こんな娘。のはなし
- 1 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:18
-
- 2 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:19
-
_いしよしLOVEストーリー
梨華が呼吸を止めて一秒、真剣な目をした。
「よっすぃ、話があるんだ。ののとあいぼんも聞いてて欲しいの。」
- 3 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:20
- 「ねぇ、よっすぃ。
私達、いろいろあったよね。
ごっちんとの仲を疑っちゃったり、
亜弥ちゃんがよっすぃにちょっかいだしたり、
飯田さんと急接近しちゃったり、
小川がよっすぃに熱あげちゃったり、
へへ、全部私の勘違いのヤキモチだったんだよね。
でもね、でもね、これはよっすぃへの愛の証明なの。
よっすぃ、私、不安なんだ。
前に酔っ払った真里ちゃんが、私に欲情しちゃったこと、あったでしょ?
あの時のよっすぃ、知らん顔してたんだもん。
そのクセさ、自信のなかった私に、『気にするな』とか、さらっと言ってくれたりさ。
落ち込んでる私の肩をそっと抱いてくれたりさ。
ずるいよ、私、よっすぃに助けられてばっか。
よっすぃの全部、私は受け入れられるよ。
よっすいの全部、私にとっては特別なんだ。
ふふっ、おかしいよね。
私達、女同士なのに。
どうしても、同期のみんなの前で言いたかったの。
私、ひとみちゃんが好き!!」
- 4 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:20
-
- 5 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:20
-
アイドルタイムの牛丼チェーン。
女の店員が、厨房の奥で梨華を迷惑そうに見ている。
ひとみ、亜依、希美の姿はすでになく、丼も下げられていた。
「・・・・・・んもう!!恥しがり屋さんなんだからっ!」
梨華のずぼらなハイテンションは、本人でも止められない。
- 6 名前:. 投稿日:2004/03/10(水) 03:21
- おしまい
- 7 名前:. 投稿日:2004/03/11(木) 04:05
-
_ちょっと待てオマエハそれでいいのか? '03
疲労はとうに限界を超え、恐怖と不安が私を支配している。
意志の一切が消え失せ、ただ体だけが頼りなく生きていた。
筋肉の一筋一筋が硬く張り詰め、汗も尽きた。
乾ききった喉は、呼吸の度にガサガサと痛む。
自分達の勢いが大きくなるほど、存在が薄れていくような気がして、それが嫌だった。
妙な圧迫感だけがはっきりと感ぜられ、今ここにある勢いとは裏腹に息苦しかった。
- 8 名前:. 投稿日:2004/03/11(木) 04:06
- 体は眠りに落ちる瞬間なのだろうが、一向に訪れる気配はない。
力が体内で細く痩せていき、正常に機能を果たさなかった。
頭の中では、思考が重く停滞している。
目を閉じると、それが蠢き、私の中を這いずり回る。
暗く冷たい思考が、後から後から押し寄せてくる。
加えて、意味もなく湧き上がる小さな苛立ちに、心はマイナスに落ちていく。
グラスに残った気泡が上向くたび、水は底に溜まっていくような、目には見えないイメージの問題。
- 9 名前:. 投稿日:2004/03/11(木) 04:06
- 振り払おうにも、この狭い立方体では角ばかりが気になってしまう。
線も面も三つが重なる特異点。
私はそこに着地点があるのだと、意味もわからず無駄に確信する。
- 10 名前:. 投稿日:2004/03/11(木) 04:06
- 名もない深夜、冷蔵庫のファンの規則的な唸りに耳を澄ませていた。
いや、正確には神経の尖っているせいで、いつもよりもよく聞こえているだけだ。
断続的に鳴る音が止む時間帯、音が消える前の僅かな瞬間、冷蔵庫のそれとは異なる震えを感じた。
似て非なるもの。
小さな小さな物音に、そっと何かが紛れ込んでいる
指の動きよりも小さな、微かな振動が空気を伝う。
初めは意識していなかった。
しかし、その振動は徐々に私の体に蓄積されていき、確かな感触として感じられるまでになった。
そしてそれが熱を帯びたとき、その存在を知った。
ライオンのような金髪の女がそこにいた。
私はそれをボスと名付け、呼んだ。
- 11 名前:. 投稿日:2004/03/11(木) 04:07
- おしまい
- 12 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:05
-
_忘れないから
「ねぇ、美貴さん。この辺で死んでみない?」
亜弥ちゃんがイタズラっぽく顔を寄せ、でも笑い飛ばせないような真面目さで言う。
「嫌だよ、まだ生きていたいし。死んで何があるかもわからないし。」
率直で素直な感想で意見だが、冗談めかして流したつもり。
「そうかなあ、絶対いいと思うんだけどな。……だってさ、今この瞬間で終われるんだよ。」
いいこと思いついた子供が、全否定されたような顔でぶつくさと。
- 13 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:06
- 死を幸福とを繋げて考えたことはなかった。
死んで名を残したとしても、死んで誰かの愛を得たとしても、その時の私には何も残らない。
消えてしまえば、手に入れたり、何かを失ったり……
そんなこと、関係なくなる。
突き詰めれば、ここにある一秒が幸福なら、それが一番いいに決まってる。
そして、その一秒のために生きているし、辛い思いも面倒なこともする。
一秒のために為すことが膨らみすぎないよう、時々生に思いを巡らす。
一秒後には消えてしまう存在意義の確認のために。
「だから美貴たん、そんなつまんない人間になっちゃったんだよ。」
「だからとか意味わかんないし。それに美貴、つまんなくないし。可愛くて楽しい女の子だし。」
思いつき以外の何物でもないような亜弥ちゃんの発言を、にべもなく突っ返す。
何を真剣に考えてんだか、私は。
- 14 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:06
- それでもまだ亜弥ちゃんは飽き足らないのか、一気にまくし立てる。
「だってね、ここがてっぺんかもしれないんだよ。こっからは不幸の連続かもしれないし、仮に幸せばっかだったとしても、ここで打ち止めておけばそんなのどうでもよくなるもん。このまま緩やかに死に落ちていくのも、静かに今の時間を思い返しながら生きるのも嫌だ。私はここで終わりにしたいのぉ!」
思うところはわからないでもないが、先に希望を持てないというのは、これまで生きてきたことを否定してしまうのではないか。
そんな気がしてならない。
- 15 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:07
- 「じゃあ、死んでその後はどうするの?死んでいなくなる人はいいけど、残される私はそんなの許せない。勝手に近寄ってきて、勝手にいなくならないでよ。」
思わず安っぽい言葉を吐いてしまった。
言ってる途中で腹が立ってきた。
答えの見つからない質問を真剣に話す人も、流す術を知らない私も、そしてそういうことを考えないようにしているのに、考えている自分のことも。
幻なんだよ、この世の全部。
- 16 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:07
- 少なくとも、こんな暖かい午後の公園で話すことではない。
楽しそうなざわめきが重なり合って、静かな幸福を作り上げている。
上半身を芝に投げ出す。
遠く霞む空も、風にたゆたう雲を乗せて平和にあくびしてる。
大きく伸びをすると、邪魔なものが体から抜けていく。
こういう瞬間があるから生きていきたい。
隣で反撃の機会を窺う亜弥ちゃんを見て、奴もまた生きる一つの理由だ、と心底感じる。
- 17 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:07
- 「ったく。大した考えも持たないで、死生観とか語んないでよ。」
毒抜きついでに、イライラの残骸も吐き出してしまう。
思いの他、弱気な亜弥ちゃんが小さく返してくる。
「そだね。……でもぉ」
「どうせ怖くなったんでしょ?先のこと考えて。」
「わかってるんなら、もっと優しくして?」
「いや、無理だから。」
「ひっどぉ〜い。」
Loveはいらない。
ありえないし、だけど亜弥ちゃんが何となく心地いい。
それだけじゃいけない?
- 18 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:08
- 力ある風が二人の隙間を滑っていく。
土埃が巻き上がり、目に入った。
僅かな時間だけど、視界が濡れて白くぼやけた。
何故だか急に怖くなり、右側にあるはずのものを確かめる。
亜弥ちゃんが、そっと両手で私の手を握る。
そして、仕返しなのか、ありったけの力を込めてきた。
痛かった。
安心した。
- 19 名前:. 投稿日:2004/03/12(金) 03:08
- 「帰ろっか。お腹空く前に帰らないと、また喧嘩になっちゃう。」
「え〜、ミキたん、絶対キッチン汚すんだもん。」
「今日は平気。そんな気がしてならない。」
「ウソだ。前だってそんなこと言って、ぼろぼろぼろぼろコンロにこぼしてたじゃん。」
「いや、あれは亜弥ちゃんが手伝うとかって邪魔するから。」
「いいよ、なんでも。今日は何か買ってこうよ。」
「あはは、それってミキの…・・・」
───
──
─
そんなどうでもいい休日の昼下がり。
- 20 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:47
- おしまい
- 21 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:50
-
_紺野あさ美はお菓子が食べ放題だからモーニング娘。を続けているらしい
歌って踊れて演技もできる、そんな現代アイドル
時代の流れに甘んじ媚を売る、安易な生き方は蹴っ飛ばす
心に気魂を、可愛いきゃいいじゃんアイドルなんて
口パクなんて必要ねー
外せ!外れろ!きっとそこが真ん中だ!!
- 22 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:50
-
石川宅。
拉致紛いの方法で連れてこられた紺野と道重、熱弁を振るう石川を冷めた目で見ていた。
「紺野さん、そこの電気スタンド取ってもらえます?」
「いいけど、なんに使うの?」
「はったおすんですよ。石川さんを。」
気味悪いくらいに冷静な道重を見て、伸びかけた紺野の腕が止まった。
- 23 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:52
- 「……コホン。まあ、そんなわけで、今日はお集まり頂き、心より感謝したい。そして、この宣言をもって私達のスタートとする。」
テーブルに両肘を乗せ、指を組んだ石川が感じを出しつつ、勝手に開会宣言。
「あー、もういいや。そんなことより、このピンク尽くし。すごく落ち着きます。」
道重が唇を触りながら、物珍しそうにドロリとしたピンク一色の部屋を見渡す。
「でも、なんかエッチですよね。」
そう言い加え、抱えていたプチシュークリームを、袋から出して口に放り込んだ。
- 24 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:52
- 「ダメよ、シゲさん。こういう可愛い食べ物は、みんなの見てる前で食べないと。みんなの前では可愛く、人目のないところでは精進するの。じゃないと、セクシーキュートにはなれないわよ。」
そう石川は道重のシュークリームを取り上げ、冷蔵庫からラップで丁寧に包んだ皿を取り出した。
「これはね、茹でたササミの黒糖まぶし。甘いものを食べたいときにはコレ。甘味+タンパク質。甘いものを食べられるだけでなく、筋肉もつくの。プロテインにまみれたハリウッドもびっくりのアイデアでしょ?」
「セクシーキュートってのもいいですけど、わたしはかわいけりゃいいんで。」
道重はぶっきらぼうに言うと、石川さんが持つシュークリームを奪い返した。
- 25 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:52
-
「つか、紺野さ、なんでずっと黙ってんの?」
だんまりを決め込んでいる紺野の目の前に、アヒル口の可愛い上目遣い。
「え?あ、なんというか。石川さんとシゲさんが可愛い、ってのはわかるんですけど、わたしはちょっと……あの、ぶっちゃけわたし、音痴ってだけでこのメンバーに選出されてません?」
「そんなことないですよぉ。紺野さん、かわいいですよ。わたしほどじゃないけど。わたし、時々紺野さんの仕草、マネしたりしますし。」
プチシューを詰め込み、口をもごもごさせながらの道重発言。
「そうなんだよね。私、紺野の上擦ったような掠れキャラ、いいと思うんだよねぇ。」
ババむさく石川が言うと、賛同を得られて嬉しいのか、道重が続ける。
「そうそう!雨の日の捨て犬みたいな、母性くすぐられる感じしますよね。」
「……ありがとう。」
紺野、ちっとも褒められている気はしないが、とりあえず。
- 26 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:53
- 「まあ、それはいいとして。これから何するんですか?その、石川さんの集いに参加するかは別にして。」
「……全面対決。」
そんな紺野の疑問から逃げるように視線を外した石川、短く一言。
紺野、フリーズ。
道重、興味薄。
「何でもいいから反応欲しいんだけど。」
沈黙に耐え切れなかった石川。
「いんじゃないんですか。」
適当にあしらった道重の声でも自信を持ったようで、石川の顔がパッと華やぐ。
そんな道重、石川の相手を紺野に任せ、真顔で鏡と睨めっこ。
- 27 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:53
- 「まずはね、仲間を集めるの。」
「例えば?」
「柴ちゃん以外。」
「柴田さん以外?」
「断られたの。大して話を聞きもしないで。」
「じゃあ、わたしからもう一回連絡してみましょうか?」
「やめて。それで柴ちゃんノッてきたらヘコむから。」
「そうですか。でも、音痴を選ぶとなると難しいですよ。」
「ギャグでカオたん誘ってみようか。」
「怒りますって。」
「う〜ん、微妙なんだよね。歌えない人って、そんないないねぇ。」
「ま、一応、わたしたち歌手ですからね。」
「だよね。歌手のオーディションやって、歌えない人が合格って、ある意味奇跡だもんね。」
「ですね。よくよく考えると、不条理な話ですよね。」
「あの〜」
「ん?なに?」
「今日の晩御飯、おかわりしてもいいですか?」
「刺すよ、シゲさん。マジで。」
「ぇへへへっ。言ってみただけですよ。石川さん、冗談わかんないかなぁ。」
「あー、こいつマジ無視。」
- 28 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:54
- 「私、後藤さんが入るなら、この会に入ってもいいなぁ。」
「紺野?何をいまさら。あんた、もう入ってるから。」
「えぇ〜?わたし、入るなんて一言も言ってないじゃないですか。」
「美貴ちゃん、一緒にやってくれないかな。」
「あ、すっごい無視された。」
「どう思う?美貴ちゃん、入ってくれるかなぁ。紺野、仲いいでしょ?聞いてみてよ。」
「なぁんでですかぁ。石川さん、自分で聞けばいいじゃないですか。」
「もしもし?お姉ちゃん?うん、わたし。さゆ。今ね、石川さん家にいるんだ。……そう、石川梨華。すごいでしょー。なんかわたし、モーニング娘。に入ってるんだなーって、改めて思っちゃって。」
- 29 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:54
- 「紺野。この訛り娘、マジで黙らせてくんない?」
「まぁた、そうやって、……梨、梨華ちゃん、わたしにばっか。」
「え?また梨華ちゃんって言ってくれたね。もう、いやぁだぁ。照れるじゃない。あさ美ぃ。」
「今ね、紺野さんが石川さんのこと、梨華ちゃんって言った。……そう、紺野あさ美。で、石川さんが恥ずかしがってる。……そうやって。わたし、モーニング娘。なんだよ?知ってた?にひひひっ。」
- 30 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:54
-
- 31 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:55
-
三者三様にワガママの限りに自らを出しつくし、壁にぶつかり、喚き、騒ぎ、喘ぎ、もがき、共に笑い、罵り合い、殴り殴られ、青春を謳い、疲れ果てていた。
重苦しい空気の中、石川が最後のカードを切った。
「仕方ない。梨沙子を入れよう。」
口をパクパクさせ、唖然とした様子の紺野。
目をまんまるにした道重が、興奮気味に唾を飛ばして
「梨沙子って菅谷梨沙子ちゃんですか?あの綺麗な顔立ちで、九九の9の段が苦手で、妙な色気と鈍くささを併せ持った、あの梨沙子ちゃんですか?」
「落ち着きたまえ、道重くん。あの梨沙子もこの梨沙子も、ラジオで好きな人いるってバラされて真っ赤になって、ヲタを萌えと狂気の渦に巻き込んだ、C子の梨沙子だよ。」
「でも、それは……」
「あぁ、かなりリスクは高い。全部持ってかれるかもしれない。だが、アイドルの多角化という時代の荒波に立ち向かっていくには、これしか方法はないのだよ。私とて、あんな自分の半分も生きていないような──」
ここで石川は深く溜息をつき、頭を抱える。
- 32 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:55
- 身を乗り出した紺野、力強く叫ぶ。
「危険過ぎます!!第一、どうやって引き込むんですか?Helloを背負って立つ人材ですよ!私たちにでさえ、あんな無理のある方法……あんな小さい子に使ったら、確実に法に触れます。それに、あの子の体が持つわけありません!!!」
「あぁ、わかってる!わかってはいるが、他に私達が生き残る術はないのだよ、紺野くん。」
「そ、そんな……」
道重が自分自身に言い聞かせるように、小さく呟く。
「わたしたちがババアになった時、世話になるかもしれない。今の内に手懐けておくのもいいかもしれないな。」
「道重くん、今からそんな計算をしてはいけない。それに、10年後、梨沙子は19歳、君はまだ24歳じゃないか。だが、私は、私はっ!!っく……」
瞬きを一切しなかった石川、涙を滲ませ、崩れ落ちる。
道重も、抗いようのない現実に唇を噛み締めている。
- 33 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:56
-
「やっぱり、無理ありますね。たぶん、次の新メンにも歌えない子、きっといますよ。その時にしましょ?」
「あのさ、紺野。足並み乱すのだけはやめようよ。」
「だって、なんか飽きちゃったんですもの。」
「わたしもです。石川さん、ご飯食べに行きましょー」
- 34 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 02:56
-
最初から無理があるとわかっていた石川。
完全に集中力の途切れた後輩2人を見て、限界を思い知らされる。
「……ま、人生、こういった挫折の連続なのよ。日常にドラマティックなんて見出しようもないし。ましてや、オチなんてつこうはずもないのよ。」
- 35 名前:. 投稿日:2004/03/13(土) 04:32
- おしまい
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/13(土) 16:19
- 青春ですな、面白い
- 37 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:02
-
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
柴田さんは今日、とっても怒っています。
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
手始めに、石川さんを捻じ伏せます。
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
キッズを黙らせます。
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
茉麻ちゃんが頑張りましたが、これも一睨み。
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
舞ちゃんが泣いてしまいました。
- 38 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:03
- 「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
勢いづいて怖いもの知らずの柴田さん、中澤さんと対峙します。
「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」
「柴田、大人になったな。よっしゃ、ウチもついてくで!」
- 39 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:03
- 「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」
ボスを一蹴。
「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」
里田のまいちゃんは、のんびり過ぎて気付きません。
「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」
なっちを泣かします。
「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」
辻っこはびっくりして、楽屋に閉じ篭ってしまいました。
- 40 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:04
- 「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」
裕子の牙城が崩れた今、最後の砦、かおりん。
「柴田、裕ちゃん。一緒にやってやろうぜ!」
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
あっちゃんを跳ね飛ばしました。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
ミキティ、唖然としてしまいました。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
あややも、見なかったフリをしています。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
もはや無敵。
誰にも止められません。
- 41 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:04
- 「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
ごっつぁんはヘラヘラと、相変わらずのマイペース。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
矢口さん、苦虫を噛み潰したような顔をしています。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
愛ちゃんは、きっと驚いているのでしょうが、最初からそんな顔のため、誰も気付きません。
「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
3人の勢いは止まりません。
- 42 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:05
- 「「「やんのかコラァ!やんのかコラァ!!やんのかコラァ!!!」」」
ケータリングで真剣に討論していた、紺ちゃんとシゲさん。
「あ、どっちが太らないんですか?クッキーとチョコ。」
「迷ってたところなんですよぉ。どっちがカロリー少ないと思います?紺野的には、クッキーだと思うんですけど。」
「……あ、そうやなぁ。どっちかっつーと、クッキーのほうちゃうん?な?圭織」
「うーん、私はチョコの方だと思うけどね。柴田は?」
「そうですねぇ。私は、もう醜くブクブクと太りたくないんで、食べないですね」
- 43 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:05
- 「えぇ〜?柴田さん、別に太ってないじゃないですか」
そんな道重の言葉に柴田、重い重い説教。
「いい?道重ちゃん。知らないから、そういうこと言えるんだよ。人ってねぇ、紺ちゃんやごっちんみたく、痩せの大食いばかりじゃないんだよ。ううん、そういう人の方が少ないの。大き目にサイズを合わせたパーカー、ぴちぴちになっちゃう恐怖と自己嫌悪、感じたことある?」
うなだれる柴田に、中澤がそっと寄り添う。
「DVD、出てしもたもんなぁ・・・」
「中澤さんはラッキーですよ。フットルース──」
「わかっとるで。それ以上は言わんでええ。絶対に言うな!!」
紺野と道重、先輩の哀傷を知り、ちょっぴり大人になった気分。
圭織は思う。
この食いしん坊の二人にすっかり毒気を抜かれてしまった私達は、何よりも幸福であり、それは逆に不幸なのではないのだろうか、と。
- 44 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:06
-
_柴田の水着って、こっちが逆に緊張するよね?
- 45 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:06
- おしまい
- 46 名前:. 投稿日:2004/03/14(日) 03:07
- >>36
逆にとは言ってみたものの、別に逆ではないのです
- 47 名前:. 投稿日:2004/03/15(月) 02:41
-
_ありふれたぉヴぇsとry
願わくば、喉を掻っ切たその後に、少しだけ生かして欲しい。
言葉にすると嘘臭い。
だから、ここで死ぬ。
そして、言葉を真実にしたいんだ。
この言葉に死を賭ける。
叶う叶わないの問題でなく、君に焼きついて消える。
君が誰かをどんなに愛しても、君がどんなに愛されても、僕はいなくならない。
君がいなくなるその瞬間まで、僕もありつづける。
そんな自己完結の、一番手っ取り早くて安い恋。
そして、僕はそれに死ぬ。
このチンケな愛に死ぬ。
- 48 名前:. 投稿日:2004/03/15(月) 02:41
-
「あ〜!!紺ちゃん、何か書いてるー!!」
亜依があさ美の手元にある紙を取り上げ、取り返そうとするあさ美を希美が押さえる。
必死の抵抗を見せるあさ美を他所に、「何か書いてる」は亜依の手元から、麻琴へと。
さらに戸惑うれいなを経由し、さゆみに渡った。
「じゃ、読みまーす。」
ぴょこんと手を挙げたさゆみ。
あさ美は諦めたように、ふらふらと楽屋を出て行った。
「ん?なんて読むんだ?これ。」
- 49 名前:. 投稿日:2004/03/15(月) 02:42
-
「読んであげるよ。」
圭織がひょいと紙を取り上げ、軽く目を通す。
「じゃあ、これ、紺野に返しておくから。」
無表情の美人は怖い。
有無を言わせない圭織の調子に、皆は興味を失わざるをえず、三々五々と散っていった。
- 50 名前:. 投稿日:2004/03/15(月) 02:42
-
「紺野、書くんじゃない。」
圭織はそう呟き、くしゃくしゃに丸め、ポケットに入れた。
- 51 名前:. 投稿日:2004/03/15(月) 02:42
- おしまい
- 52 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/15(月) 19:01
- 笑った
- 53 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:23
-
_ひとといき
──話つけに行きましょか?
自分で言って、自分でひいた。
たぶん、誰よりも。
- 54 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:23
-
収録が終わってすぐのことだった。
「なっかざわさぁん、聞きましたよぉ。」
だらしないくらいに顔を綻ばせた小川が、無駄な忍び足で近寄ってきた。
私は眉に皺を寄せて小川を牽制し、考える時間を作る。
すると、今度は逆方向から紺野が、
「杉本さんっ。」
と冗談めかして言い、顔を赤く染めた。
加護から伝わったのだろう。
あんたらはどないやねん、と返したいところだが、カメラのまわっていないところでは、殊恋愛に関して不自由な二人に言うのは酷だろう。
- 55 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:24
- 「このこのぉ」
厭らしくもあり、微笑ましくもあるような奇妙な素振りで、小川は肘で私をつつく。
これが収録前の話だったら、私はこの二人を叱らなければならないところだった。
少し会わない間にも成長する、この思春期の二人に嫉妬を感じつつ、無理して笑顔を作った。
「あんたら、ホントに成長したなぁ。この裕ちゃんに、そんなこと聞くなんて。」
小川は単純に喜び、紺野は、中澤さんも成長してると思います、と言う。
「ま、そうかもしれんな。」
私のは成長とは言わない。
経験、というのだ。
- 56 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:24
- 「で、どうなんですか?実際。」
ちょっとでも逸れる話すら耐えられないのか、小川が身を乗り出してくる。
小川も紺野も興味津々といった風で、それぞれに特徴的な目を輝かせている。
「そな、目を爛々とさせんでもええがな。別になんもないって。ラジオのネタや、ネタ。あの人がお見合いしただけやん。加護が付け加えなかったんだろうけど、それをどう断るか、っていう話だったんやで?それだけで、私にはなーんも関係あらへん。」
「ホントにぃ?」
私が恋している線を消したくないのか、小川は疑いの色を強くする。
「ほんとに。なんもあらへんがなぁ。」
「でも、あの人、だってぇ」
紺野が言うと、小川がきゃ〜、と嬌声をあげる。
「うっさいわ、もう。ほら、あんたら、まだ次、あるんやろ?はよ行き」
- 57 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:25
- 「でもさ、中澤さんウソっぽいよね。なんもあらへん、とか何回も言っちゃって。」
「やっぱあさ美ちゃんも思う?あんなので騙せると思ってんのかな。頭いいと思って、のぼせあがってんだよ。」
「聞こえるように言ってんじゃねぇよ!この、くそがきども!!」
二人を次の仕事に追いやり、私はそっと息を吐くのだ。
娘。にいる間は。
30になるまでは。
子供を産むのに辛くなるまでは。
芸能界で生きるようになったからといって、私の根本的な部分は変わらない。
- 58 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:25
-
太陽が昇りきる前に仕事は終わったが、まっすぐに家に向かった。
たまにはハナタロにも、存分に陽の光を浴びさせてやろう、と。
家に帰ると、その格好のまま、ハナタロを外に連れ出す。
まだまだ育ち盛りの二匹の犬は、我先にと、リード一杯に前へ前へと駆けていく。
人と車に気を付けつつ、私もハナタロに合わせてペースを速めた。
近くの公園まで10分ちょっと、そこまでは走ろうと思った。
- 59 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:26
- 平日の午後だからか、人は疎らで、運良く他に犬を連れた人は見当たらない。
かわいいコですね、名前はなんていうんですか?みたいな、心にもないお世辞は、今でも苦手なのだ。
このコ達とのプライベートなときくらい、余計な気を使いたくない。
五部咲きくらいのコブシが、まだ薄い冬の光を受けて、色気のない公園の中、白く咲き誇っている。
上がった息を整えながら、コブシが綺麗に見える位置まで歩き、芝生に腰を下ろした。
チワワには少し長い距離だったのか、ハナタロも先程までの元気はなく、リードの範囲でじゃれあっていた。
風が少し強く、仕事の帰りには肌寒く感じたが、今は汗ばむ体に気持ちいい。
二本のリードを離さぬよう注意しながら脱力し、空を仰ぎ、仰向けに寝転がる。
「はぁ〜。」
思わず漏れた吐息に、ハナタロが来るが、私の匂いを少し嗅いだだけで、またじゃれあいだす。
天からまっすぐに射してくる陽光が気持ちいい。
空はやっぱり東京の色で、木立の向こうは喧騒ばかりだが、それでもやっぱり気持ちいい。
- 60 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:26
-
汗が完全に引き、寒さに耐えられなくなると、行きとは違う道順で家に戻った。
いつもよりも長く、バリエーションに富んだ散歩にご機嫌のハナタロに水をあげると、私はシャワーを浴びた。
濡れた髪を乱暴にタオルで纏めると、冷蔵庫からビールを取り出し、一気に呷った。
半分ほどになった缶をテーブルに置くと、大きく息をつく。
一通り余韻を楽しんだ後、冷蔵庫のビールの残りを数え、鍋に水を張って火にかける。
フライパンでゴマを炒り、湯が沸いた鍋に、鳥のササミを入れる。
ササミが茹で上がると、それを丁寧に細く裂き、再び鍋に戻して、さらに油を抜く。
そして、キムチとササミを和え、キムチの素とゴマを加え、冷蔵庫からビールをもう一本取り出た。
少し手間がかかったが、こんなのもいいと思う。
それに、ある程度筋肉がついたから、安心してビールも飲める。
- 61 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:26
-
四本目のビールに手をかけたところで、水を飲んだ。
時間はまだまだある。
今日はゆっくりと酔いたかった。
パキシル錠を噛み砕き、苦みばしる口内にビールを流し込む。
何度も使える方法ではないのだが、こう飲むとビールの旨みがよくわかる。
私が酒を飲んでいる間、ハナは心配そうに私を見上げ、タロは匂いが嫌なのか、距離を置く。
- 62 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:27
- 「あの人、自分の人生ネタにして結婚しそうやなー。な?ハニャ」
足元にいるハナを抱き上げ、キスする。
今日、小川は、私は頭がいい、と言った。
それは違う。
慎重なだけだ。
臆病すぎるくらいに。
- 63 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:27
-
私の思考を邪魔するように、助けるように、携帯が鳴った。
誰かと話したくて、迷わずに電話を取った。
「ぁい」
「あ、みっちゃん。今日?ええよ。」
「こっち来ぃや。今、家で飲んでるんよ。」
「この前行ったばっか、って。今日来たってええがな。」
「酔ってへんわ。うっさい、ボケ!昼から飲んでんのちゃう。空見てみぃ。夜やないの。」
「はぁ!?知っとるわ、んなもん。今日は空がオレンジでも、もう夜や。」
「ハナとタロも待っとるで。あと、悪いんやけど、ビールも買ってきてくれへん?いつものやつ。」
「そう、アテはちゃんと家にあるから。じゃ、あとでな。」
- 64 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:28
-
「なぁ?ハナちゃん。あれやな。まあ、あれや……なんやったっけ?」
そう、また惚けるのだ。
犬の花子や太郎にさえも。
- 65 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:28
- おしまい
- 66 名前:. 投稿日:2004/03/16(火) 04:29
- >>51
ありがとう。なんか嬉しい。
- 67 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/16(火) 21:21
- うん、いいよ、いい
- 68 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:20
-
_解脱
私は久しぶりに札幌に帰ってきたというのに、不機嫌だった。
せっかくだからと、家族で食事に行った帰り道、私は後悔していた。
あんな気まずい空気の中で食事するくらいなら、お母さんと少しくらい衝突しても、友達と会えばよかった。
繁華街を少し抜けた先の闇が、どこか夢見心地で現実感を薄れさせていた。
- 69 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:21
- お父さんとは未だに気まずい。
下らないきっかけで決定的な溝ができたことは確かだけど、溜まりに溜まっていたものが噴き出しただけだ。
そんなことはどうでもいい。
お父さんを許す許さないでなく、受け入れられないことが当たり前になっているのだから。
「これからどうしようか。まだ時間あるわね。あさ美、どっか行きたいとこある?」
東京では神経質そうに私をガードしてくれているお母さんも、地元にいる安心感からなのか、警戒が散漫になっている。
普段なら、外で「あさ美」なんて絶対に呼ばない。
「私、帰りたい。昨日は遅くまで仕事だったし、今日こっちに着いたばっかだから疲れちゃって。」
言い訳くさい理由が、どこか嘘臭く響いた。
それは、並んで歩く三人と、人一人分のスペースを空けて歩いているせいかもしれない。
これは私がファンの人に気付かれたとき、家族に迷惑をかけないようにという、言い訳。
- 70 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:21
- 「そう?私は平気だけど。」
さっきからお母さんが一人で話している。
お母さん経由で私からお父さんへ、お母さん経由でお父さんから私へ。
「でも、雪降ってきたし。……私はどっちでもいいけど。」
妹は、私とお父さんとの喧嘩をずっと見てきたから、お父さんとは上手く関係を築けている。
「じゃあ、歩いて帰ろう。ここからなら二十分くらいだし。それでいいだろ?」
「たまには家族並んで歩くのもいいわね。それでいいでしょ?」
お母さん経由で、お父さんから私へと。
私は黙って頷いた。
- 71 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:21
-
小雪がちらつく道を、会話のない四人の家族が歩く。
私は楽でいいんだけど、お母さんはあちこち見回し、会話の糸口を探している。
お父さんはどこか思いを巡らすように考え込み、妹は寒さに身を縮ませている。
十分ほど歩くと、警察が道を封鎖していた。
私達の家は、その先の向こうにある。
「ちょっと事情を聞いてくるわね。」
お母さんは、人垣を整理している警官に、小走りに寄っていった。
- 72 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:22
-
「火事があったみたい。」
避難命令が出ているため、住民は近くの公民館や学校にいるらしい。
人の良さそうな中年の警官の案内に従った。
私は最後尾を歩いていた。
頭がぼんやりして、上手く思考が繋がらない。
寒さのせいか、感覚もどこか鈍い。
お父さんが警官にどうなっているのか聞いても、よくわからない、としか返ってこない。
お母さんは訝しがっていたが、私は本当に知らないのだろう、と思った。
よく見ると、雪に混じって灰がちらほらと混じっていることに気付いた。
余程大きな火事なのだろうが、ここからでは火の手は見えない。
- 73 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:23
-
警官に案内された先は、私が卒業した小学校だった。
外観は思い出のままだったが、夜のせいもあってか、雰囲気がかなり違う。
地域住民が犇いているせいかもしれない。
「ここで指示を待って下さい。」
案内してくれた警官は、警備しているのだろうか、校門にいた別の警官に私達を預け、来た道を戻っていった。
「では、校舎へどうぞ。毛布だけは用意してあります。」
引き継がれた警官は細長い目をしていて、有無を言わさない威圧感がある。
私達は、何を尋ねることもできずに、校舎に入った。
校内に入ると、体育館はおろか、あらゆる教室には人が溢れていた。
「こんなに人、住んでたんだね。」
妹がそう耳打ちしてきた。
全くその通りだと思い、妹だけに聞こえるように小さく答えた。
- 74 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:23
- 友達がいるか探してみたが、これだけの人数では見つけられそうもない。
こんな帽子を深く被っていなければならない状況では、友達が私を見つけるのは難しいだろう。
私は疲れで体を思うように支えられない。
何かに操られているような感じすらしてくる。
思えば、昨日までは休みなしで働き、今日は東京から札幌まで移動したのだ。
無理もない。
早く眠りたかった。
今の訳のわからない状況は不安でならなかったが、火事なのだと単純に納得した。
今の私に何よりも必要なのは、情報ではなく睡眠だ。
お父さんが調理室の一画を見つけると、私は崩れるように眠りに落ちた。
- 75 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:24
-
次に気が付くと、外はまだ暗く、起きているのは眠れなかった人達だろう。
誰もが一様に、憔悴した顔で座り込んでいる。
状況を聞いてみたかったのだが、モーニング娘。だとバレるのが嫌でやめた。
眠りが深かったせいか、固いタイルの上での睡眠でも、十分に休養になったらしい。
新幹線などで眠っても、体力回復する術を身に付けなければならなかったことに感謝した。
何か一つ確認したような、そんな爽快感があり、体はすっかり回復し、軽かった。
懐かしの母校を見て回ろうと思い、隣で寝ている私の家族を起こさぬよう、そっと調理室を抜け出した。
思い出の詰まった校舎なのだが、如何せん人が多い。
妙な違和感は否めない。
友達はいることにはいたのだが、デビューと同時に疎遠になった子だったので、声を掛けなかった。
- 76 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:24
- 玄関の前を通ると、気の短そうなおじさんと、背の高いひょろっとした警官が揉めていた。
それを、遠巻きにギャラリーが囲んでいる。
「外に出せって言ってんだろうが!」
「だから、それは無理なんです。何度も言うように、私共も状況がわからないんです。」
「それでいいって言ってんだろ!!自分の身くらい、自分で守るわ!」
すると、昨夜、正門にいた警官がやってきた。
今日は警棒を手に持って、ぶらぶらさせている。
「ここで指示を待って下さい。」
感情の篭っていない目と、温度のない冷静な口調に、ざわざわしていた空気がピタッと止まる。
細目の警官は、おじさんが怯んだのを確認すると、踵を返して持ち場に戻っていった。
おじさんがすごすごと校舎の奥に引っ込むと、ギャラリーは散開し、私も調理室に戻った。
私の家族は、まだ寝ていた。
お母さんは基本的に私の世話をしてくれているが、長く札幌に帰ることもある。
そんな時、三人でどんな会話をしているのだろうか。
見た感じ、この三人の家族はしっくりきている。
自分の入らない家族の図が、ちょっと寂しかった。
- 77 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:25
-
ただじっとしていると、体が疼いてくる。
せっかくの休日を不意にするのも勿体ないと抜け出そうと思った。
訳のわからない状況に身を甘んじ、僅かな休日を潰すのは、あまりにも忍びない。
正門からは無理だろうが、裏庭にある飼育室の屋根を伝えば、外に出られるはずだ。
飼育室の中から、屋根に出られる仕組みになっている。
昔、飼育係の子に連れられて数度行ったことがあるだけだったが、鍵の隠し場所や登り方は覚えている。
鍵の隠し場所さえ変わっていなければ、校舎から出られるはずだ。
誰かの携帯メールに、こっそり外に出ることを入れようと思ったのだが、圏外だったのでメモを妹のポケットに忍ばせた。
- 78 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:25
-
裏庭は雪に埋もれて、外に出ることができなかった。
雪のない冬に慣れきった私が、少しだけ悲しかった。
しかし、と思い直す。
これだけ雪があれば、階段の踊り場の窓から、飼育室の屋根に飛び移れるのではないだろうか。
そう考え、行ってみると、案の定、窓から飼育室の距離はそうはない。
時間が早いせいもあるが、廊下や階段は暖房がないため、人はほとんどない。
人のいなくなった今の内に、と、迷わず窓をよじ登り、その勢いで窓枠を蹴った。
落ちても雪がクッションになるだろうと思う暢気さと、休みに対する執念に感心しながら。
飛び降りた瞬間、叫びそうになったが、ぐっとこらえた。
体が恐怖で固まったせいだろう、不恰好に顔から突っ込んだ。
短く悲鳴をあげてしまったが、これは雪が吸い込んでくれた。
冷たかったが、うつ伏せになったままで、辺りを窺った。
そして、目の前の光景に言葉を失った。
- 79 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:26
- 街の一部がごっそり抜け落ちてしまっているのだ。
真っ黒に、ぽっかりと。
ここで見えるなら、学校からでも、と思い、振り返る。
気が付かなかったが、校舎の全ての窓に、光の差さないような重い色のシールが貼られていた。
がつんときた衝撃と不安に、鼓動が信じられないくらい高く速く鳴っている。
落ち着けと何度も自分に言い聞かせ、雪を口に含んだ。
少し苦味のある雪は、口内でじんわりと溶け、その冷たさに、僅かだか自分を取り戻せた。
- 80 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:27
- 心を決め、黒い穴をもう一度見てみる。
やはり、何もない。
黒い穴の直径は、50メートルくらいの楕円。
場所は、ここから直線で900メートルくらいだろうか。
私の家からは、そう近い位置にあるわけではない。
ギリギリで、私の住んでいるところも閉鎖の対象になったのだろう。
火事である可能性は、残念ながら考えられなかった。
きっちり楕円形に街がなくなっているのだ。
そして、爆発でもないだろう。
爆発音は全く聞こえなかったし、それならもっと乱雑に街が壊れるだろう。
これは「壊れて」いるのではなく、「なくなって」いるのだ。
自然の摂理を超越した光景に、休日の過ごし方なんて消え失せてしまった。
指示を待とうと思った時、私は重大な過失に気付かされる。
- 81 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:27
- 飛び降りた窓には、ここからは戻れない。
こんなに雪の積もった屋根では、飼育室の中に入るのも不可能だろう。
助けを呼ぼうにも、自分の存在がバレてしまうのは嫌だったし、玄関でのやり取りをみていると、警官の世話になるのも気が乗らない。
仕方なく、私は誰にも気付かれぬよう、屋根を這って隣の家へと伝っていった。
- 82 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:27
-
恐らく、この一帯の住民は、既に一纏めにされているのだろう。
人通りは全くない。
監視の対象地域の外に出ようと思ったが、それは無理だろう。
私ならきっと、外から来る人よりも、中から外に出る人を警戒する。
途方に暮れた気持ちで、とりあえず家に帰ろうと思った。
落ち着いて、今の状況を考え直したかった。
人員の多くは穴の方に割かれているのだろう、人通りのない街はどこか異質で、白くぼやけているような印象を受けた。
私は誰と鉢会うこともなく、すんなりと家に帰ることができた。
その間、ぽわぽわした違和感だけは拭い去ることができなかったが。
私は、自分の部屋に入った瞬間、急激な眠気に襲われた。
人生で一番濃いのかもしれない今朝の出来事を思い、無理もないと睡魔に身を任せた。
- 83 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:28
-
揺り起こされ、寝ぼけ眼のまま見上げると、お母さんが泣いていた。
あまりに突然の場面の切り替えに、私は少し困惑してしまった。
近くにいたお父さんに事情を聞いた。
四の五の言っている場合ではないと直感していた。
- 84 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:28
-
ここはしばらく隔離されるということ。
食料その他は全て配給で、水もしばらく使えないということ。
国家の機密事項だから、全ては内密に処理されるということ。
途中から意味がわからなくなり、現実を全く伴わなずに私に響いた。
そんな中、一つだけ確信していたのは、そんなの「ありえない」ということ。
私がお父さんの話を遮る。
「だって、そんなの──」
逆に遮られ、携帯を三つ突きつけられた。
そのどれもが圏外。
コートに入れておいた携帯を見ると私のも圏外になっていた。
お父さんがテレビをつけようとするが、画面は暗いまま。
どのテレビもそうなのだ、とお父さんが言い、少し間を置く。
「夜の間に全て決まったことらしい。情報は全て押さえられているそうだ。」
目の前が真っ暗になった。
- 85 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:29
-
あれから随分と経った気がするが、何も状況は変わらない。
重大な何かを見落としているような気がしていたが、受け入れなければならない。
現にこうして、起こりえないことが、実際に起きてしまったのだから。
情報の一切を封じられ、一夜の内にできたとされる鉄の壁のせいで、封鎖地域から出ることは叶わない。
家から出ることもせずに、ただ腐っていた。
このままきっと、世界に取り残されたまま、忘れ去られてしまうのだろう。
妹は私の部屋に入り浸るようになっていた。
携帯の電源を付けたり消したり、場所を変えてみたりとしているが、私には無駄な足掻きにしか見えない。
- 86 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:29
- 私はもう諦めていたのだが、妹は諦めきれないらしく、かなり苛立っていた。
生きている世界の違いだろう、と私は思う。
私は忘れられてしまうことは、芸能人としてだが、終わりだと教えられてきた。
忘れられることに怯えながらも、覚悟はしてきたつもりだ。
でも、妹はそんなことは考えたことなどないのだろう。
「ああ!ホントむかつく!なんだよ、このマーク!!」
妹の言っているマークとは、ここでの唯一の変化だ。
携帯画面の左上、三本の電波が、楕円の中に歪な丸が三つ入ったマークに変わっているのだ。
妹はこれをせせら笑っているのだと言い、お母さんは泣いているのだと言う。
私にはそれが無表情にしか思えなかった。
お父さんは、そんなことには目もくれず、どうにか現状を打破しよう頭を悩ませている。
マークが変わったからといって、通話ができるようになったわけではない。
妹はそれが許せないのだと言う。
- 87 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:31
-
「ちょっと、姉ちゃん?」
私が返事をしようとすると、しっ、と口元に指を当てた。
そして、声を潜めて言った。
「なんか聞こえない?」
ぱたぱたぱたぱた、空気を何度も何度も叩いているような乾いた音が、いくつも重なり合っていた。
窓の外には、たくさんのヘリコプターは群を成してやってくる。
妹は救援がきたと喜んでいたが、私の中では嫌な予感が渦巻いていた。
そして、それはすぐに確かな感情になった。
- 88 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:31
-
♪じーんせぇー らぁーくありゃ くぅもあーるさぁー♪
どのヘリも、大音量で水戸黄門のテーマを流しているのだ。
私は尋常でない存在の登場に怖くなってしまったが、妹は激昂している。
夏より明るい冬の空、派手な配色のヘリコプターがいくつも飛んでくる。
黄色字に青いラインという、胡散臭い爽やかさの小型ヘリ。
そして、ヘリの腹には、あの携帯の楕円のマークが、赤く描かれていた。
- 89 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:32
- その中の一つが、私の家の周りをぐるぐると回っている。
怒りに震える妹は声を荒げ、猛烈な勢いでヘリに向かって怒りをぶつける。
ヘリのガラス張りの部分から、操縦者が見えた。
化粧の濃い、髪をきりりと一つに結った大柄のおばさんが、笑顔で私達に手を振っている。
無表情の上に笑顔を貼り付けたような、何一つ動かない気味の悪い笑顔。
妹はあらん限りに罵倒し続けている。
「やめなよ。」
私の制止も聞かずに、妹は中指を立てた。
ヘリのおばさんは、ニコニコしながら右手で銃の形を作った。
そして、笑顔のまま、ばーん、と口を動かすと、妹が後方に吹っ飛んだ。
声も出なかった。
私の大きく見開いた目はどんどん乾燥していくが、瞬きすら許されない。
おばさんは、変わらず笑顔で手を振り続けている。
何のダメージもないのか、妹はすっくと立ち上がると、また狂ったように罵言を浴びせ始める。
- 90 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:32
-
私はこの瞬間、何かを悟った。
それは一つか二つか、そう多くはないが、確定した運命、いや予感の方が正確だろうか。
もう、私も、この世界も終わりだろう。
ダメになってしまうのだ。
今のこの私は、私自身を失い、全ては幻だったように消えてしまうだろう。
綺麗に、さっぱりと、何もなかったかのように。
- 91 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:33
-
混乱の極みに立たされながらも、遣り残したことを探していた。
何かできること。
取り返せること。
後悔していること。
真っ先に浮かんできたことを否定しても、それはまたすぐに浮き上がってきてしまう。
妹は吹っ飛ばされながらも鬱憤を撒き散らし続けているが、その力は次第に弱くなっていく。
ヘリのおばさんの笑顔は崩れない。
次、また世界が変わるのなら、少しだけお父さんに優しくできるかもしれない。
そう考えていた。
- 92 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:33
-
そんな夢を見た。
最悪の目覚めだったが、心に少しだけ、本当に少しだけど、余裕ができた気がした。
- 93 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:34
- おしまい
- 94 名前:. 投稿日:2004/03/17(水) 03:34
- >>67
自分にレスもネタ。
- 95 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/17(水) 20:47
- どひゃ。でも面白い
- 96 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:42
-
_道重さゆみは最近、自分のキャラに飽き始めているらしい
第2回 可愛いだけのアイドル復権に関する作戦会議
「所長、私はもう耐えられません。この前は絵里に鼻で笑われました。それに、飯田さんが本気で私たちを心配し始めています。」
「所長、マコちゃんは、ただの食いしん坊倶楽部だと思っています。」
- 97 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:42
- 黒ぶちの伊達メガネを購入した石川。
付け髭、もしくは付け黒子、次はどちらにしようか考えている。
「まず、道重くん。笑いたい奴には笑わせておけばいいじゃないか。平凡で愚かな者ほど、偉業を成す人間を嘲るものだよ。それに、飯田さんは心配しているのではない。本当は自分が一番心配されるタイプだと自認しているから、常に誰かを心配しているフリをして、社会性があるように装っているだけなのだよ。そして、紺野くん。お菓子やら何やらを持ち込んでいるのは、君たちじゃないか。そんなに食いしん坊だと思われるのが嫌なら、ケータリングにたむろするのはやめなさい。あと、ちんたら食べるのもやめなさい。さっさと食べて、人に食べている姿を見られないようにすれば、それで解決じゃないか。」
「……おかしな説得力がありますね。」
「うん、特に間違ったことは言ってないからね。」
自信たっぷりに言う石川に、反論の余地を見つけられない道重と紺野。
- 98 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:44
-
「現状を確認しておこう。まず、仲間集めの成果は芳しくないが、勧誘は継続していこうと考えている。で、次──」
「ちょっと待って下さい、所長!!勧誘は、もういいんじゃないでしょうか。キッズに『よくわからないんですけど、モーニング娘。って、やっぱり大変なんですね?』と言われた私の気持ちがわかりますか!?」
「私も異議あり、です。キッズは、全くお呼びのかからない子達しか、私たちの意図するところを理解できていませんでした。それに所長、私たちばかり働かせて、自分は何もやってないじゃないですか!いきなり後藤さんの前に引きずり出されて『紺野、話があるみたいだよ。』は酷過ぎます!あの時の後藤さんの困り果てた笑顔、私の頭の中から離れないんです!!おじゃまるの時だって、あんな呆れた素振りは見せなかったのに……」
- 99 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:46
- 「次の作戦だが、Helloの枠を飛び出してみようと思う。テレ東で思いつくアイドルといえば?道重くん。」
「え?私、あんまりテレビ見ないんで。それに私たちの意見は無視ですか?」
「ほら、毎朝やってるじゃないか。わかるだろ?紺野くん。彼女らこそ、私たちとウマが合いそうではないか。」
「でも、私たちとトントンじゃないですか。それ、マジやばいっす。つーか話くらい聞けよ。」
「紺野、今は冷静な分析はいらない。……が、意見は参考にしよう。では、チェ──」
「今いません!!」
矢のような紺野のつっこみ。
「でぇへへ、いまいません、だって。」
道重はシンプルなのがお好き。
「シゲさん、そんなのが面白いのぉ?」
「いや、面白くないです。ないですけど、ひひ、なんか笑えちゃって。」
「なにそれー。」
- 100 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:47
-
ほんわかムードでクッキーをつまむ二人を見て、石川はまた限界を感じていた。
言葉が乱れてるよ、と出かけた言葉を引っ込める。
自分の言葉も崩れているのではないか、と。
しかし、と心を決めなおし、タイミングを見計らう。
付き合ってやってる感が強い紺野と道重。
ちょっとだけ石川に合わせて、あとは好き放題。
「ちょっと電子レンジ借りますね。」
そう紺野が鞄からマイマグカップとパックのココアを取り出し、レンジでチン。
温めたココアに、隠し味だとマシュマロを入れた
これも隠し味だと道重に言われ、クッキーも一緒に。
その道重は部屋着に着替え、完全に寛いでいる。
- 101 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:50
-
「今日はこの辺にして、お話しましょー。」
石川は思った。
この爛漫で変化に富んだ末っ子には勝てない、と。
こんな短時間で挫折するなんて……
今日はもう無理だと、きつくひっつめていた髪を解いた。
- 102 名前:. 投稿日:2004/03/18(木) 02:51
- >>95
ごめん、なんか今日は返レス考えられないわ
- 103 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/18(木) 18:40
- 年下に囲まれて王様気分の石川様、素敵です
- 104 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:37
-
_黄色いお空でBOON BOON BOON
2001年からの悪習。
ハロプロライブにおける、ハローメンバーの雛壇。
開始当初では、辻が健気にタンポポの振りをしているなど、切なくも暖かい一面を見られたが、今では観客の優しさのみで支えられているMCとそう大きくは変わらない。
退屈した村田と柴田の、そんなある一幕。
- 105 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:38
-
「しかし、キッズが一番大変だねぇ。」
「だよね。キッズ以外、そう覚えることないから、お祭りムードで楽しめるんだけどね。」
「しかしだね、柴田くん、あのMCは何とかなあんのかね。」
「今年は大豊作、ってやつ?」
「まだ種も蒔いてませんよ。」
「……私が考えてるんじゃないんだからさぁ、ネタないからって、そんなとこつっこまないでよ。こっちだって恥ずかしいんだから……」
「ウソだよ、うそ。それよりさ、あゆみん。猪木超えた人、この中にいるんだよね。」
「違うよ。猪木を超えたんじゃなくて、猪木チケットの値段を超えた人だよ。」
「何十万だっけ。」
「えっとねぇ、確か60か80。そのオークションのリンク、2ちゃんで見かけたんだけど、席どこか忘れちゃったよ。」
「そういうの、ちゃんと覚えてなきゃダメだよ、あゆみぃん。お金って、やっぱあるとこにはあるんだねぇ。」
- 106 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:39
-
「それはいいけどさ、むらっち。ちゃんとしとかなきゃ。DVDになるんだし。」
「それは大丈夫。ちゃんと私は口ずさんでる感じで喋ってうから。」
「えぇ〜?私、そんなの気にしてなかったのに。」
「平気平気。関係ないよ。どうせポイントになんないと映んないし。」
「そっか、せーのっ!のあたりか、ぶんぶんのとこ、くらい、かな?そこだけはしっかりしようね。」
「そう、こんな予定調和、さらっと流して安倍さんの花舞台に備えようじゃないか。」
「あ、でも、そうなんだけどさ、見に来てくれてる人の中には、一生に一度の人もいるかもしれないんだよ。」
「……今日ばかりは安倍さん目当ての人ばっかりだよ。残念ながら。」
「……そっか、そうだよね。ごめん。もし私達のファンの人が今日のチケット持ってても、売って私たちの遠征費用に回してくれてそうだもんね。立ち見でも5万くらいだったし。」
「まじ?」
「マジ。」
「そっかぁ。Helloはまだまだ安泰だねぇ。」
「だねぇ。」
- 107 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:40
-
「そういやさ、なんか今日は卒業だかあ、打ち上げ、高い酒が出てくるらしいよ。」
「むらっち、お酒飲まないじゃん。でも、食べ物もおいしいと思うよ。」
「あゆみん、今は冬だよ?」
「わかってるよぉ。太らないように食べますぅ!」
「それならよろしい。」
「でも、今日、安倍さんってラジ──」
♪BOON BOON BOON♪
- 108 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:41
-
「こういうとこでちゃんとやっとくと、ポイント高いしね。」
「柴田くんはしっかり者だなー。でも、安倍さんがラジオに出るのは問題だなー。グレード下がりそう。」
「梨華ちゃんでも出しとけばいいよ。」
「なに怒ってるの?」
「酷いんだよ、梨華ちゃん。人のこと、いきなり歌ヘタだって。自分のこと棚に上げてさっ。」
「それは私達には耳の痛い問題だねぇ。」
「でしょ?……でしょ、じゃないや。棚上げが問題だから。」
「しかしだね、柴田くん、こういう今こそ、改めて自分達の在り方を考え直そうじゃないか。」
「ちょっと最近、微妙にだれてたからね。」
「それは違うよ、柴田くん。今は惰性で次の力を溜める時期なんだよ。」
「なんか段々博士混じってきてるよ。」
「そうかね?それは実に──。」
♪せーのっ♪
- 109 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:41
-
「むらっち、ちょっとタイミング早かったよ。」
「そう?こんなもんじゃない?」
二人の会話に聞き耳を立てていた安倍と石川は、ほとんど誰にもわからないくらいだが、立ち上がるタイミングを外した。
- 110 名前:. 投稿日:2004/03/19(金) 04:43
- >>103
ありがたいが、こんなんでいいのだろうかと自問自答……
- 111 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:02
-
_昨日よりも今日よりも好きになりたい。思い切り愛したいぷに
3月4日
天王洲スタジオ一階、カフェにて。
「今日はハロモニ。の収録ぷに。どうせグダグダだから、楽勝ぷに。」
「あいぼん、そんなこと言ったらダメぷに。一生懸命やらなきゃいけないぷに。」
「心にもないことは言うもんじゃないぷに。ミキティ、だらけすぎぷによ。」
「寝言が得意なあいぼんに言われたくないぷに。」
「「むむむむむむむむむぅ〜〜〜〜」」
- 112 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:03
-
「ミキティはじぞじぞしないぷに。」
「きっかけなしにクイズで勝負ぷに。」
「くだらないひっかけは通用しないぷによ、あいぼん。」
「なにをぉ?ぷに。」
「「むむむむむむむむむぅ〜〜〜〜」」
- 113 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:03
-
「負けた方は、まりっぺに『センチメンタル南向き』を、願いを込めて心で歌うぷに。」
「いいぷによ。けど、美貴のソロコン、微妙にバカにしないで欲しい……ぷに。」
「微妙に素に戻らないで欲しいぷに。じゃあ、行くぷによ。」
「おう、ぶりんこうんこの片割れ、来いや、ぷに。MCや青春の過ちは取り返せないぷによ。」
「「むむむむむむむむむむむむむぅ〜〜〜」」
- 114 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:03
-
「人生としては勝ち組のはずなのに、常に敗北者。だ〜れ?ぷにぃ。」
「ぷにぷにぃ?」
「わかんないぷにかぁ?ミキティ、案の定、おつむが弱いぷにねぇ。」
「なにをぉ?こうなったら、あいぼんの心を読んでやるぷによぉ。」
「「むむむむむむむむむぅ〜〜〜〜」」
- 115 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:04
-
偶然、それを遠巻きに見ていたC子は思う。
こいつら、本気でバカじゃん、と。
ちなみに、今日は三月四日。
C子には仕事がない。
彼女の中で、四日(よっか)と八日(ようか)の区別はまだ存在しない。
- 116 名前:. 投稿日:2004/03/20(土) 03:04
- おしまい
- 117 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:20
-
_安倍さんのジャージは、何故そんなに臭いのか?
石川梨華談
「安倍さんのジャージ?それ、私もわっかんないのよねぇ。っていうか、私が知ってる訳ないでしょ?あ、わかったら教えてね。」
- 118 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:21
-
亀井絵里談
「卒業の時のメッセージのことですか?デビュー前にTVで見たんですけど、安倍さんはジャージ洗わないって。絵里、ずっと思ってたんですけどぉ、安倍さんってダンスレッスンの時、クサイじゃないですかぁ。これってあんまりジャージ洗わないから、もう匂い取れないんだろうなぁ、って。で、クサイの限界が近づいてたから、買いに行くんじゃないのかなぁ、って思ったんです。ジャージって買うのって、プライベートの時じゃないですかぁ。あれは安倍さんとプライベートでも会いたい、って意味です。」
辻希美談
「なちみが臭いの?慣れちゃったよ。のの達が入った時からずっとだし。ね?あいぼん。」
加護亜依談
「うん。もうあれはそういうものだと思って諦めるしかないよ。」
- 119 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:21
- 矢口真里談
「なっちのジャージ?最近着てなかったけど、アレでしょ?ずっと着てたやつ。洗わないからね、なっち。でもね、たぶんだけど、なっちが付けてる香水がまずいんだと思うよ。ダンスレッスン用らしいんだけど。」
田中れいな談
「安倍さんのジャージ?れいな、それずっと聞いちゃいけないことなんだと思ってました。」
- 120 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:22
-
飯田圭織談
「なっちのジャージ?ジャージというか、なっちが臭いからね。なっちがレッスンでつけてる香水、あれ、たしか駄菓子屋で売ってるやつだったような。ん?いつからクサかったのか?忘れちゃったよ。最初の頃は、そんなことなかったしねぇ。ケンカしてる頃に臭くなったんだろうから……う〜ん、まあ、そんな感じだよ。ごめんね、力になれなくて。」
道重さゆみ談
「ダンスレッスンの時の安倍さんの匂いですよね?あれって臭いですか?変な匂いだとは思いますけど。」
- 121 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:22
-
吉澤ひとみ談
「安倍さんが臭いの?あんま気にしたことないからなぁ。ごっちんなら何か知ってるんじゃない?前になんかそんなようなこと、言ってた気がする。」
後藤真希談
「つーか、なっちが臭いんじゃないかなぁ。前に一緒に遊んだ時、ごとーが娘。入ったばっかの時なんだけど、なっちのお気に入り、とかって、おかしな店に連れて行ってくれたの。なんかレトロ、っつーより、ただぼろい?みたいな。気味悪い葉っぱ焚いてるような感じの。でね、これ魅惑の香水なんだよ、とかって、私に勧めてくれたのがあるのね。それさー、うんこ香水だったのよぉ、これがまた。あん時ごとーまださー、なっちがそういう冗談好きなの、知らなくてさー。で、ちょっと距離置こうと思ったねぇ、あん時は……」
- 122 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:26
-
「これってさー、総合すると、安倍さんがダンスレッスンの時、うんこ香水つけてる、ってことでいいよねぇ?」
「私、里沙ちゃんのでいいと思う。でも、なんでだろうね。普段はいい匂いの使ってるのに。」
「まこっちゃん、そういうことは聞かん方がええって。これでええやろ?あさ美ちゃん。柴田さんもこれで十分やろ。」
「うん、さすがに安倍さんに聞くわけにはいかないしね。でも、舞台終わってから調べてくれなんて、柴田さんらしいよね、なんか。」
- 123 名前:. 投稿日:2004/03/21(日) 02:26
- おしまい
- 124 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:57
-
_よろセンより長いあややのざわわ
「みなさ〜ん、集まってくださぁい。」
あややの声に誘われて、何となしにゾロゾロとキッズを含むハローメンバーがやってきます。
これぞあややマジック。
10人ほど集まったところで、急にあややが歌い始めます。
「あ、いくよ、1,2,3」
- 125 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:57
-
♪も〜もい〜ろのかたおもーい♪
歌に合わせて、振りの指差しでおっぱいタッチ。
♪かぁたおもーい くわぁたおもーい かたおもぉい きゃたおもうぃ かわおもうい♪
聴衆の飽きがこないよう、微妙に歌い方を変える天性のエンターテイナー、あやや。
けれど、やってることは、ほとんどセクハラです。
- 126 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:58
-
あややは歌いながら、気の向くままにつんつんしています。
みうなちゃんにつんつん、柴ちゃんにつんつん、梨華ちゃんにつんつん、あっちゃんにつんつん、のんちゃんにつんつん……
みんなキャーキャー騒ごうが、お構いなしです。
3周くらいつんつんしたところで飽きたのか、あややは感想に移ります。
「はぁ〜い、まっつうらはですねぇ。あいぼんのが一番だと思いましたぁ。あと、亀井ちゃんもいい感じにきてるよ!このおっとこなーかせー。反応で一番好きなのは、顔を真っ赤にしている紺ちゃんでぇ〜す。かまととぶっちゃって☆でも、やっぱり美貴たんのが、あやや的には一番で〜す。」
- 127 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:58
-
「……藤本、いないじゃん。」
みんなのどうにかしろって視線に後押しされ、つっこんだ飯田さんに対し、ぷんすかとあややは軽く逆ギレです。
「飯田っさん!あなたが一番つまんないですよぉ。なんですかっ!さっき無反応は。それが大人の女なんですか?キッズだって、なんか反応するんですよっ。見てください。キッズのまいちゃんだって、胸を押さえて恥ずかしそうにするんですよ。まだやってる。……あんなハニカミ笑顔。そう、はにかみえがお。あれが欲しいんですよっ!」
みんなの心の内を代弁しただけの飯田さん、ぼろくそに言われています。
「ねーもんはしょーがねーじゃん。」
珍しく本当に傷ついてしまった飯田さん、ふらふらと去り行く背中が寂しそうです。
傷ついたポイントは微妙に違うかもしれませんが、飯田さんは大きなダメージを受けてしまいました。
飯田さんを打ちのめしてしまったあやや、呆然とその後ろ姿を見送ります。
みんなも、ぽかーんと言葉をなくしてしまいました。
- 128 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:59
-
「あややでしたぁ〜」
誰よりも切り替えが早かったあやや、楽屋に戻るまで、ステージさながらに手を振り続けます。
「あれ?オチは?こんなことやるために生きてきたんじゃないんです!みたいな、笑えるやつ。」
いつもはピントが極端にずれている里田のまいちゃん、珍しく的を射た発言をします。
けれど、あややはすでに過去の人。
大御所のおっぱい遊びなんて知る由もありません。
満足気に散会するキッズ組と、取り残された感じの少女から羽化しようとしている少女達。
中には、ファンもびっくりしてしまうくらいの子供キャラである二十歳なりたてや、前髪を切って少女であろうと無駄な足掻きをする人や、熟れたあっちゃんなどもいますが……
とにかく、まっぷたつに分かれました。
説明させて頂きますと、これはあややが憧れの人か、同僚かの違いです。
- 129 名前:. 投稿日:2004/03/22(月) 04:59
- おしまい
- 130 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:44
-
某日
某地方裁判所 808号法廷
裁判長の抑揚のない早口が、堅く冷えた法廷内に響き渡る。
- 131 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:44
-
「主文。被告、飯田圭織、当時23歳は、えーと、これは22歳の間違いですね。10/5(日)、神奈川県横浜市の横浜アリーナで行われたモーニング娘。のコンサート「モーニング娘。CONCERT2003 〜15人でNON STOP!〜」の夜公演中、大便を漏らしたということで、カレーにおけるトラウマ症候群に関する罪に問われているものである。これは被告が前日に多量の飲酒をし、腹を下していたという事実、また、同グループ藤本美貴、ミニモニ。がMCでフリースローをしている際、つまり被告がモーニングコーヒーを歌う直前にトイレで便を済ませていたが、アンコールのGo Girl 〜恋のヴィクトリー〜の曲中、突然襲った便意に耐えていたが、ダンスの振り付けの力み具合により、勢い余って大便を漏らしてしまった。ステージ上で大便を漏らしてしまい、パニックに陥ってしまった被告は、その場で衣装のズボンを脱ぎ捨て、脱糞しながら、その場で蹲ってしまったというもの。
- 132 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:44
- 仕事仲間に見られるよりは、ステージで何もかもをぶちまけてしまおうという非常識かつ、非論理的な思考に及んだことで相当以上のパニックであったと考えられるが、子供に夢を与える存在としては、けしからんことである。加えて、翌日にコンサートが控えているのに腹を下すほど酒を飲んだという、プロ意識の欠如。
- 133 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:45
- 以上の点を鑑みると、やはり国民的アイドルであるという立場上、これらのことは非常に許されがたい行為であったと解される。
しかし、モーニング娘。ひいてはHello!Projectにおける飯田圭織の立場や存在意義を考えると、自棄を起こしてしまうだろう事情は理解できる。よって、情状酌量は余地は認められるとし、被告に懲役三十二時間、執行猶予十四日間を命じる。また、被告には控訴する権利が……」
- 134 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:45
- おしまい
- 135 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:54
-
突然ですが……
ストック少なで、どこまで毎日更新できるかを目標にしていましたが、もう限界です。
始めから、作者が書きたかっただけ、の展開でしたが、うんことかざわわとか、救いようのないものになっています。
裁判の内容とかも、言われるまでもなくテキトーです。
とりあえず、この辺でおいとましときます。
- 136 名前:. 投稿日:2004/03/23(火) 01:59
-
勢いにかまけて、ちゃんとしていなかったのでレス返し。
>>36さん
ありがとうございます。
この話は総合して、青春群像ストーリーです。
本当は締めるに最適なネタがあったのですが、時期が時期なだけに遠慮しました。
>>名無し娘。さん
作者が書きたいだけの話を読んで頂き、ありがとうございます。
深く考えず、適当に楽しんでもらえるのではないかと、信じております。
倉庫行きしない程度に続くので、隔月のチェック、お願いします。
- 137 名前:名無し娘。 投稿日:2004/03/23(火) 21:43
- 面白い。ウンコ大好き。続きも楽しみです。
- 138 名前:. 投稿日:2004/03/24(水) 02:53
- いきなり筆を絶つのもなんなんで、解説なんぞを。
よろしければ。
_いしよしLOVEストーリー
駄作企画にも出せなかったもの。
好き勝手やるには、どうしても必要な話かと。
読者の今日を削ぐ意味で、グッジョブ!と自己讃美。
ストックの中からチョイス。
- 139 名前:. 投稿日:2004/03/24(水) 02:54
-
_ちょっと待てオマエハそれでいいのか? '03
冷蔵庫のモーター音の中に、妖精が潜んでいるんじゃないかと思っていた時期がありました。
これもストックです。
_忘れないから
藤本が書きたかっただけです。
タイトルは、投稿する時に見ていたビデオからそのまんま取りました。
- 140 名前:. 投稿日:2004/03/24(水) 02:56
-
_紺野あさ美はお菓子が食べ放題だからモーニング娘。を続けているらしい
石川さんの、向こう見ずな青春の炎が燃え尽きる前に頑張った話です。
何がきっかけで思いついたのか、忘れてしまいました。
_柴田の水着って、こっちが逆に緊張するよね?
柴田あゆみの「ayumi2」を見てない方、書店へGO!
Helloでなきゃ、柴田でなきゃ……
そんな仕上がりです。
キュンとします。
買えっ!!
福屋書店かなんかの、導入記録を更新したような記憶……
ついでに言っときますと、柴田は二日酔いです。
裕子さんが柴田に与したのも、何となくわかるでしょ?
>>37
舞ちゃん→きっずのまいちゃんで
- 141 名前:. 投稿日:2004/03/24(水) 02:57
-
_ありふれたぉヴぇsとry
紺野さん、書きはしないものの、思い描いてそうです。
_ひとといき
ラジオネタです。
姉さんの女が唯一、垣間見える貴重な時間です。
笑い話でもいいから、姉さんの深さの見えない想いが報われて欲しい。
大御所の優しさ、些細な許しの数々が気になって仕方がない、今日この頃です。
- 142 名前:. 投稿日:2004/03/24(水) 02:59
- >>137
うんこはいけません。
あの絶頂期の辻加護でさえ、敵わなかった禁断のネタの一つです。
- 143 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:15
-
_仲直りの少し前
リハの合間、私はさゆと並んで壁に凭れて座っていた。
広いスタジオだけど、私たちの汗で少しもわっとしていた。
私とさゆは、よく風の通る、スタジオの入り口から少し離れた場所を選び、滴る汗と息が落ち着くのを待っている。
- 144 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:15
-
ひっきりなしとまではいかないが、入り口の側だということもあって、人の行き来が多い。
挨拶しなければならない人が来るのかもしれないが、私とさゆは疲れたフリをして、ぼんやりしていた。
まだ一回目の休憩のせいか、先輩たちは元気に遊んでいる。
れいなは先輩に混じってはしゃいでいる。
私にはれいなのそれが、空元気にしか見えない。
飯田さんがこっちをチラチラと窺っていたけど、それも気付かないフリをした。
さゆが私の肩に顔を乗せてくる。
くすぐったかったけど、そのままにしておいた。
すると、さゆの顔はずるずると肩から胸、そしてお腹へと滑り落ちていく。
私は立てていた膝を伸ばした。
「なに?」
さゆは私の膝を枕にして寝そべったまま、別に何も、と素っ気なく返してきた。
右手を下にして、先輩たちの方を向いているさゆの視線はおどおどしている。
別に、じゃないだろう。
私はそう思ったけど、黙ってさゆの肩に手を置いた。
- 145 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:15
-
さゆとれいなのケンカは、一緒にいた私でもきっかけのわからないくらい、些細な衝突から始まった。
二人とも収まりつかないまま昨日が終わり、今朝、いち早く私を味方にしようと寄ってきたさゆを、れいなには悪いと思いつつも、突き放すことができなかった。
- 146 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:16
-
「ねぇ、水。」
さゆが私を見上げていた。
私はさゆを見下ろしている。
「ねぇ、水。頂戴。」
さゆはさっきよりも少しかわいい声で繰り返した。
私がペットボトルに手を伸ばすと、さゆは仰向けのまま、小さく口を開いた。
さゆの顎をくっと持ち上げると、鼻にペットボトルの水を流し込んだ。
ぶごっ、と、さゆは咽て苦しそうにしていたが、じっと耐え、私の膝から動こうとしない。
「違うよ。鼻じゃなくて、こっち。」
またさゆは小さく口を開け、下唇を触って指差した。
- 147 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:17
- 私はさゆの口にペットボトルをあてがい、ゆっくりと傾けた。
さゆは唇を窄め、吸い付くようにして水を飲んでいる。
安心しきったさゆの表情と、波打つ白い喉が、妙に私の加虐心をさらに駆り立てた。
そして、私はペットボトルを垂直に立てた。
さゆの口からまっすぐに伸びたペットボトルの水は、ごぼごぼと激しく水泡を立てながら、その量を減らしてく。
さゆは苦しそうにしながらも、ペットボトルから口を離せない。
途中で気付いたのか、さゆはペットボトルの飲み口に舌を挿して水を塞き止め、情けない目で私を見ている。
私は、水が零れないように注意してさゆの口からペットボトルを外すと、残り少なになったそれを飲み干した。
- 148 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:17
-
私にされるがままのさゆは、それでも私の下から離れようとしない。
せめてもの抵抗なのか、身を固く縮ませて、全体重を私に傾けている。
「ばか。」
さゆは私の太ももに顔を埋め、軽く歯を立てた。
「ばーか!」
今度は噛み付いてきた。
ジャージの生地越しで、さゆも力を抑えているせいか、痛みは感じない。
さゆの吐息が熱く感じられた。
- 149 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:18
- 「バカはさゆでしょ。」
私はさゆの頭にこつんと拳を当て、そのまま髪を撫でた。
さゆも、ここまできてやっと脱力する。
「わたしばかじゃないもん。」
「ちゃんとれいなに謝れる?」
「悪くないのに。」
「れいなもさゆに謝るよ、きっと。」
「……じゃあ、謝る。」
「いい子だ。」
「……かもしれない。」
さゆはやっと顔を私に向け、にぃっと笑う。
れいなが不安そうに私達を見ている。
私はれいなに向かって笑顔で頷いて見せた。
- 150 名前:. 投稿日:2004/03/30(火) 02:18
- おしまい
- 151 名前:. 投稿日:2004/04/01(木) 01:57
-
_ちょっと頑張ってみよう
「あはん、うふん、おほん、亜弥ちゃん、大好き。美貴、感じてるよ、亜弥ちゃんの全て、何もかも。亜弥ちゃんの惜しみない、愛が……愛を感じるの!亜弥ちゃんの全部!……亜弥ちゃんの指が!!」
そう叫んだきり、果てた美貴。
気を失った美貴を、優しく見つめる亜弥。
髪を撫で、額にキスし、美貴が起きないよう、そっと抱きしめる。
そしてもう一度、美貴の瞳にキスを落とす亜弥。
「美貴たん、love you……」
亜弥は誰にも聞こえないよう、そう呟いた。
- 152 名前:. 投稿日:2004/04/01(木) 01:57
- おしまい
- 153 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:07
-
_微熱って普通はほっとくよね?
神奈川県某市にあるコンテナ内。
わずか8畳ほどのスペースは、オリジナルメンバーの憩いの場。
これは第一次追加メンバーが加入の際、その不満をぶちまけるため、中澤が用意したもの。
本来は、収納用として積まれているコンテナ群。
近くに民家がないこともあり、オリジナルメンバー五人は、この一画で声の限りに鬱憤を晴らしたものである。
現在、このコンテナは何となく捨てられない場所として残り、中澤、飯田、安倍の飲み場所となっている。
今日も懐中電灯の灯りひとつで、三人の古株が酒を酌み交わす。
- 154 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:08
-
「裕ちゃん家で飲もうよ。」
股引も毛糸のパンツもおしゃれじゃないと着用しない飯田は、寒さに身を縮ませる。
季節は春を迎えているとはいえ、山間のこの一帯は夜になるとぐっと冷え込む。
「圭織、そんなこと言わんといてや。ここは思い出の場所なんやから。」
「そうだよ、圭織。飲めば暖かくなるって。ほら、飲みなよ。」
そうは言いつつも、安倍は犬のハナとタローに酒を飲ませようとしている。
それを見た中澤、愛児二匹を守ると同時に、安倍に馬乗りになり、膝でその肩を押さえつけ、鼻をつまむ。
「圭織、今や!今や!流し込むんや!なっち、いつまでもオレンジジュースで済むと思うなや。」
無邪気で無慈悲な少年のような笑顔を浮かべた中澤、飯田に援護を求めた。
その飯田は、ちびちびと泡盛を舐め、特に何をすることもなく二人を眺めている。
飯田の動向を窺う、安倍を組み敷いた悪戯っ子の中澤と、中澤に組み敷かれた哀れみを請う安倍。
その二つの視線に、仕方なしに飯田はポツポツと話し始める。
- 155 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:08
- 「まずさー、カオリ思うんだけど、思い出の場所だからって、わざわざここで飲むことないよね。ここの思い出なんて所詮、青春の一ページにもならない、まぁ、せいぜい半ページってとこじゃない?それに春っていってもまだ寒いしさ、ここ遠いしさー、電気もガスも水道もないじゃん。大空の下で浮かれるような年でもないしさ。ここ、コンテナだし。あとね、なっち。酒飲めないとか言うけどさ、飲めないんじゃなくて、飲もうとしないだけじゃん。そういうのって、モーニング娘。の精神にそぐわない気がするの。でも、いや、うん、だからこそか……飲ますぞ!なつみ!!」
- 156 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:09
- いやいやと首を振る安倍の頬をがっちり掴んだ飯田。
泡盛の瓶を安倍の口に突っ込んだ。
頑なに飲むのを拒んでいる安倍。
泡盛は安倍の喉を通過することはなく、口腔内に溢れかえり、ぼろぼろと零れている。
「くっさーい、まっずーい、あっつーい!!」
声にならない、酒浸しの安倍の叫び。
「なっち、ちょっとや。ちょっとだけの我慢や。すぐ気持ちよくなるって!」
正月のおっちゃんみたいな中澤。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは。」
いくつか何かが切れた飯田。
- 157 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:09
-
疲れたのか、飽きたのか、三者三様に壁に凭れ、俯いている。
「なっち、酒飲んでないのに、マジで酒臭いんだけど。服とか特に。」
「なっちのせいで、ほとんど酒なくなっちゃったじゃん。」
「なんや圭織、他に何も持ってけぇへんかったのけ。」
面倒なのか、帰るに帰れないのか、三者三様に壁に凭れ、俯いている。
「せっかくだし、なんかしようや。」
「どうせさ、そうやってまたなっちに飲ませようとするんでしょ。」
「じゃあさ、なっち、裸踊りとかやってよ。ちっとは私達を楽しませろ。」
- 158 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:10
-
投げているのか、休憩なのか、三者三様に壁に凭れ、俯いている。
「カオさ、そろそろ自分をミニモニ。に押し込むくらいの発言権は持っ──」
「活動休止やボケ。ちゃんと話聞いたんか?」
「……なんか今のでなっち、どっと疲れが押し寄せてきた。いい加減、地球を捨てて、銀河系も飛び越えてしまえ。この雇われリーダー。」
動けないのか、動かないのか、三者三様に壁に凭れ、俯いている。
「あ、なっち、酒買ってきてよ。まだ余裕でしょ?カオ達、酔ってるから。」
「ふんっ、酔っ払いの論理には振り回されないべさ。」
「裕ちゃん、なんも酔ってへんよ。酔うてへんがな。」
- 159 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:10
-
倦怠に紛れ、交互に安倍に酒を突き出す中澤と飯田。
ウンザリと諦め顔の安倍、差し出されるまま、一息に飲み干している。
「ああ、ばばあとうんこ漏らしの味がする。」
- 160 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:11
-
そんな中、突如、コンテナの向こうからドアを叩く音が。
そして、甘ったるい舌足らずな声が聞こえてくる。
「安部さーん、まだですかぁ?」
「これって、さ……亀井の声?」
飯田が恐る恐るコンテナのドアを開ける。
青白い月明かりの下、亀井が唇を真っ青にして震えていた。
飯田は着ていたコートを亀井に掛け、中に入れる。
「……まあ、そういうことだから。」
しらっと言い放つ、中澤と飯田の酒に犯された安倍。
中澤も飯田も、安倍に言いたいことは山ほどあった。
が、半べその亀井の涙を煽ってしまいそうで、ぐっと拳を握り、堪えた。
- 161 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:11
-
温まるからと泡盛を飲まそうとする安倍に、断りきれない亀井。
ぴちょっと泡盛に舌をつけた亀井は、眉を顰め、まずそうに顔を歪めた。
それが中澤を欲情させてしまい、危うく唇を奪われそうになるが、これは飯田が必死のガード。
亀井は怯えていたが、予定調和のやり取りに満足気な中澤、面倒臭そうな飯田。
- 162 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:12
-
「亀井さ、キャラが欲しいんだって。」
安倍に促され、亀井が中澤と飯田に話し始める。
「私、6期の中でも、自分のキャラが薄いんじゃないかと思うんです。れいなは歌上手いし頑張り屋さんですし、さゆは……まあ、あんな感じですし。藤本さんは強いですし。私、いつまでも先輩が話を振ってくれるのに甘えてるだけじゃいけないと思うんです。かわいいだけじゃ限界があると思うんですよ。」
「言ってることはもっともなんやけどなぁ。でもなんかコイツ、さらっと自分のこと可愛いとか言いよったで?」
「別にいいと思うんだけどね。新垣だって眉毛整えてるのに未だに眉毛キャラだし、高橋に至ってはずっと空気読めないキャラだしね。普通にしてればいいんじゃない?」
「それにキャラってなぁ。自分探しと同じくらい恥ずかしい言葉やで。」
後輩の苦悩を酒の肴にしつつ、てきとーに流そうとする中澤と飯田。
- 163 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:12
- 「お二人はおバカさんなのですか?普通にしててカメラに映るんなら苦労はしねぇっていう話なんすよ。存在自体がネタだった姉さんに、自分ばっかりで場の空気の存在すら知らなかったのっぽ。おい、のっぽ、特におめえだ、おめぇ。あんたリーダーだろ?こういうケアをきっちりしてこそのリーダーだろがよ。亀井がキャラが欲しいって言ってんだから、どうにかしてやれよ。」
何か言いたそうな亀井の気持ちを、安倍が代弁。
「そうは言われてもさ、カオリ、雇われリーダーだし。それにもう思春期は過ぎましたよ。」
「うちも元リーダーやしな。それに、三十過ぎたばばあに用はないやろ?」
鼻の穴を広げて息巻く安倍の存在をほぼ無視した飯田と中澤、酔っ払い特有の気だるさで亀井を見ている。
それが謂れのない因縁をつけられているようで、かつてない恐怖を感じる亀井。
その後ろで、安倍がこそこそと亀井にエールを送っている。
「いやっ、そ、そんなことないです。大先輩のお話、聞きたいです。」
- 164 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:13
- 半分目の閉じかかった飯田が、亀井に脅し気味の忠告。
「でもさ、石川みたいになってもいいの?」
「ハッ。あいつ、ほんまにやりおったもんなぁ。」
「そんな言い方ないっしょ。梨華ちゃん、一生懸命だったんだから。でも、あれはおかしかったよねー。」
思い出話に花を咲かせるオリメン三人の姿に、自分がどうされてしまうのだろうのか、不安を抱く亀井だったが、しかしここは神奈川奥地。
簡単に逃げ出せるようなところではない。
「が、頑張ります。」
そう言うしかなかったから言った亀井だったが、後悔していた。
- 165 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:13
-
「よっしゃ、じゃあ、裕ちゃんが一肌脱いでやるわ。」
そう言った中澤、本当に服を脱ぎ始めた。
身を乗り出し、真剣な眼差しで、そんな中澤を見つめる亀井。
「コラァ!つっこまんかいっ!!」
ビクッと肩を震わせる亀井。
中澤の第二撃が飛ぶ前に、すかさず安倍がフォロー。
「なにこれ?つっこみの練習なの?」
「当たり前やがな。あんなボケの巣窟、つっこめばカメラに映りたい放題やんか。」
「いや、つっこみは矢口さんとか藤本さんがいるんで、いいんです。」
「もっと亀井らしいキャラが欲しいんだよね?」
安倍の付け加えに、強く頷く亀井。
せっかく披露した昭和のボケが恥ずかしくなり、中澤、あからさまに舌打ち。
しょんぼり唇を尖らす亀井。
- 166 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:13
-
「ワガママなやっちゃなー。じゃあ、ずっと機嫌悪そうにしてるのはどや?こう、ほら、眉間に皺寄せて。絶対つっこまれるで。」
中澤を真似てみる亀井。
「亀井なぁ。あんたケンカ売っとるんか。この中澤さんにガンたれよって。」
「えぇ〜?」
微妙に慣れてきた亀井、ちょこっとだけ自分の意志を見せ始める。
「お、返せるようになってきたか。でも、これは不可。なんか可愛いもんなぁ。」
当然とばかりに頷く亀井。
そこにロマンスを感じた中澤、亀井の肩を抱き、引き寄せる。
「ちゃんとファーストキスは済ませたんか?」
「え?……いや、あの──」
「言わんでええ。ちょーっと目を瞑ってじっとしてるだけでええからな。」
本能的に抗いようのない危機と悟った亀井、目をきつく閉じ、されるがまま。
「つぁぁぁああっ!!!」
酔ってるから、飲まされてるから、と、できあがった安倍は気が大きい。
日々の鬱憤を晴らすかの勢いで、手加減無用の飛び蹴りを中澤に見舞う。
「なっちが亀井を守る!!」
- 167 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:14
- 安倍の勇者宣言を前に、数メートルは吹っ飛んだであろう中澤、さめざめと泣き出してしまう。
中澤に懐かないハナとタロも、思わず駆け寄る。
「裕ちゃん、最近やばいねん。酒飲むと抑えられへんのよ。可愛いやんか。穢したいやんか。自分は誰のものにもなられへんから、せめて誰か自分のものにしたいやん。これ、間違ってるか?」
「裕ちゃん……」
震える肩を隠そうともしない中澤を、安倍が抱きしめた。
哀れみでも同情でもなく、心の底から中澤を思いやる安倍の優しさ。
安倍のその母性に、この場の誰もが、誰のせいでこうなったのかなんて考えもしなかった。
だが、安倍の興味はすぐ他所へ向いてしまう。
- 168 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:15
-
「ほら、亀井。あれだよ。見てよ、カオ。」
涎を垂らして眠っている飯田の顔はあどけない。
「ね?亀ちゃん。そのまんま馬鹿でない?こういう図太さが必要なんだよ。」
「寝てねーよ。」
急に目を見開いた飯田の迫力に、言葉を失い、目をまんまるにする安倍と亀井。
そんな二人の様子などお構いなしに、飯田は右手でこめかみを押さえ、左手で手酌酒。
「あー、やばいやばい。ちょっといっちゃってた。やっぱ10代の頃のようにはいかないねぇ。体力もそうだけど、アルコールの分解が甘いもん。最近は特に。だよね?裕ちゃん。」
- 169 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:16
- 涙ながら、コンテナハナタロを押さえつけるようにして抱いている中澤も、しんみりと頷く。
「そやなぁ。30あたりもそうだけど、21,2が境やねんなぁ。まあ、思い出したくない時期ではあるな。エッセイ、なーんも書けへんかった。」
「そん時ってさ、酒と薬で、体ズタズタだったんでしょ?」
「そんなこと言ったら、亀井、信じちゃうやないの。」
「今さ、なっちも信じたよね?一瞬、そうかも、とか思ったでしょ?絶対思ったよ。新発見!って顔してたじゃん。」
「あ〜ぁ、裕ちゃん、もうなっちのこと信じられへんわ。そんなんやと思ってたんかい。」
「ハイ!なっちは思います!!優しさなんか臆病者の言い訳だと!!!」
テンションでなんか言ってどうにかなろうとした安倍、耳に腕をつけてピシッと手を挙げて贈る言葉。
一目、ほんの一目、安倍をチラと見た飯田と中澤、けど思いやりはそこまで。
- 170 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:17
- 「そっちの方が面白いじゃん。裕ちゃんがボロ雑巾みたいに路地裏で崩れてるの。それよりさ、今何時?」
「10時ちょい過ぎ。もうバスないな。姉さん、酔ってて車運転できひんから、今日はもう帰れへんわ。」
「亀井、明日は学校?ま、関係ないけど。サボりなよ。」
「裕ちゃんな、学校サボったりしたのはいい思い出やけど、後悔してんねん。」
「ウソつけ。こんなとこで大人ぶって、ポイント稼がなくていいから。」
- 171 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:17
-
二人だけでトントン話をしている中澤と飯田、話に入る隙を見つけられない亀井に、あからさまな疎外に痛みを感じ、三人に背を向けて不貞寝の安倍は、壁に話しかけている。
「意味ないじゃん。ぜ〜んぜん意味ないじゃん。亀井はさ、キャラ欲しいって来てんのに、二人は好き勝手でさ、なっちは飲まされるし、飲んだら飲んだでいじめるしさ。……亀井?亀井はなっちの味方だよね?こっち来て、なっちの下僕になってくれるよね?あれれ?いつから亀井は、コンテナの壁になっちゃったのかな?あれ?おっかしーなー。亀井が見えないよぉ。どこにいるのぉ?亀井ぃ〜?亀ちゃ〜ん?えりりーん、えりっぺぇ〜……」
- 172 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:18
- 「亀井、こっからは現リーダーが、特別にうたばん的ジョンソンのすすめ、やってやるぞぉ。そこのかっぺに蹴り入れてこっちこーい。一世を風靡し、娘。爆発の原動力と私が謳うジョンソン様を亀井にやるよ。たぶんまだ使えっから。」
「なんやカオリ、うたばん?それはウチに対する挑戦か?昼ドラとか、B級の烙印押されたとか思ってるんやろ。そりゃそうや、どうせ夜のドラマには返り咲けんわ。だはははは、悪かったの、こんな女で。想いを成就できなかった今、三十路女とかわうぃタロハナが路頭に迷うのも時間の問題や!」
「なにさ、それ。無理矢理グチに繋げないでよ。言っとくけど、励まさないかんね。カオリなんてね、前髪作っただけなのに、若作りとか言われんだよ?無理ありますね、って。誰だっけ、言ったの。……亀井じゃなかったっけ?」
「か〜め゙〜い゙〜 えり゙っぺぇ〜 え゙〜り〜ちゃ〜ん。」
- 173 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:18
-
亀井、あった酒を手当たり次第に呷った。
夜はまだ長い。
- 174 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:18
- おしまい
- 175 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:21
-
_彼女の立ち方
私は素足のまま、広めに作られたバルコニーに立つ。直射日光に暖められたコンクリートが、じんわりと足の裏に熱を移す。空が眩しい。強くなり始めた陽射しが、ちりちりと私を焦がす。
- 176 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:21
-
海岸に建てられた、この周辺では一番天に近いマンションの最上階。目の前にはゆりかもめが、その先では海が鈍く揺れている。空と同じく切り取られた東京湾と、スモッグに霞んでさらに境界を曖昧にさせた地平線が、私から色を奪おうとしている。
それでも、地価の高いここ一帯のマンションの最上階が、私の青春の残滓のひとつだと言うのなら、それはそれで誇らしいことだろう。
船体を錆で赤茶色くさせたタンカーが、どろりとした群青の海に白く軌跡を残す。
潮と油の混じった風が吹き抜け、私の髪とカーテンを巻き上げた。
手元の写真が、ぴらぴら音を立てて靡いている。
- 177 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:22
-
二ヶ月ほど前のおとめのツアーの時だった。移動のワゴンから外に出ると、そこは東京よりも少し早く春の訪れを告げていた。
新緑が眩く、丸みを帯び始めた風が気持ちよかった。私はワゴンから市民会館の裏口まで足早に移動する際のほんの一瞬、春を楽しんだ。
- 178 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:22
- その日の二回目の公演が始まる少し前、私は控え室のすぐ外の喧騒のさらに向こうで、それとはまた異質のざわめきが起こったことで開場時間になったことを確認し、読んでいた本をキリのいいところまで目を素早く走らせると顔を上げた。
控え室には私とのんちゃんしかいなく、そののんちゃんは鏡の前で前髪を剃刀で、丁寧に削いでいる。一回目の公演中、前髪が目に入って邪魔だと言っていたことを思い出した。
少しずつ前髪を取り分けながら、数ミリずつ前髪を落としていくのんちゃんは、私の視線に気付かない。メイクさんに聞いた方法らしいが、その手つきはおぼつかない。赤ちゃんみたいな爪のぶきっちょな指先で、のんちゃんは慎重に、前髪を削いでいく。
- 179 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:23
- のんちゃんの使っている剃刀は、ちょっとした理容室くらいでなら使われていそうな代物で、私は手が滑ってはしまわないかと不安になってしまう。控え室の外の騒々しさとは対照的に、私とのんちゃんの間には、剃刀に削ぎ落とされる前髪の悲鳴すら聞こえてきそうな、張り詰めた静寂が横たわっていた。そして、それは私の不安と混ざり、落ち着きの悪い沈黙に変わった。
少し顎を引いたのんちゃんは真剣そのもので、鏡は整った顔を映し出している。少女を脱しようとする、精悍さが滲み出ていることに気が付いた。
- 180 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:24
- 前髪を揃え終えたのんちゃんは、ざっと前髪を振り払い、落ちそこなった髪を鏡台に落とすと、使っていた剃刀についた髪も吹き払った。そして、刃に髪が残っていないことを確認すると、のんちゃんはそっと剃刀の刃を左手首に近付ける。刃が肌に触れる寸前、心なしか躊躇ったが、静かに、置くように剃刀の刃を手首にあてがった。
私は声を出すことも、つばを飲むことも、息をすることすらままならず、祈るような気持ちでのんちゃんの動向を見守るしかなかった。
肌と刃の接地点を見つめているのんちゃんは、何か深く考えているようでもあるが、絶望的に何かが抜け落ちているような無表情で、瞬き一つしない。
私はのんちゃんの剃刀を持つ手が、僅かに震えているような気がして、それが肌を傷つけてしまわないかと気が気じゃない。のんちゃんから剃刀が離れるまで、誰が入ってきてこの停滞を壊すことのないよう、そう願うばかりだった。
- 181 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:24
- しばらくすると、のんちゃんの目に生気が戻り、何事もなかったように剃刀をしまうと、私を向き、口元だけをだらしなく広げて笑顔を作ると、いつもの調子でケータリングに行くと言い残し、元気に控え室を出て行った。
- 182 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:25
- 「麻琴ーっ、喰い行くぞ!」
途中で小川を見つけたのか、勢い込んだのんちゃんの声が、遠ざかっていく。
いつから私の視線に気付いたのかはわからなかったが、からかわれたような腹立たしさと、心の底からきた安堵に、涙が零れてしまいそうになった。のんちゃんの真意はどこにあるのかわからなかったが、剃刀を手首にあてがっていた時の目は尋常ではなかった。
- 183 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:27
- 私はその日、注意深くのんちゃんを見ていたが、これといった変化もなく、不安定な年頃の、ちょっとした死への悪戯や冒涜だろうと、自分を納得させた。というよりは、下手に突っ込んで事を複雑にしたくなかったのだ。
それからしばらく、どうしても気になって観察するように見ていたが、いつもと同じのんちゃんで、あれはちょっとした心の揺れなのだと、忘れかけていた。
- 184 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:28
- それから一月ほど経ったある日、昨夜からのんちゃんが帰っていない、と撮影間近になっても仕事場に現れないのんちゃんを探していたマネージャーが、声を潜めて私にそう言った。そして、何か知ってることはないか、と。
私は、昨日はいつも通りだったと言い、最近も変わった様子はなかった、とも言った。マネージャーは、矢口以外にこのことは言わないように私に約束させ、それとなく様子を探るように頼んだ。私は黙って頷いた。
- 185 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:29
- 撮影とはいってもハロモニ。だったため、のんちゃんは風邪で欠席、いうことで事なきを得たのだが、よっすぃや藤本は何か勘付いている節があった。あいぼんも私を見て、何か言い淀んでいた。黙っているよりも黙らせる方がさらに難しいと考えた私は、その日一日、周囲の話に耳を欹てながらも、詮索の余地を与えないよう、移動は誰よりも早くし、空き時間は本を手放さなかった。
- 186 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:29
- 私は仕事が終わると、久々に電車に乗り、二回乗り換え、家のある駅の出口とは反対方向にあるCDショップで映画を二三本見繕い、駅地下にあるスーパーでスパークリングワインと水菜とチーズを買い、欠伸を一つ噛み殺したところで、ようやく家に向かった。
- 187 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:30
- その道すがら、のんちゃんのことを考えていた。いつまでも子供のような無邪気な笑顔に誤魔化されてはいるが、あれは子供らしさが残っているのではなく、のんちゃん自身の爛漫さから来るものなのだろうと、あの一件を境に考えるようになった。
思春期である16歳という年齢に、多感で不安定な時期に差し掛かっているのも言うまでもなく、理解しているつもりでも、わかっていなかったのだろうと思う。吐き気を催すような自己嫌悪に陥ることも、理解不能の曖昧な感情が胸の内で暴れ狂い、それを持て余してしまうこともあるだろう。溜まりに溜まった鬱屈を、自らに傷をつけることで逃がそうともするのだろう。
- 188 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:30
- けど、のんちゃんのキャラクターは、彼女が12歳の頃から多少の相違はあるものの変わらず、今もそれを地でいっているような部分がある。のんちゃん自身、12歳の頃のキャラクターと、16歳の今との変化に気付いているのだろうか。
私はそれが酷くバランスが悪く、残酷なことのように思えてならない。
- 189 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:31
- ちょうどのんちゃんくらいの頃の自分を思い出そうとしても、デビューしたばかりというだけで、漠然とした不安があったことしか思い出せなく、自分でも驚くくらい、細かな感情は消え去ってしまっている。
あれこれ考えていると、不意に後ろから腕を掴まれ、無意識に引き剥がした。その引き剥がした腕に残った感触が知っているもので、そっと振り返ってみると、のんちゃんが力なく笑っていた。
- 190 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:31
- のんちゃんは、一言も発しなかった。何か飲むかと聞いても、何か食べるかと聞いても、何も言わずに首を振る。私は冷蔵庫にあった紅茶のペットボトルをのんちゃんに出し、帰りに買った映画の中から、比較的退屈しなさそうなものを選び、プレイヤーに差し込んだ。再生されたのを確認すると、のんちゃんの隣に腰を下ろした。
「今日は何とかなったから。」
配給会社のロゴを見つめながら、小さく言い、ソファに背を預けた。
- 191 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:32
- 映画がクライマックスに入った頃、膝をひとつ叩いたのんちゃんが、徐に私の膝に乗ってきた。一時期のようにドスンとした衝撃はなく、途惑うくらい、私にすっぽりと納まった。のんちゃんがまだ本当の小さな子供の頃を思い出し、それが何故だか居心地が悪かった。
「辻希美さ──」
「のんちゃんがいい。」
少しふざけてみたつもりだったのだが、のんちゃんはそれを暗い口調で拒絶した。私はのんちゃんと呼ぶものの、彼女自身、そういう呼ばれ方はどこか腑に落ちないものがあるのはわかっていた。
私としても、いつまでも少女のままでいて欲しいという勝手な願いの表れなのだと、自分を戒めるようにはしている。今が彼女の成長を受け入れる一歩になるのではないかと思っていたのだが、タイミングが違ったらしい。
期を計り違えた私は、次の言葉を出すのを躊躇した。言葉を失い、私は顎をのんちゃんの頭に乗せ、少しだけ体重を預けた。強張っていた自分の体から、力が抜けていくのがわかった。
- 192 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:33
- 少しして、のんちゃんがゆっくりと話し始める。映画はエンディングロールを迎えていた。
「……のんってさー、のんだけじゃないかもしれないけど、いろんな人達の犠牲でやってこれてるんだよね。」
言葉の意味が掴めなかった。のんちゃんのボキャブラリー不足のせいなのか、私の発想が貧困で、のんちゃんに追いついていないだけなのだろうか。私が黙っていると、のんちゃん静かに次の吐露を始めた。
- 193 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:33
- 「のんってさ、自分のことあんま好きじゃないでしょ?TVの時って、なんか自分なんだけど、何となくのんじゃない、みたいな。自分を完全に追いやるっていうか……どっかやっちゃうっていうか。」
のんちゃんはここでひとつ止め、私は話の邪魔にならないように頷いた。
- 194 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:34
- 「みんなといる時は楽しいんだけど、それとのん自身は別、っていうか。のん自身、一人でいる時は自分なんだけど、そういう自分が嫌、みたいな。でも、みんなといる時は、なんか好き、なの、かな?そんなわけわかんない感じなのに、いろんな人に支えてもらったり、いろんな人の夢潰したり犠牲にしてるのかなぁ、とか思うと、なんか申し訳ないっていうか……全然わかんないよね?」
膝にいるのんちゃんが、恥ずかしそうに私を見上げる。
「うん、わかんない。」
「だよね。」
「でもね……」
- 195 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:34
- きっとこれは解決する問題じゃない。鋭い感性が拾ってくる様々な情報が膨らみ過ぎて、処理できないだけなのだと思う。それが疑問となって自らに矛先を向け、訳もわからずに絡まり、心に枷ができ、それが重く、立ち尽くしてしまうだけなのだ。だけ、なんだ。
その内、精神的に鈍くなって忘れていき、それが笑えるようになる。幼い頃に見た、現実と見紛うくらい鮮烈なイメージを残した夢のようなものだろう。答えや意味なんて求める方が間違っているのかもしれない。
黙ってその時期を乗り越えてみたのなら、気味悪いくらいにさっぱりと、何かを失い、ちょっと強くなった自分がいたりするものだ。それを強さと呼べるのかはわからないが。
ただ、のんちゃんにそのまま言えるはずもなかった。
- 196 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:36
- 「昔さ、私、ねえ笑って、とかやってたよね?のんちゃんもさ、もうすぐそういった時期に差し掛かるんだよね。でね、のんちゃん入ったばっかの時、私にナイスバディバディやって、とか言ったでしょ?でも、その時、そういうのができない年齢になっちゃってたの。わかるとこだけ、何となく感じ取ってくれればいいんだけど。」
- 197 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:36
- のんちゃんはポカンと私を見上げたまま、口元だけをだらしなく広げて笑顔を作り、
「ぜんっぜん、わかんない。」
と言い、ぐっと私に体重を乗せてきた。そして、なんか思い出した、と前置きし、
「今日さ、仕事行く前、どうしようもなく、どっか遠くに行きたくなっちゃって。そういうのって、いけないことなんだけど、実際サボっちゃったし。……でも、カオリンもそういうことあったのかな、って。」
「で、遠くが私の家?傷つくんだけど。」
「そういうことじゃなくて。」
- 198 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:36
- 物理的な距離でないことはわかる。が、私のおどけは、笑いにはなりきらなかった。
自分と向き合い、その結果人には口にできないだろうことを、メールではなく、電話でもなく、直接私に伝えている。キャンバスに色を重ねて乗り切ろうとしていた私には、到底辿り着けない距離だろう。
「あったよ。遠くに行きたくなること。」
「で、どうしたの?」
「実際、遠くに行ってた。想像の中だけだったけど。」
- 199 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:38
- のんちゃんは、私の言葉の感触を確かめるように繰り返す。
「想像の遠く、か……」
「そういうのも、いいかもしれない。でも、時間が解決してくれる。……いつかね。」
「それじゃ遅いんだって。」
「まあ、そうだけどね。今を一生懸命に生きてたら、きっとすぐだよ。」
「……かもしれないね。」
- 200 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:38
- そして、のんちゃんは私に向き直り、強く抱きしめてきた。
「ありがと。また明日ね。」
短く言うと、帰るね、と背を向けた。私は見送ろうと後を追った。
- 201 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:38
- 「ねぇ、カオリン。」
のんちゃんは靴を履くと、大きく鼻で息を吐き、まっすぐに私を見据えた。
「カオリンはさ、私の味方?」
「なにそれ。当たり前じゃない。」
「何があっても?」
「もちろん。」
- 202 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:39
-
その一ヶ月後、ミニモニ。が活動停止した次の日、のんちゃんは消えた。同時にあいぼんもいなくなった。香港への出国記録と、銀行から数千万を引き下ろした痕跡だけを残して。
ベトナムやタイで日本人観光客に目撃されたという話があったが、それもインドでぷつりと途切れてしまった。
- 203 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:40
- 私はきっと、のんちゃんの思っていた部分の欠片も理解してあげられなかったのだろう。私の伝えたかった思いは言葉を通し、のんちゃんには全く別の意味で伝わり、何か決意を抱かせたのだろう。私の思いも寄らぬ方向へ現実が捻じ曲がってしまった気がする。それでも、のんちゃんからすれば、私は背中を押したことになるのかもしれない。
- 204 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:42
- 写真三枚入っただけの封書。着ているのはトルコの民族衣装なのだろうか、見た感じ、エーゲ海をバックにしたのんちゃんは、私がこれまでに見たことのない、弾けるような喜びに溢れていた。もう一枚はあいぼんが海を飲もうとしている写真で、最後は二人で頬を寄せ合い、笑っている。これでよかったのだろう。そう思いたい。
- 205 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:43
- 訳もわからず、好きだというだけで娘。に入り、16歳になった。どんな紆余曲折があったにせよ、考え、自らの足で踏み出した二人を、よくやったね、と抱きしめて髪を撫でてあげたい。けど、それは恐らく一生叶わない。
のんちゃんは私達といた世界を見切り、また違う世界へと飛び出した。どこかでひょっこり再会する時が来るのかもしれない。けれど、私はのんちゃんを、それまでのように抱き締めることはできないだろう。
- 206 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:43
- 海を真っ赤に染めていた夕焼けが融け、闇がゆっくりと侵食している。私の周りから、海岸から、緋色が引いていく。
その引力に、体ごと吸い込まれてしまいそうになった。
足元のコンクリートだけが、ただ冷たかった。
- 207 名前:. 投稿日:2004/04/06(火) 04:43
- おしまい
- 208 名前:. 投稿日:2004/04/07(水) 21:31
-
_夢とれいなと明日
れいながまだ福岡に住んでいた頃、彼女の部屋には地球儀があった。
小学校に入学した時、父に買い与えられた、バスケットボール大のセピア色の地球儀。
れいなは綺麗に色の入った地球儀が欲しかったのだが、
大人になるとこっちの方がいいのだと、父の一方的な意見を通されてしまった。
- 209 名前:. 投稿日:2004/04/07(水) 21:31
-
この地球儀の日本海の部分に、青マジックで小さく塗られている。
小学校三年生のれいなが、色をつけようと失敗した跡。
二三度ペン先を往復させた時点で、格好悪いと気付いてしまったのだ。
その夜、れいなは後悔に泣いた。
- 210 名前:. 投稿日:2004/04/07(水) 21:31
-
れいなは眠る前、決まって地球儀を回していた。
そして、適当に指差し、その地名を確認してからベッドに潜り込む。
目を瞑り、意識が眠りに引き込まれるまで、れいなは指差した世界で生きてみる。
太平洋をキラキラ跳ねるイルカだったり。
渋谷のセンター街を一人、颯爽と歩いていたり。
鬱蒼と茂るジャングルの中、訳のわからない宗教儀式をしていたり。
大きな城の端にある塔に幽閉され、救い出してくれる王子を待ち焦がれるお姫様だったり。
れいなは地球儀のセピアに色をつけるために、夜毎、空想を繰り広げ続けていたのかもしれない。
色気のない地球儀を、れいな色に染めるために。
- 211 名前:. 投稿日:2004/04/07(水) 21:32
-
モーニング娘。に加入が決まり、慌しく上京の準備をしていた時のことだった。
地球儀を持って行こうと考えていたれいなは、窓の外でうっすら積もっていた埃を払っていた。
何かぼんやりと思いを巡らせていたのかもしれない。
ちょっとしたはずみで、地球儀はれいなの指をすり抜け、地面に叩きつけられた。
手が滑ってしまったのか、ほんの少しは意志が働いていたのか、れいなにはわからない。
役目を終えた地球儀が、庭の隅で砕けていた。
その隣では、夏に出したままの家庭用プールが、煤けて萎んでいた。
れいなは庭に降り、地球儀の残骸を丁寧に集めると、お気に入りのショップの袋に入れた。
部屋に戻り、それを押入れにしまうと、上京の準備を再開した。
- 212 名前:. 投稿日:2004/04/07(水) 21:32
- おしまい
- 213 名前:名無し娘。 投稿日:2004/04/08(木) 00:48
- たくさん更新されてて嬉しいやよー。別に某所を見て思い出したわけじゃないやよー
- 214 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:53
-
_きっくザ☆りかばっく
柴田と石川は、神宮球場にいた。
偶然、事務所で鉢合い、どこか行こうという話になったのだが、いつものパスタ屋では味気ない。
どうしようかと話し合う二人の目に入ったのは、男性社員が持っていた野球のチケット。
貰い物だということで、二人掛かりでおねだりの上目遣い。
- 215 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:54
-
ライトスタンドにいる二人。
二人とは対極にある三塁側からは、サッカー寄りになりつつある応援がぼんわかと流れていた。
気分だからと、柴田は慣れないビールを飲み、その隣では石川はヤングジャンプを読んでいる。
二人は野球に興味があるわけではない。
人気のないライトスタンドも野球への関心も薄く、当然、二人に気が付く者はいない。
- 216 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:54
- 柴田がしかめっ面でビールを飲み干し、口直しとばかりに石川の飲んでいたゲータレードを奪う。
石川はそれを咎める事もなく、黙ってページを捲っている。
「Berryz工房の子達、微妙に距離ない?」
石川がグラビアを指差し、柴田に向けた。
「そう?……読み難い。読んでよ、梨華ちゃん。」
「なんで私が読まなくちゃならないのよぉ。」
- 217 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:54
-
カッと乾いた音が響き、球場が沸いた。
二人は忘れかけていた野球の方に目を向ける。
低い弾道が一二塁間を抜け、ライトが球との距離を縮めつつ、腰を落として捕球。
そして、そのまま二三歩助走をつけ、バックホーム。
が、勢い余ったボールはキャッチャーの頭上を通り越してしまう。
「このノーコンが!!」
酔いどれオヤジの叱責が飛んだ。
- 218 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:55
-
「そういえばさ、最近、紺ちゃんどうしてる?」
「なに、ノーコンで思い出したの?」
「うん。あと辻っ子も。」
「ののと紺野ね……」
呆れ顔の石川、携帯を弄り、写真メールを柴田に見せた。
「一時間くらい前の、ののと紺野。」
鼻水のつもりなのだろうか、辻がマイクを鼻からぶら下げている。
その隣では、辻に頬をくっつけた紺野が、マイクを眉間に付け、寄り目で口を窄めていた。
- 219 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:55
-
「カラオケ?」
「今、何人かで渋谷にいるんだって。柴ちゃんがビール買いに言ってる時にメール来たの。」
「合流しようよ〜」
「えぇ〜?わざわざ行って、平均年齢ガツンと上げたくないしぃ。」
シナをつけてはぐらかそうとする石川、柴田に顔を近づけ、矢継ぎ早に続ける。
「それよりさ、桜見に行こうよ。青山墓地んとこ、綺麗だったよ?」
「いや。絶対紺ちゃんと歌う。……なんで小声?」
「桜見ようよぉ!さ〜く〜ら〜!!」
アヒル口の石川が、柴田の手を取り、ぶるんぶるん振るう。
「紺ちゃんが頭の中にある今、そんなキショぶりっこは通じないよ。」
「あぁ〜!きしょいっていったぁ!!」
「通じません!」
「べ〜、だ!!」
ここまで言うと、急にしおらしくなり、シュンと肩を落とす石川。
- 220 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:56
-
どんちゃんどんちゃんどんちゃん。少しずつ熱を帯びていく三塁側スタンド。ざらざらと蠢く客席では埃が巻き上がり、それが照明の強い白光にきらきらと舞い、それが靄のようにも霞みのようにも蜃気楼のようにも見える。俄かに虚実味を帯びた世界はしっとりと揺らめき、夜を纏った空は淵をなくして喘いでいる。日々の鬱積を撒き散らす様々な声は、ぼこぼこと沸き、やがて一つの雄たけびになり野球を経由して正当性を知ったその他大勢には狂気を呼び起こす。どちゃがちゃんぐゎらびーぶーぎゃーじゃーばしゃぐんごー
「じゃあ、さ、桜見てからカラオケ行こうか。」
柴田が少し噛みながら言った。
石川は黙って立ち上がると、意気揚々と出口に向かう。
柴田はそういう石川が好きなのだが、今日は何故かその背中を思い切り蹴飛ばしたくなった。
- 221 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:56
- おしまい
- 222 名前:. 投稿日:2004/04/08(木) 19:57
- >>213
_______
| ノノノノ从ヘ < 友達にバイバイする時が一番さみしい……
| 〔川*’ー’川〕 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
- 223 名前:名無し娘。 投稿日:2004/04/09(金) 20:53
- ゲータレードの味を思い出した。キュンとなった
- 224 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 01:59
-
_ミキたんの、たん、は牛タンのタンだと誰かが言いました
「いいなー。……いいなー。風信子、いいなー……」
口も眉も八の字にして、切ない目をした美貴が、いいな、と繰り返す。
亜弥は後悔していた。
- 225 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 01:59
-
久々にオフが重なり、美貴を家に招いた亜弥。
新曲のPVを見てもらおうと、朝から「風信子」をリピートしておいたのが、そもそもの間違いだった。
インターホンが鳴り、テレビの音量を大きくしたところで、美貴をお出迎え。
部屋に入るなり、「風信子」のPVに釘付けになった美貴。
心の中でガッツポーズの亜弥。
- 226 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 02:00
-
「いいなー。亜弥ちゃんはさ、『笑』って言葉が好きなように、美貴、『ありがとう』って言葉、けっこう好きなんだよね、実は。言ったっけ?言ってないよね……。」
「あの、さ……美貴たん?」
「いい詞、書くよね、谷村さん。美貴、ただのエロ本好きのおじさんかと思ってたよ。いいなー、愛とか恋とか夢とかじゃなくてさ、『ありがとう』だって……いいなー。」
美貴はコテンと亜弥に寄りかかり、一度すがるように亜弥を見、視線を足元に落とす。
「いいなー。美貴、この歌欲しいな。歌ってみたいな……」
「じゃ、今一緒に歌おう?ほら、♪ありが〜とぉ、わ〜たしもいつか♪」
「わかってない。……全然わかってないよ、亜弥たん。」
「え?いや、亜弥たん、って。」
「去年の秋ツアーみたいに、ソロで歌う機会があるなら、美貴が美貴の曲として『風信子』を歌う、っていうことなの。」
「そういうのは、無理があるん──」
「なんで!?」
短く言った美貴の声は少し鼻にかかり、それは幼子のようで、ジトと濡れた視線は、容赦なく亜弥の心を射抜く。
この時点で、亜弥は諦めた。
- 227 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 02:01
-
「……あのさ、この曲、たんにあげるよ。」
「えぇ〜!?ほんとにぃ?いいの?」
あげる、と言ったところで、現状ではどうすることもできない、亜弥はわかっている。
だが、顔をきらきら輝かせた美貴の喜びように、もしかして、という一抹の不安を拭い去れない。
亜弥も、この曲が大好きなのだ。
- 228 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 02:01
- おしまい
- 229 名前:. 投稿日:2004/04/12(月) 02:04
- >>223
キュンの頃の味を強くした、Gatorade XTRAというのがあるよ。
昔のキュンを犠牲にしてでも、現在にキュンを呼び戻したい時に如何でしょう?
- 230 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:13
-
_娘。の熱は冷めやしない
娘。達その他16人くらいは、収録の合間にハロモニ。オンエアーを見ていた。
- 231 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:14
-
私はいじられてナンボなのは知ってる。
5期や6期が突っ込んでくれる=おいしい場面が増える。
いいことじゃないの、いっぱいTVに映れるわ。
みんなにいじめられてるように見えれば、また昔みたいな可愛い梨華ちゃんに戻れるかもしれない。
あの頃の私を取り戻せれば、梨沙子にだって勝てよう。
けど、どうするの?
せっかく築き上げたお姉さんキャラが壊れてしまいやしない?
あんなに優しい笑顔の練習したのに。
あんなに母性に溢れた抱き締め方と頭の撫で方、研究したのに。
いやよ、こんな所で次期リーダー戦線から脱落するのは。
ののの卒業で、せっかく次期リーダー候補No.1に躍り出たのに。
ツアー先のコンビニの払い、全部私だったのが無駄になるの?
- 232 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:14
-
恐らくこんな感じで、斜め下にポッと弾けた石川。
いつぞやの柴田を思い出していたのだろう。
中澤や飯田の援護を期待していたのかもしれない。
「やんのかこらー!」
ピンク色が具現化すらしてきそうな、超音波に近い、上擦り気味の甘い声。
無理があるのはわかっているのだろうが、石川はテンションを二重にも三重にも巻き上げ、かなり頑張っている。
- 233 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:14
-
そして、基本の、とりあえず弱い者から。
亀井が第一の犠牲者。
「やんのかこらー、やんのかこらー、やんのかこらー」
何が何だかさっぱりわからず、それが怖くて悲しくて、泣く一歩手前の亀井絵里。
「なにやってんの?梨華ちゃん?」
あくまで普通に亀井を庇い、普通に石川につっこんだ矢口。
「ちっ、神奈川の田舎で廃棄寸前の冷蔵庫がっ。」
露骨に嫌な顔をして舌打ちした石川、次の標的を探す。
「んだよ、もぉー!!」
そんな矢口の怒りの雄たけびも耳に入らない。
- 234 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:15
-
次の標的は道重。
が、石川が来る前に、飯田の背中に隠れてしまう。
「あほー。」
飯田に守られた道重は、娘。で一番強い。
そして。
「行け。」
イーダーの一言で、モー娘。鎮圧班が出動。
- 235 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:16
- 「ちゅわぁ〜!!」
紺野が空手技で崩し、
「うんしょ、っと。」
辻が右肩の関節をがっちり極める。
そして、紺野が左腕を押さえると、ホールド完了。
「申し訳ないですね。これも仕事の内なんで。」
不敵な冷笑を口元に湛え、拷問モードに入った田中。
セロテープを右手に、デジカメを左手に。
- 236 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:16
- 石川の鼻をぐっと持ち上げ、テープでひっぱり、額で固定するお決まりポーズ。
「いや、穴だけは、穴だけはやめて!…やめて……いやぁあああっ!!」
誰かさんのモノマネポーズなんぞ、ネタに走り続ける娘。達には朝飯前。
ペンライトを照明代わりに、石川梨華だとわかるアングルで、鼻の穴、鼻毛まで見えるように激写。
礼儀で関心あるフリの、安倍と飯田と矢口。
「つーかさ、どしたの?梨華ちゃん。」
「さあ、なんなんだろうね。」
「いいよ、ほっとこ?」
楽屋は、再び平和を取り戻す。
- 237 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:17
-
「いやっ、やめて、瞼ひっくり返すのだけは!もうしないから、ホント、もうしない。」
「やめませんよ、石川さん。れーなは普段は味方ですけど、今は違います。」
「ああ、そういえば、飯田さん、今日こそ、真剣勝負です。」
「……麻琴、私に勝てるとでも?」
「もうっ、なんでないんだろ。ねぇ、ののー。私のMDどこだったっけぇ?」
「ウシさん、北海道の味をありがとう。」
「しらないよ、そんなの。こっちは梨華ちゃんが暴れて大変なんだから。」
「訳ない仕事だけど、私達、抑えてるだけでつまんないよね。」
「ないちゃうよ。あの人が泣いたら、私も泣いちゃう。」
「いいから温泉旅行よこせ!」
- 238 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:17
-
「吉澤さんを弄ばないで下さい!!」
「コレ、ヤラセ?」
- 239 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:18
-
「イヤだよ。あんなん、どう考え立ってTV用のコメントじゃねーかよ!!」
「ちょっとちょっと。シゲちゃん。銀座でチョコ買うてきたんやけど、一緒に食べへん?」
「におうぞ、おめー、うんこ香水とか普通につけてくんなよ。」
「ちっっがーう!違うって。これは神に選ばれた聖なる湿地帯でも十何年に一度……。」
「お腹空いたね、紺ちゃん。」
「くっそ〜。脱いだらスゴイんだからな!ぼんぼんぼーん、って。……うっふ〜ん。」
「レンジ使う料理でいいなら、すぐに作れるよ。」
「のの、そろそろ飯田さん、潰しておかない?いつまでも昔の話されたらかなわんわ」
- 240 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:18
-
「おとめ組のメインボーカルの、道重さゆみで〜すっ。」
「めちゃくちゃ無理ありますよ、矢口さん。ぼんぼんぼーんじゃ、寸胴じゃないすか。」
「でん、ででん、でんでんででんでん。でんででんでん……でんでん!」
「とちらかと言えば、おじゃマルシェ。」
「うん。ザ☆ピースってぇ、優しい気持ちに……」
- 241 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:18
-
「もぐもぐもぐもぐ、うぇ〜うぇ〜。」
「うわぁあ!石川さんが初期チャーミーに戻ったぁ!!」
「十回十回クイ〜ズ!!あいぼんからの出題でーす。」
「クッ、かくなる上は……ダダダダーン、うんこぉ!!!」
「なあ、ミキティ。ツッコミもいいけど、矢口さん、壊れちゃったじゃねーかよー。」
「ん?いいじゃん、別に。寄せてあげられるだけ。」
「だぁってぇ〜。まだまだタコ、あげたいんだもんっ。」
「ねえ、笑って。」
- 242 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:19
-
「……みんな、みんな、間違ってるよぉ!!」
無駄に大きい高橋の声は、よく通る。
訳もわからず、高橋の声量に圧倒される、娘。等、多数。
- 243 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:19
-
高橋:みんな間違ってるよ。そうやって快適さばかり求めて……私達の生きる星だよ!?私達が大事にしてあげなくてどうするのよ!ちょっとだけ、ちょっとだけでいいの!大人が自分に向ける優しさ、どうして苦しんでる地球に向けてあげられないの!?
校長:そうだな……君の言うとおりだよ。私達の負けだよ。
一同:YEAH!!!!!
石川:さあ、みんなで歌って踊りましょう!
<エンディング曲・でっかい宇宙に愛がある>
金にまみれたチャリティーの匂いがするぅ
- 244 名前:. 投稿日:2004/04/13(火) 03:19
- おしまい
- 245 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:36
-
_設定負けのミュージカルはいらない
三月某日。
ミュージカルの台本が配られた日のことだった。
- 246 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:36
-
「シダ植物研究会って何ですか?シダ植物研究会って何ですか?」
配役を見るなり、藤本が質問。
というよりも、詰問に近い。
もう一人のシダ研究会員は、フラフラと部屋を後にした。
「……ちょっと魂の洗濯、してきます。」
「のの!」
加護が言うより早く、藤本が後を追っていた。
- 247 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:37
-
辻はビルの屋上で、体育座りをしていた。
赤焼けた光線が斜めに降り注ぎ、辻の小さな背中だけが、ぽつんと黒い影を落としていた。
わかりやすいな、と藤本はひとつ噴き出し、辻の隣に腰を降ろした。
「夕陽、綺麗だよね。美貴さ、東京来て、唯一だよ。こっちの景色で、綺麗だな、って思えるの。」
辻は困ったように、仔犬の濡れた視線で藤本を見るばかりで、その意図を掴めない。
無理もないだろう。
お姫様から、シダ植物マニアへの降格。
藤本だって混乱しているのだ。
シダ植物の良さを声高に謳ったりするのだろうか、と。
- 248 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:37
-
「ののさ、今年こそは、って思ってたんだよね。もうすぐ娘。卒業でしょ?もうしばらくミュージカルできなくなるかもしれないでしょ?だから、絶対に頑張ろう、って思ってたの。一年目は中澤さんに三十路って言う役で、二年目はカントリー娘。の友達で、三年、さ、うっ……なんなんだよぉ、シダ植物研究会って。」
涙が一粒、オレンジ色に光って、コンクリートに跳ねた。
辻の弱気を目の当たりにし、藤本は優しく涙を拭ってやる。
「考えてみればさ、シダ植物って、なんか今回のミュージカルでは重要な役柄じゃない?だってさ、光合成して、酸素作るんだよ。地球を冷ますんだよ。前向きに行こ?私達でエコの種子を世界中に蒔いてやろうよ。」
「でもさ、美貴ちゃん。シダ植物って、胞子で増えるんだよ?」
「え!?」
空が赤い。
- 249 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:38
-
驚愕の表情のまま、フリーズが融けない藤本。
衝撃の新事実を前に、搾り出した前向きを挫かれ、根こそぎ搾り取られてしまったのだ。
辻が小首を傾げ、藤本を覗き込む。
そして、申し訳なさそうに頬を綻ばせた。
「辻ちゃ〜ん!!」
藤本は、本能に最も近いところにある衝動で、辻を抱きすくめ、押し倒した。
この時、自分の中で何かが弾ける音をはっきり聞いた。
後に藤本は恥ずかしそうに語る。
- 250 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:38
- 与えられたシダ植物研究会員という現実に耐え切れなくなった藤本の精神は、辻の愛らしさ、その奥に秘められた大いなる母性に救いを求めたのだ。
「え?あ、なに?ちょっと……ねぇ、美貴ちゃん?」
夜の帳が降り始めた、眠れない東京の空。
抱きすがる藤本に、抱きとめる辻。
重なり合う二つの影を、夜が優しく包み込む。
- 251 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:39
-
悲劇は必ず訪れる。
様子を見に来た飯田が、二人の一部始終を見ていたのだ。
全盛期の、ねえ笑って、の頃よりも目を見開いて。
そして、飯田の中では、こんな図式が恐るべき速さで構築されていった。
シダ研究員+シダ研究員=情事
シダ研究員同士の情事+新米教師=あっちょんぶ…いやん
- 252 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:39
- 飯田の思考はわかりやすいのかもしれないが、誰にも到達できないところに辿り着く。
誰にも推し量ることなどできやしない。
彼女は全ての概念を無視する。
彼女の美貌と奇天烈な行動は、世の全ての事象を超越した真理なのだ。
「のの!ミキティ!!」
飛び込んだ。
飛び越えた。
重力と引力の隙間に滑り込んだ飯田は、銀色の永遠を手に入れました。
- 253 名前:. 投稿日:2004/04/14(水) 01:39
- おしまい
- 254 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:45
-
_what a Beautiful things
2002年、夏。平家みちよには選択の余地があった。一つは、CDは出せないがHelloの長女として、サポートとして生き永らえる。もう一つは、完全な離脱。
みちよは考えるまでもなく、話を出された時点で回答した。考える時間はあると言われたが、考えるまでもなかったのだ。Helloから脱する旨を、丁寧に、はっきりと、もう一度繰り返した。
- 255 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:46
-
それから10日ほどした時のことだった。みちよは、事務所でばったり圭織と会った。電話ではHelloから抜ける旨を伝えてはいたものの、圭織はどこか不満そうだった。そして、
「逃げんなよ。」
半ば突っ掛かるように圭織が感情を露にし、みちよを責めた。みっともなくたって、喰らいついていかなきゃ、歌は続けられない、リスタートなんて人生ではありえないし、一からやり直しなんて、そんなのは綺麗事に過ぎない、と。
- 256 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:46
- ◇
渋谷と原宿と表参道の駅を結んだ三角形の、その中心に位置する雑居ビルの地下一階のバーにみちよはいた。常連とまではいかないが、顔馴染みの店で、みちよの自尊心を傷つけない程度の無関心を装ってくれる初老のバーテンとその娘が経営する、わずか15席ほどの、カウンターだけのバー。丁寧に時間を掛けて磨きこまれた木製のカウンターは、しっとりと手に張り付き、みちよはその感触が気持ちよくて肘までをべったりと付けている。
みちよはカウンターの一番奥の席を空け、アイルランドビールをちびちびと舐めている。
ねっとりと濃い深い味わいと、クリーミーな泡が特徴のこのビールは常温で飲むのが適しているからと、人を待つのならこれがいい、とバーテンが薦めてくれたくれたものだ。
- 257 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:47
- 客の入りは少なくはないが、それほど気にする様子もなく、みちよはのんびりと構えている。この雑居ビルの構造上、各店舗毎にトイレは備えられておらず、各階のホールに共同のトイレが設けられている。その為、みちよが座っている側のカウンターの奥は壁で、そこまで客が来ることはない。また、白熱灯の上半分を塗り潰しただけの間接照明のおかげで、バーはギリギリにまで照明が落とされており、他の客がみちよ、これから来る飯田圭織に気が付く要素は、ほとんどと言っていいほど、ない。
事務所での待ち合わせができなくなった今、目立たない立地と、店の構造や雰囲気が都合よく、酒の種類も多いこともあってか、かつての仲間との待ち合わせによく使っている。
- 258 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:48
-
「ごめん、待ったでしょ。」
「いや。勝手に先に来てただけだからね」
圭織はサングラスを外しながらバーテンに一礼し、とりあえずビールで、と注文し、みちよが空けていた席に座った。みちよもビールのおかわりを頼み、圭織へ向けた顔を途中で一度止め、少し間を置いてから、圭織を見た。
「なんか、久しぶり……なのかな?」
「たまにメールしてたしね。それに一昨日、裕ちゃん経由で矢口からみっちゃんの話聞いたりしてたから、あんま久しぶり、って感じはしないね。あんま変わってなさそう……あ、ちょっと痩せた?」
「まあ、ね。一応、ずっと人前に出てなかったから、ちょっと絞ろうかと思って。」
「ふへへへ。」
「ん?なに?」
「関西弁じゃないみっちゃん、なんかみっちゃんっぽくない気がする。」
「メールしたよね。外人とばっか話してたら、関西弁忘れちゃった、って。」
「で、英語圏の国で英語覚えないで、タイ語を学んで来てしまった、と。」
- 259 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:48
- みちよが仰々しく不貞腐れたところで会話が止み、その隙間を計ったようにビールが届けられた。形ばかりではあるが乾杯すると、圭織はごくごくと半分ほど飲み干す。みちよは大きく一口含むと、舌の上で弾ける炭酸を楽しむように、ゆっくりと喉に流していく。
「タイ語覚えて、ビールの飲み方も変えたの?」
「圭織、タイ語はもう触れなくていいから。まだツアーが残ってるから。大阪、東京二ヶ所の長かった全国ツアーが終わって、次は名古屋、東京の全国追加公演だから、あんまり喉に負担掛けたくなくて。」
「ずっと温めてたでしょ?そのネタ。」
「ばれた?」
「うん。だから、笑ってやんない。」
そう圭織は、笑みを口の端から漏らす。
「圭織は?なんかないの?」
「ん?別に今まで通りかな。見たまんま。圭ちゃんとなっちがいなくなったことくらいかなぁ。あと、子供が入って平均年齢がガッツリ下がって、飯田圭織がちょっといい女になった。」
「とりあえず言ってみただけでしょ?」
「一応、ちょっと、って遠慮してみたつもりなんだけど。」
「褒めても笑ってもやんない。」
- 260 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:49
- みちよが二杯目を飲み終える頃には、圭織は四杯目に突入していた。
「圭織、ペース早くない?」
「喉が渇いちゃって。」
「店、変える?何か食べる?」
「いや、ここでいいよ。」
みちよが、そう?と聞き、圭織が、そう、と返した。圭織はバーテンにシャンパンはないかと訪ね、マスターが申し訳なさそうに、ないと答えると、圭織は目の前にあるグラッパを指差して、鶏肉の香草グリルを注文した。この店自慢のオーブンで作られる、乾き物以外で唯一ある食べ物だ。
みちよは三杯目のビールに口を付けた。圭織は、グラッパの入ったグラスをぼんやり見つめている。酔いが回ってきているようで、圭織の目元から頬にかけて、ほんのりと桃色に染まっている。
圭織がおもむろに鞄からカルティエのタバコケースを取り出し、店にあるマッチで火を付けた。みちよは圭織に勧められたが、当然のように断った。
- 261 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:49
- 「そういや、飲んだ時、たまに吸ってたな」
みちよが思い出したように呟くと、圭織はぶわっと煙を吐き出し、楕円形で硝子の小さな灰皿に灰を落とした。灰はほとんど落ちなかった。
「たまにね。ホントにたまに。酒が進んじゃう時に。まあ、飲む量が減るだけで、回り方は変わらないような気がするけど。・・・火は持ち歩かないようにしてるの」
圭織はそう言ってタバコを揉み消すと、出された鶏の香草焼きを一切れ食べ、グラッパを一口飲み、大きく息を吐き出すと、もう一切れ鶏を食べ、二本目のタバコに火を付けた。そして、吸わずに灰皿に置かれたタバコの白い吸い口は、口紅が付き、鶏の油が光っている。
- 262 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:49
- 乾いたベルの音が響き、風と一緒に流れてきた埃が光の粒子となって舞い、隣の店からなのか、お香の強い香りが、店の奥にいる二人のところまで届く。二人は十五分ほど言葉を発していない。どちらかが切り出すのを待っているのではなく、自ら言い出すタイミングを計っている。ゆっくりと、それぞれのタイミングで。
- 263 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:50
- 圭織が徐に切り出した。
「酔ってるから、とか言われたくないんだ。言うことは、もうずっと前から決まってたから。それを、これから言うだけだから。だから、酒の入った頭で言うわけじゃないから。決まっていたことを言い出し難かったから、酒を飲んだってだけだから。」
「前から決まってたんなら、今すぐ言わなくてもいいよね?じゃあ、私から先に言おうかな。」
- 264 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:50
- 「いや、私から。たぶんだけど、今の段階では、いや、ちゃんと言うよ。私の負けだね。みっちゃん、CD、自分で作って出したもん。私にはできない。その、今の地位を捨てられないとか、娘。でいることにこだわりたい、とか、そういうのもあるけど、たぶん慣れちゃったんだと思う。もう忘れちゃったもん。今が考えるくらいの時間もないとか、忙しいとかじゃなくて、考えようとしていない。そういう必要がないのかもしれない。私には、歌がどうのとかこだわるよりは、今を、毎日を一生懸命にやっていったり、乗り切っていくことの方が大事だから。この世界に入った頃の志は忘れちゃったし、たぶん、そういうのはなんか違うと思うんだけど、それはそれでいいと思う。・・・言い訳っぽい?」
圭織はグラッパをグラスに半分ほど残っていた中身を飲み干し、水を下さい、とマスターに言った。出された水を一息に飲むと、天井を仰いで息を吸った。
- 265 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:50
- 圭織の話を反芻するように、みちよはコツコツと指でテーブルを叩いている。そのリズムがゆっくりになり、止まった。
「まあ、言い訳、かな?でも、圭織がいいと思ってるんなら、うん、少し、話を変えようかな。」
CD聞いてくれた?とみちよが聞くと、圭織は、もちろん、と頷いた。
「そっか。『キレイゴト…』って曲、あれさ、詞なんだけど、あれが一番最初から頭にあったものなの。で、一番最後にできあがった曲なの。なんつーかな、今回のテーマ、というのかな、圭織への挑戦というか、友情というか。まあ、綺麗事でもいいじゃん、って。……探す事をやめた今此処も、ユラユラと辿り着いた今此処も、君だけのspaceだよ、って」
「そのまんま歌詞じゃん」
「圭織へのメッセージだもん、あの詞。ホントはさ、インディーズでCD出せはしたけど、かなり前の事務所に助けてもらったし、カオの勝ちとか言いたかったんだけど。私も圭織も、まだ歌えてるわけだし、今が嫌いじゃないし、充実してる。あいこ、ってことで。ダメ?」
- 266 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:55
- 圭織がみちよを見ている。何かを待っている。
「ライブ、一回は見に来てよ。」
「私が行っても安全に見れるくらいの規模の会場でライブやれるようになったらね。それよりも、みっちゃんの方が来やすいでしょ?今度おいでよ。娘。すっごい変わったよ。」
「見られるくらいのクオリティのライブができるようになったら、見に行ってやらんこともないかな。」
「負け惜しみ?」
「圭織の?」
生きていくには、いささか不自由だ。
みちよは、何故だかそう感じ、おかしくなった。
- 267 名前:. 投稿日:2004/04/15(木) 00:56
- おしまい
- 268 名前:. 投稿日:2004/04/17(土) 01:12
-
_女なら背中で語れ
どうもー紺野あさ美です。
今日は、皆さんにモーニング娘。コンサートの楽しみ方を伝授しようかと思います。
ヲタ芸を極めようとしている方々、勝手に極めて下さい。
それが懸命な選択かと思います。
前列をぼったくり値でも買ってしまった方々、あなた方も関係ありません。
無駄金積んだ席で、心行くまでモーニング娘。を視姦しちゃってね♪
では、本題に入ります。
ぶっちゃけ、私たちのこと、見えませんよね?
だからといって、どうせ出るDVDと大して変わらないスクリーンを見ているのも味気ない。
でも、誰が誰だかわかりませんよね?
やっとお気に入りの娘を見つけたとしても、すぐに見失ってしまう。
悔しいですよねぇ。
そんな時にお勧めなのが、飯田さん。
比較的見つけやすい上に、おかしな動きをしてくれるので、楽しめること間違いなしです。
さあ、この情報、500円からで如何ですかぁ!?
……って、もう情報流してるじゃねーか!!
- 269 名前:. 投稿日:2004/04/17(土) 01:13
-
楽屋で一人、新たなキャラを模索中の紺野。
それを見てしまった道重と田中。
「先輩、わたしショックです!」
目に涙をいっぱいに溜めた道重、ケータリングへと掛けていく。
「紺野さん……。なにやってんすか?」
「……MCの、練習?」
「いや、私に聞かれても。それより、さゆ、泣いちゃったじゃないすか、どうしてくれんすか?」
責めるような口調とは裏腹に、失望の色を隠せない田中を、罰が悪そうに見つめるしかない紺野であった。
- 270 名前:. 投稿日:2004/04/17(土) 01:13
- おしまい
- 271 名前:. 投稿日:2004/04/17(土) 01:16
-
読んでくれてる人がいるのならのお話。
>>237-241
この縦読み、気付いて下さった方とかおられます?
- 272 名前:. 投稿日:2004/04/18(日) 00:09
-
_松浦の背筋に勃起
亜弥は疑わない。
自分を信じているから。
- 273 名前:. 投稿日:2004/04/18(日) 00:09
-
亜弥は、溺れることは決してない。
亜弥の持つ力は亜弥のものではなく、亜弥の元に集まった人によるものだから。
それを知っているから、決して踏み外さない。
感謝に満ちているから。
亜弥は知っている。
自他共に認めるように、亜弥の才能は、人を惹き寄せる神秘を秘めているのだと。
だが、亜弥を求める人間がいなければ、それは乾いた泉と大差ないことを、亜弥は知っている。
亜弥は間違わない。
自分自身を愛しているから。
自分に集まる人間に感謝を忘れずに、尚且つ愛しているから。
亜弥は決して見失わない。
亜弥は、歌手であり、アイドルであり、何よりも松浦亜弥なのだから。
- 274 名前:. 投稿日:2004/04/18(日) 00:10
-
──
松浦亜弥は、珍しく原宿の竹下通りを歩いていた。
それは必要に迫られてではなく、確認のためだ。
渋谷で山手線に乗り換え、一駅ではあるが、原宿で降りる。
ヒトゴミにまごつきながらも、五分少々で竹下通りの入り口に辿り着く。
目深に被った帽子を、ほんの気持ち持ち上げ、そっと歩く。
誰にも気付かれないように。
亜弥よりもちっちゃな子供が、その存在に気が付く。
「あ、あややだ〜。」
- 275 名前:. 投稿日:2004/04/18(日) 00:10
-
どうもー、あややだよ〜──
そう叫びたい気持ちを抑え、小さく手を振る。
ほんのりした気持ちで、何事もなかったようにやりすごすと、そっとクレープ屋でフルーツたっぷりのクレープを頼む。
亜弥は、そんな時のクレープが、何よりも好きなのだ。
- 276 名前:. 投稿日:2004/04/18(日) 00:10
- おしまい
- 277 名前:. 投稿日:2004/04/20(火) 21:17
-
_藤本のコメントは優等生
部屋の照明を全て落とし、北海道出身アイドル御用達のニトリで買ったスタンドの灯を点ける。
抑えられた白熱球の柔らかな灯が、自己主張せずに美貴をほんのり照らす。
飯田に貰った香を焚き、飯田に貰った白ワインのコルクを、ローソンで買ったコルク抜きで四苦八苦して抜いた。
少し零れた。
- 278 名前:. 投稿日:2004/04/20(火) 21:17
-
ワイングラスを持っていない美貴は、亀井が「どうぞよろしく」と美貴にだけ買ってきた、沖縄硝子のグラスに注いだ。
飲み口には綺麗な緋が透け、グラスの中腹から底にかけての罅割れが美しい、亀井の沖縄土産だ。
軽く回し、その匂いを嗅ぎ、首を傾げ、そっとグラスを傾ける。
微かに感じられる発砲が、舌の上で心地よく跳ねる。
仕事帰り、普段以上に厳重な変装をし、母名義のカードで借りてきた、甘い甘いラブストーリーのDVDをセットし、これまたニトリで買ったソファに深く身を預ける。
フィクションのヒロインに自分を重ね、夢の世界で愛を求める藤本美貴、19歳。
- 279 名前:. 投稿日:2004/04/20(火) 21:18
-
歌手になりたかった。
アムロちゃんに憧れた。
娘。にもDreamにも落ちた。
キティにはなれたが、シンデレラにはなれなかった。
劇場予告が終わり、配給会社のロゴが流れる。
(今日はどんな恋ができるだろう……。)
とどまることを知らない妄想に鼻を鳴らし、緩みっぱなしの頬を抑えた。
そして、配給会社のロゴが終わり、次はレンタル予告。
「んだよ、もぉー!!また予告かよーー!!!」
TVの主電源ごと消した。
- 280 名前:. 投稿日:2004/04/20(火) 21:18
- おしまい
- 281 名前:. 投稿日:2004/04/28(水) 00:02
-
_タンポポは傷だ
子供電話相談所もない。
マルガリさんもいない。
新垣船長もいない。
梨華ちゃんが一時間近く喋る。
忌々しき事態である。
- 282 名前:. 投稿日:2004/04/28(水) 00:02
-
「たけしくん、小学二年生からのお手紙です。
こんにちは、毎しゅう、おかあさんにろくおんしてもらって聞いてます。
ぼくはりかちゃんに質問があります。
りかちゃんは、おしっこする時、立ってしますか?座ってしますか?
ぼくのお母さんはトイレがよごれるから座ってしなさいといいます。
でも、お父さんはおかまみたいだからすわってするのはだめといいます。
ぼくは、どうしたらいいですか?
えー、何なんでしょうかね、これは。えーと、こういうのは……」
- 283 名前:. 投稿日:2004/04/28(水) 00:03
-
なにコレ?CBCからの挑戦?スタッフがにたにた笑ってる。くそー、名古屋め。せっかく可愛い梨華ちゃんがラジオやってあげてんのにぃ!とりあえず、こんな程度の低い愚図共は放っておこう。放送事故が心配だわ。何か言わないと。
「困ったねぇ。お父さんとお母さん、言う事が違うんだ。」
困ってるのは私の方よ。ん?まつもとあきこさんが干された時、うんことまんこ、言ったのどっち?あれ?お、をつければよかったんだっけ。おうんこ、じゃ変だしな、あれ、おまんこ、こっちだっけ、でもどっちにしても言えるわけないわ!
- 284 名前:. 投稿日:2004/04/28(水) 00:03
-
この手紙は辻と小川が悪ノリして送ったものだ。
- 285 名前:. 投稿日:2004/04/28(水) 00:03
- おしまい
- 286 名前:. 投稿日:2004/05/08(土) 23:12
-
5月8日、午前0時過ぎ、飯田の携帯に着信があった。
「はい」
受話口の向こうは、遠慮を取り繕った、控えめな声。
『圭織?起きてた?』
「うん、起きてたよ。珍しいじゃん、なっちが電話してくるなんて。」
『いや、ミニモニ。終わったでしょ?どうだったかなぁ、って。』
「あれ?みんなそれぞれ、なっちからメール着たって言ってたけど。」
『そうなんだけど……さ。圭織から見て、どうだったのかな、って。』
- 287 名前:. 投稿日:2004/05/08(土) 23:13
-
圭織はソファに背を凭せ、CDの電源を切った。
「そうだねぇ……。どうだろ。」
『なにさ、言ってよ。』
「矢口がちょっと、ホントにちょっとだけだよ、参っちゃってるかな」
『そっか、そうだよね、やっぱり……』
「でも、大丈夫だよ、矢口は。時間が過ぎれば、ね?」
『そうだね。圭織が言うんなら、そうかも』
「やけに素直じゃん。」
『まあ、ね……』
圭織はそれ以上は聞かない。
なつみもそれ以上、何も言わない。
それは、二人の共通認識であり、圭織自身の傷にも触れることになるから。
なつみの大きく息を吐く音がした。
- 288 名前:. 投稿日:2004/05/08(土) 23:13
-
『そういえばさ、今日、もう昨日か、紺野の誕生日だよ?』
「もちろん祝ったよ。毎日のように会ってるんだから。それより、なっちは?」
『ちゃんとおめでとうしたよ。』
「だよね。」
『うん。それでなくても、あの子には変な重荷、背負わせちゃ──』
「なっち、前にも言ったけどさ。」
圭織はここで話を途切らせ、なつみの沈黙を確かめる。
「あれは、なっちが思い悩むことじゃない。それに、娘。のことは私に任せてよ。」
『わかってる。約束したもんね。』
「もうちょっと、私を信用してよ。」
『してるよ、信用。誰よりも圭織を信じてると思う。……でも、なっちは娘。にいないから。』
そう言われると、圭織には言うべき言葉は見つからない。
話すべき事が見当たらないから、話さない。
言葉を紡ぐ、という必要がない。
- 289 名前:. 投稿日:2004/05/08(土) 23:14
-
『……ねぇ、圭織。いつからなっち達さ、こんな風に話すようになったんだろうね。』
「圭ちゃんのおかげじゃない?」
『そういうことじゃなくて。それはきっかけじゃない。』
「理由が欲しいの?」
『そうなの……かもしれない。』
「寂しいこと言わないでよ」
『だよね。ごめん。』
圭織は何も言わない。
なつみも何も言わない。
これは、二人が無為に流してしまった沈黙でもあるのだから。
静寂を切り裂かないよう、圭織が切り出す。
「もう3,4日すれば、また一緒に収録あるから。」
『知ってる。』
「心待ちにしてるんだっけ?」
『そうでもないけど……』
「まあ、いいや。また、その時にでも。」
『そうだね。したっけ』
「うん、また……」
電話を切ると、圭織はまっすぐ浴室に向かった。
浴槽から溢れ続ける水が、白熱灯のオレンジを受けて穏やかに揺れていた。
- 290 名前:. 投稿日:2004/05/08(土) 23:14
- おしまい
- 291 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/09(日) 01:00
- またも油断すれば大量に更新されてる。そのどれもがツボ。
週に1度は来るよう心がけます。
- 292 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:14
-
_陸サーファーでもいいですか?
その日は珍しく、紺野のタイトルコールから始まった。
「浪漫〜My dEAR Boy〜発売記念。ついでに地球も大切にねっ☆。つんく♂さんを称えよう!第一回ハロモニ。ちきちき朗読選手権〜!!」
変わり映えのない、何とも扱いに困るタイトルコール。
いつも通り、とりあえずなんか出しとけ!みたいな娘。の面々。
「いえーーーーー」
- 293 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:14
-
そして、安倍の企画説明。
「はい。というわけでね、心ある歌を伝えていくには、その詞を読みこみ、自分なりに解釈する必要がありますね?みなさん。ね?圭織。そうだよね?りーだぁー?……まあ、そんな訳でね、詞の世界をより深く理解するためには、つんくさんをもっとよく知ろう、ということなのです。こらっ、藤本、嫌そうな顔しない。でね、みなさんにはシャ乱Q時代のつんくさんの詞を朗読してもらいます。」
この日のモーニング娘。全員の衣装は、ロックが大事なので、白のシャツに黒い皮パン。
何人かは、黒の下着の着用を義務付けられているが、これはおいといて。
矢口は、自らの意志でわざわざ黒下着を身に付けているが、これもおいといて。
- 294 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:16
-
安倍さん、かわいさ満開の掛け声で始まる。
「では、一発目は田中っちで『大阪エレジー』スタート!」
「ごどうすじを 一人歩く──」
突如、吹き出た炭酸ガス。
田中も安倍も、その失格の意味がわかっていない。
出す言葉を見つけられず、唖然と顔を見合わせている。
安倍、カンペを見て、ようやく納得。
「これね〜、『ごどうすじ』じゃなくて『みどうすじ』って読むんだって。わかんないよね、御堂筋なんて。ちょっと厳しかったかな。でも、しっかくぅ〜!」
その時だった。
奇跡が起きたのは。
「えぇ〜っ。」
そう手をついて項垂れた田中の覗いた胸元には……
黒ブラ!!!
田中、優勝以上の何かを得て、失格。
- 295 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:17
-
「じゃあ、次。梨華ちゃんで『こんなにあなたを愛しているのに』どうぞっ!」
「もしもこの愛が ふしだらな愛なら 何も辛くはないのだろう いつも会いたくて 朝も昼も夜も あなたの名前を呼ぶ (中略) こんなにあなたを愛しているのに あなたに伝える手段がない……」
鬱陶しいくらいに感情を込めていた石川、余韻を残しつつ、うっとりと目を閉じる。
「つまんない」
ぽろりと零れ落ちてしまった、亀井の本音
「それにキモいよ」
そう言ったのは、しかめっ面の吉澤。
炭酸ガス。
石川、キモいし普通なので失格。
- 296 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:17
-
「次、麻琴!!『空を見なよ』」
「答えはいつか出るから 逃げるこ…にげ…逃げることはし……あ!これ、まことさんの詩じゃないですか?」
「逃げることはしない」と言えないのを棚上げし、スタッフのミスについて言及。
小川、何とも笑いにくい嫌な空気にしてしまったので、失格。
- 297 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:18
-
重々しい雰囲気を痛いくらいに感じている安倍、道重の登場に少しだけ救われた。
その道重は得意そうに笑っている。
「いつも番組でやってるんで、余裕ですよ。」
他局NG、イエローカード。
往年のスマップによる、世紀的な大作「シュート」のワンシーンのようだ。
「シゲさんで、『My Babe 君が眠るまで』すた〜とぉ。」
「満足するほど抱きしめあった夜とか 不思議と幸せ感じるんだね あと何時間か経てばまた別々だね 今度会える日はいつになるんだろう (中略) My Babe 君が先に眠るまで もったいないから食べちゃった──」
「なにを?」
歌詞違いに、すかさずつっこむ藤本。
それを拾ってしまった道重。
「うんこ…………あっ。」
道重、余裕すぎてお下劣なので失格。
- 298 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:19
-
半ば辻に縋るような、安倍のハイテンション。
「はぁい、次はののぉ!『ラーメン大好き小池さんの唄』すた〜ちょ〜!」
「朝も昼も夜も夕方も ずっと思うはお前のことばかり (中略) ラーメン大好き人間なのだ……あー、ラーメン食いてぇ。」
辻、メンバーやスタッフ、その他大勢の大人の制止を振り切り、退場。
よって、失格。
- 299 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:19
-
安倍は苦々しそうに言う。
「はい、高橋で……『友達はいますか』です。どうぞ。」
「友達はいますか 友達ですか 楽しくやっていますか ……すんません、もう読めません。」
高橋、案の上哀ちゃんになってしまったので、失格。
- 300 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:20
-
気が触れたのか、安倍は含み笑いをしている。
「圭織で、『大丈夫だよ。。』いっちゃって。」
「明日になれば また 新しい命を与えられるんだって 信じてる。そう。日々燃え尽きること。これ大事。それでいいの。それがいいの。今日は 今日で 楽しんで。いっぱい 笑おう。いっぱい 泣こう。そうしたいの。」
ぼんやりと立ったままの飯田に、矢口が、
「圭織、それで終わり?」
「うん。……なにこれ?つんくさん、こんなこっぱずかしいの、書くっけ?」
モーニング娘。その他、現場にいる一同、訳がわからないといった様子で首を捻る。
安倍の表情が曇った。
- 301 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:20
-
「あ!!」
素っ頓狂な声をあげ、何かに気付いた新垣。
「あの、これって安倍さんのエッセイの中にある詩じゃないですか?」
安倍の詞をきっかけに、いつものハロモニ。のようなほんわかした空気が戻る。
そんな思惑が、安倍の中にあったのだろう。
しかし、それは見事に外れた。
安倍は唇を尖らせ、俯いている。
台本を持つ手が震えていた。
「えぇ〜?まさか、そんな、なっちが?……って、なっちかい!!」
定石通りの矢口。
本人に悪気はない。
ちょっとした芸人根性と、元・娘。の中間管理職として持つ使命感の名残によるものだ。
が、これが決定打だった。
司会の安倍、とことんいじけてしまったので、収録続行不可能。
- 302 名前:. 投稿日:2004/05/12(水) 22:20
- おしまい
- 303 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/13(木) 21:45
- なっちさん可愛い。
それとシュートに出てたV6のヒトを思い出した。
- 304 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:10
-
_バブルバス(ゾウ)はストロベリーの香り
平凡な昼下がり。
亜弥は事務所で溜まった領収書の清算をしていた。
「レコーディングの時のおやつ、落ちるかなぁ……」
そんな呟きも、けたたましい電話のベルに吸い込まれてしまう。
いつも通り、何ら変わりない事務所の風景。
- 305 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:11
- そんな中、会議室のドアが開き、一人の少女が放り出された。
「ちょっと待って下さい!話はまだ終わってません!!」
少女の叫びも虚しく、がちゃりとドア、そして鍵の掛かる無機質な音がした。
亜弥は何気なく、声のする方を見た。
声の主は美貴で、必死にドアを開けようとしている。
「そんなはずはないんです、きっと絶対どっかで話が行き違っちゃって、約束したんです、私と亜弥ちゃん。誰かに話がいってると思うんです。だから、あの、ちゃんと聞いてください、開けて下さい。開けろっ!そして聞けえっ!!!」
完全に自分を見失っている。
- 306 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:12
-
亜弥は、悪態をつき、ドアを蹴り続ける美貴に歩み寄った。
「どったの?たん。」
「あ、亜弥ちゃん。ちょっと聞いてよ。酷いんだから。」
「うん、なに?」
「夏の娘。コンサートでね、美貴、ソロで歌うことになったの。」
「よかったじゃーん。おめでとう!」
「うん、ありがと。で、やっぱ歌うなら『風信子』でしょ?せっかく亜弥ちゃん、くれたんだし。」
ものすごーく気まずそうな亜弥。
「あの、さ。……一応、言ったんだよ?マネージャーさんには言ったんだけどさ。」
「言ったんだけど?」
「無理、って笑って流されちゃった。で、そりゃそうだよね〜、ってそのまま忘れちゃってた。」
- 307 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:12
-
美貴の目が一瞬にして据わった。
「この、恥知らずがぁ!!」
「いきなりなによ。……それにわたし、恥くらい知ってるもん。」
「全裸で開脚前転する女の、どこに羞恥心が存在すんだよ!」
「あれはヨガから分派したアヤガの、崇高な美容体操だもんっ。」
「なぁにがアヤガだ、この愚か者!」
「なによ、じゃあ、人の家のお風呂でうんこ漏らすのはどうなのよっ!」
「はんっ、あれは亜弥ちゃんが先にバブルバスでオナラ大会とか、訳わかんないこと言い出すからでしょ。」
「でも、うんこは漏らさないもん。」
「あれは勢いついただけで、さきっちょ出そうになっただけだもん。すぐ引っ込めたもん。」
「どうだか。」
「だいたい、亜弥ちゃんのオナラとかすっごい臭いんだからねっ!せっけんのいい香りとか、意味なくなるんだから!!」
「くっ……」
口喧嘩では、美貴に分があるようだ。
亜弥は唇を噛み締め俯いているが、目は死んでいない。
- 308 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:12
-
「ダブルのくせに……」
「なによ、亜弥ちゃん。ちゃんと言いなさいよ」
「トイレットペーパー、ダブルの使ってるクセにぃ!!」
「……な、なにいいだすのよ。みき、だぶるなんかじゃないもん!」
「なによ、たんの家、トイレットペーパー、ダブルだったもん!」
「ち、違う。だぶるなんかじゃ──」
「いいえ、あれはダブルでした。薄いペーパー二枚がはっつけられた、普通のトイレットペーパーよりも厚くて、確かな手ごたえの、間違えるはずもない、ダブルのトイレットペーパーでした!」
「せつめいすんなぁっ!!」
「説明しますぅ!!!」
鼻息荒い亜弥。
ぷつりと何かが切れてしまったような美貴。
「あー、台無しだ。美貴のキャラ、台無しだ。全部なくなった……」
「え?あ……なに?たん?ちょっと……」
- 309 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:12
-
5分後。
「たん、このあと仕事?」
「いや、今日オフだから。」
「じゃあさ、映画見に行こうよ。世界の愛を歌う、みたいなやつ。見たかったんだ。」
「ダメ、あれ、CMの時点で美貴のつっこみ入ったから」
- 310 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:13
- おしまい
- 311 名前:. 投稿日:2004/05/14(金) 02:14
- >>303
ありがとう。
でも、もったいないから食べちゃった、をやりたかっただけってゆー……
- 312 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/14(金) 22:06
- 高橋さんはしないって言ってました。
吉澤さんはケースバイケースと言ってました。
石川さんはファンタジーを出すと誰かが言ってました。
こんこんの証言通りだったんだね。てか、アヤガってなんか臭そう。
- 313 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:01
-
_PVメイキング、辻が石川に言った「お前センターかよぉ!」があまりに面白すぎて
石川の家に泊まりに来ていた辻と小川。
ひょんなことから、センター石川の話題に。
- 314 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:01
-
辻が言う。
「梨華ちゃんってさ、何万もCD売る人の中で、最低のオンチだよね。前よりマシだけど。」
小川も続く。
「そういや、そうだよね。すごいことだよ。いつかの紅白、センターなのに歌ってないし。」
気を悪くした石川、
「じゃあ、ナカイさんはどうすんのよぉ!歌ってないのに二百万よ!!」
「だってさ、梨華ちゃん。ナカイくん、歌ってないって自分で言ってんじゃん。」
- 315 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:01
-
こんな時だけ、先輩風を吹かせたがる石川。
「どうなのよ、麻琴。」
半歩だけ辻に身を寄せた小川が、平然と言ってのける。
「実際、石川さん、今のスリートップの中で、4つくらい劣ってますよ。」
信じていた5期メンの小川にまで言われ、自己防衛の戦闘態勢にはいりつつある石川。
「何が劣ってんのよ。」
- 316 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:02
-
辻と小川が、困ったように顔を見合わせる。
「……キャラ?」
そして、辻が自信なさ気に言った。
何かよくわからないが、その言葉しか見当たらないのだ。
小川も不思議そうな顔だが、しきりに頷いている。
- 317 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:02
-
訳がわからなくなって、行き当たりばったりに近い石川が言う。
「美貴ちゃんだって、キャラで損してるじゃない!」
辻と小川、この答えは簡単らしい。
小川がさらりと言ってしまう。
「藤本さんは、石川さんとは違う。」
「うんわかる。あれはキャラとして成立してるし、ミキティかわいいもんね。」
「そう、かわいいのぉっ!!」
「でしょお!?かわいいよねぇ。……梨華ちゃんのって、全部マイナスにいってんだよね。しかも素だし。」
- 318 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:03
-
「じゃあ、高橋。」
石川が言い、小川が即答。
「愛ちゃんはしょうがないから。」
石川が、そうだった……、とがっくり肩を落とす。
辻は納得顔。
満場一致。
- 319 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:03
-
しかし負けられない石川。
「なによ、じゃあ、麻琴はどうなのよ。」
「麻琴のはキャラだもんね。」
辻の言葉に驚き顔の麻琴が、慌てて、とりあえず何か言う。
「うんうんうん、そうそう。あれは作ってるからね。完全なキャラクター。創作。」
ちょっと、僅かな隙でも見つかれば突っつく、混乱を極めたウルフヘアーの石川梨華。
「なによぉ、ずいぶん動揺してるじゃないのよ。」
「そぉんなことないですよぉ!!」
しかし、勢いでは16歳の小川には勝てるはずもなく……
石川、二歩も三歩も後退。
- 320 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:03
-
その間に、好き勝手言う辻と小川。
「梨華ちゃん、前と比べて、だんだん不細工になってきてるしね。」
「ああ、それは思うかも。私が加入した頃は、それはもう……ねぇ?」
「微妙に体重が減ったり増えたりしてるからだよ。だから崩れてくんだよ。」
暴言吐かれまくってるのに我慢ならなかった石川、態勢も整わないのに反撃。
「じゃあ、ののはどうなのよ。」
「だって、のんはがつんって上がったけど、ゆっくり下がったもん。緩やかだもん。」
「じゃあ、安倍さんは?」
「あれ?なちみリスペクトはどこいったの?」
「え?いや、それは……」
「だって、なちみ、言ってたもん。私もなちみも、ゆっくり痩せたから、リバウンドないって。」
「何の根拠があるのよ。」
「私もなちみも、安定してんじゃん。」
「……」
- 321 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:04
-
体重の話になると、微妙に入れない小川麻琴。
そこを突く石川、何振り構っていられないくらい、精神的に追い詰められている。
「麻琴、どうなのよぉっ!」
「ぃええ?わたしぃ?別に体が重くなったから、ぎっくり腰になったわけじゃ……」
小川、痛いところを突かれ、一年前のいらんことまで言ってしまう。
- 322 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:05
-
梨華ちゃんは何に目が眩んだの?
梨華ちゃんは何を見失っているの?
梨華ちゃんは何を今求めているの?
梨華ちゃんは何が楽しくて今を生きているの?
梨華ちゃんは何が悲しくて優しさをなくしてしまったの?
梨華ちゃんは何を境にそんなに変わってしまったの?
……とかなんとか、まあ、てきとーにいろいろ込めて。
辻が呆れかえったように言う。
- 323 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:06
-
「今は梨華ちゃんが、顔かわいいのに、きしょくて歌が下手、ってことを話してんだよ。」
「顔がかわいいから、それでいいじゃんよぉ。」
「それが台無しだって話してんの。いい加減、人の話、理解できるようになりなよ。」
加護の伴侶は口喧嘩が強くなる。
意識せずとも、言葉の端々には妙な自信と、相手に反論を許さない魔力に満ちている。
続けて辻が決定打を。
「梨華ちゃん、本気でバカじゃない?」
そして、小川があほだけど、なんか愛嬌のある口調でダメ押し。
「あぁ、バカだからか。だから、何もかもダメな方にいっちゃうんだぁ。」
- 324 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:06
-
完全に石川が落ち込んだところで、辻と小川、ガッツポーズ。
娘。のセンターを潰すという、16歳のちょっとした冒険心。
- 325 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:06
- おしまい
- 326 名前:. 投稿日:2004/05/15(土) 03:07
- >>312
从*・ 。.・)<石川さんがぶっといのするの、みちょ〜よ
- 327 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:31
-
_ずっと気になってたんだけどさ、
かねぼうの、キラキラ紫外線防止の「ありー(だっけ?)」のCMソング、メロンじゃない?
映画を見たり、意味のない話をしたり。
19、20にしては寂しい限りの話題だが、幸福な一時。
そんな時だった。
- 328 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:32
- 石川が柴田に何気なく言う。
「柴ちゃん、最近、何してんの?」
「……仕事?」
石川に、決して悪気はない。
「うん、仕事もそうだし、いろいろ。」
「毎日、楽しく過ごしてるよ。」
「ライブのリハとか?」
「そうだね。新曲、春のメロンライブでやっちゃったけど。」
「そっかぁ。お互い、忙しいんだね。頑張ろうね。」
石川は重ねて、頑張ろう、と自分に言い聞かせる。
柴田は何も言えない。
- 329 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:32
- でも、柴田は何か言う。
「うん、いろいろ頑張らないとね。」
「だよねぇ。ラジオとか、それ以外にも、鬱陶しいくらい、たくさん取材あるしね。」
「……そう、大変だよね。」
- 330 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:32
- メロンと娘。の差って、こんな感じ?
- 331 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:32
- 本当は、こんな心使いのできない石川、いないんだろうけどね。
- 332 名前:. 投稿日:2004/05/16(日) 00:33
- おしまい?
- 333 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/20(木) 22:54
- 石川さんの乱入の仕方に変わったなーと感じた。
村さん頑張れ。
- 334 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:48
-
_裕子さん
「さゆちゃん、あんた、自分が可愛いのは知ってるけど、男を惑わす色香をぷんぷんさせてんの、知らんやろ?」
裕子さんは、私が貰ったラブレターを見せたり、告白されたという話をするたびに、口癖のようにそう言った。
- 335 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:49
-
裕子さんは四年前に越してきた私の家のお向かいさんで、本人は三十過ぎだと言うが、全然そうは見えない。
肌がすごく綺麗で、この住宅街で化粧をしていないのは裕子さんだけだ。
それなのに、裕子さんは誰よりも綺麗なのだ。
裕子さんの髪は艶のある黒で、私と同じように、まっすぐおろしていた。
- 336 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:49
-
裕子さんは結婚しているけど、旦那さんはいない。
近所ではタブーのようになってたけど、裕子さんはそういうのは気にしてないらしい。
聞いてみると、笑って教えてくれた。
「ホモなんや、私の旦那さん。知ってる?ホモって。」
「うん。」
「仮面夫婦、ってやつ。私が生活できるだけの金入れて、あとはご自由にっていう契約なんよ。」
話が難しそうで、私はただ笑って曖昧に頷いていた。
「ま、女一人で生きていくにも限界があってな。」
冗談めかして言うと、ふっと笑みを零して、ハナとタロ、二匹のプードルを抱き上げた。
けど、裕子さんの顔はどこか寂しそうだった。
- 337 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:49
-
初めて男の子に告白されたのは、小学校の卒業式が終わったときのことだった。
クラスの男の子の中心グループのリーダー格のだった寺沢君が、背だけ高くてひょろったした山本君を連れて、私の前に来た。
「こいつ、道重のこと好きなんだってよ。」
寺沢君が、山本君の背中を押し出すようにして言った。
だからなんだ、という感じだった。
私はかわいいからみんなに好かれるのは当たり前のことだし、
それに寺沢君は、よくスカートめくりとかちょっかいかけてきたし(この撃退方法を教えてくれたのも裕子さんだ)、
山本君にしても、正直言ってあまり印象にない男の子だ。
この二人は仲がよかったんだ、くらいにしか思わず、それが不思議だった。
自然と首が傾いた。
唇を触っていたかもしれない。
二人の頬が赤らんで、はずかしそうにそっぽ向いたのを覚えている。
- 338 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:50
- その話をした時、私は初めて裕子さんに、色香、という言葉を教えてもらった。
私には男の子の理性を失わせる魔力がある。
だから、気をつけなきゃいけないらしい。
よくわからなかったけど、色香という言葉の感じが気に入ったし、私は危険な女みたいでカッコいい気がして、単純に喜んだ。
- 339 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:50
- すると、裕子さんは、隣の美貴ちゃんを引き合いにして、諭すように教えてくれた。
美貴ちゃんは顔はいいけど、色香がないから男が近寄らないということだった。
ああならなくてはならない、と。
私は、そんなことはない、と言った。
現に、美貴ちゃんを見に、この辺りをうろついてる男の人がいたりもするし、
私の家の裏の大学生は、授業もないのに美貴ちゃんの登校時間に合わせて家を出ていると、お母さんが教えてくれた。
私の言葉に、そうやんやけどな、と裕子さんは頬を歪めて言った。
「近寄ってても、結局は何もできへんねん。美貴に対しての場合は。」
そういうものらしい。
- 340 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:50
-
お母さんは、迷惑だからとあまり裕子さんの家に行くなと言うけど、私は学校が終わると(告白されたり、ラブレター貰ったりした日は必ず)、家に帰らず裕子さんの家に行った。
いつからか、裕子さんは鍵を開けてくれるようになっていた。
こんにちは、が、ただいま、になるには、そう時間は掛からなかった。
裕子さんは決して私を迎えたりはしない。
本を読んでいたり、ハナとタロの相手をしていたり、TVを見ていたり。
何かしていることが一段落ついて、ようやく笑顔を見せてくれるのだ。
どうしてそうするのかはわからないけど、私は裕子さんが振り向いてくれるまで、どきどきして待っているのだ。
- 341 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:51
-
私は自慢気に、届いたラブレターを見せる。
裕子さんは、まるで自分のことのように誇らしげに喜んでくれて、自慢の髪を撫でてくれる。
私のかわいさに寄ってくる男の子がいることよりも、これが好きなのだ。
そして、いつものように裕子さんは言う。
「色香、気ぃつけや。」
- 342 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:51
-
また、裕子さんは、たまにオーディションに落ちた女の子五人が集まって歌手デビューする話をしてくれた。
その中でも、私はちっちゃい田舎者の女の子の話が好きで、せがんではその子の話をしてもらった。
裕子さんは作り話だと笑っていたけど、私は知っていた。
それは本当にあったモーニング娘。というグループの話で、裕子さんもそこに在籍していたことを。
そういえば、といった感じでお姉ちゃんが教えてくれたのがきっかけだった。
モーニング娘。というグループの、その最年長の人がお向かいさんに似ている、と。
私が調べたところ、モーニング娘。はCDを四枚出して解散している。
お兄ちゃんは、CD二枚くらい出してからは、めっきり見なくなったと言っていた。
モーニング娘。の裕子さんは、今よりもずっと短い髪を茶色に染めて、化粧もしていた。
私の中では、何となく違う人として消化されていた。
裕子さんの話は、いつもデビューしたところで終わるから。
- 343 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:52
-
その日も告白され、断り、私はいつものように駆け足で裕子さんの家に向かった。
「裕子さん!」
息を切らせてドアを開けると、隣の美貴ちゃんも来ていた。
二人はかなり親しげで、それを知らなかった私は、言いようもなく寂しかった。
裕子さんが何かをしているとき、私は決まってハナかタロの相手をする。
よく懐いてるのはタロの方で、その相手をすることが多いんだけど。
その日も、例の如くタロの相手をして、二人の話の切れ目を待っていた。
- 344 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:52
- そして、二人がお茶を飲むタイミングを見計らって、告白されたと言った。
すると、裕子さんは私を隣に座らせ、やっぱりまっすぐに伸びた髪の毛を撫でてくれた。
私がうっとり目を閉じていると、美貴ちゃんが聞いてきた。
「告白してきた男の子と、付き合ったりはしないの?」
口調も楽しそうだし、表情も笑っていたけど、目だけが動かなかった。
裕子さんは余裕たっぷりに笑い、美貴ちゃんに聞く。
「あんたはどうなんや?」
「私?無理だって。ありえないし。」
美貴ちゃんはそう笑い、裕子さんの腕を叩いた。
その後、三人でおしゃべりして、19時以降は大人の時間だからと、私は帰された。
- 345 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:52
-
ある日、おかしな噂が私の耳に入った。
と言っても、私の耳に入るくらいだから、かなり前から、真実の顔をして通っていたものだろうけど。
美貴ちゃんが男を金ヅルにしているというものだった。
同じブランド物を男の人に買わせ、それを質に入れる。
時には現金をそのまま貢がせているというものだ。
裕子さんの家にいた美貴ちゃんからは、想像もつかない。
私は笑って聞き流したけれど、どこかそれが引っ掛かっていたようにも思う。
- 346 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:53
-
それから少しして、裕子さんの家に行ったとき、美貴ちゃんがいた。
「さゆちゃん、久しぶりぃ!」
美貴ちゃんはソファにそっくり返って、上機嫌で私に手を振った。
裕子さんは珍しくキッチンに立って、難しい名前のお菓子を作っていた。
私は美貴ちゃんの隣に座り、聞いたばかりの噂を思い出し、緊張していた。
美貴ちゃんが横目で、寄ってきたタロの相手をする私を値踏みするように見て、言った。
「確かに可愛いよねぇ。お姉さん、襲っちゃいたいくらいだよ。」
ここまで美貴ちゃんが言うと、裕子さんがキッチンから、さゆちゃんには手ぇ出させへんよ、と怒鳴った。
美貴ちゃんは笑って、冗談だよ、と言うと、話を続けた。
「綺麗な髪、してるよね。触っていい?」
黙って頷くと、美貴ちゃんは私のまっすぐな髪に、遠慮がちに指を通した。
すっと髪を手先まで流すと、またゆっくりと髪の根元まで戻り、丁寧に撫でる。
それは裕子さんそっくりで、私は抱いていたタロを落としそうになってしまったほどだ。
- 347 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:53
-
「できたでぇ。」
裕子さんが作ったのは、ブッシュ・ド・ノエルという薪の形をしたケーキで、コーヒーの苦手な私でもおいしく食べることができた。
クリスマスに食べるケーキらしいけど、そんな風情違いなんて関係なしに、私と裕子さん、美貴ちゃんの三人であっという間に平らげた。
ケーキがなくなったところで、美貴ちゃんが不意に立ち上がり、言う。
「じゃあ、これからバイトだから帰るね。」
お姉ちゃんが欲しがっていたブランドのバックを抱え、美貴ちゃんは颯爽と帰っていった。
裕子さんは、しょうがないな、とでもいった風に美貴ちゃんの後姿を目で追い、閉じたドアの鍵を閉めた。
- 348 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:54
- そして、ゆっくりと私の隣に腰を降ろすと、肩に手を置いてきた。
「聞いたんやろ?美貴の噂。」
私は不意のことに驚いて、しどろもどろになっていると、裕子さんは続ける。
「あの子な、そういうことに敏感なんよ。人が自分を見る目、ってやつ?私でも気付いたくらいやから、きっと気付いたやろな。」
裕子さんはふっと頬を歪めると、別にさゆちゃんを責めてるわけじゃない、と付け加えた。
さゆちゃんになら話してもいいかな、とも。
私は、何をすることもできず、金縛りにあったように裕子さんの目を見つめるしかできなかった。
裕子さんはそれを確認すると、小さな声で、噛み締めるように話し始めた。
- 349 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:54
- 「あの子な、男を信じられへんのよ。さゆちゃんよりちょっと年下の頃だったかな、さゆちゃんに負けずとも劣らぬ勢いでモテまくとってな。そりゃ、あんだけ可愛かったら当然っちゃ当然かな……」
裕子さんはここで一息つくと、冷めた紅茶を一口含んだ。
「でな、フラれて逆上したバカな男がおったんよ。私からすれば、ちょっと女の子に人気があるからって、思い上がったクソみたいな男やねんけどな。美貴は全然相手にしなかったみたいで、それが頭にきたんやろな、美貴の家の前で待ち伏せとったんよ。……バカな男やからな、すぐに捕まったけど、襲われそうになった美貴はずっと震えとったんや。ちょうど私が越してきたとき、四年前の話かな。」
裕子さんは自分の辛い過去を話すように話した。
- 350 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:54
- 四年前といえば、私がまだ小学生の頃のことだ。
裕子さんは、美貴はああしとかな、やってけへんのよ、と言った。
私はその通りだと思い、まっすぐ裕子さんの目を見て、頷いた。
裕子さんは、どこか救われたように、私の頭を撫でた。
裕子さんと美貴ちゃん、髪の撫で方がそっくりだと、改めて感じた。
- 351 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:55
-
それから何が変わったかといえば、何も変わっていない。
私はいつも通りに告白されては裕子さんの家に行き、裕子さんは一人で家にいた。
美貴ちゃんとも前よりずっと仲良くなって、お母さんの溜息の回数が増えた。
相変わらず美貴ちゃんは高そうなブランドばかり持っていて、男なんて相手にしない。
当たり前のように時が流れ、いつも裕子さんがいて、たまに美貴ちゃんがいた。
私はその時間を幸福とは思わなかったし、いつもあるものだと思っていた。
ただ、この楽しいこの時間が積みあがっていくのだと思っていた。
- 352 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:55
-
季節が春になり、また新入生がわっと私に群がるようになるんだろう、なんて思っていたときのことだった。
裕子さんは引っ越していなくなった。
噂好きのおばさんの顔になったお母さんの話によると、旦那さんの会社が倒産したとのことだった。
お母さんは、残念ね、とは言っていたけど、ホッとしているのが私にもわかった。
そして、お母さんは私の髪を撫で、そろそろ揃えなきゃね、と言った。
私は髪を二つに縛ろうか、なんて考えていた。
- 353 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:55
-
美貴ちゃんが失踪したのは、その五日後のことだった。
- 354 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:55
- おしまい
- 355 名前:. 投稿日:2004/05/21(金) 23:59
- >>333
たまに訳のわからんゴーストが出てきますが、流して頂ければ。
一番愕然としているのは、間違いなく作者であろうことを感じてやって下さい。。
3並び、おめでとうございますコンチクショー!
- 356 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/23(日) 19:54
- ん、胸を突かれる。春ってそんな季節やね。
おじさんが、撫でて上げるよ。ハァハァ
- 357 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:22
-
_スキヤキ部と花嫁修業部
小川麻琴が鼻の穴を膨らませる。
舞台作家さんに頼んで捩じり入れてもらった、自分で考えたお気に入りの台詞だ。
- 358 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:24
-
「スキヤキ。
外国では日本で最もポピュラーなソングとして知られています。
外国で聞いたことがある方もいることでしょう。
サビに入ってかろうじてわかる、言語の域を超えた不可解な発音に、それに準じた不快なメロディライン。
現地のバンドがとりあえず、日本人にへつらって歌う、あの歌です。
京都へ芸者を見に行ったのに、ストリートで下手糞なロックを聞いてしまったアメリカ人の気持ち。
似たようなものですね。
そしてこれは日本とアメリカ、相互の異文化コミュニケーションの第一歩となるわけです。
- 359 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:24
-
スキヤキ。
そしてこれは、決定的な家族の味の差でもあります。
離婚の一番の原因でもあるでしょう。
だからこそ、今ここで言いたい。
『上を向いて歩こう』と。
ほとんどの場合において、めでたいことがあった日はスキヤキですね?
考えても御覧なさい。
素晴らしい日の締めとなるスキヤキ、その味に違和感を感じたら?
その食卓どころか、めでたいことすら台無しですよね。
とにかく、各家庭間にあるおふくろの味の差を全て包括する究極の味、埋められるべき価値観の違い。
それは赤味噌と白味噌に関しての討論の無効化を意味するに近い。
私は声を大にして言いたい!
全ては砂糖、醤油、みりんに掛かっているのです!!
まあ、スキヤキを牛肉ではなく豚肉にする殿方、この時点で旦那様失格でございます。」
- 360 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:25
-
ケメ子と羅生門。
小川麻琴と伯爵夫人。
その違いを定義付けられる人間は、果たして存在しうるのだろうか。
「小川さん、どうしてもここだけ、絵里の中で乗り越えられません。」
申し訳なさそうに挙手してはいるが、憮然とした表情の亀井。
──あと、台詞言うときの顔がキモい。
そう小さく付け加えた。
小川は聞こえたような聞こえなかったような、聞こえていないフリ。
- 361 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:25
-
「行こう!ぜんまいちゃん!!今こそシダ植物の本領を発揮する時だよ!!」
辻の嫌味なくらいに大きな声が聞こえる。
「辻ちゃん!こごみだって!!ぜんまいじゃないもん!!」
藤本も負けない大声。
- 362 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:25
-
しゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃば……
「いやぁ!やめてぇ!!」
どうにでもなれと言わんばかりの宇宙人に襲われる、新米教師役の飯田。
それっぽく見えつつも、力を抜く。
そんな手抜き技が達人の域を超えつつある飯田。
力みのなさすら、芸のうち。
そんないいらさんが愛しくてたまらないんだ!
のんさんがそう言います。
「やめて!世界が水浸しになってしゃばしゃばなんてっ!!」
飯田は女神だ。
- 363 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:26
-
「みんな、今やらないと、ちきゅうがめつぼうしちゃうんダヨォ!!」
一方では、誰かがそう叫んだ。
「しゃー。のやろー、家出娘!何偉そうに環境問題語っとると?先に家庭をかえりみろ!!なんしとっと?なんしとっと?」
「いしかわぁ!こっちはいい加減、うんざりなんだよぉ!!」
「なによ、れいな、さゆ。それが先輩に向かって言う言葉?こっちは過去に三回もミュージカルこなしてるんだからね?」
「こなすと演じるとは違うやん!!」
「甘んじてんじゃねぇよ、この黒髪!!さゆの拳が黙っちゃいねぇぜ!!!」
「二人とも、やめるだす。やめるだす。石川さんは先輩だす!!」
「黙れや、もんぺ福井!!何か言う前に、まずはそのふざけた頭巾を取れ!!!」
「演技の世界は甘くないっちゃよ!!!」
役柄にではなく、どっかの劇団員になりきってしまった田中と道重。
一方的ではあるが、胸倉を掴みあい、激しく演技論を交わす。
彼女らは真剣だ。
- 364 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:26
-
「紺野?」
「はい……」
「基礎練でもしようか。基礎体力は勝ってるってわかったしさ……」
「ですね。」
インサイドでのパス交換。
「なんかさー、切ないよね。」
「なにがですか?」
「いきなりあのレベルの大会に放り込まれて。」
「素人がいきなり全国大会に出るようなもんですもんね。」
「でも、勝てないわけじゃないんだよね。」
「アイドルやめてちゃんと練習すれば、なんとか。たぶん……」
「でもさ、私らが娘。じゃなかったら、あの大会には出れないんだよねぇ。」
「そこが理不尽な話なんですよねぇ。」
「鬱陶しい話だよね。」
「でも、負けっぱなしは性に合いません。」
「悔しい。」
「はい、悔しいです。ホントに。」
「うん。悔しいけどさ、私、忘れかけてた青春思い出して、ちょっと嬉しいんだよね。」
「でも、悔しいです。」
「それはわかる。ちゃんとサッカーしてぇ、私は。」
「私もです……」
しつこいくらいに技術確認を繰り返し、黙々とパス交換続けるフットサル部。
彼女らもまた、ある意味では真剣だ。
- 365 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:28
-
「暇だよねぇ……」
「うん。」
「ですねぇ……」
身近なところから節電をしてはみたものの、そこから何をしていいのかわからない現代のエコ倶楽部。
矢口、加護、新垣。
ぼんやりと口の開いた矢口が、これ以上ない倦怠の中、呟いてみる。
「ウチねぇ、今月の電気代、500円も安くなったんだって。」
加護が続く。
「節約の賜物だぁ。」
「コンビニで弁当買えば、それで終わりだけどね。」
「局で出してくれるお弁当、一個多く貰えば、それで解決じゃないですか。」
節約が資源の保護と結びつかない矢口と加護、大きく溜息をつく。
気まずい流れを断ち切るように、新垣が声を張った。
「ウチなんか、水道代、800円も安くなったんですよ!」
「コンビニの弁当にカップラーメンとお茶か……」
加護が呟き、同じような低いテンションで矢口が続く。
「肉体労働のおっちゃんの一食分だね。」
「そんなかーちゃん、矢口さん、身も蓋もない。考えてもみて下さいよ、娘。全員で考えたら、ね?」
- 366 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:29
-
矢口が仕方なく起き上がった.
「娘。13人で考えると……あーわかんね。誰か計算して。」
そして、また寝転がる。
「矢口さん、娘。は今14人ですよ?」
「知ってる。おいら抜いたから。みんなでエコやってよ。」
「そんなぁ!矢口さんはどうするんですか。」
「細々エコとか面倒になったから、今度まとめてどっかに寄付する。金でエコ。そっちの方が早い。」
取材を一本受けたら、一年分の電気代の節約なんて蟻のうんこの矢口。
その無気力も無理はない。
寝転がり、ダンサー先生方の討論が終わるのを待っている。
- 367 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:29
-
「降臨せよ、降臨せよぉ〜〜っ!!」
加護が退屈しのぎに水鉄砲。
暇潰しのアイテムを欠かさない、それがモーニング娘。
「やめろ、バッ、加護てめー、化粧溶けるだろうが。魔法が解けるって!」
「ガキさん、抑えといて。」
「もうばっちり。奇跡が現実に堕ちる瞬間、見たいですから。」
かつてない笑顔の新垣、禁忌を犯す背徳の快感に背筋を震わせている。
「バカ、新垣。それ抑えてるのと違う。なんで揉むんだよ。揉むなって。んっ、おっぱい揉むな!ぁん……」
- 368 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:30
-
そして、ここは二階席。
仕事終わり、差し入れを手にした後藤、地獄絵図を思い出す。
愛すべき思い出と、思い出したくない過去の狭間に揺れていた。
「おう、ごっちん、奇遇やな。」
ちょっとした幸運な巡り合せに気を良くした中澤、後藤の肩を叩く。
が、後藤の様子を見、すぐに状況を察する。
「あ、またこんなんになってんのか……」
- 369 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:30
-
そんな二人の背後に、保田の姿が……
「ウィ〜、みんなぁ。…あれ?なんか私タイムスリップした?20代の頃の裕ちゃんと、写真撮影の時、そっちは向けねんだよ、とか決まってカメラマンにブチキレてたごっつぁんが見える。」
「あ、圭ちゃ〜ん。」
「圭坊、酔ってるからって、それは許されへんで。」
「いやぁ、参ったよ。原宿でビール飲んでたら、急に娘。の顔見たくなってさ、青山劇場に行ったら、子供になりたくない大人がどうのとか言ってんの…あれ?逆だったかな。」
「まさか、渋谷から中野まで歩いてきたの?」
「もちろん。」
保田は汗だくでも笑顔は欠かさない。
後藤は恐々と、汗で色の変わった保田のノースリーブを見ている。
- 370 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:30
- 「昼の2時過ぎから飲んでた計算になるな、ざっと考えて。で、その焼き鳥の山はなんやの?」
「いやぁ、餃子屋で飲んでたんだけどさ、そこのバイトが私を見て笑ってさ。あいつ、昼間から一人で餃子にビールの寂しい23の女、みたいな感じで。」
「そりゃそうやろ。」
「でね、頭きたから、向かいの店が焼き鳥だったんだけど、生肉も含めて全部買い占めてやった。本当はここで買うつもりだったんだけど、兄ちゃんの態度が悪いから、って。あいつ、たぶんクビだね。餃子屋の店長、すっごい悔しそうにしてたもん。」
- 371 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:31
-
そして焼き鳥を肴に、同窓会気分の酒盛りが始まる。
中野サンプラザの二階席で。
娘。の卒業生には、スタッフも強くは言えない。
何故なら、非常識にもサンプラザの二階で酒盛りするバカ共がいなければ、彼らのおまんまはなかったのだから。
「あれ?ごっつぁん、また19やろ?いいの?」
「裕ちゃん知らなかった?ごっちん、二つ年誤魔化してたんだよ?」
「そう、今は20歳。デビュー前、口止めとか改竄とか、いろいろ大変だったんだからぁ。」
ステージでは、娘。達がリハの真っ最中。
- 372 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:31
-
「ごっちん、今日は仕事終わり?」
「ん?うん、もう終わり。圭ちゃんは?」
「一日オフ……」
「……」
「……」
「何よ、黙んないでよ、二人とも。気ままな時、感じてるわよ。きっと自由なのよ!!」
- 373 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:32
-
「そういえば裕ちゃん、今日はドラマの撮影ないの?」
「昼ドラやから、夕方には撮影終わんねん。ごっちんもどう?昼ドラ。話つけたるで。プロデューサさん、ごっちん欲しがっとったわ。」
「ははっ、裕ちゃん、ごっちん獲得のための置石だったりして。」
「うっさいわ、圭坊。仕事ないよりマシや!!な?ごっちん。」
「…昼ドラは嫌だけどな。」
「ん?なんか言った?」
「んにゃ〜、べつにぃ。」
「はぁ〜い、圭ぴょん、ごっちんが何言ったか聞こえましたっ!!」
「黙れよ、ケメ子。」
「そうや、水を差すなや。」
- 374 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:32
-
「あ、そこの兄ちゃん。そう、お前。いかにも下っ端な感じの。タバコ持ってへん?ない?使えんやっちゃなー。」
「ちょっとごっちん、大丈夫?」
「いや、焼き鳥が…暴れ狂ってる。うっぷ……」
「ちょっと待ちぃや、ごっちん。」
「ごっちん?そういう時は、楽しかったことを思い出すの。いい?楽しかったことよ!?」
「ちょっと圭坊、どっから来た知恵袋やの?」
「あぁ、いつかなっちと梨華ちゃんと乗った船を思い出した。…もう無理……」
「ごっちん、吐くなら外や。そうや、そこや。そこが船のヘリや、今だ、行け!!」
後藤のゲロは、まっさかさまに音響設備へ急降下。
リハの音が止んだ。
娘。達のリハも、そこで止まる。
かなり怒った様子で、飯田がずんずんと三人のところへ。
「子供達が戸惑ってるから、やめてくんない?こんなとこで酒盛りとか。」
- 375 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:33
-
10分後。
「じゃあ、ID番号でもつける?」
「なによ、それ、ごっちん。どっかのパクリグループじゃないんだから。」
「序列から言って、ウチが一番やな。」
「だめ、圭織がIDナンバー1。出席番号方式をとりまーす。」
「じゃあ、なっちが一番じゃない?」
「ちっ。後藤めが…髪切りおって。ロングの同志だと思ってたのに……。真希のぶわぁ〜か!!」
「なぁんでさー!!」
飯田が加わり、四人になった。
その後すぐ、吉澤も加わった。
- 376 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:34
-
吉澤も加わったところで、見かねた事務所の古株が酒盛りをやめるよう注意した。
「文句あんならクビにでも何でもしれや!こっちもそれなりの報復させてもらうで!!」
自信たっぷりに、元リーダー中澤が言う。
そして、現リーダー飯田が続く。
「あーっと、石川、藤本ぉー、ちょっとこっち来い。あと高橋も。」
「おら、社員共、ドル箱抱え込んだぞ!こいつら裸にして、くんずほつれつさせて……ケメピョンの頭の中、札束でいっぱい!!!!」
- 377 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:35
-
「うっわー露骨。紺野とか、涙ぐんでんじゃない。みんな〜、こっちおいでぇ!」
後藤の声は天使の声。
ジャリ共がわらわらと……
いち早く駆けつけ、すぐに焼き鳥を発見した道重が手を伸ばす。
「あぁ!焼き鳥ぃ!!食べていいですか?食べていいんですよね?」
道重の最初の一口を合図に、飢えに飢えた餓鬼が群がった。
焼き鳥はあっという間に食い尽くされた。
肴もなくなり、飲み会お開き。
- 378 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:35
- おしまい
- 379 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:35
-
_リサリサの偶数期メンバーを考えよう!
モーニング娘。大好き新垣里沙。
彼女はモーニング娘。でありながらにして、娘。ファンの頂点に君臨する女。
元最強最悪のヒールであり、また現在では最もアンチの少ない娘。である。
モーニング娘。が好き。
これを忘れない新垣は、ある意味では初心を忘れていない唯一の娘。でもある。
メンバーであり、ファンでもある彼女は、フラットな視線を忘れない。
だからこそ、見えてくる世界があるのだ。
これは、そんな新垣里沙の日記の一節である。
- 380 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:36
-
私はきずいてしまった。
別に何を見ようと、娘。たちを見ていたわけではない。
ただ、いつもどうりにみんなといて、気がついてしまった。
少しくらいは、れいせいな目でみんなを見ていたかもしれない。
でも、こう考たのは、本当にぐうぜんだ。
〜期とくくられているが、4期の先ぱいまでは、〜次加入メンバーだった。
そんなことはどうでもいい。
今で言う、ぐうすうの期のメンバーは、みんな頭がこわれている。
2期、4期、6期……
ああ、私は恐ろしいことに気がついてしまった。
- 381 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:36
-
まずは矢口さん。
そんけいすべき先ぱいで、私はぜったいに矢口さんのようになれない。
でも、矢口さんはなにもかもまちがえている。
何が、とぐ体的にはいあげられないけれど、なにもかもちがう気がする。
それは頭のどこかがこわれているからだろう。
次に保田さん。
いうまでもなく……
市井さん。
モーニング娘。を自分からやめるなんてバカだ。
そして残念だ。
- 382 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:36
-
石川さん。
正直なはなし、ショックをかくせない。
石川さんをしれば知るほど、私は悲しくなる。
吉澤さん。
うーん……
日記に書くのも申し訳ないような……
かぁちゃん。
あ、よーく考えると、一番ふつうかも。
のんつぁん。
なにもかもがむきだしで、たれながしだ。
- 383 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:37
-
カメコ。
私がいうのもあれだけど、救いようがないと思う。
田中ちゃん。
なんだかんだいって、一番田中ちゃんが年れいと素のギャップがひどい。
シゲさん。
しっかりしてるクセに天然さん。
娘。において、社会性のある天然さんほど、たちのわるいものはない。
私のキャラがあやうい。
- 384 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:37
-
こう書いて形にしてしまったことで、まよってたのがかくしんになってしまった。
あー、私は明日からどうすればいいんだろう。
かーちゃん以外のぐうすう期のメンバー、バカのレッテルをはらずに見ることができない!!
- 385 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:37
- おしまい
- 386 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 21:41
- >>356
私を春厨とでも?
(^▽^)<大の大人が
踊らされるのって楽しいね、どっちに転んでも……
- 387 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:47
-
_end of BLUE
私はかつてない胸の高鳴りを抑え、メールの送信ボタンを押した。
なっちのエッセイを読んだ直後だっただけに、それがやけにリアルだった。
- 388 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:48
-
かおり電話して。
なっちが、なっち自身の卒業の時のことを意識していたのかはわからない。
だけど、私のなっちへの言葉が、時を経てそのまま返ってきたことが嬉しかった。
そして、どこかそれを疎ましく思ったかもしれない。
自分と似た行動をする人がいるのは、気持ち悪いものだ。
それが心強かったりもするんだけれど。
- 389 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:48
- すぐに電話すると、なっちは泣いていた。
わからないけど、さっきから涙が零れて仕方ないの、と。
外に出ているのか、その向こうで車が道路を滑る音がはっきり聞こえる。
なっちの心に呼応するかのように、涙が頬を伝っていた。
けど、それは心を震わせるまでには至らず、声だけはまっすぐに出た。
それが悔しくもあった。
- 390 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:48
- なっちは未だに状況を把握できていないようで、「え?」と「なに?」を繰り返す。
涙でさらにくぐもったなっちの声を聞きながら、私はベランダに出て、思い切り息を吸う。
東京のざらついた空気が、私の胸にある嫌悪を満たすまで、吸い続ける。
「私、飯田圭織はモーニング娘。を卒業することになったんだよ。」
吐き出した言葉の代わりに、現実がずんと重く私の心に圧し掛かった。
目頭が熱く、鼻の奥がつんと痛い。
- 391 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:48
- 「え?どういうこと?卒業?」
「そういうことだよ。私の娘。は終わりってこと……」
声が震えた。
言葉の重みに耐え切れず、崩れ落ちそうになったけど、息を強く止め、顔を上げた。
- 392 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:49
-
「ねぇ、圭織。娘。はどうなるの?私たち、みんないなくなっちゃうんだよ?」
卒業という言葉は知ってたけれど。
なっちがいなくなった娘。も知ってたけれど……。
「信じようよ。」
「なにを?」
「下の子らを。矢口を。私たちが伝えてきたことを。」
したっけ。──
久しぶりに使う言葉で、電話を切った。
- 393 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:49
-
きっと、なっちは、
「なっちにできることがあったらなんでも言って。」
そう言うだろう。
そう言わせないために、私から電話を切った。
娘。のことは任せて、というのが、なっちが卒業する時にした約束だから。
私はゆっくりと目を閉じて、冷たく硬いアスファルトの壁に背を凭せた。
これから裕ちゃんに連絡して、次は矢口だ。
脱力して震える手から落ちそうになる携帯を、強く強く握り締めた。
うっすらと雲を浮かび上がらせる夜空は、月の光を浴びてぼんやりと青い。
けれど、私には生命の鼓動が聞こえるようなネオンが主張を続ける赤の方が印象的だった。
そう感じるのは、初めてだった。
- 394 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 22:49
- おしまい
- 395 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 23:29
-
_マコとあさ美の交換日記
Dearあさ美ちゃんへ
なんか緊張するね。
こうやって改めて書いたりすることってないもんね。
でも、電子化が進む時代だからこそ、手書きが大切、っていうのもあると思う。
そんなわけで、一発目、この前行った、おむらいす屋さんの話。
小生、この間、あさ美ちゃんに教えてもらったオムライス屋に行ったんでげすが、かなりよかった。
薄焼き卵のオムライス。
原点の大切さを改めて知ったよ。
ただ一つ難点をあげるなら、付け合せのブロッコリー。
茹でが甘くて、かなり固かった。
あと、最初からマヨネーズがのせてあるのも戴けない。
オムライスはかなりおいしかったんだけどね。
- 396 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 23:30
-
早速だけど、マコちゃん。
いくら私が英語わかんないからって、そのネタは無理あるよ。
ひょっとしてバカにしてる?
まあ、いいとして……
愛ちゃんとカメコが食べたマンゴープリンを食べに、花花緑緑に行ったのよ。
行ったんだけど、どっからどう見ても私達のファンの人しかいなくて、そのまま帰っちゃった。
知らん顔して、何気なく通り過ぎたばっかりに、複雑な小路に入っちゃって、危うく迷子になるところでした。
- 397 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 23:30
-
あさ美ちゃん、それは大変だったね。
メールであさ美ちゃん言ってたから、知ってるけど。
小生、家に帰る途中、喫茶店に寄ったんですよ。
オムライスが、外のメニューに出てたから。
食べたら、もうびっくり!!
酷いのなんのったら、そりゃあ、もう……
もう、何もかもがダメ!
B級グルメにもならないくらいで。
しかも、そのオムライス、750円!!
なんかたまらなく悔しかったから、テーブルに置いてあった粉チーズとタバスコ、全部オムライスにかけて帰ってやったさ。
ふふんっ、って感じでげす。
あさ美ちゃんはどう?
究極のオムライス探し、何か進展あった?
- 398 名前:. 投稿日:2004/05/23(日) 23:30
-
「なにこれ。献立表?」
雑誌に挟まっていた、二冊のノート。
探そうと思えば死角になるのかもしれない。
だが、普通に掃除しているのでは、その範疇ではない。
紺野の母親が、掃除をしている時に、二人の交換日記を発見したのだ。
日記と共に。
この日から、父親に続き、あさ美と母親との大ケンカが勃発し、紺野家の第二次氷河期となった。
- 399 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/24(月) 00:17
- うーん…今はただ言葉に詰るだけ。
いや、踊ってしまおう。踊らなそんそん。
- 400 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 00:23
- >>399
ラジオ持ってないんであれなんだが、本当みたいだね
- 401 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:06
-
_ばいばい
ラジオが終わると、終了間際のテンションが嘘のように引き、ADのがなり声だけが大きかった。
- 402 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:07
-
型通りの挨拶を済ませ、私と石川は一足先に控え室に戻った。
何となく石川と話をする気になれず、石川も同じなのか何も話さなかった。
「じゃあ、カオたん、私、帰るね。」
目を合わさずに石川が言った。
小さな声だった。
「あ…。おつかれ。」
「うん、お疲れ。」
石川の口調は硬く、うん、の頷きは弱々しかった。
- 403 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:07
- 控え室で一人になり、ようやく大きく息を吐いた。
そのまま目を閉じると、何もかもが消え、私が卒業することも、娘。が存在することもなかったかのように思えてしまう。
いろいろと思い出すことも多いのだが、どれも私の中を駆け抜けていくばかりで、形を帯びない。
もうこれから私に娘。は続いていかない、という喪失だけが色濃く残った。
ドアの前で人の気配が止まり、少し間が空いてから、勢い良くドアが開いた。
「おつかれ〜!!」
帰り支度を済ませた矢口が、私を見止め、石川を探す。
「あれ?梨華ちゃん帰っちゃったの?」
私が頷くと、矢口は残念そうに、少し安心したように、もう一度室内を確認する。
「なんだよぉ。せっかく、圭織か梨華ちゃん家で祝杯あげようと思ったのに。」
今日くらいはいいと思ったんだけどな、と不安そうに言った。
- 404 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:08
- 私は上手に笑い、言った。
「今が落ち着く前に、みんなのスケジュール合わせて、何かしようよ。」
「じゃあ、おいらが動くよ」
やっと矢口が笑顔になった。
- 405 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:08
-
家に帰り、お風呂を沸かして、いつもよりも少し短めにあがった。
タオルで水気を飛ばし、ドライヤーで乾かしていたとき、携帯が鳴った。
矢口からだった。
「何言ってるの。迷惑なわけないじゃない。」
「矢口がいなかった期間より、矢口がいる期間の方が、ずっと長いんだから。」
「うん、そう……。それに、私達オリメンの思いとか、矢口は身を持って知ってるでしょ?私達以上に。」
- 406 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:08
- 「いや、うん…そう……。私は大丈夫。…うん。どっかいつも覚悟してる部分もあったし。」
「大丈夫だよ、矢口なら。信頼して任せられる…ふっ、なんか偉そうだったね、今の。」
「なんかさ、前にうたばんかなんかで、矢口に励ましてもらったの思い出した。」
「何かが一つ終わるだけだよ。で、また何かが始まる。」
「うん、また明日。…大丈夫だよ、私、そんなに落ち込んでもいないよ。覚悟してた未来に、現実が追いついた、って感じかな。」
「うん、また明日……」
- 407 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:08
-
髪はすっかり乾いていた。
それを三つ編みにするのも面倒くさく、暗がりの中をまっすぐにベッドに倒れこんだ。
腕で目を覆い、さらに目を閉じる。
次から次へとメンバーの顔と思い出の断片が浮き上がり、消えていった。
眠れない日が続きそうだ。
- 408 名前:. 投稿日:2004/05/24(月) 02:09
- おしまい
- 409 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/24(月) 21:39
- 眠れる日までお疲れ様なんて言わないよ。
うひ、泣かすなよ。
- 410 名前:. 投稿日:2004/05/25(火) 02:59
- とりあえずテーマ案
「田中」もしくは「かおり」
- 411 名前:. 投稿日:2004/05/25(火) 03:00
- 誤爆王の確固たる地位を築きつつある昨日今日ですが……
ちなみに、これは流しの一環です。
- 412 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:51
-
_ごろっきーずに矢口と吉澤(モーニング娘。)
最近、飯田が怖いらしい。
卒業発表を機に、何かが吹っ切れ、いくつも突き抜けたようだ。
ハロモニ。でのいくつかの奇行はその発端に過ぎず、仕事終わりが危険だ。
メンバーだけのミーティングの時は、もっと危ない。
今日は男装のおすかる飯田。
「ようし!仕事も終わったことだし、今日はオリメンの気合注入してやる!!」
そして、石川と辻と加護に目で合図する。
- 413 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:52
-
また今日もか……。
メンバー達は、あからさまに嫌な顔をする。
石川と辻と加護は、卒業をいいことに、飯田の暴走の手にかからないものとして、現状を楽しんでいる。
飯田は、もちろん全て知っている。
自分がありえないくらいに暴走していることも。
メンバーがそんな自分を鬱陶しいと感じていることも。
自覚がありながら、好き勝手やっているのだ。
無自覚の安倍よりも、ずっと質が悪く、始末に負えない。
そして、いつものように辻と加護がドアを封鎖、帰ろうとするメンバーをとうせんぼ。
石川が声を張り上げる。
「みんな、横一列に並んで!矢口さんが一番右で、六期が左、わかるでしょ?」
すっと前に出た飯田だ、恋する乙女のように恥じらい、俯きながらの上目遣い。
「圭織ね、言葉や心で伝えられる以上のものを、みんなに残したいの。だから、我慢してね。」
- 414 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:52
-
矢口に歩み寄る。
「矢口か……。へへっ、矢口にはいっぱいお世話になったよね。」
そう優しい顔で言ったかと思えば、鬼のような形相で平手打ち。
スカッ
飯田の右手は、矢口の頭上を通過。
「No!!!」
飯田、糸の切れたマリオネットの動きで頭を抱え、仰け反った。
- 415 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:52
-
「よっすぃ、そろそろ大人の階段を昇り始める頃だね。圭織、いっつも見てるよ。受け止めてね。」
飯田の右が唸りをあげる。
ガッ
「受け止めましたよ、飯田さん。この左腕で。」
吉澤、ニヤリと笑う。
「甘いよ、よっすぃ。」
スコン
飯田の左が吉澤の頭を捕らえた。
「なんか今、ものすごく軽い音しなかった?」
「のんもそれ思った。よっすぃだからじゃない?」
「そっかぁ。」
加護と辻の会話が耳に入ってしまい、吉澤は布団を被ってしまった。
- 416 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:53
-
「高橋、頑張ってるよね。頑張り過ぎないようにね。」
飯田が右手を振り上げた。
ギャ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
高橋、恐ろしいまでの速度でしゃがみこんでしまった。
「石川。」
飯田が顎で合図する。
「ほら、高橋。ちょっとの我慢だって。」
石川の甘い声は、こういう時だけ役に立つ。
酷く怯えた顔した高橋は、石川の手を借りて立ち上がる。
「じゃあ、いくよ、高──」
にゅギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
またもしゃがみこんでしまった高橋。
- 417 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:53
-
ぷっ
「紺野、今、鼻で笑わなかった?」
「いいえぇ、笑ってないですよ。」
キラキラした瞳の奥に何かを隠し、まっすぐ飯田を見つめる。
「そうか、ならいい……。」
飯田が高橋に向き直ると、紺野はその背中にあっかんべー。
「辻、加護。」
「らじゃー。」
「おーけー、ボス。」
ハケを手にした辻と加護が、高橋に飛び掛る。
「やめるがし、やめるがし!!あん、ちょっとぉ………ん?う〜ん…なんかじんわりくるわぁ……。」
「もういいよ、そのへんにしときな。…おかしなところが汚れる前に。」
飯田は辻と加護を見ずにそう告げ、なんかそれっぽい。
- 418 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:54
-
「紺野か。アンタには辻加護よりも手を焼かされたよ。それもいい思い出だけどね。」
「はい、ごめんなさい。」
「こう振り返ってみると、紺野が愛しくすらあるよ。……いくよ!」
思えば、まだビンタが一度も成功していないと気付いた飯田、ありったけの力を振るった。
ぷるんっ
紺野の柔肌に、衝撃は緩和され、それはゼロに近かった。
完全に不発の飯田。
紺野は瞳の奥に何かを隠し、ニコニコと笑顔を崩さない。
「くっ!次!!」
- 419 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:54
-
男装の飯田に、とろけてしまいそうな表情の小川。
その目はメルヘン色に染まり、ウルウルと揺れている。
恋する乙女の目にたじろいだ飯田、
「麻琴かい、さっさといくよ。」
「えぇ?なんか言って下さいよ、飯田さん。」
「じゃあ、一言。ジョンソン全盛の頃の私よりも、今のアンタのほうが正直…キツイ。」
「ひどぉ〜い!!」
「つべこべ言うな。ほら。」
あはんっ
頬を張られ、おかしな音を出したかと思えば、小川はシナを作って倒れた。
このことは忘れよう。
小川を除いたメンバーは瞬時にして、そう目で確認しあった。
- 420 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:54
-
「なんか圭織、疲れてきちゃったぁー。」
ただっこモードの飯田圭織ちゃん。
「ダメだよ、カオたん。それじゃ示しつかないって。」
石川は、矢口一同、横一列にメンバーを見て言った。
渋々立ち上がった飯田は、大きく息を吸う。
「よっしゃ、ガキさん、歯ぁ食いしばれ!!」
「はい!!」
「ちょっと待って!!」
石川が遮った。
舌打ちをした飯田が、石川を咎める。
「邪魔すんなよ、石川ぁ。」
「うん、ごめんね。でも、ちょっとだけ待ってね。……辻!加護!あんたら、何やってんの!!高橋、声も出ないくらいに感じちゃってるじゃないのよ!!みんなも気付いてるなら、止めなさいよ!!!」
高橋の呼吸は荒く、全身が桜色に染まり、失神の一歩手前だった。
- 421 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:55
- そんな石川を尻目に、飯田は一挙入魂。
ガコッ
「った、ガキさん、硬い。」
加入当初の新垣が頭の中にあった飯田、高さを計り違え、平手は頭に直撃してしまった。
えへへへ、と前髪を整えるガキさん。
そろそろ誰か気付いてもいい頃だ。
誰もまともに飯田の魂を受け取っていない。
- 422 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:55
-
「負けないっすよ、飯田さん。」
不敵な表情の藤本。
「藤本はね、けっこうお気に入りなんだけど、……まあ、いいか。」
パンッ
「ありがとうございました。」
表情を崩さない藤本。
やりきれない風の飯田、険しい表情だが所詮は負け惜しみの哀れなピエロ。
- 423 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:55
-
「負けないですよぉ!飯田さん。」
同じく、不敵な表情の田中。
パンッ
「ありがとうございました。」
表情を崩さない田中。
やりきれない風の飯田、険しい表情だが所詮は負け惜しみの哀れなピエロ。
とりあえず、誰かのマネしとけばいいからね。
そう辻に教えられた田中は素直だ。
だって、田中は子供だから。
- 424 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:55
-
ペチッ
「いったぁ〜〜い。」
頬を抑えて、膝を折ってぺたんと尻餅ついた亀井。
「亀井、てめぇ、かわいけりゃいいと思ってんのか?」
石川さんの逆鱗に触れたらしい。
胸倉掴まれて立ち上がらせられた亀井はへらへらしてる。
「そぉんなことないですよぉ。かめぇ、てめぇ、だってぇ。」
「かわいいだけでアイドルやってられんならなぁ!苦労はねぇんだよ!!」
矢口と藤本は互いに牽制しあっている。
(藤本、行ってよ。)
(無理すよ、矢口さん。)
「ふざけないください!」
大きな瞳から大粒の涙を流した紺野が、珍しく叫んだ。
メンバーにはなんのことだか、わからない。
道重だけが、感慨深そうに頷いていた。
- 425 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:56
-
濡れた瞳の道重は、おどおどと飯田を見つめている。
「さゆ、すぐ終わるから、目、閉じててね。」
飯田の言葉に、固く目を閉じる道重。
目と一緒に、鼻も口も窄めている。
飯田は振り上げた右手をゆっくり下ろすと、道重の頬にのせた。
ビクッと肩を震わせた道重。
ふっと頬を緩めた飯田は、道重の唇に唇を合わせた。
何が何だかわからないような顔で目を開けた道重、ようやく理解が追いついてポッと頬を赤らめた。
「ファーストキス?ファーストキス?初めてじゃなくても、初めてって言って。」
まっすぐに飯田を見つめ、道重はこくんと頷いた。
「……はい、初めてです。…もちろん。」
飯田の決意は固まった。
- 426 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:56
-
「はい、ここでみんなにお知らせがあります。道重が新リーダーに任命します!!」
「ちょっと待って。おいらはどうすんのさ。」
「矢口、3代目リーダーおつかれさま。道重が新リーダーだから。」
「あのぁ、おつかれさまも何も、矢口さん、まだリーダーになってませんよ。」
帰り支度をしていた藤本が突っ込んでみた。
「それなら好都合。矢口、リーダーはいいや。私、今日でリーダーやめる。明日から道重リーダー。よろしくね、さゆ。」
「ええ?…いいんですかぁ?」
とてもとても嬉しそうな道重、胸の前で手を合わせている。
「いいんだよぉ。さゆは、カオの愛を一番受け止めてくれた女の子だから、明日からリーダーなの。」
- 427 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:56
-
ギャグなのだろう。
ギャグに違いない。
大人になるんだ、真里。
そう矢口は自分に言い聞かせるが、どうも納得いかない。
それは何故か。
ギャグを真面目にやるのがモーニング娘。
その真面目なギャグがデフォになり、飽きられてしまったのがモーニング娘。だから。
つまらないギャグや、どうしょうもない思いつきは、モーニング娘。そのものだから。
下らないことを下らないと切り捨てられない、それこそがモーニング娘。なのだ!!!
- 428 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:56
- おしまい
- 429 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:57
-
_石川梨華が世界に贈るImagine
──想像してごらん
梨華ちゃんが娘。からいなくなるって──
- 430 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:58
-
4年前、意気込みだけある一人の女の子がモーニング娘。に加入した。
歌えない、演じられない、寒い。
加入早々、トリプルで80年代アイドルを彷彿とさせるダメっぷりを世に知らしめた石川梨華。
彼女は持ち前の生真面目さと責任感の強さで同期のチビ二人にウザがられ、同期の綺麗な女の子とのアバンチュールを楽しんだがやはりウザがられ、保田というドリアンよりも強烈な個性の持ち主に師事し、飯田と矢口に不条理としか思えない教育という名のポジテブ洗脳を施され、中澤にはイビリにしか見えないイジリという愛に鍛えられた。不動のツートップだった二人には疎まれた。
いつからだろう、石川梨華が認められるようになったのは。彼女の哀れなほどの健気さと、狂おしいまでの頑張りは、次第に人を惹きつけてった。いつしか、彼女はモーニング娘。の頂点へと登りつめた。そのとき、彼女が着た金ピカの裸エプロンは、後藤真希のコンサート衣装や安倍なつみのセカンドシングルの衣装にまで影響を与えている。
- 431 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:58
-
──
今日こそは。
石川梨華は念入りに計画を立てていた。
20ページにも及ぶ企画書もきちんと人数分揃えた。
ID入りの会員証もきちんとパウチ。
抜かりはない。
伊達メガネをかけ、付け黒子をセクシーに見える位置に、買ったスーツにもアイロンをかけた。
しかし、その石川の姿はさながらキャバクラ嬢。
そうして、また二人を呼び出すのだ。
- 432 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:58
-
第3回 かわいいだけでいいじゃん?会議 〜アイドルと歌について真剣に考える〜
「今日は特別ゲストをお招きした。私がモーニング娘。に入る以前、オンチの名を欲しいままにしていた方だ。」
「見りゃわかりますよ。」
潰したさつまいもを棒状にしてレンジで焼いたもの─あさ美いも─を手にした紺野が、退屈そうに言った。
- 433 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:59
-
「紺ちゃん。こんなこと、もうやめな?ね?シゲちゃんもダメだよ。梨華ちゃんについてったら、ロクな大人になんないよ。この人ね、こう見えてもすっごい酒乱なんだから。梨華ちゃんが17歳になってすぐだったかなぁ──」
「柴田君、過去をそうやって、揉み消すように否定してはいけない。忘れてはいけないんだよ。受け入れなければならないのだよ。一昨年のサッカーW杯、雑誌の連載をしていた君は怒りを隠さず、狂気の中心で叫んでいたではないか!偏向報道だ!マスコミのどこに私達の、日本の声がある?真実の歪曲だの、操作だの、言論統制だの、審判の技術や誤審問題へのすり替えだ、だの。あ、それでプロフィールにマスゲームが嫌いだって書いたの?
真実の歪曲、問題は誤審ではなく意志のある誤審、審判の技術問題の置き換え、それがどの国でどのように起こり、誰が一番得をしたのか、そして、どこで負けることによって、何を守ったのか!何を世界にアピールしたのか!!素晴らしい戦いになるであろうゲームのいくつが、あの陳腐な三文芝居で実現不可能になったのか!!!
あ、これ柴ちゃんのモノマネね?」
- 434 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:59
-
石川から出てくる言葉に、紺野と道重は目を丸くさせ、柴田は真っ赤になって俯いている。
「……もう一度だけ言う。忘れてはいけない。なかったことにしてはいけないのだよ。君が後世に残さなければならないことは、救いようのないくらい歌が下手だった柴田くんが今、立派にメインボーカルを張っている、ということなのだよ。そして、さっきの例を挙げるなら、子や孫に教えてやればいいじゃないか。共催、いや、分催の、日本のメディアが大成功という言葉で覆ってしまった中に、どれだけの生臭い悲劇が生み出されたのか。…教えてやればいい。」
何が恥ずかしいのか柴田、うっすらと目に涙が溜まっている。
「なんで梨華ちゃんが覚えてるんだよぉ……」
「酔っ払いの愚痴とか覚えとくと、後で有利なのよ。」
石川梨華の表情は強く、揺るがない。
- 435 名前:. 投稿日:2004/06/06(日) 23:59
-
一方、道重と紺野。
「話は見えないんですけど、石川さんのって、自分勝手だけど微妙に正論っぽくて困りますよね。」
「でも、それって所詮は自分の都合よく事を進めるためとか、恥ずかしい過去を話させない為なんだよね。」
「それにしても、話、思いっきり逸れてますね。」
「なんか石川さん、柴田さん打ち負かして喜んでるしね。」
「ていうか、このパターン飽きちゃいました。」
今日のお仕事は終わりとばかりに、道重は部屋着に着替え、紺野は大福をどう食べようか迷っていた。
- 436 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:00
-
ショートパンツとノースリーブに着替え、髪をほどいた道重は、お気に入りのボンボンをカチカチさせて遊んでいる。
紺野はせめてものカロリー制限なのか、大福ではなくきなこもちを食べている。
石川は、まだ柴田をちくちくと責め立てている。
- 437 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:00
-
会議は終わったものとみなし、意図ある雑談を始める紺野と道重。
「最近、思うんですけど、歌えないのって私とさゆだけなんだよね。」
「そうなんですよね。なんかこの集まり、意味ないですね。言い出しっぺが卒業しちゃうし。」
二人は石川に聞こえるように大きな溜息を吐くが、顔はにんまりと笑顔。
- 438 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:00
-
そしてここでアラビア調の悲劇。
太陽とシスコムーン改め、T&Cボンバー→真夏の真昼の蜃気楼→解散→ルル消息不明
平家みちよ→ムラサキシキブ→新世界を目指して→みちよ
メロン記念日→MIDARA摩天楼(下ネタ)→時代外れのユーロビート→パクリ→?
ファンだからこそ、愛しているからこそだった。
石川はそんなことを柴田にほのめかした。
頑張ってほしいから。
いつまでも4人でメロン記念日であってほしいから。
そのためには、石川はどんな手段でも使う気でいた。
だが逆効果。
柴田、戦意喪失。
そんなとき、石川の耳に届いたのは、この集まり意味ないですね、という道重の声。
- 439 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:00
-
「そんなことないわよ、紺野、さゆ。」
石川は身を持って証明したのだから。
可愛いだけの女の子でも、立派に一人立ちできる、ということを。
- 440 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:00
-
「でも、最近の石川さん、しっかり歌えてるじゃないですか。」
膨れる道重の言い分ももっともなことだ。
確かに歌は上達するかもしれない。
歌い続けていれば。
練習を続けていれば。
だが、そう上手くはいかないものだ。
道重はいつも踊りながら歌っている。
ライブでも、TVの歌収録でも、どんなときでも。
だが、自信がないのだ。
自分の歌声をマイクに乗せる自信が持てないのだ。
道重にはまだ、石川のように素っ頓狂に飛び抜ける勇気はない。
思春期であり、否応なく自己を見つめてしまう世界で生きているのだから。
- 441 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:01
-
「私なんて、飯田さんとシンメトリーですよ。歌のない保田さんですよ。」
翳を落とした紺野の表情は儚げで美しい。
が、紺野の控えめな性格が災いしている。
そして、彼女の頭のよさもそこに起因する。
歌えない歌よりも、独自の美を追求。
食い気の裏に潜む色気こそ、紺野の演出する最高級の屈託ないセクシーなのだ!!
- 442 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:01
-
最上級ネガテブから引っくり返って最上級ポジテブを見出した石川は言う。
「大丈夫よ、二人とも!!毎日頑張っていれば、きっといつかいいことがあるわ!!私にできることなら、何でも協力する!!!」
紺野が言う。
「じゃあ、ほい、下さいよ。」
「いいわよぉ。」
「…卒業前に、ですよ?」
「紺野さんが、ほい、なら、私はザ☆ピースの間奏がいい!…卒業前に。」
末っ子道重は、こういうタイミングを外さない。
- 443 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:01
-
苦渋に満ちた表情で、石川は迷っている。
これを好機と見た柴田は、一気に形勢逆転を図る。
「どうなのよぉ、梨華ちゃん。」
立ち上がった柴田の表情は闇に落ちてはいるが、光射す隙間はありそうだ。
「じゃあさ、紺野、さゆ。シャボン玉の台詞なら……」
石川はそう二人を窺うものの、完全に無視されている。
ほい、ザ☆ピースの間奏、どちらも石川の成功の象徴のようなもの。
紺野と道重は試しているのだ。
あわよくば、くらいには思っているかもしれないが。
- 444 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:02
-
「あのですね、私、思うんですけど、この集まりの目的は成就したんじゃないんですかね。」
石川を見かねてか、紺野が口を開いた。
道重もしきりに頷いている。
石川は二人をしばらく見つめ、ゆっくりと、何度も息を吸っては吐き、言った。
「あげるよ、ほい、も、ザ☆ピースも。…でも、私は、私は……」
まだ、紺野とさゆとこうやってバカを続けたい──
こうは続かなかった。
- 445 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:02
-
石川は髪で顔を覆い、じっと息を詰めている。
涙を堪えているのだろう。
紺野と道重は、黙って石川の姿を視界の端に映し、それぞれに思いを巡らせている。
どこから持ってきたのか、柴田はバスタオルを俯いた石川の頭に被せた。
「あのさ、梨華ちゃん。……会員証、作ったんでしょ?渡したら?」
舌足らずな柴田の声は舌足らずなだけ、舌足らずなだけに噛んでしまう分、ゆっくりで優しかった。
石川は昂ぶる想いを抑えられない。
ギュッと拳を握り締め、そのせいでネイルが折れた。
「じゃあさ、私が二人に渡そうか?」
柴田の穏やかな声に、石川が頷いた。
- 446 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:02
-
柴田は石川のポケットからパウチされたカードを取り出し、紺野と道重、それぞれに手渡した。
紺野と道重の二人は、溢れる涙を隠さずに黙って受け取った。
「で、あのさ、そのカードね、……梨華ちゃん、どうする?」
石川は首を振り、被っていたタオルを外し、顔をあげた。
タオルで乱暴に涙を拭い、泣き笑いのような表情で言う。
「そ…の、中にね…二人への……メッセージ、入って、る、から………」
- 447 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:02
-
言い終えると、石川は泣き崩れてしまう。
感情のまま、声をあげて泣き咽いでいる。
柴田はそっと、本当にそっと、石川の肩に手を置いた。
紺野と道重は大事そうにカードを胸に抱え、ポロポロと涙を零している。
石川が大きく息を吸った。
「今日、今この時間をもって『石川梨華を含むかわいいだけの女の子の会』は解散とする!!」
- 448 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:03
-
───
──
─
翌朝。
石川、紺野、道重、柴田、誰もが一様に目が赤く、腫れぼったい。
「じゃ、石川さん、また来ますね。」
紺野がそう笑い、靴を履いた。
「次はいつにします?『道重さゆみとかわいい女の子の会』。」
石川は笑い、二人に言う。
「しばらくはないよ。『石川梨華といい女の会』は。」
「じゃあ、また後で。」
「お邪魔しましたぁ。」
紺野と道重は、足取り軽く石川の部屋を出て行く。
石川はそんな二人を見送って小さく息を吐いた。
幸福の顔をして。
柴田は、そんな石川を柔らかな眼差しで見守っている。
- 449 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:03
-
──想像してごらん
梨華ちゃんが立ちあげるユニットのことを──
- 450 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:03
- おしまい
- 451 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:07
-
_没ネタUPの練習をしよう!
タイトル 死に際の真ん中で愛を歌う
- 452 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:07
-
時はバブル全盛期。
主人公は看護婦見習いのマミ。
元気で明るい性格と、破天荒な行動が玉に瑕だけど、誰にでも好かれる女の子。
マミには密かに憧れる男がいた。
彼女の勤める病院の院長の一人息子、通称「ボンボン」。
プロフィールとしては、アメリカに留学していたというだけ。
非常にわかりやすい対象に、胸をキュンキュン痛めるマミ。
- 453 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:07
-
また、外科病棟に勤務するマミの悩みの種は、内科病棟から遊びに来る一入院患者。
名前は「ケンタ」。
中学生クラスの屁理屈をこねては、何かと騒ぎたがる、典型的な不良患者。
昼間から酒を飲むわ、とりあえずみたいな感じで騒ぐわ、平気な顔して病室でタバコも吸うわ……。
極めつけとして、酔ったフリをしては、マミのおっぱいを鷲掴みするのを生きがいとする男だ。
- 454 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:07
-
ある日のこと、マミの病棟に憧れのボンボンが入院することになる。
マミは喜び勇み、ナースステーションの看護婦一同もマミの恋を成就させようと協力を誓う。
しかし、それが気に入らないケンタ。
マミのおっぱいがボンボンのモノになるのが我慢ならない。
ケンタは何かにつけて、ボンボンに攻撃をするようになる。
例えば、ボンボンが入院の暇に任せて考え付いた、病院の拡張。
溢れかえる病院への融資で、駐車場を潰して新病棟を建てることで収納可能なベッド数を増やし、さらには設備投資をしたい、と。
マミ一同、入院患者も、誰もがその提案に喜ぶ。
- 455 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:08
-
だが、そんなボンボンが気に入らないケンタ。
マミのおっぱいは自分のモノだと思い込んでいるからだ。
ついでに、いかにマミのおっぱいが素晴らしいのかを諭す。
そして、ケンタはこんな話をする。
バブルのせいで、未開部族の村落が、一つ潰されてしまった話を。
何でも、割り箸を作るために未開部族の住む森の木を伐採するとき、部族の人々はその誇りにかけて、ブルトーザーの前に手を繋ぎ、立ちはだかったというのだ。
そして、その業者は部族ごと木を切り倒した、と。
その部族が命を賭して守れなかった木は、本棚等になって日本に輸入されるが、それは無駄に捨てられているらしい。
確かにバブルが生んだ悲劇ではある。
が、言い掛かりも甚だしい。
病院の拡張はバブルによるもの。
そして、バブルにより、無残に絶滅させられた部族。
セブンイレブンの弁当がまずかったから、近くのローソンにクレームつけに行くようなもの。
- 456 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:08
-
彼の主張は、文明を捨て自然に帰ろう、という回帰そのもの。
バブルがなければ、そっと生態系の中に生きる部族が死ぬことはなかった、と。
そして、忘れてはいけない。
ケンタの目的は、マミのおっぱいなのだ!
マミはすっかり感化されてしまうのだが。
- 457 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:08
-
ケンタとボンボンのバトルは熱を帯び、当然の結果として、ケンタは病院を追い出されてしまう。
病気が完治しないまま。
マミはそのことについて、ボンボンに詰め寄る。
病気を治してあげるのは、病院の義務ではないですか、と。
しかし、ボンボンはこう言い放つ。
こっちも迷惑してるんだよ。私が君のおっぱいを目的に病院拡張しようとしている。
そんなあらぬ噂を立てられてはね。
それに、病院はここ以外にもあるじゃないか。
マミはボンボンに掴みかかった。
「ひどいっ!私はおっぱいだけの女じゃないのよ!顔だってかわいいし、おしりだってぷりぷりなんだから!!」
貧弱なボンボンは、これにより、全治3日の怪我を負ってしまう。
そして、マミは謹慎一ヶ月を申し渡される。
- 458 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:09
-
一ヵ月後。
復帰したマミは言う。
「私が変わらなければいいんです。ケンタさんが私のおっぱいを褒めてくれました。そして、命の大切さを。ボンボンはそれを貶すけれど、私が変わらずに患者さんの命を大切にしてあげればいいんです。」
ナースステーションの何人かがマミに言う。
「あなた、ケンタさんが好きなんだね。」
「そう、好きな人は、いつの間にか心の中に住み着いているものなのよ。」
そうなんだ。
マミは単純に、自分はケンタが好きなんだと、これは恋なんだと気付く。
そしてその数時間後、ケンタが事故に遭って、死にそうになってしまう。
ピエロに成り下がってしまったボンボンは、受け入れ拒否をする。
命を助けるのが医者の仕事だとマミはボンボンに詰め寄るが、その姿勢は変わらない。
すでに一生の愛を誓っていたマミは、涙ながらに歌を歌う。
ケンタは死んでしまうだろう、と。
以下のような感じで、とつとつと喪失と後悔を歌に織り交ぜる。
- 459 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:09
-
あなたといた時間は、一生の宝物。
あなたは私の知らない世界を見せてくれた人。
その全てを抱きしめ、このまま時を止めてしまいたい。
でも、無理なんだな、と思う。
お腹も空くし、眠くもなる。
心の凍ったままでも、体は確実に時を刻んでいるの。
これから、もっと二人の時間があると思ってた。
もっともっと、あなたとの時間を大切にすればよかった。
あなたに会えてよかった。
でも、ゴメンね、心の底からは言えないよ。
- 460 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:09
-
でも、あなたに出会っていなければ……
最近、そんなことばかり考える。
こんな苦しい思い、したくなかったよ。
きっと、あなたのことを忘れることはない。
今は片時も私の心から離れていくことはない。
でも、いつの間にか、自分でも気付かない内に、あなたの存在は薄れていく。
自己嫌悪に陥るくらい、あっさりと。
あなたを思い出す間隔は長く遠くなっていく。
そして、たぶん、きっと、あなた以外の誰かを、愛するように、なる、のかなぁ……
今はあなたを思うだけで、こんなに涙が止まらないのに。
- 461 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:10
-
ねぇ、もう、本当に会えないの?
焼かれて煙になってしまったあなたを見ても、その残骸を骨壷に入れても、あなたがここにいるような気がしてしまう。
あなたは私のすぐ側ににいる。
そんな気がしてならないの。
私はまだあなたを失っていない。
出会った頃は、こんなことになるなんて思ってなかった。
あなたを愛すということも、そして、あなたが今ここにいないことなんて。
涙、止まんないや。
まだあなたを失ってないのにね。
ねぇ、ここにきてよ。
どっかにいるんでしょ?
その辺から私を見て、笑ってるんでしょ?
私の何を試したいの?
私の愛が怖くて逃げ出したいの?
それとも、まだ私が信じられないの?
なんで?なんで何も答えてくれないの?
早く私を抱きしめてよ。
そして、バカだな、って私の髪を撫でて。
泣き咽ぶ私を優しく慰めて。
- 462 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:10
-
まあ、ケンタは死なないんだが。
没理由。
前作、「小麦粉 LOVE PARADE」の完成度があまりに高く、尻込みしたので。
- 463 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:10
- おしまい
- 464 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:10
-
_Good-Bye,so long
梅雨時期は決まって滝川に帰りたくなる。
慣れる、慣れないの問題ではなく、受け付けない時がたまにある。
空を見上げるのも鬱陶しく、足元ばかり見て歩いていては哀しくなる。
自動ドアが開き、しとしと降り続く雨の匂いが濃くなった。
窓ガラスに張り付いた水滴が流れ、それがまた水滴にぶつかり道筋を変える。
その向こうは、灰色に塗り潰された薄暗いビル群に、淀んで緑がかった運河。
間に挟まれるように、浮かない顔をした私がいる。
私の正面に座る飯田さんを横目で見た。
口を真一文字に結び、氷のとけた薄茶色のグラスを見つめている。
窓ガラスを幾筋にも這う水滴、そして私の顔を透かして、街を見る。
座っている場所の角度のせいか、空は見えない。
「「あのさ、」」
私と飯田さんの声が重なり、再び沈黙が降りてくる。
窓を叩く雨が相変わらずに鬱陶しい。
- 465 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:11
-
CHAPTER1 男なんていつの時代も悲しいものだよ
仕事が終わった私は、誰にも何も言わずに事務所に戻った。
夜の11時を過ぎていたし、何かあるだろうな、というのは覚悟していた。
ココナッツ娘。に入れられなければいい、くらいには考えていたかもしれない。
ただ、会長直々の呼び出しだっただけに、その危惧は否応なく嫌な方向に転がった。
プロゴルファーを目指せとか、前髪を作るなとか、そろそろどうだろう、とか……
そんなことも考えていたかもしれない。
けど、そんなことは些細に思えてしまうほど、事態はふざけているだけに深刻だった。
「悪いね、こんな夜遅くに。」
まっすぐに五階の会長室に向かった私の目に飛び込んできたのは、会長のだらしなく緩んだ赤ら顔。
そして、これでもかとコンビニの袋に詰め込まれたビールの空き缶。
豪奢な木製デスクには、塩抜きアーモンドが散乱していた。
- 466 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:12
-
「どうだね?モーニング娘。に入って一年以上経つけど──」
「梅雨時期の曇り空みたいなものです。」
「まあ、よくわからんが、晴れるといいな。曇り空というのは胸騒ぎがしてならないものだ。」
「はぁ……。」
「…男というのは勝手なものだよ。君らで稼いではいるけどな、本当に君らを愛しているのだよ。」
「……(なんだこのクソジジイ、なら美貴のソ──)」
「愛しているからこそ、苛めたくなる。不遇な立場に立たせ、その心の傷を…あのだな、私は少年の心を──」
「あの、すいませんけど、時間も時間なんで、単刀直入にお願いできますか?」
私は言って後悔した。
結論を急いでよかったのだろうか、と。
今のこの状況は、確実に心の準備を要するものだろう。
現に、会長の血走った目は何かを請うように私を窺い、神経質に揺れていた。
- 467 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:12
-
「……そうか。ではまず、ここでの事は極力内密にしておいて欲しい。」
私はぐっと身構えた。
こんなところでどこのかわからないけど処女を奪われてはたまらない。
先のことなど考えず、今この瞬間だけに生き、守ろうと思った。
ありとあらゆる全てを奪わせない。
私は私、藤本美貴という存在を突き抜ける。
会長はビールの缶を呷った。
口の端から零れたビールが会長の皺枯れた喉を流れ、Yシャツの襟を小さく濡らした。
飲み切ると大きく息を吐き、覚悟を決めたようだ。
「まあ、なんだ……」
「はい」
「飯田がうんこを漏らした、という噂についてなんだが……」
すっかりしくったマイミステイク。すとんと心が真下に落ちて、見事なくらいにそのまま放心。
- 468 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:13
-
「あの、いろいろ大変そうなのに申し訳ないんですけど、私はこれで……。」
帰ろうとすると、会長は情けない声で私を引き止めた。
「待ってくれ!ホントに、頼む、後生だから。話、話だけでも。」
「いや、申し訳ないんですけど、余計な気を揉んでハゲたくないんで、失礼します。」
「確かに私はハゲてはいるが、これは遺伝だ。だから大丈夫だ。」
「ハゲと心労を絡めましたけど、大丈夫とかそういう問題じゃないっす。」
「わかる。わかるから…金は出す、30!!」
「30……?3000万ってことですか?」
「無論、その通りだ。」
「わかりました。やりましょう。」
「……ルピーでいいかな。」
「失礼します。」
「ごめん、嘘、今のうそ。山崎のちょっとしたお茶目だって。もちろんエンで。なんなら、ドルでもいいよ。」
「じゃあ、ドルで……。」
- 469 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:13
-
私が言うと会長は心底ホッとしたようで、ビールのプルタブを引いた。
プシュッとした音と共に泡がボトボトと吹き出てくる。
「おっとっと。もったいない、もったいない。命の水が……。」
ちゅるちゅるとアルミ缶を吸う会長は、私の視線をどう受け取ったのかはわからない。
私と目が合うと、戸棚のコーヒーコレクションから、好きなものを持っていってくれ、と言った。
ささやかな感謝の気持ちだ、とも。
あまりにささやかすぎたので、私は何も受け取らなかった。
- 470 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:14
-
「とりあえず、つっこまないで聞いてほしい。安倍の卒業の日の昼公演、飯田が大の方を漏らしてしまっ
たらしいんだ。別に漏らすのは構わない。正直、これだけビールを飲んでしまっただけに、私も明日は危
うい。問題は飯田が漏らしてしまったということだ。モーニング娘。の象徴のような飯田が、うんこを漏
らす。これは大きなマイナスだとは思わないかね?もちろん、藤本にとっても。」
「はあ。いや、どうなんでしょう、私は漏らさないので。」
安倍さん卒業、飯田さん、大、漏らす、象徴、マイナス……。
- 471 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:14
-
「そういう考えも、ある意味では正しい。しかしだね、藤本。中澤がリーダーの頃のモーニング娘。は
ある程度は予定調和の中にあったのだよ。しかし、堕ちる娘。を支え、持ちこたえさせてくれたのは
飯田だと、私は高く評価している。この点について、どう思うかね?」
「すいません、よくわからないです」
「つまり、飯田がうんこ垂れ=モーニング娘。全体がうんこ漏らし、ということになりかねんのだよ、
いや、うんこ漏らしは問題じゃない。その時の飯田の落胆が怖いのだよ。動けなくなってしまうのでは
ないかと」
「どっちなんすか……」
うんことか漏らすとか堕ちるとか飯田さんとか落胆とか動く動かないとか……。
よくわかんないけど、梨華ちゃんがのゲラゲラ笑っている顔が頭に浮かんだ。
- 472 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:15
-
「…あいだしょうこだけじゃ、しょうじきキツイ……」
「はい?」
脳内梨華ちゃんの大笑いに戸惑っていると、会長が何やらぼそりと呟いた。
何か聞こえたような気もするけど、聞き取れたけど、今ならさらっと流して忘れられるだろう。
忘れてしまおう、忘れてしまいたい。
私は急いで話を進めることに。
「要するに、飯田さんがうんこ漏らしたかどうか、それと、漏らしたと仮定して、それが飯田さんの活動にどう影響するか調べればいいんですよね?」
「その通り。ドルじゃなくて、エンでいいかな?」
「ドルでお願いします。」
「そうか。……まあ、これはUFAを左右する問題だ。飯田の使いどころで、というよりも、飯田がうんこ漏らしで感情が左右されないかが。」
- 473 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:15
-
とりあえずやってみますわ、私、3000万ドルのために。
酔っ払いのおっさんの戯言をしっかり携帯に録音。
飯田さんのうんこについて報酬3000万ドル、諸経費は会長持ち。
この二点。
一応、よくわかんないけど、紙にも適当に書いてもらって、実印も押してもらった。
「そういえば、どうして私なんですか?それと、どっからその噂はわいてきたんですか?」
「まず、藤本はつっこめるだろ?それだけ。娘。だし。あと、衣装から聞いた。その辺は大丈夫。ちゃんと金握らせたから」
「いくら?」
「5。」
「あんた、いい加減、100万単位でのどんぶり勘定やめなよ。CD何枚売って、その利益が出てくると思ってんのさ。」
- 474 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:15
-
CHAPTER2 美貴は小市民
とりあえず、気晴らしにホストに行くことにした。とはいっても、頭が悪くて退屈な、くっさい香水つけて騒いどきゃいいと思ってる猿程度の無能ドモに相手させるのではなくて、途方もない金をしっかり取られるかわりに絶対バラされないし、所詮は給使であるけれどもそれなりにリスペクトできそうな男が多い矢口さん御用達の店。一人で何食わぬ顔して行くのがいい女。とりあえず安ボトル3本入れて、全部空になるまで一気させて床に這い蹲らせる。男をチェンジさせてまた数本。「REDはキツイんでOLDあたりじゃダメですか」なんて言ったバカには二本流し込んだ。全ては明るく元気な美貴の綺麗な顔、可愛い笑顔、美しさすら感じるノリの為せる技。何人目かの大男は私の足に吐きそうになったから、ゲロを代わりに鼻血をプレゼント。あら、ごめんなさい、でも誰よ、美貴の膝のちょっと下をコツンってしたの、なんて。領収書はもちろん山崎。人の金だからと小さな夢を一つ叶えてしまった私は小市民。
- 475 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:16
-
CHAPTER3 ふんころがしと空と風
矢口さんに聞こうにも、娘。メンバーだから聞きにくい。というか、メンバーは外すべきだろう。最悪の状況を想定したとき、その想定は眠る間際だったから忘れちゃったけど、結論だけは覚えている。現メンバーでは、飯田さんと距離が近すぎる。とは言っても、古株の方々とはあまり接点のない私。ごなっとうなんてものは過去の遺物でそのままフェードアウトだし、何とも気の重い……
ハロモニ。でも一緒だし、とりあえず安倍さん。というか、安倍さん以外、思いつかなかった。これで解決しなければなんて恐ろしいこと、考えないようにしよう。収録の合間、誰よりも先に安倍さんに駆け寄り、ありえないくらい真面目な顔で、「安倍さん大事なお話というか相談があるんです。」え?藤本が?なんて顔をしたのは一瞬のことで、安倍さんは嬉しそうな顔で私の腕を掴んで早々と楽屋へ。途中、辻ちゃんとマコッちゃんが付いてきたが、安倍さんはものすごい剣幕でそれを制した。ソロになると貰える個室の楽屋。懐かしかったけど、それよりもまず広々とした空間に驚いた。
- 476 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:16
- 「で、なんなの?相談って。」
私に相談されるのがそんなに意外なのだろうか、びっくりなのだろうか、そして恐らく嬉しいのだろう、安倍さんの笑顔はこれまでの人生では見たことのない、どのジャンルにも属さない、何とも不可解なものだった。幸福と自己満足と自己顕示欲に満ちていた。
「すいませんね、ドラマとかで忙しいのに」「ううん、平気だよ。ストーリーはなっちのいないところで進んでるから」「あ、そうすか。ごめんなさい」「そんなことないよ。当たれば主役のなっちのおかげ。外れたらなっち以外のせいになることになるように、最終回が二つ用意されてるから」「じゃ、今回のドラマ、安倍さんの責任にはならないんですね」「ん?藤本、なんか言った?」「いえ別になにも言ってません」
- 477 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:17
- 話がちっとも進まない。脱線の仕方も突拍子ないのだが、安倍さんは私の突っ込みなどものともせず、話は途切れずさらに続き、私はそれに重ねるように突っ込んで話の修正を試みるのだが、如何せん相手はマスタークラス。安倍なつみなのになっちを確立させてしまっている、かつて例のない猛者である。修正した先からまた脱線してしまうのだ。それは脱線といえるものではなく、安倍さんが話したいことを話すだけなのである。安倍なつみの作り上げた世界観は一部の隙も見当たらない完璧ななっちであり、そのなっちは神の作り給うたこの世界とさして差はない、いくら私の突っ込みに定評があるとはいっても、それは所詮娘。内だけでの話だ。神に限りなく近い天子である安倍さんにはやはり敵わない。
- 478 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:17
- 「あの、飯田さんの話なんですけど……」「うん、なっちと圭織は仲良しだよ。ただね、やっぱり過去の溝は溝のままなの。圭ちゃんが間に入ってくれて修復されたんだけど、やっぱり過去は消せないの。どういうことかわかる?」「いえ、さっぱり、で、あの、うんこの話なんですが。」「つまりはね、私は圭織をうんこ程度の存在として認めているし、尊敬している。仲間だし、たぶんなっちの中で一番大切な存在。で、圭織もね、なっちをしっこ程度にしか思ってないと思う。でも、圭織の中でもなっちはやっぱり唯一無二の尊い存在なの。お互いの存在がどうとかは関係ないの。それぞれに大切に思ってるし、たまらなくいとおしくて愛しているの。わかる?」「いえ、さっぱり。で、ですね、うん……」「ふん、まあ、娘。ぺーぺーじゃしょうがないわね。」カチンときたぞ、なんだか。しかし私はこんなことでは諦めない。飯田さんの名前を出した途端に仲良しがどうとか言い出したのだが、私が聞きたいのはそんなことではない。軌道修正しようにも、安倍さんの視線は中空を舞い、ただただ思いつくばかりに飯田さんとの思い出話をしている。
- 479 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:17
- 負けちゃいられないと、私は意を決して、流れ無視なことをするのでいささか意には反したが、状況が状況だけに仕方ないと空気の読めない女に成り下がった。「あの、安倍さん、飯田さんのことですが……。」「うん、だからいま話してるっしょ?圭織は気難しい子だからね、あ、そうだ、まだ二人で暮らしてた頃さ、青春の勢いに任せて青臭いけど悪いことしよう、って話になったの、そん時さ!圭織ったら……」「うんこ漏らしたって話があるんですけど、それについて何か知りませんか!!飯田さんがうんこ漏らしたらしいんです!!!」
- 480 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:18
- 安倍さんが惚けたように口を開けている。無理もない、飯田さんがうんこを漏らした話をしているのだから。私にはある満たされた充足感があった。なぜなら、あの安倍さんの、いや、なっち世界の時間を僅かながらでも揺るませ、考えさせたのだから。「あ、そう、そうなの……。なっち思うんだけどさ、圭織はうんこをもらしたわけでしょ?でもね、なっちは何度もおしっこちょびらせてるのね。」「いや、今はそういう話じゃないんで、飯田さんの……」「うん、そうなんだけどさ、なっちは思うわけね。うんことしっこ、何がどう違うのかな、って。理不尽な話だよね。どっちも排泄物でしょ?これってある意味、差別じゃない?」「あの、いろいろと疑問に感じることはあると思うんですけど、根本的に外してます。それに、うんこには大腸菌があります。人体には害です。ビッグな違いです。」
- 481 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:19
- 「いろいろあるみたいだけど、なっちもうちょっと藤本にイロイロ構ってほしいんだけど。」「あ、はい、わかりました。じゃあ、なにすればいいですか?するんで、私の質問に答えてください。」安倍さんは何も言わずに、顔を赤らめてモジモジしている。そういう系統のことをしてほしいのだろうか。けど、抱き締めようにも、安倍さんは私よりも小さいし、私は私より大きな女の子に抱きつくのが大好きなのだ。甘えっ子なのだ。
- 482 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:19
- 安倍さんのモジモジは相変わらずで、そして下を向いて拗ねはじめてしまった。話を聞き出すチャンスなのだが、この様子では何も話してくれそうにない。困った私は何すればいいかわかんないが、とりあえず頭を撫でてみた。「いや〜ん。」いやんって。安倍さん、はにかんでんのかなんかわかんないけど、エロ目になって、それで何故かぷんすかぶんすかぶんしゃかぶんしゃか、ぶんぶんぶぅん、ぷりんぷりんぶりんでどどんがどんとか……
「モーニング娘。さん、安倍なつみさん、収録再開しま〜す!!」
廊下からADの大声が聞こえた。じゃあ、お疲れ、ありがとう、なんて上機嫌で安倍さん収録に戻ってったけど、なんも解決してないし、前進すらしてない。あ〜、なんか今日の美貴、頑張ったな。収録は続くけど。
- 483 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:19
-
CHAPTER4 西麻布にて
言われて来てみりゃ西麻布。
ちょいと田舎でびっくりケメ子と合流。
雨濡れ裏路地小さな居酒屋。
「いや〜、藤本とはさ、ちゃんと話したかったんだけど、なかなか機会がなくてね……」
ケメ子の奥にはノリカさん!
「でも、よかったよ、こうやって藤本から誘ってくれて。他の六期とはさ、話したりも……」
これは確かに間違いようもなくノリカさん!!
「娘。から離れて一年になる……」
なんかとっても物凄く感動、ノリカさん!!!
「まあ、とりあえず、飲もうよ、美貴ちゃん。」
ノリカと乾杯、かけつけ3杯。
そしてそのまま記憶は土石流。
- 484 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:20
-
CHAPTER5 安いっぽい紙サブウェイ、へたくそダンス、会いたい、会えない
TVをつけると見慣れた顔がニュースを喋ってる。日曜の昼間からご苦労なこった。昨夜の酒がそのまま体内でじんわり重くのっろのろ暴れ狂っている。喉が渇いてガサガサで水を飲みたいけれど、動くと酸っぱいものが込み上げてきそうだから、じっとTVを見ていた。日曜日だから和やかにという配慮なのかもしれないが、のんべんだらりと訳のわからぬ怠惰さでチンタラ進行していく。スーパーが笑いどころはここだよと教えてくれるが、ちっとも笑えない。動こうにも動けないのだが、じっとしているだけでも吐き気を催したりする。チャンネルを変えるんだ美貴。ずっとガンガンする頭が警鐘を鳴らしてたりするのだが、体は正直でちっとも動こうとしない。この下らないTVニュースは、まだ正視に堪えうるらしい。番組を取り仕切ってる女が完璧にタイミングを取り計らった上で、「ここで中継が入りました」画面が切り替わり、映し出された女がキョロキョロとあらぬ方へ視線を行ったり来たりさせている。中継時差の弱点を笑いにしたいのらしい。ご丁寧にも画面右下に?までつけているが、やはりちっとも笑えない。
- 485 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:20
- 「あ、失礼しました。エリザベス・キャメイで〜す!」キャメイ?亀井?亀井ちゃんじゃん。やっべ、ハロモニ。だった。わかんないけど、全部削げた。せっかくのオフだけどフザけた感じに日曜だし、外行ったって人ばっかできっとつまんねー。東京の人、何にするにも並ぶのが趣味なんだよね、たぶん。きっととかたぶんばっかで意味わかんねーし。つーか、動けねー。 中澤さん、つっこまれて笑顔だし。30か……でも私、20にもなってないしな。ハロモニ。見てると哀しくなってきた。自己への自問、自分探しに最適な番組だ。疑問しか沸いてこない。初めて見たよ。あー、何もかもが絶望的でやる気がしない。…ん?鬱?これって鬱?この初体験、なんか甘酸っぱい。いちごの味?いや、違うわ。胃液の味がするもん。……もういいや。今日は鬱記念だから、全部やめちゃおう。福田さんに会おうと思ってたけど、やめておこう。よく考えたら、飯田さんがうんこ漏らすような余裕もないような頃にいた人だし、そして何よりもタメだから気まずい。
- 486 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:20
-
CHAPTER6 横顔だけが綺麗な女になるな
「美樹元さん…あ、藤本さんね。ごめんなさいね、私、最近そういうことに疎くてね、芸能界のこととか、そういうのに。子育てに忙しくて。いや、たまにTVに出てたりはしてるんだけどね、それもやっぱり子育ての合間だから。あ、べーグル食べる?いらない?私は食べるけどね。このべーグルさ、1個200円なの。で、5個以上買うと150円になるの。そう、だからいつも20個くらいまとめて買うんだけど、これが主婦の知恵なのよ。大体いつも20個買うから、いくらの節約になるんだろう、……え〜っと、まあ、そんな感じで家計を切り詰めてるのよ。え?あぁ、そうそう、圭織の話ね。ん?誰に言わないわよ、もちろん。言えるはずないでしょう。でも、圭織がうんこ漏らしたって、ねぇ…う〜ん……そういうことは考えられないなぁ。あの子、かなり繊細だし、鬱陶しいくらいに真面目だからねぇ。ぶっとんでるトコはあったけどねぇ。
- 487 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:21
- …私達がASAYAN落ちたときさ、なっちと私、なっちと圭織、みたいな風で連絡は取り合ってたの。でね、私となっち、ASAYAN落ちて、それから少ししてテレ東のスタッフから連絡あったって、話し合ってたの。まあ、一応、誰にも言わないで、って念を押されてたんだけど。で、上京して、なんかシャ乱Qがいる部屋に集められて、手売りするとかどうとか言われたんだけど、そん時、圭織もいるわけさ!私となっち、もうビックリでね。なんで圭織がいんのぉ〜!?みたいな。同じ札幌オーディション出身ってことで、それなりに心を許しあってた部分はあるわけね、あったと思ってたの、それだけにビックリさ。そっからがもう大変、気まずかったのなんの、って。思えば、私と圭織は、その後タンポポで一緒にやってきたわけだけど、圭織となっちはねぇ…思えば、あそこっからきてたんかな、まあ、そんなことは関係なくてね、圭織はそれくらい律儀で真面目なわけ、もちろん、他人の陰口なんか絶対に言わないのよ、ホント、できた子よ、あの子は。だからね、うんこなんか漏らすわけ…まあ今した話とうんこ漏らしは関係ないかもしれないけどね、圭織はうんこなんか漏ら………あ、ごめん、携帯鳴った。
- 488 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:21
- はい、お世話になっております。石黒です。少々お待ち頂けますか?……はい、大丈夫です。申し訳ないです。時間作りましたから。お手数お掛けします。…はい、そうですか。ええ、そういう場合は、縦に抱いてみてもらえますか?ええ、そうです、縦に。…はい、そうしたら、上下に揺すってあげて下さい。上、下、上、下、と。そして三回目には上、上、下、とリズムを作って頂けますか?……泣き止みました?…それはよかったです。お手数お掛けしました。…でも、流石ですわ、奥様。母親の私でも3回は繰り返さないと、泣き止まないんですの。…ええ、困ったものです。そう考えると、流石は3人のお子さんを立派に社会に出した奥様ですわ。敵いませんわ。…いや、そんなご謙遜を。……はい、ではよろしくお願い致します。…はい、失礼致します。……はい、ではよろしくお願い致します、失礼致します。
- 489 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:22
- ちっ…………で、なんだっけ?圭織のことだったっけ?うんこねぇ。漏らすような子じゃないと思うけどねぇ。わかるっしょ?なんとなく。一年くらいは一緒にやってるんでしょ?私はラブマできっぱりやめたけどさ、ホントにあれね、脱退してから妊娠発覚してさ、もうビックリだよ。タイミング、いいんだか、悪いんだか。ただね、ソロでやりたいってのはあったの、どんなジャンルにしても。一人でやってたあなたならわかるでしょ?オリメン、ったっけ?…今はそういうらしいけど、みんな、ソロでロックを歌いたいって集まった集団だからね、みんなソロで歌いたい、ってのは絶対にあるはずなの。そういえば、圭織もソロで出してるよね、そういえば。買ったわよ、もちろん、握手会にも行きたかったくらいなんだから。タンポポの仲間だしね。
- 490 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:22
- まあ、とにかくね、やっぱりソロってのは私の中で大きかったの。で、LOVE MACHINEで最後って決めて、もうやりきってやろう、って。それで、あのPVの私になったんだけど、やっぱり美しい青春の、最高に輝かしい青春の最後を飾るべきモノになったのよ。わかるでしょ?あなたも見たでしょ?モーニング娘。なんだから。あの頃と今とは信じられないくらい変わってるけどね、でも、私はそれでいいと思うの。圭織なり、なっちなり、裕ちゃんなり、矢口なり、圭ちゃんなりが伝えてきた結果がアレでしょ?だから、私はいいと思うの、信じられないくらいに変わっちゃったけどね。変わるのは悪くない、それがモーニング娘。だから、変わったけど悪くない。……あ、そういえば、知ってる?LOVE MACHINEのPV、2パターンあるの、知ってる?知ってるよね?DVDに収録されたバージョンと、真希がフューチャリングされてるバージョン。今思うとさ、あれって真希、あん時もうっすらとは感じてたけどさ──」
- 491 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:22
-
CHAPTER7 三十路の気持ちはわからないが、美貴なら「ありえないから」で済ませてしまいそうだ
安倍さんの悪夢から二週間。
再びハロモニ。の収録日。
しょうがないから、というか、最後の頼みの中澤さん。
わざわざ入りを二時間も早くして、せっかくの朝寝坊を不意にしてしまったが金のため。
中澤さん、もう入っているはずなのに、楽屋にはいない。
ふらふらとスタジオ内を歩くものの、中澤さんの姿は見当たらない。
と、そんなところで都合よく中澤さんの後姿を発見。
角を曲がり、建物の隅へ進んでく。
- 492 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:23
-
あれ?とか思ったので、こっそりと様子を窺うことに。
案の定、コソコソと中澤さんは周りを、とはいっても前左右三方向は壁だけど、を見渡し、屈んだ。
え?梨沙子ちゃん?
そうだ、間違いなく梨沙子ちゃんだ。
あ、梨沙子ちゃん、中澤さんのほっぺにチュッ。
後姿しか見えないけど、中澤さんは満足気。
で、それに飽き足らず、梨沙子ちゃんのおくちにちゅ。
あまり関わりたくないが、私の出番だろう、見て見ぬフリはできない。
- 493 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:23
- 「右も左もわからない子供に何やってるんですか!」
私の登場に動揺、混乱、停止の中澤さんだが、やはり素晴らしい。
すぐに持ち直す。
「いや、この子は上下左右、何もわからへんねん。な?梨沙子ちゃん」
こいつ、梨沙子ちゃんがとろいのをいいことに好き勝手。
私の剣幕にビビッた梨沙子ちゃん、中澤さんの後ろに隠れちゃうし。
怯えきった子犬の目で、なんか口ごもってるし。
「…な…中澤さんは……えーと、なんだっけ。忘れちゃった。」
「ほら、さっき約束したやろ?」
グランビーム出しそうな昼ドラ・マザーの優しさで、梨沙子ちゃんに耳打ち。
「ほら、藤本に言ってやり?」
「中澤さん、私の二人目のお母さんになるんだからぁ!!」
- 494 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:23
-
ん?えーと、なんでいうか、うーん……ちゅど〜ん!!!
こんな感じ、でいい?
再婚ですか、梨沙子ちゃんのお父さん、そうですか。
結婚ですか、中澤さん、そうですか。
「結婚おめでとうございます、中澤さん。梨沙子ちゃんのお父さんなんて、手近なところに運命のダーリンがいたみたいですね」
- 495 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:24
-
けっこう時間経ったと思うけど、今になってやっと梨沙子ちゃんの表情が翳った。
かわいいおめめがウルウルと……
「中澤さん、お父さんと結婚しちゃうの?じゃあ、ママは?中澤さんじゃない方のママは?どうなるの?」
あ、泣いた。
知〜らない。
「梨沙子ちゃん、違うで、なんや、藤本は勘違いしたみたいやな。中澤さんはな、たまに会って、家族ご
っこ、ちゅーんかな、生々しい言葉やな、いや、まあ、梨沙子ちゃんと仲良くしたいな、ってだけでな。
…な、泣かんといてくれるか?な?梨沙子ちゃん、ええ子やから。……おい!こら、ちょっと待て藤本!!
しっかり誤解解いてから帰らんかぁ!」
- 496 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:24
-
私の背中に怒鳴りつける声。
初めてだけど、けっこう迫力あんな。
つーか、この件に関わってから初体験が多い。
モーニング娘。について、なんてそっとうっすら考えちゃってるし。
私は中澤さんを振り返る。
「あの、火に油ですよ」
びーびー泣いている梨沙子ちゃん。
慌てふためく中澤さん。
中澤さんには悪いけど、身から出た錆だと思う。
みんなに知られる前でよかったね、ということで退散。
- 497 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:25
-
どうしよ、結婚とか、うんことか。
かすりもしない。
あ、でも待てよ。
結婚とうんこ、意外と深いところで関わってるかも。
結婚相手がくっさいうんこした後のトイレ、入れるかなぁ。
もしくは、私がうっさいうんこした後に、旦那さんに恥ずかしくない?
まあ、その心配をするのは亜弥ちゃんかな。
亜弥ちゃんのうんこ、なに喰ってもすっごいくさいから。
私は真珠のようなうんこをポロンと落とすだけだから、関係ないっちゃ関係ない。
- 498 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:25
-
CHAPTER8 海辺の豪邸でいじめられるが、弱々しい笑顔で「お母さん」と言ってみる
窓を叩く雨が相変わらず鬱陶しい。
飯田さんは口を真一文字に結んだまま、グラスを見つめたまま。
窓ガラスに張り付いた水滴が流れ、それがまた水滴にぶつかり道筋を変える。
もう何通り見ただろうか。
窓ガラスの向こうは、灰色に塗り潰された薄暗いビル群に、淀んで緑がかった運河。
夜に近づいているのだろう、闇と影が強く空を覆い始めている。
間に挟まれるように、浮かない顔をした私がいる。
- 499 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:25
-
飯田さんにちらと視線を移すと、どこかに違和感が。
それまであった空気が、世界が崩れたような、そんな大きな、けど小さな。
その時にはわからなかった。
もしかすると、泣いていたのかもしれない。
「聞いたよ、大体は。」
うんこについて探ってること、飯田さんの耳にも届いてのだろうか。
「私ね、ずっと怖かったんだ。娘。を離れる日が来ることが。」
そういえば、口止めするの、忘れてた。
「いろいろ言いたいことはあるけれど、まあ、なんて言うのかな。……娘。を途切らせたら承知しないから。」
「何のことかわかりませんが、今、美貴のいる場所ですから。」
「任せた。」
よくわからん売り言葉に買い言葉。
けど、それが全て。
- 500 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:25
- おしまい
- 501 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:26
-
2004年3月10日、何となくキーボードに向かい、「こんな娘。のはなし」みたいな書き散らしを世に出し、ストック少なで好き勝手に文章を垂れ流すことで、僕自身それなりに成長したな、と思います。酒を飲むこと、話を書くこと、軽く陰険にヒトリゴトで娘。について語ること…。いろんなことで僕自身が見えてきたし、それにより新しいことが生まれてきました。きっとここまでが第一段階なのでしょう。そして、それをクリアーできたと思います。
さあ、これから長編でも書こうか、というところでアイデアを詰めていました。その中で、娘。論に限らず、人生観、恋愛観についても深く考え、多方面から、ありとあらゆるジャンルで考えているところでした。
ここで僕の中に迷いがあることを感じました。飽きずに長編を書き上げる、という難しさの「壁」にぶつかったようです。この「壁」は乗り越えても、乗り越えなくても選択は自由だと僕は思っています。実際、元々しょうもない内容だったのですが、内容の中心がうんこという救いようのないものになってきました。もう限界です。
- 502 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:26
-
『こんな娘。のはなし』はここで打ち止めです。
これからを期待していて下さった方、いないと思いますが、いるかもしれません。「なにふざけてんだ。」と怒るかもしれません。でも、一生懸命考え抜いた結論です。どうか受け止めて欲しいと思います。どうか理解してください。
これからは新しい気持ちで、これまで以上に精力的に娘。小説に取り組んでいきます。今はすれっからしのような状態ですが、頑張ります。期待していて下さい!ありがとうの感謝の気持ちを、次のステップで必ず見せると、約束します。
『こんな娘。のはなし』作者として、「ありがとう。」そして、あたらしいこれからを、よろしくお願いします。
- 503 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 00:27
- ほんとにおしまい
- 504 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 02:23
- 川*’ー’) <わぁしのケツばっか見てんじゃねぇよ!!
- 505 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 02:23
- ( ´ Д `)<泣かないもん
- 506 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 02:24
- 州*' o'リ<……わかんなくなっちゃった
- 507 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 02:25
- 州*‘ o‘リ <ん?
- 508 名前:. 投稿日:2004/06/07(月) 02:30
- ( ´D`)<でぃあどら!
- 509 名前:名無し娘。 投稿日:2004/06/07(月) 23:14
- 500レスまで読みあげ、
『色々つっこみたい、いや言いたいことがあるけど、一言。
ここが今、一番好きだ。」
なんていおうと思ってたら、終わらいでか。
残念だけど、また会える時は優しくしてね。あと作者さんのセンスがたまに怖かった。
- 510 名前:. 投稿日:2004/06/24(木) 00:03
- >>509
ここまで読んでくれて、本当にありがとう。
いろいろ考えた末、引き篭もることにしました。
http://jbbs.shitaraba.com/sports/15466/
よろしければ。
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