希望峰
- 1 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/09(火) 10:08
- 長いことROMってましたが、初めて書いてみました。
書く方はド素人なので見苦しいかもしれませんが、
付き合っていただけたらこれ幸いです。
主人公は田中れいなで、その他大勢出演予定です。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2004/03/09(火) 10:11
- 深夜2時。
人気の無い路地裏。
この夜の静寂を破り駆けていく影が二つ・・・。
「待て!!」
「ハァ、ハァ・・・クソッ、なんつー速さだ、あのガキ・・・。」
毒づきながら角を曲がった男の前方に現れる壁。
「チッ、行き止まりか」
「もう逃げられんよ!!」
叫んだのは、引き返そうと振り返った男の前方に現れた少女。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2004/03/09(火) 10:11
- 「ハッ、舐めるなよ?てめぇみてぇなガキに捕まるほど落ちちゃいねぇぞ、オレぁ」
「今まで散々逃げ回っといて言うことはそれだけ?」
「舐めんなって言ってんだろうが!喰らえ!!」
叫んだ男の手から放たれた紙片は犬型の獣に姿を変え、少女に襲い掛かった。
が、その爪が少女の首をあと数センチで捉えようという所で
ザン、という音と共にまたただの紙くずに姿を変えた。
「こんな低級な式神使ってくるなんて・・・、そっちこそ子供だと思って舐めないでよね」
「なっ!?て、てめぇ 化け物・・・が!?・・・。」
少女の変貌に驚愕した男の言葉は、文字通り目にも止まらぬ速さで懐に飛び込んできた
彼女の一撃に遮られた。
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2004/03/09(火) 10:12
- 「それ、禁句」
身体をくの字に曲げ意識を失った獲物を一瞥し、少女は耳に仕込んだ機械のスイッチを入れた。
『はいはーい』
「紺野さん?終わりましたよ」
『ご苦労様。それじゃその人こっちまで運んでくれるかな。後はこっちでやっとくから。
・・・ってアレ?他の二人は?』
「あー、いや、それがですね・・・。」
言いかけて、背後に二つの強烈な殺気を感じ、凍りつく。
「「れ・い・な〜?」」
妙にやさしい声に振り返ると、そこには天使の微笑をたたえた二人の少女。
- 5 名前:プロローグ 投稿日:2004/03/09(火) 10:14
- 「いや、さゆ、えり、ちょっとタンマ。違うって。あの場合しょうがなかったんだって・・・。
お、落ち着いて話を・・・ね?」
両手で二人を制しつつ後ずさるも、背中に感じる冷たい感触。
「・・・殺す」
「血、ちょーだい」
何やら物騒な言葉を吐きながら迫る二人。
迫られる少女は既に涙目。
「いや、えりコワイってば・・・。さゆ!牙しまいなさい!!う、うあぁぁぁぁぁ!!!」
『お〜い、三人とも仕事・・・。』
少女の悲鳴も機械の向こうのか細い声も、夜の静寂に溶け込んでいく・・・。
深夜2時。
人気の無い路地裏。
- 6 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/09(火) 10:19
- はい、ここまで。
うわ、なんか短ッ!!
週一更新を目標に頑張るのでマターリ見守ってやって下さい。
感想、誹謗中傷、待ってます。
誹謗中傷にはレス返さないかもしんないですけどw
ではこれからヨロシクお願いしますデス。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 17:31
- 面白そう!
れいなが亀井さんと道重さんの二人にせまられてる〜ハアハア
早く続きみたいです。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 19:00
- ついに書き手としてデビューなされたんですね。
これからどんなお話へ広がってゆくのか楽しみです。
これからもマターリついて行くんでガンバです。
- 9 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:22
- 「れいな〜、朝だよ〜。早くしないと学校遅れるよ?」
言ってる割には全く焦る様子も無く布団の中の少女、田中れいなの眠りを妨げるのは
彼女の同期、亀井絵里だ。
「うぅ〜、今日サボる」
無理もない。
昨夜の疲労が残っている上、全身が痛む。
おまけに重度の貧血状態だ。
これで動けたら人間ではない。
・・・と、言ってもれいなは半分人間ではないのだが・・・。
- 10 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:23
-
「そんなコト言ってると、また飯田さんに怒られるよ?」
(誰のせいだ、誰の・・・。)
絵里と、今は地下室で熟睡しているはずの同期、道重さゆみのせいである。
もちろん口には出せないが・・・。
「あ〜もう。わかったよ!行きますよ!!飯田さんコワイし・・・。」
そう言って乱暴に起き上がる。
彼女たちのリーダー・飯田圭織の説教はコワイ。
ていうか長い。その上意味不明。
気づくと何処からか引っ張り出してきたホワイトボードが見たこともないような図形と
数式、謎の言語でいっぱいになっているのだ。
- 11 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:26
- 「だ〜れ〜が〜恐くて、説教長くて、ロボっぽいって〜?」
「ひぃっ、い、飯田さん!?口には出してませんよ、ソコまでは・・・ってあれ?」
10時間の正座を覚悟して声のする方に向き直ったのだが、
其処にいたのはリーダー・ロボより随分ちっちゃな人。
「あ、矢口さん。おはようございます」
「はい、おはよう・・・って亀井ちゃん、もうちょい驚いてよ」
「別に説教喰らうのは私じゃないですからね」
- 12 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:27
- 何気に非道いコトを言っている絵里のニコッ、と音がしそうなこの笑顔を、
れいなは昨夜も見た。
記憶が正しければその直後に恐ろしく的確な上下のコンビネーションを頂いたハズ。
彼女の笑顔はいつも同じようで、実はそういう時だけ唇の湾曲率が微かに上がるのを、
れいなは文字通り痛いほどよくわかっていた。
どうやらまだ昨夜のコトを怒っているらしい。
- 13 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:28
- 「ひどいじゃないですか、矢口さん。変声術まで使って・・・。」
「アハハ、ごめんごめん。カオリに田中起こすように頼まれてさ。
こっちの方が効果あるじゃん?」
「そりゃそうでしょうけど、心臓止まるトコでしたよ」
「ハハハ、そりゃ言い過ぎでしょ」
否、れいなは大マジだ。
「あ、あと今日は早く帰ってきな。なっちが昨日のお礼になんかご馳走作ってくれるらしいよ。
ついでにオイラ達の分もだって。どうせ今日‘‘モーニング’‘しかいないしね」
「ホントですか!?私、さゆに教えてきます。じゃれいな、玄関で待ってて」
- 14 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:29
- 嬉々としてパートーナーの眠る地下室に向かう絵里を見送り、訪れる数秒の沈黙。
「あ、矢口さん、あたし着替えるんで・・・。」
「うん」
「いや、うん じゃなくて・・・。」
「気にせずどうぞ」
そっちの気(け)がある先輩にニヤニヤと見つめられて着替えなどできるわけがない。
説得している時間もないので、無言で先輩の顔の前に右手を掲げ、シャキン、と爪を尖らせる。
「わー!冗談だってば!出て行きますから!!
・・・ホント最近の若い奴は暴力的だな」
- 15 名前:日常 投稿日:2004/03/11(木) 13:30
- ブツブツ言いながら音も無く姿を消した彼女、矢口真里の年齢は21歳。
間違いなく彼女も若くて暴力的な連中の一人だ。
「さゆとえり程じゃないですけどね・・・。」
呟いて昨日のコトを思い出すと、背筋がゾクッ、とした。
手早く制服――ブレザーとチェックのスカートだ――に着替えて髪をセットし、
鞄を掴んだ所で、壁に掛かったカレンダーに目をとめた。
「そっか、もうここに来て一年経つんだ・・・。」
一年前まで自分は普通の中学生だったハズ。
それが今や‘‘史上最強の変人集団’‘の一員だ。
そう、全てはあの日、あの人に出会ったことで始まったのだ・・・。
- 16 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/11(木) 13:31
- *****
- 17 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:33
- その日は休日で、友達の家に遊びに行っていた。
帰るのが少し遅くなり、小走りに急いだ帰り道・・・。
・・・には何も無く、いつも通りに社宅の階段を上っていった。
だが、家のドアノブに手をかけた瞬間、妙な感覚に襲われた。
吐き気のような、眩暈のような、そんな感覚に・・・。
「ただいまぁ・・・。」
ドアを開け、恐る恐るではあったが、確実にそれほど広くは無い暗い室内に響くように言った。
それなのに返事は、ない。
留守?いや、両親は割と用心深い。
れいなが鍵を持っているのは知っているはずだし、鍵もかけずに外出などしないはずだ。
それに休日のこんな時間にれいなを置いて外出なんて今までになかった。
- 18 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:34
- サプライズパーティー・・・。
そんな言葉が頭をよぎるが、今は一月。
れいなの誕生日は随分遠い。両親や他の親戚にも一月生まれの人は知らない。
一歩一歩、リビングに繋がるドアに近づいていく。
足音は忍ばせているつもりだが、それでもフローリングの廊下が軋む音がハッキリ聞こえる。
服は真冬だというのに汗でグッショリ湿ってきている。
ようやくドアの前にたどり着いた。
3〜4mの距離しかないはずなのに、れいなには学校のマラソン大会で走った森林公園の
外周より長いものに思われた。
実際、汗の量はその時のものに匹敵する。
- 19 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:35
- ゆっくりとドアノブに手を伸ばす。
自分の心臓の音がハッキリと聞こえてくる。
胃が、痛い。
れいなの動物的本能の全てが、逃げろと悲鳴のような警笛を鳴らしている。
――怖い――
実はこわがりの筈のれいなが、ここまでハッキリ怖いと感じているにもかかわらず、
その手はドアノブを捻った。
カチャリ・・・
捻ったが、そこから身体が動かない。
あとはこの戸を押すだけでいい、そうすれば両親がいつも通りに温かく迎えてくれる。
意識の上でそう思おうとしても、その何倍もの情報処理機能を持った無意識がその考えを真っ向から否定する。
自分はきっと何か変な病気にかかってしまったんだ。
そう思っても同じ事。
- 20 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:36
-
あがなえぬ恐怖。
ただそれだけがれいなの心を、身体を支配している。
この先には何かがある。
触れては、見てはいけない何かが・・・。
それが何かはわからない。
わからないコトが恐怖を増幅させているのだろうか?
否、この恐怖はその‘‘何か’‘から湧き出ているモノだ。
根拠など全く無いが、れいなの本能はソレを敏感に感じ取っていた。
- 21 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:37
- これ以上は耐えられない・・・。
そう思い、手を離そうとした時だった、
・・・・ガシャァァァン・・・・
中から聞こえてきた音に、気づいたら飛び込んでいた。
中は――カーテンが開いているため廊下よりは明るいが――薄暗く、
コタツを挟んで向こう側に誰かが立っているのと、その髪の長さからその誰かが女性であることが
かろうじて分かった。
「お母、さん・・・?」
その人影に近付こうとすると、急に外から冷たい風が吹き込んできた。
同時に雲に隠れていた月が現れ、その光が人影の顔を照らし出す。
スッ、と通った鼻筋、意志の強そうな瞳。
町で見かければ誰もが振り返るような美人。
- 22 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:38
- 「あの、あなたは・・・?」
尋ねようとして、女性の足元に転がった二つの‘‘モノ’‘に気付いた。
「えっ・・・ちょっ・・・何・・・?」
その‘‘モノ’‘は人の形をしている。
「なんでこんなトコに寝て・・・、ちょっと起きてよ、二人とも」
その‘‘モノ’‘は水溜りの上に重なるように倒れている。
「起きてよ!お父さん!・・・お母さん!!」
その‘‘モノ’‘はれいなの両親らしい。
「嘘!やだよ!!・・・なんで!?起きてよ!!起きてってばぁ・・・!」
否、その‘‘モノ’‘はれいなの両親‘‘だった’‘に過ぎない。
今はもう、物言わぬ肉塊でしかない。
- 23 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:38
- 「なんで・・・?・・・!!・・・。」
自分の手の平に付いた生温くぬるりとした液体から視線を移し、気付いた。
こちらを見下ろす女性の手に握られたソレに・・・。
日本刀・・・月光を反射し青く輝くソレと、その切っ先から滴り落ちる赤黒い液体。
それだけあれば、事態を把握するのには十分だった。
「アンタが・・・。」
この女が、自分の両親を斬殺した。
そう認識すると同時に、体の奥底から何か熱いモノが込み上げてくる。
その熱いモノは先程までの恐怖に代ってれいなの身体を支配していき、
同時にれいなの心は、紅蓮の如き怒りと不思議な高揚感に侵食されていく。
女は何か言っているようだが、その声はれいなの耳には届かない。
代りにれいなの頭には異様にゆっくりと、しかし力強く、己の心音だけが響き渡っていた。
- 24 名前:あの日、あの時、あの場所で。 投稿日:2004/03/11(木) 13:39
- 「うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
気付けば、女に飛び掛っていた。
そのまま爪で女を引き裂く。
れいなの頭には何故かそんなイメージが浮かんでいた。しかし、
「・・・ごめんっ・・・。」
言うが早いか、女はれいなの視界から消えた。
刹那、バキッ、という音と共に後頭部に走る鈍い痛み。
れいなの意識は、そこで途絶えた。
- 25 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/11(木) 13:44
- 更新終了。
レス頂いたのと、案内板で面白そうと言ってもらえたのが嬉しくて
ストック無視でやってしまいました。
そんなわけで次は一週間くらい空くかもしんないですわ。
短いくせに申し訳。。。
- 26 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/11(木) 13:56
- >>7 名無飼育さん 様
記念すべき初レス、ありがとうございます。
れいなは諸事情によりしょっちゅうさゆみに迫られてますので
存分にハァハァ言っちゃってくださいw
これからもよろしくどうぞです。
>>8 名無飼育さん 様
はい。デビューしちゃいましたw
なんか読んでばっかいねぇで貴様も書きやがれという
天の声が聞こえた気がするので。(←危険
見放されないよう頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。
読む方は毎日のようにやってるのでそちらもよろしくですw
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/11(木) 19:24
- 更新お疲れ様です。
あぁ・・・田中さん・・・
続きが気になります。
またーり待ってます。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/13(土) 23:36
- なかなかおもしろそうですね
マイペースでがんばってください
- 29 名前:なっちの晩餐 投稿日:2004/03/18(木) 10:56
- 『いただきま〜す♪』
「は〜い、召し上がれ」
UFA日本支部、第二会議室内。
あまりこの部屋に似つかわしいとは言えない、14人と1人の声が響き渡る。
その後響きだす和気藹々とした話し声とカチャカチャ、という食器とスプーンの当たる音。
「三人とも味どお?」
「「「すっごい美味しいです!」」」
「ふふ、そー言ってもらえると作った甲斐があるってもんだべさ」
なまり全開で太陽の笑顔を見せるこの女性が、今朝方真里の言っていた「なっち」こと安倍なつみだ。
どうやらこの晩餐会が彼女から三人へのお礼のようだ。
ただ、泣き出しかねないメンバーもいるのでこの後仕事を控えている
‘‘モーニング’‘全員をもてなすことにしたみたいだ。
ちなみにメニューは北海道風クリームシチューにジャンボオムライス。
材料は昨日日帰りで行って来た釧路で入手したらしい。
- 30 名前:なっちの晩餐 投稿日:2004/03/18(木) 10:58
- 「でも昨日は悪かったねぇ。なっち急に知り合いの人に仕事頼まれちゃってさぁ。大変だったっしょ?」
「いやまぁ仕事はそうでも無かったんですけどその後が・・・痛ッ!」
突如激痛の走った右足に視線を移すと、そこには見覚えのあるスニーカー。
「あ、そうだ安倍さん聞いて下さいよ〜。れいなったら昨日、わたしとえりを盾に使ってあのオジサンの
攻撃自分だけ避けたんですよ〜。ひどくないですか?」
さゆみの言うオジサンとは、なつみが追っていた空き巣ねらいの盗人のコトだ。
力はたいしたこともなかったが符術を使って巧みに逃げ回っていたので、先日‘‘モーニング’‘を
抜けたばかりのなつみに仕事が回ってきた。
アジトを突き止め昨日踏み込もうとしたのだが、友人からの依頼を断りきれず
この三人に代役を頼んだということらしい。
- 31 名前:なっちの晩餐 投稿日:2004/03/18(木) 10:59
- 「えぇ〜?田中ちゃんそんなことしたの?」
「い、いやでもアレは・・・。」
確かに捕縛系の符をいきなり放たれてとっさに自分の前にいた二人の陰に隠れたのは
事実だが、ああしなければ三人とも身動きがとれず奴に逃げられただろうし、
何よりその後できっちりと手厳しい報復まで受けたのだ、反論せずにはいられない。
「なぁに、れいな。なんか言いたいコトでもあるわけ?」
聞こえたみょ〜に優しい声に、恐る恐る右隣を見るとそこには絵里のあの笑顔。
ついでに右足にかかる彼女の体重。
これでは、
「いえ、なんでもありません。。。」
と、答える他ない。
- 32 名前:なっちの晩餐 投稿日:2004/03/18(木) 11:01
- なつみはと言えば、そんなれいなの様子を楽しんでいるのか
「田中ちゃんがそんなコトする子だなんて、なっち知らなかったべさ〜」
「ですよねぇ。わたしも騙されてましたよ〜」
とか、さゆみと一緒に言っている。それも大げさなアクション付きで。
こんな姿を彼女がかつて捕まえた凶悪犯達が見たら、たぶん泣く。
「ホントだよねぇ〜」
絵里もれいなの顔を見つめながら言ってくる。
もちろんれいなの右足に乗せる体重を増やしてグ〜リグリやりながら。
通信機越しに自分の身に降りかかった厄災を知るはずの先輩にSOSの視線を
送ったが、彼女はシチューに夢中でそんなものには気付かない。
他の誰かに助けを求めたいが、あがなえぬ恐怖―と痛み―に心と身体を支配されたれいなにそれは無理。
絵里の足はまだどいてくれそうもない。
- 33 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/18(木) 11:02
- *****
- 34 名前:悪夢 投稿日:2004/03/18(木) 11:05
- ――――寒い。
暗闇の中、れいなは一人佇んでいる。
――――ここは?お父さん?お母さん?ねぇどこ!?
叫ぶと同時にれいなの前に現れる二人の人影。
――――お父さん!お母さん!良かった、無事だったんだ。
れいなが駆け寄っても、二人は何も答えない。
それどころか、れいなの方を見てもいない。
虚ろなその瞳は、空間の一点を捉えて止まっている。
――――ちょっ、どうしたの二人とも?ねぇ!?あたしだよ!?れいなだよ!?
掴んで揺すっても、両親の口から言葉が発せられるコトはない。
- 35 名前:悪夢 投稿日:2004/03/18(木) 11:06
- ――――ゴメンッ。
響いてくる声は、両親のモノではない。
――――え?誰?
――――ゴメンッ。
――――やめて・・・。
――――ゴメンッ。
――――やめて!!
――――ゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメンッゴメ・・・・・。
――――やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!
降り注ぐ紅い液体。
崩れ行く両親の陰から姿を見せる女。
高き瞳がこちらを捉え、その手に握った鋼の悪魔が淡い光の咆哮と共に首をもたげる。
ヘタ、と座り込んでしまったれいなに近付き、女が口を開く。
――――ゴメンッ。
悪魔が、降りてきた。
- 36 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/18(木) 11:07
- ***
- 37 名前:第一種接近遭遇 投稿日:2004/03/18(木) 11:10
- 「うわぁぁぁぁ!!・・・はぁっ、はぁ・・・夢・・・?」
「あ、目ぇ覚ましたよ、えり」
「え?・・・ってわぁ!!!」
背後の幼い声に振り向いたれいなの視界に現れたのは、自分と同じか
少し下くらいの年齢と思われる少女の顔面どアップ。
「さゆ、顔近づけすぎだから・・・。びっくりしてんでしょ?
ていうかアンタずっとその子の顔見てたの?至近距離で・・・。」
「だって飲んでみたいんだもん。半妖の」
「まだダメだってば。言われたでしょ?それより飯田さん呼んでくるからその子見ててね」
そう言うとえりと呼ばれた少女はパタパタと出て行ってしまった。
今の意味深な会話を聞かされたれいなとしてはこんな部屋――壁や床はコンクリの打ちっぱなしで、灯りも数は多いが蝋燭なので薄暗い――に、
今の会話の中でも一番意味深なコトを言っていた少女と二人で取り残されるのは限りなく不安だ。
- 38 名前:第一種接近遭遇 投稿日:2004/03/18(木) 11:12
- 「ねぇ」
「ひゃぃ!」
「あは、面白い返事。わたし道重さゆみ。一応ヴァンパイアなんだ。よろしくね?」
「あ、あたしは田中れいなです。よろしく・・・ん?ばんぱいあ?」
不意にされた自己紹介の中に、どこかで聞いたような単語があったコトに引っかかる。
じーっ・・・・・。
発言者である彼女は、またさっきの距離まで顔を近づけれいなの顔と
首筋あたりを交互に見つめている。
「あ、あのぉ・・・。」
(そんなに近づかれると、なんかドキドキするんですけど・・・。)
「ね、ちょっとくらい大丈夫だよね?」
「へ?な、何が・・・ってちょっ何して・・・。」
少女の口元がキラリ、と光ったかと思うと、彼女はいきなりれいなの首元に顔を埋めてきた。
何かと微妙なお年頃のれいなとしては、イケナイ想像を膨らませてしまう。
が、その想像はすぐに外れる。いや、ある意味正解か・・・?
「痛ッ!な、何を・・・あっ、ちょっ、だめ・・・あんっ・・・やぁ・・・。」
田中れいな、当時13歳。
彼女はこれ以後毎日、道重さゆみに迫られつづけるコトになる。
- 39 名前:名も無き読者 投稿日:2004/03/18(木) 11:13
- 隠してみる。
- 40 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/18(木) 11:15
- ↑_| ̄|○
- 41 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/18(木) 11:20
- と、いうわけで更新終了でごわす。
一週間空けといて少なくねぇか?あぁん?
・・・というツッコミが怖いので先に認めときます。
少ないです。えぇ、少ないですとも。
って開き直ってる場合じゃねぇやな。
ですので近いうちに更新します。
それでどうかご勘弁を・・・。
- 42 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/18(木) 11:31
- >>27 名無飼育さん 様
レスどーもです。
気になりますか?作者も気になります(ヲイ
そんな感じですのでまたーり待ってて頂けるとありがたいです。
>>28 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
おもしろそうですか?作者もそうおm(却下
でもいいんですか?マイペースで・・・。
いいんですね?やりますよ?ホントに・・・。
ってのは半分冗談(え?)で、頑張りますので見守ってやって下さい。
- 43 名前:我道 投稿日:2004/03/18(木) 13:16
- こういう作品好きです。大好きです!
名も無き作者様、これからも読み続けたいと思うので頑張ってください!
- 44 名前:日常? 投稿日:2004/03/22(月) 01:35
- pm11:04
K県Y市E中学校理科室内。
「あ〜ぁ、わたし屋上の方が良かったなぁ。月見えるし・・・。」
「わがまま言わないでよ、さゆ。でもどうして私ら理科室なんだろ?」
愚痴をこぼし始めたさゆみを制したのは、彼女のマスター、亀井絵里だ。
「先輩達じゃ、薬品とかまで吹き飛ばしちゃうからじゃない?
いくら飯田さんでもそんなもんまで元に戻すのキツイだろうし」
「「確かに」」
れいなの意見に二人で加護同。
確かにあの先輩方は、どいつもこいつも理科室まるごと消し飛ばしかねない輩ばかりだ。
それで間違って薬品が化学反応起こしたりしたら・・・、想像するのも嫌だ。
ここは近接戦闘の得意なれいなとさゆみが適任だろう。
- 45 名前:日常? 投稿日:2004/03/22(月) 01:38
-
「流石は紺野さん、考えてるよねぇ・・・。」
「だね」
絵里の問いかけに答え、数時間前にシチュー五杯を完食した先輩の幸せそうな顔を思い出す。
正直とてもそんな抜け目の無い人選をする人には見えない。
『悪かったね。トロそうで』
「ふぇ!?紺野さん!?なんで・・・。」
通信機越しに言いかけて気付く。自分はそんなことを口にした覚えは無い。
常識的に考えればそんなコトは起こり得ないはずだが、真実はいつも一つ。
犯人は奴だ。
「石川さんですか・・・。また勝手に人の頭の中読んで・・・、訴えますよ?」
『あはは、ごめんごめん。退屈だったからつい・・・。』
聞こえてくる声は、文字通りれいなの頭に直接響いてくる。
その原因はもちろん、異様に高い彼女の声色ではなく彼女の能力だ。
今朝の真里といい、自分の先輩達は何故こうも軽々しくその特殊な能力を使ってしまうのか・・・。
明日人類が滅びるとしたらその原因は核戦争でも隕石衝突でもましてや
温暖化などでもなく、彼女たちの痴話喧嘩だろう。
「退屈しのぎに能力使わないで下さいよ。それよりそろそろ時間じゃないですか?」
『あっホントだ。じゃあまた後でね』
そういえば、自分がここに来て最初に目(?)にした能力も彼女のだった気がする・・・。
- 46 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/22(月) 01:39
- *****
- 47 名前:現実 投稿日:2004/03/22(月) 01:41
- 「ハンヨウ・・・?なんですか、それ」
「何・・・って違うの?あなた半妖でしょ?」
さゆみに襲われ、もう一度意識を失ったれいなが目を覚ましたのは10分程前。
亀井絵里、と名乗る少女に手を引かれてやってきた会議室のようなこの部屋で、
円形に並んだ机に座った少女――中には違う人もいるが――たちに周囲を囲まれてしまった。
正面の巨大なディスプレイの前に座っていた髪の長い、左手に黒い革手袋をした女性の口にした
単語は、れいなには聞き覚えのないものだった。
まぁ、意味を知ってから考えればアニメで見たことはあったのだが・・・。
「ホントに知らないみたいね・・・。紺野、コレどういうこと?」
首をかしげて頭の上に?をいっぱい浮かべるれいなを指差しながら、
手袋の女性は自分の横に座る白衣を羽織った少女に問い掛けた。
- 48 名前:現実 投稿日:2004/03/22(月) 01:43
- 「どうって言われても・・・、検査の結果はどれも陽性でしたよ?ホラ」
白衣の少女が手元のパネルを操作すると、正面のディスプレイに
数値や様々な種類のグラフが表示される。
周りの少女――年齢的に違う人もいr(ry)――たちは手元のディスプレイに視線を移している。
おそらくそこにも同じモノが映し出されているのだろう。
「まぁ考えられるのは、隔世遺伝とかですかね?」
「隔世遺伝か・・・。まぁそれが一番妥当k・・・。」
「イヤ二人だけで納得しないで下さいよ。何ですか、そのガクセーホケンとかって・・・?」
絵里の隣に座っていた若干キツそうな眼だけど美形の女性のややフライング気味のツッコミに、
れいなを含む他の少女――美人ではあるけどやっぱり歳はごm(ry)――たちがうなずく。
「藤本さん遠いです・・・。隔世遺伝ですよ。簡単に言えば、両親じゃなくて
その親の特徴を受け継ぐコトです。ただこの場合お祖父さんとかお祖母さんじゃなくても、
もっと前の・・・つまりご先祖様の中に半妖の方がいて、その遺伝子が何かのキカッケで
目覚めちゃったってコトかもしれないですね」
「キッカケって・・・?」
「それは彼女に聞いてみないと・・・。」
白衣の少女の言葉を聞いて、周りの少女――(ry)――たちの視線がいっせいにれいなに集まる。
当のれいなは話の内容についていけずに困惑気味だ。
- 49 名前:現実 投稿日:2004/03/22(月) 01:45
- 「ねぇ」
「は、はい!?」
「あなたここの前に倒れてたらしいんだけど、何があったの?
良かったら話してくれないかな?無理ならいいんだけど・・・。」
「・・・・・・。」
不意に投げかけられた手袋の女性からの質問に、れいなは黙り込んでしまう。
正直、自分でも上手く現実を受け止められていないのだ。
とは言え無理もない。
近所の人や学校の先生にはしっかりしていると言われるが、れいなはまだ中学一年生。
こんな超日常的な状況についていけるわけが無い。
だが、れいなは思った。
いや、感じたと言った方が正しいか。
――逃げたくない。
信じたくは無いが、両親が死んだことはおそらく現実。
その現実から逃げても、結局いずれはそれを認めなくてはならない時がくる。
そしてここで彼女達にその自分の置かれた現実を教えなければ、自分はもう前には進めない。
確信はないがそんな気がするのだ。
「・・・わかりました。正直まだ自分でも良く分かってないんですけど、それでよければ・・・。」
そう言ってれいなは語りだした。
現実から逃げない為に・・・。
あるいはこの時すでに気付いていたのかもしれない。
もうあの日常に戻ることはないコトに・・・。
- 50 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/22(月) 01:52
- はい終わり〜♪
いんや〜、短いッスよね?
間空いても一回で50レスくらい進めちゃう人もいるのにねぇ・・・。
学校始まったら自分もそうしてみよっかなぁ〜。
多分無理だけど・・・。
まだ序幕的なのが残ってるので待ってて欲しいんですが、
いずれ田中さん達が好き勝手暴れまわってくれるハズです。
- 51 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/22(月) 01:56
- >>43 我道 様
レスありがとうございます。
このスレ初のコテハン読者サマですねw
大好き、と言って頂いて嬉しいやら焦るやら・・・。
頑張ります!!!
- 52 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/22(月) 01:57
- 隠しときま〜す♪
- 53 名前:我道 投稿日:2004/03/23(火) 10:05
- うむむ・・・。
先が気になりますね。
藤本さん、ガクセーホケンて(笑)
- 54 名前:暴走 投稿日:2004/03/26(金) 12:40
- 話し終えると、その場は微妙な静寂に包まれた。
話の内容が内容だけに無理もないかとれいなは思ったが、
金髪で背の低い女性の一言でこの静寂の本当の理由を知ることになる。
「カオリ、今の話に出てきた日本刀の女って・・・ごっつあんと・・・似てない?」
「うん。話聞いた限りでは・・・ね。 石川ぁ!」
「は、はい!?」
突然呼ばれて驚いた様子で、色黒の女性がやたらと高音な返事をした。
「確かめてみてくれる?」
「あ、はい」
- 55 名前:暴走 投稿日:2004/03/26(金) 12:41
- 色黒の彼女は返事をすると目を閉じ数秒その姿勢で固まっていたのだが、
突然カッ、と驚いたように目を開きこう告げた。
「間違いないです。ごっちんでした。あ、ごめんね?勝手にあなたの頭の中覗いちゃって・・・。」
「へ?あ、はぁ。それより、皆さん知ってるんですか?あの人のコト・・・。」
「・・・うん、まぁ知ってるって言うか・・・仲間、なんだよ、ね」
手袋の女性はれいなの質問にやや曖昧に答えると、れいなから視線を逸らした。
「仲間って・・・じゃあ今どこにいるんですか!?」
「いやそれが、今ちょっと行方不明になっててさ・・・。ウチらも捜してるんだよね」
「行方不明って・・・それはどーゆー?」
「じ、実は指名手配中なんだよねぇ・・・ハハ・・・。」
指名手配。
逮捕状の発付に基づいて被疑者を犯人として指名し、その逮捕を全国または
他地区の捜査機関に依頼すること。(広辞苑より)
れいなもこの言葉のだいたいの意味くらいは知っている。
- 56 名前:暴走 投稿日:2004/03/26(金) 12:43
- 「・・・何やったんですか?」
「・・・連続殺人?みたいな」
おどけたような物言いに、れいなの我慢も限界点に達した。
「ふざけんな!!あんたら・・・。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!誤解だってば。ごっつぁんがそんなコトするはず無いし」
「なっ!?人殺しの疑いで逃げちょう人が刀持って死体の横に立っとったんよ!?
それで何が誤解なん!?」
「えぇと、だからそれはぁ・・・。」
東京に出てきて以来抑えていたなまりを全開にし、
烈火の如く怒り出したれいなに手袋の女性もたじろいだ。
「違うよ」
「はぁ!?」
静かに響いてきた声の方を向くと、金髪でボーイッシュな雰囲気を漂わせた女性が
れいなの方を強い意志の篭った瞳で見つめていた。
「何がどう違うって言うんですか!?」
「ごっつぁんはそんなコトする奴じゃないって言ってんだよ。
たとえ殺したのがアイツだとしても、それにはなんか理由がある筈だ」
そう言い切った彼女の眼には一切の迷いが見当たらない。
周囲の人間も皆それに同意するような顔でれいなを見つめている。
だが、れいなにはそれが気に入らなかった。
- 57 名前:暴走 投稿日:2004/03/26(金) 12:43
- 「・・・・・・け・・・な・・・・。」
「は?」
「・・・ざ・・・んな・・・。」
「ど、どうしたんだお前。大丈夫か?身体震えてんぞ」
父は、最近門限に厳しくてウザったいと思うこともあったし収入も多い方じゃなかった。
けど、優しくて面白いし家で仕事の愚痴なんか絶対に言わない、そんな強い人だった。
母は、中学に入ってから急に勉強のコトで五月蝿くなってよく喧嘩していたけど、
翌日には必ず仲直りできた。
家事もあまり得意じゃなかったけど週に3回パートに出て家計を助け、
れいなの誕生日には料理本片手にごちそうを用意してくれる、優しい人だった。
れいなは、そんな二人が好きだった。
今まで特に意識したことはないが、二度と会えないと分かった今ハッキリと言える。
良い所も悪い所も全部ひっくるめて、二人が大好きだったと。
だが、目の前にいる人間はそんな二人に何か殺される理由があったのだと言う。
悪いのは指名手配中の殺人犯ではなく自分の大好きな両親だと言う。
そんなのは、認められない。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
- 58 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/26(金) 12:44
- *****
- 59 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:45
- 爪を横向きに振るう。
ザン、と音を発て四散する敵。
切り裂いた敵の陰から待ち構えていたかのように飛び掛ってくる影。
こちらは自身の手に宿った紅き炎で焼き払う。
「ねぇ、えり」
「何?気が散るからあんまり話し掛けないでよね」
怒ったような物言い。
右足にズキリ、と鈍い痛みが走る。
「いや、奴さん減る気配ないな〜と思ってさ」
「あれ?れいなもそう思う?わたしもなんだけど・・・。」
会話に割り込んできた声の主は、実験台に奴さんの頭をめり込ませた姿勢のままこちらを振り向く。
一瞬そちらに気を取られたが、背後から聞こえた溜息に再び注意を会話の相手に戻す。
「2人もそう感じてるってコトは私の勘違いじゃないんだね」
- 60 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:47
- 呟きながら白くて細い身体(?)の僕(しもべ)に声も出さず命じ、一度に五体の敵を撃ち滅ぼす。
彼女の操る三体の僕の手に握られたもの、FNP90の持つ破壊力は
目標の排除に一切の支障をきたさない代物と言える。
敵が塵となって空気に混ざる様を改めて確認し、その残数を確かめる。
やはり、減っていない。
犬の形をした黒い炎、という表現が最もピッタリくる今回の獲物。
その総数を数えるのは両の手を使っても足りないだろう。
ただ、最初に彼らを目にした時の感想は
――――五分あれば足りるかな?
敵の戦力とこちらの戦力との比較の結果出された極めて的確な結論の筈だった。
だが、10分経った今なおその数に一切の変動が見られないのだ。
- 61 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:48
- 「れいな、話し合いで何とかならない?同じイヌ科の仲間でしょ?」
「できるか!!しかも誰がイヌ科だ!!」
「え?キツネって犬の仲間なの?知らなかった・・・。」
「うっさいよ、さゆ!!」
「ぷぅ〜」
「片手で魔獣捻り潰しながらそんな顔しても可愛くないよ」
頬を膨らませて怒ったようなポーズをとるさゆみにツッコむれいなの姿は、
数分前のものとは異なる。
肉食動物の様に鋭く尖った爪と犬歯、瞳は紅蓮の如く紅く燃えている。
何より違うのは雪の様に白く美しい髪と、その髪の隙間から顔を覗かせる犬耳だ。
『お困りですか〜?』
「あ、紺野さん!ナイスタイミングです!!あいつらの・・・。」
『分析ならもう終わってるよ』
「流石!!」
- 62 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:48
- 耳元に聞こえてきた天才科学者の声で、思索していた絵里の表情が明るいものに変わる。
電磁場が不安定なこの場所での通信を可能にした人物、紺野あさみは
絵里のその声にいささか得意げに告げた。
『その魔獣のデータね・・・、タイプA・獣型・総数17・推定霊力値620。
とまぁこれだけ見れば通常のと変わんないんだけど、核を共有してるみたいなんだ。
本体狙うのが良いんだけど、すばしっこいから全部まとめて吹き飛ばした方が早いねこりゃ』
「了解です。そういうコトなられいなの出番ですね」
「OK。じゃ後お願い」
言うが早いかれいなは絵里の立つ黒板の前まで一足飛びに移動し、
目を閉じてブツブツ唱え始めた。
同時に、れいなの身体からは紅く淡い光が湯気の如く立ち昇り始めた。
- 63 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:50
- 「よしさゆ!ウチらも本気だすよ!!」
「お願い!」
さゆみの返答を待たず絵里が彼女に手をかざして一言唱えると、
途端にさゆみの動きの速度が上がる。
片手の鋭い爪でで一度に五体の敵を薙ぎ払う。
敵も必死にさゆみの腕や手に噛み付き鮮血を啜るが、
さゆみの腕にその痕は残らず、ただ服が破れ白い肌が露になるばかりだ。
絵里も自分の僕に命じてさゆみに群がる敵を撃ち壊していく。
しかし敵の再生スピードも中々のモノで、滅ぼすとたちどころに本体と思われる一体の
身体から湧き出て再び襲い掛かってくる。
このような攻防を繰り広げること約1分。
2人の待ち望んだ声が響いた。
「2人とも、下がって!!」
- 64 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:51
- 言われるまま声の主の佇む位置まで後退した2人の眼に映ったのは
先程とは若干違うれいなの姿だった。
瞳は先程の紅ではなく、眩いばかりの黄金色に。
立ち昇っていた霊気も同様に黄金の輝きを放っている。
「喰らえ!白面金毛斬鉄爪!!」
猛ると同時に溜め込んだ霊力を一気に解放する。
刹那、周囲が静寂に包まれ自身の心音だけがやけにゆっくりと響く。
床を蹴り、一瞬で部屋の奥にいる敵との距離を詰める。
着地と同時に爪を振るう。
威力が高すぎる為炎は使わない。
やけに軽い手ごたえを気にも留めず、もう一度腕を振るう。
しかし今度は手ごたえが無い。
そこでようやく敵のいなくなったのに気付く。
静寂から解放され、顔を上げると見える壁に大きく刻まれた五本の爪痕。
それを見て改めて己の力に戦慄する。
- 65 名前:に、日常・・・? 投稿日:2004/03/26(金) 12:52
- 「お疲れ」
「うん・・・ってあれ?」
労いの言葉に答えようと立ち上がろうとしたが、脚に力が入らずそのまま座り込んでしまった。
同時に襲ってくる睡魔。
「いいよ、運んであげるから寝てな」
「ごめ・・・でもさゆ、人の、寝てる間に血、吸わないでよ・・・ね」
「あぁ!ヒドイ!!そんなことしないもん!!」
さゆみの反論を子守唄に、れいなの意識は深いまどろみの中に落ちていった。
- 66 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/26(金) 12:57
- 更新終了でございます。
ようやくバトルシーン描いたんですが、どうでしょう?
稚拙で申し訳ない。。。
何分人生経験が足りない未熟者でして・・・。
関係ないかW
あとメル欄に深い意味なんかございませんのであしからず。
次は・・・まぁ一週間以内には更新したいと思います。
- 67 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/26(金) 13:04
- >>53 我道 様
毎回レスありがとうございます。
ここの藤本さんはこんな人ですw
ちなみに松浦さんを傷つけた人を殺すようなコトはないです、多分。
って我道さんの作品を読んでない人にはわかりませんね。
そういう人は青板へGO!!
ではお互いがんばりませう。
- 68 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/26(金) 13:06
- 隠すナリ。
- 69 名前:我道 投稿日:2004/03/26(金) 14:29
- 更新お疲れ様です。
バトルシーン、迫力あってよかったです!私も見習わなくては・・・!
あ、あと、宣伝ありがとうです(ペコリ)ちょっと恥ずかしいですね(照)
これからも頑張ってください!
- 70 名前:暴走のその後に・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:21
- 「ホントに何も覚えてないの?」
「・・・・ごめんなさい。あの吉澤って人に飛び掛ったのはなんとなく覚えてるんですが・・・。」
「・・・・・。」
手袋の女性、飯田圭織は溜息を一つ吐き自分達のいる部屋の様子をもう一度見直した。
木端微塵になった机やディスプレイ、壁や床、天井の所々に穿たれた穴や爪痕。
正面にある巨大ディスプレイにも大きな亀裂が走っている。
その全てがれいなの仕業というわけではないけども、
これだけのストレスはっさn・・・破壊行為の原因を作ったのはまぎれもなく彼女のハズ。
しかし当の本人にそんな記憶はなく、責任を感じているのかションボリしてしまっている。
これでは叱るに叱れない。
その能力上後始末を任されて――というより押し付けられて――しまう自分としては
何かにストレスをぶつけたくてしょうがないのだが・・・。
- 71 名前:暴走のその後に・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:23
- 「うわぁ、これじゃ浮かばれないね吉澤さん・・・。」
「いや死んでないってば。肋骨イッちゃったらしいけど・・・。」
「代りに石川さんが死にそうでしたけどね。
でも松浦さん帰ってこなかったら結構ヤバかったんじゃないですか?」
「あ〜、確かにね。愛ちゃんとかならともかくウチらじゃあのスピードにゃついていけないもんね」
口を開いたのは、先程改めて自己紹介を済ませたヴァンパイアと精霊術士とネクロマンサー。
固有名詞で呼ぶならば、道重さゆみ・藤本美貴・亀井絵里の3人だ。
他の連中は仕事や昨夜の負傷でこの場にはいない。
「まぁとりあえず色々説明するコトあるし、ちゃっちゃと直しちゃうか。
4人共、下がってな」
「!?」
「はいはい。キミもこっちこっち」
4人に呼びかけながら外された手袋の下。
鈍い輝きを放つそれに驚き目を見開くれいなを美貴が部屋の隅まで誘導するのを確認すると、
圭織は部屋の中央まで移動し左手――正確にはその手のひらに描かれた紋様――を床に
押し当て右手をその上に添えた姿勢で目を閉じ息を一つ吐いた。
- 72 名前:暴走のその後に・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:25
- 彼女の左手からバチッ、と電光が飛出したかと思うと、次の瞬間にはその電光が同心円状に
部屋中に走り室内は眩い閃光に包まれた。
閃光が止み映った光景に、れいなの目は再び驚愕の色に染まった。
全てが元通り―――いやむしろ元以上と呼べる状態にまで復元されていた。
机も椅子もディスプレイも新品同様の輝きを放っている。
状況について行けていないれいなの様子に気づいたのか、圭織が口を開いた。
「アタシ錬金術師なんだ。この左腕はまぁ・・・昔ちょっとね」
アハハ、と照れたような笑いを浮かべる圭織に、れいなに代わって
美貴が早く話を進めろよ、といった視線を送る。
「あ、そうだね。じゃあとりあえずどこでもいいから腰掛けてくれる?
順を追って説明するから」
「あ、飯田さん。それじゃあ私たちは自分の部屋で待ってますから・・・。」
「ダメ。あんたたちまだよく分かってないんだから一緒に聞いていきなさい」
「えぇ〜、ミキもですかぁ?」
れいな達が言われるまま席につくと、非難の声を上げる美貴を無視して
圭織が長い、長〜い状況説明を開始した。
- 73 名前:状況っていうかほとんど設定説明 投稿日:2004/03/31(水) 20:27
- UFA
Universal Force Association ――世界霊力協会―― の略称だ。
霊獣・魔獣及び高位霊力保持者による犯罪への対応を目的に世界中で活動している。
現在れいな達がいるのはその日本支部の拠点となっている建物内。
支部長は山崎直樹という男が勤めている。
UFAは政治的に利用されるのを防ぐ為各国の政府からはある程度距離を置いているが、
逮捕権や武器の使用、住居及び建造物への侵入などの目的達成に
必要な権限は国連により認められている。
ちなみにどの国の支部の所在も、それが必要な一部の人間にしか知らされていない。
Hello Project
近年急速に増加、凶悪化しつつある霊力による諸問題に対処する為、
寺田光男・通称つんく♂により発案されたプロジェクト。
発案当初の主内容は戦力の強化と対魔獣用特選部隊・【モーニング】の結成だったが、
現在は【メロン】や【カントリー】、【ココナッツ】など様々な分野で活動するチームが増え、
その力を伸ばしている。
- 74 名前:状況っていうかほとんど設定説明 投稿日:2004/03/31(水) 20:28
- 霊力
いわゆるオカルト的な不思議な力の根源とでも言ったものを、UFA日本支部ではこう呼んでいる。
その正体はSNT――Spiritual NeuTorino――。
SNT
宇宙から常時亜光速で降り注いでいる素粒子・ニュートリノに動植物が発する電磁波、
精神波が影響してできる物質。その影響力には個体差がある。
ニュートリノは質量が限りなく0に近く、他の物質との相互作用もほとんどない。
毎秒十兆個以上のニュートリノが人間の身体を突き抜けており、
実はかなり身近な存在と言えるかもしれない。
精神波には動植物の記憶や感情などのデータが保存されており、SNTにもその影響が出る。
発見者は紺野あさみの祖父、故・紺野幻十朗。
霊力値
精神波のニュートリノへの影響力を数値化したモノ。これも紺野幻十朗による。
その数値は一般的には以下の通り。例外は割とたくさん存在。
昆虫 1p〜30p
植物 1p〜35p
動物(人間以外) 40p〜80p
人間(一般人) 90p〜100p →全て平常時のモノ
高位霊力保持者 500p〜1000p
霊獣 150p〜900p
魔獣 600p〜1500p
これプラス精神力が霊力の強弱の決め手となるので、
一概にこの数値が高いほうが強いとは言い難い。
- 75 名前:状況っていうかほとんど設定説明 投稿日:2004/03/31(水) 20:29
- 高位霊力保持者
上に示した通り、平常時の霊力値が500p〜1000pの人間達のコト。
その原因は遺伝によるトコロが大きく、彼らには例外なく塩基配列に異常が見られ、
その遺伝子が子孫に伝わることで起きる現象だと言われているが、詳細は未だ不明。
時として突然変異でこういった者が生まれることがあるが、彼らは超能力者と呼ばれ
術を用いることなく超常現象を引き起こせるタイプであるコトが多い。
霊獣
俗に言う妖怪のコト。
高位霊力保持者の動物版と言ったトコロだが、その姿を普通に保っているモノはごく稀少。
基本的にはUFAに保護されているので世間に出るコトは少ないが、
突然変異で生まれたものの場合凶暴化しているケースが多く、
危険と判断された場合はUFAにより殲滅される。
ちなみに日本での保護所は北海道の花畑牧場。
物に人の氣が宿ってできるモノもこの仲間。
魔獣
魔界と呼ばれる異次元からやってくる異形のモノ達の総称。
瘴気という、所謂人間の悪の氣が集まった空間に穴が空くとそこから現れる。
その穴が大きいほど強力な魔獣が出てくると言われている。
SNTには影響を受けた精神波による性質があり、同質のものは集まりやすい。
瘴気が原因で空間に穴が空くのはその性質ではなく、一般的に悪の氣というのは
強力であるのが原因だと考えられている。
彼らは核を持ち、その核が無事なら無限の再生を繰り返す。
そもそも不安定な存在である為核によりこの世界との繋がりを保っているのが原因。
天使や悪魔もこの類。
- 76 名前:状況っていうかほとんど設定説明 投稿日:2004/03/31(水) 20:31
- 半妖
稀なケースだが、高位の霊獣の場合人間との間に子を持つことがある。
その場合遺伝子の中に親である霊獣のデータは眠ったままであるコトがほとんどだが、
何かのキッカケでそれが目覚めてしまった者をこう呼ぶ。
要は、霊獣の力を持った高位霊力保持者のコトである。
れいなは紺野あさみによる検査で妖狐の半妖であると判明した。
妖狐はかなり強力な霊獣で、驚異的身体能力と自然発火能力を併せ持つことが多い。
後藤真希
れいなの前に現れた女性。
もと【モーニング】の一員だが、脱退して単独での任務の遂行中失踪、
直後に殺人容疑でUFAに追われる身となった。
無神流(ぶしんりゅう)という高位霊力戦闘集団の里出身で、
同集団の福井の分家出身の高橋愛によると宗家の長となるはずだった人物・・・らしい。
ハロプロの人間はその捜索を表向き禁止されているが、結構影でコソーリやっている。
戦闘力はハッキリ言ってハロプロ最強。
まともに闘えるのは魔剣士・松浦亜弥ぐらいのもの。
この業界では【G】と呼ばれ恐れられている。
その二つ名の意味だが、GOTO・GOD・GOLD etc...
本当の所はよく分からない。(汗
装備は日本刀・【蓮華】で、剣術の腕も異常。
霊力値は本人が嫌がるので測られていないが推定3000以上。
性格は意外と元気で明るく、特技はどこでも――飛んでるヘリの中とか――寝れること。
なのに頭脳明晰+博識で、これも本人が嫌がるので測っていないがIQは170以上とも言われる。
まぁ言ってしまえば神?
- 77 名前:状況っていうかほとんど設定説明 投稿日:2004/03/31(水) 20:32
- れいなの両親
どちらも眉間を刀のような刃物で一突きされたことで死亡。
気になるのは二人とも全裸だったコトと部屋がメチャメチャに荒らされていたコト。
今のところ真希の容疑を晴らせるような証拠は挙がっていない。
ちなみになつみに同行して圭織も現場を見てきたらしい。
圭織の左腕
昔ちょっと・・・。
ただ、人体錬成を試みた代償とかではないらしい。
(わからない人はスルーで・・・。)
- 78 名前:ある意味暴走のその後で・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:34
- ――――といった感じの内容を圭織が説明し終わるまでおよそ5時間。
れいなはなんとか聞いていたが他3人は開始直後に夢の世界へ旅立ったっきり。
「んでまぁあなたのこれからなんだけど、どうする?
あなたの力ならウチに入る資格は十分にあるケド、下手をしたら命に関わる仕事だからね。
止めるなら今のうちだよ?」
「・・・ここに入れば、強くなれますか?」
「まぁ基礎的な訓練は何ヶ月か受けてもらうから、今より強くはなれると思うケド・・・?」
「強くなってヤりたいことでもあるわけ?」
圭織の言葉を、奇跡的タイミングで目を覚ました美貴が引き継いだ。
「えぇ。その後藤真希って人を捜したいんです」
「捜してどうするの?復讐でもするつもり?
そんな簡単に倒せる相手じゃないよ」
「・・・わかりません。でももし後藤・・・さんが本当に人殺しなんだとしたら、止めたい。
これ以上あたしみたいな人を増やしたくないですし・・・。
でもそれには今のあたしじゃ弱すぎる・・・。
だからあたし、強く、強くなりたいんです!!」
- 79 名前:ある意味暴走のその後で・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:35
- 凄んだれいなの瞳に浮かぶ決意の色。
それを見た美貴は俯き、肩を震わせ始めてしまった。
「み、ミキ・・・どうしたの?」
怪訝そうに問い掛けた圭織には答えず、美貴はガバッ、と顔を上げれいなの両肩を掴んだ。
「気に入った!!その心意気!!!よっしゃ、ミキも協力してあげる!
一緒にあの神様野郎をぶっ潰そう!!!!」
「へ?いや、あの・・・。」
「ていうかミキ、アンタウチらがごっつぁんの捜策できないの忘れてない?」
「えぇ!たった今きれいさっぱり忘れました!!」
勢い良く答えた美貴に、圭織はやれやれといった具合に肩をすくめて溜息をついた。
しかしその顔に浮かぶのは呆れの色ではなく美しい微笑み。
こういう人材を【モーニング】に入れてくれたつんく♂に、圭織は久しぶりに僅かに感謝した。
- 80 名前:ある意味暴走のその後で・・・。 投稿日:2004/03/31(水) 20:36
- 「ミキはああ言ってるけど、2人はどうする?」
笑顔で絵里とさゆみの方を振り返った圭織の顔から、表情が消える。
その視線の先には幸せそうに寝息を立てている少女達。
その事態に気づいた美貴の顔がサッ、と青ざめる。
【モーニング】リーダー、錬金術師・飯田圭織、当時21歳。
ストレスの溜まり具合、S級。
嫌いなモノ、真面目に喋ってる人の話を聞かない人
=5時間も費やした説明の間、途中で睡魔に負けるような人。
特徴、話している途中は周囲のモノが目に入らない。
当然2人が最初から寝ていたコトにも今気づいた。
ツカツカ歩み寄りながら、鋼の左手に生身の右手を添える。
先ほど――5時間前だけど――より幾分控えめな閃光に包まれた左手が
その形状をハンマーに変える。
2人の少女の寝顔に、ジェイソンよろしく鈍器を振り上げる人の影が落ちる。
「ヤバイ!見ちゃダメ!!」
美貴に両目を塞がれたれいなの耳を、
数秒間の少女達の幼い悲鳴と何かの破壊音、
その後室内に響く荒い呼吸音が通り過ぎていった。
- 81 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/31(水) 20:45
- 更新終了。。。
ようやっと序章が終わった・・・。
この後の訓練生時代の話も軽く考えてあるんですが、
その辺はまた書けたら書きます。
次からいよいよ本題っつーかなんつーか、まぁそんな感じですのでこうご期待!!
・・・と言ったは良いのですが、これから実生活の方で色々忙しくなる予定。
従ってヘタすると次回まで2週間近く空くとおもいます。
読む方は毎日やってるくせに書く方は・・・と思われるでしょうけど、
放棄だけはしませんのでどこかのスレで見かけてもあまり怒らないで下さいまし。
・・・ってそんなに読んでる人いるのか?
まぁいいや。(←性格の表れ
- 82 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/31(水) 20:50
- >>69 我道 様
毎度こんな駄作に付き合ってくださってありがとうございます。
見習う!?どうなっても知りませんよw
そちらもゆっくりで良いので頑張って下さいね♪
って僕が言えたことじゃないですが。
ではまた次回!!
- 83 名前:名も無き作者 投稿日:2004/03/31(水) 20:51
- 隠すのじゃ♪(めっちゃホリデイ風
- 84 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/03/31(水) 23:59
- 初めまして。『聖なる竜騎士』と言う者です。
この小説を読ませていただいての第一印象は『斬新な設定だなあ』でしたね。
れいなの半妖、さゆみのヴァンパイヤ、亀井のネクロマンサーなどなど、
普通では楽しめない内容の小説だと思いました。
あと少し、グロいですかね・・・・・・・・・・・。
設定説明なんかも凡人には理解困難な言葉が出てきて、何とも惹かれる作品だ
と思います。
引き続き更新の方楽しみにしています。
- 85 名前:我道 投稿日:2004/04/01(木) 00:10
- また今回も現れてしまいました(汗)
イイですねぇ。何が良いってーと、藤本さんのキャラ!
名も無き作者様、素晴らしいです!サイコーです!!すいません、はじけ過ぎました・・・。
これからもマターリ頑張ってください!
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/01(木) 18:51
- >悪いのは指名手配中の殺人犯ではなく自分の大好きな両親だと言う。
って言われたのは、納得しちゃったんですか?
- 87 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/01(木) 20:19
- どーも、作者です。
更新ではないんですが早めに答えといた方が良さげな質問が出たので答えときます。
>>86 名無飼育さん 様
え〜っとですね、あれはあくまで田中さんの一時的感情を表現してみたというか・・・。
感情の昂ぶっていた彼女がよしざーさんの言葉を極端に意訳したんですね。
よしざーさん自身もごとーさんを庇う為に言っただけなので、
そういう風に思ってるわけではないです。
小説中でしっかり表現できてればいいんですが、何分未熟者でして。。。(汗
精進致しますので今回は見逃していただけないでしょうか・・・?(滝汗
で、ではまた次回更新で・・・。(逃)
- 88 名前:どうして? 投稿日:2004/04/03(土) 13:03
- どうしてボクをイジメるの?
ボクがみんなと違うから?
それともボクが弱虫だから?
ソレトモボクガ、バケモノダカラ?
- 89 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/03(土) 13:04
- *****
- 90 名前:死闘!! 投稿日:2004/04/03(土) 13:05
- 相手の左足が頭上を掠める。
その回転を止めることなく放たれた右の後ろ廻し蹴り。
それを身体を捻って衝撃を殺しつつ受け止め、ガラ空きになった軸足を刈りに行こうとしたが、
正確にこめかみを砕きに来た右の裏拳に阻まれてしまった。
脚を離して距離を取ろうしたが、それは許してもらえないらしい。
アゴを狙って飛んできた左ジャブを右手で受け流す。
間を置かない右ストレートの追撃を頭を振ってかわし、床を蹴って相手の懐に潜り込む。
それと連動して腰ダメに構えた両拳を、渾身の力で突き出す。
山突き――空手の型に組み込まれたこの突きは敵の顔面と水月を同時に狙う。
その辺の輩では顔面に飛んでくる拳に気をとられ、腹部の方まで気を回せないハズだ。
だがそれはあくまでその辺の輩の話。
今闘っている輩、吉澤ひとみはその例に漏れたらしい。
突き出したれいなの拳は両方とも、バシン、と音をたてて相手の手のひらに収まってしまった。
- 91 名前:死闘!! 投稿日:2004/04/03(土) 13:09
- 「・・・ってぇな〜。お前少しは手加減しろよ」
「そういう吉澤さんこそ随分殺気の篭った拳でしたね」
「あら、バレてた?」
「当然です。れいなだって夏先生にキッチリ体術仕込まれてるんですから
あんまり舐めない方が良いですよ?」
軽口を叩き合ってはいるが両者の眼は真剣そのもの。
それが証拠に押し合う両手は小刻みに震えている。
態勢から考えれば明らかにれいなが有利なのだが、両者の間にある如何ともし難い体格差。
それゆえの拮抗。
数秒間その姿勢を保ち、れいなが口を開いた。
「で、いつまでこうしてるつもりですか?これじゃ2人とも動けませんよ?」
「・・・それもそうだね。じゃあこうすっか」
「?・・・ってうぁ!?」
- 92 名前:死闘!! 投稿日:2004/04/03(土) 13:10
- 突然ひとみが腕の力を抜き腰をを落としたので、れいなは前のめりに体勢を崩してしまった。
ひとみはその勢いを利用してれいなを空中に引き上げる。
そのまま投げ飛ばされるのを覚悟し着地のタイミングを計る準備をしようとしたが、
ひとみが拳を放すことはなく、れいなの身体が空中でピタッ、と動きを止める。
前屈立ちで踏ん張るひとみとその手の上で逆立ち状態のれいな。
上と下、両者のバランス感覚が並外れたものでなければ成しえない態勢だ。
ちなみに今のれいなは学校帰りで制服姿。
この態勢では当然―――
「おっ、白。いいねぇ清純で」
「な!?ちょっ、何見て・・・しかもなんですかそのオヤジ丸出しな発言は!?」
―――丸見えである。
ふかこーりょくだってぇ、とニマニマいやらしい笑みを浮かべるひとみの様子を見ると、
狙っただろこのエロオヤジ、と心中毒づかずにはいられない。
- 93 名前:死闘!! 投稿日:2004/04/03(土) 13:12
- んでどうする?このまま床にキッスでもするか?」
「うぐぅ、わかりましたよ・・・。ギブアップです」
発言がいちいちオヤジ臭いのが気になるが、お互い能力を使わないというルール上
この態勢からの打開策がれいなにはない。
「さて、じゃあ約束通りおいらの仕事を手伝ってもらうぜぃ♪」
「うぅ・・・。なんであたしが痴話喧嘩の巻き添えに・・・。」
「腐るな腐るな!何事も経験だってばよ」
がははと笑う身体は美少女、頭脳はオッサンな先輩に気付かれないよう、
れいなは小さく溜息を吐いた。
- 94 名前:理由 投稿日:2004/04/03(土) 13:13
- 一応コトの顛末を説明しておこう。
いつも通り学校から帰って来たれいな。
いつも通り自室に戻ると、そこには密室のハズの他人の部屋で
ポテチを貪りワイドショーを眺めるトド、もとい吉澤ひとみ。
ヒトの部屋で何しとんじゃゴルァ、的なコトを先輩への礼儀の名の元やんわりと尋ねると、
パートナーが諸事情によりヘソを曲げてしまったので自分の仕事を手伝えとほざいた。
その諸事情がまたくだらない。
それは2人でいつものようにウィンドウショッピングを楽しんでいた時のコト。
ひとみは他の女性に気をとられてパートナーの話を聞いていなかったらしい。
そのコトを指摘され慌てたひとみは彼女の話は面白くないから普段も聞き流している、
といった旨のコトを口走ってしまった。
訂正しようにも時既に遅し。
彼女は目に涙を浮かべ、ひとみの正中線に見事な三段突きを決めて帰ってしまった。
- 95 名前:理由 投稿日:2004/04/03(土) 13:14
- そんな不当な理由で後輩に助けを強要しに来たらしい。
当然れいなは申し出を断った。
しかし横暴なこの先輩、それなら組手で自分が勝ったらOKしやがれと言ってきた。
で、気付いたら武道場・・・というわけだ。
「だいたいどうして他の女性に見とれたりしてんですか・・・。
普段は石川さんしか眼中にないくせに」
「いやぁ・・・、だってその人梨華ちゃんに似てたんだよ?」
なんだそのどこかのスレで読n・・・何処かで聞いたような話は・・・。
そんな冷めた視線を送っても目の前でデレデレと照れたような様子の彼女には届かない。
かくして即席凸凹コンビ・れいな&ひとみが誕生した。
- 96 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/03(土) 13:26
- 短いですけどココまでです。
次は気分次第。(ヲイ
冒頭の意味深な文は後々わかってくるハズです。
今回バトルシーンに力入れてみたんですけどどうでしょうか?
感想・罵倒引き続けて待ってます。
- 97 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/03(土) 13:35
- >>84 聖なる竜騎士 様
レスありがとうです。
グロい?あはは、そんなことは・・・ホントだ。
ところどころグロいやん。
自分でも無意識でしたw(危
これからもよろしくお願いします。
>>85 我道 様
誉め過ぎですよ(照
調子乗っちゃいますよ?
でも嬉しいです。
これを励みに頑張りますw
>>86 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
分かりにくい文で申し訳。。。
一応>>87で質問には答えましたが、
それで納得していただけたらまたお付き合い下さい。
こういうレスも自分の為になるのでありがたいものです。
ではまた次回!!
- 98 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/03(土) 13:37
- 隠しま〜す♪
- 99 名前:我道 投稿日:2004/04/04(日) 13:18
- いえ、いいんです!調子に乗っても良いんです!
それくらい描写が上手くて、知識も豊富なんですから!
ちょっと生意気でしたか?すいませんでした。
作者様を見習い、私も頑張っていこうと思います。
これからも頑張ってください!
- 100 名前:すかっしゅ 投稿日:2004/04/04(日) 19:36
- 期待しますよぉ。
- 101 名前:遥 投稿日:2004/04/04(日) 20:54
- 初めまして、遥です。
このお話本当に好きで、知識も豊富で文才もあって…ホント、尊敬ですよ。
田中さんのパンツが白ってトコがまた…僕的にツボです(ヲイ
格闘シーンもすごいよく出来ててすごい引き込まれます。
自分も小説書いてますが、本当に名も無き作者様尊敬です!
これからもちょくちょく感想書きますね。よかったら自分の小説も読んでみてください。
金板で連載中で、恐ろしく稚拙な文章ですが気がむいたらどうぞ。
それでは応援してます。長レスすいません。
- 102 名前:魔法のクスリ 投稿日:2004/04/06(火) 12:45
- ♪
おクスリおクスリ
魔法のおクスリ
オジサンたちに届けモノ
もらえるごほうび
魔法のおクスリ
♪
- 103 名前:ホントの理由 投稿日:2004/04/06(火) 12:46
- 「で、そろそろ話して貰えませんか?なんであたしに頼んだんです?」
目的地へと向かう車中、れいなが運転手に話し掛けた。
「だから言ってんじゃんYO!この仕事は一般人相手にすること多いから、
梨華ちゃん並に接近戦できるヤツが必要なんだって」
「それならさゆとか高橋さんの方が適任じゃないですか?
れいなは最低でも眼が紅くならなきゃ能力使えないですし」
「道重はオレの手に負えないし、高橋は他に仕事あるんだってよ。
お前しかいないんだって〜」
前を向いたまま言うひとみは、まだ自分の犯したミスに気付いていない模様。
隣でれいなが窓の外を横目にほくそ笑む。
「へ〜、さゆについては納得ですけど高橋さんさっきあたしの部屋来ましたよ?
暇なんでよしざーさんトコ行っけど断られたから田中ちゃんと遊ぶやよ〜・・・って」
「・・・・・。」
「話してくれないなら帰りますよ?」
- 104 名前:ホントの理由 投稿日:2004/04/06(火) 12:48
- ひとみがチラッ、とれいなの顔を横目で見ると瞳がうっすら紅くなっている。
話さなきゃ飛び降りるな、こりゃ・・・。
そう判断し、頭をがしがし掻きはじめる。
「だーもうっ!お前最近ホント鋭くなってンな〜、クソ。
お前また暴走しかねないから黙ってたんだが・・・。」
「ってことはやっぱり・・・?」
「あぁ。今回の件、多分【\(ナイン)】に繋がってるよ」
「やっぱそうですか・・・。」
- 105 名前:ホントの理由 投稿日:2004/04/06(火) 12:50
- 【\】
数年前突然姿を現した霊力犯罪組織の名だ。
暗殺、麻薬や武器の密輸、高位霊力の不当な使用などの犯罪に
世界中で広く関わっておりUFAにマークされている。
しかしその実態は未だ掴めておらず、後手後手に回ってしまっているというのが現状。
れいながこの組織に反応するのは、捜索中の人物【G】こと後藤真希が失踪したのが
この組織についての捜査中であったコトにある。
最近では、一度も表に姿を現さないこの組織の首領の正体が彼女なのではないか、
という噂までまことしやかに囁かれているのだ。
そこまでは深い関わりかはわからないが彼女の失踪の手がかりになりそうなのは明白だ。
現にUFAもこの組織と【G】になんらかの関わりがあるハズだという方針で捜査を進めている。
「それならそうと早く言ってくださいよ。そういう理由があるなら素直について来たのに・・・。」
「だってお前ごっつぁんのコトになると文字通り眼の色変えるだろ。
いつかも確保した犯人が苦し紛れに言った『俺は【G】の仲間だぞ』ってのに反応して
締め上げたらしいじゃんか?」
「う・・・。アレはたまたま虫の居所が悪くて・・・。」
「へぇ〜。親友を必死に庇おうとするいたいけな少女に殴りかかったのもソレかい?
あぁ〜、思い出しただけで脇腹が〜・・・。」
「うぐ・・・。」
- 106 名前:ホントの理由 投稿日:2004/04/06(火) 12:52
- れいながひとみに今ひとつ強く出れない理由の一つにソレがある。
あの日、圭織の説明の後。
医務室で寝ているというひとみに謝りに行った時。
傍に付き添う梨華には軽く睨まれたが、ひとみは自分の言い方にも問題があったから気にするな、と落ち込むれいなを励ます気丈さを見せた。
まだ人を疑うことを知らない中学一年生のれいなはなんて良い人なんだ、と素直に思った。
その時は、その時だけは。
問題はそれ以後。
ひとみはコトあるごとにその話題を持ち出してくるのだ。
本人は面白がっているのだろうが加害者(被害者?)であるれいなからすればそれは結構キツイ。
おかげでひとみから頼みごととなると強く断れない体質になってしまった。
先刻の半ば強引な勝負を断りきれなかった原因もそこにある。
「あ、てことは石川さんとの喧嘩も嘘なんですか?」
「・・・いや、それは本当。
今回のコトは梨華ちゃんと相談して決めたんだけどさ〜。
相手が手強そうとかなんとか言って連れだしゃ良いか、って話になってたんだが例のアレだろ?
実際そんな手強いわけでもないから2人で行けって言われちゃって・・・。」
「なまじつんく♂さんに許可とっておいた分不利になっちゃったワケですか」
妙に納得。
自分らのプロデューサーはかなりいい加減なので、
梨華が残りの2人に任せたいと言えば二つ返事で承諾するだろう。
もちろんその時にまだれいなが承諾していなくてもそんなコトには気付くまい。
「・・・あの人について行ってダイジョウブなんですかね?あたしら」
「・・・・。あ、見えてきた。そろそろ着くぞ」
- 107 名前:ホントの理由 投稿日:2004/04/06(火) 12:53
- れいなのがぶつけた将来への不安には答えないひとみの視線の先を追うと、
雑居ビルの立ち並ぶ道が目に入る。
取引現場と聞いてどこかの倉庫を想像していたので少し意外だ。
「運び屋さんの出入りを気にしなくていいからな。
下手に場所変えるより自分らのおウチの方が安全なんだよ」
れいなの表情を読んだのか、その疑問に答えたひとみが車を停めた。
れいなは左前方に見える建物を見上げた。
なるほど、確かに何処か怪しげな雰囲気を感じる建物だ。
「いいな。連中は霊力の存在を知っているとは言え一般人だ。
あんまり手荒な真似すんなよ?」
「はいはい。わかってますって」
できるだけ穏便にな、と念を押すひとみには答えずれいなはシートベルトを外して車を降りた。
- 108 名前:それから 投稿日:2004/04/06(火) 12:55
- ―――― 5分後 ――――
- 109 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 12:56
- 「・・・ってどこが穏便なんですか!?どこが!?」
「?穏便ジャン。一人も死んでないよ」
日本刀やら意味不明な掛け軸やらの調度品で飾られたオフィス。
その中央で不思議そうに首を傾げているひとみの足元には
動かなくなったヤクザ屋さんが6名程寝ている。
ノックに答えて扉を開けに近づいた下っ端のお兄さんはドアごと吹き飛ばされて窓の外。
ここは4階だがひとみの能力のお陰でフリーフォールは免れたらしい。
でもどこかの骨が粉砕されてるのは必至。
この先輩に「穏便」の意味を教えたのは【中澤裕子】だ。
暴力を職業にしてしまっている方々の顔の上で特殊警棒を片手に
愉快なタップダンスを踊っている彼女を見て、れいなはそう確信した。
「あたしが来た意味ないじゃないですか・・・。」
「ん?あぁ、お前を連れて来たのは・・・。」
- 110 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 12:57
- 「あれ?おねーちゃんたち誰?」
突然響いた幼い声と現れた気配に驚き、れいなは背後を振り返った。
「は!?こ、子供!?」
「あ、子供扱いしないでよ。これでもボク中1だよ?」
(ていうかこの子どこから・・・。)
突然現れた膝まである半ズボンに緑のジャンバーという格好の少年。
身長はれいなと同じくらいでパッと見小学生だが、整った大人っぽい顔立ちで
中学生と言われれば納得できる。
ただその仕草や不服そうな表情は妙に幼く、れいなに同期の吸血姫を連想させた。
「ガキと思って油断しない方がいいぞ。
アレでウチのエージェント2人に引導渡してんだから」
「ってことはやっぱり能力者ですか・・・。」
少年は床に寝ているオジサンたちを一瞥し、特に驚いた表情も見せずに口を開いた。
- 111 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 12:59
- 「もしかしておねーちゃん達、ゆーえふえーの人?」
「あぁそうだよ。用件は言わなくても分かるよね、成瀬小太朗くん?」
「うん、前にも同じよーな人来たし。コレでしょ?」
少年・・・小太朗が右手を掲げると、何も無い所からジュラルミンケースが現れる。
小太朗は手も使わずにケースを開き、中に詰まった大量の小さい袋詰にされた白い粉を示した。
「そう、ソレ。話があるから一緒に来てくれると嬉しいんだけど・・・。」
「いいよ、別に。ただし・・・。」
小太朗はジュラルミンケースを再び消し、代わって左手を掲げる。
直後彼の手の平に乗せられたモノに、れいなは目を見開いた。
- 112 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 13:01
- 左手に溢れんばかりの錠剤の山。
彼は口元にソレを持っていき、零れるのもいとわず一気に口に流し込んだ。
さほど広くはないこの空間に響くバリボリ、という咀嚼(そしゃく)音。
小太朗との距離はおよそ4m。
れいなの瞳は既に紅い炎をくすぶらせている。
ゴクリ、という嚥下(えんか)音の後に、天を仰いでいた小太朗の顔が下がる。
その瞳に浮かぶ色は、狂気。
「ボクとアソんでくれたらね?」
小太朗の姿が掻き消える。
- 113 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 13:03
- 既に能力を発動しているれいなの動体視力にも彼が動くのを捉えることは出来なかった。
そのコトから考えられる彼の能力の候補は2つ。
1,れいなでも捉えきれない程の超スピードでの移動を可能にする能力
2,空間を渡る能力、すなわちテレーポーテーション
コレとこれまでの彼の行動と彼が運び屋である事実を含めて考え、得られる正解は2。
そしてその場合、彼らは相手の死角、特に左斜め後ろからの不意打ちを好む。
れいながそこまで思考を進めると同時に、予想通りの位置に現れる殺気。
膝を屈めて体勢を低くする。
振るわれたアーミー・ナイフはれいなの髪を数本切り裂き空を切るに留まった。
敵の意外な反応に、小太朗の動作が僅かに止まる。
その一瞬を逃さず、彼のみを正確に狙う衝撃波。
咄嗟にソレを向かい撃つ衝撃波を放ったが、威力が足りずに
窓際まで小柄な身体を吹き飛ばされてしまう。
- 114 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 13:05
- キッ、と衝撃波を放った人物を睨みつけたが、彼女の身体の違和感に気付く。
右腕の肘から先が無くなっている。
立ち上がろうとしたが、喉元に感じる冷たい感触がそれを許さない。
感触の原因を目だけで探ると、空中に浮かんだ彼女の肘から先が特殊合金製の
冷たい特殊警棒を自分の喉にあてがっている。
「悪いね。アタシも君と同じPK能力者なんだわ」
「へぇ〜。じゃ、おねぇちゃんもバケモノなんだ?」
「いんや。人間だ」
その言葉を聞いて、小太朗は俯いて身体を小刻みに震わせ始めた。
「・・・そんなわけないじゃんか。だってボクと同じなんでしょ?」
「あぁ。だからお前も人間だ」
「・・・・嘘だ。」
「嘘じゃないさ。お前ならまだやり直せる。一緒に来な」
「・・・・・・・。・・・ひっく、・・・・う、ほんとぅ?・・・」
「ホントだよ」
嗚咽を漏らし始めた小太朗にれいなが優しい声をかける。
- 115 名前:狂気の少年 投稿日:2004/04/06(火) 13:05
- いよいよ声を上げて泣き始めたのを見かねてか、近づいて肩を抱いてやると
小太朗が顔を上げた。
「やーい。ひっかかった」
れいなに向けられたのは先程と同じ、狂った笑顔だった。
- 116 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/06(火) 13:14
- 更新終了〜♪
初の名前付きオリキャラ登場ですw
イメージとしては○○の炎の斬り込み隊長を狂わせて、
某螺旋漫画の外伝小説に出てきた、情熱に欠けた主人公の子供時代の容姿
と組み合わせた感じ。
わかんない方、ごめんなさい。
次回はハッキリ言って未定デス。
明日かもしんないし、再来週かもしれない。。。
なんとか来週中には更新するつもりではありますが。
- 117 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/06(火) 13:25
- >>99 我道 様
ホントにもうそんなに誉めても何も出ませんぜ、ダンナw
自分の場合知識が豊富というか、単純に漫画や本の読みすぎです。
おかげで実生活に役立たない知識ばかり増えてしまって。。。
なんとか小説でソレを役立てていきたいと思いますw
>>100 すかっしゅ 様
100ゲットおめっとさんですw
そしてレス有難うございます。
期待に応えられるよう頑張りますのでマターリついて来ていただけると
作者としては嬉しい限りです、ハイ。
>>101 遥 様
尊敬だなんて・・・。
ありがたやありがたや。。。(拝
田中さんの・・・ツボでしたか?良かったです。
正直ベタ過ぎかな〜とか思ったんですが、
かと言って黒はとかはマズイだろ、と開き直ってこうしましたw
そちらもちょくちょく見に行くので、お互いがんばりませう!!
- 118 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/06(火) 13:33
- え〜と、隠しついでにレスしてもらう時の注意というかそんなかんじのものを。
他のスレでもそうですが、感想入れる時は基本的に
E-mailという欄に半角英数でsageと入れてから行う、
というのが一応ここの決まりらしいです。
そうしないとそのスレが板の一番上まで上がってしまって更新かと思い
がっかりしてしまう人もいるので。
詳しくはFAQをどうぞ。
レス貰う側のくせにエラソウでごめんなさい。。。
- 119 名前:遥 投稿日:2004/04/06(火) 16:39
- え〜と、はじめにすいません…。sageるの忘れてましたね。
気をつけます。
そして感想ですけど、何かすごいですね。
オリキャラさんも登場しちゃったり……。
作者様が言うイメージを組み合わせると、エライ可愛い子になりましたw
れいなと吉澤さんにはそういう裏があったんですか…。
続きが気になりますね。頑張ってください。
- 120 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/06(火) 19:17
- >>119
Sageは半角でお願いします。
- 121 名前:ボクはみんなが大嫌い 投稿日:2004/04/13(火) 11:03
- ボクは人間が大嫌い。
だってボクはバケモノだから。
ボクは動物が大嫌い。
だってボクはバケモノだから。
ボクは花とか虫とかが大嫌い。
だってボクはバケモノだから。
ボクはバケモノが大嫌い。
だってボクはバケモノだから。
ボクはボクが大嫌い。
だってボクは、バケモノだから。
- 122 名前:破壊 投稿日:2004/04/13(火) 11:06
- 油断した。
後輩を刺され動揺し出遅れた一瞬。
その一瞬の間に小太朗は空間から突き出ているひとみの腕を捕らえ、
身動きの取れなくなった彼女に連続して衝撃波を放った。
幾つかはかろうじて防いだが、3,4発直撃を喰らってしまった。
内臓に損傷を受けたのか、口から赤い液体が湧き出てくる。
常人なら意識を保っていることすらできないハズの痛みに歯を食いしばって耐える。
このままでは確実に殺される。
仮にも敵は【\】の仕向けた人間。
説得は身体の自由を奪った上ですべきだったのかもしれない。
この状況を生み出したのは紛れも無く自分の甘さ。
自分の失態で半ば無理矢理連れて来た後輩を死なせるわけには行かない。
- 123 名前:破壊 投稿日:2004/04/13(火) 11:08
- 彼女の意思を繋ぎとめるのはそんな後輩への責任感。
せめてあと一回ワームホールを開ければ、れいなだけでも逃がすことができるかもしれない。
だが今は痛みに耐えるので精一杯で指一本動かすこともままならない。
そんなひとみの様子を面白そうに眺めていた小太朗が近づいてきた。
まるでラムネ菓子でも食べるかのように先程の錠剤をボリボリ、と噛みながら。
「だから子供扱いするなって言ったでしょ?
バケモノ仲間のおねぇちゃん♪」
「・・・がふっ、へ・・・ふ、ざけん・・・な・・・の、ガ・・・キ・・・。」
「ん〜?聞こえないよ〜??もう一回言ってみてぇ」
ニコニコと笑いながら、ひとみの腹部を蹴りつける。
ゲフッ、とひとみが苦しげに胃に溜まった血を吐き出すと、
おもしろそうに何度も蹴りつけた。
蹴りつける度、ひとみの作る水溜りの面積が拡大していく。
「う〜ん。おもしろくないなぁ。あ、あっちのおねぇちゃん殺したら、どうなるのかな?」
新しいおもちゃを見つけた子供のような声を上げ、倒れて血の海を作っているれいなを指差した。
出血量から判断するに、到底意識があるようには見えない。
- 124 名前:破壊 投稿日:2004/04/13(火) 11:09
- 「や・・・、め・・・ろ・・・」
絞り出すように声を上げ、小太朗の脚にしがみ付く。
「うるさいなぁ。邪魔すんなよ。死んじゃえ」
面倒くさそうにかざされた手がひとみの顔に照準を合わせた。
それでもひとみは諦めず、小太朗の顔をキッ、と見据えた。
「何その眼?弱いくせにムカツク」
小太朗の手の平に力が収束されていく。
ひとみは死を覚悟したが、それが放たれることはなかった。
あれ、と思って小太朗の顔を見ると彼はれいなの倒れているあたりに視線を
移し、何かに怯えるような顔で口を開けていた。
その視線の先をたどり、ひとみも驚愕する。
「う・・・そ・・・な、んで・・・?」
怯える小太朗の視線の先、腹部を刺され大量の出血をしたれいなが
黄金色に輝く恐ろしい量の霊氣と威圧感を放ち佇んでいた。
- 125 名前:破壊 投稿日:2004/04/13(火) 11:12
- 確かアレはれいなの切り札。
潜在能力を一時的に放出する忍術を覚えた時偶然出来たと言っていた技だ。
だが、あの出血量では術を唱えるコトもできなかったはずだしましてやあんな身体で
使えるような術でも無かったはず・・・。
何より気になるのは普段彼女がこの術を使った時の数倍の威圧感を感じるというコト。
正直ひとみも怖いくらいだ。
それまで俯いていた顔を上げ、れいなの黄金色の瞳が小太朗を捉えた。
その瞳に宿るのは敵意でも殺意でもなく、ただ純粋な破壊欲。
「う、うあぁぁっぁぁぁ!!!」
叫んで小太朗は姿を消した。
つまり、逃げ出した。
- 126 名前:破壊 投稿日:2004/04/13(火) 11:13
- しかしれいなの放つ威圧感は一向に止まない。
それどころかどんどん勢いを増している感じさえする。
身体さえ動けば、ひとみもとっくに逃げ出していただろう。
れいなが右腕を頭上に掲げる。
そこに宿る、黄金色の炎。
(はは、マジかよ・・・。)
れいなが炎を床に叩きつける。
ひとみの記憶は、そこで途切れた。
- 127 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/13(火) 11:13
- *****
- 128 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:16
- 「う゛・・・。」
目を開けると、見覚えがないでもない白い天井が視界に映った。
起き上がろうとしたが身体に激痛が走ってそれはかなわない。
「まだ寝てなきゃダメだよ。治すには治したけど結構ギリギリだったんだから」
「あ、村田さん。アタシどうして・・・。」
ここ医務室の主人、心霊医術師・村田めぐみに尋ねかけて記憶がフラッシュバックする。
転げるヤクザ、現れた少年、泣き出したかと思った次の瞬間浮かぶ狂気の笑顔、
その後の地獄のような苦痛、そしてれいなの暴走。
「そ、そうだ!!田中は!?・・・ぐっ、、、ってぇ〜・・・。」
「だから動くなっちゅーに。あと静かに。起きちゃうでしょ?」
口元に人差し指を当てるめぐみの視線の先を目で追うと、
すぅすぅ、と規則的な寝息を立てているれいなの寝顔。
脇にある輸血パックから伸びるチューブがれいなの腕に繋がっているのが見える。
腕に感じた異物感に視線を移すと、自分の腕にも同じように点滴と輸血パックが繋がっていた。
- 129 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:17
- 「で、何をどうするとあぁなるわけ?君らのいたビルはほぼ全壊、まわりの建物も半壊。
にもかかわらず犠牲者ゼロなんて・・・。」
「いや、アタシにも何がなんだか・・・。」
「まぁいいや。とりあえずよっすぃ〜が目ぇ覚ますの待ってる人いるし。
いいよ〜、入っても」
嫌な予感。
プシューッ、と自動ドアが開かれ猛スピードで飛出してくる人影。
「よ゛っずぃ〜!!!!ごめんねごめんねごめんね〜!!!!
あたしのせいで〜!!!!うわぁぁぁぁ〜〜〜ん!!!!」
「ギャーーーー!!!!痛い痛いぃぃ!!梨華ちゃん痛いってばぁぁぁ!!!」
「う゛わ゛ぁぁぁ〜〜〜ん!!!!」
キッツイ抱擁(と2人の画)。
ひとみの身体に巻かれた包帯の赤い染みが所々広がっていくが
めぐみも、れいなの容態を見に来た6期2人も我が身かわいさに動けないでいた。
- 130 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:18
- ―――2分後―――
- 131 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:20
- ひとみが動かなくなったのに気付いて今度は力任せに彼女の身体を
揺すりだしたESP能力者・石川梨華の様子を見て流石にヤバイと判断し、
後ろでボーゼンとしていた2人の力を借りて梨華をひっぺがし落ち着かせた。
未だしゃくりあげながらアタシノセイダアタシノセイダ、とブツブツ呟く久々に
ネガティブマシーンと化した梨華はほっといて、
めぐみは壁に備え付けられた通信機の回線をONにした。
「えぇ〜と、とりあえずよっすぃ〜は目ぇ覚ましました〜(また気ィ失ったけど)」
『了解です。とりあえず会議室まで重さんに運んでもらって下さい』
「わかりました〜。あ、あと紺ちゃん、部屋の隅にうずくまってるイタいヒト
片付けてもらえる?このオーラは病人の身体に障るんで。いやマジで」
実際、テレパシーを使えるような人間の放つ負のオーラは周りの動植物にとって
精神衛生上あまりよろしいとは思えない。
『は〜い。じゃぁ矢口さんに行ってもらいますから』
「よろしく〜」
- 132 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:21
- のんびりした口調の何気に毒々しい会話を終え、回線を切り
れいなの寝顔をモノ欲しそうな顔で覗くさゆみとれいなの頬をパチパチ叩く
つまらなそうな表情の絵里の方に身体を向ける。
ほっといたら殺しかねない。
「道重ちゃん、とりあえずこのオッサンいつもの会議室に運んでもらえる?」
「あ、はい。わかりました〜。えりも行こ?」
「ん?あぁ、うん。じゃ、れいなよろしくお願いします」
「はいよ〜」
さゆみがひとみを担ぎ抱えるのを確認し、絵里がドアのパネルに手を伸ばそうと
するより早く、ドアが開いた。
現れたちっちゃな猛獣使いにどうも、と会釈をして2人は出て行く。
- 133 名前:医務室にて 投稿日:2004/04/13(火) 11:23
- 「おら石川!!邪魔だから早く来い!!」
「ひっく・・・矢口さん・・・。あれ?よっすぃ〜は・・・?」
「お前がいじけてる間に重さんたちが連れてった」
「・・・うぅ、やっぱり私のことなんて・・・。イジイジ」
「だーもう、うっさい!!早く行くぞ!
酉・寅・巳・午・子・辰!!無手空動の術!!」
真里が唱えながら印を組み術を発動すると、
イジけた体育座りの姿勢のまま梨華の体が宙に浮く。
「じゃあ田中のコトよろしくね、村っち」
「はいよ〜」
梨華を運んで行く真里を見送りドアが閉まるのを確認して溜息を一つ。
幸せそうな寝息を立てている元・一般人を見て、
よくアレに慣れられたもんだ、と心の中で賞賛した。
- 134 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/13(火) 11:29
- 更新終了ッス。
相変わらず短い。。。
出てきた術については適当ですのであんまツッコまんといて下さい。
次もまた一週間くらい空くと思います。
こんなダメ作者ですがマターリついてきてもらえれば嬉しいです。
- 135 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/13(火) 11:39
- >>119 遥 様
小太朗くん、エライ可愛くしてみましたw
でも中身はこんな具合に狂ってます。
どうしてこんなに狂ったのか、は後々描ければな・・・と。
自信はないですが。。。
精進します。
>>120 名無飼育さん 様
作者の代わりにありがとうございます。
ではではまた次回!!
- 136 名前:我道 投稿日:2004/04/15(木) 19:23
- こんばんは、我道です。
ありきたりな言葉しかいえなくて申し訳ないんですが、面白い!
あと・・・くらっ、小太郎君!
田中さんいじめちゃだめでしょうがっ!!
はっ!すいません、そこを読んでちょっとはっちゃけすぎてしまいました・・・。
これからもがんばってください(ペコリ)
- 137 名前:少年の憂鬱 投稿日:2004/04/18(日) 16:13
- ボクはツヨイんだ。
だからみんなはボクをコワがる。
そうやっておびえてるヒトをコロすのがボクのたのしみなのに・・・。
なのにあのおネェちゃんたちは・・・。
そんなのユルさない。
ゼッタイにコロしてやる。
あのヒトにしょけいじょーをヨウイしてもらおう。
そうすれば・・・。
コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
- 138 名前:ゴメンナサイ 投稿日:2004/04/18(日) 16:15
- 「分析の結果、例の錠剤は私のおじい様が開発した
霊力値向上薬【エデン】であると判明しました。」
分析の結果を報告するあさみの背後のディスプレイには、
錠剤の写真とその成分を示したグラフが表示されている。
「ていうか紺野、どこでそんなもん・・・?」
「田中ちゃんの左手に握られてたんです。粉々になってましたけど・・・。」
ひとみの質問に答えて机の上に置いてあった透明な袋を掲げる。
中に入れられた白い粉がソレらしい。
「で、この薬なんですけど、相当ヤバイ代物なんですよ・・・。」
「また!?紺ちゃんのおじいちゃんってばロクな発明しないよね〜・・・。」
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイドウカカゾクノイノチバカリハ・・・。」
「・・・・・・・。」
別にあさみが悪いわけではないのだが、美貴に言われて思わず土下座。
美貴の方は別に責めてるつもりはないのだが、生まれながらのツッコミ気質と鋭い目つきが
色んな人種――ヤクザとか殺人鬼とか――を怯えさせてしまうのは日常茶飯事。
今ではどうでも良くなってきたのでそのまま放置。
ただ、今日は寝不足のせいで腕に絡みついてる亜弥以外の周囲に与える恐怖の
度合いが普段の三割増しなのに本人は気付いていないわけだが。
- 139 名前:ゴメンナサイ 投稿日:2004/04/18(日) 16:16
- 「ま、まぁそれは置いといて、どんな風にヤバイわけ?」
勇気を振り絞ってリーダーが尋ねる。
その声に反応して、ゴメンナサイマシーンになっていたあさみが顔を上げて説明を再開する。
「あ、はい。コレ、脳に作用して精神波のニュートリノへの影響力を増やす・・・
つまり霊力値を上げる薬なんです。場合によっては服用者の潜在能力を
発現させるコトもあると言いますから、田中ちゃんの暴走はおそらくそのせいかと・・・。」
「じゃあアイツ、どさくさにまぎれてあのガキから薬かすめて飲んだってコトか・・・。」
「多分そうですね。生命の危険に晒された状態でこんなモノ服用したんで力が暴走したんでしょう。
元々得体の知れない力秘めてましたし、こんなに早く副作用が出るはず無いですし」
「副作用?」
真里が訊く。
「えぇ。その副作用のせいでUFAの規約で使用を禁止されてるんです。
で、その副作用というのg・・・。」
「なんでそんな危険なモンを子供が持ってんのさ!?」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイウマレテゴメンナサイ」
「・・・・・・・・。」
- 140 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:17
- 「・・・っのガキーーーー!!!!ぶっ殺ぉぉぉぉすッ!!!!!!」
静寂。
「・・・ってあれ?ここは・・・?」
「おはよう。元気だね〜、瀕死の重傷だったくせに・・・。」
恐ろしく物騒な言葉を吐きながら勢い良く起き上がったれいなを呆れたように見つめるめぐみ。
ちなみに現在の時刻はひとみが起きてから5時間後の夕方4時半過ぎ。
この時期だとこんにちはからこんばんわに変わろうかという時間帯だ。
「え〜っと・・・、あたしは一体・・・。」
「あぁ、かくかくしかじかでね」
「そ、そうだったんですか・・・。あのクスリそんなにヤバイもんだったんですね・・・。」
小説って便利。
めぐみはひとみの時と同じように壁の通信機を使い、事務室に連絡をとる。
その瞬間、れいなの感じる嫌な予感。
『めぐ?ちょっと今取り込んでるかr・・・。』
「あ、あゆかい?田中ちゃんも目ぇ覚ましたから亀井ちゃん達に・・・。」
(ダダダダダ)
『あっ!ちょ、ちょっと待って・・・!!
・・・ヤバッ、めぐ!今すぐ田中ちゃん逃がして!!じゃないと殺される!!!』
「は?何で・・・って田中ちゃん!?」
通信機の向こうの柴田あゆみの告げた内容を聞いてれいなは弾かれたようにドアへと向かう。
が、それより早く開かれる扉。
青ざめるれいなの眼前に、巨大な鎌の刃が振り下ろされる。
- 141 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:19
- 扉から足音も立てずに現れたのは、黒いローブを纏い身の丈ほどの大鎌携えたガイコツ。
所謂、死神というヤツの典型的な姿だ。
どうやら絵里が廊下に配備しといたらしい。
用意周到だな・・・、と半ば呆れながらも無闇に振り回される鎌をかわしていく。
重く鋭い刃はそれ相応の威力を持っているのだろうが、
主人のいない下僕の振り回すソレをかわすのはれいなには造作もない。
かわされた鎌はベッドやら壁やらにいくつも傷を作っているが、
死神クンはそんなことおかまいなしに暴れ回る。
「おぃおぃ・・・、無茶しなさんなよ・・・。」
「大丈夫ですよこれぐらい。よっ、ほっ♪」
(無茶苦茶な回復力だね〜、相変わらず・・・。)
「どうでもいいけどあんまりココの備品壊すとまた飯田さんに・・・。」
ブツブツ言いながらふと開いたままのドアの外に視線を移しためぐみの動きがピタッ、と止まる。
それをいぶかしんで死神の相手を忘れずにれいなも視線をそちらに移す。
廊下の向こうから、悪魔の翼を生やした少女とそれにまたがる鬼の形相をした
これまた少女が猛烈なスピードで接近して来ているのが見える。
ちなみにれいなは、これほど怒りを剥き出しにした彼女を初めて見た。
物凄く嫌な予感。
- 142 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:21
- 「「れいなぁぁーーー!!!」」
「「ギャーーーーー!!??」」
減速することなく突っ込んできた二人。
れいなはかわそうとしたが、めぐみに盾代わりに使われて一緒に吹き飛ばされてしまった。
めぐみのメガネが宙を舞う。
あわれカルシウムの塊である死神くんは木端微塵。
「いったいな〜、ちょっとえり、 これはやり過…ぎふぁっ…!?」
れいなの不満には耳を貸さず、絵里は顔面に容赦なく前蹴り上げを見舞い、
顎を蹴り上げられて舞い上がったれいなの頭を両手で抱え込んでカウ・ロイ(飛び膝蹴り)。
間髪いれずにガラ空きの身体を鉄山靠(体当たり)で壁際まで吹き飛ばす。
れいなは壁に背中をしこたま打ち付け、肺の空気を苦しげに吐き出した。
「ゲホッ、ウェッ・・・、イタタタ・・・、ちょ、ちょっとマジヤバイからタンマ・・・って、えり!?」
呼吸を整え顔を上げたれいなの見たのは、目に涙を溜めてこちらを見つめる絵里の顔。
こんなに感情を露にした絵里を見るのは初めてでオロオロするしかない。
- 143 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:22
- 「え、えり・・・?あたし何かしたかな・・・?だったら謝るから・・・。」
「・・・ぃっく、ぅ・・・、うわぁぁぁぁん・・・!!」
「うぇ!?えり!?何?何?どうしたの!?」
いきなり絵里に抱きつかれ戸惑うれいなの様子を見て、さゆみが口を開いた。
「えり、れいなのことスッゴク心配してたんだよ?実際結構危なかったし・・・。」
「え・・・、そうなの?えり」
「ぅっく・・・うん・・・。」
「そっか・・・、ごめんね?心配かけて。でもありがと」
そう言って絵里の身体を抱き寄せる。
心配→安心して暴力という構図を何の疑問も持たずに
受け入れてしまっているコトをれいな自身は意識していない。
- 144 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:23
- この微妙に間抜けな感動シーンに水を差す者が一人・・・。
「おい、ガキ共。ヒト様を轢いといて詫びも入れずにイチャつくとはいい度胸よのぅ・・・。ん?」
「ふぇ?む、村田さん?そ、その手に握ってらっしゃるのは・・・?」
ゆらりと立ち上がっためぐみの両手の五指の間に四本ずつ握られた手術用と思われるメス。
明らかに普段と質の異なる彼女の口調と放たれる殺気を感じ、三人の間に緊張が走る。
「貴様等には少々教育が必要なようじゃな?」
「はい!?いや村田さん何を・・・!?」
「死ねぇい!!!」
気合と共に放たれるメスの雨。
明らかに構えていた量より多いそれを、咄嗟にさゆみが翼で払い落とす。
防ぎきれなかったいくつかはさゆみの服に赤い染みをつくったが、
突き刺さったソレを抜いたトコロにもう傷は無い。
流石はヴァンパイアと言った所か。
- 145 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:24
- 「さゆ!!」
「2人は見てて、ここはわたしがやる」
「ほぅ、たった一人でワシの相手とは舐められたもんじゃな。
次期にその口叩けぬようにしてくれる!!」
そう凄むとめぐみはメスで自分の右手首を切り裂いた。
鮮血が噴出し、垂れ下げられた右手が赤く染め上げられる。
その光景に目を剥く3人を他所に、めぐみは口の端を怪しげに吊り上げる。
「しょ、正気ですか?吸血鬼相手に血なんか見せて・・・。
第一その出血量じゃすぐに貧血起こして動けなくなりますよ?」
「心配には及ばぬ。それより早くカタを付けるからな。
その後全員キッチリ治療してやるわぃ。だから手加減は・・・、なしじゃ!!」
めぐみが右手を振り上げる。
血の刃がさゆみに襲い掛かったが、さゆみは避けずに両腕で受け止める。
しかしそれは完全に刃を受け止めることはできず、肉が抉れて一瞬白い骨が顔を覗かせた。
拳を二、三度握って開いてその機能に異常がないことを確かめ、相手を睨みつける。
- 146 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:25
- 「どんなもんじゃ?自分の食糧で斬られる気分は?」
「別に血だけ飲んで生きてるわけじゃありません!!」
さゆみがめぐみに飛び掛る。
その鋭い爪を、めぐみは血液の凝固作用を利用して象った刀で受け止める。
ヴァンパイアの圧倒的パワーを、見事な斬り返しで受け流していく。
だがいくらかかわし切れないモノもあるのか、さゆみの身体が徐々に返り血で濡れていく。
「ね、ねぇ・・・、止めなきゃヤバイんじゃない?あのままだと村田さんマジで死んじゃうって」
「いや、そうでもないみたい。見て、二人の表情・・・。」
絵里に言われるまま二人を見ると、めぐみは押されている筈なのに余裕のある表情をしている。
逆に押しているはずのさゆみが苦悶の色を浮かべている。
よくよく見ると、さゆみの動きが先程から徐々に鈍くなっている気がする。
突然、めぐみの身体から大量の血液が噴出し、
さゆみは避けることもできずにモロに頭からそれをかぶってしまった。
同時にさゆみの動きが止まる。
「さ、さゆ!?」
「く・・・っ」
「無駄じゃ、いくらヴァンパイアでもワシの氣を注ぎ込んである魔血をそれだけかぶって
固められては指一つ動かすことはできん」
- 147 名前:番組の途中ですが 投稿日:2004/04/18(日) 16:26
- *****
- 148 名前:コンコンのご説明しましょうのコーナー 投稿日:2004/04/18(日) 16:29
- えぇ〜、どうも紺野あさみです。
この作品は意味不明な単語やら展開やらがやたらと多いので
これからはその都度私が補足説明させていただきます。
(まったくなんで作者の仕事を私が・・・ブツブツ)
ここで村田さんが言ってる【氣】というのはですね、
SNTを利用して体内で生み出す物理的エネルギーのことです。
これは高位霊力保持者でもそれ相応の訓練を受けなければ生み出せないモノなのですが
ハロプロのメンバーは全員この訓練を受けているので皆使用できます。
他の術とは違って詠唱などは必要としません。
主な使用方法は身体の表面を薄く覆っての攻撃力と防御力の強化や
筋肉や神経の活性化による運動能力の向上などが上げられますが、
村田さんはコレを血液に注いで凝固した血液の硬度の補助を行っているようです。
コレは物理的なモノですので中国拳法などで言われる情報としての
「気」とは全くの別物と言えます。
まぁ訓練時にはこの情報としての「気」の訓練法も使わしてもらってますが
一般の方々はほとんど生み出せないので・・・。
では、紺野あさみでした〜♪
補足トリビア:【術】は自分のSNTと周囲のSNTとを使って起こすものですので
【氣】が使えなくても術は使えます。
- 149 名前:引き続きお楽しみ下さい 投稿日:2004/04/18(日) 16:30
- *****
- 150 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:31
- 「めぐ!!」
「げっ、メガネ外れてんじゃんよ!?」
「マサオ、発砲用意!!」
「ん?おぅ3人共、どうした?」
現れたのは、めぐみと同じ【メロン】のメンバー斉藤瞳、大谷雅恵、柴田あゆみの3人。
若干一名物騒な命令を発している者がいるのを気にも止めず、めぐみはそちらに視線を移した。
「どうした、じゃないわよ!!後輩相手に何やってんのアンタは!?」
「教育」
「マサオ、撃て」
「いぇっさー」
何の迷いも無い様子で、雅恵が自慢の装飾銃の引き金を引く。
軽い発砲音の後にパタ、とめぐみが床に仰向けに倒れる音が響く。
- 151 名前:豹変 投稿日:2004/04/18(日) 16:32
- 六期の3人は約三十秒で行われたその光景に唖然ボー然お口あんぐり。
ついでに目が点。
「?心配しなくてもラバー弾だから死にゃしないよ」
「い、いや・・・。で、でもどうなってんですか?
村田さん急に豹変しちゃって・・・。」
「コイツ、メガネ外すと必ずこうなっちゃうのよ・・・。
急にジジ臭くなって、普段はそれでも大丈夫なんだけど
怒り出すと手ぇつけられなくてねぇ・・・。
実力行使しか止める手立てないのよ。今後は気をつけてよね?」
「・・・・・・・・。」
比較的まともだと思っていた人の真実に、
改めて「史上最強の変人集団」のあざなの意味を思い知ったれいなだった・・・。
- 152 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/18(日) 16:41
- はい、更新終了〜♪
いきなりこの方々に登場していただきました。
いんや〜、出る人出る人全員変人だねぇ(ヲイ
今回暴走した彼女は某奪還漫画の不死身な人と、
某火影漫画に出てきたやたら紳士な敵の能力を合わせて
出来上がりました。
この作品の登場キャラにはほとんどの場合元ネタあるのであしからず。。。
- 153 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/18(日) 16:50
- >>136 我道 様
いえいえ、ネタバレにならない程度ならいくらでも
はっちゃけちゃって下さいなw
>ありきたりな言葉しかいえなくて申し訳ないんですが、面白い!
ありきたりだろうとなんだろうとその言葉が何より励みになります。
ホントありがとうございます。。。(涙
こんな人真似小猿なダメ作者ですが、
これからもよろしくお願いします。
ではまた次回更新で!!
- 154 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/18(日) 16:56
- ついでの補足トリビアです。
ラバー弾はアメリカのバウンティハンターとかが実際に使用している、
鉛のかわりに強化ゴムに黒色火薬をセットした弾です。
犯人にしてみれば臨終する代わりに青アザの大怪我だけで済むありがたい道具ですw
では、日常使用不能なムダ知識でした。
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/18(日) 19:17
- 更新乙です。変な人ばっかで笑えてしょうがないです。
心配→安心して暴力ってw
すばらしい構図です!そして受け入れてる田中さん…悲しいさがですかね?
これからも頑張ってください期待してます!
- 156 名前:遥 投稿日:2004/04/18(日) 21:33
- 更新お疲れ様です。
登場人物の元キャラ、全部わかりますww
マンガ大好きなんでw
何か重さん…カッコいい!!
確かに変人ぞろいだ!面白すぎてやばいです。
続き楽しみです。応援してます。
- 157 名前:我道 投稿日:2004/04/19(月) 06:04
- 紺野さんのゴメンナサイマシーンにじつはちょっと笑ってしまいました・・・(苦笑)
漫画のとは言えど、知識が豊富であるのには変わりません。
やーもー、本となんか尊敬です!
- 158 名前:我道 投稿日:2004/04/23(金) 06:50
- すいません・・・↑ネタバレレスでしたね・・・。
本当にすいませんでした・・・。
- 159 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:20
- 暗いトコロは正直苦手だ。
闇は否が応にも人間の恐怖を煽り立てる。
何か出るとの噂が巷の小学校でおもしろおかしく語られているのならそれはなおさら。
元々ひゅーどろどろ系は嫌いなのだ。
塗装も無くやたらと無機質なコンクリの壁。
その灰色のキャンパスに描かれた悪ガキ共の世間への些細な自己主張を見ると、
現実から逃れようとする者の弱さが滲み出ているような気がして思わず溜息が漏れてしまう。
破れた窓から吹き込む冷たい風が頬を撫で、真冬を改めて実感させてくれやがる。
兵どもが夢の跡―――そう詠ったのは誰だったか・・・。
自分達の記憶にはほとんど残らないバブル景気が残したモノはと言えば、
贅沢馴れした腐った大人、腐った社会に大量の不良債権。
富士の樹海は本日も大賑わいである。
都内某所の古びた廃ビル。
此処もそんな人間の業の馴れの果ての一つだ。
こういう場所には瘴気が溜まりやすく、その存在は自分たちにとって迷惑極まりない。
- 160 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:22
- 「おぃ田中、ボーッとしてないで早く行くぞ」
「・・・そういうセリフはその手を離して先導してから言ってください」
呆れた顔で不平を漏らすれいなのパーカーの裾は
くの一、矢口真里にガッシリ握り締められている。
「しょ、しょうがないだろ?オイラお化けだけはダメなんだよ・・・。」
「あたしだってそうですよ!!なんでわざわざあたしに引っ付くんですか!?」
「いやだってよくユーレイとかは怖い怖いと思ってると寄って来るって言うじゃん・・・?
そしたらオイラやばいから他に怖がってるヤツ盾にして逃げればと・・・。」
「何ですか!?あたしはどうなってもいいんですか!?」
「うん!!」
ピキッ(←何かのスイッチが入る音
「・・・斬鉄爪」
「のわッ!!、・・・っのヤロやりやがったなぁ!?喰らえ、雷魔式飛苦無!!」
「なんのぉ!!」
- 161 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:23
- ・・・・・・わーぎゃー・・・・・・・・
乱闘開始のゴングが鳴った。
周りの連中はいいぞーやれー、と酒場の喧嘩の見物人並にタチの悪い煽りを開始。
そんな様子を見て先頭を歩くリーダーが深い溜息をつく。
言っておくが今、任務中である。
「なっち」
「ん?なんだいカオリ」
「黙らして」
「はは、お安い御用で」
隣を歩くなつみは笑顔で応えると、ジーンズのポケットから符を取り出し胸の前に掲げる。
「急々如律令」
そう唱えて乱闘騒ぎの中心に飛ばす。
数秒後、幾人かの悲鳴の後小規模爆発が起こり渦中の方々は四方八方へ吹き飛ぶ。
- 162 名前:今週もやって参りました 投稿日:2004/04/24(土) 15:24
- *****
- 163 名前:紺説コーナー♪ 投稿日:2004/04/24(土) 15:25
- 全国6億4891万人の紺野ファンの皆さん♪
お待たせしましたぁ♪
おじゃま〜るシェ、紺野です♪
・・・って、ハッ!?
私今何を・・・?
作者:腕をぐる〜りと回して可愛くポーズを・・・ぐふっ!?(←正拳中段突き直撃
はい、馬鹿と謎の電波による肉体操作はほっといて説明に入りましょう。
今しがた安倍さんが使った【符】についてですが、
これは言ってみれば【術】を紙に封じ込めたようなものです。
元来【術】とは詠唱や真言、呪文により自身のSNTを
周囲のSNTと反応できるように変え、発動させるものです。
(超能力者や田中ちゃんの場合はソレなしで能力を発動させてますが、
これは生まれつきと言いますか脳が無意識にSNTの性質をその領域に持って行ける為です。)
- 164 名前:紺説コーナー♪ 投稿日:2004/04/24(土) 15:27
- ただ戦闘中、詠唱の時間というのは無防備で非常に危険です。
そこで登場するのがこの【符】。
これには2つ種類があって、一つは呪文の代わりにSNTを変化させる媒介として
SNTを込めることで【術】を発動させるもの。
もう一つは【符】自体にあらかじめ【術】を込め、
スイッチを入れれば手榴弾のように数秒後に発動するものです。
安倍さんが今使ったのは二つめのようですね。
欠点としては、あまり複雑な術は使えないことと
呪文による場合より威力が落ちることなどが上げられます。
では今週はこの辺で、グッチャ〜♪(パクリ)
・・・ってだから何させてんだこのアホ作者ーーー!!!
作者:親指立ててからそれをL字に変えて笑顔・・・でぐぅぁふぁ!?(←エグ過ぎて描けません
- 165 名前:引き続きどぞ 投稿日:2004/04/24(土) 15:28
- *****
- 166 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:29
- 「はぁ・・・、私最近リーダーやってく自信なくなってきたよ」
「なぁにを今更言ってるんだべか?カオリはよくやってるって。
今のだって裕ちゃんだったら一人か二人死んでたよ?」
「裕ちゃんがいたら皆まとまるもん」
「なっちはそんな恐怖政策嫌いだべ。あぁいうのもカオリが親しみやすいって証拠っしょ?」
「えぇ〜、そっかな?何か自信出てきた!ありがとなっち♪」
前リーダー・中澤裕子、ヒドイ言われようである。
背後からよけーな自信つけさすんじゃねーよ、という気合が入った時の圭織のカラ回り様を知っているメンバーからの視線を感じながらも、最早【モーニング】ではないなつみは一切気にしない。
- 167 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:29
- 「それにしてもなんで7人だけ指名してきたんですかね?」
「ソレをこれから確かめるんじゃん。でもやっぱ変だよね・・・、
7人の他は誰が来ても構わないなんて・・・。」
「別に何でもいいじゃ〜ん♪こうやって久しぶりにミキたんと一緒に仕事できるんだし」
「えへへぇ〜♪そうだよね?あやちゃ〜ん♪」
「・・・・・・・。」
「多感な中学生の前でイチャつくなよ、バカップル」
そう言って冷ややかな視線を向けている真里もれいなの右手をガッチリ握って腕に絡みついてる。
傍目には肝試しに来た――同姓であることを除けば――カップルが
二組並んでいるように見えないでもない。
どうやら何か出た時は一緒、というコトで和解が成立したらしい。
本題に戻って彼女たちの疑問の原因だが、これは例の一件から3日後の昨日、
UFAにどこをどうやってか送りつけられてきた手紙にあった。
- 168 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:31
- 『
親愛なるUFAの愚民共へ
先日は私の部下が大変失礼な真似をし、そちらの方々に不快な思いをさせたことを詫びよう。
ついては彼の申し出により改めて決闘を申込みたく思う。
もし受ける勇気があるのなら明日深夜24時、同封の地図の場所まで来て戴きたい。
参加者についてだが、こちらは成瀬小太朗一人、そちらは以下7名にお願いしたい。
安倍なつみ、飯田圭織、加護亜依、亀井絵里、道重さゆみ、藤本美貴、松浦亜弥。
以上の方々さえ来てくれれば他に援軍が何人来ようが構わない。
では、諸君等の勇気に期待する。
【\】首領、ペルセポネ
』
この挑発めいた文書を見て黙っているお嬢さま方ではない。
とは言えこの7名だけでは何かあったら大変という事で、
亜弥と【モーニング】が全員出動することになった。
- 169 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:33
- 「どう考えても罠ですよね?」
その身の丈ほどの長さはある鷹の飾りのついた杖を持ち、
頭に黒猫を乗せた背の低い少女が関西訛りで尋ねる。
「どうして?あいぼん」
口を開いたのは驚くなかれ、少女の頭の上でくつろぐ黒猫だ。
「あんなぁのの、わざわざ指名してくるなんて何か狙いがあるからに決まってるやろ?
少しは頭使わんとバカ女呼ばわりされてもしゃあないで」
「うぅ・・・、気にしてるんだからあんまりそれ言わないでよ」
去年抜き打ちでつんく♂とその友人のコンビ・・・もとい二人組みによって実施された学力テスト。
実は英語以外ほとんど負けていたにも関わらず、関西弁の魔導士・加護亜依は
頭の上の人狼ならぬ人猫・辻希美にエラソウに注意する。
- 170 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:34
- 「そこのツートップ。くっちゃべってる内にもう着いたぞ」
「ほぇ?あ、ホンマや」
先頭に目をやると屋上に繋がるドアと同期のESP能力者がにらめっこの真っ最中。
「どう?石川」
「ダメです。何もわかりません」
『ドアに特殊な細工がしてあるみたいですね』
「あーしが破りますよ。皆は下がっといてください」
申し出たのは自称訛りはもう抜けた、無神流戦士・高橋愛。
彼女の言うまま14人は後ろへ下がる。
あまり広くはない空間なので結構キツイ。
そんなことは気にせず、愛は右の手の平をドアにかざし集中力を高める。
愛が短く息を吐くとその手から淡く輝く球体が高速で放たれ、ドアが消し飛ばされた。
ドォォォン、という音と同時に舞い上がる埃と白煙。
既に獣化したれいなの目には、その向こうに小さな人影が認められた。
金属製の重いドアと愛の手から放たれた熱を持った質量との
衝突によって生じた風が少女たちのやわらかな髪をなびかせ、
その一面に広がる灰色を一層濃くしていく。
- 171 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:35
- 白煙が晴れるにつれ、月光に照らされた影の姿が露になる。
成瀬小太朗。
一見4日前とは何ら変わりないように見える。
実際容姿には何の変化も無いし着ている服まで同じだ。
だがれいなには、こちらを見つめる彼の目に浮かぶ狂気がより色濃くなったように感じられた。
「あんた・・・。」
れいなの口から漏れかけた言葉はしかし空気を震わせることはなく、
代わりに耳をつんざくような梨華の悲鳴が、下につけたワゴンでオペレーションの
準備を整えたあさみも含め15人の鼓膜を刺激した。
- 172 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:37
- 「り、梨華ちゃん!?どうしたの!?」
「ぁぁああああ、いやぁぁああああ!!!!」
『吉澤さん!!すぐに石川さんを連れてできるだけ遠くへ!!』
「はぁっ?何言って・・・。」
『早く!!石川さんの精神が危険です!!』
「!?わ、わかった」
梨華が危険と聞いてひとみは慌てて彼女の肩を抱いて姿を消した。
宙に浮く球形のカメラを通してそれを確認し、あさみが口を開く。
『迂闊でした・・・。まさかもう既にスイッチが入ってるなんて・・・。』
「ど、どういうことですか?」
『4日前の様子を聞く限りあと一週間は大丈夫だと思ったんですが・・・、
おそらくもう彼の精神は破壊されてしまっているでしょう』
- 173 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:38
- 【エデン】
この薬は開発当初、霊力値を上げ高位霊力保持者の戦闘力を向上させる
画期的薬として研究者たちの間では神の所業ともてはやされた。
だがマウスによる実験も成功し一般的霊力値の保持者(志願者)での実験も間も無く成功に
差しかかろうかという段階、不足の事態が発生した。
被験者の一人が研究員を殴り殺してしまったのだ。
それからまるでタチの悪いのウィルスが伝染していくかの如く被験者達は次々に凶暴化を始め、
実験所は乗っ取られそこにあった薬も全て奪われた。
すぐさまUFAに派遣されたエージェント達がそこで見たのは、まさに地獄。
喰い散らかされた人間の肢体、壁に描かれた意味不明の赤い文、時々響く何者かの咆哮。
鍛えられたエージェント達の精神ですら、何処か現実感の薄いその光景と
現実とを繋ぐ赤い臭気に順応するのに数分を要した。
廃病院を利用した実験所の最奥部で彼等が出会ったのは、口から赤いモノが混じった沫を零し
無作為に暴れ回る・・・いやもがくと言った方が正しいか、無様な姿の人間。
身体中の筋繊維を所々喰いちぎられ、片目は潰れおかしな方向に曲がった脚をひきずり
それでもなお彼等に迫り来るその生物を人間とよべると仮定しての話だが・・・。
- 174 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:39
- 断っておくが、この薬は服用者のゾンビ化を招くようなものではない。
それどころか、肉体にはほとんど副作用が見られない。
ただ問題なのは精神面、つまり脳への影響だった。
これもその機能には何の支障も来さないのだが、後の実験で強い精神的依存が認められたのだ。
最初の服用ではほとんどこの依存は見られないのだが、
服用を重ねる毎にソレが加速度的に高まって行くのだ。
だがこれだけではあのような悲劇を生むには足りない。
最大の問題は、副作用による攻撃性の増加にあった。
マウスの実験では、霊力向上による一時的興奮として片付けられたのだがこれがマズかった。
この凶暴性も依存同様服用の度、加速度的に増していくのだ。
人間には理性があり、ある一定の段階までこれを押さえ込むコトは可能。
しかしある領域を越え爆発してしまえば最後、服用者は身体にみなぎる破壊衝動の
赴くまま暴走する殺人マシーンになり果てる。
さらに困ったコトに、殺人マシーンと言えども食欲はあるらしいのだ。
とはいえ彼らには食事を用意したり味わったりと言った理性は残されていない。
この事実とあの惨劇を思い浮かべれば、其処で何が起こるのかは想像に難くないだろう・・・。
とにかくこういう忌まわしい経緯があってこの薬は神のうんぬんという前評判もあいまり
畏怖と皮肉を込め、【エデン】と名付けられその使用及び製造が一切禁じられた。
- 175 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:42
- そして成瀬小太朗はその常用者。
しかも既にスイッチが入っているのならそんな状態の人間の頭の中を
読むのがどれほど危険かは梨華の反応を見た通りである。
実際テレパシストではないれいな達でさえ、吐き気がするほどのプレッシャーを感じている。
ただ一つ、れいなには気になる点があった。
例の話を聞く限りスイッチの入った人間は、見境なく動くモノに襲い掛かり
喰い散らかす猛獣になる筈・・・。
しかし目の前の少年はれいな達の姿を認めても
襲い掛かるどころか動く気配すら見せていない。
「あの、こんのさ・・・!!」
その疑問をオペレーターに訴えかけようとしたのとソレはほぼ同時だった。
突如少年の足元に現れた魔法陣。
それが輝く共に、周囲の瘴気が一斉に少年の身体に吸い込まれていく。
それらを全て飲み込み終わると少年の身体が一つ、大きく痙攣した。
少年の口が開かれ、人間の声帯を使った最後の声が空間に響き渡る。
- 176 名前:禁断の木の実 投稿日:2004/04/24(土) 15:42
- 刹那、
巨大化していく少年の四肢。
顎は強く獰猛な爬虫類のソレへと、
そこから禍々しく輝く牙、五指に光る爪も同様に獲物を狩るのに相応しいモノへと変容していく。
うずくまり丸まった背中から広げられる闇色の翼。
立ち上がり、果てなく遠き虚空に浮かぶ月へと放たれた咆哮は、
先程の少年のモノではない。
身の丈3mの悪魔、
地獄の大公・メフィストフェレスに睨まれ
その場から逃げ去ろうという勇気のある人間は、
彼女達の中にはいなかった。
- 177 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/24(土) 15:48
- は〜い、更新終了でっす。
いやしかし、読みずらっ・・・。
.○
l|l ノ|)
_| ̄|○ <し
途中なぞのドツキ漫才がありましたがあんま気にせんで下さい。
気まぐれですからw(テメッ
今回はバトルシーンがないようなあるようなですが、
次回はちゃんとある筈です、多分・・・。
ラストのパラグラフに謎の単語がありますが
ソレも次回説明される筈です、多分・・・。(不確定要素多過
- 178 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/24(土) 16:05
- >>155 名無飼育さん 様
悲しい佐賀・・・もとい性どころか
それが自然な世界の住人になってしまいましたからw
>変な人ばっかで笑えてしょうがないです。
ちょっと笑えねーっていうのが多いので
笑ってくれる人がいて安心しました。
ちょっとダーク過ぎ・・・。(猛省
>>156 遥 様
おぉっ!全部わかりますか!?
良かった・・・。
自分だけじゃなくて・・・。(ナニガダ
重さんはカッコよく書ければなぁ〜、と思ってたので
そう言ってもらえると嬉しいですw
変人はますます増えてますのでお楽しみにww
>>157 我道 様
ゴメンナサイマシーン・・・よしっ、もらったw(ナニヲダ
知識が豊富・・・そう言ってもらえると救われます、非常に。。。(涙
この作品ムダな知識ひけらかすために書いてるようなモンですからw(ヲイヲイ
・・・って言ってもあちこち調べる必要もあったりするんですがね。
ネタバレ・・・この程度ならもーまんたいですよw
こんなん見てもハァッ!?(美貴帝風)・・・でしょうしw
いつも皆さんレスありがとうございます。
ではまたいつだか不明な次回で!!
- 179 名前:我道 投稿日:2004/04/24(土) 16:11
- 更新お疲れ様です。
あう、あう・・・ちょっと怖かったです・・・。
最後らへん、ドキドキして、鳥肌が立ってしまいました(苦笑)
続き・・・大いに期待です!
作者様のペースで、これからもがんばってください!
- 180 名前:へぇ〜とも言えないムダ知識 投稿日:2004/04/24(土) 16:12
- 今回出てきた危ない薬、【エデン】ですが
これは「エデンの園」からとっています。(ワカルッツーノ
ま、簡単に説明すると其処にあった知恵の木の実を
神様に食うなって言われてるにも関わらず、
お頭の弱いアダムとイヴが蛇に騙され食っちゃった・・・ってヤツです。
ま、知ってますよね?
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 00:58
- いいなー自分もつっこまれたいw
次回どうなるかドキドキです。みんな無事で欲しい。
バトルシーン期待してます。がんばってください!!
- 182 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:08
- 「やぁっ!!」
体内に巣くうナノマシンの力により巨大なナイフに姿を変えた右腕はしかし、
その太く強固な腕に弾かれた。
生体兵器・新垣里沙のそんな様子を一瞥しつつ、修験者・小川麻琴は人形(ひとがた)を取り出す。
「オン・バキリユ・ソワカ!!戦鬼・護鬼!!」
放たれた人形は2mは有ろうかという一頭身の鬼に姿を変え、
それぞれの手に握られた巨大な金棒と肉斬り包丁を振りかざす。
だが、それが敵の身体に届くより早く現れた空間の亀裂が
彼等の身体をただの紙屑へと強制退化させる。
「くっ、このヤロ!!パシクルアペ(鬼火)!!」
アイヌの血を引く精霊術士・藤本美貴の右手より放たれた緋色の炎も
やはり敵に触れることなくその存在を否定される。
「なっ!?」
『フッ、愚かな・・・。炎など酸素がなければ存在し得ぬ。真空の壁を拵えればこの通りだ』
- 183 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:09
- 「はぁっ!?ま、魔獣が喋った!?」
『我を貴様等が相手にできるような小物と一緒にしてもらっては困るな・・・。
我が名はメフィストフェレス。まぁあの男が勝手に付けたのを使わせてもらっているだけだがな。
貴様等人間が【悪魔】と恐れる高位の種族だ』
重く脳に直接響いたその声は、圧倒的な重圧をあさみを含めその声を聞いた者全てに与える。
美しい満月を背後に背負ったその姿もまたしかり。
一見して西洋のドラゴンを想起させるその姿だが、上半身は――闇と同色の
肌の色を除けば――鍛え抜かれた男性のソレに近い。
天へと向け開かれた翼は、人間の遠く及ばぬ空への支配者の象徴か。
この姿を以前にも目にしたコトのある人間が、この場に3人程いた。
「ど、どうして・・・?アンタはあの時ごっつぁんに・・・。」
『ん?ほぅ、あの時のニンジャか、久しいな・・・。
だが思い上がるな。我等はそもそもこの世界の生物ではない。
新たな依り代さえあれば幾度でも甦る事ができるのだ』
「そん、な・・・。」
赤く怪しくそして威圧的に輝く瞳に見つめられ、真里の目に絶望の色が浮かんだ。
真里だけではない。
圭織となつみ、あの事件の当事者である3人は同様の恐怖と焦燥を顔に浮かべている。
- 184 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:11
- 『ははっ、頼みの綱のあの少女も今宵は姿が見えんな?
では今度こそゆっくり楽しませてもらうとするか、な!!』
メフィストの姿が掻き消える。
同時にさゆみの背後に現れる禍々しい殺気。
「さゆ!!右に跳んで!!」
「え?」
『遅い。死ね、贋物の不死を背負いし者よ』
「きゃぁ!!」
「くっ、sis mea pars!!」
恐ろしい質量を纏った腕が振るわれ、
ヴァンパイアの再生機能を持ってしてもリカバー不能な衝撃がさゆみを狙う。
だがその一撃は、さゆみの左肩から先を抉り取るに留まった。
『ほぅ、今気付いたわ。そこのネクロマンサー、この者と契約を結んでおるな?
あのタイミングで彼女の身体を操るとは・・・、ファウストにも劣らぬ力の持ち主と見受ける』
「このっ、さゆに何てことすんのよ!?」
『くく、我を前にそれだけ吼えられるとはたいしたものだ。
貴様となら契約を考えてもいいかもな』
「誰があなたなんかと・・・。」
- 185 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:12
- 『そうか?それは残念だ。では、死ね』
「なっ!?」
かざされた左手から飛び出す闇の塊。
8mという距離、先程の愛の放ったそれに比べればまだ遅いソレを
かわすのは、普段の絵里には造作も無い筈だった。
しかし絵里の身体は動かない、
その塊のもたらす絶望的恐怖に縛られて。
周囲の者もその力に一瞬息を呑み出遅れた。
れいなもその例に漏れず、
気付いた時には塊は絵里の眼前。
飛び出したが到底間に合わない。
「え、えりぃ!!」
「きゃあ!!」
- 186 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:13
- 「急々如律令!!」
「飛苦無!!」
「Khemet!!」
なつみの符を貼った真里の苦無が塊と衝突し起こった爆発。
絵里を襲う爆風と飛び散る破片は盛り上がったコンクリートの地面が象る壁により阻まれた。
左手を地面に突き立てた圭織の錬成によるものである。
悪魔の視線が彼女達へと移される。
「オイラたちだって、アレから何もして来なかったわけじゃないぞ!!」
「皆の仇、獲らせてもらうべさ!!」
「この左腕のお礼も含めてね!!」
『我が力を知りそれでも尚向かってくるか・・・。
あまり利口な選択とは思えんがな?』
「他に生き残る確率のある選択があればそっちを選ぶんだけどね・・・?」
『ハハハ、それは尤もな話だ。では失礼の無いよう、我も全力で迎え撃とう』
皮肉にも似たなつみの一言に嘲笑し、メフィストが掌を天へと翳す。
- 187 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:14
- 其処に闇が生まれるより早く、背中に吸血蝙蝠のソレと同型の翼を湛えた
さゆみが宙を舞い彼の腕を復活した左の爪で薙ぐ。
闇が生み出されるのは妨害できたが、目立ったダメージを与えられた手ごたえは皆無。
『その翼・・・、貴様真祖だな?通りで再生の早い・・・。』
「当然ですよ。私はあのヒトの実の妹ですからね」
『・・・言われてみると、イチイと言ったか?確かに同じ霊氣の匂いがするな』
「私は道重さゆみ、市井はお姉ちゃんが使ってた偽名です!!」
今一度斬撃を繰り出そうとしたがそれは許されず、重い拳で吹き飛ばされた。
さゆみの身体を受け止め、れいなが真紅の瞳で敵を睨みつける。
『貴様は半妖だな。ふふ、実に楽しませてくれる。
世界中の能力が勢揃いと言った所か?』
「っ、うるさい!!」
れいなが飛び掛る。
だがメフィストの身体が再び掻き消え、振った爪は虚しく空を切る。
背後に現れた表情の無い彼の顔は月明りの加減で嬉しそうに歪められているかのように見えた。
『この依り代は便利だな。空間を自在に操れるわ、くくく』
「しまっ・・・。」
- 188 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:15
- 殺られる、そう思ったれいなの身体を黒い鳥の翼を持った黒豹が宙へと逃がす。
その下では愛が自慢の鉄甲を悪魔の顎に打ち込み、圭織が鋭利な刃物に
形を変えた鋼の左腕を、振り上げられた右腕に突き立てている。
「我 光の精霊に命ず、一つに集いて闇を貫け! サギタ・マギカ!!!」
唱えた亜依の杖の先から放たれた光の矢がメフィストの脚に突き刺さる。
『ちっ、猫妖精と魔導士か・・・。調子に乗るなよ貴様等!!』
「「「「うわぁっ・・・!!」」」」
咆哮と共に解放された力が付近にいた4人を吹き飛ばす。
3人が与えたダメージも、形勢をどうこうできるものではなかったらしい。
- 189 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:16
- 「あ、あんなのとどう戦えってんだよ・・・。」
『方法はあります』
美貴の嘆きにあさみが答える。
「え?何?何?」
『田中ちゃんのアレなら、何とかなる筈です』
「え?あ、あたしですか?」
「な、何だ、簡単ジャン」
『そんなワケないじゃないですか!!
田中ちゃんが術を成功させるまでの約1分、
他の皆で持ち堪えなきゃいけないんですよ!?』
「うぇっ!?で、でも1分くらいならなんとか・・・。」
『・・・向こうはその気になれば半径50mを消し飛ばせるんですケド?』
「そ、そいつぁ大変だぁ・・・。」
一度上がった美貴のテンションが一気に沈み込む。
通信機を通して話を聞いていた一同も同様だ。
- 190 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:17
- 『私が指示を出してなんとか時間を稼ぎますから皆さんもなんとか・・・。』
『ふむ、何やら蚊帳の外にいる者が五月蝿くなってきたな』
メフィストの眼が赤く輝く。
通信機からあさみの声が消え、代わりに鬱陶しい雑音が全員の鼓膜を刺激する。
「あ、あさみちゃん!?くそっ、繋がんない・・・。」
口惜しげに通信機のスイッチを切り、美貴がその原因を睨みつける。
鬼をもビビらす美貴の視線を全く意に介せず、メフィストが全員の脳に呼びかける。
『さて、我にも契約というものがあるからな。
そろそろ仕事を始めさせてもらう』
「はっ!?」
声を上げた美貴には応えず、メフィストが詠唱を開始する。
同時に、あの手紙に名前を書かれていた7人の足元に魔法陣が現れる。
- 191 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:18
- 刹那、
「なっ、何こ・・・うあぁぁぁぁあああっぁぁぁ!!!!!」
「み、みきた・・・い、いやぁああああああぁあぁあ!!!」
「「「「「「「キャアァァァアアアアアァァアァアアア!!!!!」」」」」」」
「藤本さん!?」
「あやちゃん!?」
「えり!?さゆ!?」
「カオリ!?」
「安倍さん!?」
「あいぼん!?」
突然悲鳴を上げ地面に手をつき苦しみ出した7人。
尋常ではないその苦しみ方に他のメンバーが声を掛けても、その声は既に届かない。
さらに驚かされるのは、苦しむ彼女達の身体から立ち昇る黄金色の霊気。
まぎれもなくれいなのソレと同質のモノ、周囲は唯々その光景に戸惑うほか無い。
- 192 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:19
- 「あ、アンタ一体何を・・・。」
『なぁに、少し自身の心の闇に苦しんでもらっているだけだ。
其奴等に相応の器が有れば帰って来れる筈だが、無かった場合は…。』
そう答えたメフィストの顔が、いやらしく笑ったようにれいなには見えた。
「ふざけんなぁ!!」
怒りに任せて爪を振り上げ飛びかかったが、メフィストを覆う不可視の障壁に
弾かれ元の位置へと戻されてしまう。
『生憎この術を使うと動く事ができなくてな、貴様等とは後で遊んでやるからおとなしく待っていろ』
「田中、チャンスだ!!例のアレ準備しろ!」
「え?あ、はい!!りょ、了解です!」
真里の声で絶好の好機がやって来ているコトに気付き、
距離を取り瞼を閉じて詠唱を始める。
- 193 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:21
- 『おとなしく待っていろと言うのが聞こえなかったのか…?』
突如空間に空いた穴から現れた十数体の黒い狼がれいなに牙を剥く。
見た目は先日れいな達がせん滅した低級の魔獣に似ているが、そのパワーは比較にならない。
「ヤバイ、皆!!」
真里の指示で他の4人も動いた。
銃へと姿を変えた里沙の右腕から放たれた弾丸、麻琴の爆符、愛の気功波、真里の苦無、希美の口から放たれた衝撃波がそれらを辛うじて喰い止めた。
『我が眷属を喰い止めるとは・・・。
吠えるだけの事はあるというワケか?だがあと何秒持つかな?』
「くそっ、皆!!1分踏ん張れ!!」
「「「「はいなぁぁ!!」」」」
返事で気合が入ったのか、5人は気迫と共に自分の持ちうる全ての技を敵にぶつけていく。
それでも倒れる敵は数体で、残りは5人の身体に爪や牙の傷を刻み込んでいく。
周囲は彼女達の吐く荒い息の音と少女たちの悲鳴に包まれている。
れいなもその様子は聞こえているが、今の自分にできるのは1秒でも早い術の完成。
普段の何倍もの集中力でそれを成していく。
- 194 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:22
- そして、一分。
一人の犠牲者も出さずにその時は来た。
「・・・できたぁ!!皆、下がって!!!」
「「「「「よっしゃぁ!!間に合ったぁ!!!」」」」」
「ガァゥッアァ!!!」
「炎殺掌!!!」
妨害から解放され吼える狼達を、れいなが放った黄金色の炎が一瞬にして焼き尽くす。
周囲の気温が急上昇し、狼達の存在が認められた箇所には
彼等の塵一つ残っておらず、代わりに地面が半球状に溶け抉れている。
黄金色の瞳をメフィストに向け、
両爪に宿した炎で障壁ごと敵を撃ち砕くイメージを頭に浮かべる。
こうするコトで精神力により生み出される炎の威力は遥かに増すのだ。
- 195 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:23
- 『それが話に聞く【殺生力】か…。
成程確かに我を倒せるだけのパワーを感じるな。
やむを得ぬ、少々しゃくだがアレを使わせて貰うとしよう』
「何ブツブツ言ってんのよ!?喰らえ、白面金毛炎殺爪!!」
突然メフィストが術を解き、苦しんでいた7人の身体からフッ、と力が抜ける。
それを確認もせず何も無い空間から一枚のカードを取り出し、
美しい白髪を靡かせ――普通の人間の許容速度を遥かに凌ぐ――超高速で
飛び掛かってくるれいなへと翳す。
同時に驚愕の色に染められるれいなの黄金の瞳。
原因は一瞬で脳に叩き込まれた大量の情報だった。
その顔に傷愴が浮かび、瞳の色が金から紅、紅から黒へと戻っていく。
- 196 名前:悪魔 投稿日:2004/04/27(火) 18:24
- 突然獣化を解き地面に滑り込んだれいなに真里が駆け寄り声を掛けた。
「た、田中・・・?」
「う・・・、矢口・・・さん?」
「良かった、無事かぁ・・・。心配させないでよぉ、アイツを倒せんのはオマエだけなんだから」
「・・・・・ごめんなさいっ。あたし、アイツを殺せない・・・。」
「はぁ!?何言って・・・ってオイ!?」
地面に両手をつき申し訳なさそうな声を出し顔を俯かせたれいな。
白から黒へと戻った髪に隠れて顔は見えないが
彼女の頬と地面を濡らし月の光に瞬く雫が、その表情を物語っていた。
- 197 名前:今日は最後に回されました 投稿日:2004/04/27(火) 18:48
- *****
- 198 名前:Dr.紺野の解説講座 投稿日:2004/04/27(火) 18:49
- どうも、蚊帳の外の者呼ばわりされた紺野あさみです。
(のやろぉ・・・、ぶっ殺す。メフィ・・・――無理だな――・・・作者ぁ!!)
今回はこのコーナーもラストに回されました。
緊張感ないからですって、失礼ですよね?
あ、ちゃんと作者は凹にしときましたから大丈夫ですよ?(ニッコリ
今回は数が多いので箇条書きにまとめたいと思います。
オン・バキリユ・ソワカ : 金剛蔵王権現に対して使われる御真言です。
↑は修験道で本尊として用いられている、日本で生まれた神様です。
御利益は除災・除魔などがあります。
メフィストフェレス : ファウスト伝説やゲーテの戯曲、「ファウスト」に出てくる悪魔です。
ま、色々あるみたいです。
sis mea parus : ラテン語で「契約執行」を意味すると、漫画「ネg・・・もがっ・・・。(←口塞がれた
(シス・メア・パルス)
- 199 名前:Dr.紺野の解説講座 投稿日:2004/04/27(火) 18:50
- khemet : エジプト語で「黒い土」を意味し、錬金術で重要な意味を持つ言葉です。
後にchemistoryの語源になったとかならなかったとか。
飯田さんは錬成のキーとして用いてるみたいです。
真祖 : 吸血行為によるものではなく、他の動物同様××によって生まれたヴァンパイアです。
彼等は皆、蝙蝠みたいな翼を持ってますが
コレはヴァンパイアが吸血蝙蝠が霊獣化したモノであるからと考えられています。
サギタ・マギカ : 「魔法の射手」を意味し、コレもやっぱりネ・・・うぐぅっ、、、(←首締められた
げへっ、ごほっ、、ったく何するんですかこのバカ作者は・・・。
作者:・・・・・・・・・・。(←完全に沈黙。原因は・・・。(汗))
今日の解説はこの辺でぇ〜♪
- 200 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/27(火) 18:53
- ・・・はっ!?アレ?生きてる。。。
ま、まぁとにかく更新終了です。(汗
いや、今回書くの疲れた。。。
ワケわかんない単語多すぎ・・・。(カイタノオマエジャ
コンコンの解説はかなり作者の独断と偏見てきな
部分もあるのであまり信じないようにw
- 201 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/27(火) 19:03
- >>179 我道 様
素早い反応、感謝感激デス。
鳥肌・・・、よしっ来た!!(ダカラナニガ…
期待に応えられたかいささか不安ですが、
やれるだけのことはした・・・つもりですw
漫才好評みたいですが、そろそろ身が持ちません(爆
お互い暴力的キャラを持つと苦労が絶えませんなw
がんばりませう。。。
>>181 名無飼育さん 様
紺野:ツッコまれたい?いい度胸してますね。。。(ニヤソ
ではお望みどおり、上段廻し蹴りぃぃぃぃ!!!
あぁ、、紺野さん 読者さまに何てコトを・・・。
でもボクに彼女を止める手段がないので成仏してください。(ゴルァ
とりあえずみんな無事?です。今んとこは。。。(意味深
バトルシーン、頑張ったんですがどうでしょ?
期待に応えられてれば幸いです。
では、また次回!!!(←ボロボロ
- 202 名前:名も無き作者 投稿日:2004/04/27(火) 19:09
- あ、言い忘れた。。。
戦鬼と護鬼は前鬼と後鬼をもじったモンです。
二つとも修験者・役小角の使役したといわれる式神です。
後鬼はこうきとも呼ぶ人がいたのでそこんトコ詳しく知りませんが。。。
じゃ、隠しついでの蛇足でしたぁ。。。
- 203 名前:我道 投稿日:2004/04/27(火) 19:19
- まずはじめに謝っておかねば・・・。前回は更新中にレスしてしまってすいませんでした・・・。
ああ!もう!鳥肌立ちまくりです!
そして切るところが上手。先が気になって仕方ありません・・・(苦)
作者様・・・メタメタにされてますが、大丈夫ですか(w
ボロボロにされてもめげずに頑張ってください!
- 204 名前:遥 投稿日:2004/04/30(金) 20:33
- 更新お疲れ様です。
もう何ていうか…すごいの一言に尽きます。。。
とにかくカッコいいんですよ!
バトルシーン、最高ww
ってか、今んとこはって…(汗。
続き楽しみにしてます!
- 205 名前:遥 投稿日:2004/04/30(金) 20:35
- sage忘れましたね。。。
すいません(汗。
- 206 名前:shou 投稿日:2004/05/01(土) 14:02
- おもしろいっす!
自分、バトルと六期メインの話好きなんではまりました!
妖怪や幽霊もの好きですしとにかくはまりました!!
ドキドキしながら更新待ってます!
(我道様も読んでたんですか!?このレス見てむかついたらすいません)
- 207 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:13
-
凶悪犯罪者の中には、虐待により心に深い傷を負った者が大勢いる。
だがそういうモノを背負った人間のウチほとんどは凶悪犯罪者にならない。
では、どこにその「境界」はあるのだろうか・・・。
- 208 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:14
- *****
- 209 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:15
-
物心ついた時、少年はいつも怯えていた。
彼の両親はそんな彼をいつも殴った。
両親、と言っても父親は彼の血の繋がった父ではなく
少年の母親の再婚相手だった。
公務員であった彼は普段は割と温厚だったが、酒を飲む度に豹変した。
最初は少年が自分に懐かないのに腹を立ててのモノだった。
少年の胸倉を掴み、頬を平手で打ったのだ。
その行為は日毎にエスカレートし、
800℃の高温に及ぶタバコの火を少年の腕に押し付ける、
殴る、蹴るは日常茶飯事だった。
- 210 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:15
- 母親は夫に逃げられるのが怖くて何も言えず唯々少年に謝るばかりだった。
しかし数ヶ月経つ頃には罪悪感が麻痺したのか、その行為に参加するようになっていた。
少年が小学校に上がる頃になると父親は
稽古をつけてやると言って少年の身体を竹刀で何度も打ち据えた。
だがこの頃にはもう少年は痛みに慣れてしまっていた。
ただ酷く怯えていたのは
家に軟禁され、無視されるコトだった。
自分の存在を誰にも認めてもらえない恐怖。
少年はひたすら孤独に怯えていた。
ある日、少年は両親に尋ねた。
どうして自分を痛めつけるのか、と。
両親は答えた。
「お前がヨワイからだ」
- 211 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:16
- そして、その日はやって来た。
少年は小学校3年に上がって間も無く、
いつも通り真っ直ぐ帰宅して自分の寝床、押し入れの中でうずくまっていた。
知らぬ間に寝入ってしまっていたのか、
大きな物音で少年は目を覚ました。
突然押入れが開けられ、父親が酒に酔った醜い顔を見せた。
右手に竹刀を持ち、少年を引きずり出す。
あぁ、また仕事で嫌なコトがあったんだ・・・。
少年は暢気にそんなコトを思っていた。
竹刀が少年の頭に打ち降ろされる。
少年には慣れた痛みの筈だった。
だがこの日は違った。
脳の中で何かが弾けたかのような、鋭い痛み。
少年は頭を抱え、狂ったような悲鳴を上げて痛がった。
- 212 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:17
- その様子に狼狽し父親が少年に近づいた時、ソレは起こった。
父親の腕があらぬ方向に捻じ曲がり、そのままゴキグチャ、と音を立ててフローリングに落ちた。
彼が悲鳴を上げるより早く、開いた口は頭蓋骨諸共霧散する。
生温かい血液と脳漿が少年の顔に噴きつけられた。
尚も少年の頭痛は引かず、不審な物音に気付いて台所からやって来た
母親の手から滑り落ちた包丁は床と衝突することなく室内を縦横無尽に飛び回った。
夫の変わり果てた姿と顔を紅く染め苦しむ我が子の織り成す不可思議な空間に唖然とする母親。
徐々に意識を取り戻し絞り出されようとした悲鳴はその喉に突き刺さる包丁に遮られ、
戻りかけた意識も永遠に還る事のない闇へと葬り去られた。
紅い部屋に、少年の悲鳴だけが木霊する。
コレが彼の中にバケモノが生まれた瞬間だった。
- 213 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:18
- 身寄りの無い少年は養護施設に預けられた。
親戚はいるにはいたが、事件を気味悪がって預かろうとはしなかった。
だが其処は少年にとって天国だった。
皆同様に心に傷を抱えていたが、支え合って生きていた。
其処の子供達は人の痛みを知る分だけ他人に優しく温かく、
少年は孤独に怯える必要もなくなった。
噂というのは何処にいても広まってくる。
少年の起こした常識で説明のつかない事件も例外ではなかった。
転入したばかりの学校内にもその噂は広まる。
憶測が憶測を呼び、やがて誰からとも無く少年を「バケモノ」と
罵り始めやがて当然のように陰湿なイジメが始まった。
しかし、少年にそんなコトはどうでも良かった。
たとえ殴られても、剣道初段の人間の竹刀での打撃に慣れた少年は蚊ほどにも感じなかった。
たとえ靴を隠されても、軟禁状態で無視されるのに比べれば楽だった。
たとえ教室で無視されても、施設に帰れば其処には家族がいた。
施設にも噂を信じる者がいないわけではなかったが、上級生に諭され皆そんな噂は跳ね除けた。
少年が願っても願っても届かなかった愛が、其処にはあったのだ。
- 214 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:18
- そんな幸せな日々が、2年程続いた。
- 215 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:19
- 小学5年生のある日。
登校中の曇り空の下、少年はノラ猫を見つけた。
右目が潰れ、右の後ろ肢がない。
毛も半分近く抜け落ち、思わず目を背けたくなるような姿をしていた。
おそらく何者かに虐待されたのだろう。
だが少年は目を背けず「お前もバケモノなの?」と微笑み掛け、猫を抱いた。
近くのコンビニの裏でダンボール箱に入れてやり、
少ない小遣で買った魚肉ソーセージを与えてやった。
「また帰りに寄るから」と言い残し、少年は駆け足で学校へ向かった。
放課後、掃除当番を終え再び駆け足で猫の元へと急いだ。
コンビニの裏手に着き、少年は思わず身を隠した。
いつも自分を虐めるクラスメイトが5、6人、猫を置いてきた辺りに群がっていたのだ。
「どうして?」と不思議に思った直後に耳に届いた話し声に、少年は戦慄した。
「あ〜ぁ、ホントに殺しちゃった」
「う、うるさいなぁ。ちょっと軽く蹴っただけなのに・・・。コイツが弱いのがイケナイんだろ」
「でもアイツ、コレ見てどんな顔するかな?」
- 216 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:20
- 「ねぇ」
「「「「「「!?」」」」」」
少年が声を掛けると、クラスメイト達は慌てた様子で振り返った。
しかし少年の顔を確認すると、安心したように笑みを浮かべる。
なんだお前かと口を開き、足元を指差す。
そこには、口から紅い液体を垂れ流し、横たわる今朝の猫の姿があった。
息が無いのは、明白。
少年は唇を引き結び、尋ねた。
「なんで?どうしてこんなコトするの?」
「うるせぇな!!こんなバケモノどうなっても良いだろ!?」
「バケモノだって生きてるのに、頑張って生きてるのに・・・。」
「ちょ、ちょっとからかおうとしただけだろ?コイツがヨワイのが悪いんだよ!!」
「そうだ!バケモノの癖にヨワイから悪いんだ!!」
- 217 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:22
- ヨワイのが悪い・・・?
オマエがヨワイからだ・・・?
「ヨワイから」、その言葉が少年の中の何かを壊した。
少年の頭の中に、多くの疑問が混沌と湧き上がる。
よわいといじめられるのなんでどうしてなんでばけものはつよくなくちゃいけないのじゃあぼくもいき
てちゃだめなのなにもわるいことしてないのにしななきゃだめなのぼくはしにたくないしにたくないよ
そうだぼくがしぬことないじゃないかみんながしねばいいんだよそうだよみんなころしちゃえばいいん
だころせばそうだころそうころそうころすころすころすころすころすころすころすころすころすころす
ころすころすころすころすころすみんなみんなみんなぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ
- 218 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:23
- 「・・・じゃあさ、ボクがツヨかったらいいんだよね?」
「何だよ、やんのかよ?いいよ、かかってこいよ」
ニヤリ、そんな音のしそうな笑みを浮かべ、少年が掌をクラスメイトの中心人物に翳す。
同時に弾け飛ぶ、彼の右足。
まだ声変わりの途中の少年達の声高い悲鳴が上がる。
皆ちりじりになって逃げ出す。
右足が無くなり痛覚も麻痺して逃げられない彼は涙と鼻水で顔を
ぐしゃぐしゃにして必死にもがき、助けを求める。
少年はそんな彼に屈託のない笑顔を向け、彼の顔を右手で包み込む。
「や、やめ・・・。」
「ヨワイから悪いんだろ?」
呂律の回らない許しを請う声は、彼等が先程口にした言葉に遮られた。
少年の手の中で打ち上がる、真っ赤な花火。
「ばーん、、、」
くつくつと心底楽しそうに笑う少年の頬を、ポツリポツリと降り出した雨が濡らす。
- 219 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:24
- 逃げ惑う少年達は、皆自らの家へと走った。
涙と鼻水で顔を歪め、お母さんお母さんと呪文のように唱えて家路を急ぐ。
強くなった雨脚に幾度か転んで膝を擦り剥こうと、必死に走り続けた。
家の扉をガンガン叩き、インターホンを何度も押し続ける。
お母さんお母さん、と何度も泣き叫ぶ。
そうしている時間が2時間にも3時間にも感じられた。
ゆっくりとドアが開け放たれる。
一瞬安心しきったような顔を浮かべ母の胸に飛び込もうと準備した彼等が
二度とその顔が笑顔に戻ることは無い。
開け放たれたドアの向こう、時間差こそあったものの彼等の眼前に現れたのは同じ人物。
右手に彼等の母の首を抱え左手をこちらに翳す、
ずぶ濡れになった顔に屈託のない笑顔を貼り付けた、成瀬小太朗だった。
- 220 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:25
- ―――――――――
- 221 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:26
- 施設に戻り、少年は身支度を整えた。
ランドセルに好きなゲームや漫画を詰め込み、
皆の部屋から掻き集めたお菓子と財布の中身は紙袋に。
汚れた服はその場に脱ぎ捨て、上級生に貰う約束をしていたおさがりで身を包む。
最後にお気に入りのジャンパーを羽織り荷物をもって靴を履く。
門の前で一礼したその顔に貼り付くのは、満足そうなあの笑顔。
翌日、この施設の子供が全員欠席しているコトをいぶかしみ訪れた小学校の教員は、
一定期間中精神病院への通院を余儀なくされた。
通報を受け現場を訪れた警察の人間が目にしたのは、
真っ赤に染まった壁と床。
バラバラになった子供の手足や頭。
壁に張り付いたかつて人の形をしていたと思われる肉の塊。
辺りに漂う不快な腐臭。
そして、天井に紅で描かれた「みんなころす」の六文字だった。
少年は、「狩り」の楽しさを知ってしまったのだ。
- 222 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:27
- 少年はあてもなく彷徨っていた。
時折道を歩く動物――人間を含めて――を退屈しのぎに壊しながら。
生物の命を絶って至上の優越感を味わう。
これほど楽しいことは無かったのだ。
施設を飛び出してから一ヶ月、盗んできた金は底を尽き空腹を感じれば
近くの商店から物をくすねては食べていた。
事件を知ってか万引きを見つけてか警察に追われる事もあったが
見つかればとりあえず逃げ、人気のない路地に入り追跡者でゆっくり楽しんだ。
そんな生活にも飽き始め、いつものように公園で野宿を決め込むと、
一人近付いて来る影があった。
影は言った。
一緒に――――――。
少年は2つ返事でOKした。
- 223 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:28
- それからは、趣味になりつつある殺人を任務の名の元楽しむ日々。
実に、楽しかった。
でも、何故か幸せではなかった。
何週間か前、魔法のクスリを貰った。
それを服用して人を殺すと、より楽しめた。
それでも、幸せではなかった。
少年は悟った。
自分の幸せを感じる脳の部位はとうの昔に壊れてしまったんだと。
そして今、少年は思い出した。
あの日、クラスメイトを殺し殺人の楽しさを知ったあの時。
自分の頬を濡らしたのは、降り出した雨だけではなかったのだと。
あの時、少年は、笑顔で泣いていた。
- 224 名前:硝子の少年 投稿日:2004/05/03(月) 21:29
- *****
- 225 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:30
-
れいなの頭に流れ込んできたのは、小太朗の記憶。
少年は多くの命を奪った。
楽しみながら・・・。
しかし、彼が其処に行き着くまでには悲しい理由があった。
自分は、たとえ悪魔に身体を支配されていようとそんな彼を殺すコトはできない。
止めなければイケナイのは理解できる。
しかし一人の人間の人生をまざまざと見せつけられて尚ソレができるほど、
14歳の少女は強くなかった。
小太朗の記憶は全て、悲しみの青に濡れていたのだから。
- 226 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:31
- 俯く少女の身体を、軽い衝撃波が吹き飛ばす。
「田中ッ!!」
『本当に効果覿面だったようだな?
しかし、そのまま何もせずに死ぬ気か、貴様』
「・・・・っ、それでも、あたしにアイツは殺せない・・・。」
「田中・・・。」
起き上がり、変わり果てた少年の姿を睨むその目に既に先程までの力はない。
悪魔が一つ溜息を吐き、れいなに掌を翳す。
『ふぅ、つまらんな。死ね』
放たれる、闇。
れいなには避ける力も気力も残されていない。
(皆、ごめん。あたし・・・。)
目を閉じ死を受け入れかけた少女の身体にはしかし、死へと誘う衝撃が来ない。
- 227 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:32
- ゆっくりと目を開く。
放たれた闇の塊は、魔剣士・松浦亜弥の握る両刃の剣・グラジオラスに切り裂かれていた。
「松浦、さん?」
「ハァッ、ハァッ・・・、そうやって何もしないで死んじゃうの?
アイツを倒せるのは、田中ちゃんだけなんだよ?」
亜弥の視線が先の戦いでボロボロになり座り込んでしまった5人と地面に倒れる6人に移される。
その意図を知りれいなは悔しげに眉をひそめる。
「・・・そんなコト言われても、あたしには・・・。」
「・・・分かった。でも忘れないでね?自分勝手な言い分かもしれないけど、
あの子を殺さない限り、ここにいる皆アイツに殺されちゃうんだからね?
それでも無理ならもう止めない。アタシがなんとかする」
言って亜弥はメフィストへと斬りかかる。
先程まで隙を窺って動かなかった筈なのに、明らかに普段より動きが鈍い。
例の術の効果での疲弊が激しいのだろう。
他の6人はまだ気を失ったままなのだから当然だ。
- 228 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:33
- 「ブラム・ファング!!」
剣の切っ先に風の刃を纏わせメフィストの頭上から振り下ろす。
が、見えない障壁を破るコトは叶わず放たれた拳での一撃を受けるので精一杯だった。
『その身体では満足に戦えんようだな?魔剣士』
「くっ、、、
光よ 我が身に集いて 深遠なる闇を打ち払え エルメキア・フレイム!!」
亜弥の身体が赤い光に包まれその剣も同様に赤く輝く。
『む、、、』
「ハアァァァ!!!」
裂帛の気合と共に障壁を破り、勢いそのままメフィストに切り詰める。
メフィストもこれには若干驚いたが、右手に握った黒剣で苦も無く斬撃を喰い止める。
『コレは驚いた。まだ強化系呪文を唱える力が残っているとは・・・。』
「伊達に、現ハロプロNo.1なんて言われてないですよ・・・?」
『しかし長くは持つまい?すぐ楽にしてくれる!!』
「きゃあ!!」
圧倒的腕力差で亜弥を薙ぎ飛ばし、黒剣に闇を注ぎ込む。
- 229 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:34
- 『中々楽しかったが、ここまでだな?』
「ふざけんな!!」
叫んで真里が飛び掛り、強力な圧力を発する障壁にしがみ付いた。
そのやわらかい掌に紅い線がバチバチ、といくつも走る。
『おやおや、指がバラバラになってしまうぞ?』
「っ、うっさい!!諦めるくらいならそっちのがマシだ!!」
真里の言葉を聞き、座り込んでいた4人も障壁へとしがみ付く。
もちろん唯しがみ付いているのではなく、障壁に自身の【氣】を直接注いで無効化する為だ。
「あーしらも忘れてもらっちゃ困るでの・・・。」
「修験者は苦痛を我慢してナンボなもんで」
「たまには私も役に立ちたいし」
「のんはバカだから先のコト考えんの苦手なんだわ」
『・・・全員愚鈍というコトでいいのか?』
「そーみたいね」
『!?貴様・・・。』
- 230 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:35
- 響いたのは、気を失っていたはずの圭織の声。
他の5人も次々よろよろと立ち上がり、障壁へと立ち向かう。
「リーダーだけ寝てるわけにもいかないっしょ?」
「道産子舐めるんじゃねーべさ」
「相方がやってんのにウチはやらんってのはどうもねぇ・・・。」
「死ぬ前にレバ刺し5人前・・・。」
「じゃあ私はピンクの漬物」
「わたしれいな〜♪」
『貴様等そんなに死に急ぎたいか・・・?』
「ちょっと待った〜!!」
駆け込んできたのは、白衣を羽織ってぜぇはぁ肩を揺らす紺野あさみ。
そのまま駆け寄り掌底一発。
「ぜぇ、ぜぇ・・・、これでもう蚊帳の外呼ばわりはさせませんよ?」
『・・・・・・・・。』
- 231 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:35
- 「みんな・・・・。」
呆然としていたれいなの瞳に光が戻った。
それを確認して亜弥は一つれいなに微笑みかけ、自らも障壁へと向かっていく。
「どうも、まつぅらあやでぇ〜す♪」
「あはは、あやちゃんおもしろ〜い♪」
緊張感の無い笑い声を上げる13人の足元には既に真っ赤な水溜りができている。
押し付けた手も、そろそろ痺れてきている。
全員が顔を引き締めなおし、一気に集中力を高めた。
刹那、立ち昇る蒸気を残して消え去った障壁。
メフィストの声が苛立ちに満ちる。
『ちぃっ、もういい、貴様等全員消し飛ばす!!』
- 232 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:37
- 「待て!!」
全員の視線が声の主に集まる。
白い髪を夜風に靡かせたれいなが、瞳に黄金色の炎を燻らせて佇む。
『貴様この依り代は殺せないのではなかったか?』
「・・・あたしはもう、逃げない!!」
仲間が攻撃範囲から遠ざかるのを確認し、右手から黄金の炎を放つ。
『おもしろい!!勝負だ!!!』
黒剣の切っ先から放たれた闇が、光と衝突した。
その余波が、れいなの白い肌に小さな傷をいくつも刻む。
それでも怯まず、さらに集中力を高める。
絶対的な力の差に、他の仲間は成す術無くただ見守るしかない。
しかしれいなにはそれで十分だった。
- 233 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:38
- 信頼できる仲間。
その存在だけで自分は何処までも強くなれる。
そんな気がするからだ。
しかし・・・、
『どうした?そんなものか?』
「なっ!?」
そこからは全てがスローモーション。
れいなの腕に急激に加わる圧力。
闇に飲み込まれる、光。
それが意味する、光の者の死。
響く悪魔の高笑い。
怒った仲間が飛び掛る。
振り向きざまに放たれた闇。
- 234 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:38
- それが届く寸前、降り立ったのは黄金の光。
光に飲み込まれる、闇。
驚愕する悪魔の心臓を、青く輝く刃が貫く。
少年のソレへと戻っていく肢体。
裸体を晒し月に照らされ静かに眠る少年の顔は、安堵に緩められていた。
薄れ行く意識の中、細く美しくそれでいて力強い腕に抱かれてれいなが見た優しい微笑み。
一年捜してその影すら掴めなかった筈の彼女。
髪は以前に見たときより幾分短くなっていたが間違いない。
- 235 名前:立ち向かうという事 投稿日:2004/05/03(月) 21:39
- 一撃で強大な敵を葬り去った黄金色に輝く霊氣を纏った黒衣の女性。
誰よりも強く 誰よりも高い 人の手で倒す事の叶わぬ 絶対の存在
「神」と称えられるに相応しい圧倒的存在感。
いつかの真里の言葉が意識をよぎる。
―――金色の霊氣なんて、まるでごっつぁんじゃん―――
無神流剣士・【G】こと「後藤真希」は、
青く輝く満月を背に、威風堂々悠然とこの場へ降り立った。
- 236 名前:結局最後 投稿日:2004/05/03(月) 21:40
- *****
- 237 名前:コンコンの泉 投稿日:2004/05/03(月) 21:41
- はい、ま〜た最後に持ってこられてしまった私、紺野のコーナーです。
作者:もういっそ最後にしちゃいましょうよ。HPWみたいn・・・あぴろぷぁっ!?(←カカト落とし
何ですかHPWって・・・、こっちの世界に無いネタ持ち出すのは止めてくださいよ、もう。。。
では、VTRぅ、おじゃま〜♪(←ノリノリ
虐待 : 社会問題です。こんな風になるのが嫌ならやめときましょう。
グラジオラス:松浦さんの装備している両刃の剣です。刃渡り1mってトコで、
松浦さんが扱うにはかなり大型ですね。柄の部分に竜の飾りがしてあります。
ブラム・ファング(風牙斬): あややの術です。風の刃を剣に纏わせて切れ味を倍加させます。
元ネタはスレイy・・・ふがっ・・・。(作者:ば、ばらすなってばぁ(汗
エルメキア・フレイム(烈閃咆):師匠(矢口さん風)の術です。元ネタでは相手の精神に直に攻撃
する技らしいですけどココでは【氣】のエネルギーをさらに
強化するモノみたいですね。
少ないですけどこの辺で、ぐっちゃ〜♪(←最早違和感なし
- 238 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/03(月) 21:45
- 更新終了でぇす。
いや、ちょっと痛い話があったりなかったりで。。。
苦手な方ごめんなさいね?
作者は好きなんです。(怖
そろそろ物語の核心に触れていければと考えていますが、
できるかどうかはまだ不明ですw
連休中にもう一回更新できたらいいんですが、
どうだろう・・・。(弱気
- 239 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/03(月) 21:58
- >>203 我道 様
更新中っていうか、レスだけ見たら明らかに終わってますから無理もないです。
むしろあんなに素早く反応してもらって嬉しかったので気にしないでw
メタメタ・・・そろそろ入院が必要です(爆
今回は別の意味で鳥肌たったかもしれないですが大丈夫でしょうか?
ホントいつもありがとうございますデス。。。
>>204 遥 様
最高!?・・・あ、ありがとうございます。(滝汗
そんな風に言ってもらえると作者としても最高ですww
これからもっとカッコよくできるよう精進します。
確かにお宅の重さんとは違いますねw
お互い頑張りまっしょい!!
てか気を使わせてしまってすんません。
>>206 shou 様
初めまして、そしてレスありがとうございます。
おもしろいですか?嬉しいデスw
これから妖怪とか幽霊とかの話も出して行きたいので
楽しみについて来てもらえると多少作者がやる気になります。(タショウテ
- 240 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/03(月) 22:01
- そういや前回コンコンから説明のあった
「sis mea pars」ですが、
ねg・・・資料をよく読んだら「汝は我が一部」の意味だそうです。
こっちの方がしっくりくるのでこっちを採用ってコトでお願いします。
- 241 名前:我道 投稿日:2004/05/04(火) 00:12
- 大量更新お疲れ様です(ペコリ)
い、痛ひ・・・でも、引き込まれるこの面白さ・・・。
作者様、一言言わせてもらわすと・・・さいこうーです!!!
最後のコーナー緊張感取れて、いいかもですね(笑)
- 242 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:05
- 「れいな?」
「・・・ん?何、えり」
「いや、大丈夫? なんか気が抜けたって顔してるよ?」
「あぁ、はは・・・。大丈夫だって。ちょっと色々頭に詰め込みすぎたせいだよ。
だいたいえりだってそうでしょ?」
「ま、まぁそうだけどさ・・・。」
「う゛、ん・・・。」
「えりも早く寝なって。さゆ起きちゃうよ」
「・・・うん、じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
- 243 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:06
- ココはれいなの部屋。
1人用のベッドに3人で寝るのは初めてではないけど、やはり寝苦しい。
だが、れいなの眠れない原因は他にもあった。
あの後、力を使い果たし意識を失ったれいなは3日間眠り続けた。
目を覚まし連れて行かれた会議室。
そこで彼女を待っていたのはあの人と、
彼女の口から語られた真実。
そして迫られた、選択。
れいなは迷っていた。
いや、頭の中では自分がどうすべきかの判断はついていた。
それでも尚、ここから一歩を踏み出す勇気が出せずにいたのだ。
- 244 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:06
- *****
- 245 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:07
- その場にいる全員、彼女の突然の行動に戸惑いを隠せないでいた。
そしてそれはれいなも同じ。
れいなの目の前では「神」と称えられる彼女が床に両手を突き、
頭を床に減り込まん勢いで深々と下げ見事と言う他無い土下座を決めているのだから当然だ。
その気になればもっと礼儀にかなった美しい土下座も披露できる筈なのに
それをしない彼女からは、深い陳謝の念が伝わってきた。
「あ、あの…、後藤さん?」
「ごめんなさい、あなたのお父さんとお母さんを手にかけたのはアタシです」
「!?」
発せられた言葉は許しを請うようなモノではなく、ただ自分の罪を認めそれを
心の底から申し訳なく思っている、というように感じられた。
- 246 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:07
- 「ど、どういうコトだよごっちん!?」
れいなが口を開くより早く、親友であるひとみが叫んだ。
それを本来取り乱す側の立場である筈のれいなが制する。
「待ってください、吉澤さん。後藤さん、話してくれますよね?」
ゆっくりと顔を上げた彼女、後藤真希はれいなの反応に一瞬意外そうな顔をしたが、れいなの瞳を見て顔を引き締め直し静かに頷き、語り始めた。
- 247 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:08
- *****
- 248 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:09
- 【モーニング】を抜けて間もないその頃、真希はれいなの監視を始めた。
れいなはある理由から一つの組織にマークされていたのだ。
監視と言っても、術を使って遠くから様子を見たり、
彼女の身につけているモノにその危機を真希に知らせ
そこまでの空間移動を可能にする符を隠し貼っておく程度のものだった。
あまり派手にやっては敵に気付かれ危険と判断した為だ。
だが敵も馬鹿ではなかった。
監視に気付いたらしく、どうやってか真希を何年も続く連続殺人の犯人にしたて上げたのだ。
いち早くソレに気付いた真希は、容疑の公の発表を前に姿を隠した。
れいなの監視は続行し、敵が動くのを待った。
- 249 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:10
- そして、あの日。
向けられた2人の刺客は、真希に対しての者だった。
刺客で真希を足止めしてその間にれいなを・・・、という手筈に違いない。
真希もこの事態は当然のように想定していた。
その2人の刺客が誰なのかまで・・・。
「久しぶりだな、ごとー」
「そうだね、いちーちゃん。それに福田さんも・・・。今日は何のご用ですか?」
「しらじらしい発言は無用でしょ。【G】?」
「そうそう、アスカの言う通り。じゃ、早いとこおっぱじめようか?」
「時間稼ぎ担当がそんなんでイイの?」
「なんだ、しっかりわかってるじゃない?私達も暇じゃないのよ。さ、始めましょ」
日が暮れて間も無く。
れいなの通う中学校の屋上。
戦闘を生業とする3人が臨戦態勢に入る。
彼女達の放つ裂帛の霊氣が見えぬ衝突を始め、
それにより生じた風が3人の前髪を揺らしている。
- 250 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:10
- れいなとその両親の元には「式神」を放っておいた。
しばらくの時間稼ぎにはなる筈。
後はこの2人を手早く戦闘不能にすればとりあえずはOK。
だがそう簡単に行く相手ではないコトは、身に染みてよく知っている。
そもそも直接れいなを守れば良いものをそうしなかった、
いやできなかった原因も彼女達の強さにあるのだ。
――――誰かを気遣いながら闘える相手じゃないよね〜、こりゃ・・・。
叩き付けられる霊氣を肌で感じ、改めてそれを認識した。
腰に帯びた【蓮華】の柄を握り、いつでも抜刀できるよう重心を落とす。
「まずは小手調べってトコで・・・。はっ!!」
かつての【モーニング】の一員、福田明日香の手から数本の苦無が放たれる。
それを肩の動きで敏感に察知してすかさず抜刀。
愛刀に自身の【氣】を注ぎ、苦無にちゃっかり貼られた爆符ごと斬り刻む。
- 251 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:11
- ちぱちぱ、と何とも軽い調子の拍手が響く。
「お見事。でも次はどうかな・・・?」
「次って・・・、もしかしてアレですか?」
上空を指差し、爽やかな微笑を見せる先輩に尋ねる。
悪魔の翼を生やした真祖のヴァンパイア・市井紗耶香が
ありえない速度で落下してくるのが視認できた。
「いっくぞぃ、ごとー!!」
その拳が自分の頭蓋に触れる寸前、身を翻してあっさりかわした。
当然、紗耶香の拳はコンクリートの地面に突き刺さる。
「・・・猪突猛進ってヤツ?学習しないよね、いちーちゃんって・・・。」
「そーゆームツカシイ言葉を使うなって昔から言ってんだろ?
ていうかこの腕抜くの手伝え」
右頬に殺気を感じ、地面と格闘しているバケモンを引っこ抜いて盾にする。
バケモンの腹部によ〜く研がれた刃が5、6枚食い込んだ。
「これでいいの?」
「あぁ〜、わざわざどうも・・・。オイ、アスカぁ!!オマエこーなんのわかっててわざと投げたろ?」
「はて、なんのことだか?ただ戦闘中に愉快にオシャベリしてるから」
ブツブツ言いながら、パーカーに刺さった手裏剣を抜いていく。
白い布地に紅い染みこそ残っているものの、抜いた後には当然のようにかすり傷一つ無い。
- 252 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:12
- 真希の方へ振り向きざま、笑顔で後ろ廻し蹴り。
真希も笑顔でそれに応え、整った顔を潰しにくるかかとを足首から斬り落とす。
ゴトリ、と音を立てて落ちるお気に入りのスニーカーを見て紗耶香が悲鳴を上げる。
「あぁっ、何てことすんだよ!?白いのに血ぃついちゃったじゃんか!!」
「・・・ソコ?」
確実に常識からズレたツッコミに半ば呆れつつ、心臓目掛けて突きを繰り出す。
器用にも左足のみのバク転でそれをかわし、紗耶香は明日香の元へと戻る。
右脚から噴き出す血を目潰しに使いながら・・・。
「げっ、手に血ぃついちゃったよ・・・。」
「へへ、おかえしだよぉーだ」
「っの・・・、飛空斬!!」
「うわっ、とぉ」
飛んできた【氣】の刃をしゃがんでかわし、何時の間にやら復活した右足に
力を込めて真希との距離をもう一度詰める。
ヒトの反応速度の限界を大きく上回る動きで頚動脈を狙う。
真希も互角の動きで首に迫る爪を刀身を使って受ける。
刀を返して爪を弾くと同時に紗耶香の懐に飛び込み、柄尻で顎を突き上げた。
- 253 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:13
- 紗耶香は何とか態勢を整えて距離を取ったが、脚に力が入らずに座り込んでしまう。
「れ?力入んねぇし・・・。」
「ヴァンパイアっつっても身体の仕組みは同じだからね。
アゴを打たれりゃ脳震盪も起こすでしょ?」
「へん、そんくらい根性で・・・ってのぅあッ!?」
突然地面から現れた巨大な石の腕に身体を掴まれ身動きが取れなくなった。
いきなり空に行った視線を戻すと真希が地面に両手を突き、してやったりな笑みを浮かべている。
よく見るとその両手は幾何学模様の描かれた紙の上に乗せられている。
「げっ、オマエ錬金術は反則だろ?だいたいチミの専門じゃねぇじゃん」
「引っかかる方が悪い」
「【G】に同意」
後ろから見方が敵に同意する声。
「くのやろ、こんなコンクリくらい・・・。」
「ちなみにごとーの【氣】ぃ注いであるからそう簡単には壊せないよ〜」
- 254 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:15
- 「ぐぬ・・・。仕方ない、アスカさぁん!!助けてください!!!」
あっさりと諦めて見方に助けを請う情けない声に、明日香が溜息を吐く。
「あんた、少しはプライドとかないわけ?」
「Of course.」
「こんな時に流暢な英語を使うな。アンタ邪魔くさいからしばらくそうしてなさい」
「Yes,sir!!」
ちなみに紗耶香、アメリカに留学まがいなコトをしていた時期がある。
プライドもその頃に捨てたとか捨てなかったとか・・・、詳細は本人しか知らない。
- 255 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:15
- なんで私がこんなのと・・・呟きながらもう一つ溜息を吐き、
明日香が右手を真希へと翳す。
刹那、青白く輝く一億ボルトの電流が轟き、真希の身体を襲った。
真希の身体が前のめりに傾ぎ、そのままドサ、と倒れこむ。
その様子を見て、額に人差し指を押し付けた明日香が本日三度目の溜息をつく。
「そういう演技は間に合ってるから・・・。」
その言葉を聞き、真希がムクリと起き上がりケロッ、とした表情で舌を出す。
「ありゃ、バレました?」
「バレバレ」
「でもスゴイですねぇ。一応障壁張ってたのに、せっかく用意した絶縁スーツもこの有様・・・。
流石は雷魔忍軍頭首ってトコですか・・・?」
真希のあらかじめ準備していた絶縁性の黒いコートは、
明日香の能力の起こしたジュール熱で溶けてしまっている。
- 256 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:17
- 「元・頭首よ。間違えないで」
そう言った明日香は口元に笑みを浮かべていたが、眼は笑っていない。
「でわそろそろ時間もキツくなって来たし、さっさと決着つけますか?」
「そう簡単に行くかしらね?」
「アタシにはコレがあるんで、ね!!」
コート同様溶けかけてしまった絶縁性の穴開きグラブを脱ぎ捨てた
真希の身体から、黄金色の光が立ち昇る。
【蓮華】を鞘に収め、抜刀術の用意をする。
その様子を見ても、明日香の笑顔は消えない。
「あら奇遇ね?そういうのなら私も持ってるよ」
「なっ!?」
明日香の身体からも真希と同種の黄金の光が昇り始める。
ぶっちゃけこの時、れいなの狙われる本当の理由を知らなかった真希は
その光景に戸惑うほか無い。
- 257 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:17
- そんな真希の表情を見て満足そうに微笑み、
明日香が両手を組んで印を結ぶ。
「申・酉・子・亥・辰!!
出でよ雷獣・「鬼龍」、口寄せの術!!」
明日香の身体を閃光が包み、
そこから巨大な黄金色に輝く雷の龍が飛び出す。
バチバチ、と弾ける稲妻を纏ったソレは
シェン○ンよろしく宙を踊り、その力を誇示してくる。
やがてソレも飽きたのか、こちらを眼を象った部分で睨みつけ襲い掛かって来た。
乱れかけた心を静め、その攻撃を避ける。
「くっ、龍牙斬!!」
真希も負けじと黄金色の龍を象った一撃を繰り出すが、
如何せん相手は実体の無い雷、バラバラになってもまた復活してしまう。
- 258 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:18
- ソレを見て一つ舌を打ち、真希が思巡を開始する。
――――あっちゃ〜、計算ミス・・・。
あんなのとやり合って無事で済む保証ないしな〜、、、
う〜ん、ここはいっそのコト・・・。
「どうしたの?【G】ともあろう者が自分と同じ力を持つ者が現れて臆した?」
「あはは、まぁそう取ってもらってもいいですよ。
とりあえずこの場は逃げさしてもらいますから」
「・・・できるとでも?」
「そうだぞ、ごとぅ〜。てかせめてコレ外してから行ってくれ〜」
「「黙れ」」
「・・・ハイ」
軽く凹んでしまった紗耶香は放置して、真希が明日香に符を投げつける。
ソレは明日香に届くより早く発動し、煙幕を発生させる。
「ちっ、逃がさないよ。
子・亥・巳・午 風牙破界の術!!」
明日香を中心に発生した竜巻が煙幕を吹き飛ばす。
- 259 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:19
- 気配を辿り、視線を屋上の内でも一番高い場所に移す。
「逃げるんじゃなかったの?」
「逃げますよ〜。でもまぁその前に、これな〜んだ?」
「貯水タンク・・・?それが・・・!?、あなたまさか・・・!?」
「へへぇ〜、正解」
ニヤリ、と笑い真希は自身が座っている貯水タンクに刀を突き刺す。
真希の【氣】を注がれ支配下に置かれた水が勢いよく屋上に降り注ぐ。
空気中の水分を符を使って集め足しておいたのでその量はハンパではない。
当然、雷獣にもソレは派手にかかる。
衣服や身体をこれまた派手に濡らされた明日香と紗耶香は
電気の化け物と純度100%に及ばぬ水という伝導体で繋がれ、
その電撃をモロに浴びる羽目になった。
電撃に対して耐性があるとは言え、自身の【殺生力】で普段の数倍の力を放つソレを
まともに喰らっては流石に意識を繋ぎとめるのがやっとだ。
ちなみにそんな耐性すらない紗耶香はこんがり丸焼け、おいしそう。
- 260 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:21
- 「くっ、、、流石ね?」
「買い被り過ぎですよ。まぁごとーは敵にとどめを刺す勇気も無い臆病者ですし」
「はっ、今のは一度使うと簡単には引っ込められない口寄せの術の特性を
把握してなきゃできない作戦・・・、買い被りなんかじゃない筈だけど?」
「さて、なんのことやら?じゃまぁ、行かしてもらいますわ」
一つ微笑み、真希は宙を蹴る。
- 261 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:21
- そのままれいなの家の方へと消えた彼女の姿を見送り、溜息を一つ。
「そんなに溜息ばっかつくと幸せ逃げるよ〜?」
「元々そんなモン持ってないわよ」
「あはは、違いねぇ」
痺れる手足を無視して無理矢理立ち上がる。
「それにしても呆れた回復力よね、真祖ってのは。
咄嗟に電圧下げたとは言え私の雷獣の一撃喰らっといて」
「いや実際まだ結構痺れてんだけどね・・・。
でも、ごとーにはちょっと悪いコトしたかね?」
「アンタ相変わらずあの子に甘いんじゃない?
ホントに可哀相なのはあのれいなって子の方でしょ」
「あぁ、そりゃそうか」
ふと、明日香が空を仰ぎ見る。
普段見せないどこか儚げなその横顔が心配になったのか、紗耶香が声を掛ける。
「どうかした?」
「ん〜、いや、月が綺麗だなって・・・。」
「へぇ〜、意外。まだそんなセンチな部分残ってたんだ?」
「・・・そのまま置いていくよ」
「だぁ〜!!嘘だよ、冗談!!!」
喚く紗耶香の身体は、まだ石の腕にがっちりロックされたままだった。
- 262 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:22
- ―――――――――――
- 263 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:23
- その光景を見て、真希は己の甘さを恨んだ。
敵を舐めすぎた。
向こうは、こちらが監視するより先に動いていたのだ。
調べた資料を頭の中で呼び起こす。
数年前、れいなの父親は自動車事故で大怪我を負っていた。
その際輸血の必要が出て、母親も処置室に入ったらしい。
おそらくはその時。
2人の身体に植え付けられたのだろう。
ナノマシン―――ナノレベルの超微細な大きさしか持たない人工知能を内蔵した機械だ。
その開発は実現不能とされていたが、
紺野幻十朗の息子、紺野浩志の手で実現された。
細かい説明は省くがSNT理論の導入で開発の成功にこぎつけたらしい。
コレを利用すれば不治の病の治療、限りなく本物に近い義手や義足の発明
など、人類の生活が豊かになるのは間違いないがその構造ゆえ公にできない。
そしてこの機械の発明により、
神をも超える恐ろしい所業も理論的には可能になった。
- 264 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:24
- その悪夢が今、真希の眼前に現れてしまっている。
身の丈は2mはあるだろうか、
太く破壊力の塊とも呼べそうな大型肉食獣のソレに似た手足の先には、
明らかに皮膚が硬化して出来たモノとは思えぬ銀色に輝く刃のような爪。
それを振り回して部屋中を斬り刻んでいく2体は
最早どちらが父親でどちらが母親なのかの判断がつかない。
どおりで「式神」が発動しない筈だ。
守るべき2人がこの有様では、発動のしようもない。
不自然な青い毛並みを靡かせ、2体が背後に現れた獲物に気付いた。
どうやら破壊衝動と食欲だけが彼等を突き動かしているらしい。
どこかで聞いたような話だ。
- 265 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:25
- ナノマシンの力で主成分を鉄へと変えた禍々しい爪が真希の眼前に迫る。
突き、という攻撃方法はこの一体がボクシング経験者であるれいなの父親であると気付かせた。
スッ、と首を左にずらしてソレをかわし、目標までの障害となるその右腕を斬り払う。
懐に飛び込み、眉間に刃を突き立ててすぐに引き抜く。
返り血を浴びるより早く身を翻し、もう一体を同じように貫く。
倒れ行く二体は、空中でお互いを支えあうかのように折り重なって倒れた。
残酷なようだが、こうでもしないとナノマシンの回復力のせいで仕留めきれないのだ。
現に脳が活動を停止した今も、父親の手首は回復を試みる泡を出している。
斬り離された父親の右腕が窓を突き破り、派手な音を立てた。
直後、少女が飛び込んでくる。
- 266 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:26
- 「お母、さん・・・?」
その呟きが、真希の心をどれほど締め付けたか、少女は知る由もない。
「あの、あなたは・・・?」
尋ねかけた少女の視線が、一点で固まる。
「えっ・・・ちょっ・・・何・・・?」
「なんでこんなトコに寝て・・・、ちょっと起きてよ、二人とも」
「起きてよ!お父さん!・・・お母さん!!」
「嘘!やだよ!!・・・なんで!?起きてよ!!起きてってばぁ・・・!」
「なんで・・・?・・・!!・・・。」
少女の視線に気付き、自分の手元に視線を移す。
切り裂かれたカーテンの隙間から差す月光に照らされたソレは、
今は普段の半分の輝きも見せない。
人間の生命活動を支えるこの液体の粘度というのは、想像以上にスゴイらしい。
アレだけの速度で動かしたのに、しっかりとしがみついてきた。
そこに殺される者の怨念を見た気がして、17歳の真希は一瞬戦慄する。
この刀に銘を付けた時込めた願い。
ソレに全く逆らうようなこの行為、何度体験しても慣れられるものではない。
- 267 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:27
- 「アンタが・・・。」
少女の瞳が、黄金色に染まる。
立ち昇る真希のソレと同じ霊氣。
不思議と、今度は驚かなかった。
少女の髪が白くなり、そこから犬型の耳が覗く。
不謹慎にも、可愛いな、と思った。
犬歯と爪が、彼女の自分への殺意を表すかのように鋭くなる。
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
少女が飛び掛ってくる。
一瞬、このまま切り裂かれてしまおうかと思った。
だがすぐに、自分が本当にすべきコトが頭を過ぎる。
組織を、【\】をこのままのさばらせておくわけにはいかない。
こういう時、良く回る頭というのは正しい判断をしてしまう分だけ楽ができない。
「・・・ごめんっ・・・。」
少女の背後へ飛び上がり、
血に濡れた刀の峰を少女の延髄に食い込ませる。
少女の容姿が部屋に飛び込んできた時のソレに戻る。
- 268 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:28
- 血振りをして刀身を手近にあったティッシュで紅くもっとも粘度の高い部分を拭い、
その輝きをしばし見つめていた。
その輝きの光源が気になりふと、窓の外を見上げてみる。
美しい月の輝きは自分を励ましているようにも、責め立てているようにも見えた。
- 269 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:28
- *****
- 270 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:29
- 「・・・・そうだったんですか」
「・・・うん。ごめん、アタシがもう少し調べを深くしていたらこんなコトには・・・。」
俯いた真希の表情は、泣いているかのように歪められている。
それでも涙を流す気配は無い。
こういう場で涙を流すのがいかに卑怯な行為かをよく理解しているせいだ。
「ごっちん・・・。」
親友が、心配そうな声を上げる。
他のメンバーも皆、一様に悲痛な表情を浮かべている。
彼女をよく知らない絵里やさゆみも同様だ。
そんな中れいなは一人、彼女を静かに真っ直ぐ見つめている。
誰かがそうしていたように溜息を一つ吐き、
ツカツカと未だひざまづいている真希に歩み寄る。
しゃがみこんで視線を真希に合わせ、ニコッ、と笑う。
?を浮かべた真希の頬を、渾身の平手で打ち据えた。
バチン、という派手な音が響き、その場にいる全員が凍りつき、真希が覚悟を決める。
- 271 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:30
- ――――修羅場・・・?
そんな言葉が皆の頭を過ぎったが、れいなの口から出たのは意外な言葉。
「とりあえず、それで勘弁してあげます」
「はぃっ!?そんな、アタシはあなたの・・・。」
「別にこの場であなたを斬り刻んだって、何か変わるんですか?
唯あたしが後味の悪い思いするだけですよ」
「いや、そりゃそうだろうけど・・・。」
「今の一発はそんな重要なコトを今まで告げずに姿くらましてたコトに
対するもんですよ?これからは定期的に連絡よこして下さい」
「は、はい・・・。」
時として、憎しみは生きる為の原動力となり得る。
それはあまり良い生き方ではないかもしれないけど、
とりあえず自分への復讐の為にでも生きててくれればここの環境が変えてくれる。
そう思ってここに預けて姿をくらませたのだが、
今の彼女を見ると取り越し苦労だったのかもしれない。
- 272 名前:罪 投稿日:2004/05/05(水) 03:31
- 「それよりあたしが聞きたいのは、あの〜、せっそうなんとかって・・・。」
「【殺生力】?」
「そう、それです」
「そうだね、ごとーも話そうと思ってたんだ」
例の7人に視線を送る。
彼女達の顔が強張るのがわかった。
おそらくあの時見た悪夢を思い出したのだろう。
「その前に・・・。」
「んぁ?」
「椅子に座ってもらえます?先輩を見下ろしながら会話ってのはどうも・・・。」
「あっ・・・。」
真希はようやく、自分の足が痺れてきているのに気付いた。
- 273 名前:正解は 投稿日:2004/05/05(水) 03:32
- *****
- 274 名前:【G】スポット 投稿日:2004/05/05(水) 03:33
- んぁ、ども、ごとーです。
何かよくわかんないけど今回から紺野の代わりにこのコーナーやってくれって言われたので
メンドいけどまぁとりあえずやります。
式神:えぇっと、まぁ、基本的にはなっちみたいな陰陽師が使うやつなんだけど、
まぁ遣い魔みたいな?そんな感じ。
ごとーの?何かイグアナっぽいのとか、ミニチュアダックスみたいのとかだけど?
猪突猛進:イノシシみたいに真っ直ぐ突っ込んじゃうコト。
別にヘタレで女ったらしって意味じゃないよ?
脳震盪:アゴを打つと脳みそ揺らされてあの時のいちーちゃんみたくなっちゃうんだ。
喧嘩でやるならグーよりパーの方がオススメ。
幾何学模様の描いた紙:あぁ、あの模様?あれ錬成陣って言って、まぁ魔法陣の錬金術版?
錬金術師は仕組みとかまでよく理解して術使うから
魔法陣ほど複雑じゃないけどね。
口寄せ:一種の召喚かな?魔界と契約して、自分の霊氣を代償にして呼び出すんだ。
あんな風に簡単なヤツだとちゃんとした実体持ってないみたい。
- 275 名前:【G】スポット 投稿日:2004/05/05(水) 03:34
- ・・・疲れた。もういい?
作者:え?できればもうちょい・・・。
えぇ〜、あれ?電話だ。もしもし?あれ、紺野?・・・うん、わかった、りょーかい。
作者:紺野さん何て?
「もし疲れてもうやめたいようでしたら作者斬れば万事完璧です」だって。
作者:へ?
じゃ、そういうわけだから・・・。
作者:いや、何抜いてんですか?シャキィンて、え?その構えはがとt・・・、
あのちょっ、、、まっ、、、ぎぃやあぁっぁあああああああああああああ!!!!!
次号は作者がにゅ・・・取材の為お休みします。(嘘)
- 276 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/05(水) 03:38
- 連休中ラスト更新終了です。
何でこんな時間にやってるんやろワテ・・・。
例のコーナー、若干やる気なさげですけど気にしないで下さい。
次回は未定ッスね。
疲れたし(コラ
ま、マターリついてきてくださいな。
- 277 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/05(水) 03:41
- >>241 我道 様
毎度毎度ありがとうございます、ホントに。
引き込まれるとは、また嬉しいお言葉を・・・。
しかもさいこーなんて、皆さん誉めすぎw
最後のコーナー、いよいよ作者の命に関わる
由々しき事態に。。。
某映画のCMじゃないですが、
助けてくださぁい!!
- 278 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/05(水) 03:45
- ネタが無いので作者紹介。
作者は東京生まれの横浜育ちな都会ッ子です。
その為なまりとかさっぱりわかんねーです。
田中さんやあいちゅんの出してるなまりは深く読まないで。。。
そんだけです。
また次回!!!!!ノ
- 279 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/05(水) 08:16
- 早朝更新お疲れ様です。
話のテンポが小気味良くていい感じっすね。
引き込まれます。これからも頑張ってください。
加えて。
むしろこんないちーさんを見たかった。
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/05(水) 19:43
- 更新お疲れさまです。
ごっちん潔いですね。土下座してもかっけーですよ!!れいなも冷静に話を聞けるようになったんですね(しみじみ
市井さんのキャラも一番好きな感じでこれからどうなるか楽しみです。
これからも頑張ってください。
- 281 名前:遥 投稿日:2004/05/05(水) 20:30
- 更新お疲れ様です。
もう、本当にカッコいいです!何でこんなカッコよく書けるんですか!
ごとーさんは本当、最高。。。
カッコよすぎです。尊敬しますよ。
いちーさんのキャラが、めっちゃいい感じなんですけど……。
かなり自分好みでw
続き楽しみです。頑張ってください。
- 282 名前:我道 投稿日:2004/05/05(水) 23:25
- 不肖ながらこの我道、また叫ばせていただきます(ペコリ)
すぅ〜・・・素晴らしすぎるぞォォ!!
ふう・・・失礼しました。
一井さんの強さ、基、キャラがはまりました(苦笑)
あと、私も後藤さんと同じ事思ってたり・・・(w
田中さん・・・カワイイ・・・なんて・・・すいません・・・。
- 283 名前:shou 投稿日:2004/05/06(木) 17:07
- かなりの更新お疲れ様です。
市井はかなりなさけないっすね(笑
後藤の強さよりそっちの方が気になりました。
田中も大人だけどそれが痛い・・・
とにもかくにも素晴らしいっす!
次の更新首長くして待ってます!
- 284 名前:rina 投稿日:2004/05/07(金) 08:27
- 初めて読みました。
全体的にカッコイイです!
オイラのめちゃめちゃ好みです。
ってか後藤さん・・・カッコ良過ぎですvv
さりげな〜く美味しいとこもっていきましたね(w
今後も期待してます!!
- 285 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:48
- むかしむかし、あるところに九本の尻尾を持った狐の妖怪がいました。
その妖怪はとっても悪いヤツで、
美女・玉藻前に化けて鳥羽法皇を惑わし、病気にしてしまいました。
玉藻前の正体に気付いた陰陽師・安倍泰成は彼女を倒そうと試みます。
しかし彼女の力は強力で、簡単には行きません。
困った彼は世界を回って九人の仲間を集め、ついに九尾の狐を倒します。
しかし、彼女の肉体が死んでもその魂は消えず
このままではその魂がまた悪事を働きかねません。
そこで彼は、九人の仲間の身体にその魂を封じ込めました。
こうして京の都に平和が戻り、皆幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
- 286 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:49
- *****
- 287 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:50
- 「・・・なんですかその盛り上がりの部分を一気に省いた面白みの無い昔話は?
だいたい『あるところに』で始めといて最後は当然のように『京の都に』って・・・。」
「んぁ、、、結構キツイことゆーね…。せっかくコムズカシイ古文書をわかりやすくまとめたのに…。」
「古文書?」
「うん、コレ」
懐をゴソゴソやると、いかにもという感じの巻物を取り出す。
固く縛られた紐を解き両手いっぱいに広げると、
所々虫に食われてはいるが内容は無事らしい文面が現れた。
せっかく内容が無事なのだが、生きたドジョウを墨汁に漬けて紙の上を暴れさしたような字
ばかりで回転は意外と速いが一般知識が中学生以下のお嬢様方の頭脳では理解不能。
「・・・ごめんなさい。後藤さんの苦労はよくわかったのでしまって下さい。頭痛い・・・。」
「わかりゃよし」
この場には北海道を拠点とする【カントリー】と日々鬼教官の下で訓練を積む
年少者達【キッズ】以外のHPメンバーが全員揃っている。
横目でチラッ、と自分とれいなのいるスペースを囲むように造られた机に座る彼女達を覗うと、
頼みの綱のあさみまでさっぱり読めませんという表情。
他にも圭織やめぐみなど、まともなオツムの人はいるのだが彼女たちは皆モロ理系。
こういうのは全然らしい・・・。
- 288 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:51
- 風情がないのぅ、と抱いた期待を溜息ごと吐き出し、本題に入る。
「ココに出てくる9人の仲間と安倍泰成って陰陽師さ、例の7人にオイラと福田さん、
おまけに田中のご先祖様っぽいんだなコレが」
「「「「「「「「はぃ!?」」」」」」」」
8人のすっとんきょうな声がハモった。
「な、何を唐突に…!?」
「んでその9人の身体に封じたっつー魂ってのがどうも【殺生力】の正体みたいで」
「みたいでって・・・、何処にそんな確証があるんですか!?」
「おぉ、流石に一年もココに居ただけあっていいトコに気付くね。ホレ、ここ見てみ」
と言って文章を示されるが、10行の文の下に他の字とは色の違う模様みたいなものが
あるのが判るだけでやはり読めないもんは読めない。
頭に?をいっぱい浮かべるれいなと席から立ち上がって
のぞき込みに来た7人を見て、真希が解説を開始する。
「さっきはスッ飛ばしたけど、9人の仲間についても色々書いてあってその肩書きがウチらのと
見事に一致するんだわ。世界中飛び回って裏も取ったから間違いないよ。
で、コレがその署名と血判ってわけ」
- 289 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/05/10(月) 15:52
- お久しぶりです。更新お疲れ様です。
私用のため、しばらく見れなかったんですが、しばらく見ないうちにすっごい話が
進展してますね。
皆さん、それぞれの事情が絡み合って、とても先が気になる作品になっていると
思います。
あと、所々出てくる紺野さんや後藤さんと作者さんが出てくるコーナーが、なんか
雑談っぽくって、これまた楽しみです。
これからも更新のほう楽しみに待ってます。
- 290 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:53
- 「・・・え?じゃあたしの先祖って・・・。」
「安倍泰成、調べた結果半妖と判明しましたぁ」
「いや、そんな明るい声で言われても・・・。」
「ウチの方でも調べたけど本当だよ〜」
響いた声。
全員の動きがピタッ、と止まる。
「・・・あの〜、後藤さん?」
「・・・何?」
「今天井の方から声がした気がするんですが・・・。」
「気のせい」
キッパリ即答。
「気のせいじゃないぞ〜ぃ」
- 291 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:54
- そんな声は無視して、青いカラコンを入れた女性・中澤裕子が真希に声をかける。
「で、ごっつぁん、アンタこれからどないすんねん?一応指名手配犯やろ?」
『あ』
今度は全員の声がハモった。
れいなが寝てる間の三日間ですっかり忘れていたらしい。
裕子が呆れた調子で溜息を吐いた。
「忘れとったんかい・・・。ていうかむしろごっつぁん本人も忘れてるってどうなん?」
「ダメでしょ・・・っていうか放置ですか?」
そんな天井の嘆きには一切反応せず、今度は猫目の女性・保田圭が口を開く。
「ごっつぁんアンタあまりにも自然と溶け込みすぎなのよ、
もう少し離れてた時間の溝とかないわけ?」
「いやぁ・・・、一切がっさいないね〜、あはは」
「・・・いい加減イジってくんないと頭に血ぃ昇って来たんですが」
「そのまま天に昇れ」
ボソッ、と呟いた後で周囲の人間の視線に気付きさゆみがしまった、という顔をする。
天井に逆さで立っている彼女の実の姉がニヤリ、と笑った。
- 292 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:55
- 「おおぅ、流石わが妹よ。お前ならやってくれると信じてたぞ」
『・・・・。』
両腕を開いた大袈裟なポーズで舞台男優みたいなセリフをほざく彼女。
場が凍りつき全員が完全にひいている。
そんな姉の醜態に溜息を吐き、さゆみが座っていた椅子を猛スピードで投げつける。
ふぎゃ、とマヌケな悲鳴を上げ落ちてくる彼女を、
今度は圭織が錬成したリノリウム製の腕が受け止め、壁に投げ付ける。
ふべっ、とかまたワケの分からない悲鳴と血飛沫を上げて床に倒れ込んだ彼女に
めんどくさそうに真希が呆れたような声を掛けてやる。
「で、何しに来たの?いちーちゃん」
「あたた、冷たいな〜。ただ妹が普段お世話になってるからご挨拶を・・・。」
「嘘つけ」
普段と540度違う冷たい声でで言ったのはその妹、さゆみである。
ゴキゴキと指を鳴らしながら近付く彼女に動じた様子も無く、
再び市井――本名・道重――紗耶香がその軽い口を開く。
「じゃ、ご好評につき登場ってヤツ?」
「何の話だよ!?」
思わずツッコんだのは、紗耶香とは同期・矢口真里。
- 293 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:56
- 「ていうか何で他の皆さんそんな目でいちーを見てんのさ?」
「ひいてるんだよ・・・。気付け」
「あぁ、『ひく』だなんてさゆみ!!お前はいつからそんな最近の若者風になってしまったんだ!?
『ひく』とか言われる側は結構キツイんだぞ!?」
「知るか、てかセリフ長い」
実際は豹変してしまったナルシスサーユにひいてる人も何人かいるのだが
一触即発な彼女の雰囲気に、そんなコトは口が裂けても言えない。
いい加減不死身な者同士のすぷらったぁな展開が危ぶまれてきて、
裕子がHPの最年長者の義務として動いた。
「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音菩薩・・・。」
「どわっ!?」
裕子の腕から放たれた鎖が紗耶香の身体を捕らえ、その動きを封じる。
「どや?観音経を入れた捕縛鎖の威力は?」
「へん、こんくらい・・・。」
「ちなみにそれで縛られると【練氣】ができんようになるからまず切れへんで」
「あぅ、なんかデジャヴを感じる・・・。」
- 294 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 15:58
- 「で、ホントは何しに来たん?っていうかむしろどっから入った?」
「あ〜、それは・・・。」
「オレが入れたったんや」
突然開かれた扉の向こうから現れたのは、彼女達のプロデューサー。
相変わらず胡散臭い、というのが帰って来て挨拶するのを忘れていた真希の感想。
「何考えてんですか!?つんくさん!?」
裕子が上司の胸倉掴んで(捻りながら)抗議の声を上げた。
「え、ええやん元仲間なんやし・・・ぐぇっ・・・。」
「けどコイツは・・・。」
「裕ちゃん!!」
真希の鋭い怒声にハッ、としてさゆみと圭織の方に視線を移す。
唇を噛み締めたその表情に、自分の失言を恥じた。
「あ・・・、すまん」
「あ、いえ・・・。」
「気にしないで」
- 295 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 16:00
- 「ていうかエエ加減放してく・・・―――――。」
喚くプロデューサーの頚動脈を裕子が極めて黙らせた。
で、そんなモノは一切気にせず話は進む。
「重苦しいぞ〜。話あるから聞いてくんない?」
「・・・何?話って」
「そろそろウチの組織・【\】の目的のヒント教えようって」
「目的?」
れいなが疑問を投げるかける。
それに紗耶香が答えるより早く、真希が口を開いた。
「【破壊】・・・?」
「おや流石、ご名答。でも何で分かった?」
「別に。ただあの手紙にあった【ペルセポネ】って、【破壊する者】を
意味するギリシャ神話の女神の名前だったから」
「相変わらず物知りだねぇ、ごとーは。ま、そういうこと。
ウチらの目的は【破壊】。何の【破壊】かまではまだ秘密だけど」
- 296 名前:日本昔話 投稿日:2004/05/10(月) 16:01
- 「で、それを伝える為にわざわざ・・・?」
「まぁね。じゃ、いちーはコレで」
ジャラジャラ、と音を立てたのは、どうやってか解かれた鎖。
唖然とする皆を無視してそれじゃ、と踵を返し扉へ向かう紗耶香が
足を止め、振り返って口を開く。
「あ、あとボスからの伝言。『種はもう蒔かれた』だって。じゃあね」
静寂だけを残しフッ、と掻き消えた彼女の背中。
その背中を見つめ悔しげに拳を握るさゆみを見ても、
れいなには掛ける言葉が見つからなかった。
- 297 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:02
- *****
- 298 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:04
- 顔に当たる冷たい夜風が、れいなの脳をますます覚醒させる。
見上げた月は、今日も綺麗だ。
「眠れないの?」
「あ、後藤さん」
不意に背後から声を掛けられ振り向くと、
そこには水色のスウェットを上下身に着けた真希の姿。
なんともリラックスした格好ではあったが
その左手に握られた日本刀が、現在の事態を表しているようだ。
右隣にやって来てれいなのやっているように屋上の手すりに体重を預けた。
- 299 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:05
- 「迷ってる?」
「あ〜、いや・・・。まぁどうするかは決まってるんですが・・・。」
「じゃあどうして?」
「ん〜、なんて言うかあたし、この一年後藤さんを捜すコトだけに集中してたんです。
でも見つからなくて・・・。それがこうもあっさり出てこられて気が抜けたっていうか
なんていうか・・・。そんな状態で組織がどうこう言われてもって感じですかねぇ」
紗耶香が出ていった後しばらく顎に手を当てて思惑し、
真希は7人にこう告げた。
『やばいかもしんないな・・・。悪いけど・・・そうだな明後日、一緒にアタシん家来てもらうよ』
唐突なコトに疑問の声を上げる7人に行けばわかる、とだけ答えると、
今度はれいなに選択を迫った。
『もし今より強くなりたかったら、あなたも一緒に来て』
- 300 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:05
- 「元々あたしが強くなりたいと思ってたのも、後藤さんが本当に殺人犯なら
止めなきゃって思ったからだし、その必要の無くなった今となってはどうも・・・。」
「今一つやる気が出ない、と?」
「えぇまぁ、正直なトコ・・・。」
「そっか、まぁそんな無理するこたぁないよ」
真希は軽い声でそう言って両手を頭の後ろで組み、大きく伸びをした。
ふぅ、と息をつき再び手すりに体重を戻し、夜空を見上げる。
夜風にそよぐ栗色の髪が月明かりに照らされ、美しい。
「そよぐ」という字は「戦ぐ」と書くと、何かの本で読んだ覚えがある。
なんだかこの人にすごく似合う言葉だな、などと考えながらぼんやりその横顔を眺めていると、
不意に真希が目を細め、口を開いた。
「ねぇ、アタシのコト恨んでないの?」
「え…?」
突然訊かれて、れいなは少し狼狽した。
- 301 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:06
- 「あ、いや、答えたくないならいいんだけど…。」
「いえ、でもあの〜・・・、そりゃまぁ全く恨んでないって言ったら嘘になるかもしれませんけど・・・。」
「けど・・・?」
「なんてゆーか、ココへ来てしばらくはやっぱり恨んでましたね、抑えようとはしてましたけど。
でもなんだかんだでしょっちゅうココの人達の後藤さんに対する印象みたいなのを聞いてたら、 やっぱそんな悪い人には思えなかったし・・・。
気付いたらそーゆー気持ちよりも憧れみたいなのが強く・・・。」
「ど、どうしたの?」
話の途中で目を大きく見開き、そのままピタッ、と固まってしまった
れいなに真希が不安気な声を掛けた。
「そうだ・・・、そうだよ!!あたし何でこんな簡単なコトに気付かなかったんだろ!?
後藤さん、ありがとうございます!!」
「ふぇっ!?何?何?何なのさ!?」
突然喜々とした声を上げ、真希の両手を握って飛び跳ね出したれいな。
真希には何が何だかわからない。
一通り飛び跳ねて疲れたのか、落ち着きを取り戻したれいなが語り出す。
- 302 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:08
- 「あたしこの一年で色んなコト勉強して、色んな人に出会って・・・。
色々あり過ぎてちょっとこんがらがってたけど、今そういうの思い出してて気付いたんです。
後藤さんを止めなきゃって思ったのも、恨みとかそーゆーのだけじゃなくて
あたしみたいな人が増えるのが嫌だって思ったからだし、
それからも何人か困ってる人を助けたりして、それがスゴイ充実感あって・・・。」
そこまで喋って一端息をつくと、真希に向かって頭を下げて続けた。
「あたし、誰かの幸せを守れるようになりたい。
だからその為に強くなりたい。
後藤さん、あたしも連れてって下さい!!」
真希はその行動に一瞬目を丸くしたが、
すぐに表情を崩すと、言った。
「OK。その志、忘れちゃ駄目だよ?」
- 303 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:09
- 真希は知っている。
その志の行く手には、多くの苦難が待っている事を。
いや、それがどんなモノであろうと「志」を立てそれに向かって行くという事には、
相応の覚悟がいるのだろう。
「さて、こんなトコいると風邪引くし、ごとーの部屋来る?」
「えぇ!?」
れいなが冗談めかして自分の身体を抱え込むようなポーズを取る。
真希も苦笑しながらそれに応えた。
「いやそーゆー意味じゃないから。どーせその調子じゃ朝まで寝れないでしょ?色々聞かしてよ」
「いいですよ。でも朝までじゃ終わんないかも・・・。」
「まぁそのへんは田中の腕次第ってコトで・・・。ま、行きますか」
「は〜い」
- 304 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:10
- アレはいつのコトだったろうか。
無神流の戦士は、自分専用の武具を造る時その鍛冶場に立ち会い、
その過程で自身の【氣】を武具に注ぎ、武具の出来の強化を助ける。
出来上がった武具には、その持ち主が好きな名前を付けて良い。
そして真希は、この刀に【蓮華】と名付けた。
「蓮華」の花言葉は「幸福」。
真希は人々の「幸福」を一つ一つ守っていけるように、
そんな願いを込めてこの名を付けた。
実際にその後、多くの人を救ってきた。
だが、その過程には少なからず誰かの「幸福」を奪う行為が含まれる。
無論、奪われた者の側に責任がある場合がほとんどだ。
多くの同業者はそこで自分を納得させてしまうのだろうが、
幸か不幸か真希は気付いてしまった。
例えば、快楽殺人を行う者がいたとする。
世間一般の見解からすれば、その者は間違いなく「悪」だろう。
だが、彼がそんな結果を生むまでには何らかの原因が存在する。
それは親の虐待かもしれない。
それは何かの事故かもしれない。
- 305 名前:決意 投稿日:2004/05/10(月) 16:11
- 人間というのは生まれ持った僅かな因子と、
広い意味での育った環境で出来上がってしまう。
言ってみれば自分達が誰かを傷つけずにいられるのは、
単に運が良かっただけなのかもしれない。
真希はこの真実に気付き、泣いた。
自分のしてきた事が間違っていたとは思えないが
しかし、それでも涙は溢れてきた。
自分と同じ志を立てたのだ、れいなもいずれ苦しむだろう。
今、自分の経験を話してやれば実際にその壁にぶつかった時、
少しは楽になるのかもしれない。
だが真希はソレをしなかった。
現実というのは、自身が経験しなければ意味の無いモノだ。
どれだけ本で知識を得ようと、どれだけ他人の経験談を聞かされようと、
それだけでは見えないモノが、其処にはある。
だから今は、そっと彼女の背中を押してやろう。
壁にぶつかった時、顔を俯かせてしまった時、
そこからまた顔を上げ立ち上がる事のできる強さを持てるように。
- 306 名前:景気づけにこのコーナー 投稿日:2004/05/10(月) 16:12
- *****
- 307 名前:いちーちゃんの考察日記 投稿日:2004/05/10(月) 16:13
- どうも〜、いちーちゃんでぃす♪
え?何?本名、道重だろ・・・って?いいんだよ気に入ってんだから〜。
で、何すんのコレ?
作者:いや解説っちゅーかそんなのを・・・。
OKOKまかしときなさい。
練氣 : 氣を練るコト。
裕ちゃん : 鬼。
圭ちゃん : 狛犬。
ヤグチ : ちび。
さゆみ : my sister 。
ごとー : 可愛い後輩。
カオリ : 元カノ。
観音経 : よー知らん。
ぺるせぽね : 全く知らん。
玉藻前 : 全然知ら・・・。
作者:あの〜、いちーさん?
なんだよ?邪魔すんなよ。
作者:いやもうちょっとまともに解説して欲しいんですが・・・。
ていうか一行目そのまんまだし二行目以降ワケわかんn――(ザンッ)――。(←瞬殺
うるさいわダメ作者。だいたいいちーの扱い酷すぎんだよ・・・ってもう聞いてねぇか?
じゃ、読者の皆さんさいなら〜♪
- 308 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 16:14
- *****
- 309 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 16:21
- ふぅ・・・、更新しゅうりょーデス。
前回好評だったこの人に例のコーナーお願いしたんですが、、、(汗
まぁ、作者に文句言われても全部あの方のせいなのd・・・(ガクッ)。
で、次回ですが、一応田中さんの事件簿的なのをお送りする予定なんですが
何分書いたのをすぐ更新する手法を取ってる為どーなるかわかりません。
むしろ今回はまだ脳内完結ができてない次第です。
あ、物は投げないで。(汗
そんなわけでやっぱり1週間くらい時間下さい。
- 310 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 16:42
- こ、これが噂の市井さん効果・・・?
いやどこで噂されてんのか知りませんけども。
こんなにたくさんレス頂けるとは、いやはや皆さんありがとうございますです。
>>279 名無飼育さん 様
引き込まれるだなんてそんなもうありがとうございますぅ。。。(感涙
いちーさんも気に入っていただけたようでホント一安心ですわw
そしてメル欄も拝見しました。
自分の知ってる小説で市井さんが出てるのはあんまり数無いんですが、
もしかしてあの方かしら・・・?
>>280 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
えぇ、れいなさんも成長しました。。。(同じくしみじみ
その成長過程を今度描こうと思ってます。
あくまで思って、ハイ。(カケヤ
いちーさんのキャラ・・・一番ですか!?
ホントもう、恐縮です。。。
これからどうなっていくか・・・作者も楽しみです(え?
頑張りますのでこれからもよろしくデス。
>>281 遥 様
ごっつぁんがカッコイイのは元ネタがとある漫画の主人公の兄貴だったり、
神○流の剣士だったりするせいですw
この人達、無闇にカッコイイですからね。
それにしてもいちーさん好評ですね。
実際リアルのいちーさんがいる頃の娘。をよく知らないので
湾曲しまくったイメージで描いてるんですが、、、
ま、結果オーライってコトで。。。(イイノカ?
- 311 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 17:00
- >>282 我道 様
さ、叫んじゃったYO!
素晴らしすぎるだなんてそんな・・・。
ありがたやありがたや(拝
田中さん、自分で書いといて言うのもアレですが、
彼女に犬耳つけりゃそりゃ可愛いに決まってます。(爆
これからもっと可愛く・・・違うか?
>>283 shou 様
えぇ、情けないですよどこまでもw
彼女が単に情けないだけのヘタレになるかどうかは
今後の作者の気分次第ですが・・・。
田中さん、痛いっちゃ痛いですね。
ま、この一年で成長したんです、きっと。。。(推測?
今後の成長にも期待ってことで。
>>284 rina 様
初めまして。んでレスありがとうございます。
全体的にカッコイイとはこれまた嬉しいお言葉を。。。
まぁ部分的に見ると所々アホっぽかったりするんですが・・・w
ごとーさんは徹底的にカッコ良くしたいんですが、
果たしてどうなることやら。。。
作者の成長次第です。(望薄
>>289 聖なる竜騎士 様
あ、お久しぶりです。
そういや最近自分もそちらに書き込んでないカモ。。。
もちろん読んではいるんですが。
皆さんの事情が複雑に絡まり過ぎて作者が処理に困ってるってのは
ここだけの秘密ですw
最後のコーナーも気に入って頂けたようでありがたいです。
お互いがんばりませう。
皆さんホントにレスありがとうございます。
レスもらえるとめちゃくちゃ書く気力が湧いてきます。
気力が湧いてもアイデアg(ry
ではまた次回で♪
- 312 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 17:02
- 隠しときます。
- 313 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/10(月) 17:02
- もういっちょ。
- 314 名前:我道 投稿日:2004/05/10(月) 17:31
- 更新お疲れ様です(ペコリ)
やー、れいなさん。あなたは素直で可愛い!
でも今回は少し怖い重さんに目がいきました(w
作者様・・・なんかもう、ご無事でしょうか?
作者様のご無事を祈りつつ、次回の更新期待です!
- 315 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/10(月) 17:58
- 作者さんの書くごっちんとれいなかっこよすぎです!二人ともつらい事があっても志を忘れないで欲しいですね。
市井さんは今回もへたれですが去り際はかっけーっすw重さんもキャラ変わってて面白かったしみんな良いキャラしてますね。
次回も期待してるのでがんばってください。
- 316 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:45
-
死したその後、彼には何が残るのだろうか。
何も残らないか、それとも・・・。
- 317 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:46
- *****
- 318 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:46
- その煙が昇り逝く空は、どこまでも澄み切っていた。
れいなはそんな空を見上げ、溜息を一つ。
何処か鬱ろ気な彼女が気になったのか、真希が声を掛ける。
「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫ですよ。ちょっと寝不足なだけです、はは・・・。」
「そう・・・。」
ぎこちない苦笑を浮かべるれいなにこれ以上の詮索は野暮、と判断し
真希はまた皆の輪の中へと戻って行った。
――――――成瀬小太朗。
今しがたこの火葬場で行われた彼の弔いは、実にひっそりとしたものだった。
裕子が経文を上げ、他の皆が黙祷を捧げる。
彼が死後どうなるかの科学的見解を知る彼女達の中に、その死後の冥福を祈る者はいない。
- 319 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:47
- 肉体が死する時、人体は平常時の何倍ものSNTを放出する。
コレがその者の死んだ場所、強い思いの篭もった物、かけがえのない大切な者などに
宿る事で地縛霊や幽霊、守護霊と呼ばれるモノになるのだ。
余程強い思いを残していない限り、やがて時間と共にSNTは
その人物の記憶と共に消滅する。
これが所謂「成仏」だ。
しかし小太朗の場合、メフィストによる浸食の結果脳の彼自身の意識活動が
限りなく停止に近い状況にあった為か、SNTの大量放出が行われなかった。
よって霊魂というものは残らず、梨華のテレパシーも裕子やなつみのような
視覚的霊感知能力の保有者でもその存在は確認できなかった。
霊魂となった場合、そこには死ぬ時の感情や記憶が残るか残らないかという程度で
思考力や意識はほとんどない。
そういった働きは脳がなければできないからだ。
ただ守護霊の場合、依り代の脳を利用してそれを行うコトもある。
また降霊術などでは自身に霊を憑依させ、思考を可能にする。
- 320 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:48
- 「消滅、か・・・。」
我想故我在。
死して思考や情動を失ってしまえば、それは自身の消滅に等しい。
だが実際は一定期間霊魂として現世に留まり、
運が良ければ生ける者の身体を借りて一時的にでも自身を取り戻せる。
それは完全な「消滅」ではない。
しかし彼は、成瀬小太朗はほぼ完全に「消滅」したと言える状況にある。
そしてその事実はれいなの心に妙な虚無感をもたらした。
別に彼と親しかったわけではないが、
れいなの触れた彼の心の一部はそれほど衝撃的な、重いモノだった。
- 321 名前:狂気の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:49
- ふと、自分の頬に違和感を感じた。
そっと手を当ててみる。
「あれ?あたし、なんで・・・。」
視界が滲む。
幾度手の甲で拭っても、とめどなく溢れてくるその雫は一向に止まってくれない。
死したその後、彼には何が残るのだろうか。
何も残らないか、それとも・・・。
滲むれいなの目には、ただ空の果てなき藍さのみが広がっていた。
- 322 名前:やたら短い更新の果てに 投稿日:2004/05/13(木) 18:50
- *****
- 323 名前:HVW 投稿日:2004/05/13(木) 18:51
- どうも皆さんお久しぶりです。
最近めっきり出番の少なくなったおじゃマルこと紺野あさみです。
まぁ作者には後でたっぷり話をするとして、とりあえず解説逝きますか。(字違
「我想故我在」というのは「われおもう、ゆえにわれあり」と読みまして、
フランスの哲学者であり数学者、ルネ・デカルトの言葉です。
方法的懐疑の立場にたち、一切を疑った後、このように疑っている
自己の存在は明晰で判明な真理であるとしてこう表現したそうです。
漢文調にしているコトにたいした意味は皆無です、きっと。
- 324 名前:HVW 投稿日:2004/05/13(木) 18:52
- では解説はこの辺にして、作者さん?
作者:は、はい!?(滝汗
最近私の出番少なくないですか?
ていうかこのコーナー私のじゃなかったんですか?
作者:えぇっと、それはやっぱり読者のニーz・・・ぎゃっはぁああああ!?
ばきぐしゃめきぐちょみしずしざくっぐちゃめぎょどんっどんっどんっずだだだだだだだどかん
(↑凄惨過ぎる為音声のみお楽しみ下さい♪)
はぁ、すっきりした♪
じゃあ今日はこの辺でぇ〜(はあと
- 325 名前:故・名も無き作者 投稿日:2004/05/13(木) 18:53
- *****
- 326 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/13(木) 18:57
- 更新終了です。
短い。。。
文句のある方は物を投げてみて下さい。
スリ抜けますからw
黄泉返ることができたら次こそは
田中れいなの事件簿シリーズをお送りしたいと思います。
それまでしばしお待ちを。。。
- 327 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/13(木) 19:05
- >>314 我道 様
重さん・・・、確かにちょっと怖いかもですね。
でも本当に怖いのは・・・。(意味深
で、作者ついに殺されてしまいましたw
次回までにドラ○ンボールで生き返るつもりですのでご安心を。
>>315 名無飼育さん 様
よかった〜、かっいいと言ってもらえて。。。
ありがとうございますぅw
これからも良いキャラと言ってもらえるようなキャラ
出せるよう精進します。
- 328 名前:我道 投稿日:2004/05/13(木) 20:56
- 早い更新お疲れ様です。
ちょっとしんみりしてしまいました(田中さんからもらい泣き)
作者様の描写は、本当に私の心にその場面を映すようです。感激です!
な、亡くなってしまわれたのですか!?
紺野さん!作者様にそんなことしたら駄目じゃないですか・・・(語尾弱く
- 329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/15(土) 18:24
- 更新お疲れ様です。
あまりにも切なくて自分ももらい泣きしちゃいました。
それはそうととりあえず
ポーン(石を投げる音)・・・スカッ
田中さんの事件簿シリーズ楽しみにしてます!いつまでも待ちますのでぜひ蘇って更新してください!!
- 330 名前:Ray 投稿日:2004/05/16(日) 13:46
- 前から読んでたんですが、ロムってたコトを
この場を借りて深くお詫び申し上げますm(_ _)m
いや〜毎回更新を楽しみにしておりますです!
いつもドキドキしながら読んでるんですが、
またーり更新頑張ってくださいね!
- 331 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/16(日) 16:09
- ハウンド・ブラッド(w
元ネタがほぼわかる僕としちゃ、
イイ感じで楽しめます。
最強でもないのに余裕シャクシャクな
市井のキャラがとても好きです。
最後まで期待してます♪
- 332 名前:信じる者は 投稿日:2004/05/16(日) 20:05
- 「ねぇねぇ聞いた?」
「ん〜?何を〜・・・?」
「ウチのクラスの夢宮くん、ここのトコずっと休んでるじゃない?」
「あ〜、そういえばぁ・・・。」
「でね、その理由っていうのが・・・。」
「zzz・・・。」
「・・・って寝るなー!!」
- 333 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:07
- *****
- 334 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:08
- ども、皆さん初めまして。
田中れいなです。
ハロプロに入って約半年・・・、
日々任務と訓練の繰り返しという到底健全とは呼べないにしても
そこそこに充実した青春をエンジョイしている筈のあたしなんだけど、
今現在何をどう間違ったのか、鎖で拘束され自動車で拉致されちゃってたりします。
それも顔をよく知っている方々に。
いや別に知り合いじゃない方がマシって意味じゃないけども・・・。
で、その方々の紹介をしとくとまず後部座席に倒れてるあたしから見て右側、
この車は日本車だからつまり運転席でハンドルを握り意外な程交通法規を遵守した
安全運転をしてんのがハロプロを陰で牛耳ってると噂される除霊師・中澤裕子さん。
あんまり一緒に仕事するコトないからよう知らんけど怒らせたら=死、と先輩達から教わってる。
んでその隣の助手席であたしがおかしな動きせんように自慢のサンライズスマイルを
輝かせつつ監視してんのが陰陽師・安倍なつみさん。
可愛い顔して合気道の達人で、訓練ではそりゃもう何度も・・・。
- 335 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:08
- 「あの〜・・・。」
「ん?なんだい?」
「まだ何が目的で拘束されてるのか理解できないんですが・・・。」
下校中にいきなり現れ問答無用で車に押し込まれたもんでね。
てか目撃者いたらヤバイんじゃ…。
「仕事やシ・ゴ・ト」
「…何の?」
「女子中学生連続連れ去り魔の」
あぁ、なんかそんなんが増えてるってテレビで言ってたね。
ん?というコトはもしや・・・。
「あの、まさかとは思うんですがあたしは・・・。」
「おっ、察しがエエな。その通り、チミにはおとりをやってもらう」
やっぱりかい!!
てかなんであたしが!?
もちろん声に出してツッコんだりはできないけど。
- 336 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:09
- 「・・・わざわざあたしじゃなくても、安倍さんなら地でイけると思うんですが?」
「む、それはなっちが童顔だって言いたいのかい?」
いやそうやってさゆみたくほっぺた膨らましてるあたり顔どころか精神も・・・。
まぁ中澤さんは流石に(自粛
「いやな、ウチもそう思うてんけど今回の犯人が「ちょっと目つきが悪くて生意気そう」な子
を集中して狙ってるらしくてなぁ」
「田中ちゃんが適任ってわけ」
あ、さいですか。
あたしそんなに目つき悪いかな・・・、藤本さんほどではないと思うけど。
ま、アレは生意気というか完璧に(ry
「で、手口は?」
「お、事態への順応早いなぁ」
そりゃこんな人達と半年も一緒にいりゃそうでしょうよ。
だいたいこんな風な半強制的捜査協力は前にも何度かあったわけで・・・。
- 337 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:11
- 「で、今回の相手、なんか人の生霊使ってるらしいの」
「へぇ、生霊を・・・え?」
ぱぁどぅん?
今この人、生霊がどうとか言いませんでした?
つまりアレ、生きてる人のユーレイですよね?
・・・・・・・。
無言で霊獣化し、窓を蹴破って脱出を試みたんだけど
急激に身体に食い込む鎖がソレを許してくれませんでした。
嫌だーーーー!!!!!
あたしホラー系は絶対無理なんだって!!
特にリアルのユーレイは怖いは爪で切り裂けないわでもぅ・・・、とにかく助けてーー!!
「ヤだヤだ!!オバケ怖いぃ!!」
「その鎖、その気になれば丸太をちょん切れるくらいの力あるから暴れても無駄やで」
- 338 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:12
- 「だ、だいたいあたし霊感ないですもん!!見えませんよそんなもん!!!」
「それならコレがあるから大丈夫」
「ふぇ?」
ヤな予感。
安倍さんはあたしの反応を明らかに楽しんでる様子で助手席に顔を引っ込め、
ガサゴソと何かを取り出しソレをあたしに手渡してきた。
――――メガネ?
黒いフレームのそれは左眼のレンズの端っこからニョキッ、とアンテナっぽいものが
出ているのを除けば何の変哲も無いただの眼鏡だ。
「な、なんですかコレ?」
「『視覚的霊感知装置』(紺野作)。ようするにコレつければユーレイ見えるようになるんだね」
ど、どんな仕組みで?
紺野さん、教えてぷりーず。
- 339 名前:今日もやりますいつものコーナー 投稿日:2004/05/16(日) 20:13
- *****
- 340 名前:HPH 投稿日:2004/05/16(日) 20:15
- はい、では解説させていただきましょう。
いやぁ、やっとまともな解説ができる♪
霊魂というのはいわばSNTの集合体で、常時精神波を発しています。
当然その影響で新たにSNTを生み出しあちこち放出します。
ただ霊魂の発する精神波というのは量が多く、同時にSNTも大量に放出されるんです。
で、その放出されたSNTの中にはその霊魂の持ち主の外見的データも含まれ、
これを「視覚的霊感知能力」、所謂霊感を持つ人の脳が受け取り、
そのデータは視覚野に送られるので目で見たように感じるわけです。
要するに、霊は実際に人型をしてソコにいるわけではないんですね。
よくユーレイは足が無いなんて言われるのも人は普段鏡で足の先まで見るコトが少ないですから
外から見た足のある自分に対するイメージが薄いせいかもしれません。
まぁ近代では全身写真なんかで見る機会が増えましたから
しっかり足のついた幽霊も珍しくありませんが・・・。
- 341 名前:HPH 投稿日:2004/05/16(日) 20:16
- 中澤さんや安倍さんのように感度の高い霊感を持っている方ならその霊魂の肖像イメージ
がハッキリ分かるんでしょうが、そうでない人だとその人の持つ霊へのイメージが強く作用します。
見た場所で事故があったと知っていれば血みどろだったり、
怖い怖いと思っていたらやたら凶々しかったり・・・。
でも霊魂が時間の経過や死のショックで自身の姿を忘却していたり
その肖像イメージが実際に血みどろだったりする場合は別ですケドね?
前置きが長くなりましたが、私の開発した『視覚的霊感知装置』は
その、霊魂の肖像イメージを特殊なアンテナで受信しレンズにその姿を映し出すんです。
それもちゃんと霊魂の憑依した位置も判るように。
どうです、すごいでしょう?
え?コムズカシくてよく分からないって?
もぅ、、、早い話がこの眼鏡を掛けると誰でも幽霊が見えるようになるんです。
何?最初っからソレを言えって?
消しますよ?現在龍探知機(作りました)での龍球集めに必死になってるどっかのバカみたく。
分かればいいです(ニコッ
ではまた。。。
- 342 名前:紺野あさみでした 投稿日:2004/05/16(日) 20:17
- *****
- 343 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:18
- い、今一瞬ブラック紺野さんが降臨した気が・・・。
き、気のせいだよねきっと・・・、あはは、、、
でもナルホド(仕組みはよくわかんないけど)、これ掛けるとユーレイが見えるようになるんだ。
へぇ〜、それなら任務も・・・って、え゛!?
余 計 怖 い じ ゃ ん?
「い、要りませんよ!!そんなもの!!」
「アカン。いきなり襲われたら危険やろ?」
「嫌です!!」
「・・・・・・ほぅ。」
「(狽竄ホっ)た、田中ちゃん?年上の言うコトは聞いといた方が身の為かもよ・・・?」
嫌なもんは嫌だ。
ねんこーじょれつなんかクソ喰らえ。
とにかくそれくらいにあたしはそーゆーのが駄目なんだ。
- 344 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:19
- ―――――ブチッ・・・。
はい?ぶち?何?猫?
皆さんは何だと思います?今の音。
・・・えぇ、気付いててとぼけたコト言ってましたよ。
別に受け狙いではなく、単純にこの事態から現実逃避したかっただけです。
だって今、ハンドルを安倍さんに任せた中澤さんが阿修羅もびっくりな形相で
その手に握ったハリセン型、鋼鉄製の武器・【魔消扇】を振り上げてるんだもん・・・。
- 345 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:19
- ――――――――
- 346 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:20
- そんなわけであたしは今、人気の無い夜の公園に一人佇んでいる。
初夏の湿った生温かい風に撫でられる不快感が、左前頭部のじくじくした痛みを増大させてる。
狭い車中で器用にあんなでかいもんブチかますんだもんなぁ・・・。
ていうか霊獣化してなきゃ致命傷だよコレ・・・。
『を〜ぃ、ボケッとすんなや。任務中やで』
「別にあたしの任務じゃないです」
『あ、そういう冷たいこと言うんだべか?』
言わせてんのは誰だよ。
だいたいかれこれ一時間もこんな退屈なトコに突っ立ってたら誰だってボーッとするでしょ。
紺野さんなら間違いなく油断してるよ。
- 347 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:22
-
『でもま、そんくらいぶすっ、としててくれた方が犯人さんの好みらしいんやけどな』
「・・・嫌な言い方止めてください。でもそれならこの黒ブチメガネは大丈夫なんですか?」
『いやなかなか似合っとるしメガネッ子に弱い男も多いからなぁ。大丈夫やろ?
おまけに3つ目のボタンまで開けて胸元はだけた汗で湿ったブラウスと
若干校則違反気味に丈短めのスカートやし』
狽ネ、なんか夏場なのに寒気が・・・。
ドコからともなく誰かのハァハァ言う声がぁっ・・・。
風邪だ。
きっと風邪だ、そーゆーコトにしとこう、ウン。
『!おっ、そうこうしてる内に奴さん来たみたいやで』
「げっ、うわぁ、、、怖いぃ・・・。」
『大丈夫だって、生霊の場合はそんな血みどろだったりしないし、多分』
「だぁ!!多分って、そんな不安になるようなコト言わないで下さいぃ」
『あっ、ごっめ〜ん』
・・・わざとだ。
ぜったいわざとだよこの黒なっち。
此処から少し離れた場所に車を停めてターゲットの気配を探っていた2人は
冷房の効いた車中で快適にあたしの反応を面白がってるに違いない。
- 348 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:23
- で、怖がってたあたしなんだけど、数分後にぬったり現れたソイツの姿には唖然とした。
まず何よりデカイ。
だいたい2m強ってトコかな?
形も一応手足が2本ずつに頭が一つで五体満足な人型をしてはいるんだけど、
ぼんやり青白い光を放つ不明瞭な身体とガイコツの目のまわりに
変な化粧したみたいな顔は、想像していた幽霊より遥かにマヌケ。
しかもコレを操ってる真犯人のせいか知らんけど具現化されたその足が
たてるずしずし、という鈍そうな足音がさらにコイツが霊であるという事実を疑わせる。
あまりに想像と違うのでメガネをちょっと取ってみてその姿が肉眼で確認できないのを
確かめてやっと、その事実を認識できた。
なんていうか、
全 然 怖 く な い し
- 349 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:24
- 「・・・ホントにコイツなんですか?」
『えぇっと・・・、目撃証言によると多分な』
「どんな証言だったんですか・・・。」
『えー、「その足音は地面を揺さぶり地割れを起こさんという勢いで強く重く響き、
その身体は青白く不気味に輝きこちらに伸ばされた四肢が私の恐怖を増大させました。
さらにその顔たるや人の骸に怨念という名の狂気を描いたような、それはおぞましいモノでした」
・・・以上が運良くアレから逃げ切ったやたらと霊感の強い女子中学生・結ヶ崎薫さんの証言。
アレ?この子田中ちゃんとキャメイちゃんと同じ学校だね。2−Dだって』
「・・・・・・・。」
絶句。
知り合いだ、、、あの野郎何つー紛らわしい証言を・・・。
明日学校で三枚にオロしてやる。
・・・でもあいつそんな事したら再生して3人に増えそうだ、やめとこう。
- 350 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/16(日) 20:25
- などと考えていると、多くの生霊の集合体であるマヌケな木偶の坊が襲い掛かってきた。
生霊ってのはSNTを普段より多く放出して睡眠状態になったその持ち主とはSNTの情報交換
をして繋がってるだけで、切り刻んでも一切問題はないらしいんだけど、
一応計画通りきゃーっ、と大袈裟な悲鳴を上げて捕まってやった。
このまま適当に気絶した振りをしてればそのまま真犯人のトコロに
コイツが連れてってくれるってスンポーだ。
最初計画を聞かされた時は死ぬほど嫌がったんだけど、蓋をあけてみると・・・。
この頭の傷どうしてくれんだよ・・・。
ま、後はお2人が助けに来てくれるのを待つだけか。
最近寝不足だし丁度いいや。
そういえば運んでるトコロをその辺の通行人が見たらあたしが浮いてるように見えるんだろうか、
とかどうでもいいことを考えつつ、ひんやりとして軟らかく意外に寝心地の良いデクの腕に抱かれ
あたしの意識はまどろみの中に落ちていった。
- 351 名前:復活・名も無き作者 投稿日:2004/05/16(日) 20:26
- *****
- 352 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/16(日) 20:32
- 更新終了デス。
いやぁ、死の淵から舞い戻ってまいりましたぁw
龍球集めの冒険談はそのうち・・・書きません。(アタリマエ
で、始まりました田中れいなの事件簿シリーズ。
今回は一人称にしてみましたけどどうでしょう?
なんかこんな文調のを読んだことあるぞって人は気のせいです。
次は・・・未定w(ヲイ
- 353 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/16(日) 20:41
- >>328 我道 様
感激とはまたまた嬉しい感想デス。
これからも精進し続けますw
紺:なんか言いました?
作:あ、紺野さんが黒く・・・、我道さん逃げてぇ!!、、、ってぐはっ!?
紺:私を止めようったって無駄です。覚悟ぉ!!
あぁ、成仏して下さい我道さん。。。(諦早
>>329 名無飼育さん 様
あ痛ッ!?
スリ抜けたはずの石がどこをどうやってか今頃・・・。
楽しみにして頂いて嬉しいです。
これからは殺されないよう気をつけ・・・。
紺:じーっ、、、
作:煤i汗
- 354 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/16(日) 20:50
- >>330 Ray 様
レスありがとーございますデス。
いやはや前から読んでくださっていたとは、感激ですw
ドキドキですか?作者がいつ死ぬかって(違
ま、一度死んだんですが蘇えりましたw
これからもお互いマターリ頑張りませう。
>>331 名無飼育さん 様
狽ャくぅっ・・・!
は、はて何のことやら。。。(泳目
いちーさんは最強ではないですが実はアレで結構強かったりする予定デスw
しかし元ネタほぼおわかりになるとはあなたも中々ww
ていうかもう申し開きのできないくらいあちこちからパk・・・
参考にしてるので最早バレようが何しようが構やしないんですがね?(ヒラキナオンナ
最後まで期待してて下さいw(ダイジョブカ?
ではまた次回でノ
- 355 名前:我道 投稿日:2004/05/16(日) 22:33
- 更新お疲れさ・・・ぐわっ!黒紺があぁぁぁぁ!!
あれ?空飛んでるよ(w
それでは改めて、更新お疲れ様です(ペコリ)
いや、スランプ知らずの凄腕作者様といいますか・・・もう拝んでいいですか?
期待しながら次回の更新待ってます!頑張ってください!
- 356 名前:331 投稿日:2004/05/17(月) 00:57
- 読者側としては、放置&放棄されなければ
それでOK牧場♪ なのですよ。
市井はあれでこそ市井という感じですが。(w
実は二年振りに飼育に戻ってきたんですが、
世代交代をヒシヒシと感じますね。(w
では次回も楽しみにまってます♪ノ
- 357 名前:Ray 投稿日:2004/05/17(月) 23:09
- 更新お疲れ様です!
ぱぁどぅん?に笑わさせて頂きました(w
いや〜何気に黒紺野さんがイケてます!!(爆
黒紺の虜になりそう…(ヲイ
- 358 名前:遥 投稿日:2004/05/18(火) 23:20
- 更新お疲れ様です。
何かしばらく来ない間にエライ話が進んでますねー…。
とにかく作者様の書く市井さんはかっこよくって、
ついていきます!って感じ。。。
重さんもいい感じに毒舌でww黒紺も最高!!
とにかく尊敬だぁ…。それでは次回も楽しみにしてまーす。
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/22(土) 14:24
- 更新お疲れ様です。
れいなの1人称〜♪制服姿、想像してしまいました(ハアハアめがねもおつですな
黒紺もいいかんじですね〜・・・もう殺されないよう気をつけてくださいw
次回も期待してるのでお願いします。
- 360 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 16:54
- おかしな匂いに目を覚ますと、其処は不思議の国でした。
・・・いや、マジでね?
目の前には、あたしの背後の石膏像に向かってひれ伏し両腕をバンザイしてはまたひれ伏しを
繰り返す謎の黒い覆面集団、その数およそ20。
それだけならまだしも(イヤよかないけどさ・・・。)、アーアー――こんな風にしか
聞き取れない――と何事か唱えてるし・・・。
さらに問題なのが、あたしの態勢。
さっきのデク(最早正式名称)・・・を模ったと思われる石膏像(等身大)の膝に座る姿勢で、
両手首を鎖で肩の高さまで上げたデクの両手首と繋がれてしまっている。
なんていうか、座った状態でタイ○ニックみたいな?
映画のDVD見た時にえりとかさゆと真似してやった覚えがあるけど
まさかこんな気色悪い石像とやるハメになるとは・・・。
ていうかこのカッコ、物凄くヒワイじゃないか?
いや断じて意味などわからないけど、なんとなくね、な・ん・と・な・く!!
、、、って誰に言い訳してんだあたしは・・・。
で、おまけにこの部屋、やたらと暗い。
雰囲気もだけどそれ以上に光量が少ない。
全面コンクリートの打ちっぱなしで学校の教室一個半くらいの広さのこの空間で、
光源が天井の四隅とデクの頭の横に固定された松明だけだってのが原因だろうけど。
たださゆの部屋と同じくらいの明るさなせいか、たいした動揺も無いあたしって一体・・・。
- 361 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 16:55
- 「ご祈祷やめ!」
列から一人だけはみ出て一番前で謎の儀式をしていた覆面が低い声でそう叫ぶと
一斉にアーアー言う声とやたらと揃ったバンザイ体操がピタリと止んだ。
とりあえずこの態勢はイヤなので、リーダー格らしいソイツに話し掛けてみる。
「えぇ〜っと、コレは何ですか?」
「お喜びなさい。あなたは闇神様の糧となるべく選ばれたのです」
???????????????????
何?ヤミガミ?カテ?選ばれたぁ?頭大丈夫・・・なわけないか。
「な、何ですか、ヤミガミサマって・・・?」
「あなたが今抱かれている像に宿る我等が創造主ですよ。
どうです、なんとも高貴なお顔でしょう?
あなたをココへ連れてきて下さったのもこの方なのですよ」
それは知ってるけど。
- 362 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 16:56
- 「・・・自分が何言ってるのかわかってます?」
「この方の力をお借りすればどんな願いでも叶う。
たとえそれが亡くなった人を蘇えらせる事でもね」
ピクッ――――。
『「怒りは炎となりやがて己が身を焼く」ごっつぁんによる福音書第一章より』
「なっ・・・!?」
相手の発言に思わず掴みかかろうとした所で通信機から流れてきた
中澤さんの声が、それを妨害してくれた。
上げかけた声を抑え、まだペラペラと何かを語ってる相手を放っておいて小声で呼びかける。
「中澤さん、今ドコですか?」
『目の前』
「は?目の前ってまさか・・・。」
視線を黒集団に移す。
一番遠くにいる黒い覆面の内、2人が手を振ってるのが見えた。
てことは一緒にやってたのかアレ・・・。
- 363 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 16:57
- 「一体何し・・・。」
『ねぇねぇ、なんか変な匂いとかしない?』
「はい?あぁ、そういえばなんかそんなんで起きた気がします」
今はもう順応しちゃったのかあんまし気になんないけど微かに、
常人より利く嗅覚を持ってるあたしじゃなきゃ判別できないくらいの匂いがあるのは確かだ。
「それがどうかしたんですか?」
『あぁ、【霊媒香】や。多分此処にいる連中はそれのせいで軽いトランス状態になっとる』
何、れーばいこーって・・・?
紺野さん、例のやつヨロシクほねがいしま〜す。
- 364 名前:ほねがいしま〜す。 投稿日:2004/05/23(日) 16:58
- *****
- 365 名前:開設・・・いや解説 投稿日:2004/05/23(日) 16:59
- は〜い、ご説明しましょう。
【霊媒香】というのは私のおじい様、紺野幻十朗が何を血迷ったのか開発してしまった線香です。
ま、詳しい成分とかは(作者がわかってないので)省きますが、
簡単に言えばコレを高位霊力保持者以外の人が嗅ぐとトランス状態に陥ってしまうんです。
嗅ぐ、と言ってもトランス状態に陥る原因はその香ではなくて薄い匂いしか持たないその煙です。
この煙を吸い込むと、脳の精神波を発するのに必要な部分に影響が出て
普段は一定に保たれている精神波、それに伴うSNTの放出量が不安定に
なってしまいこのような状態になるものと思われます。
高位霊力保持者の場合、この精神波を発する脳の部位が頑丈というか
常人より遥かに発達しているのでさしたる影響は見られません。
藤本:やっぱロクな発明しないね、紺ちゃんのおじいちゃん・・・。
ひぃぃっ!!ふ、フジモン!!ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメ・・・(エンドレス)・・・。
藤本:イヤ誰がフジモンだ・・・って聞こえてないし。。。
- 366 名前:短ッってツッコミがご遠慮下さい。 投稿日:2004/05/23(日) 17:00
- *****
- 367 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:01
- あ、黒紺最強神話崩壊・・・?
ま、いいや。(イイノカ?(イイダロ
「・・・というわけで、あなたはこの方の糧となるべく選ばれたのです!!ハァハァ・・・。」
「はい?あ、あぁハイハイ。わかりました」
ようやく飯田さんばりの長い力説を終え、肩で息をしながら覆面が
顔を近づけてきたので適当に返事をした。
いや暑苦しいから。
「安倍さん、何言ってたか要約してもらえます?」
『なっち国語は得意だべ。まかせるべさ。
えっとね、闇神様に世界の崩壊を防いでもらうには若くて活きの良い女の子の命が
たくさんいるんだってよ。で、田中ちゃんもその一人だから光栄だろ?みたいな』
ふざけろ。
意味がわからんわ。
そんなワケわかんない理由にはたとえトランス状態でも騙されんだろ普通。
『「特異なファンタジーを信じ込んでしまった人間に論理は通じない」
ごっつぁんによる福音書第5章より。
騙されてもうてるもんはしゃあないやろ?論理が駄目なら暴力や。
もう別室に捕まってた女の子らは助け出したから好きに暴れてイイで』
「・・・了解」
- 368 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:02
- 「ん?何か言いまし・・・がはぁっ!?」
霊獣化と同時に紅い炎で石膏像の腕をぶち壊し、覆面教祖の鳩尾に前蹴りを一発。
おぉ、もんどりうって苦しんでる。
物凄く情けないねぇ、あはははは。
「き、貴様、その姿、何者だ!?」
「UFAの人間でーす♪アンタを未成年者略取誘拐の容疑で逮捕します」
ぴらぴら、とスカートのポケットに押し込んでおいた紙きれを示しつつ、軽い口調で言ってやった。
その顔がみるみる青くなっていくのが覆面の上からでも丸分かりだ。
「お、己・・・。かくなる上は、ブツブツ・・・・。」
「?」
教祖が何かの詠唱を始めると間も無く
何時の間に動いたのか、中澤さんと安倍さんに気絶させられた覆面集団の中でも
最前列にいた奴が一人スクリ、と立ち上がると、その覆面が吹き飛んだ。
その顔に驚いたのと、自分があのメガネを掛けていない事に気付かなかったのが不味かった。
立ち上がった彼が右腕をこちらに向かって突き出す動作をすると間も無く
ふっ、と風があたしの白い前髪を靡かせたかと思うと、次の瞬間ガラ空きの腹部を襲った衝撃。
吹き飛ばされ、石膏像の胴体を背中で砕くコトになってしまった。
いたた、クソなんであいつが・・・。
- 369 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:03
- 「ゆ、夢宮くん・・・?なんで?」
「・・・・・・・・。」
返答はない。
どうやら彼もトランス状態にあるらしいコトは
焦点の合っていないその目を見れば明白だった。
- 370 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:03
- ―――――――
- 371 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:04
- 「うるさいなぁ・・・、寝不足なんだから寝かしてよ、薫ぅ」
「健全な女子中学生が休み時間に友達とおしゃべりもせず寝てるなんてありえないわよ」
ふん、どうせあたしは健全な女子中学生じゃないよーだ。
なんか無性に腹がたったので無視して机に突っ伏した姿勢のまま目を閉じた。
二秒後に感じた馴染みのある浮遊感と直後の後頭部が
硬い平面にぶつかる衝撃でまたすぐ目を開けるコトになったけど。
「健全な女子中学生が休み時間に友達とおしゃべりもせず寝てるなんてありえないわよ?」
「はい、わかりました。聞きますよ」
語尾を上げただけで他は二回目の脅迫めいた発言に観念して椅子に戻る。
健全な女子中学生が古武術の達人であっていいはずもないと思うんだけどなぁ・・・。
「でね、夢宮くんのご両親、交通事故で亡くなっちゃったじゃない?」
「あぁ、そーらしいね」
「そっけないわね。同じ境遇でしょ?」
「ほっといてよ」
確かに両親が突然死んだってトコは同じだろうケド
こっちはソレをキッカケに怪しい世界に踏み込んじゃったんだ。
変な仲間意識なんか湧かん。
- 372 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:05
- 「まぁいいや。で、ソレから夢宮くん、おかしな宗教にハマっちゃってるらしいのよ」
「・・・今度はドコで仕入れた?そんな情報」
「企業秘密」
コイツの企業秘密は国家機密と同等の守秘性を秘めてそうなのでそれ以上の詮索は中止。
「で、それが何?」
「気にならない?その宗きょ・・・。」
「ならない」
まただよ。
前にも何度かヤバそうな調査をあたしに押し付けようとしてきたけど、
コイツはあたしをどっかの推理漫画の「悟った様で実は引き篭もりがちな意見」ばかり
述べる少年漫画にはありえない無気力な主人公か何かと勘違いしてないか?
「主人公がそんなことでどうする」
「誰がだ!とにかくそんなん知らん!!」
「も〜、つまんないなぁ・・・。」
「おもしろがるなぁ!!!」
- 373 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:06
- ――――――――
- 374 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:07
- まさかその数時間後にこんな状況に出くわすハメになるとは・・・。
「ソイツは特異な霊媒体質でなぁ、両親を蘇えらせてやるという約束に
騙されてそうなったんだよ!!」
死んだ人は二度と帰って来ない。
例えどんな術を使っても、それは変わらない現実なのに・・・。
「くっ、夢宮くん!!目ぇ覚まして!!!」
「か・・・さん、と・・・さ・・・。」
呼びかけても、彼の目は虚ろなまま。
多分ご両親を呼んでるんだろう、その口から漏れる声が痛々しい。
「くはは、無駄だ。今の彼はもう我が術中。
彼に込めた霊魂が尽き果てぬ限りは元に戻らん」
この、、、中澤さんの鎖に縛られて背中に足乗せられた姿勢で生意気な・・・。
あ、鎖の締めつけ強くなった。
苦しんでる苦しんでる、イイ気味だ。
- 375 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:07
- それにしてもココにいる約20人分の霊魂と夢宮くん本人の霊魂を
使ってるなら生霊とは言え結構な量だな・・・。
しかもあたしじゃ奴さんの位置はわからない。
これは一人じゃ無理。
「安倍さん、中澤さん、あたしじゃどうにもなんないんですが・・・。」
「ん〜?イイ機会やし、一人で頑張ってみぃ」
「危なくなったら助けてあげるから」
「はぃ!?そんな、コレ元々あなた方の・・・あだっ!?」
抗議の声は、突然襲ってきた衝撃に遮られた。
さらに連続して襲ってくる衝撃を彼の動きと空気の流れで察知して
なんとか防御してるけど、このままじゃいずれやられる。
どうしたもんか・・・。
媒介とは言っても、別にオーバー○ウルみたいに彼の身体をデクの身体が覆ってるわけじゃない。彼の身体に込めた魂をいくらか離れた位置にいるデクがエネルギーとして
使っているに過ぎないから、彼はエネルギーの貯蓄所みたいなモンだ。
つまりさっきも言った通り、あたしにはデクの位置がわからない。
爪で斬るにも炎で燃やすにも、位置がわからないんじゃ間違いなくスタミナ戦を強いられる。
先輩の任務でんなこたぁごめんだ。
それなら・・・。
- 376 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:08
- 右足に力を入れ、床を蹴って跳躍。
さらに身を翻し天井を蹴り、夢宮くんの眼前に降り立つ。
あのデク鈍そうだからこんな速い動きにはついてこれまい。
「夢宮くん!!」
肩を掴んで揺さぶっても、反応なし。
こうなったら仕方ない。
拳をぎゅっ、と握り、右ストレート一閃。
あ、手加減はしてるよ?一応。
彼はもんどりうって地面に倒れ、そのまま失神。
デクを動かしてたのは彼っぽいから、こうすりゃとりあえずデクは動かないでしょ?
「中澤さん、ここまでやったんですからあとは自分達で浄化して下さいよ?」
「おぉ、この場合それが最善やな。なんや自分、しばらく見ん間に成長したな」
「ほんとほんと」
「そらどーも」
中澤さんは【魔消扇】を取り出し、(あんなデカイもの何処にしまってたんだ?)
ある一箇所にツカツカと歩み寄り立ち止まると、何か唱えてソレを横向きに振った。
- 377 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:09
- さっきから何となく感じていた嫌な気配が消え去るのを確認し、
鎖で締め上げられたバカ教祖に歩み寄る。
指をパキペキ鳴らしながらね?
「あんた、よくも人のクラスメイトを騙くらかしてくれたね?」
「き、貴様よせ!!わ、私は・・・。」
「私は・・・?」
「じ、【G】の仲間だぞ!!指一本触れてみろ、貴様等など・・・。」
「あ〜ぁ、このオッサンまた世迷い言を・・・って、おい、どした?」
- 378 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:10
- 【G】。
その通り名を聞いた瞬間、
浮かんできたのはお父さんとお母さんのいつか遠い日のあの笑顔。
身体が、熱い。
気付いたら、覆面の首を片手で締め上げ、その身体を壁に押し付けていた。
「どこに、どこにいる!?」
「な・・・、ぐぁ・・・は、はな・・・うげぇっ・・・。」
「アホ!!お前何してんねん!?」
「言え!!!」
右手に炎をたぎらせ、覆面の顔の横の壁を殴りつける。
コンクリートに亀裂が走り相手の覆面が焼けて燃え落ちた。
露になった顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃに歪められているのにも構わず、
あたしは首を握る力をさらに強めた。
同時に相手の全身から力が抜けたのを感じたけどそれでも力を込めつづける。
「田中ちゃん!!マジでその人死んじゃうって!!!」
「言えっていってんでしょ!?」
「ちっ、駄目や。自分見失っとるわ、しゃあないな」
後頭部を衝撃が襲い、あたしの意識はそこで途切れた。
- 379 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:10
- ―――――3日後。
- 380 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:11
- 夢宮くんに事件の記憶は無かったらしく、
UFAで若干の記憶操作を受けた後はすぐに学校に顔を出した。
欠席の理由は精神的過労による入院てコトで処理されたみたい。
それにしても、あたしは何であんな事・・・。
やっぱりまだ後藤真希に対する恨みが抜けきってないのかもしれない。
克服したつもりだったんだけどなぁ・・・。
チラリ、と他の男子と楽しそうに喋ってる夢宮くんに視線を移す。
あたしもやっぱ、両親を蘇えらせて貰えると知ったらあぁなったのかな・・・。
はぁ、なんか憂鬱。
- 381 名前:FILE・1〜信じる者は〜 投稿日:2004/05/23(日) 17:12
- 「『大事なのはもしもを悩む事ではなく、これから何を為すかだ』
後藤真希による福音書第・・・えぇっと、、、忘れた」
聞き馴染みのある声があたしのスパイラルに下がっていくテンションを止めた。
「って、えり。下級生の教室で何してんの?」
「だってなんか結ヶ崎さんがれいなの元気ないから励ましてやってくれって言うからさ」
「・・・あいつまた余計なコトを」
「こら。そういう言い方しないの」
「・・・はい」
ま、済んだコトくよくよ悩んでてもしょうがないしね。
またこれから頑張りますか!!
・・・でもその前に、ちょっと寝かして。
と、思って目を閉じると1.5秒後に例の浮遊感。
目を開けると床が上で天井が下。
皆が逆さまで目を見開いてるのが見える。
いや逆さなのあたしなんだろうけど。
「人がせっかく来てあげてるのに寝るな」
後頭部を衝撃が襲う寸前聞こえたえりの声。
これからはこういう人たちの前で無防備に寝るのよそう、と誓った瞬間でした。
- 382 名前:FILE・1〜信じる者は〜(完) 投稿日:2004/05/23(日) 17:13
- *****
- 383 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/23(日) 17:18
- 一週間ぶり更新終了〜♪
いやぁ、なんだこの話っていうね?
自分でもこの話に重要性があるようなないような。。。
ま、一つだけ伏線(?)みたいの消せたので。
一応このシリーズのテーマは田中ちゃんの成長なんですが、
果たして描けるかどうか・・・不安。
場合によってはネタに逃げます(ヲイ
そちらも笑いのセンスが無いって問題があるんですがね?
- 384 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/23(日) 17:30
- >>355 我道 様
あぁ、なんてことだ。。。
急いでナ○ック星に逝かないと・・・。
拝まなくてはならないのはこちらの方です。
南無・・・。(違
僕は裏紺も大好きですw
>>356 331 様
おや2年振りですか?
その間にリアルの娘。たちも色々ありましたしねぇ。。。(しみじみ
でも世代交代というにはまだまだ皆輝いていますw
放置&放棄はしないつもりなのでこれからもヨロシクほねがいします。
>>357 Ray 様
良かった、笑ってもらえたw
ぱぁどぅん?は自分も英検の面接で連呼してました。(ヲイ
立派だなんてとんでもない。
だいたい作者としてはあなた様の方が先輩であります。
つまり少なからず自分にネタをパk(ry)ている被害者の一人・・・。
で、ではこれからもよろしくです(逃走)
- 385 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/23(日) 17:38
- >>358 遥 様
えぇ、エライ話が進んでさらにワケわからなくなってます。
それぞれのキャラ気に入ってもらえたようで嬉しい限りデスw
尊敬とはこれまた恐縮です。。。
これからもついて来てください、
脳に変な影響出ない程度に。。。(エ?
>>359 名無飼育さん 様
あ、どこからともなくの声の主w
黒紺は今回降臨しなかったので殺されはしな・・・。
――――パンッ・・・、バタッ。。。(←誰かが撃たれて倒れる音
黒紺:ふっ、甘いんですよ。(ニヤソ
では皆さんまた次回お会いしましょうノシ
- 386 名前:我道 投稿日:2004/05/23(日) 18:48
- 更新お疲れ様です。
桃白○のように、メカニックになって復活した我道です(w
田中さんの成長が、私にも嬉しい今日この頃です。
はぅ!く、黒紺が・・・黒紺が・・・そんな・・・_| ̄|○
黒紺の勝利を祈りつつ、次なる更新も期待してます!
- 387 名前:Ray 投稿日:2004/05/23(日) 23:19
- 更新お疲れ様です
作者としては私の方が先輩ですか?
でも上手さで行くと天と地の差が_| ̄|○
ネタをぱk(ry!?(w
いやーおいらのでよかったらどんどんぱk(ryってくださいな(ヲイ
ぱk(ryられてなんぼですよ(ヲイ
- 388 名前:Ray 投稿日:2004/05/23(日) 23:20
- 落としてしまいました_| ̄|○
申し訳ない。・゜・(ノД`)・゜・。
- 389 名前:shou 投稿日:2004/05/25(火) 18:42
- 更新お疲れ様です。
いろいろあって見れなかったんですが久しぶりに・・・っく(涙
久しぶりに見ると感動しますね・・・
作者様、弾丸なんか素手で抜き取って(貫通してますか?)頑張って下さい。
更新を待ち望ませていただきます。
個人的質問ですが書き手になるまでにはどれ位の期間を要しましたか?
- 390 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/25(火) 21:10
- >>389 shou 様
レスありがとうございます。
次の更新いつになるやらわからんので質問には早急に答えさして頂きますね。
書き手になるまでですか、、、
え〜と、かれこれ1年半くらいROMってた気がしますw(長
まぁ自分の場合異常な長さでしたが他の作者様の作品で相当勉強さしてもらったのは確かです。
ま、その頃は特に書く気はなかったので無意識でしたが。。。w
でももしこれから書き手としてデビューされるなら思い立ったが吉日だと思いますよ?
実際自分も書こうと思ってから約1ヶ月で始めましたし、コレ。(←無計画
なんか生意気にも余計なコト言ったかもしんないですがコレでよろしいでしょうか?
返レスはまた改めて。。。ノシ
- 391 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/30(日) 00:19
- 更新お疲れ様です。
田中さんかなり的確な判断だと思います…でもクラスメイトに何の迷いもなく右ストレートはひどいかもw
作者さんの書く田中さんは本当面白くて大好きなので頑張ってください。
次回も期待してます。
- 392 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:38
-
あの紅い月を見ると、
あの日のコトを思い出す。
血のように紅い月の下、
私が全てを失ったあの日を・・・。
- 393 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:39
- *****
- 394 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:40
- 「いや〜、相変わらず涼しくていいねこの部屋」
「勉強聞きにきたんじゃないの?」
「ん?あぁ、そーでした」
UFAJ(ジャパン)本部地下5階、さゆの部屋。
ここは地下にあるコトと全面コンクリートの打ちっぱなしなおかげで夏でもかなり涼しいので、
夏休みの宿題でわかんないトコがあるって口実を使って入れてもらった。
さゆは学校にも行ってないし一般常識も乏しいケド、勉強は意外とできるのだ。
「でもさぁ、さゆって勉強ドコで覚えたの?
学校行ったコトないんでしょ?独学?」
実際のウ゛ァンパイアは映画みたく日光浴びて塵になったり、
身体から煙上げて燃え出したりはしない。
ただ強い光があんまし好きじゃないってだけで、
出ようと思えばいつでも外出できるので冬場はよく一緒に買物行った。
ずっと(店内も)日傘差しっぱだったけど。
じゃあなんで学校行かないのか、と前に尋いたら、
やっぱり太陽好きじゃないし特に行きたいとも思わないらしい。
ナッツアレルギーの人はナッツの味もダメになるのと一緒だ、と若干ズれた例えを添えて言ってた。
- 395 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:41
- 「・・・お姉ちゃんに教えてもらったの」
「アレ、さゆってばお姉ちゃんいたの?」
「・・・まぁ、一応ね」
なんだ一応って・・・?
そういえばあたしさゆの家族のコトとか尋いたことなかったな。
いやさゆに限らずココの人達全員そーだけど。
その人自身のコトはともかく、その家族なんてあんまし気になんないしなぁ・・・。
まぁ、「親の顔が見てみたいわ!!」・・・って思うよーな被害にはしょっちゅう遭遇するんだけども。
「何その一お「さゆ!!」
「「うきゃぁっ!?」」
訊きかけた瞬間、矢口さんに抱えられたえりが突然何もない空間から
飛び出して来たのに驚いてさゆに飛びついてしまった。
くそ、、、心臓に悪い・・・。
ギロッ、とえりをにらみつけたつもりだったけど、矢口さんの腕の中に既にその姿はなく、
代わりに矢口さんとえくすちぇんじるっくす。
いや矢口さん、ひぃっ、て何ですかひぃっ、て・・・。
- 396 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:42
- 先輩の反応に軽く凹みつつえりの現在位置を確かめると、それはテレビの前。
20本の蝋燭とあたしが自室から持参した机用の蛍光灯の他にもう一つ光源が加わった。
えりはと言えば何やらガチャガチャとチャンネルをいじってる。
相当慌ててるらしく、チャンネルと間違えて音量のボタン連打しちゃって耳塞いだり、
なかなか目的の局に合わせられずにチャンネル行ったり来たりさしたり。
リモコンならテレビの上に乗ってんだけどなぁ・・・。
「コレ!コレ見て!!」
よーやく目的のチャンネルに辿り着いたえりが示す画面の中、
女性リポーターが現場(?)の様子を伝えてる。
時間帯からして昼のワイドショーかな。
若干真面目な感じだから多分THE・ワ(ry
ていうかえり、矢口さんとこんなモン見てたのか・・・?
右上のテロップを読むと、「吸血鬼出現か!?連続通り魔の恐怖!!」だって。
む?吸血鬼ぃ?
- 397 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:43
- 「コレがどうしたの?最近多発してる通り魔事件でしょ?」
「れいなは黙ってて。さっき写真が・・・あっ!コレコレ!!」
(((( ;゜ ヮ゜))))ガタガタ<に、睨まれた・・・。
言われた通り黙ってテレビに視線を移すと、今度は写真が映ってる。
背後の赤い月の逆光で影になってるのと撮影場所から離れてたんだろうか、
あまり大きくは写ってないせいでハッキリとはわからないけど
人の影らしきモノがその写真には写ってる。
『コレは昨夜、現場付近でこの赤い月を撮影していた男性が偶然撮影したモノで・・・。』
ただ、2つ程おかしな点がある。
まずソレが人間だとするなら、写真の下の方に写っているビルの頭との距離が離れすぎている。
こんな状態になるには相当の跳躍力か、あるいは翼なんかが必要だろう。
そう、もう一つのおかしな点、
その影の背中から生えているさゆのソレによく似た翼のような・・・。
- 398 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:44
- 「こ、コレって・・・?」
「お、ねぇ・・・ちゃん?」
「やっぱりそうなの!?」
「い、いや・・・。この写真じゃよくわかんないけど・・・。」
「はぃ!?何?コレがさゆのお姉ちゃんなの!?」
「だから今わかんないって言ってんでしょうがぁ!!」
「はぶっ!?」
イヤ亀井さん、いきなりグーはないッスよ・・・。
「あぃたぁ・・・。一体なんなの?」
ズキズキする頬と後頭部(派手に吹き飛んで壁に衝突した)を押さえつつ、
いつも以上に凶暴化してるえりの顔色を窺いつつ尋ねた。
えりは一旦さゆの方に視線を逸らし、さゆが一つコクン、と頷くのを確認してから口を開いた。
「実はさゆのお姉ちゃん、・・・ある理由で行方不明になってるんだけど
ソレがこの写真に写ってる人じゃないかって思って・・・。」
- 399 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:45
- 「まぁ、確かに真祖って珍しいらしいケド、
コレ下手したら連続殺人犯でしょ?それなr・・・がふっ!?」
今度はパー。
もちろん平手じゃなくて掌底です。
双纒手とはまたマニアックな技を・・・。
痛手を負わされた内蔵が心配なので瞳の色を紅くして自己治癒力を高めながら
倒れっぱなしだったあたしを、えりが胸倉掴んで無理矢理起き上がらせる。
鼻と鼻が触れそうになる距離まで顔を近づけると、小声で怒鳴った(?)。
「アホかアンタは!?ちったぁ気ぃ使え!!」
「ぅえ、え、えり、おち、落ち着いてぇ」
頭をガックンガックン揺らされながら言ったんだけど、えりは一向に手を止めてくれず。
やむなく揺れる視界のままさゆの表情を伺うと、ものスゴク沈痛な面持ちで・・・。
もしかしてあたし、何かマズイこと言いました?
- 400 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:46
- 未だえりによるシェイキングヘッドは止まず、
部屋にテレビのコメンテーターらしいオカルト研究者の勝手な見解が響き始めた頃
あたしの睨みの後遺症――そんなにキツイの?――から立ち直った矢口さんが口を開いた。
「多分この件ウチにも回ってくるだろうから、
担当任してもらえるようつんく♂さんに頼んでくるよ」
「えっ、イイんですか?」
さゆが意外だ、という声を上げた。
ホントに相手がヴァンパイアなら危険度高いし、ウチらじゃ任してもらえないと思ってたんだろう。
あたしもそう思ってたんだけど・・・。
「どうせ止めたって自分で確かめに行くんだろ?」
「う゛・・・。」
「あははっ、それなら最初っから正式にオイラが協力した方が安全だしね。
他にも来れそうなメンバーいたら頼んでみるよ」
「あ、ありがとうございます!」
- 401 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:47
- 流石と言うべきか、矢口さんはウチらの行動パターンをよくわかってらっしゃる。
さゆはペコペコと何度も頭を下げ、
矢口さんはソレを「良いってコトよ」とか言いながらペチペチ叩いてる。
何か妙に嬉しそうだな・・・。
あ、普段人の頭が自分より下にあるコト少ないからか。
「良かったね、さゆ」
「うん!」
「ってぇ、え、えりぃ・・・?」
「ん?」
「いい加減、頭に、血が、昇っちゃって、るんです、がぁ」
「あ」
無意識かい・・・。
長いコト引っ張られてたせいで、あたしのTシャツが一着ダメになった。
- 402 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:48
- ―――――――
- 403 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:49
- もう一度情報を整理しておこう。
そう思って矢口さんの運転するワゴン車の中、
あたしは手元にあったファイルを捲って先程より幾分速度を上げてそこにある文字を目で追った。
最初の被害は一週間前の深夜。
現場は都内にある繁華街の人目につかない路地裏。
被害者は飲み会からの帰宅途中だった25歳のOLで、
心臓を鋭利な刃物か何かで刺され即死した後、大量の血を抜き取られたと見られている。
現場に落ちていた血の量と被害者の失血量との間に明らかな差があるのが原因だけど、
この事実が例の「吸血鬼騒ぎ」を巻き起こしたんだろう。
この後一週間で若い女性が3人、比較的近い地域で短期間に連続して同様の被害に
遭ったせいでその常識的にはありえない噂はさらに真実味を帯びちゃったわけだ。
とは言え流石に国家権力・警察は日本の法律上、
科学的に存在を認められていないモノを容疑者にするわけにはいかない。
何処か別の場所で被害者を殺害した後、現場に遺体を運んで採取しておいた被害者の
血液を丁度心臓を刺された時出る程度にばら撒いておいたものと見て捜査を進めてる。
犯行動機も単に「吸血鬼騒ぎ」を巻き起こしたかっただけだ、と見る他ないみたい。
- 404 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:50
- ただここで問題が一つ。
2人目の被害者、
酔いを覚ます為に同僚と路地裏に入ってダベってたらしいんだけど、
その同僚がトイレに行くために店に戻り帰って来た時には変わり果てた姿だったらしい。
戻って来るまでにかかった時間は多く見積もっても10分程度らしいから、
コレが普通の人間の仕業とするとその10分の間に被害者を別の場所に移して殺害し、
すぐさままた元の場所に戻したってコトになる。
時間的に見てそれはムリでしょ。
となると犯人は本当に被害者の血をその場で大量に飲んじゃったってのが
一番合理的なんだろうケド、警察はその同僚が実はどっかで
2、3時間寝てたんじゃないかって思ってるみたい。
そりゃ生身の人間が血液なんてギトギトしたモンを
何リットルも一気飲みなんて非現実的だからねぇ・・・。
そこへ来てあの写真。
マスコミが騒ぐのにコト欠かないネタだ。
- 405 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:51
- でも犯人をヴァンパイア、真祖だと仮定してもいくつかの疑問はある。
まずその犯行方法。
本当に犯人があの悪魔の翼を持つ真祖だったとしたなら刃物で心臓を突くなんて
回りくどいコトをしなくてもその鋭い牙をセオリー通り被害者の首筋に突き立てれば済む話だ。
ていうか刃物が無くても自分の爪と怪力で貫手かませば人間の肋骨くらい突き破れるハズ。
さらにさゆの話だとヴァンパイアってのも今じゃだいぶ社会に馴染んじゃってるらしく、
基本的にはUFAの保護の元、輸血パックを支給してもらったり
人間と結婚してその血を分けてもらえばコト足りるからいちいち人間襲って
UFAに追われるような馬鹿をする奴は稀少らしい。
第一、1度に飲む量が多過ぎる。
普通は1日にコップ一杯分で足りるはずだし、
何日か飲まなくても普通の食事さえ摂ってれば生活する分には問題ないのに・・・。
こういう妙な点が多いから、UFAもあまりヴァンパイア犯人説を支持してない。
あの写真も騒ぎに乗っかった偽物で、例の同僚の証言も勘違い。
ってのが一番現実的で有力な仮説だね、今んトコ。
だからこそあたしらみたいなルーキーに任してもらえたわけだし。
- 406 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:52
- チラリ、と左に座るさゆの方を横目で窺ってみる。
眉間にシワを寄せて、窓の外を眺めている。
こんな表情のさゆを見るのは初めてかもしれない。
さっきの反応といい、やっぱりお姉さんと何かあるのかな・・・。
気にはなってるんだけど、勇気が無くて訊き出せない自分が情けない。
こんな時、薫くらいの野次馬根性があれば・・・えりに殺されるね、きっと。
「よっし、着いたぞぉ」
矢口さんの声に、運転席側に身を乗り出してフロントガラスの向こうを確認する。
多分ココは繁華街の入り口付近の駐車場かなんかだろう。
ちょっと離れたトコロから、ガヤガヤとした喧騒と目に悪そうな派手な光が漏れてきてる。
「とりあえず現場を一つ一つ見てみよっか?一応もうウチの調査員が調べてあるみたいだけど」
「ん〜どうする、さゆ?」
「・・・行きます」
きっと緊張してるんだろう。
答えた表情がかつて無いほどに堅い。
- 407 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:53
- あんな繁華街に中学生を入れるのはよくないってコトで、
あらかじめ貼っておいてもらったらしい符を使った矢口さんの空間移動術により現場に到着。
路地の入り口には「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープが張られてる。
電燈なんて無いから、光源は入り口から入ってくる繁華街の
精神衛生上あまり良くなさそうなネオンの光と夜空に見える紅い月のみ。
矢口さんが懐中電灯を取り出すのを待たず
瞳だけ獣化し夜目を利かせてアスファルトの地面を見ると、
黒ずんだ大きな血痕とその上に描かれた白い人型が目に入る。
よく利く鼻にはまだいくらか残る生臭い匂いが入ってきて気持ち悪い。
「コレと言ってファイルにあるトコと違うモンは無いみたいですね」
「そうらしいね。じゃ、次行くか」
矢口さんの懐中電灯に顔を照らされた
さゆが無言で頷こうとしたのとソレは、ほぼ同時だった。
- 408 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:54
- 上方から現れる、殺気。
咄嗟にさゆは飛び込み前転で振るわれたナイフを回避し、
矢口さんは絶妙のタイミングで手元から苦無を放つ。
影は避けようともせずに4本の刃を腹筋で受け止めた。
ザシュ、という音と共に鮮血が白い人型の上にバラ撒かれる。
そんなコトは気にも止めず、影は刺さった苦無を引き抜いてこちらに投げ付けてくる。
投鄭の心得は無いらしい。
ギュルギュル高速で回転しながら飛んでくるソレらを首を振ってかわし、
えりが何処から出したのか2体の骨の下僕に命じ、
サイレンサー付きのグロックで影の身体に風穴を穿つ。
「がぁぁああぁあッ!!!」
やはり痛覚を持っていないのか、影は怯まずにあたしの方へと駆け出してきた。
躊躇無く自慢の炎でソイツの足を焼き尽くそうとしたトコロで、
さゆが間に入りソイツの顎を蹴り上げる。
- 409 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:55
- どうやらさゆも影の顔を確認できたらしい。
コイツは間違いなく男。
多分20代後半くらいか。
男がブンブン無作為に振り回すナイフを夏先生仕込みの
体捌きとステップで巧みにかわしつつ、さゆが口を軽く開いた。
「―――――――ッ!!!」
開けた口から放たれた超音波が男の両足首を斬り落とし、
男は万有引力の力で地面に引き寄せられ倒れこむ。
「ち、ちくしょッ!!てめぇら何モンだ!?」
「UFAの人間に決まってんでしょうが」
「はぁっ!?何だよソレ!!」
「うっさい」
「ふべっ!?」
喚く男の顔面にえりがネリョチャギ(かかと落とし)を見舞い、黙らせた。
その間に矢口さんは懐から取り出した符を二枚、
それぞれ斬り取られた男の足首の傷口に貼って印を結ぶ。
- 410 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:56
- 「よしっ、コレでしばらくは再生できん」
「・・・がう・・・。」
「ん?何さゆ、どうかした?」
ボソ、と呟いたさゆの方を向き直り、返答を待つ。
って、何でそんな絶望的な目をしてんの・・・?
「違う!!この人真祖じゃない!!!」
「は?何言って・・・。」
「ギャアアァァァアアアアア!!!!!!!」
「な、何!?」
突然男が悲鳴を上げたので、慌ててそちらに視線を移した。
なっ・・・!?
男の腕や脚が、先の方から消滅していく。
さっき貼った筈の符は地面に落ちてるし、見間違いじゃない。
血も流れるんだけど、流れ出した傍からその血も消滅・・・。
やがて胸の半分ほどまで消滅が進んだ時、男の悲鳴がフッ、と消えた。
同時に侵食も止まり、男は首と僅かに消え残った胸部だけという無残な姿に・・・。
- 411 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/05/30(日) 11:57
- ほんの数分間だけ続いたこの凄惨な光景に、あたし達4人は言葉を失って立ち尽くしていた。
「久しぶりだな〜。あ、初めましての子もいるかぁ?」
その声は極めて軽く、しかしハッキリとあたし達の鼓膜を刺激した。
バッ、と弾かれたようにその声のした方、数メートル上空を仰ぎ見る。
悪魔の翼を広げ、紅い月を背負って空中に悠然と佇むその姿は
とてつもなく綺麗で、それでいて恐ろしかった。
さゆのお姉さん、道重・・・いや市井紗耶香は、
まるでその位置関係がそのまま力の差であるとでも言いたげに、
あたし達4人を上空から見下ろしていた。
- 412 名前:では、引き際の分からなくなったこのコーナー 投稿日:2004/05/30(日) 11:58
- *****
- 413 名前:KvsF 投稿日:2004/05/30(日) 11:59
- どうも、本編で出番がめっきり無くなってしまった紺野あさみです。
・・・めんどくさいのでちゃっちゃと解説行きますか。
紅い月:夏至の頃など、月の南中高度が高い時に見れる満月です。
高度が高くなるコトで、月の光が通過する大気の量が増えますね。
そうすると波長の短い青い光は大気に吸収、反射されてしまいますが、
波長の長い赤い光は吸収されにくく、赤い光だけが地表に届くために
この現象が起きるのです。
欧米では「ストロベリー・ムーン」とか「ローズ・ムーン」と呼ばれます。
ん?でも夏至って6月ですよ?この話は多分7月・・・。
双纏手:八極拳の技で「そうてんしゅ」と読みます。
腰を落とし、床を踏んだ時に発生する力を背中の筋肉で増幅し
両の掌底で相手の身体に叩き込む技です。
主に内臓へのダメージを狙うみたいですね。
ちなみに夏先生は八極拳を始めとする中国拳法の達人です。
- 414 名前:KvsF 投稿日:2004/05/30(日) 11:59
- 今日はもうこんな感じでイイでしょうか?
藤本:最近やる気なくない?紺ちゃん・・・。
で、出たぁ!!!!ふ、フジモン!!!お助けぇ!!!!
藤:あ〜ぁ、また・・・。
―――――BLACK降臨―――――
藤:は?ぶらっく?黒?何そ・・・れぇえええ!?
こ、こ、こ、紺ちゃん?その手に握った大量のパイナップルは・・・?
黒紺:ふっ、さようならフジモン・・・。
ぴんっひゅっかつんかつんころころころ・・・。
藤:いやフジモンじゃな・・・(ちゅどーん♪)・・・ギャアアアアアア!!!!!
藤本美貴、享年19歳、死因・爆死(嘘)
作者:・・・黒紺最強神話復活?って、まだ投げてるし・・・。
あ、一個飛んで・・・(どっかーん♪)・・・のぎゃひゃあああああ!?
黒紺:我、最強ナリ。ふふふ・・・。
- 415 名前:名も亡き作者(字違 投稿日:2004/05/30(日) 12:00
- *****
- 416 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/30(日) 12:07
- >>386 我道 様
おぉ、機械化しましたか。
てことは腕からスーパーど○ん波を。。。w
黒紺、こんな感じになりました。
ていうか何で凹んどるんですか・・・?ww
>>387 Ray 様
受け美貴カモーンナッ!!
・・・失礼、取り乱しました。
え?ホントにぃ?
じゃ、遠慮なくパk(ryらしてもらいますw(ヤメレ
あ、そんな気にしないで。
- 417 名前:名も無き作者 投稿日:2004/05/30(日) 12:15
- >>389 shou 様
お久しぶりでございます。
ご質問には>>390で答えときました。
なんかエラそうで申し訳ないッス。。。
感動とはまたもったいなきお言葉を・・・。
弾はデザートイーグルだったので貫通どころか大量に肉を持っていかれましたw
それにしては発砲音が軽い?気のせいですw
>>391 名無飼育さん 様
彼女にとって暴力は日常なのでそんなに罪の意識は無いのですw
ていうか確実に彼女よりヒドイ人が近くにいますからね。
今日はそのヒドさにターボがかかっていました。
ま、判断は的確ですねw
面白いと言ってもらえると救われますぅ♪
でわでわまた次回!!ノシ
- 418 名前:Ray 投稿日:2004/05/30(日) 13:23
- 更新乙っす
いやぁ〜田中さんが可哀s(ry
今回も笑わせて頂きました(ニヤ
ぱk(ryっていっても、オイラのには
ぱk(ryれる要素が一つもないと思われ_| ̄|○
オイラがぱk(ryらせていただくやも(ヤメレ
- 419 名前:我道 投稿日:2004/05/30(日) 13:32
- 更新お疲れ様です。
前回は黒紺最強神話が崩れ、凹んでいた我道ですが・・・
やっぱり黒紺は最強だぁぁぁぁ!!
っと、失礼しました。つい、取り乱してしまいました・・・。
姉妹の再会・・・次回が楽しみです!
暑さに負けず、頑張ってください!
- 420 名前:shou 投稿日:2004/05/30(日) 13:47
- 更新お疲れ様です。
市井の場面、短いのにものすごくひきつけられます。
笑いをつくってたら田中ボロボロになりますね(笑
次の更新待ってます。
(エラそうだなんてとんでもないです。
貴重なご意見ありがとうございました。(感涙 )
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/30(日) 20:45
- 更新お疲れ様です。
田中ちゃん今回ボコボコにされてむごいっすね・・・ツッコミいれただけで攻撃されてるミキティーもかw
やはり黒紺は最強だった!!ビバ黒紺!!
次回も更新楽しみにしてます。最後おいしいとこ持ってった市井さんに期待!
- 422 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:29
- 「いやしかしホント久しぶりだよな〜、少し大っきくなったんじゃね?さゆみ。
ヤグチは相変わらずちっこいけど」
「ちっこいゆーな!!」
親戚のおじさんかよ、、、
翼を羽ばたかせ威風堂々地上に降り立ったその人の開口一番に、
よもや心中ツッコまずにはいられなかった。
市井紗耶香
さっき車の中、矢口さんに教えてもらえたのはこの名前だけ。
市井ってのは偽名で本名はもちろん道重紗耶香。
なんで偽名使ってんのかは不明らしい。
どんな人なのか、と尋いても
「説明しずらい。一言で片付けるなら『変人』。会えばわかるだろうけど、
この先の人生の為にはあんま会わん方がイイと思うぞ」
としか答えてくれず。
とんでもないコトを車中に響くよく通る声で言ってるから
慌ててさゆとえりの方を向くと、二人は深々同意の相槌。
えりも前に一度会ったコトがあるらしい。
- 423 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:29
- で、実際会ってっつーか実物見てみて、成程確かに『変人』だ。
真夏の湿った風に靡くボーイッシュな黒いショートヘアと整った顔立ち、
口元から覗く鋭い犬歯、背中に称えた悪魔の翼。
ソレらと背後の紅い月があいまり、なんとも神秘的で恐いくらいの美しい印象を受けた。
けど、問題は地上に降りて月の逆光から解放され露になったその服装。
意味も無くビシッ、と決められたタキシード。
首元にはしっかりと蝶ネクタイが結ばれていて、足元には新品のてかりを放つ革靴。
いや、そのカッコだけならまだ胡散臭い詐欺師くらいの印象しか受けないんだけど、
此処は背後から時より酔ったオヤジが誰かに絡むような下品な怒鳴り声と、
決して気持ちのよくない光と香りが漂ってきてる空間なわけで・・・。
だいたいこのクソ暑いのに黒のタキシードはないだろ!?
ちなみにあたしは鬼の絵の入ったTシャツ(←着替えた)と半ズボン。
さゆとえりもあたしと似たような格好で、矢口さんに到ってはノースリーブを着てる。
正確なトコロはわかんないけど気温が30数℃に達しているのは間違いない。
それでも涼しい顔してる、ってのならカッコも付くだろうけど実際この方顔中汗がだくだく。
一体何が楽しくてそんなモノ着てるのかが理解不能。
よってこの人を『変人』と判断しました。
- 424 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:30
- 「で、何しに現れたんだよ?」
「む、久しぶりにあった旧友に随分だなぁ。だいたいそっちが勝手に現れたんジャン」
「しらじらしい・・・。どうせこうなるの計算してこんな事件起こしたんでしょ?」
イラ立った声で言ったのは・・・誰?この人。
リボンを吹き飛ばして二つに結んでたハズの髪をザワザワと沸き上がらせ、
危険な色を称えた双眸で実の姉を睨む阿修羅の如き人物。
少なくともあたしの知ってるさゆじゃないのは確かだ。
それでも勇気を振り絞って声を掛けてみる。
「さ、さゆ・・・?流石にソレは「おや、バレてた?」
・・・あ?
「バレて・・・ってアナタ、
あたしらに会う為だけにこんな事件を起こしたって言うんですか!?」
「そうだけど?」
「そんな・・・。」
「やめときな、れいな。こういう人なの」
前に出かけたあたしをさゆが制した。
「ま、文句があんならかかって来な。こっちもハナからそのつもりだし」
言いながら上着を脱ぎ捨てる。
どうやらやる気らしい。
- 425 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:31
- そっちがその気ならこっちだって・・・。
そう思って再び前に出ようとしたのを、今度は矢口さんが間に立って止めた。
「お前らじゃ無理だ。ココはオイラに任せな」
「おっとそーはいかない。ヤグチの相手はいちーじゃなくてその方」
市井さんが指差したのは矢口さんの影。
全員がそちらに視線を移すと同時に、影の中から人の手が現れ矢口さんの足首を掴んだ。
「なっ!?この術・・・。」
「久しぶりね、ヤグチ?」
「くっ、やっぱりアスカか・・・。」
影の中から顔を出した女性は、どうやら矢口さんの知り合いらしい。
矢口さんは懐から(ノースリーブの何処にそんなものを?)手裏剣を数枚取り出し、
その女性目がけて投げ付ける。
女性は影から勢いよく飛び出して難無くソレをかわし、市井さんの横に着地した。
- 426 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:31
- 「誰です?」
「福田明日香。サヤカと同じ昔の仲間だよ。くそっ、厄介なのが出てきた・・・。
悪いけどお前ら、3人でサヤカの相手しててくれるか?オイラもすぐ行くから」
「3人でって・・・、矢口さん一人であの人の相手する気ですか!?
そんなの危険ですよ!!」
「・・・と言うよりは、私達のウチ二人だけで市井さん相手する方がキツイんだよ」
悔しげに呟いたのは、えり。
さゆも頷いてる。
そんなに実力差があるわけ?
「話まとまったかい?ここじゃ狭いしウチらは上でやろーぜぃ」
真上を指差しながら市井さんが言ってるのは、多分屋上のコトだろう。
さゆが翼を開き、えりはその背に乗った。
あたしも霊獣化を完全なモノにし、跳躍の準備をする。
市井さんが浮かび上がると、さゆがその後に続いた。
白くなったあたしの髪が風に靡いて汗で濡れた額に張り付き、
なんとなく不快感を感じながらあたしも無機質なビルの壁をジグザグに蹴って屋上へと向かった。
- 427 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:32
- ―――――――――
- 428 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:32
- 「・・・意外ね」
れいな達が屋上へと消えた後、最初に口を開いたのは明日香の方。
「何が?」
「イヤ、また我を忘れて飛び掛ってくるもんだと思ってたから」
「・・・後輩の前でそんなみっともない真似できないよ。けど・・・、」
一瞬の沈黙。
明日香の背後に殺気が現れ、会話をしていた真里の身体が影となって消えた。
「・・・今はOK」
振るった苦無が明日香の首を切り裂く。
が、手応えは無く切り裂いた身体も影と消える。
舌を打ち、上空を仰ぐと其処には自分のソレと同型の苦無を構える明日香。
振り下ろされる苦無を自分のソレで受け止める。
ガィィン、という金属音が周囲に響き渡り、衝突した刃の間から火花が散った。
- 429 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:33
- 「あらかじめ作った影分身の背後に隠れ、適当に会話をしながら印を組み
影抜けでアタシの背後 に移動・・・、しばらく見ないウチに随分腕上げたみたいね」
「へんっ!ちゃっかり気付いて苦も無く同じコトやってる奴がよくゆーよ」
「人が褒めてあげてんのにそういうコト言うかな?」
「うっさい。その年下のくせにオイラを見下してる態度がよけー腹立つ」
「年上を敬うべきなのはその人が自分に年の功とでも言える教えを授けてくれる時よ?
それ以外の年功序列は文化という名の下らない風潮に過ぎない」
「だ〜ッ!!またそーゆーコムズカシイ言葉でごまかしやがって・・・。」
「客観的事実を述べただけ。なに紗耶香みたいなコト言ってんのよ?」
「むぐぅ、、、うりゃぁっ!!」
見事年下に言い負かされた真里が右上段後ろ廻し蹴りを放つ。
明日香はソレをバックステップでやり過ごし、掌に意識を集中させた。
- 430 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:33
- 真里の眼に、掌に放出した【氣】を回転させ高速で突き込んでくる明日香の姿が過ぎる。
回避は不能と判断し、ジーンズのポケットから守護壁符を数枚取り出し胸の前に掲げる。
刹那、先刻真里が見たのと全く同じ姿勢で明日香が腕を突き出してきた。
高速回転する【氣】の塊が掲げられた符を張られた障壁ごと吹き飛ばし、
生じた衝撃波が2人の身体を宙へと舞い上げる。
それぞれ空中で身体を捻って態勢を整え、6mの距離を置いて音も無くアスファルトに着地した。
「【邪見眼】・・・、思ったより早く出したわね」
「後輩が危ないんだ。出し惜しみしてる場合じゃないって。
そっちも出した方がイイんじゃない?【血継限界】をさぁ」
「出させてみれば?」
「へっ、上等だぁ!!」
懐に忍ばせた蔵具符から手裏剣を8枚、それぞれ両の指の間に挟み
腕を交差させた姿勢で構える。
「眼」の力を発動。
襲い来る刃を上空への跳躍でかわしこちらに電撃を見舞う準備をする明日香の姿を確認。
腕をバツの字に振り降ろして8枚一気に投鄭し、すかさず上空へ火球を放てるよう印を結ぶ。
- 431 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:34
- 回転で殺傷力を高めた刃に描かれた梵語で水を意味するヴァンという字が薄く輝き、
その手に握った苦無で叩き落とそうとしていた明日香の視界が発生した霧に塞がれ
刃の軌道が読めなくなった。
避けきるのは少々困難。
上へ逃げるのが最善、とかつての【モーニング】随一の頭脳が判断する。
霧の上方が僅かに揺らめいた。
真里はタイミングを測り、組立てた術を放つ。
「火遁・破炎弾の術!!」
翳された掌から炎の球体が高速で放たれ、飛び出した影を焼き尽くす。
布地の焼ける音と匂いが周囲を包み込んだ。
- 432 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:35
- が、真里の顔に浮かぶのは成功を喜ぶ色でなく、疑念。
ハッとして視線を正面の霧に移したが時既に遅く、
視界に青白い火花が散り全身を痺れるような衝撃が走った。
傾ぐ身体を膝をついて無理矢理支え、霧の中から飛び出した人物を睨みつける。
「くっ、、、どうやって・・・?」
真里の質問には答えず、明日香は淡々と言葉を紡ぐ。
「【邪見眼】…、その持ち主は過去幾度となく起こった天災や敵の襲撃など
雷魔にとってのあらゆる『邪』を予見し、雷魔忍軍の危機をその度に救った。
そしてその眼は未来を『知』る者、矢口一族に代々受け継がれ、
雷魔一族の側近が持つ【血継限界】として現代まで生き永らえた」
「・・・それがどうしたんだよ?」
「けどソレは、実際に未来を見ているわけじゃない。
現在感じる光景や音、空気の流れやその場に存在するSNTの種類など、
現時点で把握可能なありとあらゆる情報を脳が無意識のウチに処理し、
予想される事態を視覚として映し出しているに過ぎない」
「・・・ソレなら、先に見た映像と実際に見た映像が全く一緒なハズないでしょ?」
「それはデジャブ、つまり既視感の原理で説明できるわ。要は記憶の混乱ね。
脳が普段の何倍もの速度で働いた後ならその可能性もより高くなるし」
- 433 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:35
- 「・・・紺野も同じコト言ってやがったよ。ったく、やっぱりバレてたか・・・。
それで、どういう対処法を使ったワケですか?まぁだいたい想像できっけど」
言って、真里が視線を明日香の身体に移す。
一見地味だが戦闘に適した工夫を多数施された現代忍者の忍装束。
その腕や脚を覆う部分が所々裂け、其処から赤黒い液体が滴り落ちている。
後ろで一つに束ねていたえりあし程まで伸びた髪は髪留めを斬り裂かれたコトでおろされ、
前髪の隙間から引かれた紅い線がやつれた顎の先を伝いアスファルトに落ちる。
「アンタの知ってるアタシは何時でも無傷で勝てる状況を作り出す。
生憎何処かの少年漫画の主人公みたいに傷つく度に強くなれる体質じゃないからね」
「それで霧と空気の微かな動きを読んで飛んでくる手裏剣を致命傷を避ける程度にかわし、
手近にあったサヤカの上着を投げ上げてソレに向け術を放った隙だらけのオイラに
自慢の電撃を・・・ってわけ?アンタがそんな賭けみたいなコトするとは思わなんだわ」
真里のその反応に、明日香が眉を顰める。
一瞬、真里の口元が吊り上がった様に見えた。
- 434 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:36
- 刹那、爆音が轟き路地に鉛色の硝煙が立ち込める。
真里はビルの壁に両足と左手を性質を変化させた【氣】を使って吸着させ、
爆風を全身で受けながら祈るような思いでその光景を見ていた。
【邪見眼】の使用は脳と肉体に多大な負担をかける。
脳はともかく肉体は・・・、と思われるだろうが、脳の酷使というのは肉体にも影響を及ぼす。
その証拠に一流の棋士は一局打つ度に体重が何キロか落ちると言う。
脳が大量の栄養を求める為だ。
加えて印を省略した無理矢理な影分身+遠隔操作による爆破。
これで仕留められなければ紗耶香の相手をする余力など残せないだろう。
だが既に先程、彼女の耳は爆発によるモノとは違うもう一つの豪音を捉えてしまっていた。
煙が晴れ、再び真里が舌を打ちながら壁を蹴って地上に戻る。
爆発時にいた場所から一歩も動かず、その身体から青白い条線を
いくつも迸らせた明日香がこちらを見つめているのを確認したからだ。
- 435 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:36
- 「あの音・・・、やっぱり【雷鳴】か」
「やるじゃない?能力の弱点に気付いてしっかりソレを補ってるなんて」
「だからお前にそー言われるとなんか無性に腹立つからやめろって」
「ふふ、ホント懐かしいわね。こうやって軽口叩き合ってると・・・。」
ある種の愁いを帯びた表情で言う明日香から目を逸らし、
しばらく俯いた後再び視線を戻した真里の顔を彩るのは、悲しみ。
「だったら、、、だったら何であんなコト・・・。」
「・・・答える義務はないわ。そろそろ決着を付けましょう。後輩が待ってるんでしょ?」
「・・・っ、、、あぁ、そうだな」
質した明日香と答えた真里。
両者の顔に先程の色は既になく、戦士のソレへと戻っている。
- 436 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:37
- 数瞬の対峙による静寂。
それを先に破ったのは真里。
最早余力を残すことは考えず、【邪見眼】の使用一回分の
集中力だけを残して持てる力を全て【練氣】に注ぎ込んだ。
全身を覆う様に生じたそれを足の裏に集中し一足飛びで明日香の眼前へ。
さらにソレを高速で右手に移し、手の中で回転させて掌底と共に打ち込む構えをとる。
明日香が動く。
ここで【邪見眼】を発動。
ただ行うのは普段の「予見」ではない。
脳の情報処理速度が高まることにより視界がクリアなスローモーションに変わる。
敵の筋肉の動き、空気・SNT・氣の流れ、自分と相手の骨が軋む音、心音、その他あらゆる情報を
脳が処理して何処に、どの軌道で、どのように打ち込めばいいかを意識上へと算出する。
致命傷を避けるギリギリの位置で構えていた明日香の表情が驚愕に染まるのが映った。
それを確認しながら敵の足元、アスファルトの地面を右腕で抉る。
高速で回転する【氣】のエネルギーによって舞い上げられた
コンクリートの塊が明日香の全身を襲い、その身体を虚空へと吹き飛ばした。
- 437 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:37
- 真里の身体からフッ、と力が抜けて膝をついた直後、
無抵抗に明日香の背中が地面に激しい音を立てて叩き付けられる。
右腕を突き立てた一瞬で明日香に直撃しそうな塊に【氣】を移したが彼女も当たる箇所に
【氣】を集中した筈、おそらく致命傷にはなっていないだろう。
とは言えしばらくは立ち上がる事すら出来ない筈。
自分もいくらかコンクリートを生身で喰らった上、術と【邪見眼】の使用による
疲労で動けないので堂々と勝利宣言はできないが・・・。
「ハァハァ・・・、くっ、、、せめて屋上に・・・げふっ!?」
無理矢理立ち上がろうとした瞬間、
喉の奥から込み上げて来るモノに気付き右手で口を覆ったが
その小さな掌に収まりきらないソレは紅い霧となって指の間から漏れる。
恐る恐る口から手を離し、そこに付いた赤黒い粘液と対面。
- 438 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:38
- 「なっ・・・?まさか・・・。」
視線を明日香へと移す。
それと同時に彼女はムクリと起き上がり、腹部を押さえてフラ付きながらも立ち上がった。
「成る程・・・、【邪見眼】の仕組みを利用して脳の処理速度を一時的に意識上で高めたワケね。
しかも脳が活性化することでリミッターが外れ、筋肉も普段以上の力を発揮する」
「ちくしょ・・・、何を・・・?」
「コレがなかったらやられてたわね、きっと」
真里に歩み寄った明日香の身体から立ち昇る、黄金色の光。
その光に真里は見覚えがあった。
「な、なんでアンタがソレを・・・?」
「返答拒否。今日は決着をつけに来たの」
「・・・決着?」
「そう、過去の自分に、ね・・・。」
明日香が右手を真里の顔に翳す。
「さよなら」
真里は間に合わないと分かりながらも印を結ぼうと試みるが、
術の完成を待たずに明日香の掌から黄金の稲妻が放たれた。
雷鳴が轟き、ビルの壁には大穴が穿たれる。
- 439 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/06(日) 11:39
- が、至近距離で直撃を受ける筈だった真里の身体にその影響は見られない。
代わりにその表情が安堵に緩められる。
「ったく、遅いんだよ!」
「あはは、ごめんごめん」
その顔に浮かべられるのは、この緊迫した雰囲気の中でさえ揺らぐこと無き天使の微笑み。
「久しぶりね・・・、なっち」
「うん、久しぶり。福ちゃん?」
雷魔忍軍頭主の証であるチカラを放つその腕を臆するコトなく掴んだ少女。
陰陽師・安倍なつみはかつての親友、福田明日香に微笑を向けて
紅い光に支配されたこの不気味な空間に整然と降り立った。
- 440 名前:はい、次。 投稿日:2004/06/06(日) 11:40
- *****
- 441 名前:あさみの部屋 投稿日:2004/06/06(日) 11:41
- はいはい、紺野あさみです。
今日はもうサクサク行っちゃいましょう♪
邪見眼:矢口さんの持つ血継限界、能力については本文中にある通りです。
矢口さんのご先祖さま達はおそらく特に意識するコトなく入ってくる情報から
天災や敵の襲撃を予測してそれを未来の映像として見たんだと思われます。
ま、動物が本能で災害を察知する現象と似たようなものです。
既視感:デジャブとも呼ばれる、一度も来たことの無い場所なのに来た事がある、とか
前にもこんな光景を目にしたコトがあるといった感覚のコトです。
その原因は神経細胞の情報伝達経路の、脳の疲労などが原因の混乱です。
その結果以前にテレビで見た事があるのを前に来た事があると錯覚したり、
酷い時には脳が記憶を勝手に作って宇宙人にさらわれた、とか言い出す人もいます。
ま、一概にそういう経験が既視感のせいだとは言えませんが
人間の記憶というのは皆さんが思うよりずっと曖昧なモノなのです。
血継限界:遺伝によってしか発現しない特殊な能力のコトです。
超能力同様、詠唱や呪文は必要ないコトが多いですね。
矢口さんや福田さんのように確実に発現する血継限界は結構稀少です。
- 442 名前:あさみの部屋 投稿日:2004/06/06(日) 11:42
- 雷鳴:福田さんの技の一つみたいです。
血継限界の能力、【雷術】のチカラを一気に全身から解放し、
空気を音速で膨張させるコトで生じた空気と熱の壁で爆発から身を守ったようですね。
矢口さんが聞いた音というのはその名の由来、空気の音速膨張による雷鳴でしょう。
操氣:氣を操るコトで、練氣の次の段階にして奥義です。
今回のお2人のように掌に氣を集め回転させたり、
氣の性質を変えて壁や天井に立ったりといったコトも可能になります。
雷魔式忍術にも元々氣の使用はあったようなのでお2人はかなりコレに長けていますが、
現ハロプロで一番コレが上手いのは愛ちゃんです。
ハイ、今回はこんな感じです。
恒例なので一応アレやってお別れしましょう。
作者:アレって・・・?
黒紺:コレに決まってるじゃないですか♪
作者:え?ソレって・・・(じゃこっ♪ どんっひゅるるるるちゅどーん♪)←コレ。
ではまた来週〜♪
- 443 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/06(日) 11:43
- *****
- 444 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/06(日) 11:50
- >>418 Ray 様
いやホント可哀s(ryデスよね?
書いたの僕ですが。。。w(ヲイ
派遣してもらったはイイがどう扱えばいいのかわからない今日この頃・・・。
今回は笑いドコがあんま無いですが前回ので笑っていただけたのは良かったですw
>>419 我道 様
えぇ最強です。
そりゃもう最強ですともw
身に染みてよく知ってますから。。。(凹
再会はしましたが激突は次回までお待ちください。
- 445 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/06(日) 11:57
- >>420 shou 様
そりゃもう若手の芸人並に身体張ってもらってますから(ヲイ
でも一番ボロボロなのは作者だったりしますが、、、
あんな短いのにひきつけられて下さって感激ッスw
次回は暴れまわってくれるハズですからお楽しみに。
>>421 名無飼育さん 様
イイトコに気付きましたね。
一番ヒドイ被害者は美貴帝ですw
苦労人なんですよ、彼女は。。。
市井さんの活躍は次回に持ち越しですが、
期待しててくださるとありがたいです。
そぃじゃあまた次回!!!!!!!!
- 446 名前:shou 投稿日:2004/06/06(日) 12:44
- 更新お疲れ様です。
とうとう矢口の時代がやってきたんですね(笑
まだ実力未知数の市井さんは思った以上に変な人
でもかなり強そうなんで期待してます。
次回、頑張って下さい!
- 447 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 16:32
- 更新お疲れ様です。
市井さんボロクソに言われてますねw
確かにタキシード着て汗だくはちょっと・・・
いよいよ本格的なバトルシーンになってきましたね〜
次回、市井さんの活躍楽しみにしております。
- 448 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 21:50
- 某誌で見たことのあるネタが満載。(w
妙なカッコつけ変人、市井。 や、それでこそ♪
楽しみ楽しみ♪
あ、更新、乙です。(w
- 449 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/07(月) 15:57
- またまた暫く、小説を読む機会がありませんでした。
なんとも、矢口さんと福田さんの、戦闘シーンは緊張感が溢れますよね。
それに田中・亀井・道重VS市井の戦闘も気になります。
それにしても作者さん、更新早いですね。
3ヶ月でもうこんなに進んでしまうとは・・・・・・・・・。
自分も見習わなくては、と思うます。
では続きのほう、頑張ってください。
- 450 名前:刹 投稿日:2004/06/07(月) 23:13
- こちらでは初めまして。
そして、更新お疲れさまです。
作者さまの書くお話ってすごいスピード感あって最高です。
変人、市井さん。これかなりツボですw
福田が何かまたかっこいいですね。
…ぁ、コーナー名がっ。
もしかして、○子の部屋ですか!?
それでは続き楽しみにしてますね〜。
- 451 名前:刹 投稿日:2004/06/07(月) 23:15
- やばっ、sage忘れ!!
すんません、緊張しすぎました。
それではっ。
- 452 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:31
- 「お、来た来た。遅いぞ、田中?」
ビルの間を蹴り登って屋上に到着すると、
丁度市井さんが蝶ネクタイを取ってYシャツをズボンから出しているトコロだった。
む、汗で張りついたシャツから透ける華奢な身体が急に爽快感を・・・。
「あたしは翼なんて持ってないんだから仕方ないじゃないですか。
あとイキナリ呼び捨てはやめて下さい」
「カタイこと言わないでよぅ。いちーってば既にそちらのお2人には
嫌われちゃってて寂しいんだからぁ」
市井さんの視線を辿って背後のお二人に視線を移してみて、
コンマ2秒後に高速で視線を市井さんに戻した。
ていうかコワッ!!
さゆは爪をブンブンと魔獣相手する時の3倍はありそうな勢いで振り回しとるし、
えりは何やらブツブツ言いながらガイコツ同士闘わせつつフル装備取り出してる!!
しかもどっちも微笑みながらっ・・・。
目が合ったら漏れなく殺されるばい。。。
ふぅ、、、あまりの恐怖に方言出ちゃったよ・・・。
- 453 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:31
- 「な?」
「イヤ、な?・・・じゃなくて、逃げないと殺されますよ?いやマジで」
「なんのなんの。まだまだ君らに殺られる程落ちちゃいないよ」
ぞくっ。
ダメだ、この人墓穴掘った。
先ほどから充満してた殺気が一層濃くなり、場の気温が5℃程下がる。
直後、
「「もっぺん言ってみろやゴルァ!!!」」
あたしの横を抜けて行く一陣の風と発砲音×3。
あたしは目の前の人が塵となる光景を想像した。
が、
えりとその下僕が放った銃弾も振るわれたさゆの爪も、彼女を捉えるコトはなかった。
呆気にとられるあたしの背後に現れた殺気。
咄嗟に振り返ってガードの姿勢を取ろうとしたけど、間に合わない。
- 454 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:32
- ダメだ、殺られる!!
・・・あれ?
- 455 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:33
- むちぅ♪
反射的に目をつむったあたしの唇に、何かやわらかいモノが押しつけられる感触・・・。
こ、コレはまさか・・・。
いや、戦いの最中にそんなハズは・・・。
恐る恐る目を開けてみた。
視界いっぱいに広がる市井さんの顔面どアップ。
鼻から下が見えないということは、感触からしても・・・皆まで言わせるなエロ作者ぁ!!
我に返っていつの間にやら回されてる腰の腕から逃れようとしたんだけど、
突然口の中で起こった未知との遭遇がソレを阻む。
や、やばっ。
力入んないし・・・。
あぁあああ、自分でも頬が紅潮しとるのがわかるぅぅうう!!!
ひゃぅっ!
な、なんか変なトコ触られとる〜!!
ドコをとか訊くなエロ読者〜!!
- 456 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:34
- 腰に力が入らず完全にされるがままになってしまったあたしの潤んだ視界の端に映る、
パイナップルと空と風。
って、嘘ぉ!?
転がって来たソレは見事あたしの足元で静止し、数瞬の沈黙の後眩い閃光を発する。
視界が真っ白になり、上下の感覚もわからなくなったあたしの耳に豪音が響いた。
・・・死んだ?
また恐る恐る目を開けると、今度は市井さんの顔ではなくあの紅い月が視界に広がる。
一瞬その輝きに目を奪われたけど、地に足が着いた心地がしないので
慌てて自分の足元に視線を移した。
ソコにあるはずの地面は無く、代わりにこちらを見上げてる
えりとさゆの顔が数メートル下に確認できる。
二人共こっちを見てるってコトは死んではいないみたいだけど、何で浮いてんの?
そう思うと同時に胸に感じる違物感。
視線を移し、ギョっとした。
- 457 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:34
- 「ほ〜、おっきくはないけど形はイイねぇ」
「な!?ちょっ、ドコを触っ、ひっ!?うわっ、モむなぁ〜!!」
「なっはっは、ウリウリ」
のあぁ〜!!
コノ人変人どころか変態だ〜っ!!
正真正銘のエロテ(ryだぁ!!
誰かへるぷみ〜!!!
必死にもがきつつ下にいる二人にSOSの視線を送ると、
その意図を理解してくれたのかコクリ、と頷いた。
えりの手に握られたトカレフの銃口がこちらを向く。
・・・って、キャメイさん?
迷うコトなえりがく引き金を絞った直後、銃声と背後からのバスッ、という音が
あたしの耳を通り過ぎた。
浮遊感が身体を襲う。
- 458 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:36
- 「羽撃ち抜かれた。落ちますよ〜」
「うわっ、せめてその手を・・・、ギャー!!」
ビルの屋上までの距離、およそ7メートル。
これくらいは獣化してれば問題無い。
ばっと、
今の落下コース、確実にフェンスより外にズれてる。
そして地上までの距離、30メートル。
これも今のあたしなら上手いコトやれば無事で済む。
ばぁっと!!
身体をがっちりとウ゛ァンパイアの怪力でホールドされて頭から無防備に落ちた場合はどーだろう?
多分タダじゃ済まない。
つーか死ぬ!!!
で、見事そんな態勢のあたしの頭には走馬灯(回りの景色がゆっくり動くってホントだったんだね)。
- 459 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:36
- 危うく目を閉じて生まれ変われたら何になろうか考えそうになったんだけど、
突然ホールドと垂直落下から解放されて目を見開いた。
「さゆぅ!!」
「・・・れいなアホ過ぎ」
そ、そんな言い方しなくても・・・。
背後の市井さんをハタキ落として助けてくれたのはイイんだけど、
やっぱりいつものさゆじゃない。。。
当然そんなコトは口に出せない。
フェンスの内側にポイッ、と投げ入れられてもそりゃ同じ。
- 460 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:38
-
「意外と無茶するね〜、チミら」
数十秒後にパタパタと復活した翼を羽ばたかせて戻って来た市井さんが言った。
なんか顔面血みどろだけど本人は気にした様子もなく地面に降りる。
「あなたの存在の方が無茶だと思いますけど?」
さゆが「存在」のトコを強調しながらわざと丁寧に言った。
微笑んでるぅっ、えりじゃないんだから・・・。
「・・・でもこんなトコで爆弾なんか使ったからそのうち人来ちゃうぞ?」
実の妹の発言に傷付いたのか、ソコには触れずに尋いてくる。
「そこらじゅうに吸音と人払いの符貼ってあるから大丈夫です」
完全武装(色々背負ってます)のえりが答えた。
あたしは大丈夫じゃないんだけど…。
「へぇ、じゃ気兼ね無くやれるな?」
「「「その通り」」」
- 461 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:38
- 示し合わせたわけでもないのにハモると同時、散開して3方向から攻撃を仕掛ける。
あたしが相手の左でさゆが右、えりはその場でガイコツ達と一緒に援護射撃担当。
「炎殺爪!!」
右手に炎を纏わせ袈裟掛けに斬り掛かったけど、恐ろしい速さで手首を掴まれ爪は届かない。
でもそんなのは想定範囲内、纏わせるに止めてた炎を最高火力で一気に放出。
紅い炎を顔面に吹き付けられ、市井さんがあたしの腕を放して背後に吹っ飛んだ。ざまぁみろ。
乙女の大事なモノを一度に奪った罪は重いんだぃ。
ていうか全然足りないし。
殴らせろ。
そう思ってマウントポジションで振り上げた拳が、片手で止められた。
「あっつぃな〜。随分乱暴・・・じゃん!!」
「うぁ!?」
お腹に足を当てられ、蹴り飛ばされる。
ぶつかったフェンスが派手な音を上げた。
- 462 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:40
- 「くっ、何を・・・?」
ありえない。
いくらウ゛ァンパイアだって2000℃近い炎をまともに浴びて髪の毛一つ焦げてないなんて…。
それどころか服まで無事ってのはいくらなんでも異常だ。
障壁・・・?
いやあの距離でなら気付ける筈。
じゃあ普通の障壁じゃないのか?
もしかしたらさゆの数倍の再生力を・・・。
「ちょっとした手品だよん♪」
この後に及んで未だ軽い調子の声があたしの思巡を遮った。
声の主の方へ目を向けると同時、その背後に翼を広げた影が降りる。
「あたしのれいなに何すんのよ!?」
イヤあたしはアンタの所有物じゃないッスよ・・・。
そんな心の嘆きが届いているハズもなく、影・・・さゆがさっきの様に小さく口を開いた。
狙いは足。
うまくすればさっきのアイツみたく動きを封じられる。
超音波はそうそう避けたり防いだりできるもんじゃないから期待も高まる。
超音波自体は目には見えないけど、さゆの動きで放つタイミングがわかった。
けど、こちらを向いたままの市井さんに変化はない。
代わりにさゆの顔に驚きが浮かんだ。
- 463 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:41
- 「効かないねぇ〜」
振り向き様放たれた後ろ蹴りがさゆの脇腹に当り、ボキッという嫌な音を共に
吹き飛ばされた身体があたし同様フェンスに叩きつけられた。
さゆは何事もなかったかのようにスグ起き上がり蹴られた脇腹に手をやって
骨を接ぐような動作をした後、口から零れる紅い線を舌で舐め取った。
「何をしたの?」
「ん?あぁ、ちょっと君らのチカラの媒介をイジらしてもらったんよ」
今まで聞いたコトのない冷たい声で尋ねたさゆの疑問に
市井さんが相変わらず軽い口調で答えた。
でも媒介・・・?
ソレって確か・・・。
- 464 名前:解説じゃ 投稿日:2004/06/13(日) 15:41
- *****
- 465 名前:まっどさいえんてぃすとの部屋 投稿日:2004/06/13(日) 15:42
- というわけで自然な流れで解説です。
市井さんの言ってる媒介について説明するにはまずSNTについて詳しく話さなければなりません。
コラそこ、「またかよ、、、意味わかんないからイイよ」って顔しない。
作者:いや紺野さん、読者サマに銃口向けるのはよして下さい。。。
黒紺:黙れ。(ぱんっ! ドサッ・・・。
SNTが精神波の影響を受けたニュートリノであるというのは以前に
そこで血の海に転がってるのが説明したかと思われますが、
正確には影響を受けているのは精神波の方であると言えます。
精神波は電磁波です。
そして電磁波には2つの性質があります。
波動性と粒子性です。
このうち粒子性の粒子というのは光子と呼ばれるスピン1、静止質量ゼロの素粒子で、
電磁波はこの光子の集合体です。
コレに特定の条件の元、ニュートリノが作用する事でSNTができるんですが
ちょっとココで原子の構造について思い出してください。
原子は原子核(陽子と中性子)の周りを電子が回るコトで構成されています。
そして原子の化学的性質はこの電子に由来します。
- 466 名前:まっどさいえんてぃすとの部屋 投稿日:2004/06/13(日) 15:43
- SNTではこの原子核の部分が光子、電子に当たるのがニュートリノになります。
そしてこの光子と、その周囲を回るニュートリノの数や軌道でSNTの性質が決まるのです。
要は原子の世界がもう一つあるんだと考えてもらえると分かりやすいかもしれないです。
さて本題に戻ります。
まず田中ちゃんのチカラ、妖狐の自然発火能力ですが
炎というのは物質が酸素と結合して燃焼する時に発する熱と光のコトですよね?
で、つまり物質の燃焼には酸素と可燃性物質が必要なわけですが
酸素はともかく可燃性物質は空気中にそんなにありません。
(まぁ錬金術では塵や埃を掻き集め酸素濃度を調節して発火させる技術もありますが
この場はやりにくくなるのでそんなん無視して下さい。)
田中ちゃんはこの可燃性物質をSNTを利用して生み出してるんです。
まぁ色々複雑な反応の結果、光子と周囲のニュートリノの数や軌道が変わり
SNTが性質変化し生み出されるんですが、詳しいことは作者もついて来れないので省きます。
(【氣】というのも詰まる所この性質変化したSNTなんですが、
その辺も色々あるのでここでは説明しません。)
田中ちゃんの炎が普通のと違い紅いのもその物質によるモノです。
本人はそんなコトを意識してチカラを使ってるわけではないので
説明した時は???な感じでしたが・・・。
- 467 名前:まっどさいえんてぃすとの部屋 投稿日:2004/06/13(日) 15:44
- で、次に重さんの超音波カッターですね。
超音波というのは名前の通り音波ですからそうそう簡単に凝縮して
刃物として使えるもんじゃないのは分かると思います。
実はこの技は田中ちゃん同様性質を変化させたSNTを、
刃状に変え超音波振動でその切れ味を格段に上げる技なんです。
ちなみにこちらもSNTの性質変化については無意識なんですが、
刃状に変えるのは練習嫌いの重さんが頑張って習得した最初で最後の必殺技です。
何やら長くなりましたが、市井さんの言う媒介とはこの性質変化したSNTのコトです。
何らかのチカラを使ってこの媒介を無効化したのかもしれませんね。
では今回はこの辺で、アディオス。 ノシ
- 468 名前:分かった方、、、いるのか? 投稿日:2004/06/13(日) 15:44
- *****
- 469 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:46
- 「ヴァンパイアに血ぃ吸われたヤツが吸血鬼化するコトがあんのは何でか知ってるか?」
「・・・いえ」
唐突に投げかけられた質問に首を横に振って答える。
「ウチらが相手を吸血鬼にしたいと思った時はな、
相手の血を吸った後に自分の血を飲ませればイイんだ。
コレがどういうことか簡単に説明するとだな、
吸血の時に相手の血液の中に自分のSNTを流し込んで受け皿を作った後、
SNTを含んでる自分の血液を取り込ませるコトでそいつの遺伝子を書き換えちゃうんだよ」
・・・はぃ?
正直意味分かりませんけども。
「・・・わかんないのね。
まぁとにかくこの時流し込むSNT、使い方を変えると色々便利なコトができるのだ。
例えば、違う性質のSNTに流してそいつを無効化したりとか
人間の身体に流して身体を作ってる物質を分解しちゃったりとかね」
「じぁあさっきのは・・・。」
脳裏に苦しみもがいて消えていく男の姿が過ぎった。
- 470 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:47
- 「あいつはその辺うろついてたチンピラだったんだけどね。
吸血鬼化さしたら指示通り暴れてくれたよ。
おまけにUFAの反応もこっちの読み通りで、こんなにうまく行くとは思わんかった」
「・・・そんなコトして、なんとも思わないんですか?」
この人はやっぱり軽い調子で言うけど、
自分が4人もの人間死に追いやったコトをわかってるんだろうか?
「じゃあ訊くけど、君は蚊を叩き潰した時何か思うの?」
その言葉で、考えるより先に身体が動いた。
だけど飛びかかって振るった爪は空を斬る。
市井さんがスッと首だけを後ろに送ってかわしたせいだ。
腹部を襲った衝撃でまた元の位置へと戻される。
「いちーにとって他人の命は虫ケラ同然なんだよ。そっちの価値観押し付けられても困るなぁ」
「随分自分勝手で最低な意見ですね?」
冷たく言い放ったえりの手元から銃声が響き、
市井さんの背中に紅い華が咲く。
- 471 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:47
- そんなコトを気に止めた様子も無く、市井さんは淡々と言葉を繋いだ。
「そー言うケドさぁ、チミらが人殺し嫌うのは要するに自分にも害を及ぼす恐れがあるからでしょ?
人間ってのは自分に利益をもたらすモノを好いて害をもたらすモンなら嫌う。
自分らだって十分自分勝手で最低ジャン?」
何故だか、その意見に反論せずにはいられなかった。
「違う!!そんなんだけじゃなくて、もっと愛とかそういう・・・。」
「いちーの言ってる利益ってのにその『愛』も含まれるよ。
さらに言うなら人間は相手のもたらす利益と害を引き算してそいつに対する見方を決める。
こりゃいちーの意見じゃなくてごとーも認めてる客観的な事実だから」
まるであたしの心の中を読んだかのような言葉。
それが余計に気に入らない。
「だったら、だったら何です!?だから自分は人間を滅ぼすなんて言うんじゃないでしょうね?」
「ありゃりゃ、こーゆートークで熱くなったら負けよ?
別にそんな正義ぶった思想は持ち合わしてないから安心しな。
ただ利用したけりゃ誰かの命なんて簡単に奪えるよ?ってだけだから。
罪悪感とか無いせいでスリルも何も感じないから楽しいワケでもねぇし」
- 472 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:49
- 今、わかった。
この人の声は別に軽いんじゃない。
ただ、欠落してるんだ。
色んな、愛とか、そういう人が生きていくのに必要な重いモノが。
「ただいちーはそれでも結構人生楽しんでるし、問題ないからねぇ。
それを邪魔されんのはおもしろくない。
っても戦闘狂だからチミらみたいのが邪魔しに来ると楽しいんだけどね?」
市井さんの顔が突然至近距離に現れる。
速い。
咄嗟に顔の前で腕を十字に交差してガードしたけど、速すぎて何をされたのかも定かじゃない。
さらにこの衝撃、【氣】をあたしのできる限り集中させた筈の腕が軋む音が聞こえた。
炎を出してやり過ごそうと試みたけど、掻き消されて頭を掌で掴まれてしまう。
刹那、痺れるような衝撃が全身を駆け巡った。
市井さんが手を放すと視界が揺れて、そのまま地面に引き寄せられてしまう。
立ち上がろうとしても、膝に力が入らない。
- 473 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:50
- 「な、何で・・・?」
「超音波振動で軽い脳震盪起こさした。暫くはまともに立てないッスよ?」
なんとか膝をついて体を起こしたあたしと市井さんの間に、白い影が割って入った。
その手に握られた銃器が火を噴くより早く、肋骨と背骨を突き破り
長く鋭い爪を光らせた吸血鬼の腕があたしの眼前に現れる。
その爪があたしの頬まで届き、軽いけど鋭い痛みが走った。
爪についたあたしの血を舌で舐め取り、満足そうな顔をした市井さんが
その腕を真上に高速で掲げた。
血飛沫があたしの顔に降り注ぎ、腹に拳大の風穴を開けたさゆが地面に叩き付けられる。
すぐさま起き上がって飛び掛ろうとしたさゆの行く手を阻むように
投げ出された足がさゆの顔面を捉え、再び血飛沫が舞う。
「あんだよ。相変わらず特攻だけだな?そーゆーのチョトツモーシンってんだよ、知ってる?」
「ゲフッ、五月蝿い!!」
振り回される爪をまた首の動きだけでかわし、
さゆの鳩尾に膝を突き刺すその動きには一切の無駄が無い。
- 474 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:51
- うずくまるさゆの頭に振り下ろされようとしたカカトが紅いモノを噴き出しながら粉砕された。
えりのデザートイーグルだ。
女性や子供が撃てば肩が外れる程の反動のそれを両手に持って
乱射しながらも、えりの放つその弾は的確に市井さんだけを射抜いていく。
「えり、ダメぇ!!」
さゆが叫んだ。
その声と同時に、弾の衝撃で一発ごとに大量の血飛沫を巻き上げながらフェンスの方へと
後ずさっていた市井さんの目がカッ、と見開かれる。
その眼は最早、人間のモノじゃない。
闇に紛れて獲物を狙う、肉食動物のソレだ。
いつ地面を蹴ったのか、あたしの眼には捉えられなかった。
ただ、悲鳴を上げたえりが砕け散った白い下僕の破片と共にフェンスを
突き破って外に飛ばされたのと、ソレをやったのが市井さんだというコトだけは認識できた。
この高さから落ちれば、【氣】を扱えるだけで肉体はただの人間であるえりは助からない。
けど、あたしの心を支配するのはその事実ではなかった。
- 475 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:51
- 「イケネ、やりすぎた。この高さじゃ無理だよな・・・。やっば、ボスに叱られっかもしんねぇ」
さゆは既にえりを助ける為に翼を広げて飛び出した後だった。
多分、間に合わない。
けどあたしには、この場にいるのがあたしと彼女の2人だけという事実の方が問題だった。
「あ〜ぁ、アレ?怒って飛び掛って来たりしないわけ?ごとーの時はそーだったんだろ?」
その口から放たれる声は、先程までと何ら変わらない軽いモノ。
不思議そうに首を傾げるその顔も、変わらない。
なのに、それなのに、あたしには彼女が、「市井紗耶香」がどうしようもなく、怖い。
彼女が歩み寄って来る。
あたしは必死に後ずさった。
「おぃおぃ、どうしたね急に?」
やめろ、来るな!!
そう思っても、恐怖のせいで声にはならない。
- 476 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:52
- 四つん這いになり必死に彼女から離れようとしたけど、眼前のフェンスがソレを阻んだ。
あたしにはその網の目が動物の檻のように感じられる。
あたしは獰猛な肉食獣の檻の中に放り込まれてしまったのかもしれない。
「あら、髪黒く戻っちゃってるじゃん」
しゃがみ込んであたしの目線まで顔を下げた彼女が獣化の溶けた髪に触れる。
その血に濡れた顔を見ているのが怖くて、視線を下げた。
Tシャツの黒地に描かれた鬼が、返り血に染まっている。
途端に、恐怖が心を蝕んでいく。
「うぁっ、うぁあああああぁあああああ!!!!!」
もがくように金網を登り、下を覗いた。
ビルの谷間には闇が広がるばかりで、何も見えない。
「ちょっとちょっと、こんなトコロでノーロープバンジーですかぃ?」
- 477 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/06/13(日) 15:52
- 振り向くと、彼女がいやらしい笑みを浮かべてこちらを見ている。
見つめているだけで飲み込まれそうな瞳が紅く妖しげに輝いた。
その輝きの原因がなんであるかもわからない程動揺したあたしの心は、
それを見てより一層恐怖に縛られてしまう。
殺される。
ここにいたら確実に殺される。
根拠も無いのに、そう感じた。
怖い。
死ぬのが、殺されるのが、怖い。
檻の外の闇と檻の中の獣を見比べる。
飛び降りた方が、助かる確率は高い。
本能がそう判定すると同時、霊獣化が解けていることすら忘れたあたしは
迷うこと無くその身を闇へと投げ出す。
落下の最中、視界に黄金色の光が広がった気がした。
- 478 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/13(日) 15:52
- *****
- 479 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/13(日) 15:57
- はい、本日の更新は以上です。
でわ、ここでお知らせです。
メル欄でも言いましたが自分、これから戦場へと赴く下準備に取り掛からねばなりませぬ。
その為今月の更新は今日が最後っぽいです。
テスt・・・いや戦い月末なもんで。
ソレが終わったら出来得る限り早めに更新したいんですが、
おそらく来月の頭一週間のドコかでとなると思います。
変なトコで切ってる上、いつもと更新量同じくせにごめんなさい。
- 480 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/13(日) 16:06
- >>446 shou 様
自分の中では随分前からやぐっさんの時代到来しっぱなしですが何かw
いちーさんはこんなんなりましたが如何でしょう?
途中お見苦しい部分もあるかと思いますが書いた時
寝惚けてたので勘弁してやって下さい。(ヲイ
>>447 名無飼育さん 様
えぇ、そらもうボロクソにw
でも今回はどうやら言われてばっかでも無いようです。
メル欄・・・禿同!!
全くあの暴りょ・・・秤ツ愛らしいおしとやかな娘さんでもぅ・・・ひでぶ!?
黒紺:そこのアナタ何か問題でも?
- 481 名前:名も無き作者 投稿日:2004/06/13(日) 16:18
- >>448 名無飼育 様
さ、さぁ〜て何のコトやら拙者にはてんで・・・。(滝汗
私のモットーは完全オリジナルで常に新鮮な発想を・・・(ぐしゃっ♪
黒紺:すいませんね。後でキツク言(殺)っときますから許してやって下さい。
>>449 聖なる竜騎士 様
緊張感出せてましたか、ヨカッタです。
今回のはいかがでしたでしょうか?
せっかく早っかたのにいきなしストップ宣言です・・・。
ま、お互いマイペースで行きませうw(ヲイ
>>450 刹 様
なんか展開が無駄に速くて誰か止めたって。。。
って感じなんですが、そう言ってもらえるとアクセル踏みたくなりますw(ヤメレ
ていうかコーナー名見抜かれてるし。。。
部屋しか合ってへんっちゅー話ですよね?
更新止めても読む方は止めないのでそちらも頑張って下さいw
ではまた来月お会いしましょう、アディオs・・・(げしっ♪
黒紺:パクんな。皆さん改めてアディオス ノシ
- 482 名前:我道 投稿日:2004/06/13(日) 17:07
- 更新お疲れ様です。
ああ・・・強すぎる・・・強すぎるよ・・・。
実は私も田中さんと同じ気持ちになりました。(((( ;゚Д゚)))) です。
作者様の知識に驚愕する一方、文型ということで更に驚いてしまいました。
両刀使い(?)なんですね・・・さすがです!
無理をせず、マターリと頑張ってください!どこまでもついて行きますので!!(←スト○カー?
- 483 名前:shou 投稿日:2004/06/13(日) 17:24
- 更新お疲れ様です。
市井さんマジカッコイイ(感動
本気素晴らしいっす!!考え方とかもGood!
軽いエロもはいり、怯えた田中に(萌
両者共に救援がきたようですし楽しみです。
更新楽しみにしてます。
- 484 名前:刹 投稿日:2004/06/13(日) 18:48
- 更新お疲れ様です。
エロいよ市井さん…微エロだよ…。
キャメイさん準備万端ですねぇ。重さんも。
ってか作者様、めっちゃ理系も得意そうなんですけど…
でも文才あるし…才色兼備!(違
作者様が旅立ってしまうのは寂しいですが、まぁテストですしね。
自分も勉強しろよって感じですが…
それじゃあマターリ待ってますww
- 485 名前:Ray 投稿日:2004/06/13(日) 19:51
- 更新お疲れ様です!
コノ前の更新を見落としてた自分が憎い!!(w
戦闘シーンはひきつけられちゃいましたよ〜!!
でも…ご存知だと思いますが、やっぱり自分はアフォでした_| ̄|○
『変人』を『愛人』と勘違い…
アレッ!?って思ってよくみたら『変人』みたいな…
やっぱアフォだ…_| ̄|○
次もマターリ待ってます!
- 486 名前:Ray 投稿日:2004/06/13(日) 19:51
- またもややってしまいました…
- 487 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 22:57
- 更新お疲れ様です。
うわー!えりりんとれいなは無事なんですか?!
市井さん強すぎですよ!そして変態すぎる!!w
こんなとこで区切られては続きが気になってしょうがないですけど作者様が戦場から戻られるまで待ち続けます・・・
- 488 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/06/15(火) 13:23
- 更新お疲れ様です。
な、なんと、亀井と田中がそのまま落下しちゃった。
まあ、展開上ここで死んじゃうって事はないとは思いますが、でもどうなるかは想像
できません。市井さんもこれからどうなるのでしょうか?
これからテスt・・・・いや戦場に赴くとは・・・・・、生きて帰ってきてくださいね。
更新のほう、首を長くしてお待ちしております。
- 489 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/03(土) 16:40
- 更新お疲れ様です(亀
そろそろ更新あるかと思い、計画的にレスしましたw
頭から全部読ませていただきましたが、みなさんどれもキャラが立っておられる。
しかも、更新スピードも速くて、見習わないといけないですね・・・。
個人的には、ノーロープバンジーがツボでしたw
それでは、続きの更新もがんばってください。
- 490 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:25
-
紅い月。
真っ赤に輝く紅い月。
それを背負って微笑むあなた。
その足元には、同じように紅いソレ。
とっても身近なソレなのに、あの日は何故だか怖かった。
ソレが大切な人のモノだから?
ううん、違う。
ソレがきっと、あなたがいなくなってしまった証だったから・・・。
- 491 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:25
- *****
- 492 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:26
- 空気を切り裂くように繰り出された右の拳。
その威力を円運動を利用して殺し、手首を掴んで身体を回転させながら背後に潜り込む。
敵の踵に自分のソレを添えてバランスを崩し、四方投げ。
通常の相手ならこれで堅いコンクリートに頭をぶつけて気絶は必至なのだが、
今の相手・福田明日香は器用に身体を捻って見事足で着地。
同時に跳躍してその衝撃を利用し掴まれた腕を取り返した。
「腕は落ちてないみたいだね、なっち」
「当たり前っしょ?これでも【安倍陰陽式合氣柔術】免許皆伝だからね」
自慢気に胸を張るのは、「魔天使」の異名を持つ陰陽師・安倍なつみ。
そんな彼女に対し、明日香は少し気になっていたコトを口にしてみた。
「それにしても、随分いいタイミングで現れたわね」
「ん?いや、ホントはヤグチが分身爆破させた辺りからいたんだけどね」
「いたのかよ!?」
離れたトコロから抗議の声(というかツッコミ)を上げたのは、
【治療符】で自身の傷の応急処置をしている雷魔忍軍上忍・矢口真里。
どうやらなつみは一番おいしいタイミングになるまで気配を消して隠れていたらしい。
- 493 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:27
- 「で、上には行かなくて良かったの?多分こっちより勝算少ない筈だけど」
「え゛!?上に誰かいるの!?」
「・・・知らないの?」
「え〜、誰?誰?ヤグチ〜」
イキナリうろたえ始めたなつみの様子を見て、
真里は今更だが助っ人を頼んだ時に3人の存在を伝え忘れた事を後悔した。
とは言え、伝えていたら自分がどうなっていたかもわからないのだが・・・。
「・・・6期の3人。相手はサヤカ」
「嘘!?勝てるわけないっしょ!?あ〜もう福ちゃん、なっち全力で行くからね?」
「あぁ・・・どうぞ」
慌てふためいているかつての親友の姿を「進歩無いわね」といった視線で射抜きつつも
明日香は自分が若干なつみのペースにはめられているコトが可笑しかった。
そんな視線には気付かず、なつみはジーンズから12枚の札を取り出し宙に投げ上げた。
札が自分の身体を取り囲むように浮いているのを確認し、左手を人差し指と中指だけ立てて
口元に持っていき、同じ形にした右手の指先で空中に五芒星を描き始める。
「バン・ウン・タラーク・キリーク・アク!!!
薬師の眷属 十二の鬼神よ 汝の力 我が身に示せ 『式神御霊会』十二神将・甲縛!!!!」
- 494 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:28
- 閃光。
白く眩い光に辺りを埋め尽くされ、明日香も真里も目を開けていられなかった。
このような術、以前は使っていなかった。
おそらくはアレからまた相当の修練を積んだのだろう。
そのコトが、少しばかり明日香の胸を苦しめた。
光が晴れ、現れたなつみの姿には一切の変化が無い。
そのコトに少し妙だなと思うが、その顔に浮かべられた微笑が術の成功を示している。
ならばする事は一つ。
苦無を数本取り出し投げ付けると同時に恐ろしい速さで印を組み、術を構築し始める。
「式払い」。
相手の術の効力が定かで無い以上、コレが一番の良策と言える。
だが、「捕縛」の呪印を彫られた苦無がその効果を発揮するより早く、
それらはなつみを覆う何の前触れも無く発生した炎の障壁に遮られ、焼き尽くされた。
「!?」
明日香の眼前になつみの笑顔が突如として現れ、驚いたその首元を水の刃が掠めた。
咄嗟に蹴りを放つが、それは鋼を纏った右手に受け止められ、当たった脛が痛みを訴える。
距離を取ろうと軸足に力を入れた時、足に違和感を感じた。
見れば、アスファルトから飛び出た氷に足首を掴まれ動きを封じられている。
なつみの背負った風の翼が頚動脈に襲い掛かる。
チッ、と舌を打ち、自分の足に向け放った電撃で氷を溶かして今度こそ距離を取る。
- 495 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:29
- 「成る程、十二神将を自分に憑依させてそのチカラを自在に使えるようにしたわけね」
「ハァッハァッ・・・っ、まぁね。これ使ってる間ならごっつぁんにも負けないよ」
「でしょうね。まぁ、使ってる間ならだけど?」
明日香の発言は、なつみの疲弊の激しさを示唆してのモノだろう。
なつみもそのコトは自覚しているらしく、一瞬で勝負を決めるべく意識をギリギリまで集中している。
「はは、まぁね。多分次で最後っしょ。そっちも全力で来た方がイイよ」
「えぇ、そのつもりよ」
明日香の身体から、黄金色の稲妻が迸り始める。
両者重心を落とし、その一撃に全てを込めた。
真里は叩き付けられる霊圧に動くこともできず、ただ黙って2人を見つめている。
- 496 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:29
- 今まさに二つのチカラがぶつからんとした時、響いた爆音。
音より一瞬早く届いた巨大なチカラの気配に驚いた3人の瞳は、
既に上空に引き付けられている。
爆音とほぼ同時、その瞳に映った黄金色の炎。
「なっ!?何アレ!?」
「・・・どうやら終わったみたいね。私は帰らしてもらうよ」
「えっ!?あっ、ちょっと福ちゃん!!!」
「じゃあね」
呆然としていたなつみと真里が気付いて呼び止めた時には、
明日香はもうその影に沈み込んで消えていったところだった。
屋上の辺りと明日香の消えた地面を交互に見ている2人を、
紅い月は変わらず照らし続けていた。
- 497 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:30
- *****
- 498 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:31
- 虚空を舞う自らの足元、道重さゆみはその光景にあの夜以来の当惑を憶えた。
(音に驚いて来てみれば・・・、何コレ?)
よく崩れないで形を保っていられるものだ、と感心してしまうほど
縦横無尽に屋上の地面を走った亀裂。
所々コンクリートの塊を隆起させたフィールド、
ソレを囲うように張られていた金網は、最早その機能を保持してなどいない。
水の代わりに硫酸でも消防車が放射したのでは無いかと思える程に溶解・変形したソレは
子供でも乗り越えられる低さになり、網目の数も既に網とは呼べない数に減ってしまっている。
しかしさゆみを驚かせたのはそれらでは無い。
溶け残った金網、その一つに背を預けて静かに目を閉じる実の姉の姿を
視界の中心に捉えたからである。
- 499 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:31
- 「お姉ちゃん!!」
思わず叫んで傍らに降り立つ。
すると姉・市井紗耶香はゆっくりと目を開け妹の姿を認めると、変わらず軽い声を上げた。
「ん?おぅ、オマエが無事ってコトは亀井も無事なんだな。
良かった。ボスにどやされんで済むわ、なはは」
「なっ!?それよりコレ何よ!?れいなは!?」
「心配せんでもあそこに寝てるよ。
ていうかまずこんな姿になった姉の心配とか無いのか?」
一つの隆起したコンクリの塊の陰を指した紗耶香の身体は、
右の肩から先が失くなり右の腹部も肝臓の一部ごと抉り取られている。
当然ソコからはおびただしい量の鮮血が湧き出しているのだが、
そんなコトは意に介せず鬱陶しそうにさゆみは答えた。
「そんなのするだけ損。
馬鹿言ってないでさっさと再生しないとホントに死ぬよ?」
冷たい声でそれだけ言うと、倒れているれいなの元へと駆けて行ってしまう。
そんな妹の背に向かって「冷たいなー」と独りごち、紗耶香は再びその目を閉じた。
- 500 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:32
- 傷口から血液の代わりに光の粒子が流れだし、傷口を覆い始める。
右肩から湧き出たソレはたちまち形を成して行き、
紗耶香の身体に釣りあった右腕の形状を再現し終わると同時、一層強い光を放った。
光が晴れるとそこには元通り新品の右腕が現れる。
同様に右の腹部も塞がり、白い肌が破れて紅く染まった衣服の隙間から露になる。
元に戻った腹筋を使って半身を起こす。
剥き出しになった腕を2、3度振り回し、指先にチカラを込め爪を尖らせたり引っ込めたりして
その機能に異常が無いコトを確かめると、後転を途中で止めた姿勢になった。
曲げた両脚を突き出しその反動で一気に立ち上がる。
視線を一度宙に這わせた後、貴重な食糧・・・もとい大事な同期の傍にいる妹にソレを移した。
- 501 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:33
-
れいなに目立った外傷は無い。
ただ揺らして呼び掛けても起きないくらいに深い眠りに落ちてしまっているらしい。
平手を一発ぶちかましても目覚めない事を確認し、
膝の下と肩の後ろに腕を差し込んで抱き上げる。
屋上の角まで運んで寝かせ、今度は往復ビンタを見舞ってやっぱり意識を取り戻さない事を
確かめた後、ショートパンツのポケットに入れてあった防壁符を取り出し
黒地に描かれた鬼の顔に貼り付けた。
口を半分開いた無防備な寝顔に笑顔を向け、すぐに顔を引き締めて姉の方を睨み付ける。
ドコから取り出したのか、紅い液体の入った500mlペットボトルを傾けている彼女は口を離すと
その飲み口をこちらに向け「飲む?」とまた場違いな空気を漂わせた。
食欲を押さえ込んで首を横に振ると、
彼女は容器をほぼ垂直に傾けて中身を胃に移し空にする。
容器を掌にすっぽり収められるサイズまで握り潰すと、紗耶香はようやく口を開いた。
「んで、どーする?
正直アタシはもう闘う理由も無くなったし帰ろっかなーと思ってんだけど」
「指名手配犯・市井紗耶香。
容疑、殺人及び傷害・その他諸々。
危険度はS級で懸賞金額$200,000」
紗耶香の質問には答えず、さゆみが淡々と並べたのは紗耶香の手配書のデータ。
それを聞いて紗耶香は眉間に皺を寄せ、むぅん?という表情を浮かべた。
- 502 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:35
- 「それが、何か?」
「これだけあれば、こっちとしてはアナタと闘う理由は十分なの」
「あ、さぃですか」
さゆみの真剣な表情と、半身になって重心を低くし右腕を垂れ下げ後方に送った
人型霊獣に特有な戦闘時の構えを見て紗耶香は呆れたような表情をする。
「あのなぁ、マスターのいない今のお前がいちーに勝てるわけ・・・。」
「ねぇ」
紗耶香の言葉を遮るように、さゆみが声を出した。
その音に先程までの冷たい響きは無い。
「その前に一つだけ尋いておきたいコトがあるの」
「ぅん?何?」
一つ息を吸い込み目を閉じる。
数瞬の間に瞼の裏を過ぎる、数々の鮮明な思い出。
目を開け、意を決したように質問を投げる。
「あの頃の・・・、わたしが大好きだったお姉ちゃんは、道重紗耶香はもう、いない・・・の?」
語尾の弱まったそれは、疑問と言うより願いに近い声だった。
それを聞いて2、3度瞬きをした後、紗耶香は目を細め唇の端を吊り上げた。
- 503 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:36
- 「なんだそんなコトかぃ。答えるまでも無いだろ?
とっくの昔にいなくなったよ、そんなモンは」
「・・・そぅ、そうだよ、ね」
完璧とも呼べる、最上級の爽やかな笑顔。
でも、何かが足りない。
決定的に、あの頃の自分の姉にあったソレが欠けている。
もう一度目を閉じ、瞼を過ぎる思い出に一つ一つ蓋をしていく。
それが終わると鼻から静かに湿った空気を吸い込み、丹田へとゆっくり落とした。
息を止め、酸素が身体中に満ちていく感覚をイメージしながら
「氣」を練り、エネルギーを溜め込んでいく。
おそらく紗耶香は今、完全に油断している。
それは自分が元々出来の悪い妹だと知っているから。
それは自分がチカラを失い、ヒトという種族と歩むコトを余儀なくされた
一族の面汚しであると知っているから。
だが、そんな自分にも勝機はある。
たとえ卑小なチカラだろうと、一点一瞬に集中すれば
巨大なチカラにも勝るコトがあると、彼女達は教えてくれた。
だから自分は賭ける。
今という、この一瞬に。
- 504 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:37
- 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
目を見開き、体内に残った二酸化炭素を吐き出すと共に気合を上げる。
エネルギーはまだ放出しない。
自分に残ったチカラ、人間とは比較にならぬ身体能力・五感・再生力を全開に。
リミッターの外れた筋肉がうねり、目標との距離を詰める。
同時に骨が悲鳴を上げ音を立てて砕け始めるが、真祖の再生力がそれを阻んだ。
目は獲物の心臓を捉え、耳はその鼓動を把握し
肌は空気の流れを感じ取り鼻は獲物が確かに其処にいることを知らせる。
そして舌は、血を求めた。
紗耶香の上半身が微かに揺らぐ。
膝を抜いて重心を落とし、腰の回転と共に紙一重に敵の攻撃をかわした後の
カウンターは昔から彼女の得意技だった。
破るには彼女の反応速度を上回る速さでもって仕掛けるしかないが、
今のさゆみには・・・いやたとえ昔の彼女でもそれは不可能。
案の定、突き出した右爪は虚空を貫いた。
ナイフより斬れる紗耶香の爪がさゆみの腹部に喰い込む。
痛みなど無いが、下半身に力が入らなくなったコトで
脊椎のある背骨ごと身体を貫かれたコトを認識する。
- 505 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:38
- だが、さゆみの狙いは此処から。
刺さった腕がさらに深く腹部に沈み込むのも厭わず、姉の華奢な左腕にしがみつく。
紗耶香は腕に喰い込み骨にまで達する妹の爪に顔をしかめ振り払おうとするが、
心臓目がけて放たれた超音波の刃がソレを阻んだ。
紗耶香が咄嗟に反応し胸部のSNTでその媒介を無効化するコトで
できた一瞬の隙をつき、さゆみは左腕を突き出して姉の心臓を貫いた。
「お前っ!?」
血流停止と脊椎破損により運動・思考機能を極限まで制限された紗耶香の顔が驚愕に染まる。
どうやらこちらの狙いに気付いたようだ。
だがもう遅い。
背中から突き出た左手を肩に回し、鋭い牙を姉の首筋に突き立てて完全に密着する。
お互い相手の身体を貫きながら抱き合う姉妹。
こんなモノを他人が見たらどう思うだろう、そんなコトを考えながらさゆみは静かに目を閉じた。
(えり、れいな、ごめんね?約束守れそうもないや・・・。)
溜め込んだ「氣」を身体中に走らせそのエネルギーを相乗的に膨張させて行く。
やがてその制御が限界点に達した時、腕の中でもがく姉に、
いやかつて姉と呼んだその人に心の中で呼び掛ける。
(もういいよ。一緒に、逝こう・・・?)
- 506 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:39
- 目を開き、暴れ回るエネルギーを一気に解放しようとしたその時、その声は響いた。
「sis mea pars!!」
「なっ!?」
全身の力が抜け、暴れていたエネルギーが徐々に萎縮して行く。
戒めから解放された紗耶香が左腕を引き抜き、同時に「霊力波」でさゆみの身体を吹き飛ばした。
大量の血飛沫が宙を舞い、2人の視界を紅く染める。
「おっと」
吹き飛ばされたさゆみの身体を受け止める、鋼の腕。
さゆみは目だけを動かしてその腕の持ち主の顔を探した。
「い、飯田さん・・・?」
「ごめん、遅くなっちゃったね?」
優しく微笑みかける錬金術師・飯田圭織。
その傍らに佇むのは親友でありさゆみのマスター・亀井絵里。
吊り上げられたその目がこちらを射るように睨んでいる。
- 507 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:40
- 「え、えり・・・?どうやってここまで?浮くのはできても飛ぶのh」
「飯田さんに連れてきてもらったのよ。そんなことより・・・。」
―――――パチンッ・・・。
絵里の平手がさゆみの頬を強かに打ち据えた。
熱くなる頬を押さえ、呆然と佇むさゆみに絵里が怒鳴る。
「何考えてんのよ!!!今自爆するつもりだったでしょ!?」
「う゛・・・。で、でも他にあの人を止める手立てがn」
オロオロと言い訳を始めそうなさゆみの言葉を遮るように絵里が畳み掛ける。
「そんなの今スグじゃなくたって良いでしょ!?
そりゃお姉さんのあんな姿見てるのはツライかもしれないけど、
勝手に死ぬなんて契約違反もイイトコだよ!!!」
「そ、そりゃそうだけどぉ・・・。」
- 508 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:41
- 割と失礼な会話を聞きながらも、さゆみ同様全身を紅く染めた紗耶香は何も言えずに佇んでいる。
わーぎゃーと続けられる言い合い(さゆみが一方的に責め立てられているのだが)は放っといて、
圭織がちゃっかり傷の再生を終えてる紗耶香に話し掛ける。
「・・・エライ言われようね、サヤカ。何かしたの?」
「はは、まぁ色々と・・・ていうかそーゆー物騒なモンちらつかせないでくんない?」
引き攣った笑顔を浮かべる紗耶香の指差す先、圭織の左腕が日本刀に姿を変え、
まるで血を欲しがっているかの如く鈍い紅の輝きを放っている。
―――――っらまぁ・・・、リアルに怨まれてるなぁ、、、当たり前だけど・・・。
ねぇ笑って?、な感じの笑顔だし。
一つ言っておくと、この2人は昔付き合っていた。
「あぁ、ごめんごめん。アンタの顔見てるとつい」
笑顔を絶やさずに刃の腹にある紅い紋様を叩き、形状を元に戻す。
いや、元には戻っていない。
ほとんど手の形はしているのだが、指の第一関節から先が5本共欠けている。
無論、錬成に失敗したわけではない。
- 509 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:42
- もう一度言うが、二人は元恋人同士・・・。
指先に穿たれた五つの穴を紗耶香の顔に向け、
漫画でなら確実に青筋マークの付きまくった笑顔で紺野あさ美の半実験体が口を開く。
「人の後輩散々虐めやがって。消え失せろぉ!!!」
「え゛ー・・・?」
放たれる、銀の弾丸(雨)。
紗耶香はどうにか飛び跳ねたりコサックやブレイクダンス踊ったりでかわすが、
シャツを捲り上げられたコトで現れた鋼の肘部分にあるマガジンを何度も装填しながら
3分以上撃ち続けられ、だんだんかわし切れなくなって行く。
しつこく言うが、2人は元カップル・・・。
「わっ、だっ、のぇ!?く、くそ、仕方・・・ぉあっ!?ズらからしてもらうよ・・・ぉおお!?」
もちろん圭織の耳にそんな声は届いていない。
言い合っていた2人もけたたましい銃声のおかげで止めざるを得なくなり、
今は黙って、口を半開きにしてリーダーの勇姿(?)を見つめている。
- 510 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:43
- 妹とその親友に助けてもらえる筈も無いと認識している紗耶香は手元に残っていた
潰れたペットボトルを投げ付け、それを圭織が撃ち払っている隙に
懐に手を伸ばし黒いカードを取り出すと、やたら上手な発音で叫んだ。
「shadow gate!!!」
同時に、紗耶香の身体が紅い光によって作られた自身の影へと沈んでいく。
その様を見て圭織が悲鳴にも近い怒号を上げた。
「待てこらぁ!!!逃げるな!!!」
「はっはっは〜、good night 皆のしゅ・・・ぅぐぁっ!?」
紗耶香の頭が影に沈み込み切る寸前、
横で見ていた筈の絵里が思わず放った流れ弾にも近い一発がそのドタマを貫いた。
脳を一時的に破壊されて不死身の真祖は沈黙し、
そのまま影に吸い込まれるように消えていった。
- 511 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:44
- 「くそっ、仕留め損ねた・・・。」
最後に言うが、2人は元アベック(死語)。
吐き捨てるように呟いた後、
圭織がまた立ちすくんでいる2人に目を向ける。
「あんた達、ケガ無い?」
「あ、いや、無数にありましたけど今は平気です」
「それよりれいなは?今ので流れ弾当たってるかも」
絵里の言葉に一瞬青ざめて辺りを見回し、
無事(?)五体満足なれいなの姿を見つけて駆け寄った時、
3人の耳にいくつかのサイレンの音が届いた。
「アレ?警察?」
- 512 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:44
- 屋内へと繋がる扉が音を立て、そこから見覚えのある2人が慌てた様子で出てきた。
「おーい、3人共〜」
「あっ、安倍さん。って、そのケガどうしたんですか矢口さん!?」
なつみに担がれるように階段から現れた真里を指差し、絵里が驚いた声を出した。
真里はバツが悪そうに苦笑いを浮かべている。
「いや、ちょっとヘマしてね。それよりなんかさっきの爆発で防音符吹っ飛んじゃったみたい。
早いとこズラかるよ?」
「そうっしょ。見つかったらまた記憶操作とかで予算大幅に飛んじゃうべさ」
「げ、そりゃマズイ。裕ちゃんに怒られちゃうよ。早く行こ。なっちよろしく」
「あ〜、それがさっき結構無理しちゃって、、、移動術はキツイかも・・・。」
「マジ?じゃぁやぐ・・・。」
- 513 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:45
- 言いかけて、頼む相手が満身創痍である事に気付く。
「か、亀井〜、アンタ一応魔導士だよね?」
「・・・わかってて訊いてますよね?」
「・・・ごめん」
下の方から、車のドアが閉まるような音が聞こえる。
今更、急いで真里達の乗ってきたワゴンに戻れば良かったと気が付く。
紅い月は、会話を止めて冷や汗をダラダラ流す戦乙女達を嘲笑うかの如く、爛々と輝いていた。
- 514 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:45
- ――――――――
- 515 名前:FILE・2〜紅い月〜 投稿日:2004/07/04(日) 13:46
- 「・・・を確認・・・した・・・よう・・・。」
『ガー・・・解・・・ピー・・・き続き・・ザーザー・がい・・・。』
「了解」
圭織達があたふたしているビルから3つ程隔てたビルの屋上。
彼女達の姿を楽しそうに眺める影が一つ。
通信を終え、その影・・・少女は溜息を一つ。
「さて、次はどんな風に楽しませてくれるのかな、れいな?」
そんな独り言を残し、少女・結ヶ崎薫は闇の中へと溶け込んだ。
そしてまたその呟きも、紅い月へと吸い込まれるように消えて逝った。
- 516 名前:久々やりますいつものコレ 投稿日:2004/07/04(日) 13:47
- *****
- 517 名前:某漫画読み過ぎな解説。 投稿日:2004/07/04(日) 13:49
- はぃ皆さんお久しぶり、紺野あさ美です。
どっかの阿呆がサボッてたせいで随分間が空いてしまいましたが、
今日も今日とて解説を始めたいと思います。
安倍陰陽式合氣柔術:安倍さんのご実家で教えられている武術で、
元来は妖魔討伐用に陰陽道を交えて創られたみたいです。
今は護身用に習いに来るOLさんとかもいるそうですが。。。
バン・ウン・タラーク・キリーク・アク:セーマンと呼ばれる、安倍晴明が考案したとされる
術の始動キーです。五大明王の名号があるとか無いとか・・・。
式神御霊会 :式神のチカラを具現化し使役する術です。
(しきじんごりょうえ) 甲縛というのはコレを自身の身体に纏って使うことで、
かなり高レベルな術式の一つです。十二神将は元々一つ一つが凄まじい
チカラを持っている上、一度に使うので相当疲弊するみたいですね。
十二神将:薬師如来の眷属で、その名号を受持し衆生を守護する12の夜叉大将です。
安倍さんが持っているのは安倍晴明が創ったと言われる十二神将の式神で
12の鬼神それぞれが特殊な力を有しています。
式払い:式(霊力)を無効化する術です。
- 518 名前:某漫画読み過ぎな解説。 投稿日:2004/07/04(日) 13:50
- 手配書:凶悪犯にはUFAが懸賞金を賭けます。
それをフリーの賞金稼ぎの高位霊力保持者達が追うんですが、
市井さんのはかなり高額な部類に入りますね。
ちなみに後藤さんのは$1,000,000です。
霊力波:真祖のヴァンパイアの霊力値は約4000p。ほとんど反則です。
当然「氣」を放出しただけでも相当な威力で、コレを霊力波と呼びます。
自爆:全くドコで覚えたのか・・・。
確かにそういう魔術があるんですが、使っちゃダメです。
では解説はこの辺で。作者さんにテストの出来栄えなどインタビューしてみたいと思います。
どうでした?
_| ̄|○ <はは、これだけ更新サボっておいてできなかったわけないじゃないですか・・・。
・・・ズタボロだったそうです。では、天誅〜!!!
作者:ぐへっあぐっ、ぷろっ!?・・・_| ̄|○ <ハァッハァ・・・。(←されるがまま
- 519 名前:FILE・2〜紅い月〜(了) 投稿日:2004/07/04(日) 13:51
- *****
- 520 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 13:58
- 久々更新終了デス。
待ってる人とかいたらごめんなさい。
とりあえず無事(?)戦場からは帰還致しました。
結果はまぁ_| ̄|○ <バッチリです、はは・・・。
さて次回ですが、一つ閑話(?)というかそれに近いの挟んで
あともう一回このシリーズやる予定デス。
あ、痛い痛い、、、
水風船はやめてください。。。
ま、その後本編ってことで。
それも本編って呼べるかどうか微妙なんですがね?
- 521 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 14:17
- >>482 我道 様
とりあえずごめんさない。。。
パk(ryってごめんなさい。。。
このお話たまに反則的に強い方々出てくるので今のうち慣れちゃって下さいなw
両刀だなんてそんな・・・。
川o・∀・)<その割には文章下手ですしね。
・・・ハイ。。。
>>483 shou 様
カッコ良く描けてました?
ありがとうございます♪
救援の方も救援なのかどうなのか・・・?
怯えてた田中さんに一体何があったんでしょうね?w
その辺も楽しみにしててくらさい。
>>484 刹 様
彼女のエロには意味が若干あったり無かったり。。。ムフフ
理系はねぇ、、、現象の論理的理解はなんとかなるんですが
数字とか化学式とか出てきた時点で∬∬´▽`)な感じになります。。。
キャメイさんの完全重装備はR−15指定ですので全部は描けません。
>>485 Ray 様
いちーさんには数多くの愛人がいるという噂も・・・ありませんw
戦闘シーン、引き付けられてなんて・・・ありがたやありがたや(拝
川o・∀・)は本編出て無くても大活躍で困ります。(汗
でも実はFILE・3に出演予定ですのでお楽しみに。
PS また気が向いたら使ってやってください。
- 522 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 14:31
- >>487 名無飼育さん 様
強くて変態、それが彼女の存在意g・・・ぐはぁっ!?
ヽ`∀´ノ:勝手を抜かすな留年作者。
だからいちーの扱い酷すぎんだよ、なんとかしろぃ!!
りゅ、りゅうね・・・。そんなコト言われてもあなたが(ザクッ
>>488 聖なる竜騎士 様
とりあえずこうなりましたw
市井さんもこれから・・・どうなるんだか?(マテ
戦場から生きては帰ってきたんですが、五体満足とは呼べないかもしれません。。。
まぁ乞うご期待ってコトでw
>>489 名無飼育さん 様
いつも楽しませてもらってます。
キャラ立ってるのはイイんですが扱いが非常にムツカシイのが難点です。(ヲイ
ていうか最近いちーさんにスレを乗っ取られてる気がしてならない。。。
見習うとあまり楽しいコトにはならないと思いますよ?w
黒紺にノーロープバンジーさせられないように頑張りたいと・・・。
黒紺:てぃっ♪(どかっ。←誰かの背中をヤクザキックした音。
ヒューーーーーーーーーーグシャッ♪
では皆さん次回もお楽しみに〜ノシ
- 523 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 14:33
- ⊂⊃
/⌒ヽノノノノハヽ
/ソソソソ 从*‘ 。‘) イラッシャイマセー
(/(/(/(/ (つと)
(_)_)
- 524 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 14:34
- ⊂⊃
/⌒ヽノノノノハヽ
/ソソソソ 从*‘ 。‘) イラッシャイマセー
(/(/(/(/ (つと)
(_)_)
- 525 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/04(日) 14:34
- ⊂⊃
/⌒ヽノノノノハヽ
/ソソソソ 从*‘ 。‘) イラッシャイマセー
(/(/(/(/ (つと)
(_)_)
- 526 名前:Ray 投稿日:2004/07/04(日) 23:11
- 更新キタ━━━━(゚Д(○=(*´Д`*)=○)Д゚)━━━━━!!!!
お疲れ様です!!
いやぁ〜何気にまた笑わさせていただきましたプッ(* ̄m ̄)
名も無き作者様の小説大好きなんで、次回もマターリ頑張ってください!
- 527 名前:shou 投稿日:2004/07/05(月) 18:43
- 更新お疲れ様です!!
本当に笑ったりしんみりしたり惚れ惚れしました。
作者様の作品・・・マジ好きです。
次回も楽しみにしてます!
- 528 名前:我道 投稿日:2004/07/05(月) 21:17
- 更新、戦からの生還、全てをひっくるめてお疲れ様です。
今回も激しく、楽しませてもらいました(日本語、ヘン?
>川o・∀・)<その割には文章下手ですしね。
いやいや。文才ありすぎて、少し嫉妬してしまいましたよ(w
私のくだらないネタでよいなら、もうどんどんと使ってください(w
それでは次回も楽しみに待ってます。長文レス、申し訳です・・・。
- 529 名前:刹 投稿日:2004/07/05(月) 21:41
- 更新お疲れ様です。
そして、戦の方も乙です。
久しぶりに作者様の文章が読めて、発狂してます。
嬉しすぎてww
ってか某漫画…もしかして某少年誌のアレですかい?
それでは次回も楽しみにしてますw
- 530 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/06(火) 14:12
- 更新お疲れ様です。
そしてお久しぶりです。
いや〜、道重さんの決死の捨て身戦法と良い、安倍さんの超魔術と良い、本当に
現実離れした面白い展開ですね。
てか、結ヶ崎薫さんて一体何者?何かこれから深く関わってくるんですか?
もう小太郎は出て来ないんですか?
更新の続き頑張ってください!!
- 531 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:32
- 「つんく♂の部屋♪」と描かてるフザけたプレートの掲げられたドアの前、
あたしは深く息を吸い込むと、横のパネルに手を伸ばした。
中からロック調の着メロみたいな中の人を呼び出す音が漏れて、
スグに天井のスピーカーから若い女性の声が聞こえて来た。
『ハイ。あれ、田中ちゃん?ちょっと待ってね、今開けたげるから』
「あ、どうも」
カメラであたしの顔を確認したらしい。
スグに扉がプシュー、という音を立てて横に開いた。
「珍しいネ若いコが来るなんて〜、ドウシタの?」
「あっハイ、ちょっとつんく♂さんに用があって」
中に入ると視界に嫌でも飛び込んでくる無意味に真っ赤な絨毯を見つめていると、
スピーカーから流れてきたのとは違う女性の少し発音のオカシイ日本語が聞こえてきた。
視線を前方に戻すと、ハーフっぽい顔立ちをした小柄な(ってもあたしと大差ないけど)女性が
デスク上のディスプレイの陰から頭を出してこちらを覗いているのが映った。
- 532 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:33
- 「ちょっと待っててね、今スグ起こすから」
「へ?起こす?」
他の2つより大きな机を挟んでその隣、スラッと長い脚をスーツのスカートから伸ばした
端整な顔立ちの女性がデスクからスッと立ち上がり、デスクと扉の間にある
応接セット(ソファとテーブル)にツカツカと歩み寄った。
ソファは黒い革張りのヤツが長いのと一人用の、それぞれ2つずつガラス製で背の低いテーブルを
挟むように置かれてるんだけど、女性はあたしの方に背を向けている長いヤツの前で立ち止まる。
次の瞬間、天井付近まで舞い上がるソファ。
唖然とするあたしと気にせず仕事に戻った小柄な女性を他所に、
ソレは片足を上げて溜息を吐く彼女の前に派手な音を立てて逆を向いて落ちた。
「ぐはっ、あだだだだ・・・。おいアヤカ、もう少し寝覚めのエエ起こし方は無いんか・・・?」
「二度と目覚めさせない方法ならごまんと知ってるんですケド、ねぇ?」
「いだだだだだっ、おまっ、脚乗せっ・・・ギャース!?」
カサカサと、台所に現れ黒光りする虫の如く這い出て来た金髪の胡散臭いオッサン。
それをソファに体重を掛けるコトで駆除したのはこのオッサン・寺田光男こと
つんく♂さんの秘書兼ボディーガード、
【ココナッツ】のアヤカさんで、デスク上のキーボードをカタカタやってるのは同じくミカさん。
いや、あたしそのゴキ・・・もといつんく♂さんに用があって来たと言った筈なんデスが。。。
- 533 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:34
- 「ハァハァ・・・、し、死ぬ・・・。お、お前な、上司にこんな真似してエエと・・・ふぎょっ!?」
「フンッ、そういう、セリフは、もっと、上司らしい、態度を、取ってから、言って、下さい!!」
うぁ、、、ヒールの踵で顔面を・・・。
言っとくけど変な想像膨らませられるほど生易しい蹴りじゃないよ?
懲りずにソファの下から抜け出て文句を垂れ始めたゴk(ryをアヤカさんがリンチするコト数分。
命辛々自分のデスクに戻ったつんく♂さんはスーツの乱れを直しながら口を開いた。
「なんや、俺に用って?」
いや、今更そんなグラサン掛けてカッコつけられても・・・。
やっぱり止めとこうかと思ったけど、一応この人の過去の栄光を信じて言ってみる。
「実は折り入って頼みたいコトがあって・・・。」
「ふむ、それはもしや先日立ち入り禁止の書庫で盗み読んでた書物に関係するコトか?」
「!?な、なんでそれを・・・。」
「お前らの行動くらいお見通しや。どや、見直したか?」
ぐ、、、伊達にハロプロのプロデューサーやって無いな・・・。
けどそこまでバレてるんなら話は早い。
- 534 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:35
- 「それなら単刀直入にお願いします。
あたしに【extractum】を教えて欲しいんです」
「ん〜、やっぱりそー来るか。でもなー・・・。」
「ちょ、ちょっとマッて下さい!!」
ミカさんが叫んで立ち上がった。
まぁ、こっち側の法律家みたいなコトやってる人だから当然の反応だよね。
「ん?どうかしたの、ミカ」
「どうしたもこうしたも、【extractum】、つまり覚醒呪文はUFAの規定で
使用が制限されテるんだモノなんダよ?」
あたし同様こっち側にあまり詳しいとは言えないアヤカさんの疑問に、
ミカさんが慌てた様子で答えた。
「ふ〜ん、なんで?」
「その使用に命の危険がトモナうからだヨ。資格試験もあるシ・・・。」
「あぁ、そーやな。でもあの本読んだってコトはそのくらいコイツも知ってるハズや。なぁ?」
もちろん知ってる。
っていうか訓練所の学科授業でも(一応)習ったから知らないなんて言ったら
菅井先生がまた泣いちゃうよ。
- 535 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:36
- 「えぇ、でもあたしが知りたいのは規定で制限されてるヤツじゃありません」
「せやろな。ソレなら俺より矢口とかのが早いし俺が忙しくて
教える暇無いんは知っとるやろーし、もう一つの方やろ?」
ぬけぬけとまぁ・・・。
「何ですか?そのもう一つの・・・って」
「せーげん所か完全に使用禁止になっとるヤツや。
存在自体危険なんで公式規定ブックにも載ってへんけどな。
普通のはただ潜在的な力を引き出すっちゅーか、氣ぃとか術の威力を一時的に高めるモン
なんやけど、コイツはまぁ、そやな、自分の中に眠ってる化物を呼び起こすモンかな」
アヤカさんの質問にな〜んの躊躇も無く答えたつんく♂さん。
ミカさんはさらに目を丸くして抗議する。
「Oh please!Give me a break!!アナタ自分の立場わかってますカ?
ただでさえ本部に目を付けられてルのに、これ以上目立ったりシたら・・・。」
「別に捕って喰われはしーひんもーん。それにまだ教えると決めたわけやないで?
まずは田中がソレを教わりたい理由っちゅーんを聞かんと、なぁ?」
体重を大きな革張りの椅子に預け、おどけたような口調でこちらに話を振った
つんく♂さんの視線は、蛍光灯に光るサングラスに遮られていて読めない。
けど、叩き付けられる重圧みたいなモノが誤魔化しを許さない、って言ってる。
心配しなくてもそんなコトするつもりはありませんよ。
- 536 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:37
- 「・・・一週間前の事件については?」
「あぁ、矢口と安倍、それに道重から報告は受けとる。例の爆発についてもな」
最後の部分を強調するってコトは、つんく♂さんも気付いてるんだろう。
目を閉じればすぐに蘇える、あの紅い夜の恐怖。
首を振ってそれを振り払い一度深呼吸をして、つんく♂さんを見つめ声を絞り出す。
「この半年で、あたしは自分が強くなったと思ってました。
けどあの人には、市井さんにはまるで敵わなかった・・・。
こんなんじゃ例え後藤さんを見つけても、本当に殺人犯なんだとしても、
あたしの力で止められる筈無いんです。。。」
「成程な、つまり力が欲しいっちゅーコトか・・・。
けどなんで自分の中に化物が棲んどると・・・?」
「うっすらですけど憶えてるんですよ、あの時のコト・・・。
確証は無いですけど、ソレを確かめる意味でもどうしてもコレが必要なんです。
お願いします!!」
- 537 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:38
- 脳裏に残る、その映像。
其処には視覚以外の全ての感覚が残っていない。
そのせいか酷く現実感が乏しいけど、みんなの話を聞くと
映像と比較して一切矛盾する点は見当たらないから、きっと現実なんだろう。
金網を蹴って身体を宙に投げ出した瞬間、視界いっぱいに広がる真闇の淵。
ソレに飲み込まれる直前、闇から吹き付けてくる暴風と耳に響く自分の鼓動から解放され、
同時に黄金色の光が周囲を包み込んだ。
光は輪郭が揺れていて、見慣れているせいかスグに炎なんだと認識できた。
光が突然右手に集まり出して輝きを増すと、あたしの身体は感覚も無いのに勝手に動いた。
右手に宿る炎を真闇に向けて放つ。
数秒後に、紅い光が目に入ってきた。
それが月の光だと認識するより早く、視界がぐるぐる回って止まると、その中央に
所々紅くペイントされ穴だらけな白のシャツを着た市井さんの姿が現れる。
特に驚いた素振りも見せない紅みがかったその姿はとても綺麗で、
普段のあたしならしばらく見とれていたかもしれない。
けど、この時は違った。
彼女の肉体は、獲物としてしか映ってない。
- 538 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:39
- 再び勝手に動く、あたしの身体。
右手を紅い月に向かって突き出すと、纏った黄金の炎が徐々に腕を伝い、全身へと拡がって行く。
でも、輝きは依然強いまま・・・むしろより強くなってる気がした。
刹那、視界が強く輝く黄金の光に支配される。
これだけの光にあたしの瞼は瞬きもしようとせず、ただその強烈な光を受け入れていた。
――――――壊せ・・・。
頭の中に、その『声』だけが響いた。
あたしの記憶は、そこで途切れる。
「ま、何にせよや・・・。」
呟くように吐き出されたつんく♂さんの声で、意識を現実に引き戻された。
「とりあえずやってみるしかないわな。誰でも使えるようになるような代物でもないし」
「ほ、ホントですか!?」
「つ、つんく♂さん・・・!?」
「しゃぁないやろ?前からこうなるかもしれんコトは分かっとったし。
田中、とりあえず準備もあるから明日闘技場に来てくれ」
「はい!よろしくお願いします!!」
- 539 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:40
- ―――――――――
- 540 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:41
- というわけであたしは今、闘技場に居る。
闘技場とは言っても、全面を銀の輝きを放つ金属に覆われたこの部屋は
あたしから見て左側の壁に取り付けられた強化ガラスを隔てて向こうに前室みたいのがあり
そこには色んなデータを採る為の機器が備え付けられていて、
どっちかってーと何かの映画に出てくる研究所の一室っぽい。
体育館並に広くて無闇に頑丈なトコが人間離れした戦闘の為に造られた空間としての特徴かな。
ガラスの隣にある入り口が真ん中から割れて左右に開くガー、という音に気付き
そちらに視線を移すと、つんく♂さんが運動には向かないスーツ姿で入って来た。
その後ろから矢口さんと高橋さんが続いて入って来て、
ガラスの向こうに座った紺野さんが機器を起動するような動作をしているのが見える。
「お待たせ。ほな早速始めよか?」
「あ、はい・・・。でもあの〜・・・。」
「いやつんく♂さん、オイラ達も何で連れてこられたのかまだ分かんないんですケド」
あたしに代わって矢口さんが疑問を口にする。
あたしの考えによるとこの術について分かるのは
【術を統べる者】と呼ばれるつんく♂さん以外にいないと思ってたんだけど
何故にこのお2人も一緒に・・・?
- 541 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:41
- 「コレは普通の術とはちょっと違ってな、身体の機能の一部にするしかないねん。
その為にはまず極限状態で自分の中のチカラの存在を認識せなあかん。
そーゆーわけで、『24時間耐久組手(能力使用アリ)』をやってもらう」
「「「はぁ?」」」
「要するに田中vs矢口・高橋で24時間闘い続けるんや。
矢口と高橋は交互にやってもええけど田中は一人で死ぬ程頑張ってもらう」
「そ、そんなん無茶ですよ。あーしらはともかく田中ちゃん死んでまうって・・・。」
高橋さんに激しく同意。
ムリムリ、不可能。こんな2人と殺り合って死なないわけないじゃん。
「嫌なら無理してやる必要はないけどな。ただ他に方法はないで。
ていうかお前たぶん何か勘違いしてるやろ?」
「え?勘違い・・・?」
教授内容にいささかの疑問を覚えてしまったあたしを
サングラスを外して真っ直ぐ見つめ、つんく♂さんが口を開く。
- 542 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:42
- 「今言ったようにこの術は普通の術とは違う。術と呼べるのかもわからんくらいにな。
コイツを使えるようになれば強くなるんとちゃう、強くならなコイツを使えるようにはならんのや」
「!!」
そうだ、訓練の最初に夏先生にも教わったのに・・・。
たとえどんなに優れたチカラを手に入れたとしても、それで強くなれるわけじゃない。
大切なのは、そのチカラの強さに溺れず支配されないだけの強さを自分が持つことだって。
「はは、そうでしたね。分かりました、やります。改めてよろしくお願いします!!」
「「・・・マジ?」」
- 543 名前:間に挟むぜ 投稿日:2004/07/11(日) 16:44
- *****
- 544 名前:あ・さ・美(強調)の解説 投稿日:2004/07/11(日) 16:45
- は〜い今日も元気に解説解説♪
とろとろ大好き、紺野あさ美です。
ココナッツ:ハロプロのチームの一つなんですが、
諸事情によりメンバーが2人になってしまった為現在はつんく♂さんの秘書兼身辺警護
という誰もが嫌がる役割を押し付けられてます。
本来つんく♂さんがやるべき全事務仕事をやらされている為お2人、特に肉体労働派
のアヤカさんは彼を甚振ってストレスを解消してるようです。
台所に出る:作者の近所は最近住宅地の建設が多くてやたらと土を掘り返している為、
黒いアレ やたらと飛んで来ては住み着いてる模様。
作者はビーダ○ンとかいう懐かしいもので何度か撃ち殺しました。
生き物の命を奪うなんて最低ですね、全く。ん?何か文句でも?(黒
extractum:ラテン語で、「引き出す」とかそういう意味の動詞が〜変化したモノらしいです。
〜のトコは作者が選択授業のラテン語をサボタージュした為よくわかりません。
覚醒呪文:詳しくはつんく♂さんの台詞を嫁。
ちなみに以前(本編的には以後)ぁゃゃの使ってた「エルメキア・フレイム」もこの類です。
菅井先生:現在UFAの訓練所で学科、つまりはこっちの世界の知識を教える
授業を担当されてる方です。例の3人の時は相当苦労したとか・・・。
ちなみにこの方もミカさんと同じこっち側の法的資格を持っています。
- 545 名前:あ・さ・美(強調)の解説 投稿日:2004/07/11(日) 16:46
- 闘技場:もちろんわたくしの設計です。
というかUFAの建物も機器もほとんど私の指示で建設・設置されたものばかりです。
全面に特殊シールド展開装置を仕込み、吹き飛ばされても安全で、
光源はSNTの影響を遮断する特性蛍光灯ですので割られる心配もありません。
実質私の実験室ではという声もありましたが今はもうありませんよ。(ニヤソ
術を統べる者:つんく♂さんの異名です。(つんく♂自体異名ですが・・・。)
意味はよくわかりません。
24時間耐久組手:過去やり切ったのは後藤さんと松浦さんだけ、という無茶な企画です。
- 546 名前:あ・さ・美(強調)の解説 投稿日:2004/07/11(日) 16:46
- Give me a break!!:えぇ〜と、、、私英語は・・・。
うぅ〜、私に壊す?を下さい?
後:んぁ、「冗談はよせ」とかそういう意味だね。
直訳で「休みを下さい」でもあながちミカちゃんの心境的には間違ってないかもしんないケド。
紺:ご、後藤さ〜ん!!ありがとうございます、助かりましたぁ〜♪
後:んぁ?なんでくっつくの?
紺:そ、それはもちろん・・・。(赤面
作:あ、あの・・・ぐぶっ!?
黒紺:邪魔すると殺す。
作:ひぃっ、後藤さんお助け〜!!
後:気色悪い。寄らないでよ。
――――――斬ッ!!!!(どさっ・・・。
- 547 名前:以上、寸劇終わり。(マテ 投稿日:2004/07/11(日) 16:48
- *****
- 548 名前:以上、寸劇終わり。(マテ 投稿日:2004/07/11(日) 16:49
- 最初に比べたら確実に威力の弱い氣の塊が飛んでくる。
跳びたいけど、無理。
半分以上抜けかけてる膝の力を全部抜き、ソレが頭の上を通過するのを確認すると、
ガスコンロ程度の火力しかない炎を右手から吐き出す。
顔に吹き付けるソレを両腕の鉄甲で阻み、ポニーテールの解けた髪を振り乱しながら、
彼女はこちらに勢いの亡い拳を繰り出してきた。
それを左腕で払い落とす。
髪の隙間から飛んできた汗が目に染みる。
「田中だけ24時間じゃ可哀相だから高橋も頑張れ」
先輩の権力をフルに濫用した矢口さんが役目を高橋さんに押し付けてから何時間経っただろう。
前の休憩が15時間経った時だったからそれ以上なのは確かだけど最早時間の感覚なんか無い。五時間毎の休憩。
今考えられるのはそれまであと何時間かというコトのみ。
- 549 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:51
- 「う゛らぁ!!」
「あづっ!?」
頬に痛み。
口の中に鉄の味が溢れる。
多分なんで自分がこんな苦しい思いしてるのかに人の良い高橋さんがようやくキレたんだろう。
「あ、、、ごめ・・・。」
右脚を下ろしながら、倒れ込んだあたしに高橋さんが謝る。
ほとんど氣に覆われていないとは言え元々体術の達人でもある彼女の蹴りは
ギリギリ霊獣化を保っているあたしが牙で自分の口内を傷つけるには十分な威力を持っていた。
そう言えば今まで手加減してくれてたんだろうか、せいぜい掠り傷程度で大した流血しなかったな。
そんなコトを思いながら口を開けると、相当深く切ったのか、結構な量の紅い液体が掌に落ちた。
しばらくソレを見つめていると、眩暈に襲われた。
- 550 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:52
- 突然高鳴る、鼓動。
舌の上を躍動する、血の味。
鼻腔を強く刺激し過ぎる生臭さも、今は何故だか心地良い。
視界は紅に染め上げられた。
自然、息遣いも一層荒くなる。
あぁ、まただ、またあの感覚だ。
身体の奥底から湧き出て来る巨大なチカラの奔流。
周囲の空気が燃え、血液が煮え滾るようなこの感覚。
頭のてっぺんから足の爪先まで、今なら自在に操れるような気がする。
身体中に漲るチカラ。
精神を支配する破壊衝動。
ついと視線を上に移す。
こちらを不安げに見つめる、ウマそうな獲物が映った。
爪を光らせ、獲物の首に腕を伸ばす。
開かれる『門』と共に、視界の紅が黄金へと・・・!?
- 551 名前:FILE・2.5〜チカラ〜 投稿日:2004/07/11(日) 16:52
- 何かに抑え付けられる感覚と同時、身体が地面に吸い寄せられる。
『門』が閉じ、チカラがその姿を窄めた。
意識が、遠のく。
全身に走る鈍い痛み。
目だけを動かし視線を上げる。
強化ガラスの向こう、こちらに手を翳しチカラを放つ男が、
サングラス越しに悲しそうな瞳を向けて来るのが映った。
- 552 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/11(日) 16:53
- *****
- 553 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/11(日) 16:53
- すっかり週一更新終了〜♪
次回はFILE・3に行きたいと思います。
え?この後どうなったかって?
それはまぁ後々・・・。
決して今週ソコまで書くのがメンドくなったわけではありません。(爆
あ、刃物は止めてください。。。(汗
いつものコーナーの2人の関係は発展する予定無いのでご了承下さい。
いやじゅ、重火器はもっとダメですって。。。(滝汗
- 554 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/11(日) 16:54
- >>526 Ray 様
ちまちま入れてる下らない笑いに・・・ありがとうございます(平伏
大好き・・・大好き・・・w
川o・∀・)<「必ず」言いましたね?
破ったら・・・。(ニヤソ
あ、脅迫されてる。。。
家に何かが届かないように気をつけてください。(トメロヨ
>>527 shou 様
マジ好き・・・マジ好き・・・ww(昇天
ほとんど無意識に入れてるネタに不安を覚え初めていた今日この頃なので嬉しい限りデス♪
もうちょいメリハリ付けられればな〜、と思いつつ精進しますので改めてこれからもヨロシクです。
>>528 我道 様
メル欄・・・良いんですね?出しますよ?
一人インパクトの必要なキャラが欲しかったモノで、出演決定です!!
どうやって出てくるかはお楽しみ。
ちなみに名前は変えて出します、割と重要な役で、ハイ。
もう止められませんw(ヲイ
- 555 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/11(日) 16:55
- >>529 刹 様
発狂・・・発狂・・・(((( ;゜Д゜))))
某漫画、多分ソレで合ってますよw
作者の学校は補習も中間も無しの一期一発勝負で
ダメなら容赦なく進級させてくれないのでソレはソレで大変だったりします。_| ̄|○
お互いがんばりませう、、、(涙
>>530 聖なる竜騎士 様
作者の脳みそも同様に現実離れした世界に浸っております。(危
彼女はですね、何者でしょうねぇ?
ヒントはですね、Metamorphmagusです。w
ま、コレの意味わかってもまだよく分かんないでしょうがww
小太朗は死んじゃいましたからね〜・・・死んじゃいましたケドね〜・・・。(意味深
では乞うご期待、さいなら!!ノシ
- 556 名前:我道 投稿日:2004/07/11(日) 17:18
- 更新お疲れ様です。
いやぁ、もうほんと素晴らしすぎますよ!流石です!
私、語彙が少なすぎるのでこんな月並みな言葉しか言えず、申し訳です。
それと、凶k(ryさん出演了承、ありがとうございます。
彼女を野放しにしておくと、この作品が破壊されますのでご注意を(爆
それでは次回も正座をして待っております。
- 557 名前:刹 投稿日:2004/07/11(日) 17:36
- 更新お疲れ様です。
ア…アヤカさん…(((( ;゜Д゜))))
ゴk(ry 呼ばわりされたあの人……よく死にませんね、
ああいう環境でw
高橋さんも…ダメじゃないですかキレちゃww
…とまぁ、支離滅裂な感想ですが、
次回も楽しみに待ってます。
- 558 名前:Ray 投稿日:2004/07/11(日) 23:22
- 更新お疲れ様です!
高橋さんキレたらあかんやよー(w
オイラのトコで田中ちゃんに流血あったらもっさんがアノ目で殺してくr(ry
か、必ず…いや、多分……おそらく…(弱っ!
川o・∀・)<お届けものでぇっす
んぎゃぁっ!!キタ━━(゚∀゚)━━!!(w
次回も楽しみにして…おりま…す(ガクッ
- 559 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/07/12(月) 15:24
- 更新お疲れ様です。
遂に田中覚醒か!?高橋さんもキレタ?矢口さんはボサっテル?
つんくや紺野さんは・・・・・・・ただ見てる??。
24時間耐久って、さすがに1日5〜6時間は寝ないとお肌に悪いですよ。
それでは更新頑張ってください。
(うわ〜〜〜、久しぶりに、自分で自分が何言ってるか分からん)
- 560 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:42
- ――――It is no use crying over spilt maiden.――――
無意識に窓を開け、底を覗き込んでいた。
其処には、何処までも昏い闇が意味も無く広がっている。
今夜は月も、星も亡い。
対象物を失ったせいか、焦点の定まらない瞳で暫くソコを見詰め続けた。
刹那、脳裏を過ぎる呪詛の声。
螺旋に墜ちる意識の中で、空は大地に、黄昏は朝焼けに、闇は光に、死は生に、
そして夢想は、現実へと入れ替わって逝く。
夢想した禁忌を現実に換え、少女は束の間の、一瞬の自由を手に入れた。
無抵抗に叩き付けられた細い四肢は有らぬ形に変型し、潰れた笑顔はもう戻らない。
見得ぬだけで確かにソコに存在した硬く冷たい人工の地面が、
少女の身体から湧き出で、はみ出た死を吸い込み、新たな生を孵す努力を始めた。
――――――潰れた笑顔は、もう戻らない。
- 561 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:42
- *****
- 562 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:43
- 「何、コレ?」
昼休み、購買で買ったピザパンを袋から出して口に入れようとした所で、
目の前に突き出された青いカバーの一冊のファイル。
眉を顰めて一瞬ソレを見詰めた後、差し出してきた相手、結ヶ崎薫に尋ねた。
「決まってんでしょ、例の飛び降り事件のファイル」
「・・・事故でしょ?アレ。そんなの今更調べても無駄だってば。パクパク」
何が決まってんだか・・・。
あたしゃ警視庁捜査一課の刑事かっつーの。
此処から読み始めるという暴挙に出た方に教えとくと、
あたしは(表向き)到って普通な中学2年の女子だからそんな血生臭い事件に興味など無い。
「・・・フンッ!!」
「ムグッ!?・・・ん〜、ん〜!!!」
無視してパンをかじり始めると、無言で喉元を片手で締め付けられ、
おまけに身体を持ち上げられて肺に酸素が入って来なくなる。
そ、その細腕のドコにそんな力が・・・!?
しかも丁度パンを飲み込もうとしたトコロだったので喉に詰まってる。
やば・・・、マジで死ぬぅ。。。
- 563 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:44
- 「話聞く気になったかしら?」
「ングングング!!!!」
「よろしい。とりあえずそれに目を通しなさい」
「ゴキュゴキュゴキュゴキュ・・・っプハァ〜、、、こ、今度こそ死ぬかと思った・・・。」
必死に首を縦に振って解放してもらい、
手元のコーヒー牛乳が入った紙パックを一気に傾け詰まってたパンを胃に落として一息。
ていうか我ながら学習しないな、あたしってば・・・。
渋々ファイルを手に取り表紙とにらめっこして、チラッと新聞部部長の様子を窺う。
あ、右手をワキワキと動かして爽やかな笑顔を向けてらっしゃる。。。
全く、つくづくいつかのあんな事件に首を突っ込むべきじゃなかったと後悔させられる。
その時のコトを思い出してこっそりと溜息を吐き、ブルーの厚い表紙を捲った。
- 564 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:45
-
◇
その事件、いや警察の見解では事故らしいんだけど、とにかくソレは一昨日の晩に起こった。
現場はココ【朝比奈学園】の、高等部校舎7階「コンピューター学習室」前の廊下。
あたしも通うこの学校、私立【朝比奈学園】は幼・小・中・高・大一貫の巨大な学園で、
何を隠そうUFAが経営してる。(ちなみにつんく♂さんは此処の理事の一人)
学園と呼ぶには敷地が広過ぎて、一つの都市と呼んだ方が相応しいかもしれない。
それぞれの校舎と学生寮に研究施設は当たり前。
教育施設とは門と、敷地内を二分する川に遮られてはいるものの、
商店街や、果ては住宅地まで敷地内に収められているのには最初、度肝を抜かれた。
話を戻そう。
件の高等部校舎はその辺の学校と似た四角い5階建ての校舎と数年前に新設された
8階建ての丸い塔みたいな校舎が隣接する形になっていて、事件のあったのはこの丸い方。
ココは6階まで無駄に多い文化・体育両方の部室が詰め込まれていて、
それより上には簡単な図書室・自習室・音楽室・美術室・コンピューター室、
その他選択授業とかで使う空き教室なんかがある。
- 565 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:46
- 事件の晩、高等部2年C組樋野翔子は何やら調べモノがあって
「コンピューター学習室」に夜遅く、10時近くまで残っていた。
友人も一緒だったらしいんだけど、その友人は教室に忘れ物をしたとかで
彼女にその場で待っているように告げ、走って行ってしまったと言う。
で、その友人が戻って来たら其処に彼女の姿は無く、アレ?と思いつつ
開いた窓の淵に手を掛けて携帯にかけてみると窓の下の方から着信音。
見下ろしてみると彼女の携帯のモノらしい見覚えのある光が明滅しているのが見えた。
彼女が出ないコトで胸に湧く嫌な予感を抑えて下まで足早に降りてみれば、其処に倒れる彼女。
慌てて抱き起こそうとして自身の手に付着した紅いモノに気付き阿鼻叫喚、
警察と救急車を震える声で呼んでから友人が助かりそうも無い重傷なのに気付き、
自分はそのまま意識を失ってしまったらしい。
うわぁ、ご丁寧に遺体の写真まで貼ってあるし・・・。
何処で手に入れたんだこんなもの。
詳しくは言いたくない。
とにかく自殺する事があっても飛び降りだけは止めとこうと思わせる凄惨な写真だ。
- 566 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:47
- 他の友人の話だとこの日の彼女の様子は到って普通で、いつも通りに教師の愚痴だの
片思いの相手がどーだの、他愛も無い話で盛り上がっていたとのこと。
寮生活をしていた彼女の、離れた所に住んでいる両親も夏休みに帰省した時に
特に変わった様子はなかった、むしろ早く学校に行きたいと漏らしてたぐらいだと言う。
担任教諭や他のクラスメイト、親しい先輩後輩に訊いても
気に止めるような不審な点には出会わなかったようだ。
樋野翔子は受験で高校からこの学園に入学して、大阪の親元を離れて寮で生活していた。
成績は割と良く、持ち前の関西弁とそこから醸し出される明るさで人間関係も到って快活。
部活動にも熱心で、器楽部のコンクールに向け一生懸命練習に励んでいた。
変な陰口を叩かれてる様子も裏で良からぬコトをやってた形跡も皆無。
大阪の家庭も円満で、暗い部分と言えば随分前にお兄さんを亡くしてるコトくらいか。
要するに、自殺する理由も殺されるような恨みを買ってる様子も一切無い。
事件の晩は曇ってたせいで月も星も無く彼女が落ちた窓から見えるのは目の前に広がる林のみ。
警察の見解をそのまま言えば何気なく窓を開けた彼女は外も中も真っ暗だったコトも手伝って、
何かの拍子に運悪く転落、コンクリートに頭から落ちて即死・・・ってのが一番妥当。
それでも他殺の線は消えないけど、校舎の出入り口全てと高等部の校舎に繋がる道のあちこちに
設置されてる監視カメラに不審な人物は1人も映っていない。
そもそも10時近くまで校舎に残っていても特に咎められるコトも無いのは
この学園の徹底的なセキュリティーへの自身にある。
突き落とされた可能性も限りなく0に近い。
まぁ、事件のショックで失語症に陥ってる第一発見者の友人を疑うなら話は別だけど。
- 567 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:47
- ◇
「どぉ、何か不審な点でも見つかった?」
ファイルを閉じて溜息を吐くあたしに、期待に満ちた声を掛ける輩が1人。
昨日授業をサボってたかと思えばこんなモノ作ってたのか。
そのエネルギーを何とか平和利用の方向に持っていけないものか。。。
「別に。しいて言えば校舎に戻った友人がわざわざその場に彼女を待たしたコトくらい?」
「あぁ、ソレにはその友人も事件の後に気付いちゃったらしくてね。
失語症になってるのもその罪の意識みたいのがあるみたいなの」
まぁ、自分が彼女に昇降口で待つように言ってればこんなコトにはならなかったろうから当然か。
しかし、二度とこんなファイルを作らないようにわざと冷たく突き放すような口調で
言ったのにコイツには全然効果が無いらしい。
自分で作って何度も読んだろうからあたしが見つけるコトなんか期待してないんだろうけど。
「で、結局こんなモノを食事中に見せて何がしたいわけ?」
あのステキな写真のおかげでピザパンは廃棄処分に終わりそうだよ、全く。
コイツは目的の為に調査をするわけじゃなく、単純に調査を楽しんでる節があるから
真っ当な返答は期待してないけどさ・・・。
でも、返ってきた答えは予想を裏切るモノだった。
- 568 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:48
- 「いや、実は調査の途中にその友人のご両親に頼まれちゃってね。
何とかして彼女を立ち直らせて欲しいんだって。
あたしも見たけど彼女、相当責任感じて閉じこもっちゃってるみたいでね」
「へぇ。。。アンタがそんなコト引き受けるなんて意外。で、どうやるの?」
「失礼ね、私にだってそれくらいの慈悲の心はあるわよ。
とりあえずどんな手を使ってでも良いから真犯人か彼女の自殺の動機をでっちあげる。
それも出来得る限り彼女の背負ってる責任が軽くなる方法で」
無茶を言う。
彼女もこの学園には高校から入ったって言うからそれなりの頭脳は持ってるはず。
その彼女を一切不審がらせずに立ち直らすなんてのは相当難しい。
よしんば上手い話をでっちあげたとして、それで殻に篭った彼女が立ち直るかは別問題だ。
コイツ1人で上手く行くとは思えない。
「あ、そ。まぁ頑張ってね」
嫌な予感が巡ったので午後の授業をサボる覚悟で立ち上がったんだけど、
首に絡み付いた細い腕がそれを阻む。
- 569 名前:FILE・3〜墜つる屍〜 投稿日:2004/07/16(金) 22:50
- 「あはは、逃がさんぞ。手伝ってくれるよねぇ?ウン?」
「い、嫌だと言ったら・・・?」
「こう」
くいっ、と明らかに慣れたような滑らかな動きで巻き付いた腕が頚動脈を締める。
一瞬スッ、と意識が飛んだ。
「わ、わかりましたよ」
「さっすがれいな、カシコイナ。じゃ、放課後彼女の入院してる病院行くから付いて来て」
「・・・ハイ」
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
あぁ、何時からあたしは暴力の前に簡単に屈服するような人間になってしまったのだろう。
(多分えりやら夏先生やらに出会ってからだろうけど・・・。)
兎に角あたしは、この難儀な体質のせいで
また関わる必要も無い難儀な事件に首を突っ込むハメになってしまった。
- 570 名前:今日は趣向を変えまして・・・ 投稿日:2004/07/16(金) 22:51
- *****
- 571 名前:今更キャラ紹介 投稿日:2004/07/16(金) 22:52
- はい、どーも。紺野あさ美です。
今日は解説単語が少なそうなので次回以降に回し、今更キャラ紹介なぞしてみたいと思います。
<田中れいな>
能力:霊獣化・発炎。
性格:割と前向き。根は真っ直ぐだがUFAに来て若干歪み始めてる。
それと引き換えに忍耐力という名の武器を手に入れた。
基本的にはお人好し。
好きなモノ:焼肉。
嫌いなモノ:ひゅーどろどろ系及びソレが出そうな雰囲気のある場所。
曲がったコトとヒト。
天敵:暴力で論理を押さえ込む方々。
霊力値:(平常時)600p前後。
(霊獣化時)900p超。
備考:妖狐の半妖で当然ながら人間寄り。
霊獣化時の身体能力はヴァンパイアに匹敵する。
発する炎は最大火力で1800℃前後。
ちなみにコレで生き物を焼こうモノなら液体化の過程を見ること無く気体化する。
本人は無意識に耐火性の「氣」で身体を覆っているので安全。
さゆの食糧として好まれるのは血液がRh−だから。
- 572 名前:今更キャラ紹介 投稿日:2004/07/16(金) 22:53
- <亀井絵里>
能力:ネクロマンシー(死霊操術)。
性格:のんびりしているが怒らすと凶暴。てか凶悪。
好きなモノ:ピンクの漬物。剥製作り。(西洋人の)墓荒らし。銃火器の手入れ。
嫌いなモノ:自分に迷惑を掛けてくる輩。弱い輩。ウザイ輩。
上記が全て当てはまる魔導士は最悪。
霊力値:約800p。
備考:元々は由緒ある魔導士の家柄の生まれだが、諸事情によりネクロマンサーに。
体術はネクロマンシーの師にも鍛えられており、技術は訓練所同期の2人より上。
「氣」による補助もあるが銃火器の扱いに長け、その辺の軍人じゃ太刀打ち不能。
魔術の方は魔法薬などの媒介を利用して宙に浮いたり、低級な基礎魔術を使うのが
やっとで、あまり得意ではないらしい。
<道重さゆみ>
能力:有翼形態への変身。超音波発生。吸血(?)。再生。
性格:かなりの自分好き。基本的に怒ったりはしないが
姉に対しては氷柱より冷たく鋭い。常識に疎い。
好きなモノ:自分。鏡。れいな(食糧として)。
嫌いなモノ:姉。直射日光。輸血パックの血液(味が落ちるらしい)。努力。
霊力値:1500p超。
備考:両親共に吸血鬼。よって真祖。
両親が真祖でなくても吸血鬼同士の子供には例外なく翼があり、真祖と呼ばれる。
ただ片親が真祖なだけではその子は吸血儀式により生まれた吸血鬼と同じ能力しか
所有しない。たださゆみは諸事情により霊力値がそっちの吸血鬼並に低下している。
再生能力の方は、以前よりは低下しているものの片腕くらいなら一瞬で再生可能。
再生の仕組みについては長くなるのでまた後日。
ちなみにヴァンパイアは不老不死というわけではない。
ま、今日はこの辺で。ぐっ、ちゃ〜♪ノシ
- 573 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/16(金) 22:54
- *****
- 574 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/16(金) 22:54
-
短いですがここまでよ〜、更新終了デス。
ま、導入部分ってトコですな。
休みに入ったので更新ペースを上げようかと思ってます。
注意して下さい。
あくまで「思って」ですから。。。
正直シャレにならない量の宿題を抱えているので、、、・゜・(ノД`)・゜・。
期待しないで待っててね♪(キモッ
- 575 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/16(金) 22:55
- >>556 我道 様
そろそろ足が痺れてらっしゃるのでは・・・?
そう思って早めの更新です。(大嘘
破壊、、、試してみますか。。。(ヤメレ
おそらくは本編に戻ってからの登場になる予定デス。
○○○○として登場しますw
>>557 刹 様
死にませんね、かろうじてw(ヲイ
此処の方々は生かさず殺さずの達人ですから♪
単にゴk(ry並の生命力だからって噂もありますが。
彼女もあそこまで我慢してたのはエライので許してやってくださいな。
きっとアヤカさんなら2秒でこr(ry
- 576 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/16(金) 22:55
- >>558 Ray 様
うわっ、まだ裏切ってないのに届いてるっ!?
ガクッ、てことは二酸化炭素か何かが詰まってましたか?
流石に理系な犯行方法だ。。。(マテ
もっさんならやってくれるハズですw
メル欄・・・煤i汗
>>559 聖なる竜騎士 様
さぁ、彼女は覚醒したんでしょうかね、フフ。。。(コワッ
矢口さんはテンパで髪がボサボサ、、、もといサボってますねw
特訓後は肌荒れが気になって仕方なかったとか・・・。(嘘
つんく♂さんは見てるだけでしたが紺ちゃんはコソーリと
データの採集や記録で忙しかったみたいです。
次回はできるだけ早くしたいと思います。
ではまた。。。ノシ
- 577 名前:我道 投稿日:2004/07/22(木) 19:38
- 更新お疲れ様です。(遅いですね・・・申し訳ないです
つ、強ひ・・・そして、怖ひ・・・(((( ;゚Д゚))))
失礼しました。でもあのキャラ、何かちょっと懐かしい気もします(ナニ?
何が起こるのか楽しみでしょうがないです。
それでは、例え足が痺れようとも、次回まで静かに正座をして待っています。
頑張ってください。
- 578 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/23(金) 15:16
- 更新お疲れ様です。
また新しい事件が始まりましたね、楽しみです。
暴力の前に簡単に屈服する田中さんが好きですよ!(とゆーかそーゆーキャラなんだから仕方ないw)
次回も期待してます。
- 579 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:56
- 西田亮子は震えていた。
彼女の病室は微風に舞うカーテンに隠れていた窓から射し込む光によって
その白さをさらに誇張するかの如く照らされている。
白く輝く空間の中央に置かれたベッドの上、彼女は膝を抱えて震えていた。
病室にはベッドの他には何も置かれていない。
その原因は彼女の左手首に巻かれた真新しい包帯にあった。
昨日目覚めた時、彼女は起き上がるなり奇声を発しながら傍らに立つ看護師の手から
ボールペンを引っ手繰り、左手首を走る動脈目掛けて突き立てた。
幸いその一撃は目標を外れ、腕に穴を穿ちボールペンを一本駄目にする被害で済んだのだ。
薬を打たれ眠らされた彼女が再び目覚めた時、看護士たちは身構えたのだが
彼女は意外なほど静かにその瞼を開け、ゆっくりと起き上がった。
彼女は、他人に意志を伝える手段と樋野翔子に関する記憶を忘れてしまっていた。
ただ、両親や担当医師も彼女の記憶喪失には気付いていない。
彼女が失語症と知った時、両親は樋野翔子のコトは忘れて今はゆっくり休めと言った。
話すコトはできずとも言葉を理解するコトはできる彼女だが、ヒノショウコという人物は分からない。
自分が何故病院にいるのかも分からず、そして今自分が何故震えているのかも分からなかった。
- 580 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:56
- コンコン、という控えめなノックの音が響く。
ガチャリ、とドアノブを捻る音の後、お邪魔しま〜すという声と共に若い看護師が2人入って来た。
1人でなくなったせいか、彼女の震えも自然に止まる。
入って来た看護師2人に視線を移し、感じる違和感。
其処にいるのは間違いなく、白衣に身を包みナースキャップを頭に乗せた若い看護師。
そう、若い。若過ぎる。
忍び込むような足取りで入って来た見知らぬ2人組は、
どちらも明らかに自分より年下の容姿をしていた。
- 581 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:57
- ―――――――――
- 582 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:58
- 結ヶ崎薫は、世間的に見れば美少女と呼ばれる部類の容姿をしている。
耳が隠れるくらいの長さに切られた髪は黒く、絹みたいにサラサラしている。
手足は細く、身長はあたしよりちょっと高いくらい。
顔も鼻筋の通った整った顔立ちで、高橋さんにも負けず劣らずの正統派美少女だ。
問題、いや大問題はその中身と能力。
そのCIAも真っ青な情報収集力は学園内の人間の個人データ全てを
把握していると言われ、非公式になんでも屋的活動をしているらしい。
一説には、各界大手企業や果ては警視庁直々の捜査依頼もあるとかないとか・・・。
おまけに流派は分からないけど古武術の達人で、技術だけならおそらく夏先生並。
UFAの規則に縛られて「氣」を使えないあたしの手におえる相手じゃない。
さらにマズイことに、コイツはあたしの本職を知っている。
あたしが此処に来たばかりの頃に学園内で起こったある事件が原因なんだけど、
そこで止むを得ずチカラを使ったその時に・・・。
このコトが上にバレたら深刻な不都合が生じる為、
弱みを握られたあたしはコイツの命令には逆らえないわけで。。。
- 583 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:58
- その結果として今、こんなカッコで病院の廊下を歩くハメになってる。
時折すれ違う入院患者やそのお見舞いに来たと思われる方々の視線が痛い。
どう見ても高校生より上には見えないだろうから当然だけど・・・。
どうやったのかは知らないが、薫は彼女の病室に看護婦や医師がやってくる時間を把握していた。
んでまぁ警察ですら面会謝絶なこの病室に忍び込む為、という名目でこんなカッコ・・・、
すなわち白衣の天使姿をさせられているわけだ。
だいたいココ1階なんだから窓から侵入とかできそうなのに、
コイツは潜入における変装の重要性を小一時間力説したあげく、
結局しぶるあたしに拳をチラつかせて強制的にこんなモン着せよった。
「えぇっと、108号室だからココだね」
「・・・マジでこのカッコで行くの?」
「無論」
『108号室』『西野亮子』と書かれたプレートの付いたドアの前、
往生際の悪いあたしに鋭い一瞥をくれ、薫は目の前のドアをノックした。
彼女は失語症なんだから返事があるわけない。
それを分かってる薫がドアノブを開こうとした瞬間、予想に反して中から返事が返ってきた。
- 584 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 13:59
- 『は、はぃい!?ちょ、ちょっと待っとって下さい!!』
ん?この聞き覚えのある独特のイントネーションは・・・。
まさか!?
「高橋さん!?そ、それに紺野さんまで!!」
「ふぇ!?田中ちゃん!?何しとるん、こんなトコで?」
頭を過ぎった予感に背中を押されてガラガラッと引戸を開けると、
其処には写真で見た顔が1人とよ〜く見知った顔が2人。
2人は膝が見えるくらいの長さのワンピの白衣に見を包み頭にナースキャップを乗せ、
手元にはカルテと思わしき薄い板状のモノを抱えてる。
「そ、それはこっちのセリフですよ!!2人は何してるんですか、しかもそのカッコ・・・。」
「い、いやコレは・・・。」
「って、田中ちゃんも同じカッコしてるように見えるけど?」
紺野さんに言われてはたと気が付く。
そうだ、あたしも2人と同じナース姿してんだった・・・。
「れいな、このステキなお嬢サマ方は・・・。」
「え゛、あぁ、え〜と、ウチの高校の先輩方。えっとこの格好は多分・・・って、薫?」
- 585 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:00
- ぬっ、とあたしの横をすり抜けて前に出た薫に2人の格好に関する言い訳を
取り繕おうとしたんだけど、薫の様子がおかしい。
なんかあたしの肩を白衣に皺ができるくらいに掴んで体を震わせてる。
狽ヘっ!?しまったぁ!!
「か、薫待っt「キャワイイ看護婦キタ━━━━(*´Д`*)=○)ヮ゚)<グハッ!?━━━━━!!!!」
「ひぃ!?誰やこのコはぁっ!?」
くっ、遅かったか。
コイツのデータでさっき言い忘れたコトが一つ。
結ヶ崎薫、特徴:無類の女好き。
ついでにカメラに(間違った方向で)情熱を注いでいる。
我を忘れて2人のナース姿を激写してます、ハイ。
ちなみにさっきあたしもされました、えぇ。
- 586 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:00
- ――――1時間後――――
- 587 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:01
- 「いや〜、さっきはごめんなさい。あんまり可愛いモンだからつい・・・。」
「「はぁ・・・。」」
所変わってココは某ファーストフード店内。
さっきの病院もそうだけどココも一応学園の敷地内。
ほんっとに何でもあるから不自然・・・。
薫がたっぷり30分間の飛び込み撮影会を終え、ようやく西野さんと話をしようとしたんだけど、
彼女は言葉の理解はできても失語症の影響か文字を書くこともできなかった。
かといってYes or No形式の質問を無神経にぶつける訳にも行かず、
とりあえず今日のところは諦めることにして4人で病院を後にした。
要するに、あのコスプレは薫に撮られる為だけのモノになってしまったわけだ。
まぁ、西野さんは非常に個性豊かなあたしらのやり取りを見て笑ってくれたし、
意外と元気そうだったから全くの無駄ってコトでもないだろうけど。
「そう言えば、お2人は何であの格好であそこに?」
「ふぇ?あぁ、ちょっと調s・・・もがっ!?」
「や、ヤダな愛ちゃん、ただ興味本位で探偵ごっこしてただけでしょ?」
「ぷへっ。あ、うん、そうそう。そうでした」
「なんだ、そうだったんですか。それじゃ私達と似たようなモンですね」
「「そうそう」」
- 588 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:02
- いや、高橋さん本音言いかけてるし紺野さん言い訳苦しいし。。。
ていうか薫も信じるなよ・・・。
でもなるほど、2人が調査に出てくるってコトはこの事件、
何かしらUFAの範疇に関わってきてるってコトか。
さらにどんな関係性があるのかを考えようとしたあたしの思考を、
突然鳴った「ダース・●ーダーのテーマ」が遮った。
紺野さんが紺色のブレザーのポケットから携帯を取り出して通話ボタンを押し、
耳元に当てて電話の向こうの相手にもしもしと応答する。
何度か会話の間に相槌を入れ、すぐ行きますと言って電話を切った後、
あたしと高橋さんだけに分かるように目配せして鞄に手を掛け立ち上がった。
高橋さんも軽く頷いてから同様に4人用のテーブルに手を突き立ち上がる。
「じゃあ田中ちゃん、あーしら用事あるから先に寮戻ってるで、できるだけ早く帰ってき」
「了解です」
「それじゃ薫ちゃん、またね」
「あ、今日はどうも色々ありがとうございましたぁ」
「ほれあさ美、ちょっと走るで。急がんと中澤さんに何言われるか分からんがし」
「・・・加減はしてよね」
そう言って2人はスカートを風に靡かせ駆け出した。
今は普通のペースだけど人目につかないトコ入ったらきっと人外の速さになるに違いない。
・・・それでもシェイクは放さないんですね、紺野さん。
- 589 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:03
- さて、あたしもどうにかコイツを言いくるめて行かないと、、、
でもどうすっかなぁ。
コイツのことだからまだ調査止める気なんて無いだろうし・・・。
「ホレ、アンタもさっさと行かないとマズイんじゃないの?」
「え゛!?」
「私の調査能力を甘く見ない方が良いわよ。
アンタの寮のメンツのコトくらいとっくに調べはついてんだから」
なんと!?
お、恐るべし結ヶ崎薫。
ウチの寮、、、ていうかUFAの日本支部は一般人の意識に介入して
近付く気にさせない結界が張ってある筈なのに・・・。
でもとりあえず今日のトコロはありがたい。
「悪い、じゃあ調査はまた明日以降ってコトで」
「まぁ今日中にアンタらが解決しちゃわなかったらだけどね〜」
「ぐっ、そこまで・・・。じゃ、じゃあまた明日!!」
「はぃは〜い」
薫に向けて手を上げつつ、あたしは店の自動ドアをくぐった。
この後、明日が中々やって来ないコトも知らずに。
- 590 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:04
- ―――――――――
- 591 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:04
- 「もしもし、うん、動き出したみたい。
・・・オッケ、とりあえず今日は別行動ね。んじゃまた後で」
携帯を切り、結ヶ崎薫は今し方出た店を顧みた。
空に映える橙色の光が、ガラス張りのドアに反射して輝かせる。
逢魔が黄昏時、彼女はロンドンを思わせる街並の学園都市に背を向け、
今まで背後にあった闇、建物の影の中へと消えた。
朝比奈学園、異界への門に向かう為に。
- 592 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:05
- *****
- 593 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:06
- 「しっかし、キリ無いなぁ」
溜息と共にそんな愚痴をこぼしつつも、中澤裕子は鎖を対象の身体に巻きつけた。
「滅」と唱えると同時、鎖が急激に対象を締め付けその身体を霧散させる。
「もう疲れちゃったんですか?」
「しょーがないよ、三十路だし」
自身の身の丈程もある杖を振り回し敵を薙ぎ倒す魔導士・加護亜衣と、
翼を生やした黒豹に姿を変え、自慢の牙と爪で敵を屠る猫妖精(ケット・シー)・辻希美。
背を合わせて死角をカバーするように闘いつつも大先輩を小馬鹿にしたように笑う2人の
背後の壁に、鎖に繋がれた分銅が突き刺さる。
メキ、と音を立てたソレを辿っていくと、笑顔のみそj・・・もといお姐さんの手首へと行き着いた。
「あ、すまんなぁ。手が滑ってもうたわ」
「「ごめんなさい」」
見事にハモって頭を下げる2人。
「3人とももうちょっとマジメにやって下さいよ」
「そーデスよ。ワタシ達こうゆう仕事久し振りなんでスから」
両手から放った合計10本の鋼糸で敵を括り裁断する元殺し屋・アヤカと
手に握った水の刃で敵を八つ裂きにする水使い・ミカの2人に言われ、
3人は再び戦闘へと意識を戻した。
- 594 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:07
- 朝比奈学園幼稚部校舎1階、さくら組教室内。
5人は大量の魔獣を相手に奮闘していた。
学園のセキュリティシステムを乗っ取った今回のターゲットは
学園内各校舎のいずれかに潜んでいる可能性が高い。
このかなり大がかりな組織的犯行に対処すべく、ハロープロジェクトの内
【カントリー】・【キッズ】、そして現在FBI内部機関において実地研修中の
保田圭を除いた25名全員に出動命令が下った。
学園の教育施設のある敷地には低級の魔獣が不特定多数放たれており、
UFAスタッフによる結界で都市側への魔獣の侵入を阻みつつ
少数精鋭を持って首謀者を捕らえようというわけだ。
特殊加工を施された黒革の戦闘装束着用を任務に当たる全員が義務付けられている
コトからも、今回の任務の危険性が窺い知れる。
教育施設側のみとは言え広い敷地内、5人1組となりそれぞれ
幼・小・中・高・大の各校舎を虱潰しに捜す事になった。
そしてこの5人は幼稚部の担当になったわけだが、
校舎に入った途端に魔獣に囲まれて今の有様である。
- 595 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:07
- 「でもコレじゃホンマ埒が開かん。加護、時間稼いだるからデカイの一発頼むわ」
「了解で〜す」
目前に迫っていた敵を、杖の先についた鷹の飾りから生える不可視の刃の切れ味と
得意の薙刀術を駆使して葬り、亜衣は入り口から遠ざかって瞑想に入った。
間断なく入り口から湧いて来る魔獣の姿は出来損なったゾンビを思わせる。
あるモノは二足歩行の人型、あるモノは四足の獣型を想起する形はしているものの、
大きさ、体の各パーツ、その他全てが不揃いで不気味だ。
中にはただの肉の塊、という姿をしているモノまでいる。
さらに始末の悪いコトに、一体一体が中々強力だ。
低級には違いないのだが、分厚い肉を裂いて身体の中央にある核まで
達するのは結構な重労働で、おまけにこれだけ数が多いと精神的にもキツイ。
ミカと裕子が水の鞭と鎖で動きを封じ、希美の口から咆哮と共に放たれた衝撃波と
アヤカの取り出したマグナムが魔獣を無に還す。
同じコトを5分程繰り返した後、詠唱を開始した亜衣に気付いて4人は入り口から離れた。
- 596 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:08
- 「この世に在らざる異界の者よ 汝の在るべき世界へ還れ
我の放ちし浄化の炎 最果ての地へと誘わん メギド・フレア!!!!」
刹那、白い炎が魔獣の身体から漏れ、一体残らず焼き尽くした。
突如上がった室内の気温に、5人の身体から汗が噴き出す。
「ゼェ、ハァ・・・。と、とりあえずこの界隈の連中はだいたい焼き尽くしましたよ」
「おぅご苦労さん。でもこの暑さはどうにかならんの?ちゅーか椅子とか机焦げてもうてるやん」
「ぜ、贅沢言わんといて下さいよ。これだけでも超疲れんのに・・・。」
「そんなコトより早く捜しましょうよ。いないならココは他より狭いんだから応援に行かなきゃ」
「ん?あぁ、そうやな。んじゃ手分けして・・・!?皆、表出ろ!!!」
「「「「!!!!」」」」
裕子が鬼気迫った様子で叫ぶと同時、青白い光が教室を包み、
次の瞬間爆音が天空へと響いた。
煙が晴れ、窓が残らず砕け、机や椅子を木端微塵にされた教室の中に人影が現れる。
「おやおや、少々火力が強すぎましたかね。全員吹き飛ばしてしまったらしい」
長髪を後ろで束ね黒いジャケットに身を包んだ男は、自身の掌を見詰めて呟いた。
その背後の入り口側の壁はまるでそこだけくり抜いたかのように綺麗に無くなっている。
- 597 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:09
- 「それにしても期待外れだな。折角あのハロープロジェクトの人間の身体を
破壊できると聞いて楽しみにしていたのに」
「生憎ソイツは無理やな」
「なっ・・・ぐぁっ!?」
突然、窓の外から打ち込まれた鎖分銅に男の身体はミシッ、という音と共に宙を舞い、
床を跳ねて廊下の壁に叩き付けられた。
砕けた窓の外に目をやると、黒い豹にしがみ付き宙を漂う3人の女性と
杖を跨いでこちらを睨む魔導士の姿が視界に映る。
「お、重い・・・。」
「ホレ辻、さっさと終わらすからもうちょい踏ん張り」
「貴様っ、よくも私の身体に・・・。」
悔しげな声を漏らしつつ男は懐から薬瓶を取り出し、両手をパンッ、と合わせて
右手に描かれた黒い刺青・・・錬成陣を瓶に押し付けた。
バチッと青白い光を瓶が放ち、男がニヤリと下衆な笑みを浮かべる。
「喰らえ!!」
立ち上がった男の手元から薬瓶が放たれる。
錬金術のチカラにより強力な爆薬と化したその瓶は、彼女達の位置で爆発する筈だった。
だが、ソレは起こらなかった。
- 598 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:10
- アヤカの放った鋼糸が瓶の口を切断し、ミカが水を浸入させて爆薬の効果を無くした為だ。
その早業に刮目する男の胴体を、教室内に残っていた鎖が捕らえる。
裕子は手首の腕輪で繋がれたその鎖を引き戻し、状況の掴めていない男の身体を宙に放った。
同時に希美の身体から手を放し鎖を操って男との距離を空中で詰めながら体を縦に反転させる。
男がハッとした時には既に遅く、胴廻し回転蹴りにより速度を得た裕子のブーツの踵が
脳天を直撃し、男の身体が砂場に突き刺さった。
「さて、コイツどうすっか?」
「拷問して首謀者の居所吐かせましょう。アタシの得意分野です」
年齢を感じさせない(失礼)軽やかな動きで着地し、
砂場に頭を突っ込んで気絶している情けない男を一瞥しながら呟いた裕子に
同じく舞い降りたアヤカが指をペキパキ鳴らして答える。
「ふむ、そいつは名案やね。ミカ、起こしたって」
「ハ〜イ」
希美の背に乗ったミカが返事と共に指をパチンと鳴らすと、
砂場から水が掘り当てた温泉の如く噴き出し、一緒に男の身体を放り出した。
地面に倒れて唸る男の頭を裕子が蹴りつける。
- 599 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/07/24(土) 14:11
- 「オラいつまで寝とんねん。早よ起きぃや」
「ぐ、、、貴様等こんなことをしてただ済むと・・・ぐぇ!?」
喚こうとした男の首を見えない何かが締め上げる。
それが緩まって咳き込みながら、右手を地面に押し付けようとした男の腕を
再びアヤカの鋼糸が締め付けた。
「は〜ぃ、下手に動くと手首から先亡くなるよ〜」
「くっ、そんなコトをすれば私は死ぬぞ?UFAの人間がそんなコトをして・・・。」
「そん時はカゴちゃんに傷口焼いてもらって出血無理矢理止めるから安心して」
そう言うアヤカの表情はあくまで笑顔。
男の顔が恐怖に引き攣る。
笑顔を崩さずアヤカは懐から色々な器具を取り出している。
「じゃあ、洗いざらい吐いてもらいましょうか?」
「ま、待て、、、貴様何を・・・。う、うああぁああああああああああああああああ!!!!!」
月も星も無い漆黒の夜空の下、男の悲鳴が木霊する。
夜は、まだまだ終わらない。
- 600 名前:サクッと解説 投稿日:2004/07/24(土) 14:12
- *****
- 601 名前:サクサク 投稿日:2004/07/24(土) 14:13
- では解説に参りましょう。
担当はもちろん私、紺野あさ美でございます。
今日は前回分のもまとめて行きますよ〜♪
It is no use crying over spilt maiden.
:今日はしっかり後藤さんに訊いて来たので大丈夫ですよ。
コレはIt is no use crying over spilt milk.という諺をモジったみたいで、
日本語で言えば「覆水盆に返らず」と同義です。
朝比奈学園:22歳以下のハロプロメンバーが通う巨大な学園です。
明治時代に開校し、敷地内の学園都市にはホント何でもあります。
UFAの日本支部も敷地内の森の中にあり、表向きは一応
学生寮の一つというコトになってます。
失語症:事故による脳へのダメージや精神的ショックにより、
言語中枢に異常が生じて言葉を喋れない・理解できない・読めない・書けない
などの症状を生じる疾患です。
西野亮子さんは事件の精神的ショックで喋ること、書くことができなくなっています。
- 602 名前:サクサク 投稿日:2004/07/24(土) 14:14
- ダース・ベー●ーのテーマ: ・・・好きなんです。
猫妖精(ケット・シー):Cait-sith。スコットランドやノルウェーの民間伝承に出てくる猫の妖精です。
その正体はのんつぁんのような半獣半人の一族で、人狼に対して人猫など
とも呼ばれます。半妖とはまた違うんですが、人間と霊獣の間にいると
言えますかね。「長靴を履いた猫」なんかのモデルもコレです。
伝統的に高位の魔導士の家系に遣えてるみたいです。
メギド・フレア(浄化炎):元ネタはスr(ry。結構高等な魔術で、魔獣の気配を追い
低級なモノなら一発で全滅させられます。
核を狙って内部から焼くので魔獣専用と言えます。
はい、本日は終了デス。
さよなら〜 ノシ
- 603 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(つづけ) 投稿日:2004/07/24(土) 14:15
- *****
- 604 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/24(土) 14:16
- 更新終了でぃっす。
いや〜、レスが無いので更新引っ張ってしまいましたよ〜。
・・・嘘です。
普通に暑さで参ってました。。。_| ̄|○
で、今回ようやくバトルシーンが出てきましたが、
FILE・3はどうやら2以上に長くなりそうです。
いい加減本編戻れよ、というご意見はごもっともですが
始めちゃったもんはどうしようもないので堪忍して下さい。(ヲイ
次回は・・・未定。
だって早くするって言ってもダメかもしんないし。(マテ
- 605 名前:名も無き作者 投稿日:2004/07/24(土) 14:17
- >>577 我道 様
懐かしい・・・気のせいですw
何が起こっているのか、今回の更新ではまだよくわかんないかも。。。
まぁ次回以降わかればイイな〜・・・。(ヲイ
それまでどうぞ正座でお待ちくださいw
>>578 名無飼育さん 様
そう、もうそーゆーキャラだから仕方な・・・どぅ!?
田:フザケんな。こっちの身が持たないっつーの。
作:大丈夫ですよ、半妖なんですからw
田:・・・炎殺掌。
作:(滅)
- 606 名前:刹 投稿日:2004/07/25(日) 14:12
- 更新おつかれさまです。
暑さと大量の宿題のせいでしばらくネットから遠ざかって
まして…(汗
看護婦コスプレ。。。
見たい!激しく見たいっス!!
ってか結ヶ崎さんって一体何者?
その他気になる人々がたくさん……
続きも楽しみにしてます。
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/26(月) 23:39
- 更新お疲れ様です。
結ヶ崎薫いいキャラしてますね〜、美少女だったってのが以外でしたw
それはともかくナースキターーーーーー!!!!!!!
次回も楽しみにしてます頑張ってください。
- 608 名前:我道 投稿日:2004/08/01(日) 13:29
- 遅れてすいませんが、更新お疲れ様です。
結ヶ崎さん・・・一体、あなたは・・・?深いですね。
あと、二人の看護婦コスプレを想像し、6回程昇天したのはここだけの話と・・・。
ごめんなさい、私を罵ってください_| ̄|○
…次回も楽しみにしてます。
- 609 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/03(火) 13:46
- 更新お疲れ様です。
実は今まで、大学の試験やらレポート提出やらでろくにパソコンいじれずに
今日やっと暇ができ、小説読まして頂きました。
また大変な事件に巻き込まれましたな〜〜、
れいなちゃんも大変ですね。
ってか、結ヶ崎薫って・・・・・・・・・・いったい何者??
あなたみたいな人が自分の身近にいなくて、本当に良かったです。
ではでは、次回の更新のほう楽しみに待ってます。
- 610 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:09
- 右前方の叢が微かに揺れる。
走る速度は落とさず、右腕に巻き付けた鎖を解いて其処に向け放った。
直後、【破魔】のチカラを宿す鎖に身体を絡めとられ動きの自由を封じられた
醜悪な魔物が闇色の葉を茂らせた叢から飛び出す。
その鎖の術者、中澤裕子が口元を僅かに動かし言霊を発すると同時、
身体を両断され声に生らない悲鳴を上げて身の丈2mの人型魔獣が塵と消えた。
自身の攻撃の成功など眼中に留めず、裕子は舗装された道を共に直走る背後の4人に声をかけた。
「っかし迂闊やったな。まさか紺野の通信機まで通じんようになるなんて」
「霊的な妨害電波ってトコですか。どうします、一つ一つ回って皆に場所教えますか?」
「別に皆なら大丈夫とちゃいます?それより早くあっちの応援に行った方がエエですよ」
「皆恐ろしく強いもんね」
「いやツジちゃんもスゴイけどね」
かく言うミカも相当なモノだが。
- 611 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:10
- 「よし、んじゃもうちょい速度上げるけど辻以外もついて来れるか?特に加護」
「肺活量には自身あるんで大丈夫ですよ〜だ。中澤さんこそダイジョブですか〜?もう歳だし」
「元々の鍛え方が違うんで〜」
「ダメならツジちゃんに乗せてもらいマスよ」
「え〜、人(猫)を乗り物代わりにしないでよ〜っ」
「・・・加護、後でオレの部屋来いや。ほな行くでぇ」
杖を担いで走る少女に鋭い一瞥をくれ、足裏から放出する【氣】の量と勢いを増す。
他の3人も同様の業を用い、残った一匹は単純に四肢に込める力を強めた。
肩で風を切り、立ち塞がる魔獣を斬り捨てながらも5人は木々に囲まれた道を奔走していく。
幼稚部の運動場の木に括り付けた男のコトなどすっかり忘れて。
- 612 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:10
- *****
- 613 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:11
-
「うわっ、ホラホラ見て見て。椅子とかこんなちっこいよ〜」
「・・・なっち、一応言っとくけど今お勤め中だからね」
小学2年生用の椅子に腰掛け、机をバンバン叩いてはしゃぐ
心身共に(胸以外)幼い陰陽師・安倍なつみ。
その戦闘中とのギャップに半ば呆れつつ、自分の身長と大差無い大きさの段平を背に負った
眩い金髪の霊剣使い・斎藤瞳が声を掛けた。
なつみは周りの人間が言うところのエロ目な屈託の無い笑顔で瞳を見上げ、呑気な声を上げる。
「わかってるってば、ボスぅ〜。でもさでもさ、何かこー夜のガッコってワクワクしちゃうっしょ?」
「あーわかりますねー、ソレ。こう何か出そうで実際相当出まくってる感じがー」
「おっ、さっすが柴ちゃん、話がわかるねー。やっぱ本物見える人は違うよねー」
何が流石なんだか、といった意味を含んで肩をすくめる仕草をし、瞳は外部との通信を
回復できないかと教卓に着いて端末をいじっている村田めぐみの方へと歩み寄る。
既に校内の捜索は終え(溢れる魔獣を無視して駆け回ったのだが)、此処に篭城して
他の場所の仲間に連絡を取ろうとした所、通信機が一切使用不能なのに気が付いたのだ。
- 614 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:12
- 「どう、せめて本部くらいはいけそう?」
「ん〜、キツイねぇ。普通の人間なら気ぃ失い兼ねない勢いで妨害霊波出されてるし」
一応尋いてはみたモノの、そんなコトは眉間に皴を寄せためぐみの表情と
砂嵐しか映らない端末のディスプレイを見れば瞭然だった。
労いの意を篭めてめぐみの肩をポンと叩き、他の3人とは違うノースリーブのボディスーツから出た腕を組み
廊下の止まない喧噪に注意を向ける。
「そう言えば大谷ちゃん大丈夫かな?」
「ダイジョブですよ、マサオだし」
召喚術士・柴田あゆみによる論理的説得力皆無+一方的な断定に、なつみはあっさりそーだね、
と同意してぬいぐるみの気持ちがわかるという不思議な妹の話を始めてしまう。
廊下では、何処か空しい銃声が響き続けていた。
- 615 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:12
- ―――――――
- 616 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:13
- (52・・・、53・・・、54・・・。)
大谷雅恵は、絞った引き金の数だけ頭の中に浮かべた数字に1を足しつつ、
自分の獲物が銃であるコトを呪っていた。
彼女が結界の張られた引き戸の向こう、2−3のプレートの掲げられた教室内にいる4人に
置いていかれた理由は実にシンプルだった。
―――だって、銃持ってんのマサオだけじゃん?
そう言った柴田あゆみの屈託の無い笑顔に負けた自分がいるのも多分にあるが、
詰まる所自分が銃技に優れているコトが現状に到った一番の原因なのだ。
魔獣というのは核さえ潰してしまえば姿をこの世界に留めておくこと叶わず、
塵となって消えてしまう。
核は基本的に身体の中央に内在し、平均してソフトボール大の大きさがある上核自体は脆いので
この弱点さえ知っていればさほどの脅威には成り得ない。
今回の連中もご多分に漏れず、身体のつくりこそしっかりしているものの、
一般人でもイングラムか何かを振り回せば倒せるだろう。
ただ、いくらなんでもこの数は異常だ。
- 617 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:14
- 目前に爪を振りかざし何の考えもなく突進してくる影が三つ。
暗視スコープを兼ねたサングラス越しで3体全ての核に照準を合わし、
引き金を絞ると同時に撃鉄に手を添え、西部劇より数段上の早業で連射した。
ほとんど一つに聞こえる銃声が廊下に轟き、3体の残滓たる細かい粒子が
銃口から立ち昇る硝煙とその香りと混じりながら雅恵の頬を撫ぜる。
背後に迫っていた敵を右の踵から生えたナイフを後ろ廻し蹴りの要領で振り回して葬りながら、
開いた弾倉に空いた6つの穴を見つめ、雅恵は暫し悩んだ。
使えば、楽に敵を一層できるが飯田圭織に説教喰らうコト必至。
ただ使わないと、先の見えないマラソンバトルを続行するしかなくなる。
・・・決定。
銃を逆さに向け弾倉内の薬筴をリノリウムの上にバラバラ落とし、
雅恵は薄い青色の弾頭の銃弾を6つ取り出して(収納している場所は決まっている)
弾倉に収めた。
右手を器用に振って銃身を閉じ、精神集中に入る。
直後、短く切り揃えた髪の横に掲げたリボルバー式の黒い装飾銃の弾倉が回転を始めた。
同時にそこからは青白い光が白い蒸気と共に漏れ出し、
ソレは回転が速くなるにつれて強くなっていく。
それはほんの数秒間の出来事だったが、雅恵がチカラを発動するのには十分な時間だった。
- 618 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:15
- 「ブリザード・バースト!!」
引き金を絞ると同時、魔獣の群れに向けられた銃口の先から飛び出す、青白い光の奔流。
螺旋を描く光渦は魔獣群を廊下ごと飲み込み、その効果を遺憾なく発揮していた。
周囲には強烈な冷気がドライアイスを焚いた時に出るような煙と共にたちこめ、
冷気の中心には氷像と化した魔獣群が成す術無く佇んでいる。
背後に殺気。
前方に投げ付けた炸裂弾で氷像が粉々に砕ける光景を視界の中心に認めつつ、
背後から迫った本能による力任せの一撃を跳躍でかわす。
逆になった視界の中で体を捻り、背後の魔獣群に照準を合わせた。
空中で薬莢を吐き捨て、左手に忍ばせていた弾頭の黒い弾丸を
6つ同時に装填し銃口を敵に向ける。
着地を待たずに発せられた「ブレード・バースト」の声と共に
弾倉を高速で回転させる銃から黒刃が飛び出した。
三日月型に湾曲した巨大な黒刃は廊下を走り魔獣を両断して塵に変える一方、
ドアに張られたなつみの結界と衝突して青白い火花を上げる。
廊下に雅恵の着地音が響き渡る頃に残っていたのは、
たちこめる冷気と壁に走った裂傷痕、そして微風に舞う黒く微細な粒子のみだった。
ふぅ、と一つ息を吐き、役割を果たしたことを告げようとドアの取っ手に伸ばした手が
バチチッ、と音を立てて不可視の障壁に遮られる。
慌てて手を引き息を吹きかけながら、改めて自分のポジションを呪った。
- 619 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:16
- 「ははっ、おもしろいなぁ。チミいちーと同じ匂いがするよ」
「なっ!?誰だ!?」
弾かれたように右の腿に巻き付けたホルスターから銃を抜き声のした方へ向ける。
緑に染まった視界の中心、廊下の中央約5m先の天井に逆さに佇む影。
影は口元を三日月型に吊り上げ(雅恵から見れば吊り下げ)、その態勢のまま
コツコツと靴音を立てて天井を踏みしめ近付いて来る。
その双眸は、光の無い闇の中で妖しげな輝きを湛えていた。
「誰だは無いでしょ〜?何度か顔合わしたコトある筈だよ?
大体今自分でいちーって言ったでしょうに、無意識だけど」
その声はあくまで軽く、闇に包まれた廊下に木霊する。
だが雅恵にその声は届かず、彼女はただ言い知れぬ恐怖に戦慄いていた。
この距離に近付かれるまで、まるで気付かなかった。
空間転移で現れたとしても気配で気付く筈なのに、それすらもなかった。
これまでにそんな経験は一度も無い。
さらに、この異様な殺気。
忍ぶような、それでいて禍々しい、例えるなら肉食動物が獲物を狙う時に発するソレのような・・・。
雅恵のこれまでの人生に野生の肉食獣を観察する機会は無かったが、直感でソレを感じ取った。
捕食者は一歩、また一歩とからかうような足取りで雅恵に迫っていく。
- 620 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:17
-
全身の毛穴から冷汗が噴き出し、向けた銃口はわなわなと震え持ち上げた腕が痺れる。
助けを求めようにも、声帯の震わせ方を忘れてしてしまったかのようで、
上手く声が絞り出せずにうぁ、という喘ぎが漏れるばかりだ。
はっ、と気が付くと、その顔がもう眼前に迫っていた。
伸ばされた細長い指先が雅恵の黒が混じった金髪を撫で、
そのまま頬を伝う汗を拭ってその雫を口に含んだ。
「うん、悪くなさそう。知ってる?汗って血液から作られてるんだよ」
逆向きに歪められた邪悪な笑み。
薄く開かれた唇から、鋭い牙が覗く。
「う、うあぁああああああああああああ!!!!!!!」
叫び、銃身で眼前の悪魔の微笑を殴りつけた。
影はバランスを崩して床に落ちたが、その顔に特殊合金による必殺の一撃を幾度も見舞う。
猛攻はそれだけに留まらず、震える指先で引き金を絞り
目の前に晒された後頭部に6発の鉛を撃ち込んだ。
銃声の度に脳漿が舞い、生温かい血液が顔面に吹き付ける。
徐々に自分を取り戻し、サングラスについたソレを拭った雅恵の視界に、
信じられない光景が映りこんだ。
- 621 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:18
- 影が、ゆらりと立ち上がる。
纏った黒い外套に付いたホコリを払い、額から引かれた紅い線を舌ですくいとる。
荒い息を抑えようともせず呆然と立ち竦む雅恵の肩に、
吸血鬼の爪が喰い込み逃亡を不可能なモノとする。
ゆっくりと開けられた口が牙を剥き出し、雅恵の首筋にゆっくりと迫って行き・・・。
「我が名の元に敵を斬り裂け 十二神将【天空】 風刃斬魔!!!」
雅恵の肩を掴んでいた左腕が見えぬ刃によって肘の辺りから斬り離され、
吸血鬼はバランスを崩して後ろによろける。
大量に噴き上げられた血液を顔面に被り、雅恵の思考が正常に戻った。
「あ、れ・・・?アタシ・・・?」
「サヤカの幻術に引っかかったんだよ。大丈夫?」
「げ、幻術?」
「うん。人の恐怖心煽るっていう、何処で覚えたか知らないけど性質の悪い術っしょ」
言いながら、なつみは自身の結界ごと斬り砕いたドアの取り付けてあった位置から音も無く出て来た。
その手には一枚の符が握られていて、強力なエネルギーを発した名残の薄煙を燻らせている。
目元は雅恵がしているのと同じ型のサングラスに隠されていて見えないが、
何処かその表情が忌々しげに歪められている気がするのは、気のせいだろうか。
否、正気に戻った今なら分かるが、自分の目の前で斬り取られた左腕を右手に握り
紅いスプリンクラーと化した左肘を気にも留めずこちらに邪悪な笑みを向けている人物が
記憶の通りの彼女なら、ソレは気のせいでは無いのだろう。
- 622 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:19
- 「カオリと言いヤグチと言い、どうして皆いちーのコトそんなに嫌うのかね〜?なっち」
「自分の胸に訊いてみなよ」
雅恵は再び戦慄いた。
なつみがこんなに冷たい声を出すところを、彼女は聞いたコトが無い。
なつみに続いて教室から出てきた3人も同じ事を思っているのか、
強張った表情をしているのが暗視スコープ越しでも分かった。
「ふ〜ん、まぁイイけどね。とりあえず今回は足止めが目的だから・・・。」
そこで一旦言葉を切って、襲撃者・市井紗耶香は右手に握っていた左腕を肘の傷口に押し付ける。
ふっ、と淡い光が漏れたかと思えば、次の瞬間には当然のように復活した左腕を振り回す彼女がいた。
どういう原理か、その足元に広がっていた血溜りまで綺麗に消え去っているではないか。
左手を握ったり閉じたりして機能を確かめ終え、言葉の続きを紡ぎ出す。
「全力で行かしてもらう。本気で来な」
- 623 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:20
- 刹那、紗耶香の身体が掻き消える。
あっ、と思った時には遅過ぎて、蘇った左手から伸びる鋭い爪が雅恵の頚動脈をあと数センチで捉えようという所まで届いていた。
得意の銃身による防御は間に合わず首筋に寒気が走った時、横から伸びて来た小さな掌が獣の腕をがっちり掴む。
雅恵の顔が驚愕に染まるより早く、吸血鬼の身体は壁を突き破って教室の中に投げ入れられていた。
轟音と粉塵が立ちこめる中、息つく間も無く灰色の煙の中から伸ばされた腕がなつみの小柄な身体を捉えて引き釣り込む。
それを妨害しようと突き出された斉藤瞳の大剣は、同じく粉塵の中から現れた闇色の翼に弾かれた。
「メロン」の4人が次の救出策を繰り出すより前に、粉塵は朱鷺色の閃光とソレに伴う爆音に吹き飛ばされる。
砕かれた窓から曇り空の隙間から覗く月光が射し込み、辺りに一瞬の静寂と薄い明かりが満ちた。
「イタタタ・・・。やっぱ真言省略は無茶だったか・・・。」
「無茶するのに他人を巻き込むなっつーの」
発言の割には機敏な動作で、瓦礫の中から所々裂けた黒色のボディスーツを纏ったなつみが顔を覗かせる。
敵の発言とは思えない文句を垂れながら一緒になって這い出てきた紗耶香も、暑苦しいコートを引きずり立ち上がった。
突然その肩口を真っ赤な刃が通り過ぎ、新たに紅い華を咲かせて吸血鬼の視線を得る。
「こっちのセリフじゃ、うつけが!!」
とても十数秒の間に人間が引き起こしたとは思えないこの惨状。
たたらを踏むことしかできなかった4人の中にそんな事態に参入しようなどという者はいない筈だった。
だが、妙に古臭い言葉遣いで不満を露にした人物の目元には、本来あるはずのモノが無い。
メガネを飛ばされた準二重人格者、心霊医術師・村田めぐみが右腕から紅い粘液を噴き流して参戦を決めた。
- 624 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:22
- 「相変わらずイキナリだな〜、もうちょっと段取りってもん・・・う゛ぉ!?」
不満を漏らすヴァンパイアのはらわたを、6発の銃弾が吹き飛ばした。
敵意を剥き出しにした大谷雅恵の手元、魔法銃・アポロンから硝煙が立ち昇っている。
「こ、こんのヤロ・・・。調子に・・・ってうひゃぁ!?」
異生物の臓物への侵入を感じ、紗耶香が緊張感の無い悲鳴を上げた。
見れば、ゴキブリ大の黒い生物がキーキー鳴きつつ自身のはらわたを喰い潰している最中だ。
慌ててその奇怪な生物を超音波振動で一匹残らず駆除し、その術者として心当たりのある人物に視線をやる。
召喚術士・柴田あゆみは新たな召喚獣を呼び出そうと、媒介となるカードを取り出して詠唱に入っていた。
「イイ加減に・・・って、うぇぇ?」
またもマヌケなノリツッコミ。
最後の一人がメタモルフォーゼの真っ最中ならソレも当然の反応か。
ゴキ、メキ、と音を立てて肥大化していく四肢。
口元が天に輝く月に向かって突き出し、その眩い金髪は銀色に変わり全身を覆っていく。
一つ、虚空に向けて咆哮を上げ、毛並みの上からでもハッキリとわかる隆々とした筋肉が蠢き
ノースリーブから突き出た右腕が床に刺して置いた幅の広い刃を抜き去り構えた。
その大剣に見合う程の巨躯の銀狼に姿を変えてなお破れないその黒のスーツがどんな素材でできているのか、
紺野あさみ加入以前に組織を抜けた紗耶香の預かり知る所では無い。
銀の人狼にして霊剣使い・斉藤瞳がその親縁に当たると言われる吸血鬼に霊剣・フェンリルの切っ先を向け、その真っ直ぐな殺気を露にしている。
- 625 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/03(火) 19:23
- 「わーい、みんなホントに本気と書いてマジだよーだ・・・。」
「バン・ウン・タラーク・キリーク・アク。
薬師の眷属 十二の鬼神よ 汝の力 我が身に示せ 『式神御霊会』十二神将・甲縛♪」
「え゛・・・。」
恐る恐る背後を振り向けば、普段が太陽なら今は月の笑顔を振り撒き、陰陽師・安倍なつみが
本気と書いてマジな眼で切り札を発動している。
バトル、スタート。
「ぎゃああああああああぁあぁぁあああああああ!!!!!ジョウダンダッタノニィ!!!!!????」
- 626 名前:再び 投稿日:2004/08/03(火) 19:24
- *****
- 627 名前:キャラ紹介、訳して蛇足 投稿日:2004/08/03(火) 19:26
- はい、えぇー、今回はまたキャラ解説をやるみたいです。
<中澤裕子>
能力:除霊術・捕縛結界術
性格:非常に暴力的、暴力で論理を押さえ込む人の代名詞
好きなモノ:チワワ、ヤグチ、酒、タバコ
嫌いなモノ:グチグチウジウジした輩。自分の誕生日
霊力値:700p前後
備考:言わずと知れたハロプロ総長。大柄な性格の割りに細やかな気配りができ、
上からも下からも慕われる組織には必要不可欠な人物。意外と情に厚い一面も併せ持つ。
その強さも然る物で、まだまだ若い連中には負けないと酔った勢いで豪語するだけはある。
鎖は本人も言っている通り本気で締め付ければ丸太がちょん切れる。
<辻希美>
能力:二段獣化(有翼黒豹形態・普通の黒猫形態)
性格:無邪気で温和、人懐っこい
好きなモノ:お菓子、あいぼん、マタタビ
嫌いなモノ:忘れられていたコトにキレて周囲に当り散らし、自分をガキ呼ばわりする赤影やピエロの格好をした人
天敵:同上
霊力値:850p前後
備考:代々加護家に仕えるケット・シー族の娘。
修行で幼少期より亜衣とは離れていて、ハロプロに入る直前に出会った。
通称:バカ女。知識が浅くて狭い。特に英語は奇跡的。
- 628 名前:キャラ紹介、訳して蛇足 投稿日:2004/08/03(火) 19:27
- <加護亜衣>
能力:魔術(特に放出系攻撃魔術はマスター級)、薙刀術
性格:負けず嫌い、前髪が決まらないとわかりやすいほど凹む、優柔不断?
好きなモノ:お菓子、のん、強い人
嫌いなモノ:体重計
霊力値:800p超
備考:亀井家と肩を並べる、由緒ある魔導士の家系に生まれた。
幼少の頃より魔術を身体に叩き込まれ、小学校にあがる頃には天才的センスで
大人顔負けの魔導士に成長した。祖母に教わった薙刀術も相当なモノ。
ただこの事件以後、とある二人組みが行った体力測定でクソ女の栄光を獲得。
本気でダイエットを試みるのであった。
<アヤカ>
能力:暗殺術全般、情報収集術
性格:普段は心優しき人格者、つんく♂に対しては中澤裕子より凶暴
好きなモノ:可愛らしいハロプロのメンバー達
嫌いなモノ:ウザイ上司、お偉い役職の方々
天敵:つんく♂
霊力値:620p前後
備考:元殺し屋の過去を持つ。仕事に失敗して死にかけた時、つんく♂に救われるという不覚を負う。
元々は一般人だったが潜在的能力があり、それを引き出すことでつんく♂が助けた。
鋼糸を持たせたら右に出る者無しの使い手。潜入捜査などもお手の物。
つんく♂の秘書と裏の仕事を担っているらしい。
- 629 名前:キャラ紹介、訳して蛇足 投稿日:2004/08/03(火) 19:28
- <ミカ>
能力:ウォーター・ハンドリング、こっちの世界の法に強い
性格:人当たりが良く真っ直ぐ、人に優しく勤勉
好きなモノ:ハワイの海
嫌いなモノ:決りを平気な顔して破る人 ex.つんく♂
霊力値:600p前後
備考:ハワイ生まれの水使い。法学を勉強する為に日本に来て気づいたらハロプロへ。
原因はつんく♂。水に自身の氣をブレンドして自在に操る他、空気中の水分を取り出し
使役するコトも可能。アヤカと一緒につんく♂の後始末みたいな役職。
<安倍なつみ>
能力:陰陽道(専門は攻撃系)、安倍陰陽式合氣柔術(免許皆伝)
性格:基本は天使、時折悪魔、天然
好きなモノ:左腕で繋がるおかーさん、善人
嫌いなモノ:悪人
霊力値:1500p超
備考:魔天使の異名を持つ凄腕陰陽師。
後藤真希とは戦闘スタイルの違いのせいで互角とは行かないが組織の戦力的には大差無い。
【モーニング】卒業後は凶悪犯罪者専門のエージェントとなりその腕を上げている。
精神年齢が幼いのが玉に瑕。
- 630 名前:キャラ紹介、訳して蛇足 投稿日:2004/08/03(火) 19:28
- <斉藤瞳>
能力:人狼形態への変身、霊剣・フェンリルのチカラを引き出す
性格:リーダー気質
好きなモノ:セクシー(?)
嫌いなモノ:銀の輪
霊力値:(変身前)650p前後
(変身後)900p超
備考:ボス。変身は人狼形態までで、完全な獣型にはなれない。
変身条件は月の光を浴びるコト。別に満月である必要は無い。
変身後は強靭な膂力と普通のヴァンパイア並の自己治癒力を手に入れる。
体調は2m弱にも及ぶ。
<村田めぐみ>
能力:心霊医術、流血操術
性格:(メガネ有)のほほん論理的、(メガネ無)ジジくさく短気で暴力的
好きなモノ:ほうじ茶
嫌いなモノ:コーヒー
霊力値:700p弱
備考:医師としても凄腕で、どんだけ重傷でも生きてりゃ治せる。
ただ病気の場合の限界は現代医学より劣る。
準二重人格については幼少期に色々問題があってこーなったらしい。
自身の血に氣を注ぎ、血液の持つチカラを最大限引き出して武器にできる。
- 631 名前:キャラ紹介、訳して蛇足 投稿日:2004/08/03(火) 19:29
- <大谷雅恵>
能力:魔法銃・アポロンを用いた銃技
性格:頼まれたら断れない(特に柴田あゆみから)
好きなモノ:銃の手入れ
嫌いなモノ:自分のポジション
霊力値:800p強
備考:その銃技は銃身でマシンガンの弾すら防ぎきり、6発ほぼ同時の着弾も可能。
弾頭に色のついた弾は中に液体魔法薬が入っており、回転と自身の氣により
魔術の放出を可能にする。銃という形態がその威力を増すのに一役買っている。
あゆみに片思い。
<柴田あゆみ>
能力:召喚術
性格:割と天然、ダジャレ好き
好きなモノ:召喚獣たち
嫌いなモノ:魔獣
霊力値:1800p前後
備考:カードを媒介にした召喚術で、他のモノより数段詠唱が短い。
召喚する魔物は基本的には魔獣と変わらないが召喚した方が強力。
扱う魔物は結構グロいモノが多い。雅恵をパシリ代わりに使う。
今回はこのぐらいで。
では、――――降臨――――
黒:ゴルァ作者。
作:は、はぃ?
黒:サボリ過ぎですよね、休みのくせして?
作:あでっ!?(ヤクザキック)いや色々と事情が・・・ぁあああ!?(腕ひしぎ十字固め)
黒:ていうかキャラ紹介のせいで私の出番が無くなってるじゃないかぁ!!!
作:そ、それが本n・・・(ボキッ♪)
- 632 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/03(火) 19:30
- *****
- 633 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/03(火) 19:31
-
更新終了でございます。
いやー、一度死んだPCが謎の復活を遂げたんですが、
結局また死んだので買い換えたらこんなに空けてしまいました・・・。
ていうか今年は何故か意外と忙しい夏休み。。。
早まって自動車教習所なんぞ通いだすからですかね?
そんなワケで次回も未定。(ヲイ
予告通りFILE・3は長くなりそうです。
見放されないように頑張ります。
- 634 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/03(火) 19:32
- >>606 刹 様
確かにこう暑いと読む気も書く気も失せますね。(ゴルァ
ナース姿は断じて作者の願望などでは無いですよ、断じて、、、断じて、、、スゲーミタイ
結ヶ崎さんは何者・・・そのうち明らかになったらいいな〜。。。(・・・
暑さにめげずにお互いがんばりませう。
>>607 名無飼育さん 様
えぇ、美少女にしとかないとナース姿がn(ry
勝手に暴走してくれるあのキャラは割と書き易かったりしますw
ただ今回キャラ出演数が多すぎててんてこまいな感が拭えません。(泣
どうか楽しみにしてやって下さい。
>>608 我道 様
何をおっしゃいますか、レスを頂けるだけで自分は幸せ者です、ハイ。
6回・・・作者と同じくらいですねw(←酷い罵り
彼女は深いんだか浅いんだか、、、
まぁできるだけ深くしてみようかと努力しようかと・・・。(弱
>>609 聖なる竜騎士 様
試験、レポート・・・聞いただけで寒気がっ。。。ガクブル
あぁ先生、りゅ、留年だけはっ、、、我が家にはお金がっ・・・!!
・・・失礼、取り乱しました。
彼女たちにはこれからどんどん大変な事件に巻き込まれて、ていうか巻き起こしてもらいますw
結ヶ崎・・・同感ですな。
久々に自分が何書いてるかわかりませんが本日はこの辺で。ノシ
- 635 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/03(火) 21:00
- ミスハケーン。
>>630
体調→体長の間違いです。
ごめんよ、ボス。。。
- 636 名前:おって 投稿日:2004/08/03(火) 22:13
- 更新お疲れ様です。初めてレスさせていただきます。
このくらいの空きなら全然問題ないですよ、普段いいペースで更新されてますし。
633の発言から同い年の予感wそれなのに自分の文章力は・・・_| ̄|○
精進します。
- 637 名前:刹 投稿日:2004/08/04(水) 22:51
- 更新お疲れ様です。
むぅ…彼女は陰陽師でつか。。。
心身ともに(胸以外)幼いとはまさにその通りw
市井さん…強いし怖い…(怯
ってか作者様はオイラより年上なんですね。
まあ多分1つか2つほどしか変わりませんがww
次回更新も楽しみにしてます。
- 638 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:22
-
事務机用特有の形をした電話が着信を告げ、男の見ていた水晶玉の不明瞭な映像が掻き消える。
出されている妨害霊波は質、量ともに予想以上の代物らしい。
男とこの導具のチカラを持ってしてもぼやけた映像を映し出すので精一杯。
雑音以外の音は聞こえない。
少し集中力を乱されただけでその映像すら保てなかった。
その事実に若干の憂欝を覚えながら、男はけたたましく自分を呼び続ける電話の受話器を手に取り耳に当てた。
「俺や。何・・・?そうか、わかった。通じひんかもしれんけどなんかあったら携帯に頼む。
あぁ、俺もそっち行くわ。ほなな」
受話器を置いて立ち上がり、今まで腰掛けていた革張りの椅子に掛けていた背広を片手にドアのパネルを探る。
両脇に開いたドアをくぐっても物々しい装備をした守衛などはいない。
上の人間もそんなモノをつけたところで足でまといにしかならないコトは理解しているようだ。
おかげで動きやすい。
とは言え以前に自分に付けられた守衛を弾き飛ばして独断で動いたコトもあるから当然と言えば当然か。
「何年振りかね、アイツと会うんは」
誰にともなく呟き、男は人気の無い白い廊下を歩いて行く。
サングラスで目元を隠し、指をパチンと一つ鳴らすと同時、
他人には決して見せない哀愁に満ちた背中が陽炎の如く揺らめき、消えた。
男、寺田光男の消えた廊下を、透明な静寂が支配していく。
時刻は深夜0時を過ぎた所。
夜はまだ、始まったばかりだ。
- 639 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:22
- *****
- 640 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:23
- 中等部校舎内は、さながらNATOによる空爆直後のコソブォ自治州並の荒れ具合だった。
砕かれた窓、撲ち抜かれた壁、原形を留めぬ机や椅子、真中から亀裂が走り壁から落ちて横たわる黒板。
予習復習のやる気がカケラも見られないロッカーに入れっぱなしの教科書も、
今やほとんどが灰と化して黄昏色の火の粉をくすぶらせている。
かつて子供達の楽しげな喜声が響き渡っていたであろう学び舎の果てた姿は、見る者に言いようの無い侘しさを味わせる。
あの戦渦の時代を生き抜いた者なら、封じて来た昏い記憶を否応なく引き出されるかもしれない。
そのような有様に生徒という名の可能性を育む学びの社を変えたのは、
野に放たれた破壊の権化・無数の魔獣群でもましてやテロリズムなどでも有り得ない。
「「ちっきしょぅぉぉ−−!!!!!」」
咆哮にも似た少女達の雄叫びの度、破壊の爪跡はとめどなく増えていく。
「お前等ええかげんにせぃやぁ!!いつまで八つ当りしてんねん!!!」
「「う゛ぉおああぁぁぁ!!!!」」
- 641 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:24
- 少女達の背後に立つ関西弁の女性の制止の声も空しく、
猛る2人の前方にいた魔獣達が跡方もなく消し飛んだ。床ごと。
関西弁の彼女は溜息を吐き、後ろでぽけーっと口を開けている少女とただ薄く微笑んでいる女性に声をかける。
「小川もゆきどんも、見てないで止めたってよ」
「「無理」」
「くぉら、小川ぁ!なんでそんな時だけ反応早いねん!!
ゆきどんも口元微笑ましたまま目だけくわっ、と開くな!カオリか己は!?」
「え〜、でも無理に止めようものなら殺されちゃいますよ〜」
「とりあえず気の済むまで暴れて貰えば静かになるんじゃない?」
「むぅ・・・。」
「「どぅあるぁぁあぁぁぁぁ!!!」」
この2人、吉澤ひとみと藤本美貴が溢れ出る涙と鼻水(鼻血)を拭おうともせずに暴れ回っている理由を説明するには
数時間前、UFAJ第1会議室まで場面を戻す必要がある。
- 642 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:25
- ―――――――――
- 643 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:26
- 「以上が今回の任務の詳細。何か質も・・・。」
「「ちょぉっと待ったぁぁぁ!!!」」
綺麗にハモった2人分の声に、仕切り役・飯田圭織は諸手を上げて威勢良く立ち上がった
その2人の足元の床をくり抜いてやりたい衝動に駆られた。
ただ説明の途中に茶々を入れてこなかったコトに免じてその衝動を押さえ込む。
「・・・何?」
「なんでミキと亜弥ちゃんが一緒じゃないんですか!?」
「なんでウチと梨華ちゃんが一緒じゃないんですか!?」
固有名詞を除いて鬱陶しいくらいにハモった2人。
圭織は盛大な溜息を吐き、両手を叩き合わせながら笑顔+冷たい声で告げる。
「アンタらがイチャついてると仕事が大幅に遅れるから。以上。はい、皆行くよ〜」
「「ち、ちょっ・・・のわ〜」」
衝動爆発。
床に押しつけられた圭織の左手から迸った青白い光が2人の足元に走り、床に丸く巨大な穴が口を開ける。
慌てて逃れようとした2人の頭を中澤裕子と稲葉貴子が踏みつけて叩き落としたのを知るのは、本人達だけだ。
駆け寄ろうとした2人の意中の方々も彼女等に連れ去られ、
彼女達は下に圭織の錬成で用意された巨大な腕から逃れるのに数分を要したのだった。
- 644 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:27
- ―――――――――
- 645 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:27
- 「だいたいさぁ、よっすぃ〜と梨華ちゃんはいつも一緒だからいいけど、
ミキは亜弥ちゃんと仕事する数少ないんだからこんな時くらい一緒にいさしてくれてもイイじゃんよ」
「あ、なんだよソレ。ウチらだっていつも梨華ちゃんが魔獣殲滅の時紺野とオペレーションしてて一緒にいらんないんだよ。
そんなコト言ったらミキティだって霊獣殲滅の時はあややと一緒じゃん」
粗方のモノを破壊し尽くし、まだ時折ズキリと痛む頭の瘤を抑えながら
精霊術士・藤本美貴とPK能力者・吉澤ひとみは肩を並べて愚痴を言い合っていた。
場所は音楽室。
足元には、何百万もするスタインウェイ社のグランドピアノが無残な姿で転がっている。
ここまで来ると、最早飯田圭織に対する単なる嫌がらせとしか甲賀忍軍上忍・稲葉貴子には思えなかった。
「ん?何、このツッコミキティ様に喧嘩売ってんの?ピンク・カッケー能力者」
「あ?やったろうじゃんよこの肉食怪獣フジモン」
「よしざーさ〜ん、そんなカリカリしないで。おがーがいるじゃないです…が!?」
「抱きつくな鬱陶しい」
鋭く突き刺さったひとみの膝で修験者・小川麻琴が地面に伏したのを合図に、
男(?)たちは数メートルの間隔を置いて跳び退き、仁義無き乱闘が開始される。
- 646 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:28
- かざされた美貴の右手、正確にはその数センチ前方から生まれたピアノ大の氷塊がひとみ目掛けて放たれた。
ひとみは微動だにせず氷塊を黒い帳越しに見つめ、その中心を通るように氷塊に幾本も想像上の軸を作り出す。
中心を挟んだ上下、軸がそれぞれ逆向きに回転し捩れた。
その現象が全ての軸で起こり、氷塊は破砕する。
窓から薄く射し込んできた月明かりを反射し輝く氷塵を挟み、2人は口元を吊り上げた。
同時に床を蹴り、体重を乗せて右拳を繰り出す。
お互いの拳がぶつかり合う瞬間、美貴は拳の軌道を自らが起こした風でずらした。
左側から、突き出した右腕をピンポイントで狙って吹いた風。
その勢いを利用し、左手でひとみの右手首を掴んで時計回りに身体を捻り後ろ廻し蹴りで
右のブーツの踵を後頭部に叩き込む。
完全に予想と常識の範囲外の動き。
ほんの刹那の間に行われた一切の無駄も無いその動作をかわす術はひとみには無い。
…はずだった。
突如、美貴の身体が後ろに傾ぐ。
その原因とおもしき軸足を襲った衝撃に視線を移し、目を見開く。
ひとみの後頭部へ振り上げた筈の自身の右足が、自分の軸足を払った後ではないか。
だが、右脚は今でも確かに振り上げられている。
目だけで辿ると、足首から先がひとみの後頭部に吸い込まれて消えている。
正確に言えばそこに開いたワームホールに吸い込まれ、美貴の軸足を払える位置から現れているのだ。
チッ、と舌を打ち鳴らし、後ろ廻し蹴りの回転の勢いのまま身体を反転させて両手を床に突く。
そこからロンダードとバク転で距離を取り、両者は再び先程の間合いに佇んだ。
- 647 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:29
- 「やるじゃん」
「そっちこそ」
「けどミキは負けないよ。亜弥ちゃんへの愛の為に・・・。」
「それならウチも負けらんないな。梨華ちゃんへのLOVEの為に・・・。」
一瞬の睨み合い。
「「行くぞオルァ!!!!」」
気合を吐き出す2人。
が、
「「・・・・・・。」」
「どうした、何で動かないの?」
「ミキティこそ」
「「・・・・・・・。」」
首をギシギシと動かし、自身の影を見やる2人。
影の、人間が動くのに必要な箇所に刺されたいくつもの針。
「影縫い。そろそろ遊んでもいられないからね」
「「ま、前田さん・・・。」」
「お、ゆきどんナイス」
針師・前田有紀によって放たれた針は的確に、暴走する2人の動きを封じていた。
- 648 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:30
- 「そろそろ他の皆の手助けに行った方がイイと思うけど・・・?」
「あぁ、それもそやな。よっしゃ、よっすぃ〜、責任持って小川を起こすか運んでくるかせい」
「へ?あ、忘れてた。おぃ、おがー、お前重いからとっとと起きて自分で歩け」
影縫いを解いてもらい、物凄く酷い発言をしながらひとみが麻琴の身体を蹴りつける。
すると、文句の一つも言わずに麻琴がムクリ、と立ち上がった。
おもむろに紙型を取り出し、口を開く。
「オン・バキリユ・ソワカ 戦鬼・護鬼」
「なぁ!?」
宙に放られた紙型は2体の巨躯の大鬼に姿を変え、目の前のひとみに肉斬り包丁と金棒を振り翳した。
咄嗟にひとみが跳躍すると同時、今までひとみの立っていた床が破壊され下の階の景色が覗く。
「げっ、小川!!いくらなんでもやり過ぎだろうが!!!」
「いやミキ達も人のコト言えないと思うよ」
ひとみの文句と美貴のツッコミに何の反応も見せず、戦鬼の握った肉斬り包丁が横薙ぎに振るわれた。
美貴が慌てて氷の障壁を展開しその衝撃を受け止めるが、2体の鬼は無言で何度も氷の壁を殴りつける。
その度にガキン、という硬いモノ同士をぶつけ合うような音が教室中に響いた。
- 649 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:31
- 「ど、どうなってんの?」
「あかん、アイツ多分操られるか何かしてるで」
「気絶のせいかしらね」
「う゛」
「臨兵闘者皆陣列在前 【式合】 鬼刀」
教室を二分するように張られた氷壁の向こう、我を失った麻琴が唱えた直後、
2体の鬼の身体が輝き、その輝きが融合した。
光の粒子は麻琴の腕に纏わり付き、巨大な日本刀へと姿を変える。
軽く透けたソレは壁や天井に大きな裂傷を刻みながら豪速で振るわれ、
麻琴の目前の氷壁をガキィンという音と共にいとも簡単に斬り砕いた。
「うわ、壊れた。よっすぃ〜、責任持って止めて来てよ」
「はぁ?んなこと言ったって・・・のわぁ!?」
目の前に回避不能な速度で突き出された巨大な切っ先。
空間転移を使い、いつもの癖で敵の背後に現れてしまう。
気づいたら、いつの間にか手に握った特殊警棒で後輩の後頭部を殴りつけていた。
同時にフッ、と日本刀が姿を消す。
- 650 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/10(火) 16:32
- 「あ゛、やべっ・・・。」
「「アホ」」
「よしっ、今のうち」
有紀が突然呟き、床に倒れた麻琴の身体に駆け寄り針を刺していく。
手を止め息を吐いた後、言った。
「これでとりあえずは大丈夫。意識が戻っても指一本動かせないから」
「「「いや戻っても・・・って」」」
小川麻琴、究極に哀れな奴である。
「さて、んでこれから・・・!?」
「「「!?」」」
ひとまず息を吐き、これからどうしようかと話し合おうとした4人の視線が、弾かれたように教室の入り口に集まる。
其処に佇む、一つの影。
「あんた、アス・・・。」
呼びかける声を遮る様に放たれる、蒼い閃光。
ドザリ、という音と共に、身体から煙を燻らせた有紀が床に伏す。
「生憎だけど、今日は任務の途中でおしゃべりをする気分じゃ無いの」
雷魔忍軍元頭首・福田明日香は、憮然とした表情で5人の眼前に立ち塞がった。
- 651 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(とぅびーこんてぃにゅーどぅ) 投稿日:2004/08/10(火) 16:33
- *****
- 652 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/10(火) 16:34
-
更新終了でぃす。
今日はちょっと黒紺お休み♪
おかげでボコられずに・・・う゛はっ!?(何処からとも無く投石
暑さで文章が支離滅裂な感じがいなめませんが、
あくまで気候のせいなのでご容赦を。。。
次回はやっぱり未定なのデス♪(ヲイ
- 653 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/10(火) 16:35
- >>636 おって 様
初レス感謝感激でござりまする。
いやいや、拙者など暑さに参って無理矢理「♪」でテンション上げてる未熟者ですから・・・。
このくらいの空きなら・・・、そう言ってもらえるとほんに救われます。
といってもあまり甘やかすとつけあがるのでお気をつけ下さいw
お互いがんばりましょう。
>>637 刹 様
なっちを見てるとそこにばかり目が・・・。(ヘンタイ
だってねぇ、ギャップっちゅーかなんちゅーか。。。
でもいちーちゃんは(ry
あと田中ちゃんも(ry
他にはミキティが・・・(ぐしゃっ♪
藤:喧嘩売ってんのかエロ作者。
んじゃみんなまたね〜♪ノシ
- 654 名前:Ray 投稿日:2004/08/11(水) 00:28
- 更新おつかれさまです
いや〜ひっさびさ過ぎて一気に読ませていただきましたよ(w
今回も楽しいですなぁ(w
所々笑える箇所がチラホラ(ニヤ
次回も楽しみにしとりまつ!
- 655 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/11(水) 03:58
- 更新お疲れ様です。
いや〜〜、いつ見てもメンバー同士のいざこざが絶えませんな〜〜。
でもそこがまた面白いんですけどね。
小川さんといい、吉澤さんといい、藤本さんといい、絡みが最高です。
今後も展開に期待します。頑張ってください。
- 656 名前:おって 投稿日:2004/08/11(水) 16:46
- 更新乙です。
本当に暑さには参りますよね、走ってて熱中症になりそうです
お互い頑張りましょう、暑さでだらけないようにw
- 657 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/12(木) 17:58
- 更新お疲れ様です。
なんか今回どたばたしてて面白いっすw
小川さん、ミキティー、よっすぃーのキャラがつぼでした。
次回も楽しみにしてます。
- 658 名前:我道 投稿日:2004/08/13(金) 10:43
- 更新お疲れ様です。
ヒィ!?本気(マジ)でやり合ってる…駄目ですよ、仲間同士なんだからw
まあ、何はともあれ(?)次回が気になります。
それでは、今回は逆立ちをして待たせていただきます。
頑張ってください。
- 659 名前:nanashi 投稿日:2004/08/14(土) 01:17
- 面白いんだけど、人間関係敵味方がよくわかんない。
- 660 名前:刹 投稿日:2004/08/14(土) 11:15
- 更新お疲れ様です。
いやぁ…仲間内でのいざこざがすごいですね。
うん。ホントにゆきどんナイスw
やっぱまこっちゃんは自分のツボです。
それでは次回も楽しみにしてまつ。
- 661 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:22
- ―――――カツン、カツン・・・。
少年が歩みを進める度、薄暗い照明に黒く輝く金属製の床が甲高い声を上げる。
ゆっくりと歩む少年の目の前には、行き止まりとなった壁を背にガタガタと身を震わせて座り込む男。
その顔はこれから訪れる終焉への恐怖と、その上に彩られた温もりを残す紅に染められている。
付着した大量の粘液は男の身体から流れたモノでは無く、先に旅立った彼の同僚のモノだ。
「た、助けてくれ!!頼む!!!」
懇願する男の声など耳に入っていないかのように、歪んだ微笑を称えた少年の右腕が持ち上がる。
以前息子がどーの妻がどーのと喚く往生際の悪い戦士に向けて、
彼の同僚を屠った時と同様に少年の掌から衝撃波が飛んだ。
だが頭を抱えて死を拒もうとする男の身体に、その衝撃は届いていない。
否、最初から少年の眼中に脆い大人の人生などは入っていなかった。
少年の放った衝撃波は男が背にしていた鋼鉄製の壁、ノブもスイッチも無い為傍目には判らないが正確に言えば扉を破壊していた。
支えを失い、男の身体が後ろに倒れ込む。
その瞳に映った、異形の怪物。
彼とて仕事柄、これまでの人生で怪物の類を目にする機会は幾度かあった。
だが、それでもその瞳にソレは異形と映った。
見た目がそこまで歪なわけでも、巨大なわけでもない。
逆に、怪物と呼ぶにはあまりにも清楚で、美しい。
だがソレの放つ強大なチカラは紛れも無く、異形。
男はこれまで、自分の人生を選ばれた者だけに許された誇りあるモノとして認識していた。
しかしソレを目に、耳に、鼻に、肌に感じた瞬間、男の認識はあっけなく崩れ去る。
男は自分の人生が如何に矮小にして瑣末なのかを思い知ってしまった。
- 662 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:22
- ソレはゆっくりと、引き裂けそうなくらいに口元を吊り上げた。
真紅の舌と、純白の歯が開いた口の隙間から覗く。
壁と自身とを繋ぎ止めていた鎖をあっさりと引き抜き、ソレが男の元へと瞬時に距離を詰めた。
頭を掴まれ今まさに引き千切られんとした時にも、男の心に先程までの恐怖は無い。
胴体に今生の別れを告げた男の顔は、狂喜という名の恍惚に満ち溢れていた。
「えぇっと、言葉はわかるんだっけ?」
「・・・・・・。」
ソレはバキ、ボキ、と盛大な音を発てて、引き千切った肉と骨を咀嚼しながら黙って肯く。
「これからあの場所に戻ってもらわなくちゃいけないんだけど、いいよね?」
「・・・・・・。」
「あれ、喋るのはできないんだっけ?」
「・・・・・・。」
ソレはただ、無言で肯く。
男の頭を全て噛み砕いて最後の一欠けらを脳漿と共に嚥下し、今度は男の胴体に無造作に腕を突っ込んだ。
ズルズルと柔らかそうな肝臓を砕いた肋骨の隙間から取り出し、よく噛みもせずに自分の胃の中に押し込む。
既に人間を生で喰い散らかすのに適さない形状の顎は砕けている。
この状態ではどちらにせよソレが人語を操ることは難しかっただろう。
少年はこの惨状に何の感慨も湧かない様子で肩をすくめ、食事を終えたソレの手を握った。
「じゃ、行くよ?」
「・・・・・・。」
無言で肯くソレを確認し、少年の姿がソレと共に掻き消える。
薄暗い檻の置かれた廊下に残されたのは、2人の守衛の原型を留めぬ肉片だけだった。
- 663 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:23
- *****
- 664 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:23
- 「いしかーさん、コレどーゆーことですかね?」
「私に訊かれても分かるわけ無いでしょ〜!!」
無神流戦士・高橋愛の問い掛けに、ESP能力者・石川梨華は普段から高い声をさらに甲高くして応えた。
そんな2人の会話を遮るように、前方から橙色の炎が吹き付けて来る。
愛は前腕と手の甲を覆うように作られた鉄甲を十字に構え、
それを媒介に展開した障壁で田中れいなのソレに比べたら随分涼しい炎を受け止めた。
梨華は愛の張った障壁を飛び越え、空中で一回転してから炎の発生源の右横に降り立つ。
炎を出している腕をすり抜ける様に突き出した掌底で相手の顎先を掠めるように打ち、脳震盪を誘った。
何の抵抗もできず相手はごろりと床に転がるが、すぐに立ち上がってしまう。
「うわ、だめだ・・・。無理矢理起き上がっちゃうよ〜」
「こら脳が完全に支配されてますね」
「とは言えやっつけちゃうワケにもいかないし・・・。」
「あーしの同級生もいるかもですからやめて下さいよ?」
そう言って前方におぼろげな脚付きで佇む制服姿の人間達に一瞥をくれてやる。
自分達がしているのと同様の機能を持つらしいゴーグル越しではよくわからないが、
彼等の瞳は何処か虚ろで生気が亡いように感じる。
- 665 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:24
- 広い大学の校舎内、捜索は二手に分かれてすることにしたのだが、
溢れかえる魔獣に苦戦し全て倒し終わる頃には3時間が過ぎていた。
通信機も梨華のテレパシーも通じないので仕方なく、分かれた3人を探すことにしたのだが
そこで目の前に現れた学園の生徒と思しき制服姿の人間たちが10数名。
それだけならまだしも、全員が何故か特殊な能力を保持している。
中には何処と無く見覚えのある生徒までいて無闇に殴り倒すわけにもいかず、
かと言って簡単に逃がしてくれるほど弱くも無いので2人は困り果てていた。
「げっ、何かいっぱい来そう・・・。」
「くっ、無神流・春雨!!」
一斉攻撃の気配を読み取った梨華の声に反応し、愛が威力の弱い氣の塊を無数に両掌から撃ち出す。
各々の攻撃を繰り出そうとしていた生徒達の身体に降りかかった【氣弾】は春雨の如く弱く、
その身にたいしたダメージを残していないが彼等の攻撃を喰い止めるコトはできた。
「あぁもう、キリが無い」
不満そうに呟きながら【氣弾】の雨をすり抜けて来た肉体強化系の能力者を一蹴した梨華の耳、
正確には脳が、聞覚えのある人物の心の声を受信する。
- 666 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:25
- 『飯田さん?』
『えっ、石川?・・・ってことは近くにいるね。そこ何階?』
『え〜と、3階ですね。っていうか大変なんですよ!!助けて下さい!!!』
『じゃあ、ここの下か。わかった、すぐ行くよ』
「良かった!飯田さん達すぐ来てくれるって」
「念話できたんですか?よし、んじゃもうちょい気張ります・・・って、え゛?」
「どうし・・・はぁ?」
突然いつも以上に目を見開いて天井を仰いだ愛の視線を追って、梨華の表情も驚愕に染まる。
自分たちの真上、ビシビシと音を発てて天井に走った大きな亀裂。
直後、ヤバ気な異音を立てて天井が崩れ落ちて来た。
「マジで?」
「でジマ?」
「「マジでジマぁぁああああああ!?」」
意味のわからないポーズと悲鳴を上げながらも辛うじて2人が
落ちてくる瓦礫の射程距離から抜け出ると、周囲は瓦礫から舞い上がる灰色の粉塵に覆われてしまう。
これでは2人のしている赤外線スコープ付きのサングラスの効果も意味が無い。
- 667 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:26
- 「ケホッケホッ、あーもう、えいっ!」
粉塵の奥から誰かが咳き込む音がしたかと思えば、灰色の帳が突然巻き起こった強烈な風に吹き飛ばされる。
風に煽られよろけた2人の目の前に、黒い翼を広げたヴァンパイア・道重さゆみの姿が現れた。
「し、重さ・・・。」
「コラ!道重〜!!」
服(と言っても皆と同じ戦闘着)に付いた埃を叩きながらブツブツ言っている彼女に掛けようとした声が、
天井に開いた無骨な穴の淵から顔を覗かせている人物の怒鳴りに掻き消される。
見れば、錬金術師・飯田圭織がネクロマンサー・亀井絵里とサングラス越しにこちらを窺っていた。
罪悪感の欠片も無い間延びした声で、さゆみは圭織の方に声を出す。
「なんですか〜?」
「なんだじゃないわよ。誰が床壊せなんて言ったの?」
「え?でも下にいるから、って言うからてっきり・・・。」
キョトンとした表情で、一撃の元に自身の足元を打ち砕いた少女は首を傾げる。
夜目が効く彼女は色眼鏡をしていないのだが、その瞳は真面目に何故自分が怒られているのかわかっていない模様。
- 668 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:27
-
さらに問い詰めようとした圭織を遮るように、突っ立っていたさゆみの身体を紫電が射抜いた。
一瞬ぐらりとさゆみの身体が揺らぐが、すぐに踏み留まって稲妻の飛んできた方向に視線を向ける。
どうやら発現して間も無い拙い能力に起こせる電圧ではヴァンパイアを戦闘不能に墜とすのには役不足だったらしい。
「このっ・・・!」
「sis mea pars。ごめんさゆ、石川さんの指示だから」
「ふひゃべっ!?」
ほとんど条件反射によって放電者に飛び掛かろうとしたシモベの動きを主人である絵里が封じた。
そこにつけ込むかの如く制服姿の少年少女達が一斉に、床にズサーッ、とヘッド(顔面)スライディングを決めたさゆみに襲いかかる。
だが彼等の攻撃は突然天井近くまで盛り上がって障壁と化した床に阻まれ不発に終わった。
「ほら3人共早く上って!長くは保たないよ!!」
「うぇ!?あぁ、はぃ!!」
「ほら重さんも早く・・・!」
「ぺっぺっ、あ〜、もうえり〜、口に砂入っちゃったよ〜」
「さゆが砂なんてある状況にするからでしょ〜」
「む〜」
愛に抱え上げられ穴の淵まで上りながらも、さゆみはマスターに対して不平を言う。
姉がいなければ基本的に普段の彼女はこんな感じである。
- 669 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:28
- 全員が4階に上がったのを確認し、圭織が穴を塞ぐ為に手を叩く。
だが鋼の左手を穴の淵に押し付けた瞬間、ピタリと動きを止めた。
そんな彼女を訝しみ、梨華が疑問の声を上げる。
「? 早くしないと上がって来ちゃいますよ?」
「・・・走るよ」
「「「「へ?」」」」
「道重が床砕くから穴塞ぐのに材料が足んないのよ!!!」
錬金術は「等価交換」の原則の下に成り立った魔術の一体系だ。
それ故無から有を生み出すことはできない。
この場合だと他の部分から材料を寄せ集めて穴を塞げそうなモノだが、
あまり頻繁に建物のバランスを崩すとそのうち崩壊しかねない。
(足止めの為に錬成した壁もそういった理由でかなり脆い)
下に落ちた材料、つまりは瓦礫をどうにか利用するにも時間が掛かる。
よってさっさと逃げないと・・・。
「うわっ、壁砕いてる!!!」
「あ、上ってきた」
「あちちちちち!?」
「いひゃっ!?」
「うわぷっ!?」
・・・こうなる。
- 670 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:28
-
5人は弾丸のように駆け出した。
10数人は穴からひょいひょい現れて追ってくる。
しかも速い。
「石川!あいつら何者なのよ!?」
「それがよくわかんないんですってば!軽く見覚えあるからここの生徒なんでしょうけど、
あのサングラスからも妨害霊波出てるらしくて私にも探れないんですよ〜!!」
- 671 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:29
- *****
- 672 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:30
- は〜い、久々に途中でおじゃま♪(なんか懐
紺野あさ美です。
今回は此処に流れまくっていると巷で(?)噂の【妨害霊波】の謎に迫りたいと思います。
私の発明した通信システムは魔獣の現れた空間、通称・魔次界での通信を可能にする為のモノなんですが、
この魔次界、空間の歪みの影響で電磁場が狂っていて従来の通信機は使用できません。
そのせいで外部からの接触ができず、通信機の発明後もオペレーション無しでの魔獣殲滅が長い間主流となっていました。
それが原因で亡くなった方というのも1人や2人ではありません。
そこで私、天才科学者・Dr.コンノが立ち上がったのです!!
まず私は最初の取り組みとして・・・何?そんなのイイから要点だけ手短に話せって?
もう、アナタ後でじっけ・・・もとい話があるから私のラボに来てください。
じゃあサクサクッと簡単に説明しますよ。
私の発明した通信機はお察しの通りSNTを利用しています。
どんな種類のSNTかと言えば、人間及びその他の動植物が他の個体と無意識下で情報をやり取りするのに発しているモノです。
俗にコレらを【霊波】と呼んだりします。
【精神波】の持つデータをそのままSNTに写し取ったのがコレと言えば分かり易いですかね。
石川さんのような精神感応能力者は脳にこの霊波を受信するチャンネルを持っていて、
受信したコレらの持つ情報を言語中枢で言葉に置き換え聴覚刺激として意識上で感ずるわけです。
ちなみに以前に話した霊が見える、というのも霊波に関係しています。
霊が見えるという人の場合、これを視覚情報として受け取っているんですね。
- 673 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:31
-
私の通信機は、これを人工的に発生させて通信に応用しています。
霊波も名前の通り波として伝わるモノなので当然波長があります。
受信する波長の調整次第では人の心の声を聞く事も可能ではありますが、
相当強い、意識上でしっかり言語として成り立ったモノが時折聞こえる程度ですから実用性は少ないです。
石川さんレベルに高位の精神感応能力者になると人の深層心理だったり人間以外や異なった言語民族の
心の声も頑張れば日本語に翻訳して聞く事ができるようですが、普段わかるのは感情程度だそうで。
この能力を保持していておまけに石川さん並の能力者となると極々稀少ですし、
この手の【術】を発展させている流派というのも聞いたことが無いので昔は魔次界での通信はほとんど無理だったんですね。
で、いよいよ【妨害霊波】の説明に入ります。
ま、薄々お分かりでしょうが要するに上記のSNT、【霊波】の流れを乱す為に流す、妨害電波のSNT版ですね。
そんなわけで石川さんの能力も威力が半減、私の通信機のあまり屈強とは言えない霊波では太刀打ち不能ってコトです。
おまけに例の人事不省の生徒集団が着けているゴーグルもコレを出しているので
石川さんと言えども直接精神に介入なんてできないわけです。
一般人に理解可能な程度ですと説明はこの辺ですか。
ちなみに以前の説明と比較してなんとなく矛盾してねーか、という意見のある方は私のラボまでどうぞ。
そんなの作者の先見の無さのせいなので私の知ったこっちゃありません。(爆
では、さいなら。
- 674 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:31
- *****
- 675 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:32
-
走りながらも後方を顧みて、圭織が舌を打ち鳴らしながら隣を走る梨華に声を掛けた。
「あの様子だとマズイかもしんないわね」
「え? 何がです?」
「見てみなよあの速さ。肉体強化系はともかく、【練氣】をしてる様子も無いのに
氣の補助で速度を上げて走ってるウチらに普通に付いて来てる」
「それがどーかしたんですか?」
追走するさゆみが今一つ緊張感に欠ける声を上げた。
その隣の絵里が呆れた様にその疑問に答えてやる。
「さゆ、れいなレベルだよそれじゃ。
つまり肉体の限界を超える運動をしてるってコトですよね?飯田さん」
「察しがイイね、亀井。そう、このまま行くとあの子達、確実に二度と歩けない身体になるよ」
「でもホントにリミッターの外れた筋肉の力使っとるんなら、下手すりゃ死ぬであの子ら」
別の意味で緊張感に欠けた言語で愛が圭織の警告にさらに不吉な補足を入れる。
達人クラスの武術の使い手だけあって人体には中々詳しいようだ。
- 676 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:32
- 圭織はしばらく視線を中空に飛ばし、思考を巡らす時の彼女独特の表情になる。
視線を前方に戻すと再び梨華の方に顔を向けた。
「石川、アタシの思考を皆に」
「了解ですっ」
圭織が思考を巡らせ始めた時には既にその指示を予期していた梨華は直ちにソレを実行に移す。
後方を走って生徒集団を牽制していた3人の脳にズン、と重い衝撃に似た感覚が響き、
その顔がキッ、とプロの引き締まりを見せた。
5人の走る廊下は突き当たりで左右に分岐している。
分岐点に差し掛かった一瞬、5人は視線を交錯させ、二手に分かれた。
- 677 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:33
- ――――――――――
- 678 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:33
- 13人の能力者達は標的が二手に分かれた事に特に戸惑った様子は見せない。
ただ狩猟本能の赴くまま、特に合図を送り合うコトもせずに分岐点で二手に分かれた。
今の彼等に通常の人間が行う思考というものは存在しない。
在るのは「外敵の排除」という、野生動物が持つ本能だけだ。
彼等、いや其等に施した処置を、実行者は【起源の覚醒】と呼んだ。
人間には各々【起源】があり、現生人類の大多数を占める「普通」の者たちはソレを忘却しているだけだ、
という彼の持論に基づく処置だったが、結果としてソレは成功の範囲内に収まったと言えよう。
だがどうやらソレには予想の範疇には違わぬが、副作用の存在が認められた。
能力の発現者達は皆「破壊衝動」、つまりそれなりに進化した種であるなら一様に持っている
「敵は出来得る限り減らしておけ」という本能に火が着いてしまったらしいのだ。
それも一部の肉食動物たちが見せる集団による協力体系という興味深いおまけつきで。
今回の目的を果たす上では返って好都合な副作用と言えるが最終的な目的に向けては
まだまだ改良の余地が認められると言った所だろう。
その事に彼やその娘のような人種に特有の愉悦を感じている男の事など、廊下をひた走る13人には無関係のモノだ。
- 679 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:34
-
分岐点を左折すると、其処で7人は逆さまに天井にぶら下がった少女と対面する。
動揺など刹那の時も無く、先頭にいた1人が右掌から先程の者のソレより幾分黄みがかった炎を揺らめかせた。
炎は天井に立つという物理法則を無視した行動を取っているポニーテールの少女を屠る。
炎が消えると其処に先程までいた彼女の姿は跡形も無い。
当然ながら何もあの程度の炎で焼き尽くされてしまったわけではない。
黒い絹のような手入れの行き届いた髪から漂うシトラス系の香りに、
鼻を利かせた捕食者たちの視線が一斉に足元に吸い寄せられた。
「無神流・大蛇」
黒衣の少女が腕をしならせる様に突き出すと、その右腕を覆うように象られた
淡く光る大蛇(オロチ)が咆哮と共に7人の顔面へと高速で伸びる。
大蛇の口腔は一瞬で正確に彼等の目元を覆うゴーグルを屠り、その視覚を一瞬のみ目が慣れるまでの時間差によって封じた。
野生の反射神経を持ってしても、この距離で高速の一撃をかわすのは早々容易なモノではないようだ。
だが狩猟者たちの感覚は視覚だけではない。
砕かれたゴーグルのレンズが床に衝突して音を立てるより早く、
他の五感を駆使して少女に牙を剥く。
非常灯が放つ緑の明かりのみが照らす廊下にカシャン、という硬質だが脆い物質の砕けるような音が響いた。
- 680 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:35
- 砕けたゴーグルのレンズがもう一段階の破壊の進行によって上げた悲鳴だった。
少女を含めて8人は、そこだけ時間が止まったかのように動きを止めている。
天井の、先程ポニーテールの少女が立っていた位置に開いた真円の穴から8人に手を翳す色黒の少女による効果だ。
穴の少し手前から青白い火花が散り、もう一つ口を開けた穴から長髪で線の細い女性のシルエットがスルリと抜け出てくる。
パン、という軽い音が響き女性が左手を床に突き立てると、そこから迸った青い光が8人の足元に走った。
光の集中した位置から幾本もの縄を象った床が伸び、人間の動きを完全に封じられるように8人に絡み付く。
それを確認し、依然天井から首だけ出して顛末を見守っていた彼女が床に膝と片手を上手く突いて無音の着地を披露した。
8人に近寄り1人混じっている味方の顔を確認し、彼女の前頭葉に施したチカラを解く。
フッ、とポニーテールの色眼鏡の奥の少女の瞳に生気が戻り、身体に巻き付いた縄も床へと戻った。
「結構上手く行きましたね」
「まっ、チームプレイならこっちのもんっしょ」
「そーですよ、なんせ絆の強さが違いますもん♪」
「「・・・キショッ」」
「あー、ひど〜い!!」
「だからそれが・・・まぁいいや。さて、あいつらは上手く行ったかね」
そう言って圭織はゴーグルの破片が落ちた直後から聞こえている喧騒に目を向けた。
・・・どうやら失敗したらしい。
夏休みにれいなに対抗して特訓したアレの成果は発揮できていないというコトだろうか。
梨華にはチカラの届くこの位置から動かないように目配せし、愛と2人でそちらに足を運ぶ。
- 681 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:36
-
右折した6人を待ち受けていたのは、あれ?あれ?とブツブツ唱えては連呼している少女達だった。
1人、背中に蝙蝠のような翼を背負った方が一歩前に出て、もう1人はその背後で謎の儀式を繰り返している。
あれ?と首を傾げる動作が奇妙なくらいに揃っていて、事情を知らない者にでも何かの波長を合わせているのかと感じさせる。
「おっかしーな、やっぱ捕縛系はまだ早かったか・・・。」
「えー、でも前成功したじゃん、一回だけ」
「一回だけね。それじゃダメでしょ、やっぱ」
「そぉ?普通一回できたらずっと忘れないモノじゃないの?自転車みたいに」
「自転車と魔術じゃだいぶ違うよ」
などと暢気な会話を繰り広げている。
そのあまりに殺気の無い空気が6人の本能に一瞬だけ迷いを生ませたのはここだけの話だ。
だがそれも一瞬、すぐに無防備な少女達目掛けて飛び掛った。
「あ、来ちゃった」
「しょうがない。とりあえず飯田さん達終わるまで壊さないように相手しないと」
怖い事を口走り、背後にいた薄幸そうな空気の少女が特殊警棒を伸ばして前に出てくる。
手に握ったソレを振り上げ、掌に高圧電流を湛えた少女の顔面を・・・蹴った。上段廻し蹴りで。
本能で感電死を狙って警棒を受け止めようとしていた少女の身体は
とんでもないフェイントのおかげで床に崩れる。
すぐに立ち上がったものの、本能的に目の前の少女達は手加減が下手だと認識した為か、警戒してすぐには襲ってこない。
- 682 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:38
-
入れ替わるように立ち塞がった翼の少女がそれを羽ばたかせ、生じた風の圧力で6人は前に進めなくなる。
それを見て、フェイント少女の頭の上にエジソンの発明品が灯りを点した。
前方の少女にその攻撃を続けるように告げ、自身は詠唱に入る。
「sis mea pars 汝に与えし契約の媒 封じたチカラを今 此処に示せ
戒めの風 縛鎖となりて闇を捉えろ アエール・カプトウーラエ!!!!」
少女が叫ぶと同時、前線の少女の翼が淡く光り、起こしていた風が形を帯びて幾つもの縛鎖に変貌し6人に巻き付いた。
それは確実に6人の動きを封じ、見事にその役割を果たしている。
「おぉ、やったじゃんえり!!」
「うん。魔術で風を起こしてそれで鎖を作るより最初から風だけ起こしてソレを鎖に変えた方が早いと思って」
魔術の媒を果たす前線の少女が歓喜の声を上げると、術者である彼女も得意気な笑顔を見せる。
そこに、彼女達の先輩である2人が自分達の役割を終えて近付いて来た。
「おー、やればできんじゃん2人とも」
「「えへっ♪」」
「誰のマネ?なんかキショいけど」
- 683 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:39
- あははと笑う長髪の女性に、ポニーテールの少女が恐る恐るといった感じで声を掛ける。
「あのー、飯田さん?」
「ん、何?高橋」
「これ、骨砕けてますよね?」
「「「え゛!?」」」
言われて縛られている6人に視線を移すと、絡みついた鎖は明らかに骨の位置より内側に喰いこんでいる。
おまけに、ギシメキ、というそれが現在進行形らしい不吉な音。
慌てて4人は彼等を反対側にいる仲間の所に運んで行き、無理を承知で脳にアクセスさせてその活動を一時停止させた。
この状態で痛覚も無い連中に暴れられたら間違いなく自身の身体をバラバラにしてしまうだろうからだ。
全員が動きを止めた事を確認してからようやく鎖を解くと既に全員、縛られていた部分の骨を完全に折られていた。
後でちょっと危ない医療スペシャリストの厄介になるハメになりそうだ。
「あの、流石に13人はキツイんですけど・・・。」
「「「「ドンマイ!!」」」」
「とりあえずアタシらだけで他のトコ行ってくるからアンタはここで頑張ってて」
「えぇ!?そんなっ、ちょ・・・、オイ!!」
動けないESP能力者の嘆きを無視して、4人は出口に向けて駆け出した。
- 684 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:39
- ――――――――――
- 685 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:39
- 「見た目より強いんだね、お姉ちゃんたち」
「「「「!?」」」」
1階、大学部校舎エントランス。
自然光を取り入れる為ガラス張りにされた天井から薄く射し込む青白い月光に照らされたこの空間。
廊下を駆けて入って来た4人は響いた幼い声に反応して足を止めた。
声の主は半袖半ズボンと言った、黒革の戦闘装束に身を包んだ4人と比較して随分異質に映る格好をしている。
「誰?キミは」
代表者である圭織が、吹き抜けになったこの場所の2階にある小さな喫茶店の
椅子に腰掛けてこちらを見ている少年に呼び掛けた。
少年は片手にもったジュースのストローを銜えて半分くらいそれを飲んでから口を開く。
- 686 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/14(土) 14:40
- 「ん〜と、たぶん敵」
「多分って何やの?」
「ボクあんまりそーゆーの興味無いから。ただボクは・・・。」
言葉を切り、少年がジュースの容器を4人の頭上に放り上げた。
少年の右手がそれに翳されると同時、透明のプラスチックが弾け飛び、
中に入ったコーラが飛沫となって4人に降り注ぐ。
月明かりを反射し黒光りするそれは、少年が見たがる液体にも似ていた。
「壊すのが好きなだけ」
用心して飛沫を被らない位置まで移動した4人が先程までいた場所に、少年の姿が忽然と現れる。
甘美で黒いベタついた液体を自ら被り、少年・成瀬小太朗はその狂気を剥き出し口元を歪めた。
- 687 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(まだ続) 投稿日:2004/08/14(土) 14:40
- *****
- 688 名前:キャラ紹介 投稿日:2004/08/14(土) 14:41
- 「ん〜と、たぶん敵」
「多分って何やの?」
「ボクあんまりそーゆーの興味無いから。ただボクは・・・。」
言葉を切り、少年がジュースの容器を4人の頭上に放り上げた。
少年の右手がそれに翳されると同時、透明のプラスチックが弾け飛び、
中に入ったコーラが飛沫となって4人に降り注ぐ。
月明かりを反射し黒光りするそれは、少年が見たがる液体にも似ていた。
「壊すのが好きなだけ」
用心して飛沫を被らない位置まで移動した4人が先程までいた場所に、少年の姿が忽然と現れる。
甘美で黒いベタついた液体を自ら被り、少年・成瀬小太朗はその狂気を剥き出し口元を歪めた。
- 689 名前:キャラ紹介 投稿日:2004/08/14(土) 14:42
- <藤本美貴>
能力:精霊術(特に氷術系)
性格:ツッコミ気質、でも割と天然ボケ、サバサバと男より男らしい
好きなモノ:亜弥ちゃん、肉、鮭とば
嫌いなモノ:亜弥ちゃんに近付く虫ケラ共、ネギ(草っぽいから?)
天敵:恋人イナイ方々
霊力値:1200p前後
鼻腔:弱い
備考:あややヲタで目付きが悪くてヤクザな精霊術士。
ロシア生まれの北海道の真ん中らへん育ちで、精霊術は若干我流。
精霊術は自然と自身を一体化させて自然界の精霊を使役する術、
という定義に関係するのか詠唱が要らない。
その為なのか彼女の性格なのか、術はダイナミックで調整のあまり利かないモノ多数。
あややを傷付ける者が現れた時、肉食怪獣フジモンに変身・・・しない。
<吉澤ひとみ>
能力:PK(psychokinesisの略。ピンク・カッケーではない)
性格:おっさん、意外に繊細な面もある
好きなモノ:梨華ちゃん
嫌いなモノ:梨華ちゃんに近付く虫、へび、心霊系の話もあんまり・・・。
天敵:帝に同じ
霊力値:1100p超
備考:超能力者。要するに突然変異の高位霊力保持者。
重力子を利用して(無意識)空間を操るのが得意。
主な能力は空間転移、空間の操作による衝撃波、空間に穴を作って利用、
想像上の軸を作って物体を捻じ曲げるなど多岐に渡る。重力操作も軽くできる。
子供の頃はUFAの保護を受けていたがそれでも色々葛藤があったらしく精神力はかなり強い。
それだけに能力も強力。
- 690 名前:キャラ紹介 投稿日:2004/08/14(土) 14:43
- <小川麻琴>
能力:修験道
性格:基本はほけーっ、たまに言葉では言い表せない状態に
好きなモノ:苦行(別にハードMではない)
嫌いなモノ:男女差別
霊力値:700p前後
備考:元来修験道は女性の入れない道だが、修験者である父親に鍛えられ身に付けた。
だが修験道の長老みたいな方々が認めないので正式な修験者ではない。
とは言えその組合の中で彼女に勝る使い手は現在いないが。
得意とするのは修験道の中でも特に難しい鬼の使役。
【式合】というのはさらに高等で、鬼の霊力を合わせて色々形を変えるモノ。
<稲葉貴子>
能力:甲賀式忍術
性格:イケず、もろ関西
好きなモノ:イケメン
嫌いなモノ:幸せそうにイチャついてる若者達
天敵:同上
霊力値:700p前後
備考:甲賀忍軍上忍。正確には裏甲賀と呼ばれる者たちの末裔。
雷魔忍軍とは戦国の世から同盟関係にあった。
広範囲爆破系の術が得意らしい。
過去の事件で仲間を一度に失うという暗い面あり。
- 691 名前:キャラ紹介 投稿日:2004/08/14(土) 14:43
- <前田有紀>
能力:五木式針術
性格:菩薩
好きなモノ:演歌
嫌いなモノ:ヘビメタ
霊力値:650p弱
備考:祖父はある高名な導具鍛冶。
知っているツボは人体におけるあらゆるモノはもちろん、他の動植物に空間や物体など
自身のチカラを注いだ針によって突けないツボは皆無。
針の投鄭もミリ単位の誤差しか生まない凄腕。
<飯田圭織>
能力:錬金術
性格:根が真面目、委員長っぽい、役職上説教くさくなっている
好きなモノ:交信、研究、絵とか詩とか
嫌いなモノ:左腕の定期検査後に神経を繋ぐ瞬間の痛み
天敵:団体行動を乱す連中
霊力値:620p前後
備考:左腕には紺野あさ美による発明品を多数搭載。
最近おもちゃがわりにされていないかと気づき始めた。
ちなみに鋼部分は肩から先。
色々仕事を押し付けられやすく、最近ストレスが溜り気味。
- 692 名前:キャラ紹介 投稿日:2004/08/14(土) 14:44
-
<石川梨華>
能力:ESP
性格:根底はネガティブ、最近は無理矢理ポジティブ、優等生気質
好きなモノ:ひとみちゃん、ピンク
嫌いなモノ:男
霊力値:1000p前後
備考:能力のせいでネガティブにならざるを得ないような過去多数。
UFAの養護施設でひとみと出会ってからはだいぶ回復。
でも男性恐怖症は未だに少し残っている。
それでも戦闘力はハロプロでも中位に分類できる。
夏先生の厳しい訓練のおかげらしい。
<高橋愛>
能力:無神流古武術
性格:なんか変
好きなモノ:宝塚、凛々しいお姉さま方、ソースカツ丼
嫌いなモノ:福井の敵(?)
霊力値:900p前後
装備:銀に輝く鋼の鉄甲
備考:福井にある無神流分家の生まれ。
着けている鉄甲の手の部分は鋼鉄のグローブみたいな感じ。
肘から先を覆うような作りで、掌と腕の内側は素肌剥き出し。
氣でコーティングせずともマグナム弾を弾くような角度と硬度を持っている。
【操氣】に秀で、夏先生並の武術の腕と組み合わせて使うと相当強力。
ハロプロ期待のエース。
- 693 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/14(土) 14:45
- *****
- 694 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/14(土) 14:46
- 更新終了でゲス。
はい、暑さのせい暑さのせい。
変なトコロは全部暑さのせいですよ〜だ。
気付いた方にだけ言っときますが、
作者は「不気味な泡」とか「根源の渦を目指す魔術師」やらが大好きですw
・・・見逃して下さい。。。 orz
ホントに長いなFILE・3・・・と思われた方、
まだまだ続きますよ♪(マテ
本編(って何だろう)は気長にお待ち下さい。
- 695 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/14(土) 14:47
- >>654 Ray 様
ひさびさで一気読み、ありがとうございます。
楽しんでいただけましたか、嬉しい限りです。
でもたまに有害な文章が混じっているので一気読みのさいには
用法用量に十分注意して服用して下さい。(ナニ?
>>655 聖なる竜騎士 様
永遠に絶えませんな(爆
最高だなんてもったいなきお言葉、まことにうれしゅうござりまする。。。(ナニジダイ?
期待に応えられるよう、必死こいて面白い展開にできるよう頑張りたいと思います。
・・・思います。(ヲイ
>>656 おって 様
全く暑さには参りますよね?
そう言えば陸上部だそうで、大変そうですね。
自分は走るのが苦手なので陸上やってる方に密かな憧れ。。。
脳梗塞の恐れもあるので水分補給はマメに、、、と素人が生意気ですねw
作者の学校周辺は日差しのせいで光化学スモッグが出るので割と危険。
>>657 名無飼育さん 様
めざせどたばたコメディー!!(違
ツボですか?良かったどぇす。
でもこのお話突然キャラが豹変することが多々ありますのでご注意下さい。
作者のイメージがわかりやすく反映されてますので。
- 696 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/14(土) 14:48
- >>658 我道 様
マジで殺り合って・・・もといやり合ってますねw
でもきっと仲間同士だからできるんですよ。
きっと・・・多分・・・もしかしたら・・・いや待てよ・・・。
あ、いえ、きっとそうです、はい、アハハ。
っていうか逆立ち!?け、血液が脳に!!!
いけませんよ大事なお体なんですから、そちらも楽しみにしてますんでw
>>659 nanashi 様
鋭くて的確なご指摘、ありがたく頂戴致します。
全く持っておっしゃる通りで、、、
ていうか敵の全体像が未だにハッキリしないせいですね。
どうにかそのうちハッキリさせるよう努力しますのでご容赦を。。。
あ、「面白いけど」、ありがとうございます。(変に前向き
>>660 刹 様
はい、無駄にすごいですね。
エネルギーの使い方を確実に間違えてますから。
戦場じゃ致命的な気もしますが気のせいです。
ゆきどんは観音様ですからいつでも的確なのですよw
まこっちゃんは(ry
皆さんレスありがとうございます。
そいじゃあまた次回(未定)!! ノシ
- 697 名前:名も無き読者 投稿日:2004/08/14(土) 18:23
- ごちゃごちゃしすぎだろ、文章。orz
- 698 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/14(土) 18:37
- 無敵鉄甲。 わはは♪
や、ソレしか思い浮かばんかったけど。
○ャンプ・マ○ジン多種多様やね♪
しかし、男キャラが出てくると
ちとシリアスになんのね。
次回も期待! ミテイハイヤヨ♪
- 699 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/16(月) 01:41
- 更新お疲れ様です。
つ、遂に成瀬小太朗再登場ですか??
自分、微妙に成瀬小太朗ファンです。
飯田さん率いるハロプロメンバーの方々は大変ですね。
キャラ紹介見てますと、飯田さんは某漫画の主人公(エドワード・○ルリック)
みたいですね。んでもって紺ちゃんがウィ○リーみたい・・・・・・。
しかも、愛ちゃんの性格が「なんか変」って・・・・・・・・。
と、とにかく次回更新を期待してます・・・・。
- 700 名前:blue 投稿日:2004/08/16(月) 11:37
- この小説を読んでおっぱいが好きになりました。
楽しみに待ってます。がんばってください
- 701 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:00
- あの頃の私は幼くて、けどそれだけに残酷だった。
あの日初めて、病室のベッドに横たわり何本も管を通された身体で静かに寝息を立てているあなたを見た時。
私の心を躍らせた感情は2つ。
この子を自分が救えるんだという喜びと、自分の研究が始めて実を結ぶコトへの達成感にも似たソレ。
自信はあった。
そしてその自信に違うことなく「治療」は、ううん「実験」は成功したんだ。
「実験」から3日が経って、目を覚ましたあなたが不思議そうに辺りを見回す仕草を見てご両親は泣いてたね。
それから事情を聞いて何処か釈然としない表情見せた後、私達に笑顔と「ありがとう」をくれた。
その言葉は素直に嬉しくて、私も同じ笑顔で返した。
この時の私はまだその「ありがとう」に湧いた嬉しさの意味に気付いてない。
自分がその時まであなたを「実験対象」としてしか、実験室のモルモットと同じくらいにしか見ていなかった事に。
私は別にあなたの元気なその笑顔を望んでいたわけじゃない。
ただあなたを、いや他の誰でもいいから誰かの命を自分の研究が救ったという事実が欲しかっただけなんだ。
けどあなたが日に日に元気になっていく様を見ているのは本当に嬉しくて、
「事後観察」なんて仕事も忘れ始めて友達と共有する時間の楽しさを知った。
この時の気持ちに嘘はないよ?
でも、時間は私みたいな非道な人間を待ってはくれなかった。
- 702 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:00
- 3週間が過ぎて、あなたはあれだけの傷を負っていたのが嘘みたいな早さで退院を迎えた。
その病院の医師達はこっち側の人だしちょっとやそっとじゃ驚かない筈だけど、それでも信じられないといった眼差しをあなたに向けてたね。
でも私達にしてみればその現象は十分に予想の範囲内だったし、その医師達の眼差しが面白いくらいだった。
最初の異変は、あの人の一言だった。
涙ながらにお礼を言って彼の手を握っていた彼女のお父さんには応えず、
あの人はいつも通りの、私が研究者として目指し続けたあの瞳のまま静かに告げたんだ。
――――――さて、仕上げといこうか。
おもむろにあの人は白衣のポケットから端末を取り出し、流麗な動作でいくつかキーを操作した。
彼の言葉の真意を量りかねていた場の人間達の視線がザクン、という聞き慣れない音の方に向けられる。
其処に咲く、紅くて巨大な鮮烈の華。
彼の眼前に突き付けられている銀色の、メスのような刃に、私はたまに現れて彼を拉致しようとする人たちを連想した。
- 703 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:01
- けど、刃を目だけで辿ってみて、そんな思考は吹き飛ばされる。
彼の視線の先にいる、目を見開いたあなた。
でもそれは不自然だ。
彼の視線を遮る筈のモノは、彼の手を握っていた男性の、あなたのお父さんの頭は何処に行った?
コツン、と何かが私の爪先に当たる感触がした。
視線を落として、探し物を見つけてしまう。
その人の顔は噂からした勝手な想像よりも随分優しかったから、他人と深く関わって来なかった私にしては珍しく鮮明に憶えてる。
それは紛れもなく、まだコレと胴体を斬り離した刃が自分の右腕が変貌したソレだと気付いていないあなたの、
新垣里沙の、父親の首だった。
- 704 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:01
- *****
- 705 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:02
- ボシュゥッ、と音を立てて、目の前の魔獣たちが気体へと変貌する。
ぐわっと上がった周囲の気温に我に返り、背後の皆さんに目をやって温度以外が原因の汗が背を伝った。
「田中ぁ!!使うなって言っただろうが!!!」
「す、すいませ、、、あの〜、、む、、一撃入れられたからつい・・・。」
「つい、で人の通ってる校舎焼き尽くす気みたいですね、この子は」
「あたしも来年から通う予定なんだからやめてよぅ」
「っていうかとりあえず温度下げないとね、グレイ・バスター(砕氷塵)♪」
そう言って松浦さんが軽く剣を振るうと、切っ先から湧いた白っぽい光が熱で化学変化を起こし始めてる廊下に満ちる。
光が晴れると廊下の気温は涼しいくらいまで下がってて、暑さに参りかけてた頭を覚醒させてくれた。
これがあるなら使っても・・・っと一瞬口走りかけたけど、あるように見える窓辺りから吹き込んでくる風を感じて慌てて口を塞ぐ。
さっきの一撃の延長上にあったせいで魔獣ごと気化しちゃったらしい。
色んな気体が混ざっておかしなモノに変わったら大変だからしょうがないのか。
- 706 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:03
- あ、ていうか皆あたしのコト覚えてる?
田中れいな、ってことくらいは忘れてないだろうけど一応主人公だから、そこんとこヨロシク。
なんか数週間出番が無かった気がするけどそれでも主人公だから、忘れたら燃すぞコラ。
でだ、今あたし達5人は高等部、例の事件のあった塔っぽい方の校舎の7階にいる。
エレベーターなんて学園のセキュリティを乗っ取られた状態で乗り込む気にはなれず、
塔の中心に位置するそれが移動するための細長い空間を囲う様に作られた階段で1階ずつ虱潰しに探してるわけ。
何故手分けをせずに5人で行動しているかと言えば、紺野さんの計算によると此処に奴さんがいる確率が一番高いらしいから。
狭いながらもしっかり魔獣さんたちは溢れているので、先頭にいるあたしがザックザックと快刀乱麻。
何しろ狭いから炎を使うのを矢口さんに禁止されてて、それでも大した問題は無かった。
- 707 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:04
- けどあの瞬間、魔獣の振るった一撃をスウェーでかわそうとした時。
思いの他相手の動きが速くてかわしきれないと思ったのに、野郎の爪はあたしの胸元を掠めもしやがらなかった。
そのコトになんか無性に腹が立って、湧き上がる感情の象徴に近いあたしの炎は思わず敵を文字通り全滅させてしまった。
・・・・・・・・。
わ、悪いか!!
あの2人と風呂に入った時感じる言い知れぬ敗北感が貴様等にわかるとね!?
わかってくれるのはいつも松浦さんと一緒にお風呂入ってる藤本さんだけやけん・・・。
・・・今のはなんでもない。。。
忘れろや、ハゲ。
- 708 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:11
- 直線の無い、緩いカーブのみで構成された廊下に響くのは依然としてあたし達5人の特徴的な足音だけ。
ここは8階建てだから、ここにいないとなるとこの上にいる確率がかなり高くなる。
「あ、ここだよね?例の飛び降り」
「え?あぁ、そうですね」
不意に、目の前を歩いてた矢口さんが振り返って訊ねてきたので彼女が足を止めた教室のプレートを仰いで見る。
そこには「コンピューター学習室」と書かれていて、この場所が例の事件の現場だと指し示していた。
あの写真を思い出して、背筋がブルッ、と嫌な感覚。
「へー、ってことはコレかな?その窓って」
「えっと、あ、松浦さん、こっちですよ」
「お、どれどれ。って言ってもアタシ、幽霊とかわかんないんだけどねー」
をーい、、、
仮にも飛び降り事件のあった窓に軽々しく触れないで下さいよー・・・。
そんなあたしの心のツッコミが好奇心旺盛な松浦さんと知的探究心の塊である紺野さんに届く筈もない。
2人は警察の現場検証の後で2階以上の窓全てが固定されて開かなくなってるのを知ってか知らずか、
グイグイ、と窓を工事の後も残された淵の溝に沿って動かそうとしている。
- 709 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:12
- 矢口さんと新垣さんはやれやれと言った表情でそれを傍観してる。
あたしより彼女達との付き合いが長いせいか、こーゆーのには慣れてるみたいだ。
「ほれ紺野、ししょーも早くしないと夜が明けちゃうってば」
「つーかあさ美ちゃん、ナニ本格的な調査グッズ取り出してんのさ」
新垣さんに言われて、紺野さんはほぇ?っとした表情で――と言ってもあたしらがしてるサングラスに比べて
随分ゴツいゴーグルのせいでよく判んないけど――振り向いた。
その手には何やら不可解な液体の入った薬瓶とスポイト、それに試験管が数本握られてる。
なんかこの場で科捜研を軽く上回る仕事をしそうで怖い。
『いやはや、そういった物を常備しているとは研究者として見上げた心掛けだな』
「!? 誰だ!!」
何の前触れも無く聞こえたくぐもった声に、矢口さんが振り返って苦無を投げつけた。
慌てて、矢口さんと同時に振り向いた松浦さん以外のあたし達3人もそちらに目をやる。
スコープ越しだとぼやけててハッキリしないけど、そこにはさっきまでいなかった誰かの影が確かに佇んでいた。
だけど現れた影目掛けて真っ直ぐ飛んだ苦無はソレをすり抜けるかのように、影の背後のカーブを持った壁に衝突して甲高い音を立てる。
- 710 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:13
- 「幻術・・・?」
『おや、そんな言葉で片付けて欲しくはなかったな、矢口真里君。
そうだな、今の私は映写機の無いホログラム・・・とでも紹介しておこうか。ただし・・・。』
赤外線スコープをONにしているあたし達に影の姿はハッキリと見えない。
けど影の周りの景色との違いで動きは把握できた。
影は腰を屈める様な姿勢になって、何かを拾うような動作をする。
ホログラム、つまりは立体映像が物を掴める筈・・・。
そう思ったあたしは次に見た光景に目を剥いた。
自称ホログラムの手に、さっき矢口さんが投げ付けたばかりの苦無が握られている。
『こんなコトもできてしまうんだがね?』
「あなたが、今回の・・・。」
『あぁ、そうだよ。自己紹介をしておこうか?でもその前に・・・。』
松浦さんの問い掛けに答えた影が手に持った矢口さんの苦無を投げ付けてきた。
けどソレは誰の身体も掠める事無く、あたし達の間を通っただけだ。
- 711 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/17(火) 02:13
- 「何のマネだよ?」
『何、私の姿を肉眼で見てもらおうと思ってね。中々の自信作なんだ、この発明は』
「はぁ?一体何言って・・・!?」
言いかけたあたしを遮るように、目の前が暗転する。
えっ?と思ってサングラスのフレームに付いたスイッチを押すけど反応が無い。
訝しんでそれを外すと、パチン、という指を弾くような音と共に天井の蛍光灯が灯りを点した。
途端に周囲に光が満ちて、影の姿が明瞭になる。
息を呑む声が4人分、廊下に木霊した。
それがあたし同様グラスを外して影の全貌を目にした4人のモノだとはわかるけど、
その4人の視線の先に佇む男の姿を見ても、あたしには息を呑む理由が理解できない。
そんなあたしに何の説明もないまま、男が口を動かした。
『久し振りだね、あさ美。随分可愛くなったんじゃないか?』
「お、お父、さん・・・?」
紺野さんのか細い呟きは、けどそれだけで説明を不要のモノにした。
手配書は見たこと無いけど名前くらいは何度も聞いてる。
紺野浩志、故・紺野幻十朗の長男にして紺野さんのお父さん。
そして、テロリストへの加担や多くの殺人容疑でUFAに追われてる、危険度SSSの賞金首だ。
- 712 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/17(火) 02:14
- *****
- 713 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/17(火) 02:15
-
はい、短っ!!
・・・と、お約束のノリツッコミですが何か問題でも?(問題山積み
兎にも角にも一にも二にも、三四がなくてぇ五に更新、終了です。(意味不明
ま、いよいよ終結に向けて動きだしました、FILE・3のね。(ヲイ
上手いこと終わるか不安ですが。(爆
っていうか辻褄合わせが大変ですYO!(自爆
予期せぬ前後の噛み合いってのを発見して(゚∀゚)だったりします。(爆死
っつーわけでどうぞお付き合いくださいませませ♪
- 714 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/17(火) 02:16
- >>697 名も無き読者
同感だ。orz
>>698 名無飼育さん 様
全部気のせいですw(お
っていうか最近何故ここで頑なに否定してるのか判らなくなってきてますが、でも気のせいなんです、きっと。。。
男キャラ、、、あ、そーいえば・・・。
シリアスというかちょびグロですが、あまりメンバーをそんな目に合わせたくないので
0から空想の方々に犠牲になって頂いてる次第にござります。(タブン
>>699 聖なる竜騎士 様
微妙になるこた(?)ファンキタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚ )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
彼は初めてまともに作ったオリキャラなので嬉しい限りですわw
いいらさんと紺ちゃん、、、気のせいです。
此処で作者が言った気のせいは全部図星だというジンクスがありますがそれでも気のせいです。
愛ちゃんの性格、あれではいくらなんでも失礼でしたよね?「どっか変」に変えておきます。(マテ
>>700 blue 様
わぉ、好きになっちゃいましたか?何かスイマセン。
でもレスありがとうございます。
これからもがんがってそのネタ書いていくので待ってて下さいw(激違
未定はイヤヨと言われたのでそーですね、、、
次回は一週間かそこらで。
でも気まぐれで変わるかもw(ダメジャン
ほなね〜。。。ノシ
- 715 名前:我道 投稿日:2004/08/17(火) 10:49
- 素早い更新お疲れ様です。
ガ、ガキサン…一体あの独白は…?
やはり、深いです。深淵の如く深すぎて、私の頭は熱暴走寸前ですw
次回が凄まじく気になります。
頑張ってください。
- 716 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/18(水) 17:46
- 更新お疲れ様です。
田中さん全焼かっけーす!理由が最高に笑えました。
しかし「一撃入れられたからつい・・・。」って言ってますけど攻撃くらってないですよね?
次回も期待してます。頑張ってください。
- 717 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/18(水) 18:10
- 更新お疲れさまです。
やったね、愛ちゃんの性格が「なんか変」から「どっか変」に格上げした〜・・・・・・。(って、これって格上げか?)
れいなちゃんもれいなちゃんですよ!たかがそんな理由で辺り一体焼き尽くすなんて・・・・・・・
・・・・・・・・すいません、「あんな事」を「たかが」なんて言ってしまって・・・・・。
オープニングからグロイですな、まあ紺パパとガキパパが出てきましたからOKですね。
次回も頑張ってください。
- 718 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/19(木) 01:11
- え〜、まっっったく更新とは関係ないんですが・・・。
れなまきキタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚ )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
無性にコレを叫びたかっただけでございます。
ごめんなさい、二人ゴト見て衝動が抑えきれませんですた。。。
回線切って首(ry
- 719 名前:刹 投稿日:2004/08/19(木) 13:45
- 遅くなりましたが、更新お疲れ様です。
いやぁ…前回の更新に間に合いませんでしたからねぇ。。。
話が進んでて驚いたりw
ってか、が…ガキさんパパ!!…こわっ。
れいなはつい、で辺りを全焼させるんですね。。。
それでは次回も楽しみにしてまつ。
- 720 名前:マコ 投稿日:2004/08/20(金) 11:43
- はじめまして。
いっきに読みましたよ。
感想を一言で言いますと 『おもしろい〜〜〜』
読みふけってしまいました。
僕も 二人ゴト見て 感動しています。
多分 しばらく続くんだろうなぁ。
ハートが 飛んでます いくつも。
と言うことで これからちょくちょく 感想書かせてくださいね。
- 721 名前:おって 投稿日:2004/08/20(金) 15:20
- 更新乙です。
FILE3もいよいよ終盤ですか。
うまくまとめられるように頑張って下さい。
自分が旅行で更新していない間に大量更新されていると非常に焦りますw
- 722 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:24
-
響いた何人かの看護婦さんの悲鳴が突然途切れ、響くのは誰かが泣き叫ぶ声だけになった。
現状を把握しきれていないまま顔を上げると、そこにはスプリンクラーが3つ。
水の代わりに真っ赤な液体を勢い良く噴き上げるソレは、間も無くバランスを崩して床にドサッ、と倒れた。
少し離れた所から聞こえたゴトゴトゴトン、という音は薙がれた首が落ちた時のモノだろうか、
などと私は陳腐なスプラッター映画のワンシーンを見るような気分で分析しながらも、置かれた立場が未だよくわからないでいる。
けど、目の前に突き出された銀の閃きとあなたの私を呼ぶ声が私の意識を現実に引きずり戻した。
咄嗟に身を捩って刃をかわし、床を転がってその攻撃範囲から逃れる。
視界に、さっき倒れた3つの胴体が依然流れる粘液を止めず、纏った白い布地を紅が侵蝕しているのが映った。
つん、と鼻を刺す様な鉄の香りに、まだ朧だった意識が一気に覚醒する。
再度響いたあなたの悲鳴にも似た呼び声にバッ、と身を起こしながら両手と左足、膝を駆使して背後に跳ぶと、
コンマ数秒前まで私の頭があった位置にガキン、とステンレス鋼が突き刺さり甲高い音を響かせた。
そうだ、彼女の腕がトランスして構成されたのがあの刃なら、其処に間合いなんて常識的概念は存在しないんだ。
その事に若干の焦りを覚えながらも彼女とあの人から距離を取り、息を整えて【氣】を練る。
無機質な瞳で状況を観察しているあの人に対して敵意の視線を向け拳を構えた。
この時何故自分があの人を、血の繋がった自分の父親をこうも簡単に「敵」と認識できたのかが不思議だ。
あるいは、自分でも気付かないウチにいつかこうゆう事態が来る事を予測していたのかもしれない。
- 723 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:25
- 6、7人いた医師や看護婦は首を落とされた3人を除いて皆逃げ出してしまっていた。
こっち側の人間と言っても全員が戦闘要員というわけじゃないし、
仮に何か武術の心得があってもこれだけ得体の知れない相手と戦うのは勇敢ではなく無謀。
その反応は当然のモノだと思える。
自分の友人を前にそんな反応は正直心外だけど。
結果としてこの場には4体の肢体にあなたと私、あの人、そして・・・。
ハッ、とした時には遅過ぎた。
私の視線の先とそこに込められた意味を理解してあの人が口元を吊り上げる。
初動すら間に合わず、深夜で無人の病院ロビーに幼い、絶叫に近い悲鳴が木霊した。
ソレを見て、私は吐き気よりもむせ返るような怒気を抑えるのに苦労した。
なぜこんな真似ができるのか。
以前からあの人の研究方針には生命を冒涜するようなモノがしばしばあり、それは何度も抱いた感情だった。
けどそれがこうも顕著に現れていいものだろうか。
響いていた泣き声も今は亡い。
それをこの世に伝えていた媒介は今、私の眼前に晒されている。
泣き顔のまま切り取られたソレが塞ぐ視界の向こうで、柔らかい何かが同じように柔らかい何かの上に倒れ込む音がした。
- 724 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:26
- あの人はまるでフォークでおかずを突き刺すような気安さで刃をその後頭部に刺して持ち上げ、自分の娘・私の前に晒している。
まるで私にその悲痛な顔をよく記憶に焼き付けろ、とでも言うように。
心配しなくても、この人の顔は泣き顔しか覚えてないよ。
事故にあった娘の事を私達に救って欲しいと頼んだ時も、死んだように眠る娘の寝顔を見つめて思い出話をしていた時も、
「手術」の前後も、娘が目覚めた時も、娘が「バケモノ」に「改造」されたと知り、同時に最愛の夫が首をもぎ取られてその胴体に駆け寄った時も、
この人は、新垣里沙の母親は、泣いていたんだから・・・。
- 725 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:26
- *****
- 726 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:27
-
「どーゆーことなんですかねぇ、アレ」
「知らないっつの!とにかく行ってみるっきゃないでしょ!!」
「・・・ていうか紺野さんはともかく新垣さんはどうしたんですかね?」
チラリと、後ろを走る2人にあたしら3人が視線を移して、戻す。
使い物にならなくなったサングラスはもう掛けてない。
何やら沈痛な面持ちで目を伏せながら階段を駆け上がるお2人のこの様子には
さっきの自称・ホログラムが消えてから気付いた。
紺野さんはまぁ、色々複雑なんだろーけど新垣さんは・・・?
もしかして、、、と思うところはあるんだけど、こーゆーのは変に勘繰らない方がいいよね。
それにしても、アレはなんだったのか・・・。
紺野浩志(こうじ)と思しきホログラムは『最上階で待っている』とだけ告げそのまま消えた。
その為だけにあんな得体の知れない代物を使って姿を現した真意が掴めない。
「そーゆー人、なんですよ・・・。」
「え?」
「あさ美ちゃん・・・。」
今のやり取りが聞こえてたのか、紺野さんが呟くように漏らした。
心配そうな顔で声を掛けた新垣さんをぎごちない笑顔で制して、続ける。
「前に言ってました。発明は世界に認識されて初めて価値を持つ・・・って」
「つまりさっきのはオイラたちに自分の発明を見せびらかせに来ただけ、ってコト?」
「えぇ、おそらくは」
- 727 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:28
- それだけ言うと、紺野さんはまた目を伏せてしまう。
こりゃ相当根深い何かがあるんだろうな・・・。
矢口さんと松浦さんは何か知ってそうな顔してるから、多分あの人の起こした事件とかに関係あるんだろうけど。
「おっと、此処だな」
「ですね」
不自然に長い螺旋階段が途切れ、あたし達の目の前には重々しい鉄の扉が立ちはだかった。
扉の前にある踊り場程度の広さの空間に5人で立ち、顔を見合わせる。
紺野さんは顔を伏せ、階段の本来の長さを走った辺りから現れた冷たい石の床を見つめてる。
「紺野、大丈夫か?言っとくけど、この先は下手すりゃ殺し合い。
整理がついてないんなら来るな。足手纏いだ」
歯に衣着せず、それでも目一杯彼女を気遣って矢口さんが言った。
確かに、この先に待つのが本当に紺野浩志なら相応の危険は必至。
中途半端な気持ちならそれは死に直結する。
けど、顔を上げた紺野さんの瞳を見て、そんな心配は杞憂に終わった。
「大丈夫です。行きましょう」
それは経験の浅いあたしにもハッキリと判る。
その瞳に映るのは紛れもなく、決意の色だった。
- 728 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:29
- ――――――――
- 729 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:30
- ガコン、と硬質の音を立てて、扉が両側に開かれた。
5人は慎重に、その内側へと足を踏み入れる。
白い。
何も無い、ただ真っ白な空間が其処には広がっていた。
足が地を蹴る感触があるのでそこに床があるのは確かだろうが、
光源の所在も定かでは無いため空間の容積の限りも把握できない。
そんな空間の入り口から20メートル程度先に彼等は立っていた。
1人は白衣を纏った指名手配犯・紺野浩志その人で、もう1人は紅い斑点のついたパジャマ姿の少女のようだ。
その少女の顔を認め、5人のうち2人が声を上げた。
「ど、どうした!?」
「あの子、もしかして・・・。」
「え?何、2人とも知り合い?」
「いや、知り合いってゆーか・・・。」
「ほぅ、どうやらあさ美と田中君は彼女の器と面識があるようだね」
5人の動揺は、凛と、かつ重く響いた男の声に掻き消された。
落ち着いていて、それでいて底知れない何かを含んだ響きだった。
男は40代後半の筈だが、下手をすれば30代前半で通じそうな若い顔をしている。
だが得体の知れない何かを湛え声の響きをそのまま投影したような顔付きは、風格だけなら数百年修行を積んだ仙人のそれを思わせる。
何より眼鏡の奥、深い闇色の双眸は見つめれば吸い込まれそうな危険を秘めていた。
- 730 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:31
- 男は少女の背に手を触れ一歩前に出させる。
少女はただ無言でこちらを睨んでいて、口元には紅いルージュが引かれていた。
「紹介しよう。今宵の私のパートナー、樋野翔子君だ。
もっとも、器の方の名前は西田亮子と言うのだそうだが」
「器?」
「うむ、まぁその辺りの説明は見てもらってからの方が分かり易いだろう」
言って、男が右手の親指をパチンと鳴らす。
その芝居がかった科白や仕草も、彼がやると一切の違和感が無い。
背後でガコン、という音がして、2人から注意を逸らさず背後に視線をやると
入ってきた扉が閉じて周囲の白に溶け込むトコロだった。
どうやらただで帰してくれる気はないらしい。
もちろん自分達としてもただで帰るつもりなど毛頭無い。
そう思い雷魔忍軍上忍・矢口真里が気合を入れた瞬間、
男の隣に立ってこちらを睨んでいた少女・西田亮子の身体が掻き消えた。
「やぐっつぁん!7時のほ・・・!!」
「うぃ!?」
後輩、魔剣士・松浦亜弥が言い終わらない内に、指摘された方向・左斜め後ろを見た真里の眼に、
紅に染まった唇を開けて唾液に塗れた真っ赤な口内を曝け出した少女の顔が広がっていた。
咄嗟に膝を抜いて少女を本人の勢いのまま投げ飛ばし、すかさず両手を組んで印を結ぶ。
- 731 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:31
-
「水遁・閻水妖壁陣の術!!」
倒れた少女を床(と思わしき箇所)から吹き出た水流がドーム型に覆い、その動きを封じた。
空気中の水分を取り出し障壁を作るという高等忍術を披露した事をなんとも思ってない様子で、
真里は半妖・田中れいなと闘う天才科学者・紺野あさ美を質す。
「おい、よくわかんねーけどあの子は一般人だな?」
「え、えぇ、その筈です」
「今日会って調べたばかりなので確かです」
「よし、じゃあとりあえずあの子はオイラの障壁で動き封じとくからその間に4人は・・・。」
と、真里が指示を出しかけた時、背後で何かがパァン、と弾ける音がした。
嫌な気配に恐る恐る振り向くと、少女が真里の障壁を何事も無かったかのように打ち破って立ち上がるトコロだ。
ヨロけてはいるが、まだ幾らかのあどけなさが残る顔には狂笑が浮かぶ。
「・・・作戦変更、ししょーとオイラはアレの相手。残りは操ってる張本人叩け。以上、散れ」
「「「「了解」」」」
5人が跳び散ったコンマ数秒遅れで、少女の右手が5人のいた位置に突き刺さる。
不機嫌そうに引き抜いた手首は、ありえない角度をつけて曲がっていた。
だがそれも、少女が左手を添えてゴキン、と音がしたかと思えばもう元通りに矯正されている。
人外の膂力と人狼並の再生力。
その2つが、少女が起源に目覚めて手に入れた能力の一部らしかった。
- 732 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:32
- 「さて、どーすっかね〜。ありゃヴァンパイア所の怪力じゃないぞぃ」
「喰らったら漏れなくgood bye life♪な感じですね〜」
暢気な会話をしながらこの場に残った真里と亜弥に、所々朱に染まった少女が恐ろしい速度で跳び掛かる。
だが同時に、それさえも凌駕するスピードで、2人の身体が左右対称に回転した。
少女に向かって右に立つ真里は右回転、左隣の亜弥は左回転で軸足と体幹を捻り
180°程回ったあたりで膝を胸に引き付け、回転の勢いに乗せて空中の少女の腹部に靴底を捻じ込む。
無遠慮な後ろ蹴りで強化ゴムを肋骨にめり込められた少女はボキボキ、という小気味良い音を間近で聞きながら、
血反吐を吐いて派手に8メートルは蹴り飛ばされた。
少女の吐いた鮮血が朱色の波となって中空に放物線を描く。
強かに背中を打ち付け脊髄に通常なら危険な衝撃を受けたというのに、
少女はヨロヨロとではあるが、口に引かれたルージュをより色濃くして立ち上がった。
そんな少女の様子にも、即席のコンビプレーを見せた2人はまるで戸惑わない。
それがおそらく、先程少女に喰い殺された男との格の違いというモノなのだろう。
- 733 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:33
-
「ま、当たんなきゃ問題ねーべ。でもあの回復力はおいしーよな」
「そーですねぇ。なんたって・・・。」
そこで2人は顔を見合わせ、邪悪、としか表現しようの無い笑みをニヤリ、と浮かべた。
少女の方に向き直り徒手空拳の構えを取りながら、言葉の続きを2人で紡ぐ。
「「全力でボコれる!!!!」」
少女の耳に、小気味良い音が旋律となって流れた。
- 734 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:34
- ――――――――
- 735 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:34
-
3人の接近にも、男はコレと言って動きを見せない。
ただ白衣のポケットに両手を突っ込み自然体で微笑を向けてくるのみだ。
「2人とも」
「はぃ?」
「何?あさ美ちゃん」
「わかってると思うけど、私を気遣って手加減なんかしちゃダメだよ?」
「「・・・了解」」
あさ美の言葉に、れいなと生体兵器・新垣里沙は顔を見合わせ頷いた。
フッ、とれいなの黒髪が純白に染まり、その瞳に紅い炎が宿る。
爪を尖らせ床を強く蹴り、男の身体を縦に薙いだ。
手ごたえの無さにハッとするより早く、男が身体を通過したれいなの腕を取り捻る。
合気の技術だろう、手首を捻り上げられたれいなの身体は宙を舞い硬質な床を砕きながら埋もれた。
肺の空気を咳と共に吐き出し一時的に呼吸困難に陥ったれいなの鳩尾目掛け、革靴が踏み下ろされる。
だが、男の足首に絡みつく里沙の黒髪がそれを阻み、男を中空へと投げ上げた。
空中でもんどりを打ちながら飛ぶ男の進行方向に現れる影。
肘を振り上げ待ち構えていた自身の娘の一撃を掌で受け止め、紺野浩志はあさ美の身体が下になるよう空中で器用に体勢を入れ替えた。
- 736 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:35
- 一面に広がる白。
この空間の特殊な造りのせいか床と中空との境界が把握できないが、跳んでからの感覚で大体の距離は判断できる。
跳躍の最高到達点から床までの距離は15m程。
両腕、両脚がホールドされていて力任せに振り解く程の猶予も無いし、
流石にスピードを得た2人分の体重を脳天で受け止めてなお戦闘の余力を残すのは際どい。
―――となればするべきコトは1つ。
ボキィッ。
真っ先に床と衝突するはずだった頭を守るように覆った前腕から響く破砕音。
感触から察するに右の手首は使い物にならないだろう。
脱力して上に被さる白衣の男と床の間から這い出て立ち上がり、自ら外した左肩の関節をはめ直す。
無理な体勢で外したせいで筋肉組織を幾分傷付けたらしく、こちらも暫くまともには動かせない。
それを外見から察してか、立ち上がった後輩が不安気に向けてくる視線を同じく視線で制し、あさ美は声を張り上げた。
「近くにいるんでしょう!姿を見せて下さい!!」
一瞬の静寂(離れた所からボカスカと雑音が届いてはいるが)の後、
何も無い空間からフッ、と床に伏す男と同じ顔が、白衣を着ている為か顔だけが浮かび上がったように現れる。
- 737 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:36
-
「おや、自信作だったのに君には通じなかったようだね?あさ美」
「皮肉にしか聞こえませんね。たかだかこの程度の電撃で機能を失う分身体なんて」
バチッ、と垂れ下がった左手に握られた機械から火花を上げ、あさ美は敵意を隠さず実父に双眸を向けた。
そんな視線を受け流すかのように肩を竦め、男はズれた眼鏡を直しながら分身を一瞥する。
「まぁ、培養したナノマシンで瞬間的に身体を透過可能な物質に変換するに過ぎないからね。
君を拘束した状態じゃそれもできないし、100万ボルトを超える電圧でそれだけの量の電流を流されればこの手のナノマシンでは機能不全にも陥るよ」
「ついでに操作不能じゃ話になりませんね。実用化なんてもっての他です」
「はは、手厳しいな。ただコストの面から見ても実用化はあり得ないから安心してくれ。
1体数千万じゃいくら【\】の資金力でも補いきれない」
「っ!!やはりあなたは・・・・。」
「あぁ、今はあの組織に身を置いているよ。というか気付いたら幹部にされてしまってねぇ。
抜けるに抜けられない。ま、抜ける気などまるで無いから問題は無いがね」
会話からホログラムなんて初めから嘘だ、などと読み取れないれいなと里沙は困惑の表情。
ただなんとなく目の前の相手が絶対に捕まえなければならない相手だということだけが漠然とわかった。
再び視線を交わらせ頷くと、隙だらけのターゲットに照準を合わせる。
「あさ美ちゃん、そーゆーことなら話は早い。とっ捕まえて色々吐いてもらいましょーか」
「・・・そーみたいだね。この場でぶち殺す予定だったけどしょーがない」
((うわ、黒っ・・・。))
- 738 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:37
-
そこで初めて、男は里沙の方に視線を向けた。
無機質な、何の感情も含まない瞳でマジマジと里沙の身体を観察している。
「ほぅ、本当にしっかり身体に定着したんだね。私の見解ではナノマシンの存在に脳細胞が耐えられず壊死する可能性も十分にあったんだが。
何せプロトタイプだからねぇ。パワーはともかく扱いは非常に難しい筈だが大丈夫なのかい?」
「あーもうぜんっぜん意味がわからない。何かあさ美ちゃんが色々頑張ってくれたんでね!もぅコレはそんな不良品とは違うんです・・・よ!!」
里沙の髪が伸び、男の身体を拘束するべく飛ばされていく。
だが、それが届くことは無かった。
- 739 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/24(火) 19:37
-
カチリ、と音がした。
見れば、男が手に握ったグリップの赤いスイッチを親指で押している。
ザクン、と音がした。
見れば、自分の腹部から銀色に閃く刃物が生え紅い液体を撒き散らしている。
ドサリ、と音がした。
見れば、男が横向きに立っている。
自分が床に倒れ伏しているだけだと気付く程の猶予も無く、新垣里沙は眠りにつく。
ただ、白い床に広がっていく紅い染みの温もりを感じながら。
数人の悲鳴に混じって、誰かの呟きを聞いた気がした。
『無力だね、人間・・・時間の蓄積というのは』
- 740 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(やっぱり続) 投稿日:2004/08/24(火) 19:38
- *****
- 741 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/24(火) 19:40
-
つーわけで更新終了でーす。
なんだかアレな展開ですが、まぁなんとかなる筈です。
ていうかなんとかならなきゃ繋がりが(ry
プロット作らなきゃやべーかなと真面目に悩み始めてる今日この頃。。。
いや脳内ではなんとかなってるんですが、
何せ他の小説読んでしょっちゅう影響受けて変更しちゃうんで作ってる時間が無駄に・・・。
無駄にせず他に生かすという手腕も無いのでこの有様です、ハイ。orz
こんな野郎ですがどーかこれからもよろしくどうぞデス。
- 742 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/24(火) 19:40
- >>715 我道 様
いやー深いんだか浅いんだか。。。
何か作者の思考みたいですな・・・。
深そうでいて実は短絡的なのかもっていう。orz
独白は脳内で全員分考えてる彼女達の過去、ってヤツですね。
はい、あくまで脳内で。
>>716 名無飼育さん 様
瞬間的に誤魔化しましたね、彼女。
流石に本当の理由を口にするのは乙女のプライドが許さなかった模様です。
全焼と言うか文字通り全滅というか。。。
怒らせたら人生振り返る余裕もありませんね・・・。(ガクブル
>>717 聖なる竜騎士 様
漠然とした感覚からどこか物質的に格上げした、、、筈ですw
田:たかが・・・?(メラメラ
あ、田中さんが燃えてる。。。
急いで避難してください。(汗
- 743 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/24(火) 19:41
- >>719 刹 様
あ、二人ゴト。。。お気の毒に・・・。
あなたの分まで自分が見ます!(マテ
れいなは、というかハロプロメンバーはつい、で町1つ消し飛ばしかねません。
特によしざーさん、藤本さんあたりは詠唱無しで強力な放出系を放ちますから、、、(怖
>>720 マコ 様
初レスありがとうございやすデス。
二人ゴト、昨日五輪のせいで潰れたのが気に入りません。
えぇ、ナショナリズムよりれなまきの方がウン百倍も大事ですw
これからもよろしくお願いしますデス♪
>>721 おって 様
えーっと、終盤に差し掛かってる筈ですが終わりが見えてない無計画な自分。。。
うまく、、、かどうかは保障できませんが何とかまとめてみますw
旅行、、、今年関東圏内出てないな自分・・・。orz
そのくせ更新も少ない。。。頑張ります。
でわまた一週間前後(適当)に。 ノシ
- 744 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/25(水) 02:46
- 更新お疲れ様です。
今回も格闘シーンが怖いっす!
ところで恐ろしいセリフを口にされましたけど・・・あややと矢口さんそんなキャラでしたか?
続きが気になってしょうがないです。頑張ってください。
- 745 名前:おって 投稿日:2004/08/26(木) 13:23
- 更新乙です。
真面目なシーンの台詞回し、難しいですよね。某完結作品FLASH見て思いました。
最後の台詞なんかきました。勉強させてもらってますw
- 746 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/08/27(金) 16:01
- 更新お疲れ様です。
矢口さん・松浦さんは、いくら回復力があるからって一般人をボコボコにするなんて人間として
どうかと思いますが、それはさて置き、紺パパはすごいですね。黒紺ちゃんが誕生した理由が
良く分かりました。
ガキちゃんも何か酷い事になってますが、頑張ってくれ!、としか言えません。
頑張ってね!西田亮子!(え〜〜、そっちか!?)
と、とにかく更新期待してます。
- 747 名前:我道 投稿日:2004/08/28(土) 20:57
- 更新お疲れ様です。
い、いやいや・・・凹ってはいけませんよ(((( ;゚Д゚))))
うっすらと、黒いヒトが増えてきたような…元々、でしたっけ?(←失礼
それでは、大長編を期待しつつ、次回からもじっくり、しっかり読ませていただきますw
- 748 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:51
-
―――――厭な、臭い。
何か、不快な臭いが充満してる。
あさ美ちゃんの顔はサッカーボール大の塊に邪魔されて見えないけど、なんとなくワタシの脇にいる男の人を睨んでるのがわかった。
塊には銀色で長いモノが刺さっていて、それを辿ってみたら自分の腕に行き着いた。
ワタシの腕が、手首の辺りから銀色に変色してその塊まで伸びてるらしい。
逆向きに銀色を辿ると、その途中で床に倒れている人が2人、目に入った。
折り重なって倒れてる2人は顔が見えないけど、真っ赤な水溜りの上に浮かんでる。
ふと、その服装に見覚えがある気がした。
なんだろ、それに気付いた時、熱いのが胸の辺りをグルグルして寒いのが背筋をゾゾゾ、となぞった。
普通に右腕を動かす感覚で、銀色を手繰り寄せてみる。
塊が近付いて来て、だんだんその形がハッキリわかるようになった。
遠くであさ美ちゃんが何か言ってる気がするけど、あさ美ちゃん声小さいし離れすぎててわかんないよ。
なんとなく、目の前にある塊は正面を向いてない気がして、くるっと銀色を捻ってこっちを向かせた。
口を開けてでろりと舌を出す白目のその人は醜く過ぎて、全然誰だかわからない。
けど、ぼんやりと全体を眺めたら、それがよく見知った人のモノだと気付いてしまった。
同時に、目の前の顔が口を動かしたように見えた。
『バケモノ』
瞬間、ワタシは銀を蠢かせて目の前の顔を八つ裂きにした。
ザザン、という音。
視界が真っ赤に染まる。
- 749 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:51
- ―――――紅い。真っ赤だ。温かい。ドロドロしてる。鉄の味。鉄の臭い。死んでる。殺した。誰が?ワタシが?誰を?
ママを。パパを。看護婦さんを。お医者さんを。ワタシが、殺した。バケモノガ、コロシタ。
遠くで誰かが悲鳴を上げてる。
それが自分のだと気付くまで、数時間はあった気がする。
なんかわからないけど、目の前が紅くて、暗くて、臭くて、寒くて、熱くて、憎くて、不快で、
ワタシはただただ暴れ回った。
ドサッ、という音で視界が戻った。
目の前に、あさ美ちゃんが転がってる。
白衣が白衣と呼べないくらいに紅く染まって、苦しげな息を吐き出しながら、あさ美ちゃんが転がってる。
やめてよ。
そんな目で、ワタシを見ないでよ。
―――――あさ美ちゃん。友達。頭の良い子。命の恩人。助けてくれた。手術をして。手術?
あさ美ちゃんなの?ワタシをこんなにしたの。なんで。どうして。そんな目で見ないでよ。
ワタシハナニ。ドウシタノ。ジコニアッテ。ズットネムッテテ。オキタラ――――バケモノ。
- 750 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:51
- 銀色を、振り上げる。
あさ美ちゃんはまだこっちを見てる。
やめてったら。
そんな目で。
そんな、感情の無い目で。
そんな、物をみるような眼で。
ワタシを、見るな。
耳元で、誰かが囁く。
『無力だね、人間・・・時間の蓄積というのは』
ワタシハ、ヤイバヲ、アサミチャンノ、シンゾウニ、ツキタテタ。
- 751 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:52
- *****
- 752 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:53
-
――――夢?
ヘンな夢。
でも、どんな夢だっけ?
思い出せないや。
あれ、ヘンだな。
起きれない。
真っ暗だし。
まだ身体が起きてないのかな?
でも指先は動く。
そういえば何か温かい。
けど寒いなぁ・・・。
なんか抜けてく感じがする。
もしかしてワタシ、死ぬのかな。
なんか眠いし。
でも、別にいいかな。
思い出せないけど、死んでも仕方ないようなコトしちゃった気するし・・・。
このまま、静かに――――――――。
- 753 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:54
- ―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――
―
- 754 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:55
- ぞぶり、と厭な音を立てて、でっかなメスみたいな刃物が新垣さんから引き抜かれた。
途端に彼女は糸の切れた操り人形みたいにドサッ、と崩れ落ちる。
新垣さんのお腹の辺りを中心にして、真っ赤な水溜りが音も無く拡がり白い床を浸蝕していく。
胸の辺りに熱い何かが煮えたぎるのがわかった。
なんとかそれを抑え込むけど、身体中から湯気みたいに立ち昇る紅い光は抑え切れそうに無い。
だめだ、落ち着け。
ここで動いたら命取りになる。
ゆっくりと周囲の様子を探る。
紺野さんは拳を握り締めて身体を震わせてる。
矢口さんと松浦さんは各々の構えを取りながらも責任を感じてるんだろうか、唇を血が滲むくらい噛み締めてる。
新垣さんは・・・ダメだ、完全に意識を失ってて自力じゃどうにもできそうにない。
血の海はもう新垣さんの伸ばされた黒髪が浮かぶくらいに拡がってる。
さらに彼女の首にあてがわれる鋭い刃物。
刃物を辿れば、昼間のソレとは似ても似つかない歪んだ笑顔の西田さん。
目の前に佇む白衣の男が眼鏡を直しながらこちらの様子を探ってニヤリと笑った。
- 755 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:55
- 「ほぅ、それなりの状況判断の力はあるみたいだね。でも念の為言っておくよ、動いたら彼女の命は亡いからそのつもりで。
っと言ってもあと何分保つか・・・まぁそう長くはないだろうね」
「っ、目的は、何です?」
「あさ美には以前にも訊いたがどうだろう、無力だと思わないか?人間・・・時間の蓄積というものは」
紺野さんの問いを茶化すような口調で、あたし達3人に紺野浩志が問い掛けてくる。
焦らせてそれを面白がっているんだとわかってはいても、イライラせずにはいられない。
新垣さんの命がかかってるんだ。
「言ってる意味がよくわかりませんけど・・・?」
「私はね松浦君、科学者という人種であるせいか物事に関心はともかく感想を持つことが苦手なんだ。
いや、もしくはそういう性格であるからこそ父がソレだったという境遇があるだけで科学者なぞ続けているのかも知れないがね。
そんな私でも時には現象に感想、つまりは感情を抱くことがある。それは憐憫だ。
10年、20年、人間の一生から見れば相応の長さを秘めた時間の蓄積により積み上げられたモノも、
実に些細な、瑣末としか取りようの無い現象にあっけなく覆される。
一時的感情の暴走、小さな意見の行き違い、ちょっとした油断、偶然などがその現象だ。
壊れされるのは築き上げてきた家庭だったり、人の命だったりする。
何の重みも秘めないモノに、蓄積された時間の重みは容易く淘汰されてしまうわけだ。
そこに私は、珍しく感情というものを感じてしまう。
実に儚く、無力で、遣る瀬無く、だが美しい」
- 756 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:56
-
芝居がかったわざとらしい科白の筈なのに、その声はすごく重く、深い所にまで侵蝕して来る。
そう、あいつの言う通り、何かが壊される瞬間というのはそれがそこに至るまでの時間に対してあまりに短い。
お父さんの38年も、お母さんの36年も、そんなに短かったわけじゃない。
けど、その時間の蓄積はあの一晩であっけなく崩れ去ったんだ。
本当に儚くて、無力で、遣る瀬無くて、けど・・・。
「美しくなんか、ない・・・。」
あの夜見た2人の姿は、決して美しくなんてなかった。
溢れる血、充満する不快な臭い、均整の崩れた顔・・・。
それに、そうだ、昼間薫に見せられた樋野翔子の遺体写真。
蓄積した時間の崩壊・・・「死」はむしろ、醜いものだ。
- 757 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:56
-
「うん?いや、これは私の勝手な意見だから絶対的というわけではない。どう感じるかは人それぞれだよ」
「で、それが今なんだって言うんだよ?オイラたちとしては早いトコアンタを捕まえて仲間の手当てをしたいんだけど」
「あぁ、そうだったね。つまりそれが今回の私の研究テーマなのだよ」
「研究テーマ?」
「『蓄積した時間の崩壊により具現化したエネルギーの保存』といったところかね。
人が死の瞬間、大量のSNTを放出してそれが霊魂となるのは知っているね?
私は過去の数々の事例から、人はSNT大量放出の影響で『起源の覚醒』に到ると考え
それに基づいた実験を行いデータを取り集計し、ナノマシンを脳内に侵入させ特殊な能力を覚醒させる方法に行き着いた。
だが、その程度の介入で覚醒した能力は弱い。
そこで、実際に一度「死」を視せた後でその精神を他の器に移す方法を考えたのだ。
そしてその研究の産物が、彼女だ」
言って、紺野浩志が西田さんを示す。
肩先まで伸びたセミロングの茶髪、昼間は少し気弱そうに見えた眼も、今は鋭く吊り上げられてる。
高めの身長から向けられてくる瞳には狂気が宿り、下弦の口元から覗く犬歯は気のせいだろうかさゆのソレと同等に鋭くなっているように見えた。
- 758 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:57
-
「ちなみに今のスイッチで彼女の身体に注入しておいた新垣君と同タイプのナノマシンを覚醒させた。
これで君らと戦ってもそれなりの勝負にはなると思うんだがどうだろう?」
「それは、望むところですね」
松浦さんの声は、今までの所とは違う場所から届いた。
ギン、という音と共に、新垣さんの首筋に突き付けられていた刃物が床に落ちる。
気取られない速さで移動した松浦さんが斬り落したんだ。
「では、パーティーの始まりだ」
一瞬、誰かが耳元で囁いた気がした。
- 759 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:57
- *****
- 760 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:58
-
「だーっ、くそ!!何やねんコイツらはぁ!?」
「うわっ、ナカザワさん、オチツいて下さいィ!!」
操られて謎の能力に目覚めてはいるが、あくまで一般人である学園の生徒に本気で攻撃しようとしている裕子をミカが制した。
そうやって2人にできた隙に乗じて、生徒たちが攻撃を仕掛けてくる。
炎、電撃、爪、投石、エネルギー弾、衝撃波・・・。
各々の攻撃を全力に近い勢いで際限無く繰り出して来るがそこは鍛えられた5人、その全てを捌き尚且つ生徒達は傷付けずに凌いでいた。
ところが、
「キリ無いわ!あいつらも何処にもおらんしこんなトコで油売ってる場合ちゃうやろ!?」
「せやからって一般人に手を出すのはどーでしょ?」
「動き封じるだけやから大丈夫ってゆーてるやろ?昔からそーゆーのは得意なんや」
「だ、ダメですヨ〜!一般人を傷付けるのは規約違反デス!!」
「えぇい離せこの石部金吉め!!!」
「わ、ワタシはそんな名前じゃありまセンよ〜!!」
・・・といった具合である。
現在地は高等部のグラウンド。
先程中を手分けして隈なく探したのだが、首謀者どころか此処を担当していた筈のメンツもいない。
とりあえず木の幹に縛りつけてきた男のリンチを決定し、外へ出てみたら制服集団に取り囲まれて今に至る。
騙された+真里にも会えなかったコトで不機嫌だった女王をさらにイライラさせるチマチマした攻防は
ミカが日本人でも普通知らない謎の蔑称に戸惑う引き金となってしまったらしい。
- 761 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:58
-
「ちょっと3人とも!喋ってないで手伝ってよ〜!!」
「私はどーも殺さずに相手するの苦手なんでぇ・・・。」
人間形態に戻り持ち前の反射神経で攻撃を巧みにかわし続けている希美と
一般人に容赦のない掌底を浴びせているアヤカが非難の声を上げる。
その声に反応し、渋々といった様子で亜衣とミカと共に裕子も戦線に復帰した。
魔消扇で炎を掻き消し、純水の壁で電撃を受け止め、鋼糸で鋭い爪を丸っこくカット、投石やエネルギー弾は光の矢で撃ち落し、衝撃波を衝撃波で相殺する。
斯様な作業をひたすら続け、5人は制服集団の身体を精一杯気遣っていた。
- 762 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:59
-
フッと一瞬、周囲に満ちていた木々の騒めきが止まった気がした。
その刹那、空気を伝う激烈な音の波。
波は物理的な衝撃を伴い5人の肌を撫ぜ、ビリビリとした感触と後方からの眩い光で彼女等の視線を集めた。
広がる光景に、5人はおろか制服集団の動きも止まる。
一方で、先程動きを止めた木々がその一瞬を取り戻すかのように騒めきを際立たせていた。
「なんやねん、アレ・・・。」
ポツリ、と裕子が漏らした呟きも、そのチカラの前に誰かの鼓膜を揺さぶる事無く残滓だけの存在になる。
その残滓すらもチカラの前には長く保つことなく、闇と光の混沌へと溶けて行った。
隣では、魔導士が原因不明の動悸に戸惑っている。
- 763 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 13:59
- *****
- 764 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:00
-
横薙ぎに振るわれた剣の刃を掌で受け止める。
当然ながら、手入れの行き届いた霊剣の鋭い刃はザシュ、と音を立てて皮膚に喰い込み鮮血を啜り出した。
その辺の霊剣ならば【心象具現化】で粉砕するコトも可能だが、対象が北欧神話の魔物の銘を宿した【フェンリル】では分が悪いにも程がある。
防御用に硬質化した氣で覆った筈の掌から溢れ出る血液がその証拠。
「ったく、何処でそんな厄介なモン見つけて来たわけ?ご丁寧に唯一コイツの霊氣を抑えておける魔法の紐ならぬ鞘【グレイブニル】とセットでさぁ」
「教える義務は無いわねぇ・・・。そっちこそ随分詳しいじゃない、どうして?」
「伊達に【\】の幹部はやってないって・・・。この仕事は色々な情報が入って来てけっこー楽しいんだよ・・・。」
ギリギリと膠着状態が続いているように斉藤瞳(人狼形態)と市井紗耶香、2人の首から上だけなら見える。
だが此処、小等部の体育館内には他にもバキドカズシ、といった音が響いていた。
原因は2人の足元を見れば一目瞭然。
段平の剣vs生身の掌という通常ありえない勝負をしつつ、2人はお互いローキックを間断なく放ち合っている。
しかも数●肇もびっくりなやたらと本格的なソレである。
静の上半身と動きっぱなしの下半身。
そこから漂うあまりの気迫に柴田あゆみと大谷雅恵は戦闘に介入することができないでいた。
- 765 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:01
-
「なんか、相変わらず色んな意味でスゴイね、2人・・・。」
「う〜ん、人狼と吸血鬼っていったらやっぱりなんか因縁みたいのあるのかもね」
訂正、あゆみはただ単に2人の戦いを面白がっているだけだ。
そんな彼女に一瞬の戦慄きを覚えつつ、雅恵は突然ぶっ倒れたちっちゃな先輩を思った。
今のアイツに任せておいて大丈夫だろうか・・・?、と。
『オイコラそこの2人!ぼけっと突っ立ってねぇで横槍入れろや!!この姉ちゃん見た目より何倍もバケモンなんだからよぉ』
「ひどいっ、いちーみたいな素直で可愛い乙女を捕まえてバケモンだなんてっ」
「「「『――――――。』」」」
「・・・って誰かツッコめよ!特にいちーをのせたナマクラ!!」
『誰がナマクラだこの変態ロリコン吸血鬼!!!』
「てめっ、誰が言った!?」
『田中っつー嬢ちゃんだよ。あんなイタイケな子を手篭めにするとは、てめぇ吸血種のプライド捨てやがったな!?
おいボス!こんな野郎(?)さっさと斬り刻んでコンクリ詰めの東京湾行き決定だ!!!』
「手篭めにはしてねぇっつの、ちょっと仕事のついでにからかっただけだろ!?」
「だーっ、もうアンタら五月蝿い!!人の耳元でギャーギャー喚くな!!!」
- 766 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:01
-
紹介が遅れたが、紗耶香と言い争ってる彼の名は【フェンリル】。
つまりは瞳が握っている、意思を持った霊剣だ。
ちなみにテレパシーの要領で人間に話しかけるコトができ、本人曰く精神は長年かけて精霊化した狼のモノだとか。
彼が話す度、刃に刻まれたルーン文字が青い明滅を繰り返す。
「rajia-ron-gra!!カード召喚、クトーニアン!!!」
「「『のぉっ!?』」」
今までブツブツ何事か唱えていたあゆみが叫んで手にしていたカードを投げると、それは体育館の床に刺さり
間も無くカードを中心として展開された魔法陣(半径10m)から十数本の触手が飛び出した。
巨大なそれはギャーギャー喚いている連中の下へ伸び、鞭のようにしなって味方諸共敵の吸血鬼を弾き飛ばす。
『てめこら召喚術士ぃ!敵と味方の区別もできねぇのか!?あとそこ、ヘタレガンマン!情けない姿で女の背後にコソコソ隠れてんじゃねぇよ!!』
「え〜、横槍入れろって言ったの自分じゃ〜ん。私コントロール下手だから我慢してよ」
「・・・命が惜しいんだよ。悪いかよ」
- 767 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:02
- と、騒ぎの止まない其処へ、ズズンという地響きが届く。
その衝撃に、3人と一振りが慌てて周囲に注意を巡らした。
「な、何よ今の音!?」
「あゆ、また何かした!?」
「違うよバカマサ」
『・・・っておい!あのロリ吸血鬼がいねぇぞ!?』
「だから誰がロリだっての!いちーは選り好みしないんだよ!!好きになったらソイツがタイプだ!!!」
『・・・見境が無いってことか。じゃなくててめぇ何飛んでやがる!?降りて来い、勝負せいやコラぁ!!』
「生憎いちーの仕事は終わったんで帰りますよ〜だ。これでも色々忙しいんだよ、じゃあな!!」
『あ、てめ、待ちやがれ!!』
ちょっぴりヤクザな剣の喚きもむなしく、真祖の吸血鬼は背中の翼で宙を舞い、屋根をぶち壊して月夜の闇へと消えて行った。
- 768 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:02
- ―――――――
- 769 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:05
-
安倍なつみは、保健室のベッドの上でかつて病弱だった頃の自分を思い出していた。
あの頃はなっちしょっちゅう貧血起こして倒れてたなぁ・・・。
その度にお姉ちゃんとか麻美に心配かけて怒られてたっけ。
そういえばあの子と最初に会ったのもあの頃だったんだよねぇ。
ホント、どうして・・・。
「・・・べさん、安倍さん、、、おいこらイモ!!」
「Σどぅぁれがイモだべか!?・・・ったぁ〜いよ、も〜。。。」
禁句に反応して勢い良く上半身を跳ね上げたなつみだが、走った激痛に顔を歪めてしおしおと頭を枕に戻してしまう。
そんななつみの様子に村田めぐみは溜息を吐き、両手を腰に当てて口を開いた。
ちなみに、眼鏡(暗視スコープ付きの特殊仕様)は先程の騒動で行方不明である。
「ったく、アンタは無茶をしすぎじゃ。とりあえず応急処置は済んだからワシも連中の方へ行くがここを動いてはいけませんぞ」
「あ、ぅん、ごめんねぇ。付き合わせちゃって・・・。」
- 770 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:05
- なつみが先程行った術は心身への負担が極端に重い。
どれくらい重いかと言えばスーパー●イヤ人3の1、5倍。
なつみは昨晩の任務でもそれを使い、満足に体力を回復させていない状態だった。
その上今日はいくつか十二神将を使いさらには真言省略での【六合】召喚、そんな状態であんなモノを使った為、戦闘途中でぶっ倒れてしまったわけだ。
「まぁ、こうゆう役職だから仕方あるまい。飯田さんに比べりゃいくらかマシだろーしのぅ」
「あー確かにねー・・・!?」
一瞬、部屋全体を伝った地鳴りと震動、そして遠くから響いた爆音。
事務机に置いていたコーヒーカップ(中身はほうじ茶)が数ミリ宙に浮いて音を立てた。
「な、何じゃ今の音は・・・?」
「中等部とか高等部の方からみたいだけど・・・って、うわ!アレ何!?」
「なっ!?ありゃ高等部か?一体何が・・・?」
ソレを見てトクン、と鼓動が高鳴ったのは、なつみ本人にも理由が判らなかった。
- 771 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:06
- *****
- 772 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:07
-
甲高い音と共に、2つの型の違う苦無がぶつかり合う。
その持ち主達の姿は既にそれを投鄭した時の位置には無く、両者宙を舞っている。
腕に青白い条線を纏った方の忍に、吹き荒ぶ冷気と景色の歪んだ空間が襲い掛かった。
狙われた忍は両手を組み合わせ瞬く間にその組み方を変え、展開した雷の障壁で攻撃を阻む。
そこに生じた一瞬の隙に乗じて、もう1人の忍が印を結んで敵の周辺を爆破した。
だが、着地直後に背後に現れた殺気と首筋に当たるヒヤリとした感触。
その刃物は吹き飛ばした筈の敵が所有する苦無と酷似している。
「生憎雷系の術は印無しで使えるのよ。さっきの印は影分身」
言いながらザッ、と容赦無く敵の頚動脈を掻っ斬る。
が、斬り裂いた筈の敵は斬った箇所から影に変貌して周囲の闇と同化してしまう。
「生憎爆破系の術は短い印で使えるねん。その続きのは影分身や。
ちなみにこのグラサンの暗視スコープは感度がけっこー良くてな、お前の印も丸見えやったで」
「エムシノキペコンル(剣のつらら)!!!」
「ちっ・・・!」
- 773 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:08
-
地中から突き出てきた氷の剣。
跳躍で移動した先に開いたワームホールから現れるかわした筈のソレ。
藤本美貴と吉澤ひとみの見事な連係プレーだ。
咄嗟に身を捩ったが、肩先を掠めたソレのお陰で地上に鮮血の雫が落ちる。
そこに畳み掛けるように襲い来る稲葉貴子による手裏剣の雨。
斬り裂かれた左肩を抑えながらも器用に身体を回転させてそれらをかわし、距離をとって敵3人を睨む。
あらかじめ人数を減らしておいたのは正解かもしれない。
ハロプロの力が自分の在籍していた頃より上がっているのも頷ける強さだ。
そんな一触即発の空気が流れる屋上に届く、光と爆音。
「うぇっ!?なんだなんだ!?」
「お、お前何しよった!?」
「別にアタシじゃないわよ。さて、それじゃそろそろアタシはお暇するわ。3対1じゃ分が悪いし、じゃあね」
そう言って福田明日香の身体の輪郭が揺らいで闇に溶け込む。
美貴が抱いているのと同じ種類の鼓動の高鳴りを感じながら。
- 774 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:08
- *****
- 775 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:09
-
無駄の無い動きで繰り出されるアーミーナイフを鉄甲で捌き、高橋愛は目の前の少年の水月に向けて鋭く前蹴りを放った。
だが、その前足底は空を切る。
少年、PK能力者・成瀬小太朗が得意のテレポーテーションで回避した為である。
小太朗の現れた先にすかさず飯田圭織による錬成でできた腕が襲うが、翳された掌から飛んだ衝撃波に破壊されてしまう。
背後から現れた狼の剥製と道重さゆみも、同様の攻撃で弾き飛ばされた。
「もー、本気でやってって言ってるでしょ〜?つまんないじゃんか」
「アンタみたいなガキに本気出せるわけないがし」
「だから子供扱いするなって言ってんだ・・・ろ!!」
小太朗が生み出した衝撃波は、溜息を吐きながら撃ち出された氣の塊と衝突して相殺する。
先程からこのような攻防が延々と続いている。
4人は彼を捕らえようとし(隙あらば大怪我くらい負わせても大丈夫だろうと思っている輩も2人ほど混じっているが)、
小太朗は折角手ごたえのありそうな相手がいるのに本気を出させないうちに殺すのを躊躇っている。
- 776 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:09
-
「もう、いっそのコト本気で殺しちゃいますか?」
「それくらいの気持ちで行ったらちょうど大怪我くらいで済むんじゃないですか?」
「コラ道重、亀井、アンタらには良心ってモンがないわけ?」
「「ないです」」
道重さゆみと亀井絵里、言っておくが2人は本気と書いてマジである。
ただ最初に敵の能力を知らずに夏休み中に開発した新技、【さゆえりスペシャル】で
放出系攻撃魔術をぶっ放し、体力が消費した為本領を発揮できていないだけだ。
粉々になったガラス張りの入り口から吹き込む夜風がその爪跡。
そんなこんなで膠着状態のこの場に、やっぱり響くあの爆音。
- 777 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/08/31(火) 14:10
- 「?何ですかねあの音」
「さぁ、高等部の方から・・・。」
「「「!?」」」
「ん?皆どうしたんや?」
「あ〜もう、時間になっちゃったじゃんかー・・・。ったく、じゃあね!!」
「あ、待ちねぇ!飯田さん、ちょっと何してんですか!?」
愛の呼びかけに、3人は反応しない。
比較的ソレに近い場所にいるせいか、影響が大きいらしい。
その間に小太朗の姿は掻き消えてしまう。
周囲には、愛の声と吹き込む風の音だけが響いていた。
- 778 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(ひゃつこく続) 投稿日:2004/08/31(火) 14:11
- *****
- 779 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/31(火) 14:12
-
更新終了。
何か今回書くのにすげー疲れた。。。
クトゥルフ神話やら北欧神話やら、まぁそのうち説明入れるかもしれんです。
え?クトゥルフ神話って確か・・・と思われた方もとりあえずそっとしといてやっておくんなまし。
気になる方はググれば簡単に出ると思うので。
じゃ、1つだけトリビア。
北欧神話の「ラグナロク」、最近某オンラインゲームで有名なこいつですが、よく「神々の黄昏」って訳されてます。
ですがこれは実はドイツ語に翻訳された時の間違いで、本来の意味は「世界を司る者の運命」だそうです。
まぁ大して意味変わんねーだろって意見もあるでしょうが、そこまで意味違ってたら流石に皆気付くのでその程度です。
ちなみにこれからこの手の話を広げていくつもりはないです、あしからず。
これから宿題をせなアカンので(コレカラ?)次回は一週間以上開くと思います。
- 780 名前:名も無き作者 投稿日:2004/08/31(火) 14:13
-
>>744 名無飼育さん 様
そんなキャラだったみたいです。
格闘シーン、怖いっすか?
良かった(?)ですw
続きは作者も気になってしょうがないので焦らず待ってて下さい。(マテコラ
>>745 おって 様
本当に、、、書くとおかしな空気に。。。
某完結作品FLASH、あれにはとどめを刺された感じですよw
べ、勉強とはまた、、、
悪い見本くらいにはなるかもしれんのでこれからもお願いします。
>>746 聖なる竜騎士 様
はい、人として間違ってます。(キッパリ
黒紺はアレ以前から存在したという噂もありますが真偽のほどは定かじゃないです。
西田亮子(?)は次回あたり頑張ってくれそうです。
あれ、頑張ってもらってはいかんのか?イイヤベツニ
>>747 我道 様
黒い人が増殖?
はは、そんなバカなコトがあるわけないじゃないですか。
ほら、黒くない人なんていっぱい・・・いっぱい・・・。
・・・マコ、イヤ、、、マサ?アレデジツハ・・・レイナ、モダメカ、ミカモキツイ。。。
・・・で、ではまた次回更新にて(汗) ノシ ←逃亡
- 781 名前:マコ 投稿日:2004/08/31(火) 22:40
- 来ましたねぇ
たしかに黒い人が増殖(やめろ)
引きずり込まれて・・・・ どきどきしながら読ませてもらってます。
ラグナロクですか? たしか エクスカリバーとか まさむねとか エンゲツリンとか(もういい。
とにかく 次もきたいしています それでは テレポ(オイ
- 782 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/09/02(木) 16:07
- お疲れ様です。
いやいや、乱闘がかなり激しく繰り広げられていますね。
市井さんといい、福田さんといい、成瀬といい、皆なんか消えちゃいましたね?
ま、どうでもいいか(いいのか?)
メンバー全員も、広いとはいえ学校で、まあ好き勝手暴れてますが、
ま、どうでもいいか(いや、良くは無いだろ)
ラグナロク・北欧神話?
ま、どうでもいいか(毎度毎度すいません)
それでは続きを期待します。
- 783 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/02(木) 17:03
- お知らせ。
ホームページを作ってみました。
中篇小説の連載などもあるので良かったらどうぞ。
http://www.hpmix.com/home/namonaki/index.htm
一応上げときます。
- 784 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/08(水) 19:23
- どうも、気付いたら週一更新の作者です。
えぇ、一週間経ったのですが実生活のリズムが急に変わったため
まだ更新できそうにないでつ。
一応土・日のどちらかでできれば、と思っていますがそれも微妙です。
もうちょい待ってやってつかぁさい。。。(平伏
↑の日記はサクサクと毎日書いてるので(今は一応)
自分の文章が読みたい方はそっちで、、、(←思い上がり
- 785 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:42
-
――――――これは、何だ?
目の前の、この光景は、何だ?
田中れいなは、応えの出ない自問を繰り返していた。
そうしていないと、自我が崩壊してしまうかのような錯覚を覚えていたのだ。
ばきぼき、ぐちゃ、にちゃ、ごくん・・・。
れいなの視線の先で厭な咀嚼音を立てながら蠢く浅黒い肉の塊。
蛇の魔物・バジリスクが頭部を思わせる巨大さと禍々しさを湛えたソレは、水色の寝装束を朱に染めた少女の腕から伸びている。
さらに、薄く開閉を繰り返して咀嚼と嚥下の音を発するソレの口から食み出た、人間の手首。
最初上腕辺りまで食み出ていたそれも、口しか持たない蛇の器用な咀嚼でやがては全て飲み込まれてしまった。
今一度、目の前で起きた光景を反芻してみる。
- 786 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:43
- 闘いの前にはエネルギーの補給がいる。
そのようなコトを呟いた紺野浩志が取り出した端末を弄ると同時、フッ、と出現した男の身体。
その顔には見覚えがあった。
UFAのスタッフだった。
何度か廊下で挨拶を交わした覚えがあった。
その、既に事切れている、腹部に風穴の開いた彼の身体が床に落ちるより早く、巨大な塊が彼の身体の在る空間をゴォッと風を切って通過した。
その塊に隠されて見えなくなった彼の身体は、ソレが退いても二度と視界に映ることは無く。
見えていた部分、彼の両脚、膝から下の部分だけが、当初の落下速度のまま床にゴロリと転がった。
ばきぼき、ぐちゃ、にちゃ、ごくん・・・。
不快な音と劣悪な臭い。
利き過ぎる五感に顔をしかめて、少女の頭上で蠢く大蛇を仰ぐ。
牙があるようには見えない。
ただ上顎と下顎の鋏み込む圧力だけで、皮も肉も骨も砕き、混ぜ込み、飲み込む。
ばきぼき、ぐちゃ、にちゃ、ごくん・・・。
見知った顔を、飲み込んでいく。
見知った顔が、飲み込んでいく。
見知った顔を、摂り込んでいく。
見知った顔が、摂り込んでいく。
- 787 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:43
-
――――――これは、何だ?
目の前の、この光景は、何だ?
ぽろり。
そんな音を立て、薄く開いた口から零れ落ちた、人差し指。
ぞぞぞ、と背筋を波立たせる、悪寒。
人間では、ない。
目の前のこの少女はもう、人間では、ありえない。
『その友人のご両親に頼まれちゃってね。なんとかして彼女を立ち直らせたいんだって』
そんな、クラスメイトの声が頭を反響する。
―――――無理だ。
- 788 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:44
-
彼女はもう、生きているのに死んでいる。
否、魂のみが死滅したのだ。
代わって、肉体のみが死滅した少女の魂がその肉体を支配している。
朽ちるは屍、滅するは魂。
その法則を無視して、屍は、生き続ける。
否、逝き続ける。
ただ、操られる凶器として。
ただ、玩ばれる道具として。
ただひたすらに、堕ちて行く。
―――堕つる、屍。
救う事等、できはしない。
- 789 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:45
- ―――――――――
- 790 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:45
- 「『何故こんな酷いコトを・・・?』、そういう表情をしているね」
「・・・あなたは本当に、正気、なんですか・・・?」
「もちろんだとも」
あさ美の苦しげな問いに、父は心外だとでも言いたげな表情で応えた。
それからまたあの芝居がかった動きで眉間に人差し指を当て、皺を寄せて目を閉じる。
「う〜ん、彼女に投与したナノマシン・『ティトノース』は新垣君のそれに比べて能力は格段に上なんだが、
何分威力が強すぎてね、肉体そのものへの負担が重過ぎるんだ。
彼女等のナノマシンは物質を素粒子の段階から再構築できるがその活動に要る基本的なエネルギーは移植者の摂取した栄養だろう?
まぁ栄養もナノマシンのチカラで生み出せはするが、それにも限界がある。
その限界が彼女の場合新垣君より短時間でやってきてしまう。
さらに脳のリミッターも外れて痛みを感じないのも災いして、そのままだと肉体がボロボロになってしまうんだ」
「それで、手っ取り早く栄養を搾取する方法として有効なのが『人間を食べる』という行為ですか。
なんだかヴァンパイアの再生について説明を受けている気分ですね」
「あのナノマシンによる再構築の仕組みは真祖のソレをモデルにしているのだから、まぁ当然と言えば当然だね」
- 791 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:46
- そこで会話を切り、敵意を剥き出す我が子を見つめる。
軽く膝を曲げて重心を落し、腕を顔の前に掲げて戦闘の体勢に入った。
動かない両腕は垂れ下がったままにあさ美も同様の構えを取り、白い空間に2人は対峙する。
力無き論理など、暴力の前には魔術も使えぬ一般人の詠唱と同じ。
今は亡き科学者の教えは、今もその息子と孫の肉体に受け継がれている。
2人の双眸に宿るのは、娘への愛でも父親への思いでも無い。
そこに感情という概念武装は存在せず、ただ無機質な、相手を観察するだけの、色の無い色のみがそれを彩る。
背後にあった喧騒も今は遠く。
無限とも思われるこの広い空間に、2人の衝突を止める者はもう誰もいない。
ばんっ、という音。
膝を狙って振り落した下段廻しは、上げられた脛にぶつかり初撃の失敗を告げた。
すぐさま脚を引き、右足の着地と同時に左脚を金的へと容赦なく振り上げる。
こちらは十字に交差した腕に留められ届かない。
さらに、敵はその蹴りの勢いに乗るかの如く飛び上がり、逆立ちの体勢でこちらの首を掴んで背後に降り立とうとした。
何の迷いも無く娘の頸部に致命的衝撃を与えようとする父親に、娘も何の躊躇もせず相手の縦回転を利用して床を強く蹴る。
バク宙の要領で、空中の男の身体に右脚を追いつける。
心臓を潰すつもりで放った蹴りは身を捩ってかわされたが、全身に走った痺れの為か男の握力が弱まりそこにかかる自身の体重を支えきれず他所へ飛ばされた。
- 792 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:47
-
神経が束になって集まっている鳩尾付近に軽くだが入ったらしい。
身体を捻ってなんとか着地はしたが、一瞬動きが止まる。
あさ美がその隙を見逃す筈も無く、容赦の無い膝蹴りが後頭部に狙いを定めて打ち出された。
ほとんど全体重を乗せたソレは、かつての頃とは比べ物にならない速度で、首を回転させその勢いに乗るようにして威力を殺しても、
纏った氣の質量に乗じて側頭部を切り裂いていく。
カシャン、とフレームのひしゃげた眼鏡が床に落ち、吹き出た鮮血にレンズを彩られる。
一瞬ぼやけた視界を気にも留めず、目の前にある膝の裏側に腕を回して引き倒す。
受身をとれず走った痛みにしかめられたあさ美の顔に、続けざま正拳を打ち落した。
あさ美は首を動かして拳をかわし、地面にめり込んで動きの止まった腕に脚を絡め、急速に圧迫する。
ビキッ、と空気ではなく脚を伝って鼓膜に硬質な音が響き、手ごたえが対象の破壊を告げていた。
支えを失って倒れ込む父の身体。
その体重を利用して膝を突き刺そうとした瞬間、わき腹に走った鋭い痛みと先程聞いたのによく似た音。
喉の辺りを熱いものがこみ上げてくる。
- 793 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:48
- 「げふっ!?」
咳と共に口から漏れる、紅い霧。
口内に拡がる鉄の味と匂いに、振り下ろした肘を戻して立ち上がったこの男と自分の位置関係。
薄れ逝く意識の中、あさ美の脳裏に、いつかの映像が妙に克明に現れた。
男が懐に手を伸ばす。
取り出された黒光りする金属は、男と同じ無機質な空気を醸している。
スッ、と流麗な動作で、カチャリ、銃口が眉間に合わせられた。
ドンッ、と音と光を発して、回転により安定を得た鉛の飛礫は、殺意を持った。
- 794 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:48
- ――――――――
- 795 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:50
-
ギィン、ガキィ、キンッ・・・!!
甲高い金属音を響かせ、亜弥は急行電車の突進にも匹敵する少女の腕の猛攻を捌いていた。
ソレは時折口を大きく開いて亜弥の身体を丸ごと飲み込もうと試みているが、
その度に風を纏った刃に上顎を裁断されて失敗し続けている。
少女が変貌した右腕を突き出し、亜弥がソレを捌いて時折に裁く。
そんな攻防を悔しげな表情で遠巻きに見つめるれいなの腕の中には、血に濡れた里沙の身体があった。
常備している器具による応急手当と本人の持ち前の再生力のおかげで幸いにも出血は止まっているが、それ以前に流し過ぎている。
すぐにでも此処を出てまともな治療を受けないと取り返しのつかない事になるだろう。
それはもちろん十分承知の上で、真里が出口になりそうな箇所を捜しているのだが、一向に見つからない。
通常この手の空間術には最低でも媒介となる空間の綻びとでも言うべき脆い箇所がある筈なのに、それが全く見当たらないのだ。
れいなも手伝えればいいが、彼女にそんなスキルは無い。
戦闘に参加しようにも基本的に単独任務の多い亜弥とではかえって足を引っ張る結果に繋がりかねない。
第一此処を離れて里沙が狙われたらそれこそ一大事な上、何より先程の映像が網膜に焼き付いてしまい精神的にもまだ幼い彼女は限界が近かった。
- 796 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:50
- 「ダーク・クロウ!!(黒狼刃)」
一際強く不自然に硬いソレを横に薙いだ後、返す刃で空を屠った魔剣・グラジオラスの切っ先から生み出された黒刃の雨。
避けようともせずその全てを身体に受け右腕を肩から斬り落とされようと、身体中から紅い飛沫が噴き出そうと、少女は痛がるそぶり1つ見せない。
それどころかほとんど間を置かずしてみるみる傷は塞がり、血液までもが傷口から体内へと戻っていく。
斬り落されて床をのた打ち回っていた右腕の怪物でさえ、肩口からびるびると伸びた筋繊維に絡め取られ元通りに結合し再び暴れまわってしまう。
それはまるでテープの巻き戻しを見ているかのよう。
心臓に銀の杭を突き刺されようと、眉間に剣を突き立て脳を破壊しようと、
ナノマシンが1つでも残っていれば十数秒で蘇りそうな程の再生スピード。
何度地獄に堕としても、何度その存在を破壊しても、幾度でも、逝く度に彼女は甦生する。
その度に、彼女はどれだけの「死」を視れば気が済むのか。
一体何度消滅を経験すれば気が済むのか。
ナノマシンが同時に全機能を停止し肉体が自然な消滅のサイクルに復帰するまで。
あるいは、彼女という器に入った彼女の魂が納得するまで。
彼女、いや彼女達の口元には狂悦した笑み。
だが目元には、残忍な、全てを憎悪する色が張り付いている。
- 797 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:51
- 器を支配するのが魂なのか、魂を支配するのが器なのか。
どちらにせよ如何なる理由があって、彼女達は自己の終末を拒むのか。
決してこのように明確に整った言語として意識したわけではないけれども、
限界に差し迫った意識の中で、田中れいなはぼんやりと、そんな事を想っていた。
「・・・か、・・・なか・・・おい!田中ぁ!!」
耳元で暴れる焦ったような音波に、れいなはハッ、と顔を上げた。
少し心配そうな色を浮かべた先輩が低い目線をさらに低くしてこちらを覗き込んでいるのが映った。
「あ、す、すいません矢口さん。。。飛んでましたよね、あたし・・・?」
「んーまぁ、アレ見た後じゃしょうがないけど・・・。」
「そ、それでどうでした?見つかりましたか?媒介」
「うんまぁ、いや、あー、、、一応見つかったは見つかったんだけど・・・。」
「・・・けど?」
問われて真里は一瞬目を伏せた。
背後を振り返って亜弥が剣を振りながらもこちらに聞き耳を立てている事をチラッと交わした視線で確認し、
濁した言葉の続きを紡いだ。
- 798 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:52
- 「どうやらこの無限亜空間、相当高度な術と大方あのオッサンの発明品とやらで成ってるらしくてね。
その、術の媒介になってるのが、あの子、なんだよね・・・。」
「え・・・?それって・・・。」
一瞬、真里が何故その事実を伝えるのにためらったのか思考がついていけなかった。
だが訓練所で受けた、こういった状況への対処法に関する講義での教官の言葉を思い出し、すぐにその答えが出た。
擬似的な、本来の空間と独立した亜空間を作り出し、それを一定時間以上安定させるには、
元々素質の無いものには難しい空間術のさらに超高度な領域に踏み込み得る技量と知識、不安定な空間の均衡を保つ為の媒介が要る。
この媒介は術者のレベルによって数、大きさ、形式などは異なってくるが、
通常の場合それが1つでも崩されれば亜空間は均衡を保てず、崩壊を迎える。
つまりは・・・、
「つまり、あの子を完全に消滅させない限りはこっから出らんないってコト。
多分術者は他にいる筈だから、あのオッサン再起不能にしても無駄だろうね。
この空間の時間軸がどれくらいずれてるか、あるいはずらされてるかも判んないし、試してる余裕も無いでしょ」
「で、でもどうやって!?さっき松浦さんが上半身消し飛ばしてもすぐ再生しちゃったんですよ!?」
「うー、それが問題だったりするんだよねー・・・。
あとは裕ちゃんたちの内誰かが高等部に来てくれれば外側から助けてもらえる筈だけど」
媒介は亜空間の内側と外側、両方に作る必要がある。
どちらを破壊した場合でもこの手の術は崩壊する。
- 799 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:52
- 「で、でもそれじゃ時間軸次第でいつになるか判らないし、、、第一彼女は普通の女子高生なんですよ!?」
「いやだから困ってるわけで・・・。まつーらぁ!!何か方法無いの!?」
「そんな、こと、言われ、ても、この子、霊力、への、耐性、も、できてる、みたい、で!!」
「ま、松浦さんに無理ならあたしたちじゃ・・・あ!」
はたと、気がついた。
1つだけ、れいなにしか使えない方法がある。
「え、何?なんか方法あるの!?」
「い、いや、、、あるにはありますけどその・・・。」
「何だよ!あるならそれに賭けるしかないだろ!?」
「う゛、でもまだ未完成で確実に成功する保障は無いですし、それを使うと・・・。」
「だから何だよ!?もしかしていつかつんく♂さんに教わってたアレか!?危険なんだろうけど今は他に方法・・・が・・・。」
思わず焦りが手伝って感情的に問い詰めようとして、目を伏せたれいなの考えている事がなんだかわかった。
そうだ、この後輩はまだ人を殺めた経験など無い。
仕事の特性上その時が来るのを覚悟してはいただろうが、両親の死を直視した事もある彼女にそれは重過ぎる行為。
さらに彼女につんく♂が教えていた術というのは相当危険なモノと聞いている。
こんな迷いのある状態で使わせるのは戦略的にも取るべき手段ではないかもしれない。
「いや、他の方法探そう」
「い、いえ!!あたしの事なら・・・。」
「バーカ。んな危なっかしい術お前みたいな半人前に使わせられるかっての。巻き込まれたら堪んないよ」
「や、矢口さん・・・。」
- 800 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:53
- ――――――10分後――――――
- 801 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:53
- 「だぁ!!くそ!!!何か無いのかよ・・・!?」
結局他に方法は見つからない。
頼みの綱のあさ美も紺野浩志と姿を消したきり戻ってこない。
辺りには、変わらず亜弥の剣が起こす甲高い金属音が響き続けていた。
「くそっ、もう裕ちゃんたちの応援待つしか・・・。」
「それは無駄ね」
「!! はぁ!?おま、何で此処に・・・!?」
唐突に増えた人の気配。
無遠慮に声を発したその人物に、れいなと真里の視線、それに亜弥の注意が向けられた。
白い背景を背に立つその影は女性。
豊満なバストに、それを強調するかのような黒のタンクトップ。
そこから伸びる腕は、女性特有のしなやかさを持ってはいるものの、
それでもやはり真里たちとは比較にならない逞しい筋肉がついている。
- 802 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/13(月) 22:54
- 「うぃーす、やぐっさん、久し振り〜。れ・・・いや田中ちゃんは初めましてだよね?」
「え?あ、はい、どうも」
「っ・・・まぁいいや。どういう意味だよ、無駄って?」
「どういうって、言ったまんまだよ。此処で待ってても出しちゃもらえないって言ってんの」
女はしれっ、と言う。
両手を上に向けて肩をすくめる仕草で、女性離れした僧帽筋が隆々と露になっている。
「だからそれがどういう・・・。」
「何か随分凝った造り方してるみたいでね。外に媒介が見当たんないの。で、それを教える為にわざわざアタシが来てあげたの、OK?」
「なっ!?マジかよ!?それじゃ・・・。」
「そ、万策尽きたってコトだね。たった一つの可能性を残して」
言って、女はからかうような視線をれいなに飛ばした。
そこに以前感じたコトがあるような威圧感を感じ、れいなは一歩後退った。
「アンタがアイツを殺るしか無いってコトだよ?田中れいな」
女の名は、ソニンと言った。
- 803 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(わかってるだろうが続) 投稿日:2004/09/13(月) 22:54
- *****
- 804 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(わかってるだろうが続) 投稿日:2004/09/13(月) 22:55
-
何だろう、今ひとつ盛り上がりと纏まりに欠ける気が・・・。
まぁとりあえず更新終了デス。
何かお待たせしといてアレな感じでスンマセン。。。
最近ちょっといっぱいいっぱいなんです、、、
今回は一応ネタバレにご注意下さいね。
あと何かに気がついても言っちゃダメ。
どうしても言いたい方はホムペのメルアドから送って下されば、答えません。w(ぉ
厚かましいお願いですがお願いします。(平伏
- 805 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/13(月) 22:56
- >> 781 マコ 様
えぇ、何か来てまーしゅ。(マキエル
Tウィルス並の速度で増殖中ですよ〜w(怖
引きずり込まれて・・・、いや、ダメ!戻れなくなるYO!!
ラグナロク=某オンラインゲーム、自分の周りにやってる連中が多々いますw
テレポ・・・え、PK能力者?(マテ
>> 782 聖なる竜騎士 様
そりゃもう相当に激しく。
某チームに到っては学校半か(ry
さらにみんな消えちゃいましたがまぁ、どうでもいいです。(イクナイ
ラグナロク・北欧神話、激しくどうでもいいですねw(ぇ
期待するのは個人の自由です。(ヲイ
でわでわホムペ共々皆様これからもよろしくお願いします。(土下座っ
次回は・・・未定。(ヤッパリ
( ` Д ´)=○)Д゜)グハッ<気合だぁー!!!(なんか遅
- 806 名前:マコ 投稿日:2004/09/14(火) 18:22
- うおっ 死んだ(マテ
ものすごく こう言うものが好きなんですけど どうしましょう。
さらに増殖してるんですが しかも早いっ。
この状態で○ プロテス ○ヘイストかけたら どうなるかな?
- 807 名前:我道 投稿日:2004/09/14(火) 23:10
- 更新お疲れ様です。
こちらにも失礼します。
うん、血塗れ事モノスゴク好きです(爆&危
ついには彼女まで登場して、盛り上がってきたなと言う感じです。
堕つる屍、終わりが近いそうでちょっと残念な反面、
どうなるんだろうと言う期待も膨らんできているのは事実ですw
それでは次回更新まで腹筋をして待つことにします。
ホームページのほうも頑張ってください。
- 808 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/09/16(木) 14:42
- 更新お疲れ様です。
お〜〜〜、血で血を洗う戦闘戦になってきましたね。
紺ちゃんピンチ!れいなピンチ!ついでに矢口さんも松浦さんもピンチ!
西田亮子、成瀬小太郎、こう言う怪物キャラ大好きです。
この2人のこれからの活躍を願いつつ、次回の更新をお待ちしております。
(そうそう、忘れてました。愛ちゃん、18歳の誕生日おめでとうございます。)
- 809 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:42
-
苦しい。
息が、できない。
ドロドロとした熱いモノが喉に溜まって、肺が酸素を取り入れるのを阻害してる。
私の身体は咳でその赤黒い粘液を排出しようとするけど、私の体勢が仰向けになっているせいで、
こんこんと湧き出てくる鉄の味は一向に取り除かれる気配が無い。
体勢を変えようと身を捩ろうとしても、右の脇腹に走る鋭い激痛がそれを赦してはくれない。
何か、無機質な音が聞こえた気がした。
霞む目をよく凝らして少し上を仰ぐと、重そうな黒い光を放つ筒があるのがわかった。
時間の感覚が麻痺してるんだろうか、妙にのんびりとした動作で私の眉間に照準を合わせたソレは私の記憶を引き出し、既視感を抱かせる。
黒い鉄を構えたお父さんの姿と、銀の刃を携えたあなた・・・新垣里沙の姿がオーバーラップして見え始める。
お父さんがオートマチックの撃鉄を起こすと、記憶の中の彼女は刃を掲げる。
その瞳に渦巻くのは、怒り・悲しみ・不安、そして憎悪。
そうだよ、ね・・・。
私のせいだもんね?
・・・こんな時にまで、無機質にあなたを見つめてるような私。
殺されても、仕方ない。
引き金が絞られる。
同時に、あなたの刃が、私の、心臓を、ツラヌイタ。
- 810 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:43
-
- 811 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:43
- キィィィィィン―――――!!!
甲高い、金属同士の衝突音。
その凛と研ぎ澄まされた音色と、現れた精漣のような静かな殺気に、私の意識は急速に色を取り戻し始める。
全身を波立たせるのは裂帛した殺気の筈なのに、何処か私に包まれるような安心感をもたらしていた。
過去と現実の光景が一致して見える不思議。
眼前で銃弾を、刃を受け止めたのは、淡く輝く鋼の刀。
刀を辿ってその持ち主に視線を這わす。
スッと鼻筋の通った綺麗な顔に、独特の深みを秘めた漆黒の瞳。
纏った黒い装束は、白い世界にその存在を誇示してる。
「後藤、さん・・・?」
「『話は後だよ』」
過去と現在、重なった声に違和感を覚えた私を尻目に、その人の姿が掻き消える。
ギン、と音がして、振るわれた日本刀をあの人が懐から取り出したナイフで受けた。
左右から間断無く迫る刃を何度かその身に浴びながらもなんとか凌ぎ、あの人が背後に跳んで距離を取る。
「くっ、流石に『神を無に帰す』一族の人間が相手では分が悪いね・・・。ここは退かせてもらうとするよ」
「あー、まぁそうしてくれるとありがたいけど。俺も痛い思いすんのヤダし」
「? そうか、では遠慮なく行かせてもらうが。君達も無事に出れると良いね、健闘を祈る」
「は・・・?」
- 812 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:44
- 驚くほどあっけなく姿を消したあの人を見送り腑抜けた声を上げたその人の顔をもう一度よく見ようとして、起こしかけた上半身。
途端に激痛が走って元の体勢に戻り、また喉に溜まった粘液を排出する為に身体が苦しげな咳を吐き始める。
「げっ、大丈夫?」
「ゲホッ、ゴホッ、すいませ・・・、う、うつ伏せに・・・、ゲホッ」
「え?こ、こう・・・?」
過去の映像に現れたあの人の声より明らかに低い声でオロオロしながらも、
その人は痛みが少ないようそっと私の身体をうつ伏せの体勢にしてくれた。
途端、白い床がごぼっ、と吐き出された朱色に汚れる。
振動で脇腹が酷く痛むけど、呼吸は幾分楽になった。
「ハァ・・・ハァ、あ、ありがとう、ございます・・・。ケホッ、あの、あなたは、もしかして・・・?」
両手を床についた姿勢のまま、あの人・後藤真希によく似た顔をしたその人に問いかけてみる。
以前目にした手配書の記憶が正しければ、この人は後藤さんの・・・。
「え?あ、俺?あーっ、とまぁ知ってるかもしれないけど、後藤真希の弟で、ユウキって言うんだ」
私が憧れたのとよく似たその笑みは、何処か私を優しく包み込んでくれる温かさがあった。
その温もりに包まれて、限界を迎えた私の意識は遠のいた。
- 813 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:45
- *****
- 814 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:45
-
人を殺した後、自分は自分のままでいられるのだろうか。
動きを封じられた敵を前に、田中れいなの胸中にはそんな不安が渦巻いていた。
ソレの足元に展開した魔法陣。
亜弥の剣によって刻まれ、真里がチカラを注いでその威力を強化した戒めの鎖は、ソレの抵抗を寄せ付け無い頑強さを湛えていた。
後は、自分があのチカラを放出すれば終わる。
きっとソレは跡形も無く消し飛び、二度と再生するコトなど叶わない筈だ。
そう、「ソレ」。
もう彼女は人という種族では無い。
そこから逸脱し、人を喰らう忌まわしき種族へと変貌したのだ。
野放しにすれば確実に甚大な被害を生むソレを手にかけた所で、責める者などいないだろう。
それでも、かつてソレが2人の少女だったという事実が、れいなの心に迷いを生んでいた。
先程真里にあぁ言ったが、実際成功の確率はそれなりに高かった。
今日はそれほど疲労したわけでも無いし、使えば確実にいける自信はあった。
だからこそ避けたかった。
こういう事態に陥るのを。
「ホラ、さっさとしないとこのコ死んじゃうよ?」
背後から無神経とも取れるソニンの声が響いた。
だがそうだ、ここで自分が逃げたら里沙は死んでしまう。
彼女と過ごした時間を思い浮かべ、れいなは静かに瞼を閉じた。
- 815 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:46
- ――――――――
- 816 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:47
-
―――ドクンッ・・・!
その【門】の戒めを1つ解く度、聞こえてくる鼓動は一段大きくなる。
あたしとは別の生命の鼓動。
【門】の中に閉じ込められたソイツは、宿主であるあたしにすら絶望的な恐怖を与えてくる。
【門】に施された戒めの鎖は、外しにくいモノほど長い。
左右の【門】の取っ手を繋ぐように渡された鎖。
一番外しやすいソレは一番短くて、【門】が完全に閉じた状態になるよう取っ手と取っ手の間をピンッと張るように繋いでいる。
次のは最初のと同じ箇所から繋がれているのにそれより少し長いせいで、鎖は少したわみ一本目を解くと【門】に可動範囲ができるようになっている。
鎖は徐々に長くなり、それに伴ってソレを外した時に門が開く範囲が広がって行く。
ゆっくりと、術を構築するように一つ一つ鎖を解いて行き、残ったのは一本だけ。
けど、その一本だけは解くことができない。
コレを解いたら、殺される。
【門】の向こうに棲むソイツに、喰い殺されてしまうから。
重々しい音を立てて、あちこち錆びた鋼鉄製の扉がゆっくり両側に開く。
ビリビリ、という圧迫感と一緒に、獣の臭いが吹き付けて来た。
- 817 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:48
-
―――――おぉっ?性懲りも無くまた来やがったのか?
気が狂いそうになる程に重い響き。
『耳を貸すな。ソイツは幻や』
つんく♂さんの言葉を何度も反芻してその声には応えず、真っ直ぐにソイツの方を睨みつける。
―――――おー怖っ。相変わらず何も応えちゃくれねぇーんだな、オイ、れいなちゃんよ?
全面を真紅に彩られたこの空間で、【門】の向こう側だけが闇に染まっている。
その闇の奥で蠢く黄金色の輝きが2つ。
からかうような口調で語りかけてくるにも関わらず、そのプレッシャーは計り知れない。
ただのイメージである筈なのに、漂ってくる紅い香りはあたしの恐怖に拍車をかける。
それでも、その黄金の双眸から視線は逸らさない。
精神力を極限まで振り絞らっていないと、すぐにでも呑まれてしまう。
そして呑まれたら最後、二度と戻れなくなる。
- 818 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:49
- ―――――で、用件はなんだ?
「・・・チカラを、貸して」
もう何度目かになる問答を繰り返した。
答えを聞いて、ソイツの瞳が凶々しく歪む。
全身を撃つのはもう、殺気なんて生易しいモノじゃない。
それは、殺意。
圧倒的で絶望的な、全てを破壊したいという欲望。
―――――いいぜぇ・・・、存分に壊そうじゃねーか。
黄金色の殺意が、あたしの全身を包んだ。
- 819 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:49
- ―――――――――
- 820 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:50
-
瞼を開ける。
全身が黄金色の輝きに包まれてる。
今にも暴発しそうな程に漲るチカラを抑え込みながら、目標を視界の中央に捉えた。
右手に黄金色の炎を宿して、床を強く蹴る。
ソレの目の前で、右腕を突き出す。
一瞬でソレは消え失せ、突っ込んだあたしの身体はそのまま何の抵抗も受けずにソレの在った空間を通り過ぎる。
目の前にはただ、真っ白い虚無の空間が広がっていた。
- 821 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:51
-
- 822 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:51
- 目を覚ますと、見覚えのある天井が目に入った。
身体の節々が痛むのに顔をしかめながらも身を起して辺りを見回すと、見慣れた部屋の風景が広がってる。
ベッドから見やすい位置に置いてあるテレビ、その間に置いた背の低いガラステーブル、ソファ、視線を移すと木製の食卓が目に入った。
その他、棚や机、その上に置かれた小物のどれを見ても、間違いなく此処はあたしの部屋。
まぁ、中学2年の女の子が1人暮らしするには幾らか贅沢過ぎる広さだけど・・・。
「ん・・・、あれ、田中ちゃん起きたの?」
「 のわっ!?紺野さん!!何してんですか!?」
いきなりベッドの脇からひょこっ、と顔を上げた紺野さんに驚いて思わずのけぞった。
ベッドで死角になる位置に寝てたらしく、頭が重力に逆らってはねてる。
もしかして、ずっと看ててくれたんだろうか。
「あ、そうだ、新垣さんは!?」
「大丈夫、もうすっかり治って亀井ちゃんと一緒に元気に学校行ったよ」
その言葉を聞いてホッ、と胸を撫で下ろす。
そっか、助かったんだ、良かった〜・・・。
って、あれ?
「え?紺野さんは学校どうしたんですか・・・?」
「ん?あー、まぁ、サボりかな。その、今回は田中ちゃんにも色々迷惑掛けちゃったし、心配で」
- 823 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:52
-
一旦視線を逸らしてから、はにかんだような笑顔で紺野さんは言った。
どうやら、気を遣ってくれてるらしい。
気にすること無いのに・・・。
自分でも驚いてるけど、不思議な程アレを殺したコトに対して黒い感情が生まれて来ないんだから。
押し黙ったあたしに、オロオロしてる紺野さんが可愛そうだから目一杯の笑顔を作って言ってやる。
「大丈夫ですって〜。あたしもこれでハロプロの一員ですよ?これくらいのコトは前から覚悟できてましたから」
てっきり笑顔を返してくれると思ったのに、紺野さんは眉をさらに八の字にして悲しそうな表情になってしまった。
え?え?な、なんでそんな泣きそうな顔するんですか?
大丈夫だって言ってるのに・・・。
「・・・田中ちゃん、もしかして気付いてないの?」
「え?」
スッ、と紺野さんの手があたしの頬に伸びて、撫でるような動作をしてから掌をあたしに向けた。
そこに光る、透明な雫。
慌てて、自分の頬を両手で探ってみる。
指先を、冷たい、熱い何かが濡らすのがわかった。
- 824 名前:FILE・3〜堕つる屍〜 投稿日:2004/09/19(日) 23:53
-
「あれ?おかしいな・・・。あれ?あれ?べ、別に悲しくも無いんですよ?ホントですよ?あれ?」
何度拭っても、瞳から溢れる雫はしつこく視界を揺らがせる。
バタバタ、とブルーの掛け布団に顔を覆った掌から零れた水が堕ちて行く。
突然グッ、と何かに包み込まれるような感触を感じた。
柔らかな温もりに抱かれ、あたしの心を戒めていた何かが解かれる。
「いいから・・・、もう、いいから、ね・・・?」
頭の上から聞こえてきた紺野さんの湿りを含んだ優しい声。
急に、心の底から何かがこみ上げて来るのがわかった。
それこそ、堰を切ったように、あたしは泣いた。
声を上げて、泣いた。
何度もお母さんを呼んで、それが届かなくて、
西田さんの笑顔を思い出して、それを二度と還らぬモノにしたのが自分だとわかって。
温もりに抱かれ、泣き疲れてまた眠りにつくまで、長い時間を、泣き続けた。
- 825 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(了) 投稿日:2004/09/19(日) 23:54
- *****
- 826 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(了) 投稿日:2004/09/19(日) 23:54
-
てなわけで、漸くFILE・3終わりまして。
賛否両論あるでしょうが、今後の物語についても珍しく真面目に考えこういう形に落ち着きました。
いや手は抜いてねぇッス。
次、もう一個、これの後日談、でも無いですが入れて、それから本編に戻ります、やっと。(ぉ
そこ、本編自体後日談だろ、とか鋭いツッコミしない。
ミキティか君は。(マテ
本編から2スレ目立てて此処は何か他の利用方法探すか、なんて考えてますが、まぁ未定です。(無計画
そういや短編コンペ、誰か長い私を止めてください。。。(ぇ
自サイトにも書きましたが、ホント、短編書く才n(ry
次回は・・・微妙。(ヲイ
- 827 名前:FILE・3〜堕つる屍〜(了) 投稿日:2004/09/19(日) 23:55
-
>>806 マコ 様
ものすごく好きですか、才能がありますね。(ぇ
プロテス・ヘイスト、かけたらとりあえず人類が滅びる気がします。
増殖は、、、娘。が増員し続ける限り増え続けますw
つまりは、永遠に。(爆
>>807 我道 様
わーい、仲間仲間〜♪(マテ
今回はそこまで血塗れてない(?)ですが、盛り上がったのかどぅーなのか・・・?
ていうか腹筋、確実に筋繊維が音を立てて千切れてる気がするのですが気のせいですねw(ぉ
そろそろお宅の奴が登場しそうなのでお楽しみに♪
てか姫と女帝も使いたくなってきてたり。。。(ボソ
>>808 聖なる竜騎士 様
ホントに、誰だこんな凄惨な戦いにしたのは?(オマエダ
み〜んなピンチで、果て切り抜けられたのでせうか・・・?
彼等はまたちらっ、といずれ出したいな〜。
どんな形でかはわかりませんがw
怪物は描いてて楽しいんです♪(ぇ
でわまた。。。ノシ
- 828 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/19(日) 23:59
- _| ̄|○<ま〜た名前欄忘れてたアル。。。
- 829 名前:我道 投稿日:2004/09/20(月) 14:17
- 更新お疲れ様です。10回で腹筋を挫折した我道です。
門のところで鳥肌を立て、最後の場面で視界が滲みました・゚・(ノД`)・゚・
まだ重いのでしょう、中学生には。えぇ。
>てか姫と女帝も使いたくなってきてたり。。。(ボソ
作者様の描く三姉妹、カモーンナ!・・・失礼。
よろしければ出してやってください。私も見たいのでw
奴の登場を仄かに楽しみにしつつ、次回を待ちたいと思います。
- 830 名前:konkon 投稿日:2004/09/20(月) 23:09
- 白版で書いてるkonkonと申します。
作者様の小説は本当にすばらしいのかぎりですね。
強くも弱いれいなやかっこいいごっちん、
ハロプロメンバーにも目を奪うものがあります!
今後も楽しみに交信待ってます。
- 831 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 14:17
- 強いの好きです
- 832 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:25
-
遠くの爆音に目を向けると、黄金色の火柱が天に昇って逝くのが見えた。
美しい、と素直な感想を抱き、科学者はその輝きに暫し見惚れる。
強大で、絶対的な破壊力。
自分達の科学の力では未だ成し得ぬ水爆を超える程の輝きを、彼女達はその小さな身体に秘めている。
そう考えると、科学者はいつも羨望とも感嘆ともつかぬ不思議な感情に抱かれるのだった。
「彼等では無理だったが、彼女達なら・・・。」
「かもしれんなぁ」
不意に、空に向けた呟きに対する応えが返って来たので、紺野浩志はそちらに身体を向けた。
其処に立って懐かしい声を発したのは、相も変わらない懐かしい姿をしたかつての戦友。
金髪に橙のサングラス、その印象的な格好で月日の経過を感じさせず、つんく♂こと寺田光男は雲間から射す月明かりを背に佇んでいた。
「よっ、久し振りやな♪善からぬ噂は常々聞かせてもらってるしオマエの写真やら映像はしょっちゅう見せられてて、んな感じせぇへんけどな」
「善からぬとは、心外だね。これでも自分なりに思うところがあって充実した日々を送ってるつもりなんだが」
「オマエがそうでも圧倒的多数がそうやないねんて。多数派にとって危険な少数派が淘汰されんのは自然な流れやろ?」
「少数派、という表現は正しくないね。基本的にチカラに大きな差が無い人間では少数より多数の方が強いというだけのことだろう?」
- 833 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:26
- 「あぁまぁ、それはそうやな。って今日はわざわざそんな勝ち目の無い論議しに来たわけちゃうわ。
1つ訊きたいコトあってんけど、やっぱりアレか?あいつらが死んだんに、オマエも一枚噛んでんのか?」
そう質すつんく♂の帳の奥の瞳は、明らかに普段とは違う鋭い輝きを持っていた。
それに気付きながらも、浩志は肩を竦めて息を吐いてみせた。
「当たり前だろう?そもそも彼らを集めたのは僕なんだから。
当初の計画とはだいぶ違ってしまったが、目的については一貫してるつもりだしね」
「・・・ま、そうやろうな。けどなんや、ちっとくらい期待さしてくれても罰は当たらんと思うで?」
「その反応、やはり君は全てを知って・・・。」
「買い被るなよ。少なくとも一緒に戦ってた頃は心の底から信じとったんや、仲間やしな」
憂いを帯び左上を見上げて過去を懐かしむ表情に、冷たい銃口が向けられた。
何の戸惑いも無い動作で引き金が絞られ、螺旋状の回転を得た流線型の鉛がつんく♂の眉間に向け撃ち出される。
だが、凶弾はつんく♂の目前の空間で動きを止め、キリキリと回転しながら白い湯気を燻らせた。
両手をスーツのポケットに入れたままの姿勢のつんく♂が小声で何かを呟くと、弾がクルリ、と回転して照準を最初に発射した人間に合わせられる。
キュンッ、と空気を裂く音を発して飛ばされた銃弾を、浩志は気配と弾頭の向きで弾道を予測し紙一重にかわした。
- 834 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:28
-
「確かに『僕』はあの頃、君たちの仲間で、本来の目的に迷いを生じる事があった。そして実際何年もそれを忘れて人並みの生活に浸っていた。
だが、【あの方】に出会って、『私』は再び目的を思い出した。その時点でもう、私は君たちの仲間では亡くなったんだよ」
「【あの方】、か・・・。一体どれほどの奴なんやろうな、オマエらみたいな【強い】連中にそれだけの影響与えるなんて。なぁ、市井、福田?」
スッ、と浩志の背後の闇から姿を現す3人。
市井紗耶香、福田明日香、それに成瀬小太朗である。
「別に。ただ私たちの眠っていた欲望を呼び覚ましてくれただけですよ、あの人は・・・。」
「そーそー、あのまま自分を押し殺して生きてたらいちーたちはどぅーなってたか判んないしねぇ」
「誰このオッサン?殺してもいいの?」
1人、物騒な物言いをする子供が混じっていたが、つんく♂は動揺した素振りも見せずシニカルな笑顔のまま。
ポケットから右手を出し、パチン、と1つ指を鳴らした。
瞬間、小太朗目掛けて強烈な火炎が吹き荒ぶ。
「うわぁっ!?」
「ったく、黙ってろよガキはぁ」
悲鳴を上げる小太朗を自身の背後に引っ込め、紗耶香が前に出て襲い来る炎が掻き消えるイメージを浮かべた。
途端に、イメージの通り紅蓮の炎は烈風に掻き消された。
- 835 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:29
- 【心象具現化】。
真祖に与えられた強力な能力の1つである。
心に浮かべたイメージを、現実に存在するものとして具現できる。
その威力は使う者の力量によってまちまちだが、その気になれば村1つ文字通り消滅させるコトも可能。
ただ消費体力、精神力の疲弊も凄まじいのであまり多用はできない。
ちなみにさゆみは今、この能力を失っている。
「ははっ、そのくらいの攻撃このいちーには・・・って、うぉお!?」
炎が掻き消えたと思ったら、それに紛れて接近していたつんく♂の拳が紗耶香の眼前に迫っていた。
慌ててガードしたが、骨を砕かれ後ろに隠していた小太朗もろとも十数メートルの距離を吹き飛ばされる。
殴り終わった姿勢のつんく♂の身体に纏われた、輪郭がはっきりせず色の薄い邪悪な鬼の姿。
「ちっ、鬼神の甲縛使役を真言無しで!?覇!!」
「おっと」
明日香の放った電撃を、つんく♂が両手を合わせ地面に手を突いたコトで現れた土の壁が阻害する。
数百万ボルトの電圧も、5mの厚さがある土壁の前には意味を成さない。
地面を手につき生まれたつんく♂の隙に、背後に迫った浩志のサバイバルナイフが銀の軌跡を描く。
が、胴体を半分に断たれた彼の姿は直ちに空気に溶け込み、代わりに真っ二つに裂かれた符が空を踊った。
- 836 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:29
- 「こっちやでぇ」
「ぐ!?」
袈裟懸けに振り落としたせいで地面に刺さりかけていたナイフは革靴で踏まれ、キン、と鳴いて柄から解放された刃が宙に放り出される。
ほぼ同時に、振り上げられた鬼の脚が浩志の身体を派手に蹴り飛ばした。
超高等レベルな術を同時に成り立たせる彼に驚愕する明日香を、つんく♂は容赦無い氣の塊で弾き飛ばす。
ものの数十秒の間に、【\】の幹部達は1人の男によって全員地べたを這いつくばる体勢に陥れられた。
「あれ何、こんなもんなん?これなら俺1人で【\】とか潰せそうやんか・・・って、ギャース!!!???」
ブチッ、と何かがはち切れる音が聞こえたような気がしたかと思えば、
つんく♂目掛けて飛んでくる歪んだ景色の塊、力任せに投げ付けられた木の幹、黄金色のプラズマ、そしてどこから取り出したのかグレネードランチャーの弾。
ズン!バキィッ!!バリバリバリ!!!チュドーン!!!!!
地面を半球状に抉り周囲を焼き尽くす攻撃に、つんく♂は堪らず宙を蹴って空に逃げた。
足元で、4人が色々自分に向けて翳しているのがわかる。
「じゃ、じゃあオレはもう行くわ!!さいなら!!!」
言って、つんく♂は闇へと姿を消した。
辺りには、爆音が数十分ほど轟き続けた。
- 837 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:30
- *****
- 838 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:32
-
「お、おい貴様等、な、何をするつもりだ・・・?」
人気の無い運動場の隅、木の幹に縛られ動きのとれない男が恐怖に震えた声を上げた。
そう、人気は無い。
人気は無いのだが、それ以外のモノがうじゅうじゃ男の周りを取り囲んでいたりする。
男に今にも襲い掛からんと迫るは魔獣の群れ。
ただ波長の合わない外的を排除する為だけに蠢くそれらは、自分達を呼び出した組織の一員たる男でも容赦はしない。
男は一撃の下にそれらを焼き尽くす程度の力量は持った錬金術師である。
だが今は、頑丈な鋼糸とそこに施された呪のせいで指先一本動かすこともままならない有様。
要するに、このままでは確実に魔獣共が持つ爪や牙、その餌食にされてしまうわけだ。
「や、やめ・・・ぃぁあああ゛あぁぁぁあ!!!!」
「・・・はぁ、、、無神流・双牙滅却!!」
男が甲高い悲鳴を上げ、今まさに獣型魔獣の牙がその喉元に喰らいつこうとした時だった。
気だるそうな溜息の後、それとは相反する裂帛した殺気と共に放たれた、逆手二刀による袈裟懸けの十文字斬り、そしてそれに伴う閃光。
後に残ったのは、泡を吹いて失神(+失●)した男の肢体とそれを庇う位置で二振りの刀を振り落とした姿勢で地面に膝を着く剣士、
そして運動場を四分する巨大な十字の爪痕のみだった。
- 839 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:34
- 立ち上がって「う゛ぁ〜」、とまた盛大な溜息を吐き、剣士は腕を交差し右手の刀を背中に背負った左肩に鯉口を向けた鞘へ、左手のモノを右肩を向いたそれへと収納する。
キン、と鍔が打ち鳴らされ、周囲にはまた静寂が訪れた。
が、それも一瞬、晩夏の夜長を新たな喧騒が駆け抜けて来る。
「おぃてめぇ!!待ちやがれ!!!」
「んなコト言われて待つバカは市井紗耶香くらいしかいないってーのっ!」
「んぁ?ソニン〜、何やってんだ?」
ちっちゃな金髪に追いかけられる色んな意味で凄い身体の女性に剣士が呼びかけると、彼女は走っていた校舎の上から飛び降りこちらへと駆けて来た。
剣士の目前まで勢いは緩めず、というか目前に来ても緩めず、剣士の顔面にズドン♪、とスタンプキックを決めてブレーキ代わりにする。
哀れ剣士は無防備に喰らい、男の縛られた木の幹(上の方)へと叩きつけられ、落ちた。
「つーか己が何やってんのよ!?アンタ捜してたらしつこくてちっこいのに追われるハメになってんのよ、こっちは!!」
「ちっこいゆーな!!!」
しつこい、には反応せずピンポイントでツッコんだちっこいのが喚いているのに、質された剣士の方は応えない。
・・・というか地面に血の海を作ってる最中なので応えられる筈も無い。
あまりに反応が無いので、「おぃ、殺しちゃったんじゃねーか?」「はぁ?いつもと同じに蹴ったつもりだけど・・・?」「イヤいつもあの勢いなのかよ・・・。」
などという割と物騒なやり取りを始めていると、ムクッ、と剣士が起き上がった、顔面血みどろで。
「う゛ぅ、ちょっと散歩してただけだよ・・・。何か人いっぱい来てめんどくさいコトになりそうだったし。そしたらなんかコレが襲われてて」
「ってあ゛、コレ指名手配中の爆破魔じゃん。鋼糸・・・、てことは裕ちゃん達か。逃げれないように相当キツく縛ってたみたいね」
- 840 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:36
- コレ、と言われてソレの顔を確認した真里が言う。
口を開けてピクピク痙攣しながら白い泡を吹いてはいるが、記憶にある細かい特徴を統計するとコイツで間違いない。
「ホラ、それじゃさっさとウチらは帰るよ。明日もじ・・・仕事あるんだから」
「んぁ?あぁ、そうか。じゃ、矢口さん、また今度ゆっくりお茶でも♪」
「アンタそのすぐ口説く癖直した方が・・・ってそーじゃない!貴様等賞金首の癖してただで帰れると思ってんのか!?」
「「もち」」
「ハモんな!!しかも言いながら屋根に跳び移ってんじゃねーよ!!」
グッ、と親指を立てて示し、身を翻して闇夜に消える2人を追いかけようとした真里の耳に、低い呻き声が届いた。
見れば、男を戒めていた糸が切断されている。
そう言えば、屋根に跳び移った時に剣士・・・ユウキが右手を左肩の柄にかけ、キン、と納刀音を響かせていた気もする。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
そして今確実に確保できるのがどちらかと言えば・・・。
そこまで考え、真里は2人の怪盗の捜索を諦める事に決めた。
「ごっつぁん、弟の躾くらいちゃんとしといてくれよぉ・・・。」
遠くでは、仲間たちが残った魔獣の殲滅に精を出している。
腕時計に目をやれば、時刻はまもなく午前3時。
今夜は結局、一睡もできそうにない。
- 841 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:36
- *****
- 842 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:37
-
事件から三日後、あたしは漸く学校に顔を出した。
と、言っても、目覚めたのが昨日だから仕方ないんだけど。
事件の翌日は結局魔獣の処理に追われ、臨時休校になったらしい。
その次の日に欠席したあたしに、何か休校と関係あるのかなんて勘繰る人はいない。
学校にはUFAのスタッフが複数名潜り込んでいて、ちょっとした暗示で休校について疑問を持たないようにしてるから。
そう、ただ1人、実状を知るコイツを除いては。。。
「やっほーれいな、昨日一昨日はよく眠れましたか〜?」
「・・・何で知ってんのよ?」
「企業秘密♪」
こいつの秘密は国家の(以下略
もう無視を決め込んで、机に突っ伏し寝の体勢に入ったあたしの肩を、誰かがとんとん叩く。
薫だと思い実戦仕込みの殺気を籠めて睨んだら、そいつはひっ、と後退った。
- 843 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:39
- 「ってあれ?夢宮くん?何、どうかした?」
「あ、あぁいや、風邪引いたって聞いたからさ、大丈夫かなって・・・。」
「え?あ、あぁ、うん、大丈夫、もう治ったから平気だよ」
「そう、なら良かった」
にこり、と笑顔で返してくる。
う゛、結構爽やかかも・・・。
「それでね田中さん、もしよかったら今度の週末にで・・・も゛ぉ!?」
「な〜にをコソコソ話してんのかねお二人さん〜!!」
夢宮くんをドロップキックで吹き飛ばし、現れた薫が妙に焦った様子でずずい、と出てくる。
あれ、何か今夢宮くん言いかけてなかったか・・・?
ヨロヨロと、立ち上がった夢宮くんの鼻の穴からはツーッ、と一本紅い筋。
「ひ、酷いなぁ・・・。また傷が開いちゃったじゃないか、ソ・・・ぷろっ!?」
「あ、ごっめーん、手が滑っちゃった☆」
どうやって手を滑らすと机が舞い上がって男の子を黒板に磔にできるのか知らないけど、
この2人ってこんなに仲良かったっけ?(←日常生活に問題があるのでそう見える
- 844 名前:涙を拭いて 投稿日:2004/09/22(水) 20:39
- ・・・まぁ、何にしても、、、
スッ、と窓の外に視線を移してみる。
本日は、晴天なり。
風がちょっと、強いかな。
それでも、まだまだ夏の暑さが消えないウチは、これくらいが丁度いい。
視線を黒板の方に戻すと、なんか、喧嘩・・・というよりは一方的暴力が行われてる気がしないでもないけど、、、(汗
不意に、笑顔が零れて来る。
ホント、嫌になるくらい日常だ。
それでも、この日常を守る為、あたしはこれからも、変わらずに、自分のままで、戦い続けていけると、思える・・・かな。
- 845 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/22(水) 20:40
- *****
- 846 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/22(水) 20:40
-
てなわけで、漸く次回からごっつぁんが出ます。
気付けば雄にこのスレの半分を使っていた事件簿シリーズ。。。(汗
キリがいいので次からは新スレ立てて、心機一転頑張っていこうかと思います。
あ、もちろんココはココで何らかの利用法を模索するので乗っ取ったりしないでね。
それとまぁバレバレでしょうけど、主人公が気付くまで何か判っても言っちゃ厭。
その辺を語りたかったら自サイトのメールで。。。
- 847 名前:名も無き作者 投稿日:2004/09/22(水) 20:41
- >>829 我道 様
重いみたいですが、どうやら顔を上げて前に進むことはできそうですw
>よろしければ出してやってください。私も見たいのでw
・・・出演確定。(ぉ
いやぁ、丁度あれくらパワフルな女性キャラが3人欲しかったモノですから。
何せ○○の○○ですからね♪
お楽しみに〜。
>>830 konkon 様
初レスありがとうございます。
>強くも弱いれいなやかっこいいごっちん
そこを目指して描いているので表現できていたのなら幸いですw
白と、その前の金の作品、ちょっとずつですが読み進めさせて頂いてます♪
追いついたらレスするかもなので、そん時はよろしくどうぞですっ。
>>831 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
強いのがお好きのようで。
これからもガンガン化け物じみた、いやむしろ化け物が増えていく予定なので
お付き合い頂けたら幸いですw(ぉ
でわでわ、新スレ立てたらまた追って知らせますのでその時まで。。。 ノシ
- 848 名前:konkon 投稿日:2004/09/23(木) 23:12
- 交信お疲れ様です。
つんくさんがめちゃつえぇ!
まともな役のつんくさんってあまりないので
すごい新鮮です(笑)
ソニンの突っ込みがハードで笑えます♪
- 849 名前:マコ 投稿日:2004/09/25(土) 01:38
- こう言うれいな 大好きっ。
かわいいと思いません?(あ)
強くて弱いれいなは 僕の小説のテーマでもあるので すごい勉強になります。
才能? はて 何のことでしょう 私は何も知りませぬ(何)
デジョンで逃亡
- 850 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/27(月) 22:35
- ほおぉ。
あの娘の正体があの娘だったとは。
そんでもって、こんなのも居たとは。
すっかり、やられてしまったよ♪(w
- 851 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2004/10/01(金) 14:35
- 更新お疲れ様です。
事件も何とか一段落ついて、やっとれいなにも普通の生活が戻ってくるのかな・・・・・・・?
西田亮子はこの世から居なくなってしまいましたが、でもまだ小太郎がいますから・・・・。
これからどんな展開を見せてくれるのか?小太郎の活躍を期待しつつ、次回更新
待ってます。
- 852 名前:名も無き作者 投稿日:2004/10/03(日) 01:57
- 新スレ立てました。
同じ板ですが一応リンク張っておきます。
希望峰U〜crisis〜
http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sky/1096734002/l50
これからこっちのスレはsage更新で行くんでヨロシクほねがいします。(平伏
- 853 名前:名も無き作者 投稿日:2004/10/09(土) 17:53
- 自サイトに書き込めないのでこっちで現状報告です。
え〜、修学旅行で北海道に来たまま台風の影響で飛行機が飛ばなくて帰れないってゆー。。。
その為あっちもこっちもなっちも更新出来ませぬ。(謎
一応明日には帰れる筈なので、、、
まぁ、そんな感じデス。(ぉ
でわノシ
- 854 名前:やり忘れてたキャラ紹介 投稿日:2004/10/15(金) 18:33
-
<矢口真里>
能力:雷魔式忍術・邪見眼
性格:ツッコミのようでいて実はボケボケ
好きなモノ:美少女
嫌いなモノ:オバケ
霊力値:850p前後
備考:雷魔忍軍の数少ない生き残りで、能力は安定していて穴が無い。
頭の回転が速く判断力に優れるものの、基礎学力はあまり高くない。
なつみに符術を習った経験もあり、黄色い熊の式神・シゲルを使役できる。
【邪見眼】のネーミングについては邪視眼とかの方がカッコよかったんじゃないか、という意見もあるが
作者がなんとなく●輪眼の響きに似せたかったのでこうなってしまった。
<紺野あさ美>
能力:科学技術(自由自在)・空手(2級)
性格:(平常時)温厚でのんびり、多少気弱。
(黒降臨時)邪悪、残虐非道、ネ申。
好きなモノ:ごとーさん、食べ物、特にイモ類(彼女の中ではカボチャもイモの仲間)
嫌いなモノ:虫
霊力値:600p未満
備考:黒降臨時は白衣の悪魔と化す。
主に降臨の火付け役は実父とつんく、そして作者(←常習犯)。
他にメカ紺野や紺婆、紺野教官などのバリエーションが・・・ナイ。
里沙に施した手術・・・生体実験の事で罪悪感を持ち、心に傷を負っている。
- 855 名前:やり忘れてたキャラ紹介 投稿日:2004/10/15(金) 18:33
- <新垣里沙>
能力:ナノマシンによる身体変身
性格:ちょっと謎、リアクションが面白い
好きなモノ:安倍さん、もんじゃ焼き
嫌いなモノ:汚い大人
霊力値:1000p弱
備考:トランス能力はその気になれば全身を変化させる事も可能だが、
体力の消費が激しいので長時間の変身持続は不可。
過去に事故によって瀕死の重態に陥ったが紺野親子の施術により生還。
父は元々こちらの世界の人間だったが表の世界で実業家として莫大な資産を築いていた。
そこに紺野浩志が目を付け、ナノマシンの研究費用を出させていたが度重なる生体実験に研究中止の命令を下した。
が、里沙の事故により再び費用を出して研究の再開を依頼、あのような結果となる。
後の調査で事故も仕組まれたモノであった事が確認されている。
<松浦亜弥>
能力:魔剣術
装備:グラジオラス(両刃の西洋刀)
性格:自分大好き、ごーいんぐまいうぇい
好きなモノ:ミキたん
嫌いなモノ:ミキたんに近寄る邪魔者
霊力値:2000p超
備考:純粋な戦闘力で言えば現ハロプロNo.1。
チカラとチカラのぶつかり合いでまともに真希とやれるのは彼女くらいのモノ。
記憶喪失で、UFAに保護される以前の記憶があまり無い。
基本的には単独任務をこなす事が多く、主に凶悪犯罪者や魔獣・霊獣の殲滅を担当する。
たまに相手の数が多い時は本人の希望により美貴と行動を共にする。
ただ美貴が役に立てているかは不明。
- 856 名前:名も無き作者 投稿日:2004/10/15(金) 18:35
- はい、キャラ紹介でした。(ぉ
まだ紹介されてない他の連中についてはまた追々。。。
とか言いつつやらずに終わる可能性がありますが気のせいです。(マテ
でわノシ
- 857 名前:名も無き"管理人" 投稿日:2004/12/01(水) 16:59
- どもーッス。
えー、物凄い私事で恐縮なんですが現在ウチのサイトの掲示板及びカウンターが機能してません。
これはどうやらサーバーが容量増幅工事の為に明日の朝10時までは使えないみたいなんです。
どうやらもナニも前もって知ってたんですが、
すっっかり忘れてて昨日の日記で書いてませんでした。(汗
つーわけでそんなわけでそんな感じです。(殴
今日はその影響で更新もできないんですが、明日以降また頑張っていくのでよろしくお願いします。
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