まだ短編を二本くらい書ける余裕が残っていますが、作者の
気まぐれで少し長い話になったりして尻切れトンボになるかもしれませんので、
これにてこちらの更新は終了とさせていただきます。
新スレを立てたらこちらでも報告いたします。
お付き合いいただき有難うございました。
- 768 名前:シンゴ 投稿日:2004/11/24(水) 22:43
- ごまたかみたいですっ!
書いて〜!!
- 769 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/24(水) 23:23
- 更新お疲れ様です。
作者さんのの新高、二人のやりとりや関係が自然な感じでとても好きです。
こちらの更新、毎回楽しみにしていました。
新スレも楽しみに、のんびりとお待ちしています。
- 770 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/25(木) 03:02
- とても好きな作品なので・・・
- 771 名前:名無し読者 投稿日:2004/11/25(木) 09:58
- いつも読ませて戴いてますた。
ハルヒさんの書かれる新垣さんの虜です。自分高橋推しですが。
次スレ楽しみに待ってます
- 772 名前:ハルヒ 投稿日:2004/12/04(土) 23:10
- みなさま、レス並びにお気遣いありがとうございます。
風板に新スレを立てました。
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wind/1102168722/
よろしければまたお付き合いくださいませ。
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