屋根の下のベース弾き #6
- 1 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/07(日) 22:47
- 同じ海板の続きです。
よろしくお願いいたします。
http://mseek.xrea.jp/wood/1018614026.html(最初)
http://mseek.xrea.jp/sea/1020511804.html(その次)
http://mseek.xrea.jp/sea/1026291110.html(パート2)
http://mseek.xrea.jp/sea/1032237720.html(パート3)
http://mseek.xrea.jp/sea/1040300502.html(パート4)
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sea/1049203127(パート5)
(倉庫行きになりましたらこちらになる予定です→http://mseek.xrea.jp/sea/1049203127.html)
- 2 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:48
-
「吉澤さんと石川さんはラブラブなの?」
「え、あ、その」
イシカワさんのダイレクトな質問にウチらは焦ってしまった。
なにも照れることはないんだけど。
「わ、分かります?」
「うん、バレバレ」
イシカワさんはにっこり笑った。
ああ、梨華ちゃんと微妙に性格違うな。
さっきはああ思ったけど、顔が同じと言ってもやっぱまったく同じキャラってワケ
じゃないんだ。
ヨシザワお兄さん、ウチ以上に照れ屋だし。
「あの」
「はい?」
「ヨシザワさんはイシカワさんを『イシカワさん』って呼んでるんですか?」
ウチの素朴な疑問におにーさん真っ赤になって、
「だ、だだだって…下の名前で呼ぶの…恥ずかしくないですか?」
物凄くシャイなひとことを呟いた。
イシカワさんは
「そーなのよー。名前で呼んでって言ってるんだけどね。
ね、ヨシザワくん♪」
と補足コメントし、ますますおにーさんは真っ赤になった。
- 3 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:53
-
―――保田視点
Wヨシザワ、Wイシカワの4人がじゃれているのを、ウチら4人は
笑って見ていた。
ヨシザワさんがイシカワさんにからかわれてるのか、大きな背を丸めて
「まいったなあ」というように頭に手をやっている。
ついでに吉澤もイジられてのか、ヨシザワさんと一緒になって
困った顔をしている。
「元気だねぇ、吉澤さん」
ヤスダさんが呟き、アタシたち3人は笑った。
土手に風が吹き抜ける。
気持ちがいいけど、ちょっと冷えてきたわ。
あったかい日もあるけどまだ冬だし。
もうすぐ陽も暮れる。
名残惜しいけど、そろそろお開きかしら。
そう思ってると、
「あ、カオリ布団干したまんまだった」
「そっか、んじゃぁもうそろそろ戻るか」
ヤスダさん夫妻は腕時計を見て言った。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
ヤスダさんはズボンのお尻を軽くはらって立ち上がった。
「んじゃぁウチらは先に戻りますね」
「あ、はい」
アタシはお気をつけて、と軽く頭を下げた。
「話せてよかった。今度是非飲みでも行きましょう」
アタシもよかったですよ。
性別は違うけど自分そっくりなひとに出会うって、そうそうない体験だし。
なんか素直に話せて、心強くなれた気がする。
「じゃ、飲み勝負しましょう。負けませんよ」
手を差し出して言うと、ヤスダさんは望むところだ、と笑った。
うちの眠そーな後藤に似たオンナノコや、ヤグチそっくりのひとも
やっぱお会いしたいし。
- 4 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:53
- ふと横を見ると、
「カオリちゃん、またね」
「はい、また圭ちゃん達について熱く語りましょうね」
カオリンズ(カオリさんがそう命名したそうだ。なんかネーミングセンスもカオに似
てるわ)は
やはり名残惜しいのか、抱擁を交わして別れを惜しんでいた。
『カオリ、帰ろ』
ヤスダさんが声をかけると、カオリさんは「うん、待って」とカオから体を離した。
ハハ、自分のカノジョがそっくりなひとと抱擁してるのって、なんか不思議な感じだ
わ。
「おーい、イシカワにヨシザワー。俺たち先帰るからなー。
おふたりも今日はありがとう。またね」
ヤスダさんはWヨシザワたちにも声をかけ、カオリさんと帰って行った。
- 5 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:54
-
「カオリさん、美人だったね」
帰り道、少し遠回りして堤防沿いの道を歩く。
カオリの言葉に、アタシは少し噴出した。
「まあね」
「ヤスダさんもカッコよかったし」
「うん。男のアタシって結構イケメン?」
「うっわー。イケメンだってー。いまどきー」
「わーるかったわねー」
笑いながら、なんとなく手をつないでみた。
子供みたいに、ぶんぶん振って。
「カオリさ」
「なに?」
「その…アタシでさ、いい…の?」
「なにがさ」
手を離す。
夕陽を背に立つカオリは、綺麗だった。
ちょっと怒ったような顔をしてる。
「圭ちゃんこそさあ、カオでいいのー?」
「よくなかったら結婚なんか考えないわよ」
「じゃ、いいじゃん」
カオリはまたアタシの手を握った。
「カオリの夢はですねえ」
「はあ」
「40のおばさんになっても、70のおばあちゃんになっても、
圭ちゃんに可愛いって思われることなの」
「…すっげー個人レベルだねえ」
「悪い?」
「いえいえ、立派な夢です」
「だしょ?」
また子供みたいにつないだ手を振って、夕焼けの中歩いて行く。
カオリ。
アタシ、もうこの手を離さないよ。
隣に、ずっとカオリがいる。
―――それが、アタシの夢なんだよ。
- 6 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:55
-
―――石川視点
ヤスダさんご夫妻も、女性のほうの保田さんたちも帰ってしまった。
陽も大分暮れてきたし、風が冷たい。
「じゃぁ、僕らもそろそろ」
ヨシザワさんが立ち上がった。
「そうっすね。何かちょっと寒くなってきたし」
ひとみちゃんも頷く。
「これ、着て下さい」
ヨシザワさんは自分のセーターをイシカワさんに差し出してた。
「え?いいよいいよ、大丈夫だよ」
それを見てると、
「ほら、梨華ちゃんもこれ着て」
ひとみちゃんも自分の上着を差し出した。
「あたしは大丈夫。それよりひとみちゃんこそそんな格好じゃ寒いでしょ」
「「駄目、着て」下さい」
ヨシザワチームの声が見事なくらいハモる。
というかヨシザワさん、カノジョにも基本敬語なのね。
あたしはヘンなトコで感心した。
「着てくれないと帰らないですよ」
ヨシザワさんはなんかそう言って強く出た。
「…変な所でいじっぱりだよね、ヨシザワくんって」
「前から分かってたことじゃないですか」
ふふっ、なんか遣り取りが微笑ましいわ。
『大きすぎるんだよぉ』ってイシカワさんはだぶだぶのセーターの袖を
ぶらぶらさせてる。
なんかそれがかわいくて微笑ましく見てたら、同じようにイシカワさんを
見てるヨシザワさんの顔も心なしか赤かった気がする。
- 7 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:56
- 「じゃぁ、ちょっと借りるね」
あたしもひとみちゃんの上着に袖を通した。
ああ、やっぱぶかぶかだ。
身長差あるし、ひとみちゃん、メンズっぽい服多いしな。
これも、なんか男物っぽい。
あたしもイシカワさんも長すぎる袖を折って、なんとか調節してた。
「こう、何か違うのにどこか似てるんですよねぇ」
「そうなんスよね」
ひとみちゃんたちはなんだか感心したように言った。
なんだか知らないけど、ふたりともジーンズのポケットに手を突っ込んで、
あたしたちを見ていた。
「今度写真お店に持って行きますね」
「うん、ありがとう」
イシカワさんはにっこり笑った。握手もした。
ごっちんに頼んで、人数分焼き増ししてもらおう。
バイトって言ってたから、メール送ればいいかしら。
「吉澤さんも、またお店の方に遊びに来てね」
「あ、はい」
イシカワさんが言うと、ひとみちゃんは長い首をぴょこんと曲げた。
あたし的に、ひとみちゃんのこの仕草はかなりツボだなー。
そっくりさんふたりで握手してる。
- 8 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:58
- 「ライブ、いつか見に行きますね」
ヨシザワさんが言うと、
「私も行く行く!!」
イシカワさんが元気よく手を上げる。
それが可愛かったので、あたしたちは笑った。
「石川さん」
「「ん?」」」
ヨシザワさんの呼びかけに、あたしたちは同時に反応。
「り、りりりり梨華さんの方じゃなくて石川さん」
「「へ?」」
ヨシザワさん頑張って、イシカワさんを下の名前で呼ぼうとしたのかな…。
「ははっ…えぇっと、また会いましょう」
ヨシザワさんは苦笑いしてる。
あたしは微笑んで、
「はい、また会いましょうね」
と手を差し出した。
ちょっと離れたとこにいたひとみちゃんが、じっとヨシザワさんの背中を
見てたような…?
気のせいかしら。
「それじゃぁ行こうか」
「うん。じゃぁまた」
帰り道が反対みたいだから、ここでお別れだ。
イシカワさんは一度振り返って、あたし達に向かって大きく手を振ってくれた。
こっちからじゃ逆光で見えないかもしれないけど、あたしもひとみちゃんも振り返した。
- 9 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:58
-
「ねー、梨華ちゃん」
帰り道、ひとみちゃんは
「ウチとヨシザワさん、どっち、手、大きかった?」
不思議な質問をしてきた。
「…へ?ヨシザワさんだけど」
ひとみちゃんは女の子なんだから、ヨシザワさんより手が小さくて
当たり前じゃない。
そう思ってると、ひとみちゃんは自分の手の平をじっと見て、
「…ぜってー負けねえ」
と呟いた。
「へ?ひとみちゃんどうしたの、一体?」
ひとみちゃんは立ち止まってしばらくあたしの顔をじっと見てたけど、
「…なんか、フツーに握手でもヤダ」
と聞き逃したら聞こえないような声で言った。
「バカねえ、誰と握手してもひとみちゃんのものだよ」
「…分かってるけどさ」
ひとみちゃんはうつむいた。
ひとみちゃんは、案外嫉妬深い。
たまに、子供みたいに。
「じゃ、イシカワさんとあたしだったらどっちが綺麗な手だった?」
はは、ちょっと意地悪しちゃえ。
そう言うと、ひとみちゃんは蚊の鳴くような声で
「…梨華ちゃんに決まってんじゃん」
さくさく歩き出した。
「もー、ひとみちゃーん!」
「ハラへったー!ウオー!」
照れ隠しなのか、ひとみちゃんはあたしの手を引いてがーっと走り出す。
ヨシザワさんも照れ屋だったけど。
ひとみちゃんも、負けないくらい照れ屋だ。
- 10 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 22:59
- さて、それから数日後―――
「こんにちはー」
あたしとごっちんは、カオリさんのお店を訪ねた。
この前の河原の写真を持って。
保田さんはお仕事だし、ひとみちゃんたちもバイトなので
時間があったあたしたちが来た。
写真だけっていうのもなんだし、みんなからメッセージも預かってきてる。
「んぁ〜、これこの間の写真です」
ごっちんが大き目の封筒をカオリさんに手渡した。
「ありがとね。イシカワ奥いるから呼んでくるよ」
「イシカワー、石川さんと後藤さんが写真持ってきてくれたよぉ」
カオリさんが奥にいるイシカワさんに呼びかけると、
『ゴンッ』
…明らかに何かぶつけた痛々しい音が聞こえてきた。
イシカワさん、大丈夫かしら…。
「ごめんねぇ、もうちょい待っててね」
カオリさんは苦笑いして言った。
「あの、何か、い、色んな音が聞こえたんですけど…」
心配で奥を見ようと首を伸ばす。
「んぁ」
ごっちんも、頷いてくれる。
「ははっ、まぁいつものことだよ」
しばらくここで待っててね、とカオリさんが言ってくれたので、
お言葉に甘えることにする。
ごっちんは店内を見渡して、
「んあ…いい感じ」
とお店が気に入ったようだった。
- 11 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 23:00
- 「お、おまたせしました」
しばらくして、イシカワさんが両手にファイルを抱えふらふら現れた。
…よろけてる。
大丈夫だろうか。
「どうしてそんな一気に持ってくるのさ」
カオリさんがあきれたように言う。
「早く戻ってきたかったんですよぉ」
イシカワさんは眉をハの字にする。
今日のイシカワさんはモノクロっぽい服で、スカートが短い。
プチセレブ風とでもいうのか。
このまえのピンクのも可愛かったけど、こういうのも似合うなあ。
「んあ、どうも。
あ、今日ここに来れないメンツから手紙みたいなの預かってるんでー、
見てやってください」
ごっちんが別の封筒からごそごそと便箋を取り出した。
「おー、どれどれ」
「わー♪」
カオリさんとイシカワさんは顔をくっつけるように便箋を覗きこんだ。
- 12 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 23:05
- 『(0^〜^0)ノ<ヨシザワアニキ!また熱く語りましょう!
イシカワさんたちとうちのライブ見に来てください!
カッケー!
(〜^◇^)<このまえはどうも〜。いやマジみんなそっくりで
びっくりしたし!オイラにそっくりな方ってやっぱ美人っすか?
キャハハ!ヤグチでしたー
川‘〜‘)|| <今日は行けなくてザンネンです。
今度圭ちゃんとお店に遊びに行きますね。
あ、そうだ。
圭ちゃんが『飲み勝負に絶対勝つわ!』って
燃えてるんですけど…止めます?
( `.∀´)<このまえはどうも!
今日は仕事なのでうちの女子チーム部員をそちらに派遣します。
また遊びましょう。
それでは世界の恋人・保田圭でした!(チュッ!) 』
- 13 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 23:07
- 「「…あのお」」
少したって、おふたりは手紙から顔を上げた。
「ハイ?」
「この…保田さんの文章の下…右下らへんにある、犬かと思われる
地球外生命体みたいなイラストは…?」
カオリさんが指でその問題箇所を示す。
ああ…やっぱりソコにくるわよね。
ごっちんも同じ気持ちだったのか、ひとこと
「…んあ」
と言った。
「犬…です。多分」
あたしは何故か小さな声で呟く。
「んあ、圭ちゃんのオリジナルすぎイラストです」
「……」
「あの…カオリさん?イシカワさん?」
おふたりは肩を震わせていたが、やがて
「ぎゃ…ぎゃははは!ほらぁ、だからカオリ言ったじゃん!
こ、これはうちのケイちゃんといい勝負だよお!」
「ハ、ハイ!そうですね!…キャハハ!」
おかしくてたまらない、というように吹きだした。
涙まで流して。
「言ったっていうのは?ヤスダさんといい勝負っていうのは…?」
首を傾げてると、カオリさんはステッカーコーナーの奥まったところにあった、
ちょっと厚手の紙を黙って手渡してくれた。ステッカーが売り切れたときに
姿を現す、スペシャルアイテムだそうだ。
- 14 名前:幸わせの小道 投稿日:2004/03/07(日) 23:14
- 『売り切れゴメン』
手書きでこの文字と、
「…ぶ…こ、このシュールなイラストは…ぶふふ」
添えられたイラストに、あたしたちはさっきのおふたかたのように
肩を震わせた。
こ、これは…。
ヤスダさんの手書きだそうで、保田さんの画風にとてもよく似た絵が
白い紙を埋めていた。
我慢できなくなったから、もーあたしもごっちんも思う存分笑ったけど。
「カオリ言ったんだよね。ナンコツずき、ビールずき。で、あの猫目。
きっと画力も似てるんだって」
「カオリさんの言う通りでしたね」
「…ハハ、そうですね」
あたしは紙を手に取って苦笑いする。
カオリさんは「人数分あげるね」と例のイラストを包んでくれた。
返品は不可だそうだ。
あたしたちはまた便箋とカードを手にし、Wヤスダさんのイラストに爆笑する。
シュールな犬とかのイラストがあたしたちに、『なにがそんなにおかしいのか?』と、
とぼけた顔を向けてるようだった。
で。
後日聞いたところによると、この頃ヤスダさんと保田さんは、
それぞれ会社で大きなクシャミをしたとかしないとか。
ヤスダさん情報は、飯田さん経由でカオリさんが教えてくれた。
やっぱ、そんなとこまで似てるんだ…。
(END)
- 15 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/07(日) 23:17
- 更新しました。
えー。
お気づきの方もいらっしゃったと思います。
昨日と今日の更新分は、匿名匿名希望さんの『僕と君との物語り。3』(空板連載中)とのコラボ企画でした。
匿名匿名希望さんのほうは「もくまおう」というタイトルになっております。
で、私のほうは「幸わせの小道」。
いいらさんがCocco好きなのもあって、匿名匿名希望さんがこのタイトルを考えてくださいました。
きっかけは今年の初めくらいに、私が匿名匿名希望さんにコラボを持ちかけたことです。
こういうのが苦手な方もいらっしゃると思いますが、お付き合いくださった皆様、更新中温かく
見守ってくださった皆様、どうもありがとうございました。
そしてこの場をお借りして、匿名匿名希望さんに心よりお礼申し上げます。
とても楽しかったです。どうもありがとうございました。
10時開始のはずがいきなりPC固まったり、復旧したらしたで
スレ容量オーバーで慌てて新スレ立てたり(汗。
ご迷惑おかけいたしました。
コラボをやって何が一番嬉しいか。
相手の方の小説が更新前に読めることです。ヲタには堪りません。(;´Д`)ハァハァ…
- 16 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/03/07(日) 23:23
- 更新お疲れ様でした。
そして新スレ突入おめでとうございます。
ベース弾きファンとしても今回と前回の更新分、かなり楽しませていただきました。
うまいこと言葉が見つからないのですが、
えぇっとえぇっと…大好きです(・∀・)
本当ありがとうございました(深々土下座)
- 17 名前:名無し23。 投稿日:2004/03/07(日) 23:32
- 新スレおめでとうございます。そして更新、お疲れ様でした。
コラボ第2弾ですねぇ。某所の風の岬編(?)の時もすごく面白かったですけど、
まさかまた読めるとは・・
今度はごっちん&ヤグのソックリさんにも会えるかな・・
- 18 名前:名無し読者M 投稿日:2004/03/08(月) 13:26
- あちらの作品を読んでまいりました。
こちらの作品も大好きでずっと読ませてもらっていたのですが、
意外とご近所でしかも同じ組み合わ・・・
今まで気が付かなかったです。
某所の先生とナースといい、こんな素敵な展開が見られるのも
作者さんの繰り広げられる世界の確かさがあってこそだと思います。
今後の進展もこっそりお待ちしております。
- 19 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/10(水) 23:27
-
―――石川視点
大晦日の夜、裕ちゃんとふたりで居間で紅白を見ていた。
「なんや、最近の若い子の歌はわからんわー」
裕ちゃんはみかんを食べながらそんなことを言う。
その割には、カラオケで平家さんも歌わないような若い子の歌歌ってる気がする…。
「やれやれ、今年も仕舞いやねえ」
「うん」
「色々あったなー」
「お姉ちゃんにもカノジョできたし」
わざと『お姉ちゃん』と言ってニヤニヤすると、軽くゲンコツで叩かれた。
濃い目に淹れたコーヒーと、平家さんにもらったゴディバのチョコでまったりしてると、
「おお、明菜や。明菜が出とるで」
裕ちゃんがちょっと身を乗り出した。
かーざりじゃないのよなみだは、とか口ずさんでる。
あたしがあんまり知らない歌だ。
前に柴ちゃんがカラオケで歌ってた気がするけど。
あたしももっと歌とか覚えなきゃな。
仮にも、バンドやってる彼女がいるんだし。
紅白も終わって「ゆく年くる年」になった。
あたしはふと思い立って、携帯を持ってこたつから出た。
「どこ行くねん」
「台所」
「ふうん。吉澤によろしくな」
…なんで分かったんだろ。
台所の暖房を入れて、ちょっと寒さに震えながらひとみちゃんの携帯にかける。
『ハイ?』
「ひとみちゃん?」
ひとみちゃんは外にいるのか、車の音とかがした。
ひとみちゃんは今から、お友達と出かけるそうだ。
まったく寒いね、雪降ってるし、と彼女は寒そうに言った。
少し話をして、ひとみちゃんのお友達が来たみたいなので、そこで電話を切った。
『おやすみ』
ひとみちゃんの声は優しかった。
- 20 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/10(水) 23:29
- 電話を切ったあと、静かな台所を見渡す。
食器乾燥機には、さっき裕ちゃんと食べた年越しそばの器がふたり分伏せられてた。
それを見て、あいぼんやののちゃんのことを思い出した。
裕ちゃんがきっとこのあと『梨華、紅茶入れてんか』と言い出すに決まってるし、
あたしもコーヒー以外のものが飲みたくなったので、お茶の支度をして居間に戻る。
「おお、気が利くやないか」
「長いお付き合いですから」
紅茶の載ったトレイをこたつに置いて、ジャムとキャビネットの洋酒を入れる。
お父さんやお母さんが生きてた頃は、4人でこのお茶を飲んで年を越してた。
子供のときなんか、こんな時間まで普段起きてないし、お酒をお茶に入れるのだって、
なんか大人になったみたいですっごくドキドキしたっけ。
「あ、12時や」
裕ちゃんが顔を上がる。
年が変わった。
それと同時にメールが携帯に届いた。
1、2…6件。
結構多いな。
受信ボックスを開けてみると、マサオさんや、市井さん、ごっちん、保田さん、飯田さん、
あいぼんだった。
なんて返事を打とうかと考えてると、今度は着メロが鳴った。
「はい?」
『おお、心の友よ。よかったー、つながった』
「柴ちゃん?明けましておめでとう」
『おめでとー。お年玉はあげないけどね』
「ハハ、そりゃ残念」
『やや、年の初めから美人と会話できるとはこりゃこりゃめでたい!』
「めぐみさんですか?おめでとうございます」
めぐみさん、お正月だから実家に帰ってるのね。
『そっちはどうよー?
あ、そっか。みんな実家帰ってるから、お姉さんとふたりなんだね』
「うん、そう」
答えてると、
『なに?お姉さん!?梨華ちゃん、お姉さんいるのですか?
お、お姉さんもび、美人なのかな?』
めぐみさん…相変わらずだ。
「はい、おります。10歳違いの。ええ、顔はあんまり似てませんが、美人です」
笑って言うと、柴ちゃんが『アンタ、見境なさすぎだよ』と電話の向こうで
お姉さんに向かってあきれてた。
- 21 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/10(水) 23:31
- 『じゃ、時間あったら新学期までに初詣行こう』
と電話を切った。
裕ちゃんは不思議そうな顔をして、
「ウチがどうかしたん?」
と言った。
「うん、柴ちゃんのお姉さんにお姉さんってどんな人って聞かれてね」
「ふうん」
そんなことを言ってると、裕ちゃんの携帯が鳴った。
きっと平家さんだろう。
裕ちゃん、平家さんからのは着メロ、平家さんの好きな曲に設定してるし。
あたしの携帯も鳴った。
ビートルズの着メロ。
ひとみちゃんからのメールだ。
『明けましておめでとう!
電話ありがとう〜。カッケー!
今年もひとみは飛ばすぜい!』
ひとみちゃんらしい文面に、吹きだした。
横では、裕ちゃんが平家さんと話してる。
みんなにメールの返事を打って、あたしは紅茶のおかわりを飲みながら
また返ってきたメールを見てしばらく楽しんでいた。
- 22 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/10(水) 23:32
-
―――その頃。柴田家
「柴田くん」
姉・めぐみがそう言うと、妹はこたつから不審げな視線を向けた。
みかんを口にしたまま。
「いやあの、アンタも柴田だし」
「柴田」
妹のツッコミも無視して、姉は妹の肩をぽんと叩く。
「年も明けたし、初詣行こうぜ」
「やだ。寒いし、眠いもん」
「寒いと眠気もふっとぶ」
どうしても連れて行く気である。
「あたしはカウントダウンTV見たいんだよ」
「そんなもんビデオに録るよろし」
「うえ〜」
「タコ焼きおごっちゃる」
「明日肉食わせてくれたら考える」
「贅沢だなっ、姉ちゃんはそんな妹に育てた覚えはないぞ!」
「わかったよー。タコ焼きはおごってもらうよ」
ブツブツ言いながら、柴田はこたつから出て支度を始めた。
柴田姉妹は地元の神社に向かった。
妹は『マサオと今年もうんぬん』等の無難なことを祈ったが、姉は
「今年こそこのムラタめに世界征服を、世界征服を」
などと呟いている。
「ベタだよ!しかも普段活舌悪いのにめちゃスラスラ早口だし!」
「さあ、タコ焼き食うか」
神様に頼むだけ頼んだら姉はさっさと石段を降りて屋台に向かった。
- 23 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/10(水) 23:35
- 「姉ちゃん」
「ん〜?」
ふたりは高い割にはさほどうまくないタコ焼きを寄り添って食べていた。
「斉藤さんさー、いま新潟なんだよねー」
「ああ、新幹線で昨日帰ったよ」
「ふーん。よく知ってんねえ」
姉は眉間に皺を寄せる。
「何が言いたいんだよ」
「いやー。幸せになってね、って。ただ、それだけ」
「あたしの恋人はマンガだっつーの」
「マンガはツライとき支えになってくれる?」
「まあ、あたしが生きてる意味?そんなんはある」
「ふうん、あたしはそのへんはよく分かんないけどさあ。
斉藤さんは、姉ちゃんのこと、いつも心配してるよ」
「そりゃ、友達だし。仕事絡みの仲でもあるし」
「まあ、それもあるんだろうけど。なんつーか、そういうのを超越してる気がする、
斉藤さんは」
「斉藤に聞いたんか?」
「いや、特に。でも、見てたら分かるよ」
「あゆみのくせにナマイキだー!!」
姉はいきなり素っ頓狂な声で叫び、妹の鼻をつまんだ。
妹は『も〜』と文句を言いながらも、姉の動揺を見てとったので結構満足だった。
そのあとは屋台をいくつか冷やかし、コンビニに寄ってから家路についた。
- 24 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/10(水) 23:44
- 更新しました。
(0^〜^)ノ<今日から新章!
タイトルは、『一月一日』の歌詞より。
かくし芸のオープニングで歌ってるあれです。
( ^▽^)<♪年の初めの 例とて〜
なお、姐さんが作中歌ってるのは中森明菜の『飾りじゃないのよ涙は』です。
作詞作曲とも井上陽水です。陽水が自分でも歌っており、そっちもなかなかです。
(明菜に提供したほうのアレンジは確か萩田光雄だったと思いますが)
レスのお礼です。
>匿名匿名希望さん
(0^〜^)ノ<アニキによろしく!ヨシザワアニキ、カッケー!
こちらこそ、一ヲタとして楽しませて頂きました。で、ご迷惑おかけしました(汗
思わず新スレですが、これからもよろしくおながいします。
>名無し23。さん
(;^〜^)<オイラあんとき、結構タイヘンな目にあったんだよね ヤスダサンハモットダケド
初レスの方でしょうか。ありがとうございます。あのときのも読んで頂いたんですね。
向こうのごっちんやヤグのリアクションとか想像すると面白いですね。
>名無し読者Mさん
(0^〜^)ノ<作者ほめられて照れてるYO!ありがとう〜
初レスありがとうございます。こちらも読んで頂いてありがとうございます。
今回は性別の違う人たちがいるので、その差を出したのですがやっぱり難しかったです。
- 25 名前:オガマー 投稿日:2004/03/11(木) 15:20
- あ〜、ほのぼのする〜。
村っちがたまらんかわいい。
- 26 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 01:17
- その頃。
飯田は妹や地元の友人と初詣に出かけ、その足でカラオケに行った。
カラオケルームで新年を迎える。
ちょっと前に梨華にメールを送ったら、少したって返事が返ってきた。
「もしもしー?」
ふと思いたって部屋を出て保田に電話をかける。
『あ…カオリ?』
寝ていたのだろう。
完全に鼻声だった。
「そう。いま、いい?」
『ん。あ、明けましておめでとう』
「おめでとう」
寝起きなのに律儀な彼女が可笑しくてくすくす笑う。
「寝てた?」
『ああ…友達とかにメール送って、こたつで泥のように寝てた。…12時40分か。大して寝てないわね』
「えー、カオ、圭ちゃんからメールきてないよー」
『アンタは直接かけようと思ってたから』
「うん」
『まあ、先、越されたけどね』
それから少し話をして、飯田は電話を切った。
部屋に戻ると、妹に『おそーい。なにしてたのよー』と少し小言を言われた。
- 27 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 01:18
- 後藤はそのまま市井家で年を越し、ホットカーペットの上で爆睡していた。
市井はその様を見て苦笑いし、後藤の家に『寝てしまったんでこのまま泊めます』
と電話をかける。
「…んあ〜、おそばそんなに食べれないよ〜」
「えらく日にちのズレた寝言だな。コイツはまだ年越しソバ食ってんのかよー」
足で軽くうりうりし、そばにあぐらをかいて座り、姉からミカンを受け取って
食べ始めた。
両親も寝てしまったので、姉とTSUTAYAで借りてきたDVDを見始める。
明け方4時頃までは意識があったが、どうにも眠くなってきたので後藤にかけた
毛布を少し自分にも寄せ、中に入ってそのまま横になった。
自分の家の毛布なのに、めくると後藤の匂いがしてなんだか恥ずかしかった。
そういや、こんな近くでひとつの布団で寝たのもヒサブリだな。
眠い頭で、そんなことを考えた。
- 28 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 01:20
- 初詣を終えた柴田姉妹は自宅に向かう道すがら、とりとめのない話をしていた。
「ねー、ねーちゃん」
「あ?」
「今描いてる漫画さー、いつ出んの?」
「早ければ3月くらい。書き下ろしだし」
「ふうん。なんか取材とか行ったんでしょ」
「ああ、かなり時間割いたよ」
斉藤に同行してもらってね、と村田は付け足した。
ふと柴田はライブハウスでの出来事を思い出す。
「ねー、マジでカオリさんにヌードになってもらいたいって思ってる?」
「思ってるんでなくて実現させようとね、作戦を練ってる」
姉はニヤッと笑う。
「飯田さんもだけど、保田さんがなんて言うかねー」
「ああ、カオリちゃんのカッコイイ彼女ね」
彼女も美人だよね、と村田は呟いた。
「もし保田さんが反対したらどうすんのさー。
保田さん、結構ヤキモチ焼きだと思うよ」
「うーむ…難攻不落とはこのことだな。
まずは外壁から攻めるか…」
村田は顎に手を当てて、しばらく本気で考え込んでいた。
- 29 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 01:26
- 梨華は2時過ぎには部屋に戻ってベッドに入った。
静かな室内に、くしゃみの音が響く。
裕子はもう寝ただろうか。
平家と結構長い間、電話で話していた。
3日に平家の両親が娘の家に来るので、その打ち合わせもしているようだ。
『裕ちゃん、うまくいくといいな…』
掛け布団を肩までかけ直し、梨華は天井を見つめた。
『あたしもいつかひとみちゃんのおうちの人に、紹介してもらえるかしら。
ひとみちゃん、裕ちゃんにはすぐ挨拶してくれたからな。
そのときがきたら、あたしちゃんとできるかしら』
暗闇の中、梨華はそんなことを考え、目を閉じた。
一方。ハワイでは。
大晦日に成田を発ったアヤカは、朝ホノルル空港に着いた。
時差があるので、もう一度大晦日をやり直すことになる。
飛行機の時間をあらかじめ言ってたので、ミカが迎えに来てくれていた。
「おはよう。お疲れ」
「あー…太陽が眩しいわ」
アヤカは手をかざしてハワイの空を見上げた。
ずっと冬の中にいて、いきなり常夏の世界なのでさすがに眩しい。
車で一旦ミカの家に向かう。
「今回はちゃんとスーツケース持ってきたんだね」
「ああ、うん。ちゃんと準備したし」
ミカはハンドルを握ってくすくす笑った。
この前来たときはバックひとつだったので、アヤカは決まり悪く窓の外を見た。
ミラー越しにミカの顔を見ると、とても嬉しそうだった。
- 30 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/16(火) 01:32
- 更新しました。
姉の幸せを願ういしかーさん、本気でなにかを企んでる村さんの巻。( ‐ Δ‐) フフフフ…
レスのお礼です。
>オガマーさん
( `_´)<博士、かわいいとおっしゃってくださってますが。タマランソウデス
(−Θ ΔΘ)ノ<罪な存在だぉ。まったくもって罪じゃ
村さんはかなり気持ち揺れてます。グラグラです。
大して意味はないのですが、上のふたりは白衣姿に変換してください。
- 31 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:45
- ―――吉澤視点
ウチは地元の友達とドライブに出かけた。
初詣のあとファミレスで軽く食事し、初日の出を目指して車を走らせる。
海岸に出たら、同じように日の出待ちの人がたくさんいた。
寒いので、友達がくれたカイロを上着のポケットの中で何度も揉む。
陽が昇ると歓声が上がった。
別に意味はなかったのだが、隣にいた連れと手を上げてパンと叩き合う。
水平線から、徐々に新しい朝陽が顔を出した。
日の出を堪能して、さて帰ろうかというとき。
運転してる友達の携帯が鳴った。
「もしもし…え?ほんとに?」
どうしたのか聞いてると、その子の身内の方に不幸があって、急遽行かなければならなくなったらしい。
「ごめん、みんな。あたしこのままおじいちゃん家行くわ。こっから一番近い駅まで送るから」
そう言ってくれたので、お言葉に甘えて送ってもらう。
ウチらを下ろすと、その子は慌しく去って行った。
急なこととは言え、お正月から大変だ。
残された3人でどうしようか言ってると、ふたりは眠いしこのまま帰って寝ると言った。
ウチはふとあることを思いつき、ふたりと別れ、ひとり反対方向の電車に乗る。
携帯を見て、ここからどれくらいの時間がかかるか考え、電車を待った。
- 32 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:46
-
―――石川視点
―――中澤家
9時過ぎに起きると、裕ちゃんはもう起きて台所でお雑煮の味見をしていた。
着物に割烹着姿だった。
「明けましておめでとう」
「おう、おめでとさん。着物着るんか?これできたらやったるわ」
「うん、お願い」
仏間に行って、準備をする。
晴れ着とか大仰なものじゃないけど、元旦はほとんど着物を着てる。
あたしひとりじゃ着付けできないから、いつも裕ちゃんに手伝ってもらってるけど。
さくさくと着付けして、すぐに完成。
居間で遅い朝食となる。
お屠蘇を少し飲んで、おせちをつまんでテレビを見る。
お年始に矢口さんが来てくれた。
「明けましておめでとーっす」
「ヤーグチー!」
晴れ着の矢口さんがかわいすぎて、裕ちゃんはいきなり玄関口で抱きついてた。
「わあ!年明けからトバしすぎだよ、裕子!」
「もーヤグチかわいすぎやわあ。裕ちゃん、ほんまどないしよ」
裕ちゃんったら。なっちさんがいないからいいようなものの…。
ちょうどお昼どきだったので、お雑煮を食べてもらう。
矢口さんは一人暮らしで特におせちとかは作らないそうなんで、喜んで食べてくれた。
「なっち、昨日夜の便で帰ったらしいんだけどさあ、妹と朝から雪合戦してんだって。
若いよねえ」
「はっは。なっちらしいな」
「アゴンは初詣とか行かないの?」
「あ、ハイ。柴ちゃんと時間あったら行こうって言ってるんです」
「そっか。しっかし、どこも混んでるよねえ。神様とかも正月から大変だね」
テレビの漫才をしばらく見て、3人で笑ってた。
- 33 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:47
- しばらくして、矢口さんは「ごちそうさま」と帰って行った。
お年賀に、「オイラのお手製じゃないけど」とマドレーヌをくれた。
お雑煮を片付けて、またまったりしてると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰や」
「今日、他に誰かお客さん来る?」
「いや、みちよも今日は来うへんはずや」
「宅配かしら」
インターフォンの受話器を上げると、
『あ…どうも。吉澤っす』
聞き覚えのある声がした。
「ひとみちゃん?」
急いで外に出ると、ひとみちゃんはなんか決まり悪そうに笑って
「…来ちゃった」
片手を上げた。
「どうしたの?」
「いや…話せば長いんだけど」
「とにかく入って。おなか空いてない?」
聞くまでもなく、ひとみちゃんのおなかがぐるぐる鳴った。
彼女はまたバツが悪そうに笑った。
「味はどないや」
「うまいっす」
すぐ居間に上がってもらって、お雑煮を温めた。
裕ちゃんがおもちを多めに入れてあげると、ひとみちゃんはひょこんと頭を下げた。
聞くと、朝からほとんど食べてないらしい。
「おかわりあるからね」
「うん。ありがとう」
あたしはさっき矢口さんがくれたマドレーヌをお皿に盛って、お茶の支度をした。
その間、裕ちゃんはひとみちゃんと話をしていた。
「今日は近くまで来たんか」
「ああ、はい。せっかくだし、お年始にって思いまして。…モチ、うまいっすね」
「うまい店のを毎年買うとるからな。ようさん食べ」
「はい、ありがとうございます」
- 34 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:49
- いきなりで、びっくりしたなあ。
ひとみちゃん、眠そうだけど大丈夫かな。
電車の中で寝て来た、って言ってるけど。
お茶のあと、裕ちゃんのすすめもあってあたしたちは初詣に出かけることになった。
駅までひとみちゃんを送りがてら。
ひとみちゃんは家の人に黙って来たらしいので、『帰ったら、母さんにあきれられるかも』と苦笑いした。
地元の神社は、こじんまりとしてるけど人もそんな多くなく詣でやすかった。
「ウチ、今日で2回目」
お賽銭を投げて、ひとみちゃんが言った。
「あ、そっか」
「梨華ちゃんのことまた頼もうかなあ。あ、違う神社でも同じ神様なんかなあ」
「何を頼むの?」
「いやー、そんなことひーちゃん恥ずかしくて言えないっ」
「もう〜」
くすくす笑って、神様にひとみちゃんやみんなのことをお願いした。
そのあとスタバに行き、少しお茶して駅まで一緒に行った。
「あのさ」
急にひとみちゃんが横を向いた。
「なあに?」
「あの…今日は急にごめん。中澤さんにも言っといて」
「ああ、そんないいよ」
「…会いたかったん、だ」
そう言ってきゅっと手を握ってきた。
「うん」
「ハハ、帰ったら何時かなー。今日すき焼きって母さん言ってたから、怒ってるだろうなー」
「おうちのひとによろしくね」
「ああ、うん。じゃ」
改札を抜けて、ひとみちゃんは手を振って行ってしまった。
- 35 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:50
- ひとみちゃんを見送ったら、ほっとしてなんか気が抜けた。
駅前をブラブラして、当たり前だけどお店はほとんど開いてないから
コンビニとかを覗いて帰る。
またスタバに戻って、裕ちゃんのおみやげにビスコットとかを買った。
外に出ると、今年初めての夕陽が、ビルの隙間から顔を覗かせた。
「ただいまー」
「「おかえりー」」
裕ちゃんの声と平家さんの声が重なった。
あれ。平家さん、来てるんだ。
「思てたより早かったな、メシにすんで」
裕ちゃんの言う通り居間にはコンロがセットしてあり、すでにお肉とかが
お皿に盛って準備してあった。
「よー、おめでとう。今年もよろしゅうになあ」
「おめでとうございます。今年もふつつかな姉をお願いします」
平家さんがウケて爆笑する横で、あたしは裕ちゃんに軽くはたかれた。
「今日はお仕事だったんじゃないんですか」
「ああ、リハが早よう済んだからな。ちょっとスタッフと飲んでそのまま来た」
おみやげ、と平家さんは綺麗な包装紙の箱をくれた。
多分、お菓子だと思う。
「今日はすき焼きや。肉もみちよが買うてきてくれた分あるから、ようさん食べや」
「いつもすみません」
気にせんでエエ、と平家さんは手を振った。
「すき焼き、か」
とさっきのひとみちゃんの言葉を思い出してくすっと笑うと、
ふたりは不思議そうに顔を見合わせた。
- 36 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 17:51
- 3人でお鍋を囲んでるとき、
「なんや、よっすぃ〜が来てたんやて?」
平家さんが言った。
「あ、はい。さっき、帰りました」
「なんや、ごはん食べて帰ったらエエのに。て、ウチの家やないけどな」
まったくや、と横で裕ちゃんは苦笑いした。
「ええ、お家の人が待ってるようでそのまま帰りました」
「ほう。…煮えたで、食べ」
平家さんがお箸でお肉をあたしのほうに寄せてくれた。
「すみません」
「みちよは梨華に甘いなあ」
「何言ってんの、平家さんが一番甘いのは裕ちゃんじゃん」
裕ちゃんは真っ赤になり、平家さんはおかしくてたまらない、というように
肩を震わせて笑う。
「ほんまに…正月から何言うてんねん」
裕ちゃんはブツブツ言ってたが、満更でもなさそうだった。
- 37 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/16(火) 17:54
- 更新しました。
(;〜^◇^)/<正月から裕子強烈すぎだよッ!オイラチッソクスルカトオモッタヨ!
(;`◇´)<ホンマにしゃあない人やなあ
- 38 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 18:49
- 一方ハワイのアヤカは―――
祖父の家に親族が集まって新年のパーティーとなる。
アヤカはそこで自分の両親と久しぶりに顔を合わせた。
母に「たまには帰ってらっしゃい」と言われ、肩をすくめる。
実家は同じ都内にあるので、ついつい面倒で帰っていないのだ。
午前0時が近づいて、カウントダウンになる。
電気が消えて、すぐそばにいた祖父と抱き合ってキスをした。
近くでミカは、アヤカの両親と頬にキスし合っている。
シャンペンを抜いて、乾杯する。
アヤカは旅の疲れが出たのか、次に抜いた赤ワインを飲んだら、眠くなってきた。
ソファに沈み込んで、座ったままうとうとする。
「アヤカ、眠いの?」
「ん…」
ミカの声がずいぶん遠くに聞こえるな、と思ったら、腕を引っ張られて、
寝室に連れて行かれた。
アヤカは靴を脱がされ、ベッドに寝かされる。
「おやすみ。あたしは戻るね」
ミカがそう言って電気を消そうとした。
何故そうしたのか分からないが、アヤカはベッドから腕を伸ばして彼女の肩を掴んだ。
「…ドレスがシワになるよ」
とまで、ミカが言ったのはどうにか覚えている。
「…アヤカ」
「…抱いてよ」
「ちょっと…いいの?」
「ん…」
この辺から記憶があやしい。
服を脱がされ、一瞬寒気がしたが、すぐにミカの肌に触れ心地よい温かさに
包み込まれた。
- 39 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 18:53
-
翌朝。
浅い眠りから覚めて、隣のミカを見る。
『…うーむ。食べられたことになるのかな』
自分の体を見ると、あちこち口づけの跡が残っている。
ミカをベッドに誘い込んで、気がついたらそうなっていた。
酒の酔いと眠気でさすがに記憶が切れ切れだが、ミカの背中に最後こらえきれず
きつく抱きついたことなどは覚えている。
『起きたらなんて言われるかなー』
体を起こして、ベッドサイドにあった水を飲む。
それよりも、誰かにこの状況を見られたら言い訳ができないので脱ぎ捨てた
服や靴をまとめ、顔を洗いに行った。
「…なにを怒ってんのよ」
「別に」
「ていうか、されたのはあたしなのに」
「誘ったのはそっちじゃん」
その日のお茶の時間。
ミカは何故だか機嫌が悪く、ムスッとしていた。
誰にも知られないように、こそっと口ゲンカする。
「ねえ、あたしなんかした?」
「…もういいよ」
「よくないわよー。したんなら謝るから」
「そんな義理とかみたいに謝ってもらいたくないっ」
「ああ、そう」
「ホラ、ふたりとも」
アヤカの母がやんわり止める。
「やめなさい、おめでたい日なのに。アヤカも、いい大人なんだから」
「ハイ…」
ミカは俯いて、アヤカはなす術がなく冷めかけたお茶を飲み干した。
結局その日は、仲直りすることなく過ぎて行った。
- 40 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/16(火) 18:54
-
保田は実家に帰って、特に何もせず過ごしていた。
犬の散歩の他は、出かけることもなかった。
夕食のあと、こたつでテレビを見てると携帯が鳴る。
国際電話だった。
「もしもし?」
大方アヤカだろうと思って出たら、やっぱりそうだった。
『ハイ、圭ちゃん。A HAPPY NEW YEAR!』
「コテコテの日本人のクセに外国人ぶって挨拶すんじゃないわよ」
保田のツッコミに、アヤカは笑った。
『冷たいなー。せっかく新年の挨拶をって思ったのにー』
「ハイハイ、ありがとね。そっちはまだ元日でしょ。
パーティーとかあったんじゃないの」
『ああ、うん』
「なんかあった?」
圭ちゃんにはかなわないな、と思い、アヤカは笑う。
昨日のミカとのことを簡単に話した。
『あ〜あ。大方、他の女の名前でも呼んだんじゃないのお〜?』
電話の向こうの保田は多分ニヤニヤしてるだろう。
手に取るように分かった。
「圭ちゃんじゃあるまいしー」
『なによッ。アタシはちゃんとやってるわよッ』
「カオリちゃんいま実家帰ってるんでしょ〜?
タマってるんじゃないのー?」
『な…!』
「あ、図星?」
『ア、アンタね…』
圭ちゃんってイジりがいがあるなあ。
電話のコードを指に巻きつけ、アヤカはニヤニヤする。
『と、とにかく、ちゃっちゃと仲直りしなさいよっ』
「ハーイ。早く欲求不満解消できたらいいね〜」
『ぶつわよッ!』
ケラケラ笑って、電話を切った。
- 41 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/16(火) 18:56
- 更新しました。
やーい>川‘.▽‘)||¶ (`.∀´;)¶<ゴルァ!
- 42 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/03/17(水) 03:24
- ( ^▽^)<ひ、ひとよりも美しい。つ、罪なわたし。じ、自画自賛。
(0^〜^)<ひ、ひっこんでろ。つ、つってんだろ。じ、じゃまなんだよ。
もう!なんでそんなに意地悪なの!>((((( #`▽´)○゛ (((((0^〜^)
そんなこと言ってましが、2000年X’mas BOXを最近手に入れたんですが、
(0^〜^)<じ〜っ… (^▽^)できあがった梨華ちゃんの写真
梨華ちゃんかわいい!>(*^〜^)つ(^▽^)
多分これが、ひ〜ちゃんの本音だと思います。まさかこんないいシーンがあるとは思いませんでした。いしよし万歳です。
お笑い賞おめでとう。(0^〜^)人(^▽^ )
(0^〜^)ノ□ジュージュー(焼きそばを焼いている)
( ^▽^)つ□<引越し焼きそばです。どうぞ。
更新お疲れ様です。遅くなりましたが新スレおめでとうございます。またちょっと長いレスになるかもしれませんが、できるだけ短くするんでこれからもよろしくお願いします。
日本とハワイは平和なようですが、オーストラリアの( ´D`)川o・-・)この2人が心配です。元気だといいんですが…
- 43 名前:龍 投稿日:2004/03/18(木) 21:16
- 毎回、楽しく読ませてもらってます。
(0^〜^)の行動力には、ビックリしました。
しかし、ヽ^∀^ノに春はやって来るんでしょうか?
がんがれ、ヽ^∀^ノ!!
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/19(金) 00:03
- すいません。落とさせていただきます。
- 45 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/23(火) 01:26
- 保田の実家―――
「さーて。寝るかね」
日付が変わる頃、保田はベッドに入って眠りにつこうとする。
うとうとしかけてると、枕元の携帯が鳴った。
「『国際』…またアヤカかね」
もしもし?と出ると、
『も、もしもし…』
電話の向こうでか細い声がした。
「ああ、紺野じゃん。明けましておめでと」
『あ…失礼しました。おめでとうございます。
あの…』
「どしたん?」
『こ、困ったことになりました…』
「…へ?」
電話の向こうは、すでに泣きそうだった。
「恋人のフリ?」
保田はベッドから体を起こし、いったん消した枕元の灯りを点けた。
『ハイ…愛ちゃん、電話で彼女とケンカしちゃって』
紺野の話ではこうだった。
たまたま高橋の恋人がブリスベンまで来ており、会おうということになった。
ところがちょっとした会話の行き違いから彼女と高橋はケンカになり、電話で口論する。
そばにいた紺野はおろおろし、高橋をなだめようとした。
高橋はひとこと、
「あっしがいまあんたの他に付き合ってる彼女や!」
紺野に受話器を押し付け、にっちもさっちもいかなくなる。
「…どーしてその場で否定しないの」
保田はあきれて頭をかいた。
『だって…向こうのひとも相当頭に血が上ってましたから。
すぐ『違う』って言ったのに…ぐすっ』
「分かった。泣くなって、ね?
辻に一緒に来てもらったら?ややこしい修羅場でもあの子がいればなんとなく和むんじゃない?」
『ハイ…』
「あたしからも辻に頼んどいてやるから、あんたはもう寝なさい。
もう遅いし」
『ハ…!も、もう1時でしたか!わたくしとしたことが…こんな時間に失礼いたしました』
いま気付いたんかよ、と保田は苦笑した。
「…さーて。なんて知らせようか」
電話を切り、辻に打つメールの内容を考える保田だった。
- 46 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/23(火) 01:29
-
その日、新垣は道重さゆみとどういうわけか初詣に来ていた。
新垣は学校で『新垣塾』といううさんくさい同好会を運営しており、
メンバーである道重と、部活動の一環として正月から出かけている。
「あ、あの子。チアの子じゃない?」
駅前で2年生の田中れいなを見かけ、道重が言う。
「ああ、田中ちゃんね。声かけてみよっか」
新垣が少し小走りに田中の元に行く。
田中は友人にドタキャンされ、ヒマなので初詣に一緒に行こうという誘いを快諾した。
- 47 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/23(火) 01:30
- 「あ、亀井さん」
神社までの道すがら、道重は今度はクラスメートの亀井絵里を発見する。
「人を指差すのはよくないけん」
田中はぼそっと言う。
「さゆ、声かけてくるねー」
てててて、と走って道重は行ってしまった。
「ちょ!シゲさん、おーい」
新垣は冷や汗をかく。
「あんひと、全然ヒトの話聞かんとね」
田中はまたぼそっと言った。
亀井は人当たりはいいのだが、何分完璧な優等生なのでクラスでは何となく敬遠されている。
友人もいるにはいるが、同じように成績のいい子たちだった。
『あの亀井さんになんのためらいなく声かけて…シゲさんすっげー』
少し離れたところから道重が亀井を誘っているのを見て、新垣は感心する。
道重に連れられて、にこやかに亀井がやって来る。
新垣はあわてて頭を下げた。
「新垣先輩、苦労しとっとね」
田中のいたわりの言葉が心にしみた。
- 48 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/23(火) 01:30
- 「亀井さん、いきなり誘って迷惑じゃなかったの?」
神社へ向かう途中、新垣は道重に小声で言う。
亀井は少し離れて先頭を歩いている。
「だーいじょーぶ!お正月からさゆみたいなカワイイ子と初詣行けるんだから、きっと亀井さんも
幸せだって!」
「あんた…長生きするけん」
田中はかなり感情のこもってない声で呟いた。
「ウフフ、ありがとう〜♪」
『オーイ!先輩をあんた呼ばわりかよ!気持ちは分かるけど!シゲさんもソコ褒められてないし!』
道重が両手で頬を押さえて嬉しそうな様を見ながら、新垣は心の中で言った。
「みんな、遅いよー」
亀井は振り返って、笑顔で手を振った。
- 49 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/23(火) 01:32
-
―――石川視点
「なんですと!?」
初詣の帰りに寄ったファミレスで、柴ちゃんは目を丸くする。
「ヨシコが来たって?しかも小田原から!?」
「うん、初日の出見に行った帰りに寄ってくれたらしいの」
小田原に行った帰りに、電車を乗り継いでうちにお年始に来てくれたのだ。
その話をすると、柴ちゃんは
「ちょっと寄ってくって距離じゃないっしょ…いやあ、愛だねえ」
「やだ!愛だなんて!」
照れて、柴ちゃんをばしばし叩く。
「いてーよ。まあ、なんだ。お姫様は年明けからラッキーだったようで」
「う、うん。あ、マサオさんは実家帰ってるんだっけ」
「そうー。もう帰ってくると思うけどー。ヤツ、あんなチャラいナリをして、律儀だからね」
「フフ、そこが好きなくせに」
「あ、梨華のクセにナマイキだ」
「もー」
そんな感じで、ずっと2時間くらいそこで長話をしていた。
柴ちゃんも連れての帰り道、裕ちゃんから電話があった。
「あ、裕ちゃん。どうだった?」
裕ちゃんは今日、平家さんのご両親と会っている。
朝から念入りに、着物を着付けていた。
『…まあ、どうにか。すまんな、今日は多分泊まりや』
「うふふ、いいよー。ちゃんと留守番してるし」
『柴っちゃんが来るんやったな。よろしうにな』
「はーい」
電話を切ると、柴っちゃんが興味深げにあたしの顔を見た。
「裕ちゃん、うまくいったみたい。きっと気に入られたんだよ♪」
「おおー。そりゃそりゃめでたい。さて、ウチらも祝勝会といきますか」
「うん♪」
今日はなんとなく、飲みたい気分だった。
駅前のスーパーで、缶チューハイとおつまみを買って帰ろう。
柴ちゃんと手をつないでご機嫌で帰った。
- 50 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/23(火) 01:35
- 更新しました。
♪〜( ^▽^)人川σ_σ||
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(0^〜^)つ□<ヤキソバうんめ〜!
引越しやきそばどうもです。新スレでもまたよろしくおながいします。
オーストラリア…どうなるでしょう。
>龍さん
(0^〜^)ノ<初レスありがとう〜!オイラ、愛のためにはエーンヤコーラ!
楽しんで頂けて作者冥利に尽きます。ありがとうございます。
ヽ^∀^ノに春…くるのでしょうか(w?
>44の名無し読者さん
( ゜皿 ゜)ノ<アリガトーーーーー!!
気がつかなかったのですが、いつの間にか上がってて、落としてくだすったんですね。
ありがとうございます。お気遣いどうもです。
- 51 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/03/23(火) 23:44
- 今月のCDで〜たのひ〜ちゃんはとってもかわいいです。
( ^▽^)<女の子みたい。
(;0^〜^)<いや、アタシ女だって。
更新お疲れ様です。
从‘ 。‘从<この子、从*・ 。.・从…できる!
シゲさんのナルシスぶりはあややといい勝負でしょうか?
从*・ 。.・从ノノ〃^-^)从 `,_っ´) ( ・e・)この4人のこれからが楽しみです。
- 52 名前:龍 投稿日:2004/03/26(金) 15:51
- 少し見ない内に、中々面白い展開になってきてますね。从 #~∀~从もイイ感じになってきてるし・・・
これからどういう風になって行くのか、楽しみです。
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/26(金) 18:04
- ageてはダメです。
レスは半角sageで。
- 54 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:48
- ―――その頃。
オーストラリア。シドニー・セントラル・ステーション。
「辻さん…面倒なことをお願いしてしまって、大変申し訳ありません」
紺野は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いいれすよ〜。ののもなんとなくひまれしたし」
やっぱりテレビのお正月特番が見られないのはネックれすねえ、と辻は笑った。
高橋は少し離れたところでそわそわと腕時計を見ている。
「保田のおばちゃんにもおねがいされたれす。これを見過ごすと
のんのおんながすたる、というものれす」
辻はおどけて自分の服を腕まくりするフリをする。
「感謝してます…」
紺野はふとした事情で高橋の新しい彼女のフリをすることになってしまい、
その本物の彼女が来るのを、今こうして待っている。
実際会ったら、角が立たぬよう、自分は高橋の彼女ではない、と言うつもりだった。
高橋はイライラしてるのか、表情が険しい。
「遅い。2時の約束なのに」
高橋は眉間にシワを寄せた。
「電車が遅れてるのかもしれないよ。飛行機の時間もあるし」
紺野がやんわりとなだめる。
「あっしは時間を守らないのが一番嫌いや」
高橋はあくまで譲らない。
困ったなあ、と紺野は眉尻を下げた。
- 55 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:49
-
「ああ、やっと来た!」
自分たちの後ろにいた日本人の団体が列車から降りてきた男性のところに行く。
「ごめん、ごめん。ブリスベンで飛行機遅れてね」
男性は疲れた表情で言った。
高橋はその声に振り向く。
「トラブルで2時間くらい身動きできなくってさ」
「それ、事故ですか!?」
高橋はその男性に詰め寄った。
いきなりせっぱつまった感じの少女に詰め寄られ、男性は少しあ然とした。
「あ、ああ。いや、そんな大袈裟なものでもないけど…君の友達でも乗ってるのかい」
「ありがとうございました!」
高橋は全部言い終わらないうちに、その場から駆け出していた。
慌てて紺野と辻も後を追う。
高橋の携帯が鳴る。
「もしもし!?」
『今、どこ?着いたんだけど』
「あんた、事故に遭ったんちゃうん!?」
『は?事故なんて初耳なんだけど。今、どこいんの?』
「え、駅の外…」
『待ってて。今、行くから』
3人は駅の構内まで戻る。
高橋の姿を認め、手を振る少女がいた。
高橋は彼女に駆け寄り、抱きついて泣きじゃくった。
「…なんか、一件落着ですかね」
「そうれすね。よかったれす」
紺野と辻は、離れたところでふたりの抱擁を見守っていた。
- 56 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:50
-
その後、高橋の彼女の誤解も解け、ふたりは無事仲直りした。
ホテルのティールームでお茶を飲んだのだが、いちゃつくところを見せつけられ、
紺野は少々ぐったりした。
辻は『スコーン食べるれすか』と紺野に申し出、彼女なりの気遣いを見せた。
ホテルに泊まるふたりと別れ、紺野と辻は家路に着く。
「あさ美ちゃん、今日外泊許可もらってるんれしょ。どうするんれすか」
「はぁ、さっきのホテルに泊まる予定でしたけど、無事仲直りもできたことですし、
お邪魔するのも野暮ですしね…」
外は少し日が傾いてきた。
風も出てきた。
「じゃ、のののうち来るれすか。なんにもないれすけど」
「いいんですか」
「へいっ。うちのお母さんたちがあさ美ちゃんのことすごく気に入ったれす。
上品で賢い子だって」
「恐れ入ります…お言葉に甘えさせていただきます」
「疲れてるれすか」
「少し…。ゆっく眠りたいです」
「うちにケーキあるれすよ。ののが焼いたれす」
「いただきます」
「それでこそあさ美ちゃんれす」
辻にぽふぽふと肩を叩かれ、紺野は少し笑った。
- 57 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:51
-
一方。日本では―――。
新垣たちは初詣をすませ、駅前の喫茶店にいた。
微妙な人間関係でテーブルを囲んでるので、中心となる新垣は汗を浮かべながら気を遣う。
「さゆ、さっきの神社でお守り買ったの。ピンクで可愛かったから」
横にいた田中が道重からお守りを受け取って見てみる。
「これ…安産のお守りじゃ」
「案ずるより産むが易し、って昔から言うでしょ。だから」
「はあ…」
田中はためいきをついてお守りを道重に返した。
「道重さんはおもしろいね」
亀井はニコニコと言った。
『おもしろいってよりナルで人の話聞かんだけたい』
田中はあくまで心の中で言い、チラッと上目遣いで見た。
「そ、そうだよね。ハハハ…」
訳もなく、新垣はテンパっている。
「前から気になってたんすけど」
ふと思い出したように田中が切り出した。
「あ?」
「新垣先輩と小川先輩って家、近所じゃないっすか。付き合ってんすか」
「いやいやいやいやいや!ありえないし!」
両手を広げてぶんぶん振り、オバチャンのようなリアクションで否定する新垣。
「まこっちゃんオバチャンだし、絶対ない!」
「オバチャンなんだ…」
道重はひっそり呟いた。
- 58 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:52
- 「じゃ、紺野先輩とも小川さん、付き合ってないんすよね」
「う、うん。多分…」
「わかりました」
しばらく間があったあと、
「田中さんは小川さんが好きなの?」
きょとんとした様子で尋ねた。
「いえ。好きなのは」
一拍置いて
「紺野さんです」
田中は言った。
「そっかあ。よかったあ。ライバルはひとりでも少ないほうがいいもんね〜。
さゆ、応援するよ!」
「はあ、どうも…。
小川さんが好きなんすか?」
「うん!だってカッコいいんだもん!」
「そうっすね。じゃ、れいなも道重さんの応援します」
ふたりのやりとりを、新垣と亀井は黙って見ていた。
「新垣さんは好きな人いないの?」
いきなりフラれて、
「うへっ!?」
新垣はヘンな声を出した。
「や、ややや!新垣塾のほうで忙しいし、好きなひとなんてそんなそんなそんな!」
「加護さんは?生写真集めてるじゃん」
道重に言われ、
「あ、あれは好きとかっていうより…う〜ん?モーニング娘。のなっちを好きなような感じ?」
新垣は首を傾げた。
「へ〜。アイドルなんだ、加護さんは」
「まあ、ね」
「安心しました」
亀井がそっと微笑んだ。
「何を?」
「ライバルは、一人でも少ないほうがいいですから」
亀井はあくまで笑顔だった。
- 59 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:53
-
―――石川視点
スーパーでお酒やおつまみを買ったあと、うちに帰って柴ちゃんとミニ新年会を開いた。
「梨華、景気付けに脱げよ」
「やだよ」
「チェッ」
柴ちゃんは残念そうに鳥の唐揚げをつまむ。
も〜、これだから酔っ払いはイヤだわ。
「んあ〜。あけおめ〜」
玄関のチャイムが鳴ったので出ると、ごっちんだった。
「あ、おめでとう。どしたの?」
「んあ、今日帰って来たから寄ったの。裕ちゃんは?」
「平家さんちだよ。今日、平家さんのご両親にご挨拶してたの」
「ああ、そうなんだ。あ、これね。うちのおかーさんがみんなに配れって。
好きならいいんだけど」
「ありがとう。お母さんによろしくね」
「んあ。…なんか酒くさくない?さっきから」
ごっちんは鼻をワンちゃんみたいにくんくんさせた。
「あ、柴ちゃんが泊まりに来ててちょっとふたりで飲んでるの。
ごっちんもどう?」
「んあ、いいの?」
「うん、上がって上がって」
「お邪魔しまーす」
ごっちんが居間に入って行くと、
「よー、ごっちん!相変わらず乳でけーな!」
と柴ちゃんが片手を上げた。
「…できあがってる?」
ごっちんがあたしにこそっと囁いた。
「うん…」
「なんだよなんだよ、ホラ!ごっちんも飲めよ!」
やや引き気味に缶ビールを受け取り、ごっちんは
「ことよろ〜。乾杯!」
と缶を掲げた。
- 60 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:55
- そのあとはおみやげに持って来てくれたみりん干しをごっちんが台所で焼いてくれたり、
それをみんなで食べたりして、楽しい時を過ごした。
「ふたりは仲良しさんだね〜」
柴ちゃんにじゃれつかれてるあたしを見て、ごっちんが微笑ましそうに言った。
「デキてるからね♪」
柴ちゃんがそう言ってほっぺにチューしようとするのを阻止しながら、あたしは
「うん、友達だから」
とあんまり気の利いてないことを言った。
『そろそろ東京に戻ろうかなあ』
実家にいても退屈なので保田は明日あたり帰京することを考えていた。
飯田はまだ戻って来ないが、そろそろ帰って家でのんびりしたかった。
部屋で年賀状の返事を書いてると、携帯が鳴った。
『アヤカか紺野』
予想して出ると、当たりだった。
『もしもし、夜分恐れ入ります。紺野です』
「ホホ!首尾はどうだった?うまくいった?」
『ハイ…誤解も解けまして、愛ちゃんたち仲直りしましたが、なんかいちゃつかれて終わった気がします』
「ハハ、まあよかったじゃん。いまどこいんの?」
『あ、辻さんのお家です。今日は泊めていただくんです」
ここで紺野は代わりますね、と辻に電話を渡した。
『オバチャンれすかあ?うまくいったれすよ〜』
「辻、グッジョブ!わざわざありがとう。ごめんね、なんかいきなりヘンなこと頼んで」
『ううん。楽しかったからいいんれす。オバチャン、いいらさんはまだ北海道れすか』
「うん、7日くらいに帰ってくるって言ってるけど」
『さびしいれすね』
「ハハ、アンタはカオリにべったりだもんね」
『ううん、オバチャンがれすよ』
「…へ?」
一瞬、保田はぽかんとしてしまった。
『いいらさん、早く帰ってくるといいれすねえ』
「うん」
『帰ってきたら、うんと甘えるれす』
「ハハ、そうね」
『じゃ、あさ美ちゃんとかわるれす』
紺野と話しながら、保田は辻がちょっとずつだけど成長していることを頼もしく思うのだった。
- 61 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:56
- ―――ハワイでは
アヤカとミカは仲直りしないまま、2日の夕方を迎えた。
この日は祖父の客人たちが来ており、ベッドが足りないのでアヤカたちはミカの家に行くことになった。
ミカの両親は昨日の晩から用事で出かけてる。
ふたりだけで夕飯をすませ、それぞれ別の部屋で過ごした。
アヤカは本とコーヒーを持って、サンルームへ行った。
サンルームで長椅子に座って夕陽を眺めてると、つまらないことで悩んでるのがバカバカしくなる。
ペーパーバックを読んでるうちにうとうとしたようで、夕陽が沈んだ頃には完全に眠っていた。
―――次に目が覚めたのはベッドでだった。
シャワーの音で意識が戻った。
「起きた?」
バスルームから、ミカがバスタオルを頭に巻いて出てきた。
「うん。わざわざ運んでくれたの?」
「あんなとこで寝たら風邪引くよ」
「ありがとう」
アヤカは簡潔に礼を言い、ベッドから体を起こした。
眠りが浅かったのもあり、まだ頭がはっきりしない。
「ねえ」
壁の鏡を見たまま、ミカは言った。
「何?」
「レファって誰?」
「へ?レファ?…学校の寮で一緒だった子だけど…なんで?」
「やっぱ、覚えてないんだ」
ミカはためいきをついた。
- 62 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:57
- ミカの話ではこうだった。
大晦日の夜、泥酔したアヤカとベッドで眠っていると、アヤカの携帯が鳴った。
アヤカは無意識で出たようで、ミカは黙って会話を聞いていた。
電話の相手はレファというようで、アヤカは何やら親密に話していたのだ。
「…ああ、言われてみれば。なんか友達と話したなーってのは覚えてる」
アヤカは頭をかいた。
「あきれた…じゃ、なんであたしが怒ってたのかも分からないんだ」
「えーと、酒のイキオイで迫ったから?」
「それだけじゃない」
「レファと電話したから?」
「それも違う。…ちょっと腹は立ったけど」
「抱かなかったから?」
「…怒るよ」
「じゃ、何?」
お手上げ、というようにアヤカは両手を上げた。
「今はシラフだよね」
ベッドのふちに座り、ミカはアヤカの髪に手を伸ばした。
「う、うん」
「今度は、覚えててね」
ベッドに倒れこむとき、ミカから洗いたての髪の香りがした。
- 63 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 18:58
-
―――1時間半後
「…運動するとおなかが空くわねえ」
「またそういうことを…」
そう言って咎めるミカの腹が大きく鳴った。
アヤカは小さく笑って、
「待ってな。なんか探してくるから」
ミカが着てたバスローブを羽織って部屋から出て行った。
数分後、アヤカはクラッカーの箱やオレンジジュースのペットボトル、
缶詰や野菜を載せた皿を手にし、得意げな顔で戻って来た。
足でドアを閉めてミカに小言を言われる。
「はい、あーん」
クラッカーにチーズとセロリを載せて、ミカの口元に差し出す。
ミカは怪訝な顔をしたが、素直に口を開けた。
「おいし?」
「うん…」
アヤカは満足そうに頷き、自分はオイスターの缶詰を開け、クラッカーに載せて食べる。
「ズルイよ、自分ばっか」
「ん」
ミカに言われ、自分が食べようとしたふたつめをミカに差し出す。
「ベッドでものを食べると行儀が悪いって怒られたよね」
ミカがふと思い出したように言った。
「ミカが夜、チョコチップクッキー食べて、シーツをかすだらけにしたからでしょ」
「も〜お!どうしてそんなことばっかり覚えてるのよ!」
ミカはアヤカの顔に枕をぼふっと当てた。
「日本のうちのママのおじいちゃん家に泊まったとき、和式のお手洗いが怖くて
ビービー泣いたくせに」
「アヤカ嫌い!」
今度はクッションが飛んでくる。
「誰かさんがおねしょしたときの証拠隠蔽も苦労したっけー」
「もー!」
ミカは真っ赤になって、アヤカにとっかかって行く。
「ねえ」
ミカを見上げる形で、アヤカは言った。
「なに?」
「その頃から、あたしのこと好きだったの?」
「…うん。そのときはコドモだったから、どういう『好き』かわかんなかったけど、好きだったよ」
「へえ〜」
「なに?ニヤニヤして」
「ん?幸せだなあ、って思って」
下から腕を伸ばし、ミカを迎える。
「ウソばっかー。どうやってからかおうか、考えてたでしょ」
「ウソじゃないわよー。もー、さっきはあんなにカワイかったのにー」
「さ、さっきっていつよ!」
「もちろん」
アヤカはにっこり笑った。
ハワイの夜はまだまだ続く―――。
- 64 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/29(月) 19:00
- ふたたび日本。保田の実家―――
携帯が鳴ったと同時に、保田は
「アヤカでしょ?」
と出た。
『う、うん。よく分かったね』
「ホホ!このヤスダに不可能はないわよッ!…む?なんかニオウわよ?」
『へ?どんなニオイよ』
「そこはかとなくエッチくさいニオイが…」
『失礼ねー。自分と一緒にしないでよ』
「あ、してないんだ」
『ううん…した』
アヤカは心なしか声に照れがあった。
「仲直りしたのねー。よかったじゃん」
『うん、ありがとう。色々、ごめんね』
「いいえー。何をおっしゃいますやらー」
『ごめんね、おみやげにヤシの実の人形買ってくるから』
「…いらない」
保田は本気で断った。
『かわいいのに』
「まだ日本の空港で買ったマカデミアナッツチョコのほうがいいわ」
『じゃ、パインの缶詰にするね』
「アヤカ…アタシのことキライ?」
保田は心底悲しそうに言った。
「はあ〜あ」
電話を切ったあと、保田はベッドに仰向けになって天井を見上げた。
「なんか…カオリにすっげー会いたくなった」
しばらく考え、
『いま電話かけていい?』と短いメールを送る。
『もしもし〜?どしたん?』
飯田から、直接電話がかかってくる。
「あ、や。なんか、声が聞きたくなってさ」
『ハッハ!カオのことが恋しくなったあ?』
「うん。ぶっちゃけ、そう」
『ぶっちゃけかよ〜。しょうがないべ』
飯田はおかしそうにケラケラ笑う。
保田は辻たちのことやアヤカのことを話す。
飯田はひとしきり聞いたあと、
『ああ。だからカオに電話したくなったんだ』
と納得する。
『おみやげは木彫りのクマでいい?』
「…いらない」
『カワイイのに〜』
「―――じゃ、アンタにはしけった落花生ね」
保田の声がやけに乾いていた。
恋人たちの夜はこうして更けていった―――。
- 65 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/29(月) 19:03
- 更新しました。
みやげものに恵まれないヤスの巻。(;`.∀´)
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(;・e・)<まったくもって苦労するのだ
人の話をあまり聞かないガキさんですら、3人をまとめるのに苦労してます。
シゲさんとあやゃのナルっぷりはまた違う種類な気がします。
>龍さん
从 #~∀~从<いや、エエ感じなんかね〜
姐さん、いい感じです。無事にご挨拶もつつがなく終えたようですし。
気がつかなかったのですが、メール欄のsageが全角になっていたようです。
全角だとageになってしまうようです。
>53の名無飼育さん
( ´D`)<フォローありがとうなのれす〜
すぐochiにしてくだすってありがとうございます。
- 66 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/03/30(火) 03:39
- ( ´ Д `)从#~∀~从<おビーフシチュー、おパン、おぺペロンチーノね。
从*・ 。.・从<ご注文繰り返します。イチゴパフェ、チョコレートパフェ、チョコレートパフェをもう一つですね。
(;´ Д `)从;~∀~从<あの、全然違います!
从*・ 。.・从<だって、みんな私が好きなんだもんっ!
从*- 。.・从パチン!(ウインク)
(;´ Д `)从;~∀~从<……
更新お疲れ様です。
最近シゲさんのかわいさに、はまってしまいました。ここでも、「自分が1番かわいい!」と思ってるんですよね。れいなちゃんの博多弁のつっこみもいいし、僕の中で6期ブームです。しかし安産のお守りなら現実のシゲさんでも買う気がします。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 06:54
- 酔った柴ちゃんイイ!!
- 68 名前:はれ 投稿日:2004/03/31(水) 17:40
- #6になって、初めて書き込みします。明日から学校嫌だけど、心機一転頑張ります!!
春休み癖が早く抜けるのか…。中学生グループの関係もいよいよ明るみになりましたね。
いったいどうなるのでしょう!!
- 69 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/31(水) 18:21
-
―――石川視点
「マーサーオー…」
柴ちゃんはガンガン飲んだので、一番に酔いつぶれて眠ってしまった。
ごっちんはそのへんにあったクッションを柴ちゃんの頭にあてがってあげて、
あたしは毛布を取り出してきてかけた。
「んあ〜、飲んだね〜。こんな飲んだのヒサブリかも〜」
「そう?」
「うん。柴っちゃんのイキオイに押されて飲んだってカンジだけど」
ごっちんはふにゃっと笑う。
『ゴトウ〜!てめー飲まねーと乳小さくするぞ』
と柴ちゃんはワケの分からないことを言って絡んでたからなあ。
「やーれやれ。よしこがいないからさびしいっしょ」
「え、え!?」
急に名前が出てきて、あたしは慌ててしまった。
「んあ?どしたん?」
「あ、あのね…」
あたしはここで1日にひとみちゃんがここにお年始に来た話をした。
ごっちんは目を丸くして、
「んあ〜…」
と感心して聞いている。
「すごいね」
「う、うん。びっくりしたけど、嬉しかった」
「あっは!梨華ちゃんだからしたんだろうな〜。よしこって基本、ケチだし♪」
「そ、そうかな?」
「よくアヤカちゃんが『サヤカと足して2で割ったらちょうどいいくらいなのに』って
ヤツらの金銭感覚のこと言ってる」
「へえ」
「とにかくー、いいお正月だったわけね♪」
「…うん!」
あたしはちょっと赤くなったけど、強く頷いた。
- 70 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/31(水) 18:22
-
平家と裕子は、平家の両親がタクシーで帰るのを見送ってから、また平家の家に戻った。
裕子は部屋に入り、ぐったりとソファにへたりこむ。
平家は笑って、お茶を入れてやった。
「お疲れさん」
「ん〜」
湯のみを受け取って、喉を潤す。
平家は自分も座って、両親の土産のお菓子を開けた。
「食べるか。赤福」
「ひとつもらうわ」
口に入れると、餡の甘さが広がった。
お茶を流しこみ、ふうっと息をつく。
「べっぴんさんなだけやのうて、しっかりした娘さんやて。好感触やで」
「気に入ってもらえたんなら、ええわ」
「その点は心配ないで。何でもっと早う会わせんのって母親に怒られたけど」
「そうか…」
裕子は目を閉じて、額に手をやる。
「あー、ときに姐さん」
「なんや。ハラでも減ったんか」
「その、着物…脱がへんの」
裕子はその言葉にがばっと起き上がった。
「なに考えてんのかすぐ分かるわ!このエロ星人!」
「ひどいなあ。疲れてるやろうし、着替え貸したろうって思ただけやのに」
「じゃ、あっちの部屋で帯解くわ。覗くなよ」
「もし覗いたら」
「勿論しばく」
「なんや、しばくくらいで済むんや」
「なんぞ言うたか」
「…いえいえ」
その後、平家の下手に出た交渉により、帯は平家が解くことになった。
裕子は終始仏頂面だったが、案外あっさり長襦袢まで脱がされてしまう。
―――翌日の梨華の証言では、裕子は何だか疲れきった様子で帰ってきたらしい。
平家の服を借りたようだが、持って帰ってきた着物はやたらと不自然なくらい綺麗に
畳んであったとかなかったとか。
- 71 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/31(水) 18:23
-
―――オーストラリア。辻の家。
「あさ美ちゃん、コーヒーれす」
「ありがとうございます」
辻からマグカップを受け取り、紺野は一口飲んだ。
ふたりはベッドの下に並んで、とりとめのない話をしていた。
「はあ、今日は色々あったれすね。
でも、オバチャンも喜んでくれてよかったれす」
「ハイ…辻さんにも保田先生にもご迷惑をおかけしました」
「イヤれすよ、もうそれはいいっこなしれす。
いいれすね?」
「ハイ」
辻が教師のようにわざとしかめっつらを作って人差し指を立てて言うので、紺野は笑って答える。
「あいぼんからメールきてたれす」
「なんて書いてました?」
「『奈良の正月は地味や。もう大仏と寺は見飽きた』れすって」
「フフ、加護さんらしいですね」
「まったくれす」
辻は楽しそうに言いながら、コーヒーのおかわりを注ぐ。
「加護さんのお土産、いいのが見つかってよかったですね」
「へいっ」
辻は満面の笑みで答える。
今日帰る途中とある店に立ち寄り、可愛いブレスを見つけた。
手頃な値段だったので、すぐに買ったのだ。
「さあ、これであいぼんをぎゃふんと言わせられるのれす。
のののおみやげのセンスを見せつけてやるのれす」
辻の言葉に紺野は笑った。
- 72 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/31(水) 18:24
- 『辻さんも加護さんも、まず第一は相手なんだな。
他人が入れないくらいに』
『もし運命というものがあるのなら、それは辻さんと加護さんかもしれませんね』
紺野は辻の横顔を見て考えた。
『今までそれぞれ知らない場所で別々に生きてきて、それでもこうして出逢ったということは、
魂が呼び寄せたのかもしれません。
運命って今までピンときませんでしたが、おふたりを見てると案外あるのかも、って思います』
「辻さんは」
「へいっ」
「運命って、信じますか」
辻はうーんと、というように顎を上げ、
「よくわかんないれすけど、いつもいくコンビニで学校の帰りになんかピンときて寄ったら、
新製品のお菓子があって、すっごくおいしかったりしたら、運命だと思うれす」
彼女らしい答えを返した。
「そうですか」
紺野は少し笑った。
「あ、でも!」
「はい?」
「あいぼんに出会ったのは、運命って思うれす」
辻はにこにこと嬉しそうな顔をする。
「ののれすねえ、初めて中澤しゃんのおうちに行ったとき、駅前で迷子になったんれすね」
「ええ」
「そのとき、あいぼんが声かけてくれて、ののと一緒に行ってくれて
無事おうちにたどり着いたんれすよ。だから運命れす」
桜の花がきれいれした、と辻は続けた。
「あいぼんは色が白くて、なんだか桜みたいに綺麗だって思ったれす」
辻は幸せそうだった。
目の前に、満開の桜がまるで見えるようだ。
『物事には終わりがある。
いつか離れ離れになってしまうかもしれない。
一生とか、先の見えないタイムリミットに運命を委ねるのはバカげてるのかもしれない』
そこまで考えて、紺野は少し怖くなった。
- 73 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/03/31(水) 18:26
-
『あたしは…ふたりとも好きだ。
ふたりとも、というより、ふたりが一緒になった感じが好きなんだろうな』
運命がもしあるなら。
辻さんと加護さんを、いつまでも一緒に。
紺野は辻の無邪気な顔を見て、何故か泣きそうな気持ちになった。
「あ、あさ美ちゃん!?どうしたんれすか?」
紺野が急に涙目になるので、辻はぎょっとする。
「なんでも…ありません」
「コ、コーヒーが苦かったんれすか?のの、お砂糖もっと入れたらよかったんれしょうか?」
「いいえ。違いますよ」
目をこすって、紺野は優しく笑う。
「ただ、ちょっと疲れてたんだと思います。
ごめんなさい、心配かけて」
「それならいいんれすが…大丈夫?」
「はい。もう休みましょう」
隣の辻が寝息を立てて眠っているのをそっと見て、紺野は小さく息をついた。
「小川さん…」
一番会いたい人物の名前を、暗闇の中、掠れた声で言った。
- 74 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/03/31(水) 18:29
- オロオロ
川o;-;) (´D`;)
更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
从*・ 。.・从つ〔鏡〕<さゆがいちばん可愛いもん!
彼女は自分が一番なんです(w シゲさんは可愛かったら別に安産でもいいようです。
>67の名無飼育さん
川#σ_σ||つ〔酎〕<サーンキュー!
ただのオッサンです(w 自分で脱ぎださないだけマシかもしれません(問題とすべきはソコではないですが)
>はれさん
( ´ Д `)<んあ〜、学校がんがってね〜
中学生グループの集いは、ガキさんがひとり気を使ってました。どうなることやら。
- 75 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/01(木) 00:46
- ついにベスト2が出ましたね。僕はやっぱミスムンが1番好きっす。(0^〜^)
川o・-・)<5期が入って最初の曲、吉澤さんが超カッコイイんです。(今月のCDで〜たより)
今は、なっちもごっちんもいないですから、さらに4人増えて
吉澤さ〜ん!>ノノ〃^-^)从 `,_っ´)从*・ 。.・从(O^〜^O)ゝVvV丿<よっちゃん!
ひ〜ちゃんはますますハーレム状態なんでしょうね。
更新お疲れ様です。
( ‐ Δ‐)<弟よ。妹を寂しがらせてはいかんぞ。
( ´D`)<小川しゃん、紺ちゃんを泣かしたらダメじゃないれすか。
( ;`_´)∬∬;`▽´)<え…はい。
柴ちゃんもこんこんも寂しいんですね。早く帰ってきて欲しいです。
川o・-・)<『物事には終わりがある。
いつか離れ離れになってしまうかもしれない。
一生とか、先の見えないタイムリミットに運命を委ねるのはバカげてるのかもしれない』
これすごい好きです。感動しちゃいました。
- 76 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 03:43
- ―――石川視点
夜も更けた。
あたしはごっちんと2人で居間にお布団を引き、爆睡してる柴ちゃんも載せて
3人で雑魚寝をした。
「んあ〜。3人で寝るとさすがに寒くないね〜」
ごっちんは顎のところまでお布団を上げた。
「ん。そうだね」
「ごとー、あんま女の子のトモダチっていなかったからさあ。なんか新鮮」
「え、そうなの?」
あたしは思わず体を起こしかけた。
ごっちんは、友達がいっぱいいるイメージがあったから。
「ん〜、いちーちゃんとばっかつるんでたのもあるしー。ごとー、女の子の
ベタベタしたのがニガテだったのね。つかず離れずってのがほとんどでさ。
なんか中学んときとか高校んときとか、いちーちゃんといるといちーちゃんの
ファンの子が因縁つけてきて、ごとームダに敵が多かったかも」
「へえ…」
「ツライ思春期だったワケであります」
ごっちんはおどけて腕で涙を拭うフリをする。
あたしはくすくす笑って、ごっちんの頭を撫でてあげた。
それにしても市井さん、ホントにモテたんだな。
あたし的にはひとみちゃんが一番だけど、確かに市井さんカッコいいし。
女の子の扱いも何故かごっちん以外はスマートだし。
ああ。
本気じゃない女の子にスマートなのか。
それを考えると微笑ましくて、可笑しくなった。
「梨華ちゃんはあ?柴ちゃん命?」
「あ、うん。命?」
なんで疑問形なんだよっ、と本人が起きてたら即ツッコんでただろ。
「あのね、あたしね」
「ふんふん」
「ごっちんや柴ちゃんとか、お友達が増えて嬉しいの。
あたし、今まで友達いなかったから」
「平家さんは〜?カオリとか圭ちゃんはあ?やぐっつぁんとかなっちは?」
「あ…うん。トモダチ…に入れていいのかな」
「梨華ちゃんがトモダチって思ったらトモダチ」
「そ…っか」
「なんにせよ」
ごっちんはあたしの方を向いてふにゃっと笑った。
「トモダチが増えるのはよいことです」
- 77 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 03:44
- 翌朝。
朝起きると、柴ちゃんが眠そうな顔で、昨夜飲み残したペットボトルの緑茶に口をつけていた。
なんかそれを見てたらあたしも飲みたくなってきたので、
「ちょうだい」
と言ってみた。
柴ちゃんはちょっとこっちを見て、
「おお。起きたか」
とペットボトルを手渡してくれる。
渇いた喉を、ほどよく冷たいお茶がすべり落ちていく。
ふたくちほど飲んで、返した。
「いいよ、全部飲みな」
「え。まだちょっと余ってんのに」
「いえいえ。姫の成長を爺は喜んでおるのです」
柴ちゃんは穏やかに笑った。
綺麗だな、と素直に思った。
裕ちゃんはお昼前に帰ってきた。
何故かぐったりしている。
普段見慣れない服だったし、平家さんのを借りたのだろう。
着物の何故かすっごく綺麗に畳まれていた。
あたしは夕飯の買物のついでに柴ちゃんを駅まで送っていった。
ごっちんは朝、バイトがある、と帰って行った。
- 78 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 03:46
- スーパーで買物をしてると、思わぬ人に肩を叩かれた。
保田さんだ。
「あ、保田さん。帰ってらしたんですか」
手には小さな旅行カバンだった。
一緒におみやげだろうか、紙袋がある。
「ホホ!あけおめことよろ!て、もう4日ね!」
「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「夕飯の買物?」
「ハイ。ああ、もしよろしかったらお昼でもいかがですか」
「そうね、裕ちゃんにも挨拶したいし、おみやげもあるしお邪魔するわ」
「ええ」
保田さんは『買物はまた後にするわ』と何も買わなかった。
「裕ちゃん、おめでとう!」
「おお、圭坊か」
家に帰ると、裕ちゃんは掃除をしていた。
疲れてるんなら、休んどけばいいのに。
今日は土曜なんだし。
ヘンなとこでマジメだなあ。
「これ、落花生ね。カラつき
ヒマつぶしにはいいから」
「ヒマつぶしですか(笑)」
「カラをむくのもなかなかオツなヒマつぶしよ」
クッキーの缶に入ってるビニールの突起をつぶすようなモンかしら。
お昼は炒飯にした。
裕ちゃんのフライパンさばきを見て、保田さんが「おお!」と声を上げる。
「すっごいねえ。アタシには出来ないわ」
「練習すればなんてことないですよ」
「オマエかてでけへんがな」
裕ちゃんはフライパンを操りながら後ろを向いて苦笑した。
- 79 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 03:47
-
スープをすすって黙々と炒飯を食べる。
みんなお腹が空いてたのだ。
「なんか…ヒサブリにまともなモン食べた気がする」
保田さんの一言に、
「アンタ、実家帰ってたんちゃうん」
裕ちゃんが情けなさそうな顔で言った。
「いや、正月も2日くらいまではいいわよ。
その後はなんか適当になんない?食べるモンとか」
「まあなあ」
「今年は2日に母親が出かけてさあ。
父親も知り合いの新年会行ったから、もー食べるモンがなくて」
「保田さん…作りましょうよ」
「誰もいないから、冷凍室のイカ解凍してキムチと炒めて酒飲んでた」
「アンタ正月からかなりキとるな」
飯田さんが聞いたら、溜息をつきそうだ。
あたしが誘わなかったら、またイカとキムチ炒めてお酒飲んだのかしら。
「おいしいのよ、イカとキムチ炒め」
「そうですね」
「まあ、酒のアテにもってこいやな」
「この炒飯もおいしいわねえ。アタシが下宿してた頃からたまに作ってくれたけど、なんかコツでもあんの?」
「別にあらへん。火力くらいや」
「へえ。今度やってみよ。レシピ教えてよ」
食事のあと、リンゴを剥いて出した。
保田さんは裕ちゃんに炒飯のレシピを教わってメモしてる。
ついでにスープも教わってた。
- 80 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 03:48
- ―――保田視点
アタシは中澤家を後にし、いったん家に戻って荷物を置きに行った。
スーパーに食材の補充に行かないと。
カオリは7日まで戻って来ないというし、ひとりとは言えあれこれ必要だ。
「あ…カオリ?」
見間違えかと思った。
階段の下のポストで郵便物のチェックをしてる人物が、こちらを振り向いた。
きょろりとした目を向けて、ふっと笑った。
「よお〜。元気〜?」
「帰ってたん?」
「うん。聞いてよー、7日にガッコ行かなきゃいけなくなってさあ。
もー、9日までガッコ行かなくてよかったはずなのにー」
カオリはそう言って唇を尖らせた。
「そりゃ災難ね」
「うん。パパたちも用事であんま家いないし、つまんないから帰ってきちゃった」
「そっか」
「圭ちゃんは?明日まで休みなんしょ?」
「アタシもつまんないから帰ってきた」
顔を見合わせて、ウチらはふふっと笑った。
うちの冷蔵庫を開けて開口一番、
「…何食べて生きてたん?」
「や、アナタが作り置きしてくれたカレーとかシチューとか」
「ん〜、もうちっと買い置きすればよかったかなあ。来年、あ、や、今年か。
今年のテーマにしよう」
顎に人差し指を当てて言うさまがどうにもツボだった。
気がついたらアタシは、彼女を後ろから抱きしめてた。
「夕飯前に食べちゃうの?」
…ヤバイ。
その色っぽい声を耳元に落とされたら。
どうにも、ならない。
- 81 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/07(水) 03:51
- ( ^▽^)<(…トモダチか)
更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
川o・-・)<何だか…切なくなってしまったのです
「ベスト2」評判いいようですね。給料が出たら買う予定です。
こんこんの台詞、苦労したので気に入って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。
- 82 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 17:07
- ―――吉澤視点
実家に帰って早や5日目。
これ以上ないくらいのんびりしてた。
梨華ちゃんとはしょっちゅうメールしてる。
今日も『柴ちゃんとごっちんがゆうべうちにお泊りしたの。
みんなで新年会。柴ちゃんは酔うとやっぱオヤジだったよ(苦笑)』
ってきた。
そうか、オヤジなのか。
今に始まったこっちゃないけど。
マサオさんが、
(;`_´)<よく乳を揉まれる…
って証言してるし、オヤジだよなー。
元旦からいきなり梨華ちゃん家に行ったことは、不思議と母さんに怒られなかった。
あきれてはいるんだろうけど、『早く手、洗ってきなさい』ってすき焼きの席につくように
うながされたのだ。
2日から下の弟とか近所の子と凧揚げしたりサッカーしたり、めちゃ小学生のように遊んでしまった。
男の子の中におっきいお姉さんがいるので、近所のおばさんたちが微笑ましいって感じで見てるし。
とにかく、普段の運動不足解消にはなった。
『明日帰るねー。あやゃが美貴ちゃん迎えに羽田行くらしいから一緒に東京行きます。
多分夜になるかも』
って送ると、しばらくして
『気をつけて帰って来てね。亜弥ちゃんと美貴ちゃんによろしく』
と返ってきた。
- 83 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 17:08
-
―――保田視点
「…う」
短く呻いて、隣のカオリに手を伸ばす。
カオリはまだ夢の中なのか、アタシの方を向いてはいたが、反応がなかった。
…帰るなり、食べ合うってどうよ?
24年間生きてきて、ここまでがっついたことはなかったわ。
カオリはそれも同じなのか、いつもより大きな声を上げた。
「…いたたた…」
目を覚ましたようだ。
腰に手をやってるので、さすってやる。
「ごめん、激しすぎたね」
「がっついてたね」
その通りなので、何も言えずただ苦笑いした。
「いやー、ずっと会いたかったしー」
「いきなり食べるし(笑)」
「一応、確認は取ったじゃん」
「そういうとこ、律儀だよね」
カオリはアタシの首に腕を回して、
「実家のお気に入りの毛布もいいけどさ」
「うん?」
「やっぱ、コレでなきゃあね」
…また『狙ってんのか』という一言を言った。
さすがに疲れたのでそのまま試合再開というわけにはいかず、小さくキスしたりして
しばらくじゃれ合ってた。
途端に、アタシのお腹が鳴った。
「音デカッ」
カオリはゲラゲラ笑う。
「お昼何食べたんよ」
「ん、裕ちゃん家で炒飯とスープごちそうになった。デザートがリンゴで」
「ん〜。じゃ、晩は何食べる?カオん家の冷蔵庫も、あんま食べるものないんだよね…」
「ピザでも取る?たまには」
「そだね。電話のとこにメニューあったよね」
カオリはベッドから下りてショーツを履いた。
アタシのカーディガンを引っ掛けて、リビングまで歩いて行く。
そのあとはベッドの中で寄り添って、何を半分ずつ載せて生地の硬さはどうするか、とか
色々決めていた。
- 84 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 17:09
- 「♪とーしのはーじめの」
村田めぐみは実家のこたつで寝転んでヒマをもてあましていた。
「姉ちゃん、ヒマそうだね」
今からバイトに出かける柴田は、マフラーを巻きながら姉をチラリと横目で見る。
「週明けからは地獄のような日々が始まるのでせめてもの骨休みです」
「ふうん。いつまでいんの」
「明日ー。夜帰るよ」
「じゃ、メシ食い行こうぜ。たまにはおごっちゃる」
「マジで?」
姉は思わず飛び起きてしまった。
「なにさー、まるでアタシがケチみたいじゃん」
「いや、事実そのとーりなんだけど」
「ふん。そんなこと言うんだったら、おごってやんない」
「そんな、あゆみさーまー」
姉妹がじゃれてると、台所から母が顔を出し
「あゆみ、遅れるわよ」
と言った。
「はーい。なんか帰り買ってくるもんある?」
「ポカリとじゃがりこ。いつもの」
「おおよ。んじゃね」
妹が出かけてからあまりにもゴロゴロしてるので、村田は母に
「少しは手伝いなさい」
と怒られて肩をすくめるのだった。
- 85 名前:年の、初めの。 投稿日:2004/04/07(水) 17:10
-
「あ」
新垣里沙は見慣れた車が走ってくるのを買物帰りに家のそばで見た。
小走りに駆け寄り、小川の家に行く。
「お、里沙」
後部座席から小川が降りて来る。
新垣は前に乗っていた両親に新年の挨拶をする。
「おみやげあるから時間あったらいらっしゃいね」
と小川の母は笑顔で言い、先に家の中に入って行った。
「なんか早くない?もっといるんかと思った」
「父さんが火曜から授業だし、その準備もあるしさあ」
「そうなんだ。先生って大変なんだね」
「まあ、夏休みあるけどね」
話しながら、家の中に入って行く。
おみやげに笹団子をもらい、新垣は手を叩いて喜ぶ。
紅茶にロールケーキも出してもらい、小川の部屋で食べる。
「お姉さんたち、元気だった?」
新垣の質問に、小川は少し顔を上げしばらく黙る。
ややあって、
「姉ちゃんは用事があるとかですぐ帰った。
妹は相変わらず」
困ったように笑った。
「そっか」
新垣もそれっきり黙ってしまう。
小川には姉と妹がおり、地元の大学に通う姉と全寮制の学校に通う妹とは普段別々に住んでいる。
小川はスポーツ推薦でこちらの高校に受かり、父の仕事の都合もあって両親と東京に出てきた。
姉と妹は昔から勉強が出来るので、何となく姉妹の中で彼女は居心地悪いものを感じている。
「あ、そうだ」
思い出したように、新垣はカバンから友人から預かってるものを出した。
「なんだよ」
「これ、シゲさんから」
新垣は、ピンク色のお守りを差し出す。
「お守り?…安産て」
小川が田中とまったく同じリアクションだったので、新垣はちょっと感動する。
「案ずるより産むがナントカってシゲさん言ってた」
「考え込む前に実行するほうがいいってことか?」
「そうなんじゃない。知んないけどさ」
しばらくまじまじとお守りを見ていたが、
「お礼言わなきゃな。なんでくれたんか知んねえけど」
とぽそっと呟いた。
- 86 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/07(水) 17:13
- 更新しました。
…安産?>∬∬`▽´)っ□ (・e・;)<(やっぱこのリアクションが正しいよね)
- 87 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/07(水) 23:46
- 更新お疲れ様です。
恋人の愛に飢えた二人がよかったです。(*`.∀´)川*σ_σ||
(;`_´)<よく乳を揉まれる…
に、大爆笑でした。
次は、梨華ちゃんが帰ってきたひ〜ちゃんを…ヒトミチャーン!!(ノ*´▽`)ノ^〜^*)
次回が楽しみです。
シゲさんは積極的ですね。あとの二人もどうするのか楽しみです。ノノ〃^-^)从 `,_っ´)
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/08(木) 02:32
- 「夕飯前に食べちゃうの?」
これええなあ。
そらヤスならずともがっつくわ。
胸焼けが待ち構えててもさ。
- 89 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/12(月) 04:15
- レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
川;σ_σ|| <や、保田さん並に飢えてたんかな?
(;`.∀´)<んま!ずいぶんじゃない?
特に保田さんががっついてらっしゃいました。飯田さん腰痛起こしてますし。
シゲさんは積極的です。ナルだけあって。
>88 の名無飼育さん
(;`.∀´)<ちょ、ちょっと食べすぎたかしらね
川*‘〜‘)||<やだ、エッチ!
それだけで丼メシ100杯くらいは軽くいけそうです。
ヤスならずともがっつくでしょうね。どんな腰痛と胸焼けが待っていようとも(笑)。
- 90 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/12(月) 04:18
- さて、本日4月12日でベース弾きが開始して2年たちました。
月日の流れの早さにただただ驚くばかりです。
今回は2周年企画・登場人物紹介改訂版をうpします。
- 91 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:21
- ・中澤家の人々
(0^〜^):吉澤ひとみ(20)。この話の主人公。彩の国埼玉出身。大学1年。
ベースバカで鈍チン。ビートルズヲタで特にポール信者。
ゆで卵とベーグルに目がない。梨華の最愛の人だったり。
実家は最中屋で下に年の離れた弟が2人いる。
イクラも好きで回転寿司にも一人で行っちゃう。
( ^▽^):石川梨華(20)。神奈川県出身。大学2年。裕子とは異母姉妹で
実母の死去により中澤家に引き取られた。ひとみの最愛の人で激しく
シスコンだったりもする。阪神が負けるとマジでヘコむ。
ありえないくらいのピンク好きでその独自のセンスはよく物議を醸し出している。
お肉が好きでそういうCMソングに合わせて踊ったり踊らなかったり。
从 #~∀~从 :中澤裕子(三十路)。京都府出身。中澤家&中澤ハイツ管理人。
酒が好きで一升瓶を掲げる姿は保田と互角で似合う。
平家の恋人で本人はあまり誘い受けタイプとの認識が無い。
義理の妹の梨華を誰よりも愛している。平たく言うとシスコン。
怒るとめちゃくちゃ怖いがかなり頼れるかっけー姐さんでもある。
( ´D`):辻希美(16)。東京都出身。高1。家庭の事情のため中澤家に下宿している。
すがすがしいくらいの食いっぷりで実は酒乱。食いしん坊なだけあって料理上手。
なごみ系キャラでみんなの人気者。思いを寄せられることもままあるのでぼんさんを
ヤキモキさせている。まだ目覚めてないのでぼんさんへの感情に戸惑ってる。
いいらさんラブ。存在自体が世界平和(飯田談)。
( ‘ д‘):加護亜依(15)。奈良県出身。高1。ののさんとは学校も同じ。
よく死んだお母さんと心の中で会話している。頭脳明晰だがかなり甘えた。
ののさんに思いを寄せる一方で、彼女の存在自体がコンプレックスでもあるので
悩みは深い。郷土名物の柿の葉寿司は好物らしい。ひそかにモノマネ好き。
- 92 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:33
- ・中澤家の周辺の人々
( ´ Д `):後藤真希(20)。東京都出身。大学1年。中澤ハイツ101号室の住人。
吉澤の同期生でバンド仲間。吉澤とは似たもの同士でマブダチ。
同じ顔をした年子の弟がいる。市井とは友達以上恋人未満な仲。
面倒くさがりだがバンド内で実は一番器用。ギターはアコギが好き。
実は梨華ヲタでもあり、よくなついている。
( `◇´):平家充代(みちよ)(25)。三重県出身。中澤ハイツ102号室住人で(一応)歌手。
自分で作詞作曲などもこなす。結構稼いでるのに何故か家は賃貸の中澤ハイツ。
裕子の恋人であり、結構昔から思いを寄せていた。恋人に日頃振り回されてるが
キメる時はキメる。律儀な性格で税理士に「是非うちの事務所に」と誘われた。
( `.∀´):保田圭(24)。千葉県出身。郵便局勤務。中澤ハイツ202号室住人で
市井のバンドのドラム担当。存在自体犯罪なくらいモテる(アヤカ談)。
一通り楽器をこなす。絵がありえないくらいヘタで超絶に不器用。
でもメカは強い。エッチも相当(ry 裕子といい勝負な酒豪でもある。
川‘〜‘)||:飯田圭織(23)。北海道出身。中澤ハイツ201号室住人で美大の大学院修士1年。
ヤッスーがいつも連れて歩いてる美女(ヲタ談)。本気でキレるとなっちより訛る。
保田を昔から振り回してるが隠れた愛情表現でもあった(気付かれなかったが)。
ののさんを溺愛していて、実の妹のように可愛がっている。( ゜皿 ゜)←交信中
- 93 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:36
- ・中澤家周辺の人々
(・´ー`):安倍なつみ(24)。北海道出身。『アベ楽器店』オーナー。
祖父の死後上京し、店を継いだ。ヤグチとラブラブ。
本人無意識で訛っている。お母さんとよく交信し、たまに返事がくる。
テンパるとよく噛む。顔に似合わず音楽の趣味が濃いらしい(保田談)。
(〜^◇^):矢口真里(22)。神奈川県出身。『喫茶タンポポ』オーナー。
裕子たちとは昔からの知り合いで梨華とは高校も一緒。
なっちラブでよくお泊りしている。見た目ギャルだが意外に人生設計は堅実。
保田とたまに飲み歩いている。芋焼酎なんかが好き。氷がないとツライ。
ヽ^∀^ノ:市井紗耶香(22)。東京都出身。生まれは千葉県。大学3年。
アマチュアバンドCUBIC−CROSSリーダー。吉澤と同じくポールヲタ。
でもギターはグレッチ。(ベンジーも好き)幼なじみの後藤に幼少時から
アプローチするもスルーされて早や10数年。報われるのか?
川‘.▽‘)||:木村絢香(アヤカ)(21)。東京都出身。大学3年。市井のバンドの
キーボード担当。帰国子女で語学堪能。パンクバンド出身で計算して遊ぶタイプ。
唯一計算の効かなかった従妹と恋に落ちる。虫が大嫌いで本気で泣く。
保田や飯田と三角関係になったこともあるが、今はいい友人。
- 94 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:39
- ・吉澤さんたちをめぐる人々
川σ_σ||:柴田あゆみ(20)。神奈川県出身。大学2年。梨華の親友でキュービックヲタ。
バンド通で音楽の趣味がかなりコア。保田もジャズバンド時代から知っている。
黙ってればかなりの美人なのに黙らないのでただの親父。実はかなりの気配り上手。
そのへんは恋人の大谷が一番良く知っている。
( `_´):大谷雅恵(21)。北海道出身。柴田の彼女。デザイン関係の仕事をしている。
上京する前から柴田とは文通していてそこで恋が芽生えた。
で、実際会ってマジボレした。ピアス多数で髪も傷みまくりなくらいころころ
色が変わるが、今時珍しいくらい古風。ナニゲにジャズに詳しい。
( ‐ Δ‐):柴田めぐみ(23)。神奈川県出身。あゆみの姉。「村田めぐみ」というPNで
シュールな漫画を描いている。美少女愛好家で飯田にモデルになってもらいたいと
熱いラブコールを送っている。何故かレンズを抜いたダテメガネをたまにかける。
肉が苦手でひょろ長い。妹の恋をそれとなく応援している。
ξξ“ З.“): 斉藤瞳(25)。新潟県出身。アヤカのバイト先の編集者で村田の担当でもある。
平家の雑誌連載の担当もしている。前田の元恋人で最近別れた。
昔ライバル視してた村田が気になってしょうがない。
かなり仕事ができるようで編集部内では恐れられている。
- 95 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:42
- ・辻加護さんをめぐる人々
川o・-・):紺野あさ美(16)。北海道出身。高1。頭脳明晰、容姿端麗(本人談)。
帰国子女で辻と仲良しさん。小川がどうしようもないくらい好きで困ってる。
他に好きなものはおいもとかぼちゃとおもちとお寿司のマグロとトロと
サーモンサビ抜き(以下略)。保田と飯田のオトナの関係がちょっとうらやましい。
∬`▽´∬:小川麻琴(16)。新潟県出身。高1。チアリーディング部の副部長。
特技は猪木と五郎さんの物真似。∬∬~´3`)<ジュンホタァル
紺野をかぼちゃをこよなく愛する会の仲間と認めているが仲間以上の感情が
あるかは不明。ご近所のガキさんとよくつるんでいる。
( ・e・):新垣里沙(15)。神奈川県出身。中3。小川のご近所さんで付属中学に通う。
高校生チームの恋の行方を興味深く見守る。ぶっちゃけ、やじ馬。
新垣塾といううさんうさい同好会を学内で運営。人の話を聞かない(担任の岡村先生談)。
加護ヲタで生写真などを熱心に集めている。アイドルのトレカも自慢のコレクション。
川’ー’川:高橋愛(17)。福井県出身。高2。紺野の親友でアメリカの中学で知り合った。
モールス信号のような早口で喋り、かつ訛っているのでヒアリングが難しい。
宝塚ヲタで高嶺ふぶきのファンだった。今は紫吹淳らしい。
学校では合唱部に所属しており「ホッピーでホップ」と歌っている。
赤いタオルがないと寝られないらしい。キャベツが敷いてないソースカツ丼が好き。
- 96 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:44
- ・辻加護さんをめぐる人々その2
从*・ 。.・从 :道重さゆみ(15)。山口県出身。中3。 基本はナルでどこまでいってもナルである。
ガキさんと同じクラスで新垣塾の数少ない部員。自分の顔よりもはるかに大きな鏡を
持ち歩いている。小川が好きで結構積極的にアプローチしてる。
大晦日には実家のほうでフグ刺しをオトナ食いするらしい。
从 `,_っ´):田中れいな(14)。福岡県出身。中2.小川のクラブの後輩。
ちょっと顔が怖くヤンキーに見られるが普通の子。
紺野が好きで可愛くてしょうがない。
シゲさんのナルぶりに引きながらも律儀にツッコんでいる。
川*^ー^):亀井絵里(15)。中3。ガキさんのクラスメートで優等生。
家もちょっとしたお金持ちらしい。いまいち性格が掴めないが
こたつお茶みかんは欠かせない。狭い隙間を好む。掃除道具入れが好き。
加護の男気(?)のあるところに惚れてるらしい。
( `w´):稲葉貴子(あつこ)(29)。辻加護の学校の養護教諭。元アイドル。
普通に保健室の先生なのだが、どこからともなくアフロヅラが現れたりしてアヤしい。
経歴などもアヤしいが、生徒が悩みを相談したりする頼れる先生。
アクセサリー教室で知り合った飯田をよく冷やかしてる。平家とも顔なじみ。
- 97 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:49
- ・レギュラーではないけどやっぱりめぐる人々
从‘ 。‘从:松浦亜弥(19)。埼玉県出身。短大1年。ひとみの幼馴染。あだ名は「あやゃ」
自分大好きで他人と会話するとき大半は鏡を見ている。
ありえないくらい長風呂で美貴様によくあきれられている。
恋人に炊飯ジャーの釜なども洗わせるが基本的には一途なタイプ。
川VvV从:藤本美貴(18)。北海道出身。短大1年。あやゃの彼女。あだ名はミキティ。
短大で知り合ったあやゃと恋に落ちる。ミキスケとかミキたんとかたんとか
様々なあだ名をつけられている。北海道の真ん中らへんから来たらしい(本人談)。
趣味は焼肉で3食でもばっちこい。軽ヤンキャラで鮭トバ愛好家でもある。
川 ‘∀^儿 :ミカ=タレッサ=トッド(18)。アヤカの父方の従妹で最愛の恋人。
日本人とオーストラリア人のハーフで地元の大学に通う。
日本名は黒澤美歌で3歳の時今の家に引き取られた。
義父はジャズピアニストで自分もミュージシャンを目指している。
(丼`ー´):前田有紀(24)。高知県出身。演歌歌手で斉藤の元恋人。
村田とは大学時代からの親友。市井が東北へドロンした際知り合い、
後から追いかけて来た後藤とも意気投合する。
斉藤の村田への気持ちを知っているので、どうにかしてやりたいと思っている。
( ` ・ゝ´):石黒彩(25)。北海道出身。元中澤ハイツ住人。夫は有名なドラマー。
結婚後の苗字は『山田』で子供2人はどちらもドラムに因んだ名前をつけた。
飯田と昔付き合ったことがあり、そのことを嫉妬した保田とガチで話し合った。
飯田と平家しか気付いてなかったが、保田のことがちょっと好きだった。
- 98 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/04/12(月) 04:51
- ・やっぱりめぐる人々
(⌒ ー ⌒):戸田鈴音(りんね)(22)。北海道出身。大学3年。『カントリー娘。』リーダー。
学園祭のときキュービックがバックで演奏してライブを行った。
村田がひそかに思いを寄せていたが後輩と付き合っていた。
キャラは天然。飯田といい勝負で迷言も多い。
(o゚v゚o):木村麻美(あさみ)(21)。北海道出身。大学3年。『カントリー娘。』サブリーダー。
犬ぞりレースでクィーンの名を欲しいままにしている名人でもある。
学園祭のダンパで里田に誘われたことがきっかけで付き合い始める。
りんねがたそがれるくらいラブラブらしい。
川=‘ゝ‘=||:里田 舞(まい)(19)。北海道出身。大学2年。
『カントリー娘。』のセクシー担当。学園祭で梨華にアタックするも振られてしまう。
ダンパがきっかけであさみを意識し、付き合い始めた。
陸上競技クイーンでもある。
(O゚ー゚O):石井リカ(23)。広島県出身。童謡歌手。デビュー当時は関連会社の
電話番などをしていた。「Peachy」名義のシングルも数枚出している。
レギュラー番組内で「エスパー」と呼ばれている。
税金を滞納するのはやめましょう、と番組内で呼びかけた恐らく最初で最後のアイドル。
- 99 名前:夢見がち 投稿日:2004/04/13(火) 00:56
- 初めまして。
イッキに読ませていただきました★
私もベースをやっているので読んでいてすごく楽しかったです。
(私は、レッチリのFLEAを最高のベーシストとして尊敬してるので、よしことはまた少し違いますが)
いしよし大好きです
これからも影ながら応援させてください
- 100 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/13(火) 02:50
- 更新おつかれです。祝、ひ〜ちゃん誕生日!&ちょうど100レスなのれす。( ´D`)
(0^〜^)実物は男まさりで、お笑いキャラでみんなに好かれる性格。
ヒエピタッ。(0^〜^)ノ□(´.▽`;川ウーン、ウーン。
川 ‘∀^儿<よっすぃ〜は優しいですよ。アヤカが風邪ひいた時、看病してくれたんですよ。
从 ;`,_っ´)<はぁ〜。失敗しちゃった。楽屋に帰りたくないよ〜。
何かあったら言ってきな。>(0^〜^)ノ从*`,_っ´)<はい。
川*^-^)<あたし達を笑わせてくれるし、とても頼りになります。
でも、本当は優しくて一途で女の子らしい一面もある。後輩からの信頼も厚い。
(*^▽^)<わたしのライバル。でも1番の心の支え。
だと思います。ひ〜ちゃん誕生日おめ!
キャラ設定の中で、みんなおもしろいですね。黙ってれば美人なのは姉妹そろってである。川σ_σ|| ( ‐ Δ‐)
れいなちゃんは博多弁でツッコミます。おじゃまるが去った後に
从 `,_っ´)<あの人何しにきたと?
といってましたから。余裕があれば、川o・-・)の好きな物をノーカット完全版で見たいですね。
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 12:42
- いつも読んでいます。
2周年おめでとうございます。
これからもどうぞ頑張ってください。
顔文字の人物紹介、かなり面白かったです。
- 102 名前:はれ 投稿日:2004/04/17(土) 10:36
- 顔文字紹介見ました!!最近登場していない方も何人かいるみたいですが、再び
何かの形で出てきてほしいです。それから、細かいことかもしれないけれど、中学生
グループの田中さんだけ中2なのですか?
- 103 名前:地平線 投稿日:2004/04/20(火) 23:58
- 正月も明けたある日、加護は風呂から上がってリビングでペットのスポドリを飲んでいた。
廊下の隅から、両親のくぐもった声が聞こえる。
「…で、向こうは何て言うてはったん」
「娘さんとは最近本当に何か接点はなかったんですかって。勝手な事言いおるわ」
「亜依に言うたほうがエエんかしらね…」
「どうしたん」
加護は廊下に出た。
両親は一瞬顔を強張らせる。
「なんかあったん」
「あ、ああ…」
父は母のほうをチラッと見、
「実はな…」
と切り出した。
- 104 名前:地平線 投稿日:2004/04/21(水) 00:00
- 翌日。
加護はある駅に降り立った。
駅のそばの花屋に入って行き、金額を言い、
「それくらいで花束を」と伝える。
それを待ってる間、店内から駅前の道を見渡す。
もう夕方だった。
マフラーに吹き込む風も冷えてきた。
30分後。
加護はある墓地にいた。
高台にある墓地はかなり見晴らしがよく、先程タクシーで来た道が細く視界に映る。
バケツに水を汲み、柄杓も入れて一度だけ来たことのある道を進む。
目的の墓は案外簡単に見つかった。
この前来た時は赤かった彼女の名前が、今は黒くなっている。
両親の名や、彼女の姉妹はまだ赤いままだ。
- 105 名前:地平線 投稿日:2004/04/21(水) 00:02
- 彼女はどうして自分を墓になど連れて来たのか。
今もって分からない。
元々変わったところのある子だったが、『あたしが死んだらここに来てね』というのは
冗談だったのか、本気だったのか。
『おまえと…仲良かった子、おったやろ。この前電車の踏み切りの中で亡くなったそうや』
父はためらいながら切り出した。
加護は不思議と静かな気持ちだった。
『そう…』
それだけ言ってためいきをついた。
『遺書もなかったから、家の人が色々聞いて回ってるそうや。うちにも電話があってな』
父の言葉を思い出しながら、墓の前で手を合わせる。
花は元々あったものは大分枯れてきてたので、自分のと入れ替えた。
雨の日にいじめられてる自分を見放して素知らぬ顔で帰ったこと。
いじめグループに加担していたこと。
恨んでることが最近どうでもよくなってきかけていたというのに。
彼女は先に逝ってしまった。
- 106 名前:地平線 投稿日:2004/04/21(水) 00:04
- 彼女は水色が好きだった。
学校に持ってくるペンケースや携帯、傘も水色だった。
あの雨の日に差していた傘も水色だった。
いつまでも自分の目に焼きついているのだろうか。
「…約束は、守ったで」
加護は、ぽつんと呟いた。
もうここに来ることはないだろう。
辺りが夕闇の深い色に包まれる。
カラスの鳴き声が聞こえる。
加護は立ち上がった。
この霊園はたまに新聞の広告に出ている。
見晴らしがいい、という宣伝文句はどうやら嘘ではないようだ。
夕陽が震えながら地平線に吸いこまれようとしている。
急激に冷え込んでくる。
加護はぶるっと身震いすると、
「…タクシー待たしてるし、帰るわ」
墓のほうを一瞥した。
「さよなら」
もう、会うこともないけれど。
- 107 名前:地平線 投稿日:2004/04/21(水) 00:05
- 加護は2日後、東京に戻った。
新学期はまだ始まっていないが、早めに戻って片付けなどをしようと考えていた。
駅に着いたのが昼の3時前で、昼食もあまり食べなかったので空腹なのに気付く。
「お、加護じゃん」
腹ごなしに入った駅前のスタバで、飯田の姿を見つける。
加護はぺこんと頭を下げ、
「どうも。お久しぶりです」
と挨拶する。
「冬休みどうしてた?楽しかった?」
適当にコーヒーとサンドイッチを頼み、飯田の席にトレイを置く。
「ああ、まあ。買物行ったり」
「うん?」
「墓参りしたり」
「お墓参り?親戚の人の?」
「ああ、や。昔…仲良かった子です」
「そう…」
飯田は少し俯いた。
「良かったって言ってもほんまに過去の話なんですけどね。
でもまあ、初めてエッチした子ですから」
「……うん」
「と言うても途中ですけどね。お互いビギナーでしたから。
それからぎくしゃくして、結局なんもなくなりましたけどね」
飯田は黙って聞いている。
加護はどうしてこんなことを喋っているのか、不思議だった。
このお人好しな人を試そうとしてるのか。
飯田は大きな目を静かに伏せている。
- 108 名前:地平線 投稿日:2004/04/21(水) 00:09
- 「ウチは中学のときひどいイジメに遭うてたんですけど、気がついたらその子も
いじめグループ側やったんです。
まあ、色々あって高校はコッチ来ましたし、それからなんの音沙汰もなかったんですけど。
正月明けにお父ちゃんからその子が電車の踏み切りんとこで立ってて跳ね飛ばされて死んだって聞いて、
お墓参りをして来たんですよ。
いや、あれですね。寂しいとこにお墓があるのはイヤですね」
「加護」
「ハイ」
返事をして顔を上げると、飯田が静かに泣いていた。
大きな目から滴がぽたぽた落ちている。
「…ごめんなさい」
加護は小さな声で謝って、飯田の手を握った。
飯田は先に店を出て行った。
「こんなことでいい大人がごめんね」
と少し笑って目をこすっていた。
どうして保田が飯田を好きなのか、何となく分かった気がする。
店を出ると陽が傾きかけていた。
帰ればいつもの日常が始まる。
辻も明日の晩帰ってくる。
ここからじゃビルが多くて地平線が見えない。
この前見た夕陽は怖いくらいだった。
街中にいることに、加護は何故かひどく安心した。
帰りに文房具店で新しいルーズリーフを買って帰ろう。
加護は下宿とは反対の方向に歩いて行った。
- 109 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/21(水) 00:12
- 更新しました。
『地平線』は今回で終わりです。
次からは新章です。
訂正です。
>>108
「こんなことで」→「こんなとこで」
レスのお礼です。
>夢見がちさん
(0^〜^)ノ<オイラと同じだね!カッケー!一気読みカッケー!乙っす!
初レスありがとうございます。おお!ベーシストなんですか!FLEAがお好きだったら、確かに
ここのヒーちゃんと違いますね。これからもよろしくお願いします。
>ヨッスィのタマゴさん
( ´D`)<キリ番おめでとーなのれす
吉澤さんほどグループのメンバーに溺愛されている人もいないと思います(w
飯田さん曰く「皆のよっすぃ〜だからね」だそうですし。柴田姉妹は黙らないので色物なのです。
>101の名無飼育さん
(0^〜^)ノ<応援ありがとう〜!カッケー!これからもよろすぃく!
初レスの方でしょうか。ありがとうございます。今後もどうぞよろしくお願いします。
顔文字は…頑張りました(w 楽しんで頂けて何よりです。
>はれさん
从 `,_っ´)<れいなは中2たいよ。一番下やけん
顔文字は書いてて、「そういやこの人全然ご無沙汰だな」と思うこともしばしばでした。
田中さんは中2です。小川と同じチアリーディング部でもあります。
- 110 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/21(水) 23:43
- ほれほれ。>( ´ Д `)ノ蛇 ((((0T〜T)<やめて〜!
(デビュー時の写真(0^〜^)−(´ Д ` )<次はこれ。 (T〜TO)<やめて〜!
ごっちん、なんだか楽しそう。
更新お疲れ様です。
( ´D`)<あいぼんにはののがついてるから、の〜ぷろぶれむれす。
川o・-・)=○<わたくしも微力ながらお手伝いします。いつでも完璧です。拳が唸ります。
( ・e・)<加護さんはファンクラブが総力を上げてお守りします。
∬∬;`▽´)<あたしが出る幕じゃないな。
今のあいぼんは心強い仲間がいるからきっと大丈夫でしょう。新章楽しみにしてます。
- 111 名前:夢見がち 投稿日:2004/04/22(木) 09:53
- 更新お疲れ様でした★
加護ちゃん切ないですねー。朝からやられちゃいました。
FLEA大好きなんですよー。まだまだ勉強中ですが。
最近はウッドもやってまして、こっちの魅力にもやられちゃってます。
- 112 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/04/28(水) 02:37
- ―――吉澤視点
新学期が始まった。
ウチのガッコは山手にあるので冬はハンパじゃなく冷え込む。
渡り廊下とか、暖房が効かないところではみんなブルブル震えながら歩いてる。
ウチもスカジャンの前を合わせ、あったかい学食を目指してすたこら歩いて行った。
学食のおかずが並んでるカウンターに近づいて行くと、市井さんに肩を叩かれた。
というか、市井さんが新学期からちゃんと来てるのなんて珍しいんじゃ…。
「吉澤、オマエなんにする?」
「あ、えと、きつねうどん?」
「何で疑問形なんだよ。もっと栄養あるモン食えよ。ホラ、定食はどうだ」
「えー、カネないっすよ」
すると市井さんは黙って笑い、
「おばちゃん、お会計こっちのもね」
とウチの腕を掴んで言った。
珍しいこともあるもんだ。
市井さん、よっぽどいいコトがあったんだな。
ウチにこの学食で3番目に高いメニューの日替わり定食(税込み420円)をおごってくれるとは。
どっちかというと2番目に高いスペシャルランチ(税込み500円)がよかったけど。
まあ、おごってもらえるんだから贅沢は言えないか。
「おーい、よしこ〜」
声のする方に目を向けると、柴っちゃんが手を振ってた。
梨華ちゃんも一緒だ。
市井さんとふたりのいるテーブルに向かう。
- 113 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/04/28(水) 02:40
- 「吉澤。オマエ、スカジャンにいかにも中学の時から着てるようなオーバーオールを
合わせるのはやめろ」
食べてる時、市井さんは言った。
「ダメっすか」
「ダメじゃないけどね、なんだろね。う〜ん」
柴っちゃんも横で首を傾ける。
「え〜。可愛いじゃないですか」
「石川のファッションに関する意見は悪いがスルーする」
市井さんの宣言に
「え〜。なんでですか〜」
梨華ちゃんは笑いながらも眉をハの字に下げた。
はあ。梨華ちゃんすっかりこの中でイジられキャラになったよ。
でもまあ、本人楽しそうだからいっか。
「このスカジャン結構ぬくくていいカンジなんすよ。ホラ、ベルベットとサテンで
リバーシブルんなってて」
「ひとみちゃんよく似合ってるよ」
梨華ちゃんがそう言ってくれるので
「ありがと〜」
笑顔で手を振って返す。
「バカップル」
市井さんがぼそっと呟いたがあえて無視した。
―――石川視点
ごはん食べたあと、ひとみちゃんと学食を出た。
「ひとみちゃん、このあと授業?」
「ああ、うん。ドイツ文学研究ってヤツ。それが終わったらバイト」
「そっか。なっちさんによろしくね」
「うん。今日は多分早いと思う」
「んじゃ、またね」
ひとみちゃんが少し手を振ってひょこひょこ歩いて行く。
空色のスカジャンの背中が、人ごみにまぎれて消えた。
- 114 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/04/28(水) 02:41
- ―――吉澤視点
「吉澤さん」
ドイツ文学の男の先生に、授業終わってから声をかけられた。
「ハイ?」
「そのリーゼントは…ご自分でセットされるのですか」
「ああ、はい。今日は朝、時間あったんで」
「そうですか…最近の若いお嬢さんはしゃれてますね」
ウチの横にいたアヤカさんが、おかしくてたまらない、というように口を押さえて
肩を震わせる。
「先生もステキですよ」
アヤカさんがにこやかに言うと、先生は真っ赤になってしどろもどろに
「ではまた」
と言い、教室から出て行った。
あ〜あ。あんなマジメな先生に。
アヤカさん、罪作りだなあ。
「自分で髪染めるのはいいけどー、まだらんなってるよ」
アヤカさんに指摘され、首をすくめる。
この前、矢口さんに
「うっわ!ありえねー、その内側黒いパツキン!」
って言われたからだ。
今度梨華ちゃんに手伝ってもらおっかな。
てことを言うと、アヤカさんは
「『美容院に行く』って選択肢はないのね」
と肩をすくめた。
- 115 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/04/28(水) 02:42
-
「♪2時のワイドショー、2時のワイドショー。2時のワイドショー、2時のゆめ〜」
廊下で加護が歌いながら歩いていた。
「ただいまれす〜」
『うわ、帰ってきょった!』
玄関先で声がして、加護は思わず体を構える。
「あいぼ〜ん!」
顔を見るなり抱きつかれ、加護は真っ赤になる。
「すっかりオーストラリアかぶれしてオーストラリアナイズされたののれす。
ただいまれす」
「…どっからツッコんでいい?」
「ヒサブリのつっこみれす」
辻は嬉しそうに加護の首筋に顔を埋め、ぐいぐいこすりつける。
「明日やなかったん?」
照れながらも辻をそのままにさせて、加護は言った。
「え?今日れすよ。やだなー、あいぼんったら」
「紺野は?」
「あさ美ちゃんは昨日の便で帰ってるはずれす。高橋さんと一緒に」
「そう…」
「さーてと、お洗濯とお部屋のお掃除れすね。あ、中澤しゃんにいない間に届いた
郵便もらってくるれす」
「よお、無事帰ったか。悪ガキ」
風呂場から裕子が戻ってきた。
掃除をしていたようだ。
「あ、中澤しゃん。ただいまれす〜」
裕子にも同様に抱きつく。
「おーおー。相変わらずやのお」
口ではこう言ってるが、満更でもない裕子。
加護は黙って、辻のスーツケースを辻の部屋に運んで行った。
- 116 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/04/28(水) 02:43
-
「ああ、のんがやったのに」
辻が慌てて、後を追いかけてくる。
「いや、別に。ヒマやし」
裕子が郵便物を部屋まで持って来てくれた。
礼を言い、辻は早速仕分けを始める。
「年賀状がほとんどやな」
加護は辻の手元を見て言った。
「へい。…あ」
「なに?」
差出人のない封筒があった。
あて先をまじまじと見た後、辻は封筒を開けた。
「箱れすね…なんれしょうか」
ラッピングされた箱を開けると、自分が以前欲しがっていた指輪が出てくる。
「わあ…」
辻は目を輝かせ、加護に抱きついた。
「うわ、なんやの!」
「クリスマスプレゼント、ありがとうれす」
ほっぺにキスをされ、加護はくすぐったそうに身をよじる。
「なんやねん、ウチはなんもしとらんぞ。
サンタが郵送しおったんちゃうんかい」
「消印が奈良になってるれすよ」
辻は誇らしげに封筒を掲げる。
加護は何も言えず真っ赤になる。
完全犯罪は、超初歩的なミスで終わった。
- 117 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/04/28(水) 02:48
- 更新しました。
( ´ Д `)<今日から新章だよ〜
タイトルはコブクロの曲からです。
( ´ Д `)<♪白い冬が街に降りて来た 雪の降らない僕等の街に
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(;‘д‘)<みんなえらいやる気まんまんやなあ ←ちょっと嬉しい
あいぼんさんは大丈夫です。お人好しな仲間が多いので。それにしてもヒーちゃん、
自分の写真までイヤがってましたねー。
>夢見がちさん
(0T〜Tと<オイラも泣けちゃったYO!オロロン
あいぼんさん、またちょっと大人になりますた。ウッドもいいですよね。
音が何とも言えず味わいがあって。
- 118 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/04/28(水) 04:57
- コントできれいな黒い長い髪の後ろ姿をみて、川*^-^)かな?と思ったら
クルッ
(・e・ )ミ
え!ガキさん。いや〜ガキさんもきれいになったなあ。と感じました。
更新おつかれです。
ひとみちゃんの頼もうとしたきつねうどんは200円ですか?うちの大学は、
かけそば、かけうどん200円 肉うどん、肉そば250円
カレー、ラーメン、親子丼300円 カツカレー、カツ丼350円
定食はおかずを1品ずつ買っていく形式でした。
今のひとみちゃんはきれいに染めてますね。かっこいいっす。僕は黒が好きなんですが。
(〜^◇^)まあ黒が似合わない師匠の影響で染めてるんでしょうなあ。
- 119 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 04:20
- ―――辻視点
新学期が始まったれす。
のんは、お友達に配るおみやげをいっぱい持って学校へ行ったれす。
あ、あいぼんにあげたブレスレットはかなり好評れした。
あいぼん、テレながらも喜んでくれたれすし。
「フフン、のののセンスにギャフンれしょ?」
って言ったら、なぜか脱力してたれすけど。
「よー!辻ちゃん!」
まこっちゃんがジャージ姿であらわれたれす。
これからクラブなんれすね。
「いま帰り?メシ食いに行かない?」
「うん、ちょうど学食に行くところれす。あいぼん、ちょっと用事あって後から来るれすよ」
「そっかそっか」
「あ、あれ…?」
まこっちゃんの耳元に、なんか光ってたれす。
「まこっちゃん、ピアス開けたんれすか」
「ああ、うん。あれ、辻ちゃんも?」
「あ、はい。オーストラリアで開けたれす」
お姉ちゃんのすすめもあって開けたんれすけどね。
耳に何かついてるのって慣れなくてなんかヘンな感じれす。
うちの学校は結構校則がゆるいんで、茶髪の子も多いれす。
でも、ヤグチさんほどのキンパツはさすがに怒られるれす。
「あ、お久しぶりです」
あさ美ちゃんがてててて、と走ってきました。
図書館に本を返しに行って、そのまま来たようれす。
「よー、元気だったー?」
「ええ。あ、小川さん。おみやげがあるんですよ」
「マジ?サンキュー!」
風が吹いて、前髪がぐしゃぐしゃになったんで、あさ美ちゃんが髪を直しました。
- 120 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 04:22
- 「あ、紺野。おめーもピアス開けたん?」
まこっちゃんが言うと、あさ美ちゃんは恥ずかしそうに
「ハイ…」
と頬を赤らめて微笑みました。
のん、同じクラスなのに今まで気付かなかったれす。
「オーストラリアで帰国するギリギリに開けたのですが、今日本はちょうど冬ですので、
化膿しにくいかなと思って」
「そうなんだー」
みんな、髪を今日は下ろしてたから気付くの遅かったんれすね。
優等生のあさ美ちゃんまで開けたのは意外れしたけど、なんらかいつもと違って見えたれす。
学食は結構混んでて、ののの隣に中学の女の子がお盆持って来たれす。
「こんにちは…」
「こんにちはれす」
はて。誰か知ってる子だったれしょうか。
分からないけど、とりあえずあいさつしたれす。
髪をふたつに分けてくくってて、色の白い子れす。
「あ、シゲさーん!ここにいたの〜」
あ、ガキさんれす。
ガキさんのお友達なんれすね。
「おう、里沙」
まこっちゃんが片手を上げます。
「よ、シゲさん。あ、里沙からお守りもらったぜ。ありがとうな」
まこっちゃんがお礼を言うと、シゲさんという子は顔を真っ赤にしてもじもじし、
「…ハイ」
と小さな声で言いました。
言ったあとも、もじもじしながらハンバーグ食べてるれす。
「シゲさん、なんかジュースとか飲むか?」
「え?」
シゲさんはきょとんと顔を上げました。
「いやなんか、お守りとかって高いだろ。
お金使わしたから、ジュースでもアイスでも好きなんおごるよ」
まこっちゃんの言葉に、シゲさんはぱ〜っと顔を輝かせます。
わかりやすいひとれす。
まるでののれすね。
「あ、それじゃ…メロンソーダいいですか」
「おっけ。メロンソーダね」
まこっちゃんは席から立ち上がって、お財布を持って自動販売機に行きました。
「まこっちゃ〜ん、あたしはホットココアね」
というガキさんの声はわざとスルーしたようれす。
- 121 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 04:24
- シゲさんは嬉しそうにハンバーグを頬張ってます。
ののはなんとなく
「よかったれすね」
と声をかけました。
「ハイ」
シゲさん、本当に嬉しそうです。
「ピアス…かわいいですね」
「あ、これれすか?ありがとうれす」
「さゆも高校に上がったら、ピアスしたいです。
きっと、かわいいさゆにとっても似合うと思うんです」
「はあ…」
「辻さんよりきっとかわいいと思うの」
ののの頭の中に『???』とうかびました。
こういうのを『困惑』というのれしょうか。
あいぼんがいまここにいたら、きっとツッコんでくれたでしょう。
あ〜あ。あいぼん早く来ないかな…。
まこっちゃんは、クラブがあるので行ってしまいました。
ガキさんとシゲさんも、用事があるので帰りました。
あさ美ちゃんとふたりになったれす。
席が離れてたからあんましごはんのときおはなししなかったけど、
なんかあさ美ちゃん、元気なかったれす。
なんでか、まこっちゃんが『じゃ、またな』って席を離れるとき、
ちょっとにらんでたれす。
「どうしたんれすか。おなかでも痛いんれすか」
「いえ…小川さんってモテるな〜と思って」
「はあ、そうれすね」
そういや、シゲさんは真っ赤になってましたね。
なんであさ美ちゃんが元気ないんれしょうか?
「用事があるので…わたくしも失礼します」
よろよろという感じで立ち上がり、あさ美ちゃんも帰ってしまいました。
「へいっ…気をつけて」
ののは席に座ったまま、小さく手をふりました。
- 122 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 04:25
-
自販機でホットココアを買ってひとり飲んでると、あいぼんがやって来ました。
「あ、あいぼーん!」
「おう。もうメシ食った?」
「へいっ。あいぼんまだれしょう?」
「うん。あー、ハラへったー」
あいぼんが食券の機械で券を買ってるのを、ののはなんとなく見てました。
あいぼんだったら、かしこいからののがわからなかったことをわかるかもしれないれす。
「みんなもう帰ったん?」
「へいっ。あのね、あいぼん」
「ん?」
あいぼんがうどんを買って戻って来てから、ののはさっきあったことを話しました。
うどんをすすりながらちらっとののの顔を見て、おつゆをゆっくり飲んでから、
『ふう』と一息ついて言いました。
「ヤキモチやろ、平たく言うて」
「ヤキモチ、れすか?」
ののがきょとんとしてると、あいぼんはちょっと苦笑いしたれす。
「分からん?」
「え〜。え〜っと…」
ののはちょっとあごを上げて、さっきのできごとを頭の中でまとめてみました。
「シゲさんがまこっちゃんを好きなのは分かったれす」
「そう」
「でも、あさ美ちゃんは…え、ええ!?」
「やっと分かったか」
あいぼんはおかしそうにクックと笑います。
「あ、あさ美ちゃん、まこっちゃんのことが好きなんれすか!?」
「いや、知らんかったん、キミくらいやから…」
「なんで教えてくれなかったんれすか!?」
「教えるとかそういうモンじゃないでしょーが」
「ののだけれすか、知らなかったのは…」
そう思うと、急にしょぼんとしたれす。
「別に知らんかったら困るってモンじゃなし。
まあ、エエがな」
甘いな、とあいぼんはのののココアを勝手に飲んで顔をしかめました。
それなら飲むな、っちゅーのれす。
- 123 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 04:26
- 「あいぼんはいつ気付いたんれすか?」
「え〜?いつやったかなあ、去年の秋くらい?」
「は、早いれす…」
「いや、あの人ら分かりやすいし」
「そういや。あいぼん、梨華ちゃんがよっすぃ〜を好きなのも知ってたんれすよねえ。
すごいれす」
「いや…。あの人こそバレバレやし…」
「恋愛のエキスパートれす」
「はあ…どうも」
あいぼんは烏龍茶の熱いのをすすりました。
なんか尊敬れす。
ののも、あいぼんみたいにエキスパートになりたいれす。
「似合ってるやん」
不意に、あいぼんが言いました。
「え?」
「ピアス」
「あ、気付いてくれたんれすか」
「帰ってきたときに気付いた」
あいぼんはニヤッと笑います。
もう。
それならそのとき言ってくれたらいいのに。
ののはなんらか恥ずかしくなって、
「あ、ありがとれす」
真っ赤になってしまったんれす。
- 124 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/01(土) 04:29
- まあ、別にエエがな> ( ‘д‘) (´D`;)<不覚れす
更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
( ・e・)ノ<我輩が前髪を下ろしたら、ライブで遠目に見たら亀井と見分けがつかなくなると作者が言ってるのだ!
私も一瞬亀井かと思いますた。ガキさん確変中ですね。
(0^〜^)ノ<きつねうどんは200円だYO!
だそうです。
そういや、ヤグチは自分の昔の映像(初期の黒髪でぽっちゃりしてた時代)を見ると必ず、
(;〜^◇^)<やめてー!
と恥ずかしがってますね。
- 125 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 13:18
- ―――辻視点
あいぼんと学食を出ると、中学のセーラー服を着た子がこっちに向かって歩いてきました。
「こんにちは」
ああ、亀井しゃんれした。
こうやって顔を合わすのは、のんは小学校以来れすが、しばらく会わない間に
きれいになってたれす。
「どうも」
「こんにちはれす」
亀井しゃんはのんに
「お久しぶりですね」
とふっと笑い、
「どうも。加護さん」
とあいぼんのほうを見ました。
「ああ、どうも」
あいぼんはぶすっとしてます。
ああ、もっと笑えばいいのに。
ののがハラハラしてると、
「そんな顔なさらないでください。取って食いやしませんよ」
亀井しゃんがあいぼんの腕に触れて言いました。
「それは失礼」
触れられた腕を自分でつかんで、あいぼんはやっぱりぶすっとしました。
- 126 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 13:20
- 駅前で『図書館寄ってく』というあいぼんと別れて、ののは商店街をぶらぶらしました。
新学期は大分早い時間に終わるからヒマなんれす。
それでも大分道草したから、お昼の3時を回ってました。
それにしても、あいぼんどうして亀井しゃんに冷たくするんれしょう。
亀井しゃんはあいぼんと仲良くしたそうなのに。
亀井しゃんはいい子らと思うんれすが、あいぼんはキライなのかな。
そんなことをもんもんと考えて歩いてると、誰かに肩をたたかれました。
振り返らなくても、なんとなく分かります。
いいらさんれす。
「うっす」
いいらさんは、女優さんみたいに髪をかきあげてにこっと笑いました。
「こんにちはれす」
「いま帰り?」
「へいっ。いいらさんもれすか」
「うん、買物して帰るとこ」
ののはふと鞄の中に、いいらさんの分のおみやげも入れてることを思い出して、
「あのれすね、のの、いいらさんのおみやげ今持ってるんれすけど、渡していいれすか。
かさばらないものなんれすけど」
いいらさんは『オー!』とガッツポーズをとりました。
一緒にお買物をして、いいらさん家に行きました。
平家しゃんにもらったという、おいしい紅茶を入れてくれました。
「可愛いピアスだね、ありがと」
いいらさんは早速、のんのおみやげをつけてくれました。
保田のオバチャンのおみやげのお酒は、航空便なのでまだ届いてないというと、
いいらさんは『楽しみだね』と笑いました。
- 127 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 13:22
-
「あのれすね」
「ん〜?」
キッチンで晩ご飯の下ごしらえをしながら、いいらさんは言いました。
「いいらさんは、いつくらいにオバチャンを好きになったれすか」
ののが聞くと、いいらさんは照れくさそうに
「え〜?」
と笑います。
「いつくらい…そうだねえ、かなり前だよ。まだ圭ちゃんも大学行ってたくらい」
「おおむかしれすね」
「そう、大昔」
いいらさんはケラケラ笑います。
「て、カオがオバチャンみたいじゃん」
「へへっ」
「一目ぼれじゃないけどね、最初からかなりインパクトあった」
「へえ」
「だって、あの人髪にメッシュ入れて、しかもカラコンしてたんだよ?
パンツスーツなんか着てさー。
カオ、『都会にはヤンキーがいる』ってマジで思ったもん」
「昔からあんなに目がでかかったんれすか」
「でかかったでかかった。ギョロッてしてたよ」
まあ、バンドしてたから、そんな格好してたらしいんだけどね、といいらさんはつづけました。
「でも、あ、初めて会ったのは、裕ちゃん家で恒例の新人歓迎会した時なんだけど、
その帰りにカオ、中澤ハイツまでの道が分かんなくなって迷子になったのね。
で、メアドとか教え合ったから圭ちゃんに道教えてもらおうと思って携帯に
電話したら、わざわざ出てきてくれてさ」
「うん」
「ここまで送ってくれたの」
「そうなんれすか」
「うん、保田さんっていい人だなーってね」
まだその頃は好きとか意識してなかったけどね、といいらさんは笑います。
- 128 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 13:25
-
「でもアレだなー」
「なんれすか」
「辻も、そういうのに興味を持つお年頃なんだなー」
興味、れすか。
考えてなかったれす。
「いや、なんていうんれすか。いいらさんとオバチャンってなかよしじゃないれすか、前から」
「うん」
「どうやって、恋人になったのかなって思ったんれす」
「どうやってかあ」
サラダを盛ったお皿を脇に寄せて、いいらさんはおかしそうに笑います。
「ずっと友達でもそれなりによかったんかもしれないけどね、それだけじゃ足りなくなったというか」
「へい?」
「あのね」
いいらさんは顎に指を当てて、うーんというように考えて
「友情だけではカバーできない感情がお互い出てきたというか」
どういう風に言おうか、言葉を探してたようれす。
「どんな感情れすか」
「言っていいのかなー」
いいらさんはなぜか頭をかきます。
ののにどう言おうか困ってるようれす。
「カオたちは女の子同士だけど、ずっと一緒にいたくなったの。
あの、なんというか、他の人に取られたくないとか、他の人に触れられるとマジでムカつくとか」
まったく別のケースなのに、なぜかののは今日、あいぼんが亀井しゃんに腕を触れられたことを思いだしました。
我ながら、分からないれす。
で、なんでいいらさんが言うのを困ってるか、ちょっと分かりました。
「今もムカつくれすか」
「うん。浮気したら一生ホルモンとビール禁止って言い渡してるから。軟骨も」
「キツそうれすね」
ののだったら、ケーキ禁止って言われるようなもんれしょうか。
「まあ、それは冗談だけどね。辻もいつか分かると思うよ」
「そうれすかねえ」
いいらさんに頭を撫でられながら、ののはなんとなく思いました。
- 129 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/01(土) 13:26
- 晩ご飯どきになったれす。
食べてったら、と言ってもらったけど、中澤しゃんにごはんのこと言ってこなかったので、
ののは帰ることにしました。
「ただいまー」
オバチャンが来ました。
というか、普通に『ただいま』なんれすね。
「お、早かったじゃん」
「お、辻。来てたん?」
「うん。もう帰るとこれす」
「ごはん食べてかないの?」
「うん、カオも食べてったらって言ったんだけどね。帰ったらごはんあるからって」
「そっか。あ、ちょうど裕ちゃんに用があるから送っちゃる。カオ、ちょっと出てくるから」
「うん。その間カラアゲ揚げとくね」
「何か買ってくるもんある?」
「そうだね、ビールもうないよ。朝のジュースと」
「あいよ」
オバチャンは鞄を置いて、
「行こう」
とののの手を引きました。
オバチャンが自転車を押して、中澤しゃんのおうちまで並んで歩きます。
「オバチャンは」
「ん?」
「いいらさんのおうちに行くとき、『ただいま』って言うんれすね」
ののが言うと、オバチャンは
「確かに、おかしいわね」
と苦笑いしました。
「ううん、おかしくないれす。なんとなく思ったんれす」
そして、それがなんとなくうらやましかったんれす。
「オバチャン」
「うん?」
「いいらさんを好きになったのっていつれすか」
「『いつ』か…気がついた時にはかな」
オバチャンは真っ直ぐ前を見て言います。
「気がつく前にも好きだったんれすか」
「多分ね。気がついてなかっただけで」
「どうやったら気がつくんれすか」
ののの質問がおかしかったのか、
「どうやって…どうやってだろうね〜」
小さく笑います。
「はっきり意識したのは、事故に遭う前だよ。
『ああ、この子のこと好きなんだ』ってね」
「へえ」
「ある日突然ね。恋ってそういうもんよ」
辻もすぐかもね、とオバチャンはまったくいいらさんと同じことを言いました。
- 130 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/01(土) 13:31
- 更新しました。
オバチャンのくせに自転車乗れるんれすね>((( ´D`) ((( `.∀´)<うっさいよ!
- 131 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/02(日) 23:56
- 川o・-。・)つ(ちゃんこ鍋)\(`▽´∬∬
おじゃまるしぇとピーマコはちゃんこ鍋をつついた仲である。
ここのカボチャの料理が絶品なんだべ。>(・´ー`)つ(地図)\(`▽´∬∬
(((川o・-・)(((川’ー’川(((∬∬`▽´)ナッチが教えてくれた店は3人で行った仲。
でも結局見つからなかった。(((川#o`-´)(((川#`ー´川(((∬∬#`▽´) ((((;・´ー`)<ごめんだべ。
川’ー’;川(・-・o;川(`▽´;∬∬)))))) (-e-#)))))<ていうか、何であたしを誘ってくれなかったの?
そんな仲のいい?5期メンバーである。
更新お疲れ様れす。
( ´D`)<ずっとのの視点なのれ、ほのぼのしてたれすね。でもおばちゃんよりいいらさんの方が目がでかいれすよ。( ゜皿 ゜)
しかし恋とは難しいのれす。
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/04(火) 04:58
- 大阪なら「おばちゃん」は自転車に乗れて当然だYO
- 133 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 19:13
- 『いいモンやるわ』
って言って保田さんにファッションホテルの割引券をもらった。
たまたま早く帰ったら、たまたま中澤さんに用があって来てた保田さんに会って。
「まだ期限は大丈夫だから」
ってナニゲに財布から抜き出してたけど。
ファ、ファッションホテルってぶっちゃけ…ラブホだよな。
保田さん、自分で使わないんかしら。
いやいや、他人に渡すくらい余ってるとか?
ああ、こんなこと言ったらまたぶっとばされるな。
「じゃ、グッドラック!」
ポンとウチの肩を叩いて保田さんは帰って行った。
グッドラックって言われてもなあ。
券を手にしたままどうしたものか困ってると、
「なんじゃ、そりゃ」
中澤さんがひょいっと覗き込んできた。
「わっ!」
「なんや、ラブホの券かいな」
なんやって…。
というか、中澤さんってほんとに太っ腹なひとだよなあ。
本来ならウチ、
『ウチの大事な妹になにしくさんねん!』
ってグーパンの一発もくらっててもおかしくないのに。
「なんや、自分ら回数少ないなあ」
ってサラって言うし。
「梨華と気晴らしに出かけたらどないや。
アイツも正月はほとんど家でごろごろしとったし」
「そうっすか。つーか…こういうの目的に出かけるのって、いいんスかね」
「自分、ほんまカタイなあ」
中澤さんがあきれたように笑う。
- 134 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 19:14
- 「あー、もー!じれったいなあ!」
中澤さんはウチのジーンズのケツポケから携帯をひったくって、梨華ちゃんに電話をかけた。
彼女はいま、カテキョで出かけてる。
「おう、梨華か?
吉澤とオマエ、今からラブホ行って来ィや」
あわてて、中澤さんから携帯を取り戻した。
まったくなんてことを!
ハタで聞いてたあいぼんも、さすがに引いてるし。
「も、もしもし梨華ちゃん!?
ご、ごめんね、急に!」
『…駅で待ってたらいい?』
梨華ちゃんの返事はまるで予想外だった…。
- 135 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 19:15
- そんなワケで。
吉澤いま、ラブホ、いや、ファッションホテルにいるっす。
梨華ちゃんはいまシャワー浴びてます。
ウチはというと、無意味にゲームなどをやってみたりしています。
ああ、落ち着かね。
なんかベッドとか花柄のカバーだし。
…保田さんも来たってことだよな。
まさか同じ部屋ってことはないだろうけど、このラブホ、保田さんのシュミで選んだんか?
なんか花とか飾ってるし。
携帯が鳴った。
「ギャー!」
思わず叫んでしまう。
「も、もしもし!?」
『…大丈夫、アンタ?
必死じゃん』
「や、保田さん!どうしたんスか」
『どうって…裕ちゃんに早速出かけたってメールもらったから、
陣中見舞いっつーかね』
『んあ〜、ヨシコ肩の力抜きなよ〜』
『テンパって、先に逝くなよー。早漏すぎんのは嫌われっぞー』
『まあ、のんびりやり』
保田さんの他に、ごっちんや飯田さん、平家さんの声まで聞こえた…。
バレバレじゃん…。
「このラブホ、保田さんのシュミっすか」
この質問には、
『圭ちゃんじゃないよ、カオだよ』
って返ってきた。
- 136 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 19:16
- 「ごめん、おまたせ」
梨華ちゃんがバスローブを羽織って出てきた。
ウチは『じゃ、また』と電話を切った。
正直、助かった。
電話でちょっと気がまぎれたから。
「誰と話してたの?」
「あ、うん。保田さんとかごっちんとか。中澤ハイツのみなさまと」
「そう。あ、お風呂そのままにしてるよ」
「ああ、ハイハイ」
じゃ、ひとっぷろ浴びてこようかねえ、とオバチャンのような小芝居をして腰をかがめて
手ぬぐいを手にお風呂場に向かう。
梨華ちゃんはくすくす笑ってた。
ああ、梨華ちゃんと一緒にオフロに入るチャンスだったのにな。
ウチの意気地なし。
頭に手ぬぐいをのせ、もんもんと考えながら湯船につかる。
『ラブホの醍醐味は一緒にフロ入ってあーんなことやこーんなことをするコトだぜ!』って市井さん、
前に豪語してたな。
どう考えても、ごっちん以外の子との体験談だろうな。
ごっちん本人目の前にして、絶対そんなこと言えないだろうし。
- 137 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 20:28
- …そういや。
市井さん、騎上位がどうこうって飯田さんとかと熱く語ってたよな。
あのときは酒入ってたし、みんなおかしかったんだけど。
『バックもオツだね!』
って柴っちゃんが言って、みんなから拍手喝采だったっけ。
その横でマサオさんが小さくなって、赤くなってたけど。
そこまで考え、ウチはぶくぶくと湯船に沈んでいった。
梨華ちゃんはジュースを飲みながら、毎週楽しみにしているというテレビ番組を見ていた。
ウチも冷蔵庫からスポドリを取ってきて、ソファの隣に座ってテレビを見る。
「ブロードキャスターって面白い?」
「うん、結構面白いよ」
普段は見ない番組に目を向けて、またスポドリを飲む。
なんかさっきまでテンパってたのが、ウソのように落ち着いてきた。
「携帯、光ってるよ」
梨華ちゃんに言われ、自分の携帯を掴む。
『よー!頑張ってるぅ〜?』
電話の向こうからは、明らかに酔っ払ってる市井さんの声がした。
- 138 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/10(月) 20:28
- 「なななな、なんスか!」
『いやー、かわいい吉澤ちゃんが頑張ってるかなーって思ってねー』
もー、かわいそうだよー、って声がした。
アヤカさんと一緒なんだな。
『がんばれよー』
「わかりましたわかりました。頑張りますからおとなしく飲んでてくださいよ」
『ごめんね、よっすぃ〜。
あとできつく叱っとくから』
申し訳なさそうなアヤカさんの声がして、すぐ切れた。
一緒で助かった。
市井さん、酔うとしつこいからなー。
電話を切って梨華ちゃんのほうを見ると、苦笑いしてた。
事情を察してくれたようだ。
「よよよよ、よろしくお願いします」
ぎくしゃくとお辞儀して、ベッドに入る。
梨華ちゃんは
「こちらこそ」
とおかしそうに小さく笑い、ウチのバスローブをするりと脱がした。
ベッドサイドの明かりだけ点けて、体を寄せ合った。
梨華ちゃんがウチの首筋に唇をすべらせる。
…喉元が、すっげー熱い。
梨華ちゃん、ウチの喉ぼとけ好きだなあ。
深いキスをすると、よくここまでキスされるし。
今も、何度も舌が行き来してる。
「…下になって」
夢うつつで、彼女の声を聞いた。
- 139 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/10(月) 20:32
- 更新しました。
( ´D`)<顔がまがるんれす
( ‘ д‘)<笑いに綿棒は欠かせんな
本文とは無関係です。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
( ´D`)<さくしゃは目がちっこいので、たいがいの目はおっきく見えるのれす
総面積はいいらさんがでかいと思いますが、ギョロ目率はヤスも負けてないかと。
>132の名無飼育さん
( ‘д‘)<しかもチャリのハンドルんとこに傘差す金具つけてるしなあ
大阪のオバチャンは、縦横無尽に商店街とかチャリで爆走してますよね。
- 140 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/11(火) 01:15
- (0^〜^)つ□<こんこん誕生日おめ。トロとサーモン(サビヌキ)だYO。
川σ_σ||<こんちゃんはラジオ前もお菓子食べて推定2万キロカロリーはとってるのよね。でも…
川o・-。・)つ◎モグモグ
川;σ_σ||<太らんのはなぜだ?
遅くなりましたがこんこん誕生日おめ。
更新お疲れ様です。
ヨセヨ…ヒトマエデ>(*`_川#σ_σ||つ〔酎〕<バックもオツだね!
で小さくなってるマサオさんがかわいかったです。
(0^〜^)(;`_´)二人は奥手で、
( ^▽^)川σ_σ||逆に積極的なんですね。
- 141 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/12(水) 20:23
- 『こんな格好恥ずかしい』
梨華ちゃんに申し出ようと思ったら、もう手遅れのようだった。
ウチは四つんばいになって、梨華ちゃんの丁寧な動きの舌に翻弄されていた。
「う…あぁ」
「気持ちいい?」
「き、気持ち…いい」
声を出すのもやっとだ。
頭の中に靄がかかったようになる。
自分の足元の方から、ぴちゃぴちゃという水音が聞こえる。
「ああ…うん…ソコ、いいよ…」
どんなに恥ずかしくても、官能ってのは正直だな。
梨華ちゃんは一心不乱に舐めている。
時々、彼女がウチの体から唇を離して息をついている声がする。
「ひとみちゃん…入れていい?」
「うん…何を?」
「指…」
そっと、お尻をあの細い指がなぞった。
それだけでビクンとなる。
「きて…」
返事は、直接の行動で示された。
- 142 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/12(水) 20:24
- 慣れとは恐ろしい。
後ろから指なんてムリだと思ってたのに。
いつの間にか、受け入れるようになっていた。
それどころか、もっともっとって、自分から求めてる。
欲求とか欲望ってどうして限りがないんだろ。
ウチを高みへと突き上げていくもの。
彼女の荒い息を耳元で感じ、見えないうねりのようなものの中に巻き込まれていく。
全部満たされたら、どこかが空っぽになっちゃうのに。
それでも、欲しがってしまう。
欲張りなんだ、ウチも、この子も。
- 143 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/12(水) 20:25
-
…気がついたら、うつ伏せになって彼女の腕の中にいた。
目を覚ましたら、彼女が心配そうに顔を覗き込んだ。
「…どしたん、ウチ?」
「びっくりしたよ、気絶するから」
「マジで?」
ああ、そういや、最後のほうまるで記憶にないわ。
なんか大きな声で喚いたのは覚えてる。
ぼんやりと天井を見つめてると、なんだか足元がひんやりと濡れているのに気付いた。
「梨華ちゃん」
「なあに?」
「なんか…冷たい。濡れてない?」
汗とかにしてはあれだし、なんだろ。
ウチが体の向きを変えて自分の足元を見てると、梨華ちゃんが真っ赤になって、
「…ひとみちゃんがその…」
「ウチが?」
「…出しちゃったの…アレ」
何が起こったか把握するのに数秒を要した。
ウチまで、赤くなる。
「ご、ごめん。タオルで拭いたんだけど、まだ湿ってたね」
梨華ちゃんがあたふたと問題箇所をまたタオルでこすった。
「い、いや。悪いんはウチだし」
悪いとかそういう問題でもないんだろうけど、彼女の手からタオルを引ったくって
ごしごしシーツをこする。
気絶した上に噴いたとは…。
ウチの体、どうにかなったんだろうか。
腰には鈍い痛みが残っている。
タオルをそのへんに放り出して、またベッドにつっぷした。
- 144 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/12(水) 20:27
- 「ひとみちゃん」
「ひゃい?」
「あの、体大丈夫?」
うつぶせのまま顔を上げると、梨華ちゃんが眉をハの字に下げていた。
ああ、この子のこの顔、好きだなあ。
なんて本人に言うと『も〜お!』って怒るだろうけど。
「いやなんか…燃え尽きた感じ?今までにない体験でしたし」
「そ、そう?
どっか痛くない?」
「腰がちっと痛いっす」
「ご、ごめん!このままでいてね」
梨華ちゃんが揉んでくれる。
あんなことをした後でなんですが、ウチはオヤジのように
「うい〜。きっもちいい〜」
気持ちよさに目を閉じた。
「次梨華ちゃんね」
マッサージが一通り終わってから、「え、え?」と戸惑う彼女の腕を掴んでうつぶせにした。
「お客さん、凝ってますね」
「そ、そうですか?」
「さぞ頑張られたんでしょう」
ウチがニヤニヤすると、梨華ちゃんは目で『も〜お!』と非難する。
「いやー、まさかアレまで噴くとは。人生、何が起こるかわからねっす」
「あ、あたしだってびっくりしたよ。ひとみちゃん、気、失ったって思ったら…出てくるし」
最後は消え入るような小声になる。
それにしてもほっそい腰だな。
彼女の腰を揉みながら、改めて思う。
ウチを惹きつけてやまない、チョコレートみたいな色の肌。
そっと、舌を落とした。
「うん…!」
すぐ反応があった。
くすぐったかったのか、身を捩じらせ、笑いながら軽くにらんだ。
それだけでは足りなくなって。
「…次、梨華ちゃんね」
うつぶせになった肩に、また唇で触れた。
- 145 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/12(水) 20:29
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
川o・)-。・)つ□<さっそくゴチになっております。ありがとうございます
こんこん、奇跡の体型ですよね。男子チームは照れ屋が多いのです。
柴っちゃんはオッサンなだけですが。
- 146 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/12(水) 20:59
- そうか!よっちゃんは鯨歳だったのか?
く、くじら?
- 147 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/13(木) 00:50
- 更新お疲れ様です。
(*/〜\*)<ひ〜ちゃん、恥ずかしいッ!
やっぱりひ〜ちゃんもかわいい女の子です。次回のひ〜ちゃんの反撃も楽しみです。
- 148 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/13(木) 02:00
- 更新お疲れ様です
ちょっと大人ないしかーさんに大人になっていくよっすぃー。
>>145
紺野さんは豆乳シリーズの開発が順調のようです。
「豆乳チャイ」なんて検索しても80件くらいしか出てこないような
レアなものまで・・・立派な豆乳フリークですねw
- 149 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/13(木) 12:11
- レスのお礼です。
>146の名無飼育さん
(0^〜^)ノ<クジラカッケー!
レスを読んで大爆笑しますた。そうか!ヒーちゃんは鯨歳だったんですね(w!
>ヨッスィのタマゴさん
( *^▽^)<ひとみちゃん…カワイスギ
もういしかーさんは萌え萌えだったと思います。ひーちゃん反撃なるか?
>148の名無飼育さん
川o・-・)<お豆腐にお砂糖もかけます。豆乳チャイぐぐって調べたら本当に約80件でした
豆乳チャイ情報ありがとうございます。確かに紺野さん、立派な豆乳ヲタですよね(w
- 150 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/13(木) 12:13
- ・中学生日記
――朝比奈女子中学3年B組放課後
゛φ(・e・ )←日直なので学級日誌つけてる
HRにて―
家庭科室を借りてマンゴープリン作りに励む一同。
(;・e・)<(うわ…幸薄そう)((川*^ー^)っフ
煤i;・e・)
(;・e・)<(い、いまのどー見てもパパイヤだよね…)ヨカッタ オナジハンジャナクテ… ((川*^ー^)
从*・ 。.・从 <次の美術は自習なの
『自習課題:自分の好きなものを描く』
゛φ(・e・ )←ナニゲに絵がうまい
从*・ 。.・从 <ガキさん、それモー娘。のなっちの絵?
( ・e・)<うん、なんでもいいらしいから。シゲさんは?
从*・ 。.・从っ□ <もちろん、さゆ自身だよ!ホラ、自信作!
(;・e・)<ふうん、すごいね…(聞くだけ愚問だった。なんか絵もキワいし)
((川*^ー^)
从*・ 。.・从<亀井さんはなんの絵描いたの?
川*^ー^)<ウフフ、絵里の顔!
从*・ 。.・从
(;・e・)
从*・ 。.・从<…さゆのほうが可愛いもん
゛φ(・e・ )<美術は自習、と
(;・e・)<(…つーか、あの画力はぶっちゃけヤバイ…川*^ー^) )
- 151 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/13(木) 12:14
- ・懐メロへの道
( ´D`)<♪ためいきの出るような あなたの口づけに
( ‘д‘)<ずいぶんと古い歌歌てんな
(;´D`)<古いって言ってるほうも古いと思うんれすが
( ‘д‘)<まあなあ
( ´D`)<中澤しゃんに教えてもらったんれすよ
( ‘д‘)<(さすがに中澤はんでもオリジナルをリアルタイムで聴いてへんやろな)
( ´D`)<ざ・ぴーなっつってふたごなんれすよね
( ‘д‘)<うん。姉はジュリーの元嫁やねんで
( ´D`)<じゅりー?
( ‘д‘)<沢田研二
( ´D`)<?
( ‘д‘)<ある意味志村けんに似たおっちゃんや ドリフコントデキョウエンシテタシ
( ´D`)<へえ、そうなんれすか。ところであいぼん
( ‘д‘)<なんや
( ´D`)<この歌に「ふたりだけのひめごと」ってくだりがあるんれすけど、
ひめごとってなんれすか
(;‘д‘)<エ…
ぼんさん脳内データバンク↓
ひめ-ごと【秘め事】@秘めて人に知らせない事柄。ないしょごと。秘事(ひじ)。
A神秘な事柄。 (広辞苑第4版・2182p)
(;’д’)<(…どう説明すりゃエエんやら…辞書の解説はビミョーやし)
( ´D`)<つまり、ひとに言えないようなことれすか
(;‘д‘)<いやいやいや…一概にそうとは(しかし当たらずとも言えども遠からずやで、しかし)
オリジナルは1963年発売だそうです。
- 152 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/14(金) 01:26
- (*‘ д‘)<守ってあげたい。これが男の気持ちなんやな。
(*´D`)<テレパシーで繋がってるのれす。
(*‘ д‘)(´D`*)<<運命の人に出会ったなって。
W−U万歳です。( ‘ д‘)vv(´D` )
ガキさん、お疲れ様です。
φ(・e・ )以前はガキさんの「ピン・チャポー」に大爆笑でした。
今回は学級日誌ですが、内容は从*・ 。.・从川*^ー^)この二人のナルシス日記ですね。
- 153 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/14(金) 20:38
- ―――保田視点
その日は土曜なのもあって、中澤ハイツ住人一同で飲んでいた。
つーか、アタシん家が当たり前のように会場になってるし(笑)。
カオリは黙々とコロッケとかを揚げ、その横で後藤はサラダや炒め物を作っていた。
「料理自慢がおるとつまみに不自由せんでエエな」
みっちゃんはビールを飲みながらしみじみ言う。
「そうね」
「んあ、ポルチーニなんかある。なんにするの?」
「圭ちゃんが作りもせんのに買い込んだんさ」
「んあ、じゃ、ごとーこれでリゾット作るね」
「おお、頼むわ」
言われてんで、とみっちゃんはアタシの肩をこづいた。
すみませんねえ。
ふたりが頑張ってくれたおかげで、つまみは豪華だった。
ポルチーニも、美味しそうなリゾットに。
- 154 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/14(金) 20:40
- 裕ちゃんからメールをもらう。
携帯を取り出してみると、
『吉澤、早速行きおったわ』
とだけあった。
グフフ、と笑ってると、
「なにひとり楽しんでんの〜」
と後藤に携帯を覗かれてしまったわ。
「んあ?行くってどこ?」
「…フフ、愛の園よっ。イシカワとふ・た・り・だ・け・の!」
唇を突き出して3人のほうを向いてチュ!っとサービスすると、
みんな『オエー!』ですって。
んま、失礼しちゃう!
「察するに、ラブホでも行ったんか?」
みっちゃん、カンがいいわね。
さすがダテに歳くってないわ。
「あ、それなら割引券でもあげればよかったね。お泊りだったらあんまオトクにならないかもだけど」
カオリが言うので、
「フフ、ちゃ〜んと渡してきたわよっ」
また『チュ!』ってやるとみんな今度はスルーしたわ…。
- 155 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/14(金) 20:42
- ―――飯田視点
圭ちゃんは今日、あんまりタバコを吸わなかったようだ。
キスの味があんまり苦くないし。
キスして裸ですべりこむようにベッドに入ると、圭ちゃんはカオのそばに横になって寝た。
カオの髪が体の下敷きにならないように後ろに流してくれ、また小さくキスされる。
「…ん…あぁ」
首の後ろから右腕を回し、右胸をいじられる。
圭ちゃんの顔は、カオの脇らへんにある。
左の胸は、圭ちゃんの熱い舌が触れていた。
圭ちゃんの左手はカオの下肢に伸びている。
「カオのここ…すっごい熱いよ」
自分が熱くしてるクセに。
涙目になって、そう反論した。
だってさあ、可愛いから。
圭ちゃんはそう言ってカオが一番感じるトコをより一層左手で擦った。
その指がもっと欲しくて、自分から腰を動かしてしまう。
何かから引き剥がされるような感じがして、体の中に強い痺れが走る。
カオは圭ちゃんの髪を掴み、掠れた声で果ててしまった。
「…早かったね」
カオの髪を撫でて、圭ちゃんは小さく笑った。
「人を早漏みたいに言うなあ!」
あまりにも恥ずかしいので、クッションを圭ちゃんの顔にぶつける。
「もー!カオばっか気持ちよくしてさあ!」
「気持ちよかったんならいいじゃん」
「よくない!」
「よくないって…こういうのは個人差があるんだからさあ」
「もー!」
もーもーって牛かアンタは、とかブツブツ言う唇を塞いで、肩を押して仰向けに倒す。
圭ちゃんの足を掴んで広げ、その間に頭を潜り込ませた。
- 156 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/14(金) 20:44
- 「…ちょっ…いきなり?」
「だって…充分濡れてるよ?」
カオにえっちなことしながら、こんなに濡れてたんだ。
圭ちゃんのえっち。
圭ちゃんはそれには答えず、
「…う、ん…」
色っぽい声を上げた。
舌で中に侵入すると、強く頭を掴まれた。
いや圭ちゃん、力強すぎだから。
それでもその反応が嬉しくて、圭ちゃんの濡れた蕾にキスをし、舌を這わせた。
後ずさりしそうな腰をしっかり押さえて愛撫を繰り返す。
圭ちゃんのレアな可愛い声に、カオまで反応してしまう。
気がつくとカオは圭ちゃんの脚に自分の蕾とかを擦りつけてた。
圭ちゃん、カオに責められていっぱいいっぱいだろうに、
脚をカオが擦りやすいようにしてくれてる。
ほどなく、圭ちゃんも果ててしまった。
カオもまだイッてなかったけど、圭ちゃんの脚から腰を外した。
『アタシはそこまでしてないぞー』
圭ちゃんはニヤっと笑って、すぐカオをうつぶせにしたのだけど。
…夜は長い。
そしてウチらはまた、肌を重ね合わせる。
- 157 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/14(金) 21:53
- 更新しました。
途中PCが固まってしまいエライ目に遭いますた。
ヤスの呪いか?
( `.∀´)グフフ
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(;・e・)<我輩のクラスメイトは濃すぎるのだ
ガキさん筆頭に濃いメンツが集う3年B組ですた。そして「うたばん」は見逃してしまいました(泣)。
- 158 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/15(土) 01:05
- 川*^ー^)は自信満々でパパイヤを切ってたので、
川’ー’川つマンゴー<なんかむこうがマンゴーっぽいやよー。
とつられそうでした。
( ・e・)从*・ 。.・从川*^ー^)この3人は同じクラスだったんですね。从 `,_っ´)れいなちゃんがいないのがおしいです。
( `.∀´)圭ちゃん、顔がエロくなってるよ。
またいち〜ちゃんに突っ込まれそうで楽しみです。
ケメコの呪いはモニターに焼きつきもでるんで気を付けてください。
- 159 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/20(木) 20:47
- その頃。
後藤は平家と一緒に保田宅を出た後、『ついでやし、乗り』という平家の言葉に甘え、
渋谷まで一緒にタクシーに乗せてもらった。
平家はこれからまた友人の家に行くらしい。
最近、市井は週末になるとギターを弾いて歌っている。
差し入れも兼ねて陣中見舞いに行く。
市井は最後の曲を歌い終わり、片づけをしているところだった。
後藤の姿を見つけ、軽く手を上げる。
「今日は何歌ったん?」
「百恵の『曼珠沙華』」
「ほお〜。ごとーも聞きたかったなー」
「おめー、さっきまで飲んでたっしょ?
ビミョーに酒くせーよ」
「んあ、圭ちゃん家で飲んだり食ったり」
使わないのに、ポルチーニなんかあってさーと報告する後藤の姿を市井は楽しげに見つめる。
- 160 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/20(木) 20:47
- ふたりはその後、チェーン系の居酒屋に入っていく。
後藤はさっきまでの飲食がウソだったかのように、次々注文する。
「…オマエはいつか胃拡張で死ぬな」
市井はあきれたようにメニューと首っぴきな後藤を、頬杖をついて見る。
「そーいやさー」
先に運ばれてきたビールで乾杯し、市井は思い出したように口を開く。
「んあ?」
「なんか、この前ちらっと実家帰ったんだけどさ」
「ん」
「おめーんちのおばさんがうちの母ちゃんに『ユウキが家に寄りつかない』ってグチってたぜ」
「んあ、お正月もごとー、カオ見なかったもん」
「そうなんか。連れんとこでも行ってるんか」
「多分、彼女んとこ」
「ほおー。ユウキもオトナになったなー」
「彼女んとこにいるんならいるで連絡の1本くらい寄こせばいいんだけどね。
おかーさんもねーちゃんもヤツには甘いから」
淡々と言い、後藤はごくごくとビールを飲み干す。
「そうか」
市井もそう言ったきり、その話題には触れなかった。
相変わらず後藤は黙々と運ばれてきたつまみを平らげるのだった。
- 161 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/20(木) 20:48
- ―――吉澤視点
翌朝。
鈍い痛みで目が覚める。
枕元の時計は7時を回っていた。
ああ、今日もバイトあるから支度しなくちゃ。
そっと起き上がると、それで目を覚ましたようで梨華ちゃんが『もう朝?』と目をこすって体を起こした。
「あ、まだ寝てていいよ。ウチ、シャワー使うから。バイトあるし」
「うん、あたしもそろそろ起きないと」
結局一緒にシャワーを浴び、服に着替えホテルを後にした。
ホテルを出たところで、意外な人に会う。
隣のラブホから、メチャ見覚えのある二人連れが出てきたのだ。
「「おわ!」」
ウチと先方のひとりが声を上げる。
「うわー…偶然。て、結構ヤな偶然だね」
柴っちゃんのひとことに、みんな冷や汗を浮かべて笑った。
朝メシでも、ということになり、最寄り駅のそばにあったカフェに入る。
『ウチら、ヤッてきました』
どう振る舞ってもこの事実は消えないわけで、みんなミョーにぎくしゃくしている。
その空気が可笑しくなったのか、柴っちゃんはふっと笑い、
「つーか、ウチら意識しすぎ」
と自己ツッコミをした。
それに助けられてみんなほっとしたように笑う。
「マサオさん」
「ハイ?」
ウチが声をかけると、マサオさんはコーヒーのカップから顔を上げた。
「マサオさん、一人暮らしじゃないですか」
「うん」
「その、柴っちゃん、しょっちゅう泊まりに来ます?」
なんであたしスルー?しかも何聞きたいかすっげー分かりやすいんだけど、と外野の声が聞こえたがあえて
無視した。
「ああ、姉さんとケンカしたとか、なんかまあ色々と」
「やっぱいいっすね、一人暮らし」
「色々やっかいなことはあるけどね」
マサオさんは苦笑いした。
その横で、
「梨華ちゃん、昨夜の戦績は?」
と柴っちゃんは梨華ちゃんにフリ、梨華ちゃんはやや引いていた。
- 162 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/20(木) 20:49
- ―――保田視点
「おつかれー」
寝室に入ってきて、カオリはペットのお茶を差し出した。
「そっちも」
ベッドの中で受け取って、一口飲む。
…結局、カオリは朝まで解放してくれなかった。
まあ、燃えまくって理性失くしてるアタシもアタシなんだけど。
「あのさー」
「あ?」
「カオのママが今後、北海道から来んのね」
「うん」
「会ってくんないかなあ」
「うん、勿論」
ママ、それとなく気付いてるみたい。圭ちゃんのこと。
とカオリは言った。
カオリのお母さんには何度かお会いしたことがある。
と言っても、ご挨拶したくらいでちゃんとお話したことはないのだけど。
「カオ、最近マジメにしてることでママは不審に思ったそうです」
カオリがわざとまじめくさった様子で言うので、思わず吹きだしたわ。
ああ、そういえば昔、
『恋人をころころ変えるのやめなさいってママに怒られたの』
とか言ってたっけ。
それも思い出して笑ってると、
「カオがマジメになった原因をママは多分評価してると思う」
「へえ」
いつか、パパと妹にも会ってね。
アタシは頷いて、カオリに小さくキスした。
- 163 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/20(木) 20:52
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
从*・ 。.・从<さゆたちは同じクラスなの。担任の先生は岡村先生っていうの
ちなみに副担任は佐野先生です。亀井の作ったパパイアプリンはかなり不味そうでしたね(苦笑
ヤスは市井いわく「エロ大臣」だそうです。きっとまた後藤あたりが詳細な報告をしてるとオモワレ
- 164 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/20(木) 20:56
- ・ウエディングベル
ある日のこと…
( ´д`)<…うーん ムニャムニャ…
…………………………………………………………………………………………………………
(‘д‘)(´D`)
つと
♪リーンゴーン リーンゴーン…
(0^〜^0)<OH〜、新郎のカゴアイ、アナタ、新婦のツジノゾミを幸せにするアルか?
( ‘д‘)<はい、誓います
(0^〜^0)<OH〜、新婦のツジノゾミは?
( ´D`)<へいっ、誓うのれす
(0^〜^0)<んじゃあ、ブチュッとブチュッと
(*‘д‘)(*´D`*)
( *´(`* )
( `.∀´)( ´ Д `)ワー!オメデトーオメデトー!
川*T〜□と ノンチャーン! ←号泣
- 165 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/20(木) 20:57
- (〜^◇^)<それでは新婦・希美様のOL時代のご友人・柴田様、吉澤様、石川様
よりお祝いのメッセージと歌のプレゼントです
(;´D`)<あの、のん、お勤めしたことないんれすけど… マダコウコウセイレスシ
(;‘д‘)<(一体なん役やねん(0^〜^0))
川σ_σ||( ^▽^)<希美、結婚おめでとう。加護さんならきっと幸せにしてくれるよ
(0T〜T0)<研修でくじけそうになったとき、希美が励ましてくれたよね!カッケー!
川σ_σ||( ^▽^)(0^〜^)¶アーカアーオキイロノイショウヲツーケタ
(;‘д‘)<(ベタな選曲やなあ)
(〜^◇^)<それではお若いふたりの初めての共同作業、ケーキカットです
( ´D`)( ‘д‘)つ
(〜^◇^)<続いてファーストバイトです
(*´D`◇と(‘д‘*)
( ‘д‘)<食うことだけは困らせへん。ついてきてくれるか?
( ´D`)<あいぼんと一緒なら、こわくねーのれす。ガツガツ食うのれす
…………………………………………………………………………………………………………
( ´д`)<…… ←いいとこで目が覚めた
(*´д`)<…ちょっといいかも
- 166 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/21(金) 01:43
- 川o・-・)<加護さん辻さんおめでとうございます。2人は私の完璧な理想です。
∬∬`▽´)<加護、辻ちゃんおめでとう。また紺野たちと一緒に食い歩こうぜ。
川’ー’川<辻さん今度ソースかつ丼ごちそうするがし。
( ・e・)つ□<はい笑って。カシャカシャ(カメラマン)
川o^-^)∬∬`▽´)川^ー^川( ^e^)<Can you celebrate? Can you kiss me tonight?♪
ベタな選曲2(今風)
(‘д‘)(´D`) いいですね。ぼんさんものんさんもかわいすぎます。
川*T〜□と 号泣するいいらさんがお母さんみたいでした。
( ‘д‘)<食うことだけは困らせへん。ついてきてくれるか?
プロポーズの言葉も感動しました。(ちょっとワロタ。)
夢にするのがもったいないです。
- 167 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/23(日) 03:22
- ───吉澤視点
バイトに行ってウチはめちゃ挙動不審な動きで仕事をこなしていた。
夕方たまたま矢口さんが来て、『もう!スミにおけないねッ!』と
ニヤニヤしながら腰を叩いた。
…バレてるのね。
なっちさんも朝から黙ってニヤけてたのはそれだったのか。
あ〜あ。
ウチってイジられる運命なのかしらん。
帰り道、スーパーの前で飯田さんに会う。
「おう。ゆうべはどだった?」
開口一番ソレですか。
まあ、いいけど。
「いやまあ…保田さんは一緒じゃないんスね」
「ああ、友達んとこ行ってる」
「そッスか。飯田さんとこもなかなかで」
「え?なんで知ってんの?」
「て…え?」
「いやー、ゆうべは圭ちゃんが離してくんなくてさー。結局夜、明けちゃった」
『てへっ』って感じで飯田さんは舌を出して笑った。
しかしこのひとはどうして恥ずかしがらないんだろう。
『オトナのオモチャ、ネットで買っちゃった〜!』ってこの前は楽しげに言ってたし。
保田さんのほうがよっぽど恥ずかしがり屋だ。
「吉澤も買い物?」
「ああ、ハイ。ゆで卵用の卵もそろそろ切れるんで」
「そっかそっか」
「飯田さんは?晩飯ッスか」
「ああ、うん。カオ用と圭ちゃん用。冷蔵庫の中、なんもないし」
「保田さんのも?タイヘンっすね」
「だって、あのひとほっといたら、外食ばっかするんだよ?体、こわすよ」
飯田さんは唇を尖らせた。
「はあ、カカア天下っすね」
「なんか言った?」
飯田さん、目を見開かないでください。こわいっす…。
- 168 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/23(日) 03:23
- 帰宅途中、メールが入る。
『( `.∀´)<ゆうべはお楽しみだったかしら?アタシの券は役に立った?
また必要になったら言いな。いつでも分けてあげるワ!グフフ…』
…いつでも分けれるくらい割引券があるのかー。
『ありがとうございます。保田さんも朝まで離してもらえなくてタイヘンっすね』
と返事を打った。
その返事は来なかった。
その代わり今度会ったらしばかれるんだろうな。
帰ったら、あいぼんが疲れきった顔でごはんを食べていた。
思わず、額に手を当ててしまう。
「どしたん?熱でもあんの?」
「違うって。勉強疲れや」
「べんきょお〜?なんだ、テストの時期でもねーだろー?」
「今度特待生の選抜試験があるんや。それの為や」
「特待生?」
「受かったら学費を免除してもらえるんれす。ひとりかふたりしか受からないんれすよ」
ののがごはんを頬張りながら説明してくれる。
「へえー。おめー、ホント勉強できるんだなー」
「ウチは下に弟もおるしな。今度もうひとり生まれるし、なるべく親の負担を減らせたらいいかなって」
「おめーはほんとにいい子だなー」
がしっと抱きしめてがしがし頭を撫でると、
「もー!やめてんか!」
と腕の中で苦情が聞こえた。
「無理しちゃダメだよ。また倒れるよ」
先に食事を終えた梨華ちゃんがお茶を入れてくれる。
「それは大丈夫や。この前ので懲りたさかい」
「ののが見張ってるんで大丈夫れす」
「今日も一日邪魔しくさってなあ〜」
あいぼんがちろっと横目でにらむと、ののはすっとぼけて口笛を吹く。
きっと机に向かうあいぼんの後ろからじゃれついてたんだろうな。
目に浮かぶようだ。
「お父さんたちは別に無理せんでエエてゆうてはるんやろ?
あんまり根つめんでやらんでもエエんちゃうの」
中澤さんが言うと、
「まあ、実力も試したいですし」
あいぼんはそう答えて、黙々とごはんを口に運んだ。
- 169 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/23(日) 03:25
-
「ねー、あいぼーん」
ごはんが終わってからも、ののはあいぼんにじゃれついていた。
「なんやねん」
「一緒に『ハロモニ。』のビデオ見るれす〜」
「もー、頼むから早よう寝てんか。ウチは勉強したいねん」
「今日の『ハロモニ。』は今日見なきゃ意味がないれすぅ〜」
「いや、ビデオの時点でその論理はおかしいし」
「あいぼんはののがキライなんれすか〜」
出た!
必殺の殺し文句!
案の定あいぼんは、『うっ…』っと詰まってる。
「いやいやそれとは別な問題やし」
「…キライなんれすね。いいれす、のの、ひとりで寂しく『ハロモニ。』見るれす」
しょぼんと肩を落とし、ののは席を立った。
「…わかったわ。『ハロモニ。』見るだけやで」
あきらめたようにあいぼんはためいきをつく。
途端に、ののの顔がぱーっと明るくなる。
「じゃ、さっそく見るれす!」
ののに腕をつかまれ、あいぼんは引っぱっていかれた。
ウチら3人は顔を見合わせ、くすくす笑った。
- 170 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/23(日) 03:27
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
川*T〜□<のんちゃんが!カオののんちゃんが〜!
実際、いいらさんはこんな風に号泣すると思います。
(*´д`)<はにー (´D`*)<だーりん
に萌え死にました。
- 171 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/23(日) 23:30
- ナンカイッタ?( ゜皿 ゜)(;0^〜^)イエ、ベツニ
更新お疲れ様です。
( ^▽^)( ´ Д `)( ゜皿 ゜)( ´D`)川σ_σ||
奥さんの顔ぶれを見ると、正直どこもカカア天下では?
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/23(日) 23:39
- どんなん買ったんか想像しただけで...(*´Д`)ハァハァ
まあ、あからさまなヤツって感じでは無さそうな。
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/25(火) 02:02
- 更新お疲れ様です
(●´ー`●)<おはよ〜(ニヤニヤ) はぁ、おはようっス・・>(^〜^0;)
(〜^◇^)<いや〜若いっていいね〜キャハハ ばれてる!?>(^〜^0;)
よしこがこの二人に茶化される姿が目に浮かびます
- 174 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/25(火) 19:21
- ――朝比奈女子高校
週明けのある日、休暇明け恒例の実力テストが実施された。
テストのあとはHRだったので、辻と紺野のクラスはジャージに着替えてバスケをした。
加護のクラスは洋画鑑賞で、視聴覚室を借りて観る。
生徒がめいめい感想を書いたプリントを日直の加護が集めて、職員室に持って行く。
その帰り、制服をひとそろい抱えて紺野と会う。
「どしたん」
「あ、いえ。実はうちのクラス、さっきのHRでバスケしたんですけど、辻さんが貧血で
倒れられて」
「へ?」
「保健室で休んでいらっしゃるので、着替えを持って行こうと思いまして」
「ふうん、そうなんや」
話していると校内放送がかかり、
『1年C組の紺野あさ美さん、職員室まで来てください』
と紺野が呼び出される。
「あ、どうしよう」
「分かった。貸して」
加護は着替えを受け取り、保健室へ向かった。
- 175 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/25(火) 19:22
- 保健室には養護教諭の稲葉がいなかった。
『職員室におります。稲葉』
と壁のホワイトボードに、メモがマグネットで留めてある。
衝立からそっと顔を覗かせると、辻が穏やかな表情で眠りについていた。
『なんや。貧血いうから真っ青な顔してんのかと思たら、気持ち良さそうに寝とる』
加護は安心し、ベッドのそばの丸椅子に腰掛けた。
「ん…」
眩しそうに顔をしかめ、辻が目を覚ます。
「あ。あいぼん…」
「よう。お目覚め?」
「うん。のん、貧血起こしたんれすよ」
「らしいな。さっき、渡り廊下んとこで紺野に聞いたわ。
あのひと放送で呼び出されたから、代わりに着替え持ってきたんや」
「ありがとうれす。もう着替えるれすね」
「具合はエエんか?」
「お薬飲んで少し寝たらすっきりしたれす」
「つーか、自分女の子の日なん?」
辻はちょっと頬を赤らめて黙って頷いた。
聞いたほうが恥ずかしくなり、加護も押し黙ってしまう。
「じゃ、ウチはそこで待ってる」
着替えてる間、衝立の外に出る。
- 176 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/25(火) 19:30
- 窓の外を見ると、とても天気がいい。
どこかのクラスが、学園歌の練習をしている。
「かーぜがふーきわたーる こーのだーいちにー」
加護も小声で合わせて歌う。
「さーわやーかなー あーさのかーおり」
つっかえた生徒がいたようで、演奏が止む。
Bメロで難しい転調をするので、初めて歌う生徒の大半はそこで間違えてしまうのだ。
「あ、あれ…?」
衝立の向こうから、焦った声が聞こえる。
「どしたん」
「あ、もう…!うまくいかないれす」
「なにが」
「あの、あいぼん…」
加護はベッドに向かった。
辻がベッドの上にぺたんと座り、背中に両腕を回し、一生懸命うんうんうなっていた。
「ホックか?」
「へいっ。どーしても留まんないんれす」
「取れたんちゃう?…見てもエエか?」
「へい。お願いするれす」
辻はちょっと泣きそうになっていた。
- 177 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/25(火) 19:33
-
辻のパステルイエローのTシャツの背中を少しまくって、手を伸ばす。
少し濃い、グレーのブラが視界に入った。
『グレーのブラか。案外オトナやな』
オッサンくさい感想を心の中で呟き、ホックを留めてやる。
「別に、取れてもなかったで」
「ありがとうれす」
辻はTシャツを整え、ぴょこんと頭を下げた。
「つーかさ、自分、単に胸大きいなってるんちゃう?」
「え!?」
「まあ、生理中はワンサイズくらい変わるらしいけどなあ」
「そうなんれすか…」
辻は感慨深げに言い、加護が見てるのにも拘らず手早く着替えた。
「はあ…オナカすいたれす」
昼休みが近づいている。
辻はお腹を押さえた。
さっきクラスメートにチョコをもらったのを思い出し、加護は
「チョコレートならあんで。さっきもうてん」
とブレザーのポケットから袋を取り出した。
「ありがとうれす。地獄に仏、渡りに船れす」
「大袈裟やなー」
加護は苦笑して、辻が袋を破って嬉しそうにチョコを頬張るのを見る。
「ついてんで」
辻の口の端についたチョコを、人差し指でぬぐってやる。
辻はそれをぼんやりと見ていた。
- 178 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/25(火) 19:34
- どうにも言えない空気が流れる。
ふたりはこれ以上ないくらい顔を近づけ、相手の肩に手をやった。
発作のように唇を重ね、今までにないくらい強いキスをする。
『甘っ』
辻のチョコの味に、加護は一瞬躊躇した。
辻の唇を挟み、舌を滑らせたりして中への侵入を試みる。
辻は加護の首に手を回し、それに応えた。
いつの間にかベッドに倒れこみ、辻の体を下にしていることに気付く。
『…保健室で青い体験なんてベタすぎる。
どうにかせな』
頭では分かっていても、辻の甘い香りに引きずられ、もっとキスしてしまう。
「…あ、イヤ」
『ヘンな声出すなー!!』
理性との狭間で戦う加護。
分かっているのに、分かっているのに、彼女の甘い声に溶けそうになる。
「うん…あいぼん。あついよお…」
「ウチもや…」
それにしても、女の子の体はこんなに熱いものなのか。
スカートがまくれ、太腿同士が直接触れていた。
もっともっと、と欲しくなる。
『ヤバい…誰かウチを止めてー!!』
それでも体は言うことを聞かず、とろけそうなキスを繰り返す。
加護の上履きが片方脱げてしまう。
床にそれが落ちたのが、終了の合図だった。
その音でふたりとも我に返り、異常に早くなった動悸を鎮めていた。
「…帰ろっか。もう昼休みやし」
「そ、そうれすね」
辻はブレザーの前を合わせ、カーッと赤くなった。
加護は先にベッドから降り、脱げた上履きを履いてベッドに腰かける辻の髪を撫でた。
頬をなぞるように手をやり、最後にもう一度キスをした。
廊下で、誰かが足早に立ち去る音が聞こえた。
- 179 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/25(火) 19:36
- 更新しました。
正直、今回の発表は堪えました。
( ^▽^)川‘〜‘)||
このふたりまとめてでしたからねえ。
なんというか、もう流す涙もないくらい悲しいです。
「愛の種」の頃から応援してるので、オリメンがまったくいなくなる娘。は
かなり自分にはつらいです。
ネガティブなことばかり言ってごめんなさい。
とりあえず、私は私にできることをして今後の彼女らを応援し続けて行こうと思います。
なんのかんの言っても、自分は結局ヲタですので(苦笑)。
(;‘д‘)<自分、ホンマDDやなあ
( 護摩)ノ<DD言(ry
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(;0^〜^)ヽ;^∀^ノ(;`.∀´)(;‘д‘)(;`_´)
マサオんとこは微妙に違うのですが、正直どこもカカア天下です。
>172の名無飼育さん
(;`.∀´)y−~~<…どんなん買ったん?
川‘〜‘)||<ん?圭ちゃんが好きそーなの(サラリ)
きっと嬉しげにヤスに見せたことと思います。そして自分で使う前に(ry
>173の名無飼育さん
(・´ー`・)<若いって素晴らしいね、ヤグチ
(〜^◇^)<キャハハ!まったくな!
茶化しがいのあるヒーちゃんなのです。イジられキャラですな。
- 180 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/25(火) 22:00
- ・優しい悪魔
(〜^◇^)/<キャンディーズかよッ!
( ´D`)<ねー、あいぼーん
( ‘д‘)<なんやねん
( ´D`)<こあくまってなんれすか
( ´д`)<…(毎度のことながら、ホンマは分かってて聞いてるんやないやろか)
( ´D`)<どういう意味なんれすか
( ´д`)
( ´D`)<ねー
( ´д`)<…自分みたいなんを言うんや ボソッ
( ´D`)<そうなんれすか!それは知らなかったれす!
((( ´D`)<さっそくみんなに聞いてみるれす!
( ´д`)<…… ←なんとなく止める気もない
( ´D`)<オバチャーン
( `.∀´)<お、辻じゃん。どしたん?
( ´D`)<あのね、のん、こあくまなんれすよ
(;`.∀´)<ハア?誰が言ったん、そんなこと(その前にこの子は意味分かってんのかね?)
( ´D`)<あいぼんに『こあくまってなに?』って聞いたら、『オマエみたいなんや』ってゆったれす
(;`.∀´)<…ふうん(…やっぱり)
( ´D`)<ねー、オバチャンのしってるひとでほかにこあくまはいるれすか
(;`.∀´)<( ( ゜皿 ゜)v )←ヤス的代表的人物
(;`.∀´)<え、えーと…いいらさんかね
((( ´D`)<いいらさんれすね!のん、いいらさんにおしえてあげるれす!
(;`.∀´)/<て、オーイ!
あのねー、いいらさん。オバチャンがいいらさんのこと、こあくまだってー>( ´D`) 煤i゜皿 ゜ )<ナヌ!?ソンナコトヲ!?
…空が青いわねえ>(´ ;)y−~~
(〜^◇^)<♪マーイスィートデービル
- 181 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/26(水) 00:59
- フレンドパークでダーツでぷ〜さん当たった。(0^〜^)´D`*)<よっすぃ〜ありがとうなのれす。
ZZZ(0´〜`)´д`*)ZZZ (´ー`・)<ギュッとして寝てる2人に見とれた。かわいいねぇ。
はい、ピンクのぷ〜さん。>(0^〜^)ノ□(^▽^*)<ありがとうひとみちゃん。
一徹一家楽屋にて 百万の札束くすねちゃおうか?( ´D`)ノ□ (^д^ )(^▽^ )(^〜^O)アハハハ
(0´〜`)ミンナイナクナッチャウ… (‘д‘)(´D`)(^▽^)ヨッチャン!
いいらさんは覚悟してましたが、梨華ちゃんはさすがに泣きそうになりました。
更新お疲れ様です。
川*■-■)<加護さん辻さん。ドキドキ
多分この人が覗いていたのでは?にしても、ぼんさんけっこう大胆やねえ。
- 182 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 21:52
-
その日の放課後、辻は紺野と購買部で飲み食いしていた。
話は加護が受験する特待生の選抜試験のことになる。
「あさ美ちゃんも受けるんれすよね」
「はい。わたくしは2学期からの編入なので今回は特待生の受験資格はないのですが、
準特待生で受験できるので」
「受かれば、何割か学費が免除されるんれすよね」
「ええ。うちは妹がいるので、少しでも学費の負担がかからないようにと思いまして」
「あさ美ちゃんもあいぼんも親孝行れすねえ。のの、バカだから受験資格すらないのれす」
辻はちょっと寂しそうに笑った。
特待生の選抜試験は『学年で10位以内』という受験資格があるのだ。
準特待生でも30位以内。
「辻さんには、辻さんにしかできないことがありますよ」
慰めるように言い、紺野は辻の肩を叩いた。
加護はその頃、図書館で勉強していた。
付属中学の生徒に、
「あ、あの!」
と声をかけられ、険しい表情で顔を上げる。
難しい数式を解いていたので、自然そういう顔になったのだ。
「なに?」
「あ、あの。加護さん、ですよね!」
「そうやけど?」
「あ、あの…加護さん、チョコの中ではなにが好きですか?」
なにを言い出すんや、この子は。
加護は怪訝な顔をし、
「別に、これと言って」
とマジレスした。
「じゃ、甘いものお好きですか?」
「うん」
「あ、ありがとうございます!」
言いたいことは言ったのか、少女はさっさと去って行った。
『いったいなんやねん』
チラッと彼女が出て行った出入り口のドアを一瞥し、加護はまた問題集にとりかかる。
- 183 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 21:54
-
「あのね、あのね」
道重さゆみは、教室に残っていた亀井絵里に、ご注進という風に報告していた。
「なんですか?」
亀井は読んでいた本から顔を上げる。
「さっき、さゆ図書館行ったんだけど」
「ええ」
「加護さんに、『チョコはなにが好きですか』って聞いてる子がいたの」
「誰がですか」
「分かんないけど、セーラーだったから中学の子だよ」
「…そう」
「加護さんは甘いものが好きなんだって」
「そうですか」
「きっと、手作りとか喜ばれると思うの」
まったく気の早い話だなと思いながらも、亀井は素直に
「わざわざありがとう」
と笑顔で礼を言う。
「道重さんは?小川さんになにかあげるの?」
道重はポッと頬を染め、
「『北の国から』の五郎さんのチョコなんかどうだろうって思うの」
とピンポイントすぎるアイディアを披露した。
そんなチョコヤだ、と思いながらも、義理で『ステキですね』と頷く亀井だった。
購買部で合流し、辻と加護は一緒に帰る。
駅までの道を、コンビニで買った温かい缶コーヒーを飲みながら歩く。
「選抜試験の勉強、大変れすか」
「まあ、落ちても成績には影響ないし」
加護はコーヒーを少し口にし、辻に手渡す。
「今週の土曜なんれすよね、試験」
「ああ、朝イチからな」
「夜、タンポポで梨華ちゃんとヤグチさんのびっくりパーティーがあるれすよ」
「昼過ぎには終わるから大丈夫や。全然余裕で間に合うで。7時からやろ?」
「へいっ。もうプレゼント買ったれすか」
「土曜に買うつもりや。自分は?」
「もう買ったれす。準備ばんたんれすよ」
辻がちょっと偉そうにえっへんを胸を反らすので、加護は少し笑った。
「コーヒー、だいぶ残ってるれす」
「自分、全部飲み。ウチはもうエエから」
「じゃ、遠慮なく」
ごくごくを喉を鳴らし、辻は缶を空けた。
- 184 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 21:54
- その頃――。
村田めぐみは、編集者の斉藤瞳に無理矢理叩き起こされていた。
「支度しな。今年こそはウチの新年会にカオ見せてもらうよ」
斉藤の目は燃えていた。
その手には、どこで調達してきたのか、こぎれいなスーツがある。
「…カンベンしてよお。やっと原稿あげて、さっき寝たとこなんだよ?」
村田は半泣きでシーツにくるまる。
「言い訳はあとで聞く。ホラ、とっととシャワー浴びる!」
どろどろに溶けそうな眠気からまだ抜け切っていないのに、ずるずるベッドから引き出され、
バスルームへと追いやられた。
村田がシャワーを浴び、バスローブを羽織って出てきたら、斉藤はにわかヘアメークになり
村田の髪や顔面をいじくりだす。
プロ仕様のメークボックスまで持参し、大張り切りだ。
村田の前髪をクリップで留め、早速コットンに化粧水をつけてはたく。
「…パーティーだなんだと時間費やすヒマがあったら、原稿のほうにエネルギー注ぎたいんだけど」
寝起きの機嫌の悪さのまま、村田は恨めしそうに言った。
「オトナの義務もたまには果たしなよ。アンタは今度の賞の候補に上がってるんだから」
彼女の顔にリキッドファンデを塗りこみながら、斉藤はそれとなく諭す。
「賞ねえ」
村田は浮かない顔をする。
「賞取ったら、銀行がカネ貸してくれんのかね」
「取ってないよりは貸してくれるかもよ」
村田は作品を描く以外のことはまるで執着がない。
自分の人気にもあまり関心がない。
ただ、描いてれば幸せだと昔から言っている。
そこに憧れ、そこにムカついてきたな、と斉藤は遠い昔を思い出す。
「眉、少しカットするよ」
「うん」
されるがままになってる村田を見て、斉藤は少しドキっとする。
目を伏せて顎を心持ち上げてる姿に、思わずキスしたくなる。
『仕事、仕事』
自分に言い聞かすように心の中で言い、専用のシザーを眉にあてた。
- 185 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 21:57
- 斉藤の手によって、普段の3割増し小奇麗になった村田は、タクシーに押し込まれ
出版社主催のパーティー会場へと連行される。
もう逃げられない。
まだ締め切りの苦しみを百万回味わうほうがまだいい。
タクシーから見える夜景を見ながら、村田は大きく溜息をつく。
「着いたら起こすから寝てな」
「うん…」
そうは言われたが、村田は何故か眠れずにいた。
都心のホテルの宴会場を貸しきって、パーティーは行われていた。
受付の女性と斉藤が二言三言言葉を交わしてるとき、村田は顔見知りの漫画家と顔を合わす。
「ああ」
「どうも」
「頑張ってんじゃない。今度エッセイ出すんだって?」
「ええ、まあ」
「そう。じゃ、連れがいるからまたね」
「どうも」
頭を下げてると、斉藤に
「村田先生、行きましょう」
と声をかけられた。
会場に入ったら入ったで落ち着かない。
酒が飲めるわけでもないし、こんなとこで出る食事がうまいわけがない。
げんなりしていると、
「一通りウエに挨拶したら、フケていいから」
と斉藤がそっと耳打ちした。
村田は頷いて、自分が連載してる雑誌の編集長のところに挨拶に行く。
- 186 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 21:59
- 一通り挨拶も済まし、帰ろうとしたところ、村田は誰かとぶつかってしまう。
「キャッ、ごめんなさい!」
『あ…』
少し離れたところで別の漫画家と話していた斉藤は、思わず振り返ってしまう。
まずい相手とぶつかった。
女グセが悪いことで有名な、男性エッセイストだった。
つい最近も、若い女性アイドルを食ったと噂になった。
「これはこれは。村田先生」
「ど、どうも。ご無沙汰しております」
村田も相手が誰か認識したようで、明らかに警戒している。
「この前出されたSMクラブの本、読ませていただきましたよ」
『あっちゃー…』
斉藤は顔を押さえて天を仰ぐ。
少し前に別のペンネームで出して、世間的にはまだ村田が描いたと秘密にしていた本だ。
出版社内でもまだ知らない人間がいるくらい内密にコトを運んだのに。
ぶちこわしである。
どうも相手は相当酔ってるようで、やたらと絡んでくる。
「やっぱりあれですか。ああいう本はああいう所に熱心に通って描かれるのですか」
村田はさすがにあきれた。
物を書く人間なら、趣味だなんだの言ってられないことくらい、分かっているだろうに。
「いえまあ、担当者のほうからも話がありましたし」
斉藤のほうをあえて見ずに答える。
斉藤は息をつめて事の成り行きを見守る。
「あんな品のない話を書かれても、そこそこ数が出るんだから流石ですね」
『品がなくて悪かったなー!!』
村田は爆発しそうになるのを自ら押しとどめ、ちらっと自分たちの周りを見る。
好奇心旺盛の目が、自分たちを取り巻いている。
この遣り取りは、今夜彼らの酒の肴になるのだろう。
村田は、やけに冷静な気持ちでそれを考えた。
「ええ、あたしは全然魅力がないものですから、彼女たちの姿は勉強になりましたよ」
ニコっと最上級の営業スマイルを投げかけ、心の中で『クソオヤジが!』と罵倒しながら
その場を後にする。
緊張が解けた斉藤は、ハーッと冷や汗をかけながら安堵の溜息をついた。
- 187 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 22:00
- 村田はムダに広い化粧室で、ざばざば顔を洗っていた。
せっかく綺麗にしてもらった化粧が落ちてしまう。
「村」
顔を上げると、鏡に心配そうな斉藤の顔が映っていた。
「ああ、どしたん」
「帰ろっか」
「うん、おなか空いたんだけど」
「わかった」
斉藤は、妙に優しく笑う。
「おごっちゃる」
「ああー。オナカいっぱい」
深夜のファーストフードでさんざん飲み食いし、村田はご機嫌で公園通りを歩く。
「ハンバーガーでよかったの〜?」
「うん、今日はハンバーガーって気分だったから」
酒を飲んでもいないのに、村田はテンションが高い。
彼女はブランコを見つけ、ダッシュで近づいたと思ったら、ヒールを脱いで立ちこぎを始める。
「ひゃっほ〜♪」
『いつもにも増しておかしい…』
その辺に放置されたベージュのヒールを拾い上げ、斉藤はストッキングが汚れるのも厭わず
ブランコをこぐ村田を黙って見つける。
- 188 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/27(木) 22:01
- 「村」
「あ?」
「ごめん、今日は」
「なにがさ」
「…なんか、自分が不甲斐ないよ」
「一介のサラリーマンなんだから、しょうがないっしょ。
こっちもぺーぺーのマンガ描きなんだからさあ」
「うん…」
斉藤は隣のブランコに、台の汚れをはたいて腰掛ける。
「うう〜…酔ってきた」
村田は気持ち悪そうに言い、今度は腰かけた。
足を地面で引きずってブランコのスイングの勢いを弱め、斉藤に
「コラ」
と怒られる。
もうストッキングはドロドロだ。
「ねー、ひとみん」
「え?」
「ひとみんはSとMだったらどっち?」
なに聞いてんだ、コイツ。
斉藤は眉をしかめた。
「さあ…深く考えたことはなかったけど。
村はどっちなんさ」
「うう〜ん…人によりけりかな。
イジめられて嬉しい人もいれば、イジめて楽しい人もいるし」
「ひとみんはあたしにイジめられて楽しい?」
斉藤は心底あきれた。
村田は悪気なく、ニコニコしている。
「さあね。…そろそろ帰るよ、仕事もあるし」
「あたしはひとみんイジめて楽しいんだけどなあ」
村田がブツブツ言うのを無視して、斉藤は
「ホラ」
とさっき村田が脱ぎ捨てたヒールを突きつけた。
「履かせて」
「ヤだ」
「ケチ」
ちょっと見てられないような格好で土に汚れた足を払い、村田はヒールに足を収めた。
「大通りに出てタクシー拾おう」
「うん。待って」
なに?と振り返ると、村田は斉藤の腰を抱いて軽く口づけた。
斉藤は目の前が真っ白になる。
「友情のキス。今日は、ありがとう」
はにかむように笑い、村田は先にすたすた歩いて、
「タクシー!」
と手を上げた。
- 189 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/27(木) 22:06
- 更新しました。
(−Θ ΔΘ)<♪締め切りひゃっか〜い 過ぎたら私は〜 ああ〜 100回ベタ塗りの夢を見るわ〜
ξξ;“ З.“)<しょーもない歌を歌うんじゃないわよ!
訂正です。
>>174
その帰り、制服をひとそろい抱えて紺野と会う。 抱えて→抱えた
>>187
ブランコをこぐ村田を黙って見つける。 見つける。→見つめる。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
( ´D`)<いつかこんな日がくることはわかってたのれすが…やっぱり悲しいれす
4期はヒーちゃんだけになりますからねえ…。ぼんさんは色香にやられました(笑)。
誰が立ち去ったかはまた後日に…。
- 190 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/27(木) 23:48
- 今月のCDで〜たで、よっちゃんの誕生日の時にメールで、
( ^д^)<これからもいいお兄ちゃんでいてね。
(0^〜^)<お兄ちゃんかよっ!
( ´D`)<いつかよっちゃんみたいな彼氏が欲しいのれす。
ぼんさんにものんさんにも、ほんとによっちゃんは愛されてます。感動しました。
更新お疲れ様です。
(+ ‐ Δ‐)○゛村さん、あんなやつ1発どついたったらいいんですよ。村さんはSで小悪魔と思います。
いやーでも今回の村さんは最高にかわいいっすよ。
从*・ 。.・从<『北の国から』の五郎さんのチョコなんかどうだろうって思うの
川*^ー^)<ステキですね。(そんなチョコヤだ)
絵理ちゃんはいつもにこやかですね。のんさん2号のなごみ系かも。
- 191 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/28(金) 04:48
- 「んー」
その翌日。
仕事場でマンガのネームを練りながら村田はなにやら考えている。
昼からアヤカが来て、雑用をこなしていた。
「先生、今夜なにがいいですか」
「んー。中華がいいでーす」
「中華…どういう系ですか」
「蒸し系とか」
「シュウマイとか肉まんですか」
「それでいいでーす」
「分かりました。お買物に行ってきますので、いい子でお仕事なさっててくださいね」
「はーい」
返事をし、また仕事にとりかかる。
アヤカお手製の中華な夕食を終え、向かい合ってコーヒーを飲む。
「さーて」
村田は棚からスケッチブックを取り出した。
「あのさ」
「ハイ?」
「女の子がつい脱ぎたくなるようなシチュエーションってどんなときだろう」
アヤカは一瞬目が点になる。
村田はマジだ。
目に迷いはない。
「え、えーと?」
「カオリちゃんに脱いでもらうにはどうすればいいかって考えてんだけどねー」
『うーん』と、村田は両腕を組む。
『まだ狙ってたんだ…』
アヤカは冷や汗をたらした。
「カオリちゃんはともかく、圭ちゃ…カオリちゃんが付き合ってる彼女が絶対反対すると思いますよ?」
「ああ、保田圭さんね。あのオトコマエのドラマーの」
「圭ちゃんはナニゲに独占欲強いですから。ヤキモチやきだし」
「あゆみもそんなこと言ってた。よく知ってんのね」
「ああ、柴っちゃんは昔から圭ちゃんのファンだそうですし」
「アヤカちゃんは?」
アヤカは一瞬答えにつまる。
「え、あ…つ、付き合い長いですし」
「そう。まあ、とりあえず、アラーキーならぬムラーターとしてはあの類まれな芸術をてっぺんまで
高めたいワケよ」
指で写真のフレームのような四角を作り、そこから村田はアヤカの顔を覗いた。
調子に乗って、床に寝転んでパシャパシャと口でシャッター音のマネをし、指のフレームを掲げる。
「先生」
「なに?アヤカちゃんも当然描きたいよ」
「いえ…すこぶる変です」
アヤカは満面の笑みを湛えていた。
大変、とかすごく、でなく頗る。
村田は寝転んだままマジでヘコんだ。
- 192 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/28(金) 04:51
- ―――翌日。
キュービック一同と柴田はアヤカのマンションにいた。
柴田はアヤカに用事があって、たまたま来ていた。
姉のおつかいで、アヤカの忘れ物を届けに来たのだ。
「すっげーマンション…家賃いくらなんだろ」
室内をキョロキョロ見渡し、柴田は素直な感想を漏らす。
「家賃聞いたら死ぬから知らないほうがいいよ」
保田は冷や汗を流しながら、柴田の肩を叩く。
「マジっすか…」
リビングの、シンプルながらヤケに金がかかってそーな内装を見て、
柴田はさもありなんと頷く。
「ベッドルームは50畳あって、ベッドはお姫様ベッドなんだぜ。モチ、天蓋つきで」
「ちょっとサヤカ!あることないこと吹き込まないでよ!」
アヤカが言うと、
「…お姫様ベッドはホントだよね。天蓋はないけど」
「ベッドもムダにデカイし」
バンドメンバーは顔を寄せ合って頷きあう。
「すっごい!写真撮ってもいいですか!?」
真剣な目の柴田を見て、『血だ…姉妹の血だ』とアヤカは村田の顔を思い出して強く確信した。
- 193 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/28(金) 04:52
- 「ああ、そうだ。いちーちゃん、言ってたマンガ持ってきたよ」
「おー」
後藤はカバンから、持参したマンガを取り出す。
その表紙を見て、柴田とアヤカはちらっとお互い目配せする。
「なんスか?MELON?描いてるひとの名前っすか?」
吉澤がひょこっと表紙を覗き込む。
「ああ、いま売れてんだよ。
オマエ、知らないの?」
「マンガはあんまし読まないんで」
「なんだ、したら先に貸してやるよ。ホレ」
「どんなハナシなんスか」
「SMクラブの人間模様のハナシだよ」
「へー。濃そうっスね」
「んあ、絵がクールだから読みやすいよ」
柴田とアヤカは今にも笑いだしそうな、なんだかおかしな気持ちになる。
「ごとー、なんかこの絵、見覚えあるんだよね…」
「え、新人じゃないの?」
「んあ…なんかこのヘンまで出掛かってんだけど、出てこなくって…」
柴田とアヤカはそっと合図して、寝室へ移動した。
柴田は件のお姫様ベッドを持参のデジカメに収めながら、
「…わかるヒトはわかると思うんだけどなあ」
とぼそっと言う。
「そう?」
「どんなに絵柄変えても、出てるっしょ、クセが。
まあ、頑張って抑えたとは思うけど」
「あのね、あゆみちゃん」
「ハイ?」
「昨日、ネットで見たんだけど、なんかバレてるみたい…MELONが誰かって」
「でしょうね」
柴田は意外に冷静だった。
「関係者って人が掲示板に書き込みしてて、知り合いに聞いたって」
「そのテの書き込みはよくあることじゃないですか。
姉ちゃんもバカじゃないんだから、バレた時の戦術はちゃんと考えてますってー。
なんせ、凄腕の編集者がついてますから、ヤツには」
柴田はアヤカを被写体にし、ニヤリと笑った。
- 194 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/28(金) 04:53
- みんなが帰ってから、保田は一人残り、アヤカのMacでCD−Rを焼いていた。
出来上がったものを取り出そうと腰を伸ばす。
保田は顔をしかめ、腰を押さえた。
アヤカはそれを見て、ニヤッと笑う。
「もー。あんまししたらカオリちゃん、赤ちゃんできちゃうよ?」
「そんなワケないでしょ」
保田はげんなりする。
「避妊はちゃんとしないとダメよ?」
ポンと肩を叩かれ、保田は
「ぶつよ?」
と横目で睨む。
「しっかし、アンタ、あの花柄のベッドカバーとかすっごいわね。モロ、お姫様じゃん」
「…クリスマスプレゼントだし」
保田に冷やかされ、アヤカは暗い顔で笑う。
ミカからの愛のこもったプレゼントである。
アヤカの趣味とは違うシャビーシック風。
実家のが母の趣味で天蓋つきのコテコテなお姫様ベッドなので、一人暮らしを機に、
カッコイイものにした。
『こんなのカワイクないよ』
というミカの暴君的宣言により、自慢のカッコイイベッドはお姫様にされてしまった。
それ以来、市井たちのからかいの的なのだが。
- 195 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/05/28(金) 04:56
- 「ふーんだ。自分こそ奥さんの尻に敷かれてるクセにさあ」
イーダ!とアヤカを顔をしかめて舌を出す。
「すみませんねえ。それが幸せなんですよ」
保田は苦笑して、マウスをクリックする。
「…そっか」
アヤカは目を伏せて、保田の背中にそっと抱きついた。
「ん?」
パソコンのそばにあったタバコのパッケージに視線を移す。
保田はそれを手に取った。
カルティエのメンソール。
この家で自分のもの以外を見るのは初めてだった。
「ああ、アンタも吸ってるんだっけ。コレ」
「どうして知ってるの?」
「カオリが言ってた」
1本もらうね、と保田は咥えた。
アヤカは黙って見ていたが、小さくためいきを吐いて火を点けたライターを近づけた。
「サンキュ」
保田はニヤッと笑った。
「圭ちゃんてさあ」
「ん?」
「卑怯だよね」
「なにが?」
「ソノ気もないのに、優しいし」
「そう?」
「…ミカがいなかったら、正直ヤバかった」
「それは残念」
ニヤニヤ笑い、保田はふくれっつらをしたアヤカにぺしっと頭をはたかれた。
- 196 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/28(金) 04:59
- 更新しました。
ヽ^∀^ノ<なんじゃ、シャビーって
( ´ Д `)<んあ〜、古く使い込んだとかって意味らしいよ ツーカイチーチャン、エイブンカジャ…
訂正です。
>>183
えっへんを→えっへんと
>>185
タクシーから見える夜景を見ながら、→タクシーから見える夜景を横目に、
>>186
ハーッと冷や汗をかけながら→冷や汗をかきながら
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
ξξ;“ З.“)<分かってるんだか分かってないんだか、小悪魔なんだよねえ…
私も村さんはSだと睨んでおります。ここの亀井さんは表面はにこやかなのです。
で、シゲさんは人の話聞いてません。よっちゃん、ぶりんこのよきアニキですね。カッケー!
- 197 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/05/28(金) 05:03
- ・ハイソな生活
川‘.▽‘)||<ママ、ただいま ←ヒサブリに実家に帰る
<おかえり。ごはんの前にお風呂入ったら?どっち使う?
川‘.▽‘)||<うん、部屋のほう
川‘.▽‘)||<♪ ←ムダに広い自室についてるバスルーム。白い陶製の猫足タブ
川‘.▽‘)||<パパは?
<出張で今夜は遅くなるわよ。先に食べなさい
川‘.▽‘)||<はーい
川‘.▽‘)||←居間でブランデー飲んでくつろいでる。暖炉の上に家族の写真立て
川‘.▽‘)||.。oO ( `.∀´)<お金持ちのおうちのお風呂ってやっぱし大理石で
ライオンの口からお湯が出てくんの?
川‘.▽‘)||.。oO ヽ^∀^ノ<リビングでなく居間に暖炉あって、床にトラとかヒョウの
頭つきの一匹ごとの敷物敷いてたりしてな!
壁には当然シカの頭の剥製?
川‘.▽‘)||.。oO( ´ Д `)<んあ〜。お父さんがシルクのガウン着て、
ブランデーグラス片手に椅子に揺られてたりして
川´.▽`)||<…あるわけないじゃん。いまどきそんなベタな
でも暖炉はあるぞ、木村家。庭にもプールだ、木村家。
- 198 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/05/29(土) 00:33
- 更新お疲れ様です。
( ‐ Δ‐)<う〜ん…
村さん、まだあきらめてなかったんですね。いいらさんのヌードを描きたいのは作者のごまさんの願望も入ってるのでは?
5月29日はアヤカのハニーの誕生日です。ミカちゃんおめ川 ‘∀^儿
しかしここもカカア殿下とは。川;´.▽`)||
- 199 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 14:32
- その週の金曜日。
加護は夜、食事をすました後、洗濯をしていた。
辻は廊下を通りかかり、それを見ていた。
「洗濯れすか」
「ん。明日朝から試験やしな。夜はタンポポでパーティーやし時間あるうちにって」
「お勉強はいいんれすか」
「寝る前にさっと見直すわ。やることはやったし」
「予習と復習と宿題は?もう済んだんれすか」
「全部ガッコですましてきた」
「…お見それしたれす」
辻は深々と頭を下げ、敗北を認めた。
乾燥機に加護がいくらか洗濯を終えた衣類を入れ、ボタンを押してる横顔を見て、
辻は不意に保健室での熱いキスを思い出す。
唇を指でなぞり、真っ赤になってると、
「どしたん」
くすっと笑って、加護が振り向いた。
「いえ、別に…」
「ふうん?」
可笑しそうに辻の顔を見、また視線を戻す。
「そーいやさー」
「へいっ?」
「自分、留学せえへんの?」
加護の思いがけない言葉に、辻は一瞬ぽかんとなる。
「留学れすか?ののが?」
「そ。オーストラリア行くんちゃうの」
からかってる様子もなく、加護は真面目な表情だった。
「あの、あいぼん?のの、英語の成績知ってるれしょ?
あの成績で留学できたらびっくりれすよ」
「でも、机の上に向こうのガッコのパンフ、置いてたやん」
「ああ、あれれすか…」
辻は思い出したように言った。
「のののお母さんの知り合いの娘さんに頼まれたんで、お母さんがののに送ってきたんれすよ。
のののじゃないれす」
「そう…なんや」
加護は目をそらし、辻の顔を見なかった。
辻はにやっと笑い、
「なんれすかあ?ののがいなくなったら、さびしいんれすかあ?」
加護にまとわりつく。
「まあ…うん」
加護がいつもと違い素直に答えるので、辻は一瞬びっくりする。
加護の背中をぎゅっと抱きしめ、
「ずっと一緒れすよ」
と首筋に顔を埋めて呟いた。
- 200 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 14:46
- そして土曜日。
加護は朝から学校で特待生と準特待生の選抜試験を受けていた。
斜め前の席には紺野。
他に20人弱の生徒が受けている。
隣の教室には2年生の受験者がいる。
選抜試験は年に2回実施され、今回は卒業が近く対象外の高校3年生と外部進学する
中学3年生以外、中1から高2まで志願した生徒は100人を越えた。
英数国の3教科の筆記試験、午後からの簡単な面談を終え、やっとこさ解放される。
「あれ…加護さんに紺野さん?」
隣の教室から、道重が出てくる。
「あ、こんにちは…」
「誰、アレ?」
加護はこっそり、紺野に囁く。
「道重さんです、新垣さんと同じクラスの」
「ああ、ガキさんの連れかいな」
ふたりのやりとりでなんとなく察したのか、道重は
「付属中学3年B組33番道重さゆみです」
とぴょこんと頭を下げた。
「ああ、どうも。付属高校1年A組8番加護亜依です」
と加護もつられて頭を下げる。
「付属高校1年C組14番紺野あさ美です」
「いや、自分は聞いてへんし」
加護にツッコまれて紺野は少し寂しそうな顔をする。
「おふたりも選抜試験を受けられたんですね」
「ああ、うん。道し…げさんも」
「シゲさんでいいですよ。みんなそう呼んでるし」
「そう。シゲさんも?」
「ええ。家の人が腕試しに受けてみればって言うんで」
「へえ」
「さゆ、自分が怖いんです」
「なんで」
「だって、こんなにかわいくて勉強もできるから。
いつか神様のバチが当たって死んじゃうと思うの」
加護はツッコめなかった。紺野も笑った顔をひきつらせながら引いている。
道重は満足そうにうふふと頷いて、『じゃ、友達が待ってるんで』と
軽く頭を下げて行ってしまった。
- 201 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 14:48
- 「すっげー…敗北感が漂うのはナゼ?」
「はあ…わたくしも疲れました」
「メシでも食い行く?学食は休みやし、どっか駅前で」
「マックの割引券が余ってますが、いかがですか」
「決まりやな」
ふたりはそのままマックに向かった。
マックで軽く昼食を終え、そのまま紺野と別れて帰りの電車に乗る。
「受かったらいいですね」
改札で別れ際、紺野がはにかむように言った。
「加護さんは、きっと受かると思います」
「分からんで?勝負は最後までフタ開けな分からんモンや」
加護はにやっと笑い、手を振って反対のホームに進んだ。
最寄り駅に着くと、踏切を越え、クリスマス前に辻と行った雑貨屋に足を向けた。
梨華にはピンクの可愛らしいピアス、矢口には派手なヒモパンを選んで
それぞれプレゼントラッピングしてもらう。
そのあといくつか商店街で買物し、中澤家に戻る。
「ただいまー」
「おう、加護か。試験はどやってん」
居間から裕子が顔を覗かせた。
「まあ、ぼちぼちですわ」
「メシは食ったんか」
「紺野とマクドで食べてきました」
「そうか。ほな、ゆっくりし」
「あの、ちょっと疲れたんでウチ、部屋で昼寝しますね。
中澤さんがタンポポ行くとき、起こしてください」
「分かった。ほな、寝とき」
念の為、目覚ましもセットし、カバンに財布だとかプレゼントを詰め、
ジャージに着替えてベッドに入った。
『頭、いた…なんでやろ。もー、こんな時に』
しかめっ面でいったん起き上がり引き出しから風邪薬の小瓶を取り出し、
錠剤を3錠飲み込んで、学校のカバンにあったペットの緑茶を一気に飲み干す。
「うー…」
そのまま、泥のように眠り込んでしまう。
- 202 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 14:51
- 「加護ぉ…加護ー」
ドアを軽く叩く音で、はっと目を覚ます。
「起きたか。そろそろ支度しィや」
「はい、あの、いま何時ですか」
「6時20分」
「ハイ、すぐ着替えます」
頭を二、三度振って片手で押さえた。
「下で待ってんで」
裕子が下に降りて行く足音を聞いて、加護は手早く着替える。
風邪薬のせいでまだぼーっとする頭をまた振って、髪をまとめた。
タンポポに行くと、すでに大勢来ており、準備が進んでいた。
今日はここで矢口と梨華のサプライズパーティーがある。
誕生日がふたりは一日違いなので、安倍が吉澤に相談して企画した。
無論、矢口には内緒で「遅い新年会」という口実で貸切にしてもらった。
安倍は矢口の料理の仕上げを手伝っていた。
楽器店は今日は6時半で閉めた。
市井と保田はすでに酔っ払っている。
「コラー!まだ始まってないのに今から酔っ払うなー!」
飯田に怒られたふたりは、頭をかく。
後藤は相変わらず眠そうであったが、アヤカが飾りつけしたり、
矢口が料理を運ぶのを意外にてきぱき手伝っていた。
平家がやって来て、差し入れのフルボトルのシャンパンを矢口に預けた。
保田たちは『おお〜!』と感嘆の声を上げる。
- 203 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 14:57
- 「あいぼ〜ん!」
奥から辻が出てきた。
ケーキの仕上げをしていたらしい。
「ねえ、あいぼんはプレゼント何を用意したれすか」
「梨華ちゃんはピアス、矢口さんにはヒモパンや!」
聞こえないように、小声で言い合う。
「ヒモパン?ヒモのパンれすか?」
辻は首を傾げる。
「例の、えっちくさいパンツのことや!しかも豹柄やでしかし!」
「はあ、例のれすか…」
辻は『例のって言われてもれすねえ…』とぶつぶつ言っている。
「まあ、いいれすけど」
と辻が返していると、安倍が壁時計を見上げた。
「そろそろいい時間だべ」
時計は7時を回っていた。
梨華と柴田を吉澤が迎えに行って、そろそろやって来る頃だ。
ほどなく、
「「こんばんはー」」
「遅くなりやした!」
白い息を弾ませ、3人が来た。
それを合図に後藤が梨華と矢口を呼び寄せ、
「ちょーいと。やぐっつぁんと梨華ちゃん、ごとーと一緒に外出てくれる?」
と連れ出そうとする。
「は?なして?オイラ、準備あんだけど?」
「どうしたの、ごっちん?」
「ま、ま。ごとーについてきてよ」
ふたりは後藤に押し出され、店から出て行った。
残りの一同はばたばた動き出す。
辻は机のケーキに、こっそり用意したバースデーチョコプレートを置く。
「さあ、始めましょうか!」
吉澤が声をかけると、
「ホイきた!」
「今よ!紗耶香、キリキリめくるわよ!」
市井と保田が椅子に載って、上の手作り垂れ幕をめくる。
今日はダマシで『タンポポ常連一同遅すぎる新年会』と矢口には言ってるので、
そういう文句の幕を用意し、紙をめくった下に本来の目的、
『リカちゃん・やぐっちゃんお誕生日おめでとう!』を仕込んだ。
ふたりは酔っていた。
「それっ」
と保田の掛け声も勇ましくめくったはいいが、
「あ…」
市井が声を上げたときには
「――あ!」
保田は椅子ごと引っ繰り返り、床に転がった。
『ズッデーン…』
「さすが…オバチャンは期待を裏切れへんな」
加護は大騒ぎの中呟いた。
「へいっ…」
辻も冷や汗をたらしてその惨状を見つめた。
紙の飾りなどにくるまって保田が転がっていた。
- 204 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:03
- その頃。
『ズッデーンドッスーンギャーワードドーン』
店内からの大音響に、
「な、なんだ?」
「なんでしょうね…?」
矢口と梨華は冷や汗をたらす。
『…中でなにか収集のつかないことが起こってるな、こりゃ』
後藤は多分主たる原因は圭ちゃんだろうと予想する。
事実、その通りだった。
「あのー…マジで寒いんですけどー」
矢口がぶるっと震え、自分自身を抱きしめた。
「んあ、もうちょっともうちょっと」
なだめすかしてそれとなくごまかしていると、ドアが開いた。
「お、オマタセしました。入ってくだせえ」
ドアから心なしやつれ加減の吉澤が顔を覗かせる。
「入れってナカ、真っ暗なんですけどー?」
矢口が言うと、
「ホントですね…」
梨華も目をこすってそろそろと入っていく。
後藤はその隙に、奥へと進んだ。
「おーい?ごっつぁーん?」
矢口が暗闇の中キョロキョロすると、
『パーン!』
急にクラッカーが鳴る。
電気が点くと飯田がテーブルの上におり、雄叫びのように
「ディアーーーーー!!!!!」
と叫んだ。バリバリの交信バージョンだ。
ジョンソンが降りてきている。
「て、違うでしょ!」
保田がさっき打った腰を涙目で押さえながらツッコむ。
律儀に片手はちゃんとツッコんでいた。
もう一度クラッカーが鳴る。
「梨華ちゃん!」
と吉澤。
「ヤグチ!」
安倍が続く。
「「「誕生日おめでとー!!」」」
全員でクラッカーを鳴らす。
梨華と矢口は頭からクラッカーのヒモをかぶり、呆然とする。
「どっきりかよ!」
矢口が例の調子でツッコむ。
こんな時期に新年会ってのもおかしいなとちょろっと思ったが、特に深く考えず
安倍の予約を受け付けたのだ。
「うっそ!?新年会じゃないの!?」
梨華は頬を押さえた。紅潮している。
「だまして悪かったべ。みんなで計画立ててやったっしょ」
「言い出しっぺはなっちさんでーす!」
吉澤がおどけて言った。
『ジャーン!』という効果音を口で出し、膝を軽く曲げ両腕を安倍に向ける。
- 205 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:06
- 「アーラ!」
矢口はにやっと笑う。
「みんな…」
梨華はすでに涙目だ。
「梨華ちゃん、そしてヤグチ。みんな、なっちもみんなも、ふたりが生まれてきてくれて、
いまここにいることがすごくうれしいっしょ」
「なっち…」
矢口も少し目を潤ませている。
「さ、飲もうや!ビールもぬるなんで!ジュースも!」
裕子がビール瓶を掲げた。
矢口が目をこすって
「キャッハ!びっくりWバースデーパーティー、成立でーす!」
照れ隠しのように笑って叫ぶと
「不成立やありませーん!」
加護が茶化して続けた。
「て、ヲイ!」
矢口は即座にツッコむ。
パーティーは大盛り上がりだった。
保田はもうベロンベロンになっている。
誰彼構わずキスしようとする。
「飲みすぎ!」
と飯田に怒られている。
吉澤と梨華は後藤たちとバカ話で盛り上がっている。
裕子と平家は安倍や矢口と飲んでいた。
「ねーちゃん、遅いなー。マサオもー」
柴田がグラス片手にためいきをついた。
今日は大谷と村田も来ることになっている。
ふたりとも仕事があり、終わり次第こちらに向かうと言っている。
- 206 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:08
- 8時を回った頃、
「す、スイマセーン…遅くなりました」
「仕事が長引いて…」
表に『本日貸切』の札を下げたドアから、村田と大谷が顔を覗かせた。
「まったくもってすみません。お詫びはこのカラダで」
村田はニコリともせず、大真面目に言う。
「おそーい!ねーちゃんも!」
カラダはいらないし、と柴田もニコリともせずツッコむ。
「おふたりともいらしてくれたんですね。ありがとうございます」
梨華は笑顔で頭を下げた。
矢口も
「お、柴っちゃんのカノジョとお姉さんだね!さ、入って入って!」
とふたりを促がす。
「いやはや。まったくもって手前味噌ですが。こちら、矢口さんのものも」
村田はカバンからいそいそと包みをふたつ出した。
「手前味噌?お姉さん確か漫画家さんなんですよね?もしかしてイラストとか?」
「ええ、恥ずかしながらおふたりのイラストです。お気に召せばよいのですが」
「お!プロがオイラたち描いてくれた!すっげーすっげー!ドレドレ…」
矢口と梨華は礼を言い、早速開ける。
見守る一同。
「あ…」
と吉澤。
「んお!」
嬉しそうにニヤける市井。
「先生…」
冷や汗をたらし固まるアヤカ。
「ヌ、ヌード!?しかもヒモパン着用!?ヒョウ柄だし!」
さすがの矢口も目を見開く。
「キャー! 」
赤くなって顔を覆う梨華。
- 207 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:11
- 「あんれまあ…しかしそっくりだべ。いい仕事してるっしょ」
安倍は半ば感心し、半ば呆然と絵を手に取る。
「おふたりの写真をもとに、ワタクシのプロとしてのプライドをかけて
全力を尽くして描かせていただきました!」
興奮気味に、村田は片手を上げて宣言する。
ちなみに写真は妹に借りた。
「「はぁ…」」
吉澤と安倍はしばらく呆然と絵を見る。
『てか、カラダのサイズに一部の狂いもないんだよね(ないっしょ)…』
ふたりの気持ちは一緒だった。
一番体の隅々まで知っている人間たちが思うのだから、間違いはない。
「あっちゃー…まさか本当にやるとは」
柴田は手で顔を押さえ天を仰ぐ。
シャレで言っているのだろうと本気にしていなかったのだ。
保田と市井、飯田も興味津々で絵に見入る。
「最近死ぬような勢いで描いてらしたのはそれだったんですね」
アヤカは最近の村田の行動を思い返してみる。
特に急ぐ締め切りもないのに、ここ数日はずっと仕事部屋にこもっていたのだ。
「うん。あ、カオリちゃん」
村田はくるりと飯田のほうを振り返る。
「は、はい?」
「次は…」
村田はポッと頬を赤らめ恥じらった。
飯田だけでなく、保田もギョッとする。
「ア、アハハハ。あ、あたしの体を描いてもあんまり面白くないですよー」
グラス片手に、飯田はそれとなく後ろに下がる。
「今すぐにとは言いません。ソノ気になったらいつでもお電話を」
村田はどこからともなく、自分の名刺を取り出して手渡す。
- 208 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:14
- 彼女の仕事場の連絡先が書いてあった。
裏には手描きで
『お返事待ってるワ。はにー(はあと)』とある。
「はあ…どうも」
まじまじと名刺を見つめ、飯田はとりあえず頭を下げた。
保田は当然面白くない。
黙って、コークハイを呷る。
「あなたにも」
村田は保田にも名刺を差し出した。
「へ?アタシ、ですか?」
「ええ」
村田は意味深に微笑んだ。
保田は自分のカバンから酔ってるのに律儀に名刺を出し、
いつもの習慣で仕事絡みでもないのに村田に自分のを渡した。
「あなたもいいカラダをなさって。バストは85くらい?」
「…分かるんですか」
「プロの目はごまかされないよ。それでメシを食ってんだから」
「そうですか、失礼しました」
保田はなんだかな、と思いながら、そばにあったグラスにオレンジジュースを注ぎ、
村田に手渡す。
「どうぞ」
「これはこれは」
とりあえずグラスを重ねる。
「何に乾杯でしょう」
「そうね。良き出逢いに」
「そうですね」
保田はフッと笑って、グラスに口をつける。
『おお、オトコマエじゃん』
保田の無意識の仕草に、村田はちょっと感心する。
『うーん。やっぱ単体もいいけどセットでもいいか…』
保田の横顔を見つめ、戦略を練るのだった。
- 209 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:18
- 「あいぼーん」
加護が気がつくと、辻がとろんとした目つきでじゃれついてきた。
「わ!なんやねん!」
ほっぺにぶちゅっとキスしてくるので、加護は辻の手のグラスをひったくって匂いを嗅いだ。
「うわ!めっちゃ酒やん!」
「あ!アタシのコークハイ!」
自分のグラスがないことに気付いた大谷が、辻がまた加護の手から引き剥がして
一気飲みしてるのを目撃して叫ぶ。
「ふあ〜。なんらかふわふわして気持ちいいのれすぅ〜」
両手を羽根のように広げ、辻はふわふわと飛ぶマネをする。
「イッてんでー!このヒト、すでに気持ちはトんでるわ!」
辻に抱きつかれ、加護は辟易する。
「あいぼん、ら〜いすき!」
ぶちゅーんと大きな音がしそうなキスをかまされ、
「…酒くさっ」
と顔をそむける。
「なんれれすかあ〜。ふ〜んだ!あいぼん、このまえがっこーでのんにチューしたくせにぃ〜」
辻の思いがけぬ告白に、
「加護、ホントなの!?」
加護の肩を掴む飯田。
「カァ〜ッ、青春だな〜」
「んあ」
ニヤける市井と頷く後藤。
「つーか、酒グセ悪いな〜。誰かさんを見てるようや」
「なんぞ言うたか?」
笑顔で平家の肩を掴む裕子。
「のの、カッケー!
コークハイ一気飲みだよ!」
「ホーント!将来が楽しみだね、こりゃ!」
「いや、カッケーけど、ののちゃん…大丈夫かしら?」
「うん…アタシも油断してたよ。もっとグラス遠ざけとけば」
吉澤と柴田をとりあえず放っておいて、梨華と大谷は心配そうに辻を見る。
辻はまだご機嫌で加護に抱きついていた。
「大丈夫…みたいだね」
「そうだね…」
梨華と大谷は笑ってまたグラスを手に取った。
- 210 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:22
- 9時半を過ぎた頃、いったんお開きとなった。
飾りつけや食器を片付け、掃除機をかける。
「ふう。こんなモンっしょ。食器は洗ったし、これでいいべ」
安倍はエプロンで手を拭き、満足そうに店内を見渡す。
「なっち、ありがとー!
みんなも今日はホントにありがとね」
矢口は店を出て、手を振った。
「はーい」
安倍以外三々五々、店を後にする。
辻は酔って眠ってしまったので、飯田がおんぶして中澤家に連れて帰ることになる。
加護はそのあとをついて行く。
少しあとから、裕子と平家が並んで歩いてくる。
「ほんまにののはあ〜」
加護は赤くなって、ぶつぶつ言う。
飯田は苦笑して、
「悪いことはできないねえ」
『よいしょ』と辻をおんぶし直す。
「辻のこと好き?」
前を向いたまま、飯田は言った。
「…はい」
加護は不思議と、静かな気持ちだった。
「そっか。それなら安心」
飯田は目を伏せる。
「花嫁の父みたいな気持ちですか」
ずばっと本心を言い当てられ、
「加護はホントに…スゴイね」
飯田はまた苦笑いした。
「宝物は、大切にしないとね」
いつか辻に言われたことを、飯田は呟く。
加護は黙って頷いた。
- 211 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/02(水) 15:24
- 柴田姉妹や大谷たちを、保田たちは帰りがてらタクシーが拾えるところまで送っていく。
梨華は柴田や大谷、アヤカと話しており、吉澤は後藤や市井と歩いている。
保田と村田は、自然ふたりになった。
「なんか…さっきから『気にいらねえぞ』オーラを感じるんだけど」
村田はぼそっと呟く。
「気のせいですよ」
「別にカオリちゃんを取って食ったりしませんよ」
「当たり前です」
「そんなにカオリちゃんのハダカ、独り占めしたい?」
保田はぴたっと立ち止まる。
「もし先生に彼女がいらっしゃったとして」
「はい」
「他の人に独占的にハダカを見せることになったらどうします?」
「あー、そうきたか…」
指を顎に当てて、村田はんーと考える。
「芸術のためだったら譲歩するかなあ」
「すみません、アタシには芸術が分かりません」
「あの素晴らしいバランスは奇跡だよ?あなたもそう思うでしょ?」
「ええ、アタシが一番知ってます!」
保田のあまりの大声に、一同はびくっと振り返る。
握りこぶしをわなわなと震わせ、保田は顔を赤くする。
「とにかく、そういうことです」
こほんと咳払いし、保田は結論づけた。
さすがに我を忘れて叫んだことに恥ずかしくなる。
「それだけどさあ」
村田は頭をかいた。
「なんですか」
「アナタも一緒ってことでどうだろ?」
…保田はぽかんと口を開けた。
- 212 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/02(水) 15:28
- 更新しました。
いつぞやAAで書いたお誕生日会SPです。
( ^▽^)<真里っぺ! (^◇^〜)<真里っぺ言うな!
このふたりって性格は似てないけど、たまに妙に似てますよね。ヤグチさんいわく、
「同じニオイがする」そうですし。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
川;´.▽`)||<そうなんだよね…いったん拗ねると長引くし
だそうです。
>いいらさんのヌードを描きたいのは作者のごまさんの願望も入ってるのでは?
買モ(護摩;)
(;護摩)<わ、ワタクシめは単にシュミでというのでなくゲージツを高めたく思い…
(;〜^◇^)<いや、正直苦しいって
- 213 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/03(木) 00:18
- ハロプロワイドでピーマコがいないと思ったら3週見れなかったんで変わってるのに気づきませんでした。
( ○Δ○)しかもムラ田めぐみ(なぜムラがカタカナ?)村さんがいるし。
川*^-^)<キャメイで〜す。
レポーターがキャメイさんて。絵理ちゃんすっかり大ブレイクしましたね。
川*^-^)<安倍さん今度の新曲は?
(・´ー`)<32ビートだべ。 (^◇^〜)<32ビート? (^〜^O)<!
ガガガガガ(((((0^〜^O)))))ガガガガガ
从;~∀~从<よっすぃ〜、それ道路工事やん。
川o・-・)<さすが吉澤さん。完璧なボケです。
更新お疲れ様です。
ずっといっしょれすよ。>(*´D`)‘д‘*)
よかったね、ぼんさん。ほんとにほっとしました。でも…
このまえがっこーでのんにチューしたくせにぃ〜>(*´3`)゜д゜*)<!!
酒乱の、ののさんにばれされてしまいましたね。
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/03(木) 03:03
- 川;・-・)<はぁ・・・ さゆは罪な存在なの。>从・ 。.・*从
( ´д`)<たいしたタマやな自分
更新お疲れさまです
シゲさんは振る舞いが自信に満ち溢れててすごいなと思います
- 215 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/04(金) 07:11
- 初めてレスつけさせてもらいます。まずは、更新お疲れ様です。
保田さんが、保田さんが〜!!ごまべーぐるさんが書く保田さんは
本当、萌え所を突きまくりです。w
(0^〜^O;)<主役放置って…。
AA劇場共々、楽しませてもらってます。
- 216 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:36
- ――日曜日。アベ楽器店。
「まーったく、今日くらいバイト入れなくてもいいっしょ」
安倍はあきれたように笑う。
今日は梨華の誕生日なのだ。
吉澤のバイトが終わってから、東京タワーを見に行こうと言っている。
「なっちさんだってー、明日矢口さんの誕生日だから張り切ってるんじゃないッスか?」
吉澤がニヤニヤ笑うと、
「ま、まあね。明日は店も休みだし、お泊りするっしょ」
「熱い夜ッスね」
「よっすぃ〜」
「はい?」
「なんか、圭ちゃんに似てきたっしょ…」
うそーん!
吉澤はムンクの叫びのように自分の頬を挟んだ。
梨華はその頃、部屋の片付けをしながら、昨日みんなにもらったプレゼントを嬉しそうに整理していた。
ネイルアートセット、古着屋のおしゃれなカットソー、外国のキャラもののTシャツ、
ピアス、スケッチブックと固形絵具のセット、エ〇ラすき焼きのタレ。
様々なものがあった。
『ウチとデートってプレゼントはどうでしょう?』
吉澤は自分を指さしてニコニコして言った。
梨華はカットソーに顔を埋め、頬を赤くさせてひとり『キャー!』とはしゃぐ。
裕子からは今朝、真珠のピアスとネックレスをもらった。
『これからは、こういうモンも必要になんで』
冠婚葬祭に必要だと裕子は言った。
今までは、何かあるとネックレスは裕子のものを借りていたのだ。
『ホンマは去年ハタチになった時にと思たけどな、まあ、色々あったしな』
裕子は照れくさそうに笑った。
裕ちゃん、ありがとう。
梨華はそっと箱を撫で、引き出しにプレゼントを大切にしまった。
- 217 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:41
- 「おや、梨華ちゃんからメールだ」
大谷は携帯の受信フォルダを開けた。
ゆうべは柴田が家に泊まり、ふたりで遅い朝食をとっていた。
『( *^▽^)<昨日はありがとうございました。可愛いTシャツうれしかったです。
プレゼントのなかに、エバラすき焼きのタレとかありました』
「つーか、アンタでしょ?エ〇ラすき焼きのタレは」
トーストをもぐもぐ食べている柴田に、メールを見せる。
「なんのことかしら」
柴田はすっとぼけて、コーヒーを飲む。
「まさか浅漬けの素とかもつけてないだろうね」
「それはない」
「あ、引っかかった」
「…チッ」
柴田は本気で悔しがった。
―――吉澤視点
バイトが終わって、梨華ちゃんに連絡を入れた。
彼女の運転で、東京タワーに向かう。
おお、なんかデートな感じじゃないの。
「なんかプレゼントの中にねえ、すき焼きのタレがあったの」
梨華ちゃんがハンドルを握って可笑しそうに言った。
「マジでー?」
ぎゃははと笑って、一路タワーへ。
ライトアップしたタワーを見ながら、中であったかい缶コーヒーを飲む。
梨華ちゃんは、ミルクティーを飲んでいた。
少しもらって飲むと、ほんのり甘くて、梨華ちゃんみたいだった。
途中で運転を替わって、ベイエリア湾岸線を走る。
「カーッケー!レインボーブリッジ!」
「カーッケー!」
梨華ちゃんもはしゃいだ声を上げる。
寒いと空気が澄み渡るのか、より一層綺麗に見える。
- 218 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:43
- ああ、去年の今頃はこうやってこんなカワイイ女の子と
夜のドライブするなんて考えられただろうか。
専門通いながら大学の受験勉強してたからなー。
正月もほとんどなんもせんかったし。
まず、彼女がいるってことが考えられんかった。
恋愛の良さがイマイチ分からんかったし。
今なら分かる。
こういうのは理屈じゃなくて、そうなるものなんだ。
必然か偶然か分からんけど。
こうやって会えてよかった。
深夜のファミレスで軽くごはんを食べて、また走る。
帰ったのは深夜だったけど、梨華ちゃんはすっごく喜んでくれた。
その夜は。
朝までとろけそうなくらい抱き合った。
ウチの狭いパイプベッドで。
すぐそばの部屋のあいぼんが目を覚まさないように。
うんと息をつめて。
それでも漏れでてしまう吐息を枕に沈めこんだり、手の平で押さえたりしながら。
…ああ。
安物のベッドはどうしてもギシギシいうな。
もっと大きくて軋まないベッドを買おう。
行為が済んで一息入れてる合間にそう言うと、彼女は『このままで幸せだよ』と微笑んだ。
ウチの大好きな、お月様みたいな目を細めて。
- 219 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:45
- 朝の眩しい光の中、目が覚めた。
腕の中にいた彼女は、いつの間にかいなくて。
床の目覚ましを手を伸ばして時間を見ると、9時前だった。
ああ、朝ごはん食いはぐれたな。
バイトもないから油断してた。
さすがに寒く、ぶるっと震えて適当に着替える。
部屋を出ると、梨華ちゃんが自分の部屋から顔を出し、
「起きた?」
と言った。
「ああ、うん。出かけるの?」
「うん。今日締め切りのレポート出してくるね。すぐ帰るから。
あ、ひとみちゃんの朝ごはん、取っといてるからね」
「ありがとうっす。ウチも今日はレポート書くよ」
「パソコンいるんなら、使っていいからね」
「うっす。どうもっす」
梨華ちゃんが出かけるのを「行ってらっしゃい」と見送ってから、
中澤さんにニヤつかれながら朝メシを食って、部屋で静かにレポートを書く。
本当に梨華ちゃんはすぐ帰ってきた。
一緒に昼ごはんを食べ、レポートのアドバイスを受けながら黙々と片付けた。
- 220 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:49
- その頃。
矢口と安倍は、店が休みなので矢口の家でのんびりと過ごしていた。
矢口の誕生日なので、小さいケーキを焼きお祝いしている。
「ヤグチみたいにちっこいケーキだべさ。めんこいねえ」
「いやいやいや、自分に合わせてないし。しかもオイラ自分の誕生日に自分で焼いてるし」
安倍からは、クロムのピアスをもらった。
安倍自身はあまりそういうアクセをしないので、雑誌を見たり吉澤たちに相談して買い求めた。
今日の矢口の耳元で、早速光っている。
「だってヤグチのケーキ、なっちのよりうまいっしょ」
「まあ、一応プロっすから」
一応、安倍もクリームを塗ったりとかは手伝った。
つい出来心でチョコペンで虫の絵を描こうとして、虫嫌いのヤグチから『ギャー!』と叫ばれた。
『ところで自分ら、どっちが受けなん?』
タンポポのパーティーで酔った裕子にこんなことを聞かれ、『裕子はナニ聞いてんだよッ』と矢口は
ばしばし叩いた。
『仲良く順番にじゃない?』
保田にまでこんなことを言われ、酒の酔いもあって真っ赤になった安倍は
『もー!お母さんに言うかんねー』と交信を始めた。
「もー、裕ちゃんも圭ちゃんも困るっしょ」
パーティーを思い起こしながら安倍は苦笑いする。
「まったくだよな」
矢口も笑う。
『やだなっち…そこヤだってばあ』
『もうこんなになってるっしょ…』
同時にゆうべのことを思い出し、ふたりは顔を見合わせて『ハハハハ…』と笑った。
飯田が大学院の補講を終え、校舎を出ると、アヤカから電話がかかってきた。
「ハイ?」
『あ、カオリちゃん?今、いいかな』
「うん。どうしたの?」
『村田先生がお話があるそうなの。カオリちゃんの連絡先知らないからかわりにかけたんだけど。
今、替わるね』
すぐ村田が
『もしもし?先日はどうも』
と出てきた。
「いえ、こちらこそありがとうございます」
『ああ、あのさ。あのあと保田さんとケンカしたりしなかった?それが気になってたんだけど』
「いえ、ケンカってほどでは」
飯田は少し苦笑いする。
- 221 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:54
- 確かに、保田はちょっと拗ねていたが。
『え、なに?えっちを拒否られたとか?』
「いえ、そういうのじゃなくて。圭ちゃん、怒っても絶対八つ当たりとかしないから
感情の処理に困ってるんだと思います」
『へえ。我慢強いんだね』
「だから好きなんです」
普通にノロけられてしまい、さすがの村田も
『ああ…そうなんだ』
と持って行き方に困る。
『じゃ、また。お詫びに今度ゴハンでも』
「いえ、わざわざありがとうございます」
『保田さんにもよろしくお伝えください』
「はい」
電話を切って、飯田は駅に向かった。
一方。
保田はアヤカ経由で斉藤に呼ばれ、青山のカフェに出向いた。
「ごめんなさいね、お仕事帰りで疲れてらっしゃるのに」
時間前に現れた保田に、斉藤はにこやかに席を勧めた。
「いえ、とんでもないです」
ふたりとも社会人なので、まずは名刺交換となる。
「クライム出版社って…音楽系の雑誌とか出されてるところですよね」
「ええ、あたしは今は村田や他の人の担当なんだけど。
保田さんは、郵便局にお勤めなのね」
「はい」
「ちゃんとした方なのね」
保田はそう言われたことが何故だか決まり悪くなる。
「まずは、村田が勝手なことをしてごめんなさいね。
あのひと、仕事のことになると周りが見えなくなるから」
果たしてそうだろうか。
保田は首を傾げる。
結構、計算ずくだった気がする。
「いえ、私はいいんですが」
「あなたの恋人の方にまでご迷惑をおかけして。
ライブの時の打ち上げの写真をあゆみちゃんに見せてもらったけど、綺麗な彼女ね」
「ええ、まあ」
保田はちょっと困ったように笑って照れる。
- 222 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 02:58
- 「村田は昔からああなの。本当にごめんなさい」
「いえ、まあ。先生の冗談だと思ってたようで、さすがにびっくりしてましたが」
「よく叱っておきますね。とりあえず、仕事がまだ残ってますのでこれで失礼しますね。
また機会があれば飲みにでも行きましょう」
「ああ、お忙しいところすみません」
「いえ。じゃ、私はこれで」
斉藤は伝票をひょいと掴んで行こうとする。
保田が「あ、私の分…」と止めようとすると、
「あなたはどうぞゆっくりしてらしてください」
とやんわりと押しとどめた。
保田は「すみません」と頭を下げる。
- 223 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 03:08
- 保田は次に表参道に向かう。
さっきの店から歩いてもたかが知れてる距離だった。
「しかしよく呼び出される日だわね」
今度は柴田と待ち合わせだ。
彼女はすでに待ち合わせ場所のカフェに来ていて、小さく手を振った。
「あの、うちの姉がすみませんでした」
保田が席に着くと、柴田は頭を下げた。
「頭を上げてよ。あなたのせいじゃないのに」
「いえ、ヤツの暴走を止められなかったですし」
「お姉さんは仕事熱心なあまりそう仰ったんだろうし、アタシは怒ってないから」
「いや、どっちかつーと趣味だと思いますが」
「そうなの?」
「単に美人好きって気も」
「ハア」
それで仕事になるのはすごいな、と保田はちょっと思う。
「とにかくまあ、あたしから説教しときますから」
柴田の言葉に、保田はくすっと笑った。
「なんですか」
「いえね、さっきお姉さんの担当の斉藤さんって人と話してきたんだけど、
斉藤さんも同じこと言ったなあって」
「斉藤さんが?」
「ええ。さっき、青山で」
柴田は『ヤバイ…これはねーちゃん本気だ』と案じる。
斉藤まで引き出して、保田の懐柔作戦に出たようだ。
「ねえ」
「ハイ?」
「カオリって…第三者から見ても普通に美人だよね」
物凄く今更な質問だった。
「ええ、まあ。かなりめに美人だと思いますよ。
つーか、保田さんかなり面食いでしょ」
「まあ、そうなんかな」
自覚ナシ。柴田は素直に感心した。
保田はアイスカフェラッテのストローをくるくる回し、何か考え込んでるようだ。
「そっか…美人なんか」
ストローを齧って、保田は反芻する。
- 224 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 03:19
- 「あたしのタイプとはちょっと違いますが、ビジュアルはすごいですね」
「へえ。やっぱ、マサオくんが好み?」
「まあ、そうですね。保田さんもカオリさんが好みですか」
「今はね」
今はって、と柴田は軽くツッコんだ。
保田がジャズバンドにいた頃を思い返す。
昔から知ってるが、保田はいつでもレベルの高い美人を連れて歩いていた。
人気ジャズバンド『「ムーンフェイス」のケイ』と言えば保田のことで、
柴田の友達が熱心に追っかけていたのだ。
『「ムーンフェイス」のケイ』はクールで女に冷たい、テクニシャンのドラマーと言われ、
かなりの人気だった。
懐かしさに、柴田は目を細める。
「ムーンフェイスのケイ」
コーヒーを飲んで、柴田はぼそっと言った。
「もー!それだけはカンベンしてよお〜」
保田は赤くなって笑う。
大きく手を振って、小さくなった。
「まったく、柴っちゃんにはかなわないわね」
保田に言われ、柴田はにこっと微笑んだ。
- 225 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/09(水) 03:22
- 「会ってきたわよ、保田さんに」
仕事を終え、斉藤はそのまま村田の仕事場に向かった。
「お疲れー」
村田はキッチンに立ち、コーヒーを入れる。
アヤカはバイトを終え、先ほど帰った。
「どうだった?」
「見かけのワリに、なんというかスレてない子だね」
淹れてもらったコーヒーを飲みながら、斉藤は保田の顔を思い返す。
「だしょ?」
「どうせ散々からかって怒らせたんでしょう、ムキになりそうな子だし」
村田は苦笑いする。
「で、彼女も結構いいカンジでしょ?」
「まあ、顔立ちが派手で目に力があるし、ビジュアルもまあまあね」
ちょっと小柄だけど、適度にバランスいいし、と続ける。
「なかなか面白い組み合わせね」
と斉藤はテーブル上にあった、ライブの打ち上げの、保田と飯田のツーショット写真を指に挟んだ。
「カオリさんとやらから、連絡はあったん?」
「こっちから今日お詫びも兼ねて、アヤカちゃんに頼んで電話したよ。
んー、難航しそうだなー」
村田はソファにひっくり返り、伸びをする。
「そうねー。いきなりギャラの話するワケにもいかんし」
「余計警戒されるじゃん」
「だからよ」
斉藤はムッとして、丸めた雑誌で村田の頭を軽く叩いた。
「たく、誰のせいで苦労してると思ってんの」
「すみませんすみません」
「分かったらさっさと働く」
人差し指を仕事部屋に向けて、斉藤は仁王立ちする。
腕組みつきだ。
「はーい」
村田はのろのろと仕事部屋に向かった。
- 226 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/09(水) 03:24
- (−Θ ΔΘ)ゞ <さ、撮ってください
く )
更新しました。
上記のAAは本文とは関係ありません。
>ヨッスィのタマゴさん
(;´D`)<のん、気がついたらおうちで寝てたれす
( ´д`)<幸せやなあ、自分
リニューアルしてHPHになったようです。ムラ田さんはウンチク王としていい味出してます。
個人的にはもっと「アイさが」大喜利のときのようにハジけてほしいのですが。
ぼんさん、幸せな一方、みんなの前で恥ずかしい思いを(w
>214の名無飼育さん
从*・ 。.・从 <こんなに可愛い自分がこわいの
( ´д`)<……
「可愛い」はシゲさんのアイデンティティーですから(w ぼんさんでさえ、ツッコめない模様。
シゲさんは実際可愛いと思うのですが、ツッコミどころ満載な面もあると思ってます。
ぼんさんの( ´д`)<たいしたタマやな自分 って台詞がいかにも言いそうです。どうもです。
>Stargazerさん
(`.∀<)――☆バチーン
( ´д`)<オバちゃん、その気になってるわ
初レスありがとうございます。保田さんのウィンクはサービスです。返品は不可です。
彼女を褒めて頂けると嬉しいです。どうもです。
吉澤さんもがんがってます(w AA劇場はまあ、いつの間にか劇場になってますた(w
- 227 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/09(水) 03:49
- ( ○Δ○)ノ□<今度メロン記念日の写真集がでます。バリ島で開放的にバッ…と、なっております。
从;~∀~从ノ□<にしてもこの表紙、ξξ“ З.“)斉藤さんがめっちゃジャンプしてんのやけど…
正直買うと思います。最近小説も実物も、ムラさんに惚れてしまいますた。ムラさんは罪な存在です。
更新お疲れ様です。
ついにムラさんが動き出したんでしょうか?危うしいいらさん。
甘あまのいしよしもゴチです。ひ〜ちゃんにダブルベットをプレゼントしたいです。
- 228 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 08:56
- 从 #~∀~从<あんたらどっちが受けなん? 何聞いてんだよ!!>(^◇^〜;)
( `.∀´)<順番ことか? (;´ー`)⊃<おか〜さ〜ん!
・
・
・
(・´ー`・)<昨日はえらい目にあったべ だねえ・・・>(^◇^〜)
(・´ー`・)<・・・ (昨夜を思い出している) ・・・>(^◇^〜)
(・´ー`・)<ヤグチ、えっちい。 え!?オイラ!?>Σ(^◇^〜;)
更新お疲れ様です
焼肉のたれは笑いましたw
- 229 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/09(水) 20:26
- ヤッスーのウィンクキター!!!w
返品なんてとんでもないですよ、我らがヤッスーのウィンク、ありがたく
ちょうだいしちゃいます。ああ、今夜は眠れないとか言ってみる。w
更新お疲れ様です。
- 230 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/11(金) 01:17
- 初レスさせていただきます。
ピクシーと申します。m(_ _)m
更新お疲れ様です。
作者様が書く、ほのぼの日常風景、素晴らしいです。
あいぼんさんのキャラが特に好きです♪
今後もあいぼんさんの活躍を期待しつつ・・・次回更新頑張ってください♪
- 231 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/11(金) 03:39
- 途中ですが、短編をうpします。
- 232 名前:カレーライスの女 投稿日:2004/06/11(金) 03:42
-
『新宿の職安通りを過ぎて脇に入ったとこ』
姉からの口頭の情報と簡単なメモを頼りに、後藤は新宿界隈を歩いていた。
『ハーモニー』というカレー屋に、年子の弟がずっと寝泊りしてるらしい。
もう3ヶ月くらい実家に帰っていない。
後藤は母と姉から着替えなどを預かって、一人で向かうことにした。
『ソニン』という女性の名を、いつからか弟の口から時々耳にしていた。
夜間高校のクラスメートという程度の情報しか知らず、いつの間にか家に帰ってこなくなるくらい、
ハマっていたことすら気付かなかった。
ソニンは家族とカレー屋を経営している。
弟とは最近付き合いだした。
最初はソニンのアパートに転がり込んでいた。
ゆうべ実家に帰ったとき、すぐ上の姉から、簡単な追加情報を教えてもらう。
一番上の姉と母は、黙ってバッグに弟の好物と着替えを詰め込んでいた。
- 233 名前:カレーライスの女 投稿日:2004/06/11(金) 03:44
- 少々重いバッグを肩にかけ、後藤は新宿までのJRの車内で難しい顔をしていた。
最初に会ったら何を言うか。
まずぶっ飛ばしてしまうのではないか。
もう子どもじゃないんだから、それはよそう。
しかし、ここまで家族を心配させる弟に対して冷静でいられるだろうか。
昼過ぎの車内で、後藤は色々考えていた。
『ハーモニー』は案外簡単に見つかった。
塗装の剥げた看板を確かめ、後藤は深呼吸して木製のドアを開こうとした。
「真希ちゃん?」
聞き覚えのある声に振り返ると、弟がスーパーの袋片手に、突っ立っていた。
「ユウキ」
よかった。
元気そうだ。
この前見たときより、いくらか痩せて頬の線が鋭くなっているが、血色はよさそうだ。
それにいつの間にか、男の顔になっている。
「どしたの?」
後藤は、ボストンバッグを突きつけた。
「着替え。おかーさんたちから」
「ああ」
「帰れとは言わないけど、たまには連絡しろって。おかーさんたち、心配してる」
「うん」
「それだけだから。じゃ、帰る」
つっけんどんに言い、後藤は踵を返そうとする。
「ユウキ、帰ってるの?」
外のやりとりが中にまで聞こえたのか、ドアから若い女の子が顔を覗かせた。
「あ」
弟とそっくりな外見でピンときたらしい。
「ユウキ…くんのお姉さんですか」
「はい、姉の真希です。ユウキがお世話になってます」
一度何かの学校行事の写真で見て以来だったが、一目でソニンだと分かった。
厚めのぽってりとした唇に、なんとなく目がいく。
「と、とにかく中へ!お腹空いてるでしょう」
昼のピークは過ぎてお客も店内にほとんどいなかったが、後藤は躊躇した。
「入って」
弟にも促がされ、後藤は仕方なく中へ入った。
- 234 名前:カレーライスの女 投稿日:2004/06/11(金) 03:45
- まずタオルのホカホカのおしぼりが渡され、後藤は黙って丁寧に手を拭った。
真面目にカレーを作ってる店らしく、店内に様々なスパイスの香りがする。
そういえば、さっき弟の上着からも同じ匂いがした。
「真希ちゃん、なにがいい?
おすすめはチキンカレーだけど」
「んじゃ、おすすめを」
弟はエプロンをつけ、手早く業務用のジャーからライスを皿に盛り、ソニンに手渡す。
熱々のカレーがかけられ、カウンターの自分の前に置かれた。
「おいしそうだね。いただきます」
朝が遅かったので、さほど空腹でもなかったが、カレーは腹に染み渡った。
ライスにかかった、スライスアーモンドも丁寧に煎ってある。
サラダとラッシーがカレー皿の横に置かれた。
ちらっと上目遣いで弟を見た。
家にいるときからは考えられないくらい、てきぱきと皿を拭いている。
「あのさ」
後藤は、ぽつんと言った。
「は、はい」
「ソニンちゃんは、おうちのひととここ、やってるの?」
ソニンは、顔を曇らせた。
「実は…」
「ソニンの親父さんが倒れて、今お袋さんたちと交代でやってんだ。
親父さんはまだ入院してるし、ソニンも色々大変だから」
ユウキが言葉少なに言った。
後藤は目を見張る。
言い訳でなく、弟がこんなにはっきり自己主張したのは初めてではないか。
後藤は、両親に怒られてぐじぐじ泣いていた、弟の遠い日の姿を思い返す。
「ごめんなさい、本当はユウキに甘えちゃいけないのに、今までずるずると…」
後藤はスプーンを置いた。
黙って、ラッシーも飲み干す。
「ごちそうさま」
立ち上がって、千円札と小銭をテーブルに置く。
ユウキは黙って、姉の方に押し返した。
「弟をよろしく」
それだけ言って、店を出た。
- 235 名前:カレーライスの女 投稿日:2004/06/11(金) 03:46
- 帰りの電車で、つり革に掴まって考える。
この胸の空虚さはなんだろう。
幸せそうな姿を見て、安心したはずなのに。
ホームで電車を待ってるとき、実家に電話を入れた。
元気そうだったと。
電話に出た一番上の姉は、『そう』とだけ言った。
ぼーっと自分のアパートまで歩く。
「後藤!」
勢いのある声にはっと我に返る。
保田が、にこにこして立っていた。
仕事帰りのようだ。
「どしたのよ、元気ないじゃん」
「あー、そう?
圭ちゃんはいつも元気だねえ…」
ともすると、保田に甘えてしまいそうだ。
この胸のつかえがなんなのか、答えがわかるかもしれない。
だが、後藤はそうしなかった。
「ごとー、用事あるから、またね」
やんわり笑って、バイバイと手を振り、また駅に戻った。
残された保田は手を振りながらも、首を傾げるのだった。
- 236 名前:カレーライスの女 投稿日:2004/06/11(金) 03:47
-
学習塾のバイトは9時頃終わる。
後藤は初めて、市井のバイト先を訪れた。
「せんせー、またねー」
「おう、気をつけて帰れよ」
市井は自分のクラスの子なのか、少女に声をかけ、こちらに向かって歩いてきた。
「オマエ、なにやってんの?」
すぐに気付き、怪訝な顔をする。
「あ、うん…なんだろね」
なんだろね、って、こっちが聞きたいよ。
市井はそう言って笑った。
「なんかあったんか?」
「あー、うん。そう…かな?」
「そっか。酒でも飲み行くか」
「おごり?」
「臨時収入あったからな。おごっちゃる」
市井はいつものように、後藤の頭をくしゃくしゃとかきまぜる。
「女の子に貢がせたの?」
「失敬な。マジメに労働した報酬だ」
「じゃ、行く」
後藤はそのひょろっとした腕に顔を埋めた。
顔を上げると、白い吐息が夜の闇にまぎれていく。
住宅街の蛍光灯の明かりがぼんやり滲んでる。
それにしても今夜は冷える。
組んだ腕から、ぬくもりがじんわり伝わってくる。
市井はまた、その髪をかきまぜた。
- 237 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/11(金) 03:50
- 更新しました。
次回から、本編に戻ります。
タイトルはまんまですが、ソニンのソロシングルより。
気恥ずかしくなるくらい昭和な歌謡曲っぷりが結構好きでした。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
(−Θ ΔΘ)っ゛<アナタはだんだんムラ田に夢中になる〜
ξξ;“ З.“)<なに暗示かけてんの
写真集表紙、マサオのお尻につい目がいってしまったことは内緒です。後姿でも分かる立派な(ry
ヒーちゃんにお心遣いありがとうです。彼女はいつかがんがって購入するとオモワレ
>228の名無飼育さん
( `.∀´)y−~~<若いっていいわね(はあと)
(;〜^◇^)/<質問の内容が大体オッサンだから!
「お母さんと交信なっち」にハゲワラですた。なっちにツッコまれてるヤグとか。
贈ったのはタレだけではないようですが、多分いしかーさんの記憶にはそれが残るでしょう。
>Stargazerさん
( ^▽^)<保田さんのウィンク、在庫ならかなりありますよ♪
(〜^◇^)/<売ってんのかよ!しかも余ってんのかよ!
今なら大放出(ry 当然、口は開けてます。「うた〇ん」でよくCGかかってた例のアレです。
ヤキモチ焼きのいいらさんに日々振り回されてますが、これからもこんなヤスをよろしくです。
>ピクシーさん
( *‘д‘)<え、そうなん?なんか恥ずかしいわあ
川o・-・)ノ <照れ屋でちょっとひねくれ者、完璧です!
初レスありがとうございます。あいぼんさんヲタでいらっしゃるのでしょうか。
ぼんさんは書いてておもろいので、気に入っていただけてなによりです。
これからもぼんさんともどもよろしくお願いします。
- 238 名前:登場人物紹介 投稿日:2004/06/11(金) 03:52
- (♂´ Д `):後藤祐樹(ユウキ)(19)。東京都出身。後藤の年子の弟。多少骨ばってる以外は
姉と同じ顔。実家になかなか寄りつかず、家族に心配をかけていた。
从0‘ ∀‘0 从 :成膳任(ソン・ソニン)(20)。高知県出身。ユウキの恋人。病気の父に代わって
カレー屋を切り盛りしてる。カレー屋の常連には『ワダさん』という人がいる。
- 239 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/11(金) 05:07
- (0@〜@)<う〜目が回る。頭がムラさんだらけだ。
暗示にかかってしまいました。
更新お疲れ様です。
(♂´ Д `)<ね〜ちゃん、弟離れできてないね。
ひ〜ちゃんのあややの時とは違って実の兄弟ですからね。
後藤家は姉弟仲いいですから。Mステでも料理を作る話で
( ´ Д `)<自分で食べたり、ユウキに食べさせたりしてます。
僕もごっちんの弟になりたいです。あとソニンちゃんは苦労人なんで幸せになってほしいです。
- 240 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/11(金) 18:22
- 更新お疲れ様です。
自分は一応( ‘д‘)が一推し、以下ノノ*^ー^)( ´D`) 川o・-・)・・・
と、DDに限りなく近いぼんさんヲタです。
ここのぼんさんは、頭脳明晰なのがイイです♪
現実でも、成績はともかく頭の回転は速そうですが・・・
前回のハロモニでも「娘。」作るのしきってましたし。
(♂´ Д `)・・・今頃なにしているんでしょうねぇ?
次回も楽しみにしています♪
- 241 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/11(金) 22:41
- ヤッスーのウィンク…余るほどあるなら、是非ともいただきたいものです。w
うた○んのCGヤッスーをイメージすればオッケーとのことなので、今から
ヤッスー絡みのビデオを見ます。ヤッスーももちろんですが、いしよし夫妻w
共々…この物語の面々を見守りたいと思います。
- 242 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:23
- ―――保田視点
イシカワとヤグチの誕生パーティーで村田さんからモデルの件を切り出されて、
アタシの周りでは小さな騒動があった。
すぐに柴っちゃんや、村田さんの担当の斉藤さんという人に呼び出され、謝ってきた。
それから数日はカオリが用事で北海道に帰ったりして、なかなか会うこともなかった。
じっくり考えることができてよかったかなと、今にして思う。
『明日帰ります』
簡単なメールが2、3日後に届いた。
『時間合うんなら迎えに行こうか』
こう返事を打ったら、
『午後早い便の切符しか取れなかったから、いいよ。
ありがとう』
少し経ってこう返ってきた。
翌日、家に帰るとカオリがいてお土産の魚で鍋の支度をしてくれてた。
ああいうことがあった後なので、会話は少なめ。
鍋が煮えるぐつぐつという音だけが響いてた。
- 243 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:25
-
アタシは夕食後ソファーに座り、新聞を広げていた。
「圭ちゃん、コーヒー入ったよ」
テーブルにカップを置き、カオリは自分も腰かけた。
「サンキュ」
ちょっと顔を上げ、礼を言う。
少し目が疲れ、眼鏡を外して目全体を指でほぐした。
「あのさ」
カオリはそれとなく切り出した。
「うん」
「村田先生から、電話あったよ。
『ご迷惑かけました』って」
「そう。こっちも、担当の斉藤さんって人に呼び出されて青山まで行った」
「そうなんだ」
「まあ、同じようなこと言ってたけど」
「うん」
「そのあと、柴っちゃんにも呼び出されて土曜のこと謝ってた」
「うん…あのさ」
「なに?」
アタシは新聞を適当に畳んでテーブルに置いた。
「カオが他のひとに裸見られるのイヤ?」
カオリはいつものようにからかってる様子はなく、いたって真面目だった。
「アンタだったらどうよ?」
「カオだったら?…イヤかな?」
「だしょ?」
「でも、あのね」
「うん」
「カオは普段ですね」
「ああ」
「『老けてたまるかあー!』というイキオイで頑張ってるワケですよ、色々と」
「ハハ」
アタシはちょっと笑った。
「でも、いつかは年とるワケじゃん」
「まあね」
「だから、一番綺麗な時期をプロの人に描きとめてもらうのもいいかなってね。
カオのためにも、圭ちゃんのためにも」
人間はいつ死ぬか分かんないじゃん、と、カオリはどこかさみしそうに笑う。
「カオ…」
「一番綺麗なカオを、圭ちゃんにずっと覚えてて欲しいから」
「あ、アンタはずっと綺麗だってば!」
アタシは珍しく、冷静さを欠いていた。
カオリは驚いたように目を見開いてる。
「うん、でも…」
「分かった」
アタシは大きく息を吐き、
「なんぼでも脱ぐわよ!キリキリと!」
啖呵を切るのだった。
- 244 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:26
-
ああいうことを聞いたあとのせいか。
シャワーを浴びながら、さっきカオリが言ったことについて考え込んでしまった。
『なんかいつもより長風呂だったね』
寝室に行くと、先にベッドに入っていたカオリがそう言った。
「ねえ」
「ん?」
アタシは天井を見つめたまま答えた。
「ムリ…しなくて、いいよ?」
「なにが」
「カオ、モデルの件、ちゃんと先生に断るよ。
圭ちゃんがそこまでイヤがるんだったら、やっぱりそれを曲げてまでするのは…」
「ムリしてないって。アタシも興味が湧いてきただけだって」
「圭ちゃんは」
カオリはいったんそこで言葉を切った。
「なに?」
「いつも、カオリが先なんだね」
カオリは嬉しいとも悲しいともいえない表情だった。
こんな顔、初めて見たかもしれない。
「カオは圭ちゃんみたいに大人じゃないから、いつも圭ちゃんに追いつこうとして、
結局引き離されてる」
ずるいよ、とカオリはアタシの頬に触れた。
「カオ、圭ちゃんを好きなのに」
「それはこっちの台詞だっつーの」
「…言いたいことがあったけどやっぱやめた」
カオリは寝返りを打った。
「なに?言いなよ」
「ヤだ、言わない」
「言いな」
「イ・ヤ・だ」
さっき言ったことと矛盾するかもしれないもん、とカオリは言う。
「なに」
「圭ちゃんは」
カオリは何故かそこで言葉を切った。
「なによ」
「色んな人に頼られてるじゃん、だからせめてふたりでいるときはカオが一番でいたいの」
確かに矛盾するかも、とバカみたいに口を開けてぽかんとしてしまった。
「なに言って…」
誰といようと心の中にずっといるくせに。
今更何を。
アタシは手を伸ばして、
「いつもヤキモキさせられてるのはこっちよ」
いつもするように、彼女を腕の中に包んだ。
- 245 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:27
-
「圭ちゃんはエッチするときしか好きって言ってくれない」
向こうから、こんな苦情が寄せられた。
キスの途中で遮って。
「いやまあ、すみませんねえ」
そういやそうだっけと、頭をかいた。
「カオばっか圭ちゃんを好きみたいじゃん」
「…バーカ」
「バカって言った」
「…どうしろっての」
しかもこんな中途半端に衣類を脱いだ状態で。
「もー、カオ寝る!圭ちゃん分からず屋だもん!」
ガバッと布団をかぶってカオリはアタシのスペースの分の布団まで独占した。
「…寒いんだけど」
しかもアタシ、アンタに脱がされて上半身まっぱなのに。
「知らない」
くぐもった声が聞こえる。
「やれやれ」
わざとらしくためいきをついて、傍らのタバコを引き寄せて銜えた。
「ヘックション!」
さすがにくしゃみが出る。
鼻を啜って、ベッド下に落ちてた自分のシャツを羽織った。
「圭ちゃん、キライ」
「そうッスか。アタシは好きなんだけどなあ」
また鼻を啜る。
本気で寒くなってきた。
「ああー、もうわけわかんなくなってきた!もー寝るわ、アタシも!」
カオリが布団を譲ってくれそうにないので、もう一枚布団を出そうと起き上がって
クローゼットの方に行こうとする。
布団から、腕だけ出てきた。
アタシのパジャマのズボンの、ゴムのところを掴んでなにやら意思表示してるようだ。
「なに?入れてくれるん?」
布団のなかで、とりあえず頷いてるようだった。
- 246 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:28
- 二十何年も生きてきたら、恋の苦さなんてイヤってほど味わう。
その細いウェストに腕を回して、そんなことを思う。
体だけ繋がる虚しさとか、お互いイヤってほど知ってて、色んな人を傷つけたり傷つけられたりしたのに、
それでもお互いを求めてる。
「圭ちゃん…」
自分の体の下から、切なげな声が聞こえる。
それを聞いて、アタシは目を細めた。
愛がなんなのかなんて知らないけど。
掴めそうで掴めないものに向かって、お互いの体にしがみついてる。
まるで獣だわね。
アタシは起き上がって膝をついた。
自分の腰に正面からしがみついて、普段聞かないような声を上げてる、
彼女の声を聞いて、目を閉じた。
言葉じゃ全然足りなくて、口で伝えようとすればするほど違うものになってしまう。
愛してる。
たったこれだけの言葉を伝えるのに、時にはじれったい思いまでして相手に向かっていく。
またうつぶせにして、両手で腰を掴んだ。
立てた膝をそっと撫でて、自分から突き出してきた腰に強くキスした。
そこにいったら、なにがある。
狂おしい声を上げる恋人に、アタシはなにができるのだろう。
我を忘れて揺れる彼女に、欲しがるものを引き渡す。
どうして、そこへ向かうのか。
なにがあるかなんて、誰も知らないのに。
- 247 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/19(土) 22:30
-
「…ごめんね」
暗闇のなかで、カオリは小さな声で謝った。
「なにが」
体を寄せて、背中を撫でてやる。
「背中、爪立てちゃって…」
あのあと、何度か抱き合って、下になったカオリはかなり指先に力をこめそれが
アタシの背中に赤い痕を残した。
「いや別に」
「ホントに、ごめん」
カオリはアタシの背中の該当箇所に手を滑らせた。
「いやー、爪立てるほどよかったんだなーって。光栄ですわ」
オホホホホ、と口に手を当てて笑ってみせると、案の定、顔にクッションがぶつけられた。
「圭ちゃんのバカ!」
カオリは真っ赤になってすでに枕を投げる態勢を取ってる。
「もー!バックでガンガン攻めるし!」
「つーか、バックになったのはどっちかっつーとアンタじゃん」
「圭ちゃんがカオをうつぶせにするからじゃん!」
「アタシのせいかよ」
「うん、圭ちゃんのせい」
カオリは枕を下ろした。
まだ顔が赤い。
「スケベなくせにえっちの時優しいし」
「他がひどいみたいじゃん」
「カオ、全然圭ちゃんになにもしてないのに」
人間のすることって物理的なことのほうが圧倒的に多いのだろうけど。
それ以外のほうが救いとか呼ぶものになってることがままある。
なにもしてないわけじゃないけど。
なにもしなくても、それをアタシは心の底から欲しがってる。
「カオが圭ちゃんのこと好きなのは、圭ちゃんのせいだよ」
「なんだそりゃ」
「うん、圭ちゃんのせいだ」
「…それはそれは」
カオリは目を閉じて、アタシの背中に腕を回した。
それにしても背中がヒリヒリする。
当分、人前では着替えられないな。
とりあえずカオリ、肩を噛むのはやめてね。
本気で痛いから。
そう伝えたのに。
アタシの体に、また傷が増えた。
- 248 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/19(土) 22:31
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
( ´ Д `)<え〜、自分では弟離れしてると…
ゴチーン、なにげにブラコンです。シスコンでもあるんですが。家族大好き人間なのです。
彼女の手料理、私も食べてみたいです。
>ピクシーさん
川o・-・)<このわたくしを出し抜いて、首席ですからね。完璧です
現実では『準バカ女』ですが(苦笑)、ここでは一応優等生なのです(ひねてますが)。
本物もかなりキレ者だとは思います。モノマネもうまいし。
>Stargazerさん
(@`.∀´)<たまーにこんなこともさせられてるけどね
うた〇んのCGはかなりお金かかってるとか。なのに登場の多いヤス。
ギラギラしすぎの彼女をよろしくおながいします。
- 249 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/20(日) 22:15
- 更新お疲れ様です。今回更新分、読んでいて非常に顔がにやけましたw
そのギラギラにやられて…2年近く経ってますが(ROM歴長いんで)
これからも見守る所存であります!もちろん、いしよしもw
- 250 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/21(月) 00:24
- ●
□⊂||(‘ー‘川<のんちゃん誕生日おめでとう。はい、カオ特製、地中海ケーキだよ。(上の青いムースがポイント)
以前、いいらさんが地中海ケーキ作ってましたね。パティシエ姿もかわいかったっす。
というわけで、ののさんおめ。
更新お疲れです。
ガブッ(+゜皿 ゜);`.∀´)イテテテ
今日もケメコはデカイ猫にかまれてますね。
(*○Δ○)ノ□<で、モデルになっていただけるの?
この話がどうなるか楽しみです。
- 251 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/21(月) 06:34
- 更新お疲れさまです。
ラブラブですねぇ・・・(w
これからも、ラブラブな2人でいって欲しいですね。
自分もROM歴長いですよ。
しっかり1枚目からROMらせていただいております。
- 252 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/22(火) 16:31
- 「で、後藤のヤツが起きたら味噌汁なんか作ってんだぜ!味噌汁だぜ、この21世紀に!」
「もーそれはさっきからなんべんも聞いたわよ」
アヤカは水割りのグラスを置いて苦笑いした。
市井は嬉しそうに『味噌汁味噌汁』と繰り返す。
ふたりはアヤカの行きつけのバーで飲んでいた。
市井は後藤と飲みに行ったときの話をし、朝起きたら朝食の支度を後藤がしていたというエピソードを、
アヤカがうんざりするくらいしていた。
「でもまあ、ユウキくんの居場所が分かってよかったね」
「まあ、居場所は分かってたんだけどな。本人と連絡がつかなかったっつーか」
「へえ」
「後藤はナニゲにブラコンだからな。なんかいまいち割り切れねーモンがあるようだけどな」
「色々あるんだね」
アヤカは水割りのおかわりを頼む。
市井は携帯にメールが届いたので、キーを操作して読む。
「なあ」
「なあに?」
「ニューオータニってドコあんの?」
市井は携帯の画面を見ながら尋ねた。
「紀尾井町」
「駅で行ったらドコよ」
「JRだったら四ツ谷かな。地下鉄は永田町か赤坂見附だと思う」
地下鉄のほうが近いけどね、とアヤカは付け加えた。
「なに?デート?」
「ちげーよ。うちの母ちゃんが明日友達とランチ食いに行くんだけど、場所知らねーっつーからさあ」
「そうなんだ」
「近くになにあんの?」
携帯を操作しながら市井は言った。母に返事を打ってるようだ。
「赤プリとか、上智とかかな。迎賓館とかも」
「サンキュ」
送信し終えて、携帯をパタンと閉じた。
- 253 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/22(火) 16:33
- アヤカは
「意外だったな」
と少し笑う。
「なにが」
「サヤカがさあ、都心のホテルを知らなかったから」
「名前くらいは知ってたぜ」
市井は少しむくれる。
「女の子連れてバーとか飲みに行かなかったの?」
「オータニはねーよ。てか、ホテルって疲れるだろ。高いし」
それもそうね、とアヤカは頷く。
「アンタのほうが詳しくてびっくりだよ、東京に住んでんのに」
市井はジントニックのグラスを持ってニヤニヤする。
「よし!今夜はハラを割って話そう!お互いの初体験トークもな!」
「えー、アタシ絶対サヤカには負けるよー」
「いやいやいや、数で言ったらおねーさんのほうがすごそーだし」
「じゃ、サヤカは初体験何歳よ」
「中学入る前」
「ホラ、負けた」
「オマエはいくつよ?」
「えーっと、14かな。ハワイにいた頃だし」
「大して変わんねーじゃん」
「サヤカの相手って?」
「近所の女子大生」
「…なんかいかにもだなー」
「そういうおめーはどーなんだよー」
アヤカはちょっと言いにくそうに苦笑してから、
「…20歳年上の女の人」
と言った。
「…おめーのほうがどうかしてるよ。
てか、相手のヤツフツーに犯罪じゃねーのか」
自分を棚に上げて、市井は言った。
- 254 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/22(火) 16:35
-
「いいじゃん、その時は本気だったんだから」
「『その時は』ねえ」
「なにをしてるヤツなワケ?
30過ぎて14の小娘と寝るヤツってさあ」
「学校の先生」
「…ハァ?」
「と言っても、大学から特別講師で来た人だよ」
「いやそれもどうかと」
「一回だけだよ。さすがに立場が立場だし」
世の中どうかしてる、と市井はやはり自分を棚に上げて思うのだった。
「しょうがないよ。好きって気持ちは止められないんだし」
しょうがないよ、ともう一度アヤカは繰り返した。
「その割には圭ちゃんには奥手だったよなあ」
市井はわざと投げやりに言った。
アヤカは少し市井の顔を見る。
「つーか、おめーっていつから圭ちゃんのこと好きだったわけ?
あ、これはパスとかは無効な、今夜はぶっちゃけトークデーだ」
「逃げはナシなワケね」
アヤカは髪をかきあげて笑う。
- 255 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/22(火) 16:36
-
「初めて会ったときから気になってたよ。一目ぼれに近かったかも」
「ほおー」
「最初からアタシに下心なく優しかったし」
「へえ」
「他の友達と同じみたいに対等に接してくれたし」
「ふうん?」
例えばさ、とアヤカはグラスを手にした。
「アタシがバーボンとか焼酎のお湯割りとか飲んでたらどう思う?」
どうって、今水割り飲んでんじゃん、と市井は思った。
「ハアまあ、顔の割にゴツイもん飲むねーちゃんだなーって思うかもな」
「相手の理想に合わせるっていうのも大変なんだよ」
アヤカはそう言って苦笑いし、グラスを呷った。
「圭ちゃんはアタシがバーボン飲もうが焼酎飲もうが平然としてて、からかいはするけど幻滅したとか
言わないからよかったの」
「そうなんだ」
「いっぱい色んな人と付き合ったけど、最高の友達だよ」
「ほお〜」
市井は感心して、少しぬるくなったジントニックを飲み干した。
「いやー、お互い好きなヤツがいなかったら、おめーと速攻寝るんだけどなあ」
冗談か本気か、市井はニヤニヤする。
「絶対、ヤだ」
「あらま」
「だって、サヤカって終わったらさっさと背中向けて寝そうなんだもん」
「…見たんかよ」
「なんかお義理で髪とか撫でてそうだし」
「お義理って…」
「飽きたらすぐ連絡絶ちそうだし」
「…ハハハ」
まるで見たかのようなアヤカの意見に、市井はただ頭を項垂れるのだった。
「おめーって都心のホテルで何人ぐらいに抱かれたん?」
「ぶつよ?」
アヤカにニッコリ笑われ、市井は心底寒い思いをするのだった。
- 256 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/22(火) 16:37
- 更新しました。
レスのお礼です。
>Stargazerさん
( ´ Д `)<んあ!2年近くもけーちゃんのギラギラにやられてるんだ〜。すごいね
2年近く前と言えば、ちょうど海板に移ってしばらくくらいでしょうか。長い間ありがとうございます。
いやあの頃は娘。がまだこうなるとは夢にも思わなかったりです。
>ヨッスィのタマゴさん
●
□と(´D`*)<いいらさん、ありがとうれす
ええ、ケメ子はデカイ猫にかまれて、引っかかれてます。生傷が絶えません。
ムラ田さんは着々とプロジェクトを組んでおります。
>ピクシーさん
( ゜皿 ゜)ノ<ナガイコトヨンデクレテテ、アリガトーーーーー!!
森板からですか!本当に長いですね!(って、私が言うのもアレですが)ありがとうございます。
なんだか有り難いような恥ずかしいような。これからもよろしくおながいします。
- 257 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/22(火) 19:59
- 更新お疲れ様です。
そう、森板からです。あのスレは1ヶ月くらいで引っ越ししましたね。
すっかりその頃には、この世界にハマっていたので、毎日巡回してますた。
初期のぼんさんのひねくれ具合とか、よっちゃんの愛用ベースは「リッケンバッカー4003」だとか、
ののさんはMac使いだとか・・・しっかりリアルタイムで読んでましたよ。
現実の娘。はどんどん変動していますが、ここの登場人物は大きくは変わらずに・・・イイですね。
これだけ長く続いている(スレ7つ目)物語も、滅多にないですよね。
作者様のスゴさを改めて実感します。
次回も楽しみに待ってます。
- 258 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/22(火) 20:07
- そうですねぇ…私も、まさか自分で娘。小説書いたりとかするように
なるとか、あの人とかその人とかが卒業したり加入したりするとは夢にも
思ってませんでした。w そんな中でも、ごまべーぐる様の娘。さん達は
変わることなくあり続けて…そのことに、救われてます。
次回の更新も、マターリお待ちしています。
- 259 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/23(水) 03:33
- 更新お疲れ様です。
ヽ*^∀^ノ<みそ汁♪みそ汁♪
川;´.▽`)||<はいはい、わかったから。
やはり、女の子の手料理はうれしいもんですね。
从‘ 。‘从<今日はカレーで〜す。
はい、あ〜ん…>从‘ 。‘从っ○川VoV*从
おいしい?>从‘ 。‘从川VvV*从<うん。
食べ茶のCMみたいに、あややもみきたんに作ってるんでしょうか?
次回も楽しみにしてます。
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/24(木) 00:56
- 市井ちゃんの耳、激痛。(笑)
耳鼻科逝ってください。
>>259
現実では逆にみきたんがあややにコメを砥がされてる訳ですが。(笑)
んでカレーはレトルト。
- 261 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:09
- ある日の昼休み。
保田は思い切って名刺に書かれていた村田のアドレスに、携帯からメールを送った。
『先日の件でお話があるのですが、先生のご都合のよろしい時にお電話を差し上げてよろしいでしょうか。
念の為、わたくしの携帯の番号も送ります。よろしくお願いいたします。保田圭』
送信してから、『これでいいのよ』と自分を納得させ、携帯をパタンと折り畳む。
一方、送られた村田は実家にいた。
妹や遊びに来ていた梨華と昼食をとっていた。
「ねーちゃん、肉も食えっつーのに」
妹はプンプン怒って、ピラフの肉をよける姉をにらむ。
「梨華ちゃん食べなさい。育ち盛りだから」
村田はよけた肉を梨華の皿に盛る。
「いえ、もう育ち盛りはとっくに終わって…」
「胸がもっと育つ」
「…ハァ」
そんなやりとりをしてると、村田の携帯が鳴った。
「んー、なんじゃ。
タイトル…保田圭です。おお、彼女からか」
梨華と柴田はちょっと顔を見合わせた。
「ふむ。なるほど」
「保田さん、なんて?ねーちゃん」
「モデルの件で話があるそうな。えーっと、彼女は今仕事だわね」
『いつでもお電話くださって結構ですよ。待ってるわ、はにー』
と返事を送り、また黙々とピラフの摂取にかかった。
「しっかし、アンタの周りは美人だらけだわね」
食後に熱い烏龍茶を飲みながら、村田は感心したように言う。
「へっへ!」
妹は得意そうに鼻をこすった。
「なんかあのパーティーんとき、ロック歌手の平家みちよもいたような…あんま喋んなかったけど」
「平家さんは中澤ハイツの住人なんです。うちとも長いお付き合いで」
梨華が言うと、
「へえ。ああ…梨華ちゃんのおねいさん、美人だったね」
村田は目を細め思いを馳せる。
『また始まったよ…』
妹はこめかみを押さえる。
「あのちびっこコンビも、将来有望っぽいし」
「ロリの気もあったん?」
「いや、どっちかつーとオトナの美女のほうが」
「マジメに答えんなよ」
ふたりのやりとりに、梨華は困ったように笑った。
『カオリ、アタシ、モデルの件引き受けるから』
バイトへ向かう飯田の携帯に、同じ頃、こんなメールが届いた。
- 262 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:18
- ―――その夜
『もしもし。村田と申しますが保田さんの携帯でよろしいですか』
村田から、直接電話があった。
「あ、先生。どうもわざわざ」
『いえ。いまよろしいですか』
「あ、ハイ。カオリもちょうどいますし」
飯田は箸を置いて、お茶を口に含んだ。
『先日の件でお話がということですが』
「はい。あの、モデルのお話ですが、お受けいたします」
『へ…?いいの?』
「カオリに言われたとかじゃないですよ。
アタシの意思です」
『それは嬉しいけど、カオリちゃんは何と?』
「いま、代わりますね」
保田は携帯を飯田に差し出し、
「村田先生。モデルのことで」
と言った。
「先生ですか、飯田です」
『なんか、急な展開でびっくりしてるんだけど、洗脳とかしたの?』
「あはは、してませんよ。
説得もしてませんし、ええ」
『そうなんだ。じゃ、カオリちゃんもモデルの件は』
「はい、圭ちゃんと一緒にやらせていただきます」
『ありがとう!あ、斉藤に連絡するから一旦切るね!』
「はい」
電話を切り、携帯を保田に返す。
- 263 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:22
- 「本当によかったのー」
「なにを今更」
保田はテーブルに戻り、食事を再開する。
今日は保田がサバの煮付けとかぼちゃの煮物を作ったのだが、「意外にうまい」と
飯田に言われややご立腹だった。
「アタシの素晴らしいハダカを見たくないの?」
唇を突き出し、ウィンクしてみせる保田。顎に両手まで当てて。
『オエーッ!』とお約束を忘れない飯田だった。
「いやなんか、いまさらだけど村田先生とはいえ、圭ちゃんのハダカ見せるの
惜しくなってきた…」
「今更かい!」
何故か弱気な飯田にツッコんでると、また保田の携帯が鳴った。
「あ、村田先生だ。カオ、出るね。ハイハイ、圭ちゃんのかわりにカオリです…へ?はい」
飯田は耳元から携帯を外し、
「村田先生がごはん食べるなら和洋中どれがいいかって。あと、夜都合いい日と」
「いや、なんでもいいけど。日にちはできたら金曜夜とか。今週でもいいけど」
「おっけ。もしもし?ハイ、金曜の夜がいいそうです。今週でもいいとか。
ハイ、なんでもいいって言ってます」
飯田はまた携帯を外し、振り返った。
「なんでもいいのはイカンって。圭ちゃんの意見優先だからって」
「ハァ?…じゃ、洋食で」
「洋がいいそうです。はい、それでは。どうも」
それからまたしばらくたって、村田から
『今週の金曜にホテルニューオータニに来てね。トゥールダルジャンの個室を予約しました。
7時半にロビーで。オサレしてきてね』
というハートつきのメールが保田と飯田に届いたのだった。
- 264 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:29
- 翌日。
仕事帰り、アヤカとギターのアンプを見に行ったついでに、
「ねえ、ニューオータニってどこあるんだっけ」
保田は尋ねてみた。
アヤカはどこかで聞いたような会話だ、と思いながら振り向き、
「紀尾井町。駅で言えばJR四ツ谷か地下鉄永田町か赤坂見附。
近くにあるのは迎賓館、上智大、赤プリ」
保田の質問に無表情で淀みなく答える。
答えられたほうは『お、おお…』と少し面食らい、
「ご、ご丁寧にどうも」
と頭を下げた。
「カオリちゃんとデートでもすんの?」
「いや、デートじゃないけど…」
「ふうん?ゴハンでも食べに行くの」
「まあ、そんなとこ」
「どこ?」
「えーっと…トゥールダルジャン」
アヤカは目を見開いた。
「また…思い切ったね。
めちゃくちゃ高いのに」
「名前だけ知ってたけど、やっぱそうなんだ…」
保田の顔色が悪くなる。いくら預金を下ろしてくればいいのか。
頭が痛くなってきた。
「ドレスコードもうるさいとこだよ、大丈夫?」
「それはまあ、スーツでも着て行くわ」
「それならいいけど。しかし圭ちゃんまで知らないとは」
「は?」
「いや、こっちの話。圭ちゃんのことだから、知ってるかと思ってた。
前に夏休みに家族で東京行くのが楽しみだったって言ってたじゃん」
「いや、うちは東京泊まるって言ったらオークラか帝国ホテルって家だったから」
「へえ」
「アンタこそ、東京住んでんのに」
保田はニヤニヤ笑った。
「オータニは泊まったことないもん」
アヤカは少しふくれてみせる。
「オータニは、か。なんで泊まる必要があるのかな〜」
「知らない」
保田の肘を押し、アヤカはギターのショーケースに目を向けた。
「トゥールダルジャンは誰と行ったのよ」
「家族と、あと2、3回はデートでだよ」
「ほおー。そのデートでいくら使ったの」
「知らない。自分で払ったことないもん」
「…そういうヤツだよなー」
保田は頭を押さえた。
「いつもあたしも払いますって意思表示はしてるもん」
アヤカはふーんだ、と言い捨て、保田を残して店から出て行った。
- 265 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:50
- ―――同じ日。朝比奈女子高校
「加護さん」
紺野は廊下で加護を見かけ、ぱたぱたと走っていく。
加護は壁にもたれて、単語帳を開いていた。
「いま帰りですか」
「ああ、うん」
「よかったら、駅まで一緒に」
「うん」
ふたりは並んで学校を出た。
「いよいよ今週末ですね。選抜試験の結果」
紺野が言うと、
「うん」
加護は小さく頷いた。
「受かるといいですね」
「んー」
「どうしたんですか、らしくない」
加護は立ち止まって、
「なんか…今回はムリな気がしてきた」
少し俯いた。
「加護さんがムリなら、今回は合格者ゼロかもしれませんね。
過去にも何度かあったそうですから」
「なんで?」
「なんでって…加護さんが受からなかったら大抵の生徒はムリですよ」
『まあ、次回に賭けましょう』
紺野は加護の背中を軽く叩いた。
- 266 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:52
- 加護は今日は髪を下ろしていた。
加護ヲタの生徒一同が、入れ替わり立ち代り、今日一日、次々加護の教室を訪れて
キャーキャー騒いでいた。
その中には当然、新垣もいたが。
こっそりと亀井も混ざっていた。
少し首を傾げ、加護はサイドの髪を耳の後ろにやった。
その耳元を見て、紺野は何気なく聞く。
「加護さんはピアスはなさらないんですか」
「したいのはやまやまやけど、選抜試験もあったし、ただでさえこの前のことで
一部の先生によう思われてないから、しばらくナリを潜めておとなしゅうしとこうかなあって」
「考えすぎですよ。ピアスを開けてそこまで注意された生徒は、今までにもいませんよ」
「まあねえ…」
加護は眉間に皺を寄せた。
「しかし自分、ちょっと変わったなあ」
「なにがですか」
「いや、なんつーかおっとりしてんのは相変わらずやけど、押しが強うなったつーか」
「ほめてませんね」
紺野は苦笑いする。
「当たり前や。タダほど高いモンはないで」
加護も負けずにニヤッと笑った。
- 267 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 20:58
- ―――吉澤視点
ウチと梨華ちゃんが夜、梨華ちゃんのベッドでうとうとしてると、
いきなり『ドーン』という音が聞こえた。
「なに!?」
「…なあに?」
梨華ちゃんも目をこすって体を起こした。
「あいぼんの部屋だよね」
「うん」
上着をひっかけあいぼんの部屋のドアを叩くと、
「あ、起こしてもうた?堪忍な…あたた!」
細くドアが開いて、あいぼんは顔をしかめて腰を押さえた。
「なにやってんの?こんな夜中に」
部屋に入っていくと、プリント用紙みたいなのが散らばってた。
椅子が引っ繰り返ってる。
「あ、うん。
この前特待生の試験あったんやんか」
「ああ、言ってたやつな」
「ウチ、多分落ちたと思うから、ちょっと勉強し直そうと思て中学の時の
ノートとかあこから引っ張り出そうとしたら、椅子から引っ繰り返ってもうて」
あいぼんの指が上を指す。
クローゼットの上の天袋の戸が、中途半端に開いていた。
あいぼんは照れくさそうに頭をかいてる。
「「…もう寝なさい」」
ウチと梨華ちゃんの声がハモった。
「…ハイ」
あいぼんはやけに素直だった。
梨華ちゃんがあいぼんの腰に湿布を貼ってやり、くれぐれも早く寝るように
ウチらは言い渡し部屋に戻った。
「まーったく。なにやってんだか」
ウチが言うと、
「あの勉強に向かう姿勢はちょっと見習わなきゃね」
梨華ちゃんが感心したように頷く。
「…うん」
「あいぼんは親孝行だね」
「うん」
「きっと試験に落ちてもうまくいくよね」
「うん、そうだね」
大きく頷いて、ウチは布団をかけ直した。
- 268 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 21:04
- ―――金曜日
それとなく、財布を確かめる。
保田は足早にニューオータニに向かう。
ネットで予めホテルの公式サイトを見て、値段を予測し飯田と自分の分の飲食費は用意した。
何度もスーツがきちんとしているか確認し、ドアをくぐる。
思ったより早く着き、約束の20分前だった。
「ハ〜イ」
ロビーで村田が手を振っていた。
「今日はどうも」
「こちらこそ。せっかくの楽しい週末にごめんねー」
村田はシンプルな装いではあったが、高そうなブランドのものを身につけていた。
一番いいスーツを着て来てよかった、とちょっと安心する。
「斉藤はちょっと電話しに行ってるから。じき戻るよ」
「はあ。あとはカオリですね」
ふたりで話してると、ふと長身の女性が入ってくるのが見えた。
髪をアップにし、ショールを肩にかけている。
ドアのそばにいたスーツ姿の男性たちの視線がいく。
飯田だと分かってはいても、見惚れてしまった。
「…惚れ直してる?」
「あ、ああ!すみません」
村田に声をかけられ、保田は我に返る。
飯田はふたりの姿を見つけると、
「ごめんなさい、遅くなりまして」
ストールをかけ直し、笑顔で小走りに近づいていった。
- 269 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 21:13
- 乾杯はシャンパンだった。
個室なので、静かにグラスの音が響く。
村田があまり飲めないのもあってハーフボトルを取ったが、これだって安くない。
保田は落ち着かなく琥珀色の液体を飲む。
村田と斉藤が仕事の打ち合わせをしてるすきに、
「圭ちゃん」
飯田はこそっと保田に声をかけた。
「なに?」
「今日、いくら持ってきた?」
保田は右手の手の平に、「3」を表した左の指をのせ、こそっと飯田のほうに見せる。
「そんなに!?」
飯田はあくまで小声だった。
「なんかあったらアンタの分もって。そっちは?」
飯田はいったん「3」を出し、次に手の平を見せた。
「まあ、それだけあればウチらの分はどうにか」
「うん」
ふたりは頷いて、シャンパンをまた口にした。
これか、何羽目か数えてるという番号つきの鴨は…。
ワゴンで運ばれてきた鴨を見て、保田は心の中で呟いた。
保田は赤ワインを、普段のビールとは比べ物にならない遅いスピードで飲む。
血のソースのかかった鴨を勿体ながりながら食べた。
ちらと隣を見ると、飯田も緊張の面持ちで鴨を口に運んでいる。
「日本のはパリの店に比べてソースが薄いから」
と実家の母やアヤカに聞かされたが、行ったことがないものを比較しようがない。
通路に来店した有名人の写真が飾られてるのを見て、ああ、噂どおりだなと
思うくらいだった。
「どう?お味のほうは」
斉藤に優雅に尋ねられ、
「は、はあ。結構なお味で」
保田は詰まりながら答える。
はっきり言って、緊張しすぎて味などほとんど分からない。
ただ、血の匂いが強いなとは思った。
- 270 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 22:11
- 「なんつーか、獣の味だねえ。ワインと合わせて食べたらいいのかな」
村田が言った。
「村田はソンをしてるねえ」
斉藤にしみじみ言われ村田はムッとして、ミネラルウォーターに口をつける。
飯田にさっき赤ワインを一口飲ませてもらったがすぐに顔をしかめて、
「アルコールと渋いぶどうの味がする」
とナフキンで口を押さえた。
シャンパンもちょっと口をつけただけで残りは斉藤が飲んだ。
「いや、あたしに遠慮なさらずじゃんじゃか飲んでください」
遠慮もなにもじゃんじゃか飲めるかっつーの。
そう思い、保田は飯田とちらっと目配せした。
デザートを食べ、食後にエスプレッソを飲んでると、
「さて、ここで仕事の話もなんですが」
と村田が切り出した。
斉藤は『ちょっと失礼。会社に電話を入れてきます』と席を外していた。
「なんかこういうことは困るとかはありますか」
「あの」
保田は飯田の顔も見て、
「一応勤め人なので、あまりはっきり顔が分かるようなのは…」
一番気になってる点を述べた。
「ああ、そのへんは大丈夫。顔は分かんないように工夫しますから。
写真じゃないですし、あくまでイラストですから」
「ああ、それじゃ」
保田はホッとする。
「公にする分は、そうします。
ただ、参考のためのデッサンとかはそっくりに描きますよ?
それは絶対表に出しません。
欲しいのがあれば後で差し上げます」
カオリちゃんのヌードは見たいでしょ?
村田はニヤニヤ笑う。
保田は頭をかいて、赤くなった。
- 271 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 22:18
- 食事を終えて店を出る。
会計は、斉藤が席を外したときに全部支払っていた。
「あ、あたしたちの分だけでも」
保田が言うと村田はやんわり制し、
「ギャラの一部です」
と笑って言った。
「ご、ごちそうさまです」
「ごちそうさまです」
保田に続いて、飯田も申し訳なさそうに頭を下げた。
最上階のバーに行く。
夜景を見て、飯田と村田ははしゃいでいた。
「飲める人と知り合えて嬉しいわ」
斉藤と保田は水割りのグラスを重ねる。
村田は飯田にカクテルを少しもらって飲んでいるようだ。
「アルコールとジュースと砂糖の味がする」
とやはり顔をしかめている。
「バーボンが好きなの?」
斉藤の質問に、
「焼酎もビールも好きです」
保田は正直に答える。
「気に入った!」
斉藤は豪快に笑いバーンと保田の背中を叩いた。
「遅くなったから」
と斉藤が帰りの車まで手配してくれた。
「じゃ、ウチらはここで」
と村田は頭を下げた。
「帰られないんですか?」
保田が言うと、
「ワタクシめはこれからこちらにカンヅメになりますから」
と村田が苦笑いした。
「お仕事だったんですか。すみませんでした」
「いえー。
べっぴんのおねーちゃんたちとうまいメシが食えてなによりでした。じゃ」
車はゆっくりすべり出した。
保田と飯田はタクシーの中から頭を下げた。
村田は車が見えなくなるまで手を振って見送る。
「さーて。部屋に戻ってお仕事ですよ、先生」
斉藤が何故か腕まくりをする。
村田は大袈裟にためいきをついてみせた。
「…難を言うと、もっといい部屋がよかったよ」
斉藤はぎろっとにらみ、
「トゥールダルジャン」
と一言だけ言った。
「すみませんすみません。今すぐ戻って文句言わず馬車馬のように働きます」
「よろしい」
斉藤はにっこり笑って、
「オラー、キリキリ歩けい!」
と村田を部屋に連行するのだった。
- 272 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 22:24
- ―――石川視点
大学に行き、食堂でたまたま市井さんと一緒になった。
そこへ、柴ちゃんも手を振ってやって来た。
「あれ、柴ちゃん?どしたの」
「おお。どしたんだ、大荷物で」
市井さんは柴田が下げていた紙の手提げを覗き込んだ。
「ああ、うん。
いえね、うちのねーちゃんが昨日からホテルでカンヅメんなって原稿書いてるらしくって、
差し入れに」
「へえ、大変だな」
「なにを持ってくの」
「おにぎりとお漬物とか。あとサンドイッチに鳥の唐揚げとか簡単なおかず。
フルーツも」
「ほー。ランチジャーまで」
市井さんの言う通り、青いランチジャーも入っていた。
「ええ。お味噌汁をいつも飲みたがるんで」
「そうか。そうだな、味噌汁はいいな。うん、味噌汁は偉大だ」
市井さんはやけにうんうん頷いていた。
お味噌汁の信者かなにかかしら。
「柴田、おねーさん、どこでカンヅメなってんの」
「ホテルニューオータニです」
「…ほお」
市井さんは一拍置いて感心したように言った。
なにかしら。なにかオータニに思い出でも。
ふたりの会話を聞いて、あたしはあったかいココアを飲み干していた。
- 273 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/06/24(木) 22:29
- 柴田は姉とロビーで待ち合わせていた。
5分ほど待って、姉がややくたびれた顔でエレベーターから下りてくる。
柴田の顔を見ると、少し微笑んだ。
「どうよ、調子は」
「まあまあかな。おー、ランチジャーじゃん。味噌汁?」
「そう、アタシが愛をこめて作ったんだよ。
全部飲み干してよ」
「分かったよ。お茶でもしよう、おごるから」
「いいの?時間は」
「ちょっとくらい息抜きさせてくれ」
姉は妹の頭をぐしゃぐしゃ撫でて笑った。
「んー、おいし♪」
女性客の多いティールームで、柴田はクリームのかかったシフォンケーキを食べ、ご機嫌だ。
姉はコーヒーを飲みながら、目を細めてそれを見ている。
「ねーちゃん、ケーキ食べないの?」
「カロリーオーバーになるからね。しばらくは」
「そっか。ごめんね、あたしだけ」
「なにをらしくない。残さず食えよ」
「うん」
素直に柴田は残りのケーキを平らげた。
柴田は『ご苦労であった』とお駄賃にお土産のケーキを買ってもらう。
ピエール・エルメのおしゃれなスイーツである。
「うっわー!ここの高いんでしょ!」
「いい、いい。母さんによろしく言っといて」
「うん。あ、明日おかーさんがお弁当箱引取りに来るって。
だから部屋に誰か引っ張り込んでアヤしげなことしちゃダメだよ」
「するかよ」
姉はあきれたように笑った。
「ねーちゃん」
柴田は帰るとき、ちょっと振り返った。
「ん?」
「なんでもない。ケーキ、ありがと」
柴田はぶんぶん腕を振って、笑顔で帰って行った。
村田も小さく手を振り、エレベーターへ向かって歩き出した。
- 274 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/06/24(木) 22:32
- 更新しました。
PCが何度も固まり、えらく時間がかかりました。スマソ
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ´D`)<すごいのれす!
(0^〜^)<すっげー!4003ってことまで覚えててくれたんだ!
ちなみに名前は「ヨシコ・グレイト・カモンーナ!2号」です。
のんさんがマカーとか本当に細かいネタを覚えててくださってるんですね。嬉しいです。
>Stargazerさん
(0^〜^)<本当に色々変わったよね
川o・-・)<小川さんが現実では∬∬`▽´)から∬∬´▽`)ですからね
書き出した頃はキュービックがオールプッチバンドになるとは夢にも思いませんでした。
昔のビデオなどを見てると9人時代のでも「なんか少ない気がする」とかつい思ってしまいます。
>ヨッスィのタマゴさん
从‘ 。‘从<たん、ほどよくぬるくなったパピコ食べる?
川;VvV从<それはやだ
起きたら味噌汁っていうのがいちーちゃんにはツボだったようです。
美貴様は一人暮らしなのですがあやゃに作らされてるほうが多い模様です。
>260の名無飼育さん
ヽ♯^∀^ノ<オーイテ。本気でぶつし
川´.▽`)||<バカなこと言うからでしょう。ホントニモー
炊飯ジャーの釜を洗わされてるうえに米研がされてるんですよね(w
いちーちゃんはアヤカにバシバシ叩かれた模様です。
- 275 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/25(金) 01:02
- なんか(0^〜^)と( ^▽^)がパパとママに見えて、
( ‘д‘)が怒られちゃったバツの悪い子供に見えて
晩の晩やのにほのぼのしとります。
- 276 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/06/25(金) 02:23
- 川o・-・)<最近、吉澤さんは健康サンダルではなくミュールを履いてくるんです。
川‘ー‘)||<じんべえじゃなくて、カオと色違いのおしゃれなジャージだし。
(*^〜^)<だってみんなネタにするんだもん。
最近のひ〜ちゃんはオシャレだそうで、なんかうれしいです。
ほんとにひ〜ちゃんは元は美人なんだから、オシャレしたらいいらさんや梨華ちゃんに負けないべっぴんさんです。
更新お疲れ様です。
(−○Δ○)<しっかし、アンタの周りは美人だらけだわね。
ムラさん、あなたも美人ですよ。
柴田姉妹は姉は美人で妹はかわいいですから、そりゃいくらでも美人はよってきますよ。
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/25(金) 03:05
- 高級ワイン
( ‐ Δ‐) ・・・(無反応
高級鴨
( ‐ Δ‐) ・・・(無反応
柴田家特製味噌汁
(−○Δ○)ノ ピコーン!
ξξ“ З.“)<ソンしてるわねぇ
(−○Δ○)<いつものこっちのがいいのじゃ
更新お疲れ様です
食事は堅苦しいものじゃなくて気軽に楽しむものですよね
- 278 名前:ピクシー 投稿日:2004/06/25(金) 18:35
- 更新お疲れ様です。
〃ノハヾヽ
州 ‘д‘)
髪下ろしぼんさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
現実では
ノノ*^ー^) <髪を下ろしてる姿に惹かれるんですよね♪
という亀井の心境はいかに?
4003が2号・・・1号は?ま、まさかあのゴミ置き場から拾ってきた・・・ですか?
次回も楽しみに待っております。
- 279 名前:Stargazer 投稿日:2004/06/25(金) 20:46
- 更新お疲れ様です。何か腹のくくり方が素敵w なことになってる
ヤッスーを尻目に、今回更新分では村田さんキターって感じです。w
出たり入ったりせわしない、なんて某番組で「ネタ」として言われて
いた彼女達…よくよく考えたら、女性アイドルで7年近い活動ってのは
快挙、といっても差し支えないのではと思ったり。…よく分らないカキコ
すいません。
- 280 名前:マルタちゃん 投稿日:2004/06/26(土) 13:14
- いつも読んでます。
あいぼんと矢口さん、ごっちんが大好きです。
髪下ろしたあいぼんいいですねぇー。
これからもちょくちょく髪下ろしあいぼんあってほしいです。
頑張ってください(何を?)
- 281 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:30
- ―――吉澤視点
あいぼんはごはんを食べながらそわそわしている。
今日、選抜試験の結果について、学校から電話があるそうだ。
お茶碗とお箸を手に、ちらっちらっと居間のほうを気にしてる。
中澤さんがあきれて、
「ごはんくらい落ち着いて食べ。気持ちは分かるけど」
あいぼんの湯飲みにお茶を入れてあげた。
梨華ちゃんも『そうだよお』と眉をハの字にする。
「は、はい。…ああ〜、高校入試のときでもこんなアガらんかったわ」
「それほど余裕だったんれすか」
「悪くとも20番くらいの手応えはあった。地元の公立は間違いなく3番以内やった」
「…はあ、すごいれすね」
ののはぽかーんと口を開けた。
あたしもつられて開けてしまう。
すごい自信だけど、実際そうだったんだろうな…。
居間の電話が鳴った。
「きたー!」
あいぼんはお箸を置いて、猛ダッシュで居間に走ってく。
ウチらもついてった。
「あーあー、もー」
中澤さんがあきれて笑ってた。
「もしもし?は?学習教材?いえ、うちは結構です」
お約束だな。
ウチとののは顔を見合わせて笑った。
梨華ちゃんもツボだったのかお腹を押さえてる。
受話器を置くやいなや、また鳴った。
「うわ!ハイ…はい、加護です。
ああ…そうでしたか。はい…いえ、どうも。
はい、失礼します」
受話器を置くのを固唾を飲んで見守る。
「どう…れした?」
「落ちた」
あいぼんは事も無げに言った。
「あー、なんかウソでもすっきりしたワ」
さっさと居間から出て行った。
「お、今度は携帯か。
ああ、お父ちゃん?うん、今うっとこにも電話あったで。
ああ、うん。別に気にしてへん。
お母ちゃんは?うん、お風呂ならエエで。
風邪引かんように言うといてなあ」
はあ、とあいぼんは携帯を切ってから小さく溜息をついた。
一応、ショックだったんかな。
ウチらは顔を見合わせた。
- 282 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:33
- 加護が部屋で本を読んでいると、紺野から電話があった。
『もしもし、紺野です』
「よお。どやった」
『ダメでした。加護さんは』
「アカンかった」
『案ずることはありません。
特待生は中高とも1人も受からなかったそうです』
「そうなんや」
『ハイ、新垣さんからメールを頂いたのですが、中2の人が1人だけ準特待生で受かったそうです』
「なんでガキさんが?」
『新垣さんは事情通なんです』
「ふうん。ああ、じゃ、あのシゲさんって子もアカンかってんな」
『ええ。そうみたいです』
「自分とこの親御さんは何て言うてはんの」
『いえ、特には。気にするなとは言われましたが』
「うっとこもや。オトンが自分が受けたワケやないのに、なんやウチ以上に気にしとったわ」
加護はさっきの父との電話を思い出し、くすっと笑った。
『いいお父様なのですね』
「まあなあ。エエ加減、娘離れしてほしいねんけど」
しばらく話をし、『じゃ、また学校で』と切った。
携帯を机の上に置き、加護は自分の腕を頭の下に敷き、天井を見つめた。
いつの間にか、辻が部屋に入って来ている。
手にはコンビニの袋を下げていた。
コートを着たままで首にはマフラー。
どうやらいつの間にか出かけていたようだ。
「あいぼん」
「あ?」
「今からあいぼんを励ます会を勝手に開催するれす。
拒否権は一切なしれすよ」
「えらいまた強引やな」
「まあまあ。コーラでも飲むれす。のののおごりれすよ。ののの」
「強調せんかて」
ペットボトルを受け取り、フタを開けた。
「ポテチ食べるれすか」
「ああ、うん」
辻は「これものののおごりれす」と笑顔で袋を開く。
「あいぼんを励ます会」はつつましく開かれた。
- 283 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:35
- 「こんな時間にコンビニ行ってたんかい」
「うん、よっちゃんについて来てもらったれす」
「遅いんやから気をつけや。あの人かて一応女なんやから」
「よっちゃん怒るれすよ」
辻は笑ってマスタードカラーのダッフルコートを脱いだ。
「なんや、ほっぺた冷たいやないか」
辻のほっぺたを、加護はそっと両手で挟んだ。
辻はえへへと八重歯を見せて笑う。
『しもた…これじゃ、“今からチュウすんでエ”って前フリみたいや』
加護はひとりで照れる。
急に手を離してもヘンなので、名残惜しくはあったがゆっくり手を下ろす。
辻が思いがけぬ行動に出る。
加護の胸に頭をもたげ、
「心臓の音がするれす…」
とくぐもった声で言った。
「…当たり前やん。聞こえんかったら大事や」
「うん…」
辻の頭に腕を回して、速くなった鼓動を悟られないかと息をつめる。
「あいぼん、いいにおいがするれす」
「どんな匂いや」
「わかんないれすけど、あいぼんのにおい」
「もっと分からんわ」
「もー、あいぼんはー」
自分こそエエ匂いするがな。
加護は顔を赤くして、辻の頭をぐしゃぐしゃ撫でていた。
- 284 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:36
- 翌日。喫茶タンポポ。
加護はタンポポへモーニングを食べに来ていた。
「あー、よかった11時でギリギリやな」
辻と遅くまで「励ます会」を開いていたため、ついさっき起きたのだ。
辻は一足先に起きて、バイトに入っていた。
たまたま保田と一緒になる。
「オバチャンとモーニングかあ」
と軽く憎まれ口を叩く。
コーヒーを飲んで保田は苦笑いする。
飯田は昨日から泊りがけで友人の家に行っていた。
「紺野から聞いたわよ。残念だったわね」
保田に言われ、加護はトーストを齧り、
「…そうなんや、聞いたんや」
と呟いた。
「アンタと紺野でも無理だったんだから、相当レベル高かったんだね」
「まあ、そうやなあ」
加護は何か引っかかるものがあった。
実は、試験問題自体はさほど難しくなかった。
普段の定期テストよりは流石に難しかったが、意外に易しく拍子抜けしたくらいだ。
今回のがたまたま易しかったのだろうか。
加護は考えながらカフェオレを啜る。
「じゃ、お先」
と保田は立ち上がった。
加護の分のレシートも持っていこうとするので、
「オバチャン?」
と加護は止めようとする。
「しっかり食ってまた勉強すんのよ」
ちょっと振り返って笑い、
「ヤグチ、おあいそ」
とカウンターの矢口に声をかけた。
- 285 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:38
- 柴田は恵比寿へ大谷と映画を観に来ていた。
終わってから携帯の電源を入れると、
『今母来タ。ステーキヲ奢ラサレタ』
というメールが姉から届いていた。
「ムカつく〜。ケーキも確かにおいしかったけど!」
携帯片手に柴田はブーブー文句を言う。
「あゆみはほんっとめぐみさんラブだなー」
大谷は可笑しそうに笑う。
「いや愛とは別問題だし」
「まあ、ステーキはムリだけどね。
焼肉丼くらいなら奢っちゃる」
「マサオすき♪」
満面の笑みの柴田に腕を組まれ、満更でもない大谷だった。
「めぐみさん、仕事進んでんの?」
「まー、あらかた終わってると思うよ。ヤツのことだし」
帰りにふたりは渋谷に寄っていた。
あちこち、洋服とかを見て回る。
目ぼしい服を見つけ、柴田は体の前に当ててみせる。
「んー、可愛い可愛い」
と大谷がニヤニヤして棒読みで答えると、
「マジメに答えろー」
と柴田は手刀を作り軽くチョップした。
「今度は何の仕事なん」
「さー、エッセイだと思うけど」
「ほー。なんか大変そうだなー」
「ヤツなんか賞の候補に上がってるみたいでさ、斉藤さんが張り切ってるみたい」
「ふうん。賞か」
「そ。ヤツ、そういうの無頓着だからね。だから今回チャンスを逃すまいっつーかね」
「めぐみさんは乗り気でないとか?」
「うん、多分。相変わらず描きたいものを描いてるだけっつーか」
「ハッハ。めぐみさんらしいな」
また柴田の携帯にメールが届く。
『美人の禁断症状が起きそうです。かしこ』
「…バカだよねえ」
目を細めて、柴田は笑った。
- 286 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:42
- 後藤は昼過ぎに目覚め、体の節々が傷むのを感じた。
「頭、イタ…」
布団から這い出て、食事を摂りに台所へ行く。
物凄く喉が渇く。
冷蔵庫からスポドリを出して、少し飲む。
「んあ〜。ごはん作んのメンドくさ…」
昨日の残りのカレーでも、とふと思ったが、とてもそんな食欲はない。
「ああー…おかゆでもおとなしく炊けばいいのかな。でもなあ」
テーブルに着いて顔をしかめ頬杖をついてると、携帯が鳴った。
「んあ…アヤカちゃん?」
『うん。どしたの?すんごい声だけど』
「風邪っぽい。体のいたるトコが痛い」
『大丈夫?お薬飲んだの?』
「うん、なんか食べてから飲もうと思ったんだけど、なんか食欲なくって」
『サヤカは?』
「いちーちゃんは今日は法事で千葉行ってるはずだよ」
『分かったー。30分ほど待っててね』
予告通り、約30分後に買物袋を提げてアヤカが来た。
「んあー、なんか悪いね。日曜なのに」
「いいっていいって。病人はおとなしくしてなさい」
アヤカがおかゆを作ってる間、後藤はどてらを着てテーブルでおとなしく待っていた。
「なに買ってきてくれたの?」
テーブルに置かれたスーパーの袋をごそごそ探る。
「んあ!桃缶だ」
「そーそ。風邪にはやっぱりね」
「あっは!ありがとー、桃缶ダイスキ♪」
後藤が子どものようにはしゃぐので、アヤカも微笑んだ。
- 287 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:50
- おかゆが出来上がり、ふうふういいながら食べる。
「アヤカちゃんおかゆ炊くのうまいねー」
「フフ、ありがと。サヤカは?」
「んあ?いちーちゃんが炊いたら、すっごいドロドロか妙に硬いかどっちかだもん。
美味しくないし」
「そう」
「んあ、おかわりいい?」
「ハイハイ」
食欲がないと言っていた割に、後藤は土鍋いっぱいのおかゆをぺろりと平らげた。
おかゆを食べてから薬を飲み、後藤はぐっすり眠り込んでしまった。
夢なのか、市井の声が耳元で聞こえる。
「オイ、後藤。メシできたぞ、起きろ」
「ん…んあ?」
後藤は少し体を起こした。
夢ではない。市井がそばにいた。
さっきまでいたはずのアヤカがいない。
風邪薬のせいで後藤はぼんやりする。
「んあ…いま、何時?」
「9時過ぎだ。おめー、よく寝てたなあ」
「9時!?アヤカちゃんは?」
「8時過ぎに帰ったよ。バイトあっからって」
「ああ…そうなんだ」
後藤はまだぼやける頭をぶんぶん振った。
「風邪なんだって?おめー」
「んあ…なんで知ってるんさ」
「なんでって、アヤカがメール寄こしたんだよ。
お姫様の看病に来いって」
市井は土鍋のおかゆを茶碗によそってやる。
後藤は一口食べ、
「これ、いちーちゃんが作ったでしょう?」
と顔をしかめた。
「よく分かったなー」
「だって、いちーちゃんが作るとすっごいベチャベチャか硬いかどっちかだもん」
「文句言うなら食うな」
「文句じゃないもん、批評だもん」
「ムーカーつーくー」
歯茎まで剥き出しにして『イーダ!』とやって見せ、後藤は市井に知られぬように少し笑って
おかゆをまた口に運んだ。
- 288 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:52
- 月曜日。朝比奈女子高校。
「あのー、新聞部ですけど」
放課後、学食で辻を待ってた加護は参考書から顔を上げた。
道重がメモ片手に立っている。
「なに?」
「アンケートに協力してもらえませんかあ」
道重はにっこりと頷いた。
「エエけど、なに」
「加護さんの好きなひとってえ、誰ですかあ」
「…ソレ、アンケートちゃうやん。インタビューやん」
「さっすが加護さん!アッタマいい〜!」
「…いや、誰でも分かるし」
「で、誰ですかあ」
「なんでそないなプライバシーに関して答えなアカンの。
少なくとも、シゲさんには関係ないやん」
「さゆは関係ないですけどお、さゆのクラスメートには関係ありますう」
「ああ、そう」
「アラ、興味ないんですか」
「うん」
「…もお〜。加護さんカワイクないですう」
「エエやん、シゲさんが一番カワイイってことで手、打とうな」
「それはもちろんですけどお」
加護はさっさと荷物をまとめ、席を立った。
「加護さあ〜ん」
道重はメモを手にしたまま、イヤイヤというように体を左右に揺らす。
「ウチの好きなヤツを知ってどうしようというの」
「みんな興味あるんですよ」
「ウチとソイツだけが知ってりゃエエだけのハナシやん」
「『ソイツ』は知ってるんですか」
「…さあな」
加護は背を向けたまま『バイバイ』と手を振り、行ってしまった。
「むう。取材失敗」
道重はぷうっとむくれて、メモを制服のポケットにしまった。
- 289 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/04(日) 01:54
- 「なにしてんの、シゲさん」
そこへ新垣が通りかかる。
自販機のココアを買いに来ていた。
「加護さんをインタンビューしようと思ったら、逃げられた」
「なにをインタビュー?」
「『好きな人は誰か』って」
「そりゃ…ムリでしょ。しかもあのキレ者の加護さん相手じゃ」
「さゆもツッコミの練習すればいいのかしら。
なんでやねん、なんでやねん」
ビシ、ビシとツッコミの手をして見せるが、明らかにヘンだった。
新垣は軽く頭を抱える。
「ハ、もうこんな時間。
さゆ、寮の当番だから帰らなきゃ」
「なにすんの、寮の当番って」
「別に、娯楽室のお掃除とかそんなのだよ。
そこのテレビ独占できるから結構いい日なの」
「部屋にテレビないの?」
「あるけど、室内アンテナで映り悪いし」
「へえー」
「それにさゆ、自分の顔見てる時間のほうが長いから、あんまりテレビ見ないの」
「ハハ…マジっすか」
「『Mの黙示録』は見るの」
「ふうん」
「出てる子がカワイイの」
「そう」
新垣はどうでもよくなってきて、やや投げやりに返事した。
- 290 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/04(日) 01:59
- 更新しました。
レスのお礼です。
>275の名無飼育さん
(*^▽^)<マ、ママだなんて
読み返してみたら普通に夫婦とその子どもの会話ですね。
ぼんさんも夜中に何しとんねんって話ですが。
>ヨッスィのタマゴさん
(−○Δ○)<もっともっと美人を呼び寄せられたら…
普通に考えたらあんなに美形だらけの友達ってのも凄いなと。
ヒーちゃんおしゃれになりましたよねえ。
>277の名無飼育さん
(−○Δ○)っフ<柴田家のかほり。具はワカメと豆腐とネギ!
アメリカ横断ウルトラクイズ帽みたいな村さんがステキです。
そうですね、食事はくつろいで食べるのが一番です。
>ピクシーさん
川*^ー^)っ¶<思わず頼んで写メール撮ってしまいました。だってカワイイもん♪
1号は吉澤さん本体だそうです。ゴミ置き場のは「ヒーちゃん2号」だそうです。
ちなみにフェンダープレシジョンベースです。
>Stargazerさん
(−○Δ○)<フフフフ…
ヤスでも村さんの暴走には敵わない模様です。
色々言われてますが、女性アイドルグループで7年ってのは凄いと思います。
>マルタちゃんさん
( ´ Д `)<んあ〜、ありがとう〜。がんがるよ〜
初レスありがとうございます。髪下ろしぼんさん評判いいですね。
これからもよろしくお願いします。
訂正です。
>>272
市井さんは柴田が下げていた紙の手提げを覗き込んだ。 →柴ちゃんが
川;σ_σ||<柴田呼ばわりかよ
(;^▽^)<ごめん
- 291 名前:補足 投稿日:2004/07/04(日) 02:15
- シゲさんは寮生です。
从*・ 。.・从<実家は山口だから、入学と同時に寮に入ったの
( ・e・)<从 `,_っ´)は親戚の人の家で下宿してるんだっけ
从*・ 。.・从<さゆ、かわいいだけじゃなくて勉強もできるから、
東京に出てきたの
(;・e・)<(また人の話聞いてないし)へえ、そうなんだ
从*・ 。.・从<自分が怖いの
(;・e・)<(そこまで自分を疑わないあんたが怖いよ)
从*・ 。.・从<ところで岡村先生はなんでさゆに『シャボンだまー』って言わすの
好きなのかな
(;・e・)<さあねえ(『3年B組イロモノクラス説』ってホントかな…)
このふたりの場合――
<ヤグーチ! (〜^◇^)<答えにカワイイとかあるんですかあ?←矢口・高3
<可愛くないですか? (*^▽^)<えへへ!←梨華・中3
やっぱり担任は岡村だった―――。
- 292 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/04(日) 02:44
- ・心配り
家族旅行に出かけた後藤――
((( ´ Д `)←後藤・小3
ヽ^∀^ノ<よ!旅行、どだった? ←市井・小5
( ´ Д `)<んあ、どさんを買ってきたからあとでいちーちゃんにもあげるね
ヽ^∀^ノ<お、おう?(どさん?)
ヽ^∀^ノ<どさんってなんじゃ?そういう特産品があんのか?
〔お土産コーナー〕
煤R;^∀^ノ<アレか!
- 293 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/04(日) 02:45
- ・ツートップ
(;‘д‘)<自分の英語はほんまスゴイなあ。辻プロって呼んだるわ。テリープリンテ
( ´D`)<なんのなんの。あいぼんの『七目そう石』にはかなわねーのれす
(;‘д‘)<ウチのは小学校のときのやん(実家で昔のテストの答案見せるんやなかったわ…)
( ´D`)<のんが辻プロなら、あいぼんは加護プロれすね。
ふたりでクルクルパーショットを決めるれす
(;‘д‘)<遠慮しときますわ
( ´D`)<えー。のん、昔『バカ女』の称号を授けられて、
バカの名誉をほしいままにしてたんれすよ?
(;‘д‘)<喜んでんのかいな
( *´D`)<ちょっと嬉しいれす
( ´D`)<のんが『バカ女』ならあいぼんは『クソ女』なんてどうれすか。
50メートル走おせーれすし
(;´д`) <もっとイヤ
- 294 名前:グング 投稿日:2004/07/04(日) 02:52
- 更新お疲れ様です。
いや〜いつ見ても柴田姉妹はほほえましいですねぇ。
((((−Θ ΔΘ)フラフラフラ<美女…美女はどこじゃぁ…
村田さんがなんて事ならないのを心より祈ってます(笑)
- 295 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/04(日) 04:15
- ひ〜ちゃん、いいらさんを語る。
川‘〜‘)||<よっすぃ、カオたちおっきいからいつも後ろだね。ちっちゃい子がうらやましいよ。
(0^〜^)<しょうがないっすよ。
川‘ー‘)||ノ゜<お米がおいしくて、コメっちゃう。
(;0^〜^)<あ…あはは。
いいらさんの寒いギャグは、ほんと困るみたいです。
更新お疲れ様です。
ガキさん、あなたの幅広いニュースソースはどこから?
こんこんはマコから聞いたのか、直でガキさんとも繋がってるんですか?
ガキさんとマコは岡女でブレイクしましたよね。ガキさんの名づけ親は岡村先生です。
- 296 名前:Stargazer 投稿日:2004/07/04(日) 13:39
- 更新キテター!!w 今回の更新分、私の萌え所を突きまくってる
内容で嬉しかったです。ヤッスーがカッケーし、柴田姉妹の微笑ましい
姿も見れるし。でも、一番笑わせてもらったのはやはりシゲさんっすね。w
シゲさんとガキさんのやり取りに、飲んでたお茶を噴出して笑いますた。w
- 297 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/04(日) 14:16
- 大量更新お疲れ様です。
そうか・・・1号は本人なんですね。
アヤカ、つくづくえぇ人だぁ。こういう人、周りに欲しいなぁ・・・
顔文字劇場もたくさんですね。楽しいです。
次回も楽しみに待ってます。
- 298 名前:はれ 投稿日:2004/07/08(木) 21:18
- お久しぶりです。川‘〜‘)||と(0^〜^0)の会話している気持ちわかります。私も川‘〜‘)||と同じ位の身長です。
最近は、この二人の間に从*・ 。.・从が割って入ってきていますね。从*・ 。.・从はまだまだ成長期ですよね…
- 299 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:35
- ――その夜
村田から『書けたよ』と連絡を受けた斉藤は、慌てて彼女がカンヅメになってる
ニューオータニに向かった。
「2日で書いたって!?」
「正確には金曜の晩と今日も入れてトータル3日弱?」
斉藤が目を丸くする横で村田はコーヒーを啜る。
「まあ、ざっとこんなもんっしょ」
書き下ろしエッセイの仕事とは言え、いくらなんでも早や過ぎる。
斉藤は上がった原稿をチェックし始める。
「とりあえず、ちょっと寝るね。読んだら起こして」
村田は小さく欠伸して、スリッパを脱いでベッドに横たわった。
そのままぐーぐー寝てしまう。
「…すぐ校正出すか」
一通り読み終えたあと原稿を机に置き、斉藤は呟いた。
翌朝。
電話で斉藤に起こされ、村田は寝ぼけ眼でチェックアウトの支度をする。
斉藤に迎えに来てもらうまで、下のティールームで待つことにする。
斉藤はゆうべはいったん村田を起こして、そのまま帰った。
30分ほどして斉藤がやって来た。
そのまま一緒に出て、カウンターで宿泊費の清算を済ます。
「安く上がってよかったわ」
村田宅に向かうタクシーの中で、斉藤は言った。
「次は恵比寿のウェスティンがいいでーす」
「ああ?」
「…なんでもありません」
村田は肩をすくめて小さくなった。
- 300 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:38
- 村田の家に上がり、ちょうど昼時だったので、斉藤がラーメンを作ってやった。
「アンタは料理の才能だけは見放されてるよね」
村田はむくれたが、ラーメンを取り上げられるのはイヤなのでそのまま食べた。
「でもまあ、あのふたりのヌードのイラストもだけど、最後にアンタといい仕事が
できそうでよかったわ」
斉藤はお茶を飲みながら、穏やかな笑顔で言った。
「え…最後って」
村田は箸を止めた。
「文字通りよ。来年度は違う部署に異動になりそうだから」
「え…どこ?」
「まだはっきりとは分かんない。
今やってる平家さんの担当も多分違う人になると思う」
『ちょうどよかったわ』
と斉藤は言った。
「『ちょうど』って…どういうこと?」
「アンタに対して邪な感情があるからよ」
「ヨコシマ?」
「そ」
『もう子供じゃないんだから、どういうことか分かるわよね』
斉藤は村田の目を見て言い、席から立ち上がった。
「分かんない…」
「カマトトぶってんの?」
「違うよ。そういうのじゃ…」
斉藤は村田の顎を指で上げさせ、唇を重ねた。
濃い緑茶の味があるなあ。
村田はぼんやりとそんなことを考えた。
- 301 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:39
- 「アタシは、アンタが嫌いだった」
唇を離したあと、斉藤はぽつりと言った。
「知ってた」
村田は顔を上げる。
斉藤は言葉を失った。
「知って…たんだ」
「うん。だって、ひとみん、あたしがひとみんと有紀といるとき声かけたら、
すっげーイヤそうな顔してたじゃん。だから相当嫌われてるんだなーって」
「そうじゃないわよ。有紀は別に関係ないから」
「ハレ、違うの?」
村田は目を丸くした。
「簡単に言うとアンタの才能に嫉妬してたのよ。こっちは地方から出てきて作家になること目指して
せっせと小説書いて投稿したり色々やってんのに、アンタはすんなりデビューしたし」
「ああ…そうだったんだ」
「まあ、今考えたらしょーもない嫉妬だったけどね。逆恨みも甚だしいし」
斉藤はタバコを銜えて笑う。
「今も…嫌い?」
「なによ、らしくない。
いつも他人にどう思われてるかなんて、てんで興味ないクセに」
「ある…よ」
「あ?」
斉藤は灰皿にタバコを置いた。
「ひとみんに関しては、あるもん」
なんとも言えない空気が流れる。
斉藤はタバコをまた銜えて火を点け、
『中学生か…アタシらは』
自分たちの間に流れる一種甘い空気に俯いてしまう。
「ひとみんは」
「あ?」
「あたしのこと」
「分かった、みなまで言うな」
手の平で押しとどめた。
「なんで」
「編集とデキちまう漫画家ってベタすぎる」
「なんで」
「仕事に私情は挟みたくないのよ」
洗面所借りるわね、と斉藤はリビングから出て行った。
- 302 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:41
- 斉藤は手を洗い、バスルームから出てきた。
村田が俯いて両手で顔を覆っている。
「ん」
斉藤は持ってきたフェイスタオルを、ぶっきらぼうに差し出した。
ひったくるように大洪水となった顔をごしごしこする。
「アタシは」
斉藤はいったん間を置いて、
「嫌いじゃない」
目をふせて言った。
「うそばっか。じゃ、なんで」
「アタシも強い人間じゃないからさ」
仕事とかとズルズルになんのがイヤなのよ。
斉藤は困り果ててまたタバコを吸おうとする。
だがパッケージはカラだった。
くしゃっと握りつぶして、傍らの屑籠に放り投げようとする。
村田はまだ泣いていた。
「どうしたいの」
斉藤は苦虫をつぶしたような顔をする。
「本当のこと言って。
あたしをまだ嫌いなのか」
「だから」
村田が顔を上げる。
「行かないで。あたしから離れないで」
「一生の別れじゃないんだから。
仕事との区別はつけな。アンタもプロでしょ」
「イヤだ…どこにも行かないで」
村田はぼろぼろと泣いて、斉藤の袖を掴んだ。
「どこにも行くなって…なに言ってんの」
『よかったわ、大きな仕事が終わってから言って。ここまで取り乱すとは』と
斉藤は続けた。
「さっきひとみん、タオル持って来たじゃん」
「うん?」
「あたしが泣いてると思ったから持ってきたんでしょ。
絶対泣かすと思うくらいの自信があるんなら、どうしてすんなり異動を受け入れるのよ」
あまりの支離滅裂さに、斉藤はあ然とした。
「どうしてってねえ…異動はしょうがないことだし」
「取り乱すってことが分かってて終わるまで黙ってたくらいの自信があるんなら、
どうしてよ!」
村田はタオルを投げつけた。
その顔を見て、斉藤は敗北に似たものを感じる。
村田は声を上げて泣いた。
斉藤はしばらく黙って見ていたが、意を決したようにもう一度口づけた。
- 303 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:42
- 「これっきりだからね…」
そう宣言して恋焦がれた相手を腕にくるむ。
「聞いてないから」
まだ涙目のくせに、愛しい相手は小悪魔のように笑う。
伸ばされた腕の中に入っていく。
「カラダの欲望なんかすぐ醒めるわよ」
「うん…そうだね」
目を閉じた彼女を、綺麗だな、と本気で思った。
「ねーちゃーん、いないのー」
なんの曇りもない朗らかな声に、リビングのふたりは固まってしまう。
「なんだー、ねーちゃんいるじゃ…ん」
柴田はリビングのドアに手をかけたまま、やはり固まってしまう。
「えー…と」
その1→姉ちゃんが斉藤さんを食べようとしている。
その2→暑いのでまっぱになっているところだった(真冬なのに)。
その3→姉ちゃんの大嫌いなゴキブリが出現し、格闘してるところだった(何故か裸で)。
柴田の脳内に様々な仮定が現れる。
床のふたりは、しばらくたって我に返り、そそくさと脱ぎ散らかした服を身にまとう。
- 304 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:43
- ――5分後
なんとも気まずい中、3人でお茶を飲む。
柴田は小さくなり、
「あの…ごめん…なさい」
頭を下げた。
「い、いいって!ね、村田!」
「う、うん。気にすんな、妹よ」
ふたりはとってつけたように明るく笑う。
「あのお…」
「なに?」
斉藤が振り返った。
「おふたりはぶっちゃけ…そういう関係になったばっかなの?それともあたしが知らないだけで、
ずっと前からそうだったの?」
「い、いや…ヤったのは今日が初めてだったけど」
「ヤったとか言うな!」
斉藤は赤くなって、村田の頭をはたいた。
「そ、そうなんだ。あの…第一ラウンドの途中だった?」
「うむ。まさしく」
村田はまた斉藤にはたかれる。
「そ、そっか…あの、本当にごめんね」
「気にすんなってー。また機会はあるし」
機会って。
斉藤は頭を抱えた。
- 305 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:46
- ―――同じ日。朝比奈女子高校。
「「あ」」
田中と紺野は同時に声を上げた。
放課後、図書室で手作りチョコの本を探していて、同時に同じ本に手が伸びたのだった。
「こ、ここここんにちは」
紺野は赤くなって手を引っ込めた。
「こ、こんにちは」
田中も手を引っ込める。
だが、一瞬でも紺野の手に触れられたのでかなり嬉しい。
首もとの赤いマフラーに意味もなく触れる。
「あ、バレンタインのですか」
田中のダイレクトな質問に、紺野はテンパって、
「ははは、はい。あ、仲のいいお友達に差し上げようと思いまして」
第一の目的は小川だったが、辻たちにも何かあげようと思っていたのであながちウソではなかった。
田中は『そうですか』と言い、
「あの、これ、結構詳しく作り方載ってました。お菓子の種類も多かったし。よかったら」
自分がさっきまで見ていた本を紺野に手渡した。
「じゃ」
「あ、あの!」
紺野が引きとめようとしたが、田中はさっさと図書室から出て行った。
- 306 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:47
-
「は〜あ…」
図書室を出て、田中は廊下の壁に手をついて大きく息をついた。
「50点なの」
道重がぬっと現れる。
「わあっ!あんた、どっから出たと!?」
「一部始終見てたの」
「覗き見か。趣味が悪いっちゃ」
「覗きじゃないもん。れいなちゃんを応援しようっていう先輩心だもん」
そう言って道重はぷうっとふくれた。
「そう。それは悪かった」
「紺野さんに本を譲ったついでに自分の好きなお菓子も言ったらよかったのに。
もしかしたら作ってくれたかもしれないのに」
「そんな図々しいことできないっちゃ。あんたじゃあるまいに」
「さゆはあんた呼ばわりなの?」
「先輩なら先輩らしく振る舞うのが筋たい」
田中の言う事もかなり変だが一理はあった。
「ね、紺野さんへチョコあげるの成功したらさゆにチョコパフェおごってよ」
「なんでそうなるね」
「さゆ、協力するの」
「あんたがしゃしゃり出たらややこしいなりそうだからいいっちゃ。
気持ちだけもらっとく」
「もお〜。さゆはさゆなりに心配してるのに〜」
「いいって。自分でなんとかするから」
道重はその場で地団駄を踏んだ。
めんどくせー人たい。
田中は心底あきれた。
「あんたは小川先輩にあげるチョコの心配でもしてればよかと?」
「さゆは完璧だから大丈夫だもん♪」
「ああ、そう…」
「あ、そうだ♪」
道重はポン、と手を叩いた。
仕草がいちいちクラシカルだった。
頭の上に電球も光っていたかもしれない。
「一緒にチョコ作ろうよ!さゆ、学校の寮に入ってるから、寮母さんに頼んでお台所使えるように
頼んであげる」
「え〜。なんであんたとチョコ作らないかんとね」
「だって、さゆたちは協力したほうが絶対うまくいくと思うの!」
「なんで」
「さゆ、天才だから分かるの」
「…はぁ」
田中はげんなりとする。
道重はひとりご機嫌で、ルンルンというようにその場でスキップしていた。
- 307 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/14(水) 03:48
- 新垣は自宅で宿題をしていた。
そこへ小川が遊びに来る。
「よお、しっかり学んでるか?」
「なに〜?いま、忙しいんだけど」
「かーさんがマフィン焼いたから里沙にもやれって」
「あ、ありがと」
休憩することにし、椅子に座ったままお菓子を食べる。
小川は床にあぐらをかき、オッサンくさい格好でお茶を飲む。
新垣はその姿を見て、
『どーしてこんなオッサンくさいのがモテるんだろ…』
と心の中で首を傾げる。
「もーすぐバレンタインだなー」
「そうだね」
「里沙は誰かにやんの?」
「いやー、特には」
新垣はちょっと考え、
「シゲさんたちと交換するかもだけど」
そう言うと、小川は真顔で
「え、おめーシゲさんとデキてんの?」
聞き返した。
「バカ」
思わず言ってしまった。
「なんであたしがシゲさんとデキてんの。
絶対ありえないし」
「だって、さあ」
「なにさ」
「だって、よくつるんでんじゃん」
「それは新垣塾仲間で同じクラスだからでしょ〜」
「そっか」
小川はそう言い、ぽりぽり頭をかいた。
「もー、まこっちゃんつきあってらんないよ。
ほらもー、帰って早く宿題でもしなよ。
ほら、帰った帰った」
「なんだよお、もー。
せっかくバレンタインに欲しいモン聞いてやろうと思ったのによー」
「あたしはいいから別に」
背中を押してさっさと追い出して、宿題のつづきに取り掛かる。
しばらくたって道重からメールが届いた。
『从*・ 。.・从<れいなちゃんとバレンタインのチョコ、手作りすることになったの。
さゆ、今年はやるよ!』
「はぁ?田中ちゃんと?」
組み合わせの微妙さに、新垣はまたもや首を傾げた。
- 308 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/14(水) 03:50
-
ウマガウマイコトハシッタ…
川‘〜‘)||ダジャレ研究
( ゜皿 ゜)交信中
ウマガウマイコトハシッタ…ネ オモロクナイ?
川^〜^)||ダジャレ発表
更新しました。
レスのお礼です。
>グングさん
(−Θ ΔΘ)<美女ー。美女はいねがぁ
初レスの方でしょうか。ありがとうございます。(勘違いでしたらスマソ)
柴田姉妹はある意味ラブラブなのです。
>ヨッスィのタマゴさん
川‘〜‘)||<コーディネートは、こうでねえと!
彼女のだじゃれをはっきり面白くないと言い切るのはシゲさんだけでは(w
ガキさんは幅広い人脈を誇る女なのです。
>Stargazerさん
从*・ 。.・从<さゆは笑わせるつもりじゃなかったよ?
シゲさんは本気です。ガキさんはそんな彼女を持て余しっぱなしです。
今回は田中さんが振り回されてますが。
>ピクシーさん
川‘.▽‘)||<フフ、ありがと♪
アヤカはみんなのおねいさんです。私もこういう人いてほしいですね。
おかゆでも雑炊でも残さず食います(w
>はれさん
(0^〜^0)<わあ、背が高いんだね!
自分は156(公称)しかないので正直うらやましいです。
でも、高い人には高いなりの悩みがあるんでしょうね。
- 309 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/14(水) 07:17
- 更新お疲れ様です。
バレンタインの時期ですか。物語ではまだ1年経ってないんですよね。
なんか、1年でこんな出会い&出来事がある人生・・・憧れますね。
昔スレのレスにもありましたが「めぞん一刻」を連想します。
アヤカが作ってくれたら、自分も残さず・・・(w
それと、ぼんさんが作ってくれたらどんな重病状態でも残さず(w
次回も楽しみに待ってます。
- 310 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/15(木) 03:59
- (0^〜^)( ^▽^)( ´D`)( ‘ д‘) マシューTV [(`.∀´)]
( `.∀´)ノ○<ホタテおいし〜。
( ´D`)<うまそうれす。おばちゃん一人でずり〜のれす。
( `.∀´)ノ○<あ〜、お酒欲しくなってきた。
(;´д`)<おばちゃん、それアイドルのコメントちゃうで。
川;`.∀从<あ〜〜!!風が強いです!!(船で移動中)
(;0^〜^)(;^▽^)<保田さん、髪が乱れて恐いです。
さすが圭ちゃんは期待を裏切らない、必ず笑いを持ってきます。
从 `,_っ´)<更新おつかれっちゃ。
こんなかわいいムラさんは初めてですね。ひとみんは、遠くへ行っちゃうんでしょうか?次回の柴田家の人々はいかに?
川σ_σ||(−○Δ○) ξξ“ З.“)( `_´)
れいなちゃんの周りはボケが多いので、ポジション的にツッコミですね。
PS ごまさんの156cmは、岡村先生と同じ高さです。
- 311 名前:グング 投稿日:2004/07/16(金) 00:36
- 更新お疲れ様です。
ハイ、初レスです。
すみませんご挨拶もせずに…はい、ヤッスーさんも一緒に
( `.∀´)>ウチのバカが申し訳ありません・・・ってなんで私もなのよ!
ってな訳でこれからぽちぽち出現させて頂きますんでヨロシクお願い申し上げます。
(−○Δ○) 人(ξξ“ З.“)←このお2人どうなるのか・・・いやはや楽しみです!
- 312 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:15
- ―――吉澤視点
アヤカさんと学校帰りに、ちょっと渋谷に寄った。
どこもかしこもバレンタインだ。
アヤカさんはデパ地下でチョコを2つ3つ買っていた。
「よっすぃ〜は梨華ちゃんになんかあげるの?」
帰りの電車の中で、アヤカさんが聞いてきた。
「ハァ、それが」
ウチはちょっと顔を曇らせた。
「グッチの星座のペンダントあるじゃないですか」
「うん」
「ネットで安いの探したんスけど、山羊座のがなくって…」
「ちょうどバレンタインと時期カブるからね、その時期生まれの人とか注文が殺到したのかも」
「誕生石のも探したんスが、なんか山羊座のは梨華ちゃんがするにはビミョーで」
『ショップで買うと高いし…』
独り言のように言ってると、
「誕生日には何あげたんだっけ」
そう聞かれて、ウチはちょっと顔を赤くした。
「え、あ…ドライブして、ファミレスでメシってコースっす。
ウチがデート代持って」
「そういうので充分だと思うよ。好きな人と一緒にいるのが幸せなんだから」
アヤカさんはちょっと寂しそうに笑う。
ああ、そうか…。
「すみません」
「謝らないの。遠距離もなかなか会う度新鮮なんだから」
笑って頭をぽんぽん叩かれた。
「ミカさんにはなにあげるんスか?」
「んー、考えてるトコ。とりあえず、時計を返してもらわないと」
「時計?」
「そ。いやー、お正月の時に『次に会うまでの人質』って大事な腕時計を取られてさあ」
「へえ。あ、いつもしてるピンクっぽい色の文字盤のっスか?そういや、最近違うのしてますね」
「うん、これはおばあちゃんに買ってもらったのだけどね」
アヤカさんがちょっと袖口をめくってみせた。
なんだか女っぽい時計だった。
すぐそばにいたサラリーマンのお兄さんが、アヤカさんの手首を見て赤くなっていた。
うっわー。
手首だけでここまで色っぽいとは。
こんなモテモテな彼女持ったらタイヘンだろうな。
梨華ちゃんも無意識にフェロモン全開だし。
『お互い苦労するッスね』
ウチはハワイにいるミカさんに、心の底から共感した。
- 313 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:35
- 夜、ウチが部屋で雑誌めくったりして、バレンタインになにをあげるか唸っていると、
あいぼんが『ちょっとギター見てくれへん?』とやって来た。
ギターを見てあげてる間、あいぼんはベッドの上に伏せた雑誌を見て、
「無難にチョコでもあげたらどないや」
とウチは何も言ってないのに意見した。
「でもなあ、うーん…」
「初めからトバしすぎたら次の年からキツなんで」
年下とは思えないようなアドバイスを授かった。あいぼんさん、オトナだよ…。
「あ、そういやおめーももうすぐ誕生日だな」
「ついでみたいに思い出してくれてありがとう」
あいぼんは苦笑する。
「なんか欲しいモンあるか?」
「エエでー、別に。それで梨華ちゃんになんかエエもん買うたりぃやあ」
「おめーはほんまイイ子だなー。ウチが男ならおめーみたいな娘ほすぃよ!」
「自分、ゆってることおかしいで」
ウチはがしがしとあいぼんの頭を撫でた。
あいぼんは『もー!やめてんか』と顔をしかめた。
- 314 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:37
- 同じ頃。アヤカ宅。
アヤカにハワイから航空便が届く。
早速包みを開けると、
「おお…」
中身はニーマン・マーカスのチョコレートのかかったポテトチップスと、
さっき吉澤と話していた誕生石のペンダントだった。
すごい偶然にアヤカは少し驚く。
この前フランク・ミュラーの時計を人質に取ったので、ミカなりに悪いと思ってるようだ。
「これは…自分にも同じものを寄越せってこと?」
皮紐を上に掲げ、グレイっぽい石の自分の誕生石を電灯にかざす。
ハズしたものを買ったらまた拗ねるかもしれない。
パソコンをつないで、ネットで双子座の石のペンダントを探すことにする。
「…ないし」
クリックする手を止めてアヤカは苦笑いする。
あちこちのサイトを覗いたが、売り切れだった。
オークションも落札済みばかりだ。
「んー、買いに行くしかないか」
アヤカはパソコンを閉じ、椅子に座ったまま伸びをした。
- 315 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:43
- ―――翌日。朝比奈女子高校。
その日は加護と辻、紺野は食堂で昼食をとった。
約束していたわけではないが、小川たちも一緒になる。
辻と加護が弁当を広げる。
その場にいる全員が『あ…』と息を呑んだ。
弁当箱こそ違うが、中身がまったく一緒だったのだ。
ウィンナーはベタにタコである。
「お、おそろいのお弁当ですか」
紺野が皆の胸のうちを代弁するように尋ねると、
「ののが作ってくれてん」
加護が事も無げに答えた。
『手作り弁当!』
『しかも辻ちゃんの!』
学園のすべての辻ヲタの願望を、さらりと叶える女・加護亜依(15)。
「あいぼん、おいしいれすか」
「まあなあ」
そう言った矢先におにぎりを口にし、加護は顔をしかめた。
「このおにぎり…しょっぱいなあ」
「えー、そうれすかあ…しょっぱいれすね」
辻も自分のを食べて顔をしかめる。
「あいぼん、あーん」
辻は自分のタコさんウィンナーをフォークで刺して、加護の口元に持っていく。
言われるまま、加護は口を開けた。
「つーか、同じおかず入ってんのに」
小川のツッコミがスルーされるくらいふたりは別の世界だった。
- 316 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:47
- ―――放課後
『まただ』
下駄箱から一通の封筒を取り出し、紺野は顔を曇らせた。
あたりに人がいないのを確かめて封を開ける。
『次の学年末テストで成績を下げないと、あんたの知られたくない話を言いふらす』
ワープロで打ったのか、無味乾燥とした字体が素っ気無く便箋に並んでいる。
『このところ頻繁だわ…本当になんだろう』
急いで鞄の中にしまおうとすると、
「紺野先輩」
聞き覚えのある声にびくっとする。
「いま帰りですか」
付属中学の田中れいなだった。
紺野は慌てて便箋をしまおうとする。
だが慌てすぎて下に落としてしまう。
「あ、ごめんなさい。れいな、急に声かけたから」
田中は謝りながら地面のそれを拾おうとする。
「あ…!」
紺野が止めようとするのも間に合わず、その文面は田中の目に入ることとなる。
「な…」
田中は絶句する。
「なんね!これは!?」
便箋を手にし、青ざめて紺野の顔を見る。
紺野はその便箋を無理矢理奪い返し、
「どう処理するかはわたくしが自分で決めます。
今見たことは忘れてください。誰にも言わないで」
早口で言い、その場から立ち去ろうとする。
- 317 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:54
- 「紺野さん!」
田中は急いで追いかけた。
「待って!これどうゆうことっちゃ!?」
「わたくしにも分かりません。
いいですか、面倒なことにあなたを巻き込みたくありません。
だからこのことは忘れて早く帰ってください」
「れいなは邪魔ってこと?」
「邪魔とかそういうレベルの問題じゃありません。
タチの悪いことですから、なるべくひっそり片付けたいんですよ」
「れいなにできることがあるんなら協力するたい!」
「頑固ですね、あなたも」
紺野は小さく溜息をついた。
「何故自ら面倒な問題に関わろうとするんですか。
あなたに何かあったら」
「好いとぉから」
「…何を」
「紺野さんを、好いとぉから」
「…なにを一体」
紺野は絶句した。
紺野と田中は、駅前から少し離れたファミリーレストランに入って行った。
ドリンクバーを頼んで、ふたりとも温かいココアを注いで来た。
「いつからこぎゃんヘンな手紙が?」
しばらくたって、田中は口火を切った。
「…ついこの前からです」
「辻さんたちは知っとーと?」
「いえ、誰にも言ってません。
さすがに頻繁に続くので、両親に相談しようかと思ってましたが」
「早く言ったほうがよかよ。
先生にも」
「ええ。うちのクラスの先生は信頼できる方なのでよかったです」
「それにしても、誰がこぎゃん」
田中は顔をしかめながらさっきの便箋を広げた。
「わたくしのことを嫌いな方がいるってことでしょうね。
いえ、嫌うというよりは憎いのでしょう」
「どうゆうことと?」
「ただ嫌うだけやったら、ここまでしません。
なにかしら、わたくしがその方に、憎しみの感情を抱かせるようなことをしてるんでしょう」
「紺野さんはそぎゃん人やなか」
「好意を持ってくださるのは有り難いですけど、万人に好かれるということはまずムリですよ」
紺野はココアを口に含んで、苦笑いした。
「それに」
「なん?」
- 318 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 08:58
- 「人間の行動のすべてが善意に起因してるわけではありませんよ」
紺野は表情を曇らせた。
田中は何のためらいもなく、
「れいなは紺野さんのこと、ばり好いとぉ」
まっすぐ紺野を見つめた。
紺野は一瞬真顔になった。
やがて俯いて、
「…やめてください。恥ずかしいから」
真っ赤になってぼそぼそ呟いた。
「ほんまばい」
「分かりましたから」
「とにかく、れいなも犯人探しに協力すると」
「お願いですから危ないことはなさらないでください。
これは子供の遊びじゃないんですよ」
『もし犯人を悪戯に刺激することになって、取り返しのつかないことになったら』
紺野は眉を顰めた。
自分の巻き添えにだけはしたくない。
「分かっとぅとよ。とにかく、紺野さんがなんと言ってもれいな、こん件から手ば引かん」
田中は意地でも関わるつもりのようだ。
紺野はまた、溜息をついた。
- 319 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/19(月) 09:00
- 更新しました。
うさんくさい博多弁はお許しください(汗
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ‘ д‘)っフ<おかいさん食べる?暑いけど
从;#~∀~从<風邪も引いてへんのにおかいさんかいな
彼女らもそれまでにないくらい濃い1年かと思われます(w 夏なのにバレンタインだし(ニガワラ
「めぞん一刻」はたまに言われますね。ぼんさんももう卒業なんですよね(遠い目)。
>ヨッスィのタマゴさん
(;`.∀´)<ただいま日本の最北端にいます ←強風でデコ全開
(;`.∀´)ノ<あー、流されちゃった… ←ウニ漁にて
ムラさんかわいさ全開です。れいなは周りがボケすぎて、いたしかたなくツッコんでます。
…そうか、私は岡村先生と同じ背丈なのか(ニガワラ 情報ありがとうございます。
>グングさん
(−Θ ΔΘ)<どうなんの?
ξξ;“ З.“)<だからアンタが聞くなっつーの
ノリツッコミしてるヤスがツボです(w こちらこそ、よろしくおながいします。
出現お待ちしております(w 村斉は友達期間が長いのが最大の壁なのです。
- 320 名前:芥龍 投稿日:2004/07/19(月) 09:16
- 更新お疲れ様です。そして初めまして
ずっとROMっておりました。
圭圭がとても好きで、毎回毎回更新を楽しみにしておりましたが
今回リアルタイムで更新を見ることが出来たので思わず書き込んでしまいました。
内心ヤキモキしていた村斉もようやく進展。
今回も少し大人な紺野さんにまっすぐなれいながいいですね。
まっすぐ過ぎてムチャしなきゃいいんですけど……
- 321 名前:グング 投稿日:2004/07/19(月) 22:31
- 更新お疲れ様です。
さっそく出現させていただきました。
いや〜辻加護学生らしくさわやかでいいっす。和みます!
そしてコンコンあんた大丈夫かぃ!?ってか田中さんタメ語っすか・・・さすがですv
友情が最大の壁・・・。確かにそうかもしれません
でも村田さんなら無理矢理にでもぶち破りそうな気がしてなりませんw
(−Θ ΔΘ)<うーぬ・・・こうぬぁったら・・・あゆみぃ!たぃほうよぉいせよ!
川σ_σ||ノ<イエッサ♪
ξξ;“ З.“)<えっ?ちょ、ちょっとマジ!?
ってな感じな気がしますw
- 322 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 23:53
- 翌日。
―――吉澤視点
朝、洗面所で顔を洗ってると、あいぼんがタオルを持ってとてとてやって来た。
何となくバレンタインと誕生日の話になる。
「おめー、今まで嬉しかったプレゼントってなに?」
参考のためそう聞くとあいぼんは少し困ったように、
「お母ちゃんが…焼いてくれたケーキ」
と答えた。
お母さんのケーキか…。
確かに敵わないな。
勝てるとも思わないけど。
「そっか」
並んで歯をしゃこしゃこ磨いた。
夕方、バイト帰りに梨華ちゃんとちょっとおでかけした。
あいぼんの誕プレ探すのと、今度一緒に見る映画の前売り買いに行くためだ。
「何がいいだろね〜」
色々見たが、なかなかいいのがない。
「あ、ひとみちゃん。
あたし、口紅見てもいいかな」
「おおよ」
一緒に輸入モノの化粧品とか扱ってる店に入っていく。
梨華ちゃんが吟味してる間ヒマなので、ぶらぶらとそこいらのものを見る。
たまに『どう?』と意見を求められるので、その都度私見を述べる。
なんとなく周りのものを見てると、ピンクの容器の香水が目に入った。
新発売なんか、特設コーナーが作られている。
なんかオモロそうなんで、近づいていく。
「いかがですか。この春限定発売です」
売り子のおねーさんに言われたので、リトマス紙みたいな紙にテスターをスプレーして
2、3度振って匂いを嗅いでみた。
うん、悪くね。
「ひとみちゃん、買うの?」
後ろから梨華ちゃんが近づいてくる。
「あ、ウチのじゃないよ。
あんさ、これあいぼんにどだろ?」
「え?」
梨華ちゃんにさっきのテスターの紙を近づけると、
「…いいね!」
手を叩いて賛同してくれた。
「あのー、これプレゼント包装でお願いします」
梨華ちゃんとワリカンで『チェリーブロッサム』っちゅう香水を買った。
春らしくて、なんとなくあいぼんっぽい香りだった。
- 323 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/19(月) 23:56
- 帰ったら、中澤さんと梨華ちゃん宛に平家さんからエアメールが届いてた。
『ヨーロッパを転々としてます』とのことだった。
「平家さんは今どこおんの」
あいぼんがお菓子を食べながら尋ねる。
「ブルガリアだって」
梨華ちゃんが絵葉書を読み返して言った。
「ブルガリア?何しに?」
「さあ、ヨーグルトでも買いに行ったんちゃうか」
中澤さんはお茶を飲みながら素っ気無く答える。
「裕ちゃんったら、全然マジメに答える気ないんだから」
梨華ちゃんはちょっとあきれたように言った。
そこへ電話のベルが鳴る。
国際電話で、平家さんからだった。
最初にウチが出て、ブルガリアへヨーグルト買いに行ったんスか、と尋ねると、
『姐さん、ホントにウチの話聞いてへんなー』
平家さんは可笑しそうに笑った。
ブルガリアにいたのは、今度のアルバムにそこの民族楽器を使うから、
それの打ち合わせとPVの撮影のためだそうだ。
今は出演依頼のあった映画の撮影で、パリにいるらしい。
今パリは昼の2時らしい。
撮影の合間にかけてるとのことだった。
- 324 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/20(火) 00:00
- すぐ中澤さんに代わると、二言三言喋っただけですぐ受話器を渡された。
『おう。自分、なんかみやげで欲しいモンあるか』
「温泉まんじゅうがいいっす」
平家さんが電話の向こうでゲラゲラ笑ってるのが聞こえた。
ちびっこに代わってと言われたので、あいぼんに受話器を渡した。
『よう、ちびっこ。
なんか欲しいモンあるか。加護はもうじき誕生日やろ』
「あ!シャネルの22番買うてきてください。
ニッポンじゃなかなか売ってへんし。お金はあとで払いますさかい」
『了解。辻は?』
「のんはお菓子でいいれす」
『なんや、遠慮せんでエエねんで』
「んー、じゃ、あいぼんと同じでいいれす」
『んー、分かった。姐さんによろしゅうにな』
中澤さんは心なしか、機嫌が悪いようだった。
電話に出てもなんか素っ気無かったし。
梨華ちゃんにそれとなく尋ねると、
「いやね、平家さん、今度の映画でベッドシーンがあるらしくって、
裕ちゃんそれでずーっと怒ってんのよ」
苦笑いして教えてくれた。
- 325 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/20(火) 00:04
- その後平家は、保田にもかけた。
ちょうど保田の家で安倍、矢口、飯田、後藤と集まって飲んでいるところだった。
安倍はアルコールの弱いカクテル一杯で潰れて早々におやすみタイムである。
『ごっちん、おみやげ何がええ?』
「ごとー?んんー、チョコとかなんかおもしろいおもちゃがいい」
『なっちはー?』
「なっち!ホラ、みっちゃんがパリ土産なにがいいかって」
矢口が揺すると、
「ん…ボブ・ディランのブートレット。『レイ・レディ・レイ』入ってるのがいいべ」
寝ぼけてる割にはしっかりリクエストする安倍だった。
「注文細けえ!」
飯田たちはゲラゲラ笑う。
- 326 名前:雪の降らない街 投稿日:2004/07/20(火) 00:09
- 「んあ。へーけさん、映画にも出てたんだ」
電話を切った後、後藤はクッションを抱えてゴロンと寝転んだ。
「結構昔からちょくちょく出てるよね」
と飯田。
「ん。たいてー脇役だけど」
矢口も頷く。
「大きな映画館でやるような映画ではないけどね」
保田は、平家の映画出演に関してコメントが載ってる雑誌を取り出してくる。
「今度のはミニシアターでレイトのみの上映予定だって」
メガネをかけて記事を読み上げた。
「ほお。それはまたマニアックな」
矢口は素直な感想を漏らす。
「あの監督のだしねー」
3人で雑誌を覗き込んで頷きあった。
「みっちゃんは今回音楽も担当だべ…」
安倍はうっすら目を開けて、蛍光灯の光に顔をしかめながらマニア情報を口にした。
「なっち、起きてるし!」
3人はまたゲラゲラ笑った。
- 327 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/20(火) 00:16
- 更新しました。
(・´ー`)<ブートレットっていうのは海賊版のことだべ。
レコーディングの段階でボツになった音源なんかも入ってたりするっしょ
(〜^◇^)<なっちのリクエスト、マニアックすぎるし
(;・´ー`)<うん、自分でもそう思うべ。完全に寝ぼけてたっしょ
(;〜^◇^)<(あれでかよ)
レスのお礼です。
>芥龍さん
(*−Θ ΔΘ)<リアルタイム…ポッ
初レスありがとうございます。やすかおヲタでいらっしゃるんですか。
これからもどうぞよろしくお願いします。
>グングさん
(−Θ ΔΘ)ノ<ぶれーいするー 斉藤をブチやぅぶれい♪
田中さん興奮のあまり、敬語を忘れてます。
村さんはその気になればイイ仕事してくれます。
- 328 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/20(火) 00:19
- ・ランチタイム
おそろいの弁当でランチな辻加護…
( ´)д`)モグモグモグ
( ´D`) テヘテヘ
川;・-・)<(キティーちゃんのお弁当箱に、タコさんウィンナー、ウサちゃんのリンゴ。
基本をハズさないベタさです。完璧です)
∬∬;`▽´)<すげー。さりげに豪華だよなー。エビフライまで入ってるし
(;・e・)<野菜もちゃんとあるし。彩りも完璧だね
( ‘д‘)<なんや。自分ら欲しいんなら食うか?
( ´D`)っ▽<リンゴ食べるれすか?
( ‘д‘)<おにぎりはしょっぱくてイケてへんけどなあ
( *´D`)<もー、あいぼんのいじわる
川;・-・)∬∬;`▽´)(;・e・)
(;・e・)<(これって、新しいプレイ?)
- 329 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/20(火) 00:21
- ・ブーム
「冬ソナ部」部活動中…
部長→川*´〜`)||( *‘д‘)←部員 〔TV〕
(;`.∀´)<なにゆえ人ん家で部活動をするかね マァ、イイケド…
ヨンサマキタ━━(゚皿゚)━━( ゚皿)━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(皿゚ )━━(゚皿゚)━━!!!!!
ヨンサマハァ━━━━━*´д`━━━━━ン
( `.∀´)<ところでヨン様のフルネームってなんだっけ
煤i ゜皿 ゜)煤i ゜д゜)
(;`.∀´)<(知らんのかよ…)
- 330 名前:芥龍 投稿日:2004/07/20(火) 00:28
- 更新お疲れ様です。レス番増えてるな〜っと思って覗いたら
またリアルタイム更新でした(w
圭圭ヲタ……まぁ正確にはやすカプヲタで特に圭圭って感じです。
今はもう閉鎖してしまいましたが昔は圭圭小説サイトなんぞ生意気にもやっておりました。
あいぼんはとんでもないリクですな……そういう化粧品に関しては無知なので
検索かけて仰け反ってしまいましたよ……
- 331 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/20(火) 00:59
- どわっ!大量更新が2回も・・・お疲れ様です。
ぼんさんとのんさんが、良い感じになってきましたね。
対照的に、コンコンは大変な目にあってますが・・・
時に、ぼんさんはしっかりギター続けていたんですねぇ。
梨華ちゃんもコソーリ「ピンクのZO−3」で頑張ってるのかな?
「冬のソナ部」なるものがあったんですねぇ(w
知られざる一面をまた発見しました。
次回も楽しみに待ってます。
- 332 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/20(火) 02:29
- 更新お疲れ様です
川;・-・)<遊びじゃないんです!なんで私なんかに構うんですか・・・!!
从 ` ヮ´)<好いとぅから。れいなは紺野さんのこと好いとぅから。
川* ・-・)<・・・・!!!
ストレートなれいなさん
こんな台詞をさらりと言えるのはれいなかキムタクくらいです
( ‘ д‘)<シャネルの22番買うてきてください
( ;`◇´)<ええけどませてんな自分・・・
中高生がシャネルの香水と思うとこんな風に感じてしまうのは自分が古い人間だからでしょうか?
パリのシャネルで家族の買い物中店をぶらぶらしてたらスーツ黒人ガードマンさんに話しかけられて
冷や汗かきまくりました・・・
(;^〜^)<見てるだけ!怪しくないYO!
( ´D`)<??めいあいへるぷゆー??
- 333 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/20(火) 04:16
- ( ´ Д `)<え〜汝は、今何時? (´▽`;∬∬川VvV;从
クククッ(´ Д `*) 川VvV+从<つまんない!
( ´ Д `)<オー失礼。では…汝は、 (´▽`∬∬<バンバンジーはなしですよ。
(+` Д ´)<… (´▽`;∬∬<いえ、好きなようにどうぞ。
( ´ Д `)<では…汝は、バンバンジー。
クククッ(´ Д `*) (´▽`;∬∬川VvV;从
川‘〜‘)||<それいいなあ。
更新お疲れ様です。
从*・ 。.・从<れいなちゃん、がんばってね。さゆ応援してるから。紺野さん大丈夫かな?さゆも怖いよ。絶対かわいすぎて嫉妬されてるから。
从;`,_っ´)<いや、逆にあんたの方が怖くて誰も近寄らんタイ。
まあ、シゲさんは関係ないですが、こんこんが心配です。
@( ・e・)ここはガキさんの大きな耳で、何か情報はつかめないでしょうか?
- 334 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:08
- ―――2月1日。中澤家。
「うおー!寝過ごしたあー!」
加護がどったんばったん階段を駆け下りてくる。
「どうしたんれすか」
バイトに出かける前のひとときを、台所でまったり過ごしていた辻は、
あまりの騒がしさに入り口から顔を覗かせる。
梨華と、遊びに来ていた後藤も居間からやって来る。
「オトンと待ち合わせやのに寝坊してもたあー!12時待ち合わせやのにー!」
「ああ、そんでそんなおめかししてるんれすね」
加護は髪を三つ編みして寝て起きてからほどき、ふわふわのソバージュになっていた。
淡い色の大人っぽいワンピースを着ている。
「どこ行くんれすか」
「銀座や」
「ザギンでシースーれすか」
「オマエはいつの時代の業界人や」
ツッコんでいると、アニメの着メロが鳴った。
「あ、メールや」
鞄から携帯を取り出す。
「なんや、『待ち合わせはソニービルにしてくれ』
うおー!ソニービルてどこー!?」
「数寄屋橋の交差点とこだよ。んあ、ごとーバイクだから送ったげる」
後藤がすたすた歩き出すと、
「ご、ごっちん、免許持ってんの!?」
梨華が慌てて言った。
「あっは!いくらごとーでも無免でバイク乗らないって」
その後を加護は慌ててついていく。
ストラップのついたよそ行きの靴を大急ぎで履いた。
「ほら、コレかぶって」
後藤は加護の頭にヘルメットをかぶせ、自分もかぶってバイクにまたがった。
加護もスカートを気にしながら後ろのシートにまたがる。
「しっかり掴まってなよ〜」
「はい、師匠」
バイクは一路、銀座に向かった。
- 335 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:11
-
「着いたよ!」
後藤は大声を上げる。
「あっは!3分前に到着!すごくない?」
ヘルメットを脱いで、カラカラと笑う。
「師匠、ほんまにすんませんでした」
バイクから降り、メットを後藤に渡す。
もう一度礼を言い、待ち合わせ場所に走っていく。
黒いカシミアのコートを来た男性の元へ加護が近づいて行く。
『あの人が加護ちゃんのお父さんか』
小柄な加護が並ぶと彼女がもっと小さく見えるくらい、ガタイのいい男性だった。
加護の父と目が合い、後藤は頭を下げた。
向こうも軽く会釈する。
加護がこちらに向かって大きく手を振る。
後藤は小さく振り返し、またメットをかぶってバイクにまたがった。
―――その日の夜。中澤家。
「…ただいまあ」
玄関で加護の声がする。
「お、帰ってきょった」
裕子は箸を置き、席から立ち上がった。
加護が大荷物でふらふらと入ってくる。
タクシーで帰ってきたのか、車が走り去る音がした。
梨華は玄関まで行って、荷物を半分持ってやった。
「おお、えらい大荷物やな」
「はいぃ〜。あ、これ、うちのお父ちゃんからです」
紙の手提げの中から大きなお菓子の包みを出した。
「おお、えらいまた。おおきになあ」
「お菓子れすか?」
辻の目が輝く。
「うん。クッキーとかの詰め合わせや。
あ、こっちはののにって」
「ののにれすか?」
「うん、お父ちゃんアンタのこと気に入ってるようやし」
「わあ、ありがとうれす」
綺麗なチョコレートの小箱を受け取り、辻は嬉しそうに包みを撫でた。
その様子を見て、梨華も微笑む。
- 336 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:13
- 「お父さんにエエとこ連れてってもうたんか」
裕子は加護の分のお茶の支度を始める。
「はあ、マキシムちゃらいうトコでメシ食って、そのあとティファニーに連れてかれました」
「マキシムにティファニー?えらいまた頑張らはったな」
「ウチもそう思います」
加護はお茶を受け取って肩をすくめる。
荷物の中にはティファニーの例の水色の紙袋もあった。
「エエもん買うてもうたんか」
「はあ、なんやペンダント買うてくれました」
「よかったなあ」
「おお〜!あいぼんのお父さんカッケー!太っ腹〜!」
風呂から上がった吉澤が、バスタオルで頭を拭いて入ってくる。
梨華はティファニーのペンダントを見て「綺麗〜」と歓声を上げる。
「いっぱい買ってもらったれすか」
「あとは、新しいMDウォークマン。前の壊れた言うたら」
「お。いいヤツ買ってもらったじゃん」
加護がMDを見せると、吉澤は感心した声を上げた。
「うん。よっちゃん、またCD、MDに落としてなあ」
「おおよ」
「ウチも小遣い貯めてMDついたラジカセ買お。
実家から持ってきたMDじゃ間に合わんわ」
「ピンクでかわいいれす」
「ほんと。あたしもこんなの欲しいなあ」
ピンク好きの梨華もそこに食いつく。
- 337 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:14
- 「加護、なんか誕生日に食べたいモンあるか」
裕子が聞くと、
「う〜ん、お好みかなー」
少し考えて答えた。
「お好みだけでエエんか。
1年に1回のことやからちょっとくらいならワガママ聞いたるで」
加護は嬉しそうに『え〜』と顔をほころばせ、
「ウチ、おでんがエエです」
「おでんでエエんか?」
「うん。ウチ、中澤さんが作ったおでん、大好きです」
加護の笑顔に、裕子は『よっしゃ!まかしとき!』と胸を叩いた。
―――週明けの月曜日。
加護が登校すると、校門前でいきなり
「加護、ちょっと来てくれ」
教師に呼び止められた。
「はい?」
首を傾げながら、ついて行く。
「先、行っといて」
振り返って辻に短く言葉をかけ、加護は走って行ってしまった。
「あ、あ…」
辻がおろおろしてると、
「行きましょう」
確信に満ちた手が辻の腕を掴んだ。
新垣だった。
加護の後を走ってついて行く。
「あ、ガキさん。朝のHRは…」
「そんなのなんとでもなります。行きましょう」
辻は少しためらったが、とりあえずついて行くことにした。
- 338 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:16
-
行き着いた先は応接室だった。
辻と新垣のふたりは扉にぴったり耳をつけ、中の音を拾おうとする。
応接室だけあってなかなか音が漏れてこないが、明らかに加護の声で
「ハァ!?」
と素っ頓狂な声がした。
「なんでそんなことを!」
続いて、困惑した色を滲ませた声が聞こえる。
「…またなんかあったんれしょうか」
「ですね」
新垣は『離れて!逃げますよ!』短く言い、辻の腕を握ってそばの階段を下りて行った。
階段の踊り場の、応接室からは死角となるところから、加護が出てくるのを見る。
すぐにぐったりとした様子の加護が出てきて、知らない教師が3、4人続いて出て来た。
1時間目開始のチャイムが鳴った。
「どうします?始まっちゃいました」
新垣は辻のほうを見て言った。
「…なんか授業受ける気がしないれす」
「あたしもです」
ふたりは確認するように頷きあって、ある部屋へと向かった。
「かくまってくらさい」
「同じくです」
養護教諭の稲葉は、書類を書き込む手を止め、見るからに健康そうな来客に目を丸くする。
「1時間の御休息は500円からとなっております」
だがすぐにニヤっとして言った。
- 339 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:18
- 辻と新垣はそのまま保健室に向かった。
中学生と高校生が授業中校内でサボれる場所は限られている。
「どないしてん。えらい珍しい」
そのへんの椅子に座るように言い、稲葉はお茶を淹れてやる。
「ああ、辻はこの前来たっけか」
「へいっ。お世話になったれす」
辻はひょこんと頭を下げる。
「自分はガキさんやったっけ。小川の連れの」
「はあまあ、そんなモンです」
『あたしってマコっちゃんとセットなんだ。ヤだなあ』
小川が聞いたら気を悪くしそうなことを新垣は思う。
ふたりはお茶を受け取り、何故か湯飲みに注がれた紅茶を飲む。
稲葉は特に何か聞こうともせず、『気ィすんだら帰り』と書類の整理を始めた。
適度なほっとかれ具合が、今のふたりには心地よかった。
1時間目終了のチャイムが鳴る。
「ガーキさーん!もおー!サボったでしょー!!」
道重が『プンプン!』といった様子で現れる。
「あ、ごめん…」
「もうー、岡村先生の授業サボるなんてー。
さゆ、『頭が痛いって保健室行きました』って言っといたけど、岡村先生、
『ガキさんは俺のことが嫌いなんやろか』って授業中ずーっと悲しそうな顔するし」
「ハハ…」
ちなみに『ガキさん』と名付けたのは岡村先生、その人である。
「次数学だからね!出るでしょ?」
「あ…ほんとに頭、痛くなってきた…」
「行くの!」
頭を押さえる新垣をずるずる引っ張って、道重は去って行った。
稲葉はその模様を見て、苦笑いする。
「の、ののもそろそろ行くれす。
お邪魔しましたれす」
「おう。もひとりのちびっこによろしゅうになあ」
稲葉は机でデスクワークを続けながら、その場でひらひら手を振る。
鞄を肩にかけ直し、辻は走って教室に向かった。
- 340 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:20
- 教室では紺野が辻の姿を見つけると、
「あ…辻さん!」
すぐ駆け寄って来た。
「お休みかと思いました。なんの連絡もないし。
とりあえず、先生には『保健室に行った』って伝えておきましたが」
「へ、へい。ありがとうなのれす」
「あの…いいですか」
「なんれすか」
差しさわりのある話なのか、紺野はルーズリーフを取り出し、
『加護さんに援助交際疑惑が上がってます』
書き上げて、辻の目をじっと見つめた。
「な…」
紙を持ち上げ、辻は言葉を失う。
「何かの間違いだとは思いますけどね」
辻の手から紙を取り、紺野は素早く消しゴムをかける。
「みなさん、席に着いてください」
この時間は国語なのに、担任教師が教壇に立った。
担任は英語担当である。
「この時間はHRになりました。
まず、プリントを配布するので目を通してください」
配られたプリントに目を通す。
『援助交際の経験の有無』など、アンケート形式のものだった。
「はぁ?なにこれ?」
クラスメートの一人が、声を上げる。
「つーか、学校がこんなの聞く権利あんの?」
教室がざわつき始める。
紺野は唇を噛んだ。
辻も俯いて、プリントの文字の羅列をぼんやりと見つめてる。
「先生、先生はどう思ってるんですか」
クラス委員の生徒が立ち上がって言った。
「強制はしません。白紙で出しても構いません」
教師の言葉に、全員『?』という顔になる。
「何があっても、私はあなた方を信じています。
責任は、私がとります」
教室中、シーンとなる。
「分かりました。
みんな、白紙で出すのはいいけど、ふざけたこと書くのナシな」
さっきのクラス委員がそう言うと、言うまでもなく全員プリントを埋め始めていた。
- 341 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:22
- 昼休みになる。
辻は加護のクラスまで行って彼女に会いに行く。
「加護さんなら、今日来てないよ」
生徒の一人にそう言われ、慌ててメールを送る。
『いまどこ?』
しばらくして返事が来、心底安堵する。
『心配すな。担任に今日のところは帰るように言われて、帰ってきた。
思いがけぬホリデーをエンジョイ中や。中澤はんに味噌ラーメン作ってもうて食うてるとこ(はーと)』
最後にハートマークまでついてるメールを見て、辻はへなへなとその場にしゃがみこむ。
「どうでした?」
心配して追いかけてきた紺野に言われて、
「家に帰ってるれす。まったく人騒がせれす」
メールを見せて、大きな溜息をついた。
6時間目のあとのHRが終わると、辻は一目散に学校を飛び出した。
マフラーが途中で落ちたので、それを持って紺野も後を追いかける。
「あの、辻さん」
「なんれすか」
「気持ちは分かりますが、電車の中を歩いて行っても、速度は変わりませんよ」
辻ははやる気持ちを先頭車両まで早足で歩くことで表現していた。
「へいっ。ああ〜、イライラするれす」
「落ち着いて。深呼吸しましょう。ハイ、吸って」
「すぅ〜」
「吐いて」
「すぅ〜…ちょっと苦しいれす」
「吐かないと」
辻は思いっきり吸い込んだため、げほげほとむせた。
- 342 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:24
- 中澤家に帰ると、加護はのんきにおやつを食べていた。
こたつに入って、梨華と教育テレビの再放送を見ていた。
「よお。おっかえり〜」
辻と紺野に向かって、ひらひら手を振ってみせる。
紺野は勢いでついてきてしまった。
「いらっしゃい。寒かったでしょ。さ、中に入って」
梨華にすすめられ、紺野は『失礼いたします』とコートを脱いでこたつに足を入れた。
「お茶淹れるね」
台所へ梨華が行った後、
「なにのんきにおやつ食ってるれすかあ〜」
辻はおおげさに溜息をついてみせた。
「せっかくの降って湧いた休日はエンジョイせな。
これ、ウマイで」
土曜に父にもらったクッキーを紺野にすすめる。
「お元気そうでとりあえず安心いたしました。
学校は一日休まれてたんですか」
「朝行ったけど、せんせーに呼び止められてなんや応接室に連行された」
「そうですか。大変でしたね」
「ホンマに大変なんは明日のうちのオトンや」
「なんでれすか」
「ガッコに呼び出し。ほんま平日で仕事やのになあ」
しみじみ言い、加護はクッキーをかじる。
「加護さんのお父様は、どんなお仕事をされてるんですか」
「うちか?言わんかったっけ、税理士や」
「税理士さんですか。それは確かに大変ですね、この時期なのに」
「ああ。電話でボヤいたはった」
辻は自分も深々とこたつに潜り、クッキーに手を伸ばす。
- 343 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:26
- 「おじさん、いつ来るんれすか」
「昼過ぎやって。さすがに朝イチやと新幹線もないしなあ。
泊まりで来るのもアレやし」
交通費もばかにならんのに、と加護は苦笑した。
「この前東京来たのは…」
「前の日まで出張やってん。で、土曜の晩に大学の同窓会あるから昼間ウチと会ってたわけ」
そこへ梨華が「お待たせ〜♪」とお茶を持って現れる。
「紅茶でよかったかしら?」
「結構でございます」
「結構でございますれす」
紺野のマネをし、辻はちょっと加護に「フッ」と笑われる。
間違ってメール送信したときのようにヘコむ。
「加護さんのお父さんってどんな方なんですか」
紺野がふと言った。
「一見税理士には見えん」
加護の言葉に、梨華と辻は噴きだしてしまう。
「ちょっと、自分ら笑いすぎ」
加護は少しむくれてしまう。
「そうそう、あいぼんのお父さんはすっごく大きいのれす。
あいぼんはお母さん似れすね」
「まあ、一見ガテン系のオッチャンみたいやけどなあ」
「そうですか」
紺野は頷いて微笑んだ。
- 344 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:28
-
―――夜。小川宅。
新垣は「マコっちゃーん!」と自主的に小川を訪ねていく。
部屋にいた小川は机に向かったまま、
「おめー、人にこの前『帰れ』って言っといてさあ」と少しふくれてみせる。
「いいじゃんよ。つーか、マコっちゃんのクラスでもあったでしょ。
緊急ホームルーム」
「ああ。おめーんとこも?」
「あったよ。中高のクラスは全部あったみたい。さすがに中学生にアンケートは
配らなかったけど」
なんて書いてあったの?と、新垣は尋ねた。
「あー。なんだっけ、『援交したことあるか』とか『あるヤツはいくらくらいもらったとか、
何か買ってもらったか』とか」
「そっか」
「つーか、加護が援交ってガセだろ?」
小川はあきれたように新垣の顔を見る。
「あったりまえじゃん!加護さんがそんなこと」
「なら、なんでそんなくだんねー噂」
「う〜ん…言っていいのかな」
「なんだ?」
「あたしも聞いた話なんだけど、銀座で男の人に宝石買ってもらったりしてたんだって」
「なんだ、そのベタなホステスのような噂は」
「待ち合わせ場所に違う男の人にバイクで送らせて、なんか高いレストランで食事したとかなんとか」
「それって、パパはパパでも実は血のつながってるパパとかじゃねーの?
なんにせよ、くっだらねーなあ」
小川は心底あきれたように、シャーペンを振り回した。
- 345 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:29
-
翌日。
放課後の少し前に加護の父は娘の学校にやって来た。
加護も放送で呼び出され、応接室へ向かう。
教師からは、加護が父といる写真が提示された。
匿名で、簡単な手紙とともに学校に届いたらしい。
写真は父の顔部分が他の男性のものとすげ替えられていた。
稚拙なもので、いかにも合成っぽかった。
父は教師相手に爆発するかと思ったが、いたって冷静だった。
その日、娘といた証拠として、マキシムとティファニーの領収書を取り出す。
まだ疑問点があるのなら、店のほうに問い合わせてくれ、と淡々と言った。
そこでドアがノックされる。
「何ですか。来客中ですよ」
教師のひとりが言うと、
「付属中学の亀井です」
相手が名乗った途端、教師の態度が変わる。
「亀井さん?何か用ですか」
「いえ、一言申しておきたいことがありまして」
いつものようににこやかに部屋に入ってきた。
「おじ様、お久しぶりです」
加護の父のほうを見て、一礼する。
「君は?」
「亀井明の姪の絵里です」
「ああ。大きくなったね。前に会ったのは幼稚園くらいだったか」
父が亀井と面識があることに、加護は内心驚いた。
「亀井さん、加護さんのお父様とお知り合いなのですか?」
教師の問いに、
「ええ、伯父が以前加護さんのお父様にお世話になったことがありまして」
亀井は落ち着いた様子で答える。
「亀井さん、用事というのは?」
しびれを切らして、加護は口を開く。
父は娘の腕を軽く掴んで、制した。
「いえ、同じクラスの方に伺ったところ、何か大変なことになっているようですので、
少しお話を、と思いまして」
「というのは?」
「いえ、実は先週の土曜にうちの父が通っていた大学の同窓会が東京でありまして、
加護さんのお父様も出席なさってたようですので、先生にお伝えしようと思いまして」
「よく知ってるね」
加護の父は少し驚いたように亀井を見た。
「母が帝国ホテルまで父を車で送って行きまして、私もそれについて行きましたから。
帰りにロビーで母とお茶をしていたとき、おじ様をお見かけいたしました」
- 346 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:30
- 加護は苦虫をつぶしたような顔をする。
自分はすぐに無罪放免となるだろう。
またこの子に貸しを作った。
加護は誰の顔も見なかった。
とりあえず帰ってよいと許可が出て、父と部屋を出る。
亀井は一足先に出て行った。
「なあ」
階段を下りて廊下を歩いているとき、加護は言った。
「ん?」
「亀井さんの伯父さんとどういう知り合いなん?」
「ああ。あの子の伯父さんは前、京都の大学で教えてはって、家が奈良やったし、知り合いの
紹介でいっとき俺が担当しててん」
「へえ」
「あの子もなんや休みのたんびにちょくちょく亀井さんとこ来てたなあ」
「ふうん」
「学科は違うけど、あの子のお父さんと大学一緒らしいしなあ」
「そうなんや」
気のない返事をしてると、購買部の前で辻を始めとしたたくさんの生徒に取り囲まれてしまう。
当然新垣もいる。
「な、なんや」
父はいきなりの軍勢に慌てる。
「なんやの、キミら」
加護があきれたように顔を上げると、
「あいぼん!どうれした!?」
と辻は迫る。
「あ、ああ。とにかく帰ってエエって言われた。今から鞄取りに行ってオトンを駅まで迎えに行ってくるわ」
「ご心配には及びません」
と紺野がさっと加護の鞄とコートを手渡す。
受け取って、加護は苦笑いする。
「君らは、亜依の友達か?ののちゃんも、久しぶりやなあ」
「へいっ。この前はチョコレートありがとうれした」
辻は嬉しそうに笑う。
「加護さんのお父さん、カッコいい!」
どこからか声が上がる。
「もー、やめてんか。すぐその気になるんやから」
加護が大袈裟に顔をしかめて手を振る。
父は横で苦笑いする。
「亜依のことよろしく頼むで」
父が言うと、
「まかしてください!」
新垣がドン!と胸を叩いてみんな爆笑した。
- 347 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/21(水) 05:32
- 加護は父の希望で、学食へ案内する。
「なんでこんなとこ見たいん?」
娘の問いには直接答えず、
「懐かしなあ。ちっとも変わってへん」
父は足元の学食に続くアスファルトで舗装された通路を見つめる。
「来たことあんの?」
「お父ちゃんな、大学ん時、自動販売機のジュースとか搬送するバイトしててん」
「へえ」
「この学校にも、よう来た」
「…そうなんや」
「ここで、初めてお母ちゃんと会ったんや」
「うん」
二人は何も言わず、学食の屋根を見つめた。
加護は東京駅まで、父を送った。
大学時代バイトしてた時、高校生だった加護の母が悪戯して、搬送用の台車に乗って
廊下中走って行ったのを慌てて追いかけて行ったことなど、父は車内で目を細めて話した。
「お母ちゃん、やんちゃやってんなあ」
「オマエのお母ちゃんだけあるやろ」
もお〜、と父を肘で小突く。
新幹線の改札で手を振って別れた。
いつもより帰りは遅くなったが、なんとなく満ち足りた気持ちで帰った。
- 348 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/21(水) 05:53
- 更新しました。
今日から新章です。
川o・-・)<タイトルはジョニー・バネットの曲からです。
リンゴ・スターもカバーしております。邦題は「夢みる16才」というそうです。
( ´D`)<のんのおたんじょうびのときの「16 CANDLES」の対のおはなしれす。
ちなみに海板のぱーと1で読めるれすよ
(;‘д‘)<絶対こっちのほうが話長なるやろうけどなあ
( ´D`)<まあまあ、細かいこと気にすると
(;`д´)ノ<誰がハゲじゃあ!
(;´D`)<まだなんもいってねーのれす
川;・-・)<そんなわけでレスのお礼です
>芥龍さん
(0^〜^0)<シャネルって1番から22番まであるの?
(;`◇´)<えー、どっから説明したらエエんかいな(注:ありません)
ぼんさんはおませさんですね、普通に考えたら。22番は日本の輸入雑貨の店の片隅で何故かひっそりと
売られてたりします。香り的には何と言うか「ちょっと粉っぽいフローラル」です。今風ではありません。
圭圭小説サイトをやってらしたんですか。このふたりのは本当に数少ないし、閉鎖されたとのことで残念です。
>ピクシーさん
(;`.∀´)<とりあえず「冬ソナ部」の部室がアタシん家なのはいかがなモンかと
川‘〜‘)||<だってー、圭ちゃん家のテレビは液晶で映りが綺麗なんだもん
いしかーさんは地道にZO−3で練習に励んでます。で、たまにひとみちゃんに見てもらってます。
こんこんは強い子なので恐らく大丈夫かと。田中さんのアプローチにどう対処するかですね。
ぼんさんとのんさんは無意識に接近してたりしてなかったり。
- 349 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/21(水) 05:55
-
>332の名無飼育さん
( `◇´)<まあ、背伸びしたい年頃やしなあ
川;・-・)<あ、あんな恥ずかしい台詞をサラリと。完璧です
シャネルの香水が本当に似合うようになるのは从 #~∀~从←この人くらいになってからですね。
パリのシャネルはガードマンつきですか…。すごいですね。
田中さんは熱いんです。しかも惚れた女絡みですからね。もう止まらないし止められないでしょう。
>ヨッスィのタマゴさん
从*・ 。.・从<さゆだったら怖くって泣いちゃう。だって、いつ嫉妬されてもおかしくないもん
从;`,_っ´)<それは絶対ウソたい。あんたは多分殺しても死なんと
ごっちんの宣教師はすでにレギュラーなワケですが。弟子までついてるし。
シゲさんはいかにもそんなこと言いそうで笑いました。こんこんは賢い子なので多分大丈夫かと。
情報通のガキさんの耳に入ったら、物凄く関連情報が集まりそうです。
- 350 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/22(木) 00:58
- 更新お疲れ様です。
師匠・・・かっこえぇ・・・ライダーですか。
この師弟の絡みは大好きなんですよねぇ。
ついでに、ぼんさんの「はいぃ〜」という返事の発音も(w
ぼん父も登場ですね。税理士とはビックリ。
次回も楽しみに待ってます。
- 351 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/22(木) 01:43
- CDで〜た(0^〜^)の日記
6月○日 (0^〜^)ただいまメイク中。普段はめったにメイクしないから道具も持ち歩かない。
(;^▽^)<ひとみちゃん、まだそれ使ってるの。5年も同じものを。
とメンバーにも言われる。
6月×日 川=‘ゝ‘=||(^〜^O)フットサルの練習中、仲良しのまいちゃんと。
6月△日 从*`,_っ´)(0^〜^O)从・ 。.・*从ジョントラボルタのコントの収録。二人の肩を抱くジゴロなひ〜ちゃん。
しかし、少し見ないうちにダンサーまでついて。すっかり大人気です。
更新お疲れ様です。
はぁ?>(´д`;)[応接室]@( ・e・)@( ´D`)<……
さっそくガキさんイヤーが出ましたね。しかもののさんも一緒に。
(+` Д ´)<まったく、ヨシコじゃあるまいし男と間違えんなよ。
(0^〜^)<最近のあたしも女の子らしくしてるもん。
髪の色を戻したせいか、最近のひ〜ちゃんがかわいすぎます。
- 352 名前:グング 投稿日:2004/07/22(木) 22:44
- 続けての大量更新の嬉しさにPCの前で踊ってます。
更新お疲れ様です。
いや〜師匠男に間違われるとはサスガですw
しかし紺野さんといい加護さんといい大変な事になっとりますねぇ・・・
頑張ってねお二人さん。
冬ソナ部・・・ぜひとも入部したいですw
- 353 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:00
- 加護は翌日の昼休み、亀井絵里に呼び止められた。
ちょうど辻と学食から帰るところだった。
ふたりが話してる間、辻は遠慮して少し離れたところに移動する。
「ちょうどエエわ。こっちも昨日のことで礼を言おうと思ってたとこやったから」
加護が言うと、亀井は嬉しそうに微笑んだ。
手には、なにか紙袋を抱えている。
「うちのオトンまで助けてもうて。どうもね」
「いえ。月曜にわたし風邪で休んだので、もっと早く対処できれば、
お父様までわざわざ奈良から呼び出されることもなかったと思います」
「そうか」
「ええ」
この子、先生らにどんだけ影響力あるんやろ。
加護は心の中でそう思った。
「で、自分は何の用なん?」
「いえ、その…」
珍しく、亀井がもじもじする。
加護は『?』となりながらも、
「なに?デートせいとか?」
ニヤっと笑って言った。
「そ、そんなのじゃ…」
亀井は慌てて手を振る。
「ふうん。ならエエけど」
加護はつまらなさそうに自分の髪をいじる。
それを見て、亀井は訳もなく不機嫌になってくる。
- 354 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:03
- 「辻さんさえよければ、そうしたいんですが」
投げやりとも思える亀井の言葉。
「なんでののなん?」
「いえ。あなたを独占するには、やはり辻さんの許可が必要でしょうから」
その一言に、加護はムッとする。
「ののとは別にそんな仲やない」
「そうですか」
「なんやの、ののは別に関係ないやん」
加護はブツブツ言った。
「本当に辻さんは関係ないんですね」
「ああ」
「辻さんと保健室で熱い口づけを交わすのもですか」
亀井の一言に、加護の顔が強張る。
「…見とったんか」
「見るつもりはありませんでしたけどね」
「で、本当の要求はなに?なんにせよ、特待生の結果出たあとでよかったわ」
「バカにしないでください!」
亀井の顔がカッと赤くなる。
「こんなことで脅迫しようと思ってません!」
「じゃ、なんやねん。わざわざ呼び出して」
亀井は涙目になって、バンと加護を突き飛ばして走って逃げていった。
「イッテ…なんやっちゅうねん」
床に彼女が忘れて行った紙袋があった。
近くの書店のものだった。
取り出してみると、中から初心者向けのバレンタインチョコのレシピ集が出てくる。
加護はなんとも言えない気持ちでそれを見ていた。
「あいぼん!」
亀井が去ったあと、辻が走ってくる。
辻の顔は物凄く怒っていた。
- 355 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:11
- ―――─放課後
「ほら、一緒に来るれす」
辻は嫌がる加護の腕を引っ張っていた。
今から中学の校舎に向かうのだ。
「なんやねん。ウチに何の非があるっちゅーねん」
「女の子を泣かせたれす。なによりの非れす」
向こうにも問題はあるがな、と加護はぶつぶつ言う。
「のんは、女の子を泣かせるようなヤツは大嫌いれす」
辻がじっとまっすぐ自分を見る。
腕を掴まれたまま加護は、
「…分かりましたよ」
ぶすっと頷いた。
3年B組の教室には何人かの生徒が残っていた。
「あ、辻さんと加護さんだ」
道重はふたりの姿を見つけて、ぴょんぴょん跳ねて手を振る。
「加護さん、今日も可愛い〜」
見知らぬ生徒に声をかけられ、
「知ってる」
と加護は無表情で呟く。
「それよか、亀井さんおる?」
「ああ、亀井さんなら」
と、その生徒は教室の後ろを指さした。
よく見ると、生徒用のロッカーと掃除道具入れの間のわずかな隙間に、
亀井がすっぽり収まっていた。
体育座りして膝を抱えている。
「…なにやってんの、アレ?」
「亀井しゃんは隙間に入るのが好きなんれす」
昔から知ってる辻が解説する。
亀井本人はにこにこと今の状況を堪能している。
あんま係わり合いになりとうないな。
加護はちょっと思った。
「亀井さん、忘れモン」
加護はそのへんの机に、さっきの本を置いた。
亀井は隙間に収まったまま、目をきょろっとさせる。
「じゃ、それだけやから」
加護が去ろうとすると、辻が加護のブレザーの襟を掴んで、
「ちょーっと待つれす!」
とおどしをかける。
- 356 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:18
- 「まだ用は済んでないれすよ」
「なにをやねん」
「一言ごめんなさいって言うれす」
「イヤや」
「だめれす」
亀井を放置してのケンカに、みんな興味津々となる。
職員室から戻ってきた新垣も、好奇心を抑えられぬ様子で見守る。
「ののの言うことがきけねーのれすか!」
「オマエはウチのなんやねん!」
「親友れす!」
「そのワリには命令形やのお!」
「あいぼんが全然言うことをきかねーかられす!」
喧々諤々、口角泡を飛ばす。
「…つーか、ぶっちゃけただの夫婦ゲンカだよね」
新垣はぼそっと呟く。
「だね」
さすがの道重も、あきれてしまった。
肝心の亀井は、のそのそと隙間から出てきて、本を鞄にしまい、小さく溜息をついた。
- 357 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:20
- 結局辻は加護に『ごめんなさい』と言わすことに成功し、大満足で家路につく。
加護は物凄い敗北感にぐったりするが、もうこれ以上争うのも不毛なので
気持ちを切り替えることにした。
電車を降りて、商店街に寄ってブラブラと歩く。
帰りに駅前のコンビニにも寄り、今日あったことを話していた。
加護が『そうそう』と思い出したように、いつかの学食での道重のネタを出す。
「へえ、そうなんれすかあ」
辻は、はふはふと肉まんを頬張って答える。
店を出ると、マフラーに冷気がすぐ入り込んだ。
加護は一気に意気消沈し、
「自分、マジメに聞く気ないやろ?」
大きく溜息をついた。
「聞いてるじゃないれすか」
「いやー、キミはいま肉まんに夢中なハズや」
「まあ、そうれすけど」
「ムーカーつーくー」
加護と辻がにらみ合ってると、
「おお、青春だな。結構結構」
偶然通りかかった矢口が自転車に跨ったまま、ニヤニヤ笑う。
「うわ、ヤグチさんコマなし乗ってんで!」
「オイラはオトナだよ!しかもちょっと面白かったぞ!」
「26インチなのれす、サドルは物凄く下れすけど」
「うわ、ナニゲに気にしてることを!ムカつく〜」
ケラケラ笑い、『じゃあな』とふたりの頭をぽんぽん叩き行ってしまった。
ふたりは言い争うのがバカバカしくなってきて、
「…帰ろか」
「へいっ」
手をつないで、家路を急いだ。
- 358 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:49
- 紺野は自宅で宿題をしていた。
そこへ携帯に電話がかかってくる。
「ハイ?」
『あ、紺野さんですか?
夜分すみません、田中です』
「ああ、どうも。
どうされたんですか」
『あの、月曜のHR…のことなんですが』
「ええ」
『なんか、気になるんスよね』
「…そう思いますか」
『あ、いえ。れいなの考えすぎかもしれんとですが』
「ええ」
『加護さんのほうがタチ悪か気、するけど、なんか手口ば似てる気ィするけん』
「そうですね」
『あの、紺野さん?』
「ハイ?」
『れいな、紺野さんのためなら、なんでもするたい』
紺野は一瞬何を言われたか分からず、ややあってやっと脳が理解した。
物凄く、顔が赤くなる。
「あ、あなたもストレートな方ですね…」
『だって、こういうのは言わな分からんばい』
「そうですね…」
『それじゃ、もう切りますけん。おやすみなさい』
「お、おやすみなさい」
切ってから、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
そして、田中の潔さが物凄くうらやましくなった。
- 359 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:52
- 吉澤はアヤカや市井とファミレスで食事をしていた。
少し遅れて家庭教師のバイトを終えた梨華もやって来る。
市井に電話がかかってくる。
「おう。生きてるか」
『んあ、生きてるよ』
携帯のテレビ電話に、後藤の顔が映る。
「ごっちんスか?」
吉澤が聞くと、市井は頷いた。
「あ!ごっちん!」
梨華が慌てて『すみません!替わってください!』と急かす。
市井は面食らって携帯を渡す。
『り〜かちゃん♪久しぶり〜』
「あの、ごっちん!」
『んあ?どったの?』
「ごっちん、この前あいぼんを銀座までバイクで送ったよね?」
『んあ、そだよ』
「…あの、すっごく言いにくいことなんだけど」
そう前置きして梨華は加護の学校で噂になったことを持ち出す。
後藤は、
『んあ!ごとーオトコに間違われてるの〜!?』
と目を丸くした。
「故意か他意かはわからないけどね」
梨華は眉をハの字に下げた。
『んあ、分かった。
金曜まで観光するつもりだったけど、今から帰るね』
「ごっちん、今どこいるの?」
『んあ?千葉』
「え、千葉?旅行なの?」
『半分はね。んじゃ、今から帰還します!』
最後に敬礼して、電話は切れた。
梨華も切って、市井に
「すみませんでした」
と返す。
「あの、今何時ですか?」
ハッと気付いた様子の梨華に
「え〜っと、10時前?」
アヤカが自分の腕時計を見て答える。
- 360 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/25(日) 02:58
- 「ごっちん、電車大丈夫かしら」
「ああ、それなら大丈夫だろ。
バイクで行ってるから」
市井は頷いて言った。
「ごっちん、ボランティアで行ってるんでしたっけ」
と吉澤。
「ああ、そういう授業取ってるらしくってな。
弟のバイクで現地行ってる」
「へえ」
「加護ちゃん、何かあったの?」
アヤカに尋ねられ、
「実は…」
と梨華はぽつぽつと話し始めた。
話してる途中で、保田がやって来る。
「…遅れてすみません」
「「「遅い!」」」
梨華以外、素早くツッコむ。
「なにしてたの〜。こんな時間まで」
「いやね、仕事絡みの飲み会があってさあ」
「うえ〜。保田さん、酒くさいっす」
吉澤はおおげさに手を振り、顔をしかめてみせる。
途中で話が途切れたので、保田も分かるようにもう一度梨華は最初から説明した。
「なるほどね」
話し終わってから、市井は腕組みをしてうんうん頷いた。
「こっちには、本物じゃないパパに買わせてたのがいるけどな」
アヤカは黙ってすぱーんと市井の頭をはたく。
「失礼ね。パパとは付き合ったことないわよ」
「オッサンとはあるんでしょ」
「…うん」
保田の素早い攻撃に、言葉の詰まるアヤカだった。
「とにかくまあ、加護も大変だったわね」
保田は話を聞いて、『どうしたっものかね』と頭をかいた。
「ええ。あいぼん、明るく振る舞ってるんですけど、
時々すごいぼーっとしてっていうか、遠い目してて」
「メシもあんま食わないし」
吉澤も続ける。
「困ったわねえ」
保田はためいきをついた。
「で、後藤は?
まだボランティアに行ってるんだっけ?」
「今日帰ってくるって言ってます。
電話でこのこと話したら、すぐ帰るって」
「ほお」
「…なんかしでかすだろうね」
保田は運ばれてきたコーヒーを飲んで、苦笑いした。
- 361 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/25(日) 02:59
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ‘ д‘)<はいぃ〜。加護はぁ〜
私もなんか好きです↑。ぼん父もちゃんと登場です。
この師弟はリアルでも「親友」って言ってて微笑ましいですよね。
>ヨッスィのタマゴ さん
(0^〜^0)ノ<イエーイ!フィーバーカッケー!
トラブルタも可笑しいんですが、バックダンサーのおふたりに私は撃沈しました。
ガキさんは行動派なので情報収集は彼女にまかすとよいようです。
>グングさん
( ´ Д `)<んあ〜、男に見えたなんて失礼しちゃう
後藤さん、一応女子なのでちょいご立腹の模様です。
冬ソナ部は現在会員募集中です。特典として、ヤス宅でゴロゴロできます。
- 362 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/25(日) 04:21
- Mステにて、ハッピーサマーウエディング
コングラッチュラーション!( ‘ д‘)⊃⊂(^▽^ ) ( ´D`)⊃⊂(^〜^O)
最初の4期のハートマークの手にメロメロです。
EDで楽しそうに話すわが子を( ´D`)( ‘ д‘)
後ろで笑ってみてる両親(^〜^O)(^▽^ )が良かったですね。4期万歳です。
更新お疲れです。
( ‘ д‘)も、川o・-・)もモテる女はつらですね。
れいなちゃん、博多っ子やけんね。ストレートで気持ちよかです。
(((((´д`;)⊂(#`D´)<さあ、謝りに行くのれす。
力ではののさんには勝てません。引きずられるぼんさんが目に浮かびます。
- 363 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/25(日) 11:10
- 更新お疲れ様です。
夫婦ゲンカ、微笑ましいですねぇ。
3年B組はガキさんの影響で、加護ヲタが多いんでしょうか?
矢口・・・「ミュージックフェア」でも、スタンドマイクが届かなくて、音響さんに下げてもらってましたね(w
Mステのハピサマはなんか、感慨深いものがありました。
やっぱり4期は「黄金世代」と個人的に思います。(世代、ってのもなんか変だな)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 364 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/26(月) 23:12
- > 「ヤグチさんコマなし乗ってんで!」
が最高!!!久しぶりに爆笑した。
- 365 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:19
- 『またか』
加護は登校して、ためいきをついた。
廊下に何か張り出されており、人ごみを掻き分けて見てみると、
自分を中傷する内容の紙が貼ってあった。
『継母にいじめられ、その腹いせに義理の弟をいじめてるかあ。
いかにもなネタやなあ』
背伸びして剥がした紙切れを見て、加護は苦笑する。
辻はその横で、悲しそうな顔で見つめる。
どこかで教師の怒鳴る声がし、早く教室に入るように言われる。
クラスメートは普段と変わらなかった。
特に何か聞かれるということもない。
「朝、あちこち貼ってあった貼り紙のことだが」
朝のSHRで担任が切り出した。
加護はビクン、と体を縮こませる。
「ガセでしょ?」
クラスメートの一人が言った。
「つーか、誰も信じてないし」
続いて、他の生徒が言う。
「今のが、すべての解答だな」
先生はそれ以上、何も言わなかった。
不覚にも、加護はちょっと目頭が熱くなった。
- 366 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:21
-
「加護さん」
放課後、廊下で紺野に呼び止められた。
「よお。自分も例の貼り紙見た?」
紺野は返事をしなかったが、困ったような悲しそうな顔をした。
「あの…あたしができることがあれば」
「いいて。なんかしちめんどーそうなことやさかい、あんま巻き込みとうないし。
気持ちだけもうとく」
最後に彼女の肩を叩いて、加護は行ってしまった。
食堂で参考書を広げて加護は辻を待つ。
最初に道重がやって来た。
「見〜つけた♪」
「なんなん?」
あきれたように笑い、参考書から顔を上げる。
「つまらない噂は、気にしないのが一番なの」
「そうやね」
「さゆなんかかわいくて完璧だから、しょっちゅう妬まれてるの」
「…ほう」
「嫉妬されてこそ女なの」
道重のよく分からない励まし(?)に少し笑い、
「ありがとう」
礼を言った。
道重も笑って頷く。
「加護さ〜ん!」
どたどたと足音が聞こえる。
姿を見なくても分かる。
新垣だ。
一緒に辻と紺野も入ってくる。
新垣は友達数人と連れ立ってやってきた。
- 367 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:25
- 「なんか、また大変でしたね」
新垣らしい気遣いに、加護は苦笑して、
「まあね〜。あそこまでいくとネタとしておいしいけどなあ。
次はなんなん?みたいな」
加護の笑ってる横顔を見て、辻は何か違和感のようなものを覚える。
「あの、加護さん。
明日お誕生日ですよね」
新垣が切り出すと、友人たちにどよめきが走る。
加護は感心したように目を丸くする。
「よー知ってんなー。
そう、16になんねん。
しっくすちーんやで、しっくすちーん」
「なにか欲しいものありますか?」
「そうやなあ、ガキさんの愛?」
ギャー!と悲鳴が轟く。
加護はニヤッと笑い、
「じゃあね〜」
と背中を向け「バイバイ」と手を振って出て行った。
- 368 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:32
- 「はぁ、びっくりした」
冗談とは分かってても、新垣は赤くなりどきどきする。
鼓動を鎮めるために胸を押さえる。
「にしてもー、加護さん明日が誕生日なんだね。
知らなかったよー」
「あれ?知らなかったの?」
「うん」
新垣が言うと、友人の一人は頷いた。
「今から加護さんのプレゼント買いに行くんだ〜」
新垣は嬉しそうに笑う。
「加護さんって何を欲しがるんだろ?」
さっきの生徒が首を傾げると、
「辻さん?」
別の友人が答えると、
「シャレになってないし!」
とバシバシ叩く。
「つーか、プレゼント買いに行くのも今日しかないじゃん」
「あ、あたし目星つけてるのあるし。プレゼント」
新垣が言おうとすると、
「紺野さ〜ん、何がいいと思います?
同じ優等生同士として」
友人は紺野のほうを向いた。
わたくしは優等生じゃありませんよ、と紺野は苦笑して、
「そうですねえ。
加護さんは読書家なので、珍しい本なんか喜ばれると思いますよ。
外国の童話とか絵本とかも」
「へえ。あ、そーいえば図書室に新刊入ったら、たいてー加護さんが一番くらいに予約してる」
「ええ」
「じゃ、買いに行こっか。ガキさん、行くよ」
「だからさっきから買物行くって言ってるじゃん!」
新垣は少しご立腹の様子で答える。
それを見て、紺野はくすくす笑った。
- 369 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:40
- 辻と加護は帰って辻の部屋でなんとなく過ごしていた。
台所から、裕子が何か煮込んでるのか、醤油の濃い匂いがしてくる。
「あーあ。まったくあいぼん様もカタなしやで」
加護はスポドリを飲んで笑う。
ベッドに腰かけ、辻は少しも笑わずに加護の顔を見た。
「これからスキャンダラスな女として売っていったらエエのんかしらん」
「あいぼん」
辻が言った。
加護は驚いて彼女の顔を見る。
「ムリしなくて、いいれすよ」
辻はじっと加護を見る。
加護の顔からも笑いが消え、立ったまま辻の首筋に顔を埋めた。
「ウ、ウチのせいでみ、みんなにいっぱい迷惑かけた」
加護は鼻を啜り、嗚咽を漏らした。
「あいぼんのせいじゃないのれす」
辻は加護の背中を抱きしめた。
「ウ、ウチのことは何言うてもエエ。
やけど、連れや家族のことまで言うのはカンベンしてえや」
辻は加護の顔を覗きこみ、頬や耳の付け根、おでこ、鼻先、顔中のいたるところに
ゆっくり優しくキスしてやる。
「泣かないで」
辻が耳元で囁く。
加護は辻の肩を掴んで、ゆっくり目を閉じた。
- 370 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:43
-
「ん…」
あまりの甘さと熱さに、つい声が漏れる。
触れたい。
唇を重ねるうち、その思いが強くなる。
自然に体が倒れた。
掴むように、またキスをする。
「あいぼんの髪、ふわふわれす…」
「ののは、さらさらやな」
暗闇の中で、囁きあった。
ベッドに斜めになって体を重ねあう。
- 371 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:48
- 指で相手の髪を梳くように通す。
もう一度強いキスをし、加護はいったん起き上がってパーカーを脱いだ。
頭から脱ぐとき、髪が落ちる音がした。
中に着てるTシャツも脱ぎ捨てて、背中に手を回してホックを外している。
「ぬ、脱ぐんれすか」
辻は腰かけたまま、自分のシャツの前を守るように掴んだ。
「イヤなら、エエで」
やけくそでもなく、いつものようにからかうようにじゃなく、加護は優しく笑った。
辻はニットのカーディガンを脱ぎ、ボタンダウンのシャツに震えながら手をかける。
ジーンズだけの加護が腰かけて近づいてくる。
暗闇でもはっかり分かるくらい、白い肌が綺麗だった。
まだシャツを着ている辻にキスしながら、ボタンを途中まで外していく。
辻の首筋に指で触れ、唇をそのあとで追う。
胸元に、熱い舌が触れたとき、辻は動けなくなった。
加護は自分のジーンズを脚から抜いた。
自分のを脱いでから辻のジーンズのボタンを外し、ジッパーに手をかけて下ろそうとしたとき、
辻がビクンと体を強張らせた。
「イヤか?」
問われて、慌てて首を振る。
いつも意地悪なのに、どうして今日は優しいのだろう。
辻はそんなことをぼんやり考えた。
靴下と一緒に、ジーンズが床にバサッと落ちた。
もう、自分たちを隔てるものは、ほとんどない。
加護がシャツの残りのボタンを外して取り払ってしまうと、キャミソールを辻は
自分から脱いだ。
それを見て、加護はちょっと驚いたようだが、すぐ辻の頬に手をやり、
嬉しそうに笑った。
またあの甘さを味わおうと、ふたりは手を伸ばそうとした。
「辻ぃー!加護ぉ!おらんのかー?メシできたぞー!」
台所から、裕子の声がした。
ふたりとも、しばらく固まってしまう。
しばしあって、もそもそと服を着始める。
一足先に服を着終えた加護は、腰かけてる辻に最後にキスをした。
先に出て行くとき、
「自分、ホンマ乳ないのぉ」
加護はニヤっと笑って言った。
辻は顔を真っ赤にして怒り、クッションを加護の顔めがけて投げた。
- 372 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:51
-
「遅なってすみません」
台所に加護が何食わぬ顔で現れる。
「ののの部屋で、爆睡しとったもんで」
「おお、冷めんうちに食べ」
裕子はふと続いて入ってきた辻の足元を見て、
「自分、裸足で寒ないんか」
と言った。
「あ、のの、靴下に穴開いてたから、そのまま脱いで新しいの履くの忘れてたれす。
先に食べててくらさい、ちょっと行って来るれす」
辻はそのまま行ってしまった。
加護は箸を手にして食べ始める。
しばらく無言だったが、
「シャツのボタンが段違いなことも、教えたったほうがええかいな」
裕子の言葉に、加護はギョッとなる。
「あ、あの…」
「泣かさんかったら、ウチは何も言わん」
「はい」
加護はふと考え、
「あのぉ」
恐る恐る切り出した。
「なんや」
「もし、もしですねぇ。加護がぁ…泣かしてもうたら、どうしはるんですか」
裕子は黙って自分のゲンコツに息をふきかけ、
「コレもんやな」
「…シャレになってまへん」
加護は泣きそうになった。
- 373 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/28(水) 09:57
- ―――その頃。
後藤は保田宅に「んあ〜。けーちゃーん、カオリー。スーツ貸して〜」と現れ、
よからぬことをたくらんでいた。
飯田もそこに居合わせたので、いったん家に戻って自分の服を取りに行った。
『後藤がなんかしでかそうとしている』と保田から聞いていたので、
面白がって自分も協力する気でいたのだ。
「色的にはこっちのほうが合うけど、やっぱ後藤にはカオのブカブカだね…」
後藤がブカブカの袖をぶんぶん振るのを見て、飯田は言う。
「そうねえ…こっちでいいか」
すっかりふたりがかりのスタイリストである。
ついでに飯田が化粧もしてやる。
「チークは…この色をこれくらい入れてっと」
「んはは、ブラシがくすぐったいのであります」
後藤は手をバタつかせて喜ぶ。
「髪は、アップにして」
「んあ、ごとー『デキる女』って感じ?」
「そうねえ。まあ、普段よりはおりこうさんに見えるわね」
保田がくすっと笑うと、
「ぶー」
後藤はむくれた。
「間違っても普段のピアスとかしていっちゃダメよ」
「んあ、了解」
そこへ矢口がやって来る。
「おお、ごっつぁん。どしたどした、見合い?」
「まっさか〜。明日、加護ちゃんのガッコ行くの」
「アラ。討ち入り?」
「まあ、似たようなモンね」
保田は苦笑いする。
「いや〜。オイラもすっげー見てェ!」
矢口は大喜びだ。
基本的に、お祭り騒ぎが大好きなのだ。
「そういや昔さー、アゴンもなんかセンセーにムカつくこと言われて、
裕ちゃんがガッコに乗り込んだことあったよ〜」
「へえ」
「なんか裕ちゃん、せんせーの襟首掴んでさあ。こう〜」
矢口は保田相手に実演してみせる。
直接は掴まず、空中で手振りだけやった。
「アンタのことだから、野次馬に混じって見てたんでしょ?」
「分かる?」
矢口はぺろっと舌を出した。
「よっしゃ!ごっつぁん、がんばれよ!」
「んあ!ごとーはやりますぞ〜!」
後藤はガッツポーズを取った。
- 374 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/28(水) 09:59
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
( ‘ д‘)<ライブでも4期が見所やったで!
4期は永久に不滅であります。私は見てないのですがライブの最後でよっちゃんが一徹調で、
「ひとすじ、ふたすじ。大阪の皆さんにお礼を言いなさい」と言ったそうです。
>ピクシーさん
(;〜^◇^)ノ<とりあえずケイちゃんよりも背が低いのは分かったよ
そうですね、4期は黄金世代です。あんだけバラバラな個性で
かつバランスのいい期はないと思います。3年B組はヤケに加護ヲタの多いクラスです。
>364の名無飼育さん
(;〜^◇^)<いやいやいや、いくらオイラ小っちゃくても乗らないし
爆笑してもらえてなによりです。
ヤグチさんは今日も頑張って26インチをこいでます。
- 375 名前:ピクシー 投稿日:2004/07/29(木) 00:30
- 更新お疲れ様です。
いざという時に頼りになる師匠〜・・・弟子を助けてやってください(願)
にしてもスーツって事は、イメージとしては「ボクにはわかる・・・」のアレですか?(w
そう、あのキャラのバランスがなんともいえません。「完璧です!」
4期もスゴイですが、オーディションもスゴイですよね。
藤本&里田も輩出してますし・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 376 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/07/29(木) 00:36
- ( `.∀´)¶<よっすぃは電話出ないし…
( `.∀´)¶Trururu…
¶Trururu… (観月ありさのマネ)せ〜んぱ〜い(0^〜^)(^▽^*)やだ、ひとみちゃんたら。
( `.∀´)<あら?電話だわ。¶Trururu…
( `.∀´)¶<もしもし。 ¶(^◇^〜)<圭ちゃん、オイラ。
( `.∀´)¶<あら、矢口。どうしたの? ¶(^◇^〜)<あの店ってどこにあったけ?
(*`.∀´)¶<あ、そこならね…(キャ!矢口からのお誘いだわ。) ¶(^◇^〜)
( `.∀´)¶<わかった? ¶(^◇^〜)<そっか。ありがと。じゃあね。Pi
(;`.∀´)¶ツー…ツー…
がんばれ、圭ちゃん。それにしても、ひ〜ちゃんの観月ありさのモノマネは見事でした。
更新お疲れ様です。
从*~∀~*从<若いってええなあ。
( `◇´)<あまりチャカしたらあかんで。姉さんと違って純情なんやから。
从*~∀~*从<純情行進曲なら歌えるで。
(;`◇´)<そういや、あったなあ。
なにはともあれ、あいぼんはののさんとガキさん率いる親衛隊が守ってくれるでしょう。
( ・e・)ノ<皆の者、加護さんをお守りするのだ!
(親衛隊)<オー! 川o・-・)∬∬;`▽´)ノノ*^-^)ノ<<<オー!
∬∬;`▽´)<あたしらもなの?
川o・-・)ノノ*^-^)<<当然です。
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/29(木) 02:28
- ( ・e・)<誕生日プレゼントは何がいいですか?
( ‘ д‘)<そうやな・・・ガキさんの愛とか?
(*−e−)ノ<な、な、何いってるんですかぁーーー!!
更新お疲れ様です。
人に見られてると意識すると女の人は本当に綺麗になるらしいですね。
芸能人が綺麗なのは常に人に見られてる事によって女性ホルモンの分泌が
活性化するからだとか聞いたことがあります。
- 378 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:21
- ―――そんなこんなで2月7日。
朝から加護はプレゼント攻勢だった。
加護が校門をくぐると、
「加護さん、お誕生日おめでとうございます」
付属中学の生徒が、ネックのところにリボンをかけた、
500ミリリットルのスポドリを差し出した。
加護はニヤっと笑う。
「ん〜。ウチが水瓶座なのに引っ掛けて『アクエリアス』か。
もう一歩ってとこやね。でも、着眼点は悪ないで」
「はい!次は頑張ります!」
「おおきになあ」
ダメ出しをされた生徒は、手を振って走っていく。
加護は手を振り返した。
「加護さん!ハッピーバースデー!」
次に現れた生徒は、ボンカレーを手にしていた。
しかも芸が細かく、袋のフチを持ち微かに笑っている。
「合格や」
加護はニヤっと笑う。
「でも忘れたらアカンで。それでもギリッやでギリッ」
「はい」
「その心、忘れたらアカンで」
加護に肩を叩かれ、その生徒はちょっと涙ぐんでいた。
- 379 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:25
-
「よお。誕生日なんだってな」
昼に学食で小川に会い、
「おお」
と返事をする。
「メシ、おごってやるよ。何がいい?」
「エエのん?」
「おー。食券買うから待ってな」
チャリチャリと小銭を自販機に流し込むように入れる。
加護は小川に一番高い定食をおごってもらった。
おまけにココアまでつけてもらう。
「んじゃ、あたしもう行くな」
「おう」
小川は立ち上がるとき、スッと箱を差し出した。
「おう?なんや、くれんの?」
「誕生日オメデト」
小川は小さく笑って出て行った。
「おお、アナスイのマニキュアや。猪木もまたハイカラなモンを」
加護は感心しながら包みを開く。
「加護さーん!お誕生日おめでとうございまーす!」
新垣を始めとした付属中学の加護ヲタ一同が教室に現れる。
「おお、ガキさん」
「これ、あたしたちからです」
薄い包みを差し出す。
感触は、なんだか硬かった。
「なんなん?」
「開けてみてください」
促がされるまま開けると、「ぐりとぐら」の英語版の絵本だった。
加護はページを開いて、顔をほころばせる。
「ありがとう」
「加護さん、あたしたちみんな、加護さんのことが大好きです」
「照れるやん」
そう言いながら、ふざけてウィンクして見せた。
キャー!という歓声が上がる。
- 380 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:30
- 加護は放課後には、紙の手提げいっぱい(しかも両手)のプレゼントを手にしていた。
しかもかなりの重量である。
「どうするれすか。梨華ちゃんに迎えに来てもらうれすか。重いれしょ」
辻はこのあと紺野と用事があるため、提案してみた。
「う、うーん。そうやなあ」
そう思い、結局梨華にメールする。
『梨華ちゃんのかわりにごとーだよー。
いま、梨華ちゃんと車でガッコ向かってるからね♪
楽しみに待っててね』
こんな返事が来、加護は首を傾げる。
「自分、梨華ちゃんに迎えに来てて言うてたん?」
「へ?言ってないれすよ?」
「いやなんか、師匠と車で来るて言うてる…」
加護は辻に自分の携帯を見せた。
「…師匠、何事ですか?」
校門前で梨華たちを迎えた加護は、後藤の格好に面食らう。
梨華は横で笑いをこらえる。
後藤は黒っぽいパンツスーツに身を包み、髪はひとつにまとめてアップにし、
フチなしで細長いレンズのダテメガネまでかけていた。
「んあ?似合わない?」
「いや、似合い過ぎですけど…」
「ささ、職員室に案内してちょーだい!」
CMの財津一郎風に言い、加護の背を押して校舎へと向かう。
辻は一足先に紺野と帰った。
今から店に取り置きしてもらってるプレゼントを引き取りに行って、
一緒に中澤家に向かうのだ。
- 381 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:42
- 「恐れ入ります、わたくし付属高校一年の加護亜依の家庭教師の者で後藤と申します」
後藤はにこやかに職員室に入って行った。
突然現れたスーツ姿の若い女性に、教師たちは目が点になる。
ちなみに後藤は飯田のつてで、『養護教諭の稲葉先生に面会』という名目で
守衛室に入校許可をもらっていた。
前もって連絡をもらっていた稲葉も、なんだか乗り気だった。
「は、はあ」
机に向かってパソコンを操作していた若い女性教師は、とりあえず立ち上がった。
「彼女の先日の件で少しお話をさせて頂きたいと思いまして、参上いたしました」
加護はプッと吹き出しそうになる。
『参上』て師匠…。
その若い先生は、学年主任の教師を呼びに行く。
後藤たちは職員室の隅で教師達の注目の的となる。
主任の教師が現れ、後藤はゆっくり説明を始める。
「彼女を銀座までバイクで送ったのは、実はわたくしでございまして」
「あなたが?」
その教師は目を丸くした。
「ええ。実は先日、わたくしが大学で受講しております科目でボランティアの実習課題がありまして、
実習地の千葉まで行くのに弟のバイクを借りて行ったんですね」
「は、はあ」
「その日出発まで少し時間があったので、ついでに彼女も送ってあげたんですが、
なんでも彼女が誤解される元凶になったとか」
「い、いや、それは別に…」
「わたくしも男の方に間違われるのは心苦しいものでして」
後藤はこう続けた。
「なんにせよ、わたくしの軽率な行動がみなさまの誤解を招く原因になったのは
間違いございませんし、一言お侘びを、と思いまして」
後藤は優雅に頭を下げる。
「か、加護さんはあなたが勉強を見てあげてるのですか」
「ええ。本当に優秀な生徒で誇りに思っております。わたくしが今まで
受け持った中でずば抜けておりますし」
「失礼ですが、あなたは学生さんですか?」
「はい。朝日女子学院大の英文科に在籍しております」
「そ、そうですか。優秀でいらっしゃるんですね」
「恐れ入ります」
後藤はふっと笑った。
- 382 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:47
- 「んあ〜、まあごとー的には一件落着?」
梨華の車に乗って後藤は前髪をいじる。
「フフ、お疲れ様」
梨華はハンドルを握って笑う。
「師匠、なんで『家庭教師』って…」
後部座席の後藤の横で、加護は拳を膝の上に置いた。
「んあ、高校生と大学生の関係を手っ取り早く且つ印象よく理解させるには、
それがぴったりだと思ってさあ。
なんなら、今度べんきょー見たげるよ」
ごとーが教えることが逆にないか、と後藤はふにゃっと笑う。
「あの、なんで今日来てくれはったんですか。
それが今日イチバンのミステリーです」
「んあ?やりたかったから」
「え?」
「なんにせよ。弟子のピンチにいの一番に駆けつけるのが、師匠というものであります」
「師匠、カッコええ!
師匠はウチの憧れの人です!」
「ぬはは、照れるのです」
加護を横抱きにして、後藤は彼女の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
- 383 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 18:55
- 「ごとー、着慣れないモン着て喋り慣れないコトバ話したら疲れちゃった」
中澤家に着き、後藤が首を横に曲げ自分の肩を揉むと、加護は素早く肩を揉んでやる。
「んあ、さんきゅ〜」
後藤は猫のように目を細める。
「んあ、ごとーちょっと寝ていい?」
後藤が大欠伸をするので、梨華は自分の中学時代のジャージを貸した。
白いサイドラインの入ったジャージで『3−B 石川』とゼッケンまでついている。
しかもゼッケンは度重なる洗濯で字が薄くなった上に、書きなおした形跡があった。
「んあ。では、おやすみなさい」
のび太のようなスピードで、後藤は加護のベッドでぐうぐう寝始めた。
それから約2時間後――
「んあ?」
階下からのかぐわしいおでんの香りに誘われて、後藤はとてとてと階段を下りていく。
台所では、裕子が大鍋におでんを炊いていた。
「んあ!おっきな鍋だね!」
まるで相撲部屋のちゃんこのようなアルミ鍋である。
薄い金色の光が、魅惑的に輝いていた。
「うまそ〜」
とたんに、後藤のハラがぐぐぅ〜と鳴る。
「オナカ空いたな…ごとー、そういやお昼食べてないんだった」
「ああ、じゃ、なんか軽く食べれるもの作ってあげる。パーティーまでそれで持つでしょ」
梨華がてきぱきと支度を始める。
彼女が作ってくれたクロックムッシュとミルクコーヒーで、後藤は奥の仏間でまったりする。
居間はパーティーの準備中で邪魔にならないようにこっちに移動したのだ。
おまけのデザートにプレーンヨーグルトにバナナとリンゴを入れたものもついていて、
後藤はご機嫌だ。
加護もその横でお茶を飲む。
「お仏壇見ながらおやつってのもオツだね」
「そうでんな、師匠」
「しかも師匠、ジャージですやん」
「あっは!ナウい?」
ナ、ナウいて。
加護は違う意味で目頭が熱くなるのだった。
加護もミルクコーヒーとヨーグルトを食べ、しばらくまったりしていた。
- 384 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 19:07
- 「んあ、ごちそーさま。お皿洗うね」
「ああ、後でまとめて洗うさかい、そこの食器洗いのに入れといてんか」
裕子は食器洗い機を指さした。
「へ〜い」
ハラがくちくなった後藤は、別人のようにてきぱき手伝いを始める。
お好みの材料をまとめて持っていったり、会場の問い合わせ電話に応対をしたり
めざましい活躍ぶりだった。
7時を過ぎたら続々とゲストがやって来た。
バイトを終えた吉澤がまず帰ってくる。
続いて保田、飯田と柴田も一緒に待ち合わせてやって来た。
後藤のジャージ姿を見た保田は小さく笑う。
「つーか、アンタそんなハデなピアスしていったの?」
後藤の耳元にはヴィヴィアンの王冠型の、シルバーのピアスがあった。
「んあ?これはちゃんとガッコの中じゃ外してたもん」
「その犬の首輪みたいなチョーカーは?」
「しくった!つけたままだった!」
「あーあー」
保田は額を押さえる。
「つーか、なんでそんなやたらとパンクなカッコなのよ。しかもゼッケンついたジャージで」
『ヴィヴィアンのピアスなんかしちゃって』
と、保田はあきれたように笑った。
「んあ、いーでしょ〜」
ジャージの裾をつまんで、後藤はくるっと回ってみせる。
「このジャージって梨華ちゃんのなんだよね…」
「わー!嗅ぐなー!」
「んあ…」
「陶酔するなー!」
「…あっは」
「頬を赤らめるなー!」
見事なワンツー・フィニッシュで後藤は吉澤にどつかれるのであった。
「冗談なのにさ」
後藤は『オーイテ』とぼやきながら頭をさする。
横にいた飯田が苦笑いして頭を撫でてやる。
- 385 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 19:25
- パーティーが始まる。
「わあ!この相撲部屋みたいなデカイ鍋は一体?」
「そんでなんでアンタはジャージなワケ?」
「んあ?」
訪れる人はとりあえず、おでんの相撲部屋サイズ鍋と、
後藤の『ゼッケン3−B石川ジャージ』について言及していた。
「ただいまれす〜」
「お邪魔いたします。完璧です」
辻と紺野が連れ立って帰ってくる。
ふたりともまだ制服だった。
「おかえりー。着替えといでよ」
飯田が出迎えてやった。
「へいっ。あさ美ちゃん、のんの部屋で着替えるれす」
「はい。ああ…たまりません、このかほり…」
紺野はうっとりと居間から流れてくるごちそうの匂いに目を細める。
持参したプレゼントの入った紙袋をぎゅっと握り締める。
飯田はその様を見て笑った。
着替えの終えたふたりも合流し、乾杯する。
加護は頬を紅潮させ、「おおきに、おおきに…」と声を詰まらせる。
「わあ…大きなお鍋ですね。相撲部屋のレポートを見てるようです。
完璧です」
とりあえず紺野もソコに触れる。
「んあ、食べてる?」
紺野はきょろんと目を向けた。
グラスを手にした後藤がにこにこして自分を見ていた。
「ああ…はい」
「んあ、もしかして緊張してる?」
「いいいいいえ…完璧、です」
紺野は赤くなって腰で後ろにずり下がる。
「アンタ、そんないきなりアヤしいジャージ女に声かけられたら、誰だって警戒するってー」
保田が苦笑いしてフォローしてやる。
『はあ…キレイな人だな。
明るいブルーに白の太いサイドラインなんていうダサくなりがちなジャージ(しかも
ゼッケンつき)をさらりと着こなして。
やっぱり美しい方は何をお召しになっても完璧なのね…』
まだどきどきする胸を押さえ、紺野はそんなことを思う。
「んあ、赤くなってる〜!かっわい〜!」
後藤は嬉しそうに紺野をぎゅっと抱きしめる。
「ししょぉ〜!ウチというオンナがありながら〜!!」
加護の悲鳴のような声が響く。
その横で柴田が大ウケしてハラを抱えて笑う。
「よしよし。カオが構ってやっからさあ」
飯田は加護の頭を撫でた。
- 386 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 19:40
- お好み焼きにおでんという、もうこれ以上はないくらいのコテコテなメニューを
堪能していると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「ただいまー」
「あ、平家さんだよ」
梨華は皿を置いて立ち上がった。
夕方に成田から電話があったのだ。
「遅なってごめんなあ。今日の主役はおるかー?」
「ここにいるれすよ〜」
辻が加護の手を取ってどたどたと廊下を走っていく。
「ハイ、誕生日おめでとう。こっちは辻な」
トートバッグからそれぞれ包みを出した。
「あ、口紅ですか」
「そ。22番はまだちっと早い思てなあ。
もっとエエ女になったら買うたるわ」
平家はウィンクした。
「わあ。キレイな色やな…」
「シャネル49番。スウィート…シックスティーン」
加護はパッケージの品番を読み上げた。
「かぁ〜。16歳にかけてんな!いちいちやることが粋だよっ」
すでに酔っ払ってる柴田は、オヤジのように唸る。
「のんはマンゴーらって。おもしろいね〜」
辻は楽しそうだ。
紺野も微笑んでそれを見ている。
しばしお土産配布会となる。
「圭坊にはライターな。タバコと」
「おー、サンキュ。あ、カルティエメンソールじゃん!」
「まとめ買いしてきたで」
「ありがと〜。違うタバコにしようか悩んでるとこだったんだ〜」
「禁煙しよって考えはないねんな。買うてきといてなんやけど」
平家は笑った。
「わたくしまで…ありがとうございます。
おいしそうなチョコまで頂いて」
紺野は恐縮して頭を下げる。
「いやエエ、エエ。
来るて分かってたら、もっとエエもん買うて来てんけどな」
「とんでもありません。今度平家さんのCD買います」
「おおきにな」
平家は可笑しそうに笑った。
- 387 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 19:52
- 平家も帰って来て、大人の時間へと流れ込む。
「あー、姐さんのおでんで熱燗をキュッと一杯かあ。
たまらんなあ」
平家は嬉しそうに言う。
裕子は黙って酒を注いでやる。
まだ怒っているようだ。
「でたよ、オヤジが」
保田がゲラゲラ笑う。
「すでにビールそんなに空けてるヒトに言われたないなあ」
平家の言葉に、飯田はうんうん頷く。
「あの、辻さん」
紺野は辻の袖を引っ張った。
「へいっ?」
「あの…中澤さんと平家さんは」
「ラブラブなのれすよ」
「そ、そうですか」
紺野は『これはわたしの胸に秘めておこう…』ときゅっと辻に借りたパーカーの
胸のあたりを掴む。
「市井ちゃんは今日はどしたん?」
飯田が聞くと、
「ゼミ旅行行ってる。週明けには帰ってくると思うよ」
後藤はトロンとした目で答えた。
ちょっと酔ってきたようだ。
「アヤカちゃんもバイトなんだよね」
「ああ、うちのねーちゃん大熱出して寝込んじまってさ。
斉藤さんとふたりがかりで税理士さんに持ってく書類整理してる」
柴田が頭をかいて言った。
「マコっちゃんも来れたらよかったのにね」
梨華が言うと、紺野は赤くなり、
「そ、そうですね」
とコーラを急に口にした。
急に飲んだので、当然むせる。
加護があきれたように背中をさすってやった。
- 388 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 20:09
- 「さて!平家さんも渡したし、プレゼント配布会といきますか!」
吉澤が立ち上がった。
全員「オー!」と拍手する。
「まずはウチね!梨華ちゃん!」
吉澤が合図すると、梨華は淡いピンクの包みを渡した。
「ひとみちゃんとあたしからだよ。もう16歳なんだね」
「うん」
加護は小さく「ありがとう」と言った。
「次はカオな。はいよ」
飯田は加護の首に何かつけてやった。
「首飾り、ですか?」
壁の鏡で確認して尋ねる。
「おう。カオのお手製」
「わあ、器用やねんね。オバチャンがホレるだけあるわ」
オバチャンは周りに『ヒュー!』と冷やかされる。
「のんかられす」
辻は箱を差し出した。
「なんなん?」
「カップとポットのセットれす。かわいいやつれす」
「へえ。おおきにな」
加護は箱の感触を確かめるように触ると、嬉しそうに笑った。
「わたくしは、こちらです」
開けてみるように言われて包みをはがすと、クラッシックタイプの小さなプーさんの
ぬいぐるみが出てきた。
「プーさんや。かわいいなあ」
思わず相好を崩す。
「はい。ピグレット〜」
モノマネつきである。みんな意表を突かれたので吹き出した。
「わしゃわしゃわしゃ」
調子に乗った紺野はムツゴロウさんのマネまで始め、ぬいぐるみのプーの口元を自分の
頭に持ってき、きっちりと『可愛がってる動物に頭からぱっくりやられてるムツゴロウさん』を演じ、
いい仕事をした。オチも完璧だ。
「すっげ〜!」
「んあ!食われてる!食われてるよ!」
吉澤と後藤は大喜びだ。
- 389 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 20:28
- 「ウチは、昨日のうちに渡したな」
中澤が言うと、加護は小さく笑って『ハイ』と頷いた。
昨日寝る前に裕子が部屋にやって来て、『16かあ。もういっぺん戻りたいワ』と
言いながら画集をくれた。
加護の好きな印象派の画家の作品を集めたものだ。
ゆうべは何度もベッドの中でそれを見返した。
「次は、あたしね」
『こっちはうちのねーちゃんから』
と柴田は包みをふたつ出した。
「ヌード?」
と間髪入れずに加護が聞き返すと、
「いや、今回はさすがにフツー」
柴田は苦笑する。
「わあ…」
はにかむように笑う加護が、額の中にいた。
繊細なタッチで描かれていた。
「で、こっちはあたし」
「アルバム?」
「そう。楽しい思い出をいっぱい飾ってね」
うん、と加護はアルバムを手に頷いた。
イチバン最初のページは、今日みんなで撮った写真を貼ろうと思った。
「で、これはおまけ」
「は?」
柴田はDVDを2枚差し出した。
「なに?」
「まあ、見てみてよ」
プレーヤーにセットすると、ややあってちょっと若き日のダウンタウンが映った。
「うわ!もしかしてこれ『ごっつ』?」
「うん、スキかなーって思って」
画面は『ゴレンジャイ』で、YOUと篠原涼子が怪人の浜田に襲われかけていた。
「うっわ〜…なっつかしい〜」
飯田が画面に見入って言う。
「しかもこれ、売ってるヤツじゃなくてテレビ録画したのを落としたんじゃ…」
吉澤が指摘すると、梨華も
「微妙にCM映ってるしね」
と頷いた。
「うちのねーちゃんのを勝手に編集しました」
「なあ、柴田さん。アホアホマンある?」
「勿論」
「オカンとマーくんは?」
「ぬかりはないよ」
柴田は親指を立てた。
加護と顔を見合い、頷いて『パン!』と手を打ち合った。
- 390 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 20:55
- 「ホホ!アタシから愛をこめて」
保田が差し出したのは、ぼこぼこした形のものだった。
「なんやろ?」
「開けてみな」
ハートのケーキ型と、こじゃれた風のお菓子のレシピ集、紅茶だった。
「これは、ウチにバレンタインになんか作ってよこせってコト?」
加護が言うと、みんな笑った。
飯田が「直接的だねえ」とニヤニヤする。
「最後はごとーかな?」
後藤は今日学校に持参したバッグ(これも保田に借りた)から
「んーと」
とごそごそ探って出した。
「んあ、おめでと」
「…ハーモニカ?」
「ブルースハープ。超初心者だからコードはCね」
後藤はふにゃっと笑った。
「…覚えててくれてたんや」
加護は声をまた詰まらせる。
辻の誕生日のときに「ハーモニカ教えて!」と言ったことを後藤は覚えていたのだ。
「今ならもれなく後藤師範のレッスンつきです」
「うん、うん…」
ハーモニカを手にして、加護は肩を震わせて泣き出した。
横にいた梨華が手の甲で涙を拭ってやる。
後藤は辻にもギターのエフェクトをあげた。
「ごとーのお古だけどね」とはにかみながら。
「カッコよく歪ませるのれす」と辻は笑った。
今日来てないメンバーのプレゼントも渡される。
まずはアヤカと市井。吉澤が預かっていた。
連名でなぜか下着セット。
「うっわ〜…ブラのサイズ言うてへんのに、なんで分かったんやろ」
加護の呟きに、
「あいつらに不可能はないわよ…」
保田が遠い目で答える。
「えらいかわいらしいなあ」
ピンクの地に小花柄で割にまともだった。
「真っ赤とかじゃなくてよかったじゃない」
「え?赤アカンの?」
「真っ赤でガーターまでついてるのを見るとどう思うよ?」
保田が言うと、飯田を始めとしたその企画に加担したメンバーは手を叩いて笑う。
「うっわ〜…ガーターまで。オバチャン、どこで勝負すんの?」
「アタシが知りたいよ」
保田は真っ赤になって小さくなった。
- 391 名前:You're sixteen 投稿日:2004/07/31(土) 20:57
- 時間がなくて来れるかどうか分からない安倍と矢口のものもあった。
安倍は吉澤、矢口は辻に預けた。
「なっちさん、エライディスコみゅーじっくバリバリやん」
CDが2枚だが、1枚は安倍のオリジナル編集だった。
自慢のMacで焼いた。
「ヤグチさん…まあ、予想はしとったけど」
勝負パンツセット。
ちょっと学校へは履いていけないようなものもある。
「オカンに見られたら怒られるワ」
加護はパンツを両手で掴んで、ちょっと泣きそうになった。
その情けなさそうな顔を見て、みんなまた笑った。
- 392 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/07/31(土) 20:59
- 更新しました。
ぼんさんお誕生日会のつづきは後日。
まだ来てないゲストがおりますし。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( `.∀´)<ホホッ!アタシのカッチョいいスーツを貸したのよッ
里田さんはかなりキャラ立ってましたね。
4期オーデの映像を見ると「そういや尾見谷さん元気かな」と思い出します。
後藤さんは「僕にはわかる…」というよりは「一見キャリア風」にした模様です。
>ヨッスィのタマゴさん
从 #~∀~从<♪今日は夢路の歌か 淋し恋しヴァイオリン 真珠の涙を 捧げましょうか
そんな歌もありましたねー。姐さん、演歌でソロデビューはイヤがってましたね。
ハロモニ。は、
( `.∀´)<アタシのポスターってあんまり作ってないんで
が、ヲタ的に切なかったです(ニガワラ ぼんさん親衛隊は熱い連中です。
>377の名無飼育さん
( ‘ д‘)<ウチもデビュー当時から大分変わったしなあ
( ・e・)<我輩も前髪解禁したのだ
女性は褒めても綺麗になるようです。実際そういう例を何件か見たことがあります。
>(*−e−)ノ
照れてるガキさんが可愛いです(w 彼女が照れてるときってこんな感じですよね。
- 393 名前:グング 投稿日:2004/08/01(日) 01:35
- 更新おつかれ様です。
ぼんさん誕生日おめっとさん!
『ごっつ』・・・グングんちにもありますよ。
しかもぼんさんがおっしゃったヤツすべてあります。(笑)
今度改めて見よっかな・・・
- 394 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/01(日) 04:18
- 更新お疲れ様です。
師匠・・・かっこえぇ・・・(2回目)
やる時はビシッ!と決めますね。
う〜ん、やっぱこの師弟は最高です♪
「姉妹」にしても、良い感じになりそうですね。
4期と共にこの師弟も永遠に不滅であります!
それにしても・・・こんなに大勢に祝ってもらえるのが羨ましいです。
自分は、家族にさえよく忘れられてるので(涙)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 395 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 04:57
- 平和だねー。
- 396 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/08/01(日) 23:33
- A型川‘〜‘)|| ( ^▽^)川VvV从(〜^◇^)川’ー’川从*・ 。.・从
O型(0^〜^)( ´D`)∬∬´▽`)从 `,_っ´)
B型川o・-・)( ・e・) AB型( ‘ д‘)ノノ*^-^)
O型は太りやすい
( ´D`)<1年目のミュージカルでのんが、2年目によっちゃん、3年目にマコトが太ったから…
(0^〜^)( ´D`)∬∬´▽`)<<<次は… 从;`,_っ´)<ひ〜!
(・´ー`)<まあストレスだからしかたないべ。ナッチとののとよっちゃんみたいにまた痩せれば問題ないべ。サイキン、ナッチハロモニヤスミダベ。
A型はシャクレが多い。 (;^▽^)<ちょっと〜!!
これが一番ワロタ。
更新お疲れ様です。
( ´ Д `)<くんくん (^〜^O;)<わー!嗅ぐなー!
( ´ Д `)<んあ… (^〜^O;)<陶酔するなー!
(*´ Д `)<…あっは。 (^〜^O;)<頬を赤らめるなー!
この3段オチがよかったです。( ´ Д `)<別にい〜じゃん。ヨシコは毎日梨華ちゃんの…
(*´ Д `)<…ね。ポッ (^〜^O;)<意味深に頬を赤らめるなー!
(*´ Д `)ノ(TдT*)<ししょ〜!
何はともあれ、ごっちん大活躍でした。
ヽ;^∀^ノ<まったく、ごと〜にはかなわんな〜圭ちゃん。
(;`.∀´)<…そうね。
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 04:19
- って言うか顔文字レスうざい
- 398 名前:芥龍 投稿日:2004/08/02(月) 08:43
- 辻ちゃん、加護ちゃん卒業おめでとう!!
更新お疲れ様です。
しかし亜依ぼんさん……何渡し方とか評価してるんですかw
関西か?関西の血がそうさせるのか?w
師匠も凄い人間だぁ普通学校に殴りこみかけませんて……
あと村田さんの所のビデオテープは保存状態が良かったのねと素直に思いました。
(我が家のその頃のビデオテープは軒並みカビて捨ててしまいました)
↑の世迷言なぞ気にせずこれからも作者さんや
ヨッスィのタマゴさんの顔文字レス楽しみにしております。
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 10:46
- >>396 ネタ書きたいなら自スレ立てろよ。
ここは、ごまべーぐるさんのスレでアンタのスレじゃない。
面白いなら救いようもあるが、つまらんネタばかりだし。
感想書けばネタバレばかり。いいかげんウザイ。消えろ。
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 12:12
- >>399
苦情の仕方が行き過ぎ
せっかく毎回楽しみにしているスレをこういう形で荒らすな
自分も顔文字レス楽しませて頂いてます
上記ふたつの書き込みは気にせずにこれからも頑張って下さい
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 20:53
- いや俺も顔文字レスはうざいと思う。
>>399みたいに荒らされるのもかなわんが、読者のやたら長い顔文字レスでスレ容量を食いつぶすのもね〜。
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 23:53
- よかれと思ってやったことがあんまりよくなかっただけの話だな。
みんなそこまでカリカリせんでもいいと思うけどな、俺は。
世迷言もウザイと言われることも、言い方考え方によるわけだし。
作者さんがどう判断を下すかってことでいいんじゃないのかな。
間借りしてる場所とはいえ、一応スレッドはごまべーぐるさんのスレッドだし。
- 403 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/03(火) 13:01
- >>399も顔文字レスもどっちも荒らし。読まなきゃ良いだけ。
俺は顔文字レスをずっと前から脳内あぼーんしてる。
- 404 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:25
- 矢口と安倍がやって来る。
「用事があるからすぐ失礼するけど、一言おめでとうだけでも」
と言った。
「おふたりとも、おおきに。
あの、ヤグチさん?」
「ん?」
「加護、あれ、いつ履けばエエんですか?」
「決まってんじゃん」
矢口はニヤリと笑う。
「意中の相手を振り向かせるトキ♪」
のんがこんなん履いてんのに萌えるとはとても思えん。
加護はやっぱりとほほ、となった。
ごぼう巻きを箸でつまみ、
「んあ…他人とは思えないな」
ぽそっと後藤は呟く。
保田はもうすでにガンガン飲んで、『ヤ〜グチ〜』と背中から抱きついて
ちっこい矢口にじゃれついている。
安倍は『コラー!』とおでんの皿を置いて保田をぽこぽこ殴る。
柴田も『りか〜。チューさせろよ〜』と迫り、吉澤に阻止されていた。
「はあ、みなさますごいですね。完璧です」
紺野はグラスを手にして、ほおっと息を吐く。
ちなみに勝手にオレンジジュースに焼酎を混ぜて飲んでいた。
「あさ美ちゃん、引いてないれすか」
「いえ、とっても楽しいです」
紺野はにこにこと答える。
「ごめんなー、紺ちゃん。
圭ちゃん、あんなオッサンだけど」
飯田が申し訳なさそうに言うと、紺野は笑って『いえいえ』と首を振る。
保田は平家の肩に手を回し、なにやら楽しそうだった。
- 405 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:26
-
安倍と矢口は30分ほどした後、
「んじゃ、また明日な」
と帰って行った。
「矢口さん!」
加護が呼び止める。
「あ?」
「矢口さんはただのちっこいひとやないです。
でっかいちっこいひとです」
「加護、酔ってんのかー?」
矢口は少し笑って、
「アリガト」
簡潔に礼を述べた。
「あ、電話だ」
柴田が鞄から携帯を取り出した。
なんでかドアーズの『ジ・エンド』が着メロだった。
「マサオ?今近くまで来てるん?
うん、そう。駅からほとんど一本道だから」
じゃ、と柴田は電話を切った。
「タクシーで来るそうです」
「マサオさん、どっか行ってはったん?」
加護が顔を向けて言った。
「うん、今日まで出張だったのよ。関西だって」
「へえ、大阪とかかな」
「じゃないかな。心斎橋行ったとか言ってたし」
「へえ。またこじゃれたトコを」
そうこう言ってると玄関のチャイムが鳴った。
梨華が素早く立って出て行く。
「ごっめん、遅くなって。
お邪魔します」
やや疲れた顔の大谷が上がってくる。
「おいっす!」
柴田が居間で出迎えてやる。
「お、おいっす。
すみません、遅くなりまして」
柴田に答えながら、頭を下げて挨拶する。
「いやいや、わざわざおおきにな。
おでん食べ。あ、お好みもあんで」
「いただきます」
裕子にすすめられて遅い晩ご飯を食べ始める。
- 406 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:27
- 「んあ、紺野ちゃーん」
「は、はい」
後藤に呼ばれ、紺野は振り返った。
「ポテチ、いる?」
「あ、はい。いただきます」
口の開いた袋を差し出され、遠慮がちに手を入れて少し掴む。
「おいし?」
「はい、塩味がステキです」
「あっは!」
後藤は紺野をきゅっと抱きしめた。
紺野は赤くなる。
「やれやれ、気に入られたようね」
保田はその様を見て苦笑いする。
「まあ、犬とか猫になつかれたようなモンよ」
「ごとーはわんこじゃないもん!」
紺野を抱きしめたまま、わんこ後藤は苦情を言う。
「いやー、アンタって動物的に好き嫌いを決めるから」
「けーちゃんなんかえっちで好き嫌いきめるくせにー!」
「コ、コラ!」
保田はあたふたとする。
紺野はよりかあっと赤くなった。
「なんか食べたいモンある?」
後藤に聞かれ、
「あ、あのお…」
と紺野は恐る恐る切り出す。
「んあ?」
「なんか足りないってさっきからずーっと思ってたのですが…」
「ん?」
「ケーキ…食べましたっけ?」
紺野の一言に、全員『あ!』という顔になる。
「え、まだケーキ出てなかったの?」
おでんを食べながら大谷は目を丸くする。
平家も「あれまあ」という顔をする。
「うわー…ウチもなんかないなあって思っててん」
「ご、ごめん!あいぼん!
すぐ取ってくるね!」
「あ、ウチも手伝う」
梨華に続いて吉澤も台所に行った。
- 407 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:28
- 「はい、あいぼん」
梨華がホールケーキを差し出す。
いかにも梨華がしそうなピンクづくしのデコレーションだった。
加護はふっと口元をほころばせる。
「可愛いですね」
「へいっ」
紺野と辻は微笑みあった。
「お母さんのケーキにはかなわないだろうけど」
梨華が言うと、加護は反射的に吉澤の顔を見た。
皿とフォークを持ってきた吉澤は黙って笑う。
「ううん。ううん」
懸命に首を振り、加護はふたりにしがみついた。
物凄く遅かりし、ケーキのロウソク吹きとなる。
「16歳の願いはなんや」
平家が尋ねると、加護は
「ナイショ」
と笑った。
「あ、そだ。
加護ちゃん、これ大阪で買ったんだけど」
大谷が鞄のサイドポケットから小さな袋を出した。
淡いピンクの石がついたピアスだった。
「ピアス?」
「うん」
大谷はふと加護の耳元を見る。
「あ、ピアスホールなかったっけ。こりゃうかつだったわ」
大谷はしまった、と頭をかいた。
「ううん、ちょうど開けようて思てたとこやさかい、嬉しいです」
「そう?ガッコ、うるさくないの?」
「普通に両耳にひとつずつとかなら特に言われないよね」
梨華が言った。
辻も頷く。
「もー、ウチこれからは遠慮せん。
髪も染めたる。ヤグチさんくらいパツキンにしょっかな」
「いやあいぼん、普通に呼び出されると思うよ…」
梨華が言うと、
「不良宣言ね」
柴田がニヤニヤと笑った。
- 408 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:28
-
ケーキを大方片付けると、なお一層酒モードに入った。
お好みを焼いていたホットプレートで、保田たちはなにやら得体の知れないものを焼いて酒のアテにしていた。
どこからともなく新しい日本酒の瓶が現れ、平家が『よっしゃ』と立ち上がってお燗をしに行く。
「カオ、熱燗ニガテだから冷やのままでいいよ」
「そうか」
「あ、あたし頂きまーす」
と柴田。
「あ、アタシもお願いします」
大谷も遠慮がちに手を上げた。
「んあ。加護ちゃんと辻ちゃんと紺野ちゃんはいい?」
「師匠…お気持ちは嬉しいですけど、ウチらフツーに高校生ですから」
「はい…お気持ちだけ」
と、紺野はウィスキーのグラスを置く。
辻も今日はまだおとなしくジュースを飲んでいた。
「ごっちん、なんでジャージなん?
それ、梨華ちゃんのじゃ…『石川』って」
大谷にも指摘され、後藤は『んはは』と笑う。
「体育なんかタルくてやってらんねーよって不良みたい」
柴田が言うと、
「でも、ジャージは着ると」
と飯田は笑った。
- 409 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:28
- 平家と裕子はその様子を、酒を酌み交わしながら黙って見ていた。
「なにしんみり飲んでんの〜」
そこへ保田が冷やかしにくる。
「ああ…いや。ウチも、おおっぴらに人前でベタベタできたらなあって思ってたとこ」
平家は少し笑った。
「んあー、充分してんじゃん」
と後藤。
「いや、アレよ。
みっちゃんも極端な例やけど、ラブホとか行ってみたいなーって」
平家が言うと、裕子はややあって、いきなり平家の首に手を回し、唇を奪った。
その場にいる全員が目が点になる。
「あ…姐、さん?」
さすがの平家もぼうっとする。
唇を解放したあと、裕子は赤くなり、憮然とした表情で居間を出て行った。
「追いかけないの?」
飯田が床に手をついて、後ろから平家の顔を覗き込む。
平家は唇を手で押さえたまま、呆然としている。
「あ、うん。
一瞬、アンタみたいに交信してたワ」
「ふるさとに帰ってたんだね」
「宇宙ちゃうで」
「カオだってそうだよお」
平家は大きな箱の入った紙袋を持って、
「じゃ、ちょっと行ってくる」
と居間を出て行った。
- 410 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:30
- 裕子は自室にいた。
平家は外から声をかけ、返事はなかったが入って行く。
裕子はベッドにつっぷして、顔も見なかった。
平家はそばに腰かけ、裕子の頭を撫でる。
「はい、おみやげ♪」
平家は箱を差し出した。
「5番の香水と、あとは」
開けてみて、と裕子を促がす。
焦げ茶のケリーバッグが中から出てくる。
「…カバンじゃ騙されんからな」
「バーキンのほうがよかったか?」
「そういう問題やない」
なんでみやげがこれやねん、ともっともなことを言う。
「ほんまは今年の誕プレにするつもりやってんけどね。思いがけず早く手に入ったし」
平家は飄々と答えた。
「5番はなんやねん」
「これはバレンタインのプレゼント」
姐さんがこれだけつけて寝てるんはみっちゃんのツボやし、と耳元で言うと裕子は黙ってはたいた。
「大体、バレンタインは来週やないか!」
「ごめんなー。みっちゃん、バレンタインは日本におらんのよ。だから、一足早いプレゼント」
「またかい!」
「淋しい?」
「違う!」
裕子はがばっと起き上がった。
- 411 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/03(火) 22:30
- 「まだ怒ってんの?」
新しい映画でラブシーンがあったことを、平家は言っている。
「そんなんや…」
裕子も何に対して怒っているのか、自分でも分からなかった。
「確かにあんまり時間なかったから、大して説明せんと行ってもうたのは悪かったって思ってる。
でも、出来上がった映画観てよ。ウチが何を言いたいんか、観てくれたら分かるから」
裕子はしばらく黙っていた。
ふれくされた表情で、ベッドに腰かけた。
「…そんなに、その監督に撮られたいんか」
「んー。確かにー、あの監督さんのはずーっと出たかったし」
あのね、姐さん。
平家は続ける。
「ラブシーンに抵抗ないて言うたらウソやで、ウチもまあ、年頃の女やし?
しかも姐さんおるしさ。
でも、あえてそれを選んだ気持ち分かってくれへんかなあ」
「分かれへん」
「即答?」
平家は髪をかきあげて笑った。
「ウチ、今までにない集中力で問題のシーン終えてんで。
いや、やっぱウチが一番燃えるんは姐さんやわ」
さっきキスしてくれて、嬉しかったで。
裕子の髪を撫で、抱きしめた。
「…エエ加減なことばっか言いやがって」
裕子は腕の中で小さく不平を述べた。
- 412 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/03(火) 22:32
- 更新しました。
下書きしながらどう書こうかずっと考えていたのですが。
今回の件に関して、色々な考えの方がいらっしゃると思います。
皆様から頂くレスに関しては小説板自治FAQにもありますが、
「ネタバレ」「ムリなリクエスト」(例:ヤスとヒーをくっつけてくれ ←ありえねー(爆)
「ストーリー予想」がなければ有り難いです。
マナー違反を指摘されるお心遣いには感謝しております。
その際にはなるべく穏やかなお気持ちでよろしくお願いいたします。
ごまべーぐるの中の人に対してはいいのですが、読まれる方のお気持ちを少しでも
心に留めて頂ければ、と願っております。
顔文字に関してもご指摘がありましたので、それを使用したレスのお返事と
ネタはしばらく見合わせます。
本日はおひとりずつお返事させて頂くのはお休みさせて頂きます。
申し訳ありません。
「ネタバレイヤソ」という場合は2chブラウザをおすすめします。
サーバの負担が軽くなるというメリットもあり、スレ容量もパッと分かります。
ちなみに私はかちゅを使ってます。この前友人宅で初めて使用したのですが、
OpenJaneもいい感じです。
あ、最後にひとつだけ。
こちらで書き始めてから早や2年以上経ちました。
ごまの中の人も姐さんも三十路になるはずです。
中澤:うっさいわ!
わざわざお時間を割いて読んで頂いていること、励ましのレスを頂いていること、
本当に心より感謝しております。
ありがとうございます。
これからもどうぞ、よろしくお願いします。
保田:中の人はアイドルヲタなのにね(プッ
護摩:(飯田にあることないこと吹き込んでる)
以上です。
- 413 名前:ヨッスィのタマゴ 投稿日:2004/08/03(火) 23:57
- どうも、いつも楽しく読ませていただいてます。
確かに自分でもちょっと、小説の感想以外を書きすぎたと反省しています。
いつもごまさんのレス返しが小説と同じくらい楽しみだったのですが、やっぱりそこに私が調子に乗ってしまったことは、認めざる得ないことだと自分でも感じます。
今回私のせいでごまさんの楽しい小説の間に迷惑をかけてしまい本当にすいませんでした。
- 414 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/04(水) 00:40
- 更新お疲れ様です。
「失敗は成功の元」ですよ・・・
ついでに、自分もかちゅ使ってます。
ん〜・・・やっぱ、こういうイベントはいいですね。
はぁ、最近こういう事されてないなぁ・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 415 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:16
- 夜も更けていよいよ居間はアヤしくなってきた。
「わー!誰、おでんにポテチまぶしたの!?」
飯田が驚きの声を上げる。
「んあー、ごとーでーす」
「すみません…わたくしも」
犯人達は素直に自供した。
紺野は首をすくめ、恐る恐る手を上げる。
保田と辻、柴田はお好み用の余ったエビ、イカ、豚肉などを勝手に炒め鉄板焼き大会に入っていた。
特に保田はそんなに食べてはいないが、かなり飲んだくれていた。
辻もついに酒モードに入って、真っ赤な顔で飯田に甘ったれていた。
梨華はかいがいしく吉澤に、炒め終った具を皿に取ってやる。
加護はその様をちょっと離れたところから見て、
『こんなにぎやかな誕生日、初めてやなあ』
人知れず、顔をほころばせた。
「疲れた?」
グラスを手にした大谷が声をかけてくる。
「ううん。マサオさんこそ出張で疲れてんのに、ありがとうなあ」
「いやいや、年に1回のことだしね」
大谷はグラスの氷をカラカラいわせ笑う。
「マサオー、なに女子高生ナンパしてんのさー」
柴田がニヤニヤして言った。
「ちげーよ。
しかも彼女いる前でするかっつーの」
鉄板焼きチームや梨華たちは大谷の台詞に大笑いする。
「それよか、平家さんもう帰ったんかな。
アタシまでなんかいいモンもらっちゃって、ちゃんとまだお礼言ってないんだけど」
大谷は自分の鞄の上に置いた箱を見て言った。
「ああ、平家さんなら」
梨華がちょっと笑うと、
「まだ裕ちゃんの部屋にいるだろうけど、今行ったら、きっとお邪魔だし?」
保田たちが続けてニヤニヤする。
「ああ…なるほど」
納得したように、大谷は
「飲むか」
グラスをぐっと呷った。
- 416 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:16
- ―――それからしばらく
居間には後藤、保田、柴田、辻が雑魚寝している。
酔っ払いは死体のように横たわり、居間に酒臭い寝息を充満させていた。
4人も寝たら部屋がいっぱいになったので、大谷と飯田は仏間に布団を敷いてもらった。
加護と紺野は同じ布団ですでに眠っている。
吉澤は梨華を手伝って、さっきから片づけをしていた。
「ごめんねー、梨華ちゃん」
大谷は申し訳なさそうに頭をかいた。
梨華は笑って頭を振る。
「ううん、お泊りって楽しいじゃないですか」
「イシカワー、フロサンキュ。マサオくん、お待たせ。次どうぞ」
そこへ飯田が風呂から上がって来た。
「マサオさん、入ってきてください」
「じゃ、お言葉に甘えて」
頭を下げて浴室へ向かった。
「パジャマもありがとな」
飯田が着ているのは、梨華のフリーサイズのパジャマだった。
こちらはさほどダサくもない。
「いいえ。サイズはよかったですか」
「うん、ちょうどいい」
飯田がバレッタで上げていた髪を下ろし、ゆるく三つ編みにする。
その様が本当に女っぽいので、梨華は見惚れてしまう。
「なに?」
「いえ、飯田さんってキレイだなあ、って思って」
「ほめてもなんにも出ねえべ」
うりうりと肘で突付き、飯田はケラケラ笑った。
「うおー。とりあえず空き缶片付けやしたー」
ゴミ袋片手に、吉澤がひょこっと襖から顔を出す。
「ありがとう、ひとみちゃん。
もう休んで」
「一応皿とか固めといたんだけど」
「うん。じゃ、あたし洗い機にセットするからもう横になって」
「いんえ。オイラも運ぶさあ」
「カオも手伝うべ」
3人は笑って台所へ食器を運ぶ。
- 417 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:17
- 「絶対、1回じゃすまないねえ」
運ばれた皿などを見て、飯田は苦笑いする。
食器もかなりの量で、洗い機に入りきれないようだった。
グラスなどは手で洗い、皿だけ入れることにする。
洗うのは飯田、すすぎは梨華、拭くのは吉澤と担当を分ける。
「わあ、飯田さんって手際いいですねえ」
梨華がグラスを洗う飯田の手元を見て、感心した声を上げる。
「カオ、バーテンのバイトしてたこともあるし」
「カーッケー!」
グラスを拭いて吉澤も声を上げる。
「そうなんですか、初耳でした」
「だろうね、知ってるの圭ちゃんとみっちゃんくらいだし」
ああ、と飯田は思い出したように続ける。
「明日香と彩っぺもかな」
「へえー。これからもっとイシカワにも飯田さんの情報寄せてくださいね」
「知ってどうすんだよ」
飯田は泡だらけの手を上げ、肘で軽く梨華の頭をこづいた。
梨華は「やあだあ」と嬉しそうにイヤがる。
吉澤は優しい目でそれを見ていた。
- 418 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:18
- ―――その頃
村田めぐみは仕事場のマンションで高熱にうなされ、うんうん唸っていた。
別の部屋で、斉藤とアヤカが確定申告用の書類の整理をしている。
「そっち、できた?」
「はい」
「よっしゃ。こっちも一段落ついた。休憩しよっか」
ふたりが手を休めると、キッチンから村田の母が顔を覗かせた。
「ふたりともなにかお腹に入れたら?
ちょうどうどんゆでてるし」
「すみません、おば様」
斉藤が頭を下げる。
母は娘の看病に来ていた。
「あの子もなんか食べさせないと。
着替えもさせたほうがいいわねえ」
「あ、じゃ。わたしが」
斉藤は立ち上がり、寝室に行く。
「村?」
「うん…」
電気を点けると眩しいだろうから、部屋のドアを開けたままにし、声をかける。
「熱、ちょっとは下がったかな」
おでこに手を当てて、斉藤はクローゼットから着替えを出した。
村田の母がシーツやタオルを持って入ってくる。
「これ、洗いたてだから」
「あ、すみません」
「この子、わがままだから具合悪い時ほど綺麗なシーツで寝たがるのよ」
「ハハ」
母はクローゼットから布団を出し、
「めぐみ、なにか欲しいものはないの」
と声をかける。
「ペリエ…レモン絞ったやつ」
とベッドで村田は弱々しく答える。
「風邪引いてるのにそんなの飲んで大丈夫なの?」
斉藤が尋ねると、
「…ならいい」
と返って来る。
「しょうがない子ねえ。
じゃ、お母さん作ってくるからね。
ひとみちゃん、ごめんだけどあとお願いね。
汗かいてるし布団も替えてやってね」
「あ、はい」
母が出て行くと、
「村、起きれる?
着替えよう」
斉藤は村田をベッドに座らせ、タオルで体を拭いてやる。
- 419 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:18
- 「…寒いのと熱いのが不規則にやってくる」
村田はそう言って身震いした。
「それが風邪だっつーの」
上半身を拭き終わると、
「ホラ、下も」
タオルを手に、斉藤は言う。
村田は慌てて頭を振り、
「じ、自分で脱ぎますう!」
と布団の中でごそごそズボンを脱ぐ。
しかし上半身はまっぱなのであんまり説得力はなかった。
「じゃ、自分で拭く?」
「う、うん」
タオルを渡され、ごそごそやっぱり布団の中で拭く。
「パ、パンツは見ないでよ!」
「見ないって」
タオルとともにぐるぐる巻きにした寝巻が渡され、斉藤は苦笑いする。
代わりに、着替えを渡してやる。
「シーツも替えるから。ホラ、つかまって」
斉藤は手を差し出した。
素直につかまり、起き上がる。
壁にもたれて座り、村田はしばらくぼんやりと斉藤が寝具を整えているのを見ていた。
「…ごめん」
「なにがー?」
「こんな忙しい時に、風邪でへばって」
斉藤は振り返って小さく笑った。
「今はちょうど一段落着いたとこだから。2、3日くらいどうってことないわよ」
「うん。あの」
「ん?」
「ありがとう」
斉藤は何も言わず、近づいてまた手を貸してやった。
- 420 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:19
- ―――翌朝。
居間チームは7時過ぎにまず、柴田が起きた。
「おお…頭、イテ」
さすがに飲みすぎたようで、二日酔いに顔をしかめる。
起き上がって、すぐそばにあった缶入りの緑茶に手を伸ばす。
そばには、後藤や保田、辻が微動だにせず毛布にくるまっている。
「マサオは別んトコで寝てるんかね」
ひとりごちてると、ドアがそおっと開いた。
「おお、紺ちゃん」
「お、お、おはようございます」
どうやら、自分の鞄を取りに来たようだ。
なにやら慌ててる。
「どしたん?」
「いえ、お風呂に入っていいと石川さんに言って頂いたので、今から頂こうと」
「ああ、着替えね。あたしも借りよっかな」
「あ、でしたらお先に」
「いいよどうぞ。あ、なんなら一緒に入る?」
柴田がニヤっとすると、紺野はかあっと耳まで赤くなった。
仏間チームは梨華がまず起き、張り切ってお風呂の支度を始めた。
次に紺野が起きてきたので、お風呂をすすめる。
「風呂も入らんと寝てもたわあ」
加護は布団の上に座り込み、ふわあっと大欠伸する。
吉澤と大谷が同じ布団でまだ寝ている。
飯田は確か梨華の隣で寝ていた。
梨華はもう起きたのか、飯田は半分のスペースですうすう寝息を立てている。
「…ハラも減ったなあ」
加護はぽりぽり頭をかいた。
- 421 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:20
-
「う…くさ」
保田はあまりの酒くささに、顔をしかめながら目を覚ました。
辻に後藤という、二大酒豪がそばに転がっている。
そりゃあ酒くさくもなるはずだ。
「んあ…おでんとっといてね。
あとで茶飯にするから」
仰向けのまま、後藤は寝言を言う。
「…朝からそれとは。おみそれしたわ」
タバコを銜えて、保田は冷や汗をたらした。
台所で、梨華はコーヒーを沸かす。
「梨華ちゃん、お風呂借りるねー」
紺野が出てきたので、柴田が声をかける。
「あ、はい。どうぞー」
「石川さん、ありがとうございました。
いいお湯でした」
湯上りの紺野は、ほっぺもピンク色だった。
それが可愛くて、梨華はふふっと笑う。
「いいえー。コーヒーいかが?」
「ステキです。頂きます」
「おはよー。ごめんねー、ゆうべは」
入り口から大谷が顔を覗かせる。
「いえいえ。あ、朝ごはんどうします?
パンもごはんもありますけど」
「あ、じゃ。
お礼にアタシ作るわ」
「わたくしも及ばずながら。
完璧です」
そこへ辻が寝ぼけ眼で起きてきて、朝食の支度となる。
- 422 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:20
-
辻が中心となっておにぎりを握り、梨華は玉子焼きと鮭を焼く。
ごはんの匂いを嗅ぎつけたのかどこからともなく後藤が現れる。
加護も「おはよう」と入ってくる。
柴田も風呂から上がってやって来る。
次に保田が入りに行った。
「うお?ご馳走大会?」
吉澤がぼさぼさの頭でひょこっと顔を覗かせた。
台所はせっせとおにぎりを握る者、サンドイッチ作りに精を出す者、昨日のおでんの残りで茶飯を
作る者、ホットプレートを持って来る者、やっぱり何か焼く者、と様々だった。
風呂から上がった保田は廊下を歩いていた。
ちょうど起きたばかりの平家と顔を合わす。
「おお。おはようさん」
「ね、昨日はどだった?」
保田が顔を寄せてニヤニヤすると、平家はフッと笑って何も言わず裕子の部屋に戻って行った。
- 423 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/06(金) 22:21
- 保田が居間に行くと、飯田が自分の鞄の整理をしていた。
「お。起きてたん?」
「ん。おはよ」
飯田の横顔は何か浮かない様だった。
「どしたん?」
「うん…あのね」
飯田はゆうべに遡り、辻の胸元にキスマークらしき跡があったことをぽつりぽつりと話した。
辻は昨日襟ぐりの広いニットを着ていたので、彼女がかがんだ時に見てしまったのだ。
保田はニヤニヤし、
「やるじゃん」
ヒューッと口笛を鳴らす。
「で、何をモヤモヤ悩んでるんかなあ。カオリママは」
「だって…まだ早いよ」
飯田は首を振った。
「早いって…アンタ今の辻くらいの年には、とっくに処女喪失してたんでしょうが」
「うん、そうだよ…でも」
「相手は加護なんだろうからいいじゃん。大丈夫、あの子は頭もいいし自分が苦労してるから
辻の事大事にするよ」
加護が相手じゃなかったらまた問題だろうけど、と保田が冗談を言うと、
「のんちゃんはそんな子じゃないもん!」
飯田はムキになって怒った。
「これが辻じゃなかったらここまで悩まなかったっしょ」
保田はタバコに火を点けた。
「圭ちゃんは何も思わないの?」
「だって思うも何も、ラブラブなんだしさあ」
アンタが思ってるより、あの子らはオトナだよ。
保田は旨そうにタバコをふかす。
「もーいい。圭ちゃんに相談しない」
「アラ」
「圭ちゃんのハゲオヤジ」
「いやいやいや、アタシがハゲなんかい」
飯田は立ち上がって、台所に手伝いに行った。
部屋を出しなに、『イーダ!』と思いっきり顔をしかめて見せる。
保田はあきれて笑う。
「うちの父さんは確かにハゲだけどさ」
保田はぶつぶつ言いながら、ズレた反論を行った。
- 424 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/06(金) 22:21
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ヨッスィのタマゴさん
いえ、こちらこそすみませんでした。わたくしに至らぬ点が多かったと思います。
どうぞこれからもよろしくお願いします。
>ピクシーさん
フォローありがとうございます。かちゅはいいですよね。
私も長いことこういう事されてませんね(ニガワラ
- 425 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/08/07(土) 00:06
- 更新お疲れ様です。
こんこんがみんなに可愛がられてますね。素敵です。
こんこんもオレンジに焼酎混ぜてて飲んでましたね。実は酒豪なんでしょうか?
PS 気持ち新たにまたよろしくお願いします。
- 426 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/09(月) 03:28
- 更新お疲れ様です。
自分が車旅に出てた間に更新されていたようで。
実は旅先でも携帯でコソーリ見てました。
いいなぁ、こういう雰囲気。
カオリママの心中や如何に?
次回更新も楽しみに待ってます。
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/12(木) 18:52
- あいぼん良い誕生日ですな〜。
ところでリアルのあいぼんってピアスしてましたっけ?
- 428 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 21:53
- 朝食のあと、片付けをし、めいめい帰宅の準備に入る。
吉澤はバイトに出かけた。
辻もタンポポに行く準備をしている。
「それじゃ、あさ美ちゃん。
ののの服はいつ返してくれてもいいれす」
「はい、ありがとうございます」
「そんじゃ、のんは稼いでくるれす」
「お気をつけて」
辻は手を振ってバイトに出かけた。
「ごとーもいったん家帰って片付けしてからバイト行くよ。
そんじゃね」
「師匠、色々おおきにでした」
「ん。またなんかあったら言うように」
加護の頭を軽く撫でて後藤は帰って行った。
撫でられた頭を自分の手で押さえ、加護は嬉しそうな顔をする。
台所では、ようやく起きた裕子が平家と遅い朝食をとっていた。
- 429 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 21:54
- 保田と飯田も、『そろそろ帰ろっか』と言っていた。
紺野は何か思い出したように、
「あ、あの。保田先生」
慌てて声をかけてきた。
「ん?」
「あの…今日、これから先生のお宅にお邪魔してもよろしいですか。
ご相談したいことが」
保田と飯田は顔を見合わせる。
紺野の様子がいつもと違ったからだ。
「いいよ、おいで。
今日はアタシヒマだから」
紺野の頭をぽんぽんと軽く叩き、保田は台所の裕子に、
「裕ちゃん、ウチら帰るわ。
ごちそうさま」
と声をかけた。
- 430 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 21:59
-
―――保田宅
「確かに子供の悪戯にしちゃタチ悪いわね」
保田は便箋をテーブルに置いた。
手紙には、紺野を脅迫する内容の文章が書かれていた。
他にも、彼女が今まで受け取った手紙がいくつかある。
紺野は色々考えた結果、保田にも話を聞いてもらおうと思い、
手紙を持って来たのだ。
「ご両親には相談したの?」
「はい…母には。
父は明日、出張から帰ってきますのでその時にと。
電話で簡単には話しましたが」
「そっか。
しかし、またなんともまあ」
「ねえ、それって紺野ちゃんだけがやられてるのかな」
他の手紙に目を通していた飯田が言った。
「アタシも考えてたんだけど、加護とかはどうなんだろ?
成績いい子がジャマだってんなら。
あの子も色々大変な目に遭ってるし」
「いえ、分かりません。
もしかして、わたくしが個人的にこのひとの恨みを買ってるのかもしれませんし。
加護さんも中傷するようなビラを貼られたりしてるようですが、
こういう手紙を受け取ったのかは、今のところ聞いてません」
紺野はそう言って、テーブルの手紙を手に取った。
「そうか…アンタも大変だね」
「申し訳ありません」
「謝らないの。アンタが悪いわけじゃないんだから」
「ハイ」
飯田が『よっしゃ』と立ち上がる。
「お昼にしよ。オムライスでいいよね?」
嬉しそうな顔の紺野と対照的に、保田はちょっとげんなりとなった。
「あんだけ朝メシ食って、よく食べれるわね。
アタシ…小さいのでいいわ。
てか、オムレツでいいくらい」
「圭ちゃんあんなこと言ってる。
たく、だらしねーなー」
飯田が訳もなく腕組みし、挑発するようにフフンと笑う。
「すみませんねえ」
ふたりのやりとりを見て、紺野はくすくす笑った。
- 431 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 22:01
- 「紺野、うちまで送っちゃる。
カオリ、今からバイトに行くっていうからさ。
一緒に」
昼食後、車のキーをくるくる指で回しながら保田が言った。
「ありがとうございます。すみません」
「またデートしようぜ」
飯田が紺野の小さな肩を抱く。
ちょっとジゴロ入っていた。
紺野は冗談だと分かってても照れまくる。
保田は小さく笑って飯田の頭を軽く叩いた。
「んあ、帰んの?」
下に降りると、ちょうど後藤が自転車を出してバイトに出かけようと
しているところだった。
「はい。後藤さん、色々ありがとうございました。完璧です」
紺野は深々と頭を下げる。
「あっは!またあそぼ〜ね〜♪」
後藤は嬉しそうに紺野をぎゅっと抱きしめる。
「コラー!後藤、カオの紺ちゃんだぞー!」
紺野、大人気だった。
「ホラもー、後藤は早くバイト行きな。
ホラ、カオも紺野も行くよ」
「圭ちゃんヤキモチ〜♪」
「ヤキモチ〜♪」
後藤と飯田が楽しそうにハモる。
「ヤ、ヤキモチ〜♪」
やや遠慮しながら紺野もハモる。
遠慮したので噛んでしまった。
それを後藤に指摘され、紺野はまた真っ赤になった。
- 432 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 22:03
- 「紺野、どっか寄るとこはあんの?」
車中、保田に尋ねられる。
「そうですね…昨日、辻さんと行った雑貨屋さんなんですが、
カフェもやってらして、 昨日は時間がなくて行けなかったので」
「だってさ。カオ、行っていい?」
「いいよー。
目ぼしいモノがあったらカオにも買ってきてねー」
「おう」
「紺ちゃん、圭ちゃんに襲われそうになったら膝カックンして逃げるんだよ」
「襲わねえよ!しかも膝カックンかよ!」
保田がツッコむと、飯田と紺野はゲラゲラ笑った。
飯田を駅で降ろし、保田と紺野は代官山に向かう。
紺野の目当てのカフェでお茶をし、店で買物もする。
保田は飯田にマウスパッドを買った。
今使ってるものが結構ボロくなってきたからだ。
ふたりは店を出て、車を停めてる場所まで歩く。
- 433 名前:You're sixteen 投稿日:2004/08/13(金) 22:08
- ───その頃。
他校とのチアの合同練習を終えた小川は、代官山の坂を上っていた。
帰りは田中と一緒になり、『どこかでお茶でもしようか』と話していた。
「小川先輩、なにが好きっすか」
「いや、別になんでも。おめーの好きなんでいいよ」
「れいな、お腹空きました」
「じゃ、メシ食えそーなトコにすっか?」
「ハイ」
それらしき店を探してると、見覚えのある人物が向かいの通りを歩いてきた。
「…紺野さん?」
田中が小さく言うと、小川はハッとなってそのふたりを見た。
車道側をトレンチコートを着た女性が歩き、その隣をピンクのコート姿の
紺野が寄り添っている。
あの女性は。
小川は大急ぎで記憶を手繰る。
思い出した。
いつだったかなんとかいう喫茶店に里沙と行ったとき、話しかけてきた女性だ。
確か保田といったか。
ふたりは楽しそうに話をし、紺野が看板にぶつかりそうになると保田がスッと
肩に手を回し、さりげなくかばっていた。
「なんか…デートみたいっすね」
田中がぼそっと言う。
デート?
いやいや、違うだろう。
あの人は確か自分の年を23とか4とか言った。
年が微妙に離れすぎてる。
大体相手は社会人ではないか。
あのコート…。
クリスマスのイルミネーションを見に行ったとき、着てたものだ。
とても気に入ってる、って言ってたっけ。
小川は何故か渇いた気持ちでそれを思い出していた。
「小川さん?」
「悪い…アタシ、帰るわ」
「え?」
「ごめん」
「ちょ!先輩!」
小川は踵を返し、駅までの道をすたすた歩き出した。
- 434 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/13(金) 22:09
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
こんこん大人気です。彼女は意外に酒豪です。こちらこそよろしくおながいします。
>ピクシーさん
おお、旅先から。どうもありがとうございます。カオリママは心配性すぎですね(w
>427の名無飼育さん
あいぼんさん色んな人に祝われてます。リアルぼんさんはピアスしてます。
確か左右1個ずつだったかと。
- 435 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/08/14(土) 00:25
- 更新お疲れ様です。
しばらくはこんこん中心のお話ですね。気になるのはやはりマコがどうするか?
ケメコはほんとに頼りになるオバちゃんです。
- 436 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/14(土) 01:40
- 更新お疲れ様です。
ぼんさんからこんこんへ主役がうつったようですね。
マコも・・・どうなる?
ぼんさん&こんこんと言えば、二人ゴトでも一緒な2人。
現実とここでは、じゃれあい方が全然違いますな(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 437 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 02:39
- ( ‘д‘)つ[2000] <表の自販機使いたいんで両替してください
- 438 名前:437 投稿日:2004/08/15(日) 02:46
- 誤爆しました。本当にすいません。
- 439 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 04:09
- ochi
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/15(日) 14:40
- はじめまして。はじめから一気に全部読んでみました。 ひとりひとり個性があっておもしろいですねぇ。 次回更新も楽しみにしています。
- 441 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/22(日) 08:18
- 更新まだかな〜
- 442 名前:グング 投稿日:2004/08/23(月) 00:55
- どもっ遅そばせながら更新おつかれです。
なんかオガーさんに心境があったみたいっすねぇ
このままどうなるか楽しみです。
しかしおばちゃん相変わらず尻にひかれてますねw
- 443 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 21:54
- 「お待たせ。行くわよ」
「…どこへ?」
仕事場で昼食を終え、コーヒーを飲んでまったりしていた村田めぐみは、旅支度で現れた編集者・斉藤を見て
目を丸くした。
「ニューヨーク」
「はぁ?なんでまた」
「まさか忘れたんじゃないでしょうね」
「…えーっと」
村田は記憶を蘇らせる。
『村、アンタの漫画を映画にしたいってオファーがあるから2月にニューヨークに行くわよ』
『あー…分かった』
いつだったか、寝起きに話しかけられ、生返事した気がする。
村田は、
「…謀ったね」
と睨みつけた。
「失礼な。ホラ、支度しな。食器はアタシが洗うから」
「イヤだよ、この寒いのになんでそんなくそ寒いとこに行かなきゃなんないのさ」
「アメ買ったげるから」
「イヤだ」
通園拒否の幼稚園児とその母親のような問答を繰り返していると、インターホンが鳴った。
- 444 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:01
- 「おはよーございまーす」
満面の笑みの柴田あゆみが入ってくる。
「あ。あゆみ」
「聞いてよ、今からひとみんがニューヨークに連れてくって…」
「はい、コレ買って来てね♪」
柴田はメモを差し出した。
「ちょっと!今から支度なんてしてたら間に合わないよ!大体荷造りも…」
「そこのスーツケースにまとめましたから」
狼狽する姉とは対照的に、柴田はいたって冷静に、リビングの隅のメタリックなスーツケースを指差した。
「こっちは機内持ち込み用のバッグ。あとはパスポートと財布だけです」
柴田がそう言ってトートバッグを肩から下ろすと、斉藤は満足そうに
「いや、いつもながらいい仕事してくれんね」
と頷いた。
「…分かったよ」
村田はあきらめて支度を始める。
「シャンプーとかはこれでいいよね」
柴田はバッグから緑色のボトルを出して見せた。
「それ、うちの母ちゃんが香港のホテルで持って帰ってきたヤツじゃ…」
「そうそう。お母さんがもったいないからコレ使えって」
「しかも使いさし…」
「歯ブラシは飛行機のトイレから持ってくればいいよね。
なかったら向こうで買いなよ」
「…はぁ」
村田は大きくためいきをついて、財布とパスポートをバッグに納めた。
- 445 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:03
- 成田では、ロビーでアヤカが待っていた。
「アヤカちゃんはなんで?嬉しいけど」
村田が言うと、
「アタシが個人的に通訳として雇ったの。
向こうで調達するとカネかかるし」
「へえ」
「聞き取るのはともかく、話すのはいまいち自信がないからね」
「ほおー」
「で」
村田はやたらと身軽なアヤカの手荷物を見る。
「今から海外行くのに、なんでこのひとはこんなに身軽かな」
機内にも持ち込めそうな手頃なバッグのみだった。
「そうですか?いつもこんなもんですよ。
石鹸とかは持って行きますが」
アヤカは言う。
「なんで石鹸」
「だって、肌に合わないとイヤじゃないですか」
「そうですか」
斉藤はやたらと大きなスーツケースだった。
行きはともかく、帰りは大丈夫なのか心配になるくらい持ちこみの鞄もでかい。
機内で村田は
「…なんでビジネスシート?」
いきなり出てきたシャンパンに目を丸くする。
「向こうの招待だからよ」
斉藤は横で端末を打ちつつ答える。
「ホテルはリーガロイヤルにしてもらったわよ。文句ないでしょ?」
「ハイ」
村田は素直に返事する。
アヤカは何か雑誌をめくっているようだった。
斉藤は食事を摂り、しばらくノートパソコンで何か打ち込んだ後、早々に寝てしまった。
「寝るの早っ」
横の村田はあきれたように感心する。
「昨日からほとんど寝てらっしゃらないんですよ。
今朝は朝イチで税理士の先生のところに書類を届けに行きましたから」
アヤカが答える。
「ああ…」
斉藤は窓側に顔を向けて寝ていた。
よほど疲れているのか、顔をしかめていた。
アヤカも寝てしまったので、村田は一人ヒマだった。
鞄からメモとペンを取り出し、スケッチを始める。
- 446 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:22
-
―――JFK空港。
「…寒い」
空港を一歩出て、村田は寒さに震える。
「当たり前なんでしょ、冬なんだから」
「もー帰りたい」
「行くわよ」
イヤがる村田を無理矢理タクシーに乗せ、ホテルに向かう。
「あきれた。飛行機でずーっと起きてたの?」
およそ半日のフライトの間、村田は一睡もせず落書きをしたり映画を観たりして時間をつぶした。
斉藤は車の中で、心底あきれた顔をした。
「だって、寝れなかったし」
「お願いだから今日は寝てね。明日からスケジュールが立て込んでるんだから」
「その映画監督というのは、何語を喋んの?」
「日本語は読めるらしいけど、喋るのは分からないわよ」
「どこの人?」
「日系のイタリア人だそうです」
アヤカがすっと答える。
「ふうん。あたしの漫画で映画を撮ろうとは、物好きな人もいるもんだねえ」
「アタシもそう思うわ」
斉藤はそう答えて、窓の外を見た。
用意されたホテルはそれなりにいい部屋だった。
「村田はとにかく風呂が長いから、一番最初に入んな。
入ったらさっさと寝るように」
「ええ〜」
斉藤の申し付けに、村田は不平の声を上げる。
「うるさいよ、病み上がりが。
これ以上こじらせないように、早く寝な」
「メシくらい食わせろー」
「適当に用意しとくから、ホラ、さっさと行く!」
バスルームに追いやられ、村田はしぶしぶ入浴の準備をする。
使いさしのボディーシャンプーをタオルにたらし、シャワーブースでごしごし体をこする。
なんだったかこの匂い。
どこかで嗅いだ気がする。
「あ、先生いい香りがする」
風呂上りに、アヤカに言われて
「そう?」
と自分の腕を嗅いだ。
「先生、おしゃれですね。
全身オードランジュヴェルトの香り」
「そうなの?」
「ええ」
それで思い出した。
昔付き合ってた彼女が好んでつけていた香水だ。
『あたしと漫画のどっちが大事なの』と決断を迫られ、『漫画』と答えたらあっさり振られた。
村田はやや感傷的な気持ちになった。
- 447 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:22
- ベッドに入ってから村田が
「寝れませーん」
とリビングの斉藤に声をかけたら、
「飲め」
とミニチュアボトルのウィスキーと鎮痛剤を突きつけられた。
「酒はイヤだよ」
「四の五の言わずに飲め。明日へばられたら困るのはこっちなんだよ。平家さんも明日は一緒だからね」
「…はーい」
うんとミネラルウォーターで酒を薄め、鎮痛剤を口に放りこんで布団にくるまった。
「まったくもう」
村田に布団をかけ直してやり、斉藤は溜息をつく。
「斉藤さん、お母さんみたい」
アヤカはくすくす笑う。
「こんな手のかかる子供、イヤよ」
「そうですね、子供だったら恋愛できませんものね」
斉藤は何か言おうとしたがあきらめてパソコンに向かった。
「休まれたほうがいいですよ。飛行機の中で少し寝たくらいなのに」
「アタシはいいよ。先にお風呂入って」
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えて」
着替えを持ってアヤカがバスルームに入っていくのを見て、斉藤は仕事の続きを始めた。
- 448 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:23
- 翌日。
待ち合わせ場所のホテルに入って来た人物を見て、村田は首を傾げる。
「なんで平家さんが?」
「アンタホントにアタシの話聞いてないね。昨日言ったでしょーが」
「だからなんで平家さんなん?」
「今回音楽担当なんだよ」
斉藤は小声で叱責する。
アヤカは斉藤の襟元のスカーフを見て、
「素敵な柄ですね。エルメスの新作ですか」
それとなく話題を変えた。
「ああ。平家さんにパリ土産にもらったのよ、この前の土曜に」
「平家さんに?」
村田はじっとスカーフを見た。
「そうよ。ほら、行くわよ」
斉藤に腕を軽く叩かれ、村田は物凄く腑に落ちないものを感じた。
監督との顔合わせで、ついでに雑誌の取材も受ける。
監督はまだ若い男性だったが、村田の原作を読んで、現代社会の複雑な縮図を映像で表現したいと
思ったとかいうようなことを、分かりにくい英語で言った。
アヤカに訳してもらって、村田は『アンタの言ってることのほうがわからん』と心の中で毒づく。
平家は少し英語ができるようで、監督と二言三言、直接話していた。
『退屈だなあ』
窓から見える青空を見て、村田はどこかへ行きたくなった。
- 449 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:24
- 1日のスケジュールを終え、平家も交えて夕食ということになった。
彼女は村田たちより1日早く現地入りし、すでに何本か打ち合わせだとかを済ませたらしい。
別のホテルに泊まってるとのことだった。
村田たちは平家のおすすめのレストランに行った。
「明日はプレス発表だから」
乾杯する前、斉藤の言葉に村田は、
「あのさ、これってあたしが考えてるよりよっぽどデカい仕事?」
と素朴な疑問を口にした。
グラスを手にしたまま、一同は顔を見合わせる。
「おもろいなー、自分」
平家は堪えられない、というように肩を震わせて笑った。
「いや別に、笑わせようと思ったわけでは」
「いやー、狙ってたらこんなおもろないて」
笑われて、村田は少しむっとする。
「そうなんですよ、今回もアタシが当日迎えに行くまで忘れてて」
斉藤があきれて言うと、
「マジで?大物やなー」
平家は目を丸くする。
ふたりで盛り上がってるのを見て、村田は段々不機嫌になってくる。
アヤカはそれを少し離れて見ていた。
- 450 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:26
-
「平家さんは最近映画音楽のお仕事も多いですね」
アヤカがそれとなく振ると、
「ああ、最近本業より忙しいかもな」
平家は笑って答える。
「おかげで恋人にずっと拗ねられっぱなしや」
「平家さんの恋人ってどんな方なんですか」
「んー、ジャイアン?」
斉藤とアヤカは小さく吹き出す。
村田は笑わずに肉にナイフを通す。
「よう似おてるやん、それ」
斉藤のスカーフを見て、平家は言った。
「ええ、ありがとうございます」
村田は突然立ち上がって、
「ちょっと失礼」
と洗面所に向かった。
3人はあっけにとられる。
手を洗いながら、目の前の鏡を見て
「…ひどい顔」
村田は小さく呟く。
何に苛立ってるのか、自分でも分からなかった。
少し頭を冷やして席に戻ろう。
村田は両手で頬を叩き、強く頭を振った。
「村、大丈夫?」
席に戻ると、既にデザートが運ばれていた。
斉藤が心配げに顔を覗き込む。
「ああ、うん。ごめん、ちょっと酔ったみたい」
なにもなかったように、また席に着いた。
「食べれそう?」
平家も村田を気にかけている。
「ああ、はい。どうも」
彼女に対して、何故こんなに腹が立つのか。
いや、斉藤にか。
気遣われているのに、村田は訳もなく苛々した。
- 451 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/24(火) 22:27
-
「あれ平家みちよじゃない?」
「あ、ほんとだー」
後ろで日本人の話し声がし、平家はそちらに向かって少し微笑み目礼した。
サインをねだられ、気持ちよく応じる。
その日本人観光客たちが去った後、
「優しいんですね」
村田はぼそっと呟いた。
「ああ、確かにゴハンくらいゆっくり食べさしてほしいけどなー。
あんま観光客のおらんとこでて思たけど、案外いはるもんやね」
平家は飄々と答えた。
「気持ちよう帰ってもうたら、ウチはそんでエエし」
「あたしだったら我慢できません」
「村!」
斉藤が制する。
「すみません」
平家のほうに向かって斉藤が頭を下げると
「出よか」
少し笑って平家が促がした。
「平家さん、本当に申し訳ありません。
後でよく言っときますので」
店を出てからも、斉藤は頭を下げる。
村田はアヤカと少し離れたところにいた。
「ああ。エエ、エエ。
おもろい子やん、ウチは気に入ったで」
平家はくすくす笑う。
「本当に子供で…」
「エエなあ」
「え?」
「ウチも、歌をそういう気持ちで好きでいたかったわ」
じゃ、また明日と、平家はタクシーを止めて帰っていった。
斉藤は車を見えなくなるまで見送り、やがて踵を返して歩き出した。
- 452 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/24(火) 22:28
-
更新しました。
今日から新章です。
タイトルはピンクレディーが1979年にアメリカ進出の際出したシングル曲より。
当時ビルボード(日本でいうオリコンのようなものです)37位にランクインしたそうです。
バレンタインの話なので、それっぽい曲をと思ったら、会員番号8番のあの人の例の歌しか
思い浮かびませんでした。
ところで「後浦なつみ」と聞いて「ドラエもんに出てくるだじゃれアイドルかよ!」と思ったのは
私だけでしょうか。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
∬∬`▽´)<(なんだ、このモヤモヤは…)
マコの心境にどんな変化があったのか?それはいずれまた。
>ピクシーさん
川o・-・)<わたくしは結構加護さん、好きですよ
ぼんさんはともかく、こんこんは結構気に入ってるようです。
>437の名無飼育さん
川o・-・)っ[1000]]<はい、どうぞ
ネタスレに書かれるつもりだったのでしょうか。どうぞお気になさらず。
ぼんさーん、ヲレチェリオねー。
>439の名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 04:09
( `.3´)<すぐochiにしてくれてアリガト!これはホンのお礼よッ
返品は不可です。
>440の名無し読者さん
煤i ゜皿 ゜)ノ <ハジメカラ!?スッゲー!!
ありがとうございます。そして、お疲れ様でした(w これからもどうぞよろしくです。
>441の名無飼育さん
(0^〜^)っ<へい、お待ち!
お待たせしました。
>グングさん
( ゜皿 ゜)<カオ、カカアテンカミタイジャン
おがーさんにあったようです。そしてケメ子は相変わらず恐妻家です。
- 453 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/24(火) 22:32
- >439の名無飼育さんのレスのお返しにコピペの消し忘れが残ってました。スマソ
村さんが使ってるボディーシャンプーは「オレンジと緑の水」という意味で、
ブランドものです。蛇足ですが。
- 454 名前:グング 投稿日:2004/08/24(火) 22:45
- リアルタイムで見ました。更新お疲れ様です。
みっちゃんなんかクールで素敵ですw
そして村さんひょっとして焼餅っすかな?
なにはともあれこれからも楽しみですw
P.S飯田さんあなたはカカア天下です。間違いないw
- 455 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/08/24(火) 23:41
- 更新お疲れ様です。
アヤカはともかく、みっちゃんも出てくるとは思いませんでした。
「みちよのくせに、また海外で仕事やなんて。」と中澤姉さんが拗ねてそうですが。
- 456 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/25(水) 03:19
- 更新お疲れ様です。
中澤姐さんの拗ねている様子が目に浮かびます。
アヤカは通訳も出来て、色々な場所も知っていて、楽器も色々出来て・・・完璧です。
舞台が日本を離れたのも、アヤカのハワイ行き以来ですかねぇ?
次回更新も楽しみに待ってます。
- 457 名前:こいう 投稿日:2004/08/25(水) 17:56
- 石川梨華が使っていたテニスラケットってなんていう名前だっけ
教えて!!!!!!!!!
- 458 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 18:28
- 誤爆かな?
ochi
- 459 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:20
- 村田たちが成田から旅立った頃、日本では。
――朝比奈女子高校
「明日は特別、スペシャルデー♪」
加護は歌を口ずさみながら、鞄に教科書をしまう。
「なんの歌れすか」
教室まで迎えに来た辻はきょとんという顔をする。
「ニッポンで一番有名なバレンタインの歌」
「ふうん?」
「ああ〜。バレンタイン楽しみれすね〜」
辻は両頬に手を当て、嬉しそうに微笑む。
「なんで?」
「いっぱいチョコもらえるれす」
「ふうん?」
「お友達にたくさんあげたりもらったりするれす」
「どさくさに紛れた本命もあったりして」
加護はニヤっと笑う。
「えー、そうれすかねえ」
知ってか知らずか、辻はすっとぼける。
『まったく…ヒトの気も知らんと』
加護は人知れず溜息をついた。
「あいぼん、帰りにチョコレート見に行こうよ。
デパ地下で試食するれす〜」
「試食目的かい!」
「さ、行くれす!」
加護の手を引っ張って、辻はぐいぐい進む。
- 460 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:27
-
田中れいなは紺野を待っていた。
どきどきしながら彼女の教室の前で待つ。
「お待たせいたしました」
今日の昼間、紺野の携帯にメールを送りチョコレートの作り方の本を貸すと言っていたのだ。
「いえ、こっちこそごめんなさい。あ」
鞄から本を取ろうとした田中の動きが止まる。
「どうかなさいましたか」
「ない!うそ、れいな昨夜ちゃんと確かめたはずやのに!?」
「教室に忘れられたのでは?」
「ううん、違う…あ」
「どうしました」
「おばちゃんに昨夜見せてそのまま…」
田中はこの時、物凄いスピードで閃いた。
「あ!紺野さん、すみません、家まで付き合ってください!
れいなの家、自転車ですぐなんで!」
「え、あの」
「お時間ば取らせません。帰りちゃんと駅まで送ります」
イキオイに引っ張られ、自転車の後ろの荷台に乗せられ、田中が下宿してるという親戚の家に連れて行かれる。
「自転車通学をなさってるんですね。知りませんでした」
自転車の後ろから話しかける。
「天気ばようて時間のある時だけったい。雨とか寒くて耐えれん時はバスっちゃよ」
「そうですか」
20分ほど走ったところが彼女の下宿先だった。
ごく普通の一戸建てだ。
「あら、お友達?いらっしゃい」
茶の間から、自分の母くらいの女性がひょこっと顔を覗かせた。
「お、お邪魔いたします」
「付属高校の先輩っちゃ。
うちの伯母です」
「失礼いたします」
「おばちゃん、昨日見せた本どうしたと?」
「ああ、台所よ。
取ってくるわ」
「れいなお茶入れるからついでに行くと。
紺野さん、先行ってて。
階段上がって左の部屋っちゃ」
「は、はあ」
本を受け取ってすぐ帰るつもりなのに、なんだかお茶まで。
紺野は困惑したが、田中の伯母にもう一度頭を下げ、言われた通りに階段を上がっていった。
- 461 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:29
-
田中の部屋は、年の割には少女らしい装飾もなく、さっぱりしていた。
「あ…石川梨華美の写真だ」
アイドルグループのCDやそのメンバーの生写真が目に付く。
グループ1ちっちゃなメンバーがリーダーを務めるユニットのCDなどもあった。
「おまたせ…あ!」
紺野が机の生写真をじっと見てるのを目撃し、田中は赤くなる。
「石川梨華美のファンなんですか」
「は、はあ」
「かわいいですよね」
「え、ええ」
アイドルが好きだと知られたのがちょっと恥ずかしかった。
カップを渡し、そわそわしてると階下から
「れいなー」
と伯母に呼ばれた。
「なんやの、おばちゃん」
戸を開けて顔を出すと、
「お友達、晩ご飯食べてくのー?」
ふたりは一瞬固まった。
紺野はぶんぶんと首を振り、手も振る。
「食べてってください。
ムリ言ってここまで来てもらったけん。
あ、おばちゃんに頼んで車で送ってもらうっちゃ」
「と、とんでもありません!
おばさまにまでご迷惑をかけるわけには…」
「晩は肉じゃがでいーい?」
伯母はそう言うと、台所で支度を始めた。
材料を刻む、トントンという音がしてくる。
- 462 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:31
-
紺野は困り果てていた。
「すみません…」
自分が悪いわけではないのに、畳に敷いた座布団に座り込んで『はあっ』と溜息をつく。
こんなに紺野を間近に見るのは初めてかもしれない。
田中は心臓をばくばくいわせていた。
紺色のハイソックスから続く、ピンクがかった白い膝にどきどきする。
「こ、紺野さんって」
「はい?」
「い、色、白いんですね」
「そ、そうですか?」
「は、はい」
お見合いのような妙な緊張感の中、トントンとノックの音が聞こえた。
「あ、おばちゃん」
「ご飯までこれで持つでしょ」
『ん』と伯母は蒸かしたサツマイモを差し出した。
紺野の顔がぱあ〜っと輝く。
「おばさま、ありがとうございます!」
今日この時が、紺野が一番輝いてる時だった。
夕食は肉じゃがに里芋と絹さやの煮付け、かぼちゃと人参の味噌汁、シャケとキノコのホイル焼きと、
イモ好きの紺野を狙ったかのような献立だった。
伯母は町内会の集まりで出かけたので、夕食はふたりで取る。
「おかわりは?」とか、田中は甲斐甲斐しく世話を焼く。
- 463 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:33
- 「れいな、お友達泊まって行くんでしょ。明日休みだし。
先にお風呂入ってもらいなさい」
帰ってきた伯母の思いがけない言葉に、
『ナイス!おばちゃん!!』
と田中は心の中で小躍りする。
「あ、あの…ご迷惑でしょうから」
小声で紺野は断ろうとする。
「これ、使ってください!」
田中は自分が寝巻にしてる、洗いざらしのジャージを突き出した。
紺野が風呂に入ってる間、田中はそわそわする。
自分のベッドの横に客用の布団を敷き、布団の上ででんぐり返しをしたり
枕を意味もなく抱きしめたりする。
「あ、ありがとうございました」
バスタオルで髪を拭きながら、紺野が部屋に入ってくる。
彼女の湯上りのピンクの頬にどきどきする。
「あ、おばさまがお呼びでしたよ。お台所に来るようにって」
「あ、はい。どうも」
田中が下に降りてくと、伯母が買ってきたケーキを持って行くように言った。
紅茶の支度もしてくれてる。
「おばちゃん、ありがとう」
田中は礼を言い、鼻歌混じりでお盆を手に階段をリズミカルに上がっていった。
- 464 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:34
- 一方。中澤家。
梨華はピンク色のエプロンを身につけ、お菓子を焼いていた。
そこへ後藤がやって来る。
「んあ、梨華ちゃん何やってんの〜」
「あ、ごっちん。
バレンタインのお菓子作ってんの」
「んあ、よしこの?」
「ううん、ひとみちゃんはまた別に。
これはみんなにあげるやつなの」
「んあ、いいにおい…。
ごとーも手伝うよ」
「フフッ、ありがと♪」
後藤もエプロンをつけ、溶かしチョコを焼きあがったマフィンにつけたりするのを手伝う。
「アラ、いい匂いじゃない!」
裕子に用事があってやって来た保田も、台所の入り口から顔を覗かせた。
「んあ〜、バレンタインのヤツなんだって〜。
ごとーも手伝ってんの。
けーちゃんもカオリにチョコあげんの?」
「用意してるわよ、他のものと一緒に」
「手作りですか?」
梨華が言うと、後藤はぎゃはは!と笑って手を叩いた。
「け、けーちゃんが手作りぃ〜!
ム、ムリだって!
だって、この前も煮魚作るのに鍋焦がしてさあ〜!
家中ケムでモウモウ!」
後藤は手で大きく煙のジェスチャーをし、涙を流すくらい笑う。
梨華も大笑いする。
『その通りだけど…なんか悔しいわ』
保田は憮然とした。
- 465 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/08/28(土) 10:38
- 帰ってから、保田は冷蔵庫を覗き、よせばいいのに黙々とチョコ作りを始めた。
「チョコソースはミルクを少々加え…」
レシピ本をじっくり読んでるうちに、鍋にかけた溶かしチョコが焦げ、もうもうと煙が立った。
「ただいま…うわ!なに!?この煙!?」
帰ってきた飯田がケホケホ咳き込みながら、鞄を肩にかけたままで換気扇のスイッチを入れる。
「換気扇じゃ間に合わんわ!圭ちゃん、窓開けて窓!」
「はははは、はい!」
言われるまま、慌てて窓を開ける。
「なにこれ!?」
煙が少し収まった頃、飯田は鍋の中を見てぎょっとする。
「…チョコ」
「チョコ!?」
鍋の中はすっかり焦げ付いていた。
甘ったるい上に焦げ臭いイヤなにおいがする。
「あーあー、もう。
なんで急にお菓子作りなんか始めたのよ」
腕まくりをし、飯田はさっそく鍋を洗いにかかる。
「しばらく浸けよっか」
「…すみません」
「チョコついてる」
保田の頬についたチョコを指で拭い、飯田はペロリと舐めた。
「この前お魚でお鍋ひとつダメにしたのにー」
「…重ね重ねスミマセン」
保田は小さくなる。
「ま、いっか。
ごはんにしよ。カオ作るから手伝って」
「うん」
保田は小さく溜息を吐いて、飯田がスーパーの袋をがさがさいわせて、中から食材を出すのを見ていた。
- 466 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/08/28(土) 10:45
- 更新しました。
ぼんさんが歌ってるのは、国生さゆりの『バレンタインデー・キッス』です。
よく娘。と比較されるアイドルユニットに所属してました。
で、私は現・秋元康夫人が好きでした。
( ‘д‘)<甘い甘い恋のチョコレート♪
レスのお礼です。
>グングさん
(;−Θ ΔΘ)ノ<や、ヤキモチじゃにゃいにょ!
ミチャーソはオトナなんです。いいらさんは普通にカカア天下です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( `◇´)<まあ、ご機嫌取んのが大変かなあ
マメなので空き時間に連絡してるようです。
>ピクシーさん
( ‘д‘)<いつもより煮物の味が濃いなあ。拗ね効果?
アヤカは特に欠点がないのが欠点です。
>こいうさん
(;`.∀´)y−~~<ごめんなさいね、分かんないわ
実物は何かの展示で見たんですが。お役に立てずスマソ
>458の名無飼育さん
( ゜皿 ゜)<ochi、アリガトウ
お心遣いありがとうございます。
- 467 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/28(土) 15:40
- 更新お疲れ様です。
田中のばーちゃんナイスアシスト!(笑
- 468 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/08/29(日) 00:25
- 更新お疲れ様です。
こんこんデータ。容姿端麗、頭脳明晰。弱点、食べ物に目がない。
サツマイモ、カボチャ、穀物類が特にお好きですね。確かにシンプルでおいしいです。
465の1行目で、ケメコが作者ごまさんからも「よせばいいのに」と言われているのがツボでした。
- 469 名前:グング 投稿日:2004/08/29(日) 00:46
- 更新お疲れ様です。
とんとん拍子に話が進むというのはまさにこのことですね田中さんw
そしてヤッスーさんなにやっとんですか・・・
まぁ私も似たような失敗しましたことありますがねw
いやしかし相変わらずのヘタレっぷり最高ですw
- 470 名前:ピクシー 投稿日:2004/08/29(日) 04:37
- 更新お疲れ様です。
ん〜・・・よく考えれば、ぼんさんの誕生日から1週間後でしたなぁ。
各自色々動きがあるようで・・・田中家の動きが一番楽しみではありますが。
そして、後藤師匠が市井ちゃんにどんなものあげるかも興味アリ・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 471 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/03(金) 04:46
- 高井麻巳子好きだったなあ‥‥‥
やすす‥‥
違う方向で勝負した方がいいんちゃう?
村上ショージ師匠絶賛の肉じゃがとか。
でもここのやすすは絶対飯田さんに止められるな。
鍋がもったいないって。
めげるなヤッスー。
- 472 名前:小説の人 投稿日:2004/09/05(日) 23:45
- レスさせて頂くのは初めてですがいつも拝見いたしております
作者さんの無駄な言葉のない描写に小説の巧さをひしひしと感じています
これからも頑張ってください
個人的に加護さんのキャラが好きですw
- 473 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:48
- 翌朝。
田中が目を覚ますと、紺野が布団のそばで着替えていた。
田中がよく眠っていると思ったのかこちらに背を向けて、ブラのホックを留めていた。
寝起きにいきなり刺激的なものを見てしまったので、田中は心臓が止まりそうになる。
『しょ、正月のおみくじが大吉なのはコレっちゃか!?』
敷き布団に頬を押しつけて、嵐が通り過ぎるのを待つ。
紺野はキャミソールを身につけ、制服のシャツに腕を通していた。
田中は無理矢理、寝たフリをした。
その後本格的に寝てしまい、田中は階下からの
「朝ごはんどうすんのー」
という声に起こされる。
ふっと目を覚ますと、紺野は折りたたみのテーブルで教科書を広げていた。
「あ…紺野さん?
何しとうですか」
「はあ、お目覚めになるまで勉強でもと。他にすることもありませんし」
「テレビでも見ててくれたらよかと」
そう言って、ベッドに寝転んだまま部屋の隅のテレビデオを指した。
「そうはいきませんよ。
音がおやすみの邪魔になるし」
「真面目っちゃね〜」
田中はつくづくそう思って言った。
- 474 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:50
- 田中も着替えてふたりで下に降りて行く。
「おばちゃん、おっちゃんはどうしたと?」
「朝から釣りに出かけたわよ。お弁当持って」
伯母は台所でおにぎりを握っていた。
ふたり分の皿にはすでに炒めたウィンナーだとか玉子焼きが盛り付けてある。
「ああ、そんでおにぎりとかなんね」
田中は席に着くなりウィンナーをつまんで口に放り入れた。
「そう、材料も余ってたしね。
どうぞ、なにもないけどたくさん食べてね」
伯母に勧められ、紺野は微笑んで「頂きます」と手を合わせた。
紺野を駅まで送り、田中は幸せな帰り道を辿る。
帰ってからも、部屋の隅に折りたたんで置いた、紺野が使った布団一式から枕を取り上げ、
「…幸せ」
と、ぎゅっと抱きしめた。
紺野のものなのか、なんだか甘い香りがする。
「あー、このカバーとか洗いたくなかと」
折りたたんだ布団の上にばふっとうつぶせになって堪能してると、下から伯母が
「れいなー、洗濯するからついでにあんたのも。シーツとか出しなさいー」
と声をかけてくるのだった。
名残惜しくリネン類を布団からひっぺがして伯母に手渡し、田中は出かける支度をする。
今日、3年生の道重さゆみと、どういうわけかバレンタインのものを一緒に手作りすることになっているのだ。
道重は学園の中高生用の寮にいる。
よくは知らないが、遠方地の出身で単身東京に出てきたと言っていた気がする。
「ああ、生徒手帳忘れるとこやった」
寮に入るには休日でも身分証明書がいる。
メールでも道重に念を押された。
- 475 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:51
- 「おばちゃん、れいなちょっと出てくるけん」
「あら、遅くなるの?」
「んー、晩ご飯には戻ると」
「そう。ご飯いらなくなったら電話しなさいね」
「分かった。行ってくる」
コートに腕を通して、学園の寮まで自転車で行く。
とてもよい天気で、日差しも暖かかった。
『はぁ…このままいい余韻で一日を終わりたかったのに、面倒なおなごに関わらないかんと』
小さく溜息をつき、小高い登り坂に差し掛かるので腰を上げてペダルを踏み込んだ。
待ち合わせの校門前に到着すると、すでに道重は来ていた。
私服を見るのは初めてではないが、今日もなんだか自分だったら絶対着ないようなフリフリの服を着ている。
「遅いの」
道重はぷっと頬を膨らました。
「まだ10分前や」
「女の子を待たせるのは失礼なの」
「いや、女の子やと思ってなか」
物凄く失礼なことを言い返したものの道重は意外にも何も言わず、
「こっちだよ」
と寮に田中を連れて行くのだった。
入り口の受付のようなところで生徒手帳を見せ、寮の中に入って行った。
「あ、2年の田中れいな」
入った途端、他の寮生に軽く驚かれる。
田中がムッとしてると、道重は
「れいなちゃんはさゆのお友達なの」
と田中の腕を取った。
「マジで?」
その寮生は目を丸くして、靴を履いてどこかに出かけていった。
「れいな、なにかしたと?」
台所で支度をしてるとき、田中はまだ機嫌が直らない様子で言った。
「うーん、ヤンキーキャラだと勘違いしてるのかも」
「れいなはヤンキーやなかと」
「地元じゃ悪かったんでしょ?」
「なに言うとぉ」
- 476 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:52
- 「れいなちゃんのマシェリのシャンプーの他に、違うシャンプーの匂いがするの。
これは…ヴィダルサスーンなの」
田中はぎょっとする。
「あんた、シャンプーフェチと!?」
「ううん、別に」
道重はつまらなそうに髪をいじる。
『紺野さん、れいなのシャンプー使ってって言うたのに、おばちゃんのシャンプー使ったと…』
田中はしょぼんとなる。
朝あんなに幸せな気持ちで抱きしめた枕は、伯母のシャンプーの残り香だったのか。
「さゆは可愛いから、ティセラなの」
「いや、聞いてないし」
「松裏アヤよりずっと可愛いの」
「どうでもええ」
「うん?」
道重はまた鼻をくんくんさせる。
「今度はなん?」
「微かに紺野さんの匂いもするの」
田中は今度は心臓が飛び出るくらい驚いた。
「あんた、麻薬捜査犬よりすごか…」
「ワンちゃんよりさゆのほうがかわいいに決まってるもん」
「分かった、分かったから…」
『さゆ絶対可愛い・世界君臨宣言』が始まると色々七面倒だということを田中はすでに学習していたので、
彼女の腕を押してとどめようとする。
「紺野さんがお泊りしたの?れいなちゃんがお泊りしたの?」
「紺野さんっちゃ。もうその話はよかと?」
「したの?」
なんの衒いもない質問に、田中はステーンとすべりそうになる。
「なななな、なにをや!?」
「してないんだね、つまんない」
本当につまらなさそうに、道重はまた髪をいじった。
「分かった、れいなちゃんまだ生えてないんでしょう?」
人差し指を立てて、道重は『ひらめいた!』という風に得意げに言った。
「な…!」
田中は耳まで赤くなる。
「大丈夫だよ、そのうちイヤでも生えてくるよ」
「れ、れいなはボーボーたい!」
田中は自ら墓穴を掘った。
- 477 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:52
- その頃。中澤家。
加護は昨日辻に連れられて(というか引っ張られて)行った『デパ地下チョコ試食大会』(辻命名)の
チョコがまだ体の中に残っていて、呻いていた。
「う〜…もう甘いモンは見とない…」
まだ11日の昼なのにこの有様だった。
「塩辛食うか?」
裕子は苦笑して、冷蔵庫の塩辛とザーサイを出してやる。
「おおきに。ポン酢があればなおよろしいですわ」
「豆腐あったし、ネギでも刻もか」
今日はふたりだけなので、特別に昼食も作ってもらえた。
湯豆腐にお茶漬けというメニューで、黙々と食べる。
「最近の若い娘は、自分用とかいうてたっかいチョコ買って行きますねんなあ」
と、若い娘の加護は昨日のデパ地下の感想を述べる。
「まあ、ささやかな楽しみってヤツやろ」
裕子はお茶を淹れてやって笑う。
「中澤さんは?酒のほうがエエ?」
「まあ、どっちかっちゅーとな」
甘いモンでもエエで、と裕子は笑って言った。
「ほな、中澤さんにはリキュール入りのあげますさかい」
加護が悪戯っぽく言うと、
「ゆうたら楽しみあらへんやん」
裕子は笑って、加護の額を指で押した。
- 478 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:53
-
―――翌日
「ほな、留守番頼むで」
裕子は昼前に税理士の所に出かけて行った。
梨華は笑顔で
「行ってらっしゃ〜い♪」
と手を振る。
今日の裕子はセレブのような格好だった。
平家にもらったケリーバッグも持って完璧だ。
「行ってらっしゃ〜い」
寝起きでぼさぼさ頭の吉澤も、玄関から出て手を振る。
裕子は「はよ寝癖直し」と苦笑して、小さく手を振った。
「ふあ〜あ。中澤さん、今日すんげーこじゃれてるね。カッケー。マダムみてー」
あくびまじりでそう言う。
「フフ、我が姉ながら見惚れちゃった♪」
「ほほお〜」
「なんてね、税理士さんのところに行って確定申告の書類預けた後、銀座に行くんだと思う。買物とか」
「へえ」
「裕ちゃん、あんま遠出しないからね。
結構楽しみにしてるんだと思うよ、ついででも。
ゆっくりお茶とかして」
「カッケー!マダムって感じじゃん」
「そうね。ね、あたしたちは家メシしよ?」
「カーッケー!」
くすくす笑いながら、ふたりは家の中に入って行った。
- 479 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 03:56
-
「めぐみ、お腹壊してないかしらねえ」
柴田家では、母と娘がのんびり遅い朝食を摂っていた。
「すーぐハラ下すからねえ、あの姉は」
妹はケラケラ笑いながらトーストを齧る。
海外に行くと、生水を飲んだわけでもないのに、姉はかなりの確率で腹を壊す。
家族で香港に行ったときも、半泣きでベッドでうずくまっていた。
「ところでねえ、あゆみ」
「ん?」
「瞳ちゃんとめぐみって、ぶっちゃけデキてんの?」
母がさらっと言うので、妹はブーッと紅茶を噴く。
「か、お母さん!?」
「なによ、自分だってマサオちゃんとそういう仲なクセに」
「まあ、そうなんだけど…」
妹はしばらく考えたあと、
「あの、斉藤さんとめぐみはどっからそう思う?」
「だって、めぐみがあれだけ懐いて甘ったれてるんだし。可哀想に、瞳ちゃんも」
眉を顰め、母は心底気の毒がる。
どうも論点がズレてる気がして、妹は
「あのさ、お母さん。
『女同士で!』とかそういうのはないの?」
恐る恐る疑問点を口にする。
「へ?だって、好きで付き合ってんでしょ、アンタたち」
「まあ…うん」
「あたしも孫の顔が見たいって気もあったけど、アンタたちみたいなワガママな子を
しっかり面倒見てくれるんだから、まあ、安心ね」
ずずっとお茶を飲み、母は何気なく言った。
「そうそう、今度マサオちゃん連れて来なさいよ。鍋でも食べさせてあげましょうよ」
「うん」
柴田は嬉しいような何かくすぐったい気持ちで頷いた。
- 480 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/08(水) 04:00
-
―――その日
村田は朝早く、実家に電話をかけた。
日本では夜だ。
まず妹が出てくる。
『どうよ、ニューヨークは』
「寒い」
『予想通りの答えだねえ。で、何の用なん?』
「おみやげはいらんの?メモに家のはなんも書いてなかったけど」
『うちら家族の分はいいから。あ、斉藤さんになんか買ってあげなよ』
「ひとみんに?」
『そうそう。これを機会に好感度アップ?』
好感度どころか、昨夜は散々小言を言われた。
まあ、自分が悪いのだが。
『石鹸はあれでよかった?』
妹の何気ない一言に、
「そうそう、まったく、罪なモンを持たせてくれたね」
忌々しげに答える。
『なんで?いい匂いっしょ?』
「元カノがつけてたのと匂い一緒なんだけど」
『え?貢がされた方?“あたしと仕事とどっちが大事なの”の方?』
「…『どっちが大事なの』の方」
『あれまあ』
いつの間にか母に代わり、受話器の向こうでのんびり言う。
『めぐみも女運が悪いわねえ』
「わ、悪かったね!ちょっと!あゆみ!」
『電話代もったいないだろうし、用事ないから切るねー。おやすみー。
あ、そっちは朝か。ま、斉藤さんとアヤカさんによろしく〜』
言いたいことだけ切って、妹は切った。
村田はしばらく受話器を握ってたが、あきらめたように自分も切った。
- 481 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/08(水) 04:02
- 更新しました。
最近夜中になると関西で地震なのはデフォなのでしょうか。
さっきも結構揺れました。
みなさんも気をつけてください。台風もやたらと来るし。
>467の名無飼育さん
从*` ヮ´)b<おばちゃん、グッジョブや!
おばちゃんのアシストで、田中さん見事にシュートを決めれたらいいんですが。
>ひ〜ちゃんエッグさん
川;・-・)<わたくしとしたことが…とほほです
>「よせばいいのに」
削ろうと思ったのに何故か入れてました。呪いでしょうか。
>グングさん
( ´ Д `)<んあ、まーた焦がしたな… ←燃えないゴミの日にて
レシピを途中でじっくり読みすぎてやっちまったようです。
>ピクシーさん
( ´ Д `)<んあ?そうだね〜、まだ考え中?
ゴチーンはナニゲにツボをつくのが上手いので、きっとそれなりのものを…。
>471の名無飼育さん
( ´D`)<どうしがいてうれしいのれす
ヤンタンで褒められてましたよね(w 河合その子が某アレンジャーと結婚した時もビクーリですた。
>小説の人さん
(*‘д‘)<いややわ、照れるやん。これからもよろしゅうになあ
初レスありがとうございます。HNから察するに小説を書かれてるのでしょうか。
自分では「味気ない文章やな」と思ってるのでそう言って頂けて嬉しいです。どうもです。
- 482 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/08(水) 04:20
- >>476
コピペで抜け落ちてました。スマソ。
冒頭部分にこちらを付け加えてください。↓
「あ」
道重は急に鼻をくんくんさせる。
「他の女の子の匂いがする」
「はぁ?」
- 483 名前:ピクシー 投稿日:2004/09/08(水) 12:22
- 更新お疲れ様です。
各自で色々な動きがあるようで・・・
れいなのあのネタは各所で見ますねぇ(苦笑)
関西では地震が大変ですね。
当方関東甲信越在住ですが、震度5弱の地震があった時は、2回とも長い間揺れてました。
やたら長いので、震源どこ?と思ったら、紀伊半島沖とはビックリ。
昨晩は突風で、家が揺れてました。
地震といい、台風といい・・・天災ではありますが、お気をつけて。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 484 名前:名無し 投稿日:2004/09/08(水) 15:36
- シャイ娘。ネタが微妙に入ってる所に笑いました
- 485 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/09/09(木) 00:27
- 更新おつかれさまです。
シゲさんに振り回されているれいなちゃんがおもろかったです。
シゲさん美少女キャラなんですが、ストレートな表現が多いですね。
あと、れいなちゃんはいつからシゲさんの友達になったと?
シゲさんのことだから、「いいの遠慮しなくて、さゆがかわいすぎて近寄り難いなんて思わないの。」
と言われて、「いや何も言うとらんタイ。」と言ってそうですが。さすがシゲさんです。
- 486 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:26
-
8時前に斉藤とアヤカも起き、ルームサービスを取った。
「やれやれ。村も寝坊しなくてよかったよ。
てか、そんな早く起きて何してたん?」
パンを千切りながら、斉藤が話しかけてきた。
「実家に電話してた」
オレンジジュースを口にし、村田は答える。
「ああ。そうだ、お土産も買いに行かなくちゃね。
今日、仕事のあと時間あると思うし」
「ああ、うん」
昨日の小言がウソのように、斉藤は平然としている。
ビジネスだと割り切ってるのか。
見放したのか。
掴みきれずにいた。
村田は斉藤の横顔を気にしながら、ベーコンエッグにナイフを通した。
「マックス、今日はどんな格好で現れますかね」
アヤカが不意に言った。
「マックス?」
村田がきょとんとすると、
「監督の名前」
斉藤は心底あきれた様子だった。
「ああ〜。そんな名前だったね…マキシミリアムなんちゃらかんちゃら」
「よかったよ、ファーストネームくらいは覚えててくれて」
「『全身エルメス男』で変換してた」
村田の一言に、アヤカはプッと吹き出す。
斉藤も堪えきれずに笑った。
「賭けましょうか?今日はアルマーニで来ると思いますよ」
アヤカの提案に、
「じゃ、あたしはヴェルサーチで」
「じゃ、ムラタめは洋服の青山で」
「いや、つまんないから」
斉藤の一言で、村田は肩をすくめた。
- 487 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:30
- 「先生のボディーシャンプー、そろそろなくなる頃じゃありませんか」
朝食の後、アヤカが言った。
バスルームに置きっ放しにしてるので、目についたのだろう。
「ああ、そうだねえ…」
「あたしのでよければ、使ってくださっても結構ですよ。
ここのホテルのも結構いいですが」
「ああ、どうも」
「どこかのホテルのですか」
「あー、えーっと。
香港のミカンみたいな名前のホテルからうちのママンが持って帰ってきたヤツ」
「ミカン?」
斉藤は怪訝な顔をした。
「多分、マンダリンオリエンタルのことではと」
アヤカはそれとなく耳打ちする。
「ああ…あのたっかいホテルね」
斉藤は昔に思いを馳せる。
今まで斉藤が香港に行ったのは、一回はバックパッカーが集う安宿、もう一回は三ツ星ホテルだが
そのホテルの中で特にしょぼい部屋に押し込められる格安ツアーだった。
「先生は香港お好きなんですか」
「ハラを下した思い出しかない」
「あら」
アヤカはコロコロと笑う。
「アヤカちゃんは?」
「ペニンシュラは素敵ですよね、アメニティーもエルメスだし」
「あれ?石鹸とかは選べるんじゃなかったっけ」
「随分前に替えたんですよ」
「へえ」
『ブルジョアの会話だ…』
斉藤は軽く眩暈がした。
- 488 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:32
-
そういえば。
村田は昨日のマックスとの会話を思い出す。
雑談の合間に『いい香りだね、エルメスだろ?』と話しかけられた気がする。
『なんだ、あたしは口説かれてんのか?』
そう思いアヤカにそれとなく振ると、
「それはないと思いますよ」
と返ってきた。
「なんで?」
「マックスはゲイで有名ですから。本人はカミングアウトはしてないようですが」
「へえ」
「もっとも、先生みたいなスレンダーな美人より、斉藤さんみたいな東洋系のグラマーな女性のほうが
好みだと思いますよ。マックスの前の奥さんは2人ともそういう人でしたから」
「ゲイなのに女と結婚歴アリ?しかもバツ2?あたしと大してトシ変わらんのに」
「そのへんの事情はあたしにも分かりませんが、2番目の奥さんはつい最近別れたんですよ」
「へえ〜。ゲイだってバレたんかね」
「さあ、どうでしょうね」
村田はやけに興味津々だ。
下世話なネタが結構好きなのだ。
「ふむ、同士か」
村田がぽそっと言うので、アヤカは思わず『え?』と聞き返した。
- 489 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:35
-
「先生、そうだったんですか」
「何を今更」
村田は聞き返されたことを逆に驚いた様子だった。
「殊更にカミングアウトするつもりはないけどね、カッコいい男よりはきれいな女の子のほうが好きかなー」
「…はあ」
「て、自分はどうよ?」
アヤカは
「…まあ、結果的にはバイになるんですかねえ」
『いや、でもなあ…』と腕組みをして答える。
「欲張りさん♪」
村田に肘で突付かれて、アヤカは『はあ…』と脱力する。
「あの」
「ん?」
「そういうのって、何をきっかけに自覚するんですか?」
「あたし?ああ〜…幼稚園、いや、保育園のとき、ホラ、子供ってお嫁さんごっことか言って結婚式の
真似事するじゃん」
「ええ」
「花嫁役のあたしをめぐって花婿候補の野郎どもがふたりケンカしてんの見て、
すっげー冷めたキモチで見てたっつーか」
「はあ」
「あとは…中学のとき、同じクラスの男子がバレンタインにあたしからもらった義理チョコを勘違いして
『オレのめぐみ宣言』したの見て、『うぜえ』って思ったとか」
「…はあ」
「で、その『オレのめぐみ』男に決闘申し込んだバカがいて、そのバカが勝って
『オレのめぐみに触ったヤツは殺す』とか言ってんの聞いて『オマエが氏ね』って
思った時かしらね」
「…普通にモテモテじゃないですか」
「そう?鬱陶しい思い出なんだけど」
「女の子って残酷な生き物ですよね」
アヤカは何故か哀れむような果敢無むような妙に優しい目でしみじみ言った。
- 490 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:37
-
「まあ、高校入って男と何度かデートしたんだけど、全然やっぱりときめかないワケよ。
そんとき悟ったね、野郎とはダチにはなれても寝れんわってね」
「じゃ、女性経験のみですか」
「いや、3回ほど寝た。まあ、いい友達以上にはやっぱなれなかったけどね」
「へえ」
「そっちは?お盛んだったんでしょ」
村田が嬉しそうにニヤニヤすると、
「あたしの友達にもそういうこと言うのはいますけどね」
アヤカは苦笑する。
「女性ってことにまず反応するわけですか」
「いや、まず容姿。女だったら誰でもいいってわけじゃないよ」
「さすがです…」
アヤカはふと、
「斉藤さんは?やっぱり容姿ですか?」
と口にした。
「え…う〜んと」
斉藤が見たら気を悪くするくらい、村田はものすごい間ができるくらい腕組みして考える。
「そうねえ…」
「ふたりとも、そろそろ行くわよ」
迎えの車が来たので、斉藤が呼びに来た。
ふたりは顔を見合わせ、バツが悪そうに笑った。
- 491 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:43
- マックスはアヤカの予想通り、全身アルマーニでやって来た。
「アルマーニだよ!」
村田はアヤカと大いに盛り上がる。
斉藤も笑いながらも、
「ホラソコ、笑いすぎ」
とたしなめる。
「なんなん?」
平家が興味深げに聞いてくる。
「マックスの今日のファッションを賭けてたんですよ」
村田が涙を流さんばかりに笑って言う。
「よかった」
平家がくすっと笑った。
「なんですか?」
「主役のご機嫌が直って」
「え…ああ。すみませんでした」
村田は肩をすくめた。
「いえいえ。さ、行こか」
控え室を出て、一同は会場に向かった。
プレス発表には日本人記者も数人いた。
原作に普通の生活を送る夫婦の家に転がり込む、自称物書きという、うさんくさい若い女が出てくるので、
『これは村田さんご自身ですか』
とそのうちの一人に聞かれる。
村田は多少げんなりし、
「まあ、書くものには多かれ少なかれ本人が出てるかもしれませんね」
と当たり障りのないことを言う。
「バカなことを聞くヤツだな」
村田は一瞬自分の耳を疑う。
平家が記者の質問に答えてる時だった。
マックスは村田の顔を見るとニヤッと笑った。
「日本語できんの?」
村田は小声で言った。
「誰ができないと言った?」
「アンタ、性格悪いね」
「お互い様だろ。あんたの言う通りだったら、あの漫画書いたあんたは激烈にイヤな女だ」
「ええ、そうですよ〜」
写真ということになり、ふたりは打って変わってこれ以上はないくらいの営業用スマイルを瞬時に作った。
- 492 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 04:55
- 「なんで日本語を普段から話さん?」
控え室に戻り、村田はマックスを問い質した。
これから休憩を挟み、雑誌の取材がある。
「相手を見て話すぜ?」
マックスは両手を広げ、肩をすくめた。
「やっぱりイヤなヤツだ」
「しかしずけずけとものを言う女だな。気に入った」
「はあ?アタシと寝たいの?」
「冗談じゃねえ。オレはグラマーなほうが好きだ」
「ああ、前のとその前の嫁さんね」
周りはハラハラとふたりのやりとりを見ていた。
マックスの側のスタッフも苦笑している。
「なんだ、結構仲良くなってるじゃないですか」
アヤカのコメントに、
「…はあ、そうであることを願うわ」
日本側の責任者の斉藤は胃がキリキリする思いだった。
取材を受け、いくつもの質問に答えてるうち、村田は『しかしあたしは
ここにいていいものだろうか』と心の中で思う。
都心の大きな映画館でやるような映画でないにしろ、自分の望むところとは
違う場所に立ってるな、と醒めた目で室内を見る。
『あたしは、ただ描いてればいいだけなのにな』
斉藤が向こうの記者と話してるのを見て、村田は思った。
「退屈やったようやね」
取材が一段落ついた時、平家が話しかけてきた。
「ああ、いえ。別に」
「ヒマなら、ウチの泊まってるホテル来うへん?
結構エエで」
「いいんですか」
「うん、今日はウチもヒマやし」
タクシーに乗り込み、平家の宿に向かった。
ミスヘイケとマックスに呼びかけられ、
「なんや、昔出てたバカドラマを思い出すわ」
と平家は苦笑した。
深夜にやっていたサイボーグもののB級ドラマで平家は工学博士の役だった。
本当にバカドラマだったので、今でもカルトな人気がある。
- 493 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 05:06
- 平家が泊まっているのは、日本にもチェーン展開しているホテルだった。
ここもマックス側の招待で取ってもらった、と平家は言った。
「うちらと別なのは?」
村田が聞くと、
「ああ、ウチは別な仕事もあってこっちのほうが何かと便利やったから、
ムリ聞いてもうてん」
「へえ。マックス、結構いいヤツなんだ」
ルームサービスでお茶を取り、ダイニングテーブルを囲む。
村田はふと、
「平家さんは、なんで歌手になったんですか」
と尋ねた。
「歌うことが好きでしゃーなかったから」
「へえ」
「自分は?」
「漫画が好きでしゃーなかったからです」
「せやろなあ」
平家はくっくというように笑う。
「なんですか」
「いや、今日の記者会見もあらぬ方見てたし、ほんまにこのひとは
漫画のことばっか考えてるんやろーなーって」
昨日ほどではないものの、村田はやはり愉快な気持ちではなくなった。
「まあ、そういうのもアリやと思うけどな」
「じゃ、平家さんは仕事以外のことも考えてらっしゃるんですか」
「村!言いすぎだよ、昨日といい、今日といい」
斉藤が止めに入る。
- 494 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 05:16
- 「ああ、ウチには自分以上に大事な存在がおるからな」
平家はあくまで冷静だった。
「昨日言ってらした恋人ですか」
村田の挑発するような目に、平家はあえて何も答えず小さく微笑んだ。
「それがあるから、歌おうって気になるんや。それがなかったら、どうなるかなあ」
「その程度の情熱なんですね」
斉藤は今度は村田の腕を引っ張って、部屋の外に連れ出した。
「いったい!」
「もうこれ以上は黙って聞いてらんない!
先に帰って部屋で頭を冷やしな!」
「なに?なに怒ってんの」
「村、アンタいったいどうしたの?
昨日からずっとおかしいよ?」
斉藤の質問に答えられずにいると、アヤカが出てきて
「先生、お先に失礼しましょう。平家さんにはご挨拶しておきましたから」
それとなく言った。
「…わかった」
村田は斉藤と目を合わさず、踵を返した。
- 495 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/12(日) 05:25
- 「本当に重ね重ね申し訳ありません」
村田たちが帰ってから、斉藤は平家に頭を下げていた。
「いやー、退屈せんでエエわ」
平家は苦笑して、コーヒーを口にする。
「帰ったら、叩いておきますんで」
「体罰かいな、コワイなあ」
「言ってきかないのはと叩いて教えないと」
『コワッ』と笑い、平家は斉藤にコーヒーのおかわりを注いでやる。
「すみません、いつもはもう少し聞き分けがいいんですが。
今回はなんだかずーっと機嫌が悪くって」
「まあ、よその女にスカーフもろたいうたら、内心穏やかじゃないやろ」
「え?」
「いや、こっちの話。
そうや、実は明日ウチ観ようと思てたミュージカルが観れんようになってな、
チケット余ってんねん。村田さんと観といで」
バッグの中から、平家はチケットを取り出した。
「いいんですか」
「ああ。あのひとが機嫌悪い原因が分かるかもよ?」
チケットを手渡し、平家は意味あり気に笑った。
- 496 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/12(日) 05:27
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ´ Д `)<んあ〜、めっきり秋だねえ
( ‘ д‘)<せやのにまだバレンタインやねんなあ
一度言わせてみたかったと逝ってみるテスト。シゲさん確信犯かもしれません。
>484の名無しさん
(*/.∀\* )<キャッ!ケメ子なんのことだかわかんない!
(;〜^◇^)<いやいや分かってなかったらそんなリアクションしねーだろ
漫画を知ってはいるのですが、ご指摘のネタは分かりませんですた。スマソ
>ひ〜ちゃんエッグさん
从*・ 。.・从 <れいなちゃんはじれったいの
从;` ヮ´)<れいなはフツーたい
ストレートというより一般基準が当てはまらないだけかもしれません。
- 497 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/12(日) 05:31
-
訂正です。
>>492
誤:
タクシーに乗り込み、平家の宿に向かった。
ミスヘイケとマックスに呼びかけられ、
「なんや、昔出てたバカドラマを思い出すわ」
と平家は苦笑した。
深夜にやっていたサイボーグもののB級ドラマで平家は工学博士の役だった。
本当にバカドラマだったので、今でもカルトな人気がある。
正:
タクシーに乗り込み、平家の宿に向かう。
乗り込む前、ミスヘイケとマックスに呼びかけられ、 (以下略)
- 498 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/09/13(月) 02:12
- 更新お疲れ様です。
みっちゃんさすがですね。まあみっちゃんは、よほどのことがない限り怒らないでしょうね。
あのめっちゃわがままな中澤姉さんと付き合ってるんですから。
にしても、一応歌手だったのがいつのまに世界の歌姫「HEIKE」になってますよね。
最初の頃のAA劇場で、下宿の掃除してたり、姉さんのお茶漬け作ってたのがウソみたいです。
- 499 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 02:39
-
村田はホテルに向かうタクシーの中、
「…また怒らせちゃったよ」
ぼそっと呟いた。
アヤカはさすがに心配そうだ。
「先生」
「なに?」
「平家さんのこと、お嫌いなんですか」
「いや、別に嫌いってわけでは」
あの余裕たっぷりな態度が癇に障るだけだと言葉に出しかけてやめた。
自分が悪いのは分かってる。
いつもだったら、ここまでハラが立たないだろう。
今回に限ってまたどうしてなのか。
「ハハ、ひとみんが帰ってきたら、また小言言われるだろうね」
「そうかもしれませんね」
アヤカは小さく笑って、目を閉じた。
海外慣れしてる彼女でも、さすがに疲れたようだ。
ホテルに着くまで、起こさないでいた。
- 500 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 02:40
-
斉藤は村田たちが着いた30分後くらいに帰ってきた。
不思議と、怒っていなかった。
それどころか、
「村、デパート行こうか」
と穏やかに言った。
「ああ、うん」
村田は怪訝に思いながらも財布の中から妹に持たされたメモを取り出した。
「なにを買うの?」
斉藤はメモを受け取って見てみた。
・スカーフ5枚(とりあえずどこでもいい)
・紅茶3缶
・口紅5本(どこのでもいいからベージュ系とかをとりあえず買うように)
村田の母と思われる字の他に、妹が赤字で付け足している。
「スカーフは親戚のオバチャンあたりに配るんだろうな。
紅茶はご近所さんか」
村田は言った。
「口紅は?」
「てきとーに配るんっしょ。
よかったよ、スカーフを10枚とか20枚って言われなくて」
「成田で買って行きゃよかったわね」
メモを見て斉藤はしまった、という顔をする。
「悪かったわ、こっちは無事着くことで頭がいっぱいだったし、
そっちまで気が回らなくて」
「自分はちゃっかりタバコ買ったクセにさ」
村田はニヤッと笑った。
「ああ…うん」
「なんてね、こっちも着いてから初めてメモの内容見たからいいよ」
「どうする?免税店は街中にないし。帰りに空港で買う?ちょい早目に行って」
「デパートでいいよ」
「そう?」
「まあ、あゆみに『バッカね〜。成田で買ってけばよかったのに』って言われるだろうけどね」
と村田は苦笑した。
「ちょうど空港へ行く用事があるので、言ってくだされば買ってきますよ」
アヤカの一言にふたりは『そうね』と頷きあう。
「ではおながいします、紅茶とかはこっちで買います」
村田からメモを受け取り、アヤカは出かけて行った。
- 501 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 02:40
-
村田たちはデパートへ出かけた。
バレンタインのディスプレイがそこかしこに見られた。
「やれやれ、どっこもバレンタインだねえ」
村田がうんざりしたように言う。
「まあまあ、1年に1度のことなんだし」
斉藤が苦笑いしてたしなめる。
「あゆみちゃんたちに何か買ってくんでしょ?」
「おおよ。本当に買ってかなかったら、高校の修学旅行のとき以上に言われるし」
「なにしたん?」
「ひとつも土産買わなかったら、大ブーイングだった」
「そりゃあ言われるわ」
「だって、なに買やあいいか分かんなかっただもん」
村田は頭をかく。
「中学とかも買わなかったの?」
「あたしの年だけ何故か田舎の寂れた雪山でスキー合宿だったから買うもなにも」
「小学校は?」
「伊勢に行ったんだけど、赤福を学校で一括注文だったから」
「ふうん。なんかつまんなさそうな旅行ばっかだねえ」
「まあね」
「それ以来買物メモをああやって家族に持たされてるわけであります」
「ああ、なるほど」
土産物を考えるの自体めんどくさくってねえ、と村田は続ける。
いくつか見て回り、村田は父に手帳カバー、母にはストール、妹にはカットソーを買った。
残りの紅茶も手早く買う。たまたま美味しそうなチョコを見つけたので、おやつに買った。
- 502 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 02:43
-
「あんたは何も買わないの?」
斉藤の分の買物も終え、近くのカフェで休憩する。
「いやー、日本でも買えそうなモンばっかだし」
村田は元々さほど物欲がない。
自分用の土産になるともっと買うのが面倒くさいのだ。
「じゃ、ちょっと付き合ってよ」
「んー、いいよ」
またデパートに戻る。
斉藤について行くと、彼女は特に迷う様子もなくすっと香水を選び買っていた。
「ハイ」
「ん?くれんの?」
「そ。バレンタインだし」
「ほー。ディオリッシモか。
へえ、さっぱりしてていいじゃない」
日本でテスターを嗅いだことがあるが悪くないと思った。
「でしょ」
「これの似合う女になれと」
「そこまでは言ってない」
「とにかく、ありがとね」
村田は礼を言い、
「ああ。じゃ、あたしもここでなんか買うわ。なにがいい?」
思いついたように続けた。
「そうねえ、じゃ、口紅選んでよ」
「合点」
斉藤の好きなメーカーの店に行き、ああでもないこうでもない、と言いながら探す。
「これは?」
テスターを差し出して、村田は尋ねる。
「ああ、いいよ。いい色じゃない」
斉藤も気に入ったようだ。
「これだったら、会社にもつけていけるし」
「あんたにそんな社会的常識があるとは…」
「なにさ、文句言うんだったら買わないよ」
「あー、分かった分かった!すみませんねえ」
村田が買ったのは、ブラウン系の口紅だった。
小さな包みを受け取って、
「大事にするね」
斉藤は少し照れたように笑った。
「ああ、うん。
あたしも」
村田は慌ててコクコク頷いた。
- 503 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 03:35
- 翌日は朝から取材を受け、これでこちらでの仕事は終えた。
昼も大分過ぎた頃、マクドナルドに村田たちは入って行った。
ふと窓のほうを見ると、マックスが彼女らの姿を見つけ片手を上げた。
今日は別々の取材だったので、顔を合わせなかったのだ。
「なんだ?アメリカまで来てマックか?
よっぽど好きなんだな」
店に入ってきたマックスは苦笑いする。
コーヒーの載ったトレイを手にしていた。
「悪かったね」
上目遣いで睨みつけ、村田はハンバーガーに齧りつく。
「土産にカネかかったから経費節約だよ」
「なにを買ったんだ?」
「家族には服とか。
親戚とかには化粧品、スカーフ」
「日本人はスキだな、そういうの。
空港でも大量に買ってな」
マックスは口の端を上げて笑った。
「別にね、好きで買ってんじゃないよ。
人間関係を円滑にするためにバラまいてんだよ」
「ほお、それはまた心のこもってないギフトだな」
「ムカつく〜!」
斉藤たちが慌てて押しとどめようとすると、マックスは顎に手を当て
「明日の晩、空いてるか?」
と言った。
「別になにもないけど?」
「8時にホテルに迎えに行く。メシでも食おうぜ」
「へえ、ディナーのお誘い?」
「ああ、マックスはケチでメシも食わさなかったって言われるのは心外だからな」
じゃあな、と彼は帰って行った。
- 504 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 03:35
- その夜。
村田と斉藤はオフブロードウェイのミュージカルを観に行った。
平家にもらったチケットというのがいまひとつひっかかるものがあったが、
好意は素直に受けることにする。
「『FAME』か…」
チケットを見て、村田は呟く。
正直、今の心境で観るのは少々辛い。
平家は分かってて斉藤にチケットを譲ったのだろうか。
『本気で怒らせてこの仕打ちだったら、敵には回したくない相手だなー』
隣で何か書き記している斉藤の横顔を見つめ、村田は小さく溜息をついた。
開演となる。
正直、ミュージカル自体はいまいちだったが、この街でまったくの無名からのし上がっていこうという
彼らのパワーには圧倒された。
『やっぱりわざとか?』
平家の本心は分からないが、幕が下りる頃には『やっぱりかなわないな』と
多少は素直な気持ちになっていた。
「面白かったわね」
斉藤は結構ご機嫌だった。
帰りの車の中でも、嬉しそうだ。
「ああ…英語が全然分からんかった。
映画知ってたからストーリーは分かったけど」
「そうね、あたしも全部は聞き取れなかった」
「うん」
会話が少なくなってきて、村田はシートに深々と身を沈め目を閉じた。
- 505 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/13(月) 03:36
- ホテルに戻ると、アヤカが先に戻っていた。
ミカの父がコンサートでニューヨークに来ており、ミカも母と昨日やって来た。
アヤカは昨日空港まで迎えに行き、今日も村田たちが観劇の間会っていたらしい。
「おかえりなさい。食事はすまされました?」
「あー、まだ。めんどくさくって帰ってきた」
「ああ、それじゃ。
さっき叔父たちと食事したお店で買ってきたんですが。
おみやげです」
「寿司だ!」
包みを受け取り、村田は押し頂くように『ははー』とひれ伏した。
日本から持ってきたインスタントの味噌汁と煎茶を淹れ、夕食となる。
アヤカはお茶だけ飲んで、にこにことふたりが食べるのを見ていた。
「お味噌汁も持ってらしたんですね」
「多分あゆみか母ちゃんが荷物に入れたんだと思う」
ふたりの会話を聞いて、斉藤は行きがけにもらったメモを思い出す。
『注意事項』と称して、『めぐみが旅先でぐずったら、味噌汁でもぶちこんでください』
『行きの飛行機で「うちに帰る〜!」と騒いだら、「じゃあ今すぐ降りろ」と突き放して
放置してください』とか妹の字で色々書いていた。
それを思い出してくすっと笑う。
「あー、ハラいっぱい。フロ入って寝ます」
村田は満足そうにハラをさすった。
「先入んな。あたしは電話かけなきゃなんないから」
「へーい」
バスタブに湯を張り、深々と体を横たわらせた。
「フェーイム やるだけやったー
すがすがっしいほーど 後悔はなーい」
天井を見上げて、歌ってみる。
自分の立ち位置がひどく頼りないものだと、今更気付いた。
- 506 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/13(月) 03:57
- 更新しました。
ミュージカル『FAME』はニューヨークの芸術学校を舞台に、
『FAME』(名声)を求めて夢を掴んだり、名声そのものに焦りすぎて
名声どころか人生そのものからドロップアウトしたりとか、そういう生徒たちの姿を
描いた青春モノです。初演は1995年ロンドン。その前に1980年アメリカで
アラン・パーカー監督の同名映画が大ヒットしました。
村さんがフロ入りながら歌ってるのは主題歌で日本でカバーされたものです。
ちなみにピンク・レディーが歌ってました。
( ‐ Δ‐)<りっめんばーりっめんばー♪
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
相変わらずこきつかわれとるで〜>( `◇´)っ□゛ ←雑巾
世界を股にかけようが、やっぱり茶漬けを作らされてると思います。
>めっちゃわがままな中澤姐さん
( `◇´)<てか、暴君?
- 507 名前:ひーちゃんエッグ 投稿日:2004/09/13(月) 17:15
- 更新お疲れ様です。
村さん大丈夫でしょうか?妹と母の扱われ方が小学生か幼稚園児ぐらいですね。
日本に帰ったらまたいつも村さんに戻ってればいいのですが。
柴田家は姉の扱い方に一番手を焼くんですね。
- 508 名前:ひーちゃんエッグ 投稿日:2004/09/13(月) 17:16
- すいません。ミスりました。
- 509 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 01:46
-
――日本では。
「お。出てる出てる」
漫画喫茶で、柴田は姉の記者会見の模様をネットニュースで見ていた。
「見せて見せて」
同じブースで、隣のシートの梨華も身を乗り出す。
――映画『GO WEST』の製作発表が12日午後2時より(現地時間)ニューヨークにて。
監督のマキシミリアム・タカクラ氏(27)、日本からは原作者の村田めぐみさん(23)、
音楽担当の平家みちよさん(25)が出席した――
簡単な記事と、マックスと握手する村田の写真があった。
「すっご〜い!世界中に知れ渡ってるんだね!」
「いや、世界っつっても、ハリウッド超大作とかじゃないし。上映も向こうとこっちだけだろうし」
「でもでも、ニューヨークでだよ!すごいじゃん!」
梨華がはしゃいでいると、隣のブースの若い男が仕切りの上から顔を出し
「静かにしてもらえませんか」
と仏頂面で言った。
「ごめんなさい!」
肩をすくめ、梨華は声を潜めて、
「お姉さんいつ帰って来るの?」
と会話を続けた。
「ん〜、土曜の昼の便で帰るっつってるから、こっち着くんは日曜の夜かね」
「楽しみだね〜♪」
「おや、アヤカさんからメールだ」
柴田がフリーメールを開けると、通訳でついていってるアヤカからメールが来ていた。
『ひさしぶり〜。
今日無事に記者会見が済みました。監督のマックスは夏くらいに映画の宣伝も兼ねて来日するそうです。
お姉さん、時差ボケもなくお元気ですよ』
ざっと目を通して返事を打つ。
『いまネットニュースで見ました。
めぐみがお世話になってます。いうことを聞かなかったら、叩いてくださって結構です』
「…叩くのはダメでしょ」
梨華は冷や汗をたらす。
「ひとのメールを勝手に読むんじゃない」
「ごめんなさい」
「チューしたらカンベンしてやる」
「それはヤだ」
「アラ」
「よお、お待たせ〜♪」
軽やかに、市井が現れた。
後ろから漫画を数冊持った吉澤も来る。
- 510 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 01:56
- 今日は漫画部(大して意味はないが、単に漫画喫茶に集う会ってだけである)
の定例会で、アヤカを除いたメンバーが集まっていた。
保田は社会人なので何故か名誉会長の肩書きだった。
今日は自宅にこもってなにやらしでかしている。
「市井さん」
「ひとみちゃん」
ふたりは同時に振り返った。
「後藤は?」
「ごっちんならあそこに」
梨華が示すほうに、『パタリロ!』を山積みにし、読み耽っている後藤がいた。
今ちょうどキーンとバンコランのガチ勝負だった。
「市井さん、ゼミ旅行どうでした?」
柴田が聞くと、
「あー、まあまあ。
メシもまあまあだったし。去年は悲惨だったけど」
『やっぱ東北はいいねえ』と目を細める。
温泉に浸かったり、エンジョイしたようだ。
漫画部はめいめいの活動を終えると、今度はカラオケルームに移動した。
市井は『ハイ、みやげ』と饅頭を広げた。
歌ったり饅頭食ったりして時間を過ごす。
「明日はバレンタインだな〜」
市井がそれとなく言うと、
「そうっすね」
と吉澤は自分が歌う曲を選びながら相槌を打つ。
「バレンタインか…」
柴田はふと遠い目になった。
「なに、どしたの?」
梨華が顔を覗き込むと、
「ああ、や。あたしはじゃないけどさ…」
と苦笑いした。
「うちのねーちゃん、昔、女にカバン貢いでエライことなったんよ」
「どういうこと?」
「いやー、それがさあ。ヴィトンのレアもののバッグをその当時狙ってた女に買い与えたワケよ」
「うん」
「したらその相手が質屋に売り飛ばしたワケよ」
「典型的だな」
市井は苦笑してタバコに火を点けた。
「それですみゃあいいんだけど、なんか他に色々とシャレになんないことをしでかしてるヒトだったみたいで、
ねーちゃん警察に呼ばれてカバンのこと聞かれてさあ」
「…ホントにシャレになってねえな」
「んあ」
吉澤も歌いながら話に聞き入っている。
- 511 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 02:00
- 「どうして?誰が買ったとか分かるの、そういうの?」
「レアものだったら、余計アシつくかもな」
「ほほお〜、詳しいねえ〜」
後藤が顔を覗き込むと、市井はすっとぼけて宙を見上げた。
「で、どうなったん?」
「お父さんの知り合いの弁護士さんに相談して、ちょうど買ったのが2月だったから、
あたしの誕生日に買ってくれたけど、あたしが気に入らないって言ったからそのひとにあげたっつー
ムリクラな言い訳を用意したんさ。
なんかあったら姉ちゃんが社会的に立場悪くなるしさあ。
まだメジャーになる前だったけど、一応デビューしてたし」
「ほほお、そんな歴史が」
「カードじゃなくて現金で買ったんがまだ救いでしたけどね。
なんか店の包装そのままだったら愛がこもってない、とか言って違う紙で
ラッピングしてくれたのも、最初あたしへのプレゼントだったっていうので
言い訳に具合がよかったようで」
「カードだとダメなの?」
梨華が聞くと
「それだったら、もっとシャレにならないことになってるよ」
柴田は一瞬厳しい表情になった。
だがすぐ元に戻り、
「次、あたし歌いますよ」
と笑顔でマイクを握った。
- 512 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 02:09
- 「市井さんはないんスか、そういうの?」
歌い終わった吉澤がマイクを置いて座ると、
「いちーちゃんは貢がせることはあっても貢ぐことはないよね〜。ケチだから」
後藤は市井の肘をうりうりしながら笑った。
「うっせ」
「女にメシおごるのはあっても、そういうのはないな〜」
だって、女にカタチに残るモンあげると面倒っしょ?
市井は言った。
「それもどうかと…」
吉澤はブツブツ言って、また曲の分厚いリストを広げた。
「後藤、おめー明日なんかくれよ」
「あ?」
後藤は『なんで?』という顔をする。
「バレンタインだろ?」
「いや、ウチらかんけーないじゃん」
そう言って後藤はふと思いついて
「じゃ、ごとーに『古今東西』で勝ったらなんかあげる」
ふふんというふうに笑った。
「よ、よし!お題は!?」
「いちーちゃんに選ばせてあげる。ここにいる他のみなさんが判定員ね」
「古今東西〜『新婚さんいらっしゃい』に付き物なモノ』」
「はあ?ワケわからんし」
「文句言うな。じゃ、いくぜ」
(パンパン)YES−NO枕!」
「はあ?分かってないねえ〜」
後藤は心底バカにした。
「最初はやっぱ『ニッペ』か『オッペン化粧品』ですよね。『フエルアルバム』とか」
柴田が言う。ミ〇プルーンはどうでもいいらしい。
「じゃ、また最初から。特別だよ、同じお題で」
後藤が言ってまた始まった。
周りの連中はハラハラと見守る。
このあと15巡くらいし、『ホテルプラザディナーつき宿泊券』だの『たわしかと思ったらハワイ』だの
『カマトトぶる片〇なぎさ』『オヨヨ』『ソファからずっこける三枝』『ジョーン・シェパードが歌う
後ろで華麗に踊る三枝』だのヤケクソ気味になったところで、後藤が負けた。
「…ごとーとしたことが」
床に四つんばいになり、後藤は本気で悔しがる。
「やった!やったー!!!」
市井は大はしゃぎだ。
勝利のポイントは『実はひっそりスポンサーだったマルコ〇みそ』だった。
「くそ〜!」
「約束だぜ、なんかくれよ」
「んあ〜…」
後藤はやっぱり悔しそうにカルピスを飲んだ。
- 513 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 02:13
-
「なんかすごいね」
帰り道、梨華は吉澤に言った。
「ん?」
「みんな、一生懸命なんだなって」
「ああ、うん」
「ウチは梨華ちゃんに一生懸命だけど」
吉澤は自分で言って、
『ウッヒョ〜!くすぐってェ〜!』
と照れる。
梨華はくすくす笑って、『あたしもひとみちゃんに一生懸命だよ』と小さくキスをした。
―――保田宅
保田は懲りもせず、先日のリベンジで豆大福を作ろうと大張り切りだった。
今度は和菓子で勝負に出るらしい。
横で飯田はあきれたように
「圭ちゃ〜ん…和菓子ってある意味洋菓子より難しいんだよ?大丈夫?」
と見ていた。
「んま、失礼ね!
見てらっしゃい!グウの音も出ないようなスバラシイ大福を作ってやるわ!」
と腕まくりをする。
今度は最初からレシピを頭に叩き込み、餡を鍋で練ったり、餅を製作したりしていた。
横で飯田は夕食の支度をしながら、手助けは無用だと宣言されたので
たまにチラチラと心配そうに見る。
「できた!」
出来上がったのは物凄く不恰好な豆大福だった。
異様にぼこぼこしている。
「ホホ!アンタに試食第一号の名誉を与えてやるわ!」
「…本人食べてないんだ〜」
飯田は恐る恐る皿の上の大福に手を伸ばす。
気のせいか、上にかかってる粉もまばらだ。
粉がかかりすぎてるところを指で払い、しげしげと眺める。
『…すんごいカタチ。異様にぼこぼこなのはおもちの豆だけのせいじゃないよね』
恐る恐る口に入れ、しばらく口をもごもご動かす。
「…あ!おいしい…!?」
「ホホ!どうよ?まいった?てか、明らかに感想の最後に疑問符ついてるわよ!」
「…まいりました」
飯田は笑って保田の口元に大福を持っていく。
「ホホ!悪くないじゃない!アタシって天才?」
「いや〜…まぐれだと」
「なんですって!?」
文句を言おうとする保田の唇を塞いで、飯田は
「残りはゴハンの後でね」
と笑った。
- 514 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 02:15
- その頃。
田中れいなは自分の部屋で懸命にバレンタインのチョコを包んでいた。
情報通の新垣にかわいいラッピングペーパーを売ってる店を教えてもらい、ギフトボックスだとか
薄紙だとかリボンを買ってきた。
「ああ〜…れいな、バレンタインにここまで手ェこんだことしたの、初めてっちゃ」
今までは買ったものを友達の間で配ったりしていた。
今回は手作りだ。
1年上の道重さゆみと学園の寮で一緒に作った。
道重は『チョコは湯せんにして溶かす』というくだりで本当にチョコに湯を入れようとする
天然でお約束のボケをしようとし、慌てて田中に止められるということもあったが、
無難にチョコを作った。
なんだか物凄くピンクな、体に悪そうな色のチョコだった。
『ハイ、れいなちゃんに1個あげる』
と言って分けてくれたが、正直食べるのをためらっている。
ラッピングが完成し、忘れないようにカバンに入れベッドにつっぷした。
以前、代官山で偶然紺野に会ったときのことを思い出す。
隣にいたのは誰だったのか。
随分親しげだったが。
自分には及ばないくらい、年の離れた大人の女性と付き合っているのだろうか。
紺野は落ち着いているから、あれくらい大人のひとじゃないと、つまらないのかもしれない。
自分のような子供だと、振り向いてくれないのかもしれない。
「…当たって砕けろっちゃ!うじうじ考えてても始まらんたい!」
ベッドの上に急にボンッと座り込み、田中はひとり『うっし!』とガッツポーズをとった。
- 515 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/14(火) 02:16
-
新垣は自宅で風呂に入っていた。
上がってきて、部屋から持ってきた着替えがないのに気付く。
「あれ?あれ?」
バスタオルをひっくり返したりして一通り探し、
「お母さ〜ん」
と台所の母を呼ぶ。
「なあに〜?」
「ここにあった着替え、知らない?」
「あ、ごめん。
一緒に洗濯しちゃった」
「も〜、お母さん」
情けなさそうな顔をし、
「いま、お父さんいないよね…」
キョロキョロあたりを見渡し、バスタオルを体に巻きつけ、
猛ダッシュで部屋に向かう。
「あ、いま部屋にまこっちゃんが遊びに来て…ま、いっか」
新垣の母はそう言って明日の弁当の下ごしらえを始めた。
「セーフ!」
新垣は部屋のドアを開ける。
「あ、里沙」
小川はベッドに座って雑誌を読んでいた。
「…ひゃぁ〜!」
新垣は驚きすぎて、前に屈んでしまった。
はずみでバスタオルがはがれてしまう。
小川はぎょっとし、おろおろと辺りを見渡し、椅子にかかっていたカーディガンを顔をそむけて
差し出した。
「なんでいんのよ〜!」
「バ、バレンタインのケーキを持ってきてやったんだよ!
ガッコに持ってくと荷物になるだろ!」
やっぱり顔をそむけながら、机の上を指差した。
シンプルな包みのケーキボックスが載っていた。
「出てって!」
「あ?」
「出てってよ〜!」
ぐいぐい押し出して、新垣は脱力して床にぺたんと座り込んだ。
- 516 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/14(火) 02:17
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ひーちゃんエッグさん
川σ_σ|| <そ〜うなんです!手のかかるヤシなんです
村さんは初海外の時機内で耳が痛くなって大泣きしたようです。
- 517 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 02:38
- いらっしゃいネタに笑いました。
オッペン化粧品が自分の中でツボ。
しかしリアルごっつあんが『千昌夫の昔の嫁の後ろで踊る三枝師匠』を知ってるとは
到底思えません。(笑)
大人になって『YES−NO枕』の意味が理解できた時の気持ちをどう表したらいいのでしょう。
ドラえもんの『Yロウ』とか。
- 518 名前:Stargazer 投稿日:2004/09/14(火) 20:11
- 久しぶりに書き込みます。まずは、更新お疲れ様です。
今回のネタ、軽くついてこれる自分がちょっと悲しいなぁと思いつつ、
楽しく読ませてもらいました。w ごまさんの小ネタは、娘。さん達だけに
限らず、幅広いジャンルを取り入れていて、読んでて非常に勉強になったり
笑ったりです。w 今度はどんな小ネタでしょうかね?w
- 519 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/14(火) 21:37
- ( ゜人゜)ダーレガ( σ。。)σコロシタ ( ゜人゜)クック( σ。。)σロビン
パタリロネタがうれしい‥。
かおりと圭ちゃんのさっぱりした甘さがよいです。
- 520 名前:gung 投稿日:2004/09/14(火) 22:38
- すいませーん、ヤッスーさんお手製大福1つ下さいw
更新お疲れ様です。
村さんにそんな歴史があったとわ・・・と、とにかくボスと今を生きてください!(意味不明)
にしてもガキさん、あなたもなんやかんやいって思春期真っ盛りなんですよねぇ・・・
ピーマコさんの挙動不審が目に浮かびますがw
- 521 名前:名無し。 投稿日:2004/09/14(火) 23:58
- 更新お疲れ様です。
自分もヤッスーお手製の豆大福を1つ・・・いや2つ・・・3つ・・(笑
豆大福好きなんでどんな味かと・・・(笑
- 522 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/09/15(水) 01:09
- 川o・-・)つフ<愛ちゃんおめでとう。よろしければどうぞ…ソースかつ丼。
更新お疲れ様です。
久振りの日本でなんかほっとしますね。そういえば、ごと〜さん・いち〜ちゃんと同じ、マコ・ガキさんも幼馴染みで両親公認ですね。
愛ちゃん・こんこんがくっついたらこの二人もと思いましたが、やっぱなさそうですね。
- 523 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:17
- ―――ニューヨークでは
翌日は1日オフだった。
本当なら今日帰ってもいいのだが、斉藤が気を利かせ帰国を1日延ばしてくれたのだ。
朝からメトロポリタン美術館に行く。
「村は1回来たことあるんだっけ?」
「うん、大学の教授引率のツアーでね。つまんなくて1日欠伸してたけど」
「協調性ないねえ」
斉藤はあきれたように笑う。
絵を一通り見て回り(もっとも物凄く広いのであまりじっくりも見てられなかったが)、
昼食を摂ってタイムズスクエアに行く。
エンパイステートビルの展望台に、行列に混じって登った。
「楽しいね〜」
村田はご機嫌だった。
ニューヨークの街を見下ろして「わあ」と歓声を上げる。
「フフ、そう?」
「うん、なんかデートみたいじゃん」
村田の邪気のない一言に、斉藤はなんともいえない気持ちになった。
帰ってから、明日は帰国なのでパッキングを始める。
村田は不用品はどんどん捨てたのでスーツケースに土産を詰めても大丈夫だったが、
斉藤はどう考えても無理そうだった。まず鞄が閉まらない。
「なんでそんなにありえないくらい荷物が多いのよ」
村田はあきれて言った。
「わ、悪かったわね!アンタが絶対色々忘れ物してくるだろうって踏んで余分に持ってきたの!
今回は失敗できない仕事だし」
斉藤は真っ赤になって怒る。
「それにしちゃあ服多すぎ。
分かった、ちょい待って」
村田はフロントに電話をかけ、大き目の段ボールと丈夫なガムテープ、はさみを持ってくるように言った。
注文の品が届いてから、てきぱきと組み立てて斉藤に
「いらん服出して」
と片手を差し出した。
「どうすんの?」
「あたしの土産と一緒に実家に送るから。
ああ、電話かけとくわ」
そう言うが早いか、
「あー、あゆみ?
今日みやげ一式、航空便で送るからー。
それとひとみんの荷物も一緒にしたからー。
うん、今度取りに行く」
実家に電話し、さくさくと荷造りを始めた。
日本の妹は『朝っぱら迷惑な』と思ったが、一応『分かった』と返事した。
- 524 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:23
-
村田はアヤカに買ってきてもらった口紅やスカーフはジップロックの袋に入れ、
家族宛にはそれぞれ斉藤に借りたペンで名前を書いた。
「アンタ、やること早いわね」
斉藤は素直に感心した声を上げる。
「まあね〜。さあて、これで完成」
上からガムテを貼り、住所も書き込んでまた電話して取りに来てもらう。
6時過ぎに出かけてたアヤカがいったん帰ってきた。
今日のマックスとの食事のあと、ミカとお泊りをするらしい。
「ヒュー!バレンタインだしな〜♪」
村田に茶化され、アヤカは苦笑いする。
8時ちょうどにマックスはやって来た。
黒いゲレンデヴァーゲンで颯爽と現れる。
助手席には平家がすでに乗っていた。
「なに!?あの戦車みたいな車は!?」
「ベンツのGクラスですよ。
さすがいいの乗ってますね」
アヤカはそう言った。
「もっとスマートな車で来るかと思いましたが、意外でしたね」
「ほお、どんなの?」
「いかにもフェラーリとか乗ってそうじゃないですか」
「あ〜」
斉藤は納得したように頷く。
「平家さん、ご無事でしたか」
村田は乗り込むなり失礼なことを言う。
「ご無事って?」
平家は助手席からちょっと振り返る。
「荒っぽい運転で乗り物酔いとか」
「いや、紳士的な運転やで」
「自家用ジェットとか持ってんの?」
村田の俗な質問に、
「オレはハリウッドスターじゃねえぞ」
マックスはゲラゲラ笑った。
「ハワイにコンドミニアムはあるがな」
「うわ、いかにもだ」
村田は『俗だねえ』とまた失礼なことを言う。
- 525 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:27
-
マックスが予約していた店に入る。
「…ワタシらはいまどう見えるんだろ」
村田の一言に、
「フツーにマックスのハーレム状態だと思います」
アヤカが苦笑して答える。
さすがに周囲の客の視線が恥ずかしかった。
マックスは案内してくれた店員に「マイ・ガールフレンズ」と彼女たちを紹介し、
村田はマックスに肘鉄を食らわした。
「この装置は…焼肉?」
案内された個室でなんだか見覚えのある網とかを見て、村田は隣の斉藤に囁く。
「そう、肉だ。好きなの頼めよ」
マックスはメニューを手渡してやった。
「何故焼肉?」
「予約しようと思ってた店にミスヘイケが『みんなでもう行った』って言うから
こっちに変えた」
「ほほ〜」
『困ったな…』
肉の苦手な村田は、運ばれてきた肉を見て困惑した。
「マックス、あなたは今日お誕生日じゃないの?」
ふと、アヤカが言った。
「よく知ってんな」
彼は目を丸くした。
「なんだ〜、お誕生日パーティーしてもらいたかったから、あたしらを呼んだんだ〜」
村田は笑う。
「別に。たまたまだ」
彼は黙々と肉を頬張った。
「最初から言えばいいのに。HAPPY BIRTHDAY!」
村田はマックスの頬にキスをした。
彼は満更でもなさそうだったが、
「妙な心境だ」
と苦笑した。
「根っからのゲイなんだね」
「アンタもだろ?」
斉藤とアヤカはぎょっとなったが、平家と村田本人は至極落ち着いている。
「分かるの?」
という村田に、
「描いたモン読めば分かる」
といたって簡単な返事だった。
「そのわりにはアタシの好物を知らないね〜。本の奥付んとこに書いてるはずなのに」
「そんなとこまで読まん」
「あらあら」
村田は肩をすくめて、食事の続きに戻った。
- 526 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:35
-
「それにしてもファッションに一貫性がないねえ。
昨日はバーバリーだったし」
村田は構わず毒を吐いた。
昨日マクドナルドで会った時、マックスはバーバリーのトレンチコートだった。
今日はCKのスーツを着ている。
「うるせえな。
人がどんな服着ようが勝手だろ」
口ではそう言ってるが、彼は結構楽しそうだ。
「いっそコロンボみたいにヨレヨレにさせたらいいのに」
「あれはステンカラーだろ」
顔を見合わせて、ふたりは笑った。
平家の携帯が鳴った。
「おうおう、誰や」
携帯を手にして出て行こうとするので、
「ここでいいぜ。聞かれてイヤじゃなかったら」
とマックスが止める。
「そりゃどうも…もしもし?」
裕子からだった。
平家の目が優しくなる。
特になんてことのない会話だったが、並々でないラブラブ加減が伺えた。
「なんだ、ガールフレンドか?」
電話を切ると、マックスが言った。
「まあ、そんなもん」
平家はニヤッと笑う。
「バーボンが好きとはクールな女だな」
みやげのリクエストの電話だったのだ。
「本物はもっとカッコエエで」
「隠そうとなさらないんですね」
村田は言った。
「自分もやん」
平家はおかしそうに笑う。
「まあ、自分から言ったりはせえへんけどなあ。
好きな女とキスひとつすんのにも気ィ使わなアカンのはたまにめんどくさいけど」
「こそこそ隠れるのがイヤってことですか?」
平家はそれには答えず
「秘すればこそ華、やっけ?
隠す方が燃えるやん?」
笑って言った。
マックスは黙って聞いている。
- 527 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:37
-
「アンタは、ストレートの連中にモテそうだな」
マックスはアヤカに振った。
「えー、ゲイにもモテるっしょ。美人なんだし」
村田が不平の声を上げると、
「いえ、ゲイの友人はいますが、彼らに興味を持たれるってことはまずないですね」
アヤカ本人も認めた。
「なんで?」
「ゲイから見たら多分一番つまんない種類の女だからだと思います」
「ほお」
村田はそう言ったあと、
「でもストレートの男とビアンには引っ張りだこでしょ?」
「引っ張りだこってものでもないですが」
アヤカは笑って、
「父に銀座のお寿司屋さんに連れてってもらったら、見事にそういうカップルに見られました」
「そりゃ災難でしたな。お父さんも気まずかったでしょうに」
そう言われ、アヤカは苦笑いした。
「食べる?」
平家にハラミの皿を差し出され、
「ああ、どうも」
と村田は受け取る。
「ああ…えっと」
「なに?」
平家はくすっと笑う。
「その…色々すみませんでした。
大人げなかったです」
「ムリに大人になろうとせんでエエねんで。
ウチも似たようなモンやし」
「それでも、すみませんでした」
村田は穏やかに言い、潔く頭を下げた。
- 528 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:43
- 「全員同じとこに送ればいいのか?」
平家を先に送ったあと、マックスは言った。
「あたしは48丁目のインターコンチネンタルへ」
アヤカが言う。
「ほお、デートか?」
マックスが言うと、
「野暮なこと言うんじゃないよ、バレンタインだよ」
村田にも言われ、
「それもそうだな」
と笑った。
アヤカのホテルに着いたら、マックスはいったん降りてドアを開けた。
「じゃ、また東京で。
気をつけて帰っておいでね」
「はい、先生たちも」
「おやすみ」
アヤカは車が見えなくなるまで手を振っていた。
「じゃあな、元気で」
村田たちのホテルに着いた時、マックスはまたわざわざ降りてドアを開けてくれた。
さっきのは偶然でなく、習慣のようだ。
「アンタもね」
それぞれ握手をする。
車に乗り込んだマックスは運転席の窓を開け、村田を手招きし、
「いい女だな」
と斉藤を称した。
「ゲイのくせに」
村田が笑うと、
「離すんじゃねえぞ。胸のデカい女はいいぜ」
と帰っていった。
- 529 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:45
-
村田はホテルの小部屋でチョコをもぐもぐ食べ、濃いコーヒーを啜っていた。
「うまいねー」
斉藤に2個ほど残して、
「さーて、フロにでも入るか」
椅子から立ち上がった。
村田が風呂の支度をしてる間、斉藤は電話をしていた。
「もしもし、有紀?」
東京の、前田有紀にかけていた。
『おお。どう、そっちは?』
「ああ、うん。
明日帰る。おみやげ買ったからね、今度渡す」
『そんなんいいのに。
ありがとう』
「そっちは?いま、レコーディングなんだよね」
『ああ、ちょうど一区切りついたとこ。
村は?』
「代わろうか?」
『ああ、いやいいけど。
どう?そっちはバレンタインだしうまくいった?』
前田のからかうような声に、斉藤は押し黙る。
『なに、まだなんともなってないの?』
「…村は、あたしのことは別に好きじゃないと思う」
『なんで〜?メロメロだと思うよ?』
「だって、あの子、仕事のことしか考えてないんだよ?」
村田は斉藤にヘアパックを借りようと呼びに来て、たまたま会話を聞いてしまい、慌てて隠れる。
『まあ、そういう子だからね。それは昔っからじゃん』
「うん…」
『あんたはどうなのよ?好きなんでしょ?』
斉藤はしばらく黙っていた。
『泣いてるの?』
電話の向こうの問いかけに、
「…なんで、自分勝手で我儘であんな漫画のことばっか考えてるような子なのに…」
しゃくりあげながら斉藤は震える声で言った。
「ああ、ごめん。もう切るね。
おやすみなさい」
『うん、おやすみ』
斉藤は電話を切って、
「ごめん村、先お風呂入っていい?」
とベッドルームのほうに声をかけた。
- 530 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:47
-
村田は速攻前田に電話をかけ、
「瞳になにを言ったの?」
挨拶もなく、詰問口調で問い質した。
『…びっくりした。別になにも言ってないわよ』
「嘘。泣いてるじゃん」
『あんたのことが好きでしょうがないからよ。
分かってやんな』
「…いまも、瞳のこと好きでしょ?」
『好きよ。あんたに言われるまでもなく』
前田の解答は明瞭だった。
村田はカッと頭の芯に火がついたように熱くなる。
『今もかわいくてしょうがない』
「じゃ、どうして?
なんで別れるの?」
『あたしの役割は終わったって思ったからよ』
「役割?」
『そう。あの子は脆いからね、そばに誰かいなきゃダメなの』
「それならなんで…」
『ずっとあたしじゃない方を見てたって知ってたから』
村田は言葉に詰まる。
『それを知っててそばにいたあたしも卑怯だったけどね、もうそろそろ潮時かなあって』
「瞳は…」
『うん?』
「さっき、あたしが漫画のことばっか考えてるって…」
『事実でしょ?
あの子はね、相手がテンション上がってる時だけ愛されて、いらなくなったら捨てられるのが怖いのよ。
あんたに分かる?』
「…それくらい、分か…」
『泣かしたら、承知しないわよ。
ニューヨークまで奪い返しに行くからね』
「な!別れたクセに!」
『瞳がどうすれば喜ぶかってあんたよりずっと知ってるわよ。
どう?まだこの期に及んでガタガタ言うの?』
「…分かった」
電話を切って、重い足を引きずってバスルームへ向かう。
- 531 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:49
-
その頃。東京の某レコーディングスタジオ。
電話を切った前田は、
「…たく、世話の焼ける」
小さく溜息を吐いた。
「ご苦労様です」
顔を上げると、同じ事務所の石井リカがコーヒーを差し出していた。
「ああ、石井ちゃん。
石井ちゃんもずっと詰めてたんだ」
受け取って、渇いた喉を潤す。
「いえ、あたしは今日からなんですけどね。
早目に来て直したいとこがあったんで」
「そうなんだ」
「憎まれ役、お疲れ様です」
にこにこと言われ、前田は苦笑する。
「聞いてたの」
「ええ、聞くつもりはなくとも声が大きかったので」
「ハハ…」
「じゃ、あたしはこれで」
「石井ちゃん」
「はい?」
「レコーディング終わったら、飲みにでも行こっか」
はい、と石井はもう一度笑って答えた。
斉藤はもう上がったようだ。
濡れたバスタブが妙に寂しかった。
洗面台に目をやると、ミッキーマウスのイラストがついた、小さな容器のシャンプーが目に入った。
ホテルミラコスタだったか、こんなイラストの容器だった。
斉藤のは日本のメーカーだし、アヤカが気を使って置いてってくれたようだ。
小さく笑って、村田は服を脱いでシャワーの栓をひねった。
風呂上りに鏡に向かってドライヤーで髪を乾かしていると、ふとネタが浮かんだ。
こんなクリアな頭で浮かんだのは久しぶりだった。
慌てて書くものを探すが当然ないので仕方なく、洗面台に置いてある自分の口紅の蓋を開けた。
「村、ちょっと洗面台使っていい?手を洗いた…!」
入ってきた斉藤はバスルームの鏡を見て声にならない悲鳴を上げる。
「ちょっと!なにこれ!?」
鏡には、村田の脳内に浮かんだプロットが口紅で殴り書きしてあった。
「ああ、ちょっとね。
おもろいネタが浮かんだもので」
バスローブ姿の村田は悪びれず言う。
「だからって鏡に書いていいわけないでしょ!
今すぐ消しな!ホテルにも迷惑だよ!」
「え〜、だって紙とかなかったからさあ。
せめてネタ帳に写させてよ」
「書いたらすぐ消すのよ」
斉藤は鏡をバンと叩いて出て行った。
- 532 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:50
-
「…お掃除終わりましたぁ〜」
村田はバスルームからネタ帳とペン片手に出てくる。
まだバスローブだった。
斉藤はリビングでパソコンを打っていた。
まだ怒っている。
「ご苦労。
…面白かったわよ、あのネタ。
もう少し練れば使えるんじゃない?」
村田の顔を見ずに言った。
「う、うん」
鞄にメモをしまい、村田はそっと斉藤のそばに近づき、意味もなくウロウロした。
「まだなにか用事?」
やっぱり斉藤は顔を見ない。
「お話があります」
「なに?」
「あたしのものになってください」
村田は背中から抱きしめて、迷い無く言った。
「…ストレートだね」
「だって、遠まわしに言ってもどうにもならないじゃん」
「…うん」
「あたしのことが嫌いじゃなかったら」
「嫌いだよ」
「…ええ?」
「あんたのそういうとこが、憧れでもありめっちゃムカつくとこでもある。昔っから」
「そんな昔っから?」
「そう」
「そんな昔から好きだったんだ」
斉藤はくるっと振り返った。
顔は怒ってるが、心なしか赤かった。
- 533 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:52
-
「自惚れないでよ。
あんたなんか大嫌いよ」
「よかった」
「はあ?」
「少なくとも、愛されてるから」
「…どこをどう解釈したら、そうなるのよ」
「好きだよ」
「あたしは嫌いだよ」
「それでもいい。あたしのものになって」
「じゃ、あたしのものになってくれるわけ?漫画中毒のくせに」
「あ〜、漫画込みじゃダメですか?
あたし漫画取ったら、他になにもありませんから」
「確かにねえ」
「だから、ひとみんというのも欲しいのです」
「あきれた。漫画と同列なワケ?
そりゃあ、女に捨てられるわ」
「そこまで分かってくれるのは、瞳しかいないよ」
「瞳呼ばわりかよ」
「ずっと、心の中ではそう呼んでた」
斉藤はずっと睨みつけてやがてすっと立ち上がった。
村田の首に腕を回して、深く口づけた。
「契約していい?更新切れとかナシで」
村田の囁きに、
「ヘタだったら、すぐ解除するわよ」
斉藤は目をそらして言い放った。
村田は斉藤の腕にキスをした。
- 534 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 03:54
-
村田は幸せな気持ちでバスタブに浸かる。
腕の中には、斉藤がいる。
時刻はもう午前3時だった。
今日はもう帰国だというのに、こんな時間まで愛し合っていた。
「あ〜、幸せ」
「…あたしは複雑な気持ちよ」
斉藤は眉間に皺を寄せて後ろから回された腕に掴まる。
「だって、ひとみんメッチャかわいいし〜。
『もう離さないで〜』とか言って」
「は、反芻するな!」
「じっとしてて」
スポンジにボディーシャンプーを含ませ、斉藤の体を洗ってやる。
「ねえ」
「え?」
「一緒に暮らそう」
「はあ?」
斉藤は後ろを振り返った。
「いやー、ひとみん今のマンションこの春で更新っしょ?
あたしもそろそろ仕事場の他に家を持ちたかったんで」
「あのね、あたし異動で場合によっちゃ北海道とかなるかもしれないんだよ?」
「週末婚もいいじゃん。
ああ、あたしは全然尽くすタイプじゃないし、ひとみんの帰りを味噌汁作って待ってるような女
じゃないけど、ひとみんが不安でしょうがないとき、引っ張ってあげれるから」
『ね?』と、村田は斉藤の顔を覗き込んだ。
「…あんたの味噌汁なんか飲みたかないけどね。すっげーまずそうだし。なんかすっごいぬるくって
煮詰まったの作りそう」
「ひどいなあ。じゃ、特訓するよ」
「いや、味噌汁はいいし。コーヒー淹れてよ、あんたのコーヒーは好きだから」
「分かった」
泡だらけの中、もう一度キスをした。
- 535 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/15(水) 04:12
- ―― JFK空港
「信じらんない!目覚まし止めて爆睡なんて!」
「だってー、ひとみんが『もっと…』って言うからだよお〜」
「いちいちモノマネすんなー!」
村田と斉藤は大寝坊し、スーツケースを猛スピードで押して空港のロビーを
走っていた。
ホテルのチェックアウト10分前に目を覚まし、寝ぼける村田をばしばし叩いて
大慌てでタクシーを拾って空港へ向かった。
ちなみにフライトにも危うい。
アヤカがいればこんなことはなかっただろうが、彼女は叔父のコンサートの
通訳に引き続き向かったため、帰国が遅れるのだ。
「あ、あれマックスじゃん」
村田が示す方に、サングラスをかけ口の端を上げて笑っている長身の男がいた。
ちなみに今日は全身グッチだった。
「よお」
「わざわざ見送り?アンタもヒマだね」
マックスはなにも言わず、笑って村田に紙袋を投げてよこした。
「なに?」
「アンタにきっと似合うぜ、メグミ」
「なんかわからんけど、サンキュー」
「またトウキョウでな!」
一度だけ手を振って、彼は帰って行った。
思い出したように、ふたりは慌てて搭乗手続きをする。
機内で、村田はさっきのプレゼントを開けた。
「うわー…アルマーニのニットだよ」
中から自分ではまず買わないような服が出てきて、村田はひゃーという顔をする。
「普通だったら…男が女を口説いてることになるんだろうね」
斉藤も『すごいね』と袋を覗き込む。
「あら?まだなんか入ってる?」
小さな包みが入っていて、『FOR MY HITOMI』と意外に几帳面な筆記体で
書かれてあった。
「誰がオマエのだ!アタシのだよ!」
村田は頭から湯気を立てる。
「なんだろ?」
開けてみると、ライターが出てきた。
「うっわ〜…デュポンかよ。てか、ヘタするとこのニットより高いんじゃ」
「タバコ吸わなかったのに、スモーカーだってバレてたのね」
斉藤はそう言ってシルバーのライターをかざして見る。
「マックス、東京でまた会おう」
ニットを握り締めて、村田は目を光らせた。
- 536 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/15(水) 04:15
- 更新しました。
コロンボは「うちのカミさんが」のコロンボです。
>517の名無飼育さん
( ´ Д `)<んあ〜、知ってたらヤだよね〜
ただのメーカー名なのになんであんなにおかしいんでしょうね(w?
枕の真の意味は私も結構物心ついてから気付きました。
>Stargazerさん
( ´D`)<しゃかいてきにはなんのやくにもたたねーのれす
たまに切なくなるのですが(苦笑)、そう言っていただけて嬉しいです。どうもです。
>519の名無飼育さん
(;‘ д‘)<ほんまやな。オバチャンらにしてはさわやかやわ
つい条件反射で踊ってしまいました。>クックロビン音頭
>gungさん
( `.∀´)っ〇<ホホ!ひとつ300万円よ! ←昭和のギャグ
村さんスレてなくて運悪く引っかかってしまったようです。ガキさんもお年頃なのです。
>521の名無し。さん
( `.∀´)っ由<ホホ!よ・く・ば・りさん♪包みはサービスよ!
あたら若い命を粗末にしてはいけません。
>ひ〜ちゃんエッグさん
川’ー’川っフ<あさ美ちゃん、ありがとうやよ〜
マコガキは幼なじみではないのですが、仲はいいです。
- 537 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/09/15(水) 04:53
- 村さんよかったですね。これでメロン一家(柴田家?)の完成ですね。
よく考えたらメロンはマサオ以外3人ともボケキャラですね。
しかも1番のボケキャラがリーダーだし。大丈夫かな?一家の大黒柱のマサオが大変そうです。
でもほんとに村さんおめでと〜。村さんをすっごい応援してたんで泣きそうな位うれしいです。
- 538 名前:名無し。 投稿日:2004/09/15(水) 18:42
- いやぁ〜村さんえがったえがった!
。・゚・(つД`)・゚・。
舞台がアメリカに変わって何だかすごく大人な雰囲気で
違う物語を読んでいる気分です。
なんか・・・いいですねこれ。
あ、ヤッスーお手製豆大福確かに受け取りやしたw
神棚にお供えしておきますw
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/15(水) 23:33
- 連日の更新お疲れ様です。
それにしてもいろいろなものに詳しいですね。自分も多趣味なんですけどかないませんね。
- 540 名前:ピクシー 投稿日:2004/09/16(木) 09:21
- 更新お疲れ様です。
旅に出ている最中に、連日更新・・・(苦笑)
ニューヨーク編も終わりですかね?
次はいよいよ、日本のバレンタイン編ですかな?
各人物の動向が気になります。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 541 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/17(金) 03:05
- 更新お疲れ様です
マックスのキャラがいいですね
個人的ツボにはまりました
デュポンのライターってどれくらいするのかなと思って調べてみました
( Д ) ゜ ゜
またひとつ新しい世界を知った気分でした・・・
- 542 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:40
- そんなこんなで2月14日。
―――朝比奈女子高校
朝、加護が登校すると、校門のそばで
「加護さん!チョコどうぞ!」
と中学の生徒にピンクの紙袋を渡された。
「おや、自分はこの前アクエリアスをくれた子ォやな」
「覚えててくださってたんですかあ!?」
「ウマかったで。ありがとうな」
ニヤリと笑って、加護は『じゃ』と片手を上げて去っていく。
「加護さん、どうぞ」
2人目の生徒を見て、
「あ、ボンカレー」
と加護は軽く驚く。
「そうですそうです、ボンカレーです」
「またくれんの?おおきになあ」
「いえいえ」
特に小ネタもなくその生徒は手を振って校舎に入って行った。
「ふむ…アクエリアスの子はモロゾフでボンカレーはマリアージュフレールか。
なにを返したらエエんやろ?」
ブツブツ言ってると、すぐ横を白いダウンコートを着た新垣がすっと通り過ぎた。
「おお、ガキさん、おは…」
声をかけるのもためらうくらい、新垣は死にそうな顔をしていた。
「なんやなんや」
首を傾げて下駄箱に向かう。
「ウチの相方はどうなっとるんやろな」
辻は駅を出たところで辻希美ファンクラブ一同に掴まり、チョコレート攻勢にあってしまった。
待ってるのも時間がかかりそうなので、
「先、行くで」
と気を利かせ加護は1人で来たのだ。
- 543 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:42
- 『まこっちゃんにハダカを見られた見られた…』
新垣はげっそりした顔で席に着く。
机の中に入っていたチョコにも気付かないくらいやつれていた。
チャイムが鳴って朝のショートホームルームが始まる。
担任の岡村が物凄くダンディーなタキシードでキメて入って来たので、
生徒はゲラゲラ笑う。
更に教室の上の壁に飾っていた額入りの賞状が勢いでバン!と落ちてきたので、
教室中に笑いが満ちる。
新垣も微かに笑った。
ちょっと離れた席の道重など涙が出るくらい笑っている。
「あー、出席を取ります。
青木」
「ハイ」
「青田」
「ハーイ」
か行のところまで来て、
「門田」
「はい」
「亀井…は、休みだったな」
新垣は思わず亀井の席を見る。
今日はちょっとぼーっとしていたので空席だと気付かなかった。
「ガキさん?」
「あ、あい?」
「ガキさん大丈夫?
風邪が流行ってるぞ、みんなも気をつけろよ」
はーいと一同は返事をする。
道重はなにやらノートの切れ端に書いて、小さく折りたたんでいた。
授業中に新垣のところにそれが回ってくる。
『从*・ 。.・从<亀井さん、せっかくのバレンタインなのにどうしたんだろうね』
しばらく考えて、
『( ・e・)<風邪でしょ。仕方ないじゃん』
と返事を書いて送る。
『从*・ 。.・从<今日のガキさんはおかしいの。タキシードでキメてる岡村先生よりずっとおかしいの』
と返って来た。
『言えない…シゲさんにはとても言えない』
新垣はテキストに手紙をはさみ、はあ、と溜息を吐いた。
- 544 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:45
-
休み時間に、一番会いたくない相手が現れた。
新垣は防災訓練のように思わず机の下に隠れた。
「里沙。なにやってんの、おめー?」
小川はしゃがんで中の新垣の顔を覗き込む。
「なあ、まだ怒ってんの?」
「べべべべ別に」
「今朝もさっさと先に行くし」
「いつも一緒に来てるわけじゃないじゃん」
「まあ、そうなんだけど。
ごめんな、アタシが悪かった。そんだけ。そんじゃな」
小川が出て行ってから、わっと新垣の周りに人だかりができる。
「ガキさん、今のなに!?」
「アタシが悪かったってなに!?」
「説明して!」
道重もなにも言わなかったが、一番説明を要求するような顔をしている。
「べ、別に。
ちょっとケンカしただけだよ」
新垣はスカートの後ろをはらって、机から出てきた。
「ケンカの原因は?」
「いや、特に。
あたしも大人気なかったし」
「ほんっと仲いいんだね〜。
ご近所さんって感じ」
クラスメートの1人が言い、
「ガキさんだったら小川さんといても違和感ないよね」
と新垣が眩暈を起こすようなことを他の生徒が続けた。
「…カンベンしてよお、あたしはただのご近所さんだよお〜」
新垣はちょっと泣きそうになった。
- 545 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:46
-
その頃。
紺野はカバンに入れたチョコを何度も何度も確かめていた。
辻はその様子を見て、
「早く渡したらどうれす?」
とちょっと笑って言う。
「いえ…まだ早いです」
少し赤くなり、『はあ』と息をついた。
「紺野さ〜ん」
教室に田中がやって来た。
「あ、田中さん…」
借りた本を持って立ち上がる。
「本、ありがとうございました」
「いえ。あの、これ」
「…チョコ、ですか」
「は、はい。
うまくできたかどうかわからんけど」
田中は赤くなって俯いた。
「ありがとうございます」
「じゃ、また」
それだけ言って、彼女は帰って行った。
『どうしたものか…』
薄紙に包まれた箱を手にし、紺野はまた息をついた。
放課後。
紺野は急いで小川の教室に向かった。
彼女はいるにはいたが、他の生徒と話している。
「お、紺野」
小川のほうが気付いて声をかけてくれたが、紺野は慌てて後ろにチョコの包みを隠してしまう。
「ど、どうも」
「いま帰り?」
「は、はい。小川さんはクラブですよね?」
「ああ、うん。
じゃあ、そろそろ時間だからまたな」
小川はその生徒と行ってしまった。
「あ…」
紺野はあっけにとられて、小川の後姿を見送った。
- 546 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:50
- 加護は中澤家に戻って、居間でもらったチョコを整理しながら紅茶を飲んでいた。
お茶は誕生日に保田にもらったものだった。
「お、ええ匂いやな。またようさんもうてからに」
裕子が部屋に入ってきて言った。
「ガッコでもうたんです、お茶は保田のオバチャンですけど」
裕子にもお茶を淹れ、『どうぞ』とすすめた。
「へえ。モテモテやな」
「のんの方が多いですよ。朝からファンクラブが押し寄せて来ましたから」
「ほお。で、アンタは渡したんか?」
『あ』と加護は小さく声を上げた。
「まだやった…」
「アカンがな、肝心なことやのに」
「うん、そうですね」
そう言ってると、辻が
「ただいまれす〜」
と戻って来た。
「おお、帰ってきょったで」
「は、はい」
「あいぼん帰ってるれすか〜?」
「ここにおんでー」
裕子が声を上げると、
「ちょっと来てれす」
と玄関先で辻は言った。
「なんやの」
出て行くと、
「へいっ」
と白いケーキボックスを差し出された。
「のんから愛をこめてプレゼントれすよ」
「これは…義理?それとも…」
「あいぼん専用れす」
「専用ね、専用…」
ハハハ、と笑い、加護は
『どういう専用?』
とちょっと悩んだ。
- 547 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 13:55
-
―――喫茶タンポポ
閉店間際の喫茶タンポポで、矢口は『う〜ん』と腕組みをして考え込んでいた。
「限定で作ったはいいけど、やっぱビミョーだったかな…」
バレンタイン期間限定のケーキを作ったが、そのうちの一種類がネーミングもさることながら、
色が敬遠されたのかあまり売れなかった。
「どピンクで『ピンクに塗れ!』ってやっぱまずかったかな」
矢口の言葉に、自分の店を終えてやって来た安倍は
「…名前つけたのなっちだから、責任取って2個引き取るべ」
とコーヒーを飲みながら答えた。
「いや、思ってたよりは売れたからいいんだけど。
あと4個か…。ん〜、でもこんなのピンク好きのアゴンしか買わないだろうな…」
そんなことを言ってると、本当に梨華が息を弾ませてやって来た。
「矢口さあ〜ん。
『ピンクに塗れ!』ってまだあります〜?」
「うわ!ホントに来たよ!」
「ここで食べていいですか〜?」
「お、おう。
飲み物は何にする?」
「紅茶お願いしま〜す♪」
運ばれてきたケーキを食べて、
「ん〜、おいし♪」
と梨華はご機嫌だ。
「あ、矢口さん。
お持ち帰りでひとつお願いしま〜す♪」
「…売れた」
矢口は遠い目で笑った。
「あと2個はなっちが買うべ。
梨華ちゃん、おいしいっしょ?」
「ハイ、色がカワイイですよね。ピンクで♪」
「ハハ…色、ね」
ペンキで塗ったようなすごいピンクだったが、味は格別だった。
「さて、オイラは新ケーキの研究でも」
「どんなの作るんですかあ?」
「これなんてどうだろう?」
大学ノートを広げ、ケーキのデザイン画を見せる。
「わ〜…おいしそ。
名前つけるんですか?」
「抹茶系でちょっと和風にしようと思うんだけど」
「じゃ、美勇伝なんてどうですか?」
「び…び・ゆう・でーん!?」
「そう。
美しくて勇ましくて後世に伝わるんですよ?
よくないですか?」
梨華が得意げに、しかも自信たっぷりに言うので、矢口は『…考えときます』と
次は安倍にノートを見せた。
- 548 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:05
- 「こっちはポップだねえ…『恋のピロリンピロリンテレフォンゴール』なんてどうだべ?」
「ごめんなっち、ワケわかんない。なに、『ピロリン』って?
しかもなんで2回?」
「じゃ、こっちは『恋愛戦隊シツレンジャー』なんてどうよ?」
「安倍さん、真面目に考えてくれてます?」
「も〜、ヤグチは注文多いっしょ」
「いえオイラなにも注文してないし」
ふたりのやりとりを、梨華はくすくす笑って見ていた。
「あの〜…」
3人ははっと開かれたドアのほうに目を向けた。
高校生くらいの女の子がいた。
「限定の『ピンクに塗れ!』ってケーキありますかあ?」
「ああ、はい。まだありますよ。
こちらで召し上がりますか?」
矢口はケーキの載ったトレイを持ってきた。
「いえ、持って帰りたいんです」
「はい、何個ですか」
「2個ください」
『『『完売だ!』』』
3人は心の中で叫ぶ。
「あー、よかった。
売り切れてたらどうしようって思った」
女の子はそう言って、満足そうにケーキボックスを抱えて帰った。
「よかったべ、売れて」
安部は胸を撫で下ろす。
「…世の中には物好きなヒトがいるんだねえ」
「え〜。ヤグチさ〜ん、イシカワ物好きですかあ〜?」
梨華は眉をハの字に下げる。
「ヤグチ、自分で作っといて」
安倍にまでツッコまれる矢口だった。
「ん、そう言えばいまさっきの子、あたしたちと同じ高校の子っぽかったですよ」
梨華はデザート用のフォークを置いて、自分の口の端についているケーキくずを
紙ナプキンで拭った。
「へ?朝比奈の子?」
「ええ、上からコート着てたからはっきり分かんないですけど、それっぽい制服でしたよ」
「へえ、よく見てるっしょ」
安部も感心したように言う。
「この辺の子かね」
「そうかもしれませんね」
そうこう言ってるうちに閉店時間になったので、テイクアウトのケーキを持って、
梨華は帰って行った。
- 549 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:10
- ふたたび中澤家。
「ただいまあ〜」
梨華が帰ってきた。
「お、帰ってきょった」
裕子が部屋から顔を覗かせる。
「おみやげ買ってきたよ〜。
一緒に食べよ」
「…またエライ色のケーキやな」
裕子は苦笑いした。
「…このチョコとエエ勝負やな」
加護は昼休みに道重からもらった義理チョコを取り出した。
辻も興味津々でチョコを見る。
「わ!カワイイ色♪」
梨華は体に悪そうな、ピンクなハート型のチョコを手にして嬉しそうだ。
「ほな、ケーキもよばれようか。
梨華、これ圭坊が加護にあげたらしいわ」
裕子は黒地に濃いクリーム色のラベルの箱を向けた。
「わあ、いい匂い。
バラの香りがする…」
バレンタインという名のお茶を淹れ、すごい色のケーキを食べながら、
遅いティータイムとなった。
- 550 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:13
-
その頃。
保田は自宅で飯田の帰りを待っていた。
『ごめん。今日は遅くなります』
それだけのメールがきて、気にはなったが
「ま、いっか」
とリビングのソファーに寝転んだ。
うたた寝をしてしまい、くしゃみで目が覚める。
「う〜…寝ちまったか」
鼻をこすって起き上がる。
シャワーの音がする。
飯田が帰ってきたようだ。
無意味にニヤニヤしてクッションを抱えて待つ。
ところが。
「よお、シャワー借りたよ。姉ちゃん」
「た、たっくん?」
何故か保田の弟が腰にバスタオルを巻いて出てきた。
「な、なんで?」
「だっても何も、今日泊まるって言ってたじゃん」
保田は記憶を手繰らせる。
そういえば、3週間ほど前にそんなメールがきた気がする。
それにしても、なんで今日なのか。
「頼む、今日は別んとこ泊まって」
「え〜、オレ、カネねーよ。このへん知り合いいねーのに」
「なんでよりによって今日なのよ」
「て、言われても。
ねーちゃん、どうせオトコいねーんだろ」
「事情が変わった。
姉ちゃん、今日に賭けてんだよ!」
「ねーちゃん、目、マジだよ…」
「これやるからこの近くのラブホでも泊まって」
保田は財布から慌しく5千円札を取り出した。
「ラブホかよ。つーか、ねーちゃん行けば?
オトコ絡みなら」
「ここに来るんだよ」
「分かったよ、とりあえず服だけ着せてくれよ」
「ただいまー。ごめんねー、圭ちゃん遅くなってー」
その声に保田は固まってしまった。
- 551 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:17
-
―――嵐は去った。
保田は飯田に殴られた頬に濡れタオルを当てる。
「ごめんなー、姉ちゃん」
弟はさすがに申し訳なさそうに、頭をかく。
タイミング悪く(ある意味よく)帰ってきた飯田は、腰にバスタオルだけ巻いた
保田の弟を見て逆上し、いきなり保田を殴った。
「ち、ちが…!」
よろけながらも弁解しようとすると、
「信じてたのに!」
と泣きながらもう一度熱い拳が飛んできた。
「ちょっと、あんた!
いきなりなんなんだ!?」
さすがに弟が止めに入ろうとして、まとめて殴られてしまう。
「けいちゃんのばか〜!!」
大泣きをし、飯田は自分の家にダッシュで帰ってしまった。
「…オトコじゃなくてオンナだったんだな」
さっきの出来事を反芻し、弟はしみじみ言った。
「うん…」
「あの子、すんげー取り乱してたけど、いいんか?ほっといて」
「うん…ちょっと行ってくる」
よろよろと立ち上がり、家を出ようとする。
「あれ、プレゼントじぇねえのか?」
プレゼントが少しはみ出てる紙の手提げを見て、弟は指摘する。
「うん…ごめんね。
あんたまで巻き添えくわせて」
弟が元凶なのに頭を下げる姉に、
「姉ちゃんってほんといいヤツだな」
と彼は苦笑する。
「ホラ、行ってこいよ。
なんなら戻ってこなくていいからな」
弟のニヤニヤ笑いに見送られ、保田は飯田家のインターフォンを押した。
- 552 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:22
- 応答ナシ。
もう一度押してもなにもなかったので合鍵で家に入った。
「カオ?」
室内はしんとしている。
「カオー?」
寝室のドアを静かに開けると、すすり泣くような声がした。
「よかった、いたんだね」
胸を撫で下ろして、ベッドの布団のふくらみに触れる。
「カオ、ごめん」
反応はなかった。
「前に写真見せたじゃん。あれ、弟。
なんか今日うちに泊めることになってたみたいで、気がついたらいたのよ」
「なんか、ほんとにごめん」
と保田は続けた。
「…なんで謝んのよお〜」
「へ?」
保田は思わずぽかんという顔をする。
飯田は布団から少し顔を出し、
「圭ちゃんが悪いわけじゃないのに、なんで謝んのさ」
「なんでもなにも…すっげー傷つけたって思ったから」
飯田は布団から体を出し、うなだれて保田を上目遣いで見る。
「もう!カオが勝手に勘違いしただけなのに!」
「あれじゃあ、勘違いしても仕方ないって。
つーか、勝手にフロ入るあの子がそもそも悪いんだし。
だから…」
飯田は保田に抱きついた。
「…殴ってから気付いた。
圭ちゃんの弟だって。だって、そっくりだもん」
「ああ、うん」
「殴っちゃってごめんなさい」
「いやー、愛の深さを目の当たりにしたっつーか」
保田は腕組みをし目をつぶってしみじみ言う。
- 553 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:24
-
「プレゼントあんだけど」
「なあに?」
「開けてみ」
開けて飯田は嬉しいような複雑そうな顔をする。
中はプラチナのファッションリングだった。
「どしたん?気に入らなかった?」
「ううん…ありがとう」
ぎこちなく笑うので、保田は
「レシート取ってるし、店行って替えてもらう?」
「違うの」
飯田は顔を上げて切なそうな表情になった。
「なに?」
「あのね」
と飯田は話し始める。
彼女の話によると、今までバレンタインや誕生日に指輪をくれた人とは
すべてダメになったので、そのことを思い出したとか。
「ハァ?」
保田はちょっとあ然とする。
「全部ダメになったって…何人くらいよ?」
飯田は指折り数え始める。
それを見て、
「いや…やっぱいい」
埒が明かなさそうなので途中で止めた。
「なんか『遊園地行ったカップルはすべて別れる』並のくっだらないジンクスだねえ」
「だからふたりで行かなかったじゃん」
飯田はまた上目遣いになる。
「あ?」
付き合い出してからデートで行ったことはないが。
保田は『あ』という顔をし、
「明日香と3人で行ったヤツか。あと、矢口とかと」
「うん、明日香はカオの気持ち知ってたから『ふたりで来ればよかったのに』って言うから、
カオ、理由を説明したのね」
「うん」
「明日香、あきれてた」
「…そりゃあね」
「矢口は特に何も言わなかったけど、なんか気付いてたっぽい」
「…はぁ〜あ」
保田はぐったりし、ベッドに座り込んだ。
「よし、こうしよう。
今から50年後に別れてなかったら、アタシの勝ちね。
モツおごってよ、モツ。3人前。
アンタが勝ったらアンタの好きなんおごっちゃる」
「…70過ぎたおばあちゃんになっても、モツいくの?
しかも3人前…」
「いいでしょおー。
遊園地もバンバン行こう。よっしゃ、あったかくなったらシー行こう、シー」
「…圭ちゃん」
「あ?」
「おごってね」
保田はちょっとずっこけそうになったが、
「まあ…しゃーないな」
と腕の中の飯田の髪を撫でた。
飯田はくすくす笑って保田の腕に顔をこすりつけたりしていた。
- 554 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/09/29(水) 14:45
- その頃。
吉澤は柴田や大谷といた。
とある駅前のモスバでバレンタインのラッピングを、大谷の指導を受けながら
懸命に包んでいた。
当然梨華用である。
「よっしゃよっしゃ。上出来上出来」
吉澤が思いのほか器用だったので、大谷は満足そうだった。
「やーったー!よくないよくない?」
ものすごくピンクな包み紙の箱を、得意げに吉澤は柴田に見せる。
「色だけで姫に大ウケだと思うけどね、もー、ラッピングが『これでもか!』って感じだよねえ」
柴田は笑って言う。
「おふたりはこれからどすんの?」
「どうって、ねえ?」
吉澤の邪気のない質問に、柴田が意味ありげに笑う。
大谷の顔を覗き込む。
大谷は真面目に照れて、『よせよ』と呟き、がさがさと散らかした紙などを片付けた。
「柴っちゃんたちって付き合いだしてどんくらいなんの?」
「もうじき1年だよ。今月の23日で祝1周年!」
ピースして柴田は自分で拍手した。
ふたりもつられて拍手する。『イエーイ!』と無意味に付け加えた。
「ほほー。
どっちが言い出したん?付き合おうって」
「えー、いきなりチューしてきたのはコッチだよお」
キシシと笑い、両方の人差し指で柴田は大谷を指す。
ちょうど『ゲッツ!』のように。
事実そうな上にバラされたことで更に恥ずかしく、大谷は真っ赤になってアイスコーヒーを飲み干す。
「ホテルでアタシのおたんじょーびをお祝いしてるときにさあ、いきなりブチューと」
自分を抱きしめ、タコのような口をし、柴田は再現して見せる。
大谷は
「わ!わかったって!
再現しなくていいから!」
と、もっと真っ赤になってぶんぶん手を振る。
吉澤はウケて腹を抱えて笑う。
吉澤は大谷運転の車で中澤家まで送ってもらい、
「ばいばーい。
姫によろしくねー」
と柴田が中から手を振るのを
「おうよ」
と答え、見送った。
中から賑やかな声が聞こえる。
「よし!」
と気合を入れ、
「たでーまー」
とドアを開けた。
- 555 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/09/29(水) 14:51
- 更新しました。
自宅のパソコンが壊れた模様で、ネットにつながりません。
更新は遅れると思います。申し訳ありません。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ‐ Δ‐)ノ<や、や。ありがとう!
マサオも結構ボケキャラです。というか、マサオこそボケキングです(w
>538の名無し。さん
( ‐ Δ‐)<泣いて喜んでくださるとは…口説いた甲斐があったにょ
村さんは一人大人気なかったですが(w 書いてる方も違う話を書いてるみたいでし
た。
>539の名無飼育さん
( `◇´)<中の人は多趣味やけど飽きっぽいでェー
興味のないことには全く無頓着なのでそれはそれで困ったものです。
>ピクシーさん
( ‐ Δ‐)<おかえりなさいまし
NY編終わりますた。いよいよ日本なのですが、進んだり進まなかったりです。
>541の名無飼育さん
(;`◇´)<プレミアものになったら、もっと凄いで。で、大丈夫か?目玉飛び出てるで
ドラマ「白い巨塔」で財前が使っていたのは60個限定で450万円のモデルだそう
です
(ドラマのは非売品のキュービックジルコニア製だとか)。マックスはライターのコ
レクターなのです。
- 556 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/09/30(木) 00:02
- 更新お疲れ様です。
マサオさん、ひゅーひゅー(冷やかし)
照れ屋さんの割には結構思い切りがいいですね。柴ちゃんもそこにホレたんでしょうか?
次回のひ〜ちゃんが楽しみです。
- 557 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/30(木) 00:43
- 大杉蓮、伊武雅刀、
そしていいらさんっすか。
いつかは、殴られる女を演らせりゃ右に出るもの無し
との評価を不動のものとしていただきたいです。(笑)
- 558 名前:ピクシー 投稿日:2004/09/30(木) 01:16
- 更新お疲れ様です。
さりげなく、福田の名前が出てきてますねぇ。ロンドン留学中でしたね。
バレンタイン、果たして残りの各人はどうするのでしょう?
PCが壊れたとは、大変ですねぇ。
一日も早い復旧を願ってます。
次回更新も楽しみにのんびり待ってます。
- 559 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:31
- ―――同じ夜。 亀井絵里は自宅のベッドで咳き込んでいた。「絵里、入るわよ」 という母の声で体を起こす。 「ごはんよ。うどんにしたけど、食べれそう?」 「う、うん」 「起きれるようだったら、こっちで食べなさい」 上着を羽織り、寝室に続く部屋に出て行った。ホテルのスィートのようなアイボリーを基調とした部屋に、何故かこたつがある。そこでふうふういって鍋焼きうどんを食べる。 「お友達にチョコをあげようと思ってたの?」 母に言われ、何故かびくっとする。通学用の鞄から大き目の箱が見えていたのだ。 「う、うん」 「残念だったわね。また元気になったら持って行きなさい」 「うん」 こたつの上の籠に娘の好物のみかんを足して、母は出て行った。 「絵里…なんでいつもこうなんだろ」 情けなさそうな顔をして、亀井はうどんをすすった。
- 560 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:34
- その頃。 新垣里沙は『なんかし忘れた気がする…』とずっと腕を組んで考え、部屋の中をぐるぐる回っていた。 朝からの行動を思い返してみる。 登校。亀井が休みだった。休み時間に小川が来た。放課後、『バレンタイン撲滅委員会』に義理で顔を出した。なんか机の中にチョコが入っていた…。
- 561 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:37
- 「…あーーーーー!!」 そこで新垣は思い切り悲鳴を上げた。自分の部屋で宿題をしていたご近所の小川が、思わずびくっとシャーペンの芯を折るデカさだった。 「里沙、夜遅くなに騒いでんの。ご近所迷惑よ」 ドアの外から母に怒られる。 「ご、ごめん…」新垣はとりあえず謝り、へなへなとベッドに座り込んだ。 『…やっばい。あたし、加護さんにチョコ渡し忘れてんじゃん…。バレンタイン撲滅委員会なんかに行ってる場合じゃなかった…!』 『バレンタイン撲滅委員会』とは、他校のある女生徒が憧れの先輩に告白するため、バレンタインそのものを撲滅し、その先輩が誰からもチョコを受け取らないようにすべく結成された、いい加減な会であった。その実態はバレンタイン当日に家庭科室を借りきってわざと佃煮を炊いたりして、学校中を脱力させるものである。仰々しい名前の割にはまったくもって大したことのない会であった。新垣はそこの名誉理事に勝手に任命されているので、今日は顔だけ出したのだ。 「ど、どーしよどーしよ…」 またもや部屋中をうろうろし、しばらく考え携帯を手に取った。
- 562 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:39
- ―――中澤家 「おや、ガキさんから電話や」 加護は『モーニングコーヒー』の着メロを聞き、携帯を上着のポケットから出した。 「もしもし?」 『あ、あ。加護さん、夜分すみません。新垣です』 「おお、どしたん」 『あ、あのお…実はですね』 新垣の話によると、今日うっかりして加護にチョコを渡し忘れたとのことだった。『加護亜依ファンクラブ』代表として預かっているので、渡さないと会員一同からシメられる。ナマモノなので明日下宿の最寄り駅まで渡しに行っていいか、と言われる。 「それはいいけど…ガキさんもそそっかしいなあ」 ずばり指摘され、新垣は泣きそうな声を出す。 『う〜…ファンクラブのみんなには内緒ですよ』 「高くつくで」 ニヤニヤと笑い、加護は「じゃ、明日1時に」と電話を切った。
- 563 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:42
- ―――その頃。 田中れいなは自室で宿題をしながら、そわそわと電話を気にしていた。晩御飯を食べながら携帯を気にするので、「とりあえずご飯食べなさい」と伯母に言われた。 『♪〜』 『ミラコー』の着メロが鳴る。田中は素早く携帯を手に取った。 「もしもし!?」『こ、こんばんは…夜遅くすみません』 電話の向こうの紺野はちょっと唖然とした様子だった。 「ど、どうしたとですか、紺野さん」 待っていたくせに、わざともったいぶって田中は言った。 『あ、あの…今日はチョコ、ありがとうございました』 「あ、もう食べたとですか」 『い、いえ。先にお礼をと思いまして。手作りなんですね。わたくしなんかのためにお時間を割いて頂いて、大変恐れ入ります』 同年代の女の子にしては物凄く堅苦しいお礼だが、田中はもうそれだけで夢心地だった。
- 564 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/21(木) 03:45
- 「い、いえ…そんなことなかです。おいしいといいんですが…」 『あ、あの。わたくし、なにも差し上げてないのですが…』 「そんなのよか。なにか欲しくてあげたんやなか」 『分かりました。ホワイトデーになにか田中さんのお好きなものをお返しに…』 「は、はい」 『紺野さんをください』 田中は一瞬そう考え、すぐに『れ、れいな!なに考えとう!』真っ赤になって頭をぶんぶん振る。 『それでは失礼いたします。遅くにごめんなさい』 あくまで礼儀正しく、電話は切られた。 「…やったぁ〜!ホワイトデーにもらえると!」 ベッドにダイブして、田中は凄く幸せな気持ちで枕を抱きしめた。
- 565 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/10/21(木) 03:48
- 更新しました。携帯から打ったので、読みづらかったらすみません。レスのお礼です。 >ひ〜ちゃんエッグさん (* `_´)ノシ<いやそんな…よしてくださいよ マサオの意外な思い切りのよさでデキあがったのです。柴っちゃんも文通してる時から好意は持ってたんですが。 >557の名無し飼育さん コブシガウナルゼ!!>( ゜皿 ゜)二二○)) いいらさんに殴られたら、まあ軽く病院行きでしょうね(苦笑)怒りながらも特にヤスには手加減したようです。しかしそのおふたりと名が並ぶとは…(笑)。 >ピクシーさん ( ´ Д `)<んあ〜、まだ修理から戻ってこない… 明日香は高校卒業後、留学しますた。ちょうどヤスが大学生、いしかーさんが高校生の頃、今のぼんさんの部屋にいました。
- 566 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/21(木) 13:11
- おつかれさまです。
私にとってこの小説は小学生の頃のドラゴンボールの様な存在です。
たまに野球でつぶれると悲しかったなあ・・・
苦労してそうですがこれからも更新も楽しみに待ってます。
あと、ガキさんどんまい!!
- 567 名前:ピクシー 投稿日:2004/10/21(木) 23:40
- 大変な状態での更新お疲れ様です。
まだPC戻ってきませんか・・・
やっぱ、壊れると大変ですねぇ。←まだ壊れた経験はないです。
えりりん・・・幸薄いなぁ(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 568 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/10/21(木) 23:57
- 更新お疲れです。
ガキさん…いくつの代表をやってんだろう?
PS PCが早く直るといいですね。
- 569 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:31
-
―――中澤ハイツ
夜、後藤はバイトから帰ってきた。
下のポストのところでここでは珍しい若い男と顔を合わせる。
「んあ、こんばんは」
「あ、どうも。
ここの方ですか?」
「はい。あの、失礼ですがどなたですか」
「保田圭の弟です。
姉がいつもお世話になってます」
そういえば、男は保田によく似ていた。
礼儀正しいところまで似ている。
「んあ、圭ちゃんの弟さんですか。
101号室の後藤です。こちらこそいつもお世話になってます」
「ああ、うちの姉ちゃんと同じバンドの人だね。
これ、よかったら」
と、保田の弟は刺身の形に切られた、おつまみかまぼこのセットを差し出した。
「んあ、ありがとーございます」
かまぼこを受け取って、後藤は彼が階段を上がっていくのを手を振って見送った。
- 570 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:31
- 後藤が家に入ってすぐ、市井がやって来る。
「はぁ〜、つっかれた」
塾講師のバイトの帰りにここに寄るように言われ、そのままやって来たのだ。
「おう、ご苦労」
「言われたとーり、バナナとレモンと牛乳買ってきたぜ。バニラエッセンスと。
なにすんの?一体」
スーパーの袋をキッチンのテーブルの上に置き、市井はどかっと椅子に腰掛けた。
「まあまあ。
手洗ってむこーでテレビでも見ててよ」
「おう」
市井は言われた通りにし、テレビの場所まで移動し、床にあぐらをかいて
「ミュージックステーション」を見る。
台所では包丁でなにか切る音がしていたが、やがて甘い匂いがしてきた。
「おまえ、なに作ってんの?」
「ナイショ」
後藤は振り向かずに答えた。
「あ、そーいやさー。
下でけーちゃんの弟さんに会ったよ」
「マジで?
どんな人?」
「けーちゃんにそっくりだった」
「ぶっ」
物凄く盛大に市井は吹き出す。
普通に失礼だった。
「なんか遊びに来たみたいよ?
あ、かまぼこもらったからおなか空いてたら食べてていいよ」
「いや、あとでいいわ。
おまえのんはもーじきできそうか?」
「うん、もーすぐ」
しばらくたって『よっしゃ』という声が聞こえる。
市井は『やっとできたか』と腰を上げてテーブルに移動する。
「お!」
市井は声を上げる。
テーブルにはフォンデュのセットがあった。
鍋には溶かしチョコが入っており、カットされたフルーツが竹串に刺してあった。
「これってこれってもしかしてもしかしてバレンタインだったりする?」
「よこせってゆったのはそっちじゃん」
後藤はわざと拗ねたように言い、
「さ、食べよ。
冷めちゃうよ?」
エプロンを外して席に着いた。
- 571 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:33
-
―――保田家ではその頃大変な騒動があったが、そんなこととはつゆとも知らず
後藤の家では温かいチョコの香りに包まれていた。
「んあ、明日は朝、ホットケーキ作ってあげるね。
タネにバニラエッセンス入れて」
「甘いモンづくしだな」
そう言いながら市井の頬はゆるみっぱなしだ。
「イヤなら食べなくていいですぅ〜」
「分かったよ。食うよ、食いますってば」
「んじゃ、手伝って。
タネを一晩寝かすから」
「おまえってなんでムダに本格派なの?」
市井の言葉は無視して、後藤は戸棚からホットケーキミックスを取り出してきた。
―――飯田家
ひと騒動が済んだあと、飯田は保田に腕枕されてスヤスヤと眠ってしまった。
それを見て、保田は穏やかな気持ちになる。
保田の携帯が鳴る。
『 ( ‘д‘)<オバチャンに渡すケーキは明日ハイツに持ってくわな〜。
このあいぼん様はバレンタイン当日にお若いおふたりのトコ行くやなんて、
野暮天なことせえへんで〜』
メールを見て、保田は小さく吹き出した。
- 572 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:34
-
―――ふたたび中澤家
「…あいぼん、なにやってるんれすか」
「後学のためや」
加護は自室の壁にぴったりと張り付き、梨華の部屋の物音を聞き逃すまいと耳を澄ましていた。
辻はポテトチップスをパリパリやりながら、
「梨華ちゃんたちなら、よっちゃんの部屋にいるれす」
と言った。
「そういうことは早よ言えや」
加護はずるずると壁に背をつけてすべり、腰を下ろした。
「…あほらし。勉強でもすっかな」
「そこで勉強って選択肢があるのがすごいのれす」
「キミもどーかと思うがね」
『よっこらしょ』と加護は腰を上げて椅子を持って来、
「ヒマやったら、ちょっと椅子がグラつかんように、持っててくれへん?」
と辻のほうを見た。
「いいれすよ」
辻に椅子を持っててもらい、加護は天袋の整理を始める。
この前夜中にやっていたら、椅子ごと引っ繰り返ってしまった。
奥になにかあったのだが、それを取ろうとしてこけてしまったのだ。
「もうちょっと…それ!」
「あいぼん頑張れれす!」
下から激励を送る辻。
どうにかして取れ、ふうふう言い椅子から降りる。
「本、れすか」
加護の手元を見て、辻はきょとんという顔をする。
「うん。
夏目漱石…『倫敦塔』」
「そんなに古いのじゃなさそうれす」
「うん…復刻版やな」
パラパラとめくり、奥付を見て答える。
「前の下宿の人のかなあ。
忘れていかはったんかもしれん」
「そうれすねえ。あるのはこれだけれすか」
「あといくつかあったんやけど、ウチの背ぇでは取れん。
よっちゃんにでも今度頼んでみるわ」
「そうれすね。
さて、早速のんと遊ぶれす」
「いや、『早速』の意味分からんし」
- 573 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:35
-
辻加護がそうやってじゃれている頃。
吉澤と梨華は吉澤の部屋でまったり過ごしていた。
「チョ、チョコ開けてよござんす?」
吉澤はテンパって噛んでしまった。
「うん、よござんす」
梨華はニコニコして、『ハイ』と箱を手渡してやる。
開封は常に大雑把な吉澤にしては珍しく、シールなども丁寧に剥がし包装紙を広げる。
「…カーッケー!」
中身はピンクの卵型チョコだった。
透明のプラスティックの箱の中に、白い細切れの紙を下に敷き、どんと構えていた。
吉澤は『カッケーカッケー』を連発する。
「あたしも開けていい?」
「うん、開けて開けて。
あ、開ける前にオイラのラッピングテクを最低3秒は鑑賞して」
「うん、じゃちょっと見てから開けるね」
梨華は少し笑い、苦労のあとが見える包装をじっくり眺めた。
「すっごいカワイイラッピングだね。ありがとう」
「あ、あんね、マサオさんに教わったんだ〜」
「マサオさんに?」
「うん。マサオさん、すっげー器用だし。
実はついさっき帰るまでマサオさんと柴っちゃんに会って、ヒーちゃん、ラッピングを教わってました」
『てへ!』というように吉澤はふざけて照れ笑いした。
「開けるね?」
「うん、どぞどぞ」
包装を剥がすと真っ白な箱が出てきて、蓋を開けると薄いピンクの大きなハート型チョコが姿を現した。
「形と色はヨシコの気持ち?キャッ!」
某番組のコントの、たら子のようにくねくねし、吉澤は畳の上をごろごろ転がった。
- 574 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/10/27(水) 10:36
- 「あたしたちって気が合うね」
自分たちのチョコを見比べて梨華は綺麗に笑った。
「う、うん。
まさか梨華ちゃんもピンクでくるとは。しかも卵」
「あのね、あたしはもひとつあるんだ〜」
「なんですと!?」
『チョコを開けてみて』と言われ、吉澤は卵チョコを半分に割る。
「…ウヲ!」
卵の中からは、ビニールの小さな袋に包まれたシルバーアクセが出てきた。
「開けてビックリ!カッケー!」
袋から出し、吉澤は早速それを腕にはめる。
チェーンブレスは蛍光灯の光を受け、きらきら輝いた。
「ウオー!こんなことならオイラもアクセ買うんだったーーー!!」
吉澤は雄叫びを上げて頭を抱え、またもや畳の上をごろごろ転がった。
「いいからいいから。ホラ、チョコくれたじゃん」
「う、うん」
「残りは、ね?」
梨華が照れくさそうに笑う。
吉澤はすくっと立ち上がり、ベッドの梨華めがけダイブした。
- 575 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/10/27(水) 11:01
- 更新しました。
更新しました。
ハフン(#0´〜`(^▽^#)ウフフ
次回、ヒーちゃんハッスルハッスルの巻(本当か?)。
パソコンが修理から戻ってきました。
ネット機能はもう全然ダメだそうです(ニガワラ
字を打つのとデータ保存はとりあえず生きてるのでしばらく更新は
外からになると思います。
ローンを払い終わったとこなのでかなり切ないです(ニガワラ
レスのお礼です。
>566の名無飼育さん
( ´D`)<ななつあつめたらねがいがかなうのれす
( ‘д‘)<そもそもこのはなしも、最初は「世界で一番ベースのうまいヤシ大会」で
スタートしたからなあ ←ウソです
こっちはまあ、野球でつぶれることはまずないです(w
私はもうちょっと前の世代なので「うる星やつら」がつぶれたら悲しかったですね。
楽しみにしてくだすってありがとうございます。
>ピクシーさん
( ´ Д `)<テレビとかがこわれるよりめんどーだよー
川o・-・)ノ <中の人はそもそも扱いが大雑把なのです
パソを修理に出すとき困るのは、人様に見られたら恥ずかしいファイル(爆)の整理です。
エリザベスは幸薄いです。遠足の当日に熱出すタイプですね。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ・e・)<モーヲタ友の会、なっち研究会、眉毛を愛する会、もんじゃに土手は要らない会、
まあ、他にもあるけどざっとこんなもん?
( ´D`)<もんじゃ会はのんも入ってるのれす
名刺を作ったら、裏面が肩書きだらけになるタイプです。
えー、パソは直らずに戻ってまいりました(笑)。
- 576 名前:ピクシー 投稿日:2004/10/28(木) 01:00
- 更新お疲れ様です。
確かに、ファイル整理は重要だぁ。(w
自分も扱いは雑だと思っている方なのですが・・・何故か頑丈なPCで・・・
ごっちん、確かに本格嗜好ですねぇ。現実でもヤンタンとかでお菓子作ってくるし。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 577 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/10/28(木) 01:46
- 更新お疲れ様です。
い〜ですね。ひ〜ちゃんハッスルしちゃってください!
ひ〜ちゃんの部屋はのんちゃんの隣なんですかね?
ぼんさんとのんちゃんにその模様が聞こえちゃうのでは?まあのんちゃんは気づかないと思いますが。
- 578 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 17:52
- ―――吉澤視点
仰向けになって、梨華ちゃんがくるのを待つ。
ウチはパーカーだけ着て、下はまっぱだった。
「う…うん、あ」
梨華ちゃんの熱い舌が蕾を探るように動く。
…アタマ、バクハツしそうだ。
こんな恥ずかしい格好でこんな恥ずかしいコト…。
てか、完全にまっぱより恥ずかすぃよ…。
潤んだ視界の端に、さっき脱ぎ捨てたジーンズが入った。
「ああ…」
気がついたら、自分で自分の胸を触ってた。
服の裾から自分の手ェ、入れて。
気付いて慌てて手を離すと、梨華ちゃんがちょっと顔を上げて笑い、
「いいよ、やめなくて。
ひとみちゃんが気持ちいいコト、続けて?」
ウチは心持ち頭を上げ、黙ってコクコク頷いた。
…死ぬほど恥ずかしかったけど。
- 579 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 17:53
- …指を入れられる瞬間って、未だに恥ずかしい。
てか、「あ、入ってきた…」ってカラダが言ってるのか、ちょっと抵抗があるというか。
梨華ちゃんはウチのブラを外したあと、やっぱりパーカーはそのままで、
ウチの中にスッとその細い指を入れた。
「う…」
「大丈夫?」
いたわるような声が、耳元でする。
「や…だい、じょう…ぶ」
「痛かったら言って?」
「うん…」
なんか…聞きかじった知識だけど、中にすんごくキモチよくなるトコがあって、
ソコを刺激するとアタマふっとびそーになるってっけど。
未だにどこなのかわからん。
「死ぬぜ?」
って市井さんなんかはニヤッと笑って言うけど。
そんなことをぼんやり考えて、されるがままになる。
梨華ちゃんの指は、ウチをいたわるように中であちこち動いてた。
「う…あ。なんか…ヘン」
「イヤ?」
「違う…そ、じゃなく…って」
なんだろ、この感じ。
彼女の指がなんかあるところを撫でると、自分で呼吸が荒くなるのが分かった。
「…ソコ、あ…りか…うん」
「ココ?」
「うん、ソコ…」
指が優しく1回撫でたと思ったら、ちょっと強めにそこを擦り始めた。
ウチは大きく目を見開いた。
「…あ!」
「いくよ?」
梨華ちゃんの呼吸も荒くなる。
体がバラバラになるような、なんかここじゃないどこかへ連れてかれそうな感じ。
どこって聞かれると困るんだけど。
親指でも固く膨らんで充血した蕾を撫でられ、ぶっとびそうになる。
「…ああ!…うあ…ああ!」
最後に、馬鹿みたいに梨華ちゃんを綺麗だと思った。
- 580 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 17:56
-
ウチがイッたあとも梨華ちゃんはウチを仰向けのまま足をすっと立てて広げ、
外側の柔らかい皮膚に舌を這わせた。
てか…ソコ、お尻近いじゃん。
「ふ…あ」
体に粟立つような震えがぶるっとくる。
そこの皮膚を少し張るように両手で広げ、何度も唇と舌でそこを味わうように触れた。
「…え?」
急に視界が変わったと思ったら、両足をかなりめに上に抱え上げられ、
梨華ちゃんはウチの弱いトコをすごく激しく吸った。
「うあ…!り、梨華ちゃん、む、ムリだから!ウ、ウチデ、デカイのに!」
かなり強めに足を掴まれてるので、動くにも抵抗できない。
「…あん!さっきあんなに…イッたのに!」
「もっとキモチよくしてあげる」
梨華ちゃんの瞳がウチの滲んだ視界の中で揺れた。
「…も、ダメ。ギブ」
コトが済んだあと、ウチはうつぶせになってヘばっていた。
梨華ちゃんはずっと背中を撫でてくれてる。
「もう〜。梨華ちゃん激しすぎ。あ、あんな…恥ずかしい格好で舐められてさあ」
足どころか腰まで上げて、しゃにむにキスされた。
梨華ちゃんは黙ったまま、『ハハ…』と眉を下げて笑ってる。
「うっし。ひとみ回復したら、センエツながらイカせて頂きます」
「え〜、いいよお〜。疲れたでしょ?」
「ダメダメダメ。ウチひとりいいメにあってはダメっす」
「いや、いいメというか…」
「よっし。次梨華ちゃんね。
2回の裏、吉澤チーム攻撃っす」
てか、どっちが表なんだ?
梨華ちゃんはクスクス笑って、仰向けでウチにしがみついてきた。
うっし、腰はちっと痛いけど快調っす。
パーカーを脱ぎ捨て、ウチはあの細い体に向かっていった。
「…石川さん」
「ハイ…」
「その…胸、だけでイッた?」
「…すみません」
梨華ちゃんが眉をハの字にする。
乳首を咥えたり、歯の裏で軽くこするようにしてると、梨華ちゃんが張り詰めたように
一瞬体を強張らせ、すぐ力が抜けていったのだ。
「ではでは。
3回の裏も吉澤チーム攻撃っす」
「いやいや、2回の裏の次は3回表でしょ」
「無法ルールなんス」
「はあ」
梨華ちゃんは苦笑して、腕の中にウチを迎えた。
- 581 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 17:58
- ―――翌日
保田は右腕を横に伸ばしたまま目を覚ました。
飯田が幸せそうな顔で保田の胸に顔を埋めている。
うっすらと目を開け、保田はふにゃっと笑った。
飯田も目を覚まし、朝食となる。
「圭ちゃんの弟くん、ゴハンどうしたのかな。まだだったら一緒に」
飯田は卵を焼きながら、テーブルの保田のほうを見る。
「うん、様子見てくるわ」
保田は家を出て、自分の家に帰る。
玄関のポストに新聞がなかったので、弟が読んでいるのかもしれない。
「よう」
キッチンのテーブルで、彼はコーヒーを飲みながら朝刊を広げていた。
「おはよ。ごめんね、ゆうべは」
「ああ、いいっていいって。
こっちこそごめんな」
「カオリがごはん一緒に食べようって言ってるけど来る?」
「おや、いいんか?
ふたりきりで過ごしたいんじゃないの?」
彼はニヤッと笑い、新聞を畳んだ。
「うん、昨日のせめてものお詫びだってさ」
姉弟は連れ立って飯田宅に入って行った。
「おはようございまーす」
「あ、おはよう。ごめんね、あのゆうべ…痛かったでしょ?」
飯田が申し訳なさそうに眉を下げて言うと、
「いいパンチっす。
てか、ヘタなオトコよりつえーわ」
彼は笑って席に着いた。
「おー。朝からゴージャス!
オムレツにサラダ!スープまで!」
姉ちゃん、いつもこんなの食ってんの?と、弟は横の席の保田を見る。
「う、うん。大体こんな感じ」
「贅沢だな。姉ちゃんにはもったいないよ」
「うっさいよ」
弟の頭を小突き、保田はポップアップトースターから焼きあがったパンを取り出し、バターを塗る。
「やれやれ。
姉ちゃんが最近やたら顔色いい理由分かったわ。
こんないいメシ食ってたら、そりゃあ健康にもなるわな」
彼の一言に、姉たちは赤くなる。
「姉ちゃんをよろしく、カオリさん」
彼は左手を差し出す。
「…うん!」
手を握り返し、飯田はにっこり笑った。
- 582 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 18:00
- 昼過ぎ。
新垣は中澤家の最寄り駅の改札で、そわそわと待っていた。
約束の時間までまだ10分ある。
しばらく待ってると、アイボリー色の縄編みのニットを着た加護がやって来る。
後ろにフードがついていて、ひょこひょこ揺れている。
「待った?」
「い、いえ!
すみません、おやすみなのに」
「ううん。
あ、お昼食べた?」
「あ、いえ。
出先からそのまま来たんで」
「そっか。
あのさ、もっとフトコロに余裕があればなんかおごってあげたいんやけど、
あいにく素寒貧やねん」
加護は照れくさそうに笑う。
「もしよかったらうち来いひん?
なんか作ったるわ」
『―――神様グッジョブ!』
新垣は天にも昇りそうな気持ちになった。
- 583 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 18:01
-
「ちょっと図書館寄らしてな。
本、返しに行くさかい」
「ハイハイハイ」
新垣はご機嫌でついて行く。
加護の生活圏が見れるのが物凄く嬉しかった。
「予約されてた本が入ってますよ」
「あ、そうですか。
じゃ、お借りして帰ります」
カウンターでの司書の人とのやりとりも、ウキウキして見守る。
「ガキさん、知ってる?」
本の貸出手続きをしてもらってる間、加護は新垣に話しかける。
「奈良のほうの図書館は、貸出カードに鹿の絵が書いてあんねんで」
「マジですか」
「うん、マジマジ」
そんなささいなやりとりすらも嬉しかった。
加護が下宿してるという中澤家には、妙齢の金髪っぽい茶色い髪の、
管理人だという美しい女性がいた。
「加護の友達やてね。ゆっくりしてってな」
「は、はい」
関西弁に圧倒されてると、
「あ〜いぼん」
台所の入り口から、大学生くらいの若い女性が顔を覗かせた。
「お友達?」
「うん。付属中学の子で新垣さん。岡村先生のクラスの子」
「じゃ、3年B組なんだ」
「は、はい」
「ガキさん、この家の娘さんで梨華ちゃん。さっきの中澤さんの妹さん。
うちらのガッコの先輩やねん」
「よろしくね」
「あ、はい。あの、朝比奈のOGなんですか」
「うん。3年のときは岡村先生が担任だったよ」
「そうですか。あの、イジられました?」
「うん。イジられたイジられた」
梨華はおかしそうに笑い、自分も昼食の支度を始めた。
- 584 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 18:02
- 加護は台所を借り、炒飯を作ってやった。
丼で卵かけご飯を作り、そのままレタスや豚の細切れと炒めた。
「うっわ〜!すっごい!おいしそう!」
新垣は歓声を上げる。
「ホント、おいしそうだね」
あたしも炒飯にすればよかったかな、と梨華はラーメンをすすった。
「多めに作ったさかい梨華ちゃんもちょっとあげんで」
「やった♪」
3人でテーブルを囲んで、お昼となる。
梨華は自分の作った、炒めた青梗菜とかき卵入りのラーメンをふたりに分けてやった。
「ヤバイくらいおいしいです!炒飯もラーメンも!」
「そりゃよかった」
「フフ、たくさん食べてね」
「梨華ちゃん、炒飯作ったんはウチやで」
「あはは、そうだったそうだった」
新垣はふたりの楽しそうなやりとりをしばらく見ていたが、やがて
「あ、あの」
と口を開いた。
「なに、ガキさん?」
「あの、こちらのお宅はいま、空室というか下宿の空きはあるのでしょうか」
「へ?ガキさん、下宿したいん?」
梨華は少し考え、
「待ってて。姉さんに聞いてみるから」
と席を立った。
「裕ちゃーん、ちょっと来てー」
と廊下から梨華の声が聞こえた。
- 585 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 18:03
- 「えっと、新垣さんやっけ?
家はどこなん?」
梨華から大まかな事情を聞いた裕子は、台所に入っていった。
「あ、はい。
神楽坂です」
「神楽坂?学校からもここからもえらい近いな」
「え、じゃ。
小川さんとこのまこっちゃんと同じとこなんだね」
梨華が言うと、
「ああ、そういえばそうやな」
裕子もそういえば、という顔をする。
「あ、まこっちゃんはご近所です。
あ、そういえばまこっちゃんのおうちに家庭教師の人が教えに来てるって…」
「それ、梨華ちゃんのことやろ。
なんや会うたことなかったんかいな」
「駅とかですれ違ってたかもしれないけどね」
と梨華が言うと、新垣も頷いた。
「そんで話の続きやけどね。
新垣さん、うちはいま一応空き部屋があることはあんねん。
ただ、あなたの場合、すごいお家が近いでしょ。
まずお家の人に話してみたほうがええよ。
もし家のひとが許してくれはって下宿したいいうんなら、連絡してね」
『これ、連絡先な』
と裕子は財布から自分の名刺を出した。
「はい、すみませんでした…」
名刺を手に取って、新垣は
『ちょっとテンパりすぎた…』
と顔を赤くするのだった。
- 586 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/11/10(水) 18:04
- 夕方、加護は駅まで新垣を送ってやった。
「なあ、ガキさん」
「は、はい」
「なんで下宿しよ思たん?」
「え、えーと…」
『あの下宿が楽しそうだったから』
と口に出して言うのが恥ずかしく、
「そ、そろそろひとり立ちをと思いまして」
と笑ってごまかした。
「そっか。
ウチ、思うんやけど」
「はい?」
「家におれるんなら、おったほうがええと思うで。
まだ高校上がるトコなんやし。
遠くのガッコに通うとかならともかく」
カネもかかるしな、と加護は少し笑った。
「そ、そうですね」
加護はそういえば奈良から一人で出てきて下宿してるんだった。
その気持ちも知らず迂闊なことを言った、と新垣は自分を恥じた。
「なんてな、ウチも最初はイヤでイヤでしゃーなかった」
「え?」
「いまのガッコ、オトンにイヤイヤ受験させられてんやんか。
『とにかく落ちてもエエから受けてみい』言われて」
「は、はい」
「渋々受けたら運悪く合格するし、ホンマは東京なんか来とうなかってん」
「そうだったんですか…」
「でもまあ、いまはそれなりに楽しいで。
色々あるけど、毎日楽しいし」
ガキさんもおるしなあ、と加護はニヤニヤ笑った。
「や、やだ!やめてくださいよお!」
新垣は真っ赤になって腕をぶんぶん振った。
「ほなな、気をつけて」
改札で手を振って、新垣は帰って行った。
少し振り返ると、加護がまだ手を振っていた。
- 587 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/11/10(水) 18:05
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ´ Д `)<あっは!作るのも食べるのも楽しいもん!
ごっちんのお菓子は画像で見る限り、プロ仕様ですよね。アップルパイとか。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ´D`)<のんの部屋は1階なのれす。奥は中澤しゃんのお部屋なのれす
のんさんの部屋で何かあったら、姐さんに気づかれる可能性はあります(w
- 588 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/11/10(水) 23:44
- 更新お疲れ様です。
梨華ちゃん対ひ〜ちゃんの試合は9回裏までやってどちらが何対何で勝ったか気になります。
「あいぼん」なので、「アイボリー」色をつけてるんですね。
……あいぼんこのシャレ何点?
- 589 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/11(木) 01:45
- 更新お疲れ様です
先にご飯と卵だけ混ぜる炒飯は一度テレビで作ってるのを見た事がありますね
いい機会なんで近いうちに試そうと思います
- 590 名前:ピクシー 投稿日:2004/11/11(木) 02:36
- 更新お疲れ様です。
自分も、よく「アイボリー」と聞くと、ぼんさんを思い浮かべるのですが(w
まぁ・・・某コンタクト洗浄剤なんかは、まんまですけど。
ガキさん、急接近。そりゃ、テンパりますね。(w
ってか、神楽坂に住んでいたのか・・・ガキさん&まこ。また新たな情報ゲット!
次回更新も楽しみに待ってます。
- 591 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 20:03
- おう、あいぼん俺と炒飯の作り方いっしょだ〜。
こうするとうまくパラパラの炒飯作れるんだよね。
- 592 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/30(火) 03:03
- あいぼん・・・
- 593 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/01(水) 18:12
- ―――その夜。
保田は自宅で、1日遅れのバレンタインを飯田と楽しんでいた。
「ほら、加護が持ってきてくれたケーキもあるわよ」
そう言って保田は、紙の手提げからハート型のガトーショコラを取り出した。
新垣との待ち合わせに向かう前、加護は中澤ハイツに寄ったのだ。
「かわいいー!」
ケーキを見て飯田は顔をほころばせる。
「圭ちゃんには絶対ムリだね、こんなの」
「わーるかったね」
わざとしかめっつらをし、保田は冷蔵庫からシャンパンを取り出した。
「アンタが買って来てくれた苺もあるし、乾杯しよ」
「うん」
飯田は微笑んで、グラスを手に取った。
- 594 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/01(水) 18:12
- ―――同じ頃。中澤家。
「そうですか。いえ、わたくしの方は全然構わないですよ。
わざわざありがとうございます。はい、分かりました。
お嬢さんにもよろしくお伝えください。それではごめんくださいませ」
裕子が電話を切った後、梨華は横から
「誰?」
と聞いてきた。加護も何も言わないが同じように顔を向けた。
「昼間来はった新垣さんのお母さん。
『娘が突然勝手なことを言いまして申し訳ありませんでした』って」
「へえ。ガキさん、下宿するってお母さんに相談したのかな」
梨華もすでに『ガキさん』と呼んでいた。
そう呼んでくれと本人たっての希望だった。
「そうみたいやな。高校を出てからは好きにさせるけど、それまでは家にいさせるって言うてはったわ」
「うーん、さすがに神楽坂じゃあねえ」
梨華は腕組みして苦笑いした。
「ちゃんとしたお家の子ォやねんな。
お母さんにえらい丁寧に謝られてこっちが恐縮したワ」
裕子がそう言うと、
「ガキさんはエエとこの子ォやって聞いたことありますわ。
家は行ったことありませんけど」
加護が続けた。
「そういや、バーバリーの服を着てたような…?」
梨華は今日の新垣の服装を思い出す。
バーバリーのブルーレーベルのニットとスカートだった。
仕草や立ち居振る舞いもなんとなく、加護が言うとこの『エエとこの子ォ』っぽかった。
「ガキさんからなにもらったんだっけ」
梨華が言うと、加護は
「ああ、うん。
トリュフやった」
と手元の箱に目をやった。
「へえ、手作り?」
「いや、どっかで買ったっぽい」
加護はそう言ってちょっとため息をついた。
「なんや、ため息なんぞついてからに」
裕子が苦笑する。
「…やせな」
加護のため息まじりの一言に、ふたりはつい笑ってしまった。
- 595 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/01(水) 18:14
- ―――その頃。
紺野は自宅で、小川に渡せなかったチョコレートの小箱を目の前に置き、ため息をついていた。
『どーしよ〜。14日に渡さなきゃ、意味ないのに…』
机の上で、チョコは寂しく横たわっていた。
箱を撫で、紺野はまた寂しくため息をつく。
「…田中さんはすごいな」
『あたしがこう思うのはヘンだけど、あんな勇気、どこからくるんだろ。
正直うらやましい…』
自分にも、あんなぶつかっていける勇気が欲しい。
そんなこともあって、田中をとてもうらやましく思った。
「…月曜こそは」
紺野はぐっと脇をしめ、
「…よし!」
唇の端もキュッと結び、気合を入れた。
―――喫茶タンポポ。
「辻ぃ〜、もう上がっていいよー」
矢口に声をかけられ、
「へいっ、お先に失礼するれす」
と辻は頭からエプロンを脱いだ。
「お、お。
そうだ、忘れるトコだった。
辻、これオイラからバレンタインの愛の贈り物な」
矢口はニヤッと笑ってチョコレートのパウンドケーキを手渡してやった。
「半分は加護に分けてやれな。アゴンとかにも」
「へいっ、ありがとうれす」
辻は八重歯をむき出しにして嬉しそうに笑い、カバンにいそいそとケーキをしまった。
「加護からなんかもらった〜?」
矢口は皿を洗いながら聞いた。
「へいっ、チョコレートのお茶をもらったれす」
「へえ〜。お茶かあ」
「『オマエはこれ以上食ったら死ぬ』って言われたれす」
「キャハハハ、マ〜ジかよ〜!」
矢口は大ウケして笑う。
「失礼だと思わないれすか?のんだってレディーなのに」
「でも、嬉しかっただろ?」
辻はややあって、
「…うん」
とはにかみながら答えた。
- 596 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/01(水) 18:16
- 辻がタンポポを出て歩いていると、
「ののー!」
後ろから吉澤が手を振って走ってきた。
「あ、よっちゃん。
よっちゃんもいま帰りれすか」
「おう、今日はもう上がりさあ。
一緒に帰ろうぜい」
ぐいっと辻の肩を抱き寄せ、吉澤は『もお〜』と笑いながらイヤがられる。
「ヤグチさんにケーキをもらったれす。
帰ったらみんなで食べるれす」
「お、いいね〜」
「あ、そうだ」
辻はふとゆうべのことを思い出す。
「あのね、よっちゃん」
「うん?」
「ゆうべ、あいぼんのお部屋の天袋から本が出てきたれす」
「本?」
「へいっ。あいぼんのじゃないんれす。
夏目漱石の『倫敦塔』って本れす。
前の下宿の人のじゃないかって」
「へえ。また難しそーな本だな」
「それでね、まだ奥にもあるらしいんれすけど、あいぼんとのん、背が低いから届かないんれすよ。
よっちゃん、取ってあげてくらさい」
「おお、まかしとけ」
吉澤は自分の胸をどんと叩いた。
帰宅後、吉澤は早速、梨華に椅子を持っててもらい、件の天袋から本を取り出した。
下から裕子、辻加護が見守る。
「ふう、全部でこんだけかね」
吉澤は手の甲で額を拭って、椅子から降りる。
「こらまた小難しい本ばっかしやな」
裕子は本を手に取り、感心した声を上げる。
ゲーテの『ファウスト』やランボーの詩集、カフカの『ペスト』、文学全集なども出てきた。
「こんな難しい本読むの、他にいないよね」
「やな」
梨華の言葉に、裕子も頷いた。
- 597 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/01(水) 18:17
- 裕子は保田の携帯にメールを送った。
すぐ保田から電話がかかってくる。
『どしたの?
仕事中じゃないんだし、直接かけてきたらいいのに』
「土曜の夜やから気ィ使ってるんやないか」
裕子の言葉に保田は苦笑いした。
『で?
加護の部屋から本が出てきたって?』
「せや。圭坊はウチ出てくとき、確か荷物全部持って出たよなあ?
アンタの本かとも思うたけど」
『さすがにアタシも文学全集なんか持ってないわよ。
そんなの読むのあの子しかいないじゃん』
「せやんなあ」
保田が笑いながら言うと、裕子はまたもや頷いた。
「あの子って?」
加護が横の梨華に聞くと、
「フフッ、あいぼんの先輩?」
と嬉しそうに答えた。
『あ、ちょっと待って。
カオリがお風呂から上がってきたから聞いてみるわ』
ややあって、今度は飯田に替わった。
『もしもし?』
「おう。夜遅うにすまんな」
『ううん。
あのね、それ、多分明日香の本だと思う』
「やっぱしそうか」
『あのさ、明日香がここ出て実家戻った時、カオ、引越しの手伝いしたのね。
明日香、それみんな処分しようと思ってまとめてたんだけど、時間なかったのね。
で、とりあえず出る日に裕ちゃんに預けて、廃品回収とかに出してもらおうって思って、
カオ、明日香に頼まれて邪魔にならないように天袋にしまったのよ』
「うん」
『で、すっかり忘れてたの』
飯田はバツが悪そうに小さく笑った。
そばで保田が笑っている声も聞こえる。
「そうか。おおきにな」
『うん。じゃ、おやすみなさい』
電話を切った後、裕子は
「さて、どうしたもんか」
と顎に手を当てた。
「メアド書いてたかいな、この前もうた手紙に」
「あ、書いてたよ。
あたし持ってくるね」
梨華は自分の部屋に探しに行った。
「どうしはりますのん?」
加護が聞くと、
「メールで明日香さんってひとに聞くれすか」
と辻も続けた。
「ああ、なんや高そうな本もあるさかいになあ。
一応聞いてみるわ」
裕子がそう言うと、加護たちは頷いた。
- 598 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/12/01(水) 18:21
- 更新しました。
ハロモニ。の亀井の絵を一発で「スパイダーマン」と分かった私の中学時代の美術の成績は
Cでした。←5段階でいうとこの1か2。
「写真集のロケ地でイメージしてる場所は?」(by うたばん)
∬∬´▽`)<畳!
それは部屋だ、マコ。
ALL FOR ONE,ONE FOR ALLと聞いてすぐ「スクールウォーズ」を思い出すオサーンな
自分が悲しいです(ニガワラ
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ´д`)<…5点。護摩の中の人、イケてへんでェ〜
しまった、あいぼん=アイボリーって全然考えてませんでした(w
ひーちゃんといしかーさんの試合(?)は延長戦にもつれこんだ模様です。
>589の名無飼育さん
( ‘д‘)<うん、ごはんがパラパラの炒飯ができんで〜
コツは強火で一気に炒めることです。
サラダオイルを使っても全然ベチャベチャじゃない仕上がりになります。
>ピクシーさん
(;‘д‘)<お、ここにもアイボリー派が
単に似合うかなと思ってそうしたんですが(w。これからはぼんさんを思い出します。
ガキさんってリアルでもよくテンパってませんか?あんな感じです。
>591の名無飼育さん
( ^д^)<うん、おいしいよな〜
仲間ハケーン。簡単にプロっぽい炒飯ができるし便利な方法ですよね。
>592の名無飼育さん
( ‘д‘)<ウチのことでなんかしんみりしてくれてはるみたいやな。おおきにな〜
ありがとうございます。お優しい方なんですね。
- 599 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/02(木) 02:38
- 作者殿、更新乙です。いつも楽しく愛読しています。
実は、石吉ヲタではないのですがここの雰囲気というか、
護摩さんの描く世界にはまって森の頃から、読んでおりました。
昨今ハロプロにはいろんなことがありすぎましたが(今回の
天使の件も)この場を借りて勝手に心を癒させてもらってます。
12月にはいり石川さんのトーク並みに寒い日々が続くと思い
ますがお身体に気をつけて頑がって下さい。マターリ待ってます。
最後に こんこん ガンガレ こんこん
- 600 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/02(木) 03:27
- 更新お疲れ様です。
ぼんさんも読書家(「異邦人」とか読んでるし)ですが、明日香もかなりのツワモノですな。
一番謎が多い人だけに、今後の展開に注目。
ガキさんは「焦り屋」、というのをハロモニで聞いた覚えがありますね。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 601 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/12/02(木) 05:01
- 更新お疲れ様です。
八重歯を出して笑うのんさんがかわいくて大好きです。僕はあいぼんよりのんさん派なんで。
- 602 名前:591 投稿日:2004/12/05(日) 00:31
- 更新おつです。
> ALL FOR ONE,ONE FOR ALLと聞いてすぐ「スクールウォーズ」を思い出す
こちらも同士発見!!!
それにしてもガキさん、中学生でブルレとは生意気な。。。
- 603 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/16(木) 02:30
- ALL FOR ONE,ONE FOR ALLと聞くとプロジェクトX思い出しまつ。
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/16(木) 22:46
- あいぼん元気?
- 605 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 18:57
-
同じ夜―――。
保田と飯田は、ひとつの毛布にくるまっていた。
裸の体を寄せ合い、まどろむ。
「今日の圭ちゃんはですねえ」
「うん」
保田は小さく笑って今にも閉じそうな目を開けた。
「なかなかしつこかったです」
飯田に言われ、思わず吹き出す。
「いやだってさあ、おねーさん昨日泣き疲れて寝ちゃうし。
アタシもまだ若いんだし」
保田は自分の髪をかきあげて苦笑いする。
「愛を感じました」
そう言って保田の頬にキスし、彼女の手を取り、そこにも小さくキスした。
「…コラ」
保田はちょっと顔をしかめる。
飯田がじっと保田の目を見て、指に舌を這わせたからだ。
両手で保田の右手を握り、人差し指や中指を口に含ませる。
保田は固く目をつぶり、恥ずかしさに頭を少し振る。
飯田は何も言わず、指をしゃぶるのに夢中だった。
「指をさ」
保田が言うと、飯田は少し顔を上げ、指を解放した。
「うん」
「指を、舐められるのがこんな気持ちいいなんて知らなかったよ」
「フフッ」
嬉しそうに笑い、飯田はまた白い指に舌を這わせた。
- 606 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 18:58
-
指の股に舌先を擦りつけられ、保田は思わず声を上げる。
頭の中に靄がかかったようになる。
「けいちゃぁん…」
飯田はトロンとした目で保田を見上げた。
「なに?」
「カオ、我慢できないよ。挿れて…」
保田はブルッと背筋に震えが走る。
熱い目で見つめられ、伝染したように体が熱くなる。
「溶けそうだよ…」
掠れた声で囁き、保田は飯田に倒れこんでいった。
「挿れるよ?」
「うん」
横になった飯田は、保田の首に両腕を回す。
保田は横になった体勢から飯田をそっと倒し、彼女の脚を広げ付け根に顔を伏せた。
「あん」
不意打ちを食らった飯田は、艶めかしい声を出す。
「すごいよ?」
「…言わなくてもいいよお」
「アタシの指舐めながら、自分も感じてたんだ」
「ばかあ…」
飯田は涙目で抗議する。
保田は濡れて真っ赤に膨らんだ蕾に、チロチロと舌を触れさせる。
「ん…やだあ。もう、いいよお…」
「我慢できない?」
保田は顔を上げて小さく笑う。
「いじわるう…キライ」
その声を聞いて、保田はスッと指を潜り込ませた。
- 607 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 19:00
- 「あ…ああ!」
膝をつき、腰を高く突き出した姿勢で、飯田は我を忘れて体を揺らす。
『自分で腰振って、この子はもー』
保田は苦笑して、熱くなってうっすら赤くなった尻に、音のするようなキスをしてやる。
「…あ!」
飯田は目を見開いて、ずるずると崩れてしまう。
「イキそう?」
「うん…イカせてぇ」
涙目で懇願され、保田は
「…アタシまでイキそうだよ」
『その声聞いてると』
最後の言葉は胸のうちにしまって、飯田に囁いた。
―――日曜日。
裕子と加護は時間が合ったので、連れ立ってスーパーへ買物に出かけた。
「おや」
加護は思わず足を止めた。
「保田のオバチャンが、遠い目でフラフラと商店街のほう歩いて行かはったわ。
どないしたんやろ」
それを聞いて、裕子は
「うんまあ、オトナは色々疲れるモンやねん。そっとしといたり」
と意味もなく咳払いした。
『飯田さん、激しいねんなあ』
加護はそっと保田に同情する。
- 608 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 19:00
- 「ただいまー…」
村田めぐみは空港からタクシーで実家に向かった。
ニューヨークから帰って来て、先に斉藤の家に寄り、そのままこっちに来た。
「あ、ねーちゃん。
帰ってきたん?」
スーツケースを引きずって玄関を開けると、リビングで妹が雑誌を読んでいた。
「んー。
こっちのフロ入りたいから来た。
父さんたちは寝た?」
「うん。
あたしも今からお風呂なんだけど」
「じゃ、ひさぶりに一緒にきょうだい水入らずで入ろうか?妹よ」
妹の肩に手をやり、村田はうんうん頷いた。
- 609 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 19:01
-
「…あー、生き返る」
浴槽の縁に手を広げ、村田はオッサンくさい声を出す。
「オヤジがいるよ…」
スポンジで体を洗い、妹は小さく呟いた。
「察するに、斉藤さんとはうまくいったみたいだね」
自分も浴槽に体を浸し、妹は言った。
「あれ?なんでわかんの?」
村田は頭にのせてるタオルを外し、体を起こした。
「わかるよ、そんなわかりやすく体中に赤い痣つけて」
妹は苦笑する。
村田はまじまじと自分の痣を見て、
「ああ…ひとみん、激しかったからね」
「いや、そんな情報寄せられても」
しばらくふたりは『ふう』とか溜息をつく以外は特に何も言わず、天窓から見える
暗い夜空を眺めていた。
柴田家の浴室には天窓があるので、晴れた日は空を眺め、雨の日には、上の窓ガラスを
雨だれが伝うのを見ながら入浴できる。
- 610 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/22(水) 19:03
- 「あのさ…ねーちゃん」
「どした?」
「あのね…ねーちゃんが旅行行ってる間、おかーさんにねーちゃんと斉藤さんのこと聞かれたのね」
「うん」
「気付いてるみたいだよ、お母さん」
「そっか」
「ねーちゃん、斉藤さんと一緒になるつもりなの?」
「なるつもりじゃなくてなるよ」
「そうなんだ」
妹は顔を伏せて、
「あたしもマサオのこと、好きだよ」
と呟くように言った。
「知ってるよ」
村田は優しい声を出し、『今更何を』と少し笑う。
「あたしたち…どっちも孫の顔、見せれないじゃん」
妹の声は震えていた。
顔を下げているので見えないが、明らかに泣いている。
村田は妹の首に腕を回し、
「あんたは好きにしていいから。
後のことはねーちゃんにまかしな」
もう片方の手で頭を撫でてやった。
「自分ばっかし!
あ、あたしだってこの家の子供だもん!」
「悔しかったら早く自立して自分で稼いでみな。
へへ〜んだ」
村田がわざとふざけて言うと、妹は姉の胸に顔を埋め、
「ず、ずるいよ…ねーちゃんばっか!」
と子供の頃から何度も言ってることを言ってしゃくりあげた。
「それが長女と次女の違いだよ。
一生に一度くらいねーちゃんの言う事聞きな」
「めぐ…めぐちゃん…」
妹は大泣きし、姉に抱きついた。
よしよし、と村田は妹の背中や頭を撫でてやった。
「まったく…『あゆ、おっきくなったらめぐたんのおよめしゃんになるぅ〜』とか
言ってたのにさあ」
子供の頃のことを思い出し、村田は静まり返った居間でひとり飲んでいた。
手酌でハーフボトルの赤ワインを注いで飲む。
酒には弱いが、なんだか飲みたい気分だった。
妹は泣き疲れ、村田の部屋のベッドで寝ている。
『いつからか、『ねーちゃん』どころか『めぐみ』呼ばわりするようになったのに…』
『やれやれ…とりあえずは不動産探しかな』
大きく伸びをし、ステレオのラジオを点けた。
- 611 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/12/22(水) 19:06
- 更新しました。
( 護摩)<悲しいときー
( 護摩)<クリスマス前の漫喫で隣のバカップルがいちゃついてるときー
( 護摩)<…鳥の足でも食うか
レスのお礼です。
>599の名無し読者さん
川o・-・)ノ<応援ありがとうございます!不肖、紺野あさ美、精進いたす次第であります!
(0^〜^0)ノシ<いしよしヲタじゃなくてもうれすぃYO!
初レスの方でしょうか。かなり初期から読んで頂いてるようでありがとうございます。
ここ数年本当に色々ありますが、彼女らをヒソーリ応援していこうと思います。今後ともよろしくおながいします。
>ピクシーさん
(;‘д‘)<いやー、明日香さんには負けるわ
( ^▽^)<明日香さんは部屋にいる時は大抵読書してたんだよ
ぼんさんは結構ファンタジー小説も(岩波の児童書とか)読むのですが、明日香はもっとツワモノです(w
テレビでテンパッてる時のガキさんは微笑ましくてつい笑ってしまいますね(w
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;‘д‘)<え、うそーん!ちょっとショック?
(;´D`)<なんで疑問形なんれすか
中の人はどっちかっつーとのんさん派だったのですが、最近ぼんさんに傾いてます(こういうのをDDといいまつ)。
>591さん
∬∬;`▽´)<ホントナマイキだよな〜
(;・e・)<だって、パパが買ってくるんだもん キナイトスネルシ
ガキさん、お嬢なんです(ニガワラ
>「スクールウォーズ」 山下真司が泣きながら部員をビンタしていたのが忘れられません。
>603の名無飼育さん
( `.∀´)<実際のエピソードを基にドラマ化したらしいわね
川o・-・)<わたくしも見ましたが、監督と部員たちとの心の交流が素敵です
ドラマ「スクールウォーズ」は「プロジェクトX」で取り上げられた、伏見工業高校ラグビー部の実話を
基にして作られたそうです。
>604の名無飼育さん
( ^д^)ノシ<うん、元気やで〜
( ´D`)ノシ<のんもげんきれすよ〜
かなり元気です。どうもです。
- 612 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/12/23(木) 02:02
- 更新お疲れ様です。
柴田姉妹の美しい姉妹愛に感動しました。
ごまさん、僕も一人身なんでめげずにがんがってくらさい。
ごまさんの影響で、村さん大好きになっちゃいました。237レスの暗示にかかったようです。
- 613 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/23(木) 02:23
- 更新お疲れ様です。
あぁ、美しい姉妹愛・・・
そして、激しい夜を過ごした2人・・・(苦笑)
ぼんさんは、某魔法使いのもの(自分もDVDは見てます)も読んでましたね。(コンコンは原書で)
最近は、ちと本業(とは言わないが)が忙しく、日帰りで色々な所を旅しております・・・
クリスマスイブも漏れなく・・・(嘆息)
マイカーのガソリン代&旅先での食費、で金が飛んで行くここ2週間・・・(涙)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 614 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/29(水) 20:41
- ――月曜日。朝比奈女子中学。
3年B組は2時間目、音楽の授業だった。
卒業式に向けて学園歌の練習をする。
「かーぜがふきわたーる
こーのだいちにー」
「さーわやかーな
あーさのかーおりー」
「はい、ストップ」
音楽教師がピアノ伴奏を止める。
「んー。やっぱりここでみんな引っかかるわね。
今日はこの転調するところを重点的にやります」
「「はーい」」
生徒一同は返事する。
道重などは必要ないのにぴょこんと手まで挙げていた。
「さーわやかーな
あーさのかーおりー
わーかきそのむねにー
いーまとーどーけー」
「あーあー
あさひなー
われらーのー
ふるーさーとー
とーこしーえーにー」
亀井は歌いながらふとグランドの方に目をやった。
付属高校の生徒が体育をしている。
持久走のようでジャージ姿の人たちがトラックをぐるぐる走っている。
加護がポニーテールを揺らしながら走ってきた。
亀井はそれをじっと目で追う。
新垣は歌いながら譜面からちょっと視線を外し、亀井に目をやった。
- 615 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/29(水) 20:42
-
昼休みになる。
加護は今日は1年C組まで、購買で買ったパン持参でやって来た。
辻や紺野と昼食を摂る。
「あさ美ちゃん、なにをそわそわしてるんれすか」
辻はテトラのコーヒー牛乳を飲みながら尋ねる。
「いえ…なんでもないです」
と言いながら、妙に浮かない顔をする。
よそ見をしているので、口に運ぼうとした、半円に切ってあるコロッケが箸からぽろっと落ちた。
「あ…」
紺野は慌てて掴み直す。
加護はしばらく黙ってその様を見ていたが、
「なあ」
辛抱たまらず口火を切った。
「は、はい」
紺野は顔を上げた。
「その鞄からビミョーにハミってるハコ、なに?」
「え、えと…」
紺野は赤くなりながらしどろもどろになる。
辻も珍しく興味津々な表情で見守る。
「バレチョコ?」
「あ…はい」
紺野は何故かあきらめたようにため息をついた。
今日はタイミングが悪く、小川に会えなかったのだ。
「行くで」
加護は立ち上がり、紺野も立ち上がらせ彼女の腕を掴み、
鞄から例の箱を出して教室から出て行った。
紺野はずるずると引きずられる形となった。
一連の淀みない動作に、辻は箸を銜えたままぽかんとする。
「…はあ。なにが起こったかわからなかったれす」
辻はまた黙々と昼食の摂取に戻った。
- 616 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/29(水) 20:46
-
「アゴ、おる?」
1年E組の教室まで行き、加護はドアの近くで囲碁に興じていた生徒に声をかける。
「ああ、アゴね」
黒石を打っている方の生徒は頷き、
「おーいマコー。面会だよー」
と教室の後ろの方に向かって言った。
友達と喋っていた小川はすぐ気付き、
「どしたんだよ、珍しい」
とやって来た。
「ああ、あの…」
紺野がテンパってると、
「このヒトがなんや渡したいモンがあんねんて」
加護は紺野の右肩をぽんと叩いた。
「なに?」
小川に見られ、紺野は観念したようにおずおずと箱を差し出した。
「お、くれんの?」
「は、はい。
ごめんなさい、本当は14日に渡そうと思ったんですがバタバタしてて…」
「いいっていいって。
ありがとな」
受け取って、小川はさわやかに笑う。
そのまま、
「じゃ、またな」
と席に戻ったのでふたりはC組に帰る。
辻が気になったのか、廊下まで出て待っていた。
「なんやおったんかい」
加護が言うと、
「うまくいったれすか」
辻は紺野のほうを見た。
紺野はコクンと頷き、
「…とりあえず、渡せました」
「ありがとうございました」
加護に頭を下げる。
「別に」
加護はいつものようにそっけない。
「大丈夫れすよ、あいぼん、照れてるんれすよ」
辻はいたずらっ子のような表情でニヤニヤし、紺野にこっそり耳打ちする。
「聞こえてんで。
でっかい内緒話やなあ」
「このあとのんにきっとツッコみまくりだと思うれす」
辻につられて紺野もつい笑ってしまう。
- 617 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/29(水) 20:51
-
――その様子を、亀井は廊下の少し離れたところから見ていた。
手にした布製の鞄には、14日に渡せなかったチョコがある。
辻が加護のほっぺたをつんつん突付く。
加護は顔をしかめながら応戦する。
それを見て、亀井は泣きそうな顔をし、踵を返して中学の校舎に走って戻って行った。
「わ」
途中で道重にぶつかる。
図書室に行っていたのか、背に請求記号のラベルを貼った分厚い本を持っていて、
はずみで落ちてしまう。
「…ごめんなさい!」
亀井は本を慌てて拾い、道重に渡してまた走って行こうとする。
「どこ行くの。もうすぐ昼休みは終わるの」
道重が言うと、
「あなたに関係ない」
亀井は顔を見ずに返した。
道重はむうっとし、
「可愛くないの。
言い訳はもっと可愛いのがいいの」
両手を腰に当てる。
「なんでもいいじゃない。
あなたこそ教室に戻ったら?」
「なんだか可愛くないの」
亀井について、道重はてくてく歩き出した。
「サボるのなら、付き合うの」
「ついてこないでよ」
「クラス委員として、見届ける義務があるの」
「そんな義務聞いたことない」
「さゆが法律なの」
「幸せな人ね」
そんなやりとりを交わしながら、ついにあまり人の来ない、古い講堂の裏に来てしまう。
機嫌悪くすたすた歩いていく亀井の後ろを、道重はとことこ歩いてやって来た。
「ここは絶好のサボリスポットなの。
あ、ちょっと待ってて」
そう言って道重はてってってっと走って行ってしまう。
「稲葉せんせーい」
学園の事務室のある校舎から出てきた養護教諭の稲葉は、声をかけられ
白衣のポケットから手を出して軽く上げた。
「なんやの。もうじきチャイム鳴んで」
稲葉はニヤっと笑った。
「さゆたちは頭痛がひどいのでいま保健室にいます」
にこにこと言われ、稲葉はちょっとあっけにとられたが、
「口止め料は、高つくで」
またニヤッとし、そのまま去って行った。
- 618 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/29(水) 20:58
-
「あきれた」
戻って来た道重を見て、亀井は眉を顰めた。
「そんな可愛くないこと言うと、あげないの」
途中の自販機で買った缶入りのココアを差し出す。
「…ありがとう」
亀井は小声で言い、受け取った。
「サボるのなんて初めて」
亀井は晴れ渡った空を見上げて言った。
「そう?さゆは中学入って5、6回目くらい」
道重が悪気なくニコニコ言うので、亀井はあっけにとられる。
「さゆは完璧だけど、たまには休養も必要なの。そしてまたエネルギーを充電して
かわいくなるの」
亀井は何故か、宇宙人と会話したらこんな感じかな、と心の中で思う。
「それは渡しそびれたチョコ?」
鞄の中の箱を見て、道重は言う。
亀井は黙ってコクンと頷いた。
ココアの缶から、あったかそうな湯気が立っている。
「どうして渡さないの」
「…わかんない」
缶を両手で握ったまま、亀井は顔を泣きそうにクシャッと歪ませる。
「さゆだって物凄い競争率の中、がんばって渡したの」
「…渡したんだ」
「うん。
あっさり『ありがとう』って言われた」
「そう」
「さゆみたいな女の子にもらって、ちょっと失礼なの」
「前から聞きたかったんだけど」
亀井はそう言って遮った。
「なに?」
「可愛いですべて許されると思ってない?」
「ううん、思ってないよ」
道重はぶんぶん頭を振った。
「というか、どうして許してもらわなきゃいけないの?」
亀井はまたあっけにとられてぽかんと口を開けていたが、やがてくすくす笑い出した。
道重も一緒に笑う。
『从*・ 。.・从 <お天気がいいから、亀井さんとひなたぼっこするの。
先生には、『頭が痛いから保健室に行く』って言ってね』
「オーイ!ヒトにサボるなってゆっておいてソレかよ!」
昼休みが終わる直前にメールを受け取った新垣は、顔をしかめながら携帯画面を眺めた。
- 619 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/12/29(水) 21:01
- 更新しました。
(;−e−)¶<まったくもう
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(*−Θ ΔΘ)<あゆみは本当にお姉様が好きだなあ ショウガナイヤツダ
川;σ_σ||<頼むから恥じらいながら言わんでくれ シカモ「オネエサマ」…
普通に、というか、ハタから見れば気持ち悪いくらい仲良しだと思います(苦笑)。
姉妹じゃなかったら、確実に恋に落ちてることでしょう(笑)。当方、今日も今日とて漫喫です。
>ピクシーさん
川o・-・)<加護さんは原書でお読みになったことはないのですか?サラリ
(+;`д´)<ムーカーツークー!
読み返してみるとえらいギャップでした(笑)。ピクシーさんが旅先でカツ丼を頼んだら
その日一番の出来のが来るようにお祈りいたします(カツ丼限定かよ)。お仕事お疲れ様です。
- 620 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/30(木) 01:43
- 更新お疲れ様です
天上天下唯「さゆ」独尊って感じですね
器でかいっすさゆ姐さんw
- 621 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2004/12/30(木) 03:43
- 更新お疲れです。
どう考えても頭痛がするのは、その二人に振り回される塾長の方だと思います(;−e−)
にしても、あいぼんのマコの呼び方が「猪木」から「アゴ」に変わりましたね。ニブちんにはこれで十分なんでしょうか?
- 622 名前:ピクシー 投稿日:2004/12/30(木) 03:52
- 更新お疲れ様です。
さゆえりの予感?
カツ丼限定ですか・・・
どうせなら、牛丼系の方が・・・(苦笑)
「仕事」ではないんですけどね・・・当方まだ社会人ではないので。
ぼんさんの「英語ペラペラになる」宣言と、コンコンの「数学主席獲得」宣言が懐かしいですね。(笑)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 623 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/31(金) 04:09
- ───その日の放課後。
辻に嬉しい知らせが届く。
4月に行われる「新入生歓迎会」でいくつかのクラブがパフォーマンスをするが、
その中にギター同好会が選ばれた。
普段は部室で弾いてばかりいるので、人前で演奏できることに辻は大喜びであった。
「初めてのライブなのれす!念願のファーストライブなのれす!」
「いやいやいや、ウチらただの同好会ですし」
部室ではしゃぐ辻の横で、加護はツッコむ。
「のののロック魂をいまこそ爆発させるのれす!」
「アンタにそないなモンがあるとはな」
「ツアー先のホテルの窓からテレビを放り投げるのれす!」
「オマエはいつの時代のロッカーや」
加護はげんなりし、
「で、何歌うねん」
と続けた。
「んー。こっこのけものみちとか」
「COCCOか。『けもの道』やな」
加護は顔をしかめ、
「つーか、入学して初手からCOCCOの激しい歌聞かされるんかいな。
悪いこと言わんからもっと無難なんにしときて。
教師ウケよさそうなんとか」
もっともなアドバイスをした。
- 624 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/31(金) 04:10
-
「たとえば?」
「村下孝蔵の『初恋』とか。
あの歌はある年代以上のオッチャンのハートのある部分をキューンとさせる歌やねん。
絶対好感触やで」
ここまで聞いて、辻はムッとする。
「どーして自分の好きな歌を歌っちゃいけないんれすか」
「別に悪くはないけどなあ。
ガッコからヘタに睨まれるのもなあ」
「守りに入るんれすか」
「誰もそないなこと言うてへんがな」
「権力なんか、クソくらえなのれすーーーーー!!!」
「わー!なんやロックなこと言うてはんでェー!」
辻が今度は窓を開けて叫ぼうとしたので、加護は後ろから羽交い絞めにして止めた。
そんなやりとりの後。
「そういえば」
加護は思い出したように言った。
「なんれすか」
「さっきここ来るまでに中学の子ォにチョコもうてんけど」
「モテ自慢れすか」
「いや別に。
なんや『卒業式にスカーフをもらってください』言われてん」
「へえ。やっぱりモテ自慢なのれす」
「なんやねんな。スカーフなんかもうてなんでモテ自慢やねん」
「あいぼん、知らないんれすか」
辻はやっと気づいたように言った。
- 625 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/31(金) 04:11
- 「なにを」
「卒業式に制服のスカーフをもらうのは、この学園では愛の告白なんれすよ」
「マジで?」
加護は顔をしかめる。
「夏用のスカーフが『高校に進んでも仲良くしてね』で、冬が」
「冬は?」
そこまで言って、辻は頬を赤らめる。
「…い、一生ずっといっしょにいたい、れす…」
「へえ〜」
一転して、加護はニヤッと笑った。
「じゃ、高校のコレはなんかイミあんの?」
自分の制服のネクタイを掴んで、加護は言った。
「ちゅ、中学と同じれす」
「へえ〜」
辻はそそくさとその場から退散しようとし、加護に肩を掴まれる。
- 626 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2004/12/31(金) 04:11
-
「な、なんれすか」
「自分は誰かからもうたことあんの?
去年のとき」
「え…えと」
「別に怒らへんで。単なる興味っつーか」
「へい…」
「ふうん。で、どうしたん?」
「お、お友達でいましょうって…」
「断ったん?」
「へい」
「もったいない」
「そうれすか?
悪いなとは思ったんれすが」
辻はふと窓に目をやった。
「あいぼんは」
「あ?」
「もし本当にスカーフもらったらどうするれすか」
「別に。フツーに断る」
「どうして」
「そんなん…好きな子がおるからに…」
そこまで言って遮られる。
「自分…さっきチョコ食ったやろ」
「なんでわかるんれすか」
「口がチョコくさい」
「チョコくさいって…ひどいれすよ」
辻はそう言ってもう一度、唇を合わせた。
- 627 名前:ごまべーぐる 投稿日:2004/12/31(金) 04:12
- 更新しました。
今年最後の更新です。
今年も「ベース弾き」をご愛読頂きましてありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願いします。
川o・-・)<いつまで…続くのですか
(;‘д‘)<それは言わへん約束や
(;^▽^)<と、とりあえずよろしくお願いします
(;^〜^)<よろしくっす!
今年最後のレスのお礼です。
>620の名無飼育さん
从*・ 。.・从<天上天下唯「さゆ」独尊…いい言葉なの
シゲさんの中では彼女中心に地球が回ってるんです(w
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;・e・)<言い訳に苦労したのだ
「アゴ」呼ばわりなのもアレですが、「アゴ」で通じるクラスもどうかしてますよね。
>ピクシーさん
川o・-・)ノ <ええ、数学主席獲得はまだあきらめておりません
そうですか、では牛丼限定で。細かい部分を覚えてくださって嬉しいです。
- 628 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/01/01(土) 01:38
- 更新明けましておめでとうございます。
今ののんさんは、酒・女(‘д‘)・ロックですね。カッケー!
- 629 名前:ピクシー 投稿日:2005/01/03(月) 08:59
- 更新お疲れ様です。
そして、あけましておめでとうございます。
今年も楽しく読ませていただきます。
ギター同好会、部室あったんですねぇ。
しかし・・・ののさん、いつのまにそんな熱い魂を(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 630 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/04(火) 05:12
- あけおめです。
のんさんギターつづけてたんですね〜。
のんとぼんの中もすっかり落ち着いたようで。。。
いしよしよりも長い付き合いのカップルのようですね。
- 631 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:22
- 「♪じゃんじゃんじゃん、じゃじゃじゃんじゃじゃん
すもーくえんだうおーたあー
ゆげがもくもくぅ〜」
それからしばらくしても、辻はノリノリで口ギターでロックを熱唱していた。
「あの辻さん?」
加護はわざと敬語で呼びかける。
「へいっ。なんれすかべいべー」
べいべーて、と加護は軽く頭を押さえる。
ロックに間違った風にかぶれると「アォッ!」だの奇声を発したり、
ベイベーだの言いがちである。
加護はそんなことを思いながら、
「とりあえず歌統一してくださいよ」
「へいっ」
辻はとりあえず返事はしたものの、相変わらず
「こじょおのけえむりい〜」
と唸っていた。
「とりあえずですね」
「へいっ」
「来年度は、ちゃんとした部室もらわな」
「そうれすね。のんも頑張るれす」
ふたりは小さな、空き教室とは名ばかりの物置部屋で、みかんの段ボール製の
テーブルとは名ばかりの箱の上に、同時にため息をつきながら缶コーヒーを置いた。
- 632 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:33
- 夕方、いい時間になったので帰り支度をして部室を出ると、
「「あ」」
渡り廊下で亀井に会った。
彼女も残って勉強でもしていたのか、図書室の方角から歩いて来た。
「よう。もう風邪はええん?」
加護の一言に、亀井はおろか辻まで大きく目を見開く。
声を掛けただけでなく、いたわりの言葉まで。
ふたりはあ然とした。
「はははは、はい。
…どうして知ってるんですか、風邪引いてたって…」
「シゲさんが金曜に教えてくれた」
「そうですか…」
「じゃ」
そのまま加護が通り過ぎようとして、
「加護さん…!」
亀井は必死の覚悟で呼び止めた。
「あ?」
加護はそのまま振り返った。
辻も一緒にその場に留まる。
「あ、あの。
これ…」
亀井はがさがさと鞄から綺麗にラッピングした箱を取り出した。
「くれんの?」
「は、はい」
「おおきにな」
受け取って軽く持ち上げ礼の動作をし、
「じゃ。のん、行こ」
そのまま帰ってしまった。
辻が慌てて後を追う。
「はあ〜…」
亀井は胸を押さえながら、その場にへなへなと座りこんでしまった。
- 633 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:36
-
「よかったれすね」
電車をホームで待ってるとき、辻は加護に話しかける。
「まあなあ」
「またまたあ〜。
うれしいくせに!」
肘でうりうりとニヤけながら突付き、辻は加護に顔をしかめられる。
加護の横顔を見ていて、辻はなんだかモヤモヤとした思いにかられる。
『…なんらかわかんないれすけど、すっごいむねのなかがくるしいれす。
のん、きゅうしんのんだほうがいいんれしょうか』
電車に揺られながら、辻はそんなことを考えた。
駅前で用事があるという加護と一旦別れ、辻は商店街を黙々と歩いていた。
いつも魅惑的な香りを漂わせている、総菜屋の揚げたてコロッケにも惹かれずに。
「のんちゃん!」
顔を上げると、一際大きな体が自分の目の前に立っていた。
飯田がスーパーの袋片手にニコニコしている。
「あ…いいらさん」
「いま帰り?」
辻は嬉しいような、困ったような気持ちになる。
飯田に打ち明けたら、この胸のつかえみたいなものの正体が分かるのだろうか。
そこまで考え、辻はきつく目をつぶりぶんぶん頭を振った。
なんでも分からないことを、飯田に頼って解明するのは卒業しないと。
辻はそう思った。
「のんちゃん?」
辻の様子がおかしいので、飯田は不思議そうな顔をする。
「あいぼんは一緒じゃないの?」
「へいっ。ちょっと用事があるとかでさっき改札で別れたれす」
「そっか。あ、よかったらカオん家おいでよ。
圭ちゃん、今日用事でいないからゴハン食べさせてあげる。
裕ちゃんにはカオが電話したげるよ」
ゴハン、と聞いて辻の目が輝く。
いくら悩んでても、辻は辻だった。
- 634 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:38
- その頃。喫茶タンポポ。
梨華はコーヒーが切れたので、タンポポまで買いに来ていた。
矢口に豆を挽いてもらってる間、雑誌をめくったりする。
「しっかしアレだな」
「なにがですか」
梨華は雑誌から顔を上げた。
「辻と加護だよ。
アイツら、この街に最初来たときは、どーしよーもねーくれーガキだったのにさあ」
「ああ」
矢口の言っている意味が分かり、梨華は小さく笑う。
「なんか、どんどん成長してくんだなあって」
「そうですね」
ふたりで少ししみじみしていると、ベルを鳴らしてドアが開いた。
「あのお」
『『あ』』
矢口と梨華は同時に心の中で叫ぶ。
バレンタインの時、『ピンクに塗れ!』という、どピンクの限定ケーキを買いに来た少女だ。
その時店にいた安倍いわく、『若いときの石野真子に似てるっしょ』というタレがちな瞳に目がいく。
今日も学校帰りなのか、短めのコートの裾から制服のスカートを覗かせていた。
「あ、あの。何か?」
はっと我に返った矢口が声をかける。
「あの、この前『ピンクに塗れ!』っていうケーキを買って帰ったんですが…」
「え!なんか起こりました!?おなかこわしたとか!?」
「あ、いえいえ違うんです」
少女は慌てて手を振った。
矢口はほっと胸を撫で下ろす。
- 635 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:41
- 「あの、お母さんが一人食べ損ねちゃって、もし売ってたら買ってきてって言われまして…」
「あ、ああ!そういうことですね!」
矢口はそこまで聞いてカウンターから小走りに出てきた。
「ああ〜。申し訳ありません。
残念ながらあれはバレンタイン期間の限定モノで、もう作ってないんですよ。
ホント、すみません。お母様にも謝っておいてください」
「そうですか。そうですよね…」
「あ、ホワイトデーの前に『和風ケーキフェアー』ってのをやる予定なんで、よかったらまた来てください。
2月の20日くらいにやる予定なんで。またよろしくお願いします」
「どんなケーキあるんですか」
「抹茶の、スポンジとかがふわふわっとしたのとか」
「『美勇伝』っていうんですよ」
梨華がニコニコしながら言うと、
「びゆーでん?」
少女は可笑しそうに梨華のほうを見た。
『アゴンてめー、余計なこと言いやがって』
そう言いたい気持ちを押さえながら、
「いやあ、あくまで名前は予定なんですけどね。
あ、ソコの地黒のおねーさんの言うことはスルーしてくだすって結構ですから」
矢口はにこやかに言った。
スルーされた梨華は苦笑いする。
- 636 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/19(水) 18:43
-
「なんかこのお店…面白い」
少女はくすくす笑いながら、店内を見渡した。
「お姉さん、朝比奈の人?」
矢口が言うと、
「なんで分かるんですか?」
少女はきょとんとした。
「あ、ウチら、オイラとあそこの地黒のおねーさんと、OGなのね」
「ああ…」
少女は納得、という風に頷いた。
梨華も少し離れたところでにこにこしている。
「ああ、はい。
もうすぐ卒業なんですけどね。
そのままウエの大学行くし」
「へえ。
結構ウチのガッコ、ウエの大学進むの大変じゃないの?内部進学でも」
「そうですねえ…あたし数学科なんですけど受かるまでは大変だったかな」
「渋っ。数学!」
「頭いいんだね〜」
梨華も矢口同様、感心した声を上げる。
「ん〜。数学しかできないし。
本当は朝日女子の家政とか行きたかったんですが、あたし家庭科が壊滅的に悪くて…」
「あ、ソコのおねーさん、朝日女子だよ。
社会学部だけど」
「そうなんだ。いいなあ」
少女は梨華のほうをまた振り向いた。
「部活とかはなにをやってたの?」
梨華の質問に、
「囲碁将棋同好会です」
少女が答えると、
「マジで!」
矢口のツボだったようで、彼女は腹を抱えて笑いをこらえた。
「ああ〜。
そっかあ、ウチのガッコ、囲碁とか大会出てるモンなあ」
「はあ。一応部長でした。
今日、久しぶりに部に顔出したんですけど。
隣になんかギター同好会ってのがありまして」
矢口と梨華は思わず顔を見合わせた。
「なんか去年の夏前くらいから、すっごい舌ったらずのアヤしいロックとかが聞こえてくんですよね」
『『…間違いない』』
矢口と梨華は目線で頷きあった。
- 637 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/01/19(水) 18:48
- 更新しました。
( ´D`)<のんがうたってたのはでぃーぷぱーぷるのきょくれす
(;‘д‘)<若干王様バージョンも入っとったけどなあ
そしていしかーさん誕生日おめ!(^▽^)
あなたがいなかったら、多分私は普通に三十路だったと思います(ニガワラ
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ´D`)ノ<ぬすんだばいくではしりだすのれす
( TдT)<たのむからやめてんか
おめでとうございます(遅)。
そうやって並べるとかなりワイルドでカッケーですね(爆
>ピクシーさん
( ´D`)<のんがせんせいにたのんでかしてもらったんれす
(;‘д‘)<なかば泣きおどしはいってたよなあ
おめでとうございます(同じく遅)。
あったんです(w ののさんにソウルフルな魂が芽生えているのです。
>630の名無飼育さん
( ´D`)<へいっ。よっちゃんにおそわったりしてまなんでたれす
( ‘д‘)<一応部活動はしとったよなあ
おめでとうございます(やっぱり遅)。
同好会ながら地道に(?)活動していたようです。
- 638 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/01/19(水) 19:13
- 更新おつです。
ぜんぶひらがなにすれば、のんさんになりますがよみにくくもなりますね。
くれぐれも窓ガラスを全部割らないように願うだけです。
- 639 名前:ピクシー 投稿日:2005/01/20(木) 01:50
- 更新お疲れ様です。
のんさん、窓ガラス割り等の暴走行為に走らないように・・・(ニガワラ
朝日女子学院大は地元では人気なんでしょうか?朝比奈のウエ行くより、朝日女子行きたいってことは。
社会学部、家政学部、文学部(英文科)・・・文系大学?
次回更新も楽しみに待ってます。
- 640 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 02:52
- 更新乙です
なんか物置小屋に段ボールの机で談笑する二人ってなんかすごいほのぼのしたイメージですねw
フジの27時間の深夜のさ○まと○居のトークみたいなイメージが浮かんで
ハロモニでそういう5分くらい力抜いた二人のトークコーナーやらないかなと思ったり・・・
- 641 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:33
-
―――ふたたび喫茶タンポポ。
次の限定ケーキフェアーが始まったらホームページでお知らせします、と
矢口はこの店のサイトのURLが書かれた名刺サイズの厚紙を少女に差し出した。
「矢口さん、ホームページ持ってたんですか!」
初耳の梨華が目を丸くする。
「年明けてから試験的に始めたの。なっちに手伝ってもらって作ってさあ」
矢口がちょっと振り返って答えた。
「へえ…家にパソコンあるからつないでみますね」
少女はそう言って紙を大事そうにしまった。
「はい、お願いします」
「ショック〜。あたし誰にも負けないくらいのタンポポマニアだって自負してたのにぃ〜」
梨華がその後ろでひそかに悔しがる。
「マニアかよ!てか、常連じゃ満足できないのかよ!」
矢口がすかさずツッコむ。
「あはは。じゃ、また」
少女は笑って出て行こうとした。
「あ、またね。
えっと…」
梨華が名前を聞こうとすると、
「岡田です。岡田唯って言います。
ユイは浅香唯の唯です」
と帰って行った。
「あ、あたしは石川り…あ、帰っちゃった」
「アゴンオマエ名乗るの遅すぎ」
矢口が苦笑する。
「だって〜、あの子足速いんですも〜ん」
「アサカユイってダレ?」
矢口の疑問に、
「さあ?」
梨華も首を傾げる。
- 642 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:38
- その夜。
矢口が安倍に送ったメール。
『アサカユイってダレ?』
『昔人気のあったアイドルっしょ。
オーディションで浅香唯賞取って…』
からに始まり、浅香唯に関する情報が長々と打ってあった。
その中には『スケバン刑事』の他、リアルタイムのファンでもなかなか知らない事柄が
書かれてあり、『なっちアイドルヲタ疑惑』が矢口の胸の中に生じた。
一方、中澤ハイツ―――。
「のんちゃん、頭はよく拭かないとダメだよ」
「へいっ」
風呂上りの辻の髪を、飯田はバスタオルでよく拭ってやる。
辻はそのまま飯田の家に行き、夕食をよばれ、宿題も見てもらって風呂にも入らせてもらった。
頭を拭いてもらってる辻は、何だか嬉しくてくすくす笑う。
飯田もつられて笑った。
- 643 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:39
-
「圭ちゃんのバスローブでちょうどよかったね」
「オバチャンのれすか」
「うん。そだよ」
椅子に座ってドライヤーで髪を乾かしてもらってる間、辻はヘンな気持ちになる。
「どしたの?」
「ううん、なんでもないれす」
『いいらさんのおうちにオバチャンのバスローブが普通にあるれす。
そういえば、おふろにシャンプーが2本あったれす』
辻はなんだかキリキリと胸が痛んだ。
「髪も梳いてあげる。
ブラシより櫛の方がいいかな」
飯田はごそごそと引き出しから柘植の櫛を取り出してきて、綺麗に辻の髪を梳かしてやった。
「のんちゃん、髪下ろすと大人っぽいね」
「そ、そんなことないれすよ」
辻は慌てて首を振る。
「これでよし。
さ、かわいこちゃんの完成です」
前の壁に掛かっている鏡に向かって、飯田はにっこり微笑みかけた。
「のんちゃんも、どんどん綺麗になってくんだろうね」
片づけをしている間、飯田は少し寂しそうに笑った。
「そうれすか。
のん、そういうのよくわかんないれす」
「綺麗になったよ。
も〜、おじちゃんどうしようってくらい!」
「おじちゃんなんれすか」
ふざけて笑った後、飯田はふっと、
「のんちゃん、好きな人いる?」
と尋ねた。
「いいらさんれす」
「ありがとう。カオものんちゃんのこと大好きだよ。
うん、でもね。
カオが聞いたのは…」
「いいらさんがオバチャンを好きなように、のんに好きなひとがいるかってことれすか」
「ああ、うん」
辻がちゃんと理解していて、自分を真っ直ぐ見ているので飯田はちょっと戸惑ってしまった。
辻は唇の端をキュッと結んでいる。
- 644 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:39
- 「あの…のんちゃん。
カオ、ずっと聞きたかったんだけど…」
「なんれすか」
「その、そのね…あいぼんのこと」
「あいぼんがどうかしたんれすか」
「いや、なんというか…好き、なんだろうな、って」
「へい、好きれすよ」
「どういう好き?」
「どういうって…好きは好きれす」
「そっか、そうだね…」
飯田は少し笑った。
「いいらさん」
「ん?」
「のん、最近おかしいんれす」
「どんな風に?」
しゃがみこんだ飯田に優しく問われ、辻はちょっと泣き出しそうになった。
「あいぼんにお友達が増えて嬉しいはずなのに、のんから離れてしまいそうでこわいんれす」
「そっか」
「どうしたらいいんれしょう」
「悩み相談?」
飯田はちょっと笑う。
自分の口調がまさしくラジオや新聞の人生相談だったので、辻も自分であっと思い照れ笑いする。
「あいぼんが他の女の子と仲良くしたりするのイヤ?」
「う、う〜ん…」
辻は腕組みして考え込む。
「あいぼんが他の女の子とデートしたら?」
「え、えっとお…」
「あいぼんがのんちゃんをほったらかしにして、他の女の子にうつつを抜かしたら?」
「うつつってなんれすか」
「そうね、夢中になるとかってことかな」
「そうれすねえ…う〜ん」
加護はそもそも自分をどう思っているのか。
それが疑問だった。
「あいぼん…のんのことどう思ってるんれしょうか」
飯田は不思議な感じで笑った。
辻はこの時そう思った。
- 645 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:40
-
「キライではないと思うよ。
カオが見た感じでは」
「そうれすかねえ…」
ハッキリ言われたことはない。
いや、ケンカしたときに『オマエなんか大嫌いじゃ!』と言われたことはある。
それを飯田に伝えると、
「それは感情的になってたからだよお」
と飯田はハラを抱えて笑い出した。
「はあ…そうれすか」
「あいぼんを他の女の子にとられるのイヤ?」
「と、とる?」
「そう。とるの」
辻がギョッとして戸惑っていると、
「あいぼんが、他のひとのものになるの」
飯田がダメ押しのように言った。
「いいらさん」
「なあに?」
「のん…バカだかられしょうか。
そういうの、よくわかんないれす…」
辻はうつむいてしまった。
飯田は辻の両肩に手を置き、
「ごめんね、カオもせっかちすぎたよ。
のんちゃんはバカじゃないよ」
優しく言って辻を見つめた。
「みんなどうしてそういうのさっさとわかるんれしょうか」
「のんちゃんもわかる日がくるよ。
のんちゃんのペースでわかればいいんだから」
「いいらさん…」
「ん?」
「ずっと」
「うん」
「のんのこと、見ててくらさい」
「うん、うん」
バスローブのまま辻は飯田に抱きつき、飯田は小さな背中を撫でてやった。
- 646 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/01/26(水) 18:41
- ―――その夜遅く。
飯田の家のチャイムが鳴った。
保田かなと思い、飯田はそばの携帯に手を伸ばし、
「圭ちゃん?
カオん家の前にいる?」
と掛けた。
『ああ、うん。どしたん?』
「今ね、ちょっと動けなくって。
ごめん、カギ開けて入って来て」
『うん?』
言われるまま、保田は合鍵で開けて入って行く。
「ああ、なるほどね」
リビングに入って来た保田は、納得、というように笑う。
ソファで飯田に膝枕してもらって、辻がバスローブのままスヤスヤと寝息を立てていた。
「ごめん、起こすのはしのびなくって」
「ああ、いいよいいよ。
いや、辻が来てるってアンタからメールきたからこういうの買って来たんだけど」
保田はケーキ屋の袋を掲げた。
「最近お膝のお嬢さんはダイエットしてるって聞いたから、豆腐のムースとフルーツのにしたんだけど」
「わあ、のんちゃん喜ぶよ。
そのお店、最近流行ってるトコのだよね」
「近くまで行ったからね。
どうする?明日食べるかい?」
「うん。冷蔵庫に」
「了解。
アンタお風呂入ったん?」
「まだ。
のんちゃん、寝ちゃったし」
飯田は答えながら辻の髪を撫でた。
「ベッドまで運ぼうか。
どっちにしろ、お泊りっしょ。連絡もしないと」
「あ、さっきしたの。
裕ちゃん出た」
「そっか。
じゃ、手伝うわ。お姫様運ぶの」
保田はソファの後ろから飯田にキスをした。
辻は薄目を開けて、その雰囲気に照れていた。
- 647 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/01/26(水) 18:43
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;‘д‘)<ホンマにごっつ読みづらいなあ
( ´D`)<のんの熱い魂を語るのにひらがなは欠かせないのれす
本当に読みづらいですね(ニガワラ すみません。
のんさん、ちょっとロックに懲りすぎなんです(w そのうち街頭でギター弾き出すかもしれません。
>ピクシーさん
( ´D`)ノ<ぎょうぎよくまじめなんてくそくらえとおもったのれす
(;TдT)<頼むからやめてんか、いやマジで!
朝比奈の方が歴史は古いのですが朝日女子は多彩なカリキュラムで最近人気、って設定なんです。
一応朝日女子は法学部なんかもあったりします。例:法学部経済学科卒→( `.∀´)
>640の名無飼育さん
( ´D`)<のん、つる〇えになればいいんれすか
(;TдT)<全てが間違ってますて!辻姐さん!
そろそろ番組がグダグダになり出す頃のアノコーナーですね(w
ハロモニ。でやってくれたら毎週標準でビデオ撮ります。
- 648 名前:登場人物紹介 投稿日:2005/01/26(水) 18:44
- 川 ´^`):岡田唯(18)。大阪府出身。朝比奈女子高校の3年生。理数系が好きらしく、
大学も数学科に進む予定。高校時代は囲碁将棋同好会の部長だった。
タンポポのケーキをわざわざ遠回りして買って帰るほど好きらしい。
- 649 名前:ピクシー 投稿日:2005/01/27(木) 01:38
- 更新お疲れ様です。
タンポポみたいな喫茶店なら、自分も常連になります(w
常連客とマスター(ヤグ)の絡みを見てるだけでも楽しいかも(w
ふむふむ・・・カリキュラムは重要ですよね。
ぼんさんに引き続いての数学得意人間が、同じ関西の唯やんとは・・・
リアルでは、のんさんが数学好きでしたね。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 650 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/28(金) 00:30
- 更新お疲れさまです
自分の中学の教師が「中学高校生の1年間は大人の10年分くらいに相当する」って言ってたのを思い出しました
ののは今まさに大人の何倍も濃い毎日を送って最中なんでしょうね
- 651 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/01/30(日) 00:48
- 更新おつかれさまです。
テレビジョンで、のんさんがいいらさんのチューしてた写真がとてもよかったです。
ほんとにのんさんはいいらさんラブだなと思いました。
今回は、読んでてこの二人の関係がすごい好きだなと実感しました。
のんさんいいらさんラブ。
- 652 名前:名無し 投稿日:2005/02/07(月) 22:37
- あいぼん誕生日オメー。
ののと一緒にギター同好会盛り上げてってください。
- 653 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/09(水) 17:45
- 辻はとても柔らかな眠りに包まれていた。
いい匂いがして、それを追い求めて寝返りを打つ。
ふかふかの毛布に幸せな気持ちで潜り込む。
「のんちゃん、風邪引いちゃうよ」
深い眠りに落ちる前に、飯田の低くて柔らかい声がしたのを覚えている。
「―――のんちゃん、朝だよ」
気付くと、飯田にすぐそばで声を掛けられていた。
「は…もう朝れすか」
「うん。ゴハン食べよ?
もう出来てるから」
飯田はもう着替えてエプロンをしていた。
「へいっ」
辻は体を起こし、ぼーっと昨夜の事を考える。
飯田と同じベッドで、優しい匂いに包まれて眠った。
『オバチャンはいつもあの匂いを嗅いでるんれすね。
贅沢なのれす、オバチャンのくせに』
ぶんぶんと寝ぼける頭を振り、えいやっとベッドから降りた。
- 654 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/09(水) 17:46
- 「おっす」
リビングに行くと、保田がトーストを齧りつつ片手を上げた。
「あ、おはようれす」
「おはよ。よく眠れた?」
「へい。あの、ゆうべはごめんれす」
「ん?」
「いいらさんと同じおふとんで寝たれす」
「アラ!」
保田はニヤニヤ笑って、
「女子高生をねえ、このおねーさんは」
と、辻の分のコーヒーを立って注いでいる飯田を座ったまま見上げた。
「なによお。のんちゃんは大事な女の子なんだからねえ〜」
ちょっと膨れて、飯田は『ハイ』とマグカップを辻の前に置いた。
「ほお〜」
「だいじ、れすか」
「そう。大事」
ニコニコ笑って、飯田は『あ、あれ忘れてた』とパタパタをスリッパの音を立てて
寝室に行ってしまう。
辻は視線を下に落とし、ちょっと考えてしまう。
保田はもくもくとトーストを食べている。
「どしたん?冷めるよ」
「あ、へいっ」
慌てて、トーストにアプリコットジャムを塗り、一口齧った。
- 655 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/09(水) 17:46
-
辻と保田は一緒に飯田の家を出た。
昨夜飯田に洗濯してもらいアイロンまでかけてもらったシャツが、朝の光の中眩しい。
「オバチャン」
「ん?」
駅までの道のりの途中、辻は声をかけた。
「なに?」
「いいらさんはのんをコドモだと思ってないれすか」
「ああ」
思い当たるというように保田は笑った。
「でも最近よく言ってるよ」
「なにをれすか」
「『カオののんちゃんがカオを置いてけぼりにしてオトナになっちゃう〜』とかさ」
ちょっとモノマネも入っており、辻はひっそり『オエ』と失礼なリアクションをとった。
保田は笑いながら『コラ』と軽くゲンコツで叩くマネをする。
「オバチャン」
「ん?」
「いいらさんのことすきれすか」
「大好きだよ」
即答だった。
笑顔が眩しい、と辻は思った。
- 656 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/09(水) 17:48
- 「アンタは」
保田が言いかけたところ、
「よう。不良娘」
角のコンビニのそばで、加護が待っていた。
「あ、あいぼん。
待っててくれたれすか」
辻が駆け寄る。
「中澤ハイツまで行ったら遠回りやしなあ。
自分、ちゃんとレポートやったか?
ゆうべメール送ってんけど」
「え?届いてないれすよ?」
辻が鞄から慌てて携帯を取り出すと、加護からのメールが届いていた。
「…届いてたれす」
携帯を確認し、辻は首をすくめて加護のほうを見る。
「あーあーもー。
ガッコ着いたら時間あらへんで。
急いで写しや」
「あ、それならだいじょーぶれす。
いいらさんがちゃんと見てくれたれす」
えっへん、と辻は胸を反らして威張る。
「じゃ、オバチャンまたれす」
「おう。行っといで」
駅前のロータリーで手を振って別れ、辻は加護と改札に続く階段を上がっていく。
辻がじゃれつくのを、加護は『やめてんか』とウザそうな顔をする。
その後ろ姿を見送り、
「…質問するまでも、なかったか」
保田はフッと笑った。
- 657 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/09(水) 17:49
- ――― 一方。
神楽坂の駅まで、小川と新垣は連れ立って歩いていた。
「珍しいね、一緒になるなんて。最近別々だったじゃん」
「ああ。今日はたまたま朝練休みだからな」
小川はそう言って小さく欠伸をした。
「ねえ」
「あ?」
口を押さえたまま、小川は新垣の方を見た。
「まこっちゃん、紺野さんたちからチョコもらった?」
「ああ、うん」
「そう」
「シゲさんは14日にくれたけど、紺野は昨日だった」
「へえ」
「紺野、14日に会ったのに、なんでくれねーのかなってチラって思ったけどな。
なんか忙しかったみてー」
「ほお!」
新垣が急にテンションが上がったので、小川は
「な、なんだよ」
とやや引いた。
「いやいやいや。そう〜。
チラって気になりましたか、チラっと」
「う、うん」
「チラっと、チラっと」
新垣は楽しそうに口ずさみ、それがあまりにも楽しそうなので、
小川は歩きながら怪訝そうに首を傾げた。
- 658 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/02/09(水) 17:50
- 更新しました。
??? ♪〜
((( ∬∬;`▽´) (((( ^e^)
レスのお礼です。
>ピクシーさん
川;´^`)<数学以外はヤバイんです、ホント
実は「マジカル美勇伝」を見たことがなく(てか、放映されなかったし(泣)、岡田さんいまひとつ
キャラを知らないんですよ。なんかのんびりしてそうな人だなーと。
>650の名無飼育さん
( ´D`)<よくわかんないれすけど、毎日楽しいれす
そうですね、自分の事を考えても、その頃は毎日が濃かったなと。
とても素敵な事をおっしゃる先生ですね。それをちゃんと覚えてらっしゃる650さんも素敵です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ´D`)<いいらさんはすてきなおねーさんれす
あんなお姉さん近所に住んでたらそりゃあ懐きますね(w
絵的に「のんさんに膝枕するいいらさん」って萌えるかなと思い、ああしました。
>652の名無しさん
( ^д^)ノシ<おおきになあ〜!
本物はもう17なんですよねえ。のんさんといたずらばっかりして中澤姐さんやヤグに怒られて
いたのが嘘のようです。ギター同好会、とりあえずは部室取得ですね(w
- 659 名前:ピクシー 投稿日:2005/02/10(木) 00:36
- 更新お疲れ様です。
なんか、改めて・・・いいなぁ、こういう生活&人間関係。(憧)
ぼんさん&のんさんは、いつまでもこんな感じでじゃれあっていて欲しいですねぇ。
たしかに、岡田嬢をはじめ、まだまだ露出が少ない故性格がわからないメンバーがいますね。
遅れ馳せながら、ぼんさん誕生日おめでとう。
ついでに矢島舞美&萩原舞、さらにはレファの誕生日ですね。重ねておめでとう。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 660 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/02/13(日) 01:40
- 更新おつかれさまです。
最後のガキさんとマコのAAが、なんかおもしろかったです。
ガキさんは何でも知ってそうですね。1番いいポジションかもしれません。
- 661 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:02
- ―――石川視点
その日、あたしは柴ちゃんのお家に遊びに来ていた。
お母さんがいらっしゃって、「まあまあ、またもや可愛くなってまあ」と
歓迎してくださった。
「おかーさーん。ケーキ焼くけどいるー?」
お母さんはリビングの奥でお仕事をされてるので、柴ちゃんはキッチンから呼びかけた。
あたしもエプロンを借りてお手伝い。
「いいわよ余ったらで。お天気いいから上で食べたら?」
「うん、そうする」
柴田家では「ケーキを焼く」というのはホットケーキを焼くことらしい。
ではスポンジケーキとかはどうなのかなと聞いたら、
「『ケーキを作る』かな」
と柴ちゃんは少し考えて答えた。
お母さんの分をテーブルに置いて、柴ちゃんは「行こ」とあたしを促がして上に上がって行った。
ホットケーキは生クリームを絞ったり、カラースプレーを飾ったりして
お誕生日ケーキ仕様にした。
今日は、ふたりでちょっと早いけど柴ちゃんのお誕生日をしようと集合した。
3階のお風呂場の横のドアを開けると屋上になっていて、今日初めて案内してくれた。
前来た時はちょっと雨が降ってきたから。
「ああ〜。いい天気だ」
屋上の端の腰掛けられる、木製の段差にホットケーキのお皿と、スタバで買ったという、
フタのついた細長いカップを置いてあたしたちはまったりしていた。
少し離れた物干し竿にかかってる白いシーツが、ばたばたと心地いい風に揺れている。
段差に並んで腰掛け、あたしたちはそれを見ていた。
- 662 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:05
- 「柴ちゃんのお家ってナニゲにしゃれてるよね」
「しゃれてるてねえさん」
そう言いながら、柴ちゃんはあたしの口のはたについたクリームを、指で拭ってくれた。
「じゃ、おしゃれ?」
「うん、とりあえずありがとう」
柴ちゃんは苦笑いしてコーヒーを口に含んだ。
「夏とかはここでバーベキューするんだよ」
「いいな〜。憧れよね、バーベキュー」
ウチは裕ちゃんが
「あんなん煙ばっかでうまない」
って顔をしかめるしなあ。
それ以前にうちのあの庭でバーベキューってヘンだけど。
「あったかくなったらまたおいでよ。みんなで肉食おうぜ肉」
「うん!」
あたしが返事すると、柴ちゃんはくしゃっと笑ってあたしの頭をわしわし撫でた。
「あゆみー、シーツ取り込んでー。
ちょっと風が出てきたわ」
「おおー、今やるよ」
お母さんが階段の下から言うと、柴ちゃんは
「さて、そろそろ冷えてきたから引き上げるか」
とお尻をはらって立ち上がった。
- 663 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:06
- 「ねえ梨華ちゃん、今度の金曜日ヒマかしら」
下に降りると、お母さんがダイニングで休憩してらして、そう聞かれた。
「すみません、次の金曜はカテキョがありまして。その後ちょっと先約が」
「あら、残念ねえ。
いえね、あゆみとマサオちゃんのお誕生日のお祝いで、うちですき焼きするんだけどね。
よかったら梨華ちゃんもって思って」
「ええ、柴ちゃんにも誘ってもらったんですけど、すみません。
また機会があれば」
「土曜はあたしがマサオとお泊りするから、気ィ使って今日誕プレくれたんさ。
な、梨華はよく気のつく娘なんだよ」
誰?
あたしは思わず笑って柴ちゃんにツッコんでしまった。
「ホントねえ。
一番はめぐみ、その次はあんたを見習わせたいわあ」
「うわー、微妙な勝ち方だなー。
しかも全然嬉しくないし」
柴ちゃんとお母さんの会話を、あたしは笑って見ていた。
- 664 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:09
- 「お父さんも早く帰るって言ってるし、たまにはね」
お母さんが言うと、柴ちゃんは
「うちのおとーさんの顔覚えてる?」
とふと思い出したように振った。
「うちのおとーさん笑っちゃうよ?
だって、めぐみとおんなじ顔だし」
柴ちゃんはゲラゲラ笑った。
「し、柴ちゃんはどっちかというとお母さん似だよね」
あたしも柴ちゃんのお父さんとめぐみさんの顔を思い出しながら、涙をこらえて笑う。
「ハンサムなお父さんだよね」
「まあ〜、めぐみと一緒で優しそうではあるけどね。草食動物っぽいというか」
うちのかーちゃんもそこにホレたらしいが、と柴ちゃんは続けた。
「どうやって出逢ったの?」
「うん、うちの母ちゃんがOLやってる時、お盆に北海道に旅行したんだって」
「うん」
「母ちゃんカニ食べすぎちゃって、帰りの飛行機でおなかこわしたらしくってさあ」
「ハハ」
「で、うちの父ちゃんも用事で北海道行って
帰りたまたま同じ便に乗り合わせてたらしくって、
あの定番の『お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんかー』ってのに居合わせたんだと」
「ああ、なるほど」
「で、母ちゃんに一目ぼれ」
「おお」
「母ちゃんも『カッコいい』とか思ったらしくって、父ちゃんを食事に誘って
その晩にデキちまってそのときできたのがめぐみとか」
「ええ、ホントに?」
それまで照れくさそうに聞いてたお母さんは赤くなり、黙って娘の頭をはたかれた。
「痛っ」
「確かに最初の日にってのは否定しないけど、めぐみができたのはもっと後よ」
「え?でも、結婚式から計算合わないじゃん。めぐみが生まれるまで」
「お姉ちゃんを呼び捨てにするのやめなさい」
「めぐ姉ちゃん3月生まれっしょ?
どー考えてもヘンじゃん。おかーさんジューンブライドとか言ってるし」
「…うん。多分結婚前、ゴールデンウィークにお父さんのアパート泊まりに行ったから
そのときだと思う」
お母さんは更に赤くなった。
―――その夜。
『誕プレありがとなー。
お礼に今度抱かれてやってもいいぜ、ふはは』
というあらゆる意味で柴ちゃんらしいメールが届いた。
- 665 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:11
- ―――吉澤視点
バレンタインの次の週の木曜日、アヤカさんがニューヨークから帰って来た。
みんなで成田までお迎えに行く。
保田さんは仕事があって後から合流だけど、キュービック一同のうち学生チームは
全員いる。
てか、みんなヒマなんだな。まあ、ウチもだけど。
「ああ〜ん。あたしも用事なかったら行くんだけどな」
と梨華ちゃんはとても残念がっていた。
「アローハー!」
到着ロビーに現れたアヤカさんはグラサンにグッチの帽子という、
正月の成田の芸能人のようないでたちで、親指と小指のみ立てて例のジェスチャーを披露した。
「おめーはドコ帰りなんだよ!」
市井さんがゲラゲラ笑う。
「ニューヨーク帰りじゃねーのか。ハワイアンみてーなこと言って」
「だって、本当にハワイ帰りなんだもん」
アヤカさんはちょっとむくれた。
「あら、いつの間に」
ごっちんが眠そうな目をちょっと見開いた。
「ちょっと3日ばかし寄ってました。
てか、サヤカに到着時間メールで言ってたのに」
アヤカさんは少し笑った。
みんな時間は覚えててもどの飛行機かまるで考えてなかった。
ドコソコ行きとかいう、空港の掲示板っつーのか、ソレすら誰も見てねーし(笑)。
「まま、とりあえず『木村さん帰朝記念祝賀会』だ」
「まだお昼だよ」
そう笑うアヤカさんの背を押して、新宿に向かった。
- 666 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/23(水) 18:17
- なじみの店が改装中とかで開いてなかったので、そのままアヤカさん家に向かった。
「会場は木村さん宅に変更、と」
市井さんが携帯で保田さんにメールを送り、それが終わるのを待って乾杯する。
「どうよ?ニューヨークでラブラブだったんしょ?
バレンタインだし」
珍しく、ごっちんが先頭切ってそのテの話題をフった。
「ああ、うん」
アヤカさんは何故か苦笑い。
「なに?
浮気がバレたとか?」
市井さんの言う事はスルーして、アヤカさんは
「いやー、ホテルのアメニティーでソーイングセットってあるじゃん」
と頭をかきながら『まいったなあ』という風に笑った。
「うん」
「あれをね、ニューヨークに持って行ったのよ」
「ほお」
「ミカとお泊まりの時、ミカのシャツのボタンが取れたから、『貸して』って
ボタンつけたげようって取り出したわけよ、ソーイングセットを」
「なんとなく読めてきたぞ」
またもや市井さんはスルーされる。
ウチもちょっと読めてきた(笑)。
「『これ、東京のホテルのでしょ?
誰と泊まりに行ったの?』ってなっちゃって」
ハハハハ、とアヤカさんは渇いた笑いを浮かべた。何処となく遠い目で。
「ママとよ、って言っても信じてくんなくってねえ。
しかもそこ行ったのミカと付き合う前なんだけど」
「「あれまあ」」
ウチとごっちんが何故かハモってしまい、ちょっと顔を見合わせた。
んで笑った。
「まあ、とりあえず説明の結果信じてくれたんだけど、
USJとディズニーシー連れてくことになっちゃって。
『連れてってくれたら許してあげる』みたいな」
「「「あらあらまあまあ」」」
今度は3人でハモってしまった。
その夜市井さんの携帯に届いたメール。
『仕事が終わんないわよ!てか、アンタたちさっき送ったメール見たの!?
スルーしすぎよ!なによ、放置なの!?』
ウチらは『ダーヤスがんばれ』と送り返し、心置きなく飲みまくったのだった。
- 667 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/02/23(水) 18:21
- (+`.∀´)¶ムキーッ
更新しました。
前回更新分の訂正です。
>>654
パタパタを→パタパタと
>>655
昨夜飯田に洗濯してもらい(中略)シャツが、朝の光の中眩しい。
→昨夜飯田に洗濯してもらい(中略)辻のシャツが、朝の光の中眩しい。
保田はそれを見て、目を細めた。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
( ^д^)ノシ<おおきに〜。遅れても全然無問題やでェ〜
( ´D`)<いいらさんはシャツも洗ってくれて、アイロンまでかけてくれたれす
三好さんについてはもっと知らないんですよねえ。関西はハロプロヲタにはあまり優しくありません(苦笑
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ・e・)y−<我輩の情報網はあなどれないのだ
∬∬`▽´)ノ<自分で言うな!シカモソレチョコダロ!
ガキさんは噂のデータバンクです。朝比奈学園のカギは彼女が握ってると言っても過言ではありません(ウソです)。
- 668 名前:ピクシー 投稿日:2005/02/24(木) 16:52
- 更新お疲れ様です。
アヤカ出た!(嬉)
現実じゃ、かなりの不遇を受けているので・・・(悲)
相変わらず、リッチな雰囲気を醸し出しているようですね。
世間ではインフルエンザ(風邪)が流行しているようです。
自分のバイト先でも、大流行していて、シフトがメチャクチャです。(疲)
ごまさんもお気をつけて・・・そして、物語の登場人物の方々も。(今は丁度時期が一緒ですね)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 669 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:16
- ―――金曜日。
朝比奈女子高校。
放課後、辻と加護は放送で社会科の準備室に呼ばれた。
他に小川や紺野、付属中学の新垣たちも呼ばれる。
準備室には付属中学3年B組の担任、岡村が待ち構えていた。
「遅い!」
『失礼します』と入って行った辻加護は思わず『ひゃっ!』とひるむ。
「待ってたぞ、ツートップ」
岡村は『ソコに座れ』と傍らのパイプ椅子を指した。
「すみません、遅れました」
続いて入って来た紺野小川、新垣は黒板を見て固まる。
そこには。
『なりきりモーニング娘。』
とでっかく書かれていた。
「遅いんだよおまえたち!」
生徒を前に岡村は軽く怒っていた。
最後に入って来た田中亀井、道重は固まる前に目が点になっていた。
「はあ、すみません。
てか、黒板のは何ですのん」
加護が口を開くと、岡村は気を取り直したように、
「君たちは、3月に『卒業生を送る会』があるのを知ってるな」
『コホン』と咳払いをした。
「ええまあ」
「そこでだ。我が朝比奈学園『モーニング娘。同好会』は『送る会』で
モーニング娘。のパフォーマンスを…コラー!道重!鏡をしまえー!」
全員道重の方を注目する。
道重はとてつもなく大きな手鏡を覗き込み、前髪をいじっていた。
隣の新垣が窘めるように腕を叩く。
「ごめんなさい、さゆ、自分の顔に見惚れてましたあ。だって、かわいいもん」
「やっぱり…」
少し離れた席の田中がひっそり呟いた。
「ほんとにおまえたちは…」
ブツブツ言いながら岡村は、
「とにかく、全員必ず参加するように」
教卓を『バン!』と叩いた。
- 670 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:18
- 「どゆこと?てか、なんで送られる側のガキさんとかも参加なん?」
その後、加護たちは学食に移動し、ブーブー文句を言い合う。
道重は『さゆ、帰って可愛い顔にパックしなきゃ』と早々に寮に帰り、
亀井も『お先に』と帰ってしまった。
田中は『おばちゃんにタイムサービスの卵買って来いってメールきたけん』と
自転車を漕いで帰った。
「のん、実は去年もしたれす」
「マジで?」
辻の思いがけない発言に加護は振り向く。
「へい。
ガキさんたちは声かかんなかったんれすか」
「ああ、そういえば。
あ、去年は確か中学の3年B組の生徒だけでやったんじゃ」
「あ、そうれした。
なんかさっき呼び出されたとき、ヤなよかんしたんれすけど」
「そういうことははよう言うてえなあ」
加護は『とほほ』とテーブルにつっぷす。
「あ、そうだ。
まこっちゃん、明日、ヒマ?」
新垣が思い出したように言った。
「いや、別になんもねーけど?」
小川は椅子にどかっとやや行儀悪く座り、自販機で買った紙コップのココアを
飲んでいた。
新垣は鞄から紙を取り出し、
「神楽坂の駅んとこに新しくカットハウスが出来たんだって。
行こうよ」
紙に書かれてある地図を指で指し示しながら言った。
小川も一緒に地図を見て、
「へえ。ちけーな」
とちょっと乗り気になる。
「学割もあるんだってさ。
明日一緒に行こ」
「おお。じゃ、昼メシ食ってからおめーん家行くな」
「うん」
- 671 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:19
- そのやりとりを、紺野はコーヒーを飲みながら黙って見ていた。
辻と話をしつつ、加護は紺野にチラッと視線を走らせる。
「あ、紺野。
チョコうまかったぜ。
ありがとうな」
いきなり小川にフられ、紺野は
「え、え?」
と慌てる。
「すっげーウマかった。
特にあのホワイトチョコのヤツ」
「あ、はい。
お口に合ったんですね。よかったです」
「うん。
ホワイトデー、何がいい?
おめーの好きなん返すな」
小川の屈託のない笑顔に、新垣と加護は同時に、
『…罪作りだ(や)』と心の中で思う。
辻は『いいなあ。のんもほしいれす』と全く違う捉え方をする。
紺野はかーっと赤くなりながらも、
「で、では。
おいしそうなクッキーがございましたら…」
と、しっかりリクエストはするのだった。
「じゃ、また月曜な。
アタシ、カテキョあるから帰るわ」
小川が立ち上がると、
「まこっちゃん、石川さんによろしくね〜」
と新垣は席から手を振った。
「なんだ、里沙、おめー帰んねーの?」
「パパたちと東京タワー行くの。
まだ待ち合わせまで時間あるから」
「またかよ。
おめーホントタワー好きだな」
小川は少しあきれたように笑った。
「だって、タワーは願掛けしたら夢が叶うんだよ、いや、マジで」
「ふうん。
じゃ、アタシに恋人でもできるように願ってきてくれよ」
小川の何気ない一言に、紺野は思わずコーヒーにむせる。
新垣も『ええ!?』と思わず椅子から腰を浮かしそうになる。
「じゃあな」
小川があくまで爽やかに去った後、紺野はハンカチで顔についたコーヒーを拭い、
「…ニブイって、ある意味幸せやなあ」
加護に励ましとも何とも言えない事を言われるのであった。
- 672 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:21
- ―――その夜。
カテキョを終えた梨華は、吉澤や後藤と一緒に、キュービックと知り合いのバンドの、
ライブを観に行った。
後藤運転の車で向かう途中、梨華は裕子に電話をかける。
『あんな、おまえの担任やった岡村先生っておったやろ。
あの人から7時頃、うちに電話あったで。
何時でもエエから電話くれて』
と裕子は口頭で岡村の連絡先を告げた。
すぐに梨華は岡村に電話する。
「…はあ」
電話を切った後、梨華は溜息をついた。
「んあ、どしたん?
ためいきついて」
「なんか問題発生とか?」
吉澤と後藤はそれぞれ言葉をかけた。
吉澤は梨華の手に自分のを重ねた。
ちなみにふたりは後部座席に座っている。
「あのね」
「うん」
「あたし、『ほいっ』ってうまくできるかなあ」
「「…はあ?」」
吉澤と後藤は同時に声を上げた。
―――同じ頃。喫茶タンポポでは。
「…なっち」
「なんだべ」
「オイラ、ミニモニの衣装似合うと思う?」
電話を切った矢口が真顔で安倍に聞いていた。
- 673 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:23
- ―――同じ日。柴田家。
柴田が大谷を連れて家に帰ると、母がもうすき焼きの支度をしていた。
「こんばんは、お招きありがとうございます」
律儀な大谷はペコリと頭を下げ、『コレ、お口に合えばいいんですが』と
ケーキ屋で買ったマドレーヌを差し出した。
「あらあら。手ぶらで来ればいいのに。
ホントに律儀ね、マサオちゃんは。
あゆみも見習いなさいね」
「は〜い」
家に上がると、2階から姉が降りてきた。
「お、来たな」
「あ、こんばんは、めぐみさん」
「姉ちゃん、もう帰ってたん?」
「仕事がたまってたから、持って帰ってこっちでやろうと思ってね。
大方片付いたけど」
「斉藤さんは?」
「まーだー。
もうじき仕事終わるってメールきたけどね」
「迎えに行かないの?」
「行こうと思ったけど、直接こっち来るからいいって」
「そう」
少しして、斉藤が
「こんばんは。
遅くなってすみません」
とやって来る。
彼女の真っ赤なコートが目に入って、村田は人知れず好ましい気持ちになる。
「いらっしゃい。
さ、上がって」
「お邪魔します」
柴田の父も帰ってきて、家族全員揃う。
「やあ、華やかだね。女の子が揃うと」
「おかえりなさーい」
「お邪魔してまーす」
父も着替えてきて、夕食となる。
「マサオちゃん、たくさん食べなさいね」
「はい、ありがとうございます」
大谷は柴田の母にごはんをよそってもらい、ペコンと頭を下げた。
- 674 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:25
- 「ところでね」
村田は切り出した。
家族全員彼女に注目する。
「あたし、瞳と一緒に暮らすから。
いいよね?」
「瞳ちゃんのご家族は何て言ってるんだい」
父が口を開く。
「あたしから少し電話で話しました。
好きにしろって言ってくれてます」
斉藤は続けるように言った。
「そうか。それならいいよ」
「お父さん反対しないの?」
あっさり承諾されたので、村田はあっけにとられる。
「する理由がないでしょ。
それに、君は一旦行動を始めたら昔から言う事聞かないし」
父の言葉に、母と妹はうんうん頷く。
「ただし」
『めぐみ、歯を食いしばりなさい』
と父は手を振り上げた。
村田は覚悟する。
彼女の予想通り、頬に平手が飛んだ。
一同は村田と両親を除いてぎょっとする。
- 675 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:27
- 「お、お父さん!?」
妹はすぐさま、姉をかばった。
斉藤もすぐ立ち上がった。
「理由もなく殴ったわけじゃないよ。
めぐみ、君がこれからしようとしてることは、世間からは僕が今君を殴った以上の
仕打ちを受けるかもしれないんだよ。まして、よそ様のお嬢さんを巻き込むんだ。
分かってるね」
「分かってるよ。それでも、あたしは瞳を好きなんだよ」
「お、おじ様。殴るんなら彼女じゃなくてあたしを殴ってください。
先に好きになったのはわたしのほうなんです」
斉藤の言葉に、村田は叩かれた頬を押さえながら思わず彼女のほうを見る。
「そうなのかい?」
「はい。
先に言ってくれたのは彼女でしたが」
父はしばらく考えていたが、
「どちらが先、とかじゃないでしょう。
どちらにせよ、めぐみのわがままに付き合わせることになるんだろうけど。
瞳ちゃんを殴る理由はないよ。
めぐみ」
「なに?」
「幸せになりなさい」
「もう充分幸せだよ」
村田はニヤっと笑った。
「さて、すまなかったね。
食事の続きをしよう」
父は席に着いた。
大谷は突然のことにびっくりし、茶碗を持ったまま手を上に上げていた。
箸を持った手も上がっている。
「雅恵ちゃん、おかわりかい」
「あ、ははははい!」
柴田の父に声をかけられ、大谷はびくっとする。
「どれくらい入れる?」
「はい、半分くらいでいいです…すみません」
父に茶碗を渡し、大谷は赤くなって首をすくめた。
- 676 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:34
- 「瞳ちゃん、ふつつかすぎる子ですけど見捨てないでやってね。
瞳ちゃんに見捨てられたらこの子はもう…」
と、母。
「斉藤さんに見捨てられたらおねえはもう人として終わりだよね」
とは妹。
「あゆみ、そんなこと言うもんじゃ…そうかな。そうだね」
父もうんうん頷く。
両親、妹に口々に言われ、斉藤は
「あ、あの…」
と面食らい、
「あ、あたしこそよろしくお願いいたします…」
と、とりあえず頭を下げた。
「やれやれ」
食事の後、廊下で大谷に、斉藤は
「家族全員によろしくされたよ…」
と言った。
「いいじゃないですか。任されてる、ってカンジで」
大谷はクスクス笑う。
「まあねえ…。
あ、そういや明日はあゆみちゃんとホテルにお泊りだっけ」
「ええ、帝国ホテルに行きます」
斉藤は『ヒュゥ!』と口笛を鳴らし、
「金持ちだなー。
頑張って来いよ!」
笑って彼女の肩を叩いて浴室に行った。
同じ頃。
リビングで、姉妹の両親は向き合って座っていた。
「あなた」
先に、柴田の母が口を開いた。
「はい?」
「約束、破ったわね」
「…すみません」
「これでペナルティー3よ。あと2つで離婚よ、離婚」
「…はい」
「まあ、これで今日のは帳消しにするわね」
母は父に手を振り上げた。
「いかなる理由でも妻子に手を上げない、だったわね。
結婚の時の約束のひとつは」
「…はい」
父は頬の痛みに耐えながら、頷く。
「あなたが手を上げたのは初めてね。めぐみに甘いのに」
「…君も覚えてるだろう。
昔、僕がいたホテルの常連だった先生が、お手伝いの女の子と心中したのを」
「ええ」
「めぐみと瞳ちゃんが、同じ道を辿るかもしれないと思うとね」
「あなた」
「うん?」
「今は、時代が変わったのよ。あの頃とは違うわ。
大丈夫、あの子たちはきっとずっと一緒に生きて行けるわ」
「うん」
「ほんとに泣き虫ねえ、あなたはもう」
「うん、うん」
妻に背中をさすってもらい、柴田の父は涙ぐむのだった。
- 677 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:43
- 「やれやれ。やっとこさ家族公認になれた」
村田は浴槽で「うーん」と体を伸ばす。
斉藤と一緒に入浴していた。
「しかし…実家でいきなり一緒にお風呂なんて入っていいもんかしら」
常識人の斉藤は声を潜める。
「あたしん家だからいいよ。
あのとーりの親だし」
「あんたはほんとに幸せだよね。
お家の人とも仲いいし」
斉藤はしみじみ言った。
「まあね〜。
まあ色々言われるけどさ、『あの作風で家族愛に恵まれてるのはおかしい』って。
大きなお世話だよね」
「まあ、ね」
別に生い立ちで漫画描いてるわけじゃないんだから、と村田はタオルを頭にのせ
深々とお湯に体を沈めた。
その後。
斉藤と久々に寝る。
村田はややあって、自室のベッドのそばにいつも置いている、ネタ帳に手を伸ばした。
「村?」
斉藤がまだ余韻から醒めきってない顔で見上げる。
村田は物凄い勢いで、ネタを書き始めた。
どういうことか察した斉藤は、心底あきれた。
「…もお〜」
「ごめんごめん、いいネタが浮かんだからさあ」
「アンタ、最中に考えてたでしょ?」
「なんで分かんの?」
「イッた瞬間に浮かぶもんですか。
もう!」
村田の尻をぺしんと叩いて、斉藤はシャツを羽織って起き上がった。
「出来上がったら呼んでよ。ちょっとタバコ吸うわ」
「うん」
村田はもうネタに夢中だった。
しばらくたって
「村?」
と声をかけると、村田はネタ帳を開いたまま眠っていた。
あきれはしたが、邪気のない寝顔に怒るに怒れなくなる。
「ほんとにもお〜…」
掛け布団を裸の肩を覆うようにかけてやり、ふとネタ帳に目をやった。
取り上げて、読んでみる。
ネタの隅のほうに、斉藤のマンガっぽい似顔絵が描いてあり、もれなく『HITOMIラブ』と
書かれてあった。
苦笑して、斉藤は自分もベッドに入った。
- 678 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:52
- ―――翌朝。
用事がある大谷は、8時ごろ柴田家を後にし、一旦自分のアパートに帰った。
「マサオ、もう帰ったの?」
母がパンケーキを焼いているところへ、寝ぼけ眼の柴田が起きてくる。
「ついさっき出てったわよ。
なに?あんたぐーすか寝てたの?」
「置き手紙してあった。
『起こすの悪いから』って」
「優しい子ねえ。
ホラ、顔洗ってきなさいな。
めぐみもそろそろ起きてくるわ」
そう言ってると、妹より更に寝ぼけ眼な姉が現れた。
「斉藤さんは?」
「気絶したように寝てる」
「本当に気絶させたんじゃないのお?」
妹は姉の腕を肘で突く。
「我が妹ながら下世話だなあ。
母ちゃん、ハラへったー」
「あんたも早く顔洗ってきなさい。
瞳ちゃんは寝かせといてあげましょ」
母は苦笑して、姉妹を『ホラ』と促した。
妹が荷物をまとめ、出掛ける準備をする。
昼に新橋のSL広場で大谷と待ち合わせだった。
今日は彼女とお泊りする。
「いやらしい下着とか持ってくの?」
「なんでそんな嬉しそうなんだよ!しかも質問内容がオッサンだよ!」
妹は姉をどつき、
「もう!おかーさん、行って来るね!」
と鞄を持って家を出て行った。
「いい加減、妹離れしなさいな」
母は『ハイ』と、娘にコーヒーの入ったマグカップを渡した。
「――え」
受け取って、村田は母を見た。
「あゆみはもう21なんだから」
「―――うん」
そっけなく返事し、村田は黙ってコーヒーを飲む。
そばで、起きてきた斉藤は小さく笑ってそれを見ていた。
- 679 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:54
-
―――柴田と大谷のふたりは、出会った1年前と同じホテルにチェックインした。
ふたりでせっせとおやつ代を節約したりして、ほぼ1年がかりで小銭を貯め、
今日この日を迎えた。
「とーちゃーく!」
柴田は部屋に入るなり、ベッドにダイブした。
「コラー!靴のまま行儀わりーぞ!」
大谷は笑って柴田の脚を軽くはたいた。
「ああー。
去年と同じ部屋じゃないけど、記念日だね」
「うん、記念日だ、記念日だ」
ふたりとも靴を脱いでベッドに寝転び、まったり過ごす。
柴田と大谷はロック雑誌の文通コーナーが縁で知り合った。
大谷が文通コーナーに『ドアーズとか好きな人がいいです』という風に送り、
それに柴田が手紙を送ったのがきっかけだった。
『あゆみちゃんはどんな音楽好き?』
『う〜ん、「河内のオッサンの唄」かな』
『渋っ』
一番最初にやりとりしたメールを思い出し、大谷はひとりでにニヤけた。
「何ニヤけてんのさ〜。
もしかして今日の激しい夜を期待してる?」
柴田はニマニマし、大谷のほっぺを人差し指でつついた。
「いやまあ、それもだけど」
「否定してないし!」
「不束者ですが、よろしくお願いいたします」
大谷は起き上がって、ベッドの上で三つ指ついてしおらしく頭を下げる。
「こちらこそ」
柴田も笑いをこらえ、頬の筋肉をぷるぷるさせながら同じように頭を下げた。
- 680 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/02/25(金) 14:56
- 「もし文通コーナーでさあ」
「うん?」
「あたしじゃない子だったら、付き合ってた?」
「いや、あゆみだから付き合ったんだよ」
「あたしじゃない子でもよかった?」
「運命です。
ディスイズ運命!」
柴田を巻き込んで、大谷はベッドで転がった。
柴田はキャーキャー言って喜ぶ。
「何か他とは違うモノを感じたんだよ、マジで」
転がった姿勢のまま、大谷は柴田の耳元で囁くように言った。
「ほほお〜。
特に特徴もないレターセット使ったのに」
『メロンみたいな色のだっけ』
と柴田は言った。
「そそ。無地でちょい薄めのメロン色の」
『ペンは細字で茶色な。ミッフィーちゃんの切手貼ってて』
と大谷は続けた。
「そんなことまで覚えてるんだ…」
柴田はちょっと泣きそうになる。
「あゆみに関する事柄には優秀な機能を発揮します、マサオ・データバンクは」
大谷は笑いながら柴田の頭を撫でた。
「その割には角のスーパーの特売日忘れてたじゃん。教えてあげたのにぃ〜」
「…う」
つまりながらも、
「あ、あゆみ限定だもん」
大谷は頑張った。
「まあ、今回は大目に見てあげましょう」
「そうですね」
ふたりはくすくす笑いながら、体を寄せ合った。
- 681 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/02/25(金) 14:58
-
更新しました。
(`_´)<誕生日は、恥ずかしいことではありません!
川σ_σ|| /(−Θ ΔΘ)/ξξ“ З.“)/<<<なんでやねん!
(`_´)マサオ、おたおめ!
メロンでは一推しなマサオ。(注:村さんはあくまで殿堂入りで一推しではありません)(−Θ ΔΘ)アラ、ソナノ?
これからも髪を傷めない程度に毛染めに励んでください。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
川‘.▽‘)||ノ<アローハー!
確かに彼女の最近の扱いは…。個人的には、FC企画の、アヤカ、ヤス、稲葉あっちゃんと
牧場行ってカレー食べるヤツが気になってますが(w
バイトお疲れ様です。シフト狂うと確かに大変ですよね。わかります、わかりますよー(遠い目)。
- 682 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/27(日) 01:21
- 更新お疲れ様です
自分も友人数名と共に送られる側なのに送る会の大道具の手伝いをしてましたよw
あと柴村のご両親はいろんな意味で「強い」ですね
- 683 名前:ピクシー 投稿日:2005/02/27(日) 12:58
- 更新お疲れ様です。
岡村先生が何やら考えているようですね・・・
朝比奈のOGまでまじえたオールスターみたいな感じになりそうな予感。
注意を促しておきながら、自分が風邪(インフルエンザかも?)にかかってしましました。
これも、狂ったシフトで入った「春一番の日」に、一日中外で働かされたせいだと思ってます。
何故か自分の住んでる所、春一番のくせに冷たい風だったので・・・
今は大分楽になりましたが、ここ2日程、床に伏せってました。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 684 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/02(水) 19:32
- ―――その夜。柴田家。
斉藤は『今夜も泊まってらっしゃい』という村田の両親の言葉に甘え、夕食をよばれていた。
村田の父もビールを注いでくれたりして、恐縮する。
「瞳ちゃんはどうするの?
もし引越しするんなら職場に近い方がいいでしょ」
母が言うと、
「それならぬかりないよ。
物件もいくつかピックアップしたから」
村田は飲めないので、一人烏龍茶を飲んで先に答える。
「あたしの今の仕事場と、出版社となるべく苦労せずに移動できるような」
「あんたはホントに一旦その気になったら早いわよね」
母はあきれたような感心したような顔をする。
父も小さく頷いた。
「この人、同居する条件として
『1.ノンフロン冷蔵庫
2.掘りごたつ
3.ケンカしても冷静に頭を冷やせる環境』
ってなかなかイカす条件、提示してきたから」
斉藤に以前もらったメモを思い出して、村田は楽しそうに笑った。
「3番目は特に大事だね。
めぐみは悪気なく多分相手を怒らせるだろうし」
父にまで言われ、村田は
「失礼な」
と膨れた。
「私が仕事が忙しいので、彼女に任せっぱなしなんです。
助かってます」
と斉藤はにこやかに言った。
「それくらい当然よ〜。
この子が言い出したんだろうし。
ねえ、お父さん」
「うん、仕事の事以外にも、色々瞳ちゃんには面倒見てもらってるからね」
父にまで頷かれ、村田はちょっとトホホとなった。
その後、村田の部屋で、斉藤は持ち帰ってきたノートパソコンを開き、
仕事の続きを始めた。
村田はその間ヒマなので、情報収集がてら、ベッドで寝転んでネットをする。
自分に関するスレも、ふと思い立って覗いてみた。
- 685 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/02(水) 19:34
- 1 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 01:26 ID:???
マックスとめぐみの並び最強
2 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 01:29 ID:???
ヲレたちのめぐみがどんどん世界にでてゆく・゚・(ノД`)・゚・。
3 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 01:36 ID:???
いやおまいのじゃないし
4 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 01:47 ID:???
めぐむの本命を予想するスレ
5 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 01:59 ID:???
>>4
誰だよ(ワラ
6 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 02:21 ID:???
>>1-5
おまいらほんとにめぐみが好きだな(w
7 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 02:28 ID:???
>>4
ゆきどんに一票
8 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 02:41 ID:???
>>4
編集のサイトーに2票
9 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 03:13 ID:???
>>7
いやちがうだろ
>>8
ありえなくもないな
10 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 03:32 ID:???
美人の妹に象印賞
11 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 03:32 ID:???
ミスヘイケが実は本命と逝ってみるテスト
12 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 05:09 ID:???
美人のママンがいるからいつまでたってもママンから卒業できないめぐみであった
13 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 06:13 ID:???
>>10
うれしくね〜
>>11
渋っ
14 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 07:38 ID:???
>>12
え、めぐみってマザコンなん?
15 名前:愛蔵版名無しさん:03/02/07 08:25 ID:???
>>14
有名だよ妹はファザコンらしい
- 686 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/02(水) 19:36
- 「…いつオマエのものになった、いつ」
村田はぶつぶつ言いながら画面をスクロールさせる。
「悪かったな〜、マザコンで」
「あ、認めるんだ」
机で斉藤が端末を叩きつつ、小さく笑う。
「…うん」
「ロリコンよりはマシだろ」
「いやぁ〜…どっちも正直どうかと…」
村田は『お茶でも入れて来よっ』と立ち上がって部屋を出た。
キッチンでは、母がパソコンを広げて家計簿をつけていた。
「あら、休憩?」
「うん、瞳にお茶でもと」
母にじっと顔を見られ、
『なに?』
と村田は言った。
「あんたにも尽くす心、っていうものが芽生えたのね」
しみじみ言われ、
「父と言い、失敬な夫婦だなー。
なにさ、まるであたしが奉仕精神ゼロみたいじゃん」
「そのつもりで言ったんだけど?」
「ムカつく〜」
軽く怒りながら、村田は母の分のコーヒーも淹れる。
「朝、あゆみにお金持たせてたでしょ?
いくら包んだの」
コーヒーを淹れる娘の背中に、母は声をかける。
「アラ、見てたのね。
うん、諭吉を1名と漱石を5名派遣した」
「アンタ、ホントに妹には甘いわねえ。
昔っから」
母に笑われ、
「…悪かったね」
村田は憮然と、先に淹れたコーヒーを飲んだ。
- 687 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/02(水) 19:42
- ―――同じ頃。ホテルのふたりは。
柴田は、鞄から封筒を取り出してきた。
「おねえが何か家を出しなに封筒を手渡してきたのね。
お金だと思う」
「マジで」
大谷は缶コーヒーを飲みつつ、目を見開く。
「うん、ちょっと開けてみる」
柴田が中を確認する。
「…やっぱり。
1万5千も入ってる」
「すっげ」
「これでふたりでゴージャスなメシでも食えってことだと思う。
1万でも2万でもなく、1万5千なとこがおねえだなー」
「そうなん?」
「うん。
これ、このまま返していい?」
「もちろん。
てか、そんなたくさんもらえねえ」
「言うと思った」
封筒をベッドサイドに置いて、柴田は笑って大谷の頭を撫でた。
- 688 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/02(水) 19:50
- 更新しました。
何もゆわず持ってゆけ>(−Θ ΔΘ)っ〔封筒〕
めぐみ、ヲレにも千円でいいからくれの巻。
前回分の訂正です。↓
>>677
村田はタオルを(中略)深々とお湯に体を沈めた。
の続き。↓
「痛かった?」
村田の頬に、斉藤は手を伸ばす。
村田は斉藤の手に自分のを重ねて笑う。
「かばってくれて嬉しかったよ。
何でしたっけ、先に好きになったんでしたっけ?」
「一応ね」
「一応って」
斉藤は村田の肩先に頬をうずめた。
※この後、
「その後。」
以降、残りの文章に続きます。すみません(汗
レスのお礼です。
>682の名無飼育さん
川母*σ_σ||(父*−Θ ΔΘ)<<恐れ入ります
あの姉妹を産んだ両親ですからおもろい人たちではありますが、しっかりした両親なのです。
私も自分の卒業式なのに何故か裏方っぽいことやらされましたよー(w
>ピクシーさん
( ´ Д `)<んあ〜、大変だったね。お大事にね
( ‘д‘)っ◇<風邪にはしょうが湯やでェ〜
もう体調はよろしいのでしょうか。どうぞお大事に。
岡村先生は何かたくらんでます、狙いに行ってます(w 皆巻き込まれそうです。
- 689 名前:ピクシー 投稿日:2005/03/03(木) 13:03
- 更新お疲れ様です。
村さん、つくづく妹思いですなぁ。
そして、それをそのまま返す柴ちゃんも。
ぼんさんありがとう。
体調は、咳と鼻がまだ残ってますが、体の方はいたって健康になりました。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 690 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/03/05(土) 01:51
- 更新おつです。
柴ちゃんよかったですね。村さん、樋口1枚では?というツッこみはナシですね。
新渡戸1枚はありませんでしたか?と訂正します。
こんな美人な姉さんがほしいもんです。でも、いたら苦労するかもしれませんが。
- 691 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:20
- ―――吉澤視点
土曜日。
ウチは昼過ぎまでバイトに入り、大学で梨華ちゃんと待ち合わせた。
ガッコで一番高い幕の内御膳(要予約)を持ち帰り用にしてもらって、
春休み期間なので人もまばらだろう学食で一緒に食べようと、ふたりで企画したのだ。
ウチより先に行ってて、図書館へ本を返してた梨華ちゃんと校門そばで落ち合うと、
原チャリがブロロロと通り過ぎた。
「あれ?ごっちん?」
梨華ちゃんが言うと、そばの駐輪場から
「んあんあ!ギリだあ〜!」
携帯をチラ見して、マッハでごっちんが駆け抜けてった。
「なんだなんだ?」
「さあ、レポートとか?」
梨華ちゃんと首を傾げてると、すぐごっちんがこちらに戻って来た。
「んあ、おふたりさん。
どったの、どよーなのに」
行きはウチらに気付かなかったが、帰りは気付いてくれた。
腕には、ドラちゃんのシールが貼ってあるメットがある。
「ああ、いっぺん幕の内御膳食ってみよーってね。
ごっちんはどしたん?」
3人で歩きながら学食へ向かう。
「んっあ〜。
レポートの締め切り、次のかよーだって勘違いしててさあ。
げつよーなんてごとー来れないから、今日出しに来たの。
受付が春休み、どよーは2時で閉まるじゃん。
マジあせった〜」
「お疲れ様。
お茶、飲む?」
梨華ちゃんが笑ってペットボトルの烏龍茶をごっちんにあげる。
「あっは、あんがと♪」
ごくごくとおいしそーに飲むと、
「んじゃ、おふたりさん。
ごゆっくり♪」
ぶんぶん手を振って、ごっちんは行ってしまった。
「あ、もう帰んの?」
「ごとーチョクでバイト行くから。またね♪」
「ヒトのコイジのジャマすると、ウマにキックされてしぬってゆーしさあ」
ごっちんはウチの顔を見て、キシシと笑った。
「またうちにおいでよ。
お菓子作ろ」
梨華ちゃんが言うと、ごっちんは
「ニン」
とナゾの言葉を残してった。
『ウン』でも『ハイ』でもなく『ニン』。
ごっちん、あなどれねえ。
- 692 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:22
-
柴っちゃんが今日たんじょーびだっつーから、メールを送っといた。
『おたおめ。今度、学食で安いメシおごっちゃる☆』
『ありがとうよ、ケチ吉(笑)』
ってすぐ返事きた。
―――んでもってその夜、聞いてもいないのに、
『激しい夜だよ』ってメールきたんだけどね。
「ひとみちゃん、食券の使い差し、1000円分くらいあったね」
梨華ちゃんが笑う。
「うっす。
ケチ吉っすから」
今日一気にドバーッと使って豪華なメシを食った。
なんか爽快だ。
「幕の内御膳、1800円だけあってすっごいボリュームだったね」
「うん、ごっちんが前、賭けに勝って食ってたのがまたうまそーでさー」
「あー、そうだったねー」
ふたりで手をつないで、校内デートするのだった。
- 693 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:25
- ―――その頃。
「まこっちゃん、おかしくない?」
「おかしくないおかしくない」
「ねー、ホントに?」
「マジだって。
里沙おめー、もう100万回くれー言ってるぞ」
小川と新垣は、カットハウスを出て、地元の駅前を歩いていた。
新垣は切ったばかりの髪が気になるらしく、もう何回も後ろ頭を押さえながら
小川に『おかしくない?』と訊いている。
「なんか安く上がったし、茶ァでも飲むか」
「おごってくれんの?」
「なんでやねん」
「うっわ。めっちゃヘタな関西弁」
「うっせ。しゃーねーなあ。
安いトコだぜ」
「やった!」
ふたりはファーストフードの店に入って行く。
適当に飲み物を頼み、ダラダラと過ごしていた。
「里沙、おめークッキー残り食えよ」
「いいの?」
「うん」
小川は返事し、ストローを口に咥えた。
ガラス窓の向こうに、見覚えのある女の子たちがいた。
「あ、あの子ら。
おめーと同じクラスの子らじゃねーの?」
小川が先に言うと、
「ああ、ホントだ」
と新垣も頷く。
「あ、行っちゃったね」
「うん。なんか騒いでたな」
ふたりがのんびり話してる一方で―――。
「ちょっと!小川さんと一緒にいた子、ダレ!?」
「めっちゃ可愛いじゃん!彼女!?」
新垣たちのクラスメートたちは、店内のちょうど死角にいて、
あまり見えなかった相手が新垣とは気付かず、勝手に騒いでいた―――。
- 694 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:27
- ―――月曜日。朝比奈女子中学。
「おはよー」
新垣が登校すると、クラスメートたちは一瞬固まった。
先に来ていて、他のクラスメートの机に行き、立って話していた道重も振り向いたまま固まってしまう。
座って本を読んでいた亀井も、顔を上げて目を見開く。
「ガ、ガキさん!?」
同級生のひとりが、やっと口を開く。
「ガキさん!髪切ったの!?」
道重が続いた。
ぱたぱたと新垣のところに走ってくる。
新垣はいつもツインテールにしてた髪を下ろし、前髪は少しずつピンでずらして留めていた。
「ああ、うん。
長さはあんま変えてないけどストパーかけた」
新垣が前髪を押さえながら答えると、もう一人の生徒が
「わ!眉も細くなってる!」
と驚きの声を上げた。
「髪もすんごいシャギー入ってるし!」
また別の生徒が、今日は下ろしてる髪に触れて言う。
「あ、色も入ってる!」
「あ、分かる?
えへへ、ちょっと入れちゃった」
新垣が照れ笑いすると、
「負けないの」
道重がビシッと宣言した。
「え、何を?」
本気で新垣がきょとんとすると、
「さゆが一番可愛いもん」
それだけ言って道重は席に戻った。
- 695 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:28
- 朝の出席を取った後、担任の岡村は
「みんなー、ちゅうもーく。
ガキさんが高校デビューしようとしていまーす」
とイジった。
「なあんでですかあ〜!
ちょっと髪型変えただけじゃないですかあ〜!」
新垣は反論する。
「似合いますよね?」
亀井がにこやかに言う。
周りの生徒は頷いた。
「でも一番はさゆなの」
「あー、はいはい。
シゲさんが一番です。
あたしは57番目くらいでいいですから」
新垣は適当に返事する。
ちなみに57番目の数字の根拠はまるでない。
「ガキさんもオトナになってゆくんやなあ」
「あの、しみじみ言わないでくれます?
髪型変えただけですから」
岡村にも新垣はツッコんだ。
- 696 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:30
- 新垣が髪型を変えたという噂は学園中に広まり、昼休みには辻と一緒に
紺野と加護まで現れた。
ちなみに加護はわざわざ見に行くのも面倒だと一旦は断ったが、
ずるずる辻に引きずられて来た。
小川が既に来ており、周りの生徒と騒いでいた。
「ガキさん、オデコは隠さないんだね」
そのうちの1人が言うと、
「里沙はデコがチャームポイントだもんな〜」
小川は笑って新垣の額に触れた。
新垣は
「もう!何すんのさ!」
身を捩ってイヤがる。
「なんだよ、デコ触っただけじゃん」
「気安く触んないでよ」
「うっわ〜。
ジョオウサマみてえ〜。里沙様って呼んでやろ」
「ぶつよ?」
ふたりがギャーギャー言ってるのを、紺野は少し離れたところで、ちょっと淋しそうに見ていた。
「あ、そだ。
小川先輩、どよーび、なんかデートしてませんでした?」
チアの後輩でもある生徒が言うと、
「ハァ?デート?」
小川は人差し指を自慢のアゴにやり、
「ああ、里沙と髪、切りに行って、そんあと茶ァした」
と答えた。
『コイツ、おごらせやがってさあ』
と新垣の肩を抱き寄せて小川が笑うと、新垣は黙って肩の小川の手を叩いた。
加護はパックのコーヒー牛乳を飲みながら、黙って成り行きを見つめる。
辻は道重に『チョコあげるの』と言われて、春限定のストロベリー味のチョコを
バクバク食っていた。
「え、ふたり、デキてんの?」
小川のクラスメートの、囲碁将棋同好会の生徒が言うと、
「いぃいえ〜!
デキてませんから!」
新垣はある意味失礼なくらい、ぶんぶん手を振った。
「てか、ガキさんフツーに綺麗だよね」
囲碁将棋の生徒が普通に言うと、
「あ、ありがとうございます」
新垣は『ふう。なんだっていうのよ。ちょっと髪切っただけなのに』
と心の中で冷や汗をたらした。
- 697 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:31
- 放課後。
その日、新垣は付属高校の生徒に呼び出され、
「まずは友達から、ど?」
と申し込まれたり、
中学の後輩に
「先輩、卒業式にスカーフください」
と予約を入れられたり、大忙しだった。
全て丁重に断る。
「もう!あたしは髪切っただけなのに!」
色々翻弄され、新垣はややキレ気味になる。
疲れ切ったので、ちょっと図書室に避難する。
そこでは、加護が調べ物をしていた。
「髪切った?」
某司会者のマネをしながら、加護は新垣に近づいていく。
「あ、加護さん」
「モテモテやん」
ヒュゥッと口笛を鳴らし、加護は茶化す。
「も、も。
勘弁してくださいよお〜」
新垣は心底情けなさそうな声を出す。
ふたりは一番奥の書架にもたれて話す。
「髪切っただけなのに、どうして…」
「ウチのクラスまで広まってたで。
『ガキさんに確変が起こった!』って」
「はあ」
「なんや目に見えて分かりやすいような可愛さになったっちゅーか」
「へ?」
「一般受けするかわいさになったってこと。
どっちのガキさんもかわいいけどなあ」
『ほなな』と加護は肩を叩いて出て行った。
叩かれた肩に手をやり、新垣は少し赤くなった。
- 698 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/09(水) 19:32
-
加護は図書室のそばで紺野と偶然会う。
「おう」
「あ。今、帰りですか?」
「うん。自分は?」
「今から帰るところです」
「そうか。
ほな、一緒に」
「ええ」
ふたりは連れ立って学校を出た。
そばの公園を突っ切って帰る。
紺野はため息をつく。
「どしたん」
加護が言うと、
「わたしって…ホントに心が狭いなあって」
「なにが」
「新垣さん…髪を切られてよりかわいくなられましたよね」
「ガキさんは前からかわいい思うけどなあ」
「ええ。
なんか…」
「アゴがガキさんにホレたらどうしよって?」
紺野は黙って頷いた。
「ホレたハレたで心狭ないヤツっておるんかなあ」
加護はスニーカーの爪先で小石を蹴った。
紺野は蹴られた小石の行方を視線で追う。
「そんなに可愛い思われたいんなら、自分もデコ出したら?」
加護はニヤニヤ笑って紺野の前髪をペロンとめくった。
「うっわ。
面積広いデコやなあ」
素直に感心して言うと、紺野は泣きそうに
「ほっといてください。
どうせわたし顔大きいです」
半ベソをかいて手で額を隠した。
「まあまあ、泣かんかて。
デコ広いんは聡明やっていうやん。
別にアゴがガキさん好きって言うてるワケやないんやし」
紺野はコクンと頷く。
「まだチャンスはあるんやし」
紺野はまた頷いた。
『しかし今日はやたらとヒトにアドバイスする日やなあ、しかし。
ウチ、こんなキャラちゃうのに』
加護はそう思ってまたその辺の空き缶を蹴った。
- 699 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/09(水) 19:35
- 更新しました。
ガキさんの髪型は、この前の『ハロモニ。劇場』の時(ラーメン屋の設定の)ので
脳内変換してください。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
(−Θ ΔΘ)y−~~<ふむ。カネはいらぬと。…そんなにお姉さまが欲しいのか
川σ_σ||<そんなにキミはぶたれたいのかね(棒?
かなりめに仲良しです。ある意味、マサオも斉藤さんも入ってこられないくらいに。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(−Θ ΔΘ)<サイフにたまたま稲造がいなかったのね
川σ_σ||<おねえってたまにナゾなお金の使い方してない?
いたらいたできっと苦労しますよ(苦笑。村さん、シスコンでマザコン気味ですし。
- 700 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/09(水) 20:59
- こんなん作ったのでおヒマな時にでもドゾー ↓
ttp://jbbs.livedoor.jp/music/12231/
(;〜^◇^)<避難所だったりするんだな、これが
- 701 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/10(木) 00:41
- 更新お疲れ様です
「あの」さゆをライバル視させたガキさんはすごいw
でも実際ガキさんは最近マジでキレイだと思います
- 702 名前:ピクシー 投稿日:2005/03/10(木) 02:37
- 更新お疲れ様です。
ごっちんのドラちゃんメット、いいなぁ。
ぼんさん、みょ〜にリアリストといいますか・・・冷静ですなぁ。
そして・・・岡村先生の企みが明らかになる日はいつか・・・?
避難所にもお邪魔させてもらいます。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 703 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/03/12(土) 16:56
- 更新おつです。
髪を切ったキャメイちゃんが最近お気に入りです。
しかし、いいらさんがあんなに切ったのにはびっくりしましたね。
ごっちんの「んあんあ」「んあ」「んっあ〜!」の、んあの3段活用がなんかツボでした。
あと、またのんさんに引きずられるぼんさんもツボでした。力ではのんさんには敵いませんからね。
- 704 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/16(水) 19:01
- ―――その夜。
保田宅に飯田、安倍、矢口が集合していた。
少し遅れて平家も来る。
今日は飲み会である。
早くも保田は酔っ払って「マリ〜!」と矢口に抱きついて、
安倍と飯田にはたかれていた。
「はあ。
こんなゆっくり飲むん、久しぶりや」
平家はほっと嬉しそうに熱燗を口にする。
「最近お疲れだったからね、みっちゃん。
どうだべ、マックスとの仕事の方は?」
映画好きの安倍は、マックスの監督作品もよく見ていて、
今度のものも楽しみにしていた。
「ああ、マックスは妥協を知らへん男やからな。ある意味燃えるで?」
平家はニヤニヤ笑う。
「『ある意味』ってどんなイミなんだよっ!」
矢口はツッコんでキャハキャハ笑った。
「すごいで?
この打ち込みの時代にフルオーケストラ入れて録音やで?
どんだけテマヒマかけるんかってな」
「へえ、すごいっしょ」
保田は
「公開されたら観に行かないとね」
と言った。
横で飯田も頷く。
- 705 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/16(水) 19:03
- 飲み会は更に盛り上がり、酔いの回った飯田がすくっと立ち上がり、
「ほ〜らマリちゃん、高い高〜い!」
と、ちっこい矢口を持ち上げた。
「ギャー!高すぎ高すぎ!」
矢口の声がはるか天井から聞こえる。
一同は床に座ったまま感心して上を見上げた。
平家はスルメを齧りつつ、
「…こわ」
と呟く。
「ほおら、ヤグチ取ってみろよ〜」
床にようやく下ろされた矢口は、今度は髪飾りを取られて上にかざされ、
取り返そうとぴょんぴょん跳ねる。
奪った飯田は得意げだ。
「コレされんの中学以来だよ!くっそ〜!」
矢口は顔を真っ赤にしてぴょんぴょん跳ぶ。
「カオリ〜、そのへんにするっしょ」
安倍がさりげに止めに入る。
「ういっく。
…吐きそう」
飯田は口を押さえて洗面所にダッシュする。
保田が腰を上げ、のんびり後をついて行った。
「カオリ飲み過ぎだよ〜。
あ〜、死ぬかと思った。『高い高い』マジで高すぎ」
矢口は胸を撫で下ろし床に座る。
よいしょ、と落ち着き、傍らのグラスを手にした。
その昔、安倍もまだ上京していない頃、矢口は飯田や保田、まだ独身だった石黒と
飲みに行き、酔っ払った飯田にむんずと掴まれて肩車された。
飯田はちっこい矢口を肩車したままご機嫌で環七を爆走し、
そのまま首都高に乗ったとか乗らなかったとか。
「あの時は…心底怖かったです」
その時の思い出を語るY口M里さん(23)。
「まあ〜。そんなことが」
オバチャンのように感嘆し、口を押さえる安部。
平家は黙って小さく笑っていた。
- 706 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/16(水) 19:04
- 飯田は保田に
「ホラ、しっかりしなよ」
と声をかけられつつ、戻って来た。
「大丈夫か?」
平家に声をかけられ、
「うん…圭ちゃんに面倒見てもらいましたから…う」
と言いつつまたダッシュで洗面所に舞い戻る。
「あの子、体調悪いんかな?」
そう言いながら保田もまた戻る。
「なんかさ」
ふたりが行った後、矢口が口を開く。
「オイラ、圭ちゃんがこんなに付き合ってる女の子に優しいとは思わなかった。
イヤ、圭ちゃん元々優しいけど、なんか付き合ってるコには冷めてるトコあったじゃん」
「ああ、言いたいこと分かんで。
本気やなかったんやろ」
平家も頷いた。
「ほほお」
矢口は平家の顔を見つつそう言い、続ける。
「むかーし、なんかカオリとオイラと圭ちゃんでディズニーランドか行ったことあんのね。
カオリ、『好きな人とふたりで遊園地行ったら別れるって昔からいうからヤグチついてきて』
ってゆってさあ。
まだ付き合ってねーだろ、オマエら!ってオイラツッコんじゃったよ」
矢口はキャハハハと笑った。
「カオリはずっと圭ちゃん好きだったんだべか」
「そ。いや気付いてないの圭ちゃんくらいだったし」
矢口がこう言うと、流石の平家も吹き出した。
「カオ、アンタもう寝な。
あとはやっとくから」
「すんませんすんません」
ふたりの声が廊下から聞こえた。
3人はそれを聞いてそっと笑った。
- 707 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/16(水) 19:05
- ――― 一方。中澤家。
「これで、よしと」
加護は手紙を書き終え、便箋を折りたたんだ。
自室にあった福田明日香の本を、加護が譲ってもらえることになり、福田にお礼状を書いていた。
『好きにしてエエて』
福田からの返信メールを確認した裕子は、笑って加護にもメールを見せた。
「あーいぼーん」
辻がドアをノックする。
「おう。なんや」
加護は手紙の封をし、机に座ったまま振り返る。
「数学教えてくらさーい。
明日のん、小テストなんれす」
「入りいや」
「へいっ」
辻は風呂上りなのか、髪が少し濡れている。
「まーたよう乾かさんかったやろ。ほんまに自分風邪ひくで?」
加護はあきれたようにドライヤーを取り出してきて、辻の髪を乾かしてやる。
「あいぼん、お母さんみたい。
小言が最近多いれす」
「うっさいわ。
言われとうなかったら、ちゃんとせいや」
「えへへ。
のん、あいぼんに怒られるのスキれす」
「…はあ?」
加護が怪訝な顔をする横で、辻はご機嫌だった。
ドライヤーをかけてもらい、髪に指を通して乾かしてもらうのが気持ちよくて、辻は目を細める。
「ネコか、キミは」
「ナ〜ゴ」
辻はひと鳴きし、ゴロゴロと加護の肩先に頬ずりした。
「もう。
乾かせんやろ」
加護が顔をしかめて、ドライヤーのスイッチを止める。
「えへへ」
「えへへやあらへん。
あー、数学やったかいな。
ホラ、今からやんで。
ウチ、早よう寝たいねん」
「うん」
辻は何だかがっかりし、持参したテキストを広げた。
- 708 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/16(水) 19:09
- ―――その頃。
新垣は家でテスト勉強をしていた。
明日から中学最後の試験が始まる。
そのまま上の高校に上がれることが決まってるし、そんなにがっついて
勉強することはないが、赤点はやはりもらいたくない。
ふと、今日のことを思い出す。
『新垣先輩、卒業式に冬服のスカーフください』
『友達からどう?』
とそれぞれ呼び出されて言われた。
「ガキさん、付き合ってる人いんの?」
と、遠回しなアプローチも含めたら結構な数になる。
この学園で卒業式に冬服のスカーフをあげたりもらったりするのは、
ステディになりたい、という意思表示であった。
どちらも見知らぬ生徒だったので、新垣は心の中で首を傾げる。
『なんだかな〜』
見た目が少し変わったくらいで、急に交際を申し込まれたのがどうにも合点がいかない。
「あ、見た目が変わったからっていうのじゃないよ。前からガキさんに興味あったから。
いや、急に綺麗になったから競争率高くなりそうだし、今の内に気持ち伝えとこうってね」
新垣は聞けば聞くほど、気持ちが冷えてゆくような気になった。
「はあ」
新垣はシャーペンをノートの上に放り出し、ため息をついた。
「よ、お疲れさん」
そこへ、小川がやって来る。
「…また来た」
「聞こえてっぞ」
小川は『ほれ』とマグカップを机に置いてやる。
湯気の立ったホットミルクがなみなみと入っていた。
「ありがと」
とりあえず礼を言って、ふうふう吹いて口に含む。
「今日、モテモテだったんだってな」
「なに?冷やかしに来たん?」
「いや。
気にすんなって言いに来た」
「は?」
新垣はそのままマグカップを置いた。
「意外に気にしィな里沙のことだからー、いきなし交際申し込まれたりして、
『みんな外見で決め付けるんだ』とか余計なこと考えてねーかなって」
「…すごい。分かるんだ」
新垣は思わず口にした。
小川はにこにこし、
「じゃな。テスト頑張れよ」
と頭を撫でて出て行った。
- 709 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/16(水) 19:10
- ノ(;〜^◇^)ノ<やめれって
タカイタカイー( )
( ゜皿 ゜)ノノ つつ
軽々持ち上げられるマリちゃんの巻(違)。
>701の名無飼育さん
从;*・ 。.・从<ここだけの話、本当に焦ったの
(* ・e・)ノ<ありがとうなのだ!
シゲさんに唯一「負けないの」宣言させた女・ガキさんです。
本物も綺麗になりましたよねえ。二十歳くらいになったらもっと綺麗になってると思います。
>ピクシーさん
( *´ Д `)っ◇<ドラちゃんシール、衝動買いしちった ヌハー
( ;‘ д‘)<え〜、リアリストかなあ。…そうかな〜?
ごっちんはさりげに身の回りのものがドラちゃんです。
ぼんさんは他人のことには冷静です(笑)。岡村先生プロデュース企画はまたいずれ…。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ´ Д `)<んあ〜、活用してるのか。知らなかったよ、んあー
( ´D`)<あいぼんくらいならラクラクひっぱれるれす
いいらさんの断髪はショックで3日ばかし寝込みました(ウソです)。
いや可愛いんですけど勿体無いなあって。キャメイ(今は亀造か)も短くなりましたねえ。
- 710 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/17(木) 00:46
- 更新お疲れ様です
彼女らの飲み会一度覗いてみたいもんです
実際に矢口「が」いいらさん「を」高い高いしようとしてバランス崩し転倒、
いいらさん頭をベッドの角に強打
なんて事があったそうですよw
- 711 名前:ピクシー 投稿日:2005/03/17(木) 01:32
- 更新お疲れ様です。
なんか、久しぶりに大人組の交流を見た気が・・・
そしてさりげなく明日香(の名前)登場。
一番謎が多い人物ですね。
しかし、本もらってお礼状書くぼんさんも律儀で本当に読書家ですなぁ。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 712 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/03/19(土) 00:10
- 更新おつです。
矢口に抱きついた圭ちゃんは、ナッチとカオリンに強めにはたかれたと思います。
ごまさんのAAの使い方はほんとに神技だと思います。
酔ったカオリンも交信状態なんですね。
- 713 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:49
- ―――火曜日。喫茶タンポポ
夕方、3時のティータームサービスで来ていた客が大分帰り、店内に静けさが漂っていたところへ、
「やーぐちさぁ〜ん!」
梨華の甲高い声が響いた。
「お。なんだアゴン」
矢口はテーブルを拭きつつ答える。」
「『和風ケーキフェア』、今日まででしたよね?」
「おう。あ、うちのサイト見たんだな?」
矢口がニヤニヤすると、
「ハイ、早速『お気に入り』に登録しましたよ」
梨華は席に着きながら、
「『美勇伝』ひとつください。紅茶も一緒に。
あ、ひとつテイクアウトでお願いします」
「ほいきた」
矢口は早速支度する。
「いやー、矢口さんから『美勇伝』使っていい?ってメール来た時は、あたしも鼻高々でしたねー」
梨華はわざとちょっとふんぞり返るように座り、腕組みして『エッヘン』などと言ってみた。
「いやいやいや、なんか脳裏から離れなくてさ。つーか、呪い?」
「きっと矢口さんのDNAが記憶してる単語なんですよ。び・ゆー・でーん!」
「ヤな記憶だな。てかDNAレベルかよ」
矢口はちょっとげんなりしつつ、皿に例の『美勇伝』ケーキを盛った。
抹茶のロールケーキで、中に抹茶風味のクリームが塗ってある。
クリームのところどころに粒あんがあり、ケーキの上に細く巻いたホワイトチョコが飾ってあった。
ケーキ表面のスポンジに線描き模様のように細く絞られたホワイトチョコを見て、梨華は
「すっごいですねえ。どうしたらこんなのできるんですか」
感嘆の溜息を漏らす。
「いちおーソッチ系の専門学校通いましたから」
矢口は照れ笑いする。
「食べるのもったいないなあ。
あ、写メ撮っていいですか。記念に」
「おおよ。『まりっぺのケーキ(はあと)』とかくっだらないタイトルつけんじゃねーぞ」
「あ、いいこと聞いちゃった♪」
「ナヌ?」
ふたりがじゃれていると、
「こんにちは」
加護がやって来た。
- 714 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:50
- 「おお。どしたどした」
「いや、どっかの大喰らいの人に『美勇伝』買って来て言われて。
わしゃパシリかっちゅーねん」
「ああ、辻もう1回食べたいっつってたからな。
何個にする?」
「はあ、ふたつください」
「ほいきた」
加護はケーキを箱に入れてもらってる間、向こうのテーブルで手を振る梨華のところに行き、
「来てたん」
と声をかけた。
「うん。あ。あのね、『美勇伝』ってあたしが名前つけたんだよ」
「そうなん。どうりで妙やと思たわ」
ハッキリ言われ、梨華は少しヘコむ。
「もお〜、あいぼ〜ん」
などと言っていると、ベルを鳴らして新しい客が来た。
「こんにちは」
「お、いらっしゃい」
その客―――岡田唯は席にいる梨華に気付き、
「こんにちは」
と軽く頭を下げた。
「あの、『美勇伝』、まだあります?」
「はいはいはい、ありますよ。
こちらで召し上がりますか、お持ち帰りで?」
「んー、どうしよっかな。
あ、1個持って帰ってもひとつはここで食べます」
「はい、お待ちくださいね」
岡田はどこに座ろうか少し視線を走らせ、梨華と目が合う。
「あ、あの。
よかったら、一緒にどうですか」
「梨華ちゃん、ナンパや」
加護にからかわれながらも、梨華にしては珍しく勇気を出した。
「ええ。じゃ、お言葉に甘えて」
岡田はコートを脱いで席に行く。
加護もコーヒーだけ注文し、3人でテーブルを囲む。
「関西の子ぉやねんね」
岡田に急に関西弁を使われ、加護は目をぱちくりさせる。
「ええまあ。お姉さんも関西ですか」
「あたしは大阪。
自分、どこなん?」
「ウチは奈良です」
「奈良!」
岡田は何故か手を叩いて喜んだ。
「奈良!シカやん!」
「シカだけやおまへんで、大仏もいますさかい」
「大仏!」
梨華は何故岡田がここまでウケているか分からず、きょとんとする。
加護もウケていることに満足そうだ。
「あ、あの、岡田さんでしたっけ?」
梨華は口を開いた。
「はあ、敬語やのうてええですよ」
「岡田さん、奈良ってそんな可笑しいの?」
「いや可笑しいいうか、関西限定いうか。ねえ?」
岡田は加護を見た。
加護も頷く。
- 715 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:51
- 「自分、朝比奈の1年の子ぉやねんな。
あたしはもう卒業やけど」
「はあ。
えっと、岡田さんって囲碁の強い岡田さんですか」
「よお知ってんね」
「はあ、校内新聞に載ってましたから。学内配布の広報誌とか」
加護は思い出したように、
「あ、ウチは加護いいます。すみません、言うの遅れまして」
自己紹介した。
「ああ、1年の首席の人やろ。有名やもんな、自分」
「いや、センパイほどでは」
加護は謙遜しながら、
『これが噂の『岡パイ』か…』
と岡田のブレザーの膨らみのあたりにちらっと視線を走らせる。
「先輩、校内の美少女コンテストでもいつも上位ですやん」
加護が言うと、梨華はふと、
「ここに過去に4位だったひとがいるよ」
とカウンターの矢口に笑いかけた。
皿を拭いていた矢口は、
「わ!触れられたくない過去を!」
自分の顔を隠す素振りをした。
「そうなんですか?」
岡田は笑う。
加護も横でニヤニヤする。
「4位ちゃ〜ん」
梨華が甘ったるい声で呼びかけると、
「アゴンてめー!」
矢口は昔のあだ名を連呼する梨華に、笑いながらゲンコツを上げるフリをした。
帰り際、梨華は矢口に
「矢口さぁ〜ん。
次のケーキは『カッチョいいぜ!JAPAN』なんてどうですかぁ〜?」
やけに自信たっぷりに提案した。
「オマエのセンスは壊滅的だよっ!」
矢口の0.1秒くらいのツッコミに、加護と岡田は笑った。
- 716 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:53
- ―――同じ頃。
吉澤は昼過ぎまでバイトに入り、その足で大学に向かった。
締め切り時間ギリギリにレポートを出し、
「よっしゃ!メシ食い行こ!」
ダッシュして学食に向かう。
「「お」」
食券を買おうとして、偶然柴田と会う。
ふたりは同時に声を上げた。
「よお。レポートでも出しに来たん?」
「うん。ヨシコは?」
「ウチも。てか、昼メシ?」
「うん。昼まで稼いで来たからね。メシも食わず」
「ほお。あ、奢っちゃる。たんじょーびだったし。300円までな、300円」
「ありがとうよ、ケチ吉」
と柴田は笑った。
柴田は300円で260円の天ぷらうどんを買い、残りで追加の油揚げを載せた。
「おお、なんか豪勢じゃん。カッケー」
向かい合って座り、ふたりでうどんをすする。
「うん。ヨシコの月見うどんもうまそうじゃん」
「あげないよ」
「ムカつく〜」
柴田はゲラゲラ笑って、ふっと素に返った。
「そういやさ」
「うん」
話をフられ、柴田は顔を上げた。
「マサオさんとなんかお泊りだったんしょ。
メール送ってきてたじゃん、『激しい夜だよ』とか」
「ハハ、まあね」
「どだった?」
「激しい夜が?」
「いやいやいや、そじゃなくて」
吉澤はうどんをすすりながら苦笑する。
「なんか楽しそーだなーって。
記念日にホテルでお泊りって」
柴田は笑顔だったが、なにか考えている風に表情を曇らせた。
「どしたん」
「ん〜、2日目の別れ際?それくらいまではもう最高潮に盛り上がってたけどね」
「ケンカでもしたん?」
「ん〜…言っていい?」
「イヤじゃなかったら」
「いや、2日目の昼に銀座の資生堂パーラー行ったんよ。
1年前初めて会った時と全く同じコースを辿るって企画だったんで」
「うん」
「店出てから、マサオの携帯にヤツの元カノから電話掛かってきて」
「アラ」
吉澤は思わず声を上げた。
- 717 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:56
-
「なんか元カノが結婚するとかでマサオに電話掛けてきたらしいんだけど。
マサオ、掛かってきた時、『ごめん、今友達と一緒だから』とかあたしに気ィ使って切ろうとしたんだけど、
あたしのいない時に掛けられてもなんかヤだから、あたし『話していいよ』って言ったのね」
「ほお」
「マサオの受け答えから察するに、マサオ、むこーのひとにお祝いだけ贈るらしいんだけど」
「へえ」
「別にそれだけなんだけど、なんか電話切ってから、ビミョーな空気になっちゃってさ」
家に帰ってから、フォローのメール送ってきたりしたんだけど、と柴田は続けた。
「別に元カノに『トモダチ』とエセ設定されるのはいーんだけど、なんかヤだなあって。
もう会わないって言って別れて、なんで電話してくるんだろって」
「ズバリ言うわよ!」
吉澤が急に口角を下げ、裏声で叫んだので柴田は
「わあ!」
と思わず箸を取り落とした。
「マサオを信じるのよ!そうじゃないとアンタ、地獄に堕ちるわよ!」
「正論だけど最後がヘンだよ!」
「アタシは泥水すすってここまで来てんのよ!」
「今すすってんのはうどんだろーが!」
「やっと笑った」
素に戻り、吉澤は穏やかに微笑んだ。
「あ。うん。
あたし、ヘンなカオしてた?」
柴田は両手で自分の両頬を押さえる。
「いや、眉間にシワ寄ってた」
「やだ〜」
「マサオさん、柴っちゃんにベタ惚れだと思うよ。
かわいくってしょうがないってカオしてるもん、いつも」
「うん、知ってる」
「あ…そ」
吉澤はなんだかテンションが下がった気がした。
ヘの字口で首を傾げる。
- 718 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:57
- 「マサオって専門通うまで女の子と付き合ったことほぼ皆無だったらしくってさあ。
専門で知り合った年上のカノジョってヒトに、いっぱしのオトナにしてもらったらしいのね。
あ、電話掛けてきたってのがそのヒトなんだけど」
「おお!
年上!」
「30とかそれくらいのおねーさんに手取り足取り?」
「へえ。ソレ、マサオさんが言ったん?」
「うん。なんか面白がって聞いてる気持ちが半分と、やっぱムカつく気持ちが見事に半分なワケよ。
分かる?」
「なんとなく、まあ」
「でもまあ、マサオを一人前のオンナにしてくれてありがとうって気持ちもあるっつーか」
「へえ」
「いま、アタシを一番好きでいてくれたら、それでいい」
柴田が微笑んでそう言うと、吉澤は
「ウヒョー!」
と叫び、急にバーンと立ち上がり、その衝撃で丼に残っていたうどんのつゆがこぼれた。
柴田が慌てて隣のテーブルにあった台ふきんで拭う。
「なに?急に?」
「柴っちゃんカッケー!オットナー!」
「いやいやいや、そう思うんならフツーに言ってよ。なにもうどんつゆこぼしてまで叫ばなくったって」
「叫ばずにはおれませんでした」
「ハア…」
柴田は苦笑して、つゆを拭いたふきんを洗いに立ち上がった。
- 719 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/23(水) 19:58
-
―――その晩。保田宅。
保田は風呂から上がり、バスタオルで髪をごしごし拭いていた。
テーブルの上の携帯が鳴り、
「はい?」
と髪を拭きながら出る。
『あ、圭ちゃん?
久しぶり、あたしだけど。
今いい?」
電話の相手は古い友人の石黒だった。
保田は、
「まあ、いいけど。
どしたん?」
そのままキッチンのテーブルから椅子を引き、座った。
『あのさ、今週末ヒマ?
ちょっと会って話したいことがあってね。
金曜とかどう?』
「金曜はちょっと。
有休とってて旅行に行くし」
『アラ、豪勢ね。
分かったわ、じゃ、木曜は?』
「ああ、別に用事ないわよ。
てか、急ぐんなら電話で別にいいのに」
『直接会って話した方がね。
じゃ、仕事終わったら悪いけど出て来てくれる?』
石黒が指定する場所をメモしつつ、
『なんなんだろ』
保田は心の中でちょっと思った。
- 720 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/23(水) 20:01
- 更新しました。
とりあえずテーブル拭けよ>川;σ_σ|| ヽ(0^〜^0)ノ<カッケー!
レスのお礼です。
>710の名無飼育さん
( ;‘ д‘)<え、マジで?
( ゜皿 ゜)<イタソウナノ
そのエピソードは初めて聞きました。あらゆる意味で無謀ですね(ニガワラ
教えてくださってありがとうございます。
>ピクシーさん
( ‘д‘)<ウン、一応礼儀としてな
( ´ Д `)<読書は心を豊かにするぽ
そういえば久しぶりだったと、書いてから気づきました(笑)。
明日香の謎解明はかたいずれ…。いつか名前以外も出るかもしれません(笑)。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(・´ー`)三○(T.∀T)○三(゜皿 ゜ )
こんな感じだったと思われます。神技ではありません。アホ技です。
いいらさんは飲もうが飲むまいが、交信に突如として入ります。
- 721 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/03/24(木) 00:24
- 更新お疲れ様です。
あはは、カッケーと叫ぶひ〜ちゃんかわいいですね。
そんな子供のような無邪気なとこに梨華ちゃんも惚れたとか?
しかし、柴吉の2人だけのトークは今までなかったので新鮮ですね。
- 722 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/24(木) 02:14
- 更新お疲れ様です。
喰ってみてえぞ美勇伝。
仕事ヒマなときにでも作ってみようかな。
レシピクレ知。
ひ〜ちゃんエッグさんへのレスのAAが
レツゴー三匹に見えてしまったのは俺だけでしょうか。(笑)
- 723 名前:ピクシー 投稿日:2005/03/24(木) 03:36
- 更新お疲れ様です。
関西弁トークキタ!
中澤姐さんとはまた違った感じの会話になってますね。
「ぱちくり」って表現がなかなかオツでした。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 724 名前:Stargazer 投稿日:2005/03/28(月) 20:44
- 宣言通り、こちらにも足跡残しにやってきましたw
さすが、と言いたくなるネタの仕込み具合に笑わせて貰いました。
次回更新も、マターリ待ってます☆
- 725 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/30(水) 20:24
- ―――翌日。渋谷。
「ほほお。これがウワサのビルか」
村田は完成したばかりの瀟洒なビルを手をかざして仰ぎ見て、声を出す。
「そ。個展をするにはもってこいでしょ?」
横で斉藤は笑う。
マックスとの映画絡みのイベントで、村田の個展がこの新しいビルのアートギャラリーで
開催されることになった。
今日は斉藤と、その下見に来ている。
ガラス張りのエレベーターで上に上がり、ギャラリーのスタッフに中を案内してもらう。
斉藤は先方のスタッフの説明に聞き入り、合間合間に頷いたり時には質問していたが、村田はまったく
聞かず、ギャラリーの大きな窓から見える渋谷の街を見下ろしていた。
「夜はライトアップしてもっと綺麗ですよ」
村田はびくっと振り向いた。
後ろにギャラリーの男性スタッフがにこやかに立っていた。
「そうですか」
とりあえず、村田は答える。
世間一般ではソフトな二枚目なのだろうけど、村田はてんで興味がなく、『しかしヘンな色のカラーシャツだな』
とまるで違うことを考えていた。
彼の微妙な色使いのシャツばかりに目がいく。
「光栄です、村田先生の個展をうちでお手伝いできるなんて」
「はあ、どうも。
こちらこそよろしくお願いします」
曖昧に笑いながら、村田は
『べっぴんのおねーちゃんはいねーのか、べっぴんさんは』
オッサンなことを考えていた。
「噂通りお綺麗で、いえ、実際お会いしたら雑誌などのグラビアで拝見する以上にお美しくて、
感激いたしました」
「どうも」
にこやかに礼を述べながら、村田は
『よくもまあ、そんな鼻が曲がるようなお世辞をベラベラと』
心の中で悪態をつく。
彼はそれからも何か言っていたが、村田は聞くフリをしつつまったく違うことを考える。
ふと、窓の向こうの空を見る。
- 726 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/30(水) 20:25
-
子供の頃、父だったか母だったか、図書館でゴッホの画集を借りてきて、少しの間、家にあった。
村田は何となく気になって、床に脚を放り出して座り、ペラペラと画集のページをめくった。
燃えるような色の向日葵が、あちこちのページにあった。
うねるような夜空とか、子供ながらに気になった。
父は娘を自分の膝に載せて座り、ページをめくりながらひとつひとつ絵の説明をしてやった。
そばには、まだ1歳だった妹が寝転がってボールを突付いていた。
「ゴッホは、生きてる間は、1枚しか絵が売れなかったんだよ」
「じゃあ、びんぼーだね」
率直な娘の言葉に、父は笑って
「ゴッホの弟は兄さんのゴッホをとても尊敬していて、困ってるゴッホにお金を送ったり、
色々助けてあげたんだよ」
「あいしてるから?」
その頃村田は「愛してる」という単語を覚えたててで、何かにつけては使った。
「そうだろうね」
父は次のページをめくり、
「生きてる間に何でも手に入れたけどとても寂しい思いをして死ぬ人もいれば、なんにもなくても
一生幸せな人もいるんだよ。
めぐみは、どっちが幸せだと思う?」
「わかんない」
「そうだね、まだわかんないね」
父はふっと微笑み、
「おやつにしようか。
お母さんにホットケーキ作ってもらおっか」
本を置いて、村田を抱き上げて、台所に行った。
『あたしは多分一生しあわせだと思う。何の根拠もないけど』
窓の外を見ながら、村田はそんなことを考えた。
- 727 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/30(水) 20:27
- 「あ、有紀。久しぶり」
斉藤の声に、村田は思わず振り返る。
前田がマネージャーらしき女性とやって来た。
「久しぶり。どうだった?ニューヨークは」
「うん、忙しかったけど楽しかったよ。
あ、今度おみやげ渡すね」
「ああ、ありがとう」
前田は窓辺の村田に気付き、
「元気?」
と声を掛けた。
「うん。
どうしたん、今日は」
まだオープン前なので、仕事絡みでない限りここに入ることは出来なかった。
「ああ、この下のイベントスペースで今度ミニライブやんのよ。
今日はその下見。
ギャラリーが話題になってたからこちらの方に案内して頂いてね」
「へえ」
「そっちは?
なんか、オープン記念でここで個展やるんだって」
「らしいね」
村田の他人事のような台詞に、前田は小さく吹き出す。
前田が斉藤と話をしているので、村田はむすっとしてギャラリー内を歩き回る。
壁に掛けられたつまらない絵を眺め、
『いまあたしの頭上にやかんをのせたら、いい案配に湯が沸くだろうな。湯気とか出て』
ムッとしたまま、ちらっと後方の斉藤たちを顔だけで振り返って見る。
斉藤は楽しそうに前田や彼女のマネージャーと雑談している。
特に前田を見る時の、斉藤の笑顔がイヤだった。
前田が斉藤の耳元で何か囁いている。
斉藤は可笑しそうに「やだ、マジで〜?」
と笑い、前田の腕を叩いた。
ふとこちらからの視線に気付いた様子で、前田が一瞬村田の方を見た。
前田はこちらを見て、ニヤッと笑う。
『わざとだ!ぜっーたい!わざとだ!!』
頭の芯が熱くなってきて、村田は更に奥に行った。
出入り口から見たらかなり死角の柱の陰まで歩く。
- 728 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/03/30(水) 20:32
- 「村」
しばしあって、斉藤が歩いてきた。
「ああ、うん」
「絵、見てたの?」
「うん、まあ」
斉藤は少し笑って、村田の隣に行く。
いきなり村田の頬に手をやり、死角なのをいいことにかなり熱いキスをした。
さすがの村田もびっくりし、一瞬怯んだ。
唇を離し、斉藤は
「大人の女の愛し合い方は知ってるんだ、子供のクセに」
薄く笑い、村田の唇を人差し指でなぞる。
斉藤は村田のタイトなロングスカート越しに、自分の膝を割って入れ、
村田の細い脚を緩やかに擦った。
村田は思わず吐息を漏らす。
斉藤の手を掴み、村田はなぞった指に一瞬舌を這わせ、骨に軽く当たるくらい指に歯を立てた。
「ウチ、来る?」
「うん」
村田は指を含んだまま、もごもごと頷いた。
―――家までとても我慢できず、結局シティーホテルに飛び込み、欲求を満たしあった。
浅い眠りから目を覚ますと、斉藤が着替え中でシャツに腕を通していた。
シャワーを使った残り香が、少し開いたバスルームから漏れてきている。
「帰んの?」
村田が少し体を起こすと、
「今から帰って仕事するわ。
アンタはもうちょっと寝てな」
斉藤は村田の肩に手をやり、小さく口づけた。
村田はシーツで胸を隠し、黙って首を振る。
「そんな顔しないでよ。帰りづらくなるじゃん」
斉藤は困ったように笑い、
「…あと1時間だけね」
服を着たまま、村田の両肩を下に押さえた。
- 729 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/03/30(水) 20:34
- 更新しました。
(・´ー`・)ノ<じゅんでーす!
( ゜皿 ゜)ノノ<チョウサクデーーーーース!!
( `.∀´)<ミナミハルオでご…
(・´ー`・)三〇(T.∀T)〇三(゜皿 ゜)
上記のAAは本文とは無関係です。
ちなみにいつも名乗れないのは「正児(しょうじ)」です。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(* ^▽^)<ウフッ
川σ_σ||<ホントに両方からノロけられてさあ
二人だけのシーンっていうのも初めてですねえ。
どんなバカ話をしてても、ビジュアルは美しいふたりです(w
>722の名無飼育さん
(〜^◇^)っ◇<はいよ!某所にレシピ貼ったからまた見てよ!
( ´ Д `)<知…なんか聞き覚えが ←張本人
微妙に長いので某避難所をご参照頂けたら幸いです。
知とはまたお懐かしい(w
>ピクシーさん
( ‘д‘)<「ぱちくり」やてまた古いですなあ、先輩
川 ´^`)<ほんまやなあ
すみません、「語彙がひと昔前」とよく言われるもので(ニガワラ
本来の関西弁(というか大阪弁)のテンポって彼女が割に近いと思います。
>Stargazerさん
(〜^◇^)<キャハハ!小ネタ一筋もうすぐ3年ってカンジ?
川o・-・)<3年目の小ネタぐらい大目に見てほしいですよね(←意味不明)
おお、こちらにもようこそ。
他にもっとすべきことがあるだろう、と自分でツッコみながら今日も仕込んでおります(ニガワラ
※村さんの回想シーンに出てくる「ゴッホのうねるような夜空の絵」
は「星月夜(糸杉と村(The Starry Night))」のことです。蛇足ですが。
- 730 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/03/31(木) 00:19
- 更新お疲れ様です。
村さん、相変わらず仕事相手はべっぴんのお姉ちゃんがいいんですね。
あまりそんな風にしてるとひとみんとあゆみん(柴ちゃん)に挟まれて、上の圭ちゃんみたいになってしまいますよ。
- 731 名前:ピクシー 投稿日:2005/03/31(木) 01:33
- 更新お疲れ様です。
ゆきどんもなんとなく久しぶりな感じ?
自分の知り合いは、関西弁喋る人いないですねぇ。
岡山、広島、山口といった中国地方や、福井、富山といった北陸はいるんですが。
福井の知り合いは、普通に高橋みたいなイントネーションしてます。
「おちょきん、はよしねまぁ」を違和感なく喋るし。(高橋と全く一緒)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 732 名前:ごまべーぐる@気づいたら3年 投稿日:2005/04/14(木) 14:20
- まずはレスのお礼から。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(−Θ ΔΘ)y‐~~<べっぴんさんもいない世の中なんて ポイズン
ξξ“ З.“)<ハイ、村田さんグラウンド100周ね
村さんはべっぴんのおねーちゃんのほうがまず創作意欲が湧くんです(w
>ピクシーさん
(丼`ー´)<ご無沙汰してます
村斉がNYに行く話以来の登場です。固有名詞以外でしたら福井弁はどうにか分かります。
川▼ー▼川<おちょきん、はよしねまぁ!
ハロモニ。劇場の不良バージョンで↑
4月12日で飼育の森板に最初スレを立ててから3年経ちました。
中の人はとても飽きっぽいので正直ここまで続くとは思いませんでした。
ここまで書き続けられたのも、場所を提供してくださる管理人さん、
読んでくださるみなさんのおかげです。
この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。
さて、本日はちょこっと短編をうpします。
- 733 名前:quattro piatto 投稿日:2005/04/14(木) 14:21
- ある日のこと。
「なあ、よっちゃん」
加護は吉澤の部屋に遊びに行き、ベースを爪弾く彼女に声を掛けた。
「何でエ、ねえさん」
「梨華ちゃんのどこを好きやの」
「どこって…」
吉澤はポッと赤くなって返答に困る。
「あ、ちなみに『全部』とかっていうのはナシな」
「あ、やられた」
吉澤は笑って頭を掻く。
「そうさねえ、まずは」
「エロイ体?」
吉澤はもっと赤くなり、『コラ』と加護を軽く小突いた。
「愛ってのはカラダとかそんなんだけじゃないんだ、そうだ」
「『そうだ』ってダレに問いかけとんの、しかし」
「いや、なんだろ」
「カラダなかったらあとなに残るん」
加護の言う事に吉澤は一瞬目を見開いた。
「愛?」
「いやいやいや、そこ疑問形でどないすんのん。一応断言しとこうな」
「じゃ、愛」
「『じゃ』て」
「おめーはどうよ?」
吉澤はベースを置いて、加護のふわふわの髪を撫でた。
「ウチ?
ウチは…」
加護は一瞬考え、
「あー…どうやろ」
「ホラ、答えらんねーだろ」
吉澤はキシシと笑ってまたベースを抱え、はなわの例の歌を弾きだした。
「じゃ、おめー、ののとおめーの大好きなべんきょーだったらどっち取るよ?」
「比較がおかしいで。てか、なんでのんのこと」
「愛してるんだろ?」
吉澤はニヤっと笑った。
加護は赤くなり、無言ではたく。
「ホンマニンゲンはあほのひとつ覚えみたいに『愛』『愛』て」
「アホだから愛を求むるんだよ」
「なんかカッコよく決めてるけど全然カッコようないで」
「こりゃまた手厳しい」
ハハ、と笑い、吉澤はまたぶすっとする加護の頭を撫でた。
- 734 名前:quattro piatto 投稿日:2005/04/14(木) 14:23
- 市井が帰宅すると、後藤がこたつにかたつむりのように潜り、首だけ出してつっぷして寝ていた。
「…ありえねえ」
市井は小さく呟き、部屋の電気を点けずに冷蔵庫を開け、ビールとつまみをしゃがんで探す。
暗い床に冷蔵庫の明かりだけ広がる。
「…んあ」
こたつでかたつむりは寝返りを打った。
「んあ!」
悲鳴にも似た声に、市井も一瞬ビクッとする。
寝返りを強く打ったのでこたつの天板が持ち上がり、ガタンと大きな音を立てて元に戻ったのだ。
「なにやってんだバカ」
「うるさいよ、ハゲ」
「起きてんなら出て来い。メシを作ってやる」
「えらそーに」
「うっせ」
後藤はやがて顔をしかめて目をこすり、ごそごそ這い出てきた。
「エビマヨでいいよな」
「ごとー、カレーがいい」
「贅沢言うな、ルウがねーよ」
「じゃ買って来て」
「買って来てだとう?
何様のつもりだ」
「ごとー様」
「…分かったよ」
市井はその辺に放り出したチェーンつきの財布を掴み、ジーンズに取り付けた。
「あー、カギカギ」
後藤は市井がやはりその辺に放り出していた部屋のカギを拾い上げた。
市井に渡して、腕を掴む。
「一緒に行こ。買いたいモンもあるし」
「お、おう」
後藤はニッと笑ってぼさぼさの髪を手ぐしで直した。
- 735 名前:quattro piatto 投稿日:2005/04/14(木) 14:24
- 「圭ちゃん、ツイストってどう踊るんだっけ」
ソファで雑誌を読んでいた飯田に声を掛けられた保田は、少し離れたところで無言で踊ってみせた。
「ムダにキレがいいね」
「悪かったわね」
「じゃ、ジルバは?」
やはりムダにキレのいい保田。
「ちなみにこれがモンキーダンス」
要求されてもいないのに、モンキーダンスを踊ってみせる保田。
「ゴーゴーみたい」
「古いよ、アンタ」
「知ってて踊れる圭ちゃんのほうが古いですぅ」
「ムカつく〜」
保田は軽く睨み、
「お茶淹れるけど飲む?」
と埃がついてもいないのに、何故か膝を掃った。
「アールグレイがいいな♪」
飯田はソファの背もたれの方に肘を突き、振り返った姿勢で笑った。
「ハイハイ、お嬢様。
お菓子はなんにすんの」
「お嬢様って呼んでるワリには態度デカイねえ」
「何になさいますか、お嬢様」
一転して恭しく、保田はパリのギャルソンのように気取って言った。
「では、頂き物のカステラを」
「畏まりました」
ギャルソン保田はふと、
「てか、アールグレイにカステラって合うかね?」
紅茶の缶を食器棚から出しながら飯田のほうを振り返った。
「だね」
飯田も笑う。
「だしょ。ま、いっか」
紅茶も残り少なくなっていて、軽い音を立てて上下に振られた。
- 736 名前:quattro piatto 投稿日:2005/04/14(木) 14:26
- 「これは、あいぼんに」
辻は、そう言って籐製の買い物籠に空色のキャンディーを入れた。
辻は梨華や裕子、平家と新しくオープンした雑貨屋に来ていた。
「辻ちゃん、自分のも買いや」
フォトスタンドを見ていた平家は、少し笑って声を掛けた。
「それは言うまでもないで。
自分、アメばっか買うてー。
ちゃんと歯、磨きや」
裕子が苦笑いする。
辻はてへてへ笑い、横の梨華と顔を合わせた。
「梨華ちゃんは何買うれすか」
「うん。これ、ひとみちゃんにどうかなって」
梨華はフェンダーギターの精巧なミニチュアピンバッジを見せる。
「ギターだけど、面白くない?」
「わあ、すごいれす。
ベースがないのが残念れすね」
「そうだね、ベースだったらもっと」
「ご注文頂けたら、お好みの楽器でお作りいたしますよ」
店のオーナーに声を掛けられ、ふたりは振り向いた。
「あ、あの、リッケンのベースとかそういうのも?」
「ええ、可能な限りお客様のご注文をお聞きいたします」
「え、えと、じゃ」
梨華はフェンダーのバッジを元に戻し、オーナーと交渉を始める。
辻はフェンダーの横に、自分が使ってるものと同じギターと色違いのを見つけ、
「わあ、この色も可愛いれす。
う〜ん…やっぱり高いれすねえ」
「なんや、欲しいんか」
後ろから平家が覗き込む。
「高いれす」
「ふむ、確かに高校生の小遣いではキツイな」
「ぜいたくはてきれす」
平家は黙って笑い、辻が裕子のところに行ったのを見届けてからバッジを手にし、
自分の買物と一緒に清算した。
- 737 名前:quattro piatto 投稿日:2005/04/14(木) 14:27
- 梨華はオリジナルバッジの注文を済ませ、裕子のところに行った。
辻もキャンディーを買い、裕子にひとつあげている。
「ん」
平家は包みの中から、辻に小袋を差し出した。
「なんれすか」
「開けてみ」
平家に促がされ、辻はがさがさ開ける。
何となく察しのついた裕子は、小さく笑った。
「わあ」
「今年の誕生日祝いな」
「ありがとうれす、へーけしゃん」
平家は何も言わず笑って、裕子にも包みを差し出した。
「なんや」
「開けてみ」
「…写真立てか」
「平家みちよのサイン入りブロマイドやるから飾ってな」
「いらん」
「うっわ、秒殺?」
平家はケラケラ笑う。
充代の写真ならもうたってもエエ。
裕子はともすると聞き逃しそうな小声で呟いた。
梨華は横で嬉しそうに笑う。
辻も何となく嬉しくなって、
「梨華ちゃん、いっこあげるれす」
透明なピンクのキャンディーを、1個差し出した。
- 738 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/14(木) 14:30
- 更新しました。
(^▽^)人(0^〜^0)
- 739 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/14(木) 21:46
- 少しの間、現実を忘れさせてもらいました。ありがとう
- 740 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/14(木) 23:40
- こんな時の更新なんて作者さん、あんた素敵過ぎるよ。
次の更新も首を長くして待ってます。
- 741 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/14(木) 23:43
- うわぁお!
嬉しすぎてあげちまったよ・・・orz
- 742 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/04/15(金) 01:55
- 3周年、ひ〜ちゃん20歳おめでとうございます。
いいらさんいわく、「べっぴんしゃん」になりました。
でも、ひ〜ちゃんの愛のバクダンは女性ファンの方がよく効きますよね。
いいらさんなら「愛を取っても亜依が残るよ。」と答えそうです。
- 743 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/15(金) 03:52
- 更新おつです。
カステラとアールグレイって合わない?
おれバカ舌なんかな?
- 744 名前:ピクシー 投稿日:2005/04/15(金) 04:34
- 更新お疲れ様です。
敢えて、よしかご、ののりかにしてあるあたりがいいですね。
ってか、4期ってどの組み合せでも、上手くいくのがいいですねぇ。
あと「ごとー様」ってのも・・・さすが姫(w
現実は大変ですが、ここはほのぼのを期待してます。
次回更新も楽しみに待ってます
- 745 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/04/20(水) 12:44
- ―――水曜日。
加護は学校帰りに学園そばの郵便局に寄り、ロンドンへエアメールを出した。
福田明日香に宛てたものだ。
少し大きめの封筒を裕子にもらい、裕子や梨華の手紙もまとめて同封した。
「ロンドンってどれくらいかかるんですか」
窓口の職員に尋ねてみる。
「3日から4日くらいですね」
「そうですか、どうも」
電車に乗って、ひとりで帰る。
―――今日の放課後、図書室に行き、司書の先生に福田がくれた本を
図書室に寄贈する旨を伝えた。
そのことは、福田の了解済みだった。
裕子がメールで伝えてくれたのだ。
好きにしていいと福田には言ってもらったが、文学全集などもあり、
自分だけのものにするにはとても惜しく、考えた結果3冊だけ譲ってもらい、
あとは図書室に寄贈することにした。
「まあ、あの出版社の全集を。
本当にいいの?」
司書の主任の先生は「いいの?」と繰り返した。
「ええ、わたしだけのものにするには勿体無いですから」
加護は笑った。
「あなたは無欲ね。
これとか本の状態は見ないと分からないけど、古本屋さんだったら
高く買い取ってくれるのよ」
全集のほか、加護が作成してきたリストに記された図書の書名を見て、
先生は言った。
「ええ、だからみんなに見てもらいたい思て」
加護が油断して関西弁で言うと、
「そうね、それがいいわね」
先生は微笑んだ。
- 746 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/04/20(水) 12:48
- 本は物量的に流石に学校へ提げて行けないので、梨華か他の誰かに頼んで
車で運ぶことになった。
加護はほうっと小さな息を吐いて、電車の外の景色を見つめた。
『日、なごなったなあ』
もうすぐ3月だ。
東京に来て1年になる。
イヤイヤ荷物をまとめてイヤイヤ上京した頃のことを思い出す。
『お母ちゃん、ウチが東京行くさかい、気ィつこて可愛らしい服とか
揃えてくれて、ようしてくれたなあ』
それを思い出して小さく笑う。
『加護しゃんは、桜みたいにきれいれす』
不意に、初めて辻に会った時のことを思い出す。
桜を見ながら、辻はにこにこしながら初対面の加護に言った。
『けったいな子ぉや』
確かそう言ってそっぽを向いた気がする。
「…お母ちゃんに手紙でも書こかなあ」
加護はちょっと暮れてきた街を見つつ言った。
- 747 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/04/20(水) 12:50
- ―――中澤家。
裕子が夕食の支度をしてる横で、平家は
「ねーさぁん」
裕子に甘えた声を出していた。
「なんやねん、忙しいのに」
裕子は顔も見ず、煮物の味見をする。
「なあて、デートしようや」
「いつ」
「まあ、いつでもエエけど」
「自分、仕事ちゃうんかい」
「あれま、まだスネてたん」
「別に」
裕子は黙々と大根を下ろす。
「マックスちゃらいう監督が宣伝でコッチ来るんやろ」
ふと裕子が言うと、
「よう知ってんな。あ、なんかネットでも見たん?」
「梨華から聞いた」
「へえ。で?」
「…マックスは男前らしいな」
平家は一瞬何を言われたか分からず、脳が把握した途端ゲラゲラ笑い出した。
「あ、ありえへんて!
マ、マックスはゲイやで!」
「自分かてヒトのコト言えんやろ」
「いやー、それにしちゃあ」
そんなことを言ってると、
「ただいまあ」
梨華が帰ってきた。
「あ、平家さんいらっしゃーい」
「よお、おかえり。
お邪魔してんで」
平家は梨華に、
「なあ、梨華ちゃんからもなんか言うてェや。
このヒト、デートしよ言うてもつれないねん」
「アラ。
裕ちゃん、なんで」
「別に。
梨華、手伝ってくれや」
「あ、うん。
手、洗ってくるね」
梨華は台所を出しなに、平家にこそっと
「大丈夫。照れてるだけだから」
と囁いた。
- 748 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/04/20(水) 12:53
- 亀井絵里は学校そばの図書館で道重さゆみと勉強していた。
「駅まで送ってあげるの」
勉強を終えたあと、ふたりは駅まで並んで歩く。
「駅までって、すぐじゃん」
亀井はケラケラ笑う。
亀井は一緒に授業をサボった一件以来、道重にちょっと心を許したようで、
タメ口を聞いていた。
「かわいいさゆが送ってあげるの」
「かわいいはカンケイないし」
「絵里かわいくないの」
道重も道重で、勝手に『絵里』と呼んでいた。
亀井は可笑しくて笑った。
「お父さんが昔言ってたけど、『いとしのエリー』って歌があるの」
不意に道重が言った。
ふたりは自販機でジュースを買って何となく立ち話をしていた。
「へえ。タイトルだけ絵里も聞いたことある」
「♪エリーマイラブソースィートって歌なの」
「…さっ、ぱりわかんない」
「愛の歌なの」
「まあ…、そうだね」
「いつか誰かにこんなこと言われたいの」
「ああ」
亀井はそうだね、と笑った。
「さゆは、ロマンティストなんだね」
亀井に優しく言われ、道重は
「世界一かわいいロマンティストなの」
頭の上にうさぎのように手をやり、
「うさちゃんピース!」
と言った。
亀井も笑いながらマネをする。
「流行語大賞をとるの。
そして世界中のみんながかわいくうさちゃんピースするの」
「…へ、平和だね」
「かわいいを世界にあますことなく広めるの。
そしてさゆは、『かわいい』の真の世界一になるの」
「…さゆ、帰ってちゃんと勉強してね。
明日、数学だよ?」
「そうだね、帰ってかわいくなるように運動するの」
「さゆ、絵里の話聞いてる?」
心が通っても、いまいち意思疎通がうまくいっていないふたりだった。
- 749 名前:KISS IN THE DARK 投稿日:2005/04/20(水) 12:58
- その頃―――
朝日女子学院大学。
「まーったく、なんで部室に置きっぱにするかね」
後藤は文句を言いながら、駐車場までアンプを運んでいた。
隣の市井は『うっせ』と言いながら、やはり同じように大荷物を運んでいた。
「大体ねえ、いちーちゃんは昔っから終業式とか一気に観察日記の朝顔の鉢とか
持って帰ってエライ目に遭って、全然せいちょーが見られないんだよっ」
「はいはい、スミマセンねえ」
「ハイは1回」
「へいへい」
後藤がむっと口を尖らせると、向こうから女の子が歩いてきた。
後藤はちょっとすれ違いざまにぶつかってしまう。
「あ、スミマセン…」
後藤が謝ると、相手は何も言わず、顔をちょっとしかめてそのまま行ってしまった。
「なんだあ?謝ってんのに」
市井は相手が歩いて行った方を見て、睨みつけた。
「んあ、今のヒト、ちょっといちーちゃんに似てなかった?」
「ハア?アタシのほーがイイオンナに決まってんだろ」
「ナニ寝言言ってんのさ。…イマのヒト、なんっか、見覚えあんだよね」
後藤はアンプをちょっと下ろし、人差し指を顎に当てて『んー』と考えた。
「どーでもいいよ。オラ、行くぞ」
「あ、待ってよお」
先に行った市井を追いかけ、後藤はまたアンプを持って小走りになった。
- 750 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/20(水) 13:04
- 更新しました。
从*・ 。.・从<さゆは、かわいいの道を追い求めるの (^ー^*;川
レスのお礼です。
>739の名無飼育さん
( `.∀´)っ□<まあ、一杯飲む?
川;σ_σ||<未成年の方だったらどうするんですか
更新してた時点では確かまだ発表されてなくて、私も夕方だったか知ってびっくりしました。
何にもしてませんが、ちょっとでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
>740の名無飼育さん
( ´ Д `)<んあ〜、びっくりしたねえ〜
(;‘ д‘)<人生なにがあるかわからしませんな、師匠
長いこと書いてますが、こんなケースは初めてですね(ニガワラ 人からのメールで初めて知りました。
すぐochiにしてくだすってありがとうございます。
>ひ〜ちゃんエッグさん
あいをあげるれす>( ´D`)っ( ´д`)<…
そのダジャレはいかにも言いそうですね(w
よっちゃん、ホントに美人になりましたねえ、って元から美人だけど。なんか年相応の色気が出てきたというか。
>743の名無飼育さん
从*・ 。.・从<アールグレイの中国茶っぽい香りのが合うと思うの
( ´。D`)っ□<カステラははしっこのが、おさとうじゃりじゃりしてておいしいれす
私は年中うさんくさいジュースをライフワークとして飲んでるので、
味覚には自信ありません(ニガワラ
>ピクシーさん
( ´ Д `)<んあ、いちーちゃんのクセにナマイキだよ←ジャイごま
ヽ;^∀^ノ<もー言われ慣れてショックでもなんでもねえな
ごとー様は今日もハゲハゲ言ってらっしゃることと思われます。
何だか色々ありますが、楽しんで頂けるものを書けたら、と思っております。
- 751 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/20(水) 13:14
-
・もしもこんな楽器店があれば
〔アベ楽器店〕
( ‘д‘)<ごめんくださーい
(0^〜^)<ハイ、いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか
( ‘д‘)<ギター見せてもらえますか
煤i;0^〜^)<ギ、ギター!
(;‘д‘)<な、なんですのん。なんか不都合なことでも
(0^〜^)<いえ!お客様は運がよくていらっしゃる!
さ、さ!こちらへ!
(;‘д‘)<はぁ…(他の店行けばよかったなあ)
(0^〜^)<どのようなギターをお探しで?
( ‘д‘)<せやねえ…アコギで初心者でもとっつきやすいんがエエんやけど、
ありますやろか
(0^〜^)っ<アコギでございますか…このあたりなんかはいかがでしょう。
お値段もお求めやすくなっております
( ‘д‘)<うーん…せやねえ。あ、こっちは?さっきのとよう似てますけど
(0^〜^)<そちらはセミアコなんですよ
( ‘д‘)<へえ。じゃ、こっちは…(思てたよりはマトモな店やなあ)
- 752 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/20(水) 13:14
-
―――20分後
( ‘д‘)<エエギターが見つかりましたわ。おおきに
(0^〜^)<いえいえ。さて、お買い上げの記念に当店よりお客様にサービスがございます
( ‘д‘)<へえ、なんですのん?
(0^〜^)<店長!カモーンナ!
煤i;‘д‘)<!
(・´ー`)っ♀ ←大晦日の八代亜紀のようなドレス
煤i;’д’)<ゲ!いつの間にミラーボール!
(0^〜^)<当店の店長より歌のサービスです! ←総スパンコールのタキシード(銀)
∞
(;‘д‘)<ハァ…(いつの間に着替えたんや)
(0^〜^)っ♀<赤い灯、青い灯、ネオンの巷。今日もさすらいゆく女。
∞ 惚れたあたしがバカなのよ。さあ、歌って頂きましょう!
安倍なつみで『ふるさと』!
(・´ー`)っ♀<♪東京で一人暮らしたら〜
(;`д´) /<前説と歌、全然合ってへんがな!衣装も!
(・´ー`)っ♀<あれまあ、お気に召さなかったべか
(;‘д‘)<いや歌はよろしいんですけどね、なんやの?
衣装がちょっと…
(・´ー`)<お客さんは本格派だねえ
(0^〜^)<その通りです。店長、次の歌いきましょう
(・´ー`)っ♀<そだね。じゃ、次『モーニングコーヒー』いくべか
(;`д´) /<もっとおかしいわ!
( ´д`)<…ダメだこりゃ
(0^〜^)<♪ブパパブパパブパパ〜ン
∞
- 753 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/20(水) 21:52
- 更新乙です。
いちーちゃんに似てる人って一体!?
うを〜!!!気になるぅ!
次回の更新も待ってます。
- 754 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/04/21(木) 02:10
- 更新おつかれです。
つっこみ役のれいなちゃんがいないとシゲさんの会話はスムーズに行きませんね。
こんな楽器店があったら毎日通いますよ。ナッチとひ〜ちゃんて結構なさそうでありありな組み合わせですよね。
ナッチがよっちゃんて新たな呼び名をつけたり、結構ナッチがよっちゃんをかわいがってますよね。
- 755 名前:ピクシー 投稿日:2005/04/21(木) 02:35
- 更新お疲れ様です。
新キャラ登場の予感・・・
いつのまにか、さゆえりが仲良くなってる・・・会話がスムーズじゃないですが(ニガワラ
ぼんさんとのんさんの出会いなんて、懐かしいですね。
のんさんが道に迷っている所で、出会ったんでしたね。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 756 名前:gung 投稿日:2005/04/21(木) 19:21
- 更新お疲れ様です。
今回もまたほのぼのした感じがしてすっごく素敵です。
いちーさんに似てる人…ひょっとしたら分かったかも…
んでもってAA劇場ですが…
激しく笑いました。それはもう腹を抱えるほど(爆)
次回の更新も楽しみに待ってます。
- 757 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619g 投稿日:2005/04/22(金) 01:36
- …やっと現行に追いついた
読み出して2週間
以来寝る前の酒のアテに作者さんの作品を読ませていただいてます
自分は( `◇´)川σ_σ||从#~∀~从 を愛してやまないんですが
この作品でフルに絡んでるのを見て喜び勇んでおります
読みながら作品内にでてくる音楽を聞きながら
挙句に仕事の車に持ち込んで聞く次第です
これからも頑張ってください楽しみにしてます
- 758 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619g 投稿日:2005/04/22(金) 04:52
- 喜び勇みすぎて全角記入ごめんなさい
- 759 名前:大の大人が名無しなんて。。。 投稿日:2005/04/22(金) 07:26
- すいません。落とします。
- 760 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/22(金) 07:33
- 中澤さんより平家さんのほうが余裕あるという関係が好き
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 23:19
- なんかここのさゆのキャラいいな〜。
このまま唯我独尊貫いてほしい。
ところでちょうどセミアコほしいんでぜひ安倍楽器店で買いたいんですが。
- 762 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/27(水) 16:41
- まずはレスのお礼です。
>753の名無飼育さん
ヽ^∀^ノ<ダレだよ、アタシに似てるヤツって
( ´ Д `)<だからわかんないんだってば コノヘンマデデカカッテンダケド
どうぞお楽しみに(w
>ひ〜ちゃんエッグさん
从*・ 。.・从<地球はさゆのかわいさで救うの
川;*^ー^)<だから絵里の話…(無理←※心の声)
私は月一くらいでいいです(苦笑 >楽器店訪問
>ピクシーさん
( ´д`)<ホンマに自分、初手から食いモンにつられてなあ
( ´D`)<え〜、あいぼんだって食べたじゃないれすか〜
ご存知なことに驚きました(すっげーすっげー)。ありがとうございます。
>gungさん
( ´ Д `)<ダレ?
ヽ;^∀^ノ<オマエが聞くなよ!
考えてらっしゃる人物と一緒かは分かりませんが、それはおいおい…。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619gさん
从#~∀~从ノ<おう!おおきにな!
川σ_σ||<その3人だと、『アイさが』がお好きとか
初レスありがとうございます。お名前は某板で時々拝見しております。
こちらにもどうも。推しメンの取り合わせが渋くていらっしゃる。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
>759の大の大人が名無しなんて。。。さん
すぐochiにしてくださってありがとうございます。
( ´D`)<おこころづかい、かんしゃれす
>760の名無飼育さん
( `◇´)<いやー、照れるやん
从#~∀~从<みちよのくせになあ
ありがとうございます。平家さんはうんとオトナですから(w
>761の名無飼育さん
从*・ 。.・从<ありがとう。絵里に負けないように頑張るの
川;*^ー^)<最初から勝負してないじゃん
アベ楽器店ではセミアコの他多数取り揃えております(w
お待ちしております。
さて、新章に入る前に短編をふたつばかし書かせて頂きます。
まずは海板パート1で書いた姐さん視点の『迷子』の、石川さん視点の話を。
- 763 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:45
- 今日、お母さんが死んだ。
朝目が覚めたら、お母さんは眠るように息を引き取っていた。
あんまり自然な死に顔だったので、わたしはしばらくお母さんが死んだことがわからなかった。
ゆすっても、いつまでたっても起きないのでお母さんの心臓に頬を当てて初めて死を知った。
『お母さんになんかあったらここに電話せい』
とお父さんに電話番号が書いたメモを渡されていたので、そこに電話した。
『はい?』
最初に出たのは、知らない女のひとだった。
「あ、あの、梨華です、いしかわ…りかです」
それしか言えなくて黙っていたら、いつの間にかお父さんに替わっていた。
お父さんはすぐ迎えに来てくれた。
お母さんは荼毘に付され、小さな白っぽい壷のような物にお父さんとふたりで骨を入れた。
お母さんが昔言っていた。
生まれた日に雨が降っていたひとは、死ぬときも雨が降るらしい。
『お母さんは生まれたとき雨が降ってたらしいから、死ぬときもきっと雨ね』
お母さんはそう言って笑った。
お母さんが死んだ日は、雲ひとつ無い、いいお天気だった。
- 764 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:46
- すぐ東京の中澤の家にもらわれていった。
中澤のお母さんは最初、わたしとどう接したらいいかわからないみたいだった。
意地悪をされたりはなかった。
ただ困ったようにわたしと向き合っていた。
『おまえはなにも心配すな』
迎えに来てくれたとき、お父さんが言った。
『お父ちゃんにまかせい。
おなかいっぱい食わしたる』
お父さんはそう言ってわたしの手をつないだ。
お姉ちゃんができた。
『梨華には、お姉さんがいるのよ』
お母さんがずっと前に教えてくれてた。
お父さんも、
『ちょっとキツイけど、気のエエやっちゃ』
と時々お姉ちゃんのことを話してくれた。
わたしは広告の裏に、会ったことのないお姉ちゃんの絵を描いた。
お姉ちゃんは、テレビに出てくるひとみたいに綺麗だった。
おこるとこわいけど。
わたしが学校でいじめられて帰ってくると、わたしに『泣くな!』と怒鳴って
つぎはいじめた子の家に怒鳴り込みに行った。
- 765 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:48
- 新しい学校は、友達がいなかった。
わたしはいつも友達がいない。
唯一、前の学校でお父さんが船乗りのカオルちゃんという女の子と仲が良かった。
カオルちゃんのお父さんは、外国の船に乗って横須賀の港を出て、そのまま帰って来ない。
お母さんは、知らない。
いたのかもしれないけど、カオルちゃんは何も言わなかった。
カオルちゃんは親戚だというおばさんとふたりで小さな家に住んでいた。
カオルちゃんはいつも同じ服を着ていた。
わたしもそんな感じだったので、ふたりともクラスのなかでいないものとされていた。
カオルちゃんとわたしは、遠足に行ってもクラスメートとは違うところでお弁当を食べ、
カオルちゃんはおばさんが持たせてくれたというリンゴを半分分けてくれた。
おやつは買って持っていくことになっていたが、わたしたちは買ったことがなかった。
横須賀を去るときも、日曜日だったけど誰も見送りに来なかった。
電車の窓から見たら、カオルちゃんが踏み切りのところでいつもの服を着て立っていた。
カオルちゃんは手をふらず、ちょっと怒ったような顔をしていた。
それから、カオルちゃんには会っていない。
あれがカオルちゃんを見た最後だ。
- 766 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:48
- 転校して、ちょっとたって友達ができた。
わたしはそのクラスの、いちばん大きい女の子のグループに入れてもらった。
だが、それもすぐに終わった。
同じクラスのちょっとかっこいい男の子がわたしを好きだと言ったら、
わたしはグループのみんなに口を聞いてもらえなくなった。
でも、平気だった。
わたしには、強くてかっこいいお姉ちゃんがいる。
お父さんとお母さんもいる。
お人形のリカちゃんもいる。
友達がいなくたって、大丈夫。
- 767 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:49
- 中学生になった。
同じ学校には矢口さんがいる。
矢口さんは中学は朝比奈の姉妹校で、高校からこっちに入ってきた。
真里っぺって言うと、『キショ!』って言われた。
矢口さんは入学式からしばらく経ったら金髪になった。
そのせいでいつも先生とケンカしていた。
高校に入ってお母さんが死んで。
みんなしばらくぼうっとしてた。
保田さんがうちで下宿を始めたのはそんな頃だった。
- 768 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:50
- あれはいつだったか。
矢口さんと、学校の屋上でお弁当を食べた。
私は裕ちゃんの作ってくれたお弁当、矢口さんは学校のそばのコンビニのパンを食べた。
「たくよー、まーたパツキンのことで呼び出されたよー」
矢口さんはうんざりしたようにパンをかじった。
「染めないんですか」
「もー、オイラこうなったら意地でもパツキンな。
卒業まで?」
「はあ」
決して正しくはないだろうけど、その意思の強さは素直に尊敬できた。
『3年B組矢口真里、今すぐ職員室に来なさい』
岡村先生の声だ。
ちょっと怒ってる。
「何がバレたんかなー。
先週圭ちゃんとクラブ行ったヤツかなー」
矢口さんはちょっと舌打ちした。
「そうなんですか」
「たるー。
あ、イシカワ、オイラ先行くな。お呼び出し?されてっから」
「はい」
矢口さんはたりーたりー言いながらぼりぼり頭をかいて階段を降りていった。
ひとり残り、わたしはもそもそごはんを食べた。
- 769 名前:水面 投稿日:2005/04/27(水) 16:51
-
部活が終わって下駄箱に行くと、矢口さんがフラフラしながら校舎から出てきた。
「矢口さん?どうしたんですか、こんな時間に」
矢口さんは文化系のクラブなので、帰りに会うのは稀だった。
「あー、イシカワか。
いや、実はさー」
矢口さんが言うには、やっぱりクラブのことがバレ、放課後ずっと反省文を
書かされてたらしい。
「誰か一緒に行ったのかっつーからさあ、オイラ、いいえ、ひとりでしたっつったのよ」
帰りの電車で、つり革に掴まって話した。
「どうしてですか」
「いや、圭ちゃんのこと言ったら迷惑かかるじゃん。
『大学生が高校生をクラブになんて!』とかなんとか」
「ああ」
「圭ちゃん、あのひと妙に律儀だからさー、これが分かったらガッコに侘びに来そうじゃん?」
「ハハ」
「友達に尻拭いさせるのってカッコ悪いっしょ」
矢口さんは連れの保田さんのことを言わなかったので、反省文を10枚多く書かされ、
結局原稿用紙20枚書いたらしい。
『どーせマジメに読んでないって。
てか、オイラ作文とかの本丸々写したぜ?』
と矢口さんは笑ってた。
- 770 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/04/27(水) 16:51
- 更新しました。
- 771 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/04/27(水) 18:26
- 更新乙です。
なんだか泣きそうになりました。
それにしても矢口さん、カッケー!!こんな先輩欲しいなぁ。
次回の更新も待ってます。
- 772 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/04/27(水) 23:50
- 更新おつかれさまです。
矢口さんとガキさんは、イジりやすいので岡村先生に特に気に入られています。
矢口さんと梨華ちゃんの先輩後輩は一番しっくりきますね。
ひ〜ちゃんが一時期金髪にしてたのは、師匠の矢口さんの影響もあったんでしょうか?
- 773 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/28(木) 00:35
- 更新お疲れ様です
矢口さんは自分の中の基準をしっかり持ってる感じですよね
社会的には間違っていようが自分が正しいと思うならそれを貫き通す強さを感じます
- 774 名前:ピクシー 投稿日:2005/04/28(木) 01:12
- 更新お疲れ様です。
本編では、時折触れられたヤグの学生時代・・・
こんな感じだったんですね。
たま〜に、最初の方とか読みなおしているんですよ。
HPの方の短編とかも含めて・・・<ぼんさん、のんさんの出会いについて
何度読みなおしても良いですね。
でもって、「ベース弾き通」を目指します(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 775 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619g 投稿日:2005/04/28(木) 19:32
- わ〜い交信だ〜
…作者さんおれの事知ってるんだ…あぁ恥ずかしい
( `◇´)<アホか!!そんな恥ずかしいコテ名乗っといて今更なに言っとんねん
从#~∀~从<ホンマや!!某板で見せてるあんたのアホコテ目立ちすぎじゃ
川σ_σ||<世間って狭いんですね悪い事できないですね
○ ・ω・ ○<そこまで言わんでも
ってな訳でココに居座る事が決定しました
「アイさが」大阪では適当な放送しかしてくれなかったんですよね〜
更新頑張ってください楽しみにしてます
- 776 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/07(土) 14:26
- 以前、矢口さんと絵本を作ったことがあるという人のブログで
彼女の事について
矢口さんは忙しくて時間が取れない中、やっと会えたときには
どんな絵本にしたいかという事を、表現方法の微妙なニュアンスにまで
自分の明確な意見を持っていて、中でも
「説明っぽい文章にしたくないんですよね」
という 言葉が、ものかき業十数年のその方の
「目からウロコ」の言葉で、
しかも具体的に、どのあたりが説明っぽくなっているか。
ということまで説明してくれたそうです。
しかもこの言葉は今、その方が歌詞を書くにあたって
とても役立っている事だそうで
絵も全部、自分で描いてくれて、サササッと
マジックで書くその線の潔さに関心しました。
と書かれているのを読んで、矢口さんならどんな状況でも大丈夫だと
安心したのをおぼえています。
そして今回の金髪矢口さんが、妙にこの文とシンクロしてしまいました。
- 777 名前:水面 投稿日:2005/05/11(水) 13:21
-
矢口さんがクラブ行きがバレ、放課後残って反省文を書かされたことは、
何故かすぐ保田さんの耳に入った。
保田さんはすぐさまタンポポに行き、
「ちょっと矢口!なんでアタシのことを伏せたのよ!」
とお店のお手伝い中の矢口さんに迫った。
「えー。
だーって、なんかよけーややこしいコトなりそうだったし」
矢口さんはそう言ってすっとぼけた。
「だからってひとりで罪カブってんじゃないわよ!」
「もーいいじゃん。
ね、オイラ反省文書いてもー終わったし?
20枚だぜ、20枚!
ちょっとした論文っしょ?」
「バカ!」
保田さんはカッカして帰って行った。
たまたまそこに居合わせたわたしは、なんというのか、
初めて『友情』というものを見た気がした。
わたしには、怒ってくれる友達がいない。
かばったり、かばってくれる友達がいない。
初めて、孤独というものを感じた。
- 778 名前:水面 投稿日:2005/05/11(水) 13:22
-
「ねーさーん」
平家さんは、お姉ちゃんのことが大好きだ。
芸能人なのに、平家さんはちっとも気取ったところがない。
わたしにも、よくしてくれる。
みんなに優しい。
でも、お姉ちゃんには特別だ。
平家さんにいつか言われたことがある。
「梨華ちゃんはエエなあ」
って。
「どうしてですか」
「姐さんに一番愛されてるから」
「そう…ですか?」
「時々、梨華ちゃんになりたいて思うわ。
そしたらあのひとの一番になれるしなあ」
平家さんは穏やかに笑った。
お姉ちゃんも多分平家さんが好きだ。
自分では、気付いてないだろうけど。
もし、お姉ちゃんが平家さんのものになったら。
わたしは、またひとりになってしまう。
- 779 名前:水面 投稿日:2005/05/11(水) 13:22
- いつだったか。
ああ、この家に来てしばらく経った頃だ。
テレビやマンガでヒロインには大抵恋人がいるのが不思議で。
お姉ちゃんに『なんで恋人を作るの?』と聞いたことがある。
お姉ちゃんはこう言った。
『大きぃなってお父ちゃんやお母ちゃんに甘えてたら
恥ずかしいやろ。
だから、お父ちゃんとお母ちゃんのかわりに甘えられるひとを探すんや』
お姉ちゃんの答えはある意味真理だった。
でも。
もしそれが本当で。
お姉ちゃんが平家さんを受け入れたら。
わたしは。
ひとりになってしまう。
- 780 名前:水面 投稿日:2005/05/11(水) 13:29
-
「イシカワって実のお母さんは亡くなられたんだっけ」
ある日、一緒に帰ってるとき、矢口さんとこんな話になった。
「ああ、はい。
あたしが10歳の時に死んで、それから中澤の家に来ました」
「そっか」
矢口さんは、そう言って両手で電車のつり革を掴んだ。
夏だったので、矢口さんの半袖の腕がすっと伸びて、手首にカラフルな
Baby−Gの時計があったのを覚えてる。
「オイラもおとーさんってナマで見たことない」
不意に、矢口さんが言った。
視線は窓の外に向けたままだった。
「え…」
「や、なんか写真は一枚だけ残ってんだけどさ。
いかんせんナマで知らないから写真見てもピンとこないのよ」
「そう…ですか」
そういえば、矢口さんのお父さんのことを誰も言わないのに、今になって気付いた。
お母さんはタンポポに行けば見かけるけど。お父さんを見たことがないと思ってはいたけど。
わたしはどうしようもなくて下を向いてしまった。
「や、おかーさんもなんも言わないしさあ、死んだおじーちゃんおばーちゃんも
なんも教えてくれなかったし、オイラおとーさんの情報疎いのよ」
「…はい」
「察するに、ヤグチが生まれる前後くらいに出て行ったカンジ?」
「…」
「おかーさんとかすげーなと思う。女手ひとつだったし。
まあ、オイラひとりっこだけどな、そんでも子供育てるってなみたいてーじゃないし」
「ええ」
「まあ、そうゆうこと」
矢口さんはそれっきり黙ってしまった。
- 781 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/05/11(水) 13:36
- 更新しました。
ヤグチ、大人気
(〜^◇^)/
(;^▽^)<主役はあたしデスヨー
そんでもっていしかーさん卒業おめでとう。
あの自信なさげだった痩せた女の子が、みんなに「キショ!」と愛される
くらい大きな存在になったことに年月を感じます。
これからもセンスなくてキショくてムダに凄い、いしかーさんでいてください。
(;^▽^)<誉めてませんよー
レスのお礼です。
>三日月ハウスさん
( T▽T)<ありがとうございますー
(〜^◇^)<キャハハハハ!先輩なったらビシビシしごくぜい!
初レスの方でしょうか。ありがとうございます。いしかーさん、今は幸せなので。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;^▽^)<岡村先生にはよくイジられましたよねー
(;〜^◇^)<おう、まったくな
ふたりとも3年次はB組で担任は岡村先生だった模様です。で、イジられまくりでした。
>773の名無飼育さん
(〜^◇^)/<お!ありがとう!
(;^▽^)<ホントによくケンカしてましたよねー
小器用なようでどっか不器用なのがヤグで、そこも彼女の魅力と思います。
>ピクシーさん
( ^▽^)<先生とはよくケンカしてたけど人気者だったんですよー
(;〜^◇^)<まあ、4位だったけどな←ちょっとショックだったらしい
HP短編までありがとうございます。ヤグは不良ではないんですが、結構やんちゃだったんです。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619gさん
( `◇´)<まあ、中の人も某板ちょこちょこ行ってるしな
川o・-・)ノ<好きなスレは某飯田さんの某ハンタースレです
アイさがはいきなり打ち切りになり、翌週から確かパチンコの番組になりましたね(苦笑
>776の名無飼育さん
( ^▽^)<そうなんだって、真里っぺ!
(〜^◇^)<真里っぺ言うな!
たまたまその本を持ってまして読み返してみたのですが、なるほど、と思いました。情報ありがとうございます。
- 782 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/05/11(水) 13:38
- ・おもいでのアルバム
『いつのことだかおもいだしてごらん』
『あんなこと』
(* ^▽^)<チャオ〜! (´▽`∬∬グッチャーナンテアリエマセンカラ
『こんなこと』
うす江>从T▽T) (´ー`*从<おねえさま
『あったでしょう』
リカちゃんありえへんくらいピンクやな〜>( ‘ д‘) (^▽^;)<え〜、そうお?
『うれしかったこと』
合格を告げられて遠くに行ってる→( °▽°) ひとりめ、イシカワリカ>
『おもしろかったこと』
トメ子止めるな!>( ` ▽´)(T〜T0)<いいえトメ子止めます! (・e・*)←モーヲタモード全開中
『いつになっても』
ポジテブ!>川‘〜‘)‖(T▽T;)<ポジテブ!
『わすれない』
なっちって呼んでみてもいいっしょ>( ●´ー`)(^▽^;)<え…無理
- 783 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/05/11(水) 13:39
- 『いちねんじゅうを』
宝塚のビデオ見るがし>川’ー’)っ□ (^▽^;)<エ、エート… ←実はあんまり興味ない
『おもいだしてごらん』
( ^▽^)从*・ 。.・从 <<ヨシ!今日もカワイイ! (VvV从<梨華ちゃんキショイ
『あんなこと』
从#~3~(;^▽^)オサケクサイデスー (・-・;川
『こんなこと』
( `.3´(;^▽^)ノ ヒエー (´ Д `;)サイナンダネエ
『あったでしょう』
( ノ▽^)アチャーミー
『もものおはなも』
( *^▽^)<花よりキレイなワ・タ・シ!ウフ♪ ( ´D`)←放置してる
『きれいにさいて』
(;〜^◇^)ゼンシンピンクハヤバイッテ(^▽^;)エー、カワイクナイデスカ?←マネキン買い
『もうすぐみんなは』
ウフッ>( *^▽^) (´ ヮ`*从 ←石ヲタ
『いちねんせい』
( T▽T)<人間って、悲しいね
『もうすぐみんなは』
( *^▽^)マタスタートネ!(^〜^0)リカチャンハムダニハリキルカラナ〜
『いちねんせい』
从,,^ ロ ^)( *^▽^)川 ´^`)<<<び・ゆうーでーん!
- 784 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619g 投稿日:2005/05/11(水) 20:24
- 更新だ〜
ヤグカッコイイ
圭ちゃんの情報源が気になるこの頃
思い出のアルバムっていい歌ですね〜ガキの頃から好きな歌です
しかしテレビ○阪はハロプロにやさしくないですよね
作者さんはあのスレにいるんですか〜
( `◇´)<あんた!!またココに居座ってんのか!!
从#~∀~从<作者さんに迷惑やからはよ家帰り!!!
川σ_σ||<あの面白くないブログいい加減に更新してください!!!
○ ・ω・ ○<ヤダ!!作者さんの作品楽しんでるから邪魔すんな!!
( `◇´)从#~∀~从<お前ちょっと裏来い!!!
ドカッバキッボコッ…
川σ_σ||<大変ご迷惑おかけしました更新頑張ってください
- 785 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/05/11(水) 21:29
- 更新お疲れ様です
矢口さんの新しい事実が発覚ですか
なんだか矢口さんも結構重い過去を背負っていたんですね
思い出のアルバムを聴くと
いつもなぜだか涙が出そうになります
次回の更新も待ってます
- 786 名前:ピクシー 投稿日:2005/05/12(木) 00:13
- 更新お疲れ様です。
やんちゃなヤグ。4位とはいえ、充分目立ってた証拠ですね。
本編中だと、辻加護紺野といったあたりも、かなりの知名度があるみたいですが。
HPは時折拝見しております。
おじゃマルが、登場人物の部屋に突撃しているやつもしっかり見てました。
故に、中澤家の家の配置とかもなんとなくわかります。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 787 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/05/12(木) 00:50
- 更新おつです。
そっか、だから梨華ちゃんは今はひ〜ちゃんに甘えまくりなんですね。
おもいでのアルバム、いいですね。アルバムといえば私はフジカラーの古田さんのCMみたいな感じが好きです。
( ^▽^)<また次もモーニング娘。になりたいですね。でも、キショいキャラはもういいかな?
ど〜うか正夢〜♪
ヒトミチャン!( *^▽^)(T〜T0)リカチャン!
ふだんめったに泣かないひ〜ちゃんが目を潤ませてましたから、ほんとに梨華ちゃん大好きなんだなあと思いました。
- 788 名前:水面 投稿日:2005/05/18(水) 14:13
-
「イシカワ、これ聴く?」
保田さんは、よくCDを貸してくれる。
洋楽の聞いたこともないグループのとか。
同じ下宿人の明日香さんも、よく難しい本を貸してくれる。
「あの」
わたしは保田さんからCDを受け取って、気になってることを聞いてみた。
「なに?」
保田さんはパソコンの画面から視線を外し、わたしの方を向いて眼鏡を外した。
「あの、この前の矢口さんのことなんですが」
「うん」
「クラブのこと、どうして分かったんですか」
「ああ」
保田さんはちょっと笑った。
保田さんの話によると、保田さんがクラブイベントにバンド仲間と行くと、ウチの学校の子たちが来ていて、
矢口さんが放課後残された話をしていたらしい。
『ねえ、今のハナシ、詳しく聞かせてくんないかな』
『て、あ…もしかしてムーンフェイスのケイ!?』
相手がウチのバンドのファンらしいから、あっさり話してくれたわ。
保田さんはそう言って笑った。
- 789 名前:水面 投稿日:2005/05/18(水) 14:13
-
「そうだったんですか…」
「まったく、あの子はなんでもかんでも一人で背負いすぎるのよ」
保田さんはそう言ってまたパソコンに向かい、キーボードを叩いた。
眼鏡越しの目は、少し怒っていた。
「そうですね…」
わたしはそのまま、黙ってしまった。
保田さんは、やっぱり学校に乗り込もうとしたところを、中澤ハイツの住人・石黒さんに止められて
断念したらしい。
『ヤグチの気持ちも汲んでやんなよ』
悔しいけど、彩っぺのほうが大人だわ。
保田さんはぼそっと呟いた。
この下宿は、主に地方から出てきた高校生と大学生をお世話している。
保田さんは千葉から出てきた。
明日香さんは東京出身だけど学校が遠いのでここにいる。
早い人は一年で出て行ってしまう。
入れ代わり立ち代わり。
みんな、いつかここから出て行ってしまう。
時々、それがひどく心細い。
- 790 名前:水面 投稿日:2005/05/18(水) 14:13
- ある日。
放課後、日直だったわたしは提出物のプリントを集めて職員室に持っていった。
岡村先生が、副担任の佐野先生と何か話をしていた。
自分のクラスの先生の机にプリントを置いて、何となく聞くでもなく聞いてみる。
「矢口さん、この前の模試の結果もよかったですし、もったいないですねえ」
佐野先生が言った。
「んー。まあ、アイツは将来しっかり考えとるしなあ」
岡村先生は椅子の背もたれにもたれて、ギシギシいわせた。
「『専門行ってケーキ職人なる』て、アイツが一番目標定めとるしなあ」
「大学は行く気がないって言ってるんでしたっけ」
「『大学で勉強したいことなんてない』てなあ、いや、耳痛いわ」
岡村先生はそう言って笑った。
その日の帰り。
駅で、矢口さんのお母さん――タンポポのおかみさんに会った。
「あら梨華ちゃん、おかえりなさい」
「おばさん、こんにちは。
どこかお出かけだったんですか」
おばさんは、よそゆきの服を着て、日傘を持っていた。
今日は、タンポポは定休日のはずだ。
「いえね、うちの真里が行きたいっていう専門学校の見学に行ってたのよ。
どんなところかと思って」
話しながら、商店街を歩いた。
「どうでした」
「まあ、私の頃と大分違うけど、あの子も行きたいって言ってるし、いいんじゃないかと思ってね。
みんな一生懸命お菓子を作ってるのがね、よかったのよ」
「そうですか」
途中でおばさんと別れて、家路につく。
- 791 名前:水面 投稿日:2005/05/18(水) 14:14
- 晩ご飯のとき。
「おまえ、進路とか考えとるか」
お父さんに急に言われた。
「お父ちゃん、梨華はまだ高校入ったトコやで」
横でおねえちゃんがお茶を煎れながら苦笑いしてた。
「学費のことなら心配せんでエエぞ」
お父さんはそれだけ言ってお風呂に入りに行った。
「裕ちゃん」
「なんや」
「うん…なんでもない」
おねえちゃんが煎れてくれたお茶を飲んで、しばらく考え事をした。
- 792 名前:水面 投稿日:2005/05/18(水) 14:14
-
保田さんに借りてたCDを返しに行く。
「もう聴いたの?」
保田さんは椅子に座ったまま振り返って笑った。
「なにをしてるんですか」
保田さんの机には、手製らしい教材プリントが数枚あった。
「ん?カテキョの採点」
「ああ、そういえばバイトしてたんですね」
「うん、めちゃデキのいい子だからね、アタシも日々勉強よ」
プリントと一緒に、『小5算数』の参考書もあった。
「コンノっていってね、おっとりしてておとなしい子なんだけどかなりキレるのよ」
「ええ」
「近所の学習塾に通ってたらしいんだけど、もう中3レベルの数学が分かってるから
かなり退屈だったみたい」
「へえ。すごいですね。でも、5年の参考書…」
「うん、それがね」
保田さんは参考書を持って苦笑いした。
「ヘンにくそまじめなトコがあって、『基礎からやり直します』って言ってんのよ。
だから、こうやってプリント作ったりしてるワケ」
「なんだか楽しそうですね」
「うん、教えがいがある。
結構慕ってくれるし」
保田さんは心の底から楽しそうだった。
- 793 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/05/18(水) 14:16
- 更新しました。
ひっそり名前だけアノひとが登場。
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619gさん
川o・-・)<中の人は割にネタスレによくいる模様です
( ´D`)<2ちゃんでびゅーはやすだのしょうすれなのれす(たぶん)
みっちゅーコンビになら裏に呼び出されてボコられてもいいです(いやなんもしてないですけど)。
大阪という地自体がハロプロとヲタに(ry
>三日月ハウスさん
(〜^◇^)<ま、色々あったけど楽しかったよ。圭ちゃんともよくつるんでたし?
( `.∀´)<アンタなっち来た頃、「マジカワイイ!ヤバイ!」ってウザかったわよね
重いといえば重いですが、ヤグなりに納得して消化している模様です。
「おもいでのアルバム」は確か6番まであるんですが、どれも過不足なくいい歌詞だと思います。
>ピクシーさん
川o・-・)ノ<わたくしの渾身のレポまで!完璧です!
川o・-・)<あ、ちなみに辻加護さんはそれぞれ熱烈なファンクラブがございます
ヤグは感動娘(by ハマグチェ)なので学校行事では盛り上げ役だったのです。
辻加護とよくつるんでる連中はそれぞれ校内でも人気者で目立ってます。
>ひ〜ちゃんエッグさん
川o・-・)<フジカラーといえば初期の綾小路嬢と店員の岸本加代子のものがオモシロかったですね
(〜^◇^)<いやいや、そのネタ若者が分かんないから
ここのいしかーさんは他人との距離の取り方がいまいち分かんない人なんです。
これからもいしかーさん(本物)はありえないくらいセンス悪くて、キショイキャラでいてほしいです。
- 794 名前:ピクシー 投稿日:2005/05/18(水) 16:37
- 更新お疲れ様です。
本編の影というか、伏線がチラホラ見えますね。
というか、小5で中3の数学って・・・完璧すぎです(ニガワラ
熱烈ファンクラブですか・・・
本編の中だと、誰が1位になるんでしょうね・・・
目立っている人物はたくさんいるだけに。
意外な結果になりそう・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 795 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/05/18(水) 19:29
- 更新お疲れ様です
矢口さんみたいにやりたいことが決まっている人を
うらやましく思います。
やりたいことが分からずに闇雲に勉強している状態なんで…
『大学で勉強したいことなんてない』か…
一回言ってみたいです
次回の更新も待ってます
- 796 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619g 投稿日:2005/05/18(水) 20:17
- 更新だ… 圭ちゃんカッコイイ
ヤグの将来見据えた進路の考え方にふと自分の
学生時代を重ねてしまいました
やっぱり選んだ道に後悔はしたくないですよね
从#~∀~从<な〜に思い出にふけってんねん!!!
( `◇´)<あんたの場合いける大学なかっただけやろ!!
川σ_σ||<あなた専門学校で留年寸前でしたよね?
○TωT○<…ヒドイ!!ヒドイわ〜
自分はまだまだ大阪も捨てたもんじゃないと思ってるんですがね
次回更新楽しみにしています
- 797 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/05/18(水) 23:40
- 更新お疲れ様です。
ちなみにこんこんも転校して数日で辻加護さんみたいな大きなファンクラブができたんですよね?
れいなちゃんが会長なんでしょうか?
現実でもカオリン、ケメコ、ヤグ、ナッチの姉さんズを抑えて、娘では首席のこんこんの天才っぷりは折り紙つきですよね。
しかし、あのときのナッチは最高におもしろかったです。
あそこからガキさんとマコがキャラ開花したんで岡村先生はいい先生ですね。
- 798 名前:一読者 投稿日:2005/05/21(土) 00:39
- >>小5で中3の数学
小学校の時クラスで一番でもなんでもない私が
4年生で公文式を始めて6年生の終わりには中3の因数分解とか
やってましたから
学年トップを取ったこともあるリアル紺野さんの頭脳なら
小5で中3の数学は十分可能だと思われます。
- 799 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/23(月) 00:57
- 更新お疲れ様です
やりたい事がきまらずに進学した自分にやぐっつぁんの言葉は耳が痛いっす・・・
- 800 名前:水面 投稿日:2005/06/01(水) 18:15
-
子どもの頃、よく海を見に行った。
家から走って行けたから。
港に行くと、外国の船が出るのをよく見る。
水平線の彼方に船が消えて行くのを、飽かずに眺めてた。
海は、どこまでも青くて。
海は好きだけど、自分の顔が映るのは嫌いだった。
それは、今もだけど。
自分の醜さを、見せ付けられるようで嫌なのだ。
水面に映る自分の顔は、ゆらゆら揺れていた。
この家に引き取られてから5年経った。
いつも優しくしてもらってるし、着るものにも困ったことがない。
いつも、おなかいっぱい食べさせてもらってる。
お母さんとふたりで暮らしてた頃からは考えられない。
だから、時々心細くなる。
あたしは、本当にここにいていいのだろうか。
- 801 名前:水面 投稿日:2005/06/01(水) 18:15
-
元々、わたしは愛人の子という立場なのだ。
本当なら、母が死んだ時、施設に引き取られてもおかしくない。
中澤の家のひとたちは、信じられないくらい懐が広い。
わたしは子供の頃、引き取られてからも学校で「愛人の子」といじめられはしたものの、
新しい家族にはとてもよくしてもらってる。
分かってもらえるだろうか。
夕食の時などにふと、お父さんとお姉ちゃんがなにか楽しげに話をしてると、
不意に「わたしはここにいていいのかな」と思うことを。
- 802 名前:水面 投稿日:2005/06/01(水) 18:15
-
中澤の家に引き取られた次の夏、一家で民宿に泊まりに行ったことがある。
お父さんの知り合いの人がやってる民宿で、敷地の中に、枯れ井戸があった。
『梨華、ほたえて井戸に落ちんなよ』
お姉ちゃんがそう言って、民宿のおばさんが水撒きするのを手伝いに行った。
わたしはお姉ちゃんに買ってもらったアイスキャンディーを持って、恐る恐る井戸に近づいてった。
中を覗くと、ぞっとするくらい暗い世界が広がっていた。
昼間なのに、底がまるで見えない。
わたしは足がすくんで動けなくなった。
「…あ!」
汗ばんだ手元から、するりとアイスキャンディーが落ちて闇の中に吸い込まれてった。
本当に、吸い込まれるように。
わたしは頭の中が真っ白になり、気がついたらわあわあ泣き喚いていた。
『どしてん』
お姉ちゃんが、抱きしめてくれて優しく尋ねてくれた。
しゃくりあげながら、アイスキャンディーを落としたことをなんとか伝えた。
すごく暑い日で、汗だくだったのを覚えてる。
お姉ちゃんは柔らかくて、いいにおいがした。
『アイスくらいまた買うたるがな。泣きな』
お姉ちゃんはわたしの手を引いて、また近くのお店に連れてってくれた。
- 803 名前:水面 投稿日:2005/06/01(水) 18:16
-
あの暗い井戸を見てたら、横須賀の海を思い出したのだ。
自分の顔は映らなかったけど。
わたしは、あの枯れ井戸みたいなものかもしれない。
いっぱい愛情をもらっても、何処か信じられないでいる。
いっぱい水を湛えた井戸から、人は必要な分の水を汲み上げる。
わたしには、汲み上げるものがない。
それどころか、水が入ってきても、渇ききってしまう。
それを、子供だから言葉にできないけど、心底怖くなって怯えてしまったのだ。
東京へ帰る日、民宿の隣の部屋にお人形が忘れてあった。
『あらまあ、朝早く発った人たちのだわね。
女のお子さん一緒だったし。
さて、どうしたものか。今から連絡してもまだ帰ってないだろうし』
おばさんが困っていた。
『梨華も忘れモンないな?』
お姉ちゃんが手を引いて言った。
わたしは黙って頷いた。
一度は大好きになったものなのに、どうしてひとは置いていったり、捨てていったりするのだろう。
- 804 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/01(水) 18:18
- 更新しました。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
川o・-・)<本当は高校レベルも行ってたんですけどね、保田先生には見抜かれてました
(〜^◇^)<オイラが聞くところによると、高1の中では辻加護のデッドヒートらしいよ
保田さんはちょうどこの頃、ある優秀な小学生のカテキョをやっておりました。
彼女が未だに「先生」と敬称をつけるのはこの頃の名残なのです。
>三日月ハウスさん
川o・-・)<中の人は勉強にがっつきすぎて周りに引かれてましたから
(;〜^◇^)<時にはドン引き?
誰しも矢口のように目的がはっきりしてるわけではないですよ。
したいことって案外、一歩引いたら見えたり見えなかったりするんでは、と逝ってみるテスト。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆mOXY619gさん
川o・-・)<中の人も卒論落としてたら留年間違いナシでした
(〜^◇^)<語学もギリギリで「可」だし、危うい橋渡ってんな〜
当方ヤスヲタなのですが、ここのこころ定期的に大阪ローカルで彼女を見る機会に
恵まれております。目下の楽しみは「プリピン」とあの迷作「サイしば」の新作待ちです。
>ひ〜ちゃんエッグさん
川o・-・)<期末テストの安倍さんといえば「カニ脚のペン」ですね
(〜^◇^)<誰もそんなトコ覚えてないから
れいなは残念ながら会長ではありません(笑)。紺野先生のFCは辻加護のより濃ゆいヲタが多いです。
私は岡女でなっちが描いた「燃えてる消防署」(BY 矢部)の地図記号が妙に好きです。
>798の一読者さん
(〜^◇^)<小6で因数分解か〜。スゴイね!
川o・-・)<数学はハマると面白いですよね
当方、数学は日本史と古文の次にダメで(でも何故か文系)そういう経験がないので勉強になりました。
情報ありがとうございます。
>799の名無飼育さん
(〜^◇^)/<ドンマイドンマイ!
川o・-・)<長い人生です、自分だけの道をゆっくり探されてもいいと思いますよ
どういう学校に通われてるのかは分かりませんが、学校で学ぶっていうのは貴重な体験ですよ。
社会に出ると頓に思います。
- 805 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/06/01(水) 21:56
- 更新キタ〜
‥なんか切ないっすね
薄暗い水面って怖いですよね‥自分も夜釣りに行ったときに
落ちた事があって一時トラウマになった事を思い出しました
从#~∀~从( `◇´)<どんくさいだけやん
○TωT○<…
川σ_σ||<ちゅ〜ねんいいですよね〜月金は仕事そっちのけで見てます
○TωT○<…圭ちゃん完全レギュラーキボン‥フリピン待ち中
次回も楽しみに待ってます
- 806 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/06/02(木) 00:48
- 更新お疲れ様です。
夜の海を見ているとなんとなく引き込まれそうになります。
何かが呼んでいるんですかねぇ?
ま、呼ばれても行きませんけど(笑)
次回の更新も待ってます。
- 807 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/06/02(木) 01:57
- 更新お疲れ様です。
切ないですね。早く石川さん元気になって欲しいです。
<川o・-・)<長い人生です、自分だけの道をゆっくり探されてもいいと思いますよ
これすごい好きです。こんこんさん師匠と呼ばせてください。
- 808 名前:ピクシー 投稿日:2005/06/02(木) 03:28
- 更新お疲れ様です。
せつない・・・とことんせつない。
人気投票:やはり穴は来ず、本命が上位ですか。
学問の方では、コンコンとぼんさんのデッドヒートみたいですが。
ちなみに当方も文系ですが、数学は日本史、生物の次に好きでした。
ちなみに一番嫌いなのは、現代文(文系なのに)。特に小説問題とか。
古典は好きでした。有名な古典文学は、すべて読んだような気がする。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 809 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/10(金) 00:05
- 更新お疲れ様です
最後の一文は心に響きました
特にペットとかの場合これは本当に思いますね
同じ動物を飼っている人間としてはちょっと信じられません
- 810 名前:水面 投稿日:2005/06/15(水) 16:04
-
「イシカワさ」
保田さんなんかは苦笑して言う。
「アンタ、ひとに遠慮しすぎだって。
もっと、甘えてみなよ」
わたしは黙って頷くほかなかった。
わたしはもう、枯れ井戸に怯えて泣いてるような子供じゃない。
水面に映った自分の顔は、やっぱり嫌だけど。
いつまでも、泣いてばかりじゃ駄目だ。
お姉ちゃんがいなくても、一人で生きていけるようにならなきゃ。
わたしがこう思い出したのは、いつだったか。
暗く深い井戸には、落ちないようにしなきゃいい。
そう、それだけのことなんだ。
わたしは物事を悪い方に考えすぎるんだ。
死んだお父さんにもよく言われた。
怖いものには、手を伸ばさなきゃいいんだ。
そう、それだけのことなんだ―――。
- 811 名前:水面 投稿日:2005/06/15(水) 16:05
- それから時は過ぎ。
あたしは大学生になった。
暗く物を考えるところは変わってないけど、恋人もでき、どうにか毎日暮らしてる。
―――雨の日の午後に、川辺に佇んで何となく水の流れを眺めていた。
折からの激しい雨で、ごうごう音を立て濁流を巻いて水は流れゆく。
「イシカワ、イシカワ」
後ろから肩を揺すられて、あたしははっと我に返った。
「あ、飯田さん…」
「なにしてんの、オマエ?
ぼーっとしてさ。交信?」
「そんな…飯田さんじゃあるまいし」
困ったのでとりあえず笑って見せた。
「雨で水かさ増してるらしいからあんまし近づいたら危ないべ?
ほれ、帰ろ帰ろ」
飯田さんの真っ赤な傘が眩しく映った。
飯田さんの大きいけど細い手があたしの腕を掴む。
―――あたしはまた振り返る。
そこにはただ、水が湛えている。
そう、それだけのことなんだ。
たぶん、きっと。
- 812 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/15(水) 16:07
- 短編「水面」はこれで終わりです。
次回からもうひとつの短編を書かせていただきます。
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;^▽^)<中の人も海で溺れて死にかけましたよねー
(;〜^◇^)<川でも流されたらしいぜ?
夜の海は怖いですよねー。ガクブル(AA略 どうぞお気をつけて。
「ちゅ〜ねん」で八木アナはヤスにはベタベタするのに姐さんにはやんない件について(w
>三日月ハウスさん
川o・-・)<♪誰もいない海〜ふたりの愛を確かめたくて〜
(;〜^◇^)<トシ誤魔化してるだろ?
そうそう、夜の海は引き込まれそうで怖いんですよね。綺麗だけど。
そうですね、呼ばれても行かないことですね(w
>ひ〜ちゃんエッグさん
川o・-・)<わたくしに弟子入りするというのなら、まずは雑巾がけからですよ?
(〜^◇^)/<オマエは誰だよ!
こんこんさん、もう人生を50年は生きたかのようなことを言ってます(w
いしかーさんは割と恒常的に渇いたところのある人なのです。
>ピクシーさん
( ´D`)<あさ美ちゃんはこゆいヲタがおおいのれす、のんなんかめじゃねーのれす
川o・-・)<辻さんのファンの方には敵いませんよ
高3の中では岡田さん、中3ではシゲさん、亀井、ガキさんが人気の模様です。
国語は現代文で点を稼いでましたねー(ニガワラ 国文に入れたのが今でもナゾです。
>809の名無飼育さん
( ´ Д `)<ごとーも実家のわんこたちはだいじだな〜 ニャンコモスズメモ
(;`.∀´)<アンタどんだけペット飼ってんの? マアヒトノコタアイエナイケド
うちで飼ってたネコたちは死期を悟ったのかある日忽然と姿を消しましたが、
やっぱり辛かったですね。何か感じ取ってくださって嬉しいです。ありがとうございます。
- 813 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/15(水) 16:08
- さて、今回からは本編に名前だけ出てきたアノひとが主役です。
タイトルはRCサクセションの曲より。
- 814 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:13
- 「あーすかー。あーすーかー」
あの声は。
中澤ハイツの彩っぺだ。
あたしは読みかけの本を置いてドアを開けた。
「まーた本なんか読んで。
ホラ、若いんだからもっと外で遊ばないと。いくよ」
「給料前でお金、ないんだけど」
「圭ちゃんの運転でドライブだから。ほらほら」
渋々、外に出て行く。
あたしの名前は福田明日香。
一応高2ということになっている。
ちょっとワケありで家を出て、この中澤家に下宿している。
で、バイトしながら単位制の高校に通っている。
ワケといっても大したコトはなく。
全日制の高校をやめ、編入した単位制の高校が自宅から遠く、
ここでお世話になっている。
- 815 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:20
- 運転は圭ちゃん、助手席に彩っぺ、後部座席にはあたしとカオリ。
車は一路横浜に進む。
「梨華ちゃんは?」
「イシカワはテニスの練習試合だってさ」
圭ちゃんが言った。
そう言えば、朝早くから出て行ったな。
「そう」
保田圭。有名女子大に通う19歳。大学2年。
同じ2階の下宿人。
部屋ではいつもタバコをくゆらせながらジャズとかロックを聴いて小難しい本を読んでいる。
やたらめったら女にもてる。
興味深い人物だ。
石黒彩。21歳。北海道出身。
短大卒業後、バイトしながら服飾系の専門に通ってる。ロッカーらしい。
あたしには分からない、横文字のメーカーのベースを大切にしている。
飯田圭織。美大の1年生。彩っぺと同郷。美人だがなにを考えてるのかたまに分からない。
絵描きというのは、こういうもんなんだろうか。
運転席の人に惚れている。
「けいちゃ〜ん!カオの分のおにぎり取らないでよお!」
…しかしどうしてこんな分かりやすいアプローチに気付かないんだろ。
- 816 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:28
-
学校のない日はバイトして、どっちもない日は下宿で課題やって好きな本を読んで。
贅沢はできないけど、いい生活だ。
下宿の食事は結構美味しいし。
パン屋さんで働いているので、余ったパンがもらえたりするし。
たまに矢口と朝の電車が一緒になる時がある。
矢口は駅前のタンポポという喫茶店のオーナーの娘さんだ。
高校を出たあと製菓系の専門に進み、日々ケーキやパイをこねたり焼いたりしてるらしい。
「専門出たら家継ぐの?」
ある日、何の気なく聞いてみた。
「んー、多分ね。
お母さんやめたらオイラしかやる人いないし」
「そっか」
矢口はスイスに留学してお菓子の勉強をしたいという夢もあって、かなり迷ってるようだ。
華やかな世界に出て行くか、地元に残るか。
矢口はいつも考えていた。
「明日香は?大検受けて留学すんの?」
「うん、そのつもり」
「そっか」
「うん」
矢口とは何も言わなくても分かり合ってたと思う。
ふたりとも夢があって。
矢口はケーキ職人、あたしはイギリスに留学して。
本当にこの頃は夢ばかり追っていて、それでいっぱいいっぱいだった。
- 817 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:35
- 彩っぺが中澤家に用があってやって来た。
「圭ちゃん、いる?部屋がやけに静かなんだけど」
あたしの部屋のドアから顔をのぞかせて言うので、一緒に行った。
「圭ちゃん、あのさ」
彩っぺがノックして戸を開けると、圭ちゃんは真っ裸で、
同様に裸な女の子にベッドで腕枕していた。
…真っ昼間からなにやっとんだ。
―――ウチらはそのまま戸を閉めて、
「…カオリには内緒な」
「うん」
という会話のみ交わした。
- 818 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:37
- その数日後、あたしが圭ちゃんに数学を教えてもらおうと部屋に行ったときだった。
「そのへんに座っといてよ。ケーキもらったからお茶入れるわ」
圭ちゃんはそう言って台所へ行った。
ベッドが目に入る。
この前の情景を思い出し、そこに座ろうと思ってやめた。
「ベッドにでも座ってればいいのに。座布団もないのに床にしゃがみ込んで」
お盆を運んで来た圭ちゃんは、床にしゃがんでいるあたしを見て苦笑した。
「いや…ここでいい、ここで」
「…明らかにベッドに座るのを拒否してるね」
圭ちゃんはまた苦笑してお茶ののったお盆を机に置いた。
「だ、だって…」
少し赤くなって座りなおす。
「あの子が来ることはもうないわよ」
「え?それって…」
「うん、別れたから」
「…あ、あのそれって…」
「あ、安心して。
アンタと彩っぺが見たせいじゃないから。
結構前からぎくしゃくしてたし」
ぎくしゃくしてもそういうことはするんだ…。
でもまあ、圭ちゃんのいいところは人のせいにしないところだな。
真っ昼間の行為はどうかと思ったが、彼女のそういうところは素直に感服した。
「あの…彼女、怒ってなかったの?あのあと」
「え?ああ、特には」
実際はなにかあったかもしれない。
それでも圭ちゃんは黙ってた。
「今度から鍵閉めてよ」
「はい」
圭ちゃんはお茶を飲んで笑った。
- 819 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/15(水) 16:47
-
「少なくとも熱愛中じゃないと思った」
彩っぺの見解はこうだった。
「なんで?なんでわかんの?」
「いやー、相手の女の子はともかく、圭ちゃんがうんざりした顔で腕枕してたしさあ」
「その…こ、行為に疲れたとかじゃなく?」
「そういうのでもなかったよ。
愛のない『行為』だったんかもね」
彩っぺはわざと行為、という単語を強調し、くすくす笑った。
カオリはこのことを知らないようだった。
まあ、知らぬが仏という諺もある。
別に付き合ってるわけでもないけど、感情的なカオリがああいう現場を見たら。
想像するだに恐ろしい。
カオリは圭ちゃんにベタボレだった。
どう見てもわかりやすいのに、圭ちゃんは気付いてない。
「けいちゃぁ〜ん!もお〜!」
あんなにベタベタされて、なぜきづかん。
人間は不可思議だ。
- 820 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/15(水) 16:50
- 更新しました。
本編よりマイナス5歳の設定でお読みください。
( ^▽^)<裕ちゃんもまだ20代だね
从#~∀~从/<やかましわい!
- 821 名前:登場人物紹介 投稿日:2005/06/15(水) 16:58
- (0°−°0):福田明日香(21)。東京都出身。元中澤家下宿人。現在はロンドン留学中。
短編では17歳(当時)。本が何より好きで趣味は古書街めぐり。
休日の楽しみはフォートナム飲みながらクリスティーという若いのにかなり渋い人物でもある。
- 822 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/06/15(水) 22:25
- 更新キター
福ちゃんと矢口の何も言わなくても繋がる関係うらやましいです
○ ・ω・ ○<自分‥言っても繋がらない場合が多々ありますorz
从#~∀~从( `◇´)<‥相手がアンタを認めてないって事やな
○ TωT ○<‥そうなのか?
しかし夢を追っかけるっていいですね‥現実に追っかけまわされてる自分orz
川σ_σ||<清志郎最高!!!!
○ ・ω・ ○<確かに裕子と八木アナと絡みないですね‥隣には横山たかしやキダタローがいたり
でも圭ちゃんのときって‥あの席巨人師匠ですよね‥裕子の席って?‥謎は深まるばかりです
(`.∀´)<フリピン発売まであと一週間次回更新お待ちしております
- 823 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/06/15(水) 23:18
- 更新お疲れ様です
人間っていうのは変な生き物です
傍から見ると誰が誰に好意を持っているのか簡単に分かるのに
自分のことになると、ほとんど気付かない
人間っていうのは本当に変な生き物です
…そんな偉そうなことを言ってるけど、ほとんど恋愛の経験が無いんですけどね orz
次回の更新も待ってます
- 824 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/06/16(木) 00:54
- 更新お疲れ様です。
<飯田圭織。美大の1年生。彩っぺと同郷。美人だがなにを考えてるのかたまに分からない。
いや、いつも何考えてるのかわからない気がします。
とりあえずケメ子を1発どつきたい気がします。
- 825 名前:ピクシー 投稿日:2005/06/16(木) 07:41
- 更新お疲れ様です。
いよいよもって、一番の謎だったあの人の登場ですね。
やっぱあの人の視点にすると、こんな感じになりますよね。イメージ的に。
ガキさんとさゆと亀・・・みんな3年B組ですな。
ヤグも梨華ちゃんものんさんも、3年B組・・・
梨華ちゃんはともかく、人気者の登竜門?(w
次回更新も楽しみに待ってます。
- 826 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/22(水) 14:00
- あたしの部屋は『図書室』と呼ばれている。
文字通り、みんな本を借りに来る。
「明日香、チャタレイ夫人持ってる?」
「あるよ、息子じゃなくて父親の最初の訳のだけど」
『チャタレイ夫人の恋人』を本棚から出して来て、圭ちゃんに渡した。
「おー、サンキュ
ハイ、これ」
とオアシスのCDを貸してくれた。
これも物々交換というのだろうか。
圭ちゃんは『大学のレポートでチャタレイ裁判について書く』と言って本を手に部屋を出て行った。
「明日香さん、これありがとうございます」
部屋でオアシスを聴いてると、梨華ちゃんがこの前貸した『嵐が丘』を持ってきた。
「ああ、うん。
どうだった?」
「ええ、なんか…感動しました」
余韻に浸るように梨華ちゃんはほおっと長い息をついた。
「ちなみに誰に感情移入した?」
「ええっと、ヒースクリフですかねえ、やっぱり」
「へえ」
あたしは意外な答えにちょっと目を丸くした。
梨華ちゃんみたいな子はてっきりキャシーに思い入れすると思ってたから。
- 827 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/22(水) 14:01
-
「ごはんやで」
裕ちゃんに呼ばれてめいめい下に降りて行く。
中澤裕子。26歳。この家の管理人の娘。よく飲んだくれている。ちょっと関西弁が怖いが情に脆い。
石川梨華。16歳。裕ちゃんの妹。女子高生。地黒なのを悩んで、こっそり美白クリームを塗ってる。
事情はよく知らないが、ふたりは異母姉妹らしい。
苗字が違うとか色々込み入った事情があるが、ふたりは仲がいい。
- 828 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/22(水) 14:01
-
「あーすか」
また来た。
あたしは読みかけの本を机に置いた。
彩っぺがカオリと連れ立ってやって来た。
「図書室見せてよ」
「いいよ」
あまり気が進まなかったが、部屋に入れた。
「ほうほう」
「へ〜」
カオリとふたり、本棚を物色している。
なんつーか、本棚をじっくり見られるのはある意味裸を見られるくらい恥ずかしい。
「コレットの『青い麦』、鴎外の『青年』、サドの『悪徳の栄え』。
明日香って文字でムラムラする方?」
「な…!」
彩っぺが本棚から振り返ってニヤニヤ笑うのであたしは真っ赤になった。
「鴎外の『青年』ってえっちな話なんだ」
横でカオリが感心している。
「やらしくはないけどね、人妻と不倫する話だからね」
「へえ〜」
「もう!用が済んだんなら帰ってよ!」
ますます赤くなってふたりを部屋から追い出そうとすると、
「まあまあ、部屋に閉じこもって文学でひとりムラムラしてるのは精神衛生上よくないし?
どうだろう、『明日香を一皮むけさす会』というのをウチらで発足しては?」
「さーんせーい!」
カオリが手を叩いて喜ぶ。
気がつくと、圭ちゃんも部屋から出て来てて、苦笑いしていた。
- 829 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/22(水) 14:01
- 『明日香を一皮むけさす会』の活動は早速行われ、あたしはこの物好きなひとたちに
成人映画を見に連れて行かれた。
「ヤだ!絶対ヤだ!」
映画館の前で抵抗したものの、カオリの馬鹿力に敵うはずがなく、ずるずる引きずられた。
ボディーガードとして、彩っぺと同じバンドだという男の子が複雑そうな困ったような顔でついて来た。
圭ちゃんもやっぱり困ったように笑ってた。
「学割効きます?」
カオリがそう聞くと、無愛想なモギリのおじさんがウチらをじろりと一瞥して、
「ウチは学割とかないよ。全部一律」
とだけ言った。
それから2時間はいただろうか。
最初の5分くらいでオナカいっぱいになってあとはもう惰性で見ていた。
カオリはキャーキャー言って喜んでいる。
圭ちゃんはたまに「カオリ、うるさい」と小声で注意している。
彩っぺは連れの男の子とたまに小声で何か話していた。
映画館から出ると、
「じゃ、あたしこれから行くとこあるから」
と彩っぺは男の子と連れ立って駅のほうに向かって行った。
その後姿を見て、あたしはなんとなく、あの人は彩っぺの彼氏かなと考えた。
- 830 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/22(水) 14:08
- 更新しました。
〔BARプリプリピンク〕
从#~∀~从←ママ
( `w´)←チーママ
( `.∀´)←ヘルプ
川‘〜‘)‖←ヘルプ補佐
曝ク;#~∀~从<ママとヘルプだけやないかい!
川;‘〜‘)‖<ヘルプ補佐ってナニ? マアイイケド
※本文とはなんら関係ありません
・補足です
>>826
「明日香、チャタレイ夫人持ってる?」
「あるよ、息子じゃなくて父親の最初の訳のだけど」
初訳の伊藤整氏のものと、完訳版で伊藤礼氏が補訳したものを指してます。
で、明日香がコレクションの本を見られて恥ずかしがってるのは、例えるなら
「エロ本をオカンに見られた中学男子」に近いです。
(;〜^◇^)<ホントかよ
(;0°−°0)<まったくね
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
( `.∀´)<ヤグチと明日香は結構仲良かったのよ
( ^▽^)<たまに遊んだりしてましたよね
一番わかんないのが客席に座ってイジられてる横山たかし、と逝ってみるテスト
プリピンフラゲしました、初回特典のフォトブックの装丁がショボかったです(ニガワラ
>三日月ハウスさん
( ゜皿 ゜)<ケイチャンゼンゼンキヅカナイデヤンノー
(;`.∀´)<すみませんねえ
好意を持ってくれてるな、というのはなんとなく分かったりします、と逝ってみるテスト
まあ、自分もショボイ経験しかなくorz ヤスは格別ニブイんです(爆
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;`.∀´)<え?アタシ殴られんの?
( ゜皿 ゜)ノ<カオガカワリニナグルーーー!!
この頃はもっと分からなかった模様です(w>飯田さん
ケメ子は異常にモテた模様で、ああいうことは結構あったとかなかったとか。
>ピクシーさん
(0°−°0)<大変お待たせしました
( ‘ д‘ )<梨華ちゃんもナニゲにモテモテやったらしいでェ ヤグチサンガイウテタ
イロモノやキワモノだったりする生徒は3年B組になって担任が岡村先生になるという
噂があったりなかったりします。
- 831 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/22(水) 14:10
- 前回の登場人物紹介で明日香の年齢を「21歳」から「22歳」に訂正します。
素で間違ってました(汗 スマソ
- 832 名前:吉たまご 投稿日:2005/06/22(水) 15:33
- 更新キタ!
かなり前にレスつけたとき、携帯代があわわになったとか書いたんですけど、今は定額制のおかげでバシバシ見まくりの吉たまごです。
脇役の方々のストーリーまで…ホントすごいっすね。
応援してます。どんどん更新しちゃってください!
- 833 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/06/22(水) 22:00
- 更新お疲れ様です
本か・・・しばらく読んでないな(漫画を除く)
恋愛小説は苦手です。少女漫画みたいなベタベタの甘々なやつは特に。
今回のは面白そうなので読んでみようと思います。
・・・別に文字でムラムラしようとかそんなこと考えてないですよ!(爆)
次回の更新も待ってます
- 834 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/06/22(水) 23:57
- 更新お疲れです。
『明日香を一皮むけさす会』で、本編で中澤さんが辻加護に大人のビデオを見せるという似たようなことをしてましたね。
ほんとここの姉さん達はみんな物好きですね。
あと梨華ちゃんが美白クリームを塗る無駄な努力に笑いました。
- 835 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/06/23(木) 03:54
- 更新キター
福ちゃんいい趣味をお持ちで‥
活字でムラムラ‥本を読んで数分後に寝る俺には無理です
BARプリプリピンク超行きたいです‥気のせいかボッタクリのような気もするんですが
○ ・ω・ ○初回限定確かにちゃちいですね‥まぁニヤニヤしながら見てるんですが
从#~∀~从( `◇´)川σ_σ||<キショ!!!
○ ・ω・ ○<ちゅうねんにはまだまだ謎が多すぎますね‥
圭ちゃんレギュラー化しないかな〜
次回更新待ってます
- 836 名前:ピクシー 投稿日:2005/06/23(木) 06:17
- 更新お疲れ様です。
図書室って・・・そうとぅな数あるんでしょうねぇ。
流石、ぼんさんを越える読書家。
やっぱ、福ちゃん視点はいいなぁ。こういう視点好きです。
本編だと、コンコン視点があてはまりますが。
ん〜・・・「辻加護とその仲間たち」が3年生になったら、B組になりそうだなぁ(w
どうやら中高で一括りみたいですし(ヤグは高3の時の担任、と以前書いてあった気が)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 837 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/29(水) 13:51
-
『明日香を一皮むけさす会』の活動は、地味ながらもその後も続けられた。
メンバーに飲みに連れて行かれ、しこたま飲まされた。
あたしは潰れて居酒屋の座敷で横になって休んでいたんだけど、酔ってハイになったカオリが矢口を肩車し、
店を飛び出して物凄い勢いで駆け出して行った。
「たーすけて〜!」
矢口の痛ましい悲鳴が今も耳の中に残る…。
カオリは矢口を肩車したまま環七を爆走し、そのまま首都高へ行ったとか行かないとか。
警察の人にお説教されて帰って来た。
- 838 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/29(水) 13:52
- 「ねえ、明日香って処女でしょ」
あたしは本から顔を上げ、怪訝な目を彩っぺに向けた。
『処女?』でなく、『処女でしょ』と決めてかかってるし。
「キャハハ!決めつけてるし!」
下宿に遊びに来てた矢口はチューハイを飲みながら笑い転げた。
とりあえず、あたしの胸の内の代弁ツッコミありがとう。
「ヤグチはどうなのよ」
圭ちゃんがニヤニヤすると、
「オイラ?う〜ん、圭ちゃんだったら抱かれてもいいな〜」
「マリ〜」
ふたりはふざけて抱き合うフリをし、タコみたいな口でキスの真似をした。
「とりあえずさ、出て行ってくれる?」
あたしの部屋で酒宴というのもどうかと思うが。
圭ちゃんの部屋でやればいいのに。
「やっぱり処女か。答えを濁したってことは」
彩っぺが腕組みして納得したようにうんうん頷く。
「いいでしょ、別に。
まだ17なんだから」
「もうすぐ18だろ〜。
1回ヤっといたら?」
「な…」
「初体験でアタリがくるとも限んないしさあ、そもそも『幸せな初体験』ってのが幻想なんだし、まあ、馴らしも兼ねて…」
「…出てけー!」
酔っ払いたちを追い出し、あたしはそこらに転がったチューハイをぐいっと呷り、本の続きに入った。
- 839 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/06/29(水) 13:52
- 「おお」
夕方、晩ご飯の調達に駅前のスーパーに行くと、みっちゃんに会った。
平家みちよ(本名:充代)21歳。歌手らしい。三重の名張というとこから単身上京して来た。
中澤ハイツの住人で彩っぺん家の隣に住んでる。
「買い物?」
「姐さんにネギ買って来い言われてなあ」
「パシリ?」
あたしが言うと、『ま、そんなモン』とみっちゃんはヘラヘラ笑った。
「そっちはあ?最近どないや、勉強しとんの?」
「うん…あのさ」
さっきの出来事をぽつぽつ話すと、
「しゃあない子らやなあ」
とみっちゃんは苦笑いした。
「イヤやったらほっとき。
そのうち飽きるやろ」
「うん、あのさ」
「うん?」
「みっちゃんは、女の人と男の人だったらどっちが好き?」
みっちゃんは一瞬真顔になった。
すぐいつものみっちゃんに戻ったけど。
「エライまたご町内で濃ゆい質問やなあ」
「あ、ごめん。言いたくなかったら…」
「体が合えばな、どっちでも」
耳元でこそっと囁かれた。
…オトナだなあ。
「じゃ、じゃ。どんなタイプが?」
「明日香みたいなカワイコちゃんかなあ」
みっちゃんはまた耳元で囁いてニヤっと笑った。
「も、もう!
裕ちゃんのケツばっか追っかけてないでレコーディングでもしてきなさいよ!」
「あはは、じゃあなあ」
さらっと手を振って、みっちゃんは行ってしまった。
- 840 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/06/29(水) 13:58
- 更新しました。
彩っぺの住まいは、今ごっちんがいる部屋です。
MBSの関西ローカル番組の企画で、ハロプロメンバーがフットサルをする模様です。
誰が出場するのかはまだ分かりませんが。
レスのお礼です。
>吉たまごさん
( `.∀´)<そうか、その頃は定額制がなかったのよね
( ^▽^)<長い期間読んで頂いてありがとうございまーす!
私も定額制がなかったら毎月エライめに遭ってます(ニガワラ
脇役に異常に凝るのが好きなんです(ニガワラ 応援ありがとうございます、がんがります。
>三日月ハウスさん
( ^▽^)<恋愛小説か〜… ←実は結構苦手
( `.∀´)<中の人は実用書ばかり読んでるわよね
当方も恋愛小説は苦手です、こんなの書いててアレですが(ニガワラ
というか三日月ハウスさんが何故娘。小説を読まれるようになったのか激しく気になる件について(爆
>ひ〜ちゃんエッグさん
从#~∀~从ノ<おう!覚えててくれててんな!おおきに!
( ´д`)<忘れようたって忘れられまへんわ
おお、そんな大昔のネタを(爆!ありがとうございます。
いしかーさんは今日も姉やぼんさん、ヤグから「ムダムダ」と言われながらもクリームを塗りこんでます。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
从#~∀~从ノ<1時間3千円ポッキリやでー
(;`.∀´)<『ポッキリ』ってポッキリじゃすまないのよね… シカモチガウミセニナッテルシ
BARプリピンは超明朗会計の優良店です(本当かよ)。活字でムラムラはある意味画像より罪深い、と逝ってみるテスト。
姐さん、番組の企画でフットサルをする羽目になりそうですね(ニガワラ
>ピクシーさん
(;`.∀´)<蔵書数いくらなのよ
(;0°−°0)<数えてない…
中澤家を出て一旦実家に戻った際、段ボールの殆どが本だった模様(飯田さん談)。
朝比奈女子高の3年B組は文系クラスだったりします。岡村先生は中高の社会科担当です。
- 841 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/06/29(水) 23:19
- 更新お疲れ様です
カオリは酔うと矢口さんを肩車するようですね。
厄介な人だ・・・
娘。小説を読むきっかけですか?
2ちゃんを巡っていたらたまたま娘。小説に関するスレに見て、それからですかね。
ま、大したきっかけじゃないです。
それにしてもなんでそんなに激しく気になるんですか?
もしかして僕に気が……嘘です!ジョークです!だから殴らないで!!
次回の更新も待ってます
- 842 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/06/30(木) 00:13
- 更新乙です。
みっちゃんは裕ちゃんのケツばっか追っかけて、尻に敷かれたり。
ほんと裕ちゃんのお尻が好きなんでしょうね。少し下ネタのツッコミすいません。
自転車で高速に乗ってはいけません。ましてや肩車なんてもってのほかです。
でもロボモードのいいらさんなら時速100キロ…いや、マッハ2はでそうです。
- 843 名前:ピクシー 投稿日:2005/06/30(木) 03:36
- 更新お疲れ様です。
真面目一直線かと思えば、そうでもない感じですね。
(『そこらに転がったチューハイをぐいっと呷り』)
中澤家を取り巻くメンバーも、相変わらずだったようで。
文系クラスってことは、ぼんさんは離脱の可能性も?(数学得意だし)
よくよく見渡すと文系が多いですね。大学組も文系だし。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 844 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/06/30(木) 03:56
- 更新キタ〜
なんか初々しさがイイッスね〜
汚れちまった俺orz
環七肩車で爆走‥超見て見たい
○ ・ω・ ○<k察の厄介は何度か経験ありますが
从#~∀~从( `◇´)川σ_σ||<バ〜カ
○TωT ○<社会人1年生の頃にポッキリの罠に嵌りました
从#~∀~从( `◇´)<ポッキリはポッキリや‥オプション忘れたらアカンで〜
○ ・ω・ ○<フットサル‥大丈夫なんだろうか‥もう3(ry
从#~∀~从<ちょっと裏で話聞こか?
ドカッバキッボコッ…
( `◇´)川σ_σ||<大変ご迷惑おかけしました更新待ってます
- 845 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/06(水) 21:43
-
学校のクラスメートで、よくカラオケとかに誘ってくる男の子がいた。
「福田、おまえ今日ヒマ?みんなでカラオケ行かね?」
「ごめん、今日バイトなんだ」
「あ、そっか」
いつも誘ってくれるのに、いつも断ってばっかで悪いな、と思っていた。
やっぱりクラスメートの女の子とかバイト先の先輩とかから、あたしはこの頃、
小さな贈り物をもらったり、付き合ってほしい、とか特別になりたい、とかいった内容の
手紙を受け取ったりしてた。
「明日香はカタイからね」
そういう話をすると、彩っぺは決まってそう言った。
「違うもん」
あたしもまだ子どもだったので、ムッとして言い返してた。
「付き合えばいいのに。怖がらないで」
「別に、怖くなんか」
ふと思い立って、
「好きでもないのに付き合えない」
と付け足した。
「いや、別にすぐ決めなくても、一回くらいデートして決めるとか」
彩っぺは苦笑した。
「期待を持たせて結局断ったら相手にも失礼だから出来ない」
「それがカタイっていうんだよ」
彩っぺはまた苦笑いした。
- 846 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/06(水) 21:44
-
圭ちゃんはこの頃、女関係がおかしかった。
いや、世間的にはどうってことないのかもしれないけど、あたしの見た限りではおかしかった。
いつだったか、
「友達」
と中澤家の2階の廊下であたしに紹介した女の子と、部屋でやっぱり真っ昼間からアヤしいことをしてたようだ。
かと思えば。
夜中澤家の前でバイクが停まってるな、と思ったら、圭ちゃんが背の高いボーイッシュな女の子と何か楽しそうに話をしていた。
バイクで送ってもらうかして、立ち話してたようだ。
あたしは彩っぺと一緒だったんだけど、声をかけようと思ったら、
ふたりは抱き合ってキスしだした。
軽い抱擁なんてもんでなく、相手の女の子の手が圭ちゃんのジーンズの、
腰骨のあたりに伸びていた。
彩っぺはなんにも言わなかったけど、あたしはキスしてることよりも、
圭ちゃんが女の顔で頬を紅潮させ、
妖艶な視線と微笑みを相手に向けてることがショックだった。
この頃は何故なのか分かんなかったけど。
- 847 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/06(水) 21:46
-
「明日香、お醤油取って」
無言で圭ちゃんに手渡す。
食事の時も、なるべく向かい合わせに座らないようにし、
視線を合わせないようにしていた。
圭ちゃんを、この頃ちょっと嫌いだったのだ。
いい人だとは思うけど、昨日寝た相手とは違う人とキスするという神経を
疑っていた。
あたしは特別カオリのことを好きってわけでもなかったけど、
気持ちを知ってたから余計そう思ったのかもしれない。
いつものようにスーパーで食材の買出しをしてると、彩っぺに会った。
「圭ちゃんはどうしてる?」
「女の子と遊び歩いてんじゃないの」
「そっか」
彩っぺはややあって
「嘆いてたわよ、『明日香が口聞いてくんない』って」
と言った。
「別に」
「とりあえず無視すんのはやめたら?同じ下宿なんだし」
「別に、無視なんて」
「お風呂でたまたま会ってそっぽ向くのは無視なんじゃないの」
「…うん」
「明日香は潔癖だからね、ああいうのは理解できないかもしんないけど、
そのうち収まるわよ、麻疹みたいなモンだから」
「麻疹?」
「そ、熱が下がったらウソみたいに治るから」
じゃあね、お嬢ちゃん、とムカつく一言を残し、彩っぺはレジに行った。
- 848 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/07/06(水) 21:49
- 更新しました。
ブログを始めたとです。
またおヒマがあれば見てください。
ttp://blog.goo.ne.jp/googoma_1973/
レスのお礼です。
>三日月ハウスさん
( `◇´)<そういや中の人もきっかけは2ちゃんやな
(;`.∀´)<気がついたら娘。ヲタ歴ウン年ね
いやいや殴られるのは私かもしれませんよ(w?(なんでやねん)
まあ、それは冗談ですが恋愛小説が苦手なら何故CPものが多い娘。小説を読まれるよ
うになったのかなというだけです、マジレススマソ
>ひ〜ちゃんエッグさん
( `◇´)<いやー、三十路のワリにはエエケツしてんでェ〜
( *^▽^)<キャー!オトナノカイワダワ
追っかけがいのあるケツなんでしょうね(下ネタスマソ
最近姐さんは毎週月曜に関西ローカルにレギュラーで出てますが、
イヤマジで綺麗です。
>ピクシーさん
( `.∀´)<てか、ひとりでよくこっそり飲んでたわよね?
(;0°−°0)<…ハイ
真面目だけどある意味ヤスたちよりファンキーなのが明日香クオリティ。
朝比奈女子のメンツは今から岡村先生が手ぐすね引いて待ってます(w
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;〜^◇^)<いやマジでコワイから
(;`.∀´)<あんときゃあ苦労したわね…
みんなまだ汚れてなかったんです。いや若いっていいですねえ(棒
フットサルはやっぱりガッタスが大阪に出張してやるんですかねえ。
- 849 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/07/06(水) 23:44
- 更新おつです。
どうしたんだ圭ちゃん?こんなタラシは市井ちゃんだけで十分だ。帰って来い。
- 850 名前:ピクシー 投稿日:2005/07/07(木) 02:11
- 更新お疲れ様です。
明日香も密かにモテモテ?
でもカタイ・・・そういう感じに見えるし。
ブログの方も、しっかり覗かせていただきました。
自分には無理だなぁ・・・三日坊主だし。
何か毎日をただ何となく過ごしているなぁ、と痛感しております。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 851 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/07/07(木) 02:26
- 更新キタ
やっぱり福ちゃんは初々しい若さが羨ましい
異常にモテル圭ちゃん‥
○ ・ω・ ○<いろんな意味で羨ましい
从#~∀~从( `◇´)<あんたホンマに女っ気ないもんな
川σ_σ||<いつもいい人どまりですよね
○TωT ○<‥
放送で裕子がハロプロにはパンチの効いた選手がいないと言ってました
○ ・ω・ ○<圭ちゃんだせよ
とテレビの前で私は突っ込んでました
ブログと次回更新楽しみにしてます
( `.∀´)<このバカも密かにgooブログやってるのよ‥放置酷いけど‥逢えたらいいわね
- 852 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/07/07(木) 23:51
- 更新お疲れ様です
「ボウヤだからさ」
なんとなく浮かびました。誰が言ったとかあんまりよく知らないんですけどね(苦笑
確かにCPものが多いですけど、あんまり甘すぎるものは読んでません
好き嫌いが激しいんです(汗
次の更新も待ってます
- 853 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/13(水) 21:29
- それからしばらく、圭ちゃんとは口を聞かなかった。
10日くらいたったある日、街で偶然圭ちゃんを見かけた。
小学生くらいの女の子とスタバのテラスでお茶を飲んでいた。
ほっぺたがふっくらして、かわいい子だった。
圭ちゃんがあたしに気づいて片手を上げた。
その横で女の子が目礼する。
子供なのになんか礼儀正しい子だな。
あたしは目礼だけして、さっさと横断歩道を渡って人ごみに紛れた。
「明日香、今日アンタ銀座にいたでしょ。
声、かけてくれたらよかったのに」
あたしが帰ってから、圭ちゃんが部屋から出てきて言った。
「信じらんない…」
「は?」
「どう見ても小学生じゃない、子供相手に」
「あ、あのお?福田さん?」
圭ちゃんはこめかみに手を当てて、
「アンタ、なんか誤解してない?
あの子はカテキョで見てる子よ、そんなんじゃないし」
「そう」
我ながらイヤなヤツだなあと思ったけど、そのまま部屋に入ってドアを閉めた。
圭ちゃんはしばらく廊下にいたみたいだけど、自分の部屋に入って戸を閉めた音が
外から聞こえた。
- 854 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/13(水) 21:29
- あたしはこの頃、少しくたびれていた。
バイト、夏の暑さ、いよいよ本番の迫った大検の試験。
自分でも分かるくらい、イライラしていた。
- 855 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/13(水) 21:31
- ある日。
バイトからの帰り道、中澤家の最寄り駅でどうにもしがたい空虚感に襲われ、
ホームのベンチに座り込んだ。
かなり暑い日で、最高気温は30度を軽く超えていた。
夏なのに冷や汗が出てくる。
顔を伏せてやり過ごし、帰んなきゃ、と立ち上がった。
2、3歩歩いたところで、なにか目の前がぐにゃりと曲がったようになり、
自分を庇うようにその場にしゃがみ込んだ。
「ちょっと、あなた大丈夫?」
どこかのおばさんに声をかけられる。
「え、ええ。はい…」
「ちょっと、駅員さんいないのかしら」
周りが騒がしい。
都会なのに、まだ他人を気にかけてくれる人がいるんだ。
あたしはなんだかやけに冷静に考えた。
「ちょ!おーい明日香!」
矢口の声かな。
肩を揺すられてる。
でもなんで、すぐそばにいるのに、声だけすごく遠くに聞こえるんだろ。
そう思ってたら、意識を失った。
- 856 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/13(水) 21:31
- 目を覚ましたら、みっちゃんがなんでかそばにいた。
どこにいるのか天井を見つつ考えて、やっぱみっちゃん家だな、と結論付けた。
「目ェさめたか、お姫様」
「うん…あたし、どしたの」
「駅で倒れてんで。軽い貧血と暑さ負けやて」
「なんか矢口がいたような…」
「ああ、姐さんの携帯に電話してきてん。
誰も家におらんかったから、とりあえず回りまわってウチんとこ来たってワケ」
タンポポに運んでもよかったんやろうけどな、とみっちゃんは続けた。
「なんか食べれそうか。
おかゆでも作るか」
「いい。帰る」
ベッドから出ようとするとフラフラした。
「まだ寝とき。
とりあえずはメシやな。
食って力つけな」
「いいってば」
「なんや、ウチのメシじゃ不満か」
「借りを作るのがイヤなの」
「なんやたかだかメシくらい」
みっちゃんはあきれたように笑う。
「頑張りすぎやで。
少しはゆっくり休み」
「どうやってよ!」
思わず叫んでしまった。
みっちゃんは、関係ないのに。
「しんどいんか?」
自分が情けなくなってくる。
あたしは泣きじゃくって、
「なんにもわかんないくせに…」
恨み言のように言った。
「そないにバイトばっかせんでも、仕送りはもうてるんやろ?
なんや、留学費用にすんのか?」
あたしが何も言わないので、
「エエか?
明日はバイトも休むねんで。
たまにはサボることも必要や」
横なっとき、と言ってみっちゃんはキッチンに向かった。
あたしはまだぐじぐじ泣いて、枕元に置いてくれてたポカリを
咳き込みながら飲んだ。
- 857 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/07/13(水) 21:33
- 更新しました。
ミラクルさんが本体合流しましたが、ちょっと前のハロモニ。でリーダー以外
ゴロッキーズのみになった 娘。を見て、オリメンヲタとしてはなんか
感慨深いものがありました。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(〜^◇^)<圭ちゃんこの頃特にありえねーくらいモテたからなー
(;^▽^)<よく女の子からウチの固定電話に掛かってきましたよね
ヤスはムダにモテた模様です。市井ちゃんよりはマシですが結果的に
女の子傷つけてます。
そのうち帰ってくるでしょう。
>ピクシーさん
( `.∀´)<ホホッ、明日香こそモテモテだったわよ
(〜^◇^)<や、フツーにカワイイもんな
ストイックなところもそそる要因だった模様です。
私も毎日いい加減に生きてますよ(苦笑。たまのハロコン等を楽しみに
細々暮らしてます。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;`.∀´)<いやそんなモテてたワケでは モゴモゴ
( `◇´)<よう電話やら掛かって下宿まで女の子勝手に来てたやん
ヤスだとパンチ効きすぎな罠。でもヤスだとチームの足を引っ張る(ry
そういやブログをやってらっしゃるって前の書き込みにありましたね。
>三日月ハウスさん
>ボウヤだからさ
( ´ Д `)<ヒントはガンダムだよ〜
ヽ^∀^ノ<「シ」で始まる名前のヤツな
↑赤い彗星って素敵やん? (まあ答え言ってるも同然ですが)
私も甘々なのは苦手なのになんで娘。小説にハマったのかとんと分かりません(苦笑
- 858 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/07/13(水) 22:20
- 更新だ〜
みっちゃんいい子(ry
しかし中澤家に絡むと包容力ももてるんですね〜
○ ・ω・ ○<いいよな〜
从#~∀~从( `◇´)<アンタは器ちっこすぎるねん!!
○TωT ○<‥ハハハ‥モテル圭ちゃんうらやまし〜
来週はついにハロプロのフットサルの全貌が‥引っ張りすぎ
(;`.∀´)<このバカのブログは放置アリアリ文才なし‥どうしようもないのよ
从#~∀~从( `◇´)<某スレの仲間にのせられて勢いだけでやった代物やね
川σ_σ||<恐いもの見たさならどうぞ後悔しますよhttp://blog.goo.ne.jp/barazoku4545/
次回更新まってます
- 859 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/07/14(木) 01:34
- 更新お疲れです。
う〜ん明日香の気持ちもよくわかるんですがね。愛する人だけしか知らないのが理想みたいな。
(0^〜^)は( ^▽^)しか知らないんで一番の理想系ですよね。キャッ!
まあこれから明日香がどうなっていくか楽しみです。
- 860 名前:ピクシー 投稿日:2005/07/14(木) 02:51
- 更新お疲れ様です。
みっちゃんの言う通り、時には休みも必要。
生真面目な人間ほど、無意識に無理しちゃう分、必要ですね。
毎日何となくすごしてますが、夏にはドライブ旅行を数回決行予定です。
北陸に行こうかと思っているのですが、最近の水害の影響で無事行けるか心配。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 861 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/07/14(木) 08:27
- 更新お疲れ様です。
そうそう、頑張りすぎずにたまには休むことも必要です。
休んだことによって、また頑張れますしね。
・・・あぁ!!どこかから『お前は1回ぐらい倒れるまで頑張ってみろ』という声が聞こえる・・・
人生休んでばっかりっていうのも考えものです。
次の更新も待ってます。
- 862 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/20(水) 21:26
- 大検本番まで一ヶ月切った。
「大検直前模試」というのをある予備校で申し込み、その試験が日曜に迫っていた。
その前日の土曜の昼、 部屋で追い込みの勉強をしようと扇風機のスイッチを入れた。
ウンともスンともいわない。
コンセントが外れてるというベタなヤツかなと思い首を傾げて見てみたら、ちゃんと入ってる。
「…やっば、故障?」
これは元々、下宿する際、実家から持ってきたヤツなのだ。
納屋に長期間放置されていたようなものなので、いつ壊れてもおかしくないシロモノではあった。
「…しょうがない、文明にすがるか」
光熱費がかかるので極力控えてるクーラーのスイッチを入れる。
「…ウソでしょ」
クーラーも、ウンともスンともいわなかった。
- 863 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/20(水) 21:26
- たまたま家にいた親父さん(裕ちゃんのお父さん)に知らせ、電器屋さんに連絡してもらう。
「おい、この猛暑で修理してくれる若いモン、皆出払っとるらしいわ」
受話器を耳に当てたまま、親父さんは振り返った。
この日は曇っていたけど、最高気温は30度を越していた。
「どないする?週明けならな来られへん言うてんぞ」
「しゃあないな〜。ほな、どっか他の部屋使うか」
裕ちゃんが辺りを見渡してると、圭ちゃんが帰って来た。
「どしたの?」
「明日香の部屋のクーラー壊れてん。なんや、この子が家から持って来た扇風機もわやなったらしいわ」
「じゃ、アタシの部屋使いなよ」
事も無げに言い、圭ちゃんは「ちょっと片付けるから」とあたしの方を振り返って見て階段を上がって行った。
「圭ちゃんはどうすんの」
「アタシ?ああ、カオリんとこにでも泊めてもらうわ。アタシもレポート書かなきゃならんし。
あ、パソも適当に使っていいから」
とVAIOのノートを指した。
「圭ちゃんは?レポート、パソコンで書くんじゃないの?」
「必要になったらカオに借りる。とりあえず急ぎのは手書きって指定だから」
じゃ、シーツも換えといたから、ぐっすり休みなよ、と圭ちゃんは部屋を出て行った。
一人になった部屋で、換えたばかりのシーツを見て。
ここんとこ、あたしが一方的に無視してロクに口利いてなかったのに、圭ちゃん、ほんとに人がいいというか。
自分の心の狭さを、この時ちょっと恥じた。
- 864 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/20(水) 21:27
-
その翌日―――。
「…だあーーー!ぐっすり寝すぎた!」
翌朝、あたしは鞄を抱えて駅までの道をダッシュしていた。
快適な部屋で勉強がはかどったのはいいが、いかんせん快適すぎて寝過ごしてしまった。
どうしよう。
もう1時間目の試験には絶望的に間に合わない。
「なーにしてんのー」
近くのコンビニから、ぷらっと彩っぺが出てきた。
「も、模試!
ね、寝坊してま、間に合わない!」
「はあ、模試?
別に本番じゃないんでしょ、いいじゃん、サボったって」
「せっかく受験料払ったんだから受ける」
「わかったわかった、ちょっとついといで」
言われるままについてくと、中澤ハイツにたどり着いた。
「ちょっと待てって。友達に送ってくれるか聞いてみるから」
彩っぺが家の中に入って1、2分経つと、中から男の人が出てきて、
「ちょっと待ってて。バイク回してくるから」
とあたしに声をかけた。
「あ、はい」
「よかったね。送ってくれるって」
「彼氏?」
いつの間にか隣に来てた彩っぺに声をかけると、
「まさか、友達」
と意味深に笑った。
彩っぺの友達のヒトのおかげで、模試にはどうにか間に合った。
しかし。
この前、イケナイ映画を見た時連れてきたヒトとは違う。
それに。
こんな早朝(しかも週末)にどーして家にいるのか。
中澤ハイツは確か身内以外異性は宿泊厳禁のハズなんだが。
そんなことをぐるぐる考えながら地下鉄で帰ってきた。
- 865 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/07/20(水) 21:29
- 更新しました。
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ .ω. ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
( `◇´)<まあ、ちゃんと面倒見んとあとで姐さんに怒られるしなあ
( ^▽^)<平家さんみんなに優しいから
包容力ある人間があの家に集まってるって感じですかね。私も人としての器は小さいです(ニガワラ
最近時間なくて見てないんですがまだ引っ張ってんですか(w>フットサル
ブログ拝見しました。棒ラーメンウマー(AA略)←ここで言うヤシ
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;^▽^)<明日香さんがんばりやさんだからムリしちゃって シンパイ
(;`.∀´)<うーむ、この頃はすんごい嫌われてたわ
経験うんぬんより一番好きな人と一緒になるのが理想だとは思います。
ただ、間違えてしまうのが人間というワケで(ニガワラ
よっちゃんのケースは凄く幸運なんでしょうね。
>ピクシーさん
(〜^◇^)<そーそー、慌てない慌てない。一休み、一休み
( ´д`)<一休さんかいな
生真面目な人間はストレスで倒れる可能性が高いそうです。
いい加減に生きてる私ですら仕事でストレスは感じますね(ニガワラ
ドライブいいですねえ、気をつけて行ってきてくださいね。
>三日月ハウスさん
( `.∀´)<あの子は頑張りすぎなのよ
川o・-・)<カテキョの時、先生よくおっしゃってましたよね
日本人は頑張りすぎです(ニガワラ
月に一回くらいサボリ奨励デーというのを厚労省あたりがやってくんないかなと(ry
いや、私こそ倒れるまで頑張んないといけないんですけどね(ニガワラ
- 866 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/07/20(水) 21:55
- 更新だ〜
文明に逆らう明日香‥なんか泣けるな〜
○ ・ω・ ○<文明なしでは生きては行けない自分には耳が痛いっす
从#~∀~从( `◇´)<あんた‥エアコンないと生きていけない超ヘタレやもんな
○ TωT○<‥大きな器に育まれて育つ若い力‥いいっすね〜俺も住みたくなってきたorz
(;`.∀´)<現時点でまだ引っ張ってるわよフットサル
川σ_σ||<ブログ読んじゃったんですね‥たぶん不幸になりますよ
次回更新待ってます
- 867 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/07/20(水) 22:04
- 更新お疲れ様です
彩っぺも圭ちゃんもなんかすごいっすねぇ
それにしても明日香は扇風機ですか
エコですね。
エコですね(なぜ2回?)
次回の更新も待ってます
- 868 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/07/20(水) 23:32
- 更新お疲れ様です。
ほんとに市井ちゃんを見習って少しはいい加減になっても明日香はいいと思います。
ごっちんに言わせると市井ちゃんはその逆だとは思いますが。
エアコン、クーラー、怖い話、(^▽^)のおもしろい話と涼む方法はたくさんあります。
- 869 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/21(木) 00:16
- 更新お疲れ様です
自分は年齢的に彩っぺ寄りなのに精神年齢は明日香寄りだなぁとか思いました
- 870 名前:ピクシー 投稿日:2005/07/21(木) 08:03
- 更新お疲れ様です。
明日香が慌てる姿とは珍しい。
扇風機・・・自分も扇風機派だったりして。
最近マイナスイオンが出る、とかいう卓上のやつを購入しちゃいました。
夏のドライブは「道の駅巡り」なんですけどね。
昨年関東を全制覇したので、今年は比較的楽そうな北陸に挑戦中。
でも、佐渡島という難所(行くのに金がかなりかかる)が1つあるという・・・
次回更新も楽しみに待ってます。
- 871 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/27(水) 21:35
- カオリってなに考えてるか分からない。
タンポポで会った時、
「ディズニーランド行こうよ!」 と誘われた。
「はあ?ディズニーランド?」
このくそ暑いのに遊園地とは。
正気の沙汰とは思えない。
「明日香、大検いつ終わるんだっけ」
「金曜には終わる」
「何時?」
「昼前にはまあ」
「じゃ、それから行けるね♪」
冗談じゃない。
何を好き好んで、炎天下の遊園地に行かなきゃならんのだ。
「圭ちゃんも誘って行こうよ」
「圭ちゃん?」
あたしがぴくっと反応すると、
「圭ちゃん、年間パスポート持ってるらしいし、カオ、知り合いの人から
チケット2枚もらったんだ。
だから、ね、行こ?」
「やだよ。カオリ、圭ちゃんとふたりで行けばいいじゃん。
なんであたしまで」
「だってさ」
カオリは急にいじいじしだして、
「好きな人とふたりで遊園地行ったら別れるってジンクスあるじゃん?だから」
あたしは飲んでたアイスティーを吹きそうになった。
てか、オマエらその前に付き合ってないだろ!
「ね、お願い。ついてきて?」
カオリに上目遣いで頼まれ、つい「いいよ」と引き受けてしまった。
カオ、圭ちゃんにメール送っとくから、じゃあね〜!
ご機嫌で、デカイお姉さんは帰って行った。
- 872 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/27(水) 21:36
- 圭ちゃんは大学が休みに入り、ちょっと実家に帰っている。
法事やら高校の同窓会やらで忙しいらしい。
大検前日に圭ちゃんからメールが来て、
『暑いし大変だけど、体に気をつけて頑張って』
と書いてあった。
ご丁寧に、会場の学芸大方面のバスの時刻表まで調べたのか送ってくれた。
『大学のそばにコンビニあるから』
とか情報まで付け足して。
あれ以来、圭ちゃんが大学の前期テストとかでバタバタしてたのもあって、
そんなに話す機会もなく、夏休みに入ってしまった。
あたしも学校でちょっとだけ上がった通知表をもらって、2日ほど実家に帰った。
お兄ちゃんが彼女をウチら家族に紹介するために連れてきてて、
あたしもちょっとだけ挨拶した。
ちなみに、扇風機は新しいのに買い換えた。
お母さんに言ったら、
「アンタ、まだあんなの使ってたの?」
と呆れられた。
新しいの買う時、千円ほどカンパしてくれたけど。
「圭坊と仲直りしたんか」
ある日、晩御飯の時に裕ちゃんに言われ、あたしはちょっと口つぐんだ。
「あ、別にケンカとか、は…」
「まあ、あの子もすぐ帰ってくる言うてたしなあ。
早よう仲直りしいやあ」
「うん…」
ケンカ、になるんだろうか?
あたしが一方的に無視してたのに。
梨華ちゃんは黙ってたけど、横で心配そうな顔をしてた。
- 873 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/27(水) 21:38
- いよいよ試験当日。
駅前でバスに乗り、会場の大学に行く。
今日は朝イチからの試験はないが、なるべく涼しい時間に行って心の準備とかをしたかった。
矢口と途中まで電車が一緒で「じゃ、しっかりやんな」と肩を叩かれた。
「明日香さん、頑張ってくださいね」
「福ちゃん、今日は早よう寝えや」
「明日香、明日は裕ちゃん張り切って朝メシこさえたるからな」
中澤一家は、ゆうべ入れ替わり立ち代わり、あたしの部屋に激励にやって来た。
そのたびにあたしは、はあ、どうも、と礼を述べた。
彩っぺから日付が代わる頃、「明日、頑張れよ」とメールがきた。
ただ中澤家と試験会場との往復で4日間が過ぎる。
ああ、そうだ。
2日めの朝だったか、会場の最寄り駅で学校で同じクラスの男の子がいた。
「おはよう。今日は何受けるの?」
声をかけると、
「送ってやるよ」
とあたしの質問には答えず、ほぼ強制的に試験会場にバイクで連れて行かれた。
後から知ったが、彼はその日は試験を受けなくてもよかったらしい。
なんでわざわざこんなとこまで朝っぱら出て来たのか、まったくもって謎だ。
- 874 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/07/27(水) 21:38
- そんなこんなで、つつがなく(?)試験は終えた。
最後のテストを終えると、あたしはカオリとの待ち合わせに向かった。
東京駅までバカみたいに遠く、本気で腹が立ってきた。
「あっすかあ〜!おつかれ〜!」
京葉線のホームで待っていたやけにバカンスな格好のカオリを見たら、何故だかテンションが下がってきた。
圭ちゃんとは、舞浜の駅前で直接待ち合わせだ。
実家からチョクで来るらしい。
カオリは車中、ずーっとうかれていた。
それならあたしを誘わずふたりで行けばいいのに、とずっと不審げに彼女を見ていた。
舞浜の駅で、圭ちゃんは
「よっ。お疲れ」
とグラサンをかけて待っていた。
「うっわ!見て見て明日香!圭ちゃん不良だよ、グラサンだよグラサン!」
「カオ、うるさい」
初手から怒られて、カオリはちょっとしょげた。
それでもめげずに、
「行こ!カオ、楽しみにしてたんだ〜♪」
とゲートめがけて、先頭切って走り出した。
- 875 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/07/27(水) 21:45
- 更新しました。
大検は今年度から「高等学校卒業程度認定試験」と名称が変わったそうです。
蛇足ですが。
(中の人が受けた頃は地理とか数学にAもBもなかったですが)
いるかどうか分かりませんが、受験される皆さん、暑い中大変ですが頑張ってください。
試験が終わったらうんとこさ飼育でもご覧ください(笑
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;`.∀´)<中の人は職場のボロイクーラー(温度設定不可)で
風邪引いたのよねえ
( `◇´)<あの家住んだら濃ゆなんでェ〜
明日香は単に締まり屋なだけです(w フットサルまだ引っ張ってますね。
ブログ読んでしまいました…不幸ですか、買ったばかりのガリガリ君落とすくらいで
(違
>三日月ハウスさん
( `.∀´)<エコロジストかどうかはさておき、かなり倹約してたわよね、
本以外は
(;0°−°0)<…ハイ
一応下宿人の部屋にエアコンはついてるんですが、光熱費を抑える為明日香は
夏は扇風機、冬は重ね着で過ごしていた模様。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;^▽^)<えー、イシカワの面白い話は涼しくないですよー
(;〜^◇^)<…ある意味暑いよな アマリノクダラナサニ
明日香は意識せずに自分を厳しく律してるのであります。
まあ、ここの市井ちゃんはちゃらんぽらんすぎるんですが(ニガワラ
>869の名無飼育さん
( ゜皿 ゜)<ナカノヒトナンテ モットコドモ
(〜^◇^)/<まだまだ若いってことでいーじゃん
大丈夫です、私など年齢的に中澤姐さん寄り(てか、タメ)なのに、
精神年齢は辻加護寄りですから(ニガワラ
>ピクシーさん
( `.∀´)<アンタほっとんど夏は扇風機だったわよね
(;0°−°0)<や、なんか実家にあったし
こういうしっかりした人って肝心な時にポカをやらかすんですよ(ニガワラ
扇風機はいいですよね、夏は風呂上りにドライヤー代わりに使ったりしてます。
- 876 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/07/27(水) 21:45
- ※訂正です。↓
>>864
誤:「ちょっと待てって。友達に送ってくれるか聞いてみるから」
正:「ちょっと待ってて。友達に送ってくれるか聞いてみるから」
- 877 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/07/27(水) 23:45
- 更新お疲れ様です。
いいらさんは上目より見下ろす感じがしますが?
しかし、いいらさんかわいいっすね。遊園地に行くカップルのジンクスを信じるなんて。
…あれ?何か不吉なこと思い出しました。ディズニーシーに行ったカップルがいますよ。
ということは…(;^▽^)(;0^〜^)
- 878 名前:ピクシー 投稿日:2005/07/28(木) 02:53
- 更新お疲れ様です。
明日香同様、自分も暑い中遊園地ってのは嫌いです。
それが夏休みとか、学生達が長期休暇中なら尚更。
普通の平日に休みを作って行ったり、人出のピークをすぎた頃に行くタイプ。
うちの扇風機は、ドライヤー代わりにも使ってもらいたいようで。
真ん中に鏡がついております。ついでに小物ケースもついてる。
あとアロマポットもあったりします。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 879 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/07/28(木) 09:23
- 更新お疲れ様です
サングラスを掛けた圭ちゃんと長身のカオリに
はさまれた明日香・・・
あの写真が思い浮かびました。
明日香がNASAに連れていかれませんように・・・
あ、NASAに行きそうなのは圭ちゃんか(爆
次の更新も待ってます
- 880 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/07/28(木) 22:07
- 更新だ〜
カオリの女の子らしさいいっすね〜
ジンクス‥信じるあたりかわいいっす
从#~∀~从( `◇´)<あんた喜んで別れスポット行ってたよな奈良公園とか
(∩ ゚д゚)アーアーきこえなーい
○ ・ω・ ○<濃厚になるのか‥余談ですがオオサカキングわくわく宝島‥忙しくなりそうです
(;`.∀´)<あんた全部仕事じゃない!!
○ TωT○<‥行きて〜
川σ_σ||<ブログの呪いない事を願います‥
次回更新待ってます
- 881 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/03(水) 21:05
- 「ねえ次はあれあれー!」
豪快に水しぶきが上がるスプラッシュ・マウンテンを指してカオリは走り出した。
「こらカオ、年寄りに気ィ使えっての」
圭ちゃんは汗だく、息ぜいぜいで文句を言う。
「たく、明日香はテスト終わったばっかで疲れてるってのにさ」
「あたしは別に…」
「そう?あの子は暴走しがちだから遠慮することないわよ」
「あ、うん」
カオリが暴走するなんて今に始まったこっちゃないし、それは別にいい。
さすがに圭ちゃんとふたりになると微妙に気まずかった。
「あ、プルートだよプルート!」
園内でたまたま茶色っぽいデカイ犬の着ぐるみと出くわし、カオリは率先して握手を求めに行った。
「プルートってミッキーの何?」
圭ちゃんに聞くと、
「ペットかな」
「ネズミがイヌ飼ってんだね」
あたしはふっと息をついた。
「なんか言った?」
握手してカオリが完璧な笑顔のまま振り向く。
- 882 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/03(水) 21:06
-
「もお!明日香はあ!夢の世界なんだから楽しまなくっちゃダメー!」
カオリはプンスカ怒っていた。
といってもなあ。
「まあまあ」
と圭ちゃんが笑って止めに入る。
「ちょっと明日香こっち」
いきなりカオリに引っ張って行かれ、カオリは
「すぐ戻って来るから」
と残された圭ちゃんに声を掛けた。
「なにさ」
「アイス食べたくない?」
「はあ?」
呼び出すほどのことか?
「圭ちゃんに『アイス食べた〜い』って言ってみそ?
きっと、喜んで買いに行くよ」
「てか、奢らせる上にパシリ?」
「圭ちゃん、明日香のこと妹みたいに思ってるからちょこっとでも甘えたほうが
いい気持ちにさせてあげられるとカオは思うワケよ」
「…どゆこと?」
「いやー、圭ちゃん頑張り屋さんに弱いからさあ、頑張り屋さんの明日香に素直に
甘えられたいというか」
「はあ」
そういうワケです、とカオリは勝手に始めといて勝手に締めた。
- 883 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/03(水) 21:06
- 「ホラ、戻ろ?
カオが明日香をシメてるとかあらぬ誤解を受けると困るし」
「なんだかなあ」
戻ると、
「なに?どしたん?」
と案の定、圭ちゃんは怪訝そうだった。
「あのさあ、カオたちアイス食べたいなあって。
ねー、明日香」
「う、うん」
「で、どうしろと?」
分かっているだろうけど、敢えて圭ちゃんは苦笑いしながら聞き直した。
「カオ、バニラとイチゴのダブルね。
明日香は?」
「あ、あと、チョコとバニラ。ダブルで」
「へいへい。分かりましたよ、お嬢さんがた」
圭ちゃんは若干背中を丸め、アイスを買いに行った。
あれは嬉しい後姿だよ、とカオリが言った。
- 884 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/03(水) 21:09
-
「せーかいはー」
あたしはつい口に出しそーになって、口を押さえた。
「ハッハ、イッツ・ア・スモールワールドがマワってるな」
圭ちゃんは可笑しそうに笑った。
そう、イッツ・ア・スモールワールドに乗ったら、そこで流れてるテーマ曲が
ずーっと頭でマワってるのだ。
あれからさんざんカオリにつき合わされ、様々なアトラクションを試し、
最後に地味めなイッツ・ア・スモールワールドに乗った。
「そろそろパレードの時間だよ」
カオリが言うと、しばらく経って電飾ギラギラの賑やかなパレードがやって来た。
「どうよ?これでもまだミッキーをネズミ呼ばわりする?」
ミッキーがカッコよく踊ってるのを見て、カオリがあたしの方をちょっとふふんという感じで振り返った。
「ネズミだね」
圭ちゃんが横でプッと吹き出した。
帰りは、圭ちゃんの運転で中澤家に戻った。
圭ちゃんは実家で小型のRV車を借りて来ていた。
ナビ役のカオリは助手席で地図をぐるぐる回して見ていたがちっとも役割を果たさず、
途中で後部座席のあたしが地図を受け取って後ろから圭ちゃんに指示したのだった。
- 885 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/08/03(水) 21:11
- 更新しました。
( ゜皿 ゜)<セーカイハセーマイ♪
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ゜皿 ゜)<ヒザオッテルノ
(〜^◇^)<圭ちゃんが一番上目遣いの被害に遭ってるよな〜
いいらさんは座ってコンパクトになった時に上目遣い攻撃をしてる模様。
遊園地のは多分ガセですよ(w 行こうが行くまいが別れる人は別れますから。
>ピクシーさん
( ´ Д `)<んあ〜、それは便利そうだねえ
( ‘ д‘ )<師匠、買わはるんですか
それはもう扇風機を越えてますね(w どういうところで売ってるんでしょうか。
私も夏場の遊園地は勘弁してほしいです(ニガワラ
>三日月ハウスさん
( ゜皿 ゜)(;0°−°0)(▼.∀▼ )
(;0°−°0)<マジで連れてかれそうだよ
これはまたまあ、懐かしいネタを(w ケメ子は既に一回NASA行って戻って来たのかもしれません。
しかし改めて濃ゆいメンツな遊園地行きです。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;‘ д‘ )<え、あの噂てマジなん?(思きし行ってもうたがな!)
( *´D`)<のん、シカに囲まれたれす
流石奈良公園。むやみにシカがうろついてるだけじゃないんですね。
オーサカキングもわくわく宝島もテレビ視聴のみです。いいらさんの猪突猛進っぷりに明日香も引いてます。
- 886 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/08/03(水) 23:46
- 更新キター
確かにネズミに飼われる犬‥なんかアレですね
夢のない男だな俺もorz
猪突猛進で地図の読めない女マジでカオリに惚れそうです
○ ・ω・ ○<あの噂は‥身をもって知らされました‥鹿に襲われたし
从#~∀~从( `◇´)<所詮噂やあんたの場合ジンクス云々関係ないやろ!!!!
(;`.∀´)<別れる以前に付き合ってたのさえ怪しいじゃない!!!
作者さんと右に同じく仕事場のテレビに噛り付いてます
昨日の圭ちゃんの浜辺の歌熱唱に感動してしまいました
次回更新お待ちしております
- 887 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/08/04(木) 00:18
- 更新お疲れです。
いいらさんにはナビ機能はついてないんですね。
( ゜皿 ゜)<200メートルサキ、ウセツデス。
みたいな。
- 888 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/08/04(木) 09:55
- 更新お疲れ様です
たまにプルートとグーフィーの見分けがつかなくなります。
っていうかグーフィーって設定上はミッキーの何でしたっけ?
友達・・・だったような?
それと・・・
圭ちゃ〜ん!アイス食べた〜い!
バニラとチョコとモカのトリプルで。
わぁ〜!!一度やってみたかったぁ〜!!
・・・すいません、ほんとにやってみたかっただけです
次回の更新も待ってます
- 889 名前:ピクシー 投稿日:2005/08/05(金) 02:34
- 更新お疲れ様です。
地図くるくる回す人いますよね。
自分の周りも、そういう使い方する人は結局役割を果たせない(w
最終的に、運転席の自分がみます。自分の車、方位磁石もついてるのに。
扇風機、いまもあたってますよ〜。
ちなみに家電量販店で買いました。卓上にしてはちょっと値段高め。
メーカーは、ミキサーとかミルサーも作っている「I○a○a○i」です。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 890 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/10(水) 21:46
- 圭ちゃんとはディズニーランド以来、なんとなくわだかまりも解けた。
あの日、園内のショップで女の子が喜びそうな、ミッキーのクッキーやら
パステルカラーの小さなミニーの手鏡を買ってる圭ちゃんを見て、
「彼女にお土産?」
とあたしは何の気なしに声をかけた。
カオリは離れたところでグッズを見ていた。
「これはカテキョで見てる子にお土産よ」
圭ちゃんは苦笑いしながら、売り子のお姉さんにお札を差し出した。
「ふうん」
「や、アンタが考えてるようなんじゃないし」
「そう」
「まあ、妹とか親戚の子供みたいなカンジ?」
「や、言い訳しなくても」
「してないって」
「ふふっ」
あたしが笑うと、圭ちゃんも笑って「コイツ」と軽く叩くマネをした。
あの組み合わせのお土産を見たら、子供向けだなって分かる。
で、圭ちゃんは聞いてもいないのに、あの銀座で偶然会った時は、
カテキョの女の子が友達のお誕生日会に呼ばれて、プレゼントを買いに行くのに
付き合ってと言われたから連れてった、とか解説してくれた。
妙に理路整然とした説明を聞きながら、圭ちゃんは浮気はできないなあと、
なんとなく可笑しくなった。
- 891 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/10(水) 21:46
- 夏も折り返し地点に来た。
学校で自主採点会と称した、大検の答え合わせがあるので登校し、
めいめい先生や友達と話しながら自分の点数をチェックする。
あたしはどうにか及第点は取れているようだ。
ほっと息をつき、荷物をまとめて下校した。
- 892 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/10(水) 21:47
- 「「あ」」
中澤家に戻ってびっくりした。
家の前に、大検の日、あたしを会場までバイクで送ってくれたクラスメートの男の子がいた。
あたしたちはほぼ同時に声を上げ、お互いを見た。
「どうしたの」
「あ、や、いや。
どうしてるかなって」
ヘンなことを言う。
学校に来れば会えるのに。
そういえば、彼は今日学校に来てなかったなと今更ながら気づいた。
まあ、夏休み中だし今日は自主採点会だから登校の義務はないが。
「元気だよ。今日、来てなかったんだね」
「あ、うん」
彼はしきりに鼻をかき、ジーンズの後ろポケットに手を入れたり出したりした。
「明日香ー。
帰ってるんかー」
玄関がちょこっと開いて、裕ちゃんが顔を出す。
「あ、うん」
「なんや、お客さんか」
彼は裕ちゃんに頭を慌てて下げた。
「ごめんね、もう晩御飯だから」
「あ、ちょ、待って」
「なに?」
「その」
裕ちゃんが眉をしかめて黙ってこっちを見る。
相変わらず玄関先からちょっとだけ顔を出していた。
「ふ、福田は」
「うん」
「つ、付き合ってる人とか、いる?」
- 893 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/10(水) 21:47
-
今にして思えば。
なんでああ答えたのか。
「うん、いる」
あの時の彼の顔と。
玄関から覗く裕ちゃんの顔と。
自分の嘘と。
あたしは多分、一生忘れない。
- 894 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/08/10(水) 21:49
- 更新しました。
キリがいいので短いですがここまでにします。
レスのお礼です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
( ゜皿 ゜)<イチバンオイシイトコサラッテイッタッテ
( `.∀´)<ホホ、人徳よ
例のドラマでヤスは一番いいとこをさらっていったようですね。
今度の休みにビデオ見てみます。
いいらさんに惚れたらヤケドする上、交信状態に根気よく付き合う羽目に(ry
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;`.∀´)<カオリには道聞かないことにしてる イマノクルマニナビカッテツケタシ
( ゜皿 ゜)<カオハフツーノニンゲンダモン
さすがにそういう便利な機能はついていないようです(w
でも進んでナビ役を買って出てはいつもぐるぐる地図を回すことに
なっているようです。
>三日月ハウスさん
( ゜皿 ゜)<バニラチョコモカトリプルダッテサ。ダッシュナ
三三(;`.∀´)<わかったわよ!
服着てて帽子かぶってる方がグーフィーです。一応ミッキーの仲間のようです。
彼にはマックスという名の息子がいるとかいないとか。
>ピクシーさん
(;゜皿 ゜)っ□<ホウガクガワカラン
(;`.∀´)<あー、もー!アタシが見るからいい!
私は物凄い方向音痴です(ニガワラ だから最初から地図は渡されません。
あのメーカーのでしたか。しかし世の中には色んな家電がありますねえ。
- 895 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/11(木) 00:28
- 更新お疲れ様です
なんとなく無意識にそういう話題を避けるっていうのは自分もわかる気がします
今思うと良くも悪くもその人と今の関係が変わるのが嫌だったのかも
- 896 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/08/11(木) 00:33
- よかったですね、明日香と圭ちゃん仲直りできて。
( ´ Д `)<圭ちゃんは真面目だから信用できるしね。誰かさんと違って…
ヽ;^∀^ノ<うっ…
- 897 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/08/11(木) 00:47
- 更新お疲れ様です
圭ちゃんとわかりあえてよかったね〜
明日香の傷になるのかならないのか‥心配
○ ・ω・ ○<やっぱり恋愛は火傷するくらいじゃないとダメッスよ
从#~∀~从( `◇´)<あんたの場合毎回火傷通り越して焼身自殺クラスやん
(;`.∀´)<がっつりいただき!!!
次回更新待ってます
- 898 名前:ピクシー 投稿日:2005/08/11(木) 10:12
- 更新お疲れ様です。
明日香・・・なんともまぁ。
一生忘れない・・・かぁ。
ほんと、世の中には色々な家電がありますね。
それと、意外なメーカーが意外なものを作ってたりしますよね。
マイナスイオン出てると感じるのは、寝てる時につけっぱで・・・
起きた時に、髪がしっとりしてる時ですね。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 899 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/08/11(木) 11:36
- 更新お疲れ様です
自己採点か・・・
センター試験の自己採点で
ボロボロだったことを思い出しました
もう、やりたくないことの上位に入ります
次の更新も待ってます
- 900 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/17(水) 21:13
- 同じクラスの男の子に恋人の有無を聞かれ、
「いる」と答えてしまった。
どうしてあんなつまんない嘘をついてしまったのか。
ため息をつきながら考えてみる。
ディズニーランドでとろけるような笑顔のカオリと、満更でもない圭ちゃんとかを見
て、
どうもあたしの中でなにか違う感情が生まれたようだ。
別にふたりは恋人じゃないけど。
てか、恋人じゃないのにあんな雰囲気のふたりおかしいから。
そのくらい、ヤツらは妙にラブラブだった。
下宿の部屋でぐるぐる回る1980円(税抜)の扇風機の羽根をじっと見てたら飽きてき
て、
タンポポへ向かった。
ちょうど矢口が手伝いで店におり、なんとなくグチを聞いてもらう。
「へえー」
矢口は開口一番、そう言った。
「まあまあ、ミエ張りたくなる気持ちわかるけどさー。
なんかあったらヤバくない?」
「やっぱりそう思う?」
「圭ちゃんとかに頼んだら?
いまフリーらしいし、恋人のフリとか」
「絶対ヤだ」
「即答かよ」
矢口はキャハキャハ笑った。
「ホレ、これ食って元気出しなって」
矢口が真っ赤なシロップがかかったかき氷を差し出した。
「え、いいの?」
「今回はオイラのおごりな。
明日香が出世したら倍返しな」
「ありがとう」
笑顔で受け取って、冷たい感触を口の中で楽しんだ。
- 901 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/17(水) 21:13
-
その夜。
「いたたた…」
「どしたの」
圭ちゃんはお箸を口元にやったまま、あたしの方を見た。
晩御飯どきに、急に左の奥歯が痛み出したのだ。
「歯が、歯が痛い…」
頬を押さえつつ、お箸をテーブルに置く。
「明日香さん、歯医者さん行ったほうがいいですよ。
駅前に、いい歯医者さんがあります」
梨華ちゃんはそう言って
「電話番号、教えましょうか」
と立ち上がった。
「福ちゃん、ちゃんと歯ァ磨かなアカンで」
親父さんが苦笑いした。
「この子、メチャ几帳面に磨いてますよ。
ホント朝晩欠かさず」
圭ちゃんのフォローに
「なんや昼も歯ブラシ持ち歩いて磨いとんのやろ」
裕ちゃんが続いた。
痛みはその夜裕ちゃんにもらった鎮痛剤で治まったけど、
その後もっとひどいことになった。
- 902 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/17(水) 21:14
-
「ちょっと」
翌日ちょっと一旦中澤家に帰ったら、裕ちゃんが
「またあの男の子来とったで」
と開口一番言った。
「え」
「ウチが玄関から見とったら、すぐどっか行ったみたいやけどな」
「いつ?何時くらい?」
「さあ、2時…くらいやったかな。
梨華が帰ってきおる前やったし」
「ありがとう、ごめんなさい」
「謝らんかてエエけどなあ。
ただ」
「うん」
「ケジメはつけや。
にっちもさっちもいかんようなったらウチに言い」
「うん、ありがとう」
頭を軽く下げて、また家を出た。
- 903 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/17(水) 21:14
-
用事で駅前に向かう。
途中の道で、彩っぺに会った。
「よう、久しぶり〜」
「あ、うん。
この前はありがとう」
「本番はどうだった?
合格間違いナシ?」
「あ、うん。
大丈夫と思う」
「そっか、よかった」
彩っぺは優しく笑った。
「福田」
思わぬ声がして、ぎょっとして振り返る。
彼が、汗だくで少し離れたところで立っていた。
- 904 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/17(水) 21:15
- 「誰?友達?」
「あ、うん。
同じクラスの…」
「ヤマモトといいます。
よろしく」
「あ、どうも。
石黒です」
「福田、聞きたいことがあるんだ」
来た。
あたしは思わず自分の右手をぎゅっと握り締めた。
名乗ってほとんど無視された彩っぺは『なんだかな』という風に首を傾げた。
「福田、おまえこの前『恋人いる』って言ったけど誰?
俺の知ってるヤツ?」
彩っぺがあたしのほうを見る。
『あんたいつできたの』
とでも思ってるんだろう。
「え」
「ずっと聞こうと思ってた」
「こ、答えなきゃダメなの?」
彼の視線は黙秘を許さなかった。
長い沈黙のあと、彩っぺが気を利かせてくれたのか、
「まあまあ、言いたくないことは誰にでもあるしねえ。
どうだろ、今日のところはお開きにしたら?」
彼のほうを見た。
「ハイ…スミマセンでした」
「じゃ、またね。
気をつけて」
手を振る彩っぺの横で、あたしは黙ったきりだった。
そばに停めたバイクに跨って、彼はメットをかぶった。
発車するのを見届けてから、
「あんたいつ恋人できたのよ、水くさい」
「…」
あたしは黙って首を振った。
「だと思った。
まあ、ああいうタイプは思いつめるからねえ。
あれですまないと思うよ」
「うん…」
並んで歩き出す。
駅前へ一緒に向かう。
彩っぺも黙っていた。
「福田!」
ぎょっとして思わず自分の耳を疑う。
彼はあたしを避けようとして、そのままバイクごと派手に転倒した。
- 905 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/08/17(水) 21:18
- 更新しました。
レスのお礼です。
>895の名無飼育さん
(;`.∀´)<まあ、明日香はこの頃カナーリヘコんでたわね
从#~∀~从<メシもあんまり食うてへんかったなあ
口に出したら確定になってしまいそうなことってありますからね。
自分はめんどくさがりなんでどう転びそうでも何にもしませんねえ(多分)。
>ひ〜ちゃんエッグさん
ヽ;^∀^ノ<で、でも『ムーンフェイスのケイ』って女に冷たいって有名だったんだぜ?
( ´ Д `)<タラシよりはマシじゃん
ヤスはクールで売ってたんで(w
どんなに女を連れて歩いても「ヤスならな」と納得されてたという得なキャラだったのです。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;`.∀´)<まあ、口は利いてもらえるようになったわねえ
从#~∀~从<あの件以来わかりやすいくらいヘコんどったけどなあ
悪気がないとはいえ、自分で招いた傷ですからねえ。きっちり被らないと。
火傷超えて傷心自殺クラスですか、凄いですねえ(ニガワラ
>ピクシーさん
(;`.∀´)<う〜ん、見てて可哀相なところはあったわねえ
从#~∀~从<確かにあの時から大人になりおったなあ
良くも悪くも明日香の一生残る思い出のようです。
家電は見ててオモロイですけど「それはお節介すぎでわ」というのもありますね(w
>三日月ハウスさん
(;`.∀´)<中の人なんて(ry
(;〜^◇^)<滑り止めの大学落ちた時、ヤケクソでスロしてたよなあ
私など試験中から「ああ、ダメだ」と実感してますた。
でもまあ、夢がかなうまでが本当に幸せだったかなあと今にして思います。
- 906 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/08/17(水) 23:25
- 更新お疲れ様です。
中澤姉さん頼りになりますね。カッケー。
しかしその分、平家さんがまたこき使われそうですが。
- 907 名前:ピクシー 投稿日:2005/08/18(木) 05:04
- 更新お疲れ様です。
歯の痛みってキますよねぇ。
自分はいまだに「歯が痛いから歯医者」はないです。
歯医者経験は「歯形の矯正」「歯石掃除」。
とはいえ、歯を削った時の痛さは今でも覚えてます。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 908 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/08/18(木) 06:03
- 更新お疲れです
自分のケツは自分で拭くでも最後は‥心強いぜ裕子!!!
自分もバイクで派手に転んだ経験があるのでヤマモト君が心配です
余念を持ってバイク乗ると大抵事故ってしまいます
( ´ Д `)<いくつ命あっても足りやしない‥向いてないんだろうね
○ TωT○<‥いや‥いや‥歯医者嫌いorz‥歯医者に行くくらいなら目医者行く〜
( `◇´)<この馬鹿昔歯医者前駄々こねてオカンにどつきまわられたらしいで!!
(;`.∀´)<焼身自殺と自己消火の繰り返しよこの馬鹿
次回更新お待ちしております
- 909 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/08/19(金) 15:09
- 更新お疲れ様です
裕ちゃん、彩ッぺ
尊敬とほんの少しの嫌みとからかいの気持ちを込めて
これから二人のことを『アニキ』と
呼ばせてください。
付いていきます、アニキ!!
次の更新も待ってます
- 910 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/24(水) 09:12
- 彼はバイクですっ転んで膝を抱えた格好で苦しげに呻いていた。
「大丈夫?」
彩っぺが駆け寄って声をかける。
あたしもはっと我に返り、近くまで走って行った。
「ちょっと、バイク起こすの手伝って」
「ど、どうやんの?」
「言うとおりにして。教えるから」
彩っぺの言う通り、起こすのを手伝い、そのあとふたりで彼に肩を貸す形で
近くの病院に連れて行った。
「ケガ…してるのかな」
待合室で彩っぺに言ってみた。
「運が良ければ打撲とかすり傷くらいでしょ。
ただ」
「ただ?」
「膝、抱えて呻いてたからねえ。
皿んとこ割ったかも」
「…ソレ、痛いんでしょ」
昔、お兄ちゃんがサッカーの試合中に転倒し、ケガをした。
しばらく入院し、本当に痛がっていたのを思い出す。
- 911 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/24(水) 09:13
- 彼は自分で自宅のお兄さんに連絡し、迎えに来てもらってバイクも
とりあえず運ばれて行った。
やっぱり膝をやられたみたいで、あたしたちにお兄さんと礼を言うときも
痛みで顔をしかめていた。
あたしは彩っぺに送られて、中澤家に戻った。
奥歯が痛い。
そっと、頬を押さえた。
ちょうどごはん時だったので、彩っぺはみんなに混じって夕食を摂った。
なんだか重い空気で、親父さんが
「なんや、お通夜みたいなカオそてからに」
と冗談めかして言った。
「お父ちゃん」
と裕ちゃんがそっと小声でとりなし、
「こりゃスマンことした」
とそそくさと
「フロ入ってくるわ」
と中座した。
- 912 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/08/24(水) 09:15
- 「あの人もバカだよね」
あたしは無理に明るく言った。
彩っぺが顔を上げる。険しい表情だった。
圭ちゃんもちらっとあたしと彩っぺを見た。
裕ちゃんは洗い物をして、帰ってきたばかりの梨華ちゃんは不穏な空気を
不審に思ってるような表情で席に着いた。
「あたしなんかを好きになるから」
あたしはこのとき、発火したかのような熱さを感じた。
実際は、彩っぺがあたにの頬を殴ったのだけど。
凄い腕力に唖然とした。
「人を好きになるのがね」
彩っぺは震えていた。振り上げた右腕は圭ちゃんが必死に掴んで止めていた。
「どれだけみっともなくて情けないものか知ってるの?」
梨華ちゃんは『ぼ、暴力はいけません』とおろおろしていた。
裕ちゃんは黙ってあたしたちを見ている。
「誰かに好きって言うのが、どれだけ勇気のいることか知ってるの?」
彩っぺはもう一度殴りそうな勢いだった。
圭ちゃんが必死で止める。
「その勇気を笑うヤツに人を好きになる資格なんてない。
部屋で本ばっか読んでるからこんなことも分からない人間になるのよ」
『最低よ』
吐き捨てるように言い、彩っぺは帰って行った。
とにかく奥歯が痛む。
よりによって、痛むほうの頬を殴るなんて。
あたしは彩っぺに叩かれた頬を押さえ、部屋のベッドで静かに泣いた。
- 913 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/08/24(水) 09:18
- 更新しました。
ドア|(`.∀´;)<あーすかー。
レスのお礼です。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( ^▽^)<裕ちゃんカッケー!
从#~∀~从<当たり前やん
姐さんかなり頼りになります。
みっちゃんはこき使われるのは勿論のことですが、自分から動いてるフシもあるので(w
>ピクシーさん
( `.∀´)<ちゃんと磨いてるのにねえ
(0T−Tと<…マジ痛い
歯医者はまだいいのですが、『唾液吸引のヘタな歯科助手のねーちゃん』に
当たった時は泣きそうです(ニガワラ
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
从#~∀~从<ホレたハレたはあんまし他人がクチ出すモンやないけどなあ
( `.∀´)<とか言いながら結構世話焼いてるわよね
姐さんこっそり世話を焼いてます。バイクは怖いですよね、どうぞお気をつけて。
>歯医者に行くくらいなら目医者行く〜
ワロタ
>三日月ハウスさん
( ` ・ゝ´)<アニキだって
从;#~∀~从<『ほんの少しの嫌味とからかい』が気になるけどな
ありがとうございます。ふたりもきっと喜んでいると思います(多分)。
しっかりついて行ってください(笑)。
- 914 名前:ピクシー 投稿日:2005/08/24(水) 09:42
- 更新お疲れ様です。
いしかーさんのおろおろっぷりが目に浮かびます(笑)
今朝まで「新潟県道の駅巡り」に行ってました。
そしたら、和島村の道の駅から中学校らしき建物が。
ひょっとして、と寄り道したら久住小春嬢の出身校でした。
グラウンドが普通のやつと、野球用のやつと2つありましたよ。
いや〜、和島村は本当に田舎でした。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 915 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/08/24(水) 11:41
- 更新お疲れ様です
殴った!?
アニキ、グーっすか?パーじゃなくてグーなんですか?
・・・グーは痛いッすよ。
せめてパーにしてあげてください。
もしくはチョキ。
・・・あ、いや、チョキはもっとダメです。
次の更新も待ってます。
- 916 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/08/24(水) 22:30
- 更新お疲れ様です
無骨ながらあったかいすね〜
明日香がこれで大人になるんだろうな〜
ヤマモトクンが無事で何より
自分も膝の半月板損傷したことあるので痛みはわかります
从#~∀~从<あんときは何の変哲もない広い直進でいきなりコケてんな
( `.∀´)<やっぱり向いてないわアンタ
○ ・ω・ ○<センスか‥
次回更新お待ちしてます
- 917 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/08/24(水) 23:31
- ドア|(`.∀´;)<あーすかー。
なんか圭ちゃんずっと損な役回りだなあと思います。でもこのAAなんかドアがツボでおもしろく感じます。
- 918 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 18:03
- おおー、やっとここまできたー!
新参読者です。
面白いのでスラスラ読ませていただいてますが、
#6に追いつくのは、さすがに時間かかったです。大河小説。
これからは、ほぼリアルタイムで読めるー。
続き、楽しみにしてます!
- 919 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/01(木) 20:03
- その夜遅く、部屋に裕ちゃんがやって来た。
あたしは頬の痛みと泣き疲れでいつのまにか浅い眠りについていた。
ドアが開いて廊下の明かりが薄暗い室内に差し込んできた。
「どないや、ちょっとはマシなったか」
ベッドのふちに座り込んで、裕ちゃんがあたしの頭を撫でる。
あたしは黙って頷いた。
「ほなら緊急で見てくれる歯医者行こか。エライほっぺた腫らして」
「…彩っぺは」
「あのまま帰ったっきりやで。
まあ、それはまたでエエやん」
あたしはまた頷いて、階段を下りて行った。
「出かけんの?」
自分の部屋の扉から、圭ちゃんが顔を覗かせた。
「歯医者連れてってくるわ」
「あたし運転しようか?」
「エエて。アンタはまた明日早いねんやろ」
「うん、じゃ。気をつけてね」
バイバイ、と小さく手を振って、圭ちゃんはあたしに向かって笑った。
- 920 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/01(木) 20:03
- 深夜も見てもらえる病院に行ったところ、あたしの親知らずはほっぺたの
内側の肉を突き破って生えてきていて、抜くにはほっぺの肉を少し切り開く
必要があるとのことだった。
何分深夜なので、そこまで大掛かりなことが出来る医師がおらず、
明日の朝出直してきてくれ、と痛み止めの薬を渡された。
「明日は絶対行くねんで」
「うん」
帰りの車の中で、あたしは頬を押さえてコクンと頷いた。
- 921 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/01(木) 20:05
- 痛み止めの薬は全然効かず、あたしのほっぺは翌日、より腫れた。
ものを食べるのにも腫れとヘンな生え方をした親知らずのせいで口が開かず、
ポカリの缶にストローを挿して、まだかろうじて開く右側の口に
ねじこむように入れた。
それで朝食は終わりだ。
心配そうな梨華ちゃんに「大丈夫だから」と全然大丈夫じゃなかったけど
笑って見せ、圭ちゃんに教えてもらった道をたどって歯医者に行った。
梨華ちゃんオススメの歯医者は先生は無口で必要最低限しか喋んないが
腕がよく、あたしの悩みのモトだった歯をあっという間に引っこ抜いた。
切り開かれたほっぺの内側はさくさく縫われ、明日抜糸に来るように言われた。
軽くなった頬を押さえて帰り、昨日の出来事を思う。
彩っぺに会ったら何て言おう。
彼を侮辱したことに関しては謝るけど、彩っぺには多分あたしは謝んない。
決めた。
絶対謝ってなんかやるもんか。
- 922 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/01(木) 20:08
- 更新しました。
大阪ローカルの「っちゅ〜ねん!」という番組の観覧に行きますた。
(→目的は当然ヤス)
CM中、ヤスの後姿を見て私がぼそっと「エエケツしとるよなあ」と呟いたら
同行のヲタ友にひっそり「オッサン」と呟かれてしまいますた。
レスのお礼です。
>ピクシーさん
(;^▽^)<い、いえ、帰ったらおふたりがスゴイことになってて
ビックリしちゃって
从#~∀~从<梨華はああいうのごっつうろたえおるからなあ
いしかーさんはおろおろして右往左往してますた(笑)。
ミラクルさんの実家らへんはかなりのどかでよさげなとこですよね。
>三日月ハウスさん
ホレ、チョキ>( ` ・ゝ´)v(0°−°0;)<なにやってんのさ
アニキ、一応パーだった模様です。
チョキはもっとダメですか(笑)。ワロタ
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;`.∀´)<痛そうね
(;0°−°0)<ウン、マジで呻いてたし
無事だったようですが、ちょっと踏んだり蹴ったりです(苦笑)。
見晴らしのいい道ほど油断して危ないようです。お気をつけて。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;`.∀´)<まあ、同じ下宿人だったしねえ
( ゜皿 ゜)<ケイチャン、オヒトヨシダカラ ←そのお人好しを振り回してた代表的人物
適当に考えたAAなんですが、ツボでいらしたのなら幸いです(笑)。
ヤスは基本いい人ですので(笑)。
>918の名無飼育さん
\(^▽^)/<初レスありがとうございまーす!
(0^〜^)ノ<追いつきカッケー!
まずはお疲れ様でした(笑)。時間をかけて読んで頂いて嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします。
- 923 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/01(木) 20:08
-
訂正です。
>>912
誤:実際は、彩っぺがあたにの頬を殴ったのだけど。
正:実際は、彩っぺがあたしの頬を殴ったのだけど。
- 924 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/09/01(木) 22:23
- 更新お疲れ様です
握手会にも行かれた様で羨ましいです。
27日は家で想像の中で握手してました。
1枚しか買わなかったから外れて当然か・・・
美貴様と握手したかったなぁ・・・
次の更新も待ってます
- 925 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/09/01(木) 23:37
- (;●°−°0)腫れたほっぺバージョン。
更新おつかれさんです。
私も親不知を先月抜いたばっかなんで痛さがよくわかります。
この2人の意地の張り合いはすごそうで梨華ちゃんがまたオロオロしそうです。
こんなときこそひとみちゃんが…まだいないんだった。
- 926 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/09/02(金) 06:06
- 更新キター
明日香強情だな〜かわいいけど
○ ・ω・ ○<こういう時ってどっちが折れるかタイミング難しいですよね
( `.∀´)<あんたすぐ折れるじゃない
从#~∀~从<ヘたれで構成されてるからな〜
○ ・ω・ ○<人間関係を潤滑にする為です‥‥嘘です
○ ・ω・ ○<運転気をつけます
( `.∀´)<このバカなかなか頑丈に出来てるのよね〜軽トラに撥ねられてもぴんぴんしてるし
○ ・ω・ ○<っちゅ〜ねん観覧いったんすか〜‥いいな〜俺も行きたいorz
女性限定って言うのがな〜羨ましい
次回更新待ってます
- 927 名前:ピクシー 投稿日:2005/09/02(金) 09:27
- 更新お疲れ様です。
さっくり抜けてよかったねぇ。
自分は抜かずに済んだクチですが。多分。
一時期奥歯が痛かったのが、親不知だと思ってるんですが。
今は何ともなく。
事故といえば、自分もダンプカーにはねられてピンピンしてました。
もちろん相手の速度は控えめでしたけど。原付ごと吹っ飛ばされました。
ちなみに人生において捻挫・骨折の類はしたことないです。つき指が最高?
2階から転げ落ちたりしたことはあります、2回程(ニガワラ
次回更新も楽しみに待ってます。
- 928 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/07(水) 23:26
- 次に彩っぺに会ったのはイベント会場だった。
圭ちゃんに誘われて、アマチュアバンド大会にやって来たのだ。
別に興味もなかったけど、圭ちゃんも助っ人で出場するって言ってるから観に来た。
「けいちゃ〜ん!」
隣のカオリがうるさい。
「キャハハハ!圭ちゃん別人じゃん!
愛してるワ〜、ヤッス〜!」
隣のちっちゃいのもうるさい。
「よ」
彩っぺは軽く頷いて挨拶した。
「あ、彩っぺ。
久しぶりじゃん」
矢口が言うと、
「うん、ちょっと里帰りしてた」
「へ〜」
あたしと目が合い、
「元気だった?」
と声をかけてきた。
「まあ、ね」
「あの男の子、どうなった?」
「さあ。
まだ会ってないよ」
「携帯の番号とか知らないの?」
あたしが頷くと、心底あきれたような顔をした。
「ハナシ、あんだけど」
彩っぺはツイ、と顎で出入り口の方を指した。
あたしは何も言わず、ついて行った。
- 929 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/07(水) 23:26
-
「謝らないよ」
あたしが開口一番言うと、彩っぺは怪訝な顔をした。
「あの子を侮辱したことは謝るけど、彩っぺにはビタ一文謝んない」
「殴ったことは謝る」
あたしにちょっとかぶせるように、
「でもそれ以外は謝んないよ」
と言い切った。
じっとしばらくお互いの顔を見ていたが、なんだかヘンに可笑しくなってきて、
吹き出してしまった。
- 930 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/07(水) 23:27
- それから、しばらくバンド大会をみんなで見た。
「彩っぺは出ないの?」
あたしが尋ねると、
「あたしの知り合いが出てるから観に来たのよ。
なに?圭ちゃんも出てんだって?出ないっつってたのに」
圭ちゃんはとっくに出番が終わって、バンド仲間と控え室に行ったようだ。
- 931 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/07(水) 23:28
- 表彰式も終えて帰る時、会場の前でギターだかベースだか黒いケースを担いだ子とぶつかった。
「あ、スンマセン」
男みたいだけど、声を聞く限り女の子のようだ。
「あ、こっちこそゴメン」
その子はもう一度頭を下げてひょこひょこ歩いて行った。
「彩っぺ、あの子が持ってんのギター?」
「あれはベース」
「へえ」
「あの子、出てたよ」
「大会に?」
ウチらとちょっと離れたところでカオリや矢口がギャアギャア騒いでいた。
圭ちゃんが叱ってる。
「浮いててダメだね」
「ヘタってこと?」
あたしがきょとんとすると、
「逆、逆」
彩っぺは少し笑って、
「一人だけ巧すぎて他がついていってない」
空には、うっすら月が出ていた。
- 932 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/07(水) 23:29
- 更新しました。
レスのお礼です。
>三日月ハウスさん
高くつくぜ>川VvV)っ
もっと高くつくわよ!>( `.∀´)っ
仕事帰りにダッシュで行きました(苦笑)。美貴様はありえないくらい小顔ですた。
あんなに肉食ってどこに貯めとくんだろってなくらい痩せてましたし。
>ひ〜ちゃんエッグさん
( `.∀´)<アハハハ、そんなカンジで腫れてた腫れてた!
(;0°−°0)<もー、ヒトゴトだと思ってー
私は親不知全部抜いてしまってありません。ちなみに全部虫歯やらヘンな生え方しますた。
ひとみちゃんはこの頃まだ埼玉の中学生です(w
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
( `.∀´)<中の人はケンカをめんどくさがってすぐ謝るのよねー
从#~∀~从<『っちゅ〜ねん!』は八木アナもべっぴんさんやったで〜
いっそ女装するとか(ウソです)。
強情な者同士のケンカってシャレになんないですからねー。自分はまずケンカの芽を摘み取ってしまいますが(苦笑)。
>ピクシーさん
(;0°−°0)<すぐ抜けたけどやっぱ痛かったよ
( `.∀´)<ほっぺも腫れてたしねえ
親不知は甘く見てるとマジで痛い目に遭います(w
そういや私もチャリごとベンツにふっとばされて結構無事でした、まあ肩は打ちましたが。
- 933 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/09/07(水) 23:58
- 更新お疲れ様です
アニキと明日香、仲直りしたようで良かったです。
本当に仲がいいと自然と仲直りしてしまうものですよね。
ま、僕は殴られてもアニキについていきますけど(爆
それにしてもこんなところにひ〜ちゃんが出てくるとは・・・
さすがです。
ごまべ〜ぐるさんもアニキって呼んでいいですか?
あ、アネゴでもいいですけど。
次の更新も待ってます。
- 934 名前:ピクシー 投稿日:2005/09/08(木) 02:03
- 更新お疲れ様です。
ここにも本編との伏線がチラリ?
親不知、確かに甘くは見れませんね。
姉や兄の痛がりっぷりを知ってるので。
でも、自分はいまだにあそこまで痛い、ってのはないなぁ。
次回更新も楽しみに待ってます。
- 935 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/09/08(木) 06:09
- 更新お疲れです
仲直りできてよかった〜
○ ・ω・ ○<喧嘩に発展してしまうと‥もう口より手がorz
从#~∀~从<どうしようもないアホやな‥作者さん見習って平和主義目指し
○ ・ω・ ○<女装‥マジで考えようかな‥
( `.∀´)<射殺されるわよあんた‥第一アンタみたいな濃い女なんかいないわよ
○ ・ω・ ○<保田さんにはかなわないっすよ‥
( `.∀´)<殺すわよ
○ ・ω・ ○<‥ごめんなさい‥生八木アナみて〜
次回更新お待ちしています
- 936 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/09/09(金) 00:18
- 黒いケースを担いだ男みたいだけど、声を聞く限り女の子のような子とは?
白い肌で、べーグルとゆで卵で出来たほっぺが印象的な子ですか?
- 937 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/14(水) 08:51
- 打ち上げの飲み会に誘ってくれたのは彩っぺだった。
渋谷の、どっかのクラブみたいなとこに連れて行かれ、狭苦しい空間でとりあえず手足を動かしてみた。
「お、サマになってるじゃん」
彩っぺはニヤニヤ笑った。
「さすがバレエ経験者」
「まあね」
得意げにふふんとやってみせても、内心冷や汗モノだった。
だって、クラブなんか来たことないんだから。
圭ちゃんは、離れたトコでなんかやたらと激しく踊ってる。
カオリはオマエはロボットかとツッコミたくなるくらい、カクカクぎこちなく動いてた。
「キャハハハ」
ちっちゃいのがぴょんぴょんはねてる。
矢口はどっかの男の子にナンパされてた。
- 938 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/14(水) 08:51
- 飲み物を、と思ってフロアから離れると、
「やあ」
といつだったか、模試の時遅刻しそうになって送ってもらったヒトに会った。
「あ、その節はどうも」
「あ、真矢くん」
彩っぺも近づいてきた。
「来てたの」
「ああ、後半だけちょっと見た」
『じゃ、また』
と言い、そのひとはあたしにオレンジジュースっぽいグラスを手渡してくれた。
「これは…おごりってこと?」
あたしがグラスを手に困惑してると、
「いいじゃん、もらっときなよ」
と彩っぺは少し笑った。
- 939 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/14(水) 08:51
- またフロアでいい加減に踊ってると、
「ひとり?」
と肩をつかまれた。
振り向くと、それなりにかっこいい男の子がすきっ歯を覗かせて笑ってた。
「あ、や。
連れがいます」
「ごめんねー、あたしの連れなの」
彩っぺはあたしの両肩を正面からかばうように、引きずるように連れ去って行った。
「や、どうも」
礼を述べると、彩っぺはなんだかとろんとした目つきで小さく頷いた。
- 940 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/14(水) 08:53
- 喧騒のクラブを出て、外の空気を吸いに行った。
隣には彩っぺがいる。
渋公の方から、人がぞろぞろ出てくる。
「ママー、トレカ買ってー」
「自分のお小遣いで買いなさいよ」
「パンフ買ったらお金なくなっちゃったよ」
小さい女の子がお母さんらしき人に連れられて駅に向かって行く。
「あ、ママ!あのビル撮りたい!
カメラカメラ!」
「リサ、いい加減にしなさい。帰るわよ」
女の子は手を引っ張られて行ってしまった。
「なんだろね」
あたしが人だかりの方を見て問うと、
「あれじゃない?モーニングなんとかってグループの」
「ああ、ライブね」
彩っぺと手をつないで信号を渡ってく。
駅とは逆の方に歩いて行った。
手のぬくもりが心地よい。
ここを抜けたら、一種いかがわしい通りに出る。
でもなんだか平気で歩いてる。
きっと、彩っぺがいるからだ。
誇らしいような、ちょっと恥ずかしいような。
入ってみる?
その誘いの先には、ギラギラのネオンがあった。
- 941 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/14(水) 08:57
- 更新しました。
実際の初ライブはこの年の7月です。
ちなみにこのグループの初めてのトレカ「プリネーム・モーニング娘。」
全50種は同じ年の12月にバンダイから発売されました。
レスのお礼です。
>三日月ハウスさん
(;▼〜▼)<な、なんのことでェ?あっしにはわからねえでゴンス
(〜^◇^)/<オマエはナニモノだよ!てか、バレバレだよ!
別になんてことなく自然に仲直りしてるのが友達というものです。
ありがとうございます(w。アニキでもアネゴでもお好きなのでどうぞ(w
>ピクシーさん
(0▼〜▼)<チラリカッケー!
(〜^◇^)<ところであくまで正体は隠すんだな?
チラリってなったかは分かりませんが、まあご想像におまかせします。
親不知は腫れ過ぎるとマジで飲み食いができなくなります。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(0▼〜▼)<仲直りカッケー!
(〜^◇^)<カッケー言いたいだけちゃうんかと(ry
頑固者同士なのでかえって解決できたのかもしれません。
私もオッサンみたいなモノですから女装くらいなんてことはないかと(いけませ
ん)。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(0▼〜▼)っ◎<オ、オイラ、ベーグルなんて食ったことないYO!
(〜^◇^)/<手に持ってるのはナンだよ!
まあ、ご想像におまかせします。
当時埼玉在住の中学3年生の方で、趣味はバンド活動とメールとバレーとか。
- 942 名前:三日月ハウス 投稿日:2005/09/14(水) 13:29
- アネゴ、更新お疲れ様です
前回のひーちゃんに続いて
彩っぺの旦那とガキさんの登場カッケー!
このシリーズで他に誰が出てくるのかすごく楽しみです
次回の更新も待ってます
- 943 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/09/14(水) 23:00
- 更新お疲れ様です
‥ガキさ〜ん
さぁ次は誰だ!!!
○ ・ω・ ○<ネオンかぁ〜懐かしいな会社員時代よく呼ばれてふらふら逝ってたな〜
从#~∀~从<このバカ次の日店から通勤したこと何回もあったらしいで
○ ・ω・ ○<給料がすぐ消える原因はあれだったな‥
○ ・ω・ ○<先日友人宅で女装してみました‥捕まりそうなので諦めました
- 944 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/09/14(水) 23:19
- リサさんって、何か似たような豆っぽい子と同一人物なんでしょうか?
正体バレバレおもれ〜!
- 945 名前:ピクシー 投稿日:2005/09/16(金) 00:30
- 更新お疲れ様です。
明日香がクラブ・・・なんともイメージが涌かない(ニガワラ
レス遅れの原因は、富山県&石川県に行ってました。
能登半島の端っこの方まで行ってきましたよ。
やっぱ、日本は日本ですねぇ〜(謎)
次回更新も楽しみに待ってます。
- 946 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/21(水) 22:05
- 彩っぺは受付でおばさんと何か二言三言言葉を交わし、鍵を持って戻って来た。
部屋までの足取りといい、慣れてるな、と思った。
あの時、彩っぺが指差すネオンはいかにもなホテルのだった。
『ご休憩』の価格が相場なのかどうかも見当がつかずドアをくぐった。
10時を過ぎたら嫌が応でも泊まり料金になると彩っぺに教わって、
なるほど、と納得する。
- 947 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/21(水) 22:06
- 別に指示されることなくシャワーを浴び、口づけを受けた。
平常時の体温っていうのは35度とか6度だっけ。
意外にひんやりしてるんだな、と思った。
文字通りだ。
肌を重ねる、とか肌を合わせるって。
真綿でくるむような、かと思えば、例えるならシャツを乱雑に脱ぎ捨てるような。
それが彩っぺの愛し方だった。
―――それにしても初心者だと分かっててやってるだろうに。
絶対、わざとだ。
今夜は満月だ。
彩っぺが眠りについてから、東京のスモッグだらけの空にうっすら浮かぶ月をじっと眺めていた。
- 948 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/21(水) 22:06
- 愛がないことを目覚めてから改めて自覚した。
このことを彩っぺにどう言い訳しようか、あたしは膝を抱え後味悪い思いでずっと考えていた。
眠りが浅かったのか、彩っぺは案外早く目を覚ました。
ソファでぼんやりしてたあたしと目が合うと、少し体を起こした。
「あ、彩っぺ…」
なに?
彩っぺは、優しい声を出した。
あたしは少し頭を振り、さっきまで一生懸命考えていた言い訳を、唇に紡いだ。
「あ、あたし…」
「後悔、しないでね」
彩っぺはあたしが言うより早いか、こっちまで来てあたしをぎゅっと抱きしめた。
「あたしも絶対しないから」
「うん」
しがみついて、わんわん泣いた。
愛がなくても出来るってことに納得と後悔、色んな感情が押し寄せてきた。
でも。
初めてが、この人でよかった。
恋とかそんなのじゃなかったけど。
友情のまま押し流されて結局恋にもなんにもならずに、昇華もなにもできなかったけど。
この人でなかったら、あたしは恋もなんにも知らずに大人になってただろう。
痛い思いも、苦い思いも分からないまま。
- 949 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/21(水) 22:07
-
―――あの後、彩っぺは中澤ハイツを出て行って、あたしをバイクで模試会場まで連れてってくれた人のお嫁さんになった。
あたしは高校を何とか卒業し、一旦実家に戻ってからロンドンにとりあえず語学留学までこじつけた。
今でもたまにあの頃の事を思い出す。
彩っぺが中澤ハイツを出る前、圭ちゃんの部屋でみんなで写真を撮った。
撮影係の梨華ちゃんは『シャッターここでいいんですかあ?』としきりに聞いていた。
写真を撮ろう。
みんなが離れ離れになっても、ここにいたことを思い出せるように。
そう言ったのは、あたしだった。
その写真は今も手元にある。
1枚はアルバムに飾り、もう1枚余計に現像してもらった分は写真立てに飾ってる。
ベッドの上から、カオリが笑いながら転げそうになってる。
- 950 名前:雨上がりの夜空に 投稿日:2005/09/21(水) 22:07
- ―――いつものように、バイト先から下宿に帰る。
『アスカ、またニホンからエアメールよ』
と下宿先のマダムが封筒の束を渡してくれた。
お礼を言って、階段を上がって行く。
「あれ、カオリからだ。珍しい」
封筒を開けると、カオリが何故か真面目くさった表情の圭ちゃんと写った写真が出てきた。
『明日香、元気でやってる?
カオリ、結婚します』
何度か読み返し、また思い切ったことを、と写真の中の圭ちゃんの英断にシャッポを脱いだ。
もう1通は裕ちゃんたちからだった。
『元気そうやね。
彩っぺからもよろしく伝えといてってこの前メールきてたわ』
恋でもないのに、その名前を目の当たりにすると苦笑しそうになる。
これは多分あたしが彼女を忘れない限り続くのだろう。
彼女も、きっとそう。
やけに分厚い封筒だと思ったら、梨華ちゃんからの他に、加護亜依とやや丸っこい字で記名された封筒が出てきた。
ああ、あたしが前いた部屋で今下宿してるって子か。
そういや本を譲るって件でこの前裕ちゃんにメールしたっけ。
『初めまして、福田明日香様。
加護亜依と申します。
先日は素敵な本を譲って頂いて、本当に有難うございます』
お茶を飲みながら、ゆっくり手紙を読む。
梨華ちゃんが、みんなの写真を同封してくれた。
全部入るような少し大きめの写真立てを、明日探しに行こうと思う。
- 951 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/21(水) 22:10
- 更新しました。
これで明日香番外編は終わりです。
次回からまた本編に戻る予定です。
レスのお礼です。
>三日月ハウスさん
∬∬`▽´)<おめー昔っからヲタなんだな、初ライブまで見てるとは
(;・e・)<なななな、なんの話?チ、チケの半券なんか記念に残してな、ない よ!
当時神奈川県にお住まいだった小学校5年生のお嬢さんです。
なっち推しでカラオケでも特になっちパートは完璧です。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;・e・)<し、知らないもん!渋公へは『ザ・トップテン』見に行ったんだもん
∬∬;`▽´)<なにソレ?アタシも知らねーよ
ネオンはネオンでも違うネオンだった模様。
私もスカートがまるで似合わないので女装のようなモンです(苦笑)。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(;・e・)<し、渋公で『ザ・トップテン』見てそのままNHKホール行って 『レッツゴーヤング』見たんだもん!
∬∬;`▽´)<ますますわかんねーって!
オリメンヲタで特になっち推しの小学校5年生のお嬢さんです。
豆というかなんというか超小顔で土手のないもんじゃが好物です。
>ピクシーさん
(;・e・)<し、渋谷はそう!ク、クラブイベントに行ったの!クラブイベント!
∬∬;`▽´)<もーいーって
当時のイメージからは本当に湧きませんよね(ニガワラ てか、辞めた時で中3でしたか…(遠い目)。
能登半島かあ、いっぺん行ってみたいですね。
- 952 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/21(水) 22:24
- 更新おつかれさまです
自分がまだ娘。さんたちのファンになる前に気にかけていたのが
福田さんだったの思い出しました
すてきなお話しありがとうございました
- 953 名前:ひ〜ちゃんエッグ 投稿日:2005/09/21(水) 23:30
- 番外完結。お疲れ様でした。
明日香の出演が終わって寂しい気もしますが、そろそろグラサンを外した主役も見たいですね。
また甘々まったりとした本編を期待しとります。
- 954 名前:懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619g 投稿日:2005/09/21(水) 23:57
- 番外編お疲れ様です
○ ・ω・ ○<あっあすか〜
なんか叫びたくなったっす‥深い意味はないです
あらネオン違い
从#~∀~从<アホやな〜
(;・e・)<このバカの女装は見た人全員殺意抱く代物でしたよ
本編復活お待ちしております
- 955 名前:ピクシー 投稿日:2005/09/22(木) 02:52
- 更新お疲れ様です。
明日香視点も終わりですか。なんか名残惜しい。
能登半島は一気に走りぬけた感じですけどね。
輪島の朝市とか、千枚田、能登空港はちょっとだけ見てきました。
能登空港って何故か「道の駅」にもなってるし。
いやいや、やはり日本はどこいっても日本ですねぇ。(しみじみ)
次回更新も楽しみに待ってます。
山梨
- 956 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/28(水) 23:14
- レスのお礼です。
>952の名無飼育さん
(0°−°0)<ありがとうございます
( `.∀´)<中の人も明日香の歌が好きだったのよ
そうでしたか、私もヤスヲタになったのは、彼女が明日香パートを引き継いだからっ
ていうのも
あるんです。素敵なお話と言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます。
>ひ〜ちゃんエッグさん
(0°−°0)<う〜ん、当分出番はないかな
( `.∀´)<グラサンをした主役は何してるかしらねえ
明日香もまた機会があれば出て来たり出て来なかったりするかもしれません。
とりあえず本編を頑張らせて頂きます(笑)。
>懐妊菊門○ ・ω・ ○薔薇族 ◆homOXY619gさん
(;0°−°0)<叫ばれてる
( `.∀´)<叫び返したら?
ネオン違いで更に軽く騒動でした。一気に大人の階段を駆け上がってるし。
殺意を抱く女装ですか(笑)。それはそれで凄いですね。
>ピクシーさん
(0°−°0)<ありがとうございます
( `.∀´)<若い頃をちょっと思い出したわねえ
とりあえず無事(?)終わりました。また機会があれば、と思っております。
空港なのに「道の駅」なんですか、謎ですね。
- 957 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/28(水) 23:16
- ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sea/1127916379/
( `.∀´)<新スレよッ
(〜^◇^)/<まだ続くんかよッ!
- 958 名前:ごまべーぐる 投稿日:2005/09/28(水) 23:17
- とりあえず微妙なレス数なので、思い切って新スレを立てることにしました。
こちらは何かに有効利用しようと思います。
ではでは。ノシ
- 959 名前:ごまべーぐる 投稿日:2006/02/11(土) 11:56
- 作者です。
管理人様、ログ整理作業お疲れ様です。
こちらのスレも残して頂けないでしょうか。
ご無理を言いまして申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
- 960 名前:ごまべーぐる 投稿日:2006/02/11(土) 12:08
- 以前書いたヤス番外編の頃の話です。
今回は市井視点で。
- 961 名前:ラブレターズ 投稿日:2006/02/11(土) 12:09
- 気晴らしとバンドのドラマー探しも兼ねて行った、ジャズバンドのライブ。
ソコで、すっごいヤツを見つけてしまった。
「な、なんじゃ!?あのドラム…」
ドラマーは割に小柄な女で、仏頂面で正確無比なリズムを刻んでいた。
わざとやるハズし方もクールで、アタシはその音に呆然としてしまった。
「んあ〜、すんごいねえ」
隣の幼馴染の女は、いつものようにのんびり言った。
「ケイー!」
会場のどこかから掛け声がかかる。
「ケイ?んあ、あのヒトがケイか」
幼馴染の女―――後藤はごそごそとカバンからフリーペーパーを取り出した。
「キマリだね」
後藤の言葉に、アタシも頷いた。
アタシは当時、大学に入ったばっかで、ロックバンドをこの幼馴染とやっていた。
ところが――まあ、原因の大半はアタシなんだけど――ドラムやベースといった、
バンドの要であるリズム隊のメンバーが長くいつかず、困り果てていたのだ。
『今もやってんのかわかんねーけど、ムーンフェイスのケイってのがスゴイぜ。
ジャズバンドだけど、あの音は凄いから』
仲間から聞かされ、アタシと後藤は『ジャズ、ムーンフェイス、ケイ』って
キーワードを頼りにずっと探していたのだ。
- 962 名前:ラブレターズ 投稿日:2006/02/11(土) 12:10
- 『ムーンフェイス?解散したぜ、とっくに』
『マジで!?』
後日、別の知り合いのバンドのギタリストから聞かされた時は、
ショックで倒れるかと思った(て、アタシはそんなヤワじゃないけど)。
『ケイってヒトはどうしてんの』
『ああ、元が学生だしなあ。あ?オマエとガッコ一緒じゃねーの?
アサヒなんとかって女子大』
ケイが今もバンドをやってるかはともかく、
『大学が一緒』という耳寄りな情報を入手して、アタシはソコで満足してた。
「んあ、ライブに行くよ」
どこからチケットを手に入れたのか、後藤はジャズバンドのライブに行こうと
誘ってきた。
「ジャズ?なんでまた?」
「ケイってヒトが出んの」
「マジで!?」
「ゲストで出るんだって」
後藤はさくさくとライブハウスまで歩く。
- 963 名前:ラブレターズ 投稿日:2006/02/11(土) 12:11
- ケイの音は凄かった。
めちゃくちゃ耳がいいのか、リズム感がいいのか。
その両方なのか。
リズムだけでなく、その空間まで支配していた。
その癖、前に出過ぎない。
もう、完璧だった。
「すんげー…チビリそう」
アタシが放心状態で呟くと、
なに言ってんのかね、コノヒトは。
後藤はそう言って顔をしかめた。
- 964 名前:ラブレターズ 投稿日:2006/02/11(土) 12:12
- 「いちーちゃんがオンナノコのケツ追っかけてる間、ごとーはガッコの友達から
ケイさん情報を入手しました」
「ナニ?」
ライブ後、立ち寄った居酒屋で後藤は得意げにメモを広げた。
「本名:保田圭。都内の女子大の3年生。千葉県出身。射手座、A型。
大学入学と同時に千葉の実家を出て都内で下宿中。
趣味:ドラム、サックス、パソコン
コンビニでお弁当を買うときはカラアゲ弁当」
「趣味まではともかく、最後のはナンだよ、『カラアゲ弁当』って」
「さあ、好物なんじゃない」
「そもそもその教えてくれたヤツってナニ?」
「んあ、ムーンフェイスの追っかけやってたんだって」
「へえ」
「ヤスダさんに迫ったら、普通に断られたってゆってた」
「はあ。
ソイツ、オンナ?」
「ごとーの友達?」
「ん」
「んあ、そーよ」
「もったいねえ」
間髪入れずに、丸めた新聞で叩かれる。
アタシはゴキブリかっての。
- 965 名前:ラブレターズ 投稿日:2006/02/11(土) 12:15
- ライブを見た翌日。
アタシは早速、大学構内でヤスダケイ探しを始めた。
部活の先輩に『3年にヤスダケイってヒトいます?』
と聞いたら『ヤスダ?経済のヒトかな』
とだけ答えが返ってきた。
掲示板のおしらせなど、マメに目を通す。
アタシが普段見るのは休講情報くらいだ。
「…あった!」
『法学部経済学科3年206番保田圭』
学籍番号とともに、デカデカと何かの掲示物に名前が書かれてあった。
一般教養の授業に珍しく出席する。
確か、出席簿が回ってくる授業があったはずだ。
経済の学生が大半なので、もしや『ヤスダさん』とやらもとってるかも知れない。
「ケイちゃ〜ん」
労することなく、ヤスダさんは見つかった。
呼んだヤツは苗字を呼んだわけでもないが、『間違いない!』という確信があった。
「ああ、久しぶり」
あの日、ムダにギラギラしながらドラムをドカドカ叩いてた小柄な女は、
今日はやけに穏やかに友達らしき女と喋っていた。
「ケイちゃん去年もこの授業取ってなかった?
落としたの?」
「ううん。時間あったからモグってんのよ。
この先生の授業面白いし」
「へえ、熱心だねえ」
それからヤスダさんは授業までご学友と喋り、担当の先生が来てからは
背筋を伸ばしてモグリのくせに熱心に聴講していた。
- 966 名前:ごまべーぐる 投稿日:2006/02/11(土) 12:17
- 更新しました。
いつ終わることやら(汗)。
タイトルはジャズのスタンダードナンバーからです。
ヤス→大学3年
いちー→大学1年
ごま→高2
でお読みください。
- 967 名前:ごまべーぐる 投稿日:2006/02/11(土) 12:22
- ヤス番外編の方の「All Of You」は「屋根の下のベース弾き #2」41-104で
読めたり読めなかったりします。
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