tips
- 1 名前:R 投稿日:2004/03/01(月) 01:19
- 短編連作みたいなものを書いていく予定です。
よかったらお付き合いください。
恋愛要素アリ、コメディーアリ、ホラーアリ(?)のナンでもアリ。
まず最初は今話題の親分とその舎弟さんの微妙な関係のお話、、、の予定。
- 2 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:16
- 三大欲、即ちそれ「食欲」「睡眠欲」「性欲」
どれが一番て言ったら、これ、今間違いなく「睡眠」他ならない。
つまり、要は眠い、ソコハカトナク眠い。
「よ〜しざわさあん」
地方のコンサートツアーそれも立て続けに五連チャンときて悲鳴を上げるを通り
越して、悲鳴をあげる事も面倒になった無気力な体に、間伸びた声。オマケに重
力加担付きが圧し掛かる。
「重いよ」
ピシャリ一言。
「えーひどい〜、ひどいひどい〜」
離れるどころか逆にしっかりとしがみ付いて、ジタバタと暴れるものだから益々
重力増。
「更にきもい」
「うあー、また言ったあ、またきもいって言ったあ。大体どこがきもいって言う
んですかあ?ねー、ねー吉澤さんってば」
下唇を噛み締めてカラダをくねらせる様子にホウとひとつため息。だから、それ、
それです。キモイのは。
- 3 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:18
- 「あー、もう、なに?麻琴」
ついさっきまで大人しく隣で雑誌を読んでいたかと思いきや、一転じゃれ付いて
くる自称子分もどき舎弟もどきは、ようやく目を向けると案の定半開きの口とお
世辞にも締りがあるとはいえない笑みを浮かべてこちらを覗き込む。
「えへへぇ」
にかーっと笑うと更に擦り寄ってくる。だから、きもいっちゅうに。
もう一度「キモい」と言いそうになるものの、話が進まなくなりそうだから、諦
めて彼女の示す方向に視線を合わせる。
「お腹すきません?ラーメン行きましょうよ、ラーメン!」
ローカル情報誌のカラーページで、赤と黄色でカラフルに彩られた一角。いかに
も「頑固」な親父とチャーシュー埋め尽くされた丼が映る。
「やっぱ、旅先といえばご当地ラーメンですよねえ」
開きっぱなしの口から今にも涎が流れ落ちるんじゃないかという程表情を緩ませ
て、空を仰ぐ。想像するまでも無くその脳裏にはラーメンをずず、とすするシー
ン他ならない。
- 4 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:19
- 「・・・イッテラッシャイ」
「え、行かないんですかぁ。。。美味しいのに、絶対…」
誘う前から既に行く気満々だったらしくブーブーと不満を漏らす。
理由その一:繰り返すけど、とにかく眠い。
理由その二:ごっついラーメンを食べるほど空腹でもない
理由その三:写真集を控え密かにダイエット中・・・
とまあそんな所。盛りだくさん。
ただ、そのどれもこれもが敢え無く反論されそうな予感が掠めて
「んー、行ってらっしゃーい」
行かないという言葉を言わずして提案を退ける。
「むー、あ、わかった!あれですね、デートですねっ、駄目ですよ、アイドル
はあ、恋愛禁止です、秘密の恋!禁断の恋!うー恥ずかししいねえっ」
「・・・・・・あほか」
- 5 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:21
- 東京、あるいは関東圏ならまだしも生まれてこの方一ヶ月といたことの無い土地
に来てて何を言ってるのやら。もちろん本人も軽口のつもりでいっているのは承
知しているから軽く受け流す。
「ほら、ウチはいいからこんこんとでも行っておいで。こんのー」
恐らくは亀井あたりから首尾よく手に入れた煎餅をポリポリと齧っている紺野に
話を振る。
それで。
本当に行く気が無いのを悟った麻琴は、ほんの少し表情を曇らせた、そんな気が
したけれど。
輪に加わってきた紺野は、幸い煎餅を齧ったくらいのものでは納まりが付かない
ほど空腹だったようで、目の前で実にスムーズに話は纏まる。お望みどおり、ラ
ーメンを食べに行くことになった二人の姿を見送る。
そうして、ようやく静寂と安息を手に入れた私は、早々に引き上げて自分用にあ
てがわれたホテルのベッドに身を沈める。深く、深く。
- 6 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:22
- ---------------------------------------------------------
「……腹減った」
ベッドサイドに放り投げていた携帯のデジタルを見ると結構眠ったつもりだった
けれど3時間ほどの経過を示していた。どうやらなんとも現金な私の体はある程
度の「睡眠欲」を満たすと、それでは次にと食欲を刺激して目を覚まさせたらしい。というと格好いい気もしないでもないけどぶっちゃけ腹が減った。
誤魔化して無理矢理にも寝てしまおうと試みるも敢え無く腹の虫に敗退する。
さて、どうしたものか。
とりあえずは、と。麻琴が楽屋に忘れていった情報誌をパラパラと捲る。
まったく、アイツときたらお目当てのラーメン屋が載っている雑誌をモノの見事
に置いていって。目的にちゃんと着けたんだろうか。もっとも、あの二人なら何
処でも美味しく食べてるんだろうけど。
やっぱ、一緒に行ってやればよかったかな。
一瞬だけ見せた寂しそうな表情がふと脳裏に浮かぶ。
ラーメン特集の次には、春のオススメコンビニデザート特集。
コンビニ、コンビニねえ。
- 7 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:23
- 「……ふむ」
ページを開いたまま携帯電話を手に取る。呼出音3回目で少々眠たげなとぼけた
声が「もしもしぃ」と響く。
「ういーっす」
「あ、吉澤さん?どしたんですかあ?」
「ああ、ちょっとねえ」
架けてはみたものの、自分のこの上ないご都合主義に今更気付き躊躇する。
まあぶっちゃけ夜中のコンビニに一人で夜食買いに行くのが単純に嫌だったわ
けで。だったら誰か巻き添えにするべと思ったわけで。
相手の誘いは速攻断っておいたくせに、おまけに現在明らかにお休みモードな
訳で。
それでも。
『さっきは悪かったな』とか『休んでる所悪いんだけどさ』などという殊勝な
台詞は発せられず。
- 8 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:24
- 「なんかさあ、甘いもん食べたくない?」
「甘いもんですかあ?あー」
いつもと変わらないのほほんとした声。
「ホテル前のさ、コンビニあるじゃん?さくら風味の新作パフェ出てるって」
「あ!知ってます知ってます!雑誌で見ましたよ」
そりゃそうだ、キミが持ってたものなんだから。でもって、そっちの誘いは断
っておきながらしゃあしゃあと電話してるんだから。嫌味の一つくらい言って
も良さそうなものなのに。
「あー、食べたくなってきたあ、吉澤さんっ行きましょコンビニ!行きましょ
うよ!」
屈託無くそういう麻琴に思わず頬が緩む。
「しょうがないなあ、行くかあ」
「やたっ、用意してすぐお迎え行きますね」
通話終了のボタンを押した後に、言葉通りに今にもバタバタと駆け込んで来る姿
が想像できて苦笑する。
- 9 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:25
- しょうがないなあ。
うん、そう、しょうがない。
奮発して好きなものでも奢ってやるか。
ね。
- 10 名前:a pupil's profile 投稿日:2004/03/07(日) 16:27
-
------fin-----
- 11 名前:R 投稿日:2004/03/07(日) 16:29
- こんな感じで、短いのをパラパラと。
当方、どちらかというとマイナー推奨。
ですが、続けてもう一つは王道系で。
- 12 名前:限界ラバーズ 投稿日:2004/03/07(日) 16:32
- 「やばいよう、もうほんとやばい」
いつも通りといえばいつも通り、突然といえば突然に美貴の首に両腕を掛けて
ぶら下がる亜弥ちゃんはそう言った。
「ん?なにが」
決まってこういう時程、亜弥ちゃんの言うことは失礼ながらたいしたことも無
く、かといって邪険にするとその何倍も手痛いしっぺ返しを食らうことは重々
承知しているから素直に問いかける。
「みきたんが好きすぎて死んじゃいそう」
・
・
・
たっぷり、10秒。
それまで絶え間なく続いてた会話はプツンと途切れて言いようの無い沈黙が続く。
どっちか、私か、それとも亜弥ちゃんかが。お互いのどちらかが間違いなくこの
沈黙にピリオドを打つことは明白だけれど。その瞬間だけは、それが永遠に訪れ
ないんじゃないかと錯覚する沈黙。
- 13 名前:限界ラバーズ 投稿日:2004/03/07(日) 16:33
- 「そか」
ポツリと毀れた言葉。その次にまた、これまたたっぷり10秒ほど固まった亜弥
ちゃんは、一転してぷうっと頬を膨らませると。
「なにそれっ、ナニソレみきたんっ!なんかなんかそれって、それって!」
機関銃、散弾銃、マシンガン(おんなじか?)溜めに溜めた貯金を使い果たす
がごとく亜弥ちゃんが叫ぶ。どうやら、お姫様は私の回答がお気に召さないら
しい。
「だってね、普通こんなこと言われたら、心配するとかあ、んでもって大丈夫
だよとかって安心させるとか・・・」
サラサラした黒髪をまあまあと撫でて宥めてご機嫌の回復を願う。
- 14 名前:限界ラバーズ 投稿日:2004/03/07(日) 16:35
- 「いや、だってさ」
周囲のみんないわく、私という人間は自分では何気ない軽口のつもりでも、時と
場合によってはよろしくない場合もあるらしい。もっとも今がそうなのかどうか
はわからないけど。
「死んじゃい、『そう』、なんでしょ?」
「へ?」
それは彼女の予想外の返しだったのか、動きを止めてきょとんとして瞳を覗き
込む。
「死ぬ、とかいわれたらもち、真剣に考えるけどさ、でもってついでに亜弥ち
ゃん死んでないし」
「・・・・・・」
すぐにはその意味することが分からなくて、ご自慢のかわいい顔の眉間に不似
合いな縦皺を浮かべて悩んでいたけれど、意味を理解した途端にまたまた、大
暴走の予感が頭をよぎる。
だから、そうなる前に先手先手。
「それに」
大暴走エンジンのキーを廻さないように、彼女の手を包み込む。
- 15 名前:限界ラバーズ 投稿日:2004/03/07(日) 16:36
- ――――――――――――
―――――――
―――
「美貴は死なないけど、亜弥ちゃん好きだし」
というわけで、今日も平和です。
- 16 名前:限界ラバーズ 投稿日:2004/03/07(日) 16:37
-
------fin-----
- 17 名前:R 投稿日:2004/03/08(月) 00:11
- 勢いついでにも1個。
ガキマコ。
- 18 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:13
- ピ
リモコン音と共に画面が静止し、若干ノイズの混じった映像が固定される。
自分の家なんだからもう少しくつろげばいいのに正座で画面と対峙したまま、
まこっちゃんは深い溜息をついた。
「・・・・・・やっぱカワイクないね」
「・・・・・・」
「同じ泣くでもあさ美ちゃんはカワイイのに」
先ほどから画面には唇を「へ」の字に曲げて必死で我慢しつつも耐え切れずに
涙を流すまこっちゃんのアップが映し出されていた。
ゲームでまこっちゃんが思わぬタイムロスをしてしまい、結果最下位となって
しまった場面だった。
もう随分と昔の収録だったから普段なら話題に登ることも無いのだけれど、先
日ダイジェストとして放映された『メンバーの涙のシーン』にて他のメンバー
と共に放映されたものを改めてまこっちゃんと鑑賞している。
同期同士、時々こうしたお互いの歌とかダンスとかをチェックする目的で録画
しといた映像を見たりするんだけど。
今日は、
- 19 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:15
- 「みんな・・・泣いててかわいいのに私だけ不細工だ・・・」
つまり、今日のお題はそういうことである。
彼女、小川麻琴はなんでも今年の目標は「アイドルになる」ことらしくそれに
は一つ「かわいく泣く」ことも欠かせない要素らしい。
とはいえ、彼女の魅力はそのままの彼女。それは私ももちろん周りのみんなも
同意するところであり、そうじゃなくなったまこっちゃんなんてまこっちゃん
じゃない。
だから、私新垣里沙は年上とはいえこの愛すべき同期をどうにか復活させる
使命感に燃える。
「そんなことないよっ」
極めて、そう極めて明るくそして自然に努めて私は微笑む。
「まこっちゃんかわいいよ、マジかわいい」
「・・・・・・」
う。
無言のプレッシャー、というのか。
まこっちゃんはジトっと、さも疑わしいといわんばかりの眼差しを向ける。
- 20 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:16
- 「ホント、本当だってば。かわいい、かわいいよっ」
「・・・ホントに?」
「うん!ホントホント!」
いや、ホントカワイイ。カワイイです。
自らにも呪文を唱えるかのように繰り返す。
お世辞にもあまり思慮深いとはいえないまこっちゃんにしてはやけに今日は食
い下がってくる。いつもなら、そっかあ、んじゃ頑張るねっとでも言ってくれ
そうなものを。
「・・・違うもん」
「へ?」
予想外の切り返しに私は思わず奇声を発する。違うっていうのは
「え、とあのナニがどう違う、と」
「里沙ちゃんの言ってるカワイイはきっと種類が違うもん」
「は?ナニ、それ、種類とか?」
どうにも頭をひねってもその意味するところを理解することが出来ずに問い返す。
- 21 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:19
- まこっちゃんはこれまた深い深い溜息をついてぼそぼそと愚痴る。
「きっと、それはね、違うんだもん。ほら、あさ美ちゃんとか、愛ちゃんとか
が言われてるかわいいって言うのはさ、あー、あややかわいいっ、とかごっち
んかわいいっ、とかあ、それからアユかわいい、とか上戸彩かわいいとかのか
わいいで」
「うん」
さりげなくカワイイとあげている五期メンの羅列の中に私が含まれていない事
が気になったけれどまあそれにはとりあえず触れないことにする。
「里沙ちゃんの言ってるかわいいは、きっと、後藤さんちのペットがかわいい
とか、吉澤さんちの弟がかわいい、とかちびまる子に出てくるおじいちゃんが
なんかかわいいねとかそういうかわいいなんだよ、きっと」
私に言葉を挟む隙を与えずに一気に言い切る。
- 22 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:20
- 「え、そ、そんなことないよっ。少なくとも私はそういうかわいいとかあんま
使わないし」
「嘘だああ」
「なんでよっ」
露骨な全否定に思わず声を荒げる。が、まこっちゃんは一向にひるむ様子なく
「だってさ、こないだコンビニで一緒に雑誌立ち読みしてるときさ、ゴジラ特
集の『ミニラ』見てかわいい〜って連発してたじゃん。じゃあ、あれは、なに、
なんなのさあ」
「う、ぐ」
珍しく鋭い、かつ的確な突っ込みに言葉が詰まる。
でもっ。
でも、駄目よ里沙!ここで負けちゃ駄目!
そう、必要なのは自信、そして勇気!
- 23 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:21
- 「嘘じゃないよ!」
彼女の両肩をがっと掴み視線を合わせる。
「り、さちゃ・・・」
「私さ、嘘付いてる目してる?ねえ私たちたった四人きりの同期だよね?
お互い信じあいながら、支えあいながらここまでやってこれたんだよ」
「・・・信じあう・・・・・・」
「もっかい言うよ?まこっちゃんはカワイイ、カワイイよ」
「里沙ちゃん・・・」
心持ち瞳を潤ませながらまこっちゃんは力強く頷いた。
「そっか、そっかあ!そうだよね、里沙ちゃんが言うんだもんね。えへ、でも
そっかあ、そっかそっかあ。かわいいかあ。あははあ、照れるなあ、こりゃま
いった」
えへえへと笑いながら乱舞するまこっちゃん。
その姿を見て。
『ウギャー、キャッ、キャッ』
小さな炎を吐きながら乱舞するミニラの姿が脳内を過ぎって。
- 24 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:21
- ゴメンと小さく心の中で謝った。
- 25 名前:同期の桜 投稿日:2004/03/08(月) 00:22
-
------fin-----
- 26 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/09(火) 00:28
- 今までこのスレに気付いていませんでしたが、めっさ面白い。続き楽しみです
- 27 名前:R 投稿日:2004/03/10(水) 01:28
- >26さん
レスありがとうございます。短編連作なので続くものもあればそうでないもの
もありますが、今のところ吉澤小川師弟のお話は続く予定です。基本的にこの
二人押しなのでやや登場頻度高くなるかもしれませんが、お付き合い頂けると
嬉しいです。
- 28 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/10(水) 14:13
- メインではないそうですが(残念!w)、レアな富士登山コンビが自分的にツボでした。可愛すぎ。
- 29 名前:R 投稿日:2004/03/14(日) 15:37
- >28 名無し飼育さん
こんにちは。レア推奨派ですのでまた思いついたら書きます。
今のところの予定レアものとしては、紺辻とか、、、
- 30 名前:R 投稿日:2004/03/14(日) 15:38
- ちょっと一息。
いいださん。のちょっといいはなし。
- 31 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:40
- 薄い明かりの漏れるカーテンを開いたらビルの谷間から珍しくくっきりと月が
見えた。
夜の闇。
冬の空。
風。微かなそれでいて冷たい。
零時を既に廻った通りは時折過ぎる車を除いては都会の夜にしては、静か過ぎる
くらいに落ち着きを払っている。
「あ、なんか書けそう、かも」
突如舞い降りるインスピレーション。
何処かへ行ってしまわない内にこの世界への足跡を残さなくては。
誰に命じられたわけでもないのに、そんな使命感に燃え、ペンと紙を探す。
「え……っと…あ、あった…」
トゥルルルルルルル!
「ぁっ?」
携帯の傍に置いてあった、ツアー先のホテルから持ち帰ってしまった黒いボール
ペンを手にしようとした瞬間けたたましく鳴り響く。
指定外の着信を示すそっけない添え付けの着信音は一瞬にして心地良い静寂を打
ち壊しただけでなくせっかく舞い降りてきた創作の神様も慌てふためいて逃げ出
してしまった様子。
- 32 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:42
- まったく!
画面を見ると表示は公衆電話を示していた。
いつもならば知らない番号など決して出たりしないのだけれど、この時ばかりは、
せっかくの時間を邪魔された腹立たしさの幾分の一かでもぶつけてやらなきゃ気
が済まないような気持ちになっていて。
乱暴に取り上げて通話ボタンを押す。
「いやっほう〜セクシイベイべエッ♪おこんばんわあっ、コングラッチュレイシ
ョーン!」
「……」
どうしよ、これ。
これ、切っていいよね。絶対いいよね。
心の中の9割5分以上はそう思ったけれど、でもカオリ一応リーダーだし。一応も
しもとかも、本当に一応だけどあるかもしんないし。
しばらく黙っていると受話器越しに「あれ〜おっかしいなあ…間違っちゃったか
なあ」とボソボソ呟く声が聞こえる。
「…どしたの、よっちゃん…」
「あっ、なんだあ、やっぱあってる〜!お元気ですかあ?」
- 33 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:43
- カラカラと陽気に笑う、電話の主よっちゃんこと吉澤ひとみはどうやら随分上
機嫌みたいだ。
その理由を考えてみるとすぐさま思い当たる節。ああ、そういえば今日は仕事
終わったら早々に引き上げてたっけなあ。ええと、確か
「今日、同窓会だっけ?中学ん時の」
「ピンポーン!」
お世話になった先生がなんでも今年退職をするらしくそれでは、と当時のクラス
で集まるという話をしていたのを思い出す。元来人情深い彼女としてはぜひとも
参加したい所だったのだろう。幸い、今日の撮影は予定通りに順調に進み、定刻
には間に合わないとしてもなんとか途中から滑り込みで参加したとの事だった。
私も学生時代の友人から何度かその手の誘いは受けたけれども北海道から上京し
ている身としては、余程のタイミングに見合わない限りその申し出を受け入れる
ことは事実上不可能に近かった。
心の中でちょっぴり羨ましいなと思いつつも、なんだって電話をかけてきてるの
かの理由がわからずに耳を傾ける。
- 34 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:45
- 「いやあ、もう最高っすよ。超すげーっていうか。あそこは鉄板でしょうってい
うカップルがあっさり別れててお互い速攻カレカノ作ってたりとか、激ヤセして
てアンタ誰よってのがいたりだとか。これが一番凄いんだけど結婚して子供連れ
てきちゃったりしてたりとか。しかも、ウチの知る限りじゃ、彼氏いない歴年齢
と一緒です位の勢いの子だったのにいきなり子持ちだもん、そりゃ驚くっつーの」
他にもあれやこれやと、私が口を挟む隙もないくらいに喋りつづける。
あー、もう。大体今何時なんだろ?
ふとそう思って時計を見ると実はまだ9時を少し廻ったばかりの時間だった。
そんな私を構うことも無く尚も話は続く。
「いや、変わったのはみんなだけじゃなく、うんそう、もちろん…ヨシザワも…
そりゃもう劇的に変わっちゃったわけなんだけど、え、あ、いや体型とかじゃな
くて!いやそれも多少あるかもしんないけど…その取り巻く状況ていうか、周囲
の環境っていうか。けど、けどその…ヨシザワ自身が全く前と変わったわけじゃ
なくて〜」
- 35 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:46
- ちょっとずつ、
いやホントちょっとずつなんだけど
カオリ判ってきた。
けど、もしかしたら世紀の大作の創出の瞬間を邪魔されたんだから、もう少しだ
け意地悪がしてみたくなる。
適度な相槌だけを打って彼女の出方を待つ。
「で、これから二次会とか?」
「わ、凄いご明答!もしや、エスパー?」
いや、普通わかるし。ナニ、もしかして馬鹿にしてる?カオリのこと。
「あははっ、そうなんすよ、そうなんですよね。2次会!こりゃ弾けちゃいま
すよね。ぶっちゃけちゃうよそりゃ。けど……なんつーか。当たり前なのかも
しれないんだけど、ウチは変わってないのに、なんつーか、昔みたく、みんな
……確かにモーニング娘の吉澤ひとみだけどその前に、中学時代の同級生吉澤
ひとみであって……判ってはいるんだけど、あー」
「…うん」
「やっぱ、サイン頂戴だとか、それならまだしも安倍さんのサインとかあやや
のサインもらっといてだとか……、あ、いや、それは置いといて明日仕事早いし、
万が一超弾けてるとこスクープされたりするとまずいし。まだ未成年だし…」
- 36 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:47
- 「それで、よっちゃんは単なる酔っ払いなの?だったら早く帰ること」
「え?」
それまで「うん」「ああ」位しか言わなかった私の言葉にピタリ会話が止まる。
未成年で、ましてやアイドルなのに、無防備な飲酒。正直お説教は山ほど。でも。
「それとも……」
「飯田さん?」
しゅんとなる姿が容易に想像されて、思わず微笑みそうになるのを堪えて言う。
「寂しいの?」
「な……」
受話器の向こうでトラックかなにかのクラクション音が聞こえる。どうやら店
からではなく外から架けて来ているのだということがわかる。
春近くとはいえ、まだまだ肌寒い季節に一人。陽気で明け透けに見えて……。
「どっち?正直に言うこと。じゃなきゃ、切りまーす。これでも忙しいんだから」
「え、あ、いやその……」
そうして
- 37 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:48
-
「……寂しい、です」
- 38 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:49
- ―――――
―――――
ようやく、絞り出すような声で小さく聞こえた。
だから、私は
「はい。OK、んじゃ一端切るね」
「え、ええっ?飯田さんっ?」
なんだよそれ、といわんばかりの当惑振りに堪えきれずにクスクスと笑う。
「準備できたら電話するから」
「はああ?」
「何処いるか場所教えて。朝までカラオケでもなんでも付き合いましょ」
「あの。飯田さ…」
「んじゃ、後で」
切ったその手でそのままタクシー会社のボタンをプッシュする。
そう。今日はこんなキレイな星空なんだから。
もったいないじゃん、ねえ。
だから、出掛けよう。
そうだ、こんなタイトルどうだろう?
- 39 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:50
-
満天ドライブ。
- 40 名前:満天ドライブ 投稿日:2004/03/14(日) 15:50
-
------fin-----
- 41 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:40
- 「私、れいなとやりたい」
撮影後に、メンバー全員でミーティングがあると聞いていたけれど、どうしても
したい電話があって、遅れること5分。
入ろうとした楽屋のドアノブに手を掛けた瞬間、その声が耳に入ってきた。
30度くらいまで廻しかけた手をピタリと止めて頭の中で反芻する。
なんつった、今。
ワタシ
レイナト
ヤリタイ
そして次にゆっくりと脳内で変換作業を行う。
ワタシ=今声を発した人物=さゆ
レイナ=れいな=つまり私
ヤリタイ=………
- 42 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:41
- 途端にバクンと心臓が音を立てて鳴る。
ドクンドクンと鳴り止むことなく、私の思考が進むと共にペースを速めていく。
いや、待って。落ち着いて。れいな。
焦る事はなか。冷静に。
つまりこれは、冗談、そうきっと冗談に違いない。
そうに決まってる!
「そっかあ、重さんは田中ちゃんとやりたいのかあ」
「はい!」
恐らく矢口さんらしき声に対して屈託無く答えるさゆ。
…もう、矢口さんまで悪のりして。
自分がいないところで勝手に会話のダシにされてると思うと腹立たしくもなって
きた。
これは、ひとつ文句でもいわなならんと。
そう決意して再びドアノブを廻そうとする。
「あ、でもむしろ」
「うん?なに」
「れいな『と』やりたいっていうよりはあ、れいな『を』やりたいかな」
- 43 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:42
- 「おおっとそうきたか!」
な…
な、
な
なに〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
さっきの10倍くらいに跳ねあがった心拍数に加え、カーッと血液が集中して体が
熱くなるのがわかる。
なにを、なにを言う取ると!!??さゆはあ
その、れいなをやりたいってことはつまり、れいながさゆに…
最近背も伸びて目線一つ違うさゆの姿を思い浮かべる。いや、私だって少しは大
きく…力だって…いやでも本気で力ずくの対決になったら果たして…
「そんならおいらだって田中をやりたいよ」
- 44 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:43
- 「え、そんなんアリなの?んじゃカオリも田中やりたーい」
「ミキも、ミキもやりたいっ」
矢口さんの声を皮切りに次々と「やりたい」と連呼するメンバー。
「亀井はどうなのよ?」
「え?」
ほぼ全員であろう声を聞いて脱力気味の体をなんとか支えてエリの言葉を待つ。
エリ…あんただけは違うと?
「私も…ちょっと、やりたい…」
遠慮がちながら、確かにそう言った。
「あー、もうしょうがないなあ。わかった!こうしよう」
口々に意見を言うみんなを制して矢口さんはこう叫んだ。
「順番!かわりばんこにやるっていうのはどうよ?ナイスアイデアっしょ!」
こんなの…
こんなのって…
「いやあああああああああああ!!」
- 45 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:46
- -----------------------------------------------------------------
(楽屋内)
「……今さあ、なんか凄い悲鳴聞こえなかった?」
「そうですか?それより、れいな遅いですね〜」
「だねー。新曲のパート割どうするか、つんくさんの案を元にあとはみんなで
話して決めてって言われてんのに」
「だから、このユニゾン部分は私とれいなで、、このメインパートのれいなの
ところをどうするか…みんなやりたがってますもんね」
- 46 名前:みんな愛のせいね 投稿日:2004/03/14(日) 16:47
-
------fin-----
…
…
究極の、
もてれな
小説…
- 47 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:21
- 「お〜やぶんっ」
撮影を終えて、メイクを少し直そうかと鏡に向かう私の背からかかる声。
振向かずとも鏡面に映るその姿と、こんな愛称(?)で呼ぶ人物など一人しか
いないわけで。
「なに、麻琴?」
「おおっ、凄い!よくわかりましたね、やっぱ愛ですか愛」
「いや、違うし」
心持ち下がってきた睫をビューラーで丹念に巻き上げながら即答する。
けれども素っ気無い態度にめげることなくあろうことか首の辺りにしがみ付いて
くるものだから
「わ、こら。今ダメだってば、ツッ」
勢いで、閉じたままのビューラーを引っ張ってしまう。目元に軽い痛みが走って
思わず声をあげる。
「わわ、ごめんなさいっ」
うっすらと涙を浮かべて恨みがましく睨みつけると、さっきまでの勢いは何処へ
やらしゅんとしょげた麻琴が映る。
- 48 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:23
- こういうの何て言うんだっけ。そう、あれだ、『捨てられた子犬』まさにそれ。
あ。でも犬っていってもあれだな。茶色くて、種類でいうならシバとか、その他
雑種とか。とにかくチワワとかその類じゃなく…いかにも…
そう思いつくと今度は可笑しくなって来る。
ククと笑い声を漏らす私を不思議そうに見つめる。
そうして様子を伺うように恐る恐る
「えと…その、ごめんなさい」
10センチほど低い位置から覗き込んで尋ねる麻琴。
その頭をポフポフ撫でる。
「よおしよしよし」
「へ?」
無造作に撫でられて乱れてしまった頭を気にすることなく声をあげる。
「あ、のお…」
「怒ってないよ」
- 49 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:24
- 瞬間
「よかったあっ」
(ワンワンッ)
ファサファサッ!
響く鳴き声に
ファッサファッサと揺れる茶色い尻尾。
え……!?
慌ててブンブンと頭を振ってもう一度麻琴を見る。
そこには当然人間の姿の麻琴がいて増してや尻尾なんてあるわけもない。
きっと…疲れてるんだ私。
それに涙目になってて視界も若干悪かったし。
「まことぉ、クッキー食べる?」
私がそんな訳のわからない葛藤に心悩ませているとふいに高橋が声をかけた。
「食べるっ!」
(ワンッ!)
振向いて一目散高橋の隣に移動する麻琴にまたもやファサっと揺れる尻尾。
- 50 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:26
- 「吉澤さんも食べませんかあ?」
「……」
ああ、おかしい。
また、
また見えちゃったよ。
なんじゃこりゃ。
笑顔で私にもクッキーをすすめる高橋にこちらもなんとか笑みを作って対
応する。
「美味しいよ、愛ちゃん」
一足先にポリポリとクッキーを貪る麻琴の背後に立つ。
その後ろ姿を眺めて、ゆっくりと視線を背中から腰、さらにその下へと移し
ていく。
……やっぱ、あるわけないよねえ。
…
…
サワサワ
すっと手を伸ばして、ぴったりとくっつけるとそのまま掌を上下させてみる。
うん、やっぱ何も無い。
まあ、しいていうならちょっと肉付きが……
- 51 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:28
- 「ひゃああああああ!」
突然、辺りに響き渡る悲鳴というか嬌声があがる。
「よよよよよ吉澤さんっ何するんですかあ!い、いきなり」
今の今まで目の前にいたはずなのにいつのまにか楽屋の壁にぴったりと貼りつ
くように身構えた麻琴がこちらを見ている。
「いや、別に」
まさか尻尾を確かめようとしましたなどといえるはずも無くサラリと受け流す。
「い、いくら私が魅力的だからってえ、こんな公衆の面前で、前触れも無くい
きなり…しかもそのっ…おしりから触るなんでイやらしいです!」
「なにい?」
一丁前に乙女ぶる(ちゅうか乙女はひゃああなんて言わないだろ)麻琴。つうか
大体なんだって私が好き好んで麻琴の尻なんかを…
むう…
生意気な。
「アホか。いいかあ、イヤらしいっていうのは」
事をきょとんとして眺める高橋を手元に引き寄せる。
「こういうのを言うんだっ」
「あ…キャッ」
「ああああっ、愛ちゃんっ!」
危機を察知して全速力で駆けて来る麻琴。
うわ。
突進してくるよ、おいおい…うわ!
- 52 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:29
- ……そうして無理矢理に私と高橋を引き剥がしてじっと見つめる麻琴に
「スキンシップスキンシップ♪な、たかはすぃ〜」
「はぁ…」
掌をヒラヒラとはためかせて笑う。すっかり巻き込まれて完全に触られ損な
高橋には後でジュースでも奢ってあげるとしよう。
で
「いやあ、でもさ」
「?」
まだ何か言いたげな麻琴を制して続ける。
「麻琴、前世絶対犬でしょ?」
「はああ?」
首を傾げる仕草がそのまま脳内でキューンと首を捻る子犬の画像に切り替わる。
うーん、やっぱどっかおかしいのかもしれない。
けど。
まあ、いっか。
私の目の錯覚だろうが、本当に尻尾が生えてようが、別に変わりは無いのだから。
(ワンッ)
- 53 名前:a pupil's profile2 投稿日:2004/03/14(日) 20:30
-
------fin-----
- 54 名前:R 投稿日:2004/03/14(日) 20:34
-
親分とその弟子第2弾。
で…
一応まだこのお話は続けようかと思っているのですが、、、
この二人はあくまでも師弟だ!!
というかたや、、
この二人はあくまでもお馬鹿なお笑いコンビだ!!
というかたや、、
この二人は純粋青春まっしぐらな関係だ!!
というかたは3以降は読まれないほうがよいかもしれません。。
つまり、そういうことです。
- 55 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/14(日) 22:36
- つまり、そういうことなんですか!!
まいったな……でも、今日のハロプロワイドの小川さんが書いた吉澤さんの絵を見て、
この人本気だな…と恐れ戦いたので楽しみにしています。
他の話もめっちゃ面白い! 究極のれなもて笑った。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/17(水) 19:29
- ここのお話たち、いいなあ。ほのぼの楽しいのりで読んでたら
飯田と吉澤の「いい話」にぐっときたり。
それにしても小川と吉澤のこんな話を待っていたよ。作者さんありがとう。
そしてどういうことになるのか楽しみにしつつ待ちます。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/14(金) 14:58
- 保全
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