「それじゃ、歌のほう、ヨロシク」 あの子はホッとした顔になった。ステージに向かう途中、矢口さんは親指を上に向け、ウインクをした。私たちの作戦は成功した……かに見えた。 私たちの新曲のイントロが流れ始めた。よっちゃんさんが前に出て「Hey! Let's Have a Dance, My Dear」とかっこよく決めた。そして次はあの子の番。 「You Know?」 次は私の番だったが、危うくワンテンポ遅れるところだった。あの子のセリフ、わずか二語だが、危険な徴候が表れていた。「やよー?」と聞こえたのは錯覚だったのだろうか。