Wild Times
- 1 名前:ざんぎ 投稿日:2004/02/28(土) 22:05
- アンリアルで登場人物はいっぱいです。
なにぶん初めてなもので文章がヘタで読みづらいでしょうが
お付き合いいただけると幸いです。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2004/02/28(土) 22:10
-
―――――夢を見た……
正しいものが何なのか見失いながらも、
自分たちを信じ続けようとした人たちの夢を―――――――――――
Wild Times ― another story〜プロローグ〜
現在、世界は4つの国に分かれている。
その4国最大の都市・イーストで事件は起こった。
朝廷を守護するイースト最強の集団・護廷十番部隊。
その役割から通称モーニング隊と呼ばれている。
その六番隊長・小川麻琴が何者かによって殺害された。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2004/02/28(土) 22:12
- イーストを牛耳る「神帝 つんく」。彼がいる天上宮の守りは完璧である。
半径10kmの球状にバリアーが覆っていて、上空及び地中からの侵入は不可能。
中に入るためには東西南北4つの門からはいらねばならない。
門にはもちろん守護がいる。門番四神とよばれる者たちだ。
さらに内部の天中街には護廷十番部隊。この布陣が崩れることなどありえなかった。
しかし、隊長格が殺されたという事実。
これは戦いの始まりに過ぎなかった……
いや、本当はもうすでに始まっていた。何百年も前からの、ある男の野望。
その終焉の始まりだった――――――
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2004/02/28(土) 22:14
-
―――――ゴポゴポゴポ。
ずらりと並ぶ巨大な培養カプセルのなかでなにやら生物らしきものがうごめいている。
人間の脳らしきものが入っているものもある。
大袈裟なほどに巨大な、なんらかの装置。
どうやら研究所のようだ。しかし、ひとは一人しかいない。
部屋の真ん中で椅子に座り、その装置を眺めながら男は呟いた。
「くくく、もうすぐや。もうすぐ長年の夢がかなう。
世界が、この星がオレのもんになるんや。」
―――――動き始めた歯車
これを止めることなどできはしない
しかし行き先を変えることはできる
苦しみ、もがきながらも歴史を動かすのはヒトなのだ――――
- 5 名前:第一話 投稿日:2004/02/28(土) 22:17
- 話は二週間ほど前に遡る。
10月15日
――――天中街中央部・二番隊長邸
「最近はすごく平和れすねぇ。5年前の戦争がうそみたいれす。」
「そうね。でもなっちは少し怖い…嵐の前の静けさっていうか…5年前と似た感じ。なにか悪い予感がするの。」
「安倍しゃん……ののはアイスが食べたいのれす。」
「……ふふっ。おやつにしよっか。」
「やった〜。あ、ハトさんれすよ。」
護廷十番部隊・一番隊長・辻希美と二番隊長・安倍なつみは仲がよかった。
辻はその性格から誰にでも愛される存在だが、特に安倍は妹のようにかわいがっていた。
そんな安倍のことが辻も大好きだった。二番隊長邸にきてはよく話をしている。
季節は秋だが縁側に注ぎ込む太陽の光があたたかい。心地よい天気だ。
ハトが一羽、青い空に吸い込まれるように飛んでいった。
- 6 名前:第一話 投稿日:2004/02/28(土) 22:19
- Wild Times ― another story〜第一話 戦いの予兆〜
5年前、この世界では大きな戦争があった。
世界の権力を握っていた政治組織・「シャ乱Q]のメンバー4人による仲たがいの結果起こったものである。
勢力的にはつんくが圧倒的であった。そのため、他をつぶすことはいつでもできるとして、
侵略はひとまずおいておかれたため、世界は4つに分断された。
(しかし現在、他の3人には政治力がなかったため、形だけの王となっているのが事実である。)
そのとき、辻は戦士ではなかった。戦争の恐怖に怯え、ふるえる日々を過ごした。
しかし、そのなかに希望の光を見た。それがつんくの守護をしていた、かつてのモーニング隊であった。
憧れた。戦争の中で彼女たちは誰よりも強く、そして優しかった。
2年後、厳しい審査を乗り越えて入隊できたときは、仲間とともに涙を流してよろこんだ。
「ののぉ〜!!こんなところにおったかぁ〜!!」
突然庭に入ってきた少女は、誰が見ても怒っているようだった。
「あっ、あいぼん。アイス一緒に食べる?」
「うわっ、安倍さんありがとう!〜っくぅ、冷たくておいしい!!ってそうだ、のの!!」
「そんなに急いでどうしたのれすか?」
「3時に道場って言っておいたやんか。なぜにこんっ!?」
「…………あっ…」
「遅いっ!!ほら、いくで。」
「でも、アイス…」
その刹那、ものすごい勢いでにらまれた。
三番隊長・加護 亜依は約束を破られるのがダイキライだった。
「ぐすっ…安倍しゃん、いってきます。」
「ふふ。怪我しないようにね。」
- 7 名前:第一話 投稿日:2004/02/28(土) 22:22
- ――――天中街西部・訓練場
「も〜おそいよぉ、のの。」
「今日こそはあたしがぶっつぶす。」
四番隊長・石川 梨香、七番隊長・吉澤 ひとみは口々に言った。
「てへへ、ごめんれす。」
辻はたいして悪いと思っている様子もなく、特徴のある八重歯をみせて
ニコッと笑った。その笑顔にはすべてを許してしまいそうな不思議な力が
あったが、長年付き合ってきた人間にはもう効くわけがなかった。
「じゃあリクエスト通りさっそく、のの対よっすぃ〜はじめっ!!」
「先手必勝。くらえぇぇぇ、『滅殺棍』!!おりゃあああああ!!!!」
はじめの合図とともに叫びながら吉澤がかかってきた。
しかし、辻はヒラリとそれをかわす。
「ちっちっちっ。力だけでは勝てませんよ〜だ。」
「へん、あたしの座右の銘は剛よく柔を断つどぁ!!!」
そう言って吉澤は辻に向かっていく。
「ギャラクティカ・クラッシュ!!」
「よっすぃ〜、ステキっ…」
「梨香ちゃん…キモイで。」
「あいぼん!!よっすぃ〜にあやまって!!」
「ちゃうって…」
「辻ぃ〜、逃げるなぁ!!」
吉澤は馬鹿の一つ覚えのように辻に襲い掛かる。
しかし、『滅殺棍』は空を斬るばかりだ。
「馬鹿だとぅ!?」
んげっ怒られた…
「今度はこっちの番れす。『紅桜』!!」
辻の声とともに桜吹雪がまう。
「くっそぉ〜」と吉澤は自身の霊帯刀をブンブン振り回している。
吉澤が疲れてきたのを見計らって、辻が一太刀。あっけなく勝負はついた。
「それまで!!」
- 8 名前:第一話 投稿日:2004/02/28(土) 22:22
- ひとは大なり小なり霊力をもっている。それを高め、精度を増し、武器の形状にしたものが霊帯刀である。
もちろん練習試合なので、傷つかないように霊力を調節してある。
霊帯‘刀’といってもなにもすべてが刀の形をしているわけではない。辻こそ刀だが、加護は槍、
吉澤にいたってはやたらゴツイ棍棒である。つまり性格がでるということだ。
「なにぃ〜、ど・う・い・う・こ・と・だぁ〜!?」
あがぁ!!こういうことだよ…
護廷十番部隊は完全な実力至上主義だ。霊力の高いものが上に立つ。
彼女たちが若くして隊長格を担っているのはそのためである。
「よっすぃ、もっと考えないとだめれすよ。」
「辻にいわれたらおしまいだよ…」
「あと霊帯刀の名前もコワイれす。」
「だってカッケー方がいいじゃん。」
「じゃあ、あのナントカクラッシュって?」
「ん?やっぱりさ、技の名前付けたほうがカッケーって思って。
最近つけてみた。」
「ふ〜ん。よっすぃってどうでもいいことにこだわるんれすね。」
「どうでもいいですと!?辻、あんたわかってないわね。
いい?霊力はあたしたちのメンタル面と密接に関係してるのよ!
つまり、名前をつけることによって愛着がわき、より一層、
攻撃力が高まり―――――――」
吉澤があさっての方をみて力説している。
辻は眠たそうに目をこすって大きな欠伸をした。
「ちゃんと聞け!!」
- 9 名前:第一話 投稿日:2004/02/28(土) 22:24
- ――――「よっしゃ、次はうちらやで。」
「梨香ちゃん準備はいいれすか?はじめッ!!」
「は、はやっ。ま、いっか。いくでぇ、『波槍』!!」
「え?え?ちょっと待って…」
加護が斬りつけるや否や
「きゃあ〜」という悲鳴とともに崩れ落ちていく石川隊長…
「はぁ…それまでれす。」
「梨香ちゃん、これじゃ練習にならへんやんか。」
「ぐすん、だってぇ、四番隊は救護専門…」
「言い訳は見苦しいれすよ。ののたちは仮にも隊長なのれす」
「梨香ちゃんも筋トレしよ、筋トレ。」
「筋肉は関係ないよぉ」
「なに言ってんの。健全な身体に宿る健全な魂っていうでしょ?」
「肌の色だけは黒くて健康そうやのにね。うちはやいても赤くなるだけやからうらやましいわ〜。」
「ぐす、これは地黒だもん」
この4人は同期のため一緒に行動することが多い。このコントのような練習試合はいつものことだ。
いざというときに戦わなければいけない立場にあるのはわかっている。
モーニング隊とはそのための組織であると。
だからこそ、いつまでもこの平和が続くことをみな願っていた。
- 10 名前:ざんぎ 投稿日:2004/02/28(土) 22:29
- きりがいいのでここまでにしておきます。
しばらくはストックがあるので、週一くらいで定期的に更新できると思います。
- 11 名前:みっくす 投稿日:2004/02/29(日) 02:40
- 結構おもしろそうですね。
頑張って下さい。
次回も期待してます。
ちなみに ×梨香 → ○梨華 です。
- 12 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:02
-
10月20日
最初の事件が起こった。
謎の生物がバリアーの外の天恩街で暴れまわっているという情報が入ってきた。
門のところにはきていないので天中街、天上宮は安全であろう。
しかし、謎の生物はかなり手強く、平隊士では歯が立たないので隊長までが出向くこととなった。
現場に向けて走る影が3つ。
「やっぱり悪い予感があたったっしょ。」
安倍が独り言のように呟いた。
「え?安倍さん、なにかいいましたか?」
「ううん。なんでもないよ。よっすぃ、藤本、油断は禁物だからね。」
「………」
護廷十番部隊・九番隊長・藤本美貴
2年前までつんく直属であったが、現在はつんくの命でモーニングに所属している。
そのため他の隊長とは仲があまりよくない。
- 13 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:04
- ――――天恩街
「キシャアアア!!」「グルルルルル!!」「ゴガアアアア!!」
敵は3体。
鮮やかな緑色の肌は凄まじい筋肉で盛り上がっている。
眼は赤く光り、髪の毛の生えていない頭には血管が浮き出ている。
理性などはなく、ただ破壊することが生きている証であるかのようだ。
「こいつら…強すぎ。絵里、大丈夫?」
「う、うん。なんとか…」
討伐に出向いた二番、七番、九番隊はほぼ壊滅状態だった。
二番隊所属・亀井絵里、七番隊所属・田中れいな、他数名しか残っていない。
平隊士は霊帯刀をつくりだせるほどの霊力はない。そのため、普通の武器を
自分の霊力で覆うことで多少強度を増している。しかしそれは、霊帯刀に比べれば
あまりにか弱かった。加えてこのバケモノたちは動きこそ遅いものの、その攻撃力、
その生命力たるや恐るべきものであった。一隊10人が同時に攻撃してもビクともしなかった。
そしてひとり、またひとりと隊士の数は減っていった。
- 14 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:07
- ブゥオン。ドガァァァ。
バケモノたちが腕を振り回すたびに街が破壊され、隊士が傷つく。
「きゃあ!!」
もう彼女たちには自分の身を守ることしかできなかった。
「!? れいな!!後ろ!!」
一瞬の油断。敵に背後をとられた。
「し、しまっ……」
しかし次の瞬間、バケモノが躊躇した。その動きで、やはり生物なのだと
実感する。もしこいつらがプログラムされたとおりに動くだけの機械なら、
田中の命はもうすでになかった。
「あ〜あ…街がメチャクチャだ。あのお店のベーグル好きだったのに…
田中ぁ、もっとふんばんなよ。罰としてあたしの部屋の掃除だかんね。」
「……吉澤隊長………」
「まったく…やりたいほうだいしてくれたべさ。梨華ちゃんもつれてくるべきだったよ。
亀井、無事かい?」
「は、はい。」
安倍と吉澤が無事な隊士を一箇所に集めている最中、バケモノたちは
動かなかった。いや、動けなかった。
藤本がにらみをきかせていたのだ
- 15 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:09
- 「………『弧月』……」
藤本の霊帯刀『弧月』はいうなれば円形のブーメランだ。
両手からなげられたそれは、弧を描きながら獲物にむかって
とんでいき、遠隔操作で敵を翻弄しながら確実にダメージを与える。
「ヒュー、いつみても鮮やかだべさ。よっすぃも少しは見習ってみたら?」
「いえ、やっぱり攻撃は一撃必殺に限りますよ。」
「みんなはそこで見ててね。後輩の参考になる戦いをするべさ、よっすぃ…って――」
「おりゃアアアア!!!『滅殺棍』!!!!」
吉澤は安倍のことはまったく無視して突っ込んでいった。
「はぁ…しょうがないなぁ。あの子は。
っと、こうしちゃいられないべさ。『連華』!!」
安倍の霊帯刀『連華』は三節棍だ。
素早い動きで敵を突いたかと思えば、まるで意思をもっているかのような
動きで節にわかれ、惰性によって、または敵を締め付けダメージを与える。
破壊本能で動いていたバケモノたちは、もはや防衛本能で動いていた。
「逃がさないわよ!!」
吉澤が行く手を阻み、霊帯刀を振り回している。
そのせいで街の破壊が進んでいるというのはこの際おいておこう。
- 16 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:11
- ――――――――
勝負は割とすぐについた。思いのほか防御力が高く、苦労したが
あれだけの平隊士が攻撃してもビクともしなかったバケモノたちが肉の塊と化した。
隊長格とはかくも凄まじい霊力をもっているのだ。
「任務完了っと。二人ともお疲れ。」
「あ、お疲れ様です。」
「……………」
「ちょっとアンタ。先輩に挨拶くらいしたら?」
「…無理に仲良くする必要はないでしょ?それに実力至上主義の護廷隊にも
力の差はあるわ。自分より格下の相手とじゃれ合ったって仕方ないじゃない。」
「どういうことだよ」
「……言ってほしいわけ?………もう帰るわ。」
「藤本、なっちのことをどう言ったってかまわないけど、ひとつだけ覚えておいて。
ひとは一人ではどうしようもない時があるの。そんなときに助けてくれるのが仲間。」
「………」
「つんくさんがモーニングに藤本をいれたのだって考えがあってのことだと思うわ。」
何も言わずに、藤本は去っていった。
「あんにゃろ〜、前はつんくさん直属だったからって偉そうに―――」
「おつとめごくろーさん。」
いつの間にか背後に珍しい人物が立っていた。
「稲葉さん?」
「後始末はうちら隠密が引き受けたで、アンタらははよあがりぃな。」
「隠密機動隊も大変だね、あっちゃん…」
「たいしたことないで。うちはうちにできることをやるだけや。」
そういってバケモノたちの屍骸をすばやく片付けていった…
「さすがは隠密。仕事がはや〜い」
「………」
「安倍さん?どうしたんですか?」
「あのバケモノ…どこからきたんだべ…?」
「う〜ん…ノースの仕業かもしれないですよ……
前に梨華ちゃん…ノースに潜入調査したことあったじゃないですか。
そのとき…あやしい動きがあるって……」
「そういえばそんなこと言ってたね…」
「……………」
「ま、ここで考えてても仕方ないべさ。
さ、わたしたちもけが人をはやく梨香ちゃんのところに………」
- 17 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:14
- 10月27日
――――天中街中央部・護廷十番部隊総長室
コンコン。「護廷十番部隊・副長・矢口真里。入ります。」
二代目総長・飯田 圭織に矢口は呼ばれていた。
「……? カオリ。カオリ?カオリっ!!」
「ん?ああ、矢口。どうしたの?なんか用?」
「はぁ?用があるって呼んだのはそっちでしょ?また交信してたわね。」
「ああ、そっか。そうだったよね。」
飯田はよくぼーっとしていて何を考えているかわからない。
そのくせ突然核心をつくことを言い、まわりを驚かせる。
しかし、みんなが飯田を信頼しているからこそ総長の座についている。
――――「で、なに?」
「この間の未確認生物についてなんだけど」
「ああ、うん。解剖の結果、でた?」
「それがね……科学部隊のひとたち、『我々にまかせておけ。お前たちには関係ない』だって…」
「!?どういうこと?あれだけ被害がでたのにオイラたちにはなんの説明もないの?」
「矢口、どう思う?」
「どうって……」
「みんなはノースの新型の生物兵器だと思ってる。
でも、もしかしたら……」
そこまで言って飯田は口を噤んだ。
「……ふう、やめよう、憶測でものごとを判断するのはよくないわ、
って昔いわれたしね。」
「そ、そうだ、一応なっちに三国の状況を見てくるように言ったから。
……カオリきいてる?カオリ?」
飯田の反応はない。またお得意の交信をはじめてしまったのだろうか。
しかし、その顔は普段とは違い、なにか考えごとをしているようだった。
- 18 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:17
- 「ねえ矢口…裕ちゃんはどうしてる?」
「は?え、や、カオリ、それは…」
「大丈夫。わたしのチカラで隠密にも、だれにも絶対に聞かれないから。」
「……そ、じゃいいか。元気に…してるよ。」
「そう…だよね。裕ちゃんだもんね。」
「どうしちゃったの?カオリ、いつも変だけど今日はさらに変だよ。」
「矢口……宇宙の彼方にすっとばすわよ?」
「うっ、ゴメン…オイラが悪かったから『銀河』だけは勘弁。」
「街にね…不穏な動きがあるって聞いたからさ。アンテナにピンときたんだ。裕ちゃんじゃないかって。
予感がするの。きっとまた戦いが始まるんだね。」
「カオリ…。」
「そうなったら…カオリは……どうすればいいんだろう…。」
- 19 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:20
- 元護廷十番部隊・総長・中澤裕子。
彼女はいま、イーストをかえるために反乱軍のリーダーとして、静かにその時を待っていた。
軍といってもそんなたいそうなものではない。協力者はたったの4人しかいない。
それに戦えるのは中澤を含めて3人。あまりにも無謀な反乱にみえた。
しかし、やらないわけにはいかない。
表向き、彼女は神帝・つんくのやり方に異を唱えたために、
当時の隊長たちを見届け人として打ち首にあったことになっている。
刃をおろしたのはほかでもない現総長の飯田である。しかし、飯田の『銀河』は空間をあやつる。
刃は中澤の首ではなく空間そのものを斬った。空間のズレにより中澤は生きたまま、
まわりには首を落とされたように見せかけた。
そして死んだと思っている中澤の身体を亜空間にとばすとみせかけて、安全なところに送った。
この事実は現在のモーニング隊では飯田と矢口しか知らない。そしてそれ以来、飯田は中澤とあっていない。
いまでも連絡をとっているのは矢口だけだ。
- 20 名前:第一話 投稿日:2004/03/05(金) 14:22
- ―――イースト領・山奥の小屋
がちゃ、ギィ。
古びたドアが錆び付いた嫌な音をたてながら開いた。
「裕ちゃん…」
「おう、圭坊にみっちゃん。下らん雑念は捨ててきたか?」
「ええ、負の感情で剣をふるえば身を滅ぼす…でしょ?」
「そや。」
「…………」
「みっちゃん?」
「……大丈夫や、ねぇさん」
「よっしゃ。こっちの準備も整った。手遅れにならんうちになんとかせな。」
元護廷十番部隊・副長・保田圭、元つんく直属・平家みちよ。
彼女たちは中澤に同調してつんくのもとを離れ、隠れて暮らしていた。
「ごほっごほっ…」
「明日香、無理しちゃだめよ。」
「あやっぺ、だいじょうぶ…みんな気をつけてね…」
「ごめんね、裕ちゃん。私は…」
「明日香、あやっぺ…二人ともホンマによう働いてくれたなぁ。
心配することないで、うちらは絶対帰ってくる。」
元護廷十番部隊・一番隊長・福田明日香。
病に倒れ、現在は安静に暮らしているが、中澤に協力してきた。
元護廷十番部隊・三番隊長・石黒彩。
中澤のよき理解者である。また、世界に名高い物理学者でもある。
「さぁ、いくで。二人とも、気ぃ引き締めていきや!!」
彼女たちはこのとき知る由もなかった。すれ違いから、かつての仲間たちと
戦うことになろうとは……。
- 21 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/05(金) 14:25
- 更新しました。
とりあえず、第一話はこれで終わりです。
- 22 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/05(金) 14:28
- 11 みっくす様>
気をつけていたつもりでしたが、早速名前間違いをやってしまいました。
失礼極まりないですね。ご指摘ありがとうございます。
期待にそえるようがんばりますので、どうぞ応援よろしくお願いします。
- 23 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:02
-
PM10:28
「くっそ〜、なんなんだよあいつら〜!!」
「アレ…サウスの無人戦闘機・キラービーだよね…
それに…ウェストの陸上侵略機・バッタ…どうなってんの?」
「この間のバケモンもノースの仕業って噂やし…」
「3つの国が連合して攻撃してきたんれすかね…」
天中街を走る吉澤、矢口、加護、辻。
再び事件が起こった。
「とりあえず辻と加護は西に!!オイラとよっすぃは南にいくよ!!」
「東と北は…?」
「東には藤本と紺野をいかせた。北には…後藤と松浦がいったよ。」
「ソロが動いたんですか?そりゃこれだけの騒ぎなら当然かぁ…」
「気合入れていくでぇ!!」
- 24 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:03
-
Wild Times―another story〜第二話 死の足音〜
- 25 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:08
-
――――天恩街、北部
PM10:36
「んあ、あたしが寝てる間になにがあったの?」
「なんかぁ、サウスとかウェストが攻めてきたらしいですよぉ」
「へー、そりゃたいへんだねぇ。」
「人事みたいに言わないでくださいよぉ。あ、でも後藤さんの『覇国』があれば
百人力ですよね。」
「はは、そんな期待されても…それにあいつらが相手なら
松浦の『千本矢』のほうが頼りになるよ。」
「そんなに誉めないでくださいよぉ。」
「ハハハ…」
神帝つんく直属 後藤真希、松浦亜弥
イーストでなにかがおこったとき、処置をするのはモーニングの仕事である。
故に直属の2人が動いたことはいまだかつてなかった。事態はそれほどまでに
緊迫している。
チームとしてまとまっているわけではないので周りからはソロと呼ばれている。
「ちゃっちゃとおわらせてもう一眠りしよ…」
後藤がぽつりと呟いた。
- 26 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:12
-
――――天中街
PM10:25
「それじゃあ、まこっちゃんは南側、理沙ちゃんは東側の見回りね。」
「うん…わかった…」
「あわわわ、わたし大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だよ。自信もって。隊長がそんなだとみんなが不安になるよ。」
「う、うん……」
護廷十番部隊・八番隊長 高橋愛、六番隊長 小川麻琴、十番隊長 新垣里沙。
彼女たちもまた同期である。本当はもう一人いるのだが、最近はこの三人で行動することが多い。
「それにしても明日はまこっちゃんの誕生日なのにねぇ。
はやく安全になればいいね。そしたらさ、お誕生日会やろう。あさ美ちゃんもさそって4人で。」
「うん、そうしよ!!」
「ありがと…2人とも…」
「まっこっちゃん?どした?さっきからなんか変だよ?」
「…う、ううん。なんでもないよ。わたしは大丈夫だから…」
「調子が悪いなら休んでても―――」
「心配しないで。大丈夫…お誕生日会、楽しみにしてるね。」
「それじゃあ2人とも、気をつけてね。」
「はぁ〜…またあとでね。」「……うん…」
- 27 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:16
-
――――東門近くの森
PM11:13
中澤、保田、平家の3人は、東門から潜入するために
その近くの森に身を潜めていた。
「どういうわけや?他の国が攻めてきよるとは…」
「でもねぇさん、これは好機やで。あちらさんは混乱してる。」
「そうね。モーニングはほとんど迎撃に向かってるはずだし。警戒はしてても
中は手薄のはず。」
「そやな。いくならいまか……よし、いくで!!」
- 28 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:21
-
――――東門
「裕ちゃん…これって…」
「なんや、どえらいことになってんで。」
「門番四神が殺されるなんて…」
「村田…」
門番四神・東の青龍・村田めぐみ
中澤たちがきたときにはすでに事切れていた。
イースト全土から選び抜かれた門番の死……
それは中澤たちが抱いていた疑念を確信に近づける結果となった。
「やっぱり、つんくのやつ…」
「まて圭坊。憶測で物事を判断するのはよろしくないなぁ。」
「でもねぇさん…」
「ああ……こらぁ、いそがなあかんな…
もし敵に会って話してわかるようならええけど、だめなようなら…
わかってるな?」
「大丈夫だよ、裕ちゃん。」
「……なら、いこか。」
- 29 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:25
-
――――天中街西部・救護棟倉庫
PM11:34
「うぅ…暗いなぁ…石川隊長もなにもわたしにいわなくてもいいのに…」
ガツッ!!どでっ…
あ、ころんだ。
「いたぁ〜い…」
護廷十番部隊・四番隊所属・道重さゆみは石川に救命道具の補充を命じられていた。
外では戦闘が行われ、警戒レベルが3に設定されているいま、救護班の活躍は必死である。
石川の命令は的確だが、人選には問題があったかもしれない…
―――いや、誰がきても同じでっただろう。悲惨な光景を目の当たりにしてしまうという点で
道重は不運にちがいなかったが…
ピチョン、ピチョン…液体が滴る音がきこえてきた。音の発生源と思われる
倉庫の壁に自然と目がいく。手にした懐中電灯を壁にあてた。
「きゃああああああああ!?」
そこには――――
胸を一突きにされたまま倉庫の壁に刺され、わずかではあるが宙に浮いた状態になっている
小川真琴の姿があった。目がうっすらと開いているが、まだ血が流れており、
刺されてからまだ間もないことが見てとれた。
- 30 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:30
-
10月29日
―――――救護棟本部
AM0:02
ガチャ…
「飯田さん…」
「小川は……?」
ふるふる、と石川は首を横に振った。
飯田は小川の顔にやさしく手を触れた。
「死因は心臓を貫かれての心機能停止…それと…霊源点を破壊されています。」
「霊源点をつぶされた…。霊力を使えなくなって、なすすべもなくやられたんだね…。
だからこんなにきれいな顔してるんだ……」
「飯田さん…どうしますか…?」
「隊長には伝えるよ。隠密に頼んどく…。
それと警戒レベルもあげてもらう。」
「わかりました。」
「それからね、これはまだ未確認なんだけど…侵入者がいるらしいの。」
「侵入者…?まさか麻琴は―――。門番はなにを―――。」
「そう興奮しないで。こっちはまだなにもわかっていないの。こんなこと…はじめてだから…。
小川のことで自分を見失ってしまったら…次にああなるのは石川かもしれないわよ。」
「は、はい……」
「それじゃ、いくね?」
飯田が立ち去った後も、暗い表情のまま、石川は小川の亡骸を見つめていた。
過去に戦争を体験していたが、身近な者の死というのは初めてだった。
しかし不思議と涙はでなかった。それは、まだ見えざる敵に対する憎しみのせいかもしれない。
いままで戦うということに抵抗があった。自分の仕事は傷ついたひとを癒すことだと言い聞かせ、
ある意味逃げてきた。だが、彼女はいまこぶしを握りしめ、武器をとる決意をしたのであった。
- 31 名前:第二話 投稿日:2004/03/14(日) 20:34
-
――――天中街東部
AM0:24
「―――――伝達事項は以上です。」
シュっ
隠密隊員は伝達事項のみを簡潔に言うと、夜の闇に消えていった。
ショックのあまり新垣はその場に立ち尽くしている。
「そ…んな…まこっちゃんが……?さっきわかれたばかりなのに…」
と、何者かの足音がこっちに近づいてくる。
―――タッタッタッタ
「だ、誰!?」
「新垣か…?」
「な、中澤さん?そ、そんな…どうして中澤さんが…処刑されたはずじゃ……
それに、保田さんに平家さん…
まさか…侵入者って……?」
「わたしたちのことでしょうね。」
「じゃあ…まこっちゃんもあなたたちが!?」
「小川?いや、しらんなぁ。」
「とぼけないでください!!まこっちゃんの仇……『霧笛』!!」
新垣の怒りとは裏腹に、穏やかな笛の音が鳴り響く。
霊帯刀『霧笛』は笛の音に霊子を帯びさせて、まわりにいるものの
自由を奪う。いつもならばそれで新垣の役目はおわり。パートナーが
止めを刺してきた。しかしいまは一人。はじめて人に刃を向けた。
「やああああああ!!」
「圭坊!みっちゃん!」
「えっ!?どうして―――?」
平家はすんでのところで新垣の攻撃をかわし、保田が新垣の腕をとり背後にまわる。
動けないはずの2人が動いた。霧笛が効かない。
新垣は完全に身体を封じられた。
「さすがはねぇさんの『無音』やね。」
「わるいな、新垣。うちの霊帯刀は他の霊帯刀の効果をかき消す。
霊帯刀が普通に武器やったら気付いたのにな。あんたの霊帯刀が音という
特殊なもんやっただけに気付かれへんかった。」
「そ、そんな…」
「あんたらみたいな子どもが戦うことはない。いま、楽にしたる――――」
- 32 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/14(日) 20:39
-
更新しました。
- 33 名前:みっくす 投稿日:2004/03/14(日) 21:58
- いよいよ本格的になってきましたね。
あと、他のメンバーの霊帯刀も気になるとコです。
次回も楽しみにしてます。
- 34 名前:みっくす 投稿日:2004/03/14(日) 22:33
- 連レス失礼
今までの登場を考えると
紺ちゃんは埋まってない
護廷十番部隊・五番隊長でいいのですかね。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 10:24
- なっちも現実どおり、ソロになったりするんですかね?
勝手ですが、強いなっちを期待しています!
とにかく、想像が膨らむ文ですね!勝手な妄想が・・・・
次回が楽しみです!!!!!!
- 36 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/20(土) 18:31
-
>>33,34みっくす様
お察しのとおり紺ちゃんは5番隊長です。
今回の更新でようやく登場します。でも登場だけになりそう…
霊帯刀は実はあまり活躍しないかも…
あくまで戦う娘。を描くことが目的ではないので。
>>35名無飼育さん様
期待通りなっちは…。でもソロにはならないかも。
想像が膨らむ>してやったり!!ッて感じです。
どんどん妄想してください。
それでは続きです。
- 37 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:33
-
――――天恩街南部
AM0:40
「よし、ようやく片付いたみたいだね。」
「はあああ…あいつら雑魚でしたけど数だけはいましたね。」
うんざりしたように吉澤が言った。そこら中に敵の残骸が山積みにされている。
「他のところはどうかな?よっすぃ、東を見てきてくんない?オイラは西にいくから。」
「あ、はい、了解っす。」
「それじゃ―――」
矢口が走り出そうとしたとき、隠密が突然現れた。
「隊長各位に伝令!!六番隊隊長・小川麻琴殿がお亡くなりになりました。」
「アァ!?なに言ってんだ!!小川が死んだって―――」
「よっすぃ、落ち着けって!どういうこと?」
「詳細は――――――――――」
「伝達事項は以上です!!」
「そんな……」
「よっすぃ、急ごう。他のみんなが心配だよ。」
- 38 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:34
-
――――天恩街西部
AM1:07
「はぁ、はぁ。ののぉー!!どこいったんやー?」
加護がおろおろと辺りを行ったり来たりしていた。彼女は意外と冷静にものを見るタイプなので
このようなことは珍しい。そこに矢口が到着した。
「加護!こっちも終わったの?」
「あ、矢口さぁーん!大変なんです…。
ののが…ののがいなくなったんです。」
「えぇ!?」
「数が多かったんで分かれて戦ってたら…いつのまにか……」
「…まぁ、辻に限ってあんなやつらにやられるとは思えないけど…」
「ののになんかあったら…うち…うち……」
「大丈夫…きっと、大丈夫だから…とりあえず戻ろう。」
すると例によって隠密がどこからともなく現れる。
「隊長各位に伝令!!」
「ああ…オイラはもう知ってるからいいよ。加護にはオイラから―――」
「は、しかし…」
「いいから帰れっつってんのよ!!」
「………失礼します!!」
「矢口さん…?」
いつもと様子の違う矢口になにかが起こっていると感じ取ることができた。
「加護……実は―――――」
- 39 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:35
-
――――東門
AM1:12
「村田さん!!村田さんっ!!」
吉澤は一旦東の迎撃ポイントにいったが、もうすでに藤本と紺野はいなく、
そこには敵の残骸だけが残っていた。おそらく帰還したのだろうと思い、
自分も帰ろうと東門にきた。そこで目にしたのは、門を守護する
間違いない実力者のなれの果てであった。短時間のうちに何人もの
犠牲者がでた。これが戦争というものなのかと改めて実感していた。
「くそっ…いったいどうなってんだよ……。
急いで戻らなきゃ……。」
- 40 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:37
-
――――護廷十番部隊会議室
AM2:00
頃合を見計らって、飯田は隊長を集めた。
どんなに悲しくても、隊長たちを統べるものの務めとして
気丈に振舞わなければならないのがつらかった。
いまほど総長という立場を恨めしく思ったことはない。
「これまでにわかっている事実を説明するわ…」
飯田の顔色はすぐれない。
「六番隊長の小川が亡くなったというのはみんなきいたわね…?」
みな、顔を下に向けている。
高橋にいたっては涙を流していた。
「まこっちゃん…」
――――――お誕生日会、楽しみにしてるね。―――――
(あのとき…まこっちゃんの様子がおかしかった。もしかしたら
なにか知ってたんじゃ……)
「ほかにも被害がでてるの……」
ふう、と飯田は力なくため息をついた。
「十番隊長の新垣、門番四神の村田さんも亡くなったわ…
それから一番隊長の辻が行方不明……」
「ッ………………!?」
その場にいた誰もが動揺をみせた。全員参加が原則の隊首会。
おかしいとは思っていた。
ひときわショックの大きかったのは高橋だった。一番の親友たちが
この短時間でいなくなってしまった。
- 41 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:40
-
「辻には捜索隊をだした。無事だといいんだけど…。
亡くなった三名については殺害方法はすべて同じ。
霊源点を破壊された後、心臓を貫かれている…」
「同一犯……?」
「断定はできないわ。」
「「「「………」」」」
「それで気になったことがあるから、詳しくは石川に話してもらうわ。石川…」
「はい…。3名の遺体には…直接の死因となった胸と霊源点以外には外傷はありませんでした。
争ったというあとがまったく見られません。
可能性としては、殺害犯は圧倒的な力を持つ人物。もしくは……」
石川の顔が曇った。
「油断を与えることができる顔見知りの可能性も…」
「侵入者が顔見知り……?」
「あくまでも可能性の話をしているだけよ。それで私たちの中に
疑心が生まれれば、かえって敵の思う壺かもしれないし…」
- 42 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:43
-
「飯田さん、ちょっといいですか?藤本さんと紺野…あんたたち敵を迎撃したあとどこにいったの?」
「…敵を殲滅してから帰還したわ。」
「村田さんを見つけたのはあたしだよ。どこから帰還したんだよ?
倒れてる人を見てみぬふりしたわけじゃないだろ?」
「つっかかってくるわね…私たちを疑ってるわけ?村田さんを殺したって。」
「そうとってくれて構わないわ。」
「吉澤、あまり興奮しないで。さっき言ったばかりじゃない。
疑いだしたらきりがないわよ?
でもあなたたちの行動には疑問点があるわね。藤本、紺野、
やましいことがないなら答えて――――」
- 43 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:44
-
ビー、ビー、ビー、ビー!!
突然、警報が鳴り響いた。
〈天中街南部・兵器庫周辺にて侵入者発見の報告。直ちに警戒にあたれ。
繰り返す――――――――〉
「しょうがないわ。隊首会は一旦中止。加護、高橋、吉澤、いって!!」
「「「了解しました!!」」」
「飯田さん…わたしも前線で戦います…」
「石川……わかったわ。でもあなたの本分は救護だということを忘れないで。
これ以上仲間を失いたくないの…」
「はい……」
「藤本、紺野はわたしと矢口と一緒に行動してもらうわ。文句は言わせないわよ?」
「「……了解。」」
- 44 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:47
-
――――天上宮・地下研究所
精巧に人間のかたちをしてはいるがその顔からは生気が見られず、
明らかに人間ではないことが見て取れる3つの機械の塊
――いや、もとは人間だったのだが――それらをみながらつんくが言った。
「お前らはほんまによう働いてくれてんで。さすがは改良に改良を重ねただけはある。くくく。
それに石黒博士、福田。お前らもご苦労やったなぁ。
コマはそろった。あいつらもそうとう疑心暗鬼を生じてるようやし、あとは高みの見物といこか。
計画達成まで、もう秒読み段階や…はっはあっははあ!!」
「「………………」」
- 45 名前:第二話 投稿日:2004/03/20(土) 18:49
-
第二話 了
続けて第三話にいっちゃいます。
- 46 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:50
-
10月27日
――――ノース市街地
「やっぱり………ここももう滅びてる…」
安倍は矢口の命をうけ、サウス、ウェストに潜入してきた。
しかし、いづれの国ももうすでに滅びていた。見渡す限りの瓦礫の山。
「どうなってるんだべ…?内乱…ってわけでもなさそうだし。
それにしてもひとっこひとりいないなんて……」
すでに1時間は歩いただろうか。安倍はもとはノースの出身である。
しかし、かつての街の面影はない。
「なにかが起こっているのはわかってたけど…これは異常っしょ。
急いでイーストに戻らなきゃ…」
- 47 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:50
-
Wild Times―another story〜第三話 滅びの唄〜
- 48 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:51
-
10月29日
――――護廷十番部隊会議室
AM2:28
〈天中街北東部・兵糧庫周辺、及び西部・訓練場周辺に侵入者発見の報告
直ちに警戒にあたれ。繰り返す―――――〉
「ま、またぁ!?カオリ、どうなってんの?」
「わたしにきかないでよ。
……仕方ないね。藤本、紺野は兵糧庫に向かって。」
「いいんですか?わたしたちにいかせて…まだ疑惑は晴れてませんけど?」
「事態が事態だからね。それにわたしはモーニングのみんなを信じてる。」
「………」
「とにかくいって。訓練場は…例によって後藤と松浦にいってもらいましょう。」
- 49 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:53
-
――――天中街南部・兵器庫
AM2:28
〈天中街北東部・兵糧庫周辺、及び西部・訓練場周辺に侵入者発見の報告
直ちに警戒にあたれ。繰り返す―――――〉
「これは……お仲間ですか?中澤さん…」
「中澤さん…どうして……?」
侵入者撃退のために出陣した吉澤と石川は、加護、高橋とわかれて兵器庫に
向かうと中澤たちと出くわした。石川はまるで幽霊でも見たように青ざめてしまっている。
「吉澤、かわいないな〜。死んだハズの人間やで?
せめて石川ぐらい驚いてもらえんか?」
「肝っ玉は据わってるんで。それよりも質問に答えてください。
まだ仲間が?」
「昔の好や、正直にいうで?うちらはこの3人だけや。
他のやつらは知らん。」
「…昔の好?ならなんで小川や新垣を殺したんですかっ!?」
「さっきもきかれたけど小川のことはほんとに知らないわ。
それに新垣が死んだってどういうこと?」
「とぼけるなっ!!!『滅殺棍』ッ!!」
「……許せませんっ!!『炎舞扇』!」
「!?圭坊、みっちゃん、散れっ!!」
- 50 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:54
-
吉澤の破壊力はすでにご承知のことと思うが、戦うことを決心した石川も
なかなかのものであった。
吉澤が勢いよく霊帯刀を振り下ろすと砕けた地面が10mほど飛び上がった。
かとおもえば、石川が炎の竜巻をつくりだし容赦なく中澤たちを追い回す。
「くぅ…強烈やな。若さのパワーか?」
「ねぇさん、なんか誤解があるようやけど…」
「きいてもらえそうに…ないな。『無音』もまだ使えん。」
中澤の『無音』は霊帯刀の効果を消し去るというのは前にも言ったが、
一度使うとしばらく使うことができないというリスクもあった。
その間、およそ3時間。
「……ここは逃げる。ポイント39:15にはバラバラにいこ。」
「わかった、裕ちゃん」
「・・・・・・」
「みっちゃん?どないした?」
- 51 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:55
-
中澤の声に応じることもなく、平家の身体は力なく崩れ落ちた。
ピクリとも動かない。心臓を一突きにされ平家はすでに絶命していた。
そしてその後ろには、これほどの実力を持つ人間が集まる中、
気配を感じさせることもなく何者かが立っていた。
手にした刃に血が滴っている。
「みっちゃんっ!?くそっ、こいつはいったい…?」
「梨華ちゃん……なに?アイツ…」
「わからない。でも…生きてる感じがしない。人間の皮を被った…機械…?」
次の瞬間、ソレは猛烈な勢いで突っ込んできた。やはり人間の動きではない。
みな、かわすのが精一杯だ。
「くそっ、圭坊!!いくで!!みっちゃん……すまんっ。」
平家の遺体をそのままにしたくなかったが、中澤と保田は走り出した。
- 52 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:56
-
「裕ちゃん……さっきのって……」
「圭坊…気付いてたか……」
「……忘れるわけ…ないわよ。」
「自分も死んだことになってる人間やから…人のことはいえんけど……
信田が…なぜ……?」
- 53 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:58
-
敵はなおも尋常ではない動きで攻撃を続ける。
吉澤と石川には反撃する暇さえない。
石川が炎の竜巻をつくりだしても敵はお構いなしに突っ込んでいく。
吉澤の大振りな攻撃では殺してくれといっているようなものだ。
どれだけの時間そうしていただろうか。
攻撃をかわし続けている2人に疲労の色がみえた。
「っあぐ!」
ついに吉澤が攻撃をかわしきれなかった。痛みによる一瞬の隙。
敵はそれを見逃さなかった。吉澤をめがけて飛んでくる。
「しまっ―――」
「よっすぃ!!」
身体が勝手に動いた。
なにも考えることができなかった。
ただ大好きな親友を守りたかったから。
- 54 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 18:59
-
―――――「梨華ちゃん!!!!?」
ふたりの動きが止まった。時の流れすら止まっているように感じた。
「梨華ちゃん!!梨華ちゃん!!梨華ちゃん!!」
石川は応えてくれない。手足がダラリと垂れ下がり、
胸からは赤く染まった刃が生えている。
「ああ……?あっ、あああああぁぁぁぁっ!!?」
力の限り叫んでも、吉澤は動けなかった。
敵は刃を引き抜くと、何事もなかったかのように闇の中へと消えていった。
石川の身体が無造作に横たわる。
「り…かちゃ……ん……。うわああああああぁぁぁ!!」
大粒の涙を流し、吉澤は泣き散らした。
これほど泣いたのは生まれて初めてだった。
いつもそばにいて、冗談をいい笑いあった。
2人でいれば会話が途切れることなどなかった。
いまもすぐそこにいるのに、何度呼びかけてもなにも返してくれない。
石川はもう、笑わない、泣かない、怒らない。
遠い世界へいってしまった。
- 55 名前:第三話 投稿日:2004/03/20(土) 19:01
-
―――ザァァァァ
いつの間にか雨が降ってきた。
それでも吉澤はそこを動こうとはしなかった。
石川の亡骸のそばに蹲り、雨にいいようにぬらされている。
いつもの彼女からは考えられないほどに、吉澤の顔からは表情が消えていた。
- 56 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/20(土) 19:04
-
今回の更新は以上です。
戦闘シーンって難しいですね。ほとんど戦闘してませんけど…
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 21:30
- ああ・・石川死んじゃった・・これからどうなるんだろ・・個人的にはなっちが見たいなあ。更新待ってます。気になって仕方ないです
- 58 名前:みっくす 投稿日:2004/03/21(日) 02:47
- 更新お疲れさまです。
う〜ん、何か複雑な展開になってきましたね。
どうなるんだろう。
>57名無飼育さん
ネタバレレスはやめましょうね。
読む楽しみが半減してしまいます。
- 59 名前:みっくす 投稿日:2004/03/21(日) 02:51
- ということで、スレ隠し
- 60 名前:みっくす 投稿日:2004/03/21(日) 02:51
- スレ隠し
- 61 名前:ざんぎ 投稿日:2004/03/27(土) 20:14
-
>>57 名無飼育さん様
今回の更新でなっちきますよー。
更新待ってます>ありがたい限りです。レスをもらえるのも
すごく嬉しいんですが、ネタバレには気をつけて下さいね。
>>58〜60 みっくす様
スレ隠しどうもです。
複雑にしすぎて無理やり且つあっさりとラストを迎えるかもしれません…
しかし、この話が終わってもWild Times自体はまだ……
- 62 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:15
-
――――天中街西部・訓練場
AM2:57
いまやイースト最強と名高い後藤。あまり物事を深くは考えず、
ちょっとやそっとのことじゃ物怖じしないが、彼女はかつてないほど混乱していた。
「いちーちゃん……」
「久しぶりだね、後藤。」
市井沙耶香。元護廷十番部隊・5番隊長。
後藤を鍛えたのはなにを隠そうこの市井である。
しかし中澤処刑後、誰にも理由を明かさずにイーストを去った。
「後藤さん…」
「松浦…2人きりにして。あんたは向こうにいったやつらを…」
「は、はい。(後藤さん、いつもと雰囲気が違う……)」
松浦は後藤がいつもよりも幼い感じになったような気がした。
ただならぬものを感じ、松浦は素直に従い侵入者を追って走っていく。
- 63 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:16
-
―――ザァァァァァ
突然の雨もお構いなしにふたりはお互いを見つめたまま動かない。
その光景はある種の美しさを伴っていた。
「いちーちゃん、どういうことか説明してよ…」
「後藤……あんたたちこそどういうつもり?
確かに四国は敵対していたけど…罪もない人たちまで…
カオリは…モーニングはつんくをとめようとはしなかったの!?」
「いちーちゃん…なに言ってんの……?後藤、頭悪いからわかんないよ…」
「ノースもウェストもサウスも…滅ぼされた。ものすごく
強いバケモノとかに襲撃されて…もう……ないんだよ。」
「わかんないよっ!!わたしたちはそんなことしてない!!
するわけない!!!」」
「後藤…でも事実は事実だ。もし後藤たちが本当にやってないなら…
わたしだって無駄な戦いはしたくない…わたしは後藤を信じるよ?」
「うんっ、ありがとう、いちーちゃ―――
ッ!!?あぶないっ!!」
- 64 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:17
-
まばゆい光の光線がふたりに向けて発せられた。
間一髪で直撃こそ避けられたものの、市井の左腕はもはや使えそうになかった。
敵は人の形をしてはいるが、とても人間とは思えない。
平家と石川を殺したモノにとてもよく似ていた。
「ぐっ…」
激痛が走り、市井の整った顔が歪む。
「よくも…よくもいちーちゃんを…」
敵はなんのためらいもなく、こっちに向かってくる。
「『覇国』っ!!」
後藤の手のひらから凝縮された霊子のビームが敵めがけて発せられた。
強力な一撃が完全に敵を捕らえたかと思われた。
「!!?」
敵も間一髪で直撃を避けたようだ。普通の人間にはとてもじゃないがかわすことすらできない
スピードだろう。しかし右腕を消し去ることはできた。
腕を消し去られても敵のスピードが落ちることはなかったが
敵は向かってはこなかった。手に持つ兵器で光を放ったかと思うと
そのまま姿をくらましてしまった。
「いちーちゃん!大丈夫!?」
「いてて…命があるだけましだよ。後藤、強くなったね」
「いちーちゃんの…おかげだよ……」
「それにしてもいまのやつ…見間違いじゃなければ…T&C部隊のルル…」
T&C(Tacit and Charge)部隊。「無言の突撃」の名のとおり、
5年前の戦争において常に先陣を切っていた部隊である。
しかしそれが災いし、信田美帆、ルル、小湊美和は死亡。生き残ったのは
稲葉貴子だけである。そのときのことがトラウマになり、稲葉は前線を離れ
隠密の道を進んだ。
「後藤、やっぱりあんたたちの知らないところでなんかが起こってるみたいだね…」
- 65 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:18
-
――――天中街南東部
AM3:10
「侵入者…おらへんな……梨華ちゃんとよっすぃ、大丈夫やろか…?
それにこの雨……鬱陶しいなぁ…」
「あ、加護さん!あれは!?」
「の、のの!?」
「あいぼん!!愛ちゃん!!よかった…やっと会えた…」
「いままでどこにおったんや?連絡もせんと…心配したんやで…」
「え!?あ、それは…」
(……?なんやろ?のの…なんかいつもと…?)
「辻さん…なんかいつもとしゃべり方違いませんかねぇ?いつもはもっと舌ったらずっていうか…」
「そ、そんなことない、れ、れすよ。」
(しゃべり方だけやない。なんか…まったくの別人みたいな…)
そこにいるのは確かに辻希美だ。ずっと心配していた辻だ。
しかし加護はその辻になにか違和感を感じていた。
(気のせい…やろな…)
「あ、あの…ごめん…よく覚えてないの…」
「軽い記憶喪失になってるみたいですね。でも無事でよかった…」
「いま大変なことになってんやで…」
- 66 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:19
-
――――「そ、んな…」
「つらいけど…これが現実なんです…」
「落ち込んでる暇はないで?いまもみんなどっかで戦ってるはず―――」
―――ドガァァァァ!!!
そんなに遠くない場所で建物が崩れる音がした。
「!?いまのは…2人とも、いくで!!」
- 67 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:20
-
――――「はあっ…はあっ…くっ、うぅ…」
石川が死んで、吉澤は放心状態だった。何も考えられず、いや、
頭の中は石川のことでいっぱいだった。
石川が死んでしまったのは自分のせい。何度も自分を責め続けた。
そのせいで、敵に囲まれていることに気付かなかった。
以前天恩街を襲ったバケモノ。そんなに苦戦することなく勝った。
しかし今回は数が多い。さすがの吉澤も10匹に交代交代に攻撃されては
手も足もでなかった。
「うあああああああ!!」
それでも吉澤はみすみす殺されるようなことはしなかったし、
石川をおいて逃げるなどとも微塵も思わなかった。
満身創痍で霊帯刀を振るう。
ベキベキっ…グシャッ
「ぐぎゃあああああ」
これで4匹目。絶対不利のこの状況でよく戦っていた。
しかし、すでに意識は朦朧とし、霊帯刀をつくり出す事も困難になっていた。
戦うにはもう血を流しすぎた。
「も、もう……だ…め……」
ついには膝をついてしまった。
- 68 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:21
-
「よっすぃー!!『波槍』!!」
「『天風』!!」
加護と高橋の二人は図らずもバケモノの急所をついたようだ。
一瞬のうちにバケモノたちは沈黙する。
辻は少しオロオロしていたが、意を決したようにとびかかる。
刀を鞘に収めたまま柄に手を伸ばし、横一文字に振りぬいた瞬間、
バケモノは真ッ二つにされた。
刀の切れ味もさることながら、辻の剣術はいつもとは違うように感じた。
残るは三匹。
「なんや?のの。霊帯刀の出し方まで忘れたんか?ま、いいや。とどめぇ!!」
「まこっちゃん…理沙ちゃん…みてて。」
「許さない!!…れ、れす…」
三人は同時に飛び掛ったがさっきと同じようにはいかなかった。
バケモノの肌がまるでゴムのように伸びたのだ。
そういえば心なしか緑色の肌に模様が入っているようだ。
「な、なんやねん、コイツ!?」
「さっきのやつと全然違う!?」
「……ッ!!」
辻が一匹に切りかかる。狙うは頭。本来なら致命傷は確実。
しかし、ボヨンとその勢いを吸収されてしまう。
「くっ…」
続いて高橋が攻撃に移る。高橋の霊帯刀『天風』は自らの身体を霊力で
覆い、格闘をするタイプのものだった。加護のように武器を作り出す器用さは
ないが、純粋に破壊力だけを極めたものだ。その攻撃力は吉澤以上だった。
瞬時に無数の突きと蹴りを繰り出す。しかし、これもすべて弾き返されてしまった。
- 69 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:22
-
「あかんな…これは。」
とりあえず三人は吉澤を巻き込まないように少し離れたところに三匹を
誘導した。しかし、何度攻撃を繰り出しても同じだった。
逆に徐々にダメージを受け始めている。
「…ふたりともちょっと…」
決して頭がいいわけではないが、キレのよさはモーニングでも
一、二を争う加護が何か考えを絞りだしたようだ。
「――――と、いうわけや。一か八かやってみよう。」
「チャンスは一瞬ですね…」
「あいぼん……わたしは…」
「だいじょうぶ。うちらにはできる。絶対に。そう信じよう!」
「はい!!」「……うん…」
三人はそれぞれの敵を睨みつけると、素早い動きで敵を翻弄しだした。
しかし敵もそれについてくる。何度みてもこの巨体からは考えられない動きだ。
三人ともあからさまな攻撃はせず、ある時は敵の攻撃を甘んじて受けていることさえもあった。
時折、目で合図をし、なにかタイミングを計っているようだった。
それを何度か繰り返したあと、三人が大きく頷いた。
「いまや!!」
- 70 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:23
-
加護の声とともに高橋のところに集まり、敵に対して一列に並んだ。
なんと敵も同じように一列に並んでいる。加護が狙っていたのはこれだった。
高橋は脚に霊力を集中し、ありったけの力を込めていた。
加護は辻を抱きかかえ自分の足の裏に霊力を込め、防御力をあげた。
地面を蹴り上げ、辻を支えとして身体を地面に平行にした。
辻も刀を構える。
「愛ちゃんっ!!手加減すんなやぁーー!!」
「いきますっ!!」
高橋が全力で加護に蹴りをいれる。
加護と辻が一体となって、もの凄い勢いで敵に向かって飛んでいく。
「うわっ、きっつ〜…。でもこれでいい。
いくでぇ、ののぉ!!」
今度は手に霊力を込めた加護が、辻を押し出す。
高橋と加護をカタパルトに使い、二段に加速した辻の勢いは凄まじい。
そして一列に並んだバケモノのお腹に突っ込んでいった。
三匹のお腹がはちきれそうなほどに伸びる。だが、まだ破れない。
「辻さんッ!!」「ののぉっ!!」
(わたしにはふたりみたいな霊力はない…でも、わたしにだって特別な
力があるはず…眠ってる力があるなら、お願い!!)
「やあああああぁぁぁ!!」
そのとき、辻の刀が光り輝いた。
ピリ…ピリピリ…引き裂かれるような音が鳴る。
ピリピリ…ズバアアァァァーーー!!!
ついにバケモノたちのお腹に大きな穴が開いた。
断末魔の叫び声をあげながらバケモノは倒れた。
そしてついに事切れた。
「あいぼん、愛ちゃん!!やったよ、倒したよ!!」
「やりましたね、辻さん!!」
「やったな、のの。っとこうしてもいられんな。
よっすぃのところに急ごう。」
- 71 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:24
-
――――「よっすぃ!!もう大丈夫やで!!」
「吉澤さん!!」「よっすぃ〜!!」
しかし吉澤からは返事は返ってこない。なにかをうわごとのように
つぶやいている。
「り…ちゃん……ごめ………わ…しも…そこ……い…から……」
「よっすぃ…だめだよ、逝っちゃ!!」
「………………」
「よっすぃ……ごめんね…わたしたちがもっとはやく…」
「………………」
「辻さん、加護さん……とりあえず戻りましょう…
いつまでもこんなところじゃ…吉澤さんと石川さんがかわいそうです……」
降りしきる雨が汗も涙も…すべてを流していった。
- 72 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:25
-
――――天中街北東部・兵糧庫
AM3:00
「あれぇ〜?あのひとたちどこいっちゃったのかな?」
市井と対峙した後藤とわかれ、敵を追う松浦。
いつの間にか兵糧庫まできていた。
「!?」
危うく出ていきそうだったところを思いとどまった。
(いた…侵入者。でもあれは…紺野さんに…美貴たん!?)
藤本と松浦は仲がいい。いや、よかったというべきか。
彼女がまだソロだったころはなにをするにも、いつも一緒にいた。
だが、藤本が後藤に取って代わられたときから、会う機会は減り、
いまでは二人きりで会うことなどなくなってしまった。
「藤本さんに紺野さん。ご苦労様。おかげで侵入もスムーズにできたわ。
人を殺す覚悟はいらなかったようね。」
「殺すだなんて……里田さん、なるべく人を傷つけないようにって、
わたし言ったじゃないですか…」
「わかってるわよ、紺野。でもモーニングのほうが好戦的だったんじゃない?」
「あさみさん……それは…こっちにもいろいろあって……」
(う〜ん…遠いし、雨のせいでよく聞こえないよぉ。でもあの様子だと…
二人が侵入者を導いたような感じよね…美貴たんが……そんな…)
- 73 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:26
-
―――ムズムズ…ムズムズ
(や、やだ…こんなときにクシャミが……が、我慢―――)
「つっ、ぷりっ!!」
「誰!?」
「!!?松浦さん!?」
「亜弥ちゃん…」
「あややや〜、見つかってしまったら仕方ないですね…紺野さん、美貴たん
どういうわけか説明して―――」
カッッ―――その瞬間、空が昼間のように明るくなった。
何本もの光の矢が雨のように降り注ぐ。まるで松浦の『千本矢』のようだ。
しかし、これは霊力によるものではない。自らの力で戦う彼女たちには
不要のもの…科学兵器だ。そのなかに映るひとつの影。よくは見えないが、
平家と石川を殺したモノや市井の腕を使えなくさせたモノによく似ていた。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン――――
ドドドドドドドドドド――――
あたりにあった建物は跡形もなくなくなった。
その真ん中にポツンとある半球のもの。
「た、たすかったぁ……さすがね、紺野さん。」
紺野は手を天にかざしていた。その手からでている
やさしい光はその場にいる全員を包み込んでいる。
紺野の霊帯刀『鏡水』。
「みなさん、大丈夫ですか?」
「いまの…なんなんですかぁ?」
「敵………」
- 74 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:26
-
ぼそりと言うと、藤本は敵にかかっていこうとした。
しかし、すでに視野から敵は消えていた。
「…!?」
敵は瞬間的に地上に降り、紺野たちに向かってくる。
「くっ…『千本矢』ぁ!!」
「『雪崩』っ!!」「『津波』っ!!」
奇妙な偶然か。松浦、あさみ、里田の三人の霊帯刀は中・遠距離型のものである。
三人の霊力があわさって凄まじい威力となっている。
しかし、それでも敵にはあたらない。それどころか敵を見失ってしまった。
「!?松浦さんっ、後ろ!!」
―――ガキッ!!
「亜弥、後ろをとられるなんて甘いわね…。」
「み、美貴たん…」
間一髪のところで藤本が敵の攻撃を受け止めた。
敵は藤本から離れると、何メートルも跳躍し何本ものビームを放つ。
「みなさん、わたしのうしろに!!」
再び紺野が『鏡水』でバリアをはる。
「『千本矢』!!」
「『弧月』」
藤本と松浦は前に跳び、頭上の敵に向かって放つ。
『千本矢』によって逃げ場を奪い、『弧月』が確実にダメージを与える。
バランスを崩した敵は、真っ逆さまに落ちて地面に叩きつけられた。
しかし、それはフェイクで、何事もなかったかのように敵は松浦を斬りつけてきた。
「しまっ…!!」
しかしまたしても藤本が松浦の窮地を救った。
横から敵に体当たりを喰らわせる。
あさみと里田が攻撃をくりだす。
しかし、それにまぎれて敵の姿は見えなくなった。
それきり敵が現れることはなかった。
「…ばか…油断するなって…言ったじゃない……」
「美貴たん!?」
どさりと音をたてて、藤本は地面に倒れた。
わき腹からはおびただしい量の血が流れていた。
「ッ…ドジっ…ちゃった…亜弥の…せいだから…ね……」
- 75 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:27
-
「亜弥…わたしたちは…裏切ったわけじゃないよ…。
誰も殺してない…たぶん…みんなをやったのはいまのやつら……。
信じて…くれる…?」
「…うんっ…うん…」
「つんく…あいつは世界を滅ぼした…。わたしたちさえ…あいつにとっては
邪魔者なんだ…。疑いをかけて…同士討ちさせることが目的…。」
「わたしたちは、それをとめるために三国の生存者に声をかけて
シャッフル同盟を結成したんです。市井さんとともに。
わたしたちが架け橋になって、つんくさんを倒すために。」
「どこにつんくの目が光ってるかわかんないから、ギリギリまで
言えなかったってのはわかるけど、いきなり攻撃されたんじゃね…。
やっぱり悪の手先か、ってなるわよ。市井さんもかなり頭にきてたみたいだし。」
「そんな…それじゃ…わたしたちは……」
「ゲホッゴホッ…あいつの思い通りになんか…させないで…。
あいつの犠牲になった…すべてのひと……たちの…た…めに……」
「美貴たんッ!!」「「「藤本さん!!」」」
「…………」
「みんな…いきましょう…みんなと合流しなきゃ…。
急がないと……ぜんぶ終わってしまう……。」
- 76 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:28
-
――――護廷十番部隊会議室
AM4:00
「新たな犠牲者は…石川と吉澤……。
そして2人と同じ場所に侵入者・平家みちよの遺体も…。
おそらく戦ったんでしょうけど、石川、平家両名の殺害凶器は
いづれも同じものという結果が出たわ。」
「それって……侵入者とは別の第三の存在があるってことですか?」
「オイラの分析では、敵は最低でも3グループあるね。
第一の侵入者、第二の侵入者、これはおそらく別のグループ。
でも警戒令がでたのはその2つのみ…バケモノと
みんなを殺した謎の敵の情報は知らされてない。これから考えられるのは……」
「まさか……内部にも敵が……?」
「そう思いたくはないけどね。」
「そういえば藤本さんとあさ美ちゃんは…?」
「……行方不明よ。ただ、二人が向かった兵糧庫ではかなりの被害が
でてるらしいわ。ついでに言っとくと後藤と松浦も行方不明。」
「なっ…どうなってるんや…?」
そのとき、ギィッと会議室の扉が力なく開く音がした。
扉にもたれかかりぐったりとしている女性。
矢口に潜入捜査を依頼された安倍なつみだった。
「なっち!?」
「えへへ…ただいま、矢口…。さすがのなっちもひとりじゃちょっとキツかったっしょ…」
- 77 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:29
-
◇ ◇ ◇
「なにかが起こっているのはわかってたけど…これは異常っしょ。
急いでイーストに戻らなきゃ…」
一通り三国の状況をみた安倍は、この世界に起こっている異常を報告するために、
捜査を切り上げて戻ることにした。
だが、ほとんど休憩をとってこなかったので、さすがに疲労がたまっていた。
そこで、市街地から離れたところにある、まだノースにいたころに行ったことのあった
自然が多く残っている場所で休憩をとることにした。
(よかった…ここの被害は少ないみたい。昔のままだべさ…)
川に沿って、上流に向かい歩いていくと洞窟があることを知っていた。
昔はよくここにきて遊んだものだった。
洞窟の手前、川のほとりに最近使ったであろう焚き火があった。
偶然にもひとが生活している痕跡を見つけることができた。
(もしかしたら…この中に…?)
◇ ◇ ◇
- 78 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:30
-
「わたしは南から順番に潜入してきたの。でもサウス、ウェストともに
滅ぼされたあとで生存者を見つけることはできなかったの。
もっとよく探せばいたのかもしれないけど…時間もなかったしね。
最後のノースも同じような状況だったんだけど、偶然生存者を見つけて
話を聞くことができたの。」
「貴重な情報ね。どうだったの?」
「うん…ある日突然、バケモノが襲ってきたんだって。
特徴をきいたら、前にイーストを襲ったのと同じだったわ。」
「ちょっとまってよ!ってことは!?」
「うん、あのバケモノは三国どれの生物兵器じゃなく…おそらくイーストのもの…」
「で、でも…うちらもあいつらに襲われたんですよ?」
「バケモノを操っている黒幕は…国なんかに興味はないとしたら…
人類を滅ぼすことが目的なのだとしたら…」
「わたしも高橋の意見に賛成ね。そしてそんなことができるのは
この世界に一人しかいない……」
「「「つんくさん!?」」」
「それからもうひとつの情報…三国の生き残った人たちで
シャッフル同盟という組織を創ったらしいの。その中心的な人物は…
どうやら沙耶香みたい。」
「!?じゃあ、もしかしたら後藤は沙耶香と…」
「その可能性は高いわね。」
「それにね…なっちも襲われたんだ。
そのひとたちから情報をもらって急いで帰らなきゃってときに……」
- 79 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:31
-
◇ ◇ ◇
敵は5体。
4体は気味の悪い仮面をつけ、手足はスラリと長い。
姿形は女性的な印象を受ける。
そしてもう一体は以前天恩街を襲ったバケモノに模様がついているやつだ。
加護の機転でなんとか勝ったあのバケモノだ。
(こいつら、一体…?。)
素早く動き回るが追いきれないスピードではない。
ただ、敵の持つ武器が少々やっかいだ。
1体が鞭、もう2体がマシンガン。
安倍の霊帯刀『連華』よりも攻撃範囲が広い。
残る1体だけが刀。安倍はまずこいつを相手にすることにした。
油断をすればやられる。戦闘モードになった安倍の眼からは
いつものやさしさは消えてしまった。
一直線に刀の敵に向かっていき、せめぎ合いになる。
それでも背後への警戒は怠らない。
(くるっ!?)
ババババババっ!!
2丁のマシンガンが火を噴く。それを察知した安倍は、敵の頭上を飛び越え
敵を盾に使う。味方の弾で蜂の巣にされた敵から仮面がずり落ちた。
その顔の眼にあたるところにはカメラが、そして脳にあたるところには
なにやらチップが埋め込まれているだけで、まるっきり機械であることがわかった。
完全に機能は停止したようだ。
- 80 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:32
-
(やっぱり、こいつら機械…)
安倍は敵の刀を手に取るとマシンガンの敵1体に向かい飛び掛る。
片手の『連華』を回転させてもう1体のマシンガンの弾を防ぎ、鞭が身体をかすめても気にせず
腕を斬りおとす。そして頭に刀を刺し、機能を停止させるとマシンガンを奪い取った。
残り3体。
もう1体のマシンガンを横にとんでかわし、そのまま空中で鞭のとんでくる方向に銃を乱射する。
カチッ、カチッ。弾は撃ちつくしてしまったが鞭を持つ1体は完全に沈黙した。
しかし、背後に例のバケモノに回り込まれた。
「くっ…しまっ――!?」
「グルァァァァ!!」
まるで大木のような腕が安倍に襲い掛かる。ガードをする暇もなくふっとばされた。
が、安倍も『連華』によってバケモノに攻撃をしていた。しかし―――
(なに…!?今の感触…)
吹き飛ばされながらも、たしかに当てたはずだったがまるで手応えもなく
バケモノもピンピンしてこちらに向かってくる。
「ちょっと手強そうだべ…!!
バケモノは後回しだね。」
バケモノの攻撃をかわし、マシンガンの敵へと目をやる。弾をかわしながら
敵に近づいていくと、敵はマシンガンを捨てた。弾切れらしい。
すると突然、拳法の構えをとり、鋭い蹴りを繰り出した。
安倍はすんでのところでしゃがみ、敵の軸足をはらい距離をとる。
(こんなこともできるってかい…?)
そうしている間にもバケモノは攻撃を仕掛けてくる。
両手を握り、腕を振り上げると地面に向かって振り下ろした。
安倍がそれをかわすと地面が割れてめくれあがった。
かわした先には突きと蹴りのラッシュが待っていた。
安倍も負けじと『連華』で応酬する。映画の殺陣のように
激しく素早い動きで、どちらも引かない
だが、敵が蹴りをだしてきたとき三節棍の節がわかれ脚をからめとった。
これが棒術とはちがうところである。安倍は最初からこの一瞬を狙っていた。
(とった!!)
敵をなぎ倒し脚の関節を折る。そしてそのまま敵の中枢であろう頭を
粉々にした。
残り1体。
- 81 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:33
-
緑色の肌に模様の入ったバケモノは何も考えずに突進してくる。
安倍は距離をとり、一息つく。
「こいつは…どうするべか……?仕方ないアレを使うか…」
安倍は『連華』を消し去り、目を瞑って集中しだした。
安倍の身体のまわりを霊気が渦巻く。そして安倍の身体を
すっかり覆ってしまった。その姿はまるで獣のようである。
武装術。安倍はそう呼んでいる。といってもこの姿の安倍をみたものはいない。
ひとりでの訓練中に霊気で身体を覆うことを思いつき、試してみたらできてしまった。
そんな器用さが安倍にはある。しかし疲労度が激しく、とても持続していられなかった。
それ以来、これを使ったことはない。
(もって3分…。いっきにカタをつける!!)
安倍は手に霊気の爪をつくると、バケモノに向かって飛び掛った。
「ガッ!?」
バケモノが安倍の姿を確認することはなかった。
気付くと腕がなくなっていた。安部の霊力の精度とスピードが、
加護たちが3人がかりでやっと成し遂げたことをやってのけた。
そして次の瞬間には安倍の前にバケモノであった肉の塊ができあがった。
「くっ…はぁっ…はぁっ…」
武装術を解いた安倍は、そのままその場に崩れ落ちた。
「うぅ…や…すんでる…ヒマは…ないべさ……」
◇ ◇ ◇
- 82 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:34
-
―――しばしの沈黙。そして矢口が口を開いた。
「カオリ…オイラたちはこれからどうする?」
「天上宮に……つんくさんのところにいくわ。
でもみんなは少し休んでて。カオリひとりでいってくるから。」
「カオリ…危険だよ!!みんなでいこう。それに…いくにしてもカオリだって
休んだほうがいいよ。」
「……そうだね。……わかった。
またなにが起こるかわからないけど…二時間の休憩をとるわ。
みんな、少しでも休んで…」
- 83 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:34
-
――――天中街中央部・三番隊長邸
AM4:30
辻と加護は加護の部屋で一緒に布団にはいっていた。
戦いの場に身をおいていても、まだ幼さの残る彼女たちは
ともにいることで恐怖心を取り払っているようだった。
「みんないなくなってもうたな……のの…。
ののだけはうちのそばからはなれんといてな……」
「……うん、ずっといっしょだよ。」
「のの……そういやそのブレスレット、どうしたん?」
辻の腕には行方不明になる前にはしていなかったブレスレットがつけられていた。
「あ、これはあいぼ…じゃなくて……その…だいじな人にもらったの。」
「だいじな人…?」
「そう、あいぼんと同じくらいだいじな人。これがあったからわたしは
ここにこれたんだよ。あっ……」
(…???ま、いっか…ののらしいっちゃ、ののらしい。)
「少し寝よか?」
「うん…つかれちゃったね。」
「のの…手、つなご…」
「うん…」
- 84 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:35
-
――――天中街中央部・護廷十番部隊総長室玄関
AM4:38
ガチャ…
静かに玄関の扉を開け、飯田がでてきた。
「やっぱりいくんだね、カオリ」
「!!?」
「カオリが頑固なことくらい、この矢口ちゃんはお見通しさ。」
「矢口…」
「カオリ…ひとりで抱え込まないで。オイラも一緒に―――」
「これはわたしの問題なの…やっと……気付いたの。
わたし、間違ってた。モーニングのみんなだけでも助けようなんて間違ってた。
罪が償えるわけじゃないけど…わたしにできるのはこれしかないから……
ごめん、矢口。……『銀河』…」
「えっ!?カオリ?どういうつもりだよ!!罪っていったい―――」
ブゥウン――――光に包まれた矢口はその場から姿を消した。
「矢口…ありがとう……」
- 85 名前:第三話 投稿日:2004/03/27(土) 20:37
-
第三話 了
今回の更新は以上です。
- 86 名前:みっくす 投稿日:2004/03/27(土) 23:02
- なんか謎がいっぱいになってきましたね。
次回も楽しみにしてます。
- 87 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:57
-
10月29日
AM5:09
――――護廷十番部隊会議室
「全員あつまったね…。」
安倍、辻、加護、高橋は矢口によって召集をかけられていた。
護廷十番部隊として十人いた隊長はもはやこの5人と紺野しかいない。
「矢口さん。緊急事態って…それに飯田さんは?」
「詳しく話してる時間はないよ。カオリは…たったひとりでいった…。」
「!!?」
「なんか思いつめてるみたいだったけど……オイラたちもいかなきゃ!」
「カオリ……。矢口、急ごう。」
「うん。みんな、いくよ!!」
- 88 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:57
-
――――天中街北部
AM4:52
「みんな、無事みたいね。」
「市井さん…藤本さんが――――」
「……そう…。でも悲しんでる暇はないわ。藤本のためにも
急がなきゃ…」
シャッフル同盟―市井、紺野、里田、あさみ、アヤカ、ミカ。そして
後藤、松浦。
それぞれの瞳には固い意志が映っていた。
「いちーちゃん…」
「…これで最後にするんだ……」
- 89 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:58
-
―――――――世界を救うなんて大きなことは言えない
ただ……たいせつなひとたちと未来を生きたい
それぞれの想いを胸に秘め、少女たちは向かう
その先にある希望を目指して――――――――
- 90 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:59
-
Wild Times―another story〜第四話 希望の道しるべ〜
AM5:20
「くそっ…オイラたちを中にいれないつもりかよ…」
「こんなところで時間をくうわけにはいかへんのに……」
天上宮の入り口には、あのバケモノの大群が門番のように群がっていた。
しかも辻たちが散々苦戦した模様入りのやつらだ。
「なんとかして切り抜ける!!いくよ、なっち。『双飛燕』っ!!」
矢口の霊帯刀は二本の短剣だ。素早い動きで敵を切りつけ、攻撃力は高くないが
確実にダメージを与える。小柄な矢口ならではの戦法だった。
「わかった。『連華』!!」
安倍も霊帯刀をだし、身構える。
しかし、そのとき後ろから声が聞こえた。
「矢口っ!!」
「さ、沙耶香!?」
- 91 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:59
-
「ここはわたしたちにまかせてみなさんは先へっ!!」
アヤカはそう言うと、ミカ、里田、あさみとともにありったけの
霊力を入り口に向けて放った。バケモノどもはそれをいとも簡単に回避する。
そのおかげで、まるで入り口への光の道ができたようだ。
「いまです!!」
「矢口っ!!いくよ!!」
「わ、わかった。」
「わたしたちもいるわよ!!」
「絶対に…負けられない!!」
「リーダーの仇っ!!」
そう言ってかけつけたのは門番四神の大谷、斉藤、柴田であった。
「ここはわたしたちが絶対に通さない、いってください!!」
「みんな…無事でいてよね……」
- 92 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 21:59
-
AM5:31
天上宮大広間。つんくの玉座の奥に地下研究所への階段があった。
「よし、ここだね。」
「急ご―――!?」
ヒュヒュヒュヒュヒュ――――
ズダダダダダダダ――――
突然、無数の鞭と銃弾が襲い掛かってきた。
その持ち主は仮面をかぶったような顔で、機械的な動きで
こちらに向かってくる。
「こいつら…わたしたちを襲ったやつに似てるね。紺野さん…」
「ええ。でもちょっと違うみたいです。なんていうか…あれほどは
完成されてないっていうか…」
「仕方ないな…つんくをぶっとばしてやりたかったけど、
それは矢口に任せるよ。」
「沙耶香…」
「んあ、やぐっつぁん。安心していっていいよ。わたしたち強いから。」
「矢口さん…みんな…あとはお願いします…」
松浦、紺野、市井、後藤、高橋がそれぞれ敵に向かっていく。
「いこう…」
矢口たちも走り出す。
「…みんな…死ぬなよ……」
- 93 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:00
-
AM5:46
階段を降りると、地下とは思えぬほどの割りと広い廊下がはしっていた。
「きっとつんくはこの奥に―――ん?」
そこには姿は変わり果てているが、確かに昔ともに過ごしたことのある
顔が三人いた。だが、彼女たちは5年前の戦争で死んだはずである。
「T&C部隊……!?そ…んな…どうして…?」
「やっぱり…見間違いやなかったか…」
「あっちゃん!?」
「くっ…こないな姿にされて…何人ものひと殺して…
そんなことアンタらが願うわけないやんな…。
思えばうちが運良く生き残ったんはあんたらを救い出すためだったのかもしれんな…。」
「稲葉さん…」
「みんな…はよいき。つんくのアホンダラをぶっつぶしてきてや…」
「ひとりじゃ無理れすよ!!」
「あっちゃんひとりにはさせないわ。」
「圭ちゃん!!それに…裕ちゃん!!」
別ルートからきた中澤と保田がそこにいた。
矢口の目には安堵の光が映っている。
「エ…?どうして…裕ちゃんが……」
安倍は驚きを隠せない。処刑されたはずの、モーニング結成当初からの仲間が
そこに立っているのだ。他のメンバーも何が起こったのかわからないという表情をしている。
「みんな話はあとや。あっちゃん大丈夫か?」
「ねぇさん…うちもこいつらと同じT&C部隊やったんやで…?大丈夫や…」
「圭坊、頼むで…」
「まかせてよ。」
「よし、矢口。」
「うん、みんな…いくよ。あっちゃん…圭ちゃん…ありがとう…」
- 94 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:00
-
――――天上宮・地下研究所
AM5:37
ウィィィィン――――カッカッカッカッ
「きたか…飯田。まっとったで。」
部屋のちょうど中央あたり、仰々しい装置に囲まれてつんくが椅子に座っていた。
「つんくさん…約束は…」
「ああ、わかっとる。」
ピッ―――ウィィィン
床からカプセルがでてきた。その中には赤ん坊がいた。
その子は石黒の赤ん坊であった。つんくはその子を人質にとり、
飯田、石黒、福田の三人を利用した。
「よく眠っとるやろ?オレも鬼じゃあないからな。
お前らだけは助けてやるで。みんなで新しい世界へいこうやないか。」
「……………」
「どないした?飯田…」
「……つんくさん…あなたの計画はわたしが阻止します。」
「カオリ…」
「ふん、いまさらなにを。」
「わたしは間違っていました。自分たちだけ助かろうだなんて…
あの楽しかった日々はもう戻ってこない。助けたかった人たちまで…
殺してしまった……」
「さよか…所詮お前にはオレの気高い理想はわからんかったいうことやな。
なら、お前もほかのやつらとともに死ねばいい。」
- 95 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:02
-
ウィィィィン――――ダダダダダダっ
矢口、安倍、加護、辻、中澤の5人が入ってきた。
矢口は飯田の姿を目にして少し安心したが、飯田と目が合ったと同時にわかってしまった。
飯田に近づきゆっくりと口を開く。
「カオリ…やっぱりつんくの計画加担者だったんだね。それで罪滅ぼしなんて…。
でもね、それを誰も責めたりしないよ。カオリはオイラたちを護ろうとしてくれたんだよね…。」
「矢口……。」
二人にはもう言葉はいらなかった。それだけの時間をともに過ごしてきた。
つんくのそばにいる石黒と福田をみて、さすがの中澤も驚きを隠せない。
「あやっぺ…明日香…なんで……?」
「裕ちゃん…ごめん……。」
- 96 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:02
-
そのやりとりを見ていたつんくはニタニタとした嫌な笑みを浮かべ、
芝居じみた口調でしゃべりはじめた。
「これはこれは…十番部隊の生き残り諸君。それに中澤。正直、お前らがここまでくるのは
計算外やったな。」
「わたしが生きてることに驚かんのですね?」
「お前が生きてることは知っとったで。実を言うとな、お前もオレの計画の一端を担っててん。
オレを殺しにくることは目に見えていたからな。それを逆に利用させてもらったで。」
「…どういうことですかね?」
「お前らがモーニングの連中を殺してると思わせて戦わせておけば、オレが苦労することもなく
邪魔者を減らせるっちゅうこっちゃ。新垣の件はその最たる例やな。」
「そうか…吉澤が言ってたのはそういうことか…」
「ご丁寧に霊力を失わせて寝かせておいたみたいやなぁ。T&Cをいかせるまでも
なかったわ。」
「くっ……」
「そして他の国のやつらとなんや企ててた藤本と紺野。あいつらに疑いをかけるのも
おもしろいようにうまくいったしな。ただ予想外だったんは小川や。結果を見てみれば、
あそこで殺しておいて正解だったが、当初は予定してなかったんや。あいつの能力を
知らなかったからな。」
「???」
「その様子やと誰も知らんかったようやな。あいつの隠された力、それは予知能力や。
あいつはオレの計画をすべて知っていた。だがそれを誰に打ち明けるでもなく、
たったひとりで止めようとした。わたしがみんなを護る、言うてな。」
「小川……そうだったのか…」
矢口の顔が苦痛で歪む。
「本当ならお前らはお互いを疑い、憎しみあい、絶望のうちに死んでいくはずやった。
オレはお前らをみくびりすぎてたらしい。まさかここまでくるとはな…。
本当ならここにはもうオレと石黒、飯田、福田しか おらんはずやった…。
オレの計画を狂わせたお前らに敬意を表して、少し話をしてやろか。何も知らずに死ぬのは面白くないやろ?」
「散々人を殺しておいて…いまさら!!」
「まぁそう言うな。さて、どこから話そか―――」
- 97 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:03
-
「―――まずオレの本当の目的やけどな、お前らたぶんオレがただこの世界を
滅ぼしたいだけやと思ってるやろ?」
「違うとでもいうのかよ!?」
思わず身を乗り出して矢口が叫ぶ。
矢口はつんくを目の前にしていつもの冷静さを完全に欠いていた。
「すこしちゃうなぁ。オレがいらんと思うのは人間だけや。だからかつての仲間さえも利用し、
最後には実験台に使った。オレは木も花も、鳥も虫も、つまり人間以外の動植物は全部好きなんや。
進化しすぎた人間は破壊の限りをつくした。オレにはそれが許せんかった。」
「あんただって同じことしてるやんか!!」
加護も怒りをあらわにしている。
辻が加護の服の裾をぎゅっとにぎった。
「そやな…だがそれは仕方なかった。理想の世界を創るには多少の犠牲はやむをえん。
断腸の思いでやったことや。」
「……………」
「そしてな、これはお前ら驚くで?オレの計画は100年以上前から進められていた。」
「!!!?」
そういってつんくは着ていた服を脱ぎ去り、自らの身体を剥き出しにした。
そこには皮も肉も骨すらもない。そう機械。ヒトの身体のかたちに造られた
冷たい鉄の塊があるだけであった。
- 98 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:04
-
「オレは人間を滅ぼすために人間であることを捨てた。唯一の名残は脳みそだけや。
しかし、それすらも本当のオレの脳ではない。オリジナルつんくの脳のコピーや。
体細胞からクローンを造ることもできたがな。それではオレのキライな人間のままや。
この技術は他にも活かされてんで。お前らも闘ったやろ?かつてのT&C部隊と。
そこのカプセルに入ったのがあいつらの脳や。脳と身体を分離することでやつらが自我を持って
動くことはない。さらにオレの命令だけに従うように脳をいじくってる。だが思考はAIなんか
じゃないから直線的な動きはせずに、むしろ人間以上に柔軟な動きが可能になっとる。」
「許せない…」
怒りに奥歯をかみ締めながら安倍が呟いた。
「まぁせっかくやから最後まで聞いとけ。ところでな、この世界は人口がここ数十年で激減したのは
知ってるな。なかでも男はほとんどいなくなった。Y染色体の弱体化とかウィルスだとかいわれてる
けどな、これは遺伝子操作で簡単に女性だけを創りだすことができる。男はやっかいやからな。
とっとと消してしまいたかった。何人かに一人は男が生まれることもあるけどな。
そういうのはすぐに遺伝子の組み換えで破壊本能を極限まで高めたバケモン―――ヘルビーストって呼んでるがな、
それになるはずなんやけどなんかの間違いで生き残るやつもおる。いまの世界に生きてる男は全員その類や。
石黒の旦那みたいにな。」
「だが、遺伝子操作で生まれたやつらの中には突然変異がいたんや。お前らのような強力な霊力を
もった連中や。これは滅ぼされまいとする人間の抵抗のように思えた。だからオレらはそれを逆に
利用することにした。5年前の戦争はそれや。霊力をもった連中を戦わせるために世界を分断した。
科学にものいわせて一気に滅ぼさなかったのは、憎悪や絶望――負の感情を抱かせて殺してやりたかったからや。
ただ、嬉しい誤算もあった。飯田や福田の能力や。生物科学は極めたといっていいが時間と空間に関しては
なかなか難しくてな。」
- 99 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:05
-
「???」
「人類を世界から一掃するためには自然も破壊しなければならない。自然が元通りになるには
長い年月がかかる。そこで考えたのが人類が生まれる前の美しい星を、この時間軸に持ってくると
いうものやった。しかし、石黒の理論は素晴らしいものだったがうまくいかんくてな。
行き詰ったところに現れたのがこの二人っちゅうこっちゃ。 空間を操る飯田の『銀河』、
時間を操る福田の『時流』。これをうまくシンクロさせて空間と時間を 超え得るエネルギーを造り出し、
オレらのテクノロジーで制御する。オカルトと科学のみごとなコラボレーションや。
ただ、対象が星そのものやからな。なかなか骨が折れたが、そこはお得意の生物科学を利用して、
装置自体を自己増殖させて星全体に根を張った。あとはこの装置を作動させ、過去の美しい地球をイメージするだけや。」
「難しい話はようわからんけどな、そんなたいそうなモンがつくれんやったら、あんたひとりで
別の世界にいったほうが早いんちゃうか?」
「わかっとらんな、中澤よ。オレが愛したのはあくまでもこの地球なんや。確かにお前の言うとおり、
この装置を使えば別の世界―パラレルワールドにいくこともできる。事実、実験段階で、少しばかり
手を加えた貝に高性能の小型カメラをつけて飛ばした。そいつはどうやら太古の昔にとんでしまったようだが…
まぁ時間移動ができる証明にはなったっちゅうわけや。」
「でもな…パラレルワールドはオレのいた地球じゃあなくなってしまう。
オレの護るべき世界はこの世界や………。さて、少し話すぎたかな。長年の夢が叶うときやからな。
柄にもなく嬉しくなってもうた。もう終いや。いや、始りといったほうがいいか―――」
- 100 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:05
-
ウィィィィン――――ダダダダダダっ
突然、扉が開き研究所内に人が駆け込んできた。
「みんな!!」
そこには後藤、高橋、松浦、柴田、ミカ、里田、保田の7人が立っていた。
「ばかな……生物科学のすべてをつぎ込んで生まれたあのバケモンどもを…。」
「犠牲は大きかったけどね…でも、みんな最期は同じことを言ってくれた。
私たちを信じてるって…。平和な世界を取り戻してって…。約束したんだ、いちーちゃんと!」
「信田さんも、小湊さんも、ルルも…泣いてた。あっちゃんと戦いながら…」
「涙やと…?あいつらはもう人間やなかったんや。なのに…」
「つんくさん…人間は無限の可能性を秘めているんです。確かに人間は汚い部分を持ってます。
でも…決してそれだけじゃないはずです。たとえ間違ってしまっても、そこから正しい方向へ
修正することも、よりよくすることもできるんです。」
「……………」
「うちらは世界を変えていけたはずや。そう信じる。うちらを信じてくれた仲間たちのために!」
「ふ、ふふふ。ははははは。変えれるやと?人間が。」
「人間はか弱い存在だけど、でも…強くもなれるんだ!!」
つんくはしばらく下を向き黙っていたが、低い声で静かに笑い出した。
その笑いは彼女たちを嘲笑していつるかのようだった。
「……おもしろい。なら、オレにそれを証明してみせろ。オレに未来をみせてみろ!!」
そう言うと、つんくはおもむろに立ち上がり歩き出した。
全員が身構えるがつんくからは殺気もなにも感じない。
カツっカツっ、という靴の音だけが響き渡る。
そのままつんくは研究所をあとにした。
「オレは…星を救い……真の支配者になるんや……」
- 101 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:06
-
「みんな!!この装置は使用するもののイメージを汲み取って、そのイメージに近い空間と時間を
探し出す装置なの。でもヘタをすれば私たちがいる世界とはまったく違う世界になってしまう
かもしれない。チャンスは一度きり。やり直しはきかないわ。」
「ごほっごほっ…みんな心をひとつにして…。私たちが平和に暮らす世界を取り戻しましょう。」
誰からということもなく、彼女たちは互いの手をつなぎ祈った。
「それじゃあ…いくよ…」
飯田が装置のスイッチをいれると、あたりは柔らかな光に包まれた。
- 102 名前:第四話 投稿日:2004/04/03(土) 22:07
-
「あさみ…」
「アヤカ…」
「村田さん…斉藤さん…大谷さん…」
「美貴たん…」
「まこっちゃん…あさ美ちゃん…理沙ちゃん…」
「あっちゃん…」
「いちーちゃん…」
「みっちゃん…」
「石川…」
「よっすぃ…」
「あいぼん…だいじょうぶだよ。またすぐに会える…わたしはいなくなっても…
辻希美はいつも…どこでもあいぼんのそばにいるから。……さよなら………
ううん、またね…」
辻があの笑顔をみせた。しかし加護には、その目にどこか寂しさを映しているような気が
してならなかった。
「のの…?」
彼女たちの輪がよりいっそう強く光り輝いて、すべてを包み込んだ。
そして――――――――
- 103 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:08
-
Wild Times-another story-エピローグ
―――――夢を見た……
正しいものが何なのか見失いながらも、
自分たちを信じ続けようとした人たちの夢を―――――――――――
- 104 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:08
-
さわやかに晴れわたる青空。
太陽の柔らかな光が部屋の窓から降り注ぐ。
こんな清々しい日の、もうお昼だというのに寝ている女性がひとり。
「んあ〜…むにゃむにゃ…」
ドンドンドンドンっ、と部屋の戸をたたく音がする。
「ごとぉ〜、はいるよ?」
「後藤さ〜ん、こんにちわ〜。」
「まったく…はやくしてよね。」
3人の女性が部屋にはいってくる。
市井と松浦と…なんと藤本までがそこにいた。
「んんん…」
後藤はなおも起きずに寝返りをうつ。
「…寝てますねぇ〜。」
「ごとーー!!起きろ起きろ起きろ〜!!」
「は〜あ、いっつも寝てるじゃない。」
市井に激しく揺さぶられ、とうとう後藤も目を覚ます。
「ふあああ…おふぁよ、みんな。でもなんでわたしの部屋にいんの?」
「あぁ!?今日みんなで買い物いこー、って言ったのは後藤だろ?」
「ちゃんと起きてますかぁ?」
「いいかげんにしてよね…」
「ああ〜、そうだったねぇ。それじゃあちょっと支度するから待ってて?
シャワー浴びてぇ、ご飯食べてぇ、あっ見たいワイドショーが――――」
「「「どこがちょっとだぁ〜!!」」」
結局買い物は中止。後藤の家でだらだらと過ごすことに決まった。
- 105 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:08
-
「ほらぁー、そこ!!ダラダラしない!!もっとキビキビ踊る!!」
「「「「はぁ〜い…」」」」
村田、斉藤、大谷、柴田の4人は踊っていた。正確には稲葉に踊らされていた。
先週は民謡を歌っていた。先々週は跳び箱やマット運動をしていた。その前の週は
中国語を話していた…。
なぜこんなことになってしまったかというと、稲葉、小湊。信田、ルルの4人が
村田たちには個性がないといって、個性を磨く特訓をしようと言い出したからだ。
そうして一週間交代でいろんなことをやろうということになった。
彼女たちにはいい迷惑である。
「柴田ぁ!!違う!そこはもっと、こう…」
「は、はいっ!」
「村田、恥ずかしさを捨てろっ!!もっとはじけて!」
「う、はあい…」
「大谷、そこで飛んで一回転!!」
「ええ!?」
「斉藤、化粧がケバイ!!」
「!!?」
そうして彼女たちの一日は過ぎていく…
- 106 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:09
-
「やぐち〜、ちゅーしよ、ちゅー。」
「ちょ、裕ちゃんやめてよ。」
オトナな彼女たちは酒盛りをしていた。中澤はもう完全にできあがってるらしい。
「いいやんかぁ、減るもんじゃなしに。」
「カオリ!たすけ…」
飯田はビールの缶を両手に持ちあさっての方を向いている。
「カオリ!!カオリ!!へるぷみ〜…」
「シッ、いま大事なとこなの…。地球が滅びるかどうかの瀬戸際なのよ!」
「うそつけよ!!なっち〜」
「ん?矢口もこのお肉食べたいの?だ〜め、あげないよ〜、きゃははは。」
安倍はさっきからひたすら食べてばかりいた。
「…太るぞ……」
「なんか言った!?」
安倍の目がどんよりと黄色く光った気がしたので矢口はびびってしまった。
「ほ〜れ矢口。こちょこちょこちょ…」
「きゃははは、や、やめてぇ〜…」
さっきからずっとこんな調子だ。
しかし別の方に目を向けるとやけに暗い雰囲気を醸し出していた。
「うう……わたしは世界一不幸な女や〜」
「みっちゃん…いい子なのにね…」
「わかってくれるかぁ、圭ちゃん…」
「わたしだって、もっと…もっと…うわ〜ん……」
こっちは泣き上戸だ…
今宵も酔っ払いたちの宴は止まらない。
- 107 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:09
-
「「「はっぴ〜ば〜すでぃ、まこっちゃん!!」」」
「みんな…ありがとう。」
今日は小川の誕生日だった。高橋、紺野、新垣はささやかながら
4人でパーティをひらいた。
「さあ、ロウソクの火を消すのよ!」
「うん!」
目一杯息を吸い込んでケーキにささったロウソクの火を消した。
パンパンっ、っとクラッカーの音が鳴り響く。
「おめでとぉ〜!」
「それじゃあ早速プレゼントです。じゃじゃじゃじゃ〜ん。」
そう言ってまず紺野がかわいらしくラッピングされた袋を差し出す。
「開けてみてっ」
「うん。」
紺野のプレゼントは『温泉の元』だった。袋のかわいさとは裏腹に妙にババくさい。
「まこっちゃんは腰が弱いから、それでよ〜く疲れを癒してね。」
「あ、アリガト…」
「むう…やるわね、あさ美ちゃん。じゃあ次はわたし!!」
高橋は小川にあげる前に自分で袋から出してしまった。
とりいだしまするは…宝塚のブロマイド。それはあんたがもらって嬉しいモンだろう。
「ああ…宝塚…なんてステキなのかしら。わたしもあんなふうにカッコよくなりたいなぁ…」
目を輝かせてうっとりしている高橋につっこめる人などいなかった。
「へ、部屋に飾っておくよ。…」
「うん!!」
最後は新垣だがなにやら申し訳なさそうな表情をしている。
「あ、あの…はい!!これ…」
と言って手渡したのは『マッサージしてあげる券』。
あふれんばかりの手作り感…というか完全に手抜きだった。
「理沙ちゃん…忘れてたんだね…」
紺野がいきなり核心をついた。
「うっ…いや…その…。ごめんね、まこっちゃん……。」
「いいよいいよ。みんなの気持ちだけで十分だよ?」
どこか遠まわしに微妙なプレゼントのカヴァーをしているような気がするのは
きっと気のせいだろう。
「さあ、今日はうんと騒いじゃおー!!」
- 108 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:10
-
「う”〜、さむ〜。」
「かごちゃ〜ん、さ〜む〜い〜よ〜。」
「よっすぃも梨香ちゃんも若いんだからしゃきっとせんと!ののを見てみい。」
「花火♪花火♪」
吉澤、石川、加護、辻の4人は加護の提案で、浜辺に花火をしにきていた。
「っていうかさ、いま何月だと思ってんの?10月だよ、10月。
花火の時期なんかとっくに終わってんの!」
「甘い…甘いで、よっすぃ…。
たとえ明日、世界が滅びようともわたしは林檎の木を植える…。」
「?加護ちゃん…何ソレ?」
「む、昔の偉い人が言ったんや。つまり、冬に花火やったっておかしくも
なんともないやんか。」
「いや、訳わかんないし…」
「みんな〜、はやく花火やろ〜よ〜。」
「ほら、ののが待っとる。」
「しょ〜がないな〜。」
- 109 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:11
-
シュー、バチバチバチ…
白い火花が黄色になり、オレンジになり、赤になりやがて勢いをなくしていく。
「わー、きれい…」
辻の目がキラキラと輝いている。
「悪くないやろ?よっすぃ。」
「そりゃ、花火はきれいだけどさ…。」
花火をやりながらも、石川だけはよからぬことを考えていた。
(このシチュエーション…よっすぃともっと仲良くなるチャンスよ。
辻ちゃんと加護ちゃんが邪魔だけど…。うん、やるしかないわ!)
「よっすぃ、さむ〜い。」
石川は吉澤に寄りかかっていった。んが、
「あ、ドラゴンあるじゃん。ドラゴンやろっと。」
と、吉澤にあっけなくかわされてしまった。ゴロンっと石川が砂の上に転がる。
(う〜、負けないもん…)
「梨香ちゃん、なにしてんの?」
辻が顔を覗き込んできた。無性に恥ずかしくなって
石川の顔は真っ赤になっているが、暗くてわからないのが幸いだった。
「いっくれすよ〜」
辻が手にしているのは16発の火の玉が噴出する『連弾』。
火をつけると早速火の玉が飛び出す。
「おお〜かっけ〜。」
「すごいね〜、よっすぃ。」
そう言って腕を組もうとするが、間から加護がでてきた。
(う〜加護ちゃんのばかぁ…)
「いいでぇ、のの!!」
「え?呼んだ?」
「「「!!?こっち向くなぁ〜!!」」」
加護が辻の名前を呼んだせいで、辻が振り返ってしまった。
筒からはまだ火の玉が出ているというのに…
一瞬で辺りは騒然となった。
- 110 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:12
-
「あ〜、ひどい目にあった…。」
「ほんと…なんかすごい疲れちゃった…あ、じゃあわたしたちこっちだから。」
「はぁ…またな…。」
「じゃあねぇ。」
吉澤、石川と別れたあと、辻と加護は近くにある公園にいった。
「花火、すこしあまってるからやっちゃおうか?」
「うん、線香花火やろう。のの。」
「どっちのが長いか競争ね?」
ふたりは同時に火をつけた。
先っぽがみるみるうちに丸くなり、細い光の線が儚くも綺麗に映る。
パチパチパチ…ぽと…
辻の方が先に落ちてしまった。
続いて加護のも落ちる。
「あ〜あ、まけちゃった…。あいぼん、もういっかいやろ?」
「うん……。」
「全部なくなっちゃったね。」
「うん……。」
「あいぼん…どうしたの?さっきからへんだよ。」
「……なんかまだ信じられなくて…。これは夢やないかって…。
霊力も使えなくなったけど、目が覚めたらまた戦わなきゃならないんじゃないかって…。」
「きっとね、もういらないんだよ。ほかのものをこわすちからなんて…。」
そう言って辻は加護のそばに寄り、手を握った。
手には寒さからくるものだけではないであろう震えがあった。
辻はやさしくその手を包み込んだ。
「あいぼん…。わたしね、ずっと真っ暗なところにいたような気がするの。
なにも見えなくて、なにも聞こえなくて…すごくこわかった…。
だからわたしはあいぼんのそばにいてあげようと思ったの。
ずっと…あいぼんといっしょにいるよ。」
「のの……。うちもずっとののといっしょや…。」
- 111 名前:エピローグ 投稿日:2004/04/03(土) 22:12
-
夢と現実の違いとはなんなのだろうか。
然したる違いなどはないのかもしれない。
夢でも現実でも、彼女たちがそこで生きていることに間違いはないのだから。
少女たちが戦うことのない世界。
人々の笑顔があふれる世界。
世界は希望で満ち溢れている。
真っ白な鳩が青く澄んだ大空を羽ばたいていった。
Wild Times-another story
END
- 112 名前:addition 投稿日:2004/04/03(土) 22:13
-
「それじゃあ色々とありがとうごさいました。」
八重歯を光らせ、にこりと笑って去っていく一人の少女。
石黒と福田がよく知る少女に瓜二つだが、彼女はその子よりもどことなく大人びていた。
その姿が見えなくなってもまだ石黒と福田は立ち尽くしたままだ。
「あやっぺ……」
「明日香…私も信じられないけど……信じざるをえないわね。
あの子のことを否定すれば、いまの私たちはなんなのってことになるし。」
「あの子をみていて思ったんだけど……
もしかしたらあのとき私たちといっしょにいたのって…。」
「ええ、私も同じことを考えていたわ。なんの間違いでかはわからないけど、
あの子はきっと私たちの過去へいってしまうのね。」
「あの子の言ってたことが本当なら……私たちにも責任は……。
私たちにできることはもう何もないの?」
「いまの私たちにはあの世界のような技術もないし、
明日香や圭織の能力も失われてしまった…。
持ってる知識は全部渡したし…残念ながらこれ以上は介入のしようがないわ……。」
石黒と福田は悔しそうな、そして悲しそうな表情で、
少女が歩いていった道を見つめ続けた。
- 113 名前:ざんぎ 投稿日:2004/04/03(土) 22:22
-
>>86 みくっす様
いつもレスありがとうございます。
これからもお付き合いいただけるとありがたいです。
- 114 名前:ざんぎ 投稿日:2004/04/03(土) 22:25
-
それにしても自分の文才のなさには恐れ入りますね…
よく書こうなどと思ったもんだ。
なんだ、第四話の展開の速さは…。はぁ……
でもまぁ、これで次のTimeにいくことができます。
んが、1ヶ月ほど更新はできないと思いますので、
苦し紛れの予告編を…
- 115 名前:ざんぎ 投稿日:2004/04/03(土) 22:26
-
どこにでもあるような、至って普通の学校・朝露女子高等学校、通称朝女。
しかし・・・・・・・・・・
通っている生徒はちょっとだけ普通じゃないかもしれない。
「必殺・加護スペシャル!!」
「ギャラクティカ・クラァシュッ!!」
「辻ちゃんデス・パーンチ!!」
「やめて!私のために争わないで!!」
「「ぎゃあぁぁぁ〜〜〜!!」」
これは格闘小説・・・ではない!!
勤務している教師陣も…ちょっとだけ普通じゃないかもしれない。
「仕方ないわ…こうなったら奥の手よ。」
「覚えておきなさい。いずれ私が世界を変えるかもしれないわよ?」
「保健室のおねーさんやからって怪我を看ると思ったら大間違いやよ?」
「うふっ、私もまだまだイケるわね…チュっ」
「死にたくなかったら言うこと聞きなさい。」
「はぁ…めんど……」
彼女たちは本当に先生なのだろうか・・・・・
そして朝女の永遠のライバル?・ハロー女子学園。
「心の友と書いて心友と呼んであげてもよくってよ?」
「んあ〜、くやし〜〜〜」
「OH!!ジャパニーズハラキリデスカ?」
「いいね、その顔。人が苦しんでるのを見るのは最高だわ。」
「あややや〜、こんなのありですか〜?」
「誰がババアやねん。クソガキ。」
バラエティにとんだ性格のようで・・・・・・
「作者の力量不足かしら…?」
「…また端折りやがったわね、この作者……。」
嗚呼、自分のキャラに罵倒される作者(汗っ
バレー・友情・方向音痴・ぽじてぃぶ・暗黒の時代・優勝
ノーベル賞・テニス・ひったくり・因縁・タイムマシン
熱戦・烈戦・超激戦・・・・・・?
※注 これはWild Timesであり青春学園コメディでもあるのです!!!!!!!!
Wild Times-ideal story
5月上旬 更新予定
乞うご期待!!っていうか読んでやって下さい、ホントに(切実)
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/13(日) 20:51
- 今6月上旬なわけだが?
- 117 名前:ざんぎ 投稿日:2004/06/15(火) 20:55
- _| ̄|○
どうぞ私を大嘘つきと罵って下さい…
PCの調子が悪かったり、学校が忙しかったりで…
今後できないことは宣言いたしません。
なんとか続けたいとは思ってますので。
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