一球入魂!

1 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/06(土) 13:13
どうも初めまして。
空板で推理小説を書いています『聖なる竜騎士』と言う者です。
メインは推理物なんですが、様々なジャンルの小説を書いて見たい
ので、ここ風板にやってきました。

誤字脱字が多いとは思いますが、末永くお付き合いお願いします。
2 名前:始めに 投稿日:2004/03/06(土) 13:20
今回は高校テニス界を舞台にした少しアンリアルなスポーツ物です。
登場人物は娘。メンバーを出せるだけ出す予定です。
小説の内容の都合上、男子や女子がテニスの試合を行う事になりま
すが、気にせず読んでください。
そこら辺がアンリアルなんです。

あと、作品の中盤あたりから、ハロプロメンバー以外の一般人が登
場しますが、そこも気にせずお読みになってくだされば、幸いです。
3 名前:始めに 投稿日:2004/03/06(土) 13:33
昨今、現代社会は「男女平等」と言う言葉が盛んに叫ばれている。

確かに、昔に比べ現在社会はまだまだ完全とは言えなくとも、男女
間の隔たりが無くされかかっている事は、確かである。

教育現場現場においても、職場においても、公共の場においても、
研究施設内においても、勿論スポーツ界においても、その言葉は例
外無く響き渡っている。

遂に「男女平等」と言う言葉は社会全体の強迫観念の様に、その殆
んどの人間に浸透して、実現にと移ったのだった。

当然、高校スポーツ界にもその波が押し寄せ、つまりは高校スポー
ツ界全ての競技において、男女混合競技が採用される事となったのだ。

そう、今はそう言った社会なのだ。
(そんなことを頭に置いて読んでください。)
4 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/06(土) 13:54
ある春の晴れ渡った日の午後、ここ『私立聖陽学院高校』では入学
式が行われていて、つい今さっき、終わったのだ。

まだまだ、初々しさが残る中学校上がりの新入学生が、両脇を水々
しく陽の光を反射している校門前の1本道を、それぞれの友達と一
緒に歩いて帰っている。

多くの入学生が笑いながら、または期待と不安を胸に抱きながら、
各々の帰路についていた。
その殆どの入学生は帰ってしまったが、まだ数人の入学生は校舎に
残って、校内を見回るなり、友人といつまでも馬鹿な話に花を咲か
せたりしていた。

そんな中で、1人ポツンの立っている、髪の毛をポニーテールにし
てまとめていて、目がクリッとしていて、まだ可愛らしさが残る少
女がいた。
その少女の名は『高橋愛』と言った。
高橋愛もその内の1人だった。

高橋は友人と話をするわけでもなく、校内を見学するわけでもなく、
ただ校内のグラウンドの周りを、とぼとぼ歩いているだけだった。

多少傾いた陽の光が、淡く高橋を照らしていた。
5 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/08(月) 21:40
どーも、あっちでもお世話になってます。
これまでスポーツもの読んだことなかったので楽しみデスw
あっちもこっちも期待してますんで頑張って下さいww
6 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/08(月) 22:50
「名も無き読者」さん、どうもこちらこそ、お世話になります。

名も無き読者さんもご存知かと思いますが、空板では、かの名作「青のカテゴリ
ー」や、某少年漫画(テニスの王○様)に影響されまして、テニス物の小説を
書いてみようと思いました。
向こうでは推理物ですが、メインの推理物を書くに当たって、
やはりこれからより良い作品を作っていく為に、推理ものだけにこだわらない
で様々なジャンルに、自ら触れ合っていく為に、こうしてスポーツ物の小説を
書くに至りました。

向こうの作品と違って、頭の中で細かい設定がなされていませんので、実際、
どんな感じに展開していくか、自分でも分かりません。
こんな作品ですが、どうぞ温かい眼で見てやってください。
7 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/09(火) 00:21
高橋はグラウンドの周りの細いアスファルトの道を歩いている。
『私立聖陽学院高校』、略して『聖学』は進学校として有名であるだけあって
校内、校外においてかなりの恵まれた施設が設けられている。

教室は全室冷暖房完備、エレベーターやエスカレーターは勿論、グラウンドに
は全天候で野球場やサッカー場、室内温水プールなどなど・・・・・・・。
演奏ホールや超大型図書館もある有様。

高橋はそんな学校に憧れてこの「聖学」に入学した。
しかし、本来、高橋はこの「聖学」に入学できるなんて思ってもいなかった。

「聖学」は先程から申している通り、かなりの進学率を誇っている為、その分
入学する為の入学試験を突破するのも、至難の業である。
高橋も冗談半分で受検したところ、奇跡的に合格、晴れて聖学生となれた、は
良いが高橋の仲の良い友人は皆、地元の公立高校やどこかの私立高校に進学し
たため、実際聖学には高橋の話し相手となる友人が居ないのが事実だった。

高橋はグラウンドの脇や、外周コースなどを歩きつつ部活動の見学をしていた。

高橋「やっぱり、高校と言ったら部活でしょ。」

高橋は友人の居ない寂しさを、部活で解消しようと思い、2〜3年生の部活動
風景を眺めていたのであった。
8 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/11(木) 21:58
高橋は沢山の部活動を見て回った。
陸上部に始まり、サッカー部、ソフトボール部、バレー部、剣道部、卓球部・・・・・。
数多くの部活動を見てきたが、高橋は何故か不思議な気分になった。

それものそのはず、どの部活もどの部活も、部員全員が制服を着ながら部活動
をしていた。
しかも、部活動と言っても、まともに部活動をやっている者は殆ど居ない。
皆、遊びながら、友達と話しながら、まるで大学のサークルの様に活動している。
見た目は楽しそうだが、どこか一生懸命さが欠けていて、あくまでも趣味と、
言わんばかりの部活動だった。

高橋「ふう〜〜〜・・・・・・。」

高橋は深い溜息をついた。
昔の人を思わせるようだが、高橋はその見た目とは裏腹に、熱血的な1面を見
せる。
高橋は部活動と言うと、青春そのもので、「あの夕陽までダッシュだ!」的な
言葉を半ば本気で信じるような人間なのだ。
高橋はかなり落胆した。

高橋が別のところに眼を向けると、そこは部活動自体しないで、グラウンドを
支配して、ストリートダンスやベンチに腰掛けながら、ギターの練習に励む者、
その他もろもろが大勢居た。

よく言えば自由で楽しく、悪く言えば熱心さに欠けた、まあ言ってみれば現代
人風な部活動風景だった。

高橋は、頭を垂らしながら歩いていた。
9 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/11(木) 22:19
何処まで歩いても、何処まで歩いても、そんな堕落した部活動風景は続いた。
高橋は頭では分かっていたが、現在のしかも進学校の部活動などはこんな物だ
とは想ってはいたが、やはり心のどこかでは期待していた部分があったのであ
ろう、がっかりした気持ちは隠せなかった。

高橋は、ほぼ無意識の内に歩いていた。

高橋の頬を優しく風が吹き付けて、高橋はふっと気がついた。
いま、高橋は体育館のすぐ脇に居た。
高橋が、体育館の壁に付けられている時計を見た。
その時計は既に、4時を越えていた。
歩き出したのが3時前後だったので、かれこれ1時間は歩いていた事になる。

高橋「もう4時か。結構見て歩いたし、そろそろ帰ろうかな・・・・・。」

高橋が西の方角を見た。
そこには、黄白色をした太陽から、徐々に朱色に染まっていく太陽があり、高
橋は見ながら呟いた。

高橋が踵を返し、今来た道を帰ろうとした。
高橋は何か虚脱感の様な疲れを感じた。
何かを裏切られたような、そんな疲れを感じた。
10 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/11(木) 22:42
3歩、4歩、高橋が足を動かした時、何やら後方で音がした。
高橋がその音の存在に気付き、足を止めその音の方向を向いた。

高橋が耳を澄ましてみる。
今の今までは何も聞こえなかったが、良く耳の神経を研ぎ澄ましてみれば、確
かに音が聞こえる。
しかも、さらに耳を澄ましてみれば、その音は断続的に聞こえてくる。
しかも何かの打撃音の様な、激しい音でもあった。

高橋は何故か、その摩訶不思議な音に何故か惹きつけられた。
何か、懐かしいような、そんな感覚だ。
高橋は静かに、静かにその音の元に近づいた。

その音源は今まで居た体育館の、その壁のまた向こうから聞こえてくる。
高橋は頬を吹き付ける風に逆行しながら、その体育館の壁の元に着くと、先程
の打撃音は益々、強さを増し鼓膜を響かせる。

その打撃音は、高橋の腕を、脚を、頭を、そして心を震わせた。
高橋は恐る恐る、その壁の向こうを除いてみた。
11 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/11(木) 23:03
高橋が覗いたその壁の向こうには、1人の女子生徒が居た。
その女性は右手にテニスラケットを持っていて、壁に向かってテニスボールを
打ち付けていた。
打ちつけられたテニスボールは壁に反射し、反射したボールは再びその女子生
徒の元に戻って来て、その戻ってきたボールをまた打つ。
俗に言う「壁打ち」だ。

その女子生徒は、昔の人が言う三寒四温と言うように、まだ寒さが完全に取り
払われない時期なのにも関わらず、半そでのTシャツ1枚を着ていて、また
ハーフパンツを履いていて、全身が汗だくの状態で壁打ちをしていた。
その女子生徒は明らかに、今まで見てきた部活動風景とは相異なる姿だった。

高橋は、隠れてみている体育館の壁から、その子供らしさが残る可愛らしい顔
と、ポニーテールの1部分を出しながら、目を皿にしながら見ていた。

遠目で見てみると良く分からないが、その壁打ちをしている女子生徒はテニス
ラケットを振りぬく瞬間、前腕部分の筋肉や筋がくっきりと浮かび上がり、
上腕二等筋や上腕三頭筋もせり上がった筋肉が高橋の目に飛び込んだ。

脚も、腿もふくらはぎもほっそりとした感じだが、薄膜のすぐしたの大腿三等筋
やヒラメ筋も薄くそれでいて、ガッチリとした筋肉が汗に光が乱反射しながら
見えるため、とても輝いて見える。
12 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/11(木) 23:22
また、壁打ちの打撃音の陰にその女子生徒の人間とは想えないほどの、異常な
までの息切れした呼吸音もが聞こえてくる。
そして、その打撃音と呼吸音が交互に聞こえてくる。

ハア!

スパーーーーーーン!

ハア・・・・・・・!!

スパーーーーーーーン!!

ハア・・・・・・・・・・・・・・・!!!

スパーーーーーーーーン!!!

交互に聞こえてきる2つの生きた音は、聞くもの全てを魅了し惹きつけて止ま
ない力を持っていた。
高橋もその魔力の虜になっていた。

全く無駄な脂肪が付いていない全身の筋肉や筋や骨、
またテニスボールが如何なる所に返ってきても、確実に返球する技術や柔軟性、
小刻みに響く打撃音、

それら全てが魔力と化す。

しかし、そんな中でも一際眼を惹くのが、その女子生徒の眼だった。
その女子生徒は見た感じ高橋の上級生らしいが、高橋同様、幼げな顔つきをし
ていた。
背の高さは普通の女子生徒ほどの高さだが、またその童顔、そしてその顔と全
く同調しない動きも眼を惹くが、しかしその両眼がひどく釣り上がっていて、
カッと見開いていて、それでいて充血していて瞳孔が開ききっている。
その壁打ちをしている女子生徒の幼い表情は、既に人間の顔を解き放っていて、
草食動物を狙う肉食動物の眼をしていた。
13 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/12(金) 12:41
描写スゴッ!
はたして女子生徒の正体は!?
…を考えながら次回を待ちます。w
14 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/14(日) 23:20
「名も無き読者」さん、今作品初レスありがとうございます。

まさか、描写を誉められるとは想いませんでした。
この女子高生が一体誰なのか?
まあ、これから先読んでいただいたら、すぐに分かると想います。
この「1球入魂!」は始まったばかりですが、早速、この先の展開が行き詰ま
り気味です。
こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします。
15 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/14(日) 23:34
高橋が物陰からそんな異様なまでの光景を見ていた。
すると、

女子生徒「あっ!」

壁を反射したテニスボールが想わぬ方向に飛んでしまい、上手く返せず後方に
そらしてしまった様だ、壁打ちをしていた女子生徒は、思わず声を上げた。

勢いを保ったまま、テニスボールは高橋の足元まで転がってきた。
高橋は腰を下ろして、その足元のテニスボールを手にとってみた。

高橋はその手に持っているテニスボールを見てみる。
かなりの練習につき合わされているのであろう、もう既にぼろぼろになっていた。
色はとっくに褪せていて、表面もあらゆる方向に大小様々な傷が付いていた。

女子高生「ボール飛んできたでしょ?ごめんね。」

何とも可愛らしい声が聞こえた。
気が付くと、高橋の目の前に先程の女子高生が立っていた。
やはりその姿は、全身汗だくで、息も切れていた。

高橋「あ、いえ、大丈夫です。」

高橋は持っていたテニスボールを、その女子高生に手渡した。
その時、高橋はボールを手渡す時にその女子高生の手に触れたとき、一瞬、
ギョッとした。
16 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/14(日) 23:53
高橋(・・・・・・・・・・・・・・・。
   この人の右手・・・・、硬い・・・・・・・・。)

その女子高生の、今までテニスラケットを持っていた右手は血豆が数多く存在
し、他の部分も、潰れた血豆の跡がくっきり残っていて、皮膚も厚く、その
可愛らしい表情とは、似ても似つかない程だった。

女子高生「あ、どうもありがとう。」

その女子高生は高橋からテニスボールを受け取ると、屈託の無い笑顔を見せた。

その女子高生は壁打ちをしている時と、何ら変わらなかったが、ただ1つだけ
異なった点があった。

先程まで、充血した肉食獣の様な眼光をしていたのも関わらず、今のその女子
高生の両眼は、先程の両眼とは全く異なった、普通の女子高生の優しそうな眼
をしていた。

女子高生「ところで、あなたこんな所でなにしているの?」

高橋が、その女子高生に見とれていると、不意にその女子高生が尋ねてきた。

高橋「あ、すいません。ちょっと壁打ちの音が聞こえたので、つい・・・・・・・・・・・。」

女子高生「ふ〜〜ん。・・・・・・・・・・・・・。
     あたな名前、何て言うの?」

高橋「高橋・・・・・・・愛、と言います。」

女子高生「へ〜〜、愛ちゃんか・・・・・・・・・・・。良い名前だね。
     私の名前は『安倍なつみ』って言うの。
     愛ちゃんはテニスに興味あるの?」

高橋「あ、はい、中学生の時に少し・・・・・・・・・。」

安倍「へ〜〜〜〜。」

安倍は頷いた。
17 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/15(月) 00:07
安倍「さっきから、私の事見てたの?」

高橋「は、はい・・・・・・。すいませんでした。」

安倍「アハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・!。
   何謝ってるの?変なの〜。
   も〜〜〜〜、見ているなら見てるって、1言言ってくれれば良いのに〜。
   私、恥ずかしいよ〜。」

先程までの飢えた獣の様な表情をしていた同一人物とは思えないような満円の
笑みを一杯に浮かべて、賑やかな声を出した。

安倍「あっ、ごめんね。引き止めちゃったね。
   そんじゃあ、私、練習に戻るね。」

安倍はそう言うと、笑顔のままクルリと背を返すと、そのまま先程の壁打ちを
行っていた定位置に戻ろうとした。

高橋「あ、あの〜、安倍さん・・・・・・・・・・・・。」

高橋の声で引き止められ、安倍は足を止め振り返った。

安倍「ん〜〜?な〜に〜?」

高橋「あ、あの・・・・・・・・・・・、
   明日も見に来て良いですか・・・・・・・・・・・?」

安倍「勿論!全然OK!」

そう言うと、安倍は再び歩き出して、大地を踏みしめると、また壁打ちを始めた。
高橋も暫くその安倍の姿を眺めていた。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/15(月) 10:52
なっちと高橋のからみ、大好きです!
期待してますよ!
19 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/18(木) 23:40
「名無し飼育」さん、ありがとうございます。

なっち、高橋のからみを気に入ってもらえてこちらとしても嬉しい限りです。
これからはもっとメンバーが出てきて、様々なからみが出現します。
お楽しみに!

でも、しまいには架空の人物が出てきます。
その架空の人物とメンバーとのからみも、またあります。
(空板で言う『皇祐一郎』みたいなのが出てきます。予めご了承下さい。)
でもあまり来たいしないで下さい。
20 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/19(金) 22:55
翌日、聖学は正式に新学期が開始される。
今日は絵に描いた様に空は晴れ渡った。

高橋は1年4組(1−4と表記)であった為、プレートに「1−4」と書かれ
た教室のドアを静かに開けた。
中は新鮮な空気に満ちていた。

窓から入ってくる朝陽が眩しい筋をなして教室内の床や机の上に広がる。
教室内には、高橋と規則正しく並んだ机と椅子しかなかった。
高橋が朝早く来すぎたようだ、まだ時計は7時を少し回った程度だ。
教室内はシンと静かだった。

高橋が黒板に張り出されている座席表に眼を通す。
その座席表によると高橋の座席は窓際の1番後ろの席だ。
高橋がその自分の机の上に持ってきた鞄を置く。

すると高橋の眼にキラキラと乱反射してくる光の束が入ってくる。
高橋が窓を開け放って顔を出して外を見てみる。
そこには聖学のすぐ脇を流れる大きな川が横たわっていた。
その大きな川の表面で幾多にも反射した朝陽があらゆる方向へ放射されていた。

何の変哲も無い、普通の風景だったが、
都会のど真ん中とは思えないような、そんな幻想的な風景だ。
微かだが、サアサアと川の流れる音が聞こえる。

そんな幻想的な世界に、高橋は昨日の安倍の神秘的な光景を重ねてみた。

まるで遠い過去から語り継がれてきた神話の中の登場人物かの様に、高橋の頭
の中では光り輝く世界に君臨する女神の様に、決して自分の様な凡人が近づい
てはいけない聖人かの様に、そんな風にも思えて仕方が無かった。
21 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/19(金) 23:12
高橋が暫くその光景に浸りながら、乗り出している窓から入ってくる風にご自
慢のポニーテールを靡かせながら、ただ時間の流れを感じていた。

8時30分、朝のHRが始まる時間だった。
もうその頃になると、1−4の生徒全員が教室内に集まっていて、それぞれの
仲の良い友人と楽しげな話をしていた。
しかし、高橋にはそんな楽しくお喋りする友人がこのクラスには居なかった。
いや、正確に言えば、この学校には居なかった。

高橋は本来なら、地元の公立の高校に地元の友人と一緒に進学するはずだった。
しかし、冗談半分で聖学を受検したら奇跡的に合格してしまったのだ。
その為、高橋と高橋の友人は別々の高校に進学せざるを得ない状況になってし
まったのだった。
高橋の出身中学校から聖学に進学した人は、高橋以外もう数人はいただろうが、
その中でも、高橋の知人は1人も居なかった。

つまりは高橋はこの学校では、孤立無援だった。

高橋は机の上で腕を組み顔を少し埋めながら、そんな楽しく話をしている生徒達
を恨めしそうな眼で眺めていた。
22 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/19(金) 23:29
そうこうしている内に、1限目の授業が始まった。
どうやら1限の授業は高橋の嫌いな数学の様だった。

ドアから数学の教師が入ってきて、簡単な自己紹介を終えると、早速授業に入
った。
さすが進学校、と言った雰囲気が出ていた。

高橋(はあ〜〜〜〜〜〜〜、数学って苦手なんだよね。
   それに最初は聖学に合格して嬉しかったけど、友達が1人も居ないしな〜。
   なんか詰まんない。)

高橋は鞄から数学の教科書、ノート、シャーペンを取り出し、板書を繰り返し
ていた。
高橋がほぼ無意識のまま、ただ黒板に書かれたチョークの跡を追っていた時、

トントン

高橋の右肩を誰かが軽く叩いた様だった。

高橋「え??」

高橋が叩かれた肩の方を向くと、高橋の右隣の席の女子が妙にびくびくしながら、
高橋の方を見ていた。
23 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/19(金) 23:48
高橋「あの〜〜、何でしょうか?」

高橋は自分の隣の席に座っている、自分の肩を叩いた見ず知らずのクラスメイ
トに、静かに腰を低くして尋ねた。

その高橋の肩を叩いたクラスメイトは、背は高橋と同じ程度の背の高さだったが、
髪の毛はすこし短めで、顔は少し丸みを帯びていて、子猫の様な可愛らしさを持ち合わせていた。

クラスメイト「あの〜、初めてで申し訳ないのですが、今日、数学の教科書
       を忘れてきたんですけど、良かったら見せて欲しいんですけど・・・・・・・・。」

その高橋の隣に座っているクラスメイトは、かなりオドオドしていていた。

高橋「(え?授業初日から忘れ物?本気?)
   え・・・・、う、うん、別に良いよ・・・・・・・。」

クラスメイト「ほ、本当ですか?あ、ありがとうございます。」

そのクラスメイトは水を得た魚の様に嬉しそうな顔をして、頭を何度も高橋に
下げた。

まあ、その後、数学教師に2人とも睨まれた事は言うまでも無い。
24 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/20(土) 00:09
高橋にとって、長い長い数学の授業が終わった。
高橋は今まで息の詰まるような空間から開放されたかのように、ふう〜〜〜〜、
と深い溜息をつきながら、また話す友人の居ない、鋭い痛みを伴う孤独感を紛
らわせる為に、両眼を閉じながら机の上の組んだ両手の上に顔を潜らせた。

眼を開いていれば、周り一帯の友人の居る幸せそうなクラスメイト達の顔を見
なくてはいけない。
それが何事にも耐え難い苦痛でしかなかった。

そんな時だった。

クラスメイト「あの〜〜〜〜・・・・・・・・・・。」

先程、数学の時間に教科書を見せてあげたクラスメイトの、これまたオドオド
した声色が高橋の耳に止まった。

高橋「え・・・・・・・・・・・?、なに?」

高橋はその重くなった顔を上げた。

クラスメイト「あの〜〜、先程はどうもありがとうございました。
       お陰で助かりました。」

そう言うと、その女子クラスメイトは礼儀正しく頭を下げる。

高橋「え?あ、そんな事気にしないで。困った時はお互い様じゃない。
   私の名前は高橋愛って言うの。あなたは?」

クラスメイト「え?わ、私の名前ですか?
       あ、あの〜、こ・・・・・・、『紺野あさ美』と言います。
       す、すいません。すこし緊張しちゃって・・・・・・・・。
       私、名前を聞かれるの久しぶりなもので・・・・・・・・・・。」

その紺野と名乗る女子生徒は、また顔を赤らめ、激しく恥ずかしがった。
25 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/24(水) 23:12
キーンコーンカーンコーン・・・・・・・・

本日の最後の授業の終わりを告げる鐘の音が鳴る。

高橋は長い重圧に解放たれたかのような安堵感に包まれた。
急いで帰り支度を済ませると、鞄を担いで急いで『昨日の場所』に向かおうと
した。
『昨日の場所』とは勿論、安倍と出会った体育館脇の狭い場所である。
高まる心臓の鼓動を抑えつつ、手際良く教科書やノートを鞄の中にしまい込む。

高橋はふっと隣の紺野の席が眼に入った。
そこには紺野の姿はもうなかった。

高橋(見かけによらず、行動が早いな。)

そんな事を思いつつ、高橋は教室を出た。

高橋が玄関を出た時、ポプラの木々からの木漏れ日がその顔を照らし出す。
26 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/24(水) 23:40
体育館の脇、すぐ隣を大きな川が流れる猫の額ほどの狭い空間。
アスファルトの敷き詰められていて、体育館のせいで太陽光が遮られていて、
1日中影に覆われているスペース。
そこが昨日、高橋が安倍と出会った『約束の場所』だった。

高橋が昨日と同じ様に、体育館のすぐ横を通っているレンガ製の小道を進めば
そこには、昨日と同じ光景が待っていた。
昨日同様、小刻みに聞こえる激しい打撃音が耳に入ってくる。
恐らく、安倍の壁打ちの音であろう。
何1つ昨日と変わっていない。

ただ1つ変わっていると言えば、昨日、安倍の壁打ちを眺めていたその場所に、
高橋以外の誰かが居る事だった。

後姿しか見えなかったが、姿格好からして高橋と同じくらいの年齢の女子生徒
らしい。
高橋は、その女子生徒に気付かれないように観察していると、輪郭は分からな
いものの、体全体が丸みを帯びている。
しかし、その女子生徒の履いているスカートから出ている長い脚は、ふっくら
とした体とは裏腹に、脂肪という脂肪を絞りつくしたかの様な、すらっとした
筋肉の引き締まった脚が、何よりも眼を惹いた。

高橋が1歩、また1歩、その後姿の女子生徒に近づいた。
1歩1歩近づく毎に、何処かで見た事があると、高橋は感じていた。

高橋がその後ろ向きの女子生徒に、あと1歩と言うところで何かに気付いた。
27 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/24(水) 23:52
高橋「あ、あさ美ちゃん!?」

高橋が素っ頓狂な声を上げる。
その高橋の声に驚き、その女子生徒が高橋の方向を向く。

紺野「え!?・・・・・・・あ、愛ちゃん!?」

紺野も今、やっと背後の高橋に気付いたらしい。

高橋「あさ美ちゃん、こんなところで何してるの?」

紺野「愛ちゃんこそ・・・・・・・・、どうしてこんな所に?」

高橋と紺野が面と面を向けて話していると、向こうから安倍がラケット片手に
2人のもとにやって来た。

安倍「あ!いらっしゃい!愛ちゃん待ってたよ!」

安倍が汗だくになりながらも、いつもの笑みで2人に話しかける。
28 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/25(木) 00:16
安倍「愛ちゃん、約束通り来てくれたんだ。ありがとうね。
   ところでこちらの方は?」

安倍が紺野の方を見ながら尋ねる。

紺野「あ、あの・・・・、初めまして。
   わ、私、愛ちゃんのクラスメイトの紺野あさ美と言います。」

紺野は高橋と会った時と同じ様な、とても恥ずかしそうな仕草を見せた。
もう顔は当然、耳の先までが真っ赤であった。

安倍「紺野あさ美ちゃんだね?私は安倍なつみ。こちらこそよろしくね。」

安倍は子供の様にとても嬉しそうな笑顔で紺野を迎えた。

安倍「ところで、あさ美ちゃんはどうしてこんな所に居るの?」

紺野「あ、あの〜、私、テニスに興味があって、帰ろうとしたら安倍先輩がテ
   ニスラケットを持ってこっちの方向に来るのが見えたので、つ、つい・・・・・・。」

安倍「ほんと〜!!あさ美ちゃんもテニスに興味があるの!?
   なっち嬉しい!!」

安倍が笑みを溢しながら、キャーキャー言いながら叫んでいると、

??「なっち〜、そこ子達が昨日言ってた子?」

突然、安倍の後ろから子供っぽい無邪気な声が響いてきた。
安倍の背後から現れたのは、背が以上に低い髪の毛が茶髪の人形の様な可愛ら
しい風貌の女の子だった。
29 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/25(木) 00:34
安倍「あ!やぐち〜!そうそう。なんか2人になっちゃったけど。」

安倍に『矢口』と呼ばれたその少女はふ〜〜ん、と言いながら2人のもとに
歩いてきた。

安倍「あ、2人に紹介しておくね。このちっちゃい子は『矢口真里』って言うの。
   こう見えても私と同じ高校3年生なんだ。」

矢口「ちっちゃいって言うな!ったく・・・・・・。」

そう言いながら、矢口は高橋と紺野をまじまじと見つめた。
とは言えほんの数秒の間だが・・・・・・。

矢口「・・・・・・・・・・。
   あなた達2人とも、テニス経験者でしょ?」

矢口がいきなり2人に聞いてきた。

安倍「あれ?矢口、私、この2人がテニス経験者って事言ったっけ?
   高橋についてはテニス経験者ってことも言ったかもしれないけど、紺野
   については今、来たばっかりだから何も知らないはずでしょ?
   何で知ってるの?」

安倍が不思議そうな表情を浮かべながら、矢口に聞いた。

矢口「な〜〜に、簡単だよ。この子達の掌を見ただけ。」

矢口はそう言いながら2人の右の掌を自分の胸の高さまで持ち上げた。
30 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/03/25(木) 00:50
矢口「あんた達さ、2人とも右利きでしょ?」

高橋「はい、そうですけど・・・・・・・・・。」

紺野「私も・・・・・・・・・。」

安倍「え〜〜、何でそんな事分かるの〜!?」

矢口は自慢げな顔をしながら答える。

矢口「そんなん簡単だよ。この2人、微かだけど右手の掌の特定の部分に豆
   みたいな物の跡が残っているんだよ。
   人差し指と親指の間とか、小指のすぐ下の部分とかさ。」

高橋と紺野は揃って自分の右手をまじまじと凝視する。
確かに、そう言われてみれば豆らしき物の痕跡が残っている事は残っているが
言われなければ見逃してしまうほど、微かであった。

高橋(今まで、自分自身でも気付かなかったのに、この矢口って言う先輩は一
   目見て右手の跡を見つけるなんて・・・・・・・・。
   この人すごい観察眼の持ち主なんだ・・・・・・・・・・。)

高橋は心の中で頷いた。
31 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/04/02(金) 14:30
その時、高橋はある事をふっと思った。

高橋「あの〜〜、安倍さん、矢口さん・・・・・・・・・1つ聞いても良いですか?」
  
安倍「ん?何?」

高橋「安倍さん達はどうしてこんな体育館脇の狭いところでやっているんですか?
   きちんと整備されたテニスコートなら、向こうのグラウンドにあるじゃ
   ないですか?」

安倍・矢口「え・・・・・・・!?」

高橋がその言葉を発した途端、安倍と矢口の表情が明らかに曇った。
その2人の表情を察して、高橋と紺野も一瞬戸惑った。

高橋「ねえねえ、あさ美ちゃん。私何か変なこと言っちゃったかな?」(小声)

紺野「さあ・・・・・・・・・。でも雰囲気的になんか気まずいよ。」(小声)

高橋と紺野が小声で耳打ちをしていると、安倍が口を開いた。

安倍「ン〜〜〜〜・・・・・・・・・・・。
   実を言うとね、正確に言うと私達はテニス部じゃないんだよ。」
   
32 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/04/02(金) 14:49
高橋「え・・・・・・・・・・??
   テニス部じゃないってどう言う事ですか?」

安倍「愛ちゃんもあさ美ちゃんも見えると思うけど、ここからグラ
   ウンドの反対方向にテニスコートが見えるでしょ?」

安倍がそう言うと、指でその方向を指した。
それに釣られて、高橋と紺野が後ろを振り返った。

そこには確かに綺麗に整備された8面のテニスコートが敷かれていた。

安倍「確かにね、この学校には様々な最新鋭の設備が整っているだよね。
   テニスコートだってコンクリートが敷かれていて、人工芝だ
   けど綺麗に整えられている。
   でも、私達はそのテニスコートの使用が許されていないの。」

安倍は何とも寂しそうな表情を浮かべて言った。

紺野「え?使う事が許されていないって、一体どう言う事ですか?」

矢口「あんた達も知っているでしょう?
   この学校でまともに機能している部活動なんて無いって。
   
   生徒達も学業優先で、部活はあくまで気分転換、息抜きでし
   か考えてないし、学校側だって部活動に一生懸命になっても  
   もらったら、学業に支障が出るからって良い眼で見てくれな
   い。まあ、進学率が売りの高校だからしょうがないんだけど
   ね。」

矢口も安倍に続いてそう言った。
33 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/04/02(金) 15:09
安倍「私達も最初はテニスがしたくてテニス部員だったんだけどね。
   でも2人も分かると思うけど、『テニス部』って言う名前だけで、
   実際はまともな活動はしなかったんだ。

   たまに軽くテニスをする事もあるけど、ただ単にお喋りしたり、バレー
   をしたり、歌ったり踊ったりするだけで、私達が期待した部活動とは
   思いっきりかけ離れていた。

   だから私達は『テニス部』を退部して、独立して『テニス同好会』とし
   て、ここで活動しているって訳。」

しばし、4人の間に静寂が訪れた。

高橋「でも・・・・・・・・・・・、そんなのおかしいじゃないですか!?
   真剣に部活をしようとしているのは安倍さん達じゃないですか!?
   それなにの、何で安倍さん達が移動しなくちゃいけないんですか?」

矢口「私達も顧問の先生にそう言ったんだよ。
   言った事は言ったけど、門前払いだったわけ。」

高橋「ど、そうしてですか!?」

高橋が怒りを露にした。

安倍「私達も最初はそう思ったんだけど、その後顧問の先生の話によると、
   向こうのテニス部の部長が、この学校の理事長の孫らしいんだって。」

安倍が苦笑いをしながら言った。
34 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/04/02(金) 15:28
高橋「じゃあ、顧問の先生は向こうに理事長の孫である部長がいる
   から下手な事が言えないって事ですか?」

安倍「らしいよ・・・・・・・・・・。
   当時の顧問の先生が申し訳なさそうに言ってたけど・・・・・・・・。
   確かにそうだよね、理事長の孫に下手な事言ったら、自分の
   首が無くなるかもしれないもんね。
   顧問の先生は悪くないよ・・・・・・・・・。」

安倍が必死に辛い顔を我慢して、笑顔を絶やさないように努めてい
るのが良く分かる。

安倍「『テニス同好会』だから公式戦には出場出来ない。
   それでも、私達はテニス部を辞めた事は後悔していない。
   だって毎日楽しいもん。」

安倍は太陽の様な、満円の笑みを浮かべた。

紺野「それでも、2人だけ同好会って言うのは辛くないですか?」

矢口「え?2人?
   違うよ。テニス同好会は私達2人だけじゃないよ。
   実はもう2人いるんだ。」

高橋・紺野「へ!?」

矢口がそう言うと、高橋と紺野は素っ頓狂な声を上げた。
35 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/04/02(金) 16:07
安倍「あ!そうか、愛ちゃんとあさ美ちゃんはあの2人を見たこと無いんだっけ?
   あの2人は今、ランニングに行ってるからもう少ししたら帰ってくるよ。」

安倍がそう言うと、高橋と紺野の背後から2組の足音が聞こえてきた。
1つは軽やかな足音だが、もう1つの足音は重々しく力尽きたような感じの
足音だった。

その2つのは次第に4人に近づいてくるのが分かる。

安倍「お、噂をすればなんとやら。その2人が帰ってきた。」

当の2つの足音の主が姿を現した。

??「ちょっと待ってよ〜〜、梨華ちゃん速過ぎ〜・・・・・・・。」

髪の毛が短く茶髪で、見た目が男っぽい人物が、激しく息を切らしながら、
明らかにランニングでばてたのであろう、足元が覚束なく両眼が死んでいた。

???「もう、今日はいつもよりスピード落としたのに・・・・・・・・。
    よっしぃーは相変わらず体力無いよね。」

もう1人は、今の人物と違って殆ど汗をかかず息も切れていなかった。
何とも可愛らしく高いアニメ声が特徴の少女だった。
肩まである黒髪を風で揺らしながら、軽い足音を響かせやってきた。
36 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/06(火) 11:30
更新お疲れ様です。
お、あの2人の登場だ。
ん〜このメンツでどういった物語になっていくのか・・・。
続きも楽しみですねぇw
37 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/04/21(水) 13:39
「名も無き読者」さん、ありがとうございます。

このメンツ、さあ??と???は一体誰なのでしょうか?(ネタバレかな?)

ここで作者の独り言ですが、テニスの団体戦はダブルス2つ、シングルス3つで戦
かいますね?ってことは合計7人必要なんですよ。
でも現在の登場人物は高橋・紺野・安倍・矢口・??・???の6人」。
ってことはもしかしたら、もう1人くらい登場するかもしれませんね。

お楽しみに〜。
38 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 15:58
???「安部さん、ただいま。」

髪の長い方の少女が、その独特の声色を響かせながら言った。

安倍「お帰り、石川。今日はどのくらい走ったの?」

安倍はその少女を石川と呼んだ。

石川「今日はヨッシーが疲れたって言うから、少し距離は落としたつもりなんですけ
   どね。
   それでもヨッシーばてちゃったみたいで・・・・・。」

そう言うと石川は、ちらりと、隣で肩で息をしている背の高く、髪の短い少女の方を
見た。

??「何が少し距離を落としただよ!そんな涼しい顔しやがって・・・・・・。」

ヨッシーと呼ばれたその少女は、かなり息が切れていて、聞き取ることが困難だった。
39 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 16:08
石川「あれ?ところで安部さん、この御2人さんは?」

石川が早速、高橋と紺野の存在に気付いたようだ。

安倍「ああ、そうだった。石川達にも紹介しておくね。
   高橋愛ちゃんと、紺野あさ美ちゃん。
   別に、うちに入る入らないは別にして、練習を見にきてくれたんだ。」

石川「高橋さんに紺野さんね?初めまして。私の名前は石川梨華。よろしくね。」

先程以上に、そのハスキーボイスが耳に響いてきた。

安倍「んでもって、あそこで息を切らしながら死んでるのが吉澤ひとみって言うの。
   みんなはヨッシーって呼んでるんだけどね。」

安倍が指差すほうには、日陰になっている体育館の外壁に背を凭れながら、俯いて表情が
すでに死んでいる吉澤の姿があった。

と、そこへ高橋と紺野の前に石川が顔を出してきて尋ねた。。

石川「ねえ、2人とも。あなた達はテニスやる気無いの?」
40 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 16:16
高橋「え、テニス・・・・、ですか?」

高橋は思わず、隣に立っている紺野と顔を合わせた。

石川「あなた達、何処にも部活動に所属していないんでしょ?
   そんでもって、私たちの練習に興味があるんだったら、どお?
   うちらのテニス同好会に入部(入会?)する気無い?」

紺野「え、入部する気・・・・・・・・ですか?」

高橋と紺野は正直、困った。

高橋「わ、私は別に、そんなテニスをする気は・・・・・・・そんな・・・・・・。」

紺野「私も、そんなテニスなんて・・・・・・・・。」

高橋と紺野は揃って、石川と視線を外し、俯いたりしながらその申し入れを拒んだ。

確かに、矢口の言ったように2人はテニス経験はあることはあった。
しかし、どう言う訳か2人とも、あまりテニスをすることに引けを感じていた。
41 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 16:27
石川「このテニス同好会もまだ部員(会員?)が4人しかいないの。
   だからさ、1人でも多くの部員が欲しいの。
   だからさ、お願い!良かったらさ・・・・・・・・。」

石川がそこから先を言おうとしたとき、

安倍「石川。いい加減にしなさい。」

石川の背後から安倍の、静かながらも口調のはっきりとした強い声が聞こえた。

石川「え、で、でも・・・・・・・、安部さん・・・・・。」

安倍「いい加減にしなさいって言うのが聞こえなかった?
   見てみなさい。2人とも困っているでしょ?
   確かに、テニス同好会は4人しかいないけど、今までそれで十分だったでしょ?
   この2人は、ただ私たちの練習を見にきてくれているだけ。
   分かった?石川?」

再び、安倍の厳しい口調が石川の耳に刺さる。

石川「・・・・・・。どうもすみませんでした・・・・。」

石川が申し訳なさそうに頭を深々と下げる。
42 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 16:39
安倍「ごめんね、2人とも。石川の言ったことなんか気にしなくていいからね。」

今度は安倍が申し訳なさそうな笑顔で、高橋と紺野の2人に謝った。

高橋「え、ああ、大丈夫ですよ。ぜんぜん。
   気にしてませんから・・・・・・・・・。」

紺野「わ、私も気にしてませんから。
   あ、そろそろ帰らなくちゃいけませんから、ここで私達は失礼します。
   行こう、愛ちゃん。」

高橋「う、うん。それじゃあ私も今日はこの辺で・・・・。」

そう言うと2人は、この場の湿った雰囲気から逃れようとしてか、そそくさと、体育館脇の
テニスコートから姿を消した。

安倍「うん。じゃあ、またね・・・・・・・・・。」

安倍は緋色の夕陽と重なっていく2人を見送った。

そこからしばらく、アスファルト上のテニスコートで静寂が現れた。

矢口「2人とも帰っちゃったね・・・・・・・。」

矢口が静寂の空間にぽつりとこぼした。

安倍「うん、そうだね・・・・・・。」

安倍ももの悲しそうに返した。
43 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/02(日) 16:46
矢口「ねえ、なっち。なっちも本当はあの2人に来て欲しかったんじゃないの?」

安倍「ん〜、まあね。正直テニス同好会に欲しい2人だったよ。」

矢口「じゃあ、なんで梨華ちゃんにあんなこと言ったの?」

安倍「だって悪いじゃん。あの2人は「もっとやりたい何か」があるかもしれないんだよ。
   高橋と紺野の2人が自分からやりたいって言うなら良いけど、
   私たちが無理矢理引き止めちゃ、あの2人が可哀想だよ・・・・。」

安倍は持っていたテニスラケットを掌でくるくると器用に回しながら言った。
44 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/09(日) 22:22
はじめまして。紺ファンです。こうゆう感じのやつ大好きです。
これからもここに来ますのでよろしくお願いします。
とゆうわけで更新待ってます。
45 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/11(火) 12:45
「紺ちゃんファン」さん、始めまして。どうもありがとうございまっす。

紺野のファンですか?安心してください、紺野はこれから活躍していくはずですよ。
陰ながら応援してあげてください。

更新のほうは、皆さんお気づきの通りかなりいい加減です。
そこらへんはあまり気にせず読んでください。
46 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 12:56
一方そのころ高橋達は安倍達の居た体育館脇のテニスコートを抜け、校門から玄関
に向かって延びている並木を歩いていた。

その並木は両脇を綺麗な桜の木々で覆い尽くされている。
柔らかな陽の光は反射しながら輝いている葉々が、高橋達を覗いていた。

高橋「ふう〜〜〜・・・・。」

紺野「ふう〜〜〜・・・・。」

両者は軽い溜息をした。

紺野「ねえ、愛ちゃん・・・・・・・。どうする?」

紺野が高橋に向かって話し掛けた。

高橋「どうするって・・・・・・何が?」

紺野「何がって、安倍先輩たちのテニス同好会のこと。」

高橋「う・・・・・・・うん・・・・・・・・・。」

高橋は俯いたまま答えた。
47 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 13:11
少し歩いていくと、2人は長い歩道脇の整備されたテニスコートが目に付いた。
そのテニスコートは床が天然芝で覆われていて、全部で8面あり、照明装置も完備
されている、まさに最新鋭の設備が整っている、さすが天下の「聖学」を思わせる
のに十分な場所だった。

高橋と紺野はふっと、その場で立ち止まった。
そのテニスコート内には数人の男女が、別にテニスをすると言うわけでもなく、
ただベンチに座って馬鹿でかい声で話をしていたり、あるいはまた訳のわからない
遊びをして、そこを支配していた。

その足元にはお菓子のゴミや、先程遊んでいたのか、ぼろぼろのテニスラケットや
ボール、今度は野球の古い木製バットや、しぼんだバレーボールなんかが散乱していた。

テニスラケットも、グリップがすでに折れ曲がっていた。

そんな時、ベンチに座っていた1人の女子生徒が高橋と紺野の2人の存在に気付いた。

女子生徒「ん?な〜にあんた達?もしかして入部希望者?」

高橋「え??」

紺野「いえ、別に。私達はただ見ていただけで・・・・・・・・。」

高橋と紺野はその話し掛けた女子生徒の化粧の濃さにすこし引いた。
48 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 13:26
女子生徒「ね〜、タク、タク!入部希望者っぽい奴が来たよ!」

その厚化粧の女子生徒は、高橋達の言葉も聞かず、「タク」と言う人物を呼んだ。

高橋「いえ・・・、だから私達は別に入部希望とかそんなんじゃなくて・・・・・。」

高橋が必死で弁解しようとしていると、向こうのほうから1人の男子生徒がやって来た。

タク「いや〜、いらっしゃい。我が聖学テニス部へようこそ。
   僕がこのテニス部の部長の「雪斬拓馬(ゆきぎり たくま)」だ。
   名前が拓馬だから、通称タク。よろしく!」

タクと呼ばれた人物は、高橋達に満円の笑みを投げかけた。

高橋「テニス部の部長・・・・・・・?」

高橋はその言葉を聞いたとき、何かを思い出した。

高橋・紺野「そうだ!!」

2人はその一言で、互いの顔を見合わせた。

高橋「ねえねえ、あさ美ちゃん。確か聖学のテニス部部長って・・・・・・。」

紺野「そうだよ、安倍さんが言ってたけど、テニス部の部長ってここの理事長の孫なんだっけ。」

高橋「そう言えば、ここの理事長の名前も「雪斬」って変わった苗字だったから覚えてる。
   間違いないよ。この人、理事長の孫だよ・・・・・。」

高橋と紺野は、相手に気付かれないようにひそひそ声で話した。
49 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 13:45
雪斬「君達は、テニス部の入部希望者なの?」

紺野「いえ。別に私達は・・・・・・・。」

紺野が慌ててそう言おうとした時、

高橋「あの、すみません。雪斬さんにお伺いしたいことがあります。」

高橋が紺野の言葉を遮った。

雪斬「ん?なんだい?」

高橋「このテニス部はいつもはどんな活動をしているんですか?」

雪斬「何でだい?そんなこと聞いて何になるんだい?」

高橋「いえ、何となくですけど・・・・・・・・。」

雪斬「どんな活動って、別に、いつもこんな感じさ。」

高橋「え?いつもこんな感じなんですか?」

高橋は改めて、テニスコート内の荒れ模様を、痛々しい眼で眺めた。
50 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 13:53
高橋「テニスの練習とかしないんですか?」

雪斬「何で?」

高橋「な、何でって・・・・・・・」

高橋は雪斬の意外な反応に困った。

雪斬「なんで、親しい友人と楽しく集まってまで、そんな汗かいて疲れる思いしなく
   ちゃいけないのさ?
   僕たちは、好きなことを、好きなときに、好きなだけするのさ。
   だから、決まった活動時間も活動内容も無い。
   そっちの方がアットホームで楽しいだろ?
   部費だって、おじいちゃんに頼めば好きなだけ出してくれるから、使い放題。
   どうだい、楽しいもんだろ?」

高橋「そ、そんな・・・・・・・・・・。」

高橋は雪斬の言葉に言葉も失った。
こんな事を、さも当然に言う雪斬が信じられなかった。
51 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/11(火) 14:13
高橋「じゃあ、別に部活でこのテニスコートを使わないんでしたら、ほかに使いたい人が
   いるんだから、その人達に貸したら良いじゃないですか?
   例えば、体育館脇にいるテニス同好会とか・・・・・・。」

雪斬「テニス同好会?
   ああ、確か安倍がいるところじゃなかったっけ?
   あいつまだテニスしてたのか。本当に馬鹿だよな?」

紺野「馬鹿って、そんな言い方ないんじゃないですか?」

今まで黙っていた紺野も、ついに反撃に出た。

雪斬「ったく、君達は何をそんなにカリカリしているんだい?
   あいつはこのテニス部を退部して、テニスを続けている、言わば裏切り者だぜ?
   そんな奴に、この僕のテニスコートを貸すわけないだろ?
   それに、そもそもこのテニスコートは僕たちも物なんだ、僕たちがいつ、どう使って、
   誰に貸そうと、僕等の勝手だろ!?」

高橋「じゃ、じゃあ、せめて、安倍さん達に大会に出してあげるくらい・・・・・・・。」

雪斬「あーーーー!!五月蝿いな!!ウザいんだよお前達は!
   こっちが下出に聞いてりゃあ、安倍さん、安倍さんって馬鹿の1つ覚えみたいに
   騒ぎやがって。
   いいか!こっちは理事長の孫だぞ?その気になればお前達を退学にすることも
   僕には可能なんだぞ?
   そうなりたくなかったら、とっとと帰えろよ!
   ったく、今日はもう冷めちまったな。
   みんな、帰ろうぜ!」

そう言うと雪斬を先頭に、残りのテニス部員達も高橋達に向かって、「ばっかじゃないの?」
「さ〜い〜あ〜く〜」、「調子に乗るんじゃね〜よ。」などと罵声を浴びせながら
テニスコートから帰っていった。
52 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/11(火) 22:58
作者様、更新ありがとうございます。
安倍さん達、もちろん紺野さん達もどうなるんでしょうか?
これからも更新がんばってください!!
53 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/31(月) 13:44
「紺ちゃんファン」さん、今回も御感想の方、ありがとうございます。
どうもすいません、更新が遅くなりまして・・・・・・。
自宅にインターネットが導入されたら、もう少し更新がてきぱきできると思うのですが。

安倍さん、紺野さん、そして高橋やいしよしペアまで出てきまして、これからどんな展開に
転がるのか、作者の自分が教えて欲しいです。
とにかく、少なくとももう1人出てくる予定ですので、そこまではお楽しみに。
54 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 13:56
高橋と紺野は、雪斬達が立ち去ったテニスコートに残された。
ただでさえ広いテニスコートが、2人だけになり、さらに一層広く感じる。

高橋が視線をテニスコートを囲っている金網フェンスの上の方に移した。
そこにはでかでかと、

「テニス部員以外立入禁止」

と書かかれた看板が眼を引いた。

その看板を眺めた後、高橋は背中にかばんを担いだまま、テニスコート内に足を踏み入れた。

紺野「あれ?愛ちゃん、どうしたの?」

紺野が高橋に向かって、不思議そうに聞くと高橋はフェンスにより掛けてあった古い
テニスラケットを見つけ、やさしくその手で握り拾った。

高橋にはそのテニスラケットを握った感覚が、いとおしい位に懐かしかった。

よく見ると、今拾ったラケットのすぐ脇にも、同じようなテニスラケットが何本も
転げ落ちていた。
高橋はゆっくりと腰を下ろしながら、そのうちの1本を逆の手で拾い上げた。
そして、それらのラケット全てを、静かに見つめる。

紺野「愛ちゃん・・・・・・・・・・?」

高橋「・・・・・・・・・・。
   ねえ、あさ美ちゃん?あさ美ちゃんはテニスしたことがあるんだよね?」

高橋がゆっくりと尋ねる。

紺野「え?うん、中学校の時はやったことあるけど・・・・・・・・。」

高橋「1ゲームしない?」

高橋は今拾ったテニスラケットを紺野に向けて差し出した。
55 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 14:21
紺野「え?ゲーム??」

高橋「うん!やろう!」

高橋は紺野の返事も聞かず、担いでいたかばんを、ベンチの上に勢い良く投げ捨てると、
コートのネットを挟んで向こう側に移った。

紺野は高橋から指し出されたラケットを握ったまま、訳のわからぬまま、コート内で
構えることとなった。

高橋と紺野が、天然芝の綺麗に整ったテニスコートを対角線に並んだ。
もう陽が傾いているせいか、オレンジ色のコート上に2人の創り出した影が、もうすでに
その背を高くしていた。

高橋「あさ美ちゃん、行くよ!」

そう言うと、どこから持ってきたのであろう、少し泥で汚れたテニスボールを自らの
真上に、高々と投げ出した。

サーブである。

高橋の身長は150cmそこそこである。
そんな、お世辞でも高いとは言えない身長をさらに縮め、ボールが最高点を過ぎ、落下
してくるところを、タイミング良く溜め切っていた翅を開放して、ラケットと共に
大きく振りぬいた。

多少?不恰好ながらも、ラケットに打ち抜かれたボールは小さな放物線に従って、
紺野の居るコートに落下し、紺野のすぐ横を通過しようとした。

先程まで、訳が分からなかった紺野も、無意識に体が反応したのか、その右手に
握られたテニスラケットを振り上げ、高橋のサーブをスイートスポットで完璧に捕らえ、
そのまま、ストレートに、また高橋のコートに返球した。

その返球されたボールは高橋のラケットに、行く手を遮られること無く、コートに
突き刺さり、そのまま高橋の後方へと消えた。
56 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/05/31(月) 14:33
この度は、「一球入魂!」を呼んでいただき、誠にありがとうございます。
今回はこのテニス小説を読んでいただくにあたって、テニスのこと殆ど(全く)知らない
と言う人も居られるかもしれません。
そこで、作者から簡単なテニス用語講座を作らせて頂きました。
とは言う物の、作者もテニスのことは齧った程度で、殆ど知りませんので、
もしかしたら、間違った物も出てくるかもしれませんので、そこの所はスルーして
頂いて構いませんので、よろしくお願いします。

サーブ・・・・ゲームを開始する際、または得点が決まったときに、プレイヤーが
       順番に、自分でボールを投げてそれを打つショットのこと。
       このサーブは、打つとき、決まった場所に打たないと、相手の得点に
       なってしまうんです。

スイートスポット・・・・・テニスラケットの網の部分を「ガット」言いますが、そのガットの
             中心部分を「スイートスポット」と言います。
             このスイートスポットにボールが当たると、ボールが良く飛ぶんです。

ガット・・・・今言いましたが、テニスラケットの網の部分を「ガット」と言います。
57 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 14:45
高橋「さっすが、あさ美ちゃん。」

高橋は構えていたラケットを下に下ろすと、後方のフェンスにぶつかったテニスボールを
取りに行った。

紺野(うそ・・・・・・・・・。)

紺野は心の中でその同じ言葉を、何度も何度も反芻しながら、自分のラケットを握っていた
右手の掌を見つめた。
テニスを止めてもうすぐ1年になる、矢口にテニス経験者と言われたその右手を。

高橋「あさ美ちゃん、すごいね。リターンエースじゃん。
   あさ美ちゃん実はとっても強いんじゃないの?」

紺野「・・・・・・え?、そんな。別に・・・・・・」

紺野は高橋の声で、今まで飛んでいた意識を戻し、戸惑いながら答えた。

高橋「15−0だね、でも今度はそう簡単には決めさせないよ!」

高橋は意気込んで、再びあのテニスボールを握り締めた。

紺野「愛ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

この時、紺野は今まで、心の中で息を潜めながらひっそりと佇んでいた、何か不思議な
感覚に襲われた。
それは、楽しく、ホッと出来て仄かに熱い物だった。
58 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/05/31(月) 14:52
リターンエース・・・・相手が打ったサーブを返球し、相手が触れることができずに得点に
           なったとき、「リターンエース」と言います。
           他にも「サービスエース」もあります。

サービスエース・・・・自分の打ったサーブが、相手に触れられることなく得点になったとき
           「サービスエース」と言います。

15−0・・・・・テニスの得点の数え方。
         テニスは1点目が決まると15ポイント、2点目が決まると30ポイント、
         3点目が決まると、40ポイントになります。
         そして4点目が入ると、そこで1ゲーム終了、てな具合になります。
59 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 15:03
紺野は再び、その熱き物が宿った右手にテニスラケットを握らせ、高橋のサーブに
備えて、腰を軽く下に下ろした。

高橋が右手にラケットを握りながら、左手でボールを地面とバウンドさせながら、
なにやら考え事をしていた。
やがて、高橋がボールをしっかりと握りなおし、サーブを打つ体勢になった。
その時、

高橋「ねえ、あさ美ちゃん?あさ美ちゃんはさ・・・・・・・・・」

高橋は一旦そこで言葉を切り、先程と全く同様にテニスボールを上空に投げ出した。
体を弓の様に曲げ、投げて落下してきたボールをラケットで捕らえんとする。

高橋「・・・・・・・・どうしてテニスを始めたの?」

高橋の発した言葉とほぼ同時に、高橋のラケットがボールを鋭く捉える音がした。

バシューーーーーン!!

硬く乾いた音が、紺野の鼓膜を震わした。
60 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 15:26
先程よりも鋭さを増したサーブが、紺野の懐に飛び込んできた。
紺野も負けじと打ち返す。

紺野「愛ちゃんは?」

紺野の打ち返した、少し緩い放物線は高橋の目の前に落ちた。

高橋「私?私はね、実を言うと中学校時代、テニスがしたくてテニス部に居たわけじゃ
   ないの・・・・・・。」

高橋はそのボールを打ち返す。

紺野「え?」

高橋から打ち返された、何の変哲も無いボールを、紺野は打ち損ねてしまった。
さっきよりも軌道が低く、そのまま中央に張ってあるネットに遮られて、そのまま
紺野のコート内に落ちた。
勢いを失ったボールが、風の吹くまま、コート上をゆっくりと転がった。

高橋「・・・・・15−15。・・・・実はね、その頃私あんまりテニスに興味が無かったの。
   でも仲の良い友達がテニス部に一緒に入部しようって言ったから、私もテニス部に
   入部したの。
   最初は球拾いだけしかできなかったけど、別に強くなろうとか思ったこと無くて・・・・、
   友達と一緒におしゃべりができる時間が増えたから、最初は別にこのままでいいかなって、
   
   でも、その友達はもとからテニスが好きだし、しかも親が元テニスプレイヤーで、
   プロ1歩手前まで行く位の実力のある人だったらしいから、英才教育受けて、
   かなり実力もあったの。
   だからすぐに試合とかに出て、練習もハードに成っていって、少しずつ話す時間
   だとか、会う時間すら無くなっていったの。

   友達と話す時間が無いから辞めます、なんて言えないからそのまま、テニス部続けて
   3年間経っちゃった。
   結局、その友達はテニスの名門校に進学が決まって、高校からは別々の学校に
   通うことになって、それっきり会ってない・・・・・・・・・・。

   そう言うあさ美ちゃんは?」
61 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/05/31(月) 15:39
紺野「私もテニス部に仲の良い友達が居たの。
   私はもとからテニスに興味があったから、その友達と一緒にテニス部に入部
   したの。
   私の中学校のテニス部はそんなに強くなったし、私も友達も楽しく、勝ち負けに
   拘らないような、そんなテニスをしていたの。
 
   でね、3年生になったとき、その友達は「もっとテニスがしたい。もっとテニスが
   上手になりたいからテニスの有名な高校に進学したい。だからあさ美ちゃんも、
   一緒に同じ高校に行こう。」って言ってくれたの。

   私は嬉しかった。私も3年間テニスをやってたけど、もっと強くなりたいって
   感じたことは何度もあった。
   でもできなかったの。
   私は両親に半強制的に新学校への進学を決められていて、3年生の春までしか
   部活をやらせてもらえなかった。
   どんなにテニスがしたいと言っても、親にはわかって貰えず、その友達との約束は
   守れなくて、テニスも諦めて、この聖学に来たの。

   学業だけで、部活がぜんぜん有名じゃないこの学校に来たとき、最初は全然、
   つまらなかった。
   でも、安倍さんを見たとき、なんだかまたテニスがしたいって思えてきちゃって・・・・。」
62 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/05/31(月) 20:14
作者さま、お久しぶりです(?
紺野さん、そして高橋さんは救われるのでしょうか?
つづきにさらに期待です。
(うまくいくといいですね(?))
63 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/13(日) 15:55
「紺ちゃんファン」さん、お久しぶりです(?)

高橋と紺野も過去に色々あるようですね。
本当にうまくいくと良いですね。(人事のようですが、こちらとしてもこれからどう
展開していくか、本当に微妙なところです。うまく話が展開してくれればいいのです
が・・・・・・・・。)

さあ、これからどんな風に話が繋がっていくのか、作者の自分としても楽しみです。
64 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/06/13(日) 16:03
最初は俯いていた紺野だったが、

紺野「・・・・・・・・・・私は今でもテニスが大好き!
   例え、大切な友達と離れ離れになっても・・・・・・・・・、
   それでも私はテニスが大好き!!」

そう言いながら、紺野は顔を上げて力いっぱい答えた。

高橋「私も!」

高橋も力いっぱい紺野に答えた。
再び、高橋は黄色いテニスボールを構えてサーブの体勢に入った。

高橋「ねえ、あさ美ちゃん?」

紺野「ねえ、愛ちゃん?」

2人の声色が見事に重なった。
2人は互いの目を見合わせた。
65 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/06/13(日) 16:11
高橋「何?」あさ美ちゃん?」

紺野「愛ちゃんこそ、何言おうとしたの?」

高橋「・・・・・・・・・・・・・。
   多分お互い同じこと考えてたと思うよ。」

紺野「何々?」

高橋が小さな笑みを浮かべる。
つられて、紺野も笑みを溢す。

夕陽がさらに高度を落とし、オレンジ色を通り越して、真っ赤な色にコートと2人を
染め上げた。

高橋がボールを宙に浮かべる。
紺野がラケットを両手に持ちながら、そのボールの行方を伺う。

高橋「もし良かったら・・・・・・・・・・・・・・、
   またテニス始めない・・・・・・・・?2人で一緒に・・・・・・・・・。」

高橋の右手に持たれたラケットがスイートスポットで、弾丸の如くテニスボールを
捕らえる。

紺野「やっぱり・・・・、同じこと考えてたね・・・・・・・。」

紺野は自分に向かって打たれたサーブを、体全体を使って反動をつけて、高橋に
打ち返した。
66 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/06/13(日) 16:17
紺野「やろう!!愛ちゃん!!またテニス始めよう!?」

高橋の足元に紺野の打ち返したボールが勢い良く弾む。

高橋「本当!!あさ美ちゃん!!」

紺野「本当!」

高橋と紺野は、互いにラリーを繰り返しながら、まるで会話のキャッチボールのように
一言一言言いながらボールを打ち返しつづけた。

それは日が完全に沈むまで、続けられた。

翌日、高橋と紺野は揃って入部届をテニス同好会に提出したとの事らしい。
67 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/13(日) 20:24
紺ちゃん!愛ちゃん!!がんばれ!!
そして作者さま、応援してますヨ!
がんばってください!楽しみにしってます!
さらに、テニス同好会よ!がんばれ!
68 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/30(水) 14:29
「紺ちゃんファン」さん、ありがとうございます。
今まで更新できなくて本当に申し訳ございませんでした。
これからはもう少しできるだけ早め早めに更新したいと思っています。

テニス同好会にも頑張って欲しい限りです。
69 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/01(木) 18:51
高橋「1年4組高橋愛、出身中学は『福新中学校』です。よろしくお願いします。」

紺野「1年4組紺野あさ美、出身中学は『神海北中学校』です。よろしくお願いします。」

高橋と紺野は安倍達の前で、自己紹介ををして頭を下げた。

安倍「こちらこそよろしく。2人さん。」

安倍もいつものような笑顔で迎え入れてくれた。

こうして高橋と紺野は正式に「テニス同好会」へと入部したのだった。

テニス同好会とは言っても、する事は普通のテニス部とは何ら変わらない。
ただ、この学校のテニス部が2つ存在するようなものであって、勝つ為のテニス、強くなる為の
テニスの練習を行う。

安倍「じゃあ、2人にはまず、ランニングでもしてもらおうかな?」

高橋「ランニングですか?」

安倍「そう、2人はまだ、高校受験明けで体がなまってるでしょ?
   そんな状態で普通に練習しても、怪我しちゃうから、まずは走りこみ。
   これは体育界の鉄の掟。
   石川たちがこれからランニング行くから、一緒に付いていくと良いよ。」

そう言うと、安倍は向こうで入念にストレッチをしながら生き生きとした表情を見せている
石川と、対照的に暗くて溜息ばかりついている吉澤を指した。

それを聞いた横にいた矢口が安倍に駆け寄る。

矢口「なっち!本気!いきなり梨華ちゃんたちと一緒にランニングさせるつもり?」

と言う矢口の問いかけに対し

安倍「ん?なんで?何かおかしい?」

と言って安倍は平然と返した。
70 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/01(木) 19:00
そんな会話をしているとは露知らず、高橋と紺野は安倍の言う通り石川達の元に寄った。
そこへさっきまで安倍と話していた矢口が2人に駆け寄ってきた。

矢口「いい、あんた達?梨華ちゃんとランニングするときは無理するんじゃないよ!
   じゃ無いととんでもない事になるからね?」

紺野「とんでもない事ですか?」

矢口「そう!と・ん・で・も・な・い・こ・と・・・・・・・・。オイラが言えるのは
   それだけだから。くれぐれも気をつけるんだよ!分かった?」

高橋「は、はあ・・・・・・・・」

紺野「分かりました・・・・・・・・。」

高橋と紺野はあいまいに答えを返すと、矢口はまた安倍の居る場所に帰っていった。

矢口「絶対だかんね!」

帰る途中、矢口は振り返りマタ念を押すように2人に言った。

高橋と紺野は頭に疑問符を抱きながら、石川と吉澤とランニングを開始する事となった。
71 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/01(木) 19:08
石川「やったーーーー、ヨッシィ。私たちにも遂に後輩ができたんだよ!何かすごくない?」

吉澤「ああ、そうだね。」

いつものキンキン声がさらにその周波数を増して、耳が詰まりそうになるくらい響いてくる石川。
それに対して、何だか憂鬱そうな声で返したのは、見るからに男っぽい口調の吉澤。

石川「どうしたの?ヨッシィ?何か元気ないじゃん?何かあったの?」

吉澤「あ〜〜〜、もう!お前と一緒にランニングするのが嫌なのに決まってるだろ!
   しかも、そのアニメ声何とかできないのかよ?いい加減うっとうしいんだよ!!」

石川「え〜〜〜、ヨッシィ酷い。私だって好きでこんな声になったんじゃないのに〜〜。」

吉澤「だからその声辞めろって言ってんだろ!」

高橋と紺野は、静かにそのやり取りを見届けていた。
さながら夫婦漫才であった。
72 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/01(木) 19:16
吉澤「はい!やることちゃっちゃとやっちまおう!今日のランニングは校内周回コースを
   3周だったっけ?」

校内周回コースと言うのは、聖学の敷地の円周上をぐるりと1周取り囲んでできたランニング
コースのことである。
このコース1周が約3kmある。

石川「え〜〜〜、今日たったの3周?もっと走ろうよ〜〜〜。」

吉澤「自分だけ走ってろ!行こう、高橋、紺野。」

石川に毒づきながら、吉澤は石川を置いていき、高橋と紺野の2人を連れて行った。

石川「え〜〜、ちょっと待ってよ〜〜〜!ヨッシィ!高橋!紺ちゃん!」

高橋達のはるか後方で、身の毛も弥立つ気色悪い声が、その体を震わした。
暑い日本の夏にとっては、ありがたい存在ではあるのがだ、現在は正直いささか不快な
物ではあることは確かだった。
73 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/01(木) 19:31
石川・吉澤・高橋・紺野の4人は聖学敷地内をぐるりと1周取り囲んだ校内周回コースを
走っていた。
コースは雨が降っても走れるようにと全天候のゴムの敷き詰められたコースであった。
4人の軽い足音が、その全天候のコースに響いて心地よい。
4人の歩幅が違うせいであろう、4つの足音が揃ったり、その揃った状態から徐々に別れていく
その不規則なリズム感が、精神をそそる。

走っているその両脇も、年々の卒業者達の贈り物の桜の木や欅の木などに彩られて、緑が
一段と映える。
その時はちょうど、綺麗で軽いそよ風も吹いていたので、体から出る汗もちょうど良く
蒸発し、体もすがすがしい事この上なかった。
久しぶりに走った高橋や紺野にとっては、懐かしい感覚に襲われた。

高橋「ねえ、あさ美ちゃん?」

紺野「ん?なに?」

高橋「矢口先輩の言ってた、『石川先輩たちとのランニングは気をつけろ』って一体どう言う
   事なんだろね?」

紺野「私も同じ事考えてた。一体何なんだろうね?」

高橋「無理するなって言ってたけど、無理するなって・・・・・・?」

紺野「別にこれと言って変わった事も無いけどね・・・・?」

2人は互いに顔を合わせながら、う〜〜んとにらめっこをしていた。
いくら考えても答えは出てこない。
恐らく、矢口先輩が新入生に気を使って言ってくれた言葉なのであろうと、このとき
2人は思っていた。

2人は再び、心地よい軽やかな4人分の足音と、周りの風景と、正面から流れてくる爽風を
全身に感じながらランニングを続けていた。
74 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/01(木) 22:34
作者さま、更新どうもです。
石川さんの隠された秘密(?)とは。
この先、紺ちゃんと高橋さんはどうなる?!
続き、楽しみにしてます。
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 22:15
こ〜んな後輩がほし→よ☆
76 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/07(水) 07:08
「紺ちゃんファン」さん、ご感想ありがとうございます。

石川さんの隠された秘密とは・・・・・・・。
って別に隠してはいないんですけどね・・・・・・・・。
この先、どうしましょう?話も何とか軌道に乗り、これからって時に、この先の展開が
まだ決まっていません。
でも更新はできる限り定期的にかつ迅速に行いたいと思いますので、どうか温かい目で
見てやってください。
77 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/07(水) 07:11
「名無し飼育さん」さん、ありがとうございます。

自分もこんな愉快な先輩たちが居たら良いな〜って思います。
でも、自分の周りにはもっと素晴らしい先輩たちが居ますから、全然羨ましくありません。
更新頑張ります。
78 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/07(水) 07:26
矢口「ねえ、なっち?」

練習の途中、矢口はラケット片手に安倍に尋ねた。

安倍「ん〜、な〜に〜?」

矢口「あのさ〜、本当に大丈夫なのかな?」

安倍「何が?」

矢口「何がって・・・・・・・、あの2人の事。ヨッシィは良いとして、高橋と紺野
   の2人は梨華ちゃんと一緒で本当に大丈夫なの?」

安倍「さ〜〜〜、多分大丈夫じゃないでしょ?」

矢口「たぶん大丈夫じゃないって、どうすんのさ?あの2人がこれでここ来なくなったら?
   せっかくの新入部員なのに・・・・・・・。」

安倍「その時はその時だよ。もし万が一にこの位でこの「テニス同好会」辞めるんだったら
   遅かれ早かれ、いずれ去っていく運命なんだよ。
   だったら、大切な高校生という青春時代をこんな事に費やさないで、もっと他の事に
   費やせるから、辞めてもらったほうが、私は良いと思うよ。
   どうせ辞めるんだったら、早い時期に辞めてもらった方がこっちとしてもありがたいでしょ?」

安倍が、その眼を冷たくしながら、俯いて言う。

矢口「なっち・・・・・・・・・・・」

安倍「嘘嘘。まさかあの2人がこんな事くらいでへこたれるわけ無いって。
   あの2人は何か、光るものを感じるんだよね、なっちは。
   だから、大丈夫!!あの2人はちゃんと耐え切ってくれるよ。」

矢口「・・・・・・・・・・・。そうだね。」

安倍「ほら、そんな事より練習練習!!」

矢口「おう!!かかって来い!!なっち!!」

安倍と矢口は再び練習を再開した。
79 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/07(水) 07:39
校内周回コースはスタート地点からの距離が、コース上の脇に小さな看板として
表示されている。
白塗りの板に、黒く『500m』や『1000m』といった感じに文字が書かれている。

高橋達がランニング中にふっと、そのコースの途中に立っている距離数を表した看板に
目をやった。
『2000m』と書かれていることが確認できた。

ちょうどその頃からであっただろう、高橋の体に異変が起き始めたのは。

両足が突如として鉛のように重くなり始めたのだ。
両腕も、次第に痺れのような感覚が置き始めて、思い通りに動かなくなり始める。
視界も最初と比べ、揺れ始めて来て、肺もきりきりするほど痛みが走ってくる。
徐々に、自分の呼吸する声が荒っぽくなり始めて、口もおのずと開き始めてきた。
どう考えても普通ではない状態であった。

高橋(・・・・・・・、何だろ?これ・・・・・・?
   体が・・・・・・・・やたら・・・・・・・・・重い・・・・・・・。
   もしかして疲れている・・・・・・・?
   でも、そんなペースが・・・・・・・・・速くなってる感じもしないし・・・・・・。
   何だろ・・・・・・・・・・?)

高橋と、石川・吉澤・紺野との感覚が明らかに開き始めていった。
80 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/07(水) 07:53
高橋は苦しいながらも、必死で3人に離されるまいと着いていく。
くっ付いては離れ、離れてはくっ付きの繰り返しである。
離されるまいとくっ付いて走ろうとすればする程、高橋の身体の異常は状態を増していった。

その時、隣を走っている紺野の表情を一瞬覗いた。
紺野の表情は、高橋自身ほどではないにしろ、かなり苦痛によって歪んでいた。
呼吸も苦しそうで、歯も必死で食いしばっている様子であった。
注意して聞いていると、前方を走っている吉澤からも、微かではあるが微妙に呼吸が
荒れている声が聞こえてきた。

その時、初めて高橋はこのランニングの異変に気がついた。

『明らかにペースが上がっている。』

少なくとも、高橋にはそう感じざるを得なかった。

このランニングの先頭を走っている石川以外の3人は、明らかに相当な疲労を起こしていた。
疲労の度合いは人それぞれではあるが、疲労している事自体は明らかである。

しかし、当の石川は息1つ乱すこと無く、フォームも依然として安定し、ストライドも
その広さを保ったまま、涼しい顔をして徐々にそのペースを吊り上げていったのだ。
81 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/07(水) 08:16
高橋達は体育館の出入り口の真正面に引かれた「スタートANDフィニッシュ」と書かれた
ラインを跨いだ。
高橋達がランニングを開始した場所だ。
ようやく1週が終わったのだ。残すは2週、6000mである。

6000m。確かに長い距離である事は確かだが、ある程度スポーツをやっていた者にとってみれば
とても耐えられる距離じゃない、とまでは言えない。

陸上の長距離は勿論、短距離やサッカーやバスケットボール、テニスなどのある程度の持久力
を必要とする競技ならば大抵走りこみという物は行われる。

となると、本来なら6000mがそこまできつい物でもない事はある程度、理解しえる。

ところが、そのペースが速くなれば話は別である。

本来、ゆっくりと走れば主に脂肪が燃焼され『乳酸』という物が殆ど発生しない。
しかし、スピードがつけばつくほど、エネルギー源に炭水化物が消費され、
今度は筋肉中にエネルギーの燃えカス、言わば『乳酸」と言う疲労物質が蓄積され
筋肉がどんどん酸性に傾き、筋肉の収縮を阻害し始めて、やがて脳はこれを『疲労』と
認識し始める。これが疲労の正体だ。

ペースが速くなるという事は、それだけ筋肉中に多量の乳酸を生み出し、筋肉が著しく
疲労し始める。

しかも、高橋達はまだ3000mしか走っていないのに、まだこれから倍の6000m
も走らなくてはいけないと言う精神的疲労もかなり存在する。

そんな状態で6000mと言うのは、正に拷問に近い苦しみを得ながら走ると言う事に
他ならないのだ。
82 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/07(水) 08:32
高橋の視界には既に、石川達はまるで豆粒大の大きさにしか見えないほど離れていた。
どうにか追いつこうにも、最早手足、さらには肺が言うことを聞こうとしないのだ。

手足は既に力尽き、惰性でしか動いておらず、肺もパンクするのではないかと言うくらい
限界が近づいていて、もはやどうにもならない状況であった。

一層より一層、石川たちの背中は小さくなっていく。
そこには自分と同じ1年生の紺野あさ美の姿も、どんどん小さくなっていくのが確認できる。

高橋、自分1人だけが取り残されている。
例え遅れようとも、当然誰1人として立ち止まって待ってはくれない。
ただ、自分が離されていくだけである。
高橋は見る見るうちにその速度を奪われていった。

高橋は2周目の「1500m」と書かれた看板の横を通った。

そこで、高橋は朦朧とする意識の中、過去の忘れようとした「あのときの事」を思い出していた。
自分が中学校のテニス部での「あの1件」の事を・・・・・・・・・・。


高橋(・・・・・・・・・・・忘れようと思ったのに・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・忘れようと思ったのに・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・忘れようと思ったのに・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・どうして思い出したんだろう・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   もう、あの日のことを繰り返したくない・・・・・・・・・・・・
   もう、私はあのときの私じゃない・・・・・・・・・・・・・・・
   私は、生まれ変わったんだもん・・・・・・・・・・・・・・・・)

今まで死んでいた高橋の両眼に、僅かながら光が差し込んだ。
83 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/07(水) 20:40
作者さま、更新どうもデス。
そうでしたか・・・少しづつぺースが・・・。
あさ美ちゃんは・・・すごいな・・・もち愛ちゃんも・・・。
私はもう、1000mの時点でボロボロです・・・。
やっぱ石川さんはすごいですね。
あの距離で涼しい顔か・・・。
はは・・・もう、すごいしか言えない・・・。
ま、それは気にせず、更新、これからもがんばってください。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/07(水) 21:36
更新オツカレです。
自分はどっちかと言えば愉快な先輩ですよ♪
長距離も石川さんには負けません(笑)
これからも頑張ってくらさ〜い
85 名前:名も無き読者 投稿日:2004/07/08(木) 16:00
更新お疲れサマです。
フッ、自分なら500mで人事不省。(ビョウキ?
しかし高橋さん、気になるモノを抱えていらっしゃるようで・・・。
その辺も含めて次回も楽しみにしてます。
86 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/19(月) 23:11
「紺ちゃんファン」さん、ありがとうございます。

石川さんの隠れた才能が発揮されました。
やっぱり、紺ちゃんは体力あるキャラで仕上たかったので、こんな形になりました。
愛ちゃんはランニング大変そうですね。
愛ちゃんも主人公、後半重要な役柄を担うので今はまだまだと言う事なのでご期待ください。
87 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/19(月) 23:21
「名無飼育さん」さん、どうもありがとうございます。

な、なんと、名無飼育さんは長距離ランナーでしたか?
しかも愉快な先輩と来ましたか?
石川さんに勝てますか?石川さんはこれから大変な事になる予定ですから・・・・・・。
ではこうご期待!!
88 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/19(月) 23:36
「名も無き読者」さん、お疲れ様です。

500mでギブアップって、それはいくらなんでも・・・・・・・・。
愛ちゃんには少し心の傷を抱いて頂きました。なんてったって一応、主人公ですから。
勿論、愛ちゃんだけではありません。他のメンバーも同様に心の傷を負っています。
いや、負っているはずです。多分。(何しろ、頭の中で話が完全に出来上がっていないので・・・・・)
そこ等辺を楽しみにして下さい。
毎度、毎度、遅筆ですが・・・・・・・・・・・(汗)。
89 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/24(土) 16:19
ピピッ!

吉澤が左腕にしていた陸上選手などが良く使用する腕時計型のストップウォッチの
ラップボタンを押した音が、その持ち主の耳にだけ響いてきた。

吉澤(この1周のラップが10分38秒・・・・・・・・。
   1km約3分30秒ペース・・・・・・・・・。
   今日は梨華ちゃん、やけに最初からとばすな〜〜・・・・・。)

その時計の指す秒数を見て、吉澤は思わず溜息を漏らす。

ちらっと、すぐ横を涼しげに、そしてやたら楽しそうな表情を浮かべながら走っている
石川に視線を移す。
いつに無く、満足げな顔である。

自分の額にうっすらとではあるが、浮き出てきた数滴の汗をその腕でぬぐいながら、
今度は石川と自分のすぐ後ろを走っている紺野に目を移す。

紺野「はあ・・・・・・・・・・・・・!
   はあ・・・・・・・・・・・・・・・・!」

その嫌でも聞こえてくる掠れ切った呼吸音が吉澤の耳をやけに突く。

しかし、その紺野の両眼は光を失ってなく、微かではあったが、未だに前を行く自分と
石川の両方の背中を捕らえていた。
90 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/24(土) 16:37
吉澤(こいつ・・・・・・・・・・。
   へえ・・・・・、なかなかタフじゃん・・・・。)

何とか大丈夫そうな紺野から視線を元に戻す。

そろそろ集中して行かないと、更にペースを上げてくる石川について行けなくなる。
微かに、両足の大腿筋と両腕の上腕ニ頭筋が軋むのを感じながら、呼吸をリズミカルに
整えつつ、ランニングに集中した。

両脇を流れる色取り取りの木録に眼をくれる余裕も無く、吉澤はただそのいつも通りの
ペースアップについていった。

ピピッ!

早くも2周目のラップ音だ。

吉澤が顔を動かさず、眼だけを恐る恐る動かしながら時計のラップを読み取る。

『10’07”72』

それが時計のラップ表示部分に表示されていたタイムである。

吉澤(はあ〜〜〜〜????10分7秒?
   何このラップ?ありえない!いくら梨華ちゃんでも3000mを10分1ケタ台って・・・・・・。
   1周目より30秒以上タイムが上がってる・・・・・・・。
   一体、どうなってんの・・・・・・?)

心の中で激しく毒づきながら、ふっと背後の紺野に眼をくれる。
そこには、先ほど以上にぼろぼろな紺野が、お世辞にも綺麗とは言えないばらばらな
フォームで走っている紺野の姿が確かにあった。

顎が上がりきっていて、腕も曲がりきっている。ストライドもピッチも滅茶苦茶。
呼吸音も最早、喘息患者か?と思えるくらい乱れきっている。
汗の量も半端ではない。丸みを帯びた顔全体が汗にまみれている。

しかし、あの両眼だけは、光を一向に失わず、いやむしろ輝きを益々増しつつ、
懸命に確実に1歩1歩走っている姿があった。   
91 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/24(土) 16:49
吉澤はその姿を見たとき、恐怖に近い物を感じた。

何故、ここまで着いてくるのであろう?
何故、ここまで着いてこれるのであろう?
何故、こんなになるまで走るのであろう?

一瞬にして吉澤の全身の汗がひいた。もしかしたら鳥肌もたったかもしれない。
走っているにも関わらず、寒気が背筋を走った事を感じた。

吉澤(う、嘘だろ〜〜〜〜〜〜!!??)

紺野はまだ高校に入って数日の、受験鈍りしている普通の女子高生なはずである。
そのため、体力が現役時に戻りきっておらず多少劣っているため、ここまでぼろぼろなのは
説明がつく。

問題はここからである。
何故、ここまでぼろぼろになり、恐らく立っている事すらままならない状態なのであるに
紺野はなぜここまで、普通の人間ならとっくに挫折しているはずのこのペースに
意地になってでも着いてくるのか?

吉澤は、恐怖と疑問の念が詰まった心で自分に問いただした。
92 名前:そして歯車は動き出す 投稿日:2004/07/24(土) 17:03
本来、人間に限らず全ての動物には「妥協」・「諦め」などの本能に近い物を持っている。
「妥協」・「諦め」などのそれは、別に恥じるべき物ではない。
動物なら誰しもが持っている、言わば自己防衛反応の1種であるのだから。

人間(動物)は自らの持っている全ての力の、わずか10%から高くても25%〜
30%までしか出せないようになっているらしい。(あくまでも『らしい』)
これは我々の脳に組み込まれている本能の1種で通称「リミッター」と呼ばれている。

人間が持っている筋力の100%全力を出そうものなら、忽ち支えている骨が粉砕し
動けなくなってしまう。その為、自らの体を守るため、最大筋力の数%しか自力で出せない
仕組みになっている。
(火事場の馬鹿力と言うのも、緊急事態ということで、脳内の「リミッター」が解除され
普段見せない怪力が、1瞬ではあるが出せるらしいのだ。)

この様に動物同様、人間には自らの体を痛めないように自己防衛反応が起こり、
自分の身体に危害が及ぶまで体に動こうとさせない本能が働くのだ。

その為、自分を何処まで追い込めるか?と言う練習は、言ってみれば自らの本能に
大して喧嘩を挑んでいる事だと言える。
93 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/07/27(火) 21:32
作者さま、更新どうもです。
なるほど〜、ちょっと勉強になったかな?
紺野さん、すごいですね。。。
なんかこの後の展開が超〜気になります!!
94 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/04(水) 22:11
「紺ちゃんファン」さん、どうもありがとうございます。

どうも、何か小説じゃなくて解説みたいになってしまいましたね。
何か専門的な?言葉が出てきて、そのままほったらかしになってますね。
のちのち、詳しい解説もしますので、楽しみにしてください。
95 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/04(水) 22:19
本編の前にちょっと一言。
今気付いたんですが、サブタイトル(名前の部分)を最初から「そして歯車は
動き出す。」から変えてませんでしたね。

本当はもっと前から色々なサブタイトルを考えていたんですけどね・・・・・・・。

次回からいきなりですが、サブタイトルを変えさせていただきます。
96 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/07(土) 01:05
ハァイ!!がんばってくださぁ〜い・・・!!
楽しみにしてま〜す!
97 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/12(木) 00:41
「紺ちゃんファン」さん、ありがとうございます。

何か最近更新遅くない?、今更サブタイトル変えるの?とか思わないで下さい。
いや〜〜、小説書くのも大変ですね、改めて感じました。
98 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 01:03
石川・吉澤・紺野の3人は依然として落陽の映えるコースの上を走っていた。
時折吹き抜ける小さなそよ風は、最早3人には全く意味を成さないものとなっていた。

息が荒れ、両脚も鉛のように重くなり、既に3周目に入ってからと言うもの、
吉澤の脚も、肺も、既に限界に達しかけていた。
最初の時とは比べのになら無いほどの汗が額を覆い、自分でもストライドが
徐々に狭くなっていく事が分かる。

もう、後方の紺野に眼をくれてやる余裕も無くなった。
すぐ横を走っている石川は、何とか眼を動かせば視界に入る。

石川に眼をやると、その石川も額に汗を溜め込んでいた。
いつもの様な、ランニングを楽しんでいる笑顔はそこには無く、真剣そのもの
と言った感じの表情を浮かべていた。
それを見て吉澤はただならぬ寒気を感じた。

しかし、石川梨華の地獄のランニングも間もなく終焉。
距離も残るところ、あと400〜500mとなった。
99 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 01:19
最後の400〜500mは直線だ。
大きな校門脇のカーブを抜け出すと、あとはゴールラインまで一直線の道のりだ。
5mほどの道幅で、3人は綺麗に並んで走っていた。
3つの大小様々な呼吸音が、道端に植えられている新緑豊かな木々に吸い込まれていき
3種類の足音もまた、鈍くもある一定のリズムを刻みながら、ゴールは近づいていた。

吉澤が道の横に立てられた、距離の書かれたプレートに眼をやる。

吉澤(あとラスト400m・・・・・・・・。)

心の中で呟きながら、吉澤は少し安堵に浸った。

その時だった。

石川梨華の体が、ぐんと吉澤達の5m程前にでた。
一瞬の出来事だった。
石川梨華がラスト400mで、再びペースを上げだしたのだった。

ランニングの練習で最後の数mのペースを上げること自体は、何ら珍しい事では
無い。むしろそれが普通なくらいである。

しかし、吉澤が驚いたのは今までの石川梨華のランニングペースが異常だったのに、
そこからまたラストにペースアップした事だった。
100 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 01:29
吉澤は何とか、疲労し切って動かなくなって体を、鞭打つかのごとく無理矢理
動かした。
ラストスパートをかけた石川梨華に着いて行こうと必死にもがいた。
乳酸の出切った大腿三頭筋、大腿四等筋、下腿三頭筋、ヒフク筋、(多分こんな名前の筋肉だったと思います。)
が悲鳴を上げるのが聞こえる。
それでも、ラストだ、と言う心の声に支えられて吉澤は懸命に走った。

その瞬間、吉澤のすぐ左横を何かが通り過ぎた。


紺野あさ美だ!!
紺野あさ美がラストスパートをかけた石川に着いて行ったのだ。

吉澤は我が眼を疑った。
吉澤の想像し得なかった光景が、紺野あさ美と言う驚異的な粘りがそこにはあった。
101 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 01:45
吉澤は一瞬、呼吸が止まる思いがした。
一瞬、時が止まった思いがした。

1周目、2周目が終わった時点では、明らかに自分よりも疲労し切っていた
ルーキー・紺野あさ美が最後の最後と言う場面で、事もあろうに自分を抜き去り、
石川梨華に着いて行くと言う、出鱈目なスタミナを見せ付けたのだ。
呼吸こそ、今にでも潰れてしまいそうな音を出しているにもかかわらず、
紺野のその眼は、先程以上にギラギラと鋭い眼光を備えている。

吉澤(な・・・・・・・・・・!ば・・・・・・馬鹿な・・・・・・。)

吉澤も必死になって両手両脚を動かすが、2人のスピードは既に吉澤にとって
手遅れな状態になっていた。
2人と吉澤との間隔は、決して縮まる事が無く、どんどんどんどん、開いていく
一方であった。
2人の背中がゆっくりと小さくなって見える。

吉澤にも、既に肉眼でゴールラインがはっきりと確認できる所まで来ている。
酸欠でぼやけている視界に、うっすらと真横に引かれた真っ白なライン。

ゴールラインだ。

その距離にして、およそ100m。
吉澤は最後の力を振り絞る。

すると、前方から声が聞こえてきた。
102 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 02:02
石川「ねえ、紺ちゃん?」

紺野「はい・・・・・・・・、何でしょう・・・・・・・・?」

突然の石川の問いかけに、死んだような声で紺野は応答する。

石川「あなたまだ余裕?」

紺野「はい?」

石川「どう?良かったら、もう1周しない?」

紺野「ガチンコで勝負しようって事ですか?」

石川「どう??嫌なら良いけど?」

紺野「・・・・・・・・・・・・・・・・・望むところですよ・・・・・・・・・・!」

石川はふっと、小さな微笑を浮かべる。

それを聞いた吉澤は、最早驚かなかった。
いや、正確に言うと驚く気力すらなかった。
満身創痍で、自分の体が自分の体でないような感覚、もう少しで終わると思っていた
ランニングが最後の最後で不意打ち的に増大する、この心身を征服するこの虚無感。

それら全てが吉澤ひとみを打ちつけた。
103 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 02:16
石川と紺野はゴールラインを過ぎると、またスピードを上げた。
少なくとも吉澤にはそう見えた。

最後の力走を見せて、吉澤も数秒遅れてゴールラインを跨ぐ。

実際のところ、石川・紺野と吉澤間のタイムの差は殆ど無い。
具体的なタイムで言うと、ほんの7〜8秒程度。
しかし、当の走者にとってはほんの数mの差が、何とも大きな差に見えることが
頻繁にある。


ゴールした吉澤は、その直後、腕にしている時計のラップボタンを押し、そのまま
アスファルトのロードの上に倒れこんだ。
倒れこんでまず『来る』のが、呼吸器官などの内臓の苦痛だ。

今まで酷使し続けた肺や心臓、また胃腸や小腸が入っていた時以上に苦痛を訴える。
パンパンに膨れ上がった肺は、きりきり痛み、まともに呼吸が出来ない。
心臓もやたらと心拍数が多く、破裂寸前を思わせる。
徐々に、胃や腸などのはらわたが、変に活動をし始めて嘔吐を催す。
理性も体力も使い切ったランナーにとって、この嘔吐を我慢する手立てが無く、
腹の奥底から湧き上がってくる違和感に、無い気力で我慢する事もまた苦痛の1つだ。

吉澤は疲れなれているとは言え、この苦痛は何度味わっても耐え難いものだということを
改めて再認識した。
104 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 02:26
うつ伏せに倒れていた吉澤は、呼吸しやすいように体を半回転させ、今度は
仰向けになってみる。

今はちょうど、特別進学クラスの連中や図書館などで自主勉強を行っていた
人間が、下校する時間帯に当たる。

当然、倒れこんで苦痛にもだえている吉澤は、そんな連中に白い眼で見られている。
まるで勝者が敗者を見下すように、
綺麗好きな人間が汚物を避けるように、
母親が子供に「あんな風にはなっちゃいけません。」と冷やかな眼で見るかのように、
皆、視線だけを投げかけるように吉澤を露骨に避けて下校し出す。

しかし、今現在の吉澤にとってはそんなことはどうでも良いこと。
吉澤は次なる苦痛に耐えねばならなかった。

呼吸器官や内臓器官の苦痛のお次は、手足などの筋肉系統の過度の疲労による
痙攣などを伴った苦しみだ。
105 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/12(木) 02:39
全力で走りきった後の筋肉は、前にも言った様に乳酸と言う疲労物質が溜まっている。
その状態ですぐに止まり横になると、乳酸が処理されないまま筋肉中に残存し、
痛みを伴った軽い痙攣などの症状を引き起こす事がある。

手足の指の先や、極度に乳酸の溜まった箇所は痛み痺れる。
しかも、その痛みや痺れはそう簡単には治らず体を動かさなければ、長い間
その苦しみを味わなくてはいけない。
何とも言えないじわじわいたぶられる持続的な苦しみをだ。

そもそも乳酸は酸素不足内での筋肉の収縮運動によって発生する。
しかし、その発生した乳酸を処理するのもまた、筋肉の収縮運動によるものである。

充分に酸素がある状態で、ゆっくりと簡単に筋肉を動かす事により、エネルギーを
消費する上で、乳酸も一緒になって消費、燃焼される為、体の疲労が取れるのである。

その為、運動後すぐに横たわると乳酸は発生するが、筋肉は動かない為、増えるだけ
増えるので、自然処理されるまでの間、その苦しみに耐えなければいけない。

とは言え、今の吉澤は動けるような状態ではないのだが・・・・・・・・・・。
106 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/08/12(木) 02:56
ひさしぶりにこのコーナーが戻ってまいりました。
って、「ちょっとしたテニス用語講座」とは言ってますが、実際テニス用語なんて
あんまし出てきてないですよね・・・・・・・・・・・。
そもそも、テニスやってる場面なんて、高橋VS紺野のほんの1シーン程度だけなのに
殆どがランニング絡みの、陸上用語講座になっているような気が・・・・・・・・。
まあ、あんまり気にせず行きましょう・・・・。

コート・・・・テニスをする上で、決められた場所にボールを打ちなさいと言う
       風に決められたエリアの事。シングルス戦とダブルス戦でのコートの
       広さは、若干ダブルス戦のコートの方が広いみたいです。
       ってか、言わなくても皆さん、雰囲気で分かりますよね?

高橋の友達・・・・一体誰なんでしょうね?この先(いつのなるか分かりませんが)
         出てきますよ。ヒントは高橋の出身中学校名です。

テニスの名門校・・・・これもこの先(やっぱりいつのなるのか分かりません。)
           大切な高校になってきます。お楽しみに。

紺野の友達・・・・高橋同様、誰でしょう?(毎度毎度すみません。いつになるか分かりません。)
         やっぱりヒントは出身中学校名です・・・・・・。
         (なんで自分はこんな場所に、推理小説風に謎かけなんて持ってくるんでしょうか?
          やっぱり自分は根っからの推理小説オタクなんでしょうか?)

ラリー・・・・テニスでお互いにボールを打ち合い続ける事を言います。
107 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/08/12(木) 03:12
シングルス戦・・・・単に『シングルス』とも言います。
          1対1のタイマンで勝負する事です。

ダブルス戦・・・・単に『ダブルス』とも言います。
         2対2で勝負する事です。コートの広さも若干こちらの方が広くなります。
         個人の実力も去ることながら、チームメイトのコンビネーションも重要に
         なってきます。

福新中学校・・・・この中学校名には意味がありますよ。

神海北中学校・・・・同上

ランニング・・・・安倍さんの言う通り、全てのスポーツの基本です。
         心肺機能、持久力、毛細血管の強化、集中力の向上などが主な効果です。

毛細血管・・・・体の末端や深部に血液を送り込む為の、非常に細い(髪の毛よりも細い)
        血管の名称。
        毛細血管を強化する事により、筋持久力を強化できます。

筋持久力・・・・一口に『持久力』と言っても大きく分けると2種類の持久力があります。
        それが『筋持久力』と『全身持久力』です。
        筋持久力とは、簡単に言えば速いスピードをどこまで持続できるか、と言った
        持久力です。

全身持久力・・・・こちらは、恐らく世間一般で使われている「持久力」に近い言葉だと思います。
         こちらは、簡単に言えば、どれだけ長い距離を走る事が出来るか、と言った持久力です。

ストレッチ・・・・走る前には、体を体を動かして血液の循環を良くしておいた方が良いですよ。
         体が柔らかいと、怪我もしにくいですからね。
108 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/08/12(木) 03:33
アニメ声・・・・自分的には好きです。(いや、誰も聞いてないから。)

1周3km・・・・長いですね〜〜。やたらと広い敷地ですね。
         自分の知り合いに。出身高校が神奈川県の有名校『桐蔭高校』出身の
         奴が居ます。今年の春、横浜で大きな陸上の大会がありまして、ついでに
         見にいったんですが、やたらと広かったですね。まあ、あの位の広い敷地だと
         思ってください。

全天候・・・・『オールウェザー』・『タータン』と呼ぶ人も居ます。
       雨が降っても走れるように、特殊なゴムが敷かれたトラックの事です。

ペースが上がっている・・・・今回の石川さんの様な徐々にペースを上げていくランニング方を
              『ビルドアップ走』と言います。
              陸上では主に、長いランニングの時に取り入れたり、時にはレースのペース感覚を
              養う為に取り入れたりします。

フォーム・・・・ランニングの際の腕の振り、脚の運び、上体の傾きや顔の高さなどを全部まとめてこう言います。

ストライド・・・・@ランニングの際の歩幅の間隔の事。(今回はこちらの意味)
         A1歩1歩の歩幅を広くしスピードのある走方。「ストライド走法」
          スピードが出る分、疲れやすい走法と言える。主に中距離で多く使われる。
          対照的な走り方として、『ピッチ走法』がある。

ピッチ・・・・@ランニングの際の歩数の事
       A1歩1歩の歩幅を短くする代わりに、歩数を多くしてスピードを稼ぐ走法。「ピッチ走法」
        やはり、ストライド走法ほどのスピードは出ませんが、疲れにくい走法と言えます。
        主に長距離で使われます。
109 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/08/12(木) 04:43
乳酸・・・・本編で書いたとおりです。

精神的疲労・拷問・・・・全く持ってその通りです。長距離は身体的能力も必要ですが、
            それ以上に精神的に強くなければ速くなれません。

腕時計型のストップウォッチ・・・・陸上長距離の人間なら、まず誰でも持ってます。ラップタイムや何かを測るのに絶対必要です。
                  ちなみに自分も持ってます。「SE○KO」の「スーパー○ンナーズ」です。

10分38秒・10分07秒・・・・最早病気です。この人達。速すぎます。自分で書いておいて速すぎは無いだろ!と皆さんに言われそうですが、
                 陸上長距離でもない高校女子でこのペースは速すぎます。
                 ちなみに最後の2000m〜3000mのラップは更に速くなる予定です。
                 この調子で行くと、10000mが33分台になります。
                 高校女子で10000mと言う公式競技は残念ながら有りませんが、あのペースで最後には余裕で紺ちゃんに
                 話しかけてますからね・・・・・・・。全力出せばどの位出るのでしょうか?
                 ちなみに自分が一緒に走っても、絶対着いていけません。

上腕二頭筋・・・・ちからこぶの出来る部分の筋肉の事です。

大腿筋・・・・主に腿の筋肉の事です。詳しく言うと腿の表の筋肉を「大腿筋」、裏の筋肉を「下腿筋」とか言うようです。
       確かそう言うと思います。間違っている可能性もあるので、あんまり突っ込んで言いません。

ヒフク筋・・・・ヒフク筋だったと思います。確かふくらはぎの内側の筋肉だったかな・・・・・・?
        誰か知っている人、お願いします、教えて下さい。

ガチンコ・・・・真剣勝負です。
110 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/08/12(木) 04:55
大きな差に見える・・・・実際7〜8秒は大きな差ですね。
            ランナーの皆さんは分かると思いますが、ほんの1〜2秒の差が実際の距離よりも
            長く見えます。
            事実、マラソンや長距離の世界では『魔の1m』と言う言葉が存在します。
            自分が前の走者との間隔が1m未満なら「まだ着いていける」と感じるが、
            1m以上離されると、とたんにその距離が長く見えて、本当に離されてしまう、
            と言った研究結果があるそうです。

嘔吐・・・・暑い夏場などで走りこみをした人なら、1度くらいは経験があるのでは無いでしょうか?

「まるで勝者が敗者を・・・・・・」・・・・懸命に走っているランナーをこんな眼で見てはいけません。彼女達は一生懸命なんです。


何とか1通りの説明は終わったつもりですが、それでも読者の方々には伝わらない事や、文才の無いこの自分が書く文章です、
意味不明な部分があることでしょう。
そんなことは遠慮無くお申し付け下さい。こちらも丁寧に対応させていただきます。

何か、遂にはランニングとも関係無い事も書いていたような気がします。
殆ど意味を成さない解説になってしまいました。
まあ、これからもこんなやんわりとした感じでやって行きたいと思います。
それでは、変わらぬご声援の程、皆様宜しくお願いします。
111 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/12(木) 23:54
作者さま、更新どうもです。
『ちょっとしたテニス用語講座』、ありがとうございます。
ためになったかな?な〜んて・・・。
それにしても紺ちゃん、すげぇな・・・。
あの距離を走ってなおかつ喋れるなんて・・・。
自分には一生無理でしょう・・・。
筋肉のことはあまり知らないので作者さまに助言することはできませんが、
これからもがんばってください!

こんな長文すいません・・・。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/13(金) 16:07
自分陸上部中距離だけど多分着いていけない_| ̄|○
でも高校女子でもかなり強くないとそのペースは無理じゃ・・・。
それこそインハイに行くような人じゃないと。
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/13(金) 23:33
http://www.hayama-co.com/musclelam/hiza-asi/001hifukukin.htm
これですね
114 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/16(月) 03:32
「紺ちゃんファン」さん、どうもありがとうございます。

『ちょっとしたテニス用語講座』が少しでもお役に立ちましたか?
立てたとしたら光栄です。
自分でも思います・・・・・・・・石川さん、紺ちゃん・・・、君達速過ぎますよ!
115 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/16(月) 03:41
「名無し飼育」さん、毎度どうも〜。

なんと名無し飼育さん、陸上中距離選手でしたか??
自分も陸上中長距離選手です。
実際、高校女子でもこんなペースで走れませんよね?
一応、実業団の選手の方々(渋井さんや、福士さんなど・・・・)よりは、遅い設定ですから
安心してください。

ちなみに良いますと、「108」で言いました「横浜で大きな陸上の大会があって」
と言いましたが、この大会、実は関東インカレでした。

最後になりましたが、「113」、ありがとうございます。ヒフク筋であってました。

インハイ・・・・「インターハイ」の略です。

インカレ・・・・「インターカレッジ」の略です。
116 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 04:00
吉澤は何とか立ち上がり、近くの建物の壁に寄りかかった。
量眼を瞑ったまま、軽く天を仰ぎながら呼吸を正す。

吉澤は自分の左手にしてあったストップウォッチを見た。
そこには3周目のラップが刻まれている。

吉澤「ははは・・・・・・・んなアホな・・・・・・・・。
   9分48秒03なんて・・・・・・・・・・・。
   少なくとも普通の女子高生じゃないよ・・・・・・・・。
   それに梨華ちゃんもそうだけど、あの紺野とか言う1年生、あいつも相当の馬鹿だな。
   こんなペースで走っといて、まだもう1周走るんだから。」

吉澤はあざ笑った。その現実離れしたラップタイムを。
そして、石川と紺野の2人を。

吉澤「ふ〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・」

建物が影となって、直接陽の光が当たらない。
鉄筋コンクリート製の壁の無機質な冷たさが、吉澤の沸騰した体温を緩めていく。
汗も、うっすらとではあるが、引いてくる。
117 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 04:13
吉澤「よいっしょっと・・・・・・。」

吉澤が膝に手を突きながら、ゆっくりと立ち上がる。
すると、周回コースの方から聞こえてくる。

高橋「はあ・・・・・、はあ・・・・・、はあ・・・・・、はあ・・・・・、はあ・・・・・」

高橋の声だ。3人から遅れていた高橋がやってきたのだ。

吉澤「そう言えば高橋も居たんだっけ・・・・・・。大丈夫かな、あいつ?
   あんな化け物ペースに途中まで着いてきたんだからな。それでも走り貫いたんだから
   たいしたもんだ。」

吉澤はゴール地点で、高橋がゴールするまで待った。

小さくはあるが、向こうの方から高橋がこちらに向かって走ってくる姿が見える。
石川のビルドアップ走が堪えているのであろう、かなりつらそうな様子である。

どんどん大きくなってる高橋の顔を見た。
かなり苦しそうだ。顔全体が苦痛からか、既にくちゃくちゃに崩れている。
118 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 04:22
吉澤はゴールラインの中央で、もうすぐ走り終わる高橋を待っていた。
高橋の呼吸音が、耳のすぐそばまで響いてくる。

ラスト200m・・・・・・・100m・・・・・・・50m・・・・・・30m・・・・・・
20m・・・・・・・10m・・・・・・・5m・・・・・・0m・・・・・・・

高橋はゴールラインを越えた。
高橋はやっとの思いでゴールし終え、迎えていた吉澤の腕の中に飛び込んだ。

吉澤「お疲れ様〜〜〜、高橋、良く走りきったね〜〜〜〜。」

吉澤が走り終わった高橋を労う。

高橋「・・・・・・・・・・・・。」

高橋の反応は無い。
119 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 04:31
吉澤「ん?・・・・・・どした、高橋?」

高橋「・・・・・・・・・・」

吉澤が再度話しかけるが、はやり高橋の反応は無かった。

吉澤「おい・・・・、高橋・・・・・・大丈夫か・・・・?」

高橋「・・・・・・・・・」

吉澤は高橋を揺すってみたが、やはり反応は見られなかった。

吉澤「ま、まさか・・・・・・・・。」

吉澤は抱きかかえていた高橋を見た。
高橋は両眼を閉じていて、息も弱々しかった。

吉澤「な・・・・・、こいつ、気絶している。」

吉澤はここでようやく、高橋が激しい酸欠で意識を失っている事に気がついた。
120 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 04:45
吉澤は事の重大さに気付いた。
高橋をさっきまで自分が寄りかかっていた壁に入れていくと、急いで校内の保健室に走り出した。

数分後、吉澤は右手に救急箱、左手に酸素スプレーを抱えて、高橋が横になっている場所に
戻ってきた。

手際良く何枚ものタオルを近くの水道水で濡らして、高橋の額や脇の下、脚や膝の裏などに被せる。
それが終わったら、今度は気を失っている高橋の口元に酸素スプレーを装着させ、
酸素を供給する。
あとは、全身を見てみるが特にこれと言った怪我は見当たらない。

吉澤はふう〜〜〜、っと大きな溜息を残し自分も同じく壁に寄りかかる。

まだ春先だと言うのに日差しが強烈だ。
今、囁かれている地球温暖化という奴か?

吉澤は再び疲れがぶり返した気分だった。
121 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 05:08
タッタッタッタッタ・・・・・・・・!!

夕暮れでオレンジ色のペンキを溢した様な全天候のコースの上を、2人の足音が
規則的に流れる。
石川がペースを上下ながら前を走り、その石川の肩のすぐ後ろを紺野が着いていく
と言う形で2人のデッドヒートは更に熱を帯びていった

2人の間には会話は無く、あるのは足音と呼吸音だけ。
北風が2人の背中を押すように、2人のガチンコ勝負は火花を散らし始めた。

4周目に入った時、石川は途端ペースを多少落とし始めた。
しめたと思い、すぐ後ろを走っていた紺野はすかさず、石川を抜き去ろうと、
脚の回転を速め石川に並ぼうとしたときだった、それを確認した石川は今度はいきなりその
ペースを急加速で上げ始めた。

紺野(へ!!)

紺野は驚いた。
てっきり疲れてペースが落ち始めたのだと思っていた紺野は、突如にペースアップした
石川に虚を突かれた。

何とかアップしたペースに着いて行く紺野を尻目に、石川は小さな笑みを浮かべる。
暫くそのまま走っていると、突如、再び石川はペースを落とした。

紺野(な・・・・・・また?)

紺野は今度は、抜きにかかろうとはせずそのまま石川のすぐ後ろに着く。
石川もそれを確認し、暫くそのペースを維持すると、ある地点から先程同様、
突如にしてまたペースを上げ始める。

石川はこれを何度も繰りかえした。
122 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 05:44
紺野(こ、これって『揺さぶり』ってやつ?ってことは石川先輩は本気なんだ!?)

紺野は石川のペースの上げ下げが500m周期である事に気付いた。
250m程ペースをあげ、次の250mでペースを落とす。
これを延々と繰り返していたのであった。

紺野は自らの拳に力を入れ、歯を食いしばる。眼光が炎と化す。
本気である石川に本気で答え様としたのだ。

石川も紺野のただならぬ雰囲気を悟った。

石川(ふふふ・・・・・・、紺ちゃんもやる気になってきたわね・・・・・。
   なら、そろそろ、決着つけましょうか・・・・・。)

石川と紺野は最後の曲がり角を抜けた。
ラスト500m、石川は紺野と眼を合わせた。
123 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 06:00
石川(ラストスパートでケリつける?)

紺野(悪いけど負けませよ)

眼でその様なやり取りを交わしたのであろうか、コーナーを抜けたところで、
2人は横一直線に並んだ。
誰が合図を出したわけでも無く全くの同時に石川、紺野がダッシュをかけた。

ここまで来ると紺野は全身が疲労で一杯なのは変わらない。
傍から見ればけろっとしている石川だが、それは腹の底を探られまいと必死で
隠しているのかもしれない。
考えても仕方が無い、どっちにしろ残すは視線の奥先にあるゴールライン、
ここまできたら自分を信じるしかない、いや信じる事しか出来ない。

紺野は腕が引きちぎれるばかりに動かす、今まで動かなかった脚も釣られて
動き出す。呼吸するも酸素が殆ど肺に入ってこない。最早、無酸素状態に近い。

苦しい・・・・・・ 

苦しい・・・・・・

苦しい・・・・・・

それしか頭に浮かんでこなかった。

と、その時だった。
124 名前:本領発揮 投稿日:2004/08/16(月) 06:18
紺野の薄れ行く意識と視線のすぐ脇を「何か」が通り過ぎる。

石川梨華だ。

ゾク!!

思わず背中が悪寒に染まる。

今まで自分と同じ距離を同じラップで走ってきたとは思えないほどのスピードで
で横を過ぎ去った。
紺野は愕然とせざるを得なかった。

驚異的なストライド、異常なまでのばね、我が眼を疑うほどのピッチで、
石川梨華は見る見るうちに小さくなっていく。
紺野はその背中を見ているしかなかった。

まるで白鳥の様な優雅さとも言えるフォームで石川は走っている。
それに引き換え、自分はどうであろう?見るも無残なフォームで、まるで足掻いている
様にも見えるだろう。
自分の力の無さを悔いた。
石川はどんどんどんどん遠ざかっていく。
これほどまでに実力の差があったにも関わらず、あんな大きな事を叩いた自分が
恥ずかしかった。
眼に、薄っすら涙が浮かんだ気がした。


石川がゴールし、紺野も続いてゴールする。
その差は15〜16秒、距離にして100m近い差が2人にはあった。
125 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/08/16(月) 13:29
作者さま、更新お疲れ様です。
石川さん・・・もうすでに人間の域を超えとりますな。
でも、ここまでついてこれた紺ちゃんに私は拍手をあげます。
パチパチ・・・・・・・
愛ちゃん大丈夫かな?酸欠・・・
作者さま、これからもガンバ!ですぞ!
126 名前:おって 投稿日:2004/08/24(火) 23:11
明らかに陸上っぽいものが見えて覗きに来てみました。
でもテニス小説でしたか。
私はどうやら石川さんには付いていけない様子です。中距離ですが。
まあ所詮都大会止まりの選手だし仕方がないかな(ネガティブ
知り合いに二人確実に着いていける輩はいますが。
127 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/09/10(金) 15:48
「紺ちゃんファン」さん、どうもありがとうございます。

石川さん、紺野さん・・・・・・・この方々は化け物決定ですね。
何気に吉澤さんも、高橋さんも、4人の中だとスタミナ無いキャラですが、実際はかなり
速いんで、やっぱりこの人達も化け物決定。
ん、なんか3年生の安倍さんと矢口さんが出てきてませんが・・・・・・・・・・。
まあ、気にしないで下さい、そのうち出ます。(多分)
128 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/09/10(金) 15:53
「おって」さん、ありがとうございます。

陸上?ギク!ギク!!ギクギク!!!
やっぱりそうですよね?なんか話がテニスから思いっきり逸れてますよね?
自分が陸上やっているせいか、こう言う系を書いているとどうしても力が入って
しまうんで・・・・・・・・。はい、これから気をつけます。

すいませんね、なんか思いっきり手付かずで。なにせ、昨日まで埼玉の上尾陸上競技場
に居ましたから・・・・・・・・、陸上の大会で・・・・・・・・。
これからはもっと・・・・・・・・まあ、もう少し頑張ります。
129 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 14:53
吉澤「はい、梨華ちゃん、お疲れ様。」

吉澤は用意していたスポーツタオルを石川に手渡した。

石川「ありがとうヨッシィー!」

今の今まで走っていた人間の声とは思えないような、澄んだ声で石川も応答する。

石川「あれ?そう言えば愛ちゃんは?」

石川は周りを見渡す。その辺りに高橋の姿は無い。

吉澤「ああ、高橋なら日陰で休ましてるよ。なんか酸欠一歩手前だったから。」

石川「ふ〜〜〜ん、そっか・・・・・・・・・。」

石川はタオルで額の汗を拭いながら、顔色1つ変えない。
呼吸も多少、荒れているとは言えいつもと大した変化は無い。
130 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 15:07
矢口「お〜〜〜〜〜い!!石川〜〜〜!こっち手伝ってくれ〜〜〜!!」

2人のはるか向こうで3年生の矢口の声がする。

石川「え、でも・・・・・・・。」

呼ばれた石川は少し困惑した。
周回コース上で仰向けになって悶えている紺野や、酸欠一歩手前状態の高橋達のことが気になるらしい。

吉澤「早くいっといでよ。この2人は私が面倒見ておくから。」

石川「本当?でも悪いよ。私も・・・・・・・。」

矢口「石川〜〜?そこにいるんでしょ?聞こえたら返事くらいしろ!」

吉澤「矢口さんもああ言ってる事だし、ここは私に任せて行っといでって。」

石川「・・・・・分かった。サンキュー、ヨッシィー!」

矢口「石川ーーー!!早く来いって言ってるだろーーー!!お前の家に鶏投げ込むぞーーーー!!」

どんどん矢口の罵声が酷くなる。

石川「待ってくださいよ〜〜!それだけは勘弁してくださいよ〜〜。」

石川は、相も変わらずすさまじいスプリントで走り去っていった。
吉澤も、薄い悪魔的な笑みを浮かべながら、見送った。

吉澤(よ〜〜〜し。これで今度、ベーグル奢ってもらえるぞ。)
131 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 15:20
吉澤はコースの上で野たれ死んでいる紺野の元に寄った。
紺野は、同じ距離をほぼ同じペースで走りきった石川とは違って、呼吸する事すら
苦痛でならない顔をしていた。

吉澤「おい!?紺野、大丈夫か?立てるか?」

吉澤の問いかけに、紺野は首を動かしたか、動かさないか程度に動かして、返事を見せるものの、
あとは殆ど動かなかった。
荒々しい呼吸と、胸の上下運動だけが、今紺野が生きていると言う証拠になる以外何も無かった。

吉澤「ほれ、立て。立てるか?手貸そうか?」

吉澤が両手を使って紺野を起き上がらせようとしたが、紺野は最早自力では立てなそうだ。
吉澤は、ふう、と溜息をこぼし、ようやく紺野を肩車で高橋の居るちょうど日が隠れる
日陰の場所に移動する事ができた。

そこの下はちょうど、アスファルトになっていて、横になっている高橋や紺野にとっては
その無機質な冷たさが、逆に多量の熱を帯びた身体に、ひんやり心地良かった。

紺野は、吉澤の助けを借りてようやく灼熱の太陽から逃れる場所に来て、やっと正気を
取り戻した気がした。
132 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 15:29
吉澤「紺野、水飲むか?」

腰を落として座っている紺野の目の前に、吉澤が膝を落として、右手にボトルを持って
聞いてきた。

紺野(今はとても水なんか飲める状態じゃない。
   下手に何か口に含んだら、戻しそう・・・・・・。)

紺野は無言で首を横に振った。

吉澤「・・・・・・・・・・・・・そっか。」

吉澤は立ち上がった。
紺野も一息ついて、深呼吸し直そうとしたその時、

ドバーーーーー!!!っと言う音とともに、紺野の頭上に大量の水が降り注いだ。

紺野「うえ?」

何が起こったのか分からず、紺野はその頭上を見上げる。
そこには、蓋の開いて逆さになったプラスチックボトルを持った吉澤が立っていた。
133 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 15:47
吉澤「気持ちよかったか?」

紺野「ちょ・・・・・吉澤さん、何するんですか!?」

吉澤「涼しくて気持ちいいでしょ?」

紺野「え??」

紺野の体を横切るように、緩やかな風が紺野の体を包み込むように、通り過ぎる。
それと同時に、熱を帯びていた紺野の身体も氷を素肌に当てられたように、すうっと逃げていく。

吉澤「どう?涼しいだろ?『気化熱』だよ。
   最近、日本暑いだろ?日本だけじゃなく、地球全体が暑くてさ、まだ春先だって言うのに
   こう暑くっちゃしんどいだろ?そんな時頭ッから水被れば涼しくなれるだろ?」

紺野「あ、ありがとうございます。」

そう言われると、吉澤はにっと笑みを浮かべながら、紺野の横のスペースに腰を下ろした。

吉澤「お疲れ様。どう?今日疲れた?」

紺野「ええ、まあ、正直死ぬかと思いました。」

吉澤「ハハハ・・・・・・、当たり前だよ。4周も梨華ちゃんに着いていったんだから。」

紺野「石川先輩、速いですよね。」

吉澤「ああ、ありゃ化け物だね、完璧。でも、私に言わせると1年生であいつに着いていく奴も
   充分、怪物だと思うけどね。」

紺野「私も中学校時代、持久走なら自信があったんですけど・・・・・・・・・、でも1つしか違わないのに
   あんなに速い人がいるなんて、正直ショックですよ。」

紺野は苦笑した。
134 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 16:03
吉澤「なに言ってんだよ。紺野だってもう1年練習すれば、梨華ちゃんみたいに速く
   なれるさ。」

紺野「そんな、私あんな風にはなれる自信がありませんけど・・・・・・・・。」

吉澤「でも、梨華ちゃんはなったよ。」

紺野「へ?」

吉澤「梨華ちゃんだって、去年の今ごろは普通の女子高生だったけど安倍さんの言う通り、
   『スポーツの基本は足腰を鍛える事。それにはまずランニングだべさ。』って言う
   言葉信じて、365日走りこんだら、あんな事になっちゃたんだ。」

紺野「吉澤先輩と一緒にですか?(『だべさ』って・・・・・・・・・)」

吉澤「基本的にはね。私も安倍先輩に同じ事言われて、毎日一緒にランニングは繰り返したさ。
   でも梨華ちゃんの走りこむ量はこんなもんじゃ無かったよ。
   今でこそ、テニスの技術的な練習をメインにしているけど、あの頃は1日
   15km〜20kmは普通に走っていたね。勿論私も。」

紺野「20kmもですか?」

吉澤「少なくともね。多いときは30km走った時もあった。
   私も当時は今日の紺野みたいに、本当に血反吐吐くんじゃないか、って言うくらいきつかった。」

紺野「吉澤先輩たちは、1年間もそんな事をしてきたんですか?」

吉澤「私はね。」

紺野「『私は』?」
135 名前:本領発揮 投稿日:2004/09/16(木) 16:20
吉澤「さっきも言ったけど。私と梨華ちゃんは部活中練習中ずっと走ってた。
   けど、梨華ちゃんは練習が終わって、皆が帰った後も、インターバル走や
   ビルドアップ走やレペテーション走も、何から何までやってた。
   そんじょそこらの、陸上部なんかよりも走ってた。
   ある日、偶然見かけたときは、正直こっちが吐きそうだったけどね。
   照明もろくに無くて、遠い周りのビル街の薄いネオン灯なんかを頼りにして、
   必死で走っていた。
   
   声はキンキン耳に障るアニメ声で、変にキショくてテンション高くて、ポジティブ
   なんだかネガティブなんだか分からなくてうっとうしいんだけど、、その1点だけは
   誰が何と言おうと、唯一尊敬できる点だね。」

2人の間に、さっきまで止んでいた風がまた吹き始めた。
紺野は寒気がした。
汗の始末や、頭から被った水の事もあるが、今の話を聞いたせいもあろう。
いつのまにか、呼吸も元に戻っている。

紺野「吉澤先輩、すいません。こんな面倒掛けてしまって・・・・・・・。」

吉澤「ああ、いいのいいの。気にしないで。今度ベーグル奢ってもらえるし・・・・・」

紺野「ベーグル?」

吉澤「え?ああ、何でもない。気にしないで。
   ほら!!高橋!いい加減起きろ!そろそろ練習に戻るぞ。」

その場をごまかすように、吉澤は近くで寝ていた高橋の自慢のポニーテールを鷲掴みにして
無理矢理起こした。

高橋「痛たたたた・・・・・・・・!
   あれ?ここは・・・・・・・・・・?」

ぼーっとする頭をそのままにして、高橋は目を覚ました。

吉澤「ほら。もう向こうに梨華ちゃんが行ってるから、私たちも急ぐよ。」

そう言って吉澤は紺野と高橋を半ば強引に引っ張っていった。
136 名前:ちょっとしたテニス用語講座 投稿日:2004/09/16(木) 16:49
皆様すいませんでした。色々諸事情により更新がかなり遅れてしまいました。
本作も駄文で申し訳ありません。
さ、気を取り直して始まります。

酸欠・・・・極度に激しい運動後、体内で必要とする酸素量が、肺から体内に入ってくる酸素量を大きく
      上回り、脳に充分な酸素が供給されないと、意識を失う場合があります。

額や脇の下・・・・・熱中症などの症状が出たとき、身体をすぐに冷やさなくてはいけません。
          その場合、額・脇の下・他にも膝裏などの皮膚のすぐ下を大きな血管が流れている場所を
          冷やすと、効果的です。

地球温暖化・・・・なんとかしなくては!!

揺さぶり・・・・陸上の長距離やマラソンでしばしば見かけられる物です。
        レースで先頭グループが大勢いる場合、先頭のランナーが意図的にペースを短い間隔で上げ下げ
        する事を言います。
        こうする事によって、普通に走るよりも疲労が出やすくなり、力の無いランナーは戦線を離脱し、
        集団人数を減らし、レースを優位に進める事ができます。
        しかし、あまり実力の無いランナーがすると、逆に自分が疲れてしまうため、ご注意を。

無酸素状態・・・・・激しい瞬発系の運動をすると、例え呼吸をしても体内に酸素が中々取り入れなくなり
          実質、酸素のない状態で運動する事になります。

鶏・・・・石川梨華の大好物(?)

ベーグル・・・・吉澤ひとみの大好物。実際、作者はどんな物がベーグルなのか知りません。

気化熱・・・・液体が気体になろうとするとき、周りから熱を奪います。この奪われる熱を気化熱と呼びます。
       確か、高校2年生に習います。さすが吉澤さん。
       くわしくはお近くの化学の先生に聞きましょう!

137 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/16(木) 20:39
http://www.dreamcorp.co.jp/what/what'sb.html
簡単に言うと、餅々っとしたパンです

リアル紺野は、気化熱は知ってたな
138 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/09/17(金) 21:32
う、更新されてた。やった!
よっすぃ〜はイイですね。私もあんな先輩ほし〜☆
紺ちゃんみたいな後輩(?)もいいな。
次回更新を待ってます

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